>1
乙〜♪
>1
おつん〜♪
6 :
前スレ643:04/03/27 02:30 ID:rQbMRY9N
スレ立てはやっ!
>1
おつかれさまでした〜♪
んではもちと後に投下させて頂きますです。
>6
健司が部活の朝錬で一緒じゃなくて良かった…と、圭介はしみじみ思った。
アイツに朝からヘンな目で見られたら、いくらなんでもすごく傷付いたに違いない…と自分
でも思うから。
「けーちゃん…そんな格好してると、ますますヘンに思われるよ?」
「うっせー…人の気も知らないで」
「……私には一生わかりませんよぉー」
「代わってやれるなら代わってやりてーよ…」
「あ、それイヤ」
「…オマエって、時々すげーつめてーのな…」
圭介だってもとは男だったのだから、雑誌のグラビアとかを見て「お、いいチチ!」とか
「こっちの方がでけーよ。いいなぁ揉みてー」とか言っていた事は否定しない。けれど、自分
がこうなってみて初めて、それがいかに無責任で他人事な物言いだったかを痛感する。
いまさらながら「グラビアアイドル(主に巨乳爆乳タレント)の皆さん、ごめんなさい」と
いう気分だ。
もちろん、悔いたからといって、今、この状況を打開出来るわけではないのだけれど。
「ね、それでおばさん、いつ帰ってくるの?」
「…知らねぇ…。どうせまたオヤジと新婚気分で遊んでるんだろーよ。息子一人ほったらかし
といて、いい気なもんだよ」
「へへへ…おじさんとおばさん、ラブラブだもんねぇ」
「ラブラブ言うな。キショクわりぃ」
両親がアレでナニな行為をしているなんて想像するのは、まだ男と女のナニを経験した事の
無い圭介にとって、ひどく苦痛を感じてしまう。たとえそこに愛があるのだとしても、なんだ
かすごく生臭くて不潔に感じてしまうのだ。
だいたいがそもそも、星人の母と地球人の父が、普通の夫婦のようにナニをするものなのだ
ろうか?
母に聞けば、きっと身振り手振りで克明に教えてくれたりするのかもしれないけれど、……
というか嬉々として聞かされそうで、だからこそ今まで一度だって訪ねた事は無かったのであ
る。
「なんでー?…あ、おばさんにこの事伝えなくていいかな?」
「どの事?」
>7
「けーちゃんのおっぱいが“ぶくーっ”てふくらんだこと」
“ぶくーっ”のところで、右手で胸の前を“ぐいんっ”と半円を描いて振って見せる。何か
の映画で、大部屋役者が「ウチのナニが、ナニですから」と言いながらお腹の大きくなった事
をジェスチェアで示した時のような、そんな動きだった。
「………人の胸をモチか風船みたいにゆーな」
「でも、けーちゃん一人にしてるって事は、よっぽど信用されてるんだねぇ…」
しみじみと言う由香の言葉を聞きながら、圭介は
『本当にそうか?』
と思った。
性が転換した時は、あれだけ心配してくれたのに、それ以後の放任具合はどうだ。超過保護
なところ自体は変わらなくて、相変わらず毎日夜には必ず電話してきて、その日一日あったこ
とを根掘り葉掘り聞かれるものの、自分からはいつ帰ってくるのか、話す素振りすら見せやし
ない。
どうにも悔しいから、肉体的な変化は一切母には話していないが、なんだか、母の手の平の
上で躍らされているようで寒気さえ覚える圭介だった。
■■【33】■■
教室に入ると、いつものように挨拶をしながら自分の席についた。いつまでも鞄を抱えてい
るわけにはいかないので、意を決して机の上に置き、何食わぬ顔で中から教科書やノートなど
を取り出す。
そのうち、教室の空気が段々と少しずつ変化してきた事に圭介は気付いた。
誰も、圭介と目を合わせようとしないのだ。
男子などはあからさまに視線を外し、そそくさと自分の席についてしまう。視線を感じて振
り返っても、さっと目を逸らされるので対処の仕様が無い。女子に至っては、まずギョッとし
た目で見て、それからまじまじと見つめ、そして近くの女子に近づいてヒソヒソと囁きあった
りしている。
ある程度覚悟していた事だけれど、これでは針の筵だ。
元々、影でコソコソしたりする事に対して我慢強いタイプではない圭介は、あと数秒放って
おいたら確実に怒鳴り散らしていただろう。
…と、女子のグループから一人の女生徒が何か思い詰めたような、決死の覚悟でもしたよう
な表情で圭介の前に立った。
>8
こんな時行動に出るのは、男子ではなく女子の場合が多い。この年代の男子は、いろんな意
味で好奇心があるくせに女子の問題には首を突っ込みたがらず、妄想を膨らませるだけで傍観
者を気取る事が多いのだ。まったく腑(ふ)抜けているとしか言いようが無い。
「なんだよ?」
いい加減イライラしてきていた圭介は、腕を組んで重たい胸を支えながら、下からねめつけ
るようにしてその女生徒を見上げた。
彼女は確か、桑園京香(そうえん きょうか)とかいう名前だったはずだ。
先週の火曜か水曜日に、“彼氏のプレゼントで一番喜ばれるのは何か”…と、圭介に相談を
持ちかけてきてから、以来、何かと話しかけてきてくれる女の子だった。艶々としたロングヘ
アの黒髪とパッチリとした二重で切れ長の目が、大人しくて優しそうな雰囲気を醸し出してい
るが、これが実はまったくのフェイク(にせもの)で、実は気が強くてエッチ大好きのエロエ
ロ女だという事を圭介はよおく知っていた。
『彼氏がアナル(肛門)に入れたがって困るけど、嫌われたくないから良い断り方を教えて』
と言われた時は、もう自分は金輪際女の外見なんて信用しねぇ…と心の中で決意したものだ。
その京香が、ちょっと怒ったような困ったような複雑な顔で、圭介を見下ろしている。
「あの…さ、いくら『ナイ』からって、いきなりそれは無いんじゃないかな?…ちょっとキモ
イよ?」
口に右手を当て、身を屈めて圭介にそう耳打ちする。傍目には、『女の子のナイショ話』と
でも映っているのだろうか。
「はあ?」
「それ」
京香は顎で、圭介の大きく突き出した胸を指した。
圭介は、彼女の言わんとしたところがなんとなくわかり、一瞬激昂(げっこう)しかけたも
のの、一息ついて立ち上がると無言で体を反らし、彼女に向かって胸を突き出してみせた。
「ん」
「え?…触ってみろってこと?」
「ん」
「ちょっとやだやめてよこんなとこで…」
予想外だったのか、あたふたとうろたえる京香の手を取り、圭介は強引に自分の右胸を触ら
せた。
>9
教室のあちらこちらからは、2人のやりとりを見ていたのか「やだ」とか「きゃー」とか
「うわっ」とか「うほー」とか実に様々で妙な声が上がる。視界の端に、やに下がったスケベ
そーな顔の吉崎達3馬鹿が入ったけれど、圭介はそれらを全部無視して、さらにぐいっと京香
の手を胸に押し付けた。
「…え?…あれ?…うそっ…」
驚愕に目を見開いた京香が、思わず衆目の中だという事を忘れて両手で圭介の胸を鷲掴みに
する。
そして、
「……マジ?」
「マジ」
「モノホン?」
「モノホン」
「………やわらかー………!!…」
しばらく圭介の胸を揉んでいた京香は、ここに至って自分が何をしているのかき気付き、
「ちょっとこっちにいらっしゃい」
と、圭介の手を引っ張って行く。
2人が教室を出て行くと、途端に教室の中は歓声と嬌声が飛び交い、その中で由香は、
『まあ、誰だって驚くよねぇ…』
窓側一番前という場所の利点を生かし、鼻歌などを唄いながらのんびりと通販カタログの下
着のページを眺めていた。
一方、京香にトイレまで連れてこられた圭介は、個室に誰か入っていないか京香が確かめて
いる間、彼女に揉まれてズレてしまったTシャツを直していた。
「もうわかっただろ?あのさ、もうすぐはるかちゃん来るから、用があるなら早くしてくんね
ーかな?」
圭介がそう言うと、京香はツカツカツカ…と圭介に歩み寄って、せっかく直したTシャツご
と、ブラウスを捲り上げた。思わず声が出かけるが、圭介は恥かしいのを我慢してじっとして
いる事にする。
京香はしばらく“ぽかん…”と、朝の由香みたいに口を開けて重たげな乳房を眺めていたけ
れど、はっと気付いて捲り上げていたTシャツを少し乱暴に引き下ろした。
「ちょっと、いったいどういうこと?説明しなさいよ」
>10
「オレにもわかんねーよ。朝起きたらこうなってたんだから」
スカートにTシャツとブラウスを入れながら圭介が憮然とした顔で答える。ほっぺたが赤く
なって、なんだかものすごく可愛い。
「……いつから?」
「先週の金曜かな。朝起きたらちょっとふくらんでた。で、土日でこうなった」
心底うんざりした口調の圭介の言葉に、京香の目が剣呑に輝く。
「あんたね…ふざけるのもいい加減にしなさいよ」
「ホントだって」
「ウソ」
「ウソ言ってどーするよ?だいたい、オレだって困ってんだからな?いきなりこんな邪魔なモ
ンが胸についてみろ。鬱陶しくてしょーがねーだろ」
そう言って圭介は重たい乳房を右手でたぷたぷと揺らして見せた。
「取りなさいよ」
「ムチャ言うな」
「……ふざけた体ねぇ…」
「……人に言われると腹立つな」
トイレの大きな鏡の前で、2人の少女は睨み合った。
けれど、すぐに片方が深く溜息を吐き、やれやれと首を振る。
「悪かったわよ。ヘンな言いがかりつけて。あんただって、ある日突然自分が女だった…なん
て知って嫌な思いしてるのに、クラスメイトの私達が責めたりなんかしたら、それこそ逃げ場
が無いものね」
基本的には、京香は悪人ではないのだ。人の痛みをわかってあげられる人間なのである。
ただ、ちょっと人より自分の感情を優先してしまうのが難点なだけなのかもしれない。
「でもこれであんたってある意味『最強』よね」
「は?なにが?」
「男みたいにサッパリした性格でロリータ顔の……こいういうの、なんて言うんだっけ?爆乳
(ばくちち)?…しかも、まだ初物(はつもの)なんでしょ?」
それを言うなら『ばくにゅう』だ…と思ったが、ツッコむとまたややこしい事になりそうだっ
たので、圭介は別の疑問をぶつけてみた。
「なんだよ。ハツモノって」
「は?…それ本気で言って……るみたいね。初物ってのはね、まあつまりバージンってことよ」
>11
「ばっ!ばかか!?当たり前だろそんなの!!男なんかとンなことできっか!!」
今朝の夢が“ぶわっ”と蘇る。
圭介は顔を“かああああっ!”と赤らめてぶんぶんと首を振った。
「…しかも男嫌い…と。………なーんか、イカ臭いオタ男(お)が妄想ふくらませて作ったよ
うな女ね。言っとくけど、私の勇ちゃん取らないでよ?」
「は?」
「手出したら承知しないから。それと手出されても許さない」
「おいおい…」
圭介は挑戦的な目で自分を見る京香を、うんざりした目で見上げた。
勇(ゆう)というのは、京香の彼氏で、何かにつけやたらとカッコつけたがる、隣のB組に
いる優男(やさおとこ)だ。「自分はモテる」と勘違いしているのはあの手の男の基本だけれ
ど、自分に寄って来るグラム10円くらいの軽いバカ女(京香がそうだとは言わない。口が裂
けても)が、この世の女の「全て」だと思ってる、救いようの無い男でもある。自称「女の理
解者」で、その実、自分の狭い経験の中で勝手な恋愛論を振りかざすしか能の無い、ただのバ
カなのだ。
「やめてくれよ。オレはあんなヤツ……っつーか、そもそも男なんかに興味ねぇよ。だいたい、
どこがいーんだ?あんなバカ」
「あのね、勇ちゃんを馬鹿にしないでくれる?あれで、私にはスッゴク優しいんだから」
君を含めた女全員に、だけど。
『しかも可愛い女限定ときてる』
圭介は心の中でそう呟いて、ムキになって彼がいかに優しいかを熱弁し始めた京香をぼんや
りと見上げた。
恋をする女ってのは、ここまで馬鹿になるのか。じゃあ、オレは一生恋なんてしなくていい
や。
そんな気分だ。
「ね、どうなったの?」
ふと声がしてトイレの入り口を見れば、クラスの女子の顔が鈴なりに並んでいた。
「なんだよオマエら…」
「生チチ。正真正銘の。確かめたから」
「「うそーー!!」」
「なっ!?」
>12
「なっ!?」
京香の溜息混じりの言葉に、女達が“どどどどどっ”とトイレに雪崩れ込んで来る。圭介は
恐怖を感じて後退り、たちまち壁際に追い詰められてしまった。
「ね、なんで?」
「すっごいね、触っていい!?」
「どうしたの?何か使ったの?」
「土日で手術した?どこで?」
「なんでなんでなんで?私にも教えて?」
「教えなさいよコラ!」
…もうめちゃくちゃである。
「ちょ…まっ…おいっ!…やっ…まてまてっ!…だっ…そこちがっ……触るなっって…」
何本もの手が胸に伸び、もみくちゃに揉みたてるのを、圭介は必死になって払い除ける。も
し男に同じ事をされたら引っ叩いて蹴り上げて蹴倒して逃げるのに。
相手が女だと思うと、どうしても手が出せなかった。
「なにしてるの!?ホームルーム始めるわよ!?」
数分後、担任のはるかちゃんが教室に残った生徒に聞いてトイレまでやってきて怒鳴ると、
まるで蜘蛛の子を散らすようにわらわらと女生徒が中から出てきた。
何事かと思いながら中を覗き込んだ彼女は、次の瞬間、なんとも言えない顔をして
「…まあ…野良犬に噛まれたと思って…」
…と、とんちんかんな事を大真面目に言ってのけた。
トイレの中では、壁際の床に崩れ落ちるような格好で、圭介が座り込んでいる。ブラウスを
捲り上げられ、Tシャツをくちゃくちゃにした圭介は、ぼんやりと放心状態ではるかちゃんの
顔を見た。
「……こ……こええぇー……」
集団になった女は怖い。
期せずしてその認識を新たにした圭介であった。
散々揉まれた彼の乳房は、赤く腫れてじんじんと熱を持つほどになっていた。
気持ち良いとか悪いとか、そんなのは感じている余裕すら無かった。
>13
■■【33】■■
ちっちゃくって可愛くて、ナマイキな口調で「オレ」とか言って、しかもブラウスのボタン
をはじけ飛ばしてしまいそうなくらいパッツンパッツンに胸元を盛り上がらせた美少女という
のは、男だけでなく女にとってもひどく興味をそそられる存在らしい。
圭介は先週に輪をかけて珍獣扱いとなり、さらにオモチャにされていた。
一時間目の数学の男性教師ですら、顔を見る前にまず胸を見た。それにいちいち腹を立てて
いるのは馬鹿馬鹿しいとは思いながらも、イライラはつのった。
胸が大きくなっていいことなんて一つも無い。
授業を受けている間、机に“のしっ”と胸を乗せて楽をすれば、ノートを取る時に邪魔で仕
方ない。また、消しゴムのカスや鉛筆の汚れが付いても、胸の下の所だと自分ではぜんぜんわ
からない。それに、まず第一に、歩いていて足元が見えないし、重いからすぐ腕を組むように
なって肩が倍凝った気がした。
Tシャツを2枚も重ね着しているせいか、胸の谷間が蒸れて汗疹(あせも)だって出来そう
だ。トイレの個室に入って乳房を持ち上げながら、下に溜まった汗をハンカチで拭いている時、
人生の意味を考えてしまって哀しくなってしまった。
背伸びをしたり腕を上げただけで、すぐブラウスがスカートから出てしまうのもイヤだった。
けれど、圭介が何よりイヤだったのは、1時間目の休みにトイレで汗を拭いてから個室から
出た時、まるで隙を突くようにして何度も女子に胸を揉まれたことだ。ホームルーム前の、こ
のトイレで味わった圭介の乳房の感触が忘れられないのか、胸を揉んだ時の圭介の反応が面白
いからなのかはわからない。
抵抗出来ない圭介を捕まえて、女生徒達はおもしろ半分に代わる代わる彼の胸を揉みしだい
た。
もはや、我慢も限界にきていた。
間が悪いというのはこういう事なのか、よりによってこめかみをひくつかせながらトイレか
ら逃げ出した圭介の胸を、擦れ違いざまにあの3馬鹿の一人、吉崎卓巳(たくみ)が揉んだ。
女子相手では我慢するしかなかった圭介も、相手が男子ならなにも遠慮したりしない。する
必要も無い。
>14
かくして吉崎は、鬼の形相をした圭介にとことん追いかけられる事になった。
2時間目の始業のチャイムが鳴る中、圭介はひたすら逃げまくる吉崎を、胸をぶるんぶるん
と盛大に揺らしながら追い掛け回し、バランスがとれなくて転んだ。今日、もう2回目だった。
しかも、揺れるたびに胸はちぎれそうなほど痛む。
それが、圭介の怒りにさらに油を注いだ。
圭介は近くにあった箒をブン投げて吉崎を転倒させると、馬乗りになって彼をボコボコにし
た。スカートがめくれパンツ丸出しでも気にした様子も無い。手で殴ると女の華奢な拳などす
ぐに壊れてしまうため、上履きを手に持って殴り倒した。
結果、その惨状に慌てた生徒が教師を呼び、圭介と吉崎は、2時間目が始まっているという
のに職員室ではるかちゃんにお説教を喰らう羽目になったのだった。
「わかった?山中クンはもう女の子なんだから、そういう事はしないの」
ソバージュの髪を揺らし、幼児に言い聞かせるような猫なで声で話しながら、黒縁眼鏡をか
けた担任教師の坂上はるかは、今日17回目の溜息を吐(つ)いた。
目の前には、髪もボサボサ、服はヨレヨレ、どこかで転んだ時にぶつけたのか、おでこにでっ
かいたんこぶをつけた、セミロングの可愛らしい少女が立っている。ブラウスは学校指定の丸
襟ブラウスではないけれど、風船でも仕込んでいるんじゃないか?と思うくらい大きく張り出
した胸を見たら、聞くのも馬鹿らしくなってやめてしまった。きっと今まで着ていたブラウス
が着れなくて、新しいものも用意出来なかったのだろう。とすれば、このブラウスは誰かに借
りた物に違いない。
はるかはそう思いながら、その重たそうな胸の持ち主を下から見上げた。
少女は憮然とした顔で不機嫌そうに目を逸らしたまま、貝のように口をつぐんでいる。紅潮
したほっぺたはぷくぷくとしてやわらかそうで、子供っぽい顔からは想像も出来ないほど豊か
な胸とはアンバランスな事この上も無かった。
「わかったの?」
もう一度、今度は少し声を強めて聞くと、少女は膨れっ面のまま隣に立つ少年の足を踏んづ
けた。
「いてーー!!!」
「山中クン!!」
>15
「だってはるかちゃん!コイツ、オレの胸掴んだんだぜ!?許せるか?そんなのっ!?」
少女は、鼻にティッシュを詰め込んだ少年を親の敵(かたき)か害虫か、はたまた大嫌いな
グリーンピースでも見るように睨みつけ、唾を飛ばして激しく主張する。少年といえば、少女
に上履きで散々叩かれ、蹴られて、制服は誇りまみれの上、顔にはいくつもの内出血の痕(あ
と)がつき、口を切ったのか口角(こうかく)には血が滲んでいた。
「んなでけーおっぱいぶら下げてるからだろ?女どもには触らせてんだからケチケチすんな」
「んだとコラァ!!」
「やめなさーーい!!」
スパンスパーーン…と、2人の頭を、手に持っていた教員連絡用回覧版を使い、美智子直伝
のテクニックで引っ叩くと、はるかは今日18回目の溜息を深々と吐いたのだった。
『それにしても…』
と、担任を持つのは今年が初めての新人教師は思う。
どうしてこの子は、急にこんなに胸が大きくなったのだろう。
金曜日までは、それはもう見事なほど“ぺったんこ”だったはずだ。それが、土日を挟んで
月曜日の今日は、まるで胸だけプレイメイトにでもなったみたいだ。他の部分がちっちゃかっ
たり細かったりするので、ローティーンの女の子の胸に別の生き物でも張り付いているかのよ
うにさえ見える。
これがギャグマンガなら、きっとここは笑うところなんだろう。
けれど、あいにくココは現実で、今は職員室でお説教の真っ最中だ。
『女性仮性半陰陽って………一部分だけがこんなにも早く成長してしまうものなのかしらん?』
この生徒に関しては口外無用・秘密厳守・漏洩厳罰・暴露解雇…と、上の方から厳しい“お
達し”があり、しかるべき医療・研究機関に連れていくわけにもいかない。しかも、この子自
身は知らないだろうけれど、この子がまっとうな学校生活を送れるように一番尽力したのは、
あの高尾先生(アナゴ)だ。それがはるかには、少し悔しかった。
>16
「私にもこれくらい胸があれば、高尾先生も女に見てくれるかもしれないのに」
そうだ。
胸がぺったんこだから、髪を大人っぽくしても、スーツを大人っぽくしても、高尾先生は自
分をまだ教え子の時のままでしか見てくれないのだ。
そう思いながら圭介の胸を見ていたはるかは、少年と少女が、なんとも気まずい顔をして自
分を見ている事に気付いた。
「…なあに?」
「……先生さぁ…独り言はなるべく一人の時に言った方がいいと思うな」
「同じく」
「………私、今、口に出してた?」
2人がこくりと頷く。
「うそっ………バレた!?」
「いや、みんなもう知ってるし」
「みんなにはナイショにしてて、ね?私が高尾先生のこと大好きって知られたら、もうみんな
の前に立てなくなっちゃう」
「いや、だからみんなもうソレとっくに知ってるし」
「あああああああ…恥ずかしい…どうしよう私…」
「……人の話、聞けよ」
一人真っ赤になってくねくねと体をよじる担任教師に、少年と少女は途方に暮れて立ち尽く
していた。
■■【34】■■
後ろ手に職員室のドアを閉め、圭介は横に立つ馬鹿の顔を斜め上に見上げた。
血はもう止まったのか、ティッシュを引き抜いた鼻の穴をひくつかせて、吉崎は口元の血を
拭う。
『抵抗、しなかったな』
この男は、圭介が上履きで殴り続けている間中ずっと、体を丸めて顔を腕で庇い、圭介が殴
るに任せていた。何度もその機会はあったのに、一度も反撃せず、ただ圭介の気の済むように
させていたのだった。
『それってやっぱり……』
>17
小さく息を吐く。
「なあ」
「うん?」
「なんで抵抗しなかった?」
「…女を殴れるかよ」
『やっぱり…な』
圭介は、少しがっかりした。
男だった時には、取っ組み合いの喧嘩だってした。だのに、圭介が女だとわかった途端、こ
の男は手を出すのをやめたのだ。
圭介はもともと女だったわけじゃないけれど、そんな事は関係なく、今、女である以上、コ
イツにとって自分はもう、手を出す対象では無くなったということだ。
『もうコイツとは、喧嘩もできねーのか…』
圭介は少しがっかりして、ちょっとだけ……いや、かなり、寂しかった。
もう、男同士の馬鹿話も出来ない。修学旅行で風呂に入ってちんちんの大きさを比べたりな
んかも出来ない(いや、それは別に残念でもないけど)。誰が好きだとか、どのグラビアアイ
ドルがいい乳してたとか、バイクの話とかサッカーの話とか、ブリスターパックの新製品の話
とか、そういう、当たり前にしていた当たり前の話が、もうコイツとは当たり前に出来なくなっ
てしまったのだ。
圭介が前と同じ気持ちでも、心は前と全く変わらなくても、コイツらが変わってしまう。自
分との間に、線を引いてしまう。
その寂しさに、疎外感に、圭介は胸がたまらなく苦しくなった。
「お前ももう、覚悟決めた方がいいぜ?」
「何がだよ」
「自分が女なんだって事をさ」
「はあ?」
「その、可愛いと…思うぜ?」
「アホか」
吉崎には申し訳ないが、鳥肌が立った。
「お、俺だけじゃなくてさ、加原も金子も、そう思ってる」
「気持ち悪い事言うな」
>18
本気で“ぞぞぞぞぞ…”と背筋に悪寒が走った。悪友に恋愛感情を持たれるなんて、悪い冗
談にしかならない。
「オレはオレだ。山中圭介はどこまでいっても山中圭介だ。何も変わっちゃいねーし、これか
らも変わらねーよ。冗談でもオレに『好き』とか言うなよ?目の前でゲロ吐くぞ?」
「言うかよ」
“ぷっ”と拭き出した吉崎の顔が、今まで見た事が無いくらいに優しい顔になっていた。言
葉とはまるきり逆に、それは男が女を見る時の顔、そのものだった。
「その……おっぱい掴んで、悪かったよ」
「教室棟I」へ続く渡り廊下を歩きながら、吉崎は口篭もりつつ圭介に謝った。頭を下げたり
手を立てたりしないけれど、本気で申し訳なさそうだった。
「痛かったか?」
「痛かった。許さん」
「……悪かったって言ってるだろ?」
「……今度やったら承知しねぇ」
「ははっ…どう承知しねーんだ?」
「…………もう口利いてやんねー。テメーなんかゼッコーだ」
「絶交って……コドモかよおめーわ」
「うるせー」
「じゃあ今度はこっちだな」
「うひゃっ!!?」
お尻を撫でられた。
飛び上がって転びかけ、圭介は顔を真っ赤にして馬鹿を睨んだ。コイツに対して「寂しい」
なんて感傷を抱いた自分が、ホントに本気で正真正銘の馬鹿に思えた。
「テっ…………テメェ〜〜〜〜〜…」
「おーこえぇこえぇ」
ニヤニヤ笑いながら脱兎の如く駆け出す吉崎を、圭介は怒り狂って追い駆ける。
ボコッてやる。
殴ってやる。
蹴ってやる。
>19
再起不能にしてやる。
チンチン捻じ切ってやる。
その様子を、教室の廊下側の窓から健司が見ていた。由香と圭介は同じ2Dクラスだけれど、
健司だけは2Eなのだ。
『あ、けーちゃん……なにやってんだろ…』
鬼のような顔をして授業中の廊下を走り過ぎて行く。健司には全く気付かなかった。
けれど、何より健司が驚いてぎょっとして息を呑んだのは、ぶるんぶるんと上下左右に盛大
に揺れまくる、圭介のでっかい胸だった。
『あ…あれ…??』
シルエットがおかしい。細くてちっちゃい体に、とんでもなく不釣合いな胸だった。
『ええと……』
どきどきした。
なぜかわからない。
汗の光る額も、ぼさぼさに乱れた髪も、白くて細い手も足も、もうすっかり見慣れたと思っ
ていたのに。
それになにより、あれは『けーちゃん』なのに。
健司は、厚い胸板を内側から打ち鳴らす心臓の鼓動に、戸惑いを隠せなかった。
■■【35】■■
胸がものすごく痛かった。
涙が出た。
圭介は3時間目の体育を休んで、生理休暇の制服組と一緒に体育館の隅で見学していた。
この学校は、県下でも早々とブルマを廃止した部類に入る。基本的に体操服はジャージのみ
学校指定で、他は自由だ。だからこそ圭介もブルマを履いて恥ずかしい思いをしなくて済んで
いた。
ただし、「自由」とは言っても思春期の男女を不必要に刺激しないように、体の線がハッキ
リと出るタンクトップやチューブトップ、そしてスパッツなどは禁止…とまでいかなくても厳
重注意対象となっている。
>20
というわけで、圭介は女になる前とほとんど変わらない服装で壁際に座り込んでいた。上は
Tシャツにジャージを羽織り、下はハーフパンツという姿だ。男だった時は短パンだったけれ
ど、さすがに女になってからは裾から下着が見えてしまう事が多々あって、教師にハーフパン
ツに変えるよう指示されたのだった。
『ちくしょー…』
一応着替えはしたけれど、着替えに使った保健室にソラ先生がいなかったので、胸を診(み)
てもらう事が出来なかったのだ。圭介が来るのを彼女が手薬煉(てぐすね)引いて待ち構えて
いるだろう場所に、自分一人だけで行く…というのは、まだ抵抗があった。でも、由香も一緒
だったので大丈夫だろう…と思ったのだ。
時間が経つにつれ、おっぱいの上の胸元のひりひりとした痛みがひどくなってくる。
おっぱいの付根部分も鈍く痛んだ。
コートの中の由香が、心配そうにこっちを見ている。手を軽く振ってやると、ホッとしたよ
うに微笑む。…が、あぶない!と思う間もなく、頭にボールが当たって宙高く跳ね上がった。
『なんだかなぁ…』
保健室に行く前に、近くのトイレへ由香に連れられるようにして入った時の事を思い出す。
あまりにも圭介が痛がるので、心配した由香が引っ張っていったのだ。
個室に入ってすぐ、
「ね、けーちゃん、胸出して」
真面目な顔で詰め寄られた。
「こんなところでか?」
「だからトイレまでわざわざ来たんでしょ?」
「う、うん…」
圭介はブラウスのボタンを外し、Tシャツを二枚とも捲り上げて“ぶるん!”とたっぷりし
た重たい乳房を放り出した。
「ぜっ、全部出さなくてもいいってば!もうっ!」
「え〜…」
同性なのに真っ赤になって目を覆ってしまった由香を見て、圭介までが赤くなる。
「いいよ」
圭介はトップを両手で隠しながら、天井の蛍光灯の光が当たるように角度を調節して由香に
見せた。ただでさえ豊かな胸が、両手で少し押えるようにしている事で深い谷間が強調され、
さらに豊かに見える。
>21
これで少し前屈みになって恥ずかしそうに微笑んで見せれば、どんな男だってたちまち野獣
になって襲いかかってきそうだった。
けれど今ココにいるのは由香一人であり、その彼女は、乳房そのものよりも、その上の部分
に目を吸い寄せられていた。
「うわ…」
思わず由香は息を飲んだ。圭介の乳房の上部、急激な盛り上がりを見せるその部分が、内出
血で痛々しく紫色に腫れていた。
左手で捲り上げたTシャツを押さえ、右手の人差し指と中指でおそるおそる触る。ぷにぷに
とした触感とあたたかな体温に、由香は、なぜかどきどきした。
「…痛い?」
「そりゃあ…」
「……これ、痕(あと)にならないといいけど…」
「え?」
「今日だけならまだいいかもしれないけど、毎日こうだと、やっぱり……」
由香の言った言葉に、思わず圭介は息を飲んだ。こんなみっともない斑(まだら)模様が一
生残るなんて、考えただけでゾッとする。
「…ね………今日、ブラ買いにいこっか」
「……うん」
思わず素直に頷いた、圭介だった。
目の前で、レシーブを打つ女生徒の、体操服に包まれた胸が“ぷるっ”と可愛く揺れた。圭
介のように、笑ってしまうくらい盛大に揺れたりしない、歳相応の揺れ方に見える。
『いいなぁ…』
しみじみと思う。
重たい胸は、走る時にしっかり固定しておかないと、毛細血管がぶちぶちと切れる。そりゃ
あもう景気良く断裂する。そして、切れた所は内出血を起こし、腫れて、引き攣りを起こし、
鈍い痛みになる。
よく、巨乳・爆乳アイドルなどが白い砂浜で、おっぱいをぶるんぶるんと盛大に揺らしなが
ら画面奥から走ってくる映像などがあるが、あれはきっと相当痛いのを我慢しているに違いな
い…と圭介は思う。
仕事だから出来る事なんだろうけれど、自分なら仕事でもやりたくないと圭介は思った。
>22
今は若いからいいかもしれない。
でも、肌に張りが無くなったら、揺らしまくったツケはスグ、確実に、乳房に訪れる。伸び
きった皮下細胞は、大胸筋だけでは重量のある乳房を支えられずに、だら〜んと垂れてしまう
のだ。古いコントで老婆役のコメディアンが、長く伸びたタクアンみたいな乳房を「よいしょ」
と肩にまわすシーンがあるが、自分の胸がもしそんな風になったら恥ずかしくて死んでしまう
かもしれない…と圭介は思った。
『やっぱり買おう…。由香についてきてもらって、ちゃんとしたブラ買おう…』
体育のバレーの授業の間、圭介は体育館の壁際で生理休暇の女生徒に混じりながら、じっと
一人で決意を新たにしていた。
長く伸びきった乳房を肩に背負う自分の姿を、必死に振り払いながら。
体育が終わり、圭介は着替えるために由香と保健室へ向かった。
最初から休むのであれば着替える必要も無かったのだけれど、ソラ先生にも用はあったので
仕方ない。
「いた」
中を覗くと、ソラ先生(空山美智子)がなんだか疲れた様子で机に足を投げ出し、椅子にふ
んぞり返っている所だった。
年齢不詳のソラ先生だけれど、前にはるかちゃんから、彼女ははるかちゃんの2つ3つ上だ
と聞いた事がある。何でも、この高校に着任した時の歓迎会で、一度だけ歳を教えてくれたら
しい。それが本当だとすれば、今は25・6のはずだが………とても結婚適齢期の女性とは思
えない“色気の無さっぷり”だ。
圭介達がそろそろと部屋に入ると、
「やっと来たか」
ソラ先生は圭介達とは“反対側を向いたまま”そう言って、くるうりと椅子を回しこちらに
向き直った。
ニヤリと笑ったその顔は、とてもとても“男らしかった”。
>23
ここまで。
いきなり大量投下してしまいました。
これで書き溜めていた分を消化しました。
みなさんの御言葉、励みになります。
ありがとうございます。
>24 イイ! 次も期待してます。
>>24 描写がすごく気持ちいいなー。
ヒロインが悶々としつつも、神聖不可侵な雰囲気を持っているのもツボだ。
>>24 , -ァ、
ヘニ `ヽ _∠∠ -ヽ. ,, _
/ /´::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ
〈 -/ .:. .::.. .::. . .. :. :..ヽ.:.:: 、
ヽ_ '..:::::::::::::i::::::::::ト;:!、:::::!|::::!::::リ
/ / 7!:::::i:::::::::|i,⊥!」 |! L::」'-T7
ゝ/ ハ::::::、;:イィト-1ヽ r= !' おつかれですー
7 , ヽ::f'`!ヘヾ:::ノ , , お茶どうぞ!
\ト、_iヾ'_、::\ ー ' イ
|::i::::|::丁:::\::ヽ r_ イ|:::!
イ::|::::!:::i::::::ノ-ヽ;::\!|ヾ`!:| r「 ̄ ̄i|
i::::|::::::::|:::f _,. `ヽ|`ヽ,!`}_,.っ、__ノェョュ__,
!:::i|::::r=1´:. `,>-‐7i' '´,ニ⊇-' ̄ ̄
ヽト、::| ヽ;:... | !-r<!ィT´
` ヽ, _,,}r'、/`1 i |ヨ!r 1ヾト,
>" 7 /! ! ノ-、 Y'T|-、 !,-N
く / ィ r゙‐'〇,. < , | |、_O、ノ |
}/ / | 'ュ_,.Y ヽ-'/ ! |i´Yヽ. |
ア`V ∧ ゝ-' イ | iド'_ゝ' j
./ ' / ∧ /| .:| !|  ̄
/:. / / 7'" | ::| |.!
.〈:.. /:. / ' | ::i |
\/.: / ! i .::! |
`ヾ、 | , :::|i |
 ̄7ー‐r----,.L - '
く \_;,} - {
\ ゙7ー- _ゝ、
`ゝ- ..,,_ )
28 :
名無しさん@ピンキー:04/03/27 15:36 ID:ZTnu67/U
作者様は何者なんですか?
プロですか?
29 :
名無しさん@ピンキー:04/03/27 15:44 ID:Og6qnC+U
エロでつ。
30 :
名無しさん@ピンキー:04/03/27 17:39 ID:tMsX+r3/
>24
乙です〜♪
普通に素人とは思えない書き方です。
けど、一つしつもんです
>由香と圭介は同じ2Dクラスだけれど
てありますが、前スレだと
>2年C組のクラスメイトはともかく
と、あるのでつ。
どっちがホントですか?
>>24さん
今回も面白かったです!
胸が大きくなるといろいろと困ることがあるんですねw
女子からも男子からもモミモミされたり・・
でも鬼の形相をして追いかけてくる圭介って
なんかすごく可愛いー(;´Д`)ハァハァ
それと前スレを途中からあれよあれよと言う間に
埋めていってしまった24さんにも驚きです。お疲れさまでした。
33 :
618:04/03/28 00:13 ID:H6hdJ9yt
前スレの
>>625の続きです。
*****
「着いたよ」
「えっ…?ここ…?」
有紀と愛がやってきたのは大豪邸の入り口だった。
「私のウチなんだから別にいいじゃない」
有紀は絶句した。愛が冗談を言っているのかと思ったくらいだ。
「それともホテルが良かった?私お金がかかる場所は嫌なの」
「いや、そんなことより…ここ…ホントに君の家なの…?」
そう思うのも無理はない。有紀の家の20倍ほどの広さがある大豪邸だ。
そもそもこんな大豪邸に住む女の子が援交などを望むだろうか。
有紀は先行きが不安になった。
「うん、ウチのパパ、藤堂病院の院長なの。知ってるかもしれないけど学校の先に見える病院よ」
藤堂病院…。近所でも有名な大病院で有紀も何度かお世話になったことがあった。
それに学校の健康診断の受け持ちも藤堂病院がすべて行っている。
「藤堂病院の院長の娘!?なんでそんな娘が援交なんかを…?」
「あら失礼ね。院長の娘だからって甘やかされてるわけじゃないわよ」
愛はムッとしたような顔になって反論を始めた。
その顔がまたいじらしくて可愛かったので有紀は思わず笑ってしまった。
愛は身体の発育こそ早く色めかしいオーラを発してはいるが、
やはり高校1年生らしく喜怒哀楽がハッキリとして案外わかりやすい性格かもしれない。
「人の顔見て笑わないでよね。小遣いだって月に15000円よ。
男の子だったら十分な額かもしれないけど、洋服買ったりオシャレをするには少なすぎ!
パパももう少しくらい私に小遣いをよこしてもいいと思わない!?
もしかしたら私への嫌がらせかもしれない。いや、きっとそうよ!
食費を削ったり節約したりいろいろなやりくりをして大変。肌の手入れが出来なくて
慢性的にカサカサ肌になっちゃったりしたらどうしてくれるのかしら。
あー、そう考えただけでも悲しくなってくるわ。それにいつも院長の娘だから
お金を沢山持ってるってみんなに勘違いされて恥ずかしい目にあったり…」
マシンガンのように繰り出される愛の話を受け流しつつ聞いて
とりあえず大変なんだなと有紀は納得した。
34 :
618:04/03/28 00:15 ID:H6hdJ9yt
>>33 愛の部屋に接待されるとそこは綺麗に整頓された少女らしい部屋であった。
「あ、私ちょっとシャワー浴びてくるからユウ君はそこで待っててね」
愛はそう言うとその場でセーラー服を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!!!」
有紀は生の女性の裸体など見たことがなく、愛の行動に戸惑ったが
軽く呼吸をし、バクバクと鳴る心臓の鼓動を抑えた。
(こんなところで脱ぎ始めるヤツがいるか…フツウ?)
すると彼女は一瞬先ほどと同じような呆れたような顔をしたがすぐに微笑んで話しだした。
「もー、何言ってるの。これから私達エッチするんだよ。
今さら裸見るくらいで何恥ずかしがってるの?今のうちに見て慣らしておいたら?
まあユウ君のそういうトコって女の子っぽくて可愛いけどね」
「か、可愛い!?バカ言え。それに女っぽいっていうのはやめてくれよ」
「ハイハイ、とにかく私シャワー浴びてくるね」
愛は有紀の顔を見て笑みを浮かべながらセーラー服をベッドの上に放り投げた。
そして下着姿になりそのまま部屋を出て行こうとしたが思い出したかのように振り返り
「あ、そうそう、退屈させたら悪いしな〜んでも好きなことしてていいわよ」
含みのある言葉を残し部屋を出て行った。
「何してもいいって言われてもなぁ…。することないじゃん…」
有紀はとりあえずベッドにもたれて愛が帰ってくるまで待つことにした。
35 :
618:04/03/28 00:16 ID:H6hdJ9yt
>>34 「はぁ…彼女、遅いなぁ…」
有紀はちらっと時計を見た。予想に反してまだ20分しか経っておらず
何度目かになる溜め息をついた。
これから女性と初めてエッチをするということを考えると心臓が鼓動して
落ち着こうにも落ち着くことが出来なかった。
何をしても落ち着かないので、とりあえず藤堂愛について考えてみることにした。
愛の容姿は非常にグラマーだ。クリっとした奥二重、透き通った湿った唇、
みずみずしく少しピンクがかった白い肌、
同性でさえも憧れるであろう背中まで伸びた黒くてしなやかな髪、
形の整った少し大きめのバスト。どれをとっても完璧であった。
幼らしいあどけない顔とセーラー服を着ているからこそ高校生だとわかるものの
そのボディラインの美しさはまるでモデルのようだった。
少なくとも有紀より年下であるとは微塵も思えなかった。
愛は男性経験も豊富なのではないだろうか。
あのような女性を男が放しておくわけがない。
36 :
618:04/03/28 00:17 ID:H6hdJ9yt
>>35 (そういえばエッチってまずどうすればいいんだっけ…。えーと…)
愛はまだ帰ってこないようなので、有紀は持てる知識を総動員し
女性への攻め方を思い巡らせすことにした。
まずはリードしながら優しくキスをしてあげ、少しずつ激しめのキスにしていく。
十分に口辱を堪能してから胸を優しく揉んでやり、舌で乳首を愛撫してやる。
それと同時に手で秘部を撫で、相手に変化が見られるようになってきたら
互いに激しく抱き合い、十分に秘部が湿っていることを確認し挿入する。
考えただけでペニスが膨れ上がるのがわかった。
ふとその時ベッドの上に置かれた愛のセーラー服が目に入った。
(彼女の匂いを嗅いでみたい…)
セーラー服を手に取り自分の鼻と密着させる。
愛のシャンプーの残り香と汗とが混じりあいなんともいえない匂いを醸し出していた。
そして何よりもセーラー服の触り心地が非常に良く、
有紀は気がつけば顔にセーラー服を擦り付けて手でギンギンになったペニスをしごいていた。
「あ…女の子って…こんな心地よさそうな服を着てたんだ…」
愛が帰ってくるかもしれないことも忘れ、
有紀はトロンとした目でセーラー服に見入り自慰に耽っていた。
「あ…うっ…だ、駄目…でっ、出ちゃう…っ!うっ!!!」
精液が大量に噴出され、愛の制服を汚していく。
射精してもなおペニスはおさまらず、はちきれそうであったが
白く汚れたセーラー服を見てハッとした。
「しまった…、ど、ど、どうしよう」
有紀が自分のしてしまった行為に慌てふためいていると
見計らったかのようなタイミングで突然背後から声がした。
「あら、ユウ君どうかしたの?」
37 :
618:04/03/28 00:18 ID:H6hdJ9yt
>>36 そう、最悪のタイミングで愛が帰ってきてしまったのだ。
「ふふふ、どうしたのユウ君?そんなトロンとした目で私の制服を握りしめちゃって」
「ち、違うんだ!!これは…その…ちょっと…あの…」
有紀はなんとかマトモな返答を考えるが頭が真っ白になって何も思い浮かばなかった。
「ふふ、私見てたよ、ユウ君がオナニーしてるところ。気持ちよさそうだったね…」
「な――――」
あの行為を見られていた。有紀の顔は一気に青ざめていった。
「ふふ、そんな怯えた顔しなくていいよ。
なんでも好きなことしていいって言ったのは私だものね」
ニコニコしながら愛がベッドに近づいてくる。
そして愛はバスローブのまま有紀の肩を軽く抱きしめ耳元でそっと
「ホントのところどうだったの…?私、ユウ君の口から直接聞きたいな」と呟いた。
愛からはほのかに石鹸の香りが漂っていた。
「べ、別に…違う!!」
すべてを愛に見透かされているような心持ちがしたが有紀は懸命に否定した。
「ふふふ、嘘吐き…。ホントはキモチよかったクセに…」
愛は優しく小声でそう言うと、有紀のペニスを軽く撫でた。
「あ…」
思わず有紀は声を洩らす。
「ほら…ここはこんなになってるじゃない…。セーラー服、良かったんでしょ…」
誘い込むかのように語りかける愛に、有紀はボーっとしてきた。
「うん…」
「やっとホントのこと言ってくれたね…。セーラー服…着てみない…?
もっともっと良くなれるから…」
もっと気持ち良くなれる…下腹部を膨らませている有紀にとってそれは麻薬のような言葉だった。
「ね…一回だけ着てみよう?私からのお願い…」
「一回だけ、ホントに一回だけだよ…」
愛からのお願いだから仕方ないと自分に言い訳をし、愛の提案に応じた。
38 :
618:04/03/28 00:19 ID:H6hdJ9yt
>>37 「ふふふ、ユウ君可愛い…」
セーラー服を着た有紀をウットリとした目で愛は有紀を見つめた。
「は、恥ずかしいよ…こんなの…。やっぱりやめよう…」
「恥ずかしいって言ってるけど昂奮してるの丸分かりだよ…。
ユウ君、スカートが盛り上がってるもの。クスッ…変態なセ・ン・パ・イ」
愛はからかうように言うと有紀を優しく抱きしめた。
その抱擁は女性同士が抱き合うような優しい抱擁であった。
セーラー服を着させられているからであろうか。有紀は倒錯的な昂奮を得ていた。
(あ…なんだろう…この感じ…。僕…まるで女になったみたいな感じ…)
「ふふ…ユウ君気持ちいいでしょ…?女の子みたいな顔しちゃって…。
クスッ…ホントは女の子なんじゃないの…?」
「ち、違…んんぁ!?」
否定しようとしたが口を開けた瞬間、愛の舌が有紀の口に進入した。
有紀は最初、愛の行為に戸惑いされるがままになっていたが
次第に自らも舌を絡めキスを味わうようになった。
ちゅぱちゅぱ…
愛から送られる唾液を舌で転がしながら堪能し飲み込み、
そして愛もまた有紀の唾液を味わった。
じゅるじゅる…ちゃぷちゃぷ…
身体全身に行き渡る快感に有紀は身悶えした。
お互いキスを終え口を離すと名残惜しそうに口から唾液が糸を引き地面に滴り落ちた。
39 :
618:04/03/28 00:20 ID:H6hdJ9yt
>>38 「んあ…」
「ふふふ、ユウ君ったら変な声上げちゃって…」
そういうと愛は有紀のセーラー服をまくしあげて乳首のまわりを舐め始めた。
「ひゃ……っ!」
鋭い刺激が有紀を襲った。
今まで乳首を舐められたことはおろか抓ったことさえない有紀にとって
乳首から感じられるピリピリとした未知の感覚はおそろしかった。
ただ、年下の女の子のなすがままに愛撫されているという倒錯的な状況を
思い浮かべるとますます昂奮してきた。
「ユウ君…乳首で感じてるなんて…ホント女の子みたいだね…。
ううん…けどホントはユウ君は乳首で感じてるんじゃないの…。心で感じてるの…」
舌を乳首から離し、有紀のトロンとした目を上目遣いで見つめて喋りだした。
「女の子はね…自慰をする時ね、男性みたいに視覚的なものに頼らずに
自分が想像したエッチな妄想で自慰をするの…。だから心で感じてるユウ君はもう女の子だよ…」
愛は再び有紀の乳首を愛撫しはじめた。
「おんな…のこ…?」
こうやって愛に愛撫されているとまるでホントに自分が女であるかのように思えてくる。
「あ…!んぁ……キモチ…イイ…」
思わず本音を洩らしてしまった。
「やっとキモチイイって言ってくれた…。もっと素直になっていいんだよ…」
愛は有紀の腰に添えていた手をお尻にまわした。
「ひゃっ!!なっ、何!?」
有紀は今までとはまた違った跳び上がるような過敏な反応を示した。
「やっ…め…お尻は…っ」
愛の変態的な行為を静止しようとするが、アナルのまわりを愛撫され力が抜けてしまう。
「ユウ君のお尻は汚くないから大丈夫…。ほら…ここ気持ちいいでしょ…?」
「あっ…ん…、やめ…っ…、こっ、こんなの…おかしい…っ」
40 :
618:04/03/28 00:21 ID:H6hdJ9yt
>>39 愛は指を唾液で湿らせ、グイと人差し指の第一関節を有紀のアナルに挿れた。
「い、痛っ…!お願いだから…、や、やめて…っ」
有紀は愛に懇願したが、愛は一向にやめようとせずアナルへ適度な刺激を与えながら
舌で有紀の耳元、首筋、背中、内股をゆっくり舐め回していった。
それが執拗に繰り返されるうちにアナルの痛みも全身の快感とシンクロしはじめた。
「はぁ…ん…あぅ…」
(痛いのに…なんで…こんなに…)
「ユウ君…女の子って素敵でしょ…。女の子ならいつでもこんな快感を…
ううん、女の子の快感はこんなものじゃない…もっともっとすごいの…」
有紀はまるで全身が性感帯になったようで愛に身体のどこを触られても
ビクンと跳ね上がるような反応を示し、色っぽい声も洩らした。
「なりたいと思わない…?女の子に?」
アナルに舌をねじ込み軌跡を描くように舌を動かしちゅぷちゅぷと舐めまわす。
「んあっ!!はっ…ああ…っ!!」
有紀の湿った吐息が洩れる。
愛はそこからさらに口を窄め、舌を尖らせ突付くようにアナルを刺激した。
「あ…っ!あ…んふぅ…ああっ!!」
「…ね?どうなの…?」
まるで母親が赤ん坊をなだめるような優しい口調で有紀に尋ねる。
「い…いい…っ!なりたい…なりたい…っ…ですっ!あっ…はぅっ!!」
有紀本人の口から発せられたその言葉を聞き、愛は小悪魔的な笑みを浮かべた。
41 :
618:04/03/28 00:24 ID:H6hdJ9yt
>>40 「それじゃあ…ご褒美ね…。えいっ!」
最初に触られたきり、一度も触れてもらえなかったペニスを愛は強く握りしめた。
「あ、ああああああああっ!!!」
有紀は一気に絶頂まで導かれ上半身を仰け反るようにして達して
そのままベッドに倒れこんでしまった。
「ふふふ…ユウ君ったら…ドライイキしちゃったのね…。ホントに女の子みたい…クスッ」
愛は失神した有紀を見て再びサディスティックな笑みを見せ携帯電話を手にとった。
「あっ、パパ?素敵な男の子に出会ったの…。
フフ、もしかしたら今回はうまくいくかもしれないわ。
ええ、無意識に女性への憧れを抱いてるみたい。
そのうちこっちが何もしなくても望むようにしてみせるわ。だから準備よろしくね」
愛は倒れた有紀の髪を撫でながら微笑んでいた。
////////////////
ここまでです。
>>24氏に触発されて書いてみました。
けど、漏れの文章は読みづらいですね…、もうしわけありません。
以後できるだけ努力します
618さんもキタ━━━━━━(・∀・)━━━━━━━ッ!!!!
でも、もう遅いので寝ます。明日、ゆっくり読むんです。
とりあえず乙!!です。
キタ━━゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚━━ ッ ! ! !
激しく期待通りの展開で最高でつ ! !
お初でドライ逝きした有紀ちゃんも可愛すぎ ! ! ! !
女の子になりたいっ ! ! ! もっと・・もっと感じたいっ ! ! ! ! !
ヾv ,'⌒vシ
, ⌒´ `ヾゝ
んl i!从ノリ))J
ノ jル(!^ヮ^ノリヽ, <前スレ埋まりました〜♪
レノ/(){`‐'.}こ!)ソ
しノ―ウ〉J
~じフ~
618さん、読みますた。
>「ね…一回だけ着てみよう?私からのお願い…」
愛サマの優しいまるめこみように、思わず勃っちゃいました(*´д`*)
それにセーラー服すがたのユウ君、エロ可愛いんだろうなぁ(;´Д`)ハァハァ
漏れだったらもう、どんな陰謀があろうと、愛サマの言いなりになります。
46 :
:04/03/29 00:49 ID:djhuOBqq
ハイレベルな職人が二人競い合うスレとは…
贅沢なスレだ…
二人ともガンガレ!!
47 :
Ts:04/03/29 15:51 ID:2w0EvXNK
つぎスレたてするときは、リアルネタ禁止をテンプレにいれとこうよ。
また、荒れる原因になるから。
いれる必要はないと思われ
それに今連載してるのもリアルネタだしなw
たまに変な椰子もくるだろうが
荒れるも糞もウザイと思えばスルーしろよ
お前らが反応するから空気が悪くなるんだろ?
しょーもない事で2レスも使うな
・・・いや漏れのを入れると3レスだなw
とりあえず反応するのはもうやめろや
ここは職人様と、職人様を盛り立てる信者で
成り立ってると言う事を忘れるな
>>50 >それに今連載してるのもリアルネタだしなw
なんか勘違いしてるみたいだな。
>>49が言いたいのは、現実世界で性転換はどうのこうのとかの話題じゃないのか?
>>51 まあ
>>50の言ってる事も分からんでもないが・・・
とにかく言いたい事はその部分ではないだろ
>荒れるも糞もウザイと思えばスルーしろよ
>お前らが反応するから空気が悪くなるんだろ?
このへんはまさに禿同!と思うがね
どちらにしてもこの辺でこの議論は止めた方が良い
50の言ではないが、俺ので5レス目だ。そろそろ空気を戻さないと不味い
>>47のTsさん
良さげなサイトの紹介ありがとん!
そこ、知らなかったのでうれすぃです!
女の子の言いなりになって女の子の格好させられるその話、
めっちゃハアハアしますた!その他のストーリーもぼちぼちと
拝読させてもらいまーす。
>みんな
どこがリアルだかわかんないけど、ホントは読んで興奮してるくせにw。
別に嫌だったらパスすればいいんだしさ。
女装ネタ自体はスレ違いかもだけど、
書いてくれる職人さんあってのSSスレじゃん。どうせするなら
建設的な論議しようじゃん。
裏付けるも糞も反応するなよヴォケ! ウゼェ
>>47-53 でお前らは
>>54に対して何て言うんだ?
リアルウザイとか騒ぎ出してまたスレを荒らすのか?w
テンプレに入れるべきなのは
「リアル禁止!、スレ違い出ていけ」と叫んで
他人を叩いてスレを荒らす行為の≪禁止≫だな
つーか47のサイトはリアルでも何でもないんだろ?w
まさにお笑い種だな、マジウザイよお前ら
1スレごとに1回は荒れるな…
このテーマを扱う以上、これは宿命か
ジサクジエンご苦労様>ID:2sM5Edp1
>>41の続きからです。
「うっ…?あれ…ここ?」
有紀は朦朧とする意識の中、目を覚ました。
「ユウ君…目、覚めた…?」
「あれ…僕…一体…」
チラリとあたりを見渡すと有紀はベッドの上で寝かしつけられ
すぐそばで可愛い少女が心配そうな顔で見つめていた。
「ユウ君、倒れちゃったんだよ…心配しちゃった。
ごめんね、無茶させて…」
(あ…そうか…僕は愛ちゃんとエッチしてそれで…)
有紀は先ほどの愛との行為で自分が女のようにイカされたことを思い出して
顔を真っ赤にして俯いてしまった。
それを悟られないように有紀はとすぐに愛に言葉をかけた。
「いや…君が謝ることはないよ。その…、あの…、途中で倒れた僕が悪いんだ…」
「けど…」
泣きそうな顔でこちらを見つめる愛。
その瞳はとても澄んでいたが、有紀を気絶させてしまったことを悔いるような
弱々しいものであった。
(おいおい、まるで死人を悲しむような顔はやめてくれよ)
有紀はポンと愛の頭に手をおいて撫でてやった。
「愛ちゃんは全然悪くないよ。僕だってほら、ピンピンしてる。
それに…えーと…キモチよかったし…さ…」
コホンと咳払いをしながら愛の頭をなでなでしていると
次第に愛の顔も綻びはじめ
「えへへ…」と可愛らしい笑みを浮かべながら嬉しそうな顔をした。
(か、可愛い…)
有紀は先ほどの愛とはまた違うあどけない少女の笑みにドキッとした。
>>61 「え、えーっと…それじゃあ…僕はそろそろお金払って帰るね」
近くの床に置いてあったカバンから財布を取り出そうとベッドから出ようとして
有紀は自分の下着を身に着けていることに気がついた。
「あ…下着、穿かせてくれたんだ…」
「うん、ユウ君が風邪引いたら困るもの」
「あ、ありがとう…」
真顔で風邪を引いたら困ると言われ、またもやドキッとしてしまい
そそくさと財布からお金を取り出そうとする。
(はぁ…こうやっていざ金を払うとなるとなんか惨めだなぁ…)
愛はあくまでお金のために有紀とエッチをした。
しかも有紀だけがさんざん楽しみ(?)
愛を気持ちよくさせてやることさえ出来なかったのがますまさ惨めだ。
渋々お金を取り出し愛に受け渡そうとすると、
「いらない…。そんなモノいらないよ」
愛は予想外のことを言い出した。
「私すっごく楽しめたから。ユウ君からお金なんて取れない」
それは有紀にとって非常にありがたい。
けどそれは矛盾している。彼女はどうしてもお金が欲しくて援交を望んだはずだ。
「けどそれじゃあ援交の意味が…」
「もー、何!?そんなに私に貢ぎたいの?
せっかく私がいらないって言ってるのに!」
愛は先ほどのまでの弱々しい雰囲気から一転して突然プンスカ怒り出した。
そのギャップが実におもしろい。
「わ、わかった、わかった。わかったから!」
(ヤレヤレ、やっといつもの彼女に戻ってくれた。
お金の件はよくわからないけど、まあいっか)
腑に落ちないものの彼女がいいと言うのだから結局お金は払わないことにした。
>>62 それから30分ほど2人は学校のこと、身近のこと、友人のことなどを話しあった。
その時の愛はお喋りで本当に楽しそうに友人のことを有紀に自慢していた。
気がつけば時計もすでに7時をまわりだしたので、有紀がそろそろ帰ろうかと考えていると
「ユウ君にちょっと…、これ…」
愛はコルク栓のしてある小さな瓶を取り出した。
中にはほんの一口で飲み干せる量の透明な液体が入っている。
瓶には『ORG-01』と書かれたラベルが貼られていた。
「何これ…?」
有紀は一体それがなんなのかまったく検討がつかなかった。
「これはね…、一時的にペニスの機能を低下させて萎縮させるお薬。
低下っていうのは実は語弊で、本当はペニスを縮めることで神経繊維の密度を
高めて擬似陰核をつくりだすものなんだけど、
そんなこといちいち説明してもわからないだろうから置いといて…
効果は…まあ長くて3時間くらいかなぁ…。パパがつくったお薬なの」
「そ、それをどうして僕に…?」
嫌な予感がし、有紀はおそるおそる愛に尋ねる。
「まだ説明が終わってないよ。ペニスのサイズは大体通常の5分の1くらいのサイズに
なっちゃうんだけど全然平気よ!一時的にクリちゃんになっちゃうだけだもん。
それに2,3時間もすればすぐにもとに戻るんだよ。世紀の大発明よね!!」
(クリちゃんって…おいおい…)
目を輝かせながら愛はとんでもないことを口にしていた。
>>63 「僕はそんなものいらないよ」
有紀は先手を打った。そんなわけもわからない物騒なものを頂けるはずがない。
先にキッパリと断ってしまえばいいのだ。
「そ、そんなぁ…」
みるみるうちに愛はシュンとした顔になり今にも泣き出しそうだった。
(うっ、そんな顔しないでくれよ…。
けど、ここで妥協したら僕はあの得体の知れないアヤシゲな薬を…!!)
「僕はそんなものいらないよ」
まったく同じ台詞を機械的に言う。
(心を鬼にしろ!僕は鬼だ!何言われたって妥協しないぞぉぉぉぉ!!!)
「そもそもそんなもの僕がもらってどうするんだい?僕はもう帰るよ」
悲しそうな顔をした愛の顔は敢えて見ずスタスタと愛の横を通り過ぎ帰ろうとした。
しかしその時
「クスッ……」
愛が背後で静かに笑った。ピタリと有紀の足が止まる。
「ユウ君のおバカさん…。私はユウ君のために言ってあげてるのよ…」
愛はそっと有紀に近づき、人差し指で有紀の背筋を軽くなじる。
もの静かで加虐的なその声と仕草は有紀をイカせた時のものだった。
「ぼ…、僕のため…?」
愛は有紀の背中に密着して甘い声で有紀に言った。
「女の子になりたいって言ったじゃない…。クスッ…、涎まで垂らしながら…。
ほら…あの時のこと思い出しただけで…ココ、こんなになっちゃったね…オマセさん…フフッ」
>>64 不覚にも有紀は制服のズボンをパンパンにしていた。呼吸が僅かに乱れる。
「あ、あれは…、た…ただ…その場の成り行きで仕方なく…」
「そうかしら…?けど…とても気持ち良かったんだよね…?
ドライでイッた時の顔なんかまるで初めて潮吹きした女の子みたい…」
「う…」
愛の言葉に少しずつ心が揺らぐ。
しかしそんな事よりも先ほど愛との行為を思い出してしまい、
今の愛の言葉を否定出来ずに勃起させてしまっている自分自身に心が揺らいだ。
なぜか女の子と呼ばれるたびに胸が高鳴る。
今まで散々背が低いだの童顔だの言われ
コンプレックスにさえ感じていたはずなのに…。
「ユウ君の悪いトコだよ…、そうやって自分の気持ちに素直になれないところ…」
じわじわと愛が有紀の心に侵食してくる。
「そ…っ、そ、そんな…こと…」
「あるわよ」
キッパリと愛は言い放つ。
>>65 「ほら…今度はさっきよりも女の子になれるよ…。ユウ君がなりたい…、ね…?」
少しずつ愛の言葉が有紀の心を捕まえ、シュルシュルと舐め回すかのように
有紀の心を縛っていく。
「ぼっ、ボク…は…」
(女の子になんか…なりたいわけ…)
口だけではなく、心の中でさえも愛の言葉を完全に否定することは出来なかった。
「淫らな女の子になりたいんでしょう…?」
それをいいことに愛の言葉はさらに有紀を蝕み、有紀をズタズタにしていく。
「何かの…まちが…」
「間違いなんかじゃないわ…。あなたは…もうすでに―――」
―――オンナの虜なんだから。
有紀の心がグワングワンと何かにスウィングされるかのように響く。
そして、ついに
「は、い―――」
有紀は認めてしまった。自分の奥底にある欲望を。
>>66 ***
有紀は結局小瓶を家に持ち帰った。
しかし持ち帰っても別に使わなきゃいいんだ、と自分を納得させていた。
家で家族との夕食をすませ、ベッドに横になり暗がりの中で
キラキラと不気味に光を反射させる透明で個性のない液体が入った瓶を手にとって眺めていた。
/////////////////////////////
ここまでです。
一応トリップつけました。
まだまだ未熟者ですが読んでいただけると嬉しいです。。
>>67 一応確認。この先に女装じゃなく完全に女性化する展開が待ってるんですよね?
期待して非該当作品だと後で知ると後悔が大きいので。
>>68 はい。完全に女性化させます。
最初から突然女性化してしまったり誰かの手によって勝手に女性化させられたら
強制女性化になってしまうと思って、有紀自身が女性化を望むようにしようと思ったのですが、
展開が遅く、かつ不安を抱かせてしまうような文を書いてしまったことをお詫びします。
もうしわけございません。。。
>>618さん
そ、その薬、漏れにも一瓶わけてください!!
エッチな小悪魔、愛サマがいてくださるのなら
迷わずいっきに飲み干します!!
>23
実は今回も、
エロがありません。
なので、エロナシに興味無い人はスルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>30
ツッコミありがとうございます。
修正しました。できましたらこれからも(笑)。
今回、時間経過も整理して日付も変えました。
適当に書いてたツケが…。
>23
■■【36】■■
いつものようにベッドのカーテンを引いて順番に着替えると、圭介は由香に、先に教室へ帰
っているように言った。
けれど彼女は「待っている」と言って聞かないため、仕方なくこのまま保健室で待っていて
もらう事にして、そして圭介と美智子は隣の学生相談室へと移動した。そこは、ソラ先生のカ
ウンセリング用の部屋でもある性質上、防音と機密性は保健室よりもずっと高かった。
美智子に続いて相談室に入り、圭介が椅子に腰掛けようとした時、彼女は窓のカーテンを半
分だけ閉めながら
「どうだ?『星人』(ほしびと)として目覚めた気分は?」
と、言った。
まるで、「今日の朝飯は何だった?」と聞かれた気がして、圭介は一瞬呆けてしまう。
「え?」
「ま、半分とはいえ、『星人』の血を引いている以上、仕方ないわな」
「……は?」
絶句、した。
無理も無い。『星人』云々の話は、まだ誰にも言っていないし、言うべきものでもないと思っ
ていたから、圭介は健司にも由香にも秘密にしてあるのだ。それを、どうして一介の保険教諭
が知っているのか。
美智子はにやにやと笑うと、椅子に腰掛けて高く膝を組んだ。
今日は八分袖のカットソーと黒のスリムジーンズという出で立ちだ。カットソーはグレイッ
シュブラウンで、襟回りはハトメ使い…という、スリムでスタイリッシュな美智子には良く似
合っている。もっとも、圭介にはただ、くすんだ色の袖が中途半端な長さのシャツと、細い黒
ジーンズ…という認識でしかなかったけれど。
美智子は、上に羽織った白衣のポケットからシュガーレスのチューンガムを取り出して、2
粒ばかりを無造作に口に放り込んだ。
「ん?」
>72
「噛むか?」という意思表示なのか、美智子は口をもごもごさせながら、メタリックに輝く
包み紙を圭介の目の前に差し出す。圭介は機械的に一つ受け取って、ただ機械的に口に入れた。
そうしていながら、視線は美智子から離れない。
圭介は初めてこの教師の“得体の知れなさ”に不安を覚えていた。
「まあ、そう警戒すんな」
ニヤニヤと笑う美智子は、しれっと無理難題を言った。
自分の、誰にも明かせぬ秘密を知っていた人間に対して、警戒するなと言う方がおかしい。
それをこの保健教諭はわかっているのか。
「…言ってる意味がよくわかんねーんだけど」
圭介は当然の如く、美智子の言葉を否定した。
彼女はしばらく圭介の顔を見ていたが、
「そうだな。いきなりこんな事言われてハイそうですかって、納得しろって方がおかしいわな」
そう言うと、安物のパイプイスの背もたれに身を預けて、すぐ側の机の上のノートパソコン
の電源を入れた。そしてフォルダをいくつか開き、一つのテキストデータを展開する。
彼女はそれを、無表情に淡々と読み出した。
「山中圭介、実年齢17歳。
父親は山中善二郎、実年齢42歳。
母親は山中涼子、主観年齢32歳。
●●●高校2年C組、出席番号28番、美術部。女性経験無し。交際歴ゼロ。
通学時間徒歩およそ15分。住宅街一戸建てに住む3人家族の一人息子。
女性化前の身長は154.9センチ、体重46キロ、血液型B型、誕生日は5月3日。
小学2年生の5月27日に肉体変化の兆候により高熱を出し、その際の短時間に性転換を4
度経験。男性体で一応の固定化をみる」
「ちょ…ソラ先生、それって…」
誕生日までのプロフィールは、ちょっと調べればすぐにわかる事だった。けれど、5月27
日の事は圭介と彼の家族しか知らないはずだ。そして、その衝撃が強過ぎて、彼女が母親の年
齢を「主観年齢」と読んだ事に、圭介は気付かなかった。
「まあ待て。まだ続きがあるんだ。
ええと…肉体変化の直接の原因となったのは、当時クラスメイトだった神蔵椎奈(かみくら
しいな)、7歳への初恋と思われる。
>73
以後、一周期ごとに発熱を繰り返すものの、何らかの要素が障害となり肉体変化まで進行し
なかった」
「…な…なんでそんな…」
かあああっ…と圭介の顔が赤く染まる。
初恋相手の名前まで知られている事の衝撃に、言葉も無い。
「もちっと聞きな?
…が、今年5月29日に再び発熱し、3日間昏睡状態に陥る。
6月1日に女性体へ半固定化。母、山中涼子から自分の体についての詳細を教えられる。
同日17時24分に、同級生の川野辺由香と谷口健司が自宅を訪問。同2名、18:53分
帰宅。
6月2日。17時32分に、担任の坂上はるかが自宅を訪問。18:11分帰宅。
6月3日。20時12分に、谷口健司が自宅を訪問。20時34分帰宅。
6月4日。14時29分に外出。街に行き、その後、谷口健司、川野辺由香の自宅を訪問。
6月5日。登校。
6月6日。この日より、バイオリズムに変化。再転換の兆候有り。
6月8日。昼休みに私と接触。肉体に“ゆらぎ”を発見。
同日、19時4分に屋内プールへ向かう。19時23分、帰宅。肉体から派生する波長に一
定のパターンが認められる。
6月9日。胸部特定の肉体変化有り。要観察。
6月10日。胸部に著しい変化。
6月11日。更に変化。今に至る。
質問は?」
絶句する圭介を前に美智子は、『にーーっ』と、茶目っ気溢れる教師が、お気に入りの生徒
にいぢわるする時のような笑みを浮かべた。
揃えた足の上で握り締めた手の平が、じっとりと汗で湿っているのがわかる。目の前に座る、
中性的な保健教諭の意図が見えない。ここまでどうやって調べたのだろう?いや、それ以前に、
なぜ“それ”を知っているのだろう?
圭介は、重たい胸の谷間に流れる汗を感じながら、じっと息を詰めて床を見ていたが、やが
て観念したように吐息を吐くと、ゆっくりと美智子を見た。
>74
「どこまで…知ってるんですか?」
「全部」
即答された。
「オレが…その…宇宙人……あ、えと…『星人』と地球人のハーフだってこと…も?」
「ああ」
あっさりと言う。
「いつから?」
「いつからもなにも…私をこの学校に赴任するように仕向けたのは、涼子さん…お前の母親だ
からな」
「はあ?」
どうしてここで母の名前が出て来るのか。
「言ったろ?お前は私達の希望なんだ」
美智子は、圭介の母が言ったあの言葉を、ひどく真剣な眼差しで口にした。
■■【37】■■
ソラ先生も『星人』。
その事実に、圭介の頭が今度こそ真っ白になった。
そんな圭介に、美智子は珍しく柔和な視線を向ける。普段、皮肉や苦笑じみた笑みしかほと
んど見たことの無い圭介には、その笑みが、なぜか母、涼子と重なって見えた。
「なあ、山中……いや、圭介。お前、一度だって考えた事無いのか?あれだけ映画やテレビに
出てる母親なのに、テレビや雑誌、新聞のレポーターや記者とかが、なぜ今まで一度もお前の
とこに来なかったのか」
美智子は語る。
それは、圭介が考えようともしなかった事だった。考える事を、頭が拒否していた事だった。
「小学2年生の時に、お前は初めて『星人』の因子の発現を経験した。でも、『星人』の因子
が発現したからといって、お前は『星人』の力に完全に目覚めたわけじゃなかった。
>75
このままでは、お前はいずれ『星人』の力を狙う者達のターゲットとなってしまうかもしれ
ない…私達は、そう考えた。
まあ、今だって、『星人』独自の…地球人とは違う特別な力がある訳でもないし、『星人』
として私達が共有するネットワークへのアクセス権を全て手に入れたわけでもないけどな」
「『星人』を狙う…??」
「当然だろう?自分達より遥かに進んだテクノロジーを持つ者を、この惑星でまがりなりにも
『力』を持つ者達が放っておくはずが無い。
かつて涼子さんは自分の同朋を探すため、この惑星の文明圏に、私達『星人』にしかわから
ないメッセージを送った。
主にマスメディアを使い、映像を媒体としてネットワークを利用し、さらに、我々の因子を
持つ者達を媒介して、この惑星(ほし)に散らばる同胞達に向けて。
彼らは涼子さんのメッセージを受け取り、彼女の元に集まった。
そしてその時初めて、今まで数百年間沈黙を守り、歴史の影に身を潜め、それぞれがそれぞ
れの方法で自分の身を守ってきた『星人』達が、互いに協力して身を護るためのコミュニティ
を作り出したんだ」
「コミュニティ……」
「圭介。お前は小さい時、何度も彼等に会っているはずだ」
たまにふらっと家にやってきて、圭介にたくさんの御土産をくれたけれど、いつもヘンな歌
を唄ったり父や母と一晩中宴会していたりした、奇妙な格好の人達を記憶の底に見つけた。
「あのヘンな人達……か」
ぼそりと圭介が言うと、美智子はなんともいえない顔をして唇を歪めた。
「……彼等の前でそういう事は口にするなよ?悲しむからな。
彼らは主にテレビ局員や芸能関係者を装い、涼子さんの友人として、幼かったお前を護るた
めわざわざ危険を冒して日本までやってきたんだ。そして因子の安定状態を確認し、不安定だっ
た能力を封印して普通の地球人として暮らせるようにしてくれた。ンな事言ったらバチが当た
る」
圭介は、小さい頃に見た彼等の顔を思い出そうとした。でも、出来なかった。彼らが歌った
ヘンな歌や、夜通し聞こえてきた宴会のどんちゃん騒ぎだけは覚えているのに。
>76
『そうか…あれはただ宴会しにきただけじゃなかったのか…』
記憶がおぼろげなのは、小さかったから…というだけではなく、能力と共に記憶まで封印さ
れたからなのかもしれない。圭介はそう思った。もしかしたらその時、自分の母親や自分の境
遇について疑問を抱いたり、不信感を抱いたりしないようになにかされたのだろうか……。
圭介はすこし不安になり、けれど顔には出さないようにして美智子の話の続きを聞いた。
「私達『星人』は、自分の姿形を自由に変える事が出来る。でもそれは万能じゃない。一度変
化させれば2・3日は休息が必要だし、代謝機能も落ちてしまう。力も格段に弱って、私達を
狙う者達の目にも留まりやすくなってしまう」
「そうまでして…なんでオレなんかのために…」
圭介の言葉に、美智子は背もたれに委ねていた身を起こして正面から彼を見た。
あの日見た、母の吸い込まれそうな瞳と同じ力を、圭介は美智子に感じた。
「子供を護るのは親の義務だ。
子供を護るのは種の責任だ。
だから私達『星人』は、お前を全力で護る。
言っておくが、『星人』にとって地球人の常識や法律や慣習や宗教や、その他もろもろの
“お前を縛る全て”など、紙屑同然だ。そんなものは鼻をかんで丸めてゴミ箱に3メートル先
から投げ入れてやる。それを拒む事は出来ないし、する権利を与えた覚えは無い。
私達はお前を護るためなら命を奪う以外の事は何でもやる。
それを覚えておくといい。
その上でお前が地球人として、地球人の常識や法律や慣習や宗教や、その他もろもろのお前
を縛る全てに準じるというのであれば、私達はそれを止めはしない。それはお前の生き方であ
り、それはお前の人生だからだ。自分で物事の分別がつき、自分で道を選ぶことの出来る年齢
になった以上、それはお前の当然の権利だからだ。
私達は、お前を“私達の自由に”したいわけじゃないんだ。
“私達の愛するお前を”自由にしておきたいんだ。
>77
重ねて言うが、お前を護るのは私達がそうしたいから、そうすべきだと思うからしているこ
とで、それに対してお前に感謝して欲しいとか、ああしてほしいこうしてほしいあれはだめだ
これはだめだなんて、強いるつもりも全く無い。
そして私達は、お前の肉体が安定している間のプライバシーは尊重している。その点は安心
していい。こうして詳細なレポートが存在しているのは、お前の肉体が不安定な間だけだ」
言葉も無かった。
正直、衝撃だった。
自分は、あの小学2年生の5月からずっと…いや、ひょっとしたらその前からずっと、彼等
『星人』の監視下にあったのだ。
『監視下……いや、ちがう…』
見守られてきたのだ。
ただ、圭介が生きたいように生きてゆくために。
毎日ずっとどこかで誰かが見ている。
見られている。
普通なら、それは恐怖だ。
不気味な行為であり、不快この上ないものに違いない。普通の神経の持ち主なら、ノイロー
ゼに陥って発狂してしまうかもしれない。
けれど圭介は、どうしてなのかわからない。ただ、胸があたたかくなった。
自分を気にかけ、全てを投げうって自分を護ろうとしてくれている者達がいる。その事実が、
涙が出そうなほど、胸を熱くした。
圭介がそれを美智子に伝えると、
「それは、お前のナーシャスが『星人』のネットワークにアクセスしているからだ」
と言った。
「ナーシャス?」
「この星にその語彙は無い。発音も出来ないから、一番近い音を組み合わせてみた。地球風に
言えば、『深きもの』だ」
「ふかきもの?」
>78
「お前の精神の奥底にある、お前を形作る意識の最も基本となる部分だと思えば良い。『星人』
は、それが無意識下で干渉・反応し合い、一つの精神世界を形作る」
「……………集合意識……とか言うヤツ?」
圭介は、SF好きのクラスメイトから聞きかじった単語を口にしてみた。どちらかというと
心理学に属する言葉なのだけれど、最近見たSF映画のテーマに、そういうものがあったらし
い。
「それは正しくもあるが、正しくも無い」
………よけいわからなくなった。
『星人』の因子が発現し、理解力が飛躍的に増したはずなのだけれど、ぜんぜん意味がわか
らなかった。
「難しいか?」
「……うん」
「素直だな。けどそれでいい。追々わかる時が来る」
美智子の目が、きゅっと細くなり、それはまるで子猫か子犬を見る時の、由香の目に良く似
ていた。
その視線に何かむずむずするものを感じ、圭介はもぞもぞと椅子の上で座りの悪い感じを味
わっていたが、やがて一つの疑問が浮かび上がってきた。
「あ、でもさ、もしそんなふうに心の奥で他の『星人』と繋がってるなら、母さんがわざわざ
メッセージを送る必要なんて、なかったんじゃないの?」
「いい質問だ」
机の引出しから御褒美の飴玉でも取り出しそうな顔で、美智子が微笑んだ。
「確かに、コミュニティが形成されネットワークが確立された今では、メッセージは特に必要
じゃない。でも、あの当時は確かにそれが必要だったんだ。理由は様々だが、一つ言えるのは、
皆に呼びかけ、集め、コミュニティを形成し、さらにネットワークを確立させることは、涼子
さんしか行うことが出来なかった…という事だ。
でなければ、数百年も待たずに『星人』はとっくの昔にネットワークを復活させていた。
涼子さんがいなければ、私達は今頃この辺境の星で、自分の存在した意味すら無くして朽ち
ていただろう」
>79
「……母さんって、そんなにすごい……の?」
圭介はあの、
超過保護で、
子離れ出来ない、
若くて歳の離れた姉だと言われた方がよほどしっくりくる、
「ほにゃにゃ〜ん」とした笑顔の、
料理があまり上手ではない、
いまだに父とラブラブな、
頼りなさそうで実は頼れそうにも感じなくもないかな?と疑問系な母を思い浮かべて、眉根
に深く皺を刻んだ。
「お、もうすぐ4時間目のチャイムが鳴るぞ」
むむむむむ…と腕を組んで首を傾げていた圭介に、美智子が壁の時計を顎で指し示した。
「え?あ、やべっ…」
「もう質問は無いか?なんなら昼休みにまた来てもいいぞ?」
「えっと、あ、そうだ、あ〜〜〜あのさ、結局最初の質問に答えてない気がするんだけど…」
「最初の質問?」
「ソラ先生が、いつからオレの事、知ってたのか…って」
「…圭介、お前、人の話ちゃんと聞いてたか?」
「………聞いてましたよ」
「私は涼子さんのメッセージを受けて、最初にあの方の元へ集まった『星人』の一人だ。それ
以後、私はずっとお前の事を見てきたんだぞ?」
「へ?」
「私だけじゃない。最初に集まった3人の『星人』は、そのままこの島国に留まり、お前と、
お前の家族を護り続けてきた。お前がこの街に引っ越してきたのは、偶然じゃない。この街は、
お前のために用意されたものなんだ。お前がここじゃない高校を受験していたら、きっと私は
その高校に潜り込んでいただろうな」
「そんな…だってそんな簡単に…」
チャイムが鳴った。
保健室に通じるドアから、控えめなノックが響く。授業に遅れることを心配して、焦れてい
る由香に違いない。
「言っただろう?『星人』にとって地球人の常識や法律なんてのは、無いのと同じだって」
>80
そう言うと、美智子は立ち上がりながら圭介にバチッとウィンクをしてみせる。意外に長い
睫のおかげで、そのウィンクはすごく、決まっていた。
「ついでに言えば、テレビや雑誌や新聞の連中が来ないのは、涼子さんが名前を変え、女優で
在り続けているからだ。メッセージは星人に向けたものから、地球人の無意識下に働きかける
ものへと変化して、毎日文明圏へと送られ続けている」
それはウソだ。
圭介は思った。
メッセージ云々の話ではない。
母が、女優で在り続けていることだ。
一人の女性が、何十年も変わらず女優で在り続けられるわけがない。記憶の中の母は、物心
ついた頃からずっと今と同じくらい若々しかった。そんなにも長い間、変わらぬ美貌のままの
女優を、怪しまない人間がいるだろうか。
「本当に不可能だと思うか?」
圭介の肩をかるく押しながら、美智子は圭介の心を読んだかのように、ニヤリと意味深な笑
みを浮かべる。
それはいつもの、どこか人を食ったような笑みだった。
圭介と由香が保健室から出ていった後、美智子は生徒相談室から出てきた一人の人物を見た。
その人物は、『ここにいながらここにいなかった者』だった。圭介が気付かなかったのでは
なく、圭介の認識域の“外”に身を置く事で、彼の側にいながら彼の意識内には“いなかった
ことになっていた”のだ。
「これで、良かったですか?〜〜〜さま」
言葉の一部が不明瞭な音となり、言葉を成さない。無理矢理声帯を使った…という感じだ。
「うん。上出来。もうちょっとわかりやすい言い方だと、もっと良かったかな?」
「カンベンして下さい。私、こういうのって苦手なんですよ」
「美智子ちゃんなら適任だと思ったから頼んだのよ?あの子ったら、私が相手だと身構えちゃ
いそうなんだもん」
「………美智子ちゃんはやめてください。涼子さま」
げんなりした顔で美智子がそう言うと、見るからに重たそうな胸を揺らして、世界で一番高
齢で、一番若々しく、一番ワガママで一番過保護の母親は“んふっ”と満足そうに笑った。
>81
ここまで。
>前:618 ◆li6.DY4olM さん
おつかれさまです〜♪
のんびりマイペースでがんばりましょー。
あ、そうそう。
圭介のプロフィール関係って、けっこう適当です。
154cmの男子高校生の友人なんていませんもん。
本格的に作家としてデビューなさったほうがよろしいのでは? そう思った程、読み入ってしまいました。お疲れ様です。
文章はうまいけど、ここが何板かを考えてくれ。
まぁ、これから、エロエロな展開になるってゆーなら別だが。
つまり、もっとエロを頼むよ、ってことです。
エロばっかりの文など駄作、萌えない、糞
日常が上手にかけてるからエロが生きてくる
それすら分からず、こんな素敵な作者に
いちゃもんをつける85は、最低の糞人間
SSもかけない凡人の煽り叩き粘着の癖に
作者様に偉そうに注文をつけるな、何様のつもりだ
エロが見たいだけなら、もっとエロが多いスレに逝け!
>154cmの男子高校生の友人なんていませんもん。
154cmの男子高校生は知らないが154cmのJリーガーは実在します
柏レイソルの中井昇吾選手は154cm/50kgとか
おねてぃ?
>>82 まあ、なんというか個人的にはこの展開でも十分なんですが。
>>85みたいな意見も出るわけなんで、もう少しこまめに軽くでいいんでエロを含めておくのが
良策だと思います。
一投稿に付き一つ位は何かしらエロシーン(淫夢でも自慰でも細密な露出でも)を入れて置け
ば不満を抑えてスムーズに流す事が出来ると思います。
週刊連載の漫画には1話毎にそれなりの山場が要るってのと同じような事です。
>>82 氏 GJです。
あのー「ふかきもの」という単語は意識して使ってらっしゃいますか?
某クトゥルフ系のDeepOne(簡単に言うと半魚人)を思い出してしまうのですが。
人と交わって繁殖するし。子供の頃は普通の人間だし。クトクルフ系自体宇宙ネタだし…
>>90 安物のドラマや週刊誌を見てるようで嫌な感じ
それに書き手のストーリー展開に負担をかけて
執筆速度が遅れることは必死だと思うし
全部まとめて読み直した時に、全体のバランスが悪くなって
せっかくの良い作品が、ただの凡人級エロ作品になりそう
毎回エロがあったらマジで飽きるよ。他所のTS以外のスレも見てみたら?
エロばっかりの作品なんて、つまらないって意見の方が絶対に多いから
つーかエロしか求めてない椰子は、溜まりすぎだよw 彼女作ったら?
まぁ、あれだね。ストーり重視ならエロは相対的に減る。
いまは、ストーり重視の長編の作家さんが多いってだけの話でしょ。
>>92 ちゃんと文章読んでレスしようよ。
俺は別に今の流れが悪いと言っちゃいない。
ここがエロパロ板でなければ、無理してエロを入れる必要もないと思ってる。
煩いのを招かない自衛手段として、とりあえずエロが1回入るのを単位にして
アップするとか言う方法論でも良いと思ってるだけ。
っていうか、エロばっかで話のない奴はむしろイラネエんだよ。
絡むならまっとうに絡むべき相手に絡めよ。
>94
書き手は十分に自衛手段とってると思うけどなあ。
毎回エロありなしの断りいれて、NGWORDであぼーんも可能。
これ以上を書き手に望むのは正直酷な気もするけど。
まあエロ一回入るのを単位でUPするのは悪くないとは思う。
あと86さん、もう少し抑えた表現を使ってください。
気持ちはわかるけど、スレのふいんきが悪くなるので。
>>94 その無理してエロを入れる、って言う理論が嫌なだけ
エロは無理するものではなくて、必然であるべきと思うよ
ストーリーを展開して、シチュ作って、雰囲気盛り上げてって
ここぞ!って言うシーンにエロがはいるから、本当に盛り上るんでしょ?
ここは確かにエロパロ板だけど、エロが主目的じゃない人はいっぱいいるよ
ストーリー展開上エロも当然入るから、この板でSSを書いてるって人のほうが
エロだけを目的として書いてる人よりよっぽど多いんだし、板を気にして駄作が増えるのは嫌
それと今のようなストーリ展開で、エロが入るまでうp出来ないとしたら
うpの間隔がかなり大きくなるし、そうなると読み手の書き込みも減ってスレが寂れて
下手すると落ちる可能性も出てくるし、活気が無いと新しいSS書きさんも降臨しにくいと思うよ
このスレに活気があるのも、今みたいに2日に1回は誰かがうpしてくれてるからだし
出来ればこのペースを維持して貰って、活気に引かれて他の書き手が現れるようにしたいからね
>>96 だから、何をそんなに絡むかな。
こういうことも考えてみてはとしかいってないだろ。
>>97 ん・・・、なんとなく絡みやすかったからw ごめんね
無理してエロを入れる必要もないと思ってる。
と
一投稿に付き一つ位は何かしらエロシーン(淫夢でも自慰でも細密な露出でも)を入れて置けば
って何気に矛盾してるよな
作者がエロシーン入れないってことは「無理して入れてない」ってことなんだから
注文の多い傍観者達
作者さんに文句を言う奴は自分で書けば良い
>82さん
ますます面白くなってきましたね!
最初のころ自分が想像してた軽いタッチの話と違って、奥ゆきのありそうな
ストーリーのようですね。
今回もエロなしでしたが、謎の深まる展開が飽きさせません。
いろいろと意見はあるようですが、どれも2ちゃんねるエロパロ板レベルでの話。
82さんの描こうとしてるのは、アニメやラノベで充分通じるオリジナルストーリー
なんですもんね。どたばた純愛ラブコメ+本格SF??
これからの展開はまったく予想がつきませんが、この続きが作品タイトルとどう
つながっていくのか・・楽しみにしてます。
頑張ってくださいね!!
まぁ、あれだ
good ! __ ∩ ∩ _
-´─- 、\H- 、_,,,,......イヘへ、_/7'´_~二ニ
r==⊂エニ/__::_:::\:://ハ::::::::V´二二二
l /::/:::::::::::>::::::::::/::ゞ;l;::::::八コ⊃ /
l //::/:::/:::/::::::::::::/:i::l:::l::l:::::::::::!ヽ\
|/::/:::/:::/::/::/|:|:::::/|::|:::|::|!:l:::::::::::|::::l \
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//.|! .!::|::|::|ゞ|V_i:|;、:::::::/jノjムノ|/!:::l:::::l:::::::l
// .|::|::|;;|/〇:゙li ゞノ fl〇::lト |::::j::::l_::::::|l
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このスレはいつもこうだろ。正直、情報の質も落ちたし次スレいらんよ。こういう展開になるのみえてるわけで他スレに悪影響。
関係ないけど強制の方人減ったな
>104
言いたいことはわからんでもないが
よくみたらマルチじゃねーか
107 :
:04/03/31 23:31 ID:R2y+cWK2
>106
前に、あちこちのTSスレを荒らしていた香具師じゃないのかな?
初歩的な質問なんですが、海外ではTGで、日本ではTSなのはなぜなんですか?
まあ、元々強制スレでクーデターを起こして独立したスレですから・・・
110 :
:04/04/01 00:00 ID:Bc8a+6IH
どっかに類語の解説があったような気がするんだが……
TG=Trans gender で(社会的)性転換
TS=Trans sexで(肉体的)性転換
じゃ無かったっけ??
111 :
:04/04/01 00:07 ID:a8V1d61e
TSF の F と TV がワカラン……(´・ω・`)
>>111 Fはフィクションの意味。
TVはトランスヴェスタイト、つまり異性装(女装とか男装とか)
>>108 初期に日本でTS系サイト開いた人が「TS」という用語を使って定着したから。
>113
FICTIONだと思われ。リアルと区別するために。
116 :
111:04/04/01 00:57 ID:a8V1d61e
>112-115
なるほどー
しかし、こんな時間にこんなに人が(w
ここって人気スレ??
TSが八重洲氏でTSFが月華氏だっけ。
「F」と入れるあたり、当初からリアル系との区別は課題だったわけか。
リアルTSとリアル系TSFの区別も別スレで散々議論されてったけな
SSスレはこの話題が出ると荒れるんだよね・・・
保管庫まだ〜(AA略
transsexualの略だよ、つーかここってふにゅとかの住人もいるの?
>>118 荒れるっていうかサッキュバスのりんくはった人に
リアルウザいとか言う変な人がいるからでしょ?
女装嫌いのホモフォビアでも別にいいけど
SSスレで暴れられるとすっごく迷惑
↑またこの人か。。。
ID:5D2Q0HVGはもう出てこないでくれ
>>118をスルーしてるのに、わざわざ蒸し返すとは荒らしにしか思えない
126 :
118:04/04/01 20:25 ID:U/Jkulvb
ごめん、配慮が足りんかった・・・
吊ってくる
127 :
82:04/04/02 01:48 ID:Kl4bp8ur
今回は「ぷちえろ」…がちょっと。
良く考えるとすげーえっちなシチュ(自分的に)なんですが。
「そんなものはエロじゃない」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>81
「あ」
教室へ急ぐ圭介は、不意に声を上げて立ち止まった。
「どうしたの?けーちゃん」
「……胸、見てもらうの忘れた…」
「…………見てもらったんじゃないの?」
「……あ、…いや………いいんだ」
訝しげに見る由香に曖昧に笑って、圭介は再び廊下を早足で教室に向かい始めた。
■■【38】■■
圭介は4時間目の間中、授業を受けながらもずっと考え続けていた。
乳房はまだ少し痛む。けれどそれより何より、ソラ先生の言った事の内容の方が、遥かに圭
介の心を捕えているのだ。
正直、因子が発現し理解力が以前より格段に増した今でも、彼女の話は全てが理解出来たと
はとても言えない。もっとも、あの話が全て本当だという確証も無いし、圭介にはそれを確か
める術(すべ)も無いのだ。いや、信じるとか信じないとか、そんなのは問題ではないのかも
しれない。
心の奥で、魂に一番近い部分で、彼女の語った事を信じたい…信じなければ……信じよう…
という、強い力を感じるのだから。
ふと、視線を左に泳がせる。
窓から、空が見えた。
6月の空は雲が厚く、今にも雨が降り出しそうだ。例年ならもう少し早めに入梅宣言がされ
るはずなのだけれど、今年はまだ出されていない。湿気が高く、座っているだけで2枚重ねの
Tシャツの中が蒸れてくる。汗が吹き出た胸の谷間が、少しじっとりと気持ち悪い。それを意
識すると、乳房の根元が思い出したかのようにじんじんと痛んだ。
教壇では、はるかちゃんが現代国語の教科書を持ちながら黒板に例文を書いている。当ては
まる慣用句を答えよ…という問題だ。時々、生徒から鋭いツッコミが入るとあたふたと慌てる
のが微笑ましくさえある。せっかくの大人っぽいスーツが(実際に大人なのだけれど)台無し
だ。
>128
教室では黒板を走るチョークの摩擦音と、教科書やノートをめくる音、ノートにシャープペ
ンシルを走らせる音が、まるで漣(さざなみ)のように漂っていた。他の学校はどうか知らな
いが、この学校で学級崩壊と呼ばれる破綻した授業風景は滅多に無い。特に国立や有名私大を
狙うような進学校というわけでもなく、また、大人しい優等生ばかりというわけでもないのだ
けれど、この土地の気質や雰囲気がそうさせるのか、刺々しい空気が満ちる事などほとんど無
いのだ。だから、いわゆる「不良」と呼ばれる種類の人間や、精神的に病んだ人間、他人を攻
撃する事に喜びを見出す人間には、圭介は今まで出会った事が無い。
これが、圭介の日常だった。
穏やかな日々。
穏やかな人々。
でも、ソラ先生の言葉を信じるのであれば、この『優しい世界』は、星人が圭介のためだけ
に作ったものだという事になる。
もちろん、この高校は圭介が産まれる前からこの土地にあったものだ。けれど、圭介の家族
がこの街に引越してきたその時から、街は少しずつ変容していった……のかもしれない。
『そういえば、この街じゃあ事件らしい事件とか、起きた覚えが無いな…』
事故や災害はあった。大規模では無かったけれど、突発的な事故や天災などは、どんなに高
次の者が腐心しても「起こるべきもの」なのかもしれない。ただ、圭介の身の回りでは、突発
的な事故は一度も起きた事が無かった。
『ほんと……ガキの頃から護られてきたんだな…』
溜息を吐(つ)いた。
特にイヤだ…とか、気持ち悪い…とか、そういう感覚は無い。
ただ、少しわずらわしいかもしれない。今も誰かに自分の一挙一動を見られているのかもし
れない…と思うと、これからはあんまりムチャな事は出来ないのかな?と思ってしまうのだ。
ソラ先生は、
『お前が地球人として、地球人の常識や法律や慣習や宗教や、その他もろもろのお前を縛る全
てに準じるというのであれば、私達はそれを止めはしない。それはお前の生き方であり、それ
はお前の人生だからだ。自分で物事の分別がつき、自分で道を選ぶことの出来る年齢になった
以上、それはお前の当然の権利だからだ』
>129
と言った。
また、
『私達は、お前の肉体が安定している間のプライバシーは尊重している。その点は安心してい
い。こうして詳細なレポートが存在しているのは、お前の肉体が不安定な間だけだ』
とも言った。
今は、まだ半固定化なのだと言ったから、安定するまでの間だけだと思えば、そんなに嫌が
ることでもないのかもしれない。
ストーカーや興信所や記者やレポーターに付き纏われる事を考えれば………
『あ…』
そこまで考えて、圭介は不意に、もっとも根本的な事柄に思い至った。
“彼等『星人』が、こうまで自分を大切に扱ってくれるのはなぜなのか”
もちろん、同じ血を引く同族という面も確かにあるだろう。
でも、それだけではない。
母は、なんと言った?
あの日、母は、自分になんと言った?
『「けーちゃんは、善ちゃんと私の形質を半分づつ受け継いだ、2人の本当の子供』
いや、もっとあとだ。
『この惑星(ほし)で私達星人にも子孫が残せるかどうかは、けーちゃんにかかっているって
言っても言い過ぎじゃないわ』
そうだ。
『星人』は地球人達の中で、自分達の血(遺伝形質)…生きた証(あかし)を残そうとして
いる。純血種同士の子孫ではなく、地球人との間につくった子孫で。そしてやがて『星人』の
血は薄まり、広がって、地球人と完全に融合し、その時初めて彼らはこの星の住人となるのだ
ろう。
『故郷に帰ることの出来ない人々が求めた、もう一つの故郷……』
地球に、自らの命を遺(のこ)す。
そのための、子供。
それが、自分。
>130
『ハーフ…ハイブリッド……合いの子……』
そして自分には、彼らの希望が、期待が、願いが、かけられている。
子を成す。
そうだ。
『星人』が最も願い、最も渇望しているのは、純粋な意味での「地球人との子供」なのだ。
『オレに子供を作れって…ことなんだよな…』
けれど、今の圭介は女だ。もしかすると、これからずっと女かもしれない。
そうなると、自分は男とセックスして、しかも中出しされて、その上妊娠しなければならな
い…………????
なぜか、母がしたように体外受精という選択肢は無いように思えた。
『うあー……』
なんだか嫌な考えになりそうで、圭介はノートをとるフリをして左手で口元を覆った。
けれど、一度浮かんだ考えは、他に話し掛けてくれたり自分が話し掛けたりするわけでもな
い授業中の教室では、これっぽっちも消える気配が無い。むしろ、どんどんと思考が進んでい
く。
職員室から出た時に見せた、吉崎のあの顔を思い出した。
今朝、登校した時の、クラスメイトの男子の顔を思い出した。
自分の体は、もう完全な女で、しかもえっちな夢を見たからなのかわからないけれど、胸が
こんなにも“巨大”にふくらんでしまった。
乳房は昔から、男に対する強烈なセックスアピール(性交誘発効果)を発すると言われてい
る。実際、世間的にもこれだけ『巨乳』や『爆乳』のグラビアタレントがもてはやされている
のは、それだけ世の男を惹き付ける力があるという事だ。圭介だって、男だった時にはグラビ
アアイドルの豊かでやわらかそうな乳房に興奮したものだ。
つまり、
『これって……』
圭介は机に“のしっ”と載せた、ブラウスを突き破らんばかりに突出している重たい乳房を
見下ろした。
>131
つまり、体はもうすっかり『男を迎える準備』が整っている……ということなのだろう。過
剰にふくらんだ乳房は、男性に対する『私はもうすっかり成熟して、いつでもセックスOKで
す』のサインとして機能している…ということなのだ。
クラスメイトなど、男だった頃の圭介を良く知っているはずだ。一緒に馬鹿話だってしたし、
くだらないケンカだってした。あの頃は完全な男で、彼らもちゃんと男として接してくれてい
たのだ。
なのに、骨格が変わり、体格が変わり、そして脂肪のつき方が変わって乳房が重たくふくら
んだだけで、圭介をすっかり「女」として見るようになった。今朝の男子の視線は、欲情した
オスの目だったのだ。
かつて、圭介はグラビアアイドルの豊満な体に、それほど欲望は抱かなかった。けれど、全
く抱かなかったかといえば、そんな事は無い。
『でっけーおっぱいだな』
『揉んでみたい』
『嘗めてみたい』
『吸って、揺らして、じっくり見てみたい』
『えっちしたい。あそこに入れて、突いて、揺らして、キスして…』
ぞっとした。
今まで自分が、スカートがめくれるのも構わずに走り回ったり、机の上で足を広げて座った
り、胸を盛大に揺らしまくってたり、気軽に肩に手を置いたり、後から手元を覗き込んだり、
ジュースの回し飲みしたりした事を思うと、それがすべて、不必要に男を欲情させてしまう行
為なのだと、気付いてしまったのだ。
他ならぬ自分が、かつて自分が感じただろう欲望を、クラスの男達から向けられているとい
う事実。
自分は、なんて無自覚な大馬鹿野郎だったのだろう。
圭介はゴクリと唾を飲み込んで、そろそろと周囲の男子を見た。
見知った悪友たち。
その悪友たちが、今も自分の体をいやらしい目で見ている気がして、産毛の1本1本まで立
ち上がるような震えを感じた。
>132
毎日行われる由香の『女の子チェック』は、正直少し…いや、かなり面倒でわずらわしかっ
た。どうして女はこんなにも面倒なことをしなければならないのか。行儀や、話し方、歩き方
から走り方、モノの食べ方まで!
でも、今ようやくわかった…気がした。
あれは、女らしくすることで男にアピールするだけかと思っていたけれど、それだけではな
いのだ。アピールしつつも、必要以上に対する男を性的に刺激しない自己防衛の手段だったの
だ。確かに男には自分をアピールして、自分にとって、よりレベルの高い相手を惹き付けなけ
ればならない。けれど、不特定多数に対して行う過剰なアピールは、逆に自分の身の危険を招
く。その結果得られるのは、不本意な結末…または、破滅だ。
由香が言う「女として」とか「女のたしなみ」とかは、その加減をコントロールする術(す
べ)だったのだ。
圭介は急に寒気にも似た震えに、“ぶるるっ…”と体を震わせた。
思わず肩を竦め、自分で自分の体を抱く。
力も弱い。
足も遅い。
体力も無ければ、格闘術などの、身を護るための技術も無い。
なのに、セックスアピールだけが過剰にある。
『これじゃあ…』
「襲ってくれ」と言っているようなものではないか。
『星人』達は、おそらくきっと「子供が出来さえすればそれでOK」に違いない。確証は無
いけれど、健康でさえあれば、相手がどういう人間かなどは、ひょっとしたら全く関係無いの
かもしれない。だとしたら、彼等の『護り』は、期待出来ないのではないだろうか?
か弱い女である限り、自分の身は自分で護らなければならない。
『男に戻りたい…』
圭介は、女になって初めて、心からそう思った。
>133
■■【39】■■
昼休み。
圭介は再び保健室にいた。もちろん一人で、だ。
由香には「胸を診てもらうだけだから」と言ってあったけれど、正確にはそれだけではない。
『星人』に関する話は、由香や健司にはとても聞かせられない話だからだ。
それでも、きっとたぶん、5時間目の始業チャイム近くになれば、由香が呼びに来るに違い
ない。
それだけは、確信めいてさえいた。
「男に戻る方法!?」
保健室で、購買部で買ってきたヤキソバパンを咥えていた美智子は、圭介の口にした言葉に
訝しげに目を細めた。
なんで今さら?
そんな声が聞こえてきそうなほどだ。
圭介が、女性化して学校に登校してから一週間、彼には自分の体について、性について、考
える時間はたっぷりあったはずだ。涼子からも、圭介が強く男に戻りたがっている…とは聞い
ていないし、そんな報告も受けていない。
美智子は、圭介がもうすっかり、これからの人生を女性化したままで生きていく覚悟が出来
たものだと、思っていたのだ。
やはり、前の休み時間に話した事が、彼の心に影響を与えたのは確かなようだ。
『だからまだ早いんじゃないですか?って言ったのになぁ……ほんと、涼子さまは強引なんだ
から』
美智子はヤキソバパンをもごもごと飲み下しながら、真面目な顔で頷く圭介を見た。
あの恐ろしい『事故』から数百公転周期。
彼女は生きるため、不時着した地域で最も知能の高い生命体(後でその生命体が『(野)犬』
と呼ばれる下等生物だと知り、ひどくショックを受けたことは、涼子にはヒミツだ)の肉体を
模し、長い休眠期とほんのひとときの活動期を交互に過ごしてきた。そして、もうこの未開の
惑星などには救助も救援も期待出来ない…と絶望しかけた時、ふと立ち寄った現地人の集合活
動圏……『街』で彼女のメッセージを受け取った19年前のあの日の事を、彼女はこれからも
決して忘れないだろう。
>134
同朋の中でも抜きん出て“力”の強い一族……あの『旅』の間、『星人』の統率者として皆
を率いていたその一族の一人が、あの『大事故』を生き延びていた事も驚いたが、現地人の雄
体と“つがい”になり、『彼』と“子”を成そうとしていた事にはもっと驚いた。
だいたい、あのメッセージにしても、いったいどういうつもりだったのか。
最初のメッセージなど、ふざけているとしか思えない。
『おいしいお茶を飲みましょう。みんなで集まって、おいしいお茶を』
ここの言葉で表すとすれば、こんなメッセージだった。
彼女は、煙草とアルコールの匂いの満ちる安酒場の片隅で蹲(うずくま)りながら、ぽかん
と口を開けてビジュアル受像機(テレビ)の画面を見入っていた。
数百年ぶりに受け取ったメッセージが「お茶会の誘い」だったなんて、故郷の長老達はどう
思うだろうか。
そう、ぼんやりと思いながら。
それから肉体を再構成し、涼子を中心とした生き残りの『星人』達で、新たなコミュニティ
を構築したまでは良かったけれど、結局彼女は仲間の反対も押し切って、強引に子供を作って
しまった。しかも他の全ての『星人』達に協力を取り付け、再び一つに纏め上げてしまった手
腕は、まがりなりにもさすがは“あの”一族の一員なのだと思わずにはいられなかった。
何も考えていないようで、その実何も考えていない。
かと思えば、気がつくといつもいつも涼子のいいように動かされている自分達がいる。
彼女の子供…固体名『山中圭介』の因子発現による今回の事件でも、美智子は涼子によって
比較的平穏な生活を引っ掻き回されてばかりだ。
美智子は涼子と違って、自分の遺伝因子を地球人のものと掛け合わせる事が出来ない。その
権限が無いのだ。『システム』に組み込まれた『プログラム』が、美智子の因子をはじいてし
まうのである。おそらく、完全な“子”を作る事が出来るのは、今となっては涼子ただひとり
に違いない。
だからこそ、圭介は涼子の子供であると同時に、『星人』全ての子供でもあるのだ。
>135
確かに、過去には『星人』によって不完全ながら因子を組み込まれ、『星人』と適合するよ
うに調整された地球人もいて、そんな彼らは他の地球人と交配し、数多くの子孫を残した。け
れど『システム』を介せず作られた“子”は、『星人』の因子を発現する事無く死に、運良く
生き延びた“子”はもはや『星人の子』とは呼べぬ者に成り果ててしまった。
だからこそ、地球人と『星人』の両方の形質を併せ持ち、健康体としてすくすくと成長を続
ける圭介は、自分達の種族の希望の星なのである。
本来、『星人』に性別などというシステムは無い。それが、この惑星の環境に適応するため
に肉体を構成する際、奇しくも全ての『星人』が採用し、涼子も美智子も『女性』を選択した。
美智子は、愛した現地人が『雄型』だったから。そして美智子は、
『美智子ちゃん、女の子になりなさいよ。そうよ。それがいいわ。ね?はい決まった!』
の一言で女性になった。
…簡単なものだ。
生殖能力が無い以上、肉体は好きに改変出来るし、それによる弊害などは無い。だから美智
子も特に拒む理由も無く、女性体となった。
けれど、圭介は違う。
地球人の形質を半分受け継ぐ彼は、肉体に引き摺られ、精神を変容させる。その上、地球人
との生殖能力を維持するため、頻繁に肉体を改変する事は出来ないし、また、改変には肉体を
ひどく酷使してしまう。
子孫に自らの種の遺伝形質を残す…という目的のために『男性』にも『女性』にもなること
が出来る『星人』の特質は、彼に対して肉体的にも精神的にも、ものすごい負担を強いる事に
なるだろう。
それは、もう18年前からわかっていた事だった。
『だから私がここにいるんだけどね…』
美智子はヤキソバパンを牛乳で飲み下して、パンパンと手のパンくずを払った。こうして
『味覚』の楽しみを覚えたのも、あの頃ではなかっただろうか。
>136
■■【40】■■
美智子はパンの入っていたビニール袋をくしゃくしゃと丸めて、2メートル離れた場所の屑
篭に投げ入れた。狙い違わず中に入った事を確かめると、彼女は高く足を組み直して正面の圭
介をじっと見つめる。
「戻りたいのか?」
もちろん『男に戻りたいのか?』という意味だ。
「ああ」
「なんで?」
「なんでも」
「どうしても?」
「どうしても。方法はあるんだろう?」
ぐぐぐ…と息んで身を乗り出す圭介の、その両腕の間からたっぷりと重たげなふくらみが盛
り上がっている。椅子に座って前傾になり、脚を思い切り開いて股間のところで椅子に両手を
ついていた。水色のパンツが丸見えな上、乳房が両側から腕で“ぎゅっ”と寄せられて、ただ
でさえ凶悪な大きさの“ロケットおっぱい”が、30%ほど増量されているように見える。
男に対して貞操の危機を感じるようになっても、相手が女性だと、まだまだこうも無防備に
なってしまうのか。
「パンツ見えてるぞ?」
「話をそらすなよ」
…と言いながら、ほっぺたをうっすらと赤くしながらいそいそと脚を閉じ、スカートを直す。
その姿は、美智子が見てもひどく可愛らしい。
『女としての羞恥心は、ちゃんと生まれてる…か』
女性化した原因を考えれば、それは順当な成長と言えた。
少なくとも美智子から見れば。
「無いわけじゃないけど、難しいぞ?そもそも、お前が女性体に変化した原因は、依然として
お前のすぐそばにあるんだ。その原因を除いてしまうか、対象が変わらない限り、お前の体が
男に戻る事は無いだろうな」
「……なんだよ…原因って」
「お前はもう気付いてるはずだそ?」
“んん?”と、美智子はちょっとからかうように口の端を歪めて半目の視線を向ける。健司
は『うっ…』と小さくうめくと、あっというまにほっぺたを赤くして上目遣いに美智子を見やった。
>137
「わ…わかんねーから、聞いてんじゃん…」
「じゃあ言ってやろう。健司だよ。谷口健司が、お前を女にしたんだ」
「なっ…」
圭介は、顔をさらに真っ赤にしてのけぞった。
そのまま“ぐらり”と体が傾(かし)ぐ。
『健司が、お前を女にした』という言葉が、圭介のなんだかとてもヘンな部分を刺激したら
しい。
「な…なな…」
「お前は健司が好きなんだ。好きで好きでたまらないから、女になった。お前の体が、健司と
の子供を欲しがってるんだ」
美智子の容赦無い言葉に、圭介は“あうあうあうあう…”と意味不明な呻き声を上げて椅子
から転げ落ちた。
そのまま床にお尻をつけて、ぺたんと座り込んでしまう。
「…だ、いや、そりゃす…好き…だけどさ、そ、それはダチとしてであって、そんなヘンな気
持ちなんかじゃないぞ!?」
無駄な抵抗だ。
耳たぶどころか首筋まできれいなピンク色に染めていては、どんな言葉もウソに聞こえる。
いや、本人にウソをついている自覚が無いとしても、体がそんな状態では、それが、彼が
“自分で自分を騙すために吐いた都合のいいゴマカシ”でないと言えるはずもなかった。
「オ、オレが健司のこと、す…好きだとしても、じゃあなんでガキの頃に変化しなかったんだ?
おかしーじゃねーか。毎年、今の時期は体がヘンな感じになってたんだ。…そ、そうだよ、健
司が好きってのは、それは、その、あれだ、友情ってヤツで、その気持ちはガキん時から変わっ
てねーんだから、だったらガキの時に変化してもいーじゃねーか!」
自分で口にした言葉に正当性を見つけようとして、強引に展開している。語尾が段々と高く
なり、圭介は、最後にはほとんど叫ぶように言いながら床から立ち上がった。
「往生際が悪いな」
「う、うるせー……オレが健司に惚れてるなんて…そんな…こと…」
「子供の頃、お前のそばにはいつも川野辺由香がいた。お前はいつも『由香を護らなければ』
という意識で男性化していたんだ。未発達な感情では、それが保護欲なのか独占欲なのか理解
しろという方が無理だっただろうな。
そして心は、もう一つの存在もちゃんと意識していた。
>138
いぢめられっこだった、健司だ。
その証拠に、お前の体はいつでも性変換が可能なように肉体の成長を未分化のまま固定して
しまっていただろう?ここ数年のお前の肉体成長率が、同世代の固体と比べて著しく低いのは
そのせいだ」
圭介は、筋肉も増えず、身長も伸びず、いつまでたっても男らしい体つきにならなかった理
由を、美智子の口から聞いて不思議と納得してしまった。感情はまだ必死に否定しているのだ
けれど、理性の片隅で「やっぱりそうか」と思っている自分がいることに気付いてしまったの
だ。
「ところが、思春期になって精神的にも肉体的にも不安定になり、逞しく成長した健司との体
格差を実感する事で、お前の中の女性的な部分が健司に感じた友情に反応してしまったんだろ
う。…お前、健司に対して『コイツと離れたくない』とか『コイツとずっと一緒にいたい』と
か、思わなかったか?」
圭介は顔を真っ赤にしたまま、美智子から目を逸らして壁の視力検査表のランドルト環(一
部が欠けた黒の円)を睨みつけた。
それが答えだった。
「だから女性化した」
「…なんで友情で女になるんだよ…」
「友情なんてのは便宜上のものでしかない。それはお前もよくわかってんだろ?
愛とか恋なんてのは人間が作り出した倫理によってどうとでも変わる。今のこの日本でまだ
奇異に見られる男同士の同性愛も、たかだか2百年前には『衆道』としてむしろ武士を中心と
して推奨されていたくらいだ。
相手を愛しいと思い、『護りたい』『護られたい』『支えたい』『支えられたい』と思う心
に、親子や夫婦、姉妹、恋人、親友などの、立場の違いなんて実際のところ関係無いのさ。
逞しく成長し、お前を護れるようになった健司とずっと一緒にいたいと感じたから、お前は
女になった。
これ以上明確な理由があるか?」
圭介は言葉も無く、すとん…と椅子に座り直した。
「じゃ…じゃあ、この胸は…」
「健司は『おっぱい星人』なんだろう?たぶん、健司の好みの女に変化したのさ」
「………背が伸びるように毎日すげーいっぱい牛乳を飲んでいたのも、原因?」
「それは…どーかなぁ…」
>139
「で、でも、もう飲んでないぞ?」
必死な顔の圭介が可愛かった。
自分の肉体が、ここまで潜在意識に忠実に変化した事を、まだ認めたくないのだろうか。
「なあ、圭介。
たぶんお前の体は、今、一所懸命に男と女の性のどちらが一番自分にとって有意義か、どち
らで生きる方が一番ストレスが少ないかを判断しようとしてるんだ。
男として子孫を残すか、女として子孫を残すか…のな。
それを過ぎればちゃんと性別も固定して、男か女のどちらかになる。今はまだ不安定で、肉
体的にも変動があると思う。けど安心していい。両性具有(アンドロギュヌス)とか、その逆
に両性具無とかにはならないから。まあ、お試し期間だと思えばいいんじゃない?」
「んなムチャな…」
世にも情けない顔をして、圭介は肩を落とした。まるで雨に濡れた捨て子犬のようで、思わ
ず頭を撫でてやりたくなる。
「一つだけ、肉体を手っ取り早く固定化する方法があるんだけど……涼子さんは、それ…教え
てくれなかっただろ?」
「……なんでだ?」
「まあ、母親なら教えたくねーわな」
美智子は小さく溜息を吐くと、机に頬杖をついて視線を宙に向けた。
「なんだよ。ケチケチしないで教えてくれよ」
「それが人にものを頼む態度?」
「教えて下さい」
「よろしい」
くくくく…と美智子の口から笑みが漏れる。神妙な顔でしゃちほこばった圭介が、やっぱり
可愛いのだ。
彼女は“こほん”と咳払いすると、あの、どこか人を食った笑みを唇にのせて圭介の腰のあ
たりを見た。
「…ま、ぶっちゃけ、エッチすればいんだ」
「…は?」
「聞こえなかったのか?えっち、セックス、まぐわい、おまんこ、ええとあとは…」
「ストップ!ストップストップストップストップストップストーーーーーーップ!!」
「なんだよ」
>140
「そうじゃなくて、聞こえなかったんじゃなくて、ええと…なに?どういうこと?」
圭介の顔は、もうこれ以上無いくらい真っ赤だ。しきりに瞬きを繰り返し、額にはうっすら
と汗まで浮かんでいる。口の中が乾くのか、頻繁に唾を飲み込んで喉が動いていた。
「手っ取り早いのは、誰でもいいから男に抱かれて精液を体内に取り込むこと。まあ、つまり
中出しセックスしろってことだ」
圭介の体が30度、左に傾いた。
淡々と説明する美智子の言葉が、圭介の右の耳から左の耳に抜けて行く。
彼はその間、口を半分開け、呆気にとられた表情で彼女の顔を見続けていた。
■■【41】■■
場合によっては女のまま受胎するかもしれないけれど、男に戻る可能性だって、あるのだと
いう。
美智子は言う。
重要なのは『星人』の遺伝形質が、この星の現住生物である人間と自然状態で子孫に遺せる
か…ってこと。
『星人』のテクノロジーを使えば簡単だけど、それじゃあ意味は無いんだ。
男とイッパツやって、男の精液を膣内で感知した時、お前の肉体が強烈なストレスを感じる
ようであれば、たぶん女から男に戻れるかもしれない。女として子孫を残すより、男としてよ
りストレスの無い方法で子孫を残す選択肢の方が、ストレス無く良質な状態で“子”を成す事
が出来るなら、それに越した事は無いからな。
男は自分の子孫をより多く残すために相手と心が通い合わずとも性交出来るのに対し、女は、
より質のいい子孫を残すために相手を吟味しないと行動に移れない。
より最良の方法で上質な遺伝を成し得るのは、「数打ちゃ当たる」か「厳選方式」か。
もっとも、男に体を自由にされる女が、女の体を自由にする男よりストレスを感じるとは、
必ずしも言えないからな。
ひょっとしたらお前の体は、女のまま子孫を残す事を選ぶかもしれない。
それでも良ければ、試してみるといい。
私達も期待してる。
>141
お前が、私達の“命”を地球の者の命を結び付けるその時を。
なんたってお前は、私達の希望の星なんだから。
話し終えた美智子は、席を立って保健室のテーブルの上の急須に、ポットからお湯を注いだ。
「飲む?」とジェスチェアで湯飲みを示してみせるが、圭介は呆然としたまま気がつかなかっ
た。
「ショックがデカすぎたか?」
圭介が男に戻るには、健司と物理的にも精神的にも遠く離れ、その上で他の女性に恋しなけ
ればならない。
それが出来ないのであれば、誰でもいいから男と寝て、中出ししてもらって、精液を膣内で
感じた時に強烈なストレス感知を期待するしかない。
それは、今の彼にとって苦渋の選択……いや、きっと血を吐くような決断を強いているに違
いなかった。
「そんなに…」
「ん?」
不意に口を開いた圭介に、湯飲みへお茶を注いでいた美智子の手が止まる。
「そんなにオレが大事なら、なんであの時、他の医師にまかせようと思った?」
「あの時?」
「オレが倒れた日の昼、ここで目覚めた時」
「ああ………そうだっけ?」
「あの時、由香に言ったんでしょ?オレの目が覚めて、それでも気分が悪かったらちゃんとし
た医者に見せろって」
「けど、行かなかっただろ?」
「それは結果論で…」
「まあ、ホントに病院行かれても、ここ(地球)のケチな設備でなんかわかるほど、私達のテ
クノロジーはやっすいモンじゃないからねぇ。それにあの時点では、お前の体は間違いなく男
だったわけだし」
「で、でも、そのまま病院に入院とかしたら、まずかったんじゃないですか?もし病院で変化
とかしたら」
>142
「その前に手ぇ回して、家に連れ帰ってただろうさ。お前のオヤジならね。もっとも、そんな
事しなくてもこの街の病院は私達のコミュニティの息がかかっているからヘーキ。小学2年生
の時、お前のオヤジはここの病院にお前を移したんだよ?覚えてないのか?」
…覚えてなかった。
けれど、街一つ、まるまる圭介のためだけに用意してしまう『星人』達の事だ。ウソとは思
えなかった。
「ま、それはそれとして、これから自分がどうするか、よーく考えるこった」
圭介は黙って、湯飲みを差し出した美智子を見上げた。
「で、なんだっけ?もう一つ用があったんじゃないのか?」
「あ…うん…」
圭介の視線が、自分の胸に落ちる。ほっそりとした体には全く不釣合いな、“どかん”とヴォ
リューム満点の乳房に、美智子の顔が悪戯小僧のような笑みを浮かべる。
「胸……か。まあいい。痛いか?」
「まだ、少し…」
「…とりあえず見てみるか」
保健室の窓のカーテンを引き、ドアには鍵をかける。そうしてから美智子は、椅子を引き寄
せて圭介のすぐ正面に座った。彼女の吐息を感じるくらいに近い距離だ。ちょうど、医師が患
者の具合を診る時の距離と同じだった。
「脱いでみ」
「…ぜ、ぜんぶ?」
「全部脱ぐ必要は無いよ。前だけ捲り上げればいい」
一瞬、圭介は躊躇したけれど、すぐに、覚悟を決めて紐タイを外し、ブラウスのボタンを一
つ一つ外してゆく。そしてブラウスの前を開くと、2枚重ねで着込んでいたTシャツを一度に
捲り上げた。
カーテンに遮られた淡い陽光の中に、真っ白で乳首だけが綺麗な赤の、豊か過ぎるほど豊か
な乳房が“ぶるんっ”とまろび出る。「巨乳」とか「爆乳」とか、『異常です』という差別的
語彙を変容させただけの形容名詞(?)が、ぴったりくるような乳房だった。
「でかっ!!なんだこりゃ!?バケモンかオマエは」
「ひ…ひでぇ…そこまで言う?!」
まるでいきなり凶器でも突きつけられたかのように、ぎょっとしてのけぞった美智子へ、圭
介は今にも泣きそうな顔を見せた。
>143
ここまで。
身体検査は、さらりと流してしまいそうです。
選り抜きレス
>87
「154cmの<陸上で体を引き絞り、
以後、筋肉の増強が無いまま文化部に1年半在籍した>男子高校生」
の資料なんてどこにも無いもので…。
>89
??シチュが?
>91
特には…。
私はダーレス派ではなくクラフト派ですが、原理主義者ではありません。
が、「ダンウィッチの怪」「インスマスの影」のアレは
「深きもの」よりは「深きものども」という和訳の方がしっくりきますね。
>102
あんまり期待されてますと、
「な〜んだ」という単純なプロットが元なのでガッカリするかもです。
>>144 毎度GJ!!です。
健司のことがたまらなく好きだから身体が女性化
したっていう理由にキュン…としますた。良かったです。
>>144 地球外生命体(宇宙人という言葉は好きではないw)とか圭という字を含む名前とか
成長しない体とかおねてぃっぽかったんだけど全くオリジナルですか?
ここは、完全オリジナルが多いスレです。
もちろん、2次創作もOKです。
148 :
144:04/04/03 03:31 ID:wMLKQMrR
今回は「ぷちえち」…かな?
「そんなものはエロじゃない」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>143
「しっかし…こんなちっちゃい体に、よくもこんなにでっかいもんが実ったなぁ…」
「実ったってゆーな」
ぶーたれる圭介は、すっかり涙目だ。『バケモン』と言われたのがよほどショックだったら
しい。
「あの…けーちゃん…?」
その時、控えめなノックと共に由香の声が聞こえた。ためらう圭介に構わず美智子がドアに
近づき、あっさりと鍵を開ける。
「…あ…えっと……お取り込み中…??」
保健室に入ってきた由香は、ブラウスの前をはだけ、Tシャツを捲り上げて椅子に座ってい
る圭介を見て目を丸くした。両手で乳首を隠しているため、ただでさえ豊かな乳房が押されて、
さらに豊かに見える。カーテンが引かれているために淡い光となった陽光が、白い肌に優しい
陰影を落とし、ちょっと幻想的にさえ見えた。
……雑誌のグラビアみたいだった。
しかも、ちょっと芸術寄りの。
「けーちゃん…きれい…」
「ばか、早く入ってドア閉めろよ」
苦笑する美智子が由香のために椅子をもう一つ用意するのを見ながら、圭介は少し恥ずかし
そうに言った。
「あ、うん」
「あれ?もう昼休みって終わる?」
「ううん。そうじゃないけど、ちょっと気になっちゃって……」
ほにゃっと笑みを浮かべる由香に、美智子が椅子を示す。キャスター付きの椅子は2つしか
無いので、由香にはパイプ椅子だ。
由香はその椅子を圭介の側まで引き寄せて、彼の胸を見ながら腰を下ろした。
「あ。体育の前に見た時より、良くなってるね」
「まあなぁ…さすがに、あの斑(まだら)が残んなくてホッとしたよ」
さっきまで美智子と話していた事はキッパリと忘れ、今は由香に話を合わせなければ…と圭
介は思った。
まだ、彼女に自分が普通の人間ではないのだとは知られたく無かったからだ。
「んじゃ、改めて見せてみ」
「……ん」
>149
美智子が椅子に座ると、圭介は乳房から両手を離した。由香にはトイレで一度全部見せてい
るし、美智子にも見られている。今さら恥ずかしがる事でも無いから、2人の目前に晒(さら)
してしまう事にさほど抵抗は無かった。
ぷくぷくしたほっぺたがほんのり赤いのは、たぶん気のせいだ。
「…っ……」
“ゆさり”と重たげに揺れる乳房を見て、由香が、さっきとは違う意味で息を飲んだ。
“ぷるっ”でも“たぷっ”でもなく“ゆさり”である。
実に重そうだ。
「……けーちゃん………エロい」
「エロ……」
『バケモン』の次は『エロ』ときた。
………もし健司に見せたら、なんて言うだろうか?
『いや、見せるなんてありえねーし』
途端に顔が火照ってくるのを無理矢理鎮め、圭介は、指を伸ばして乳房を突付こうとした由
香の右手を、“ぺちっ”と叩いた。
「ほら、じっとしてろ」
由香と圭介の静かな攻防に苦笑しながら、美智子は彼の椅子を掴んで自分の正面に向かせる。
圭介はTシャツが下がってこないように両手でたくし上げているけれど、そんな心配は全く
無用だろう。
彼の首はほっそりとして、ちょっと短い。背が低いのでことさらにそう見えるのかもしれな
いけれど、首筋と鎖骨の描く線は、ひどく幼い感じがした。その鎖骨から薄い胸板へとなだら
かな稜線が走り、そこからみっちりと重たく盛り上がった白い乳房へ、急激にカーブを描いて
いる。半球を描く「お椀型」と、釣鐘(つりがね)状に前方へ突出した「紡錘(ぼうすい)型」
の中間くらいの、きれいなカタチだった。
「こりゃ、どっからどー見てもカンペキにおっぱいだな」
「そんなのは見ればわかるってば」
「ちょっといいか?」
圭介の返事を待たず、美智子は両手で圭介の乳房を両手で下から掬い上げるようにして持ち
上げた。
「んっ」
ぴくっと圭介の肩が震える。美智子の手が、思ったよりもずっとひんやりと冷たかったのだ。
>150
乳房は、主に乳腺と脂肪のカタマリだ。だから、圭介のように体格と不釣合いな重さだと、
いくら肌が若々しくてもどうしても少し下垂してしまう。けれど、彼(彼女)の乳房は歳を取っ
て“だらん”とだらしなく垂れているわけではないので、持ち上げる…というより、下から手
を添えて押し上げるといった形になった。
「それにしてもでけー…。しかもイイカタチしてやがんなぁ…ええいチクショウ」
「なんですかチクショウって…」
生殖機能が無く、外部生殖器も実質的には『飾り』でしかない美智子にとって、乳房は邪魔
なものでしかなかった。少なくとも19年前までは。だからこういう体にしたのだし、それで
特に不都合も不満も無かったはずだ。
…はずだったのだけれど。
『私もかなり毒されてんなぁ…』
もにもにと圭介の乳房を触診しながら、美智子は心の中で苦笑した。
乳房が「女性」や「母性」の象徴であり、「豊かさ」「慈愛」のシンボルだというのは、地
球の文化を知る事で美智子にも理解出来た。男性が強烈なセックスアピールを感じる事も、理
解出来る。豊かな胸は、かつて人間が獣(猿)だった頃、主に後背位(バック)で性交してい
た頃の名残だろうと言われている事からも、それはわかる。直立する事で、発情時に肥大する
豊かな尻肉を露出する機会が失われ、その代わりに乳房が膨らんで、性交可能であることを雄
に報せるのだという。
生殖能力が無く、“子”を成すことの出来ないからこそ、美智子は数年前から時々、自分に
も豊満な乳房が欲しいと思うようになっていた。もちろんその気になれば、美智子はすぐにで
も豊満な乳房を胸に盛り上がらせる事が出来るけれど、この学校にいる限り、それは『できる
けれどしてはいけないこと』だった。いきなり体型を変えて、生徒の注目を浴びたりするのは
得策ではないからだ。
圭介が肉体変化を起こしてすぐ保険医の肉体も変化すれば、その間になんらかの因果関係を
感じる者も必ず出て来るだろう。
『出来れば…記憶操作はしたくないからな…』
>151
人間の脳のシナプシス反応を操作して、一定時間内の記憶を消去したり改竄(かいざん)し
たりする事は、『星人』の技術をもってすれば不可能ではない。けれど、それをこの惑星の住
人に行うには、絶えず危険が伴う。シナプシスの化学反応による電気信号伝達で形成されたネッ
トワークは、炭素系生物では珍しいものではない。けれど、この惑星の記憶構造は、他の惑星
人に比べてひどく脆弱であり、微細な調整が難しいのだ。
だからこそ、記憶操作は極力せず、もししなければならない事があっても、最小限の改変に
留める事が決められていた。これは全て、この星の人間を愛するゆえの、涼子の決めた不文律
(ふぶんりつ)なのだ。
圭介の乳房は、白くて、もちもちと手に吸い付くような肌をしていた。適度にやわらかく、
あたたかく、いつまでも触っていたくなるほど気持ちが良い。
「女子に揉まれただろ?」
乳腺の発達具合を確かめながら、美智子は悪戯っぽく聞いた。
途端に圭介の顔が、あからさまにうんざりしたものになる。
「……イヤんなるくらい。人の触るなら自分の触れっつーんだ。オレのおっぱいはオモチャじゃ
ねーぞっての」
「まあそう言うな。自分に無いから触りたいんだろうし、それにたぶん、触った時のお前の反
応が面白かったんじゃないのか?」
「それって結局、オモチャにしてるってことじゃねーか…」
唇を突き出して、子供っぽく拗ねたような顔をする圭介を見ていると、オモチャにしたくな
る女子生徒の気持ちがよくわかる。
艶やかなセミロングの黒髪。
小さい頭と整った顔。
細いけれどキリリと意志の強さを感じさせる眉。
長い睫とクッキリとした二重瞼(まぶた)。
パッチリとした少し釣り目気味の目。
鼻筋は通っているけど、ちょっと上を向いた鼻がやんちゃな悪戯っ子を思わせる。
すっきりとしていながら、ほっぺたはぷくぷくとやわらかそうだ。
その上、体つきもほっそりとして背も低く、まるで少し前の少女漫画の主人公みたいだった。
>152
そんな、『可憐』とか『可愛らしい』とか『子犬みたい』とか『ポケットに入れて持って帰
りたい』とか言われそうな少女の胸に、大人顔負けの豊かな乳房が重たげに揺れている図…と
いうのは、“その手のシュミの方々”なら、まず間違いなく大喜びしそうなシチュエーション
だった。ちょっと生意気そうながらも、可愛らしくあどけない『ロリータ顔』に、“どかん”
とでっかい『爆乳』…というのは、昨今のセクシャル系グラビアアイドルの傾向と、ぴったり
合致しているからだ。
「もう痛みは無いのか?」
美智子が乳房の上部…胸元の少し赤くなっている部分を指で押さえながら圭介に聞いた。
「ん……うん」
触診とはいえ、何度も揉まれ、撫でられて、圭介はすっかり大人しくなってしまっていた。
口を塞ぎ、赤いほっぺたのまま、自分の乳房を美智子の白い手が動き回るのをじっと見ている。
「ナニ感じてんだ?」
「…ばっ…ンなこたねーよ…」
10円玉より少し大きいくらいの乳輪に、小豆くらいの可愛らしい乳首。その淡い桜色の乳
首は少し赤味が増し、その上しっかりコリコリと勃起している。美智子はそのことに気付いて
いたけれど、あえてそれについては何も言わなかった。
「言うほど痣(あざ)も残ってないしな、たぶん体質的なものもあるんだろう」
美智子は言外に、『星人』の肉体的特性であることを含めて言った。由香がそばにいる以上、
その話は出せないからだ。
けれど、ちゃんとそれが伝わったのか、圭介の顔がふっと緩んだ。
「ホッとしたか?」
「うん。やっぱり…ね」
「そうか」
体に傷や後が残る事を心配するのは、女性的な感性だ…と美智子は思った。圭介は、思った
よりも急速に精神までが女性化しつつあるらしい。
「乳腺もしっかり成長してるし、脂肪の感じも特に異常は無さそうだ。そういえば、もうカッ
プは測ったのか?」
「カップ?」
「バストカップだよ。知ってんだろ?」
「なんだそりゃ?」
>153
「おい川野辺…お前、彼女だったんならそれくらいカレシに教えとけよ。下着買ってもらう時
に困るだろ?」
じいい…と、なんだかもの欲しいんだか羨ましいんだか、圭介の乳房を見ていた由香は、美
智子の言葉に慌てて両手を振った。
「かっ…彼氏じゃありませんっ!そ、そんな!そんなけーちゃんにわたしなんか」
「じょうだんだ。本気になるな」
その慌てっぷりに、くくく…と美智子が笑う。由香はたちまち憮然となり、ぷうっとほっぺ
たを膨らませた。
「トップとアンダーはわかるよな?」
圭介の乳房を解放し、美智子は椅子に体を預けて腕を組む。すっかり今の本職である、保健
教諭の顔をしていた。
「………上と下…」
「そうじゃなくて……あーもういい…川野辺、そこにメジャーがあるから取ってくれ」
「あ、はい」
立ち上がり、とててっと壁際の戸棚に由香が向かう。前面がガラスの観音開きになっている
戸棚には、消毒薬や包帯、ハサミやアルミ製の箱などが置いてある。メジャーは、その一番下
の棚にあるはずだ。
「Tシャツはいいからブラウスだけ脱げ。そのままだと測りにくいから」
「…はい」
圭介が言う通りにすると、今度は後を向いて両腕を上げるように言う。
そして由香がメジャーを持ってくると、手馴れた手付きでメジャーを引き出し、彼の体に回
した。
「んひゃっ!?」
「なんて声出してんだ?」
あまりにも可愛らしい悲鳴に、美智子は“ぷっ”と吹き出してしまった。
「いや…ちょっと冷たかったから…」
「可愛い声だけど、そういうのは男の下で出すもんだ」
「男の下?……………なんだよそれ」
顔が真っ赤だった。どういう意味なのか理解したに違いない。
「じゃ、おっぱいを持ち上げな」
「は?」
>154
「トップサイズってのは、ブラをつけた時と同じ状態で測った、乳首の位置でのサイズのこと
だ。エロい雑誌とかでバスト90センチとかって書いてあるアレだ。まあいいや。川野辺、ちょっ
と見てやんな」
「あ、はい」
由香が圭介の前に回り、乳房を寄せ上げるように言う。
「こ、こう?」
「脇のお肉も持ってきてね」
「脇のお肉って…」
「ここ」
「あひゃっ」
「もうっ…ヘンな声出さない」
「だってさぁ…」
「ほら、自分でやる」
「う…うん…」
「そう。うん、もうちょっと。あ、持ち上げ過ぎ。…ん、そう。あ、あ、あ、ストップ。うん。
ここ」
背中越しに2人の会話を聞いていると、普通の女の子同士の会話だとしか思えない。片方は、
たった一週間ちょっと前までは、正真正銘の男の子だったというのに。
「いいかー?測るぞー?」
「んぅっ…」
乳首を“しゅるっ”と擦ったメジャーに、圭介は小さく声を上げた。
「い…いま、わざとやったでしょ?」
「あ〜…ソラ先生ってばえっちー」
「ばか。じっとしてろ」
耳たぶまで真っ赤にした圭介と、ほにゃほにゃとした笑みを向ける由香に、美智子はわざと
怖い顔を作って言った。
乳房のカップの測り方は、トップバストとアンダーバストの差で決められる。由香のように
ぺったんこの胸だとさほど苦労は無いのだけれど、今の圭介のようにたっぷりと豊かな胸は、
一人では正確に測る事が出来なくて、誰かの手助けを必要とした。
>155
トップバストのサイズは、乳房の一番大きな(高い)部分の、胴を含めた周囲のサイズだ。
方法としては、ブラジャーを付けているのと同じ状態を作り、乳首の上でメジャーを通す。手
で持ち上げるのがいいけれど、とりあえず測るだけなら、ゆったりめの仮ブラをつけて、それ
で測ってもいい。
手でおっぱいを持ち上げて乳首の位置を上げる時、脇に流れた肉を寄せる事を忘れてはいけ
ない。男が思うよりも簡単に、乳肉は『移動』するからだ。手で脇肉を掻き集め、寄せ上げて
そのままおっぱいを維持し、メジャーを回してトップを測る。一人では正確に測れないのは、
明白だ。
それに対してアンダーバストのサイズは、比較的簡単に測る事が出来る。バージスラインの
すぐ下を測ればいいだけ…だからだ。
「バー………なに?」
「バージスライン。覚えとけ。この、乳房の下の、ふくらみの輪郭線の事だ」
「ちょっ…んっ……くすぐったいって」
「我慢しろ。お前みたいに乳房そのものが馬鹿でかい場合、大抵はそこを少しキツめに測って、
逆にトップバストはゆったりめに測ると、カップに少し余裕が出来て胸が苦しくないぞ」
「馬鹿でかい………」
今度は『馬鹿』ときた。
『馬鹿みたいにデカイ乳』…と言いたいのだろうけれど、どうしても『乳にばかり栄養がいっ
て脳味噌カラッポの馬鹿』と聞こえてしまうのは、圭介の被害妄想かもしれない。
「んんん…??…アンダー65.5…の、トップが…………87・5か……限りなくGに近い
Fカップだな」
「すごっ……」
由香が目を丸くして、改めて圭介の乳房を見た。
テレビや雑誌などではよく見かけるものの、こうして同年代の女の子の「生Fおっぱい」を
見たのは、由香はこれが初めてだった。今までこの学校で見た事のある胸は、大きくてもせい
ぜいがDカップくらいで、それも、実際には形が良くなかったり、水増しして申告していたり
するものばかりだった。だからこうしてその大きさを実感しながら目の前で測って、そして出
た「F」というサイズには、どうしようもない衝撃を感じずにはいられなかったのである。
「さっきも言ったが、トップはちょっと余裕を持って測ってあるから、実際はEカップくらい
じゃないかな?」
「それでも十分でっかいです」
>156
ここまで。
>146
はい。オリジナルです。
山中圭介というのは、書いてる時にちょうど新撰組を見てて、
山南敬助から取りました。ドラマの彼はちょっとアレですが。
最大公約的に「似てる」と言われても困ってしまいますが…。
アンダー65だと確かにFカップだけど、
乳の大きさだけで言えば70のEや75のDと同じだから爆乳と言うほど大きくないよ。
たとえば佐藤寛子が近いサイズだけど、服来てたらそんな目立たない。
>>157 Good Job
毎度お疲れ様です。
ガンガッテ下さい
おっぱい、程よいサイズに抑えてくれて、ほっとしたw
でかすぎると、年取って垂れたところを想像して引いちゃうんで。
161 :
名無しさん@ピンキー:04/04/03 15:53 ID:d44UPZbo
微乳は美乳の信者はオレだけ?
精神は男で身体は女、ていうのを強調しようとすると
どうしても豊乳になる罠。
てかsageを推奨
>>157さん
乙です!!
遅レスですが必ずチェックしてますよ。
いやぁ、女同士の会話に参加してるみたいでじゅうぶんエロいです!!
それに157さんのお話は、女性の乳房が発達した理由だとかいろいろなことが
書かれていて、読んでるとタメになります。
あと、男の子が女の子に変身した物語ですから、ここは微乳よりやはり
“ゆさり”ですよねw
ぷちエロを気になさるも何も、ストーリーや毎回の話自体が非常に面白いので
これからもガンガンいってくださいな。
すみません。
スレ違いとは思いますが、みなさん詳しそうなのでおたずねします。
昔、雑誌を立ち読みしてて、そこに紹介されてた海外サイトのイラストを見て、ハアハアしたことがあります。
それは、強制的に肉体をシーメール美女に改造された男たちが、女性から性的拷問を受けるという倒錯的な世界をテーマにしたサイト内容でした。
でもその頃はまだパソコンを持ってなかったので、実際には見れなかったんです。サイト名も覚えてません。
誰かそこを知っている人いませんか?
165 :
名無しさん@ピンキー:04/04/03 23:57 ID:d2ctKBnj
167 :
:04/04/04 01:40 ID:dqztUv5T
168 :
164:04/04/04 09:12 ID:Mth4FY+i
みなさま、すみませんでした。
リアル系ってわけでもないので諦めます。
170 :
164:04/04/04 18:26 ID:Mth4FY+i
>>169さん
なるほど!それにかなり近いモノがあります。ていうかびっくり。
キーワードがわからなかったので今まで探しようもありませんでした。
ありがとうございます。ではあちらの住人になりますのでさようなら。
「非強制」だから、カメラとか月華みたいに単純に女性の快感を味わいたくて
自主的に女性化するネタのスレかと思いきや、そうでもないのね。
>>171 まあ、非強制≠自発的だからね。
自然現象や偶発的事故は、誰かが強制した訳じゃないからね。
わざわざ労力をかけて男を女に変えるような人物が登場しないおかげで、
エロに直行せずほのぼのラブをかけたりするのは、意味のあることだ。
強制する誰かがいる状況だと、エロに直行しやすいからねぇ。
質問!
昔から容姿は女っぽい主人公が、熱出したりして朝起きたら、女になってる。
母親に相談しても、むしろ喜んでて、幼馴染みの友達に相談したり、医者に行ったりしても原因はわからず。
そのうち疲れて寝ちゃって、そしたら幼馴染みが寝ている主人公を見てムラムラしてきて、
半強制で犯しちゃって・・・。でも最後はハッピーエンドで、みたいな、ライトタッチの短編小説を昔読んだんですが、どうしても見つかりません。
どなたか知りませんか?
>>173 SSスレでそんなことしちゃ駄目だよ。情報系スレでやろうね。
スレ違いすいませんでした。
前回の続きを投下したいのですが、前スレにおいてるので全文投下の方がいいんでしょうか?
177 :
:04/04/05 21:53 ID:5gFgs4sF
続きからでいいと思われ。
了解。では続きから投下させていただきます。
NGワードはKINO ◆Nq.KINOKeY
前スレ等過分が駄目だった方はスルーでおねがいします
翌日からは二人旅。苦くて好きじゃなかった薬草に頼る日々からの開放。
リトルは魔法国家サマルトリアの名に恥じない魔法剣士だった。
通常の魔法使いは殆どの武器を使うことが出来ない。
剣と魔法を両立させることそれだけ困難だということだ。
「レイ、大丈夫?」
「ああ。回復魔法が使えるってでかいよな。一人の時はずっと薬草に頼りきりだったし」
「そう。良かった。そう言って貰えると嬉しいよ」
横顔はどこか凛として、少年の様でもある。
(俺、無事にこいつと旅を続けられるんだろうか……だってよ、顔だって体だって悪くないんだぜ?)
ふわふわと風に踊る栗金の髪。
それかと思えば、リザードフライを一刀両断にする姿。
(喧嘩だけはやめよう。絶対に死ぬ。勝てねぇ)
「何ぶつぶついってるのさ?早めにムーンペタ行くんでしょう?」
胸から下げられたのは鎖に絡めた銀の鍵。
まるでリトルを守護するように、きらきらと輝く。
宿屋の扉を叩いて、相部屋をとって荷物を降ろして鎧を脱ぐ。
「一日お疲れ様。明日も無事に生きてられると良いね」
リトルの言葉はこの先の未来を暗示するものだった。
明日、生きていられる保証はないのだ。
「なぁ、お前のこと聞いてもいいか?」
「今更知らないことも無いでしょ?昔から顔あわせてるんだから」
「いや、だってお前が女だったなんて知らなかった」
「聞かれなかったしね」
鉄の槍を拭きながら、リトルはくすくすと笑う。
薄い唇にはほんのりとした色を乗せてやりたいと思わせる魔法がある。
「なぁ、ムーンブルクの奴を見つけたら一度サマルトリア行こうぜ。リトルの親父さんにちょっと話あるし」
話したいことは、山のようにあったはず。
それでも、いざ時間が出来てしまえば何も話せなくなるのだ。
「明日は……遠くに行かなきゃいけないんだから……」
余程疲れたのか、瞼は半分閉じかけて。
「早めに寝ようよ。僕も……そうする……」
ムーンブルクの第一王位継承者は、ハーゴン軍の奇襲を受けて現在行方不明。
小さな手がかりは王宮から逃げ延びた兵士が言っていたことだけ。
「アスリアさまは……姿を人外のものに変えられています。西の沼地に……真実を写すラーの鏡が……」
兵士はそこで息絶えた。
その亡骸の手を組ませ、血で汚れた顔をリトルは自分のローブを裂いて拭き取った。
神官としての学位を持つ立場として、そうせずにはいられなかったのだ。
「明日、僕たちがこうならない保障はないよね……こんなことが起きないように、がんばらなくちゃ。
まだ、死ぬわけには行かない……レムを残してなんて死ねないよ。まだ、あの子は小さいんだから」
サマルトリア王妃は王女出産後に逝去している。
まだ幼い妹を残して死ぬことは出来ないとリトルは呟くのだ。
表の心は国のため。本当の心は、君のために。
古の勇者ロトも恐らく同じ思いだったのだろう。
誰だって、自分の命を賭けてまで見知らない誰かのために戦うなんてことはできない。
大義名分を掲げても、本当の心は大事な人の傍に残して旅立つのだから。
繰り返される「もしも」は、そうならないからこそ、考えてしまうこと。
古より人の心は、何一つ変わらないのだから。
早朝にムーンペタを出発し、兵士の残した地図にそって目的地に向かい南下する。
マンドリルやリザードフライの群れはリトルの魔法が援護する形になり、大分戦闘も楽になってきていた。
「しかし、ハエの群れに猿の群れ……たまんねぇよな」
「そうだね。こうも続くとさすがに辛いや」
岩場の二人して凭れて、空を仰ぐ。
痺れた腕を伸ばして、前を見つめるのはレイ。
その腕の傷に治癒魔法をかけながら風に髪をそよがせるのはリトル。
大人びた子供が二人。
「なぁ、死ぬ間際って何を思うんだろうな」
「何だろうね。色々言われてるけど……結局その瞬間になってみなければ分からないんだろうね」
くたくたになった身体を投げ出して、いっそこの過酷な現実から逃げ出してしまいたい。
これが夢ならば……仮想を立てても現実の前では塵になってしまう。
「レイ」
頬に走る傷に触れる指先。
「どんなことがあっても、君は生き残って。直系のロトの血を持つのは、君だけだから」
サマルトリアも、ムーンブルクもロトの末裔ではあるが直系には当たらない。
ローレシアだけが純血のロトの子孫なのだ。
「何……言ってんだよ」
「死ぬ瞬間、何を考えるって言ったからだよ。ボクは……多分君が生き残る方法を考えて、自分の選択肢が
正しかったことを信じる。そして……良かったって思う」
「……………………」
「この先、誰も傷つかないことなんて無いんだ。戦うって、そういうことだから」
たった二つしか違わないはずなのに、その翠の瞳はずっと先のことを見つめていた。
当たり前に与えられるはずだった未来。
その未来は、今は確約されたものではないのだから。
自分よりもずっと重い覚悟を背負って旅立った彼女。
銀の鍵は運の良さだけでは手にすることなんて出来ないのだから。
魔力を帯びたものを手にするには、それ相応の術師としての力が求められる。
鍵が、彼女を所有者として認めたからこそここにあるのだ。
「立派な王様になれるよ。お前なら」
「なれることなら、なりたいよ。でも……」
ため息は風に溶けて。
「ボクは、王様にはなれないんだ」
「………………………」
「神官になろうと思う。この旅が終わったら」
その後に「無事に生きて、気が変わらなかったら」と付け加えて笑った。
王位は妹が継ぎ、娘婿が時期サマルトリアの国王となる。
正当な継承者であっても、その立場を捨てなければならないのだ。
「でもね、結構楽しいよ。城からずっと出たかったからね」
籠の中の鳥の、束の間の休息。
鳥はただ綺麗なだけでは価値が無い。
その声、色、羽根の形。
同じように、ただ王位継承者だからとは言えない立場。
「もし、君も妹も互いを思う気持ちがるのならば」
目線は自分よりも、遥か彼方。
「サマルトリアの独立を保ったままであるならば、一緒になるのも悪くは無いと思うよ。ただ、泣かせたら承知しないけど」
「俺は、ガキには興味ないんだよ」
のろのろろと体を起こして進み行く。真実を映す鏡を手にしないことにはどうにもならないのだ。
この旅は、自分たちに何を与え、何を奪うのだろう。
今出来ることはそう―――――――前に進むことだけなのだから。
ムーンブルクの東、以前はルビスを祭る祭壇があった場所。
そこに広がる沼地の中にどうやら件のものはあるらしい。
絡まる腐水を払いながら、必死に探し回る。
「……これ……かな……?」
出てきたのは銀細工で縁取られた、流麗な一枚の鏡。
鏡面は汚れていて何も映せないが、裏にはしっかりとムーンブルクの刻印とロトの紋章が刻まれていた。
草原に座って、該当でその表面を丹念に拭き取っていく。
次第に光を帯びて、鏡は本来の美しい姿にと戻った。
「どれ……ってただの鏡だな」
「そう?」
レイの声につられて、リトルも鏡を覗きこむ。
「……え……?どういうことだ?」
「何……これ…………」
確かに二人の姿を、ラーの鏡は写し取った。
健康的な少年と、そしてその隣に並ぶのは―――――端正な顔立ちの少年だった。
王子として育てられてた着たものの、リトルの体は『女』であって『男』ではない。
それでも、真実を映すというラーの鏡は彼女を彼として映し出したのだ。
「兎も角、面倒なことは後で考える。ムーンペタ戻ろうぜ」
「そうだね。何だか頭痛くなってきたよ」
こめかみの辺りを指で押さえて、リトルは二度ばかり頭を振った。
まだ、騒動はほんの始まりに過ぎないということにまだ誰も気付かずに。
ムーンペタに戻ったものの、アスリアの行方は知れないままだった。
手がかりはこのラーの鏡だけ。
「どうしようか」
「まぁ、原始的だけど……」
レイは鏡を取り出して、そちらこちらを映し出す。
「数撃ちゃ、当たるだろ?」
考えすぎてしまうリトルと、己の直感を信じるレイ。
相反するから、おそらく一緒に居られるのだろうとリトルは考えた。
「!!!」
鏡面が光り、一匹の白い犬を映し出す。
その姿はゆっくりと一人の青年の姿を映し出していく。
「うわっ!?」
ばきん!と一筋の罅が走り、鏡は風化するように崩れていった。
「ようやく元に戻れたぜ。世話、掛けたな」
すらりとした長身の青年。纏ったローブにはムーンブルクの紋章。
「私の名前はアスリア。ムーンブルク第一皇女だった。数年前まではな」
濃紫の髪と、石榴の瞳。自信有り気な口元と、知性的な佇まい。
「待て。皇女ってお前……オカマか?」
「馬鹿言え、お前脳みそまで筋肉か?」
アスリアは横目でレイを一瞥して、そっとリトルの肩を抱いた。
「ま、立ち話もどうにもならねぇ。ちょっと移動しようぜ」
夜の帳も下り始め、酒場にも明かりがつき始める。
酒でも引っ掛けなければ聞けないだろう話に、二人はアスリアの後についていった。
「まずは、この始まりから話さなきゃなんねぇな」
口元の泡を拳で拭って、アスリアは天を仰ぐ。
「始まりは……ま、ハーゴン軍の侵攻からだな」
さかのぼること十六年前。大神官と名乗るハーゴンは、眠っていた魔物を率いて地上への侵攻を始めた。
勇者ロトの竜王討伐から百年後のことである。
手始めに精霊ルビスを封印し、各所に散らばるロトの残留思念を消し去るためにハーゴンは屈力していた。
始めにそれに気付いたのは、魔法国家ムーンブルクの先代。つまりはアスリアの父親に当たる。
当時四歳だったアスリアに王は、魔法文明を駆使して一つの呪いをかけた。
王女として育てられてきたアスリアを男性化させ、王子として育て上げる。
同じようにムーンブルクと連盟を組んでいたサマルトリアでも同様のことが行われた。
まだ、一歳に満たないリトルを女性化させて、それでも敢えて王子として育て上げると。
当時、ローレシアと他二国は一触即発の状態にあった。
武力では圧倒的なローレシアに対して、サマルトリアとムーンブルクは王位継承者同士で婚姻を結ぶことで牽制しようとしたのだ。
ハーゴン軍侵攻のごたごたに乗じて、アスリアはあたかも初めから王子であったかのように伝えられる。
王位継承者が三人とも男であれば、おいそれとローレシア王も動くことはでき無いからだ。
「親父……どこまでアホなんだよ……」
「そのアホの血をしっかり引いてんのは、お前だ。お前」
二杯目に口をつけて、アスリアはリトルの方をみる。
「ま、そういうこった。仲良くしようぜ。リトル」
「待て、だったらお前が男になったのは納得いくけど、リトルが女になったのは何なんだよ。元々男だったんだから
そのままでも良かったはずだろ」
「そりゃ、俺とリトルは許婚ですから」
「え!?僕、そんなこと聞いてないよ!!」
「お前が二十歳になるまで言わないってことだったからな。ま、今となっちゃ……ムーンブルク自体が存在してないようなモンだけど」
ハーゴン軍の奇襲により、ムーンブルクは壊滅させられた。
アスリアを逃がすために犬の姿に変え、王は最後の力でラーの鏡を沼地へと転送させたのだ。
「支配欲の強さってのは、どうにもできねぇもんだ。俺も腹括って王子として生きることを選んだ」
くしゃくしゃとアスリアはリトルの頭を撫でる。
「親同士の密約で、辛い思いさせて御免な」
「……………………」
今まで、誰にもかけてもらえた無かった言葉。
押さえつけてきた気持ち。
「ハーゴン、さっさと倒して……いい家庭を築こうな」
「こら待てオカマ。話が飛躍してるぞ」
「だから許婚だって言ってんだろ。こいつには妹も居るし、ムーンブルクに娶っても問題はねぇじゃないか」
にやりと赤い瞳が笑う。
「あ?もしかしてお前も狙ってたか?このマセガキ」
「うるせぇオカマ!!」
「俺を侮辱すんのはリトルにも同じ言葉はいてることになるって分かってんのか?お前」
怪訝そうな顔で、リトルは二人を見る。
「どうでも良いけど、君たちと旅すんの……何か嫌になってきた」
右手をレイ、左手をアスリアがぎゅっと掴む。
「ま、どっちにしてもハーゴン倒さなきゃすすまねぇ。仲良くやろうぜ」
紆余曲折を得て、ようやく揃ったロトの子孫たち。
三者三様に、始祖といわれたロトも恐らく苦笑しているだろう。
ベッドに腰を降ろして、疲れきった腕を揉み解す。
「リトル、ちょっと良いか?」
「どうぞ」
風呂上りの濡れた髪をタオルで拭きながら、アスリアはリトルの隣に腰掛ける。
「さっきは御免な。ガキからかうのって面白くてさ……俺も、ずっと男して生きてきたから今更女に戻れとか
言われてもぴんとこなくて……リトルと俺は、同じだし。リトルさえ良ければ、俺は一緒に居たいと思う」
「……………………………」
「今すぐってわけでなくてもいいんだ。一緒にムーンブルクを復興してもらいたい。俺は……そう思ってる」
自分よりも、三つ上の青年は少し照れくさそうに笑った。
数々の呪文を駆使する大魔道師も、一日の終わりには一人の男に戻るのだ。
「あのね、アスリア……教えて欲しいんだ」
「何?」
「僕たち、一体何なんだろうね。男でも女でもない……」
すい、と手が伸びて頬に掛かる。
レイの無骨な手とは違う、細く白い指先。
右手の中指を彩る紅玉。その玉の中にはムーンブルクの紋章が浮かんでいた。
「俺は俺。リトルはリトルだ。それじゃ駄目か?」
ゆらゆらと揺れる気持ちと絡んだ不安の糸。
ぷつり。と断ち切ってアスリアは満開の笑顔を浮かべた。
「リトル」
そっと唇が額に触れて、離れる。
「ア、アスリアっ!?」
指先をリトルの唇に当てて、アスリアは小さく笑う。
「しっ。隣の部屋で筋肉馬鹿が寝てるからさ」
ちゅ…と鼻筋に、頬にゆっくりと唇が下がる。
そろそろと手が下げられて、細い背中を抱きしめるように唇が重なっていく。
初めは、触れるだけ。そのまま次第に深く。
「……ぅ……ふ……」
絡まってくる舌先と、抜けていく力。
手を回すことも出来ずに、甘く唇噛まれては何度も何度も繰り替えて重なる。
「……っは……」
ようやく唇が離れて、呼吸できることで開放されたことを身体が気付く。
「女も悪くない?」
「……そんなこと、ないよ。でも……」
ぐい、と唇を拭う指先。
「僕は男だと思いたい。自分を。アスリア、君も王女だよ」
「本来はな……そう、戻れたらどれだけ楽か。俺に術をかけた本人は死んじまったしな」
解術を出来るのは術者のみ。その術者であるムーンブルク王はこの世にはもう居ない。
「面倒なことばっかりだね。お互い」
「でもさ、真面目な話……お前に術かけたのもうちの親父だと思うんだけど。サマルトリアって元々女血統だろ?
だから、ハーゴンに対抗するためにお前を女に変えたんだと思うんだ。でも、敢えて男して育てた。
どっかのアホ親父のとこのに攫われないために」
くるくると指を回すと、その先に小さな光りが生まれる。
そのまま小さなハートを描いて、アスリアはその光りを花でも渡すかのようにリトルに。
「どう思う?」
「可愛い……綺麗だと思う」
「重症だ。男だったら普通は、凄いとかだろ?十七年も女やってんだ。そうそう戻れるとは思えねぇ」
そういわれて、リトルはキッとアスリアを睨んだ。
「僕は、サマルトリアの第一王子。そんなにうちと戦争したい?」
「私も、ムーンブルク公国第一皇女、アスリアーナ。一人の人間として、サマルトリア第一王子に婚姻を
申し込もうと思います。どうか、我がムーンブルクを御救い下さいませ」
跪き、その小さな手に接吻する姿は王子そのもので。
紳士的に接せられれば、懐かしい王宮での生活を思い出してしまう。
「アスリア……」
指を組んで、そのまま少し力を込めてベッドへと押し倒す。
「こんな隙だらけの男もそうそう居ないぞ?」
「止めろっ!!」
「んじゃあ、男だって証明してみろよ。俺が触ってもどうにも成らなかったら認めてやるから」
ローブの上から、やんわりと胸を揉まれて顔を逸らす。
少し物足りない大きさかもしれないが、これからまだ成長すればいい逸材にはなるだろう。
王宮で育てられた花は、ただ綺麗なだけじゃない。
「男なら、耐えてみせろよ?王子様」
上着を剥ぎ取ると、外気に晒された肌が震える。
掌に収まってしまう乳房にちゅ…と唇を当てると、ぴくんと肩が揺れた。
「ん?これだけでも感じる?」
「……くすぐったい……っ…」
そんな言葉はお構い無しに舌先でちゅぷ、と舐めあげて軽く噛む。
唇で挟みながら、吸い上げて口中で嬲るようにそれを弄ぶ。
左右を交互に責め上げる唇と舌先。
(やだ……絶対に違う……っ……)
ぎゅっと唇を噛んで、湧き上がる感覚を押し殺す。
初めて他人から受ける愛撫に、体は素直に反応してしまう。
やんわりと揉み抱きながら、解き取りその先端をきゅん、と摘み上げる。
「……ぁ……ッ……」
ぎゅっとシーツを握る手。頭を振って、必死に振り切ろうとしても。
「!!」
舌先はぬる…と滑りながら、小さな窪みを舐めあげた。
するりと手が腰を撫で上げるだけで、肢体が震える。
ズボンを取り払って、下着越しに指をそっと這わせていく。
焦らすように、卑劣を上下に撫で上げて時折その上をくりゅ…と捏ねるように押し上げる。
「…ぁ……ァ!!…」
もどかしげに揺れる細腰。
わざとじらしながら、ぐ…と親指を布越しに内側に僅かばかり沈めて。
「んんっ!!」
びくん、と腰が跳ねる。押さえつけて、尚も執拗に指先は擦るように動く。
「……邪魔なもの、取っちゃおうか……」
布地を剥ぎ取ると、秘所と離れまいとしてぬるつく体液が糸を引いた。
目を細めて、膝を開かせる。
「まだ、我慢できる?リトル……」
ちゅく…と指先を少しだけ侵入させて、半透明のそれを絡める。
「あ!!やだっ!!」
きゅっと充血した突起を摘み上げると、白い喉元が仰け反って。
その反応を楽しむように、今度は舌先がそこを攻めあげていく。
内側に入り込むその熱さ。
この体が女のそれなのだと、強く認識させられる。
例え、どれだけ自分は男なのだと言い張っても。
構成する柔肉は女であると雄弁に語るのだ。
じゅる、ぢゅく……触れられる度にこぼれる体液。
「あッ!!あ、あ…ァ……っ…!!」
指と唇は、止まることなくまるで違う生き物のように動き回る。
「女の子ってのはさ……気持ち良いとこうなるんだ」
指先を開くと、つ…と糸が二本を繋いだ。
「そんな……こと……ッ……」
小さな頭を押さえつけて、かみ合うように唇を重ねて。
離れ際に伝った銀糸を、指で断ち切る。
「……続き、しよっか……」
足先に引っ掛かったままのブーツを脱がせて、アスリアは口だけで笑った。
「やだ……やだっ!」
腰を抱き寄せた時だった。
「リトルから離れろ!!このオカマがァァァァァ!!!」
勢い良く扉を蹴り上げ、レイはそのままアスリアにとび蹴りを仕掛ける。
ひらり、とかわしてアスリアは逆にレイを魔法で壁にたたきつけた。
「油断もすきもねぇ!!」
「この夜中に来るってのは……おんなじこと考えてだろ、こんのマセガキ童貞が」
「誰が童貞だ!!オカマ野郎!!!」
つかみ合いながらぎゃあぎゃあと喚く男二人。
「………どっちも、いい加減に……しろっ!!!!」
叫びと共にギラの閃光が室内で炸裂する。
「!!!!!!!!」
「どっちもどっちだ!!!馬鹿っ!!!」
襟首を掴んでばちん!と派手な音。
頬に紅葉の痕二つ。壮大な往復ビンタが事の終止符を打った。
「ハーゴン倒すまでは一緒に旅はする!!けど、終わったら僕は神官になる!!!」
二人を外にたたき出すと、それきり扉は開かなかった。
どうしようもないくらい晴れた朝。
顔を腫らした男二人と、不機嫌極まりないといった表情の女一人。
この奇妙なパーティはムーンペタを出発することになる。
黒髪短髪の少年。長く伸びた髪を一つに結わえた青年。
笑えば可憐であろう少女。
名乗らなければこの三人があのロトの子孫だとは誰も思わないだろう。
「俺は別に三人でもかまわねぇけど、童貞君にゃきついだろうし」
「お前、脳みそまでピンク色かよ」
「ガキ。邪魔しやがって」
言い合う二人を槍の柄でがつん、と叩く。
「二人とも、目、瞑って」
「?」
「いいから、瞑って」
気迫に言われるままに、目を閉じる。
「!!」
口に詰め込まれたのは、シュークリーム。
「馬鹿なことで争ったって、何も生まれないよ。口喧嘩でこれ作れる?」
外壁の焼き具合と、中に入れるクリームの量。
シュークリームは見た目以上に難しい菓子の一つだ。
「まだ、契約できてないんだけど……唱えるだけで魂を消し去る呪文があるんだ」
伝説の高魔法の一つ「ザラキ」は一瞬で相手の生命の日を消し去る力を持つ。
それを習得できるのは、リトル一人だけ。
「今度なんかやったら二人まとめて始末するから」
困り者の子孫が三人。
遥か天空の古の勇者も苦笑するような者ばかり。
旅はまだ始まったばかりなのだから。
以上です。投下先をあちこちとさがしたのですが、こちらをお借りしました。
オリジナルの神が多い中、二次なので、あれかもしれませんが。
長文でもありませんが、157さんが投下するまでの間食にでも召し上がってもらえれば幸いです〆(゚▽゚*)
>KINOさん
GJ!!です
ドラクエではこのシリーズがいちばん好きなので楽しめました。
スレタイとは微妙なとこですが、元ネタにもしっかり沿っていて
面白い設定ですよね。
何となくまるくおさまってしまう(?)エンディングがVerry Goodでした!!
>>196 むしろDQの二次は激しく待ってました。乙!
女の子として責められてるリトルに萌え!
言い争うアスリアとレイにギラが炸裂するシーンを想像したらワロタ
200 :
157:04/04/06 01:17 ID:D/icGvqO
>196
ぐじょぶ!
ぐっじょ〜〜ぶっ!
可愛いなぁリトル。ぜひ連載して欲しいとこですが。
…シュークリームはリトルが作ったんでしょーか…。
怒るとコワい、お菓子も作れるちんまい最強魔法少女(…それちがう)
レイとアスリア……すっかりリーダーシップとられてますが。
ごちそうさまでした!
>201
あ。
せっかくKINOさんが投下されたので余韻に浸って下さい。
次回は
「けーちゃん、下駄箱で」
「けーちゃん、視姦される」
「けーちゃん、下着を買う」
の3本でぇ〜す。
204 :
157:04/04/07 02:41 ID:lXqkeXZY
今回も「ぷちえち」…か、「微えろ」。
「そんなものはエロじゃない」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>156
なんとなく打ちひしがれたような顔で、由香は軽い口調の美智子を見た。『うらやましくな
んかないもん!』という、健気(けなげ)な意志がその瞳に宿っている。
美智子は“きょとん”とした圭介の胸と“むうっ”と唇を突き出した由香の胸を交互に見て、
「まあ、がんばれ」
と、由香の肩をぽんと叩いた。
カップサイズで最も小さいのは、AAAの5.0センチだ。トップとアンダーの差が2.5
センチ大きくなるに従い、カップもランクアップしてゆく。7.5センチまではAAカップ、
10センチまでがAカップ……Fカップは22.5センチまでで、Gともなれば25センチほ
どになる。
もちろん、カップの容量だけで乳房の大きさ…バストサイズを表す事が出来ない事も確かだ。
圭介のバストサイズは、アンダーが65.5センチでFカップなので、F65(65F)な
どと表記される。実は、カップの容量だけを考えれば、そのF65はE70と同じカップ容量
とされているのが現実だった。同様に、E70はD75と。D75はC80と、同じカップサ
イズとされている。そして、その要領でサイズをシフトしていくと、F65のカップは、AA
95のカップ容量と同じという事になってしまうのである。
では、それで本当に見た目のバストサイズが同じかというと、決してそんな事は無い。
見た目のヴォリュームは、全て相対的なものだからだ。乳房そのものが容量が大きくても、
アンダーバストが大きければ乳房そのものの豊かさには結び付かない。
圭介の乳房に対して美智子や由香が絶句したのは、圭介が今、中学生程度の体格しかないた
めなのだ。
グラビアアイドルなどには、プロフィール欄に身長163センチでバストは93センチのG
カップ…などと、平気で明記しているものがあるけれど、その数値が本当に正しいかどうかは
甚(はなは)だ疑問だ。Gカップともなれば、トップとアンダーの差は25センチにもなる。
>205
となれば、アンダーサイズは68センチとなるはずだが、身長160センチ以上の成人日本
女性で胸骨の外周が68センチ以下だと、まともな心肺機能さえ望めない虚弱な体…となって
しまうだろう。もちろん、では身長が160センチ以下ならば納得出来るのか?と問われれば
それも不信感は拭い得ない。その場合、胸以外は中学生レベルの体型だということになり、全
身の脂肪分布に著しい偏りがある事を自ら示す結果となってしまうからだ。
大抵の場合、プロダクションの意向でタレントのプロフィールなどはどうとでも改竄される。
要は、『売れれは良い』のであって、数値が正しいかどうかは、全く別の問題なのだ。タレン
トは『商品』なのであって、売れるようにデコレーションしたりディスプレイするのは、資本
主義としては正しいカタチなのだから。
また、時には屈み込んで乳を垂らし、それでトップバストを測ってカップサイズを底上げす
る場合もあるというから、サイズなど本当に自由に申請してしまえるのである。
同様に、ウエストサイズが58センチから60センチであるのも、その数値を好む男性(客)
が多いからそうなのであって、実際にそのアイドルのウエストが58センチかというと、決し
てそうだとは限らないのが今の常識となっている。プロダクション申告のその数値を鵜呑みに
して、グラビアアイドルのプロポーションこそが理想であり、数値を超えた女性は全て「太っ
ている」と思うのは、よほど女性に慣れていないか、幻想を抱いているか、現実を見ようとし
ないかのどれかだ。内臓が本当に入っていれば、健康的に育った18歳以上で160センチ以
上ある女性のウエストが、60センチを下回る事などほとんど無いのである。
>206
そういう人間は、平気で身近な女性を傷つける。自分の狭窄(きょうさく)な視野でしか認
識していない不完全な知識を振りかざし、それ以外を認めようとしないからだ。だが、マスメ
ディアの情報を鵜呑みにして視野を自ら狭めて行くそんな男性が増えているのも、また確かな
のである。
そういうモロモロの意味を踏まえた上で圭介の体を見た場合、明らかに中学生レベルの体型
(しかもほっそりとしたコンパクトサイズ)にFカップというのは、驚異を通り越して既に異
常だと言えた。
圭介はじいい…と自分の乳房を凝視する由香の視線から隠すように、Tシャツをそそくさと
下ろした。体育前のトイレでは、あんなに恥ずかしがっていたのに、由香の、この変わりよう
はどうだろう。明るいところで長時間露出した事で、彼女の好奇心を無駄に刺激してしまった
のだろうか?
「けーちゃんは、体が細いからよけいに胸がでっかく見えるんだよね。お腹や脚にお肉ついて
ないのに、胸ばっかりお肉ついてるのなんて反則だよ。代わって欲しいくらい」
「反則って……オマエな…これ、すげー重いんだぞ?代わりたいのはオレの方だ」
Fカップともなれば、乳房自体の厚みは優に12センチを超える。重さに至っては筋肉より
も比重が軽いとは言っても、片方の乳房だけで800グラムにもなるのだから、両乳房で1.5
キロを軽く越えてしまうわけだ。どのくらいの重さなのか実際に知りたければ、500ミリリッ
トル入りのペットボトル3本に並々と水を入れて、それをまとめて首からかけてみればいい。
1時間もそうしていれば、いかに豊か過ぎる乳房というものが女性の肉体に負担を強いている
か、嫌でもわかるだろう。
実際、圭介の肩は、まだ昼だというのにカチコチに凝っていた。首を回すだけでごりごりと
鳴る気がする。
「やっぱりいい…」
「うわっ、すげーイヤそうな顔…」
>207
苦笑ながら、圭介はブラウスのボタンをはめて、袖を軽く袖を捲(ま)くる。制服用のブラ
ウスは胸がとても入りきらないので母のものを借りてきたのだけれど、身長や胴回りが違うた
め、胸以外はちょっと(?)余るのだ。
「あ、チャイム鳴っちゃう!」
時計を見た由香が、慌てて立ち上がってメジャーを戸棚に返しに行った。借りたものをちゃ
んと元あった場所に返すところは、由香の美徳だと圭介は思う。彼女の母は躾(しつけ)には
厳しくて、だからこそ圭介も由香の『女の子チェック』が決して的外れなものではない…と思
えるのだ。
「わかってると思うけど、明日は身体測定だから、もうちょっと正確に測ってもらえるんじゃ
ないかな?」
この学校の身体検査は健康診断も兼ねていて、主に街の総合病院が担当している。美智子は
書類を揃え、やってくる医師や看護士のサポートをするだけだ。それでも雑用が多いので、忙
しい事に変わりは無い。
「実は今日、帰りにブラを買いに行くんです」
何がそんなに嬉しいのか、由香はにこにこと言いながら圭介の腕を引き、立ち上がらせる。
「ちょ、ちょっと待てって」と彼が言ってもおかまいなしだった。
「…そうか、じゃあ丁度良かったな。ちゃんと可愛いの買ってこい」
この分では、圭介はまだ女性用下着売り場に行った事など無いだろう。そんな彼が、女の花
園の代名詞のような下着売り場で、いったいどんな反応を示すのか、美智子はひどく好奇心を
刺激される。果たして、顔を赤らめ“あたふた”とするか、それとも、色とりどりの綺麗で可
愛い下着に目を輝かせるか…。
「すっごく可愛いの買ってきます!」
「……なんかやだ」
「うわっ、すごくイヤそうな顔…」
由香にからかわれながら保健室を出て行く圭介を、美智子はひどく優しい眼差しで見つめて
いた。
■■【42】■■
ホームルームが終わり、担任のはるかちゃんに部活を休ませてくれるように言うと、圭介と
由香はさっそく昇降口へと急いだ。駅前の商店街やスーパーで買うのは、圭介がさすがにどう
にも恥かしいと思ったため、2つ駅を越えたところにある大型店舗へ行く事にしたからだ。
>208
由香が所属しているテニス部は県下一の弱小部で、インターハイなど夢のまた夢、唯一出場
出来る先輩も去年卒業してしまって、今では『やる気』をどこかの青空フリーマケットでさっ
ぱりきっぱり売り捌(さば)いてしまったかのように覇気が無い。由香のような運動神経『切
れてる』子でも所属出来ている時点で、並みの運動部とは一味違う。いきなり「休みます」で
OKが出てしまうのが、その証拠だった。
「けーちゃん、はやくっ」
「お、ちょ、待てよ、クツが…うわっ」
下駄箱からクツを取り出し、履きかけたところでつんのめり、危うく転びそうに
「おっと」
「あ、ごめん」
通りすがりの女子生徒に、後から抱えられるようにして引き起こされる。
誰だろう。そう思う間もなく、正体はすぐに知れた。
たぷたぷたぷたぷたぷたぷ……
「あのー…やめてもらえます?」
無言で後から両手で胸を弄ばれながら、圭介は極めて冷静に言った。中指と薬指を使い、巧
みに「たぷたぷ」と乳房を揺するその指使いは、ものすごく怪しい。
「ふむ。E…いやF…か。育ったな」
たぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷ……
「なんでわかるんですかっ!?……じゃなくて、杉林部長…」
背後に立つのは、三つ編みで黒縁眼鏡の立派なヘンタイさんであるところの美術部部長、杉
林素子(もとこ)だった。
ここは3年生の昇降口では無いはずなのだが、なぜか、いた。ひょっとして、待ち伏せてい
たのだろうか?
>209
「もう私は部長ではないが」
たぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷ……
「引き継ぎは…んっ…あ…明日でしょう?」
「ふむ。そうだった」
たぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷたぷ……
「いいかっらっ…はっ…て、手を離して…下さいよっ」
「ん?なぜだ?」
「ひっ人の胸を、ここ…んな、ところで揉んでるってのは、イケナ…イことなんですよ」
帰るために昇降口に来た者、たまたま通りがかった者……彼等は、いきなり公衆の面前で繰
り広げられた破廉恥な行為を、“なまあたたかい目”で見守っている。その目には例外なく
“私じゃなくて良かった”とか“ああ、杉林先輩かぁ。それじゃあ仕方ないよな”とか、わか
りたくなくてもわかってしまう非常に薄情な感情が浮かんでいて、圭介は人の世の世知辛(せ
ちがら)さをまざまざと思い知った。
あの由香でさえ、“あららら”という顔をして見ているだけだ。
『急いでるんじゃなかったのかよぉっ!』
…と瞳に力を込めて見つめても、「ごめーん」と顔の前で手の平を立てられるだけだ。
「毎日圭ちゃんの胸を大きくするために私は努力すると約束したではないか」
たぷっ…たぷっ…たぷっ…たぷっ…
「いや、これ以上でっかくなってもこま…困るし。…っていうか、約束してないし」
むにむにむにむにむにむに…
「約束はしたぞ?私が私にした果たすべき盟約だ」
もにゅっ…もにゅっ…もにゅっ…
>210
「め…めい…って…ひっんっ…」
むにむにたぷたぷと胸を揉みしだく動きも止めず、部長はわざと圭介の耳元で囁くように言
う。ただでさえひどく理知的な声は、同性なはずの圭介の背中をゾクゾクを震わせる。この部
長が女でありながら「女殺し」とか「メイデン・キラー(処女殺し)」とか言われている片鱗
を、味わいたくないのに味わってしまった圭介であった。
ブラをしていない乳房は、部長の指の動きをダイレクトに感じてしまう。胸が“きゅうう”
と切なくなり、その中心に“ぽっ”と火が点ったような気がした。
「あひゅ…ふっ…」
「ん?感度は良いようだな」
「い…いいかげんに…」
「ほれ」
くにゅっ
「んひゃんっ」
硬く尖ってしまった乳首を、部長の中指が“くりっ”と嬲(なぶ)ったのだ。
部長の眉が、驚いたように跳ね上がった。
「…可愛い声じゃないか」
「お、怒りますよ?怒るとひどいですよ?めちゃくちゃひどいですよ?!」
「どうひどいのかね?」
くにゅっ…ぷるっ…
「んぅあんっ」
「どうひどいのかね?」
「…せ…先輩のこと、めっめちゃくちゃキライになりますっ!!」
その瞬間、“ぱっ”と両手を離して部長は圭介から離れた。
「ふむ。君に嫌われるのは私の本意ではないしな」
「…じゃ…じゃあ、さいしょから…し…しないで下さい…よぉ…」
くたくたくた…と下駄箱の前の簀(すのこ)の上にお尻をぺたりとつけて座り込んでしまい
ながら、圭介はにくたらしくも美しいヘンタイ部長を睨みつけた。
>211
うっすらと瞳に涙の膜がかかり、熱く潤んでいるように見える。ピンクに染まったほっぺた
が、彼の可愛らしさをいっそう引き立てていた。
そんな圭介を、部長はニヤリと見下ろして言った。
「本当にイヤだったかね?」
「あたりまえですっ!」
「本当の本当にイヤだったのかね?」
「あたりまえだって言ってるでしょ!?」
すると、部長は“すっ…”と圭介の耳元にその赤い唇を寄せ、
「本当に全然気持ち良くなかったのかね?」
「……ッ!!!……」
途端に、ぼっ!と首まで真っ赤になった圭介に、部長は「ふっ」と笑うと、
「今日は華道部に連れていこうと思ったのだが、また今度にしよう。急用なのだろう?」
「はい」
圭介ではなく、由香が答えた。
「どこへ?」
「けーちゃんの下着を買いに」
『下着』の部分だけ声を潜めて、由香が答える。
「そうか!圭ちゃんの下着か!それはブラかね?!それともパンツかね?!Fカップではなか
なかいいのが無いぞ?!」
大声で言われ、由香の努力が2秒で無駄になった。
圭介は恥かしさのあまり卒倒しそうになりながら、由香の手を引いて走って逃げた。
「む?なぜ逃げる!?あてはあるのかね?!通販はどうだ!?なんなら私の方で用意してもい
いが!?いや、むしろそうしよう!」
…後は一度も振り返らなかった。
■■【43】■■
町内に、ランジェリーショップのような独立したブティック形式の店舗が無いのは、やはり
不便だと由香は思う。
>212
独立店舗なら、店内で知人に出会ってもそれはランジェリーを買いに来た客であり、必要以
上に詮索される事も無いからだ。商店街やスーパーではそうもいかず、一般客の男性が何気に
視線を向けてきたりして、年頃の女としては落ち着かないこと甚だしい。それに、商店街では
顔を知られ過ぎて、店のおばちゃんにそれとなく根掘り葉掘り聞かれてしまうのは目に見えて
いる。
『ちょっとは大きくなったかい?』
『由香ちゃんももうそんな年頃なんだねぇ』
『もういい人は出来たかい?』
中学生の頃までは結構馬鹿正直に答えていたこの質問も、近所のおばさん達に無用な話のネ
タを与えるだけだと気付いてからは曖昧にお茶を濁すだけに留めるようになった。けれど、
『女になった』ばかりの圭介にとって、そういう詮索攻撃は、ただ胸を見られるよりずっと、
耐えがたい苦痛に違いない。
圭介の家まで学校から徒歩で15分…とは言っても、駅とは反対に位置していればわざわざ
一旦帰って…という考えには至らない。駅のトイレで、圭介は由香が一応持ってきたクリーム
ホワイトのサマーセーターに着替えた。母のブラウスは由香が軽く畳んで、皺にならないよう
にカバンの上に置くだけにする。
「どうせ洗うんだから、別にいーじゃん」
「そういうわけにはいかないの」
こういうところは、圭介にもまだ理解出来ない。どうせ洗濯してアイロンをかけるのだから、
その前の状態がどうあれ関係無いと思うのだ。
Tシャツ2枚重ねにセーターでは、ちょっと汗ばんでしまうので、Tシャツは1枚だけにす
る。少しスースーするけれど、思ったより気温が高いので大丈夫だろうと判断した。
「あ、もうすぐ電車来るかな?」
「急ぐぞ!」
「ちょっと待ってよぉ」
お金がちょっともったいないけれど、駅のコインロッカーにカバンとサブバッグを押し込ん
で、圭介と由香は切符を買い、駅のホームへと上がっていった。数年前にこの駅を高架化した
市長は、磔(はりつけ)獄門(ごくもん)市中引き回しの上おやつ抜きにすべきだと圭介は思
う。特に産業も観光地も無い単なるベッドタウンのこの町の駅を、わざわざ高架化する必要性
を感じないからだ。
>213
もっと他に整備すべき道路や設置すべき設備があるだろうに。
「そんなこと言って、けーちゃんは単に階段昇るのが嫌なだけでしょ?」
「うっさいなぁ」
「けーちゃんはね、運動不足なんだよ。そんなんじゃ、すぐ太るよ?」
「うっさいっ」
「階段イヤならエスカレーター使えばいいのに、ヘンなとこガンコなんだもん」
「うっさいって言ってるだろ?」
「いたいー。頭叩かないでよぅ。けーちゃん、女の子になってからますます乱暴になった」
「オマエがヘンな事言うからだ」
「あ、電車!」
ホームに電車が滑り込んで来る。ホームに上がると、駅前ビルの間から黄金色の夕日が見え
て、ものすごく綺麗だった。午後になって晴れ間が見えた時は、なんだか気分まで楽になった
気がした。このまま明日も晴れてくれると嬉しいのだけれど、そうもいかないだろう。
圭介は階段を上がりながら、無意識に左手で胸が揺れるのを押さえていた事に気付いて、慌
てて手を離した。Tシャツに乳首が擦れて痛かったから無意識にしてしまったのだけれど、自
然と持ち上げるような形になり、その大きさが余計に目立ってしまっていたのだ。
『部長のばか…』
まだ、胸の奥がじんじんとしている。胸が揺れるとTシャツで擦れて、体の奥に点った消え
ない火が、いつまでもいつまでも燻(くすぶ)っている気がした。
今日1日で何度、人に揉まれただろう。痛みはもうほとんど無いけれど、それとは別の疼き
が消えないのだ。硬く尖っていた乳首は、もうすっかりグミキャンディのような元のやわらか
さを取り戻している。けれど、触れればすぐにでも再び硬く立ち上がってしまいそうだった。
階段を駆け上がり、乱れた息を整えて、圭介と由香は電車に乗り込む。時間が時間なだけに、
圭介達と同じ学校帰りの学生や、会社帰りのサラリーマンなどで車内は混んでいた。しかも、
吊り革に掴まれないのにスペースは適当に空いている…という、最悪の混み方だった。
なんとか由香だけドア近くの鉄棒に掴まらせ、圭介はその由香の肩に手をかけるカタチで立っ
た。どうせ2駅間の、6分程度の間だけだ。
>214
そう思っていた。
「…んっ…」
声が漏れた。
おかしい。
電車が発車しただけだ。その振動が、体を震わせただけだ。
なのに。
なのにこの“痺れ”はなんだ?
その時、圭介はまだ気付いていなかった。電車の中にいる、ほとんど全ての男が圭介を見て
いた。ちらちらと、雑誌に目を落としながらも盗み見るサラリーマン。ひそひそと仲間内で囁
き合いながら、電車の中吊り広告を見る振りして見る学生達。あからさまに見ている者は少な
い。それでも、ほとんどの視線が圭介の体に集まっていた。
あきらかに空気がおかしければ、圭介も気付いたに違いない。けれど、この時の圭介は体を
駆け巡る甘い“痺れ”を押さえ込むのに一所懸命だった。
圭介は、なんだか無性に恥ずかしかった。列車の中で、素裸で立っているような気がする。
最初は由香も、ぶかぶかのトレーナーにしようと言ったのだ。けれど、それだと太って見え
るからなんとなくヤダ…と、圭介自身が言ったのでセーターにしたのだった。ところが、体に
ぴったりとフィットしたセーターは、電車の揺れや、ちょっとした圭介の仕草に呼応して揺れ
る乳房の動きを、如実に示してしまう。
ぞくぞくした。
背筋を這い上がる“疼き”に、ぴくりぴくりと体が震えた。
「けーちゃん…」
「…ん?」
由香は、自分の肩に掴まって電車の揺れに身を任せている圭介を見た。頬がほんのりと上気
して、ぷっくりとした可愛らしい唇をうっすらと開いている。とろん…とした瞳は、まるで夢
見るいばら姫のように潤んでさえいた。
『走ったから……だよね?』
そう、由香は自分を納得させる。
「けーちゃんってば」
「…ん…うん………うん?」
>215
「??…なんか、みんなけーちゃん見てるよ?」
由香の言葉に目をパチパチとさせて意識を覚醒させた圭介は、周囲をさりげなく見回した。
ささっと、あからさまに怪しく視線を下げるサラリーマンがいた。にやにやと笑っている学生
達がいた。
不意に、ぞっとした。
彼等に背中を向け、右手で何気ない風を装って胸を隠した。
「…けーちゃん?」
「気にするな。外…見てろよ」
「うん」
圭介の脳裏に、美智子の、あの話が急に脳裏に鮮やかに蘇る。自分の体が、異性に対して絶
えず「いつでもOKだよ」とサインを出し続けているのと同じ状態であるということ。そして
自分の体が、歩く『性欲促進機』みたいになっている事実を、不意に自覚した。
しかもそれは、全て健司のためなのだという。
健司との子供が欲しいから、圭介の体が反応して、変化したのだと。
『お前は健司が好きなんだ。好きで好きでたまらないから、女になった。お前の体が、健司と
の子供を欲しがってるんだ』
認めたくないけれど、認めなければいけない気がした。
男の自分が否定しても、女の自分が認めていた。
だからといって、今さら健司とセックスが出来るとは思えなかった。17年間男として、そ
して彼の親友として過ごした時間が、理性のブレーキとなっていた。
けれど。
『手っ取り早いのは、誰でもいいから男に抱かれて精液を体内に取り込むこと。まあ、つまり
中出しセックスしろってことだ』
男に戻るには、健司と物理的にも精神的にも遠く離れ、その上で他の女性に恋しなければな
らない。
それが出来ないのであれば、誰でもいいから男と寝て、中出ししてもらって、精液を膣内で
感じた時に強烈なストレス感知を期待するしかない。
『誰でもいいから……って……』
>216
周囲の男達の視線が自分の裸の体に絡み付いてくる気がして、思わず“ぶるるっ”と体を震
わせる。
そんな事、出来るはずが無い。
「けーちゃん?だいじょうぶ?」
心配そうな由香に笑いかけようとした時、ガタンッ…と電車が揺れ、圭介の足元がふらつい
た。ブラをしていない重たい胸が、ゆさっとセーターの中で揺れる。
「おほっ」
歓喜の声に、ばっと顔を上げると、すぐ前に立っていた中年のサラリーマン風の男が慌てて
視線を逸らした。逸らしていても、にやにやとしたいやらしい笑みが消えていなかった。
気持ち悪い。
恥かしい。
「オマエは異常だ」
「みっともない」
「そんなでかい乳をして、恥ずかしくないのか」
そう言われてる気がした。
かああ…と血が顔に上る。俯いて、胸を抱きかかえるようにして隠した。
けれど、それにしてもおかしい。世の中には、胸は小さい方がいいという男もいるはずだ。
なのに、胸が大きいというだけで、男達の性欲を喚起させる力が自分にあるなど、とても思え
なかった。自分は、胸以外にもそんなサインを周囲に出しているのだろうか?
その時だ。
「乳…でっけぇ…」
声が聞こえた。
はっとして顔を上げ、声のした方を見た。学生がこちらを見ていた。きょとんとしている。
圭介は思い切り睨みつけ、再び俯いた。
「揉んでみてぇなぁ」
また聞こえた。
>217
今度は違う方向からだ。顔を上げると、ぎょっとした表情でポロシャツを着た30代くらい
の男が圭介の乳房を見ていた。圭介が睨んでも、目を逸らさない。
「爆乳だな、あー…やりてぇ…」
まただ。
また聞こえた。
今度も違う方向からだった。
頭がおかしくなったのだろうか?
そう思った時、女になって初めて町へ出た時の事を思い出した。
そこで圭介は、高校生らしい2人組みの男に会い、声をかけられたのだった。
そのうちの一人が、圭介に歩み寄った時、
『ヤッたらどんな顔するかな』
そんな、情欲に汚れたどろどろとした感情が、心の中に流れ込んでいたように感じなかった
だろうか?
あの時は、女になって情緒不安定だったから、それで聞こえるはずも無い声が聞こえたのだ
と思っていた。今日まで一度も、何も聞こえた事は無かったから、すっかりそう思い込んでい
たのだ。
けれど。
「いいケツしてんなぁ…」
ぞくっ!とした。
緊張して、お尻が“きゅんっ”と上がる。
これは、なんだ?
この電車にいる男達の声が、いやらしい妄想の声が、直接聞こえるとでもいうのだろうか?
これも、『星人』の因子の発現だというのだろうか?
「まずは、このでかいおっぱいだな」
今度はすぐ側から聞こえた。しかも、斜め後だ。
身がすくんだ。
怖くて動けなかった。
初めて、男を「怖い」と思った。
「パイズリしてから、この締まったケツを抱いて、後からガンガンやってやりてぇな。可愛い
顔がひいひい言って啼くのが見てぇ」
いやらしい言葉が、全身を嘗めるように撫でてゆく。
>218
圭介は唾を飲み込み、体を震わせながらじっと窓の外を見つめた。流れ行く街並み。繁華街
へと続く線路。夕日はビルを染めて、ガラスが眩しくも美しいオレンジの光を反射している。
眼下には自動車とバイクと自転車と歩く人々。夕焼けの中の、ありふれた風景。
その中で。
犯されている。
『やめっ……あっ……』
びくり…と、腰が震えた。
声が、圭介を嘗める。
嬲るように纏わりつき、全身を這い回る。
「おっぱいちゅーちゅーさせてくんねーかな?」
「どこの学校だ?この電車で通ってんのかな?だったらオレは毎日乗っちゃうぞ」
「家を突き止めて、犯したら気持ちいいだろうな」
「きれいなマンコしてそうだよな」
「でかちち揉ませろー!」
「可愛い口だよな。フェラして欲しいぜ」
「あっちの子とレズらせてみてーな」
「正常位だろ?バックだろ?んで、騎乗位であのでかおっぱいが揺れまくるところ見てーよな」
「百合かな?百合みてーだな」
「素っ裸で四つん這いにさせたら、おっぱいが垂れていやらしいんだよなぁ」
男達の視線が、声が、どろどろとした思念が、圭介をあらゆる角度から、あらゆるポーズで、
あらゆる趣向で、嘗め、犯し、弄ぶ。
気持ち悪い。
吐きそうだ。
「…い、いたっ…」
不意に由香が声を上げる。
知らず、由香の肩をぎゅっと握っていたようだ。
>219
「ご、こめん…」
「……けーちゃん…だいじょうぶ?顔が真っ青だよ?」
「…ん、なんでも…」
ない…と、言えなかった。
男の欲望に晒されるということは、こういうことなのか。
想像してよりも、ずっとひどい。まさか男の思念が流れ込んでくるなんて、考えもしなかっ
たのだから仕方がない。
圭介は自分の考えがひどく甘いものだったことに、改めて戦慄していた。
次の駅で、さらに人が増えた。
目的の駅に着くまでのたった6分そこそこの乗車で、圭介は最低最悪の気分を味わった。
満車となった車内で、これ幸いとばかりに体を密着させてくる頭の禿げ上がったオヤジがい
た。頭の両側に申し訳程度に髪があるけれど、整髪料の匂いがものすごかった。育毛材入りの
トニックなのかもしれない。そのオヤジの息が、頭の上から「むふー…むふー…」と降り注い
で来た時、圭介はあまりの気色悪さに全身の毛が逆立つかと思った。
流れ込んでくる思念は、圭介のやわらかなお尻や、太腿や、背中に触れている喜びから、た
ちまちもっと卑猥で、もっと大胆なものへと変わった。接触しているからなのか、流れ込んで
来る思念が他の誰よりも強烈で、しかも離れたくても混んでいて離れられず、圭介は、まるで
拷問されている気分だった。
次の駅までの2分ちょっとの間で、3回も体位を変えて犯された。
その二つは、圭介も知らないものだったから脳裏に浮かぶ事も無かった。だから、まだ助かっ
た。けれど、後背位(バック)だけは鮮烈にイメージが流れ込んできた。
立ったままでお尻を掴まれ、指であそこを散々弄られた挙句に、いきなり根本までちんちん
を入れられた。背中を嘗めまわされ、後からおっぱいを両手で思いきり強く握られた。
もちろん、実際にされたわけではない。
全て、オヤジの頭の中での出来事だ。
自分の息子と同じくらいの歳の女子高生を、思うさま自由に犯し抜くのが、このオヤジの夢
らしい。
『この変態めっ!!!』
>220
吐き気がした。
全身に鳥肌が立った。
気持ち悪くてこのまま死んでしまいたくなった。
けれど、我慢した。由香を抱きかかえるようにして、つぶれそうな彼女を護る事しか考えな
かったから。
「けーちゃん…いいよ?私、平気だよ?」
「だまってろ」
「でも…」
「いーから」
実際には、由香よりも圭介の方がいくらか背が低い。だから、傍から見ると、気弱な子犬を
チワワが一生懸命に護ってるような、そんな微笑ましくも滑稽(こっけい)な雰囲気があった。
けれど。
「…うん。ありがと」
由香は、なんだか昔に……圭介になにかと護ってもらっていた小さい頃に戻ったような気が
して、嬉しかったのだった。
ふかふかとしたやわらかい胸だけは、昔と違ったけれど。
駅に着いて、どっと人が溢れ出したホームを、由香は圭介の手を引いて人の波を掻き分け…
……ようとしたけれど、もたもたしてるだけで一向に進まず、結局、圭介に手を引かれて改札
を抜けた。車内で護ってもらったせめてものお返しに、気分が悪そうな彼を助けるつもりだっ
た。けれど、結果としてまた助けられてしまった。そのどうしようもなく無様な現実に、由香
は自己嫌悪に陥ってしまう。
圭介はそんな由香を見て少し笑うと、彼女の手を引いてデパートまで走った。
胸が揺れまくって、痛かった。
道行く人達が2人を見た。
男達は、圭介の胸を見て目を見張り、すぐにニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。
それでも、走るのはやめなかった。まるで、デパートに入れば全てが解決すると信じている
かのように。
けれどデパートに入ると、圭介はすぐにトイレに駆け込んで、
胃の中のものを残らず吐いた。
>221
ここまで。
下着を買うまでいきませんでした。
バストに関しての記述は、むちゃくちゃ独善的です。
「これが正しい!」なんて言うつもりはこれっぽっちもありません。
224 :
名無しさん@ピンキー:04/04/07 03:21 ID:UlVU89X3
》223
携帯からGood Job
>223
「ぷちえろ」「微えろ」って・・・
えろえろじゃないですか
ハァハァもうどうにでもして⊂⌒~⊃。Д。)⊃
>>223 にしても説明がくどい。さらっと流す程度で良いのでは?
>>223 いつも楽しみにしています。
一つだけアドバイス。プロのライトノベル作家の言ですが、
作者が設定し、考えたことを全部、本文に書いちゃ駄目だ。という事だそうです。
設定ってのは、読者の楽しむ中身であるキャラクターやストーリーを味合う為の
器であって、料理本体じゃないと。器ばかり立派で中身が少ないと不満に思う人も
当然出てきます。
苦労して考えたものだからそれを見せたいという気持ちは理解できますが、それを
あえて押し留めて本文に書かずに置く。それができれば今よりもっと良い小説になる
と思います。
キタ━━━━━\(゚∀゚)/━━━━━!!!!
イイヨイイヨ!待ってたよ!まさに(*^ー゚)b グッジョブ!!
コミケで同人誌作ったら買いに行くよ。
>223
私はスリーサイズの設定読んでて、なるほど!そういうものなのか!と思いましたよ。
確かにゲームの設定で身長170越えてウエストが60以下ってのは?という感想だったが
アンダーバストにもそういう事情があったのかと思って、正直、驚いたし為にもなりましたよ。
体重も170cm以上で50kg切ってたら、体、大丈夫ですか?と心配になってしまう性格です。
自分はスリーサイズ設定厨なもんで、もっと詳しい描写かあってもいいかなと思ったのですが
どうやら少数派みたいですね。これからも、いい作品を書いていける様に頑張ってください。
>スリーサイズ設定厨
ワラタw
>>223さん
すっごくエロかったです!
視姦されるだけでなく、その男たちのいやらしい思念まで
聞こえてきちゃうところで興奮しちゃいました。(*´Д`)ハァハァ
同人誌作ったら自分も絶対買います!
当方女なんですが一意見を。
スリーサイズの記述、悪くはないのですが、細すぎるのは異常のように書かれると、実際ガリガリでの私はすごく不快に感じました。
もう少し表現を柔らかなものにしても良いのでは、と思います。
もちろん一意見ですし私情が混じってしまっているので聞き流して下さっても結構なんですが…
藻前に惚れてもいいですか?
234 :
223:04/04/07 22:12 ID:EegOJvjp
>232
体が細いのに胸だけ驚くほどたっぷりと豊かに実ってる…のが異常…と書いたのですが…。
232さんがそうだったら、ごめんなさいです。
>そういうモロモロの意味を踏まえた上で圭介の体を見た場合、明らかに中学生レベルの体型
>(しかもほっそりとしたコンパクトサイズ)にFカップというのは、驚異を通り越して既に異
>常だと言えた。
今日も、下着買うとこまで書けませんでした。
投下はもっと後になります。今日よりは早いと思いますが。
では。
前スレのログってどこかに無いでしょうか?
236 :
232:04/04/08 01:06 ID:nppkq5RA
あ、胸はそうではないのですが、身長に対する骨格、ウエスト等の話が引っかかってしまって…。
でも多分私も過敏になっていたんだと思います、すみません。続き頑張って下さい。
237 :
234:04/04/08 01:44 ID:zxEZpgJA
今回は…ええと………ゆ、ゆり??
「そんなものはエいらん!」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>221
■■【44】■■
婦人服売り場の階段横の椅子で、圭介はぐったりと背もたれに身を預けていた。
由香が、水に浸したハンカチを目に被せてくれる。ひんやりと冷たくて気持ちよくて、いい
匂いがした。
由香の匂いだった。
「だいじょうぶ?」
「……へーき…」
「平気じゃないじゃない…」
由香は、「しょうがないな」とでも言いたそうな口調でそう言うと、なでなでと圭介の頭を
撫でた。
「…なんだよ」
「ん……なんとなく」
「…ガキ扱いすんな」
「…イヤ?じゃあ、やめるけど」
彼が「う〜」とか「あ〜」とか言ったようだけれど、特にやめろと言われなかったので、由
香は彼のさらさらの髪を撫で続けた。真黒でツヤツヤで、そして柔らかい。見た感じ、枝毛が
ぜんぜん無いのがすごく羨ましかった。引っ張ってやろうかと由香は思ったけれど、抜けたら
嫌だし、第一もったいないのでやめておいた。
『女の子なんだなぁ』と、唐突に思う。
小学校3年生の時から見続けて来た、あの強くて優しくていぢわるでずるくてちょっと乱暴
で、でも大好きな男の子の圭介は、もうここにはいない。ここにいるのは、強くて優しくてい
ぢわるでずるくてちょっと乱暴で、でも大好きな女の子だ。
体が変わり、周囲の目が変わり、それでも彼自身の根本的な部分は何も変わっていないよう
に思える。さっきだって、自分の気分が悪いのに懸命に護ってくれた。押し付けられた胸はや
わらかかったけれど、引っ張ってくれた手は白くて細くて頼り無かったけれど、でも、彼は彼
だった。
「ね、けーちゃん。そのままで聞いて」
「…うん?」
「あのね?けーちゃん、自分の体、嫌い?」
長い沈黙があった。
由香がじっと黙っていると、やがて観念したように圭介が口を開いた。
>238
「………なんだよ突然…」
「いいから答えて」
「……………あんまり…好きじゃねーな。……いろいろめんどくせーし」
「そう…」
『もし生理が始まったら、もっともっと面倒になるんだよ?』
由香はそう言いたかったけれど、今の、ぐったりして弱々(よわよわ)に弱った圭介には鞭
打つみたいで気が引けた。
「…なんでそんな事、今になって聞くんだ?」
「なんとなく」
「なんとなくって……」
「ね、けーちゃん。けーちゃんは女の子の体とか、胸がおっきいのとか、イヤみたいだけど、
自分の身体の特徴…というか、自分で欠点だって思ってる部分を『チャームポイント』にする
のも、『デメリット』にするのも、結局はけーちゃんの考え方一つなんだよ?」
「……そうか?」
「そうだよ。けーちゃん、私の体、どう思う?」
「どう…って………」
「ちっちゃいでしょ?それに胸もぺったぺただし、ウエストは締まってないし、お尻も…その
…ちっちゃい」
ハンカチを載せているので由香の顔は圭介には見えなかったけれど、圭介には彼女の顔が赤
くなってるのが、声でわかった。
「ハッキリ言って、幼児体型…でしょ?」
「……あ〜〜…」
「いいよ。ホントにそうだもん。でも、ちっちゃいってのは本当だし、中学生みたいだっての
も本当」
圭介は思わず『小学生でも通るぞ』と言いかけたけど、黙っておいた。
「でも、ちっちゃくて子供っぽいから、初対面でもあんまり警戒されないし、子供と仲良くな
るのも早いんだよぉ?」
「精神年齢がいっしょだからだろ?」
「ちゃかさないの」
「へいへい」
>239
「洋服も、そりゃあ確かにオトナっぽい感じのは似合わないけど、でもサイズがあんまり変わ
らないから、昔の服だって着れるし」
デザインはどうなんだ?…とツッコミたいのを、圭介は堪えた。
「なんか後ろ向き過ぎねぇ?」
「いいの。それに、さっきみたいにけーちゃんに庇(かば)ってもらえちゃったりもするし」
「ばか」
「ふふふ…」
由香は椅子の背もたれに圭介みたく体を預けると、少し汚れた、階段の踊り場の天井を見た。
ぐてーとだらしなく両足を投げ出している2人の少女を、通りすがりの女性が訝しげに眺めて
いく。
「…オレの体は、どう考えれば『チャームポイント』になるんだ?」
「すごく女の子っぽい」
「……それっていいことなのかよ」
「可愛くてグラマーだと、男の子がいろいろ無理聞いてくれるよ?」
「下心ありありでな」
「いや?」
「キモチワリイ」
「だよね」
「コラ」
「でもいいんだよそれで。下心のある男の子は、可愛い女の子のお願いを聞いてあげるのが好
きなの。可愛い女の子のお願いを聞いて、『女の子の言うことを聞いてやる僕って、なんて優
しいんだろう』って思うのが好きなの。自己満足が大好きなんだよ。だから無理言ってもいい
の。自己満足させてあげてるんだから」
「……ひでぇ…」
「そう?」
「……じゃあ、オレもそうだったのか?オレの事も………そう思ってたのか?」
恐る恐る言う彼が、可愛くて愛しくて、由香は思わず“ぎゅっ”としたくなった。けれどそ
んな事は出来ないので、ぐったりした彼の左手を右手でそっと握る。細くて白くてちっちゃく
て、爪が丸くて可愛い手がびくっと震えた。ちょっとびっくりしたみたいだったけれど、彼は
振り解(ほど)いたりはしなかった。
「けーちゃんは違うよ」
>240
「どこが」
「だってけーちゃんは下心なんか無かったもん。『由香ってばかだなぁ』『オマエってトロイ
なぁ』『仕方ないなぁ』『ぐずぐずすんなよぉ』……いっつもいぢわるな言い方ばっかりして、
ほかの女の子にだって、いっつも乱暴な言い方ばっかり。でも、そんな人は下心なんて無いの」
「……わかんねーだろ?わざとそういう言い方して、隙を作る作戦だったのかもしんねーだろ?」
「それはないよ」
「なんで?」
「けーちゃん、そんなに器用じゃないもん」
「………馬鹿ってことかよ」
ちっと行儀悪く舌打ちする圭介に、由香は本当におかしそうにくすくすと笑った。
「違うよ。けーちゃんは、優しいの。きっとたぶん誰にでも優しいんだよ。でも、優しい自分
が照れ臭くて、そう思われるのが恥ずかしいから乱暴な口調になっちゃうの」
「……………………なんでそんな事がわかるんだよ」
「わかるよ。だってずっとけーちゃんだけ見てきたんだもん」
目の前を小さな子の手を引いた若い母親が通り過ぎてゆく。こどもが圭介の胸を指差して
「おっぱい!」と嬉しそうに言うのを、由香はなんとなく微笑んで見ていた。
『けーちゃんのお嫁さんになりたいな』
そう思っていた自分が、ひどく遠く感じる。
「ねえけーちゃん」
「…うん?」
「そろそろ、その『オレ』ってゆーの、やめない?」
圭介が、息を飲んだ。
彼女はそれに気付かなかったように少し深めに息を吸い込む。
「けーちゃん、もう胸もそんなにふくらんで、髪もさらさらで、手も肩も首も足首だって細く
て華奢(きゃしゃ)で、どこからどうみても女の子だもん。女の子が『オレ』なんて言ってる
の、ヘンだよ?目立っちゃうよ?さっき電車の中でみんなが見てたのって、けーちゃんが乱暴
な口調だったからじゃないかな?けーちゃんは男の子だった時の事をずっとずっと忘れたくな
いから、だからずっと乱暴な口調でいるのかもしれないけど、すごく可愛い子がすごく乱暴な
口調で『オレ』って言ってると、やっぱり嫌な事言うオトナだっていると思うし、みんなだっ
てずっとずっとどう接してたらいいのかわかんないと思う」
>241
そこまで言うと、由香は圭介の顔を見た。桜色の可愛らしい唇が、への字にひん曲がってい
た。
圭介はハンカチの下で瞼(まぶた)を開き、見えない天井を見上げた。
真っ白いものしか、見えなかった。
「『私(わたし)』にしない?」
圭介は、さっきの電車の中の出来事を、彼女に一つも説明出来ないもどかしさを感じていた。
いっそのこと、由香に全てを話せたらどんなにか楽だろう?
確かに由香の言う通りだった。口調まで女らしくすると、身も心もどんどん女になってゆく
…『女でいること』にどんどん馴染んでいって、もう男に戻りたい気持ちとか、男だった頃の
記憶とか、そういうものが今よりもっともっと希薄になって、17年間の自分を自分で“無い
もの”としてしまうんじゃないだろうか?…そう思っていたのだ。
男であったこと…もとはちゃんとした男だったことを、ずっとずっと忘れたくなかったのだ。
けれど。
…けれど、それももう限界なのかもしれない…。
圭介はハンカチの下で瞼を閉じて、小さく息を吐いた。
「……どうしても?」
「『あたし』でもいいし『あたい』でもいいけど、『オレ』はだめ」
ひん曲がった圭介の“への字口”が、何か言いたげにむにむにと動く。
>242
「…あ…」
「あ?」
「あた……あた……」
「……?…」
「あた…あたあた……あたた……」
…なんだか世紀末救世主伝説の幕が上がりそうだった。
どうしても「あたし」と言えない圭介に、由香はくすくすと笑って、
「じゃあ、『ボク』は?」
「…やだよそんな子供っぽい」
「じゃあ『私』」
由香が圭介の左手を“きゅっ”と握った。
逃げ道は残されていなかった。絶体絶命の崖っぷちだ。
そして、長い長い逡巡を経て、
「………ボク…」
圭介はようやくそれだけを口にしたのだった。
>243
ここまで。
>227
すみません。設定は書きながら考えてて、しかも大筋以外はいきあたりばったりなので、
書ける時に書いとけ!って感じで書いてます(笑)。
考え方は全く同感で、でも商業作品じゃないからいーや的に書いてたりします。
人に読んでもらう以上、それではいけないのでしょうが、
「私自身がストレス無く書ける」…というのが大前提なので…お許し下さい。
>228 >231
同人誌は全く考えてません。本を作ってるヒマありません。
誰かが作るのに寄稿する…という形なら出来ますけど。
次回は(ごにょごにょ)まで書けたらいいな。
245 :
名無しさん@ピンキー:04/04/08 02:07 ID:9wdBsdGK
ごにょごにょごにょに禿げしく期待しつつ、Good Job
ちなみに、個人的には読み手にしばられず、
本当に書きたいものを書いた方がいいと思う
その方が長続きするだろうし
新作おつ〜
ごにょごにょに期待してますよ〜
好きなように書いちゃって下さいな
実はごにょごにょよりも、こんなストーリの方が好き♪
こういう読者もいるので、あまり読者の好みは気にしないで
好きなように書いた方が良いと思う。何はともあれ、Good Job☆
ちなみに>でもいいんだよそれで。下心のある男の子は、可愛い女の子のお願いを聞いてあげるのが好
>きなの。可愛い女の子のお願いを聞いて、『女の子の言うことを聞いてやる僕って、なんて優
>しいんだろう』って思うのが好きなの。自己満足が大好きなんだよ。だから無理言ってもいい
>の。自己満足させてあげてるんだから
は禿同!(藁 美味しいご飯に、プレゼント♪ おねだりは女の子の特権です♥
最近興味本位でこのスレ覗いたんですが、こんな素晴らしい話に巡り会えるとは…
最高です。続き楽しみにしてます。
243とかって、書き込みの数ですよね?
だとすると、この話ってかなりの長編なんですねえ…この描写でこの長さだなんて凄い。でも前スレが落ちちゃってるから、このスレ以前の話が読めないのが悲しすぎです…
「あたあた」に噴出してしまいました。
あいかわらずすごい文章力というか・・・続き超期待です。
才能ですな。 お疲れ様です。
前から感じてたけど、こっちって、向こうに比べて女性的なのね。
DQ2って、男性な感じより、女子っこ、って感じだしね。
252 :
名無しさん@ピンキー:04/04/08 15:45 ID:1+tYTZ32
僕っ娘に 激 し く 期待しまつ!
見事にらんまスレの隣にあるなw
美少女なのに‘ボク’のけいちゃんと、幼児体型なのに
すっかり‘お姉さま’な由香タンに萌えますた!!
256 :
Ts:04/04/08 19:08 ID:stjBv/mk
やっとここまで読んだ。
女として牡の視線を意識するとことか凄くエロイ(*゚∀゚)=3=3
というか、女性の立場を意識して書いてる点はホントに凄いと思う。
ごにょごにょカモーン
本で読みたい…
挿絵もついてたら最高。
>>251 向こうの男性的な考えに合わなかった人が
このスレを分離させたんだし、そうなって当たり前かも
向こうは男の子を女の子に無理やり変化させる話で
こちらは女の子になりたい男の子の願望を扱う話
>>261 願望というと少し違う気がするがな。
恋愛以前の感情として好きな男と好きな女がいて、好きな男に強く引かれた
主人公が男の方に惹かれた結果、男としての自我をもったまま女になったわけだし。
男と女の間でゆれる揺らぎの作品って感じだと思うが。
男を女に変えて欲望の対象とみるのが向こうで、より純愛路線に近い方向がこっち
というのなら素直に同意する。
ハード路線とソフト路線。
ストーリーの手段ではなく目的としての、
主人公に屈辱を与えるエロシーンがあるかないか。
でもこれは俺定義だからスレの定義は違っててもキニシナイ。
そのうち、また何か持ってこさせてください(゚▽゚*)ノ
二次ですけど。
266 :
244:04/04/10 01:22 ID:Eob1sAlQ
今回は「微えろ」。
「そんなものはエロじゃない」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>243
■■【45】■■
曽我山多恵(そがやま たえ)24歳は、女の子が大好きだ。
どれくらい好きかというと、口に出す時に「だい」と「すき」の間(あいだ)に1.5秒ほ
どの間(ま)が開くほどだ。
文字にすると
「だいっっっっっっっすきっ!!」
となる。
もちろん、そんな事を公衆の面前でちからいっぱい公言するのは、今の日本ではまっとうな
社会人としてはあまり喜ばしくない事態を引き起こす恐れがあるので、いくら体面をさほど気
にしない彼女とは言っても、おいそれと口には出さない。
ただ彼女は、女の子を“愛(め)でる”のが好きなだけなのだ。“女の子にえっちなことし
たい”だとか、“監禁して御世話しながら一日中眺めていたい”だとか、そんな無粋で不健康
であまつさえ人道的にどうなのか?なんて事を考えているわけではないのである。
彼女は、まだ自分自身でも男と女の区別さえつけられないくらいちっちゃい女の子が、大好
きだ。もちろん赤ん坊は、いけない。せめて意思の疎通が出来てコミュニケーションが成立し
ないとダメだ。ぷにぷにした手で自分の子供に見立ててお人形さん遊びなどしている様子は、
彼女をとてもとても幸せにする。
ようやく男と女の区別が出来、女の子だけのコミュニティを形成し始める頃の女の子が、大
好きだ。同じ年頃の男の子よりはるかに精神年齢の高い彼女達が、それでもそんな馬鹿で愚か
で愚鈍な(全て同じ意味で、つまり「くだらない」という意味だ)男達に対して『恋』という
『病』を病んでしまうところなど、切なさと運命の残酷さで胸が震える。
けれど、とりわけ大好きなのは、男と女のなんたるかに興味を抱き、自身もオトナへの階段
を上り始めた恋多き年頃の女の子だった。オトナの体へと変化し始め、戸惑いと甘酸っぱい期
待と、胸が苦しくなるくらいの切なさで自分の心さえコントロール出来ない様(さま)などは、
あまりの愛しさに眩暈(めまい)さえしそうになる。
ああ男達よ、お前達の相対(あいたい)する女の子達は、こんなにも賢く愚かで、冷たくも
優しい存在なのだ。だから大事にしろバカ。じゃないとコロスぞコンチクショウ。
何度そう胸の中で叫んだ事か。
>267
だから、彼女がこのデパートに就職してこの売り場にいるのは、彼女にとっては運命の采配
(さいはい)とも言えた。
ここには男などという不潔で馬鹿で自分の事しか考えていない動物などいない。フロア長は
男だけれど、テナント店長は女性ばかりだし、事務関係も女性が大半、そしてメーカーの営業
は女性限定だ。
だから、そろそろ身体のあちこちがオトナっぽくなりだした、まだ青い柑橘系果実のような
女の子だって、抵抗無く訪れる事が出来る。
誤解が無いように彼女が主張したいのは、彼女だって普通に男と恋もすればえっちもする女
だという事だ。
ただ、1年前に男と別れてからは、ますます女の子好きに拍車がかかった事は、彼女の親友
にさえ話していないヒミツだった。
ところで、4月から6月くらいまでの2・3ヶ月は、彼女にとって、とてもとても嬉しい時
期でもある。性に目覚め始めた女の子達が、中学、そして高校に入学し、今までとは違う自分
を実感したり、他の女の子とは違う自分を自覚したり、新しい友達の間で自分の位置を確認し
たりする時期だからだ。カラダがオトナへと成長し始めるその時期(学生時代)には、新しい
自分を主観的にも客観的にも演出したいという願望が芽生えるためか、普段よりちょっぴり多
く、甘酸っぱいレモンちゃん(ここは夏ミカンでもユズでもカボスでもライムでも柑橘系なら
なんでもいい)達がこの店を訪れるのだ。
ここには、彼女達の傷付きやすい多感な心をカラダごと包み込む、レースの“ラッピングツ
ール”が溢れんばかりに揃(そろ)っている。それはシルクであったり綿(コットン)であっ
たり化繊であったり、色も白だったりピンクだったりベージュだったり5月の青空のようなラ
イトブルーだったり、もちろん魅惑の赤や黒や紫なんてのも揃っていたり実に多彩だ。
膨らみ始めたささやかな胸に、そっと優しくフィットする人類の叡智。
滑らかな曲線を描き繊細でデリケートな(同じ意味だ)ヒミツの花園を包み込むレースの芸術。
そう。
彼女の勤務する場所は、女性用下着(ランジェリー)売り場なのだ。
「いらっしゃいませぇ〜」
>268
ほら、今日も可愛らしいレモンちゃん(そこ。笑わないように)が、その若く健康的なカラ
ダを護り演出するデコレーションを求めてやってきた。
学校帰りだろうか?2人とも手にカバンは持っていないから、きっと駅かどこかのローッカ
ーに放り込んできたに違いない。だってほら。あの制服は駅2つ向こうにある高校のものだか
ら。
2人は姉妹だろうか?それとも同級生?親友?
なんとなくぐずぐずしている背の低い女の子が、もう一人に左手を引っ張られているのが微
笑ましい。2人ともセミロングの、いまどき珍しい艶やかな黒髪で、しかも2人とも色がとて
も白かった。
「ほら、ぐずぐずしないのっ」
「で、でもさぁ…」
手を引っ張っている女の子は、前髪の間から少し太い眉が覗いている。ぱっちりとした目が
ちょっと垂れていて“ほにゃほにゃ”とした笑顔が可愛らしい。どこか、子犬っぽい印象があ
る。対して引っ張られている方は、目がちょっと吊目気味で、やんちゃな猫を思わせる。それ
も子猫だ。背がちっちゃくて首も肩も手も足も細くて、思わずうちに連れて帰りたくなりそう
になる。
子犬と子猫のじゃれあい?
いや、「おっとりとした優しいお姉さん(でも怒るとこわい)」と「気の強いナマイキな妹
(でもおねーちゃんッ子)」という感じだ。お姉さん(?)の方は、いつだったか見た事があ
るような気がしないでもない。けれど妹(?)の方はまったくの初めてだろう。あんなに可愛
ければ、多恵ならぜっっっったいに忘れたりなんかしないから。お姉さん(?)の方も十分可
愛らしいけれど、彼女の可愛らしさはまた別だった。たぶん学校でもモテモテ(死語です)に
違いない。
>269
2人は売り場の前で立ち止まって、色とりどりのブラがディスプレイしてある一角に視線を
注いでいる。どうしようか迷う妹(?)とお姉さん(?)の姿が、まるで駄菓子屋の前でどの
キャンディが一番甘くて美味しいか選んでいる小学生に見えて、多恵は自分でも口元が“ふにゃ
ふにゃ”とだらしなくゆるんでしまっている事に気付かなかった。
お姉さん(?)の胸は、見事なぺった胸だ。あれはたぶんAAカップに違いない。
ただ、妹の方のレモンちゃんは、胸がメロンちゃんだった。
■■【46】■■
「でかっ!」
不意に聞こえた声に、圭介は顔を上げて売り場カウンターの方を見た。中には、包装紙を整
理している若いお姉さんしかいない。
「でっかいなぁ…この包装紙…またサイズ間違えたな?」
どうやら、包装紙のサイズが注文と違っていたらしい。
自分の胸の事を言われたのではないと思い、圭介はほっとした。どうも、電車の一件からそ
ういう言葉に過剰反応してしまっているようだ。
『しっかりしろよ…』
自分で自分に叱咤する。
デパートに入り、婦人服売り場のフロアに入ると、“あの”声はまったく聞こえなくなった。
デパートに入る前、由香の手を引いて駅から走っている時も、電車の中に比べればずっとずっ
と少なかったし、声も小さかった。どうやら、よほど強烈な思念でないと流れ込んでは来ない
ようだ。しかもそれは男性のものに限られ、彼らが性的に欲望を感じた“声”だけのようだっ
た。
帰りの電車をどうしようか少し悩むけれど、今は目の前の難題を解決する事の方が先決だ。
今は18時12分。
デパートの閉店が19時半だから、あと1時間15分くらいしか時間が無い。
「ほら、けーちゃん」
由香が急(せ)かす。
>270
自分から店員に声をかけろと、旅人に謎掛けをしたスフィンクスのように無理難題を言うの
だ。まったくもってひどい女の子だった。今まで一度も足を踏み入れた事の無い“人外魔境”
へ、たった一人で赴(おもむ)けと命じるなんて、護りの強固なトロイへ嫉妬に狂って闇雲に
攻め入れと命じたスパルタ王メネラオスよりひどい。ハリウッド戦争映画の鬼軍曹もパンツ一
枚で逃げ出しそうなくらい冷酷非情だ。
「……オニ……」
「……けーちゃん、なにか言った?」
笑顔がこわかった。
「なんでもないです」
手を“きゅっ”と握られてから、どうも由香には逆らえなくなっていた。もともと『女の子
チェック』の“先生”でもあるので、圭介に「由香に逆らう」という選択権は全く無いに等し
い。
…というか、無い。
圭介は覚悟を決めると、ギクシャクとした動きでブラジャーやらパンツやらストッキングや
ら、洋画(しかも、ちょっとえっちなヤツ)でよく見るストッキング留め(ガーターベルト)
やらスケスケのネグリジェみたいなヤツ(キャミソールのことらしい)やら、何に使うのかよ
くわからないヒモみたいなヤツなどの間を縫って、カウンターまで歩いた。
やたらと顔が熱い。きっとたぶん、顔が真っ赤になっているのだろう。けれど歩みを止める
事は出来ない。
これは戦いだ。
そう、戦いなのだ。男として、一度は立ち向かわなければならない試練なのだ。
「いや、それは違うだろ」という心のツッコミを無視して、圭介は目をパチクリさせた店員
の前に立った。
年上の店員さんは、紺のベストにタイトスカート、臙脂のリボンタイがピンクのシャツに映
えて、キリっとした雰囲気の中にも可愛らしさがあった。髪は短いポニーテールで、顔は、ま
あ美人に入るかな?と言えなくもないファニーフェイスだった。「綺麗」というより「人懐っ
こい」感じだ。シャドウは薄目で、ルージュはローズピンク。ナチュラルメイクを基本として
いるらしく、キツくない程度にまとめられていて、ほのかに柑橘系のフレグランスの香りがし
た。左胸の名札に「曽我山」と書いてあった。
>271
…けれど、もちろん緊張しまくって下を向いたまま、机の上にあったやたら可愛いオレンジ
のハサミから視線を動かせない圭介には、ぜんぶわかるはずもなかった。
「ぶ…」
「え?」
地の底から聞こえてきそうなくらい低い声が、少女の可愛い旋毛(つむじ)から聞こえて、
ショップ店員のお姉さん、曽我山多恵(そがやま たえ)24歳は思わず声を上げた。
「ぶ…ぶ…」
「ぶ?」
「ぶ…ぶぶぶぶ……ぶらじゃぁ、くださいっ!」
「…あ、はい…」
あっけにとられて、思わず間抜けな返事をしてしまった事に多恵は気付いた。女の子は、ま
るで、初めてランジェリー売り場に来た男の子みたいな緊張ぷりだ。いや、昨今の男の子は、
彼女へのプレゼントだとかでもっと気楽に来る者もいる。ここまで緊張しているのは、今となっ
ては男の子でも珍しいかもしれない。
「失礼ですがお客様?お客様がお召しでしょうか?」
「あ、そ、オ……いや、ボクの、です」
「はい?」
「ボクがします、ぶらじゃぁです」
…なんだかヘンな言葉になってた。
けれど、多恵が気に掛けたのはそんな事ではなかった。
『う…うわぁ…“ボクっ娘(こ)”だぁぁ…』
目の前の少女は、自分のことを『ボク』と言ったのだ。
漫画やアニメなどでは見たことがあるけれど、現実では初めてだった。現実にいたという事
実自体が驚異だった。
『女装した男の子じゃないか?』とは、これっぽっちも思わなかった。こちとら女を24年
もやってる上、職業柄お客様が男か女かなんて一目見ればイッパツでわかるのだ。それでわか
らなければ、そういう女は女をやめていいと、多恵は思う。それは彼女の、プロの部分が思わ
せたことだ。
『ほんとにいるのねぇ…こういう子…』
>272
しかも、多恵の直球ど真ん中ストライクな女の子だった。
多恵は決してオタクなどではないのだけれど、それでも圭介の姿は彼女の魂の琴線に“ズビ
シ”と触れた(ブチ切った?)らしい。
見れば見るほど多恵好みだ。
細くてちっちゃくてナマイキそうで可愛くて、しかもメロンみたいなおっぱいして自分を
「ボク」と言う。
妹に一人欲しい。
ぜひ欲しい。
言ったらなってくれるだろうか?
「…あの…」
怪訝そうな顔で、メロンちゃんが顔を上げた。文字通り、メロンを2つ押し込んだみたいな
胸元がゆさりと揺れる。
「は、はい?」
いかんいかん。どうやら妄想が過ぎたようだ。
多恵はにっこりと職業スマイルで顔をガードすると、どきどきする鼓動を悟られないように
しながらカウンターから出た。
「いくつでいらっしゃいますか?」
「え?あ、えと、17です」
「いえ、お客様のバストサイズです」
あまりにもベタな圭介の勘違いにも、店員は笑顔を崩さずに答えた。
「あ、え、その、わかりません」
「…以前に御使用されていらっしゃったものは、いくつでしたか?」
「……あの、こ、今回が初めてです」
「……はい?」
「その、今までつけたこと無かったんで、それで、その…」
「………大体でよろしいのですが……」
「あ、えと、そのそれなら、その、F…」
「Fですか?」
「あ、すみませんまちがえましたEですっ」
「Eですか?」
「すみませんちがいますDですっ」
>273
「Dですね?」
「Cかも…しれません…」
段々と小さくなる圭介の声に、多恵は小さく溜息をついた。大きいのがそんなに恥ずかしい
のだろうか?こちらも仕事なので、私情は挟んだりしないし、笑ったりもしないのに…。
けれど、圭介は多恵の溜息をどう勘違いしたのか、“びくっ”と肩を震わせると恐る恐る彼
女を見上げた。
「あの……どのくらいの大きさなら、おかしくないんですか?」
その、雨に濡れた子猫みたいにしょぼくれた目に、多恵の“おねーちゃんハート”が“きゅ
ううんっ”と鳴った。
彼女は、今すぐ抱きついてよしよしと頭を撫でてやりたいのを“ぐっ”と堪え、
「…………お客様?失礼ですが、正しいサイズを教えて頂かなければ、こちらと致しましても
どんなものを薦めてよいものか、判断しかねるのですが…」
「す…すみません…」
ますますちっちゃくなってしまった。
その時、売り場の外でワゴンの中のストッキングを見ていたあのレモンちゃんが、見かねた
ように店内に入ってきた。
「すみません。この子、今までブラした事無くて、正確なサイズがわかんないんです」
「はあ」
「ぽやぽや」としたおっとり系おねーちゃんかと思ったら、意外にしっかりとした言葉を使
う。見た目とは違って、どうもこの2人の力関係ではレモンちゃんの方がずっと上らしい。
「今までチューブトップとかタンクトップとかばっかりで、でも、この大きさじゃないですか。
今はまだいいですけど、すぐに垂れちゃいますよね」
「そうですね…しっかり補正しませんと、形も崩れてしまいますし…」
「だいたいのサイズでいいですよね?」
「御存知ですか?」
「はい。さっき、ちょっと測ってみたものですから」
「そうなんですか?」
「はい。確か、トップが87の65Fだったと思います。アンダーが小さいので、よろしくお
願いしますね」
「では念のため、測らせて頂いてよろしいでしょうか?」
「いいですよ。…ほら、けーちゃん」
>274
「あ、え?うん…」
一人ぽつねんと立ち尽くして、多恵と由香の会話をぽけっと聞いていた圭介は、由香が肘で
つつくと慌ててセーターの裾に手を掛けて脱ぎ始めた。
「お、お客様!?あの、別に脱がなくてもよろしいんですよ?」
「そ…そうなんですかっ?」
中学生みたいな背格好の少女の服の下から、Tシャツに包まれているとはいえ、大人顔負け
の重たげな乳房が“ぶるん”とこぼれ出せば、誰だって驚く。それ以前に、ここには他の客も
いる、デパートの売り場の中なのだ。この少女には衆目(しゅうもく)の中で服を脱ぐという
事に対して、抵抗は無いのだろうか?
多恵は少女のセーターを直してやりながら、一から全部説明しないといけないかな?と覚悟
を決めた。
「はい。とりあえず、サイズを服の上からメジャーで測ります。それから、失礼ながら学生さ
までいらっしゃるようですので、御予算に合わせて、いくつか商品を取り揃えさせて頂きます。
そうしましたら、お客様は気に入ったものを何点かお持ちになり、そこの試着室で装着してみ
て下さい」
「試着…ですか?」
圭介は訝しげに店員を見て、試着室を見て、それからもう一度店員を見た。
下着の試着なんて、聞いた事が無い。トランクスは3枚1000円のヤツだし、中学の時の
ブリーフだって、グンゼの真っ白いヤツを母さんが買ってきてくれたものだ。第一、人が身に
つけたものなんて、気持ち悪くないのだろうか?
「けーちゃん、ブラは試着していいんだよ?…というか、なるべく試着した方がいいよ。自分
に合ったものじゃないと、胸が苦しかったり、お肉が上や脇やお腹に流れちゃうから」
「流れ……」
驚愕の事実だ。保健室で脇の肉を寄せる時にもそんなような事を言っていた気がするけれど、
そんなに簡単に乳房の肉というのは移動してしまうものなのだろうか?
圭介は、また一つ、知られざる女体の神秘を垣間見た気がした。
店員は、セーターの上から圭介のバストサイズを軽く測り、とりあえず65Fということで、
4つほどのメーカーのものを3〜4着ずつ持ってきてくれた。
>275
パットとかワイヤーとかフルカップとかハーフカップとか、ホックがどうとかストラップレ
スがどうとか、いろいろと聞いたような気がするけれど、ぜんぶ由香と店員さんに任せておい
た。最初から全部聞いても覚えられないし、面倒臭くて逃げたくなったから。
困ったのは、試着室にブラを持って入ってからだ。
着け方がわからない。
一応、低年齢向けなのか、試着室には「正しい下着の着け方」なんていうものがあって、そ
れを読んだ。
まず、ストラップ(肩紐)に両腕を通し、前屈みになって、カップの下の方に手を添えて掬
い上げるように乳房を入れる。そして後でホックを留めて、肩紐を調節し、お肉が流れている
ようなら、脇から背中の方まで手をまわして手の平でお肉を掻き寄せるようにして集め、カッ
プに収める。最後に、カップの中に上から手を入れて、形を整える。
これで完全防備な“ブラおっぱい”の出来上がり。
らしい。
『なんか…すげーな……粘土みてー』
女の乳房は、ただそこに“ある”ものではなく、こうして“つくられる”ものだったのだ!
圭介はセーターもTシャツも全部脱いで、上半身裸のまま正面の鏡に自分を映してみた。
巨大乳(きょだいちち)な自分のおっぱいは、もう何度も見ているせいか特に感じる事も別
段無い。気持ちとしては男なのだから、こうして胸が膨らんだらひょっとしてもっと何かしら
興奮するかも…と思ったけれど、自分のおっぱいで興奮するようなナルシストじゃないから1
日で飽きた。ひょっとしたら、骨格と一緒に脳まで変化したのかもしれない。興奮する場所が
どっかに変わったのだとしたら納得だ。
試着室の中は、店内の天井の蛍光灯の明かりだけが頼りで、少し薄暗い。その中で見る自分
のおっぱいは、色が白くてやわらかくて、まるでつきたてのお餅のようだ。薄暗い中で見る乳
首は少し赤味が強く、今はぷにぷにとやわらかくて小さかった。おっぱいの表面には青い血管
がうっすらと浮いていて、それが自分の体の一部なのだとハッキリ自己主張している。
「はあ…」
溜息をついて肩を落とせば、それだけで“ゆらっ”と重たく揺れた。
>276
圭介は目の前に、店員さんが選んでくれたブラを持ち上げた。なんだか不恰好で、地味なブ
ラだ。もっとレースとかフリルとか、そういう飾りがたくさんついているものを想像してたの
で、なんとなく肩透かしをくらった気分だった。肩紐(ストラップ)も、なんだか少し太いよ
うな気がする。背中で留めるホックは、なんと3つもあった。
途方にくれて、圭介は由香を呼ぼうかと思った。
でも、「一人で着けられるようにならないとね」と、スパルタ式鬼教官は、にこやかに笑い
ながらも手助けしてくれる気はちっとも無さそうだったので、仕方なく自分一人で着ける事に
した。
「ええと…」
肩紐に両手を通す。それから、頭を鏡にぶつけないようにしながら御辞儀をするように体を
折り、重たく砲弾状に垂れ下がった乳房を、カップに掬い上げるようにして収めた。
けれど、真面目に背中でホックを留めようとして腕が攣(つ)りそうになった時は、さすが
に悩んだ。自分の体が固いのか、世の女性達の体がやわらかいのか。思わず圭介は、由香や涼
子やはるかちゃん達は、毎日こんなややこしい思いをして下着を身に着けているんだなぁ…と
思って、妙に感心してしまったのだった。
なんとかホックを留めると、それだけで疲れた。もういいや、という気分になった。けれど、
店員さんがせっかく10着くらい用意してくれたから、全部試着してあげないといけないかな?
と思う。
自分が客なんだから、気に入ったものを2〜3着だけ試着してあとはやめとこう…という考
えは、すっかり抜け落ちていた。
「ん…」
左のカップに左手を添えて右手を突っ込み、ぐいっと脇のお肉を寄せた。ほとんど無かった
けど、そうしろと書いてあるからそうした。右のカップも同じようにする。
そこまでして、やっともう一度鏡を見た。
「こんなもんかな…」
ブラジャーを着けた事で、なんだか胸がもっと大きくなった気がした。重さでちょっと垂れ
ていたのが、下着で支えられて持ち上げられたからだ。けれど、楽になったのは確かだ。試し
に体を左右に振ってみた。
「お〜〜…」
揺れない。
それだけで、なんだか嬉しかった。
>277
「ん?」
「正しい下着の着け方」には、「正しく着けられたか、チェックしてみよう」とあった。
『ええと…?』
1.アンダーバストはちゃんと安定していますか?ブラは、体に対して水平になっています
か?
『なってる……んじゃないかな?』
2.カップの上辺が、バストにくいこんでいませんか?
『食い込んで…ない…かな?』
3.カップはあまっていませんか?
『余って、ない。うん』
4.前部の中心は、浮いていませんか。指1本分くらいなら大丈夫です。
『前部の中心??どこだ?………ここかな?…浮いて……ない…かな?』
5.脇にくいこんでいませんか?または浮いていませんか?
『…たぶん』
6.ストラップはゆる過ぎたり、きつ過ぎたりしませんか?
『こんなもんじゃ…ないかなぁ…?』
7.背中のホックの位置は、肩甲骨の下におさまっていますか?
『………見えない……』
一応、チェック項目に則して見てはみたけれど、どれもOKといえばOKだし、NOといえ
ばNOだ。どうせならこのチェック項目も絵入りで表示しておいて欲しかった…と思う、圭介
だった。
「お客様、いかがでしょうか?」
カーテン越しに声が聞こえた。
「あ、はい…なんとか…」
「失礼してもよろしいでしょうか?」
「え?あ、なんで?」
びっくりした。
中に入ってくるの?なんで?どうして?
「サイズがちゃんと合っていませんと、逆に胸によくありませんから」
「…確認ですか?」
「はい」
>278
「じゃ…お、お願いします」
胸がドキドキした。
すぐに店員さんが「失礼します」と言いながらカーテンの隙間から身体を滑り込ませてきた。
外に中が見えないように、素早く、スムーズな動きだった。さすがに手馴れている。
ふあっと柑橘系の香りが、圭介の鼻をくすぐる。気持ちのいい匂いだ。
なんだかわかんないけどドキドキが増した。
「こ、こんな感じ…ですか?」
「そうですね。ん〜…」
「あの、なにか…」
「失礼しますね」
答える間も無かった。
くるりと後を向かされると、店員さんのほっそりとしたあたたかい左手が、するりと右のカッ
プの中に滑り込んだ。そのままぐいぐいと奥の方まで差しみ、息を飲む圭介に構わず、乳房の
下の方のお肉を引っ張り上げるようにして持ち上げた。乳首の位置を指で確認したのか、少し
カップの中で調整し、左の乳房も同様にする。
「……んっ…」
声が漏れた。
店員さんの右手の指が、乳首を擦ったのだ。
その間も店員さんは事務的にテキパキと手を動かしてゆく。カップの中でバストトップの位
置を最適な位置に持ってくると、今度はブラの裾を指で摘んで揺すったり、外から押したりし
て乳房の収まり具合を確認する。その手付きは実に手馴れたもので、いやらしさや無駄な動き
などは全く無い。
…もっとも、いやらしい動きなどありようもないのだけれど。
「どうでしょう?」
「あ、はい」
正面の鏡に圭介を向かせて、店員さんは肩越しににっこりと笑った。
「お客様。トップがこの位置にくる感じを覚えておいて下さいね。一番、胸の収まりがいいは
ずです」
「……トップ?」
「ニプルの位置です」
「…………ニプル?」
>279
「乳首です」
「あ…はい…」
店員さんは特に言葉に意味を込めたわけでも、声色を変えたわけでもないのに、圭介は急に
“かああ…”と血が顔に集まるのを自覚した。
「苦しくはありませんか?」
「…はい」
「キツくはありませんか?」
「はい」
「でも、まだちょっと…」
「……?」
店員さんは、胸の谷間とブラの隙間を見て、
「少々お待ち下さい。もうワンサイズ大きいものをお持ち致しますから」
と言って、カーテンの隙間からするりと出ていった。
>280
ここまで。
…下着購入が終わりませんでした…。
よりぬきレス
>245>246>247
ありがとうございます。好きに書かせて頂けて嬉しいです。
>248
ちょ…ちょっと長すぎますか?
>252>256
「ボクっ娘(こ)」というのにツボ入りました。
>264
いえむしろリトルたん待ちな私なんですが。
いつ投下されるのかなぁ…と待ってまつたヽ(´▽`)ノ
土日は遊びに行くので、書いてるヒマ無いかと。
月曜以降…かな。
>>281 グッジョブ!!!
圭タソかわいすぎですヘァヘァ 月曜まで待てねーよorz
>>281 改めて思ったんですが、登場人物がみんなものすっごくキャラたってますよね。
(作家さんにこんなこと言ったら失礼かな・・・)
ここはあえて多恵姉さん萌えw
>>281 良かった〜初ぶら体験に萌え萌えでつ♪
でもぶら無しでFカップだったら
ちゃんとぶら付けたらG行くかも
友達に寄せ上げが上手な子がいて
ぶら無しだとBにしか見えないのに
格闘する事3分(上げ過ぎ!)で
見事Cカップバストに変身します
でも仕事して腕を上げたりすると
だんだんずれてくるので
密かにトイレで直してたりするんですw
あまりにも変わるので最初はみんなで
ヌーブラ?とか整理厨?とかからかってたくらい
男の人はブラジャーマジックに騙されないようにw
>>281 乙です!
しかし、微エロに入った途端、文章のノリがますます生き生きしてきたようなw
それに下着のことなんか右も左も分かってないけいちゃん、多恵お姉たまの
絶好の餌食にされちゃいそうなうれしい予感が(*´Д`)ハァハァ
来週が楽しみです。ワクワク
|,.'⌒
|⌒ ヽ
|ノ)))〉 ダレモイナイ… テストスルナラ イマノウチ…?
|ヮ゚ノリ
⊂)!
|
|
前スレ202続き
----------------------------------------------------------------
「ボクのせい……?」
「そう。君があのまま娘になることを拒否していれば、僕がなれるはずだったんだ」
サァラは双子のサヤカと一緒に、"アリスの娘"になるための特別なプログラムを
受けていた。しかし、サァラははじめから自分の運命が決められていることに反発し、
娘になることを一旦は拒否した。娘になるには本人の意思が絶対であったから、
次の候補者に選択権が移ることになっていた。
「そ、そんなこと……。イタイ!やめて!!」
男は、サァラの乳房をねじ上げるように握りつぶした。
「僕はアリスの娘にならなきゃいけなかったんだ。それなのに、君は気まぐれに!
娘にならないといったり、なるといったり!!」
「ボ、ボクだってお姉ちゃんと、離れ離れになりたくなかったんだ!」
性転換装置は1台しかない。だから双子のアリスの娘を誕生させようとしても、
同時にはできない。性転換の為にサヤカと別れ、一人残されたサァラはその寂しさに
耐えかねていた。そして大好きだったサヤカと離れ離れになるよりは、同じ娘となって
暮らしていくことを選んだのだった。
「だから、気が変わったっていうのか?」
サァラは頬を強く叩かれた。口の中に血の味が広がる。憎悪と敵意を持った相手に頬を
叩かれるなど、アリスの娘にはありえないことだった。
経験したことの無い暴力行為に、サァラは震え上がり、声も出なかった。
「ふん、おまえさえいなければ。僕だって彼と……」
恐怖に色を失ったサァラの瞳に、男の握るナイフの光が映った。
>287
(助けて、お姉ちゃん!)
必死で探すサヤカの耳に、確かにそう聞こえたような気がした。
サヤカは立ち止まって、もう一度耳を澄ませたが、聞こえてくるのは空調の音
だけだった。
「どう?見つかった?」
ハルカが通路の反対側からやってきてたずねる。
「いいえ、どこにも。ハルカ姉さま、私どうすれば……。サァラを一人にするんじゃ
なかった。あの子、泣いていたのに……」
「しっかりしなさい、サヤカ。さっき伝助先生にもお願いしてきたわ。
船内にある全ブロックの緊急救急設備要員にも声を掛けてくれるって。
あと30分探して見つからなかったら、評議長へも連絡が行くわ。そうしたら、
船のみんなが協力してくれるはずよ。」
「まさか、自殺なんて……」
「バカなことを言わないで!ねぇ、良くわからないんだけど、サァラはそんなに
思いつめていたの?」
「わからない。わからないんです!お姉さま。あのコはずっと、今日まで何も
言わなかったから。う、うぅっ……」
「双子の姉妹の間にも、わからないことがあるなんてね……」
「緊急警報!005発生。Cぶろっくノ保安要員ハ、大至急C7-310ヘ突入セヨ。
252ハ955モシクハ954。救急要員ハ蘇生術準備。」
唐突にアリスの基幹要員向け音声警報が通路に響き渡った。
事態の深刻さを聞き取ったハルカは、厳しい表情でサヤカにいう。
「あなたは自分の部屋へ戻って。後で連絡するから!」
「待って、ハルカ姉さま!私も行きます。サァラなんでしょ?サァラが危ない目に
あっているんでしょう?私も行かなきゃ!」
「まだサァラだと決まったわけじゃないわ。ついてきちゃダメよ!」
ハルカはこの時、サヤカを押し止めることができなかったことを、あとで後悔する。
>288
「助かりますか?先生」
ハルカは医療室でレイカとともに、伝助医官の蘇生術を手伝っていた。
「うむ、危険な状態じゃ。このまま再生槽に入れるわけにはいかん。
欠損部分を仮組織に置き換えんとな。しかし今の状態では手術もできん」
「サヤカの方は?」
「今は薬で眠らせてるわ。明日の昼まで目覚めないと思う」
「それまでには結果がでるじゃろう。おまえさんたちは一度部屋へ戻りなさい。
何かあればすぐに呼び出す。明日は長い一日になるじゃろうからな。少し寝ておけ」
「そうね、そうさせていただきます。ヒロミが心配だし。でも、明日はどうしようかな。
ヒロミをそんなに長時間一人にはできないし……」
「ウチにつれてくれば?」
「レイカのところへ?」
「シルヴィに世話させる。明日はお勤め無い筈だし」
「うーん、あのコ。まだ私以外の人間と過ごしたこと無いしね。大丈夫かしら」
「妹想いのハルカ姉さまには不安でしょうが、その……いずれはシルヴィと
パートナーになるんだから、今から慣れておいてもいいんじゃない?」
「いずれは……か。シルヴィが、というよりあなたのところに預けるってのが不安
なんだけどね」
「どういうイミ?だいたい私だって一緒に、ここに詰めなきゃならないんだから」
「だから私はヒロミよりも、自分の心配をするべきなのよね」
「あのねぇ……」
ハルカとレイカは、隣室のベッドに寝かされているサヤカの様子を伺う。
「サヤカ、大丈夫かしらね。もし明日起きたとき、彼女が錯乱するようなことに
なっていたら……」
「心配しても始まらない。私たちはベストを尽くすだけ」
>289
翌日の昼頃、幸いにもサァラは危篤状態を脱した。昏睡状態ではあったが容態が
安定したため、再生槽へ入れる前に手術をすることになった。
サヤカも目を覚ましたが、妹の凄惨な光景に立ち会ったショックで、感情のない
様子だった。心配したハルカが飲み物を勧めながら話しかける。
「あの男だけど、どうもアリスの娘になれなかった逆恨みで、サァラを
襲ったみたいなの。だから、サァラが何か悪いことをしたから、酷い目にあった
わけじゃないのよ」
「アリスの娘になれなかった逆恨み……?」
それまで"ええ"とか"はい"とかしか答えなかったサヤカが問う。
「ええ、そうらしいわ。警備官が……」
「私のせいだわ!私の!!」
「何を言ってるの、あなたが悪いなんて。サァラが運び込まれたときにも自分のせい
だとか言っていたけど、悪いのはあの男で……」
「いえ、やっぱり私のせいなんです!ハルカ姉さま」
「どういうことなの?ちゃんと説明してくれなきゃわからないわ」
「あのコはアリスの娘になるのを嫌がっていた。だから、私たち本当は一緒に暮らせ
無かった筈なんです。でもね、お姉さま……私、サァラと離れて暮らしたくはなかった。
そしてそれはあのコも同じだったと思っていたんです。だから……」
「だから?」
「だから、アリスに頼んだんです。私が性転換槽に入っている間、サァラに新しい
パートナーと組ませないでって」
「それって……」
「そう、さびしがり屋のあのコが、私がいないことに耐えられる筈が無いって思ったん
です。だから一人のままにすれば、きっと私と娘になるって、そしたら……
ずっと一緒に……、暮らせるって…、そう決めてくれるって……」
最後の方は、もう涙声になって、ハルカにもはっきりと聞き取れなかった。
その後は、もう何もいっても、泣きじゃくるだけだった。
>290
「どう?サヤカの様子は」
診察室に戻ったハルカに、先に部屋を出たレイカが心配そうにたずねる。
「うん、サァラが酷い目にあったのは自分のせいだって、泣いてるわ」
「何でそうな風にサヤカが思いつめてしまうのかわからないけど、悪いのは、
あの男でしょ? まぁ、死んじゃった奴にこれ以上罪のかぶせようも無いけどね」
「死んだ、ってどういうこと?レイカ、いくらなんでも処罰されちゃうなんて早すぎるし、
あの男を取り押さえた時だって、たいしてケガなんかしていなかった筈でしょ?」
「それが外周ブロックの独房に閉じ込めている間に、自殺って言っていいのかしらね。
外壁との間にある動力伝達パネルの蓋をこじ開けて。
その……中はメチャクチャだったらしいよ」
「そんな、工具もなしに? だいいち、アリスが監視しているのにそんな手間の
かかることが、できるわけがないでしょう?」
「うん、良くわからないんだけど、パネルが勝手に開くわけは無いから、やっぱり
こじ開けたとしか。もっとも私が見たわけじゃなくて、知り合いに聞いただけなんだけどね」
「妙じゃの……」
「あ、先生いらしたんですか?」
「うむ、そろそろ始めようかと思っての。2人とも頼むぞ」
「はい先生」
3人とも奇妙な疑問を感じたが、手術室に入り準備を始めることにした。
今は目の前で助けを必要としている、サァラに集中すべき時だから。
手術室に入る時、ハルカは視線のようなものを感じた。
(誰かが監視しているわけでもないのに……、しっかりしなくちゃ!)
手術中の記録をとるために、ハルカはモニタカメラをSTBYからRECに切り替えた。
すっかりご無沙汰してしまいました。
人多すぎがぜんぜん解消されないので、かちゅ〜しゃとか言うのを入れてみました。
これなら書き込みもできるんですね。
サボっている間に新しい作家さんとか登場してるし。これから過去ログを探してきます。
ではまた。
◆li6.DY4olM さん
もう続きは無いのかな。。。
アリスさん お久し振りです(*'д`)ノシ
楽しみにしてますんで頑張ってくださいね。
295 :
名無しさん@ピンキー:04/04/11 01:10 ID:47omq7R4
ハイレベルな職人さんが3人に!
贅沢なスレだ…
職人さんもっと来ないかな…
普通な職人さんが来ればこの3人の職人さん達が引き立ってイイ(゚∀゚)!!
上手い職人さんが来れば、4人衆になってもっとイイ(゚∀゚)!!!
3人?誰と誰と誰よ?
297 :
nana:04/04/11 01:39 ID:S2aVpVoh
ゲェェェ
∧_∧
(ill ´Д`)
ノ つ!;:i;l 。゚・
と__)i:;l|;:;::;:::⊃
⊂;::;.,.';;;;'::.:.;::.⊃
ageると、とたんに業者が出てくるな
(‘Å’)ノ 300!
301 :
名無しさん@ピンキー:04/04/11 11:01 ID:47omq7R4
>296
2人だった…
KINOさん話し終わってたんですね…
>301がいいたいのはKINOは詰まらんってことでFA?
>303
まて、漏れはKINO氏のSSは好きだぞ。出てくるスレ全部見に行ってるから。
少なくても漏れの中じゃレベルは高い書き手だと思ってる。
>301のはなんか、KINO氏に喧嘩吹っ掛けてるのかとおもってな。
二次でも、オリジでも待ってます (・∀・)
アリスさんお帰りなさい。
話がますます謎めいてきましたね。続きが気になります。
アリスの娘たちって存在自体がエッチなのに、でも彼女たちそれぞれには
妹想いっていうか、心に憂いものを持つもの同士すごく優しいハートを
感じるんですよね。そういうとこが好きです。
続きもよろしくお願いします。
306 :
名無しさん@ピンキー:04/04/13 17:40 ID:xA9mbEnt
age
307 :
アリス ◆Alice.9wCE :04/04/13 23:44 ID:/NLbO4cy
シルヴィ、レズに目覚める……編です(w
あんましエロくないですが……。
>291
アリスの娘たち〜 お留守番
----------------------------------------------------------------
「いらっしゃい、お姉さま」
シルヴィは久しぶりに会うハルカを、満面の笑顔で迎えた。
「少しご無沙汰したわね。シルヴィ、元気だった?」
「ええ、お姉さま」
「はじめまして、レイカお姉さま、シルヴィお姉さま」
一緒に連れてこられたヒロミが、おずおずとハルカの後ろから挨拶をする。
ヒロミはハルカが不在の間、同じく不在となるレイカの部屋に預けられることになった。
まだ精神的に不安定な時期であるため、保護者が必要なのだ。そのため、レイカの
妹であるシルヴィに預けられることになった。性転換後、部屋を出るのも初めてだし、
ハルカ以外の人間と接することもほとんど無かった。男だった時には初対面の相手
でも緊張したことは無かったが、今は他人の視線にとても敏感だった。ヒロミは通路を
出てレイカたちの部屋へ行く途中も、ものめずらしそうな男たちの視線に怯えていた。
ハルカの手を両手でしっかりと握り締め、隠れるように歩くのが精一杯だった。
「ヒロミちゃん、はじめまして。私がレイカ、こっちがシルヴィよ」
「よ、よろしくお願いします」
ヒロミはぴょこんとお辞儀をした。
「緊張してるの?かわいいわね。シルヴィも最初はこんなだったね」
「ワタシはこんなに臆病では無かったですわ。レイカ姉さま」
シルヴィは蔑む様な目で、ヒロミを威嚇するように言う。せっかくのオフ日に面倒ごとを
押し付けられるなんて、シルヴィはまっぴらだった。
ついさっきまで、追い返してやる!とレイカに不満をぶつけていたのだ。
「おや、厳しいねぇ。いずれアンタの妹になるんだから、もう少しやさしくしてやったらどうなのさ?」
「なにしろワタシはお姉さまの、妹ですから」
「あら、私はあなたに冷たくしたつもりは無かったのだけど、そんな風に思われていたなんて残念だわ……」
ハルカが悲しそうに言う。
>308
「いえ、ワタシが言ってるのはハルカお姉さまのことじゃなくて、レイカ姉さまのことです」
「シルヴィったらね、ヒロミちゃんにアンタを取られちゃったもんだから、ずうっとむくれてるのよ」
レイカはくすくす笑いをしながら、ハルカに言う。
「ワタシはむくれてなんかいません!」
「あの……やっぱりボク、帰った方が……」
「ほら、ヒロミちゃんが怖がってるじゃない。」
レイカがシルヴィの背中を突っつく。
ヒロミは今にも泣き出しそうな表情で、シルヴィを見ている。
「ワタシはっ!…いえ、えーとね。ヒロミ…ちゃん?大声出してごめんね。」
「それじゃあ、私のお願い聞いてくれるわね?ヒロミをよろしくね」
「も、もちろんですわ。ハルカお姉さま」
まんまと二人の姉に、丸め込まれてしまったような感じもしたが、そもそもヒロミと
同い年のシルヴィがハルカたちにかなうはずも無い。
「ヒロミ、泣いたりしてシルヴィを困らせたりしちゃダメよ。明日には迎えにくるから」
ヒロミは、下を向いてこくりと頷いた。どうしようもなく不安な気持ちがこみ上げてきたが、
今それを言ってしまったら、ハルカを困らせることになる。そう思うと、黙って頷くしかなかった。
二人はそれぞれの姉を送り出して、部屋の戸を閉じた。
「ヒロミちゃん?」
「は、はい、シ、シルヴィ……お、お姉さま」
「そんなに怖がらないで。別にとって食ったりしないから」
シルヴィは、ほんの9ヶ月ほど前の自分を思い出しながら、苦笑する。
この時期はまだ、自分でも思い出すと恥ずかしくなるほど、幼い行動を繰り返したりする。
姉というよりも母とも言うべき存在がこの時期の"娘"にとっては必要なのだった。
>309
「何か飲む?紅茶なんてどう?」
「紅茶?」
「飲んだことない?とてもいい香りがするの。気分を落ち着けるには一番よ」
「……いただきます」
シルヴィは棚からポットとカップを出し、テーブルを整えて小さなお茶会の準備
をした。優雅な手つきで紅茶をカップに注ぎ、ブランデーをやや大目(これはシ
ルヴィの好み)にたらして、ヒロミの前に置く。
「ほんとう、とてもいい香りですね。シルヴィ・・お姉さま」
「いちおう同い年なんだし、シルヴィでいいわ。ワタシもヒロミって呼ぶから。
第一まだ"お姉さま"なんて、なんだかくすぐったいしね」
「でも、……ハルカお姉さまが」
「ヒロミ。いずれ姉妹として一緒に暮らすんだし、堅苦しいのは無しで……」
言いかけて、シルヴィはヒロミの表情が急に曇ったのに気が付いた。
「さっき、レイカお姉さまも言ってた、いずれシルヴィ姉さまの妹になるって。
ボ……私、ハルカお姉さまとは別れなきゃいけないの?」
「あ、いや……、そのね。人はいつか別れるときがくるわ」
「別れって?」
シルヴィはまずいことを言ってしまったと思った。ヒロミには、まだハルカは必要
不可欠の存在なのだ。自分だって急にハルカと別れることになり、新しい姉と暮
らすことになった時、不安で淋しくて泣き叫んで、2人の姉を困らせていた。
そして、アリスの娘たちの寿命は短かった。そもそも普通の人たちだって長く生き
てもせいぜい40年前後しか生きられない。クローン培養で生まれた生命の寿命は
概して短い。まして性転換という、過酷なストレスを受けた身体はさらに短くなる。
2人の大切な姉たちに残された時間も、また……。
>310
「ワタシたちはまだ若いから、年上のお姉さまが必要なのよ。本当は年の近い娘
同士がパートナーになるのよ。でも、私たちの場合それはまだ先のことよ」
「ホント?」
「ホントよ。でも、ヒロミはワタシのこと嫌い?私と姉妹になるのはイヤ?」
シルヴィはわざと意地悪な質問をした。どうあれ、明日まで2人で過ごさなくては
ならないのだ。それならば、少しでも自分になついてもらわなくては困る。
「ううん、嫌いだなんて。そんなこと」
「良かった。じゃ、こっちおいで。髪を梳(と)かしてあげる」
「は、はい……」
ヒロミは紅茶の残りを、ごくんと飲み干して、シルヴィの隣にちょこんと座った。
シルヴィは鏡台からブラシを取り出してきて、ヒロミの髪を梳かしはじめた。
「真っ黒で細くてきれいな髪ね。毎日ブラシングしてるの?」
「はい、ハルカお姉さまに。……でも、シルヴィ姉さまの、髪も銀色でとてもキレイ
です……。手も……真っ白だし。真っ赤な……目も、とってもキレイ〜!」
そういうと、振り向いてシルヴィに抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと、ヒロミ! 髪が梳かせないじゃないの」
「ふにゅ〜ん!」
シルヴィは、ヒロミに押し倒される格好で、じゅうたんに仰向けに倒された。
「ヒロミ、ふざけるのはやめ……」
みるとヒロミは頬を高潮させて、目もとろんとしている。
(さっきまで、ワタシを怖がっていたのに何で急に? 何か悪いものでも食べて
……まさか、紅茶飲んだからとか?)
船の住人の中には時々、嗜好品などの食べ物中に含まれる物質に、過剰反応
する場合がある。人によってその原因物質も症状も様々だったが。
>311
シルヴィの場合は、幸いにそうした"危険な食物"はなかったが、姉のレイカは、
ホットミルクにリキュールを加えると、強烈な催淫効果があった。
ヒロミは、シルヴィの手をとって、まだほとんど膨らんでいない自分の胸に押し
付ける。とろんとした目が、"シテホシイ"、そうシルヴィに訴えていた。
「ヒロミ!あのね、しっかりして!今、水飲ませてあげるから……」
シルヴィはヒロミを振り払おうとするが、しっかりとしがみついて離れようとしない。
その時、部屋のヴィジホンのコールが鳴り響いた。
「こんな時に誰よ!取り込み中よっ!!!」
出たくても、ヒロミと格闘中では出ようにも出られない。
何度かコールがなった後、自動的に留守応答モードに切り替わる。
「シルヴィ?ヒロミ?? いないの〜?」
声の主はハルカだった。映像が出ないところを見ると、おそらく診察室か手術室
にいるのだろう。
「……シルヴィ。言うの忘れてたけど、ヒロミにアルカロイド系の化合物が含まれた、
食べ物とか飲み物とかあげちゃだめよ。あなた紅茶が好きだけど、ヒロミには飲ま
せないでね。もちろんアルコールもね。微量でもヒロミにとっては強い媚薬みたいな
効果があるから。じゃあね!」
「お姉さまぁ! それは先に言っておいてくださいっ〜!」
(アルカロイド系……紅茶?。カフェインか!お菓子のチョコレートにも……。
それに香りつけのブランデー。トホホ〜)
自分よりも小さい体の、どこにそんな力があるのかというほど、強い力で抱きしめ
られながら、シルヴィは遅すぎる注意事項を肝に銘じた。
>312
「はぁ、はぁ……。きゅふぅ〜ん!」
切なげなヒロミの嬌声が部屋に響く。
(やれやれ、いきなり手間かけさせてくれるわねぇ……)
シルヴィは、シュミーズ1枚のヒロミを後ろから抱きかかえ、未発達の乳房の
頂点をなぞっていた。一度高められた性欲は、中々自分でも押さえがきかない。
ましてそれが、媚薬成分を含むものを口にしたとあっては。シルヴィはそのこと
を姉のレイカに、いやというほど味あわされたことがある。いや口にしただけなら
まだ、すぐに水なり冷たいものなり飲ませて、誤魔化せられたかもしれない。
しかし…ヒロミはハルカによってある程度「開発」されていた。髪を梳く行為が、
ヒロミを急速に高めたに違いない。
「はぁ〜ん、おねぇさまぁ。もっとぉ〜」
シルヴィはヒロミの首筋にキスをしながら、秘裂の頂点をつまみ上げる。
ヒロミの幼い花園はとっくに蜜であふれて、シルヴィの指をぬるぬるにしていた
ので、ぬるんっと若芽が逃げる。
「きゅっん!!」
ヒロミはビクンと体をのけぞらせたかと思うと、すぐに体重をシルヴィに預けてきた。
「イっちゃったの?ヒロミ。気持ちよかった??」
「はぁ、はぁ、おねぇ、さま、気持ちいぃ……」
(これで、収まってくれるかなぁ……。でもこのコ、かわいい顔してイクのねぇ。
なんとなく、ハルカお姉さまや、レイカお姉さまの気持ちがわかったかも?)
これまで、シルビィは「快感を与えられる側」だった。「伽を勤めるときに困るわよ」
と2人の姉に良いように弄ばれ、イかされるばかりだったから、こうして妹に
「快感を与える」のははじめてだった。一方的に与えられる、未知の快感に震える
自分が恥ずかしくて、うれしそうに責め続ける姉を意地悪だと思ったこともあったが。
(確かに、これは別種の快感かも。もっといじめて……いえ、イかせてあげたくなるわね)
一発目ageてしまった、スマソ。
鯖移転で過去ログが〜。
次は早くて週明けになると思います。
でわでわ〜
>アリスさん
乙〜!
突然ネコ化したヒロミが可愛かったです。
「ぬるんっと若芽が逃げる」
エロいフレーズだったのでメモしときました!
アリスさんが来るとほっとするな…。
他の作品を多い隠さんとばかりに毎日大量投稿してくる自分勝手とはえらい違いだ。
317 :
281:04/04/15 00:30 ID:WMXS01Ru
今回はエロ無しです。
「そんなものはいらん」という人は、スルー願います。
あ、それと「大量投下ウゼェ」という人も(´ー`;)ノ
NGワード「ボクたちの選択」
>316
名は体をあらわすを地で行ってるね。
>280
『ワンサイズ大きいもの……』
圭介は彼女のその言葉に、ちょっとうんざりした。やっぱり、測った時より大きくなってる
のだ。そう思った。
そう思うと、重たい胸がなおさら重たく感じる。これからしばらく……ひょっとしたら一生、
自分はこの不恰好なまでに大きい乳房と付き合っていかなければならないのだろうか…。
乳房が大きくて喜ぶのは、男だけだ。
圭介はそう思う。乳房が揺れるのを見て喜ぶのも、「揉みたい」とか「吸いたい」とか、そ
ういう事をして喜ぶのは男だけなのだと。
『健司のヤツ…どうしてるかな…』
圭介は不意に、温和な微笑みの幼馴染みを想った。
『あいつもでっかいおっぱい…好きだよな……』
つい、自分の深い胸の谷間を見下ろしてしまう圭介だった。
今朝は彼が朝錬で一緒に登校出来なかったし、昼休みはソラ先生のところにずっといたし、
帰りは由香と買い物に行くとだけメイルして、そのまま下校してしまったから、実のところ今
日は結局一度も顔を合わせていない。
なんとなく、寂しい。
それは本当だ。
けれどもこれは、単に友人を想う心なのだ…と思うのだ。異性として気になるとか、決して
そんな事は無いのだ。
ましてや、ノーブラで揺れまくってた自分の胸を見たら、健司ならどんな顔をしただろうか?
とか、こうしてブラをして、もっと大きくなった自分の胸を見たらどう思うだろうか?などと、
決して思ったりなんかしてないのだ。
たぶん。
いや、ほんとに。
それで健司が嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をしたとしても、圭介はこれっぽっちもドキド
キしたりなんかしないし、ましてや嬉しくなんて思ったりなんかしないのだ。
たぶん。
………きっと。
…………………………ちょっとくらいなら…。
『んなわけねーだろ?しっかりしろよ、オレ』
>317
邪魔しちゃいましたね。
申し訳ない。
>319
つい、頭を抱えてしまう。17年間の男のアイデンティティが崩壊しつつある。新たに構築
されつつあるのは、女の体の上に積み上げられる女の意識だ。
本気で男に戻る気があるなら、覚悟を決めなければならない。
それを実感する。
けれど、
「男とえっちなんて…出来るかよ…」
健司から心も身体も距離を起き、他の女性に恋をする…という選択肢は、圭介の中では最初
から無いらしい。
そして、他ならぬ自分自身でその選択肢を消している事に、彼は全く気付いていなかった。
「お客様…よろしいでしょうか?」
「あ、ひゃいっ」
思わず声が裏返り、圭介は口を抑えて試着室のカーテンを振り返った。再びするり…と、先
ほどの店員さんが入ってくる。決して中の様子を外に漏らさないような気配りを欠かさないの
は、プロフェッショナルと言えた。
圭介の声が裏返ってしまっても、店員さんは笑みを絶やさなかった。けれど、今度のは、ちょっ
と営業スマイルとは違う気がする。
彼はたまらなく恥ずかしくなり、首筋までピンク色に染めながら小さく身を縮こまらせた。
「こちらは、先ほどと同じデザインで、もう一つ上のサイズです」
「あ、はい…」
聞かれたのだろうか?
『男とえっち』という言葉は、やっぱり『セックス』という“直接な性交渉”と結び付くも
のだ。聞かれたとしたら、今この店員さんは、『この子は男とえっちするために新しい下着を
選びに来たのね』とか思ってたりするんだろうか?
恥ずかしい。
どうしよう。
否定した方がいいんだろうか?
けど、聞こえていなかったら?
聞こえてても、そんなこと思ってなかったら?
頭がぐるぐるして、顔に血が上って、どうしたらいいのかわからなくて、圭介は鏡の前で立
ち尽くしてしまっていた。
>321
■■【47】■■
「男とえっち…」
多恵は、確かにそう聞いた。
試着室から出て、多恵は今のデザインよりもう一つカップサイズを上げた、65Gを手にし
た。この店にあるGカップブラで、少女のような高校生でも買えるくらいのものは、このメー
カーのものを含めて3種類くらいしか無い。そもそも、日本人女性の体格と脂肪分布からして、
アンダー65でFカップ以上のブラが必要な女性など、滅多にいないのだ。それでも3種類も
あるのは、多恵にとっては不本意ながら女装趣味の少年とか、パーティー用の“シャレグッズ”
として買っていくお客様がいるからに他ならない。買う者がいる以上、それがどんな対象であ
ろうとも売るのが商売だ。それでも、ちょっと虚しい気持ちを抱いてしまうのは止められなかっ
た。
そういう意味でも、今日のあのメロンちゃんは、多恵にとって、とてもとても喜ばしいお客
様であった。
『本当は国内のメーカーさんが、もっと安く出してくれればいいんだけどねぇ…』
手に取った3種類のブラのうち、2種類が海外製のものだ。
国内メーカーのものは縫製も丁寧だしデザインも美しく、特にメイク力(めいくりょく)は
素晴らしいから、あのメロンちゃんのようにアンダーが細いのに胸だけたっぷりと豊かな乳房
には、どうしても日々しっかりと乳房の肉を補正し、支える、国内メーカーのブラが一番相応
しい…と思える。海外製が悪いとは言わないけれど、どうしても縫製が甘い気がして『消耗品』
というイメージが強いし、その上、メイク力の弱さはいかんともしがたかった。
もちろん、メロンちゃんもブラだけに頼るのではなく、エクササイズで乳房を支える筋肉を
鍛えてくれればもっといいのだけれど、昨今の女子高生にそこまで望むのは無理かもしれない
…とは思っていた。
70Fか75Eを合わせてみて、正確に採寸したあとで寸詰めする…という方法もあるけれ
ど、これからの事を思うと、一度キチンと自分のカップサイズをあのメロンちゃんに認識させ
ておきたい…と多恵は思った。何より、ちゃんと自分の身体に合ったブラをする事で、自分に
魅力がある事を自覚して、そして背筋を伸ばし胸を張って歩けるようになって欲しいと思うの
だ。
>322
『あの子…きっと自分の胸が嫌いなのね…』
ちょっと溜息が出る。
『どのくらいの大きさなら、おかしくないんですか?』
そう聞いた時のメロンちゃんの顔が、脳裏に浮かぶ。あんなに可愛くて、あんなに綺麗な髪
で、大きくてもあんなに美しい形の乳房をしている子が、自分の体が嫌いで、しかもそれを恥
じているだなんて…。多恵にはそれがどうしても納得出来ない。
ハッキリ言えば、我慢出来なかった。
確かにあの体格であの胸の大きさは反則(?)だと思うし、正常な発育とはちょっと言えな
いかもしれない。でも、あんなに可愛い心(ココロ)を持ってるのだから、もっと自分に自信
を持って欲しかった。世の中には、あのメロンちゃんよりはるかに性格が悪くて顔もスタイル
も劣ってるどうしようもない自意識過剰な女性が、大手を振って「コンパニオンですぅ」とか
「モデルやってるんですぅ」とかのたまってるのだから。
可愛いココロを持った可愛い女の子は、日本の宝、ひいては世界の宝なのだ。私はその可愛
い女の子を正しい道に導かなければならない。これは決して私情なんかじゃなくて、崇高な使
命なのである。
『…なんてね。バカな事考えてないで仕事仕事っと…』
ぐぬぬ…と右手を握り締めながら天井を見上げていた多恵は、ふ…と肩の力を抜くと試着室
に急いだ。
そして聞いたのだ。
「男とえっち…」
という、メロンちゃんの言葉を。
びっくりしたような、裏返った声がたまらなく可愛かった。
試着室に入り、上半身にブラだけつけたメロンちゃんは、なんだか脅えたような表情で多恵
を見上げていた。多恵も、そんなに背は高いほうではない。162センチくらいだ。それでも
メロンちゃんは、多恵の鼻か口あたりまでしか背が無かった。だから狭い試着室では自然と、
メロンちゃんは多恵を上目遣いで見るような形になる。
捨てられた子猫みたいな目をしていた。
多恵の“おねーちゃんハート”が、また“きゅううんっ”と鳴った。
『ああもうっそんな目で見つめないでっっ』
>323
…たぶん、血気盛んな男の子だったら鼻血でも出していそうなイキオイで、多恵の心臓はド
キドキしていた。
念のために言っておくが、多恵はそっち方面の人ではない。ただ、女の子が好きなだけなの
だ。それも可愛い女の子が。ものすごく。
「どうかなさいましたか?」
「あ…いえ…その………べつに……」
ごにょごにょと、そのぷっくりと可愛い唇をむにむに動かしながら言うところなど、今すぐ
家に“お持ち帰り”して、4丁目の手作り洋菓子店『フランボワーズ』の洋ナシのタルト&とっ
ておきダージリンでおもてなししてしまいたくなる。この可愛い唇が、タルトを“はむはむ”
と食べたり、ダージリンを“んくんく”と飲むところが見たいっっ!
けれど、もちろん多恵はプロフェッショナルであるからして、そんな妄想大暴走な気配など、
微塵(みじん)も見せなかった。
『なーんて…ね』
本当は聞きたかった。
「デートに着ていくの?」と、ちょっとだけ聞いてみたかった。
この子が好きになる男の子って、どんな子なんだろう?
胸が大きい事を気にするって事は、その男の子って、きっとちっちゃい胸が好きなのね。た
ぶん男の子はこの子に「俺はおっぱいがちっちゃい方が好きなんだ」なんて口には出して言わ
ないけど、でもたぶん家にある雑誌とか街で見かけるポスターとか、テレビのタレントとか、
胸がちっちゃい子に反応したりしてるんだわ。この子がそういう、好きな男の子の一挙一動を
細大漏らさず見ているなんて、これっぽっちも思わない鈍感さで。
この子もきっと「ボクの胸、嫌い?」なんて聞けなくて、でもどうしたらいいかわかんなく
て、それで悶々としてたりするんだわ。あーもう、かわいいっ!それに、今までタンクトップ
とかチューブトップばっかりだって言ってたから、自分がどんなに可愛いかとか、自分の胸が
どれだけ男の子をドキドキさせるかなんて一度も考えた事なんて無いんだわ。もしかしたらそ
の男の子は、今まで友達みたいにずっと一緒に遊んできた子かもしれないな。で、ある日ふと
その男の子の事が好きな自分に気付いちゃったのよ。それで告白して一応OKはもらったけれ
ど、男の子は胸のちっちゃい子が好きで、今になって悩み始めたんだわ。
>324
ううん。告白してないのかも。一緒に遊んでいたから、その男の子の好きなタイプって知っ
てるはずよね。だから自分の胸が大きくて、告白してもOKなんてもらえないって思い込んで、
ずっと悩んでるのかも。こんなに可愛い子が「好きです」って言ってOKしない男の子なんて
いないのに。…ってゆーか、それでOKしない男の子なんてこっちからフってやればいいのよ。
でもきっと出来ないのよね。この子、たぶんハートはものすごく傷付きやすい繊細な子なんだ
わ。
妄想大暴走。
『いかんいかん…』
多恵は心の中で自分の頭をポカポカと叩き、メロンちゃんの細い肩を持って鏡の方に身体を
向けさせた。
「少し両手を上げて頂けますか?」
「あ…は…はい…」
多恵は、ブラを装着している上からもう一枚をかぶせて、後ろのホックを引っかけた。それ
から下のブラを上に引っ張り出す感じで外す。圭介にもそれは、彼女が彼のバストトップを見
ないようにしているための処置なのだとわかった。
あっという間に新しいブラが装着され、再び後からカップの中に手が滑り込む。圭介が声を
上げる間も無く、脇の肉が寄せられ、トップ位置が調整されていく。
コンビニで売ってるエロ漫画とか、インターネットのえっちなサイトの妄想小説とかだと、
こういう場合、お姉様キャラの場慣れした手付きに翻弄されてえっちな展開になる…というよ
うな、リビドー迸(ほとばし)る“どうしようもなく頭の悪いパターン”が多いのだけれど、
店員さんの“プロの手付き”はいやらしさとは無縁で、テキパキとした素早い手順には淀(よ
ど)みが無い。
圭介はすっかり安心し、すべて彼女に任せてしまっていいのだ、と思った。
「どうですか?」
「あ、はい…大丈夫です」
多恵は、圭介の胸の谷間とブラの隙間を見て、
「いいみたいですね。これ、65のGです」
―――圭介は眩暈がした。
『あなたは異常です』と言われた気がする。
>325
「Hでも良かったのですが、あいにくここにはGまでしか無かったものですから」
「じ………じい?」
「はい」
なんだそのサイズは。
頭の中でサイズの数字が浮かんでは消える。Fカップでトップとアンダーの差が22.5セ
ンチではなかっただろうか?カップは2.5センチで1カップサイズ上がるから、Gは25セ
ンチでHは27.5センチ………。
いやまてまてまてまてまてまて……トップとかアンダーというのは胴体を含めた「胴回り」
のことだから、27.5センチがそのまま乳房の大きさということじゃなくて…。
頭から煙が吹きそうだった。
「お客様が測られた時は、おそらくヌードサイズではありませんでしたか?」
「ぬ…ぬーどさいず?」
なんだかわからないけれど、混乱した頭に『ヌード』という言葉が鮮烈に刺さって胸が不意
にドキッと高鳴り、圭介は思わず俯いてしまった。鏡の中で、肩越しにまっすぐ目を見てくる
店員さんの視線が痛い。
「上半身が裸の状態で測ったサイズです」
「あ、はい…」
「実際にブラをした状態ですと、他に流れたお肉を集めたりトップ位置を調整したりするので、
だいたい1〜2カップはアップする場合が多いんですよ。お客様は、無駄な贅肉はほとんどあ
りませんでしたけれど、それでも…」
「じゃあ…」
「お客様のカップサイズは、Gカップ、もしくはHカップではないでしょうか」
「あ、あの、由香は…一緒に来た子、呼んでもらえませんか?」
「もう一人の女の子…ですか?」
「はい」
「先ほど、化粧品を見に行くとかで、後はよろしくお願いします…と」
あの薄情者めっ!
申し訳無さそうに言う店員に当たるわけにもいかず、圭介は“むうっ”と唇を引き結んで自
分の胸を見下ろした。
>326
もちろん、由香を呼んでどうなるというものではない。それはわかっている。けれど、自分
よりずっと「女暦」の長い彼女に、なんとなく不満をぶつけてしまいたかったのだ。
『どうすりゃいいんだよ。こんなでっかいモン…』
ただでさえ大きくて邪魔なものが、ブラをする事でさらに大きくなってしまった。それは圭
介にとって、少なからずショックな出来事であった。いっそのこと、ブラを買うのはやめて、
Tシャツで押し潰すみたいにして過ごそうか?
でも、そうすると胸がつぶれて形が悪くなって、それで“だらーん”と垂れてみっともなく
なったり…。
――どうしよう。
どうしたらいい?
こんな胸、やだ。
こんな胸、いらない。
感情を止められない。止まらない。どんどんどんどん嫌な考えになっていく。
みんなに笑われる。みんなが見る。
また、いやらしい目で見られて、また頭の中でいっぱい犯されるんだ。
いろんないやらしいことされるんだ。
オレは男なのに。
本当は男なのに。
ずっと男だったのに。
こんな胸があるから。
圭介は頭がぐちゃぐちゃになり、感情が膨れ上がって、目頭がじわじわと熱くなるのを感じ
た。
■■【48】■■
驚いたのは多恵だった。
>327
カップサイズを告げたら急に連れを呼んで欲しいと言われ、いないと言うと不意に黙り込ん
で、そして
「…ぅ………っ……」
泣き出してしまった。
ぽつぽつと、試着室の床に黒い染みが出来る。肩を震わせ、しゃくりあげ、メロンちゃんは
声を殺して泣いていた。
声をかけた方がいいだろうか?
でも、どうやって?
私は単に下着売り場にいる店員で、メロンちゃんのプライベートな問題に口を挟むような立
場にいない。
そう多恵は思いながら、肩を震わせる少女をの細い肩を見つめた。けれど、試着室からそっ
と出ようとして、
「……もうやだ……」
そう、少女が小さくつぶやくように吐き出した、血を吐くような言葉に、多恵の“おねーちゃ
んハート”が、“きゅんきゅんきゅんっ!”と鳴った。可愛くて可愛くて切なくて苦しくて、
もうプロフェッショナルな従業員の営業スマイルなんて顔に貼り付けていられなかった。
「…どうしたの?」
初めて、お客に対して対等な言葉遣いをしてしまった。
入社以来、言葉遣いだけには気をつけていたのに。どんなに失礼な客にも、腹の立つ客にも、
理不尽なクレームをつける客にも、決して言葉遣いを崩したことが無いのが、彼女の密かな自
慢だったのに。
メロンちゃんはしゃくりあげ、俯いたまま
「だんでも…だい、でず」
と言った。鼻水で鼻が詰まって、おかしな声になっていた。だからなおさら、不憫に見える。
「なんでもないこと、ないでしょう?」
タイトスカートのポケットから、ハンカチを出して差し出した。けれど、メロンちゃんが受
け取らないので、なかば強引に顔を上げさせて涙を拭い、鼻水の垂れた鼻を“くちゅくちゅく
ちゅ”と拭う。
>328
店の店員が客にする事ではない…と思う。逸脱した行為だ。それはわかっている。けれど、
だからといって細い肩を震わせて声も上げずに無く少女を放っておいて良い理由にはならない。
「………店員さん…」
ずずっと鼻を啜(すす)り、メロンちゃんは涙がいっぱいに溜まって赤くなった瞳で多恵を
見上げる。
「曽我山多恵(そがやま たえ)」
「え?」
「私の名前。これはもう店員がする事じゃないから、今はただのお姉さん」
「………多恵…さん」
名前を呼ばれて、多恵は軽く目を見開いた。可愛らしい声で、気のせいかもしれないけれど
少し甘えるような音が混じっていて、背中が“ぞくぞくぞくっ”としたのだ。
『あ、でも“おねえさま”ってのも、アリだったかなぁ?』
…なんてバカな事を考えてしまったのは、ヒミツ。
けれど、メロンちゃんはそれをどう誤解したのか、
「ご、ごめんなさい。曽我山さん…」
慌てて苗字に言い直した。
「多恵でいいわよ?」
「…………た……多恵…さん…」
「ん。…ね、どうして泣いちゃったの?」
狭い試着室で半裸の美少女と2人きり…という、ちょっとヘンなシチュエーションでありな
がら、多恵はどうしても聞かざるをえなかった。この年頃の女の子にはよくあることで、肉親
にも友達にも話せないヒミツの一つや二つ、必ずその胸の中に秘めているものなのだ。そうい
う悩みは、誰にも相談出来ないままだと、たちまち悪い『種』になってしまう。その『種』は
やがて芽吹き、女の子を闇へ引き込むツルを伸ばし……そして少女は堕(お)ちてゆくのだ。
肉親にも友達にも手の届かない、暗い闇の中へ。
…と、そこまで大袈裟に考えなくても、自分の生活とは全く関わりの無い赤の他人だからこ
そ話せることもあるだろうし、また、そういう存在は必要だろうと、多恵は思ったのだった。
「…胸を」
「胸?」
「…小さく見せる方法は、ないですか?」
見上げてくる瞳が切実だった。
>329
ここまで。
買い物はもう終わってるのですが、今日はこのくらいで。
>283
多恵姉さんは、圭介が「女として」の自分を考える上で出したかった「年上のひと」です。
……えっちまでもっていけるかどうかはわかりませんが。
>アリスさん
十分エロいです(笑)
アリスの娘は存在自体が背徳的でえろーなので、普通にしてても十分萌えたり。
個人的にはサァラが好きなんですけど「欠損部分」…って…( ̄口 ̄;)
ぼちぼちいきます。
331 :
名無しさん@ピンキー:04/04/15 00:59 ID:wBoJwm/f
>>330 萌え狂いそうです。
今、大声で叫びながら走り出すという、
とても近所迷惑な事をしたい気分です。
でも通報されかねないので自粛しておきますね。
>>330 圭ちゃん可愛すぎ。女としての経験の不足がどうして良いか解らない戸惑いになって
本来の精神年齢以上に幼く弱く見せているところがとてつもなく可愛い。
今後の展開期待しております。
けいタンの涙声に(;´Д`)ハァハァ
こんなにたよりなくって可愛らしい女の子だったら
多恵お姉さまじゃなくても悶え苦しみそう
>>330 グッジョブ!!
ところで誰か前スレのログ持ってないですか?
10日ぐらいネットかは離れてたもので見逃してしまった…
名スレ見つけた!
「あいつが僕で〜」を思いマスタ。
>337
「おれがあいつであいつがおれで」のことかな?
>330
駄目だ。キュン死にする。
340 :
330:04/04/16 00:57 ID:vJvs4N1h
すみません。
今回もエロ無しです。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>329
多恵はその瞳に胸を突かれ、息が詰まる思いがした。
この愛らしい子が、こんなにも自分の身体を厭(いと)う理由とは、なんだろう?自分を否
定してまで得たい恋があるのだろうか。それとも、単に思春期ゆえの不安定なココロから?
自分の高校生時代は、どうだったろう?
『私は、私を好きでいてあげられていただろうか?』
言葉にすればそんな想いが、多恵の胸に満ちる。
彼女は、涙の滲んだ少女の目をまっすぐ見ながら、ゆっくりと一言一言区切るようにして問
うた。
「自分の、胸、嫌い?」
「嫌いです」
キッパリ言った。
「男が見て、イヤな気持ちになります。ヘンな目で見られるのはイヤです。気持ち悪いです。
恥ずかしいです。前はそんなこと無かったのに、こんな胸になったら急にイヤなことばかりで
す。見られるのも触られるのも、もうヤなんです」
一気に言って、メロンちゃんはまた俯いた。
多恵は少女の心に、重たい『石』が乗っかってると思った。その『石』は、ある日突然空か
ら落っこちてきたわけではなく、じわじわと大きくなって、気がついたら自分でもどうしよう
もないくらい大きくなって、もうどかすにどかせなくなってしまった重たい『石』だ。決して
「岩」ではないのは、自分の想い一つで簡単に取り除けるくらい小さいものだから。体ごと心
まで押し潰してしまいそうなくらい大きいものではないから。
「……男の人、嫌い?」
「ダチは嫌いじゃないです。でも、野郎は嫌いです」
『ダチ』と『野郎』の意味が、多恵にはよくわからなかった。
「気になってる子はいるの?」
「…………いない、です」
躊躇いがあった。
多恵は“ふっ”と肩の力を抜くと、
「男の子は、みんなおっきいおっぱいが好きよ?そりゃもう呆れるくらい。おっぱいがおっき
ければあとはなんでもいいってくらい。それくらい、バカ」
「バ…」
「そう。バカ。どうしようもないクズよね」
>341
「クズ…」
メロンちゃんは、多恵のそのキッパリとした言い様(よう)に、息を飲んだ。
「女の体の一部で一喜一憂して、ワイワイ騒いだりからかったり。ほんと、どうしようもない
ク」
「…アイツはそんなんじゃな」
多恵の言葉を遮るように出された言葉が、途中でブツリと切れる。見れば、少女は耳まで真っ
赤になって、多恵から見えないように顔を背けていた。
なあんだ。
『やっぱりいるんじゃない』
かわいいなぁもうっ!…と、多恵は一人でふにふにと笑ってしまう。
多恵は圭介の両肩にやんわりと両手をのせると、軽く屈み込んでメロンちゃんの艶やかな黒
髪に頬を寄せた。
「ね、女の子に、なんでおっぱいがあるか、知ってる?」
「…え?」
急に変わった話に、圭介は目を瞬(しばたた)かせて鏡の中の多恵を見た。鏡の中の彼女は、
どこか悪戯っぽい表情で、口元を優しくゆるめている。ランジェリー売り場のプロフェッショ
ナルなお姉さん…というより、近所のお姉さんといった感じで、親しみが“ぐぐぐっ”と増し
ている。
圭介が、頬がますます熱くなるのを感じながら幼女のように“ふるふる”と首を振ると、
「女の子のおっぱいはね、大好きな人を癒してあげるためにあるの」
鏡の中のお姉さんはにっこり笑って、圭介の髪を優しく撫でてくれた。
「いや…す…?」
「ちっちゃいおっぱいも、おっきいおっぱいも、みんな。ほら、ええと…………」
「???」
本当ならここで名前を教えてくれるはずなのだけれど、こういう会話に慣れていない圭介は
不思議そうに見つめるばかりだ。
仕方なく多恵は諦めて、
「……名前、なんだっけ?」
「けいす…………ケイでいいです」
>342
本当の名前を言うと、それだけでまたややこしい話になりそうだったので、圭介はそう答え
た。
偽名ではない。途中で切っただけだ。
けれど、本当の名前を言えない罪悪感に、圭介の小さ………大きい胸が、ちくりと痛んだ。
「ん。じゃあケイちゃん、小さい頃、お母さんに“ぎゅっ”ってしてもらった事あるでしょ?」
「……はい…」
今でもしょっちゅうされてます…とは言えなかった。
「哀しい時や苦しい時、なんだかわかんないけれどムカムカした時、お母さんに“ぎゅっ”て
してもらったら、楽にならなかった?ふあふあして、いいにおいして、あーもうなんでもいい
や…って、ならなかった?」
「……なった……かも…」
「女の子の胸にはね、ヒーリング効果があるの」
「ほんと?」
初めて聞いた。
「うん。ケイちゃんも時々、誰かを“ぎゅっ”ってしてあげたくなる事、ない?」
「…………ある」
幼馴染みの、朴訥(ぼくとつ)で純朴(じゅんぼく)で暢気(のんき)で、晴れた日の牧場
でのんびり草を食(は)んでいる牛みたいな顔が浮かんだ。
不思議と、否定しようとは思わなかった。
「ふふ。それはね、『あーこの人に元気をあげたいな。私の心の中の元気な部分をあげたいな』っ
て思ったり、『この人を“ぎゅっ”ってしたら私も元気になるかな。もっともっとこの人に元
気をあげられるくらい、元気になるかな』って思うからなの」
「………ほんとに?」
「ほんとほんと」
ウソかも…と思った。
「あ、今、ウソかもって思ったでしょ?」
「えっ!?」
びっくりした。多恵さんは心が読めるんだろうか?
「ウソじゃないよ。でも…ホントでもないかな?」
「……は?」
>343
「けど、私はそう信じてる。そう信じたいし、そう信じれば、ケイちゃんもきっと自分の胸が
好き……まではいかなくても、嫌いにはならないと思う。
ケイちゃんのおっぱいはね、ケイちゃんが『元気をあげたい』って思った時に、それが出来
るようにおっきくなったんだよ。
ケイちゃんが『癒してあげたいな』って思った時にそれが出来るように、ここまでおっきく
なったんだよ。
だからそれを嫌だって思ったり、恥ずかしいって思う事は無いの。ケイちゃんが『元気をあ
げたい』『癒してあげたい』って思う相手以外にどう思われても、それは関係無いし、その相
手に必要とされる事に比べたら、そんなのはなんでもないって、きっと思えるようになる。
これはホントだよ?
だから、胸の大きな自分を嫌いにならないで。自分の体の一部を否定しないで欲しいの。少
しずつでいいわ。少しずつでいいから、ケイちゃんには自分の体を好きになってあげて欲しい。
そのためなら私、いろいろ教えてあげる。もちろん、仕事はヌキだよ?
ケイちゃんがちゃんと自分の胸を好きになれるまでなら、小さく見せる方法だって教えてあ
げる。ね?」
鏡の中の多恵の顔は、明るく、優しく、そしてちょっとだけ悪戯っぽくて、圭介は心の中の
固いしこりが少しずつやわらかくなっていくのを感じていた。
■■【49】■■
それから圭介と多恵は、ブラの試着をしながら色々な事を話した。『胸を小さく見せる方法』
も教えてもらって、結構いろいろな方法があるのだと知った。
中には、ブラを、アンダーが1サイズ大きくてカップサイズが1〜2サイズ小さいものにす
る…というものがあった。最近のブラが、ほとんど「寄せて上げる」(バストアップ)効果が
あるのに対して「広げてつぶす」方法だ。
でも多恵さんにちょっと怖い顔されて、
「これは胸の形が悪くなるかもしれないから、ケイちゃんはぜったいにしちゃダメ」
と言われた。
「しない方がいい」ではなかった。「しちゃダメ」と禁止されてしまった。
>344
人から強制されるのは本当は好きではないはずなのに、なんだか嬉しかった。それが不思議
だったけれど、一人っ子の圭介には、こうやって「いけないこと」を「いけない」のだと教え
てくれる多恵さんが、なんだか「お姉さんがいたらこんなのかなぁ…」と思えてしまったのも
事実だ。
「ブラキャミソール」というものも教えてもらった。けれど、意外にゆさゆさ揺れてしまう
らしいし、これは圭介の思い込みだけれど、シルエット的にも学校に着けていくには、ちょっ
とダメっぽい気がした。それに、キャミソールというのはなんだかえっちっぽくて、着替えの
時とかにクラスメイトの女子に見られると思うと、ちょっと恥ずかしいと思った。
他にも、「パッド無しの一枚レースブラ」とか「ストレッチコットンブラ」とか、インポー
ト(輸入品)ものも教えてもらった。インポートに限って言えば、お金に余裕があるなら「消
耗品」と割り切って買うのもアリ…だとか。洋服の文化で発達したので、立体裁断では日本よ
り一日の長があり、色もデザインも豊富だから、選ぶ楽しみが味わえる…とも。圭介はさすが
にその楽しみに進んで目覚めるのは、まだちょっと遠慮したい気分だったので、曖昧に返事し
ておいたけれど。
「ノンワイヤーブラ」も教えてもらったけれど、圭介くらいの大きさになると安定が悪くて
お勧め出来ないと言われた。
最後に、この売り場には無いけれど海外メーカーの、大きい胸の人用の「ミニマイズブラ」
というのも教えてもらった。パナシェというブランド名で、商品名は「ミニマイザー・アクティ
ブ」…なんていう、なんだかロボットアニメの必殺技みたいな名前だった。着けるとおっぱい
ビームでも出そうだけれど、もちろんそんな事は無い。値段は5000円弱…と、なんとか手
が届く(他の7000円とか1万2000円とかのブラに比べれば、だけど)ものの、色気も
そっけもない機能重視のブラだから、年頃の女の子的にはどうかな?とか言われた。
>345
けれど、むしろ色気なんて無い方がいいと思ってた圭介は、店にあったカタログでそのブラ
を見せてもらった。黒とグレーがあって、特に黒はなんだかカッコイイと思えたので、取り寄
せてもらう事にする。
お金の事が心配だけれど、貯金を少し下ろせば大丈夫だし、いざとなれば母に出してもらお
う…と圭介は思った。自分でもズルイとは思ったけれど、女になる…なんていう不慮の事態は、
本来なら圭介の人生にはあるはずのない出来事だし、その責任の一端は確実に母にあるのだか
ら、それくらいは負担してくれてもいいと思うのだ。「何かをねだる」…という事を普段はほ
とんどしない圭介だから、たぶん母はむしろ喜んで負担してくれるのではないだろうか?…と
いう打算があったのは確かだけれど。
そして、多恵さんにパソコンを持ってる事を話すと、今ではインターネットでも簡単に下着
を購入する事が出来るし、装着サンプルの画像も豊富にあったりするから、「参考にするとい
いよ」と言われた。
「でも、フィッティングだけは実際にしてみないとわからないし、アンダーのリサイズも、ちゃ
んと購入したお店でしてもらった方がいいと思うから、私は自分の脚で店に行く方を選ぶなぁ」
5着目のインポートブラのフィッティングをしながら、多恵は背中越しに言った。この店に
来た時に比べて、もうずいぶんと口調が砕けてしまっている。「ほんとうは、ちゃんと接客用
の言葉遣いをしなくちゃいけないんだけどね」と言いながら“ぺろっ”と舌を出す多恵さんは、
年下の圭介が見てもなんだか可愛らしくて、ちょっとだけドキドキした。
結局、圭介は国内メーカーのものを1つと、ノンワイヤーのフルカップを1つ、それにちょっ
と安いスポーツブラを1つ選んだ。
ノンワイヤーのフルカップブラは、なんだか外見は「おばさんブラ」そのものって感じでは
あったけれど、乳房を下から上に、持ち上げながらやや押さえ付ける……という感じで、意外
に安定感があったから選んだのだ。
>346
安いスポーツブラ(それでも3000円弱した)は、家の中や寝る時などに着ける事にする。
昨日の段階でもうずいぶんと膨らんでいた乳房の、あの重たい感じを、少しでも軽減したかっ
たからだ。それに多恵さんに、おっぱいは寝てる時に脇に流れやすいから気をつけてね…なん
て、ちょっと脅されたからでもある。
そして、パンツも数枚買った。多恵さんにメジャーでサイズを測ってもらい、ブラとお揃い
になるデザインのものを数種類用意してもらい、その中から自分で選んだ。選んでいる時、ちょっ
とだけ…………そう、ちょっとだけ、なんだか嬉しくてどきどきして、楽しかったのはヒミツ。
タイプはローレグのボーイズレッグタイプやローライズタイプを中心に選んだけれど、一枚だ
けレースのフルバックタイプを選んだ。それを選ぶ時、レースの部分がすごく可愛くて綺麗で、
こんなのを履けるんだ…と思ってドキドキしてしまったのは、誰にも話せない…話さない、ぜっ
たいのぜったいのぜっっっったいの、ヒミツだった。
ブラジャーを2着とパンツを4枚、それに総合カタログを3冊とレシートと注文伝票控えと、
それから多恵さんの個人的なケータイの番号と下着の洗い方を間単に書いたメモ…それらの入っ
た手提(てさげ)袋を手にして、圭介は多恵さんに“ぺこっ”と頭を下げた。こんなに素直に
人に頭を下げたのは、いったいいつの頃以来だろうか。
そして今、圭介は買ったばかりのブラをつけている。サイズがぴったり合っているから、着
けていても着けているのを忘れてしまいそうなほどだ。歩いても体を揺すっても、不用意に乳
房が揺れてしまうという事が無い…というのは、やっぱり嬉しい。
「どう?気持ちいい?」
「え?」
「胸」
「あ、はい」
「よかった」
多恵の顔に、営業用ではない笑みが浮かぶ。
一人の客に長時間かかりすぎのような気もするけれど、閉店直前だったから、まあ、いいだ
ろう。1時間でも、けっこうゆったりと買い物させてあげられた気がしたから、多恵も嬉しかっ
た。
>347
ここまで。
次は健康診断を経て、「ごにょごにょ」としておいた「……」まで書けたら…いいなぁ。
>339
「キュン死」…。
すみません。
噴きました(´ー`;)ノ
リアルタイムで楽しませていただきました。
イカン、萌え死んでしまうっ
おお!!素晴らしいです。
我輩も貴方様のような小説が書きたいです。
>>348さん
このシーンでエロを期待していた自分が恥ずかしいです。
読んでいてこちらまで癒されたと言うか、元気をもらえたような
気がします。本当に素晴らしい作品ですね。
>>348 圭ちゃんがとっても可愛いです。こんな可愛い子はどんな事があっても決して不幸になっちゃいけません。
こんな可愛い子が不幸になることは宇宙の摂理に反しています。
圭ちゃんが大好きな健司は、その一命を賭して圭ちゃんを幸せにするように。
圭ちゃんを幸せにするためであるならば、生身で大気圏突入しようと、素手で星の一つや二つ砕こうと全て
許せます。って事で、健司は絶対に圭ちゃんを幸せにするように。
今のスレから読み始めたから、どうも健司のイメージが掴めないなあ…
前スレではもっと登場してたんですか?
うむ。過去ログか。
実はワシも先日の鯖移動の際のゴタゴタで迂闊にも削除してしまったのじゃ。
困ったのう。
ワシも「アリスの娘たち」の姉妹関係がいまひとつうる覚えでのう。
誰か保存してる者はおらんものじゃろうか。
>>348 萌え萌えですた♪
あと多恵さんも素敵です。
こんな人が店員さんだったら
おにゅ〜のぶら買うときは
ぜったいそこ行っちゃうかも。
ぎゅっ☆ってしてあげたい時かぁ・・・(*´∀`)
>>354 普通にdatファイルはパソコンに残ってるけど
うpしても良いの? ってか、うpの仕方が・・・?w
強制みたく保管庫作ってくれる神をキボンヌ
AirH'でのんびりうp・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・でかい。 リロード ΣΣ(゚Д゚;)えっ500kbなのに。。。。。
ごめんなさい。。。
テキストでうpしますたw
分かりやすいでしょ?(*´∀`)
363 :
337:04/04/17 00:42 ID:vfdsJm1m
364 :
348:04/04/17 01:27 ID:7GvnXk0V
エロに向けて、エロくない部分を投下しておきます。
…というわけで、すみません。
今回もエロ無しです。ラストへの伏線だけ張っておきます。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>347
「では、商品が入荷致しましたら御知らせ致します。連絡は御自宅の方でよろしいですか?」
多恵は、わざとおすましして圭介にそう言うと、
「今度、もうちょっと安くていいの、探しておいてあげるね」
と小さく囁いて、ぱちっとウィンクした。
「はい」
結局、学校の帰りに銀行のキャッシュディスペンサーで下ろしたお金は、ほとんど使ってし
まった。下着にこんなにもお金がかかるなんて予想外だったのだ。男にはブラなんて必要無い
し、トランクスなんて3枚1000円の安いので十分だったのに…。
由香は「3000円あればけっこう可愛いの買えるよ」と言ったけれど、それはCカップま
での話。D以上になると、おばさんブラじゃないものを選ぼうとすると、すぐ値段が張ってし
まう。安いだけなら、たぶんそんなに悩まなくてもいいのだろう。けれど、安いだけだと、す
ぐに傷んで買い換えないといけない気がして、嫌だった。
だから、多恵さんの「安くていいの」という言葉は、本当に嬉しかった。ついさっきまで、
「男に戻る」事を真剣に考えていたことさえ、忘れてしまうくらいに。
「だいじょうぶ。ケイちゃんならきっと何着けててもバッチリグーだよ」
「え?」
「しょーぶしょーぶ」
…何が「勝負」なのだろうか?
右手の親指を立てて左手を腰に当てニコニコと笑う多恵さんに、圭介はものすごく違和感を
感じた。
でも、聞かない事にする。
なにかすごい誤解があるような気がしたけれど。
「あの子、来ないね」
ちょっと背伸びするみたいにして、売り場の外を見回しながら多恵が言った。短いポニーテ
ールが“たふたふ”と左右に揺れてなんだか可愛い。
「由香?」
「“ゆか”って言うの?お姉さん」
「…お姉さん?」
不思議そうに圭介が言うと、多恵は「あれ?」というような顔をして彼を見た。
「あ、えっと、姉妹…じゃない?」
「オ……ボクと由香が?違いますよ。ただの幼馴染みです」
>365
「じゃあ…先輩?」
「…どうしてそうなるんですか」
「だって…えっ?同い年?」
「……そうですけど?」
「そう…なんだ…へー…」
「………どーゆー風に見てたんです?」
さすがに圭介が眉をちょっと顰めながら言うと、多恵はバイバイするように慌てて体の前で
両手を振って、
「あ、ううん。べつに。うん。そう。あはははは」
と、思いっきり怪しい挙動で笑った。
「どうせボクは童顔だし背も低いし、ちんちくりんですよ」
「あ、『ちんちくりん』って死語じゃないかな?」
「多恵さん?」
圭介がにっこり笑いながら「さん?」を「さぁん?」と発音する。こんな時にも「あ、なん
か、ちっちゃい子犬がいっしょうけんめい威嚇(いかく)してるみたいで可愛い」と思ってし
まう多恵は、やっぱり重症だった。
その時、思い出したように閉店時間を知らせる音楽が、ざわついた店内を流れ始めた。『蛍
の光』のオルゴールヴァージョンだ。それと同時に、閉店のアナウンスが天井のスピーカーか
ら聞こえてくる。
「あ、ほら、来たわよ」
多恵の声に、彼女の見ている方へ顔を向ける。
果たして彼女の視線のその先には、何かをいっぱいに入れた手提げ袋を左手に下げて、なぜ
かツヤツヤの肌で『ほにゃにゃーん』とした顔で歩いている、少しトロそうなおねーさんが、
いた。
■■【50】■■
山ほどの試供品とカタログと、化粧水と乳液と、それに敏感肌用低刺激石鹸を入れた手提げ
袋を抱えながら、由香は駅のホームのベンチに圭介と一緒に座っていた。
駅のホームは、夜の8時近くにもなれば、人影もぐっと少なくなる。
もうすぐ19時52分発の普通列車が到着する予定だ。学校帰り…と言うには、少し遅い時
間かもしれない。
>366
繁華街にはまだまだ人はたくさんいて、圭介がそこを避けて通ったために、本当ならデパー
トから10分くらいで着くところを、20分近くもかかってしまったのだ。
買い物の前にデパートのトイレで、胃の中身を全部吐き出してしまった圭介は、お腹が空い
ているのか、妙に無口だった。せっかく彼のために試供品をいっぱいもらってきたのに、由香
にはそれを渡すきっかけが無かった。普段使わない乳液まで奮発(ふんぱつ)して買ったのだ
から、出来ればこれからちょっと家にお邪魔して、彼の顔にいろいろしてあげたかったのに。
それに、彼がどんな下着を買ったのか、由香は知らない。見せてくれないから。
「ちゃんと可愛いの、買った?」
と聞けば、
「うん」
と、ちょっと憮然とした顔で返事するし、
「もしかして、ものすごくえっちなの買ったの?」
と聞けば、
「ばっ…ばばば…ばかっ…んな事あるかっ!」
と顔を真っ赤にしながらもちゃんと答えるから、彼をほったらかしにした事を怒ってるわけ
ではなさそうだった。もっとも、肌の状態を診てもらった上、スキンケアのテストやちょっと
したメイクまでしてもらったから予定よりずっと時間がかかってしまった……なんてことは、
ちょっと言えないのだけれど。
「ねえ、けーちゃん」
「んー?」
横に座る圭介の顔をちらちらと見ながら言うと、彼は気の無い返事をしながら唇をむにむに
と動かした。これは、何かを考えている時の圭介のクセのようなものだ。自分でもうまくまと
まらないけれど、それでも何か答えを出したいと思っている時の。
「ん。なんでもない」
「んー…」
電車がホームに滑り込み、少し遅れて風がセミロングの髪をなぶる。17年間も慣れ親しん
だ、ホコリと排気ガスと湿気の匂いだった。ベンチから立ち上がって、出来るだけ人の少ない
車両を選んで乗り込んだ圭介を、由香は少し後からついて歩く。
車内は適当に空いていて、一日の終わりの、あの独特の気だるい雰囲気が車両に満ちていた。
乗り込んできた2人に視線を向ける人は特に無く、心なしか圭介も“ほっ”としたように見え
る。
>367
「まだ、人がいっぱいいるのはイヤ?」
不意に向けられた言葉に、圭介は由香を見た。
「なんで?」
圭介の問いに、由香は周りを見て近くに人がいない事を確かめてから少し声を潜め、
「…べつに。ただなんとなく、けーちゃん、行きの電車の中でものすごく辛そうだったし、そ
れってやっぱり急に“オンナのコのカラダ”になったことと関係あるんじゃないかな?って思っ
たから。私だって、時々すごく人ごみが苦手になる時があるし、けーちゃん、デパートで吐い
たでしょ?そういう経験、私にもあるから」
…と言った。
「……由香も?」
「うん。あのねぇ、女の子の体って、すごくデリケートなんだよ。精神的に不安定だと、体も
正直で、すぐに気分悪くなるの。自分でもイヤなんだけど、前にソラ先生が言ってた。女の子
は次の世代を産むための大事な身体を護るために、男よりずっと繊細で丈夫に出来てるんだっ
て」
「繊細で丈夫…って矛盾してない?」
「ちょっとの変化や悪環境にも反応して自分に警告を出すくらい繊細じゃないと、人は自分の
身体を大事にしないから。でも、その環境にちょっとやそっとじゃ負けない丈夫さも持ってな
いと、子供は産めない。環境に負ける女性は消えて、そういう変化や悪環境にも耐えて子供を
産める者だけが、次の世代を産む権利を得る………って、ソラ先生は言ってたよ」
「へえ……」
圭介は、母と同じ『星人』である美智子の、あまり女性を感じさせない顔を思い浮かべた。
そして由香の、顔に似合わない頭の良さを改めて実感する。圭介には、たとえ美智子に聞いた
としてもそれを理解して、その上でこうして誰かに伝える事なんて出来そうになかった。
由香は、圭介がなんとなく感心しながら自分を見ている事に気付かない素振(そぶ)りで、
「あんまりムチャしないでね?」
…と、ポツリと呟いた。
「……オ……ボク、ムチャしてる?」
「うん。女の子なのに、男の子と同じ気持ちでいる」
「だってそれは…」
『しょうがないじゃないか』という言葉を飲み込む。
>368
17年間男として生きてきた習慣や感覚が、そんなにすぐに変わるものではない。それに、
自分でも変えるつもりは無かったのだ。
圭介は胸を隠すようにして抱え込んだ、デパートの紙袋を見下ろした。
女の下着。
ランジェリー。
レースのパンツを見ている時、綺麗で可愛くて、なんだか嬉しくなった。
これは男だった時には考えもしなかった事だ。
けれど、今ではその「嬉しい」という気持ちを認めている自分がいる。
『心まで、完全に女になってきている』
そう感じる。
少し前までは、それを「イヤだ」「気持ち悪い」「怖い」と感じる自分がいた。
けれど、今はどうだろうか?
「もう、ムチャしないでね?」
「でも…」
「しないでね?」
真剣な由香の眼差しが、胸を刺した。
自分は本当に男に戻りたいのだろうか?
それとも、女のままでいいのだろうか?
このままでいたいと、思っているのだろうか?
『お前は健司が好きなんだ。好きで好きでたまらないから、女になった。お前の体が、健司と
の子供を欲しがってるんだ』
ソラ先生の言葉が、鮮明に蘇る。
《男に戻るには、健司と物理的にも精神的にも遠く離れ、その上で他の女性に恋しなければな
らない》
《それが出来ないのであれば、誰でもいいから男と寝て、精液を膣内で感じた時に強烈なスト
レス感知を期待するしかない》
>369
それをまた、思い出す。
健司と離れる事も、すぐに男とセックスする事も、両方とも出来ないのであれば、また変化
するまで何ヶ月も…ひょっとしたら何年も、気長に待たなければならない。
それまで女として生きなければならないのは、もはや決定事項のように思えた。
母やソラ先生は、圭介が健司の子を身篭る事を期待している。今ではそう思える。もちろん、
地球人の男で、圭介がそれを了承さえしていれば、たぶん誰でもいいのだろうけれど、そこで
ストレスを感じて男に戻ったら、今度は恐らく、由香を身篭らせる事を望むような気がした。
由香を異性として見るのは、健司を異性として見るのと同じくらい難しいというのに。
『健司と………セックス……??…』
なんだか妙な気分だ。今はまだ、健司を異性として見るには抵抗があるのだ。無意識ではど
う感じているかは自分でもわからないけれど、理性の上では、まだ彼は「親友」なのだから。
『もう…慣れていくしかないのかな…』
“女である”ことに。
“女をやる”ということに。
圭介は車窓の外を流れる夜の街並みに目をやりながら、小さく溜息を吐き、
「わかった」
と、由香に呟いてみせた。
■■【51】■■
駅のトイレで一応制服に着替えてから外に出ると、駅前ロータリー広場の時計の針は、8時
17分を指していた。
「すっかり遅くなっちゃったな」
「うん」
駅前商店街は、8時を過ぎるとほとんどの店がシャッターを下ろし、閑散としてしまう。ロ
ータリーに停まっている数台のタクシーだけが、人の生活を意識させていた。金曜ならば9時
を過ぎる頃から通勤帰りの酔っ払いが増えるところだけれど、今日はまだ月曜なのだ。そのせ
いか、タクシーの台数も心なしか少なかった。
今日一日で、いろんな事があったな…と、圭介はしみじみと思った。
>370
朝起きて、胸がE………Gカップになってた時は、笑うしかなかった。ノーブラで学校に行っ
て、すごく痛い思いをしたり、女子連中にもみくちゃにされたり、吉崎を追い回して張り倒し
たり……。
『ソラ先生……』
中性的な保健教諭が、実は『星人』だったと知ったのも、まだたった9時間程度前の話なの
だ。それから、『星人』のこと、自分の体のこと、この街のことなどを聞いた。今、この瞬間
も、自分は『星人』達に見守られているのだろうか…。
『あんまり自覚無いけど』
周囲を見ても、それらしい人影は無い。たぶん、それなりの設備…というか、機械でモニタ
ーしているのだろう。対象である圭介の、精神的な負担にならない程度に。
そして昼休みには「男に戻る方法」をソラ先生に聞いた。
それは、健司と遠く離れ、その上で他の女性に恋するか、または誰でもいいから男とセック
スして、精液を膣内で感じた時に強烈なストレス感知するか…。
『ムチャ言ってくれるよな…』
ソラ先生の、人を食ったような笑みが脳裏に浮かぶ。
胸がGカップなんていう体格からは大きく外れたサイズになったのは、健司が「おっぱい星
人」だと知っていたから、その健司に気に入られるように肉体が変化したのだと、彼女は言っ
た。そして、それはたぶん健司の近くにいる限り、元に戻る事は無いのだろう。
結局、今日明日どうこう出来るような問題ではないから、放課後に部活を休んで由香と遠く
離れたデパートまでブラジャーを買いに行ったのだ。
思い返すだけで頭が痛くなってくる。
恋愛シミュレーションで言えば、数か月分のイベントを一気に消化した気分だった。
「ん…ちょっと寒いね」
ロータリーをぐるりと回りながら、由香がぶるっと身を震わせる。
「昼間降った雨のせいだろ」
「6月なのに…」
「6月だからだよ」
横断歩道を渡り、駅前コンビニの前を横切る時、不意に由香が圭介のセーターを摘んだ。
「ね、けーちゃん。なんか買ってく?ほら、お腹減ってるでしょ?」
「いいよ。家で食うから」
>371
電車に乗っている時、圭介のケータイに母からメイルが届いた。家に帰っているから、早く
帰りなさいというメッセージだった。買い物に行っていた事と、もうすぐ駅に着く事をメイル
しておいたから、今頃晩御飯の用意をしてくれているに違いない。
これだけお腹が減っていれば、たとえどんなとんでもない料理が出てきても、食べられるも
のなら全部平らげてしまえそうだ。
「山中?それに川野辺も。どうしたんだお前ら」
ふと聞こえた声に顔を上げると、コンビニから見知った顔が出て来るところだった。
しかも、圭介にとっては、ちょっと会いたくない相手だ。
「げっ」
「なんだ『げっ』てのは。お前ら、こんな時間までナニしてんだ」
高校教師、高尾(アナゴ)は、生活指導担当らしく憮然とした顔で圭介を睨み付ける。
圭介にとっては、1年の頃からの確執が少しは和らいだとはいえ、苦手である事には変わり
のない相手なのだった。
「買い物」
手に下げた紙袋を上げて憮然と言う圭介は、アナゴの目が自分の大きく張った乳房に留まっ
たのを見て、
「生徒のチチにキョーミあんのか?」
「いや、お前、それ…」
アナゴとは今日、一度も顔を合わせていない。だから、話には聞いていたとしても、実際に
大きくふくらんだ胸を見るのは、たぶんこれが初めてなのだろう。
「ふくれた」
「……ふくれたぁ…?…」
「見たいのか?見るか?見せてやろーか?」
挑発的に“ほれほれ”と胸を揺する圭介の頭に、由香が後から“ずびしっ”と“ちょっぷ”
した。
「…さっさと帰れ。こんな遅くまで、こんなとこフラフラしてんじゃない。お前達、自分が女
だって事、ちゃんと自覚してるか?」
「…わーってるよ」
「けーちゃん、言葉遣い」
また“ちょっぷ”が落ちた。
今度はちょっと強かった。
>372
「………わかってます」
由香の『女の子チェック』は、目上の人への言葉遣いにも適用される厳粛(げんしゅく)な
ルールなのだ。
「こんばんは。高尾先生」
「おう」
高尾(アナゴ)は由香に答えると軽く右手を上げ、
「さっさと行け」
と横柄に言った。なんだか挙動が不審だ。
「先生は、買い物ですか?」
「ん…ああ、まあ………いいから早く行け」
その不審さに圭介が何か言おうとした時、
「先生?アイスはバニラが良かったですか?一応、チョコも買っておきましたけど…」
「あ」
「え?」
アナゴの後から買い物袋をゴソゴソ覗きながら出てきた人物と、圭介達の目が合った。
童顔の顔にソバージュの髪、黒縁眼鏡にちょっと似合っていない堅苦しいスーツ、そしてオ
トナっぽいローファー…。
「きゃっ!?あ、あああぁあぁぁ、山中クン?川野辺サン?」
「はるかちゃん……ナニしてんの?」
顔を真っ赤にして、アナゴの陰に隠れるように身を縮こまらせたのは、圭介と由香の担任の
はるかだった。
「あの、あのあのあのあの、あのね、これはね、違うの。あのね、職員会議が長引いてね、そ
れに部活の定例会があったものだから遅くなってね、それで小テストの採点もしてたら晩御飯
食べそこなっちゃって、そしたら高尾先生も晩御飯まだだっておっしゃるもんだから、私、最
近ちょっと料理覚えたの、煮物とか、煮魚とか、だから、その、決してやましいことなんかな
いのよ?ぜんぜん、そうまったく、ちょっと残念なくらい…じゃなくて、あの、そう、ええと、
これは教師間のコミュニケーションを潤滑にするためのいわば」
「坂上先生。ちょっと黙ってなさい」
「はい…」
アナゴの溜息混じりの制止に、たちまちはるかちゃんは“しゅん”としてしまった。
「へー………」
>373
「なんだ山中」
「いえ、べぇつぅにぃ」
23歳のはるかちゃんと43歳のアナゴでは、親子ほども歳が違うものの、はるかちゃんが
恩師の事を男として好きな事を知っている圭介としては、祝福すべきなのかもしれない。でも、
面白くなかった。アナゴが4年前に奥さんを亡くしていて、今はフリーだから問題無いのだと
しても、なんだか面白くなかった。
「……言っておくが、最近ここらあたりで女子高生を相手にした変質者が目撃されてな。それ
の巡回も兼ねて見回ってるだけの話だ。誤解するなよ?」
「へー…ほー…ふーん…」
「……お前の思ってるような事は一切無いんだからな」
「全然?これっぽっちも?」
「これっぽっちもだ。今後も一切、そういう事は無い」
「え〜〜〜〜〜〜………」
アナゴのキッパリとした言葉に、間延びした不満の声が上がる。
「坂上先生…」
「すみません…」
圭介は、ここまで困り切ったアナゴの顔を、初めて見た気がした。
『まあ、いいか…』
今日はこれで許してやる。
ありがたく思え。
そんな気分だった。
「変質者…ですか?」
由香が、ちょっと不安そうな顔をする。
「ああ。特に乱暴をするとか、そういうんじゃないらしいが……嘗める、らしい」
「は?嘗める?」
「…何が楽しいのか知らんが、顔を、べろべろと」
「やだっ…」
「それも背の低い子を中心にしてな。お前らも気をつけろよ?」
『背の低い子』という言葉が引っかかったけれど、圭介と由香は一応頷いておいた。
>374
■■【52】■■
由香の家の前で彼女と別れると、圭介は夜の道を一人歩いた。
「夜道は危ないから、パパが帰ってきたら、そしたら送ってもらおうよ」と心配そうな由香
に「だいじょうぶ」と手を振って、すたすたと歩く。
「高尾先生も言ってたじゃない。その、ぺろぺろする変質者に会ったりしたら、どうするの?」
「そん時は、蹴倒して殴って捕まえてやるよ」
そう軽口を叩いて、圭介は薄闇に紛れた。
慣れ親しんだ道だ。危ないもなにもあるものか。
そう思った。
由香の家から圭介の家のある住宅街まで、ものの数分の距離だし、薄暗いとはいっても20
メートル間隔で外灯も点いている。たとえ痴漢が出ようと、普通のかよわい少女ではない圭介
にとって、そんなものは台所に顔を出す“茶色いヤツ”より簡単にツブしてやれると思ったし、
変質者がロングコートを広げて粗末なちんちんを無理矢理見せたとしても、「指差して大笑い
してやるぜ」というくらいの余裕があった。
両手に下げた紙袋には、右の紙袋には下着、そして左には化粧品の試供品と乳液の瓶がごっ
ちゃりと入っている。いざとなれば左手のスナップで瓶入り紙袋を振り回し、襲撃者の頭にジャ
ストミートしてやるだけの自信があるのだ。もちろん、少し邪魔だけれど、走って逃げる事だっ
て出来る。
そう。
何も問題は無い。
由香の家からは、煉瓦(れんが)造りの塀を曲がり、一方通行の道路標識を左に見ながらコ
ンビニの前を通り、鶏の脚の指みたいな3つ路を左に曲がる。少し坂になってる道を上がって、
次の道を左に曲がり20メートルも歩けば、そこが8年間住み慣れた我が家だった。
『コンビニが近いのは、いいよな』
そう思いながらコンビニの前を通った時、レジの前に立っていた男を目が合った。
圭介は慌てて目を逸らす。
向こうは明るい店内で、こっちは暗い夜道だ。人が通ったのはわかってるだろうけれど、目
が合った事まではわからないだろう。
>375
けれど。
『……あ…れ?……』
3つ路を左に曲がったところで、後を歩く足音を聞いた。
ぞくっ…と、背筋に震えが走った。
ぞわぞわぞわ…と首筋の産毛が立ち上がり、“きゅっ”とお尻の穴に力がこもる。体が、足
音に反応していた。
『気にするな。気のせいだ』
そう思おうとしても、どうしても足音がついてくる気がして、震えが止まらない。
おかしい。
自分はもと男で、ケンカだって慣れたものではなかったか?今日だって吉崎を追い回して転
ばせて、さんざん上履きで張り倒してやったではないか。大丈夫。たとえ相手が何かしようと
しても、そんなヤツは吉崎みたいに
――――相手が抵抗しなかったからな。
ドキン!とした。
自分が女になってから、何回も何回も、男とケンカした。張り倒したし、蹴倒した。
けれど、一度として相手から張り倒された事はあったか?
蹴倒された事は、あったか?
男の暴力に晒された事は、あったか?
もし、後の男が変質者だったら。
痴漢だったら。
強姦魔だったら。
強盗だったら。
自分はほんとうに抵抗出来るのか?逃げられるのか?自分を護れるのか?
10キロの米袋すら持てなくなった腕で、
少し走るだけで息の上がってしまう体で、
>376
細くて華奢な足首で、
それでも、自分は自分を護れるのか?
『………ぅ……』
ぶあっと汗が吹き出た。
背中と脇の下と胸の谷間に、汗を感じた。
『おちつけ…おちつけ…』
コンビニの男の、やけに角張った顔が目に焼き付いて離れない。知らない顔だった。近所で
は見ない顔だ。
短めの髪、ジャンパー…それから、ジーンズ……それから……それから…………
思い出そうとしても思い出せない。他に特徴は無かったか?
もし何かされたら警察に………
ちょっと待て、何かって、なんだ?
電車の中の、あの感覚。
男達の、あの欲望にまみれた想像が、現実になって襲い掛かってきたら。
あの電車の中で、自分は何回男達に犯された?
自分は何回、男達に好きにされた?
どこを嘗められた?
どこを噛まれ、引っ叩かれ、何を突っ込まれた?
ぶるっ…と体が大きく震えた。
あの時。
あの電車の車内で、何人もの男達に弄ばれた胸が、じんじんと熱を持ったように疼いた。
『ちがう…想像だ。イメージだ。ホントにされたワケじゃない…』
無理矢理キスされ、服を剥かれ、乳房を、乳首を好きに嬲られ、弄られた。あの想像。頭に
流れ込んできた、痛覚さえも感じてしまいそうな、濃厚なイメージ。
前から、後から、立ったまま、無理矢理ちんちんを根元まで突っ込まれ、好き勝手にガツガ
ツと動かれて、泣き喚く自分に男達は何を心の中で思った?
たっぷり注ぎ込んでやる。
>377
流し込んでやる。
どろどろの精液だ。
孕(はら)め。
俺の子を孕め。
「…っ…」
唾を飲み込んだ。
“ごくっ”と大きい音がした。後の男に聞こえなかっただろうかと、心が萎縮(いしゅく)
した。
歩く速度が無意識に速まる。
ゆるやかな坂を登る。
その角を左だ。
きっと足音の主は右に曲がる。
きっとそうだ。
別に自分の後をつけているわけじゃない。
自分は関係無い。
襲われたら?
ばか!
考えるな!
関係無い。
自分は襲われない。
自分はもと男だ。
そんな人間を襲うヤツなんていない。
『その、可愛いと…思うぜ?』
>378
ばかっ!吉崎てめー!出てくんなっ!
『俺だけじゃなくてさ、加原も金子も、そう思ってる』
うるさいっ!ばかっ!ばかっ!出るなっ!
歩く。
歩く。
歩く。
角を曲がった。
あと20メートル。
ほら、屋根が見える。青い屋根だ。明かりがついてる。母さんが帰ってきている。
聞こえない。
足音なんか聞こえない。
立ち止まる。
耳を澄ます。
ほら、聞こえ
コツ…
「……っ…ぅぁ……」
怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い…。
女になって初めて、ただ夜の道を歩く事が怖かった。人の足音が怖かった。
どうしようもなく体が震え、何かにすがりたかった。
>379
『…ぁさん…母さん……』
声が。
出ない。
コツ…コツ…コツ…
身が竦む。
動けない。
後を振り返れない。
馬鹿っ!走れ!走れ!
家はすぐ目の前だ。あと15メートル無い。走って、玄関に飛び込め!
コツ…コツ…コツ…
『…け……健司……健司健司けんじ健司ケンジけんじけん』
助けてくれ。
ここに来てくれ。
オレを護ってくれ。
誰にも渡さないように……!!
>380
ここまで。
んーーー……微妙…。
>352
そこまで想って下さって、ありがとうございます。
…結末は、もう決まってるんですけど…。
お楽しみに。
>353
ええと………あははは(ごまかすな)
>355
ぎゅってしてあげたい人、いますか?
さて。
おやすみなさい。
>>360 うあ…もう無い_| ̄|○
後生ですから再うぷきぼん…させて下さい(´Д⊂
>>381 グーッジョブ!!
健司ー!!早くきてやってくれー!
385 :
382:04/04/17 02:45 ID:3pLChX9V
>>383 あ、ありがとうございますっ!ヽ(´ー`)ノヤター
,.-t、,/ _ ̄~~`'ー- 、, (__
f ,l.  ̄r< ̄ >- 、 ` く l,__
,.〜',/ `ー'‐'^ヽ,__j,.ィ_ nヽ \ ,.゙ヽ
/ / / ,. `y' \ ', )
ヽ//'// /' / ,. ノ L._ ヽ ト、 ,)
. // / 'ム ノ / /'彡イイ| イ ノ fヾ! | 'ー,
l/l l 〃 //' 彡〃 |川.|.了ヽ__!|ヾ |. /{!
. |从 //-く ム-彡'"二゙!从レ' i |`ー`)ーレ' _j
r、r、 |l V/' lr'。! 'スヽ',从 ,!└-- ァ,r=,ゴ
>>1 ヾヽヽ\. nl 、l゚ソ /ー'。ミY/ / ア / |_,ノ 。
ヾヽヽヽ'、{. ', .: ゞニン^'j. / //ノ,! ハ ー┼‐ ___ ヽ
\\^ `!ヾ、. ヽ‐1 /./ノ / l. ハ L, ノ | ヽ _,ノ
ヽ ヽ }.ヽ, !ノ |/ ./ l |-! | )
/.) ノ、ヽiゝ、、、--‐='7 ノ ,ノ"7-v'--'く
、'ー===i. /. ス、 ( f ハ. / / / / ) \
/ヾ;、,_ゞ==イ ミ 〈{ 7イ. | ./ / ) l r‐'" ヽ
. / `ー' |〈 \ | |. | |. | /,ノ 〉 | _j レ┐
/ ,イ,〈 ミ、 ゙K、j ,. l | /ノ Vメ、 ノ- ,ゝ
/ /)>L>、 {、7゙,、j y' / く.( )ヽ, 「 _ノ、_
( ノ /\ヽ〈ヽ,).l } //ノ ヽ _∧,r‐' `ヽ、
387 :
355:04/04/17 11:08 ID:Z78pjQzP
>>383 d(゚Д゚)☆スペシャルサンクス☆( ゚Д゚)b
ハルカたんの話に・・・・つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
圭たんの話に・・・・(*´д`*)ハァハァ
>>381 うぇぇん、ラストへの伏線がわからなかったよぅ…欝。
それにしてもハラハラドキドキ。
でもいざピンチになると大好きな(?)健司の名前が
出ちゃうとこがキュンとしますた。
>>383 サンクス!しっかり保存しますた。
>>381 改めてグッジョブ!
「誰にも渡さないように!」っていうのが
もう切ないやら甘酸っぱいやら。
今読み返して涙出てきますた。
393 :
381:04/04/17 20:09 ID:FAQO1Qfn
夜から明日にかけて遊びに行くので、この時間にお邪魔します。
前回アップ出来なかった部分を投下しておきます。
今回もエロ無しです。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>380
「よお」
「ひっ!?」
背中に声を掛けられて、圭介はそのちっちゃい身を縮こまらせた。
「…どこのカワイコチャンかと思ったら圭介じゃねーか。こりゃまた可愛くなったなぁ。どう
だ?今夜は久しぶりに一緒に風呂に入るか?親子の語らいってヤツだな」
能天気な口調でガハハと笑う中年の男を、圭介は良く知っていた。
それはもう、知りすぎるくらいに良く知っていた。
「それはそうと、その紙袋はなんだ?久しぶりに我が家に帰ってきた父上に、お土産でも」
「うるせーーーーーーー!!」
圭介のドロップキックが鳩尾に突き刺さり、男はB級香港映画のアクションばりに高速回転
しながらアスファルトを転がっていった。
容赦無かった。
するつもりも無かった。
せいせいした。
「ブッ殺すぞクソオヤジ!!」
砂まみれになりながら立ち上がった圭介は、誰かがマナー違反して置いていった燃えるゴミ
の中へ、頭から突っ込んだ自分の父親に向けて、右手の中指を「びしっ!」と立てた。
涙ぐんでいるのが、ちょっと可愛くてキマっていなかったけれど。
■■【52】■■
圭介に遅れる事5分。
父、山中善二郎はケロリとした顔でリビングに入ってきた。
ゴミ置き場に突っ込んだはずなのに、その体にはゴミ一つついていない。さすが、地球外生
命体の『星人』と愛し合って、あまつさえ子供まで作ってしまった“非常識人”は、どこか違
う。
「ひでーな圭介。『一緒に風呂入ろう』なんてのは、ちょっとした冗談じゃねーの。そんなに
怒るこたぁねーだろ?」
自分が息子に蹴倒された理由を、どうも誤解しているようだ。もっとも、圭介としても「人
を怖がらせやがって」なんてとても言えないので黙っていたのだけれど。
「あらあら、いいわね親子の触れ合いって」
>394
「圭介のドロップキックも久しぶりだよ。なかなかキレが良くて驚いた」
エプロンで手を拭きながらキッチンから出てきた涼子に、善二郎は顔のシワを深くしてニコ
ニコと報告する。
息子にドロップキックを食らわされて喜ぶ父親なんてものは、あまりこの世にはいないと、
圭介は思う。
「ただいま、涼子ちゃん」
白いものが混じったロマンスグレーの髪を、ざっくりと大雑把に後へ撫で付けて、善二郎は
ぎゅうっと愛する妻を抱き締める。
「おかえりなさい、善ちゃん」
涼子はそのたっぷりとした乳房を愛する夫の胸に押し付けて、愛しくて愛しくて仕方ない…
というようにうっとりと囁いた。
そして、
「……やめてくれよな子供の前で…」
リビングのテーブルの前で熱い抱擁と熱いキッスを熱烈に披露する両親に、圭介は心底うん
ざりしたように肩を落とす。
両親の仲が冷え切って、子供がいるから離婚しないだけの“壊れかけ夫婦”よりは数倍もい
いとはいえ、帰ってくるたびにこれでは、正直、うんざりするなという方が無理というものだ。
ましてや、圭介のような年頃の子供には、両親を性的な意味で見る事に、かなりの抵抗感を感
じるものなのだから。
こうなるとやっぱり『星人』の母と地球人の父の“夜の生活”は、やっぱりアダルトビデオ
でやってるみたいに………。
『うえ…』
なんだか恐い考えになりそうだったので、圭介は“ぶるるっ”と顔を振ってその想像を振り
払った。
「いいかげん慣れんか?」
「慣れるかっ!」
母の細い腰に両手をまわしたまま言う父に、圭介は噛み付かんばかりに吼(ほ)えた。
長い抱擁と何度も繰り返されるキスに、苦りきった圭介が部屋に上がろうとすると、善二郎
は急に真面目になってリビングのソファに座るように言った。
「なんだよ」
>395
圭介は、まだ制服のスカートのままだった。紐タイは外していたけれど、母のブラウスはま
だ着たままだし、下もチェックのミニスカートのままだ。早くスウェットにでも着替えてしま
いたくて、圭介は“ぶすっ”とした顔で飄々(ひょうひょう)とした顔の父親を睨みつけた。
善二郎は、そんな圭介の顔を穴があくほど見つめると、
「やっぱり女の子が家にいるってのは華があっていいなぁ!ねえ、涼子ちゃん!」
ソファごとひっくり返りそうになった圭介は、ガラステーブルに脚を載せ、灰皿を持った右
手を無言でぶんぶんとぶん回した。
「まあ、待て待て待て待て待て待て」
「うっせ!話ってのはそれだけか?ああん?」
「お。可愛いパンツ」
「!!」
慌ててテーブルから脚を下ろし、スカートを掴んでパンツを隠す圭介に、善二郎はニヤニヤ
とした顔を向ける。
「こっのっクソオ」
「話は聞いたか?」
一瞬のうちに、善二郎の顔から一切の表情が消えていた。
その変わりように、圭介は思わず息を飲む。滅多に見ない、父親の真剣な顔だった。切れ長
で鼻梁も高く、薄い唇とガッシリとした顎を持つ親父は、真剣な顔をすると鋭利に研いだ刃物
のような鋭さを見せる。
それきり言葉を発しない善二郎に気圧されるようにして、圭介はソファに座り直し、“こくっ”
と頷いた。
こんな顔をした時の父には逆らわない方がいい。なぜか小さい頃から、圭介はそれを体で覚
えていた。
「そうか…」
息を長く吐き出し、父はソファに体を預ける。
42歳の父の浅黒い肌は、日に良く焼けているけれど、シミなどはほとんど無い。肩幅は広
く、背も高く、これで口髭を生やして制服を着れば、政府の官僚とか軍隊の司令官と言われて
も、そのまま何の疑問も持たずに信じてしまいそうだった。
「空山さんは、お前が生まれる前からお前の事を知っている。これからも何かあったら頼ると
いい」
いつもの、ちゃらんぽらんでいい加減な父親ではなかった。
>396
帰ってきた時はいつも家で酔っ払ってて、適当な事を言ってごまかしたり、デタラメな事を
もっともらしく言って子供の頃の圭介を騙す事に悦びを見出しているような、いつもの父親で
はなかった。
『考えたらロクでもねー父親だよなホントに』
外資系の商社勤めと聞いていたが、そんなのはウソに決まっている。先日の母の話でそれが
よくわかったし、ソラ先生の話も、この父親がサラリーマンなんて逆立ちしたってやれる人間
じゃない事を示していた。
『まあ、聞いてもどーせ教えてくれるわけないから、聞いてなんかやんないけど』
“ふっ”と肩の力を抜く。
それでもこの父親が、自分の事を愛しているのは嫌というほど実感している。
悔しいけれど、母の信じきった目がそれを証明しているのだ。
「で、だ」
なんとなく面白くない想いに唇をむにむにさせていると、善二郎はしかめつらしい顔をさら
に真剣にさせて、圭介の顔を見た。
思わず居住まいを但し、父親の視線を正面から受ける。
「…なんだよ」
そう言おうとしたのに、視線から受ける重圧(プレッシャー)で口がうまく動かなかった。
「一つ、聞いてもいいか?」
「…………なに?」
キッチンから、母が料理する音が聞こえる。御機嫌なのか、鼻歌まで歌っていた。
さすが女優で歌手…といった感じで、そのメロディは耳にひどく心地良い。
善二郎はしばらく圭介の顔を見つめ、言った。
「生理はまだか?」
リビングから聞こえてきた音に涼子がキッチンから顔を出すと、そこには今日2度目のドロッ
プキックを鳩尾に受けて床に転がる、愛する夫の姿があった。
母に「めっ」と叱られ、父に「はっはっはっこれは参ったな」と軽く言われながら、圭介は
母の作った餃子を親父の分まで食べた。
>397
ドロップキックは確実に親父の腹に決まったというのに、まるで効いていなかった。バケモ
ノだと思った。
久しぶりの家族揃っての夕食は、それでも一応、楽しかった。
秘密が無くなったせいか、親父は母を連れて世界中を旅した時の事を話してくれたけれど、
圭介は話半分で聞いておいた。親父の話を全部信じるとロクな事が無い…と、小さい頃から学
習しているからだ。
どこの世界に、UMA(未確認生物:Unidentified Mysterious Animals)やオーパーツ
(場違いな出土加工物:out of place artifacts)や古代遺跡までが、ほとんど『星人』に関
わりあるものだ…と言われて素直に信じる者がいるものか。時代も地域も全く別々で、共通項
などほとんど無いものを、どれもこれもいっしょくたにしてしまおうなんていうのは、小学生
のウソよりひどい。
第一、母の話からすると、母達がこの地球に降り立ったのは、数百年前ではなかったか?
オーパーツや遺跡には、数千年から数万年以前のレベルのものだってあるのだ。
ただ、父の言った言葉に、気になる事があった。
「『星人』というのは1種族の名称を指すものじゃない。言ってみれば、そうだな…サーカス
の名前だと思えばいい」
「はあ?サーカス?」
「サーカスは人間だけで構成されたものばかりじゃないだろう?ライオンやトラ、像やクマや
犬、猫、時にはネズミだってサーカスを構成する一員になる」
「……どういう意味?」
「『星人』も同じだ」
「…どこが?」
「人は人だけじゃ人として認識されないって事だ」
全く訳がわからなかった。
>398
ここまで。
ふう。
次回、ようやく「ごにょごにょ」です。
圭介が初めて自覚して「ごにょごにょ」で「ごにょごにょ」をします。
ここまで下準備が長くて、すみません。
>>399 乙です。
エロなしでも相変わらず読み物として面白いですね。
それにしても圭たんの「ごにょごにょ」想像しただけで(;´Д`)ハァハァ
オヤジカコイイ
402 :
399:04/04/20 00:14 ID:zCEcyFQc
今回は「ちょちエロ」です。
人によっては「激エロ」かも。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>398
食事が終わって、圭介は母から鼈甲(べっこう)のような光沢のカチューシャ(髪飾り)を
もらった。流れ込んで来る人の思念をカットするのだという。まるで、中学生の時に読んだエ
スパー漫画に出て来る「ESP(超感覚的知覚能力:Extra-Sensory-Perception)制御リング」
みたいだった。
「こんな時のために」と、なんだか“ピンチの時のスーパー技術者”とか“胡散臭い万能研
究者(マッドサイエンティスト)”が言いそうなセリフと共に差し出されたそれを、圭介はこ
れ以上無いくらいバッチリと疑いの目で見ながら受け取った。
なぜこのタイミングなのか?
電車の中で息子があんな目にあったのを、知っているのか?
知っているなら、どこで知ったのか?
他人の心の中で犯されて苦しんでいた様子を、ずっとモニターしていたのか?
モニターしていた『星人』は、どうして助けてくれなかったのか?
聞きたい事は山ほどあった。でも、聞かなかった。
聞けなかった。
2階に上がり、とりあえず勉強机に向かうと、圭介は紙袋の中身を全部取り出して机の上に
並べた。
ブラジャーが2着。
パンツが4枚。
ランジェリーの総合カタログが3冊と、レシートと注文伝票の控え。
曽我山多恵さんのケータイの番号と、下着の洗い方を間単に書いたメモ。
化粧水の瓶。
スキンケア用のパックとか乳液とか保湿クリームとか、何に使うのかすぐにはわからないパ
ウダーとかファウンデーションや口紅のサンプル……。
コットンとか脂取り紙まで入ってた。
覚悟を決めた……とはいえ、やはり思わず溜息が出る。
今まで、ニキビとか肌荒れとかにはあまり縁が無かったし、女みたいに眉の手入れだとかパッ
クだとか気にする男は大嫌いだった。けれど、まさか自分が“そういうこと”をする立場にな
るなんて、ほんの2週間前にはこれっぽっちも思ってなかった。
>403
これではクラスの女達がいつも「お金が無い〜」だとか「宝くじ当たんないかな?」とか
「どっかに金持ちで顔が良くてちょっとバカでこっちがしたい時しかえっちしなくても文句言
わないウマチン(……「具合の良いちんちん」…らしい)の彼氏って落ちてないかな?」とか
言うのも、わからないではない(男を「落ちてないかな?」と言ってのける感性だけは、どう
してもついていけそうにも無かったけれど)。
親からもらう小遣いだけでは、とても化粧品や服やアクセサリーや雑誌など、自分の欲しい
ものを全部買う事なんて出来やしないし、ましてや、男にデート代を全てもってもらわなけれ
ば、とても割りに合わないからだ。
ブラやパンツや、おりものシートとか生理用品などは、きっと他の女の子達だって親に金を
出してもらったりもするのだろうけれど、そうするとたぶん、自分が「いいな」と思った下着
などは買えないに違いない。「可愛い」下着ならまだいいけれど、ちょっと「過激」な下着や
「刺激的」な下着は、母親のチェックが入ってしまうだろうから。
『母さんは…………自分から買ってきそうだな…』
にこにこしながら「ねえ、けーちゃん、コレ着てみない?」と、スケスケのブラとか真っ赤
なパンツとか持ってくる母の姿が容易に浮かんで、圭介はげんなりとした。近いうちにきっと
“襲撃”を受けそうな予感がした。
そういう過激な下着は、別に男に見せるためだけに買うわけではなく、ごく普通に「自分が
欲しいと思ったから買う」ものだ。
そういう過激な下着を着ている自分に、ちょっと「優越感」…というか、「特別意識」を持
つのが、なんとなく楽しいのだ。
……と、クラスの女子は言っていたけど、圭介にはよくわからない。男には、そんな感覚が
希薄だからだ。
>404
たとえば、男が「黒のラメ入りビキニパンツ」や「極Tバックビキニパンツ」や「ブランド
(……メジャーなところではカルバンクラインとか)パンツ」を履いてきても「あ、それいい
なぁ」なんて言う男はいないし、ましてや「どこで買ってきたの?今度教えてよー」なんて言っ
たりしない。特別な下着なんて買ってる余裕があったら、たぶん靴とか時計とか、服の方に金
をかけるからだ。だいたい、下着の見せっこなんていう事を男同士でする…なんて、考えただ
けでキショク悪くて鳥肌が立つ。
そんな圭介が、着られなくなったブラウスとベストの代わりを購入することを忘れた…と気
付いたのは、ブラとパンツをクローゼットの引き出しに仕舞って、制服からスウェットに着替
えようとした時だ。
デパートでは下着を選ぶだけでいっぱいいっぱいで、とても制服の事まで頭がまわらなかっ
たのだ。
女になってから着ていたブラウスは母が用意してくれたサイズ(子供服サイズの150)だっ
たけれど、胸回りが子供服サイズとはとても言えない特盛サイズになってしまったため、やは
り購入しないわけにはいかない。いつまでも母のブラウスを借りているわけにもいかないから
だ。
「…けど明日は、また借りないといけないかな……」
そこまで考えて、圭介は自分よりずっと大きくて重たげで、“ゆさゆさ”と良く揺れる母の
胸が脳裏に浮かんだ。
『母さん……ちゃんとブラしてんのかな…』
いつもぎゅっと抱き締められたりする時、ブラの感触を感じた事がほとんど無い事を思い出
す。いつも“ふあふあ”で、“たぷたぷ”で、あったかくてやさしくて、いーにおいがする…
…母の胸。圭介を産んで、しかも32歳の年齢であの大きさだと、もう垂れてもいいはずだ。
なのに、“だらん”とだらしなく垂れているようには見えないし、むしろ張りもトップバスト
の位置も、月刊プレイ○ーイのグラビア並みだ。あれだけやわらかいのにちっとも垂れないと
いうのはズルイけれど、もしそれが『星人』だから…というのであればさらにズルイ気がする。
『オレも……』
>405
『星人』の因子で男から女へ性転換したのなら、肉体的な特徴も母のものを受け継いでいる
…と考えていいはずだ。いや、そう考えたかった。歳を取って、このでっかい胸が“だらん”
とだらしなく垂れると思うと、すごく嫌だからだ。ただ胸が大きいだけでも恥ずかしいのに、
その上みっともなく垂れたりしたら、いったいどうすればいいのか。
…と、そこまで考えて、
『いや、別に一生、この(女)ままって決まったわけじゃないし…』
圭介は眉を顰めて一人ごちた。
それにしても、と思う。
帰ってきて早々、親父のペースに巻き込まれて気付く事も出来なかったけれど、母は、父の
ところに行っていたのではなかっただろうか?6月8日……先週の木曜日に東京に出掛けて、
月曜日の今日、帰ってきた。その間、たぶんあの『万年新婚馬鹿夫婦』の事だから、ずっと一
緒にいたに違いない。なのに、母があんなにも熱烈な抱擁とキスで出迎えるなんて、まるで何
日も離れていたみたいだ。
何をしていたのだろう?
唐突に思う。
母は、本当に父のところに行っていたのだろうか?
ひょっとして、
『オレが女になった事と、やっぱり何か関係がある……のかな…』
自分の周りで、自分の知らない事が、自分の知らないうちに動き始めている……そんな気が
する。
「けーちゃん?お風呂空いたわよぉ?」
ノックと共に、母のぼんやりとした声が聞こえた。
頭を振って、浮かびかけたものを振り払う。今、そんな事を考えて悩んでも、仕方ない気が
したのだ。母と、そして父が何を考え、そして何をしようとしているのかはわからない。けれ
どたぶん……圭介が哀しんだり苦しんだりするようなことはしないに違いない。
…そう、信じる事にした。
>406
■■【53】■■
山中家の風呂は、広い。
たぶん、普通の日本家屋の一戸建てにしては。
圭介はまだ入った事が無いから知らないけれど、ラブホテルの風呂場より少し小さいくらい
広かった。
ゆったりと体を横たえ、伸びをしても十分な大きさのバスタブは、安っぽいプラスチックで
はなく、だからといってステンレスのように味も素っ気もない硬質なものでもなかった。FR
P(繊維と樹脂によって強化されたプラスチック:Fiber Reinforced Plastics )だと思うの
だけれど、滑らかな手触りと薄いクリームイエローのあたたかい感じは、湯船に身を沈めると
心から落ち着く。バスタブの設置されている部分のタイルは臙脂(えんじ)色をした大理石風
のもので、床や壁もわずかに緑の入ったクリーム色をしていて、圧迫感は無い。
壁の一方は、全面がすりガラスで出来た窓になっていて、しかもその窓は、2枚のガラスを
組み合わせて内部に空気を密封した、断熱・遮音・結露の防止に優れる複層ガラス(ペアガラ
ス)だった。
ちゃらんぽらんで得体の知れない父だけれど、この家を建てる時に風呂をこういう風に造っ
た事だけは、評価していいと圭介は思う。
圭介は脱衣所でスウェットの上着を脱ぎ、腕を攣りそうになりながら苦労してブラのホック
を外した。
“ゆさっ”と豊かな乳房が重力に引かれ、その重さを改めて圭介に自覚させる。洗面所の鏡
に映った自分の姿を見て、圭介は今朝ほどその二つの『果実』を「不恰好だ」とは思っていな
い自分に気付いた。
『女の子のおっぱいはね、大好きな人を癒してあげるためにあるの』
多恵さんの言葉が蘇る。
『ケイちゃんのおっぱいはね、ケイちゃんが「元気をあげたい」って思った時に、それが出来
るようにおっきくなったんだよ。
ケイちゃんが「癒してあげたいな」って思った時にそれが出来るように、ここまでおっきく
なったんだよ。
だからそれを嫌だって思ったり、恥ずかしいって思う事は無いの。ケイちゃんが「元気をあ
げたい」「癒してあげたい」って思う相手以外にどう思われても、それは関係無いし、その相
手に必要とされる事に比べたら、そんなのはなんでもないって、きっと思えるようになる』
>407
自分はあの時、健司の顔を思い浮かべてしまった。
あいつに「可愛い」とか女モノの制服を「似合うよ」とか言われて、それで、あの牧場での
んびりしてる牛みたいな雰囲気の目でじっと見られると、どうしようもなくアイツを“ぎゅっ”
としたくなる。
そして、さっきは夜の道であろうことか健司に向かって助けを求めてしまった。
しかも誰にも奪われないように…とまで。
否定したくても否定できない。
なぜならそれは、事実なのだから。
鏡の中の圭介は、ゆっくりと自分の胸を両手で掬い上げた。もったりとして重たくて、もち
もちした肌触りでなんとなく触ってるだけで気持ちいいけど、それだけでは特にえっちな気分
とかにはならない。乳房は乳房で、それ以上でもそれ以下でもない。でも、健司の顔を思い浮
かべると
『…んっ…』
“きゅんっ”…て、する。
胸の奥に“ぽぽっ”と火が灯(とも)って、じわじわじわ…と乳房の中の導火線を火が走る。
導火線は、乳房の“先っちょ”に繋がっているのだ。
『ばか……なにしてんだよ…オレ……』
胸を見下ろした。
ちっちゃくて細くて、力も無ければ体力も無い。
重いものも持てないし、本気になった男には、きっととても対抗出来ない、無力な自分。
その胸に実った、不釣合いなほど大きな乳房…。
なにもできないじぶんが、たったひとつできること。
『オレは…誰かに元気をあげられる…のかな。誰かを癒してやれるの…かな』
誰か。
それは誰なのか。
わかりすぎるほどわかっている。
思わなくても、この体が知ってる。
>408
両手に余る、乳房。
白くて、やわらかくて、大きな、乳房。
揺れる、
肉。
誰かに元気をあげるもの。
誰かを癒してあげるもの。
『あ…』
体の中を、“とろり”と流れるものがあった。
お腹の中を、重力のままに“とろり”と滑り落ちるものが、あった。
慌ててスウェットのズボンとパンツを脱ぎ、タオルを持って浴室に飛び込む。たぷたぷと揺
れ動く乳房に、鈍い…けれどどこか甘い痛みを覚えた。
軽くシャワーで体を流すと、すぐにゆっくりとバスタブへ身を沈めた。バスタブの端にタオ
ルを畳んで置く。
「…ん……」
体を伸ばしてそこに頭を預けると、“ぷかり”と、乳房だけが水面から顔を出す。濡れて、
天井の明かりの光をはじく濃いピンクの乳首が、いつの間にか大きく、硬く、勃起していた。
小豆くらいの可愛らしい乳首だったのが、今は大豆ほどの大きさになり、10円玉より少し大
きいくらいだった乳暈(にゅううん)が、ふっくらとパンケーキみたいにふくらんで赤味も増
している。
『乳首……立ってる……』
脱衣所で長いこと上半身裸のまま立っていたから、肌寒さで立ってしまったのだ。
そう思いたかった。
思おうとした。
でも。
「……っ…ん……」
ぬるっ…とした、ぬめり。
それを、両足の“深いところ”に感じる。
>409
考えてみれば、母が出かけた8日の朝、女になってからトイレで初めて自慰をして、放課後
に健司の手の感覚を振り払うようにもう一度してから4日間、圭介は一度も自慰をしていなかっ
た。どんなにいやらしい夢を見ても、健司の体にどんなに反応しても、自分から進んであそこ
を弄ったりはしなかった。
あまりにも強い快感に、怖くなったのだ。
男の何倍も強くて、そして何倍も持続する快感の波に呑まれたら、自分はどうにかなってし
まう気がした。あの快楽に慣れてしまうと、自分はもっともっと強い快楽を求めて、普通の快
楽では満足出来なくなってしまうような、そんな……まるで昼なお暗いジャングルの底無し沼
に、ずぶずぶとはまってしまうようなそこはかとない「恐怖」を感じたのだ。
なのに。
「けんじぃ……」
ダメだと思いながら、それでもアイツの名前を口にしてみた。自分で思ってるよりも、ずっ
とずっとずっと、甘ったれて鼻にかかった声がした。
ぞくりと、した。
浅ましいまでに情欲に濡れた、親友を呼ぶ声。
『なに言ってんだ…オレ……』
急にものすごく恥かしくなる。
けれどその羞恥が、鮮やかに知覚を呼び覚ます。
牧歌的な顔と大型草食動物みたいな優しい目と、張りつめた筋肉に覆われた上半身が、脳裏
に浮かんだ。
逞(たくま)しく張った肩。
伸びやかな腕。
ぱんぱんにはじけそうな太股。
それから、一気に脳裏に結像する。
だめだ!
遅かった。
ビジョンを振り払う事が出来なかった。
>410
鮮やかに蘇る、あの更衣室の彼の体が、たちまちリアリティをもって圭介に迫る。
親友の身体に欲情してしまった背徳感が、逆に蜜のようにまぶされる。
“オレは親友の身体に欲情してしまった、いやらしい最低なヤツだ”
そういう被虐(ひぎゃく)的な意識が、マゾヒズムを呼び起こす。
自分は、自分で自分を貶めて喜ぶヘンタイなのか。
それが言葉にならずに感覚だけで圭介の神経を焼いた。
「……っ…はっ……」
バスタブの中で、身を捩(よじ)る。浮力で重さが軽減された揺れる乳房を、両手で“きゅ”
と抱き締めた。
途端、甘い痺れが全身を駆け巡る。こうなるとわかっていてしてしまう自分が、とんでもな
く馬鹿に思えた。バスタブの端のタオルに頭を預けながら、圭介はお湯の中でその身をくねら
せた。水面から、水でぬめるように輝く白い肌が、沖で遊ぶイルカのように現れては天井の光
をはじいて消える。お湯の中では、抱き締めた乳房のその紅い左のトップを、細くて白い彼の
右手の中指と親指がこりこりと嬲っていた。
『ち……くび………きも…ち…い……』
くりくりと、摘んで転がす。
ぴるぴると、中指ではじく。
くにくにと、押し潰すようにして弄ぶ。
ぜんぶきもちよかった。
『あ…だめ…だ……のぼせる……』
“はふっ”と吐息を吐き、バスタブの中で身を起こす。気だるい体をのろのろと持ち上げて、
ほとんど転がり出るようにして洗い場の椅子にお尻を乗せた。血行が良くなり、乳房やお尻な
どの脂肪にもたっぷりと熱がこもる。全身がぽかぽかとして、じんじんとして、そして“とろ
とろ”だった。
ひょっとしたら、今ここで健司が「けーちゃん。えっちしよ」と言ったら、圭介は喜んで体
を開いたかもしれない。
それくらい、今の圭介は普通じゃなくなっていた。
『からだ……洗わなくちゃ……』
ぼうっとした頭で、石鹸を手に取り、スポンジでわしゃわしゃと泡立てる。
>411
肩を洗った。
二の腕を洗った。
肘を洗った。
首を洗った。
胸元を洗った。
そして胸を、
「……っ……」
スポンジの目が、トップを“すりっ”と擦った。
いたい。
きもちいい。
むずがゆい。
いろんな感覚が、その一点に集中する。
それでもそれを我慢して、乳房の周りを洗う。上、脇、バージスライン、胸の谷間……そし
て全体。“むにむに”して“たぷたぷ”して、やわらかくてきもちいい。
“ぷるぷる”と震え、“ゆらゆら”と揺れる。
スポンジがタイル床に落ちる。揃えていた膝が、いつのまにか開いていた。
自分の姿が、洗い場の鏡に映っていた。椅子に座って、泡にまみれた両乳房を両手で掬い上
げるようにして持ち、足を開いている。ちらりと、脚の奥の濃い翳(かげ)りが湯気に曇った
鏡に映る。“どきんどきんどきん”と、すごく大きな鼓動の音に慄(おのの)きながら、左足
をじりじりと開いた。
『…あ…』
奥が、見えた。
>412
女になって目覚めた日には、全部抜け落ちていた陰毛も、今ではすっかり生え揃ってもしゃ
もしゃとした茂みを形作っていた。
由香に「夏になる前に無駄毛のお手入れはしなくちゃね」と言われたけれど、『星人』の体
質なのか、脇(わき)も脛(すね)も、そんなに濃い体毛は生えてこなかった。実に都合のい
い体質もあったものだ…と、自分の体ながら呆れたりもしたけれど、無駄毛処理はする必要が
無ければ無いで面倒臭くなくていい。けれど、陰毛だけはちょっと濃い目に茂ってしまって、
そろそろ処理しないといけないかな…とは思っていたのだった。
その茂みを、ソープの白い泡が胸から伝い落ちていた。
泡が白いからこそ、茂みの黒がハッキリと際立った。
その茂みの奥に、亀裂がある。
今は見えないけれど、在る。
それは、肉の亀裂だ。
敏感で繊細な襞と、痛いほど刺激に反応する花芯がある。肉の鞘に包まれて、襞の中に隠れ
るようにしてある、その肉粒を、圭介はまだ直(じか)に擦った事は無かった。4日前だって、
直接触れると痛いから、包皮の上から突付くようにして、陰唇で挟むようにして、じわじわと
刺激したのだ。
『もし、あそこを嘗められたら……』
不意に浮かんだ想像に、圭介は自分で驚き、困惑した。
知識としては知って、いる。
「クンニリングス」というのだ。
男が直接、あそこに口をつけ、舌で、唇で、鼻で、愛撫する。
『舌………うそ…あんなとこ…舌で、なんて……』
どうするのだろう?
陰核を嘗める?
陰唇を嘗める?
膣口は?
中に入れるの?
肉の亀裂の、その奥の部分をぜんぶ?
「…ぁ…」
>413
考えただけで、“とろり”と粘度の高い“もの”が、お腹の中から下りてくる。
きたないのに。
そんなところ、きたないのに。
なのに。
おとこの、くち。
“ドキン!”とした。
『やだ。知らない男なんか、やだ。きもちわるい』
でも。
アイツなら。
『ばかっ…なに考えてるんだよ………そんな、健司の口なん………』
考えるのではなかった。
うっすらと思ってはいても、それを言葉にして意識に上らせるのではなかった。
「〜〜〜〜〜っ……!……」
呑まれる。
意識が、波に呑まれる。
指が。
「っ…ぁあっ……」
ソープにまみれた右手が、“ぬるっ”と肉の亀裂を撫でた。
「けん………なめ……」
“ぬる…ぬる…”と、決してお湯ではない…お湯ではありえないぬめりが、指にからみつく。
粘度が高くて、幻覚に過ぎないとわかってはいても、ひどく“熱かった”。
「だ…………ぅ……」
理性が「やめろ」と言う。
これ以上すれば、ぜったいに後悔する。
そう言っている。
でも、指が。
震える指が、止まらなかった。
>414
「…んっ…ぅは……ひぅ……」
“ぐぐぐぐぐ…”と、脚が突っ張る。椅子に座ってお尻をもじもじと揺すり、“びくっ…び
くっ…びくっ…”と、痙攣するように体が震えれば、重たい乳房が同じように震えながら揺れ
た。
陰核を、包皮の上から中指で突つく。
リズミカルに、“とんっ…とんっ…とんっ…”と。
ぬめりを塗り広げるように、陰唇の襞の間を滑らせたりも、する。人差し指と中指を、大陰
唇の上で躍らせる。陰毛の、ざわっとした感触にソープが泡立つ。
『…んっ……しみる……』
涙で滲んだ視界の中で、シャワーのノズルを手に取った。
洗い流さないと…。
それだけを、思った。
本当にそれだけだ。
なのに。
「…んっ…」
湯加減を確かめて、それを股間に当てる。
「…んっ……んっ……」
ぞわぞわぞわっ…と、した。
『きもち……い……』
シャワーのお湯の粒が、股間全体を叩く。気持ちイイのと、もどかしいのが、間断無く訪れ
る。
右手でノズルを持ち、左手は知らず、右の乳房を下から掬い上げるようにして掴み、少し強
めに揉んでいた。
『そんな……強く……』
この左手は、自分の左手ではない。
では、誰の?
昼休みにソラ先生から逃げる時、
『オレの手を引っ張った』
アイツの、手。
>415
それが、揉む。
『ばかっ…やめろよ…』
自分でしていながら、脳裏のアイツに拒否してみせる。
なのに、アイツは優しく笑いながら決してやめよとはしない。
『ばかっ……ばかっ……ばかっ……』
“きゅうう…”と乳首を摘む。導火線についた火が、乳首ではじける。そしてその火花は、
シャワーで刺激し続けている股間のものにも飛び火する。
「…んっ……んっ……ぁっ…ふっ……んぁっ…」
声が漏れる。
誰の声だ?
そう思った。
甘ったるくて、鼻にかかって、何かをせがむみたいな、か細い声。
キモチイイ。
だめだ。
気が狂う。
<けーちゃん、イッちゃう?>
脳裏のアイツが囁く。
『ダメだって…ダメ……言ってる……のに……』
<イッちゃう?ねえ、イッちゃう?>
無邪気に聞くアイツが憎たらしい。
それでも、
“きゅうううううっ”と乳首を強めに摘まれれば、抗うことなんて、できやしなかった。
「んあぁうっ…」
語尾に、ピンク色のハートマークがつくくらい、甘い、甘い声が漏れた。
“きひっ”と、食い縛った唇から声が漏れ、しゃくりあげるように白い腹が波打つ。はじけ
るように断続的に震える胸の上で、『女』そのものの具現である豊かな乳房が、2度3度とな
く跳ねて、踊った。
>416
ここまで。
圭介が初めて自覚して「健司」で「オナニー」をします。
でした。
私のTSでの萌えところは、
やっぱり転換によって今まで性対象ではなかった「男」が
肉体的な対象になってしまう事による戸惑いと自分の体への嫌悪とあきらめの葛藤かなぁ…と。
そして圭介は激しい自己嫌悪へと。
>>393-417 キタ━━━(((゚∀゚)))━━━!!!!
正直自慰ネタが来るだろうと予想はしていたんですが、
投下をリアルタイムで見ていて想像以上に(;´Д`)'`ァ'`ァしてますた(w
前におっしゃっていた、日常をしっかり描写してあるからこそ
エロ度が高まって萌える(だっけ?スマソ、かなり適当です)ってのには禿同です。
健司の性格も豹変せず、まんまな感じなのが(・∀・)イイ!!
続き楽しみにしてます。
>>417さん
最高です!
難しいことはわかりませんが、漏れ的にはこの作品で
今まで読んできた中でクライマックスでした
興奮と同時に、心が激しく揺さぶられた感じです
>417
今回は面白かった!!!!GJ!!
できればこういう路線キボンヌ。
下着の話を延々されてもピンとこなかったので……。
>>417 激えろ最高でつ♪。.:*・゜(n´D`)η゚・*:.。.ミ ☆
ってか、ほんと文章とか感情表現とかが素敵です。
なんかこんなの読んだら、えっちぃ夢見そう。。。w
あっ、私のTS萌えどころも417さんと似ています。
今まで普通に見ていたはずの人なのに
ふと自分とは違う、男の人なんだ・・・って認識して
だんだん意識し始めて。 付き合っていくうちに
彼にだったら抱かれても・・・って思ってる自分に気付いて
いろんな葛藤を感じながらも、最後は彼の愛を受け入れる。。。
そういったTSならではの、メンタルな部分にとても惹かれます。
次回作も楽しみ☆
>>417 堪能させていただきました。そろそろ、生身の健司とゆっくりと語らわせてやってください。
423 :
名無しさん@ピンキー:04/04/20 22:24 ID:J97QfmlM
私のここ最近の楽しみは>417様の降臨です。
次回も楽しみにしてます!
>424
そこの管理人、ぜんぜんやる気が無くて本スレさえも補足してないからダメポ
もしやるなら、新しく倉庫作ること推奨。
426 :
417:04/04/21 02:43 ID:0tcdqrxc
今回は「ちょちエロ」です。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>416
ベッドのシーツがひんやりと、火照った心地良い。
気だるくて、体中が火照ってるけれど、でも、すっきりしてた。体が“満足”していた。
でも。
「…うぅぅ…」
健司で…親友で、イッてしまった。自分が正真正銘の“ヘンタイ”になってしまった気が
した。
その自己嫌悪が黒く淀んで胸を詰まらせている。体がものすごおく満足しているからこそ、
それに相反するように気持ちが沈んでいく。
最高だった。
とろけるような快感だった。
それは認める。
けれど、それは決して摘み取ってはいけない禁断の果実だったのだ。
イヴは、神様に決して食べてはいけないと言われていた「善悪を知る木の実」を、邪(よこ
しま)な蛇に唆(そそのか)されて食べてしまったがゆえに、楽園(エデン)を追われた。下
世話な雑誌などでは、「善悪を知る木の実」は「知恵の実」であり、「知」はイヴに「恥」を
与え「快」を与え、そして「性」に目覚めた。イヴからそれを与えられたアダムは、男女で行
う「セックス」に目覚め、その結果2人は淫欲に耽(ふけ)り神の怒りを買った……と書いて
あったりもする。教会が知ったら編集者が暗殺でもされそうな話だ。
アダムはイヴから作られた、いわば妻であり娘であり、そして自分自身でもある。近親婚が
当たり前のように行われていた時代でも、自慰行為に浸ったり、父と娘が淫欲に耽るというの
は、やはりタブー(禁忌)だったのではないだろうか。そしてタブーは、それが罪深ければ罪
深いほど、甘く人を惑わす…。
親友に抱いた情欲は、間違いなく圭介の中ではタブーだった。
決して抱いてはいけないものだった。
しかもそれによって自慰までしてしまった。以前、学校のトイレでしてしまった時は、体の
中で燻(くすぶ)ってどうしようもなくなってしまった火種を宥めるという理由があった。け
れど今日は…。
自分から、した。
「うぅ〜…」
>427
ものすごく、感じた。
「うううぅ〜〜〜……」
タブーだからこそ、いけないと思うからこそ、ものすごく。
「…明日……健司にどんな顔して会えばいいんだよ…」
圭介は枕に顔を埋(うず)め、誰ともなくもごもごと言った。
■■【53】■■
翌日。
6月13日の火曜の朝。
圭介は夢の中で、なぜだかわからないけれど巨大な灰色熊(グリズリー)とK−1のリング
で取っ組み合いの熱い戦いを繰り広げていた。けれど、のしっと上から圧(の)し掛かられて
胸をぎゅうぎゅうと圧迫され、苦しさのあまり死に物狂いでバンバンとマットを叩いたところ
で、
目が覚めた。
この胸で仰向けになって寝るのはとても夢見が良くない…ということを学んだ朝だった。
そして、久しぶりにえっちな夢を見なかった、普通の朝だった。
「…ふあっ……」
欠伸(あくび)をしながらもそもそと起き出し、ベッドの上であぐらをかいて、雨のしとし
とと降る窓の外を見ながら“ぽりぽり”と胸元を掻(か)いた。
寝る時もブラをしていたから、なんだかむず痒い。
つけていないと気になって寝られないし、第一、形が崩れてみっともなくなるんじゃないか
…と思って着けて寝たのだけれど、寝てる間にはどうしても汗をかいてしまうから、むず痒く
なるのは仕方ないのかもしれない。
慣れるしかないのだろうな、と思う。
『そういえば…』
と、目をこしゅこしゅとこすりながら圭介は思う。
おっぱいがこんなにも大きくなったことを、母も父も何も言わなかったな…と。
やっぱり、体の変化とかそういうものは、全部筒抜けなんだろうか…。
『もし生理がきたら…』
>428
その時あのオヤジが何か言ったら、今度はチョークスリーパーホールドで“落として”やろ
う。
圭介は密かにそう心に決めた。
スウェットのまま階下に下りると、母が一人でスクランブルエッグを作っていた。
父は、朝早くにもう家を出たらしい。
ものすごく機嫌が良くて肌の感じがイキイキツヤツヤした母は、ニコニコしながらカフェ・
オ・レを作ってくれながら、圭介にそう告げた。母が機嫌の良い理由はなんとなく想像が出来
たけど、その想像が脳裏に結像する前に頭の中のスクリーンをビリビリに破いたから大事には
至らなかった。朝っぱらからヘンな想像なんてしたら、胸焼けがして一日が台無しになってし
まうところだ。
トイレに行って、健康診断の時に出す寄生虫検査用の検便を、苦労して取った。なんだか男
だった時より恥かしさが増してた気がするけれど、なるべく気にしないようにする。でも、入
れておくビニール袋は不透明なものを2枚にしておいた。
顔を洗ってテーブルに着くと、テレビでは、薄いピンクのスーツを着たワンレングスのちょっ
とポケポケしたお天気お姉さんが、いつもより少し遅い入梅を告げていた。前線の影響で、今
週一週間はほとんどが雨降りとなってしまうらしい。
にこにこと笑みを浮かべながら言うそのお姉さんに「雨降りがそんなに嬉しいか」と聞いて
みたかったけれど、それが八つ当たりなのだと自分でもよくわかっていたから、黙って山盛り
サラダに母さんお手製のドレッシングをかけて、サニーレタスをムシャムシャと黙って食べる。
ドレッシングには、塩ではなく砂糖がたっぷり入っていた。
朝食を終えて歯を軽く磨き部屋に戻ると、玄関の呼鈴が鳴った。
階下で母が「いつもありがとうね」と言ったので「ほにゃにゃにゃ〜ん」とした顔の幼馴染
みだとわかった。そもそもこんな朝早くに家に来るのは、彼女以外有り得ない。部屋でスウェッ
トを脱ぎ、そして夜用ブラを外していると、案の定、圭介と同じセミロングの童顔少女が部屋
に入ってきて「まだ着替えてないのぉ?」と言った。
「うるさいな。由香が早いんだろ?」
「ほら、胸を早く隠してよぉ」
>429
圭介が動くたびに“たぷたぷ”と揺れる重たそうな乳房を見て、由香は慌てて目を逸らした。
昨日は、何度も目にしてはいたけれど、こうして朝日の中で改めて見ると、さすがに気恥ずか
しいらしい。
「女同士なんだから恥ずかしがることないって」
「そりゃ、そうだけど…少しは女の恥じらいってものも学んだら?」
“女の恥じらい”なんて言葉は、17年間蓄積された圭介のデータには無い。
「やだ。だいたいオレは」
「ボク」
「………ボクは、男だったんだから」
「でも今は女の子でしょ?」
「そうだけど…」
「はい、わかったらさっさとする。遅刻しちゃうよ?」
由香に急かされて、クローゼットの引出しから昨日買ったばかりのブラを取り出す。今日は
健康診断があるので、“おばさんブラ”はとりあえずやめておく。
「あ、これ買ったんだ?」
「う、うん…」
由香が手元を覗き込んでくるのを、なんとなく恥ずかしく思いながら頷く。結局昨日は一度
も見せていなかったから、由香は圭介がどんなブラを買ったのか知らなかったのだ。
「へ〜……」
「…なんだよ」
「けっこー可愛いから」
くすくすを笑う由香を無視して、肩紐に両腕を通す。すると、
「あ、ちゃんとそうやってるんだ」
「なにが?」
「ちゃんとストラップに手、通してからしてるから」
「………違うの?」
「うーん…本当はいけないのかもしれないけど、ホックを留めてからこうやってこうやってこ
うやって、カップに胸を収めてからお肉を寄せるの」
由香はジェスチェアで、体の前でホックを留めてぐるっと前後にブラを回し、それから肩紐
を右、左と肩にかけてから、カップをぐるんと回すようにして胸に被せてみせた。
「う…ウラワザ…」
>430
「ふふっ…そんなにたいした事じゃないよぉ」
「…腕が攣(つ)りそうになりながらホック留めてたオ……ボクの立場は?」
「ありません」
「…うあー……」
「それはそれで正しいと思うから、急いでなかったらそれに慣れるといいと思うよ」
「今は?」
「急いでるから、早い方」
「わかった」
素直に由香がした通りの方法でブラをちゃっちゃと着け、今日も母から借りた白のブラウス
を着て、紐タイを結ぶ。圭介がタイを結んでいる間、由香は彼のセミロングの髪をざっとブラッ
シングした。
枝毛も無く艶々とした髪は、ブラシをするすると通す。
「けーちゃん、結べたらこっち向いてね」
「ん…」
学生服ならホックで済むのに、と圭介は思う。ほとんど留めた事なんてなかったけれど。
『あ…う…こんなもん…かなぁ…』
女子の制服を着るようになって、もう一週間経つけれど、まだこの紐タイには慣れなかった。
「結べた」
「はい。こっち向いて」
「ん」
由香の方を向いた途端、“ぺちゃっ”と両頬を彼女の手が叩いた。
「あっ…な、なに?」
「じっとしてて。せっかく化粧水買ったんだから、ちゃんとつけてよね。どうせ顔洗ったあと、
なんにもしてないんでしょぉ?」
「だ…ぁっ…いいよ、もう」
「よくない。これって基礎(化粧水)なんだから。けーちゃんって肌がキレイだし目もパッチ
リしてて睫(まつげ)長いから、ファンデとかマスカラとかライナーとかチークとかは別にし
なくていいと思うけど、化粧しなくてもせめてこれくらいはつけておかないと。あと乳液ね。
出来れば洗顔したら毎回つけとくといいよ?水分補給しとかないと、肌荒れちゃってからだと
遅いから。化粧水はたっぷりつけて、乳液は3分くらいしてから。目元とほっぺたを重点にし
て、つけ過ぎないようにね」
>431
由香が何を言ってるのか、圭介にはさっぱりわからなかった。
彼女は自分はほとんど化粧なんてしないように見えるのに、圭介にわからない異文化の言葉
を話してた。
……誰か、わかるように翻訳してくれないだろうか?
「まだわかんなくてもいいからじっとして。ほんとうは、ちゃんとけーちゃんの肌に合ったの
がいいんだけど………はい、次はグロスね。私と同じリップでいいよね。けーちゃん、ちょっ
と上向いて。あ、そうだ、その前にちょっとだけパウダーはたいとく?」
「……うん」
ここは素直に従っておこうと思った。
でも、由香には悪いけど、化粧について覚えるつもりは、圭介の心の中ではまだ、まるっき
り無い…のだった。
やけに手馴れた由香の手でしっとりつやつやになった圭介は、カチューシャを頭に付けて、
なんだかもうすっかり疲れた顔で家を出た。由香に言わせるとこんなのは基本の基本の基本だ
という。
それじゃあ応用とか発展になると、どんなスゴイ事になるのか。
圭介はなるべく考えないようにしよう、と思った。
健司は相変わらず朝練で、顔を合わせなくてちょっとほっとした。
でも、やっぱり寂しかった。
その代わり…ではないけれど、のんびり登校する事は、ちょっと出来なかった。
学校に行く間、豊かにふくらんでブラウスをぱんぱんに押し上げる胸は、やはり…と言うか
なんと言うか、登校中の男子だけでなく道行く男性のほとんどの視線を集めたからだ。
ブラをしてても、さすがに全く揺れないというわけにはいかない。
それでも、不必要に刺激する事は避けることが出来たようで、圭介はほっとした。
そして、彼等の思念が流れ込んでくる事も無かった。母からもらったカチューシャは、ちゃ
んと機能しているらしい。
一度だけ、カチューシャにそんな機能(思念遮断)が本当にあるのか、確かめようと思い外
してみたら、
『でけーチチ!!』
>432
というどうしようもなく頭の悪い声が聞こえたので、すぐにつけ直した。
声の主は、圭介の知らない1年生だった。
“声”は、昨日よりずっと鮮明だった。
思念を読み取る能力が圭介にあるとしたら、その能力は確実に強くなっているようだ。
家に帰ったら、カチューシャをつけなくてもキッチリと思念を遮断する方法は無いか、母に
聞いてみようと圭介は思った。
健康診断も兼ねている身体検査(測定)は、今週の月曜から行われている。
3年生は昨日で、今日は圭介達2年生の番だった。
医師面接と健康診断は、「教室棟I」にある保健室と、その隣にある学生相談室で行われる。
保健教諭のソラ先生は、主にこの街の総合病院からやってくる医師や看護士のサポート役だった。
圭介は、事前に渡された保健調査表にはとりあえず正直に答えておいたけれど、性別が変わっ
てしまった以上、それもあまり意味が無い気がした。しかも、総合病院は『星人』の息がかかっ
たところだから、答えなくても微に入り細に入り、既に調査済みに違いない。それでも正直に
書いてしまうのは、これはもう性分でしかなかった。
受付に調査表と検便を出すと、すぐに尿検査用の紙コップを渡された。トイレに行き、なん
とかこぼさないように4センチくらい入れた。……本当は1センチくらいにしておこうと思っ
たのだけど、すぐに止まらなかったのだ。
恥かしいので、トイレに流して少しだけにして出した。
それから身長、体重、座高を測定して、すぐに血液採取、眼科検診、耳鼻科検診、歯科検診、
視力検査、聴力検査、心電図検査……とフルコースを経て、医師による内科検診を終え、そし
て最後にようやく学校正面玄関前のバスで胸部エックス線検査をして終わり……という、なか
なか徹底したメニューだった。
心電図検査と内科検診は、思春期の生徒への配慮と、総合病院に運良く女医がいたことで、
どこの誰ともわからない男性に肌を見せる事態は避ける事が出来た。もっとも、ブラとTシャ
ツは着ていてもいい…というのがあったから、そんなには不安ではなかったのだけれど。
困ったのは、健康診断の最中ではなく、その後だった。
>433
豊か過ぎるくらい豊かな胸が恥かしくて、背中を丸めてこそこそしていたのが逆に嗜虐(し
ぎゃく)心を煽(あお)ったのか、それとも、どうにも恥ずかしくてほっぺたが赤ん坊みたい
に真っ赤になってたのを面白がられたのか、更衣室を兼ねた学生相談所で制服を着ようとTシャ
ツを脱いだ途端、
「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜でかちち〜〜〜〜〜〜〜!」
「わにゃっ!?」
後からガバッと数人に抱きつかれ、押さえつけられて、ほとんどいぢめじゃないかと思うく
らい揉まれまくった。
「ちょ…あっ…やっ…やめっ……おいっ!やめひょにゃのにひっ」
「お〜〜〜やわ〜〜〜〜〜!!」
ブラをたくし上げられ、むにむにむにむにむにむに…と直(じか)に柔肉を揉まれて、圭介
はくたくたくた…と脚から力が抜けるのを自覚した。
昨日、トイレで揉まれた時と全く違った。たった一日で、『女の身体』が、ますます『女の
快楽』に馴れてしまっている。
それを自覚する。
でも、同性に揉まれても感じてしまうなんて、それはないだろ?と思った。あまりにも情け
なさ過ぎる。なんて節操の無い体なんだろう。
「お。チクビ立ってきた」
「ばっ…やめっ………」
「みんな、来て来て、すげーの。やーらかいよー」
そう言いながら、京香は圭介の乳房を、ぐにぐにたぷたぷとパン生地を捏ねるみたいに揉んだ。
「どれ?」
「えーなんかやーらしー」
「センセー来るよー?」
「いや、別にヤッちまおうってんじゃないから」
「そうそう」
「ばかーっ!オマエらなぁ!…ぅ…んっ!」
好き勝手言いながら周りを囲む女子生徒を、圭介は精一杯恐い顔で睨みつけた。
けれど、彼の今の可愛らしい顔つきでは、子犬がきゃんきゃん吠えるよりも迫力に欠ける。
案の定、女子達はただくすくすと笑いながら見ているだけで、ちっともやめようとしない。
「どう?女の子。もう馴れた?」
>434
“きゅっきゅっきゅっ”と、勃起してしまった乳首を絶妙な指使いで摘まれる。強い刺激に
首を“きゅんっ”と竦(すく)めながら振り返ると、桑園京香(そうえん きょうか)の切れ
長で二重の目が、悪戯っぽく濡れ光っていた。
「ばっ…オっ…オマエっ…そーゆーシュミが」
「無いわよ。ばかね」
「んっ!!」
“きゅんきゅんっ”と人差し指と中指で乳首を挟まれ、リズミカルに引っ張られる。痛みと
共に、甘い“疼き”が下腹の奥にある洋ナシの形の器官と直結した。みるみるうちに、圭介の
首筋が、胸元が、きれいなピンク色に染まってゆく。
「うわぁ色っぽー」
「どれどれ?あ、ほんとだー」
「なになになに?圭ちゃんってコーフンしてんの?」
周囲の女子は好き勝手言うだけで、京香がむにむにたぷたぷと圭介の乳房を弄ぶのを見てい
るだけだ。けれど、それでも大勢の視線に裸の胸が晒される…というのは、想像以上に圭介の
羞恥を刺激した。
「ねえ、やめようよぉ」
「のべっちは黙ってて。いっつも一緒にいるんだから、たまには私達にも貸してよ」
「え〜……」
『貸してよ』とはどういうイミか!?
由香も由香だ。
一言言われただけで引き下がるな!
「オ、オマエら…マジで怒…んっ…るぞっ!?…んあっ…」
「ほんとやーらかいね。いくつ?サイズ」
「Fじゃない?」
「どーだろ。ねえ、胸囲はいくつだった?」
「Hあったりして」
「“えっち”ねー」
「きゃははっ」
これは何の冗談だ?いや、冗談にしてもひどすぎる。どうして自分が、こうも、いつもいつ
もクラスの女子のおもちゃにされなければならないのか。
腹が立って、情けなくて、圭介はじわっ…と視界が滲むのを感じた。
>435
『ばかっ泣くな!コイツらぜったい、よけい面白がるに決まってる!』
そう思い、彼が唇を噛み締めたその時、
「おーい…お遊びはそのくらいにしとけー。淫行罪で現行犯逮捕すっぞー」
ソラ先生の間延びした声が、学生相談室に響いた。
「やばっ」
一瞬、腕を押さえつけていた女子の力が緩む。
「このっ!!
「きゃっ!」
圭介はすかさず彼女達を振り解き、入り口に向かって走った。
「あ、ばかっ!んなカッコで廊下に出るなっ」
ソラ先生の声も無視する。女子におもちゃにされるくらいなら、廊下で人に見られた方がま
だマシだった。男子だろうが男の教師だろうがかまやしない。
そう思った。
「けーちゃん!」
薄情者の幼馴染みの声も無視する。ぶるんぶるんと盛大に乳房を揺らしながら廊下に出てド
アを閉め、慌てて周囲を見た。
驚いた顔をした、次の順番待ちのE組とF組の女子がいるだけで、男子の姿は無い。
覚悟していたとは言え、さすがに圭介は、ほっとして顔を上げ
「あ」
2階の渡り廊下に、健司が、いた。
こっちを見ていた。
目が、ぎょっとしたように大きく見開かれていた。
……長い長い長い長い長い…………ほんとうに長い…一瞬、だった。
次の瞬間、健司の顔が“ぽかん…”としたものから、みるみるうちに真っ赤になり、くるっ
と後を向くと“だだだっ!”と駆け出して、今来た方向へ逃げるように去っていった。
「……うそ……」
>436
圭介は今更のように、揺れ動く重たい乳房をそろそろと両手で抱くようにして隠し、ドアに
もたれたままずるずるとその場に座り込んでしまった。
ショックで、身体がかたくなってた。
凍えたように、ぶるぶると全身が震えた。
『見られた……健司に……』
ケンジニミラレタ。
ぐちゃぐちゃだ。
何も考えられない。
恥かしい。
見られた。
ぜんぶ。
やだ。
うそだ。
なんで?
どうして健司があんなところに?
うそ。
やだ。
「なん……で……」
顔が火のように熱かった。視界がじわっと滲んで、ぽたぽたと熱いものがこぼれた。
どうして涙が出るのか、わからなかった。
>437
泣く理由なんて、無いはずだ。
なぜならアイツと自分は、子供の時なんておしっこの飛ばしっこだってした仲だったはずだ。
中学の修学旅行では一緒に風呂にだって入ったし、去年の水泳の授業もいっしょだったじゃ
ないか。
恥かしいヒミツなんて、いっぱい知ってるし、いっぱい知られてる。
いまさら、裸の胸を見られたくらいで
「っ…う……ぁあああ〜〜〜………」
不意に声が、漏れた。
恥かしくて哀しくて苦しくて、感情がぐちゃぐちゃになって声を上げて泣いた。
「けーちゃんっ」
由香が保健室の入り口の方から駆けて来て、ブラウスを肩からかけてくれても、圭介はしゃ
くりあげ、鼻水を流しながら、声を上げて泣き続けた。自分でも、どうしようもなかったのだ。
止められなかったのだ。
「あらら〜…泣いちゃった…」
保健室から京香が顔を出して、ばつの悪そうな顔をして見ている。
由香は、彼女には珍しく「きっ!」とキツイ目で京香を睨むと、無言で側にくるように視線
と顎で示した。
その目が言っていた。
「ここに来て今すぐけーちゃんに謝って」
そう言っていた。
いつも「ぽやぽや」してるだけ、こんな顔の由香には、妙な迫力があった。
ぐすぐすとしゃくりあげ、由香に抱かれて肩を震わせる圭介は、彼女が今まで見た事が無い
くらい、ものすごく恐い顔をしている事に、最後まで気付かなかった。
>438
ここまで。
>418
想像とはいえ、いきなり健司が鬼畜になるのは「なんかちがう」と思いました。
>420
ディティールに萌えるので、エロばっかりは…ちょっと…。
>421
イイ夢、見られましたか?
>422
次は、たぶん。
それでは、また…。
リアルタイムキタ━━(゚∀゚)━━!!!
今回もすごく萌えますた。
けーちゃんにハアハア
健司タンにもハアハア
>>439 心にキュンときますた…でも(*´Д`)ハァハァ
改めて思いましたが、すごく筆が速いんですね。
442 :
名無しさん@ピンキー:04/04/21 07:51 ID:UQ1H860J
443 :
名無しさん@ピンキー:04/04/21 16:59 ID:GoJMsrpd
物語に引き込まれますね。
なんだか切なくなりました・゚・(ノД`)・゚・
続きを期待しておりますm(__)m
俺は、この作品に「エロ」は似合わないと思っているので
今回みたいな「えっちぃ」展開を希望ーw
446 :
439:04/04/21 22:13 ID:5ubwSbYu
>445
う〜あ〜…誤字脱字引用間違い時事列違い…は〜ず〜か〜し〜…。・゚・(ノ∀`)・゚・。
最後まで書き終えられて、それでどこかにアップする機会がありましたら改訂版を。
いえ、SS書きとしてはアップしたものが全てで、じたばたすべきではないのですが。
はあ…。
>314
アリスさんの光臨をひそかにお待ちしているのですが…。
週明けとのことでしたので、賑わいを維持したくて。>441
>446
「降臨」……。
こんなところでまで誤字……。
448 :
439:04/04/22 01:49 ID:9sUVp9nv
今回はエロ無しです。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>438
■■【53】■■
自分には、人として大切な感情のいくつかが、すっぽりと心のどこかから抜け落ちてしまっ
ている。
「彼」に逢うまで、谷口健司は、いつもそんな風に思っていた。
世界を構成しているいくつもの「きれいなもの」「きたないもの」「うつくしいもの」「み
にくいもの」「しろいもの」「くろいもの」……。
それらにちっとも心動かされない、子供だった。
最初にいぢめられた記憶は、幼稚園の年長組の時のものだっただろうか。
教室で飼っていたミドリガメが、朝になったら死んでしまっていた事がある。その時、どん
な顔をしていいかわからなかったから、とりあえず笑っておいた。もともと、感情を外に出す
タイプではなかったし、生き物の生き死にに対しても、感情を示すのが苦手だった。
いつも笑っていれば、みんな優しくしてくれた。先生も、父も母も、近所のおばちゃんも、
にこにこと頭を撫でてくれた。
だから、その日も同じように、笑った。
「冷血人間」というあだ名がついた。
ミドリガメが死んだら、笑うのではなく“泣かなくてはいけないのだ”と知った時には、も
う周りに友達はいなくなってた。
それでも、笑う事はやめられなかった。
表情も無く黙っていると気味悪がられるけれど、笑ってさえいればみんな普通に優しかった
から。
笑顔は、とても便利だった。
笑顔だけ張りつけておけば、たいていのコトは乗りきれた。
そうして小学校に入学してしばらくすると、新しいあだ名がついた。
「フク」。
福笑いみたいに、いつも笑ってるから。
>449
…毎日が楽しかったわけじゃ、ない。
哀しいということがどういうことなのか、わからなかったから笑ってただけだ。
自分が笑っていると周りも自然に笑ってくれるから、だから笑っていただけだ。
本当に楽しい事なんて、一つも無かった。
誰も自分に、ほんとうの事を教えてくやれしなかったから。
なんとなく暮らして、なんとなく笑って、なんとなく毎日が過ぎていく。
それでいいやと、そう思っていた。
2年生の時に、あだ名は「キュースケ」(九官鳥)になった。
叩いても蹴っても、筆箱を壊しても上履きを隠しても、それでも笑ってたから。
ずっとずっと、何をされてもひたすら笑ってれば、いじめっこ達はすぐに飽きる。
健司は、小学2年生でもうそれを学んでいた。
豆腐屋を営んでいる父と母が、本当の両親ではないと知った時も、いつもと変わらずに笑っ
ていた。
兄弟喧嘩なんて滅多にしないし、両親にもどこか違和感みたいなものを感じていたから、な
んとなくそうなんじゃないかとは思っていたけれど、それが事実になると、さすがにショック
だった。
けれど、2つ歳上の兄も知らなかった事を知ってしまっても、それでも健司は、いつものよ
うに笑っていた。
こんな時、どうすればいいのか、どんな顔をすればいいのか、誰も教えてなんてくれなかっ
たから。
3年生になって、薮本康史(やぶもと やすし)といういじめっ子と同じクラスになった。
いやだった。ゲンコツで人にいうことを聞かせようとするところが、たまらなくいやだった。
でも、健司は笑った。
笑っていれば、たとえいじめられてもそのうち飽きて別のターゲットを見つける。
そう思っていた。
でも、健司のどこかが、薮本という少年の何かを刺激したらしく、いつまでたってもいじめ
をやめてくれなかった。
>450
そんな時、転校生がやってきた。
担任だったミサ子先生に案内されて教室に入ってきた背のちっちゃい子を見て、健司は「可
愛い(女の)子だな」と思った。でもミサ子先生に紹介されて男の子だと知って、びっくりし
た。
その上、女の子みたいな顔の事でからかった薮本と、あっという間に取っ組み合いのケンカ
を始めてしまい、さらに驚いた。
クラスの中でも飛び抜けて体も大きく、ふてぶてしい顔付きの薮本に、その少年は真正面か
ら向かっていって、鼻血を流しながら薮本が泣き出すまで彼の耳に噛み付いていた。
「ばかだな」と思った。
そして、ちょっとホッとした。
明日から、きっとターゲットはあの少年になる。そうすれば、もう自分はいぢめられない。
ずるい、考えだった。
そして、ずるい人間はぜったいに報われない。御伽噺(おとぎばなし)でも、大昔からそう
決まっている。根性の捻じ曲がった「はなさかじいさん」の隣のじじいは、最後には必ずひど
いめにあうのだ。世界というものはそうでなければならないし、正しいものが報われるのは自
然なカタチだったから。
だから世界のルールどおり、ターゲットは変わらず、薮本は健司をいじめることをやめなかっ
た。
あの少年が、そんな健司にどうして声をかけたのか、健司にはわからない。きっと少年自身
も覚えてやしないだろう。
影が長く伸びる夕焼けの下校の時間、ゴミ箱の中に隠されていた水で濡れてぐちゃぐちゃの
靴を手に持ち、それでも笑ってみせる健司に、少年は言った。
「お前、ばかだろ?」
仕方ないよ。
「なんでだ?」
だって、ケンカしてもしょうがないもん。
「悔しくないのかよ」
>451
悔しくなんかないよ。
「お前、男だろ?」
見ればわかるでしょ?
「チンチンついてるなら、頭きたら怒れよ」
怒ってどうにかなる?
「すっきりする」
笑ってた方がいいよ。
「ウソつけ」
「お前の顔、ウソっぽい」
まっすぐ、目を見ながら言われた。
綺麗な、目だった。
人の心の奥の方まで見透かすような、そんな目だった。
「泣け」
ガツンと、きた。
頭をゲンコツで叩かれたのだと気付いた時には、視界が滲んでいた。
「泣け、ばか」
痛いよ。
「痛くしたんだ。泣け」
なんで、こんなことするの?
「泣きたいのに泣かないヤツは、見てて腹立つ」
そうなのか、と思った。
そうだったんだ、と思った。
自分は、ずっとこうしたかったんだ。
ずっとずっと、こうしたかったんだ。
初めて人前で、声を上げて泣いた。涙があとからあとから溢れて、止まらなかった。
鼻水が出た。
>452
涎(よだれ)が出た。
ミドリガメが死んでも
友達がいなくなっても
筆箱を壊されても
上履きを隠されても
カスタネットを取られても
ノートに落書きされても
父と母が本当の両親ではないと知っても
それでも泣かなかったのに、いつの間にか大きな声を上げしゃくりあげて、泣きじゃくって
いた。
そして少年は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった健司に
「きたねーなぁ…」
と言いながら、それでもずっと、そばにいてくれた。
そしてその日から、少年は健司の「兄貴分」であり「親友」であり「ヒーロー」に、なった
のだ。
健司は人と争うのが苦手で気が弱く、けれどその分、頭は良かった。
少年は喧嘩っ早くて気が強く、勉強なんて大嫌いだった。
正反対の2人だから、逆に惹かれたのかもしれない。
少年は負けず嫌いで、気に食わないヤツには絶対に弱味を見せたがらなくて、だから薮本よ
りテストの点が低いとムキになった。その頃、少年とよく一緒にいた川野辺由香というおとな
しい少女と、3人でよく勉強会なんてものをした覚えがある。真面目な健司と比べて、すぐに
「飽きた!」と鉛筆を投げ出してしまう少年に、由香が「ダメだよぉぅ」と舌っ足らずな口調
で窘めるのを見るのが、健司は好きだった。
由香の家のそばで、散歩の途中に犬の糞を処理しないで放置してしまうニ丁目の柴オヤジに、
少年が真っ向から向かって行った時は、彼がオヤジの連れた気の荒い「ジロウ」という柴犬に
左手の服の袖を噛みつかれて力任せに振り回された。その時はさすがの少年も顔が引き攣って、
泣きそうになってた。でも、それでも少年は怯まずに、柴オヤジにしつこく何度も何度も何度
も何度も文句を言って、とうとう最後には由香に謝らせたのだ。
カッコ良かった。
>453
ケンカも強くて駆けっ子も早くて、肝試しもへっちゃらで、ニンジンもピーマンもちゃんと
食べられてクラスで一番最初に50メートル泳げるようになった少年が、健司は大好きだった。
少年のようになりたいと思った。
少年のように、強く、優しく、それでいて“男のプライド”ってヤツを持った男の中の男に
なりたかった。
今は泣き虫で少年の後に隠れているしか出来ない自分だけれど、いつか彼と並んで一緒に闘
いたいと思った。何と闘うのかわからなかったけれど、ずっと一緒にいたいと思った。
それが出来る自分に、なりたいと思った。
それは、中学生になっても高校生になっても、少年より背も高く力が強くなっても、それで
もずっと、変わらなかった。
でも。
その「彼」が、ある日突然「女」になってしまった。
いや、本当はもともと「彼」ではなく「彼女」だったのだという。
正直に言えば……可愛いと思った。
ものすごくタイプだった。
髪がさらさらのツヤツヤでちっちゃくって可愛くて、ぎゅっと抱くと折れてしまいそうで、
でも気が強くて睨み付ける瞳には命の強さが満ち満ちていた。
でも、少年は………いや、その「少女」は、つい先日まで、自分の親友だったのだ。目指す
べく目標だったのだ。ヒーローだったのだ。
そんなのは無い…と思った。
神様を恨んだ。
少年さえも恨んだ。
でも、嫌いになんて、なれなかった。
逢うたびに少しずつ、「女」の「彼」に惹かれていく。
話すたびに「女」の姿をした「少年」に心が奪われる。
そして、昨日の月曜日。
>454
男子生徒を追いかける少年を見た。シルエットが、めちゃくちゃ変わってた。胸が“どかん”
とふくらんで、“ぶるんぶるん”と揺れまくっていた。
びっくりした。
先週までぺったんこだったのに、なんという不意打ちだろうか。
強烈に、「女」を感じた。
もう、「彼」ではなく「彼女」であり、「少年」ではなく「少女」だと思った。
でも正直を言えば、あの胸は何かの冗談だと思った。悪ふざけの好きな「彼」の、冗談なの
だと。
…なのに。
「おー健司、先生いたか?」
体育館に引き返すと、クラスメイトがそう声をかけた。
はっとして、咄嗟(とっさ)に「いなかった」と言ってしまった。
そうだ、自分は保健委員で、職員室に担任の先生を探しに行ったんだ。でも
おっぱい。
…じゃなくて。渡り廊下を歩いていたら、1階の保健室の方から
おっぱい。
……じゃなくて。けーちゃんが
おっぱい。
「おい、健司、お前…大丈夫か?」
口元を押さえ、体育館の壁に寄りかかった健司に、クラスメイトが訝しげに言った。
「大丈夫。もうすぐ俺達のクラスでしょ?準備しとこうよ。先生には後で言っておくから」
女子は保健室で健康診断を受けるけれど、男子は体育館でまとめて受ける。まるで農場の畜
産みたいに並んだ男子生徒が、流れ作業的に次々と各検査を受けていく。上半身裸になった男
子生徒の汗臭い肌が、体育館のワックス輝く床板に反射していた。
『あ、そうだ』
検便を忘れた生徒が6人もいたので、それを級長の自分が担任に報告して、指示を得ようと
思ったのだ。
>455
それで職員室に行こうとして………職員室は保健室の上で………それで………。
おっぱいが。
『あれ、けーちゃん……だよね』
上半身裸の女生徒。
ブラが首元にずり上がっていて、真っ白で豊かな胸が、重そうに揺れていた。
大きくてやわらかそうで、それで、ぽっちりした2つの紅い乳首が…
『わ……わ……』
健司は慌ててそのビジョンを振り払う。股間のモノが、正直過ぎるくらい正直に“反応”し
ようとしていたのだ。
『けーちゃんに…コーフンするなんて…』
健司は、自分がものすごく穢れた、汚い人間だと思った。
もし圭介に、あの「少年」に興奮してアレが勃起なんてするような事があったら、もうきっ
と自分は「彼」と顔を合わせられない…。
そう思った。
誰も言わないのかなーとか思いつつ
アスタリス萌えと呟いてみるテスト(謎)。
……いや、むしろジゃsdrftgyふじこlp;@
>456
ここまで。
>444
に…似合わないですか?エロくないですか?
…エロ板での存在意義が…(意義は求めちゃいけない)。
>422
だめでした。
次回は、たぶんエロ。
男の話になると、急に感想が減りますな。(w
>>439 GJ!!です。
健司の描写が少ないので気になっていた所です。
まあ、萌えられはしませんが(*´Д`)アヒャ
次回のエロに期待です。
>>458 グッジョブ! 健司からみた圭ちゃんが可愛くて良い感じです。
次こそ2人でドキドキものの会話を、お願いします。勿論その先があっても大歓迎ですが
もう一回位焦らしてゴール前に山があった方がうれしく思います。
461 :
名無しさん@ピンキー:04/04/22 13:48 ID:m7jxHlCS
>457
「アスタリス」で検索してもわかりませんでした・・・。
おじさん(おにーちゃん?)、それ古すぎ・・・。
サンデーで連載していた「岡崎つぐお」の「ジャスティ」って漫画のキャラなんですね。
ESP制御リングって、どっちかっていうと超人ロックとか・・・(あれは首輪だっけ?)
>>458 健司の話だ〜♪
場のふいんき(何故か変換できない)を無視して
もっと健司の話を! と言って見るテストw
なんか、ガンガレって励ましてあげたくなります
不器用で、ちょっと可愛い。。。ぎゅっ☆ってしたいかもw
>>439 夢・・・見た事は見たんだけど・・・
何故かハウステンボスw
私「○○○になりました」
父「なに? ゆるさん!お前のような奴は、二度と家の敷居を跨がせん」
母「まぁまぁお父さん、娘が欲しいって言ってたじゃない」
父「いや、それとこれとは・・・・」
母「つべこべ言わないの」
父「・・・・・」
私「ごめんなさい、お父さん。 それと・・・今わたし、付き合ってる人がいるんです」
父「!?」
母「あらあら、、、」
彼「始めまして、お義父さん、お義母さん。○○と申します」
・
・
・
ってとこで朝(微妙すぎて笑えない...orz つか、期待してたえっちぃ夢はどこに。。。。?w
463 :
TS:04/04/22 21:20 ID:JUzc8xOs
いままでずっと女の子視点だったので健司視点新鮮ですた
GJ!
次もハァハァして待ってます
>>462 ×ふいんき
○ふんいき(=雰囲気)
ガイドラインよろしく↓
('A`)
467 :
458:04/04/23 01:16 ID:cDCSmCFR
今回はエロ分補給ということで。
「これでエロ?」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>456
■■【54】■■
閉じられたカーテンの隙間から、梅雨月の夕方の、とても弱い陽光が差し込んできている。
壇上に上がった可憐にして厳粛なる議長は、一息ついて、ゆっくりと自分に注目する一同の
顔を見渡した。教室に集まったのは、全部で8人の女子生徒だ。どの顔も、期待と興奮に目を
輝かせていた。
―――ただ2人を除いて。
「ではこれより、2年C組女子生徒有志による、第6回定例会議を行います」
『美しい』という形容が似合う長い黒髪の少女がそう宣言すると、6人の女生徒が一斉に拍
手する。
ただ、一番前の席に座っている2人の女生徒だけは、なんとなく半目になったまま冷ややか
に壇上の議長を見上げた。
「何か不服そうね?」
議長の女の子が『心外だわ』とでも言わんばかりに2人を見下ろした。
「…いや、不服とか、そーゆーんじゃないけどさ…」
2人の少女の内の一人……山中圭介は、呆れたような半目のまま、プロジェクターのスクリ
ーンに映し出された『今回の議題』に目を移した。
「コレ、なに?」
スクリーンにはデカデカと、こんな文字が貼り付いている。
『淫乳艶歌〜お姉さんの果実〜』
壇上に立つ議長…桑園京香は、左手で長い黒髪を耳の上にかきあげて、優雅に後のスクリー
ンを振り返り、
「今回の研究テーマよ」
これ以上無いくらいに厳(おごそ)かな表情でキッパリと言った。
「違うだろ?それってアダルトビデオだろ!?」
「男女の生殖活動を題材にした、赤裸々な観察記録よ」
「何が定例会議だよ。つまりはAV鑑賞会じゃないか」
「失礼ね。これはあくまで研究会。ただAV見てオナニーするだけの男と一緒にしないで欲し
いわ」
>468
「胸張ってゆーな!……しかも、もう第6回……」
「圭ちゃん?研究は継続しなければ意味は無いのよ?」
「なんだよそれっ!なんでオ…ボクが憐(あわれ)れむような目で見られなくちゃいけないわ
け!?」
「なによ。せっかく泣かせちゃったお詫びに御招待してさしあげたのに。感謝されこそすれ非
難されるいわれは無いわ」
「いや、ゼンゼンお詫びになってないし。しかも、自信たっぷりに言う事かコレが!?」
「圭ちゃんの知らない知識を分け与えてあげようってのよ?だいたい、いきなり実践しても失
敗するだけじゃない。だからこうやって事前に知識を身につけておけば、いざと言う時に役立
つじゃないの」
『そんな事もわからないの?』といった顔で真面目に言われて、さすがの圭介も“ぐっ”と
言葉に詰まった。
助けを求めて隣に座る由香を見れば、顔を赤くして押し黙ったままだ。まるで役に立ちそう
に無い。
圭介としてはもともと男だったのだから、男がどうされたら喜ぶかなんて知ってる(つもり
だ)し、まだ男とセックスする覚悟なんて無いのだから「見ても仕方ない」と思っている。
けれど、今ここでそれを言っても京香はきっと納得なんてしないだろう。ましてやこんな
「ヒミツ」を知った後では、何を言っても無駄のような気がした。
「…で?んなこと言うからには、研究は進んでるんだろーな?」
「一応、一通りは」
“ふふん”と京香は意味ありげな顔をして、
「フェラ・クンニとかのオーラル(口淫)系、おっぱいを使ったパイズリ・ソープテク、アナ
ルとか素股とか手コキも基本は。
ソフトSMはタオルとかアイマスクを使ったものくらいでムチとかスパンキングはまだね。
ローソクは興味あるけど、あれは男の子の方に自制心が無いと危なくてやってられないわ。
後は縛りとスカトロだけど、聖水プレイと浣腸プレイは臭くて汚くてダメね」
二重で切れ長で涼やかな目をした、一見清楚なお嬢様風の京香の口から、エロエロで淫靡
(いんび)な単語がつらつらと飛び出し、圭介は呆気にとられてぽかんと口を開けた。
>469
由香を見ると、なんだか可愛そうなくらい真っ赤になってすっかり俯いてしまっている。赤
くなるという事は、その意味を知っているということだ。圭介は由香の頭の辞書の中に、「フェ
ラ」とか「クンニ」とか「パイズリ」とか「アナル」とか「素股」とか「スパンキング」とか
「スカトロ」とか「聖水プレイ」とか「浣腸プレイ」とかの言葉が、どれくらい記録されてい
るのかちょっと見てみたくなった。
「…あのな、頼むからそーゆー事をキッパリゆーな」
「どうして?」
「いや、普通、女の子が口にするような言葉じゃないだろ?」
圭介が顔を赤くしながら憮然と言うと、京香も、そして圭介と由香の周りの女生徒も、おか
しそうにくすくすと笑った。
「本当にかわいいわねぇ、圭ちゃんって」
その目は、ゾクッとするくらいいやらしくて妖しい。
『ああ…そうだった』
圭介は唐突に思う。
桑園京香という女は、こういうヤツだった。エロエロでエッチ大好きなセックスマニアなの
だ。たぶんこの、LL教室を借り切っての研究会…いや、セックステクの『講習会』も、京香
の発案に違いない。
講習会とはいっても、内情はAV鑑賞会そのままだ。もし男子生徒がLL教室を借りようと
しても、内容はどうあれ、はるかちゃんは絶対に許可してくれないだろう。でも、級長で成績
も優秀な京香が言えば、たぶんきっとはるかちゃんは二つ返事で許可してくれたのではないだ
ろうか?
『ありえる…』
「勉強もほどほどにね?」とかなんとか言いながら自分のクラスの優等生を信じきって鍵を
渡す新米教師の、まだ幼さが残る顔が目に浮かぶようだった。
『……女って……ずりぃ…』
京香達が放課後に仲間内だけで集まって、密かに何かやってるのは圭介も知っていたけれど、
まさかこんな事をしているとは思ってもいなかった。
正真正銘のアダルトビデオだ。
しかも流出モノの裏ビデオだ。
そうなると中身は当然無修正で、あんなところもこんなところも、あれもこれもそれもぜん
ぶ丸見えの赤裸々に違いない。
>470
男だった時に知っていたら、なんとか手を回して借りようとしたかもしれなかった。スケベ
大魔王の吉崎あたりにバラしたら、きっと涎をたらさんばかりに喜んだだろう。
今はもう、ぜったいに教えてなんかやらない気分だけど。
結局、ビデオは最後まで見てしまった。
放課後に部活を休んでまで何をしているのか。そう思わないでもない。最初は、さすがに丁
重に辞退してしまおうかと思ったのだ。
でも、京香に「なぁんだ。圭ちゃんってやっぱりお子ちゃまなのね」とか言われて、それで
もやめるのはなんだか癪だったので、嫌がる由香を説得して最後まで見た。
ちょっと、後悔した。
なにしろ、裏モノだ。見たくないものまで全部見えてしまうのだ。
圭介は自分のあそこだってまだちゃんと見たことないのに、人のものなんてそれこそ一度も
見たことなんてなかった。
マジで、びびった。
出演しているのは、圭介もちょっとは知ってる爆乳AV女優だった。プロダクション申告で
Hカップの、モデルでも通りそうな、背が高く、顔はともかくとしてスタイルのキレイな女性
だ。胸にシリコン入ってるという噂があったけれど、その真偽は定かではない。確か、健司の
部屋にあったエロ本にも、載ってた気がする。
…思い出して、ちょっとムカッときた。
話は単純で他愛の無いもので、設定としては近所に住む幼馴染みのお姉さんに、彼女に憧れ
る童貞高校生が大学入試のための家庭教師をしてもらう…というものらしい。とても高校生に
は見えない、真黒に日焼けして筋肉質な男優が、背中や腕に当たるお姉さんの爆乳に我慢出来
ずに襲ってしまう…という馬鹿みたいな内容だった。
最初は嫌がっていたお姉さんも、青年が(とても青年には見えないけれど)「ずっと好きだっ
た」と告白すると「恋人にはなれないけれど、キミの初めてになってあげる」と優しく体を開
いてくれちゃったりなんかする。
――なんて都合の良い話だろう。
こういうものを見ると、アダルトビデオというのは、つくづく頭の悪いリビドー溢れる中学
生が、悶々とした妄想の果てで考えそうな内容だと思えた。
>471
セックスシーンそのものは、キスから始まり、セーターをブチ破って飛び出してしまいそう
なくらいでっかい乳房を愛撫しながら、服をはだけ、股間をねちっこく指でいじくってゆく…
という、至極オーソドックスなものから始まった。
女子生徒達はそれぞれ、「あったまわる〜」とか「んなわけないじゃんねぇ」とか「ドーテ
ーの指使いじゃないじゃんよ」とか、本当に好き勝手言っている。
それでも、女優の耳や首筋や背中、脇、腰、ヘソ…などへ、男優がキスしたり嘗めたりしな
がら少しずつライトグリーンのワンピースを脱がせてゆくと、それまで男優に対して「コイツ
腹筋割れてるよ〜」とか「顔、濃いねぇ」とか「キス上手そう」とか言っていた女生徒達が、
徐々に揃(そろ)って無言になっていった。
教室の明かりを消しているため、画面に集中しやすくなっているのかもしれない。ちらっと
教員用机に座る京香を見ると、ちょっと冷めたポーズを取りながらも興味深々…といった感じ
で画面に見入っていた。
LL教室の前と後の入り口のドアには鍵がかかり、しかもカーテンが引かれているために中
は決して見られないとはいえ、バレやしないか別の意味でも心臓がドキドキした。音を出すわ
けにはいかないので、もちろんスピーカーは切って、音声は生徒各個人が生徒ブースの端子か
らヘッドホンで聞いている。けれど、だからこそ余計に音がクリアに聞こえて、女優の喘ぎ声
や男優の息遣い、ぺちゃぺちゃとした唾液の音やキスの音が、ぞわぞわと耳を刺激するのだ。
たっぷりと大きくやわらかな乳房へ、男優が美味しそうにかぶりつき、しゃぶる。画面一杯
に映し出されたその情景に、圭介の胸がむずむずした。
“もにゅもにゅもにゅ”と、たっぷり時間をかけて乳房を揉み、ぺろぺろと嘗め、ちゅばっ!
と高く音がするくらい強く吸う。まるですぐそばで聞いているかのようだ。音に、耳を『犯さ
れて』いる気がする。思わず目を瞑ってしまってから、はっと気付いて教員用机の方を見ると、
京香がにやにやしながらこちらを見ていた。
>472
(なんだよ)と声を出さずに口をパクパクさせると、(べぇつにぃ?)と同じく口パクだけ
で京香が答える。なんだか見透かされている気がしておもしろくなかった。
スクリーンでは男優が女優のパンツをするするする…と脱がせている。
圭介は、女優が少し腰を浮かせて、男優が脱がせやすくしているのに気付いた。
『そうか』
と思う。
『ああすれば、スムーズに…』
…と、そこまで考えて
『ナニ考えてんだオレ…』
と、自分で自分にツッコミを入れる。
やがてカメラは少し引いて、男優が女優の両足を“がばっ”と大きく開くのを映した。
そしてすぐに“そこ”にズームアップする。
…重ねて言うが、裏モノである。
あんなところもこんなところも、あれもこれもそれもぜんぶ丸見えの赤裸々だった。
『うげっ』
と思った。
隣を見ると由香も同じ感覚を抱いたのか、顔を顰(しか)めていた。
“あんなもの”が自分の股間についてるだなんて、あまり信じたくない気持ちだ。「赤」と
「肌」と「ピンク」と「黒」と「茶色」が、ごちゃごちゃに交じり合って濡れて光ってただれ
ていた。
もしゃもしゃとした陰毛と、少し変色した赤い亀裂は、内臓の色そのものだ。お尻の穴の周
りはココア色で、そのシワが放射状になった穴は、とろとろとした粘液にまみれてヒクヒクと
動いていた。男優が“くぱっ”と大陰唇を指で開くと、びらびらとした貝みたいなピンク色の
……というか内臓色の襞の中に、ぬるぬるとした『穴』が見えた。
膣口だ……と思った途端、気が遠くなった。
自分に“あんなもの”がついてるというだけでもショックなのに、セックスの時はあれを相
手に見られるのだ。そんな恥ずかしくて恐ろしいこと、出来るわけが無い。
圭介はそう思った。
>473
男優は女優の肩に手を回し、彼女の体を起こしてねっとりとしたキスをした。甘えて鼻を鳴
らす女優の、その脚が閉じられようとするたびに、男優は舌をいやらしく絡めながら「脚をいっ
ぱいに開いていろ」と言わんばかりに右手で彼女の膝小僧を払う。白くて大きくてやわらかい
乳房が、ゆらゆらと揺れてひどくいやらしかった。
やがて、男優が右手の中指を口に咥え、たっぷりと唾(つば)をつける。ぬらぬらとしたそ
の指を「どうするのだろう?」と思った途端、男優は手を女優の股間に伸ばし、唾のいっぱい
ついた指でクリトリスをくりくりと嬲(なぶ)った。
「やだぁ…」と、ヘッドホンの外から声が聞こえる。ちらっと由香を見ると、彼女は両手で
顔を隠すようにしながらもしっかりと指の間からスクリーンを凝視していた。
“ちぷちぷ”“くちゅくちゅ”と、粘液質の音が響くたび、女優が甘ったるい声を上げなが
ら体を、腰を揺する。重たそうな乳房がゆさゆさと揺れ、腿の内側に“さっ”と紅が差した。
時間をかけて股間を嬲ると、やがて男優は自分の唾液と女優の粘液の絡んだ指を再び口に含
む。そしてたっぷりと唾をつけ、今度は中指と薬指を揃えて、ずぶずぶと彼女の膣口へ沈めて
いく。
「あ〜…」
「…はぁ…」
「やだ…」
「ぅん…」
周囲から、吐息のような声が漏れるのが聞こえた。みんな、自分が彼氏か誰かにされている
ところを想像でもしているのだろうか?
圭介は、もちろんあそこに指を入れた事なんて、まだ一度だって無い。痛いし、怖いし、し
かも2本も入れるだなんて、とても気持ち良くなるとは思えないからだ。
今まで3回だけした自慰にしても、せいぜいが、指の腹で裂け目の合わせ目をすりすりとな
ぞるのが精一杯だった。小陰唇の中にまで指を入れる事なんて、お風呂で洗う時以外にはしよ
うとも思わない。
けれど、スクリーンの中の女優は、ものすごく気持ち良さそうだった。うっとりとして、小
鼻が広がって、口を開けて「あんあん」と喘いでいる。体を“びくっびくっ”と震わせるたび
に、豊かに実ってツンと上を向いた乳房が、勃起した乳首をのせてぶるぶると震えた。
>474
圭介は思わず「ごくり」と唾を飲み込んで、その音があまりにもハッキリと聞こえてしまっ
たために、恥ずかしくて思わず誰かに聞こえやしなかっただろうかと不安になった。
男優は指を“ぐちゃぐちゃ”と出し入れしたり、手首を使って“ぐりぐり”と捻るようにし
たりする。その間にも男優は女優にキスしたり耳を嘗めたり耳たぶを噛んだり、首筋をべろべ
ろと嘗めたりしている。
気持ち悪い。
気持ち悪いだろうそれは。
気持ち悪いに違いない。
そう思いながらも、圭介は“ぞくぞく”がお尻の上の、腰骨のところでわだかまって消えて
くれない事に気付いていた。
女優の耳は男優の唾でべとべとのどろどろになり、それでも女優はうっとりと目を瞑ってほっ
ぺたを真っ赤にしたまま甘い啼き声を上げている。やがて男優の右手の動きは速くなり、それ
こそ男が自慰をする時に素早く手を動かし、何度も出したり入れたりを繰り返した。指は2本
とも根元まで挿し込まれ、ぐいぐいと奥の方まで押し込まれている。「気持ちいい」とか「よ
くないとか」そういう問題じゃなく、圭介には…もう、なんだか、「痛い!」としか思えなかっ
た。
そのうち、男優が指を少し浅めにして、さらに素早くそこを擦り始めると、たちまち女優の
声が、余裕の無い切羽詰ったものになっていった。そして、
「いやっあっだめっ!いやっいやっいやっいやっいやっ」
と、何度も声を上げて、彼女の膣口の上から“びゅっ!びゅっ!”と透明な液体が迸った。
あれが『潮吹き』と呼ばれるものだという知識は、圭介にもあった。けれど、尿道口から出
るものだとは思わなかった。てっきり膣口から迸るものだと思っていたのだ。
『じゃあ、やっぱりあれってオシッコ……なのかなぁ……』
こんな状況だというのに、圭介は思わず腕を組んで、う〜ん…と唸ってしまった。
『…ということは、だ。つまり……お漏らし?』
あまりにも恥ずかし過ぎる結論に、ぐあっと顔が熱くなる。あんなに気持ちの悪い…言って
みれば映画『エイリアン』に出て来るフェイス・ハガー(第一幼生体)の裏側みたいな“ぐちょ
ぐちょ”のあそこを見られた上、指を突っ込まれて乱された挙句、泣きながらオシッコを漏らす
………………………………たぶん、死にたくなる。
>475
男の時は単純に「お〜すげ〜!!」とか「うわっナンダコリャ」とか言ってたセックスとい
う行為は、いざ女の立場で見ると、なんて恥ずかしくて恐くて苦しそうな行為なんだろうか。
男に戻らない限り、自分はいつかあんな事をして子供を産まなくてはいけないのだ。いや、男
に戻るとしても、健司から離れて女に惚れない限り、結局は男とセックスして膣内で精液を受
け止めなければならない…。
『……おいおいおい……』
改めて、自分は、なんて『危機的立場』に立たされているのだろう!…と思う。
健司と離れたくない。
でもセックスはしたなくない。
……それが許されるなら……。
『女を「やって」もいいかな…ってやっと思えてきたのに……』
面倒な事や恐い事はたくさんあるけれど、そんなに悲観的な事ばかりではない…と、ちょっ
と前向きに考えはじめていた矢先に、まさかアダルトビデオを見て自分の立場を再確認すると
は思わなかった圭介だった。
男優が指を抜くと、膣口は“くぱぁ…”と開き、カメラはその奥の肉色までもハッキリと映
し出していた。ひくひくと、女優の白いなめらかな腹がしゃくりあげるように痙攣し、うっと
りとしたその顔は快感の余韻を味わっているように見える。
みっともない、と思った。
なんて無様な姿なんだろう。
けれど、目が離せなかった。男だった時に見た時とは、違う意味で、目が離せなかった。
男だった時は、男優に自分を重ねて見ていた。だから胸に満ちたのは、征服欲とか支配欲と
かいう感じのもので、「穢(けが)してやったぜ、へっへっへっ」とでもいった感情だった。
でも、女になった今、こうして見ていると、いつの間にかあのぐったりとして恍惚の表情で
全身を震わせている女優に重ねてしまっていた。
恐い。
苦しい。
恥かしい。
死にたくなるくらい恥かしい。
>476
ううん。
きっと死んじゃう。
アイツにあんなことされたら、きっと死んじゃう。
アイツ?
アイツって、だれ?
ああ……でも。
でも。
男におっぱいを揉まれたり、吸われたりすると、あんなに気持ち良いの?
男にあそこを指でくりくりされると、あんなに気持ち良いの?
男に指を中まで入れられて、それでぐちゃぐちゃされたら、あんなに気持ち良いの?
胸がどきどきした。
息が苦しくて、顔が熱くて、あえぐようにして呼吸した。
両手を胸元に当てて、右手で喉元を押さえた。
心臓が、キツネに追われた野ウサギみたいに跳ねまわっていた。
“ごくっ”と喉が音を立て、何度も瞬きを繰り返す。
そしてそんな圭介を、教員用机の上の京香がじっと見つめていることに、彼は気付いていな
かった。
画面は変わり、寝転がった男優の脚の間に女優が正座していた。カメラは、その女優のポニ
ーテールの茶髪を後から撮っている。なめらかな肩から背中、腰に至る線。その腰に続く、ま
るくて豊かなお尻。
そしてズームアップ。
女優が腰を少し上げる。お尻の肉の山の間のものが、全部カメラに映る。ココア色の穴も、
ぱっくりと開いた大陰唇も、充血してはみ出した小陰唇も。
カメラが切り替わって、見下ろすアングルになる。仰向けの男優の股間に、女優が顔を伏せ
ている。上下にリズミカルに動くその頭の上で、ポニーテールが文字通り馬の尻尾のようにフ
リフリと揺れていた。
>477
カメラが、女優の口元にズームする。
『あ…』
圭介が、ふと我に帰る。
形はずいぶんと大きくて、いびつで、色も黒っぽいけれど、見慣れたモノが画面にインした。
2週間前には毎日のように見ていた、男性器………男のちんちんだった。
それを、女優が愛しそうに、美味しそうに、嬉しそうに、嘗め、しゃぶる。
涎にまみれ、ぬらぬらと濡れ光るソレを、圭介は不思議と「気持ち悪い」と思わなかった。
ちんちんというものをイヤと言うほど知っている圭介は、ソレがオシッコをする器官だと知っ
ている。仮性包茎のちんちんは、ちゃんと皮を剥いて洗わないと恥垢が溜まってしまうことを
知っている。
それでも、スクリーンの女優とシンクロしてしまっていたからか、その“「汚い」はずの男
性器を「しゃぶる」行為”を、彼は気持ち悪いとは、少しも思わなかった。
いや、むしろ。
自分がもう失(な)くしてしまったものだからだろうか。
愛しいと、思った。
赤黒くて、ツヤツヤとした先端部分。
血管が浮いて「がんばってるゾ!」とでも主張しているような幹(みき)。
一口大のウズラの卵のようにコロコロと転がる、デリケートな精巣を包んだ玉袋。
勃起したソレは、火がついたみたいに熱いのだ。
“びくんびくん”と、命の鼓動を伝えて跳ねるのだ。
手で、触れて。
愛しい愛しいひとのそれを。
いとしいいとしい、それを。
舌で。
唇で。
口の中で。
いのちを。
あついいのちを。
>478
「コホン」
はっ…とした。
慌てて京香を見る。彼女は、そ知らぬ顔でスクリーンを見ている。
圭介は、どっと汗が吹き出るのを感じた。
『…見てた?…』
気がつくと、自分は口をうっすらと開き、舌を歯の上に、唇の上に走らせていた。
まるで、御馳走を前にして舌なめずりでもするかのように。
「………ッ…」
左手を口元に当て、スクリーンから目を逸らした。けれど、ヘッドホンからは、女優が男の
ちんちんを嘗めしゃぶる音が聞こえ続けている。
ぴちゃっ…ぴちゃっ…ぴちゃっ…
くちゅっ…
ずるるっ…ずっ…じゅちゅっ…
じゅっ…じゅるるっ…
べちゃ…
んあっ…は…っん…
画面を見た。
引き寄せられた。
見ずにはいられなかった。
圭介の中の「女」の部分が、じんじんと熱く疼く。
視線が、吸い寄せられ、引き止められ、縫い止められる。
>479
やがて女優は、自慢のHカップの乳房で、男のちんちんを挟み、しごき、乳首でくにくにと
赤黒い先端を刺激した。
『…おっぱい……あんなふうに……』
両側から両手でもったりと持って、体全体を使うようにしてちんちんを刺激する。滑りが悪
いと思ったのか、女優がもごもごと口を動かして、唾液をとろりと乳房の間から頭を出してい
るちんちんに垂らした。その唾液を潤滑油にして、女優はさらに圧迫と摩擦による愛撫を加え
ていく。
『そうか…つば…で…』
無意識に、圭介は自分がする時の事を考えていた。
緊張して唾が出なかったら、どうするんだろう?
唾でしたら、臭くなったりしないんだろうか?
相手が「汚い」とか、思わないかな?
圭介は、自分でもそれに気付かない。
そして女優は、満足そうな笑みを浮かべると上半身を起こし仰向けの男の身体を跨(また)
いで、そのまま腰を落とした。剣道で言うところの蹲踞(そんきょ)の構えに似ているけれど、
脚の開き具合が男優の身体を跨いでいる関係で、女優の肩幅より少し広いところが違う。そこ
から、和風便器にしゃがみ込むような格好になって、女優は右手で男優のちんちんの根本を指
の間に挟むと、自分の股間のぱっくりと開いた肉の亀裂に当てた。
カメラはそれを、女優の背後のお尻の肉の間からアップで撮っていた。
あんな太いものが入るのか。
圭介も由香もそう思ったけれど、女優はゆるゆるとお尻を振ると、ちんちんの先端を亀裂の
中へ押し進めた。
『ちがう…』
押し進めたのではなく、女優自身が腰を落としているのだ。カメラは女優の正面からになり、
女優の顔に浮かぶ、まるで貪欲な猫科肉食獣を思わせる笑みを映した。
『…喰う』
>480
圭介はそう思った。
『喰われる』ではなく、『喰う』。
男のちんちんを腹に収め、その“いのち”を自分のものにする。
その立場。
自分の、立場。
『ふと…い…』
圭介の、指1本も入らないあそことは違う。女優のそこは、男優のモノをじりじりと飲み込
んでゆく。
「ああ…あ〜〜〜…」
女優は男優の汗ばんだ胸に両手をつき、お尻を揺すりながらその白い喉を震わせる。上を向
き、伸びやかなその首を精一杯伸ばして、嬉しさの満ちた声で淫猥(いんわい)に啼く女優は、
獲物を捕らえ、切り裂き、噛み砕いて嚥下(えんか)する、永久凍土を駆けるオオカミのよう
だった。
ぐっ…ぐっ…ぐっ…と、お尻を揺すって腰を落とし、根本まですっかり胎内に男のちんちん
を収めてしまうと、女優はその重く熟れた乳房が男の胸に触れるくらいまで身体を前傾させた。
乳房はそれ自身の重みで少し垂れ下がり、正面から見るよりもずっと豊かに、重たく見える。
女優の顔には悪戯っぽい小悪魔の笑みが浮かび、自分の固く大きく尖った乳首を男優の乳首に
当てて、円を描くようにくりくりと刺激した。
『…あんなことまで…』
豊かな胸だからこそ出来る……気がした。
そしてカメラは再び女優の背後からズームで迫り、男優のちんちんを根本まで飲み込んでい
るあそこを画面いっぱいに映した。デリケートな玉袋が、女優のたっぷりと豊かなお尻に圧迫
されて、なんだかぱんぱんにふくらんで見える。
『痛いかな…?』
と圭介が思った途端、女優がお尻を上下させて、ねっとりとした粘液の絡んだちんちんが、
ぬらぬらとした光を纏わりつかせながら姿を表した。
『ぜんぶ…入ってる……あんなに…太いのに…』
圭介は、「オンナの身体」のしなやかさ、力強さ、貪欲さ、そして包容力を、一度に見せら
れた気がした。
>481
■■【55】■■
映像はその後も、男優と女優の行為を次々とスクリーンに映し出していった。
女性上位でしばらく膣内でのちんちんの摩擦を楽しんだ女優は、男優が上半身を起こすと、
その首に抱きついて、まるで遊園地で父親に甘える幼女のように、甘ったるい笑みを浮かべて
安心しきったように身を任せた。
貪欲なメスの顔だったものが、次の瞬間には無垢な少女の顔をしている―――――。
自分にはきっとあんな事は出来ない。
そう圭介は思う。
体位はやがて体面座位から、正常位になり、男優は女優のHカップの乳房に顔を埋めるよう
にしながら腰を動かしていた。そして正常位から、今度は横臥後背位(添寝するような格好で
のバック)になり、やはり後から女優の豊かな乳房を揉みしだく。
最後はバックになり、カメラは犬のように四つん這いになった女優の、重たく垂れた乳房が、
男優に突き入れられるたびに“ぶるbんぶるん”と前後に激しく揺れ動く様を映した。
『痛そうだな』
圭介はそう思う。
でもたぶん、その痛みさえも気持ち良いのだろう。
あられもない声を上げ、全身を紅潮させて、それでも腰を振りペロリとピンクの舌で自分の
唇を嘗めてみせる。
ついさっきの、圭介のように。
そしてビデオは、男優が女優の背中に射精し、豊かなお尻で拭うように精液を塗り付けて、
唐突に終わった。
プロジェクターの明かりが消えると、最前列の蛍光灯だけが、突然点灯した。
熱っぽい顔で“ぼ〜〜〜…”と放心状態にあった圭介は、はっとして、入り口のところに立
つ京香を見た。彼女の手は、蛍光灯のスイッチパネルにかかっている。上目使いに圭介の方を
見て、妖しい笑みで“にやっ”と笑った。
「セーエキ出した後は、くっだらない三文芝居が続くだけだから、後はパスね」
>482
ここまで。
>457
アスタリス……ジャスティですか?
>460
すみません。
このスレ内でも終わらないかもしれません…。
山は………ちょっと重いのがいくつか。
>461
検索してわからなかったのに、どうやって調べたのでしょう??
>465
すみません。
じゃ。
ガイドラインよろしく↓
485 :
483:04/04/24 04:25 ID:N8Yd36b7
今回はエロ無しです。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>482
パンパンと、ついてもいないホコリを払うような仕草をしてから、壇上に上がって教卓に両
手をついて一同を見回した。
「で、どうだった?勉強になった?」
にっこりと、それはそれは魅力的な笑みで京香は問い掛ける。
「てゆーかぁ、コレ前に見たじゃん」
「えーそうだっけ?」
「ねえ、今日って、アナル拡張じゃなかった?あたし期待してたんだけど」
「変更したんでしょ?ニューフェイスがいるからさぁ」
「イチバン無難だもんねぇ」
「そうそ。グロくないしね」
「でも圭ちゃんのおっぱいなら、アレ、できんじゃねーの?」
「パイズリ?でもさぁ、デカ過ぎて男のチンポ挟んでも中に隠れちゃいそうじゃない?ナメら
んなきゃイミ無いじゃん」
「Fなら大丈夫っしょ」
「いいもん持ってるよな・あ〜あ、アタシもキョヌー欲しいよ。キョヌー」
周りで女子生徒が好き勝手言っても、圭介は何も答えられなかった。
隣の由香を見ると、なんだか彼女「も」妙な表情で、ひたすら“もじもじ”している。
今の圭介には、彼女の気持ちがよおくわかった。
それはもう、分かり過ぎるくらいに。
あそこが、洪水なのだ。
“とろとろ”で“くちゅくちゅ”で“ぬるぬる”なのだ。このままだと、スカートにまで染
み出してしまいそうな気がした。
すぐにトイレに行って、それで染み出したぬめりを拭い去りたかった。替えのパンツに履き
替えたかった。
壇上の京香を見る。
顔は少し赤かったけれど、まったく平気みたいだった。やせ我慢してるようには見えなかっ
た。
『こいつはバケモンか』
そう思った。
>486
「…今のビデオの…その、どこが勉強になるんだ?」
「なるじゃない」
『あら?』と、京香はその形の良い眉を上げて圭介を見た。あからさまに『わからなかった
の?』という顔をしている。
「男からの服の脱がされ方、キスの仕方、され方、おっぱいの見せ方、指マンの時の反応の仕
方、フェラの仕方、その時の表情、パイズリの仕方と顔の見せ方と表情、騎乗位の入り方、男
の乳首の愛撫の仕方、騎乗位の時の腰つき、おっぱいの触られ方、誘い方、その時の仕草、体
面座位での肌の密着のさせ方、甘え方、正常位での腰の使い方、各体位での顔の見せ方、体の
動かし方、男を喜ばせる声の上げ方……数え上げればキリが無いわよ?」
「ちょ……待てよ。それ全部出来るわけないだろ!?」
「どうして?」
「だってその…あ、あんなにか、感じてたら、そんなの自分でわかんないじゃないか」
「はあ?」
「はあ?…って…」
いかにも「驚いた」という顔の京香を見て、圭介の方が驚いた。
周囲の女生徒も、なんだかクスクスと笑みを漏らしている。
「圭ちゃん、あのね、さっきのアレ、女優が本気で感じてるなんて、思ってないわよね?」
「え?え?え?」
思ってた。
「あのね、あれはお芝居。演技なの。大体、周りにはスタッフが最低5人はいるのよ?
そんなとこで本気になれる女は、よっぽどのセックス好きか、男優がめちゃウマか、ドラッ
グやってるかよ」
「そ…そうなの…?」
「まあ、私達とセックス商売の人とは別だけどね。
恋とセックスの基本は、いかに男に気取られないように主導権を握るか、よ?本気で感じる
のはそれはそれで悪くないけど、全部である必要は無いの。むしろ、70パーセントは感じて
も、30パーセントはいつも冷めてないとダメ。自分を演出しないと、男はいろんな意味で本
気になってくれないから」
京香が何を言ってるのか、正直、圭介にはよくわからなかった。
>487
「特にセックスで大事なのはね、男に
『あなたが好きだから、こんなになっちゃうの』
『あなただけよ?こんな私を見せるのは』
『あなたが欲しくて欲しくてたまらないの』
……って、女が思ってるって思わせること。
真実がどうあれ、『あなただけ』ってとこが大事なのよ。
最近の歌にもあったじゃない?
ベスト・ワンよりもオンリー・ワンなの。
この女には自分しかいないんだ…って思わせとけば、後は好きにできるから」
「…はあ」
『好きに』って、なにをどう『好きに』するのだ?
「でも、女がそう思ってるだなんて男に気付かれたらアウト。
男にはね、『へっ…こいつはもうオレのトリコだぜ』って思わせとくのがイチバンなのよ。
男ってのは基本的に馬鹿だから、そう思わせておけば操縦もしやすくなるから。
『可愛い女だ』って思ってくれたら、それでもう勝ったも同然。
可愛くおねだりして、可愛く怒って、可愛く拗ねて、可愛くキスしてあげれば、男は何でも
言うこと聞いてくれるわ」
「はあ…」
「やあねぇ。気の抜けた返事なんてして。圭ちゃんも男として17年間も生きてきたんだから、
自分が女の子に対して抱いてた幻想の一つや二つあるでしょ?」
「幻想……」
「そうよ。幻想。
男の子は幻想が大好きなの。
周りを見てみなさいよ。今の世の中には幻想が溢れてるわ。ファンタジーよね。
男は自分の都合の良い今しか見えないし、見ないし、感じないし、反応しない。
だからここまで男に都合の良い女性像が氾濫してるの。
女としては、それを利用しない手は無いわ。
アダルトビデオなんて、その最たるものよね。ここに出て来るのは、男にとって甘い甘い砂
糖菓子みたいな都合の良い女ばっかりだから、いい御手本になる。どうすれば男から見て『可
愛い女』『えっちな女』『いやらしい女』『スケベな女』になれるか、その答えが全部詰まっ
てるもの。
>488
エロゲーでもエロマンガでもエロアニメでもいいけど、ああいうのはキモイから生理的にダ
メ。あんなの見てたら感性が死滅するわ。
ああいうのを見てシコシコオナってるようなキモ男(お)は、最初から眼中に無いから別に
いいんだけど」
「はあ…」
「自分にベタボレな女の子を無下(むげ)に出来る男は、そうそういないわ。
その上『自分にだけ』『可愛くてえっちでいやらしい女』だったら、大抵の男は落とせる。
気に入らないところがあっても、相手がこっちに惚れてるうちはどうとでもなるわよ。
自分に惚れさせておきながら、上手に自分好みの男に変えていけばいいの。
ほら、よく言うじゃない?
『歴史は夜、創られる』って。
イチバン恐いのは男じゃなくて女だっていうのは、歴史や物語が証明してる。
女は魔物だって言われるのも、それだけ女が男を魅了して自由自在に操る力を持ってるから
なのよ。
聖職者が女を不浄のものって言うのも、別に『お月さん(月経)』で血がドバドバ出るからっ
てだけじゃなくて、神の道を外れさせ、神への愛を奪って独占してしまうからよね、きっと。
女の魅力は聖職者にとっても神に勝る魔性の美酒なのよ。
そうそう。
『傾国の美姫』って言葉はあっても『傾国の若君』とか『傾国の美少年』なんていう言葉は
無いわよね。それに敵国に自分の娘を嫁に差し出して血縁を結び、内側から篭絡していく方法
は、古来から西洋でも東洋でも行われていた軍事的にも政治的にも極めて有効な手段だったし
…………………って、なんて顔してるのよ圭ちゃん」
「あ…いや…」
よほど間抜けな顔をしていたらしい。
眉を顰めて訝しげに見る京香に、圭介は“ふるふる”と首を振った。
>489
「いい?女の価値は、男で決まるの。
どれだけイイ男を手駒に出来るかで、女の人生が変わっちゃうんだから、いろんな男と関係
して、トリコにして、それで自分の価値をどんどん高めていくの。
安売りなんてもってのほか。
本気になるのもなるべくBAD(バッド)。
基本は
『ハートはクール、瞳はゾッコン。オトコのチンポは操縦桿(そうじゅうかん)』
これよ」
驚いた。
ただのエロエロでエッチ大好きなセックスマニアかと思ったら、こんな事を考えていたのか。
外見的には清楚なお嬢様然としていて品行方正(ひんこうほうせい)そのものという京香が、
まさかこんな事を考えながらいろんな男とえっちしていたなんて、圭介はこれっぽっちも知ら
なかった。
『スケベ大魔王』の遥か上をいって宇宙にまで飛び出してるような『エロエロ大魔神』の称
号は、まさしくこの女こそ相応しい気がした。
なまじ頭が良いだけ、凶悪だと思った。
「オマエ……今、何人と付き合ってんだ?」
「そうねぇ……6人くらいかな?」
「6人!?」
「有望なのは3人ね。
将来モノになりそうなのが1人いるけど、あとの2人はえっちが上手だから。
あ、でも、寝たのは4人だけよ?」
まるで、スポーツチームの監督みたいな口調で言った。
「6股してるのがバレたりしないのか?」
「5人は、他にオトコがいるの知ってるからバッティングしてもヘーキ。気をつけなきゃいけ
ないのは1人だけだから大丈夫よ。
大体、バレるような女は最初からしなきゃいいの。そもそも、そんな資格無いわね」
「…オマエ…その人達のこと、本当に好きなのか?」
>490
「好きよ?当たり前じゃない。
じゃなけりゃ寝ないし、抱かないし、抱かせないし。
人を好きになるスタイルに決まりごとなんて無いでしょ?
その人のどこを好きになるかは人それぞれだし、どこに価値を見出すかも人それぞれ。
御飯とパンとパスタとお粥のどれか一つを選べって言われても、それぞれにいいところがあっ
て、それぞれに悪いところがあるから、すぐには答えは出せない。
人が人を好きになる要素だって、それが優しさであったり、地位やお金であったり、社会的
立場であったり、若さであったり、テクニックであったり、千差万別でしょ?」
「本命は?」
「ぜんぶ」
京香はケロッとした顔でそう言うと、
「もちろん、あの人達の期待を裏切らないように、服や化粧品にはしっかりお金をかけるし、
エステやスキンケアにも時間をかけるのは当たり前だと思ってる。女を磨くのは、好きになっ
た男に好きでいてもらうための、最低限の礼儀だわ。
そしてその分、『いい女を抱ける』ってだけでも神様に感謝して欲しいし、その上『オレを
好きでいてくれる』っていう自尊心と満足感を充足してあげるんだから、自分の人生のために
あの人達を天秤にかけるくらい許されて当然の権利じゃない?」
圭介は何も言えなかった。
ただ絶句して、壇上の京香の顔を見ていた。
「何かを得ようとするには、それに見合う代償が必要。
それをちゃんとわかった上で、私は私の生き方を選んだ。
それに対して文句を言われる筋合いは無いし、言わせない。
OK?」
何もかも見透かしたかのような切れ長の美しい目で、圭介と由香を順番に見た。
その目には決意と自信とプライドが、まるで薄闇の中の「明けの明星」のように強く強く煌
いている気が、した。
「だからね、せっかく可愛い女の子になったんだから、出来れば圭ちゃんには、とびっきりの
イイオンナになって欲しいのよ。
かの孫子も言ってるわ。
『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』ってね。
今回、この研究会に御招待したのは、そういう意図もあったワケ。
>491
圭ちゃんには「女」として、「男と女」を知って欲しい。
そしてそれは、のべっちも了承済みなんだから」
圭介は“ぎぎぎ…”と壊れたゼンマイ仕掛けの人形のように、ぎくしゃくとした動きで隣に
座る由香へ首を向けた。
「ごめんねぇけーちゃん…。で、でも、私だってまさか“こんなの”だなんて知らなかったか
ら…」
「“こんなの”は失礼ねぇ」
手を合わせて平身低頭で謝る由香へ、壇上の京香は複雑な表情を浮かべながら嘆息した。
「“圭ちゃんに今イチバン足りないのは『女としての自覚』だ”ってのべっちが言うから、あ
んなことやこーんなことをいろいろ教えてあげようと思っただけなのに」
「京香ちゃん、だめだよぉ言っちゃぁ…」
「ほお……そーかそーか…オマエが…」
ゆらりと立ち上がる圭介を、由香は冷や汗をかきながら引き攣った顔で見上げる。
LL教室の扉が開いて、由香が圭介に追いかけられながら飛び出してくるまで、あと10秒。
■■【56】■■
今日は、健康診断、放課後の研究会…と、「女の快感」を覚えてしまった体の、どうしよう
もないほどの不便さを、まざまざと実感してしまった1日だった。
結局あの後、由香は由香なりに彼の事を想ってした事だと圭介は理解して、やわらかいほっ
ぺたを30秒ほど“ぐにぐにびみょーん”と引っ張るだけで許してやった。
それに、なんだかんだ言ってもそれなりに(ものすごく不本意だけど!)勉強になったし、
京香を中心としたクラスの中の人間関係もなんとなくわかったし、京香にはなるべく逆らわな
い方がいい…と学習もしたから、それはそれで(ほんとーにものすごく不本意だったけど!)
有意義な時間ではあったのだ。
さすがに、パンツの中が“とろとろ”に濡れてしまったのは参ったけれど、これはもう慣れ
るしかないのだろうと想う。
でも、圭介が本当に困惑して、焦燥して、落胆して、悲嘆までしまったのは、次の日…6月
14日の水曜日、からだった。
>492
健司が、変わってしまったのだ。
夏休みに行われる水泳部の大会が近いし、これからその大会まで何度か記録会も行われるた
め、練習量が増えて、朝、一緒に登校出来ないのは、わかる。
でも、練習が終わるまで待っててやると言っても
「いいよ。夜遅いし、危ないよ」
と言って先に帰るように言ったり、第一そんな時でも、前ならあのどこか安心出来る牧歌的
な微笑みを向けてくれていたのに、こちらを見ようとしてくれない。
たまに見ても、決して目を合わせないし、すぐに顔を背けてしまう。
もともと健司とは、2年になってからクラスが分かれて合同授業も一緒になることは無くなっ
ていたのだ。圭介はC組で、健司はE組だったからだ。C組は、美術部で同じ宮森倫子(みや
のもり りんこ)のいるD組と合同授業を受け、E組はF組と受けると決まっているのだ。
2人きりになるなんて事は、それこそほとんど無い。
廊下で会っても必ず誰か側にいるし、教室に会いに行っても全身から「何か用?」っていう、
なんだか拒否されているような感じがして、圭介の方がいたたまれなくなってしまう。顔は前
と変わらない笑顔だったりするものだから、違和感はかなりのものだった。
伊達に8年間付き合ってきたわけじゃい。
こういう時の健司は、何か嫌な事があったり、不機嫌だったり、何かをじっと一人で考えて
いるのだ。
原因は、圭介にもなんとなくわかる。
昨日、2階の渡り廊下にいた健司に、裸の上半身を見られた事だ。
細い体に似合わないくらいたっぷりと重たく実った乳房を、健司の右1.8、左2.0の目
で、バッチリクッキリハッキリと見られてしまった事だ。
それしか思い当たる事が無い。
親友がある日突然女になって…いや、女だとわかって、しかもどんどん女っぽくなってゆく。
髪も、顔も、格好も、着ている服だって、それに化粧…というほどの化粧ではないけれど、
紅い唇にはツヤツヤのグロスなんて塗ってるし、それに加えてあの場面だ。
ある意味、健司の兄貴よりも兄貴みたいに付き合ってきた圭介が、自分の知らない「女」に
なっているのを視覚的にハッキリと衝撃的瞬間で認識してしまったのだ。
『キモチワルイって……思ったのかも…』
>493
圭介は、思いたくないけれどそう思った。
もし健司がある日突然女になって、胸にでっかいおっぱいが出来たら…たぶん自分も「キモ
チワルイ」と思うに違いないからだ。
でも、顔も見てくれないのは、寂しい。
嫌われたのかもしれないと思うと、哀しい。
でも、そんな事を健司に聞けるわけないのだ。
「ボクの事、嫌いになった?」
…どの顔(ツラ)下げて、聞けるというのか。
どうしたらいいかわからなかった。
ただ、日々だけが過ぎていった。
木曜になり、金曜になり、それでも、結局、アイツの姿だけ遠くに見て、それで一日が過ぎ
てしまう。
ただ、昼休みに一度だけ、いつもと同じように圭介と由香と健司でお弁当を食べた事があっ
た。その時も、話は普通にするのに、とうとう最後まで健司は圭介の顔を見てはくれなかった
のだった。
「健司くんとケンカでもしてるの?」
由香がそう心配してくれたけれど、話せなかった。
話したくなかった。
やっぱり嫌われた。
気持ち悪いと思われた。
それを認めるのが、嫌だったから。
結局、そんな日が続いて、土曜日になった。
その日は一日中ずっと雨で、どこにも出掛けずに家でごろごろして過ごした。
ずっと哀しかった。
ずっと苦しかった。
アイツと普通に話せない事が、こんなにも辛いだなんて、思いもしなかった。
話したい。
>494
顔が見たい。
また、前みたいにあのでっかい背中を「ばしんっ!」と叩きたい。「しっかりしろよオマエ
よー」とか言いながら、後から硬い尻を蹴り上げてやりたい。あの、ごつごつしてて、力強く
て、あったかくて頼もしくて、そして優しい手に、もう一度触れたかった。
アイツの優しい目に映る、自分の顔が、見たかった。
アイツの家に行こうか?
そう思った。でも行けなかった。
ケータイでメールしようか?
でも、なんて打つ?
以前なら、男だった時なら、きっとこんな時は有無を言わせず家まで押しかけて、
「文句あんなら言え!うだうだしてんじぇねーよ!」
とか言えたのに。
…いや、本当はそうすべきなのだ。そうすれば、また月曜からでも元の関係に戻れるような
気がする。男だった時と、なにも変わらない態度でさえいれば………。
そうこうしているうちに夜になり、夕食になったけれど、母が何を言っても「うん」とか
「あー」とか「へー」とかしか返事しなくて、その上、大好きな麻婆豆腐も辛口のはずなのに
ちっとも辛くなくてあんまり食べられなかった。
心配してあれこれ言う母に「生理じゃないか?」と、珍しく2日続けて家に帰ってきた父が
言ったけれど、キックする気も起きなくて黙ってお風呂に入った。
母が気を利かせてくれたのか、大好きな柚子の香りの入浴剤入りのバスタブに身を沈めても、
悶々とした気持ちはちっとも治まらなくて、
圭介は、なんだかもうどうしようもなくなって、
涙がぽろぽろこぼれて、苦しくって切なくって、胸がいたくていたくて、なんでもいいから
紛らわせたくって、
健司を想って、した。
それは、アイツを想っての、2回目。
切なくて切なくて切なくて、泣きながらした2回目。
…だった。
>495
ここまで。
キターーー 。* ゚ + 。・゚・。・ヽ(*´∀`)ノ
・・・ってか、なんか切ない。。。・゚・(つД`)・゚・
手を伸ばせば届くはずなのに、手を伸ばせない・・・
けんじぃのアフォ! 男だったらもっとバシッっとしてよ
けいちゃんの全部を受け止めれるように堂々としててよ
こんな可愛い子を泣かせないでよ。 しっかりと抱きしめてあげてよ。
けいちゃんを幸せにするのは、けんじぃの使命なんだから、もっと頑張ってよ。
。。。。ん、、、なんとなく、けんじぃを叱咤してみたくなりましたw
続きを激しく待ってます♪ 早くけいちゃんの極上の笑顔が見たいなぁ。。。
健司が圭ちゃんのことキモチワルイだなんて、絶対そんなことあるはずないですよね!?
きっと何かの勘違いに違いありません。
困難な道のりも、彼らが本当に望むものを手に入れるためには
支払わねばならない代償と信じてます。
切ないですね。
何故か胸が苦しくなりました(:_;)
>>497 どうでしょうかね。まあ、ハッキリ言って、”別に健司じゃなくてもいい”わけですが。
それ以前に、2人(?)の間には、壁が2つあるしな。
しかもそのうちの1つにはデスラー総統も耐えられなかったわけで。
>>498 そう思うに足る理由が十分すぎるほどありますよ。>キモチワルイ
>もし健司がある日突然女になって、胸にでっかいおっぱいが出来たら…たぶん自分も「キモ チワルイ」と思うに違いないからだ。
これだけでも異物(異質)であることは十分だが、更にこれ。
>「言っただろう?『星人』にとって地球人の常識や法律なんてのは、無いのと同じだって」
危険なんだなぁーこれが。
はじめてこのスレみたけどいいスレですね
鵜呑みにするのはアレですがなんか説得力のある文章でグーです>>作者さん
これだけの質を維持しつつあの投稿ペースは素直に「すごい」の一言です
>>500 え〜〜っ、けんじぃじゃなくっちゃだめっ! 今更ほかの男なんかじゃやだ!
・・・と言って見るテストヽ(´ー`)ノ
ん、、、現実だったら他の男も十分ありえるしw、シチュ的にもライバルの出現はOKだけど・・・
連ドラとかだったら、けいちゃんを会った時から女として扱ってくれる大人の男性があらわれて
けんじぃとの辛い関係に耐えられなくなったけいちゃんが、その人と初えっちして付き合って
でもやっぱりけんじぃが忘れられなくて、けんじぃもライバルの存在で自分の気持ちに正直になって
その後いっきに三角関係をもつれさせて、涙のエンディング…とかありそう(変なドラマみすぎw
なんとなくけいちゃんには純愛を貫いて欲しいかなぁ〜って・・・。 これ以上切なくさせたくないもんw
それにけんじぃだったら、性別の壁も、人種の壁も、思い出の壁も越えてくれそうだし。 期待してまふ♪
>>503 彼が現時点でそこまで覚悟できればですが。
できてなければ…短期間で破局でしょう(長いか短いかの違いでしょうが)
>>503 それと、人種の壁じゃなくて、種族の壁といったほうがよろしいかと。
エイリアン系ですから。(類似品:バビル2世)
>>503 いい忘れました。
>けんじぃとの辛い関係に耐えられなくなったけいちゃんが
多分、辛い関係に耐えられなくなるのは健司だと思いますが。
プライバシーが文字通り全く保護されない環境下におかれて耐えられるやつはいないでしょう。
507 :
非503:04/04/24 20:31 ID:F+2Vhfh3
>>506 この場合において「プライバシー」とは?
読んで胸が切なくなった…グッスン。
ガンバレけーちゃん!
511 :
507:04/04/24 21:35 ID:F+2Vhfh3
>>509、510さん
納得です。ありがとうございます。
自分の読み込み不足でした。けーちゃんファンのつもりがお恥ずかしい。
ちなみにその漫画、自分もリアルタイムで掲載誌読んでおりました。
デスラー総統の意味やっとわかりました。m(__)m
なんかみんな悪い方ばかりに予想してるんだな・・・
健司もあの一件以来、けーちゃんに惚れてるのを
照れと元男の親友という葛藤で意識しないフリしてるだけで、
実際は・・・という感じかと思うんだけど。
星人がどうとかって、健司は案外気にしないタイプだと思うんだけどな
いんや。
なんで健司ぃがいま、けーちゃんを避けてるのか
みんな知ってるってばっ♪
名無しさんだが、容易に個人を特定できるな…
515 :
名無しさん@ピンキー:04/04/25 01:35 ID:jWgXI9eO
前スレを保守している人いますか?
すごく読んでみたいのですが・・・・
1回うpされなかったっけ。
もう消えたのかな・・・?
>>512 現在はね。そのうち気味悪く思うようになる可能性はある。
そう思われるに足る能力を持ってるわけだし。
|,.'⌒
|⌒ ヽ
|ノ)))〉 ダレモイナイ… コウシンスルナラ イマノウチ…?
|ヮ゚ノリ
⊂)! 今回スレ違いギリギリの話なんで、
| 気になる人はスルーしてください。
>>313 アリスの娘たち〜 フレイ/永遠の時とともに
----------------------------------------------------------------
「………As Time Goes By…」
ジャスのメロディーに乗せた歌声が、照明を落とされた一画にこだまする。
ウェーブのかかった長いオレンジ色の髪に明るい緑色の瞳。胸元の大きく開いた
デザインの暗赤のドレス着た"アリスの娘"の一人が歌っている。
1週間だけのクラブが、夜の食堂で開かれていた。
船内では、人類が地球で暮らしていたころの文化を再現するという目的で、様々な
イベントが催されていた。とはいえ、老朽船の維持に必要なギリギリの人口では、
あまり大掛かりで人手のかかるイベントはめったには開かれない。しかし、主催側
としては準備にあまり手間がかからず、利用側としては個々人が思い思いに楽しめ
る人気のイベントとして、数ヶ月に1度は行われていた。アルコールを含む軽い飲食と
音楽、ゲーム、そして着飾った"娘"たちとの会話。ともすれば単調になりがちな船内
に潤いを与える、夜の憩いの場だった。
今宵のホステスはフレイとフローラ、アヤカとアヤノの4人の"娘"たちが勤めていた。
歌い終えたフレイが、カウンターに腰掛ける。
「編集長……、じゃなかった。マスター、水割りね」
ホストスタッフは船内娯楽誌の編集部員たちが勤めていた。編集長は臨時クラブの
マスターとして、カウンターで客に出す飲物を作っていた。一日の作業を終え、訪れる
客の中には酔って暴れたり、娘たちに絡んだりとトラブルを起こす者もいる。
そうした場合に場を収めるのがマスターの本当の役割だった。増設されている監視ユ
ニットを通して、普段よりもアリスが細かく注意を向けてはいたが、小さなトラブルを穏
便に済ませるには、人の手が必要であり、臨時マスターの編集長はその手の手腕が
長けていた。
>520
「また飲むのかい?さっき中和剤を飲んだばかりだろう?」
「歌うために飲んだのよ。どうせ直ぐに誰か寄ってくるから、飲んでおきたいのよ」
アルコールは気分を高揚させる。フレイとっても例外ではなかった。
普段はアリスが割り振る伽の相手だったが、クラブにいる間は「合意があれば
いつ誰と寝てもいい」そういう暗黙の了解があった。だから男たちはこの時とばかり
に娘たちを口説き、ひとときの交わりを獲ようとするのだった。したくなければしなく
てもいい……でもフレイは抱かれるのが嫌いではなかった。
フレイには"7艶(いろ)のフレイ"というあだ名があった。"娘"たちにはそれぞれ個性
があったが、特にその特徴が際立っている"娘"には、半ば公然と呼ばれるあだ名が
あった。男を絡めとる2本の脚、巧みな愛撫で翻弄する2本の腕、二つの豊かな乳房、
そして快感の絶頂へと導く秘所。それが"7艶"の由来。そしてフレイをそんな体に作り
上げた人物がいた。
「相変わらず。歌だけは苦手みたいだな」
「教授!どうしてここに?!」
「来てはいけないかね?」
「いえ、そんな……。お久しぶりです」
フレイは体が疼き、期待で胸が膨らんでいくのを感じていた。
彼こそが不感症だったフレイの性感を目覚めさせ、セックスを愉しむアリスの娘として
完成させた人物だった。性転換中に起きたトラブルで失われた、フレイの快感中枢系
を再生し、薬剤を用いて丹念に脳との関連付けを続けたのだ。
教授はフレイが生まれる前から、科学技術部のリーダーを務める天才で、アリスのメ
ンテナンスを始め、船内のさまざまな機器の研究開発を取り仕切っていた。だからこそ、
性転換装置のプロである伝助医官にもできなかった、難問を解決できたのだ。
>521
「久しぶりだな。元気かね?」
「はい、教授は?お加減が良くないとは聞いていましたが」
「まあ、ぼちぼちだな」
「あの……」
「わかっている」
「では、こちらへ……」
フレイは教授を控えの部屋へ招いた。臨時のクラブである食堂のすぐ隣には、伽を勤める為
に用意された部屋があった。普段でも待ち合わせに使われることの多い食堂区画だったから、
利便性の上からも"それ"専用の部屋が元々用意されていた。
部屋に入るなり、フレイは教授に抱きすがった。
「教授、お薬。……薬をください」
薬……フレイの性感を目覚めさせた薬。性転換直後の敏感で繊細な感覚が最も高められる
時期にあって、年上の姉の執拗な調教にも反応することの無かった快感を目覚めさせた"媚薬"。
今のフレイには、劇薬に近いため、扱いを心得ている教授からしか与えられない薬。それはどん
な性技でも味わうことのできない、"自分が壊れて行く感覚"をフレイにもたらす、極上の快感を
与える薬だった。
「ああ、用意してある。でも、これが最後だぞ」
「最後でもいいです。私を壊して!」
教授はカプセルを口に含むと、口移しでフレイに与えた。教授はフレイの快感を高
める方法を熟知していた。フレイは恍惚とした表情で教授のキスを受け入れ、一刻
も早く効果を得ようと、カプセルを噛み砕いた。
「……苦い」
「こんなに淫乱な娘になりおって……」
「教授が、私をこんなにしたんです。お忘れですか?」
「そうだったな。後悔してるか?」
「いいえ。それが私の、今生きている理由ですから。教授が下さったんです、私の人生……」
>>522 この船では誰もがそれぞれの役割を持っている。性感の無い……伽を勤めることの
できない"アリスの娘"など何の価値も無い。口に出す人はいなくても、フレイはそう
思い詰めていた。フレイは自分の居場所が無くなるのではないかという不安に押しつぶ
されそうになっていた。だからこそ"廃人になるかもしれない"というリスクを犯してでも、
教授に救いを求めたのだった。
「いつもみたいに、抱きしめて下さい……」
劇薬だけに、効き始めに強い不安感と孤独感がフレイを襲う。
その間は体を震わせながら、誰かにすがっていなくてはとても耐えられない。
教授はフレイを強く抱きしめ、少しでも不安感を和らげるために、オレンジ色の髪を優しく
なでていた。やがてフレイは全身の皮膚がピリピリとして、体の奥底からジンジンと熱く
なって行く高まりを感じていた。
フレイの体の震えが納まっていくのを見て取った教授は、フレイをベッドに移す。
「脱がせるぞ。照明は消さないからな」
「はい、教授の好きなようにしてください」
教授はわざと乱暴にフレイのドレスを剥ぎ取る。教授はいつも殊更にフレイを乱暴に扱う。
それは"治療"を施していた時のことを思い出させる。強い刺激と被虐感が、フレイの心と体を
翻弄し、性感を目覚めさせるのに効果的だったからだ。もちろんフレイだって、ただ乱暴に扱わ
れるのは嫌だった。そのために性転換したとはいえ、単なるオモチャとして、弄ばれるだけの
存在では悲しすぎる。しかし教授は、乱暴なだけではなかった。無愛想ではあったが、フレイの
ために心を砕き、何の知識も持っていなかったフレイに、様々な知識と技術を教えてくれた。
それは例え伽が勤められなかったとしても、それ以外で生きて行くだけの意味を、フレイが見出
せるようにしてくれたのだった。教授は、粉々に打ち砕かれていたフレイの心と身を再構成し、
生きる術を教えてくれた神であり、全てだった。
>523
教授の手で素肌を晒されていくフレイは、前に会った時よりも白髪の増えた髪を見つめながら、
出会ったばかりの頃を思い出していた。
「……感じない?」
「ええ、このコ。どんなことをしても、気持ちよくならないみたいなんです。触れられたりするのは
解るみたいなので、神経がやられているわけじゃない見たいなんですけど……」
「ふむ、伝助医官のファイルによれば、身体的には何の問題もなさそうだがな……。
では服を脱ぎたまえ」
「今ここで、ですか?」
フレイをかばうように姉が問い返す。
「ああ、そうだ。下着も全てとって全裸になるんだ」
「でも、他にも人が……」
「別に君が脱ぐわけじゃない。その子を治したいんだろう?」
姉は心配そうにフレイと教授を交互に窺う。
(お姉さま困ってる。私の顔を見てる……。みんなに心配ばかりかけている、私は悪いコなんだ……。
せめて言われたことぐらいは……)
フレイは意を決して、やわらかい素材でできたブラウスを脱ぎ、はいていたキュロットも脱いだ。
下着といっても、まだほとんど膨らんでいないフレイの胸には必要がなく、上着を脱いだフレイは
小さな布1枚しか身につけていなかった。フレイは未発達の自分の体を、初対面の教授に晒す羞恥心
で顔を赤くしていた。
「……下も取るんですよね?」
「ああ、もちろんだ。感じないんだろう?」
「ええ、でも……」
デビュー前の"娘"の裸体など、そうそう見れるものではない。好奇心に駆られた他の研究員たちの
視線が、フレイに突き刺さってくる。フレイは、怯えるように震えながら、最後の一枚に手をかけた。
しかし自然と涙が出てきて、それ以上手が動かない。
不意に立ち上がった教授が着ていた白衣を脱ぎ、フレイに頭の上からかけた。
「もういい。羞恥心はあるようだな。別の部屋へ行こう」
更新遅くなってすみませぬ。
先週末から急な出張が連続するようになり、しばしば更新が遅れますが、
見放さずによろしくお願いします〜。
>496さん。
楽しみに読んでます。やっと未読追いつきました。
それにしても、すごく筆が早いですね。
私の場合、この程度の長さでも、プロットから肉付けに早くて2日、
間をおいて2日ぐらいかけて校正(そんでも、おかしな部分が残る_| ̄|○ )
というパターンなので、驚異的です。
ではまた……。
アリスさん キタ━━(゚∀゚)━━!!!
おお、今回はグッと大人っぽいセクスィ・ストーリーですな。
まだアリスの娘としては、まるっきり未熟で未開発だった彼女が‘七艶のフレイ’へと
華麗な変貌を遂げていく過程、是非はやく読んでみたいところです。それに、
>「いいえ。それが私の、今生きている理由ですから。教授が下さったんです、私の人生……」
このセリフがたまらなくグッと胸に迫りました。
しかし教授って、今まで御茶ノ水博士みたいな野暮ったいオッサンを想像しておりましたw
>>494 聞かなくてもわかると思うんだがなぁ…圭介の場合は。
>アリスさん
淫モラルでエロヰながらも、当場人物たちの優しさが垣間見える話、GJです!!!
ところで、ふと思い出したのでつが、アリスさんは昔、毒男板のスレで、
ご主人様との夢を見る人形(藁)のポエムを投下してた人じゃないですか??
529 :
名無しさん@ピンキー:04/04/26 15:57 ID:yks/88l1
530 :
名無しさん@ピンキー:04/04/26 17:26 ID:vU8i+x4I
圭タソまだー?
もう我慢できない(*´д`)ハァハァ
532 :
名無しさん@ピンキー:04/04/26 23:38 ID:UedS/uri
宇宙海賊ミトに似たような奴がいたな。
心まで女ではないけど。
>>496 貴方は何故この様な良作を投下し続けているのに、
名無しのままなんですか?職人ならコソコソ
逃げ隠れしないでコテハンで投下をするべきです。
誰にも真似できないようなすごい作品を
コテなしで投下する職人ってめっちゃカッコイイ!!
>>533 そんなもんなの?
リアルを聞くのはどうかと思うが、ネットの上での過去ならかまわんのでは?
それで相手を非難、否定しようってワケでもないんだしさ
最もそういう傾向での過去詮索なら論外だとは思うが
それに、答えるか否かは職人さん次第だし
>>537 >それで相手を非難、否定しようってワケでもないんだしさ
所詮2chなんだから、
>>537はそう思ってても詮索を始めれば
あることないこと書き立てるアフォも出てくるでしょ
そういった無用なトラブルを避けるためにも、神の正体の詮索は
なるべくしないほうがいいと思う
正体を晒してもよいと考えてる神は、こちらから聞かずとも
正体を晒すなりヒントをくれるなりするだろうし
とりあえず、殺伐は(・A・)イクナイ
名前なんか飾りでしかありませんw
作品が(゚д゚)ウマーなんだからいいじゃん。
540 :
名無しさん@ピンキー:04/04/28 18:16 ID:YdPlf9ww
よくわからないんですが、前スレのミラーっていうのを
作ってもらったんですけど、
>>515さんとかのために
貼っても良いでしょうか?
>541
よいです。
543 :
名無しさん@ピンキー:04/04/29 01:44 ID:U57Vz0KS
三日も読まないと禁断症状がでそうだ(*´д`)ハァハァ
544 :
496:04/04/29 03:34 ID:ng3YDdap
>525
おつかれさまでした〜。
いやもう、早いとこ続きお願いします(笑)。
欲求不満で暴動が起こる前に。
すみません。
私の場合、考えたら早いとこ書かないと忘れてしまうので早いのかも。
「書く」>「アップ」(をいをい、推敲は?)
>543
エロまで持っていってから投下しようと思ったのですが、
連休は旅行するので途中投下します。
今回も基本的にエロ無しです。
「そんなものはいらん」&「大量投下ウゼェ」という人は、スルー願います。
NGワード「ボクたちの選択」
>495
■■【57】■■
翌日の6月18日は日曜日だったけれど、今日も朝から、圭介のケータイには妙なメールが
何通も頻繁に入ってきていた。昨日から増えてきている、いわゆる迷惑メールというヤツだっ
た。軽いものは「今日ヒマ?遊ばない?」というもので、薄気味悪いものになると「今、駅に
いるんだ。御飯食べようよ。迎えに行こうか?」なんてものまで。中には、あからさまに『発
情してんじゃねーよ』と言いたくなるようなメールもあって、圭介はいちいち消していくのも
面倒になり、とうとう昼には電源を切ってしまった。
「遊ばない?」
「好きです」
「愛してる」
「えっちしよう」
「オレならキミを満足させられる」
馬鹿か?と思った。
ハッキリ言って気味が悪い。
対外的には「男として育った女」だという事で、普通の女の子よりも気安いのだろうか?
普通の女の子よりも、セックスに寛容だとでも思っているのだろうか?
正直、全身の産毛が逆立つくらい、ゾッとした。
この2週間、学校内で他の男子生徒から圭介に対しての“こういう”アプローチは、ほとん
ど無かった。5月29日に倒れるまで、圭介はごく普通の男としてごく普通に登校していたの
だから、いくら外見が女になったからといって、同じ学校に通う男としてはすぐに性愛の対象
に見られなかった…ということなのだろう。
けれど2週間もすると、男というものは外観さえ自分好みなら後はどうでもよくなるらしい。
そしてそれを決定的にしたのは、健康診断の時、圭介が廊下へ上半身裸のまま飛び出してしまっ
た事が、一番大きな原因だったようだ。
あの時、健康診断の順番待ちをしていた女子生徒の一人が、健司と目が合って固まってしまっ
た圭介をケータイで撮影した。
その写真が、瞬く間に男子生徒の間を駆け巡った…と知ったのは、木曜日の事だ。わざわざ
桑園京香が、その写真を流した女子生徒を連れてきて、圭介に謝らせたのである。
>545
女子生徒はF組の女の子で、圭介の知らない顔だった。圭介の所に連れてこられた時、もう
その女の子はほとんど涙目になっていたから、京香に「何か」されたのは明白だったけれど、
事が事だったため同情などこれっぽっちもする気になんてならなかった。
京香にケータイの液晶画面で見せてもらった画像は、被写体との距離もあり、しかも荒れて
たので、ちょっと見ただけでは映っているのが誰なのかは、わからなかった。けれど、セミロ
ングの黒髪とちっちゃくて細い体に似合わない、たっぷりと豊かな乳房が、なかばシルエット
になって横から撮影されていて、なんだか胸にボールか椰子(やし)の実でもぶら下げている
ように見えた。今、この学校でこんなシルエットを描くのは圭介以外ありえない以上、この人
物はたとえ顔がわからなくても、間違いなく彼だと言えた。
圭介も、自分の事ながらそのシルエットはとても17歳の高校生には見えないと思う。その
手の人達が大喜びそうなアニメキャラとか、子供にはとても見せられない特殊な漫画のキャラ
クターなら、掃いて捨てるどころか“そればっかりです”とPTAのヒステリックなおば様方
が胸を張って叫びそうなくらい氾濫しているスタイルだった。
これなら、“標準的女子高生な体格”をした女の子なら、思わず撮ってしまっても無理はな
い気がした。
嫉妬とか、興味とか、そんなのよりまず「笑える」からだ。
ギャクにしか、なっていない。
それにしても、こういう、圭介にとって羞恥すべき情報が無制限に流布されてしまう…とい
うのは、いったいどういう事なのだろう…と彼は思う。やはり『星人』は、圭介によほどの事
…例えば命の危険や、『星人』の存在そのものが暴露されそうな危険がない限りは、干渉しな
いつもりなのだろうか?
そして、圭介に対して欲情した男達が出す、気色の悪い迷惑メールに対しても。
いや、もしかしたら、それすらも圭介の「女としての自覚」を促す手助けになる――とでも、
考えているのかもしれない。圭介と地球人の間に子供が生まれる事を望んでいる『星人』達に
とっては、もう一度彼が男に転換して肉体的負担をかけるよりも、このまま――圭介が女のま
ま、地球人の男の子供を産むことを望んでいるだろうから。
>546
…と、圭介はそんな事さえ思ってしまう。
『そこにオレの自由意志は無いのか…?』
そう思わなくもない。
けれど、肉体が安定している間のプライバシーは大抵において護られ、圭介の精神的及び肉
体的自由を保障する…と美智子(ソラ先生)は言っていた。それは、信じられると圭介は思っ
ている。
本当に彼等が圭介の肉体だけを必要とするのなら、圭介が地球人との間に子供を作るという
結果のみを重視するのなら、たぶん彼等は躊躇(ちゅうちょ)する事無く、圭介から自由意志
を奪うだろうからだ。
それを思えば、自分のこの不安は杞憂(きゆう)に過ぎないのだろうと、圭介は考えるのだっ
た、
こうまで迷惑メールが増えたのは、あの写真と共に圭介のケータイのメールアドレスが一緒
に流布(るふ)されたからだけれど、それにしても一日に届く量がハンパじゃなかった。土曜
日だけで20通はあっただろうか。相手は、同級生の男ばかりではないのだろう思う。興味半
分や単なる冷やかしも多いけれど、本気なのかどうか判断しにくいメールも多かった。
とにかく、“あたまわるい”メールが多いのだ。
昨今、一昔前のアニメや漫画によくあるような、机の中や下駄箱に直筆の手紙を入れる…な
んて“超”古典的な方法は、ほとんど無いと言っていい(1度だけ、机の中に下級生の女生徒
から手紙が入ってた事があったけれど、これは恐くてまだ開けていない)。もっとも、圭介の
通う学校の下駄箱は蓋(フタ)などついていないものだから、そもそも“下駄箱にひそませる”
というシチュエーションそのものが成り立たないのだけれど。
より手軽に、より“頭を使わない”で。
メールで気軽に「情熱」は電波に乗って届けられる。
金と女とセックスと、お洒落がいっぱいに詰まった、風船よりも軽い頭の持ち主達の10束
20円くらいの「情熱」が。
桑園京香(そうえん きょうか)の6人いる彼氏(?)のうちの一人である、一ノ瀬 勇
(いちのせ ゆう)からも、来た。もちろんそのメールは、ソッコーで京香に転送しておいた。
>547
男なんかにメールされてもむちゃくちゃ鬱陶(うっとお)しいだけで、
「男の子からこんなにメールもらっちゃたぁ!どうしよう?う〜んケイ、困っちゃうなぁ」
なんて事は、たとえ天地が逆転しても、たとえ心まで女になったとしても、ぜったいに、こ
れっぽっちも、思うわけがない。
圭介は心の底から、強く強くそう思う。
だから当然、送り付けられるメールは返事なんてゼッタイにしないで、片っ端から着信拒否
に設定して削除しておいた。
そんなにイヤなら、メールアドレスを変えるなり、電源を切っておくなりすればいいのだけ
れど、圭介はたったひとつの理由のために、それが出来ないでいる。
―――健司から、メールが来たら困るから、だ。
もちろん、アドレスを変更して、その変更後のアドレスを教えればいいのだけれど、普通に
話すだけでも苦労しているのに、アドレスを変えた事を告げて、もしその理由を聞かれたら、
どう答えていいかわからなかった。
理由を適当にごまかす…というのは、健司に対してはしたくはなかった。もうアイツには
『オレは女性仮性半陰陽だった』という大きなウソをついているのだ。これ以上、アイツを騙
すのは気が引けた。
かといって、変更した旨だけをメールにして送り付ける…というのも、なんだか寂しかった。
もちろん、アドレスを変更して、その理由をアイツに正直に答えて、その対処方法とかをア
イツと一緒に考えれば、ギクシャクしたこのイヤな感じも無くなるかも………なんてことも、
考えた。
でも。
でも、もし、
「いーんじゃないかな?けーちゃん、もう女の子なんだし、好きにすれば」
なんて、また顔も見てもらえずにそう言われたら、今度こそ心が張り裂けてしまうかもしれ
ない。
単に気持ち悪いと思われるより、嫌われてしまうより、全くの無関心を示される事の方が、
一番……恐かった。
だから、自分でも「馬鹿だなぁ」とは思うけれど、それでもやっぱり一日に何度かは、アイ
ツからメールが来ていないかケータイをチェックしてしまう。
>548
「びっくりした」とか「ごめんね」とか、そんな言葉じゃなくても、なんてことのない言葉
でいいのだ。
アイツからのメールが、欲しかった。
昼御飯を、母が作っておいてくれたシチューとバゲットで簡単に済ませ、ソファにごろんと
横になって、圭介は再びケータイの電源を入れた。
どうせいつもの鬱陶しいメイルしか無い……そう思いながらも、ついチェックしてしまう自
分は、やはり馬鹿なのだと思う。
こんな風に来ないメールを待ち続けていないで、アイツにちょっと電話して、前みたいに軽
く話せばそれで解決するかもしれないのにそれが出来ずにいる自分は、やはり大馬鹿なのだと
思う。
とんでもない“へなちょこ”だ。
女になってから、力だけじゃなく心まで弱くなったのだろうか。
前なら。
男だった時なら。
そう思うたびに、女になった今と、たった2週間前と、何がどう違うのだろう、と思う。
「……ない…」
落胆が言葉になって、ピンク色の可愛らしい唇を割る。さらさらと顔にかかる黒髪が鬱陶し
くて、イライラしたようにかきあげた。
『バカ健司っ…ったくさぁ…メールしてこいよな……』
自分の事はとりあえず電離層まで打ち上げておいて、圭介は“きゅ”と唇を噛んだ。そのイ
ライラのまま、4通あった差し出し人不明のメールを片っ端から着信拒否に設定して、削除す
る。
“ぐいんっ”とソファの上で仰向けになって、脚を肘掛から外に出し、ぶらぶらと揺らしな
がら背伸びをする。ノーブラの胸の上で、重たくてやわらかい乳房が“ゆさり”と揺れ、スウェッ
トの裏地に乳首が擦れてちょっと痛んだ。夜用ブラは、寝ている間は着けていたけれど、さす
がに胸が窮屈で取ってしまったのだ。
>549
そのスウェットの中に裾(すそ)から右手を入れて、圭介はもちもちとした肌触りの左乳房
を、手の平に包んでみた。小さくなってしまった女の手では、包もうとしても包み切れないヴォ
リュームだ。乳房はあたたかく、やわらかく、重たくて、そしてツンと尖った乳首がそのてっ
ぺんで自己主張している。
『昨日……』
健司を想いながら“して”しまった。
なんでもいいから、切なくて痛くて苦しい胸のざわめきを紛らわせたくって、夢中になって
この胸を、あそこを、弄った。
『恋』じゃないと、理性が言う。
アイツが欲しいと、身体が言う。
どちらの声を信じればいいのか。
どちらの声に従うのがいいのか。
『でも、あんなふうにアイツの事考えながらオ…オナニーしちゃうって事は、アイツとセ……
…セックス……してもいいって、思ってるってこと……なのかな。…そうなのかな』
考えると、途端に全身に汗が吹き出る。
健司と抱き合う。
健司とキスする。
健司におっぱいを触らせる。
健司におっぱいを吸ってもら……う……。
健司にあそこ…を……
『ダメだ。今は、想像なんてできない…』
“ふしゅぅ”と、頭から湯気が出そうになり、圭介は慌てて想像を打ち消した。
>550
でも、それだけだった。
昨日みたいにドキドキしたり切なくて泣いてしまったりは、しない。
たぶん、身体が、心が、いっしょになって熱くなって、もうどうしようもなくなって、それ
ではじめてアイツを想うと“じんじん”するのかもしれない。こうやって“ぽけっ”としてる
時に健司の顔を思い浮かべても、胸の奥がなんとなくあったかくなるだけで、そんなにドキド
キだって、しないし………。
左の乳首を、右手の中指でくりくりと弄ってみる。
『…ん…』
ほら。
肉体的な反射だけだ。
健司を“切ないくらいに愛しい”と想わない。
想えない。
『健司とセックスなんて……』
出来ない。
そう思う。
でも、やっぱり健司に嫌われたままだと、寂しい。
これは本当だ。
『オレは、本当に健司とセックスしたくて…健司との子供が欲しくて、女になったのかな……』
天井のライトを見ながら、ぼんやりと考えていた圭介は、突然がばっと起き上がると、右手
で口元を押さえて視線を宙にさ迷わせた。
『……ばかだよなオレ………健司とえっち“しなくちゃいけない”…ってずっと思ってたけど、
オレは自分の事ばっかり考えて、アイツがどう思うかなんてちっとも考えてなかった。オレが
アイツとえっち出来ないって思うのと同じくらい、アイツもオレとえっちなんてしたくないっ
て思うに決まってるのに』
もし、万が一、健司に「ボクとえっちしよう」と言ったら、どうなる?
「けーちゃん、どうしたの?熱でもある?」
なんて言われるだろうか?
それとも、
「なんの冗談?」
と言われるだろうか?
それとも、
>551
「なんの冗談?」
と言われるだろうか?
それとも、
顔を見てくれないどころか、話もしてくれなくなるだろうか……。
「だって、けーちゃんって男だったでしょ?そんなことやだよ。気持ち悪い」
なんて言われたら?
アイツはそんなひどい事言わないって思うけど、
思いたいけど、
でも、
もし、
そう言われたら?
『………健司の…心が知りたい……』
溜息を吐(つ)いて右手をスウェットから出し、さらさらとした艶やかな髪をかきあげる。
その手が、不意にピタリと止まった。
『そうだ……カチューシャを取って…………だめだ…』
圭介は溜息をついて、仰向けになったままお腹の上で両手の指を絡ませた。
健康診断のあの日、帰宅した圭介は、母に“カチューシャをつけなくてもキッチリと思念を
遮断する方法”は無いか、聞いてみた。
答えは、
「う〜ん…残念だけど…今のけーちゃんは、ちょっと無理かも…」
だった。
圭介の『星人』としての能力は、まだ不完全な状態でしか解放されていないのだという。全
て解放され、完全に能力をコントロール出来るようになれば、無意識な状態ではおのずと不要
な思念はカットされるし、そもそも意識する事も無いらしい。
そもそも『星人』にとって地球人の思考を読み取る能力は、決して高いものでは無く、今の
圭介の力にしても、強烈な思念に反応しているだけで、普段の思考は感じる事さえ出来ない。
>552
それは、圭介のナーシャスが『星人』のネットワークに中途半端な状態でアクセスしている
からだと母は言う。
不完全にアクセスして、整理されない情報がオーバーフロウを起こしているために、知覚が
ズレを起こし、最も近くに存在する地球人の、主に強烈な思念を拾ってしまうのだという。言っ
てみれば、ラジオのチューニングが不完全で、チャンネルが違っている状態かもしれない。ちょっ
と性能の良くないラジオで一番近いメイン放送局の電波を拾おうとしたら、チャンネルが少し
ずれていて、近距離で開設している私設FM放送を拾ってしまった……とでも言うような。
そんな状態だから、地球人の思念の中でも最も強い、欲望に直結した思念を感知してしまう
のだという。
そしてその「欲望に直結した思念」の中でも、食欲や睡眠欲や支配欲、自己顕示欲などでな
く、性欲――しかも、自分に向けられたえっちな思念に反応してしまうのは、それを圭介が無
意識下でひどく嫌悪しているから…らしい。嫌悪しているからこそ、逆に敏感になっているの
だ、と。
「けーちゃん?好意の反対は、嫌悪じゃ、ないの。無関心なの。
それと同じように、嫌悪の反対も好意じゃないわ。嫌悪の反対も、無関心。
だって、嫌悪しているということは、つまり無関心ではないということでしょう?
その対象に近付きたくない、関わりたくないと思うからこそ意識しちゃうの」
そう、母は言う。
カチューシャを取る事で、地球人の思考の全てを感じてしまうわけではない…。
それは圭介を少し安堵させた。
けれど、彼等の思念から抽出された「自分に向けられた欲望の思考」には敏感に反応してし
まう…というのは、圭介の心を一方で暗くした。なぜなら、自分の『星人』としての能力が完
全に解放され、安定するまでは、人前で……特に男の前でカチューシャを取る事は出来ないの
だ…と、言われたようなものだったから。
ともあれ、カチューシャを取る事で、健司の心を知る事は出来ない。そして、たとえ思念が
流れ込んでくるような事があったとしても、それは健司が自分に対して性的な欲望を感じたも
の…という事になる。
そう考えてしまうと、なんとも言いようの無い、複雑な気持ちになってしまう圭介だった。
>553
■■【58】■■
午後になって、トイレに行っている間に、留守電へメッセージが入った。
デパートの下着売り場の、あの多恵さんからだった。注文していたブラが届いたので来て欲
しいという事だった。
『そうだな…ぐちゃぐちゃ考えてても、何も変わらないし…』
どうしたらいいかわからない時は、とにかく動いてみる。それが本来の、圭介の“スタイル”
だったはずだ。
最近の自分はいろんな意味で、やっぱりヘンだ。
それを自覚する。
部屋に戻り、スウェットを脱いで、クローゼットの引出しからフルカップの“おばさんブラ”
を取り出した。別に、誰に見せるというわけでもないし、見られるとしてもそれはたぶん多恵
さんだろうから、これでも構わなかった。一応、パンツも替えておく。服は、今日は少し肌寒
いので、Tシャツとニットのセーターを着て、その上に薄手のジーンズジャンパーを着込む。
パンツはスリムボトムで、靴はスニーカーにしようと思う。セーターの色は、美術部の後輩の
マーちゃんに「胸が大きくてもあまり目立たない」と言われた黒だ。
「こんなもん…だよな…」
姿見に全身を映して見る。
繁華街に出るには、この年頃の女の子にしてはどうかと思うようなコーディネイトかもしれ
ない……と圭介は思う。女っぽい服を着るのもまだ抵抗あるし、かといってまるきり男っぽい
服を着るのも、なんだか周囲の人の目が「はあ?」という感じに見えてしまうため、なんとな
くちくはぐになってしまうのも仕方ないと思った。背が低くて童顔なので、余計にそう思える
のかもしれないけれど。
実際にはそんなにヘンには見えないし、そもそも人は自分が思うほど自分の事など見てはい
ないものだ。けれど、最近の圭介は自分でも気付かないうちに、ずいぶんと自意識が過剰気味
になっていた。
勉強机に座り、卓上鏡を見ながら髪を梳(と)かし、顔をウエットティッシュで湿らせると、
化粧水をコットンにつけ、叩くようにしてのばす。目元と頬骨のあたりを中心にして乳液を馴
染ませて、唇にはちょっと色のついたリップクリームを滑らせる。そして、適当に前髪を散ら
せてカチューシャをつければ、完成。
>554
すっかり馴れてしまった手付きでそれらをこなすと、もう一度姿見に全身を映して見る。
「こんなもん、こんなもん」
同世代の女の子に比べたら、たぶんずっと簡素で適当な“お出かけ準備”に違いない。
でも、いいのだ。別に男に媚びるわけじゃないし、由香から言われた「女の子として最低限
のたしなみ」さえクリア出来ていれば。
細々(こまごま)としたものを入れたショルダーバッグを持って玄関を出ると、薄い雲が空
を覆っていた。面倒くさいけれど、とりあえず折り畳みの傘を持っていく事にする。
気分を変えるために外に出たのに、天気が悪いと心まで晴れないような気がしてくる。
それでも、自転車で駅まで走る間に頬で風を受けていると、なんとなく気持ちが軽くなるか
ら不思議だった。
いつものように駅を2つ越して、デパートのある繁華街に降り立つ。そういえば、この街に
は下着を買いに来て以来だった。
男だった時には、健司とよく新譜CDとかブリスターパックの限定版フィギュアとかを買い
に来たものだった。それは、駅前の商店街に無くても、この街に来れば大抵のものは手に入っ
たから…なのだけれど、考えてみれば顔なじみの地元で買い物しないというのは、ちょっと薄
情だったかもしれない…と思わなくもない。
駅の改札を出ると目の前に広がる、緑をふんだんに植えた広場には、そこここにデートを楽
しむカップルの姿が見える。梅雨で外に出る機会が減ったからか、少しでも天気が回復すると
人々は申し合わせたように街へと出て来る。そのため、広場はいろんな人達で賑わっていた。
本当に、いろんな人達で。
「ねえねえねえ」
何度目かの声に、圭介は苛立たしげに「ちっ」と小さく舌打ちした。
女の子が一人で歩いていると、やはり…というか、それがまるで礼儀でもあるかのように様
々な男が声をかけてくる。
カチューシャのおかげで、いやらしい思念こそ流れ込んでこないものの、男達の目は、圭介
の顔よりもまずジージャンとセーターを内側から押し上げるたっぷりと豊かな胸に吸い寄せら
れ、そして値踏みするように顔をじろじろと見る。そしておもむろに言うのだ。
「彼女?今からどこ行くの?」
皆、テープに録音したかのように同じ事を言う。
>555
ここまで。
(あ…ファイズ…)
多恵と「ほにゃほにゃ」するまで書いてありますが、
後は帰ってきてから…ということで。
ええと……4日か5日かな。
では。
萌 え
心理描写が素晴らしい!
今回も話に引き込まれれました。
お疲れ様です。
楽しみに待ってます!
百合展開はいらねえ
そう言う時は、かちゅでもOpenJaneでも好きなの使って、あぼーん。
>>560 まあ、好きな人間も居るんだし、それは作者さんにお任せということで。
それこそ、要らないところはあぼーん。
5日も待てねーよ!ハァハァ
強制化の方をずっと追いかけてたけど
こっちも盛り上がってたんだな
>>564 強制は厨の多いスレだからね。今もヘンなのが沸いてスレ止まってるし。
別れておいて正解だったみたい。
厨しかいない点ではどっちも大して変わらんが
居心地がいいのはこっち
きっと両方のスレを見て両方のスレの職人さんに期待してる奴が
一番多いのに、片一方で片一方を中傷してる565はヘンな奴だな。
同じジャンル内で中傷しあってると共倒れするよ。
大人なら心にしまわないと
いやーんなふいんき(←なぜか変換できない)になるのも、姉妹スレ一緒というのがワロタ
なんかもう圭介に欲情する男はみんな女にしてやりたいね。
男も全て自分に欲情される立場を味わえばいいのだと。
ん〜、あ〜でもみんな女になった事で、互いに魅力的な女体を愛し愛される、
女から見ても、むさい男より綺麗な女を愛でる喜びを理解できるってことだな。
>>570 作品をちゃんと読め。
上2行は成立しても、下2行の展開はありえないだろ?
>>571 上2行は成立したら、下2行が成立するってことだ。
>>572 だから、作品を読めといってるだろ。
体が変わった人間は、全部が変わるわけじゃないが元のままでも居られないんだよ。
>>573 そう、元のままじゃいられない。
従来の性別枠組みをはみ出したTS現象が頻発することで、
社会の硬直した異性愛観念が通用しなくなる。
女はそもそも美しさ、可愛さに心惹かれるわけだから
女が女を愛する考え方が当たり前になるのだな。
とてつもなくつまらなそうですね
>>574 マッチョで野獣のような男に惹かれる女性というのは、どう解釈すればよいのでそ?
>>574 女性が同性への美しさや可愛さに心惹かれるとしたら、それは願望であって同性愛とは無関係
例えば世の男性が同性の俳優やスポーツ選手を格好いいと思うのがホモじゃないと一緒
|,.'⌒
|⌒ ヽ
|ノ)))〉 ダレモイナイ… トウカスルナラ イマノウチ…?
|ヮ゚ノリ
⊂)! 今回もエロなし、スレ違いギリギリです。気になる方はスルーしてください
|
>524
教授は2人を自分の研究用の個室に招じ入れた。端末からアリスを呼び出し、
フレイの過去のデータをまとめるように命じた。ディスプレイに表示された医療
データを見ていた教授は、やがてこう告げた。
「この子は、しばらく私が預かろう」
「ええっ?でも、このコはまだ性転換してやっとひと月なんです。まだお勤めで
きるような時期ではありませんし、第一男の人に預けるなんて」
「別に伽をさせるわけではない。治療のためだ」
「その、一緒となると……。パートナーの方とはどうなさるんですか?」
「私にはパートナーはいない。この研究用の個室で暮らしている。隣の保管庫
を片付ければ、この子用の個室も作れるだろう。部下に用意させる」
「しかし……。この子にはまだ覚えなきゃいけないこととかありますし」
「では、毎日ここへ通わせるかね?」
姉は黙らざるを得なかった。科学研究部のあるブロックはフレアたちのいる
中央ブロックとは農業区画を隔て、さらに後部居住ブロックも越えた機関部側
にあった。船体を縦断する交通システムは、先週老朽化が原因の事故で使え
なくなっており、修理が完了するまでまだ2ヶ月はかかるということだった。
加えてセキュリティの厳しい科学技術部と機関部への立ち入りは厳しく制限さ
れており、今日だってここへ来るまで手続きを含めて2時間半もかかった。
その間、フレイはずっと好奇の目に晒されることになり、心配した姉は何度も
人目に付かない場所で休憩を繰り返しながら、ようやくたどり着いたのだ。
毎日通ってくるなんて論外だった。
>579
「お姉さま、私大丈夫です。心配しないで」
「フレイ……。わかりました。教授、このコをよろしくお願いいたします」
そういうと深々と頭を下げた。フレイの手を握り、それでも心配なのか、最後に
フレイをぎゅっと抱きしめ、中央ブロックへと帰っていった。
「アリスの姉妹のパートナー関係は、特別とは聴いたことがあるが……、
君たちはいつもあんなに、相手を思いやるものなのかね?」
「お姉さまはいつも私のことを第一に考えてくれるんです。大切な時期だからって」
「そうか、では私もなるべく君の事を考えているようにしよう」
服を脱げと言った時に顔を赤くした時以外、あまり表情の変化が見られないフレイに、
教授は疑問を感じながらも、姉がしていたようにフレイの手を握りながらたずねた。
「私が怖いかね?」
「よく……、わかりません。だってまだ会ったばかりだから……」
「では、私のことから話そうか……」
教授はフレイに自分の略歴と、今手がけているプロジェクトの話などをかいつまんで
説明した。フレイは黙って聞いていたが、自分の何倍もの時間をこの船の中で過ごし
てきた教授の話は、難しくてよくわからなかった。
「……以上だ。何か質問は?」
「教授。教授は今、幸せですか?」
「何だって?」
予想外の質問に、教授は聞き返した。
「私、お姉さまや他の人たちにもたくさん心配かけているんです。私、誰の役にも立っ
ていない。迷惑かけているだけなんです。誰かのために役立つことが、この船で暮ら
す人の幸せだって、お姉さまは言っていたけど、それならたくさんの人の役に立って
いる教授は、とても幸せなのかなって……」
>580
「君は、いま自分が幸せではない、と思っているんだね?」
「よく解りません」
「ふむ……」
教授は、この娘が快感を感じない以上に、もっと根本的問題を抱えているので
はないかと感じていた。
部屋が準備できるまでの間、教授はフレイに部屋のものは何を使ってもよいから
と言い残し、科学技術部の執務室で溜まっていた事務的な作業を片付けていた。
教授は数時間後に「準備ができました」との部下の報告を受けた。仕事の区切り
が良いところで作業を一度中断し、フレイを自室から用意された部屋へ移そうと
個室へと戻った。フレイは教授が部屋を後にしたときのまま、椅子の上に座った
ままだった。教授は確信に近い不安を感じながら尋ねてみた。
「ずっと、そうしていたのかね?」
「はい。ここで待っていろ、と教授がおっしゃったので」
フレイは表情を変えずに答える。
「……のどは渇いていないかね?」
「はい」
「お腹はすいているかな?」
「はい、少し」
「トイレへは行きたくないかね?」
「はい、行きたいです」
「わかった、ではまずトイレへ行って、その後で飲み物を少し飲んだら、食事にしよう」
「はい」
質問の間、フレイはほとんど表情をかえなかった。
(思ったとおりだ。この子には快感どころか、情緒表現とそれに伴う動作そのものが
非常に弱い。だから感じたことを動作で表現することができないんだろう。だとすれば、
これは私の領分ではないな。まだ伝助先生のほうが適任と思えるのだが……)
>581
結局教授はその日執務室へは戻らず、自室でフレイと簡単な食事を済ませると、
いくつかの簡単な質問をした。見慣れない機械が部屋にたくさんあるせいか、
時折小型の表示器などが明滅するたびに、フレイは落ち着かない様子を見せた。
1時間かけてようやく問診を終え、結果をレポートにまとめて伝助医官へとメールし、
早々にフレイを用意された隣室へ寝かせた。そしてヴィジホンで伝助医官を呼び出し、
自分の所見を簡単に伝える。
「……以上です。先生、私には手に負えそうもありません。いえむしろ、"アリスの娘"
をたくさん診てきている、先生のほうこそ適任なのではないかと思うのですが?」
「レポートは読んだ。君の所見は的確だとワシも思う。だが、いろんな意味で、
これは君が適任ではないかとも思っておる」
「なぜです?確かにここでも薬物治療なら行えますが、心までは治せません」
「フレイには、自分が無い。白紙状態じゃ。彼女に必要なのは楽しいときには楽しいと感じ、
悲しい時には涙を流すことなのじゃ」
「ですから、それは私には……」
「キミは昔、アリスに人格を持たせることに成功したではないか」
「人格と呼べるほどのものではありませんよ。そう見えるだけで、単なるフロントエンド、
インタフェースです。端末用のクライアントですから、アリス本体に人格があるわけじゃ
ありません。そもそも管理コンピュータに人格など不要です。勝手な判断や思い込みで
処理を始めでもしたら、大変なことになりますからね」
「いいのじゃよ、それで。フレイはコンピュータではない、生きている人間じゃ。
アリスと違ってやりがいがあるだろう?」
「そんな乱暴な。第一私に子供の面倒を一日中見ていろ、とでも言うのですか?」
>582
「子供子供というが、この船では誰もが作業に従事し、役割を果たしておる。
あの子だってきちんと基礎過程は修了し、暫くはしっかりと仕事についておったのだぞ」
「それは、普通の場合でしょう?第一、15歳以下は見習いです。それに、性転換を終えた
ばかりのアリスの娘は子供同然だと、おっしゃっていたのは先生ではありませんか」
「あの子は頭が良いし従順だ。言われたことは忠実にこなせるし、逆らったりすることも
無い。一日中付き添ってやる必要はない」
「自分でトイレにも行けないんですよ?」
「トイレの場所を教えなかったからじゃろう?」
「……確かにそうですが、頭が良いのならば自分で、それに部屋のものは何でも……」
「何でも使って良いと言ったが、その中に用を足せるものは無く、その部屋でおとなしく
待っていろ、と命じた。そうじゃろう?」
「……おっしゃるとおりです」
「あの子に何かを教えることは確かに難しい。言われたことしかできんからな。笑えといえば
笑うことはできるが、それは単に他人がやっているのを見て真似ているだけじゃ。
しかし、そうなってしまった原因は……」
「先生、そちらで患者か誰か、苦しんでいませんか?」
「いや?」
「おかしいな、確かに泣き声のようなものが聞こえたような気が……」
教授はもう一度耳を澄ませると、微かだが確かに聞こえる。それはどうやらフレイの寝ている、
隣の部屋からのようだった。
「先生、また明日ご連絡します。とにかくそちらで彼女の受け入れをお願いします」
>583
教授は隣の部屋のドアを開けて中に入った。照明の落とされた部屋のベッドから、
確かにすすり泣く声がする。
「どうしたんだ!どこか具合でも悪いのか?」
教授はつい大声を出して、毛布に包まり震えているフレイに近寄った。
「ごめんなさい! ごめんなさい!ボクが悪いんです!ボクがあの時、モニターを
見落とさなければ!」
「なにを言っているんだ?寝ぼけて怖い夢でも見たか? アリス、少しだけ明るく
してくれ」
暗闇から少しだけ明るくなった照明で、目を真っ赤に泣き腫らしたフレイの呆け
た顔が浮かび上がる。
「……誰? ボ……、私……。 教授?」
「目が覚めたか? ひどい汗だな。タオルを取ってくる」
教授は腰掛けたベッドから立ち上がろうとすると、意外なことにフレイは教授の
左手を両手でしっかりと握って離そうとしない。すぐ戻るからと言いかけた教授に、
フレイは俯きながら小さな体を振るわせ、
微かな声で教授に懇願する。
「……お願いです。少しのあいだ、手を離さないでいてください」
あまりに小さな願いに、教授は無言でフレイを自分に引き寄せ、しっかりと抱き
しめた。一瞬、フレイは体をびくんとさせたが、やがて自分からも教授にしっかり
と抱きついて、嗚咽に体を震わせていた。
(こんな小さな子が、声を殺して泣くとは…。一体、この子に何があったのか?)
>584
「落ち着いたか?」
「取り乱してすみませんでした。教授」
ようやく落ち着いたフレイを自室に連れて戻った教授は、温めたミルクを与えて、
フレイの不安要因となる部屋中の表示機器類を片っ端から消したり、テープを
貼り付けたりしていた。
「さて、さっき見た夢の内容を話してくれるかな?」
「……思い出せません」
「フレイ。私は君を責めたりはしない。この部屋にはアリスのモニタもない。話し
てくれないか?」
「……」
教授はフレイが夢でうなされたのは、彼女の過去に原因があるのではないかと
推測したが、端末にアクセスしようにも、モニターの表示にまたフレイが反応す
るかもしれないと思うと、本人に直接尋ねるしかない。
「質問を変えよう。君は今何歳かね?」
「12歳です」
「12?生まれたのは?」
「2年前です」
「……君の元の名前、性転換前の名前は?」
「ジュン」
「では"ジュン"君。仕事をしていたそうだが、何の仕事かね?」
「EVA(船外活動)です」
「パートナーの名前は?」
「……」
「……"ジュン"君のパートナーの名前は?」
「……ト、……トオヤです」
「トオヤ君も、EVA要員だったんだね?」
「……そうです」
>585
「さっきは、トオヤ君のことを思い出していたのかな?」
フレイはそう尋ねられると、はっとしたように目を見開いたが、すぐに下を向き、
やがてまた声も出さずに泣き始めた。
「思い出させてすまない。今日はもうやめておこう。部屋へ戻ってもう寝なさい」
教授は自分の探究心を優先させたこと後悔した。フレイがなかなか椅子から立
とうとしないため、手をとって立ち上がった。しかし、フレイはぎゅっと教授の手を
握り締めて、立ち上がろうとはしなかった。
「……私、一人で寝たことが無いんです」
(うっかりしていた。12歳で、しかもひと月前に娘になったばかりなら、普段寝る
ときには常にそばに誰かいたに違いない。一人で寝かせたのも不安要因のひと
つか……)
「わかった。一緒に寝よう。君のベッドでは私には小さすぎる。わたしのベッドで
良いかな?2人では少し狭いが」
フレイはこくんと頷いて立ち上がった。教授に手を引かれ、続きの小さな部屋に
入ろうとしたが、入り口で立ち止まってしまった。
「踏まれると困るものもあるからな」
そういうと教授はフレイを抱き上げ、乱雑に散らかされた狭い部屋の中を埋め尽
くす、得体の知れないガラクタ群を器用に避けてベッドにたどり着き、フレイを横
に寝かせた。教授も上着を脱ぎ、フレイのすぐ隣に横になる。
>586
「あの……教授。手を……握っていて、くださいますか?」
「ああ、いいとも」
「それと……、今日はできれば……その。あ、明日はちゃんとしますから……」
フレイは少し顔を赤くしながら、教授を上目遣いに見る。
(バカな、こんな子供に……)教授はフレイの言わんとしている事に気づいたが、
それを明確に否定すると、せっかく開きかけたフレイの心の扉が再び閉じてしま
いかねないのではないか?とも思った。同時にこんな小さな子供のうちから、
そういったことを学んでいかなければならない、娘たちの境遇にも憐れさを感じた。
「君は治療中だ。治るまではそんなことは考えなくていい」
そういうとフレイは安心したように、教授の手をしっかりと握り、目を閉じた。教授が
フレイの髪を撫でてやると、安心したのかすぐに寝息を立て始めた。
(この子は決して感情が無いわけではない。自分を表現することを知らないのか、
それとも何かの原因で自分を閉ざしてしまったのか……)
そう考えながら、教授もやがて深い眠りに落ちていった。
フレイの設定は、もともとはヒロミのものだったのですが、>> 526さんのレス見て、フレイのものとして
復活させてしまいました。次回も白紙状態のフレイをお楽しみ?ください…。
だもんで、フレイの回想エピソードは長くなります。船内実時間としては、ほんの「ご休憩時間(笑)」
ほどの出来事なのですが……。
ヤロー供の外観はあまり描写していませんが、自分なりにはイメージを持って描いています。
医官の伝助はともかく、教授も編集長も名無しなんですよね(←決めてない)。
>528さん
1年以上も前に鯖移転で消滅したスレを覚えていらっしゃるとは……。チト恥ず〜
ではまた!
え〜〜と、もしあの三人の続きとか書いたらここに投下OKですか?
不可の場合は他に持ち込みますので、判定ヨロです(゚▽゚*)ノ
可
当然、可
・・・ってか、早く投下してくださいw訊かないでいいからw
下さい!下さい!是非下さい!
神様お願いします!待ってます!
早く!さぁ早く!今!今すぐ!
ここに!今すぐここに!ほら!早く!急いで!
さっさとし… おっと失礼(゚ε゚)
>>589 貴方はもう別に訊かずに投下しても大丈夫だと思うw
そろそろ次スレだな……
次スレ立て逃げしてもよろしいですか?
s a g e 進 行 推 奨
も忘れずに入れてくれ。
了解しました。
トライします。
>>588 アリスさん、負けないでがんばってください。
>アリスさん
しかし、フレイは主人公たちの中でも特にはかなくもろい‘アリスの娘’なんですんね。
彼女を言い知れぬ不安に駆りたてる過去はまだわかりませんが、でも姉妹愛だとか、
教授とかのまわりの人間の優しさをすごく感じます。
今回のシークエンスで自分はこの作品の魅力がよくわかりました。
俗ぽい言い方ですが、ヒューマン・ラブ・ストーリーなんですよね、女性化小説っていう名を借りた。ああ、でもほんと切ないです。
アリスさん乙です〜!
>589のフレイタンに萌えますた。
次回は次スレですね。教授にあんなことやこんなことを教えてもらうのでしょうか? ハァハァ(*´д`* )
>589でなくて、>587ですた……_| ̄|○
606 :
名無しさん@ピンキー:04/05/01 22:20 ID:SU+DF7nM
,,..-‐--ー-- 、 _
, -'" 彡 ミ `゙ヽ、
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Vノ:}::ヽゞ;::ハ `"::::::::. __' :::: ノ,イ:} レ'
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うめ
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610 :
名無しさん@ピンキー:04/05/02 19:39 ID:62eaGZl6
埋め
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( )
` ー '
,へ_ ,ヘ-''" 7 ̄ ̄"''ヽ ○
/〈__{{ 〉ニ/ :/ / / }ハヽ O
/ .:://:{ l`ー' { ,イ_;l .:| ノ l !ヽ
/ .::////L}::::::ミ゙ V,_V {:|レ},ィ ノ ノ}-、 ……というスレだったのですわ
| :::l:l::/l:l:rヽミ゙ ゙''ー` ノリイノ∠_|
l:: ::l:l:∧:::{、9` 、ヾ/l::. ヽ
゙、: ::l:l:| ヽヽ、 rー-," !::l::::: }
ヽ::{l| | ヾミ ::. ヽ ' /^⌒}l:: }
ヾ、 .} ::::..__ / ノ: ノ
____r''| ::::::{ ̄ /シ
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:.:.:.:.:.:.:.:\ヾ、 \ ヽヽ、___
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、ヾ、__ ヽ | ll フ-、
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`'ー-ニニヽ |,=ニン'/:.:.:.:}
糸 冬 了 . . . _ 〆(゚▽゚*)
あ れ ? ま だ か け る ? ? ?
616 :
名無しさん@ピンキー:
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:::', ::::::: ∠、=、 \ /_ノ ヽ::: / 埋め立てageだっちゃ!
::::ヽ_ :: / 7, \ / .ヾ_ノ/
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:::::::::::ゝ,l ::l 7 .| l / /
::::::::::::::〉 :ヽ /:: | / /
r―‐、/ :::l 、 、゚ /::: | / /--、
ll ::| `ヽ、 _,, -'' `ヽ:/ , ト、
| .. ::| l ̄/ / _,, /__,」 ゝ
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