【2次】漫画SS総合スレへようこそpart36【創作】
1 :
作者の都合により名無しです:
2 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 21:08:00 ID:Z1DQsb2U0
3 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 21:09:03 ID:Z1DQsb2U0
>1様
お疲れ様です。
バキスレも36、SSも実生活も頑張ろう
5 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 21:14:50 ID:Z1DQsb2U0
スレ立て初めてしたんで、間違ってたらごめんなさい
>ふらーりさん
アーネの少女っぽさに萌えました。
強敵倒した後の爽快感と終わりに近いせつなさがよく出てました。
>鬼と人ノワルツ作者さん
バキ、全快!ですね。カマキリ相手の死闘楽しみにしてます。
本当に連載してくれてよかったー。
>サマサさん
書き出しの妄想と、最後のメンバーのがっかり感が面白い。
本編、ますます期待してます。
>前スレ495さん
ドラえもんと魔法少女のコラボですか?読みたいです。
でも反則級の強さのパーティですねw
6 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 21:20:27 ID:SIR2sszE0
ネギま!とパタリロ!のクロスオーバーSSがみたい。
ローゼンメイデンのSSよみたいお
8 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 21:43:39 ID:0kSLi4ja0
1さんお疲れです。
カマキリとバキのSSに期待してます。鬼と人のワルツね。
やっぱり原作ではグダグダのまま終わったから…
あと、魔法少女とドラえもんのコラボ書こうかなって人、
ぜひお願いします。これはマジで楽しそうな題材だ。
9 :
聖少女風流記:2006/03/18(土) 00:13:28 ID:loVkxCqq0
第十二話 決戦前の空白
少し実も蓋もない事を書く。
小説や戯曲などでジャンヌ・ダルクが語られる時、このオルレアン解放の戦いは
彼女の物語のクライマックス的な役割を担っている。
実際に、この戦いは百年戦争の歴史的転換点であり、また彼女の短い人生の中でも
最高の華といえる華麗なる戦争として語られている。
が、現実はやはり世知辛いものだ。
現在の研究において、この戦いにおけるジャンヌの存在とその効力は、
「いてもいなくても大勢に影響はなかっただろう」が一般的であるらしい。
このオルレアンの戦いには当時のフランス最高の指揮官や将軍が集まっていた。
つまり、フランスの全てを賭けた総力戦である。
その時代の帰趨を賭けた戦いを、どうして20歳前の素人の少女に託せよう。
歴史とはリアルの積み重ねである。そこに寓話は存在しない。
だが、一介の少女がフランスの為に立ち上がり、彼女を慕い多くの人間が集まったのも
また歴史のリアルのうちの一つである。
たとえいくさ場で役に立たず、ただマスコットガールとして立ち尽くしているだけでも、
命懸けで戦場に立ち、その姿に人々が熱狂したのも史実である。
英雄は数々の逸話により装飾され、人以上の存在として語られがちである。
が、当時の人々を熱狂させたのは、ただの貧しい少女が、フランスの現状を憂いて
微力ながら前線に赴いた、その姿そのものであるのではないだろうか。
自分の中のイメージでは、ジャンヌは聖女でなく、ただの少女である。
そして慶次ならば、英雄でも聖女でもない、弱さ醜さをその心のうちに潜ませる
ありのままの少女だから愛するのではないだろうか。
物語は決戦地、オルレアンの東の門、「ブルゴーニュ門」から再開される。
10 :
聖少女風流記:2006/03/18(土) 00:14:30 ID:loVkxCqq0
ジャンヌたちは熱狂を持ってオルレアンの街の人々から迎えられた。
元々、この地はフランスのものであり、自分たちをイギリスから開放させる為に
やってきたフランス軍は迎えられて当然ではあるが、熱狂の度合いがケタ外れであった。
理由は勿論、ジャンヌ・ダルクである。既に、勇名はオルレアンまで馳せていた。
聖女として、英雄として、そしてイギリスから開放してくれる救いの御子として、
彼女への期待が崇拝の域まで達していたと言っていい。
それまでのフランス軍は、イギリスの前に連戦連敗であった。市民は絶望の淵にあった。
その時、「聖女」と称される見目麗しい救世主が現れる。熱狂するなという方が無理だろう。
入街の時、ジャンヌは白馬に跨り、シャルルより拝領した白銀の鎧を身に纏い、
美しい髪を強調するかのように兜を被らず、解放を象徴する旗を高く掲げて現れた。
百戦錬磨の剣士の頑強さと、神々しいまでの美しさを演出するような登場である。
「あ、あの、恥ずかしいんですけど、私」
ジャンヌは声援に照れながら微笑を返す。遠目に分からないが、顔は真っ赤になっている。
「これくらいでちょうど良いのだ。市民を味方に付けておけば、長期戦になれば勝てる」
ぶっきらぼうに無骨な男が言った。ジャンヌの馬の真横に自分の馬を並走させ、
しかめっ面のまま正面を見据えている。
「俺も派手が好みだがね。しかし、あんたの顔がこの入城をぶち壊しにするな」
慶次が不機嫌そうに言った。ベルトランとジヤンが慌てて慶次を咎めようとする。
「まったく、せっかくジャンヌ殿が旗持ちまでしてるのに。辛気臭くてかなわないな」
慶次はどこ吹く風で平然とのたまった。
この男にとっては、相手の身分はどうでもいいのだ。好きか嫌いか、それだけである。
男が慶次の方を見る。慶次に向かって、低い声でやんわりと言った。
「慶次殿、と申されたな。この戦いにおいて、責任者は私とジャンヌ殿。
指示には従ってもらいます。私の方が、この地にも詳しい」
慶次は無視してプカリ、とキセルを吹かした。そして事も無げに言った。
「敵が出たら戦うまでです。城があれば落とすのみ」
11 :
聖少女風流記:2006/03/18(土) 00:16:36 ID:loVkxCqq0
ベルトランはため息をついた。この男に遠慮はないのか。
相手は、フランスオルレアン軍の隊長である。
名をジル・ドレといい、フランスでも屈指の名士であり、名将軍であり戦術家でもある。
当然、ベルトランのような準騎士とは身分が違う。
本来なら、近くで馬を乗る事すら許されない相手なのだ。が、慶次はこう言った。
「なるほどね。あの男がこの地の大名だから、城を落とせないのか」
慶次は一目で相手の力量を見抜く力がある。それもいくさに関する事なら100%当たる。
慶次は、このドン・レミを信用してはいない。ベルトランはハラハラと様子を見ていた。
ドン・レミが慶次に何か言おうとした。が、慶次は機先を制し、ひょいと物を投げつけた。
旗であった。いつの間にかジャンヌから旗を奪って、それを投げつけたのだ。
ドン・レミの顔に旗が当たり、彼の顔色が一瞬に変わる。が、慶次。
「これから2人で重大な作戦を練ります。ジャンヌ殿を、お借りしますぞ」
松風とジャンヌの白馬が駆け出した。ドン・レミは呆気に取られてその場に残された。
12 :
聖少女風流記:2006/03/18(土) 00:18:15 ID:loVkxCqq0
「さ、この辺でいいでしょう。あの無粋な男は、ベルトランたちに任せればいい」
街を少し離れ、小高い丘の上で慶次とジャンヌは腰を下ろした。
「あ、あれ、松風さんが、どっかに行っちゃいますよ?」
ジャンヌが慌てて松風と、松風について行く白馬を呼び戻そうとする。慶次は笑った。
「松風は頭がいいからね。きっと、気を利かせてくれたんでしょう」
ジャンヌが少しはにかむ。そのまま、お互い何も言わないまま数分が過ぎた。
「怖いですか」
唐突に慶次が言った。ジャンヌの体がピクリ、と反応する。ジャンヌは応えた。
「少し。……ううん、すごく」
涙を浮かべていた。18歳の少女である。水晶のような涙が次々に溢れ出す。
「怖いのは、ひとつじゃないんです。あの声援に応えられるかどうか。
本当に、フランスを救えるかどうか。初めての戦争で、生き延びれるかどうか。
自分が、戦場で役に立つかどうか。それに怖いんですけど、現実感がないんです。
自分が、本当に戦争をするなんて」
慶次は黙って聞いていた。また、無言の時間が流れる。
「でも、今は怖くはありません。あなたが、横にいますから。 …いえ、きっと。
戦場でも、あなたが横にいてくれれば、きっと」
どれだけ時間が経ったのだろう。ただ、ぼうっとしているだけの時間。
それが妙に尊く感じる。 ……そして、こんな時間がもう来ないような予感もある。
ふと、慶次は街と、落とすべき敵の姿を見た。
13 :
聖少女風流記:2006/03/18(土) 00:18:47 ID:loVkxCqq0
この街は、人口2万人ほどの町である。当時としてはかなりの規模の街だ。
だがその街をぐるりと囲むように、不吉な砦が二重三重に、築かれている。
この砦こそが、オルレアンの市民を支配するイギリス軍の居城である。
その砦は堅固な石造りで、強引に入城しようとするものをまず高さで阻む。
石造りの砦は、向こうから橋を下ろさない限りは侵入しにくく、
梯子を掛けて一人ずつの侵入を強いられる。イギリスから見れば格好の的である。
だがそうしない限りは、あちらへは攻め込めない。
方法はひとつ。地上戦で有利に戦い、その勢いを持って相手の兵力を減らし
そのまま一気呵成に砦を攻め上る。つまり、地上での戦いが全ての鍵になる。
だが、一箇所砦を破っても、その奥にはさらに堅固な砦が待つ。
慶次は、合戦の華は平地での総力戦、と思っている。篭城攻めは少ない。
慶次にとって、篭城している相手を攻める事がどうしても好きになれないからだ。
が、今度の敵は篭城ではなく、いわば要塞である。
その高さと堅固さを利用して、今までフランス軍を虐殺してきた相手である。
得意ではなくとも、やらざるを得ない。なにより、ジャンヌの為に。
慶次は、いつもの言葉をジャンヌに囁いた。俺が、必ず守ってみせる、と。
第二の砦の奥に、獣の臭いが漂っていた。
数人の裸の女が、気を絶して倒れている。その真ん中に、怪物が目をギラつかせていた。
「こ、こんな腐った、お、女どもじゃ、ま、満足出来ん」
怪物の目が凶暴に輝く。ワインを立て続けに数杯飲み干すと、太い息を吐いた。
「ま、待っておれ、ジ、ジャンヌ。こ、この呂布奉先の、つ、妻となる女よ」
14 :
ハイデッ子:2006/03/18(土) 00:21:02 ID:loVkxCqq0
ごきげんよう、皆様。
このたび、ミドリさまのプティ・スールにさせて頂きましたハイデッ子です。
ミドリお姉さまをびっくりさせようと思い、この場での急な発表ですが、
きっとお優しいお姉さまの事、チンコ付でもかわいい妹が出来たと、
健やかに笑って許して頂けるでしょう。
ちなみにごきげんよう、とは私たち上流階級のお嬢様の、便利なご挨拶言葉です。
皆様方、奴隷階級の愚民どもに使用例を優しく紹介いたしますと、
「おはよう」もごきげんよう、「さようなら」もごきげんよう、
「退かぬ媚びぬ省みぬ」もごきげんよう、「足元がお留守ですよ」もごきげんよう、
「おじさんショートで3万ね」もごきげんようで通ります。
私は清廉なお姉さまと違い、妹の友達喰っちゃったり、警察に指紋取られたり
挙句の果ては男とやっちゃったりした薄汚れたチンコ付きですが、
これからはお姉さまを見習い、清く正しく美しく生きて行きたいと思います。
貧乏人の皆様方、これからもミドリお姉さまとハイデッ子を宜しくお願い致します。
では、ごきげんよう。
ミドリさん、すいませんでしたああああああああああああああ!!!!!!!!!
しょうもない事を思いつくとどうしても書きたくなる病気なんですう。
「虹のかなた」の続き期待しております。
いずれ味方はいなくなるな…
旦那、相変わらず本編と後書きでキャラ違いますねw
「花の慶次」だと籠城戦の経験あった彼ですが、逆に攻城戦は経験少なげ
しかも相手は未曾有の籠城をやってのけた魔人呂布奉先
そして味方は不協和音
果たして史実通りいくのでしょうか?楽しみにしております
味方なんかいるわけないだろカス
>>ハイデッカ
何言ってもいいけど他の職人さんを貶める形でネタにするのだけはやめてくれ
なんだよぉ〜性転換?
ミドリの処女を奪うのはアンタだと信じていたのに…。
>妹の友達喰っちゃったり、警察に指紋取られたり
>挙句の果ては男とやっちゃったりした
どんな人生歩んでんだ、あんたww
part.1
白羊宮、聖域黄金十二宮最初の宮であり、教皇となる前のシオンが治めていた宮である。
かつての自宮に攻め入る事になろうとは、とシオンは自嘲した。
「シオンよ…
儂は悲しいぞ…
お前ほどの漢が、偽りの若さに目が眩み、ハーデスの軍門に下ろうとは…」
老いた武友(とも)、今や名実ともに老師として通る童虎の言葉に、
シオンはあらかじめ容易しておいた建前を叩き付けるだけだ。
童虎が最大の難関である。と、十二宮に攻め入る前、偽りの冥闘士として甦った黄金聖闘士に説明した。
13年前、ヒヨッコでしか無かった彼らは、その命を燃やして戦い抜いた漢となっていた。
その変遷に不思議な感情を抱いたものの、シオンは表向き、かつての教皇としての
傲然とした面持ちを崩さずにいた。
今は唯の老人ではないか、とデスマスクが異議を立てたが、
「デスマスク、貴様は私を斃す自信はあるのか?」
との言葉の前に、彼は沈黙せざるをえなかった。
前聖戦から下って243年、その激動の時代を生き抜いたシオンも童虎も、老いたとて一筋縄でいく相手ではない。
斃すには余程の手段を講じて隙を作らねばならないだろう。事実、シオンがサガに討ち取られたのは、
サガの変異に気を取られてしまったからに他ならない。シオンとて、常在座臥戦場を心得る戦人だったのだから。
己の後継と考え、眼をかけていた少年がいきなりそのような姿になろうものなら、隙ともなる。
童虎とは、老師として長らく後進の指導にあたり、その陰で他勢力相手に政争を繰り広げてきた男である。
しかも、その脳髄は老いに侵されてはいない、
つまり、彼の生涯の年輪は、若輩には思いもよらない手段に繋がり、武器となるのである。
熟達した戦士とは、それほどまでに恐ろしい存在なのだ。
若き日の童虎、その血気と若さにまかせた猪武者の面影は全くない、
今や年齢に相応しい奸智を持ち合わせた百戦錬磨の士だ。
挑発には乗らないだろうし、情感に訴える事など無意味だろう。
「故に、私が押さえる
その間にアテナの元へと急ぐのだ。」
教皇であったころ、敵対勢力にみせた、かつての冷徹な笑みを甦らせ、シオンは宣言する。
「十二宮を踏破したのも五人、今ここにいるのも五人
簡単な計算だろう?」
いかに年齢不相応の重厚さをもつ黄金聖闘士と言えど、血気盛んな若衆たちだ、
この手の、誇りをくすぐるような煽りに反応しないわけがない。
地上最強の12人の黄金聖闘士、唯一人でもこの世をひっくり返すことはできる。
己の思うままに力をふるえば、この世を、まるで紙くずのようにたたき壊す事が出来る。
そう確信する彼らの、一度傷ついた最強という誇りをこうしてくすぐってやれば、
簡単にシオンの望み通りの反応してくれる。
人の心というのは、快・不快とそれから派生する喜怒哀楽に大きく左右される。
マインドコントロールという人心操作術によると、人間は、行動、思想、環境の三つの内、
一つでも制圧されてしまうと、制圧した側に従ってしまうのだという。
そこまで極端ではないにせよ、人の上に立ってきた人間というのは、
命令する、支配するコツというものをつかんでいる。
この手の言に反応しないは、それこそ同じように上に立ってきた経験のある者。
すなわち…。
「指揮は、サガ、お前が取るのだ」
彼、サガである。
サガは一瞬驚いた顔をした後、神妙にうなずいた。
その反応は、シオンを満足させるものであったが、表情には出さず、シオンは最後の演説をする。
「小僧共、これから我らは鬼畜生と蔑まれねばならん。
生前築き上げてきた名声を、経歴を、捨て去らねばならん。
墓標から名が削りとられ、聖域史から我らの名が喪われる事にもなるだろう。
愛弟子たちにも辛い目を強いる事になるだろう。
だが、それでも、我らは進まねばならん。
思い返せ、我らがあえてこの不浄の冥衣をまとった意味を。
思い返せ、我らが冥府で味わった苦痛を。
思い返せ、我らの先達が必死で守ったこの地上を。
思い返せ、我らが黄金の魂を!小宇宙を!
それらはすべて…」
ぐっと、力強く、シオンは右拳を掲げる。
「この地上の、愛と正義の為に!」
アフロディーテも、カミュも、サガも、シュラも、デスマスクも、右拳を掲げ、シオンに続く。
「この地上の、愛と正義の為に!」
アフロディーテが闘うのは美しい地上を守りたいためだ。
カミュが闘うのは己の信念を全うしたいために。
サガが闘うのは、はぬぐい切れぬ汚名を再びかぶるためだ
シュラが闘うのは顔も知らぬ誰かの為だ。
デスマスクが闘うのは、イタリア人が命を張るのは女と己の名誉の為という至極単純な理由だ。
そしてシオンは、果たせなかった教皇の責務を果たす為。
彼らは再び、大地に帰ってきたのである。
故に、シオンは、戦友と殺し合う事など、覚悟の上であった。
必要とならばねじ伏せてでも、斃してでも進む。その覚悟の上であった。
長いので何回かに分けます。
花粉症にはつらい季節です
第9話 チーム=カーボン
時刻は午後3時。鞍馬達は道場の中で相良宗介を混ぜて車座で座っていた。
「するってぇと・・・びんを支援してくれる人に誰かが脅迫状を送ったわけだな?」
「肯定だ。“びんちょうタン”を今日の夜午後9時に誘拐すると言っている。」
「そして君が来たわけか。」
鞍馬と宗介の会話に泉宗一郎が割り込んだ。亀の甲より年の功という言葉がある。
長い間武術家として生きて来て誰かが人質に取られた状況で闘った事があるのかも知れない。
泉宗一郎は冷静で落ち着いていた。
「ウバメガさん・・・」
びんが呟いた。懐かしい人を思い出しているかのような表情を浮かべている。ウバメガという男の顔を
覚えているかどうかは定かではないが会った事はあるらしい。
「愉快犯の可能性もある。とにかく犯人から“びんちょうタン”を守る事が俺の任務だ。」
宗介は事務的な口調で言い切った。装備はといえばまるで戦争をするかのように数多くある。
勿論実弾が篭められている。得物では無く兵器。一度火を吹けば甚大な被害が出る。
「今疑問に思ったんだが・・あそこに寝てる奴はお前の仲間なのか?」
鞍馬が質問した。もしそうであるなら目の前にいる相良宗介という男は危険である。似たような軍服を
来ているし何よりここに訪れた目的も似ている。共通点が数多くあるのだ。
「いや知らない男だ。他の組織が“びんちょうタン”を保護しようとしたのかもしれない。」
「そうか・・・俺は喧嘩売っただけなのかもな・・。」
鞍馬には思う所があった。ギリアムは誘拐犯からびんを保護する為に来たのかもしれない。
自分はギリアムという男を誤解してしまったのではないか。だとしたらとんだ道化だ。即戦力になる
人間を撃破してしまった事になる。
「保護すれば“びんちょうタン”は軍部が引き取る事になる。安全は保障され生命の危機に晒される
可能性は低くなる。」
「なぁ・・・万が一の事を考えて逃げた方がいいんじゃないのか。」
今まで黙っていた久我重明が口を出した。ある意味正論である。スペシャリストである宗介以外は
皆一般人である。厳密に言うとびん以外は格闘家なのだが無手が兵器に対抗する手段は非常に少ない。
命あっての物種という見方もあるのだ。
「身代金目当ての犯罪予告という線もある。何より組織なのか個人なのかわからないが・・・今俺の
組織の鑑識が相手を洗っている。」
「相手がわかっても何処から攻撃してくるかわからないってのはつらいな。」
丹波がぼやいた。戦略的に考えて相手が何者なのかを知っても対策を建てなければどうにもならない。
「ただ奇妙な所は“びんちょうタン”を誘拐すると言って置きながら現れる場所を指定していない。
可能性は低いが・・・陽動かも知れない。」
「ダミーか。こちらの注意を引きつけておいて別動隊が仕事をするんだな。」
鞍馬は珍しく知恵を働かせていた。推理小説の様に怪盗が警察に挑戦状を送る場合と似ている。
つまりだ。犯人は“びんちょうタン”がウバメガ氏と一緒に暮らしていると思っている可能性がある。
びんが一人暮らしであると知っているなら誘拐した後に身代金の要求をするだろう。
しかし知らない場合はウバメガ氏に危険が迫る可能性もある。
「泉さん、最近ここいらで不審な人物を見かけませんでしたか?」
「見てはいないが・・・“オーク氏”の豪邸の近くで不審な人物が見受けられたから注意しろという
知らせはあったな。」
「オーク氏か。かつてミスリルが彼の護衛を引き受けた時がある。彼に娘がいるとその時聞いたが・・・・」
宗介の頭の中には一つの仮説があった。だがそれはあくまで仮説でしかない。証拠や判断材料が少なすぎる。
物好きが屋敷の周りにいただけなのかも知れない。
「泉さん。この屋敷の間取り図を見せて頂きたい。」
宗介が泉宗一郎にこう言った背景には理由がある。具体的にどこをびんの居場所にするかという事。相手が侵入
してくる可能性が高い場所にブービートラップを仕掛ける。これは基本だ。窓、裏口、入り口、縁側、
日本の家屋には外が覗ける場所が沢山ある。本来誰かを誘拐する場合は速やかに目立たず行うべきなのだ。
足も付きにくいし痕跡は残らない方がいいのだ。
「宗介といったか。俺らは身を護る為には闘わなきゃいけないが・・・相手が銃弾持ってたらやばいぜ。」
「問題ない。その為の装備を持ってきた。」
宗介は自分が持ってきたバッグを開けると明るい色の物体を取り出した。それはテーマパークのマスコットの
気ぐるみの様な物だった。色は灰色で頭部が熊の様な形をしている。
「梶原とやった時の事を思い出すぜ・・・」
丹波がニヤリとして手に取る。意外にも彼はデザインを気に入ったらしい。
「これは頑丈な繊維で作られていてマシンガンの銃弾をも通さない。離れればショットガンの玉も
受け止める事が可能だ。」
宗介が解説を続ける。びんにもサイズが小さい同じモノが与えられた。
「あのー、そこの寝てる奴も似たようなモノ着てたんだが・・・。ホラそこにある黒いの。」
鞍馬が指差した先には“ゲシュペンスト”とギリアムが呼んでいた黒いスーツが転がっていた。
無造作に置かれたスーツはまるでゴミの様に見えた。
「まぁ得物持ってるわけじゃねぇしこういうのも悪くねぇな。」
闇の空手家・久我重明はほくそ笑んだ。壊し屋とも呼ばれているこの男が笑うという事は
久我重明はこれから来る闘いに期待しているのかも知れない。
「一般人には逃げて貰いたいが・・ここは泉氏の屋敷だ。逃げたとしても家は破壊されるかもしれない。
そこでだ。即席で作るが部隊名を決めたい。基本的に団体行動だ。だが固まる必要は無い。危険を感じたら
バラバラに逃げてもらっても構わない。理想は二人ずつだ。危険な状況下では一人では非常に困難だが
協力相手が居れば生存の可能性はある。」
不意に音が鳴った。宗介の懐からピピピと音がなる。発信源は携帯電話だった。
「こちらウルズ7。どうぞ。」
「あーこちらウルズ2。敵に新しい動きがあった。“びんちょうタン”とオーク氏の娘、
“クヌギたん”を攫うという通報があったらしい。もっともオーク氏の方に電話が来たらしいが。
こちらがオーク氏の屋敷に向かう。」
「了解。こちらは“びんちょうタン”との接触に成功した。引き続き護衛任務を続ける。」
無線を切ると宗介は泉宗一郎が持ってきた家の間取り図に目を通した。薄い紙に間取り図を写し取り
赤ペンで印をつける。どうやら印の所がトラップを仕掛ける所らしい。
「あの・・この人どうします?」
びんがギリアムの傍に立っていた。皆が“ボン太君”を着ている中ギリアムだけは私服姿で気絶している。
「捕虜は不戦宣誓をさせて解放するか、あるいは連れて行くかだ。そいつに水をかけて起こせ。」
相介が命令するとびんは言われた通りに傍にあったヤカンの水をギリアムの顔にかけた。
「う・・・」
呻き声と共にギリアムは目覚めた。彼の腕には包帯が巻いてあり応急処置がされていた。泉宗一郎が
巻いたものだ。打撃だけでなく関節技の専門家でもある泉にとっては骨折の応急処置など朝飯前である。
「ここは・・どこだ・・・。」
「泉さんの道場だ。」
鞍馬が返答した。数時間前、鞍馬はギリアムに勝っている。
「敵は!?」
「まぁ落ち着け。今は誰も襲っては来ないよ。ところでお前さんの事を詳しく聞かせてもらえないか。」
「俺の名はギリアム・イェーガー。“ゼウス”からのエージェントだ。“びんちょうタン”を保護せよという命令だ。」
「そうか・・悪かった。正直あまりにも唐突過ぎたんでな。“びんちょうタンは狙われている”と最初から言えば良かったんだ。
まぁ早とちりしてしまった俺も俺だが。」
「今から部隊名を決めたい・・名は・・“チーム カーボンだ。俺はカーボン1だ。鞍馬はカーボン2 びんちょうタンはカーボン3、
泉さんはカーボン4、久我さんはカーボン5、丹波さんはカーボン6だ。」
「その由来を教えてくれネェかな。」
「びんちょうタンを漢字にすると備長炭だからだ。」
「な・る・ほ・ど・・・。」
正直今回行き詰りました。鞍馬がアホっぽく見えてます。今回は薄っぺらいというか・・・
もう少し練るべきかなと思いながらも書いてました。びんちょうタン編が終われば
びんを主人公にしたサイドストーリーを描きたいと思っています。第9話終了です。
ではでは。
ハイデッカというとエストポリスを思い出す……
32 :
作者の都合により名無しです:2006/03/18(土) 19:35:44 ID:wEAgco9a0
>ハイデッカ(ある意味の尊敬を込めて呼び捨てにする)
そうか、ジャンヌダルクって歴史上ではただの人寄せパンダだったのか…
でも、このSSでは萌えかっこいいジャンヌを期待しております。
>銀杏丸さん(もうすぐ社会人ですなー頑張って)
この話は、今までの「黄金時代」の総決算的な話になりそうな気がします。
導入部最高。これからのシオンと童虎、サガとカノンの悲しい宿命を感じますね。
>フルメタル作者氏(もうびんちょうタンをコテにしたら?w)
内容薄いなんてとんでもない。楽しめました。鞍馬はこの位でちょうどいい感じ。
びんちゃん、えらい豪華なメンバーに守られて心強いですね。特に鞍馬はナイトだ。
ハイデッカの後書き読んでデスノートのAA
「だめだこいつ、早く何とかしないと」を張ろうかと本気で思ったw
>>30 鞍馬よりも久我さんがあまりに物わかり良いのに笑った
初対面の人間にいきなり「今殺せたぜ」とか言うぐらい物騒な方なのに
>黄金時代
数話に分かれるという事は、最終エピソード?
話もハーデス編の導入部だし、なんだかそれっぽい。
このSSはサイドストーリーや創作だけでなく、
原作に沿った描写に、銀杏丸さん独自の心理描写を
載せてくれる書き方が非常に大好きです。終わらないで。
>フルメタルウルブス!
ただのマスコットキャラかと思っていたびんちょうタンが、
まさか物語のキーキャラだとはw鞍馬主人公みたいだ。
個人的には久我さんの残虐ファイトに期待してます。
しかしこのSSでも見事に丹波は影が薄いな。原作でもだけどw
>ハイデッカ
市ね、ミドリさん汚すなカス
でもSSは好き ツンデレ?
やっぱキタかボン太君wwwwwww
>>34 俺もなんとなく黄金時代はもうすぐ終わりそうな気がする
黄金たちも一回り以上したし。好きな作品だから終わって欲しくないけどね。
この作品にはいい意味の安定感や安心感があって好きだ。予定調和的な感じの。
ただ、続いて欲しいより銀杏さんの新作を読みたいという気持ちのが強いな。
ハイデッカよ、現連載人の中でも3本の指に入るほど聖少女は好きだ。
が、後書きに凝るのもいいが、本編をまず頑張れ。
今回、前と同じような場面だぞ、慶次とジャンヌ。セリフも使い回しっぽい。
37 :
作者の都合により名無しです:2006/03/18(土) 23:48:03 ID:b238OfRE0
>銀杏丸さん
山羊座の人間として
>シュラが闘うのは顔も知らぬ誰かの為だ。
これはきました。すごくらしくていいです。
カミュ、サガ、そしてアフロがまたいい。
そしてデスマスクにワロタ。
ダイ大のその後の話書いてもいいかな?
二刀流って男女両方ともOK・・つまり両刀使いの意味だよな?
誤爆した。スマソ。
>>
ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1140526874/422-425 海水ずぶ濡れのD=アーネが、水着姿のまま街中を突っ走って突っ切って、石段を
駆け上がってボロ寺秘密基地に飛び込んできたのは、夕陽が沈みきる直前のことだった。
「みんな、聞いてくれっ! 陛下は助かるぞ! マリネラって国の王様が……」
犬1号を放り出しながら、喜色満面で言ったD=アーネだったが、空気の重さに
言葉を止めた。下っぱたちが、今にも泣き出しそうな顔で見つめてきている。
「? なんだ。どうしたんだみんな?」
「……D=アーネ様。いいですか、落ち着いて聞いて下さい」
「そ、その口ぶりはもしかして、また陛下の病状が悪化したって連絡でもあったのか?」
「はい。王宮医師の見立てでは、もってあと三日だとか。三日以内に地球ぐらいの
きれいな空気の中に移住しない限り、命はないと」
くらっ、とD=アーネは一瞬気絶しかける。
「だ、大丈夫だっ。マリネラって国が陛下を迎えてくれることになったんだ。
国王公認、国ぐるみでな。だからもう、何の心配もない。すぐ陛下に知らせるぞ!」
D=アーネは基地の奥、ヴァジュラム本国に繋がっている次元ゲートに向かって走った。
下っぱたちがまだ何か言ってるが、話は後だ。そこまで陛下の病状が悪化してると
なると、相当苦しんでおられるはず。助かることはもう確定しているが、急がねば。
基地(寺)の一番奥の部屋の、突き当りの壁が次元ゲートになっている。無数の絵の具を
無秩序に混ぜ、それが生き物のようにうねっているかのようなそのゲートを潜れば、
すぐにヴァジュラム本国に到着する仕掛けだ。
全力で駆けて来たD=アーネが、一直線にそこに飛び込む。すると、
「ぅぐわああああぁぁっっ!?」
凄まじい熱さと痛み、そして怒涛のような圧力に弾かれ、突き飛ばされて部屋に戻された。
危うくそのまま倒れそうになったが、体のあちこちから煙を立てつつ何とか踏ん張る。
「な、な、何だ? 何が起こった?」
混乱して次元ゲートを見つめるD=アーネ。慌てて追いかけてきた下っぱたちが、
「やっぱり……」という顔をしている。
「おいこら説明しろっ! 一体何なんだ、これは?」
「以前、パステリオンが張った地球結界ですよ。ほら、大僧正様が馘兵鬼(かくへいき)
を使った時に、あいつらが地球を丸ごと結界で包み込んだしょう?」
「あ、あの時の結界のせいで、地球から出られなくなっているっていうのか?」
「ついさっき、本国から詳しい分析結果が届いたんです。どうやらこの結界は、強い
魔力を持つものほど強い力で弾き返すようだと。援軍が来られなかったのもそのせいで」
「ちょっと待て! だったら私たち程度の魔力の弱い奴なら、問題なく通ることができる
はず。そうだろ? 実際、ついこないだまで私もお前たちもすいすい行き来できてた」
下っぱたちが、辛そうに答えた。
「……最近、D=アーネ様はご熱心に訓練されてましたよね。順調に魔力が上がっている、
そう仰ってましたよね」
「! そ、それじゃ……」
陛下を救う為、パステリオンを倒す為にと血の滲む思いで心身を痛めつけてきた、
その結果だと? そのせいで、今、陛下に会いに行けない、と?
いや、そもそもこの結界にそんな性質があるのなら、陛下自身が通れまい。つまり、
どうあがいても地球には来られないわけで。
「っ……と、とにかく、私は一度本国へ戻る」
「そ、そんな、無茶ですよ。今試されたでしょう? D=アーネ様はもう、
パステリオン公認の『阻むべき強敵』なんですよ。だったら結界を破れるはずが」
「うるさいっ!」
しがみついてくる下っぱたちを振りほどいて突き飛ばし、どくろステッキを振るって
戦闘用魔法装束を身に纏い、D=アーネは次元ゲートに飛び込んだ。
即座に、結界の抵抗力が襲いかかってきた。炎の蛇が首を締めつけ、電撃の蔓が脚に絡み、
強酸の津波が全身を蝕んでくるような……圧倒的無数の激痛が、D=アーネに食い込む。
これが全て、パステリオンの仕業だ。地球を守護する三人の女神が、邪悪な侵略者を
阻むために張った、聖なる光の結界。そのあまりにも強大な力が今、D=アーネの前に
立ちはだかっている。
「ぐ……く……うぅ…………あぅっっ!」
D=アーネは全身の魔力を振り絞って耐える。するとそれに呼応して、結界の抵抗力も
上がる。といって魔力を下げれば、また弾き出されてしまうだけだ。
強引に、力で一直線に突き破るしかない。だが、できるか? あの三人が張った結界を?
「へ、陛下のところに、行くんだ……邪魔を…………ジャマをするなああああぁぁっ!」
D=アーネの叫び声が、眩しくスパークし続ける結界の中に響き渡った。
D=アーネが希望から絶望へと突き落とされつつあった頃、地球のマリネラ宮殿にて。
執務室で、タマネギ1号が報告書類の束を見ながらパタリロに言った。
「あの日の昼、地球製とは思えない人型兵器が鉱山に現れたそうです。そして女の子
の声で宣戦布告のようなものを行ったと。殿下、もしかしてあのD=アーネって子は」
「だろうな、多分。ヴァジュラムとやらの尖兵だろう。だが安心しろ」
といってパタリロは、引き出しから一枚の写真を取り出して1号に見せた。着物姿の、
まるで人形のように楚々とした、そして艶やかな和風美少女が写っている。
「日本の、某巨大掲示板の漫画二次創作スレッドで知り合った子でな。時々メールや
写真のやり取りをしてる。で、この子から銀髪の魔法少女の話は聞いてたんだ」
「はあ」
「確かに物騒なことを言ってるが、根は素直で優しい子らしい。ヴァジュラムの
上層部はどうあれ、この子は信用できるそうだ。陛下とやらは約束通り来る
だろう。こちらの手の内にな。そうなれば、万一のことがあっても人質にできる」
「なるほど。で、この写真の子そのものが信用できるか否かは……」
言葉が消えた1号のこめかみに、コルトパイソンが押し当てられている。
「お前は雪奈ちゃんを疑う気か。そんなに六発込めロシアンルーレットをやりたいのか」
「それ全然ルーレットになってません、ではなくてその、し、信用します、はいっ」
こういう時のパタリロに逆らうと本当に命に関わるので、1号は大人しく頷いた。
後で軍部に連絡して、準備だけは整えておくよう指示することを誓いつつ。
「解ればいい。実は来週、オフで会う約束をしてるんだ。あ〜、待ち遠しいっ♪」
パタリロは知らない。マリネラ王家も相当なものだが、裾野家の一族もかなり
シャレにならん連中の集まりだということを。パステルブルーの実の親、裾野雪奈を
外見で判断してしまった彼の、後の悲劇はここでは語らないこととする。
ともあれ。もしこの時点で、ヴァジュラムが総攻撃をしかけてきたとしても、マリネラ
が日本やアメリカや世界各国と手を組んで戦えば、おそらく互角には渡り合えただろう。
宇宙怪獣や魔法戦士軍団が相手でもだ。小学生の魔女っ子戦隊なんぞに頼るまでもない。
だがそんな状況も、間もなく打ち破られる。地球人と地球の兵器が百倍に増えても、
千倍に増えても、ヴァジュラムには全く歯が立たないこととなってしまうのだ。
……パタリロに、マリネラに、心からの感謝を捧げた一人の少女の手によって。
次回完結。原作をご存知の方は、展開について沈黙を何卒よろしくお願い致します。
なお私の中ではパステリオン最終七人の可愛さランキング、一位二位がブルー二人
だったりして。裾野家は家族全員、好みです〜。あ、容姿のみならず性格もですぞ。
>>1さん
おつ華麗さまです! にしてもアーネに萌えて頂けたのは光栄至極。今なら
ブックオフの100円コーナーで時々見かけますので、読んで頂ければ嬉しいです。
>>ワルツさん
ん〜、強く優しく落ち着いた刃牙が、見てて心地よい。迫力ある凶暴モンスターに、ただ
怯えるのみで非力な一般人(少し謎持ち?)と、脇役も固まってるので安心して読めます。
刃牙が負けることはないでしょうが、脇コンビの出自が気になりますね。黒幕は何処?
>>サマサさん
ぅあトウマくん可哀想、と思ったらどうやら最終的にはそれなりに幸せになれたみたいで、
ほっと安心。ユーゼスや同棲カップルも含め、結局誰も不幸にはなってませんね。遊園地
へのトラウマを植えつけられた約二名だけか? でバキスレイオスが……本編に出るっ!?
>>ハイデッカさん
慶次と呂布の一騎打ちより前に、見所いろいろありますねぇ。城攻めと、ドン・レミ絡み
と。ジャンヌに関する不吉なことはひとまず棚上げ、まずは男たち、というか将たちの
戦いですな。それでもやっぱりジャンヌは敵味方双方の中心にいる。物語の層が厚いです。
>>銀杏丸さん
言われて気づく。童虎は元々強い上、若い肉体と長い経験を兼ね備えた人……反則っぽい。
今回は
>>24に全てが凝縮されてますが、こういう風に全員カッコ良くなるとやはり魚と蟹
が際立ちます。あの二人を他の面々と同列に綺麗に纏められるのは流石です、銀杏丸さん。
>>ウルフズさん
あのミスリルが本腰入れて動いてるのか……びんが狙われる理由、狙ってる相手、どっち
も普通ではなさそうですな。まぁボン太君IN鞍馬たち一堂・宗介も含む、ならかなりの
戦力。そのメンツに堂々対抗できる敵というのも、考えにくく楽しみ。どんなのが来る?
>>前スレ445さん
>ここを見ていたら私も書きたくなってきました。
私もそうでした。今もそうです。そういう気持ちを抱き、書き始めて下さることこそが、
当スレの原動力そして活力。445さんの気持ちの具現化、待ってますぞっ。
>>38さん
上に同じ。ダイは人気ある作品ですし、私個人も好きですので、楽しみにしてます!
47 :
作者の都合により名無しです:2006/03/19(日) 11:28:04 ID:o6s70oJ90
ふらーりさんお疲れ様です。次回完結ですか。寂しいです。
D=アーネというキャラは強さ論議で噂は聞いてたんですが、
こんな可愛らしいキャラとは思いませんでした。楽しかったです。
大団円期待してます。
でも、ふらーりさんはちょうど長編サイズになってからの完結が多いなあw
さすがバキスレのプロやなw
>>24より
part.2
「思い出すなぁ、童虎よ」
チリチリと、大気が焦げ、帯電したイオンが教皇と老師の間の空間を歪ませる。
冥府の黒い土で模されたアリエスの聖衣が、シオンの小宇宙に震える。
長きに渡って風雨に曝され続け、色あせた童虎の衣服が、彼自身の熱い魂に従って波打つ。
「ホッホッホ…
貴様とは何度拳を交えても、決着がつかなかったのう」
大気がはじけ飛ぶ轟音は、その激突からだいぶ送れてその場の人間の耳に届いた。
シオン必殺のスターダストレヴォリューションと、童虎奥義の廬山百龍覇が激突したのである。
卓越した、超人といっていいほどの技能をもち、数々の戦いにて磨き抜かれ、
鍛えあげられた聖闘士である紫龍の心眼をもってしても、その激突を感知することは出来ず。
「ほぉ…」
神仙の域に足を踏み入れた童虎をもってしても、カミュ・サガ・シュラの三人の突破を許していた。
シオンが全力で技をぶつけねば、彼ら三人は百龍の顎にかみつかれていただろう。
この時点ですでに、アフロディーテとデスマスクは、ムウ最大奥義の前に冥府へと逆戻りしている。
演技に力が入りすぎだ!馬鹿者共が、とシオンは胸中で毒づいた。
シオン最後の直弟子であるムウは、その外見や物腰とは異なり、
一度激怒しようものなら守護星座の伝承通り、神の羊の如き暴威をふるうのである。
13年もの長きに渡って同輩として肩を並べていて、ムウの気性に気がつかぬとは、と、
シオンは計画の困難さを改めて思い知っていた。
そんな内面の葛藤などおくびにも出さず、シオンは口の端をわずかに歪ませながら、叫ぶ。
「今の貴様では、私を押しとどめる事など出来はせん!」
シオンは拮抗を押し切った。
童虎の老体がごろごろと土埃に塗れながら大地を転がる、ダメージは隠しきれていない様子である。
シオンは童虎をこのまま無力化できるとは考えてはいない。
この様すらフェイクの可能性もあるのだ。
「残念だったな、童虎。
貴様と私の力が拮抗していたのは243年もの昔の話だ。
見ろ、お前のその老いさらばえた姿を!
見ろ、私の輝くほどの若さに満ちた姿を!
時間とは残酷なものよ…」
シオンは、今の童虎が短絡な男ではないと解っている、
が、先ほど金牛宮で感じた妙な気配、そして今も尚監視しているだろう冥闘士たちの目を考えると、
挑発に乗り、短期決戦を仕掛けてくるのならばこちらの思惑通りだ。
出来るならば友を手にかけるような真似はしたくない、だが、ハーデスを斃す為ならば犠牲は止むを得ない
243年の歳月は、シオンと童虎の両者に鋼の心をもたらしていた。
しかし、シオンの想いとは裏腹に、口上に激昂したのは童虎ではなかった。
「黙れェい!
教皇の身でありながらハーデスの軍門に下るなど言語道断!
この紫龍がアテナにかわって成敗してくれる!
くらえ!廬山昇龍覇ァー!」
ヒヨッコが、と口中で呟き、シオンはその一撃を片手で受け止める。
「これが?この程度で?この精度で昇龍覇だと?
一撃放つ際に心の臓腑の守りががら空きだ!威力もまるで話にならぬ!
これでよくもまぁ昇龍覇などとほざけたものよ!
恥を知れ小僧ォウ!」
シオンは紫龍の右拳を左手でつかみあげると、上半身のバネだけで童虎に向かって紫龍を投げ飛ばした。
自然、童虎は愛弟子を受け止めざるを得ず、攻撃を中断せざるを得ない。
危うい処だった。シオンは冷や汗をかいた。
もし投げるのが一瞬でも遅ければ、童虎の矮躯そのものを弾丸とした技・廬山龍飛翔をくらっていただろう。
龍飛翔から昇龍覇、そして百龍覇へと繋がる流れは、童虎必殺のコンビネーションであり、
かつてこのコンボで冥界三巨頭の一角、天雄星ガルーダのアイアコスを葬り去ったのである。
「童虎、師匠想いの良い弟子を持ったな。
紫龍とやら、老いた師の手を取り、仲良く二人そろって冥土の旅路を行くが良い」
童虎のみならず、弟子すら纏めて屠るならば、いかに童虎といえども奥の手を出すだろうというシオンの目論見は、当たる。
彼の全く予想しない形で。
「シオンよ、とうとう魔道に墜ちたか…。
ならばせめて、友である儂がこの手で引導を渡してやらねばなるまい…」
童虎の小宇宙が、変わった。
喩えるならば、蛹から蝶がかえる瞬間の緊張感。蝉の幼虫が、殻を破って成虫へと変態する瞬間の躍動。
「シオンよ、貴様にも知らされてはいなかった事がある。
儂の心臓はな、1年に10万回しか鼓動を打たぬ」
「…ッ?!
バカな!それではまるで…!」
「解るじゃろう?シオンよ。
10万回とは常人の一日の心臓の鼓動の回数…」
童虎の老いさらばえた、老師の威厳そのものとも言うべき外見が、変わる。
彼の皮膚に細かく亀裂が走り、その内側から若い魂の息吹が漏れ出す。
「儂の肉体にとって、243年とはたった243日でしか無かったのじゃよ!」
そこに現れたのは、かつての18才の童虎!
かつて、共にあった。馬鹿もやった。切磋琢磨しあった。喧嘩もした。
同じ釜の飯を食った。同じ涙を流した。同じ喜びを分かち合った。同じ苦しみを分かち合った。
親友の姿がそこに現れた。
「神々の不死の法!MISO-PETHAMENOS(ミソペサミノス)!」
ああまったく、いよいよ以て…。
「童虎ォー!」
殺しにくい事この上ない…。
「シオン、これで儂と貴様は互角じゃよ!」
シオンの葛藤を知ってか知らずか、童虎の攻撃的小宇宙が極限にまで高まると、
刹那の間もなく、童虎最大奥義がシオンに襲いかかる。
ミソペサミノスの衝撃に気をとられ、彼の反応は一瞬遅れた。これではスターダストレヴォリューションでの迎撃は不可能だろう。
ならば、鉄壁のクリスタルウォールしかない。
先ほど食らって廬山百龍覇の威力は確認済みだ、抑え切れると踏んだが、それもまた驚愕と共に打ち破られる。
技自体はムウのそれと同じだが、使い手が異なる事によって威力も異なる。
シオンの恐るべき小宇宙によって生み出されたこの巨大にして不可視の障壁は、
若さを取り戻した童虎の技によって易々と破壊されたのである。
「莫迦なッ!」
「童虎!貴様ここで私と差し違える腹積もりか!?」
「一緒に死んでやるのだ、嬉しく思え!
紫龍!何をしている!さっさと奴らを追え!アテナには儂が話を通しておく!」
はじかれたように走り去る紫龍の姿が、シオンの目には、何故だか過去の童虎にかぶって見えていた。
第十六回はラストエピソード一個前です
カノンとサガの絡みを期待されてる方には申し訳ないのですが
あんまり絡まないかもしれません
ぶっちゃけ、原作での描写が番好きなんで変えたくないんです
お疲れ様です銀杏丸さん。
この作品は原作の名シーンを本当に上手に銀杏丸さん風に料理してますね。
シオンとドウコの昔のシーンと、今の決闘シーンが重なって見えます。
普段より星の輝きが一層冴える夜のヴェイブ、
二人の男は人目につかぬジャングルを決闘場に選んだ。
明るすぎる夜、幾ら満月とはいってもこれはおかしい。
すぐに夜を照らす者の正体が判明する、一際輝く七つの星、北斗七星。
今から戦う者を従える星。
「言って置くが、本気で行くぞ。」
その言葉が口から漏れる前に、既に闘気が溢れている。
対するホークは、まるで覇気が無い。
既に勝負を投げ出しているのだろうか。
脱力した棒立ち状態、その体の手に頼りなく斧がぶら下がっている。
「ああ、俺もだ。」
言葉にも力みは無く、これから戦いに挑む姿とは思えなかった。
ましてこれが本気とまで宣言をしている。
何か策があるのか、それとも甘く見られているのか。
「安い挑発になど乗らん。本気を出さんなら貴様に待つのは死だ。」
ケンシロウは、気がつかなかった。
それが自分の兄の拳の極意に近いものであったのに。
「行くぞ、北斗剛掌波!」
先制攻撃を仕掛けたのはケンシロウ、竜をも屠る男の放つ闘気がホークに襲い掛かる。
ゆるやかに動き、最小限の動きでかわすホーク。
いや、動いたのではなく動かされたのだ。
「北斗壊骨拳!」
最小限とはいえホークは素人、そこから動きを派生させるのは難しい。
驚異的な移動で間合いを詰め、必殺の一撃が放たれた。
必殺の拳はホークの頭骨を粉々に砕く・・・筈だった。
拳はホークをすり抜け空を切った。
だが見失うほど速くは無い、残像を残している。
無意識に拳を打ち込む、当たらない。
何故だ?右か!左?
単調で完全に読めている筈だったホークの動きが、次第に素早く鋭敏に、
それでいてしなやかな物へ変わる。
気がつけば残像の数は無数に増え続けていた。
「これは・・・トキの動き?」
上半身はまるで無防備だがその足並みはトキの舞踊に酷似していた。
ここに来てようやく攻勢に出るのか、斧を振りかざす。
すると、闘気が体中から溢れ出す。
周囲を破壊しかねない暴力的なオーラ。
「こ、これはラオウの!?」
闘気の量は違えど、その質はまさしくラオウの闘気だった。
体中のオーラを斧に込め、渾身の一撃が放たれる。
「次元断!」
相手を斬りつけると同時に空間が歪む、歪みは更なる歪みを生み、
人一人包み込むほどの巨大な「穴」を作り出す。
紙一重で「穴」から避けるが斬撃は避け切れなかった。
「船の中で、北斗の男達の声を聞いた。」
斬り終わるとまた脱力し、斧を握る手から力を抜いた。
だがトキの様な脱力では無い、体全体を完全な無防備にしている。
戦う体勢ではなく話す体勢へとなった。
だが構えは解かずに話しに耳を傾けるケンシロウ。
「今のお前では一人で戦うのは死へと繋がる、お前は生き延びなければならん。
そう言うと、少し技を教えてくれた。」
「そして、お前を昔のお前に戻すための強敵になってくれ。
それが北斗の男達からの伝言だ。」
言い終わるとホークは再び構える。
今度はトキの様に優雅に、それでいてラオウの様に豪胆に。
「そうか・・・行くぞ、ホーク。」
そう言うと闘気を集中させる。
目が澄んだそれへと変わる。
「そうかい、そんじゃ俺も行くぜ。」
斧を地面に突き立て、ファイティングポーズを取る。
そして、激突する。
技術を全く用いずに殴りあう。
血飛沫を撒き散らしながら全く退かずに殴りあう。
「ぐっ!」
ホークに勢いが無くなり始める。
体術は素人な上、相手は一流の暗殺者。
スタミナも筋肉の造りも違う。
遂に殴り倒されるホークに、ケンシロウは言い放つ。
「少しかじっただけでのお前では、俺の相手では無い。」
そう言うとホークの後ろにあった草陰から、ゲラ=ハが出てきた。
「選手交代ですね。」
両腕を天破の構えの様に上下へ広げ、足は前後にスタンスを取る。
精錬された雰囲気を持ちながら、どこか野性的なゲラ=ハ。
「フ・・・いいだろう、一対一とは言って無いからな。」
こうしてホークとゲラ=ハが交代しながらの殴り合いが続いた。
熾烈を極めた戦いも、長引くにつれて戦いと呼べる物では無くなってきた。
秘孔への一撃必殺の攻撃を駆使するケンシロウも、ゲッコ式武術の構えからの技も、
終りが近づいてくるにつれて只の殴り合いへとなっていった。
ゲラ=ハは疲労で動けなくなり、最終的にはホークとケンシロウの殴り合いとなった。
ホークの右が腹部へと突き刺されば、ケンシロウの蹴りがガードの上からでもダメージを与える。
そして疲労困憊の両者の戦いに終りの時が来た。
「うおおおおおおおお!」
「でりゃああああああ!」
両者の拳が互いの顔面を打ち抜き、倒れる。
やはり一日の長があるのだろう。
動けないホークに立ち上がるケンシロウの姿が見えた。
「負けちまったな。」
素直に敗北を認めるホーク、ケンシロウがその手を取り、立ち上がらせる。
そして無言のまま、ジャングルの奥へと立ち去ってしまった。
「キャプテン、いいんですか?」
闘いを見ていたゲラ=ハが立ち上がり、聞いてきた。
村の方を見ながら、ホークは答える。
「最初からそういう決まりだからな、仕方ねぇよ。」
そう言って歩き出すホーク、ゲラ=ハもそれに続く。
普段は険しく鬱葱とした、ほの暗いジャングルの帰り道は、
強い日差しの下で碧が光を反射させ美しく輝いていた。
ヴェイブへと戻ったホークは食料等の購入を済ませ、船に乗る事にした。
どうやらヴェイブからの船はメルビルしか無い様だ。
すると何やら怪しげな商人がミイラを担いで船へ乗り込んでいた。
嫌な予感を漢字ながらもメルビル行きの船へ乗り込む。
船室で暫らく過ごしていたら、予感が的中したのを悟った。
「ぎゃああああああ!」
船内に叫び声が響き渡る、叫び声の元へ駆けつけるとそこには先程の商人がいた。
爪で引き裂かれた痕がある。
その傷の大きさは、さっきのミイラの手の平ぐらいの物だった。
邪神さんが旧スレに新作を書き込んでらしたので
俺が新スレに移植しました。余計なお世話だったかな?
バレさんが大変と思って。
>銀杏丸さん
俺もこの辺りの流れが原作で一番好きだなあ。
原作に沿って進んでいるけど、どうこの名シーンを
銀杏丸さんが味付けしていくか楽しみです。
>邪神さん
まあ、ケンシロウ相手ではホークとはいえ厳しいですな
でもこの男の友情からまた強い力が生まれてきそうな。
新たな敵も出現しましたし。
61 :
作者の都合により名無しです:2006/03/19(日) 23:45:26 ID:eSDIM4LK0
>ふら〜りさん
ふら〜りさんらしいほのぼのした中にもカーズとの死闘など、
ハードな面も見えて満足度高かったです。ラスト期待してます。
もちろん、新作の方も。
>銀杏丸さん
友情とセイントの長としての重きものを背負った2人、
対峙が悲しいですね。ラスト前のエピソードに最適と思います。
弟子の前で師はいつも悲しいな。
>邪心?さん
ホーク夢想転生使えるとはwちょっと台詞使いが
ケンシロウっぽく無い気もするけど、楽しく読めました。
強力コンビの誕生ですねw
62 :
作者の都合により名無しです:2006/03/20(月) 16:59:00 ID:jzI3iRII0
ドットキャラのホークとケンシロウが戦ってる姿が想像つかんw
ミンサガやってみようかな
63 :
作者の都合により名無しです:2006/03/21(火) 12:41:53 ID:yW/aSrz20
サナダさんはどうしたんだろうか
やさぐれの続きが読みたいんだけど
サナダムシさんは一気に連続に書いて
しばらく休むというパターンだから今はタメの時期かも
俺、今日書こうと思ったけど野球で燃え尽きたからお休み
舞台はアメリカ。高層ビルの立ち並ぶ大都市の一角。
裏路地の奥の奥。電灯もまばらで暗すぎる場所。
一人の女性と数人の男達がいた。
「女性を引っ掛けるなら、もうちょっと注意したほうがよろしいですわ」
腰に掛かる長い黒髪に丸い眼鏡。
女性にしては背が高く足も長い。
そして顔に広がるそばかす。
みれば純朴な印象を受けるが、笑みに歪んだ顔がそれを払拭する。
口を開く。唇が歪む。月光の下にさらされる突き出た牙。
「まったく、無駄な時間でしたわ。先方の気分を損ねていないとよいのですが」
喋っているのは女性一人だ。
少しだけ首を傾げ、これから会う仕事上のパートナーについて思案
をしている。
目の前の男達は声を上げない。
平生なら、自分達を無視する輩は片っ端から暴力の対象にするの
だが、今の彼らにそんな能力はない。
脳髄を破壊され、内蔵をぐちゃぐちゃに犯されスープにされ、骨
という骨が砕かれ壁のしみに成り果てた男達に、そんな能力はない。
「ああ、大変! もう少しで遅刻です! もう、あなた達が悪いんですよこの米
国野郎共。次に生まれ変わったときは、もう少し利口になっているといいですね」
女性は目の前の惨事を気にも止めず、微笑みながら傍らの火打ち式
マスケット銃を握り直し、屈伸するように足を曲げ、
「よっと」
跳躍。
軽がると十階建てのビルの屋上に着地。
そのまま地面から生える鉄の塔に飛び移りながら、目的地へ急ぐ。
残された裏路地に人の気配はない。
むせ返るほどの濃密な血の匂いのみ。
漆黒のスーツに身を包んだ女性。
そのすらりと伸びた手足は見事なスタイルで、麗人と呼んでも遜色ない。
その一方で、どこか田舎娘的な側面もこの女性は見せる。
だが、その特徴の一つ一つが、彼女の本質を隠す手助けをしていた。
彼女は吸血鬼。血を好み血に飢えた戦鬼の徒。
鉄火をもって戦を始める悪鬼羅刹。彼女の真の姿は、化物である。
黒く塗り潰された空には、何も見えない。
もう人間は星の光に頼ることをしなくなった。
ビルの合間を飛ぶ女性の眼下には、過剰すぎるほど人工灯が瞬いている。
―――ただ月だけは、いつも変わらずそこにある。
タン、とコンクリートを軽く蹴る。たったそれだけの動作で女性の体は空を飛ぶ。
―――やはり、人間ではない。
「いけないいけない。急がなくっちゃ」
女性は慌てた様子で足を速める。
しかし、顔は笑みで溢れている。
そして今の彼女性の動作は、見方を変えれば、スキップをしている
ようにも見える。
大事そうにマスケット銃を抱えて、夜の世界へ溶け込んでいく。
下に住むただの人間が、それに気付くことはない。
化物は隠れるのが得意だから。
しかし、今の女性の頭に自分を隠匿しようなどという考えはない。
ただ、約束の時間に間に合うようにと足をすすめるだけだ。
もっとも、夜空を飛ぶ人影を、誰かが見かけたとしても、そして
それを他人に吹聴したとしても、誰も真面目に取り合わないだろう。
そんなものは現実の埒外だからだ。
しかし、吸血鬼は飛ぶ。
無辜の人間を嘲笑うかのように。
どの人間の血を吸おうかと選別しているように。
牙が疼く。
血が、欲しい。
「おっと! いけないいけない。今から仕事なのに」
軽く頭を振り、吸血衝動を意識の外に出す。
ほんのひとときしか忘れられないが、仕事にさしつかえない程度
には我慢できる。
まさか、今から会いにいく人間の首筋に牙を突き立てるわけにはいくまい。
ケチらないほうがよかった、と女性は後悔した。
さっき銃殺した男達の血を、臭いからと飲まなかったことを。
女性は迷う。
非常食としてもってきた輸血パックを、ここで飲んでしまおうかと。
先程思わぬいさかいに巻き込まれたため、少々喉が渇いていた。
どうしようか。
飲んでしまおうか。
「――いえ、やめておきましょう」
首を軽くふる。そうだ、別に焦らなくてもいい。
今回の仕事は彼女の宿敵である王立国教騎士団やヴァチカンが
からんでくることはない。
数多く存在する“協力者”――奴隷ともいう――が、情報操作に
一役買ってくれた。
だから、彼らのようなアンチフリークス達に、彼女達ミレニアムが
こうして世界経済の中心地まで枝葉をのばしていることを知る機会はない。
明確で強力な敵と遭遇する心配がない以上、血を吸って体力を保持する
こともないだろう。
どうせこの街の警察は、どうあがいても彼女に勝つことはできない。
なら、今の自分の心配は杞憂だ。女性はそう判断した。
何度目かの跳躍を止め、あるビルの屋上に立ちつくす。
目の前に広がる建造物……彼女と彼女のパートナーとの待ち合わせ場所。
……女性の気配がわずかに零れる。
ほんの少しの殺気。
眼鏡から漏れる深紅の光。
「少し……空気がざわついていますわね」
蛇のように体をはい上がってくるような不快感。
ちりちりと目の裏が焼ける。
この緊張、まごうことなき闘争の世界。
女性は目を細めて眼前のビルの窓を見る。
吸血鬼の超知覚は遥か遠くの部屋の様子をこと細かに脳へ伝達した。
わずかの間、女性はその場に固まっていた。
しかし、すぐに行動を再開する。
懐から親指ほどの大きさの紙袋を取り出す。
丁寧に開く。
中身は弾丸。
マスケット銃にそれを込め、構える。
「どこのだれかは存じませんが、仕事の邪魔はいただけませんね。死んでもらいましょう」
一つ目の銃声。
かくして猟師は狩場に降り立ち、獲物を狩らんと矢をつがえ弓を引く。
だが、今、吸血鬼にして最後の大隊のヴェアヴォルフにして魔弾の射手
であるリップヴァーン・ウィンクル中尉は、自分と拮抗する者がいる
とは夢にも思わない。
自分が狙っているのは、無力な獲物ではなく、己と同じ猟師であることを。
そして“魔弾の射手”の異名を冠することを、リップヴァーンは
まだ知らない。
続き物です。傾向はバトルぽいです。
題材はヘルシングです。
私は戦争が好きだ〜で有名な漫画です。
最近 原 作 版 OVAが発売したりしています。
小中はクトゥルーを出しすぎだと思います。
デジモンにインスマスを出すなんて正気の沙汰じゃありません。
セト神とかインコグニートとか血に貪りつく婦警とかうろたえる旦那とかっ!
ともかくゴンゾウは消えろって話です。
リップヴァーン中尉が戦う相手はPS2の大作クロスゲームで出てきた敵キャラです。
あんまり日をおかないように努力します。
それでは。
71 :
作者の都合により名無しです:2006/03/21(火) 23:21:40 ID:64N+Q0yP0
おお、ヘルシングってのは読んだ事ないけど
噂に名高い作品ですね。
出だしもハードな感じだし、吸血鬼対ハンターの話かな?
確かぷよぷよの作品書いた方ですよね?期待してますよ。
クロスゲームってスパロボみたいなのでいいのかな?
ナムカプだったら嬉しいけど、これ大作違う気がするからなあ。
どんなキャラだろう…楽しみだー
ヘルシングは楽しみです。
燃えるアクション期待してます。
でも、後書き意味が分かりませんw
>>73 ヘルシングの原作読んだ後で、TV版観ると分かるよ
マジで殺意湧くからw
75 :
作者の都合により名無しです:2006/03/22(水) 12:47:18 ID:czxRqYXb0
ヘルシングしらないけど、ぷよぷよの時の
ほんわかした文体が好きだったから期待してます。
しかし今回はハードだ。俺もヘルシング読んでみようかな
>>44 地球から次元を越え、更に遥かな星々の海を隔てた向こう側。そこに、神聖魔法国
ヴァジュラムがある。統治するは巨大城塞宮『武国殿』に君臨する法皇プリマス。が、
今彼は重い病に伏せっており、事実上国家を運営しているのは大僧正アントナンである。
武国殿の最深部、アントナンはいつものように自室で政務を取っていた。筋肉質の巨躯
を軍服風の黒い僧衣に包んだその姿には、確かに国を統治するものの風格がある。
そんな彼が、ふと書類の束から顔を上げた。
「ん……? 何だ、今の揺れは。地震か?」
と、目の前のドアを突き破るように蹴り開けて、一人の少女が乱入してきた。
「大僧正様ああああああああぁぁぁぁっっ!」
その身を包む魔法装束はボロボロで、もう半裸といってもいい姿。髪も肌もあちこち
焼け焦げ、痛々しい火傷跡から細い煙が立ち昇っている。
だがそんな惨状も本人は気にしていないらしく、目を血走らせてアントナンに詰め寄り、
「陛下は? 陛下は陛下は? 陛下の容態はっっ!?」
「ディ、D=アーネ? お前なんでここに、その姿は一体……って、ああ。そうか」
あの連絡を聞いたのか、と思い至って、アントナンは一瞬、薄い笑みを浮かべた。
D=アーネはそれに気づかなかったが、アントナンはそのまま優しげな表情に移行して、
「安心しろ。今は落ち着いておられる。知っての通り、もう猶予がないのは事実だが」
「うっ……」
「どうやらお前も、随分と強くなったようだ。が、あと三日でパステリオンを倒し、
あの結界を消すというのはさすがに無理だろう。可能性があるとすれば、ただ一つ」
と言ってアントナンは、虚空からワイングラスを取り出した。中にはドス黒い液体が
満たされ、嫌な臭いの湯気を上げている。
「これは我がヴァジュラムに伝わる、闇のカクテルというものでな。これを飲めば、
その者の魔力が一気に数万倍に膨れ上がる。だがそんな力を並の器、並の肉体で支え
きれるはずもなく、我が国の歴史でもこれを飲んで死ななかったのは僅か数人……」
「んな便利なものがあるのなら、もっと早く出して下さいっ!」
D=アーネはアントナンの手からグラスをひったくり、ためらわず口元に持っていった。
魔力が大きすぎて、肉体が耐え切れず死ぬ? そんなの愛の力で乗り越えてみせるっ!
「ちなみに死ななかった者たちは、魔力を支えきれる肉体を強制的に与えられている。
いわばカクテルの副作用だな。全員が人間とは似ても似つかぬ、醜い怪物となった」
ぴた、とD=アーネの手が止まる。
「それを飲み、数万倍の魔力を手に入れる為には、そうなるしかないというわけだ。
元々それぐらいの覚悟がなくば、カクテルの力に耐えられないであろうしな」
「……」
「醜い怪物の肉体。それを得てカクテルの力を制し、己がものとすることができれば、
おそらくパステリオンにも勝てるであろう。それ以外に陛下を救う道は無い」
D=アーネは、目の前のドス黒い液体をじっと見つめた。そして
希望と絶望の混じったそのグラスを、アントナンの机の上に置く。
「どうした、飲まないのか?」
「……最後にもう一度。もう一度だけ、陛下に会わせて下さい。お願い……します」
この後、法皇プリマスに最後の謁見をしたD=アーネは、病に苦しむ彼の姿を見て
決意を固めた。アントナンの部屋に戻るなり、グラスを手にとって捧げ持つ。
『……さようなら、陛下……』
目を閉じ、グラスに口をつけ、傾ける。闇のカクテルが唇を濡らし、そして喉に通った。
思えば、ほんの半日ほど前には、陛下は絶対に助かると狂喜して海を泳いだ。海の向こう
で、希望を掴んだはずだった。あの国で、僅か二日ほどの間にいろんなことがあった。
『ぁ……ごめん、ヒューイットさん……もう遊園地には行けなくなっ……ちゃった……』
ドクン、ドクン、とD=アーネの中で何かが脈打ち始めた。それに合わせて、
D=アーネが変化していく。全く別の何かへと。
D=アーネという名の少女、その顔も、その身体も、その肌も、その匂いも。何もかもが、
蟻にたかられる砂糖細工のように、みるみる失われていく。代わりに、闇のカクテル
そのもののような、ドス黒いモノが内側から溢れ出していった。それが、D=アーネに
新しい肉体を与えていく。
もう、ヒューイットが萌えた銀髪の魔法少女はいない。いかなる愛の奇跡が起ころうとも、
あのD=アーネの笑顔は永遠に戻らない。今、彼女自身が力と引き換えに捨てたのだ。
そして……
地球。星ごと揺らすような一瞬の大地震が、三人に異変を知らせた。
何か、とてつもなく強大な存在が地球結界を突破して地上に降り立った? 魔法の
光を纏って変身した魔女っ子三人が、不安な表情で現場に駆けつける。
そこにいたのは、
「この魔力波形……まさか、D=アーネ? D=アーネなの!?」
「う、嘘っ!? 返事して、D=アーネ! 何があったの?」
三人の声は、もう彼女には届かない。もはや少女の面影など無い、異形の怪物と
変わり果てたD=アーネは、容赦の無い殺意の牙を剥いて恐ろしげな咆哮を上げた。
その心の中はもう、ただただ真っ黒な炎が燃え盛っているだけ。
オ・マ・エ・ラ・ヲ・コ・ロ・ス…………!
宇宙最強の魔法使いと、史上最凶の大魔獣の戦い。
地球とヴァジュラムと、無限に連なる平行世界の命運をも賭けた戦い。
そして一人の少女が、未来も希望も自分自身も、全てを捨てた戦い。
全宇宙を巻き込む壮絶な死闘が、今、幕を開けた…………
『魔女っ子戦隊パステリオン』最終巻に続く
ふ〜、何とか繋がった。これが各種最強議論スレの上位常連キャラ『D=アーネ』です。
あ、原作をご存知の方。嘘はついてませんよ? 例えばほら、彼女の頬は失われた
でしょう。ヒューイットがぷにぷにしたかったであろうあの頬は。永遠に戻らない。ね。
ともあれ。読んで下さった方、感想下さった方、ありがとうございましたっっ!
>>銀杏丸さん
主人公たちの先代・師匠バトル。作品の厚みが出て好きなんですが、本作でも紫龍の未熟
若輩ぶりがいい感じです。童虎やシオンの強さと風格、紫龍たちの若さと将来性が引立て
合ってます。約二名は引き立て役哀れ。このままハーデス編を描いて頂きたいものですが。
>>邪神さん
まず、今まで読んできてまだまだホークのこと理解してなかったなと。腕っぷしも器量も。
それと、殴り合いというケンシロウの土俵に乗りつつ、でも1対2、けど結果は負け、と
どちらのメンツも潰さない展開が見事! 私なら多分ホークを贔屓してたな……脱帽です。
>>487さん
吸血鬼というのもいろんなキャラがいますが、リップはなかなか血の匂いと気品と色気が
良いですな。身体能力が凄そうなのに、武器が銃というのは少し意外ですが。スペック
みたいに実は素手の方が強いとか? 戦いぶりについては次回見られそうですね。楽しみ。
>>60さん
おつ華麗様。そういうココロ配りと労を惜しまぬ方がいて下さるからこそ、
このスレが続いているのですよね。ありがたいことです。
>>ちなみに
原作のD=アーネの最後は、ちゃんとハッピーエンドです。このSSの続きであれば、
きっとヒューイットは祝福しつつもハンカチ噛み締めるんだろうなと……そんな風に。
80 :
二十話「骸の支配者」:2006/03/22(水) 15:46:32 ID:olYT/G7J0
「キャプテン、これは・・・。」
ゲラ=ハが先程の叫び声を聞き、駆けつけた様だ。
「ああ、十中八九間違いねぇ、さっきのミイラだ。」
嫌な気配が周囲に漂い始める。
だがあのミイラから感じた物ではない。
もしや、乗客をゾンビに?
すぐ側の死体へ目をやると、死体だったそれは満面の笑みで立っていた。
その目は既に腐食を始めていた。
「まずい!銀で作られてる武器なんか持ってねぇぞ!」
アンデットを物理的な攻撃で倒すにはかなりの大技を使わなければならない。
既に死んでいるから痛みを感じる事無く、己の体が粉々になるまで立ち向かい続けるからだ。
まして乗客を片っ端からゾンビに変えていかれたら身が持たない。
アンデットが苦手とする聖なる祝福を受けた武器か銀、ミスリルで造られた武器が必要だ。
だが銀は非常に高価で、ホークに手を出せる物ではなかった。
「キャプテン、私がゾンビの相手をします。
乗客に貴族の方がいたら銀製の武器を持っているかもしれません。」
槍を構えるゲラ=ハ、爬虫類として進化を遂げたゲッコの眼差しが煌めく。
ゲラ=ハが負ける事は無い、但しゾンビが異常な数に繁殖しなければ。
次々と乗客室のドアを開け、ゾンビの襲来を告げる。
銀武器を持っている者は居なかったが船が単純な構造なので小型船への避難は容易だった。
問題は、数名ほど乗客が消えているという事。
速くゲラ=ハの元へと戻らなければ。
急ぐホークだが後ろに気配を感じた、船に乗り込む時に見かけたアレから感じた物。
振り返ると包帯に身を包んだ異型の者が立っていた。
人の形をしているが、干乾びた足や腕は人の物とは思えないほど細く、
そして、手からは鋭い爪が出ている。
商人の持っていた、あのミイラだ。
81 :
二十話「骸の支配者」:2006/03/22(水) 15:47:45 ID:olYT/G7J0
〜乗客室前〜
姿勢を低く保ち、槍を大振りにミイラの足元へなぎ払う。
正確にはミイラ達、だが。
「はあっ!」
スウィング、大振りななぎ払いを鍛えぬいた肉体で速く、強く振りぬく。
乱戦時は複数の敵の足元を攻撃し、大きな隙を作ることも出来る。
達人ともなれば生み出す衝撃波で後方の敵をも攻撃出来る。
ミイラ達の足が砕け散る、しかしそんな事で止まりはしない。
腕の力で跳躍し、一斉に飛び掛るミイラの大群。
槍で防御を固めるが気休めにしかならない事を悟る。
ミイラの一撃で槍が吹き飛ぶ、使いすぎてガタが来ていたのだろう。
更に襲い掛かるミイラの姿が見える。
「キャプテン、御無事で・・・。」
ゲラ=ハが死を覚悟したその時、光と共に一斉にミイラが吹き飛んだ。
唖然とするゲラ=ハの前には、あの男が立っていた。
〜船底・小型船前〜
「うおりゃあ!」
渾身の力を込めて斧を叩き付ける。
が、既に包帯の下は人間の皮膚では無かった。
岩石の様に硬い体に斧を弾かれ、爪のカウンターがホークへ襲い掛かる。
咄嗟に盾で防ぐ、だが小型のバックラーでは防ぎ切れずに引き裂かれてしまった。
盾を犠牲にし、距離を取るホーク。
盾の代わりにフルーレを取り出す。
「二刀流なんかした事ぁ無いんだがな。」
82 :
二十話「骸の支配者」:2006/03/22(水) 15:48:42 ID:olYT/G7J0
ハヤブサ斬り、軽い細剣ならではのスピードで敵に切りかかる。
正に隼の如く俊敏に。
鋭い切先でも傷一つ負わない。
「無駄ダァ・・・ソンナ攻撃ジャアナ・・・。」
唐突に話しかけるミイラ、目に人間らしさが戻る。
どうやら人語を理解出来るようだ。
「俺ハ・・力ガ欲シカッタダケナ・・・ノ二・・・・デスガ・・・」
途切れながらも言葉を発する、苦しみに耐えながら。
油断させるための演技だろうか?
だがデスとは三邪神の一人の名だ。
距離をさらに空け、様子を見る。
「頼ム・・・苦シイィィィ・・・殺シ・・殺・・・殺、殺ス殺ス殺スゥゥゥ・・・」
再び正気を失い目に狂気が映る。
怒りが沸々と湧き上がる。
デスにこんな姿にされたのだろうか。
「人を何だと思ってんだ・・・!」
斧を握る手に憤怒の全てを込め、哀れな魂の開放を願い振り下ろす。
真っ二つに裂けていくミイラ、その顔は安らぎに満ちていた。
包帯に隠されてはいても、間違いなく人間の表情を残して。
ミイラを倒した後、ホークには虚無感だけが残った。
奴等の操るアンデットには、人の死体もある事は知っていた。
だがサルーインの復活が近づき、魔物が強力になるに連れて知能を持ったまま蘇る者も出る。
今みたいに人の感情を持った者を倒すのは、心が震える。
人を殺した気分にさせられる。
一刻も早くサルーインを、三邪神を倒さなければ死者の魂に平安は無い。
決意を新たに、ゲラ=ハの元へと戻る。
83 :
二十話「骸の支配者」:2006/03/22(水) 15:49:30 ID:olYT/G7J0
船室の前に行くと無数に散らばるゾンビの残骸がお出迎えしてくれた。
全てゲラ=ハがやったのだろうか?
「終わったか・・・。」
後ろから声が掛かる、声の主は意外な人物だった。
「てめぇ・・・ケンシロウじゃねぇか!何でここに?」
森の中へ消えたケンシロウが船に乗り込んでいた事に驚きを隠せないホーク。
ゲラ=ハが倉庫から武器を調達してきているのが見えた。
一体どうなっているのか?
「お前も俺の強敵の一人、と言う訳だ。」
ケンシロウはそう言って甲板へ向かう。
後を追うホーク、一体何をする気なのだろうか?
「おい!どうする気だ!?」
臆す事無く、ケンシロウは言った。
「この船を頂く。」
それは自分の耳を疑わせる一言だった。
メルビル行きと言う事は帝国の管轄内の船だ。
それを奪ったら間違いなく大罪人だ。
「正気かお前?ゾンビに噛まれたのか?」
どこにも傷跡は無い、残念ながら本気の様だ。
「海賊なんだろう?覚悟を決めるんだな。」
荷物運びを終わらせ、ゲラ=ハも甲板へと上がった。
ゲラ=ハにこの馬鹿を止めて貰おうと説得しようと試みるが、
「さぁ、船を出しましょうキャプテン、小型船の碇は外して置きましたから。」
後には退けないらしい、ミイラの死体も蒸発を始めていた。
今から言っても誰も信じてはくれないだろう。
操舵席へと立つホーク、覚悟を決め雄叫びを上げる。
「ちっ、ヤケクソだぁ!いくぜ、野郎どもぉ!」
新生ホーク海賊団、誕生。
84 :
邪神?:2006/03/22(水) 15:51:30 ID:olYT/G7J0
お返事遅れましたが56氏、誘導dクス。邪神です。
自分の不手際なのに処理していただいて感謝感謝でございます。
次回からはスレの容量見ながら新スレの様子を粘り強く見守ってカキコします。
それではこれからも冷ややかな目でサドスティックに見守らず、
暖かく易しい目で見てあげてください。
例えばホークが二刀流になった意味が無い、とか・・・。
きっとそのうち真価を発揮するんで・・・。
〜サガ講座&質問箱〜
ふら〜り氏 お褒めの言葉どうもです。
しかし原作ではルート選択によっては残虐非道の悪行超人にもなれるのがロマサガ。
人殺して武器を奪って冥府にいっても宝石集めれば神様の武器もらえたり。
逆もまた然り。善、悪、中間、どのルートかでいける場所が違い、全てのルートを辿れる。
グレイとか複数のキャラ使って大方のイベントを自分也に再現していきたいです。
61氏 ケンシロウの言葉使いってイマイチ分かりづらいw
男らしかったりカマセっぽかったり・・・もう一度最初から読まねばw
85 :
作者の都合により名無しです:2006/03/22(水) 19:33:43 ID:u9cL1OuJ0
>ふらーり様
完結おめでとうございます!
ふら〜りさんらしい世界で、最後はきれいに原作へとつながりましたね。
また、新作お待ちしております。
>邪神さん
ケンシロウはすっかりメンバーの一員になりましたね。
キャプテンより強い船員の加入で、ホークの立場がなくなるかも。
ケンシロウの活躍楽しみしてます。
ふら〜りさんお疲れ様でした。飽く事無い制作意欲に敬意を示します。
アーネがとにかく可愛かったです。また、新作でお会いしたいです。
邪神?さん、ついにケンシロウもパーティに加わりましたね。
これでサルーインたちに少しは対抗できるかな?
しかしなかなかテイルズチームにいかないね。
「賢者が二兎を追わないのは何故だと思う?」
師は言う。
「賢いからではないぞ。
追う気力も体力も度胸も無いからだ。
追えるものなら追ってみたいものだな!」
――『騎士が剣を抜いたのは。』より
原題 L'epee du Dernier Chevalier
詰まるところ、東方仗助はマザコンである。
杜王の冬、特別凍える日だった。
外が薄明かりなのは、日が落ちかけた所為だけではなかった。
四歳児だった仗助は、その日高熱を出した。
母、東方朋子、この時点で24歳。女として、母親としての経験はまだ浅かった。
アドバイザーになるべき、明子の父親、東方良平も、まだ勤務から帰ってきていなかった。
我が子の異変に、朋子は無我夢中で車を出し、彼を連れ少し離れた市営病院へ向かった。
降り出した雪に目もくれなかったのは、最大の誤りだった。
住宅街を抜けたころには、雪は吹雪へ凶変していた。
積雪が瞬く間に道路を消す。
タイヤを雪に捕られ、目いっぱいのアクセルも空回りする。
車が止まった。
周りに民家も無く、この猛吹雪で外出するようなものの居ない。
予測できたはずの事態だった。
車体を打つ雪とともに、焦りはその勢いを増すばかりだった。
このままでは、仗助が死ぬ――
私の所為で仗助が死んでしまう――
元々縮こまっていた理性は、死のキーワードに完全に押しつぶされた。
ワイパーが凍り付いて動かなくなったころには、朋子はすっかり状況に呑まれていた。
ある限りの衣服でくるんだ我が子を抱きかかえると、車を乗り捨て、朋子は豪雪の中を駆け出した。
病院にはまだ3kmはある。
車を出したのも過ちだったが、これは最悪の判断ミスだった。
親子揃っての凍死、可能性としては一番高い。
結果的には、ミスの上塗りが功を奏した。
軸が凍結したような足つきで市営病院の扉をくぐると、一言も発することもなく、
衣服ですっぽり包まれた仗助を動揺する看護婦に手渡した。
熱にうなされていたはずの仗助の表情は、穏やかなものになっていた。
朋子は、身体のあちこちに凍傷を負い、結局は母親のほうが長期入院することになった。
以来、このことを思い返すたび、仗助の中に、怒りに似た感情が湧く。
自分自身に対してである。
今の仗助があの現場にいたなら、四歳の自分を殴り倒していたかもしれない。
自分の弱さで、母親が傷ついたのだ。
今回と似たような出来事は、レベルの大小は有れど、多々あった。
そのたび、仗助は思う。
俺のために、自分の命を削るな。
仗助に父親は居なかった。
東方も、朋子の姓である。
母子に、朋子の父親の良平の三人家族である。
父の不在を、仗助は特別淋しがらなかった。
母親の愛を受けきれないほど与えられたし、町を愛するベテラン警官の良平が、十分に父親代わりになれた。
一度だけ父の事を尋ねたことがあるが、朋子は苦笑いをしながら茶を濁すばかりだった。
その表情には、嫌悪の感ではなく、淋しげな陰が浮かんでいた。
いつもの母が見せない、とても艶やかな表情だった。
父への不思議な嫉妬も生まれたが、母に対する愛情が全てを占めてしまった。
高校入試を終え、進学を控えた仗助は、思い立った。
思春期半ばにもなると、同世代の多くは親離れをしたがった。
親の干渉を拒み、蔑視し、理由もなく嫌う。
仗助の行動はまるで逆だった。
そろそろ恩返しをするべき時期ではないか。
もう仗助が生まれて16年になる。
良平がいるとはいえ、母子家庭のせいもあってか、朋子はやや過保護な面もあった。
16年という歳月を、朋子は身を削りに削って仗助を育てた。
他人の目から見れば、ごく一般的レベルの親の行動かもしれない。
だが朋子は女親一人で、完璧な育児をしてくれた。
仗助にとっては、理由は十分すぎた。
誰に似たのか、仗助は180cmを超える身長と、それに準じた体力を有していた。
頭も決して悪いほうではない。
自分の全能力を使って、母親の人生を必ず幸福なものにする。
何かが起きれば、自分は身をていし、母を守る。
他人の無理解は、意に介すまい。
自分を一番愛してくれた人を好んで何が悪い。
決意は固かった。
決意と共に、仗助の中に、何かが芽生えた。
そんなころ、高校生活も始まり、夏休みを目前にしたころだった。
始まったのは侵略だった。
たびたび良平は言った。
本当の太陽は、もっと真っ赤だったと。
仗助には、良平の言う、赤い太陽の記憶がほとんど無い。
昔話のような感覚で聞いたものばかりだった。
仗助が高熱を出した年、太陽の異常が見られ始めたのはちょうどそのころだったという。
最初は本当に些細なものだったらしい。15年ほどをかけて、変化は完了した。
今の日光は、青い。
理由を究明する前に、世界は黙らされた。
メディア凍結寸前に、中国における核弾頭の誤爆を報じるニュースを見た。
死の灰が日本にも降り注ぐのでは、という憶測が飛び交っていたころだった。
その際、仗助はDIOという名を目にした。
太陽を、世界を変えた張本人だという。
ここ杜王町も、先週、たった一日で壊滅した。
いまや、明かりの漏れる家は、東方宅だけだった。
自室で、仗助はCDを聞いていた。
タイトルは「Holly」。
この歌手は、病と事故とで、妻と息子を同時期に無くしたという。
仗助の生まれる以前から活動していたようだが、このタイトルを最後に音楽界を去ったという。
すべてCD付属の解説カードに書いてあった。
先週のどたばたで、朋子の部屋から出てきたものだ。
出てきたときには、CDプレイヤー共々破損していたのだが、修理することは出来た。
壊れていたものと思えないほど、澄んだ音がスピーカーから流れ出てくる。
男性ボーカルが、アコギに乗って、妻の指にはまったダイヤモンドリングのことを唄っていた。
時折、その歌声がゆるむ。あらわな感情を、狂ったようにボーカルは叫んだ。
一人身となったこの歌手に、仗助は自分を重ねていた。
港町である杜王に、一隻のタンカーが現れた。
搭乗員は無し。搭載されていたのは、ゾンビ、腐れた不死人どもだった。
積荷の代価は虐殺と略奪。
慣れ親しんだ隣人も、高校に入って出来た友人も、みな消えてしまった。
殺されたか、連れ去られたか。
良平は、先週の襲撃時に、住民を庇って死んだ。
ゾンビに食われる良平から、仗助は震える視線を外せなかった。
ふと、最も恐れていた悲鳴が、耳をつんざいた。
振り向くと、最も見たくなかった光景が、仗助を襲った。
倒れていたのは朋子だった。
仗助は叫んだ。叫びといえるようなものではなかった。
肺がねじつぶれ息を押し出し、摩擦で喉を焦がし、音速で口を飛び出してゆく。
「―――――――!」
朋子を抱えると、他の連中を押しのけ、逃げ出した。
仗助につられ、何人かが同じく飛び出したが、一瞬の遅れが、彼らの最後を決めた。
走りながら、仗助はまだ叫びをあげていた。
誰かが自分の声を呼んだ気がした。
断末魔も聴こえた気がした。
叫びがその全てを遮断してくれた。
全てを捨てて、仗助は母親を選んだ。
皆を見捨てるのか。
内なる声を吐き捨てながら、仗助はまだ無言で叫んでいた。
スピーカーからは、長めの間奏が流れている。
朋子は、傷こそふさがったものの、高熱を出し、昏々と眠っていた。
母親を別室に寝かせ、仗助は一人思いに沈んでいた。
考えれば、自分とボーカルは、ぴったりと重なり合いはしなかった。
先ず一つの理由に、仗助の孤独は自分で選んだものである。
そもそも自分には、失った友人知人を悲しむ権利も無いのだ。
皆を尻目に自分だけ逃げた。母親と、その他大勢を天秤にかけたのだ。
秤の結果が、今である。
正しい選択だったか。
そうなのだ、と思う。
仗助の思考に相槌するように、ボーカルが、何故、と短く唄う。
曲はそのまま、締めの演奏に入った。
仗助は答えあぐねた。
自分は間接的に人を殺したのだ。
許されることなのか。
母を助けるためとはいえ……
あるいは。
あるいは、俺は、自分が助かりたいがために、母親を言い訳にしたのではないか。
最悪の考えがよぎる。
何もかも忘れ、母親を救ったという結果だけを見たかった。
だが開き直るには、正気すぎた。
それに、まだ助かるとも限らない。
俺は間違っていたのか……?
仗助を置き去りに、音色はトーンダウンしていった。
「仗助さん……」
ギターの余韻も消えたと同時に、もう一つの理由が現れた。
いつからそこに立っていたのか、支倉未起隆(はぜくらみきたか)だった。
仗助親子の他に、ただ一人強制移民から逃れた男だった。
泣きながら朋子の手当てをする仗助の前に、未起隆はふらりと現れた。
以来共同生活を送っている。
未起隆がいうには、仗助と同学年らしい。最近杜王に引っ越してきたばかりなのだという。
仗助は、転校生の話など聞いたことがなかった。
それに、転入するには、夏休みが始まるというこんな時期はふさわしくない。
怪しいことは怪しいが、少なくともゾンビではないようだった。
「お母さんが、なにやらうめいていますよ」
淡々と用を告げると、未起隆は場違いな笑みを送った。
仗助は、未起隆が苦手だった。
生き残り同士、手を合わせてやっていくべきなのだろうが、未起隆には協調性にかけていた。
今の笑みがいい例である。
悪気はなさそうなのだが、常識が欠如していた。
常に冷ややかに固まった顔は、日本人離れしていた。
ヨーロッパ系の血が流れているのではないか。
そう尋ねる仗助に、
「なかなか気に入っているんです、このかたち」
とだけ、未起隆は答えになっていない答えを返した。
他にもいろいろなことを尋ねたが、大抵は返答の意をなしていなかった。
日替わりで答えがかわることも合った。
そのくせ自分からしゃべるときは、酷くくどい説明口調ときていた。
こいつは神経衰弱なのだと、仗助は半ば決め付けていた。
そのため、今の笑みにも、怒りは湧かなかった。
病床の朋子は、汗を顔いっぱいに垂らしながら、低音「あ」や「う」を口からひねり出していた。
昨日よりも、症状が悪くなっている。
「破傷風かなにかでしょうか。破傷風って知っていますか? 急性伝染病の一種で、
傷口から菌がはいって起こります。菌の出す毒素が中枢神経、特に脊髄を冒し……」
いつものことなので仗助は無視をした。
破傷風とは限らないが、あのゾンビに傷を負わされたのだ、病原菌が進入したには違いない。
傷は治せても、病はどうにもならなかった。
だが、どうすればいい……。
「病院へ行きましょう」
なぜか、ムッとした表情で未起隆が言った。
「病気のときは、病院にいくのでしょう? 今がそのときですよね。違いますか?」
表情がまた変わり、悲しそうな顔をする。
行ってどうなる……。
口には出さずに、仗助は自分に尋ねた。
ドクターを呼ぶか。最悪、薬だけ握って帰ってくるか。何の薬を持ってくるのだ。
行くとすれば、少々距離はあるが、市営病院か。病院が破壊されている可能性は。
ありえない選択を、じっくり考えている自分が居た。
判断ミスは死に繋がる。
母を置いていくのにも、抵抗がある。
「ここらにはもうゾンビはいませんよ。引き揚げたのでしょう」
未起隆が、勝手に付け加えた。
ならば、餌を求めてあちらにゾンビどもが溜まっている可能性もある。
否定できる要素は多々あるのに、仗助ははっきりとNoといわなかった。
「すくなくとも行かなければ、お母さんはこのまま死ぬでしょうね」
ずれた笑みで未起隆が言う。
これは、チャンスなのか。
俺は、親を守れる絶好の機会なのか。
俺は、それを得て、嬉しがっているのではないか。
「私は間違っていますか?」
俺は間違っていたのか。
いや。
間違いだと、言ってよいのか。
間違いだというのは、母の命か。
あの時、母が死ねばよかったのか。
今、母が死ねばいいのか。
否定して、どうする……どうなる!
「行く」
怒ったように、仗助は言った。
半分
>>53より
Part.3
アルデバランには守るべき者がある。
この己を好きだと言ってくれたエウロペを、
エウロペを育んだこの地上を、守り通さねばならぬ。
12宮と突破せんとする冥闘士、を迎え撃たんと気炎をあげるアルデバランの眉間に、
光速の鉄拳が打ち込まれていた。
サガの幻朧拳である。
教皇にのみ使用を許され、数多い聖闘士の拳技の中でも、
「魔拳」の異名が付けられている幻朧魔皇拳のベースとなる技であり、
その威力は行使する者の力量次第で自在に操作することが出来る。
裏を返せば、そこまで極めねば伝説の魔拳を使うことは出来ないということなのだろう。
サガの幻朧拳は、黄金の野牛を一瞬だけ止めた。
一瞬あれば十分なのだ、光速の住人である黄金聖闘士からしてみれば。
それだけあれば金牛宮を突破する事は可能なのだ。
幻惑から覚醒したアルデバランは、三人を追撃すべく振り向いた。
だが、それが彼の明暗を分けた。
IFを語っても詮無きことだ。
しかし、もし、アルデバランが幻朧拳に耐えきっていたのなら、
もし、振り向かなかったら、
もし、三人だけではないと彼の思考の端にでもあったのなら、
もし、ムウがもうすこし速く彼のもとについていたのなら…。
「ディープフレグランス!」
冥闘士最悪の暗殺者・地暗星ディープのニオベと…。
「グレート・ホォオォオォンッ!」
黄金の野牛アルデバランは、差し違えることはなかっただろう。
その瞬間、エウロペはなぜ自分が泣いているのか解らなかった。
その瞬間、エウロペはなぜ跳ね起きたのかが解らなかった。
何故か、彼女の母が死んだときと思い出した。
自分のもっとも大切な者が居なくなってしまった。
自分の一部がこそげ落ちた。そんな感覚を彼女は味わった。
「嘘…、ですよね?アルデバラン様!
嘘…。嘘…。嘘ですよね!」
願いは叶わず、黄金の野牛は、散った。
その、豪放磊落な、鉄壁の小宇宙がふっと消え去った事は、
戦闘中の、または戦闘待機中のすべての聖闘士が感じていた。
むろん、双児宮に差し掛かった三人も。
「ハーデスめ!やはり追っ手を…!」
カミュは、隠しきれない焦燥とともにはき出すように言った。
カミュの言葉は当たっていた。
シオンと童虎との壮絶な戦闘を隠れ蓑に、正規の冥闘士たちはまんまと十二宮へ進入していたのだ。
冥闘士とは、冥衣によって体質を作り替えられた人間であり、
中でも地上侵攻部隊である地サツ星たちは、それぞれが一点突破型の魔人である。
ムウと熾烈な戦いを繰り広げた幻惑の魔蝶・地妖星パピヨンのミュー、
聖域の防御機能、雑兵達をほぼ完全に沈黙させた芳香の暗殺者・地暗星ディープのニオベ、
変幻自在に踊る見えざる鞭・地伏星ワームのライミなどはその中でもエースなのだ。
かつての聖戦では、彼らによって数多くの聖闘士が犠牲となったほどである。だからこそ、
シオンは、童虎は、特殊攻撃への対処を講じ、弟子たちへと伝授していた。
肉体そのものを限界まで鍛え上げ、
小宇宙によって脅威の破壊力を生み出す聖闘士にとって、
冥闘士たちの特殊攻撃は鬼門と言えた。
歴代の教皇達が対策を講じ、そのことごとくが破られ続けた結果、
シオンと童虎が辿り着いたのは、第六感を研ぎ澄ます事により、
見えざる攻撃を回避するという、賭博的な対処法だった。
小宇宙そのものと言うべき第七感・セブンセンシズに覚醒していた黄金聖闘士にとっては簡単な事と言えたが、
しかし、誰にも向き不向きはある。
アルデバランがそうだった。
彼は第六感の中でもサイコキネシスや予知といった能力が極端に低かったのである。
生まれついての事のため、彼自身も常に気を張っていたのだが、
この聖戦においては相手が悪すぎた。
後の先を取るカウンター使いであったこともまた、この場合には逆に働いていた。
そして、ムウの哀惜の声が金牛宮にこだました。
アルデバラン死す
ファンの方、申し訳ございません、これ以上はちょっと無理でした
エウロペは黄金時代第五回に登場した僕のオリキャラです
再登場と同時に恋人を殺してごめん
第10話 月光
城と見紛う程の豪邸であった。あちこちに見張りが立ち鉄条網が設置されている様はまるで
要塞の様である。まるで何か重大な会議が始まるのではと思える程に仰々しい警備であった。
正門から玄関まで10分程歩くのではないかと思える庭があり噴水やら木々やらがある。
中に入ると中央に二階へ上がる為の階段があり天井からは大型のシャンデリアがぶら下がっている。
居間にウルズ2とウルズ6が立っている。何かの打ち合わせをしている様である。ウルズ2の左側にいるのが
ウルズ6である。両者とも迷彩柄ではない野戦服を着ている。緑色の上下にブーツ。
「で、“マルス”っていう組織がこの屋敷のお嬢ちゃんを誘拐しようとしてるわけか。」
「ウルズ6、アンタ手出さないでしょうね?」
「ちょ、俺にはそういう趣味は無いっすよ。キレイなお姉さんが趣味なんですよ。マオ姉さんみたいな・・」
「はいはい。そういう話は後でね。」
ウルズ2が足早に居間へと移動する。何より広い屋敷の為居間に行くためには一階から二階まで移動する必要があるのだ。
(家が広いっていうのも困り物ねー。)
心の中でぼやきながらマオは階段を上がり居間へと歩き始めた。“マルス”という組織は今まで聞いた事が無い。
誘拐やらゲリラによる襲撃は治安が悪い国ならある。それが日常茶飯事とはいかないまでもそのようなケースが
多発している地域もあるのだ。
「ミスリルのウルズ6です。異常はありませんか?」
「うむ君達の実力はよく知っている。世界で一番信頼できる傭兵集団だ。」
この屋敷の持ち主、オーク氏がウルズ6に語りかける。
「脅迫されたりする覚えはありませんか?何者かから嫉妬されているとか。」
「今の所、私には無いね。それなりに普通の方法で現在の地位を確立したわけだが。」
実際マオはミスリルの鑑識や諜報部員にオーク氏の事を洗わせている。だが何も出ない。
普通の富豪だ。となれば・・・単なる愉快犯だ。ほぼ同時期にウバメガ氏という男に脅迫メールを仕掛けたのも
“マルス”という組織。そちらはミスリルの別働隊が護衛に周っている。
突然、ウルズ6の腰にある携帯電話が鳴り始めた。ピーピー、ピピピピと電子音を立てる。それは通常とは違い
緊急事態を知らせるものだった。
「こちらウルズ6。どうした!?」
「緊急事態発生!護衛対象のウバメガ氏が謎の部隊によって誘拐されました!」
「そちらの部隊はどうだ!?」
「無事です!ガーッ・・・負傷者は一人もいません!」
馬鹿な。敵の目的は“びんちょうタン”という少女の誘拐だった筈だ。あれはデマでウバメガ氏を
誘拐し彼の企業から身代金を得るつもりだったのか。ミスリルの部隊が護衛であっても誘拐したというのか。
「即座に追跡を開始せよ!」
「無理です!相手はASです!ですが発信機は付けました!準備が整い次第追跡を開始します!」
そして無線は切れた。
「君の仲間がピンチなのかね。私は今予感がするんだが・・」
不意に地面が揺れた。屋敷全体がグラリと揺れている。マオとオークは近くにあったテーブル等にしがみついた。
地震ではない。間隔を置いて振動が来る。ズシッ、ズシッと何か巨大な物が歩いて来る。
「全員オーク氏とクヌギたんを守れ!手の空いている者は窓際を警戒しろ!他の者は居間へ集合しろ!」
ウルズ6が無線で連絡を取っている間にも振動は近づいてくる。ASであれ何であれ、振動の主は
真っ直ぐこちらに向かっている。
「こちらウルズ7!今からそちらに向かう!」
「こちらウルズ6!何をしている!アンタにはびんちょうタンの護衛を命じたはずだ!」
「そうだ!だが敵の目的はびんちょうタンではなくウバメガ氏だった!そしてほぼ同時に別の場所からオーク氏を連れ去ろうとしている!」
ウルズ7からの無線は切れた。今頃自動車でこちらに向かっているに違いない。
「ちっ。しょうがないわね・・。」
拳銃を構えるとマオは居間の入り口付近の角に背中を当てた。念のため右と左を確認する。
既にミスリルの何人かは居間へと集まって来ていた。
今の所相手が侵入したという報告は無い。だが報告は無いだけでもう既にあるのかも知れない。
夜道を一台の車が走っていた。車の後ろに荷台がある四輪タイプのトラックだ。
今その荷台には何体もの着ぐるみが積まれていた。通常と違うのはその着ぐるみの中に
人間が入っている事だ。運転は宗介で助手席には鞍馬がいた。
「しかし・・なぜガキ共を連れて行く気になったんだ?防護服があるとは言え危険な所にガキを・・」
「あちらから願ってきてくれた。こちらとしては非常にありがたい事だ。人手が必要だからな。今回の任務は。」
仲間から連絡を受けた宗介が準備をしている頃、突然「ちくリン」「ちくタン」「あろえ」「れんタン」と名乗る
女の子4人が泉宗一郎の家を訪ねたのである。どうやら宗介が泉宗一郎の家を訪れるまでの過程で助けた子供達らしい。
ちくりんとちくタンは転んで足を挫いた所を、あろえは運動後の脱水症状で気絶した所を、れんタンは神社の石段から足を滑らせて
気を失っていた所を助けてもらったらしい。道場での宗介と鞍馬のセリフから「お手伝いさせて下さい」と言い出したのだ。
その子達は地元なので宗介よりもこの地域の地理を知り尽くしているのだ。
「マダケ」という薬屋の娘であるちくリンは仕事で外出する事が多い為近道を知っている。それに加えてカリスマ性がある為
“リトル=カーボン”というチームを新たに作ったのだ。勿論危険な事は宗介がさせない。闇夜に目が慣れた頃に白兵戦での
基本、トラップを仕掛けるチーム、つまり工作隊である。
「でもよ・・よくOKしたな。お前。」
「俺があの子達の年齢ぐらいではもう戦場にいた。今でも忘れられない仲間達とな。」
鞍馬は絶句した。自分より年下なのにまるで同い年の様な印象を受ける。
「リトル=カーボンに告げる。目的地についたらオペレーション トウェルヴ・キングブロック・ビッグホイールを
発動させる。各自準備しておけ。」
「「「了解!」」」「リョウカイ!」
一人だけカタコトのちくリンが他のメンバーに比べてワンテンポ遅れていた。
「何だいそりゃ・・・」
「作戦名だ。俺独自だがな。俺達、つまりチーム=カーボンが突入しリトル=カーボンが待機する。俺達が敵を外にあぶり出した後
逃げる敵をリトル=カーボンのトラップで一網打尽にする。」
「でもよ・・トラップって・・事前に置くもんだろう。」
「問題ない。あの子達を助けた後、礼として協力してもらった。“量産型ボン太君”には筋力補助装置が付いている。
小さな子供でもAS用の落とし穴を掘る事が出来る。さすがにASがすっぽりと入る程の穴は無理だったが入ったら最後
動けなくなるトラップを落とし穴の底に仕掛けておいた。」
「プロの傭兵だな。」
「お前もプロレスラーだろう。鞍馬。白兵戦時の能力はミスター泉とミスター久我と同じくらい頼りになると思っているぞ。」
「へへへ・・そう言われたからには“マルス”の奴等に目にもの見せてやんねぇとな。」
やがてトラックは目的地に着いた。宗介達はチーム=カーボンとリトル=カーボンの二組に分かれた。突入するのが
宗介達である。リトル=カーボンは主にオーク屋敷周辺および屋敷の裏口、そして庭に待機している。ちく姉妹が持ち場に付く。
一番重要な仕掛け、そう対AS用トラップである。次にあろえがキャプチャーネットの場所に付く。対人兵器であり
引っかかった者の体には電流が流れ気を失う。最後にれんタンが対人落とし穴の場所に付く。その名の通り対人落とし穴なのだが
これが非常に厄介だ。なんせ落とし穴の底はトリモチみたいになっているのだ。一度くっついてしまえば暫くは離れない。
殆ど身動きが出来なくなる。
「よーし!チーム=カーボン行くぜ!」
「面白い事になって来たぜ・・久我重明の力を見せてやるぜ・・マルス・・殺したぜ。」
「老いぼれの経験を嘗めてもらっては困るな。」
「カーボン2(鞍馬)、カーボン3(びん)とペアを組め。カーボン6(丹波)は俺とだ。
カーボン5(久我重明)とカーボン4(泉宗一郎)は裏口だ!」
無論全員ボン太君を着用している。宗介達は正門から、鞍馬達はワイヤーで横から突入しようとしている。
「カーボン1、トウェルブ何とかとか言ってたが12人目は誰なんだ?」
「カーボン6、それは後でわかる。」
今、歴史上、誰も知らないボン太君集団によるポケットの中の戦争が始まろうとしていた・・・。
登場人物紹介
ウルズ2(本名メリッサ=マオ)(出典 フルメタル パニック!) 相良宗介の上官で傭兵集団“ミスリル”の
一員。姉御肌でお酒とタバコが好きな人
ウルズ6(本名クルツ=ウィーバー)(出典 同上) 相良宗介の同僚でメリッサの部下。メリッサ達と
コンビを組んでいる。特技は射撃で ウルズチームの遠距離専門である。
登場人物紹介
クヌギたん(びんちょうタン) 大富豪の娘。父 オーク氏が過保護な為(学校以外外出する事が出来ない)
外の世界を知らず、あこがれている女の子。盆踊りを知らなかったり「お金で解決」という性格に
思える所があったりする問題児。
ちくタン、ちくリン(同上) ちくタンは薬屋“マダケ”の娘。明るい性格でオリジナルのハツメイ品を作り出す
ちくリンの姉。ちくリンは三歳児である。
あろえ(同上)普通の性格で普通の家庭環境で育つ女の子。水分が少なくなると気絶する体質。
れんタン(同上)神社と寺院の娘。なぜか特殊能力があり木魚を叩くと魂が見えたりする。特技は
博打。くじ引きで一等賞を取ったりする。
今回はアクションに力を入れてみました。それでも伝わりにくいかもしれません。今後精進しますんで
ご容赦を。宗介って小さい子を見たら何か思う事があるのかなと思って自分の予想を書いてみました。
彼が好きな人はすみません。僕の解釈が合っているかどうかはわかりませんが・・・。
第10話終了しました。もっと盛り上がる展開を書けたらいいのに・・・。
109 :
作者の都合により名無しです:2006/03/22(水) 23:39:57 ID:la/UGtEx0
>(多分)ユルさん
もしユルさんならお久しぶりです!多分間違いないと思う。このシリーズ好きだから。
あの直情径行と思われる仗助の裏側を見事に描写してますね。深い洞察に頭が下がります。
動きはこのシリーズは少なめだけど、仗助の覚悟は結実するか?楽しみです。
>銀杏丸さん
ああ、やっぱりこのパートはある意味黄金時代の総集編なんだな。牛さんも死んだし。
断末魔の刹那さみたいのを感じます。牛さんは確かにパワーだけで、頭が回るタイプではないですね。
次はムウが大活躍?
>フルメタル作者さん
びんちょうタン軍団に餓狼伝軍団が侵食されていってるwアクションに力入れてるのは成功ですね。
この作品は爽快感が一番いいところですから。びんちゃんのかわいさもあるけどw
しかし、コンビのパワーバランス取れてないなあw
なんかやたら多く着てるんで、一行感想で。バラして欲しいなーw
・マジカル・インベーダー
完結乙。アーネというキャラは知りませんが、楽しく読めました。是非また次回作を。
・キャプテン
ケンシロウが完全に主役食ってますね。戦闘能力・人気共に上だから仕方ないかw
・Standing on the Edge of Summer(ユル氏なら久しぶり)
仗助ってこんな思い悩むキャラだっけ?しかし、内面描写の腕は相変わらず凄いな。
・黄金時代
アルデバラン哀れwでも、本当に終わり近いみたいね。最終話はどのパート使うんだろ?
・フルメタルウルブス
びんちょうタンの仲間ってこんなにいるのか… 久我さんがすっかりいいおじさんだな。
あとね、フルメタ作者さん。
前の人(銀杏丸さん)が投下してから1分で自作を投下ってちょっと早いと思う。
30分くらいは待った方がいいかと。
111 :
作者の都合により名無しです:2006/03/23(木) 11:04:33 ID:cHLrqtZd0
勇次郎が海皇が置いて行ったセーラーネプチューンと対戦して技の数々を
己のものにして、その後セラネプの技とアイテムで転戦するというSSはどうだろうか。
朝目新聞の画像作品にも負けない無敵の勇次郎を創ろうwwwwww
ヌメリが水影心とか修得してて海王決定戦に来てセラネプ化するパターンも有り。
112 :
前スレ445:2006/03/23(木) 15:50:06 ID:dIAZS4Aj0
SS用キャラクタ設定完成
現在プロット作成中
本編13話+番外編3話の計16話構成の予定です
都築節の再現はできるだろうか…
破綻をきたすのを避けるため、全部書き上げてから少しずつ書き込む予定です
第六十二話「炒飯登場」
地球を発って10日あまりが過ぎたころ―――ついにのび太たちはメカトピアが目視できるところまで接近した。
「へえ・・・あれがメカトピアなんだ」
アークエンジェルの展望室から見える、地球に似た青い星。それをキラ、アスラン、そしてリルルは感慨深げに眺める。
「久しぶりね。本当に久しぶりだわ・・・」
「うん。だけど、メカトピアのみんなは今もクルーゼに苦しめられているはずだ」
「ああ。俺たちがやるしかないじゃないか!」
「おう!変態仮面の野郎をぶっ潰してやろうぜ!」
ジャイアンも頼もしい声で応じた。
「よし、ではメカトピアに着陸する。衝撃があるから、みんなしっかり椅子に座れ」
バカ王子の声に、一同は慌てて着席する。シートベルトをつけて、しっかりと身体を固定した。
そしてアークエンジェルはメカトピアの大地へと降りていくのだった・・・。
―――そこは、廃墟だった。かつては大きなビルが立ち並ぶ大都市であったろうその場所は、無残に瓦礫が積み上げられて
いるだけだ。
「・・・僕たちの住んでた街だよ。クルーゼが現れる前までは、みんな平和に暮らしてたのに・・・建物だけじゃない。
死んだ人も大勢いる」
キラはがっくりと肩を落とす。アスランがその先を続ける。
「だから俺たちはレジスタンスに身を投じたんだ。こんなことをする奴を、許したくなかったからな」
アスランも流石に今は電波セリフを吐く心境にはなれないようだった。いつになく神妙な顔つきである。
「―――とにかく、今の状況がどうなってるのか知りたいな。レジスタンスの生き残りにでも会えれば・・・」
「みんな!ちょっと来てくれ!」
バカ王子の声に会話が中断された。すわ何事かとバカ王子の元に集まる。
「レーダーに何かの反応がある。少し離れた場所に、熱源が数十機・・・どうやら、何者かが戦闘を行っているようだな。
ちょっと待ってろ。今モニターに写してみよう」
カチャカチャと端末を操作して、モニターに映像が映し出された。
「これは・・・!モビルスーツ!?」
モビルスーツ―――すなわちクルーゼ直属の兵器だ。そして、それと戦う二機のロボットの姿。かなり腕の立つパイロットが
乗っているらしく、次々と敵機を撃ち落していく。だが数で勝る相手に対し、追い詰められているのは明らかだ。
キラはそれを見た瞬間、顔色を変えた。アスランとリルルも同様だ。
「ど、どうしたの?怖い顔して・・・」
「ごめん!説明は後でするよ」
それだけ言って、キラは駆け出す。アスランもその後を追っていった。
「まずは俺とキラが出る!みんなは後から来てくれ!」
声だけ残して、姿が見えなくなる。恐らく二人は、あのロボットに加勢するつもりなのだろう。
「一体どうしちゃったんだろう・・・リルルは何か知らない?」
のび太の問いに、リルルはモニターから目を離さずに答える。
「・・・モビルスーツと戦ってるのは、レジスタンスの仲間の機体よ」
「えっ・・・じゃあ!」
「レジスタンスの生き残りってわけだな」
バカ王子は得心いったとばかりに頷く。
「よし、僕らも現場に行こう。あの二人なら、万一ということもないだろうが・・・」
―――万一のことなんて、やっぱりそうそう起こらないらしい。アークエンジェルが現場に着いた頃には、モビルスーツは
既に全滅していた。
そして、キラとアスランの姿もあった。彼らは機体から降りて、二人の少年と話し合っている。どうやら例の二機に乗って
いたのは、その二人らしい。
アークエンジェルから降りて、四人の元に駆け寄る。
「よかったわ・・・二人とも、無事だったのね」
リルルが話しかけると、少年の一人がそちらを振り向いて口元に笑みを浮かべる。
「お、リルルもいたのか。ま、この通りだよ―――へえ。そいつらがさっき言ってた地球の仲間か。どうにも頼りなさそうな
奴らばっかだけど、大丈夫かよ?」
少年の一人がやや軽薄そうな態度で応じる。色黒の肌に金髪、どうにも軽い男という感じだ。
「ちょっと、失礼ですよ。せっかく僕らを助けにきてくれたっていうのに・・・」
それを諌めたのはもう一人の少年。まるで女の子みたいな、ちょっと可愛い顔をしている。
「へいへい、悪かったよ」
全然悪いと思っていない顔で答える金髪。その様子に、キラは苦笑する。
「ごめんね、彼はちょっと口が悪くて・・・悪い人じゃないんだけどね」
「いや、別に構わないけど・・・」
「あん?なんだ、青いタヌキまでいるじゃんかよ」
「タ、タヌキだって!?」
久々の暴言に、ドラえもんが切れた。
「ぼくはネコ型ロボット!タヌキだなんて、失礼な!」
「まあまあ、怒るなって。じゃあ、とりあえずその二人のことを教えてくれないか?」
ドラえもんを抑えつつ稟が尋ねた。アスランがそれに答える。
「金髪の彼はちょっと変わった名前でな。痔悪化・エロスマンというんだ」
「じ・・・痔悪化・エロスマン!?うわあ、悲惨な名前・・・」
「ちょ・・・待てよコラ!人の名前を勝手に変えるんじゃねえ!」
怒鳴る金髪の少年。まあそりゃ痔が悪化したエロスマンなんて紹介されたら怒るだろう。
「アスラン、てめえふざけてんのか!?いつからそこまでアホになったんだよ、ええ?」
「ははは、冗談だって。ちゃんと紹介しよう。彼はディアッカ・エルスマン。狡猾で残忍な性格と本人は言ってるが、むしろ
迂闊で残念だ。得意技は炒飯作り。日舞が得意らしいが、そんな設定はもはや忘却の彼方だ。
言葉の最後に必ずグゥレイト!と付ける癖がある。
そしてこっちがニコル・アマルフィ。可愛い顔して姿を隠してこっそり攻撃するえげつない戦法が得意で、戦死したら
死亡シーンが数十回に渡ってしつこく回想されそうな幸薄い男だ。でも続編に出なかったからある意味勝ち組だ」
「何ですか、その無茶苦茶な説明は・・・」
女顔の少年、ニコルも顔をしかめる。
「ごめん・・・アスランは色々あって、こんなことになっちゃってるんだ・・・」
キラは遣る瀬無さそうに二人に謝った。ディアッカとニコルも、その<色々>の中に、本当に色々あったんだろうなあ・・・
と思い、それ以上追求するのは控えた。
「でも、よかったよ。こうして二人に会えて・・・今は、どんな状況になってるの?」
キラが尋ねると、二人はメカトピアの近況を語りだした。
「どうもこうも、相変わらずだよ。主要な都市はほとんど陥落しちまったし、レジスタンスも散り散りになっちまった。
けど、何とか生き残りを集めて再結成したんだ。はっきりいって、苦戦続きだけどよ」
「そうか・・・だが安心しろ。この最強部隊<アスランと愉快な仲間たち>が来たからには、もう大丈夫!一気に反撃を開始
するしかないじゃないか!」
アスランの無根拠な自信に、ディアッカは盛大にため息をつく。
「簡単に言ってくれるぜ・・・」
「はは・・・とにかく、基地に戻りましょう。皆さんもどうか来てください。アスランの仲間なら、僕たちにとっても大切な
客人です」
「だって。どうする、ドラえもん」
「・・・行こう。ここでウダウダしてても仕方ないよ」
それには誰も異存はなかった。そしてのび太たちは二人の手引きで、レジスタンスの基地へと向かうのだった―――。
投下完了。前回は
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kisin/03/61.htm かなり間が空きましたが、本編再開。
今回のタイトルの意味が分からない人は、新シャア板で聞きましょう。
相方の彼も、次回登場予定。
(レス番はほぼ全部前スレです。)
>>443 ちょっとぶっ飛んでるほうがいい思い出になる・・・かなあ・・・(汗)
>>444 元ネタのバンプレイオスからして素晴らしい語呂のよさですからね。
>>446 個人的にはもうちょい電波な文を書きたかったのですが。バキスレイオスは
本編ではかなりまともに戦闘します。
>>5 本編もゴールラインがようやく見えてきたので、これまで以上に力を込めて頑張ります。
>>ふら〜りさん
完結おめでとうございます。原作知らないけど、やたら壮大に終わりましたね。
魔女っ子戦隊パステリオンって名前に似つかわしくないくらいハードだw
番外編は本当はみんなもっと悲惨なエンディングを迎えるはずだったんですが、流石にギャグといえど
やばかったのでこのような形になりました。
118 :
作者の都合により名無しです:2006/03/23(木) 19:12:03 ID:0ReZ+HtW0
まためちゃくちゃきてるな。
>ユルさん
久しぶりのシリーズ再開ですね。1年ぶりくらいかな?お帰りなさい。
今回の主役は一番好きなじょうすけなので余計期待してます。
宇宙人とのコンビで、母を助けるじょうすけはいい。後編に期待。
>黄金時代
ハーデス編の名シーンが蘇ってきますね。どこか物悲しい感じで。
アルデバランは引き立て約やかませというより、こういう星の下に
生まれてきた人と思う。北斗のシュウみたいな。
>フルメタルウルブス
プロの傭兵部隊対、ガロウ伝精鋭たちですか。像山がいないのは
心細いけど、その分主役?の鞍馬がびんちゃんを守るために
獅子奮迅の活躍をしてくれるでしょうね!
>超機神大戦
とうとう本編再開ですね。いよいよ、ラストスパートかな?
まだまだ隠しだまとかもいるんでしょうけど。
いつものノリですが、どこかシリアスさが漂ってきますな。
痔悪化キタああああああああ!!!
水銀灯とわはーとむすーとちょいあの登場を希望する!!
エクスタシンちゃんデモ可!
120 :
作者の都合により名無しです:2006/03/23(木) 20:05:14 ID:cWXiVx5X0
いよいよ超機神も最終章突入か…
まだまだ先は長そうだけど。
知らないキャラがどんどん投入されるけどw
それはそれで楽しみ。頑張って下さい。
>>112 魔法少女+ドラの作品を書こうとしてた人かな?
全部書き上げてからだと疲れちゃいますよ。
それだけのボリュームならうぷしながら、の方が
楽と思いますが。勿論ご自身の自由ですけど。
期待しておりますので頑張って下さい。
種大嫌いで常日頃から超機神に種さえなければ・・・なんて密かに思ってた私も
>>115を読んだら笑うしかないじゃないか!ってなりました。つか腹よじれるわ。
122 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 21:38:51 ID:hGditvmQ0
第十三話 天下一の傾奇者
オルレアンの街に辿り着いてから2日、ジャンヌたちは束の間の休息で英気を養っていた。
その間、ベルトランは敵の砦の外観を調査し、ジル・ドレは策略を練っていた。
慶次はのんびりと街を探索しながら、いつもと変わらぬ様子でキセルを吹かしている。
勿論、松風の背に跨りながらである。そしてジャンヌも同乗していた。
「少しは、気が晴れましたかジャンヌ殿」
慶次が自分の前で遠慮がちに座っているジャンヌに声を掛ける。ジャンヌは微笑んだ。
「ええ。でも、まだ実感が沸きません。 …明日、私が戦場に立つなんて」
慶次は優しく微笑んでいる。道行く人々が松風の威容に立ち止まる。子供も寄ってきた。
ジャンヌはぴょん、と松風から飛び降りると、自分の代わりに子供を松風に乗せてやった。
子供の身なりは貧しい。一見すると男の子か女の子判らないほど、ひどく痩せている。
それでもその子供は松風に揺られ、きゃっきゃっと楽しそうにはしゃいでいる。
ジャンヌは子供に気付かれないように、そっと金貨をポケットへ入れてやった。
子供は遊びに満足すると、元気良く去って行った。ジャンヌはその姿に目を細める。
「優しいですな。あの金は、この街の人々の数年分の給金にもなる」
「私も出自は貧しい村人ですから。でも、ここで戦争すれば、あの子達にも」
慶次は応えない。いくさの熱さと同時に、惨さも知っているからだ。ジャンヌは続けた。
「私たちの兵にも、きっと家族がいるのでしょう。勿論、敵のイギリス兵にも」
ジャンヌの顔に影が差す。慶次はその顔を美しいと思ったが、同時に危うくも感じた。
優し過ぎる。それも、とびきり優し過ぎる。やはり、この人がいくさ場に立つのは無理だ。
慶次は、織田 信長の苛烈ないくさ振りが好きだった。
敵はすべからく殺す。相手が坊主であれ村人であれ、敵に回れば容赦しない。
が、この人は逆だ。市民は勿論、戦場で戦う人間の命まで思いやっている。敵の命すら。
123 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 21:40:58 ID:hGditvmQ0
「あの手紙も、結局何の役にも立ちませんでしたね」
ジャンヌはオルレアンに出発する前、イギリス国王へ向けて手紙を出している。
彼女は文盲なので他者の代筆だが、内容はイギリスへの降伏を求めた手紙である。
勿論、戦況有利なイギリスが、一少女の手紙など一顧だにする訳はなかったが。
ジャンヌは戦争を避けたいと思っている。誰にも死んで欲しくないと思っている。
ジャンヌが少し申し訳なさそうに、慶次に言った。
「慶次さんは、戦争になったら敵を殺すのですか?」
自分はいくさ人である。生き死にの中に身を置いてきた人間だ。答は分かり切っている。
「出来るだけ、人を殺さないようにして頂きたいのですが」
慶次は絶句した。優しさが余りにも浮世離れしている。戦場で人を殺すな、とは。
しかも自分もその戦場に立つのではないか。慶次は少し困惑して、言った。
「ジャンヌ殿も、敵を殺さぬおつもりですか。これから、戦場に立ち続けるというのに」
今度はジャンヌが絶句する。自分が人を殺す、というところがどうしても想像出来ない。
ジャンヌは顔を赤くしながら自問している。慶次は微笑みながら言った。
「わかりました。約束は出来ませんが、殺さぬよう努力はします。ですがジャンヌ殿。
もし自分の命が危ないなら、その時は」
敢えてそこから先は言わなかった。が、ジャンヌには意味が伝わったようだ。
頭から湯気が出ている。何かを必死で思案しているようだ。やがてジャンヌは宣言した。
「決めました。もう一度、戦争を止めるようにイギリス軍を説得してみます」
124 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 21:42:05 ID:hGditvmQ0
ジル・ドレは苦吟していた。どうしても、あの砦を落とす算段が思いつかない。
調査を終え、この指揮官のコテージに戻ったベルトランとジヤンも苦い顔をしている。
そこへ、慶次が帰ってきた。ジル・ドレが吐き捨てるように言った。
「いいご身分ですな、戦争前に逢引とは。我々が作戦を練っている間に」
慶次はそれを無視し、ベルトランとジヤンに耳打ちをする。2人の顔が変わる。
「バ、馬鹿な、それは本当か、慶次!?」
ジヤンの声に、慶次は黙って頷いた。ベルトランは慌てて鎧を着込み始める。
それを見てジル・ドレも異様な事態らしい、という事に気付いた。
彼に構わず外へ飛び出る3人。ジル・ドレもそれを追う。慶次に忌々しげに聞いた。
「あの世間知らずの聖女さまが、何かやらかしたのか?」
慶次は振り返らず応えた。が、その内容はジル・ドレを驚愕させるのに充分だった。
「ジャンヌ殿は、たった一人で砦に向かったよ。いくさを止める為にな」
ジャンヌは砦を見上げて、ぶるっと体を奮わせた。もう夕刻近い。
この頃の戦争は何処か牧歌的な雰囲気が漂い、陽が落ちたら戦いは止める、という
暗黙のルールがあった。一応の見張りはあるが、弛緩した雰囲気が漂っている。
近付かなければならない。声が届く場所まで、砦に少しでも近付かなくてはならない…。
声が届くという事は、当然、矢も届くという事だ。命の保障は無い。
でも、やらなきゃ。もしここで戦争を止められれば、落とさなくていい命が助かる……。
ジャンヌは意を決して砦に歩いていく。足取りが重い。
慶次を無理に帰したのは間違いだったろうか。自分一人で、何が出来るというのだろう。
125 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 21:43:49 ID:hGditvmQ0
高い。近くで見ると、この石造りの砦は山のように高く感じる。
怖い。もし、上から一斉に矢を放たれたら、私なんか絶対に死んでしまう…。
大丈夫。私はまだ、何も成し遂げていないから。
成し遂げていないという事は、成し遂げるまでは必ず、神様が護ってくれる。
スウ、と息を呑み、思いっきり吐いた。そしてありったけの声で、大きく叫んだ。
「イギリスオルレアン軍、リシャール提督に警告します!」
一度声を出すと、何かが吹っ切れた。ジャンヌの美しいソプラノの声が響く。
「私はフランス軍のジャンヌ・ダルクです。明朝、数千の軍がこの砦を攻撃します。
無駄に命を奪いたくありません。降伏して下さい。そうすれば、命は保障します!」
太陽がすっかり落ち、夜が始まろうとしていた。シン、とした寒空に、失笑が響く。
砦の上のイギリス兵からのものである。失笑はやがて津波のような爆笑へと変化した。
そして砦の上の兵から次々と馬鹿にしたような、卑猥な言葉が降り注いだ。
「やれやれ、敵の俺たち相手に売春相手のお誘いか、聖女殿」
「シャルル相手に、体を使って兵を出してもらったらしいな、売女」
「よし、俺一人だけ降伏してやるよ。あんたが体で慰めてくれればな」
慶次たちが到着した。数十メートル先のジャンヌを見て呆然とした。
砦の下の広い平地で、涙をポロポロ流している。子供が苛められているように。
「おい、何をやってるんだ聖女は。敵を前にしてあのザマはなんだ!」
ドン・レミが激高した。慶次はジロリ、と彼を睨んだが、何も応えない。ジヤンが叫ぶ。
「慶次、あれを見ろ! ヤバいぞ、ジャンヌ殿は」
ジャンヌに弓兵が狙いを合わせている。弾かれるように松風が駆け出した。
まるで疾風のような松風の速さである。ジル・ドレは目を丸くした。
ジャンヌ目掛けて罵声が次々と降り注いでいる。屈辱で唇を振るわせている彼女。
その罵声の中に、一本の矢が混じり、勢い良く飛んできた。ジャンヌは気付かない。
パシ、と乾いた音が響いた。ジャンヌの鼻先数センチで、矢尻が止まっている。
慶次が、矢を受け止めていた。素手で横から握り掴んだのである。
126 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 21:45:26 ID:hGditvmQ0
罵声が一気に止まり、シンと静まり返る。あんな神業は見た事が無い。
だが慶次の神業は、イギリス弓兵部隊のプライドを深く傷つけたようだ。弓兵長が叫んだ。
「あの男とジャンヌ・ダルクに一斉射的だ、生かして帰すな!」
雨あられと矢が降り注いだ。ジャンヌは呆然と立ち尽くしている。
慶次は松風をジャンヌの前に移動させ、自ら彼女の盾となった。ジャンヌは目を瞑る。
慶次の赤柄の槍が唸った。まるで空間を2つに引き裂くような、豪快な一振りである。
次の瞬間、イギリス兵は信じられないものを見た。慶次とジャンヌは無傷である。
ただ、数十ともいえる矢が至る所に飛び散っていた。静まり返るオレリアン。
静かに様子を見ていたイギリスオレリアン提督・リシャールが苦々しげに言った。
「聖女を護る、華美で屈強な騎士がいるときく。あれが、その男か」
慶次は太い腕でジャンヌを持ち上げ、自分の前に乗せた。そして砦の方へ声を掛ける。
「俺は前田 慶次。この決着は、明日必ずつける。戦場でまた逢おう」
そして踵を返すと、来た時と同じ疾風で去って行く。イギリス兵に動揺が広がった。
「なんだ、あの化け物は…。あんなのが、俺たちの敵に回るのか」
ガヤガヤと砦内がかまびすしくなる。が、リシャールは浮き足立つ兵を一喝した。
「うろたえるな、馬鹿者! 相手のあの化け物がいるのなら、こちらにもあの鬼神がいる。
あの化け物は、呂布殿に討ってもらえば事は済む」
イギリス兵の動揺はその言葉で収まった。
あの前田 慶次とやらがいくら化け物でも、今この砦にいる呂布に適うわけは無い。
呂布はイギリス軍の前に突然現れ、ジャンヌをくれればフランスを潰す、と宣言した。
疑ってかかる将軍たちの前から姿を消すと、外で悲鳴と絶叫が上がり始める。
呂布はほんの数十秒の間に、イギリス兵五十人を虐殺したのだ。
その男が、今この砦にいる。明日が、フランス軍の実質的な最後になる…。
イギリス軍の誰もがそう確信していた。
あちらが聖女ならば、こちらには魔物がいるのだから。
127 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 21:58:26 ID:hGditvmQ0
慶次の前で、松風に跨るジャンヌが震えている。
松風は気を使うように、ゆっくりと歩を進めている。ジル・ドレが怒鳴った。
「なんという軽率な。しかも、敵前で涙を流すなど。これが我が軍の傭兵どもに
知れたら、どれだけ士気を貶めると」
「うるさいよ、お前」
慶次がぴしゃりと言った。激怒しかかるジル・ドレだが、慶次の視線が怖くなっている。
先程の、信じられない慶次の武が頭を過ぎる。舌打ちしながら押し黙った。
「ジャンヌ殿。あれが戦場です。目の前の敵は、常にあなたを殺す為に動いている」
ジャンヌは口を開かない。うっすら涙を浮かべ、慶次の広い胸にしがみついている。
慶次は優しい口調ながら、初めてジャンヌに対して厳しい言葉を言った。
「そんなザマでは、沢山の味方が死ぬな。弱将の下では、兵は無残な死を迎えるだけだ」
びくん、とジャンヌの体が弾けた。慶次を見上げる。慶次の視線はあくまで優しい。
が、どこか物悲しさと厳しさも秘めている。慶次の目が語っている。
ジャンヌ殿は、もうジャンヌ殿だけでは無いと。沢山のものを背負っていると。
そうだ。自分は何を甘えていたんだろう。
フランスを救うと決めたときから、私は一少女では無くなっている。
そして、そんな私の元へ、数千人の人間が集まってくれている。
そんな私がこんなに弱くては、誰も救えない。死なせるだけだ。
ジャンヌはコクンと頷くと慶次に言った。
「誰も殺したくはありません。でも、それ以上に誰も死なせたくありません。
戦場で甘い、と言われるでしょうけど、本心です」
慶次は微笑みながら聞いている。ジャンヌはジル・ドレの方を振り向いて、言った。
「全ての兵の皆さんを、街の外の広い丘の上に集めて下さい。お話があります」
ジル・ドレが反論しようとする。兵数は8000人を超える。それを一度にだと?
「何をおっしゃる、ジャンヌ殿。明日は戦争というのに、そのような無駄手間…」
「ジル・ドレ殿。私は王太子代理にして神の御使い、ジャンヌ・ダルクです」
それまでとは違う、威厳に満ちた声でジャンヌは言った。有無を言わさぬ迫力で。
128 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 22:00:32 ID:hGditvmQ0
オルレアンより1キロ程南へ下った小高い丘に、汗臭い傭兵たちが集まっている。
正規のフランス兵は3分の1程である。残りの大部分は、ジャンヌの行動と考えに共感し、
彼女の元に馳せ参じた男たちである。 ……が、それは建前だった。
ほとんどの男たちは、(この女についていれば、しばらく食いっぱぐれない)という
胡散臭い連中であった。勿論、大して士気はない。
フランスの現状を憂いてはいるが、その為に自分が傷付くことはごめんだ……。
そういう、クズのような連中が多かった。
勿論、その程度の集まりという事は慶次もジャンヌも知っていた。
だが数は力である。敵の兵力の倍近い人数はいくさでは有利には違いない。
慶次は数頼みのいくさなどごめんだったが、ジャンヌを死なせる訳にはいかない。
不承不承ながら、この大軍を率いる事になっていた。
ガヤガヤと雑然とした雰囲気の中、好き勝手にわめき出す傭兵たち。統制などは無い。
こんなザマで、戦争が出来るのか…。ジル・ドレは泣きそうになっていた。
だが、ジャンヌが丘の上に立つと静まった。好色そうな視線が一斉に彼女に降り掛かる。
すぐに、砦に立った時以上の卑猥な言葉が、ジャンヌに次々と向けられた。
が、今度はジャンヌは微動だにしない。真っ正面から視線と言葉を受け止めている。
数千人の男対たった一人の聖女。これはいくさだな、と慶次は思った。
やや離れた場所で、慶次、ベルトラン、ジヤン、ジル・ドレが様子を食い入るように見る。
ジャンヌが、そこで見ていて下さい、手は出さないで、と断った為だ。
ジャンヌは高い場所から、数千人の男たち一人一人の顔を覚えるようにジッと見た。
その神秘的な静謐に、男たちは気圧され始める。
するとどうだろう。ジャンヌは急に、白銀の鎧を脱ぎ始めた。男たちが口笛を鳴らす。
薄布一枚の上半身は柔らかな曲線を描き、ジャンヌの女の見事さを表現している。
興奮し始める男たち。しばらく女は抱いていない。最前列の男がついに飛び掛ろうとした。
「動くな!!」
ジャンヌが一喝する。彼女らしからぬ口調で、激しく。そして続けた。
「私は、あなた方の隊長です。 ……ですが、見ての通り、ただの、小娘です」
129 :
聖少女風流記:2006/03/23(木) 22:02:13 ID:hGditvmQ0
ジャンヌの小振りの胸を凝視していた男たちも、彼女の声に耳を傾けだした。
「女ですが、この国を愛してます。そして、この国以上に、この国で生きる人たちを」
もう、茶化すものはいなかった。傭兵たちは真剣に耳を傾けている。
「小娘一人の命でフランスに光が戻るなら、私はいつでも捧げるつもりです。
ですが、私には力がありません。一人では、何も出来ません」
ジャンヌの右手が剣の柄にかかる。声がより高く、大きくなった。
「この国に生きるものは、全て私の家族。あなたたちにも、愛する家族がいるはずです」
しゅる、と少しずつ剣を抜いていく。静かに、ゆっくりと。
「だからその家族を守るために。 …私に、命を預けて下さい。共に、戦って下さい」
剣を完全に抜き終わった。そして、その剣を天に向かって大きく突き上げ、叫んだ。
「フランスの、未来の為に! フランスに生きる、家族の為に!!」
最初は小さな小波のように、ぽつりぽつりと小さな声だった。
だがそれは少しずつ大きくなり、最後は津波のように男たちは剣を突き上げ叫んでいた。
「フランスの為に!」 「フランスの未来の為に!!」 「この地に生きる家族の為に!!」
怒号が荒れ狂っていた。最後は、まるで合唱するように男たちの言葉が揃っていた。
「フランスを救う、聖少女の為に!!!!!!!!!」
ジル・ドレはその様子を呆然と眺めていた。なんだ、あの小娘は。
僅か数分の間に、絶対のカリスマとなり、荒くれどもの心を一つにしてしまった。
慶次が頭を叩きながら愉快そうに笑った。
「俺も散々傾いてきたが…。こんな見事な傾奇振りは初めてお目にかかる。
天下一の傾奇者は、どうやらジャンヌ殿のようだなあ」
ベルトランがジル・ドレに静かに言った。
「あの人には、不思議な力がある。これだけは、どんな名将も真似出来ません」
ジル・ドレの苦虫を噛み潰したような顔に、微かに笑顔が浮かんだ。
ジャンヌに完敗したらしい。
夜の帳が近づく夕闇の中、フランスオルレアン軍の心は一つになった。
そして、決戦の朝を迎える。
130 :
ハイデッカ! ◆duiA4jMXzU :2006/03/23(木) 22:05:32 ID:hGditvmQ0
前回のミドリさまへの無礼を反省し、ハイデッカ・ハイデッ子から
ハイデッカ!へと生まれ変わりました。!は反省の証と思って欲しい。
なぜ!が反省の証になるかは、俺にもよくわからんが。
とんでもないミスをやってしまった。洒落にならん。
以前もオルレアンをオレリアンとか書いてたけど、今度は比較になりません。
いつも大好評の爽やかな後書きは今回は無し。ファンの方すまん。
で、大ミスなんですけど、俺も今回のパート書き終えて気付いた。
今回のやつは直しましたが、前話での新キャラの名前が間違っております。
「ドン・レミ」ではなく「ジル・ドレ」が正しい。
ちなみに「ドン・レミ」はジャンヌの出身地の村の名前である。
しょうもないミスだ。だって語感が似てるんだもん。俺は悪くねえよ。
ちなみにこのジル・ドレさんは正しくはジル・ド・レもしくはジル・ド・レイといい、
(点が2つ続くのは面倒臭かったので1つ省いた)実在の人物である。
ジャンヌの親友で(愛人という説もある)、100年戦争の英雄といわれ、
愛するジャンヌがイギリス軍にメラゾーマ喰らって処刑された事で
狂っちゃって、そのせいで黒魔術にのめり込み、何百人もの少年少女を監禁して
最後に首を掻っ切られて処刑されたという、イカしたファンクなおっさんだ。
前田 慶次が子供に見えるほどの傾き振りよな。
ジャンヌが美女だったというのは多分、間違いない。と思う。
後世、レンブラントとかがジャンヌの絵を描いているけど、これは想像なので
当てにはならんが、当時のフランス兵のジャンヌの落書きが残っているのね。
これがまた可愛いの。落書きなので技術はないけど、嘘も無いだろう。
鎧姿だけど長髪で、お目目パッチリ。体ほっそり。
当時の兵たちは、ジャンヌを戦争のシンボルとして、そしてまたオナペットとしてw
大事に思ってたんだろうなあ。
いやー、カリスマですねぇ、さすがは聖少女
ジル・ドレのツンデレぶりを期待しとります
いやはや。こういう事態がさほど珍しくないというのが、今のバキスレの凄いとこですな。
>>邪神? さん
や〜、早々と帰ってきましたかケンシロウ。主人公が精神的・物理的にピンチなところに
颯爽と駆けつけて、鮮やかに目前の敵を撃破してみせるたぁ渋いっ。そして出ました、彼
のある意味キメ台詞、強敵と書いて「とも」。原作で希少な彼のチーム戦、今後が見もの。
>>ユルさん(ですよね?)
条太郎も同じ理由で戦いに身を投じましたが……状況の悲惨さが違いますね。特に四部は
吉良絡みを除けばズバ抜けて平和・日常的でしたから、あの街でこの惨状というのは想像
するだけでなかなか怖い。そんな中にいる仗助、というのも何だか現実離れした感じです。
>>銀杏丸さん
いろんな角度から、原作の克明な描写ですね。この最上級非常事態の中、アルデバランが
ちゃんとエウロペのことを胸に抱いて戦いに臨んでたのが何だかかっこいい。それだけに
結果が悲惨です。予定変更オリジナル展開で、彼女に仇を討たせるなんてのはいかがっ?
>>ウルフズさん
一気に大所帯、かつ華やかになりましたね。「ウルフズ」って宗介と鞍馬たちのことかと
思ってたら、ここにきて大増員、しかもそのメンツといったら。ますますもって、敵組織
「マルス」のメンバーが楽しみです。次は各コンビそれぞれの活躍か、それとも苦戦か?
>>サマサさん
今に始まったことではありませんが、何とも鋭いファンサービスですなぁ。何だかんだで
サマサさんは、評判の良くない種を丁寧に持ち上げている気がします。斜め向こうの方へ。
で。前作と比べドラチームの戦力向上が著しい本作、今回更に増強しましたがどこまで?
>>ハイデッカさん
結局、ジャンヌは最後まで慶次寄りの発言はしませんでしたね。それでも彼女なりの悟り
を開き、将兵の心を結びつけ燃え上がらせた。何気に呂布との対比が面白い。あっちは
無言虐殺で信頼(?)をもぎ取ってる。その化物と戦うは、聖女を護る華美で屈強な騎士っ!
今度「銀魂」を題材に書きたいと思ってるんだけど、需要あるかな?
134 :
作者の都合により名無しです:2006/03/23(木) 23:58:50 ID:lRRV2fKM0
清祥所はハイデッカ氏がおかしくなければ最高なんだが・・
>>133 がんばれ。あの軽妙な掛け合いをどう表現できるかだな
>ハイデッカ氏
どう考えても刑次はジャンヌの脇に回ってますねw
今回もジャンヌの魅力が満載でした。
慶次と呂布と最強決戦で、ジャンヌから主役の座を取り戻せるか?w
scene34 伊藤開司【十二】
カイジの頭脳は今までに得た情報から、ある一つの仮説を導き出していた。
(犯人はおそらく『アイツ』だ……!
あとは、三号室へ行って『アレ』を確かめればはっきりする……
『アイツ』が唯一の状況証拠を手放すその前に、告発してみせる……!)
心中で、そう力強く意気込んではみたものの……
ホールは、陰鬱としたムードに包まれていた。
とても、三号室をもう一度見に行きたい――などとは言い出しにくい雰囲気である。
それでも。場の空気に呑まれ、臆して言い出さない、と云う訳にはいかなかった。
カイジの推理が正しければ……事件の解決は、もう目の前にまで迫っているのだから。
すぅ、と大きく息を吸い込み。意を決して、カイジは声をあげた。
「あー……三号室を見に行きたいんだが……誰か、付き合ってくれないか……?」
しかし、無反応……まったくの無反応……!
ある意味、冷たい拒否の言葉が返ってくるよりも気まずい、長い無言の時間が流れた。
(おいおい……いくらなんでも、無視を決め込まなくてもいいだろう……!)
彼等の口を貝のように閉ざしていたのは、疑心暗鬼だった。
笠間潤も、ハネダユカリも……今までに犯人ではないかと疑われた人間は、例外なく死体となって転がり出てきた。
今こうして、テーブルを囲んでいるメンバーの中に『確実に』犯人が潜んでいる……
その事実はカイジの予想以上に、探偵たちに強いプレッシャーを与えているようだった。
そう。他の探偵たちから見れば当然、カイジが犯人でない、という保証など無い。
ついて来た人間を、その場で襲うような短絡的な犯行はまずありえないとしても……
三号室へ向かおう、と行動を促すカイジの発言そのものが
探偵たちを何らかの罠にかけるべく、虎視眈々と機会を窺っているであろう
犯人の戦略の一環なのではないか……そんな疑念は晴れなかった。
「そ、その……犯人に繋がるかもしれない手掛かりの、心当たりがある……!」
カイジはもう一度呼びかける。それにも、誰も応じないかと思われたのだが……
「俺が行こう」
意外と言うべきだろうか。名乗りをあげたのは、旗元だった。
得体の知れぬ相手ではあったが、この際犯人でなければ誰でもいい……
そんな思いで、カイジは頷いた。
旗元と共に、三号室へと向かう。
カイジは三号室に着くと、早速ドアを開き、その側面を入念に観察した。
(ビンゴだ……! デッドボルトではなく、ラッチボルトに傷がついている……!)
しっかりとした裏付けを得て、カイジの中で推理が確信へと変わっていく。
続いてカイジは、床に転がったままになっていた掛け金とネジを拾いあげた。
その両端には、何かが塗りつけられて乾いたような、僅かにざらざらとした感触があった。
「何か、収穫はあったのか?」
床に這い蹲り、掛け金をじっと見つめるカイジに、旗元が後ろから声をかける。
「ああ、大収穫だ……! これで犯人を告発――」
言って、後ろを振り向いて。カイジの顔色が変わった。
旗元は、大きな木製の時計を両手に持ち……天高く掲げていた。
彼は、何をしようとしているのか。問い質すまでもなく、大方の予想はついた。
scene35 旗元太の『手記』※一部抜粋
○月○日
梓の病気について、担当医師から告知。
特殊なタイプの心筋症で、心臓移植をしなければ助かる道はないらしい。
日本の現行法では、十五歳未満の子供は、臓器提供者……ドナーになる事が禁じられている。
早急に渡米し、移植手術を受けなくては命はない、と言われた。
目の前が真っ暗になった。あまりにも突然だ。何故梓がそんな仕打ちを受けねばならないのか。
金が要る。何としてでも、金が要る。
○月○日
街頭での募金活動と広報活動を並行して行う。
これで資金が集まってくれることを祈る。
○月○日
善意の方々には申し訳ないが、このペースでは、とてもではないが間に合わない。
この手の活動は、個人、団体を問わない横の繋がり、コネクションが大切であると実感した。
俺は今まで、何をして来たのだろうか?
仕事に打ち込むあまり、満足な人間関係を築いていなかったことが悔やまれる。
それよりもっと悔やまれるのは、梓に父親らしい事を何もしてやれなかったことか。
梓の寝顔に誓う。大丈夫。きっと助けてやるから。
△月○日
人を当てにするのはもう止めた。梓を助けられるのは俺以外にはいない。
経理の立場を生かし、職場の資金を二千万円ほど着服した。しかし、これではまだ足りない。
その気になれば、もっと多くの額に手をつける事も出来たが
下手をすれば誤魔化し切れず、渡米前、移植手術前に足がついてしまう。
それだけは絶対に避けなければならない。
△月○日
帝愛グループから、イベントの招待状が届いた。
正直、読まずに破り捨ててしまおうかと思ったが、思い止まって良かった。
おあつらえ向きに、優勝賞金は破格の一億円。信じられない。
都合のいい幻覚ではないかと、何度も用紙を見直した。これは天の助けに違いない。
どうか神様、梓を助けてほしい。梓には何の罪もないのだから。
毎度ありがとうございます。前回投稿は前スレ
>>375です。
そろそろ、今まで話の中にあった違和感が解けてくる頃でしょうか。
・兵藤
作者のイメージとしては、やっぱりこんなキャラですね。
精神的に追い詰められている人間を見てほくそ笑むタイプと言うか。
・謎
整理したんですが、多すぎますね。近々全部消化しなければ……
141 :
作者の都合により名無しです:2006/03/24(金) 14:35:20 ID:oqc/BcrZ0
おお、物語が一気に進んだ感じがありますね。
閉塞状態から、カイジのの頭脳で一点突破、そして謎の一角が
チロチロと溶けていく感じ。
このまま旗元太が犯人、という形では終わりそうにないですね。
第一話「ジャンプ? なにそれ走り高跳びのこと?」
「おい店員さんよぉ、ジャンプが一冊もないってのはいったいどういう了見だよ」
銀髪天然パーマの男が、コンビニの店員にいちゃもんをつけていた。
「はぁ……いや、でも今日もう水曜ですし」
どうやら店に『週間少年ジャンプ』が置いていないことが気に入らないらしい。
「いや、おまえだからってマガジン山積みにすることはねぇだろうが」
「そういわれても今日が発売日ですし」
銀髪天然パーマの男が愛読しているジャンプは、毎週火曜日発売。店に山積みで並んでいる『週刊少年マガジン』は、毎週水曜発売。
「おま、そんな賞味期限の切れたものはさっさと処分するっていうコンビニ店員の心得を律儀に守ってちゃあ駄目だろ。俺みたいに発売日に買い逃した客のために一冊くらい残しておくのが真に良質な店員ってやつよ」
「でも本置けるスペースも限られてるし、ジャンプあんまり売れないし」
「おいいいい!! おまえ今なんて言ったァ!? 確かに雑誌の売り上げはマガジンのが上かも知れないよ!? でもジャンプは全国の少年の愛読書だぞ!? あれ、でも俺おっさんだ! ははっ、ちょっと虚しくなってきたじゃねーか!!」
「帰ってください」
そうして、坂田銀時はコンビニを追い返された。
「ちくしょう、もうこのコンビニは駄目だな。次からは隣町の大江戸マートにしとこう」
その時、銀時は目当てのものを手に入れることができなかった喪失感と、コンビニ店員に対する怒りのせいで注意力が散漫になっていた。
結果、ドカン。
(……は?)
コンビニを出てすぐ、そのまま車道のど真ん中をぶつぶつと呟きながら歩いていった銀時は、車に撥ねられた。
(アレ? なんか前にもなかったかこんなこと? そうだよ、たしかあの時もジャンプ買いにいった帰りに車に撥ねられて……記憶をなくしたんだっけか)
かつての馬鹿な経験を思い出し、銀時の意識は、そこで途絶えた。
……が、すぐに覚醒した。
「あれ? なんともねーぞこれ」
車に撥ねられた――のは確実だったのだが、当たり所が良かったのか、銀時の身体に目立った外傷はなかった。せいぜい擦り傷程度で、血もでていない。
それを確認してか否か、銀時を撥ねていった車もとっくに姿を消していた。
「……まぁいいか」
特に怪我もしていないし、気にすることでもないだろ。
そう判断し、銀時は家路についていった。
「侍の国」
この国は、かつてそう呼ばれていた。
しかし、侍達が仰ぎ夢を馳せた江戸の空はいつしか異郷の船が飛び交うようになり、かつて侍達が肩で風を切り歩いた街は、今では異人が踏ん反り歩く。
二十年前江戸に舞い降りた異人『天人』。彼らの台頭により、侍は弱体化の一途を辿る。
剣も地位も彼らにもぎ取られ、そこはもはや『侍』の国とは呼べなくなっていた。
それでも中には、そんなことはお構いなしに悠々自適に生活する人がたくさんいる。
坂田銀時もそんな人間の一人だ。彼は普段はよろず屋を営み、誰に束縛されることなく暮らしていた。
その中でも、毎週発売される週刊少年ジャンプの購読は、彼の習慣である。
年齢はとうに少年とは呼べなくなっているが、彼は少年の心を忘れず未だにジャンプを読み続けている。
時には葛藤したこともあった。「いい年こいてジャンプってどうよ」と。
だがその時は、「いや、でも男は死ぬまで少年っていうしなぁ」と自己解決した。
結局、銀時はいつまで経ってもジャンプ離れのできない駄目な大人だったのだ。
しかし、彼が車に撥ねられた翌週の水曜日。
事件は、起きた。
「あああああああァァァァーーーーーーー!!!?」
「え、なになに?」
行きつけのコンビニで買い物をしようとしていた銀時は、店内に入ってきた一人の男にいきなり指差され、叫ばれた。
「おま……その手に持っているものはなんだァァ!!?」
「は? いや、どこからどう見てもマガジンだろ」
銀時には、男がなぜ自分に対して喚き散らしているのか見当もつかない。
「あ、なにお宅もマガジン買うの? だったら心配しないでも、まだそこにいっぱいあるぞ」
「ちげー! 俺が言いたいことはそんなことじゃあねぇぇぇ!!」
マガジンを買おうとした銀時にいちゃもんをつけたこの男の名は、服部全蔵。
どこかで聞いたことのある某有名忍者の名前と被るが、彼もまさしく忍者。しかも元お庭番衆で随一の実力を誇る使い手。
とまあこんなプロフィールは今の状況では特に重要ではない。
彼を語るにあたってもっとも重要なのは、全蔵自身もジャンプ読者だということ。
いつだったか、銀時とは残り一冊のジャンプを巡って激闘を繰り広げたこともあった。
好きな漫画のジャンルはラブコメで、最近、痔に悩まされたりしている。
全蔵は、銀時を同じジャンプ愛好家として見ていた。
しかし! 銀時が今まさにレジに運ぼうとしているそれは……週刊少年マガジン!
ジャンプ愛好家がマガジンを買うなど、それは裏切りにも等しい行為。
全蔵は、銀時のその行為が許せなかったのだ。
「目を覚ませぇぇぇ! おまえは超がつくほどのディープなジャンプ愛好家だったはずだァァァ!!」
「は、俺がジャンプ愛好家?」
熱意を持って銀時につかみかかる全蔵だが、銀時の反応は薄い。
「馬鹿言っちゃいけねーよ。あんなのガキが読むもんだろ? 俺は『武装錬金』が打ち切りなった時点で見限ったね、あの雑誌」
「最近だァァァ! それは間違いなくおまえがおっさんになってから打ち切りになった作品ダァァァァァァ!!!」
コンビニ店内で壮絶な口論を繰り広げる大人二人は、はっきり言っていい迷惑。
他の客達も冷ややかな視線で二人を見つめていた。
「おまえよう、マガジンをどれだけのトラック野郎どもが愛読しているかしらねぇのか? サービスエリアとか見てみろ、どこも本棚マガジンやヤンマガ一色だから」
「うるせぇぇ!! ジャンプは俺たちみたいな少年の心を忘れない大人のためにあるんだよぉぉ!」
はたから見れば、熱くなっているのは全蔵だけで、銀時はそれを冷たくいなしているようにしか見えない。
これでは、全蔵が単なる子供だ。
「わかったわかった。お宅のジャンプに対する熱い情熱はわかったから。俺はマガジンを買う。おまえはジャンプを買う。万事解決だ」
「違う! だからおまえはジャンプ読者で……」
「あ、すいませんこれください」
全蔵を振り払い、さっさと会計を済ませる銀時。
「ちょ、待っ……!」
「あ〜、もう春だな。どうりで変な人も増えるわけだ」
そう言い捨て、銀時は早々にコンビニを出て行ってしまった。
あとに残された全蔵には、冷ややかな視線のみが残る。
「な……いったい、あいつになにが起こったっていうんだ……」
なぜ、銀時はいきなりジャンプ読者からマガジン読者になってしまったのか。
なにが銀時を変えたのか。
全蔵には、それがまったくわからなかった。
本当にやってしまった……。
あ、
>>133です。
「銀魂」で初参加させてもらいました。
原作知らない人にはちょっとわかりづらいネタになってしまったかもですが……。
他の皆さんとはえらく空気の違うギャグものになってしまいましたが、続けられるとこまでは続けたいと思っています。
ではなにとぞよろしく。
>カマイタチ
ついに目の前で牙をむき始めた狂気。せっかくカイジが確変したのにw
でも、簡単に背中を旗に取らせるって事は、カイジが想定していた犯人と
違ったって事かな?もしくは日記で示される通り、今までとは別件?
>シルバーソウルって英訳するとちょっとかっこいい
お、銀魂書いてくれましたか。読み切りとばかり思ってたんで連載は嬉しい。
銀さんの天然かつ結構シニカルなボケが最初から反映されまくりですね。
初回はギャグでしたが、この作品特有の「結構いい話」も炸裂するんでしょうか?
148 :
作者の都合により名無しです:2006/03/24(金) 21:54:21 ID:MU878yNr0
>見てた人さん
お久しぶりです。で、しばらくご無沙汰と思っていたら復活と同時に急展開ですね。
まだ旗が真犯人とは限らないけど、多分物語の秘密のある程度は握っているんでしょうね。
カイジは無事でしょうか?ここでカイジが死んだら凄いサプライズですがw
>一真さん
はじめまして、新連載お疲れ様です。銀魂は好きな漫画なので期待しております。
ジャンプ一冊だけでここまでドラマが始まる、というのも銀魂風味満載ですね。
キャラの口調が原作とまったく同じなんで、違和感なくサクサク読めて楽しかったです。
149 :
作者の都合により名無しです:2006/03/24(金) 23:06:15 ID:oqc/BcrZ0
一真氏、新連載ありがとうございます。
正直、銀玉という作品は名前くらいしか知りませんけど
軽妙なやり取りと子供みたいな意地の張り合いに笑いました。
これからもがんばって下さい。
150 :
レンタル家族:2006/03/25(土) 02:21:40 ID:tMfIaSO80
久しぶりに家族全員で夕食を食べる。
これは上手に出来たというバカ弟に私はエルポー。
やたら上機嫌の母は私にピーマンの肉詰めを勧めてきた。
いつもは無口な妹も、その光景を微笑ましく見ている。
弾む会話。
おいしい食事。
すると私たちが夕食を食べているのを見て、母が飼っているペットが
物欲しそうな顔で私を見つめてきた。
仕方がなく私はおかずの秋刀魚をペットに投げる。
すると母が飼っているペットは空中で見事なキャッチ。
それを褒めるミンナ。
私も釣られて拍手する。
私たちが褒めているのを汲み取ったのか、母が飼っている
ペットも両手を叩きながら秋刀魚を食べる。
それを見て、思わず家族ミンナの笑顔がこぼれる。
幸せな私たち。
しかし、それらは『ある代価』を払い続けないと継続できないのだ。
151 :
レンタル家族:2006/03/25(土) 02:24:28 ID:tMfIaSO80
どうもしぇきです。
オーガ→野球と投下しようかと思ったのですが、
今回はショート短編で。
元ネタは分かった人だけが楽しめます。(えっ?
ちょっと今日は時間が無いので感想は今度の投下時に書きます。
では失礼・・。
152 :
レンタル家族:2006/03/25(土) 02:29:33 ID:tMfIaSO80
後、これで終了です。
続きはないです。無駄レスすいません。
153 :
作者の都合により名無しです:2006/03/25(土) 19:44:43 ID:G4dGUcX20
ショート過ぎるだろw
しかし元ねたさっぱりわからん…
最初サザエさんかと思ったけど最後の一行で
俺も元ネタわからん。
正直、感想も書きようがないw
第11話 土方
カーボン6(以下丹波)とカーボン1(以下宗介)が廊下を走っていた。遠くで銃撃の音が聞こえるが
敵の気配は無い。何より今まで通ってきた道には人っ子一人いなかった。
「敵は少ないらしいな。」
丹波が無線で宗介に伝えた。ボイスチェンジャー機能が付いている為外に聞こえるのは「ふもっふ」という声である。
「少ないが精鋭部隊の可能性がある。」
宗介の戦士としての勘が告げていた。ミスリルはこの屋敷の護衛に二つの中隊を送ったようである。その姿を今見ないという事は
敵は目立たず行動しているかもしれない。トラップが仕掛けられている可能性もある。
「カーボン6・・二手に分かれるぞ。」
「待て・・カーボン1。向こうに誰かいる。」
真っ直ぐな廊下の先にに誰かいた。杖を持つ男。年は40代程か。
「土方・・」
丹波はその男の名を呟いた。土方元ーーー
文七はこの男と戦っている。闘っただけではない。勝っているのである。この男の剣に。
七年前ーーーいや六年前であったか。信州。あの梶原に負けてサンボの河野勇を探していた時だ。
最初にあった時もこの男は刀身をその赤い下で舐めた。しかもその時は刃そのものに舌をあてて
下から上までこの男は舐め上げたのだ。その時この音が口をすすいだオレンジジュースの赤く濁った色
まで丹波は鮮明に覚えていた。
「土方・・なぜここにお前がいる。」
音声変換装置の電源を切った上で丹波が土方に話しかけた。
「丹波・・・プロレスリングじゃなくて普通でも熊のコスプレしてるのかい。」
土方がニヤリと笑った。友達に笑いかける様に喋る様は彼を知る者からして見れば意外なモノである。
「土方・・あんたはクヌギ家の客分なのか。」
「違うな・・人手が必要だと言うんで来たのさ。もしもの時の為にここのお嬢ちゃんと行動を共にしろってな。」
言われて初めて丹波は土方の足にしがみついている少女に気付いた。年はびんと同じぐらいだろうか。
オートクチュールの青いドレスを着ていて頭に二つ炭の形をした髪留めをつけている。土方の後ろから半分身を
乗り出し注意深く前方を見ている。
土方の剣の腕は丹波が良く知っている。並みの空手家では瞬く間にナマス切りにされてしまうだろう。
「ここから逃げるのか。土方。」
「逃げたってここの屋敷の主人が攫われるだろうぜ。どっちが攫われようが結果は同じさ。」
「ふもふもふも!」
カーボン1から指令が出る。ボイスチェンジャー機能をONにしている為丹波以外には何を言っているか
わからないのだ。
「土方ッ!」
丹波が腕を使って土方を伏せさせる。土方の真上を銃弾が通り過ぎていった。
「へぇ・・そうかい。」
敵の襲撃である。AK47を装備した敵が攻撃して来たのだ。ズダダダと遠くから撃って来る。
土方は杖から剣を抜き放った。
「見せてやるぜ、この俺の剣をな!」
敵が土方目掛けて銃弾を撃って来る。土方は剣を斜めに構えた。剣の側面が敵の方向を向いている。
一発、そして何発も続いて土方の剣に命中した。カキン、コン、カキン、コン。
鋭い金属音が鳴る。驚くべき事に土方は剣だけで弾を弾いているのだ。剣自体は殆ど動いていない。
恐るべき防御技術である。そして銃では無理だと判断した敵が突っ込んできた。手に警棒を持ち
走ってくる。土方が剣を杖、つまり鞘の中に戻した。
「ひょっ!」
「だっ!」
二人の的が同時に声をあげ真っ直ぐに警棒を振り下ろす。だがその攻撃は土方に届く事は無かった。
声を上げた直後に敵の腕から手首が跳ね飛ばされていたからである。土方の居合い切りであった。
「うわぁぁあ!!」
痛みに耐えかねた敵が混乱して片手で怪我した手首を押さえている
「相変わらず強いんだな。」
「そう言ってくれるとはありがたいね。丹波。だが俺はここから嬢ちゃんと一緒に脱出する。お前達はオークがいる居間にいけ。」
「ふもふもふもふも!」
「了解。土方、俺はお前とクヌギたんを護衛する。」
クヌギたんを抱えた丹波が土方と一緒に走り出す。入ってからそれ程時間は経過していないし正門も近い。2分とかからず脱出出来るかもしれない。
そういう事を宗介は考えていた。辺りを警戒しながら歩き出そうとした直後、彼は何かに気付いた。自分と似たような感じ。戦闘のプロフェッショナル。
「ふもーっ!ふもっふもっふもっ!」
「気付いてたのかい・・・」
曲がり角から男は姿を現した。上半身裸に空手着の下を着ている。帯は黒。
「ふもっふ!」
「何言っているかわからないが・・気ぐるみの中にいるのはどんな奴かな。」
男の髪の毛は濡れていた。宗介と男の間合いが縮む。宗介の戦略はこうだった。この間合いは銃は使えない。恐らく避けられる。
銃器というのは本来射程がピンキリである。射程が短ければ相手に接近するしかない。今装備している銃は中距離用である。
相手の土俵で勝負するつもりはない。状況に応じて戦法を変えるだけだ。
男がゆっくりと間合いを詰めてきた。宗介は動かない。筋力補助機能の出力を最低限にして待つ。カウンターを取られた時の
対処法も想定しておく。最初から全力で来るのか。それとも小手調べに来るのか。何にせよこれは一対一の戦闘。
何度か聞こえた銃撃音も今は聞こえない。明かりがついた建物の中にいる二人。宗介はそこに大気の様に立った。
そして相手が動くよりも先に踏み込んだ。ボン太君の拳が男の顔を襲う。だが宗介の予想外の出来事が起こった。
宗介の拳が当たる前に男は首を振ったのだ。濡れた髪に付いていた水が飛びボン太君の目の部分に付着した。
何という実戦的な。自分の髪すらも得物として使うとは。目晦ましとは非常に有効である。フェイントにも使えるし
伏兵を動かす為の磐石でもある。ワイパーを起動させた宗介が横に動く。そして相手の死角から背後に回りこむーーー
しかしそれは防がれた。いや厳密に言えば回り込む事は出来たが相手が体を回していたのだ。
(ちっ)
宗介が左に動く。相手もついてくる。
(この男・・理にかなった動きをしているな。ボクシングのステップの様だ。)
宗介が更に左に動くと見せかけて斜め右に飛び、体当りを試みる。要はフライングボディプレスである。
ボン太君の重さ+宗介の体重の物が降ってくるのだ。対策としてはガードするか避けるかしかない。
だが相手の男は違った。なんとフェイントでは無く本命の体当りに反応し踏み込んで来たのである。
「かっ!」
男と宗介が空中でぶつかりあう。空中で男がボン太君の左目のワイパーを掴み折った。まだ水は残っている。
つまり視界が半分利かないという事だ。落下しながらも関節を極めようとする男を振り払い宗介は
男と距離を取った。パワードスーツ内部であれこれいじってみるが視界悪化の状況は変わらない。
宗介がパワードスーツを脱ぎ始めた。装備をここで破棄するつもりらしい。相手は待っている。
完全に脱ぎ終わると宗介は構えた。組み技にも打撃技にも対応できるミリタリーマーシャルアーツの構えである。
「葵飛丸・・」
男は自分の名前を言った。
「ウルズ7だ。」
宗介がセリフと同時に動く。今度は右に回りみながらジャブを放っていく。やはり生身の方がいい。自分は銃器の専門家ではあるが
素手での白兵戦も経験はある。美学やロマンを追い求める余裕は普通の兵隊には無い。だが今の自分は不思議と高揚感を覚えている。
飛丸が右手で宗介のジャブを弾いていく。ジャブとほぼ同時に出すローもカットしている。不意に宗介が飛丸の人中を突いた。
そして宗介が疾き事風の如く回り込み飛丸の右腕を極め足を払って投げる。そのまま相手の頭を地面に叩き付ければ宗介の勝ちである。
ここまでは宗介の計算通りだった。しかし彼の計算に誤差が生じた。飛丸が力に逆らわず自分から飛び足から着地したのである。
プロレス技のブレーンバスターを防ぐ要領と同じであった。
飛丸が左拳と右足刀をがら空きとなった宗介の腹に叩き込む。痛みから飛丸の腕から手を離した宗介に飛丸がローとミドルを混ぜた攻撃をする。
なんだ、こいつは。“待ち”タイプの格闘者なのか。グラップラーなのかストライカーなのかわからない。どちらが得意なのかもわからない。
組み合えばある程度までは把握できる。だがこいつにはそれが無い。隠しているだけなのかも知れない。理にかなった動きをしているのはわかる。
宗介はカウンターでローを放った。鞭の様な蹴りが飛丸の右足を襲う。カットしてもまだダメージはあるらしく距離を取る為に後ろへ飛丸は下がった。
「温まったな。」
「ああ。」
今までのは本気では無かったというように飛丸が答えた。両者とも睨みあったままである。
登場人物紹介
土方元(小説版餓狼伝)旅をしながら色々な組織の客分(寝床と食料を貰い仕事を請け負う人材。)
になっている剣使い。
葵飛丸(同上)葵三兄弟の一人。昔アメリカへ渡った葵流という古武術の子孫。
漫画版餓狼伝にはまだ出て来ていない人間を出してみました。僕の中では土方元は渋くて強面だけど
実はいい人です。ヤクザの筋の通し方の現場を見てしまった丹波と酒を飲むあたりとか。
葵飛丸は・・あんまり印象に残ってないので原作の7巻あたりを参考にしてみました。
今回夢枕獏先生の文章を参考にして見ました。あんなに無駄の無い文章書けるだなんて・・・
やはりプロは違うな・・・。第11話終了です。
土方や葵まで登場とは!
ボンタくんやびん達といった可愛いキャラが縦横無尽に走り回ってる一方で、アクションの殺伐さがたまらんw
162 :
作者の都合により名無しです:2006/03/26(日) 02:42:50 ID:HKmVMAzo0
お疲れさんですフルメタさん。
原作ファンにはたまらない出演者たちですな。
汗臭そうなガロウキャラの中にいるびんちゃんたちが
想像つきませんが、その対比も面白かったりw
意外といっては失礼だけど、アクションシーンの描写に上手いのに感心した
葵兄弟は好きなんで活躍させて下さい
サナダムシさんミドリさん復帰祈願あげ
165 :
作者の都合により名無しです:2006/03/26(日) 22:32:31 ID:n02MUY6+0
うみにんさんとVSさんもな
166 :
ふら〜り:2006/03/26(日) 23:18:12 ID:Qax3MhiA0
>>見てた人さん
皆目見当もつかないアテは阿呆でおますっとイジけつつ。カイジの行動、原作での主人公
死亡ルートをなぞってるっ! と心配してたら案の定。でも本作の場合、彼が犯人とは
限らない。カイジを犯人かもと疑っての先手必勝かも。その辺り、原作より闇が深い……
>>一真さん(ちなみに私は剣心が終わって少し経った頃、購読をやめました)
濃くてテンポよくて、気持ち良く読めました。男、いや漢たるもの、こういうコダワリ=
浪漫を忘れちゃいかんと思います。仲のいい友達が、自分の嫌いなアイドルの追っかけを
してた、みたいな気分か全蔵君? ちょっと可愛いぞ。お初とのことですが、期待大です!
>>しぇきさん
う〜、解らない! とりあえずピーマンの肉詰めが出てくる漫画といえば「あさりちゃん」
しか浮かばない。あれも家族ものだし、ペットも確か近年登場してたはず。けど人員構成
も性格も全然違うみたいだし。最後の一文がブラック風味で気になる……回答ぷりぃず!
>>ウルフズさん
とりあえず土方と葵、腕前もさることながら駆けるボン太君ズを見て動じないとは中々の
胆力(?)。技術的にも精神的にも、カーボンの面々に劣ってないようですな。そして、
>今の自分は不思議と高揚感を覚えている。
原作でも言ってましたね。熟達の傭兵が見せる男らしさ、つーか少年らしさ。宗介らしい。
167 :
邪神?:2006/03/27(月) 00:25:12 ID:7K3bE+vg0
クジャラート、過去に首都メルビルを中心とした国家バファルや、ローザリアと領土争いを続けて来た国。
だが今は敗戦続きで兵力は落ち、士気も低い。
サルーインの復活に備え、和平を結んでなかったら滅んでいたであろう。
立場的には辛うじて冷戦状態に持ち込んだ、という訳だ。
しかも領主トゥマンは野心家で有名である、近い内に動きが見られるであろうとどこも警戒している。
そして、最も警戒されているのは、アサシンギルド。
〜アサシンギルド〜
鏡の前に立ち、己の肉体を見つめる者がいた。
自らの美貌に酔いしれ、南斗の使命を捨てた男、その名はユダ。
「俺はこの世で最も強く・・・そして美しい!レイの居ない今、この妖星こそが最も美しく輝く時。」
フンドシからリップを取り出し、唇へ塗りつけるユダ。
サルーインによって力を得て蘇ったユダは、一時はレイの居ない事に喜びと共に悲しみを抱いた。
この世で自分こそが最も美しいという実感と、あの美しい南斗水鳥拳を目にする事が出来ない。
その両方の感情がユダを悩ませた。
だが今は気にならない、何故ならレイに変わるライバルが出たからだ。
「ふ・・・相変わらずフンドシ一丁とは、趣味が悪いな。」
後ろから声がする、奴だ。
アサシンギルドトップクラスの実力を持ち、そして最高のファッションセンスを持つ男。
ドイル。
「見たまえ、この俺を・・・女性の持つ美と男性特有の肉体美の調和だ。」
ピチピチに張り詰めた純白のドレスを身に纏った男は、ユダを挑発する様に自らの容姿を自慢する。
「フン!馬鹿め、裸体こそ己の美しさを最も際立てるドレス!女装をするのは貴様の肉体ではドレスにはなれないから、
それを示しているのに気付かんとは・・・愚かな奴よ。」
二人の間に火花が走る、ちなみに記し忘れたがここは廊下、十字路になっている。
勝手にユダが鏡を置いて廊下を通りがかる部下達に自分の美しさを示しているのだ。
反対側はもちろんドイル、コスプレショーを披露する為いつもユダと鉢合わせになる。
部屋に入るのは寝る時くらいだ、ユダとドイルの両方に「どちらが美しい?」等と聞かれたら、
待っているのは死あるのみ、爆殺か斬殺か。
二人が寝ている時間に通り抜けるしかないのでここの暗殺者にはクマが消えない。
168 :
二十一話「裏を牛耳る者」:2006/03/27(月) 00:27:16 ID:7K3bE+vg0
二人が争っている時にこの奥にある宿舎室にたどり着けるのは、ただ一人。
「むっ!」
「きたか!」
二人が即座に猛者の臭いに反応する。
若干十五にしてヤクザ達を収める組長となった、花山薫。
純白のスーツにワニ革の靴、服装からも高級感が溢れ、普通の成金ヤクザとの格の違いが浮かぶ。
だが注目すべきはそこでは無く、その肉体。
顔には無数の傷が刻まれている、否、顔だけではない。
スーツの下には体中が弾痕と刃物で切りかかられた様な深い傷跡が幾つも浮かんでいる。
ドイルとユダが道を塞ぎ、花山の前へ立ちふさがる。
「いい所に来たな、花山。このわいせつ物と私のファッション、どちらが美と呼ぶに相応しい?」
その言葉にユダは血が出るほどに拳を握り締め、殺意を抑える。
そしてその血をリップの上から唇に塗りたくり、満面の笑みで話しかける。
「フ・・・こいつの戯言に付き合う必要は無いぞ、素直にこの俺が、この世で最も美しいと言え。」
思わず体の中に仕掛けてある武器で襲い掛かろうとするドイル、だが冷静に憎悪を募らせる事で対処する。
二人の間の火花が更に激しさを増す中、花山は表情一つ変えずにスーツを脱ぎだす。
その脱ぎ方というのが異常だ、なにせ服の構造を無視してズボンから動まで一気に引き剥がす様に脱ぐのだから。
そして二人に背を向ける。
そこには、花山家に代々伝わる伝承を元に彫られた刺青、「漢立ち」が堂々と背中を埋め尽くしていた。
斬られ、歪み、それでも鬼神の如く表情は変えず背中にある幼児を寺の鐘の中へと入れ、守り抜いている。
唖然とする二人、傷跡の無い美しい肉体を完璧と信じるユダも、女性と男性の美のミックスを信条とするドイルも。
只その美しさには立ち止まり、困惑するしか無かった。
スーツのポケットから酒を取り出し、飲み口をへし折り大口を開けて中身を一気に飲み干しながら、
花山はその場を去ってしまった。
「くっ、認めん!あんな傷だらけのみすぼらしい体を、美しいなどと・・・。」
「馬鹿な・・・俺のファッションこそがこの世で最高峰の美貌を映し出すのだ!」
迷いを振り払うため、二人は踵を返して自分の部屋へと戻っていった。
この日、ようやく暗殺者達に安息が訪れた。
169 :
二十一話「裏を牛耳る者」:2006/03/27(月) 00:28:30 ID:7K3bE+vg0
〜クジャラート・首都タルミッタ〜
「本当に街につけるとはな、アンタこの街の出身なのか?」
ロニは、軽く2メートルはある大男、スペックに話しかける。
「イヤ、ダガ住ンデルノハコノ近クダゼ。」
何か様子が変だ、言葉の奥底に何か決意の様な物が見られる。
だがカイルはそんな事は気に掛けずダッシュで道具屋へと向かう。
「くっそぉぉぉ!なんでアップルグミが無いんだ!戦闘中に苦い薬飲んで回復なんて嫌だ!」
グミで回復するのも如何なものか?
まぁ自分もそうなので気には留めないロニ、リアラ。
スペックも肉まんで毒が裏返ったのでノープロブレムだ。
「まぁ・・・グミはいいけど腹は減ったな、食料も確保したいし。
スペックさんよ、どっかうまい飯扱ってるとこ頼むぜ。」
ロニが六つに割れた見事な腹筋をさすりながらスペックに尋ねる。
「イイゼ、其処ナラ話モ出来ルカラナ。」
そう言うと足早にパブの中へと入っていった。
続けて入っていこうとするロニ、だがカイルが苦しんでいるのに気付く。
「おい、どうしたカイル!何か悪い物でも食ったか?」
苦しみながらカイルの指差す方向には「ポーション」と書かれた怪しい色の飲料水が市場に売られていた。
市場に平気で毒物を置いているのだろうか?真相を確かめに行こうとするロニの耳に入ったカイルの一言は、
「おえっ、まっずー・・・。」
少し本気で心配してしまった自分に腹が立つ、今度からカイルの水筒にはこの「ポーション」を入れておこう。
リアラがカイルの背中を優しく撫でて吐かせている、何やら恋人の様にしか見えないので、
カイルに出す飯にも「ポーション」を入れておいてやろう。
そういえばシコルスキーに飯やってなかった、まぁいいや。
その時シコルの入っている木箱は、港で沈みかけていた。
カイル達はほっといて、一足先にスペックに続けてパブへと入る。
170 :
二十一話「裏を牛耳る者」:2006/03/27(月) 00:29:32 ID:7K3bE+vg0
スペックが奥の席に腰掛けている、周りに人が居ない所に。
やはり何かある、席に座ると早速その確信を突いてきた。
「アンタ、気付イテルンダロ?俺ガアンタ達ヲ助ケタ理由。」
直球で来た、ならばこちらも素直に応じるとしよう。
席に着き、話を聞くロニ。
「実ハナ、俺ハアサシンギルドッテ組織ノ上位アサシンナンダ。」
アサシン、暗殺者である事を明かしてきたスペック。
まだこの世界では日が浅いため、組織の事は知らないが暗殺者の頼みでは碌な事では無いだろう。
一応最後まで聞いて置くロニ。
「オ前等ヲ助ケタノハ、ソノ組織ヲ潰スノヲ手伝ッテ欲シイカラダ。」
自分の組織を潰して欲しい、これは意外だったが何にせよ面倒に変わりは無い。
トンズラしようか考えていたその時。
「いいじゃんロニ!助けてもらった恩もあるしさ!」
後ろにはすっかり元気になったカイルの姿があった。
こうなると後の展開はお約束だ。
「オウ!スマナイナ、ボウヤ。」
がっしりと手を繋ぐ二人、すかさず食いかかるロニ。
今ならまだ間に合う。
「ちょ、ちょっと待ってくれるか?俺達は旅の途中でさぁ。」
だがロニの意図に反して、パーティーのリーダー英雄(の息子)カイルは。
「何いってるんだよロニ!悪の組織に勇猛果敢に飛び込む俺・・・まさしく英雄の姿じゃん!」
幾らカイルの父、スタンを尊敬しているロニでもこんな時ばかりは、
息子を英雄ヲタクに仕立てたスタンを恨まざるを得なかった。
やる気満々のカイル、こうなると止められない。
もう諦めるしか無いのか、そんなロニを更に追い詰める事態が起きる。
吹き飛ぶ店のガラスの音と共に、店内へと突入する男達。
「スペック、貴様の命貰ったぁ!」
奇妙な装束に持っている武器は爪等の異様な武器、ほぼ確実にスペックの同族であろう、
カイルのやる気も男達の突入で最高潮になってしまった、この後の展開もやはり「お約束」なのだろう。
諦めの気持ちと共に、ロニは愛用のハルバードを握る手に力を込めた。
171 :
邪神?:2006/03/27(月) 00:30:37 ID:7K3bE+vg0
最近は9時くらいに眠くなるけど3時くらいまで根性で耐える良い子な邪神です。
ひどい時は目に氷突っ込みながら目を覚ましつつ寝ないでモンハン2にしがみつきます。
なんて不健康なのかしら!
まぁ俺の健康状態はどうでも良いですね。
しかし今回のドイルVSユダでドイルが「しけい荘」のドイルとかぶってる様な・・・。
違う!パクリではない!インスパイヤ(ry
ぬうううう、ドイルを真人間に更生させてギャグをユダとシコルに絞れと言うのか・・・。
ダメだぁぁぁ!そんなことしたらドイルは只のマジンガーZだ!
インパクトもネタも失われてしまう!
と、言う訳でコスプレヲタを変えずにパワーアップさせてみます。
ドイル戦、お楽しみに。
しかし後書きにもネタバレを多く含む辺り、後書きから読む人は不憫だろうな・・・。
ゴメリンコ。さらにタイトルの書き忘れもゴメリンコ。
〜サガ講座〜
タルミッタ クジャラートの総本山、豊富な水源があるが船は別の町で出している。
そのため港は無い筈なのだがそこは貧乏だし物資の流通で金儲け、とかの裏づけで。
建設費?トゥマンは民には慕われているのでなんとかなりますよ。(ヤケクソ)
トゥマンは用心深いのでしょう、城に人を入れようとしませんが、城には特別な方法で入る事が出来ます。
豊富な水も侵入者避けであろう。
バファル メルビルを中心とした国家、衰退しているクジャラートと違って街は多く、物資も多い。
だがクジャラートの様な独自の文化はないのでローザリアと流通している武器に大差は無い。
邪神?氏乙
しっかしアサシンギルドって、およそアサシンに向かない奴ばかりな気がするのは最早言ってはいけないことかw
ーーー右、左、ここで飛び込んで右脇… クソ
「チッ」
刃牙は何度目かの小さな舌打ちをした。懐に入り難くなっているのだ。
ーーー速くなっているのか? いや
刃牙対カマキリの第二ラウンドはカマキリが優勢であった。
鎌の使い方は巧みさを増し、刃牙が懐に入ることを許さない。
ーーー 間接狙いを見抜いている、それに
鎌の一振りごとに無駄な動作が無くなっていくのが見て取れた。
明らかにこの化け物は刃牙から「格闘技」を学習しているのだ。
リハーサルにはない動き、刻々と克服されていく弱点。
もろかったはずの受けが洗練されていく。カウンターが取れない。
外れた鎌が地をえぐり、岩を砕く。
−ーー まともに喰らえばえらいことだ
カマキリの足払い(正確には足薙ぎとでも言うべきだろう)。
だが振りかぶりが微妙に大きい。動作が丸見えである。
「喰らうか、バカ」
かわしざま跳びあがり、もう一度のど笛に一撃を喰らわせようとしたときである。
ーーー フェイント!?
体が急に重くなり、そして突然重力が消える。
刃牙は天高く放り投げられていた。
ーーー やばい
下ではカマキリが鎌を構えて待ち受けている。
カマキリと交差する刹那に攻撃し、鎌の衝撃を軽減する他ない。
カマキリの鎌と刃牙の体が交差する。
その刹那に刃牙が鎌を受け止めつつ繰り出した回転蹴りは、カマキリの頭部を,ぐちゃりした感触を残して完全に叩き潰した。
空中での攻撃に姿勢を崩した刃牙が立ち上がり即座に振り向く。
ーーー やっぱりな
たった今頭部を蹴りつぶされたカマキリがまだ立ち上がり鎌を構え、中身の飛び出した複眼でこちらを見据えている。
刃牙はゴクリとつばを飲み込んだ。
カマキリはしゃりりと舌なめずりをする。
斬撃というにはあまりに打撃的な鎌の嵐が刃牙を岸壁に追い詰めていく。
潰れた頭部が徐々に回復していくのも見える。
カマキリは狩りをするとき、獲物を弄り、体力の消耗を待って鎌で絡め取る。
刃牙はカマキリの術中にあった。ガードをしても硬い鎌の攻撃は容赦なく肉を削り取っていく。
刃牙の威力を絞った攻撃に傷を受けても意に介する様子はない。
カマキリの鎌の有効攻撃圏数メートル四方、其処から刃牙は抜け出す術を全て失っていた。
ーーー こいつ、笑ってやがる
何度目かの刃牙の攻撃は肩口で受け止められ、再び岸壁に跳ね飛ばされる。
懐に飛び込むことも、有利な位置を確保するのも封じられた。
だが刃牙は自分の口元が緩んでいくのを感じていた。
傍目には状況は絶望的である、会心の攻撃は無駄に終わり、敵の術中にあり、倒す術は見当たらない。
しかし刃牙の中に湧き上がってくる感情は恐怖でも、絶望でも、敵愾心でもなく、もっと熱いものだ。
美味い料理を目の前にしたような、美酒に酔い始めるときの感覚。
あたりの空気の質が変わり始める。
木々のざわめきが大きく聞こえる。
カマキリの斬激が完全に空を切る。
気押される様に後足が半歩下がる。
再び前進し構えたカマキリの口元が一瞬大きく開く。
光の加減によるものか、刃牙にはカマキリの複眼の曲線に反射する光の筋が、まるで哂っているように見える。
ーーー さあ、もっと
ーーー もっと分かり合おう
刃牙の背中が軋みを上げていた。
その昂ぶりは上から降ってきた黒い何かによって突然中断された。
その黒い何かはカマキリを殴りつけ、その巨体を持ち上げ、荒々しく投げ飛ばした。
ーーー 親父?
違う。
黒を基調として紫がかった体。隈取のような面。手にした赤い棍棒。そして頭に生えた角。
まるで昔話の鬼。
「くれない(紅)」
炎につつまれ、その姿がみるみる赤く染まっていく。
立ち上がったカマキリの鎌を平然と受け止め、逆間接にへし折り、拳の一撃でカマキリの外骨格を貫く。
逃げようとするカマキリの首を抱え、締め上げ、無造作にひっくり返し、脚を引きちぎる。
おもむろに取り出した太鼓をカマキリの体に取り付け、リズミカルにたたき出す。
「灼熱真紅の型」
そのリズムが生み出す、何か清らかな力は、カマキリの体を満たしていき。
そしてカマキリは轟音を立てて粉みじんに消し飛んだ。
鬼の姿をしたそいつは言葉を失う刃牙の前で、鬼の面を外し、さわやかに笑ってこう言った。
「結構、鍛えてます」
ーと、どうしよう。
本編で勇次郎が突っ込んでしまったので少し途方にくれています。
それと恐ろしいことに気づきました。
みんなの歌にあるのは「赤鬼のタンゴ」でワルツではないのですね。
素でまちがっていました。
ええいままよ、何とかワルツにしたててやるわ
とか思ったのですが、タンゴとワルツがどう違うのかがわからないのでどうしようもないですね。
>黄金時代さま
デスマスクの闘う理由がカッコいいと思ったら、戦わずに冥府に戻られてしまったw
>>この時点ですでに、アフロディーテとデスマスクは、ムウ最大奥義の前に冥府へと逆戻りしている。
に哀愁がただよっていますね
>487様
猟師は誰なのだろう、わくわくします
>ふらーりさま
魔獣D=アーネ なんだか泣けてきました。原作知りませんが、助からないのでしょうね。
>standing edge of the summer さま
仗助はジョジョの主人公の中では比較的弱い主人公なのだというのが見えてきますね。
この世界でのDioとの決着はつけられるのだろうか。
>フルメタルウルフズさま
葵流まで出てくるとは、びんは何をもっているのでしょう。しかし久我さんいい人だ。
>サマサさま
ディアッカ以上にアスランの今後が心配です。
>聖少女さま
慶二は信長が敵だと知ったら喜びそうですね。ジャンヌといさかいになりそうな予感。
>カマイタチさま
カイジ無事か。旗さん本当に生きてるのか。偽者だったりは。
>一真さま
はじめまして原作の雰囲気がそのまま文章から感じられました。俺もそれぐらいうまかったらなぁ。精進します。
>邪神さま
なんだかアサシンギルドの構成員の方がナッグラビーよりよほど濃くて強そうですねw
響鬼さんの体力(紅時)
パンチ力 8000貫(約30t)
キック力 13333貫(約50t)
100m 2秒
幅跳び 90m
数値的には勇次郎と五分に渡り合えると。
180 :
聖少女風流記:2006/03/27(月) 15:49:47 ID:SpV4Itlp0
第十四話 開戦直前の不吉
私の目の前で、女が屈強な兵に犯されようとしている。
女は泣き叫びながら必死で抵抗していた。が、所詮は女の力である。
簡単にテーブルの上に強引に組み伏され、粗末な衣服を強引に剥ぎ取られた。
女の下半身が露出した。白い尻が剥き出しになる。更に女の悲鳴が大きくなる。
兵はそれを見て、サディスティックな微笑を浮かべて自分も下衣を脱ぎ始めた。
女は敬虔なキリスト教徒だった。この日まで、彼女は純潔を守り通してきた。
畑仕事を手伝い、羊を追いながら、貧しくとも平穏な人生をこれまで歩んできた。
やがて、村の誰かと結ばれ、子を宿し、年老いて天に召される。
自らが祈りをささげた主の下へ、幸せに旅立つと信じて疑わなかったはずだ。
だけど、現実なんてこんなものだ。神に祈りは届かない。
とうとう男はいきり立った彼自身を、女の聖地へとねじ込んだ。
快楽に歪む男の顔と、苦痛に歪む女の顔。対照的なはずの顔が、何故か同じに見えた。
女は私が今まで見た事の無いような憎悪を浮かべ、呪詛の言葉で男を罵った。
私は暖炉の中に隠れながら、目の前の光景に奇妙な興奮を覚えていた。
性的興奮と言ってもいい。まだ性的な事は何もわからない年頃だったのに。
背中をナメクジが這い回っているような感覚に、体を熱くしていた。息を荒くしていた。
……目の前の犯されている女は、私の姉だというのに。
兵の行為が終わりを迎えていた。
呆けた顔で腰の動きを止めると、男は女から一気に引き抜いた。
女は気でも触れたかのように独り言を囁き続け、テーブルに覆いかぶさったまま動かない。
兵は女へ向けて何かを言った後、剣をゆっくりと引き抜いた。
そして背後から、女の、私の姉の背中を貫いた。何の呵責も無い、自然な動きで。
私はその後の光景を、一生忘れないだろう。
181 :
聖少女風流記:2006/03/27(月) 15:50:55 ID:SpV4Itlp0
兵は笑いながら部屋を去っていった。彼にはただの遊びだったに違いない。
村を必要以上に蹂躙したのも、姉を犯したのも、姉を背後から刺し抜いたのも。
私は兵が…。イギリス兵が部屋を出た後、暖炉から飛び出した。
すぐに姉にしがみついた。先ほどの後ろめたい快感はとうに消し飛んでいた。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん!!」
もう、私以外は誰もいない部屋に、私の泣き声が虚しく鳴り響いた。
今この部屋に存在するのは、私と、粗末な家財と、目の前の肉の塊だけである。
姉だった肉塊に寄り添って狂ったように泣いた後、私は立ち上がった。
いや正確には、イギリス兵への憎悪が、私を立たせたのだ。
その時の私の顔には、神など宿っていなかったと思う。
おそらくは、対極の禍々しい何か。別のもの。魔女とも、悪魔とも。
(またあの夢…? ここしばらく、見なかったというのに)
ジャンヌは汗でびっしょり濡れたシーツを撫でながら、ため息混じりに首を振った。
動悸が早い。体が小刻みに震えている。悪夢が、彼女自身を浸食している証拠。
両手で顔を塞いだ。もう、退けない所まで来ているというのに。
窓から外を見た。寂光が夜を溶かし始めている。朝が近い。
今日は1429年 5月4日。いよいよオルレアン決戦の初陣の日である。
あと3時間もすれば、フランスの命運を賭けた戦いが始まってしまう。
それなのに、今の自分の情けなさはどうだろう?
客観的にいえば彼女を誰も責められまい。
初めての本格的な戦争が、百年戦争の分水嶺となるやも知れぬ決戦である。
が、ジャンヌはこの戦いの隊長であり、将軍であり、フランス軍のシンボルでもある。
彼女の戦い振り如何で、フランスの未来が変わるといっても過言ではない。
それは彼女にも分かっている。が、彼女の迷いは晴れない。
でも自分は、本当に聖女と呼ばれる資格があるのだろうか?
182 :
聖少女風流記:2006/03/27(月) 15:51:40 ID:SpV4Itlp0
自分がもしかしたら、聖女ではなく魔女ではないかと思う時もある。
もしかしたら、自分はついて来てくれた人間を、無為に死なせるだけかも知れない。
人の命を背負えるほど、自分は大した人間だろうか?
答えは出ない。が、それでも彼女は戦うことをやめる訳にはいけなかった。
戦う理由が、フランスを救う為なのか、それとも憎悪なのか、それは分からないが。
「私は今、猛烈に感動している…。我らが前に救世主が降臨された事を。
実は王太子の謁見の時に彼女を見た時から、私は彼女を本物だと思っていた…。
が、私には立場があった。軽々に彼女を認める事は出来なかった。
だが今、私はここに宣言する。彼女こそ、フランスを救う神子であると。
その神子と共に戦える事、君たちも誇りに思って頂きたぁあああい!!!」
数百人の観客の前で、ジル・ドレが興奮しながら演説している。
ジャンヌに対する絶賛と信奉を声高に叫んでいた。観客も彼に同調し興奮している。
目の前の数百の観客は、全てジル・ドレの私兵である。
フランス屈指の富豪の彼が、金に飽かせて集め、鍛え上げた精鋭の部隊である。
「わ、私はこの運命に涙を禁じえない…。私は、彼女の為なら喜んでこの身を捧げよう。
諸君たちも、命など惜しまず、勝利のみにまい進して頂きたぁあああい!!!」
私兵たちの興奮がピークに達した。ジャンヌコールとジル・ドレコールが巻き上がる。
しばらく離れた場所で、ベルトランとジヤンがその様子を呆然と眺めていた。
「戦争前のセレモニーと言うから付き合ってみれば…。なんだこの騒ぎは」
「そう言うな、ジヤン。ジル卿がジャンヌ殿に心酔してくれるのは有り難い事だ」
ジヤンは、会ったばかりの頃のジル・ドレの仏頂面を思い出して呟いた。
「それにしてもえらい変わりようだ。あの卿が、こんなに興奮なさるとは」
「……いや、本来の姿はこっちだろう。まだ彼は24、5の若者だからな」
「な? 24! そりゃ本当か、ベルトラン?」
素っ頓狂な声を上げるジヤン。顔の皺と荒れた肌から、自分よりずっと年上と思っていた。
そしてクスクスと思わず笑いを零した。が、ベルトランは笑わなかった。
「笑い事ではないぞ、ジヤン。 …彼は、黒魔術に傾倒していると聞く」
183 :
聖少女風流記:2006/03/27(月) 15:52:41 ID:SpV4Itlp0
ジヤンの顔色が変わった。黒魔術は当時、禁忌とされていた。
「ジヤンよ、フランス随一の権力を持つ卿が、ジャンヌ殿の信奉者になってくれるのは
確かに心強い。が、ジル殿のあの尋常ではないのめりこみ方を見よ。加えて黒魔術。
……決して、手放しでは喜べぬ」
ベルトランの言う通りである。嫌な、不吉な予感が過ぎる。
ジャンヌは決して貴族全員に認められている訳ではない。活躍を疎ましく思う輩も多い。
重い沈黙を切り裂くように、目の前のジル・ドレが叫んだ。
「さあ諸君、我と共に讃えよ。聖少女を。そして駆逐せよ、憎きイギリス兵どもを。
君たちがいよいよ、戦場で輝く時がきたのだあああああああああああああ!!!」
私兵たちは最初フランスとジャンヌを賞賛していたが、次第にイギリス兵を罵り始めた。
ベルトランは思わず顔をしかめた。確かに憎むべき敵だが、同じキリスト教国ではないか。
ジヤンがため息混じりに言った。
「あれが、あの程度の男がフランス第一等の貴族か…。なあベルトラン。
本当にこの国は、俺たちやジャンヌ殿が命を賭けてまで守るべき国か?」
ベルトランも同じ事を考えていた。苦吟の後、やっと振り絞るように言葉を発した。
「貴族の為に戦うのではない。俺が戦うのは、何でも無いただの人たちの為だ」
ジヤンは友の顔をジッと見詰めた。この男らしい、飾り気の無い言葉である。
「なんとなく、慶次に似ているな、お前」
剛直で真面目なベルトランと、傾奇者の前田 慶次。
一見似ても似つかぬ2人だが、根に同じものが流れている。ジヤンはそう見抜いている。
「バカ抜かせ。俺は、あんな化け物ではない」
ベルトランはそう言いながら場を離れようと歩き出した。照れ隠しかもしれない。
「何処へ行くんだ?」 ベルトランの背中へ聞いた。
「話題の主のところだ。卿のお守りは任せたぞ、ジヤン」
184 :
聖少女風流記:2006/03/27(月) 15:53:28 ID:SpV4Itlp0
「いや、騎士ってのは取っ付きにくい人ばかりかと思ったけど、あんたは違うねえ」
目の前の大柄で奇妙な騎士に、一兵卒のトムスが問いかけた。トムスは笑う。
「しかし、本当に旦那はいくさが好きなんだな。さっきから質問攻めで疲れるよ」
大柄な騎士は勿論、前田 慶次である。
慶次は子供のように目を輝かせながら、トムスや周りの兵にしきりに声を掛けていく。
慶次は今、軍隊の兵士と共に酒を酌み交わしながら、いくさ論議に花を咲かせていた。
まるで10年付き合った知己のように、すぐになってしまうのが、この男の特技である。
「いやあ、面白いなあ。やはり、洋の東西を問わずいくさには熱がある」
慶次ははしゃぎながら武器や鎧を手にとって嬉々としている。
西洋の鎧や平刃剣から、慶次が始めて手に取る西洋弓(クロスボウ)、大筒。
何より彼の心を虜にしたのは、見上げるような投石機であった。
(投石機とは、木材や獣毛などの弾力とてこの原理を利用して大石を遠くに飛ばし、
敵兵や城砦を攻める兵器の事である)
慶次は投石機の周りをうろうろし目を輝かせている。その様子に兵たちは笑っている。
「まったく、お前は何処へ行ってもその場の中心になるんだなあ、慶次」
背後からベルトランが声を掛けた。慶次は笑って応えた。
「いや、生まれついてこういうのが好きでね。ただ、ちょっと美しさが無いかなあ」
その点が惜しい、とばかりにしきりに慶次は首を傾げている。
ベルトランは吹き出した。人を殺すための兵器に、美しさなど必要ないだろう。
が、慶次は猛然と反論した。人の生き死にに関わるものこそ、美しくあるべきだ。
「なるほど、それがお前の国の考え方か。面白いな」
ベルトランはどっかりと腰を下ろした。慶次も差し向かいで座る。
その時、トムスが慶次の槍を持って現れた。
185 :
聖少女風流記:2006/03/27(月) 16:09:29 ID:SpV4Itlp0
「いやあ、美しいねえ旦那の武器は。装飾が工芸品のようだ。惚れ惚れするよ」
ベルトランもそれには同意した。慶次の槍も刀も鎧も、この国には無い美しさがある。
が。槍を見て、ベルトランの顔が一変する。
「慶次。お前、その槍の刃先はなんだ」
刃先が不自然に光っている。何かを塗ってあるのは間違いない。慶次がぼんやり応えた。
「ああ、ロウを塗って固めたんだよ。切れ味を落とすためにな」
「お前……!!」
もうすぐ戦場に立つ男が、わざわざ自分の武器を威力を落とす。信じられない事だ。
「ジャンヌ殿と約束してね。 …なるべく、人を殺さないと」
慶次がやんわりと言った。ベルトランは思わず慶次の顔を凝視した。
「並の相手なら、お前ならそれでもどうにでもなるだろう。だが、相手がもし…。
そう、あの呂布とかいう化け物なら。 …死ぬぞ」
慶次は槍を手に持ち、くるくると手の内で回していた。やがて言った。
「なるように、なるさ」
男の究極の優しさだろうな、とベルトランは思った。女の約束の為に死んでやる。
「慶次。俺が前に言った事を覚えているか」
「ん…?」
「お前が聖女の剣ならば、俺は盾になる、と。お前はジャンヌ殿の為、剣として突き進め。
俺は盾として、ジャンヌ殿を守り通して見せる。たとえ、相手があの化け物でも」
慶次とベルトランはしばらく顔を見合わせ、そして大きく笑った。
出会ってほんの数週間なのに、生まれて以来の共に思える。これほど愉快な事は無い。
…この絆も、この決戦で断たれるのだが。
数時間後。
ジャンヌが白銀の鎧に身を包み、白馬に跨り開放の旗を掲げた。八千の兵を従えて。
オルレアン開放へ向けて、聖少女、出陣。
186 :
ハイデガー ◆duiA4jMXzU :2006/03/27(月) 16:12:40 ID:SpV4Itlp0
俺の後書きは哲学的と評判の為、名前をハイデッカからハイデガーに変えてみた。
では哲学的且つ、心温まる俺と妹のエピソードを一つ。
大学一年の頃、とある風俗にいった時の話。
そこは数メートル間隔で客が座り、女に口でいたしてもらう、という情けないものだった。
40分、6000円。時間内なら何発でもOK。俺の相手はやたらハイなメキシコ人だった。
5分後。「イッパ〜ツ!! お客サン、ハヤイネ〜」 他の客、軽く失笑。
12分後。「ニハ〜ツ!! お客サンタフネ、ビクリスルヨ」 他の客、クスクス笑い。
23分後。「サンパ〜ツ!! 新キロク〜! ワタシ、クチ疲レルヨ〜!!」
客大爆笑。俺、屈辱で顔真っ赤。泣きながらもう一つ記録を伸ばした後、店を出た。
数日後、俺は決心した。これではいかん。大きくても、こんなにスピーディーでは…。
そして決心した。チンコを鍛える事を。そして悩んだ末、俺が取った方法は
「濡れタオルで、戦闘時のチンコを叩いて鍛える」という昔ながらの方法だった。
風呂の時に、チンコをバスタブの縁に置き、思い切り上から濡れタオルを打ち下ろした。
力の加減もクソも無い渾身の一撃が、棒でなく頭にクリティカルHIT!!
次の瞬間、俺の口からこの世のものとは思えない程の絶叫が…。
悲鳴を聴き、慌てて妹が飛んできた。当時中三で15歳。勿論、生娘である。(多分)
チンコ丸出しの俺を見て顔を赤らめるが、俺の苦しんでいる様子にオロオロしている。
「お兄ちゃんどうしたの、転んでぶつけちゃったの? 救急車呼ぶ?」
涙目でオロオロする妹に罪悪感を感じ、正直に原因を話した。すると妹は泣き出した。
「お兄ちゃんじゃない、あんたなんか、私のお兄ちゃんじゃない!!」
心が痛んだ。チンコはもっと痛かった。それから2日ほど、妹は口を聞いてくれなかった。
あれからもう8年経つ。妹はそれなりに美しく成長し、6月に結婚する事になった。
兄がグダグダだと、妹はしっかりするようだ。何処に出しても恥ずかしくない女になった。
兄貴より早く結婚するなんて、ちょっと生意気だぞ。でも、思い切り幸せにおなり。
お前の幸せが、俺の幸せなんだから…。
187 :
作者の都合により名無しです:2006/03/27(月) 17:32:20 ID:dQC6CBsP0
>邪神さん
場面転換してから急に各キャラが活発に動き始めましたね。ユダまで出てきた。
サガはあんまり詳しくないので、バキチームが暴れ始めたのは嬉しいです。花山頑張れ。
>鬼と人とのワルツ作者氏
ベガをぶん殴って登場するゲームのシーン思い出したけど、登場キャラゴウキじゃないよね?
最後のセリフが爽やか過ぎる。ライバルキャラ登場って感じかな?
>ハイデッカ氏(ハイデガー?w)
ジルドレが美味しいですね。史実ではジャンヌ死んだ後殺人鬼になるんですけどw
オルレアン決戦マジで楽しみです!歴史に拘らず自由闊達に書いて下さい。
>泣きながらもう一つ記録を伸ばした後、店を出た
速さよりも回復力を尊敬するwしかしあなたは馬鹿ですねえ。勿論いい意味で。
ああああああ…
今更届いたコミックス版を読んで、作った設定が成り立たない事が分かりました
練り直しです…
忘れた頃に来ると思いますので、気長に待ってください…
第二話「僕らは過去の名作を忘れない」
「で、僕たちにどうしろと?」
「いや、だからよぉ、おまえ達の方からあいつに一言言ってやって欲しいわけよ」
差し出された麦茶をぐいっと飲み干し、服部全蔵は唇を拭う。
彼が今いる場所は、『万事屋銀ちゃん』。坂田銀時が営むなんでも屋である。
ソファーに座る全蔵の正面にいるのは、銀時の助手である眼鏡の少年、志村新八。
今、銀時は都合よく外出中で、全蔵はそのタイミングを見計らい、仕事の依頼に来ていたのだ。
その依頼というのが……『坂田銀時にジャンプ読者に戻るよう説得して欲しい』という実にどうでもいい内容だった。
「って言ってもね、服部さん。別に銀さんがジャンプ読者からマガジン読者になろうが、僕はどっちでもいいんですけど」
「駄目なんだよ! 今のジャンプにはああいう年甲斐もなく少年の心を持ってるおっさんの消費者が必要なんだよ!!」
全蔵が熱心に頼み込んでいるのには、それ相応のわけがあった。
銀時とは、なんどか剣を交わしたこともあるライバルのような関係。
あの汚らしい天然パーマを思い出すだけで、嫌気がさしてくる。
しかしその中で、銀時のジャンプにかける情熱だけは理解しているつもりだった。
自分と同等にジャンプを愛する子供っぽい大人。
その銀時がいきなりマガジンに心変わりするなど、よっぽどのことがあったに違いない。
同じジャンプ読者として、同じ駄目な大人として、自分が銀時の目を覚ましてやらねば!
と、意気込んで新八たちに協力を求めに来た全蔵だったのだが……ジャンプがマガジンに変わろうが変わるまいが、新八にとってはどうでもいいことだった。
「駄目ネ新八!」
断ろうとした新八に、チャイナ服を着た少女が待ったをかけた。
彼女は、銀時、新八と同じくこの万事屋のメンバーで、名を神楽という。
「銀ちゃんがジャンプ買うのをやめちゃったら、『聖闘士星矢』の続きが読めないヨ!」
「いや、お嬢ちゃんそれ何年も前の作品だから。聖矢だったら今チャンピオンREDでやってるから」
「あと『ハイスクール奇面組』も読めなくなるネ!」
「いや、お嬢ちゃん、だからね、それは昔のやつだから。今やってないから」
「銀ちゃんがジャンプ買わなくなったら……えーと、『北斗の拳』が! ケンシロウの活躍が!」
「あれ? お嬢ちゃん年いくつ?」
神楽のボケは、真面目な雰囲気を倒壊させるほどの威力を誇る。
ところ変わって江戸の町。
コンビニ帰り、銀時が適当な場所で買ったばかりのマガジンを読んでいると、傘を被った一人の男が声をかけた。
「ほう、おまえがジャンプ以外の雑誌を読んでいるとは珍しいな」
「なんだヅラ、おまえもマガジン読みたいのか?」
「ヅラではない桂だ」
銀時に声をかけた男の名前は、桂小太郎。
二十年前の天人襲来の折、彼らを追い払おうと銀時と共に剣を振るった侍である。
結局は天人の強大な力を見て弱腰になった幕府が彼らと条約を結んでしまったため、桂たちの戦いも無駄になってしまったのだが。
しかしそれでも桂は戦うことをやめず、今では指名手配になりながらも、幕府に反旗を翻そうとする攘夷志士の筆頭として暗躍している。
銀時とは、言ってみればかつての戦友。剣の向きを違えた後も、時々こうやって接触をとることがある。
ちなみに……桂の横にいる物言わぬ『何者』かの名は、エリザベス。
一応は桂の仲間で、その『おばけのQ太郎』を彷彿させる外見は、「あれ、こいつ着ぐるみなんじゃねーの?」とも思われるが、その真相は定かではない。
「まあいい。ちょうどそのマガジンに関係することで、おまえの耳に入れておきたいことがあってな」
「耳に入れておきたいこと?」
嫌な予感がする。
桂がこうやって真面目な雰囲気で話すときは、大抵がお国がらみのなにかヤバイことである。
そして、銀時は毎回のようにそれに巻き込まれていた。
「そのマガジンを出版している、講談屋についてだ」
「まさか……いつかの時みてぇにそこで不穏な動きがあるとかなんとか言うんじゃねぇだろうな?」
「ほう、察しがいいな。正にその通りだ」
やっぱりか、と銀時は開いていたマガジンを閉じる。
「講談屋は幕府開闢より続く老舗の出版社だが、最近その講談屋に数人の攘夷浪士が出入りしているとの情報が入っていてな。詳しいことはわからんが、いつかの橋田屋の時のようにテロリストと関わりがあるのやもしれん」
「おいおい、そいつぁおまえとは関係ない連中なんだろうな? 攘夷浪士さんよ」
「もちろんだ。高杉の手の者か、もしくはまったく別のやつらか。今はまだ調査中だ」
この国には、幕府に仇なそうとしている輩がごまんといる。そのほとんどはかつて銀時と共に戦った侍達であり、桂や高杉晋助のようなリーダー格について徒党を組んでいる者もいれば、勝手気ままにテロを行っている輩もいる。
銀時のように今を自由に生きている侍など、それほどいないのかもしれない。
「まあそんなもんは幕府の連中がなんとかするだろ。俺は平和にマガジンが読めればそれでいいよ」
銀時にとっては、幕府がどうとか攘夷浪士がどうとかなどは既にどうでもいいこと。
今はそれよりも、『はじめの一歩』の続きのほうが気になる。
「ふっ、相変わらずだな銀時。しかしもし講談屋がテロリスト共と通じているなど世に知れてみろ」
「あぁ?」
「マガジンの出版もできなくなるぞ」
「――――――――――――――――――――――――あ」
「新八ィィィ!! 神楽ァァァ!!」
ドアを蹴破って、銀時が帰宅する。
そのいきなりの登場に、中にいた新八、神楽、全蔵は目を白黒させながらも視線を一点に集中させた。
「ぎ、銀さん!? どうしたんですかいきなり」
「どうしたんですかじゃねぇぇぇ!! マガジンの危機だぁぁ! 講談屋に行くぞ!!」
「は、はぁ!?」
いきなりのことで、わけがわからない。
なにやら興奮している銀時に対し、新八がしどろもどろしている合間、全蔵が銀時に詰め寄る。
「なに言ってやがるんだテメー! おまえはマガジンのことなんて知らぬ気にせぬのジャンプ読者だったろうがァァァ!!!」
「あれ? 痔忍者じゃん。なにしてんのおまえ?」
「痔忍者ァ!? なにその呼び名!? おまえに痔になった人の苦しみがわかるっていうのかァァ!!?」
「銀ちゃーん! 銀ちゃんがジャンプ買わなくなったら『スクラン』の続きが読めないアルヨォ」
「心配するな神楽。あれはマガジンだ。そして痔忍者はジャンプで連載中だ」
「やってねぇぇぇ!! ひょっとしてナルト!? 『NARUTO−ナルト−』と勘違いしてる!!?」
「いやあれは、ラーメン忍者だ。痔忍者の作者はおまえだ。痔忍者先生」
「俺ェェ!? あれ、でも先生って響きいいなオイ!?」
「銀ちゃーん! 銀ちゃんがジャンプ買わなくなったら『クロ高』の続きが」
「ああもう、おまえらうるせェェェェェェ!!!」
※収集が着かなくなってきたので、勝手ながら少しシーンを飛ばさせて頂きます。
「講談屋?」
ところ変わって、武装警察真選組屯所。
「はい。どうやらそこに攘夷浪士共が出入りしているようで」
会話をしているのは、真選組副長にして極度のマヨラーである土方十四郎。
そして、同じく真選組に属する監察(密偵)の山崎退。
奇しくも敵対している桂と同時期に、真選組も講談屋の不穏な動きを察知していた。
「ふん、大方テロリスト共のパトロンか何かか。天下の出版社ともあろう講談屋がご苦労なこった」
「乗り込みますか?」
「そうだな……久々に大暴れしてみたかったところだ。おい総悟、さっさと起きて召集かけろ」
土方が、部屋の隅で眠っていた人物を乱暴に蹴り飛ばす。
「う〜ん……なんでィ土方さん。いつ俺の仕掛けた針山地獄のトラップから逃げ出したんですかィ?」
「は、針山地獄ゥゥ!? おまえなにサドスティックな夢みてんのォォ!!?」
眠りから覚醒したこの男は、真選組の一番隊隊長、名を沖田総悟。性格は一言で言うならS。
「あの……副長、そういえば局長の姿が見えませんが」
「ああ、局長ならいつものストーキング行為中だ」
「はぁ……そうですか」
局長というのは真選組局長、近藤勲のことである。
本来なら彼らの上司に当たる人物なのだが……新八の姉、お妙へのストーカー経歴などにより、その威厳は薄い。
だから、いなくても特に問題視されなかったりする。
「ふっ、久々に楽しい喧嘩になりそうだぜ――」
「土方さん、そろそろドラマの再放送が始まりますぜィ」
「んなもんは予約録画しとけ」
「あいにくビデオが故障中でさァ」
「マジで? じゃあ見てからいくぞ」
だが、上司が上司なら部下も部下だったりする。
早くも2話目です。
ギャグとシリアスの配分が難しいですがなんとか頑張ってます。
今後はどっちよりにいくかまだ未定……銀魂特有のいい話もできればやりたいなぁ。
と今回はこのへんで。
・その名はキャプテン
花山さんとスペック北!サガチームよりバキチームの方が好きですね。
一応漫画板だし。ユダまで絡んで、物語がどんどん膨らんでいきますね。
余計なお世話ですけど、収集するの大変ですよお?
・鬼と人とのワルツ
カマキリとの死闘、ずっと続くかと思ったんですが、決着つく前に
ニューキャラが現れましたね。やはりバキより強いのかな?
響鬼ってキャラはどこからの出展かわかりませんけど、ライダー?
・聖少女風流記
今、一番好きな作品かも。SSから品格さえも感じます。
苦悩するジャンヌたちに、欝なフラグが立ちまくってますね。
歴史は詳しくないですが、火あぶりのラストだけは避けて欲しいな。
・ハイデッカ氏の後書き
早いですね。でも回復力は凄い。これは男として武器なのか弱点なのか?
ふら〜りさん、君の意見を聞こう! しかし品格の欠片も無い文ですね。
・シルバーソウルって〜
本当に原作にそっくりなやり取りですね。下らない発端から徐々にギアが
上がっていくような軽妙さがそっくり。一番好きな真選組も出てきたし、
どうやら事件が起きそうな気配ですね。次話シリアスかな?
>鬼と人とのワルツ
あの蟷螂、魔化魍だったんか・・・
そしてまさかの響鬼さん登場!!名無しの
>>195もこれにはビビった!!
196 :
作者の都合により名無しです:2006/03/27(月) 21:59:17 ID:r+/WSvp/O
バキスレについにヒビキさん参戦!
これだからバキスレはたまらないぜ!
197 :
作者の都合により名無しです:2006/03/27(月) 22:16:48 ID:dQC6CBsP0
銀魂、原作の特徴つかんでますねー
メインの3人の画像が思い浮かぶようです。
神楽ちゃんのボケとかも生きてるし。
198 :
ふら〜り:2006/03/27(月) 23:01:49 ID:pozGzK3N0
>>邪神? さん(スペックが酒場で……バキスレ最初期の、大好きな名作を思い出します)
ユダとドイルとはまた、意表を突きつつもしっくり来る組み合わせですね。絶対に弱くは
ないはずだけど、強いとも言いにくいこの二人。まぁ花山も、あれで結構ナルシーだと
思いますので。いいトリオかも。少し可愛げのある本作スペックは、次回戦ってくれる?
>>ワルツさん(さしずめ勇次郎は……『鬼の道を行き、全てを踏み潰す男』ですかね)
今までのバキスレ鑑賞歴で、五回あったかどうか。「ぶっ!」と本当に吹きました。「紅」
の一言でまさかとは思ったんですが、ヒビキさんですかぃっ!? そりゃ確かに鬼ですけど!
もしかして絵板のリクに応えて? 私も特撮ヲタとして嬉しいです! 次が待ち遠しいっ。
>>ハイデッカさん
ジャンヌの中に潜む魔性の欠片? 本人に自覚があるとあっては、後に魔女呼ばわりされ
る時にどう反応するのか……。慶次は慶次で、ついにやってしまったというか敵を気遣っ
てる。どう考えても戦いについてはマイナスにしかならないロウ塗り、何を引き起こすか。
>>一真さん
前回から匂ってはいましたが、もう確定しました。一真さんの意図は知らねど、私は認定。
>自分と同等にジャンプを愛する子供っぽい大人。
嫌気がさす、とか言いながらコレですよ。もう本っっ当に銀時のことが好きなんだなぁと。
ジャンプ読者に戻って欲しい、ジャンプの話で盛り上がりたい。解るぞ、そういう気持ち。
>>魔法少女さん
了解。気長に待ってます。魔法少女さんも、バキスレの他作品を見て萌えたり燃えたり
参考にしたり自信喪失したり目標にしたりライバル認定したり、いろいろしてみて下され。
199 :
虹のかなた:2006/03/28(火) 02:00:35 ID:/eaAHlni0
ごきげんよう、皆様。お久しぶりです。
ttp://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/32.htm からの続きです。
「斗貴子さん。虹が何色かご存じ?」
城戸沙織がそんな質問をしてきたのは、馬鹿でかい城戸家の車の中であった。
細い雨が降りしきる中、城戸邸を出てから十数分。
行き先については「そのうちにわかります」と笑った城戸沙織にそれ以上口を開かせることが出来ず、その事に苛つき
ながらも斗貴子は大人しく柔らかいシートに収まっている。
――――『沙織お嬢様を信じているから』
先程ジュネはそう言っていた。
『沙織お嬢様は瞳子を見殺しにするようなマネは絶対にしないし、ホムンクルスを逃すようなこともしない。あの
お方はそういう方だから』とも。
この言葉をどこまで信じられるのだろう。どこまで信じていいのだろう。
チラリと向かいに座るジュネを見やると、しっかりと視線が合ってしまった。
――――『笑った方がかわいいよ』
恐らく戯れに言ったであろう言葉を急に思い出してしまい不覚にも頬が熱くなる。
斗貴子の表情の変化をどう思ったのか、ニヤリと笑ったジュネを睨むと今度はクスクスと笑い声をたてられてしまった。
紅薔薇さまじゃあるまいし。こんな風に表情をコロコロと変えるなんて……百面相なんて自分らしくない。
そう思うものの制御するより先に出てしまう表情には打つ手がない。
斗貴子がそんな複雑な気持ちになっている時に、何の前触れもなく先程の沙織の質問が飛び出したのだ。
「……は?虹?七色だろう」
突拍子もない質問に突っ込むことも忘れ思わず素直に答えてしまう。
「そうですね。日本では一般的にはそう言われていますね」
城戸沙織の返答はスッキリとはしないものであった。
思わず眉を顰め口を開く。
「何が言いたい?」
「斗貴子さん。ギリシャ神話はどの程度ご存じ?」
「はぁ?」
質問に質問で返すな、と突っ込むのも忘れるほど今度の質問も突拍子もなかった。
ギリシャ神話。何故突然今。
200 :
虹のかなた:2006/03/28(火) 02:02:11 ID:/eaAHlni0
会話には流れというものがあるだろう。城戸沙織は明らかに意図的にそれを逆流しているように感じられる。
どうにかしれてくれ、という意味を込めてジュネに視線を向けるとジュネも斗貴子と同じように……いや、それ以上に驚い
ていた。
話の唐突さにジュネと斗貴子がついて行けずにいる事には気が付かないのか、沙織は微笑みながら斗貴子の返答を待
っている。
「……ギリシャ神話については基本的なことしか知らん。オリンポス十二神やらヘラクレスやらの話くらいだな」
しぶしぶ答えを返すと、沙織はならば、と前置きをして三度目となる突拍子もない質問をしてきた。
「斗貴子さん、カメレオン座という星座をご存じ?」
「沙織お嬢様?!」
何度目かになる「はぁ?」が斗貴子の口から出る前に、何故だかジュネが非道く驚いた声を上げた。
慌てた様子のジュネを笑いながら宥め、沙織は相変わらずの微笑みで斗貴子の返答を待つ。
沙織の質問の意図を探ることを諦め、斗貴子は些か投げやりな気分で肩をすくめた。
「知らん。聞いたこともない。本当にあるのか?そんな名の星座」
「あるさ!」
間髪入れずに叫んだのはジュネであった。
なぜ彼女がこんな風に反応するのかまったくわからないが……妙に必死に見えるのは気のせいだろうか。
ジュネとは対照的に相変わらず笑顔の沙織がゆっくりと口を開いた。
「知らないのも無理はありません。カメレオン座というのは天の南極近くにあるため日本からはまったく見えない星座なの
です。カメレオン座の成立は16世紀なので星座にまつわる神話もありませんしね。……そうですよね?ジュネ」
「……はい。…………確かに日本からは見えないし四等星ばかりだし神話もないけどさぁ……」
小さくなっていく語尾と比例するように肩を落とし明らかに落ち込み始めたジュネをクスリと笑いながら、沙織は優雅な動
作で胸元に流れた髪を後ろへとやった。
それだけで思わず見惚れるような美しさなのだが、口を開くと台無しだということを斗貴子はこの数日で思い知らされてい
る。
「では……斗貴子さん。ジュネも……、なぜ、16世紀という比較的近代になってから新しい星座が作られたのかはわかり
ますか?」
ほらまた、よくわからない質問をぶつけてくる。
もう何度目かわからなくなってしまったため息をつき、斗貴子はそれでも質問に答えようと考える。
「新しい星が発見されたから、とかか?」
一般的に思い浮かぶ答えはコレだろう。
星が増えれば星座も作り直さざるをえないのではないか。
だが城戸沙織は一定の笑顔から表情を変化させることはなかった。
201 :
虹のかなた:2006/03/28(火) 02:03:29 ID:/eaAHlni0
「そうですわね。歴史上はオランダの航海士であったケイザーとホウトマンがまとめ、それを同じオランダの地図制作者で
あるプランチウスが明らかにしたと言われています。ああ……それを一般に広めたのはドイツの天文学者バイエルでしたの
で、カメレオン座はバイエルが作ったと言われることも多いようですね。つまり航海士が新しく星を見つけそれらで星座を
象ったということは十分考えられますけれど、私の質問はそれとは違うことなのです」
沙織の持つ妙な知識に驚きながらも引き込まれていく自分を自覚し、斗貴子は思わず自嘲する。
ふと見ると、いつの間にか落ち込みから復活したジュネがいやに真剣な顔で沙織を見つめていた。
「ジュネには言い方を変えて質問しましょうか。……なぜ、私の先代が比較的近代になってから新しい星座と聖衣を作らせ
たのかわかりますか?」
今度のジュネへ向けられた質問は、斗貴子にとって正真正銘全く意味がわからないものだった。
だがジュネにはわかったのだろうか。
見たこともないような難しい顔をして何事かを考え込んでる。
「……いえ。何か意味があってのことなのでしょうか?」
しばらくしてジュネが白旗を揚げた。
お手上げ、という風に息を吐き沙織に視線を向ける。
それを受けた沙織は、先程よりも深くなった微笑みでジュネと斗貴子を交互に見やる。
「この世に生まれた物には全て意味があるのですよ。ですけれどそれとはまた別に……カメレオン座は意図的に作られた星座
なのです」
「意図的に……?!」
ジュネが驚いた声を上げる。
だが、斗貴子には彼女の驚きも沙織の言葉の意味も全くわからなかった。
新しい星座と十字架(クロス)とに一体どういう繋がりがあるというのだ。
そのうえ、星座を意図的に作ったなど……よくわからん。
だがジュネはそんな斗貴子とは逆に先程よりももっと難しい顔で考え込んでいる。
その時、緩やかに車が止まった。
窓の外には見慣れた景色がある。
「ここは……」
「ええ、そうです。私たちの愛すべき学舎……リリアン女学園高等部です」
そう。沙織の言うとおり、車が止まったのはリリアン女学園高等部の正門前であった。
車を降りると雨はやはりまだ降り続いている。だが傘などはさしていられない。
さすがに沙織もそのことをわかっているのか、雨粒を気にしもせずに門に手をかけた。
「行きましょうか」
沙織の言葉に頷き、ジュネも斗貴子も門を潜る。
202 :
虹のかなた:2006/03/28(火) 02:07:59 ID:/eaAHlni0
(戦士長は……)
確か今夜は夜番なはずだ。
チラリと守衛室に視線を向けるがそこには誰もいない。
どこに行ったのだろう。もしかしてもうこの学園内にいるというホムンクルスの所なのだろうか。
マリア像の前を過ぎゆき、分かれ道に出る。
「ジュネ。先程の質問は宿題にしましょうか」
「宿題……ですか?」
「ええ。その答えを知ったとき、きっとあなたはあなたの求める強さを手に入れられるでしょう。……私が信じられません
か?」
「……いえ」
斗貴子には意味のわからない話をしながらも、先頭を歩く沙織は迷いもせずに右に折れる。
(こっちは確か……)
「……お聖堂」
沙織が足を止めた場所はお聖堂の裏手であった。
「隠れましょう」
「何でっ……って、引っ張るな!」
「沙織お嬢様、あそこに……」
仕方なく茂みに入り込み隙間からジュネが指さす方を覗く。
そこには、傘をさした二つの人影があった。
お聖堂の入り口前。
つい数週間前に斗貴子がジュネと戦ったのと丁度同じ場所。
そこにいたのは青い傘をさすツインテールの上級生、紅薔薇さまと……。
「アイツは……!」
赤い傘。亜麻色の髪。
忘れもしないあの顔は…………例のホムンクルス…………!!
「しっ!しばらく様子を見よう」
思わず飛び出そうとした斗貴子をジュネが慌てて押さえ付ける。
「なぜ……!」
「いいから!」
ジュネに押さえ付けられ、仕方なしに再度二人を見つめる。
紅薔薇さまと例のホムンクルスは何か会話を交わしている。
雨音に邪魔され聞き取りづらいが、二人は何かを言い争っている感じではないが友好的とも言えなさそうだ。
203 :
虹のかなた:2006/03/28(火) 02:08:54 ID:/eaAHlni0
「ロザリオはただの象徴で、それで人の心を繋ぎ止める事なんてできないよ」
凛とした紅薔薇さまのこの言葉が、やけにはっきりと聞き取れた。
ホムンクルスが紅薔薇さまに一歩近づく。
「どういう事です?!ロザリオは姉妹の証なはずなのに……!!」
「証だけど、大切な物だけど、でも姉妹の絆は二人の心にあるものだから。だからロザリオがなくても私の妹は
瞳子だけなの。瞳子に嫌われてもロザリオを返されてももう私にとっての妹は瞳子だから。……きっと永遠に」
「…………」
状況も二人の会話の流れもわからない。
だが紅薔薇さまがはっきりと宣言したその言葉に押し黙ってしまったホムンクルスは、俯いたまま微動だにしない。
――――――――――――ざわり
背中を一直線に悪寒が駆け上る。
これは。この感覚は。
「………………――――――――――――!!!」
ホムンクルスが何かを叫ぶ。
悲鳴というより絶叫。絶叫と言うより……力の解放。
顔を上げたホムンクルスの少女が笑う。笑う。笑う。
それと同時に、斗貴子は考えるよりも先にジュネの制止を振り切ってお聖堂の前へ飛び出していた。
204 :
虹のかなた:2006/03/28(火) 02:14:30 ID:/eaAHlni0
今回はここまでです。
続きが遅くて申し訳ありません。
上原萌奈美の元ネタですが、性格はほとんどオリジナルキャラで名前とイメージは「タカハシくん優柔不断」
というマイナー漫画からです。
曽根崎薫子か十文字花菜か海槌麗巳か萌奈美かで迷ったのですがこちらを選びました。
ちなみに「タカハシくん優柔不断」は非常に読後感の悪い漫画ですのであまりお勧めはできません。
>ふら〜り様
リクエストの答えて頂きありがとうございます。
パステリオンの原作は存じませんがD=アーネかわいいですね。
本当は仕事もできるいい人なヒューイットは原作では報われない事ばかりですが、今回は少しだけ報われた様
で安心しました。
44号は出てきた途端にあっさりやられてしまってちょっと切なかったです。
一応上級悪魔くらいには強いはずなのですが、カーズはそれ以上なのですね。JOJOは数年前に読んだきり
なのですがもう一度読み返してみようと思います。
マリネラやパタリロの描写も上手くて読んでいて楽しかったです。
ふら〜り様の作品はすごく好きなのでまた、SSを書いてくださることを楽しみにしています。
>ハイデッカ(ハイデッ子?)様
偶然ですが私の実の妹も今度の6月に結婚します。
妹に、という事でしたけどSSや後書きを拝見する限り私の方が年下のように思えます。
もしハイデッカ様のような方がお姉様だったら楽しいでしょうね。
聖少女風流記、毎回楽しみに読んでいます。
後書きも毎回面白くて見習いたいとは思うのですが努力不足なのかいつもつまらない物になってしまっていて
反省しています。
これからも頑張ってください。
それでは、ごきげんよう。
また名前欄の入力ミスです。ごめんなさい。
うぉぉおー!
ミドリさまいらっしゃったー!
やはり裕己は芯の強い娘ですね
物語が収束していく感は楽しいですが、
終わりが近いと言うのは少し淋しいです
ミドリさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
斗貴子さんが聖衣を十字架と勘違いした所が凄く印象に残りました。
確かに聖衣のことを知らなければクロスって十字架だと思うよな・・・。
scene36 旗元太
伊藤開司は、一心不乱に三号室を調査していた。
ドアを開け、その側面を何度も覗き込んだかと思えば……
今度は床に這い蹲り、落ちている掛け金やネジをカチャカチャと弄り回す。
こうして、傍目から見ていても明らかだった。彼は、限りなく真相に近付いている。
伊藤開司が、犯人を告発し、ゲームの勝者になるのは、もう時間の問題なのだろう。
彼の自信と確信に満ち溢れた目を見れば、言われなくてもそれがわかった。
そして。夕凪理沙の時のような――告発が間違っていた等と云う奇跡は、きっと二度も起こらない。
彼は今、あろうことか俺の目の前で、無防備な背中を晒して縮こまっている。
今なら。今なら。彼を止められるかもしれない……!
そう考えただけで、息が荒くなった。脈拍も急上昇する。心臓が口から飛び出そうだ。
あの日、俺は誓ったじゃないか。梓の命が助かるのならば、何でもする……と。
人殺しだって――例外ではない。
今は、躊躇する時間すら惜しかった。
出来る限り気配を消して、丁度サイドボードに置かれていた、大きな木製の時計を手に取る。
「何か、収穫はあったのか?」
聞きながら、時計を持った両腕を上げた。
「ああ、大収穫だ……! これで犯人を告発――」
彼が振り向き、表情を一変させる。
――やめて――
不意に、頭の中で声が響いた。
梓の声か……? いや、違う。男のような、女のような……形容し難い声だった。
その声を切欠に、世界が色を失ってゆく……
それはまるで、モノクロの無声映画を見ているよう。
初めての感覚。自己を、俯瞰視点で見つめる奇妙な感覚だった。
俺は悪鬼のような形相で、彼の、伊藤開司の頭部に時計を叩き付けている。
何度も……何度も……何度も……何度も……!
彼の頭部も、凶器である時計も、最早原形を留めてはいない。
もう彼は、とっくに動かなくなっている。
それなのに……俺は止めようとはしなかった。
何かに憑かれたように、振り下ろしては、叩き付ける。
ひたすらに、狂った単純作業を繰り返していた。
文字盤の硝子が割れ。砕けた木片が宙を舞い。血飛沫が飛び散った。
果たしてこの凶行が発した物音は、ホールまで聞こえていたのだろうか。
ホールから、異常を察知した参加者たちが、ぞろぞろと集まってくる。
「なんてことだ……」「犯人……!」「捕まえろ!」
顔の無い人々が、口々に喚き立てた。
「おおおおおおおおお!」
俺は奇声を発しながら壊れた時計を振り回し、無駄な抵抗を試みている。
どう見ても、多勢に無勢だった。敵う訳がない。
俺はあっという間に取り押さえられ、冷たい床に口づけする羽目となった。
そこで唐突に、フィルムは途切れる。
――選択を、間違えないで――
気付けば、俺は大きく振り上げていた筈の時計を、胸に抱きかかえるように持ち替えていた。
何が起こったのか理解できず、呆然と、その場に立ち尽くす。
確かに、俺は、今。手にしているこの時計で伊藤開司を殴り殺し……
抵抗空しく、犯人として拘束された……はずだった。
今までの出来事は、何だったのだろうか……!?
とてもではないが、納得の行く説明は出来そうになかった。
極度の緊張が生んだ、性質の悪い白昼夢……そういうことにしておこう。
「おい……どうしたんだ……!? そんなもの持って突っ立って……」
伊藤開司が、怪訝な顔でこちらを見た。
そこでようやく、自分が夢と同様に、伊藤開司を殺そうとしていた事を思い出す。
しかし……悪い夢を見たおかげで、俺は正確な状況判断能力を取り戻しつつあった。
そうだ。今ここで伊藤開司を殺して、一体何の得があるだろうか。
どう言い訳したとしても、犯人扱いは免れない。結局、笠間潤と同じ末路を辿るだけではないか……!
「もう用は済んだ……ホールへ戻ろう」
伊藤開司はそう言って、拾った掛け金をズボンのベルト部分に挟み、足早に部屋を出て行く。
「あ。ああ……」
俺は力なく頷いて、その後を追う。
まだ夢の続きを見ているのではないか……そんな気さえした。
scene37 ?????
私の意志が伝わったのかどうかは、定かではないけれど……
旗元さんはどうやら、伊藤さんの殺害を思い止まったようだった。
これは、奇跡なんだ。私と云う存在が起こした、小さな奇跡。
少なくとも私は、そう信じてみる事にした。
私には何も出来ない……なんて悲観するよりは、前向きでいいと思う。
せめて願おう。叶うと信じて。せめて祈ろう。届くと信じて。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>139です。
色々ありまして、間が空いたり空かなかったりしていますが
生暖かく見守って頂ければ幸い。
それにしても、カイジを伊藤さんと呼ぶと何だか別人みたいですね。
次回で、犯人指摘です。
・旗
カイジの『犯人でなければ誰でもいい』との独白通り、別件ですね。旗はシロ、探偵です。
今まで彼は『絶対にゲームから降りない』と強く主張してみたり
夕凪、笠間が殺された、と聞いた時に安心したような素振りを見せたり
要所要所で、あからさまに不審な行動を取っていました。
そのあたりの裏事情を書いたのが前回の『手記』です。
・主人公死亡ルート
そう言えばかまいたちでは、犯人と二人で田中さんの部屋を調査に行って
透があっさり殺されてしまうBADENDがありましたね。
あれを最初に見てしまった人は、ちょっと悲しくなったかもしれません。
やはり一週目は「サバイバルゲーム編」がお勧めです。
羽入?
土左聞群平田枡?
215 :
作者の都合により名無しです:2006/03/28(火) 19:16:31 ID:svhQxaVD0
ミドリ様いらっしゃったー
基地外がまとわりついて大変でしょうが、月1でいいので頑張って下さい
>虹のかなた
あくまで洗練された沙織と、とんがった斗貴子との会話が楽しいですね。
しかし沙織さん(ミドリさん)は博学だー。星座の歴史の勉強にもなりました!
SSの方は最後不穏な動きでヒキですが、待ってますので完結はお願いしますね!
>カマイタチ
最初の2レスで、カイジが抹殺されてしまうエンドという意外な形かと思ったけどw
旗は探偵なのかー。色々と糸が絡んでますね。でも、マルチシナリオのゲームなら
確実にここでバッドエンドですね。ともあれまだまだ続いてくれるのは嬉しいです。
>ミドリさん
トキコと沙織&ジュネの結束が固くなっていく印象を受けました。
トキコは普段は厳しいのに、人の危機には真っ先に飛び出すな。ツンデレ?
>見てた人さん
一人ずつ、犯人から脱落していきますねえ。旗もやはり違いましたか。
でも、旗はこれで死にフラグ立ったのかな?それとも声のお陰で回避かな?
217 :
二十二話「始まった暗躍」:2006/03/29(水) 03:46:21 ID:SFM1V4590
アサシンの流れる様な連続攻撃をかわし、反撃へ移るカイル。
「空翔斬!」
一瞬で相手の頭上へ跳躍し、強烈な兜割りを瞬時に叩き込む。
体を翻すのも間に合わず顔面から胴まで綺麗に切られても、攻撃の手を緩めない暗殺者。
決ったと思ったカイルの油断を突いた攻撃をロニが阻む。
「ぼさっとするなバカ!」
ハルバードで受け、そのまま受け流す。
常人なら重さで振るう事すら不可能な戦斧で。
体勢の崩れた暗殺者へと止めの一撃を与える。
「空破特攻弾!」
自ら回転しながら突っ込み、衝撃と共に斧で切り刻む奥義。
街路まで吹っ飛んだアサシンは大量の出血で絶命した。
ロニに礼を言う間も無く次々とアサシンが襲い掛かってくる。
「カイル!外から来る援軍は俺に任せて店の中を片付けろ!」
ところ構わず空破特攻弾を連発し、アサシンを蹴散らすロニ。
だがカッコイイ台詞を吐きながらグルグル廻りながら敵に突撃する姿はどこか間抜けだった。
「ロニ・・・こんな時に言うのは酷だけど彼女できない理由が分かったよ!」
見るに耐えないといった表情で店の中へと突っ込むカイル。
そんな親友の言葉にロニの心境は揺らいだ。
〜ロニ心の叫び〜
ちょ、待ってくれカイル!何でだ・・・何で俺に彼女が出来ないんだ!
まさかアイツ、俺のカッコ良さに嫉妬してあんな暴言を?
フ・・・フフフ、ゆ、許さん・・・折角のカッコイイ台詞や場面をぉぉぉぉ!
彼女持ちだからって調子に乗りやがってぇぇぇぇぇぇぇ!!
街中のレディ達が俺を見ていて「あら、素敵な殿方。結婚してくださる?」
な展開も考えられない事は無かった・・・そんな貴重な場面で、彼女居ない暦を露にした奴には、
地獄すら生ぬるい!スタンさん・・・あなた息子は醜く歪んでしまいました。
この俺が、ロニ・デュナミスが正義の鉄拳で制裁を加えます!
218 :
二十二話「始まった暗躍」:2006/03/29(水) 03:47:13 ID:SFM1V4590
ロニの隠れた殺意が膨れ上がる中、カイルは店の中へと戻る。
苦戦してるかと思いきや、信じられない光景が広がっていた。
スペックが目にも止まらぬ連打、連続攻撃とは攻撃力より数で攻撃するのが基本だ。
だがスペックの一撃で暗殺者達の骨は吹き飛び、無数の血痕が床を埋め血の海へ変えていく。
それが無数に飛び掛っている、今の自分にできる剣技の全てを用いた所であの男との差を埋められるのか?
良く見ても互角に持ち込むのがやっとであろう、さらにそこへ。
「エアプレッシャー!」
リアラの晶術によって退路を閉ざされた敵たちが否応なしにスペックの連打の餌食になる。
5分も経っては居ないであろう、あっという間に敵を全滅させる。
「す、すごい・・・。」
唖然とするカイルを他所に疲れる様子も見せないスペック。
外ではロニが次から次に現れるアサシンに悪戦苦闘している。
「オイ、アッチデ戦ッテルノヲ連レテキナボウヤ。」
そう言ってパブの奥へ進む、どうやらこの店を選んだのは単に飯がうまいから、では無いようだ。
すぐに外へ出て加勢するカイル。
「ロニ、パブの奥に隠し通路がある。そこから逃げよう!」
互いにバックステップで敵に背を向けないように店の入り口まで進む。
「1、2、3!」
一気に二人で扉を潜り抜け奥へと進む。
それを無理に追おうとした暗殺者は扉につまり、一瞬遅れる。
後列は割った窓から侵入し、更に店内が狭くなり進むのが遅れる。
「うまくいったねロニ。」
完璧なコンビネーションにはしゃいでいるカイルだが、ロニはさっきの言葉を忘れてはいなかった。
心を悪戯に傷つけられたと思ったロニの怒りの炎は消える事は無かった。
「フフフ、いずれ貴様も・・・。」
邪悪な笑みを浮かべるロニ、鉄拳で済ます気は明らかに無い。
その時、一列になって突っ込んでくる暗殺者達の姿が見えた。
今は只逃げるのみ。
219 :
二十二話「始まった暗躍」:2006/03/29(水) 03:49:18 ID:SFM1V4590
「ん?港に出たぞ。」
どうやら隠し通路は港へ繋がっていた様だ。
スペックとリアラが小船に乗り込んでいる。
「カイル、急いで!」
リアラがカイルの名前を叫ぶと同時にカイルのスピードが上がる。
戦闘中は自在に振り回している重いハルバードも、流石に逃走時はロニの動きを鈍らせる。
既に港から距離が出来てしまった小船へ乗り込むため、停泊している船を踏み台に飛ぶ。
「リアラぁー!」
叫び声と共に船へと飛び込む、後一歩届かない。
前のめりになりながら諦めず手を伸ばす、そして船からはリアラの手が伸びる。
二人の手は繋がり、無事にカイルは船へと乗り込んだ。
ロニはまたも怒りに手を震わせた。
鍛えぬいた全神経、視神経までもが常人を超越しているロニ。
お互いに名前を叫びながら手を取り合うそれは、さながら恋愛小説のワンシーン。
そう、自分の未体験ゾーンへとまだほんのお子様のカイルが・・・。
年だけ取ってく自分と違い、大人の階段を上っているカイル。
「俺だって・・・俺だってなぁ・・・。」
彼女さえ居れば、儚くも虚しいロニの夢、そして希望。
兄弟の契りを交えながらも、彼女だけは自分が先だと思っていた。
ロニの精神は・・・崩壊した。
「・・・カァァァイィィィィィルゥゥゥゥ!!!」
目は真っ赤に充血し、血の涙を流しながらも悪鬼羅刹の表情でカイルと同じように船を渡る。
ハルバードと成人したロニの体重では不可能な芸当だが天を切り裂かんばかりの怒りが、それを可能にした。
大きくジャンプし、ハルバードを取り出す。
「天を割る人・・・すなわち俺ッ!神空割砕人!!」
ロニの最終奥義が今、炸裂する。
220 :
二十二話「始まった暗躍」:2006/03/29(水) 03:50:27 ID:SFM1V4590
高く、雲に届くまで高く飛び上がり標的へと狙いを絞る。
落下中も斧を振り回し勢いを高める。
空気との摩擦で熱を生み、ハルバードの刀身が真っ赤に染まる。
「死ねぇぇぇぇぇカイルゥゥゥゥ!」
灼熱の炎の如く真っ赤に染まった斧をカイル目掛けて振り下ろす、そこへ。
「た、助けてくれぇぇぇッ!」
船へと高速で泳ぎながらバタフライの様に水を手で押しのけ、体を宙へと浮かび上がらせる。
そして船へと着地、一流の筋肉と一流の運動神経、そして一流のへタレ、シコルスキー。
船へと着地した際にもちゃっかりカイルのポジションへ立ってしまった。
「ハァ・・・ハァ・・・死ぬかと思った。」
スペックに下ったと勘違いされ、アサシンに追われていたのであろう。
死への恐怖も終わるよ、さよならシコルスキー。
灼熱の斧が振り下ろされた。
〜南エスタミル〜
クジャラート弓、この世界で量産されている弓で最も強く、値段も高い弓。
強く、しなやかでいて装飾も美しい、一流の弓鍛冶屋でも無い限りはこの弓に勝る弓は作れないであろう。
その弓が、シコルスキーの命を救った。
アサシン達が大量にこの弓を持ってロニへと放ったのだ。
だが訓練が足りない者ばかりだったのか、狙いはハルバードへと逸れてしまった。
弾かれたハルバードは海へと姿を消し、愛用の武器を失ったロニはシコルスキーの真上に落下し、
彼をクッションに怪我を負わずに済んだ。
ちなみにシコルスキーは歯が何本か折れてしまった。
弓の射程距離外まではカイルが剣で、リアラが晶術で防ぎきる事に成功し、
無事、南エスタミルまで逃げ延びたのだった。
疲れ切った彼等は宿を取り、明日の事は明日考える事にした。
だがロニは納得がいかなかった、何故ならカイルとリアラが同じ部屋だからだ。
カイルもお子様とはいえ男、しかも思春期真っ盛り。
高まる胸の鼓動を抑えながら保護者として見守るという使命へと身を投げた。
だが、天井からイヤらしい目で見守る保護者を持つカイルは、
彼女の出来ないロニ以上に不幸かも知れない・・・。
221 :
邪神?:2006/03/29(水) 03:51:44 ID:SFM1V4590
モンハンで武器はそこそこいい物作ったけど防具がしょぼくて即死してます、邪神です。
ロマサガも武器は二の次、防具でしたねスーファミは。
ワンダーバングルと術への対策、そして強い技。
でも武器も強い方がいいですからほったらかしはいけませんな。
さぁロニの奇行が目立って参りました。
本作ではこんな変質者みたいな事はしないんですが、
製作者が腐女子を標的にしているのか、「ウホッ、いい男。」「やらないか?」的なネタが結構・・・。
結構っていっても二つか三つ程度ですから通常のプレイに差し支えはありませんw
〜サガ講座であり質問箱でもある〜
南エスタミル 治安が悪く、とても汚い町。
孤児がいきなり寄ってきて「金くれ」とか言い出すので金を渡すか追い払うか出来ます。
追い払うとミンソンでは「糞でも食うかー?」等の汚い台詞を間の抜けた声で言い放つので笑えます。
ミンソンプレイ時は是非!
クジャラート弓 実はこんなべらぼうに高い弓使った事ない。
弓キャラなんてパーティーに一人だけだしイベントでもっと強い弓が無料で手に入るしなぁ。
ふら〜り氏 戦闘シーンは相変わらず短めですが、アサシンギルド乗り込んでからが活躍する時です。・・・多分。
194氏 フ・・・ロマサガ2でワンダーバングルに頼らずボクオーンでストップした俺の閃きで、
全て何とかなる!何ともならない時は投げ抜け・・・ならず投げ出(ry
222 :
作者の都合により名無しです:2006/03/29(水) 06:25:31 ID:GfTq4H/r0
見てた人さん、いつも楽しく呼んでます。
前回のヒキでカイジが最悪撲殺、よくて大ダメージかと思いましたが
なんとか回避できましたね。旗は留まりましたが、これから物語りに
絡むんでしょうか?いよいよ人員が絞れてきましたね。
夜中に邪神様お疲れ様です。
スペックが強いのは嬉しいけど、やはりここでもシコルスキーは
ヘタレ&カマセか…。死刑囚の中で一番好きなんだけどなあ。
テイルズは忘れてしまった。リアラってどんな娘だったっけ?
キャラ立ちまくりの4人に比べて、シコルは死刑囚の中でも一番特徴がないんだよなー
武器が切り裂き拳および指力だけというのがどうにも辛いし、性格も割と普通だし
邪神さんいつもお疲れです。
スペックが原作登場時の迫力のまま(ちょっとだけいい人ぽいが)
暴れているのが気に入ってます。シコルも頑張ってほしいな。
バキはどうでもいいけどw
ゲームあんまりやらないんで、どうしてもバキキャラや北斗キャラの方を
応援してしまうなあ
225 :
作者の都合により名無しです:2006/03/29(水) 19:26:15 ID:DkGnV7gr0
そううち、モンスターハンターとかのキャラやモンスターも出てくるのだろうか
どんなゲームかわからないけど、邪心氏がすごくご執心みたいだから。
うみにんさんやVSさん、サナダムシさんもだけど
俺としてはゲロさんがご無沙汰なのが寂しい
226 :
作者の都合により名無しです:2006/03/29(水) 19:49:04 ID:9GvtG+G10
ゲロさんは一時期、投下感覚も内容も神掛かっていたな、確かに
第六十三話「対立」
―――メカトピアの誰も知らない場所で。
仮面の男―――クルーゼが一人佇む。
「来たか―――ドラえもん、野比のび太、そしてムウ・ラ・フラガにキラ・ヤマト・・・!」
呟きながら、自分の手を見る。今までの人生、約20年余り。たった20年だ。
それなのにその手は、まるで枯れ木のような老人の手だ。生まれながらに背負わされた、十字架。
こんこん、とドアがノックされた。すぐさまドアが開き、もはやたった一人だけになった<同僚>が入ってきた。
シュウ=シラカワ。クルーゼも頭脳と能力には一目も二目も置いているが、得体の知れない男であった。
それはお互い様かもしれないが。
「返事を待たずに入ってくるくらいなら、最初からノックなどしないでほしいものだな」
「ククク・・・これは失礼。急ぎ報告したいと思っていたものでして」
悪びれもせずにシュウは言い放つ。
「やっと完成しましたよ―――色々と」
「ほお・・・」
それを聞いて、クルーゼの口元に笑みが浮かぶ。危険な香りを放つ、凶笑だ。
「それは結構なことだ。いつもながら手際がいいな」
「お褒めに預かり光栄ですよ。さて・・・彼らへの挨拶代わりに、早速仕掛けましょうか」
「そうだな・・・ん?そこに誰かいるのか?」
視界の端に、何者かの姿を捉えた。
それは一人の女だった。端麗な顔立ちに、長い黒髪。冷え切った瞳が、逆に美しさを際立たせている。
知らない顔だが、その瞳だけは印象に残った。自分好みの、破滅を宿す色だ。
「ああ、<彼女>ですか?そう言えば、あなたには話していませんでしたね。彼女は・・・」
「―――私のことは構わないでしょう。私など、ただの闖入者ですよ」
見た目から受ける印象通りの冷たい声が響く。
「ふん・・・つれないな。君のように美しい女性からつれなくされるのも、中々乙なものだが」
「ククク。申し訳ないですね。彼女はまあ、私の助手・・・というところですか。少々偏屈なところがありますが、まあ
大目に見てください。彼女にも、そろそろ表舞台に出てもらいたいと思いまして」
「そうか―――よろしく頼むよ」
「・・・こちらこそ」
本当に社交辞令としか思えないそっけない態度だった。苦笑して、クルーゼは立ち上がる。
「さて、それでは仕掛けるとしよう。君の作った玩具も、存分に使わせてもらおうか」
「玩具とは酷いですね。まあいいでしょう。行きますよ―――アザミ」
アザミ―――それが彼女の名前なのか。彼女は何も言わず、シュウの後を歩いていった。
その顔に、ほんの少しだけ躊躇が見えた―――ほんの少しだけ・・・。
―――レジスタンス基地。そこにはロボットに人間、合わせると意外に多くの住人がいて、結構な大所帯のようだった。
ディアッカとニコルの案内の傍ら、話は何故かメカトピアの歴史に移っていた。
「―――で、その時メカトピアを治めてたのがフーク・ダ・ミッツ王ってんだ。嫁と一緒にとんでもねえ悪政を行った
せいで、最後は市民からリンチ喰らって悲惨なもんだったらしいぜ」
「そうか。愚劣な王の末路は悲惨なものだな」
バカ王子が分かったようなことを言う。
「・・・でもさ、その話が何か関係あるの?」
「いや、ないけどさ。あ、一つだけ。フーク・ダ・ミッツ王は別に某アニメ監督とは関係ねえからな」
「またヤバいネタを・・・サマサめ、ついに開き直ったか」
アスランはまたしても妄言を吐く。一つ言っておくが、この会話は実在の人物には全く関係ない。ないんだったらない。
「で、さあ・・・」
ディアッカが話を続けようとしたときだった。
「―――ふん、アスランたちが帰ってきたというから来てみれば・・・」
硬い声がそれを遮る。振り向くと、そこにいたのは銀髪の少年。どこか冷たい、触れれば切れる刃物の危うさを秘めた瞳が
印象的だった。
「ちっ・・・わざわざ地球まで行って、連れてきたのがガキやらタヌキか。学芸会でも開こうってのか?」
「何だと!?」「タヌキだって!?」
少年の暴言に、ジャイアンとドラえもんがいきり立つ。掴みかかろうとするジャイアンを、キラが止めた。
「やめなよ、二人とも!イザーク、君も何てことを言うんだ!」
「本当のことを言っただけだ。何が悪い?」
少年―――イザークという名らしい―――は、非難の言葉にもまるで態度を変えない。そして話は済んだとばかりに背を
向け、そのまま捨てゼリフを吐いた。
「精々言っておいてやるよ。お前らなんかに出番はない。さっさと地球に帰るんだな」
そして、そのまま立ち去った。
「何よ、あいつ・・・」
亜沙は不機嫌そうに頬を膨らませる。
「くそっ!スネ夫みたいな声のくせに威張りやがって!」
「それ、関係ないでしょ」
ややヘンテコな方向に怒りをぶつけるジャイアンと、突っ込むスネ夫。
だが稟だけは、怒りではなく困惑を浮かべていた。
「あいつ、なんか悲しそうだったな」
「悲しそう?どういうこと、稟さん」
「ん・・・勝手な意見だけどさ。あいつ、自分じゃどうしようもない悲しみを、誰かにぶつけるしかないんじゃないかな。
そうじゃないと、自分が壊れちまうから・・・上手く言えないけどな、なんとなく分かるんだ。そういう奴を、昔見たから」
「そう?単なる嫌な奴っぽいけど」
つれない言い草ののび太。しかしその時ディアッカが口を開いた。
「・・・お前、稟だっけ?それで合ってるよ、多分」
「え?」
「あいつな・・・母親が死んだんだ」
ディアッカは少々気まずそうに語った。
「モビルスーツの攻撃に、街ごと吹っ飛ばされて―――それからだよ。あいつ、あんな風に荒んじまった。だからってわけじゃ
ないけど、失礼なのは許してやってくれよ。あいつも、複雑なんだ」
「・・・・・・」
のび太たちは複雑な表情で顔を見合わせた―――その時、基地の中をけたたましい警報が鳴り響く。
<敵襲、パイロットは各自戦闘準備を。敵襲、パイロットは・・・>
「ちっ!休む暇もないのかよ!」
舌打ちしながらディアッカは駆け出す。のび太たちもそれに合わせて走り出すが、ニコルに止められた。
「皆さんはちょっと待ってください!ついさっき揉めたばっかで、また顔を合わせたら余計イザークを刺激しちゃいますよ。
ここは僕たちに任せて。大丈夫、今回は大勢で出るんだから」
「そりゃそうかもしれないけどさ・・・」
納得いかない様子ののび太たちに、ディアッカは軽い調子で答える
「ま、着いたばっかなんだしここはゆっくりしてなよ。イザークの奴はまた後で何とか言い含めるからさ」
それだけ言い残してディアッカとニコルは走り去っていく。それを一同はただ眺めるだけだった。
「大丈夫かな・・・」
「心配するな。あいつらはああ見えて腕は確かだ。多分大丈夫・・・大丈夫だと思う・・・大丈夫じゃないかな・・・」
アスランが不安になるようなことをぐちぐち言い募る。実に縁起でもなかった。
「僕たちはモニターで様子を見よう。それで何かあったら、すぐ出撃できるようにだけしとこうよ」
キラの言葉に、一同はとりあえず頷く。一抹の不安を抱きながら・・・。
―――格納庫。
イザークは愛機<デュエル>の中で、写真を見つめていた。
自分と母親が写っている、色あせた写真だ。
母子家庭に生まれた彼だったが、寂しさなど感じたことはなかった。いつも母は自分を愛し、守ってくれた。
それを―――奴らが奪ったのだ。
「母上・・・母上の仇を取るのは、俺だ・・・!」
そうだ―――自分がやるのだ。あんなどこの馬の骨とも分からない余所者などに頼らずとも、自分が・・・
「イザーク」
「さっきから黙りこくって・・・どうしたんです?」
ディアッカとニコルの声に、ふっと我に返る。二人も既に自分の機体―――ディアッカは<バスター>、ニコルは<ブリッツ>
に乗り込んでいる。
「アスランたちが連れてきた連中のことか?あんな風に冷たくするなって。折角助けに来てくれたってんだからさあ・・・」
「そんなことじゃない!あいつらのことなんて言うな!」
「イザーク!落ち着いてくださいよ!」
ニコルが大人しい顔に似合わぬ強い口調でイザークをたしなめる。小さく舌打ちしつつも、イザークは頷いた。
「ちっ・・・分かってるさ。行くぞ、みんな!」
心にわだかまる激情を抱え、イザークは戦場へと飛び立った。
投下完了。前回は
>>116より。
フーク・ダ・ミッツ王はサマサオリジナルキャラです。実在の人物とは本当に無関係です。
無関係ですったら!
イザークの母親を勝手に殺しちゃったのはまずかっただろうか・・・
少なくとも、ラクス様よりはまともな人気がありそうなお方だし。
>>118 まだまだネタはあります。シュウもまだ最悪の技・へ○ざ○(分かる人にはモロバレ)を出してないしね・・・
>>119 すいません、分かりません・・・
>>120 マニアックなネタが多いですからね・・・知らなくても楽しめるよう努力はしますが。
>>121 痔悪化は出しただけで笑いが取れると確信しておりました。
>>ふら〜りさん
どこまで強くなるのか・・・うーん、勢いだけでキャラの強さが変動する場合もありますしねw
>>しぇきさん
わ・・・分からねえ・・・!高屋敷家かなあ、とも思ったんですが・・・
>>鬼と人さん
カマキリを倒した男の元ネタが分からんですが、その分楽しみに次に何を出すのか見たいです。
超機神のアスランは周囲のハラハラを他所に、本人は図太く幸せに生きていきそうな気もします。
234 :
作者の都合により名無しです:2006/03/30(木) 17:36:56 ID:oA+ynsKY0
ドラチームとクルーゼの対峙により対決ムードが高まってきましたな
前作の最強キャラのアザミもついに表舞台に現れてきたようですし。
まだネタはあるということなのでまだ続いてくれそうですね。安心しました。
でも、番外編ならともかく本編にあまり楽屋ネタはどうかな、と。
超機神は最初から楽屋ネタ多かったじゃないか。
236 :
作者の都合により名無しです:2006/03/30(木) 17:52:44 ID:oA+ynsKY0
いや、番外編ではいいんだけど、本編のシリアスな場面に
「サマサが…」とか挿入されると少し違和感感じるんだよね。
萎えるまではいかないけどね。俺だけかな?
まあサマサ氏、気になさらず。続き期待してます。
―――レジスタンス基地。そこにはロボットに人間、合わせると意外に多くの住人がいて、結構な大所帯のようだった。
ディアッカとニコルの案内の傍ら、話は何故かメカトピアの歴史に移っていた。
「―――で、その時メカトピアを治めてたのがフーク・ダ・ミッツ王ってんだ。嫁と一緒にとんでもねえ悪政を行った
せいで、最後は市民からリンチ喰らって悲惨なもんだったらしいぜ」
「なるほどね。愚劣な王の末路は哀れなものだな」
バカ王子が分かったようなことを言う。
「・・・でもさ、その話が何か関係あるの?」
「いや、ないけどさ。あ、一つだけ。フーク・ダ・ミッツ王は別に某アニメ監督とは関係ねえからな」
地の文でも言っておくが、この会話は実在の人物には全く関係ない。ないんだったらない。
「で、さあ・・・」
ディアッカが話を続けようとしたときだった。
「―――ふん、アスランたちが帰ってきたというから来てみれば・・・」
硬い声がそれを遮る。振り向くと、そこにいたのは銀髪の少年。どこか冷たい、触れれば切れる刃物の危うさを秘めた瞳が
印象的だった。
「ちっ・・・わざわざ地球まで行って、連れてきたのがガキやらタヌキか。学芸会でも開こうってのか?」
「何だと!?」「タヌキだって!?」
少年の暴言に、ジャイアンとドラえもんがいきり立つ。掴みかかろうとするジャイアンを、キラが止めた。
「やめなよ、二人とも!イザーク、君も何てことを言うんだ!」
「本当のことを言っただけだ。何が悪い?」
少年―――イザークという名らしい―――は、非難の言葉にもまるで態度を変えない。そして話は済んだとばかりに背を
向け、そのまま捨てゼリフを吐いた。
「精々言っておいてやるよ。お前らなんかに出番はない。さっさと地球に帰るんだな」
そして、そのまま立ち去った。
「何よ、あいつ・・・」
亜沙は不機嫌そうに頬を膨らませる。
「くそっ!スネ夫みたいな声のくせに威張りやがって!」
「それ、関係ないでしょ」
ややヘンテコな方向に怒りをぶつけるジャイアンと、突っ込むスネ夫。
>>230の問題の箇所をちょこっと訂正しました。
楽屋ネタ、確かに書いてる方は楽しいけどやりすぎはよくないですね。
失礼しました。
俺は楽屋オチネタもサマサさんの持ち味だからいいと思うんだけどね。
ただ、今回は物語の敵キャラの中で最重要クラスの相手で、
しかもかなり大事な場面と思うから、ちょっと?と思ったのは事実。
馬鹿王子やヤムチャとか相手なら本編でも問題ないと思うけどね。
でも、指摘に対して素直に修正するその姿勢は素晴らしいと思います。
クライマックスに向けて頑張ってね。
240 :
二十三話「魔の手 後編」:2006/03/30(木) 19:54:54 ID:qEARzFeg0
「ぬぅぅぅ、カイル・・・今にお前の化けの皮を剥してやる・・・。」
こんな治安も経済も碌に出来てないの町の宿屋では天井の穴は数え切れない程だ。
ロニは色々な意味でそこに目をつけた、ピッタリと。
丁度良く部屋の全景を見れる穴を発見しヤモリの様に張り付いている。
何やら二人で会話を始めている。
「どうしたの?カイル、元気無いみたいだけど・・・。」
リアラがベッドに腰掛けているカイルの側に寄り添う。
充血が激しくなるロニの目、嫉妬の炎は燃え盛る一方だ。
「・・・俺、足手まといなんじゃないかな。」
急に弱音を吐き出した、もしや女の前で弱みを見せてそこを慰めてもらうようにして取り込む作戦か?
自分より上のテクニックを目の前で見せ付けられてると思い込むロニ、嫉妬も怒りも最高まで高まる。
「今日の戦い、俺一人も倒せなかった・・・勢いに任せて店の外へ突っ込んで、
パブの中にリアラを残してまで飛び出したのに、ロニが居なかったら多分・・・。」
自分の無力さを噛み締めるカイル、ロニの目から赤さが消えていく。
どうみても演技には見えない事に今更気付く、自分の勘違いに罪悪感を覚えるロニ。
「スペックが居なかったらリアラの晶術の時間稼ぎも出来なかった。
俺は・・・リアラを見殺しにしたんだ。」
ロニの視点からでは後姿しか見えないが、旅で成長したと思っていたカイルの背中は、
幼子のように小さく見えた。
「そうかもしれない。」
リアラの冷たい一言にカイルはただ、拳を強く握るしかなかった。
今すぐこの天井を破ってでもカイルをフォローしたいロニ、だが言葉は見つからない。
黙って見守る事にし、カイルと同じように拳を力強く握る。
「でも・・・それはあなたが頑張ってくれた証、私の為に英雄になろうと努力する、
あなたの精一杯の気持ちよ。」
その言葉はカイルの心に届いたのか、思い掛けない台詞に驚いたのか。
体をリアラの方へ向ける。
241 :
二十三話「魔の手 後編」:2006/03/30(木) 19:55:55 ID:qEARzFeg0
「強くなんか無くってもいい、あなたの心はいつも私に力をくれたわ。」
天使の様な微笑みと共にカイルに向けられた言葉の数々が、この僅かな時にカイルを成長させた。
先程までの幼子の様な小さな背中は今までのカイルとは別人の様に、大きく見えた。
「ありがとう、リアラ。」
そう言って立ち上がるカイル。
感動して目が潤むロニ、
「スタンさん、見てますか?カイルは立派な男に・・・」
言葉は途中で途絶えた、ロニの炎が燃え上がる。
なんと、二人で立ち上がり抱き合っている。
感動的なシーンで感動的に抱き合う二人、
それを見ただけでロニの本能が猛る。
だがすぐに理性で抑えるロニ。
「いっ・・・いかん!あれはイチャイチャしてるんじゃない!
落ち着け・・・落ち着くんだロニ・デュナミス!」
本能を押さえつける為、理性を極限まで高める。
怒りを抑えるため体中が震え上がる。
そして天井は、その震動に耐えられない程に老朽化していた。
ミシミシと言う音が天井から響く、抱き合うのを止めた二人がそこを見ていると、
「うぎゃあああああ!」
天井から絶叫と共にロニが降ってきた。
「な、何してたのロニ?」
まずい、覗いてたなんて正直には・・・いや、
二人ともお子様だしなんとかなるだろう。
「えーっと、これはだなぁ〜つまり保護者として二人が成人もしてないのに〜・・・」
思いつく限りの言い訳を口から吐き出す、なにか自分が惨めになっていく気がする。
ロニの言葉が終わる前に部屋から出て行くカイル。
「お、おい待てよカイル!」
242 :
二十三話「魔の手 後編」:2006/03/30(木) 19:57:22 ID:qEARzFeg0
外へ出るとカイルは町で一人立ち尽くしていた。
「カイル・・・すまん、心配だったんだよ。」
誤ってみせるロニ、だがそんな事で部屋を出た訳では無い様だ。
「見なよロニ、ここにも沢山孤児がいる・・・。」
カイルの向いている方へ目をやると、物陰にボロを纏ったみすぼらしい子供が何人も居た。
町中が汚れきっていて、しかも多くの子供達がこの有様だ。
「なんだ、家に帰りたくなったか?」
そう、カイルの家は孤児院なのだ。
ロニとも本当の兄弟では無い、スタンが戦争孤児を引き取ったのだ。
スタンが、ソーディアンが引き起こした天地戦争の孤児達を。
寒さに震える子供達、カイルの家に居る子供達。
どちらも両親を亡くしているのにここの子供達の顔には笑顔は無い。
「すぐに元の世界に帰る方法を探して、帰るつもりだった・・・。
でも、ここの子供達を見て気付いたんだこっちの世界でだって困ってる人が居る、助けを求めてる。
英雄は・・・困ってる人を見捨てたりしない!」
旅に出る前までのカイルだったら根拠も無い自信と共に自惚れに満ちた表情を恥ず事も無く披露しただろう。
だが今は違った、半端な覚悟を感じさせない本物の決意がその言葉に秘められており、
見せた事も無いくらい真剣な表情で語っている。
「そうだな・・・でも、どうやって救うんだ?」
だが助ける、という決意だけでは足りない。
「まだ・・・分からない。」
今はそれでいい、助ける為に何をするか?
それこそがカイルに求められている。
そしてこの答えを出した時、きっとカイルが自分で胸を張って自分を、
「英雄」と呼べる様になるかもしれない。
「ううっ・・・寒っ!おい、風邪でも引いたら明日のアサシンギルド戦で如何なっても知らねーぞ!
さっさと宿に戻れ!」
243 :
二十三話「魔の手 後編」:2006/03/30(木) 19:58:15 ID:qEARzFeg0
明日考える、そう言って部屋に入っていった筈のロニが自分から攻めると言い出した。
首を傾げるカイル。
「どういう心変わりだろ?」
覚悟を決めた時の男は時に実力以上の力・・・いや、人間の本当の実力を出せる。
カイルの実力では一人として倒しきれなかったアサシン達に、
覚悟を武器にどうやってカイルは立ち向かうか、ロニはそれを見たくなったのかもしれない。
〜翌日〜
近くの人気の無い山脈の崖下を目指し、たどり着いた。
「コノ扉ノ向コウガ・・・アサシンギルドダ。」
なんの変哲も無い岩、スペックはそれを扉と称してなにやら岩をさすり始めた。
隠れ家にはうってつけであろう、仕掛けの解除が終わったのか先程の位置へと戻る。
「故障シテヤガル、フンッ!」
一発思いっきりひっぱたくと素直に扉は開いた。
幸い落石はなかったがこんな崖下でそんな真似をして生き埋めになったのでは冗談ではない。
「おい!岩でも降ってきたらどうすんだ!」
扉の奥へと進むスペックの背に向かって怒鳴り散らすロニ。
だが問題はそこでは無かった。
扉の向こうから足音がする兵士に感づかれたか?急いで逃げなければ。
しかし、スペックは構わず突っ込む。
「逃ゲ道何カネェヨ、チョットシタ近道ナラアルガナ。」
そう言うとスペックは真っ黒な壁に突き進んだ。
壁を突き破るのだろうか、そう思った瞬間スペックは壁をすり抜けたのだ。
黒一色の壁を触ってみるとなんと自分も通れた、どうやら特殊な細工が周囲にされているようだ。
中に入ると光の無い真っ暗な空間へと出る。
「一方通行ダカラ壁ヲ手探リデ探シナガラ行クンダ。」
暗殺者達に感づかれない様にするため、スペックの声が小さく暗闇に響く。
そして暗闇を出たそこは。
「フフ・・・待ちくたびれたぞ裏切り者め。」
南斗六聖拳が一人、南斗紅鶴拳のユダの待つ十字路前の部屋であった。
244 :
二十三話「魔の手 後編」:2006/03/30(木) 19:59:04 ID:qEARzFeg0
どーも、ここに来てようやく忘れてた「魔の手 後編」です。
まぁ丁度ユダの魔の手が伸びてるんで「忘れてたんだろ?」なんて野暮な事聞いてはならぬ。
題名いちいち見てくれてる人がいたら申し訳ないんでだしときます。
ええ、別に他のが思いつかなかったってことは無いですよ。無いったら無い、きっと無い。
〜サガ講座、そして質問箱〜
222氏 いやー良い娘なんです、でも少女って割には絵がケバイんです。
まぁ画家の絵がそういう物なんで仕方無いっちゃ仕方ないんでしょうが。
他のキャラもケバイんですがリアラは不自然にケバイんです。
しかしデスティニー2は秘奥義連発をやらなければ結構面白いんで好きです。
キャラもイベントも面白いし、でもストーリーがいまいち。
225氏 ワイバーンのリオレウスはモンハンから出演ですね。
これに続けて色々出て行くと思います。
おまけ
邪神?の成分解析結果 :
邪神?の68%はかわいさで出来ています。
邪神?の9%は記憶で出来ています。
邪神?の8%はアルコールで出来ています。
邪神?の7%は情報で出来ています。
邪神?の6%は勢いで出来ています。
邪神?の1%は大阪のおいしい水で出来ています。
邪神?の1%は下心で出来ています。
ttp://tekipaki.jp/~clock/software/index.html でやってみた。
俺はかわいい系だったのか・・・(0w0;)
邪神さんここんとこハイペースでお疲れ様です
テイルズチームはロマサガチームやバキチームと比べて
どこか微笑ましいですね。ラブコメ要素も入っているし。
でもま、スペックの存在感には正直適わないような…
絵ヅラの迫力がぜんぜんちがうもんw
246 :
作者の都合により名無しです:2006/03/30(木) 21:50:19 ID:P9ROnDUx0
>サマサ氏
タヌキに反応するドラえもんのほのぼのさと、対決の緊張感の対比がいいです。
俺はあまりサマサさんの作品に出てくるキャラは知りませんが、それでも楽しく読めます。
>邪神?氏
リアラを巡って、テイルズパーティで複雑な男女関係が出来てますねえ。
嫉妬とか駆け引きとかw ユダ対スペックの対決は楽しみだ。自由の女神壊した男対オカマ最強の男。
247 :
作者の都合により名無しです:2006/03/31(金) 12:18:49 ID:VxdNBfxk0
スペックとケンシロウが目立ってホークやテイルズキャラの影が薄いなw
週中はいつもこないねえ
249 :
作者の都合により名無しです:2006/03/32(土) 18:58:02 ID:apW2Mqu50
そして月曜日に4、5本まとめてくると
出来れば散らしてほしいw
250 :
ふら〜り:2006/03/32(土) 21:43:17 ID:h7g5isl/0
>>ミドリさん(44号は、また機会があれば活躍させます故。今回は申し訳ござらぬっ)
>馬鹿でかい城戸家
初っぱなの一言が強烈に斗貴子ですね。彼女以外、どの子も絶対こんな言葉遣いはしない。
沙織たち、そして学園に馴染みつつも変わらないとこは変わらず。裕己、ジュネと三人が
主人公(カメラアイ)って感じですが、この物語の終着点への興味は斗貴子が一番です。
>>見てた人さん(Sとカイジがテレパシー的に心通わす……なんてのも期待してみたり)
>カイジを伊藤さんと呼ぶと何だか別人みたいですね。
あ〜確かに。原作じゃ、不自然なくらい「カイジ」ですからね。書面の表記とかまで全部。
しかし。そういえば探偵間の武力行使は規則違反ではない。なら探偵としては、自分以外
を皆殺しに……しても告発しないと勝利条件未達成か。皆殺しは犯人にしか益なし。むぅ。
>>邪神? さん
スペックが強くて頼れるのは非常ぉ〜に嬉しい。次回もユダと派手に闘りあってくれると
いいなぁ。あと地味なところでハルバードの重さ描写がしっかりしてましたね。戦闘中は
「重さに振り回される」のも利用して扱ってるんだろなと。こういう細かなリアルも見事。
>>サマサさん
ドラが初対面の相手に「ネコみたいなロボットだな」と言われたこと……原作・二次創作
通じて見たこと皆無。正直、耳があってもネコにゃ見えませんが。アザミとの再会も気に
なりますが、次の見所はイザークとの和解か。ここはあまり意表でない、王道展開を期待。
第六十四話「終焉の使者」
激しい戦いが始まった。
敵味方が入り乱れる中をイザークが駆る<デュエル>が切り込み、勇猛果敢に敵機を切り裂いていく。その後方では
ディアッカの<バスター>が、正確な射撃で確実に標的を打ち抜く。
そしてニコルの<ブリッツ>がミラージュコロイド(透明化装置)を利用しての奇襲を仕掛ける。
数では勝るモビルスーツだが、三人の活躍もあって次第に追い詰められていく。全滅も時間の問題だろう。
その様子をモニターで見ていたのび太たちも、既に警戒は解いていた。
「よかった。別に問題なさそうだね」
「ディアッカたちは実は結構強いからな。雑魚相手ならこんなもんだろう」
言っている間に、残ったモビルスーツも撃墜されていく。最後の一機まで駆逐され、戦闘は終わりを告げた―――
かに見えたその瞬間だった。
レジスタンスの機体が、突如爆砕された。
「え!?」
「なに、どうしたの!?」
軽いパニックに陥る一同。既に戦闘は終わったものと思い、モニターから注意を離した隙の出来事だった。再びモニターに
意識を集中する。
そこに映し出されていたものは―――
<・・・嘘だろ・・・なんで、アレが・・・!>
マサキが震える声で呟く。無理もない、彼にとってそれは忘れえぬ悪夢だったのだから。
そしてそれは、ドラえもんやのび太にとっても同じだった。
モニターに映し出された巨大なそれは、30メートル近くにもなるだろうか。重厚で禍々しいフォルムは、機械仕掛けの
魔王というに相応しい。
かつてのび太たちは神界と呼ばれる世界で、それと戦った。その名は―――<グランゾン>!
「どうして!?あれは完全に破壊されたはずなのに!」
「ま、まさか幽霊とか・・・」
「バカ、ロボットの幽霊なんて・・・」
<おい、そんな呑気なこと言ってる場合じゃないみたいだぜ・・・>
がやがやと不毛な会話を続ける一同に、マサキが警告する。
<見てみろ、とんでもないことになってるぞ>
その言葉に従って、モニターの中の戦場へと視線を戻した。そこに広がる、更なる絶望の光景―――!
「ああ・・・」
誰ともなくため息とも悲鳴ともつかぬ声が漏れた。所々で空間が歪み、そこから巨大な影が浮かび上がる。現れたのは、
またしてもグランゾン・・・!
はたして何機いるのか、視界に映るのはもはやその漆黒の姿のみ。
「まさか、りょ、量産型ってこと!?だけど一体、誰が・・・」
<シュウの奴しかいねえだろ、こんなことができるのは・・・!>
一同が衝撃を受けている間に、それは行動を開始した。
量産型グランゾンはまるで羽虫を嬲るかのように、レジスタンスたちを蹂躙していく。まるで紙を引きちぎるかのように
機体を軽々と切り裂いていく。
それはもはや戦闘ではない。一方的な虐殺だった。
「みんな・・・行こう!」
のび太は拳を握り締める。
「こんなことを許しちゃおけないよ。そうだろ!?」
その言葉に、ドラえもんたちも顔を引き締める。
「そうだ・・・こんなのは、ダメだ!」
キラが強く頷く。その瞳に、熱い闘志を滾らせて。
「でもさあ・・・あれがどんだけ強かったか覚えてるでしょ?量産型だからちょっとは弱くなってるかもしれないけど、
あんなたくさん・・・」
「スネ夫、お前何しに来たんだよ。今さらびびるんじゃねえ!」
「び、びびってなんかないよ!ちょっと言ってみただけじゃない」
弱腰のスネ夫と、怒鳴りつけるジャイアン。
「不安なのは仕方ないよ。けど、そんなこと言ってる場合じゃない。ぼくたちがやるしかないんだ」
「・・・分かってるって。ぼくだって、何度も危険を潜り抜けてきたんだからね」
間に入ったドラえもんに、スネ夫もそう返す。やはり彼も幾度にも渡る冒険を生き抜いただけあって、いざとなったら
並の小学生とは度胸の据わり方が違う。
「よし!ならイザークたちのピンチに、かっこよく駆けつけるしかないじゃないか!さあ、久々の本格的なバトルだ。
気合入れていくぞ!」
アスランが真っ先に駆け出す。のび太たちもその後に続いて走る。
―――その中で、しずかだけはあることが気にかかっていた。
グランゾンの姿を見たからだ。それが、<彼女>を思い起こさせた。
「アザミ・・・」
最後の最後、分かり合えたと思った彼女。未だどこかで生きているらしい彼女。一体、どこにいるのだろう。
そしていつか出会う時があれば、自分は彼女とどう向き合うのか。
答えは、出ない。
「しずかちゃん、どうしたの!?顔色が悪いけど・・・」
「大丈夫?具合が悪いなら、出ない方がいいわ」
のび太とリルルが足を止めてしずかに駆け寄る。それに対し、笑顔を作って答えた。
「心配しないで。あたしなら大丈夫だから。さ、行きましょ」
「う、うん・・・」
そして再び駆け出す。心に残る思いを、無理矢理に押し込んで。
―――戦場では、イザークたちが苦戦を強いられていた。
「く・・・くっそぉーーーーーっ!」
イザークは雄叫びをあげながら量産型グランゾンに切りかかる。それをあっさりと掌で受け止められ、逆に打ち払われた。
「イザーク!」
ディアッカが叫びつつ、バスターの武装の中でも高威力を誇る高エネルギー収束火線ライフルで量産型グランゾンを撃つ。
撃たれたショックで一瞬その動きが鈍り、その隙にニコルのブリッツが近づき、ワイヤー付のクロー<グレイプニール>で
雁字搦めに縛りつけ、完全にその動きを封じた。
そして態勢を立て直したイザークのデュエルが、ビームサーベルを二刀流で構えて突撃する。回避も防御もできずに、
量産型グランゾンは切り刻まれて沈黙した。
「ちくしょう!やっと一体かよ・・・!」
ディアッカが絶望的な声を上げる。レジスタンスのパイロットの中でもエース格の三人で囲んでおきながら、たった一機を
倒すのにここまで苦戦している。
そんな怪物が、まだまだ何十機という規模で暴れまわっている―――!
焦燥と絶望が頭をよぎったその時、凄まじい衝撃に目の前が真っ白になった。一瞬の隙に攻撃を食らってしまったのだ。
バスターが激しく地面に打ち据えられ、ディアッカはその中で気絶した。
「ディ・・・ディアッカ!」
それに気を取られたニコルも、同じ運命を辿る。量産型グランゾンが手を翳し、そこから<ワームスマッシャー>を放つ。
まともにエネルギー弾の一撃を喰らい、ブリッツが煙を吹いて地面へと倒れこんだ。
そして量産型グランゾンは、一斉にイザークへと向き直る。
イザークはもはや恐怖さえ感じることができなかった―――そんな呑気な感情などに浸っている暇はない。
目の前に広がる悪夢―――いや、それは悪夢などという生温いものではない。絶望というにも不十分だ。
それは<終焉>。悪夢は覚めれば忘れられる。絶望しても、また立ち上がればいいだろう。続きがあれば、また希望も
生まれるだろう。
だが―――全てが終われば、もはや後には何の意味もない。何も生まれることがない。
終焉とはそういうことだ。続きがない。だから、終わり。なんてシンプルで、なんておぞましい。
終わり、おわり、オワリ。
目の前の悪鬼たちは、まさにその具現者だ。全てを終わらせるべく降臨した、終焉の使者―――
そしてその中の一機がその剛剣をイザークに向けて振り下ろす―――
その寸前で、それは頭部から一刀のもと両断された。
「あ・・・」
イザークは呆けた表情で救いの主を見る。それは、赤き戦士の姿―――
「イザーク!あとは俺たちに任せろ!」
そこから聞こえたのは、アスランの声。そして、舞い降りる巨大な影の数々。
「お前らっ・・・」
「へん、あんだけ威張っといて情けねーの!」
ジャイアンが先ほどのお返しとばかりに言い放つ。そして一同を代表して号令を飛ばす。
「おーし。みんな、行くぞ!」
「おーう!」
力強い声。それは絶大な敵を前にしても、けして揺らがない意志の表れ。
終焉を打ち破る者たちが今、戦場に立つ!
投下完了。前回は
>>232より。
いつか本家スパロボにも出ないかな、量産型グランゾン・・・
ディアッカたちは完全にヤムチャポジションですが、特に問題はないと思われます。
>>234-236 楽屋ネタ連発は確かによくなかったですね。
>>239 ディアッカとの雑談だからこんくらいまあいいかなと思ったんですが、うーん、難しい・・・
>>246 タヌキタヌキ・・・ドラえもんにはそれしかないのか・・・
>>ふら〜りさん
一応同じネコ相手なら、ちゃんとネコと認識されてるっぽい場面もありますが、ネコどころか正直タヌキにさえ
見えないような・・・
イザークとの和解は、まさに王道少年漫画的展開で行きます。
量産型グランゾン……ついにこのネタが来たかw
あれはスパロボでやったときは悪夢そのものだった
>サマサ氏
「量産型」とは銘打たれてないけど、複数のグランゾンと戦うスパロボはすでにありますよ
PSに移植された「第四次スパロボS」の最終面で、確かネオグランゾン5〜6体でてきました
シュウが乗ってる奴だけ倒せばクリアできるんですけどね
>>257 偏在ですね。確か三体同時に現れるというまさに悪夢そのもの。
しかも苦労して倒してもバッドエンド扱いという・・・
>>101より
Part4.
デスマスクとアフロディーテは、黄金聖闘士である。
そして、黄金聖闘士同士の戦いというのは、相性によってその優勝劣敗が決する。
最も神に近い男と呼ばれ、今まさにサガたちと激闘を繰り広げているシャカや、
先ほど彼らを景気良く吹っ飛ばしたムウなどは、特殊能力、所謂超能力系統の技を使う為、
一芸型のデスマスクにとって、どうしても相性の悪い相手だ。
デスマスクは、ムウによって冥府へと送り返される直前、盟友アフロディーテと共に、
この地上で最も冥府に近い場所、ハーデス城へとたどり着いていた。
ムウやシャカに超能力では劣り、次元操作においてはサガとカノンに及ばぬデスマスクだが、
それでも彼は黄金聖闘士屈指の超能力者なのである。
技そのものからの脱出は不可能でも、逃げ道を探すくらいならば可能なのだ。
死人の道標たるデスマスクだからこそ、可能なのだ。
デスマスクの奥義であり、彼の代名詞とも言うべき積尸気冥界波、一点突破型の技である。
その本質は、敵の魂を引きはがし、封印するという清き技であった。
蟹座の聖闘士に代々受け継がれたこの技は、使う者を聖人にも悪魔にもする。
しかし、デスマスクは望んで悪魔の振る舞いをしてきた。
己の預かる巨蟹宮を、己が殺した者たちの死面で飾るなどは、まさしく悪魔の振る舞いだった、他の者から見れば。
無論、デスマスクには理由があった。
死者の面を己の宮に刻み込んだのは、己の所業を忘れぬ為。
己は所詮、血塗られた道を歩くしか能がない、兵であるという事を忘れぬ為。
力こそ正義と信じ、聖闘士の正道を外れ、外道となったからには、その外道を貫き通す。
その覚悟が、巨蟹宮の死面なのである。
覚悟という意味では、今彼と共にハーデス城の門前で冥闘士と戦っているアフロディーテも同じだ。
アフロディーテと名乗る前の彼は、あらゆるものに博愛の心を忘れない、優しい少年だった。
博愛が奪う愛へと変わったのは、アフロディーテの両親がテロに巻き込まれて死んだときからだ。
正義を口にした連中の手で両親が死んだ時、アフロディーテは無力だった。
力なき者は、何をされても文句をいう事すらできない。
その思いが、彼の根幹を担った。
父を、母を、家族を亡くした少年は、修羅へと入った。
愛の女神の名を名乗ったのは、運命への皮肉だ。力こそが凡てだ、アテナの聖闘士としては正に外道というべき思想だったが。
その根幹において、彼らは似ていた。
ハーデス城は、かつてのハインシュタイン城である。
現在の聖闘士たちは知るよしもないが、かつての聖戦に参戦した聖闘士たちから慕われた、
聖域庶務課のゲオルグ・ハインシュタインの実家であった場所でもある。
今聖戦において、ハーデス軍はアテナや聖域、そして聖闘士を徹底して侮蔑した。
かつての黄金聖闘士を冥闘士として聖域へと送り込む事など、その最たるものと言えるだろう。
ハインシュタイン城もまたそういった意味合いから、ヒュプノスとタナトスによって、
真っ先に攻略対象となっていたのである。
モイライの三老女でなくとも、人一人の運命を弄ぶことくらいは眠りと死の兄弟には可能なのだ。
「ええぃ、数が多すぎる!」
「フ…、デスマスク!君らしくないな、この程度で根をあげるのか?」
そういうアフロディーテも、デスマスク同様に煩わしそうに、地上侵攻担当である地サツ星たちを睥睨した。
108星の魔星を守護にもつ彼ら冥闘士たちは、その地力が高いことでおそれられている。
彼らの見たところ、冥闘士の平均戦闘力は最低ランクのものでも白銀聖闘士級、
最高ランクのものは、黄金聖闘士級だ。
だからこそ、聖域十二宮攻略戦の前線から外れた彼らは、その兵力を消耗させることを選んだのである。
デスマスクは変わったと思う者も居るだろう、
肩を並べ、冥闘士どもを倒し続けるアフロディーテもそう思っているかもしれない。
だが、これもまたデスマスクの顔なのである。
彼のメンタリティの多くを占めるのは、彼自身は納得しないだろうが、イタリア人気質である。
イタリア人は、都市国家単位での団結力が非常に強く、同胞意識が高く、名誉心に篤く、なによりも誇り高い。
サッカーを見ればそれを理解出来るだろう。
一度、仲間と認めた者には命がけで報い、敵には一切の容赦もせず、裏切りは看過しない。
まだデスマスクとなる前の彼は、華やかな町の裏路地で、そのルールに従って生きていた。
悪ガキならまだマシだろうが、彼の行状は既に犯罪者のそれであった。
そうしなければ生きていけなかったし、幼い弟たちを飢えさせるわけにはいかなかった。
守るためには力が必要だった。
だから、拳をふるうのに一切の躊躇はなかった。
幸か不幸か、彼に聖闘士としての才を見いだしたスカウトによって、少年はデスマスクとなる。
少年には、より強い力が必要だった。
家族を、仲間を、友を、力なきが故に喪ってしまったが為に。
「何をしている?聖闘士ども」
来た。
間違いなく、黄金聖闘士クラスだろう。このワイバーンのラダマンティスという男は。
「見ろよ?この冥闘士たちのフヌケぶり。
こんな奴らに任せていたら、一万年と二千年かかってもアテナの首なんざ取れやしないぜ?
だったら、再び俺たちを地上に送り込むべきなんじゃないのか?」
仲間のために、友の為に、愛するものの為に、命を捨てる。
それはデスマスクがデスマスクとなる以前に、
アフロディーテがアフロディーテとなる以前に持っていたルールなのだ。
そして、彼らのルールであった、力こそ凡てという思想、それは、聖闘士としての正道に殉じようとした瞬間に、牙を向いた。
本来の聖衣ではなく、聖闘士の力を封じる結界の下だったとはいえ、デスマスクとアフロディーテは敗れた。
どこまでも、己のルールに忠実であった故に。
Part5.
温かな、優しい命の息吹が、聖域を癒していた。
逝った七十七人。
友だった、兄弟とも言えた、恋い焦がれた、愛した、そしてなによりも、仲間だった。
生き残った、たった二人は、今、別離を歩む。
一人は、聖闘士亡き聖域の教皇として。
一人は、冥闘士の監視者として。
「なんて畏れ多い肩書きだ…」
「貴様が言うなよ。
私なんぞ教皇だぞ」
教皇の間、その玉座の赤絨毯の上で、少しばかり赤らんだ顔色で、
シオンと童虎は杯を酌み交わしていた。
聖戦から3ヶ月、十二宮を守るのは今や主亡き聖衣だけだ。
童虎は郷里五老峰にて、冥闘士の監督者としての任務に就くことになっている。
シオンは既に教皇としての責務に追われている。
「刎頸の友、って知っているか?シオン」
「廉頗(れんぱ)と相如(しょうじょ)か?」
童虎は、ああ、と肯き、さらに杯を干す。
「思えば長いつきあいだな…。
お互い、ハナタレの頃からか」
シオンもまた、杯を干す。
「我が友、童虎よ」
「おう、我が友シオン」
にやっと笑うと、呵々大笑する。
「次の聖戦、生き残ろうぜ、シオン
そしたらまた、ここで一杯やろう」
243年前のその事を、二人はつい先ほどの事のように覚えている。
「あのときの我々は、廉頗(れんぱ)と相如(しょうじょ)だったが
今の我々は、張耳(ちょうじ)と陳余(ちんよ)だな」
「正しく、刎頸の友だな」
苦笑と共に、シオンは言う。
「そろそろ終わりにしようか」
「処女宮のあの爆発、恐らくアテナエクスクラメーションだろうな…」
たわいない雑談のように聞こえるが、彼らの間の空間はまるで飴細工のようにねじ曲がっている。
恐ろしいまでの小宇宙の昂ぶりだ。
もはや、この二人の間に割って入ることのできるものは誰もいない。
例えアテナだったとしても、この二人の激突は止められない。
「頚を刎ねあう友、か…」
「未練だな、シオンよ。
その姿になったからか?一度死んでも変わらないものだのう」
瞬間、シオンの拳が童虎の顔面を打ち据え、童虎がシオンの顔を蹴りとばしていた。
奇しくも、あの春の日、恋焦がれた少女の為に、
当の少女とは全く関係ない所で争った時と同じ構図だった。
少年時代、黄金色の日々は遠く霞み、今はただ、無明の闇が、塗りつぶすのみ。
だが、闇夜には星がある。
旅人を導く星がある。
戦という闇を歩く聖闘士には、アテナという星がある。
童虎の聖衣が哭(な)いていた。
模造品でしかないシオンの冥衣も哭いていた。
「嘘をつくのが巧くなったな…、シオン」
「貴様こそ、韜晦(とうかい)が巧くなったものだ、童虎」
破顔一笑。
「行くぞ、わが友シオン」
「応さ、我が友童虎」
そして、聖闘士たちは冥府を踏破する。
十二宮の奥、アテナ神殿にてアテナの聖衣を復活させたシオンは、ゆっくりと消えていく。
春に雪が溶けるように、ゆっくりと。
「じゃあな、童虎。
先に逝っているぞ…」
童虎は、無言だ。だが、その沈黙は、ほかの何よりも雄弁だった。
刎頚の友という言葉には二つの意味があります。
ひとつは、首を刎ねられても悔いは無い友
もうひとつは、文字通り「首を刎ねあう友」です
劇中二人が語っていたのは、その関係者です
廉頗(れんぱ)と相如(しょうじょ)が前者
張耳(ちょうじ)と陳余(ちんよ)が後者です
シオンと童虎、彼らがハーデス編でその真の姿を見せたとき
僕が思い出したが「刎頚の友」という言葉でした
次回、最終回です
嘆きの壁と呼ばれる絶壁がある。
神話の昔より、冥府の看守、死者の防人、地下の王として君臨するハーデスの居城・理想郷エリシオンへ繋がり
ギリシア神話における三柱の主神・天帝ゼウスのオリュンポス神殿と天界
海皇ポセイドンの海底宮殿と海界に値する空間を守る、いわば最後の砦でもある。
冥府の統制者としての公が畏怖されるハーデスであるが、その私の部分は奔放な兄弟達とは異なり、
細君ペルセポネに対して純愛を貫いているという以外な一面もある。
大地母神デメテルと天帝ゼウスとの娘であるペルセポネは、春の色彩を司る美しい娘であったという。
冷たい冥府の看守でしかなかったハーデスは、命の輝きそのものとでも言うべき彼女に惹かれたのだろう。
友達のニンフと花を摘んでいたペルセポネは、ハーデスによって攫われた。
ハーデスは、彼女を花嫁にしようとしたのである。
愛娘が行方不明になったので、デメテルは半狂乱になった。
大地の豊穣を司るという仕事を放り出して、娘探索の旅に出かけたのである。
実はこの件は、ゼウスの承諾を得た行為だったのである。
そうとは知らないデメテルはもう大地などどうでも良いと、旅に出る。
大地の女神に見捨てられた大地はもう何も実を結ばなくなった。
そして、地上に長い冬が訪れた。
大地は荒廃し、山野からはその輝きが喪われ、太陽すら大地を照らすことを止めた。
余談だが、世界中の神話にこのような「輝きの喪われた時代」の話が存在する。
我が国の岩戸開きなど有名な物だろう。
その時代に生きた人間は、この不毛の、命枯れ果てる嘆きの時代を、どのように生きたのだろうか?
終わらぬ夜の時代、止まない餓えの時代、永く長く死の臭いに捕らわれ続ける時代。
想像を、絶する。
だが、これだけは確実に言うことが出来る。人々は、決してあきらめなかったと。
諦めを踏破したからこそ、次代へと命は繋がった。理不尽に屈しなかったからこそ、生命は美しく輝き続けるのだ。
268 :
作者の都合により名無しです:2006/04/02(日) 15:54:56 ID:KhcSHN/F0
>サマサさん
前回とうってかわって激しい戦いが始まりましたが、ドラえもんチームの
「やるときはやる」の精神が垣間見られてよかったです。
多くの修羅場を潜って来た仲ですからね。今回もきっと潜り抜けるでしょう。
>銀杏丸さん
うーん、次回で最終回かあ。寂しいなあ。いい意味で手頃な長さで読み易くて、
それでいて中身が詰まっているこのSSが本当に好きだっただけに残念です。
今回はデスマスクのかっこよさが際立ってましたね。悪ではなく、己の美学を
貫く生き方が。あくまでシオンたちがラストエピソードの主役だと思いますが。
今、嘆きの壁の前で諦めを踏破する物達が集う。
「冗談ではない…!」
シャカは、己の矜持(きょうじ)にかけて叫んだ。
神に最も近いとされた、己の矜持がシャカを駆り立てた。
青銅聖闘士の小僧どもがここまでやって来たというのに、
黄金聖闘士の己がこの体たらくでなんとする!
「冗ッ談じゃないッ!」
ミロは吐き捨てるように叫んだ。
誇りが許さぬ。
鬼畜の烙印を押される事すら恐れず、現世に舞い戻った親友の誇りが許さぬ。
ここまで来た亡き親友の愛弟子の誇りの為にも許さぬ。
「冗談じゃない!」
アイオリアは叫ぶ、獅子の如く叫ぶ。
亡き兄ならばこの程度、苦ともせずに乗り越えたはずだ!
亡き兄の背を追いかけてきた、亡き兄のように成ろうと、亡き兄を越えようとしてきた。
今が、今こそが、亡き兄と肩を並べて闘う時なのに、まだ亡き兄の背を追ってどうする。
「冗談を…」
静かな怒りだ、嵐の前の凪(なぎ)の如く、
津波の前の引き潮の如く、ムウは静かに怒りを燃やしていた。
師・シオンの真意を測ることのできなかった己に、シャカの真意を覚る事の出来なかった己に、
何よりも、最強の黄金聖闘士の役目を果たせぬ己に、ムウは怒りの焔を静かに燃やした。
「冗談…!」
童虎は常に無力感に苛(さいな)まれていた。
親友の死を、弟子が命をかけて闘ったことを、悔やまぬ時は無かった。
全ては、ハーデスとの最終決戦のために。
先代のアテナに誓った、あの春の黄昏に誓った、あの別れの日に誓った、
その為だけに、天秤が水平に保たれるように、心を殺して生きてきた。
それが何という事だ、この期に及んで、なんと無力だ!
全聖闘士の要、黄金聖闘士・天秤座ライブラの童虎は、己の聖衣の無力さに歯がみしていた。
通じないのだ。ライブラの武具たちが。
かつて、アレスの狂闘士たちを薙ぎ払い、海界の覇者ポセイドンの7つの柱すら打ち砕いた、
最高最強を自負する星振る武具がまったく役に立たない。
親友(シオン)の二度目の最期に声すらかけず、冥府へと向かったと言うのに…。
「アイオリア、シャカ、ムウ、ミロ、お前達の命を、儂に預けてくれるか?」
星矢と瞬は、その言葉に弾かれたように童虎に視線を向ける。
死を賭すのだ。童虎は、少年達に視線でそう答えた。
直前のシャカと同じ手段を講じる。だが、今度は五人分だ。威力は足す四ではなく、五乗倍だ。
五人の黄金聖闘士たちは、戦鬼の如き笑みを浮かべて童虎の問いかけの答えとした。
「せめて、十二人そろえば何とかなったのじゃがのう…」
口に出してしまい、童虎は苦笑する。無い物ねだりをしたところで始まらないのだから。
だが、黄金聖闘士たちは忘れていた。
死しても消えぬ、死すら踏破する者たちが居る事を忘れていた。
彼ら五人の黄金聖闘士の聖衣が、突如共鳴しだしたのである。
今こうして生きながら冥府に居ること自体が奇跡なのだ。
命を引き替えにして奇跡の一つでも起こしてやろうと、腹をくくった五人が、さらなる奇跡の呼び水となった!
金牛宮から牡牛座の黄金聖衣、カノンの下から双子座の黄金聖衣、巨蟹宮から蟹座の黄金聖衣、
磨羯宮から山羊座の黄金聖衣、宝瓶宮から水瓶座の黄金聖衣!
そして、人馬宮から射手座の黄金聖衣が飛来したのだ!
昏(くら)い、太陽の日すらささぬ冥界の嘆きの壁の前に、残る七体の黄金聖衣が降り立ったのだ!
「どうした!だらしが無いぞ!」
一騎当千の豪傑、難攻不落の黄金の野牛・アルデバランが呼びかける。
「ハ、この俺様が居ないとな!」
何時もの皮肉な笑みで、黄金の死神・デスマスクが笑う。
「最期の奉公だ」
不滅の聖剣・シュラが、変わらぬ調子でいう。
「弟子にまかせ切りにするわけにも、行くまい?」
水と氷の魔術師・カミュは、常と変わらぬ佇(たたず)まいを崩さずに言う。
「フ…、理不尽に抗う力こそ、黄金聖闘士」
茨の戦士・アフロディーテが、嫣然(えんぜん)とした、不敵な笑みで言う。
「死して尚、アテナの為
そんな事を言う資格は、私には無いのかもしれない…
だが、それでも、私は…!」
光と闇に翻弄され続けた男・サガが言う。
そして、そんなサガの肩を叩く漢がいた。
「…ッ!」
驚愕に目を見開くのは、サガ、シュラ、そして…
「兄さん…!」
黄金の獅子は、呆然と呟いた。
金色の翼を広げ、黄金聖闘士にその人ありと讃えられ、死して尚アテナの為に闘う漢。
射手座・サジタリアスのアイオロスが、在りし日の姿で、そこにいた。
「行くぞ、サガ」
只一言で良いのだ。
親友なのだから。
滂沱(ぼうだ)の涙を流しながら、サガは、「応」と答えることしかできなかった。
年重ねること二百四十三年、不撓不屈の闘志を胸に、地上の愛と平和の守護の為に、
童虎が目指し、教皇となったシオンが末期に夢見た光景がそこにあった。
天に、地に、海に、冥府に鳴り響く、最強無敵の黄金聖闘士十二傑がここに揃ったのだ!
「おまえたち…」
童虎には、もう語る言葉もない。
十二人の黄金の小宇宙が燃えさかる。
神にどれだけ近づいたとしても、神にはなれず、叶わず、
ただ、その差だけを実感し、絶望し、嘆けとでもいうのか?
否だ。
死の嘆きすら踏破した者こそが、明日の勇者なのだ。
そして、アイオロスが矢を番えた。
「星矢、瞬、下がっていろ」
童虎は、静かに、二人に向けて語りかける。
「今から黄金十二人がアイオロスの矢に全小宇宙をこめて放つ
この時代に黄金聖闘士十二人が一体となって放つ最初で最期の一矢じゃ…。
それは小規模ながら太陽、即ち命の焔をこの冥府にもたらし、
必ずや嘆きの壁を破壊してのけるじゃろう」
だが、と童虎は続ける。
童虎のその顔に浮かぶ表情を語る言葉を、星矢は、瞬は、知らない。
二百四十三年もの長きにわたり、この戦いの為だけに生きながらえてきた漢の、貌だ。
その漢の貌を語る言葉など、だれが持つというのだろう。
「よいか、ハーデスはその真の肉体をこよなく愛しておる」
先の聖戦で分かった事じゃが、と前置きして童虎は星矢に伝える。
「ハーデスは、神々の父と母、クロノスとレアから生み出された真の肉体を愛するがあまり、
聖戦の折には仮の肉体を選ぶのじゃ」
丁度、瞬のようにな。という童虎の言葉に、瞬自身は複雑な表情で頷いた。
「ここに至るまで、儂はこの地獄の中をハーデスの肉体を探して追ったのじゃが、それらしいモノは見付からなんだ。
ならば、答えは一つじゃ。ハーデスはその肉体をエリシオンに隠しておるのじゃろう。
それも最深部に、じゃ」
「お前たちならば、神の血を受けた聖衣を纏うお前たちならば」
アイオロスが、遺志を託した少年たちへと語る。
「この嘆きの壁の向う、エリシオンへと到達し」
サガが、己を打ち倒した漢へ向かって語る。
「必ずやアテナの元へと、アテナの聖衣を届けることができるじゃろう」
もはや、言うべきことは何もない。
星矢と瞬が扉の向うへと駆けていくのを見ながら、黄金の十二人は、ふっと微笑んだ。
復讐の念を抱いて生きてきた者もいる、
己の信念の元に生きた者もいる、
道を外れた者もいる、
善悪の彼岸に溺れた者もいる、
亡き兄を越えようと足掻いた者もいる、
彼岸の果てから戦場へと戻った者もいる、
長き生涯をただこの戦の為だけに費やした者もいる、
激情のままに戦った者もいる、
アテナの正道を貫いた者もいる、
己しか見ていなかった者もいる、
師弟の絆の為に散った者もいる、
力のみを信じた者もいる。
だが、それでも、彼らの視線の先にあったのは、一柱の女神、戦と智の女神の姿だった。
「今こそ燃えろ!黄金の小宇宙よ!黄金の魂よ!」
そのとき、星矢は、黄金の十二人が微笑んだのを知った。
まるで。神話の昔から見守り続けた兄のような微笑だった。
「この暗黒の世界に!」
そうだ。彼らは、神話の昔から共に戦ってきた兄弟だったのだ。
その兄弟たちに、別れを告げるときが来たのだ。
さらば、熱き血潮の兄弟たちよ…。
「一条の光明を!」
さらば、黄金の聖闘士たちよ…。
黄金の嵐のなか、体も、魂も。霞のように消え果ていく絶望の中で。童虎は十三人目の漢の姿を知った。
「死ぬ時くらい付き合ってやる、そう言ったのはお前だろう?童虎」
懐かしい、声だ。
僅か数時間前に過ぎないのに、まるで千年も会っていなかったように思える。
「うろたえるな小僧ども!
この教皇シオンが付いている!安心して全力を出せ!」
天翔る黄金の雄羊のような巨大な小宇宙が、十二人の円陣を後ろから支えていた。
太陽の、命の煌きが、嘆きの壁を討ち抜いた時、黄金の聖闘士たちは、静かにその役目を終えた。
「太陽が…」
目覚めた星矢の目に飛び込んできたのは、命の煌き。
ハーデスが心の底から愛してやまず、焦がれてやまず、その果てに憎悪した、命溢れる美しい地上。
その地上に再び太陽の光が差していた。
「星矢ーッ!」
冥王を打ち倒した女神アテナと、戦友の少年たち、そして青銅聖闘士の兄弟たちが目を覚ました星矢にどっとつめよる。
星矢は、その中に、姉の姿を見つけた。忘れるものか、夢にまでみた姉の姿だ。
涙でにじんでよく見えない、だが、姉の姿を忘れるものか。
星矢は、還ってきたのだ。
人は、また過ちの歴史を繰り返すだろう。
人は、また衰退を極めるだろう。
人は、絶望に沈むだろう。
だが、星矢たちのような人間が居るのだ。
神すら打ち倒し、嘆きすら踏破し、死すら跳ね除ける少年たちが居るのだ。
神に縋ることなく、真実の栄光を築き上げるに違いない。
それこそが、黄金時代なのだから。
一年もの長きにわたって僕の拙文に付き合っていただいて本当にありがとうございました
ひょんなことからバキスレを知り、
職人の皆様方の作品に触発され書き出して早一年、まだまだ未熟者です。
未熟者だからこそ、全力投球させていただきました。
ここまでやれたのは、感想を下さったふら〜りさん、名無しさん、職人の皆さん、語ろうぜスレの皆さん、
そして拙作を保管してくださったバレさん。
あなた方のおかげです
ありがとうございました。
拙い語彙で感謝の言葉が続きませんが、本当に、ありがとうございました!
できる限り早く、戻ってきます。
280 :
作者の都合により名無しです:2006/04/02(日) 16:56:31 ID:pKbjOBa80
最終話のアイオロス復活は感動しました。いいなあこういうやり取り。
一年間お疲れ様でした。そして完結おめでとうございました。
ところで、
>姉の姿を忘れるものか
魔鈴さんと素で間違えていたことは忘却の彼方なのでしょうか。
まずは銀杏丸さん、完結お疲れ様でした。おめでとうかな?
就職したばかりらしいので中々忙しいでしょうが、また面白い作品を
ひっさげて帰ってこられるのを今から楽しみに待ってます。
>超機神大戦
ジャイアンといいスネ夫といい、自分のポジションみたいなものを
わかってますね。決戦前でも揺るがない何かを感じます。
映画版ドラえもんの決戦前みたいな雰囲気で、いい感じですね。
量産型グランゾンの悪夢を、このチームの絆がどう跳ね返すか楽しみ。
>黄金時代
童虎とシオンという偉大なる最初の黄金セイントから、
シャカやサガなど先輩セイントを経て、最後に物語が主役たる星矢に
もどってきましたね。原作屈指の名シーンとラストシーンを思い出させる
いいラスト、このSSに相応しいラストだと思います。お疲れ様でした。
取り敢えず
>>262でアクエリオン噴いた。
何この蟹様と魚様、かっこよすぎるんですけど(w`
・・・原作でもこれくらいだったらなあ・・・。
第12話 Muscle Docking
轟音が響いていた。手榴弾が爆発する音である。どこぞで戦闘が繰り広げられているらしい。
普通の人間なら驚くか逃げ出す。だがここにいる人間達は違う。今邸内にいる人間は護られている者か護る者、他は
襲う者である。廊下には多数の木の破片が転がっていた。
「あのう・・どうです?」
「ん・・・大丈夫だ。ここには敵はいない」
裏口から忍び込み敵を何とかやり過ごし鞍馬達は入り口付近、つまり二階へ上がる為の階段付近にいた。
鞍馬は思った。
びんは実は「おばあちゃん」からサバイバル教育を受けていたのではないだろうか。そうでなければ
小さい子供が一人で生きていく事は難しい。森の中では様々な危険がある。大雨による地すべり、落雷による火災、
強風による倒木。どれもこれも山で暮らす人間にとっては脅威である。事実屋敷側面からの侵入以降びんの
頭の回転により発見を免れている。
「ふもふもふも!」
びんが無線で鞍馬に伝えた。“ボン太君”のボイスチェンジャー機能が働いているのだ。
「ふもふもふも!」
鞍馬もびんに応答する。手で合図をし階段を支える柱の傍まで走る。相手との距離はまだある。
見ようにも階段の側面が壁になるので見えない。柱から数メートル程歩き頭が隠れるギリギリの場所で顔を出す。
鞍馬の目に三人の男達が映った。三人の内二人は迷彩服、後の一人は黒いコートを着ている。黒コートの男は
がっちりとした体つきで背が高い。見るからに幹部クラスという雰囲気である。
「陽動はうまくいっているようですね、クラマさん。」
「ああ。まぁこちらは数が少ないが精鋭部隊だからな。」
何事もないかの様にクラマと呼ばれた男と護衛が階段を登っていく。
鞍馬は迷った。仕掛けるかそれとも尾けるか。素人を一度に三人相手にするのとは違うのだ。
もし相手が刃物を持っていたら組む前に切られてしまうかもしれない。相手はそこらへんのチンピラではなく
軍人か傭兵。命がけである。相良から渡された“ボン太君”を着ているとはいえ大丈夫なのだろうか。
喧嘩でも試合でも無い。これは命のやりとり。
そういう思いに耽っていると誰かが鞍馬の腕を引っ張った。
「ふもー。」
びんが不思議そうに見上げていたのだ。
「ふもふもふも。」
鞍馬が安心しろと言うかのようにびんの肩に手を置く。
「ふも、ふもふも。」
「ふも。」
鞍馬とびんが交信を終えゆっくりと歩き出す。クラマ達はもう既に階段を上がり終えて二階の通路を歩き出していた。
広い居間であった。ウルズ2とウルズ6がいた。屋敷主であるオーク氏の護衛任務についているのである。
先刻のASによる振動は威嚇であったらしくまだ本体は現れていない。否、見えないだけなのかもしれない。
相手のASが何であるかわからないのだ。AS(アームスレイブ)には光化学式迷彩機能が付いている機種もある。
肉眼ではわからない、つまり透明になるのである。
「ASと言ったか・・・巨大なロボットが屋敷の壁を壊しに来るのか。力づくだな。」
オークがそわそわした様子で呟いた。透明だが自分のすぐ傍にいるかも知れない巨大な敵。それに恐怖を覚えるのが
凡人である。
「現在、我が隊が敵と交戦中です。ですが退路の確保は出来ています。」
そしてASとの戦闘に慣れているのがミスリルの様な傭兵部隊の人間である。
「こんな少人数で護りきれるのかなぁ?あー?」
居間の入り口から声がした。
3人の男達がそこにいた。クラマが声を出すまで誰一人として気付かなかったのである。
クラマは煙草に火を付けた。クラマの後ろにいる二人の護衛はライフルを持っている。
「おまえら、やーーー」
クラマの言葉が言い終わらない内に二人の護衛がバタリと倒れた。銃声はしない。物音を立てない攻撃によって
護衛は倒されたのである。
「む」
クラマが振り向いた。彼の目の前に着ぐるみが二つあった。それだけなら良かった。着ぐるみの中にいる人間が
やったという事はわかる。だが彼の誤算は着ぐるみの後ろにいる存在だった。
飛び出したのだ。黒いモノが。
それが人の形をしたモノだという事にクラマが気付く頃には彼の体は弾かれていた。
「ぐあ!」
クラマが呻くのと着ぐるみの中の人間達が動くのは同時だった。足元に倒れていた兵士の腕を掴み引きずる。
後方の地面を蹴って前へと進む。着ぐるみの二人の内、一人が弾かれたクラマを真上に蹴り上げる。
「ゴバァッ!」
血を吐き出すクラマ。彼の目の前は霞んでいた。
小柄な着ぐるみの方が兵士の体を持ち上げたまま飛翔する。一瞬にして天井近くまで舞い上がりクルリと回転する。
今度は兵士の方が下を向いている。
「ふもふもふも!」
大柄な着ぐるみの方が何かの合図をする様に叫んだ。小柄な方と同じく兵士の体を持っている。今度は兵士の体が上である。
クラマは思った。
間違いない。あいつらは俺を挟み撃ちにする。腕よ動け。動け。動け。片腕でもいい。折れたって構わない。
まだ片腕があるさ。腕一本はくれてやる。俺は勝つ。そうさ まだーー
ボキリという音がした。兵士の骨かクラマの骨が折れた音であるかどうかはわからない。唯一つ言える事は
クラマは兵士二人の体に挟み撃ちにされたという事である。
「う・・・あ・・・」
クラマは呻く事しか出来なかった。肋骨が何本も折れている。左腕の感覚が無い。
辛うじて動く右腕で胸ポケットから煙草の箱を取り出す。震える手から落としそうになりながらも
蓋を開ける。恐ろしい程緩慢な動作。今はそれしか出来なかった。
「へへへ・・・どうだい。マッスルドッキングの味は。」
着ぐるみが上からクラマを見下ろしていた。
「トリプルカーボン作戦だったか。」
黒ずくめの男が着ぐるみの中の人間に話しかけた。
「“三本の矢は簡単には折れない”という話を思い出してね。久我さんとびんちゃんがいなかったら成功しなかったよ。」
「泉の奴は別の場所にいる。」
クラマの脳内に敗北の二文字が浮かび上がった。自分は負けたのだ。だが最後の手は打った。この任務を成功に導く為の
最後の手段。
「さぁコイツをどうするかね。」
「とりあえず質問と行こうか。おい吐けや。」
久我重明がクラマに蹴りを入れる。血を吐くクラマを見ても顔色一つ変えずに何度も繰り返す。
「う・・・お前達は・・・終わりだ・・」
それだけ言うとクラマの体は死んだ様に動かなくなった。一筋の血が彼の口から流れてくる。
「俺達は終わりだ・・と言っていたな。どういう事だ?」
突如、ゴウンという音がした。非常に近い。そして壁に皹が入った。ピシッと音が鳴り
見る見る内に壁が崩壊していく。あっけに取られるウルズ2とウルズ6を尻目に巨大な腕、つまりASの腕は
オーク氏の体を掴んだ。そのまま外へと戻っていく。
「野郎!合図を送りやがったんだな!」
鞍馬がびんを小脇に抱えて走り出した。あの重量をまともに相手にしたらこちらは一溜りも無く倒される。
小柄な物はすばしっこいが一歩ごとの距離はどうしても大人には劣る。もう片方の腕が攻撃を仕掛けてくる可能性もある。
「カーボン5からギリアムへ。“ ス キ ヤ キ”」
「ラジャー!リトル=カーボン1、リトルカーボン2、スキヤキだ!」
ギリアムはリトル=カーボンの指揮官役として参加していた。片腕が折れている為まともな戦闘は出来ないが現場の指揮を出す事は可能である。
「了解!」
「リョウカイ!」
屋敷周辺には宗介達が仕掛けた様々な罠がある。様々な状況を想定して対人用、大戦車用等の罠が仕掛けられている。
中には勿論AS用の罠もあるのだ。
敵のASが動き出した。ズシリ、ズシリと巨体を揺さぶるかの様に歩いている。
「いくよ!ちくリン!5、4、3、2、1、」
「「0!」」
ちく姉妹が同時にボタンを押し糸を引く。たちまち敵ASの足元に巨大な穴が現れた。
敵のASがバランスを崩し轟音を立てながら尻餅を付く。勿論単にバランスを崩しただけなら問題ない。
単純にレバーやら何やらを操作して体勢を建て直せば済む話である。だが今回は違った。
落とし穴に足が入った途端ASの全ての機能がダウンしたのである。主電源、サブ電源、燃料タンクからの
電気、その他諸々が全く応答しないのだ。理由は簡単である。
相介がOS用のコンピューターウイルスを開発したのだ。それをAS内のOSに忍び込ませる仕掛けが
落とし穴の底にあったのだ。デジタルウェポンをアナログなタクティクスで使用するという画期的な
作戦である。
唯の鉄の塊と化したASから敵のパイロットがコックピットから出てきた。まだオーク氏はASの手に握られている。
誘拐が目的ならASからオーク氏と共に降り車やら何やらでこの場から離脱するはずである。事実、ASに乗っていた
男は機体の手の方へと歩いていた。
機体の肘辺りまで男はごく普通の足取りで歩いていた。角度が緩やかなためか普通の速度で前に進んでいたのである。
だが異変が起こった。突如男が膝を付き機体から落下したのである。
「へへへ・・カーボン7とはオレ様の事よ。腕っこきのスナイパーであるオレにかかったらどんな獲物でもイチコロよ。」
原因は狙撃であった。びん達がいる居間からウルズ6が敵を狙撃したのである。距離も遠くましてや夜である。
狙撃に成功したのはウルズ6の天才的な狙撃技術と集中力があったからなのだ。
「12人・・・十二王方牌大車輪・・か。」
鞍馬がポツリと呟いた。
すみません、連続投稿に引っかかってしまいました。最近キン肉マンのゲーム
をやったので技をSS内に入れてみたんですが・・・わかる人いるのかなここにorz
個人的に餓狼伝がアニメ化されるとしたら鞍馬の声優はやはり
神谷明だと思うんですよ。お調子者で強い所が似てるし。
第12話終了です。
長編への移動ありがとうございました。これからも頑張って行きたいと思います。
290 :
作者の都合により名無しです:2006/04/02(日) 21:25:59 ID:/QaPeujl0
>サマサ氏
大量の敵ロボット兵、それを見て結束するチーム内と、なんだか
シリアスな決戦ムードが漂ってきますな。いつもピンチですが
今回のは大ピンチでどう切り抜けるのか楽しみです。
>銀杏丸氏
お疲れ様でした。1話からリアルタイムでずっと読んでました。
この作品は単なる聖闘士の活躍だけでなく、オリキャラが出たり
原作に沿いながらもより感情移入し易いエピソードが挿入されたりと
変化に富んでて良かったです。また、なんか書いてくれると嬉しいな。
>フルメタル作者氏
意外と仲がいいですね、カーボンズの人たちはwナイスチームだ。
絶対にチームの統制が出来ないような連中だと思いきや、やはりびんちゃんの
可愛らしさがまとまりを生んでいるのかな?ちく姉妹になんとなく笑ったw
あ、
>>271双魚宮が抜けてる・・・。
後は
>>275の最後の行、サガが語っているのならば
じゃろうという語尾はどうなんだろう・・・とか?
何はともあれ完結お疲れ様です、楽しませていただきました。
フルメタルウルブス作者さんお疲れ様です。
びんちょうタンは知りませんけど、びんちゃんの愛らしさとそれを守る
鞍馬を初めとするカーボン部隊が逞しいですね。
肉体を駆使して戦うだけかと思いきや、狙撃とかもしてますし。
あと、遅ばせながら長編カテゴリ移行おめでとうございます。
293 :
ふら〜り:2006/04/02(日) 23:15:06 ID:nbcYD9yQ0
「AさんやBさんは良く来るけど、CさんとかDさんは最近ご無沙汰だな」
なんて考えることができるのも、層の厚さがあればこそ。EさんFさんが
仕事や勉強の都合で忙しい時でも、GさんHさんが頑張って書いて下さる。
毎度おなじみ、今日も元気です、バキスレは。
>>サマサさん
前作ボスキャラが量産型で再登場……ひぁ〜なるほど。パワーアップとか強敵瞬殺では
なく、こういうインフレもあるかと溜息。敵も味方も質も量も、来るトコまで来てます。
>「おーし。みんな、行くぞ!」
うん、こういう役はジャイアンですよね。のび太ではなく。古き良きガキ大将の勇姿!
>>ウルフズさん
意外なほど快調に飛ばしてますな、カーボンズ。にしてもマッスルドッキングをカマす
ボン太君の図というのは、想像すると怖いんだか面白いんだか。リーダー(ですよね?)
の宗介も、実戦に指揮にトラップ作りにと大活躍で。このまま一気か、それとも……?
>>銀杏丸さん(お〜つ〜か〜れ〜様でしたっっ!)
まずは蟹&魚を、原作の設定や展開から外れることなく、しかし原作とは比較にならぬ
カッコ良さで描かれたのに感服。その二人を含め、黄金全員を丁寧に美しくそして深く
描ききったのに感心。青銅側にカメラを振らず、両聖戦の最後まで描き抜かれた「黄金」
伝説に感動……です。聖域が舞台の日常的ラブコメ、十三年前の事件に絡む男たちの物語、
幅広かった本作も壮大にフィナーレを迎えられましたね。またのご執筆、待ってますっ!
7/1 9:00 時空管理局本局
こんにちは、高町なのはです。平凡な小学三年生だった私が、ある事件をきっかけに魔法少女になってはや一年以上。その間にいくつもの出会いがありました。最初はすれ違いも多かったけれど、今では多くを共有できる親友になりました。
今は、後進に技術を伝える教導隊を目指して、武装隊士官として日々邁進中です。
「どうだい高町君、隊には慣れたかい?」
こちらは今の私の上司、つまり武装隊の隊長で提督のイグナチオ・デルカーノさん。「はい」
「君は教導隊を目標にしているそうだが、そろそろ部下を持ってもらおうと思ってね」
「部下、ですか?」
「君ほどの実力を持っている教導隊志望の魔導師が、部下を持った経験がないというのは今までに例のない事なんだ。入ってきたまえ」
ドアが開くと、そこには三人の魔導師が。
「名前と年齢、あと魔導師ランクを」
デルカーノさんがそういうと、黒髪で短髪、眼鏡をかけている知性的そうな女性が、
「エラントラ・鄭・グレンジャー、15歳、A+ランクです。よろしくお願いします」
次に、ちょっと不機嫌そうな青緑色の髪の男の子が、
「フェリツィア・ファボリット、13歳、A-」
そして、赤銅色の髪でおさげの元気そうな女の子が、
「ティアナ・ユリシーズ、11歳。Bランクです。よろしくお願いしますっ!」
「あの、全員年上なんですが…」
「できるだけ年齢が近い人材を集めたんだが、さすがに年下の隊員はいなかったんだ」
「俺はこんなチビッコが上司だなんて嫌です!」
「彼女の実力がどれだけのものか、実戦になればわかるさ」
「はぁ…はい…」
こうして、私に三人の部下ができました。まだまだ信用はないだろうけど、頑張って背中を預けてもらえるくらい信頼されるようになりたいです。
同時刻 次元世界「エスペート」首都バトリット
「将軍、ヴァスコー地方もあと一息で平定できそうです。」
「そうか。これで念願だった統一された平穏な世になるな。リヒャルト様にも見せたかった…」
同時刻 次元世界「エスペート」首都バトリット
「将軍、ヴァスコー地方もあと一息で平定できそうです」
「そうか。これで念願だった統一された平穏な世になる。リヒャルト様にも見せたかった…」
まず、加藤が起床した。
体についた砂を払い、背筋をぐっと伸ばす。
ほとんど添い寝に近い形で、井上はまだすやすやと眠っている。今日はさらわれずに済
んだようだ。ひとまず安堵した。
マングローブの密林から突出した城は、昨日と変わらない不気味な存在感をかもし出し
ている。今のところ、城に甲冑に代わる主が住み着いている気配はないが、用心に越した
ことはない。
寝息を立てている井上に注意を払いながら、加藤はいつも通り果物狩りへ向かった。
仕事はたやすく終了した。十数個もの実を両手に抱え、砂浜へ戻る。
ひとりで軽い朝食を取ると、柔軟体操から稽古が開始される。
正拳突きを一心不乱に繰り出し、型をてきぱきと決めていく。無頼といえど、さすがは
三段。堅苦しい形式ばった鍛錬も、そつなくこなす。
指立て伏せ。空手は手首から先こそが命。指と腕を同時に鍛え上げる。
飛び散る汗が、鍛錬の充実ぶりを如実に物語っていた。
水平線から太陽が切り離された頃、今度は井上が身を起こす。
先輩の邪魔にならないよう気を遣いながら、朝食を済ませる。
あとはただ、見学に努めていた。うっとりしていた。神心会トップクラス選手による修
練は、黒帯一歩手前にある彼女に強いショックを与えていた。
「やっぱりすごい……」
これが現時点で加藤に送る、率直な評価だ。
もはや、数日前に恐れた血に飢えた狼という面影はなかった。
空手家。いつだって強さを追求し、情に厚く、時には弱者を守る騎士となる。彼が神心
会きっての凶漢だというのは十中八九、真実なのだろう。が、彼からにじみ出ている空手
に対する愛もまた、真実にはちがいない。
もう怖くない。この人とならば、あと半月くらい生き延びられる。
井上が加藤に対し抱いていた恐怖心は、そっくり信頼へとシフトしていた。
太陽がまもなく真上に移動する時刻。大きく息を吐き、集中の糸を自ら切った加藤に、
井上が歩み寄る。
「オス、先輩」
「あ、おぉ……起きてたのか。オハヨウ」
後ろめたさが多分に反映された、ぎこちない“おはよう”。加藤はすっかり井上を忘れ
ていた。そして、声には出さず自省する。もし、またも彼女がさらわれるような事態にな
れば、今度こそ取り返しがつかないことになるかもしれない。ひとりで鍛錬に夢中になる
など愚の骨頂もいいところだ。
しかし、井上はきちんと見抜いていた。
「いいんですよ。先輩は強くならなきゃいけないんですから……」
波紋ひとつ立たぬ湖のような、慈愛に溢れた笑顔だった。敵から目を逸らすことを禁忌
とする加藤も、この時ばかりは目を逸らしてしまった。
「いや、まァ、強くならなきゃならねぇけど」と、赤面しながらごまかす。
──が、いつまでも武神が平和を許すはずもない。
「失礼します……」
「このタイミングで出て行くんかい。性格悪いねぇ」
「うむ」
高低さまざまな三色の声が出現した。
「来やがったかッ!」右手で、井上に離れるよう指示する。
『青』と『黄』と『赤』。今日、武神より放たれた試練は、文字通り三色を帯びた男た
ちであった。
『赤』で塗られた男が一礼する。
「初めまして。今日は我ら三人が相手となりましょう。いえ、今日が最後となるでしょう
ね」
丁寧さに彩られてはいるが、露骨な挑発を含んでいる。さらに、『黄』が続ける。
「大して強そうじゃねぇな。さっさと終わらせちまおうや」
「うむ」とだけ、『青』は答えた。
一対三。初めから複数相手を設定されていた試練はこれまでなかった。東京にいた頃と
は比べられぬほど鋭敏になった第六感が、加藤に危険を伝える。
「コンビネーションか……。けっ、まとめてぶち殺してやる」
加藤が構えると同時に、『青』と『黄』と『赤』は、弾かれたように駆け出した。
「ひょおっ」
『黄』は真正面から眼突きを敢行する。
加藤が横へかわすと、これを予測していた残る二人が同時攻撃を仕掛ける。
「シィッ!」左から、『赤』による貫き手。
「しゅっ」右から、『青』による直突き。
タイミングは絶妙だった。が、速度はさほどでもない。加藤は研磨された両手で、二撃
を華麗に捌ききった。
むろん、防いだだけでは終わらない。中段突きが『赤』の水月を突き刺し、孤を描くハ
イキックは『青』へと吸い込まれるようにヒットした。
「あとはてめぇだッ!」
流れはこちらにある。先ほどいきなり眼突きを放った『黄』を狙い、加藤が殺気をぎら
つかせる。
だが直後、加藤がぴたりと立ち止まる。
「くっ」
なんと『青』と『赤』は、すでに反撃に移ろうとしていた。一連の攻防が帳消しになっ
た気配すらある。
「きっ……効いてねぇだと」
性格に差異はあれど、性質は同類。色の三原色を拠りどころにする三人組は、極めて似
通った笑みを面相ににじませた。
お久しぶりです。
◆AWbEsTwxCc氏、直後投下申し訳ありません。
次回へ続きます。
いよいよ部下を持ったと思ったら、いきなり大事件。そしてびっくりする出会いも。
次回「ドラえもんのび太とリリカルマジカル全力全開!〜魔法少女リリカルなのはTS〜」第1話「まさかまさかの解逅なの」
リリカルマジカル頑張ります!
サナダムシさんお久しぶりです!!っていうか、303と304の流れが最高w
二重投稿で焦ってしまい、順番を乱してすみませんでした。
とりあえず書き出してしまえば、後には引けなくなるだろうと思って書きました。
毎回次回予告をつける予定です。
期待しないで待っていてください。
307 :
作者の都合により名無しです:2006/04/03(月) 06:32:12 ID:pz726nw+0
>全力全快氏
おお、いつか魔法少女とドラえもんのコラボを書くと言っておられた方ですね。
魔法少女の方の素材はわかりませんが、時空の絡む壮大な物語になりそうで
期待しております。新連載、完結に向けて頑張って下さい!
でも、ワードかなんかにまとめて書いておいてから一気に投稿された方がいいかも。
時間おきながらだと、投稿されようとする他の書き手さんが少し戸惑いますからね。
>サナダムシさん
お久しぶりです!一ヶ月位あいてたので体でも壊されたのかと心配してました。
加藤、相変わらず井上さんに対して紳士ですね。井上さんの加藤に対する好感度も
上がりまくりで。でも、やっぱりやってきましたね試練が。どう切り抜けるか楽しみです。
>全力全開さん
新連載お疲れ様です。俺も魔法少女って漫画なのか特撮なのか
どのネタが元なのかわかりませんが、とにかく長編ドラという事で期待してます。
色々と設定も考えられているみたいで、やる気が感じられますな
一気に書こうとすると辛いと思うんで、気長にのんびり頑張って下さい
>サナダムシさん
バキスレを代表する職人の一人のサナダさんが消えてしまうなんて
思わなかったけど、俺もひょっとして事故でも起こしたかとw
相変わらず加藤がナイトしててかっこいいです。原作と違ってw
また、やさぐれもうんこもw期待して待っております。
>フルメタルウルブス!
カーボンズのチームワークの良さが意外。絶対に仲間割れしそうな面子なのに。
びんを守るために、ガロウ伝グループとフルメタルグループが一致団結してるなあ。
>ドラえもんのび太とリリカルマジカル全力全開!〜魔法少女リリカルなのはTS〜
(いくらなんでもタイトル長すぎwテンプレ作る人困るだろw)
新連載お疲れさんです。魔法少女とドラと聞いてたんで、いきなり時空管理局とかは
意外でした。結構バトル&冒険ものになるのかな?まだ0話ですけど、期待してます。
>やさぐれ獅子
サナダムシさんお久振り。元気そうで何よりです。この作品は2部になってから
また色合い変わって楽しいですね。試練&井上さんとの恋?を加藤がどうクリアするやら。
ご感想ありがとうございます。
今パソコンを修理に出しているんで携帯から書いたんですが、第1話からはパソコンで書くことにします。
時空管理局とかはアニメで出てきている通りです。ただ、新キャラが異常に多いです。
↓これを見ると大体の流れが分かります
http://www.nanoha.com/ 公式
萌えより燃えの部類に入ると思います。
なにせキャッチコピーが「熱血魔法バトルアクションアニメ」ですから。
しかも結構話は重いです。
せっかく書くので、泣けるいい話にしたいと思います。
もちろんタイトルも短くw
311 :
作者の都合により名無しです:2006/04/04(火) 09:23:49 ID:6whJmQ7e0
魔法少女ってこんなのかw
てっきり特撮物かと思った。
それはともかく頑張ってくだされ
びんちょうタンが出た時も(しかも板垣キャラと一緒に)双頭吃驚したけど
まさかこのスレでなのはを拝めるとは予想も出来なかった・・・。
なのはって魔法少女物の皮を被った特撮系ヒーロー物だよなあ・・・。
特にファイズ好きには堪らない(w`
313 :
聖少女風流記:2006/04/04(火) 16:13:26 ID:7aIPvPus0
第十五話 ラ・ピュセルの旗を掲げ
フランス中央部サルトル地方に位置するオルレアン市では、500年以上の伝統を誇る
『ジャンヌ・ダルク祭』が現在でも盛況に行われ続けている。
毎年5月8日。ジャンヌがオルレアンを解放した日である。
人々は仮装行列や軍隊パレードに騒ぎながら、中世の衣を纏ってこの日を大いに楽しむ。
600年近くも前の、19歳で不遇の死を迎えた少女の事を思いながら騒ぐのだ。
人の命は短い。せいぜい生きて100年といったところである。
ましてやこの少女は、17歳でフランスの為に立ち上がり、19歳でこの世から去った。
激しく眩しい光芒を放ちながら、まるで花火のように儚く散っていったのである。
だが少女のその濃密な2年弱は、時間を超え、今でも世界中から敬意を払われ続けている。
これこそが、ジャンヌ・ダルクの成し得た最高の奇跡ではなかろうか。
この荒唐無稽な物語も佳境に入りつつあるが、今更ながらお断りをしておく。
この物語は歴史的な考証をしてしまえば、間違いの方が遥かに多い。
大まかな流れは史実・事実に則って書いているが、致命的な欠落や間違いは多々存在する。
例えば最初にジャンヌと慶次が出逢った場面。
ジャンヌが自分の事を「ジャンヌ・ダルク」と名乗っているが、これは本来ありえない。
「ダルク」とは、後にジャンヌがシャルルから与えられた英名だからである。
例えば作中「イギリス」と表記している事。当時の呼び方では、「イングランド」が正しい。
これ以外にも、大きくも細かくも多々相違点はあるが、お見逃し頂きたい。
作者が分かりつつも敢えて間違いを貫いている場面もあれば、不明ゆえの間違いもある。
が、この物語は区分けすればファンタジーである。歴史物ではない。
一介のもののふが、救世の神子と出逢い、そして別れる様のみを描き続けるつもりである。
出来れば、この荒唐無稽な物語に最後までお付き合いして頂ける事を。
314 :
聖少女風流記:2006/04/04(火) 16:14:16 ID:7aIPvPus0
心臓は破裂しそうなほど高まっている。旗を持つ左手は、ぶるぶると震えていた。
誰でも近くに寄れば、彼女の緊張と恐怖が手に取るように分かっただろう。
でも、決して兵たちに弱みは見せない。私はそう誓った。
戦場に立っている。しかも、私はその先頭に立ち、解放の旗を掲げている。
ようやくここまで来た、という思いも強い。夢見枕に大天使ミカエルが立って以来数年。
心に思い浮かべていた光景でもある。シャルルに解放を宣言したオルレアンの決戦は。
この地は、ちょうどフランスの中央部に位置する。
イギリスとの戦争でも最重要地点であり、その為にこの地で数多くの血が流された。
ここを征さない限り、勢力で劣るフランス軍に勝ち目はない。
ずしり、と肩に重しが載ったような錯覚をジャンヌは覚える。
この地に生きる貧しい人々や、フランス各地で自分に声援を贈ってくれた人、そして
こんな戦争のずぶの素人の為に集まってくれた兵たち。そんな期待が重いのだ。
振り返った。兵たちが列を成している。
数千人の兵が、疑念も持たず自分に着いて来てくれる。そう、この旗を掲げた自分に。
左手に掲げた旗を見上げる。その純潔無垢を現すデザインが少々鬱陶しくも感じた。
真っ赤に染め上げられた生地に、美しい白百合が描かれた旗。
赤地は解放への意志を示しており、白百合は純潔を表している。
彼女が永遠の処女『ラ・ピュセル』である証を掲げた旗である。
この旗を彼女に贈ったのはジル・ドレであった。
一晩でその旗を職人に見事に染め抜かせ、オルレアン解放のまさにシンボルとして
ジャンヌに託したのだ。兵たちにも評判は最高だった。だが、ジャンヌの心は暗い。
(私は、白百合のような無垢ではない、ただの女)
そんな気持ちが彼女の胸に横たわっている。
自分の中にイギリス兵への憎しみがある。慶次に抱かれたがる女としての情念もある。
私にこの旗は重い…。そんな気持ちが彼女を暗くさせる。
だが顔には出さない。出せば、兵たちの動揺を生み、結果として死なせるからだ。
315 :
聖少女風流記:2006/04/04(火) 16:15:05 ID:7aIPvPus0
心の葛藤と、外面の凛々しさ。
目的とする第一の砦、サン・ルウ砦に到達する前に、ジャンヌの心は発狂寸前まで
かき乱されていた。どれだけ強い信念があろうとも、まだ18の少女である。
「ジヤン殿は、陽動として砦の側面から攻め入るようですな。
数百の手勢でかく乱した後、我ら本隊が正面から突入いたします」
ジル・ドレの配下の将軍、ラ・イールがジャンヌにそう耳打ちした。
彼は有能な男である。指揮能力ならベルトランやジヤンなど比較にならないだろう。
が、同時に不遜な男でもある。エリートの傲慢か、ジャンヌに対してもそんな態度を取る。
少し顔の蒼ざめているジャンヌに向かい、彼は冷笑気味にこう言った。
「そんな顔をしなくても宜しい。ただ、あなたはそこにいればいいのです」
戦争は自分が受け持つ。あなたはただ、士気を煽る為の人形でいてくれれば宜しい。
そう言っているのだ。ジャンヌはラ・イールの顔を睨み付けて言った。
「ジル・ドレ卿から聞いているはずです。この戦争の指揮官は私だと」
「やれやれ。戦場はお花畑とは違う。あなたに怪我をされると、私が卿から
叱られてしまう。出来れば、陣の一番後列に隠れて頂きたい」
ジャンヌとラ・イールの間に不穏な空気が流れる。慶次はそれを見て大きく笑った。
「わっはっは。流石はジャンヌ殿。先頭に立って兵を率いる覚悟とは」
慶次の方を振り返るラ・イール。彼は慶次の事が気に食わない。
異国人でありながら、部隊の中枢になんの遠慮もなく居座るのが許せないのだ。
慶次にラ・イールが何か言おうとしたが、機先を制して慶次が言った。
「ジル・ドレ殿やあなたの戦い振りが、この状況を呼んだのではないですか」
何年もこの地にいて、なお砦を落とせないではないか。そう慶次は言っているのだ。
こう言われてはラ・イールは何も言えない。慶次を睨みながら、私兵の所へ下がった。
ジャンヌは、慶次に改めて見惚れた。
何故この人は、「こうして欲しい」と思った時に、的確に手を差し伸べてくれるのだろう。
慶次は涼やかに微笑む。聖少女と天下一のいくさ人が、数千の兵の先頭に立っている。
316 :
聖少女風流記:2006/04/04(火) 16:16:00 ID:7aIPvPus0
「もうしばらくですかな、いくさの始まりは」
慶次が楽しくて堪らないと言った顔でそう言った。その顔に思わず微笑むジャンヌ。
「本当に、戦いが好きなのですね。慶次さんは」
「男が男である、それがいくさですからね」
慶次が短く応えた。ジャンヌは一瞬笑った後、また表情が沈む。
「この期に及んで、私はまだ」
背後から蹄の音が鳴り響く。数千馬の音である。この会話は、2人だけのものであった。
慶次は天を見上げた後、にっこり微笑んで言った。
「いつか、俺が歌をジャンヌ殿に歌いましたな。今度は、ジャンヌ殿の歌が聞きたいな」
ジャンヌは驚いた。あと1時間もしない内に、フランスの命運を賭けた戦いが始まるのに。
この人は何を言ってるんだろう。目をパチクリしながら絶句するジャンヌ。
「あ、あの、こんな時に…。それに、私は、歌が、苦手で」
「昔、死にかけた時に歌を歌ったんだよ。不思議に、死ぬ気が全然しなくなった」
慶次は少年のように笑ってそう言った。ジャンヌは胸が甘く高まる。
この人は、なんで死ぬかも知れない戦いの前に、こんなに涼やかに笑えるんだろう。
「下手、ですよ? ……私がこの旅に旅立つ前に歌った歌です」
ジャンヌは歌い始めた。その声は天井から響くように、慶次の心をかきむしった。
317 :
聖少女風流記:2006/04/04(火) 16:18:18 ID:7aIPvPus0
さようなら ムーズ川よ
幼い日々に私を優しく夢見させたあなた
あなたは今も牧場の この谷あいを流れる
さようなら ムーズ川よ
私は行きます 新しい国へ そこにはあなたはいない
いま私は行きます 新しい国へ
私は戦争をするでしょう いくつもの川を越えるでしょう
私は行きます 新しい仕事で自分をためそうとして
私は行きます 新しいおつとめをはじめようと
いつここに帰ってこられるのでしょう もう一度羊の毛を紡ぐために
いつ私は見られるのでしょう 流れるあなたのさざなみを
いつ私たちは会えるでしょう それはいつなの?
いまも愛するムーズ ああ私のムーズ川よ
ああお父さま お母さま お耳に入るのはいつのことか
私は戦いの 雄叫びの国にいるのだと
お許し下さい二人とも 私の出発を お二人の涙を
お許し下さい 私の出発を そして私の嘘を
偽っての出発とお二人の長いお苦しみを
かげながらさようならを申し上げる この私を
シャルル・ペギイ『ジャンヌ・ダルク』より
318 :
聖少女風流記:2006/04/04(火) 16:21:17 ID:7aIPvPus0
ジャンヌが歌い終えた。不思議と心から不安が消え去っていた。
「哀しい曲ですな。だがそれと同時に、力強さも感じる。平和な故郷が、見えますな」
慶次は涙を流していた。最強の侍が、人前で、他人の歌を聞いて泣いている。
ジャンヌはそれが途方も無く美しく思えた。慶次の横にいるベルトランも泣いている。
この2人が、本当に愛しく思えた。男女の愛ではなく、同胞としての愛で。
一人の馬兵が伝達に現れた。ジヤンの奇襲成功の報である。
ジャンヌは白銀の剣を高く掲げ、ラ・ピュセルの旗を閃かせて宣言した。
「時は来ました! これより、サン・ルウ砦に向かい、イギリス軍を撃退します!」
兵士たちの怒号が響き渡った。
馬たちの蹄の音の間隔は短くなり、男たちの顔がキラキラと輝きだす。
慶次の顔も今までジャンヌが見た事も無いほど輝いてる。戦場こそ男は熱い。
その中で、自分は騎士としてどこまで…。
その不安は的中する。数時間後、ジャンヌは死線を彷徨う事になる。
319 :
ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/04/04(火) 16:39:12 ID:7aIPvPus0
>ミドリ様
わかりました。結婚しましょう。
住民の方々はこの結論に驚くと思う。またハイデッカやっちゃったかと。
だがもう一度
>>204のミドリさんのレスをよく見て欲しい。
これは間違いなく彼女の俺への求愛なのである。
FBIでプロファイリングを実務レベルでこなして来た俺には一目瞭然である。
>偶然ですが私の実の妹も今度の6月に結婚します。
もう一行目からこれである。
おしとやかなミドリさんがここまで熱烈とは。イタリア人やメキシコ人並の激しさだぜ!
妹同士結婚したんだから、私たちも…、の女心が明白ではないか!
>妹に、という事でしたけどSSや後書きを拝見する限り私の方が年下のように思えます。
素直に読めば、「年下だから、あなたの色に染めて」の意図であるのは間違いない。
>もしハイデッカ様のような方がお姉様だったら楽しいでしょうね。
最後の「でしょうね」に注目して欲しい。これは消極否定の「でしょうね」である。
つまり、一見お姉様になって欲しいと見受けられるが、実はそれ以上を熱望している。
「お姉さまじゃ嫌!旦那様で無いと…」以外、この文脈からは考えられないでは無いか!
中国で深層心理学を学んだ俺ならわかる。あのレスが、俺へのプロポーズであると…。
ミドリさん、あなたのお気持ちはしっかりとわかりました。
現実的には無理なので、スレ内結婚ということで!
すいませんでしたミドリさん……。また調子に乗ってしまいました………。
あと銀杏丸さん、完結お疲れ様です。俺は特に童虎とシオンの若かりし頃の話が好きでした。
また、何時の日か楽しませて頂ける事を願ってます。
>ハイデッカ
俺と結婚しろ
>ハイデッカ
萌えた
寧ろ俺の嫁になれ!!
322 :
作者の都合により名無しです:2006/04/04(火) 18:13:00 ID:968EJ9y20
ハイデッカさん、ミドリさん、スレ内結婚おめで・・アホ!
ミドリさんはバキスレ住民全員の宝なんだよ!あんたのものにするな。
恐ろしい男だなあんたはw
しかしSSの方は後書きと違って本当にまじめですね。
最初のレスのジャンヌ祭りの事とか勉強になります。
ジャンヌの歌、なんかの小説からの引用かな?
ジャンヌの望郷の念がよく出てますね。
いよいよ決戦か。ジャンヌ戦死?でも確か火あぶりだよね。
323 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:06:52 ID:Q/GglaWK0
〜キャラクターの出演作品と紹介〜
ゲームのキャラ紹介の中にはゲームの世界観の紹介も含んでみました。
攻略っぽくなってる所はスルーで。
ホーク勢力
キャプテン・ホーク 俺が知るロマサガシリーズ最もダンディな男、通称、陸に上がったカッパ。
(初代ロマサガ) ミンソンでは髭を三つ編みにしてパイレーツオブカリビアンの主演を狙った。
正義感が強く、無闇に人を殺める事はしないのがポリシー。他の海賊達からも
一目置かれているが、ライバルのブッチャーからは良く思われて居ない。
ブッチャーに騙されて自分の船、レイディラックを失った時からが、
海賊、キャプテン・ホークの物語の本当のスタートであろう。
ゲラ=ハ ホークでスタートすると最初から居る。爬虫類の進化した民族、ゲッコ族の青年。
(初代ロマサガ) 攻略本に青年と書いてあっただけなので年齢は不詳。両親はゲッコ族の英雄とまで
呼ばれた程の戦士であったため、力、体力共に水準を大きく上回る。
ケンシロウ 最強の暗殺拳、北斗神拳を用いてこの世の悪を片っ端から叩き潰す。
(北斗の拳) だが自分で死神と名乗る通り、関わった人間は大抵死ぬ。
善人だろうが悪人であろうが無差別で、強敵なんてこの男から呼ばれたら
FFの死の宣告も同然である。民間人の治療を行っていたアミバ様をビルから落としたり、
バットみたいに内臓ぐちゃぐちゃにされた人間を治療できるのに胸を貫かれた実の兄は
放置。まぁバットを例に挙げたらボウガンで死んだ子供とかも見殺しになってしまう。
初期のケンは未熟だったという事にして見過ごすのが大人であろう、なんて時代だ。
ちなみに好物はビーフカレー。
324 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:08:37 ID:Q/GglaWK0
グレイ勢力
グレイ なんだかミンソンになってビジュアル系になってしまったイケメン剣士。
(初代ロマサガ) ホークの渋さが判らない人は大抵こいつで始める。しかし初期で3人仲間
が居てしかも強いのだから間違った選択ではない、だが初っ端から恐竜の卵とってこい、
と無謀な事を言われるのでその言葉を信じてはいけない。
ミンソンではスキルによって敵にストーカーされない様にして取れるが、
スーファミでは初期ステータスで恐竜がうじゃうじゃいる穴に飛び込んでいくのは、
ちょっとしたスペランカーの気分を味わえる。
ノエル 第一形態では軽装の姿で体術を主に攻撃を仕掛けてくる。
(ロマサガ2) カウンターで物理攻撃の大半を防がれ、大ダメージまで与えてくる。
第二形態になると真っ赤な鎧を着込んで剣を使用する。
体力が減ってくると使用する月影は弱小パーティーなら一撃で全滅する。
第二形態のノエルに特殊な装備を用いず正攻法で勝てれば一人前のサガプレイヤー。
だと思うよ?
325 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:09:42 ID:Q/GglaWK0
D(デスティニー)チーム
スタン 田舎から城の兵士を夢見て飛び出した青年剣士。
(TOD) 金が無いから飛行竜と呼ばれる生体機械に密航するが、
寝ている所を見つかる。そして飛行竜が襲撃を受けた時、
倉庫の武器を手にする、それは人類の英知を秘めた剣、ソーディアンだった。
過去の戦争に使われた技術の結晶は剣に意思を持たせた。
中心にあるレンズの力で晶術と呼ばれる強力な魔法の様な力を使う事が出来る。
ルーティ 金の亡者をそのまま描いた感じの女性レンズハンター。
(TOD) モンスターとはレンズと呼ばれる物の力で凶暴化した普通の動物が大半である。
そのモンスターを倒してレンズを手に入れてくるのがレンズハンター。
レンズに秘められているエネルギーによって電化製品の様なものを作ることも可能。
ちなみに彼女が金の亡者なのは一身上の都合の為である。
326 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:10:49 ID:Q/GglaWK0
D2チーム
カイル 英雄、スタン・エルロンとルーティ・カトレットの間に生まれた息子。
(TOD2) 子供の時に父、スタンは旅に出てしまい顔を覚えてはいない、だが
スタンの様な英雄になりたいと願い、旅に出たいと思っている。
ロニが里帰りして一緒にラグナ遺跡へ巨大レンズを取りに行くとこから、
彼の英雄への道が開かれる。ちなみに、ファミリーネームが両親の
エルロン、カトレットでは無く、デュナミスなのは、孤児院で育った子供達は
「絆」と言う意味でデュナミスを名乗っているからである
ロニ デュナミスファミリーの子供達の中で最年長であり、カイルの良き兄貴。
(TOD2) 家計が厳しい孤児院の経営を潰さない為に仕送りをするため都会へ出る。
そしてストレイライズ神殿、アタモニ神団騎士に所属して、モンスター
から人々を護り、金も稼ごうと考えたがレンズ所有者を優先して助ける
アタモニ神団のやり方に反発し、巨大レンズの情報を手土産に孤児院へと帰る。
リアラ 巨大レンズが割れると共に現れた謎の少女、英雄を探しているが目的は語らない。
(TOD2) 成長して行くカイルへ恋心を抱くが・・・
スペック 凶悪な死刑囚、最強となったバキをターゲットに脱走して東京へと海を泳ぐ。
(バキ) 潜水艦から脱出しても水圧に体が潰される事無く5分もの間呼吸を止め、
更には過度の運動まで出来る。
327 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:12:37 ID:Q/GglaWK0
アサシンギルド(サルーイン勢力の一部)
花山薫 日本最強の喧嘩ヤクザ、若干15歳だが大人でも見上げなければ顔を見れない体格を持つ。
(バキ) 現在19歳でもう少しで酒も飲める年齢だが15歳でもう飲んでるので問題にならないか心配だ。
その驚異的な握力は相手の腕を挟み潰し、血管の膨張から神経の切断まで起こす。
もはや技と呼べる物ではないが花山への畏怖を込めて「握撃」と呼ばれる。
ドイル これまた脱走して東京を目指した死刑囚の一人。
(バキ) 体中に仕込んだ武器の数々は殺傷能力の高い物ばかり。
しかも身体能力もかなりの物、走行中の列車に張り付く事も出来る。
婦警のコスプレもお手の物、ヒロインの数倍マシ。
ドリアン 死刑囚、これだけ言えば上記の奴等と目的は同じであると理解していただけよう。
(バキ) というかバキスレなんだし必要する必要があるかどうかも微妙である事に書いてて気付いたが
念のため説明する。中国拳法の使い手でもあり、優秀な拳士である称号、海王を冠する者。
様々な小道具を用いて戦い、地下闘技場の男達を苦戦させる。
柳龍光 死刑囚、これで判るよね?「空道」と呼ばれる武術の使い手。
(バキ) 手に毒を染み込ませた毒手等を用いるがホームレスに切りかかられる。
片手を失って出血多量の中地上最強の生物に殴られたりもした。
だが登場初期は主人公を一撃でダウンさせるほどの強者だった。
ユダ 南斗六聖拳の一つ、南斗紅鶴拳を使うナルシスト。
(北斗の拳) 自分の美しさに自信があるのかフンドシ一丁で鏡の前に立ち唇を塗ったりする。
顔から血が出ると怒る。宿す星は「妖星」
328 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:14:11 ID:Q/GglaWK0
サルーイン勢力
サルーイン 三柱神の次兄、だが実力は兄弟中では最低だ。
(初代ロマサガ) だがディスティニーストーンを捧げると他の兄弟に劣らない強さになる。
捧げるか捧げないかはプレイヤーの意思に任せられるのでゲームが物足りなくなった
人しかやらないのが問題だ。ゲッコ族達を作った神であるため彼等からの信仰は厚い。
ミニオン(ストライフ等) ディスティニーストーンを集めていれば確実に出会う。
(初代ロマサガ) サルーインの分身であるため彼等に技を見切られると本体のサルーインにも、
その技は効かなくなる。そこだけが問題なので強い事は無い。
アミバ どんな拳法でも誰よりも速く習得できる天才の中の天才。
(北斗の拳) ケンシロウが自分の兄、トキと見間違えるほどの技のキレ、精度を持つ。
一度はケンシロウを地べたに這い蹲らせるが、お喋りしてたら復活してしまった。
うっかり自分で自分の腕を吹き飛ばしてしまったがきっとケンシロウが視力を落とす
秘孔でも突いてたのだろう、とファンは口々に語る。その後はビルから落とされ、
死ぬ間際にも名台詞、「うわらば!」を残す北斗の拳、屈指の偉人。
リオレウス 空の王者と呼ばれる飛竜種の代表格、体内の火炎袋から炎を精製し吐き出す。
(MHシリーズ) 他にも毒をもった爪での一撃はその巨体と相まって一撃で死に至る時も。
空中から獲物目掛けて突撃して狩猟を行う姿は雄雄しく、正に「空の王者」である。
2になって凶悪な攻撃力で暴れまわる様になったため、装備は人気だが
戦いたがる人はいない。空を飛び回り空中から毒爪で攻撃してきたり、
空中からの火炎、地上での火炎、突撃、フェイント突撃からバックステップ火炎等、
攻撃方法は多種多様。尻尾をブンブン振り回したりするので尻尾を斬るのは慣れないと
難しい。麻痺等の状態異常を使えば少しは楽になる。
329 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:14:41 ID:Q/GglaWK0
ケンに助言してた幽霊、ではなく強敵達。
ラオウ 世紀末の覇者、拳王と言う名の巨人。ケンシロウ、トキの兄。
武力による暴力の統一を夢見たが、強すぎる力は意志と共に
暴走を始め暴挙を尽くす。誰もが認める北斗最強の漢。
最後は強敵達との死闘を潜り抜け、思い出を心に刻んだケンシロウに破れ、
潔く自ら天に昇る。
トキ 北斗神拳の歴史の中で最も華麗な技を持つ男。相手に苦痛を感じさせない
北斗有情拳を主に用いる。弟ケンシロウとユリアを庇い、
死の灰を浴びた為、伝承者の道を閉ざされた。
半死人の体でありながらラオウに互角の戦いを挑む事が出来る程の強者。
最後はユリアの兄、リュウガと共に炎の中で生涯を終えた。
シン ケンシロウの胸に七つの傷を作った張本人。愛した女性はケンシロウ
の恋人、ユリアだった。ケンシロウを叩きのめしユリアを強奪してから
一年が立ち、復讐に来たケンシロウとの戦いで自害した。南斗六聖拳の一人、
南斗孤鷲拳の使い手。宿す星は「殉星」
レイ 南斗六聖拳の一人、南斗水鳥拳を使う「義星」を宿す男。
妹を助けるため汚い事に手を染めて人格が歪んでいたらしいが、
ケンシロウに出会って人情を取り戻す。ラオウに3日で死ぬ秘孔
を突かれ、最後は愛した女、マミヤを救うため、同門の南斗六聖拳の一人、
ユダを倒し悔いを残す事無く散った。
サウザー 南斗六聖拳の一人、「将星」を宿す、南斗108派の中で
最強を誇る南斗鳳凰拳の使い手。 南斗鳳凰拳は南斗の中で唯一
一子相伝の拳らしく、その力は北斗神拳と同等の力を持つという。
この拳の前には敵は全て下郎、格下に構えを取る事は無い。
との事で構えは存在しないが対等の敵には特別に構えを用いるらしい。
ケンシロウに自分の体にある秘密を見破られ痛みを伴わない有情拳で果てる。
330 :
邪神?:2006/04/04(火) 20:15:25 ID:Q/GglaWK0
その他
ブッチャー サンゴ海を荒しまわる海賊、略奪そのものを楽しんでいるクズ海賊。
(初代ロマサガ) ボス面したがってホークを罠にはめ、サンゴ海から追い出しサルーインの僕になる。
正確には僕になった訳では無いかも知れないがメルビルにモンスター軍団と共に
襲撃してくるので多分確実であろう。ちなみに意外に強い。アイスデビルとのコンビはきつい。
範馬バキ 地下闘技場のチャンプ、父親は地上最強の生物と呼ばれる最強の漢。
(バキ) 自分の母親を父親に殺されており、その弔いのために打倒、父、範馬勇次郎を目指す。
格闘センスは父の血を受け継いでおり常識の通用するレベルでは無い。
松本梢江 あらゆる漫画でこのヒロインの存在感を上回るキャラクターを自分は知らない。
(バキ) 初登場時の面構えから既に一線を築いていたと言っても過言ではない最強のヒロイン。
そもそも道端の一般人が普通に描けているのにヒロインがこれだけ酷いのはどういう事か。
だが何故かモテる。神の子、アライjrとバキの間で行ったり来たり。人間関係は
顔と同じくらいドロドロだ。バキやアライは何故こんなゲテモノに異性として惹かれたのか?
疑問は絶えない。ちなみに「梢」の字が初登場時は違う文字だ。何故か変換で出ないが
グラップラー時代の初登場シーンと違っていたのだ、目の錯覚でも無い。
本当に違っていたんだ!
331 :
うみにん:2006/04/04(火) 21:06:38 ID:a/dRTFLX0
邪神様、続けてのカキコ失礼します。
こんばんは。連絡遅くなって申し訳ありません。
いったんネット環境復活。
ですが、SSの続きは・・・7行くらい書き足したくらい・・・
なるべく頑張りますが、あんまりちまちまと
間があくのもなんですので、今度投下するときは
もうちょい書き溜めてからにしようかと思ってます。
なので、もう少し時間かかるかも。
一応今の時点で1話分くらいの続きはできてるかな。
それにしてもスレの方は変わらず盛況なようでなによりです。
さしあたって連絡のみ・・・
332 :
ふら〜り:2006/04/04(火) 23:11:06 ID:zZdvqjFM0
>>全力全開さん
開幕ですね、遂に。ドラ長編となると私も含めて期待してる人、多いですよ〜。完結まで
頑張って下さいっ。「なのは」は全力さんのが初見ですので、そこも楽しみに……って、
>なのはって魔法少女物の皮を被った特撮系ヒーロー物だよなあ・・・。
>特にファイズ好きには堪らない(w`
マ、マコトか
>>312殿。観とくべきだったか……かくなる上は全力殿のSSにて堪能ぞっ!
>>サナダムシさん(ヒーローとヒロインの図が固まった途端のご無沙汰、辛かったですっ)
いやぁ井上姫。自分の立場を120%理解しきってるというか。観ててこそばゆいというか。
>もう怖くない。この人とならば、あと半月くらい生き延びられる。
加藤も加藤で、優しく細やかに気遣ってて。もはや言うことなしの二人です。で次なる敵。
私の脳内ではペプシマン風の容姿ですが、性質のみならず名の表記からして不気味ですな。
>>ハイデッカさん
慶次もジャンヌも「二人っきりでいる時」と「戦いに目を向けてる時」の落差が大きいん
ですよね。ただ慶次はどちらも本性、ジャンヌは本性と根性。その根性を支えるのが信仰
と……恋、と言っていいのかな。サナダムシさんとこと違い、こちらの騎士&姫は多難だ。
>>うみにんさん
うみにんさんがSS執筆を楽しんでおられる限り、当方もうみんさんのSSを楽しみに
待っております。いや……うみんさんが執筆を苦痛に思われても、楽しみに待ってしまう
かも。ま、まあとにかく、じっくり書き溜め、ゆっくり練られたご力作を待ってますっ!
>>邪神? さん
多いとは思ってましたが、こんなにいたんですねぇ。集結、収束まではまだまだ長そうな。
>聖少女風流記
ちょっと最近展開遅い気がしますがwそれでも決戦前の書き込みが凄いですね。
たまに挿入される豆知識や
>>317みたいのが作品の質を高めてます。
映画とかでこの戦いは見てますが、どうハイデッカ氏が料理するのか楽しみです。
>後書き
いやぁ、いい意味での馬鹿で素晴らしい。
でも多分、ミドリさんのすっごく丁寧に拒絶されると思うがw
>邪神さん
正直、ロマサガは知ってるけどテイルズは知らないんでこういうのは助かります。
ご自分の趣味がたっぷり入っているキャラ紹介ですなーw
>うみにんさん
お元気な事が何よりです。のんびり続きを待ってます。
第四章「狂宴」
scene38 真相解明
「どうでした? 何か手掛かりは掴めましたか?」
備え付けられた時計は、一時三十一分を指し示していた。
ホールに戻って来たカイジと旗元に、黒川が尋ねる。
「手ごたえはあった……あとは、犯人を告発するだけだ……!」
言って、カイジは会心の笑みを浮かべた。
静寂に満たされていたホールが、微かにざわめく。
「さて、早速始めるとしようか……告発を……!」
カイジはテーブルについた参加者達を、一通り見渡す。
そして、意を決したように口を開いた。
「まどろっこしいのは嫌いだから……結論から言わせてもらう」
一呼吸置いて、カイジは『犯人』へと向き直り、研ぎ澄まされた言葉の矢を放った。
「犯人は、あんただ」
カイジの眼差しが、犯人を貫く。その先に居たのは……只野文男だった。
演技にしてはあまりに出来過ぎた驚愕の表情を浮かべて、きょろきょろと周囲を見回す。
「なあ。もう、お芝居は終わりにしないか……?」
「ななっ、何が芝居なものですか! 何をどう考えたら、私が犯人に――」
「論拠は笠間潤が告発された時と同じ……あんた以外には、密室殺人は不可能だったから、だ……!」
反論の機先を制するように、カイジは畳み掛ける。
「犯人の正体を教えてくれたのは『二つの違和感』だった……
先ず、違和感その一『扉の強度』だ。
最初に、三号室のドアを体当たりで破った時。俺。黒川さん。あんたの三人で体当たりして……
打ち破るまでに要した回数は確か、三回だった。
次に、一号室のドアを体当たりで破った時。前回のメンバーに二人を加えた、男五人で体当たりして……
打ち破るまでに要した回数は、五回だった……!」
そこでカイジは少し間を置いて、その言葉の意味が場に浸透するのを待つ。
「ここで一つの、大きな疑問が浮かびあがる……
三号室と一号室では、中の掛け金が下ろされていた分
一号室よりも、三号室の方が扉の強度は上だった筈……!
それが、体当たりした人数と、回数から考えると逆転……
何故か、三号室より一号室の方が、扉の強度が上だったという結論に達する……!」
夜が更け、冷え込んできたホールの気温とは対照的に、熱気の籠ったカイジの言葉がホールに響く。
「それでようやく、気付いたんだ……
もしかしたら『三号室は元から、鍵なんてかかってなかったんじゃないか』ってな……!
あんたはあの朝、三号室の前で……ドアノブを握ったまま、離さなかった……
そう。あんたは体当たりのタイミングに合わせてドアノブを回し、衝撃をラッチボルトで殺していた……!
それが証拠に、三号室のドアはデッドボルトは無傷で、ラッチボルトだけが損傷していた……!
でも、それだけではあまりにも杜撰な計画だ。他の誰かに横から割り込まれたりして
ちょっとドアノブを握られでもすれば、すぐに鍵がかかっていない事が露呈……
折角のトリックが水泡に帰してしまうばかりか、犯人の正体すら白日の下に晒されてしまう……
それを危惧したあんたは、保険をかけておいた。夜のうちに、部屋の掛け金を外しておき……
支えとなっているネジの代わりに、掛け金の両端に速乾性の接着剤か何かを塗りつけたんだ……!
そして、その『即席の掛け金』をドアの内側に貼り付けておいた……」
そう言って、カイジはズボンのベルトに挟んでおいた
三号室の掛け金を取り出し、その両端――何かが塗られた痕跡を示した。
「そうすれば、ドアノブを握られ、多少押したり引いたりされたとしたとしても、ドアは開かない……
その状態のまま、体当たりなどで無理矢理にドアを抉じ開ければ
梃の原理でドアに接着してあった掛け金と、置かれていただけのネジが自動的に吹き飛び
あたかも、掛け金が下ろされていたかのように錯覚する……!
あの時、誰も強行突破を言い出さなければ、あんたが言い出していた……違うか?」
只野は答えない。口を真一文字に閉じ、感情の窺い知れぬ目でカイジを見る。
「次に、違和感その二……『一号室での行動』
いつもあんたは、死体を遠巻きに眺めては、大袈裟に動揺している振りをしていた……
そんなあんたが、一号室で死体を発見した、あの時ばかりは積極的に動いた……
首を百八十度回転させた夕凪理沙の死体に、真っ先に駆け寄って……
背中に置かれた部屋の鍵を取り、俺に渡した。
それは何故か……? 答えは簡単……
それが『密室トリックに必要不可欠な行動であったから』に他ならない……!
各部屋の鍵は、同じ金色である上に、特に目印となるタグが付いている、と云う訳でもない。
遠目で見れば……いや、近くで見たとしても、自分の部屋の鍵でなければ判別がつかない……!
あんたは予め、鍵を目立つ場所……死体の背中に置いて
部屋に入った直後に指を差し、わざとらしい台詞まで吐いて
その場にいる全員に鍵の存在を印象付け……
鍵が確かに室内にあった、という既成事実を作り上げた……!
そして、誰かが鍵に対して何らかのアクションを行う前に
先手を打ち、素早く死体に近付き……振り向きざまの一瞬で、鍵をすり替える。
これで、密室の完成だ……!」
「証拠は……! そこまで言うからには、証拠はあるんですか……!?」
沈黙を守っていた只野がようやく、喉の奥から搾り出すような声で反論をぶつけた。
「ある」
カイジはそれをいとも容易く、氷の刃を思わせる鋭い一言で切り払う。
「偽装に使った九号室の鍵は勿論、その場に残しておく訳にはいかない……
一瞬の内に、出来るだけ安全な場所へ隠さなければならなかった……
後ろから見ている俺たちの視界に入ってしまう、ズボンの左右ポケットは当然無理……
そうなれば……鍵の隠し場所は、ボールペンを挿していた、胸ポケット以外にありえない……!
さあ、教えて貰おうか……何故九号室の鍵が、今! あんたの胸ポケットに入っているのかを……!」
そこまで聞いて。只野は深く溜め息をつき、天を仰いだ。
胸ポケットから鍵を取り出し、テーブルに投げる。
「まあ、合格点をあげましょうか。覚悟はしていましたが、意外と早かったですね……
もう二、三人はいけるかと思ったんですけどね。大したものですよ、キミは」
別人のような口調でそう言って、無駄の無い動作で椅子から立ち上がる。
変わったのは、口調だけではない。
立ち振る舞いにも、以前のような情けない雰囲気は微塵も感じられない。
狂気に満ちた眼光。一分の隙もない動作。仮面を脱ぎ捨てた只野は、冷徹な殺人鬼そのものだった。
それを察知した他のメンバーも、各々ガタガタと慌しく席を立ち、只野から距離を置いた。
カイジと、只野の視線が交差する。それは、胃の痛くなるような睨み合いだった。
「随分と、余裕だな……?」
カイジが、挑発するように言う。
「ふふ……面白い事を言いますね。遅かれ早かれ、私が告発を受けるであろう事は想定の範囲内。
元々、最後の最後まで正体を隠し通したまま……
三日間で全員を始末出来るとは、思っていませんでしたよ。気付きませんでしたか……?
リスクの高いトリックを用いてまで、わざわざ現場を密室にする『必然性』が皆無であった事に。
もっと上手いやり方……証拠を残さない手口は、それこそ、いくらでもありました。
プロパビリティのトラップを各所に仕掛けてもいいですし……食事に毒を盛っても構わない。
ですが、それではあまりにも、味気ない事この上ない……
そんな形で終わらせてしまっては、命を賭けて犯人を探している参加者にも
このゲームを御覧になってくださっている兵藤様にも失礼というものでしょう。
それに何より、最低限の証拠は残さなければフェアではない……誰も私にたどり着けませんからね……!
プレイヤーが解く事を前提に製作されているから『ゲーム』なんですよ。
どんなに知恵を絞っても解答の出ない問題なんて、面白くも何ともないでしょう?」
「負け惜しみはそれだけか……!?」
「負け惜しみとは心外ですね。まだ……ゲームは決着していないんですよ」
「何だと……!?」
「そこのあなた」
只野は顎を軽く上げ、旗元を指し示す。
「確か『一字一句違わず記憶している』のでしょう。
彼に、探偵の勝利条件を教えてあげてはくれませんか……?」
不愉快極まりなさそうな顔をして、旗元は口を噤んだ。
「言いたくないんですか? 仕方ありませんね……
では、代わりに私がおさらいしてあげましょう。
探偵の勝利条件は『犯人を確保し、状況証拠、または物的証拠を以って告発する事』です」
一瞬、空白の時間が流れた。だが、すぐにその言葉の意味を理解し、カイジは身構える。
「はい、よくできました」
只野は口の両端を吊り上げ、不敵に笑う。
「そう。あなたにはまだ仕事が残っています。犯人を……私を『確保』する、という大仕事がね」
只野の腕が蛇のように蠢き……袖口から一本のアイスピックが掌に落ちた。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>211です。
犯人指摘と同時に四章突入。犯人予想は当たっていたでしょうか?
そろそろいっぱいいっぱいです。広げすぎた風呂敷が手に余ります。
今回、本当はもっとロジカルに話を運びたかったんですが……
解決に至るまでの積み重ねが不足気味だったので、仕方ないですね。
・S
孤独なSと心通わす役目は、おそらく、Sに一番縁の深いKの担当になると思います。
書いてみるまで、どうなるやらわかりませんが……
340 :
作者の都合により名無しです:2006/04/05(水) 15:36:48 ID:D1i2ccIm0
見てた人さんお疲れ様です。
正直、只野とは思わなかったな。
まったく何の根拠もなく黒川かと思ってた。
猟奇殺人には女が似合いそう、という理由で。
第四章突入ということは、犯人確保で終了って訳でなく
まだ何かありそうですね。
ついにカイジが爆発しましたね。確変カイジは瞬間だけアカギレベル?
カイジが違和感を感じると、確実に物語が一変する所がまた原作通り。
感想でロジカルではない、とおっしゃってましたけど十分過ぎますよ。
願わくば、もう1回くらいどんでん返しがあると嬉しいですね。
4章は最終章なのかな?
343 :
作者の都合により名無しです:2006/04/05(水) 22:53:07 ID:ZxyWGsLR0
三号室の鍵の有無がキーだったのか。
犯人自体、最初は双葉かなと印象だけで思い、
結局途中から自分の推理能力のなさにトリックの見破りを諦め
ただカマイタチを純粋に読んで楽しんでいただけだがw
只野はアイスピックだけでなく隠し玉もあるのかな?
でも、原作のゲームでもピックの殺し屋だったようなおぼろげな思い出が
>ハイデッカ
決戦前の緊張と、それを打ち消すようなジャンヌの歌声。いい場面ですね。
ジャンヌダルクの花舞台と、呂不と慶次の一騎打ち楽しみにしてます。あ、ミドリさんとお幸せにw
>邪神さん
こういうのがあると、読者としては大変読みやすいですね。
いくつもの場面で同時進行しているから、このタイミングでの解説はありがたい。
>うみにんさん
キター!本復活お待ちしてます。仕事が好調そうで、結構ですね。
>見てた人さん
いつも設定の精密さに感心するなあ。カイジの頼もしさがかっこいい。
只野とは俺も思わなかったけど、説明聞いて納得です。個人的にはまだまだ続いてほしい!
第六十五話「戦いの先に」
「なんで・・・」
イザークはコクピットの中で呆然と呟く。
<余所者>たちが今、あの怪物たちと戦っている。あれほどの強大な敵と向き合っている。
「なんのために・・・」
あいつらは余所者じゃないか。メカトピアなんてどうなっても、関係ないんじゃないのか?
なのに何故、戦える?
「イザーク!大丈夫!?」
通信装置から聞こえてきた声にはっと我に返る。
「キラ・・・か?」
「よかった、無事みたいだね」
「ああ・・・それより、あいつらは・・・」
「え?」
「あの地球人たちは、何故こうして戦ってるんだ?」
「何故、って・・・?」
「あいつらは余所者だ。メカトピアとは関係ない。なのになんで・・・」
イザークは答えの出ない問いをキラにぶつける。キラは一瞬だけ考え、それに答えた。
「・・・のび太たちにはのび太たちで、戦わなくちゃいけない理由がある。けど、それだけじゃない。なんていうか、その、
みんなは悪く言っちゃうと、お人好しだから・・・」
「お人好し、だと?」
「うん。それも度を越して、ね。もしも彼らに戦うべき理由が何もなかったとしても―――のび太たちは、僕らを助ける
ために戦ったと思う。みんな、本当にお人好しだから」
「・・・なんて、甘い奴らだ」
吐き捨てるイザーク。だがキラはそれを否定はしなかった。
「うん、甘いよ。だけど・・・だけど、凄く強いんだ。力とかじゃなくて、もっと別な何かが。そういう彼らだから―――
僕もアスランも、リルルも一緒にいるんだ」
キラの言葉はイザークの胸を強く打った。そんな強さの存在など―――彼は知らなかった。
「だから―――できたら、みんなと仲良くしてくれないかな」
「・・・・・・」
イザークは何も答えなかった。それを気にする素振りを見せつつも、キラはSフリーダムを飛翔させ、戦場へと立つ。
それを見送りながら、イザークの中で様々な感情が渦巻いていた。
それが何なのか、イザークにも分からない。だが、意外と不快ではなかった。
「お人好しの―――地球人、か・・・」
呟く彼の口元には、小さな笑みが浮かんでいた。
「てやああああぁぁぁっ!」
ペコの掛け声と共に繰り出された槍の一撃が量産型グランゾンを貫く。抜き出すと同時に火花を散らせて爆発した。
<後ろにもいるぞ!>
アヌビスからの警告。振り向きざまに拳を突き出し、その胴体をぶち抜く。これで破壊したのは二機。だが、全体から見れば
たったの二機だ。目の前には、十機は優に越えるであろう大軍。
「このままじゃ埒があかない。アヌビス、一気に打ち砕くぞ!」
アヌビスは両手を合わせて前方に突き出す構えを取った。そして、ラムダ・ドライバの力を全開にする。
(思い出すんだ―――USDマンを倒したあの感覚を!)
己の想いの全てを乗せるイメージ―――それがアヌビスの両掌に伝わっていく。アヌビスの機械の瞳が強く輝いた。
「―――<ヘル・アンド・ヘヴン>!」
極限に達した破壊エネルギーを宿し、アヌビスが咆哮しながら突撃する!
量産型グランゾンはそれを迎撃すべく攻撃を仕掛けるが、それはアヌビスを包む緑色のオーラに阻まれて届かない。
そして、アヌビスの眼前に存在するありとあらゆる全てが灰燼に帰していく―――
そこでようやくペコは一息ついた。
<見事だ。以前とは比べ物にならないほどラムダ・ドライバを使いこなせている>
「そうか・・・これもUSDマンとの戦いのおかげだな」
<うむ・・・ともかく、こちらはあらかた片付いた。他の者たちは無事だろうか・・・>
「無事に決まっている。みんな、とても強いのだから」
ペコはそう言って、信頼のこもった笑みを浮かべた。
アスランとキラが、絶妙のコンビネーションで量産型グランゾンを翻弄する。
素早い動きで量産型グランゾンの攻撃をかわしつつ、Sフリーダムが一斉砲撃を放ち、その隙を突いてアスランが次々に
斬り伏せていく。
「まだまだ行くぞ、キラ!」
「分かってるよ、アスラン!」
量産型グランゾンは二人に攻撃を集中させるが、Sフリーダムと∞ジャスティスの性能、それを操る二人の技量の前には
まるで数を撃っても当たらない下手な鉄砲だ。そして、戦士はキラとアスランだけではない。
どこからか砲撃の雨が降り注ぎ、数機がまとめて爆散した。
「二人とも、俺にも活躍させろよ?」
G(ガンバレル搭載型)フリーダムに乗ったムウが軽口を叩く。そのまま勢いよく懐に飛び込み、ビームサーベルで貫く。
「ふ、所詮は量産型だな。俺たちの敵ではないわ、わっはははははは!」
「それじゃ悪役だよ、アスラン・・・あ、危ない!」
アスランが余裕をぶっこいた隙にワームスマッシャーの一撃を喰らう。大きく態勢を崩しながらも、アスランはなんとか
踏みとどまった。
「むうう・・・油断した・・・」
「しっかりしろよ、アスラン!」
「わ、分かってる!今のはほんのお茶目だ!喰らえ、ジャスティスリフター!」
一部では∞ジャスティス最強武装との呼び声も高いリフター投げが炸裂する。某パン屋の少女もびっくりのコントロールで
飛んでいくリフターが、一気に量産型グランゾンを薙ぎ倒す。
「見たか、これが俺の実力!さあ二人とも、もう一頑張りだ!」
さながら戦神の如く戦う三人。こちらはもはや決着は目前だった。
三機のドムがぴったりと息の合った連携で量産型グランゾンを蹴散らしていく。
「おらおら!ジャイアンさまの御通りだぁぁっ!」
止めとばかりにジャイアンの機体が蹴り飛ばす。凄まじい衝撃に量産型グランゾンのボディがひしゃげて、動かなくなった。
その近くでは、のび太・ドラえもん・リルルが乗るダイザンダーが戦っている。
「一機一機はそこまで大したことないけど―――この数は厄介だよ!」
ドラえもんが焦る。ダイザンダーを取り囲む量産型グランゾンは、数十機の大団体だ。
「どうする!?<ダイザンダー・キャノン>で一気にいっちゃおうか」
「ダメよ。あれは両手を変形させるから他の攻撃ができなくなるわ。撃ち漏らしたらその隙を狙われるわよ」
「そっか・・・じゃあ、これならどうだ!」
ダイザンダーが空中に飛び上がり、デモンベインに手をかける。
「憎悪の空より来たりて―――」
「正しき怒りを胸に―――」
「我等は魔を断つ剣を取る!」
「―――汝、無垢なる刃―――<デモンベイン>!」
口上と共にデモンベインが引き抜かれ、剣身に眩い光が宿る。光を纏ったデモンベインを握り締め、量産型グランゾンを
次から次に斬り付ける。斬られた機体は例外なく火花を散らしつつ、全ての機能を強制的に停止させられた。
そして全てを斬り終えた時、デモンベインを鞘へと戻した。
「―――<レムリア・ディレイ・インパクト>!一斉昇華!」
その声と共に、量産型グランゾンが一斉に浄化の光の前に消えていく。跡には塵すら残さなかった。
「す、凄い・・・それにしても大長編限定のこのかっこよさを、日常でも十分の一でいいから発揮してくれれば・・・」
「それを言うなって・・・とにかく、この辺の敵は片付いたね」
「そうね。他のみんなもそろそろ来るはずよ。ここで待っていましょう」
「うん。みんな、無事だといいけど・・・」
「ばーか、無事に決まってんだろ。おれは全然心配してないからな」
のび太の心配を軽く笑い飛ばすようなジャイアンの明るい声。それを聞いてのび太たちもくすっと笑った。
白銀のボディを閃かせ、サイバスターが空を舞う。
量産型グランゾンはその動きにまるで反応できない。決して量産型グランゾンが鈍重なのではない。サイバスターの動きが
あまりにも速すぎるのだ。
残像が残るほどの速度で、次々に量産型グランゾンを斬り裂いていく。
<へっ!いくらグランゾンでも、量産型でサイバスターに勝てるかよ!稟、一気にやってやれ!>
「分かってる!喰らえ―――<サイフラッシュ>!」
サイバスターから凄まじい閃光が迸り、量産型グランゾンを飲み込む。半数は消し飛ばされ、残った半数も多大なダメージ
を受けた。
「まだ行くよ!やっちゃって、シロちゃん、クロちゃん!」
<ガッテン承知ニャ!>
<あたしたちにお任せニャ!>
亜沙の声と共に、AIネコのシロとクロが答える。そしてサイバスターから二機の攻撃ユニットが放たれ、生き残った機体に
襲い掛かる。既にダメージを負ったボディでは耐え切れず、量産型グランゾンは破壊された。
「わーい、ネコさんすごいぞ!」
「シロもクロも、お利口さん・・・」
フー子とプリムラがそれぞれ二匹を讃える。
<へん、ネコにしちゃ上出来じゃねーか?>
<まーっ!相変わらず嫌な男ニャ!素直に人を褒められニャいのかニャ!?>
<へいへい、悪かった悪かった>
「まったく・・・お前ら、仲がいいな」
稟が苦笑しながらそう言うと、一人と二匹から同時に<誰が!>と仲良く返ってきた。
「やっぱ仲良しじゃない。ねえ?」
「仲良しトリオ」
「トリオー」
<勝手にトリオにすんな!>
茶化す女性陣に、本気で怒鳴るマサキ。敵を全滅させて気が緩んだせいか、会話が弾んでいる。
―――そこを、狙われた。
背後から飛んでくる光弾。それをまともに受けて、サイバスターが大きくよろめく。
「なっ・・・!?まだ敵がいたのか!」
狼狽を他所に、光弾が連続して襲い掛かる。地面を蹴って転がり、それをかわす。
<くそっ!どこから狙ってやがる!?>
「―――ここですよ」
声と共に前方の空間が歪む。そこから出てきたのは、やはり量産型グランゾン―――否。
<違う・・・あの威圧感、量産型なんかじゃねえ!>
マサキが驚愕を露わにする。その理由は、ただ一つ。
<あれは―――本物のグランゾンだ!>
「・・・!じゃあ・・・誰が乗ってるんだ?」
<分からねえ・・・シュウの奴が今さら乗るとも思えねえし、そもそも今の声は女だった>
「女・・・まさか!」
答えに思い至り、亜沙が複雑な感情に顔を歪ませる。それに応えるように声が再び響く。
「そう・・・そのまさか、ですよ。お久しぶりですね、皆さん。始めましての方もいるようですが、ね・・・」
「やっぱり・・・あんたは、アザミなのか・・・?」
搾り出すような声が稟の口から漏れる。
「―――お元気そうで何よりです。ですが、旧懐を暖めあう仲でもないでしょう。私とあなた方は、敵なのですから」
言い終えると同時に、グランゾンが接近して剣を横薙ぎに振るう。それをディスカッターで受け止めつつ、サイバスターは
距離を取った。
「何でだ―――何でこんなことをするんだ!」
稟はアザミに怒声を浴びせた。
「あんたはまだ―――人間を滅ぼそうとか思ってるのかよ!?」
「・・・さあ、ね。もはや自分でも分かりかねます。ただ一つだけ―――私は自分の誇りより生にしがみつくことを選んだ、
愚かな女だというだけですよ。そしてあの時と同じように、サイバスターと戦う―――なんて不毛な繰り返し」
グランゾンが両手を胸の前で合わせ、高密度のエネルギーを凝縮していく。掌の間で黒い球体が発生し、火花を散らす。
「―――<ブラックホールクラスター>!」
「くっ・・・!」
上空へと飛び上がることでその一撃を避ける。そこにグランゾンがさらに追い討ちをかけた。
「どうしました?サイバスターはあの時とは比べ物にならない力を持っているのでしょう!何故それを振るわないのです。
私とは戦えない―――そういうのなら、ただ死になさい」
アザミの声はどこまでも冷たい。まるで、氷のように―――
「ちくしょう・・・あんたは昔と、ちっとも変わってないのかよ・・・!」
稟は拳を握り締め、非情な決意を固めた。今ここで倒さなければ、彼女はまた多くの人を傷つけるだろう。
ならば、自分たちがやるしかない。
「フー子!」
突然の呼びかけにびくりとしたフー子だったが、すぐにその意味に気付く。そして意識を集中させ、祈るように手を合わせる。
そしてその姿が光となって消えていく―――
同時に、サイバスターが神々しい輝きに包まれた。放たれる強烈なプレッシャー。力の弱い者ならば、それだけでサイバスター
の前に平伏すだろう。
「―――<ポゼッション>!」
「な・・・この力は・・・!?」
アザミの声が震える。グランゾンは反射的に剣を構えるが、その瞬間に右腕が斬り飛ばされた。その剣戟は、アザミの目には
まるで知覚できない。
さらに一撃。続けて二撃。返す刀で三撃―――
瞬きする間もない一瞬で、サイバスターはグランゾンの四肢を断ち切った。そしてその衝撃が、アザミの意識をもかき消す。
グランゾンが仰向けに地面に崩れ落ちた。
それを見届けて、サイバスターのポゼッションを解除する。今回のポゼッションは一瞬だけだったので、体力の消耗がそこまで
酷くなかったことに安堵しつつ、稟たちは倒れ付すグランゾンを複雑な目で見下ろしていた・・・。
戦いを終えた仲間たちが、続々と集まってきた。サイバスターだけはまだ戻ってこないが、ひとまず機体から降りて、
互いの健闘を称えあう。
そこに、目を覚ましたらしいディアッカとニコルもやってきた。
「いやあ、本当に皆さんには助けられちゃいましたね」
「全くだぜ。正直ただのガキ共としか思ってなかったけど、見直したよ」
「酷いなあ・・・」
「はは、そう言うなって。ほら、他の連中もお前らに礼を言いたいってよ」
「他の連中・・・?」
その言葉にふと気付くと、周りをレジスタンス兵たちが取り囲んでいる。彼らは好意的な笑みと拍手で、のび太たちを
迎え入れた。
「お前らやるなあ、ほんとに!おかげで死ななくてすんだぜ」
「ちびっこいのに大したもんだよ!」
「よっ、スーパーエース!」
「い、いやあ。そんなぁ・・・」
謙遜しながらも、褒められることが嬉しくないはずがない。デレデレとしながら、のび太は観衆から離れて立つ少年の
姿を見つけた。銀髪に、端正な顔立ち―――イザークだ。
「あ・・・」
思わず身構えるのび太たちに、イザークはゆっくりと近づく。そして数メートルの距離で向き合った。先ほどのいざこざを
知る者たちは、思わず唾を飲み込む―――だがイザークは意外な行動に出た。
その手をのび太に向けて差し出したのだ。
「え・・・?」
意図が分からず困惑するのび太。イザークは言った。
「助けられたことは感謝している―――ありがとう」
それは彼にしては、実に素直な言葉だった。のび太も表情を緩めて、差し出された手を握る。イザークは相変わらず仏頂面
だったが、握り締めた掌から、その不器用な友情を感じられた。
「俺がいつかこの借りを返すまで、くたばるなよ―――分かったな!」
「―――うん!」
強く頷くのび太。それを見届けた一同は、心に引っかかるわだかまりが解けたことを感じていた。
その時、空に巨大な影が見えた。サイバスターがやっと戻ってきたのだ。
「よかった。稟さんたちも無事だったんだ」
そしてサイバスターが着陸し、稟たちが降りてくる―――駆け寄ろうとして、稟が誰かを抱えていることに気付いた。
「誰・・・?」
首を傾げる一同。だがしずかが、真っ先にその正体に気付いた。そしてしずかは駆け足で稟の元に駆け寄る。
「しずかちゃん・・・」
「稟さん!その人は・・・まさか・・・」
稟は痛みを堪えるかのように首を縦に振った。そして抱きかかえていた人物を、ゆっくり地面に寝かせる。陽の光の下に
晒されたその顔は、見間違えようもない。
「・・・アザミ!」
しずかは震える声で、彼女の名を呼んだ・・・。
投下完了。前回は
>>255より。
前作のラスボスの量産型をグロス単位で倒し、前作のラスボスを瞬殺した今回。
ここまでインフレが進んでいるとは・・・考え無しにパワーアップさせまくったので、このような結果に。
さて、4月から働いています。結構時間がきついので、更新ペースは落ちるかもしれません。
最低でも週一くらいで更新したいと思ってはいますが・・
>>257 まあネオグランゾンならともかく、グランゾンの量産型ではインフレしたメンバーに勝てないという
ことで・・・
>>268 修羅場の割には意外とあっさり潜り抜けちゃいました。うーん(汗)
>>281 決戦はまだまだ先。これからが大事です。
>>290 インフレによるごり押しでした。もっと知能的なバトルを書けないものか。
>>ふら〜りさん
インフレのさせ方、見せ方には結構こだわってます。実力がないので上手く表現できてませんが(爆)
劇場版ジャイアンはいい男ですよね。
サマサさんお疲れ様です。サマサさんも銀杏丸さんと同じく4月から働いてるのかー。
俺もそろそろ仕事見つけないとな。秋になって涼しくなったら働こう
>超機神大戦
自分から損できるドラチーム、今の得する事しか考えていない奴らとはえらい違いですね
多分、生身では最強であるUSDマンとの戦いを乗り越えたからこそインフレがあるんでしょうね
総てのキャラが自分たちの持ち味を出して戦っていますね。
アザミとリンの久しぶりの邂逅も楽しみです。週1なら十分です。仕事共々頑張って下さい。
俺も10月くらいから働き出すつもりです。
357 :
作者の都合により名無しです:2006/04/06(木) 20:08:46 ID:AzMO0pH+0
サマサさん、更新回数減っちゃうかー。残念。
週1回でも充分多いけど、サマサさんは週2回以上ってイメージを通してほしかったw
今回、主役たちらしくいつもよりイキイキと、そして真剣に戦場に立ってますね。
前回の重要キャラアザミですが、これは仲間入りフラグかな?
>>356 いや、今すぐ働けよw
サマサさんお疲れ様です。
貴殿の作品から創作意欲を書きたてられました。実は、声優が原作のなのは=プリムラというのもなのはで書こうと思った一因です。
ここで唐突に質問なのですが、ドラえもん+なのはは、三部作を予定しているのですが、アニメで「急激なインフレはない」と示されてしまったので、パワーアップに時間がかかり、それに伴ってのび太達の学年も上がってしまいます。
学年を上げるのはまずいのでしょうか?
まずいのでしたら、終盤のシナリオを組み直す必要があるので…
ご意見よろしくお願いします。
>サマサさん
まだまだ続く宣言は嬉しいけど、更新回数減っちゃいますか。ちょっと複雑
今回は超機神らしい、必殺技満載で、チームのキャラの個性爆発の回でしたね。
アザミがどう立ち回るのか、次回を期待してます。
>全力全開さん
キャラクターの個性がちゃんとしていれば、多少の設定の変更はOKと思いますよ
ていうか、皆さん好き勝手に書いてますからw 原作準拠してたらほとんど連載なくなるw
好きな作品を好きなように書けるのがバキスレの魅力と思いますし、
全力さんも書き易いように、ご自由に書かれれば宜しいかと思います。
余り肩に力を入れず、のんびり頑張って下さいね。
360 :
二十四話「血化粧」:2006/04/07(金) 00:48:01 ID:dJ3fOYVb0
妖星、人々からは裏切りの星と呼ばれるがそうではない。
その星は、天空に最も美しく輝く知略の星。
そして冠する拳は、北斗神拳と天を二分する暗殺拳、南斗聖拳。
秘孔による内部からの破壊を目的とした北斗。
鍛え上げた肉体による強力な一撃で外部からの破壊を目的とする南斗。
美と知略に秀でた妖星の用いる拳、それが南斗紅鶴拳である。
〜アサシンギルド内部・ユダの寝室〜
「チッ、バレテタカ。」
スペックが部屋にいた男を見て言葉を漏らす。
上等なマントと貴族の様な優雅な衣服を身にまとってはいるが、
放つ殺気と闘志が、スペック並の戦闘力を持っている事を物語っている。
「上位アサシン用の通路を使うのは大体想像がついた、少しルートを変えさせてもらったぞ。」
妖しげな笑みを浮かべながら男は策に陥ったスペックを嘲笑う。
「話に聞いていた通り連れの者達がいるようだな、直ぐ死ぬのだから意味は無いが冥府への土産をくれてやる。
俺はこの世で最も強く、そして美しい男、南斗六聖拳妖星のユダ。どうだ、私と取引をしないか?」
そう言うと男は部屋の扉を開け放つ。
そして変わる事の無い妖しい笑みをその顔に浮かべながら話を続ける。
「残りカスの実力なんぞは知らんが、スペックは私と同じ上位アサシンだ。
複数を相手に戦うには少し骨が折れる・・・残りカスは通しても構わんぞ?」
残りカスと呼ばれたのに腹を立てたカイルが剣を抜こうとする、それをロニが素早く止めに入る。
ロニの目が語る、「絶対に手を出すな」ロニに従い剣を抜く手を降ろす。
罠の可能性が大きい、と言うより確実であろう。
男の言葉に乗るか反るか、決断に迷うカイル。
そこにスペックが突然、ユダの誘いを承諾した。
「イイゼ、ドウセコノ奥二居ルンダロウ?アイツ等ガ。」
ユダは目を見開き更に妖しい笑みを浮かべる。
どうやらそれも策の一部にすぎない様だ。
361 :
二十四話「血化粧」:2006/04/07(金) 00:48:40 ID:dJ3fOYVb0
一般兵士の姿も気配も感じない、何か別の罠を用意しているのだろうか。
だがユダの策は地形、地質から天候まで考えを巡らされた完璧な物ばかり。
城の中は天候以外の全てが完全にユダの手中にある。
打ち砕くとすれば半端な策に頼るのは無謀、己の力で打ち破るしかない。
「スペック・・・大丈夫か?こいつの言う通りにしちまって。」
大丈夫な事は無い、スペックは白い袋を取り出しロニへと渡す。
「コノ先ヤバイ奴等ニ見ツカッタラ、ソイツノ中身ヲ使エ。」
飾り気の無い真っ白な、少し大きめなポケットのような物を受け取る。
中身を確認しようかと思ったが今は先を急ぐ事にした。
「ん?それは・・・何故貴様がそんな物を?
だが生憎中身は全てサルーインの元へと運ばれた後だ、何を入れた?」
ユダの問いに答える事無く構えるスペック、目に凶悪な輝きを宿しながら。
ユダも聞くだけ無駄と悟ったのか、構えを取る。
二人をその場に残し部屋の外へと出て行くカイル達。
「アンナ奴デモ足止メニハナルダロ・・・。」
去っていくロニの手に握られた袋を見ながら、一人呟くスペック。
戦い以外の事を考える時、それは如何な達人でも隙が生じる。
「もらったぁ!」
袋へと目を移していたスペックに、ユダの神速の突きが襲い掛かる。
スペックが腕で払いのけるがユダの腕全体が真空波を生み出し剃刀の様な鋭さとなっている。
直に突かれるのは避けられても、ユダの拳を完全に防ぐ事は出来ない。
払った腕によって体勢が崩れて隙が出来るかと思い、ユダへと目を向けると既にこちらを向いて構えている。
「この俺の突きをかわすとは流石だな、しかし俺を倒す事など不可能だぁ!」
緩急が大きく舞いの如き足捌きと手の動きで、スペックを翻弄する。
その動きは妖しさとは美しさである事を体現していた。
実体を掴ませない鮮やかな、それでいて速く、そして優雅に舞う。
「ヒャハハハ、切れろ切れろぉ!」
後ろへ回り込んだユダが地面を走らす様に真空波を放つ。
横へとかわして何とか切り抜けるスペック。
体勢を整える暇を与えず一気に踏み込み必殺の手刀を放つ、だが。
362 :
二十四話「血化粧」:2006/04/07(金) 00:49:45 ID:dJ3fOYVb0
スペックの肘鉄がユダの顔面へとクリーンヒットする。
地面に叩き付けられ、強烈な打撃が背中を走る。
「うばぁ!」
よろけながらも立ち上がるユダ、
信じられない。といった表情で。
殴られた顔へ手を伸ばす、その手を見ると大量の赤い液体が付着していた。
血だ。
「あ・・・・・・ああ!あああ・・・うおおおおおおお!」
自らの身体から流れた液体が血である事をハッキリと確信してしまったユダ、
動揺を隠せず叫びまわるその姿には、妖しさも美しさも感じない。
「お・・・俺の顔に傷が!この美しい顔に傷がぁ〜〜〜〜〜〜!」
唯一の例外を除いて、誰一人として傷つける事の敵わなかった己の顔から大量の血が。
この顔へと傷を与える事が出来たのは今は亡き強敵、レイだけだと言うのに。
サルーインの力を頼ってまで蘇り、力を得たと言うのに。
「き・・・貴様ぁ!殺してやるぅぅぅ!」
怒りに我を忘れるユダ、燃え上がる闘気が腕に集中し突きの威力が倍増する。
更に怒りが高めた身体能力で踏み込みまでもが神速の域に達する。
だが今度は掠る事も無かった。
「おごわっ!」
今度は突きが届く前に水月への蹴りで攻撃を潰されるユダ。
腹を押さえながら悶絶する。
南斗聖拳の弱点である足技の少なさに付け込んだその一撃は、
ユダの瞬発力と相まって更なる威力を生み出した。
「・・・ふ・・フフフ。」
2撃目を喰らったと言うのに笑い出すユダ。
何故か戦い始めの時よりも闘志を抑えている様だ。
先程まであった殺気も消えている。
「技はレイに比べれば遥かに劣る劣悪な物だ、美しさの欠片も無い。」
再び笑い出すユダ、どこか吹っ切った顔だ。
以前のような妖しい瞳では無く、澄んだ目でスペックを見ると再び闘気が湧き上がる。
「だがお前の拳が語っている!レイと同じ熱い拳が!」
363 :
二十四話「血化粧」:2006/04/07(金) 00:51:11 ID:dJ3fOYVb0
ユダの殺気が闘気へと変わり、体中を駆け巡っているのがスペックにも見えた。
怒りに身を任せていた時よりも遥かに冴えた闘気が腕を包み込んでいた。
「ヘッ、何時マデオ喋リシテンダ。
喋ッテル暇ガアッタラカカッテキナ!」
素早い身のこなしで翻弄するユダ、その動きは残像を残す程。
見切るのが不可能と判断したスペックは残像だろうとお構いなしに殴りに掛かる。
必殺の無呼吸連打、その一撃は岩を砕き、金属を湾曲させ生物を確実な死へと至らしめる。
そんな一撃を5分もの間、途絶える事無く相手に連続で叩き付けるのだ。
スペックの視神経は正確に己の四肢の射程距離を覚え、ユダが射程に入ると脳へと伝達した。
脳がスペックの肉体を一つの目的で支配する、「眼前の敵を屠れ」と。
そしてそれを実行に移すため呼吸を止め、筋肉は自然と相手への打撃に移った。
だがスペックの拳は全て空を斬り、ユダの姿が消える。
ユダは思い出した、レイの技によって命を落としたあの瞬間を。
今まで再び出来たライバルのせいで忘れていた、相手を認めるという事を。
美しく華麗なレイの拳とは違い、粗暴で技術に頼らぬスペックの拳。
強敵という存在がユダの真の力を呼び覚ました。
「甘い!」
再び地面を這う衝撃波がスペックを襲う、切れ味もスピードも段違いになっている。
だが一度は避けた技、素早く横へかわして難を逃れる。
そして反撃へ出ようとする、しかしまたも消えるユダの姿。
室内にも関わらず風のゆらめきを感じる、それは上から流れる様な風だった。
ふと上へ目をやると、突進してくるユダの姿が見えた。
「南斗紅鶴拳奥義!血粧嘴!」
着地と同時に手から衝撃波を放つ、今度は切れる衝撃波では無いのを見切ったスペックは腕でそれを防ぐ。
だが威力に対する認識が甘かった、ガードを弾かれ無防備な体制になる。
そして奥義の本領が発揮された。
「フンッ!」
手刀を突き刺し、その手を軸に体全体を回転させながらスペックに突撃する。
鉄をも切り裂くユダの手刀の一撃に加えて、回転力を用いて自らドリルになる奥義。
全てを破壊する削岩機となって相手を討つ、ユダ最高の技。
「スペック・・・貴様の血、俺の化粧にこそ相応しい。」
364 :
邪神?:2006/04/07(金) 00:51:54 ID:dJ3fOYVb0
最近近くにゲーセン出来た訳でも無いのに北斗の動画DLしまくってる邪神です。
病人の筈であるトキが最強で有名なあのゲームです。
ユダ様の奥義はそのゲームで出てきた必殺技の動画から考えました。
ユダ様コミックで奥義出す前に殺されてるんでどうしようかと思いましたよ。
血粧嘴の最後の字が読めなくて探してたら動画も発見、天を掴める気分になりました。
北斗のゲームは今まで一つもやってないんですがスーファミのは大体クソゲーで有名ですね。
一度やってみたいです。
〜質問以外にも回答してるけどサガ質問&講座〜
ふら〜り氏 もう収集がつかないというよりこち亀みたいにエンドレス・・・
無理ィィィィ!ネタが続くか微妙、読んでくれる人がいるかも微みょ(ry
333氏 しかし全て事実・・・でもノエルとかパワーアップする事書いてネタバレ気味
なのにリアラだけ正体不明にしてある罠。あ、キャラ紹介にクジンシー忘れたけどいいや。
またキャラ増えたら紹介増えるかも。
邪神氏乙
スペックvsユダ熱いな!
血粧嘴ってこういう技だったのか…長年の疑問がひとつ氷解した
北斗には名前だけで実態が不明な技が多いからなー、北斗八悶九断とか、白羅滅精とか
南斗究極奥義・断己相殺拳とかな
367 :
作者の都合により名無しです:2006/04/07(金) 19:15:14 ID:Pyn45J1A0
>全力氏
あんまり最初から型にはまった考えしてると疲れて続かないよ。
設定とストーリーなんて大枠だけ決めて、あとは書きながらでいいんじゃない?
>邪神氏
ロマサガチームやテイルズチームより、ケンシロウやスペックの方が目立っているなw
スペックがかっこいい。戦い方もスペックらしいブルドーザーみたいな迫力ですね
ユダもレイのようにスペックを認めているみたいだし。ルックス的にはレイとは対極だがw
全力全快氏はちょっと真面目過ぎる。そこが好感持てるけど。
好きにやればいいんだよ、バキスレは自由SSスレなんだから。
書きながら少しずつ修正していけばいい。期待してますよ。
>キャプテン
バキでいっちばん魅力的だった頃のスペックだな。
この作品ではヘタレて欲しくないなあ。
でも、スペックって無呼吸連劇以外、芸がないんだよな。
ユダ有利か?
369 :
作者の都合により名無しです:2006/04/08(土) 06:23:25 ID:+66lLKTF0
バキスレの盟友・ヤムスレを偲んで
ヤムチャ主役の短編SSでも書いてみようかな
370 :
作者の都合により名無しです:2006/04/08(土) 06:30:53 ID:a4gGeDAs0
371 :
作者の都合により名無しです:2006/04/08(土) 14:05:27 ID:7KMmwZt/0
372 :
作者の都合により名無しです:2006/04/08(土) 22:33:04 ID:yXIohqzk0
最近更新頻度落ちてるかな?
一時期は週に20本近く着てたのに
あの頃が異常だったといえばそうだが
四月だからね
新生活はじまったり
年度始めだったりで職人諸氏も忙しいのだろう
というか、一時期が異常で今が普通だろう
普通といっても週に10本位来てるんだから十分すぎ
以前はバレさん潰れちゃわないかと心配だったもん
前スレ322から
「あらあら、そんな事があったのね」
微笑んで、マリアはテーブルの上にこんがりと焼けた七面鳥を置いた。
「うん。それ以来スヴェンには随分助けて貰ったよ…と言うより、助けられっぱなしかな」
ロイドがシャンパンを勧めるが、当の本人はボトルを手で制した。
「これ以上飲ませるな。帰れなくなるだろう」
「泊まって行けば良いさ。シンディだって、君が来てくれて喜んでる」
確かに、スヴェンの膝の上のシンディは彼の来訪を喜んでいた。丸さの取れない顔と伸び切らない手足で感情を目一杯に表現する。
それに其処は、スヴェンが訪れる度に彼女限定の特等席だった。
シンディがクリスマスイヴ生まれな為、誕生パーティとクリスマスパーティを同時に行う。
この日は通算三回目の複合パーティだった。
安アパートにたった四人のパーティでも、彼等にとっては大邸宅の大人数より賑やかで華々しい。
そもそも会合の華は調度品や食事の質では無い。その場の人々がどれだけ楽しめているかだ。
その意味では、其処は最高の会場だった。
「済まないねスヴェン。毎回プレゼント持って来てくれて」
「なに、いいさ。一度≠ナ済むから俺の財布も助かってる」
言いつつ頭を撫でるシンディは、今回のプレゼントの中で特にお気に入りの、人気アニメ「のけモン」の一番人気キャラ、
ビガジュー(得意技は捕食)のぬいぐるみを抱き締めてご機嫌だった。
「えへへ〜、おじたん」
舌足らずの猫撫で声で頬を擦り寄せる彼女をずり落ちない様抱き締めながら、スヴェン達はなお懇話を進めて行く。
「持って来てくれるのは嬉しいけど、加減を考えて欲しいわ。この娘の部屋はもう、ぬいぐるみに占拠されつつあるもの」
「酷いな、そいつら。一体誰の部屋だと思ってるんだ。
よし、ここは一つ俺が厳しく言っといてやるよ」
「『俺に買われてるんじゃない』、とかかい?」
親しいが故の慣れた掛け合いに、三人は弾ける様に笑った。
スヴェンが寝るまで起きている
そう意気込んでいたシンディだったが、九時を過ぎた頃には船を漕ぎ始めていた。
「シンディ、もう寝よう」
「……やら、おきてゆ!」
へたくそに積んだジェンガの様に頼り無く揺れるも、口だけは立派にロイドに反抗した。
「シンディ、パパを困らせるんじゃないぞ」
「やら! おじたんとねゆ!」
寝惚けた瞼を必死に開きながら、スヴェンの胸にしがみ付く。
幼年の我はなかなかどうして強い。故に只優しいだけでどうにかなる物ではなかった。
となれば当然、其処に何らかのプラスアルファが無い限りそれを折る事は困難極まる。
いきなりスヴェンの左手が、シンディを優しく抱き締めた。
彼女がその事に喜ぶも束の間、今度は空いた右手が彼女の背中を一定のリズムで優しく叩く。
「…え?」
その仕様には覚えが有った。
彼女が今よりも小さい頃(つまりは最近)、良くマリアにして貰ったその遣り口は――――
寝かし付けるためのものだった。
「な、なに!? なんれ! おじたん!!」
「…でな、ロイド。俺はトロアチアの独裁政権には反対な訳でな…」
見上げたスヴェンは、適当な話で彼女の訴えを完全に無視していた。
「ひ、ひどい!! オニ―――ッ!!」
「…間違ってるんだよ。民衆を軍事力で押さえ込んだ所で、政敵やらレジスタンスやら作るだけで……」
暴れるが、抱き締めた左手は完全にシンディの行動を封じていた。辛うじて動く手足をばたつかせても、スヴェンの寝かし付けは
止まらない。
「にゃ―――ッ!! バカバカ! おじたんのバカ―――ッッツッ!!!」
「…まあ、人間のシステムに完璧は無いからな。平和な国だって政治家が馬鹿やってるし……」
騒いでも叫んでも暴れても、少女一人の力に状況を変えられる訳が無い。
寄せた眉根と必死に開いた瞼が力を無くしていくのを感じながら、彼女の意識は心地良い安息に沈んだ。
「……相変わらず見事なお手並みねえ」
「なに、対応の仕方は十人十色、それぞれに合った形を選べばいいだけさ」
気持ち良く眠るシンディをマリアに預けながら、スヴェンは深みのある笑みを返した。
「なんだか君の方がよっぽど父親みたいだよ。どうも僕はその子を扱いかねる」
そう言いつつロイドは、ふわ、と欠伸を漏らした。
「…お前も寝た方が良いんじゃないのか? 最近何だか知らないがあんまり寝てないそうじゃないか」
「ん、いや大丈夫。この位へっちゃらさ」
そうは言うが、眼の下には酷い隈を作っていた。それを見たスヴェンは、父親の様にやや強めに肩を叩く。
「寝とけ。体調管理だって立派な仕事だ、イザって時にとちったら笑い話にもなりゃしない」
行動と言うものは、使い様によっては言葉よりも強く意思を伝える。彼の意志の強さを悟り、ロイドは嘆息した。
「判ったよ。君の言う通りだ、寝とくとしよう」
「それでいい。片付けは俺とマリアに任せて、体を休めろ」
「あら、私も?」
マリアの言葉を聞くやスヴェンはにっと笑い、手際良く空の食器をまとめ出す。
「甘えるな。自分の家だろ?」
「ロイド」
シンディを預かり、寝室に向かおうとしたロイドの背中に、テーブルクロスを丸めながらスヴェンが言葉を放った。
「? 何だいスヴェン?」
マリアが台所で洗い物の最中なのを確認し、彼は声を顰めた。
「その眠たい理由は、敢えて聞かないで置くが……もし例の派閥争いに手を貸したいとかだったら、止めとけ。
お前らは関わらなくて良い、これは俺の話だ」
まるで彼の身を案ずる様な神妙さで、スヴェンは囁く。
それを聞くやロイドは微苦笑を零す。
全く以って、人よりずっと切れるくせに判り易い男だ。自身よりもこの腰巾着の事を一番に考えている。
却って疑問に思うくらいだ、この無能に此処まで素晴らしい友が居る事は。
愛しい人、可愛い娘、そして終生の友。これだけの幸せに囲まれて良いのだろうか。
「……大丈夫、そう言う事じゃないよ。ごく些細な事さ」
何故か、彼の笑顔が僅かに寂しくなった。
「スヴェン」
「何だ?」
当然その変化を見逃すスヴェンではないが、今は敢えて捨て置いた。
「…そう言う事を言われる度に思うけど、やっぱり君は僕のヒーローだよ。あの時から、ずっと。
ううん、僕だけじゃない。マリアにも、シンディにも、それどころかもっともっと多くの人達にも、君はヒーローだ。
果たして君はこれから、どれだけの人のヒーローになるんだろうね?」
「―――おいおい、あんまり持ち上げてくれるなよ。
大体ヒーローってのは、面倒なんだぞ。メシ時風呂時問わず、危険を察知したら飛んでいかにゃならないんだからな。
プライベートなんて無いのと同じだ、昔テレビで見たシンパイダーマンを思い出せ。お前は俺に日常とヒーローの狭間で
苦悩して欲しいのか?」
言われてロイドは吹き出した。それに合わせてスヴェンも笑う。
「…そうだね、それは一大事だ」
「だろ? 結婚したら最終回じゃ家族総出で悪の組織と決戦だからな。大変だ」
ジョークで寂しさを吹き飛ばされ、ロイドの貌に正しい笑顔が戻る。
「それじゃ、そろそろ失礼しとくよ」
「そうだな。じゃ……」
……二人が離れようとしたその時だった。
「……まって、おじたん」
声に二人は挙を止める。
ロイドの腕の中ですやすやと寝息を立てていた筈のシンディが、目を覚ましていた―――が、それでも瞼はかなり重そうだ。
「起こしたか。悪いなぁ、俺にも用事が……」
「……ちがうの。まってて」
ロイドの腕から降りると、頼り無い足取りで廊下の向こうの自室へと歩いていく。だがそれを慌ててロイドが抱えた。
「シンディの部屋に行くんだね?」
「…うん。……おじたんはそこにいて」
二人はそのままシンディの部屋へと消えた。
―――――少しして、抱えられたまま戻って来たシンディの手には折り畳まれた画用紙が握られていた。
「…それは?」
「……おじたんに…ぷれれんと…」
スヴェンが受け取るのを確認すると、彼女はそのまま幸せそうに眠った。
何かと思い、開いてロイドと共に見ると、
「………これって…」
「……俺か?」
其処に描かれていたのは、様々な色のクレヨンで描かれている上、幼さのディフォルメが効いている為良く判らないが、
じっと目を凝らせば、色取り取りのハートに囲まれた白服の男のバストアップだった。
顔の色が焦げ茶の所為で一瞬そうとは思わなかったが、この服装は紛れも無くスヴェンだ。
「…どうやら随分好かれちゃったみたいね」
何時の間にやら、二人の間に分け入る形でマリアが現れた。
「良かったね、マリア。シンディの貰い手が決まったよ」
「そうね。大事にしないと許さないわよ、義理の母さんとして」
「…お前ら、正気か」
そして三人は笑い合う。
―――六年前。
其処には、全てが有った。富と権力以外の、全ての幸せが。
愛情が有る。友情が有る。家族愛が有り、感謝が有り、喜びが有り、笑顔が有る。
誰一人として居辛くない、温和な彼等の世界の全て。
それはまるで陽炎の花の如く、目映く儚い無形の宝。
そう―――――、陽炎の様に。
ロイドとシンディが寝静まった頃――――、何故かまだスヴェンは彼らの家に居た。
「これを見て、スヴェン」
そう言ってA4サイズの封筒を渡したマリアからは、母としての貌も妻としての貌も失せていた。
其処に居たのは、三年前スヴェン達と数々の犯罪者を検挙した敏腕捜査官、旧姓マリア=クラフトその人だった。
そして彼女から調査結果を受け取ったのは、現役捜査官の中で最年少のキャリア組にして若手最高の出世頭、そしてISPO史上
最高の検挙率を誇る男、スヴェン=ボルフィード。
「…これは……」
「副長官はね、ブライアン一家の重鎮、ヴァシリと絡んでいるわ。どうやらハイスクール、カレッジと同窓生だったらしいわね」
ブライアン一家は歴史が古い上に規模も大きい。この国の犯罪組織ネットワークの半分は彼らが握っていた。
「成る程な、副長官の強みはこれか。
今以上に持ちつ持たれつをやって、ISPO内の発言力を大きくする…ってのが副長官の絵図だろうな」
確かにその方法なら、副長官派の検挙率を上げ、各種賄賂で同志を募る事は出来る。しかし、
「だが判ってないな。トップのマーク=ブライアンと対等じゃない限り、立場はこっちが下だろうが。
長官になったらすぐ適当な責任取らされて、ブライアンの子飼いに挿げ替えられるだけさ」
ヴァシリと共に昼食を摂る副長官の隠し撮り写真に、スヴェンは嘲笑った。
「…そうなったら、ISPOからブライアン一家の海外進出への門戸―――いえ、大木戸が開かれる事になるわね」
取り締まる側が犯罪者に加担する事事態は良くある話だが、それが国際的公安組織団体と言うのは流石に無い。
副長官派の勝利は、事実上世界最大級の犯罪組織の乗っ取り行為に他ならない。
「………大局の見えないマヌケ爺が。その時点でクロノスの粛正が始まるぞ」
マリアの肩が、思わず震えた。実際彼女が最も恐れているのはそれだ。
ブライアン一家は、クロノスの存在そのものを知ってはいても、直接の関わりが無い為にどれだけの規模なのかを知らない。
クロノスがそう言う風に情報統制を図っている為仕方の無い事なのだが、そのお陰でブライアン一家に関わる全てが目隠ししたまま
虎の顎に突っ走る事となる。
知らないと言う事は、多くの場合恐ろしい。彼らは間違い無くクロノスが粛正の大義を得るほどに増長するだろう。
「――――で、そっちが長官派の、外務次官との癒着記録よ」
「…こいつはたまげた、外務次官自ら密輸入か」
数字と地名、その他隠語の羅列が整然と並ぶ帳簿の写しを見て、スヴェンは苦笑する。
素人目には何が何なのか判らないが、武器、麻薬、違法生物、古美術品、貴金属、或いは人間が、ISPO本部を隠れ蓑に
国内外を行ったり来たりする様が、スヴェンには手に取る様に判った。
「……判るの? 私は内容を調べてようやく判ったのに」
「少しな」
と、上の空で嘯きながら眼は次々と文書を駆け回る。捲れば捲るほど、どんどんと長官の保守的思想が何によって支えられているか
スヴェンの中に浮き彫りになっていった。
道理で、あんなデカい家に住んでる訳だ
何故かその事を声にせず、全てを速やかに封筒へと収めた。
「……派閥争い、と言うより代理戦争だわ。巨大マフィアと外務次官の」
「…だな。やれやれ、何処も彼処も腐ってやがる」
このままではISPOそのものがクロノスに裁かれかねない。各派閥は疑う余地無く双方の手先だ。
「…俺が用意したルートを使ったんだろうな」
「ええ。私や貴方に行き着く事はまず有り得ない、と言うのはちょっと信じられない触れ込みだけど」
「問題無いさ。俺もお前ら一家も安全だ」
しかし、直に情報に触れた奴は生きちゃ居ないがね、と続く言葉を省いたのをマリアは知らない。
「此処までして貰って、悪いな」
出掛けの玄関口でスヴェンは、コートを羽織りながら申し訳無さそうにマリアに告げた。
「いいわよ。貴方の為だもの
それに、元々私から言い出した事だし」
それを払拭する様に彼女は微笑んだ。
「これで、このつまらない権力争いを終わらせられるなら安い物よ。ヒーローのサポートくらいはさせて頂戴」
「しかしな……」
「はいはい、言いっこなし。仕事が溜まってるなら早く職務に戻りなさい」
まだ何か言おうとしたスヴェンを、無理矢理扉の外に押し出した。
飛び出してよろめいたが、何とか態勢を立て直す。
「あのなあ…」
溜息混じりに扉へと振り向く、と、スヴェンの視線が一点に止まる。
…扉は閉じられていなかった。そして半開きの其処から覗くのは、やや失意のマリア。
「ねえスヴェン、貴方の幸せは一体何処に有るの?」
その質問に、スヴェンは答えなかった。
「貴方は私やロイドに此処までしてくれたけど、貴方は自分の為に何もしないの?」
真っ直ぐに、ともすれば非難にも取れそうな眼で見据えた。
「…結婚した方が良いわ、貴方ならいい人がきっと見付かると思うの。このままじゃ貴方が…」
「可哀相…なんて言ってくれるなよ。好きでやってる事なんだから」
彼女の言葉をはにかみ一つに伏す。
その笑みに、マリアの胸が微かに高鳴った。そしてふと思い出す、まだ結婚していなかった頃、スヴェンの何に心を惹かれたのか。
―――この、優しく包容力に溢れた素直な微笑。心のささくれが溶かされてなだらかに成る様な、暖かさがそれには有った。
「―――じゃ、これは預かるぜ」
封筒を指し示したスヴェンの言葉に、はっと我に帰る。
「あ…え……ええ、うん、そ…それじゃ」
とうに人妻な筈なのに、何故か彼女は少女の様な気持ちでスヴェンの背中を見送っていた。
雪の降る町、パーティ帰りやこれから向かう人々を尻目にスヴェンは一人歩く。
気温は確か天気予報ではマイナス8度にもなると言っていたが、彼の胸にはそれを物ともしない炎が燃えていた。
俺の幸せ、か。安心しろマリア、俺の頭の中で現在進行中だ
貌には出さなくとも、これからの事を考えるだけで大笑したい気分だった。
もうこの戦争は俺の物だ。見てろ爺い共、何もかも奪い尽くしてやる
マリアが集めた情報は、常人ならせいぜい強請るで限界だが、彼には更なる利用法が閃いていた。
全てはこう言う時の為だ。種は蒔いた、実は実った。ならば後は収穫するだけだ。
その時、スヴェンの携帯電話が鳴った。
右の内ポケットから取り出し、蝶番式に開く。
「…もしもし………ああ、君か。
済まないな、行けなくて。俺も頑張ったんだが、どうにも仕事が片付かなくてね。ん? ああ、そいつは有り難いな。
でも今度埋め合わせはするよ。……大丈夫、気にするな。愛してるよシャーリーン、長官…と失礼、父上によろしく」
通話を切った後は、流石に笑みが湧く。普段の彼を知る者なら目を疑うであろう、悪辣で冷酷な笑みだった。
事の成功に喜ぶと、ふと煙草が欲しくなった。
煙草を咥え、火を点けようとジッポーを取り出したその時、石が無くなっている事を思い出す。
舌打ち一つでコンビニを捜すが、この周囲は服屋や本屋しかない。彼の知る限り其処に火の類は無かった。
「…くそ」
忌々しくも周りに眼を廻らすと、道路を挟んで向かい側の歩道に、ホームレスが集まってゴミを燃やしたドラム缶で暖を取っていた。
渡りに船とは良く言った物だ。すぐに彼らに駆け寄った。
「済まないが…火を分けてくれないか?」
快く、ではないにしても特に拒む事も無く彼らはスヴェンに場所を譲る。
そのまま咥え煙草をドラム缶から立ち上る火に近付けようとしたが、なかなか火勢が強く、そのままでは被っていた帽子が焦げる事に気付く。
と、同時に一計を案じた。
懐から取り出した画用紙に火を点け、それを火種に成功の紫煙を胸いっぱいに吸い込む。
さて、これからが忙しくなるな
思案の端で、用済みになったシンディの絵を炎に投げ捨て、また彼は帰路に着く。
その時、スヴェンの携帯電話が震えた
左≠フ内ポケットから取り出し、スライド式に開く。
「…もしもし………ああ、これはこれは副長官。
申し訳御座いません、パーティにお顔を見に行けなくて。…いえ、これから雑務が残っておりまして……
酷いですね、ロイドは俺の相棒ですよ。無能は些かあんまりでは………
ええ、ええ、私は副長官の勝利を信じています、ええ。では、メリークリスマス」
通話を切るや、それに向かって鼻で笑った。
ヤクザの使い走りが、偉そうな口を聞いたもんだな。
無能はどっちだ、欲ボケてないだけあんたよりマシさ
ロイドが無能だと言う事は、それを相方とするスヴェンも無能と見なされる事となる。それがなんとも不愉快だった。
…………いや、俺を本気で二重スパイと信じてるあんたとなら、良い勝負かもな
ロイドを思い出すと必然的にマリアも思い出す。
安心しろお前ら、まだまだしばらくは守ってやるさ。何せお前達は――――――
出会った時からそうだった。ずっと、彼の心の中ではそう思っていた。
今もそれは、絶対に変わる事の無い不変の事実。
大事な俺の……道具だ
385 :
作者の都合により名無しです:2006/04/09(日) 11:07:44 ID:KFj8mpHc0
おお、リアルタイムでNBさん発見。
連投規制かな?
ネット用のパソがYou're Shock!!(挨拶)
おかげで車で二十分のネットカフェまで行かないと投下出来ないNBです。
いや、其処の存在を知るまではもう絶望でしたね。もう進められないかもと。
何故か殺人鬼ジグソウに攫われて、
「君は時間とパソに感謝しないのでゲームをしよう」
とか云われる夢まで見てしまうほど、人生どん底でした。(夢で本当によかった)
さて今回、「罪科」開幕です。
今回を見て判るとは思いますが、↑が6年前のスヴェンです。
果たしてこの、自分で書いて何だが非道い悪漢がどうやって今になるのか、
今回の焦点は正に其処です。
頭使う話は、読み手に理解し易くするのが大変難儀な為、今から俺が混乱しております。
……しかし、俺が今回のスヴェンの立場に立ったら………事の大きさに腰引けてバックレるな。間違い無く。
まあ、世間一般ではどうなのか知らないけど。
兎に角、この面倒で長くなりそうな話をどれだけ読み易く一話にまとめるかが俺に課せられた課題と言えるでしょう。
さて、過度なお喋りもこの辺にして……今回はここまで、ではまた。
387 :
作者の都合により名無しです:2006/04/09(日) 11:30:34 ID:KFj8mpHc0
お疲れ様ですNBさん。
今回も力作で、しかも大長編で読み応えたっぷりですね
シンディを中心としたアットホームな雰囲気から(のけモン笑った)
シリアスな会話への自然なチェンジは相変わらずお見事ですね
最後の不気味な独り言が、過去の暗さと重みを物語っている気がします
>面倒で長くなりそうな話をどれだけ読み易く一話にまとめるか
更新ペースをもう少し速くして頂ければ、2話3話に分けて頂いても構いませんがw
NBさんお疲れです。
罪科のタイトルどおり、アットホームな雰囲気の中にも
ドス黒い何かが漂ってますね。スヴぇンの原罪の話になるのでしょうか?
原作知りませんが、NBさんの作品は毎回毎回書き手として参考になり、
読み手として楽しみにしてます。
もうちょっと更新ペース速ければ正真正銘(俺にとって)神なんだけどなw
389 :
ふら〜り:2006/04/09(日) 19:04:46 ID:+wAKzJD50
>>見てた人さん
巧い! こういう作品は「あ〜、言われてみれば! なんで気づかなかったんだ私はっ!?」
と思えるのが正しいというか読んでて気持ちいいですよね。で確保の件、この展開は当初
から予想してましたが……殺害方法からして、奴がタダ者でないのは明らか。勝てるか?
>>サマサさん
既にドラ側のインフレが上回ってましたよと。桁外れな強さと優しさに打たれたイザーク、
>俺がいつかこの借りを返すまで、くたばるなよ―――分かったな!
うん、男らしい。今気になってるのはアザミの過去と今後と、な〜んとなく強調されてる
USDマン。次に出てきた時のペコたちの反応、そしてペコたちへの対応が楽しみですっ。
>>邪神? さん
あのスペックが「ここは俺に任せて先に行け」展開ですよ奥さん! それでいてちゃんと、
原作通りの無呼吸連打を、深く掘り下げて描かれて。そういや前蹴りも得意技でした……
うぅ嬉しい。物語的には勝っても負けても不自然じゃないから、先が読めないのも楽しい!
>>NBさん
地味なとこで、スヴェンの寝かしつけワザが良かったです。本当に何でもできる人ですな。
本作開始以来、能力性格その他ありとあらゆる面で、私にとって完璧超人だったスヴェン。
その評価がどうやら、過去のこととはいえ変わりそうな感じ。用済みの画用紙、って……
>>全力全開さん
(その設定を)使ったらいい。それでSSが面白くなるのなら、迷わずそうすべきです。
みんな思い続けてきました。よりもっと面白いSSを読みたい・書きたい……次スレは
もっと……そして…………辿り着いた36です。
390 :
作者の都合により名無しです:2006/04/09(日) 19:45:04 ID:KKe5l8tE0
NB氏、乙です
スヴェンの過去話、原作ではなかったお話ですよね?
(原作詳しくないんで、もしあったらごめんなさい)
ここら辺は完全にNBさんのオリジナルになると思うので
期待してます。
現代話は激しい中にもどこか明るさがありましたが、
完全に暗いどろどろした話になりそうですな。
391 :
作者の都合により名無しです:2006/04/09(日) 23:07:50 ID:KFj8mpHc0
>>389 ふら〜りさんはまたいつから新連載開始するんですか?
春先は皆さんお忙しいのかな
働き始めた人もいるみたいだし
第六十六話「アザミ・1」
気絶したアザミは、しずかの強い要望によって基地の医務室に運び込まれた。勿論、反対意見もあった。
「しずかちゃん、こいつが何したのか忘れたのかよ?今だって、稟さんたちを襲ったっていうじゃねえか」
と、これはジャイアン。
「過去の経緯は分からんが、同感だな。敵兵をわざわざ治療してやるなど、甘いにも程がある」
と、苦い顔のイザーク。
彼らの言い分も分からなくはなかった―――というより、完全に正論だった。しかし―――
「だけど―――このままじゃ死んじゃうかもしれないわ!お願いよ、彼女を助けて!」
しずかはそう言い続け、ついにイザークたちも折れたのだった。結果、自分たちの監視付でという条件ではあるものの
アザミは医務室で治療を受けることになったのだった。
「けどさ、アザミって確か人間じゃなくて神族だよね?人間の治療でどうにかなるのかなあ」
「分からないよ。神族や魔族も、身体の作り自体は人間と変わらないとは聞いたことがあるけど・・・」
のび太の疑問に、稟が難しい顔で答える。
「それに、アザミは確か人体実験やら何やらで魔力を強化したせいで、ボロボロの身体だってのも聞いた。情けないけど、
俺には何も言えないよ・・・」
結局、よく分からないということらしかった。一同はふーっとため息をつく。
「・・・まあ、折角治療までしてやってるんだ。助かるに越したことはないな」
と、イザーク。言葉は乱暴だが、彼なりに気を遣っているらしい。
「そうだよ。きっと大丈夫だよ、しずかちゃん」
のび太もそう言って励ます。しずかはそれを聞いて、こくりと頷いた。やや湿っぽい空気がドラチームと、そして新たな
仲間であるレジスタンスの三人組の間を流れる。―――いや、一人いなかった。
「あれ、ディアッカさんは?」
「ディアッカ?ああ、彼は昔から医務室が大嫌いなんですよ。医務室に行くと何故か刃物を振り回す女の子の幻影が見える
とかで・・・」
「なんだそりゃ」
そんな与太話をしているうちに、医務室から医師が出てきた。どうにも妙な顔をしている。
「・・・あの、どうなんですか?アザミは」
しずかが尋ねた。
「うーん・・・目を覚ましたし、命に別状はないね。だけど彼女の身体は、人間の医者の領分じゃないよ。なんていうか・・・
サイボーグって言ったらいいかな?」
「サイ・・・ボーグ?」
予期せぬ言葉に、一同は凍りついた。
「そう、サイボーグ。彼女の身体は半分以上は機械で出来ているんだ」
「そんな・・・どういうことなの?」
しずかが口を押さえる。医師はそんな彼女に言った。
「えっと、しずかさん・・・ってのは、君でいいんだよね?」
「え?そうですけど・・・」
「彼女は君と話がしたいと言ってる」
医師の言葉を受けて、周囲はざわめく。
「しずかちゃん、どうするの?危険かもしれないよ」
「・・・行くわ。あたしも・・・彼女と話したい」
そう言って、しずかは医務室の中に入っていった。
「ほんとに大丈夫かな・・・」
「心配してても仕方ないよ。しずかちゃんはあれで頑固だからね、止めても聞かなかったと思うよ」
ドラえもんは結構楽観的だ。そうでもなければ、数十回にも渡る修羅場の数々を乗り越えられなかったであろうが。
ともかく、一山越して弛緩した空気が流れる。と、今まで黙っていたバカ王子が突然口を開いた。
「稟、すまないがグランゾンを撃墜した場所を教えてくれないか?」
「え?いいけど、なんで・・・」
第一声がそれでは、面食らうのも当然だろう。しかしバカ王子は平然と続けた。
「ちょっとばかり興味がある。実際にどんなものか見てみたいんだよ」
<・・・また変なこと企んでんじゃねえだろうな?お前、サイバスターにネコ二匹くっつけやがったことを忘れたなんて
言わさねえぞ>
「失敬な。ただちょっと面白大改造を・・・ゲフンゲフン。サイバスターと対を成すというグランゾンとやらを見てみたい
だけだよ」
「まあ・・・いいか。じゃ、付いてきてくれ」
稟と共に、バカ王子は去っていく。
「どうするつもりなんだろ、バカ王子さん・・・」
「知らん。話題にしたくもないが、折角の奴のいない空間を存分に楽しもう」
クラフトはそう言って、すぱすぱタバコを美味そうに吸い始めた。本気でバカ王子の話題には触れたくないのだろう。
「・・・それはそれとして・・・しずかさんは、本当に大丈夫かしら・・・」
リルルは固く閉ざされた医務室の扉を、不安げに見つめた。
医務室の中、清潔なベッドにアザミは横たわっていた。その横に、しずかは立つ。
「―――お久しぶりですね、お嬢さん」
「そうね・・・アザミ」
それだけ言って、互いに見つめあう。しばらくして、しずかが口を開いた。
「アザミ・・・あなたは、何故ここにいるの?何故また、こんなことをしたの?何故・・・」
それ以上は言葉にならない。アザミはそんなしずかに対し、薄く笑った。
いつも浮かべていた氷の笑みではない。どこか自嘲めいた笑みだった。
「一度にたくさん質問をしますね・・・まあいいでしょう。最初から説明していきましょうか・・・」
そして、アザミはしずかに対して語り始めた―――
投下完了。前回は
>>354より。
貴重なお昼の休み時間に何やってんだろう、僕・・・(汗)
働き始めると、ほんとに時間が貴重です。
>>356 人のために自分が損をできる・・・それが出来る人って、現実に何人いるでしょうか
>>357 週一とか言いましたが、短くなった自由時間も結局SS書きにあててしまいそうです。
アザミの仲間フラグ・・・どうかな?
>>全力さん
ありがとうございます。僕のSSから創作意欲をって、すごい褒め言葉です。
原作設定については、SSなんだから必要と思ったところは変えてもいいと思いますよ。
設定に忠実でなければならないとか言い出したら、僕なんて・・・(笑)
>>359 必殺技で一気に決着を付けさせるのは、無茶苦茶楽です。インフレ漫画を書く作家の気持ちが
分かりました・・・だって楽なんだもん(汗)
>>ふら〜りさん
USDマンにもまだまだ見せ場は用意してます。読者人気も高いキャラですし、個人的にも気に入ってますし。
397 :
作者の都合により名無しです:2006/04/10(月) 15:49:47 ID:gr0KDff+0
サマサさんお疲れ様です。
働き始めたばかりで疲れもたまっているでしょうにその熱意には頭が下がります。
前回の強力な敵だったアザミでも見捨てないしずかちゃん、映画版ドラと同じ心意気ですね。
今回は次回への繋ぎの回だと思いますが、アザミの口からどんな事実が語られるか楽しみです。
仕事と休息と遊びの合間で構わないので、SSも頑張って下さいね。
サマサさん乙です。サイボーグ・・・・草薙素子や鋼鉄ジーグが
思い浮かびました。まさかアザミが鋼鉄ジーグとなって戦線復帰
するのでしょうか。必殺技名は“アザミブリーカー”でしょうか。
続き楽しみにしてます
399 :
作者の都合により名無しです:2006/04/10(月) 17:41:36 ID:4QXzfTqu0
サマサ氏、仕事勤め大丈夫だろうか…
などと余計な心配してしまうけど、頑張って下さい。
アザミの告白は以降の話のキーになりそうですね。
400 :
作者の都合により名無しです:2006/04/10(月) 23:24:23 ID:vroDvuMh0
仕事休みの40分程度の間に3レス+後書きが書ける事に驚嘆した
401 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:37:52 ID:9qHi3Ne00
前回は
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/nakukoro/09.htmです。
<一日目・その8-(1) 馬子にも衣装>
現在時刻:午後13:30 場所:村内の学校・裏門
自転車のブレーキ音が聞こえる。
どうやら勇次郎は見回りを終えて学校の裏門に返ってきたようだ。
「ったく・・。さっきのは一体なんだったんだ?」
愚痴をこぼしながら自転車を裏門にある駐輪場に停める勇次郎。
今し方、自分の目の前で起こった不可解な人物――現象でも考えているのだろうか?
勇次郎は自転車を止め終えた時の形のままその場に佇んでいる。
「・・・、まあ・・。いい・・。とりあえず戻るか。」
そして、数分ほどその場に佇んで思考をめぐらせていた勇次郎は、これ以上この場に居続けても
意味がないと判断したのか、ゆっくりと校舎に向かって歩き始めた。
――――数分後・・・。
402 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:38:31 ID:9qHi3Ne00
「ん・・・。焼却炉か・・・。」
だだっ広い裏門周辺をゆっくり歩いていた勇次郎は、やっとこさ駐輪場と校舎までの中間地点である
焼却炉の前に辿り着いていた。
思わず焼却炉の方に目を向ける勇次郎。
人を焼き殺した張本人なのに、『それ』はまるで反省した様子は見えなかった。
するとそんな焼却炉を見て、不意に勇次郎は水ぶくれに埋め尽くされた少年の『あの言葉』を思い返す。
「死ぬのを見守っていた・・。か・・。けっ!!くだらねえ!!!」
『あの言葉』を思い返して胸糞悪くなった勇次郎は、その場に唾を吐き捨てる。
唾を地面にはき捨てるなど教師がする行為ではないが、それも勇次郎視点から見れば仕方ないように思える。
なぜなら勇次郎にとって人の死というのは『自分から与える』もの。
少なくとも『見守る事』ではない。
だから勇次郎にとって少年のあの言葉は、とても受け入れられない言葉なのだ。
「まあ、いい。今は・・・な・・。」
意味ありげに一人ポツリと漏らした勇次郎は、先程の一連のやり取りのせいで曲がってしまったネクタイを、
焼却炉の表面に映る自分の姿を鏡代わり見立ててあっという間に真っ直ぐに直す。
こうして見ると、馬子にも衣装と思っていた勇次郎の背広姿も意外と様になっているようだ。
そして次にネクタイを直し終えると、さきほど転倒してしまった時に乱れてしまった髪形を
手串整えながら早足に校舎内に戻っていくのだった。
403 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:39:19 ID:9qHi3Ne00
<一日目・その8-(2) 名案>
現在時刻:午後13:55 場所:村内の学校・圭一のクラス(2-A)
不気味な出会いをしたにせよ、無事に教室まで戻ってきた勇次郎は、
あと数分もしない内に来るだろう『警察への配慮』を生徒達に叩き込もうとしていた。
これは別に『勇次郎が生徒の事を思ってやろうとしている事』ではない。
多分・・・。いや、絶対自分の為の生徒への指導であると想像できる。
なぜなら少しの出来事でもすぐに大騒ぎするこのクラスの生徒達は、
勇次郎にとって『自身の心の平穏を乱す厄介な存在』だからだ。
「あ〜、てめえら。これから警察が来るからそいつらの指示に従って・・・。」
勇次郎が自身の台詞を言い終える前に、大音量のサイレン音が遠くから聞こえてくる。
どうやらパトカーがこの学校に来たようだ。
そんなサイレン音に喋るのを妨害された勇次郎の腹の中は怒り心頭だったが、
何とか警察がこのクラスまで来る僅かな間にか言いたかった事を言おうと、
本当に要点―――もとい本音だけ生徒達に怒鳴りちらす。
「ちっ・・・。もう来たのか・・。仕方がねえ・・。おい!!てめえら!!いちいち五月蝿くするんじゃねえぞ!!」
「は〜い!!」×37
パトカーのサイレン音に気を取られていた生徒達だったが、勇次郎の怒鳴り声を聞くや否や
どっかの音楽団のように声をそろえて華麗に答える。
この光景だけを見ると、このクラスの生徒達は先生の言う事を良く聞く良い子の集まりにも
見えてしまうが、おそらく日頃の条件反射で答えてしまっただけだろう。
その証拠として、勇次郎の声に答えた後の生徒達の行動は『警官という未知の人間』に対しての妄想を存分に
炸裂させて、教室を先程の十倍は五月蝿くさせたのだから。
404 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:40:11 ID:9qHi3Ne00
現在時刻:午後13:57 場所:村内の学校・圭一のクラス(2-A)
―――サイレン音が鳴り終わると、校舎の外から大量の人間がこの学校に入ってくる音が聞こえる。
これはパトカーから降りてきた警官たちが学校内に入ってくる音だ。
そして、校舎内に入ってきた警察官たちの殆どは職員室や事件現場に向かわずに、
次々と生徒達のいる教室に一人ずつ入っていく。
どうやら現場検証などの前に生徒の保護が最優先と判断されたみたいだ。
しかし、そんな安全という名の保護を届けるはずの警察官が教室に入った瞬間!!
その教室ごとに異変が起きる!!
果たしてそれは一体・・・。
いや、ここまで読んだ方は、もうお分かりだろう。
そう、警官が教室に入る度に起こる異変。それは好奇心に支配された生徒達の狂喜乱舞の声である。
「うわ〜!!警官だ〜!!」
「ねえ!!警官って、目からビーム出だすの?」
「その帽子の中には何か秘密兵器が?」
こう言った言葉で支配される警官が入って行った教室内。
それにしても、圭一のクラス以外でも警官を見ただけでこの騒ぎとは・・・。
これでは『圭一のクラス』に警官が入ってきた時は一体どんな状態になるのだろうか?
もしかしたら、ガラスが全部砕け散るぐらいの超音波はでるかもしれない。
いや、冗談ではなく。
405 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:41:44 ID:9qHi3Ne00
「ちっ・・・。てめえら、くれぐれも五月蝿くするんじゃねえぞ!!俺がイラつくからな!!」
そんな他のクラスの騒ぎを聞いた勇次郎は、これから迎えなくてはならない警官を見た時の
生徒たちのリアクションを考えた途端、思わず脊髄反射のように大声で注意をうながす。
だが、そんな言葉では『警官に対して必要以上の期待を求めている純真な生徒達』は止める事は出来ない。
警官が近づいてくる事を実感する度に、圭一のクラスの生徒達は純真無垢な瞳をキラキラ輝かせる。
―――遂に『隣のクラス』まで・・。
きっと数秒もしない内に、このクラスまで警官はやってくるだろう。
そして隣のクラスの戸を開ける音が聞こえるや否や、圭一のクラスの生徒たちの目の色は一斉に黒から金に変わる。
サイレン音が聞こえた時よりも、さらに五月蝿くなる教室内。
それなのに何故か勇次郎はいつものように怒鳴り散らす―――もとい、生徒達を注意しようとはしない。
おそらく、さすがの勇次郎も今の生徒達の状況を見て、『コイツラを撲殺する以外で止める事は無理』と
確信したからなのだろう。
なぜなら文字通り加速度的に五月蝿くなる教室内を、勇次郎は心底うざそうな顔でのんびり
眺めることしかしていないのだから。
―――だが、天は勇次郎を見放さなかった。
406 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:42:21 ID:4wAC9Ny10
「おい!!お前等!!少しは黙ったどうだ?ちょっと!!田中!!
そんなに警官の服装が珍しいからって、ガキみたいに体をぺたぺた触るんじゃない!!」
突然、勇次郎よりも大きな声が勇次郎自身の耳に入る。
この声は隣クラスの担任の声だ。
いつもだったら、こういった先生らしい先生の声にも過敏に反応して、そのクラスに怒鳴り込みに行く勇次郎だが、
何故か今回に限ってはそんなリアクションを取らず、万人がビックリするようなリアクションを起した。
『笑顔』・・・。
いつもは怒るところを、とてつもない―――いや、見たことも無い笑顔をしているのだ。
「くくく・・・。そうか・・。そういうことかぁぁ!!!!」
勇次郎は頭にある豆電球の光が点く勢いで立ち上がる。
―――そう、思いついたのだ。
自分の目の前に居る生徒達が、これから狂喜乱舞することを止める手段を・・・。
「足音!!させるかぁ!!!」
そして、このクラスに近づいてくる足音をキャッチした勇次郎は、思いついた名案を実行するために
物凄い速さで教室から飛び出ていった。
407 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:42:55 ID:4wAC9Ny10
現在時刻:午後14:00 場所:村内の学校・圭一のクラス(2-A)
「どうも、上々城町の警察の者です。今回はこういった事件が起こりましたので、
地形の面や皆様の安全を考えて、皆様を護送車で送迎する事になりました。」
「・・・・・。」×37
圭一のクラス(圭一はいまだ気絶中)に来た警察官は一言挨拶をすると、
さっそく生徒達に帰宅方法の旨を大まかに説明する。
さて、異変にお気づきだろうか?
そう!!あの五月蝿い圭一のクラスの生徒達が声1つ上げていないのだ。
これは勇次郎の策が成功した事を意味する何よりの証だろう。
果たして、勇次郎は一体どうやったのかというと・・・。
「ねえ・・。警官って、なんだか普通だね。起き抜けの父さんみたい。」
「そうだね・・。凄い武装でもしているかと思ってたけど・・・。」
どうやら勇次郎が行なった策に気付かず、生徒達はまんまと騙されているようだ。
――もうお分かりだろう。
勇次郎が一体どうやって生徒達の警官への興味を削いだのか。
語り部一人だけ注目しているその答えとは・・・。
「あのう・・。先生?そろそろ服とかを返してくれませんか?一応、警察手帳もその中に入っているので・・。」
「却下。」
――― 一言で言えば、警官の服を無理やり奪ったのである。
さらに分かりやすく言えば、生徒達が興味を持っていたのは警官という人種よりも、
その服装や持っている道具にあったのだ。
だからそれを排除してしまえば、思っていた格好との落差で幻滅するのは必至。
兎にも角にも勇次郎は自身の思惑通り、見事生徒の沈黙化に成功したのであっ・・・
408 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:43:34 ID:4wAC9Ny10
「でも、あれが警官なんだよね。」
「そうだよね〜。凄いんだよね〜。」
「なあ、やっぱり拳銃持ってるのかな?」
「もってんじゃねえ?人が死んでるらしいし。」
「「「「「せ〜〜の!!警察のおじさん!!質問!!」」」」」×37
ピンポンパンポ〜ン〜♪
―――これから学校を支配する騒音と、それに対する勇次郎の反応については過激な表現が多々出てくるためカットされます。
ピンポンパンポ〜ン〜♪
「あ〜。やっと帰りやがった。それにしても警官が来るからって背広を着る必要はないだろうよ・・。」
勇次郎は生徒達が乗っている護送車を窓の外から見送ると、くたびれたように着ていた背広を脱ぎだす。
地上最強の生物が疲れさせるとは・・・・、全く田舎の高校生は恐ろしいものである。
「ったく、こんな暑苦しいものは・・・!!」
『背広とワイシャツ』を脱ぎ終えた勇次郎は、使用済みのティッシュのようにそこら辺へ投げ捨てる。
勇次郎が着ていた時とは違って、一気にその存在感が希薄になる『背広とワイシャツ』。
どうやら勇次郎が着てこその存在感だったようだ。
「にしても、今日はあちいな・・・。まあいい・・。クーラーが効いている職員室にでも戻るか。
『校長の奴がまだ用がある』とか言っていたしな・・・。くそッ!なんだか本当に教師をやっているみてえじゃねえか!!」
そして勇次郎は、教師らしい仕事をしている事に珍しく自分自身を罵倒しながら重い足取りで教室内を後にした。
ガラガラ・・・。――――ピシャ!!!
勇次郎が教室から出て行くのと同時に、勢い良く閉まった教室の扉の音が誰も居ない廊下中に響く。
「ん・・。ふああ〜・・・・。あれ?みんなは?」
すると、この音で一人の青年が突っ伏していた机の上で意識を覚醒させる。
そう、この人物とは・・・。
「確か・・・、変な臭いがして・・。帰って来た勇次郎先生の目を見たら・・・。」
先程の警察が来た時の一件のせいですっかり忘れられていた、この物語の”副主人公”こと前原圭一である。
409 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:44:31 ID:4wAC9Ny10
<一日目・その8-(3) 下校>
現在時刻:午後14:35 場所:村内の学校・保健室
学校内でも特に『異質』な空間―――保健室。
学び舎にベットがあるという面だけでも、『異質』を語る資格は十分だが、
それ以上に保健室が異質な空間と感じる理由とは、やはり『消毒液の匂い』であろう。
なにしろ病院でも行かない限り味わう事が出来ない『それ』は、学校に来たはずの生徒達を一瞬にして
異空間へ誘い、ここへ来た『自分がよほど重症だということは錯覚させる』ほどの力があるからだ。
だから保健室でサボる生徒も出てくるし、保健室の先生は魅惑的に見えるのだろう。
まあ、それでも本当に具合悪い人にとっては、そんな事を気にするどころでは無いが・・。
「ねえ、レナ?具合はよくなった?」
レナの友人である千沙は、本当に心配そうな顔で彼女のことを気遣う。
どうやらトイレで手を洗っている最中に気分の悪くなってしまったレナは、
今の今までこの保健室で休憩を取っていたようだ。
「うん☆おかげで気分もよくなったし、元気モリモリだよ☆」
「そう・・・。モリモリ・・ね・・・。って!!スマッ・・・・!!」
友人の時代遅れのコメントに、千沙はなんともいえない表情になる。
そして彼女が一応のツッコミを入れようとした・・・、その瞬間。
――――保健室の扉が今にも壊れんばかりの勢いで開いた!!
「てめえら!!帰るぞ!!」
読み手に関しては誰もが予想していたであろう『人物』が、無駄な威圧感を漂わせながら保健室に入ってくる。
当然、その『人物』とは範馬勇次郎の事だ。
おそらく勇次郎の言っていた『校長からの用事』というのは、『校舎に残ってしまった二人』
を送り届けるという内容だったのだろう。
しかし全くそのようなことを知らされていなかったレナと千沙は、勇次郎の突然の出現に
心底ビックリしたような表情で勇次郎を迎えてしまう。
410 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:45:23 ID:4wAC9Ny10
「・・・・。」
そんな二人のリアクションに、いつもならば憤怒の1つでも見せる勇次郎だが、『先程の少年』のことや
『教師をやっている自分へのジレンマ』を感じている今は、特にこれといった言葉を返さずに、
何時の間にやら持ってきていたレナと千沙の通学鞄を、無造作に二人の方へ放り投げた。
綺麗な放物線を描(えが)き、保健室を横断する二人の通学鞄。
横断するスピードは速過ぎず遅すぎず・・・。
――――そして、二人の腕の中に優しく着陸した。
「「おおっ〜〜!!」」
ジャストでフィットな勇次郎スローに、思わず感嘆の声を挙げてしまうレナと千沙。
これも人外な運動神経が成せる技なのだろうか?
「けっ!!早くしろ!!さっさと帰るぞ!!」
そう言って勇次郎は足早に保健室から出て行く。
いつもよりも一言少ないのが、『教師をやっている自分にジレンマを感じている』のが良く分かる。
「「は〜い。」」
しかし、そうとは気付かないレナと千沙は、先に外に出て行ってしまった勇次郎の背中を確認すると、
利き腕に自分の通学鞄を持って、父を追うような子の姿のように急いで保健室から出て行くのであった。
411 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:45:57 ID:y+Q1Wr6L0
一方、その頃の圭一君はというと・・・。
「あれ・・・?俺の自転車のフレームが曲がってる・・・。なんで?」
帰宅するために裏門の駐輪場にやってきた圭一は、自分の自転車を見るや否や思わず憤怒と疑問が
入り混じった声を挙げてしまう。
なにしろ今朝乗って来た時は傷一つなかった自転車が、今は傷だらけ上にフレームまで曲がっているのだから。
ここだけの話、実はさっき『勇次郎が見回りに使っていた自転車』は―――『圭一の自転車』。
転倒したときに少し傷ついたと語ったが、隅々まで見てみると所々フレームが変な方向に曲がっているのが分かる。
「くそう・・・。ついてねえよ・・・。あ〜あ・・。徒歩か・・・。面倒くさいなあ・・・。」
そして、圭一はフレームが曲がっている事に危険を感じた為、仕方がなく徒歩で家路に着こうとするのだった。
「まあ・・・。”1時間”も歩けば・・・。はあ・・・。疲れるなあ・・・。」
しかし圭一は知らない。
もしかしたら、”1時間”では家に帰ることが出来ない状態に陥る可能性がある事を。
そう、知らないのだ。
―――『気絶していた』せいで『焼却炉から死体がでてきた事』も、その『犯人がまだ周辺に居る危険性』が潜んでいる事も・・。
412 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 00:47:09 ID:y+Q1Wr6L0
続いて、<一日目・その9-(1) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事1>
を投稿したいのですが、非常に長くなるので30分ほどおきます。
413 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:18:39 ID:hU49cSgE0
大変勝手ですが、続いて投稿させてもらいます。
414 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:22:55 ID:hU49cSgE0
<一日目・その9-(1) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事1>
現在時刻:午後14:50 場所:通学路
青年の肩に掛かった学校指定のバックは、彼が前に進む度に規則正しく揺れる。
規則正しいとは言っても、それが揺れるスピードはとても速く、彼が急ぎ足で歩いているのを容易に想像できる速さだ。
では、なぜ彼はそれほどまでに早足で歩かなければならないのか?
―――答えは簡単。
学校と自宅の距離があまりにも遠すぎて、早足で帰ることでもしないと日が暮れてしまうからだ。
もうおわかりだろう。
この急ぎ足で歩いている少年は・・・・。
「それにしても・・、なんで誰も起こしてくれなかったんだろう?」
存在感がまるでない副主人公こと前原圭一君である。
『事件があったことも犯人が辺りに潜んでいる可能性』事も知らず、圭一は無防備に歩をひたすら前に進める。
彼が歩を進める度に、夏でもないのにやたらと暑く照らしてくる太陽がゆっくりと・・・、
だが確実に体力を奪っていく。
そしてしばらく歩き続けた圭一は、消耗した体力を回復させるために近場の木へ涼みに入る事に。
「ふう・・・。まだ先だな・・・・。」
一人そう呟いた圭一は、ゆったりと木に寄りかかりながら、無駄に暑い太陽の日差しのせいで掻いてしまった
汗を、ポケットに入っていたハンカチで優しく拭き始める。
「景色はいいんだけどな〜。景色は・・・。はあ・・・。」
そう言いながら視線を前に送った先には、都会人だった圭一にとっては癒しの光景が。
辺りをいくら見回しても自分以外の人間が居ないという人口密度の広さ。
都会では香ることさえない、緑の匂い。
舗装されていない通学路にカルガモの親子が仲睦まじく行進している。
「そろそろ・・・。いくか。」
都会では見ることの出来ない景色を堪能した圭一は、休憩してしまった時間を取り戻すかのような勢いで、
通学路をまた足早に歩いていくのだった。
415 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:24:25 ID:hU49cSgE0
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路
ただ真っ直ぐ伸びているというだけの通学路。
都会の舗装され尽くした道路とは違って、辺りには人工的な建造物は殆どなく
数百メートル間隔に電柱が建っているぐらいしかない。
だから夏でもないのにやたらと暑い今日という日に、こういった田舎道を歩請うとする行為は、
非常に体力を使う行為であり、都会から転校してきた圭一にとっては非常にキツイ帰り道だった。
「はあ・・。はあ・・・。おかしいな?自転車で通っているとはいえ、こんなにも家まで距離って・・・、あったけ・・・?」
先程の休憩から『ニ時間』は歩いただろうか?
いつもの通学時間の三倍(自転車に乗って)は歩いているのに、なぜか一向に居住区の影さえ見えない。
幸い『焼却炉に人を放り込んで焼死させた犯人』には出会ってはいないが・・・・・。
「おかしい・・・。おかしいよな・・・。」
そして何時までたっても自分が住んでいる居住区が見えないことに、
圭一の頭の中は言い知れない不安に支配され始めていた。
――――更に十分後・・・。
「変だよ・・・。そんなに俺って歩くのが遅い・・か?」
『夏でもないのにやたらと暑く生きとし生けるものを照らしてくる太陽』にすっかりと体力を吸われた圭一は、
先程のように日除けとなる木が無い為、制服の上着を頭の上にかぶせてこの場で休憩をとる事に。
「暑い・・・。おかしい・・。道でも間違えたのかな・・・?
はは・・・。まさか・・・。ひたすら真っ直ぐに歩けば良いだけなのに・・・。」
暑さの為に疲れきった体を鬱陶しく思いながら、圭一は自身の置かれた状況を真剣に考える。
まともな答えは出てこない。
それもそのはず、なにしろ圭一は学校を出てから、ただ真っ直ぐにしか歩いていないからだ。
当然、いつも登校するときと同じ道。
同じ方向に真っ直ぐ歩いている。――だから・・・。
「やっぱり迷うはずは無い・・よな・・・。くそっ!!なんだよ一体!!」
当たり前の答えだが、それが答えになっていないことに思わず自身の髪をクシャクシャする。
しかし悪態をついたところで、事態が変わるはずもない。
「仕方ない携帯を・・・・。」
そう言って圭一は制服のポケットから携帯電話を取り出して、親に連絡をしようとする。
416 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:25:55 ID:hU49cSgE0
―――――が、何故か圭一は思い直したような顔をすると、頭まで見えている携帯電話をポケットの中に入れ直してしまう。
「やっぱり・・・。恥ずかしいよな。せめて日暮れまでには帰れるだろうし・・・。」
そうなのだ。
ただ『真っ直ぐ歩けば家路に着くはずの通学路』を歩いているのに「迎えに来てくれ」なんて電話は恥ずかしい事この上ない。
――――だから・・・・。
「よっこらせ・・。っと!」
連絡するにも羞恥心が邪魔してすることが出来ずに、圭一は疲れた体を引きずるように立ち上がると、
ただ真っ直ぐ歩けば帰れると信じて歩き始めるのだった。
それにしても・・・・。
圭一は気付いているのだろうか?
彼が学校が出た時間は『午後14:35頃』。
そして学校を出てから『2時間以上』経っている。
つまり夏にもなっていないこの時期とはいえ、普通に考えるのならば現在の時刻は『午後17:00前』になる。
そう、この時間帯は普通は『夕方』にあたるはずなのだ。
「あちい・・・。太陽の奴・・。」
――――未だ太陽が沈む気配すら見せる事がないことに・・・。
417 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:27:02 ID:hU49cSgE0
<一日目・その9-(2) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事2>
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
疲れきった体を必死に支えながら、圭一はひたすら家までの道筋を歩く。
いや、歩いている”はず”と言った方が正しいだろう。
なぜなら圭一が学校を出てから既に三時間が経過したというのに、
一向に自宅のある居住区の影すら見えないからだ。
無論―――太陽も何故か沈む気配すら見せてはいなかった。
「はあ・・・。まだ家が見えないや・・・。おかしい・・。・・本当に・・・、さっぱりだ。」
先程と同じように、制服を頭にかぶるながら三度目の休憩を取っていた圭一は、
ひたすら真っ直ぐ伸びている通学路を見て恐怖交じりの溜息をつく。
それにしても、この暑さで『三時間以上も歩いている』のに『脱水症状』を起さないとは・・・。
やはり、今のこの状況は何かが変である。
しかし、『家が見えないのはおかしい』という思考”のみ”が圭一を支配しているため、
勿論そんな矛盾点に気づく事も無く・・・、
「さて・・・。行くかな・・。ふう・・。」
―――いつか家に辿り着くと信じて疲れた体を奮い立たせる事しかしなかった・・。
418 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:27:38 ID:h5yHw//N0
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
更に歩き続けて十数分。
全く変わる事のない景色をひたすら真っ直ぐ、家があるはずの方向に歩き続ける圭一は、
今の自分の精神状態にとっては喜ばしい嬉しいハプニングに遭遇した。
――――それは・・・。
「風か・・。うっ・・。クソ!!目にゴミが!!」
そう、周りの田んぼに生えている植物を激しく揺らすほどの勢いとなった風が、
圭一の瞳に微細なゴミをプレゼントしたのだ。
おそらくこれを読んでいる読者の方は、『目にゴミが入った事を喜ばしい事なんて感覚がおかしい』とでも思うだろう。
でも、想像して欲しい。
いつも歩いている通学路ないし、職場へ通じる道が幾ら歩いても目的地にたどり着かない事を。
しかも、真夏並の気温のなか。
そして周りには道路はあるのに何故か人も車も一切通らず、さらに暑さのせいで思うように
自分の思考がまとまらないほどの状態で・・・。
果たして貴方は正常な判断が出来るだろうか?
―――時間的に太陽の出ているのはおかしい。
―――同じ景色しかないのはおかしい。
後者は考え付くかもしれないが、太陽に関してどれ程の人が気付くであろうか?
だから典型的な一般人の圭一にとって状況の変化は非常に望ましかったし―――喜んだ。
419 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:28:43 ID:h5yHw//N0
ともかく圭一は、目にゴミが入った状況の変化を喜びながら指先を唾でぬらし始める。
ゆっくりと網膜を傷つけないように目の中に指先を入れ・・・ゴミを取り出そう優しく指を動かす。
ゴミという不純物が瞳に刺激を与えた事により、唾をつけた指を入れる前から濡れていた目の中は、
圭一の指先をすんなり受け止める。
ぬるりとした感覚が圭一の目の中を満たし―――鼻骨の方へゴミを寄せていく。
さらに鼻骨の近くに集まったゴミを、指先にほんの少し力を入れながら―――てこの原理のように押し出し・・・。
鼻骨近くの目の切れ目から、微小サイズのゴミの塊が姿を現したのだった。
「と、とれたかな・・・。」
指先についた微笑サイズのゴミを制服のズボンで拭くと、今度はゴミを取っただけじゃ払拭できない
もやで覆われている視界を早く元に戻そうと、人差し指で目をこすり始める。
「な、何とか前が見えるかな?早く帰らなくちゃ。」
そしてまだ薄(うす)ぼんやりしている視界に苦しみながらも、圭一は家路に着くことを優先して前に歩き出した。
―――数分後。
圭一は家に帰ることが出来ると信じて、目の前にある通学路をひたすら歩いていた。
すると通学路の周りを埋め尽くしている田んぼの中央に、一人寂しく体育座りをしている『一風変わった少年』を見つける。
『一風変わった少年』を見つけるや否や、今まで恐怖に彩られた心の中が一気に薔薇色になる。
僅か数時間の間だったかもしれないが、彼にとっては苦しい戦いだったからだ。
しかし――いや、やはりという接続詞が正しいのだろうか?
こんなおかしな情景の中に人がいるという事。
そう、これは明らかに・・・。
語り部である私の中に、先程自分が語った一文が蘇る。
――『犯人がまだ周辺に居る危険性』・・。
この一文が・・。
420 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:29:55 ID:h5yHw//N0
<一日目・その9-(3) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事3>
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
――― 一風変わった。
大体は性格を表すこの言葉だが、今回は一目見ただけでこの少年が『一風変わっている』と分かる。
なぜなら少年は上半身裸という風体な上に、田んぼの中央で体育座りをしていたからだ。
「はだ・・・か?」
『一風変わった少年』の全体像を見た圭一が、思わず洩らした最初の言葉がこれである。
人は外見からその人を判断する事が多い。
別にその人の中身を知らなくても、その人と付き合う気がなければ、外見のみのレッテルで
その人の存在を他人と区別する事が出来るからだ。
だから『上半身裸』という点において、圭一はこの少年に何かレッテルをつけようと思っていた。
恐らくこのまま行けば『一風変わった少年』という、私と全く同じレッテルをその少年に付ける事になるだろう。
しかし、圭一は私と同じレッテルを付けるまでにいかなかった。
「あれ・・・?いつの間に・・・?」
なぜなら圭一が瞬きもしない内に、田んぼの中央に体育座りをしていたはずの少年が目の前に移動していたから・・・・。
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
421 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:31:04 ID:h5yHw//N0
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
最初は喜ばしい出会いのはずだった。
普通ならとっくに帰っているはずの距離を歩いているのに、いまだ家の影すら見ることの
出来なかった圭一の精神は限界に来ていたからだ。
それなのに『偶然出会ったはず』の一風変わった少年はまるで幽霊の如く、圭一の目の前に移動してきた。
しかも、圭一が田んぼの中で見つけたときと同じように体育座りのまま・・・。
(うわ〜・・。なんだか気味が悪いな・・。こいつ・・。)
語り部である私とは違い、『気味が悪い』というレッテルを最初に貼る圭一。
これで彼の中でレッテルが貼られた今、この『上半身裸の少年』との会話が出来なくなる。
(どうしよう・・。なんて話しかければ・・・。)
そう、第一印象が最悪だと会話が弾まないのだ。
読者の方々もきっとそういう経験を少なからずした事があるだろう。
だからまずは相手の事を観察しながら話すタイミングを掴もうとすることに。
(え〜と・・、何か話すきっかけ・・。・・・・ん?)
そして圭一がしばらくの間、必死に話しかけるタイミングを探していると、急に少年は悲壮感漂う表情で
『圭一の背後にあるもの』を一点に見つめ始める。
(なんだろう?後ろには田んぼしかないけど・・・。)
少年の行動が気になって、思わずその視点の先――――首を曲げて後ろを振り向く圭一。
するとそこには・・・・・。
『田んぼしかなかった』場所に、いつのまにやら燃えさかる火炎に包まれた一軒の民家が
今にも崩れそうな様子で佇んでいた。
422 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:32:20 ID:h5yHw//N0
<一日目・その9-(4) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事4>
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
田んぼがあった場所に家があるというあまりにも不可解な状況。
普通ならば不気味でしかたがないモノだが、何故か一軒家が火事である事に捕らわれた圭一は、
『あるはずの無い場所に家がある』事については全く考えようとはしなかった。
「何であんなところに家が?じゃない!!火事だ!!どうしよう!!」
ともかく『中にいるかもしれない人達』が気にかかった圭一は、目の前に座って居る
『一風変わった不気味な少年』のことは放って置いて、燃えさかる民家の方へ駆け出した。
「お〜い!!!中に人がいるのか〜?」
家の門近くまで来た圭一は、中にいるかもしれない人へ必死に呼びかける。
大きく息を吸って・・・、自分の限界まで叫び!呼びかける!!
「お〜い!!返事をしてくれ〜〜!!」
数回ほど家の門の前で叫ぶが、全く返事の返ってくる様子は無い。
圭一の頭に嫌な想像が浮かぶ。
「く、くそう!!と、ともかく・・・・。携帯・・・。よし!!119・・・。」
圭一はポケットから携帯電話を取り出すと、急いでダイヤルを消防署の番号へ押す。
しかし・・・。
「あ・・。れ?繋がらない・・・。電池切れ?そんなバカな?」
今日は全く携帯電話を使用していないのにも関わらず電池切れ。
信じられない機械の無常宣告に、一瞬絶望的な気分になる圭一。
この絶望感は決して火事を消し止める消防車を『呼べない』事だけから来ている訳ではない。
今の今までは、『太陽の暑さのせいで思考が回らずに携帯電話を使用するまでに至らなかった』が、
これでハッキリしてしまったのである。
「助けが・・・。呼べない・・・。いや・・、家にも・・・。」
言ってはいけない事を言ってしまいそうになる圭一。
423 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:35:20 ID:kj3oVruN0
しかし寸前で我に返ると、その言葉をグッと飲み込みこれ以上悪いことを考えないようにしながら、
目の前の火事になっている家の事を考え始める。
(どうしよう・・。中に人がいるか・・。それも分からないし・・・。)
自分にできない事が無いことは重々承知はしているが、居ても立っても・・・・・。
いや、至極一般人な圭一には、家に帰ることの出来なくなりそうな現実を受け入れる準備も精神力も無い。
だから、”どうにかなりそうな頭の中”を押さえつけようと、”目の前の火事”という”現実”を受け入れる事で
自分自身を誤魔化そうとしているのだ。
そして、どうしようもなくなった心を抱え込みながら、圭一は家の門をくぐり抜ける。
―――眼前に広がる炎。
普通ならば、ここで表札の1つでも見えるものなのだが、火事に包まれているせいか、
この表札は黒ずんでしまって、何が書いてあるのか良く分からない状態になってしまっていた。
「名前も・・。分からないか・・・。」
玄関に通じる扉前まで来たものの、やはり自分が出来ることは叫ぶ事しかなく、家に帰る手段の1つを
失ってしまったことも含めて絶望的な気分が圭一の心の中を埋め尽くす。
「くそっ・・。」
目の前の現実。これが終わった後に待っている現実。
この二つのどうしようもない変えられない現実に、圭一は視線を思わず横に逸らしてしまう。
心底恐怖に彩られた顔で・・・。
だが・・・、現実から視線を逸らした行為は、圭一にとって正解の選択肢ではなかった。
「子供・・・。えっ・・・?」
そう、現実から目を背けようと燃えさかる家から視線を外したその先には・・・。
「俺と・・・・。レナ?」
そこには『子供の頃の自分とレナ』が炎に包まれている目の前の家を、手を握り合って寂しそうに佇んでいた。
424 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:36:02 ID:kj3oVruN0
<一日目・その9-(5) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事5>
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
「な、何でこんな所に俺と・・レナがいるんだよ・・。なんで!!なんで!!」
心の準備もなしに飛び込んできた現実に、圭一はこれ以上に無いほど怯えた表情を作りながら一歩一歩後ろに後ずさる。
――――今にも崩れ落ちそうな足を一所懸命に支えながら。
「俺が・・・。レナが・・・・。しかも子供の!!もう!!!何がなんだか!!」
もう家に帰ることが出来ないかも知れない恐怖。
目の前の現実に何も出来ない自分への恐怖。
そして、『子供頃の自分とレナ』が突然現れた不可解な恐怖。
そんな三つの恐怖に、圭一の頭の中はどうにかなりそうになっていた。
「違う!!俺は・・。あの時は子供だったから!!目の前の火事なんてどうしようもなかったんだ!!
そう!!子供!!俺が子供だったから!!」
そして、目の前の火事と子供の頃の自分等を見る度に、彼の脳裏に昔見たはずの光景が断片的に次々と現れる。
どうやら今あるこれらの光景は、かつて圭一自身が見た光景のようだ。
まるで良くあるストーリーの―――読者の方が予想がしやすい情景。
だが・・・・。
これから圭一の記憶とは『全く違う方向』に話が展開し始める。
425 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:36:54 ID:kj3oVruN0
「ねえ。圭一君?」
突然、恐怖に混乱しきっていた圭一に”何故か”子供の頃のレナは笑顔で話しかけてくる。
―――これはおかしいだろう。
もしもこれが『子供の頃の圭一』の記憶ならば、その記憶に登場してくる人物が『大きな圭一』
に話しかけてくる事は考えられない。
ならばこの光景は?
「うっ・・・あっ・・・。」
しかし多重に重なった恐怖に支配されている圭一は、そんな彼女の言葉に声にならない声でしか
返事をすることが出来ない。
どうやら恐怖のあまりに若干の胎児化をしているようで、子供の頃のレナが自分に話しかけていることに
関しては疑問に思う隙すらないようだ。
「今の圭一君は、この圭一君よりも大きくなった?それとも小さくなった?体は大きくなったから・・・。
『今の圭一』君は大人だよね。この圭一君は子供だけど『今の圭一』君は大人だよね。だから・・・・、」
だが、子供の頃のレナはそんな圭一の状態を全く気にすることなく、純真無垢な笑顔で
圭一の目の前にある炎に包まれた家を指差した。
ギギィィィィィ・・・・・。
すると、彼女が指差すと同時にゆっくりと『燃えさかる炎に包まれた家の扉』が開く。
――・・・おいで・・・・。
そして開いた扉から見える炎の動きが、圭一にとってはまるで手招きをしているように・・・、
『こちらへおいで』と言っているように・・・、
「あの中に入って、私のお母さんやお父さん・・。当然、弟も助けてくれるよね☆」
――――見えた・・・。
426 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:39:05 ID:kj3oVruN0
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
子供の頃のレナが燃えさかる家を指差すと同時に突如開いた玄関のドア。
中は暗く・・・、だが炎は赤く・・・・。
――そして手招きしているように・・。
端から見てみていても其処が地獄だと十分に分かる入り口だ。
しかし恐怖に支配されて何が何だか解らなくなっている『今の圭一』には、
指差す先を視線で追えても、それに対するリアクションいついては全くとる事ができなかった。
「どうしたの?『大きな圭一』君?あそこに入って、早く私の家族を助けてよ〜☆」
一方、子供の頃のレナは、指差した方を見ながら呆然とする『今の圭一』に家族を助けろと何度も催促する。
―― 子供らしく『駄々をこねる』ように・・・。
「今度は助けてくれるよね。だって、だって。あのとき、約束したもんね。」
「うっ・・。あ、あの時・・・?」
「そうだよ!!ほら!!今からするんだよ!!あの時の約束を!!」
そう子供の頃のレナが言うと、横に居た『子供の頃の圭一(自分)』は、レナの方へ向き直って
涙目になりながら『あの時の約束』を言い始める。
「ごめんよ・・・。僕がもっと大きければおじさんやおばさん達を助けられるのに・・・。
僕が!!もっと大きければ!!きっとおじさん達を助けに行くのに!!」
「ほら〜〜〜☆言ったでしょ?言ったよね?言ったもんね☆『大きくなれば助けに行く』って言ったもんね♪
約束だもんね!!ねえ?『大きな圭一』君?」
言うべきことを言い終えて、ま人形のように無表情で佇む『子供の頃の圭一』を余所に、
満面の笑みで『今の圭一』に『あの時の約束』の催促をする子供の頃のレナ。
しかし―――いや、やはり「今の圭一』には、その言葉に子供の頃のレナが納得するような
答えは喋る事が出来ず、口を半分開けたまま困惑した表情を浮かべるだけとなっている。
「どうしたの・・・?助けてよ・・。助けてくれんでしょ?あのとき言った言葉は嘘じゃないよね?
嘘なら・・・。嘘なら・・・・。」
すると中々答えてくれない『今の圭一』を見て、『あの時の約束』は嘘だと判断した子供の頃のレナは、
満面の笑顔で足元にあるプラスチック製の小さなバケツから鉄製のガーデニング用のシャベルを取り出し・・・・、
427 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:40:08 ID:kj3oVruN0
「そんな圭一君はいらないよね!!!」
――――もう価値のなくなった玩具を壊すように鉄製のシャベルで、『子供の頃の圭一(自分)』の後頭部を
何の躊躇もなく力の限りに叩き始めた!!
まるで、自分の思い通りにならなかった事に癇癪を起したみたいに・・。
ガシュッ!!ガシュッ!!ザシュッ!!
叩くたびに少しずつひび割れていく『子供の頃の圭一(自分)』の頭部。
まずは一発目で『子供の頃の圭一』の意識を奪うと、続いて二発目から後頭部にひびが入り・・・・、
そして六発目の殴打で――――
グチャ!!!
―――後頭部を完璧に砕いた。
ぽっかりと後頭部に穴が出来ると同時に、辺りに飛び散る脳内を満たしていた鮮血と頭蓋骨の破片。
勢い良く飛び散った『それら』は、全て『今の圭一』の顔に付着する。
「これで!!どっかーん!!あはははははは〜〜!!」
そして駄目押しの7発目が何の躊躇もなく炸裂すると、『子供の頃の圭一(自分)』は抵抗する事さえ許されずに
糸の切れた人形のようにゆっくりと地面に倒れる。
――脳漿をそこら辺にぶちまけながら。
しかし、これだけでは『子供の頃のレナの中の癇癪様』が満足できないとのご様子。
『子供の頃の圭一(自分)』が倒れると同時に”自身も前かがみにしゃがむ”と、
間髪居れずに笑いながらシャベルの鋭い先端で後頭部を突き刺し―――――かき混ぜ始める。
ザシュッ!!グチュグチュグチュグチュ。
少女が作り出す不気味な音が、目の前の火事にも劣らない存在感を漂わせる。
トマトをボールに入れてかき混ぜる時とは、全く違う効果音。
それでも1つだけ共通点を上げろというならば、それはトマトも『子供の頃の圭一』の脳味噌も、
新鮮さに関しては申し分のないということだけだった。
428 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:41:10 ID:44+G18X60
「あははははは〜〜!!見て見て!!『大きな圭一君』!!本物のミートソースだよ〜〜〜☆
面白いね〜〜!!人間は頭を混ぜるとミートソースになっちゃうんだよ〜☆」
子供の頃のレナが『子供の頃の圭一』の頭の中をかき混ぜる度に、
何故か彼の目玉は血の涙を流しながらグルグル回り始める。
さて読者の方々は、どうして死人の目玉が突然回り始めたのか分かるであろうか?
そう、それは子供の頃のレナが容赦なく『子供の頃の圭一』の頭部をかき混ぜているせいで、
彼の脳を支える骨が砕け、その下の喉の方まで鉄製のシャベルが貫通しているからだ。
だから、かき混ぜるたびに引っかかる神経が動かないはずの『子供の頃の圭一』の目玉を回転させている。
まさに人体のメリーゴーランドといった所だろう。
「混ぜ混ぜよ〜う〜♪ミックスジュース〜♪・・・・・シャベルじゃ、疲れちゃうね☆え〜い!!」
そして、呆然としている『今の圭一』の目の前で歌いながら『子供の頃の圭一』の頭の中をかき混ぜていた
子供の頃のレナは、今度はなんと『右手』でかき混ぜ始めた!!
ズブシュッ!!!ズブ・・・、ズブブブ・・・。
突然、地に倒れていた『子供の頃の圭一』の体が激しく上下運動し始める。
おそらく素手でかき混ぜる際に、レナの腕が頭蓋骨に当たっている為だろう。
「あははははは〜〜!!おもしろ〜い☆見て見て〜〜!!大きな圭一君の方に挨拶しているみたいだよ〜☆」
子供の頃のレナがそう言うと、『子供の頃の圭一の体』は激しく上下しているために、
まるで『今の圭一』に挨拶しているかのような首の動きをし始める。
しかし、その挨拶しているかのような首の動きは、圭一の目には・・、
――・・ウ・ソ・ツ・キ・・・・。
「うわあああああああああーーーー!!!!」
遂にこの状況に耐え切れなくなった『今の圭一』は、利き腕である右手を思いっきり振りかぶって
固めた拳で子供の頃のレナの頭部を殴りつける!
429 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:41:55 ID:44+G18X60
ゴスッ!!
『子供の頃の圭一』の脳味噌をかき混ぜることに集中していた子供の頃のレナは、
死角からの殴打に全く反応できずにクリーンヒットしてしまう。
そのおかげで『子供の頃の圭一』の頭の中から彼女の腕が抜け出て・・・。
――――『中にあった』脳漿が辺りに大量にぶちまけられる。
「痛ッ!!・・・・あっ・・・。」
だが『今の圭一』は格闘に関してはズブの素人も良い所。
彼の一撃は子供という骨がまだ成長しきっていないレナ頭部に甚大なダメージを与えたものの、
拳の突き方すら知らない彼は、恐怖に身を任せて乱暴に殴ったせいで自身の拳も痛めてしまう。
「くう〜〜・・・。痛い・・。」
そして『今の圭一』は自分が殴った相手―――子供の頃のレナの様子を確認しようと、
痛めた拳から目線を真っ直ぐに戻す。
すると・・・。
ブシュ!!グチュグチュグチュグチュ・・・。
「怖いよ〜。あははははは〜〜!!!『大きな圭一君』は怖いよう〜。」
そこには子供の頃のレナが鉄製のシャベルを使って、『子供の頃の圭一』の頭部を体から刈り取ろうとしていた。
430 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:42:52 ID:44+G18X60
<一日目・その9-(6) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事6>
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
子供のというのは残酷だ。
蟻の巣の中に水を流し込んだり、芋主を虫眼鏡で焼いたり・・・。
よく残虐非道の事件が人間界のニュースで報道されるが、もしも生物界全体をニュースにするならば、
人間の子供は常に死刑判決を受ける存在であろう。
しかし子供には、小虫(蚊や蟻)を殺したところで罪の意識は生まれない。
もしかしたら大人になってもそういうことをする人がいるかもしれないが・・・。
まあ、それは置いておくにしても、子供のというのは純粋にして残酷なのだ。
だから・・・、いま目の前で起こっている光景は、欲しい物が手に入らないことに癇癪を起した子供と
あまり変わらないのかもしれない。
それが異常性や狂気に彩られてもだ。
ダメだと・・・、それはダメだと教えられなければ子供は分からない。
壊しても元に戻らないものがあるということを誰かが教えなければ・・・。
―――――ここに居る、子供の頃のレナにも・・・。
「怖いよ〜☆大きな圭一君は怖いよ〜。」
『今の圭一』に割れた頭を左手で支えながら、子供の頃のレナは『子供の頃の圭一』の頭部を体から分離させようと、
必死に鉄製のシャベルをのこぎりやナイフのような刃物に見立ててえぐり続ける。
グチュグチュ・・。ブシュッ!!
動脈を切り裂いたのか辺りに血が一斉に飛び散る。
それをまともに浴びた子供の頃のレナは先程よりも血に顔が覆われる面積が少なくなって、
まるで『赤鬼』のように真っ赤になっている。
しかし彼女はそれをまったく意にも止めず、「怖い怖い」を連呼しながら『子供の頃の圭一』
の頭部を体から切り離そうと必死だ。
――――まるで『今の圭一』から逃げ出そうとしているのかのように・・。
431 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:44:06 ID:44+G18X60
皆さんは子供の頃の自分を思い浮かべた時、自分よりも遥かに大きな人間に対して闘争本能をもったことがあるだろうか?
例えば大人に貴方が殴られた時、子供の頃の貴方は反撃に転じるだろうか?
人によって答えが変わるかもしれないが、大部分の人はただ単に泣き叫ぶことになるだろう。
もしも反撃したとしても『勝つ』という稚拙な単語を手に入れることはまずありえないし、
今まで感じた事のない大きな痛みに貴方はのた打ち回るかもしれない。
つまり大人―――もしくは自分よりもふたまわり以上の存在に暴力を振るわれると、子供は『恐怖』に彩られるのだ。
だから――― 子供の頃のレナは逃げようとしている。
自分よりも遥かに大きくなった『今の圭一』から。
だから――― 子供の頃のレナは『今の圭一』には手を出さなかった。
反撃されたら怖いから。
だから――― 子供の頃のレナは・・・・、『子供の頃の圭一』の首を刈り取ろうとしている。
―――だから・・・。
432 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:45:25 ID:44+G18X60
トンッ!!!
『今の圭一』の耳に何かが地面に落ちた音が入ってくる。
入ってきた音は重くて・・・。そして低くて・・・。
一見、その音を聞いただけじゃ、何が何だか解らない音だ。
しかし、音だけではわからないその正体もすぐに知る事になる。
そう、子供の頃のレナのこの一言で。
「あははは〜!!見て見て〜〜!!これなら良いよね☆」
彼女は笑いながら『今の圭一』に話しかけてくる。
いや、実際は『言葉だけ』が笑っているのかもしれない。
なぜなら・・・・。
「私も圭一君だよ〜☆だから怒らないよね〜☆あはははははーー!!」
子供の頃のレナは切り落とした『子供の頃の自分(圭一)の頭部』を被ったからである。
しかも後頭部から頭を入れた為、上下逆さまの状態で・・・。
433 :
作者の都合により名無しです:2006/04/11(火) 01:45:57 ID:7ihG8X1O0
投稿規制かな?
30レスは新記録じゃないか?w
434 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:46:50 ID:HVaSYove0
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
「な、なにやってるんだよ・・・・。」
「ほえ?何って・・・・。これなら圭一君は私を怒れないよね?」
レナだから圭一に怒られているので、自分も圭一になれば怒られずに済むと思い込んだ少女の凶行。
それを含めた善悪の区別のつかない彼女の行動の数々は、遂に『今の圭一』の最後の砦を崩し始める。
そう・・、正気という名の砦を・・。
「・・・・。返せ・・。」
「へっ?何が☆」
「頭だよ!!俺の・・・!!『俺の頭』を返せ!!!レナーーー!!!!」
とうとう正気を保てなくなった『今の圭一』は、人が変わったように叫び散らしながら、
『奪われた子供の頃の圭一の頭部』を取り返そうといきり立って彼女がかぶっているモノを鷲掴みする!!
「うわ〜〜!!やめて!!頭が!!頭が取れちゃうよ☆止めてよ〜〜!!圭一君☆」
一方の子供の頃のレナも、怒られないために必要だと思い込んでいる『子供の頃の圭一の頭部』
を盗られまいと、小さな血に塗れた両手で必死に抵抗する。
一見、遠目から見れば仲の良い兄弟のお遊びにも見えるが、近くに寄れば一転。
その光景たるやこの世のものとは思えない。
燃えさかる家を眼前にして、互いに人の頭を取り合う青年と少女。
これを地獄と言って、ほかに何を地獄と言えるのだろうか。
【頭を返せ!!頭を返せ!!頭を返せ!!頭を返せ!!頭を返せ!!】
これが一分間に百は言い放たれるであろう――この光景を。
「うるせえ!!これは『俺の頭』だ!!!『俺の頭』なんだよ!!!」
「うう・・。痛い!!痛いよ!!取れちゃう!!レナの頭も取れちゃ・・・・・・。」
ゴキ!!
この甲高い音と共に、しばらく取っ組み合っていた両者の均衡が突然崩れ始める。
なぜなら突如としてこの音が辺りに響いた直後、『今の圭一』抵抗していた子供の頃のレナの言葉が途切れたからだ。
すると同時に『今の圭一』の猛攻を抑えていた両手が力無く下に・・・。
435 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:48:18 ID:HVaSYove0
突然の状況の変化に『今の圭一』の動きがピタッと止まる。
そして『今の圭一』が次の言葉を投げかけようとした瞬間、『上下逆さまな子供の頃の自分(圭一)の頭部』は
突然ゆっくりと左方向に回転し始めた。
まるで『今の圭一』が言った言葉―――「俺の頭を返せ!!!」に呼応したように・・。
「うわ!!」
動き始めた『子供の頃の自分(圭一)の頭部』を見て、『今の圭一』は思わずその手を離してしまう。
するとゆっくりだったはずの回転速度が徐々に・・・。
グジャッ!!ゴキゴキゴキ!!!
左方向に回転しようとする度に、それを被っている子供の頃のレナの首の骨がゆっくりと折れていく。
ゴキ・・・、ゴキュゴキュゴキュゴキュ!!
しばらくして180度回転し終わった『逆さまだった子供の頃の圭一の頭部』は”普通の人間と同じ頭の位置”に戻る。
――――子供の頃のレナの頭部と引き換えに。
「れ・・な・・・?」
そう呟きながら、『今の圭一』は『子供の頃の圭一の口』から茶色い髪が生えている事に気付く。
「う・・、わわわ・・・。」
読者の方々もお分かりだろう。
『子供の頃の圭一の頭部』を被った子供の頃のレナがどうなったのか。
そう―――――――――――
”今度は子供の頃のレナが『逆さま』になったのだ。”
436 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:49:32 ID:HVaSYove0
<一日目・その9-(7) 『前原圭一』の帰宅途中の出来事7>
現在時刻:午後??:?? 場所:通学路?
燃えさかる赤(炎)を背景にして起こった『4つの惨劇』。
元は一般人である青年の中に『閉じ込められていた記憶の再生』のはずだった。
いや、本当は『唯の帰宅途中』に起こった出来事。
閉じ込められた記憶の再生が起こるはずが無い。
当然、目の前の出来事を真実か、それとも夢かと判断するべく手段は彼には無い。
つまり、この出来事が進む中では青年は無能である。
抗う事も出来ない。
それでも物語は進んでいく。
青年の理解と正気を一気に奪い去る形で。
昔の自分の存在が目の前で消える形で。
昔から知っているはずの少女が『逆さま』になる形で。
―――物語は進んでいく。
語っている私も、これが登場人物にとっての現実なのか、夢なのかが解らないまま。
―――物語は進んでいく。
物語が進むから、二つの仮面を被った何者かはゆっくりと『今の圭一』に近づいてくる。
『子供の頃の自分(圭一)』の頭部と、『逆さま』になった昔から知っているはずの少女(レナ)の仮面を被って。
今までの惨劇を考えると、『今の圭一』がこの場にいるのは危険である。
しかし抗う事すら許されていない彼は、その場から離れるための許可書を持たない。
別に体が逃げることを拒絶している訳ではない。
恐怖に彩られたわけでもない。
ただ、所詮は物語の一部でしかない彼は、この場から離れる事の出来ない設定だからだ。
そう・・・、二つの仮面を被った何者かが描いた物語通り。
でも、二つの仮面を被った何者かは、長く話し込むつもりは無いらしい。
なぜなら『今の圭一』の目の前まで来た何者かの瞳がそう言っているからだ。
きっと、先に起こった『4つの惨劇』で伝えたい事は伝えたのだろう。
437 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:50:20 ID:HVaSYove0
―――『大きくなった前原圭一』に・・。
また連投規制にはまってるのかな?
439 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:54:27 ID:HVaSYove0
もう一度言おう。
伝えたい事は伝えた。二つの仮面を被った何者かは。
だから、ただ一言。
伝えたい事は行動で示したから、一言だけ言った。
―――二つの仮面を被った何者かは『仮面の声』でこう言った。
二つの仮面を被った何者かは、圭一の耳元でそっと言った・・・。
昔から知っているはずの少女の声で。
――・・・・う・そ・つ・き・・・。
この言葉は聞くと同時に、圭一の顔が万力で締め付けられるような表情に変身する。
そんな彼の表情を見て、『子供の頃の自分(圭一)』の顔―――二つの仮面を被った何者かは満足げな表情を浮かべる。
自分自身の満足げな顔のはずなのに、酷い嫌悪感と悲しみに襲われる圭一。
そして・・・、燃えさかる赤(炎)をバックに、子供の頃の自分の顔が違う誰かの顔に変わっていく。
決して悪寒のするような音は出さず。
燃えさかる赤(炎)の音も一切出さず。
――これは、二つの仮面を被った何物かが演じた物語が終焉を迎えるためだ。
やはりエンディングは静かな方が良い。余韻も残る。
だから静かだ。
今までのように存在感がある音もたてず。
子供の頃の自分の顔が違う誰かに変化しても。
きっとこれが最後の変化だ。
『前原圭一』の帰宅途中の出来事において最後の変化
440 :
439の最初に、現在時刻:午後??:?? 場所:通学路? を忘れた:2006/04/11(火) 01:55:38 ID:HVaSYove0
「あれ・・・?アンタは・・・。」
『今の圭一』は子供の頃の自分の顔が違う誰かに変わること以上に、その変わった顔に異常な興味を示す。
それもそのはず、子供の頃の自分の顔が変化した誰かは、彼が知っている顔だからだ。
「アンタはさっきの・・・・。」
そう、この燃えさかる家に来るまでに遭った、たった一人の人間。
『気味が悪い』というレッテルを、圭一の心うちで内緒に貼った『一風変わった少年』だ。
「アンタがこれを・・・・!!」
圭一は目の前の人物の正体を認識した途端、食って掛かるような言動で言葉を紡ぎ始める。
先程まで、自分が物語に翻弄されていた登場人物だとは露知らず。
いや、まだ二つの仮面を被った何者か―――――『一風変わった少年』の物語は閉幕していない。
だから前原圭一はまだ踊っている。
彼が『気味が悪い』というレッテルを貼ったのも、『一風変わった少年』にとっては思惑通りかもしれない。
そして『一風変わった少年』は、主演の人形である圭一に、それを証明するかのような笑みを浮かべると、
圭一達の目の前で燃えている家の壁に自身の顔を宛がい始める。
「うっ・・・・。」
異常性のある『一風変わった少年』の行動を目の当たりにして、圭一は軽い嗚咽を洩らす。
しかし彼の嗚咽以外、辺りから音は一切聞こえてこない。
肉が焼ける音や、家が燃えている音もだ。
そう、あくまで無駄な音は邪魔なのだ。
この惨劇の作者である『一風変わった少年』にとって。
だから、この物語の主演を演じている前原圭一の音以外は聞こえてこない。
自身の顔を炎に宛がうのをやめて、『一風変わった少年』の顔がだんだん『水ぶくれに埋め尽くされていく』過程の音も。
「うわああああああ〜〜!!!」
”本当”に気味が悪くなった『水ぶくれに埋め尽くされた少年』の顔見て、思わず圭一は悲鳴を上げる。
441 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 01:56:25 ID:HVaSYove0
必要とされる音が辺りに響く。
圭一の悲鳴が辺りに響く。
そんな全く隙だらけな圭一に対して、『水ぶくれに埋め尽くされた少年』が次にとった行動
―――物語の終章は、地面に落ちている鉄製のシャベルで、圭一の息の根を止める事だった。
「や、やめろーーー!!!!」
まるで勇次郎に襲われているかのようなスピードで、彼の頭は先程の『子供の頃の自分』のように割られていく。
しかし、圭一の断末魔が辺りに響く事はない。
―――エンディングは静かなものに限るからだ。
む?また連投規制かな?じゃあ支援
でも、しぇきさんどうしたの?
443 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 02:00:23 ID:HVaSYove0
長いです。意味が解らないです。
でも、最終的には意味がわかる話しになります。しぇきです。
内定が取れたので、前よりかは速いペースで投稿できるかと。
>152さん、153さん、154さん、ふら〜りさん
レンタル家族の元ネタはエヴァンゲリオンです。
レンタル家族とエヴァで察してください。
説明すると、本分より長くなるのでw
>438さん
すいません。ラジオ聞いてました。
お疲れ様です、しぇきさん。あと内定おめでとうございます!
今回はすっごい大作になりましたね。
正直、3回5回に分けてもよいかと思いましたがw
最初の勇次郎の37人の生徒への先生振りから、
圭一精神世界の葛藤のシリアスな展開になりましたね。
エンディングは静かに限る、というのが最終的なゴールへの布石かな?
でも、もーちょっと次は少なめにしてね。
バレさんも天プレ作る人も困ると思うw
俺はリアルタイムで読んだからいいけど、流石にこの分量一気読みは…
445 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 02:08:47 ID:HVaSYove0
久しぶりの感想。(一行になるのは申し訳ないです)
>サマサさん
仕事とSSの両立には頭が下がります。
スパロボで言うと48話でしょうか?
それにしてもグレイト達がwジャイアンたちのロボット描写も見れたので、後は量産型グランゾンのビジュアルが知りたいw
>ミドリさん
原作も終了してしまいましたが、こっちのホムンクルスはこれからが本領発揮っぽいですね。
最終的なアテナの立ち回りが非常に気になりますが、ある意味水戸黄門的な存在が
事態を一気に終息してくれそうですね。
>ハイデッカさん
雰囲気的にもうすぐ終わりそう?
本当にラストが気になる話です。火あぶり時には慶次はどういう風になるのでしょうか?
あの女忍者の時みたいな反応になるのか?
フランス軍を含めて、一人で戦って散るのか?どうなる?
446 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 02:18:00 ID:HVaSYove0
>444さん
読んでいただいて有難うございます。
まあ・・・。長いですね。スイマセン。
個人的には一度に投下したかった内容なので。
後、ここまで投稿で来たからいえます。
このSSはサイコホラーです。(になるような力量があるといいなあ〜)
感想続き。
>ユルさん
仗助の心理描写が物凄いですね。
そういえば、JOJOの母親はリサリサ以外はろくな目に遭ってないですねw
続きを楽しみにしています。
>487さん
ヘルシングものですか!!
血の描写が非常に多い原作ですが、やはりこのSSもそんな猟奇的な感じに?
個人的にはセラス大活躍を希望w
>ふら〜りさん
完結お疲れ様です。
パタリロがちゃっかりカーズを撃破して・・・・。
最後は・・・。
力を求めるアーネが悪いのか、原作の作者が悪いのかw
元のかの世に戻って欲しいです。(ちなみに原作は最初しか読んでないです終わっていたらスイマセン)
447 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 02:27:13 ID:Zyy9HQ3L0
>一真さん
正に原作どおり!!題名で既にやられました!
ええ、大人になってもジャンプは大切ですよ。
なぜなら私のルーチンワークの1つだからw
>銀杏丸さん
なるほど、黄金時代はセイヤ達のことだったんですね。
てっきりメイオウ編のゴールドセイント達かとw
いや、むしろここまでゴールドセイントたちの話を作っておいて、
最後にセイヤ達を持ってくる構成の素晴らしさが物凄いです。
新作をお待ちしています。お疲れ様でした。
>フルメタルウルフズさん
ポン太君大活躍w
いや〜、このギャップの差が溜まりません。
宗介も、椿と戦った時のように格闘の素晴らしさに目覚めたみたいですし。
「十二王方牌大車輪・・か」
餓狼伝キャラでもGガンが?
448 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 02:33:54 ID:Zyy9HQ3L0
>全力全開さん
魔法少女とドラえもんのコラボとは!!
一見、魔法とドラえもんって合いそうですが、
キャラ的に合うのが少ないですよね。
だから優しい+丸っぽいキャラ?雰囲気みたいのがある奴が必須に感じて
いましたが、まさかなのはから来るとは!!続きを楽しみにしています。
>鬼のワルツさん
原作では行くところまで行っていますが、やはり1つの戦闘が心に残るのが
バキの本来の持ち味。ライダーまで出てきたのは以外ですが、
よく考えたら、バキが勇次郎とまともに戦うにはライダークラスにならないと無理な気が・・。
はっ!!もしや最終的にはバキも・・・。
>サナダムシさん
加藤が超カッコイイ!!
これなら裏の世界で行けなくてもいい気がしてきます。
でも、やっぱり加藤は勇次郎―――いや、バキ超えが目標なのかな?
今は女性を守る加藤ですが、最終的にはきっと独歩戦までは行きそうな雰囲気を感じます。
449 :
オーガの鳴く頃に:2006/04/11(火) 02:46:35 ID:Zyy9HQ3L0
>邪神?さん(そういえば、いつも?を忘れてましたスイマセン)
テイルズの戦闘SSには、テイルズ好きとしては非常に嬉しいです。
魔法の描写が難しそうですが、それ以上にキャラ全てを目立たせながら
戦闘を展開していくのは凄く、面白いです。
今はスペック戦が熱いですが、サールイン戦は物凄い戦闘になりそうですね。
キャラが多くて大変でしょうが、頑張ってください。
>NBさん
黒い思惑が原罪の扉といった話ですね。
これからどう転ぶか全く解りませんが、どっちにしてもバットエンドは明らかで・・。
結末がわかっていても気になってしまいます。
後、シンディが無駄に可愛いのは使用でしょうか?
これで全部かな・・・?
次はフリーザ野球軍を投稿します。
では失礼・・・。
450 :
作者の都合により名無しです:2006/04/11(火) 18:15:31 ID:MuHOlthI0
お疲れ様です。長いですけど、話の流れ的に確かに
一度に投下したくなるのもわかる気がします。
最初は学園コメディだったんですけど、主人公とヒロインを中心に
闇が広がっていってますね。いまや最初のアットホームな雰囲気はどこへやら。
圭一が恐怖に壊れていく様が恐ろしいです。勇次郎はこれからどう絡むのかな?
451 :
テンプレ1:2006/04/11(火) 18:56:52 ID:MuHOlthI0
452 :
テンプレ2:2006/04/11(火) 18:57:50 ID:MuHOlthI0
453 :
テンプレ3:2006/04/11(火) 19:00:22 ID:MuHOlthI0
454 :
テンプラ屋:2006/04/11(火) 19:02:06 ID:MuHOlthI0
チロルさんが1月18日より、ゲロさんが2月2日より連絡取れていない為、
テンプレから外れました。ご連絡お待ちしております。
パオ氏2月19日より連絡ありません。今回はセーフですが、このままだと
次スレで外れてしまいます。至急更新かご連絡を。
個人的にゲロさんがテンプレから外れるのがショック。大ファンなので
是非ご一報お待ちしております。
あと、すいませんここ最近タイトル長い作品多すぎますw
特に全力全開氏、半角にしないと一行にまとまんねっすw
scene39 伊藤開司【十三】
「意外だな……」
カイジは、小さな声で呟いた。
「何がですか?」
それを受け、只野は疑問の表情を浮かべる。
「犯人役が、凶器をそんなに堂々と持ち歩いていた事、だよ。いくらなんでも迂闊に過ぎる。
もし、ボディーチェックでも行われていたら、どうするつもりだったんだ……?」
「ああ、そんな事ですか。これはね、信頼の証ですよ」
「信頼の、証?」
「そうです。いつでも犯行に利用できるよう、このペンションには、各所に凶器が隠してありました。
カイジくん……あなたが三号室に行った時に、探偵たちの隙を見て、幾つか懐に忍ばせておいたんです。
あなたなら、きっと、私の残した手がかりをすべて拾い、犯人を指摘してくれると思っていましたからね」
「なるほど……俺の『告発』は予想通り、って訳か」
「そういうことになります。さて……どう料理してあげましょうか」
只野は悪魔の微笑を浮かべながら、アイスピックをタクトのように振るってみせる。
「そうそう。参考までに、一つ教えておいてあげましょう……
このアイスピックには、先端部分に抽出されたニコチンがたっぷりと塗られています。
一刺し……いえ、掠っただけで、命はないものと思ってくださいね……?」
只野は余裕を見せつけるように、ゆっくりとカイジに向かって歩を進める。
確かに、生命の奪い合いという観点から見れば……只野とカイジでは比較になろう筈もない。
身体能力の差。戦闘経験の差。どちらも圧倒的にして致命的。正面から戦えば、勝ち目は限りなくゼロに近いだろう。
だが、それでも。じっと只野を見据えるカイジの瞳からは、負の感情は一切感じられなかった。
利根川の時と同じだ……そう、カイジは思う。本性を露にした只野からは、勝利を確信した者の驕りが見て取れた。
(まだこちらにも、勝機は充分残されている……
頑強なダムが、ほんの小さな亀裂からいとも容易く決壊するように……
奴の心の内にある『油断』と言う名の亀裂から、突破口を開いてみせる……!)
「いい目ですね……覇気に満ち溢れています。ですが、気迫だけでは人は殺せない」
只野はカイジの目前にまで迫っていた。カイジは瞬きする間も惜しんで、その一挙手一投足を警戒する。
(今、この瞬間だけでいい……! 恐怖心を、克服するんだ……!)
カイジはこれから行動を起こさんとする興奮を、気配を気取られぬように、息を押し殺す。
「さあ……どうしま」
(今だ……!)
慎重に只野との間合いを計っていたカイジが、千載一遇のチャンスとばかりに動いたのは
只野が前方にアイスピックをかざしたまま『どうしました』の『し』の言葉を発音しようとした――正にその瞬間だった。
風を切る音と同時に、カイジの腕が、鞭のように撓る。
それは時間にして、コンマ数秒の攻防。
下から掬い上げるように振られたカイジの腕が、只野の手に握られていたアイスピックを奪い取った。
(封じた……! 敵の切り札……一撃必殺の凶器を……!)
しかし、敵もさるもの。小さく舌打ちをして、すぐさま後方に飛び退き、距離を取る。
「やはりあなた、只者じゃあないですね……悉く、私の作戦を台無しにしてくれます」
「油断したな……形勢逆転、だ……!」
カイジはにやりと笑い、アイスピックを構えた。
そのまま、摺り足でじりじりと間合いを詰めてゆく。
「さて……それはどうでしょう?」
カイジにつられるようにして、只野もにやりと笑う。
そして。懐から、おもむろにトカレフを取り出し……銃口を、カイジへと向けた。
「と、飛び道具かよっ……!?」
カイジは動揺しながらも、持ち前の状況判断能力を遺憾なく発揮していた。
只野がトカレフを取り出し、引鉄に指をかけるまでの、ほんの僅かな時間に。
姿勢を低くして咄嗟に横へと飛びのき、キャスターテーブルの下へ転がり込む。
更には、即座にそれを蹴り上げ、足の部分を両手で持ち……即席の盾に仕立て上げた。
「ほう、やりますね。ですが、所詮は付け焼刃……!」
ドン、ドン! ダンッ! ホールに断続的な発砲音が響いた。
放たれた計三発の弾丸が、呆気なくキャスターテーブルを撃ち抜く。内一発は、カイジの耳元を掠めた。
「くそっ……!」
「トカレフの貫通力を甘く見ないことです。そんな板切れでは盾にもなりませんよ」
デモを制圧する機動隊のようにキャスターテーブルを構えたまま、カイジは急ぎ調理場へと後退する。
拳銃を相手にするには、ホールは遮蔽物が少な過ぎた。ここで刃を交えても、万に一つの勝ち目もない。
scene40 『犯人』
私はすぐさま、調理場へと逃げ込んだ奴の後を追った。
ドアの影に奴が潜んでいる可能性を考慮し、拳銃を構えたままドアを一気に開け放つ。
首は極力動かさず眼球だけを左右に動かし、睨めつけるように調理場を一通り見回す。
未だ開け放たれたままの大型冷蔵庫。
食事用の丸テーブルと、その周囲に幾つも並べられた長椅子。
およそ吹雪の山荘には似つかわしくない、南国を思わせる大きな観葉植物に、藤製のパーテーション。
先程盾代わりにしていたキャスターテーブルは、流し台に斜めに立てかけられていた。
なるほど確かにここは、ホールよりもゲリラ戦に向いた環境らしい。
逃げ足だけは早いようで、調理場入り口から目視で確認出来る範囲内には既に奴の姿は見当らなかった。
(調理場の何処かに息を潜め、私の隙を狙っている、か……
構わない。この調理場は遮蔽物こそ多いが、ホールへと続くこのドア以外に逃げ道はなく、そう広くもない。
奴は既に袋の鼠も同然だ……ゆっくりと、炙り出せばいい)
私は奴の不意打ちを警戒しながら、気配を探す。
と、先程盾代わりにしていたキャスターテーブルの下から、奴のトレーナーの裾が覗いているのを発見した。
(上着を脱いだのか。こんなものをデコイ代わりに使うとは……私も舐められたものだ)
仕掛けと呼ぶのも憚られるような、稚拙な仕掛けだった。
キャスターテーブルの影に奴が隠れている……私がそう勘違いするとでも思ったのだろうか?
このわかり易いデコイ。おそらくは奴の陽動か、罠のどちらかなのだろう。
どちらにしても、今出入り口から離れるのは好ましくない。
シュプール敷地内をフルに活用しての鬼ゴッコは、私としても遠慮願いたかった。
私は確認の意味も込めて、キャスターテーブルに向け二発発砲した。
着弾の衝撃で、立て掛けられていたキャスターテーブルが、ずり落ちるようにして倒れた。
流し台とテーブルの間に挟んであったトレーナーもふわりと舞って床に落ちる。
(やはり、服だけか……下らない真似を)
そう思った瞬間だった。
「バカめっ……こっちだ……!」
ガタン、と云う派手な音を立てて、パーテーションの裏側から奴が飛び出す。
(バカはどちらだ。わざわざ的になるべく姿を現すとは。自殺行為も甚だしい……)
即座に私は、奴に向けて発砲した。奴はそれを、丸テーブルの下に滑り込み――間一髪で回避した。
奴は豊富な遮蔽物を巧みに利用し、銃弾を掻い潜る。
しかし解せない……悪戯に動き回り、甘んじて攻撃を受けているようにしか見えなかった。
私が入り口付近から動かない事もあって、直撃こそ喰らわないものの
いつ何時急所に命中し、致命傷を負ってもおかしくはない状況である。
実際、左肩口を一度銃弾が抉っている。生命に関わるような傷ではないものの、放置しておくには危険な出血量だ。
(おとなしく隠れていればいいものを……何がしたい?)
奴は搦め手で銃弾を回避しながらも、じわじわとこちらとの距離を詰めて来ていた。
そこで私も、奴の思惑に気付く。
アイスピックとトカレフでは、正面からやりあっては勝ち目は無い……
奴は賭けに出たのだ。
トカレフの装弾数は八発……
奴が狙うは、銃弾を使い果たしたその一瞬……!
マガジンを入れ替える……リロードの隙を突くつもりか……!
丁度、残弾は一発。それに気付けば、私とておいそれと最後の一発は撃てない。
それでも――こちらの有利は揺るがない。奴は浅からぬ傷を負っている上に
威嚇、牽制目的では発砲できないものの、トカレフは十二分に抑止力として機能する。
とはいえ、次の一発で確実に息の根を止めるか、動きを封じるかしなければならない。
考えを巡らせながら、死角に逃げ込んだ奴の姿を探した――すると。
大型冷蔵庫の陰に隠れてはいるが、無防備な右足がこちらの射程範囲内に晒されていた。
(土壇場で、詰めが甘い……奴の悪運もここまでか)
それを視認した瞬間、私の行動は決まった。
(最後の一発で行動を封じ、リロードを行いながら奥へ――冷蔵庫の陰へと走る。
足を撃ち抜かれた奴は、私への反撃も、調理場からの脱出もかなわない……!)
発砲。放たれた銃弾は、確実に奴の右足を捉えた。「ぐっ」という呻き声と共に、足が引っ込む。
(終わりだ)
懐に手を入れマガジンを探しながら、奥に走り出そうと一歩を踏み出す。
しかし、私の目に飛び込んできたのは予想外の光景だった。
それは、こちらに向かい猪の如く突進して来る奴の姿……!
(何故……!? 奴の足はもう使い物にならない筈……!)
奴の足元に視線を移し……ズボンの裾から『何か』がはみ出ている事に気付く。
その正体に気付き、私は愕然とした。三号室の――掛け金だった。
(ズボンの内側に掛け金を仕込んでおいて、銃弾を防いだ……! 計算尽くで、隙を見せたのか……!
最後の弾丸を安全確実に消費させた上で……私の油断まで誘った……!)
“あいつは――追い詰められれば追い詰められるほど、その力を発揮する。
言うならば『窮鼠、猫を噛む』を体現したような男なのだ”
その場に踏み止まり、床を踏みしめ蹴り上げる。私はバックステップで調理場出口へと後退した。
(この私が、こんな……追い詰められた小鼠にしてやられるとは……!)
所持している武器の格差も大きかっただけに、この読み違いは屈辱的だった。
“確かに鼠。ちっぽけな鼠には違いない。しかし、ただの鼠ではない。
決して諦めず、猫を罠へと誘い込み、致命傷を与える鼠……!”
「おおおおおおぉぉっ!」
雄叫びをあげながら突撃してきた奴が、渾身の力を込めてアイスピックを振り下ろす。
(間に合うか……!?)
私は即座に、トカレフにマガジンを装填。奴に向けて構えた。
毎度ありがとうございます。そして天麩羅屋さんお疲れ様です。前回投稿は
>>338です。
確変カイジならきっと……銃弾だって避けられる……!
・ロジカル
そう言ってもらえると嬉しいです。
見切り発車と言う事もあり完璧には程遠いですが
矛盾は出来る限り少なくしたいものです。
・原作ゲーム
原作での犯人の武器は、確か拳銃でしたね。
だから、と言う訳でもないですが、拳銃を出してみました。
※
読み返すとちょっとわかりにくい気がしましたので
前回の推理パートで、説明不足な分の補足です。
1.見た目だけではどの部屋の鍵か判別できない、と言うのは明示されていないのでは?
scene10にて「掌サイズの小さな金色の鍵」との描写はありますが
タグが付いていない事、一目で見分けがつかない事等は描写されていません。
しかし、カイジが「実際に使用して」その部屋の鍵かどうか確かめるシーンが二度ありますので
そのあたりから、見た目だけでは鍵の判別は不可能であるとの結論に至れるかと思います。
2.只野の洋服には胸ポケットがあった(鍵を隠せた)と明示されていた?
scene17で、胸ポケットに挿してあったボールペンを黒川に渡しています。
3.犯人の胸ポケットに入っていた自室の鍵は何の証拠にもなりえないのでは?あれで自白するのはあっけなさすぎる。
構成ミスです。どちらかと言えばメインとなる物証は三号室扉、ラッチボルトとデッドボルトの損傷状態でした。
また、犯人が予め用意しておいた数種類のトリックの解決が、ゲームの勝利条件として設定されていました。
>しぇきさん
お疲れ様です。長かったけど、これまでのしぇきさんと違う毛色の作風で楽しかったです。
圭一が過去の自分と向き合って少しずつ狂っていくのは最初からすると考えられませんね。
サイコホラーという事ですけど、なんかそうなると勇次郎の出番はもう無い感じ。
なんでも力技だからなあ、この人w
>見てた人さん
只野はやはりカイジを高く買っていたんですね。告発も想定内。只野というより帝愛の会長か。
ねずみをいたぶる猫みたいに執拗な只野を、覚醒したカイジが凌ぐのはかっこいい。
カイジというより、銀と金の殺人鬼との戦いを思い出しますね。アクションなのに心理戦だし。
それに今回は後書きにも感心しました。ここまで微細に設定を考えているとは。プロ並。
>こんなものをデコイ代わりに デコイって何ですか?
>テンプラ屋さん
いつもお疲れ様です。パオさんとゲロさんに関しては俺は心配してませんけどね。
あれだけの書き手が、まだ連載中の作品おっぽって消える訳は無いです。気長に待ちましょう。
デコイってのは囮ってこと
サマサさん
赤色・青色・橙なる種(=SEED)・人間失格・欠陥製品あたり出てくるでしょうか?
余談ですが、Fateのアーチャーとディアッカって似すぎです
アーチャー負けたけど
という訳で、(声優ネタ)亜沙とプリムラのタイガー道場マダー(マテ
しぇきさん
ガンガン買っていたので、耐性はあるつもりでしたが、怖いもの見たさとはまさにこの事でしょう、続きが気になります。
天ぷら屋さん
題名「ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは」にします。相変わらず長いですが
見てた人さん
ミステリ小説好きなので、こういう展開大好物です。
本題ですが、成長させることにしました。どちらにしろ最終回で六年後になってしまうので。
ただ、のび太達は原作の方の四年生(テレビ版は五年生)にします。なのは達も四年生なので、まさに同年代です。
実は、最初はKanonで書こうとも思っていたのですが、(「ぽんぽこたぬきさん」by川澄舞、で理由は大体分かるでしょう)戦闘に持ち込みにくいのでやめました。
いくつもの作品からキャラを出すという手もありますが、私はとらハメンバー+1作品くらいに絞ろうと思います。
パソコンが来週末に帰って来るので作品はそれ以降になると思います。
お疲れ様です見てた人さん。今回も堪能させていただきました。
設定の作り込み凄いですね、マジで。
俺は頭がそんなに良くないのでトリックとかは全然分かりませんでしたけど
解決編を過ぎても更にクライマックスが待っているのに驚きました。
カイジ絶体絶命だけど、その時こそカイジは(その時だけ?)真価を発揮するんで
ここからの逆転を期待してます。
全力全開氏もやる気満々ですね。
ちょうどスレの変わり目で1話からのスタートというのもキリがいいと思います。
頑張って下さい。
どうもご無沙汰してます。
正直な話、このスレにおけるモチベーションは落ちてしまっています。
心苦しいのですが、嘘をついても、この場凌ぎにしかならないので。
このスレを覗いたのも大体一月振りくらいという有様で。2ちゃん
自体ほとんど見なくなりましたね。専用ブラウザも、もう二ヶ月ほ
ど起動してないです。
ただ、今日「魔女」向きの短編ネタが久々に浮かんで、凄く書きたい
気持ちになっていますので、近いうちどうにかしようと思ってます。
タイトルはもう決めてます。「魔女旅に出る」。これはスピッツ最
初期の代表曲の一つで、これを聴いてて(最近出たベストで)浮か
びました。これは絶対書きます。一話完結なので。
「奇跡の血量」は、俺にしては珍しいことにオチまで頭にありますが、
なかなか書けないんですね。いつか続きを書きたいなあ。
「茄子」は、元々が一話完結読み切り型ですので、ここで終わっても
それほど問題はないと思っています(ただ、「終わりにしよう」と決
めたときに、俺がそう言えばいいだけのことで)。今の状況だと、
気軽に「続き書きます」とも言えないですね……「茄子」に関しては。
では。今月中には上記の作品を。
最後になりましたが、楽しみに待って頂いていた方々(恐らく五名ほど
の方)、申し訳ありませんでした。
第三話「面接にはタメ語を使えるくらいの度胸を持って挑め」
ここは、天下の講談屋マガジン編集部。
そこには実力と学歴を備えた者が集う、プロの領域。
素人が足を踏み出せば、厳しい先輩編集者から愛の鞭という名の罵倒が押し寄せる。
「なにやってんだてめェェ! ここ1ページ抜けてんじゃねーかァァァ!!」
「ひぃぃ、すすすすすみませんんん!!?」
特に、締め切り前ともなれば修羅場は必至。
もしミスが生まれれば、天下の講談屋の名前に傷をつけることになる。
故に、新人教育は厳しい。
「あんたたちが新しく来たっていうバイトの人?」
だが、天人襲来より今日まで、江戸はどこも等しく不況だった。
だから、天下の出版社でもバイトを雇ったりしている。
「えーと、坂田銀時さんに志村新八さん、神楽さんに服部全蔵さんに、ええと山崎……ん? これなんて読むんだ」
「退(さがる)です。山崎退」
――そう、俺の名は山崎退。泣く子も黙る武装警察真選組の監察(密偵)だ。
そんな俺がなぜこんな出版社に面接に来てるかって?
俺が動く時……それは、事件の匂いを嗅ぎつけた時だけなのさ――
「困るんだよねぇ、こういう難しい読み方だとさっ、社員同士のコミュニケーションとかも大変でしょう? てか神楽さんね、君まだ子供じゃない? うちは未成年は働かせられないんだけどなぁ」
「たかが面接官が偉そうなこと言ってんじゃねーよ、オヤジ」
「オヤジ? この娘今親父って言った? 言ったよね?」
――今、ここには潜入操作のために来ている。
それというのも副長が、「おい山崎、ドラマ見終わるまでにちょっくらテロリスト共の頭数おさえてこい」
などという無茶苦茶な命令をしてくれたせいだ。
あのドラマ長いんだよなぁ……再放送のくせして五時間くらい放送するらしいし。
これ絶対来んの夜になるよなぁ……それまで俺に編集のバイトしてろってか?
そろそろ転職考えるかなぁ……――
――まぁ今問題なのそんなことじゃあない。
問題なのは、俺と一緒に面接を受けているこの四人だ。一人を除いて全員顔馴染み。
……つーか、なんでいるんだよこの人たち。万事屋の仕事はどうしたんだよ――
「うちは学歴とか能力とか重要視すんだけどね、あんた達にやってほしいのは雑用だから。とりあえずやる気があればいいから。意気込みだけ聞かせてもらおうか」
山崎が心の中で溜息を十回ほど吐き捨てた後、面接は適当な流れで進行していった。
「じゃ、まずは坂田さん」
「はい。まず私が御社を選んだ理由はですね……」
――おおお御社ァァ!? なんだ、この旦那こんなに真面目な人だったか!?
なんか背筋ピシッとしてるしィィ!!――
「いいねぇ坂田さん、不況に打ち勝つには一にも二にもやる気だよ。じゃあ次、志村さん」
「ええとですね僕は……」
「ハイ次、神楽さん」
――えええ!? なんか流されたァァ!?
ひどくない? 扱いひどくないィィ!?――
「神楽デス。好きな漫画は『コナン』と『ワンピース』デス」
「よりにもよって他誌の看板作品じゃねーか。喧嘩売ってる? ねぇ売りに来たの?」
――この娘はこの娘で採用してもらう気ゼロだァァ!
いったい何のために来たんだこの人たちィィ!?――
「じゃあ次、服部さん」
「はい、好きな漫画雑誌はジャンプです。嫌いな漫画雑誌はマガジンです。未熟な僕ですがどうか面倒見てやって」
「やれるかボケがァァァ!!! こちとら忙しいんだよ! おまえら冷やかしなら帰れェェ!!」
――オイぃぃぃ!!! なんだこの人、万事屋の新しいメンバーか!?
完全にケンカ売ってるよ、面接官の人キレちゃったよオイ!――
ぷしゅっ
山崎が心の中でツッコんでいると、大荒れしていた面接官が突如力なく倒れこんでしまった。
「なっ!? ちょ、ちょっと面接官さん!?」
山崎が起こそうとしても、面接官は反応を示さない。
よく見ると、気持ちよさそうに寝息を立てているのが分かった。さらに首筋には一本の針が。
「おいおい面接官の人寝ちまったよ〜仕方ないから全員合格ってことでいいな。忙しいって言ってたし」
そう発言する全蔵の手には、どこから出したのか、この場には不自然な一本の筒が握られていた。
筒と針。眠ってしまった面接官。すぐに結びつくのは、アレしかない。
――ええェェェ!? 吹き矢か? 吹き矢で眠らせちゃったのかこの人!?
しかもなんか無理やり合格にしようとしてるしィィィ――
「おいおい痔忍者よぉ、そいつぁいくらなんでもやりすぎじゃねぇか」
全蔵の強引な所業には銀時も気づいていたようで、珍しくまともなことを言いながら全蔵に詰め寄る。
「てめーがジャンプ好きなのはかまわねぇ。面接官眠らせて不正働くのもかまわねぇ。でもマガジンのことを悪く言うのだけは勘弁ならねぇな」
――って、おい! そっちかよ!!?――
「へっ……考え方まですっかりマガジン色に染まっちまったみてぇだな。なんならここで決着つけてもいいんだぜ」
「なんだぁ? 今の俺なら限りなく非道になれるぞ。やるんならお前の痔ばっか攻めるぞ」
「銀ちゃんそれならバックは私に任せるネ。見事に痔忍者ヤローのケツ穴を狙い撃ちしてやるヨ」
「ちょっ、あんたら何しに来たかわかってるんですか!?」
万事屋一同はジャンプオタクの痔忍者を加えて、あいも変わらず賑やかだった。
だからこそ、山崎は思うのだ。
ああ、この任務絶対うまくいかねーな…………と。
はい、第三話です。第二話は
>>189より。
4月に突入して忙しくなった分、久しぶりのSSでいっぱいいっぱい……。
今回はキャラのアクに頼りすぎて駄目駄目です。ええ分かってますとも。
山崎がいなかったら成り立たなかった上に分かりにくいしね。ちょっと短いしね。もう駄目だ。疲れてる。ホント疲れてる。次頑張ります。この次は倍くらい頑張ります。
あと銀魂アニメ化されましたがご存知でしょうか?
もし知名度が上がったのであれば万々歳。
服部全蔵なんていつアニメに出てくるかわからんマイナーキャラっぽいけどさ……。
最後に。新参の私が言うのもなんですが、他の方々も連載頑張ってください。
定期的に質を落とさず連載している作家様、本当に尊敬してます。
ではでは。
471 :
作者の都合により名無しです:2006/04/12(水) 16:28:39 ID:DhTXLon30
お疲れ様です一真さん。
銀玉は良く知らないのですけど、ノリとテンポのいい作風が好きです。
こんな連中が面接に来ておかしな振る舞いし始めたら大変だなw
キャラのアクにたより過ぎて、とおっしゃいましたけど
なんか「キャラクターss」みたいなノリでいい感じですよ。
ゲロさん、ちょっと残念です…。
2ちゃん自体を見てないなら仕方ないですね。
でも、ご連絡あって良かったです。
そう肩に力入れて書かなくても構わないので、
「思い出したように」書いてくれれば幸いです。
・見てた人さん
ロジックの点で決定的な矛盾は見つかりませんよ。小さな部分ではあるんでしょうけど、
何より「面白い」という点で素晴らしいです。只野の強襲に覚醒カイジがどう立ち向かうか。
勢いとか力尽くではなく、カイジには最後まで頭脳で撃破してほしいですね。
・全力全開さん
Kanonってゲームのですか?うわ、そっちの方も見たかったような。うぐぅとかw
なのはは知りませんが、ドラ長編という事で思わず期待してしまいます。
・ゲロさん
かなりショックです。でも、まだ書きたいものがあるというのはゲロさんの職人魂が
尽きていない証拠。肩肘張らず今回みたいに、思いついたからちょっと書きたくなった時に
また書いて下されば結構です。3ヶ月、4ヶ月に一回でもいいからゲロさんの短編読みたいなあ。
・一真さん
祝!アニメ化でタイムリーですね。俺も銀魂は大好きで、あのボケとツッコミが再現されてますねw
新撰組といえば俺の中では沖田が一番すきなのですが、今回はあの連中の中でまともな方の山崎が
ちゃんと役割を果たしてますねw 銀魂といえば人情話も華ですけど、もうすぐ入るかな?
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