1 :
名無し物書き@推敲中?:
∧ ∧
/ ヽ ./ .ヽ
/ `、 / ヽ
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..━━━━━━━| ||||| ノ .|━━━━━━━━
ミッ | < .|
ャッ ヽ __ノ /
ウチ \ /
3 :
「林」「うるさい」「靴」:03/09/22 05:59
目を開けるとそこには見覚えのない天井が広がっていた。
外からは犬の鳴き声が聞こえてくる。
ほんの少し前まで僕は自分の部屋にいたはずだった(と思う)のに今僕は知らない家で寝転がっている。
いや、家というより廃屋と言った方が正しいだろう。
長年誰も使っていなかったであろうそこは荒れ果てたひどい姿だった。
あまりに犬の声がうるさいのにイライラして、ようやく僕は起き上がる決心をした。
このままここに居ても何の解決にもならない、とりあえず外に出よう。
そうして立ち上がった時に足に刺さった木の感触で、靴を履いていないことに気がついた。
ああ、やっぱり僕はさっきまで自分の部屋にいたんだ。
自分の記憶が間違っていなかったことに安心した。
すっかり錆びたドアノブに手をかけ外の空気を吸う。
そしてそこに居たのは僕が先月まで飼っていた犬だった。
おかしいなと思いつつその傷だらけの犬のあとをついていく。
林を歩き続けると目の前が開けて湖が広がっている。
犬がそこに座ったので僕も座った。
目を開けるとそこには見覚えのない天井が広がっていた。
外からは猫の鳴き声が聞こえてくる。
「空」「嘘」「ビー玉」
ビー玉には一億個に一個の割合で猫目石のような星が入るという。それを見つけた者は
夢も叶うのだと、俺たち兄妹は親方に教えられた。
草深い中学を出て、妹の久美を連れて俺がガラス職人の見習いとして小さな工房に就職
したのは二年前だった。車椅子の妹というコブ付きでもいいと言ってくれた親方には心か
ら感謝していた。それほど後継者に困っていたというのを後から知ったが、それでも親方
夫婦は親切だったし、兄妹ふたりきりの俺たちの慣れない東京の暮らしを親身に助けても
くれた。知覚障碍を持っている久美は幼児ほどの知能しかない。おもちゃ代わりに与えた
ビー玉が気に入って、一日中光に透かして遊んでいる。風鈴を与えても、音がするから怖
いといってイヤイヤをして受付ない。
ある日久美がわんわん泣いて俺を呼んだ。「おにいたん、くみ、おもらし」といって俯
いて泣きじゃくる。空色のズボンの股の間が真っ赤だった。俺はどうしていいかわからず
におかみさんを呼んだ。「まあ、久美ちゃん女の子になったのね」と、おかみさんが手当
てをしてくれた。やっと安心したのか、久美はぎゅっと握っていた手を緩めた。その手か
らビー玉がこぼれ落ちる。「ほし、ほし」と久美が微笑む。緑色のそのビー玉には猫の目
のような星が入っていた。一億分の一の夢? 嘘つきめ。久美はずっと信じてたんだぞ。
次は、「ボクサー/カレンダー/ホッチキス」でお願いします。
5 :
ボクサー/カレンダー/ホッチキス:03/09/22 12:44
一人暮らしのマンションの一室で私は悲鳴をあげた。
(痛い痛い痛い・・・)心の中で叫びながら痛みのするところ―――足の裏を見た。
するとそこにはホッチキスの芯が完璧に刺さっていた。
(嘘・・・なんで?)ホチキスの芯を踏みつけただけでこんなに完璧に刺さるわけがない。
しかし現にこうして刺さっているんだ。でもどうやって?幽霊?
そんなことを考えながら私はホッチキスを引き抜いた。血は出ない。
(気にしない気にしない・・・そんなことより・・・掃除だ!!)
床を徹底的に磨き、めくり忘れていたカレンダーをめくる―――ああ、画鋲が取れてしまった。
(きっとこんな風にホッチキスの芯も落ちてたんだろうなぁ。この事を話のネタにでもするかぁ〜)
突然チャイムが鳴る。「はーい」と返事をする。この時をどれだけ待ち望んだことか。
合コンで勝ち取った二十歳のボクサー。先週のデートでキスまでは済ませた。
あの引き締まった体に私は抱かれるんだ・・・よだれがこぼれるのをこらえつつドアを開ける。
「なぁ、これなに?そこに落ちてたんだけど・・・」
彼は私に変な人形を見せてきた。そして紙切れもついていた。そこには―――
『想いを込めてあなたの人形をつくりました。これでいつも一緒だよ』
この人形の作者―――私のストーカーは人形の足の裏にその紙をホッチキスで止めていた。
わら人形かよ!!
お題忘れました。「メガネ/髪/薬」
いつものように、俺はあいつに飯を奢らせていた。
「お待たせしました。」
料理が来た。…む?何か腹が…。
「ちょっとトイレ行って来る。お前、これ食ったらぶっ殺すぞ。」
「うん。分かった。」
今日は素直だな…俺は、ボサボサの髪にメガネをかけた、冴えない格好のそいつを置いて、トイレに入った。
トイレから出てくると、相変わらずボサボサの髪のあいつが座っていた。
俺はイスに座ると、物凄い勢いで飯を食い始めた。
「ねぇ。」
「あ?何だ。」
「…僕さぁ、お金が尽きてきたんだよね。」
「あ?なら親からパクればいいじゃねぇか。」
「…君はやっぱりそう言うんだね、この悪魔。でもいいよ、今日で君とはお別れだ。」
お別れ?何を言ってやがる。
「これに毒薬を仕込んでおいたよ。君に、あと少しだけ誠意があれば…助けてあげたんだけど。」
「何…!?」
俺がそう言うが早いか、早くも毒が回り始めた。
血を吐き、床に倒れる。
あちこちから上がる悲鳴。
悲鳴の中、あいつは俺を見下し、ニヤニヤと笑っていた。
全く、どちらが悪魔なのか…。
次のお題は「悪魔」「寿司」「居座る」でお願いします。
「おい、いつまで居座る気なんだよ、お前ら」
俺は苛立ちを隠そうともせず、後ろで菓子を食い散らかしている高橋と佐伯を
振り返ってにらみつけた。いっこうに技を閃かないロマサガ3も怒りを加速させ
ている。ファイナルレターと地ずり残月は本当に閃くのか。
「そりゃ夕飯が出てくるまでにきまってんだろ、な、ポール」
高橋が隣の佐伯と顔を見合わせ、笑いながら言う。現在時刻は午後の2時。ゆうこ
がやってくるのは2時間後の4時。夕飯を3時に食うつもりはないから、何とかして
こいつらをたたき出さなきゃならない。
「寿司でもとってくれるとうれしいんだけどな〜」
と、ポールこと佐伯が勝手に上がりこんできた立場で言い放つ。こいつがポールと
呼ばれているのは、いつもポール・スミスの服を着ているからだ。ブランドってやつに
に疎い俺でも知っている有名ブランドだが、そこの服ばっかり着ているポールは、俺
以上にセンスの無いやつだというのが仲間内での定評だ。
「とっとと帰れよ、お前ら。4時にゆうこが来るって言ってんだろ」
「食べるのにも困っている友達を見捨てて彼女をとるなんて、お前は鬼か、悪魔か」
高橋はすこし調子にのりすぎている。佐伯もだ。こいつらは一人じゃ何もできないくせ
に、二人そろうととたんに元気づく。だいいち何がポールだ。ポール・スコールズのファン
である俺にとって、元ネタは違えど佐伯のようなやつがポールと呼ばれているのはただで
さえ納得できないのだ。
とにかく、図に乗り過ぎたツケは払わせてやらなきゃな。
ちょい長めスマソ。
次は 「サッカー」 「ワイン」 「耳たぶ」 でお願いします。
9 :
サッカー/ワイン/耳たぶ:03/09/22 19:08
彼女は俺の耳たぶを良く触る。
今日だってそうだ。高級レストランに来ているってのに……
「だってぇ…ぷにぷにして気持ちいいんだもの」
彼女は可愛い。
デザートを食べ終えると、唐突に彼女は切り出した。
「別れましょう」
彼女は、可愛かった。
俺一人だけになった、テーブル。
食後のワインが届く。二人分――
もう、耳たぶを撫ぜられることもない。
恥をかくことも無い――けれど。
けれど。
彼女はサッカー選手と結婚するそうだ。
これからは、そいつの耳たぶを撫で続けるのだろうか。
次は 「蜜柑」 「魔法」 「革命」 でお願い致します。
10 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/22 22:35
蜜柑を頂戴。
喉が渇いて死にそうなの、もう生きてゆかれないわ。
お願い。
愛情という魔法で私に革命を起こして。
もう一度…
つぎー「蚤」「愛」「価値」
11 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 00:15
準備ができました――そう言って、係の人が私を呼びに来た。
化粧が綺麗に施された顔が鏡に映る。どことなく淋しそうな女がこちらを見ていた。
今日私は結婚する。
会って三ヶ月、友人たちは皆、そんなに早く決めちゃっていいわけ? と口々にそう言った。
夫となる人は、国内でも有数の資産家の息子だ。
お金目当て? そうかもしれない。過去の私には皮肉だけれど。
かつて愛した人は、とても貧乏な画家の卵。だけど彼と一緒にいるだけで、言葉にならない程の愛を感じることができた。
お金なんて僕らの愛の前には何の価値にもならない。彼はそう言った。
だけど絵が売れて、彼の名前も有名になっていく反面、私とはすれ違いの生活が続いた。
別れを切り出したのは彼。彼の創作活動を支えてくれる資産家の令嬢が現れたと、そう言って。
愛はお金に勝てない。じゃあ私はそのお金を使って、愛に復讐してやる。
「素敵ですね」
私と同じ位の年頃の可愛らしい女性が声を掛けて来た。
その隣には、スーツがまるで似合わない細身の男性。女性が彼の腕を引っ張って、あぁ、とおもむろに口を開いた。
「――おめでとう」
ありがとう、と私も応じる。
スーツを着た彼に、かつて愛した彼の影はどこにもない。
妻の実家が事業に失敗して、私の夫となる人に融資を申し入れてきたのだ。アトリエは売り払われ、名も廃れた。
かつてお金のために私を捨てた彼が、お金のために私に愛想をふりまく。
「アハハハハ」
私が突然上げた笑い声に、二人がぎょっとした表情になる。
――待っていたのよ。この時を。なんて面白いのかしら。
復讐が始まる。それが甘い蜜となるか苦い蜜となるのかは、私にしか分からない。
次は「水」「ショートカット」「ガラス」で宜しくでつ。
12 :
12 ◆x9GoEGTC/M :03/09/23 00:43
「ショートカット」「水」「ガラス」
そうだね・・・あれは、中学3年の冬だったかな。
そのころ、僕には片思いの娘がいたんだ。
え、以外だって?・・・まあ、聞いてよ。
その娘は、髪は綺麗に切り揃えたショートカットで、
優しくて、笑顔が眩しい・・・・・・とてもいい娘だったんだ。
2学期はじめにあった席替えで、運良くその娘と隣の席になってた。
僕は奥手だったから、あまり自分からは話しかけられなかったけどね。
でも、時折、その娘から僕に話しかけてきてくれてさ。
・・・嬉しかったな。他愛のない、短い会話ばかりだったけど、
あの娘の笑顔を見るだけで、心が癒される感じだった。
授業中はさ、その娘のことが気になってチラチラ見ちゃうんだよ。
たまに目が合いそうになると、僕はあわてて窓の外に視線を逃がしてね。
そのとき、ちょうど雪が降っててね。ガラス越しに、グレーの空から
落ちてくる白い雪を見てたんだ。それがガラスにつくと、一瞬で解けて
水になっちゃうんだ。それがまた幻想的で。うん、綺麗だったよ。
でも、結局その娘には告白できないで卒業しちゃったんだ。
今思うと、どうして告白しなかったのか不思議だなぁ。
あの娘も僕のことを好きだったかもしれないって思ってたんだけど・・・
・・・え、どうしてそう思うかって?
・・・・・・それについては、また今度ってことで。
実体験を基に書いてみましたw
次のお題は「初恋」「ソーダ」「旅行」で、お願いします。
13 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 01:06
「水」「ショートカット」「ガラス」
道路の向こう、フロントガラスを通して目に映る先の先まで、車。
なんでそうなったかといわれても、誰かがすっころんだのか
ガタイのいい兄ちゃんが地面を掘ってるのかは分からないが。
左に顔を向けると、泳いで渡るにはちょっとつらい位の幅がある川。
水面は光を浴びて煌々と輝いている。
「あー、水陸両用車が欲しい」と右側、助手席の彼女に言った。
「はぁ?」、彼女は小説を手にしたまま、こちらに顔も向けず。
「渋滞抜けられるだろ?川をショートカットし……」
「ハイハイおめでとうございます良かったでちゅねー」
暫しの沈黙。
「あー、えーと、トイレとか、大丈夫?」
やはり、それは気になる。渋滞はまだ続きそうだから。
彼女は本から目を離し、窓に顔を向けた。
「したくなったら、言う。気にしないで」
彼女の耳が少し赤くなってるように見えた。
次は「炭酸飲料」「紅茶」「コーヒー」でよろしこ
被ったか。
俺の御題はキャンセルでヨロ。
15 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 01:17
わたしの初恋のひと。栗色の髪した男の子。
陸上部で、足が二番目に速かった。
よく学校帰りに、自販機でメロンソーダを買っていたよね。
おぼえてる?私にもわけてくれたじゃない。
間接キスに一人でドキドキしちゃった。
あのころ――2人とも何も話さなくって…
嘘みたいね、こうやって、あなたと今一緒に居るなんて。
もう10年くらい、経つのかな…
2人で次の旅行計画なんか立ててる。
ねぇ、知ってる?私、幸せだよ。世界でいちばん!
下手ですまぬ
「素直」「眠り」「扉」でおねげぃしやす。
16 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 01:24
僕は高校二年生にもなるのに『恋』というものをしたことがない。いや、なかった。
それというのもほんの一ヶ月ほど前の修学旅行で
同じクラスの女の子、山野さんに初恋してしまったのだった。
今までの人生は恋をしたことがないだけで損ばかりしてきた。
好きな人トークに参加できなかったし、初体験なんて夢のまた夢だ。
しかし今日、僕は彼女に告白する。今僕はみんなで夏祭りに来ているのだ。
「や、山野さん、は、話があるからちょっと来て」
僕と山野さん以外の口元がゆるむのがわかる。僕たちはそそくさと裏道に入った。
「あの・・・実は僕・・・山野さんが!!すすすすすすすすすすす・・・・」
「・・・え、え!?どうしたの・・・泣いてる!!」
山野さんは僕のそばに駆けつけて頭を撫でてくれた。
「いえーい!!おめでとう!!!」
友達がみんな覗いていたらしい。ビールの代わりにソーダをかけられる。
まだ告白してないのに・・勘違いされた。山野さんは何がおめでとうなのかわかっていないようだ。
でも泣いてる僕の頭を撫でてくれるなんて山野さん・・・やさしい人だ。
やっぱり僕は山野さんがスキだーーー!!
短いのって難しい。どこまで説明がいるのかわからない・・・
「なわとび/スカート/真っ赤」
17 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 01:25
かぶってしまった・・・次は
>>15さんのお題でお願いします
18 :
gr ◆iicafiaxus :03/09/23 02:19
「素直」「眠り」「扉」「炭酸飲料」「紅茶」「コーヒー」
「なわとび」「スカート」「真っ赤」「猫」「空」「真実」
台風ももうどこかへ行ってしまって、今日はどこまでも高く青い空になった。
休暇もあともう少し。僕は栃木の伯母さんの家の渡り縁に腰掛けて、従妹違いの真実ちゃんが
なわとびをするのをじっと見ている。高く跳んだり、低く跳んだり。手を交叉させてみたり。
そのたびに真っ赤なスカートの裾を揺らしながら、汗を振り撒いてジャンプを続ける真実ちゃん。
「高志さん、お茶でもいかが? 真実もちょっとやめて休憩なさいー」
呼ばわって伯母さんがお盆を運んでくる。立ち上がろうとした僕を制して、縁側にそれを置く。
真美ちゃんがなわを片手に束ねて縁に上がる。僕が渡したタオルを素直に受け取って、額を拭く。
うち使いの気軽なカップに紅茶が三人分満たされる。葉っぱの香りが立ちのぼる。
「高志さんは紅茶はお好きかしら。真実がまだコーヒーも炭酸飲料も飲めないものだから」
僕は、喜んで頂きますよ、とそれを受け取り、砂糖と牛乳をたっぷり入れる。眠りから覚めた
猫のお皿にも伯母さんが、牛乳を注いでやった。
「真実、あなた汗かいてるわ。ちょっと着替えなさいよ」と、伯母さんが箪笥から肌着の替えを渡す。
真実ちゃんは一度受け取って、しかし不意に「ここじゃやだ」と言って駆けていく。扉の閉まる音。
「あらー、あの子ももうそんな年頃かしらねえ」と笑う伯母さん。
今年はどうやら残念だけど、真美ちゃんとお風呂には入れなさそうだ。
#スレ立てではご迷惑かけました>皆様
#次は「椅子」「目」「吹き出し」で。
彼女のことはずっと前から気になっていて、社内で見かけるたびに僕はひとりでドギマ
ギしていた。たまに目が合いそうになっても、自分から視線をそらしてしまっていたから
声をかけるチャンスすらなかった。そんな彼女が、ここ最近退社後に本屋で立ち読みをし
ている姿を見かけて、僕は思い切って食事に誘おうと思った。我ながらすごい勇気だ。
「あ、あの、よろしかったら、今度食事に付き合ってもらえませんか?」
「今日なら時間ありますけど?」想像してた通りのかわいい声だった。
「え゛?」僕はあまりにもあっさりとOKが出てしまって言葉に詰まった。やばい、心の
準備も何もできてない。が、このチャンスは逃すわけにはいかない。僕はとりあえず知っ
てる中でいちばん小ぎれいなレストランに行く事にした。
僕がいかにもぎこちないやり方で彼女の椅子を引いて座らせようとしたら、彼女はクス
ッと笑ってありがとうと微笑みを返してくれた。まさか今日の今日、食事に付き合っても
らえるなんて思ってもみなかった僕は、心の中で「おちつけ、おちつけ」と繰り返して、
彼女に気づかれないように深呼吸をした。
「ぼ、僕、今日どもるかもしれないけど、ふ、普段は違いますから」これじゃまるでマン
ガの吹き出しみたいだな。僕は緊張で汗ばんだ手を膝に置いて固まってしまっていた。
次は「マグカップ/点/坂」でお願いします。
現在テレビ朝日系毎週火曜20:00〜20:54の時間には、
『運命のダダダダ〜〜ンZ』を放送中です。毎週テーマ別に
分けて色々な運命を分けたエピソードをクイズ形式で紹介しています。
面白いと思うので、是非ご覧ください!! 詳細情報は↓
http://asahi.co.jp/dadada/
「マグカップ/点/坂」
久し振りの秋晴れの休日に浮かれて、私はあてもない散歩に出かけた。
夏の名残りのおしろい花が、さらりとした空気にのって香ってくる。
垣根越しに点々と見える、赤いランプのような彼岸花がやさしく揺れる。
私はのんびりと世田谷の住宅街の坂道をのぼっていく。
「みいちゃあん、みいちゃあん」誰かが猫を呼んでいるようだ。
私は急にいたずらっぽい気持ちになって「にゃあーーん」と猫の声をまねて
返事をしてみた。猫を呼ぶ声は一瞬、沈黙したあと「みいちゃあん」とまた
呼んだ。「みゃーーん」また返事をしてみた。白い壁のモダンな3階建ての家の
庭にをのぞくと、マグカップを片手に芝生の上にしゃがんでいる男の人が見えた。
白い長そでの薄手のセーターにコットンパンツ。茶色の皮のサンダルを履いている。
私の視線を感じたように、ふいに垣根越しにこちらを振り向いた。
「みいちゃん?」やさしそに目を細めて、白い歯をみせて笑ってくれた。
目元の皺とすこし疲れた顔色の人。「ミイイ」どこかで本物の猫の鳴き声がした。
彼は庭を横切り私の視界から消えた。もう少しで何かはじまりそうだったのに。
急に風が首筋に冷たく感じた私は、子猫のように足音をひそめて坂道を引き返した。
***つぎは「祝」「ヨーグルト」「まぐろ」でおねがいしますです。
22 :
祝 ヨーグルト まぐろ:03/09/23 13:27
今日は俺の誕生日。当然誕生日といえば――
「はい、ヨーグルトまぐろ!!! 」
これだよ、俺の大好物!!祝いの席にふさわしい食いモンだぜ。
「超うめ〜〜〜!!! 」
プレーンヨーグルトの酸味とまぐろの血生臭い味がジャストフィットだ。
これに醤油もいいが、黄粉をかけるとまた美味なり。
次は「看板娘/玄米/メモ帳」でよろしくです。
看板娘/玄米/メモ帳
『人はモデルになるのではない。モデルとして生まれてくるのだ』
蒲田の定食屋の看板娘だった私が、たまたま出かけた青山のブティックで
モデルクラブにスカウトされたのは今年の春のことだ。一流モデルも所属する超難関の
『レッドシューズ モデルクラブ』だ。名刺をもらった時、私は心底びっくりした。
スカウトマンらしき目つきの鋭い中年男に「是非、親御さんとお話させて下さい」
とねばられて、その日のうちに蒲田の自宅まで来てもらった。頑固な父は猛反対し
母は舞い上がってしまい、私は人生で初めての大展開にひたすら狼狽えた。その男の
熱心な説得にほだされ、ついに私は父の反対を押しきり、事務所に入ることにした。
しかし、初めて知るモデル業界のすさまじい競争意識と、徹底した体型へのこだわり。
そして食事制限の地獄。すべてを何ごとも無く、淡々とこなす先輩たちに私は驚嘆した。
私の主食は玄米に変わり、飲み物はミネラルウォタ−のみ。毎日の過酷なレッスン。
毎晩、実家の定食屋のカツカレーの夢を見た。「体重管理も才能のうちだよ」モデルの
先輩は毎日メジャーをあてて、私のモデルとは言いがたいウエストの太さに呆れている。
「モデルやめて実家にかえれば?」私は事務所の入り口に飾ってある伝説のモデルの
金言を、だらしない体への自戒をこめて実家からもってきたメモ帳の表紙に書き写した。
地元の信用金庫のメモ帳についた、揚げ物の油のシミを見て、私は声をあげて泣いた。
次は「架空」「刺殺」「相棒」でどうぞ。
24 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/23 20:13
「架空」「刺殺」「相棒」
花の御江戸で刺殺事件。だが、下手人は白州の上でもしたたかだった。
「御奉行様、目撃者の「金さん」など・・・架空の人物で御座いましょう」
「ほう、そうか。ならこの桜吹雪に見覚えはないとでも言うのかぃ!」
さっとはだけた奉行の肩に、遊び人・金さんの桜吹雪が舞っていた。
南町奉行・遠山景元の正体を知って、あっと目を見張る下手人。
「お、お奉行様!」「なんでぇ、まだ言いたい事でもあるのかい」
「いえ、もう、獄門は覚悟いたしました」と、下手人は改めて訊いた。
「金さんモードの御奉行様が、なぜこうも偶然、大事件に遭遇されるのかと・・・」
奉行はにやりと笑った。「わりぃな、そいつはちょっと秘密なんだ」
彼は、背後の箱をそっと撫でる。頼りがいのある相棒を。
赤いランプの黒い箱・・・それは時空を越えて不時着した木星探査船のものだ。
彼等には分かるまい、それがHAL9000型コンピュータだとは。
「明日は、新橋で事件発生の確率が高いよ、キンサン」と、箱が囁く。
「ようし・・・これにて一件落着!」
お江戸の城下にHALを呼ぶ。花も嬉しい、遠山桜ーーー(以下略)
※とはいえ・・・まだやってるのかなあ、あの番組
次のお題は:「相棒」「防止」「止血」でお願いしまふ。
25 :
12 ◆x9GoEGTC/M :03/09/23 21:36
「相棒」「防止」「止血」
敵の迫撃砲弾が塹壕のすぐ近くに着弾し、土煙と粉塵を巻き上げた。
塹壕の中にいた俺は助かったが、外に出ていた相棒は爆風で数メートル吹き飛ばされた。
「畜生!歩兵突撃が始まるぞ、各員応戦用意ッ!!」
分隊長の声が聞こえたが、俺はそれに構わず相棒のもとへと駆け寄った。
相棒は地面に突っ伏すように倒れこんでいたが、俺はその片手だけを掴み、
うめき声を上げる相方を励ましながら、そのまま塹壕まで引きずっていった。
軍服の右袖を引きちぎり、止血帯として負傷箇所より心臓に近い側に巻きつける。
負傷箇所は右大腿部と右上腕。出血が酷く手に負えないと判断した俺は、衛生兵を呼んだ。
「ドク!早く診てくれ、負傷兵だ!!」
その時だった。俺のこめかみに銃弾が命中し、俺の命が絶たれたのは。
塹壕の前面には、敵兵の突撃を防止する目的で鉄条網が張り巡らされていたが、
奴らはそれに構わず突撃してきたのだ。結局、俺は終戦まで生き残れなかった。
なあ相棒。俺の名前が戦死者名簿の何番目に載っているか、知っていたら教えてくれよ。
戦記モノはなかなか難しい・・・・・・
次のお題は「地下鉄」「瓦礫」「赤」でお願いします。
26 :
「相棒」「防止」「止血」:03/09/23 21:54
下山途中、後ろを歩いていた北野が「ぎゃあ」と悲鳴をあげた。
俺がびっくりして振り向くと北野は頭から血を流して倒れていた。
「北野!」すぐに駆けよって止血の薬を塗ってやった。「どうした?」
「熊にやられた。おい!後ろだ!」俺は咄嗟に熊の一撃をかわした。でかい。ヒグマだ。
餌を漁りに来たってわけか。俺は急いでリュックから日焼け防止スプレーを取り出し
熊の顔めがけて噴射した。目をやられた熊は両手をぶんぶん振りまわし暴れまわった。
よし!効いてる!と思ったのも束の間。熊はバランスを崩し、北野の上に倒れこんだのだ。
熊に乗られた瞬間北野は「ぎゅう」と言った。しかも熊はその後念入りに北野の上で
2回転も転げまわったのだ。北野は死んだ。「北野!」許さん。許さんぞ。俺の相棒を。
俺は震える手でリュックからCL−1300GT2というモデルガンを取り出した。涙がこぼれる。
まさかこれを使う時が来るとは。熊はまだぐふぐふ言いながら転げている。
俺はBB弾を230発装填した。「北野。敵は取るぞ」と俺は照準を熊に合わせた。
熊はスプレーのダメージから回復したらしく2本足で立っている。俺と目が合った
瞬間にこちらへ唸りながら走ってきた。「うおおおおおお!」俺はフルオートで
モデルガンを乱射しつつ向って行った。
「串カツ」「金髪」「ライブ」
27 :
「地下鉄」「瓦礫」「赤」:03/09/23 21:58
地下鉄に飛び乗った俺の前に座っている女の子は瓦礫を持っていた。
正確にはコンクリートの瓦礫を入れたポリバケツだ。良く見る青いやつ。
「変ですか、私」
「いえ、別に」
思わず答えてしまったのは、妙にその女の子が美人だったからだ。
「これはね、私の家なんです」
そう言うと女の子は我が子のようにバケツを抱えた。
「家?」
「潰れたんです。取り壊し」
「ああ」電車がホームに滑り込み、空いた隣に座った。「なるほどね。あなたにとっては大事な物なわけだ」
「ええ。だから新しいおうちまで運んであげてるの。今日10回ぐらい往復したわ。でもまだいっぱい残ってるんです」
「全部運ぶつもり?」
女の子はこくん、と頷いた。
「だって可哀想だもの。うちのコンクリートの砂利にはね、男の人がまざってたの。
悪い人のお金を騙して盗んで、その人に砂利の中に混ぜられたの。
苦しい苦しいって毎晩私の所に出てきたわ。パパやママは気味悪がって引越したけど、
でも一人っきりじゃ淋しいでしょ? だから私が運んであげてるの。あっ」
女の子は嬉しそうにバケツの中から赤いもので汚れた背広の切れ端のようなものを取り出した。
「これ、彼のよ」
そう言うと嬉しそうに笑った。
次は「トランプ」「小熊」「エアパッキン」で
28 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 22:00
「地下鉄」「瓦礫」「赤」
目の前が真っ赤だ。
俺は、目を覚ましたばかりで周りの様子が確認できない。ただ、赤い。
手探りしてみる。触れると、ぬめぬめとした質感を感じる。鼻に近づける。錆びた鉄のような臭いだ。
朦朧としていた意識が戻ってくる。嫌なニオイだ。これは、血の臭い――
段々、暗さに目が慣れてくる。これは……一面に広がる瓦礫と、列車の残骸。
思い出してきた――
俺は、いつもの道を辿っていた。いつもの。
遅刻ギリギリで飛び起きて起きて、地下鉄に乗り込む。
そんで会社で怒られて、怒られて……そんな当たり前の日常が、また今日も続くはずだったのに――
なんだ、この惨状は!?
今俺は、朽ち果てようとしている。もっとも、他の人間よりも少し遅いだけのことだが。
おそらく全員死んでいる。若しくは、全員死ぬ。
次は…「亀/中学野球/おから」で
29 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 22:17
「相棒」「防止」「止血」
私は後方からの激しい衝撃で持っていたCDを床にばら撒いた。
CDについた盗難防止用のバーコードが反応し、けたたましいブザー音が店内に鳴り響く。
私は尻餅をついて走り去っていく男に憎しみのこもった視線を投げかけた。
「大丈夫ですか? うわ! 血が出てるじゃないですか!」
店員の目線を追うと、手首からは色鮮やかな血が滴り落ちていた。
すっかり気が動転してしまった店員は慌ててポケットからクシャクシャのハンカチを取り出し、私の手首に巻きつけた。
「一応、止血しましたけど病院に行きますか?」「いえ、大丈夫です。あの男の人は何かしたんですか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですが……」店員の首をかしげる仕草を眺めながら私は立ち上がり礼を言った。
「ハンカチ洗って返しますね」
口をすぼめて照れ笑いを浮かべている店員を残して私はその場を立ち去った。
私は自分の笑顔の効果を知っている。
家に帰った私を男が迎えた。「どうだった?」「まあまあかな」
シャツの下から10枚ほどのCDを出し、透明のテーブルに並べた。男は短く口笛を吹くと私の肩に手をかけて囁いた。
「今度は宝石でも狙ってみようか? 相棒」「それよりもう少し濃い色にしたほうがいいね」
私はハンカチをゴミ箱に突っ込むと、ケチャップと絵の具を混ぜて作った血糊を眺めた。
次は「ツンドラ」「籠の中」「ドストエフスキー」でお願いします。
30 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 23:11
えー交通整理入ります。
次は
>>27さんの「トランプ」「小熊」「エアパッキン」でお願いします。
「串カツ」「金髪」「ライブ」・「亀」「中学野球」「おから」は誰かのサルベージ待ちで。
「ツンドラ」「籠の中」「ドストエフスキー」は固有名詞が入っているので、本当はだめなのよ。
32 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/23 23:54
「串カツ」「金髪」「ライブ」「トランプ」「小熊」「エアパッキン」
「亀/中学野球/おから」
「高校球児が金髪でライブなんて、ダメ」「トランプ・賭博など、もってのほか」
高野連の潔癖壁が、一人の若者の人生を変えた。
彼は高校野球を諦め、中学野球に賭ける事を決意したのだ。
彼は高校三年生だった。「こうなったら年齢詐称しかない!」
全身をゴム仮面で圧縮カムフラージュし、無理矢理中学に入学。
エアパッキンから漏れる空気を呼吸する。さすがに苦しい。
問題は身長だ。こればかりは圧縮できない。
それでなくても、18歳の体毛の彼は、中学生としては小熊の様だった。
おまけに試合に勝った日は串カツでビール・・・どうみても怪しい。
「君、試合に勝ったはいいのだがね」と、監督が嗜める。
ろれつの回らぬ声で、彼は反論する。
「まあ、ま、ま。おからいこと言わず、中学野球にモラル規制もないれすし・・・」
そして彼は成功した。試合に出れば、高校生と中学生は兎と亀も同様だ。
勝ち負けを思いのままにできる試合、緩い規制、放置するマスコミ。
彼は、数十倍の賭金を手にしたのだ。
※ほとんどお題だけで終わり・・・9題だから見逃して(^^;
次のお題は:「ツンドラ」「籠の中」「ドス」でお願いしまつ
33 :
「ツンドラ」「籠の中」「ドス」:03/09/24 00:54
深海魚として生まれたことに後悔はない。それでも、一度でいいから
渋谷の街角でクレープを頬張ってみたい。
チョウチンアンコウの俊くんが山手線の改札をくぐったのは
若気の至りでも気の迷いでもない。己の運命に立ち向かう鉄石の意志と
念願成就への努力のなせる業であった。
気圧差と期待でパンパンに膨れ上がった体を、座席に預ける。三人分の
空間を占領した俊くんに非難の目が集中するが、俊くんの頭の中は
まだ見ぬクレープで一杯だ。人間ふぜいがいきがるな、とばかりに
触手の先端を明滅させるばかりである。
降り立った渋谷の駅前には、ツンドラの凍土が広がっていた。
ハチ公像があるべき広場の一角に鎮座した巨大なアザラシ像の首には
「WELCOME TO CANADA」の札がかかっている。どこかで道を
間違えたらしい。そういえば、本土の砂浜に上陸した時点で
天ぷらの香りもスキヤキの匂いもしなかった・・・。
とにかく、過ぎたことをクヨクヨ言っても始まらない。カナダにだって
クレープの一枚や二枚は売っているだろう。目の前に口を開けた洞窟が
とりあえずの散策ポイントだ。ガス探知用のカナリヤを連れて
勇躍潜り込んだ。
長年の深海暮らしで、暗い場所には慣れている。狭い横穴をしばらく
進むと、大きな空間に出た。反対側の岩壁に、ネオンの灯りが
瞬いている。きっとクレープ屋だ!夢中で泳ぎだした俊くんの尾びれが
ピタリと止まった。籠の中のカナリヤがこときれている。ガスだ!
一目散にもと来た道を引き返す俊くんの背中に、ドスが深々と
突き刺さった。屋台のオヤジが投げつけたものだ。
カナダくんだりまで出稼ぎに来て、客に逃げられてたまるか。
カナリヤは死んだ。俊くんも死んだ。オヤジの頭上には
「たこ焼き」ののれんが風に翻るばかりであった。
次のお題:「瞳孔」「政治犯」「ゲイバー」で。
そのひとは別れ際、あたしを抱きしめてこう言いました。
「…あんたがあのひとの娘でよかったわ」
行きなさい、と背中を軽く叩かれて、転びそうになったその瞬間、ドン、という音があたしの耳に響きました。
いやな予感がして振り返ると、血だらけになったその人が倒れています。
金髪のかつらが少しずれて、中の髪が見えました。
綺麗にお化粧をしていた顔は本当に白くて、瞳孔は血走っていました。
空色の目がにせものだったのだことを知ったのは、このときでした。
街に一軒だけ建っていたゲイバーに立てこもっていたそのひとが、ある目的を持った政治犯だと分かったのは
あれから十年経ってからです。
当時の仲間だった父を引き戻すためにあたしを誘拐したと聞きましたが、それだけではないような気がします。
父を語るあのひとの言葉には、何かしらの温かみがあった気がして。
女の人のように美しかったあのひと。
今もあのひとのことを思い出すときには、見開いたままの空色の目がまず思い浮かぶのです。
次は「結婚記念日」「羽」「ブランコ」で、おながいします。
7行目、正しくは「にせものだったことを」です。
スマソ。
36 :
12 ◆x9GoEGTC/M :03/09/24 21:53
「結婚記念日」「羽」「ブランコ」
その日は、僕たちの13度目の結婚記念日だった。キリスト教信者の君は、やたらと「13」を気にしていたけどね。
そのころには、僕はもう32歳になってて、君は31歳を迎えようとしていたんだよね。心配する君に、
「大丈夫、ジンクスなんて気にしなければ大丈夫だよ」
とか何とか、訳がわからないことを言って、無理やり説得したんだったね。けど・・・やっぱり、止めておけばよかったんだ。
その日、僕が仕事から帰ってくるとすぐに、君を連れて予約していたレストランに向かったんだっけ。
ああ、そういえば予約した時間よりずっと早くに仕事が終わったから、あの公園に行ったんだ。
―そう、僕と君が初めてデートした、あの公園さ。僕らはあのころのことを思い出しながら、
まさにあのころと同じように、二人でブランコに腰掛けて、ちょうど街が夕暮れに沈んでいく中、
ずっと話し込んでいたんだよね。そのとき、どこからともなく白くて綺麗な羽が落ちてきたんだ。
君はそれを拾って、胸ポケットに仕舞い込んでたよね。
「まるで、天使の羽みたい・・・・・・」
って言ってね。今思うと、それは本当に天使・・・いや、もしかしたら、悪魔の羽だったのかもしれない。
やがて、僕らはそろそろ時間になったから、公園を後にした。バスに乗って駅前のホテルまで行くために、
近くのバス停まで歩いていったんだ。あれは、6丁目の交差点だった。信号が青になって、横断歩道を
渡っていた時だった。急に派手なワンボックスが右折してきて・・・・・・・・・・・・君は、跳ね飛ばされたんだ。
まるで、羽が生えて飛んでいるかのように、君の身体は天高く舞い上がり・・・そして、とてもゆっくりと、
まるでスローモーションがかかっているかのように、地面に堕ちていった・・・・・・・・・・・・
14度目の結婚記念日の今日。僕は、君の好きだった蘭の花を片手に、6丁目の交差点へ向かって歩いていた。
なんか、ありきたりな・・・・・・もっとストーリーを捻らないと。反省。
にしても、暗い終わり方が・・・・・・次こそは、ハッピーエンドを書きたいものです。
さて、次のお題は「翼」「サルベージ」「時間」でお願いします。
「翼」「サルベージ」「時間」
「じいちゃん、サルベージ船に乗ってたことある言うのん、ホンマなん?」
幼い男児が満面の笑みをたたえて老爺の傍に駆け寄ってきた。
その目にはピンクサファイアの光とも、劣らない輝きを放っている。
「ホンマやよ、岳坊。坊主、今日はどないしたんや」
老爺は、顔に彫られた年輪をさらにかき寄せるようにして、柔和に微笑む。
老爺の笑顔を見て、男児はさらに顔をくしゃりとやり、
「あのな、あのな、じいちゃん、ぼく宝物を見つけたいんや。
サルベージ船て、沈没船を引き上げる船のこと何やろ?きっと、引き上げたとき、宝物がどっさり出てくるんやろうな。
そうやろ、じいちゃん」と勢い付いた。
「ああ、そうやで、岳坊。船を引き上げるとな、たくさんの宝物が出てくるねん。ほら、岳、じいちゃんの膝の上乗りぃ」
老爺は、男児をひざに乗せ、その表情が見えなくなった後、表情に影を落とした。
ホンマは全然、楽しいもんやないねんぞ、岳坊。
心の中で、老爺はそっと呟く。
未来や夢や時間を奪い去られ、血塗られた翼を持つ小さな天使たちや、
愛するものとの再会に待ちわびた血の涙を流す女神、
そして、深い皺が刻まれ、たくさんのものに愛された手を持つ天の死者。
たくさんの者たちが、瞼の上に駆け巡っていった。
「だからこそ、この子には」小さな願いを抱いて、老爺は優しく男児を――岳坊を抱きしめた。
☆次は「走馬灯」「早稲」「ターゲット」でお願いします。
訂正です。
15行目
×死者
○使者
よう考えたら、うちってホンマに訂正多いなぁ……と思いましたw
39 :
「走馬灯」「早稲」「ターゲット」:03/09/25 01:50
俺には特技がある。植物の気持ちがわかるのだ。
そんな能力対したもんじゃないと思うかもしれないが、俺の仕事にはそれなりに役に立つ。
そんなわけで俺は今日も勤め先の県の農業試験場にスクーターをかっとばしていた。
そろそろ早稲の季節だった。だから俺も朝が早い。
しかし途中の田んぼで朝っぱらからコンバインががたごとと早稲を刈っているのに出喰わした。
俺はスクーターを止めて電柱の横のひしゃげた自販機からオロナミンCを買って飲んだ。
気付の意味だ。そうでもしないとやりきれなかったからだ。
コンバインに苅り取られていく稲の気持ちが、気持ちのわかる俺をターゲットにしているかのごとく俺の心の中になだれこんでくる。
苗代の冷たさ。はじめてこの場所に植えられた時のくすぐったさ。
そして自分に生えているめしべとの恋。自家受粉。実る穂先。
「おええ」
ナルシズム爆発の稲の感情には今だに慣れることが出来ない。しかもそれは死を前にして強められ、走馬灯はマーガリンになりそうな勢いで回っている。
俺はスクーターを押して、なんとかその場を離れた。
これから季節は秋になる。俺にとっては憂鬱な時期だ。
「もうすこし早く起きんとだめか……」
おれはため息をついた。
次は「秋祭り」「キツネ」「ワープロ」で
40 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/25 01:56
「走馬灯」「早稲」「ターゲット」
「ついにこの日がきた」病床で彼は呟く。
重病の彼は、古ぼけた校舎の老教授。
老人といってもまだ60。いち早く刈られる早稲の様な生涯だ。
贅沢なぞ一つもせず、ひたすら論文ばかり書く生活を送っていた。
エディタを使う古いパソコンと原稿。それが、彼の全財産だ。
嘘一つつかず、清貧と寄付とボランティアの生き様が、走馬灯の様に浮かぶ。
遠のく意識の中で、彼は再び呟く。「この日のために生きてきたんだ」
全ては死後のためだった、これで天国に行けなければ嘘だ。
老人は拳を天に差し出した。「我が人生に、一片の悔いなし!」
三途の川を渡った翌日、閻魔様はにっこり笑ってこう言った。
「君が天国をターゲットにしてきた事は知ってるよ。いい心がけだ・・・ただ一つ」
と、厚いプリンタ記録用紙をめくる。
「問題はない、君は天国行きだ。ただこれだけ嘘をついた事は知っておいてくれ」
紙には老人が論文を書いてきた何十年、毎日繰り返された嘘が記載されていた。
<私はまだ秀丸をまだ使い込んでいません>
<後でシェアウエア送金します><現在試用中です><キャンセル>・・・
※近頃は「メモ帳」
次のお題は:「修学旅行」「枕」「いいわけ」でお願いしまふ
失礼しました、6分遅れでやってしまいました m(_ _)m
次のお題は、39さんの「秋祭り」「キツネ」「ワープロ」で お願いします。
秋祭り、キツネ、ワープロ、修学旅行、枕。いいわけ
「よー出来とるやないか。このちらし。ワープロで作ったんか?」
「違うよ。こんなんワープロなんかで出来へんわ。
マサキ、おじいちゃんのことなんか無視してええからな」
祖父と母親の掛け合いを横目で見ながら私は刷り上ったパンフレットをファックスに流し込んだ。
今度こそ決まればいいが。30分後、電話が鳴った。
「このデザインでもええけど、この秋祭りはキツネの格好をして練り歩くのが一番の目玉やねん。
もっとそこを強調して欲しいんや」
「ははは、結構、強調はしてた思うんですけどね。念のため、もう一回やり直して見ますわ」
卑屈な表情を浮かべて誤魔化そうとする私は彼らの目にどう映っているのだろう。
受話器をフックに戻しながら私は中学の修学旅行を思い出した。
枕投げで投げた私の枕が同級生の目に当たり、失明騒ぎになったことがあったのだ。
「俺のやつが当たったんかなぁ。一応、謝っとくわ」
私はあの時から少しも成長していないのだろう。私は企画書をくしゃくしゃに丸めて捨てた。
次は「乾いた」「猫じゃらし」「ストロー」でお願いします。
「乾いた」「猫じゃらし」「ストロー」
麻酔から醒めると、病室の白い蛍光灯が見えた。今は何時だろう。
すっぽりと白いマスクで顔を覆った看護婦が、私が目覚めた事に
気がついて「山田さーん、わかりますかあ?」と顔を近付けてきた。
「今、何時ですか?」かすれた声が出た。「夜の10時ですよ、気分悪くない?」
私は小さく顎を引いて返事をした。もう手術開始から12時間か。看護婦は出ていった。
全身麻酔をかけられている間、私は夢をみていた。
どこか知らない町の、古い駄菓子屋の前に私は立っている。
入り口には大きな三毛猫が座っていて、ぱたり、ぱたりとシッポを地面に
打ちつけていた。ひどく喉が乾いた気がして、私はコーラでも買おうかと
考えていると「銀貨でごまかそうとしてもダメさ」三毛猫はそう言って目を細めると
つまらなそうに横をむいた。仕方がないので、近くの電信柱の根元に生えていた
薄緑色の猫じゃらしを一本摘んで、猫の前に置く。「おばあさん、コーラとストロー」
そう言いながら三毛猫は店の奥に歩いていった。ちりんと首輪についた鈴が鳴った。
猫じゃらしを引き抜いた感触が、まだ手に残っている。「山田さんどうですか?」
医者が病室に入ってきた。医者の胸ポケットには、薄緑色のボールペンが刺さっていた。
次は「部屋」「影」「囚人」でお願いします。
44 :
12 ◆x9GoEGTC/M :03/09/25 19:03
「部屋」「影」「囚人」
天井から吊るされた裸電球だけが、唯一の光源である薄暗く狭い部屋。
そこに、一人の男がいた。男は別段、何かをするわけでもなく、
ただベッドの上に寝転んでいた・・・・・・いや、既に息絶えていた。
瞳孔は開ききり、だらしなく開いた口からは、涎と血が垂れていた。
この男は、軍事政権下で民主化運動を行った。しかし、独裁的な体制下では
そのような行為は許されるはずもなく、男は秘密警察によって検挙され、
政治犯としてこの軍刑務所に収容されていた。本来は戦争犯罪を犯した
自国の兵士を収監するためだったが、大粛清により逮捕者が急増し、
国内の刑務所はその収容能力を超えてしまっていたのだ。仮措置として
溢れた囚人を軍刑務所へと収容することが決まり、男は軍刑務所へ
収監されたのだ。これは彼にとって、いや、彼だけではなく、
この軍刑務所に収監された全ての人々にとって、極めて不幸なことだった。
一般の刑務所の看守より、軍刑務所のそれは遥かに横暴だったからだ。
看守は囚人に対して陰湿な虐待を行い、看守は自分自身の優越感を
満たそうとしていた。食事も満足に出されず、衛生状態も最悪。
絶望に打ちひしがれた受刑者の中からは、自殺者が続出した。
この非運な男は、看守の虐待により絶命していた。死体は意図的に放置され、
魂が抜けた肉体は朽ちていった・・・・・・・・・・・・
かくして民主化の光明には影が落ち、国民は独裁軍事政権下で、
以前と変わらぬ貧困にあえぎながら、その日暮をするしかなかった。
この国が、民主化を迎えるのは、まだまだ先のことであろう。
いや、果たしてその日が来るかどうか・・・・・・・・・知る由もない。
前回、ハッピーエンドにしたいと言ったのに・・・ううむ。
まあ、お題がお題と言うことで勘弁してくださいw
次のお題は「西瓜」「風鈴」「煙」でお願いします。
細長い窓から差し込んできた夕陽が、彼女の背に落ち、長い影を造った。
この高くて地上が見えない塔に閉じ込められて、何年経っただろう。
兄は言った――お前の醜さが罪なのだと。だからお前は誰の目にも触れない
ようなところに隠れていなければならないと。
兄が告げた事実に怯え、彼女の部屋には鏡など、姿の映るものは一切置かれていない。
必要最小限の家具の他にあるのは、閉じ込められる際に兄が渡した美しい金細工の櫛。
亜麻色の髪が唯一、お前の中で美しいものだから、大切にするようにと言われ、身長を超えるくらい伸びたそれを、毎日毎日梳る。
いつか読んだおとぎ話のように、その髪を塔から垂らしたら、王子様が迎えに来てくれるだろうか。
何一つ不自由はないけれど、まるで囚人のような生活を送る彼女のたった一つの夢だった。
深夜、木の焼ける匂いで目を覚ませば、塔の窓から見えるのは赤や橙の光。付近で火事が起こっている。いずれこの塔も崩れるだろう。そう悟った。
しかし入り口の鍵は兄が持っていて、自分では開けることすらかなわない。
縋る思いで丁寧に編みこんだ亜麻色の髪を、そっと窓辺に垂らす。
しばらくして、はぁはぁと男性のものらしい息遣いが聞こえてきた。兄以外の人間に会うのは実に久しぶりだった。
だが兄が言った自分の醜さのことが、今更浮かんできて、逃げ出したくなる。しかし力強い腕は、髪を握る力を緩めない。
彼女が逡巡している間、男性は窓辺まで来ていたらしい。しかし彼女の顔を見た途端に、声高に叫びながら下へ落ちて行った。
やっぱり、お兄様が言ったことは本当だった――私は醜いから、誰も助けてはくれないのだと。
手元にあった銀のナイフで、編みこんだ髪を根元から切り落とす。ざん、と音を立てて、髪は下に落ちた。
「ふふ、あはは…」
崩れゆく塔から聞こえたのは、哀しい女の笑い声。
「あの塔にいたのは、絶世の美女だったそうだよ」
粗末な酒場の片隅で、語り部の婆がそう締めくくった。
妹に恋焦がれた兄が、誰にも触れさせたくない、と高い塔に閉じ込めたと。
火事が起こった際、助けに向かった騎士が見たのはこの世の何にも喩えようのないくらいの美女。
その美しさに驚いて、命綱であった亜麻色の髪を手放してしまったと。
次は「グランドピアノ」「桜」「杖」でよろしくでつ。
47 :
12 ◆x9GoEGTC/M :03/09/25 19:37
「グランドピアノ」「桜」「杖」
戦争は終わった―――それは敗戦という形でだったが、終わったのだ。
それから暫くして、俺がいた戦線にも引き揚げ船がやってきた。
船へ向かって歩いていたが、つい最近の戦闘で左足を負傷していたため、
俺は杖をついて、左足を引きずるようにしながら歩いていた。
全治2ヶ月という診断で、義足にならなかったのはささやかな幸運だった。
船員に助けられながら船に乗り込み、待ち焦がれていた故郷への帰路に着く。
船上から広大な大洋を眺めながら、置いてきた家族や彼女のことを
思い出していた。俺の故郷は小さな漁村だった。親父は漁師で、
小さいころはよく漁船に乗せて貰った。それだけに、海は懐かしかった。
戦争さえなければ、今頃は漁師になっていたかもしれないな・・・
数週間の航海を経て、引き揚げ船はようやく本国へと帰り着いた。
寄港先は首都圏の港だったのだが、そのあまりの惨状に俺は絶句した。
栄華を誇っていた首都の面影はなく、今はコンクリートやガラスの残骸で
埋め尽くされているだけ。路傍では浮浪者や戦災孤児が、バラックを
組んで細々と生活していた。―――俺の故郷は大丈夫だろうか?
不安に駆られた俺は、辛うじて運行している列車を乗り継ぎ、故郷へと急いだ。
故郷へ帰り着いてみると、そこには出征する前となんら変わりない故郷があり、
俺を迎えてくれた。街路の桜並木は満開で、花びらが少しずつ散っていた・・・
真っ先に家に帰って家族に会おうと思い、家路を急いだ。だが、不意に
ピアノの音色が俺の耳に飛び込んできた。不思議と聞き覚えのある曲・・・・・・
ああ、そうか―――彼女が作った曲だった。彼女の家には不釣合いなまでに
立派なグランドピアノがあり、俺が彼女の家を訪れたときは、自作曲を
披露してくれたんだ。俺の脚は、無意識の内に彼女の家に向かっていた。
残してきた婚約者に、「ただいま」の一言が言いたくて・・・・・・
(後記:ようやく、念願のハッピーエンド・・・よかった。
いまいち消化不良な感じもしますが、字数の影響だと思ってくださいw
さて、次のお題ですが、前出の
>>44でお願いします)
季節は水みたいに流れていく。
暑さと寒さは対比ではない。流動するものなのだ。
夏の終わりとは、秋の始まり。
秋の終わりが来れば冬は既に始まっている。
夏は冬の鏡だ、と誰かが言った。
熱力学に基づけば、
西瓜には西瓜の成れの果て、風鈴には風鈴の成れの果て、
冬の風物詩があるはずだった。
季節は秋。
夏の残滓が残る微かに温い風の中、
秋刀魚を焼く煙を見ながら、春はいつなのだろうと思った。
お題
「谷」 「中心」 「徹頭徹尾」
49 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/26 00:42
目が回るような忙しい日常。休みと言う谷を越えれば、後はまた、しばらく山続きとなる。
ダイニングテーブルで、新聞を広げ、コーヒーを口にしながら、平日の様な朝を迎えていた。
こんな時ほど、規則正しい生活をしていることを嫌に思うことはない。
何が悲しくて、休みの朝早く起きて、時間をチェックしなければならないのか。
今日は休みだった、そう思っても二度寝する気にもならず、眠気そのままに起き上がる。
それほど自分にとっては、日常の中において、休みとは本当に一時的なものであり、
仕事が生活の中心なんだなと実感する。社畜、という言葉が俺にはぴったりだ。
きっと逃げた女房が、この場にいれば、実に嫌な顔と、皮肉たっぷりな朝の挨拶を聞けるんだろうな、
と可笑しくなって、顔がにやけた。
そう、俺は家庭も何も考えはしない馬鹿な男なんだ。俺には一つのことしか出来ない。
だがそれでいいじゃないのか。
――徹頭徹尾、いっそ死ぬまでこんなんでいいかもな。
新聞の小さな記事に目が惹かれた。
『某大手会社員が自宅で死んでいるのを、同僚に発見された。過労死か?』
俺は、わらった。
お題
「笑顔」「鉛」「殺意」
50 :
「笑顔」「鉛」「殺意」:03/09/26 02:13
「死ねよ」
どん、と腕の骨に響く振動の後、鉛弾が土下座している男の背中を貫いた。
安物のトカレフもさすがにこの距離だと外すことはない。
三度目の引き金を引いた時には、俺は自分が笑顔な事に気付いた。
ま、30人だな。
俺はアニキの言葉を思い出した。
オレが顔を覚えているのは30人だ。あとは顔も覚えてねえ。殺意もねえ。
殺すのがよ、おもしれえんだよ。
武闘派で知られたアニキについたことが俺の運命を決めたのかもしれない。
次々に俺は鉛を食らわせる。
その度土下座をした男はぴくぴくと体を震わせる。
「おい、よぉ、死んだフリかよ? おい? つまんねーんだよ」
俺はマガジンを一本使い切るまでその男に鉛を食わせた。
50人だな。
砂利の粉砕機に死体をかけている間、俺はアニキの言葉を思い出していた。
50人ぐらいからタマがもったいねえと思うんだ。お前よ、生命っつーのは幾らか知ってるか?
男のよく練られた挽肉を見ながら俺は無性にハンバーグが食いたくなってきた。
ま、100円ってとこだな。鉛弾一個分よ。
次は「失恋」「すね毛」「爪切りで」
51 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/26 03:20
失恋してしまった。死にたい。原因は私の「多毛症」だ。
これのせいでよくいじめられた。「毛すごいね」とか言われて。
顔と全身にものすごい量の毛が生える病気。
剃っても抜いてもエステに行っても次の日にはぼーぼーになってるんだもん。
髭が生えてるような女なんて誰でもいやだよね。顔は伊藤美咲なんだけどなー。
あーあ……手の甲も毛がびっしりだ。ちょっと爪が伸びてるかな。
あっ!あれ使ってみよ。100均で買った「すごすぎな爪切り」とかいう
超ださいやつ。どこかな……あった。ぱちんぱちん、と。よし終わり。
うわっ、すね毛すごいことになってる。生えすぎて渦巻いてる。
よし、このやばい爪きりで抜くぞ。いてっ。おーいて。……え?
すね毛が……全部抜けてる。どういう事?こっちの足もやってみよ。
いてえ。……うわ。全部抜けた。髭も。抜けた!腋も。抜けたあ!うわお。
これ、めちゃめちゃすごいけど朝起きたらまたぼーぼーになってそう。今日はもう寝ます。
で、起きてみたけど毛は生えてない!すべすべのぴかぴか!
「すごすぎな爪切り」やばい。胸に熱いものがこみあげてきた。
「火星人」「営業マン」「FAX」
「火星人」「営業マン」「FAX」
火星人と水星人は仲がいい。火星人は最近、地球に「火の国大接近」という
銘柄のタバコを売りにいった。営業マンとしては、気質が朗らかな水星人には
すこし劣るが、粘り強さでは火星生まれが一番だ。今回もなかなかの営業成績だった。
「やるなあ。火星人」水星人は、部屋に遊びにきた火星人を労ってやる。
「たまたまさ」火星人は赤くなって、水星の地酒「惑星 水のごとし」をゴクリと飲む。
「地球の営業所からFAXがきたけど、みんなおまえのことほめてたぞ」水星人は笑う。
火星人は恥ずかしそうに「もういいよ。明日早いから寝ようぜ」と言った。
水星人が布団を敷く。しかし掛け布団は一枚しかない。水星は深夜になると
底冷えが激しい。仲のいい二人は半分ずつ布団をかけて眠った。
だが無意識に、おたがい寝ながら布団をひっぱりあってしまう。
布団をかけた方は眠り、かけない方は寒さで目がさめ、また自分の方へひっぱる。
火星人は起きてひとりでタバコを吸っている。「おい、もう朝か?」水星人は聞く。
「いや、ちょっと疲れたから一服してるんだ」火星人は答えた。
「俺もひと休みするかな」水星人も起きて、きのうの残りの冷酒を一口飲んだ。
次は「鍋」「二日酔い」「指圧」でおねがいします。
53 :
「鍋」「二日酔い」「指圧」:03/09/26 19:18
「あなた、課長昇進おめでとう!!」
「やったね!!パパ!!」
正式な辞令がおりた今日。いつもは豚肉の割合が高いのに、今夜の鍋は牛肉だけだ。
近所の奥さんたちとの付き合いに忙しい妻と、塾にけいこ事にと会話する暇もない息子が、今日は
珍しく自分を囲む。
「パパ、肩揉んであげる」
小学生とは思えない力強い指先で、肩を指圧される。些細なふれあいが嬉しい。
「ほらあなた、もっと呑んで」
妻がビールをグラスに注ぐ。普段はそんなに呑まない方だが、妻が優しくしてくれることなど滅多にないので、
勧められるままにグラスを傾ける。
目覚まし時計の音が、二日酔いの頭にガンガン響く。
「…あ〜、時間だ」
慌てて出勤の準備をし、玄関に向かう。靴箱の上に上がっていたのは、子どもと共に写っている友人の写真。何気なく手に取った。
「家族、か…」
昨夜久しぶりに友人たちと呑み歩いたら、聞かされたのは妻子の愚痴だ。
金を稼ぐロボットだと思ってんだよ、あいつら――そう言ったのは、誰だったか。
彼らの語る話が余程印象的だったのか、昨夜夢に見てしまったらしい。
「でも、いいよな。俺は未だに独り身だよ。愚痴れるくらいの家族が欲しい」
写真をそっと置くと、磨いた革靴に足を差し入れる。
今日は今の部署への、最後の出勤日だ。ただし昇進ではない。
彼は六十歳――定年退職の朝をたった独りで迎えた。
次は「いとこ」「職員室」「ろうそく」で、おながいします。
秋になって始めての雷雨。雷雲起ちこめて暗くなり辺りは怪しげな雰囲気。
おまけに採光を重視していない建築様式のおかげか家の中は真っ暗だ。
電灯をつけようとしたがふと思い立ってろうそくを出してきた。
ろうそくに火をつけると電気にはない原始的な優しさに溢れる光を放つ。
その灯りの中に私は淡い思い出を映し始めた。
中学校の時、僕はよく名前で冷やかされた。
至って普通の名前だ、冷やかされるのは同じ名前の女の子がいたからだ。
その地方の旧家だったおかげか同じ学校にいとこが通っていたのだ。
そしていとこも同じ様に冷やかされていたせいか僕を嫌っており、
僕もいとこを嫌っていた。お互い会うことを避けており
校内行事などで仕方がない場合はわざと欠席をするほどだ。
そんなある日、学校に雷が落ちて停電が起きた。
混乱を避けるために教室待機を教師は告げたが偶々電灯のスイッチを触った奴がいた。
運の悪い事にスイッチは帯電していたらしくそいつは感電し倒れた。
教師は生徒を保健室に担いでいき日直だった僕は職員室に連絡をしに行く事になった。
そして職員室にはいとこもいた。僕のクラスと同じ様な事が起きたらしい。
帯電事故で騒然となった教師達に相手にされず場の雰囲気から戻る事も出来ず僕達はじっとしていた。
居心地が悪くそわそわしていると彼女はポツンと呟いた。
「綺麗ね」
彼女の視線の先には非常用のろうそくが灯っておりとても綺麗だった。
「うん、綺麗だね」
結局中学生の時にいとことの会話はそれだけだった。
そして成長し社会人となった私の目の前には……、
いつの間にかいとこだった妻が同じ様にろうそくを眺めていた。
55 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/26 21:36
「こんなところでやるつもり?」
いとこは俺を睨みつけた。
いくらなんでも夜の職員室はヤバイというのだろう。
真夜中の学校は無人だと思われがちだが、警備員は巡回しているし、宿直室には当番の教師が泊まりこんでいる。
いま職員室は俺ら以外にいないが、いつ警備員や教師が見回りにくるかわからない。
下手に見られたらイイワケが効かない。それでも。
「かえってスリルがあっていいだろう?」
俺の言葉に、いとこはすこし逡巡してから、ややあって頷いた。
なんだかんだいっても断るわけがない。とくにこういう危機感や背徳感にまみれるシチュエーションならなおさらだ。
すでに服を脱ぎ始めている。スキモノめ。
俺はスポーツバッグから、用意してきた道具を取り出した。
手錠やロープやさるぐつわ・・・・・・
「やっぱり最初は縛りからはいらないとな。それからバイブ責め、ローター、鞭打ち、浣腸、まだいろいろ用意してきた・・・・・・ああっ!!」
なんてこった!!
俺は致命的なミスに気づいた。
「ロウソクを忘れた・・・・・・」
「マジ?」
アレがないと盛り上がりに欠けるんだが。
・・・・・・さて、どうしようか。
56 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/27 05:42
「早いとこ済まそうよ」『せかすな……。えーと、右へ四回94と。おい!消すなよ』「ううん、消えちゃったんだよ」
『馬鹿っ!なんで新しい電池と交換してこねえんだよ!』「声が大きいよ」『どうすんだよ、メモリが読めねえよ』
「だから大きな声出さないでよ!」『でかいのはお前の声だよ!馬鹿!いいから、職員室から代わりの
懐中電灯持って来いよ』「え、やだよ。一人じゃこわいもんって嘘だよ。行くよ。おこらないでよ」
「って馬鹿!なんで電気点けんだよ!消せ!」「え、だって暗くてどこがどこやら」「消せっ!消せよ!!
消せっつってんだろ!ぶち殺すぞ!!」「わかったよ。だから怒鳴るのやめてよ。守衛さんに気づかれるよ」
『あったのか?』「ううん、懐中電灯は見つからなかった。でも、蝋燭はあった。はいよ」『……ライターは?』
「持ってないよ。煙草吸わないもん」『んなこと聞いてねえ。これにどうやって火を点けるかって話だよ』
「ああ、そうか。も一回行って来る」「だから、何でいちいち電気点けるんだよ!!」「ごめん、つい。でもさ」
『なんだよ?』「ここ窓がないから、別に電気点けても明かりは外に漏れないと思うんだけど」『……』
まあ、そんなこんなで見事にテストの答案を盗み出すことに成功した訳よ。で、もちろん俺は合格したさ。
え? 馬鹿の相棒? あいつは追試らしいよ。なんでも寝坊してテスト受けらんなかったんだそう。
馬鹿だよね。さすがにもう付き合ってらんねえ。でも、心配はしてないよ。あいつ馬鹿だけど、昔から勉強
だけは良くできるんだ。
57 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/27 08:34
「いとこ」「職員室」「ろうそく」
「カバンの中身を見せなさい」
木枯らしに軋む職員室のドアの音が、この指導室まで聞こえてくる。
「いや、いやです!私、規則やぶってなんかいません・・・お願いです!」
教官の前で黒いカバンを抱いたまま、彼女はうずくまるしかない。
「持込禁止が何か、君は知っているはずだ。見せなさい!」
指を押し剥がす様開けたカバンの底には、一本の白いろうそくがあった。
「やっぱりな・・・」わあと泣き崩れる女生徒の前で、教官は迷っていた。
下校時間を告げるアニーローリーの音楽が、窓を通して聞こえてくる。
「行きなさい」彼は言った。
「君がいとこに持つ感情は、私も知っている。行きなさい」
「教官・・・ありがとうございます!」
カバンを抱いたまま、彼女は部屋を飛び出した。
残り少なく、炎も危ういろうそくを、大急ぎでカバンの新しいものに取り替える。
・・・これで自分の卒業は延びるかもしれない、でもいいんだ。
一方、絶望視されていた難病から救われた若者の母が、嬉し涙を拭いていた。
「奇跡だわ・・・天国のいとこのお姉さんが、あなたを護ってくれたのよ!」
※なんかすごく昔のテレビ番組みたいだー
次のお題は:「はみだし」「帯」「納豆」でお願いします。
スーパーのチラシがあるだろ?
「特価品」の欄に、三段にパックされた納豆の写真が載ってて
パックの帯には「はみだしもの、ひねくれもの御用達」って書いてあったんだよ。
こりゃ怪しい、って買ってみたわけだ。
中を開けると、大豆と藁が入ってた。
次は「バス」「ガス」「発破」
「なんたることだ!このバスコ=ダ=ガマ、これほどの恥辱を味わったことはないぞ!」
私は地団太を踏んでいた。乗員一同が、びくりと震えて肩をすくめた。
「許さん!許さん!蛮人ども、この私の財産を!」
留まるところを知らない憤怒を抱え、私は怒声も露に、乗員に発破をかけた。
「いいか、貴様ら!!万難を排して、あの羊を取り戻して来い!出来なければ」
私は鐘楼の一角を指した。そこには一組の骸骨がつられ、風に揺れていた。
「あのガスコーニュ人と同じ運命をたどるものと思うがいい!」
わが勇猛なる乗組員はそれぞれ銃を構え、原住民の村へと突撃して行った。そして、
2時間後。副長が銃を片手に戻ってきた。
「カピターン、羊は原住民どもが食ってしまったそうです」
何!?私は思わず天を仰いだ。
「しかし、カピターン」
副長は続け、扉の外へと手招きをした。
「羊の身代に、原住民がこの娘をカピターンに委ねるそうです」
詳細は書きません。下品なので。
次のお題は「ゼロ」「夏」「ヘルメット」で。
60 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/27 23:22
前方の反対車線から向かってくる車のヘッドライトが眩しい。
夜行バス、深夜の車内は静まり返っていた。皆、毛布に身体を包み、
深い眠りについているのだろう。ただ、車内は静まり返ってはいるのだが、
後部座席の、体系の良い中年オヤジの凄まじいいびきが、正弘に容赦のない不眠を与えていた。
――畜生、予想外だ。
仕方なく流れる窓の外の、暗い景色を虚ろに眺めていた。
ぷぅ、と唐突に横から聞こえる、妙に間の抜けた高い音。
咄嗟に横を見やると、穏やかな表情で、寝息を立てる美人な女性。
どうやら、彼女の尻がガスを噴いたようだ。鼻を劈く、すっぱい香りが仄かに漂ってきた。
――こ、この女ッ!
正弘は、短気だった。自分にとって不快な事があれば、すぐに憤怒し、暴力をふるった。
だが、相手は美人で、尚且つ無防備に寝ている女性。手をだすのは男ではない。
――だめだ、屁ぐらい。だが、されど屁!
暴力はいけない。そうだ、暴力はいけないが、だが相手は寝ている、何をしてもばれはしないのだ。
ならば、悪戯の一つ程度――悪くは無い。
正弘は彼女の毛布の下に、そっと手を差し入れた。手に伝わる体温。
そうだ、このくらいなら平気だ。ちょっと触るだけだ、何も問題は無い。
そう自分に発破をかけて、女性の乳房を優しく揉んだ。
――刹那、悲鳴は轟き、車内は騒然となった。
なんてことはない、オヤジのいびきが喧しくて、寝れないのは正弘だけでは無かった。
それだけのことである。
不本意にも屁をふってしまった彼女は、恥ずかしさにより、寝たふりをきめていたのだ。
正弘は翌朝、当然の様にバスを下された。
お次のお題 「眠り」「香り」「叫び」
アイタ、書くのが遅かったです。
僕のお題のほうは無しで次ぎの方お願いしますね。
申し訳ないー。
この夏に、彼は死んだ。
軽い交通事故だった。彼がヘルメットさえ着けていれば、死は免れただろう。
電柱に頭を打ちつけた彼の頭は、見るに耐えない有様。
頭が良くて、スポーツ万能だった彼。いつも私に微笑んでくれた彼。
その彼は、もう死んでしまった。
私は自殺を決意し、今ここに居る。
ここなら、生き残る可能性はゼロだ。
私は自転車を走らせた。
道路からクラクションが鳴り、危険を知らせる…。
「しかし、こんな自殺も珍しいですね。」
「ああ。…普通なら、もっと追い詰めた顔をしているものだが…。」
少女は笑顔で死んでいた。
まるで、長い苦痛から解き放たれたかのように。
次のお題は「水」「飲み干す」「風船」で。
63 :
「ゼロ」「夏」「ヘルメット」:03/09/27 23:56
戦後、そのゼロ戦は武装を外されてフロートを付けられ、民間に転用されていた。
戦いのない常夏の南国の空をフロート付きのゼロ戦が飛んでいく。
高野は目標となる島を見て、操縦桿を倒す。
がす、がす、と整備不良の、いや敗戦後はロクな整備さえされたことのないエンジンがせきこんだ。
高野はその度あやすようにフットペダルを操作して、機体をなだめる。
よう相棒、がんばれよ。
フットベダルを通したその言葉に答えるように機体は、せきこむのを止めた。
「……がんばれよ、か」
その言葉の空しさに気付いて、高野はふっ、と力なく笑った。
目標の島が見えてきた。
高野は暗礁を避けるように島を回ると、桟橋に向けてゆっくりと着水していく。
しゃあ、とフロートが水面を掻く独特の感覚が高野とゼロ戦を襲う。
ゼロ戦は寄ってきた漁船にフックをつけられ、港へと曳航されていく。
不格好だ。オレも、こいつも。みんな。
「1627時、高野飛曹、郵送物配送の任務のため当地に到着しました」
ヘルメットに咥えタバコの男が、日本語を喋る高野に困惑の表情を浮べた。
「帰投は明朝0800時を予定。燃料の補給を願います」
咥えタバコの男はイライラした調子で日本語を喋るな、とどなっていた。
「……タバコ」
高野は息を吐き出すと負犬のような目でうつむいた。
男はとまどった調子で高野に火のついたタバコをよこした。
次は「タグ」「牙」「パイプ」で。
すいません。
お題は「水」「飲み干す」「風船」で。
子供のような顔で無邪気に微笑む彼の姿を、私は追っていた。
季節は夏。
今彼は、近所の子供と一緒になって遊びに興じている。
思えば、この笑顔に私は惚れたのだ。
紆余曲折の末に、私と彼が両想いであったと知ったときの嬉しさは、
こうして無邪気にはしゃぐ彼を見ていると随分と遠く感じる。
空を仰いだ。夏の陽射しは強くて、目を少しだけ閉じる。
焦りもした。泣きそうになったときもあった。
それでも結果として、今私は彼とここにいる。嬉しい。
別な嬉しさがここにある。
「見て、麻理」
彼が私の名前を遠くから呼んだ。私は手に持ったペットボトルの水の残りを飲み干す。
微笑んでいる彼の手には風船。どうやら、子供たちに風船の膨らまし方を教えていたらしい。
それ、と彼は風船を私の方向に向かって投げた。
緩慢と、穏やかに風の軌道を追いながら、方向を変え、形を変え、それでも私の手元に届く風船。
オレンジ色の風船は、空の青とのコントラストが映えて、綺麗だった。
私はそれを受け取る。膨らんで、膨らんで、一つの形となった風船。
たとえ破裂して、なくなったとしても、今度は私が膨らませればいい。
そうしてまた、私が投げ返してやるのだ。彼に向かって。
一つの季節は終わっても、また巡る。それは永遠に終わらない心の形にも似て。
そんなことを幻想して、夏の暖かな陽射しと風の中、私は彼に微笑んだ。
次のお題「タグ」「牙」「パイプ」でお願いします。
すいません訂正
×それは永遠に終わらない心の形にも似て。
○それは永遠に終わらない心の形にも似て確か。
68 :
「タグ」「牙」「パイプ」:03/09/28 18:53
月明かりに照らされてひとりの男が立っている。
黒いコートに身を包み、しんと静まり返った街を徘徊する
その風貌はまるでドラキュラ。
なんて考えてるとその男がこちらを振り向く。
パイプをくわえたその口にはキラリと光る牙が。
これじゃあまるっきりドラキュラそのものじゃないか。
僕に気がついた男はゆっくりと、確実にこちらに歩いてくる。
逃げなければと思っても足が動いてくれない。
男が僕の首筋に噛み付こうとしたまさにその時、
僕の視線に入ってきたのはまだタグがついたままのコートの襟元だった。
あぁ、まぬけな男だ……
「ひよこ」「TV」「紅茶」
69 :
「ひよこ」「TV」「紅茶」:03/09/28 20:45
うららかな春の陽射しが差し込む部屋、のはずが今日はあいにくの雨。
出かける気にもなれず、私は紅茶を飲みながらTVを見ていた。
ふと視線をドアのほうへ向けるとひよこが一羽。
雨に濡れて小さな体から水を滴らせている。
寒さにひよこはブルッと体を震わせる。
「ほら、おいで」
手招きをするとひよこは私のひざに乗る。
「プリン買ってきたんだ」
「ありがとう。でもその黄色いセーターはどうかと思うよ」
ひよこはくちばしをとがらせた。
「ノート」「オムライス」「廊下」
70 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/28 20:48
テニスの名門校・青春学園中等部に入学してきた越前リョーマは、アメリカJr.大会4連続優勝の経歴を持つ、テニスの天才少年。
早速テニス部に入部したリョーマは、1年生で初めてレギュラー入りをはたし、地区予選に出場することに。数々のアクシデントを乗り越え、青学はついに関東大会への切符を手に入れた。
そして迎えた関東大会。青学は1回戦で昨年の準優勝校・氷帝学園と対戦。手塚のまさかの敗退、川村の無効試合などで、5試合すべて終了しても決着がつかず第6試合まで及ぶが、リョーマの勝利により青学は見事2回戦進出を決めた。
だがその試合中肩を痛めた手塚は、治療のために九州へ行くことに…。
手塚が旅立った後、より団結力が強まった青学は、強豪・緑山中を下し、ベスト4に進出。念願の全国大会行きを決めた!
http://kumanote.jp/i/member/member_top.php?USER_ID=battleroya
72 :
「ノート」「オムライス」「廊下」:03/09/28 21:10
吉良君は勉強が出来る。のは、いいんだけど。
「英語のノート?……はい、田宮さん」
吉良君が無造作にくれた英語のノートにオムライスの絵が書かれていて、あたしは思わず吹き出してしまった。
「田宮さんってさ、僕のノート見ると絶対に笑うよね」
「だって、オムライスって」
「無茶苦茶食いたかったんだよ」
「あはははっ」
あたしの笑い声に、廊下に居た子も何人か反応しているのがわかった。
恥かしいけど、でも笑いを止めることは出来なかった。
「そんなにおかしいかな?」
「あははっ……ごめんね。そんなに食べたかったら、今度作ってきてあげようか?」
「あそう? じゃあ今はスブタ食べたいからじゃあこれからスブタの絵を描くよ」
「あはははっ……わかったから、もう、もうやめて……」
あたしが笑い転げるのを、吉良君はにこにこと見つめていた。それが妙に嬉しくて、あたしは笑いを止められなかった。
それがあたしが吉良君に、毎日お弁当を作ってくるようになった理由だった。
次は「水虫」「ディスク」「医者」で
まだ冬の寒さが残る3月下旬、僕が学校に登校してみると、階段を上がってすぐの廊下に、
ついさっきできたと言わんばかりにほくほくと湯気をたてたオムライスが、真新しい真っ白な皿に乗ってちょこんと
置いてあった。僕は一瞬、この非現実的な光景を前にして、文字通り固まってしまった。
現実的に考えて、学校の廊下に出来立て―と思われる―オムライスが皿に乗っかって置いてあるわけがない。
僕はとっさに鞄からノートとペンを取り出して、その光景をスケッチしようと試みた。
しかし、まだ気が動転しているせいか、僕はその光景を切実に、ありのままに描く事が出来なかった。
そして次の瞬間、オムライスは僕の前からその姿を消した。
僕は、しばし唖然とした後、ノートを鞄にしまって、スライドショーでも見ている気分のまま、教室へと向かった。
僕は教室までの道のりを歩いている間、その廊下を一度も振り返らなかった。ただの一度も振り返らなかった。
「ジャズ」「煙草」「喫茶店」
おお。被ってしまった(笑
「ほぅ、水虫」
目の前の白髭の彼、この辺でも評判の医者はそう言った。
「そうなんですよ」
「なら、ディスクグラインダーで削ってしまえばいい」
にこやかにそう答える彼。私の背中から足先まで、思わず寒気が走った。
「ふむ、嫌か。ならバーナーで焼けば菌は死ぬが?」
やはり表情は変わらない。むしろ先ほどより目が輝いているように見えた。
「仕様が無い、じゃあこれだな……」
結局、足先には塗り薬。
薬を出しておくから触るな、痒ければ氷を当てろとのこと。
そうして出された飲み薬と塗り薬のおかげか、数週間後には
かゆみはきれいさっぱり収まった。
「言動が普通でないが、何故か直る」との評判でその皮膚科は
今日も行列と、悲鳴が絶えなかった。
次は「然る」「猿」「去る」
然るところに奇術師がいた。大変に腕が良く「奇術界の司祭」と異名
を取るほどだった。ある時皇帝が奇術師の有名を耳にし、隠者に化けて
彼の元へ赴いた。
奇術師と共に世界を渡り歩く女性がいる。彼女は悪魔の女司祭長と呼
ばれ、男の恋人にして唯一の相棒だった。隠者は魔女の美しさに身分を
忘れて結婚を迫った。
「太陽の審判をお受けください。月と星と共に答えは出ます」
そして隠者は塔の頂上から吊るされた。皇帝は運命の輪を足にくくり、
死を頭の下に置いて夜をひたすらに待った。太陽が天高い塔の頂上に
来て吊るされた男の縄に火をつけようと近づく。
「ああ!太陽よ!お前に正義があるならばもっと力を節制しておくれ」
「ならん、お前はここで果てるのだ」
かくして愚者は砕けた。今や女帝となったその妻は、皇帝の破片を猿の
剥製へと塗りつけ、まもなく奇術師とその恋人を呼びつけた。
「見事であった。褒美の品は何が良いかな」
「では次の舞台へと去る前に戦車でこの相棒を轢いてご覧に入れましょう」
「ほう。ならば戦車を用意させよう」
次は「竜巻」「先頭」「爆弾」で。
僕の名は星野晃。
数日前から、世界中で空から爆弾が降るという事件が起きていた。
その爆弾が爆発した後には放射能を含んだ強力な竜巻が発生した。
誰の仕業かもどんな仕組みなのかもまったく分からなかった。
そんなある日、僕の家の庭に爆弾ではないおかしな物体が墜落した。
そのおかしな物体は…銀河パトロール隊の宇宙船だったんだ。
乗っていたパトロール隊員は僕に不思議なブレスレットを渡し、
なんと地球人の先頭に立って宇宙海賊と戦ってくれと言うんだ!
びっくりする間もなくそれっぽい奴が攻めてきた!
なんとも急な話だけど…いっちょやるか!
新番組『銀河戦士アステリオン』 第一話「アステリオン誕生」
星の力でアストラルチェンジ!
次は「翼」「雲」「龍」で。
79 :
「翼」「雲」「龍」:03/09/29 12:32
強い陽射しの午前、男が公園のベンチに腰掛け、煙草を燻している。
どうやら、あまり仕事ができないようである。
「ああ、今日も一日どうやって過ごすか・・・」と呟く。
ふと空を見上げると、入道雲が横たわっている。
すると、雲の間からするすると糸屑みたいなゴミがするすると落ちてくるのが見える。
(なんだろう)と訝しく思いながらも男はゴミを見詰め続ける。
落ち続けているのはゴミではなかった。それは、クネクネと身を捩りながら降りてくる「龍」であった。
龍は男の前に降り立った。すると龍は言った。
「よう。暇そうだな。どうだい、私のように空を飛んでみたくないか?私が翼をあたえよう」
「と、飛びたい。飛んでみたい!」と男は訴えた。「よろしい。ではあのビルの屋上にいきなさい」
男は屋上に立った。龍は「翼は与えた。さあ飛びなさい」と言う。
男は震えながらも、屋上から飛び降りた。すると、龍の言う通り、男は自由に空を飛びまわることが出来た。
そのまま雲の中に入っていって戻らなかった。
ビルの下に、頭蓋骨が真ん中からパッカリ割れた男の体が横たわっていた。
「犬」「パソコン」「老人」
80 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/29 13:20
飼い犬のタロウが死んでしまったので、老人は一人ぼっちになった。
妻は5年前に死んだ。息子が一人いたのだが些細なことで勘当した。それ以来音信不通だ。
老人はふと思いつき、パソコンを使ってタロウとの思いでを綴ったホームページを作った。
最初は2,3人ほどしか訪れてくれなかったがそのうち50人ほどの人が見てくれるようになった。
掲示板などで意見を交わしていると淋しさがまぎれた。作ってよかった、と老人は思った。
その日の深夜、眠っていた老人の枕もとにタロウが立っていた。「タロウ!」老人は驚いて
飛び起きた。「一体……これは……」頭を撫でてやるとタロウは目を細めた。
その瞬間タロウと老人はふわりと浮いた。あっという間に空高く舞いあがった。
老人の目に足元のちっちゃな自宅を見た。「タロウ、どこまでいくんだい?」
タロウは返事をせず、老人を天へ天へと導いていった。
その頃、老人宛に1通のEメールが到着していた。
「あなたは私の父親ではないでしょうか?15年前にあなたに勘当されました。
お元気でしょうか。ずっとずっと会いたかったです。どうか返事をください」
「パスワード」「軟膏」「学習」
そこは僕が毎週通っている学習塾の一室だった。
気がついたときには既にその部屋にある机に突っ伏していた。
何故、自分がこんなところにいるのか分からない。これより前の事はまるで覚えていないのだ。
僕はこんなところで何をしているのだ。
その部屋には時刻を知らせるようなものは何一つなかったため、僕には
時刻の大体の予想すら分からなかった。
とにかく、こんなところにいても仕方がない。とりあえず自宅に帰らなければ。
僕は部屋のドアノブを回した。がちゃがちゃ、という、まるで囚人が無理に手錠を外そうとするような、
不吉な音が部屋中に響き渡った。
しかし、いくら回してもドアは開かなかった。外側から鍵が掛かっているらしい。
僕は急に怖くなって大声をあげてドアを力任せに叩いた。背筋がゾクゾクしている。
しかしどんなに大声をあげてドアを叩いても何も起きなかった。
僕は諦めてドアによりかかった。―その瞬間、ドアの向こう側から、トーンの高い女性の声が聞こえてきた。
「パスワードを、パスワードをどうぞ。」
「パスワード?」僕にはまるでわけがわからなかった。パスワード?
「あの、すいません。パスワードとは、何のことでしょうか?」と僕は尋ねてみた。
「パスワードは軟膏です。な・ん・こ・う。」
僕はますますわけがわからなくなった。何かを象徴しているのだろうか?
「そうですか、じゃあ、パスワードは軟膏ですね?」
「はい。では、どうぞお通りください。」
女の声はそう僕に告げた。僕はためしにドアノブを回してみた。
かちゃ、という気持ちのいい音と共に、ドアが勢いよく開いた。
女の姿はどこにもなかった。僕は狐につままれた気分のまま、家路を急いだ。
次は「レコード」「携帯電話」「辞書」で。
82 :
「レコード」「携帯電話」「辞書」:03/09/29 20:37
妹が使っていた(回していた)レコードを見つけた。
大掃除、押し入れの隅で発見した。
レコードのジャケには「ストリートなんとか」と荒々しい文字で書いてあった。
姉としては一度ぐらい妹の思いでに触れるのも「あり」かと思い「ストリートなんとか」の「なんとか」を調べる為に辞書を探した。
大掃除が面倒で飽きていたのも若干。
結局、辞書は見つからなかった。
その内、辞書を探す事からも外れて久々現れた昔のコミックガンガンを読んだりしてたし、まあ見つかる筈も無かった。
夜になり投げやりな大掃除の後始末が倍面倒に思えた。
携帯電話(DoCoMo)が鳴った。
クダラナイ話を一通りした後、思い出したように「ストリートなんとか」の「なんとか」とは何か?と尋ねた。
妹は「知らないし、それ私のレコードじゃないし」とあっけらかんに言い放ち、携帯が切れた。
しょうがないので、私は辞書を再び探し始めた。
「茶」「白猫」「ボクシング」
83 :
「茶」「白猫」「ボクシング」:03/09/29 21:10
胸の動機が収まらない。鍛えあげた拳を握り締めた。無理やりに指先の震えを止める。
もっと他にいい場所があったのではないか。何度も通りを確認した。
始めはいつでもドキドキして落ち着かないものだ。
しかし、そのうちに不思議と見つけて欲しいという気持ちに襲われる。
隠れている間にぼくはこれまでの事を思い出した。
高校時代、インターハイ決勝で顎を割ってボクシングを諦めたこと。
自暴自棄になっていたぼくをコンパと偽って無理やりにサークルに入れた友人の事を。
今では騙された事にも感謝している。かくれんぼクラブは全国規模のサークルだ。
平穏な生活で再びこんなスリルを味わう事ができるとは。
気配に反応して思わず後ろを振り返った。
茶色の模様の白猫が近くのゴミ箱に座ってぼくを見ている。
安心して首をすくめようとしたぼくの目が追跡者を捕らえた。
「いたぞ!」
どうしようもない絶望感が広がった。
「羽」「兄弟」「病気」
「アンタは病気だよ。」
その慰めの欠片もないような言葉を侮蔑を含んだ笑顔で投げかけられた瞬間、僕はこの男の顔を
ぶん殴って、そのニヤリと笑った口元に覗く歯をすべてへし折ってやりたい衝動に駆られた。
しかし、まわりには多くの人がいる。こいつが近所の喫茶店で話をしようと持ちかけたのも、
ひとつの戦略だったわけだ。この状況では、こいつの胸ぐらを引っつかんで脅かすこともできない。
僕は仕方なく無言でこの男の顔を睨みつけた。
見れば見るほど嫌な顔をしている。人を蹴落として嘲け笑う人間特有の顔だ。
―そして、悲しい事に僕とこいつとは血の繋がった実の兄弟なのだ。
そして弟は僕に向かってさらに追い討ちをかけた。
「兄貴、俺はアンタと違って遥か上空に羽ばたくことのできる羽根を持っているんだよ。
まぁ、アンタは地べたにでも這いつくばって必死に無駄な努力でも続けてな。
それが嫌ならさっき俺の言った条件をのむんだな。」
結局僕は、弟の出した条件を承諾してしまった。
僕は帰り道、店のフロントガラスの前に立って、自分の背中に真っ白な羽根がはえている姿を想像してみた。
しかし、いくら想像してみても、それは今の空虚な自分の姿には到底似合うことはなかった。
「ピアノ」「旋律」「海外」
そんな兄弟がいた。新宿に。高層マンションに住んでる。
男前の独身であった。病気している兄弟とも。兄はうつ病で
弟が分裂病だった。親が心配してた。べらんだからとびおりないかどうか。
まず飛び降りたのは弟のほうだった。それで死んだから兄は深く悲しんだ。
弟に羽があったら死ななかったのに。兄は馬鹿だった。兄はばあさんをマンションに呼び寄せ弟の代わりにした。
おばあさんは創価学会だったから二人で題目あげた。時が過ぎていった。二人は結婚した。
次は「朝鮮人」「撲滅」「運動」
次は「ピアノ」「旋律」「海外」じゃなくて、
「朝鮮人」「撲滅」「運動」です。
87 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/29 21:55
>>86 5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
ピアニストは船のバーで独りピアノを弾く
海外へ旅立つ船の中で旋律のピアノをただひたすら演奏する
誰もがしみ出てくる音楽に耳を傾け、心を酔わせる
しかし誰も彼を見ない、誰独りとしてかれに気づかない
彼のいない船の中、波に揺れるだけのゆりかごの中で
ピアニストは曲を奏でる
次は花火、神社、提灯
俺んちの神社から、花火大会の花火が見えるぞ。
もごもごとそれだけを言って、彼は去っていった。
その時、私にはその言葉の意味が分からなかった。
当日、提灯を持って、顔を真っ赤にした彼が神社で立っているのを見た時、私は悟った。
喧嘩慣れしたガキ大将も、恋には慣れていない事を。
次は「転覆」「眠り」「船」でお願いします。
90 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/29 23:20
「転覆」「眠り」「船」
遠い海で、帆船が難破したらしい。
船底には、奴隷が大勢いたらしい。
報告を聞いても、王は「そうか」としか言えなかった。
大英帝国を維持するために仕方ない犠牲だと、自分に言い聞かせていた。
異国の呪術師が最後にこう言ったらしい。
「海の呪い・水の呪いが王女にあるだろう。それは終生続くだろう」と。
その夜、王は夢を見た。
幾十、幾百もの黒い手が、愛娘を海に引きずり込む夢を・・・
早朝。眠りから覚めた王は、娘の部屋へと急ぐ。それは恐怖の予感だった。
娘の間のドアの前には、既に何人もの近衛兵がいた。
「何でもありません、どうか・・・どうか帰って下さい」
と扉の向こうから哀願するその声が、王女の身にふりかかった事件を暗示していた。
「それっ!」ドアを壊して乱入する近衛兵。
王女はシーツに顔を埋め、海の呪いに号泣するばかりだった。
しかし、昨夜シーツに描いてしまった黄色い世界地図は隠しようがなかった。
※少し下品か(^^;
次のお題は:「モーター」「船」「笹」でお願いしまふ
笹が無茶苦茶はえててどこまで行っても笹だらけで視界がきかない。
そんな中を僕は歩き続けていた。何も言葉が出てこない。疲れていてただ足を前に進めるだけだ。
愛してる。愛してる。遠くに見えるちゃちな漁船。木造じゃないか。回転しているモーターから湯気が出ていて
僕は、触ると熱くて危険だと思ったりした。すでに夜は更けてきていた。
俺が何を書きたいかというと、未来が見えないということだ。主人公はもちろん触ると熱いモーターに触りやけどをする。
死んでいいから動いていたいという話だ。荒らしではないのである。わかる奴はいないだろう。
ほとんど死んで動かない木造の漁船でもモーターがまだ動いているのだ。また川を突き進んで生きたい。いろんな魚を積み込みたい。
推敲もしていない即興の小説でもない駄文で悪いかい?お前ら馬鹿だな。糞。糞だって俺も知ってるけど糞を捨てて明日も仕事をがんばるからよろしく。自己中心的万歳。
のお題は:「化け物」「蕁麻疹」「鳳仙花」でお願いしまふ
はい、交通整理入りますよ。
現在のお題は「転覆」「眠り」「船」を継続です。
>>90は「転覆」が「難破になっているので無効です。
>>91-92は荒らしなので問題外。
荒らしは無視が最適です。皆さん、今しばらくの辛抱です。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍び・・・・・・
酒が足らん奴だなあ
言われるほどまで荒らしてない俺を、荒らし呼ばわりするお前のほうが嵐だよ。
まあ自分でもわかってるだろうけど。お前に交通整理される覚えは無いな。
各権利がある限りは嫌われてても書いていくから。あのさあ。まあ、こんどは気合入れて書くかも知れんぞ
。俺も。もう25だ。この野郎。てめえ。お題とか出さずにこれから勝手に書いていってさ。
時間があったら、批評してやるから。スルーするのにも嫌ーな思いしながらスルーするような批評をさあ。
お前の交通整理能力は無視することが限界ですか?はははははははっははっは
なにが交通整理入りますだばか。交通整理できませんから無視するしかありませんだろ。うんこちゃん
転覆」「眠り」「船」を継続だな。わかったよ。了解。
眠り狂四郎、船で転覆トリオに出会う。
雨が三日も続くと池之端から鯉や鮒が流れ出し三味線掘の市場のあたりに下ってくる。
「おーい、網をかけるぞー」
その声を聞くと、漁を休んでいたおとなたちは昼の浅い眠りもそこそこに起き出し、四
手の網をかけて鯉を捕る。高橋のあたりはとくに泥が溜まりやすく、船着場のあたりは泥
沼のようになってしまう。汚穢船を漕ぐ太一の父親は、鯉の網を尻目に、まる二日にわた
って何度も隅田川を上下することになるのだ。
泥んこになった父親が帰って来るのを見るたびに、ああ、また今日も鯉を食べるのだな
と太一はげんなりした。太一は泥臭い鯉も父親の姿も嫌いだった。汚穢船で働いているな
どいうのは猟師にもなれない者と決まっている。太一はそんな父の仕事を卑屈に受け止め
ていた。
「太一坊は、ばかだなあ。海に漁に出れば、いつ波に揉まれて船が転覆しちまうかわから
ねえんだぞ? だけどなあ、汚穢船は真っ平な筏のようなものなんだ。どうやっても転覆
なんてしようがねえんだよ? 」
太一は漁に欠員が出ても、滅多に海に出られない父を恥じていた。
ある日、父が三崎まで漁に行くことになり、太一はうれしかった。荒れた海に出かける
頼もしい後ろ姿に太一は満足した。父を見た最後の朝だった。
すみません。
お題を書くのを忘れました。
次は、「印」「ステップ」「都」でお願いします。
100 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/30 03:57
>>97 伸介;「しかし、四郎の野郎はなかなか来ないね」
八波:「なかなかとは言うけれど、どのくらい待ってるのか見当がつかねえよ、俺には」
伸介:「そうだな。つい今しがた着いた気もするし。だが、暇には違いあるまい。石でも積んで遊んでるかい?」
八波:「お前の冗談は趣味が悪くていけねえ」
伸介:「そうかい? 一つ積んでは父のため。二つ積んでは母のため」
八波:「おい、ありゃあ雷蔵じゃねえか?」
伸介:「おっ! そうだ、間違いない。市川雷蔵だよ。まだ、こんなところにいたのか?」
八波:「こうしちゃいられねえ。サインもらってこなけりゃ。俺は大ファンなんだ」
伸介:「待てよ! 俺も逝くよ」
八波:「はあはあ、何とか間に合ったな」
伸介:「いやあ、こんな所で雷蔵に会えるとは」
八波:「ずいぶんと混んでやがるな。おい、本当にこの船に乗ったのか? まさか隣じゃあるまいな」
伸介:「いや、確かに眠り狂四郎はこいつに乗ってるよ。その証拠に、ほら、船が沈み始めてやがら」
八波:「おいおい、本当に傾いてるぞ。眠狂四郎が乗ってるとどうして船が沈むんだ?」
伸介:「南伸介と八波むとし、そいつに四郎を加えてみろ、転覆トリオじゃねえか。わはは」
わはは。スルーしてよし。
101 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/30 04:21
うんこちゃんはおめえだハゲ。
mj必死だな(w
>>100 四「郎」じゃなくて四「朗」だし
「南」じゃなくて「三波」だし
むと「し」じゃなくてむと「志」だし
そもそも八波むと志は脱線トリオだし
>>100 もう一つ。「転覆」トリオじゃなくて「てんぷく」トリオだし。
>>102-103 オサーン、ネタにマジレスカコイイ!!けど、そういうのは感想スレでやってくれ。
「やれやれ、これで第一ステップってところだな。しかし面倒だな」
やる気のない声でそう言うと、彼は手に持っている地図に印をつけ、タバコを一本咥えた。
その手に持つ地図に記してある無数の点は、今回と同じ手口の事件が過去に発生した地点である。
この都市は国の都だけあって事件も多いが、同じ手口の事件が続くことは珍しいことであった。
しかも、数多く事件はおきてるのに解決に結びつくような証拠がひとつもない。
そのため彼は、事件の起きた場所を一つ一つ調べなおすという作業を行っていた。
一服しようと懐からライターを取り出し、タバコに火をつけ、空に向かって煙を吐く。
気持ちよく一服していると、突然、連絡が入り休憩の邪魔をする。
彼は、自分がこんな面倒な職業を選んだことをいまさらながら後悔しながら
連絡にあった場所へタバコを咥えたまま渋々歩き出した。
「学生服」「ペットボトル」「扇風機」で
ペットボトルと壊れた扇風機をリサイクルすると
ほら。こんなに立派な学生服が。
「歯茎」 「雨」 「こんにゃく」
ちと感想書かせていただきやす
89スゲー良かったよ
えらそーに書いて申し訳ないが、マジで良かった
109 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/30 15:36
天然水っていえば湧き水だと思っているかもしれない。
だけど、雨水だって立派な天然水だ。
それをボトルにつめて純天然水100%で売ろうが、何の問題もないはずだ。
ましてその水で、お茶や豆腐や食パン、はたまたこんにゃくまで作って、純天然水100%のラベルで売っても、やはり問題は無い。
ところが、最近になって苦情が殺到してきた。
曰く、おたくの食品を食べていたら、体中に発疹がでた。貧血になった。具合が悪い。歯茎から血が出た。
専門家に見てもらったら、ダイオキシンだのなんだのと、いろいろ有害物質が出てきたらしい。
すべては雨水を使用しているせいだ、社員の誰かがそうマスコミにリークし、世間がヒステリックに騒ぎ出した時点で、俺は正直に雨水を使っていることをテレピで告白して、さらに言った。
「まあ雨水の汚染ってのは、つまり大気の汚染でしょう? それは人々が便利さと引き換えにした様様な問題が絡んでいるわけで
それはつまり我々人間の社会全体の問題というわけで、そこまでわが社では責任はもてませんな」
「なにをつまらないイイワケをしているザマス!!!」
いきなり同席していたゲストのババアがわめきたてた。
ナントカ環境保護団体とナントカ消費者団体の理事を兼任する、太った厚化粧のババアだ。
「天然水使用だの健康食品だと銘打っておきながら・・・・・・」
「だれも健康食品だなんて一言も銘打ってませんよ。わが社の商品のどこに、そんなことが書いてありますか?」
ババアは静まり返った。
俺を糾弾しようとしていたマスコミ関係者たちも、そういえば・・・・・・と顔を見合わせている。
「当方、広告に偽りはありません。お客様の健康に関しても、まったく責任を取る立場にはないわけですな」
重々しく俺は言ってやった。
正義は勝つ!!!
一生懸命書いたのは分かるが、お題は出してくれよ
111 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/30 19:19
「タンパク質」「最終」「撃墜」
112 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/30 22:31
遠き過去、早漏で淡白質な自分が奔放で浮気質な彼女を留めるに打った最終手段、中出し、撃墜。先日孫が出来ました。
113 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/30 22:32
微塵、歴史、泉水。
114 :
「タンパク質」「最終」「撃墜」:03/09/30 22:48
辞表を提出したその足で、俊郎は海へ向かった。
海岸沿いの県道を愛車で爆走する。助手席の窓を開け、社長が
首を出した。俊郎の辞表を引き裂いて、空に向かって放り上げる。
真夜中の日本海に、紙吹雪が舞った。
海風で乱れる長髪を押さえつけながら、社長が俊郎に尋ねた。
「それで、俊くんは私をどこへ連れていく気かね」
「俊くんは勘弁して下さいよ、気持ち悪い。だいたい社長、僕が車に
乗る前から助手席に座ってたじゃないですか。どうやって鍵を
開けたんですか?」
「そんな犯罪めいた話はよそうじゃないか。まったく君は怒りっぽいな。
タンパク質を摂りたまえ、タンパク質を」
「それを言うならカルシウムじゃないスか」
目的地に到着した。車を降り、素足になって波打ち際を歩いていく。
波と砂の感触が足に心地よい。遠くに瞬く漁船の灯りをしばし眺めて
やがて目をつぶる。遅れてやって来た社長が、俊郎の肩にそっと手を置く。
「明日からさっそく職探しだな、俊郎くん」
「いや社長、さっき辞表を破って捨てたでしょ。やめたらイカンって
メッセージじゃなかったんですか?」
「いやいやいや。俊郎くんも男なら、万難を排して荒海に漕ぎ出したまえ。
そう、あの船のように!」
ビッと指さした漁船の影が、ふいに大きく輝いた。忽然と現れた氷山に
激突して、真っ二つになった船体が火の粉を巻き上げ海に没していく。
「船が!俊くんの船が沈んじゃう!おのれB29め、この手で撃墜してくれる!」
「社長、あれ飛行機じゃなくて氷山すよー。しゃーちょー」
竹ヤリ片手に沖へ突進する社長と、それを追う俊郎。
二人の人生の最終便が、月夜の荒海に漕ぎ出でた。
115 :
「タンパク質」「最終」「撃墜」:03/09/30 22:48
ありゃ、かぶった、のかな?
とりあえず、次は「ロボット」「麻雀」「教室」で。
116 :
「ロボット」「麻雀」「教室」:03/10/01 00:24
その雀荘はロボットばかりだった。俺は雀荘の中をちらっと見て、入るのをやめた。
ロボットと麻雀してもつまらないからだ。
奴らはマナーがなってない。ダマテン一発消し降りなんでもありだ。
しかも顔色が変わらないもんだからやりにくくてしかたない。
交差点に捕まっている間に一服しながら、雀荘の看板を見る。
最近めっきり人間オンリーの雀荘も減っちまったな。
いや、そもそも街を歩く人間の数が減ってきていた。
最近のロボットはよく出来たもんでぱっと見ほとんど人間と区別つかないが、やつらのとって付けたような歩き方は注意すればわかる。
俺はそれどころか、会社の近所の話し方教室に入っていくロボットさえ見かけたことがあった。馬鹿か?
信号が青に変わる。目の前のロボット屋には『ついに登場! セックス可能な高性能機』という張り紙があった。
なんでも中に操縦者の卵子か精子を入れておくんだそうだ。
皮膚感覚は尻から伸びた光ファイバーを通して操縦者に伝えられる。
「糞野郎どもが」
俺はこの街が嫌いだった。
だがどうせ郊外に出たところでこの街以上に、年を取らないロボットで溢れているのは間違いがなかった。
次は「配線」「ミス」「電車」で
117 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/01 01:39
先日、電車が突然緊急停止した事件があった。調べてみると電気系統の配線に明らかなミスが見つかった。
電車の整備士が逮捕された。その部門の担当がこの男だったのだ。
「おい!電車を意図的に停めようとしたんだろ?なぜだ。答えろ!」
「ちがうんです!わざとじゃないんです。本当です!信じてください!」
「わざとじゃない?じゃあ本当に軽いミスだったってのか?」
「はい。昔から知らない内に間違えたことをしてることがよくあるんです。その時は
まったく気付きません。大事なことに限ってそうなんです。自分では完璧のつもりなんです」
「なんだか都合のいい話だな」と刑事は言ってせせら笑った。男は下を向いて黙っている。
その時、刑事の同僚が慌てて入ってきた。「おい!こいつの前職を見てみろ!」
刑事は差し出された1枚の紙に目を落とした。「な……」
そこには原発職員、飛行機整備士、バスの運転手などの職業が書かれていた。
刑事は尋ねた。「おまえ、まさかこれらの仕事をしている時にもなにかミスをしたのか?」
男はしばらくしかめっ面で考えた後、こう言った。「いやあ、それが全く覚えてないんです」
「天ぷら」「水」「すずめ」
お七の母親の八百屋お福は、お七を身篭っていたときに本所深川で火事に遭った。妊婦
が火事を見たり、葬式を見送るというのは忌み嫌われていたため、生まれ年の丙午と重な
って、お七はたいそう不吉な女児として因果を含まれていた。
「お七とやら、そちは今年、十四になるのじゃな? 」
奉行は、火盗改め方に挟まれて濡れねずみのように震えているお七にたずねた。夜桜を
散りばめた大振袖の片方はちぎれていた。
「して、そちはてんぷらの火を誤って袂に貰い、それが障子に飛び火したというのは真で
あるか」
振袖の背中のふくらすずめの帯は半ば解け、黒く焦げて垂れ下がっていた。お七は数え
年で十七、火付けという大罪を犯して火あぶりの刑に処せられるぎりぎりの年であった。
お七の一途な恋心を不憫に思った奉行は、せめて死罪を免れさせようとして、わざと
「"じゅうし"になるのじゃな」と、念を押したのだった。
「いいえ、お奉行さま、私は丙午の生まれ、今年で十七になりました」
お七は、火消しの水ですぶ濡れになった顔をあげ、何かを振り払うように答えた。
間もなく鈴が森の刑場に運ばれたお七は、炎の中でその短い生涯を閉じたのである。
次は「技巧/オルゴール/床」でお願いします。
「おかえり、父ちゃん」
ドサと音を立てて大きな茶色掛かった座布団のようなものが運ばれてきた。
「ふう、結構な重労働だぜ」
そういうと、頭を振り汗を弾き飛ばした。
軽く労いの言葉をかけられると、またいつものように夫婦での他愛もない話が始まった。
チュン介の両親は仲睦まじい事で近所でも評判になっている程だ。
従ってこの会話は後、子一時間は続くのである。
堪りかねたチュン介が話に割り込んだ。
「ねえねえ、父ちゃん。」
「これはなあに?」
「これかい?これはてんぷらって言うんだ。」
チュン介はまじまじと茶色のモノに見入っている。
嘴で突付いてみるが、これといって変わった反応は示さない。
――きっと生物の類ではないのだ。
そう思うと、チュン介の行動は大胆になっていく。
父親は微笑んで見つめている。
しかし、この「天ぷら」というものが食べ物であることを教えようとはしない。
全てを教えてしまう事が教育にはつながらない事がわかっているからだ。
「父ちゃんこれ美味しいよ」
真ん中が破けたてんぷらの上でチュン介は驚いている。
「コラ、食べ物のうえに乗るんじゃありません。」
チュン介は首をすくめ、無い筈の舌を出す仕草をした。
人間の真似である。
子供時分には誰もがする遊びだ。
しかし、大きくなるにつれ、人間に捕らえられていく仲間達と、
それでも共存しなければならないジレンマのうちに彼らは成長してゆく。
夫婦は互いに微笑みながら息子の成長を喜んでいる。
――外には雨がぽつぽつと降り始めていた。
>>119 先に書いてしまってすみません(^^*ゞ
お題も決めてくださっていいですよ>119さん
いえいえ、お気になさらずに。^^;
と、言う事で次は
>>118さんのお題「技巧/オルゴール/床」でおながいします。
(っていうか、お題・・・入ってますよね?)
早起きなんですね>119さん
(わたしはずっと起きてましたけど(笑))
あ、直接「水・すずめ」の語句は使ってなかったです。)汗
申し訳ない。
>>119はスルーして下さい。
スレ汚してしまって、すみません。
(
>>119)
(すずめの親子、かわいかったですよん)
126 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/01 07:02
床にオルゴールが転がっている。
見事な技巧がこらしてあるそれは、先日、交通事故であっけなく
逝ってしまった彼氏からの誕生日プレゼントだった。
拾って蓋をあける、すると彼の好きだった曲が流れてくる。
故・坂本九さんの『上を向いて歩こう』だ。
そういえば、一度、彼に何でこの曲が好きか聞いたことがあった。
「んー。だってさ、上向いてたらほんとにいいことありそうじゃん。そう思わない?」
と、彼は私の好きな笑顔で言っていた。
曲の1フレーズを口ずさんでみる。
『上をむいて歩こう 涙が こぼれないように』
私は天井を見上げた。しかし、効果はなく、涙はボロボロ零れ落ちてしまう。
「いいことなんて何もないじゃない。バカ」
そう上を向いて言うと少しは楽になった気がした。
上を向いて愚痴るのが癖になる。なんとなくそう思った。
次は「機関銃」「薔薇」「風」で
朝、起きると隠しておいた機関銃がなくなっていた。
どうせ母親の仕業だろう。いつものことだ。隠し場所を工夫したつもりでも
すぐ見つかってしまう。ただ、いつもと違うところは探しても見つからないという点だ。
まいった。俺は機関銃がないと落ち着かない。もう病的ともいえるほどアレを溺愛している。
あの光沢、何者にも劣らない力強さ。誰もいない空き地でアレを連射した時
の爽快感。たまらない。全くもってアレが無くなるなんて俺には我慢ならない。
しかし、ない。
いつもの台所の床の下を探してみたが、見つからない。どこだ。どこに隠したんだろう。
母親が起きてから、アレを見つけ仕事に出掛けるまでたいした時間はなかった。
だから、絶対に家の中にあるはずだ。台所の窓が、がたがたと鳴る。台風がきているらしい。
俺の不安を助長させる。
家中くまなく探したが、見つかる気配すらなかった。絶望だ。まさか、あの短時間で廃棄したのか。
前々から捨てろ、捨てろと口煩く言ってきたが、まさか!本当に捨てたのか!しかし、分かってい
るはずだ、俺はアレがないと生きられないという事を!俺は興奮して家の中をひっくり返す
様にまた、探した。ない!ない!ない!涙がでてきた。もう、だめだ。アレがない。今回は本当にゴミにだした様だ。
チャイムが鳴った。不機嫌にドアを開けると、宅配便だった。散らばった様々な物に驚く配達者。大きい荷物。中身。
真っ赤な機関銃だった。月並みな言い方をすれば、バラのような。手紙。読むと、ーお誕生日おめでとう 母と父よりー
俺は泣いた。そして、自分が許せなくなった。そうだったのか。そういう事だったのか。
誕生日そして俺は、20歳、今日から正式に機関銃を持てる歳なんだ。すっかり忘れてた。赤はあまり好みじゃないが、まぁいい。本当に嬉しい。
俺は両親に感謝しつつ、家をかたずけ始めた。
誕生日
忘れてた。
次は、「テレビ」、「カーテン」、「テロリスト」
踊り場からさらに登っていくと、屋根裏部屋のドアを囲むアーチ型の飾りが見える。保
品はその少女趣味を見てふっと笑い、ノブを回して中に入った。
――ここが俺の部屋か……。いかにも女が描きそうなしょうもない夢殿だな。
壁際に置かれたシングルベッドの上にボストンバッグを置いて窓際まで進んだとき、庭に
止めた車の向こうに人影がよぎった気がした。保品は反射的に白いフリルのカーテンを閉
めた。
――まずはカーテン作りからだな。明日、この分厚いベッドカバーでカーテンを作ろう。
保品はベッドカバーの厚みを手で確かめてから、ベッド脇にある白木の椅子の上に丸めて
置いた。電気ストーブのスイッチを入れ、テレビのリモコンを探した。つけてみると、フ
セイン政権の残党による国連施設の爆破事件のニュースが流れていた。彼らテロリストた
ちと、ヒットマンと呼ばれる保品の背負っている宿命は同じだ。死というものを介してし
かその存在を語られることはない。
――山の中とはいえ、テレビの受信状態はそれほど悪くなさそうだ。
今日から春の雪溶けの頃まで、保品はこの登別の別荘である仕事の準備をしなくてはな
らない。電話のケーブルの状態を見るために保品は一階に下りて行った。階段を降りきっ
て地下室のドアを探していたそのとき、別荘の電話が甲高く鳴った。
次は、「蔵書/呼吸/花嫁」でお願いします。
凄い。みるだに凄絶だと思ってしまう。
壁、壁、壁に埋まるように揃えられたのは数々の彼のコレクションだった。
吹き抜けのホールいっぱいのそれが囲むのは、中央の螺旋階段。
それらを手に取るために造られた階段は、DNAにも似た羅列を想起させる。
その高さは天まで届くほど、そんな表現も決して過剰じゃない。
「どうよ?」
「すげえな。これだけ集めて、何やってるんだ?」
「そりゃあ、アレだよ。集めて、眺めて、悦に入る。ああ、俺のコレクションたち」
そう言った奴の表情はまさに法悦のそれ。正直な話、信じられない。
蒐集という類の感覚は俺には解らないが、こいつがこれだけ金と手間をかけて
集めたんだ、それは蔑まれるより寧ろ、認められてしかるべきではないか、と思う。
収集家といえば本を集めていた奴がいたな、と思った。調度こんな感じの吹き抜けに、
いっぱいの蔵書。比較してしまえば、今のこれは随分と程度が落ちるんだろうな。
そいつのほうを振り向くと、呼吸というより蠕動に近いハァハァ。こいつ、やばい。
「こいつは、特に最高傑作なんだぜ」
と、言ってウエディングドレスを着せた、花嫁を模したと思われるフィギュアを指差した。
一階の、入り口から最もよく見える位置のガラスケースに飾られている。
金持ちの考えることはよく解らなかった。
次のお題
「看護婦」「看護士」「看護師」
最近、どうも女優位の社会になっている気がする。
看護婦が看護士だか看護師だかになって名前が統一されたりするのはまだいい、それは普通だ。
男女で職の名前が違うっていうのはおかしいからな、うん。
でもな、女性専用車両ってのはなんだ?
痴漢されたくない女性の為に造られた?
おかしいだろ。それなら男性専用車両も造れって言うんだよ。
それなのに、男性は普通車両で乗れっての、おかしいだろ。
まぁ、今ではこんな事を言う人は居ないんだがな…。
朝6時。
彼は、今や男性専用車両となってしまった普通車両に乗り遅れた。
次の車両までは、あと2時間。
何せ、普通車両は2両、それ以外は全て女性専用車両なのだから……。
次のお題「花火」「打ち上がった」「花火大会」
132 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/01 21:01
あちこちで花火がいくつも打ち上げられた。
国中が花火大会みたいなありさまだ。
とうとう、ついに、革命が成ったのだ。
古代ローマ帝国の暴君ネロにも例えられた、かつての大統領はもう墓場の中だ。
誰もが手を取り合い、歓喜し、歌い、騒ぎ、この国の明るい未来に思いをはせた。
「あの人なら、きっと俺達のためにいい政治をしてくれるさ!!!」
その男は、大統領の椅子に深々と座してながら、煙草をくゆらしていた。
民衆の支持を集め、革命を実行し、成功に導いた男だ。権力の最高位に上り詰めながら、その表情はどこか浮かない。
「いかがなさいました、大統領?」
おもむろに側近が尋ねた。
「私は、かつてはその日の生活費にさえ困っていた学生だった」
「ハア・・・・・・」
「特に才能や学識があるわけでもない、それが、いまや運だけで大統領の地位にいる。なあ、こうは思わないか。俺にできることは他の奴等にもできる。
誰でも運さえあれば誰でも俺にとって代わることができる・・・・・・」
「だ、大統領!?」
側近が粛清されたのは、次の日のことだった。
それが、国民の八割が粛清された、血の一週間の始まりであった。
133 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/01 21:02
あ、まちげえた。
お題継続(TT
虫の羽音と、多くの人々の途絶えることのないざわめきがつくり出した不協和音が、
僕の耳に不愉快な感覚を与えた。
空を見上げると、いくつもの打ち上がった花火が夜の闇に蔓延んでいる。
僕は身体中から吹きあがる汗を首にかけたタオルで拭いながら、
形の悪い、見るからに不味そうなたこ焼きを焼きつづけた。
もう、永遠と言ってもらわなければ慰めがつかないくらいに、長い時間この作業を続けている。
しかし、僕が、まだ十分に焼きあがっていないたこ焼きに手荒くソースをかけて、パックに詰めるという作業を
続けようと手を伸ばした瞬間、ひとりの男が、急に屋台の中に入り込んできて、僕の横に置いてある
かごの中に入った売上金をかごごと掴むと、終始無言で、まわりの人間を蹴散らしながら走り去って行ってしまった。
僕は唖然としながらその犯行を眺めていた。男が走り去ってしまったあとも、
僕は追いかけることも怒鳴り声をあげることもせずに、呆然としながらその場に立ち尽くしていた。
しばらくして、僕は椅子に座って、ポケットから煙草とライターを取り出した。
そして火をつけ、ゆっくりと煙を吸込み、吐き出した。
まわりの人間達はみな僕を見ながら、口々に勝手な事を言っている。
僕は煙を吸い込みながら、このくだらない花火大会が終るのを待ちつづけた。
「電池」「学校」「パンダ」
あれ、
>>133さんが間違えたということは、ぼくのお題でいいのかな・・
書いてしまったので・・・。お題は
>>134さんのでよろ。
幼少のころ、大きな花火大会のあと花火師達が行う打ち上げに連れて行かれたことがある。
普段から威勢のいい丈夫たちだったが、輪を掛けて逸っていた。
そのあまりに酷い騒がしさに、幼心に二度と来たくないと誓ったほどだった。
同時に、こんな所に平気でいることができる父親が理解できなかった。
父は全くの下戸であったし、その上寡黙であったから
騒ぎの中には入らず、ただずっと座っていた。
――嫌ならこなければいいのに
しかし、父は何も言わなかった。
私は次の年から行く事に駄々をこね、結局父の死後まで参加することはなかった。
しがらみを嫌い学業のため上京したが、そこで待っていたのもしがらみだった。
先輩の命令一つで脱ぎ、踊る。
――結局、同じじゃないか。
花火師だった父親が死んだ。
大学も留年しており、働こうにも職の当てもなかった私は故郷に戻る事になった。
まだ大学出などいなかった田舎では、たとえ中退であろうが尊敬の目で見られることとなった。
花火師達も若い血が入ると言う事で皆喜び、祝いの席を設ける事になった。
彼らは素直に喜んでくれていた。
父の花火師としての腕は皆一目置いていた。私はその息子なのだ。
こうして私の花火師としての生活が始まった。
しかし、父に反発し花火など一度も作らずに学府に逃げ込んだ私が作れるはずはなかった。
結局、向こうで私が得たものは、脳の中に役に立たない小さな書斎を作っただけだった。
その為、前からよく家に出入りしていた老花火師がついてくれることになった。
彼は父について多くを語ってくれた。
――この町に父が来た時の事。
――素人だった父に花火を教えたときの事。
――父が語った花火への思い。
父は伝統という惰性に任せて生きていたわけではなかった。
いや、此処にすむ花火師達すべてもそうではないのだ。
血を絶やさぬ事ではない。
技術を後世に伝えるためにではない。
答えはまだわからない。
聞いてもきっと答えてくれないだろう。
――だが、あせる事はない。
花火師としての私は打ち上がったばかりなのだ。
スマンです・・
膝下に下ろされたズボンの端に、イモリが顔を覗かせている。
お腹が痛い。ここは、東棟のトイレの個室だ。
「うう…、昼の揚げパンだろうか?」
水の滴る音が遠くに聞こえる。僕は座ったまま腹を抱えた。
魔法学校の第二学士に進んでから、僕は全くツイていない。
ジェイミーには学期早々に振られ、今日は仕込んだ電池が外れて、
飛行機が空中分解した。先生からは大目玉を食らい、おかげで僕はクラスの笑い者だ。
舌打ちをすると、スイッチの音がした。辺りが暗くなる。クスクス笑いと共に
駆けるように去る複数の足音。やられた。ヤツらだ。胃が軋むように痛む。
本当は、食あたりなんかじゃないのかもな。
僕は、指先に力を込めて呪文を唱える。闇の中、光が生まれ、それは蝶となり
旋回しながら僕の頭上で止まった。いつものように、消えない。成功だ。
足元のイモリが拍手をし、僕は得意げに笑う。
いつの間にか腹の痛みは治まっていた。
お題「夕暮」「彼」「はじめから」
そう、はじめから分かっていたことだ。
彼は笑い、そう呟いた。含み笑いで――
「まあ……そう、落ち込むなよ」
分かっていた。こんな言葉に何の意味も篭っていない事は。
「そりゃあ、つらいことだとは思うよ。だけどさあ…対策が不十分だったんじゃないの?」
無為を積み立てる作業。それは恐ろしく非生産的なことだ。
「分かっていたっつーんなら、もうちょっとさ、考えればよかったんじゃねえの?」
「お前に分かってたまるものか…」
彼はまたぼそっと呟いた。力ない細切れ声。生の気配を感じさせないほどに――
「なっ?そりゃあ、つらいのは分かるけどさ…親にエロ本見つけられた位でそんな落ち込むもんじゃないよ」
こんな言葉では、彼を救済することなど出来っこない。しかし、言うほか無いのだ。それ以外、無いのだ。
夕暮時、二つの影が浮いていた――
次は「妊婦/大部屋/セメント」で頼みます。
はじめから、あなたのことがすきでした」
淡い夕暮れ色の紙に紡がれた一文。
僕は異様に胸が高鳴った。
そのストレートな言葉はいかにも彼女らしかったし、何よりもそういってもらえたことは、至福の喜びだった。
「僕も、大好きだった。最初から」
小さく呟くと、物言えぬ彼女も、何時になくうれしそうな様子だ。
「わたしたちつうじあっているのね」
「勿論。僕たちは運命によって定められていたのかもしれない」
普段はめったに口にさえできないような、歯がゆい台詞も彼女の前ではすんなりと言葉にできた。
彼女は定められた人だ。
僕はそう確信している。
薄暗い部屋だったが、とても暖かい空気が流れている。
僕は、淡い夕暮れ色の紙に乗せられた十円玉に人差し指を優しく重ねたまま、静かに目を閉じた。
「こっくりさん、こっくりさん、あなたは僕のものだ」
☆女のこっくりさんがいるのかは謎ですが。(そもそも男?)
昔はやったことありますね……。
何にも起きませんでしたけどw
次は「ガラス食器」「広辞苑」「カオス」で。
久々にリロード忘れてました(゜Д゜)
すみません。
お題は140さんの「妊婦/大部屋/セメント」で。
143 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/02 01:39
蟻のアント一家はピクニックに出かけた。
息子のアントンが人間に踏まれそうになったり、妻のアントニーは身重なので
なにかと夫のアントが手伝ってやらねばならない。アントはもうくたくただった。
道端に落ちてた飴玉を家族で舐めている時に言った。
「なあ、ちょっと休憩しないか?父さん少し疲れたよ」アントン・アントニーも了承した。
近くの平地で休憩していると頭上で「よーし!セメント流すべー」との声が聞こえ、
どろどろのセメントが流し込まれてきた。大変だ!飲み込まれてしまう!
アントは大声で叫んだ。「やめろー!子供と妊婦がいるんだ!やめてくれえ!」
アントニーとアントンは震えながら抱き合っている。「おーい!聞こえないのか!」
アントの叫びも空しく一家はセメントに飲みこまれた。
アントは考えていた。咄嗟に近くにあった小さな穴に3匹とも逃げ込んだものの、周りは
セメントで固められている。さて、どうやって脱出しようか。
「子犬」「流血」「もやし」
144 :
「妊婦/大部屋/セメント」:03/10/02 01:42
大家立ち会いの元マンションの壁をぶち抜いてみると、中から妊婦の死体が出てきた。
「曽我警部、出ました!」
科警がやけに弾んだ声で叫ぶ。
「い、一階なのがね、よかったですよ。道路にも面しているし。ここは大部屋にして、こ、コインランドリーにでも」
俺は顔面蒼白の大家に同情した。
無理もない。勝手にセメントで壁の厚みを増やされて中に死体を隠していたわけだから。
「身元わかるもん出てるか?」
「それはこれからですね。でも殺された田上宮子で間違いないでしょう」
「馬鹿野郎。お前が決めんな。さっさと調べろ」
「へいへい」
まあいい。とりあえずこれで調書のウラは取れた。
俺はタバコを吸いに外に出ようとした。
「すいません、警部まだ死体が……」
「はあ?」
俺は科警の指差す方を見た。
それは赤ん坊だった。小さな両手で抱えられるぐらいの赤ん坊の死体が、ひいふうみいよ、とにかく沢山、壊された壁から突き出していた。
俺はあたりに構わずタバコを吸った。そうでもしなけりゃ胸くそ悪くて仕方なかったからだ。
「……田上宮子の子供か?」
「わかりません」
「何にせよ、出生届は出されてなさそうだな」
科警は気味悪そうに法的に生まれてさえいないその子らに一瞥をくれた。
宮子は理想の子じゃないからと子供を殺した。オレはそれを手伝わされた。オレはそれに耐えられなかった。
自白を思い出しながら、俺はまだ壁に埋められている妊婦の死体を睨みつけた。
そいつは何が面白いのか、にやにやとひきつったように笑っていた。
すいません。
次は「子犬」「流血」「もやし」で。
「へえ、・・・いや、違うんでさあ。」
目の前の若い官憲はさっぱり要領を得ないと言うように首をかしげる。
「代われ」
今度は老刑事が目の前に座った。
「一から話してくれねえか。俺も長年刑事ってやつをやってきたがこんな事件は聞いたことがねえ。」
煙草に火をつけ煙と一緒に大きくため息をついた。
「覚えてる事全部話してくれ。別にあんたを逮捕するわけじゃないから心配するこたあねえ。もう一度最初から頼む。」
「へ、へえ・・・。」
逮捕されないと聞いて安心したのか、それまで下げていた顔を上げ男は話し始めた。
「あれはつい三時間、いや、四時間。時間はいい?
――あっしが店の休憩がてらに品川の河川敷にいったんです。
昼でもねえ夕飯の準備にも早いってんで客は誰も来やしないんでさあ。
暇だってんでカカアに店任せてでたんでさ。あっしは八百屋なんでブンガクなんて言葉あこねくり回したようなもの読めやあしやせんで。
――へえ、河川敷にはあっしの他には誰もいやせんでした。
あっしはいつものとおり土手に寝転んだんでさあ。
それから半刻もしないうちにピカドン、ピカドン、と。
ああ、雷様がお怒りになられてる。
空は晴れてるのにってんでえ不思議な事もあるもんだなあと、へえ。
すると今度は耳い劈く様な音でピカドオン、いくら耳の遠いじいさんでもあんなでかい音出しやせんぜ。
へへっ、撃たれてはないでさあ、撃たれてたら今ごろ河川敷で骸骨になってケタケタ笑ってなきゃあなりやせん。
――それで、何が起こったってんで、ガバ、と起きてみるとでっかい子犬がいたんでさあ。
へえ、でっかい子犬です。身の丈六尺はあったんじゃねえかな。
それで二本足で立っている。
顔見るときっと柴犬の類だと思いやした。
柴犬は簪屋のお鶴ちゃんが飼ってるんでピンときたんでさあ。
いいや、嘘じゃありやせん。
いくらあっしが学のない八百屋だからって犬くらい判りやす。
まあ、それであっしは驚いておりやしたが、逃げやしやせんでした。
それどころか近づいていったんで、あっしもその時なぜ近づいたのか判りやせんが。思い切ったことをしたもんです。
四つん這いになって、そろりそろりと近づいていくと、急にその子犬がフスフスといって怒り始めたんでさあ。とはいっても声音も子犬そのものだったんで、危ないとは思わずにそのまま近づいていったんです。
すると奴さん人間様のするように走り出した。あっしの方へです。
器用なもんだなあ、なんて思っておりやしたが、いきなり奴はあっしの顔に蹴りいれてきやがった。
あっしはそのまま水際まで飛ばされたんでさあ。
へえ、その時生まれて初めて流血ってモンをしたんです。
頭にカア、と血が昇って来やしてねえ。
このとおり、あっしはひょろっとしてんで昔からもやし、もやしってあだ名つけられてるほどの男なんで喧嘩の類なんてしたことがない。
だからって子犬に負けたんじゃあ人間様としての面子が立たねえってんで喧嘩が始まったんでさあ。
そこからはあんた等の見たとおり。
あっしに聞くより逃げた奴さんに聞いたほうが早く済むってもんだ。」
次のお題、「スピーカー」「プラグ」「コンセント」
148 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/02 06:49
そいつはケチで有名だった。
いまどき三畳のボロアパートに住んで、バイト代はほとんど貯金。部屋の家具はほとんど粗大ゴミから拾ってきたものだった。
そんなヤツの唯一の趣味は音楽鑑賞。
「いい音だろ、重低音ってヤツだな」
遊びにきていた俺に、ヤツは言った。
「一昨日、川原で不法投棄されてたのを見つけたんだけどさ、このスピーカーは拾いモンだぜ」
そうは思えなかった。
ゴミ同然のそれからは、クラッシックがゆっくりと流れている。だが、それに混じって、重なって流れ続けているこれはなんだ?
最初は雑音だと思った。だけどよく耳を澄ませば・・・・・・。
ぶつぶつと囁くそれは、あきらかに人の声じゃないか!!
「気にするな。どうせ捨てられていたモノだ。少しくらいおかしいのはしょうがないよ」
彼は朗らかにさえ笑っていった。
「いや、少しじゃないだろ、なんかマジでおかしいぞ、コレ」
俺はスピーカーに近づくと、じろじろと調べまわした。
背筋が凍りついた。確かにおかしかった。マジでおかしい。とんでもないことだ。
そのスピーカーにはプラグもコンセントもついていなかったんだ!!!
「千切り」「高速」「沈没」
昨日のことだ。
「魔術に使うのよ〜」などと間延びした言葉と共に、妻が買い物袋から取り出したものは毒草だった。
名を、マンドラゴラという。妻が言うには、雌らしい。
どうやって手に入れるのかは知らないが、オカルト趣味の妻はよくこういった怪しげなものを家に持ち帰る。
20世紀の魔術師がデザインしたタロットだの、儀式用の長剣だの、本物の干し首だの、沈没した大陸の神官服だのと
彼女の怪しげな収集物にこれ以上なく占拠された居間に、新たに物騒な観葉植物が加わろうと加わるまいと、
この絶望的な景観に救いは生ずるまい。既に諦めの境地に達していた私は、彼女が嬉しそうに抱えて頬ずりする植物に
毒さえなかったならば、特に反対もしなかっただろう。
彼女の趣味は無害である。どれだけ怪しげで、この上なく世間体が悪く、ご近所様に犬や猫を生贄にしてるのではないかなどと
あらぬ疑いをかけられようと、妻の趣味はあくまで趣味の範疇にあり、害はない。
しかしこの前、町内の山田さんが不審な死を遂げた事件で警察の立ち入り調査などされてしまったことを考えると、
我が家は相当社会にマークされていると考えるべきである。もし近所で毒物を使った犯罪が起こり、再び調査を受け、
我が家の誇る忌まわしい居間のテレビ台の上に毒性植物がましましているのを警察が見たらどうなるだろうか?
最終的には疑いは晴れるだろう(そうであると願いたい)
だが、潔白の証明までに受ける社会的な傷は甚大だ。マスコミは妻の趣味や私の寛容を異常であると偏狭に断定し、格好の話題とするだろう。
良くて失職程度。悪ければ親族にまで類がおよぶかもしれない。
考えすぎかもしれないが、妻の抱える二本の脚に似た不気味な毒草を見ると、どうにも嫌な予感がしてならない。
だから、今回だけは妻に言ったのだ。
「捨ててきなさい」と
彼女の収集物に正面切って文句を付けたのは、これが初めてだった。
私の反対は予想外だったらしく、瞳を大きく開いて驚いた妻は盛大に駄々をこねた。
非建設的な論戦に四半日を費やした結果、頑として譲らない私に彼女は、明日の燃えるゴミに出すことを約束してくれた。
150 :
「千切り」「高速」「沈没」2/2 :03/10/02 08:57
そして今日、異界的な恐るべき居間から、かの植物は姿を消していた。
私はほっと心をなでおろしてテーブルにつき、朝食をとった。
異常に気がついたのは食事を終えようと言うころだった。
水かさを減らしたみそ汁の中から大根にしては黒過ぎる千切りにされた何かが姿を現し、
心臓は鳴り響く早鐘のように高速回転を始めた。
脂汗が噴き出し、蛙のように全身がぬめる。
私は寒気に襲われ、震える手で箸を置き、見上げた先には愛しい妻の笑顔が。
彼女の肩越しに見える台所のまた板には、ねじくれた脚の片方を失った植物が――
長文失礼しました
次は「触角」「幻想」「羊」でお願いします
151 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/02 09:03
152 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/02 09:37
俺はクジ運がいい。
宝くじだって懸賞だって、愛読者プレゼントだって、面白いくらいにゲットしてきた。
あたり目が、むこうから俺を名指ししているように。
・・・・・・岩のような厳つい顔。隆々たる巨体。見上げるような大男だった。
だが、彼の最たる特徴はもその頭に雄羊の頭蓋骨なんぞを乗せていることだ。
なんなんだ、こいつは。変人か、イカレているのか?
それよりここはどこだ?
たしか自分のベッドで寝ていたはずだが。じゃあコレは夢か、はたまた幻想か。
いや、俺の四肢を束縛する、鉄製の拘束具の痛み。とてもゆめまぼろしとは思えない。
「おめでとう!!」
よく通るバリトンで変人はのたまった。
「な、なんだ、なにがおめでとうなんだ? 何をしようっていうんだ?」
「いやなに。ちょっと邪神召還の生贄になってもらうだけだよ。だいじょうぶ、痛くないよ。ただちょっと他人より早く死ぬだけだから」
「な、なんで俺が!?」
「クジで決めたんだ」
俺はクジ運がいいんだ、いいはずなんだ・・・・・・。
床に描かれた魔方陣から、まるでイソギンチャクのような緑かがった蛍光色の触手が、幾十、幾百とうねり、のたうち、からみあい、俺を飲み込んでいく。
こんなあたり目なんてイヤだあああああああああああああああっ!!!
153 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/02 09:39
「組織」「泥棒」「職務」でどうぞん(^^
154 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/02 14:32
酔いつぶれて駅で寝ていたら変な男が寄ってきてビラを渡された。
「10月12日総決起集会。18:00から。居酒屋『場末』にて」としか書いてないので
何の催しかよくわからない。男は「良かったら来てくれよ、じゃ」と言い去っていった。
少し興味をそそられたので指定の時間にその居酒屋へ行ってみた。中には20人ほどの
中年〜老人がいて、すっかりできあがっているようだ。駅で会った男が俺に気付き
「おおっ!来てくれたのかい」と肩を叩いてきた。「俺は泥棒の源。“ゴッドハンド”と呼んでくれ」
俺が適当に返事をしているとゴッドハンドは「あれが強盗の山田“ハウンドドッグ”保。その隣が
詐欺師の“スカンク”だ」などと客たちを紹介した。なるほどこいつら皆犯罪者なのか。
俺も凶悪な顔してるからな。仲間だと思われても仕方ない。
そのうちにリーダー各の男が「われわれ犯罪組織が一致団結し職務を遂行することが未来への
道を切り開くのである!」と変な演説を始めた。客は総立ちになって喝采を送っている。
ゴッドハンドも「いいぞお」なんて叫んでいる。盛り上がる奴らを尻目に俺は悩んでいた。
いつ警察手帳を見せるかを。
「双眼鏡」「肥満」「脂」
155 :
熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/02 20:42
お父さんが僕の十三歳の誕生日に買ってくれたアイワの双眼鏡。僕はそれに十八になって
オナニーして精子ぶっかけた。二十五のとき隣のマンションそれで覗いて警察に捕まった。
生まれて初めて女の裸見れたと喜んだものさ。いい思い出だなあ。とても懐かしい。あれからもう十五年も経ったのか。
時の経つのは早いものだ。俺にももう三人の孫がいて、会社でも重役中の重役、重鎮と部下にゆわれていて、
「そうさ重鎮さ。俺は生まれてた時から重鎮さ」オー。じゅんチンサンだーサイがーサイコー。合唱がすごかったなあ
あの宴会。思い出の品をもって行こうって俺が言い出して双眼鏡もってってさ、殺すぞ、てめえ、右のレンズはなあ、
薄汚く肥満した池田大作のケツの穴に入れるためにあるんだ。覗くためじゃねえぞ。左のレンズが脂で曇ってたら右のレンズで池田の正体明らかにせい。怪物だよあれはマジで。
次は「マント」「アンコ」「マンコ」
間違って書き込みボタン押してしまいました。。すみません。なかったことに
アンコなマントをマンコにヤットコ捩じ込んだ。
ぎゅっと
「蚤」「口マネ」「スポーツ」
今日は娘の、校外実習の日だ。都会育ちのあの子に田植えがちゃんとできるか、
心配でたまらない。父兄の参加は禁止としおりにはあったのだが、親馬鹿の一心か
ら、双眼鏡片手に見守ることにした。
レンズの向こうでは、娘が肥桶を担いでいる。大丈夫か、肥溜めに落ちたりしない
か、しぶきが跳ねたりしないか。気がつけば、両手に脂汗がにじむほどに双眼鏡を
握り締めていた。
堆肥満載の肥桶を担いだ娘が、よたよたと覚束ない足取りで畦道を歩く。落ちたり
しないか、田んぼの中にガラス瓶が投げ捨てられていたりしないか。心配でならない。
と、ぽんと肩をたたかれた。娘に見入っていた私は思わず飛び上がった。
そこには、見たことのない中年の男が立っていた。
「お互い、親馬鹿ですなぁ」
ビデオカメラを弄びながら微笑む男に、私は極上の笑みを浮かべた。
次のお題は「枕カバー」「歌」「飛行」で。
159 :
猫 ◆20aeV/mQK. :03/10/02 22:08
ある日の夜、俺は男友達と酒を飲んでいた。
時計の針が進むごとに、一人二人と人数が減っていって気づけば俺と俺の親友だけになっていた。
「おー。もーさけねーのかー?なーなー、きいてるのかー?」
親友は、もともとうるさいのだが酒を飲むと余計にうるさくなる。そのことを知ってた俺は、内心かなり焦っていた。
先ほど友人たちがいたときの様子から、こいつが酔ってるのはわかりきっている。
時計は午前1時をさしており、いまこいつに暴走された場合、苦情が来るのは目に見えている。
そのため、俺は酔っ払った奴の言葉など無視して、必死にどうするか考えた。
「ちぇ、無視かよ。面白くねぇなぁ、あ、なら俺、歌っちゃいまーす!いくぜぇ、一番、浪漫飛行」
その瞬間、俺は血の気が引いた。こいつの歌は友人間では最終兵器と呼ばれているくらい酷い。
「やめろ、はやまるな!」と止める俺の声に耳も貸さず、空き缶をマイク代わりに歌いはじめる。
説得が不可能だと悟った俺は、目の前の敵を無力化させるためのものを探す。
『逢いたいとー』ついに歌い始めた。俺の心を絶望が満たしていくなか、ふと床に目線をやるとそこには枕があった。
うちの枕は中に小さいパイプが詰まってるもので結構重い。使える、俺はそう一瞬で判断した。
枕カバーがはずれないようにつかむと、気持ちよく歌っている奴の顎めがけて放った。
枕は一直線に飛んでいき、見事命中。奴は仰向けに倒れていった。
どうやら部屋にあった大きめのクッションの上に倒れたらしく頭などは打ってないようだったが、気を失ってるようだ。
それを確認すると俺は、散らかった部屋を片付け始めた。しばらくすると、奴は寝息を立てはじめたが
その寝顔が俺の苦労とは程遠いほど幸せそうだったので、腹が立った俺は額に『浪漫』と落書きしてやった。
次の日、酒飲んでからの記憶が途中からなくなっていた奴と喧嘩になったのは言うまでもない。
次は「卵焼き」「カップラーメン」「ネクタイ」で
昼のチャイムが鳴ると、先ほどまでの静けさとはうって変わり、職場は雑然とする。
両手を挙げて伸びをする人、ネクタイを緩める人、髪をとかしはじめる女……等。
俺も、持っていた書類をデスクへ投げ、首の凝りをほぐしてから弁当をカバンから出す。
「主任の。卵焼きじゃないんですね」
振り向くと新人の女の子が髪を揺らしながら笑っている。
「あ〜? ああ、まあな」
蓋の開いた弁当箱には、白飯の上に目玉焼きが載せられている。その様子には”堂々とした”
という形容がよく当てはまる。うちの嫁は、こうなのだ。ずぼらというか、なんというか。
昨日は、なんとインスタントラーメンであった。カップラーメンではなく、袋のやつだ。
それが弁当箱に押し込まれている。
白身に箸を刺すと、さっくりと割れた。白飯には醤油が掛かり、少しは工夫が見られる。
俺は頬張りながら笑った。噛み締めると笑みと飯とが混ざり合い、内側から頬が押され妙な感じだ。
――幸福とは、こういうことかもしれないな。
今朝、嫁の中に、新しい命があると判った。
次のお題「美容」「ため息」「白」
今、私はお空の上にいます。真っ白な雲に包まれて、気持ちがいいです。
今日も学校があったけど、あそこにいるとため息しか出ないから……
気付いたら、また、屋上から飛んでここに来てしまいました。
あっ、今飛行機が真下を飛んでます。パンツ見えちゃいますね。でも、いいや。
あー…お空に上にいると、肌が荒れちゃうなぁ。ちゃんとウチに帰ったら美容保湿しなきゃ…
それでは、また。
次は「草の根運動・インターポール・ヴェネチア」で。
良質の麻薬を製造していた通称「マリオの隠し農園」がインターポールに
発見され、そこの主であるマリオが逮捕されて15年。
刑期を終え、ヴェネチアに帰ってきた彼を友人が出迎えた。
「大変だったな、マリオ。これからどうするんだ、また農園を開くのか?」
「いや、あの商売はもう廃業だ。考えたら俺は沢山の若モンを
麻薬漬けにしてきた。これからの人生、真っ当に働きながら、
若い衆に麻薬の恐ろしさを啓蒙していこうかと思うよ」
「お前ほどの男が麻薬についての啓蒙活動か、よく決心したな」
「せめてもの罪滅ぼしだ。よかったらお前も協力してくれねぇか?」
「それは構わないが、どうやって活動していくんだ?問題も多いぞ?
邪魔する奴も少なくないだろうしな。潰されてしまう可能性もある」
「協力者を集めて地道にやっていくよ。草の根運動って奴だ。きっとうまく行くさ」
「大した自信だな。植物を相手にするのとはまた違った話だぞ」
「大丈夫。ここはヴェネチア、水の都だ」
次の御題「電話代」「カレー」「宅配便」でお願いします。
日曜日の昼過ぎに電話が掛かってきた。
ちょうど、僕はここ一週間仕事詰めで疲れた体を癒そうと、気持ち良く昼寝をしている最中だったので、
無視しようかとも思ったが、10コールを数えた時点で、僕は諦めて受話器を取った。
「もしもし」
「もしもし、俺だよ。分かるだろ?」
「あぁ。分かるよ。で、何の用だ?」
彼は受話器の向こうで一呼吸置いた。
「お前、もう昼飯は食っちまったよな?」
「さっき食べたよ。今はちょうど昼寝をしてたところなんだ。君が電話を掛けてくるまではね。」
「そうか。ところで、お前ん家になんか食い物ないか?何でもいいんだ」
食い物と言えば昨日作ったカレーが余っていてちょうど処分に困っていたところだ。
「昨日作ったカレーが少し余ってるよ。それだけだね」
「そうか。実はな、今月いろいろあってさ、今日の昼飯を食うだけの金も財布にないし、冷蔵庫にだってまともな食い物やら材料やらは
何も入ってないんだ。」
「ふうん。取りに来るのかい?」
「いや、それが、今、仕事が忙しくてさ。お前が届けてくれないか?」
僕はウンザリした気分で、受話器を取ってしまった事を後悔した。
「さっきも言ったように僕は君が電話を掛けてくるまで昼寝をしてたんだよ。僕もここ一週間仕事が大変だったんでね。」
「頼むよ。お願いだ。お前、高校のとき宅配便のアルバイトしてたじゃないか。なに、この借りは必ず返すさ。じゃあ、電話代が勿体無いから
切るぞ。頼むな。」
そう言うと彼は僕の返事も聞かずに唐突に電話を切った。
僕は受話器をおろして、軽い溜息をつくと、そのままソファーに寝転んで、瞼を閉じた。
恨むなら勝手に恨めばいいんだ。
僕は薄れゆく意識の中、彼の、軽い怒りを含みながら困惑した顔を想像して、頭の中で軽い溜息をついた。
「メタファー」「腕相撲」「細腕」
166 :
「メタファー」「腕相撲」「細腕」:03/10/04 01:27
それは死と再生と縁のメタファー。契約。もしくは我慢比べの腕相撲。でも真実は、馬鹿ってこと。
あたしは女の子の細腕に、カッターナイフで傷をつけた。
「っ!」
痛みはないようにしてあげてるんだけど、やっぱり人間体を傷つけられるとびくついたりするもんで、その子は思わず手を引いた。
「終わったよ」
ま、それも計算づくなんだけど。
その子の腕には細い紅色の線が刻まれていて、血が玉になって溢れてきていた。
「一日過ぎたら直っちゃうから。その前までに墨を擦り込むの。これ消毒用のアルコールと墨」
その子は真剣な顔でこくんと頷いて、あたしからアルコールと墨を受け取った。
そして先にあたしが傷をつけた男の子と、お互いに傷口に墨を塗り込み始めた。
「ずっと一緒だからね。ずっとだよ」
そんな切ない言葉が、女の子の口から漏れてくる。
あたしはそれをため息まじりに聞いていた。なぜこんな事が流行り始めたのかわからない。
多分、不良の男子と女子が、おそろいの入墨をして問題になったのが元な気がする。
その内カップル同士で墨に浸した針でつついてほくろを作るのが流行り始めて、
それが学校で禁止されてからはカッターナイフになったってわけ。
あたしは中でも上手いと評判だった。
まあ、そりゃね。
あたしは自分の腕をまくりあげる。
そこには今まで付き合ってきた男の数だけの切傷が、黒い線を残していた。
次は「土手」「日記帳」「コルク」で
167 :
「メタファー」「腕相撲」「細腕」:03/10/04 01:28
それは死と再生と縁のメタファー。契約。でも真実は、我慢比べの腕相撲。
あたしは女の子の細腕に、カッターナイフで傷をつけた。
「っ!」
痛みはないようにしてあげてるんだけど、やっぱり人間体を傷つけられるとびくついたりするもんで、その子は思わず手を引いた。
「終わったよ」
ま、それも計算づくなんだけど。
その子の腕には細い紅色の線が刻まれていて、血が玉になって溢れてきていた。
「一日過ぎたら直っちゃうから。その前までに墨を擦り込むの。これ消毒用のアルコールと墨」
その子は真剣な顔でこくんと頷いて、あたしからアルコールと墨を受け取った。
そして先にあたしが傷をつけた男の子と、お互いに傷口に墨を塗り込み始めた。
「ずっと一緒だからね。ずっとだよ」
そんな切ない言葉が、女の子の口から漏れてくる。
あたしはそれをため息まじりに聞いていた。なぜこんな事が流行り始めたのかわからない。
多分、不良の男子と女子が、おそろいの入墨をして問題になったのが元な気がする。
その内カップル同士で墨に浸した針でつついてほくろを作るのが流行り始めて、
それが学校で禁止されてからはカッターナイフになったってわけ。
あたしは中でも上手いと評判だった。
まあ、そりゃね。
あたしは自分の腕をまくりあげる。
そこには今まで付き合ってきた男の数だけの切傷が、黒い線を残していた。
次は「土手」「日記帳」「コルク」で
よく飛ぶと評判のコルクバットで、友人を打ってみた。
広い土手で、十分にフォロースルーをとって打ったのだが、全然足りなかった。
彼は光の速さで空へと消えていったのだ。
そんなことすっかり忘れていたある日……。
家のポストを開けてみると、中に郵便物が入っていた。よく分からないが、外国からのものだ。
包装紙を破ったら、日記帳が現れた。名前欄にはあの日ホームランした友人の名前。
《やあ、お前に飛ばされてしばらく経った。俺は今ロシアにいる。こちらの生活はとても刺激的だ。》
彼は、おれを責めようとはしなかった。そういう文体だった。
最後に、とても印象深い言葉が載っていたので記しておく。
《人は様々なことを学ぶ。たとえそれがどんなに苦しい状況であっても…全てのものに感謝する》
おれは安心した。心底安心した。本当に、あいつを打ってよかったと思った。
だって、あいつから500円を借りていたんだもの――
次は「芸能人・ロマンティック・口髭」で
「芸能人」「ロマンティック」「口髭」
他に客のいないバーのカウンターで、二人の女性がけだるそうに語り合っていた。
グラスを磨いている私の耳に、彼女たちの会話が流れ込んでくる。
「ねえ、自分が芸能人になったような気分になれるのって、人生に何回あるんだろ?」
「んー、よくさぁ、結婚式の時にそう思うって言うけどね」
「そうなのよね。私もさ、普通とは違う形だったけど、そう思ったわよ」
「あー、アンタの結婚式、荒れたもんねー」
「そう、あいつがさ……結婚式に乱入して、私を連れ出してくれたのよね」
「まるで昔の映画みたいだったわよ、アンタたち」
「ええ、これ以上ないくらいロマンティックな瞬間だったわ。
自分が映画やドラマのヒロインになったんじゃないか、って気にすらなったわよ」
恍惚の表情を浮かべていた女性の顔が、一瞬にして曇った。
「でもね……教会を出てキスした時、あいつの口髭がチクチクして痛かったのよ……」
「現実なんて、そんなものさ」という言葉を口には出せず、私はグラスを磨き続けた。
※感想書きの方々、いつもありがとうございます。
次のお題は「豆」「ソファー」「常識」でお願いします。
「常識にとらわれてはいけません。自由な発想でアイデアをだしてください」
私はもはや夢の中にまで聞こえるようになった女性主任の甲高い声に顔を見上げた。
頑張り次第で月収百万円も可能!
バカな広告に騙されて15人もの欲深い人間たちがこの狭いマンションに集められた。
集まる人間は決まって毎回、不思議と同じタイプの生気に乏しい顔ぶれなのだ。
私は今までカモにしてきた人間の顔を一人として覚えていない。
「いいですか、アイデアが採用された人には充分な報酬が約束されるのです。
登録料がたったの5千円、5千円で、ですよ?」
主任に促され、私は熱意溢れる口調で繰り返した。
今までの登録者たちが悲惨な状況からどのように成功したか、私は何度も説明した。
「例えば、ここにソファーと豆があります。凡人はソファーに座り、豆を食べるでしょう。しかし、成功者は違う!」
私は豆を床にばら撒くとその上に胡坐をかき、革張りのソファーをムシャムシャと頬張り始めた。
「そう、見てください。これです!この発想なのです!」
主任の絶叫を聞きながら私は革張りのソファーを更に深く、喉の奥まで詰め込んだ。
鼻水が上唇に溜まり、豆が尻の下で弾ける音がした。
「くらげ」「電気」「回し蹴り」でお願いします。
172 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/04 06:33
クラゲのようにふわふわとアイデンテティーを確立できない
鮮人が性犯罪に走る。ルーシーブラックマンさん殺しの犯人の冷蔵庫には
犬肉が。スタミナつけて性犯罪?電気関連では日本の核開発にいちゃもんを
つけつつ、ユウミリなる小説家が朝日紙上でエロ小説を垂れ流す。
ネギチャリで鮮人をポア(麻原も鮮人?)できれば言う事なし。
しかし、ネギチャリどころか回し蹴りもままならない体がうらめしい。
「北鮮」「朝日」「拉致」でお願いします。
俺が帰宅して彼女の部屋を開けてみると、彼女は本を見ながら眠ってしまったようで
枕もとの電気スタンドには明かりががついたままだった。
我が家には毒を持つものがいる。まず水槽のくらげ。
水槽の中でのんびり漂ってる姿から想像し難いが、くらげには毒があるのだ。
次に目の前で寝ている少女。一度、口を開けば少女とは思えないような毒舌の嵐で
数多くの人間が、その毒に撃沈している。
スタンドの明かりを落とし、彼女を起こさないよう静かに部屋を出て行く。
眠っている姿は綺麗なんだけどなんて思うあたり、どうやら俺も彼女の毒にそうとうやられているようだ。
「旅行」「コスモス」「記憶」で
リロードせずに書き込んじゃいました、申し訳ないです。
次のお題は172さんの「北鮮」「朝日」「拉致」で。
ウサギがいた。
真っ白のうさぎ。どこかで見たような気がする。そうだ、故郷だ。懐かしい。子供の頃、山で見た。
フェンス越しに見えるウサギ小屋。学校だろう。校庭もある。こんな時間だから誰もいない。それにしても広い。
なんとなしに、俺は中に入ってみた。校庭の隅に鉄棒が見える。そこまで歩いた。校庭はこんなにも広かっただろうか
随分遠く感じた。鉄棒。四つ。背が高いものから順にならんでいる。これも懐かしい。どれも錆一つない、設置したばかりなのだろうか。
一番背の低い鉄棒に座ってみた。幼少の頃が思い出される。よく、奴と一緒に鉄棒に座って日がくれるまで話をした。何をそんなに話す
事があったんだろうか。喋った内容はほとんど忘れてしまった。
しかし、ただ一つ憶えている事がある。あれは、俺が親父に叱られて家出をした時だ。奴も家出に付き合ってくれて、結局行く所もないし
学校に行った。いつもの、鉄棒の上。二人。奴が唐突に口を開く。
「俺さ、今度いなくなるから」
いつもの悪ふざけだ思った。
「何言ってるの?お前も親父と喧嘩する予定?」
奴は笑った。でもすぐ真顔になる。
「いや、ホントに。家の親父在日ってやつで、家族皆で北朝鮮に帰るんだって」
子供の俺には在日の意味が理解できなかったが、大変な事だっていうのは分かった。悲しさより驚きが強かった。
「えっ、じゃあお前、日本からいなくなるの?北朝鮮って遠いの?いつまでそこいくの?」
「日本からいなくなるし、遠いし、もう日本には来ない、と思う」
俺は何も言えなくなった。それからは、二人とも何も喋らなかった、と思う。そして、親が捜しにきて解散した。
奴は、今度と言ったが次の日からいなくなった。別れの言葉もなにもなしだ。なぜかは分からないが、俺は泣かなかった。
今なら、分かるような気がする。奴は子供ながらに気が付いていたんだ。日本で在日がどういう扱いを受けていたか。むしろ、自分の弱点のように
思い込んでいたに違いない。その弱点を俺に告白して別れの悲しさと同時に何か悔しさを感じたのかも知れない。
ふと気が付くと世が明けそうそうだった。朝日が綺麗だ。数年溜まったいた涙が一気に溢れてきた。
すいませーん。次は
「氷」 「包丁」 「カップラーメン」で
よく見たら「拉致」が入ってない……
無視の方向でお願いします。
178 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/04 08:24
包丁を氷水に浸しておく。
こだわりとはこういうことだ。
なんでもないようなことだが、これは魚をおろすときに生じる、わずかな摩擦熱で身が痛むのをさえ防ぐ、繊細な技法なのだ。
三枚におろした鯛は、もちろん明石の天然物であることはいうまでもない。
その新鮮な切り身に慎重に包丁を当て、滑るような動きで薄作りに切っていく。
最高級の真鯛の味と香り、舌ざわりに歯ごたえ、それを生かすか殺すか、すべてがこの包丁さばきで決まる。
最後の包丁が引かれた。
俺は会心の笑みを浮かべた。
完璧だ。その水晶のような美しさ。それは、それが最高の素材と技術で作り上げられた芸術であることを示していた。
見ているだけで口の中に唾がわいてたまらない。いますぐ食してしまいたいほどだ。
だが、まで最後の仕上げが残っている。
できあがったばかりの真鯛の薄作りを、俺はきれいに盛り付けていった。
湯気を立てているカップラーメン(激辛エスニック風カレーラーメン)に。
最高級真鯛カップメンの完成です!!!
たかがカップメンの具材ひとつにもここまでこだわる俺ってグ・ル・メ。
え? 鯛が台無し? なに言ってんの。
味覚おかしいんじゃないの?
次は「組み立てる」「足掻く」「噛み締める」
おれは、最後の地球食を噛み締める。ゆっくりと時間をかけて…。
宇宙――すっかり行き易い場所となったそこへ、おれも今日旅立つ。
自分で組み立てた安売りの宇宙船キットで、飛び出す!!
大気圏突破の際に、一瞬意識が飛んでいた。気付いたら、空が、真っ黒い――。
そうか、おれは遂に辿りついたのだ。大宇宙へと。
体がふわふわ浮く。安モンだからかなあ?とりあえず、足掻いてバランスをとってみた。
周りを見渡すと、沢山の衛星と共に大量の宇宙船が見えた。
今、宇宙はおれたちを包み込んでくれている。無限の優しさと厳しさを持って――。
次は「神様」「あられ」「ヤンキー」で
私はお前の神様だ お父さんは私にこう言った
いつも私はお父さんに お前は私が作ったんだ
と言い聞かされた。 そんなお父さんの言葉を聴くと
少し辛いときもあったが それを除けばお父さんは私に
よくしてくれたと思う しかしそんな父に育てられて 私も少しやんちゃになってしまった・・・
ある日 村の中を散歩していたら 前方に
金髪の赤いリボンをした喫茶店の不良娘と
おかしな耳をつけた子供とその兄と思われるヤンキー風味な男の
3人にあった 彼らは私に声をかけてきた
私は不良娘の頭を少し ほんの少しはたくようにして挨拶をしておどけてみせるつもりだった・・・
バキッ ものすごい音がした しまった
そう思ったときには遅かった 私は軽くはたいただけのつもりが
不良娘の首は折れてしまい ブラブラと揺れている
それを見て他の二人も私を恐れるような目でみていた
数日後 裁判が行われることになった
私はただ軽くはたいたつもりなのに・・・ お父さん・・・
あぁ、もう審判の時だ・・・
「えー、では 原告のりまき あられは・・・」
次は「疼き」「暗闇」「暖かい」で
渇く。
この研ぎ澄まされたナイフを見ていると、渇く、疼く。望む。
人の肌に差し込んだ時、あばら骨を通しゆっくりと心臓に差し込む、あの瞬間。
抜く。ゆっくりと。相手が絶命するのを待ち。ナイフを抜く。なんの声もない。人が人じゃなくなる。
待っていたかのように血が流れ落ちる。温かい。暖かい。あたたかい。
また、手入れ。拭う。研ぐ。
もはや、コレを崇拝している自分に気が付く。これを使っている時の自分。本物。
仕事をしている時の自分。闇。暗い。くらい。
そうして、今日も町に出、獲物を探す。
「的」 「溺愛」 「慟哭」
彼は娘に溺愛していた。
ただひたすらに愛した。モラルや常識など、どうでもよかった。
娘は、的にされた。何度も何度も撃ち抜かれた。狂った若者達によって。
彼の中に、慟哭が響いた。そして、心に悪魔が住み着いた。
ただひたすらに殺した。モラルや常識など、どうでもよかった。
次は「唄」「パクリ」「大吟醸」で
183 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/04 10:20
「的」 「溺愛」 「慟哭」
小次郎との死闘以来、武蔵は注目の的だった。
そして、今・・・
武蔵は。故郷での生活が、気に入りだしていた。
腹部の焼ける様な微痛を除いて。
武蔵は。夕食に春菊の煮付けを食していた。
溺愛するお通は、いそいそと布団の支度をしている。
武蔵は。奥歯にひっかかった春菊の茎を、舌で抜こうとしていた。
思うが侭に成らぬ春菊に、思わず爪楊枝に手を伸ばす武蔵。
武蔵は。自分のお通じを、しばし凝視していた。少し黒い。
耐え切れない痛みに、身を屈める、武蔵。
医者は言った。「典型的な神経性胃炎ですな。ここまで酷いのも珍しい」
武蔵は。突如としてこう叫んだ。
「そんなに観察、観察、しないでくれぇぇぇ!」
追い詰められた、慟哭の声だった。
武蔵。敗れたり。
※個人的には又八の方が気になる;
次のお題は:「悠久」「持久」「魔球」でお願いします。
184 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/04 10:24
ごめんなさい、やってしまいました(- -;L
次のお題は、182さんの
「唄」「パクリ」「大吟醸」でお願いします。
網戸から時折吹き込んでくる冷たい風に肌寒さを感じた。
それでも僕は窓を閉めずに、ソファーに寝転んだまま、大きく背伸びをした。
それから、僕は台所から大吟醸を取り出して、昨日買ったばかりの綺麗なコップに注いだ。
友人のパクリ癖、彼女の下手な唄、うだつのあがらない上司。
僕は頭はつまらない考えで埋め尽くされ、そのまま深い意識の底へとまっさかさまに落ちていった。
急性アルコールなんたらで死んだらどうしよう。
でも、まぁ、いいか。
「ジャズ」「ブルース」「メロディー」
訂正
× 僕は頭は〜
○ 僕の頭は〜
「ブルース解散!?」
世界最高の航空戦技集団、ブルーエンジェルスの解散は、一部航空マニアの
間に大きな話題となった。
F−14トムキャットを必要とする戦場も、戦術思想もなくなったことがその理由
だった。トムキャットが担った任務は、F−18が引き継ぐことになるという。
「さよなら、ブルース」
厚木に集ったマニアたちは、大いなる悲しみをもってブルーエンジェルス解散式
を金網の向こうから見守った。
メロディーがどこからともなく流れ始めた。
ワンダレイの<悲しみの味>。どこかゆったりとしたジャズ・ナンバーは、ベトナム
から連綿と続いたトムキャットの長い戦いの歴史を、労わるように流れていた。
さようなら、ブルーエンジェルス。
次のお題は「預金通帳」「麦茶」「お子様」で。
ある晴れた午後の出来事だ。俺の携帯が着信を知らせたのだ。驚くべきメッセージが母親から送られてきていた。
走って家まで帰ってきて、俺は麦茶がばがば飲んだ。六キロの道のりを学校から家まで。
ま昼間に君たちは走ったことがあるか?しかも鬱な思いで。おやじが死にかかっているのだ。思えば俺のおやじは俺が生まれたころから死に取り付かれていた。
俺がお子様ランチを食べている光景。それは俺自身が幼かった俺をハイアングルからとらえているものの紛れもなく俺の最初の記憶だ。
その光景の中にもおやじは思い荷物を背負って坂道を登ってレストランまで歩いてきていた。俺と母はそんな父を見ながら笑いあっていた。
* * *
俺はおやじが死んだらいくら金が入るか知りたかった。
タンスの引き出しを開けて親の預金通帳を見た。
貯金が四百万あった。
だが封筒の中にあるもう一枚の紙切れを見ておどろいた。
俺に保険金がかけられていた。俺は茫然とした。誰が何のために俺に八千七百万もの保険金をかけているのだろうか?
それはお前の両親がお前を殺して多額の金を得ようとしているからだ。
だれだお前は。いつからそこにいた。俺はお前が生まれる前にこの部屋に住んでいた者だ。
だとすると先住者か?そうだ。だが今この部屋は俺の部屋だ。お前の部屋でもあり俺の部屋でもある。そう奴が言ったとき俺の背中がうすら寒くなった。
俺は奴の目を見てみた。奴は俺の後ろを見ている。俺は奴の視線を追った。そこに俺のお父さんとお母さんがいた。
「隆。とうとうお前は私たちの秘密を知ってしまいましたね」
「いつかはこの日が来るとは思っていたが……」
「何を言ってるんだ。おやじ、おふくろ」
次は、
「服役」「コンドーム」「古代」
「服役」「コンドーム」「古代」
『古代のコンドーム』なるものがが服役中の囚人に配られることになった。
袋には『古代の魔力で百発百中』と、書かれていた。
噂によると、キャッチフレーズが危なすぎてほとんど売れなかったらしいが
捨てるのは勿体無いということで囚人達に配布されることになったらしい。
その刑務所で刑期を終えて出所した囚人が、皆一年半以内には子持ちになってるあたり
どうやらキャッチフレーズは誇大なものではなかったようだ。
次は「ぬいぐるみ」「ナイフ」「口紅」で
口紅には、魔性の魅力があると言われる。
最近、これが大きな社会問題に発展している。
なにせ、この前までぬいぐるみと戯れていた少女が、唐突に口に紅を引き街へ繰り出してしまうのだから――
こういうタイプの少女は、非常に危険である。
世の中には、幼女趣味をもつ男性も多いのだ。
そういう人種は、たがが外れると何をするか分かったものでは無い。
徐にナイフを胸ポケットから取り出し、脅しをかける者も存在するだろう。
そう、私のような、な――
次は「魔術」「寿司」「日本水連」
その日、僕はひとりの男と戦う事になった。
背は僕より少し高い。垂らした前髪が顔全体を覆っているため、どんな表情をしているかは分からない。
そいつは僕めがけて挨拶も無しに、いきなりストレートパンチを繰り出してきた。
僕はスレスレのところで咄嗟に身を引いて、何とかそのパンチを避けた。
少し間合いをひらくと、男はまたもや僕めがけて攻撃を仕掛けてきた。
まわりには人がいなかったため、僕はフィールドを最大限に使い、逃げ回った。
防御だけではらちがあかない。
僕は近くにあった「日本水連」と書いてある、まわりに何個もの電球がついた看板を両手で抱えると、
勢いをつけて男めがけて投げつけた。
ガシャーンという、回転寿司の皿を床に思いきり叩きつけたような音があたりに響き渡った。
残念ながらヒットはしなかったみたいだ。
すると、男は懐から小さな翡翠を取り出して、僕につきつけて、何やら呪文めいた言葉を言い出した。
魔術でも使うつもりなのだろうか。
「そろそろ昼食の時間よ」
階段下から母親がそう叫んだ。
僕はコントローラーを投げ捨てると、テレビのスイッチを切って、空腹の身体で階段を駆け降りた。
次は「罪」「罰」「贖罪」で。
194 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/04 21:04
罪は罰で解消されるものだろうか?
そう思った。どこともしれず、水かさがまるでない所に僕は横たわっていた。
ただひたすら、罪と罰について思考していたのだ。
目の前には、暗闇を円形に切り取る夜空と、そこに浮かぶ月がある。
太い排水管の、出口なんだとそう悟る。月は、赤みがかかっていた。
違う。
世界が紅いのだ。ふと、手を動かそうとする。水を滴らせながら、
手を顔の前にかざすと、くっきりと紅い液体の残りらしい色素が付いていた。
汚水の上に横たわったままで、僕は手を洗う。紅い色素は案外簡単におちた。
なんでこんな事になっているんだ?
その答えは記憶の表層にあり、間を置かずに思い出せた。
あいつに呼び出されて、それで後ろから首を……。
ではこの紅い色素は?血なんだろうに、僕は痛くない。ただ水が冷たいだけだ。
こんな事なら、付いて来なけりゃ良かった。あんなヤツに、いつもボソボソと
喋る奴には、存在意味がないと思った。思おうと取り繕っただけだったと
言う考えが浮かび振払う。プライドの為やっただなんて絶対に、
絶対にあり得ない……。
意味の無いアイツに、オレはこんな所に放置されて、死ぬのか?
そう思うと、自嘲的な笑みが浮かんできた。死ぬのもいいかもな。
アイツに貶められた点については死んでも死にきれないが。
寝返りを、ふと打つ。流水に波がたつ。
アイツの、深紅の体が意味ありげに、僕の奥の暗がりにあった。
僕の罪か、アイツの罪か、罰は僕に?贖罪までやらせるのか……。
やられた。僕は監獄に追いやられた。言っても信じてもらえなかった。
死をもって、あいつは僕に全ての罪を、罰を、贖罪を押し付けたのだ。
次は、「律儀」 「痛み」 「隣人」
隣人はおかしい。どこかおかしい。
いや、表向きはどうということのないサラリーマンなのだが…律儀に挨拶も返すし。でも…
なんというのか…体に纏っている「匂い」が、違う――
俺は、いけないことだと知りつつも、隣人の家を覗き込んだ。深夜4時のことだ。
すると、異様なモノが目に飛び込んできた。
床一面に染み渡っている真っ赤な液体。
匂う…あの「匂い」だ!隣人の体から発していた匂いはこれだったのか……これは…血。
奇声が発せられた。その方向に目をやる。
包丁を自分の体に突き刺す隣人の姿。
彼の体が脈打つたびに、真っ赤な鮮血が飛び出る。床に落ちる。
痛いだろう。しかし、彼の顔はどうだ!?満面の笑みではないか!!?
その時、俺は忌みながらも理解した。痛みは彼にとって快感なのだと――
俺は徐にその場を後にした。
もうアイツには関わらねえ……!!
次は「娘」「サイレン」「ランゲージ」
隣りに村山さんが越してきてから三週間がたった。引越しの挨拶に来たのは夫人村
山だけだった。都心のマンション住まいで今どき律儀なことだと真紀子は驚いた。なん
でも、夫が仙台に単身赴任していてる夫と、この春から大学に通うようになった息子の
三人家族らしい。
村山家は生ゴミの量が異常に多い。息子の姿もほとんど見かけたこともなく、ふだん
は夫人ひとりでいるはずなのにと不思議に思い、「お引越しって後片付けが大変ですわ
ねぇ」と声をかけてみた。そういえば、運び込まれた大型冷蔵庫はまるで業務用のよう
に大きかった。真紀子は、この間テレビでみた「買い物がやめられない女」というのを
思い出していた。食べもしないのに食料を大量に買い、賞味期限がきれないうちにどん
どん捨てて、しょっちゅう買い足す。つまり、買い物衝動をただ満させればよいという一種
病気だ。山村さんの家の経済状態は決して悪くはなさそうだったし、家計に響いて痛い
ということでもないのだろう。
ある日、真紀子の家のポストに『隣人の距離』という本が入れられていた。それは、し
じゅう監視をしてゴミ漁りをしていた主婦が、何者かによって殺されたという推理小説で、
「今度の隣人も、またゴミだ。私はゴミを見ると粉々にしたくなるのだ」で始まっていた。
今みたら、「痛み」が「痛い」になってしまいました。
スルーしてください。
>>196 しかも、「夫人」と「村山」がひっくり返っているし(;_;)
なんてデリカシーの無い国なんだろう。
国の平穏を守るはずの警察のはずが、大きな音量でサイレンを鳴らしている。
とりあえず静かな街並は守ってほしいものだ。
だが今、私がボディーランゲージを駆使して目の前の厳つい警官とコミュニケーションをとっているのは、サイレンのせいではない。
まったく、何てことだ。英語は勉強しておくべきだった。
今になって後悔の念にさいなまれる。
きっと今の私の顔を見たらとても情けない顔になっているだろう。
相手がアジア人の顔など見分けられないのがせめてもの救いだ。
「ガアル、ガール。ア、リトル。」
自分を指差し、その後、腰の高さを示す。
私の娘だ。
――私の娘はこの国ではこれだけしか特徴が無いのか。
結局伝わらなかった。
とりあえず大使館に連絡するしか次にする事は思い浮かばなかった。
ハア、――なぜこんな事に。
――私が目を離さなければ
肩が重い、それに首も締め付けられるように苦しい。
体全体が――そう、子供でも背負っているかのように重い。
私は、私の背中を指し笑う警官どもを思いっきり睨み、次へ行く場所へ向かった。
次は「フジ」「織田雄二」「警官」で
200 :
「フジ」「織田雄二」「警官」:03/10/04 23:01
あたしの好きなタイプ?。
うーん、『踊る大捜査線』の青島さんとかタイプかも。
え?あんな猿面した警官のどこがいいのかって?
何言ってんの、あの熱い行動力が最高なんじゃない。
それに、あたしサルっぽい顔結構好きかも。
織田雄二以外にもガレッジセールのゴリとかもカッコイイって
思っちゃうし。
え?、あの男はどうかって?
あれは駄目!いくら猿っぽくてもあれは勘弁。
あの極端にしかめた眉毛はちょっとキモイよ。
まるでフジサンじゃないアレ。
いくら世界最強の警察とか言われていてもさー、
ブッシュ大統領はちょっとひくよね。
次は「放課後」「素材」「脱離」でお願いします。
遂に娘が完成した、と男は諸手を挙げて歓喜した。
稀代の天才工学者と謳われた彼は、学会の寵児。
十年前に失った愛娘を実験中の事故で亡くして以来、
彼は娘を「造ろうと」苦心に苦心を重ねてきた。
果たして、その研究は実を結ぶ。造形は完璧。質感も申し分ない。
挙動の機微は彼が記憶を頼りに何年もかけてシミュレートして来た賜物。
外科医が解剖でもしない限りは人外と見抜けるものはいないだろう。
震える手を握り締め、頸筋に誂えたスイッチに手を伸ばす。指が震える。
もう出会うこともなかったはずの娘との邂逅。心臟の鼓動が早まる。
目覚めて初めのランゲージはどうするべきかが分からない。
今の自分は随分と興奮していることを冷静に理解していながらも、
かつての娘にどう接していたかが思い出せない。
否、と頭を振る。今のこの瞬間の喜びに比べれば全ては瑣末。
スイッチに指先が触れた。少々では見咎められないように偽装した
金属質のスイッチは、そこだけが人間ではないことを知らせるもの。
不安もあった。男は目を閉じ、震える指でスイッチを深く押し込む。娘は起動する、はずだった。
鳴るサイレン。研究室に設えたディスプレイの全てが赤く光り、エラーを警告する。
男は終ぞ気づかなかった。過日希望を得たときから心の奥底にしまい込む形で忘れていた。
かつて、彼が娘を失い打ちひしがれていた頃、自暴自棄に造った一つの機械。
研究室を巻き込む形で己が造り上げたもの。
男の全てたる愛娘の頸筋の真横、娘を乗せた台に組み込まれた、男の絶望の一つの形。
即ち、自爆装置のスイッチに。
起動してから十秒後に爆発するシステムを、放心していた男は止められない。尚もエラーを警告する合成音。
最後の数秒で我に返り、必死で何があったのかを確認しようとする指先は愛娘の頸筋へと。
目覚めたばかりの娘と、それを知らずに抱きかかえた男は一緒に、そう言えばこうして抱き上げてやった、直後、
閃光と衝撃が全てを圧倒した、そこから先は知らない。
次のお題
「城下町」「相対速度」「帽子」
うわ、すまそん
リロード忘れてた……
このスレってレベル高いですね。
みなさんまじめそうだし。
下校時刻を知らせるチャイムが鳴る。
――放課後の理科室。
なんていうと怪談や恋愛話の舞台にされる事が多いが、実際にはそんな事は無い。部屋中に充満する消毒液の匂いで、青臭い学校独特の匂いも消えてしまう。
「うーん、もうヤメヤメ!」
「わかりやすい脱離反応なんて知らないわよ。」
「まったく、先生が自分でやれよな。」
部員達からは口々に不平がふき出す。
僕達は今、学習も兼ね、脱離反応を見る授業で使うための教材を作らされている。
副部長の野田さんが薬品にフタをしながら言った。
「素材が間違っているんじゃないの。明日、また新しい素材でやってみましょう。」
いいかげん飽きていた部員達は、その言葉を聞くやいなや、さっさと帰宅し始めた。
残ったのは僕と片付けをしていた野田さんだけとなった。
――流れる沈黙。
この部屋は、沈黙をも脱離させ無機なものにしてしまう。
現実なんてこんなものだ、人は化学式のように簡単にくっ付いたり離れたりできないのだ。
「はいはい、言い訳しない。もてないのはただ単に、あんたがオタクだからでしょ。」
片付けが終わった彼女は、そう言い残すとスタスタと教室を出て行ってしまった。
――思ったことを口に出してしまうのは僕の癖なのだ。
せっかくだから、次のお題は「城下町」「相対速度」「帽子」で。
今日は、江戸城跡に来た。現在は皇居となっている。
日差しが容赦なくおれを照り付ける。持ってきた帽子を深くかぶった。
しかし…パトカーが多いなあ。嫌な感じだ。
城下町は、随所に江戸時代の香りを残していた。
俺はこの時、「相対速度」という単語を思い出していた。
一方から見た他方の速度――
現代は、時間が急速に進んでいる。時間の丈が短い。
江戸時代の人々は目を回すんじゃないだろうか……?
心の中に情景を詰め込んで、俺は江戸を後にした――
次は「ボクシング」「競馬」「新聞」
「あーあ、またすっちまったか、何で普段は勝てないかね、ったく」
有り金の底が尽きかけた俺は、今度こそバイトを探そうと思った。
どんよりと曇った冬の寒空の下、公園の片隅にあるゴミ箱から取り出したスポーツ新聞。
トップ記事はボクシングで日本フライ級王者が変わったとかだが、俺には関係ない。
所詮才能に恵まれた物の世界、俺には眩し過ぎる。
そして目的のページを開くと、土方やパチンコ屋といった定番の仕事が並ぶ。
中にはコンピューター関係もあるが、機械音痴の俺には無縁の業種。
どれを選んでもこれじゃ変わらねえや……そう思うとやるせなくなった。
色々考えているうちに嫌気が差し、結局俺が出した結論は、
残る金を競馬につぎ込む事、当たればまた数日は持つ。
なぜかこういう時に限って当たってしまうのが俺の経験則。
これでは駄目だ……内心そう思っていても、1年前恋人を失って以来
生きる理由をなくした俺には、嫌な事をしてまで立ち上がる動機はなかった。
やるせない葛藤を抱えたまま、俺はまた競馬場に足を向けた。
自分が変わるきっかけは、一体どこにあるのだろうか。
今の俺の人生は、それを探す旅なのかもしれない。
次は「ちんまい」「魔法」「携帯」で。
お題、形容詞が混じってるとダメですか?
良かったらそのままでお願いしたいですが、
ダメでしたら「ちんまい」→「仮想」でお願いします。
携帯電話ってのは、前世紀の未来予測で唯一実用化されたもの、だそうな。
ほんの十数年前までは車に無線電話積んだだけでぎゃあぎゃあ騒いでたの
に、技術の進歩ってのはすごいぜ、ホント。
アーサー・C・クラークだったか、『十分に進歩した科学は、魔法と見分けがつ
かない』つったのは。まさに魔法だな、あの野戦通信機を遥かに越える機能が、
あんなちんまいボディにパッケージングされてるんだ。
なんか『科学の限界』とか、色々言われてるけど、そんなのは十九世紀にも言
われてたことだし、人間はその限界の壁を打ち破ってきた。
俺は携帯電話を見て思うわけよ。人類はいつか、ほんとうにドラえもんみたい
な世界を作り出せるんじゃないか、ってね。
次のお題は「ハイライト」「布団」「幼稚園」で。
「うん、じゃぁ、またねー」と携帯電話を切ったときに
たまたまそばにいた曾おじいちゃんからこう声をかけられた。
「そんなちんまい箱にむかってなぁにをはなしとんなぁ?」
機械嫌いの曾おじいちゃんが機械のことをたずねてきたのが意外で
僕は少し驚きながら「これはね、携帯電話って言ってね、遠くの人と会話できるんだよ」と言った。
「ほぅ、そんな箱でで話せるってーのはあれだなぁ、魔法みたいだなぁ」
なんて曾おじいちゃんが似合わないこと言うから、僕はまた驚かされた。
曾おじいちゃんの家からの帰り道、ポケットから携帯電話を取り出してみる。
人と人とをつなぐ魔法の箱。そう思ったら携帯電話がいつもとちょっと違って見えた。
次は「秒針」「後始末」「帽子」で
リロードミスやってしまいました。・゚・(ノД`)・゚・。 すみませんです。
次のお題は208さんの「ハイライト」「布団」「幼稚園」で。
「そやからブツはとこに隠したって聞いとんのや!」
酒巻の尖った革靴が彼女のわき腹周辺に突き刺さった。
苦しげに体を折り曲げながらもがく彼女を眺めながら私は茶番劇を笑った。
布団で簀巻きにされた彼女にとって、酒巻のようなアル中の蹴りなどさほどの苦しみではないのだ。
「関西弁ってのは漫画みたいだな」
「あ? どういう意味や?」
「うそうそ。ちょっと言ってみたかっただけ」
私はパイプ椅子から飛び降りるとパンツの食い込みを直した。
いくら脅しても彼女は決して喋るまい。ブツを持って愛人と逃げた夫を待つ人妻か。
私は末端価格30万円のうまい棒を持ち逃げした夫に激しく嫉妬した。
ポケットから取り出したクシャクシャのハイライトにマッチで火を付ける。
酒巻のような男にはわざとクシャクシャに曲げたタバコを吸っている私の美学はわかるまい。
「たしかやおきん幼稚園だったっけな?あんたの息子が通ってるのは?」
私の言葉に目を剥き、悔しげに唇を振るわせる彼女はかつてないほどに美しい。私は充足した。
次は「秒針」「後始末」「帽子」で
時の刻みを報せる秒針。刻々と近付く事柄。
私の前では、息も絶え絶えの老人が、間近に見えているであろう死と向かい合っていた。
「頼むぞ……果たしてくれ」
老人のトレードマークとなっている巨大で厚ぼったい帽子が、小刻みに揺れる。
老人は、この世界を統べる者である。この、地下世界を――。
私は、果たさねばならない。
後始末を。
世界の終焉を。
手の中に在る、このスイッチを押せば、地下世界は終る。
『わしが死んだら、この世界を消し去って欲しい』――老人の願いである。
彼が居なくなっては、この世界の存続は不可能。
私は、スイッチを押す――。
次は、「台風」「瓦」「ストーブ」
冬の寒い道場内は、しかし今この時間だけは熱気を放っている。
長身の空手着を纏った男の、その裂帛の気合と――衆人の
見届けようと手に汗握る緊張によって。
それは、台風(ハリケーン)と称ばれる、男の必殺技だった。
身体をねじることによって生まれる遠心力を、
直線の軌道に転化させて繰り出される必殺の手刀。
男が振り上げた手を降ろす。
轟、という音と共に、台風が全てを吹き飛ばした。
強靭なる瓦二十五枚が、文字通り崩れるように瓦解する。
おお、とあがる活声。
それにつられてか、道場内に設えられたストーブの炎も踊る。
「次は四十枚だ」
お題
「氷塊」「火球」「魔術師」
214 :
「氷塊」「火球」「魔術師」:03/10/05 17:28
村の夫婦がある男に必死になにかを懇願している。
男は村一番の魔術師だ。夫婦の娘が行方不明になったので
魔術を使って娘が生きているかどうか、それからできることなら
居場所も見つけてくれ、と頼んでいるのだ。
男は難しい顔をして話を聞いていたが、村人の必死のお願いに心を打たれ承諾した。
夫婦は男の手を握って何度もお礼をして帰っていった。
あくる日、男は手の平から出した火球を大きな氷塊にかざしてなにやら呪文を
唱え始めた。後ろでは夫婦が心配そうな表情でそれを見つめている。
男は氷塊を覗き込みながらこの世のものとは思えない声で喋り始めた。
「見える…見えるぞ。娘は生きている。村のふもとの森の大木の傍で
うずくまっているのが見える」それを聞いた夫婦は大急ぎでその場所へ行った。
男のいうとおり、娘は無事だった。夫婦は大変喜び、男に対して金貨、衣料品、
食料、家畜などたくさんのお礼をした。そして村人たちは一層その男の魔術を信じるようになった。
男は自宅で受け取ったパンをぶどう酒で流し込み、考えていた。
次はどの娘をさらおうかと。
「やらせ」「ガッツポーズ」「からくり」
5行目 村人→夫婦 です。
216 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/05 17:30
ガッツポーズには、様々な用途がある。
例えばこんな時――
バカヤロー!! 金返せ――!! 死ね――!!!
ありとあらゆる怒号が鳴り響くテント内。
その標的は、表情を崩さずに言う。
「どうでしょう? お楽しみ頂けましたか? 」
この男はサーカスのピエロである。しかし、この男、とてつもなく下手なのだ。
観客に怒りを包ませるほどに………
「このからくりは――」
この下手糞――! 国に帰れ――!!! 観客の怒りが治まる気配は一向にない。
「………………だろう?」
ピエロは何かを呟く。そして、拳をぎゅっと握り、突き上げて、大声で言う。
「面白かっただろう!!!!? 」
観客唖然――そして、次の瞬間会場が今日最高の音量を発したのは言うまでもない。
次は「ダウナー」「宅急便」「文様」
218 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/05 19:15
宅急便で送られてきたものは、土器の壷だった。
その特異な形は、それが縄文様式であることを示している。
送り主は、ウォルフガング・ダウナー。オカルト関係の権威で、本物の魔術師だ。
早くから東方の魔道体系に興味を持ち、とくに日本や台湾、インドネシア諸島といった、離島における独自の魔道の発達に著しい興味を示している。
いまは彼の言うところの「真日本呪術」、つまり縄文時代の呪術を研究するために、東北地方を遊覧しているはいずった。
ということは、これは彼が発見した何か呪術に関係した品、なんだろうが・・・・・・、はて、いったいなんであろうか。
手紙のひとつも添えられていないのでわからない。
「いったいなんなんだ、これは?」
「セツメイショウ!!!」
いきなり声が響いた。ウォルフの声だ。だが、どこから?
種ポーーーーんと蒸気が抜けるような音がして、壷の中から飛び出した人影。それは空中でクルクル回転すると、すたっと床に着地する。
ウォルフガングは振り向くと、ニヤリと笑いかけた。
「コンナフウニ移動スルタメニツカウモノサ。アル種ノゲートッテトコカナ」
俺は唖然として声も出なかった。
次〜〜「救済」「めくる」「初物」
219 :
「救済」「めくる」「初物」:03/10/05 20:41
あたしは、憂鬱な気分で目が覚めた。
「変な顔……」
隣には男が寝ている。何も考えてないような無神経な顔だ。
肌に油が浮いているような気がする。
あたしはベッドスプレッドをめくって立ち上がった。
男に触れないように注意しながら、ベッドを降りて、シャワーを浴びた。
痛みさえ感じる熱めのシャワーが肌に残った男の感覚を忘れさせてくれる。
ふと、父の顔が浮かんだ。母が死んでからずっと一緒に寝ていた父は、しがらみを断ったようなさっぱりとした顔で笑っていた。
裸になって抱きあっていても、父は私を奪うことはなかった。
あたしは、父を助けているつもりだった。父の救済者。
一週間前にキスしようとした瞬間、父がもうこういう事は止めよう、
と悲鳴に似たような声で言い出す前までは、
あたしだけが落ち込んだその気持ちを癒せるたった一人の人間だって信じていた。
でも……逆だったんだ。母が死んだとき涙が溢れなかったのは、そういう理由だったんだ。
太ももが妙に張っていた。血が股間から滴り落ちて、シャワーのお湯で薄まっていく。
「……君ははじめてだったのか」
ぶよぶよとしたものが、あたしを後抱きにした。
「でもさ、初物の割によがってたね。そんなに気持ちよかった? 自分でいじったりしてたの?」
男の手があたしの胸をまさぐっていた。その手に父を感じて、あたしは男を押し退けた。
次は「理由」「コップ」「消臭剤」で
隣の家のヘンテコ変人鬼畜博士が俺にくれた薬があった。
何か知らないが、これ飲むとコップになるらしい。
どうして俺にくれたか理由は分からないが、飲んでみよう。
俺はコップになっていた。
元に戻れるのか? いや、別にいいけど。どうでもいいし。
おや、チン毛がパンツから飛び出してるおっさんが近付いてきやがる。
そういやあ、今頃はサラリーマンが起きだす時間だなあ。
えっ…? おっさん、ちょっとよしてくれ。俺は牛乳瓶じゃあないよ。カルダスじゃあないよ。
うわあ、おっさん、俺を手に持ってトイレに入らないでくれ。
消臭剤臭いのはいいとしても、アンタの一物や排便なんざ見たくもないよ。
せめてその手にもつ新聞で俺に見えないようにしてくれ。不思議だが、俺は今、目をつぶる事が出来ないんだ。
それ以前に、目がないのになんで見えてんだよっつー話なんだが……
んっ…うわっ、臭ッ!! 口をつけるな!! せめて歯を磨いてからだなあ……
ああああ………爪を口で噛むなよ…それ、入れるなよ入れるなよ…やっぱ入れた――!!!
おっさん、ウンコ終ったか? あれ? 窓を開けて……? えっ………? 俺を…………??
なっ……投げるのォ〜〜〜!!!? 外にィ!!? いや、待て、割れるって割れるって。
絶対われっ――
俺は飛んでいる!!
今っ、俺は空を飛んでいる!!!
もうすぐ落ちる!!
最後の輝き――パリン。
「あー……最近、ウンコのキレが悪いなあ………」
ウンコを流すと、おっさんは、そんなことを呟きながらトイレを出た。
そして、手を洗い、メシを食って、また繰り返しの人生を歩み始めた。
外のガラスの破片は、ばあさんがブツブツ文句を言いながら片付けた。
不思議なことに、ガラスはピクピクと蠢いていたという――
次「荒し」「リコール」「MDコンポ」
工学部の俺。工具店から何かしら部品を買い込んで変なオブジェを作るのが趣味。
しばしば電気品を分解することもある。そして勇気を振り絞ってMDコンポを分解しオブジェを作ることにした。
ドライバーを握る手も心なしか震えてる。何せ数万円もした家電に手を出すのは初めてだし
俺はそんな高価なもの失くすほど金銭面で余裕も無い。
しかしそんな状況を吹き飛ばしてまでそれをオブジェに変えたい理由が俺にはあった。
そのMDコンポは欠陥品、つまりリコールされた物だった、ということもあった。
そしてなにより俺のどうにもとまらない芸術的衝動がそれをオブジェに変えたがっていた。
数時間後、荒れ果てた部屋、望んでいたものとはかけ離れている物体。
確かに俺が望んだ芸術品とはほど遠い。でも俺は満足してる。
俺の中で芸術的衝動が金という価値基準を上回ったからだ。
初めての投稿です。駄文だとは思いますが何気に必死で書きました。10分ぐらいかな。
次は「味噌汁」「ビデオ」「鉛筆」でお願いします。
「味噌汁」「ビデオ」「鉛筆」
ナイフで少し削り過ぎた鉛筆をクロッキーの上に滑らせると思いの他なじむ感じがした。
純白の中にも妖艶さと大胆さを潜ませたカサブランカの花。
白百合のようにそそとしているのでもなく、ベアトリックスのような熱情もこもっていない。
しかし、俺はカサブランカのそんな中途半端なところが気に入っていた。
そう、俺が狂おしいほどに愛しているあの女のように。
オレンジ色の花粉を振りまくの葯に濃淡を付けている所で、不意にチャイムが鳴った。
時計に目を向けると、丁度、短針が九の所をさしている。
ドアを開けると、其処には静かな笑顔をたたえた百合香がいた。
「どうせ、晩御飯まだでしょ?それから、昨日いってたビデオも持ってきたわ」
台所には昨晩百合香に作ってもらった味噌汁が鍋に残したままだったので、内心どきりとした。
しかし、百合香は別に気にしている風でもなく、リズムよく包丁を動かし始めた。
「ねえ、またカサブランカ描いてるの?」
「……まあね」
急にカサブランカが振りまく香りに胸が詰まった。
俺に白百合は似合わないからな。
ふいに俺の瞳の奥でカサブランカのようなあの女が、妖艶に微笑んだ。
まぶしい光をたたえた百合香の背中から視線を逸らせ、俺はひたすらカサブランカの花を凝視していた。
☆カサブランカは高いので文化祭のときしか生けたことないです。
次は「炭酸せんべい」「コミックス」「スクールペン」で。
223 :
「炭酸せんべい−コミックス−スクールペン」:03/10/06 15:04
プラハの冬は寒さが厳しい。空気の粒が肌にパリパリと突き刺さるようだ。朝の旧市街
を見たかったが、この路面の凍てつきようでは、少し時間がかかるかもしれない。沙羅は
引き返すことにした。消え入りそうな街灯の光はどこか幻想的で、影の中からいまにも雪
の精があらわれそうな感じだ。チェコではアニメ文化が発達していて、コミックスコーナ
ーなども充実している。陰鬱なイメージのある東欧で、現代のメルヘンともいえるコミ
ックが育ったのは、重い空気と抑圧の歴史への無意識の反発だったのかもしれない。
ふとあたりを見回すと、モノクロの景色の中にマックの赤みがかったオレンジの看板が
見えた。店の中に入ると、婚約者の裕樹が何か薄くて丸いものを光にかざしている。
「やだ、いつの間にこんなところに来ていたの? 」
「へへ、外に出たらあまりにも寒いしね。ところで、さっきさ、新婚旅行中の人にこれを
貰ったんだ。マックはともかく、炭酸せんべいがチェコにあるなんてびっくりだよ」
裕樹は、スクールペンでノートに顔くらいの大きさの輪を描いた。薄黄色の炭酸せんべ
いの真ん中には、プラハの街並みが焼付けられている。
「ここにプラハの街を描き写してしまえば、割れたりしないしね」
沙羅は、コーヒーにミルクを入れながら、裕樹となら一緒に生きていけそうと思った。
次は、「線」「スパーク」「ハンガー」でお願いします。
(れ)
224 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/06 15:31
「線」「スパーク」「ハンガー」
ある日、道を歩いていたら住宅街の歩道にハンガーが落ちていた。
クリーニング屋でもらうような針金ハンガーが、アスファルトの上に
はりついている。私は指でつまんで近所のガードレールにハンガーを掛けて
おいた。何となくそのハンガーが地面でホコリまみれになる事が不憫だったのだ。
帰り道、また先程のガードレールに出くわすと、ハンガーはそのままだった。
しかし、ハンガーに割り箸の袋が結びつけてある。「?」なんだろうか。
そのままにして通り過ぎて、私は家に帰った。
何日かして、またその道を通りかかった。遠目で見ると何か白い塊が
ガードレ−ルの上にのっかっている。近寄ってみるとあの時のハンガーに
無数のメモ用紙、割り箸の袋、ストローの袋などが結びつけられているのだった。
外側の白線の上に、黒いマジックで何か書いてある。
『ここに結んでおくと願いが叶います』『いたずらしたらスパークするよ』
私は不思議な気持ちがして、しげしげとハンガーを観察してみた。100以上は
結ばれている。どういう事なんだろうか。突然、人の気配を感じて振り向くと
私の周りを子供達が取り囲んでいた。10歳くらいの子供が前に出て言った。
「スパークする?」「……いや、しない」慌てて首を振る。子供はにやりと笑う。
子供達の目の中には、青い火が灯っていた。転がるように私は逃げ帰った。
**次は「人魚」「薔薇」「船上」でお願いします。
窓の外にはまだ例の市民団体が座っている。
彼らはフランスの核実験に抗議とかで三日前からずっとハンガーストライキをやっている。
なぜ今頃、しかも日本のフランスパン工場の前でそんなことをしなきゃならないのか。
理解不能だ。彼らはそれこそ核実験の放射線で脳がやられてるのかもしれない。
今のところ座っているだけで実害はないが、安心はできない。
カレー屋で連日大声で排泄物の話をしたり、もんじゃ焼き屋で連日大声で嘔吐物の話をしたり、
彼らの悪行は数え上げたらきりがない。
そういえば今朝早く工場の機械の一つがスパークした。
彼らはすでに牙をむいたのだろうか。
「人魚」「薔薇」「船上」
昔々ある所に、人魚たちの住む平和な入り江がありました。
人魚は金色の鱗を輝かせながら泳いでは、浅瀬で巻き貝を育てたり
深海の海草で薬を作ったりしていました。しかしどこの世の中でも
平和は長くは続かないものです。ある嵐の夜、恐ろしい風と波にまぎれて
人間の海賊を乗せた船が、人魚たちの入り江に迷い込んできたのです。
海賊達は長い航海ですっかり荒んだ心に磨きがかかり、人魚たちを見ると
「生け捕りにしろ!」「逃がすな!網をかけろ!」と躍起になりました。
船上から望遠鏡で指示をだしている、海賊の船長は「伝説の人魚を見つけるとは
運がいい。さて、小娘の人魚の味はどうかのお」と好色な笑いを浮かべています。
「船長!人魚の娘どもは、全員生け捕りにしました!」「こいつは上玉ですぜ」
片目の手下が、にやにやしながらひとりの人魚の娘を引きずってきました。
船長は人魚の薔薇色の体を思う存分、嬲りはじめました。人魚の娘は「いやあ!!」と
悲鳴をあげました。そして髪の毛の中にかくしていた、人魚の秘薬を呷りました。
すると、人魚の体はみるみる破れ、中から青い鱗で覆われた醜い魚があらわれました。
「ぎゃあ!」海賊達の叫びも空しく、全員、人魚達に貪り喰われてしまいました。
青い鱗で覆われた魚になった人魚たちは、遠くの海に旅立っていきました。いまでも
今でも人魚たちは、青い魚の形で暮らしています。この魚を「鮫」と言います。
鮫は人と魚が交わってできた悲しく恐ろしい魚なのです。
つぎは「夕」「怨念」「断崖」でお願い致します。
最近やたら肩が重い。
最近、仕事がキツい事もあるかもしれないが、休みを挟んでも変わらない。
別に原因があるのだ。そう、仕事とは別に――
今思い返すと、この部屋に越してきた頃からおかしくなってきた気がする。やたら家賃安かったし。
もしや、よくテレビとかで聞く『この部屋に怨念が〜〜』みたいな!!? 勘弁してくれ……宜保さんは亡くなったし。
ちくしょう…今日はたまの休みだってのに……こんな事を悶々と考えていたらもう外は夕焼けかよ……そりゃ烏も鳴くよ。
そして、夕日も落ち、闇が絶対的な質量で迫る。
だが、おれは電気を付ける気にはなれなかった。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い―――――!!!!
憑かれているのか? おれは憑かれているのか!!? 取り殺されてしまうのか!!?
嫌だ…そんなのは……嫌だッ!!
おれは意を決して扉へと向かう。こんなとこ、おさらばよ!!
一心不乱に眼に見える扉へと走る。よし、早く――刹那。
扉は、底の見えぬ断崖に姿を変えていた。
ガラスを勢い良く突き破る音がし、そして、地面に大きめの物が落ちる音が続く。
何かがおれに、ガラス窓を扉と断崖に見せていたのだ。
その何かが例の怨念なのか、それとも、おれの……
次は「砂丘」「ランバダ」「サイバー」
229 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/06 22:09
ここいくつか良作が続いてるね。
ここが一番まともなスレだな。
お邪魔してごめんよー
「ねえ、砂嵐って見たことある?」
さゆりは、ザーザーとノイズを吐き出すテレビの画面に向かって、ボソリとつぶやいた。僕は返事をしない。
――要するに何もする事が無いのだ。
僕らは二人してひざを抱えて座っていた。
目の前のテレビは何も映し出さないし、僕らはテレビにそれを求めているわけでもない。
彼は十分に役割は果たしている。画面にはちゃんと砂嵐が写っているではないか。吐き出す雑音も、どうせ耳に入らないのだから変わりは無い。
今は、何をしていようとも無為な時間には変わりない。
たとえブラジルでランバダを踊っていても。砂丘で本物の砂嵐の中にいても。
突然電話が鳴った。
「回線の修理が完了しました」
その事を伝えると、彼女は少し微笑んだ。
「行こうか」
「――うん」
僕らはそれぞれのPCのスイッチを入れた。
そうして漸く、僕らは心地よいサイバースペースに戻る事ができた。
次は「犬・自転車・公園」で。
231 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/06 23:31
鳩とたわむれる老人。
ベンチで読書をする青年。
犬を連れて散歩をしている女性。
紅葉を眺めながら、ゆっくりと自転車をこぐ家族連れ。
噴水の周りでおしゃべりに興じる少女たち。
まどろむような、柔らかな時間の流れ。めくるめく鮮やかな四季の移ろい。そこはまるで夢のような暖かな場所だった。
すべては過去の話だ。
その公園はすでにない。
いまでは見上げるばかりの高層マンションが聳えている。
白く鮮やかな外観をしていたが、彼にはそれが墓石のように見えた。
なにもかもが失われ、変わっていく。残るのは思い出だけだ。だが、それさえも時がたてばあやふやなものにならざるを得ない。
そう、確かなものなどなにもなくなっていくのだ。
この現実の、そして自分の中の、確固たるなにかが、砂が零れるように失われていく喪失感・・・・・・。
「なあ、俺は老いた。本当に老いてしまったよ・・・・・・」
彼はひっそりと呟いた。誰かに語りかけるように。おぼろげな思い出の中の誰かに。
青白い街灯が、彼の寂しげな姿をいつまでも照らしていた。
いつまでも。
次は「名門」「養成」「除籍」
232 :
「名門」「養成」「除籍」 :03/10/07 00:27
ボクは運良く出自が良いこともあって
名門の道を歩み出すことを許された。
しかし、ボクはそのことを有難いことだとは思わなかった。
名門というだけあって、その養成課程は熾烈を極め、
ボクはそれについていくことができなかった。
何時の間にかボクはこの特権を得ることができなかった者達を
羨むようになっていた。
ボクも彼らみたいに自由にやれたらいいな・・・、と。
それから数年後、ボクはこの名門から除籍する羽目に陥っていた。
もうここに戻ってくることはないだろう。
でもこれで良かったのだ。ボクはもともとこの道に進むべきではなかったのだ。
翌日の新聞には、世の中を震撼させた連続殺人事件の犯人の
死刑執行が執り行われたという記事が掲載された。
その記事をみながら、人々はこう口にした。
「あいつは人間に生まれてきたのが間違いだったんだ」
次は「フラグメント」「コリジョン」「ますます」でおねがいします。
それは順調な航海の途中、突然起こった。
私の乗る小型客船と大型客船とが回避不可能なコリジョンコースに入ったのだ。
急いで救命胴衣を身に着けると、私は甲板に立った。
救命ボートは押し寄せた人であふれており、乗れる気配はない。迫る影はますます大きくなる。
私は腹を括ると、遠い故郷にいる妻子との思い出のフラグメントを胸に海に身を投げた。
訪れる着水の衝撃。そして、私の意識は闇へと落ちていっていた。
目を開けることに安堵した。生きてる。家族に会える。
体が動くことを確認すると立ち上がり、あたりを見回す。すると視界にそれが飛び込んできた。
眩いばかりのネオンの中に、堂々とそびえ立つ大きな蛍光ピンクの看板には
『ようこそ、天国へ!』とはっきり書かれている。天国から地獄。
私はそこに呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
次は「目薬」「差」「女」でお願いします。
男は古びた薬局に入ると、店で一番「効く」目薬を出すよう女の店員に頼んだ。
目に点し瞬きを三回程すると「真実」が見えるようになるらしい、その目薬は
一般のものより数千円ほどの値段差があったが、男は信じ購入した。
家に帰り、さっそく目薬を点し、ゆっくりと瞬きをした。三回目の瞼を閉じ
そしてゆっくり目を開け周りを見渡す男は、確かに「真実」を見ることができた
ぼ っ た く ら れ た
「火薬庫」「引火」「ポップコーン」
235 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/07 13:48
気違いボブがいつものように白い粉を用意してきた。
今日は犬の糞を食べながら来たらしく口の周りに彷徨を漂わせている。
俺とボブは熱い口付けを交わしてから隠れ家である陸軍基地の火薬庫に向かった。
この見張りは小心者で物音がする度にびびって小便を垂れ流すので臭くてたまらない。
だがそのおかげで他の人間は寄り付こうともしないからここは絶好の隠れ家だ。
お礼にと思って見張りの耳元でポップコーンを破裂させたら気絶してしまった。
俺とボブは一通り楽しんで帰ろうとしたら見張りはまだ気絶していた。
起こしてやろうと思ったら腐臭がした。心臓発作でくたばったらしい。
惜しい奴を亡くした。
俺とボブは線香代わりにケツの穴に大事に秘蔵していたマリファナに火をつけ口にくわえさせてやった。
次の日、陸軍基地が跡形も無く消し飛んだというニュースが流れた。
煙草の火が火薬庫に引火したのが原因らしい。
なんとまあマヌケな軍隊だ。おかげで隠れ家がなくなってしまった。
こりゃただじゃ済まんな」
「何すか?」
巡査部長の河豚田の唸り声を聞いて私は書きかけの調書から目を上げた。
河豚田が差し出した新聞の見出しにはでかでかと、
『西日本の火薬庫と呼ばれる広域暴力団下関組山陽会の金庫番が拘置所で死亡。
死因は差し入れのポップコーンを喉に詰まらせての窒息死』
と、あった。確かに異常な死因ではあるが、交番勤務に配属されたばかりの私にとっては何の意味も持たなかった。
覚えなければならないことが山ほどあるのだ。
「まあ、関係ないっすけどね」
「こういう事件はな、管轄が違うって言うても覚えといて損はないんや。
よぼよぼのじじいじゃあるまいし、こんな死因誰も信じん。山陽会は数は少ないけどイケイケの武闘派や。何かひと悶着起きるで」
定年間近のじじいが知ったかぶりしやがって。私は脳裏によぎった思いを顔に出す事も無く調書の続きを書き上げた。
数日後、件の拘置所職員が死亡したとのテレビ報道を箱で休憩中に見た私は仰天した。
何でこんなところでほのぼのと鼻毛抜いてるような河豚田の野郎にわかるんだ。
「やっぱり弾けたか……」
ぽつりと呟いた河豚田を呆然と眺めながら私の頭に「引火」という言葉が浮かんで消えた。
次は「主婦」「食」「リモート」でお願いします。
237 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/07 17:43
>>235 逝ってよし。二度と書き込まなくていいぞ
238 :
熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/07 19:15
主婦を食いたい。俺は人妻倶楽部に行き主婦を食った。生でさせてくれるというのでおれは
リモートコントロール不可能の巨根をぶち込むと、主婦の膣を裂かせたまま紅の町に一人自由の羽を拡げた。
239 :
熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/07 19:16
次は、「叛乱」「風車」「シタール」
昼前のスーパーには、主に食料品を目当てとした主婦たちが群っている。
「すいません、トイレ貸してもらえませんか」
僕は、近くにいる若い女の店員にそう話し掛けた。
「はい、どうぞ。」
女はいかにも面倒くさそうに答えると、そそくさと立ち去っていってしまった。
僕がトイレのノブを回すと、カチャ、という、まるで拳銃に実包を込めたような不吉な金属音があたりに響いた。
そして素早く、手提げからペットボトルと、パックに詰めたドライアイスを取り出した。
そして、急いでペットボトルにドライアイスを詰めて、きつくキャップを閉めた。
これで簡易爆弾の完成だ。爆発するまでに数分かかる。
その前に逃げ出してしまえば大丈夫だ。
僕は何気ない顔でトイレを出ると、そのまま店の出口まで向かった。
このスーパーはたかだか数百円の万引を学校にチクったのだ。
そのせいで僕は長期間の謹慎処分を受け、単位は落とすは、信頼は失うはで、酷い目にあった。
今回はその仕返しのつもりだった。
しかし、良い気分でポケットに手を突っ込んだ瞬間、さっきまで持っていた財布がないことに気がついた。
どうやらあのトイレで落としてしまったらしい。
財布には学生証が入っている。万が一爆発の後、僕の学生証が見つかりでもしたら、大変なことになる。
血の気がひいた。
まだ爆弾を仕掛けて3、4分しか経ってないはずだ。
僕は急いでトイレに駆け込んだ。
その瞬間、大きな爆音と共に、僕の身体にも激しい衝撃が伝わってきた。
へへ、威力ばっちりじゃねーか。
この馬鹿でかい音なら店にいる連中も気づいてくれるだろ。
あー痛てぇ。気づけ。そして早く病院へつれてってくれ。
畜生、次はリモートコントロールできる爆弾仕掛けてやる。ざまあみやがれ。
「花」「華」「鼻」
我が家のすぐ近所に、アンティークショップがあった。常日頃から怪しげな品々
が並ぶことでその筋の好事家には知られた店だが、今日はいつもに増して珍妙
なものばかりが並んでいた。私はついつい好奇心に後押しされ、店内に足を踏み
入れた。
どこから掘り出したのか、いやでっち上げたのか、メイドインチャイナと書かれた
景徳鎮の壷とか、ゴッホが書いた向日葵の花の種とか、胡散臭いどころか怪しさ
大爆発の品ばかりが店内に並んでいる。なんというか、華々しいまでのバッタ臭い
オーラに満ち満ちているのだ。
「源頼朝が九歳のときのしゃれこうべ……」
私はとある頭蓋骨を手に、絶句した。そこに現れる店主。
「お客さん、これなどいかがかな」
差し出したのは、長さおよそ六十センチほどの木の板。
「これは……いや、当ててみましょう。聖徳太子が持っていた芍でしょう」
「惜しいですな」
店主はにやりと笑った。
「これは禅智内供の鼻を支えた、『鼻持上げの木』です」
「落語ですらないのかよ!」
次のお題は「オレンジ」「遅刻」「お徳用」で。
242 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/07 22:02
家に小便漬けのオレンジの種が送られてきた。送り主はジョーだ。
こいつは女の匂いを嗅いだだけでもイッてしまうから早撃ちジョーと呼ばれている。
小便漬けのオレンジの種は俺たちの間で緊急集会を行うという意味だ。
集会に遅刻したら罰ゲームとして痰壺を一気飲みさせられる。
俺は通りすがりの車を奪って集会場へ急いだ。途中で何か轢いた気がしたが時間が無いから無視した。
集会場になっている地下駐車場にはすでにメンバーが集まっていた。すでに車でギシギシやってる恋人もいた。
だが時間になっても肝心の早撃ちジョーが来ない。
俺達は嬉々として罰ゲーム用の痰を集めた。痰が出なかった者は鼻水で許された。
すると車でヤッてた二人が突然裸のままで出てきた。
ラジオニュースで早撃ちジョーが何者かに轢き逃げされて死んだと言ったそうだ。
また一人惜しい奴を亡くした。
俺達はジョーの墓に痰壺とお徳用紙おむつを捧げた。
あいつはまだ寝糞が治ってなかったからだ。
244 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/08 00:20
245 :
「オレンジ」「遅刻」「お徳用」:03/10/08 00:21
「ファー!」
キャディの金切り声と共に飛んできたオレンジが、俊明の後頭部を
直撃した。もんどり打ってグリーン上にひっくり返った俊明めがけて
なおも凶弾は襲いかかる。カボチャ、亀の子タワシ、タピオカ、水子。
なんとか体勢を立て直した俊明の目に飛び込んできたのは、阿修羅の
ような社長の形相であった。傍らのキャディーが、ピッチングマシンに
次の一打を装填した。鉄アレイである。マシンと俊明の距離、約3メートル。
「何やってんすか社長!そんな至近距離で水子食らったら死んじゃうでしょ!」
「俊くん。キミ、大遅刻した割にはゴルフ上手いねぇ。私みたいな
下手くそとコースを回っても、面白くないだろ?」
自称シングルの社長だが、今日に限って絶不調なのである。遅刻した癖に
バーディを連発する俊明に嫉妬の炎を燃やすのも、無理からぬ話だ。
「いや、あの、すんません。それはそれとして、せめて普通のボールを
普通にクラブで打って下さいよ。キャディー!とっととピッチングマシーンを
しまってこい!ていうか、お前が率先して弾込めすんのはおかしーだろ!」
「でもちゃんとファーって言いました」
「そういう問題じゃなくてだな、俺はゴルフの根幹に触れる話を…」
「言・い・ま・し・た!」
社長もキャディーも、取り付くしまもない。未だ一言ありげな俊明だが
ここはおとなしく引き下がって、次のホールで社長のご機嫌をとることにした。
13番ホール、パー5。別名『お徳用コース』。
オナーの俊明が、あさっての方向にスタンスを取ってボールをしばき上げた。
大きく右に逸れたボールを目で追い、ほっとした笑顔を浮かべる。こりゃOBだ!
OBゾーンは、超鋭角すり鉢状の13番ホールの斜面にあたる。急勾配を転がり落ちた
ボールが最深部の穴に吸い込まれた。ホールインワン。お徳用コースの面目躍如である。
怒れる社長が、キャディーに手榴弾を手渡した。
246 :
「オレンジ」「遅刻」「お徳用」:03/10/08 00:22
>>244 うわ、お題が出ちゃいましたか。失礼しました。
次は「終電」「プルタブ」「尿意」から、ですね。
247 :
「終電」「プルタブ」「尿意」:03/10/08 00:47
私は突然襲い掛かってきた尿意にせきたてられて、改札口脇のトイレへと駆け込んだ。
今来ている電車がいってしまえば後はもう終電しか残ってはいない。
だが迷っていられるような時間は無い。いそいで小便器の前に立ち、ジッパーをいきよいよく開く。
しかしそこにはあるはずの見慣れたものがなく、なぜかプルタブが付いていた。
缶ジュースに上についているあれだ。
一万個集めると車椅子が寄付されるとか言うあれだ。
ほろ酔い気分も一気にさめる。
いっておくが私のものがプルタブのように小さいのではない。確かそれはプルタブなのだ。
しばらくその光景に呆然としていたが、ホームから電車の来る音がしてきて私はようやく我に返った。
いそいでジッパーを引き上げると、ジッパーの金具とプルタブがぶつかって小さく金属音を立てた。
そのことだけは感謝しながら、生身だったら酷いめにあっていたはずだ、ホームに駆け上がり電車に体を滑り込ませる。
肩で呼吸をしながら、私はこれから先のこととかなぜこうなったとかよりも別のことを考えていた。
おそらく中身は直前に飲んでいたものからして炭酸系に違いない。そうするともうやばいぐらいに振ってしまったことになる。
とにかくもれる心配はなさそうだ。私はあれがどれだけ飛ぶか想像しながら椅子にへたり込んだ。
次は「ネームタグ」「帽子」「ピンセット」で
おれは事に備えて集中を高める。
帽子をギュッと深く被る。勿論これも作戦遂行の為だ。
今日の潜入場所は、某紡績工場。一見唯の薄汚い工場だが、密かに重火器が製造されているという。
今日のおれのノルマは、このコンパクトカメラを用いて、証拠写真を撮ってくること。
入り口まで、あと300M。心拍数が上がる。証明の為のネームタグを胸に取り付ける。
首尾よく侵入出来るか…? もし侵入失敗したら…… 頭の中であらゆる状況をシュミレートし、対応準備を整える。
門番は85歳の田中正造さんだった。
チェックというチェックもされず、あっさり通してくれた。
おいおい…仮にも破壊兵器作ってる工場が、だぞ……こんなザルでええんかい?
おれはどうにかテンションを保ち、奥に進む。そして、辿りつく。大量の重火器が保管・製造されている場所へ――
…………………………………おい。
花 火 じ ゃ ね え か ! ! ! ? ? ?
なんじゃこれ!? ざけんな!! こちとらぁ、ここに着くまで常に護身用のピンセットを構え、緊張しながらだなあ…
急に思い出した。この依頼書、組織経由で送られてきた原文ままのものだが…
166 名前:名無しちゃん…電波届いた? 投稿日:03/10/04 01:27
近所の工場で何か怖い音がする…絶対に何か武器を作ってるに違いない違いない。
2ちゃんかよ!!? しかも電波板!! このアホ組織…ツッコミどころ多すぎんだよォ!!!
あほだ。
「音楽」「ラーメン」「おまけ」
おれの名前は音楽大学。
脳内に無限の五線紙を持ち、無限の五線紙の上に無限の♪を
当て続け、続けさまに音を復元できるという優れた声帯を持っているのだ。
今日もまた脳内で音楽が・・・・・・。ああ、分かってる。分かってるって。そう焦るな。
バカ!焦ってるのはお前自身だろ。お前自分に自信がなくて焦ってんじゃねえのかよ、バカ野郎!
いいさ、俺は・・・・・・ああ、そうだ。今日もラーメンを食べながら呪いの言葉のように悲しい音楽を喉から
つるつると麺が吸い込まれていくと同時に、あるいは吸い込まれるがゆえに吐き出し続けなければならないのだ。無限に。
そうしておいて、どうせ分かってることだ、俺は挑戦という言葉をそこら中に書き付けて・・・・・・バカ!何やってるんだ!
自信だ、自信がない、おれには自信がない。
だからどうしたって?重要なんだ。自信というものが一番音楽に必要さ。
言ってることは簡単だろ。だけど自信を持つというのは一番難しいことであって・・・・・・
間違いない!これだったのだ、おれが待っていたのは!
そう、今日俺はいよいよ会社を立ち上げることになってしまった。だが、やってしまった。取り返しのつかない。
もう俺に音楽は必要ないんだ。一切を否定して、俺が俺であるという、音楽が音楽であるということを否定して、
会社はもう始まってしまっていた。
キーンと飛行機の鳴って、もしくはがさがさと落ち葉の鳴って、そうして俺はどうやらお菓子についているおまけのおもちゃだった。
そうだね。俺はお菓子についているおまけのおもちゃを作る会社を立ち上げたんだったね。
250 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/08 03:15
お題忘れた。
夜の勢いで無茶してしまった。
「綿棒」「一人暮らし」「歯痛」
誰かが見れば滑稽だと思ったかも知れない。しかし男は一人暮らし
でツレも無く、人目を気にしなくて良かったし、気を置けるほどの
余裕もありはしなかった。
男は50本ほど束にして売っている綿棒を買って帰宅した。ドアを
占めて鍵をかけると、男はやにわに激しい足踏みと身震いを始めて
部屋の奥へと走りこんだ。右手にはしっかりと綿棒の入った袋が
握られて、左手は頬を強く抑えている。
それは痛みの限界に達した虫歯だったので、男はすぐさま歯痛の元
を抜きに掛かった。ボールと歯に紐を縛り、思い切りボールを投げた
のである。声にならない声が部屋中にこだまし、壁といわず床と
いわず、部屋中をボールが跳ね回った。
跡からは血が出ていた。男は焦って綿棒の束を取り出すとそのまま口に
突っ込んだ。血を混ぜた涎が塞がらぬ口から垂れ流れ、男は隙間に
ティッシュを詰めた。
そうして男は窒息した。
一人暮らしは楽だと思っていた。
まず、自由だ。縛るものは何も無く、思うが侭に行動できる。
遅く帰っても注意する人間もいない。
だが、その考えは改めざるを得なくなる。
後ろ手にバタン、と乱暴にドアを閉める。
痛む歯を押さえ、部屋中をひっくり返したが、保険証が見つからない。
思い切り箪笥を蹴ってみるも、歯の所為で思うように力が入らない。
力比べでは箪笥の勝利となり、足を抑えてうずくまる結果となった。
保険証は実家から取り寄せようと考えたが、時間がかかりすぎる事に気付いて止めた。
残った力で床の上を蹴散らして、寝るスペースを確保する。
仰向けになって天井を見る。
次第に、視覚も聴覚もズキズキという痛みに支配される。
急に、「歯痛には正露丸が効きますぞえ」という祖母の言葉が思い出された。
ガバ、と起きると、薬箱から正露丸と綿棒を取り出す。
小さくちぎった正露丸を、黒く空いた穴に詰め込む。
徐々に苦味が痛みを侵食していく。
ふう、と大きく息をついた。
ふと遣った目先に電話があった。
――そういえば、しばらく連絡してないな。
僕はおもむろに受話器を取った。
次は、「鞄」「遅刻」「電車」
あ、次のお題は「がんじがらめ」「竹」「糸」でお願いします
あ。俺のはお題書いてないから252氏の「鞄」「遅刻」「電車」 でお願いします。
スレ汚しスマン。
かぶってしまった。
>>251さん、スマソ。&フォローありがとう。
部屋には、何時だって死ねるように首吊りの縄を作っておいた。
ポケットには、何時だって死ねるように服毒自殺用のカプセルを入れておいた。
電車を待つときには、何時だって死ねるように最前列、スレスレにたっていた。
棚には、同じ色、形の容器に、塩、砂糖、そして白い粉の猛毒を三つ並べていた。
最低の自分の人生とは、お別れしたいものの最後の最後で勇気が足らなかった。
だから、何かの間違いで、意図せぬ出来事で死ねるよう、こーしたクダラナイ
工夫を考えられる限り沢山していた時期があった。
ある日、念願の「何かの間違い」がおこり、私は毒物を口に入れてしまった。
もう、引き返せない、これで私の人生を終わらせられる、嬉しさで胸が一杯になるが
体には何の変化も無かった。そのとき、私はやっと自分が天国に遅刻していた
事にきがついた。
「猫」「犬」「鳥」
うあ・・・失敗。
×ポケット ○鞄
です。ゴメンナサイ。
258 :
熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/08 06:44
>>257 ポケットが鞄だろうがどうでもいいんだよ。「猫」「犬」「鳥」って何だよ。
お前が出したお題は糞過ぎる。お題変えろ馬鹿
「まだ見つからないの。うう……シロちゃん」
「大丈夫。俺がついてるから」
私は弘美の肩をそっと抱いた。いつまでも小刻みに震え続ける彼女の丸まった背中が愛しく、切なかった。
「とりあえず、なんか食べよう。メシまだだろ?」
「ご飯なんか……でも、ありがとう。本当の友達っていいね」
「事故多いもんな。犬だけじゃなくて猫とか鳥も」
弘美が可愛がっていた愛犬の首なし死体が線路脇で見つかってから3日。
電車に刎ね飛ばされたであろう首をいまだ彼女は捜し続けていた。
私は慰めともつかぬ言葉を弘美にかけながら、冷蔵庫から作り置きのサラダを取り出した。
「俺だけだ。お前を本当に守れるのは俺だけなんだ」
私は小さく呟きながら、ビニール袋でぐるぐる巻きにされた肉塊を下段から冷凍庫へと移し変えた。
袋の底に血が溜まり始めていた。
次は「飛び蹴り」「四」「キャップ」でお願いします。
僕たちはミクロの決死隊を真似して犬の肛門の中に入っていった。
犬の直腸は朝鮮半島ではキムチの詰め物などの料理で使われており結婚式
などのおめでたい席では欠かせないものだ。
僕らが長い旅路を終えて夕暮れ時肛門から出るとそこは朝鮮人たちであふれていた。
「こりゃとんだことになったぞ。朝鮮人につかまったらお仕舞いだ。かたわにされる」
朝鮮人たちは見た目は人間に似ているが、それは似て非なるもの、高貴と下賎、人間であって
人間でない、彼らは結局創価学会の博愛精神で生かされているだけなのだ。彼らの主食は主に犬で
まれに猫も食うとされている。僕らが彼らの酒の席に出たときにも……一匹の猫が……踊り食いされていた。
僕らは朝鮮人の蛮行を許すことができなかった。薄汚い朝鮮人どもを僕らは撃ちまくった。
死体は彼らの使っていた調理場へ運んだ。朝鮮人は鳥肉の味がした。が、臭みが強かったので僕らは一口しか食べなかった。
キャップ、とび蹴り、四
キャップを深くかぶる時は気分的に滅入ってる時。どうも精神的に不安定だ。
朝の4時ってのに、このざわつき消えない街の雰囲気も俺に合わない。けどこの雰囲気を楽しんでる自分がいる。
人並みが絶えなくそして静寂が訪れないこの場所。騒がしいのにどこか無機質で殺伐としてる。
もし近くの奴がとび蹴りをしたとしても誰も気には留めないだろう。
これが戦後に日本が作ってきた街なのか。否、違う。
この街は生きている。
他人を知ろうとしないこの雰囲気がこの街を作ったんだろう。
他人の関心を集めようと集めようとするファッション、態度で表さない人間の矛盾。
ここの人はどこか寂しげな表情をしてる。
それは俺も同じ。
次は「時計」「さむらい」「お菓子」
262 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/08 16:12
学校が終わってうちに帰ると、隣の空家の前に運送会社の車が止まっていて、つぎつぎと隣家に家具が運び込まれていくところだった。
「母さんただいま。となりに誰かひっこしてきたんだね」
「ええ」
「どんなひとか知ってるの?」
「なんでも、さむらい している人なんだって」
「ふーん、さむらい?? いまどきそんなことやってる人いるのかな」
そのとき、玄関のほうで「ごめん」という声がした。
さむらい が引越しの挨拶にきたらしい。
「はーい」俺は応えて玄関にでた。
そこには、羽織袴に脇差を差した さむらい らしき大男がたっていた。
「えっと、どうぞおあがりください。えーっと、母さん、お隣さんが見えたよ…」
俺はさむらいを応接間に通した。
母さんがお茶とお菓子をもってきて、俺が去ろうとすると、無言のまなざしでひきとめた。
「どうぞ、粗茶ですが…」母さんが勧めると、さむらいは無言で茶をすすった。
「…」とりあえず、俺たちもお茶をすする。
そのまま、気まずい数分がながれた。
ふと、さむらいが、壁にかかっている時計に目を留めて、俺に質問した。
「あれは何かね?」
「えっ。あ、あれですか。時計ですよ。えーっと、時間をはかる道具です」
「ふーん」
「おさむらいさんのお仕事は戦争でしょ? 時計とか役に立つんじゃありません? おほほ」母さんがややうろたえ気味に、愛想笑いを浮かべて口を挟んだ。
「んー、いや、時間なんてあんまり気にしたことないな。わしらの仕事アバウトだし。適当に声のするほうにいって、人を切るだけだから」
「そ、そうですか。おほほほ……」母さんの笑いが空ろに響いた。
また数分の沈黙。そのとき、突然窓が派手に割れて、侍が座っているソファーの肘掛に矢が突き刺さった。
「な、なんなんだっ!?」俺は驚くと、さむらいは、。
「ごめんっ!!」
そういって抜刀して、割れた窓から雄たけびを上げながら飛び出していった。
「・・・」俺が黙っていると、母さんは力なく言った。
「ガラス屋さんに電話しなきゃ」
つぎはお題は、【知ったかぶり】【自殺未遂】【入院】。
おれの学校に「知ったかぶりの守口」と呼ばれる男がいる。
彼は沢山の話を聞かせてくれる。
人生に絶望し、頚動脈を切ったコト。――自殺未遂に終ったが。
ロブ…なんとかいう銃の構造が気になり、精神を病み入院してしまったコト。
他にも沢山ある。これらの話を、守口君は時に切々と、時に情感たっぷりに語ってくれる。
しかし、それらは全て嘘、と言うか、しったか、である。
だから、彼が近くに寄ってくると皆逃げる。生理的に嫌なのだろう。ウザいし。
聞いてやるのは俺だけ。このままでは、守口君の精神はマジで崩壊してしまうんではないだろうか。
ただ…守口君にヘコんでいる様子は全く無いのだが。
つか、死ね。
「男」「パソコン」「漫画」で。
次は「飛び蹴り」「四」「キャップ」でお願いします
なんか激しく間違えた。気にしないで。説明すると長くなるから、なかった事にしてください
266 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/08 18:53
気違いボブがサツにパクられた。ラリってパンツを穿かずに地下鉄に乗ったらしい。
急いで出してやらないとあいつの可愛いケツが看守や囚人どもの餌食になってしまう。
この辺を取り仕切っているキャップ刑事は漫画に描いたような腐った刑事だ。
お気に召すような賄賂を贈ればどんな凶悪犯でも解放してくれる。
キャップは肉が好きだから、公園のホームレスをブチ殺して太股のうまそうな部分を持っていった。
だが、キャップは三日前にベジタリアンに転向していた。
忌々しい男だ。飛び蹴りでも食らわしてやろうかと思ったが後のことを考えて抑えた。
野菜なんて急には用意できない。困り果てていると、
パソコンマニアでボブの穴兄弟でもあるケントが果物なら用意できると言った。
野菜も果物も似たようなもんだろうと思って、ケントにその果物とやらを届けさせた。
ボブはそれから1時間もせずに無事に帰ってきた。
まだ昼間だったが俺とボブとケントは三人で思う存分楽しんだ。
テロでもあったのか外では消防車やサツの車がやかましかったが俺達の愛には何の影響もない。
ボブのケツはまだ誰にも汚されていなかったのだ。
四時のニュースで、ケントが届けた果物は極上のパイナップルだったことが分かった。
せっかくだから六つ全部使わせてもらった。
「デカブツ」「アイスクリーム」「Scream」
267 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/08 19:50
私立苦狼魔帝高校英語教師、真賀仁。
ダイブツのような図体と人柄で、デカブツという愛称で呼ばれている。
指導力も意外とあるし、いろいろと面白い薀蓄も披露しくれる。
少しドジなのがたまにキズだが。
たとえば
「掘った芋いじるなってどういう意味だかわかるか?」
真賀先生はぐるりと教室を見回す。
「今何時ですか? って意味なんだ。どうしてだろうって思うだろ? What time is it now?って文型を、そのまま日本語の音読みに当てはめて、そうやって覚えてペリーたちと会話していたんだね。
こういう方法はジョン万次郎が最初に考えて・・・・・・」
ほかにハマチドリなんてのもあるぞ、と彼は続けた。
「こんなふうにだな、単語をひとつひとつ覚えて、いちいち頭の中で辞書を引いて会話するんじゃなくて、会話のいちフレーズをまるごと日本語にあてはめて覚えたほうが、日本人としちゃあやりやすいとは思わないか」
なるほど、と何人かの生徒が頷いてみせる。
「たとえばな、I Scream、私は叫ぶって意味のフレーズ、これを日本語に直して覚えると、アイスクリームになるんだ。みんな好きだろ、アイスクリーム。これは覚えやすいよな
外国人と話すときにも、アイスクリームって言えば、叫びますよ、というふうに伝わるわけだ」
「・・・・・・アイスクリームはもともと英語ですよ」
誰かがつっこんだ。
一瞬の沈黙ののち、教室は爆笑の渦につつまれた。ちなみにドジ踏んだ先生が、一番爆笑していたのだが。
こんなドジな、だけど愛すべき教師なのだった。
次「打ち上げ」「周回」「探索」
俺は打ち上げられて15年になる人工衛星だ。異常現象などの探索が仕事だったが、
そろそろ、ただ地球の周回軌道に乗っているのも飽きたのでちょっとした悪戯をすることにした。
俺を15年も無休で働かせたのだ、ちょっとくらい驚かせても罰はあたるまい。
早速、俺は逆噴射をかけ減速をはじめる。すると体が地球のほうに引かれはじめた。
慌しくなっているだろう地上の様子を想像するだけで笑いがこぼれてしまう。
俺は気がすんだので、通常の軌道に戻ることにしたがここで予想外の出来事が起こってしまった。
ちょうど地球に落ちていこうとする隕石が俺の体をかすったのだ。軌道が乱れ、俺の体はどんどん地表に引き寄せられる。
まずいなと思いつつも、仕事に飽きた俺はこれも良いなとも思った。
ゆっくり地球へ落下していく中、俺はふと自分に大量の核燃料が積まれていることを思い出した。
次は「椅子」「ガラス」「心」で
ここ最近書斎に置いてある木製の肘掛椅子の調子が悪い。どうも脚の一本に
負担が強いらしく、ガタガタと安定しないのだ。駅への途中に在った今はもう
潰れたと聞く骨董屋で気に入って、何度も修理して三十年使い込んだ代物だ。
ある日朝の揺らがない内から決心して椅子を処分することにした。哀惜の思いも
手伝って方法は火葬に決める。ゆっくりとマッチを擦って火をつける。ゆらめく
火を眺めていると、丸でこの椅子の命運を知って光る涙のようだった。
いよいよ椅子の腰掛にマッチを放った。しばらく経つと煙を出しながら木が
黒く変色してゆくのが見える。もう少し待つとパチと弾ける音がして火が十倍に
膨れ上がり、三十年の亡霊に見える勢いとなった。
それからはもう怪物と化した炎が椅子に飽きたと見えて、本棚や書物にまで火を
飛ばしだした。床等は怪物を支える太い足に踏み潰されてとうに炭になっている。
果たして化け物は天井まで届き壁一杯を覆い尽くしてしまった。同時に凄まじい
音がガラスと耳を突き破る。カーテンに付いた火がガラスに歪みを与えたのだろう。
大音響と共に私の視界は暗転した。何、痛いものか。妻はもういないのだから。
私の心は椅子と共に燃え尽き、果ててしまったのだから。
ああまた忘れた。次は「イルカ」「帆船」「虹」でお願いします。
彼氏のYは「虹」を「に↑じ↓」と撥音する為、彼の「虹」への思い入れたっぷりのお話はこちらには殆ど伝わって来ない。
こうして真夜中のファミレスで、この人のお話を聞くのもいい加減苦痛。
そりゃあ付き合い初めの頃は、どうしようにも興味の無い話でも食い付いたけどさあ。
はーつまんねえ。
にしてもよくよく見るとほんとイルカに似てるな、こいつ。
顔が長いんだよ、いや顔のパーツが長いのか。
どうでもいいか。
「でね、その帆船を一人で動かしたギリシャ人がさあ、」
あー早くホテル入ってsexして寝たい。
頭痛いし。
「冒険」「ダンス」「姉妹」
272 :
熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/09 07:23
冒険心の無い奴らが多すぎる世の中だが恵子は違う。
恵子は小さい枠の中に閉じこもって満足している三語スレの住人のような馬鹿ではない。
彼女は性の冒険を繰り返していた。十代の頃にはクリトリスを包む皮が擦りむけるぐらいオナニーもしたし、
入れた?入れられたチンポの本数も三桁あった。少なくとも百本は超えていた(はずだ)。
そんな恵子ではあるが、忙しい仕事の合間に小説とかいい訳みたいな、
時間さえあれば私が優れた小説だということをお見せできるのになあ(詠嘆)みたいなわけわからん
ようなこと考えてる(基地外だ)厚化粧駄文書きのほうが恵子など及びもつかないほど、度外れにスケベであることはその文章からわかる。
こいつらはダンスという言葉から喚起されるイメージは腰をくねらせ、股間と股間を合わせる(もちろん異性同士でだ)スケベ踊りくらいしか思い付かないような卑しい奴らなんだ。
(もちろんマンコは大洪水である)。妹はいないがいたらぜひ姉妹で貝合わせしたいなあと思っててそんなころ想像しながら
きゅうりをマンコに押し込んでオナニーしたこともある恵子は三十歳を超えた今も独身で仕事が終わると三語スレの簡素書きに変身して、
言いたい放題書きたい放題やっているが近々良い男に告白する予定だ。恵子の夢は一度否定した者の足の裏のにおいを嗅ぐマゾメス犬になりさがることなのだ。落差が大きいほど
マゾ快感が増すことを十分認識している糞簡素書きの恵子が真面目そうなふりをしているのはそのためなのだ。いやらしい女だ。わかった。それならチンポをねじ込んでやるよ。
(この文章を読んだ時、糞簡素書きの彼女のマンコがほんのりしめっていたという。彼女はそのことを悟られないために本スレ272に簡素をつけることは無かったという)
273 :
熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/09 07:55
お題継続だ糞蝿ども
274 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 10:19
「アイヤーイヤーイヤーイヤーアイヤー」
「ウンバーウンバーウンバーウンバー」
いくつもの松明が闇に踊る。
アフリカ奥地の未開の原住民、アナベベ族のファイヤーダンスだ。
彼らは白と黒の双子の姉妹神を信仰している民族で、いまは年に一度の、彼女たちに生贄をささげ部族の繁栄を祈願する祭りの夜なのだった。
その取材でこの村を訪れた白人たちにも、山盛りのごちそうが振舞われた。
「むほっ、これはうまい」
取材陣のリーダーである言語学者のピーターが満面に笑みを浮かべる。
「豚に近いが、少し違うな。何の肉かわからんが、とにかく美味い」
「このお酒も美味いですよ、教授」
「おお、なんと、これは蒸留酒ではないか。それも上等なウイスキーもかくやというシロモノだぞ。未開部族といいながら、なかなか文明化がすすんでいるではないか。よきかなよきかな」
いい肉といい酒に囲まれたスタッフ一同し上機嫌である。
彼らは知らない。
村から少し離れた密林の中に、彼らの秘密の食糧貯蔵庫があることを。
その中に、以前にもこの村を訪れた冒険者たちの死体が、天井から吊り下げられていることを。
振舞われた肉が、同じ人間の肉であり、振舞われた蒸留酒が、彼らがたまたま携帯していたポケットウイスキーの中身だつたことを。
そして、
彼らもまた次の食料として保存される運命だなどと、想像さえしていないに違いない。
次「瞳」「わき腹」「土壇場」
最終ラウンドの鐘が鳴る。体中、疲労と痛み、満身創痍だがまだ戦える。
このラウンドが終われば全て俺は報われるのだろうか。それとも今までの努力が泡となって消えるのか?
開始数秒後にいきなりわき腹へのフックがキマッタ。顔を歪める相手の顔。
「勝機!」
疲れ果てた己の身体にムチを打つようにラッシュをかける。
「今しかない、このチャンスを逃せば負ける」
焦りからかそれとも疲れからでた油断か、乱発打の隙間から土壇場にカウンター気味に
相手のパンチをもらう。
気がつけば控え室。あれから何も思い出せない。周りのコーチやスタッフは
ねぎらいの言葉をかけてくれた。けど今の俺にはそんなもの必要ない。
油断から出た、自分から作ってしまった敗因。勝てた試合を逃した悔しさ。
悔いだけが残る。
いつの間にか瞳から涙が溢れ出てた。
「飴」「学校」「水」
でお願いします」
277 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 15:04
学校帰りに駄菓子屋に寄るのが日課だった。
その駄菓子屋が潰れた。
明治生まれの婆さんが、たったひとりで暮らして、切り盛りしていた店だ。
俺たちが遊びに行くと、しわくちゃの顔をさらにしわくちゃにして嬉しそうにしていたものだ。
もう身寄りはなく、天涯孤独だとも言っていた。死んでも誰にも迷惑かけないのが嬉しいと、淡々と告白していたのを思い出す。
すでに店はあとかたもなく、新築のマンションの骨組みが出来上がりつつあった。
「あの婆さん、どうなったのかなあ」
タケシが呟く。たいして感情がこもっていない声だ。
「さあなあ。ま、生きていればどうにかなるるだろ、どうにか」
俺も適当に答えた。たしかに行き付けがなくなったのはちょっち痛いが、なにもそこが俺たちにとって全てではない。
かわりなんていくらでもある。なくなれば、また新しい遊びを探せばいいのだ。
「しかし、潰れるとは思わなかったよなあ。やっはり、毎日毎日お菓子くすねてたからかな」
お菓子がほしかったわけじゃない。ただの遊びだった。
フ菓子だの水飴だの、そんな古臭い不気味で不味そうなお菓子は、すぐに近くのドブ川へ捨てた。
「さあなあ。まあどうでもいいさ」
全てはもう済んだこと。過去の領分だ。
店が潰れようがお婆さんがどうなろうが、俺たちとは無関係だ。知ったことではない。
いらないものをゴミ箱に捨てるように、いらない思いでもどこか遠くへ消してゆく。
それは青春の1ページにさえ残らない、明日になれば全て忘れているたぐいのことなのだった。
次は「制約」「誓約」「製薬」
ナベさんとその取り巻きの連中は、渡辺学校もしくは渡辺塾と呼ばれている。ナベさん
は十歳のときからヤクザの使いパシリとして掃除、洗濯、運転手、なんでも要領よくこな
したが、なかでもみんながうなったのはその頭のキレと博才であった。とくに手本引きに
かけては、兄貴分たちもかなわない度胸と腕前を見せた。
ナベさんは、水仕事をするときも寝るときも左手の包帯を取ったことはない。左の掌に
は花札大の板が包帯できつく巻かれていた。いつしかナベさんの手には、四角い窪みがで
きていた。ナベさんのイカサマは何十年もバレたことはないが、たった一度だけ危険な目
にあった事がある。連勝するのを不思議がったある賭場の人間が、代打ちを何人か呼び寄
せたときだ。最後に縁日で飴を売っている康司が座に加わったとき、ナベさんの顔には一
瞬動揺のような表情が浮かんだ。勝負は綾のものと言われる。気圧された者が負けだ。案
の定、花札を吸い付けた左手を康司に捻り返されたナベさんは、そのまま外に引きずり出
され、容赦なくナベさんを殴りる蹴るされた。ぼこぼこに殴られるナベさんを、賭場の連
中がドスに手をかけながら見守っている。ナベさんは鯖折りを受けながら康司に囁いた。
「おい、今だ」
ふたりは別々の方角に一目散に走って逃げた。
12行目
「容赦なくナベさんを……」→「ナベさんは容赦なく殴る蹴るされた」
に訂正します。
※お題は前のひとのでお願いします。
僕は人形な訳だけども、普通のとは違うんだな。
制約とやらがあってさ、毎日必ず一度は人を笑わせなきゃならないんだ。
もし、破ったら、命を無くしてしまう。いや、持ってかれてしまう――
今日は製薬会社からの依頼があったらしい。
新薬の宣伝の為に街頭で演じるんだって、ご主人様が言った。
ご主人様は、僕に誓ってくれた。こんな風に――
――私は、誓約を交わそう。お前の命を危険に曝す代わり、首尾良く事が運べば――
この先は、よく分からなかった。その時、意識が無くなっていたから。
ただ、一つ覚えていることがある。この時、ご主人様はとても悲しそうだった。
何か、大きな、そう、とても大きな何かがあるんだ。仕方の無いことがあるんだ。
その為に、僕は人形となったのだ。人間から――
ご主人様がどんな目的を持って僕を人形にしたかったのかは知らない。
でも、そんなことはどうでもいい。僕は、尽くしたい。
僕の為に涙してくれたこの人に、尽くしたい。
その為に、僕は今日も道化となり、人を笑わす。どこまでも――
「先生」「兄弟」「映画」
「ここにもサインするんですか?」
「あと、こことここにもお願いします」
殺風景な病室の一室で私は数十枚にも渡る誓約書を眺めてうんざりした。
しかし、これも全て弟のためだ。私は直前に顔をあわせた弟の黄色くむくんだ痩せこけた姿を思い起こし、サインを済ませた。
5年前、世話になっていた叔父夫婦と喧嘩して地元を飛び出した元気な弟の姿はそこにはなかった。
兄の私でさえ持て余していたほどの不良だったのだ。
深夜、弟が腎臓疾患のため危篤との連絡を受けた私は急遽、病院に駆けつけ、腎移植の手続きを取った。
「手術の前にまずこの薬を飲んでください。麻酔補助薬です」
水と一緒に先生から手渡された錠剤を喉に流し込むと備え付けのベッドに横になる。
急速に訪れる眠気の中、兄弟で初めて見た映画を思い出し、微笑んだ。意識が急速に遠のいた。
「18時46分32秒。死亡確認」
弓状に体を反らしたベッドの上の死体を冷たい声が嬲った。
「自分の兄貴を殺した気分はどうだい?」
「俺の気分が爽快だとでも思ったか? とにかくこれで借金はチャラだ」
黒ぶちメガネの男の問いにやつれた男は震える拳を握り締めた。鼻水を啜り上げる音が白く長い廊下に響いた。
次は「水」「みちづれ」「夜」でお願いします。
僕は夜空に輝くお星様。
今日も列を抜け出して、地球へ遊びに行こう。
えーと…ここは日本か。前にも来た事があるなあ。
確か前に来た時には、子供に気に入られちゃってなかなか宇宙に戻れなくて困ったっけ。
まあ、僕が可愛すぎるのがいけないんだけどさ…まあるいおめめとかくっ付いてるし。
僕に引き付けられない人間はいないね!!
さて、今日は…うん、この家にお邪魔しよう。僕はガラス窓を突き破って中に入った。
「こんにちわ! 僕は星の……」
中は、今までに見たことも無いような惨状が広がっていた。
誰も足を踏み入れていない、移動すら為されていないであろう部屋。
散乱するアニメ絵の少女たち。壁一面には、アニメのポスター。
噂には聞いていたけど…これが、オタク……?
「えっ…えっとぉ…今日は」
「出てけよォ!! オレの時間を邪魔すんじゃねえぞコラァ!!! 」
な…なんだ、このテンション。可愛い僕を見てこの反応は一体……。
いや、そもそもコイツはなんだ!? 水ぶくれした緩々の体、伸ばしっ放しの髪、
恐らく何週間も風呂に入っていないのだろう、この悪臭……底辺だ。
「出て行けよ……」
男はそう言うって僕に背を向けた。そして、何かの画面を凝視する。
画面を見ると、さっきのアニメの女の子が、あられもない姿を晒している。
僕は、敗北を確信した。
「お前…オレを嘲笑ってるのか? オレをゴミのように見るのか!? オレと一緒にコロシテヤルゥ!!!!! 」
道連れになる前に、僕は宇宙へ帰ろうと思った。完全無欠に可愛い僕も、オタクには勝てないと思わされた。
「制服」「回路」「日記」
283 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/09 20:42
「水」「みちづれ」「夜」「制服」「回路」「日記」
正門をくぐると・・・「バシャー!」受付の女性が水ごりをしていた。
頭から水を浴び、唇が紫色になっても一心に祈り続ける。
なのに会社は平然と、机にはビニールプールまで装備してある。
「制服のブラウスが透けなくて残念です」と言うと、彼女はにこやかに一礼した。
エレベータで社長室に上がると、様々な祈りの声が聞こえる。
「南無阿弥陀佛、南無阿弥陀佛」「父と子と聖霊の御名において・・・」
部外者の自分までも、みちづれにしそうな大合唱。
彼等の思考回路は、一体どうなっているのか?
そして社長室からは、「キェー!」と、精神集中の雄叫びが響く。
「あのー」と切り出すと、白装束の社長はいちはやく叫んだ。
「おお若者よ!よくきた、共に祈ろう」
=== ○○製薬は、皆様の御健康をお祈りいたします ===
看板に偽りなし。健康への祈りは、今日も深夜まで続く。
私も社長に習い、徹夜で般若経を唱えさせていただきました。
・・・と、業務日記には書いておこう。
※なんかむりやりだー
次のお題は:「兎」「月」「空気」でお願いしまふ。
未来、知的生命体があちらこちらの星に居るんだな。
(あの、空気無いんですが……)
おれは宇宙空間に居た。頭の中に浮かぶ言葉は何故か丁寧な言葉遣いだった。
(月が超至近距離で拝めるのはいいのですが、あと数秒で逝きますよ、コレ…)
そんな生き死にの際を体感している時、天使は舞い降りた。
「助けて欲しい? 」
彼は、おれに聞こえるように耳元で話してくれた。おれは頷いた。
おれは、アレなお兄さん兎たちに囲まれていた。
「あ……あの、これは一体…? 」
「とっとと払わんかいコラァ!!! 」
な、何をっ!!? 困惑するおれの前に、さっきの天使――と言っても兎だが――が、おれに歩み寄る。
「これは商売なのよ、お兄さん…この荒んだ世の中にただで人助けをするような感心な人たちが居ると思って? 」
兎だろ、と思いつつも、口には出さなかった。
「で……でも、おれ、お金なんて…」
「そうね、持ってるわけ無いわよねぇ」
堕天使は、そう言っておれに手渡す。これは……?
「最新式の光線銃よ。今からあなたをどこかの星に放つから、そこの生命体を全部始末してきて頂戴。
丁度、事業拡張の為に新たな拠点作りが必要だったとこなのよね」
はい?
「安心して。人間の生きていける環境の星を選ぶから…じゃっ、ヨロシクね〜」
「いや、ちょっと待って!! ちょっ……」
僕は生きて帰れますか?
「果実」「夢」「息切れ」
恨めし残暑の九月が終わりゃ、
馬たち踊るG1戦線。
兎に角、十月、空気がうまい。
兎も午睡の微睡む季節、
月夜に咽ぶ虫の声、
空き瓶拾って月を透かせば、
肉眼をば笑うお伽の時空、
気が付きゃ猿の俺なのだ。
N.H
286 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/09 21:41
「果実」「夢」「息切れ」
「お前は運がいい」
囚われの身の彼女に向かって、大幹部はこう言った。
「新たなる怪人の誕生を、その目で見る事ができるのだからな。フッフッフ」
地下基地には、悪夢の様な怪人の溜まり場だった。
そしてひときわ高い座に一人、黒衣の男が髭を撫ぜている。
「教授!」彼女は思わず叫んだ。
ノーベル賞まで授けながら、科学の暗黒面に身を染めた男。
地下基地に身を隠し、様々な怪人を産み出す、悪の首領。
「あなただったのね!」
教授は、彼女の事など目に入らぬ様だった。
ソファーに身を任せ、傍らに盛られた果実を貪っている。
皿が空になると、濁った目をつと上げて彼女を見る。
軽い嘔吐と息切れに、教授は声を荒げた。
「早くレモンを持てい!わしは・・・わしは酸っぱいものが食べたいのだ!」
許せない。彼女は思った。
※「彼女」の立場が・・・
次のお題は:「活性」「炭」「いそしぎ」でお願いしまふ。
287 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 21:44
よじのぼっている。
桃の木だ。
まるでジャックが登る豆の木のような、遥かな高みまでそびえている巨大な幹だ。
ただの桃の木ではない。
てっぺに近くの枝の先端に、たったひとつ、実をつけている。
仙桃だ。食べれば千年の寿命を得られるという伝説の果実だ。
ようやく手が届くところまできた。
もうすぐそれが手に入る。
だが、慌てるな。俺は自分をいましめる。ここまで来て下手にドジを踏むわけにはいかない。
息切れを沈め、気持ちを落ち着かせると、枝の上をはいずるように、そろそろと進み始めた。
細い枝だ。俺の体重をかろうじて支えきれるか否か、といった具合だ。
それでも先へ、先へと進む。
もう少しなのだ。望むものが手に入る。這って、這って、這い進んだ。震える手を伸ばした。桃の柔らかい感触を指先に感じた。そう、もう少しで―――――
何かが折れる音がした。体が宙に浮いた。次の瞬間には、もう落ちていた。
視界が滝が逆流するように激しく上へ流れ、そして・・・・・・
「・・・・・・夢か」
だらしなく床に転げ落ちた状態で、俺は目をさました。
まったく奇妙な夢を見たものだ。
俺は頭を掻こうとし、ふとその手を止めた。
なかば唖然として、まじまじとそれを見る。
手の中にはあの桃がしっかりと握られていた。
次「時間」「希望」「鋼」
288 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 21:45
うわ、先を越された(TT
お題は「活性」「炭」「いそしぎ」でヨロシクね(^^
最近、活性酸素なる物質が騒ぎを起こしている。
なんでも呼吸で取り入れた酸素はほとんどが水素と結合して水になるのだが、
その一部が水素と結合することなく活性酸素になるのだそうな。
私は炭素と結合して二酸化炭素になるものだとばかり思っていたのだが、違う
のか?大気中の酸素濃度がおよそ21%。そのうち2%が活性酸素になるとして、
水に変化する酸素が大気の19%。分子量を無視して考えると、大気の76%が
水素なのか?これはおかしい。75%あるはずの窒素はどこに行った?
では、人体のどこかに水素を生成する器官があるのか?馬鹿な。そんな大量
の酸素を保有していては、火事のたびに大爆裂だ。
このままでは埒が明かないと考えた私は、水を調査してみることにした。サンプ
ルは近隣から採取することとし、横浜市の水道水、走水神社の手水、三崎公園
いそしぎエリアの海水とした。
それぞれの水を分析してみたが、特に異常な物質等は発見されなかった。魚を
投入しても、変わった兆候は見られない。
水に対するアプローチは失敗に終わった。次回は人体に対しアプローチするこ
ととし、サンプルを燃やしてみようと思う。
次のお題は「DVD」「翼」「シュークリーム」で。
290 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 22:25
炭を焼いている男は桃をカジっていた。
桃に内在する健康成分モモキンカラウヤシが
思いつきでシュワちゃんになろうとした
無筋肉青野菜人間を活性化させる実験に
使用投与された。が、すぐ死んだ。
人生のいそしぎは自力本願でね!
という教訓が潜む結果であった。
291 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 22:32
DVD」「翼」「シュークリーム」
DVDはドラゴンヴィショップデスヂテウの略である。
両翼約30メートルの半端な化石竜だ。
鼻糞が武器の暴れん坊で手に負えなかったと聞く。
ウマモリキウグウグとむせびながら、
俺たちのご先祖様と対峙していたらしい。
292 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 22:34
シュークリーム?
293 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 22:38
>>291続く
DVDはドラゴンヴィショップデスヂテウの略である。
両翼約30メートルの半端な化石竜だ。
鼻糞が武器の暴れん坊で手に負えなかったと聞く。
ウマモリキウグウグとむせびながら、
俺たちのご先祖様と対峙していたらしい。
夜空がシュークリームでいっぱいの時代のうわさばなしである。
294 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 22:43
295 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 22:53
目の前にシュークリームがならんでいる。
ふわふわサクサクって感じの生地と、とろーりとした中身のマッチングを想像しただけで生唾がわく。
信じられるだろうか。
どう見てもそこにある現実としか見えないが、これは立体映像なのだ。
新世代DVDは、立体映像対応なのだ。
しかも、甘いカスタードクリーム、苺やチョコレートの香りが鼻腔をくすぐる。映像や音のみならず、香りまで? もう絶句するしかない。すごい技術だ。
プロモーションの映像が切り替わった。
洋画のワンシーンだろうか。甲高い泣き声とともに、巨大な翼竜がブースいっぱいに出現した。
その皮膜が風を孕んで羽ばたき、風圧がもろに俺の顔に叩きつけられる。
こんなところまで再現されているのか!!
もう呆然とする俺の前で、翼竜がそのとがった口を開くと、いきなり俺をくわえ込んだ。
左右からダンプに挟まれたような、すごい力だ。鋸のような鋭い歯が、俺の身体にくいこんでいく。
い、痛い、痛い。マジで痛いって。血が、ほんとに血がでてるよう!!
これって映像なのか?
それとも俺は本当に食われているんだろうか?
次「オンライン」「苛む」「爆ぜる」
296 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 23:30
「オンライン」「苛む」「爆ぜる」
「オンライン」
と言おうと思ったが、口はいかにもコンビニなおにぎりでいっぱいだった。
「苛む」
と言おうと思ったが、口は羽のないのコオロギでいっぱいだった。
「爆ぜる」
と言おうと思ったが、口は少女のの舌でいっぱいだった。
次 少女 玄米 オットセイ
少女はコンビニおにぎりの玄米の粒が残る舌でオットセイのざらざらした皮を舐める。
次「オンライン」「苛む」「爆ぜる」
298 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/09 23:44
「オンライン」「苛む」「爆ぜる」
オンラインはこどくだ。
ひとりボッチである。
「苛む!」「爆ぜる!」
と、わめいてみたが、誰にも相手にされず放火を趣味にした。
今夜もマッチが友達だった。
next 泥棒 栗 ヤシガニ
いったい何人が、ディスプレイの前で息を飲んだことだろう。
少女の自殺は、その一切合財がオンラインで公開されていた。
少女が己を苛むその一瞬一瞬を、CCDカメラがストリーミング画像に変換し、
世界中へと配信する。
ステンレスの刃が皮膚を裂き、鮮血が滴り、黄色くぷつぷつとした脂肪層が顔
を出し、肉が爆ぜ割れ、筋肉が剥き出しになる、そのすべての音を、マイクが拾
い、デジタルPCMの形で散布する。
そして、
「ひあ、あああ……」
少女が血に粘ついた断末魔の声を漏らし、事切れ。
血にまみれた腕がカメラを引き倒し、カメラが光を失った少女の瞳と共に横た
わり、
ただ広がり続ける血の染みがレンズを埋め尽くし、
世界中のディスプレイは真紅に染まった終焉を映し出した。
次のお題は「中古」「情けない」「5時半」で。
オンラインショッピング、苛む、爆ぜる
オンラインショッピング。最近あまり家から出るのが億劫になった俺はかなりこれを利用してる。
何時からだろう、部屋に閉じ篭もりがちになったのは。。。
別に社会にうんざりしたわけじゃない、人間関係が悪くなったからじゃない。急に何もかもが虚しくなった。
これから将来、俺は何をして生きていこうか、生きてゆかねばならないのか。
やりたいことが見つからない。言葉にするのは簡単だがこれほどの難問に苛まれたことは一度も無い。
部屋に閉じこもっていても解決はしない。それはわかってる。
ただ何をするにしても億劫になった状態が続いて、もう、、、、、初めの一歩を踏み出すのが怖くなってる。
パソコンの画面から覗かせる一冊の本。
「幸福論」
これを読めば冷え切って脅えている自分の心を爆ぜるきっかけになるかな?
次は「花火」「秋」「線路」
すみません、漏れはスルーしてください。
しかもお題を間違えてるし。逝って来ます。
303 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/10 00:15
新品の肌だというけれど、その坊やには中古の女がよく似合った。
犯られたら殺りかえす。
情けない。そう、非情が坊やの最後の砦。
寒い夏があるように腐った処女もいるもんさ。
5時半女の血は臭う。
次ですが、 〜半周 カレンダー ポップコーン〜
304 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/10 00:18
「中古って言うなよ。アンティークだよ」
唇を尖らせて友が言う。腕には彼がアンティークと称する
中古の腕時計。苦労してオークションで手に入れたんだと。
「じゃあその時計で今何時だよ」
「5時半」
「いつから5時半のままなんだよ」
「家に届いたときから」
情けない話だが実話である。
その後彼の中古はオークション候補になったらしい。
油断の出来ない世の中である。
#お題は>303さんのでおながいします
305 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/10 00:34
「40日間世界半周ってのはどうだろう?」
夏休み早々バカなことを言う奴が居た。
「夏休みが80日あれば世界一周出来たのになぁ。惜しいよなぁ」
カレンダーを捲りながら唸っている彼は重大な事に気づいていない。
「40日間だと世界1/4周しか出来ないワケだが」
「え?マジ?」
「40日掛けて半周したら、もう40日掛けて戻って来ないといかんだろう」
「あ・・・」
彼の間抜け面に、俺は食べてたポップコーンが鼻から出て来るかと思った。
「俺のグレートな夏休みプランが〜」
「別に80日も掛けなくても世界一周くらい出来るぜ」
「え?マジかよ?」
俺は棒を地面に立ててその周りをぐるりと周ってみせた。
「ほれ、世界一周したぞ。どうよ?」
力いっぱいポップコーンをぶつけられた。
お題「初雪」「花火」「落ち葉」などいかが?
おれは考えたことを実行してしまう人間。
ビルから飛び降りた時は大変だったらしい。
そんな感じで、今日は近所の花火大会の打ち上げ場に侵入した。
「花火と一緒に打ちあがったら気持ちいいんだろうなぁ」と考えてしまったからだ。
走馬灯、という奴だろうか?
空中に火達磨になりながら舞い上がったおれの中で展開される映像――
物心ついた頃、初雪を見て「この雪をぜんぶ食べたい」と考えちゃったなあ…ホントに食っちゃった。
秋の落ち葉を見て「これを繋げ合わせたら立派な服が出来るのではないだろうか? 」なんて…翌日大風邪ひいたな。
そうだ、おれは考えたことを実行する男。昔も今もそれだけは不変だ。
ならば、今この瞬間、死の間際でも考えよう。え〜と…「落ちたくない」
おれはフルバーストで飛び上がり、大気圏を突破した。
「コタツ」「カレー」「ホムンクルス」
307 :
「半周」「カレンダー」「ポップコーン」:03/10/10 01:02
「ちょっとションベン」
哲也は発泡酒の缶に吸い終わった煙草を落とすと少しフラつきながら立ち上がった。
昭子はヤニで茶色くなった壁に絨毯に落ちていたポップコーンを当ててみた。
にちょ、という感触がして、ポップコーンは壁にくっついてしまった。
昭子はため息をついて哲也の部屋を見回す。
昭子の座っている場所から半周見回した全ての物が茶色い。
壁も天井もパソコンも壁に掛かったカレンダーも、ありとあらゆるものが線路の側の家のように茶色にくすんでいた。
そして白い。これは哲也が今まで吸っていた煙草のせいだ。
「……けほ」
ため息をついた昭子は思わずせきこんでしまった。
昭子は煙草飲みが大嫌いだった。人に害を与えてるっていうのに無神経なのが信じられない。そういう人は無闇やたらと物にあたるヤクザかなんかとおんなじだ。
だけど……哲也は違ってた。
私のこと、哲也の方から好きだっていったんだし、それに……哲也といると落ち着いてくるし。
「……すっきりすっきり。ごめんな。昭子ちゃん煙草飲みでもさ、いくらなんでもここ煙いだろ」
「ううん。全然平気だよ。あ、あたしも吸いたくなっちゃった。吸っていい?」
昭子の言葉に哲也は意外そうな顔をした。
「……いいけど」
昭子は煙草に火をつけると頬をぷくっと膨らませて、白い煙を吐いた。
哲也はそれを見て、ふっ、と笑った。
「あのさ、吸うんじゃなくてもっとゆっくり肺の中に入れるんだよ。普通に息してみて」
すう、と肺に入れた息と一緒に辛い何かが昭子の胸に入りこみ、昭子はふらつく頭を振った。
「そうそう」
哲也は悪戯っぽく笑うと、昭子の口から煙草を取り上げた。
か、考えすぎ?
じゃあ次は「コタツ」「カレー」「ホムンクルス」
で。
「あれだろ、ホムンクルスって。2ch風に言えば、中の人も大変だな!みたいな。」
とカレーをムシャムシャ食べながら、上手いんだか上手くないんだか
わからない例えを友人はした。
中の人などいない!と一寸突っ込もうと思ったが
狭いアパートで男が二人でコタツを囲んで2ch語でそんなやり取りをする
・・・本気で生まれてきたことに後悔しそうだからやめた。
はぁ、コイツに心理学のレポートを手伝って貰おうと思った俺が馬鹿だったか・・・。
「お爺さん」「お婆さん」「桃」
310 :
「コタツ」「カレー」「ホムンクルス」:03/10/10 02:08
男はコタツで暖をとりながら考えていた。
台所には一ヶ月以上前に作ったカレーがまだ放置してある。
それだけならば一人暮らしの男の生活を考えれば普通のことである。
しかしながら今回は少し様子が違う。
しばらく前からカレーの鍋から異音がするのだ。
夏場ならば虫がわいていると想像がつく、しかし今は二月だ。
コタツしか暖房器具のない男の部屋で真冬に虫がわくわけがない。
だが、鍋の中に何かがいることは間違いない。
男は鍋の中のホムンクルスを夢想しながら、今日もコタツでまどろんでいる。
ごめんなさい。
かぶった上に次のお題を書いてませんでした。
次のお題は
>>309のお題でお願いします。
>>309 「お爺さん」「お婆さん」「桃」
A「・・・桃はねぇだろう。」
B「やっぱ桃は無いよなぁ・・・。」
A「オレたちゃお爺さんかっーの!」
B「いやいや、それを言うならお婆さんだろ。」
A「るせーな。今問題にしてんのは桃はねーだろっつーことだよ」
B「まぁ、確かに桃はありえないよな。」
そこへ現れるC
C「なになに、どしたの?」
A「桃なんて選択肢はありえねぇっつー話。」
B「桃ってのはねぇ・・・。(笑)」
C「・・・何が?」
A・B「クリスマスプレゼント。」
C「・・・。」
A「桃ってどーよ。」
B「桃じゃぁねぇ・・・。」
C「うーん、桃かぁ。」
夕日に佇む3人。
次、「真空パック」「牛乳パック」「洗顔パック」
313 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/10 07:55
秋の過ごしやすい陽気のある日の夕暮れ、マンション一階の角部屋に住んでいた
ある女の部屋のエアコンダクトから異様な太いホース状の物体がニョキニョキと顔を出していた。
洗顔パックを塗りたくった女はいつもの様に下らないテレビドラマに夢中になっており気が付いて
いなかったが、その太いホースから轟音が部屋に鳴り響いた瞬間、やっと女は異常を認識した。
急激な息苦しさと、肺に妙な圧力を感じ胸に手を当てた女は、半ばパニックになって
外への脱出を試みた。しかし、全てロックされ、アリとあらゆる隙間は蟻の通る隙間も無い
ような「工夫」がされ、家具で窓を突き破ろうにも、まるで強化ガラスのごとき強度で跳ね返された。
その時、女はようやく自分が誰かに殺されかかっていることを理解し、泣き叫んだが
その声は蚊のなくような音にしかなれず、やがてそれも消えていった。
置いてあった、未開封の牛乳パックは急激な内部の沸騰に耐え切れず破裂し霧散
テレビやPC、電球の類すべて弾け散り、まるで出来損ないのコントのようだった。
そんな状況でも、運悪く意識と命を繋いでいた彼女だが、塗りたくっていた洗顔パック
の大量の水分がグツグツと高温になってしまっていた為、顔面の皮膚を巻き込んで、ポトリと落ち
そして、その顔を見たとき、ようやく逝けたのだった。
マンション角の死角・・・。巨大な塊を、必死に持ち上げる男がいた。成人男性程度の重量があるので
足取りは重かったが、ヲタク専門の結婚詐欺師に、自分の無意味コレクションの一つである
アメリカ産業務用超強力掃除機を使って真空パックの要領で復讐を果せたその心は、とても軽やかだった。
無理やり・・・すぎ?
「容疑者」「取調べ」「資質」
「午前8時47分、青森県に住む13歳の少年、A容疑者逮捕!」
テレビから緊急のニュース速報。またか、年々犯罪の若年化が進んでる。
大人たちは「我慢の出来ない子供、躾けの出来ない大人」を毎日のように放送してる。
でもね、子供たちの犯罪の理由はそんな安易で幼稚なものではないと思うよ。
昔よりも物が溢れてる時代に少ない小遣いしか持ってない子供は常日頃から我慢の連続で、
親が働いてる家では孤独との戦い、親からを優しさを受けなければ、他人を思いやる術を知るはずはないよ。
それに複雑怪奇な子供たちの人間関係もあるだろうし。
子供の素晴らしい事は周りの環境自体で天才にも犯罪人にもなる資質があるってこと。
これは同時に恐ろしさも含まれてるけど。
子供の心の中では常に天使と悪魔による取調べがあるのかもしれない。
次は線路、花火、秋。
失敗、確か13歳は逮捕できなかったような。。。詳しいことは知らないのでゴメンなさい。
>>314 コテハン使って、恥さらすなヴォケ。
くだらん文章しか書けない厨が。
さらに次のお題が、花火と秋?・・・あのな、季語を使って素人が文章を書くのは
難しいんだよ、文章が平たくなりがちだから。
お前はもう、ここに来るなよ。
堤防に車を止め、外に出て故郷の空気を吸い込むように深呼吸をしてみた。ぐるりと見
渡す視界の中に、橙色の彼岸花の群れがかすかに揺れている。唯一残されていた貨物線も
廃線になり、線路はおろか枕木などもすべて撤去され、今は秋草だけが昔の静けさに寛い
でいるようだ。土の匂いを久しぶりに嗅ぎながら、堤防の草むらをかき分けて歩いて行く
と、ぽつりぽつりと夏祭りの残骸たちが散らばっている。
束ねた風船の横でアマチュアの大道芸がぱらぱらと拍手を受けたり、夜の花火大会を待
ちきれない者がプラスチックのコップを手に酒盛りをしていたり、なごやかな田舎の風景
の残像がそこにはあった。
――帰ってこなければよかったのかもな
僕は、このまま陸の孤島として細々と生き続ける故郷のけなげさが哀れに思えた。彼岸花
の花言葉は「かなしい思い出」だっただろうか。そんな詩人めいた感傷とは別の思いが、
僕の胸をじわじわと締め付けていた。故郷の記憶を封印しようとした日の自分の悲壮な姿
をふと見つけて、無言の思い出たちに打ちのめされている気分だった。ススキの中で月に
吼えようとしていたかつての感情が、まるで僕の現実を問い詰めているようで、僕は息が
できないまま水の無い川をただ見つめていた。
次は、「空想」「箱」「鎖」でお願いします。
318 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/10 17:14
文芸板で情けない煽りするなよ。こっちまで同レベルと思われるだろ?
即興で思い付かなかったのか?下手でもいいから書いてみろ。
>>316 ちゃんと次のお題が書けてれば
煽り即興文として完成してたのね
残念
>>317 「空想」「箱」「鎖」
---箱がある
黒く、大きな箱である
私の両手を広げたよりも大きい
私は空想する
この箱の中には何が入っているのだろうか
私は箱の中が気になってしょうがない
箱の上部に手をかけ、私は中を覗く
・・・誰?
私の首に鎖がかかる
私は箱の中に引きずり込まれる
箱の中に居た人影は私の背を蹴り、箱の外へと出て行った
・・・私か
箱の中には私が居る
そして、私は空想する
この箱の外には何があるのだろうか
私は鎖を握り締める---
次、「秘書」「辞書」「こしょう」
秘書課にはずいぶん古い辞書があった。
國語辞典という背表紙のその辞書はなぜかいつも社外秘の資料を置く棚の右端に置かれていて、
誰かが手に取るのを待っているようだった。
あたしは中山社長つきの秘書の梨田さんに渡す社外禁用語集を作るために、
その棚から家電部門の資料を探していた。
あたしは用語集を作るのはあたしの担当みたいなものだったから、資料はどこにあるのかわかっていた。辞書の隣だ。
「……くしゅん」
家電の資料を手にしたとたんにホコリが舞って、あたしはこしょうを嗅いだみたいにくしゃみをした。
くしゃみの原因は辞書だ。社史編纂室か資料室がお似合いのその辞書はお年寄のぐちのように
少し動かしただけで積もり積ったホコリをあたしに向かって吐き出してきた。
もう。なんでこんな辞書があるんだろう。
あたしはその辞書を開いてみた。
奥付には昭和十五年と書かれている。何故いきなり奥付が開いたのかと言うと、そこに手紙が挟まっていたからだ。
その手紙にはこう書いてあった。
『いつか君がこの手紙を見つけてくれると信じて 中山駿』
社長の息子名義のその手紙に、あたしは思わず後を振り返った。
梨田さんと目があった。梨田さんはあたしに向かって、
ごめんね、というように手を合わせた。
次は「薬局」「カバー」「水筒」で
「水筒カバーを外したら、中は漏れ出たお茶でビチョビチョになってた」
小学校の遠足の話をしていた。
「昔っからどこか抜けてたのね、あなたって」と彼女は笑う。
笑い事じゃなかったんだ、そのときは。内心そう思いながら幸せそうに笑
う彼女の顔をみているうちに、なぜだかわからないけれど、本当に突然だ
けれど、言いようの無い不安に駆られてしまった。その不安から少しでも
逃れようと、目を逸らす。笑っている彼女の脇に、仕事帰りに二人で薬局
で買った、風薬と頭痛薬と生理用品、そして赤ちゃん用の紙オムツが、何
くわぬかのような顔をして僕らの話を聞いていた。
「笑わないでよ。ほんっとのほんとに悲しかったんだから。カンッカン
照りでさ、熱いのなんのったらありゃしないんだったんだから」
「熱かったよねぇ、あの日は。可愛い子供を日射病で殺すつもりだった
のかしら」
「そしてそれをみた君が、そっと水筒を差し出してくれたってわけだ」
と僕が照れくさそうに言うと、彼女はまた笑いながら、
「しょぼくれてた姿がどこか可愛かったのよ。あんな間の抜けたよう
顔はじめてみたもの」
そう、おかしいくらいに僕はどこか抜けている。だから気づかなかった
んだ。アイツのカバーが破れてて、目に見えない穴が空いていることに。
スレッド4以来じゃ書くの。
山なし、落ちなし、意味なし。
「羊」「バイセクシャル」「日没」
ワタシはいたってノーマルだが、セクシャルマイノリティと現代社会という
テーマに興味を持っていた。ある日、セクシャルマイノリティの問題について考える
地域カンファレンスに参加した時、彼とは出会った。
やがて、ワタシ達二人はお互いに深く愛し合うようになり
そしてそれは、今でも続いている。だが、ワタシは今、幸せではない。
日没に囲いへと戻れなかった羊と同じ運命を辿ってしまったからだ。
バイセクシャルだと思っていた彼が、屍姦嗜好というセクシャルマイノリティだったなんて……。
「奇跡」「クリスマス」「サンタ」
ああ、そうだ。思い出した。ガキの頃読んだクリスマスの話を集めた絵本の…
挿し絵で描かれてた、サンタ。あれに似てるんだ。確か。
俺が夜勤から帰る途中、牛蒡橋を渉っているとその爺さんが見えた。
緩い流れの川にずぶ濡れになりながら踊っている、爺さんを。
膝まで水が浸かっている。街灯のおかげで爺さんの姿はくっきり見える。
爺さんは真っ赤なコートとズボン、そしてこれまた赤い帽子を被って踊っているのだ。
サンタクロースそっくりな、爺さんが。
何の踊りだろうか?と言うか、何ゆえ爺さんは踊っているのか。
この寒空、しかも冷たい川のなかでよくあれだけ元気に踊っているのか。
俺だったら踊るどころか足を浸けるのも難しいだろう。爺さんのような
高齢者が顔の1つも青くせずに踊れるとは、奇跡だろう。
街灯が1回、2回点滅した。
お次は『鏡』『化物』『馬鹿』で。
住所不定無職のサンタ・クロース(62才)が20日、京都市相楽郡加茂町の民家に煙突から侵入しようとしたとして、京都府警から事情聴取を受けた。
サンタ容疑者が民家の屋根にのぼって煙突内部を伺っているところを、付近の住人が発見し、警察に通報した。
サンタ容疑者は駆けつけた警官と約20分間口論した末、ほおを1回殴り、公務執行妨害の現行犯で逮捕された。
警察の事情聴取に対し、サンタ容疑者は「煙突のある家が他にみつからなった」「クリスマスの練習だ」「奇跡を起こせる」などと意味不明な主張を繰り返しているという。
警察では、責任能力の有無について慎重に検討することにしている。
付近では窃盗が相次いでおり、警察では余罪についても厳しく取り調べる方針だという。
つぎのお題は、「精神病」「ひらめき」「宗教」。
(ごめん、間違って↑書き込んだ (゚∀゚)アヒャ 訂正番 ↑はスルーで)
住所不定無職のサンタ・クロース(62才)が20日、京都市相楽郡加茂町の民家に煙突から侵入しようとしたとして、京都府警から事情聴取を受けた。
京都府警によると、サンタ容疑者が民家の屋根にのぼって煙突内部を伺っているところを、付近の住人が発見し、警察に通報した。
サンタ容疑者は駆けつけた警察官と約20分間口論した末、ほおを1回殴り、警察官は公務執行妨害の現行犯でサンタ容疑者を逮捕した。
警察の事情聴取に対し、サンタ容疑者は「煙突のある家が他にみつからなった」「クリスマスの練習だ」「奇跡を起こせる」などと意味不明な主張を繰り返しているという。
警察では、責任能力の有無について慎重に検討することにしている。
付近では窃盗が相次いでおり、警察では余罪についても厳しく取り調べる方針だという。
お題は前の方ので
328 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/11 18:29
奈美もついに力尽きたか。
わたしは大声で助けを求めようとした。が、かすれた声が喉の奥で上ずっているだけだ
った。確かに映っている。鏡を見るわたしの横で、首の無い男がメガネのレンズを拭いて
いる。わたしは目だけを下に向け、自分の足元をそっと見た。わたしの足以外には何も見
えない。も、もしかして、ゆ、幽霊? わたしは目を閉じて息を殺した。お願い、幻覚なら
早く消えて。わたしの耳に「すぅ、はぁ」という息づかいが入ってくる。わたしが女子ト
イレに入ったときはひとの気配はなく、個室のドアもすべて開放されていた。一番奥のト
イレに入り、伝線したストッキンクンを履き替えている間も、人が出入りした様子はなか
った。頭からすっと血が下がっていくようだ。そのとき、女性の話し声が聞こえ、わたし
はおそるおそる目を開けた。首筋から背中にかけて冷たい汗がじっとりと流れている。
二人連れの女性は、それぞれ個室へと消えた。ああ、よかった。やっぱりさっきのシー
ンの化物のせいで見えた幻覚なんだと思い直し、わたしは白いカバーの付いた指定席に戻
った。馬鹿馬鹿しいと笑われるだけだと思い、博には黙っていた。その後のストーリーも
何もわからないまま、首の無い騎士の映画は終わり、画面にはタイトルロールが流れてい
る。ぼんやりスクリーンを見つめていると、館内が徐々に明るくなりはじめた。
わたしは再び息が止まった。観客の首だけが全部後ろを向き、わたしを見ていたのだ。
次は、『表紙』『柱』『爪』でお願いします。
330 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/11 20:58
デュードがパンツの中の大砲で商売を始めると言い出した。
奴のパンツの中にはストローしかなかった気がするが、まあどうでもいいことだ。
デュードは開業祝いに美しい女を贈れと言い出した。
三日以内に贈らなかったら手足の爪を全部剥がして裏返しにしてまた貼り付けてくれるそうだ。
無茶を言ってくれる。ギフト用の女がコンビニエンスストアで売ってるとでも思ってるのか。
しょうがないから公園にでも落ちてないかと探し始めた。
すると意外なことにグラビア雑誌の表紙を飾れるほどの上玉がベンチで無防備に寝ていた。
夜だったから届けるのは明日にして、ひとまず首輪をはめて隠れ家の柱に縛り付けた。
届ける前にあっちの方を品定めしようと剥いてみてさすがの俺も仰天した。
股間には俺のものにも匹敵するデカブツが鎮座ましましていたのだ。
だが、これだけの上玉ならオカマでもいいだろうと翌日そのままデュードに届けた。
その後聞いた話では、デュードは商売道具を大砲から大穴に変えたらしい。
「ヒット」「タイプライター」「ボス」
331 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/11 22:29
鳴かず飛ばずのボスをサクセスさせたのは僕、僕だ。
今では旬の、時の人、ボス。
それで僕が得たモノは?
年季のタイプライター、彼の私物だ、繋がりを示す唯一のしるし。
して今後、皮肉な望み。
コレを駆使して、裏切り者の首根っこを押さえ、鈍いドタマをヒットする。
そんな作品を仕上げたい。
332 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/11 22:32
感染、ラップ、素人目。
少女時代から物の怪に憑かれやすい体質のわたしは、
よりにもよって、13日の金曜日の宿直を任されることとなった。気をつけねば。
しかも、相棒はあの数学教師。あの筋金入りの現実主義者とはそりが合わん。
人のいないはずの教室に鳴り響くラップ音。空気感染するように教室から教室へと広がっていく。
「ふう。この時間帯、生徒の校舎への立ち入りは禁止されているのだが」
おいおい。わたしにはそこいらに霊魂が漂っているのが見えるぞ。
素人目にも不自然すぎる状況のはずだ。さらに、音楽室でひとりでに鳴り出すピアノ。
「はは、最近のピアノは高性能だな。勝手に演奏してくれるなんて。光るピアノってやつか?」
音楽室にそんなピアノを導入する予算はない。いわゆる学校の七不思議というやつだろう。
だが、数学教師がピアノの側にあるコンセントを抜くと、曲はそこで途絶えた。「先行くぞ」
わたしにはピアノの前で悄然としている幽霊の姿がはっきり見える。わたしは衝動的に、その幽霊を締め上げた。
「てめえ、コンセント抜かれたくらいで演奏やめんな? 大体このピアノ電気つかってねえぞ!」
「うう……あの御仁、露ほども信じていないんで干渉できんのですわ。うちら意識野の住人やさかい」
「幽霊ならせめて干渉しやがれ! まるであの野郎が正しいみたいじゃねえか!」
「極論するに、両方正しいんですわ。あねさんも、あの御仁も。そうでないと世界が成立しないでっしゃろ?」
「てことは、わたしばっか損してるじゃねーか!!」
音楽室に響く、霊感をもたぬ人間にも聞こえる、女教師の絶叫は、
校内の新たな七不思議の一つに叙せられる名誉を得た。
次のお題は、「冷凍」「睡眠」「歳月」でよろしくお願いします。
335 :
「冷凍」「睡眠」「歳月」:03/10/12 04:22
男は愛する妻の冷え切った頬を撫でていた。
あれからどのくらいの歳月を経ただろう。
妻が交通事故で帰らぬ人となってから……。
男は絶望的な悲しみにくれたが、妻への強い愛が「死んだ」ということを
認めさせなかった。そしてその思いが妻の遺体を冷凍保存することを選択させた。
大型の冷凍庫。−60℃の中で妻は永遠に睡眠から目覚めることはない。
なにひとつ反応を示さないが確かにそこに「いる」妻。
あの頃のように言葉を交わしたい。身体に触れたい。愛し合いたい……。
男の妻への思いは日に日に強くなっていった。
今、男は微笑んだ。「愛してる」と妻に囁き優しく髪を撫でる。
そして自らも冷凍庫の中へ入り、内側からロックした。
「宝」「監督」「股」
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| ・ ・ | < さぁて誰も読まない小説でも書くか
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337 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/12 08:47
「カット、カット!!!」
邦画会の鬼とよばれる深策監督の土製に、撮影現場が凍りつく。
「コラア、この大根が!! てめえ何年役者やってんだよ。役柄わかってんのか、ああ!?」
相手は俳優暦32年の大ベテランたる里見剛太郎。
そんな彼も監督に頭が上がらないのは、彼自身が監督に見出され、育てられてここまできたからだった。
いや、彼のみならず、いまここにいる現場のスタッフ全てが、深策組とよばれている監督の子供たちのようなものだった。
「いまどんなシーンだ? 旗揚げからついてきた股肱の臣だぞ? 国の宝とまで言われた百人力の将なんだぞ?
その家臣にだ、君主である自らが切腹を命じなきゃいけない、そういう場面だろうが!!!」
メガホンを勢いよく地面に叩きつける。
「もっと感情を考えろよ、主君のよ。全然、こもってねーんだよ!! どんな思いで処断するのか、少しは考えたか?」
「それは・・・・・・」
里見氏は口篭もりつつも、おずおずと述べる。
「やはり、その、譜代の忠臣とはいえ、落ち度は落ち度。特別扱いしては国の秩序はたもてませんから、すまないと思いながら、泣く泣く切腹を・・・・・・」
「ちがああああああう!!!」
監督の絶叫が響き渡る。
「いいかあ、主君にとってな、有能なヤツなんざめざわりでしかねーんだよ。自分より目立つやつなんかな。
自分より部下に尊敬と忠誠が集まったらって考えれば、危ねえだろーが!!
少しでもヤバイって思えるヤツは容赦なく斬るんだよ、自分のみを護るためにな。だれだって自分が一番可愛いんだ!!!
いいかあ、所詮、人間なんてそんなモンなんだよ。譜代だ、忠臣だって便利に使ってても、やばくなれば捨てるのが人間ってモンなんだよ!!
そういう感情をこめろっていうんだ、わかったか?」
「監督もそうなんですか?」
ぽつり、と里見氏が呟いた。
撮影現場に奇妙な沈黙が降りだ。だれもが監督をじっと、くいいるように見つめている。
「いや、俺は違うヨ、もちろん」
監督は苦笑を浮かべながら、気まずげにイイワケがましく述べたけど、一度しらけた空気は、もう元には戻らなかった。
「宝」「監督」「股」
「おーいい。ひと休みしようや」現場監督のひと声で、ブルドーザーや
シャベルカーは唸りを止めた。一輪車で、掘り出した土砂を運んでいた俺も
最後の土を放り出すと、頭のタオルで汗を拭った。このハゲ山の造成工事の
バイトに入って今日で三日目。現場作業が未経験の俺には辛い作業だ。
「あー。参った、参った」伐採した木の根元に崩れるように座り込む。
「アレ?」木の根元から何かがのぞいている。古い荒縄が地中から顔を出して
いるのだ。俺は何の気無しに作業靴のつま先で、荒縄の周りを掘り返してみた。
土が柔らかく他の場所を掘った時と全然、感触がちがう。切り落とした枝を差し
込んでみると、中でカチリと何か固い物に触れた。俺はすばやくあたりを見回した。
それぞれに一服している他の作業員からは、切り倒した丸太が目隠しになって
俺の姿は見えない位置にある。「よし!」俺は両手で夢中で掘り返した。「出た!!」
油紙で封印された小さな瓶が出てきた。もしかしたら小判でも入ってるんじゃないのか?
そっと封印を破ると、中にはどっしりとした「金の延べ棒」が入っていた。
「マジかよ……」心臓が縮み上がる。その時「何やってんだあ?」と現場監督の声がした。
俺は驚いて尻餅をついた。「あー、また出たか。びっくりしたろう?まあ、見てなヨ」
そう言うと監督は、ツルハシで「金の延べ棒」をかち割った。「!!」俺は息を飲む。
まっぷたつになった延べ棒の中身は、なんと、ただのコンクリートだった。
「ここの地主だった奴は、徳川の埋蔵金やら財宝やらの発見に全財産注ぎ込んで
破産したんだってさ。その恨みか、趣味なのか、こういう悪戯が多いのよ」慰めるように言う
監督から目をそらし、俺はしゃがんだ股の間に頭をいれて、おしの様に押し黙った。
次のお題は「美味」「珍味」「禁制品」でお願いです。
「美味美味美味美味美味美味美味美味美味美味美味ィィィッッ!!!!!」
街頭でこんなこと言ってる奴いました。お巡りさんちょっと来て下さい。
「私はめったに珍味を味わうことなどないが、これには堪えられぬ!! 美味なるぞォォ〜〜〜!!!!」
えっ? 渋滞に捕まってる? 早くしてくださいよ。皆ビビッてますんで。
「これは、禁制品にすべしであろ。こんなものがこの世に存在しては私は生きていけぬわァ!!」
こっち振んなや。『すべしであろ』ってさあ。おや、サイレンの音が。お巡りさんこっちです。
調べてみると、男はファイヤートリッパーであることが分かった。
今まで日本全国で計58件の放火事件を起こしてきたらしい。
ともかく、これ以上犠牲者が出なくて良かった。ありがとう、美味珍味禁制品。
「国際」「社会」「通念」
340 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/12 11:06
573 :109.113.99.219.ap.yournet.ne.jp熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/12 04:16 ID:yh/dyqb2
【板名】創作文芸板
【スレのURL】
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1064168742/l50 【名前】名無し物書き@推敲中?
【メール欄(省略可)】
【本文】
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以下の会話を英訳せよ。(50点満点)
A「すいません。オマーン国際空港はどこですか?」
B「ここの地図を見てください」
A「私は地図が読めません」
B「あなたはきっと子供の頃社会の成績が悪かったですね」
A「地図が読めないから社会の成績が悪いというのは誤った通念ですよ」
B「失礼しました。ここから真っ直ぐ5区画進んで右に曲がれば見えます」
A「ありがとうございました」
『新訳』『誤訳』『新約』
木こりは熱心なキリスト教徒だった。
木こりは信心深く、教えを厳格に守っていた。
片時も聖書を手放さず、一日のほとんどの時間を聖書を読みながらすごしていた。
ある時、木こりが聖書を読みながら歩いていると、自分が切った切り株に気付かず転んでしまい、
男は手にもっていた聖書を泉に落としてしまった。
何よりも大切にしていた聖書を落としてしまい、木こりはオイオイと泣いた。
しばらくすると、泉の中から若い女の姿をした泉の精が現れた。
「貴方が落としたのは、この旧約聖書ですか。この新約聖書ですか。
それともこの誤訳聖書ですか。」
木こりはすぐに、「旧約聖書です」と答えた。
泉の精は、「貴方は正直な人ですね。ご褒美にすべて差し上げましょう。
旧約聖書は新しいものを差し上げましょう。」と言い、3つの聖書を渡した。
しかし、木こりは暫く3つの聖書を読み比べると、手書きの粗末な誤訳聖書だけを手に取り、
他の2つは捨ててしまった。
泉の精は悲しそうに、「貴方が持っていたのは旧約聖書ではなかったのですか」と聞いた。
木こりは開いた旧約聖書を指し、「俺が持っていたのにはこんな文字は書かれていない」
と返事をして、元来た道を戻ってしまった。
泉の精は手にしていた古い旧約聖書を開くと、手垢で殆どの文字が滲んでしまっていた。
次は「ボールペン」「密室」「ノート」で
おれは3時限目から出席するフツーの高校生だったが、何故か宇宙飛行士に選ばれた。
大気圏を突破するときは、部屋が密室のせいなのか、少し圧迫される感じがしたが、まあどうにかなった。
順調に飛行ルートをなぞっていると思ったとき、異常発生。
突如ルートから外れ、太陽に接近して行っているらしい。
「Hey!! don,t keep your ……」
他の外人エリートさんたちが騒いでいる。こんな感じで、おれは英語が解らない。
「Push!! 〜〜〜」
なんか訳解らんが、とにかく目の前のボタン一杯集まっているトコをぶったたいてみた。
すると、正常なルートに戻ったっぽかったので、よかった。
おれは彼らに胴上げされた。なんだかふわふわして気持ちが悪かった。
こんな感じでこの後もテキトーにこなしてたら、帰ってこれた。
地球に帰ってきたら、おれフィーバー。宇宙ノートを出版しないか、と言う話まで舞い込んできた。
当然快諾、大ベストセラー。売上金でおれ記念館まで出来上がった。すげえ、隕石で作ったボールペンの売り上げ。
こんな真っ赤な嘘商品でもバカ売れするこの国は素晴らしいと思う。
人間、チャンスを逃してはいけない。
「浪漫」「生理」「石」
十年前、自転車で転んで肘を擦りむいた私に同級生の石川くんがハンカチを貸してくれた。
「ありがと、明日必ず洗って返すね」
私は石川くんにそう約束した。でも、その約束は叶わなかった。
私はその日のうちに父の仕事の都合でオーストラリアに引っ越したのだった。
ようやく日本に帰ってきたのがつい先月のことだ。
今では石川くんは大脳生理学の権威として全世界に名を馳せていた。
私のことなんか忘れているかも…
そんな不安もよぎったけど、勇気を振り絞って連絡してみた。
なんと石川くんは私の声を聞いただけで思い出してくれた。
彼の研究室で私は十年ぶりに石川くんに再会した。
積もる話の後で、私はあの思い出のハンカチを…
あ、オーストラリアに忘れてきた。
「出血」「銀色」「欲しかった」
「浪漫」入れ忘れた。
ごめんよ。無視してくれて結構。
346 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/12 17:33
>>342 前の人がまともな文を書いてない場合はお題は無視してください。
>>346 申し訳ない。
以後気をつけます。^^;
348 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/12 18:18
無数の大蛇が絡みつくような樹海の奥地だった。
ここまで追ってくる者はいるまい、そう安心したからだろうか。男は地面に倒れこんだ。
腹部の出血は止まる気配さえ見せない。明らかに致命傷だった。
助かりたくてここまで逃げてきたわけではない。己の死を晒すのは、彼の本意ではなかった。
(・・・・・・寒いな。なんでこんなに寒いんだろう)
それはどこか郷愁にも似た思いだったかもしれない。
そう、あの日もこんなふうな寒い日だったような気がする。彼は漠然と思った。饐えた臭いが立ちこめる貧民街で、いたずらに死の足音が近づくのを聞いていた、あの雪の日の夜も。
苦笑が浮かんだ。
(結局、俺はあのころと何も変われなかったんだな・・・・・・)
望んで得たはずの帝位だった。そのために、どれだけの犠牲をしいてきたか。彼の歩んできた道は、血と殺戮に彩られていた。
至尊の帝位。空前の大帝国。だが、それが本当に欲しかったものなのか。なにかもっと、別のものを欲していたのでしないか。
わからない。
もうなにもかもがどうでもいいことのように思えた。
なにもないところから始めて、総てを手に入れ、そして結局は何もかもなくして同じ場所へ帰ってゆく。始まりも終わりも総ては同じなのだ。
長い、長いため息を吐いて、彼は銀色の瞳を閉じた。
そして二度と開かなかった。
「開く」「呑む」「嘲る」
「出血」「銀色」「欲しかった」
「ホントはあたしのこと、ずっと欲しかったんでしょ」
出血。
「あ、あぁ」私は曖昧な相づちを討つ。
溢れ出して来る。
「素直になりなさいよね。ふふふ」
完全に彼女に身を委ねた私の手元から、十字の形をした
銀色の虚構が落ちていった。
そして、それは、私の首筋から流れた血が、皮膚を伝っ
て床に届くのよりも早く、脆い音を立てて崩れていった。
「円軌道」「儀式」「暮雨」
350 :
「円軌道」「儀式」「暮雨」:03/10/12 19:16
車を降りてつづらおりの円軌道を二三越えてはいたが、目的の山寺まではまだ距離があった。
「まいったな」
暮雨の中、仁科はけもの道、といっていい剥き出しの地面を踏みしめていた。
「教授、本当にこの道でいいんですか?」
学部四年の宇山涼子がスニーカーの汚れを気にしながら不安気に仁科を見た。
「大丈夫だよ。まったく君は心配症だなぁ」
仁科の笑いはあまり霊験あらたかではないらしい。
「……そう、思う。いやね、僕も前にここに来るまでは信じていなかったんだよ」
仁科は沸き起こる不安を言葉で埋めていった。
「真言立川流の儀式なんてものは大概後世に面白おかしく伝わったものばかりだからね。まあ元々が淫祠邪教の類とされているわけだから。
最初聞いたときは驚いたもんだ。阿闍梨からは儀式を見せてやる、とまで言われてね。その時もうすこし意気地というものがあればよかったんだが。
覚えているかい? 前にゼミでやった筈だよ」
「淫水でしゃれこうべを塗り固めること40日、というやつですよね」
「そうだ。しかしなかなかそういうのに付き合えるご婦人はいないもんだ。だからその気にさせる方法というのも発達したんだそうだ。記録には残っていないがね」
仁科は涼子をちらっと振り返った。
涼子は何か言いたそうに仁科を見つめ、微笑んだ。
「……教授にもうすこし勇気があればよかったですね」
「そうだねえ。そうしたらその時に記録が取れたんだがね」
涼子は仁科の上着のスソを握った。
「……もう少しでつくよ」
仁科は振り返らずに先を急いだ。
次は「爪切り」「パンツ」「暖房」で
352 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/12 22:48
外は極寒、真冬の凍てつく景色の中で、内で、てかウチで、
暖房ガンガン真夏のハワイ、俺裸族。
パンツなど拒否、開放感。
儀式めいた作法で順序で手足の爪切り、準備OK。
早速漕ぎ出す(こき出す)、魅惑の海へ、海原へ。
即発射。
353 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/12 22:49
桜。吐息。血尿。
爪きり、暖房、パンツ。
パチン、パチン。あいつが爪を切っている。
別にいいんだけどさ、つめを切るぐらい。でもあなた、私の家に来てまだ何の言葉も発してないよ。
爪を切ってるあなたに私の姿は写ってるの?
じっと見つめる私の目にはあなたしか写ってないのに。冷え切ったこの空気、あなたの暖房で暖めてよ。
悲しくなる前に私の心を暖めてよ。
静寂のこの部屋であいつの爪を切る音だけが響いてる。
最近、気合を入れたパンツも穿いてないなぁ。もう潮時かなぁ。。。あ、あいつがこっちを見つめてる。
「もう、帰るわ」
あなたここに何しに来たの?
教室、靴、カレンダー。
355 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/12 23:23
雌豚のステファニーが血尿が出たと言ってわめいていた。
何でも、エレンと我慢比べをして二日間小便を我慢したところへ
負けてパンツを濡らしたエレンが腹いせにボディブローを喰らわせたらしい。
自分はもう長くないから思い出をちょうだいとステファニーは言った。
公園の大きな桜の下でヤりたい、とステファニーは前から言っていた。
俺はデブ専ではないのでよほど飢えてない限り
体重100キロを超えるこいつと交わりたくはなかったが、
結局は思い出をくれてやることにした。
ことが終わるとステファニーは生温かい吐息を俺の首筋に吹きかけた。
そして、ステファニーはもう動かなかった。
俺は今日が来るたび思い出す。数年の時を経てもなお鮮やかに、鋭い胸の
痛みを伴って、あの日の甘く苦い記憶を。
「日曜日の夕方、教室で待ってるから」
俺は行かなかった。躍り上がるような歓喜に包まれたくせに、カレンダーに印
をつけるほど心囚われたくせに。
俺は幼かった。ほんの僅か教室の手前、下駄箱で、俺は怖くなった。彼女の
靴箱に上履きがないのを確かめた時、本当に『いる』ことを知ったとき、俺は人
に想われることを恐れたのだ。
歓喜に倍する恐怖に襲われ、俺は逃げ出してしまった。あの時俺は何を恐れ
たのだろう。家族?友人?制度?恐怖への恐怖?それはもう思い出せない。
俺は今日が来るたび思い出す。あの日の舞い上がるような心持ちと、翌日見
せた彼女の悲しげな表情が、俺の心に暖かく、そして冷たい風を吹かせるのだ。
次のお題は「ブラウン管」「ステッカー」「割り箸」で。
357 :
「ブラウン管」「ステッカー」「割り箸」:03/10/13 02:44
「・・・ウチ来る?」彼女が俺にそう告げた瞬間、
俺は人生で初めて耳を動かすことに成功した。というか体中がビクンとした。
こんな夜の11時に彼女の家に行く、って事はつまり・・・・・・・「ぃ、行く!」
巷で大人気の天然娘。とてもかわいい。行動すべてがかわいい。
「切手買ってくる」を「キットカットいる?」と勘違いして
「手にベトつくからいやー」と言った俺の彼女。
パーティなんてやらないのにコンビニ弁当と一緒に
割り箸の100本詰めを買ってきた俺の彼女。
というか俺はこんな純粋な女子を淫らな女豹に変えていいのだろうか・・・・。
彼女の家に入った俺は絶句した。
テレビがある。
しかしそこにはカリブ海賊、しゃれこうべ、ゾンビ、十字架・・・・などの
俺の知っている彼女から連想できもしない大量のステッカーが所狭しと貼られていたのだ!!
そう、それはブラウン管の隅にまでおよんでいた。
「なにこれ・・・・」
「うんとね、テレビから幽霊が出てくるって聞いたからこの人たちに守ってもらってるの」
俺は彼女をソファに押し倒した。
しまった。コンドームがない。こいつとできっちゃった結婚するのはぜってぇいやだ。
※書いてる時の気持ちが不安定だったから変になってるだろうな・・・
お次は「のど飴/職人技/ジャンプ」でお願いします
昔、ジャンプしてブロックを壊すヒゲ親父がいたけど、あれって職人芸だと思う。
実を言うと、僕はそのヒゲにどうしようもなく憧れてしまっていた時期があったのだ。
丁度ファミコンの3が出た時だった気がする。
そして、今、僕はどうしようもなかった。
ロクに高校へも行かず、かといって何をするでもない。慣れないタバコを嗜み、のどを壊す。
そんな無為なコトを繰り返しているうちに、いつのまにやらのど飴が無ければ生きてゆけない体になってしまった…。
僕は外に出た。学校に行くつもりはこれっぽっちも無い。ただ、なんとなくだ。
いや、日常と違う何かを、生活サイクルに組み入れたかったのかも――。
そんなときだった。僕があの懐かしいモノを見つけたのは。
空き地の空の上に浮かぶ、あのヒゲ親父のゲームのブロック――。
2メートルはあるが、僕は飛ぼうとする。体が勝手に動こうとする。
飛ぶ。全然届かない…。悔しくて、またエイヤと飛び上がる。その繰り返しだった――
やっと触れたと思ったとき、もうブロックの形は見えなくなっていた。
でも、感じ取れる。僕の体に新しい力が与えられたこと……。
パワーアップアイテムを手にしたヒゲ親父のような、溢れるパワーを――。
マリオ3は傑作。
「神」「ブーツ」「天命」
貴方は神を信じます?私?私は信じませんよ。あんな奴を信じるほうがどうかしてますよ。
いきなり私に「新作のブーツ買ってきてくれ」なんて言うくらい当たり前で、こないだなんか自分が暇だからって
「あー、どっかで戦争起きないかなぁ」て言ってた奴ですよ?
しかも、逆らったら「天命だ。俺の声は天の声なんだよ!」なんて言い出すし、付き合ってられませんよ。
ほんと、あんなのが神だと思うと情けなくて情けなくて……。
あ、もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと休憩時間が終わっちゃいます。
愚痴聞いてくださってありがとうございました。また機会があったらお会いしましょう。
では、貴方に神のご加護がありますように。
次は「ピアノ」「楽譜」「満月」で
360 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/13 11:26
私はついに秘密結社満月団のアジトを突き止めた。
だが、アジトへ潜入してみると人の気配はまるでなかったし
奴らが扱っていたはずの武器や麻薬も影も形も無い。
すでに引き払われた後だったのだろうか?
残っていたのは場違いに豪華なピアノが一台のみ。
念のためピアノもあちこち動かしてみたが隠し通路などは見つからなかった。
諦めて引き揚げようとしたその時だった。地面に小さな紙が落ちているのを見つけた。
紙には楽譜が書かれていた。私はふとひらめいてピアノの前に戻った。
この楽譜の通りにキーを叩いてみる。だが、何も起こらない。
お手上げだ。私は一応紙を持って本当に引き揚げた。
翌日、楽譜が逆さまだったことに気付いてもう一度行ったときには、
奴らは本当に逃げ去った後だった。
「極秘」「禁」「秘密」
熱液は即刻NGワード登録しましたが何か。
次のお題は
「熱液」「ウゼェ」「死ね」
でお願いします。
その駅の周辺には、「穴」があるという。
その穴は一つ。円く、大きい。深い。暗い。覗き込んでも何も見えず、何もわからない。
その禁じられたその穴は、発見当時は注目を集め、マスコミによる調査もされたが結局は、穴の底にたどり着けず
今では話題性もなくなり、おざなりの立ち入り禁止の囲いができているだけで、放置されている。大衆は飽きるものだ。
現在の穴は主婦の格好の的だ。ゴミだ。底なしの穴に目をつけ、粗大ゴミを捨てるのである。この町のゴミ収集量が極端に
減ったのもこの穴が現れてからだ。それほどの量が捨てられている。皆がやっているが、皆が気づいてないふりをする。公然の秘密というや
つだ。
いつもの様に夜中に、ある主婦がゴミを捨てにいく。いつもの穴。いつみても気味が悪い、そう思いながら壊れたノートパソコンを捨てる。
一瞬の内に穴に吸い込まれ、見えなくなった。当たり前だが、何の音もしない。底がないからだ。
その時、背中を誰かに押された。主婦は、ちょうど穴を覗き込む様なかっこだったのも災いして、抗う事もなく
真逆さまに穴に墜落していった。暗い。怖い。主婦は感じはしたが、何も考えらなくなった。いつまでも落ちていく。いつまでも暗い。いつまでも怖い。
いつまでも速い。
人の気配を感じた。その方向に向き直りたいが、落ちている最中なので出来ない。声もでない。
ー秘密ー
その声にならない声、一種の思念は主婦に語りかけた。
ー秘密ー極秘ー誰にも言えないー見せてあげるー
主婦は、走馬灯のごとく自らを見た。母親の胎内から生れ落ちる瞬間から現在まで。
最後の自分。穴を覗いている。誰かが自分を落とす。夫だ。
何故?主婦はその感覚に囚われた。落ちる。堕ちる。やがてすべての真実が見えてきた。
疑問は抱かなかった。それはあるのだ。感覚的に分かった。
ある日ある町の駅の周辺で、奇妙な事が起こった。一つの洗濯機が空から降ってきたのである。
その洗濯機は、かなりの高度から落下したと予想されるにも関わらず傷一つなかったという。
「雲」 「カン」 「大事」
大事にしてた、白いパラソル。
2人で差して歩くんだって、言ってたっけ。
あの日、雨が降りそうだっていう、僕の勘は当たってた。
君は、こんなに晴れてるのに、雲1つないのにって、信じなかったね。
結局、出来ないままだった。
そんな大事じゃないんだけど。
そういう小さな想い出が、積もり重なって、僕の心を締め付ける。
君の二十数年の人生の中に、幸せなエピソードを、僕はいくつ残せただろうか。
「ワンピース」「雨」「青」
ワンピースっていい。なんかソソる。
驟雨が襲う。彼女のワンピースが濡れ、青いブラがくっきり見えるようになる。
僕の体は欲で燃える。
彼女は僕に燃えてくれるだろうか。
「手術」「卵」「欄」
366 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/13 17:20
「次の方どうぞ」
扉の中から、薄暗い廊下に女の声が響き渡った。
ぼくがドアを開けると、そこには髪を後ろで三つにしばった若い女が、小さな椅子に腰掛けてこっちを見ていた。
その顔には、薄い笑みを浮かべていた。
部屋の中には、余計なものは何一つ無かった。
窓や時計さえも存在しなかった。
いささか奇妙な部屋だ。
僕は一瞬、ここから今すぐに逃げ出したい衝動に駆られた。
「では、この名簿にお名前を記してください」
女はそう言うと、ポケットから枠線すら書かかれていない、真っ白な紙とペンを取り出した。
女の顔には依然として薄い笑みが浮んでいる。
僕はそれを受け取り、真っ白な紙の真中に自分の名前を書いた。
しかし、この紙を名簿と呼ぶにはいささかの抵抗があった。
「これで、よろしいでしょうか?」
僕が紙(女が名簿と呼んでいるもの)を見せると、女は表情を変えずに、ありがとうございます、と言った。
「それでは、こちらに来てもらえますか?」
女は椅子から立ち上がり、そのまま僕とすれ違い、入ってきたドアから外へ出ていってしまった。
僕は慌て女のあとを追おうと、ドアを開けた。
367 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/13 17:21
しかし、そこには既に女の姿は無かった。
僕は呆然としてしばらくその場に立ち尽くしていた。
しかしいくら待ってみても女の姿は見えない。
僕は仕方なく、薄暗い廊下をあてもなく歩き回った。
少し歩いたところで、「手術室」というプレートがぶら下がったドアに行き当たった。
僕はそのドアを何回かノックしたが、誰からの返事も無かった。
少し考えて、僕はドアノブを回してみた。
カチャ、という気持ちのよい音と共に、ドアは勢い良く開いた。
中には、もちろん誰の姿もなかった。
女のいた部屋と同様、そこには窓も無ければ時計も存在していなかった。椅子すらも置いていない。
僕が急に怖くなって部屋を出ようとした瞬間、どこからともなく女の声が聞こえてきた。
「その部屋はあなたの心です。卵のように脆く、壊れやすい。あなたはその部屋から出る事はできません」
僕にははじめから分かっていた。
分かっていて、自ら進んでここに来たのだ。
僕は諦めて、床に勢い良く寝転んだ。
僕の後ろでは、ドアがゆっくりと閉まり、あとからカチャ、という鍵のしまる音が聞こえた。
「打破」「ペニス」「鍵穴」
>>1より
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
369 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/13 17:51
長文Uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
370 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/13 17:53
それと前の人がまともな文を書いてない場合はお題はスルーしてほしい。
俺は、清楚で、淑やかな、隣のクラスの奈緒子が好きだ。
だから、この状況を、なんとか打破しなくてはいけないのだ。
小学3年の時に、両親の部屋の鍵穴から覗いた夜の営みを、
6つ年上の、隣の美香姉ちゃんに聞いてから早5年。俺は姉ちゃんの玩具だ。
自分の股間から生えた子象の鼻のようなちんちんを、
大人たちは「ペニス」と呼ぶのだと、俺はそのとき教わった。
姉ちゃんは悪魔だ。そして俺は最低最悪のバカだ。クズだ。ゴミだ。
口では嫌だと言っていても、俺の手をふくよかな自分の胸に押し付けたり、
ペニスをその柔らかい手で撫でれば、俺が抵抗できないことを、姉ちゃんはよく知っている。
そして奈緒子のことを漏らしたその日以来、あんたの奈緒子も私と同じだと、耳元に囁いてくるのだ。
いや、違う、俺の奈緒子は清純なはずだ。こんなにいやらしい声では喘がないはずだ。
もっと小さな声で、控えめに……いやいやいやいや、そもそも、
奈緒子はこんな事はしない。そうだ、しないのだ。
あんたには私がいるでしょ。あんたには私がお似合いなの。私にしておきなさい。
ううう、いや違う、こんな本能で動く、獣みたいなのが、俺の本当の姿なわけがない……。
姉ちゃんといると、俺は駄目になる。駄目にされてしまう。抜け出さなくてはいけない。しかし……。
そして今日も俺は、綺麗な、汚れのない奈緒子を求めながら、姉ちゃんの身体に溺れてしまうのだ。
「回転」 「業者」 「増殖」
俺は体液にまみれた新聞紙を振るった。快音はもう聞かれない。粘液が壁を叩き
潰す音と、粘液になったヤツが壁にへばりつく音だけだ。
マスクはもうない。取れてしまった。部屋に充満した粘っこい空気が、もう2時間も
前に駄目にしてしまった。汚穢への嫌悪も、もう麻痺してしまった。俺はマシー
ンだ。ただ汁に半ばとろけた新聞紙を振るい、ヤツを殺し続ける、一つの生態機械だ。
援軍!援軍はまだか!俺は血走った目を扉に向けた。闘争のエキスパート、絶対
殺戮の業を秘めた死の商人、滅失の業者!俺に万倍する、渇仰の戦士!
「ぬああああああ!!」
俺は雄叫びを上げ、新聞紙を振りかざし、壁に叩きつけた。一撃で5匹を粉砕する。
しかしそれでも、ヤツらは留まることを知らない。
這いずり、回転し、のた打ち回り、仲間の死肉を喰らい、羽を広げて飛行し、触角を
蠢かせ、ただただどこからともなく増殖する無慮数万のゴキブリの群れは!
「業者はまだかぁっ!?」
俺は狂った絶叫を上げ、汚液が沁み込むのも構わず、俺の脛に飛びついたヤツを
ひしゃげた新聞紙で破砕した。
次のお題は「朝帰り」「ロケットランチャー」「マウスパッド」で。
373 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/13 19:58
マウスパッドが地面に落ちた。
自分の見ているものが信じられなかった。
ああ、それが幻であってくれとどれだけ願ったろうか。
あるいは他人の空似だと。
だが、俺が彼女を見間違えるはずはなかった。俺はあいつのマンコの中まで知っているんたぜ。
どうしてだ、陽子。なんで俺以外の男と朝帰りしたんだ。確かに俺はオマエを束縛しないと約束はした。だが、どうして相手がタケトなんだ?
俺よりいいっていうのか、そんな、高木ブーにも似たヘタレデブが。
それだけは許せなかった。
たまたま持っていたロケットランチャーを肩に担ぐと、安全装置をはずし、スコープの中央に2人の姿を捉える。
わらってやがる・・・・・・
ターゲットサイトの向こうで、2人は幸せそうに微笑んでいた。
幸せのまま、逝かせてやるよ。
それが、陽子、オマエに対する俺の愛の証だ・・・・・・。
俺は躊躇なくボタンを押した。
次は〜「僭越」「掘る」「繋げる」
もう破れかぶれだな。
駅前を裸で踊り狂いながら疾走している感じだ(ワラ
破滅へ向かって百の花束
俺は熱液さんじゃないよ。
だから次回のお題もまともでしょ。
ただ、与えられた題材を偉そうにえり好みしないだけ。
文章の勉強している身分で、アレは嫌です、コレは書きたくないです、なんて言いたくないってだけ。
とにかく貪欲に書くしかないでしょ、プロを目指しているなら。
それとも同人誌で書きつづけていれば満足なわけで、プロを目指すってのは才能のない自分を慰めるイイワケなんでしょうか?
俺は自分にイイワケしたりゴマカシしたりしたくないね。
>376
ただ貪欲に書いてるだけじゃあ上手くはならない。
感想貰って、悪いトコ直して、そうやって少しづつ成長していくもの。
ただ書きゃ成長するんなら、プロ並の奴等がゴロゴロすることになるぜ?
378 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/14 00:04
ジョーの墓を掘る羽目になったあの日から俺達はずっとリーダー不在の状態が続いていたが、
ようやく新リーダーを決めるための集会が行われることになった。
集会が始まるなり、目立ちたがりのジャックが立候補した。
他に立候補する者はいなかったから決まりなのだが、ジャックはご丁寧に選挙演説を始めた。
ろくに聞きもしなかったので内容はほとんど覚えてない。
未来へ繋げるとか明日へ導くとか、そんな意味合いのフレーズを延々繰り返してたと思う。
みんな退屈していた。居眠りを始めた者もいた。エレンはすでに寝小便するぐらい熟睡している。
さらに数時間して全員に殺意が芽生え始めた頃、ジャックはようやく演説を終えた。
全員の承認を得て、ジャックは新リーダーになった。そしてジャックはこう言い出した。
「では、僭越ながら喜びの裸踊りを披露いたします!」
その日のうちに俺達はジャックの墓を掘る羽目になった。
リーダー不在の状態はもうしばらく続きそうだ。
「無理矢理」「押し込む」「撲滅」
379 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/14 02:56
幼い頃に父親が死んだ。
だから、あまり記憶には無い。
微かに憶えているのは父親は「何かを撲滅する運動」
と言う活動をする市民団体に参加していたというだけだ。
ただ、母親が言い伝えるところに依れば
父は無理矢理にその団体に参加させられていたそうだ。
――何かを撲滅する。その何かとは何なのだろう?
考えながら父親の写真を手に取る。
写真の中の父を見た瞬間、頭の中を電気が走る感覚に襲われた。
僕は『何か』を知っていたのだ。今までそれを記憶の片隅に押し込んでいたのだ。
「そうか!そおういう事だったんだ!」
そう叫んだ時、背後に人の気配を感じた。
振り帰ると、そこには母が立っていた――
「帰る」「光る」「見張る」
「帰る」「光る」「見張る」
望遠鏡を覗く目に力が入る。この機会は逃せない。
やっと巡って来た、この絶交の時に帰ることなんて出来
ない。後ろで連れのぼやく声が聞こえるが、いっこうに
構いやしない。
僕のプライドにかけても、一心不乱に追ってきたんだ、
逃すわけにはいかない。
覗く左目の、直線上の対象が光る。意識を集中させる。
鋭いまでに目を見張る。
無謀なまでに存在を感じさせる、その光の中にこそ僕
の求めているものがあった。ビンゴ! ついにやった。
彼女は下着を脱ぎ、美しい、とても美しい、しなやか
な肢体を僕に差し出した。
落ちはねえよ。
「腐乱」「集注」「四諦」
スペースグライダーのコンパスをセットして、次元跳躍航法に問題なく移行したのを確認すれば、
もう僕ら乗組員にやるべきことはない。もとよりコンピューターが文句ひとつ言わずに黙々と仕事
をこなしているのだ。彼らは何故あんなにも勤勉で真摯なのだろう。そういう生き物だからだろうか。
いつものように暇をもてあました僕は、例のごとく古典文学の集注だかガイド本だかを読み散ら
しているジュリオに話しかけた。
「なあ、お前〈四諦〉って言葉、知ってるか。言っとくけど死体じゃないぞ。苦集滅道のほうだ」
「宇宙の果てを知らないように、そんな言葉知らねー」
ジュリオは気取って答えた。僕にはそれが古典文学の『ジョジョの奇妙な冒険』の台詞をアレンジ
したものだとはわかったが、どこのシーンで使われたものかまではわからなかった。
「宇宙の果て、か。僕たちはまだいわゆる宇宙人にすら出会っていないなあ」
「いきなりなんだよ。まあ、サイヤ人だとかフリーザさまに襲われないだけましさ」
僕ら人類が宇宙に出て数世紀、まだ自分たちと違う星に生活する知的生命体には出会っていない。
けれど存在の痕跡を発見することには成功していた。ある星に、高度な文明のなれの果てと明らか
にみえるものを見つけたのだ。その遺跡は人類に多大な影響を与えた。今僕らが使っている技術の
ほとんどが遺跡からの恩恵にあずかっている。
でも遺跡のもとの主はいったいどこへ消えたのだろう。ある星態学者は言った。あの星は魚や蟹に
食い荒らされた腐乱死体みたいなものだ、と。星を食い尽くした後、まだ見ぬ彼らはどこへ行ったのか。
地球を食い潰してしまった僕ら人類は、これからどこへ行くのだろう。
もっとも、大学を辞めてしまって小さな運送会社に潜りこんだ僕がそんなことを考えたところで
仕方のないところだ。僕のやることはただひとつ、今日も誰かと誰かを繋ぐ架け橋―うちの会社の
キャッチコピーだ―になるだけさ。ハロー。ニイハオ。こんにちは。今日もご利用ありがとうござい
ます。
すこし長くなってしまった。
次は 「フットボール」 「最後」 「音楽」 で。
382 :
「フットボール」 「最後」 「音楽」:03/10/14 14:38
五時間目の音楽の時間、僕は突然校長室に呼び出された。理由は分かっている。
昼休み中にフットボールをしていて、僕が蹴ったボールが校長の眩しい頭にクリーンヒットした。
神に誓ってあれはわざと当てたんじゃない。突然地面から生えてきた校長の方が八割がた悪いはずだ。
これまで校長室に呼び出された者はみんなそのまま行方不明になったらしい。
僕も行方不明になるのだろうか。自分が行方不明になるのはどんな心地だろう。
僕は校長室に向かう途中で三回水道を見つけて三回水を飲み、三回トイレを見つけて三回おしっこをした。
校長室の前に着いた頃には脚ががくがく震え始めていた。
落ち着くために僕は給食の残りのレモンジャムを取り出して食べた。
僕はレモンジャムが大好きだった。中毒と言ってもいいぐらいだった。
僕のクラスにはレモンアレルギーの人が多く、給食で出るたびに二十個手に入る。
昼休み中に五個食べたから残りは十四個。残りも全部食べてしまいたくなったけど、
そうしたら本当に最後の食べ収めになってしまう気がしたから、三個残して十一個だけ食べた。
さあ、行こう。僕はついに校長室のドアをノックした。
「恐怖」「ジャム」「逆さま」
「恐怖」「ジャム」「逆さま」
私が16才になった時、ママは私にジャムの作り方を教えてくれた。
「好きな人のことを考えながら、ゆっくりスプーンを回すのよ」
森で摘んだ木いちご、ヘビいちご、黒すぐり、こけもも放り込み
香りのいいお酒をひと垂らししたら、ゆっくり煮込んで、はい出来上がり。
「好きな人にあげてごらん。きっとおまえに恋してくれる」
私は、ジャムのたっぷり入ったケーキを、大好きな人にプレゼントした。
「愛しているよ。結婚しよう」私は大好きな人の輝くばかりの花嫁になった。
あれから何年が経っただろう。私のジャムは色を失い、棚の上でほこりをかぶって
触れる人もいない。あの人は、町の女の元へ行ってしまった。私はママの言葉を
思い出す。「焼け付くような心をこめて、逆さまに早く、スプーンを回してごらん」
私はぐつぐつと新しいジャムを煮る。早く早く、あの人に帰ってきてほしい。
私は町にジャムを売りに行った。「ひとつちょうだい」あの人の女が手招きする。
失望も恐怖も知らぬ乙女の瞳。赤いジャムを手にのせて、女は軽やかに戸を閉めた。
魔女のジャムを食べた女は、焼け付くような渇きを覚え、男を殺すと生き血を
すすった。小さな骨になった男は、ジャムの瓶に入って、魔女の元へと帰っていった。
*次は「裏切り」「掟」「追跡」でおねがいします。
四十年目に突入した。
桃鉄というゲームは何年経過しようとも気が抜けない。キングボンビー一発で
絶望的な大逆転が起こるのだ。というか、脱出不可能な貧民が一人増えるのだ。
一兆オーバーを背負ってトップ街道を爆走する俺は、二千億マイナのラスから
執拗な追跡を受けていた。しかし金のある身は強いもの、後一歩というところで
新幹線やリニアを駆使し、嘲笑うように引き離して思うように地団太を踏ませていた。
しかも2位との共闘体制。裏切りはない。賭けの対象となったジュースが、信頼の
担保となっている。今も東北本線に俺の追跡路を、2位のヤツがうんちで絶ってくれ
た。俺がここにいてカードでも使っていれば、ラスは北陸本線へ迂回するしかない。
しかし、2位が奇妙な動きを見せた。リニアカードを用い、二十数歩を確保した彼は
ラスのボンビーを拾い、秋田から盛岡へ……俺のピシャリ上!?
「愛と友情……そして掟破りの裏切り」
『キ〜〜ング、ボンビ〜〜〜〜〜!!』
「こっ、この野郎!」
こうして俺たちは残りの六十年余りを、不毛な消耗戦ですごした。誰がおごったか
は……聞くな。
次のお題は「出航」「潜水」「ガスタービン」で。
夏真っ盛り――。
おれはプールの授業を受けていた。プールは好きだ。
薬まみれの液体とはいえ、やはり体が大きなものに包まれる感覚というのはいい。
おれは息を思い切り吸い込み、潜水をする。
目の前が薄青く染まり、水が耳に詰る音で占められる。スウ、と…
そのはずだったのだが…聞こえるのだ。
ごうんごうん 何か、機械的なものが振動する音。プールの底から響く、音。
おれはさらに潜り、底に耳をピタリと着ける。 ごうんぷしゅうごうんぷしゅうごうんぷしゅうごうん。
これは…動力機の音? ガスのような音がする。ガスタービン? おかしい、何故底から?
ごうんごごごうんぷしゅんぷしゅうんぐわあああぶしゅうんんんんしゅぷるるる……
音が変化した。何かが胎動する音。そして地中をえぐる音。移動している。
ごうんががが……ぷしゅうん……ぐあああっっ………
異変は起こる。おれ以外の人間にとっては唐突に。
大型の飛行物体がプールの隣の敷地から飛び出した。
まるで70年代アニメのような個性的もとい無駄なこだわりが透けて見えるようなフィルム。
「よっしゃ〜〜!!! 出航だ、ブラックデビル号〜〜!!!!」
船長らしきオヤジが叫ぶ。ちょっと待てそれが名前か。周りの人間が大騒ぎする中、何かおれの心は冷めていた。
ブラックデビル号は何処かへ去っていった。もういい――。おれは何事も無かったかのように水の奥に潜った。
「信念」「からくり」「雲」
三島項太夫はからくり師だった。只のからくり師ではなく、信念を持ったからくり
師だった。常により精巧なものを、より優れたものを生み出そうと日々その業に
磨きをかけていた。
そんな項太夫が、ある日茶汲み人形の噂を聞きつけた。なんでも、無礼を働く客
を斬りつける茶汲み人形を作った男がいるとか。正直話を聞いたときは肝を潰した
が、元来負けず嫌いの気性から、闘志が熱く燃え上がるのを項太夫は感じた。
――待っておれ、当代随一のからくり師は俺であるということを天下に示してくれよう。
およそ半年もの間材料の買い付け以外では一歩も外に出ることなく、項太夫は業に
精を凝らした。やつれ切った項太夫が工房からまろび出たとき、その手にはおよそ五
寸四方の桐箱が抱えられていた。
項太夫が創り出した得体の知れぬからくりの噂は瞬く間に江戸中に広まり、若年寄
高覧のもと、項太夫はからくりを披露する機会を得た。
白洲の上で、項太夫はゆっくりと桐箱を開けた。
そこに鎮座していたのは、うねうねと無数の針を蠢かせる、木彫りの雲丹。
「さながら真の雲丹のごとく、針を動かして這いずり、魚をも食らう……」
項太夫は世を騒がせたとして、江戸払いを申し付けられた。
微妙に落ちてないかな……次は「ナーバス」「爆弾」「合鍵」
387 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/14 23:55
僕の日々。
イツ見ても接続状態で上下運動しているような母親は流し、僕は淡々階段を上がる。
断続的に聞こえ来る甲高い雌豚のいななき、気にならない訳じゃない、そのように努力するだけ。
そのように努めて僕は部屋の内から錠をする、ナーバスにも幾重にも。
それから相棒/オンボロPC、ディスプレイにと灯をともす。
接続。
好みは爆弾・ガスの製造レシピ、そんな類を素っ気なく記してある暗暗(アングラ)なサイト群。
さて、今でも階下からは爆発的な絶頂の叫びの環境音楽、僕は静かに静かに爆発を待つ。
だが、僕はいつでも湿気た火薬。
彼女/母親がいつかは溝にピッタリの合鍵を見つけ、僕を捨てて行ってしまう事、それを僕は恐れるのです。
この執着は誰にも、僕自身にさえも解らないのだが、。
388 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/14 23:56
馬、軒下、菜種。
軒下のペガサスが僕に話しかけてくる。
「なあ、あんさん、ワシどう見える?」
僕は考え込んでしまった。普通に見りゃ「翼の生えた馬」だ。
でも、彼はそんな回答を望んでいる訳ではないのだろう。
「なあ、はやく答えてーや」
どうすべしなのか…菜種油を搾り取るごとく繊細に対応すべきだろう。
しかし、馬以外に何に似ているか、思いつかない……どうすれば。
「ああ、もうええわ! 別の人に聞く――」
ペガサスは体全体を回転させ、地面に潜り去っていった。
それを見た僕は、今なら答えられると思った。そっくりだ、形状も行動も。
おまえゲッター2な。
「唇」「瘡蓋」「宇宙」
390 :
馬、軒下、菜種:03/10/15 00:44
大きな芦毛の馬は私の前を駆けていった。
背中には菜種油の樽がたすきに掛けられて、草鞋を履かされている。
「おおい! そいつを捕まえてくれ!」
遠くで馬丁らしき人影が、私に向かって手を振った。
馬鹿なことを言うもんだ。暴れ馬など止められるもんかね。
そう思っていた。馬の行く先を確かめようと振り返るまでは。
「……」
馬はじっと私を見つめ、尻尾をぱさぱさと振っていた。
たったったっ、と馬丁の近付く音に、馬は耳を側だてている。
それでも私を見つめたまま、その場を動こうとはしなかった。
「はあ、はあ、はあ……急に走りはじめやがって。この野郎」
馬丁は馬の手綱を乱暴に引いた。
「ああ、主人。その馬を私にくれんか? この脇差でどうだ?」
私は鞍のない馬に膝を締めて乗りながら、道を進んだ。
腰が少々淋しかった。先祖伝来とまではいかないものの、それなりに価値のあるものだ。
刀道楽の次は馬ですか? どこに飼う気ですか? 軒下にでも繋ぐんですか?
私の頭に妻の吉乃の顔が浮かぶ。
「……目があっちまってな」
だめだ。こりゃ脇差を買った時の言いわけだ。
私は暖かな馬の背で、なんとか言い訳を考えていた。
次は「趣味」「茶」「シェーバー」で
すいません。次は「唇」「瘡蓋」「宇宙」で。
「唇」「瘡蓋」「宇宙」
「趣味」「茶」「シェーバー」
ある寒い冬の日、セント・シェーバー教会の片隅に捨て子があった。
茶色の巻き毛の愛らしい、まだ生まれて間もない、男の子の赤ん坊だ。
神父は、あわてて近所の産婆を呼んで、冷えきってしまった赤ん坊を
手当てしてもらった。産婆は言う。「神父さま。きっとこの子は神のお使いです」
赤ん坊の足の裏には、十字架そっくりの薄桃色の瘡蓋があった。
神父はすやすやと眠る赤ん坊のつま先に唇をそっとふれてキスをした。
その途端、趣味の野菜作りで患った、持病のヘルニアの痛みから解放された!
「おお! なんという慈悲深い神のお計らいか!」神父は歓喜しむせび泣く。
おしゃべりな産婆の口から、あっと言う間に、この奇跡の様子は町中に広まり
人々は奇跡を求めて教会に押し寄せた。そして、病を癒す奇跡は続出した。
しかし、不思議な事に人々にも同じ瘡蓋が身体中に出現しはじめたのだ。
ある夜、赤ん坊は火がついたように泣きはじめた。すると教会の前の広場に、凄まじい
閃光が轟き、宇宙船が着陸した。異形の宇宙人達は、瘡蓋のある人間を残らず
急きたて宇宙船に乗せると赤ん坊とともに遠い彼方へ去っていった。
健康で善良な家畜たちに、焼き印を押し終わった宇宙の牧童は、また別の星を目指した。
次は「吊り橋」「泥沼」「戦時」でお願いします。
船乗りという職業技能が今更にして役に立つとは思わなかった。
焼け落ちた吊り橋の向こうで、四百メートルの川を渡るのにも銅貨一枚を払う買い物客が群がっている。
都会などと謳うには、所詮ここもまだまだだったということだろう。
過日この国で起こった戦争は、終始泥沼の一途で終結を迎えた。
国軍は未だ、次の闘争に向けての軍備強化を推奨している。
草原の国である隣国の騎士軍に対抗するために、弱小国でもある我が国は地の利を生かすしか方法がなかった。
川を挟んだ攻防戦。戦時中までは壊れずに残っていた橋は、終結してたった二ヶ月、
戦禍の傷跡としてその雄雄しき姿を崩したのだ。……ま、そのおかげで。
「おい」
「ああ、よくここを見つけたね」
そう、言っておく。言うほどに客が少ないわけではないが、まぁある種の話術というやつだ。
「船があったからな。……向こうは多すぎて渡れやしねぇ。お前も船頭なんだろ?」
「この国唯一の商店街が橋の向こうにあるってのは辛いな。ま、ともかく、三枚だ」
「三枚!?ボッタクリじゃねぇか、そりゃ。あのな、こっちは仕事先なんだ」
おいおい、こっちも商売なんだぜ。
「いやならやめてもいい。日が暮れるまで順番待ちでもするかい?
素人船で相次いだ事故、忘れたわけじゃねぇだろ?今や国は助けちゃくれないぜ」
軍備でその程度のことにはかまっていられないのだ。自警団も然りである。
「……クソッ」
懐から銅貨三枚を出す男。
どのみち橋が復旧したらこっちは商売にならないんだ。この間は、稼がせて貰う。
橋むかいの数少ない住民たちは、こうした戦争の被害を一番受けたといってもいいかもしれない。
「乗れ。安心しろ、事故んねぇよ。最近は船頭でも事故が多発しているからな?」
事実、一日何十人も乗せていることの、船体疲労によるものである。
そんな馬鹿どものおかげで、俺の商売は成り立っているわけだが。
未だ復旧の兆しを見せない吊り橋に向けて、俺は軽く目を閉じた。……罪な橋だな、と。
次は
「幻想」「廃人」「音楽」
彼はね……生きる事をやめちまい死ぬ事もやめちまった人。
ああして美人の奥さんが居て不自由の無い生活で何故って?
彼と奥さんは幼馴染だった。小さい頃から奥さんはいつも彼のそばで微笑んでいた。
そして年月が経ち彼は尊敬していた親を亡くし苦労して大学を出て軍に入り、
奥さんも親が死んであの人と同じ様に苦労して喫茶店を開いたんだ。
彼が二度ほど戦場を駆け回った直後だ、この国の王が三度目の戦争を準備しだしたのは。
知っているだろ?この国と隣国が王族の面子だけでいがみ合いしていたのは。
この国のみんなも隣のみんなもこれじゃいけないってんで革命が起こった。
彼は革命の立役者として英雄となり隣国の英雄と友好調印を成し遂げた。
あの時は凄かったね……お互いの国歌を同時に鳴らすと素晴らしい音楽に変わっちまったんだから。
それで周りの国すら巻き込んでお祭り騒ぎ。その勢いで英雄は奥さんにプロポーズした。
ところが幼い頃の幸せは幻想だったのさ。奥さんの両親はなんと義理。裏の稼業が少女売春宿。
そして役人だった親は宿への孤児斡旋を担っており、皆は黙認して利用していた。
英雄は結婚式の後その事を知り最初の政府演説の時、国民全員に叫んだ。
「皆が皆黙っているから……二度も若者が死にに行き少ししか帰らなかったんだ
もう私は黙られるのもそ知らぬ顔で裏切られるのもゴメンだ!」
言ってその場で英雄は毒を飲んだ。真実に気付かなかった自分を裁くために。
その場に居た物は毒を吐かせようとし、我々は英雄に平身低頭……謝った。
でも全て英雄は拒否した。そうして死に瀕した英雄へ奥さんが駆け寄って。
「帰りましょうよ、とっても疲れたのでしょう。私たちの家に帰りましょうよ」
彼は毒を吐いて奥さんと家に帰った。でも死にはしなかったが廃人になっちまった。
それでも奥さんは幼い頃のように傍で微笑んで彼が自分の名前を呼ぶのを待っている。
次は「青銅」「燐光」「艶」
395 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/15 22:24
我こそは勇者、抜き足差し足女主人の床の間へ。
狂気を孕み艶やかな燐光を放つ青銅のナニを構え、ただひたすらに暗がりの窪みを目指す。
そして、「あっ、あぁっ、あぁ〜ん。。。」
さて、合意の上の蹂躙とは罪?
396 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/15 22:26
淋病、盟友、優勝旗。
「済まないね、わざわざ。今、人手が足りないんだ」
「此れが新しく出土した青銅鏡ですね」
「ああ」
「うーん。それにしちゃあ綺麗過ぎませんかねぇ、この青銅鏡」
そう言うと、私は蒼色の世界を覗き込んだ。
おかしい。余りにも変だ。幾ら木箱に入っていたからと言っても、この輝き方は新しく造られた物と変わらない。
「ハハハ、皆そう言うよ。この鏡の逸話は知っているかい」
「いいえ」
「この鏡はね。大陸からの渡来人が造ったものなんだ。
彼は日本語は話せなかった。だが、鏡を作る技術は大変優れていたから、皆に慕われていたそうだ。そしてある時、村の美しい娘に恋をした。」
「ああ、それでこの鏡を」
「いや、違う。ただの艶話じゃあない」
「……と、言いますと」
「うん。美しいと評判の娘だったからね。その地方の豪族の嫁に取られたんだ。
彼の評判は広まっていたから当然の成り行きで嫁入り用にと鏡の注文が来た。
まあ、普通は仕方ないと思って諦めるんだろうけど、遠い異国で一人ぼっちの彼にとって、その娘はたった一筋の光だったんだろう。
恨んだ男は己の血で鏡を磨き、完成とともに絶命した。鏡はもちろん納められた。だがその後、豪族の家で大量殺人が起こった。
村人が見つけたとき、屋敷の中で娘が家人の血で鏡を磨いていたそうだ」
「へえ、面白い逸話ですね。しかしそれはあくまで昔話であってこの鏡の状態の説明ではない」
「私も最初はそう思っていたよ」
――ゴン。
暫くの沈黙の後、私の後頭部に鈍い衝撃が走った。
そのまま重力に引かれ床に倒れる。
眼は霞んでいたが、床の端に乾いて黒ずんだ血の塊が見えた。
「――ああ」
私は納得した。
暗くなる視界の中で鏡だけが燐光していた。
長文スマソ。
僕は閉鎖的なこの村が大嫌いだ。この村を出たい、そのためだけに水泳を始めた。
でもそのおかげで彼女に巡り会えた。水泳は僕にとって恋のキューピットだった。
でも残酷な悪魔でもあった。
僕は県大会で優勝して都会の大学にスポーツ推薦が決まった。
僕は盟友に彼女をあずけた。この村を離れて彼女とはつきあえない。
出発の日、水泳部の仲間達に見送られて僕は汽車に乗り込んだ。
やはり彼女は来てはくれなかった。ゆっくりと汽車が動き出す。
「頑張れ〜」
聞き覚えのある声がした。彼女だ。小さな体で精一杯優勝旗を振っている。
ブワッと涙がこぼれた。僕は汽車の窓から身を乗り出して大きく手を振りながら叫んだ。
「頑張る、俺頑張るよ。だから、だからおまえも頑張れ。頑張って、淋病治せ〜。
みんなも治せよ〜」
僕はいつまでも手を振っていた。
次は「逆鱗」「太鼓橋」「宴」で
399 :
「逆鱗」「太鼓橋」「宴」:03/10/17 01:20
天帝の玉城のお側に北海龍王傲順様のお屋敷がありました。
その間には天の河があって、大変不便だということでしたので、太鼓橋がかけられておりました。
韋駄天はその太鼓橋を渡って、手紙を龍王様の元へと運んでまいりました。
韋駄天が運ぶようなものですからそう対したものではございません。龍王様が天女に出されたごくごく私的な宴会へのお返事でございます。
「……では、この文を西施殿に。くれぐれも粗相のないようにな」
顎の逆鱗を撫でながら、まんざらでもない様子で傲順様は韋駄天に指図なさいました。
そして宝物庫に足を運び、なんぞ気のきいた物を漁っておりますと、歩雲履の靴が出てまいりました。
それはその昔、斉天大聖孫悟空に奪い取られたものにございます。
傲順様は、ふと歩雲履の靴を履いてみようという気になりました。
元々が海の主でありますので実は今まで履いたことはありませんでしたが、天の川に漂う霞を踏みしめますと、たしかにその上に乗ることが出来ます。
「おほっ!」
時々フラフラするのは御愛嬌。傲順様はすっかり歩雲履が気に入って、おっかなびっくり、かなり高い所まで昇っていきました。
「ふむ。これは珍しい。傲順殿ではございませんか」
いつの間にやら、夜空に輝く太白金星様が傲順様の目の前におりました。
「や、これは金星殿。これはずいぶん高くまで昇ってまいったようですな」
ふと傲順様は後を振り返りました。
見ると雲は千々にちぎれて帰り道もわからぬ有様。しかも屋敷はぽつんと豆粒のように小さく見えておるだけです。
「いや、これはあの猿めに汚された歩雲履が今も使えるかを試しておってですな」
傲順様は不安気に、金星様に弁解なされました。
「それはそれは。ここまで来られるのは大変でしたでしょう。もうすぐお役目が終わりますから、それまで話相手でも」
金星様はにっこりと傲順様に微笑みました。
「や、それは私も退屈しておったところです」
傲順様はほっとした様子で金星様のお側に侍りました。
その宵はよくよく目を凝らしてみると、夜空の金星に巻きつく白い筋が、くっきりと見えたそうにございます。
次は「黒」「ワイン」「玉」で
400 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/17 01:48
「逆鱗」「太鼓橋」「宴」「黒」「ワイン」「玉」
部族長の婚礼の宴に、三日目の夜になっても客が絶えない。
年配の部族長は、剣の刺さった大樹の下で、彼等をもてなす。
無言で俯く花嫁・・・しかし、彼女の事は客の誰もが知っていた。
戦で滅びた或る名家に、玉の様な双子の赤子があったこと。
赤子は略奪され、育て上げられ、一人がここで買われたこと。
名家の肩書きを持つ麗しき乙女・・・しかし、買われた花嫁だ。
物珍しさとワイン目当てに集まる客。それはさながら太鼓橋の上の見世物だった。
「なかなかじゃねえか」「一体幾らで買ったのか・・・」
その言葉が逆鱗に触れ、大爆発を引き起こした。
「あああぁぁぁ!」
宴に悲痛な慟哭が響いた。皿が割れ、机が倒れ、客はやんやと囃し立てる。
「ああ、その通りだよ!でも部族長ってのはなぁ、色々自由にならないことも・・・」
いままで耐えに耐えてきた、どす黒い言葉があふれだす。
「・・・あなた・・・あなた、風邪をひきますわ」
冬の大地に蹲る彼をひきおこす、これが花嫁16才最初の仕事であった。
※「宴」と「ワイン」でムリヤリ連結させていただきました^^;L
次のお題は:「放射能」「ドーム」「ゲーム」でおねがいしまふ。
東京ドームで行われているこの「日本怪獣博士選手権」という参加者多数のクイズゲーム大会もいよいよ選手が絞られてきた。
かくいう私も64人の中に入り込むことが出来た。
しかし次のクイズでさらに半分の34人にまで絞り込むようだ。
やはり私のこの成績では絶望的だろう。
このまままじめに答えるのも空しいのでせっかくだから人生初のボケに挑戦してみることにした。
さて次のクイズは……
Q 放射能で大きくなった怪獣を全て挙げなさい。
アメリカ、ソ連、インド、パキスタン、北朝鮮、後他に何かあったかな。
その回答を渡したら係りの人はくすりともせずにいぶかしげに私を見ていた。
人間やりなれないことはするもんじゃない。
お次は「眼鏡」「黒」「ハンカチ」の三本で
ドームの中の様子を確認したトムは、満足げな表情をうかべると、
「俺の勝ちだな、リョータ」と同僚のリョータに声をかけた。
リョータは、トムの方にちらりと視線をやると大きくため息をつき、本当に不思議そうにトムに尋ねる。
「どうしてお前の予想はこうもあたるんだ?」
「お前は考え過ぎなんだよ。たかが実験だ、ゲームだと思えゲームと」
トムはそれが当たり前のことようにさらっと言うと「用事がある」と言い残して部屋を出ていった。
残されたリョータは、トムの言葉に言いようのない寂しさを感じていた。
しばらくして、リョータは頭をかきむしると机の上にあったコーヒーを一気に飲んだ。
「苦いな……」そう呟いた彼は席を立ち、ドームに悲しげな視線を送ると
部屋の明かりを消し、部屋から出ていった。
だれもいない部屋に残されたドームの中には、戦争で放たれた核兵器の放射能によって
汚染された青い惑星がひっそりと暗闇に浮かんでいた。
次は「雨」「猫」「満月」で
リロード忘れてました。次のお題は401さんの「眼鏡」「黒」「ハンカチ」で
家に帰ると、茶トラ猫のタロウは黒フチの眼鏡をかけて、赤いハンカチを首に巻いていた。
「ぷっ」
あたしが吹き出してもタロウは何もかもかったるい、というように動こうとはしなかった。
「タロウ、あんたって何されても本当嫌がらないよね……良太! いるんでしょ! タロウにこんなことするのあんたぐらいよ!」
タロウから眼鏡を外してあげながら、廊下の奥に声をかける。するとのそーっとした様子で、中学生になったばかりの甥の良太が顔を出した。
「おーかーえーり。ハラへった」
「はいはい。お姉ちゃんは何? また飲みにいっちゃったの?」
「シラネ。今日は食わせてもらえって」
良太はチラシを見せた。そこにはやけに丁寧な字で、”遅くなります。今日は和美の所でご飯を食べなさい”と書いてあった。
「……火あそびもいい加減にすればいいのに」
「んー? なーにー?」
あたしはぎくっとして良太を見た。
ちょこんと座る良太の隣には、おなじくちょこんとタロウが座っていた。
二人ともどこか覚めたような、この世の全てを悪い冗談だ、とでも言っているような目をしていた。
「……なんでもないよ。じゃあビーフシチューでも作ろうか」
あたしは少し、そんな目に弱い。
次は「雨」「猫」「満月」で
ある日、あるとき、少女の影法師がそこにたたずんでいた。夜空に浮かぶ大きな大きな満月。
前日まで降り続いた雨が空気中の塵芥を洗い流したせいか、それはひときわ美しく輝いた。
欠けるところのない月を背に、一匹の白猫が気持ちよさそうに、のびをしていた。
それは目の錯覚だろうか。猫は次第に姿形をかえてゆき、月を背負う銀髪の少年へと転変した。
「はじめましてにゃ」「へ? え!? あなたはだれですか?」
「ぼくはぼくにゃ。うーん、容子にとっては、月の精霊という表現が一番ちかいかにゃあ」
怜悧な印象の少年だったか、話はじめるとイメージが一変した。困った仕草が無性に可愛らしい。
「いいから願い事をいうにゃ。たったひとつだけ叶えたげる」
……
「うん、月の存在は地球の生命の発祥にも関係しているってどこかで聞いたことがあります」
「そうそう、魂の樹なわけにゃ。何百年かに一度、純粋な魂に触れて生気を取り戻す必要があったわけにゃ」
「話変えるけど……外見はしょうがないとしても、その喋り方ってどうにかならないもの? はっきりいって変」
「あ、それは容子の責任にゃ。今の姿形、性格その他もろもろは容子の精神世界の映し身だにゃ」
本気でがっくりと肩を落とす容子に、銀色の川の隙間からはみ出した猫耳をぴくぴくさせて、追い打ちをかけた。
「容子は本当に、世界の覇権も、かしづく奴隷たちも、百花繚乱のハーレムもいらないのかにゃ?
本気でやりたい放題だにゃ」
それはおそらく教科書に載るような歴史上の出来事なのだろう。少年には危ういところがある。
「絶対にいりません。ささやかで幸せな人生がわたしの目標ですから」
おそらくほっておけなかったのだろう。容子の望んだ願いはたったひとつ――お友達になりましょう。
次のお題は、「砂嵐」「オアシス」「人外」でお願いします。
407 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/18 21:27
夜も更けた。
東京暮らしの孤独を癒そうとテレビをつけても、各局は段々と砂嵐しか映さなくなってくる。
白黒の洪水に呑まれたくなるほどに、部屋の底に沈みそうになる。
眠れない深夜。ときおり私は駅へ繰り出す。
新興のニュータウンであるこの街の駅での、終電の様子はなかなか味があるのだ。
多くの疲れきった人々が改札から吐き出されると思うや、わき目もふらず己が帰路へ急ぐ。
その先に待ってくれる人がいようが、いまいが…。
玄関を開けるまではみなどこかしら孤独そうなのである。少なくとも私は、みな孤独であって欲しいと願う。
孤独なそれらが群れて成す行列は、まるで一個の人外のバケモノのように見える。
孤独な彼等は、バケモノの不可欠な細胞なのだ。バケモノに必要とされているのだ。
そして私も孤独である。然り、私もバケモノにとって必要な存在でありたいと思う。
だから私は駅へ繰り出す。バケモノがぼうと形成されるこの時間だけ、慣れないこの街がオアシスになる。
次のお題は、「三十路」「観用植物」「缶詰」でお願いします。
409 :
「三十路」「観用植物」「缶詰」:03/10/18 23:24
まあ……トシで言えば三十路だった。
この松の盆栽は、俺から見れば四十ほど下になる。
それでも30年。昔から考えれば、永い時間だ。
盆栽、というものはただの慣用植物ではない。
言うなれば時間の缶詰。
永い年月を経てやっと作りあげられた、究極の渋みだ。
それに、俺は剪定ばさみを入れるかどうかためらっていた。
えぐれるような幹の枝ぶりに、ほんのすこし生えた葉。
「……うむ」
予感がする。
この葉が育った時、この盆栽は最高の渋みを発っするに違いない。
俺は時には切り過ぎ、時には残し過ぎ、何度も取り返しのつかない過ちを繰り返してきた
物を育てる才能のない俺にとってそれは、最高傑作が出来上がる、唯一の機会かもしれない。
俺ははさみを置いてその針葉を撫で、漏れる笑みを押し殺す。
育てよ。
そう思いながら縁側にあがろうとした時だった。
がしゃーん、という音とともに盆栽は砕けちった。
「すいませーん。ボール取ってくださーい」
気がつくと俺は隣の空き地で野球をする子供を追いかけ回していた。
「許さん! 許さんぞ! 待てこら!」
次は「日本」「シリーズ」「百貨店」で
暗いリビングに入ると、留守番電話のランプが光っていた。
部屋の明かりをつけ、留守電を再生する。
「美穂?お母さんだけどね。また荷物送っ…」
ピッ。停止ボタンを押すと、ふう。溜息をつく。
今度もまた母からだ。全て聞かずとも話は分かる。
どうせまた見合写真を送りつけてきたのだろう。
女も三十路が近くなると、なんやかんやと周りがとうるさい。
やれやれと頭を振りながら、バッグとコートを壁掛けにかけると、
部屋の隅で寝ていた猫が、起き出して来た。
「ただいま」
猫に挨拶すると、にゃあ。と返事をし、私の足に纏わりつく。
可愛い奴だ。笑みがこぼれる。
晩飯はまだかと催促する猫に、キャットフードの缶詰を開けてやると、
部屋着に着替え、帰りに買ってきた本をバッグから取り出した。
反対側の手に、グラスとボトルを下げて、ベランダへ出る。
月の光を照り返し、青く光る観葉植物に囲まれながら、
白いスタンドの明かりの下、本を袋から出し、ページを繰っていく。
仕事は今面白いし、私と必要としてくれている猫もいる。
今の生活に十分満足している。それを壊されたくはない。
でも……。だから今夜も私は、本の中に王子様を探す。
次も、「三十路」「観用植物」「缶詰」で。
かぶった…けど、ちょうど良かったw。
現在のお題 「日本」「シリーズ」「百貨店」(409)
私は一つの本を探している。
名前は知らない。幼い頃に見たことがあるだけの、たった一冊の本。
日本全国を巡るだけの財力はないから、少しずつ行動範囲を広げては、落胆する毎日。
歳も三十路に近づいてきて、体力は落ちるばかり、それがシリーズものなのか否かすら
定かではない本を、独りで探すのにはいささか酷な話だ。
店員に聞いても、わからないという。無理からぬ。そも、名前も出版社もわからないのだから、
その方法ではどうにも埒が明かない。それでも、自動ドアを潜り抜け、観用植物を払いのけ、
本がある場所には常に出向き、歩いた。本屋、古本屋、百貨店、あるいはゲームショップのコーナーにまで。
昨日結婚したばかりの夫は情報処理技術者で、端的に言えば、理系指向の持ち主。
そんな曖昧な記憶ではわかるはずがない、諦めろ――そうはいうものの、
幼い記憶に刻まれた、たった一つの曖昧な像が、今になっても私を捕らえて放さない。
そんな夫も最近では、持ち前のインターネット技術を駆使して、休みの日ともなれば缶詰をして調べてくれている。
ありがたい。本当にそう思う。今度何かプレゼントしてやろう。そう考えながら、今日も玄関に出た。
……さて、この物語は、行動力だけが信条の愚直な女とその伴侶の、ちょっとだけ奇妙な本が起こした物語である。
お題「空想」「幻想」「夢想」
訂正
九行目
理系指向→理系思考
昨日→先日
415 :
「空想」「幻想」「夢想」:03/10/19 02:24
一ヶ月ほど前からこの酒場に妙な男が出入りしている。
彼は夜になると酒場に現れ、まるで女のような綺麗な声で歌って聴衆からおひねりを集めた。
彼は尋ねられるたびに違う名前を名乗った。また、彼の故郷は空想上の地名だった。
彼の歌う曲は彼自身の作だった。曲のタイトルはこれまた尋ねられるたびに変わった。
ただ、「〜〜幻想曲」というのだけは共通していた。
彼の素性が気になって酒場から出て行った彼の後をつけていった者が七人いたが、
誰もその結果を詳しく話そうとはしなかった。全員見たものもそれぞれ違うらしい。
ただ、「今まで生きてきて夢想だにしたことのなかったものを見た」というのだけは共通していた。
「全部」「不思議」「参上」
「全部」「不思議」「参上」
「カバーお願いします」
セーラー服を着た背の低い学生が、一冊の文庫を差し出した。
題名は『不思議の国のアリス』。
何だか微笑ましい気分になって、私は鼻歌交じりの気分でカバーを付け始める。
訳本は余り好きな方ではなかったが、新潮文庫の更々とした手触りが心地よくて、
小さな書店に並んでいた新潮の本は全部読んだっけ。
訳本の直訳的な文章は、読んでいて眉を吊り上げたくなることもしばしばだった。
主要な登場人物が初出の章に、平気で「〜参上」などと書いてあるのだ。
さすがに参ってしまう。
しかし余り好きでないと言っても、やはりアリスやアンは面白かった。
私もそういうお年頃だったのだろう。
『不思議の国のアリス』を買って行った少女もアリスとお友達になったりするのだろうか。
そう考えると何だか愉快な気分だった。
嬉しそうな表情で書店のドアから出て行く少女に、
はまだ学ランを着ていた頃の初々しい頃の自分を重ね合わせていた。
☆『赤毛のアン』は特に好きですね。
20回くらいは繰り返して読んだはず。
次は「ボンド」「山伏」「イカ墨」でお願いします。
訂正です。
最終行、
誤 「はまだ学ランを着ていた頃の」
正 「私は、まだ学ランを着ていた頃の」
というかはまだって何と言う感じですよねw
「ボンド」「山伏」「イカ墨」
ジェームス・ボンド最新作を見た。
今作の舞台は日本!二作続けてアジアが舞台とは思わなかった。見所は、
敵役に雇われた、超人並みの能力を持つ山伏との対決だ。この山伏の恐ろ
しさたるや、まさに圧巻。マトリックスのエージェントかと見間違うほど
の凄まじさなのだ。分身の術は使うわ、法螺貝を使ってボンドの聴力を奪
うわ、木から木へ軽い身のこなしで翻弄させるわで目が点になった。
特に笑えたのは、イカ墨を口に含み、グレートムタばりの毒霧でボンド
の目を見えなくしたところだ。
結局この山伏は、いや、全てをいうのは無粋だな。とにかく山伏とのア
クションシーンは最高だった。今までに見た映画のなかでも、もっともエ
キサイティングだった。DVDもいいが、いますぐ映画館に見にいくべし。
「リアリティ」「愛しき反抗」「ダーツ」
「愛しき反抗」って一語なの?
リアリティという言葉自体、現実味が無いように思える。
今現在俺が触れている空気だけが現実であり、「リアリティ」などというちょっとカッコイイ言葉はこの空気には存在しない。
なんてことを、彼等を見ていると考えてしまう。
大学の昼休み、晴天のもと構内の並木道をぶらぶら散歩していると、しばしば彼等が通り過ぎる姿が見受けられる。
銀杏の落葉が舞う中、六十年代の薫りを今だにひきずる社会革命会の面々がサークル棟である三号館へと駆けていく。
社会に、マジョリティに、大衆意識に反抗しているらしい彼等はああみえて彼等なりの青春を送っているのだろう。三号館の玄関をいささかおおげさなスローガンで飾り立てながら。
しかし彼等の意図する「革命」など、現在に変革をもたらすどころかおよそ現実離れしていて、まるで夢想である。
理想の女性を追い求めて遍歴を繰返すドン・ファンよろしく、理想の現実を求めて空回りする彼等の反抗は、愛しき反抗と言って差し障りないだろう。
かくいう俺も、いまだかつて理想の女性に巡りあえた試しなどない。
「ちーっす」
所属する文芸サークルの部室のドアを開ける。誰も居ない空間に挨拶するこの空しさよ。
俺はもてあました青春の情熱を、壁に掛かっている的めがけてダーツに込める。
「おい、田中何やってんだよ!!!」
…ちっ、バレたか。
「彼女に振られたからって部室の飾りに当たるのよせよ!」
ちょっと都合で席を立ってしまいました。
次のお題は「青信号」「目隠し」「御神木」でお願いします。
「青信号」「目隠し」「御神木」
熊野神社の秋祭りに、見世物小屋がやってきた。お祭りに見世物小屋が回ってきたのは
二十年ぶりだ。子供の頃にたった一度だけ、親父にねだって連れていってもらった事がある。
「ペンギン女」という出し物は、手足がふつうの人よりも少しだけ短い女の人でヤギのように
膝の関節が裏返っていて、前に後ろに踊りながらお尻に「おかめ」のお面をつけてラッパを
吹いていた。「火喰い男」は棒の先についた火の玉を、飴でも食べるように口の中に放り込み
ぼーっと炎を吹いた。他にも瓶詰めにされた「奇形魚」や「ワニのミイラ」そして極め付けは
「ヘビ喰い男」だ。太った男の人が、器用にヘビの頭を食いちぎり丸飲みしていた。
子供だった俺の目にその光景は焼きついて、その夜は怖い夢を見たほどだ。神社の御神木の脇に
赤い布に「見世物小屋」と白く染め抜いたノボリが立っている。小屋の入り口の番台には中年の
着物姿の女が座って「親の因果が子に報いー」と口上を述べている。独特の節回しを聞きながら
千円払って中にはいると、客は一人もいなかった。絨毯の切れ端を敷いただけの客席に腰を
下ろすと中央の一段高い舞台では、目隠しをした老婆がもろ肌を脱いで、三味線を弾いている。
そしてピエロの扮装をした老人が、老婆の曲にあわせて手品をしていた。水を注いだ帽子から
花吹雪を降らせる。俺が拍手をするとピエロは大きくお辞儀をして、帽子から缶ジュースを
取り出して俺に渡してくれた。昔見た異形の芸人たちや妖しい瓶詰めはもうどこにもなかった。
俺はひっそりと席を立つと、見世物小屋を後にした。入り口にはもう誰もいなかった。
祭りのお囃子はいつの間にかやんでいた。縁日の出店も帰り支度に忙しそうにしている。
通行止めになっていた神社の前の県道にも、いつも通り車がごうごうと行き交っている。
街灯の灯りでピエロにもらった缶ジュースの日付けを見ると、ちょうど二十年前のものだった。
青信号で疾走する長距離トラックの排気を浴びながら、いつまでも俺は缶を眺めていた。
次は「危篤」「電報」「放蕩」でお願いします。
「危篤」「電報」「放蕩」
質の悪い冗談だな。時代遅れの電報が来た。
「父、危篤、すぐ帰れ。父より」
まずなにより、お前が土へ帰れ。それにだ、去年の盆に、三年振り
に実家に帰ってみたら、家がなかったじゃないか。どこに帰れってい
うんだ。危篤じゃなく、奇特というのなら、世界中どこにいようがあ
んたに会いにいってやろうじゃないか。
母親がなくなってからの放蕩三昧にはこりごりしている。息子に写
真を送るのはいい。父親らしさもある。でもな、横に写ってるのは散
々だ。タイのおカマだ、いかにも娼婦だの、はてはどこぞの一夫多妻
制の国で何人もの女を侍らせているわだ。
何なんだ一体。俺が何をした。不幸というのもおこがましい。他に
形容すべき言葉が見当たらない。
そこでふと考えた。これは俺に対する復讐なのかもしれない。俺は
日本で初めて、同性同士で結婚したカップルだ。
母親はなにもいわなかったが、体調を崩したのはそれからだったし。
……いや、……いや。
「免疫」「重圧」「ミサイル」
「免疫」「重圧」「ミサイル」
ヒュ〜〜〜〜〜〜〜。
ミサイルが空を飛ぶ音でおれはまた目を覚ました。
これで2回目…それはつまり日本から今夜2つの街が消えたと言う事だ。
この街に派遣されてからもう3ヶ月が経とうとしていた。
故郷を出発したあの日、サクラがキレイだったが今はもう夏。
『もう日本はダメらしい』そんな噂を何度耳にしただろう。
隊の中の生き残りの数もここ2週間で三分の一になった。
食料不足で免疫力の衰えたものは次々と伝染病にやられていくのだ。
心の重圧に押しつぶされて自殺するものもいた。
そんな状態を目の当たりにしているおれたちの間に噂を疑う者などいなかった。
ただ、おれには一つだけこの戦争に感謝していることがある。
星のキレイなこの街に派遣されたことで、プラネタリウムに行かなくても満天の星空が見られることだ。
この空を見ているときだけは何もかもを忘れられる。
おれが毎日なんとか睡眠が取れるのもこの星のおかげなのだ。
そして今また星を見ているおれに睡魔が押し寄せた。
「楽しい夢が見れればいいのにな。
友達、恋人、家族。みんなとゲラゲラ笑えるような楽しい夢………」
そしておれは再び眠りに落ちた…次のミサイルがここに飛んでくることも知らずに。
ヒュ〜〜〜〜〜〜〜。
ミサイルが空を飛ぶ音でおれはまた目を覚ました。
「ガラス」「ギター」「有罪」
「ガラス」「ギター」「有罪」
「おいら流しの渡り鳥〜色街流して旅烏〜」
流しの銀さんの歌声が、ガラス戸のむこうから聞こえてきた。
あたしは女将さんに「銀さん、キマシタ!」と声を張り上げる。
奥の小上がりで、一戦終わったお客さんにお酌をしていた女将さんが
「伊勢佐木町ブルースお願いしますって言っとくれ」と嬉しそうに
あたしに言う。女将さんは元々横浜の人で、この街に流れてくる前は
横浜のクラブで働いていたらしい。女将さんは銀さんが来るのをいつも
楽しみにしている。「銀さん伊勢佐木町ブルース、オネガイしまーす」
夜目にも飴色に光って見える、使い込んだギターを肩に下げた銀さんは
角の柳の下で振りかえると「どうも」と手を挙げてあたしに合図をした。
銀さんはあたしの父さんに似ている。皺だらけの色黒の顔も大きな耳も。
父さんは悪い警官に殴られて、手を潰された。仕返しに警官をナイフで刺して
有罪になった。「あなた知ってる〜港ヨコハマあ〜」景気のいいギターと
銀さんの登場で、店はパアっと明るくなる。あたしはすっかり上手になった
日本語で「マッテました!」と合の手を入れる。横浜の港からは故郷のブラジルに
帰る船が出ている。山奥のさびしい温泉街に銀さんの歌が潮の香りを運んできた。
次は「切り札」「裏街道」「妻子」でおねがいします。
427 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/21 22:49
この界隈はここ数年ブラックライトニングとかいうセンスの無い名前の暴走族に荒らされている。
彼らは凶悪だった。彼らを捕えようとした同僚の警官がもう何人も病院送りにされている。
今日も取締りが行われるが、出動メンバーの大半が直前に急に体調を崩して署に残った。
男のくせに生理痛を起こした者までいたのにはあきれた。
結局、出動したのは私と部長刑事だけだった。
部長刑事は妻子ある身でありながら、もっとも真剣にこの問題に取り組んでいた。
部長刑事「信頼できるタレコミによると、裏街道を通って港を目指すらしい。裏街道で張るぞ」
張り込み場所に着いた。
私「…私達二人だけで奴らを止められるんでしょうか」
この当然の疑問に部長刑事は「切り札がある」とだけ答えた。
それが何かを尋ねる前にけたたましい排気音とクラクションの音が近付いてきた。
奴らが現れたのだ。ホルスターからいささか頼りない武器を取り出そうとすると、
部長刑事「待て、これを使うんだ」
部長刑事が私に渡したのは一挺のロケットランチャーだった。
「無線」「汚染」「新鮮」
「無線」「汚染」「新鮮」
ただただ無造作に流れてくる音の洪水に身を浸してから、 どのくらいたっ たのだろうか。 見
当もつかないほどに、 私の精神は汚染されてしまったのか。 人の暗さの一部分に。
きっかけは、 拾った無線ラジオ。 後で知っ たのだが、 違法な物らしい。 周波数さえ替えて
しまえば、 どんなことだっ て聞けてしまう。 漁船や長距離トラックで使っているものだという
ことだが、 興味本位で聞き始めるうちに、 他人の会話を知りたい欲望が、 私を満たしていった。
盗聴。 それが今私の日常を占めている。無線ラジオから盗聴機器へと変わっていく過程に、自
制心が働 けば良かったのだが、生憎、私には無いものだった。
「あいつも経理っ てものが分かってから話しをしてくれよ。なんにも知らないくせに口をだす
なってんだ。お前もあれには辟易してるんだろ?」
「ね、仕事終わったらいつものクラブで待ち合わせね? 今度は違うプレイをしようよ。 ねぇ、
いいだろ、 俺の願いを聞いてくれるのが君だろ?」
「聞いた、聞いた? あそこの奥さんってば、大人しそうな顔して不倫してるんだって」
実に新鮮な驚きが私を満たしている。だれもかれも、後ろめたいことをしているものだ。 なに
も私に限ったことじゃないようだ。錯覚? そんなことは知らない。ただ自身の属する世界に、そ
の身を委ねてゆけば済む事だ。
「種子」「理性」「後悔」
#たぶん間違いだらけ。
429 :
「種子」「理性」「後悔」:03/10/22 03:16
約束はもう叶うことは無い。そんなこと、わかってるのに。
今日は私の誕生日だ。『来年のバースデイも一緒にいような。』そう写る携帯メールの画面が涙で滲む。
感傷的な気分に陥るであろうことは容易に予測できたことだ。そのメールの翌日、些細なことで喧嘩をしてコウタと別れて以来私にはずっと恋人がいない。
このあいだ高校のころの先輩から結婚式の招待状が届いた。もうそんなトシなのに、私はずっとジメジメとコウタを忘れられないでいる。
「あらケイコこんな遅くにどこ出かけるの」「あ、ちょっと散歩。」
早く帰ってきなさいよー、母親の親切もセンチメンタルな気分の時は単なるおせっかいとなる。一人になりたい。
内心いら立ちを覚えながら、ああコウタと喧嘩したのもこんな気分の時だったっけ、なんて思い出す。
去年の私の誕生日、秋になってもまだ内定を貰えずに卒業論文を書けないでいた私は、農学研究所勤務が既に決まっているコウタにやつあたりしてしまったのだった。
些細な口論が大きな喧嘩になっていくのはよくあることで、私はコウタがバースデイプレゼントとしてくれた植木を、あろうことか鉢ごと割ってしまったのだった。
翌日コウタは何も言わず、一緒に住んでいた部屋を出て行った。後悔だけではすまされない自己嫌悪が胸に込み上げる。
…ヤバイ、思い出したら泣けてきた。思いきり泣ける場所をと、近くの公園に入る。ここのケヤキの木の下で、コウタとよく話していた。
ピピッ。メールの着信だ。誰だ人の感傷をジャマするヤツは!
『おまえはヒス起こさなければイイ女なんだから、理性鍛えろよ。』
コウタから、だった。
『あ、そうそう。あのケヤキの下、見てくれよ? 去年おまえにやる筈だった俺の処女作品が育ってるから。』
ハッとして足下を見やる。すると四葉のクローバーが一面に繁茂していた。
「バカ…。」
泣きながら私は品種改良した自作の種子をここでばらまいて丁寧に育てているコウタの姿を思い浮かべた。ちょっと泣きながら笑ってしまったけれど、彼を好きで良かったと思った。
今日は最高のバースデイになりそうだ。
上の作品グダグダかもしれない…精進!
次のお題は「魔法」「ダンス」「回転」でお願いします。
431 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/22 05:33
回転寿司で好物のネタが出てきたら、
是非とも魔法の指揮棒を振るってダンス・ミュージックを演出しよう。
椅子に座っている客は思わず隣の人と手を取り合い、
優雅なワルツを踊らずにはいられなくなる。その隙がチャンスである。
あなたが好きなアナゴを、イクラを、ホタテを、ウニを、
味覚の限りを尽くして堪能しよう。
ただし指揮棒は常に振るい続けなければならない。
ある程度の楽章をこなさなければ、
踊りに引き込まれた客達は消化不良のまま椅子に戻り、
パクパクやってるあなたを見て、騙されたことを知るだろう。
もちろん彼等は立腹する。
ののしられ、殴られ、人によって自分の勘定をなすりつけてくるかもしれない。
そうならないように、始めた音楽は最後まで責任を持って奏でなければならない。
また、注意すべきは店員である。
彼等は客に満遍なく寿司ネタを提供することをささやかな美学にしているから、
あなた一人が高級なネタを独占するのを好まない。
そこでできるだけ大きく魔法の指揮棒を振るわなければならないのだが、
時としてダンス・ミュージックなど好きでない若い店員がいる。
こういう場合はもちろんユーロビートなわけだが、
問題はあなたが今流行りの曲をどれほど知っているかということと、
それを指揮棒できちんと表現することができるかということである。
ちなみに魔法の指揮棒は一本3千円。私の店で売っている。
お次は「ポニー」「屋台」「彼女」でよろしく。
「会長、お茶をお持ち致しました」
そこには、柔和な表情で頷き返す線の細い男がいる。安斉優一。
名は体を表すというが、こんな穏やかな名前に惑わされてはならない。
若干三十一歳にして、安西財閥の会長を務める切れ者中の切れ者。若干威厳の欠けるきらいもあるが、
傾いた安西コンツェルンに巣くう寄生虫どもを一掃し、グループを黒字化した手腕はだれにも否定できない。
そして何より独身である。育ちのよさが醸し出すのだろうか、
世間知らず空気が、もはや何の必要もなくなった無責任な庇護欲をかき立てる。
会長の第一秘書、玲子も決してその例外ではなく、カップを運ぶ手が少しだけ震えている。
自分はちょっと運と頭がいいだけの山出しの小娘。それでも一縷の望みだけは捨てきれない。
MBAの資格も有するこの才媛は、入社後、おいしい紅茶の入れ方ばかり勉強していた気がする。
このアールグレイはお気に召していただけるだろうか。
「ところで、玲子くん。いつも夕方からこのビルの下で営業している屋台を知っているかい?」
「えっと、屋台というと、男性社員が噂していたあのラーメン屋台でしょうか? もし、お邪魔なら立ち退く…」
「そうそう! ポニーテールの少女が切り盛りしているあの屋台! 最近通い詰めているのだけどね」
業界関係者との会食は、ここのところキャンセルが続いているが、まさか、
「あんな華奢な体じゃあ、屋台を移動させるのも一苦労だし、あの歳でタチの悪い酔っぱらいの相手もしないといけない。
ヤクザに絡まれることだってあるだろう。大変じゃないか? て訊いたら、彼女なんて答えたと思う?」
分かるはずもない。だが、たったひとつ思い当たる嫌な予感。
「亡くなった父親から受け継いだ大事な屋台。大変だから、毎日が充実しているって」「……そうですか」
「どうやら僕はあの子に一目惚れをしてしまったようなんだ。何を贈ったらよろこんで…って、れ、玲子くん!」
玲子の割ってしまったマイセンのカップ、汚してしまったスーツに絨毯は、今日の少女の売り上げの何倍にあたるのだろう。
これからはじまるのは、住む世界のそれぞれ違う三人の恋の物語である。
お次は、「宝玉」「研磨」「中華」で。
「ふむ……これが今回の一番の目玉、サファイアの涙ですか」
巨大な宝玉があしらわれた乙女の彫像を見て、私は唸った。
「そうです。この彫像はイタリアの云々……」
解説する男の言葉も耳には届かぬ。
それにしても美しい。研磨された数々の宝石の輝かしさとは裏腹に、
濡れそぼつ、玲瓏なる乙女の瞳は悲壮に満ちている。
ライトアップされ、光を様々に反射する輝きとのコントラストこそが、
職人の意図するところであったことは私にもわかる。
しかし。
「これは――なんですかな?」
乙女の掲げる器には、中華風のナルト模様。乙女はそれを見て
涙しているようにも私には見えるのだ。
「ああそれはですね、この器の中身が云々……」
私の予想が正しければ、これは随分と滑稽な話である。
乙女の髪飾りはナルトであり、乙女の美しいウェーブヘアは……
ああ、今にも匂いが漂ってきそうだ。
次のお題
「理想」「仮想」「妄想」
ナルト→メンマ
でもよかった。
「明日地球が滅びるの!!」
私は部長にそう切り出した。
「ふ〜ん……」
「つまり今日が最後の一日な訳ですよ!? 普通の高校生男子が最後にしたいことといえば…!」
私は部長が好きだった。
昔の少女マンガみたいな恋愛をしたいんじゃない。
はっきりと言ってしまえば、セックスがしたいのだ。
普通の高校生男子なら――したいハズだ。そういう年頃なのだから。
いつも部室で訳の分からないモノを研磨している彼でも、性欲くらいはある。
まさか、最後の望みが「中華料理食いたい」とかではないだろう。
ここで色仕掛けでもして攻めれば…幸い、私も容姿は悪くない。
「そうだなあ…最後に何がしたいかと言われれば……」
次の日、部長は徹夜で製作した極大破壊爆弾で、隕石を破壊した。地球は救われたのだ。
「いーねえ!! これ以上楽しいことはないな!!!」
部長は、隕石のカケラをまるで何かの宝玉を扱うかのように拾い、優しく布に包んだ。
呆れるけど…ガッカリしたけど……こういうトコも好きなんだなあ………
少女漫画っぽく…ないね。
「乱戦」「上方」「柵」
お題は434さんので頼みます。
>429
そんな歳でも、忘れられないものは、
いつまでたっても忘れられないもので……。
まあ、1年間、同じ人を忘れられないでいるってのが、
長いか短いかは人それぞれなんでしょうけれど。
別れて以来、二度とケヤキの下に行かなかったあたしの雄々しさと、
ケヤキの下で、種を育て続けるコウタの女々しさとの対比が良い感じです。
あたしにコウタへ詫びのメールを入れる甲斐性?があれば、
1年間も音信不通なんて事にはならなかった気もしますが、
まあハッピーエンドで良かったですね。
最後になりましたが、適当なところで改行を入れた方が良いでしょう。
>431
オチに商品アピールをもってくるのであれば、
>問題はあなたが今流行りの曲をどれほど知っているかということと、
>それを指揮棒できちんと表現することができるかということである
を受けて、魔法の指揮棒はおまけにして、
楽譜のセールスにした方が良かったかと思われます。
指揮棒をアピールするのであれば、指揮棒さえあれば十分!
と思わせないと、お客は買ってはくれないでしょう。
すみません、誤爆しました。
>ドンマイっす。いつも感想ありがとうです。
「理想」「仮想」「妄想」
奈々子は俺にとって理想の女だ。つややかな白い頬と桜色のくちびには
清らかな微笑みが、花びらのように浮かんでいる。さらりとした薄茶色髪は
台所の窓から差し込む柔らかな日射しを受けて輝いている。華奢な身体だが
たっぷりと量感のある胸のふくらみが白いセータからくっきりと感じられて
俺は奈々子を押し倒して、めちゃくちゃにしてしまいたい妄想にかられる。
「何見てるのよお」奈々子は包丁を持つ手を休めて、俺を振り返って笑った。
「な、なんでもない。ごめんね、料理作らせて」俺は良からぬ妄想を見抜かれた
気がして慌てて取り繕う。「ごはんのスイッチいれてくれる?」「あ、いいよ」
俺は立ち上がって、炊飯ジャーのスイッチを入れようとした。
「ビーーーッ!!」突然ベルが鳴って、ブレーカーが落ちたかのように部屋は
真っ暗になった。「うわっ!なんだ?奈々子だいじょうぶ?」
俺は流し台の前の奈々子が心配でうわずった声が出た。
『プレイ続行しますか?』電光掲示板の緑のランプが暗闇の中に灯った。
「またかよっ!続行するよ!いちいち待機モードに入るなよ!」
俺は安売りの電器屋で買った「省エネ冷蔵庫 奈々子」に向かって怒鳴る。
「理想の恋人仕様」が売り物で、仮想の恋人の立体映像を映し出してくれるのだ。
しかし、省エネモードが災いして15分以上継続して映像がでないのだ。
「まったく、本物の女みたいに出し惜しみしやがって!」
俺はこんなの詐欺だ、と思う反面、奈々子にならカモにされてもいいやと
すっかり仮想現実の世界に嵌まってしまっている自分もいる。奈々子はまた
台所に戻ってきた。俺の気持ちを弄ぶように、今度は裸にエプロン姿だった。
次は、「乱戦」「上方」「柵」で。
441 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/23 04:56
r
俺はまじめな化学教師だ。その日は、中間テスト作成に徹夜したのが祟ったのか少し頭がふらふらしていた。
俺は問題無いだろうと判断し、受け持つクラスへ向かった。起立、気を付け、礼。授業が始まる。
すると俺の考えが甘かったことが思い知らされた。脳内で様々な思考が大乱戦を繰り広げ始めたのだ。
そんな俺などお構いなしに生徒の一人が手を挙げた。俺としては見なかったことにしたい。
だが、やはり放置する訳にもいかず、しかたなく俺がそいつを指名する。するとそいつはこんな質問をしてきた。
「先生!上方と下方の置換はどちらが効果的なんですか?」
またくだらない質問を……。俺は胸の中で毒づくと、正常とは程遠い頭で考えて答えた。
「そうだな、時と場合にもよるな。たとえばこの教室で二人っきりの場合だ。
する気があれば置換なんてものじゃすまないだろうな。他の例としては……。
そうだな、満員電車の中だな。いくら人であふれてるといっても上方はまずい。周りに気づかれてしまうからな。
そういった場合はだ、柵の間を通すように慎重に手をのばして下方を攻めることをおすすめする。
まぁ、相手に声を出されたら終わりだがな。あとはそうだな……。ん、どうした?」
生徒達の反応を見ようと集中を目の前に向けると、鳩が豆鉄砲食らったような表情でこちらを見ていた。
ふと、自分が今まで言ったことを思い出す、とすぐその答えには行きついた。どうやら俺は『チカン』の勘違いをしたらしい。
俺は、まぁこんなこともあるかと思うと授業の続きを再開した。
次は「学生服」「戦国」「城」で
443 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/23 07:11
「乱戦」「上方」「柵」
病室の窓の外には、青い柵に囲まれた牧場がひろがる。
彼女は毎朝その景色を眺める、朝霧の中を走る一匹の白馬を。
今年で16歳。病弱な彼女が、外出を許される事は一生ないだろう。
「夢でもいい、あの白馬の様に・・・」彼女はふと呟いた。
不意に、或る声が上方から降ってきた。「夢でよければ、な」
次の瞬間、彼女は白馬となって牧場を翔けていた。
草木の匂いも鬣を伝う朝露も、全てが初めての素晴らしい体験!
それは現実と違わない、限りなくリアルな夢だった。
やがて牧童達が白馬を導く、柵の中の青い馬小屋へと。
真新しい馬草を与えられ、手綱を結わえられる時、彼女はふと気がついた。
牧場の片隅のこの馬小屋に、いつもと違う特別な用途がある事に。
一台のトラックが到着し、黒い牡馬が小屋に入る。
牧童達は柵の上で、手こずる種馬の乱戦ぶりを囃し立てる。
当然の様に白馬に圧し掛かる、種馬の生暖かさと獣の息の匂い・・・
夢から覚めるにはどうそればいいのか?
それは現実と違わない、限りなくリアルな夢だった。
※書いてておええ^^;L
次のお題は:「スクリュー」「リング」「タオル」でお願いしまふ
444 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/23 07:57
「学生服」「戦国」「城」
「信長様!」と濃姫が呼んだ。
「カフスが入っておりません」
「うむ・・・」とぐずりつつ、俯いて小さな手帳をひろげる。
「<戦国人手帳>(1)服装は清潔に(2)カフスは必ずつける(3)靴下糊棒禁止・・・」
「お前はどうだ。スカートは膝上一寸か?靴下糊棒は使ってはならぬぞ!」
濃姫は得意気にセーラー服の胸をはって、「風紀委員」の腕章を見せた。
「私めなら大丈夫。急ぎ城内購買部にてカフスを買っていらっしゃいませ」
信長は唸る。
これはどういうわけだ、欧米の新式の服装を取り寄せただけなのに。
学生服だと、なぜか、服従しないといけないな気分。
ただただ、服装だけのことで・・・
自分は、どうしてこうも卑屈な人間になってしまったのか?
戦国時代後期。
欧州列強支配への序曲は、既に始りつつあった。
静かに、思いもかけぬ方法で。
※かぶってすみません、責任とって書いてみますた。
次のお題は、継続の「学生服」「戦国」「城」でお願いしまふ
ヤンキーは学生服を改造する。短ラン長ラン、ボンタンにドカン、エトセトラエト
セトラ。
私の知人である山城も、そんなヤンキーの一人だった。彼は内張りに刺繍を
好んで施した。背中にでっかく刺繍を入れるほどの気合も財力もないだけの話
なのだが、そのセンスはある種常軌を逸していた。
「ホレ、見ろやコレ」
個人的に親しくしていた私に、彼はよくその刺繍を見せびらかしていた。
<戦国自衛隊>
「ノリだけで言葉選ぶのやめぇ!専守防衛のヤンキーなんか見たくないわっ!」
そんなことを繰り返していた。
ある日、朝登校したばかりの私に、なんとも言えない笑みを顔に張り付かせた
山城が、つつ、と寄ってきた。どうやら新作を見せびらかしたいらしい。見せてみ
ろ、と言うと山城は何とも嬉しげに、変質者よろしく学ランの袷を開いて見せた。
<進者極楽往生 退者無間地獄>
…………
「お前は一向門徒かぁっ!?」
今頃になってお題入れ忘れに気づいた。スマン皆。
継続、もしくは「寝坊」「銀行振り込み」「ドラ焼き」で。
447 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/24 02:52
「寝坊」「銀行振り込み」「ドラ焼き」
今日は待ちに待った給料日だったけれど、
たぶんそれで気が緩んでしまったのだろう。
うっかり寝坊をしたために、バイト先に着くのが30分ほど遅れてしまった。
店長は仕事が終った後、僕のことをねちねちとなじった。
彼はいつも文句を言う相手を探している。
それが唯一の趣味と言ってもいいかもしれない。
次第に僕は頭にきて、「そんなに言うなら給料はいりません!」
と怒鳴ってやりたくなる。でも、実際にはそんなことはしない。
説教の後、僕は店長に頭を下げて給料袋を頂戴する。
そんな自分が少し嫌になる。
翌日、溜まっていた公共料金を銀行振り込みで支払う。
すると後に残る金額はごく僅かである。その量を見ると酷く哀しくなる。
週末、大学時代の友人が遊びに来た。発泡酒を飲みながら
「俺は生活費を払うためにあんな奴に頭を下げているわけじゃないのに」
と愚痴った。友人は持ってきたコンビニの袋をゴソゴソと掻き回し、
中からドラ焼きを出した。「まあ、甘いものでも食べて元気になれよ」と言う。
僕は半分に割ったドラ焼きをもらい、一口で頬張った。
あんこが妙に少なくて、お世辞にも満足できる代物ではなかった。
「人生、もっとあんこが多くても良さそうなのに」と僕は呟いたけれども、
友人はもさもさと口を動かすばかりで、何も答えなかった。
次回、「タウン」「あいつ」「橋」でよろしく。
448 :
「タウン」「あいつ」「橋」:03/10/24 16:30
外国人が集まりそうな場所に、英語版のタウン誌を置いて回るのが進也の仕事だ。編集
から営業までほとんど進也がひとりでやっている。バイトの電話番には「発行部数は1万
5千部です」と答えさせるように言ってあるが、実際には二千部がいいとこだ。日本に来
て間もない外国人にとっては少しは有効かもしれないが、長期にわたって日本に住んでい
る者や外資企業の人間にとってはゴミ同然の情報だけの、ただのクズペーパーだ。
実際、広告を出したいと言ってくるのも、わけのわからない個人や私企業ばかりだった。
曙橋の近くの又借りのオフィスで、進也はFAXマシーンにかかりきりだった。壊れた
ままのリモコンを尻目に、エアコン本体のボタンを押す。異常気象のせいなのか、十月だ
というのに真夏のように蒸し暑い。さっきから何度も繰り返しているが、八ヵ月前に広告
を掲載した会社宛のFAXは送信エラーが続き、電話をかけても常に留守テープが回って
いるだけだ。広告の掲載開始時に使った2、3の"サクラ"の存在に気がついたのか?
そもそもフリーペーパーの広告で大勢の客を釣ろうとすること自体が甘いのだ。どいつも
こいつもろくなもんじゃないな。進也は苦々しい思いで、自分の落ちた位置を今さらなが
ら感じた。掲載料を払おうとしないあいつらも、この俺も、所詮同類ということなのか。
進也は、紙を咥えたままになっているFAX電話機のリダイヤルボタンを押した。
次は、「柄」「ライフ」「立つ」でお願いします。
「喰らいやがれ」
対峙した二人の男の片方が、必勝の笑みを浮かべる。
柄に手を掛け、腰を低く落とし――来るべき相手を迎え撃とうとする
その姿勢は、男の必殺技「ライフセイバー」。
剣光閃けば森羅万象すべからく、命を刈り取る神域の絶技である。
だが、もう一方もこの相手に相応しきと剣を手に取った猛者。
この程度では怯まない。否、彼奴が本気となった姿を見てみたい、
そんな心持さえその動作には見て取れた。その殺意に応えるように、
もう一方の男もまた、柄を握りしめたのだ。
二人の男が立つその大地は、互いの剣気で地鳴りさえ起こしているかのようだ。
じりじりと、間合いが狭ま
「なぁ、ライフセイバーはないだろ?」
突然後ろから声を掛けられて、キーボードを打つ手が止まる。
僕は振り向きざまに言葉を返した。
「いいじゃないか、格好いいと思ったんだから」
次のお題
「月」「宵闇」「刹那」
月なる女神アルテミスの輝きが、煌々と大地母神ガイアを照らす。
ガイアは思う。妾のみが在りて仔を産み、種々の戦に身を委ねたは、刹那のことで
あったか、はや永劫の彼方であったか。
千々に裂かれたウラノスを天蓋とし、クロノスの紡ぐ時にたゆたう。クローソーが紡ぎ、
ラケシスが織り成し、そしてアトロポースが断ち切る。時の腕を逃れるのは、ただガイア
のみ。ヘリオスの曙光とニュクスの宵闇が千万億と巡り、ティターンもギガースも、はた
またオリュンポスの神々もその果てに滅ぶが定め。ガイアのみがただ在り、在り続ける。
ガイアは虚空に輝く満月に思いを巡らす。仄青く、光ともなく闇ともなく、冷たく照らす
月を。
月よ、月よ。幽冥の狭間に在り、妾と冥府を共に照らす月よ。汝のみが、妾と妾の子
らを等しく照らしてある。妾が何時しか永き生に倦み、滅びの途を選ばんとしても、汝は
斯くも冷たく妾を照らしてあるか。
そして地母神は思うことを止め、微睡みに落ちる。千万年を経て、神にも長き時を超え、
新たなる目覚めの時まで。
月は冷たく、眠れるガイアを照らし続ける。
次のお題は「ハッピー」「予約」「刺激感」で。
452 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/24 20:18
「月が綺麗やねえ」
「ほんま、久しぶりやわ、こんな夜空」
藤堂姉妹は、まだその時点ではすぐそこまで来ている危機に何一つ気付いていなかった。
いや、正確には何かが近づいてきている事は察知していたのだが、
それが危機であるという事に気付いていたのだ。
その「何か」は、夥しい「怨」を纏っており、宵闇を増幅させながら姉妹の背後に迫っていた。
「姉さん、勿論わかってはりまっしゃろ?」
「アホ言いな、こんな殺気立ったお人に気付かんとでも思ってんのん?」
姉妹が振り向いたのは同時・・・だったように思える。少々の差こそあれ、
どちらかが先に、と言えるほどはっきりした物ではなかった。
その時だ。
ぶしゅ。ぶしゅ。
これは擬音である。そして刺された場所もまた祇園だった。
そんな事はいい?いやいや、それはお約束という事で。
私は姉妹の上空にいた。上空に。
これは九条の言い間違えではない。そうなんやて。
洒落ならもっと気の利いた事を言ってるがな。
刹那には信じてもらえないかもしれないが。
次のお題
「デリバリーサービス」「茶筒」「音楽評論家」
お題「ハッピー」「予約」「刺激感」
結婚してもう1年が経とうとしているのだと、
陽子はカレンダーにつけられた赤い丸印で知った。
この赤い印をつけた時と同じ幸福感があるかと今問われれば、言葉に詰まる。
帰りの遅い夫を待って起きているのをやめたのはいつ頃だったろう。
左手に誇らしげに輝いていた銀の指輪ももう随分とくすんでしまった。
その指輪をそつと外してドレッサーの上に置くと、
タイミングを合わせたように電話のベルが鳴った。
受話器から聞こえてきたのは愛おしげに自分の名前を呼ぶ声。
「あの店、予約したから。今日だっだろ?」
陽子の頬に、久方ぶりに笑顔が戻った。
鏡に向かいいそいそと口紅をつける。
この口紅は確か結婚前に夫に贈られたものだったと思いながら。
馴染みの店に入ると、奥の席に腰掛けた男が手を上げた。
「ハッピーバースデー」
陽子の好きなカサブランカが揺れる。
男は陽子の笑顔を誇らしげに見ながら、少し困ったように眉を下げた。
「今日、結婚記念日なんだろ? いいのか、旦那は」
陽子は赤い唇をに、と歪めて笑うに留めた。
というわけで次のお題
「デリバリーサービス」「茶筒」「音楽評論家」
454 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/24 20:41
音楽評論家、なんて肩書きはいまや何の役にも立たない。
何人もの新鋭音楽家に挫折の道を歩ませたこの両手はもう、
自力で茶筒を開けることすらできないのだ。
ベッドの上に根を張ったこの身体は、
今や12時と18時の食事宅配のみを楽しみに、
ただ惰性で生きながらえているだけだ。
チャイムが鳴った。時計を見ればいつもの時間よりも10分も遅れている。
手元のインターフォンで制服を確認し小言を告げ、
鍵を開けるといつもとは違う男が靴も脱がずに入ってきた。
私ははっと彼の顔を見た。パチン、と彼の手の中で音が鳴る。
ああ私は確かこの男の音楽を何と酷評しただろうか。
その記事の内容を思い出す前に、ギラリと光ったナイフが私を確実に捕らえていた。
次のお題は「通り雨」「スリッパ」「赤い花」
「通り雨」「スリッパ」「赤い花」
通り雨が止んだ。
私は切れていたタバコを買いにいくために、パジャマの上にカーディガンを羽織って外に出た。
水溜まりがそこかしこに出来ているだけで、いつもとなんらかわりのない平坦な歩道。私は歩
く。ニコチンが切れていると私はとても不機嫌になる。足早に曲がり角の自販機を目指す。
「ピッチャン! ピッチャン!」
なんだろう。子供が雨上がりにはしゃぎながら遊んでいるのだろうか。音のでている方へ足を
かたむける。
「ピチャピチャピッチャン! ピッチャピチャ!」だんだん近づいて行く。
子供が嬉しそうに遊んでいるだろうと思うと、不機嫌な気持ちも少しは和らぐというものだ。
多少の遠回りぐらいしたっていい。 だがそこでみたのは驚くものだった。
4、50代に見える、便所スリッパを履き、頭にクルクルを巻き付けたネグリジェ姿のオバ
ちゃんが、水溜まりの上で飛び跳ねていたのだった。傍らに咲く赤い花より鮮やかな、紅い口
紅を光らせながら。
動揺した私は失敗を犯した。ハイライトとラークを買い間違えた。よほど赤い色に惑わされた
のだろうな。
「俘虜」「クリスマス」「通訳」
456 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/25 06:01
「俘虜」「クリスマス」「通訳」
巨大スクリーンに拘束椅子。人体実験室としてはまともだった。
40歳にはなるだろう俘虜の男は、拘束されながらも念を押す。
「本当だな。私が被験者になれば、娘の安全は」
「保障するとも、ガス室は免除だ。君同様、大事な被験者だからな」
「ひ、卑怯者っ。貴様は人間の屑だ!」「お父様ー」
固定された瞼に巨大スクリーンが向けられ、クリスマス番組が映し出される。
洗脳薬が点滴され、通訳が同じ言葉を繰り返す。「聖なる夜には・・・」
実験は、丸三日続いた。
男の生活は前と同じ、重労働の繰り返しだ。
冬も深まり、スコップを持つ手が震える。
「なあ、敵の仕事だろ。なにをそんなに一生懸命」と俘虜仲間が訊く。
「それはな」と答える男。「真面目にがんばる者には、だ」
そこに娘が帰ってきた、慰安室に皆勤で頑張る娘が。
「そうよね、お父様。真面目にがんばるよい子には・・・」
実験は成功だった。
二人は完全に信じていた、サンタクロースの存在を。
※みんなが信じてる
次のお題は:「労働力」「低コスト」「密封」でお願いしまふ
457 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/25 10:06
「労働力」「低コスト」「密封」
もうすぐ出勤の時間か。
玄関で、そうつぶやいて男は溜息を吐く。
彼は、「行きたくない」と叫び
ちょっとでも油断すれば心の全てを覆い尽くそうとする絶望に
「生活の為じゃないか」と、いつもと同じ言い訳をし
絶望がまた何か言わないように心を密封して、ドアを開けた。
彼が働いている会社は人材派遣会社に紹介されたものだった。
会社の上の連中は、不景気やらなんやらの理由で
なるべく低コストで手に入る労働力が欲しいので
人材派遣会社に、その希望に見合った人材を求める。
彼は駅への道を歩きながら、「同じ道、同じ毎日、つまらない会社
僕は歯車なのか?機械なのか?人間じゃないのか?」と心の中で呟いた。
結局、玄関で密封する時に使った「生活の為じゃないか」
という心の鍵は、絶望にとって無力過ぎたのだった。
------------------------------------------------
次の御題は「テレビ」「日光」「猫」でお願いします。
テレビをつけたら、ニュースをやっていた。
よくやる、日光の凶暴化した猿の話だと思っていた。最初のうちは。
しかし、今回のニュースは少し毛色が違った。
人の持ち物を奪うほどに凶暴化した猿に、新たなライバルが登場したというのだ。
そのライバルは、猫!
主に東照宮付近に住み着き、甚五郎作『眠り猫』の加護を受け、今では一帯の猿
を駆逐する一大勢力に発展したという。
猫は観光客の前ででんぐり返り、もふもふの腹の毛を触らせたり、肉球をぷにぷ
にさせたりすることで餌を得ているという。
そこまで見た俺はテレビを消し、戸締りをした。
今すぐ、日光へ行こう。
次のお題は「満員電車」「ネクタイ」「礼儀作法」で。
11:30以降書き込みはしてないから!
何勝手に人のHN使ってるの?????????
460 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/25 13:03
誤爆かいな綾瀬たん。
461 :
満員電車・ネクタイ・礼儀作法:03/10/25 16:21
その日、鉄太郎は帰宅の為に電車に揺られていた。
少々不便ながらも、鉄太郎は江古田に住んでいた。
某大学の芸術学部に進学するため、旭川から上京して以来、
この大都会のヘリにある鄙びた学生街の呪縛にかかったらしく、
卒業後一時は川崎に住んでいたのだが、テレビ番組の放送作家の仕事が
軌道に乗り始めてから、またこの街に呼び戻されるかのように居を移した。
電車の中は珍しく空席だらけだった。仕事柄、帰宅する時間が不規則なので、
普通の勤め人と同じ時間に電車に乗り合わせる事は滅多にない。
鉄太郎はこの空間が好きだった。乗っているのは老人や子供連れの主婦ばかり。
ネクタイを締めて満員電車に揺られるのは鉄太郎には耐えられない事だった。
とりたてて勉強も出来ず、礼儀作法も満足に知らない。
そんな人間が満員電車に乗るのは、まっぴらごめんだった。
次、「オリーブオイル」「へヴィーメタル」「純情」でお願いします。
462 :
オリーブオイル・へヴィメタ・純情:03/10/26 22:24
皿の上でペットボトルを傾けた。黄色の池が出来て、オムレツが島のように
見えた。郊外の食料品店で仕入れた、安いオリーブオイルだった。
ペットボトル入りの薄黄色い液体には、苦い思い出がある。
脈動する黒い人だかりの中、へヴィメタルと光線が私たちを貫いていた。
私は腕を振り回しながらも、ステージの性的興奮を煽るような仕草に、
ひどくもじもじとしていた。客が這い上がり、私たちに向かって飛び込んで
きた。人の波に沈むかと思いきや、リレーのように頭上を運ばれていく。
ライブハウスの際まで運ばれたその男を、私は羨ましいと思った。
つと、ボーカルが腕を高く掲げた。
いつの間に飲んでいたのか、ペットボトルが握られている。客の興奮が
高まった。ペットボトルが宙を舞う。私の方へ。
中身は、ちょうどこんな色合いだった。安売りのオリーブオイル。私は
興奮の中、きっとボーカルが口をつけたであろうペットボトルに、急いで
唇を押し当てたのだった。塩辛い味覚に気づいたのは、半分も飲み干した
後だった。
尿を飲み干して、潤む目でステージを見上げる私は、それでもまだ純情
だった。それを幸せだと思っていた。
463 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/26 23:16
お題は?
「2っきり」「期待」「恐がり」
「じゃ、また明日。今日はたのしかったよ」
「えー。今日わたしの家においでよ、田熊クン。今日、家族がいないの」
そういいながら彼女は満面のえみを浮かべた。家族のいない時に誘うってのは期待していい・・・のか?
オレは淡い期待を持ちながら、彼女の家に入った。
そして、彼女の部屋に真っ先に案内される。
「ここがわたしの部屋だよー」
部屋に入ると彼女の匂いが充満してる。いいにおいだ。
なんだこの匂い。わた菓子のような、そんな匂いがする。
心臓が一気に波打つのがわかるほど、オレの胸は高鳴り、当然下も・・・。
「渡辺さ・・・」
彼女を抱きしめ様とするが、それより先に腕を引っ張られた。
「それはそうと、こっちきて」
「えっ? えっ?」
またもや、ひっぱられていく俺。なんだァ?
「オフロバに蜘蛛がいるのよ。朝、洗面器でフタをしてとじこめたんだけど
このままじゃお風呂にはいれないのよ」
「は?」
期待ハズレばかりの言葉にうなだれる俺。
親にいえばいいじゃん! あ、そうか。彼女の家は留守だった。
虫退治のために俺を家に連れてきたわけね。などほど。
「はいはい。じゃ、ティッシュとはえたたき持ってきて」
こんな彼女だけど憎めないし、多分これからもずっとこんな風に
つきあっていくんだろうなーと思う。
おわし
465 :
オリーブオイル・へヴィメタ・純情:03/10/27 00:02
>463 うわっ忘れてた。ごめん!>464のってことでよろしく。
466 :
オリーブオイル・へヴィメタ・純情:03/10/27 00:17
あれ? >464も次の題を忘れてるな?
じゃあ決めとこう。
次は『崩壊』『雨』『異国』でたのんます。
467 :
「2っきり」「期待」「恐がり」:03/10/27 00:45
夕暮れ、2っきりで土手を歩く。少し期待してしまう状況だけれど、でも、田原くんとはそんな関係じゃない。
ただ文化祭の委員をしてるだけで、同じ方向だから一緒に帰ることになんとなくなっちゃっただけだ。
あたしは10センチ程、田原くんの側に寄った。
こつん、と肩が振れるけれど、田原くんは気付かないみたいだった。
「でもうち、文化祭なにやるんだろうね。前みたくお化け屋敷かな? でも、よっぽど恐がらせないと、競争率高そうだし。三宅さんそういうの詳しかったよね?」
「え?」
「だって、サバトとかブードゥーとか詳しいじゃない。前の文化祭なんか泣き出す子もいたりしてさ」
そりゃ、本物も呼んじゃったし。
「ああ、そう、ね。でも多分大丈夫だよ。騒霊ばっかりで祟ったりしないから」
「み、三宅さんって、ちょっと変わってるよね」
そう。あたしは変わってる。ポルターガイストとか交霊とかに興味があるし、それが普通じゃないって、親からも言われてる。たのむから普通にしてて、って。
「俺、恐がりだからさ。幽霊とか無茶苦茶嫌なんだよね」
「大丈夫よ。普通にしてれば祟られないし、それに、悪霊なんかあたしがおっぱらってあげるから。
田原くんの為だったら悪魔祓いも怖くないし」
勇気を出して手を握ると、田原くんは手に汗をかいて、固くなっていた。
「そ、その時は、おねがい」
田原くんはぎこちなく答える。
そっか。田原くんもあたしのこと好きなんだ。
「うん。悪魔も悪霊も、悪い虫みんな追っぱらっちゃうから」
あたしは一世一代の微笑みを浮べた。
次は「雪」「侍」「宮」で。
あう。
じゃあ次は『崩壊』『雨』『異国』で。
雲の天蓋が包む草原の戦場を、雄雄しく駆ける男の姿。
鈍色の仮面を被ったその手に似つかわぬ大剣を構え、自らが武器と謳うように進む。
押し迫る大群は、しかし紙切れのように切り伏せられていく。それは既に集団としての機能を果たしていなかった。
たった一人の男に崩壊させられたのだ。その事実が、軍勢の中にいた騎士たちを戦慄させた。
――我が軍はもう終わりだ。あの朝令暮改な指揮官の下にあっては。
――隊長さえいてくれたら。
――言うな。かの白狼は、最早我々を導いてはくれぬ――。
ついにその騎士たちの下に、敵の剣が届いた。降り続く豪雨は、思ったように馬を走らせず、しかし敵の馬と来れば、
出来合いの湿地をものともせずに駆けてくる。敵軍とは膠着状態だった。それを覆した仮面の騎士は、
既にこちらの軍の中ほどまで来ていたのだ。やぶれかぶれで繰り出した攻撃も、ひらりと躱されたかと思うと
次の瞬間には――。切り伏せられていく仲間を横目に見ながら、しかし兵の中の一人は確かに見た。
男の手にある大剣。それは、式典や戦場で幾度も目にしたはずの、
彼も彼らの仲間も奉じていたはずの、精緻な細工をあしらった白銀の大剣。
その剣。その強さ。その速さ。何故――と問うた兵が切り捨てられる直前に幻視したのは、
かつて王国最強と呼ばれたはずの騎士隊長、白銀の狼の雷鳴も高らかな、異国の騎士の姿だった。
お題
「稜線」「神域」「乙女」
私の故郷は大和国、奈良県は奈良盆地である。
常に山を眺めて過ごしたたせいか、東京で暮らす今も、
山がどこかに見えないと不安になる。
久しぶりに帰郷してみた。盆地から見渡す山々の稜線は
何も変わっていなかった。ただ、こんな田舎でもちょっぴり
近代化が進んでいた。近所に郊外型アミューズメント施設ができていた。
近鉄アーバンライナーに新車両が投入されていた。
国道の幅が広がっていた。私が子供のころは「国道が狭くて危ないから」
という理由で中学まで自転車通学できなかったのに……!
国道といえば今回私が故郷を訪ねる理由が、日本最古の「国道」
山の辺の道の最北端に位置する石上神宮に詣でることである。
大学の卒論提出期限が迫って、いや、正確に言うと過ぎて……ゲフンゲフン、
いるのである。論文に石上神宮をとりあげているので、帰郷がてら見に行くことにしたのだ。
神域は……狭い。「神宮」だからといって明治神宮や伊勢神宮の規模を想像しては
いけない。すぐそばの天理教本部の大きさに比べなんとも貧弱な……。
ああ、そうか、思い出した。石上神宮の神域は背後の布留山をも
含めたものだった。これなら天理教ともタメを張れる。
しかし正月だというのに参詣者の少なさよ……。こればっかりは天理教に
持っていかれっぱなしのようだ。
見た。十分見学した。むしろ立ち入ることのできる神域が狭すぎて
物足りないくらいだ。私の見学欲はこんなことでは満たされない。
神社といえばあれを見学せねば!そう、巫女さんである。
どこだ?どこに私の求める乙女が……。いた!しかし容姿が……。
これだから田舎は……。名古屋の某所で見た巫女さんはもっと綺麗……ゲフンゲフン。
久しぶりの故郷は良かった。石上神宮周辺も、地元とはいえ行ったことがなく、
新鮮だった。私は満足して故郷を後にした。
私の卒論が担当教員の目に入るのはそれからさらに日を置かねばならないのであった。
次は「軍団」「太陽に」「ほえろ」の三語で
「軍団」「太陽に」「ほえろ」
「本当に行ってしまうの?」彼女はうつむいて、そっと地面をつま先で掻いた。
「ああ……。男には男の夢があるんだ」俺はぶるりと首を振り、踵をかえした。
「あばよ、もう俺の事なんか忘れろよ」彼女はじっと俺を見つめていたが
過去を振り切るように、2、3歩よろめくように歩みだした。そして……。
太陽に向かって昂然と顔を上げると、尻をふりふり彼女は去っていった。
女はつよいな。だが、俺はトレーナーと勝負の世界に賭けることにした男だ。
あばよ! 俺は雄叫びをあげた。おっちゃん! 俺はやるぜ! リングが俺を呼んでいるんだ!
「けえっ!けっけっけっ!」敵の咆哮が俺を圧倒する。
敵に目潰し攻撃を受けた俺は、首に致命傷を負ってしまった。
「ほえろ!飛びつけ!威嚇されるな!」おっちゃんの声が聞こえる。
でも、もうダメだよ。おっちゃん。ああ、こうやって死んでいくんだな……。
『軍鶏団子鍋 はじめました』
俺を失ったおっちゃんは闘鶏から足を洗い、軍鶏鍋屋になった。
俺はミンチになって好物の小松菜の海に沈んでいった。こーこっこっこ。
……御題継続で。
472 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/27 13:25
先日石原軍団の本締めが、太陽に吼えろの撮影を開始するとの通達があった。
マスコミでもさわがれてたのに、まだやる気か、と思うADの俺。
身内にもこのことでいろいろ聞かれて、ホントに大変だったのに…。
業界にかかわっても、いいことがねぇ。つかいっぱしりだし、もう、くたくた。
理想と現実はこんなにかけはなれたものだったら、この職についてないよな。
「西原ー。なにもたもたやってんだ! はやく来い!」
「はい、ただいま〜」
そうだった、いま撮影してるんだった。
次は「銭湯」「老婆」「ヘルスメーター」でよろしこ。
「銭湯」「老婆」「ヘルスメーター」
お忘れものでございますか? はいはい。取ってありますよ。腕時計でしょ。
ヘルスメーターの脇に落ちていたのを見つけて、番台でお預かりしておきました。
ええっと。はい、どうぞ。舶来のすてきな時計ですねえ、本当にまあ、よかったこと。
一一いえ、すみません。年寄りはすぐ昔の事を思い出すんですよ。
いえ、ね、昔もお客さまのように腕時計を忘れた方がいらっしゃったんですよ。
まだ、あたくしが娘時代のことです。今でも、忘れ物をお預かりしている方の事なんです。
いつも袴を履いて、きちんとした身なりをされていた、法科の学生さんでした。
でもねえ、兎に角、忘れ物をされる方で。うふふ。ハンカチやら足袋やら何かしら
忘れていかれる。本やら万年筆やら、大事な仕送りの入った封筒まで。だからいつも
あたくしが、走って追い掛けていったんですよ。「お忘れものですよ」って往来で
声をかけると、真っ赤になって平謝りに詫びられて。あたくしもまだ十七の小娘でしたし
男の人の物に触るなんて、とてもじゃないけど恥ずかしい盛りでしたしから
怒ったような顔をして「もう忘れないで下さいね」なんて意地悪な口をきいたりして。
その方が最後に忘れていかれたのが、腕時計だったんですよ。なぜかその日は追いつけなくて。
そのあと、ふっつりと姿が見なくなって。戦争も段々激しくなって消息もわからなく
なりました。でも、いつか、ひょっこり戻って来られるような気がしてねえ。
こんな婆さんになっても、風呂屋をやめられないのはこのせいですかねえ。
あら、あら、とんだ長話になって。どうも御免下さい、またおいで下さいな。
一一風呂屋のガラス戸が開いて、一人の老紳士が入ってきた。紳士は番台に向かった。
途端、老人の頬が朱に染まる。番台の老婆は目を見開き、灰色の瞳にはみるみる涙が溢れた。
**次は「巨人」「小人」「流刑」でおねがいします。
↑
申し訳ありません。×風呂屋→○銭湯
二回も風呂屋と書いてしまいまいした(泣
475 :
次は「巨人」「小人」「流刑」:03/10/27 21:44
不法投棄のゴミが運ばれる様を見て、幼い頃に流行った遊びをふと思い出した。
遊びというよりは、虐めに近かったソレは、子供ながらに悲惨なゲームだと感じていたのを良く覚えている。
『巨人』と呼ばれる一人の鬼を何人かの『小人』で追い回し、
捕まえたときは泣き叫ぶまで殴りつける。『巨人』が泣いたらゲームは終了だ。
逆に『巨人』が反抗し小人を泣かせたときは小人の負け。
その小人は『流刑』と呼ばれる×ゲームを言い渡され、空き地に点在する冷蔵庫に押し込まれる。
ゲームも終盤になると幾つもの冷蔵庫から泣き声が聞こえてくるのだ。
いつしか私達にとって、冷蔵庫とは何物にも変えがたい恐怖を生み出す檻となっていた。
子供らしい意味の無いゲームは子供だからこそ出来たゲームだったのだ。
私はただの一度も流刑になったことは無かった。
今でも古ぼけた冷蔵庫を見ると思い出す。あの他愛の無いゲームを…。
次は「国」「ズボン」「CD」でお願いします
476 :
「国」「ズボン」「CD」:03/10/27 22:15
まだ学生だった頃、一年間必死でバイトして、ためた金で世界旅行に
行った。少ない路銀だったから贅沢も出来ず、日本から持ち出したCDを
ポータブルで聴くのが唯一の慰めだった。
休学しながらの旅行だったので時間は十分にある。都市圏にいた頃は
国の違いを考えていた。日本の狭さを、外国という未知に触れることで、
痛感したかったのだろうと思う。
そのうち宿に泊まる金も乏しくなって、バスで荒野へ出た。街で買い
込んだ水や食料を頼りに歩くうちに、自分の中で国の境界が消えた。
強い訛りの英語で話しかけてきたヒスパニック系の親子と、通じない
会話を何時間も楽しんだ。どこにいようと、自分が踏みしめているのは
同じ地面だ。
もうズボンのポケットには、切れた電池しか入っていなかった。
CDを親子に差し出すと、物珍しそうに覗き込んだ。日本では有名だが
もちろん親子は知らなかった。鏡面のように夕日を反射させて遊ぶ娘を
抱いて、女は笑っていた。
──次は、「サンダル」「天の川」「土」でお願いします。
477 :
「国」「ズボン」「CD」:03/10/27 22:17
うああ、投稿欄に書きなぐったら日本語が……主語が抜けて文章が
おかしかった……。いいわけ見苦しいから、今度は頑張ろう。
「国」「ズボン」「CD」
和の国にズボンという南蛮渡来の物が伝わったのが明治維新のころ(だとおもう)
そこから我日本は急速な発展を遂げたように思う。
それから1980年代、コンパクトディスクなる、七色に光る媒体に曲を録音できる
CDというものが開発された。
これは久々に世に登場する、画期的な発明である。
なにしろ、音質がこれまでとは違って、非常にクリア、なおかつ、いままでは
数分かかった蒔き戻しの手間がいらない(レコードのぞく)
しかし、21世紀になった今日。
前世紀とさほどかわらない生活様式である理由はなんだろう。
予想通りなら宇宙へはもう行けたはずである(金持ちをのぞく)
気軽に宇宙旅行を楽しめる時代はまだまだ先のような気がしてならない。
今後ますますの文明の発展に期待したい。
つぎは「先生」「戦争体験」「ひきこもり」でおねがいします。
479 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/28 03:07
職場関係のごたごたが嫌になり、ひきこもって半年。
そろそろ失業保険も切れるのでどうしようかと思っていたところへ、
親戚の年寄りを介護しないかという話が舞い込んで来た。
老人は俺の大叔父に当る人で、はかつて先生をしていたらしく、また戦争も体験してるという。
痴呆症状が出てきて、最近ではその頃の記憶がごっちゃになって周囲を困らせているという。
かつて福祉関係の仕事をしていた俺が今ひきこもっていると聞いて、
何とか助けてくれないかとやって来たのだ。
ひきこもって半年、最近何かと家人もうるさい。次の仕事を探すまで、という約束でOKした。
なんてことの無い、よくある痴呆老人だった。時々通って下や風呂の世話などの世話をやき、
時に戦争体験をえんえんと聞かされ、時に○○君!と説教された。
それで、いくばくかの金をもらい、後はひきこもるだけの日々であった。家人も親戚の世話を
しているということで、前ほどやかましくは言わない。目をつぶると、人前で理不尽に俺を怒鳴りつけていた
上司が浮かぶ。このままひきこもって働きになど行きたくないものだ。
ある日、大叔父が、「こうしてひきこもっていると、昔のことばかり思い出す。」と項垂れていた。
その気持ちはなんとなく解るなぁ、などと思いながら、適当に作業を終わらせて家に帰った。
家に着いてから、徘徊したまま帰って来ないと連絡があった。めんどくさいなぁ、と思いながら、
昔のことを思い出す、と言う言葉を思い出し、大叔父がかって勤めていた学校へ行った。
思い残すことがあったと、そこの事は時々つぶやくように独り言でこぼしていた。
大叔父はそこで自殺していた。何でいまさら、と駆けつけた大叔父の家族が呆然とつぶやいた。
それはひきこもっていたからさ。
俺にはそんな気がした。あれから1年、俺はまだ就職する気にもなれずひきこもっている。
次は
>>476の、「サンダル」「天の川」「土」で。
担任の山口先生が、最前列の机に原稿用紙を置き、ひとり四枚ずつ取って後ろに回すよ
うにと言った。夏休みを前にして、身近なひとの戦争体験や、同世代の生徒たちが動員さ
れたこと、原爆のことなど、戦争について四枚以内で自由に書きなさいと言う。最後まで
書けなくても、書いたところまでのみんなの思いを知りたいのだと先生は言った。
「採点はしないから、感じたままに書きなさい。箇条書きにしても構わないよ」
先生はそう言って、腕時計のアラームをセットし、教壇の横に座って本を読み始めた。
その日は、学校を休みがちだったひきこもりの園田君も授業に出ていた。園田君の席は
僕の隣りだ。内気な園田君は、学校を休んで家で好きな本ばかり読んでいるらしく、テス
トの成績のほうはパッとしなかった。制限時間があっという間にきて、結局僕は半分しか
書けなかった。先生が静かに顔をあげ、今書いた作文を隣りのひとと交換するように言っ
た。園田君の作文の字はすごく丁寧で、しかもちゃんと四枚分書けているようだ。
先生に指名されて、僕が園田君の作文を読むことになった。『戦争に行くのも、会社に
行くのも、自分を犠牲にして戦うという点では精神構造が同じだと思う』みたいな文章を
読んで、まだ中一なのにずいぶん難しい言葉を使えるのだなと、僕は驚いた。読み終わっ
たときに拍手が沸いて、先生は園田君を褒めた。園田君は少し恥ずかしそうだった。
次は(>479さんの)
>>476の、「サンダル」「天の川」「土」で。
今夜に限っては、随分と空が明るかった。
夏。祭りの喧騒が微かに残る宵の最中を、私は彼と二人で歩いている。
互いの足音だけが僅か、しかしぬるま湯みたいな空間にやけに響いてもどかしい。
ああこんなことなら、サンダルなんて履いてこなければ良かった。
ぺた、ぺたなんて間抜けな音響、今この状況からは排斥されるべきものだって言うのに!
無言。祭りを一通り見終わってから今まで、一言も口にしていないような気がするのは、気のせいか。
それも、多分お互いに。……長い。なんて、長いのだ――公園の木々は、風に揺れすらしない。
「……ねぇ」いきなり、突然、咄嗟に来るものだから、
「へぇっ!?」なんて、殊更間抜けな返事をしてしまった。
……いや、嫌悪に浸るのは後からでいい。「あ、ごめ、ん、なに?」
「うん、ほら」そう言って、彼は空を仰ぐ。私もつられて見上げる。動転してて、首がちょっと痛かったのはご愛嬌。
――ああ。この辺は街の明かりも届かない。木々の梢の囲む中、切り取られた夜の空は、
天の川までとはいかなくても、それでも充分に幻想的で。
無言じゃなければきっと、気づかなかった。――うん、そうだ、そうだろう。そう思っておこう。
知らず、土を踏みしめていた。せめてこのしじまに、間抜けな音だけは響きませんように、と。
次のお題
「亜麻色」「ロザリオ」「アプリコット」
>462
尿を飲んで喜ぶのは果たして純情なのか。むしろ真逆ではないのか。
うむ、やはり純情なのだろうな。いや、純情そのものじゃないか!そんな気がしてきた!
シモだけど、発想も展開もいい。あとは描写をもう少し親切にすれば、より良くなると思う。
例えばこの場面。
>客が這い上がり
客がどこへ這い上がったのか分からない。
>リレーのように頭上を運ばれていく
これは読み手に丸投げの描写。
ライブの光景が元から頭の中にある人は容易に想像ができるのだろうが、
仮になかったとしたら、おそらくは理解に苦しむだろう。
三語だから多少の読み手への依存も仕方がない、という考え方もあるとは思う。
でも、自分はナシ。
>464
ところで、このお題はどこからひっぱり出してきたの? 2っきり。 まあ、いいか。
かわいいお話ですね。
>467
上手。十五行で収めていれば、迷わず優良あげちゃう。
難癖つけるとすると、セリフの出所がわかりづらいことかな。
例えば、最初のセリフは「三宅さん」が出てくるまで、どっちが話してるのかわからない。
にぶい奴だと中盤まで混乱するかも。
怖がりというキャラ設定のため、田原くんの口調は上品なんだろうけど、わかり易さを優先するならば、
もっと男っぽくするのも手。まあ、参考までに。 良。
>469
かっこいいですね。
>470
長いので読めません。アホウですみません。
>471
イケる。
>2、3歩よろめくように歩みだした。そして……。
太陽に向かって昂然と顔を上げると、尻をふりふり彼女は去っていった。
って、ちゃんと軍鶏の描写として破綻していないのよね。
いいよ、いいよ。「軍団」については見て見ぬ振りしてあげる。 良。
すいません。誤爆しました。 ややっこしいよね。
485 :
「国」「ズボン」「CD」:03/10/29 00:18
>482
ありがとう! 尿の話書いたものです。主語抜かしちゃうのが癖で、ちゃんと
見直さないと駄目ですね…
「這い上がった」のはステージなんですが、ステージを直前の分で書いて、
しつこいかなあ…と削ってそのままにしてました。「段上」とかでもアリ
だったかもしれません。
描写の不親切さは指摘されるし自覚があります。適切な御指摘ありがとうございました!
うおー感想もらえると嬉しいなあ(素人丸出し…
486 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/29 01:47
「亜麻色」「ロザリオ」「アプリコット」
女はショールで顔を髪まで隠し、黙って診察台に向かっていた。
男は相手を安心させるため、敢えて無表情でこう言った。
「名乗る必要はありません、そのまま横になって下さい」
銀色の器具をアルコールの炎に晒し、黙々と検査の準備をする。
そう、彼は無免許の堕胎医だった。それも上流階級の女専門の・・・
罪の意識のためか、ロザリオを握り締めたままで横たわる女。
体を開きながら男は言った。「これは独り言です、答える必要はありません」
台を横切るカーテンの向こうから、頷く気配が伝わる。
「今、ふと、昔、舞踏会で一緒に踊った少女を思い出しました。
アプリコットの様な唇でよく笑う、亜麻色の髪の少女です。
彼女も私も、初めての舞踏会でした。二人とも若かった・・・夢中でした。
私の名の入った舞踏会の手帳を、あの人は今も大事にしてくれているかと。」
診察は終わった。「手術は来週月曜に」男は、無機質な表情に戻ってこう言った。
そして手術の日、女はやって来た。前回と同じ、顔も髪も隠したままの姿で。
しかし、前回診察台で見せた亜麻色の毛だけは、手術の時もそのままだった。
※ああ下品・・・デュヴィヴィエ監督、ごめんなさい(^^;L
次のお題は:「舞踏」「葡萄」「部長」でお願いしまふ。
487 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/29 02:50
tyoubun uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!!
ある晩、息子と母親はテレビを見ていた。テーブルの上には水洗いしてホコリを落とした葡萄。水滴はついたままだ。
二人は房から一粒ずつちぎっては口に運び、傍らに葡萄の皮を積み上げていた。とりたてて話すこともなく、視線はテレビのニュースキャスターへ向けられている。
「…少なくとも十二人が死亡…」
息子は他人事のニュースに興味がなかった。現実に起こってること(なのだろう)と思ってはいても、やはり現実感がない。
葡萄は好きでも嫌いでもない。テーブルに置かれているから手を伸ばす、そういうことだ。
「では、また明晩」
ニュースキャスターが番組の終わりを告げる。
母親が告げる。
「父さん、リストラされたんだって」
母親は特別な話題でもないと思っていた。毎朝スーツを着て家を出る父親がどこへ向かっているのか。
靴を履くために丸めた彼の背中を見れば家族にはおおよそ想像が見当がついていただろう。
大方、公園でブランコでもこいでいたのではないだろうかと思っていた。案の定息子は驚きもしなかった。
「ふーん。で、退職金とか貰えたのかね?」
テレビの中で真っ暗な舞台に白いスポットライトを浴びた老人が踊っていた。それは、踊りという言葉から想像される動きとは違ってはいたが。
「…暗黒舞踏というのは…」
二人は真っ白な化粧をした奇怪な老人の動きを漠然と眺めていた。
489 :
「舞踏」「葡萄」「部長」:03/10/29 04:15
いつもと同じ筈だった。
いつもどうりの時間に家を出て、同じ電車に乗り、同じ会社に行き
同じ人間に挨拶をする。
だのに、俺の席に座っているおフランス風のナイスミドルは何なんだ一体!
鼻につく甘い口調で早速女性社員に声をかけていやがる……クソッたれ、どうなってるんだ。
だいたい、奴らおフランス系の人種は気に食わないんだ。昼真っから葡萄酒なんぞを飲み、
夜は舞踏会なんぞに出かけ、女は尻を振りながら男を誘うのだ。腐り切っている。
よし、ガツンと言ってやるぞ。
「おい、甘いマスクの貴様! 勝手に人の席に……」
甘いマスクの左胸にキラリと輝く部長のマーク。
わたくし山田淳二は未だ独身の43歳であります。仕事仕事で仕事尽くめの人生でしたが
未だに課長どまり。この渡世の常識くらいは弁えております……。
次の瞬間わたくしの文句はおべっかに変わっていましたとも。
お茶を濁したところで、次は「交配」「悪魔」「酸素」でお願いしまし
490 :
489 sage:03/10/29 04:19
ごめんなさい。
お題は488でお願いします
491 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/29 15:16
「イケメン」「キモメン」「合コン」
この三語でホラー小説を書いて下さい
492 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/29 19:09
わたしの名前は川合伊予。趣味は鏡を眺めること。
それくらい私はかわいい。
そんな私が合コンに誘われた。私は合コンなんかで安売りするような
女じゃないけど社会勉強のつもりで行ってみることにした。
内緒の話だけど私はあまりかっこいいかっこいい男性が好みではない。
いわゆるキモメン好きだ。イケメンには興味が無い。
会場に到着した。皆の目が私に集中する。それはいつものこと。
だから私はそんなの慣れているの。
いわゆるイケメンの方が私にこう言ったわ。
『ぶっさいわー。』
次は「花火」「夏」「シベリア半島」でお願いします。
493 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/10/30 00:41
「花火」「夏」「シベリア半島」
はるか英国から日本に流れ着いて、10年。
まさか、自分が日本最西端の発見者になるとは思わなかった。
「ここが最西端なんです。おめでとう、発見者は貴方です」
「ア、ドモ、アリガト、ゴザイマース」・・・やはり実感がわかない。
花火が上がり、役人が大勢で祝いに来る。
「ナゼ、ミンナ、船デ、来ルノデスカ?」
「そりゃあなた、ここは最西端の常夏の島なんだから。船でないとね」
島?彼は驚いた。
「ノー!ココ、日本ノ西ノ縁。ニシベリ・ア・半島デスネ」
「いえいえ、日本はね、本州がずっと北に控えてるんですよ」
なんということだ。この島に流れ着いて以来、ここが日本本島と思い込んでいたのだ。
日本最西端の島、与那国島。そしてその西の縁、西崎。
それが彼にとっての「日本」だった。
「ソ、ソンナ・・・」早速本国に知らさねば。
知らなかった、日本がロシアに併合されていたなんて。
※なんとか固有名詞不使用・・・ああ苦しい;
次のお題は:「バラ」「名前」「臭気」でお願いします。
「君の誕生日に香気あふれるバラを贈るよ。
君の名前を書いたカードを添えて、ね」
いつもふざけてばっかりの私の彼。
おもしろいんだけど、たまには雰囲気のある
セリフの一つも言って欲しい、そう思っていた矢先のことだったから
正直うれしかった。
それなのに、ああそれなのに。
今私の目の前におかれた香気あふれる、というか臭気ただよう
この物体は何?
「バラだよ。豚バラ。早速これで何か作ってよ。あ、俺お好み焼き大好きなんだよね」
こんなものにネームカード添えられても……。
「私の誕生日くらいアンタが作れーーーーっ!!」
私のグゥパンチが彼のボディに突き刺さった。
次は「ナイト」「娘ッ子」「暴かれた」の3語。
俺の職はナイト・ナイト(夜騎士)。
今日も俺は夜の街を巡回さ。
おっと。泥酔した娘ッ子を発見さ。こいつは見物だね。
あっ。俺の方を見たね。きゃつも俺にぞっこんLOVEかな?
ははっ。こっちに来たよ。俺に何か妖怪?なんちゃってね。
おっと。冗談が過ぎたね。さっきからテンションが
うなぎのぼりさ。
おっ。もう俺の目の前さ。ハートがずっきゅんだね。
あははっ。どうやらあの娘ッ子の興味は俺の後にいた優男の
ようだったよ。日本も終りだね。
これが昨日帰りの会で暴かれた僕の過去さ。
次は 「ティッシュ」「鼻水」「デビル」でお願いします。
496 :
「ナイト」「娘ッ子」「暴かれた」:03/10/31 01:57
父親の墓が暴かれた、と聞き、エリゼは学校の寄宿舎から教会の墓地に駆けつけた。
「……父さん」
エリゼの父親の棺は掘り起こされ、死体が露わになっている。
金歯があるか探っていたのかもしれない、口から二三の歯が腐った肉を伴ってこぼれていた。
彼女は震えながら息を飲んだ。教会の神父はその様子を見て十字を切った。
「あー、こんな事になったのは大変残念な事だが」
「神父さま、父さんが何をしたの? お金も持っていない、ただの石切り職人なのに」
「こんな事を言ってはなんなんだが……君のお父さん、マルコにはよくない噂があったんだよ。あるナイトをゆすって、大金を得た。その家が没落する程のね」
「嘘よ。ウチにはお金なんてないもの」
やい娘ッ子、マルコの金はお前の物か。何処に隠した? 言わねえと非道いめにあわせるぞ。
そう言いながらエリゼは、昨日家に来た老人の事を思い出して震えた。
「ねえ、エリゼ、もしも良くないお金を持っているのだったら、私に預けるのはどうかな? このままだとマルコも地獄に堕ちるかも」
「本当に何も知らないんです!」
そう叫ぶエリゼを、神父は忌々しそうに睨みつけた。
この娘は絶対に知っている筈だ。娘想いのマルコだ。必ず預けている。
「父さん……」
でなければこの子が学校なんかに行けるものか。しかも寄宿している。一体何処から金が出ているんだ?
「言いたくなったら、言いなさい」
神父はそう言うと、教会に戻った。
次は「角」「篭」「瓶」で
すいません。次は「ティッシュ」「鼻水」「デビル」で
学校に行こうとする僕を姉貴が呼び止めた。
どうしたんだろう。宿題はやったし時間割も調べたしハンカチもティッシュも持った。
戻ってみると姉貴は「今日の運勢を占ってあげる」と言って変てこなカードを取り出した。
タロットカードに似ていたが、タロットにないはずの絵柄が随分あった。
どうも姉貴が自分で作ったものらしい。
怪しいとは思ったけど、時間には余裕があったので僕は占いをしてもらうことにした。
姉貴はテーブルに百枚以上はあるカードを全部ばらまき適当にかき混ぜて一枚だけ取り出した。
その一枚のはデビルの絵が描かれていた。
どんな運勢なのかと聞いたら「悪魔に襲われる」のだそうだ。
果たして、学校に行く途中で後ろから呼び止められた。振り向くと悪魔がいて高笑いしていた。
「ははははは!覚悟しろ!この俺様がお前の鼻水を飲み尽くしてくれるわ!」
どうやら、姉貴の占いが当たったらしい。
「空間」「光速」「慣性」
三語はないの?
ごめん、下げ切れてなかったみたいだ
501 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/11/01 11:12
「空間」「光速」「慣性」
光速ロケット試作品。それはなんと人力車だった。
3人の運転手に、課長が説明する。
「漕げば加速されるから、いつかは光速に達する。頑張れよ」
「か、課長っ!それはあんまり・・・」
「慣性の法則があるから大丈夫だ。社命がかかってる、血を吐いても漕げ!」
3人は、極限まで空間を切り詰めた操縦室で、3交代で漕ぎ続けた。
まだ光速にほど遠い、電波も通じる。
「か、課長、なかなか大変ですー!」
沈黙の後、答えが返ってきた。「もっと、死ぬ気で、頑張って、漕げ!」
なんだかんだで光速に達し、地球に戻ってきた。
船内では数ケ月だが、ウラシマ効果によって地球時間で50年は経っている。
古い経営体質が災いしたらしい、その時、会社はとうに消滅した後だった。
※理論的には可能だと思うけど・・・何万年漕げばいいんだろ
次のお題は:「便秘」「コンベンション」「令嬢」でお願いしまふ。
NYにて開催された月開発会議の舞台に一羽の鶴が舞い降りる。それは予想外の行動であった。
満月をバックに(おそらく意図的な演出)して、タワー屋上のヘリポートへと優雅に着陸する。
「閉塞した地球社会にはうんざり」と、紅鶴月子。その性(さが)傲慢にして苛烈、優美にして峻烈。
――停滞していた宇宙開発は、紅鶴グループの投資によってブレークスルーを迎えた。
その投資規模たるや、フラミンゴ(紅鶴に紋章によく似ている)の集団自殺とも噂されたほどだ。
だが紅鶴の令嬢が氷の大鉱脈を掘り当てると、月は天文学から経済学的な観念へと一気にパラダイムシフトした。
当然のように地球では先進国による月世界の利権の争奪戦が巻き起こる。
見上げる夜空には、大航海時代のアメリカ大陸にまさる広大な新天地が誕生したのだから。
このコンベンション会場こそが、その政治の表舞台であり裏舞台でもある。
ヘリポートへ各国の要人たちが我先にと出迎えた――それこそ警備をふりきってまで。
紅鶴の株は軒並み高騰し、すでに投資した何倍もの資金が回収されている。誰もが紅鶴とコネクションを持ちたがった。
そのとき月子はドレスのスカートをまくしあげ、差し込まれたマシンガンを引き抜き、虚空にむけてフルオートの引き金をひき絞る。
…そして、唖然とした空間にぽつねんと佇む、テレビカメラにむけて言い放った。
「月世界の独立を宣言する。そして地球に対し命令する。今後、いかなる宇宙開発も禁ずることを。
遵守されない場合には、この重力井戸の底に質量兵器を投下する。おわかり?」
月子は、ふうーと銃口に息をふきかけながら、ふと思いついて続けた。
「……地球に来ると、便秘がちでイライラするの」
月の無慈悲な夜の女王は、その圧倒的な支配力にもかかわらず便秘の女王様と呼ばれ続け、
無重力状態における大腸生理学の飛躍的進歩のきっかけになるのであるが、それはまた別のお話。
お次は、「心象」「滂沱」「コラボレーション」
504 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/02 02:39
いつしか僕は恍惚境に浸っていたのだ。
京子は、しばらくは嗚咽して蹲るままだったが、やがては顔を上げて僕を見つめた。
滂沱として頬を濡らす白い面――マスクに、なぜかしら虚ろな笑みをぶら下げながら。
それを眺めるうちに、昂ぶる僕の表情が歪を伴いながら彼女の虹彩に映るのを知り、
僕は一連の白昼夢を思い出した。そうだ、あれは悪夢なんかじゃなかったんだ。僕の、
僕の心象風景だったんだ。
答えは出たに等しい、と僕は思う。僕らの愛は、結局のところ遊戯だったのか?
いや、違う、新しい「愛のかたち」を模索するコラボレーションなのだ。それに相応
しい大団円は、もはや愛を昇華させるほかにない。
頬より伝う、幾筋もの軌跡に湿る頸に両の掌を添えて、僕は京子の瞳孔を覗き込ん
だ。伝播している、間違いない、明らかに伝播している、僕の意思が伝播している。
僕らの意思はひとつに絡み合ったのだ。
やがて僕は、掌にやさしく、少しずつ力を加えていった。
お題は「焼酎」「蛇行」「損傷」
505 :
「焼酎」「蛇行」「損傷」:03/11/02 09:54
社長のそばには、いつも金魚鉢があった。金魚の名は『俊くん』と
いった。その俊くんが役員会議の席上、まさかの解任通告を受けた。
金魚の肩書きを失った俊くんのショックは計り知れない。虚ろな
足取りで会社を後にして、馴染みの呑み屋にしけ込んだ。正確には
虚ろな足取りなのは金魚鉢を抱えた社長である。
俊くんの人生は蛇行の連続だった。幾多の困難と挫折の果てに
掴み取った金魚の座を、こんな形で追われる事になろうとは。頬を
伝う涙を隠そうともせず、注がれた焼酎を一気に呑み干した。
おかわりを要求する俊くんに無言でうなずき、社長が次の焼酎を
金魚鉢にドボドボ満たし始めた。
俊くんは解任されたが、社長は今でも社長なので会社に戻った。
社長室のドアをくぐると、真っ暗だった室内に明かりが灯った。
役員一同の拍手が俊くんを包んだ。『俊くん、ハンマーヘッド昇格
おめでとう』と書かれた垂れ幕を見て、俊くんはすべてを理解した。
窓際に据えられた巨大な水槽では、雌のハンマーヘッドが悠然と
泳いでいる。ハンマーヘッドとなった俊くんの、新しい恋人である。
社長の手によって、俊くんが水槽に移された。俊くんの頬を、涙が
濡らした。先程とは違う、感激の涙である。みんな、ありがとう!
水槽の底には、ボートが沈んでいる。激しく損傷した船体の内部には
数個の頭蓋骨が転がっていた。ハンマーヘッドはバリバリの肉食である。
俊くんは食われた。
506 :
「焼酎」「蛇行」「損傷」:03/11/02 09:56
次は「崖っぷち」「台本」「ふて寝」で。
彼に残されたチャンスは少なかった。
ただ一度、あるとするのなら、今度開かれる陸上大会。
ここでインパクトを残せなければ、彼に先は無い。
彼はふて寝した。確実に未来へと進行する時から目を背けるために。
いや、それは違う。
彼は、溜めていたのだ。来るべき時に向けて、全ての力を発散させるために。
三日間寝続けて、競技会の日――彼は、静かに立ち上がった。
「『崖っぷちのランナー』どうよ!?」
「サイコーっす部長!! その脚本!!!」
「よっしゃ〜〜!!! このノリのまま突っ走るぞおめーラァッ!!!!」
「ハイ部長ッッ!!!!!!」
某高校演劇部の三人は、書き上がったばかりの草案を手に、稽古場へと走った。
久々に書いた。
次は「勉強」「人生」「理想」
私の人生は勉強のみで占められていた。特別な能力のない、特に秀でたと
ころもさして無い私が現代社会で生きていくには、努力した時間のみが才能
に並立する要素だったのだ。
勉強してよい高校に入り、勉強してよい大学に入り、そして就職しても勉強、
勉強、また勉強。
昨日までの私は、勉強のみで構成された生物だったといえよう。
しかし、昨日までの私は死んだ。
あくまで勉強の一環だった、インターネット。昨日までの私は、そこで殺された。
歌が流れている。熱く、魂を揺さぶる歌が、努力のみで構成されていた私を根
底から震撼させ、破壊し尽くした。
世の中には、真面目に、このような歌を歌える人々がいるのだ。
今の私は、最上だと思っていた今までの生、勉強で構成された生に否を唱える。
私は羽化した。真なる理想を見つけたのだ。
私は歌う。歌いつづける。新たな私の生を寿ぐために。
「ケミカルアンカー、DaDaDa〜〜!!」
もうとまんないっす。
次のお題は「無限」「アンケート」「シリコン」で。
509 :
「無限」「アンケート」「シリコン」:03/11/03 00:31
駅前をふらついていると背後から肩を叩かれた。
振り向くと、一人の女が微笑みかけていた。
身体はガリガリに痩せているのに胸だけはやたら大きい。
この胸にはシリコンでも入っているのに違いない。
全く面識のない女だった。
幼年時代から記憶を辿ってみてもこんな顔の女に心当たりは無かった。
なぜこの女は俺を呼び止めたのだろう。
ティッシュ等の配布物も持ってないし、アンケート用の筆記用具も持っていない。
まさか俺を逆ナンパしようというわけでもあるまい。
人違いじゃないのか、と言ってみると、間違いなく俺に用がある、という。
俺はあんたのような女なんか知らない、と言うと、元は男だった、と答えた。
それでもう一度思い出してみると、確かにそいつは俺の知り合いだった。
人間の可能性は無限なんだなと思い知らされた俺だった。
「マスター」「バスター」「ミスター」
「マスター」
俺は椅子に腰をかけマスターを呼んだ。寒風をしのぐためにこの
喫茶店に入ったのだ。ホットコーヒーの1つも頼もう。
しかしマスターはいっこうに出てくる気配がない。もう一度、
マスターを呼んだ。それでも出てくる気配は、ない。その時だ。
俺の右肩はつんと突つかれた。右隣にいる中年が突ついたのだ。
「なんです」
いきなり突つかれ少々腹が立った俺は吐き捨てるように言った。
中年は鼻をすするといひひ、と笑った。厭な…気色の悪い笑い声だ。
中年からは死んだ獣のような臭いが放たれていた。
「それじゃあ、駄目だよ。ッズ。ここじゃ、マスターなんて、ッゥズ。
呼んだって誰もご…来ねぇんだよ。いひ、ひひひ」
舌足らずで、やたら濁点と句読点が多い無気味な喋りだ。
「キングジョーをじっで…知っているがい?」
キングジョー。どこかで聞いた。それはとても幼いころに聞いた。
何だっただろうか。確か人間じゃない…何かのキャラクターだった気がする。
思い出そうとする俺を見ながら中年が言う。
「ウルトラセブンてな番組があったろう」
…そうだ。そうだ。俺が幼い…具体的に言うと小学校中級くらいまで
のめり込んでいたウルトラマン・シリーズのロボット怪獣だ。黄金色に
輝いていて四体に分離し、陸海空を攻めるペダン星人のスーパーロボットで、
セブンがもっとも苦戦した怪獣だ。押し入れをひっくり返せばソフビ人形が
出てくるだろう。懐かしい。
「…その…キングジョーが何か?」
「ここのマスターは、ッ…ズ…そのキングジョーなんだよ」
思わず大声ではぁ?と言ってしまった。すると中年はまたあの厭ぁな笑いを発する。
この中年はきちがいなのだろう。どこの世界にキングジョーがマスターの喫茶店が
あるものか。そもそもキングジョー自体が存在しない、架空のものだ。
「あんたホットコーヒーかね?」
「はぁ、まぁ」
「よし。おい、キングジョー。ホットと…そうだな、俺はグレープバスターだ」
グレープバスター。察するにグレープフルーツの炭酸飲料水なのだろう。
こんなきちがいの隣にいれるか。そう思い俺は席を変え…いや店を出ようとした。
しかし席を半分立ったときだ。のそのそと…店の奥から金色の人外のものが出て来た。
キングジョー。
胸部は虹色に光り、目は丸く何も写っていない。頭部の両端にはアンテナのようなものが
くるくると回転している。テレビで見たように40メートルもあるセブンと同じ程の大きさ、
と言う訳でもなく人間と同じくらいの大きさだった。
恐ろしくて声も出ない俺をよそにそのキングジョーはコーヒーをコップに入れ出す。
中年はにやにやと笑っている。
焦げたようなコーヒー豆の臭いが俺の鼻をつんざいた。
次のお題は『狼』『怪談』『コオロギ』でおながいします。
訂正
思わず大声ではぁ?と言ってしまった。すると中年はまたあの厭ぁな笑いを発する。
この中年はきちがいなのだろう。どこの世界にキングジョーがマスターの喫茶店が
あるものか。そもそもキングジョー自体が存在しない、架空のものだ。
「あんたホットコーヒーかね?」
「はぁ、まぁ」
「よし。おい、ミスターキングジョー。ホットと…そうだな、俺はグレープバスターだ」
時間潰しに駅前のパチンコ屋で5000円負けた後、ぶらぶらとバスターミナルまで
歩いて行った。だが、待ち客で座る椅子は空いていなかった。方向音痴なので
慣れない土地であまりあちこち歩きたくなかった。爪を噛みながらざっと辺りを
睨み回していると、駅の横にミスタードーナツがあったので入ることにした。
飲茶セットを注文し、シュウマイにつけるしょうゆの中にマスタードを入れるか
どうか迷っていると突然携帯が鳴った。彼女からの着信だったが俺は無視した。
一分も経たないうちにまた鳴ったが二回目の着信も俺は無視して黙々と食べ続け
た。方向音痴というよりも、降りたことも無い駅で降りてしまった失敗は、
俺だけの秘密だ。次の発車時間まで、あと40分くらい。
次は「詐欺師」「ネルシャツ」「苦し紛れ」で。
すいません、かぶりました。
>>514 はスルーして結構でつ。
ネルシャツにジーンズの、爽やかな外見の男が歩いていく。
――彼女は大丈夫だろうか。
男は先月、「仕事」でお見合いパーティーに参加していた。
そこでカモを引っ掛け、騙し、貢がせる。その予定だったのだが……。
――はは、結婚詐欺師が獲物に惚れるなんて、笑い話にもなりゃしない。
苦し紛れに強がってみても、自分の気持ちに嘘はつけなかった。
無論、彼女を騙しているという罪悪感はあるし、それは日に日に重くなっていく。
それでも先週、彼女のマンションで過ごした夜に、彼女に贈った指輪の値段は、
間違いなく男の収入三ヶ月分だったし、彼女も喜んで受け取ってくれた。
その彼女は昨日、約束のデートに来なかった。携帯も繋がらない。
心配になった男は彼女のマンションまで様子を見に来たのだ。
しかし、部屋のドアをノックしても、返事がない。
――まさか、病気で動けないでいるのか?
合鍵を借りるため男がマンションの管理人に事情を話すと、
予想外の答えが返ってきた。
「はあ……。その部屋の人なら、先週出て行かれましたよ」
「……はは、ははは……!」
額を抑えた男の口から、弱い笑い声が漏れる。
――そうか。そういうことか……。
つまり、俺たちの仲を妨げる物は、何もないってわけだ!!
男は即座に携帯を取り出し、馴染みの興信所へダイヤルした。
次は、「多数」「隔離」「DVD」で。
517 :
gr ◆iicafiaxus :03/11/03 11:25
「狼」「怪談」「コオロギ」「詐欺師」「ネルシャツ」「苦し紛れ」
秋も終わりに近い東北の温泉町の合宿所に僕らは泊まり込んでいる。
毎年恒例の文芸部の夏合宿なのだが、今年は夏のうちに開催できなかったので、この
十一月の連休に、なんとか格好だけでもと、合宿を設定してしまったのだ。
これも恒例のものだからと、暗い部屋に蝋燭をともして、即興で創作した怪談を語る。
一人語り終えるごとに、一本ずつ灯りを消して。
あいにく僕の番のすぐ前は、詐欺師志望の太田部長が次から次へともっともらしい話を
でっち上げるその巧みさに、一同舌を巻きながら聞き入ったところで、僕はそんな籤運の
悪さを恨みながら、「昔々…」と話を始める。そして、気づかないくらい少しずつ声を細める。
「娘の去った後の障子をそうっと開けると… わっっ!!」――急に大声を出すという、
明らかに苦し紛れの力技なのだけれど、とりあえずみんな、怖がってはくれる。
続いて、例年どおり裏の古戦場で肝試しだ。さっき取っておいた籤運が効いたのか、
僕は気になる後輩の恵子ちゃんと一緒に歩くことになった。
肝試しといっても、コオロギも松虫も死に絶えた十一月の野っ原である。吹き抜ける
夜風に時折葉の無い木の枝がひゅうひゅうと音を立てる、怖いというより寂しい場所だ。
「寒い」と震える恵子ちゃんに、上着代わりの厚手のネルシャツを脱いで掛けてやって、
僕らは一面枯れすすきの野原を歩く。宿の灯りが遠くなってきた頃、僕は言った。
「さっきの話には続きがあるんだ… 寺を後にした娘が、荒野を彷徨って、親切な若者に
道を案内されるところまで話したね… 娘は感謝しながら言う。『こんな荒野で、人に
出会えるなんて』すると娘を先導していた若者が立ち止まった。寂しい場所である。
『それはどうかな』若者が振り向くと、その顔は獰猛な狼のものに変化していた!!」
僕は大声を上げながら、作り物の狼の面を使って恵子ちゃんを脅したつもりなのだが。
いつのまにか同じような野獣の面を用意していた恵子ちゃんに僕が逆に驚いて、みっとも
ない声を出してひっくり返ってしまった。そこには恵子ちゃんの高らかな笑い声。
#しばらくぶりに書きに来たけど、どうにも冴えないなあ。
#お題は「多数」他で。
518 :
「多数」「隔離」「DVD」:03/11/03 14:01
小久保裕紀の巨人入りが報じられた瞬間、むき出しのエロDVDが
俊くんの手を離れた。カランと軽い音を立てて床に落ち、軽い
傾斜のかかったオフィスの通路を転がっていく。同僚のつま先に
ぶつかって大きく跳ね上がり、ちょうど入り口のドアを開けた
社長の頭の上に着地した。文字通りのエロガッパとなった社長が
一張羅のホークスジャンパーを翻し、歩を進める。俊くんの
デスクの前で立ち止まり、興奮さめやらぬ口調でまくし立てた。
「小久保が巨人入りだと?俊くん、キミは悔しくないのかね!?
我が社の公金を横領して、赤字のダイエー本社に横流しする
ぐらいの気概がキミにはないのか!?」
「僕だってショックっすよ。こんな資本主義から隔離された
クソ会社のはした金で小久保がホークスに残ってくれるんだったら
いくらだってピンハネしちゃいますよ!ていうか、まず俺に
給料を払えよ!何ヶ月ただ働きしてっと思ってんだ!この甲斐性なし!」
「バカモン!そんなケチくさいことぬかす社員はクビだ!今すぐ
出て行け!そしてホークスの四番打者となって日本一を目指せ!」
社長がデスクをバシバシ叩くたびに、頭の上のエロDVDが飛び跳ねる。
何度目かの跳躍でとうとうずり落ち、開けっ放しのPCのCDトレイに
収まった。トレイが閉まり、ムービーが再生を開始した。
それまでの言い争いも忘れ、モザイクなしの洋ピンに食い入る
社長と俊くん。他の社員も集まってきて、いつしか会社をあげての
大鑑賞会となった。
多数のギャラリーに囲まれたAV女優は、会見席での小久保とは裏腹に
心からの笑顔を皆にふりまいていた。
519 :
「多数」「隔離」「DVD」:03/11/03 14:02
うえーん。
次は「日本一」「買収」「リストラ」で。
「多数」「隔離」「DVD」
保健所の職員にもらった書類をもって、バスに乗り込むと乗客は俺一人だった。
一一いよいよ娑婆とはお別れか。俺は僅かな荷物を隣の座席に投げ出すと
シートベルトをセットした。それを合図にバスは高速で自動運転をはじめた。
俺が「伝染性眼多発症」に罹ったのは2週間前のことだ。この伝染性の奇病は
今年の春、突然、米国から爆発的に広まり、今は日本中で猛威をふるっている。
驚異的な伝染力と症状の異様さ、そして特効薬も治療法もないという全く
絶望的な情況で、日本政府はアメリカに習い「患者隔離法」を打ち出した。
一一つまり、感染したら最後、患者は二度と日の目は見れないということだ。
大多数の患者は自殺を選んだ。それも焼身自殺で、自分の亡骸を始末してくれる
火葬場もないと踏んでの行為だった。だが、俺は死ななかった。そして逃げもせず
一一理由は単純だ。買ったばかりの黒沢明のDVDをまだ見終わってなかったからだ。
バスが停車し、ドア−が開いた。「お疲れさま。003号さん?」同じ患者とおぼしき
若い男がバスの入り口から顔を出した。額にはやはり、第三の眼がぱっくりと開いている。
俺は黙って、自分の額に開いた第三の眼をふせた。男の手の平に開いた第四の眼が荷物から
はみ出たDVDの表紙の「生きる」の文字をじっと見つめていた。俺はバスを降りた。
かぶりすみません。次は518氏の「日本一」「買収」「リストラ」で。
「いいか? 我々は日本一を目指す!! 大改革を開始する!!! 補強を行い、粛清を!!!!」
新監督の大号令の下、それは始まった。
他球団の有力選手を金で釣り上げ、その裏では次々とベテラン・中堅選手のリストラを進行させた。
チーム内には不穏な空気が蔓延し、選手とフロントの関係は険悪さを増す。
選手が大挙球団事務所に押し入った時、監督はこう言う。
「買収だの、恐怖政治だの言われようがなぁ… 勝 て ば い い ん だ よ !!!!!」
その年のオフ、監督は首になった。大改革を行うも、結果はぶっちぎりの最下位。
いい選手を集めようがどうしようが、気持ちが繋がっていなかった。
皆で一つのものを目指す心が無かった。そう、「勝利」を目指す心が無かった。
彼は愚策を取った。それが、敗因だ。
>>518 驚きました。心中お察しします…
次は…「忠誠」「待遇」「涙」
「夢は、世界征服です」
しばしの沈黙。
「日本征服、いや、日本一ぐらいにしておけ」
進路面談の席で、担任教師が言った。
そんな教師だった。おれの投げやりな口調にも、真面目に答えてくれた。
勤めていた会社が買収され、新体制のもとリストラされたおれは、路頭に迷
いながら、10年も前のことを思い出していた。
「世界征服どころか日本一、いや、一人前にさえなっていない……」
半ば冗談で言った高校時代の感触が、手に取るように蘇ってくる。
あのとき、まともなことを言っていたら、おれは今何をしていただろう。別
の人生を歩んでいただろうか。
あのときの教師の言葉で、おれは少しやる気になったんだ。
大学には行けなかったけれど、メーカーに何とか就職をして、現場仕事から
事務職に抜擢されもした。
目の前のアスファルトを踏みしめながら、おれは自分に問うてみた。今から
口にする言葉が、また10年後の自分を作っていく。
「夢は、世界征服です」
おれはアフォかもしれない。とりあえず、この感触を覚えておこう。
ちょっと書きたかったもので。
お題は「忠誠」「待遇」「涙」で。
「忠誠」「待遇」「涙」
組織から依頼が届いた。今回の除霊の対象は……。
私は電車に二時間揺られ、一日一本のバスに乗り継ぎ、指定された場所へ
辿り着いた。組織に属してから十五年、忠誠を尽くし一週間に八日といえる
ぐらい働いてきたというのに、自家用機の一つぐらい用意してくれてもいい
のに。交通費は俺持ちだ。この待遇にはもう涙すらでてこない。
電気すら通っていない農村へと辿り着いた。いよいよ本格的な仕事の始ま
りだ。村長に会った後、促されるままに、問題の農家へと連れていかれた。
愕然とした。今まで見た中でもっとも印象のある依頼といえば、この依頼
と言えるくらいに。
私たちのような、能力者にしか見られない異形の者達の姿が、皆、いまで
いうSMAPの木村拓也なみのルックス張りの霊ばかりだったのだ。村の男達の
反感を買うのも無理はない。どいつもこいつもジャガイモをすり鉢でこね尽
くしたような顔の男しかいなかったのだから。
除霊はとても困難だったが、成功した。後味の悪さのみが残ったが、仕方
ない。キアヌ・リーブスばりの顔の私が引き受けたのだから。
「戦場」「クリスマス」「絨毯」
有り難う。
きみにもらった絨毯。ふかふかで僕はとても気に入っています。
あんまりその手ざわりがここちよくて、じつはまだ部屋にひいていません。
それをきみに話せば、ちゃんと使え、というのでしょうね。
僕はきみの怒った顔より笑った顔が好きだから、だからそれは話しません。
ただ、有り難う、と。
僕はいま、きみの部屋でひとりきりです。
きみはいま、きみの部屋にいません。なぜならきみは戦場にいるのですから。
明々と「クリスマスセール」とかかげられた四角い箱の中、きみはいま、必死なのでしょう。
その四角い箱の中には、はげしい争いが限界までくり広げられていることでしょう。
きみがぶじに帰ってきますように。僕は祈るけれど、それよりもきみにあいたいのです。
きみが戦場へ赴いているから僕はクリスマスの夜、ひとりきりなのですから。
プレゼントはなにがいいでしょう。
そうですね、ふかふかの襟巻がいいですね。
メリー・クリスマス
次は「手」「紙」「温度」で
朝の五時前とはいえ体感温度はゆうに40℃を超え、砂混じりの空はどんよりとクリーム色をしている。
「そろそろ出ましょうか。バグダッドからバスラまでは六時間はかかりますから、今出ないと、突風にやら
れるかもしれません」
コーディネーターに急かされ、僕とガイドはジープに乗り込んだ。僕は、アメリカ国籍であるということ
を隠してバグダッドを中心に取材活動をしていた。ヤモリが壁から滑り落ちて死んでいたから、砂嵐には気
をつけろとホテルのボーイが忠告してくれた。砂嵐を経験していないものにとっては、まさに悪夢なのだと
念を押された僕は、ゴーグルと耳栓を再度確認した。万一のときに目や耳が砂にやられるのを防ぐためだ。
小一時間も走ると、砂の色が変わり始めた。少し赤みが増した砂のあちこちに、なめし皮か厚紙のような
ものが見える。それは、アフリカの荒野で見た水牛の糞のように、茶色く毛羽立ったまま乾いていた。
「あの破れたマットのようなものは何なんだい? 駱駝の糞か何かかい?」
「ああ、あれは動物の死骸ですよ。骨や肉から剥がれて、風が吹くたびにカパカパと飛んでます」
そんなものがなぜ珍しいのかというような顔で、ガイドが答えた。ヤモリの吸盤に生えた毛に細かい砂が
入ってしまうようなときは、砂嵐の前兆だ、砂漠で道を見失うと人間も駱駝も末路は一緒なんだよと言って
運転手が笑う。壁から滑り落ちて死んでいたヤモリの死骸を思い出した僕の背中を、乾いた汗が流れた気が
した。戦地と砂漠には死が普通に落ちている。僕は、残りの道程の無事を敵国の砂漠の神に祈った。
次は「痛恨」「伝言」「フラッシュ」で
どんなにちっぽけな人間にだって、今まで生きてきた歴史というものがある。
その歴史とは、記憶という名のひとの脳裏に裏打ちされた過去の記録にほかならない。
そして、人が人としての自我を保ち続けるにはそれにすがりつくしかない。
だが、いまのわたしにはその歴史がないのだ。
ある朝、わたしは自分の名前すら思い出せなくなっていた。自分がどんな人生を歩んできたのかも。
この記憶障害は別にしても、幸いというべきか、わたしの頭はそれほど悪くないらしい。
手のひらには、朱のインクで、「きょうの日記をつけること」と伝言が記されてあった。
[10月3日] 外に出たが、顔見知りなど作るべきでないと直感した。過去の自分を思い出すのがおぞましい。
[10月2日]
狂気の沙汰だが信じることにする。10月1日の日記は、まぎれもなくわたしの筆跡なのだから。
いまはただ、いまの自分を失うことが恐ろしい。
[10月1日]
痛恨の過去のフラッシュバックを消し去るため、わたしは一日以上の記憶を保つことができないよう「処置」を施した。
あした以降のわたしに忠告する。過去に対する詮索を避け、いまのわたしを生きるよう。なお、金銭的な心配はいらない。
街にでた。遠く離れた異国の地でも、簡単な英語なら通じるようだった。簡単なことなら推測できたし、調べもできた。
かなりの確信がある。これは騙されたのではなく、「わたし」の選んだ選択だ。
――そして「今日のわたし」は次のように日記に記した。
[10月4日] 一日の日記を綴りすぎないこと。積み上げる歴史は多すぎないほうが好ましい。
次は、「凄絶」「理性」「怪物」
527 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/04 13:44
「ゲリピーサンダーーーーー!」
勇者ゲーリーの究極魔法がビチクソ魔王に炸裂した。
ビチクソ魔王はたちまち凄絶な勢いで下痢を撒き散らした。
ゲリピーサンダーをかけられた者は下痢が止まらなくなり最後には衰弱死するのだ。
ゲーリーは鼻をつまみながらこれで勝ったと確信した。
しかし、ビチクソ魔王が撒き散らした下痢は徐々に動き出し気がつくとゲーリーを包み込んでいた。
ビチクソ魔王の糞はそれ自体が意志をもった怪物なのだ。
ゲーリーは鼻や口から糞が体内に侵入してきて発狂寸前に陥った。
ゲーリーは最後の理性でまた一つ呪文を唱えた。
「セキリティーーーー!」
ゲーリーの周りに赤茶色の防御壁が現れ、ゲーリーを囲んでいた糞が消し飛んだ。
セキリティーとは、絶対に破られない防御壁を作ることができる魔法である。
しかし、この魔法を使ったものは赤痢になってしまう。
血混じりの糞を撒き散らしながらゲーリーは新たな呪文の詠唱に入った。
戦いはこれからだ。
「下痢」「便秘」「ゲル状」
私は最強の対人兵器を開発中だ。
新兵器開発にあたって求められたコンセプトは、地域制圧後も接収して利用するため、
攻撃対象を人間に限定し、環境及び建造物に被害を与えない、という物だった。
そこで日の目を浴びたのが、私の専門分野である生物兵器だったのだ。
ここまでの開発は順調に進み、既に実験体の育成段階に入っている。
とは言え、遺伝子レベルから設計してあるため、私が行うべき作業は、
成長過程に問題がないか確認する、定時チェックだけである。
今夜の実験体の食餌には、人間の中にはアレルギーを起こす者もいる、
危険な白色の液体を、加熱して与えた。……ふむ。食欲は旺盛なようだ。
次に、攻撃本能のチェックを行う。毛玉を放り投げてやると、
実験体は理性を失って飛び掛っていく。よしよし。攻撃本能にも問題はないようだ。
1日の最終作業として、消毒を行う。私は実験体の首根を掴むと、水槽に放り込んだ。
凄絶な形相で暴れる実験体を押さえつけ、容赦なく殺菌剤に塗れさせる。
洗浄作業終了後、体毛を無理やり熱風で乾かすと、実験体はそのつぶらな瞳で私を睨み付けてきた。
その強烈な視線に耐えられなくなって我を失う前に、私は慌てて実験体を保温カプセル内に放り込んだ。
ふう、危なかった……。もう少しで、私が最初の犠牲者になるところだった。
しかし。ふふふ。開発は順調だ。この怪物の、実戦投入も間近だな。
テスト結果に満足した私は、実験室を後にした。
次は、「全国」「新設」「電撃」で。
529 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/04 18:33
「全国」「新設」「電撃」
「全国民に告ぐ既にこの国は、グスダフ公国の占領統治下に入った。
無駄な抵抗さえしなければ、命だけは保障する」
旧ノキア連邦の崩壊により、優秀な科学者たちが、世界に散らばった。
その中でも、最も異彩を放っていたDrメイソンを世界の各国は我が物にしようと触手を
伸ばしていたが、遂に彼はグスダフV世に尽力することを決意した。
いや、正確にはせざるを得なかったというべきか…。
彼の愛娘がノキア連邦国瓦解の直後、行方不明になってしまっていたのだ。
世界の各国が彼を求めたのは、単なる才能だけではなかった。
彼の発明した光学θ-rayを応用した化学兵器の最新設計図さえ手に入れればそれでよかったのだ。
それさえあれば、世界を掌握できる。
Drメイソンが、グスダフ公国に降ったという報は世界に電撃をもたらした。
世界各国から糾弾を受けていた独裁国家グスダフ公国による
暗黒支配の序章が今、始まった…。
「カフス」「煙草」「ミッドセンチュリー」
材料
スイカの種100粒(大体でOK)、正露丸4粒、パイナップルジュース 20cc
1.スイカの種を割って中身だけを集めます。
2.正露丸は3粒はそのまま使い、あとの4粒はすりつぶして粉にします。
3.スイカの種の中身、正露丸3粒、パイナップルジュースを一つの鍋にぶち込みゲル状になるまで煮込みます。
4.皿に盛って、正露丸の粉を上に振りかけてできあがり。
便秘によく効きますが、多量に服用すると下痢になります。
子供の場合は量を半分程度にしてください。
また、苦いので飲みやすいように蜂蜜を入れてもいいでしょう。
※実際にやってどんな効果が出ても責任は持てません。
二行目の「正露丸4粒」→「正露丸7粒」
532 :
「カフス」「煙草」「ミッドセンチュリー」:03/11/05 01:08
ガラパゴスの軌道エレベータはミドセンと呼ばれていた。
ミッドセンチュリー。2050年着工だ。
「では、ガラパゴスの絶景をお楽しみください」
俺は上昇していくエレベータの中にいた。外のカメラと連動して、丸い軌道エレベータの壁に景色が投影される。
軽くめまいを感じて、俺は胸ポケットに手をやった。煙草を探していたのだ。
当たり前の事だがそんなものは管理局にとっくに没収されている。俺は煙草を出しそこなった指でカフスをいじった。
「子供みたいね」
妻のミリーがコーヒーを差し出しながらカフスをいじる俺の指に触れた。
「高い所が苦手なんだよ」
「あら? これはナイロビのよりも低いわよ。あなたの職場だった」
エレベータは成層圏を抜け、地球が丸く感じられるほどの高さまで上がっていた。
「……だからさ」
赤道にかけて、丸い帯が見えた。それは遠く、ナイロビにまで繋がっている筈だ。
「テロデ上の重しが外れちまえば、そのまま倒れちまうからな」
俺は昔の職場の残骸を見降ろしながら、カフスを指に強く押し突けた。
次は「リング」「ワールド」「幸運」で
533 :
リング ワールド 幸運:03/11/05 02:02
望遠鏡で街を眺める。
林立しているビルと、無数の看板。
武富士、プロミス、ワールド、金貸し?
新型Z、大きな風俗嬢、CANCAN、HMV、脈絡がない。
そんなの当たり前だとつぶやいて、傍らのビールを呷る。
街を往く無数の人々、それぞれの人生。
想像はしない、頭痛がしてきそうなほど無数の…。
500m先のマンション、着替える女。
小さな幸運、下世話な出歯亀。
俺のことか。
不細工な女の顔を見てこれが幸運ならそんなものいらないと嫌気がした。
望遠鏡を上に向けて星を見ようとしても、紫の空にまたたく星はなかった。
次は「新品」「新巻鮭」「抗がん剤」で
534 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/05 03:09
>>533 ごめん、粗探しという意味じゃないけど「リング」は?
忘れてたああ…_| ̄|○
改めて「リング」「ワールド」「幸運」
雨上がりの道路の水たまりを車が通る。泥水を撥ね上げて通りすぎる。
空は青い色と夕暮れの色が混ざりこんだ不思議な色で。
こんな写真が撮れたら、その幸運を誰かに教えてあげることもできるかもしれない。
くたびれたジャケット、不精髭となおらない寝癖で現れた男の申し出を
すんなりと受けてはくれなくとも。それでも、いいと思った。
足の踏み場もない部屋に帰って、競馬新聞を広げる。
「リングハミに替えた効果が出れば」というコメント。
△の印がぽつぽつとだけ並ぶ穴馬に男は印をつけた。
夕暮れはやがて夜を迎える。
ワールドトレーディングセンターが真っ二つにされて何年がたったのか。
相変わらずのニュースが繰り返される、9月11日(金)の夕方。
幸運のカフスはまだ俺のポケットにあった。リンチでボコボコの体を引きずって市場の通路を進むと
「旦那さん!新品の新巻鮭どうよ。鮭は体にイイあるね!ミッドセンチュリー社の抗がん剤も真っ青アルヨ!」
威勢のいい魚屋が大きな新巻鮭をもって黄色い歯を剥き出していた。笑っているらしい。
ミッドセンチュリー社の抗がん剤に副作用が見つかったニュースは
昨晩のワールドニュースで全世界に流れたわけだが、
こんなおやじがネタにするほどセンセーショナルだったわけだ。
俺は左手のエンゲージリングをそっと撫でてみた。
ミッドセンチュリー社にいる元の妻は今頃さぞかし忙しい思いをしていることだろう。
スクープをすっぱ抜いたのが俺だとわかったら、どんな顔をするのだろうか。
最後の煙草に火をつけながら、俺は笑いが止まらなかった。
次のお題は「紅茶」「鳩」「かぼちゃ」で
ハロウィンで余ったかぼちゃというのはちょっとかわいそうな存在だと思う。
出荷時期からして明らかにそれ向きに栽培されたのにもかかわらず、
祭りが終わってからスーパーで安売りされていたりする。
なんと言うかかぼちゃ人生(?)の目的を達成できなかった挫折感、のような
哀愁を感じる。こんなことを考えるのは、世界広しと言えども私だけかもしれない。
それとも隣のおばさんもそう思ってるのかな。いやいや、あの人は値札しか見ていない。
そういうわけでスーパーから出てきた私は、重たいかぼちゃが入ったビニール袋を
二つもぶら下げていた。
パンプキンパイにしようと思う。美味しい紅茶を淹れて、友達を呼ぼう。先日お土産
だよって鳩サブレをくれたから、そのお返し。
そのためにまず部屋の掃除しなくちゃ。明日は掃除をすると、あの夕日に誓っておこう。
カァカァとカラスの鳴き声をBGMに、拳を胸の前に……ビニール袋が重いので、腰の
あたりで妥協した。運動不足だなあ。
やっぱり明日は運動しよう。
次のお題は「きくらげ」「毒殺」「防災」
その日、私立喜沙流我(きさるが)学園では防災訓練が予定されていた。
いつ訓練が開始されるのかなど、当然生徒たちに知らされるはずもなく、
高等部の3年A組でも和やかな給食風景が広がっていた。
けたたましく鳴り響く非常ベル。
その瞬間、一つの命が消えた。
「被害者は沢本美紀。給食のきくらげから青酸カリを検出……毒殺か」
そう呟くと香川刑事は鹿爪らしい顔をして、煙草に火を点けた。
「案外簡単な事件かもしれませんよ。香川刑事」
探偵・如月海路は場違いなほど脳天気な声でそう言った。
これまでの捜査で明らかになった点は以下の5つ。
1、訓練は本来午後に行うはずであった。
2、それを知っているのは教員のみ。
3、毒が入っていたのは被害者の皿のみであった。
4、被害者は午前中に「気分が悪い」と保健室へ一度行っている。
5、被害者はきくらげが大の苦手だった。
「ほら、もう答えは出てるようなもんです。犯人は……」
流石にこの長さで即興ミステリはキツイか。
次は「保健の先生」「カプセル」「どさくさ」でお願いします。
さぁて、この幸運のカフスを”カボチャ頭”に渡せば今回の仕事は終了というわけだ。
全く中華街ってやつはどうしてこうゴチャゴチャと入り組んでいるのだろう
どの店も防災基準を満たしているとは思えない。何もかも整然としたミッドセンチュリーの本社とは対照的だ。
看板を見ながら歩いていると、重そうなスーパーの袋を2つもぶら下げた女とぶつかった。
逞しいものだ。元の妻もあのぐらい家庭的だったら、俺たちも上手く行ったのだろうか。
”かぼちゃ頭”の店は中華街の路地の奥にひっそりと隠れるようにあった。
割合趣味のいい店で、店内に入るとすぐ華やかな紅茶(ジャスミンティーか?)の香りがした。
案内され、奥に入っていくと”カボチャ頭”は食事の最中だった。
「ワールドニュースは拝見したよ。よくやってくれたな、まぁ君も食事でもどうかね?」
かぼちゃ頭はいつになく上機嫌で俺にスープを勧めた。
「鳩肉とキクラゲのスープ。大丈夫だよ、毒殺するつもりなら自分の店ではやらない。」
ニコニコと微笑む”かぼちゃ頭”は好々爺そのものだったが、スープに口をつける勇気は無かった。
次のお題は「爪」「枯れ葉」「漢方薬」
すまん。。話考えてる間にかぶった
お題は無かったことにしてクレ(つд⊂)
543 :
「保健の先生」「カプセル」「どさくさ」「爪」「枯れ葉」「漢方薬」:03/11/05 20:22
カサカサとした昌弘の爪先が猥雑に茂みを掻き分け、枯れ葉の縁のように私の陰核に爪を立てた。
「どさくさに紛れて痛い事しないで頂戴」
そう言って私は、幾種類かの漢方薬が調合された滋養強壮のカプセルを舌の先にのせ、情熱的なキスに乗じて肉欲に塗れた男子生徒の喉へと押し込んだ。
「あんたみたいな保健の先生、エロビデオでしかお目に掛かれねーよ」
可愛らしいことを言う。大人びた物言いに見合うテクニックがともなっていたならば、どんなにか私を喜ばせられただろうに。
私は毎度代わり映えのしない前後運動にうんざりしながら、この見栄えだけが取り得の若い牡をどうやって捨ててしまうかを考えはじめていた。
次は「嫉妬」「親」「配偶者」
「嫉妬」「親」「配偶者」
親の反対を押しきるかたちでわたしたちは結婚した。国際結婚だった。
親は呼べなかったから、式はわたしや彼の友達だけのひっそりとした
ものだった。 女友達は祝福してくれたが、そのまなざしのなかに嫉妬
じみた感情が含まれているのを、私は感じていた。
彼、すなわちわたしの配偶者は、とても誠実で優しくて、そしてハン
サムだ。日本の文化にくわしくて、 その中でもとくに仏教に心酔して
いた。もちろん日本語は完璧だった。収入も申し分ない。
でも幸せというのはなかなか手に入れられないものなのだ。
仕事が終わり、夜遅く家路につく。家には明かりが点いていた。彼は
先に帰っていたみたいだ。 愛しい彼の姿を探すがどこにもいない。一
体どうしたんだろうか。不安になる。 気を落ち着かせるため、水を飲
もうと、私は冷蔵庫を開けた。そこで驚くものをみた。彼の姿だった。
「……!?」ショックで声がでないわたしは尻餅をつく。その矢先だ、
「oh! キョーコさん、お帰りなさい。僕は今、仏教の修行中です」
ただただ驚きながらも、何故か頭の中でそんな仏教しらないよ、とい
う冷静な突っ込みがこだました。そのあと彼に説教したのはいうまで
もない。ほんの七時間ほどだが。
後日知ったのだが、彼は仏教は仏教でも、心酔していたのは密教だった
らしい。変な宗教に目覚めたら怒ってやろう。おじさんの方舟みたいな。
#「方舟」「フレンチカンカン」「システム」
#19行、長くて熊襲
☆彡■■■ 田中康夫はインチキの改革ゴロ ■■■☆彡
マスコミにない情報満載 田中康夫が恐れをなし、リンク拒否する「田中県政追撃コラム」
http://members.goo.ne.jp/home/tuigeki 菅直人は、田中康夫を大臣にだなんて言ってるけどオオ痛い!改革派だの市民派だのって言ってるけど、
あんなのぜんぜんインチキ、まるでダメ。「改革」をネタに売名してるだけの新タイプのゴロつきだね。
それに気付かない菅直人は大馬鹿。こんな具合だからいつまでたっても野党なんだ。
田中康夫は一ツ橋大学時代に学内誌の部費数百万円を横領して停学喰らい就職もフイ。プ〜タローして
いるときに書いた小説がたまたま、文藝賞の「なんとなくクリスタル」。ところが、受賞騒ぎで横領事件
が世間にバレルのでは?と受賞辞退までしていた、なんて知ってた?こんなのが大臣?
私は昔ロッキード事件なんてのを取材したこともある元記者で、こんな質問を会見で訊いたけどバックレ
られちゃって田中康夫の正体モロ見え。
この有様、長野県HP
http://www.pref.nagano.jp/hisyo/press/20011228n.htm で確認できます。
今やってるのはメルマガだけど取材のほうはバッチリでマスコ゛ミの上を行く情報沢山出してます。長野県庁では大評判。
マスコミって言ったって、長野県辺りにいる連中はオイラから見れば出来の悪い大学生ぐらいにしか見え
ないんだけど、やってることは目茶苦茶でこんなんでよく・・・と今更ながら思う今日この頃。
うわべだけの田中康夫と、程度の低い新聞印刷会社の文案係が織り成す、ドタバタ長野県政物語を読
みたい方は読者登録の上お読みください、なんてね。みたい方は読者登録の上お読みください、なんてね。
嫉妬」「親」「配偶者」
『嫉妬って嫌なことばね。焼き餅と言ってちょうだい。
親って酷な文字ね。食べるために養うなら、鬼といってほしいわ。
配偶者ってつまらないわ。いっそ土偶と呼んで、古墳まで連れ添うわ』
霊能者はつらつらと言葉を吐く。祖母の霊を呼び出してほしいと頼んだのだが
何の間違いか、売れない詩人だった、親父の霊が降りてしまったらしい。
「親父、頼むよ。おばあちゃんと替わって」俺は時給2万円で来てもらった売れっ子
霊能者のオバサンの身体に縋り付く。親父、生涯働きもせず、祖母にたかっていた
ドラ息子だった。「こんな時まで邪魔すんな!」霊能者がパチリと目を開けた。
「以上ですう。ワテはおいとましますう」二万円を受け取るとそそくさと帰っていった。
「……ああ。どうすんだよ、形見のダイヤの在り処を聞きだせなかったじゃんか!」
俺はまだ虚空を漂っているであろう、親父の霊を睨んでやった。「……待てよ」俺は突然閃いた。
さっきの馬鹿な詩を分析してみる。「焼き餅、酷、鬼、偶……わかった!」
「偶はサル、鬼は鬼門、酷は時刻、焼き餅は火の象徴と当てはめてみると……」
俺は飛び上がって叫んだ「申の方角、裏鬼門、台所のかまどの下だ!……って、あれ?」」
まだ居たらしい親父の霊が囁いた。『母って灰に似てるわね、炭の仲間よ、ダイヤモンド』
次は「方舟」「フレンチカンカン」「システム」で。
ノア「方舟が完成したどー!!」
息子「でも、こんなでっけー船が、どうやって動くんだ?」
ノア「案ずるな、息子よ。これはフレンチカンカンシステムで動くのだ」
息子「・・・・・・・・・・・・・・・」
ノア「・・・・・・・・・・・・・・・」
次のお題
「アメリカ」「イラク」「日本軍」
548 :
あまりにもアレなので…:03/11/06 00:10
「方舟」「フレンチカンカン」「システム」
若き日のT.ロートレックは、ムーランルージュに入り浸っていた。
ある音楽が流れると8人のフレンチカンカンが舞台を一列に飾り立てる。
その左から2番目が彼のお気に入りだったのだ。
彼は低俗とされたその劇場を好んだ。
そして、本来あるべき人間模様を彼のフィルターを通して、カンバスにかきとめた。
彼は由緒ある階級に生まれた人間だったが、その生活を嫌っていた。
その相応しくない行動のせいで親類からは奇異な目でみられていた。
しかし、彼から見ればそのヒエラルキーのシステムによって、
とらわれたある種の人間たちがとても不思議に思われた。
まるで選ばれた存在かのようにノアの方舟に縛られて生活するのは、
彼にとって苦痛そのものでしかなかったのだ。
艶やかなスカートのフリルが舞台で舞うたびに
彼の精神は自由にカンバスの上を踊るのだった。
お題は
>>547
だから固有名詞は避けろって。
550 :
「アメリカ」「イラク」「日本軍」:03/11/06 00:42
はるばるイラクへやって来ました日本軍……いや、自衛隊か。
現地の報道記者達は、飛行機のタラップを降りてくる異様な格好をした
日本人達に好奇の目を注いだ。
日本人達は、先頭を降りる一人の左官と思われる者は、頭巾を被り
付け髭を生やし、着物を着て、まるで黄門様のような格好をしていた。
続く尉官と思われる二人は助さん、角さんの格好を、そして残りの者は
与力、同心の格好をしていた。
この格好には訳がある。それは、首相がイラクに自衛隊が駐在に行くのを
仲裁に行くと勘違いし、時代劇好きの首相の発案により
「仲裁ならば水戸黄門だ!」の一言により全てが決まったのだ。
そして、自衛隊派遣の全容をマスコミに対し秘匿する方針により
首相の意見の反対者は出てこなかった。
タラップを降りる日本のサムライ達の顔は恥ずかしそうに紅潮していた。
それが報道記者のカメラのフラッシュにより、ますます紅くなった。
その光景を見た護衛のアメリカ兵は小さいがよく通る声で
「フジ!ゲイシャ!ハラキリ!」と言ってニヤニヤと笑っていた。
次は「地震」「対策」「ベッド」でお願いします。
551 :
「地震」「対策」「ベッド」:03/11/06 01:46
「ははあ。つまり水槽に浮いているというわけですか」
お客さまは気味悪そうに、モデルハウスの玄関をちょんちょん、と足先でつついた。
「正確には水槽ではありませんが、粘度の高い液体の上に立っているんです。地震対策です。震度6強にも耐えられます」
あたしはいつも、このモデルハウスを来て頂いたお客さまに説明する時は苦労する。
「いや、すごい技術ですね」
液体の上に家が浮いている、というのがどうも納得いかないらしい。
「んー、例えばウォーターベッドの上に家が立っている、と考えていただけますか?
その場合、地面は揺れますが、上に寝ているお客さまには揺れているという事はあまり感じられないでしょう?
つまり、そういう事です。これは回りの振動に敏感な精密機器の工場などでよく用いられる技術で」
革新的な技術だ、と言いたいのになんであたし、こんな言い訳してるんだろう。
「……決っして、新規に作られた技術ではないんですが」
「いや、よくわかりますよ」
でもそのお客さまは、敷居を越えようとはしなかった。
次は「鴨」「居」「カメラ」で
旅をしようと思い立ったが吉日、早速出掛けようと空手で電車に飛び乗ったのはよかった。
そんな彼が行き先を決めているわけなど当然なく、窓の外の流れる風景をぼんやり眺めながら
「さて、どうしよう?」と軽く途方にくれるのでした。
そんな折
「次はこの電車の終点、松本」
と車掌のアナウンスを聞き、彼は一度下車して考えようと思いました。
とりあえず信州そば、なんて安易に決めて入った蕎麦屋で鴨せいろを食べながら彼は考えます。
(はて、どこにいこうか)
蕎麦を口に入れながら、ぼけっとしている彼の顔はまじまじと見るとまさに気の抜けた阿呆です。
その彼の視線の先にはテレビのモニター、現地のテレビカメラは段々のみかん畑を写していました。
(そうだ、京都…じゃなくて愛媛に行こう。みかん食べたい)
彼は名古屋で一泊して、大阪に寄り道して、道後温泉に浸かって、ようやく愛媛の段々畑にたどり着きました。
聞けば新居浜というところだそうです。教えてくれた帰省中という若者が言います。
「サラリーマンの方みたいですけど、お仕事ですか?」
ここまで一張羅できてくたびれたスーツを着た彼は答えました。
「私は公園勤めですから…。」
怪訝な顔をした若者に猫背を向けて、彼は歩き出しました。
右手に下げたカバンの中には、帯封のついた二つの百万円が入っていました。
次は「露」「西」「亜」でお願いします。
2百万はこの旅行で使い切ってしまうつもりでした。
公園のゴミ箱から拾ったお金です。持っていてもろくなことにはならない気がします。
公園のベンチの影になっている目立たないゴミ箱は露草が周りに生い茂っていて
いったいどのぐらいの間、この大金が放置されていたのか、彼には見当がつきません。
なにかの事件に関わったお金なのかもしれません。
大金を持っているせいか、先ほど食べた鴨せいろの味が濃かったのか喉が渇きます。
亜米利加珈琲の看板につられて入った喫茶店は見た目より繁盛してるらしく、
西日の差す窓際しか席が開いていませんでした。
暫くぼんやりと外を眺めていると、向かいのモデルルームにいる女の子が
こちらを指差しながら誰かと話しているのがみえます。
逆光ではっきりとは見えませんが女の子と話しているのは先ほどの若者のように見えました。
嫌な予感がします。若者は彼を追いかけて来たのでしょうか。
お題は「菓子パン」「山」「強盗」でお願いします。
「いいこと?例え居間にいても、地震が来たらスカートを頭の上まで持ち上げて、
それで頭を防御してベッドの下に潜るのよ!
貴方はスカートを履いてないから地震対策は御自分で考えてちょうだい」
アメリカンチェリーのジャムで飾った菓子パンを食べながら、
真っ赤な口をしたイラクシャは大真面目にこう言った。
確かにフレンチカンカンでも踊れそうなスカートだ。僕は笑いを堪えるのに必死だった。
なんでずっと揺れているこの箱舟のような島で地震対策がそれなんだろう。
3日に一度はスカートを捲り上げてベッドの下に潜り込むわけか。
「笑ってらっしゃるの?失礼な方ね!貴方は地震をご存知ないのでしょう?
地震というのは大地や山が波のように揺れるのよ!日本軍の強盗より怖いってお爺様が仰っていたわ!」
イラクシャはその桜色に上気させた露西亜人形のような頬を可愛らしく膨らませた。
僕の可愛いお姫様は「日本軍」が何なのかも知りはしないのだろう。
「笑ってなどおりません。鴨萱の花粉のせいで鼻がむず痒かっただけです。」
初日から御機嫌を損ねるわけにもいかないので、もっともらしい顔を造って見せることにした。
イラクシャのような生徒なら、家庭教師という古風なシステムもそう悪くは無いなと思った。
これで備え付けの監視カメラさえなければ、随分と楽しい仕事になるだろうに・・・
お題は「雨」「夜中」「合格」でお願いします。
「雨」「夜中」「合格」
仙人に弟子入りして30年が経った。「石の上ににも三年じゃ」と言われて
仙人の裏山の岩に座り続ける修行に入ったが30年たっても許してもらえない。
もう俺の足には苔が生え、頭には鷲が巣をつくっている。両肩は雨に打たれて
まるで散弾銃で撃たれたように穴が開いてしまった。夜中には狼がよってきて
俺の膝の軟骨を齧ったりもする。これには閉口したが修行中だから文句も言えない。
ある晩、やっと仙人が俺の所にやってきた。「いやあ参ったよ」仙人は笑う。
「岩山の梺の食堂で飯を食ったら、財布を忘れてきた事に気がついたんじゃ」
「でも取りに帰るのも面倒なので、勘定分の皿洗いをして帰してもらおうと
思ったら30年も洗い場に立たされたわ。もう足が棒になってしまったよ」
仙人の足は只の白い棒になっていた。俺は鷲の巣で覆われた口を久しぶりに開いた。
「あのお、私も30年も座りっぱなしなのでもうそろそろいいでしょうか?」
「不合格!」俺の頭上で稲妻がぴかりと光った。「減らず口め」仙人はくるりと俺に
背を向けるとまた岩山を下りていった。「また財布忘れてますよ」と言おうと思ったが
修行中なので止めにした。
次は「流血」「懺悔」「昼下がり」でおねがいします。
空が青い。
私は空に包まれている。
昼下がり、虚空を駆ける。
一直線に、重力風力自重も借りて、地上へと飛び込む。
私は懺悔などしない。
たとえ、この下にいるであろう相手が、流血過多で死亡したとしても。
私は懺悔などしない――――。
頭の裏側でそう思いながら、今、インパクト。
頭に最近観たエアマスターが…
「寸劇」「バディ」「スピカ」
身分違いの恋に自殺を図った二人の男女。そんな劇のクライマックスを見ていた。
劇団真珠星。通人には名の知れた、それなりに妙な劇団らしい。何が妙かと連れられて来てみれば。
「なにさ、あんたが懸念するようなことは何もないじゃない。もう終わるよ?」
「いやいや。この劇団の凄いところはね、……あ、もう少しだよ」
何がもう少しだというのだろうか。例え生まれ変わっても二人は出逢うと――
永遠の愛を誓い、命尽き果てた恋人たち。泣けるお話である。どう考えても至極真面目なミュージカル。
しかし、幕が下りるかと思われたその前に、劇場は突如として暗くなる。
「あ、れ、ここで終わりじゃないの?」
「いいからいいから。あ、ほら来た」
それも寸劇の事。ナレーターの声が百年後を告げる。生まれ変わりの後もあるのか。――え、
明るくなった劇場の中央にスポットライトを浴びて立つのは――ああ、確かに生まれ変わっている。
劇団真珠星の名に恥じぬ、エナメル質の、真珠のような筋肉を纏った巨大な男女の恋人二人。
スピカの如くに輝いて、抱き合っているではないか。
隣の友人が、もう本邦初公開というようなしたり顔で、私に耳打ちをした。
「毎回コレで締めるんだよ、劇団の団長とその奥さん。いやさ、どんな劇でも」
お題「論理」「摂理」「原理」
558 :
「論理」「摂理」「原理」:03/11/07 02:18
「あな賢きでうすの摂理よ……」
禁制の聖母像に祈りを捧げる以蔵のフシ回しに、囲炉裏を囲んだ皆はこうべを垂れている。
以蔵の娘のヨネは斜視の入った目をきょろっと動かして、父の顔を盗み見る。
母親がそんなヨネの膝を、親のカタキのように睨みつけながらつねった。
「ぬふ、ぬふふ」
ヨネは気に止めていないようににたにた笑いながら、組んだ指をこねくり回している。
気はいいもののヨネは少々頭が悪い。
ヨネ以外に子供が育たない以蔵にとって、それは気の重いことだった。
周囲とはまったくの没交渉であるこの村では、ヨネのような子は珍しくなかったのだが。
だからヨネも、襲われる。選択肢は少ないのだから。それは論理的な結論なのかもしれない。
股から血を流しながら帰ってきたヨネに、以蔵は誰にやられたんだ、と聞いた。
以蔵の心中は複雑だった。娘を奪われた怒りと、このヨネを奪ってくれた安堵とが複雑に搦みあっていた。
しかしヨネは、妙に落ち着いた顔で、「ぬふう」と笑っているだけだった。
やれば子供が出来る。たった一度の交渉であれ、原理的に考えれば、それもありうる話だった。
「ぬぅ……ふふ」
組んだ手を外して、ヨネは少し膨らみかけた腹を撫でた。
いつものにたにた笑いとは違って、表情はどこか、聖母のように柔らかかった。
ふと、以蔵は生まれてくる子供が楽しみになっている自分に気付いた。
「……あーめん」
以蔵は聖母に深々とこうべを垂れた。
次は「感情」「大上段」「ビールビン」で
ということで「寸劇」「バディ」「スピカ」消化。
「あれがアルクトゥルス。スピカと併せて夫婦星とも言われてます」
ふーん、としか言えない。この暗さだというのに手も握ってこないこの男は、
一体どういうつもりなんだろうか。
演劇を見た後に食事をして、まあデートとしてはいいだろう。本編は半分くらい
寝ていたが、幕間の寸劇は楽しめた。食事も悪くなかった。その後に「星を見に
行こうよ」なんて言われたら、ついに来たかと思うだろう。トイレで下着まで替えた
ぞ私は。
横目で彼を見る。私がまともに聞いていない事に気付いていないのか、あの星が
どうだあの星座がどうだとまだ語りつづけている彼の身体は、意外とがっしりしていて
悪くない。カバディで鍛えました、と言っていたのを思い出す。冗談だろうと思っていた
が、本当かも知れないと思えてきた。
「あの……退屈ですか?」
私が話を聞いていないことにようやく気付いたのか、彼が言った。
「ううん、でもちょっと寒くなってきたかな」
そう答えて彼と密着する。さあこい。
「あ、そうですね。風邪を引かないうちに帰りましょうか」駄目だこの男。
お題は>558で。
引き返せるうちに別れたほうがいい。そんな友人の忠告を思い出した。
そいつは優子の兄にあたるのだが、つきあうつきあわないの以前から、
そんなことを大上段に言われないといけない理由が理解できなかった。
青いランプの光と、それを複雑に透過し反射するアクリルのテーブル。
どこか水族館を思わせるバーには、不思議とジャズが似合った。
「――それでね、急に後ろから声かけられたものだから、わたしすっかり驚いちゃって」
俺の隣には嬉しそうに会話を続ける優子がいる。かなりの美人といっていいだろう。
ちょっと抜けたところがあるものの、男に従順で古風な性格。
それは完全に俺の好みなのだが、そもそも優子とはどんな人間だったのだろう。
自分色に染めた覚えはない。勝手に違う色に変化していく女がそこにいるだけ。
たまらなくなって、じっと女の目の奥を覗き込んだのだが、
そこには感情という形を模倣するだけの無機物があるように感じられた。
ふとグラスに注ぐ優子の手がとまり、ついにはボトルを取り落とした。テーブルの上をくるくると転がる。
「わたし、どこか失敗した?」
青いテーブルの上をつうっと麦色の液体が滑るが、女は一向に頓着しない。
優子とは、男の求める完璧な女性像にして、自分というものを持たず、
それゆえ精神的な寄生対象に応じて自分を殺し続けるタナトスの女。
「次はもっとうまくやるから。あなた好みの女になるから」
ビールビンがテーブルから転がり落ち、ぱりんという音をたてた。
#次は「孤独」「水槽」「形而」
561 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/07 08:55
孤独「ブリブリブリブリブリブリブリブリブブブブブブブブリリリブォオオオオオオオオオオオオォオオオオオオッッッッッッ(風速三十米の屁を放つ)」
水槽「くせ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロ
オゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(もの凄い勢いでゲロが噴出)」
形而「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
!!!!!!!!!ブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリ
ブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリ!!!!!!!!!!!!!!(びびって喀血と下痢と小便を撒き散らしながら突然死した)」
そう言えば、ここ暫く、餌をやっていなかった。
そんな心の余裕はなかった。
ソファに深く身を静め、目の前の、青い水槽をぼんやりと眺める。
中には銀色の熱帯魚が、1匹泳いでいるだけだ。
今、この魚も孤独を感じているのだろうか。
水槽の底には、喰い千切られた、同族の尾が沈んでいる。
……そうか。お前は孤独な生を選んだか。
だが、俺には耐えられそうにない。
現実の蜜の味を、一度知ってしまったこの身では、
最早夢や想い出などという、形而上の物では満たされない。
それとも俺は、お前の形而下にあるのか。それは大変光栄な事だ。
だが。俺は。お前では、満たされない。
いずれにしても、お前に残される道は緩慢な死だ。
ならば今、俺と共に逝こうではないか。俺はエアポンプを止めると、
ネッダを刺したそのナイフで、自らの頚動脈を抉り出した。
次は「波紋」「給与」「厳選」
「大臣!答えてください!!」
マイクを向けた報道陣が詰め寄り、フラッシュの嵐の中を
ボディーガードの黒服と警備員に囲まれながら渦中の人は黒い車へと歩を進める。
VTRの後、リポーターが締めくくる。
「現役大臣の秘書給与流用疑惑が政界に与えた波紋はまだまだ広がりをみせそうな気配です」
寝起きの暗い部屋の中で、乱れ髪の女はぼんやりとその様子を眺めていた。
隣では男が呑気に鼾をかいている。
(いつだかと同じニュースが流れてる、もっと頭使えばいいのに。)
彼女はチャンネルを選局ボタンを押しっぱなしにして、一通り変えてみた。
大した番組もやっていない、そう思ってテレビを消し、リモコンを投げた。
「もっと受け手が面白いと思う番組を作りなさいよ…。馬鹿テレビ」
テレビのモニターには薄暗く彼女の間抜けな顔と植え込みが映りこんでいた。
別室にて。
「お前ももっと見るほうを意識しろよ、マグロ女」
停止ボタンを押してテープをデッキから引き抜いた。
テープには「厳選!!素人盗撮」と書かれたラベルが貼ってあった。
次は「大体」「毎回」「再開」でお願いします
「やれやれ……本邦最高の料理人とやらが、この程度ではな」
突然やってきた男は、調理場に波紋を呼んだ。
昼飯を食いに来たというのにがっかりさせないでくれ――そういった後、
調理人を押しのけコンロの調子を確かめる。「お、おい……あんた」
「黙っていろ。今、料理と言うものを教えてやる」
唖然としていた調理人たちは、男の行動を止められなかった。
――奇跡だった。
包丁さばき、調味料の分量、どれ一つとっても神業に等しい技術である。
「喰ってみろ」
そう言って未だ唖然としている一人の調理人の前に出されたのは一杯のスープ。
「おっと、いかん。仕事に遅れると給与に響くのでな」
スープとともに名詞を渡し、踵を返す。
「厳選された素材などと謳うのもいいが、な」
それが去り際の台詞。
残されたスープは、なんだか懐かしい、母の味がした。
お題
「レトリック」「ワールドワイド」「硝子細工」
すいません。
お題は
>>564さんのでお願いします。
金剛次郎はワールドワイドな改造人間である。
彼は巧みにレトリックを駆使し、日夜名文を誕生させたり、
贔屓にしている硝子細工製作者の元を訪ね、彼よりもすばらしい硝子細工を作り上げたりしながら、
たまに襲いかかってくる怪人どもを捻じ伏せている。
今日も改造人間・金剛次郎は世界を駆け巡っているだろう。
趣味に興じながらも、たまに地球の平和を守っている彼を忘れてはならない!!
「豊潤」「無職」「邂逅」
あ、間違えた…引き続き
>>564さんので頼みます。
569 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/07 21:08
大体、人生と言うのはいいかげんなものである。
毎回、人生をやり直しては、小休止、そしてまた再開する。
そういう人生でいいと思う。そもそも人生に目的があるのだろか。
無論、答えは否であろう。
「ドラえもん」「ドストエフスキー」「ナポレオン」
ドラえもんは、ドストエフスキーを片手にナポレオンのグラスを呷った。
次は「大体」「毎回」「再開」
あははは、大体そんなネタみたいなやり取り、
毎回繰り返してて、よく飽きないよね。
というわけで、同じお題で再開です。
「ドラえもん」「ドストエフスキー」「ナポレオン」
……
そうやってまた、2chの夜は更けてゆくのだった……。
※ゴメンナサイ、ちょっと書きたくなっちゃいました。
次のお題は「大体」「毎回」「再開」で。
「大体」「毎回」「再開」 「ドラえもん」「ドストエフスキー」「ナポレオン」
「おい」
塹壕の奥から陰気な声がした。せっかく近世ヨーロッパに連れてきてやっているのに、この厄介な糞眼鏡が随分とぞんざいな口を聞く。
「おら、ドラえもん。毎回毎回、危険な目に会わせやがって」
遠方から届く雷音から、ピョートルの砲列が示威行動を再開したのが分かる。この餓鬼、置いて帰るか?
「大体、ナポレオンって何だよ? 言葉通じねーしよ。この前の正月だってドストエフスキーだったじゃねーか。知らねーよ、んな外人」
うざいので無視する。どうせ騎兵突撃になりゃ泣き入れてくるに決まってる。うだつの上がらない奴。
林に構える幕営の奥から場違いな静香の嬌声が聞こえ皆いらつく。
重低音で地面が鈍く揺れる。着弾が近いので壕を変える。早く二十三世紀に戻ってドラミの万子舐めたい。
次は「道具」「装具」「拷苦」
拷苦が分からない僕は厨房確定でしょうか?……
「おい拷苦って書いてみろ」「ごうく?」
突然、部屋に入ってきた兄は麦茶を片手にニヤニヤと私に笑いかけた。
兄の歯が黄色く光っている。
「ひょっとして沢庵食べた?」「食べた!」
語気鋭く言い放った兄の血走った目に気圧されて私は口をつぐんだ。
彼は一体どうしたというのだろうか。先週から急に深夜に飛び起きて
ガチャガチャと奇妙な装具を肩につけては鏡の前で踊りだす。
見て見ぬ振りを決め込む父と母が私は信じられなかった。
「どんな漢字?私そんなの書けないよ」
震える私を横目に兄は私の机を漁るとノートと赤のボールペンを取り出し、
刻み込むように書き上げた。
「俺が考えた主人公の必殺技だ。
そんで、これがテーマソング。夏色の風に誘われて真夏のキスキス〜」
兄は鋭く尖った剣のような道具を振り回しながら歌った。
私は思わず合わせて裏声でハミングした。
これが団欒なのね。私は目を瞑りいつまでも歌い続けた。
次は「にゃんにゃん」「うまい」「うしろ姿」
ちょっと思っただけなんだけどね。
こうさ、にゃんにゃんとしてるじゃん、女の子が。
僕は小柄でふっくらとしている女の子はうまい(色んなイミで)ことを知っているから、
アレだね。簡単に言うと…なんだろ? まあ、ともかくやらかい女の子が大好きなわけだ。
そんな感じのコはうしろ姿を見れば一発で分かるから、僕ほどになれば。
うん、食っちゃうね。おいしくね。
ま、ちょっと思っただけなんだけどね。
「蒲池」「つなぎ」「防弾」
つなぎをカジュアルに着こなす二人組。
そいつらは東北某所に現れた。
「おい、林檎ばっか食ってんじゃねーよ!!」
「だってぇ〜〜おいしーんだもん!!」
「まあ、いい。目的は覚えてるよな?」
「目的?」
「ここに来た目的!!!」
「あぁ…確か、蒲池を……」
「『かまいたち』だって…かまちでなく」
彼らは実は妖怪ハンター。つなぎは防弾チョッキ兼ファッション。
「言い伝えによると、かまいたちってのは真空波みたいな鋭いやつで攻撃してくるらしいからな」
「ああ、このつなぎって防寒着じゃなかったんだ」
「ファッションだ」
訳分からん。
「ボール」「枝木」「楓」
ボールが楓の枝木に引っかかっていたが、今はまだこの話と関係ない。
木に引っかかったボールをヒントに一代で巨万の富を築き上げた男の話は
有名だがこれもこの話とは関係ない。
その男がくしゃみをしたのに驚いた渡り鳥がいっせいに羽ばたいて
結果的に500km離れた台風の進路を変更することになったのは学術的に
非常に興味深いできごとだったがこれもこの話とは関係ない。
進路を変更した台風が男の家財の一切を濁流に押し流すことになるのだが
これもこの話とは関係ない。
この台風によって木に引っかかっていたボールがはたしてどうなったのか、
それはどうでも良いことだしこの話とは関係ない。
そして、結局この話が何を意味するか、モニターの前で首をかしげる君が
いる訳だがこれは僕には関係のない話だ。
次は
「君が」「首をかしげる」「話」
結婚相手などまだ決める歳ではないというのに、父は勝手に一人の男を連れてきた。
縁談の席で、君を嫁に迎えたいと言った男は、続けざまにこう言った。
「君が望むのならば私は何でもします」
嘘つきめ。私は首をかしげる動作をしながら問うた。
「まぁ。何でもするとはどこまでしてくれるのですか?」
すると、男は答えた。
「命すらも捧げます」
予想通りだ。私は微笑みながら問うた。
「それでは……西の山に竜の住む洞窟があるのをご存知ですか?」
男は迷ったように答えた。
「はい、獰猛な、それは恐ろしい竜であるという話を聞いております」
なかなか博識じゃないか。それなら話は早い。私は問うた。
「では、その竜を退治して、鱗を取ってくることが貴方に出来ますか――」
そうして発っていった男の行方は、ようとして知れない。
お題
「時間軸」「髪飾り」「勇者」
―テレビゲームじゃあないんだから―
髪を後ろで束ねた不精髭の男が言った。そう、ゲームでは無い。リアルなのだ。
郊外の有名ゴーストタウンに彼らは集められた。高給のアルバイトという名目で
不特定多数の人間をいくらか集め、長距離バスに乗り込ませると、数時間後にはココ
に到着って寸法だ。
「素敵な髪飾りですね」
若い女が俺に話し掛けた。男には似合わない髪飾りを不信に思ったのだろう。続けて女は言った。
「貴方もバイトで? 私はゆき。よろしく」
さっと手を伸ばしたので、私も素直に手をだし、言った。
「私はゲームマスターだ。特別な時間軸から来た!」
思い切り声を張り上げて言うと、彼女は少したじろいだ。周りの人間もちらほらと此方を見やる。
私は続けて言った。
「さあ、ココに集められた勇者よ! 今こそ立ち上り、剣を持て!」
そう言うと、背中のバックパックを投げ出した。中からは装飾の綺麗な短剣が転がる。
さあ。と言うと渋々だが彼らはナイフを手に持ち、私の先導に従う。後は城に連れて行けば私の仕事は終わりだ。
―全く、ゲームじゃあないのだから。彼らの嗜好は極めて理解しがたい―
リアルでRPGがしたいなんて……髪飾りから電子ピープ音が鳴り、私は持ち場へと帰った。
次は「お金」「鋼」「眼鏡」でお願いします
友よ・・・
眼鏡をかけているからって、額に稲妻型の傷を描くのはやめれ。
百均のペーパーナイフを「鋼の剣」って呼ぶのはやめれ。
お金の単位をGだとかKだとか訳の解からん単位で計算するのはやめれ。
電車の中でダンジョンの話をするのはやめれ。
就職の内定も無いのにギルマスになったと喜ぶのはやめれ。
みんな心配している。いいかげんに現実に戻ってこいよ。
お題は「森」「ゼリービーンズ」「尻尾」でお願いします
582 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/10 14:33
>>578 こういうのは、日本でも中国でも昔からよく語られてる話。
龍の玉にしても鱗にしても。
かぐや姫でも求婚者のひとりにこの手の難題を出したはずだ。
せっかくだからオリジナルのを書いて挑戦してみなよ。
じゃないと練習にもなんないよ?
584 :
「森」「ゼリービーンズ」「尻尾」:03/11/10 21:30
森が、取ってくれと頼んだのだ。とても痛くてつらいのだと、森がさめざめ泣くのだ。
森が泣けば鳥も泣く。動物たちも騒ぎ出す。狩りどころの騒ぎではない。
本当は、面倒だ。けれど行かなくてはならない。明け方私は家を出た。
森は薄暗い。木が茂っているせいだ。でも怖くはない。
私は狩人。森は家。森は友。怖いことなどない。私は友のために歩いている。
踏みしめる大地から、森の息づかいが聞こえる。私を気遣う、あたたかさ。
なのに。やがて現れた煮え立つ池の、水が撥ねた。私の上着に、煙が立った。
大きな穴があいてしまった。なんて事だろう。ひどいことをする。
しかし、大地から感じる森の息づかいに、何ら変化はないのだ。温かい、ままのだ。
少し、怖くなった。森に、他人を感じた。心に、隙間があいた。生まれた闇の奥から、
化け物が出てきた。後ろから迫ってくる。ぼくはなきながらはしったんだ。
だんだんくらくなってきた。とってもつかれたよ。たそがれのなかにうすぼんやりと
ひかっていた。みつけた。ぜりーびーんず。おなかがすいたので、いただきます。
ちょっとげんきになったから、もうかえることにします。
あるいてあるいて、いきどまりだった。もうあるけない。たおれた。ふわふわしてた。
しっぽだ。みちをまちがえたみたい。でも、でぐちはもうすぐだね。
暖かな毛皮の感触に包まれ、こころを暖かなもので満たされて、急速に意識が遠のく。
帰る家なんて、もう無くなってしまったのに、ぼくは、とてもにっこりと、わらった。
「助さん」「拡散」「蜂」で
585 :
「助さん」「拡散」「蜂」:03/11/11 00:07
「助さん待ってよ。」
俺の背後で少女の声が聞こえた。
「俺は旅の隠居のお供か。」
俺は助なんて名前じゃねぇと言いながら俺はさらに歩を速めた。
「ああ、待ってくださいよ!助さん」
なんてしつこい奴だろう。
さっきから俺の後を――俺がどんなに早く走ろうがぴたりとついて離れない。
今もぜえぜえ言いながらついてきている。
まったく、こんな冴えない男の後を付回して何が楽しいのか。近頃のガキはわけがわからない。
うざったいので警察に突き出そうかとも思ったが面倒くさそうなのでやめた。
面倒は嫌いだ。
そろそろ適当に巻いておさらばしようとした俺に少女は言った。
「助けてくれてありがとうございます。」
「は?」
「だから今度は私に助けさせてくださいね。」
何を言ってるんだこいつは。少女の顔に見覚えはなかったし、
他人を助けるだなんて面倒をした覚えもない。
「人違いだろ」
そう言い終わるか言い終わらない内にふくらました袋が破裂したような安っぽい音がいくつかした。
それとほぼ同時に俺は少女に押し倒されていた。
アスファルトに思い切り身体を打ちつけられた俺は信じられないものを目にした。
少女の身体が少しずつ拡散して消えかかっていたのだ。
唖然とする俺に少女は微笑むとこう言った。
「たしかに助けましたからね」
次の瞬間、少女は消えうせ替わりにちっぽけな蜂の死骸が腹の上にころがっていた。
「君!大丈夫か!?」
どうやらさっきの音の正体はどっかのヤーさんが放った銃弾だったらしい。
抗争がどうだとか他の怪我人がどうだとかいう話をどこか遠くで聞きながら
俺はこの間クモの巣にひっかかっていた間抜けな蜂を助けてやったのを思い出した。
次「日記」「雷」「音」でお願いします。
586 :
!「日記」「音」「雷」:03/11/11 00:44
「世の中って不思議なものおおいよな。」
「だね。」
友達から空返事が帰ってくる。
「地球とかさ、宇宙とかさ、てか自分がわかんねぇもん。俺。」
好きだった先輩と遊園地へいったってのに、つまらなかった。どうしてだろう。
「だね。」
・・・。
「あ、雨だよ。」
「だな。」
雨だ。しっとりする雨。落ち着く雨。これも不思議のひとつだ。突然、空が光る。
「わっ、くるよ。」
口に出すほどのことでもないと思ったが、こんな奴だ。
「すっごいね、雷。」
いつもなら軽く流すところだが、今のは確かにすごかった。
「ああ、だな。」
静かな雨に、すこし不気味な雷の音。
「あ、やんじゃった。」
通り雨だったのか、雨は十分ぐらいでやんだ。
「すごい晴れたね。」
「だな。」
いつのまにか俺が空返事になってる。
「僕、先に帰るね。」
「ああ、さよならな。」
「さよなら、また明日ね。」
夕焼けが綺麗だ。見事に赤く染めてる。 放課後、誰もいない教室、赤く染まった黒板。 いまなら、いまならきっと逃げないで、考えられる気がする。先輩と俺と、もっと楽しくいられる方法。
「あ。」
思いついた。
「交換日記でもするか。」
つぎは「人」「碑と」「灯と」でおねがいします。
587 :
「人」「碑と」「灯と」:03/11/11 01:36
小さな慰霊碑と、常夜灯と、潮でボロボロになった看板以外はなんにもない場所だった。
本当になにもない。石碑の先は断崖になっていて先には海が広がっている。
回りには松さえ見当たらなかった。
風のせいだろう、と暮央は、長めの髪を抑えながら思った。
この最後の良心のような風は嫌いではない。
海の向こうから吹き上げてくる風は、崩れそうな暮央を支えてくれるようだった。
それは姉の月耶も同じらしい。月耶は恐がりもせず断崖を覗き込み、
「兄さん、ここから飛んだんやね」
といった。
月耶は、兄の睦紀を好いていた。普段色恋に疎い暮央にもわかる程だったから、それは潔癖症だった睦紀にとって、どれほどの刺であったかは想像に難くない。
そして睦紀は死んだ。すまない、と殴り書きを残して。
「姉ちゃん、あんまり覗きこんだらあかん。落ちたら死ぬで。助かった人おらんのやで」
暮央は悲鳴のような声でいった。月耶はわかってる、というようににこっと笑った。
「なあ、こうしてるとな、兄さんの声聞こえるみたいなんよ……はじめて来た場所やのにな。懐かしい気するわ」
「錯覚やそんなん」
月耶は淋しげにうつむいた。
暮央はそんな月耶の手をひっつかむと、ぐいぐいと崖から遠ざけた。
月耶の手は冷たく、震えていた。
次は「救済」「募金」「珠」で
モニターがズラリと並んだ彼の『仕事場』で、青年は答える。
「雲を掴むような話に驚く人間には大金も掴むことはできない、そう思いますよ」
経済誌の記者はメモを取っている。傍らにはテープレコーダー。
大学を出て3年で勤め人を辞め、瞬く間に財を築きあげてしまったトレイダーがいる、
そんな噂が業界内を駆け巡ったのは2年前のことだった。
彼は未だに株の売買のみで暮らしているが、もはや売買高は市場が無視できるレヴェルではなかった。
−何故比較的安定した生活を投げ打って株式売買一本でやっていこうと思ったのですか?
「もともと普通に働く気はなかったんです。株はテラ銭が一番安かった、それだけです」
−テラ銭?ギャンブルで生活しようと思っていたのですか?
「そうですよ。『勝負』は救済なんですよ、僕にとっては」
負けてもよかったとも付け加え、青年はこともなげに答えた。
−ジョージ・ソロスのような何らか目的、例えば莫大な募金であるとか、そういったものは一切ないのですか?
「そんなものはどうでもいい。目的なぞないんですよ。あなたもよくよく考えればわかりますよ」
−しかし、あなたはもうお金を稼ぐ必要からは開放されているほどのお金を手にしました
「別に稼ぐためにやってるわけではない、さっきも言ったはずです、負けてもいいと」
莫大な金を扱うことに興味があるわけではないからファンドを組むこともせず、
『勝負』の刺激を得るために、破滅とつながった戯れのために全て自分の資本で取引しているのか、記者は考えた。
−何かアドバイスをお願いします
「要は想像力ですよ、それさえあればお金は無限に増えていきますよ」
成功人からの珠玉の一言を期待していた記者は軽い落胆とある種の絶望を感じた。
青年は、枷が外れた天才にしかできないことが世の中にはある、という事実を言っただけであったから。
次は「証明」「秋刀魚」「シンクロニティ」でお願いします。
おれの目の前に不特定多数のゴミどもが並んでいる。
「よーしおまえら聞け。今からお前らを右から順々に殴ってくからなぁ」
奴らの眼の色は変わらない。空ろ。
おれはお前らがお前らであることを証明するためにこうしてやってるんだからなあ。
秋刀魚がうまい季節になったからお前らを殴ってるんだからなー。
おれはお前らを殴る。これぞまさにシンクロニティって感じだよな。
訳の分からない言葉を並べてゴミどもを殴り伏せていった。
気持ちのいいわけがない。
「バラード」「花粉」「腹時計」
夕暮れに染まる丘陵に、なお朱く染まる血の海は、そこに立つ黒い影……
たった一人の男によって齎された悲劇だった。男は己が起こした凄惨を、夕暮れのバラードなどと
ふざけた名前をつけて笑い、いままた丘に現れた人影に対し向き直る。
「どうだ、シェリー。これが俺の手に入れた力さ。みろよ、この人と人で染まった百花繚乱を」
シェリーと呼ばれた女の剣士は、顔をしかめて剣の柄に手を掛けた。
「……そう。それで、五十人も……罪のない人を殺したのね、セイン」
逆光で見えなかった男の顔は、一歩踏み出したことで……静かな狂気をシェリーに示した。
「闇の力に染まった貴方には、血飛沫さえも、そう……花粉みたいに感じるのでしょうね」
「染まった?違うよ、シェリー。これはね、運命だ。足元のこいつらだってそうさ。
俺に咲かせられる為だけに育った蕾のようなものだ」
人の骸を花と謳う。それがどれだけ愚かな事かをこの男は知らない。
「ああ、こいつらを喰った事で俺の腹時計も治まったようだよ。……シェリー、君はデザートだ。
俺の力の証明に。君も、この花園に咲く一輪として、結末としよう」
言葉は要らない。――もう、どうしようもないところまで来ている。
シェリーは無言で剣を抜き放った。
お題「レンズ」「プリンセス」「魔法」
591 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/12 00:18
ここに一枚のスカーフがある。
キラキラしたラメ入りの、だが古びてボロになってしまったそれは、私にとっては大切な思い出である。
小さい頃、疑うことも騙すことも知らない幸せな頃、私はそのスカーフをかぶることでプリンセスになった気分を味わっていた。
大人の女が化粧をしてより美しい自分を夢見るように、私はそのスカーフによってより愛される自分を夢見ていたのかもしれない。
甘いお菓子も、摩訶不思議な魔法も、かっこいい王子様も、スカーフをかぶった私にとっては安易に手に入るものに思えた。
今大人になりつつある私からすれば、お姫様幻想などという甘い夢を味わえる能力自体が魔法だったような気もするが。
最近夢を見なくなって久しい。欲しいものは時間とお金。見えてくるのは容赦ない現実。
いつから私の心のレンズはこうなってしまったのだろうか。
私はスカーフから垣間見た少女の私に問い掛ける。「私のレンズは、曇ってなんかないよね?」
今の私は現実を見据えてちゃんと生きているよね?と。
小さい頃の私が夢見たプリンセスよりも素敵な存在になれてるよね?と。
次のお題は「十九歳」「街路樹」「立ち入り禁止」で
街路樹が並ぶこの大通りも、
十数年前はイルミネーションという灯りで着飾られていたらしい。
でも今は、街灯の火が点った所を、あたしは見たことはない。
『関係者以外立ち入り禁止』
そんな立札に、あたしは躊躇することはない。
あたしは、その立札ごと門を蹴倒すと中へと足を踏み入れた。
今、あたしには金が必要なのだ。
あたしは今、たしか十九歳だったと思う。
十九年前、あたしを生んだ親は何を考えていたのだろう。
これから先、なんの希望も持てない時代に、
なんで、あたしを送り込んだんだろう、苦労することは解かってただろうに。
あたしは、いつもこんなことを考えつづけていた。
でも、あたしはこのお腹の中にいるだろう子どもを、なんとかして生みたいと思った。
勝手な思いこみかもしれない、でもこの子たちが受ける苦労は
この子自身が解決してくれる、あたしはそう考えていた。
そのためには、金が必要なのだ。
次は「信号」「落下」「痛いよう」でお願いします
夜空から星々が落下したかのようなイルミネーション。
落ちてくる星に紛れて今年もサンタが街にやって来ました。
相棒はおなじみ、トナカイ。
ところがこのトナカイ、まだ子どもで経験が浅く、おっちょこちょい。
さっきも止まりきれずに壁に鼻をぶつけてしまいました。
「痛いよう、サンタさん。オイラの鼻がつぶれちゃったよう」
やさしいサンタさんはトナカイの鼻をなでてあげました。
「つぶれていやしないよ。ちょっと腫れただけだ。心配ないよ」
「ほんとだ。真っ赤になってる」
「トナカイや、それは赤信号だよ。その信号を無視して
またむやみにスピードを出すと、今度はほんとに鼻がつぶれちゃうような
目に遭うかも知れないよ」
「うん。オイラこれからはあわてずに走るよ」
トナカイはどんなプレゼントをもらうよりも
やさしいサンタさんの気持ちがとてもうれしかったのでした。
メリークリスマス!
次は「ブツ」「漢」「萌」の三語
594 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/13 00:40
漢パワー!! オレは激しく発光し、地球全体を照らし出した。
事のあらましは5秒前――――。
オレはここ秋葉原で人を待っていた。奴は現れた。おい、ブツは?
「あっ!! ワリィ、忘れちまった。ほのかタン抱き枕」
それを聞いたとき、オレの中の何かが弾けた。音が鳴り響く――。
オレの心の弁は決壊し、訳の分からない言葉(日本語だったかさえ怪しい)でしゃべくった。
大意はこんな感じ。ふざけんな! オレがこの一週間欲求を抑え付けていたのは何のためだったと思ってんだ!!
言うまでもねー!!! オレのほとばしる『何か』をほのかタンにぶちまけ(略)
化学反応が起きた。オレの中の漢心と萌心が混じり合い、何か別のエネルギーに変わっていく――。
漢パワーはこうして発生した。全部アイツが抱き枕を忘れたせいだ……!!
ちなみに…何故『漢パワー』なのか。それは、オレの心の中で漢心がわずかに萌心を上回っていたためである。
「霧」「霞」「河童」
「霧」「霞」「河童」
無機質な扉の前にそっと立つと、私は抱えた問題集とノートをさらにきつく抱きしめた。
霞掛かった視界と呼吸困難に陥ったかのように締め付けられた胸。
私は頭を振り払い、扉を二つ叩いた。
「失礼します」
パソコンの画面から離された細い目を見つめ、私は静かに彼に笑いかける。
「また質問か?最近は頑張ってるな」
不器用な彼は、少し固まったような微笑を浮かべ、私のノートを覗き込む。
俯く彼の横顔を見ながら、私は何だか急に虚しさと切なさで一杯になった。
「河童の川流れだな。ほら、ここ、君が得意な問題を間違ってる」
そんな彼の言葉が霧に覆われた向こう岸からのように聞こえるのはなぜだろうか。
……こんなに彼の傍にいるのに。
触れたくても触れられない彼の大きな手で指差された文字を見ながら、私は、そうですね、と答えた。
十五も歳が違うのに……そして彼には定められた相手がいるのに、どうして彼に会いたいと願ってしまうんだろう。
――どうして、彼のことを好きだ何て思ってしまったんだろう。
狂おしいほど切ない思いをひた隠し、私は今日も彼のいる教官室を訪れる。
☆ある意味切羽詰った文章ですね……。
ちょっと自伝的かもしれないw
すみません。次のお題ふるの忘れてました。
次は、「バレー」「枕投げ」「墨」で。
……ちょっと動揺してたのかもしれませんねw
『リンゴをかじると、歯茎から血が出ませんか?』
「出る」古いテレビCMを思い出して、俺は力強く答えた。「先生、この人漏らすみたいです」隣の
女子がすごい勢いで俺から離れて金切り声を上げた。大げさな。しかしリクエストとあらばしかたがない。
「このバカチンが!」チャックを下げようという俺の動作は先生の激しいゲンコで止められた。
「つむじを殴るとゲリになります」俺は頭を抱えてうめいた。ひっ、と女子が怯えた。
「漏らしたんだって」「ダダ漏らしだって」「なんか臭うよ」バスのなかは大騒ぎになった。
俺たちは修学旅行に来ていた。シリコンバレー、アメリカだ。理由はわからん。ノリ?見学は
充実していたが、どういう訳だか宿泊は研究所の一角だった。与えられた枕の脇には沢山のランプが
点滅していた。「コワクアリマセンヨー」研究員が怪しく囁いていた。……なんで去年まで京都だった
旅行先が、積立金そのままでアメリカになったのか、わかったよ。
「うりゃー」かけ声。枕が耳元をかすめていった。どごっ、と鈍い音がして、男子生徒が倒れる。
修学旅行の夜は枕投げと決まってます。俺も加わろうと、枕を手に取ろうとした。「重っ!」砲丸かよ!
待て待て、この重さは人命に関わるのでは?「どごっ」「ぎゃっ」「うぅ」阿鼻叫喚である。
やがて乱れ飛んだ枕が施設を破壊し始め、全員が研究所から追い出された。あふれるエネルギーを
もてあました我々は、猿のように喚きながら、日本の伝統、墨で黒々と、「神風参上」「夜露死苦」と
研究所の壁いっぱいに書き散らした。日本文化、此処にあり。満足だった。
「歯茎からでた血は、虫歯菌を更に培養させる。歯槽膿漏は放っておくといけない!」バスに揺られ、
昨日の晩のことを考えながらも、思いは彷徨う俺、青春であった。
「先生、この人『イケナイ』とか喚いてます」女子が半べそで大声を上げた。
「やだー」「たまってるのかしら」「さっきの『出る』はその意味だったのね」違うのだが、リクエスト
には答えねば。チャックを下げようとした俺の手は、先生にがっちりと捕まえられていた。その手は、
鈍い光沢を放ってひんやりしていた。「機械の体」先生は、にやりと笑った。隣の女子の髪が伸びて
いた。バスが浮いた気がした。
お題は「サックス」「シックス」「ソックス」で。……エッチ(w
眠れない。
伸びきったジャージとスウェットを履いた学生は布団の中で悶々としていた。
埒があかない。もそりと立ち上がると、食器棚からグラスと冷蔵庫から氷を取り出した。
友人に薦められて最近覚えたウイスキーをあおりながら、最近聴くようになったジャズを聴く。
時間は…AM5:24、眠ってしまえば一限には間に合わないかもしれない。
しかし、彼には眠らなければ朝方眠ってしまうだろうという予感というよりも確信に近いものがあった。
だから酒を飲んででも寝よう、そう思った。それは半ば強迫観念に近いものがあった。
サックスの音が心地よい。それでも眠りを強制されねばならない不自由さは如何ともしがたかった。
洗濯物のスニーカーソックス。さっき一週間ぶりに動かした洗濯機から取り出した、生乾き。
いくつかの複雑なリズムパターンとアルコールが彼の感覚を研ぎ澄ましたのか。
第六感、シックスセンス。死神がそこにいるような気がした。
「まだ・・・だろう・・・」
グラスの氷が音をたてた。ここがここでいいという、不思議な肯定感が彼を包んだ。
変な詩みたいになってしまった(鬱
次は「クリーム」「大根」「習慣」でお願いします。
彼の発言に地面が揺れた気がした。魚が足下を通り抜ける感覚。
「だって、いまさらどうにもならないだろ」
あんた、そんな、結婚は慎重にだとか、迷っているから待って欲しいとか、いままでは何だったの?
相手が妊娠したからって簡単に決めちゃう人じゃないでしょうが。
「結局、勢いなんだよな。おれってさあ、きっかけがないと決心つかないタイプなんだ」
は?関係ないって、そんなの。これから仕事なのに、勝手なこと言いやがって。
きれるよ。きれていい?
「まて、落ち着け。落ち着いて話し合おうよ」
話し合っても結果は同じだろ。朝からむかつくこといってんじゃねえよ。
「とりあえず、包丁置こうや。な、まじ、ごめん、謝るから包丁置いて」
彼が手を握ってきたので、咄嗟に右手を振り下ろす。
スパッ
真っ二つになったのは、大根だった。腰を抜かした彼が、
「ごめん、全部嘘なんだ。許してくれ。こういえば、お前がおれに愛想尽かすと思って」
そんなに必死に謝らなくてもいいよ。許してあげる。あなたの嘘は習慣みたいなものだから。
大好きなあなた、これからもずっと二人でいようね。
お次は♪
・クラス会
・殺人鬼
・「これって夢だよね?」
今日は3年ぶりのクラス会だ。卒業したときには13人いたクラスメイトも、今日の出席者は僅かに5人。
都合で来られない者も勿論いるのだろうが、クラスの半数はあいつにやられたことが判っている。
あいつ・・・エリート揃いのこのクラスの中でもとびきりの切れ者だった。みんな優秀なエリートだったから自分より優秀な者の存在が許せなかった。優秀だったから苛め方も巧妙で、あいつを陥れるための罠は教師にも誰にも気づかれなかった。
しかし奴は気づいた。そして全てに耐えて超一流の就職先を保証してくれる卒業証書を手に入れた後、顔色一つ変えずに復讐を始めた。殺人鬼という本性を現して。
「こうして集まって相談しても、奴から逃れる手なんて見つからないんじゃないのか」
「莫迦なこというな。俺たちだって優秀なんだ。みんなで力を合わせれば奴を出し抜くことだって夢じゃない」
そうだ。その為に開いたクラス会だ。俺たちが力を合わせれば・・・。
「相変わらずね、あなた達」
後ろからハスキーな声が聞こえる。一瞬にしてみんな凍り付いた。
振り向くと喪服に身を包んだ奴がいた。艶やかな笑みを浮かべ、手には鋭利なナイフを持っている。
こんな場所でクラス会を開いたのが間違いだった。廃ビルの地下の会議室。奴に見つからないようにと選んだ場所が、死体を発見しにくい棺桶にもなるということに誰も気づかなかったなんて。
「これって夢だよね?」
「確かめてみれば判るかもね」
ニッコリ笑って奴がナイフの刃を舐める。醒めない夢が始まろうとしていた。
初投稿です。どきどき。
お次は「蒼穹」「深い井戸」「地平線」でお願いします。
すっごいミス!
《クリーム》使ってなかった!!
ホントは九行目、〈話し合っても結果は同じだろ)の前に、
〈口にクリームつけて、なに慌ててんの?〉
が入るところだったんだよ♪あちゃー、しくっちゃった丸
許してね!?
605 :
「蒼穹」「深い井戸」「地平線」:03/11/13 23:10
生まれてからの80年はあっという間に思えた。しかし死んだ後は、それ以上だった。
死んだ後の霊体はあらゆる物理法則の直接干渉を受けない変わりに、
純粋に「見る」存在になる。初めのうちは興味深かった「見る」事も、
膨大な時間のなかであらゆる知識を吸収しながら、世界に干渉できない
もどかしさのなかで苦しみに変わった。感情は他者との交流によって発展
する。「見る」だけの彼が、新しい感性と環境を持ち作り出していく次代の者たちを
理解できなくなるまでにはそれほど時間はかからなかった。やがて彼は、外界の時間の流れに
背を向けた。自己の内界を過ごした。時間は流れた、轟々と音を立てて。
……思い出すのは夏。蒼穹。空のてっぺんは真っ青で、地平線からは真っ白な
入道雲。蝉の声。とぎれとぎれの、子どもたちの声。徐々に視界が狭まっていく。
声が途切れ、手の感触が消え、視界が、狭まり、一点に集中していく。……死の瞬間、
鮮やかに思い出したのは夏の太陽の下、無邪気に遊んだ子どもの頃。見えていたのは、
点。ぎらぎらまぶしい、光。
そして、気づけば彼は暗闇のなかにいた。体が動かない。頭上には、まばゆい光。
まるで井戸の底から天を見上げるような感覚。デジャブ。俺は、死んで、そして
何を思った?高まる感情。痛切なる願い。ああ、世界はあそこにある。あの光の
なかに。戻りたい。なのに、なぜからだが動かない?ここはどこだ?
彼の願いは叶うことはない。世界は死んでいた。ブラックホールの中は、たわんだ
重力が、光さえねじ曲がる。頭上に輝く光の中に、確かにすべてはあった。が、直接
物理法則の干渉を受けない彼も、「見る」ためには自身の位置の特定が必要だ。逆流は
あり得ない穴の底では、彼も「自由」ではない。これから続くのは、永遠のまどろみ。
強烈な一点の光を見つめる、恒久の時。
お題忘れ。スマソ
「スペースシップ」「愛憎」「コインロッカー」で。
607 :
「スペースシップ」「愛憎」「コインロッカー」:03/11/14 00:00
俺はコインロッカーで生まれた。生みの母は知らない。しかし
今後、出逢ったところで、ショットガンで頭を吹き飛ばすような
事はしないだろう。俺には、理解できない。その怒りが。むなしさが。
つーかさ、なんでそーなるの?
だって俺のクラスの大半は「コインロッカーベイビーズ」だぜ?
医療機関が貸し出す人工子宮(+保育器)が一般化してコインを
入れれば動き出すようになって十年、今やコーラとポップコーンの自動
販売機の間に「コインロッカー」が置かれ、できちゃったらコインを入れれば
ちゃちゃっと国家機関が処置をしてくれる。開発時は反対の世論が巻き起こったが、
できちまえばそれ、便利なもんで、みんな、使ってるよな!
だいたい、今の子どもの半分がお仲間だし、今は福祉がしっかりしているから
なんて事ないんだよね。じーさんばーさんだけよ、気にすんの。……びっくりした?
ま、未来で大きな事はそんなとこかね。過去から来てもらった君には済まないけれど。
でもね、変わらんところもあるのよ。最近宇宙ステーションに大型スペースシップが
ご丁寧に二台、つっこんだけど、理由は宗教上の愛憎。同じ神なのに、聖地の奪い合い
だってさ。ここら辺は君らの頃と変わらないんじゃない。心は、いつも不可解だねぇ。
なんか質問ある?……え、ビルに飛行機がつっこんだのは石油メジャーと産軍複合体の
陰謀?……はい、カメラ止めて。お前さ、帰りたくないんだ?なぁ?素直に頷いときゃ
いいんだよ。これ、テレビだよ?言っていいことと悪いこと、区別つく?……オッケー。
わかりゃいいんだ。肩の力抜いて。はは、がんばろう。
俺はこわばったそいつの方に手を置いて、囁いた「な、あんまり変わらないだろ、未来も」
「屈服」「うきうき」「キーン」で
「行かないで!」
叫ぶあんたの手を振りきって、冥王星行きのスペースシップに搭乗。
しかし、そこに待っていたのは地球と何ら変わらない、つつましくもうとましい、
平凡で怠惰な生活だった。ああ、こんなことなら無理に申し出ることもなかった。
今頃、あいつ何してるかな?いつものように飯食って、テレビ見て、風呂に入って……
いつだって愛憎に縛られてたよなあ。スペースシップでは人種国籍関係なしの
友好平和条約が批准されているのであります!あれほど嫌いだった複雑な人間関係、
喧噪の日々、いまはその思い出だけを頼りに生きてられるのであります……。
そして、航海記録は500日に突入。祝い酒が振る舞われるなか、地球より緊急連絡。
ケビンが赤ら顔をいっそう赤らめて怒鳴る。
「地球が火星人の襲撃を受けた!ほとんどの人間が殺されたか捕虜になったらしい」
いまや計画の全ては海の藻屑。我々の運命も風の前の塵芥。急遽地球に引き返したところで
いったい何になるというのだろう?ケビンが唇を湿らせて、息を整えた。
「NASAのコインロッカーに息子の写真を忘れてきたんだ。もう顔を忘れてしまった。
死ぬ前に一目見ておきたい。もちろん、みんなの意見に従うけど……」
ケビン、こら、ケビン!俺たちは友好条約を結んでるんだろ。君の意見に文句がある奴なんていないさ。
まっすぐに引き返す。帰りは行きよりずっと速い。窓の外には青い地球。
どうしてる、俺たちの地球。俺たちの家族。平和な星、俺たちのスペースシップ。
609 :
「スペースシップ」「愛憎」「コインロッカー」:03/11/14 00:04
地球上だろうと地球外だろうとスペースシップの上だろうと、
人の出入りが激しいところにはたいてい男女の愛憎劇とか人間ドラマがある。
それと同じくらいの確率でコインロッカーもある。
だがその二つが同時に起こる確率というのはかなり低くなるのではないか?
とはいっても決して起こらないものではないし、実際に起こってしまったら確率がどうとかいう問題ではなくなる。
たとえばこんな風に。
「…スペースシップ・コインロッカー・ベイベー」
語呂が悪い。
僕は、眼前のコインロッカーの中で冷たい宇宙のことなど知らずに、
ただただ眠りこけている赤ちゃんを見つめながら自分で自分に突っ込んだ。
次のお題は「純情」「三段」「蹴り」
かぶってしまったわ、ごめんなさい(ウフン
つ・ぎ・の・お題は、
607さんの「屈服」「うきうき」「キーン」で、よ・ろ・し・く(チュ
そして僕は砂に埋められていた。首まで埋められたから何も身動きが
とれない。手が出れば、少しはましなのかもしれないけど。
いや、変わらないよね。いつの間にかに僕は、動けないのに、
体をぎゅっと丸めようとしていた。恐怖。それが僕を支配していた。
うつむいた僕の目には映らないけど、そして極力映らないようにしている
のだけど、頭の上には、二人の、四つの冷たい目が哀れな自分を見ているの
だろう……舌なめずりをしながら。
あっという間だった。手足を押さえられ、埋められた。状況がまったく
つかめなかった。パニックだった。助けて、と、大きな声で喚いた。猛烈な
怒りが沸いた。いやだ、ここから出して、と。
いきなり叩かれた。耳がキーンとなった。続けざまに何度も、平手打ちが
来た。痛かった。そしてそれ以上に、怖かった。何が起きているのかわからない。
声を上げるのをやめた後も数回叩いた後で、彼らはようやく手を止めた。僕は、
低く泣いていた。でも、まだその時点ではパニックの渦中だった。
やがて、ぎゅっとつぶった目を開いた。まぶたが腫れて、あまり開かないが、
頭を上げた。そして、見上げた虚空にあったその目を見たとき……僕の心は簡単に折れた。
屈服した。何よりも怖かった。その目は、歓喜の光が宿っていた。うきうき、と
いうことばがこぼれるくらいに。僕ははじめて、怖い人間を、知った。
ああ。そして、今は片方の耳は何も聞こえない。キーンという耳鳴りだけ。そして、熱い。
爆竹をつっこまれたのだ。
痛い。痛い。嫌だ。怖い。僕の瞳は、左右に細かく揺れていただろう。体の震えが、
そこにも現れていた。
たぶん彼らはこれで終わらせない。僕を見て、彼らはわらっている。夜の砂場には誰も来ない。
「一度、皮をはぐってやってみたかったんだ。痛いらしいんだよこれが」手に、光る物があった。
ゆっくりと視線が降りてきた。のどの奥に何か固まりがつっこまれたように、声が、でない。
冷たい、僕の命を奪う物をほほにあてられた。
彼の瞳が、欲情して潤んでいた。「いい声で啼いてよ、ネコちゃん」
「蟹」「鳥居」「リハビリ」で
美和子はアイスクリームが好きだった。
舌先でくにゅくにゅ練って芯が残りつつも屈服して少し柔らかくなったのをこくん、と飲む込む。
「んふふ」
美和子はアイスクリームを食べている時が一番幸せそうだと、あたしは思う。
「おいしい?」
見てるとなんか、あたしまでうきうき嬉しくなってくる。
だからあたしは最近美和子にアイスをおごる。昔は全然好きな子じゃなかったのに、むしろ嫌いだったのに、世の中わかんないものだ。
「うん、うっ……痛ぁ」
美和子は突然頭をかかえた。たぶん食べすぎてキーンとしてしまったんだろう。
「ほら、急いで食べるから」
「冷たい喉ごしもアイスのうちだし、それにアイスって戦いなのよ」
「はあ? 戦い?」
あたしは思わずすっとんきょうな声を上げた。
「ほら、アイスって冷たくて固いけど、口の中に入れてるとやらかくなるでしょ?
少しはとろとろになるまで遊んであげたいなって思うけど、でもちょっと意地悪なぐらいのがわたしは好きなのよ」
そういうと美和子はあたしに、極上のアイスを食べている時のような至福の微笑みを向けた。
次は「純情」「三段」「蹴り」で
614 :
「屈服」「うきうき」「キーン」:03/11/14 01:55
すいません、次は
>>612さんの「蟹」「鳥居」「リハビリ」で
恋愛救済専門旅行代理人という大層な肩書きの私ですけれども、
じつわ対した事はしていないのです。
妻が食事の用意をしなくなったという方に「北海道の蟹ちゃん食べ放題コース」
なぞをご紹介したり。
セックスレスの夫婦様に「関門海峡と愛の鳥居を潜る」
といった一見訳のわからない御旅行をご紹介するだけの職業なのです。
いわば、愛のリハビリと言うのでしょうか?
それとも心のリハビリと言うのでしょうか?
いずれにせよ、その「何か」を感じるのはお客様自身なのです。
――お相手のいらっしゃらないお客様の場合ですと、特別コースAの
「眠らない町新宿。今日もダブル太陽」なぞがお勧めかと――
次は「ミサイル」「抑える」「貰える」で
大統領はうんざりした顔で、目の前のモニターを睨み付けていた。
「何とかならんのかね、ラムズフェルド」
「残念ながら」
国防長官の絶望的な言葉に、大統領は溜息をつく。
「……この際だ、ミサイルでもなんでも予算で買い占めて、まとめて撃ち込んではどうだね」
「大統領、今少し辛抱の時ですぞ。我が国が世界を抑える役目をもっているのは、証明せずとも明白なのですから」
「ならば、なぜ国連のアホどもは、我々に協力しない」
「………」
国防長官が黙り込んでしまったので、大統領は再びモニターに視線を落とした。
「……ジャップどもが盛り返してきてるぞ」
「残念ながら……今我々に出来る事は限られています。それに、イラク情勢に対しては数少ないの協力国で…」
「軍も派遣せず、何が協力だ。あの程度のテロで尻ごみしおって」
苛々と首を振ってから、情けなさそうに大統領はうめく。
「ああ、こんな事なら、ゴアに勝たせてやれば良かった……」
「……」
「次の休暇はいつ貰えるのだね?」
大統領の露骨な現実逃避の言葉に、国防長官は皮肉な笑みを浮かべた。
「お望みなら、今すぐにでも」
彼に出来たのは、乾いた笑いをあげる事だけだった。
お次は「かさぶた」「毛布」「告白」で。
617 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/14 20:19
かさぶた「ブリブリブリブリブリブリブリブリブブブブブブブブリリリブォオオオオオオオオオオオオォオオオオオオッッッッッッ」
毛布「ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲゲゲゲゲゲゲゲロロロゲェエエエエエエエエエエエエェエエエエエエッッッッッッ」
告白「ああっ、もうダメッ!!はうあああーーーーっっっ!!!
ブリイッ!ブボッ!ブリブリブリィィィィッッッッ!!!!
いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱいウンチ出してるゥゥッ!
ぶびびびびびびびぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!ボトボトボトォォッッ!!!
ぁあ…ウンチ出るっ、ウンチ出ますうっ!!
ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
んはああーーーーっっっ!!!ウッ、ウンッ、ウンコォォォッッ!!!
ムリムリイッッ!!ブチュブチュッッ、ミチミチミチィィッッ!!!
おおっ!ウンコッ!!ウッ、ウンッ、ウンコッッ!!!ウンコ見てぇっ, 」
つみとがのしるし天にあらはれ、
ふりつむゆきのうへにあはわれ、
木木の梢にかがやきいで、
ま冬をこえて光るがに、
おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。
みよや眠れる、
くらき土壌にいきものは、
懺悔の家をぞ建てそめし。
浄化されました。
お題は引き続き、「かさぶた」「毛布」「告白」です。
無邪気に毛布にじゃれつく子犬を見て祐樹は溜息をついた。
「どうしよう……」
学校の帰り道、道ばたに捨てられていたのを友達が見つけたのだ。
柔らかく愛らしいぬいぐるみのような子犬に
最初はかわいいね、小さいねと笑っていたのだが
そのうちすてられたのかなと誰かが言いだした。
しかしいっしょにいた友達はかわいそうかわいそうと言うばかりで、
家が社宅だから駄目だとか言って子犬を連れ帰ってくれそうになかった。
「ぼくがつれて帰る!」
そんな友達のやりとりを聞いているうちについ言ってしまったのだ。
薄汚れた段ボール箱の中でたった一匹、来るはずのない迎えを待っていた子犬が
母子家庭で帰りをひとりで待つじぶんと同じように見えたからかも知れない。
母親が仕事から帰ってきた。
祐樹は手の甲のかさぶたをいじくりながら告白の機会をうかがった。
次のお題「水鏡」「ビー玉」「雲」でお願いします。
水面に映った自分の姿は、人間として成熟され、充分すぎるほどに育ってしまっていた。
池の水鏡に映るのは、見慣れたはずの、くたびれたコートを纏った大人の姿。
普段、注視する事のない自分の姿は、背後の青と勝手に対比されてしまって、愚かな姿を映し出している。
そう、空は変化することがない。昔は、もっと汚くはなかっただろうか。昔を思い出す。
例えば子供時代、よく愛飲したラムネ。硝子の瓶に入った液体。中のビー玉は、市販のものよりも
絶対に綺麗だったろう。何かに包まれて生きる限りは、きっと不純物が混じることはないのだと思う。
――無論、ラムネの作業工程など知らないが。それでも、そんな漠然としたイメージを想起して、
何となくため息をついた。子供と大人の境目は、一体何だったと言うのだろう。何かに包まれて生きていた子供時代。
世の中は不思議だらけで、それ故に生活を心配する必要なんてなかった。
思うに、外側を知った時から。自分の中にあった綺麗は失われて、不思議が不思議でなくなった時に、
自分は生活する力と引き換えに、世の中の仕組みを知ったのだ。知らないと言う事は、見えないと言う事。
そうして見る目が変わってしまっただけ。濁ってしまった、そんな目でさえ、見ていたものは一緒だったのだから。
空に浮かぶ雲。透明な空を汚す不純物でも、合わせ見ればこれ程綺麗に映ると言うのに。
不純と純を合わせ見た時に、人は綺麗に映るものなのだろうか?
漠然とした思考を停止して、立ち上がった。肌に受ける風もまた、透明だった。
お題「銀色」「モノクローム」「ポートレート」
一つだけ、色が違っていた。美術館といえば色とりどりの絵画や力強い石像が
立ち並び、全体が重々しい空気に包まれた場所であると思っていた。そうして
その一角に来るまで、確かにこの美術館は私の思った通りの場所だった。
入り口を入ってすぐの広間に石像が立っている。詳しくないから誰が造った
とは分からない。私の興味は、すぐ隣に伸びる廊下にかしずくように並んだ
絵画の方へ、自然と向けられた。
色の溶けた廊下をゆっくりと進みながら、私は美術館にいる自分を眺めていた。
別の広間に出てもう一度廊下に入った時、それが私の目に映った。そこだけ色が
欠けている。見ると、モノクロームの絵がかけられていた。鉛筆による肖像画だ。
古い紙なのに尚力強く描かれ、人物の目は光っているようにさえ思われる。
作品名は銀色のポートレート。確かに目だけでなく全体が淡い銀のようだ。
しばらく呆と眺めて、後の絵や像は素通りして元の広間に戻った。まだ目の奥に
あの肖像がある。若くないが美しい女性の画だった。
出る時案内係にあの絵について聞こうとしたが、私は結局苦笑いしてそのまま
出てしまった。案内嬢の面影に、あの銀色の貴婦人が確かにあったからである。
次「カレー」「扇子」「火傷」
623 :
「銀色」「モノクローム」「ポートレート」:03/11/15 02:29
「あいつのためにやったんだ」
40男はポツリポツリと喋りだした
盗ったモノは銀色に輝くプラチナリング
女を想像してみた
きっと銀幕で見るようないい女なのだろう
スラっとしていてグラマー、大きな瞳で猫のようにしなやか
中年男はおもむろに女のポートレートを差し出した
うっ、意外と地味なタイプ どこにでもいそうだ
「あんた、だまされてたんだよ」とつぶやきながら、煙草に火をつけた
きっといい女だったんだろう
この男にとっては――と思って苦笑した
次のお題は 「海岸」「貝殻」「犬」
624 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/15 21:32
「カレー」「扇子」「火傷」
カレー大魔神の屋敷の端には召使のサムが住む小屋がある。
カレー大魔神は、毎日毎晩カレーをすすり、世界中のカレーの
味を吟味し、本物に近い味を出すことに腐心しているのだ。
本物のカレーはどんな味か。それは大魔神が子供の頃、まだ
小魔人だったころに味わったカレーの味が一番近いだろう。
カレー粉を煉るうちにあらわれるカレーの精。
彼が扇子でひと煽ぎすると、黄色い香りのむこうにはサムの笑顔が
現れた。サムは何者か。「俺はしがない薬売りですぜ、だんな」
サムの腕の中には火傷したアンモナイトがうずくまる。
「もう十分ですぜ、だんなさん」サムは大魔神に哀願するように微笑む。
カレー大魔神はアンモナイトとサムを従えインドの路上で「猫屋」になった。
もうカレーの心配も世界のカレーの風向きも気にせず、猫をなでて暮らすばかりだ。
次は 「海岸」「貝殻」「犬」で。
625 :
「海岸」「貝殻」「犬」:03/11/15 22:25
空は暗く、風は冷たい。
ならせめて、星星が瞬いていてもいいのだけれど、あいにく空は雲
に覆われていて、ただ黒い。
そんな中、私は犬に引っ張られながら、海岸沿いを歩いていた。
――たまにはあなたが連れて行きなさい。
母は言うと、我が愛しのポチと、リードを手渡してきた。
だからしかたなく、私はこうして寒空の下ポチと共に、寒風吹き止
まぬこの道をあるいているのだけれど。
しかしこれでは、まるで犬がリードを引いて私の散歩をしているよ
うだ。……あれ?なにやら手が軽い。私は恐る恐る、リードの先に目
を向けた。
「うそ……」
リードの先が千切れていた。嬉しそうに走るポチの姿が見える。
て言うか、なぜ気付かん。私。
いやいや、自分に突っ込んでる場合ではない。いま、やる事は一
つだ。
「ポチ!」
私がそう怒鳴るとポチは一瞬振り向き、首をかしげた。
「お座り」
かんぱついれずに言うと、ポチはすっと腰をおした。
私はいそいでポチの下へと走っていく。
私が目の前に立つと、ポチは喜ばしそうに尻尾をふった。
626 :
「海岸」「貝殻」「犬」:03/11/15 22:59
寒いなあ。私は相変らず海沿いの道を歩いていた。
少し先をポチが歩く。
その首には首輪だけで、リードはない。どうしても首輪につけなおすこ
とが出来なかったためだ。
それにしても寒い。どうにか体を温めなければ。思い、私は近くの自動
販売機まで向かった。
確か、財布にはギリギリ百二十円入っていたはずだ。
私は何を買おうか心踊らせながら財布を開き、お金を取り出す。
百円、十円。私はもう一枚の十円玉を取り出そうと、財布に指を入れる。
「……えっ?」
何故。私の指が触れた物は十円玉ではなかった。何か貝のようなもの。
「しじみ……?」
財布の中には十円玉のかわりにしじみの貝殻が入っていた。
冷たい風が私をなでる。
次のお題は「部屋」「月」「玩具」で
彼は暗い部屋の中にいた。
その部屋は彼の大きな家の中では小さな部屋にすぎなかった。
しかし、毎日が孤独で退屈な彼にとっては、安らぎと暇つぶしを与えてくれる大切な部屋のうちの一つだった。
部屋には大小様々な形のつぶが浮かんでいた。
目に見えない霧の様な小さいつぶもあれば、中にはテニスボールくらいのつぶもあった。
あちこち動き回るつぶもいたし、凍っているつぶや、燃えているつぶもあった。
彼は目をとじるだけで高性能な顕微鏡のように詳しくつぶ達を眺めることができた。
彼が念じればつぶ達を操作することさえできた。
彼はいつもそこでつぶ達を眺めたりいじったりして時を過ごした。
ある日、彼はつぶを眺めている時にくしゃみをした。
その勢いである青いつぶの周りを回っていた小さいつぶが青いつぶにぶつかってしまった。
その二つのつぶが壊れたのを見て、彼は少し残念だった。
しかし、彼にとってはたかが二つの玩具を失っただけにすぎなかった…
その日、月が地球にぶつかったせいで僕らはみんな死んでしまった。
次の題は、「人生」「ミュージアム」「遅刻」でお願いします。
628 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/16 00:27
629 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/16 00:41
「海岸」「貝殻」「犬」「部屋」「月」「玩具」
海岸を歩く。少し泣きながら。
でも、振り返った時には子犬のように無邪気に笑って見せた。
今日のわたしは人魚姫。貝殻の水着がその証。自分にそう言い聞かせる。
会心の笑顔にも先生はけわしい顔だ。九月の沖縄はもう三日晴れ間なし。そう、わたしは雨女だ。
自覚はある。昨日ホテルの部屋で作った照る照る坊主にはしっかり雨合羽を着せてやった。
「そろそろ、上、外そうか」
先生の無慈悲な声が飛んでくる。彼の中ではすでに決定事項のようだ。
わたしから視線を逸らしたマネージャーの姿が、わたしの苦しい立場を物語っている。
脳裏に浮かんだのは無表情な父の顔。
わたしはあなたの玩具にはならない。そう言って家を飛び出したのはいつのことだったか。
貝殻は簡単に砂の上に落ちた。紐を引っ張ればいいだけのことだった。
重複御免。お題は
>>672で。
630 :
名無し物書き@推敲中?:03/11/16 00:42
631 :
「人生」「ミュージアム」「遅刻」:03/11/16 03:14
地下鉄の窓を鏡代わりに使いながらピアスを付けた。
毎週、早朝会議の日は朝食を取る時間がない。あわてて口紅を引き、駅に走るだ
けで精一杯。地下鉄の中で過ごす三十分の間に、ピアスを付け、書類を見直し、
ウォールストリートジャーナルの一面に目を通す。今日は五分寝過ごして、一本
遅い地下鉄に乗った。会議に遅刻をすれば、まる一日、シニアアドバイザーと意
地の悪い彼の秘書の一言一言にびくびくして過ごさなければならないだろう。秘
書の凝った細工のセルフレームの眼鏡が目に浮かぶと、空きっ腹がきりきり痛ん
だ。途中の駅に止まった地下鉄の車内に、突然アナウンスが流れた。
「この電車はこれ以上先へ行きません。全員下車してください」悪態をついて流
れ出る人にもまれて階段を上りながら、キャブに飛び乗ればまだ間に合う、と私
は思った。ここから通りをまっすぐ下るだけだ。地上に出ると、車は絶望的に渋
滞していた。いや、歩道の人間さえも立ち止まって前方を見上げている。反射的
に振り返ると、あと十五分で会議が始まるはずの私の職場に飛行機が突っ込んで
いた。人生は不可思議なものだ。あの秘書のものだった変形したセルフレームは
今、ミュージアム・ピースになっている。
次のお題は「コーヒー代」「出す」「女」
子供の頃やるなと言われたのを我慢できず、皿を円盤投げのようにして投げた
事がある。がしゃんと大きな音がして割れた。これを聞いた母がさっと私に寄って
来て、腕を掴むと外に放った。追い出すと母は戸の鍵を閉め、大声でやっては
いけないと言ったでしょうと言って、父が帰ってくるまで私を家に入れなかった。
父の後について入ると、割れた皿は綺麗に無くなっていた。投げたのは初めて
だったから割れた皿は自然に無くなるのだと思い、その後も度々投げた。やる度に
締め出されたが、家に入る頃には皿はいつも姿を消した。母はそういう女だった。
今となっては母に当時の厳しさを見ることはない。子供心にただただ冷たい人だ
と思って育ったが、母が歳を取って弱ると次第に優しさが見えてきた。或いは私が
歳をとったからなのか、今は暖かさしか感ぜられない。
「あぁ、コーヒー代ぐらい私が払うわよ」
一人暮らしを始めてもう十年になるが、今もこうして喫茶店で母と会う。最近は
はやく結婚しろと煩い。そろそろ私も結婚を考えた方がいい歳なのだ。
「アンタも、早くいい人見つけなさいね」
とても、暖かい言葉だと思った。
題書いてなかった、ごめんなさい。次は「紅玉」「七夕」「サザンクロス」
634 :
「紅玉」「七夕」「サザンクロス」:03/11/16 04:45
「今年こそたくさん紅玉のジャムが作れるよね」
結花が嬉しそうに呟いた言葉は闇とボンボリがせめぎ合う屋台の隙間に消えていく。
彼女を病床から、七夕祭りに誘い出したのは私だ。
要安静、と医者から念を押されてはいるものの、日々意気消沈していく結花は見ていられなかった。
それに約束だった、今年こそ一緒に七夕祝おう、って。
看護婦である私は結花の主治医に頼み込んで、七夕祭りの外出を許してもらったのだった。
毎年毎年ベッドで見上げるしかなかった窓越しの四角い夜空はどんなに狭かったことだろう。
治るかもわからない僅かな希望と治らないかもしれない大きな不安に苛まれる毎日…それは心も風前の灯火のようにしぼんでいくだろう。
結花は入院する前、私に語ってくれたことがある。
入院前は毎晩星座早見盤で欠かさず夜空を見上げていたこと、南の島でしか見れないサザンクロスを見るという夢、病院はあまりに夜空が小さいこと…。
「そうね、結花ちゃん。冬ごろにはきっと退院できるわよ。」
「ね、お姉さん。結花が退院したら一緒に南の島行こうよ。一緒にサザンクロス見るの!」
「ふふ、ありがとう結花ちゃん。きっと退院出来るわ…」
私は遥か南のサザンクロスにそっと願いを懸けた。
結花ちゃんが元気に退院できますように…。
ミスった…後半初めの
結花は入院する前、私に語ってくれたことがある。
→
結花はベッドの上で、私に語ってくれたことがある。
m(_ _)m
あと次のお題は「早朝」「寝ぼけた」「大失敗」で。
つーか次スレ立てなきゃ。
638 :
「早朝」「寝ぼけた」「大失敗」:03/11/18 00:46
油でなでつけた薄い頭が風によって乱れてしまった早朝
イライラしながら電車に飛び乗ると、これまた大混雑
ハッ、誰かが黒いスカートの子の尻をなでてる
「痴漢はよくないな」田村正和風に言ってみた
「うっせーよ、禿げ」と振り返った女はオカマだった
「ばっかじゃねーの、あたしたち、遊んでただけだし」
電車を降りてから会社まで7分もある、バーコードが乱れてしまって、つるっぱげが寒い
大失敗の朝だった
次は「猫」「虐待」「いじめ」で
緑の茸を盗んだ。それは誰も見たことも無い神秘的な斑点のある茸で、とてもじゃないけど
人間の食欲を駆り立てる要素は皆無に等しい。
「あの泥棒猫め、絶対に許さないぞ」、スタンガンを片手に男が息を荒げてそう云って手元
を光らせたのは確認していた。
あの憎らしい男から茸を奪い取ることができたが、正直心中穏やかではなかった。本能に身
を任せることしかできない、どうしようもない衝動を否定する術なんて存在しない。別に茸なん
て欲しいと思わなかった。脳からの信号だけ、それだけでくすねた。
それはあの男にも当てはまる、と思った。スーパーのゴミ置き場のダンボールよりも無造作
に積重ねられた痣が訴える復讐せいでもない、ただ単に本能、いや、衝動を吐いただけ。
大事にしている茸をあいつの手元から消去することは、虐待をされた私の痛みよりも酷いのか
もしれない、背中に無数と植えつけられた鉛の跡を思い浮かべながら私はそう浮かべみた。私
は新品の鉛筆で背中に何度も数字の1を書かれた。普通の鉛筆なのに赤鉛筆になるなぁこりゃ
あ、あの男の言葉を覚えているくらいの恐怖だったのに、あの男を思いやる。可笑いとも、イカれ
ているとも思わない。
なぜなら弱い立場だと自覚した時点で、いじめられてい自分を成立させてしまうからだ。いじめら
れてはいない。弱者はあの男なんだ。茸が無くてしどろもどろのあの男の姿を想像して、背中の
傷から赤ん坊が生まれるのかと思った。私はいじめられてはいないのだ。
次は、「プロ野球」「廃墟」「CD」でお願いします。
>>639 【訂正】
(11行目)
私はそう浮かべみた。
↓
思った。
シャカシャカシャカシャカ……♪
音漏れの酷いヘッドフォンを耳に当て、ポータブルCDプレイヤーから流れる音楽に絆される。
彼が今寝っ転がっているここは、一部の仲間しかしらない廃墟。工事中のままもう十年手をつけられていない。
「あっ…!! こ、ここにいたんか…おめえこんな日になにやってんだ!?」
友達だ。肩で息してる。なんか必死だ。
「今日からプロ野球選手だってのによー…先生ビビってたぞ、すげえ報道陣の数だって」
甲子園でちょこっと優勝しただけでこんなに注目されるとは夢にも思っていなかった。彼は。
このまま生きていきたいと思っていた。