【2次】漫画SS総合スレへようこそpart26【創作】

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1作者の都合により名無しです
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart26【創作】


元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇
SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart25【創作】  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1112530647/
まとめサイト 
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm

2作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 17:52:51 ID:C37nlaFP0
ほぼ連載開始・復活順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

ドラえもんの麻雀教室(VS氏)
 http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/gateway.html
ドラえもん のび太の地底出来杉帝国(うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dekisugi/01.htm
4×5・AoB(ユル氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/4x5/1-1.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/yuru/03-1.htm
ラーメンマン青年記・北の果てより(パオ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ra-men/01.htm    
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/kita/01.htm
ザク(ザク氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/zaku/01-raou.htm
超格闘士大戦(ブラックキング氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kakuto/01.htm
ディオの世界(殺助氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dio/01.htm
輪廻転生・オーガのリング(草薙氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/rinnne/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/kusanagi/o-01.htm
虹のかなた(ミドリ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
蟲師・もっけ ウブイワイ(ゲロ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/musisi/01-1.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/gero/mo-01.htm
オムニバスSS劇場(バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
3作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 17:53:35 ID:C37nlaFP0
殺人鬼とオーガの鬼事・ギャグSS日和(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/02-1.htm
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/01.htm
忍者の証(青ぴー氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/aopi/01.htm
バキ外伝 デスゲーム(五氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/death/01.htm
Z戦士への入門(Z戦士氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/z-fighter/01.htm
鬼の霍乱(名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/oni/01.htm
黄金時代(銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/01-1.htm
不完全セルゲーム(サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/sanada/08-1.htm
おとめごころ(ふら〜りさん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/furari/15.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
4作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 17:54:39 ID:C37nlaFP0
白昼夢(名無し氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1112530647/517

もうしわけありません、抜けてました・・・
これで間違いないと思います。
5作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 18:06:41 ID:gIV2kzip0
スレ立てお疲れさまです。
しかし、本当にスレが立て辛くなりましたね。
6作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 18:11:12 ID:e9vOduNc0
>>1乙!
7白昼夢:2005/05/14(土) 20:56:09 ID:86jFnuWB0
―どれほど歩いたのだろうか?

既に陽は沈みかかり空は血の様に紅く染まっている。
あの男の地図の通りに進んでみると、他の建物より頭一つ高く幅広い瓦の屋根が見えてきた。
どうやら目的地は神社らしい、あの男は神仏か何かを私に拝ませるつもりなのだろうか。
それが彼の言う『幸福』なのか?だがまぁこの際神頼みも悪くないかもしれない。
どんな形であれ、また新たな目的が見つかるのが何より嬉しかった。

石畳を上り鳥居をくぐり神社に辿りつくと頭を丸めた巫女、いや尼といった方が適切かもしれない。
一人の女性が立っていた。

「よくぞ参られました、彼から大体の話は聞いているでしょうが・・・・ここに来た、という事は既に覚悟はお有りと考えて宜しいですね?」

どうやらアポは既に取得済みらしい。
『彼』とはあの男の事だろう、尼は挨拶もそこそこで話を進めてきた。

「彼にはまだ何も言ってないよ」

神社の境内の奥から不意に声が聞こえ見覚えのある帽子が見えた。
―あの男だった。

「やぁ」
「ヤァ」

初めて会った時と同じ様に、私は彼の言葉を反復して挨拶を交わした。

「自己紹介がまだだったね。私の名前は吉良吉影、今日から君のパートナーを努める男だ、これから話をする君の返答次第で、だがね」

男は、吉良吉影はそう言うと今度は自分を睨んでいる尼の方に向いて再び口を動かした。
8白昼夢:2005/05/14(土) 20:57:56 ID:86jFnuWB0
「ほとんど何も知らせずに、ここを紹介したのは悪かったと思ってるよ、ただ私から
 話すより、この場であんたに喋って貰った方が何かと都合が良いと思ってね」

尼は表情を強張らせたまま黙って聞いていたが、ため息をひとつ付くと私の方に顔を向け話し始めた。

「まぁいいでしょう、しかし彼から何も聞いてないとすると・・・貴方は今の自分が何者かしっかり理解していますか?」

自分が何者か理解しているか?
そんな哲学的な質問を尼は突拍子もなく私に尋ねた、だけどまぁ彼女の言わんとしている事は分かる。

「ここに来るまでに、なんとなく・・・・はっきりしてる事は私も既に『死んでいる』という事ですかね」

自分は既に死んでいる、が・・・かつて生きていた世界にはまだ存在している、
ひどく矛盾しているが、あの男に、吉良吉影に会う前からそこだけは何故か強く意識できていた。
だけど自分が何者かが思い出せない、ここに来る途中断片的に思い出すことはあったが頭の中では酷い靄がかかっている。
まるで白昼夢の様な感覚だ。

「成程、そこさえ自覚しておけば十分でしょう、貴方にはそこにいる彼、吉良吉影と共に一つの仕事をこなしてほしいのです」
「仕事・・・・ですか?」

先ほど彼が言ってたパートナーとはそういう事らしい。

「彼もまた貴方と同じ死人です、単刀直入に言いますが、その彼と一緒に悪人の魂を裁く、いわゆる死神としての仕事を貴方にして頂きたい」

『死神』、『悪人を裁く』、聞き覚えのあるフレーズが私の脳内を駆け巡った。
9白昼夢:2005/05/14(土) 20:58:56 ID:86jFnuWB0
「『何故?』なんて事は聞き返さないで下さい、貴方には、やるか、やらないか、だけ答えて頂きたいのです」

私には質問も許されないらしい、最も自分が何者かも分からない状態で質問などする気もなかったが、しかし

「しかし私は・・・・・・」

すぐには返答できなかった。
YESと答えると私が死ぬ前に・・・何の為に生きていたのか、それを全て否定してしまうような気がしたからだ。

「彼は・・・吉良吉影はこの仕事をこなす事によって死者としての『幸福』がいつか訪れると信じています。
 生者である私にはその『幸福』が一体なんなんのか、まるで想像もつきませんが、貴方なら・・・・・」

尼のその言葉を聞いていた吉良吉影が横から「フン」と鼻を鳴らした。

「死者も生者も関係ないね、仕事をして、いつか『幸福』が訪れる、と信じる事が今の私の『幸福』さ、
 まぁ、それはさて置いて君も今すぐ答えは出せないだろうからじっくり考えるといい、一応参考までに
 今回のターゲットの顔でも見ておくかい?」

ほら、と言い吉良吉影は『今回のターゲット』である一枚の顔写真を私に手渡した。





―其れを見た瞬間―白昼夢のような感覚は―全て消えうせ―おぼろげだった周りの景色が―鮮明に映った―





「夜 神 ・・・ 月 ・・・・・・」
10白昼夢:2005/05/14(土) 20:59:56 ID:86jFnuWB0
私は全てを思い出した―全てを理解した。
私は何故死んだのか、ここに来る迄に出会った人間は誰だったのか、彼らは何を伝えたかったのか。
そして私はこれからどうするべきなのか。
気が付くと私は彼女から・・・南空ナオミから手渡された遺品を爪が食い込む程強く握り締めていた。
その行動が怒りか、悲しみか、後悔か、・・・何から来るのか自分自身分からなかったが―強く強く握り締めた。

「・・・やりましょう」

私は短く、ただ一言それだけを言った。

「ほう・・・」

写真を渡した途端、私が返答するとは思っていなかったのか、あるいはそれと知りながら彼は写真を渡したのか。
吉良吉影は一言呟いてから私をじっと見つめた。

「オーケー、どういう心境の変化かは知らないが・・・こっちも『何故?』なんて事は聞かないさ、やる気になって
 くれればそれで良い・・・と、そういえば君の名前をまだ聞いてなかったな、自分の名前はちゃんと覚えてるか?」

自分の名前、そうだ自分の名前・・・・・私は迷う事なくこう答えた。

「L・・・私の事はLと呼んで下さい」
11白昼夢:2005/05/14(土) 21:02:58 ID:86jFnuWB0
スレ立てお疲れ様です。
前スレ524からの続きで完結です。

一応これで全て分かってくれるかとも思うのですが・・・・
ジャンプが手元にないと分からない部分もあるかとも思います。

主人公を逆に勘違いしてしまった方もいらっしゃった様ですが、
成る程、読み返してみるとそう捉えられてしまっても無理ないような
紛らわしい部分もあったかも知れません。
12作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 21:06:58 ID:8Yerisql0
白昼夢さんスレたて直後の投下乙でした

Lが掠れさせながら月の名前を呟く場面がぞくぞくきました
白昼夢さんの他作品を読んでみたいです
13ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2005/05/14(土) 21:30:50 ID:wkIsGIDR0
来ましたねぇ……質量共に豪華絢爛。嬉しい雄叫びをあげつつ、とりあえず感想のみ。

>>1さん
おつ華麗様にございます。感動的で芳醇なSSの数々が並ぶこの場を、よくぞ継いで
下さいました。本スレもキレイに丁寧に真剣に、参りましょう!

>>パオさん
別に好きなタイプでもない悪人なのに、春成が強いのが嬉しい。原作の裏切られ感プラス、
何だかんだでまだ陳老師のことに拘っている、ある意味純朴さ。そこが魅力になっている
のかも。そして「盟友の……」のくだり、何度見てもこういうのは独特の感動があります。

>>ゲロさん
回を重ねるごとに、スケールが大きくなったり、やり口(というか生態)が巧妙になったり
してきた蟲たち。今回は遂に被害者も被害状況も不明瞭なままスタート……いつにも増して
先読み困難ですな。回を重ねるごとに、義侠心が表に出てきたギンコを何が待つのか?

>>ザクさん
最初、ザクの再生機能を駆使した戦いっぷりを見て「柱の男」みたいだな〜と思ってたら、
いきなりジョセフが出てきて驚きました。ザク自身が言う通り、ジョセフのような巧妙な
策ではないものの、波状攻撃で見事、勝利! 策というより技ですが、カッコ良かったです!

>>NBさん
心配はしちゃあいませんでしたぜダンナ。あのNBさんが、帰ってこないはずぁない、と。
さて復帰早々、そそる展開ですねぇ。いわゆる四天王とか三人衆とかの形。で私はやはり、
リオンに期待です。どんな風にワタぁ抜いて魅せてくれるのか? 血と激痛が楽しみっス。
14ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2005/05/14(土) 21:31:42 ID:wkIsGIDR0
>>サナダムシさん
「常に全裸な妖怪野郎、ワゴン車にて体育座り」とだけ聞かされたら、何が何だか全然
解りませんな。本文読んだら、妖怪野郎は微妙に可愛いんですけど。まともな目的がある、
けどそれが彼の望む形で成就されるかどうか。多分しないだろ、思えるところがまた魅力。

>>サマサさん
うむ。健闘してる、と言えますねこれは。結局勇次郎はいつの間にか「一瞬にして、有無
を言わさずケリをつける必殺の一撃」なんてのは封じ込まれてるんですし。いーちゃんの、
舌先三寸と度胸一つで。これなら確かに、戦闘力とは関係なく賭けで勝てるかも。頑張れ!

>>白昼夢さん
……うぐ。吉良は四部までのことなら知ってますが、他は解らない……不勉強な我が身が
恨めしい。でも前回書きましたように、作品の構成や文章の雰囲気には感服してます故、
どうか別ネタで再度。でないと悔しいというか勿体無いというか、無念ですので何卒っっ。
15作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 22:14:20 ID:n3buoyo5O
職人さん達ナ小ラシノ!毛呂キリ間願貼った倉地位!
16スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 22:57:32 ID:6MHiHH1a0
えぇと。
こちらに投下させて頂くのは初めてとなります。
本来ならば

【BOY MEETS】武装錬金総合萌えスレ50【BATTLE GIRL】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1114958654/

の方に投稿すべきSSですが、冒頭部が↑のスレの少し趣旨と外れているのと
分量が若干多いので、こちらに投下させて頂きます。
萌えというのが嫌いな方は、最初からか

>世がゴールデンウィークで賑わい始める直前、四月二十八日だった。

の辺りから読み飛ばして貰った方がいいかも。では。
17スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:02:09 ID:6MHiHH1a0
錬金戦団にはいくつかの副業がある。
だって一応世界規模の組織だから
「核鉄をちまちま管理する」「ホムンクルスをブッ殺す」
なんていう非生産的な行動しか繰り返さなかったら
収入が途絶えて、みんな路頭に迷ってしまう。
だから副業を手がけて、このやるせない不況をどうにかこうにか凌いでいる。
一番有名なのは、「ドモホルンリンクルを作る仕事」の請負だ。
よくCMで流れているこの仕事、主に外部の人間を用いる。
何故ならば、どこの企業でもそうだが、社員を育てるのには非常に金が掛かる。
たとえば新入社員を一人前にするには、色々な経費が平均で三千万ぐらい必要だ。
それだけの銭をかけて育てた人間をだ。
たかだか「ドモホルンリンクルの汁(以下、秋水と呼ぶ)を一滴一滴監視する」
程度の仕事に回して、果たして元手が回収できるか? いや、できない。
そもそも秋水ごときの良し悪しなんぞ、実をいうとアホでも分かる。
黒ずんでいたらそれは悪い秋水で、灰色がかった半透明の秋水が良い秋水なのだ。
基準は単純だ。だから呼び集めたバイトや派遣社員に教えて任せる。
そして育てた社員は、事務や管理に回す。
こっちで人が育たないと将来的に困るからだ。
それが企業のありようであり、錬金戦団が秋水監視を請負った理由でもある。

更に、外食産業も手がけている。
ロッテリやがそれだ。経営理念は以下のとおり。

『ロッテリや基本方針 お店全体が善意に満ち溢れ、誰に接しても親切で優しく
明るく朗らかで、キビキビした行動、清潔な店と人柄、そういうお店でありたい。
心の安らぎ、ほのぼのとした暖かさを感じていただく為に努力しよう』

これはどの店舗の事務所にも掲げられており、
アルバイトの少年少女は厨房に入る前にこれを逐一復唱する。
テンチョーにも義務付けられているが、面倒くさいのでやらない。
18スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:03:12 ID:6MHiHH1a0
知名度では秋水のそれよりガクリと落ちるが、規模では勝っている副業もある。
四角い黒地に白(もしくはその逆)の文字で「963」とあしらわれた服の販売業だ。
何故、服を売るのか?
それは、錬金戦団の歴史と深いかかわりがある。
何百年もの昔、紆余曲折を経て形成された錬金戦団において
最初に確立されたのは、核鉄の管理でもなく、ホムンクルスの捜索でもなく
制服の作り方だったのだ。
『錬金戦団』という、おおよそ名前に重みもセンスの欠片もないこの組織が
現在以上に実体があやふやな創成期において統制を計るには
制服という古典的な、かつ単純明快な『組織の記号』の着用を
戦士たちに義務付ける他なかった。
同じようなコトは、日本の幕末における新撰組にも言える。
土方歳三は、有名な浅葱色のダンダラ模様の制服を着せるコトで
元をただせば浪人以下の烏合の衆に過ぎない隊士たちに死力を振るわせ
鉄の結束を新撰組にもたらした。
もっともそれは、例えば『局(組織)ヲ脱スルヲ許サズ』と定められた
局中法度なる非情の掟に拠ってもいるが、しかしあいにく
錬金戦団にそういうのはない。
あれば、抹殺対象のヴィクターIIIに『局ヲ脱シテ』付き従った
津村斗貴子や中村剛太に酌量の余地はなく、キャプテンブラボーも
「(戦団への)復帰に尽力する」などとは言わなかっただろう。
ゆえに制服だ。
創成期における戦団上層部は、年下に苺をもよおす戦乙女のような苛烈さで
裁縫のできる者を捜し、見つかれば厚遇の約束と引き換えに
ひたすら制服を作らせた。
また、その方法を戦団初の第一級の機密として
いや機密たりうるよう連日連夜、口角泡を飛ばし続けて徹底的に昇華せしめた。
制服をいかに機能的かつ、恒常的に生産できるか。
戦団が、その最初に直面した課題を克服した後には
制服を司る部門が特別に設けられ、今日まで制服が生産されている。
19スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:03:50 ID:6MHiHH1a0
一つ、制服に関わる特別規定がある。
その生産に五年以上従事するか、もしくは千着以上収めた者は
武器たる武装錬金の発現に不可欠な核鉄の受領に
かなりの便宜が計られるようになっている。
犬飼という、気質も力量もかませのそれ止まりで
見た目が劣化韓国スターの戦士がいる。
しかし彼ごときが核鉄を受領できたのは
半ば陋習じみた前述の特別規定を利用したからであり
『好きな犬のぬいぐるみを作り続けてたから裁縫は得意』程度の
犬飼を見れば、いかに制服というのが錬金戦団にとり重要か分かるだろう。

制服は戦闘服も兼ねている。戦闘の相手はホムンクルスがほとんどだ。
彼らは半ば無尽蔵に湧いてくるから、戦いは一向に収まらない。
戦えば何らかの負傷があり、制服が無傷で済むのも稀だ。
結果、制服の消耗速度は、並の作業服のそれを遥かに上回る。
また、戦団には戦部という、ホムンクルス退治の記録保持者がいるが
彼の十文字槍の武装錬金、『激戦』は高速全身修復を特性としていて
それを頼みに戦部は、避けるべき攻撃も身に浴びる節がある。
すると制服は確実に破損する。。
こういう自身の武装錬金の特性ゆえに制服を失う者も
戦団には存在しており、制服の消耗速度に拍車を掛けている。
制服部門の二〇〇四年度の統計によれば、
一日に約二十着の制服が消滅、もしくは着用不能に陥っているらしい。
よって千着ほど収められれば、普段から制服の修繕や作成に
あくせくしている制服部門は、五十日ほど楽をできる計算となる。
五十日分の楽というのは、非常に大きい。
一人につき一日八時間分の労働力が浮くのだ。十人いれば八十時間。
設備の点検や伝票の整理、安くていい材料を探したりもできるし
忙しくないから有給の消化もやりやすい。
残業もしなくていい。定時(17:35)に帰れて冒険王ビィトが見れる。つか見たい。
だから、千着を収めた者が貢献を認められ、核鉄を得やすくなるのも無理はないだろう。
でも、服を千着作るより、普通に腕を磨いて核鉄貰った方がいいような……
20スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:04:55 ID:6MHiHH1a0
錬金戦団が普通の服を売るコトに着目したのは
ユニクロが威勢を誇りはじめた頃だ。
錬金戦団の上層部、それを真似して服を販売するコトを決めた。
培ったノウハウと制服部門経由の人脈を活かすのだ。
ついでにカップなどにも同じ意匠を施し販売するとも決めた。
『店に服だけでは素っ気ない。刺身にだってツマはある』てなスローガンだ。
ともかく、ホムンクルスを恐れない戦士が、営業活動をどうして恐れよう。
彼らの不断の努力により、あっと言う間に店舗や販売ルートが形になった。
すると何がいいのか963ブランド、徐々に売上を伸ばし、店舗は全国区へと拡がった。
だが錬金戦団に人は少なく、戦士が店番に出向するコトもしばしばだ。
前置きが長くなった。
戦士長たる火渡とその側近の毒島に店番の命が下ったのは
世がゴールデンウィークで賑わい始める直前、四月二十八日だった。

高そうな机へ、両手がばんと叩きつけられた。
「ふざけんな! どうして俺が服なんざ売らなきゃならねェ!」
手と声の主は、後ろ髪を散切りに結わえた若い男だ。
要するに火渡である。
眼光鋭く、一見すると到底カタギには見えないが
立場的には一応『恐ろしい化物から普通の人を守る』、ヒーローである。
それも戦士長という、内実はよく分からんがとにかく偉い立場だ。
そして彼の闘争本能の発露たる武装錬金の名は『ブレイズ オブ グローリー』。
ところどころに六角形をあしらった焼夷弾の武装錬金で
発する炎の威力たるや『周囲500m、瞬間最大五千百度』にも及ぶ。
攻撃力に関しては、戦団の中でナンバー1と評されるほどだ。
だから彼、いわばレッドだ。
リーダーで主役で素晴らしき人を楽にしてやるレッドだ。
そのレッドがどうして店番をしなくちゃならん。
ゴールデンウィークは家でビールをあおって、ぐうたらしたいのだ。
その為に、毒島からのピクニックの誘いも断り、有給も取ったというのに──…
「不服ですか?」
火渡と机をはさんで対面している男が、顔をあげた。
21スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:05:55 ID:6MHiHH1a0
彼はイスに腰掛けていて、年ごろは30の半ばごろ。
かけたメガネが良く似合う細面で、部屋の中だというのに
黒い帽子とマントを身に付けている。
帽子はむかし清教徒たちが愛用していたピューリタンハットのようだが、よく分からない。
ともかく、坂口照星である。
物腰柔らかく、一見すると紳士だが、実は火渡以上にカタギではない。
それは後々分かる話なのでさておき、照星について幾つかふれよう。
彼の役職は大戦士長。
やはり内実はよく分からんが、火渡よりは偉い立場だ。
そして武装錬金は『バスターバロン』。
全身甲冑(フルプレート)の巨人であり、最凶最悪最期の威力を誇っている。
なぜならば、その特性は「作品の終わりを告げる」コトであり
ひとたび現われると、全ての登場人物と作中の事象に実質的な死を遂げさせる。
ゆえに最凶最悪最期。

さて火渡。ぐいっと身を乗り出し、それこそ火を噴きそうな勢いで叫んだ。
「当然だ!」
横では毒島がいつもの通り、剣幕に怯えている。
容貌はガスマスクだ。ガスマスク然としたまごうコトなきガスマスクだ。
照星が口を開いた。
「でもキミは厄介ゴトがあれば、いつも真っ先にこなしていますよね?
不条理を不条理でねじ伏せるのが、キミの主義のハズでは?」
「ああ。確かにそうだ。だがこっちについちゃ納得できねェ」
「伺いましょう」
照星は机に肘を付き、両の拳を厳かに絡めた。
「いいか──…」
火渡は憮然と話し始めた。
彼の弁によると、不条理を不条理でねじ伏せるのは
人の手に余る錬金術に対してのみであり
人智の範疇内にある服の販売業にそうする必要はないらしい。
「しかしその論調だと、キミが素直に従うとも取れますが」
メガネをすいと直す照星に、煮えたぎる眼光が突き刺さった。
22スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:08:34 ID:HG/IA2Ru0
毒島にはその目が、神話に出てくるサラマンダーのように映る。
(……カッコいい)
ぼーっとする毒島の横で、怒鳴り声はヒートアップしていく。
「従うわきゃねェだろ! 俺は不条理の中で生きてんだ!
その俺がどうして今さらカタギの世界になんざ……いいか。
俺にゃあ、錬金術以外の不条理に付き合うつもりは一切ねェ!」
「でも戦団の副業ですから、一応、不条理の範囲内ですよ」
「それはテメーの理屈だ!!
大体、人手がいるんならテメーが行けばいいだろうが!
老頭児(ロートル)にゃあ、服屋で女にチヤホヤされてる方がお似合いだ。
それと今思い出したが、この前貸した三万円いい加減に返しやがれ!」
「こちらへ」
いつの間に移動したのか。
座っていた照星、向かいにいた火渡の袖をぐいと引き
彼を部屋の角っちょに連行した。
そしてお茶会の雑談で漏らすような笑みで、優雅に拳を振り下ろす。
「ああっ! 火渡様がジャムに! おばあちゃんが手作りしたけど
砂糖が多すぎて粘っこくて、しかもイチゴが潰れきっていないまずそうなジャムに!」
ここにきてようやくセリフを発した毒島を振り返り、照星は言った。
「大戦士長に逆らえばこうなります。
しかし部下はみんな、私の大のお気に入りなので
火渡が困っていると言うのなら三万円ぐらい貸してあげましょう。
毒島は厄介な上司にいつも困っているので」
「えぇと」
「六万円あげましょう。全く、大変ですね。こんな」
と今は地べたで震えるだけの肉塊をアゴでしゃくり
「暴力的な火渡に付き合わされて。上司を選べない部下は不幸ですよ全く」
「あ! え、えぇと…」
毒島は困った。何が困ったって、何事か抗弁しようとした火渡の顔に
尖ったブーツの先っぽが深々とめりこんだから。
無論、照星の仕業だ。
火渡、鼻は無残に折れ、体は伏した。
23スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:09:33 ID:HG/IA2Ru0
地面に赤く広がるいびつな円は、彼の鼻血だろう。
「HAHAHA!」
「ひ、火渡様をいじめないで下さい〜!
お洋服なら私ひとりでもどうにかできますからぁ」
半泣きで制止する毒島もなんのその。
照星は意に介さず、ゴガッ、ゴガッ、と軽快なテンポで頭を蹴りまわす。
「服を売りましょう火渡。大丈夫。
あなたならちゃんと出来ます自信を持って。
だから、さぁ、早いトコ立ち上がるのです火渡」
しゃがむやいなや、前髪を引っつかんでアゴを上げて、そこへアッパーを叩き込んだ。
火渡、どうにか後ろへ吹き飛ぶのは耐えたが、立て膝のまま二度三度力なく揺れ
やがて名状しがたい呻きをぐえぇっとあげると、血溜まりへ崩れ落ちた。
「失礼します」
不意に部屋の扉が空いた。入ってきたのは千歳。
書類の束をいくつか小脇に抱えたまま、部屋の状況を見回した。
ここで照星の妖精の舞(ニンフズ・ダンス)が炸裂し、火渡は仰向けに倒れた。
「ヘイヘイヘーイ! イェア!!」
攻勢はやまない。
机に飛びすさった照星は、自由落下の慣性と全体重を込めた肘を
火渡のノド笛に叩き込んだ。ベコンと鈍い音がした。
しかしどうという感想もないのか、千歳は眉一つ動かさない。
無表情は、貞淑という形容がぴったりの顔立ちとあいまって
どこか人形じみた美貌を醸し出している。
その美貌の女性を、毒島は救世主のように見た。
なぜならば千歳、かつては『照星部隊』の一員であり、照星、火渡
そしてこの場にいないキャプテンブラボーこと防人衛とは旧知の間柄。
こういう状況も慣れているだろうと、毒島は仲裁を期待したのだ。
しかし千歳は無表情のままグっと親指を立て、
照星が同じようにすると、彼に書類を渡して部屋を出た。
照星はそれらから一枚引き抜いて
「では、火渡と毒島には服の販売を手伝って貰うというコトで」
9万円ともども毒島に渡し、火渡を部屋の外につまみ出した。
24スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:10:07 ID:HG/IA2Ru0
まるでゴミでも扱うような手つきだ。限りない愛情が見てとれる。
そして毒島が慌てて部屋を出ると、ドア前に千歳がいた。
瀕死の火渡の脳天目がけ、バールのようなモノを振り下ろさんとしていた。
「あの。もし、千歳さん……?」
「チッッ! 若いからって調子に乗りやがって!」
千歳は無表情のままスゴい舌打ちをして、どこかへと去っていった。

ちなみに書類には、店の所在地と細々とした連絡事項が示されている。
店の名前は、「963銀成支店」。まんまだ。

ゴールデンウィーク初日。
「クソ、まだ痛みやがる」
963銀成支店の事務室で、火渡は首をさすった。
「あまり捻らない方がいいですよ、火渡様。湿布貼りましょうか?」
毒島はいそいそと薬箱を差し出した。
「いらねェ。つーか毒島」
「はい」
薬箱に小さな両手を置きながら、ガスマスクは生真面目に頷いた。
「今日はここの連中、一人も休んじゃいねェぞ。
俺たちが来る必要がどこにあるんだ?」
事務所はがらんどうだが、それは他の者が売り場に回っているからだ。
出勤してきた火渡と毒島は、マニュアルを渡されてそれっきりだ。
それもとっくに読み終わり、火渡はとてもヒマそうだ。
ゆらゆらと上下に揺れるくわえタバコの火も、か細く見える。
「それは…大戦士長様のご命令なので…」
「ああ、俺をボコりやがった大戦士長サマのな。
一晩中核鉄使ったのに、まだ痛みが引かねェ。
ったくあの老頭児、力だけはありやがる。いい加減引退すりゃいいのによ」
手近にあったステンレスの灰皿に、ぎゅっとタバコを押し付けた。
「差し出がましいようですが」
「あん?」
火渡は毒島を見た。
25スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:10:53 ID:HG/IA2Ru0
ガスマスクが制服の上にエプロンを着ている。奇妙だ。
奇妙だが、それが妙に似合う毒島は、こう言った。
「大戦士長様には『死ね』とか『殺す』とかはおっしゃらないんですね」
「るせェ!」
「きゃん!」
間髪入れず、毒島の頬に灰皿が命中した。ガスが出た。
しかしそれでも足らなそうに火渡は立ち上がり、ゴミ箱を蹴った。
膝まである青いゴミ箱は倒れ、お菓子の袋やらが散乱した。
それらを毒島は慣れた様子で戻し、ゴミ箱も立て直した。
「ほら、それに、五日目、確か五月三日からは
店長さんたちはお休みして私たちにココを任せるとも」
毒島は頬を撫でながら、目の望遠レンズをかしゃかしゃと伸縮させた
タバコの灰が入ってないかどうか確認しているらしい。
「そういや言ってたっけな。んなコトも」
火渡はまたゴミ箱を蹴った。毒島は戻した。
「思うんだがよ、俺もテメーも接客にゃあまるで向いてねェな」
「そうでしょうか? 私は別に……」
言葉を遮るようにまたゴミ箱が蹴られた。毒島は戻した。火渡は呟いた。
「そうさ」
片やヤクザじみた性格で、片や、そのヤクザにゴミ箱を蹴り倒されても
いちいち一生懸命戻して、文句一つ言わない性格だ。
どっちも極端で、販売業には不向きだろうと火渡は思っている。
だから反対したのだ。
毒島はしばらく黙った後、ぽつりと呟いた。
「…マスク、外した方がいいでしょうか?」
自分なりに、接客に不向きな理由を思い当たったらしい。
「はぁ? 別にいいだろそのままで」
しかし火渡はいかにも心外と言った様子だ。
(そのままでいいんだ……)
ガスマスクはガスマスクなりに、嬉しいらしい。
26スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:11:44 ID:HG/IA2Ru0
二日目から彼らは店に出始めた。
「あー! スゴい! ガスマスクさんがいるよ! ガスマスクさん!」
「ホントだ。何かのキャンペーンなのかな。ちょっと触ってみようよ」
「こ、こら騒がないの二人とも! その、スミマセン」
「プディーヌ? ショルルヴァモンニュツゥネ、ニャララ。
ノォー! …ガルルル! ウゥ〜! ワンワン!」
「知らない人に吼えちゃ駄目だ姉さん!!」
とまぁ、毒島の容姿に騒ぐ者もいるが、時間と共に慣れた。
一人おかしいのがいるが、やむを得ない理由がある。ギョウザを食べ過ぎたから仕方ない。
火渡はというと、警備員を務めるコトになった。
三日目には、強盗がきた。強盗は、鉛筆を毒島に突きつけた。
毒島、もがいたせいでマスクがずれ、ところどころ素肌が露わになっている。
「ケケケー! 俺は書記だぞ偉いんだぞォ〜!
分かったらBの鉛筆六万本持って来ーい! ハゲ!」
「きゃう!」
ガスマスクからはみでた細く白い首すじを、尖った鉛筆がぷにぷにとつつく。
その光景を見た火渡は、キレた。
彼的には店を任せられた不満の爆発だが、実際はどうか。
ともかく、ラフに着崩したジャケットが電光の様にたなびいた。
「知るか! 死ねッ!」
手近から一本1980円のベルトを引っつかむと、それを思いっきり投げた。
(ベルトの金具部分が)強盗の頭を強打した。彼は動かなくなった。
四日目には、棚卸をした。
棚卸というのは、商品の数を数える行為だ。
えらく疲れたが、しかしどうにかこなせた。
閉店後。宿にしているホテルへ続く繁華街で、毒島が
「慣れてきた感じがするので、明日もきっと大丈夫ですね」
というと、火渡はくわえタバコで「あぁそうだな」と生返事をした。
彼にとっては雑務なので、大丈夫じゃなくても別にいい。
というか、面倒臭くなってきたので店を全焼させようかとすら考えていた。
しかしなんだか隣の声に気勢を削がれてしまって、ため息がてらに煙を吐いた。
毒島相手ではこういうコトがよくある。あるが、是正する気分にはあまりならない。
27スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:13:04 ID:dMLcvPxO0
スカっとしないが、それもまた不条理。火渡はまぁいいかと思った。
その間にも毒島はいっしょうけんめい大股で歩いている。
長身で足早な火渡と並んで歩いている。

五日目。
ここからは火渡と毒島が店を切り盛りする。
と言っても、接客も事務作業も毒島がほとんどこなせるので
火渡はヒマになってきた。
(また強盗来やがれ。退屈しのぎにゃあなる)
でも強盗は来ず、何事もなく一日が過ぎた。
六日目と七日目も同じく。
ヒマな一日ではあるが、しかし毒島は小さい体でせっせと頑張っている。
商品の整頓をしたり、掃除をしたり、ガラス窓を磨いたり、書類をずっと書いてたり。
火渡は段々、その姿を見るのに腹が立ってきた。
「なぁ、店さえ見ときゃ、老頭児からの任務は完了なんだぜ。
だから気張ったって何の得にもなりゃしねえ。事務所で少しぐらいサボってろ」
命令口調でいうと、毒島はガスマスクに汗を浮かべた。
原理は分からんが、困っているらしい。
「そのですね、火渡様。あの… その」
「もたついてねェでさっさとどうするか答えろ。
答えねェと殺す。ただし逆らっても殺すぞ」
ドスを聞かせた声に観念したのか。大声が上がった。
「お洋服を売るのが夢でした!」
「は?」
「ですから、私は小さいからお洋服を売るのが夢…
やっぱりヘンですよねこういうの… 笑ってください」
レジ番をしてたガスマスクが俯いた。
背丈が低いので、排気筒がレジカウンターに当たりガスがでた。
その頃、試着室で着替える千歳を根来が覗いていた。
28スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:14:15 ID:dMLcvPxO0
根来というのは、所有する忍者刀の武装錬金
『シークレットトレイル』の「斬りつけた物に潜り込める」
という特性を利して、奇襲や覗き、同性との合体といった
アブノーマルな挙動を繰り返すろくでもない戦士だ。
「ぬうぅっ!? 防人君以外に肌を晒そうとは何たる不覚! そして恥辱!」
千歳はバールを手にした。
店中にこだまするは割れる鏡と絶叫のハーモニー。
すわ何事かと、客が試着室をとりまいた。
しかし所詮は野次馬で、口々に勝手な思惑を述べるのみ。
どいつもこいつも役立たずのクズだ。
誰ひとりとして根来を助けようとはしない。
根来は元々人間が嫌いで、人と関わりあいたくないので錬金戦団に入った。
いわんや、まともな恋の経験に興味などなく、おかしなプレイでしか興奮できない。
後輩の手作り弁当とカップラーメンじゃ、断然後者だ。
だからますます人間が嫌いになり、そしてアゴに炸裂するバールへ
新たな悦びを見出しつつある。
さてこの状況、店員としちゃ対応しなくちゃならない。
知り合い同士のイザコザなら尚更だ。
毒島はハっと顔を上げ、試着室に群がる黒山の人だかりを見、こんなコトを言い出した。
「で、でも、お客さんの為に頑張るのも、戦士として頑張るのも
同じじゃないかと私は思っています」
だから行くのか、それとも、おかしな話を聞かれたから逃げたいのか。
小柄な体は踵を返し、走りだそうと試みた。
しかし火渡のほうが早かった。彼はレジカウンター越しに背中を蹴った。
威力は弱めだったが、哀しいかな。体格の差がありすぎる。
「わぁー!」
盛大にすっ転んだ毒島は、何が何やらといった様子でキョロキョロした。
目のガラス部分にはヒビが入り、少々無残な格好だ。
「…良かったじゃねえか」
「はい?」
ここでようやく蹴られたと毒島は気付いたが、疑問はますます増えた。
まぁ、理不尽な暴力はいつものコトだが、何が良かったのだろうか。
29スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:15:51 ID:dMLcvPxO0
「念願が叶ってよ」
そういう火渡は頭をクシャクシャと掻き毟り、不機嫌そうに瞑目した。
その姿が毒島にはバツが悪そうに見えて、なんだか嬉しいやら照れくさいやら。
「え、えぇ、まぁ」
職務を忘れて、また俯いた。照れているらしい。
そして肉の弾ける音がした。試着室の方からね。

八日目。
イコール五月六日・金曜日。
予定ではこの日が終わりだったが、突如現れた照星が
『予定が変わりました。日曜日までお願いします』と伝えた。
火渡は憤慨したが、アバラを六本ほど折られてしぶしぶ了承した。
試着室では、根来を殴打していたバールがぼきりと折れた。
「クソが! 捨てたハズの良心がどうして今さら痛みやがる!
さ、防人君のばかぁ!」
千歳は舌打ちをすると、折れたバール(幼稚園の頃から使っていて愛着は深い)
に合掌し、変えのバールを買いに試着室を出た。
根来の生命、いつまで持つか。

九日目。
円山が遊びにきた。
オカマで、一発ごとに身長を15cm吹き飛ばせる風船爆弾の使い手だ。
「人が下らねェ延長くらってイラついてる時に
何のほほんと遊びにきてんだテメェ! ブッ殺すぞ!」
「まぁまぁ火渡ちゃん。
今日はオフだからざっくばらんに話しましょう。
それに何より今のアタシはお客サマ。大事にしないと怒られちゃうわよ」
円山は商品を物色した。
凄まじい形相の火渡を煽るように、しばらくわざとらしい歓声をあげると
やがて毒島のいるレジで会計をすませ、火渡に駆け寄った。
毒島はその様子を不安そうにじっと見たが、お客さんが来たので慌てて対応した。
「用がすんだらとっとと帰りやがれ。店ごと蒸発させるぞ」
30スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:16:28 ID:dMLcvPxO0
「つれないわねぇ。まぁいいケド。
ね、ところで火渡ちゃん、明日が何の日か知ってる?」
「知らねェな。俺がクソ忌々しいこの仕事から解放される記念日か?」
「ブッブー!」
円山はヘンな顔をして×サインを作った。
試着室からは弱々しい歓喜の声が響いた。命と引き換えの快楽を根来は味わっている。
正解は彼の命日かも知れない。
客が去り、毒島は火渡たちをちらちら気にしだした。悟られないようさりげなく。
のつもりだが円山にはバレバレで、彼は毒島へ意味ありげな笑みを贈った。
毒島はしゅんとした。何らかの敗北感を感じているらしい。
円山の話、続く。
「明日はね、職場の人にカーネーションを送る日なのよ」
もちろんウソだ。火渡をはめて後でからかいたいだけなのだ。
不快の色が濃くなった火渡をよそに、円山はつらつらと話を進める。
そうまるで、あらかじめ決めていたコトを強引に導くように……
「まず犬飼ちゃんは、残念ながらここには来れないわ。
だって今ごろちょうど15cmでドブネズミの群れと戦っている頃だから。
彼の身長は165cmだからあと一発でキリ良く消滅よ。クスクス。
戦部は山(ペトラピンダータ。ブラジルの秘境)へクルピラを食べに行き
アタシはそうね…そう、川に洗濯へ行かなきゃいけないのでムリ。
根来はもうすぐ死んじゃうみたいだし、防人戦士長は千歳サンを
ようやく遊園地に誘えるとかどうとか。
大戦士長サンはお仕事があってここには来れないし
何より、六月の第三週あたりに白いバラを贈るべきなのよ。
おやおや、じゃあ毒島ちゃんしか残ってないわねハイ決定。
ちなみに大戦士長サンも同じコトを考えていたらしく」
円山は懐から紙を取り出し、丁寧に広げると火渡に見せた。

五月の第二日曜日に、戦士長・火渡は、戦士・毒島に
カーネーションを送りなさい。でないと、分かってますよね。

「というカンジの指令所があるので、ちゃあんと贈りなさい」
31スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:17:11 ID:dMLcvPxO0
火渡は笑った。
「ケッ。やりゃあいいんだろうやりゃあ。
どうせ散々不条理なメを見たんだ。今さら別に関係ねェよ」
笑うと、頬がニュっと裂け、肉食爬虫類のごとき獰猛な印象がある。
褒められた笑顔じゃないが、毒島は遠巻きに見て、ますます落ち込んだ。
「そうそう。素直なのはいいコトよ。
そだ。アタシが警備員してあげるから、今からカーネーション買って来なさいな。
善は急げよ火渡ちゃん」
口に手を当てて笑うオカマを、火渡は少し不信な目で見た。
妙に親切なのが気に掛かる。しかし、サボる好機を逃すほど忠実でもない。
「んじゃあちょっくらフけるぜ」
そういうと、乱暴な戦士長は店を出、終日ついに帰らなかった。
毒島は理由を聞いてみたが、円山ははぐらかすだけで要領をえない。
仕方なく、トボトボと一人寂しく小さな歩幅でホテルへ帰った。

九日目。つまり五月八日・最終日。
まず、千歳が試着室から引き取られた。
迎えに来たのはキャプテンブラボー。
火渡と同じく戦士長の彼は、GWで身動き取れず
千歳との約束をフイにしかけていた。
だから千歳は、根来を打ち据えるほどにやさぐれていた。
「すまなかった千歳」
「…私の方こそ。ゴメンね防人君」
互いにしばらく謝りながら、二人は店を出た。
入れ違いに救急車が来て、放置されてた根来を聖サンジェルマン病院へ搬送した。
消耗は凄まじく、彼は輸血と亜鉛の投与を余儀なくされた。
しかし根来は後悔していない。
多くの傷と引き換えに、かけがえのないモノを手にいれたからだ。
メガネをかけた看護士が、身動き取れぬ根来を検温した。
部位は伏せるが、思った。
「バールよ、さらば」
そして体温計が好きになった。
32スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:19:14 ID:eUpiPqIf0
「え?」
「だから、今日はこういうのを贈る日だろ。さっさと受け取れ」
綺麗な赤い花が、ガスマスクに突きつけられている。
突きつけられた当人は、グルグルと混乱を始めた。
今日は母の日ではないか。
なのにこの凶悪極まりない戦士長はどうしてカーネーションを自分に贈るのか。
「その、火渡様。私は、火渡様より年下ですよ。
背だって本当に低いですし、何よりお役に立ててるかどうか。
えと、何と言いますか、私は違うんじゃ」
「んな話は聞いてねェ。テメーはこの花を俺から受けとりゃいいんだ。
俺ァ、昨日の夜まで探し回ってたんだ。クソ、あのカマ野郎め
サボらねェ方が楽だったとはどういう了見だ。とにかく受け取りやがれ」
「ですから、その、今日は…」
「いいな!」
赤々と燃えるような花束が、毒島にぐいと押し付けられた。
ああ、恨むべくは円山の悪ふざけ。
哀れ火渡は、五月の第二日曜日の意味を誤解して
同僚を母とみなす行為とも知らず、ただ去り行くのみ。

毒島は困った。
しかし捨てるのはしのびないので
カーネーションを押し花にして、大事に大事に保管した。終わり。
33スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:20:14 ID:eUpiPqIf0
以上。
タイトルは便宜上、「錬金戦団のあれこれ」とでも。
34作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 23:36:53 ID:VDlrYCXQ0
>>1さんお疲れさんです。俺立てれませんでしたw

>白昼夢作者氏
ひとつの漫画からと思ったら、複合してたらわかんないよ!w
なんとなくデスノは分かりましたけどね。吉良はわからなんだなあ。
しかし最後の一行で綺麗に収束しましたね。また是非新作を!

>スターダスト氏
始めまして。投稿毎にリアルタイムで楽しませて頂きましたw
最初のドモホルンリンクルのベタな笑いにやられました。
最初硬い文体なのに、徐々にくだけて来て毒島が締めましたね。
次回作も期待しております。でもこの分量は、正直2回に分けて欲しかったw


また盛ってきて住民は楽しいけど、バレさん大変だなあ。
35作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 00:20:56 ID:h3N3WXDz0
短編なれど力作、名無しさんとスターダストさんGJです。

・白昼夢
前編中編と隠しておいて後編の今回で名前を明かすのは推理小説みたいですね。
結局名無しさんで通されたけど、今まで何か書かれた方ですかね?
・錬金戦団のあれこれ
微妙におかしな連中が集まっている錬金戦士たちのおかしな日常が楽しいです。
一番人気のブラボーか蝶を主人公にまた一本どうですか?
36HUNTERxHUNTER フランス料理の味が分からない男:2005/05/15(日) 11:02:47 ID:JQAGVJ8/0
 キルアという名のガキがいる。殺し屋一家の末っ子でものすごく強い。どれ
ぐらい強いかというと、ダーツが腕に刺さったぐらいでもんどりうって泣いて
痛がるぐらい弱い。
「うひー!」
 次々とダーツが飛んできて、正確にキルアを撃ち抜いていく。キルアは森の
中をメチャクチャに走って逃げて自宅に戻った。殺し屋界の大立者である父親
に助けを求めるためである。
「オヤジー! 助けてー!」
「死ねー!」
 玄関のドアを開けたら父親が斧を振り下ろしてきた。父親は偉大な殺し屋な
ので、全人類が殺しのターゲットなのであった。キルア、絶体絶命!

「とー!」
 男の投げたダーツが的に命中した。それを見ていた女が拍手をして無邪気に
笑っている。近頃キメラアントという虫ケラ軍団が人間様に盾ついて各地で暴
れ回っていて、男と女はキメラアントのオロソ兄妹だった。オロソ兄妹の特技
は遠隔操作のダーツ攻撃で、妹の作ったバッジを付けられた人間が標的になる。
兄の投げたダーツが的に当たると標的にも刺さる。愛と信頼の絆で結ばれた兄
妹の、史上最強のコンビネーションである。今回の標的はもちろんキルアだ。
「兄さん、次でとどめよ!」
「でりゃー!」
 ダーツは妹の眉間に突き刺さった。晩飯の魚の数が原因で二人の仲は険悪と
なり、兄はずっと妹殺しのチャンスをうかがっていた。妹は死んだ。
「妹、討ち取ったりー!」
 無敵のダーツ攻撃にも弱点はある。的を外すと兄妹も死ぬ。
「妹よー!」
 兄も死んだ。大の字に倒れた兄の指が、冷たくなった妹の指にそっと触れた。
37HUNTERxHUNTER フランス料理の味が分からない男:2005/05/15(日) 11:03:24 ID:JQAGVJ8/0
「キルアー!」
 ハンター仲間のゴンがかけつけた時には、キルアはすでに虫の息だった。体
のあちこちにダーツが刺さっているが、一番出血がひどいのはパックリと割れ
た背中のキズだった。ゴンの目の前にはキルアの父親が立っていて、血に濡れ
た斧を狂ったように振り回している。一見すると、このキチガイが犯人のよう
にも見える。
「それは違うぞ、ゴン!」
 二階からゴン達の上司のモラウが降りてきた。ハンターの仕事は人助け全般
で、鍵の修理から一揆の鎮圧まで何でもやる。モラウの任務はキメラアントの
王の退治であったが、王があまりに強いのとかったるいのとで、ここでずっと
寝こけていた。死んだように眠っていたので、キルアの父親にも殺されずにす
んだ。
「オレは一部始終を見ていた。キルアがどうしてこうなったかというとだな」
 寝ていたのだから見ている訳がない。しかしハンターはそんな細かいことは
気にしない。モラウはキルアのケツからダーツを抜き取って歩き出した。
「このダーツがふらふらっとこっちからだな」
 ダーツを持って外に出た。ゴンも後ろからついてきた。キルアの父親は斧の
振りすぎで肩を壊して引退した。
「まだまだずーっとあっちの方からな、飛んできてな」
 モラウとゴンは山越え谷越え海を渡って、一軒の民家にやってきた。鍵のか
かったドアを蹴り破って中に入ると、男女のキメラアントが手を取り合って死
んでいた。正面の壁にかかったダーツの的の前で止まって、モラウはダーツを
握る手に力をこめた。
「こうだー!」
 的のど真ん中にダーツを突き刺した。的にはキルアの絵が描いてあって、中
心部はちょうどキルアの心臓だった。
「でな、あっちの喫茶店のモーニングがブレッド食い放題でな」
 モラウとゴンは民家を出て、そして二度とキルアの元へは帰らなかった。
38作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 11:06:16 ID:JQAGVJ8/0
>近頃キメラアントという虫ケラ軍団が人間様に盾ついて各地で暴
>れ回っていて、男と女はキメラアントのオロソ兄妹だった。

ここ、直すの忘れちゃった。やっぱ焼肉にしときゃよかった。
39作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 12:10:18 ID:ZZCUoMqKO
キャラ崩しすぎてて逆に笑えない。ネタにするような漫画、場面じゃないし。
ネタも使い回しの感がいなめない。
親父をキチガイにするには無理があるし、やるならもっと笑える理由付けがほしかった。
全体的に、悪く言うと適当に書いてる気がする。
まあそうなのかもしれませんが。
40作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 12:28:24 ID:PoFg08SH0
新人さん?
41作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 13:20:54 ID:3U4L+Yc50
VSさんかと思った。
42作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 15:12:13 ID:Kha9LPnvO
文体的にVSさんじゃねぇ?
43作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 15:30:39 ID:9ajcpc6W0
間違いなくVSさんだろうね。
VSさんの作品は会わない人には徹底的に会わないから、
絶賛か酷評しかない人。俺は好き。
でも今回はブランクからいつものキレが足りない気がする。

しかし、麻雀とバキヤクバレを投げ出してまで新作を書いた心意気を買います。
44作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 18:05:53 ID:DW7tmiyzO
VSさんにしちゃ拙い。違うだろう。
45作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 18:15:42 ID:ZZCUoMqKO
「◯◯助けてー」
「死ねー」
ってやつ、十回ぐらい見てる気がする。
46作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 19:01:05 ID:JQAGVJ8/0
>>44
違くないです。久しぶりのネタ書きなんで
これでマジカンベンして下さい。
ぼちぼち何か書いていけたらいいと思っております。
47ドラえもんの麻雀劇場EXTRA:2005/05/16(月) 02:23:51 ID:vfcGXwoK0
「ドラえもーん! ボクを英語ペラペラにしておくれよー!」
「はい、ほんやくコンニャクー」
 ドラえもんはのび太の口にコンニャクの塊を放り込んだ。のび太は怒涛の英
語力を身につけた。
「わーい! アイキャンスピークイングリーッシュ!」
 流ちょうな英語で喜びを表現して、背後の外人に話しかけた。オーとかイエ
ーとか頷いて噛みタバコをペッと吐き捨てて、またドラえもんに向き直った。
「あのねあのね、三千万円用意しないと、この人ボクを撃ち殺すんだってさ!」
 外人は大変コワイ顔をして、のび太の頭にゴツい銃を押し付けている。ドラ
えもんは笑顔でのび太に訊いた。
「どうだいのび太くん、英語が話せるって素晴らしいことだろう」
「もうサイコー! これでボクもハリウッドスターの仲間入りだね!」
 のび太は嬉しそうに答えて床をのたうち回った。鎖で緊縛されているので体
の自由は一切きかない。
「そういう訳でドラえもん、三千万円プリーズ! ハリアップ!」
「ちょっと待っててねー」
 ドラえもんはのび太の部屋を出た。のび太の受難に心を痛めつつも居間でく
つろぐパパとママに、犯人の要求を伝えてあげた。
「よし! パパ頑張ってお金を作るぞ!」
「愛するのび太のためならママ、体だって何だって売っちゃうわ!」
「三人が一千万円ずつ集めて三千万円だ! みんなでのび太くんを助けよう!」
「オー!」
 三人は天高く拳を突き上げて、勢いよく家を飛び出した。
48ドラえもんの麻雀劇場EXTRA:2005/05/16(月) 02:24:25 ID:vfcGXwoK0
「はい、一千万円!」
 パパが居間の机に万札を積み上げて、鼻息荒く言った。
「会社の金庫にこれだけあった! 盗んだ!」
「はい、ママも一千万円!」
 ママも一千万円集めてきた。ぜんぶ五百円玉だった。
「繁華街でパンパンやってきたの! 二万人と寝たの!」
「はい、ボクはこれ!」
 ドラえもんが使用済みパッキーカードの束をぶちまけた。三人の合計金額は
二千万円となった。
「残りはたったの一千万円だ! のび太くんが待ってるぞ!」
「オー!」
 三人は再び金策に奔走した。ドラえもんは二千万円を軍資金に充てた。

「ただいまー!」
 まずパパが帰ってきて、五百万円を居間の机に置いた。
「パパ、車売ってきた! 他人のベンツ盗んで売ってきた!」
「ママもただいまー!」
 やはり五百万円を稼いだママが帰ってきた。書類を一枚持っていて、なんだ
かよく分からない国の文字が書いてある。
「ママ、のび太売ってきたの! のび太はアフリカ行きの船に乗るの!」
「はい、おみやげー!」
 最後にドラえもんが帰ってきて、二千万円分のはずれ馬券の束をぶちまけた。
これで合計金額は一千万円。なぜかさっきよりも一千万円減った。
「らちがあかーん!」
 ドラえもんの怒りが爆発した。一千万円を机ごとひっくり返して、パッキー
カードとはずれ馬券と一緒にビリビリに破いてゴミ箱に叩き込んだ。
「こうなったら強行突入だ! ボクには未来の秘密道具がある!」
 ドラえもんはパパとママにほんやくコンニャクを食べさせた。二人は無敵の
英語ペラペラ戦士になった。
「悪い外人をやっつけるぞー! 突撃ー!」
「オーマイガー!」
49ドラえもんの麻雀劇場EXTRA:2005/05/16(月) 02:25:12 ID:vfcGXwoK0
 のび太の部屋に踏み込んだ。外人は五人に増えていた。
「最初の人のお友達だって! みんな三千万円欲しいって!」
 のび太は目をキラキラ輝かせながらドラえもんに言った。ドラえもんはしば
らく考えて、そして言った。
「とりあえず、これ食ってみて」
 五人の外人にほんやくコンニャクを食べさせた。
「サンゼンマンエン、クダサーイ!」
 全員日本語ペラペラになったところで新しい客がきた。ヤクザが自転車に乗
ってやってきて、窓の下から下品な声で喚き出した。
「ワシのベンツをパクったのはおんどれかー!」
 どうやらパパの客らしい。ドラえもんはメンチを切って対抗するパパを押し
のけて、ヤクザにほんやくコンニャクを投げつけた。
「ミーノベンツハ、ドコデスーカ!」
 ヤクザはコンニャクを食って日本語ペラペラになった。休む間もなく、今度
は部屋のふすまが乱暴に開いた。見たこともない男が現れて、早口でまくし立
てた。
「アベラバレ。ロベカルヒブブブブガジボヤーハ」
 何語なんだかさっぱり分からない。ドラえもんは男にほんやくコンニャクを
食べさせた。日本語ペラペラになった。
「ノビタイルカー! フネガデルゾー!」
 のび太を迎えに来た船長だった。ヤクザも部屋に入ってきて、全員で口汚く
罵り合っている内にすっかり意気投合して、のび太を胴上げすることになった。
「ワーッショイ! ワーッショイ!」
 宙を舞うのび太の目に歓喜の涙が光る。ドラえもんはのび太に尋ねた。
「のび太くん、今の気分は?」
「エクセレーント!」
 英語が話せるとこんなにいいことがある。みんなも英語を勉強しよう!



50ドラえもんの麻雀劇場EXTRA:2005/05/16(月) 02:26:26 ID:vfcGXwoK0
もう一本書いた。これはどんなもんだろか。
51作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 03:00:10 ID:mppb5+Em0
おもしろいです。
52作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 08:27:08 ID:6bH+gAVL0
一本ごとに全盛期VSさんに近づいていく気がする。
直前のハンターよりは面白い。
(といか、ハンターの漫画自体がVSさんの芸風に合わない気がする)
しかしまた3ヶ月ほど休載してしまう悪寒もする。
とりあえずお疲れ様です。
烈といい今回の変な外人といい、VSさんのネタに妙な外人はつき物ですな。
53不完全セルゲーム:2005/05/16(月) 19:58:21 ID:O4JEbCoy0
前スレ>>573より。
54不完全セルゲーム:2005/05/16(月) 19:59:06 ID:O4JEbCoy0
第五話「英雄伝説」

 ──荒れ果てた山岳地帯。
 16号が放ったヘルズフラッシュにより、山々が完全に崩壊しつつある。取材や救出活
動のためか、多くのヘリコプターも見受けられる。
「やれやれ、とんでもないことになったものだ」
 低空飛行にて、故郷を探すセル。これでは研究所も大破してしまっただろうが、セルを
開発した地下室は無傷なはずだ。
「この辺だったな……」
 セルが地面へと、小型エネルギー弾を次々に放っていく。小規模な爆発が数ヶ所で起こ
り、やがて人工的な施設が姿を現した。喜ぶセル。
「くっくっく……さて入るか」
 ヘリコプターに気取られぬよう注意しつつ、セルは地下研究所へと入っていった。
  
 静寂に包まれた地下室に、コンピュータが一台だけ佇んでいる。
「気は進まんが、仕方ない。こいつしか頼れる者はいないからな……」
 巨大なレバーを上げ、電源を入れる。すると、コンピュータに付属された計器類が、ま
とめて動き出した。
 しばらくすると、スピーカーから音声が発せられる。完全に蘇生したようだ。
「おはよう、セル」
「……おはよう」
「君がここに来たということは、完全体になったということか。まずはおめでとう」
「いや、まだなってないんだ。クリスタルも、まだ一つとして吸収していない……」
「なっていないだと!」
 激昂したコンピュータは、内臓されているエネルギーを一気に外部へと放出した。
55不完全セルゲーム:2005/05/16(月) 19:59:48 ID:O4JEbCoy0
 突風にも似た気迫が、セルに押し寄せる。コンピュータからは、放電現象のようにスパ
ークが迸っている。故障はしないのだろうか。
「完全体になっていないなんて、絶対に許せない!」
「いや、だから……。これからなるから……」
「“これからやる”……そういって、ちゃんと宿題をこなす児童は存在しない!」
「ヒィッ!」
 コンピュータは仕込まれたアームで、セルに強烈なアッパーを浴びせた。さらに、倒れ
たセルに追い討ちをかけるように猛烈な連撃を打ち込む。
 岩をも穿つ威力を誇る猛連打を受け続け、ついにセルが昏倒する。
「セル、立たんかッ!」
 すっかり、体育会系となってしまったコンピュータ。心も体も打ち伏せられたセルに、
もはや立ち上がる力は残されていなかった。
「立てないのか。ならば、完全に消え去ってしまえ!」
 再度エネルギーを放出し、コンピュータが眩い光に包まれる。
「フハハハハ……! 私が全エネルギーを使えば、地球は粉々に砕け散る! こんな下ら
ぬ天体など、セルもろとも跡形もなく滅んでしまうがいいッ!」
 激怒によりプログラムが破綻し、暴徒と化したコンピュータ。このままでは地球が危な
い。セルはわずかに残っていた力を振り絞り、心底から叫んだ。
「俺は完全体を諦めたわけじゃないんだ! ただ、クリスタルについての情報をもらいに
来ただけなんだ!」
 すると、コンピュータはエネルギー放出を中断した。魂を込めた説得は、どうやら機械
にも伝わったらしい。
「そうだったのか。さっきまでのは水に流してくれ」
 ──こうして、セルは人知れず地球を救ったのであった。
56不完全セルゲーム:2005/05/16(月) 20:01:00 ID:O4JEbCoy0
 正座をするセルに、コンピュータがクリスタルについて解説を行う。
「水、火、風、土、炎。これら五つのクリスタルは、名称と関係のある場所へ存在するは
ずだ」
「例えば?」
「そうだな……。水のクリスタルは海や川、といった具合だな」
「よし分かった! さっそく海と川を調査しに行ってやる!」
「ちょっと待て、このセミが! 話は終わりまでちゃんと聞け!」
「セ、セミって……」
 尋ねるセルを無視して、コンピュータは説明を強引に再開する。そろそろセルに付き合
うのが面倒になってきたようだ。
「ドクター・ゲロが申すには、クリスタルは五つとも地上にあるらしい。よって、海底や
川底を探しても意味はない」
「なるほど」
「以上」
「へ?」
「もう知らん」
 予想以上にあっさりと、解説は終了してしまった。まずは呆気に取られたセルが、次に
思い返したのは人造人間たち。もっと決定的な情報を持っていかねば、下手をすれば殺さ
れる。
「こんな大雑把な情報で、クリスタルを発見出来るわけないだろう!」
「ではセル、こちらから問おう。この地球上で、海と陸地とではどっちが広い?」
「くっくっく、俺をなめるなよ。海に決まっている!」
「だろ? そして、さっき私が渡したヒントで、クリスタルは地上にしかないと分かった
はずだな?」
「うんうん」
「……つまり、おまえは既に、広い地球上の半分未満に捜索ポイントを絞ったわけだ!」
「なぁるほどォ!」
 セルは納得した。納得してしまった。意気揚々とスキップで研究所を出ていくセルを見
送ると、コンピュータは細々と音声を流す。
「……セル、死ぬなよ」
57サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/05/16(月) 20:02:23 ID:O4JEbCoy0
コンピュータ再登場。
次回から本格的にクリスタル探し開始です。
58作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 20:52:48 ID:6QH1N0s00
コンピュータに折檻されるセル…
しかし、その気は無しに世界を救ってしまうところはミスターサタンっぽい。
性格も似てるし。ヤムチャよりよほどマシか。
しかしコンピュータもセルもいいやつっぽいですね。
59作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 21:30:37 ID:Lcuxdfkz0
サナダさんお疲れー
セルとコンピュータになにか友情を感じる。
クリスタル探しか。ファイナルファンタジーみたいだ。
60作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 01:42:54 ID:y9mxIfUq0
サナダムシ氏乙
セルもだけど、コンピューターも相当アレな性格してますね。この話のセルの人格のモデルは
サイヤ人やフリーザじゃなくてコンピューターのようなきがしてきました。
61作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 08:12:58 ID:BZvqAmsJO
宣伝

ジャンプキャラ主人公&ヒロインバトルロワイアル
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1115216913/
62作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 08:15:59 ID:YppTAqeC0
お、VS氏復活してる。またのご活躍期待してます。
サナダムシさんも乙。セシコル可愛いですね。
63ラーメンマン青年記:2005/05/17(火) 19:44:34 ID:bbWjLhLE0
<超人アーリーデイズ   ラーメンマン編 後編6>
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ra-men/09.htmの続き

恐ろしい。
ラーメンマンの闘志の炎は、目の前の男の寒気に掻き消されそうになっていた。
同じ超人拳法を学んだ者同士ではある。技には共通している点は多い。
が、所詮自分は道場拳法に過ぎない。戦場を知らない戦士未満の存在。
命懸けの修行はしていても、命のやり取りはこれが初めてである。しかも、格上相手…。

それに、郭 春成にはタブーは無い。ただ敵を倒して制圧する。それだけである。
卑怯も何も無い。拳士の誇りなどとうに捨てているだろう。先程の暗器が証拠だ。
いや暗器だけでなく、勝つ為ならこの男は平気で銃火器でも使うだろう。
(この男と俺では、……心構えが、違う)
その善悪は問う所ではない。だが、『生き残る』事に掛けて正しいのは春成だ。
人としては、わからない。今は問う所でもない。

ゆっくりと死神が影を連れて近づいてくる。怖い。
が、先程の応酬で技量は絶望的なほど差がある訳ではない事はわかった。
ならば、最初の攻撃を避けるのに全神経を集中する。しかるのちに、反撃……。
春成は無造作に近付いてくる。ちらり、とナイフをちらつかせながらである。
ラーメンマンの冷静さが乱れる。今度は恐怖からではない。屈辱からである。
俺がそんな小さな刃物ごときを、恐れるとでも?

「心が、揺れているな。不動心失格だな、お前は」
春成はそう嘯くと、ナイフにキスをした。身構えるラーメンマン。刺す? 投げる?
だが違った。春成はそのナイフを、ふんわりと放ったのである。
子供にも避けられるような速度で。が、ラーメンマンの意識外の、予想外の攻撃である。
ラーメンマンの闘気が明らかに鈍る。
64ラーメンマン青年記:2005/05/17(火) 19:45:33 ID:bbWjLhLE0
速い攻撃には慣れている。殺意のある攻撃ならいくらでも対処できる。
だが、無作為に放っただけのナイフに、ラーメンマンは一瞬釘付けになってしまった。
達人に近き故に、『無意味』と思われる行動には戦闘回路が慣れてはいないのだ。
なんの威力も無いようなフェイクの攻撃。当たった所で、一筋の血が流れるだけだろう。
だが彼はそのゆっくりと落下するナイフを必要以上に警戒し、全力で避けてしまう。

(毒? 毒が塗られているのか? それとも、ナイフの柄に火薬が仕込んである?)
一瞬の間に様々な思考が錯綜する。が、全ては杞憂である。だがその杞憂は隙になる。
からん、と小さな音を立てて転がるナイフ。ほっとするラーメンマン。
だがその弛緩の一瞬、歴戦の兵である春成は見逃さない。

腹が爆発する錯覚を覚え、小さく喀血した。何時の間にか、懐に春成が潜り込んでいる。
深々と右拳が突き刺さっている。声を発する事が出来ない。息すら苦しい。
「甘いな。もしかしたら拳の技量だけなら俺と競るかも知れねえ。が、綺麗過ぎる」
反撃。脳が必死に左腕に命令する。拳を振り被ろうとする。しかし、春成が速い。
「グハアアッ」
無様な声を上げ、鼻血を噴出すラーメンマン。春成の頭突きが鼻骨を叩き負ったのだ。

更に心臓に必殺の拳、命奪崩壊拳が迫る。駄目だ、これをまともに食らえば死ぬ。
必死で両腕で心臓をガードした。だがそれを吹き飛ばし、胸に突き刺さる拳。
ほんの僅か両腕のガードで威力が殺がれ、心停止は免れる。しかし、絶体絶命である。

65ラーメンマン青年記:2005/05/17(火) 19:46:23 ID:bbWjLhLE0
まるで無理矢理犯される処女のような恐怖の表情を浮かべるラーメンマン。
駄目だ。殺される。修行中の俺がこんな怪物に挑む事自体、無理だったんだ……。
まるで気が触れたように叫ぶラーメンマン。目からはどくどくと涙が溢れる。
しかしサディスティックな嘲笑を浮かべて春成は言う。
「おいおい、命乞いしそうな勢いだな。だが許さねえよ。散々いたぶって殺す。
 俺はおめえを殺した所で何も心が動かねえからな。これぞ、不動心ってヤツだ」

腰から力が抜けていく。絶望というものがこれほど生命力を奪うものとは。
その場にへたり込み、春成を見上げながらずず、と後退さる。しかし春成は逃がさない。
ラーメンマンの顔面へ強烈な蹴りを叩き込んだ。鼻が完全に潰される。
パアン、と破裂音がした。意識が飛び、何が起こったのか判るまでしばらく掛かった。
春成の掌により、右鼓膜が破られたのだ。

こいつは本当に俺を嬲り殺す気だ…。
全身がガクガクと震える。恐怖で叫びそうになるのを止めたのは春成である。
「てめえの叫び声は色気もねえ、五月蝿いだけだ」
喉笛に手刀を突き刺し、邪悪に笑う。ゴホゴホと蒸せ返る。唾に血が混ざっている。

66ラーメンマン青年記:2005/05/17(火) 19:47:38 ID:bbWjLhLE0
「鼻、耳、ノドと来たから、次はやっぱり目を潰すかあ?」
抑揚の無い声が、破られていない左鼓膜より響く。ラーメンマンは悟った。
こいつのは不動心などではない。ただ、心が死んでいるのだ。
闇に蝕まれ、感ずるべき人間的な心が潰れているのだ。心を喪失しているのだ。
無いものが、動いたりするだろうか。

(違う。やはり不動心とは、決して揺らがぬこころ、などという浅いものではない)
ラーメンマンは確信する。揺らがぬ強き心も不動心の側面ではあろう。
だが、それだけではない。もっと真摯で、大切で、そして純粋なものがきっとある…。

『真理はいつもまつ毛のようにすぐ目の前にあるもんじゃ』
高僧・朴念の言葉が蘇る。もう少しで、何かに届きそうな気がする。もう少し……。
しかし、ラーメンマンの刹那の自己問答は春成の拳によって破られた。
確実に、ラーメンマンの目玉を潰しにきたその拳。なんの逡巡も無い。
すんでの処で避わす。が、また黒雲のように恐怖がラーメンマンの心を包む。

発狂しそうな恐怖の表情でうずくまる彼を、春成は薄笑みを浮かべたまま蹴り続ける。
ラーメンマンはもう闘う気力すら失い、ただ体を小さく丸め、頭を両腕で包みこみ
必死で自分を守ろうとするだけである。それでも構わず、腕の上から蹴り続ける春成。
が、不意に蹴りの嵐がぴたりと止まる。不機嫌そうな声で唸る春成。
「死にてえのか、坊主」

春成のふくらはぎに、少年が狼のように噛み付いていた。
ラーメンマンが幼き頃の自分と重ね合わせた、あの少年である。
67パオ:2005/05/17(火) 19:53:37 ID:bbWjLhLE0
64と65の間に3行ほど抜けているな。ま、意味通るからいいか。
今回で終わらせるつもりでしたが、また1回伸びてしまいました。
思えば、これ人魚姫の直後くらいの始まりなんだよなあ…

まあ、金曜日までには最終回うぷ出来るようがんばります。
で、土日に3本くらいは更新したいな。
今月は後半ヒマなんで、何とか沢山更新したいです。
68作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 20:55:32 ID:+85rQmQs0
乙ー
ハルナリ強いですね。次回の最終回楽しみにしてます。
先週の新作とDIO早く読みたいな
69作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 22:25:04 ID:BxA6+bwRO
パオは爺ダナ
はよ寝ろや
70AnotherAttraction BC:2005/05/17(火) 22:28:43 ID:XgGRDDp10
前スレ565から
「じゃ、僕は用が有るからこれで」
そう言ってクリードは一人、適当な階で降りる。
高級ホテルであるためもう7・8人乗ってもまだ余るエレベーターは、彼らを乗せ、振動をまるで感じさせぬまま
レストランの有る階に向かう。
そんな中、ふとシャルデンの眼が思案するキョーコを認めた。
「どうしまシタ、キョーコ」
余程思案に没頭していたのだろう、突然話し掛けられた事によりはっと顔を上げる。
「あ、ええ…さっきから考えていたんですけどぉ……」
どうやらまだ疑問が形になっていないらしい、言葉の歯切れが悪かった。
「……クリードさん、何時の間にリオン君達のとこまで行ったんでしょうねえ?」
聞いてデュラムとリオンの顔から血の気が引いた。
そう言えばそうだ、あの轟音が鳴る前は確かに遠くにいた。にもかかわらず二秒足らずですぐ傍にいた。
走って来たのか? だとしても二人には感じ取れなかった。いや、それ以上に肩に手を置く代わりに刀を抜いていたら……
―――二人を殺そうと思えば、殺せたのだ。
その事実は筆舌が語る以上に、知らずクリードの忍耐に助けられた事を表していた。
「…気ィ付けなアンタ等。私等のボスはああ見えてキレ易いから、長生きしたきゃ滅多な事するんじゃないよ」
それを補完する様に美女が言葉を紡ぐ。
「ま、逆に言や相当馬鹿な真似しない限り大丈夫って事だけどね」…と、薄く笑って緊張をほぐすのも忘れずに。

「エキドナさん、ちょっといいですかあ?」
言われて彼女はキョ―コの方を向く。
「? 何だい、キョ―コちゃん」
新たな疑問が生まれたらしい、先刻の悩み顔はどこかに行っていた。
そんな彼女を見て、エキドナは「幸せだねぇ、この娘は」と微笑ましい溜息を胸の中で吐く―――が、
 
「エキドナさん、私より道が上手いんですよね? なのになんでクリードさんの側に付いてないんですかあ?」
71AnotherAttraction BC:2005/05/17(火) 22:31:11 ID:XgGRDDp10
表情こそ変えないものの、心の中で焦る。まさかいきなり核心を突かれるとは思わなかったからだ。
―――道を見事に駆使できる者に限り、クリードは同行や直接の使役を指示する。
事実、キョ―コ、シャルデン、シキはそれ故に早い段階からクリードの直属だった。
…道の強さを決するのは、そのものの強さではなく発想と創意工夫。それが初めから出来る人間はただでさえ少ない道士になお少ない。
例えば以前、気体を除くあらゆる物質を自在に操作できる道士が居たが、クリードはその場だけの評価を繕って潜伏させた。
案の定そいつはナンバーズに発見されるばかりか、無謀にも挑んで殺された。
その折キョーコが何故かを訊くと、「キミと違って工夫がなってない」とあっさり片付けたものだ。

「……個人的な用事が有ってね、まあクリードに許可は貰ってるから良いんだけど」
心中を完全に押し殺し、声音も表情も平静そのもので答える。別に何処もおかしくは無い在り来たりの物言いは、嘘かどうかは別と
しても外見的に疑いの粗は見出せない。従ってキョーコは勿論周囲もぎこちなくでは有るが、それで納得する。
そうしている内に、エレベーターはカフェラウンジの階で止まった。
72AnotherAttraction BC:2005/05/17(火) 22:31:58 ID:XgGRDDp10
「……待ってたよ、エキドナ。報告を聞こうか?」
先に下りたクリードは、自室に訪れた待ち人が入ってくるなり告げた。
「E計画は良好、Bは下拵えのまま保留、Cは完了、ってとこかね」
彼女も特に何という事も無く返す。
「結構結構、いい感じに進んでるようだ。キミが有能で助かるよ」
「…なら少しばかり慮って欲しいもんさね。あのお嬢ちゃんカン鋭くてさ、取り繕うのに一苦労だからね。
 それに、気取られない様に抜け出すのもまた…」
「…済まないね、色々と。先刻もキミが止めてくれなかったら………」
少し疲れた様な吐息で、モーニングセットのコーヒーを飲み干した。
「別にいいさ、アンタの目的は私の目的でも有るんだから。それより……」
クリードとは別に用意されたトレイからサンドイッチを取りつつ疑問を呟く。
「……そろそろ教えとくれよ。アンタの“お友達”に執着する訳をさ」
――――言われて気付く。考えてみれば当然か、まだその理由については誰にも教えていなかった。
二杯目を注ごうとした手を止め、手近な安楽椅子に腰掛けた。
「簡単さ。彼が来てくれればこの戦争、間違い無く僕らの勝ちだ。……クロノスだってきっとそう思ってる」
「また………持ち上げたモンだねえ。道士にでもするのかい?」
呆気に取られるのも無理は無い。いくら強くとも、たかが一人に戦況が揺らぐ物だろうか。言葉の裏を深読みすれば、
贔屓の感さえ伺える。そんなエキドナの返答に、クリードは薄く笑った。
「……まあ、してもいいんだけど生憎そんな必要は無いよ。
 あえて効率性のみで言わせて貰えば、トレインの価値は………核を越える」


―――――時と所変わって、その日の昼時。
トレイン=ハートネットは人をかわしながら、並ぶ露店の間をひた走る。必死に、全速力で。
走りに日頃のキレが感じられない。負傷でもしたのだろうか、何故か息も荒い。
その後をやはり必死に追う巨漢。怒号を発し、巨大な刃物を振り上げながらトレインに追いすがる。
その身を包む白服は所々薄汚れ、頭に乗った背の高い帽子も同様に汚れている。
巨漢は吠える。
73AnotherAttraction BC:2005/05/17(火) 22:32:49 ID:XgGRDDp10
「この、食い逃げがアア――――ッッツッ!! 金を払わんかァ―――ッツッ!!!!!」

………トレインを追うのは、彼に店の大半のメニューを制覇された挙句、食い逃げされた食堂の店主だった。
「待ッ……待て待て待て待て待て!!!! まずモグモグ…話し合おうじゃガツガツ……ないか! な!!?」
店の人気メニュー、「双首竜ヒレカツ丼」を掻き込みながら釈明する、が店主にトレインの意思は届かない。
「…笑わせるな、骨ごと挽き肉(ミンチ)にしてやるわ!!! 待ていこわっぱがアアアァァァ――――ッッ!!!!!」
酷く物騒な発言と同時に、店主は彼に肉薄する。意外に速かった。
「死ねィッ!!!」
携えた肉切り包丁を、手錠の世話になりそうな台詞と共に振り下ろす。
しかし、元クロノナンバーズNo,13の肩書きは伊達ではない、後ろ手に放った空のドンブリは見事に店主の顔に嵌まる。
当然店主は視界を失い、側の露店の一つに顔から突っ込んだ。巨体なだけに、露店は木っ端微塵に粉砕する。
彼が動かなくなったのを確認すると、店からガメて来たお冷やを一息に飲み干した。
「ふううぅ……悪いな親父。この世は正義が勝つ様に出来てンのさ」
倒れ伏す店主を指差し、スタイリッシュに決めた。何処かから「ズッギャアア――――――ン!」とか音が鳴る……のは流石に嘘だ。
「いやー、食った食った。どれ、さっさと……」
完全なる勝利を確信し、ホクホク顔で去ろうとしたトレインの足首を、異様にごつい手が捕まえる。
「な……何ぃ!!?」
「…ブフゥ〜、貴様ら意地汚い食い逃げ共がァ! どいつもこいつもズタボロの皆殺しにしてくれるゥ!!!」
割れたドンブリの隙間から覗く目は、憎悪の炎を溢れさせる。そのせいだろうか、一瞬トレインの眼にある人物が重なった。
「タ……タル○ス!!?」
――――――実際、それを彷彿とさせるガタイとド根性だった。
「……ふ、わしの店で食い逃げしたのが運のツキよ。
 絶望の悲鳴を発せ! 一度も食い逃げ犯を逃した事が無い、このわしが……! …………あれ?」
気が付くと、掴んでいた足は何時の間にか露店で売っていた大根に変わっていた。
周囲を見渡せば、かの食い逃げ犯が全力疾走で豆粒大になっている真っ最中ではないか。
「の………逃すかあああぁ――――ッツッ!!!!!」
何処ぞの吸血鬼の弁を借りれば、「悪魔もブッ飛ぶ」気迫と効果音(?)で、彼もまた駆け出した。
74AnotherAttraction BC:2005/05/17(火) 22:33:31 ID:XgGRDDp10
「スヴェン! やばいぞ、急いで銃を取れ!!!!」
宿の部屋に飛び込むなり、急いでドアを閉めながらトレインは愛銃を抜いた。
「気を付けろスヴェン。相手は歴史的ゾンビの片割れだ、気を抜くな!!! ――――って……スヴェン?」
……彼は、何処かから出した頑丈なロープでトレインを縛っていた。

――――やがて、ドアが怒号と共に吹き飛んだ。
「WWURRREEYYYYYY! こわっぱが!!! 此処に逃げ込んだのは判っている、出てこんかァ――――ッ!!!!」
そんな彼の前に、ふん縛って猿轡まで噛ませた下手人が突き出された。
「………持ってってくれ、こんな奴」
痛そうに頭を押さえる眼帯男が、疲れた様に食い逃げ犯を投げ出した。

………相棒がしょっ引かれるのを尻目に、部屋の中に眼を向ければ―――――
テーブルの上にスヴェンの物ではない請求書の山と、先刻「こいつはメチャゆるさんよなぁぁ」とバックブリーカーを
食らって虫の息で横たわるリンスと、慌てて介抱するイヴ―――――
「イヴ、ギャグパートなんだから治療なんぞしなくていい。放ッとけ!」
腹立たしげに突っぱねると、懐から胃薬の錠剤を取り出し瓶に口を付けて直に呑む。
「………どうしてこう、ウチはでっかいガキ共ばっかりなんだ……」
飲み込むと、今度は頭痛薬を取り出した。
75AnotherAttraction BC:2005/05/17(火) 22:39:49 ID:XgGRDDp10
えー、何かキレのいい挨拶を探してますが、見つからないNBです。
今回ちょっとギャグを入れてみましたが、如何でしょうか。
ギャグにしても挨拶にしても、冴えない時はとことん冴えないモンですねー……
ま、それはそれ、これはこれってことで今回はここまで、ではまた。
76作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 00:44:09 ID:7HkdMERBO
ギャグは妻らんからやらないほうがよいよ
77作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 05:10:23 ID:EgsorQCY0
ギャグ入れるのはいいけど
「ギャグパートなんだから・・・」
の下りはどうかと思う。俺が楽屋ネタ嫌いなだけかもしれないけど。
78おとめごころ:2005/05/18(水) 06:03:04 ID:J28NAfel0
>>ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1112530647/530-533
大鎌と鎖分銅が、唸りを上げて高速立体回転、鎌足を取り囲む結界を形成した。その
切れ味と破壊力と隙間の無さは、辛うじてではあるが蛇たちを残らず斬り潰していく。
鎌足はそうやって乱弁天を展開させたまま、少しずつ前進していった。
『……よし、何とかいける!』
「ほほう。思ったよりはやるな」
呼傑は動揺した様子も見せず、軽く跳び退いた。蛇たちもそれに従い、鎌足への攻撃を
やめて、包囲を解いて後退する。
「未熟者ばかりだったとはいえ、我が宝竜黒連珠の構成員を一蹴しただけのことはある。
ならば俺も、鐘家蛇彊拳の秘術を見せてくれよう!」
呼傑が、右手を振り上げる。すると蛇たちが一斉にその手に集結し、互いの頭から尾、
尾から頭へと連なっていき、一本の長い長い鞭となった。
その鞭は呼傑の頭上、空中でとぐろを巻いて鎌足の方に先端を向けている。
「これぞ鐘家秘技、蛇彊結徊匁! 大鎌を使う娘よ、貴様の命運今尽きた!」
呼傑が、蛇でできた鞭を繰り出した。鎌足に向かって真っ直ぐに、乱弁天の真っ只中へ。
全包囲一斉攻撃で通じなかったものを、こんな一本の鞭で何が……と思い鎌足は構わず、
乱弁天を止めずに前進していく。迫り来る蛇の鞭目掛けて、大鎌の刃を振り回す。が、
「っ!?」
蛇の鞭が空中で軌道を曲げ、鎌をかわしたのだ。そしてそのまま、まるで地面を這う
かのような動きで宙をうねり泳ぎ、分銅も鎖も巧みにかわしていく。
「無駄だ! 蛇彊結徊匁は、いわば隅々まで意志の通った生ける凶器! 
いかなる攻撃もすり抜けて敵に到達し、必ず咬み殺す!」
呼傑の言葉どおり、乱弁天はあっけなく突破されてしまった。蛇の鞭の先端、すなわち
大口を開けた蛇の牙が、唾液と猛毒を滴らせながら鎌足に迫る。
大鎌、いや大鎖鎌を高速回転させているこの状態では、素早い回避行動はとれない。
そしてその大鎖鎌が防御に使えない今、とるべき手段は一つしかない!
「くっ!」
鎌足は大鎖鎌から手を放して地に伏せ、横へと転がった。蛇たちは全て鞭になっている
ので包囲はなく、そのまま呼傑から遠ざかることに成功する。
だが回転中に手を放された大鎖鎌は、当然の成り行きとして回転しながら飛んでいく……
79おとめごころ:2005/05/18(水) 06:03:46 ID:J28NAfel0
「勝負、あったな」
蛇の鞭を一旦縮め、手元に戻した呼傑が冷酷な声で言った。
「可哀想だがこれは、試合ではない。殺し合いだ。従って、逃亡も降伏も認めない」
「……」
鎌足は、転がり逃げたその体勢のまま、立ち上がれないでいた。
大鎖鎌を失ってしまった今、呼傑の次の攻撃を防ぐ方法はないのだ。
「なかなか強かったぞ。お前のことは忘れぬ。さらばだ、大鎌を使う娘、本条鎌足!」
呼傑が蛇彊結徊匁を繰り出し、鎌足が恐怖に眼を閉じた、その時!
「鎌足いいいいいいいいぃぃぃぃっ!」
雪崩のような連続爆音と共に、地面スレスレを黒い塊が矢のように飛んできた。
次から次へと発破を自分の後方斜め下に投げ、翼の絶妙な操作で低空高速飛行して
いる、蝙也だ。
「? な、何だあいつはっ!?」
と呼傑が驚いた時にはもう、蝙也は鎌足と蛇彊結徊匁の間に割って入り、翼を大きく
広げて呼傑側に背を向け、鎌足を庇っていた。
だが呼傑とて、いつまでも驚いてはいない。もう鎌足の乱弁天はないと気づき、
振り上げ投げた蛇彊結徊匁を空中で分解させ、二人の頭上に蛇の雨を降らせた。
すかさず蝙也は、悲鳴を上げる鎌足を地面に押し倒し、外した翼をその上に被せて、
「伏せてろ鎌足、動くなよ! 必殺、直撃発破六連!」
降って来た蛇たちに、直に発破を投げつけた。爆炎と爆風が五つ連なって、蛇たちを
焼き焦がし吹き飛ばす。そして六つめは、立ち込めた爆煙に紛れて呼傑へと……
「ぅぐああぁぁっ!」
爆撃を喰らった呼傑が、蛇たち同様焼かれながら吹き飛んで、背後の大木に
背中から打ち付けられる。そこへ走り込んできた蝙也が、袈裟がけに手甲剣で一撃! 
呼傑は致命傷こそ逃れたが、肩から脇腹へと深く斬り裂かれてしまった。
「ぐくっ……、こ、ここは引き分けにしておいてやる! 間もなく開かれる
天挑五輪大武會に、主頭の俺が出ぬ訳にはいかぬのでな!」
捨て台詞を吐いて、傷を押さえながら呼傑は山を駆け下りていった。蝙也は深追いせず、
じっと立ったままそれを見送る。
80おとめごころ:2005/05/18(水) 06:04:35 ID:J28NAfel0
そこへ、大鎖鎌を回収した鎌足が駆け込んできた。
「こらああああぁぁっ! 戻って来なさい! こっちは全っ然、無傷なんだからねっ! 
そりゃ不意討ちの二対一だっただけど、そっちは蛇が山盛りなんだから、
文句言わせないわよっ! これのどこが引き分けだってのよ!」
「いや、引き分けだ。俺と奴の戦いだとすればな」
蝙也は振り向かず、ぽつりと言った。何だか様子がおかしい。
「蝙也君?」
見れば蝙也の手には、どうやら手で握り潰したらしい蛇の死骸が一つ。
「……さっきの直撃発破六連、奴自身を攻撃するのに一つ使ってしまったのが
失敗だったようだ……五つでは、爆破の幕に隙間ができ……」
蝙也が、仰向けに倒れた。
その首筋に、小さな穴が四つ、空いている。……蛇の咬み傷だ!
「っっ! へ、蝙也君! 蝙也君、しっかりしてっ!」
顔面蒼白になった鎌足が、慌てて蝙也を抱き起こした。だが蝙也の顔は既に、
その鎌足を遥かに上回る青白さ、そして冷たさを帯びている。
一刻も早く解毒、いやその前に毒を吸い出さねば、と鎌足が蝙也の傷口に唇を
近づけ……ようとしたら、蝙也が鎌足を突き飛ばした。
「や、やめろ! 忘れたのか、あの喪黒とかいう行商人が言ってたことを!」

「お嬢さんがもし、男性相手にキスなどをしてしまうと……お嬢さんの望みが
女の子の体を得ること、である以上、まずそれは失われます。加えて、さぞ
恐ろしい運命がお嬢さんを襲うことでしょう。お嬢さん自身が死ぬ、
という程度では済まないようなことが。泉で溺れ死んだ、乙女の呪いによって」
81ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2005/05/18(水) 06:06:01 ID:J28NAfel0
>>スターダストさん
できれば何回かに分けて欲しかったとこです。読むのみならず、待つのも楽しいものですし。
原作は未読ですが、とりあえずガスマスク毒島ちゃんが好み。周囲が思い切りデンジャーな
中、健気控えめなヒロインしてますね。あと、潰れてきってない苺のジャムは結構好きです。

>>VSさん(祝・ご帰還! お暇をみてまた楽しませて下さい)
フランス料理〜
確かに少々薄めな気もしますが、VSさん味でてます。もし続きがあれば、実はキルアの
傷は父親と何の関係もなかったとか、最終的に実は死んでないとか、そんな風になりそう。
ドラ麻雀
こういう話でドラとパパママのみならず、のび太も同じく非常識なのがVSさんならでは。
突っ込みしてるようで実は皆無、全員暴走な凶悪ぶりが気持ちいい。本編も待ってます!

>>サナダムシさん
人造人間トリオだけでなく、コンピュータにもボコられる正座セミ。彼に「勝利」が
訪れるのはいつのことやら。結局火と炎の違いについても水に流されたままですし、道は
遥か遠そう。あと最後の「死ぬなよ」は人造人間たち以外にも何かありそな雰囲気……?

>>パオさん
錯乱とまではいかないまでも、恐怖で叫び声をあげるラーメンマンとは、また何とも。
原作「闘将!」の方でも時々未熟者な面は出てましたが、さすがにここまでは。うむむ。
悟りを開いての逆転、となりそうな展開ですけど、果たして間に合うか。少年……!

>>NBさん
核を越えるとか評された男が、その能力を駆使して食い逃げですかい。で他作品のキャラ
が出てくる、ではなく他作品のパロときたもんで。ギャグパートがここまで清々しいほどに
イッてると、反動が楽しみです。今は平和にドタバタしてる面々が、一挙暗転……に期待。
82作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 08:06:15 ID:33caOWwu0
いつ呼んでもふらーりさんの感想はすごいなあ
作品より読み応えがある
83ぬん:2005/05/18(水) 11:41:25 ID:7HkdMERBO
近々SSを書こうかと思ってます。
でもふらーり氏は僕に感想書かなくていいです。
84蟲師 果てなき闇:2005/05/18(水) 16:06:32 ID:kZYJA/p70
前スレ>>547から続き

85蟲師 果てなき闇:2005/05/18(水) 16:07:20 ID:kZYJA/p70

 これは、真の闇だ――。
 穴を深く潜り、光の届かない場所にまで達した。ギンコはそこに、或る既視感を見出した。

ギンコの最初の記憶は、この穴とよく似た闇だった。
そこには恐怖はなく、あるのはただ『無』。
 『無い』というものが『在り』、『在る』というものが『無い』――。
 あの闇には、確かに『在った』のだ。
 それと限りなく近いものを、今、ギンコは確かに感じていた。
 存在していないと見なされていたモノが、ここにはある。
 否――ここにあるのはそれだけだ。
 人に見えぬモノが群れを成して泳いでいる。
 ここでは、蟲に成りきれぬヒトが群れを成して泳いでいる――。
 この穴に落ち、死ぬことも出来ず、蟲にもなれないモノ達が、無力を嘆き鳴いている。



86蟲師 果てなき闇:2005/05/18(水) 16:08:39 ID:kZYJA/p70
 ギンコは、明かりを灯そうとはせず、ただ耳を欹て、モノ達の声を聴こうとしていた。
 理解は出来ない。それは既に人に伝わる言語ではなくなっていた。だが、それでも、
彼等の気持ちは伝わる。そう、ギンコは考えた。
 この穴が、自然に出来たのではないことは明らかだ。
 ギンコは、壁を触る。確かにただの土だ。それは間違いない。
 蟲に、大地に大穴を開けるだけの力があるのか。あるかもしれない。断定は出来ない。
実は穴は開いていない可能性もある。一時的に、穴が開いていると見せ掛けているの
かもしれない。どちらかといえば、そちらのほうが可能性としてはあるだろう。
 問題なのは、この穴を作り、保っている蟲が、落ちたヒトを解き放たないこと。死を与えず、
かといって蟲にするわけでもなく。そこにどんな意味があるのか、ギンコにはまだ掴めなかった。
 いや――蟲のやることに、意味などないか。今までの蟲との遭遇例で、蟲の意図を感じられた
ことなど、全くと言っていいほど無かった。あれらはただ、奇怪なことが好きなのだ。そう、思うこと
にしていた。
 
 そんなことを考えている今も、ヒトだったモノどもは、ギンコに分からない言語で話しかけ、実体の
無い体で助けを訴えようとしていた。ギンコには見えている。彼等の姿を、しかと捉える眼を生まれ
ながらにして持っている。それゆえに、心中に沸いて出る感情は抑えられずいた。
 哀しいモノ達だ――彼等の手が、体をすり抜ける度に、そう思わずにはいられなかった。


87蟲師 果てなき闇:2005/05/18(水) 16:09:42 ID:kZYJA/p70

 遂に、足場が尽きた。
 過去来た蟲師達は、ここで諦めたということか。
 ギンコは、長縄で体を縛り、それを足場に括り付けた。こんな縄では、高が知れている。だが、
今はそうする以外に無い。
 ここから先、自分を守るものはこの一本の縄のみ。
 ギンコは意を決して跳んだ。遠心力で壁に叩き付けられたものの、大したことは無い。
 幸い、体を支えやすい質感の壁であった。手を少し土に入れることが出来る。足をふんばることも、
僅かながら可能だ。
 ギンコは、とりあえずの安全を確認した後、周りを見た。異変に気付かずにはいられない。先程まで
見えていたモノ達の姿が、無い。
 その代わりに、先程までとは違う空気が流れ出した。
 この大穴を開けた蟲が、近くにいる。
 穴の奥底から、憐れなるモノ達を有頂天で眺めていたに違いないモノが、いる。
 聞こえたのは、またも人に伝わらぬ言語。しかしそれは決定的に異なる。攻撃的に聞こえた。
 ギンコは気配を察知し上を見た。蟲がいる。蟲である筈である。
 実体がある。蟲である筈のモノは、縄に手をかけ、結び目を解こうとしていた。
 何故、蟲に実体がある?
 蟲は、ギンコを見て嗤った。
 
 闇の中に消えていく間、ギンコは考えていた。
 過去来た蟲師は、去ったのではない。あれに落とされ、『死ぬことも出来ず、虫にも成れないモノ達』
の一員となったのだ。
 俺も、そうなるのか。
 そう、したかったのか。
 ギンコは闇に消えた。


88ゲロ ◆yU2EA54AkY :2005/05/18(水) 16:10:28 ID:kZYJA/p70
蟲師史上、多分かつてない程にシリアスな引きで次回に続く。次回できっと終わりです。

色々映画を見ました。劇場では『コンスタンティン』。家では『気狂いピエロ』。他は割愛。
どっちも別方向に突き抜けてて楽しかったです。コンスタンティンは絶対笑えるのでオススメです。
あと漫画は結界師とかハルコビヨリを買っときました。ハルコビヨリ読むとなんかいい気分になれます。

前スレ>>549
有難う御座います。また書く可能性もありますので、その時はお願いします。

>>550
選ばれた存在かは分かりませんが、漫画の主役になるだけはあって、それなりに特異性は備えている
のかもしれません。
新連載はぶっちゃけ、まだ何も考えてないんですよね。題材だけは決めたんですけど。

>>580
有難う御座います。そこそこ頑張ります。

>>13
今回は遂に実体のある(普通の人にも見える)蟲なんて出してしまいました。さてどうなるか。

では次回。
89作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 18:46:58 ID:SDCocjF90
お疲れ様ですー
デジャブから虚無の闇へ落ちていくギンコ
いよいよ本当に終わりっぽいですね。
歴代のSSスレ作品の中でも大好きな作品のひとつなので
終わらないでほしいけど、ゲロさんにも都合ありますね。
最終回と新作期待してます。
90ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/18(水) 21:36:08 ID:te4fW9aF0
「どんなお話?」

二十一世紀の東京に蘇った古の魔城、ノースウエスト。
調和とチョンボの女神ダイサンゲーンの宣託を受けし
五人の戦士が、いま魔城の扉を開けた。

テンホーの巨人、チン・イーソー!
永遠のデバサイ、ドラドラドラ・ドラドーラ!
ツメシボの舞姫、リンシャン!
ヤキトリ大好き、全自動の卓!
鉄壁のバンバン、THE・東南西北!

彼らを待ち受ける運命は!? 南四局の果てには何が
ある!? 日本麻雀界最強の純チャンがドラアンコで
オタポンをイーペーコーしてバックドロップする!


「前回まで」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/dora2_021_04.html
91ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/18(水) 21:36:55 ID:te4fW9aF0
「お前がモーフィアスだ!」
 のび太は右のインド人を選んだ。根拠はある。左のインド人は頭にタンコブ
をこさえていて、ターバンが大きく盛り上がっている。雀卓の角に頭をぶつけ
て悶絶したのはトリニティの方で、つまりは無傷の右のインド人がモーフィア
スだ。
「はっずれー!」
 右のインド人がバカ笑いをして、のび太にガソリンをぶっかけた。
「大はずれー!」
 左のインド人が小躍りをして、のび太にライターで火をつけた。のび太は一
瞬で火だるまになった。
「のび太さん、死なないでー!」
 左のインド人のターバンがもぞもぞと動いて、中からドラミが飛び出した。
タンコブの正体はドラミだった。ドラミはのび太に消火器を噴きつけて、のび
太は一命を取り留めた。
「ドラミちゃんは、なんでそんなところから出てくるのかな?」
 全身粉だらけになったのび太は、感謝よりも先に率直な疑問をドラミにぶつ
けてみた。
「うっさいわね! アタシがどこから湧いて出ようとアタシの勝手でしょ!」
 ドラミは新しい消火器を取り出してのび太に噴射した。ホースの先から生卵
の奔流がほとばしって、卵白の効果でのび太のお肌はツルツルになった。二人
のインド人はドラミをかばうように仁王立ちになって、物分りの悪いのび太に
説明してやった。
「この女、便所で寝てたね」
「寒そうだったから、ワタシのターバンでくるんでやったね。という訳で、お
前ハズレね。卵くさくて不快だからとっとと日本を去るね」
「てめえらのターバンの方がよっぽど不快だー!」
 こみ上げる怒りを抑えきれず、のび太は身もだえをして床を転げ回った。モ
ーフィアスとトリニティは全く同じ顔をしてのび太の狂乱ぶりを見ている。ド
ラミはとっとと厨房へ逃げた。
「胡散臭い双子のインド人の言うことなんか、かけらも信用できるか! お前
がモーフィアスだっていう証拠を見せろ! 今すぐ見せろ!」
92作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 21:37:18 ID:xSIU961d0
ゲロ氏乙。
ギンコの旅も次でしばらく休止か。寂しいな。
最終回に相応しい幕切れを期待してますよ。
93ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/18(水) 21:37:33 ID:te4fW9aF0
「ほれ」
 モーフィアスは一枚のカードをのび太に渡した。それはモーフィアスの免許
証だった。
「どう見ても本物の免許証ね。フォークリフトもOKね。これで文句ないね」
 のび太の動きが止まった。免許証の写真とモーフィアスの顔をじっくりと見
比べて、今度はトリニティに声をかけた。
「念のために、お前の免許証も見せてみろ」
「ほれ」
 トリニティはのび太の持っていた免許証をひっくり返した。モーフィアスの
免許証の裏面はトリニティの免許証だった。
「こんなもんが証拠になるかー!」
 のび太は床ゴロゴロを再開した。床にはいつの間にかパン粉が敷いてあって、
あとは油で揚げればのび太のフライのできあがり、という所まで漕ぎつけた。
「出たね! のび太お得意の悪あがきね!」
「ケチをつけるだけムダでーす! モーフィアスとトリニティの幻惑殺法で、
お前らまとめてタコ部屋行きでーす!」
 モーフィアスは席について、トリニティはその後ろに立った。二人一緒に牌
の山に手を伸ばして、裂帛の気合いと共にリーチ後一発目のツモを引いた。
「おっしょーい!」
 モーフィアス&トリニティ、九萬ツモ。
「こんなもんいらないねー」
 モーフィアス&トリニティ、九萬ツモ切り。
「ロン」

一一一二三七八(123)123

「リーチ一発純チャン三色ピンフ。16,000点」
「負けたねー!」
 幻惑殺法、破れる! アカギに痛恨の振込みを犯したモーフィアスとトリニ
ティはショックで街の彼方までぶっ飛んで、墜落した立ち呑み屋で軽く一杯引
っ掛けてサウナに寄っていい汗かいて戻ってきた。ターバンは臭いままだった。
「ただいまねー」
94ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/18(水) 21:38:10 ID:te4fW9aF0
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_k.gif

 雀荘ではKが復活していた。一見涼しげな顔をしているが、モーフィアスと
トリニティに対する怒りで腹の底は煮えたぎっている。
「キアヌ・リーブス様の鼻の穴にターバンを突っ込むなんざ、随分と威勢のい
い真似をしてくれるじゃねーか。それでアカギには勝ったのか」
 モーフィアスとトリニティはサウナでほてった体を寄せ合って、肩を組んで
笑顔で答えた。
「ワタシたちの幻惑殺法、大成功ね! キアヌ、気絶してたから巻き込まれな
くてラッキーね! ワタシたちに感謝するね!」
 Kはシリアスな表情を崩さずに、アカギのアガリ手を指して言った。
「だったらこれは何だ。アカギの倍満が卓上で踊ってんじゃねーか」
「幻惑殺法と麻雀、全然関係ないね! そんなことも分からないなんて、キア
ヌ大バカねー!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_k.gif

 サーベルを振って大笑いするインド人を、キアヌは冷ややかに見つめている。
キアヌと自分たちの温度差にようやく気づいて、二人のインド人は笑うのをや
めてインド顔になってKに問いかけた。

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_turban2.gif
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_turban1.gif

「キアヌ、ワタシたちのこと嫌いか?」
「ああ大っ嫌いだ。映画の中でもお前らと敵対したくてしょうがなかった」
「キアヌ、ワタシたちとマトリックスの新作撮りたくないか?」
「マトリックスは三部で完結してんだバカ。そんなに撮りたきゃお前らだけで
ホームビデオで勝手に撮ってろ」
「カレーが足りないよー!」
 モーフィアスとトリニティは奇声を張り上げて厨房に駆け込んだ。ザブンと
肩までつかる音がして、全身カレーまみれになって戻ってきた。
95ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/18(水) 21:38:50 ID:te4fW9aF0
「サウナもビックリのカレー風呂ね! これでワタシたち、無敵のそのまた無
敵のマハトマ・ガンジーね!」
「キアヌもしょせんはワタシたちの敵ね! アカギもろともコテンパンにして
魚のエサにして、来世は立派なブタのエサよ!」
「セワシー! カレー鍋ひっくり返して最初から作り直せー!」
 完全に傍観者に徹していたドラえもんが息を吹き返して、セワシにばっちい
カレーの廃棄を要求した。しかし鉄石のごときセワシのカレー哲学はびくとも
揺らぐことはなかった。
「カレーにインド人が漬かって何が悪いー! てめえは出されたものを黙って
食えー!」
 新建材の壁を隔てて、ドラえもんとセワシの視線が火花を散らす。それと交
錯するようにインド人とKの闘気がぶつかり合って、深夜の雀荘ノースウエス
トに紅の十字架が華ひらいた。
「おー面白え! 二人まとめて返り討ちにして、オレとアカギでハリウッドに
凱旋だ!」
 Kがモーフィアスとトリニティの挑戦を受けた、その時だった。
「その必要はないよ!」
 玄関のドアが勢いよく開いた。宴も半ばの雀荘に颯爽と現れた男を見て、K
とモーフィアスとトリニティとアカギはそれぞれのトーンで驚きの声をあげた。
「おー、スミス!」
「スミスねー!」
「まさかのスミスねー!」
「スミスか」
 のび太も男の顔は知っていた。興奮で卵とパン粉をまきちらしながら、その
男の名を呼んだ。
「レジー・スミスだー!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith1.gif
96ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/18(水) 22:07:45 ID:te4fW9aF0
つづく。
97作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 22:13:33 ID:xSIU961d0
おお、100%VSさんが帰ってきた…
投げ出したんじゃなかったんだ…
98作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 22:38:06 ID:3tzgFfEf0
普通のストーリー物より、こういうのは難しそうだからなあ
それこそ本人のテンションが一定以上高くなきゃ書けないだろうから不定期更新なのも致し方ない
99作者の都合により名無しです:2005/05/19(木) 08:15:40 ID:qTO+hzLp0
>蟲師
いよいよラストか。大団円になるのか、それとも続きそうな雰囲気で
終わるのか。また書いてくれるみたいだから後者かな?

>ドラ麻雀
ハンターに関してはがっかりしたものだけど、今回は面白かった。
レジースミス書かせたら漫画板でVS氏に適う者はいないな。
100作者の都合により名無しです:2005/05/19(木) 19:09:33 ID:UFG4+naL0
最近、格闘大戦来ないねえ
101作者の都合により名無しです:2005/05/19(木) 22:06:09 ID:eJyUzBpH0
VS氏はとりあえずHPのトップページなんとかしてほしい。
「あけましておめでとうございます今年もよろしく」って。
102作者の都合により名無しです:2005/05/20(金) 08:42:50 ID:xzGku4N30
>>100
うみにんさんはもっと来ないな。体また壊してないんだろうか
草薙さんもか。
103トラえもん のび太の地底出来杉帝国:2005/05/20(金) 20:04:50 ID:sIV+mZV7O
もう無理ぽ
104作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 02:59:49 ID:jg476I9/0
騙るな!
と思ったら芸が細かいな

それより問題はパオだろ。
105ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 04:27:18 ID:l/XaeqLm0
>>95
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith1.gif

======================================================================
レジー・スミス / Reggie Smith
 1945年4月2日生まれ。レッドソックス、カージナルス、ドジャース、SFジャ
イアンツに在籍して四度のワールドシリーズ出場を果たした偉大なベースボー
ルプレイヤー。十七年間のメジャー通算成績は打率.287、314ホーマー、1092
打点、2020安打。1983年に来日して読売巨人軍に入団。二年間で186試合に出
場して打率.271、45ホーマー、122打点、134安打。1984年引退。
 アメリカでジャズのアルバムを発売しており、画像はそのプロモーション写
真だと思われる。日本でも松山千春の名曲「On the Radio」をカバーして、日
米両国でのシンガーデビューという快挙を成し遂げた。宇多田ヒカルの大先輩。
======================================================================

「レジーだ! レジーだ! ボクのレジー・スミスが日本に帰ってきたー!」
 のび太はレジー・スミスの大ファンだった。それがKにはすこぶる面白くな
い。大スターのキアヌ・リーブスは知らないクセに、日本で中途半端な成績し
か残せなかったロートル助っ人外国人には異常なほどの愛情を示すなど、こん
なことがあっていいのか。いい。いやよくない。のび太自身はそこんところを
どう考えているのか。Kはのび太に問いただした。
「どうなんだよ」
「はい、アカギさんの16,000点!」
 のび太はKの点棒入れから16,000点を抜いてアカギに渡していた。モーフィ
アスとトリニティが支払いを丁重に断ったので、保護者のKが立て替えるのは
社会人としての常識であった。
「テメこの」
 ムカッ腹が立った。Kはバトンを二本取り出して、のび太の両方の鼻の穴に
深々と突き刺した。のび太はドロンと変身した。
106ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 04:28:21 ID:l/XaeqLm0
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_katsuo.gif

「ん?」
 作者が変わったような違和感に気づいて、のび太は便所に行って鏡を見て戻
ってきた。あまりショックを受けたような様子でもない。
「すごーい! ボクKくんになっちゃった! のび太に一体何が起こったの?」
「ハリウッド仕込みの特殊メイクだ。文句あっか」
「へー、これKくんがやったんだ。できればもっと男前にしてほしいんだけど、
こんな感じに仕上げてくれない?」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_hiroshi.gif

「うっさいボケ。てめーは一生ハゲのクソガキのままでいろ」
 Kはのび太との不毛なコミュニケーションを切り上げてレジー・スミスに向
き直った。レジーは蝶ネクタイの上にアフロヘアを乗せて、白い歯をむき出し
にして笑っている。
「それで、何の必要がないって?」
「キアヌ、アメリカに帰る必要はないね。新しい映画、この雀荘で一本まるご
と撮ることになったね」
「うへー! こんな辛気くさい雀荘で撮影すんの!」
 のび太は二つの疑問に思い当たった。生まれ変わった自分のハゲ頭は毎日剃
る必要があるのか天然ハゲか。そしてもう一つは、どうしてレジー・スミスが
この雀荘にいるのか。
「セワシくーん。レジー・スミスもマトリックスに出てたのー?」
 マトリックスの生き字引きであるセワシに質問した。すぐに厨房から答えが
かえってきた。
「エージェント・スミスっつってなー。分裂して増殖してキアヌと闘ったー」
「ふーん。要するにアメーバ並の扱いだったってことね」
 得心のいった顔で鼻くそをほじるのび太の背後のドアが、また開いた。入っ
てきた男は爽やかな笑顔でKに言った。
「キアヌー! 映画撮るよー!」
107ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 04:29:37 ID:l/XaeqLm0
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith1.gif

 どこかで見たことのある顔だな、とのび太はぼんやり考えた。特大の鼻くそ
を掘り出したショックで、閉ざされた記憶の扉が重々しく開いた。
「レジー・スミスだー!」
 二人目のレジー・スミスだった。驚く間もなく新しい客が来た。

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith1.gif

「キアヌー! 映画ー!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith1.gif

「キアヌー! メシー!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith1.gif

「アカギー! キアヌが死んだよー!」
 増殖したエージェント・スミスは特殊効果ではなく、本当にたくさんのレジ
ー・スミスだった。レジー・スミスは隊伍を組んで次から次へと店の中に入って
きて、ついに五十人のレジー・スミスが集結した。

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith3.gif
108作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 04:31:32 ID:l/XaeqLm0
つづく。これhtmlに起こすのチョーめんどくせー。
109ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 10:45:03 ID:l/XaeqLm0
「うわーい! 憧れのレジー・スミスが五十人まとめてボクに会いに来てくれ
たと思ったらお前はなんだコンニャロ!」
 一人、変なのが混じっていた。のび太は男の額めがけて必殺の頭突きをお見
舞いした。
「痛いなンモー! 何すんのー!」
 男はどんぐりまなこを一杯に広げてのび太に抗議した。抗議しながらこめか
みに指を当ててグリグリ回したりバンザイしたりと、行動に落ち着きと脈絡が
ない。のび太は男に反撃した。
「せっかくのレジー・スミス見本市が、お前ひとりのおかげで台無しだ! わ
かってんのかクロマティ!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith2.gif

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ウォーレン・クロマティ / Warren Cromartie
 1953年9月29日生まれ。1974年から十年間エクスポズでプレーして、1984年
に読売巨人軍入団。現役メジャーリーガーの肩書きに恥じぬ実力と陽気なキャ
ラクターで、チーム随一の人気選手となった。在籍七年間で二度のリーグ優勝
に大きく貢献し、779試合に出場して打率.321、171ホーマー、558打点、951安
打の成績を残した。1991年にMLB復帰、ロイヤルズで一年間プレーして現役生
活に終止符を打った。
 帰国後の著書「さらばサムライ野球」では異国ニッポンでの野球生活の苦悩
と不満を切々と綴って話題となった。一方でロックバンド「CLIMB」のドラマ
ーとして日本のバラエティ番組に出演したり、引退後は実業家に転身してバッ
ト型の歯ブラシを日本企業に売りつけたり、日本の変な焼きそばのCMに変な外
国人役で出演したりと、どうやらニッポンのお金は大好きだったようだ。
======================================================================
110ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 10:45:44 ID:l/XaeqLm0
「台無しってのは言い過ぎよンモー! せっかく日本に来てやったんだからも
っと歓迎してよンモー!」
「ンモーンモーってお前は植田まさしか! お前なんかいなくっても巨人は毎
年優勝できるから、荷物をまとめて日本に帰れ! ここが日本だバカ!」
「のび太くん、のび太くん」
 たまらずKが制止したが、のび太の怒りは収まらなかった。
「いーやKくん言わせてくれ! だいたいコイツは」
「のび太くーん!」
 一言たりとも言わせなかった。のび太はKのドロップキックでものの見事に
吹き飛んで、熱した油で満たした大釜の中に落下した。豊潤な香りと揚げ音が
して、のび太のフライができあがった。
「ボス、ワイヤーアクション!」
「オーケー!」
 Kにボスと呼ばれたクロマティはKに釣竿を渡した。Kは大釜の横の脚立によ
じ登って、油の底に糸を垂らした。すぐにのび太が引っかかって、Kは一気に
糸を引き上げた。
「うおりゃー!」
 たわんだ竿が逆向きに弾んで、のび太のフライが空中に舞った。
「ふっかーつ!」
 キツネ色の衣を脱ぎ捨てて、新生のび太が飛び出した。もちろん全裸だ。油
ぎった体をシャワーですっかり洗い清めて、クロマティの頭を平手で叩きなが
らKに言った。
「なに? こいつボス猿なの?」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_smith2.gif

 気持ちは分かるが猿ではない。クロマティはマトリックスのシリーズ通じて
の監督なのであった。
「だからな、あんまりボスをいじめるんじゃねーぞ。爆発しちゃうから」
「へーい」
111ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 10:46:47 ID:l/XaeqLm0
 のび太はガウンを羽織って席についた。Kとアカギとドラえもんで麻雀勝負
を再開して、東二局の親のアカギがサイコロを回した。到着したばかりのクロ
マティには状況がよく分からない。
「キアヌよ。深夜の雀荘で四人で全自動卓を囲んで、アンタら一体何をしてい
るのかね?」
「麻雀に決まってんだろ」
「ファンタスティーック!」
 クロマティは何もない空間に向かってまた何度もバンザイをした。意味もな
く室内を走り回って、Kがワイヤーアクションに用いた脚立の上に座った。
「さっそく映画撮っちゃうよ! 全員さっさとスタンバイしろー! ンモー!」
 これ以上喋らせてもうるさいだけなので、みんなクロマティの言う事を聞い
た。Kが主役でのび太とドラえもんとアカギが敵役、雀荘の他のメンバーがエ
キストラということになって、五十人のスミスは壁と入り口をぐるりと囲んで
退路を断った。脱出不能の真剣勝負、地獄の麻雀映画デスマッチが始まった。
「そんなのあんまりよー!」
 床からモーフィアスとトリニティが生えてきた。悔しさのあまりターバンを
噛んで、臭さで意識を失いかけつつ泣いてクロマティに訴えた。
「ワタシたちを忘れるなんて、ボス薄情ね! Kの席にはもともとワタシたち
二人が座ってたね!」
「ボス、キアヌなんてクソ役者はハッとしてグーして、ワタシたちを主役にす
るね! その方がよっぽど面白い映画つくれるね!」
「お前たち、これねー」
 クロマティは二人の足元に大きな二台のカメラを放り投げた。クロマティ監
督が哀れなインド人に与えた役割はカメラマンだった。
「なんでよー!」
 それはあまりに甘酸っぱい体験だった。しかしボスの命令は絶対である。モ
ーフィアスとトリニティはぶつくさ不平を言いながらも、カメラを肩に担いで
所定の位置についた。改めてクロマティが叫んだ。
112ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 10:47:30 ID:l/XaeqLm0
「シーン1、のび太ボーイが役満をアガってキアヌ大ピンチ! ヨーイ!」
 雀荘の空気がピンと張り詰めた。のび太たち四人はすでに配牌を取り終えて、
裏返しに伏せてある。
「スタート!」
 クロマティの合図と同時に、勢いよく配牌を開いた。
「どりゃ!」

北7(1)二9八北95六南(2)西

「監督ー! ボク役満アガれませーん!」
 嬉しそうにギブアップを宣言するのび太だが、一発撮りが信条のクロマティ
はカメラを止めなかった。
「アカーギ! のび太ボーイのヘルプ、プリーズ!」
 クロマティが指令を出すまでもなく、アカギは仕事を完了していた。光より
はやい神業で、のび太の配牌をすべて入れ替えてしまった。下積みの経験なア
カギは、己の役割を実によく理解していた。

22334466688発発

「監督ー! ボク役満アガっちゃいまーす! リーチ!」
 次巡、またもアカギが動いた。ノータイムで発を切り飛ばしたその瞬間、電
光石火のワープ航法でアカギとのび太の席が入れ替わった。
「ロン」

22334466688発発

「緑一色。32,000点」
「すごーい!」
 のび太、悲劇の役満振り込み! Kは無傷でのび太を倒した。
「はいオーケー!」
 クロマティは両手で大きな輪を作って、すぐにシーン2の撮影に入った。
113ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 10:48:18 ID:l/XaeqLm0
「シーン2、傷心のキアヌの前に、モーフィアスとトリニティが現れる!」
「ワタシたちの出番よー!」
 モーフィアスとトリニティは小躍りして喜んで、すぐに自分たちがカメラを
回していることに気がついた。
「ボスー。カメラはどうするよー」
「そんなもん知らないよー! スタート!」
 二人はちょっと考えて、カメラを持ったままKの両脇に立った。そんなモー
フィアスとトリニティに、KはKらしからぬ温情を見せた。
「オレの代わりに麻雀打たせてやる。座れ」
「マジですかー! キアヌサイコー!」
 Kを椅子から蹴飛ばして、二人いっしょに椅子に座った。しかしカメラが邪
魔でうまくツモれない。Kが救いの手を差しのべた。
「オレがツモってやるから、お前らは存分に撮影を続けろ」
「ありがとねー」
 モーフィアス&トリニティ、八索ツモ。79のカンチャンターツがメンツに
なった。やはりカメラが邪魔で牌を捨てられない。
「仕方ねーな。オレが代わりに捨ててやろう」
「キアヌ優しいねー。ホーリーシットねー」
 モーフィアス&トリニティ、789メンツから中抜きで打八索。
「ロン」

1122335566778

「チンイツピンフリャンペーコー。ドラの三索が二つで36,000点」
「キスマイアース!」
 アカギの魔手が牙をむいた。モーフィアスとトリニティは椅子ごと仰向けに
ぶっ倒れたが、それでもカメラは手放さなかった。Kはまたもや強敵を退けた。
「ンモー! オーケー!」
 台本もなければ役名もない。自然の流れに身を任せたウルトラアドリブムー
ビーは、シーン3に突入した。
114ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 10:53:32 ID:BkYbBCPt0
つづく。すぐにアップしてもいいんならアップします。
115作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 11:52:46 ID:blSq8OfQO
超ハイペース&ハイグレードな更新に乙。
続投俺的には全然OK
116ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 13:20:55 ID:BkYbBCPt0
「そこの青いボーイ、悪の親玉ね! 五十人のスミスを引き連れて、キアヌの
前に立ちはだかるね!」
「はいはい、もーなんでもやるから」
 ドラえもんは業界きっての慧眼の持ち主だった。こんなもの映画の撮影でも
何でもないことをとっくの昔に見抜いていたが、なんかもう全てが面倒くさく
なっていたので素直に言う事に従った。
「スタート!」
 クロマティの映画にかける情熱が、ドラえもんには海より深くうっとおしか
った。それ以上に、ドラえもんを囲むように群がったレジー・スミスの重厚な
アフロヘアが暑苦しかった。あんまり暑苦しかったので、
「オラ」
 独裁スイッチでスミスを一気に消し去った。親玉のふとした出来心で、悪の
組織は壊滅した。あとクロマティは麻雀の映画を撮っているつもりらしいので、
「あいよ」
「ロン」

五六六六七(12334)234 (5)←ロン

 アカギにピンフのみ一本場の1,800を差し込んでキレイに締めた。残すはク
ライマックスのシーン4のみとなった。Kがクロマティに提案した。
「せっかくだから、大物ゲストも出演させようや」
「ンモー!」
 クロマティの許可が下りたので、Kは椅子から立ち上がった。
「のび太にアカギにドラえもん、そこに並びなさい」
 指名を受けた三人は言われた通りに一列に並んだ。Kは厨房に向かって大声
を張り上げた。
「セワシー! こーい!」
 セワシが厨房からやってきた。カレーはまだ出来上がっていない。本当に作
っているのかどうかも分からない。
117ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 13:21:55 ID:BkYbBCPt0
「ドラミー!」
「なによ」
 ドラミがセワシのズボンの中から顔を出した。ターバンの次はセワシの毛だ
らけの股ぐらだった。
「二人とも、のび太たちと一緒に並びなさい!」
 Kは列の端っこに立って、バトンを頭上高く振り上げた。
「お前ら全員、特殊メイクで大物ゲストに変身だー!」
 ハリウッドの技術の粋を集めた魔法のバトンで、みんなのほっぺたを順番に
ぶん殴っていった。
「とう!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_rocky.gif

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ロッキー / Rocky
 シルベスター・スタローンの出世作となったボクシング映画の金字塔。1976
年に公開されたパート1は、同年の第49回アカデミー賞作品賞に輝いた。
 1990年のパート5から長いブランクを経て2003年、スタローンがパート6の脚
本に着手したというニュースが全世界を駆け巡った。事態を重く見たアメリカ
政府は激戦の末スタローンの捕獲に成功し、聖なる石で彼の魔力を封印した。
 2005年の満月の夜、聖なる石に亀裂が走った。ロッキー復活の日は近い。
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118ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 13:22:35 ID:BkYbBCPt0
「だりゃ!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_rambo.gif

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ランボー / First Blood
 1982年公開。ベトナム帰還兵ランボーの数奇な運命と哀愁を描いたドタバタ
ギャグアクション。小汚いカッコで街を徘徊してポリスに職質されて、キレて
山に立て篭って大暴れするのがパート1。仕事をもらって喜んでいたら赴任先
はイヤな思い出しかないベトナムで、さらに上官も超イヤな奴でキレて大暴れ
するのがパート2。これではイカンと仏寺でおとなしくしていたら昔の仲間が
ピンチだと聞いて、アフガニスタンに飛んで大暴れするのがパート3。パート3
だけキレていないようだが邦題のサブタイトルは「怒りのアフガン」。副題で
しっかりキレている。
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「どっせい!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_cobra.gif

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コブラ / Cobra
 1986年公開。コブラの異名を持つ刑事マリオン・コブレッティが本物のコブ
ラとコブラの座を賭けて沖縄で闘うお話。アーノルド・シュワルツェネッガー
主演の「ゴリラ」もムツゴロウが監督を務めた「子猫物語」も1986年の作品で、
1986年は動物映画の当たり年であった。といっても本物の動物が出てくるのは
「コブラ」だけで、「ゴリラ」のゴリラはシュワルツェネッガーの見た目で、
「子猫物語」の子猫は骨格標本のみの登場だった。
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119ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 13:23:25 ID:BkYbBCPt0
 叩きすぎてバトンが壊れた。しかしバトンはただの小道具だったので、代用
品のすりこぎで何の支障もなくメイクを再開した。
「ビッチ!」

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オスカー / Oscar
 1991年公開。筆者未見。スタローン初のコメディ映画。精一杯におどけた表
情のスタローンはコメディというより踏み絵を強制された隠れキリシタンのよ
うで、「キミはそんなことしなくていいんだよ」と抱きしめてやりたくなる。
 カタギの一般市民になるべく悪戦苦闘するマフィアを描いた本作は、1966年
のフランス映画「オスカー」のリメイクであるらしい。知らなかった。へーと
思ってリメイク元のストーリーを調べてみたら、アカデミー賞狙いの男優が墓
穴を掘って身を持ち崩す映画だった。全然違うやんけ。
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「破ー!」

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ドリヴン / Driven
 2001年公開。1994年に事故死したF1ドライバー、アイルトン・セナに捧げた
意欲作。ほとんどのシーンが実際のレース場で撮影されており、本物のピット
の隣に撮影用のにせピットを作ったり、現実のレースの表彰式のあとに映画の
出演者が表彰台に上がってシャンパンをかけ合ったりしていた。許可を取って
いたかどうかは不明。
 麻雀教室第二部11話に断末魔として登場。
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120ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 13:24:09 ID:BkYbBCPt0
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_rocky.gif
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_rambo.gif
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_cobra.gif
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 五人のシルベスター・スタローンが雀荘ノースウエストの乾いた大地に降り
立った。Kとクロマティは全てをやり遂げた充実の表情で、勇壮華麗なその武
者姿を見渡した。しかしまだ、撮影という最後の大仕事が残っている。
「カメラ、スタンバイね!」
 クロマティの号令で、ソファでくつろいでいたモーフィアスとトリニティは
ノロノロと立ち上がってカメラを構えた。そのカメラが何だか妙に細長いこと
が、Kはずっと気になっていた。
「今さらなんだが、それホントにカメラか?」
 Kがそう尋ねると、モーフィアスとトリニティは鼻で笑って心でも笑った。
「キアヌ、バカねー。レンズがあるからカメラに決まってるねー」
 レンズはなかった。黒光りするボディの中身は空洞で、筒の先には大きな穴
が空いていた。
121ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 13:26:09 ID:U04lezJ10
「ファインダーだってついてるねー」
 ファインダーはある。だがそれはファインダーというよりは、射撃用の照準
に見えた。
「このレバーを引くとフィルムが飛び出すねー」
 モーフィアスとトリニティは手元のレバー、というかトリガーに指をかけた。
二人がカメラだと言い張るその物体が、Kにはだんだんバズーカ砲に見えてき
た。
「そのトリガーを引くと、ひょっとしてフィルムじゃなくて砲弾が飛び出すん
じゃないか?」
「そんな訳ないねー。実際に引いてやるから己の過ちに気づくねー」
 カメラをスタローンに向けてトリガーを引いたら砲弾が出た。流線型の鉛の
砲弾は唸りを上げて、のび太扮するスタローン目がけて一直線に飛んでいった。
「のび太くん、危ない!」

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http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_driven.gif
122ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/21(土) 13:26:43 ID:U04lezJ10
明日以降につづく。さてどのスタローンがのび太でしょう。
123パオ ◆oIVyz8LOXE :2005/05/21(土) 16:30:14 ID:uhZpPN5c0
お疲れ様ですVSさん。
長いことブランクがあったんで心配してたんですが、前回と今回は凄いなあ。
余人が及ぶところではない…。

投下します。ラーメンマンの最終回です。でも、投稿規制で多分全部は無理かな。
まあ、この話は旧年中に終わっとかなければいけなかったですね。他のやつもそうですが。
124ラーメンマン:2005/05/21(土) 16:32:29 ID:uhZpPN5c0
<超人アーリーデイズ   ラーメンマン編 最終回>
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ra-men/09.htm

鬼気迫る表情の少年の牙が、春成のふくらはぎにギリリ、と食い込んでいく。
細身だが鍛え抜かれた春成の肉体といえど、不破ではない。
血が流れ、肉が痙攣する。しかし春成の表情は動かない。彼なりの不動心である。

少年の目は血走っている。小さな修羅さながらの貌である。
無力な少年が、沸騰点まで達した怒りのみを武器に、強大なる拳士に牙を突き立てている。
先ほどまで、春成の圧倒的な戦闘能力に恐怖していたラーメンマンは己を恥じた。
そしてそれと同時、この少年から何かを感じた。何かに、届きそうなのだ。
(俺にない何か。この少年にあり、俺にないもの)

それは純粋な怒り。それは純粋な哀しみ。それは…?

思考の迷路に陥りそうになるラーメンマンを、嬌声が止めた。少年の悲鳴である。
ぎゃ、と耳をつんざく獣のような声。痛痒からの声である。
春成が少年の顔を横殴りに叩きつけたのだ。ボールのように転がる少年。
春成にとっては軽い一撃だが、少年の歯は折られ、鼻からはダラダラと血が滴っている。

「…子供だぞ」
ラーメンマンは痛みを忘れ立ち上がった。心の奥から沸々と湧き上がるものがある。
「だから? ガキとはいえ俺の体を傷つけたんだ。お仕置きしなきゃな」
ラーメンマンが制止しようとする目の前で、春成は蹴りで少年の腹を踏みつけた。
小さな声をあげ、吐血する少年。目から生気が失せ、怒りの表情が消える。
少しの痙攣をした後、少年は動かなくなった。呆然とするラーメンマン。
125ラーメンマン:2005/05/21(土) 16:33:10 ID:uhZpPN5c0
「おいおい、決闘中だぜ? おまえは心のコントロールも出来ちゃいねえな」
少年の前に立ち尽くすラーメンマンを春成は笑う。ガクガクと震えが走る。
「貴様…、自分のした事に良心は咎めんのか」
「フン。決闘中にのこのこ出張る方が悪い。それに言ったはずだ。
俺はまったく心乱れず人を殺せると。不動心、不動心、ふひゃははは」
「許さん…。絶対に許さん…。その腐った不動心ごと、貴様を叩き潰すッ」

血が沸き、怒りが爆ぜる。狂った獅子のように、ラーメンマンは春成に襲い掛かる。
拳法の型からは既に外れている。ただ狂ったように突きと蹴りを繰り返すだけだ。
殺意と怒りが竜巻のように荒れ狂い、人形の炎となりて春成に噛みかかる。
だが、その攻撃は圧倒的な迫力ではあるが理に叶っている訳ではない。
春成は超一流の拳の資質を持つ男である。
ラーメンマンの龍の拳、虎の足を巧みに、そして丁寧に捌いて寄せ付けない。

(強い。恐ろしく強い。何故に天は、このような外道にこのような才を)
焦りが怒りを薄くし、また心に恐怖が立ち上がる。
春成は怒涛の攻撃の合間から、細かく、小さく、しかし確実にカウンターを合わせていく。
怒りで肉体のリミッターは外れているとはいえ、限界は必ず来る。攻撃が鈍った。
その瞬間、春成は見逃さない。今度は大きく強く、右上段蹴りを側頭部に叩き込んだ。

ぐらり、と揺れるラーメンマンの体。意識が肉体から乖離する錯覚。
どんなに鍛えても、脳へのダメージだけは防ぎようがない。ダウンだけは堪えた。
が、ピタリと動きが止まった。
ラーメンマンの視覚がスローモーションのように春成の動きを捉える。
死の瞬間、神経が極限まで高ぶり、空気すら固体化して感じるというあの境地。
(殺られる…。一矢すら報えずに、殺される)
126ラーメンマン:2005/05/21(土) 16:33:55 ID:uhZpPN5c0
春成の手の型は鷹の爪のように鋭い、二本貫手の型である。
あの人差し指と中指が、まっすぐ俺の目かノドを突き破るんだろう。ほんのすぐ後に。
観念した。怒髪天の怒りも、今まで磨き上げた業も、凶悪極まるこの男には通じなかった。
(無念…。陳老師、未熟な弟子を、超人拳法を汚して死ぬ元弟子をお赦し下さい)

静かに瞼を閉じた。最後くらいじたばたせず、不動心で自らを終えようと思ったのだ。
(…違う。こんなの死に様は、潔くも何もない。陳老師や朴念師の言われる、
不動心とは程遠いはず)
だが遅い。おそらくは、陳や朴念のいう不動心の答えのすぐ近くまでは来たはず。
それが、こんな死の間際とは。つくづく私は不肖の弟子だ。

しかし、来ない。春成の必殺の二本貫手が、目を、喉を貫いて来ない。
ラーメンマンは目を明けた。慄然とした。春成が苦悶の顔で痛みに耐えている。
少年が、また春成の足に噛み付いていた。それも、鍛えようの無いアキレス腱の辺りに。
少年は、先ほどの春成の蹴りにより意識があるかどうかも怪しい。
だが、まるで少年自体が巨大な牙のように春成に襲い掛かっている。気迫。いや、鬼迫。
「このガキがああッ! そんなにも殺されてえのかあッ!!」

春成は少年の髪の毛を鷲掴みにして無理やり引き剥がした。
少年の口には、春成の肉と血がこびり付いている。
無敵の邪拳士に初めて一矢を報いたのは、ラーメンマンではない。ただの少年である。
春成が少年の命を奪わんと、脳天へ目掛け鉄拳を打ち下ろそうとする。
が、それよりも早くラーメンマンの拳が春成の顔面にメリ込んでいた。吹き飛ぶ春成。
「貴様…、それでも人かッ!!!」
127ラーメンマン:2005/05/21(土) 16:34:39 ID:uhZpPN5c0
紅い。ラーメンマンの目の前総てが真っ赤に染まっている。炎の赤の色である。

それは燎原を奔る焔のように激しく、世界の総てを焼いている。
いや、燃えているのは目の前の光景だけではない。俺だ。俺もだ。
俺の拳も、俺の足も、俺の目も、俺の心も、俺の魂も真っ赤に燃えている。
自分を制御できないほど、魂の奥底から次から次へと炎が立ち上がる。
殺せと。万人に殺人者と罵られようと、目の前の男を生かしておくなと。

この炎は、自分のものだけではない。
あの少年の炎でもあり、目の前の外道に虐げられていた人々の炎でもある。
その炎の名は怒り。そして憎しみ。人間の最も純粋で、激しい感情。
(俺も死ぬかも知れん。だが、こいつも必ず一緒に連れて行く)

天に跳ねた。ありったけの怒りを肉体に込めて。そしてそのまま滑空する。
獲物を狙う鷲のように、全能力を足先に集中させる。虎のように雄々しく吼えた。
「烈火太陽脚ッ!!!」
太陽のように大きく、炎のように激しい怒りを、春成にぶつけた。総てを賭けて。
春成はそれをもっとも受けで強力な十字受けで止めた。空中より襲い掛かる鷲を、
しっかりと踏み止まっている。激突点である腕はブスブスと焦げ臭い。
少しずつ、ラーメンマンの蹴りが受けを潰し始めた。しかし春成も秘奥を放つ。
「万魂拳ッ!!」
春成の肉体の氣が膨れ上がり、それが全身に行き渡る。肉体の硬度が跳ね上がった。

万魂拳。己の氣を充実させ、ほんの瞬間肉体を鋼鉄化させる春成のオリジナルの奥義。
今度は春成が、空中から襲う烈火太陽脚を押し返し始めた。
なんという膂力。恐るべき底力。自分が生き残る為には総てを喰らう邪悪な意志。

128作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 16:47:21 ID:VpVHn3pt0
5レス。投稿規制か。
10分(もっと短くていいかもしれんけど)待てば解除されるからもう大丈夫だろうけど。
しかしVS氏のラッシュは凄いな。求めていた画像が発掘できたからか。
129ラーメンマン:2005/05/21(土) 17:32:11 ID:uhZpPN5c0
地で万全の受けで鉄壁と化す春成。空中で槍と化し、突き通そうとするラーメンマン。
だが、ギリギリのところではやはり実力の差が現れる。少しずつ、春成が前に出る。
「これを跳ね返したらお前は終わりだ…。八つ裂きにしてやる」
空中のラーメンマンの体勢が崩れ始める。
蹴りの爪先の春成への接地点が、万魂拳の鋼により引き剥がされそうになる。
そうすれば、終わる。ラーメンマンに、次の攻撃の力は残ってはいない。

負けるのか。勝てないのか。殺されるのか。
脳裏を掠めるその言葉。炎が小さくなっていく。眼前の世界の『赤』が薄れていく。
その時、目に地面を蠢く何かの光景が飛び込んできた。少年である。
少年は意識を失い、ボロボロになりながらも、三度春成に襲い掛からんと地を這っている。
ゆっくりと、一ミリずつ前に。次は確実に殺されるのに。決して適いはしないのに。

(俺は、なんという馬鹿だ)
炎がまた燃え上がる。この身は滅んでもいい。だが、少年だけは死なせない。
春成への怒りと、少年から感じる憎しみと哀しみが混じり合い、弾けた。
ラーメンマンの顔に『鬼』が浮かび上がる。炎は最大限に燃え上がった。

その怒りに呼応するように、ラーメンマンの肉体がドリルのように回転を始める。
春成の鉄壁を誇る万魂拳の腕より、血が飛沫く。受けが崩れ始める。
ラーメンマンは一本の槍、一本の矢となった。
ガードの腕を弾き飛ばし、胸へと突き刺さる槍。春成の心臓を突き破らんと。
「がああ、た、助けてくれえ、俺が、俺が悪かったあッ」

春成の絶叫が空気を切り裂く。だが命乞いに構わず肉体を貫いていく烈火太陽脚。
(地獄で閻魔にでもいえ。俺は、貴様を殺す)
あと数ミリで心臓に到達するその足先。だが、その時に凛とした声が掛かった。
「そこまでよ、ラーメンマン」
130ラーメンマン:2005/05/21(土) 17:33:00 ID:uhZpPN5c0
怒りを諌めるような慈愛深く、それでいて芯の通った声。8年間欠かさず聞いた声である。
この声だけは忘れない。ラーメンマンは神妙な顔で春成から脚の爪先を抜く。
春成は、一瞬短く声をあげ、その場にバッタリと倒れ付した。声の方を振り返る。
その声はやはり、敬愛する師・陳 宗明。隣に朴念もいた。

陳は優しく少年を抱きかかえている。そして静かにラーメンマンに言った。
「その男はワシが始末をつける。殺す価値も無い男よ。 …よくやった、ラーメンマン」
ラーメンマンは応えない。本当に、良くやったのだろうか? 見透かすように朴念が言った。
「上等上等。未熟者にしては頑張ったわ。この小僧も大事無い。ひゃはははは」

風がラーメンマンの顔を撫でた。自然に胸の前で手型を作る。
右手で拳を造り、左手で掌を広げ拳を包み込む。師への、感謝を表したものだ。
「陳老師…。私は、あなたとの約束を破り超人拳法を使ってしまいました。
 しかも怒りで我を忘れたり、敵の前で震えたり…。破門も当然の未熟者です。
 8年間、この未熟者を指導して頂きありがとうございました。 …お元気で」

また風が吹いた。ラーメンマンは深々と一礼し、背を向けて去ろうとした。が。
「見事なり、不動心。 ……流石は、我が自慢の弟子よ」
陳の声が響いた。その言葉に、驚いて振り返ろうとするラーメンマン。
だが陳はさっさとラーメンマンを追い越して歩いていく。背中越しに陳は言った。
「何をしておる、ラーメンマン。帰るぞ。この子供の治療を、急がねばならん」
131ラーメンマン:2005/05/21(土) 17:33:39 ID:uhZpPN5c0
立ち尽くすラーメンマン。後ろから、朴念の声が響いた。
「ひゃはははは。お主は合格したというに、ちっとも嬉しそうじゃないのう」
唖然とするラーメンマンに、大中国一の高僧・朴念は優しく説いた。
「楽しければ思い切り笑えばよい。悲しければ大きな声で泣けばいいのじゃ。
 そして決して赦せぬ悪辣には、真っ赤に怒ればよい。
 その感情は魂の奥底から来る、混ざり気の無い、何ものにも動かせぬ純粋な心。
 故に、不動心。誰にも、動かせぬお主だけの無垢なるこころ」

朴念の言葉が染み渡る。そうか。やっと分かった。
『何ものにも動じぬ』不動心も大事だろう。だが、過ぎれば人の痛みも分からなくなる。
本当に大切なものは、あるがままに感じるこころ。それこそが本物の不動心。
そしてもうひとつ。超人拳法は私憤に使うにあらず。あるのは義憤のみ。
それを伝えたかったのか、陳と朴念は…。

朴念はのんびりとラーメンマンにせっついた。
「ほれ、陳の姿が見えなくなるわい。拙僧も、夕げでも馳走になろうとしとるのに、
 何をぼーとしておるか。しっかりせい。 …超人拳法後継者よ」

俺はなんという偉大なる師をもったのか。それも2人も。
何時の日にか、陳老師と朴念師の境地に追いつける日が来るだろうか。
ゆっくりと陽が沈み始める。迷うことは無い。ただあるがままこの道を歩けばいい。
本物の『不動心』を胸に…。

これより4年後、ラーメンマンは超人拳法後継者としての認可を受ける事となる。
後に正義超人の重鎮として名を馳せし男・ラーメンマンへとこの物語は続く。    (完) 
132パオ ◆oIVyz8LOXE :2005/05/21(土) 17:40:50 ID:uhZpPN5c0
ああ、朴念の台詞で書き忘れた。↓こんな感じ
「不動明王」がその名に反し憤怒の表情を現しているのは、
魂から突き動かされる純粋な心こそが本当の「不動心」だからだそうです。

この話は本来3分の1程度に縮まなければいけませんでした。
書いている内にどうしても長くなるな。他のやつも。短く纏める能力が無い。
なんとか、サイト連載は今月中に終わらせて、他の連載作品ものこのこやります。

投稿規制って10分ですか?30分以上前に掛かった気が…。
133作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 19:09:48 ID:HNZ3FVXT0
パオさんVSさんお疲れさまですー
電波びしびしのギャグのVSさんと
説法とファイトのパオさんの対比が面白い。
お二人ともバキスレの最初からの方なのでずっと頑張ってください。応援します。


ミドリさん、うみにんさん、ブラキンさんマダー
134ふら〜り:2005/05/21(土) 21:52:27 ID:Sq5UBbauO
ぬるぽ…とでも言っておきましょうか。
135作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 22:37:03 ID:vvZ1qsEO0
崇拝なくして 萌えは無し
ありがたがること それが萌え 
Motion Of the Emotion 恐れず怯まず退かず 人目に勝る我が目あり

上目遣いに照れ笑い
ちょっとドジって テヘ笑い
タカビーならば 高笑い
でも孤独で寂しい一面が あっタカビー系には必須です

不思議系にも よもやまあれど
無口で ミステリ醸しだし
時折つぶやく ストレート
紅潮すれば 超貴重
ボケ属性まで装備され あっズレたセリフの破壊力〜
136作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 22:37:18 ID:vvZ1qsEO0
信仰なくして 萌えは無し
愛で愛でれば それは萌え 
Motion Of the Emotion 恐れず怯まず退かず 人目に勝る我が目あり

最終兵器の 妹ボンバ
元気で活発 おてんば系
鬱でナーバス 病弱系
世間知らずの無垢属性
妹パターン様々あれど あっお兄ちゃんと呼ばれたい〜

男勝りで ボーイッシュ
ボクという字は カタカナ厳守
最初は 突っ張るその態度
素直じゃなくても 根は素直
天然ボケの親友が あっなぜかお似合い迷コンビ〜
137作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 22:37:44 ID:vvZ1qsEO0
憧れなくして 萌えは無し
届かぬ思いは これぞ萌え 
Motion Of the Emotion 恐れず怯まず退かず 人目に勝る我が目あり

装備属性 メガネッ子
取ったら可愛い もう古い
付けてて可愛い これ基本
三つ編みお下げも 捨てがたし
馬鹿な男を蔑んで あっ知的で清楚なインテリ系〜

幼なじみは ヒロインで
隣の姉さん 先生で
引っ越しすれば 再会で
大好物が 子供のおやつ
王道こそ醍醐味の あっこれぞ我らの萌えシチェーション!

Motion Of the Emotion 恐れず怯まず退かず 人目に勝る我が目あり
Motion Of the Emotion 恐れず怯まず退かず 人目に勝る我が目あり
138作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 22:37:49 ID:regmolJ00
パオさん完結お疲れ様です。
このキン肉マンシリーズは続くのかな?

出来れば既存の作品からお願いします。
139作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 23:07:17 ID:+3LjgEJP0
>「貴様…、それでも人かッ!!!」
肉食いちぎるようなガキはボコられて当然な気がするんですが。
140作者の都合により名無しです:2005/05/21(土) 23:23:00 ID:regmolJ00
なるほど、春也は本物の不動心の持ち主だな
怒りに任せて子供をボコったw

それはともあく135-137は何だよ。誤爆?
141作者の都合により名無しです:2005/05/22(日) 00:39:36 ID:zLiyjOES0
>VS氏
すごい量ですね。しかもクオリティ高い。
ハンターの時はどうなるかと思いましたが
最後のヒキの訳わからなさ加減最高w

>パオ氏
長期連載完結おめでとうございます。
僕念というキャラクターが好きでした。
不動心はそういうオチでしたか。感心。
142戯言遣いとオーガの賭け事:2005/05/22(日) 12:20:52 ID:0/uuouVa0
前スレ577より

爆発の衝撃で、世界が揺れる。上手く音が聞こえない。鼓膜がどうかしてしまったのか。
範馬は確実にこの爆発に飲み込まれた。普通に考えれば、跡形も残らない―――。
しかし。しかし、彼は仮にも最強の名で呼ばれる存在だ。この程度でどうにかなるとは思えない。
ぼくは燃え盛る校舎とは逆方向に走り出し、ボロボロの小屋―――のような場所、ボロボロ過ぎてよく分からないが、
元は温室かなにかだったのだろうか―――に入った。そして、腰を下ろして彼が現れるのを待ち受ける。
果たして、範馬が姿を見せた。特に外傷は見られない。服だって綺麗なものだ。
別にぼくは驚かなかった。やっぱりね、というかんじだ。今更あの爆発で無傷だったことなどでいちいち
びっくりしてはいられない。
ぼくは重い腰を上げる。
「ふん―――俺を本気で殺す気なら、核でも用意しとくんだったな」
何とか声は聞き取れた。幸いにも鼓膜は破れていなかったらしい。
「いや、多分何を用意してたって同じだったと思いますよ」
ぼくらは軽口を叩き合う。まるで友人同士のように。
けれどぼくらは友人なんかじゃない。最強と最弱。強靭と脆弱。戦士と詐欺師。敵同士。
これほど噛み合わない関係もない。待ち受けるのは、お互いを噛み合う道だけだ。
「さて、どうする戯言遣い。そろそろギブアップか?」
「―――そうですね。このままやっててもぼくがあなたを圧倒できるとは思えないですし―――」
言いながら、ぼくは範馬に向かって歩き出し―――四歩ほどで脚を止めた。
「けどね、まだ終われないんですよ」
ぼくの目の前には天井から下がったロープがあった。ぼくはそれに手をかける。
「無駄だと分かってて―――それでもこんな自殺行為を続けるのを―――あなたなら馬鹿だと思いますか?」
「馬鹿以外の何者でもねえだろ。そろそろ付き合いきれなくなってきたぜ」
範馬は吐き捨てる。それはそうだ。彼にしてみればこんな闘いに価値などないのだろう。
ぼくは少々申し訳ない気分にさえなった。戯言遣いの茶番劇に付き合わされることほど馬鹿らしいこともない。
けどまあ、もうちょっとだけ。もうちょっとだけお付き合いのほどを。
ぼくはロープを思いっきり引っ張った。
143戯言遣いとオーガの賭け事:2005/05/22(日) 12:21:36 ID:0/uuouVa0
途端―――上空から範馬に向けて、何かが飛び掛る。それは―――網だ。
ただの網ではない。それに使われている繊維は、なんだかよく分からないが、カーボンだのグラスだのとは比べ物に
ならない強度だという。
クジラだって捕まえられるよー、と、これを提供してくれた玖渚は言っていた。しかし―――
「クジラは捕まえられても―――あなたは捕まりませんか」
範馬はあっさりと、その網を引き千切っていた。まあ、当然の結果か。範馬はぼくに近づき―――
胸倉を掴んだ。
「もういいだろ・・・戯言遣い。暇ならいくらでもあるが、てめえの遊びにゃあこれ以上付き合えねえよ」
そして、ポキッと小気味いい音が響き、右腕に激痛。右腕の関節が一つ増えている。
次に左腕。また激痛。関節が一本増えた。
ああ、やれやれ。何度折れれば気が済むのやら、ぼくの腕。
「どうだ?もう両手は使えねえ。どうしようもねえだろうが」
「おいおい、範馬勇次郎。<オーガ>なんて割にゃあちょっと甘くないですかい?ぼくは害虫属性の持ち主ですからね。
きっちり止め刺しといた方が―――」
右脚、ついで左脚が破壊された。激痛。このまま関節が増えていったら、ぼくの骨格は新種の類人猿と誤認されてしまうんじゃ
ないだろうか。
「これで―――両腕と両脚。まだやるか?」
「・・・・・・」
ぼくは答えない。アバラに衝撃。激痛。ゴフッと口から血が吹き出た。やばい、ちょっとやばいなあ。
「まだやるか?」
「・・・・・・」
ぼくは答えない。次は、衝撃は来なかった。範馬が怒鳴る声が聞こえた。
「馬鹿かてめえ!何くだらねえ意地張ってやがる!一言いやあいいだけだろうが!本気で死ぬぞてめえ!」
「・・・・・・」
「・・・・・・チイッ」
鎖骨と肩に衝撃。また激痛。もうどこが痛んでいるのかさえ分からないほど、痛みが渾然一体としている。
144戯言遣いとオーガの賭け事:2005/05/22(日) 12:22:21 ID:0/uuouVa0
「・・・もういいだろうが。もう折る骨もそうそう残っちゃいねえぞ?全身バラバラになるまでやるつもりか?」
「・・・そうだなあ・・・さすがにそれは遠慮したいですね・・・。けどまあ、ぼくの心配するなんて、、随分
優しいことで・・・」
腹に衝撃。あ、やばい。痛みを感じない。こりゃあちょっと不味いかも。
「てめえは―――何がしてえんだ!」
範馬がまたも怒鳴る。
「俺はこういうチマチマしたことは嫌いなんだ!さっさと降参するか、死ぬか、どっちかにしやがれ!」
「・・・・・・」
ああ、そうだな。もうそろそろいいか。もう充分に―――
「京都タワー・・・」
「・・・なに?」
「京都タワーの展望室・・そこで、哀川さんが待っています」
「そりゃあ、降参宣言ってことか?」
「それはあなたが勝手に判断して下さい。ぼくはもう―――喋るのもきついんで」
「ふん・・・」
範馬はぼくから手を離す。ぼくの身体は地面に落ちた。範馬はぼくを見下ろし、言った。
「勝負あり―――だな」
「・・・・・・ええ、勝負あり、です」
範馬はそれを聞き、ぼくに背を向けて歩き出す。ぼくはそんな彼に言い放った。
「この勝負―――ぼくの勝ちですね」
範馬はぎょっとした顔でぼくに振り向いた。
145サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/05/22(日) 12:22:53 ID:0/uuouVa0
投下完了。
いーちゃん、まさかの勝利宣言で次回へ。
146作者の都合により名無しです:2005/05/22(日) 13:21:48 ID:8A0+Be390
お疲れさんです。いーちゃん、あの勇次郎に勝利宣言か。
頼もしいというか、命知らずというか。
秘策があるんでしょうね。
147作者の都合により名無しです:2005/05/22(日) 15:29:27 ID:Dv/ykJ6qO
まだやってたのかサマサ氏。
すまない、忘れていた。謝る。
148作者の都合により名無しです:2005/05/22(日) 15:30:10 ID:hPJgcUk00
>パオ氏
連載完結おめ。春成りは正直すぐやられると思ったけど、強くてよかった。
一番すきなのは坊さんとのやり取りの中盤。他の連載もがんばってね。

>サマサ氏
一人称が「ぼく」なのでどうしてもほんわかとした空気だけど、相手は
オーガなんだよな。いーちゃん男前だな、でも勇次郎に負けて欲しくない。
149作者の都合により名無しです:2005/05/22(日) 21:12:49 ID:GJnq6J8s0


>パオさん
完結? それとも第一編完? とにかくお疲れ様です。
つまり不動心は己の思いに正直であること、ゴーマニズムみたいなものですか。
(「動かぬ心ではない、動かされることのない心(強い意志)」とか、どっかのサイトで読んだ記憶が)
春成はもうちょっと雑魚っぽくして欲しかったですね。(人質を取るとか)

>サマサさん
確かにいーちゃんは「まいった」とは言ってないから勇次郎の試合放棄、とも言えますね。
真意は分かりませんが、この状況下であんな台詞を吐けるとは、漢というか馬鹿というか。
二人の戦いも次でラスト(今回で殆ど終わってますが)ですね。早めの更新を
期待してます。

>VSさん
本調子になったようでめでたしめでたし。
久々に第一部から読み返してみれば、麻雀の比重が凄まじく減少してるのな。
今回も麻雀やってるようで違う方向進んでいるし。面白いからいいけど。
ところでHPへのアップはいつ頃でしょうか?
150おとめごころ:2005/05/23(月) 14:22:26 ID:Hrw1fUfn0
>>80
鎌足は、喪黒の言葉を頭の中で反芻し、そしてそれを否定するように首を振った。
「だ、だけど、でも……でも、でも!」
「鎌足。お前、前に言ってたよな。半端な覚悟じゃおカマはやってられない、って」
息を乱し、脂汗を浮かべながら、蝙也はよろりと立ち上がった。鎌足から離れるように。
「だったらそれを、貫いてみせろ。それともお前は、半端な覚悟でおカマやってたのか?」
「ぅ、くっ。そ、そんなこと、今言ってる場合じゃないでしょ!」
「場合だ! それに何より、俺は何がどうあっても、お前に犠牲にして生きることなど
できん! そんなことは許されん! 俺はまだ、あの日のおにぎりの恩を返していない!」
「蝙也君……」
蝙也を追いかけようとした鎌足の足が、止まる。
「お前がおカマであることに覚悟を決めたのと同じように、俺は武士としての道を
歩むことに、覚悟を、覚悟を、決め……ぅぐ、決め、て、るんだ……っ!」
蝙也の息が、絶え絶えになってきた。それでも蝙也は、その震える手を突き出して、
鎌足の接近を阻んでいる。
「た、頼む、鎌足。お、おお俺に、い、生き恥、だけは。許しててて、くれ。武士と、
して、せめて、恩を、恩義を、返して、死にざ、ま、ざ、死にざ……」
「……そうね。私はおカマだったわ。女の子の装いしてても、中身は男の子」
と呟いた鎌足が、大鎖鎌を地面に落とした。そして、地を蹴って一瞬で間合いを
詰め、拳を握って蝙也の腹に一撃、叩き込む。
151おとめごころ:2005/05/23(月) 14:23:33 ID:Hrw1fUfn0
「ぅぐっ!?」
倒れかけた蝙也の体を抱きとめ、鎌足は言った。
「知らなかったでしょ、私の拳の威力なんて。あの大鎖鎌振り回すんだもん、こう見えて
結構リキあるのよ。今の蝙也君ならこの通り一撃ね、一撃」
「お……お、お前、」
「はいはい大人しくして。すぐ済むから」
「や、やめ……っ!」
蝙也の首筋に、咬み傷の痛みよりも熱い、けれど優しい、点ができた。
その熱さを感じながら、蝙也は気を失ってしまう。その体を、鎌足が支えて立つ。
「こんなに男っぷりを魅せつけられて、私だけ恋する乙女やるわけにはいかないでしょ。
あんたも私も、武士とかおカマとか以前に、男の子ってこと。……ね、蝙也君」
蝙也を背負って、鎌足は歩き出した。いつの間にか日は沈み、しかも悪天候なのか
月や星の光もなく、真っ暗……と思っていたら、雨が降ってきた。
「あらら。怪我人かつ病人を濡らしちゃ、大変ね」
鎌足は急ぐ。急ぐが、雨に濡れてしまうのは避けられない。
だが、どんなに濡れても鎌足は男の子なので力はある。思ってたより早く、洞窟倉庫に
辿り着けた。
152おとめごころ:2005/05/23(月) 14:24:16 ID:Hrw1fUfn0
倉庫内に備えられていた警備兵用の医薬品で、何とか蝙也の手当てはできた。どうやら
毒の症状も収まったらしく、今はすやすやと寝息を立てている。
土砂降りの雨音を聞きながら、がらんした広い洞窟倉庫の真ん中で、鎌足は座っている。
濡れた服は棚から棚へと紐を渡してそこにかけ、下で焚き火をして乾かしている。洞窟の
中だが天井も高く広いので、煙が籠ることも無い。
一糸纏わぬ濡れた体、裸の鎌足の体は今、男の子のそれだ。
『…………』
膝を抱えて、無言で焚き火を見つめている鎌足。そこへ、
「いやあ突然の雨で参りましたよ。失礼、ちょっと雨宿りさせて頂きます」
と言いながら、男が一人ずかずかと入ってきた。黒ずくめの行商人だ。
ちらりと鎌足が視線を向ける。声で判っていたが予想通り、喪黒福造だった。
喪黒は焚き火を挟んで鎌足と向かい合う位置に、どっこいしょと腰を下ろす。
「さて。お嬢さん、どうやら私の申し上げた禁止事項を破られたようですな」
「……見ての通りよ。でもね、」
鎌足は喪黒を見返して、きっぱりと言った。
「後悔しちゃいないわ。私は、おカマとして生きる。男の子の、おカマとしてね」
「ホッホッ。これはまた見事な男っぷり、これこそ『漢』ですなぁ。かつ、健気な
乙女心……二つ合わせて『漢女心』とでも言いましょうか、実は殿方なお嬢さん?」
小馬鹿にしたような喪黒の言いように、鎌足は答えない。喪黒が言葉を続けた。
「まあ、お嬢さんの心根がどうあれ、決まりごとは決まりごとですので。
お嬢さんは、然るべき報いを受けねばなりません。覚悟は良いですね?」
喪黒が、人差し指を鎌足に向けた。鎌足は動じず、じっとその指を睨んでいる。
そして……
「ドオオオオオオオオォォォォン!」
153ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2005/05/23(月) 14:25:39 ID:Hrw1fUfn0
>>ゲロさん
つ、掴み所がないっっ、というのが何よりの感想。蟲になりきれぬヒトとか、徹底的に
虚無な闇とか、一時的に見せかけられてるだけの穴だとか……読んでてずっと、浮遊感が
ありました。ふわふわ。とか思ってたら落下。恐怖ではなく不安を抱いて、次回待ちます。

>>VSさん(ロッキーもランボーも全然観てないのに、コブラだけ観てます私)
おぉお久方ぶりの麻雀本編。卵まみれののび太が転がった瞬間、「きっとパン粉が来る!」
と予想しましたが大当たりで嬉しい。初期は作中最凶だったのに影が薄くなってたドラが、
久々に独裁スイッチで気持ちよくキメてくれて嬉しい。アフローズの消えっぷり、爽快也。

>>パオさん
メインの、不動心の悟りに関するところも深々と頷いてしまいましたが、その前段階の
>焦りが怒りを薄くし、また心に恐怖が立ち上がる。
これに代表される、上がったり下がったりするラーメンマンの気持ち、気迫の揺れっぷり
も良かったです。読んでいて素直にシンクロできました。この調子で他の超人編も、ぜひ!

>>サマサさん
「まだやるかい」といえば花山ですが、やっぱり印象が違いますね。やり手が勇次郎だと。
いや、やってる内容も違うといえば違うんですけど。で勝利宣言……勇次郎側の敗北条件
に「いーちゃん殺害」がありますけど、いくら何でもそれは。いやもしかして、まさか?
154作者の都合により名無しです:2005/05/23(月) 21:24:29 ID:tDQVaxBe0
報いか…一生恋は成就しないとか、そんなのかな。

しかし、今週は終了ラッシュが来そうだなあ。
155作者の都合により名無しです:2005/05/23(月) 22:43:49 ID:cQ8LtarO0
ふらーりさん乙です。
乙女で漢なキャラはふらーりさんが一番うまいなあ
156コルテラジオ:2005/05/24(火) 23:52:58 ID:e+rcqd8mO
私はまだやるぞ。SSスレ構造改革をッッ
157作者の都合により名無しです:2005/05/25(水) 02:30:10 ID:Xzqfkln50
ミドリさま
また放置プレイですか
158作者の都合により名無しです:2005/05/25(水) 13:31:27 ID:/ngMMkA4O
もし明日世界が滅ぶなら あの子に伝えてほしい
精一杯の愛情を あの子に与えてほしい
それが私の望み 神よ欲張りでしょうか?
冷たくなった烈海王が 私に無言のエールをおくる
ああ 罪深き人類よ エデンの戦士はあなた方を許さないだろう
燃えさかる炎の中で 沸騰するは範馬の血
聖なる夜に爪垢を 煎じて飲むのは真羅字刃牙
オレハマオウ ムテキノパズーなり
159作者の都合により名無しです:2005/05/25(水) 14:35:23 ID:/ngMMkA4O
遠く離れたこの星にパオの息吹が吹きかかる
汚れちまった黒い大地にミドリの優しさがふりかかる
倒れかかったザクの肩をうみにんが優しく支える
悪の魔の手を払うため旅立つブラキンとサマサを五が追う
全てはふらーりのために
VSの種がもつおに そしてフンコロガシに
戦いから逃げた外伝は 噴火口に身を投げた
ぬるぽ
160作者の都合により名無しです:2005/05/25(水) 15:12:22 ID:2HwWI7mQ0
変なの来たな。作品まだかな
161ちんこ:2005/05/25(水) 18:39:23 ID:/ngMMkA4O
はやく作品来ないかなあ
162作者の都合により名無しです:2005/05/25(水) 22:40:59 ID:v6f3G+NJ0
>>159

ガッ!
163虹のかなた:2005/05/26(木) 01:40:08 ID:v6WkQgJI0
ごきげんよう、皆様。
ttp://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/26.htm からの続きです。
お忘れの方もいらっしゃるでしょうが、「紅薔薇さま」と書いて「ロサ・キネンシス」と読みます。



祐巳が、古い温室でキャプテン・ブラボーなる人物と出会う数分ほど前。

二年菊組は、鐘の音と共に滞りなくホームルームを終えていた。
手早く荷物をまとめ、瞳子や乃梨子を初めとするクラスメイト達との挨拶もそこそこにジュネはざわめく教室を出る。
待ち合わせ場所である温室に向かう前に、ジュネにはどうしても確かめたいことがあった。
一時限と二時限の間の休み時間。
一瞬だったけど確かに感じた強い小宇宙。
この敷地内……いや、この校舎内で発せられたそれは、間違いなく知っている聖闘士のモノだった。
ソレが誰なのかまでは特定できなかったが、少なくとも自分の弟弟子のモノではない。
自分が彼の小宇宙を感知し違えるなどあり得ないからそれは確実だ。
だとすると一体誰が…。
大きく翻りプリーツを崩してしまったスカートを気にすることもなく、ジュネは大股で階下へ向かう。
(この辺りだったと思うんだけど……)
そこは一階の校舎の端にある、教職員用の出入り口だった。
ひっそりとしていて人気は全くない。
ふと、出入り口の脇に小部屋――――事務室があることに気が付いたジュネは受付となっている小窓を覗き込み……
ポカンと口を開けてしまった。
……小窓の奥には、机に向かい光速で電卓を叩いている白銀聖闘士の姿がある。
「魔鈴さん…?!」
予想外な人物の意外な姿に思わず呆然としてしまったが、ハッと我に返る。
(なんで魔鈴さんがここに…。と言うか、魔鈴さんが机に向かって座ってるとこなんて初めて見た…)
ジュネの声に視線を上げた魔鈴は、仮面の変わりになのか、細い銀縁の眼鏡をかけていた。
それを指先で少し持ち上げ位置を直すと、おもむろに腰を上げる。
ツカツカと大股で室内を横切り、事務室を出た魔鈴はジュネと向かい合った。
164虹のかなた:2005/05/26(木) 01:41:31 ID:v6WkQgJI0
「魔鈴さん、どうしてここに……って!痛っ!」
問いかけの途中で、ジュネは突然脳天に広がった痛みにうずくまる。
避けようがないほどの素晴らしいスピードで、魔鈴にゲンコツを落とされたのだ。
「馬鹿だね、この子は。自分も一応任務中だってのに素っ頓狂な声を出すんじゃないよ」
「…すみません…」
チカチカと危険に点滅する目を瞬きながら、ジュネは大人しく謝る。
ここで口答えでもしようものなら、もう二、三発ほど殴られるのは確実だ。
「…魔鈴さんはどうしてここに?」
痛む頭をさすりながら魔鈴に尋ねると、
「アテナから聞いてないのかい?私も任務でここにいるんだよ」
と、眉をひそめられてしまった。
(何も聞いていないから驚いてるんです…)
魔鈴がここにいるということは、ほぼ間違いなく今回の件絡みだろう。
なのに、どうしてアテナは自分に魔鈴がここに来ていることを教えてくれなかったのか。
まぁ、この後お会いした時に教えてくれるつもりだったのかもしれないが…。
(ジュネの驚く顔が見たかったからぁ〜、なんて言われたらグレてやる)
ある意味年頃の乙女らしい決意を固めたジュネがため息をつく。
それを見やり、魔鈴は小さく苦笑した。
「アテナがジュネには教えても構わないって仰ったから教えるけど、私は今回、福沢祐巳という女の子を護衛している」
「紅薔薇さまを?」
なるほど。
紅薔薇さまが例のホムンクルスに関心を持たれているのは事実だし。
確かに彼女にも護衛を付けた方がいいだろう。
魔鈴さんは強いし頭も良いし、適任だ。
「ロサ・キネンシス?」
一方、魔鈴は聞き慣れない単語に首を傾げていた。
「あ、福沢祐巳のここでの通り名なんです。紅薔薇さまって。なんでも赤い薔薇の名前だとか」
「へぇ。紅薔薇ってイメージじゃなかったけどねぇ」
魔鈴のその言葉に、思わずジュネは笑ってしまった。
確かに彼女は薔薇……しかも、紅い薔薇なんてイメージじゃない。
どっちかって言うと、野に咲くたんぽぽとか、そういった方が似合う。
165虹のかなた:2005/05/26(木) 01:42:55 ID:v6WkQgJI0
「ついでに教えとくけど、シャイナと瞬も今回、この件でこっちに来てるよ。別の女の子の護衛をしている」
「シャイナさんと……瞬が」
「確か、佐藤聖とかいう女子大生の護衛だよ。……ジュネ?」
険しい表情で一点を見つめたまま固まってしまったジュネの顔を覗き込み、魔鈴はため息をついた。
白銀聖闘士・蛇遣い座のシャイナは魔鈴と同期で同じ年の女聖闘士だ。
ジュネにとっては、魔鈴と共に数少ない同性の先輩であり目標でもある。
そして…アンドロメダ座の瞬は、ジュネと同じケフェウス座のダイダロスに師事した青銅聖闘士だ。
彼はジュネにとっては弟弟子にあたる。
例の城戸光政の百人の子供の一人である彼はアテナからの信頼も厚く、サガの乱や海皇ポセイドン、冥皇ハーデスとの
戦いにおける活躍で、その実力は聖域でも最強クラスだと認識されている。
優しすぎたせいで泣き虫で弱くって、いつ死んでもおかしくないと思われていた修業時代からは考えられない話だ。
(いつからだったんだろう…)
自分が、彼に特別な感情を持ち始めたのは。
あまりの弱さに放っておけなくって世話を焼いていた修業時代の頃からなのか。
彼が、死ぬ確率の方が高かったサクリファイスを成し遂げた時からなのか。
十二宮突破という、自殺行為にも匹敵する行動を起こそうとした彼を止めた時にはもうすでに、ジュネにとって瞬は特別
な存在だった。
「…瞬にはまだ、会うつもりはないのかい?」
サラリと、でもジュネを気遣うように魔鈴が問いかける。
視線を伏せたままのジュネは、小さく頷いた。
三年前。
城戸沙織がアテナとして覚醒し、自分の正当な地位を取り戻すべく聖域に赴かんとしていたあの夜。
星矢達と共に聖域に乗り込むという瞬を、ジュネは引き留めた。
素顔を晒し、瞬達の抹殺を狙う聖域の刺客の目を盗んでまで。
あの時は彼を死なせたくない一心で必死だった。
ダイダロス先生を失って、その上瞬まで失ったら自分はどう生きていいのかわからない。
結果として、城戸沙織はアテナとして認められ、彼女を信じた青銅聖闘士達は重傷を負いながらも生き延びることが出来た。
闇に覆われていた聖域に光が戻ったのだ。

……だけど。
166虹のかなた:2005/05/26(木) 01:44:55 ID:v6WkQgJI0
グラード財団の病院で眠り続ける瞬を遠くから見つめていたジュネは、瞬の生還を喜ぶと同時に胸を裂かれるような後悔に
襲われていた。
……どうして自分は、彼の信じたモノを信じてやれなかったのだろう。
アテナの聖闘士は希望の聖闘士。
なのに自分は希望を見つける努力もせずに逃げようとし…。
自分がしたことと言えば、唯、泣いてすがって彼を引き留めようとしたことだけ。
自分は戦う力を持っているのだから、彼と一緒に戦うことだって出来たはずなのに、そんなことを考えもせずに。
自身を押しつぶす様な後悔の渦の中、ジュネは自分の取るべき道を模索し続けて…そして、見つけたのだ。
自分はどうありたいのか。
(――――強くなりたい)
人として。聖闘士として。
心も、体も。
単純な願いだと思う。だけど。
瞬はきっと、これからもアテナの為に戦い続けるだろう。
ならば自分も共に闘い……彼の盾となって死んでいきたい。
それがきっと、アテナや世界の平和に繋がると信じたい。
自分で決めた自分の生きる道を進むために――――その為の強さを手に入れるまでは、瞬には会わない。
そう決めたのだ。
「…まだ会えません」
険しい表情のまま俯き、声を固くしたジュネは更に視線を下げた。
今はまだ、駄目だ。彼に会えるほど、自分は強くなっていない。
自分が納得できる強さを手に入れるまでは、駄目だ。
頑固で一途な後輩を数秒ほど痛ましそうに見つめた魔鈴は、やれやれ、と小さくごちながら再びジュネの脳天にゲンコツを
落とした。
「まったくあんたも不器用な性格だねぇ」
涙目になりながら痛がるジュネを見下ろし、魔鈴が苦笑する。
それが魔鈴なりの励ましなのだとわかり、ジュネもどうにか笑ってみせる。
「アテナをお待たせしてるので、もう行きます」
「ああ。夏休みにでも一度聖域においで。腕がなまってないか見てやるから」
とてもありがたいが、命の保証のないお誘いに苦笑いを返す。
「アテナにシケたツラお見せするんじゃないよ」と笑う魔鈴に会釈をし、ジュネは歩き出した。
彼の名を聞いたことで鮮明に甦ってきた胸の痛みを隠しながら。
167虹のかなた:2005/05/26(木) 01:46:47 ID:v6WkQgJI0

靴を履き替え昇降口を出ると、丁度、斗貴子と出くわした。
「…どうしたんだ?その頭」
挨拶もせず開口一番に告げられた言葉がこれだった。
いや、斗貴子に「ごきげんよう」なんて挨拶をされたらこっちが驚いてしまうところだが。
驚いた様子の斗貴子の視線が自分の髪へ注がれているのがわかり、ジュネは肩をすくめてみせる。
「瞳子にやられたんだ。この方が動きやすいからいいんだけど」
二時限目と三時限目の間の休み時間。
朝は憂鬱そうだったくせに、二時限目が終わったときにはなぜか突然ハイテンションになっていた瞳子に問答無用で
編まれてしまったのだ。
左右にきっちり、綺麗な三つ編みに。
ちなみに毛先には水色のレースのリボンがあしらわれている。
『機会があったらやりたいと思っていましたのたよ』と上機嫌な瞳子に一応『やめてくれ』と頼んでみたのだが、まさしく
無駄な抵抗に終わってしまった。
まぁ、リリアンの制服には似合うかもしれないし、多少動きやすいから、と開き直ってそのままにしておいたのだが。
「変か?」
斗貴子があまりにも驚くので尋ねてみると
「いや。……似合っている」
と予想外の言葉が返ってきてしまった。
(え…と…)
この微妙に照れくさい間はなんなんだろう。
「……行くか」
「……ああ」
並んで歩きながら斗貴子を見下ろすと、視線がぶつかった。
一瞬だけだったけど斗貴子が微笑んだように見え、ジュネもクスリと笑う。
(そういえば)
斗貴子と目を合わせて笑い合うなんて、これが初めてではないだろうか。
前を見つめる斗貴子はいつもと同じように険しい表情をしているけど。
なんだか、ほんの少しだけだけど……胸の痛みが、和らいだような気がした。
168虹のかなた:2005/05/26(木) 01:48:50 ID:v6WkQgJI0
今回はここまでです。
少し心理描写が多くなりましたが、ここを書かないと次に繋がらないのでご了承ください。
この次はもう少し早く投下したいです。

それでは、ごきげんよう。
169ミドリ ◆5k4Bd86fvo :2005/05/26(木) 01:53:01 ID:v6WkQgJI0
>>163-168は私です。
前回と同じミスを…ごめんなさい。
 
後、今更ですが武装練金の最終回はちょっと衝撃でした。
おやすみなさい。
170作者の都合により名無しです:2005/05/26(木) 04:14:24 ID:DU1/8vkP0
ミドリさまイラッシャッタ━(゚∀゚)━━━!!

ジュネさん、乙女ですね
可愛らしいです
そしてメガネの魔鈴さんて似合いすぎだ!

シャイナさんも期待してます♪
171作者の都合により名無しです:2005/05/26(木) 10:07:57 ID:xAdtgIOO0
ミドリさまお久しぶりのごきげんよう。

ジュネのピンチにさっそうと瞬登場とかあるのかな?
魔鈴さんといいトキコさんといい、ストロングビューティーな
女性のてんこ盛りですなwしかし、メインキャストって9割女性なんだ。
ブラボーが異彩を放ちますな、わははは

172作者の都合により名無しです:2005/05/26(木) 11:44:34 ID:WH21ITFSO
他こねーなチキショー!!
うわあああああああ!!!
173作者の都合により名無しです:2005/05/26(木) 17:59:31 ID:FIDTq9Nv0
みどりさんお久しぶりです。
マリンさん現れてどんどん登場人物増えていきますねー。
しかも>>171いう通り9割美人。女性の心理描写も流石にうまいですね。
174作者の都合により名無しです:2005/05/26(木) 22:44:51 ID:WH21ITFSO
ミドリ士乙
星矢がこれからどんな活躍を見せてくれるか、今後に期待してます!
175作者の都合により名無しです:2005/05/27(金) 01:14:56 ID:ITrXQQy60
瞬ははたして登場するのか?
沙織お嬢さんを学園に送ってきたリムジンの運転手はだれだったのか?
期待してます
176作者の都合により名無しです:2005/05/27(金) 11:12:58 ID:f16VVG0M0
暫定ランキング

SS 最強 リュウケン、ラオウ、ケンシロウ
S 覇者 コウリュウ(若時)、サウザー、カイオウ
─────────────────────
A 元帥 シン(盛時)、コウリュウ 、ファルコ(両足)

--------------超えられない格の壁-----------------

B 将軍 トキ(健常)、レイ(白髪)、シュウ(両目)、ヒョウ、ジュウケイ、ハン
─────────────────────
C 衛将 トキ、ファルコ、シン、レイ、シュウ、ユダ、デビル、ウイグル、黒夜叉
D 准将 ジャギ、砂蜘蛛、バラン、ジュウザ、フドウ、牙一族親父、カイゼル、シャチ
─────────────────────
E 副官 リュウガ、ハート様、カーネル、アミバ、ソリア、ライガ&フウガ
F 隊長 ボルゲ、ヒューイ、シュレン、アサム、南斗双斬拳、殺&斬、ハーン兄弟
─────────────────────
G 士官 ナガト、ヌメリ、ショウキ、アルフ、マダラ、ヒルカ、シエ、ブロン、マッド軍曹、バット
H 兵士 ギョウコ、アイン、フォックス、リハク、バルガ、赤シャチ、マイペット、ダガール、3馬鹿
─────────────────────
I 雑魚 泰山分派、屈強モヒカン(ジード等)、南斗分派(ジャッカル等)、コマク様、ゴンズ様
J 弱者 コウケツ、サモト様、マミヤ、村人、病人、老人、女子供
177作者の都合により名無しです:2005/05/27(金) 11:14:07 ID:f16VVG0M0
サウザーとラオウはカイオウと違い最後まで底を見せなかったキャラというのが凄い。

ラオウ・・・・最強状態のケンシロウと何度も互角(以上)の勝負をし最後はわざと負ける。
サウザー・・・一戦目圧勝。二戦目もケンシロウの拳筋を見切り圧倒しつつも全く予想外の攻撃の前に惜敗。
カイオウ・・・全く怒りのない弱い状態のケンシロウに一発芸でたたみかけて辛くも勝利。再戦時は惨敗。
178作者の都合により名無しです:2005/05/27(金) 22:14:43 ID:MrjR5tAn0
179作者の都合により名無しです:2005/05/27(金) 23:46:35 ID:A6L3xhNe0
久しぶりに荒らされているか。ま、多くはいうまい。
職人さんが投下してくれれば元の雰囲気に戻るはず。
うみにんさんやブラックキングさんはどうした?
180ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 00:09:43 ID:6LsLbp8J0
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/dora2_021_04.htmlで
左を選択した場合
=====================================================
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_turban1.gif

「お前がモーフィアスだ!」
「あったりー!」
「ワタシたちの負けねー! のび太さすがねー!」
 モーフィアスとトリニティは当たりのプラカードをかざしてのび太を祝福し
た。のび太はちっとも嬉しくない。
 素直に負けを認めすぎる。モーフィアスとトリニティは完全な双子なのだか
から、やろうと思えばいくらでもすり替わることができる。これも幻惑殺法と
やらの手管の一つに違いない。のび太はこの世の全てが信じられなかった。
「お前ら、なんか魂胆があるだろ。怒らないから言ってみ」
「そんなことないねー。 当たりを当たりと言って何が悪いねー」
「これ、正解者へのプレゼントねー」
 モーフィアスとトリニティはのび太に大きな箱を手渡した。のび太が耳を当
てると、箱の中からコチコチという音が聞こえる。
「見事なまでに爆弾じゃねーか。こんなもん誰が開けるか」
「そこまで疑うならあげないよー」
 二人のインド人はのび太から箱をひったくって、くちばしで柱をつついてい
たスネ夫にあげた。
「これ、お前にやるねー」
「ん? なんだこれ?」
 スネ夫はなんの疑いもなく箱を開けた。箱の中身は大きな金の延べ棒と、時
計の音を吹き込んだテープレコーダーだった。
「こんなもんいらんわ」
 延べ棒とテープレコーダーをゴミ箱に叩き込んで、また柱つつきに没入した。
資産家の息子のスネ夫にとって、金の延べ棒など犬のクソに等しいゴミ屑だっ
た。いわんやテープレコーダーをや。モーフィアスとトリニティは恨めしそう
な目でのび太を見た。
181ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 00:10:36 ID:6LsLbp8J0
「のび太のせいで、大事な金の延べ棒がゴミになったねー」
「反省してるならこっちに来るねー」
 のび太の腕を引っ張って、部屋の隅に連れていった。頭の上には大きなくす
玉が吊ってあって、目の前にはケーブルが横に張ってある。ケーブルは赤と青
の二本あった。
「どちらかのケーブルを切るとくす玉が割れるねー」
「間違ったケーブルを切るとドカンか」
 のび太の疑いは晴れていなかった。テープカットを断固拒否するのび太に、
さすがのモーフィアスとトリニティも怒り出した。
「人を疑うのもいい加減にするよ! もうワタシたちで勝手にやるよ!」
 まずモーフィアスが赤いケーブルを切った。くす玉が割れて、垂れ幕と鳩が
飛び出した。次にトリニティが青いケーブルを切った。くす玉がいったん閉じ
てまた開いて、巨大なケーキがのび太目がけて落ちてきた。
「どうねー。どっちを切ってもドカンじゃなかったねー」
「ボクが悪かった! この通り!」
 のび太はやっと二人への嫌疑を解いた。ケーキまみれになって土下座するの
び太を、モーフィアスとトリニティは笑って許してやった。
「分かればいいのよー。麻雀の続きやるよー」
「ワタシたちのツモ番よー。のび太もさっさと卓に戻るよー」
「はーい!」
 のび太が椅子に座るとスイッチが入った。椅子に仕込んだ起爆ボタンだった。
ドカン。

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/bomb.gif
182ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 00:11:36 ID:6LsLbp8J0
 サイレンと野次馬の嬌声がかすかに聞こえる。爆発現場から遠く離れた歩道
橋の上で、モーフィアスとトリニティは大成功のプラカードを振り回して踊り
狂った。
「幻惑殺法、大成功ねー!」
「あれだけ布石を打っておけば誰だって引っかかるねー! キアヌとアカギも
道連れねー!」
 トリニティは懐からスタンプカードを取り出して、ドクロのハンコを一つ押
した。カードには九十九個のドクロが並んでいる。
「あと一個で百個ねー!」
「Mサイズのピザが一枚サービスねー!」
 高笑いするトリニティの肩を、後ろから叩く者があった。トリニティは振り
返って嬉しそうに悪態をついた。
「誰ねー! お前なんかにピザは一切れもやらないねー!」
「それは残念だ」
 アカギだった。正面に据えた全自動卓には、手牌と山が対局途中のままで積
んである。
「アカギだー!」
 モーフィアスとトリニティはショックのプラカードを掲げて驚いた。はずみ
でトリニティの手からスタンプカードが落ちて、歩道橋の下の車道に吸い込ま
れていった。
「お前らの番だ。ツモれ」
 アカギは静かに勝負の再開を告げた。南家も北家もいない、夜空の下のタイ
マン勝負だった。
183ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 00:12:34 ID:6LsLbp8J0
「そんな暇はないね! 今からキアヌの家に線香あげに行くね!」
「なら死ね」
 ツモを拒否したトリニティの眉間に万点棒が突き刺さった。トリニティはよ
ろめいて橋の欄干にもたれかかって、そのまま車道に落下した。ドクロのハン
コが懐からこぼれて、先に落ちたスタンプカードに百個目の刻印を押した。
「お前はどうする」
 残ったモーフィアスに抵抗の意思はなかった。ヨロヨロとアカギの向かいの
椅子に腰を下ろして、リーチ一発のツモを引いた。モーフィアス、南ツモ。ツ
モ切り。
「ロン」

(222444)444777南

「四暗刻単騎。64,000点」
「ヒンズースクワーット!」
 モーフィアスはたまぎるような叫びをあげて、トリニティとは反対側の欄干
から車道に落ちた。通りがかったピザ屋のバイクに衝突して、ピザを頭からか
ぶって息絶えた。Mサイズのピザだった。
「ククク……」
 ハリウッド気付の請求書を残して、アカギは席を立った。夜の歩道橋を降り
るアカギの背中を、冷たい月が見つめていた。
184作者の都合により名無しです:2005/05/28(土) 00:13:25 ID:1WvQOAH+0
年がら年中あけましておめでとうの人がキター
大好きだVSさん。この雰囲気を変えてくれ

しかし日本一長い最終回かも知れんね。
下手したら最終回が本編の半分超えるかも。
望むところだけど。あと、バキウソバレも復活してね!
185ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 00:14:35 ID:6LsLbp8J0
これ以外の分岐はホームページでやります。

はじめは巨人時代のスミスとクロマティで完全野球ネタを書いたんだけど
画像がどうしても見つからなかったのでほとんど書きかえました。どっかで
使い回せるといーなー。
186作者の都合により名無しです:2005/05/28(土) 00:21:14 ID:1WvQOAH+0
>これ以外の分岐はホームページでやります

えーそんな。ここで書いてよ。
バキスレ引退しちゃうの?ウソバレ止めちゃったの?
187ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 00:21:16 ID:6LsLbp8J0
>>184
>下手したら最終回が本編の半分超えるかも。
楽勝で超えます。今年中に完結できたらミラクルだと思って下さい。
バキのウソバレも書かなきゃなー。MIXIの日記も書かないとなー。
188ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 04:28:04 ID:6LsLbp8J0
>>121
「のび太くん、死ぬな!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_oscar.gif

「んー。どっしよっかなー」
 のび太はおちょぼ口に指を当てて、壁を這うゴキブリを眺めている。自分の
おかれた状況を全く自覚していない。
「ボケっとしてんじゃねーぞテメー! 殺すぞ!」
 マイペースなのび太に業を煮やして、Kは両手を広げてのび太の前に立った。
身を挺してのび太を砲弾から守るつもりだ。
「んー。Kくん、死んじゃうのー?」
「そんな訳ねーだろ! これだ!」
 Kはすりこぎを振り上げた。モーフィアスとトリニティの放った砲弾に、あま
たの傑作映画を生み出した特殊メイクを施した。
「でやー!」

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_nobunaga.gif

======================================================================
織田信長
 1534年、尾張生まれ。青年期より天下布武を志し、自身を主人公にした国盗
りゲームをパソコンにて発売するが大コケ。以後はエロゲーに路線変更する。
「ナイトライフ」「団地妻は電気ウナギの夢を見るか?」「マイロリータ」は
信長アダルトゲーム三部作として一世を風靡するも1582年、家臣の明智光秀の
謀反により本能寺で死去。趣味は大化の改新。
 あとホモ。
======================================================================
189ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 04:28:49 ID:6LsLbp8J0
 空中で織田信長に変身した砲弾はKとのび太の脇をかすめて、窓から外へ飛
び出した。信長公の出陣を見送って武運を祈って、Kはモーフィアスとトリニ
ティに詰め寄った。
「念のために聞いてやる。お前ら、ここまで全然撮影してないよな?」
「当たり前ねー。バズーカで映画撮るバカがいたら連れてきてほしいねー」
 開き直る二人に、Kは非情な通告を突きつけた。
「お前らクビ。国に帰れ」
「誰がやっちゅうねーん!」
 モーフィアスとトリニティはターバンをほどいて床に叩き付けた。すぐに拾
って元通りに巻き直して、偉そうなKに猛抗議した。
「キアヌ、ボスじゃないね! ワタシたちをクビにする権限ないね!」
「バズーカだってボスが用意したね! クビになるのはボスとキアヌね!」
「そうなのか、ボス?」
 Kはクロマティに分かりきった質問をした。予想通りの答えが返ってきた。
「ボク、なんにも知らないよー」
「人生五十年やっちゅうねーん!」
 モーフィアスとトリニティはターバンをむしり取ってビリビリに破いた。代
わりに古新聞を頭に巻いて鏡でしっかりチェックして、クロマティとKに中指
を立てた。
「お前たちとはもうやってられませーん! ここでおサヨナラねー!」
「あー帰れ帰れ。インドにでも足立区にでもとっとと帰れ」
「ワタシたち、インドでキアヌ・リーブスを名乗ってアングラ活動するねー!
いいかー?」
「マトリックスの続編もワタシたちで撮って世界上映するねー! いいかー?」
「バイバーイ」
 Kは二人の話など全然聞かず、そっぽを向いて手をシッシと振った。荷物を
まとめたモーフィアスとトリニティは窓のふちに手をかけて、もう一度Kを振
り返った。
「キアヌ! ボス! 次に会うのはアカデミー賞の表彰式ね!」
「インドのアカデミー賞は壮観ね! 客は牛とハエだけね!」
 捨てゼリフを残して縄ばしごに飛び移った。ヘリはアメリカに帰った後で、
そこに縄ばしごはなかった。
190ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 04:29:27 ID:6LsLbp8J0
http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_turban1.gif

======================================================================
モーフィアス
映画俳優兼インド人。日本の雀荘で初代キアヌ・リーブスを襲名するも、ドー
ナツの食いすぎが原因で二年後に死去。遺体はインドとハリウッドの間をとっ
て、野比家の庭に埋葬された。
======================================================================

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_turban2.gif

======================================================================
トリニティ
ターバンとヒゲの人。モーフィアス亡き後もキアヌ・リーブスとして活動を続
ける。映画にかけるあくなき情熱は子孫の代に受け継がれ、マトリックスの最
新作を次々と製作。シリーズ完結となるパート70は、ガンジス川の川辺で牛が
二時間草を食い続けるだけの環境映画だった。
======================================================================

「さてボス。これからどうする?」
 邪魔者も消えたところで、Kは改めてクロマティに尋ねた。映画の撮影が不
可能ならば、アメリカに帰るしか選択肢はない。
「しょーがないねー。とっておきの最終兵器ねー」
 クロマティは大きな金属の箱を取り出した。テレビカメラといって、映画が
撮影できるとっても便利な機械である。
「うへー! ボス、本物のカメラも持ってたのー!」
「ボスなんだから持ってきてるに決まってるねー! ンモー!」
「そーなー。映画を撮るのにカメラを持ってこない訳がねーよなー」
 Kとクロマティは和やかに笑って、大きな声で叫んだ。
「そういう訳で、最初から全部取り直すぞ! 覚悟はいいか!」
「へーい」
191ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 04:30:37 ID:6LsLbp8J0
 2005年四月十六日、アメリカでキアヌ・リーブスの最新作が公開となった。
当初はキアヌ演じるプロ雀士の名前「コンスタンティン」がタイトルであった
が、ヘビースモーカーの悪魔祓い役のアカギがあまりに好評であったため、日
本公開時にタイトルが変更された。新しいタイトルはもちろん……。

http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/img/dora2_021_04_akagi.gif



ドラえもんの麻雀教室 最終回その4 了
192ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 04:32:57 ID:6LsLbp8J0
最終回その5がいつになるかは分かりません。明日書くかもしれないし、来年ぐらいに
なるかもしれません。間隔が空きすぎた時は、例によってハンターハンターのネタを
一本はさみます。おのれ冨樫義博。
193ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 08:44:59 ID:6LsLbp8J0
>「団地妻は電気ウナギの夢を見るか?」

おはようございます。これツッコミ禁止。気づいてよかった。
194おとめごころ:2005/05/28(土) 18:59:14 ID:MoPN+0AV0
>>152
その後。
志々雄一派は、順調な発展を遂げた。構成員も質量共にどんどん向上し、
京都の暗黒街に見事な一大兵団を築き上げるに到った。
鎌足と蝙也、最古参の宗次郎を含む面々は、精鋭部隊『十本刀』に任命され、組織内の
大幹部格となった。……その中には、志々雄の寵愛を受ける由美という女がいたりする。
戦闘力はなく、よって戦場には赴かず、血の一滴も流さずに、四六時中志々雄の側を
離れない由美。その由美を得て以来、志々雄は他の女には全く目を向けなくなった。
元々女ではない鎌足など、言うに及ばず。全く眼中にない、というか眼中から消えた。
そして。
緋村剣心たちとの戦いで、志々雄一派はあっと言う間に壊滅。鎌足は小娘二人との戦いで
負傷、志々雄は死亡。鎌足の最愛の人は、由美と手に手を取ってあの世へと旅立った。
生き残ってしまった鎌足に残っているのは、仇敵である明治政府の一員という身分のみ。
明治政府の命令に従い、その手足となって働くこと以外、生きる道は残されていないのだ。
「はは……あはははは、凄いわ。こりゃ凄いわ。あの行商人の言ってた通り、ズバリ
その通り大当たり、ってやつ? ふふ、ふふふふ、本当に、本当にこれって……」
警察病院の寝台の上で、鎌足が笑っていた。泣きながら笑っていた。
「私一人が死ぬ、なんて軽いものじゃなかった……死ぬだけで済んでたら、どんなに……
どんなに……は、はははは……どうしよっか、私? もう、生きてたって何にも……」
その時。素っ気無くドアが叩かれ、鎌足の返事を待たずに男が入ってきた。
「邪魔すんで」
髪を逆立てて何本もの剣を携えた男。志々雄が死に組織が壊滅しても、何も変わって
いないかのような、飄々としたその顔と態度。張である。
「鎌足。ワレに一つ、言うとかなあかんことがあってな」
195おとめごころ:2005/05/28(土) 18:59:52 ID:MoPN+0AV0
志々雄が鎌足に伝えていなかった、十本刀の裏の任務。万一戦いに敗れて組織が壊滅した
時は、志々雄一派の存在を後世に伝える語り部になれ、と。張はそれを鎌足に説明した。
「明治政府の連中に、歴史を好きにさせん為にな。志々雄様はワレの気持ちを知っとった
から、『あいつは一番の語り部になってくれる』て笑とったで」
「語り部……」
「せや。ワレが志々雄様の最期の命令を全うするか、それともワガの勝手な気持ちで
逃げてまうか。ま、今あの世へ言ったりしたら、志々雄様にどやされるのは確実やな」
鎌足は、俯いたまま無言。何も答えない。
「ワイの話はこんだけや。これからワレがどないするかは、ワレが決めぇ。ほなな」
張は、ドアを閉めて出て行った。そのドアを見つめて、鎌足は思う。
『……馬鹿。あの志々雄様が、自分が負けた時のことなんか考えるはずがないでしょ。
嘘つくなら、もっとましな嘘つきなさいよ。って言っても、』
胸の中、思っているだけでは堪えられず、つい、口から言葉が出る。
「私を騙せる嘘なんて、誰にもつけないでしょうけどね。だって、私……私以上に、
志々雄様のことを理解してる人なんていないんだから。私が一番、志々雄様のことを
ずっと、ずっと見てた……ずっと想って……想って、たんだから……」
鎌足の口から漏れた言葉は言葉にならず、最後の方は嗚咽に溶けた。
196おとめごころ:2005/05/28(土) 19:00:30 ID:MoPN+0AV0
病室を出てドアを閉めた張は、そのままスタスタ歩いていった。廊下の角を曲がって、
更にしばらく、歩いていく。
そして鎌足の気配も何も感じられなくなってから、充分距離を取ってから、口を開いた。
「言うて来たで」
「ああ。世話をかけたな」
壁にもたれて、蝙也が立っている。彼も張や鎌足と同じく生き残り、明治政府の一員
として、間もなく大陸に渡ることになっている。
「確かにまあ、あの嘘で騙せたら、鎌足は生きよるやろ。あいつの中で志々雄様は絶対
やさかいな。せやけど、何でワイに言わせんねん。ワレが自分で言うたったらええのに」
「……この俺に、今更あいつに合わせる顔などあると思うのか」
蝙也は俯いたまま、表情と同じく痛々しさを湛えた声で言った。
「あの蛇使いとの戦いの時、俺がヘマをしなければ。あいつは、由美を差し置いて
志々雄様の寵姫となれていたはずなんだ。それなのに……それだけではない、葵屋での
戦いにしても、俺があんなガキ相手に不覚を取らなければ、あいつを護ることもできた
んだ。だが現実は、お前も知る通り。俺はあいつの為に、何一つできなかった……っ!」
「ま、まあ蝙也、落ち着けや。え〜と、その、つまり、やな」
今にもこの場で切腹しかねない蝙也の無念っぷりに、張は何とか説得を試みる。
「ワレは確か、武士道を貫くとか何とか、言うとったやないか。せやけどな、本来の
武士道ちぅもんは、主君の為に尽くすもんやろ。鎌足は別に、ワレの主やないんやし」
蝙也は張の言葉を聞いて、小さく溜息をついた。そして、のろのろと病院の出口に
向かって歩き出す。張もその後に着いて、のろのろ歩く。
「……俺はお前ほど、西洋の言葉には詳しくないがな」
「あん?」
「だが西洋の武士道についてなら、いくらか聞き及んでいる。誰にも言わなかったが、
幼い頃から俺が憧れ、目指していたのはこちらの方なんだ」
蝙也は、顔を上げて虚空を見つめた。何かを思い出しているかのように。
「西洋の武士たちは、主君以外の、もっと個人的なものにも忠誠を尽くし、それを
何よりの誇りとするらしい。確か、『誓いを立てる』とか言うそうでな。
友との約束、己の名誉、そして……惚れた相手に対しても、だ」
197ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2005/05/28(土) 19:03:36 ID:MoPN+0AV0
最近凄いVSさん、すみません。「おとめごころ」献上させて頂きました。
おつき合い下さっている皆さん、次で終わりますので、もう少しだけお願いします。

>>ミドリさん
前半、ギャグ方面で可愛いジュネ。中盤、シリアス方面で可愛いジュネ。そして終盤、
ビジュアル的に可愛いジュネ。今回のジュネは主人公の一人・ヒロインとしての面目躍如
でしたね。マリンさんも、頼りになる姉御肌してて。今回はひたすら可愛く平和、でした。

>>VSさん
某社の忘れたい過去をサラリと抉ってますな。で今回は、時計の音のテープレコーダーが
ヒットでした。なぜ素直にただの時計にしない……自分の命も他人の命もピザの為に賭ける
だけのことはある、か。そんな中アカギが一人、黙々淡々とキメてしまってるのはさすが。
198作者の都合により名無しです:2005/05/28(土) 19:05:26 ID:vmBbVcpF0
VSさんは絶好調なのかヤケになっているのかわからん。
でも出来れば他分岐もここでやって欲しいな。
ハンターはヤクバレ向きの素材ではないと思う。

ふらーりさんも次回で最終回か。来ない人多くなってきたし、寂しくなっちゃうかな
199ドラえもんの麻雀教室 最終回:2005/05/28(土) 23:25:18 ID:6LsLbp8J0
>>198
あのですね。分岐というのは最終回その4の分岐のことで、
その5からその12まではここできっちり落とし前つけますよ。
ハンターネタは書くっつったら書きます。またクソミソに言われ
ちゃうんだろうな。エヘヘ。

>>ふら〜りさん
どうやらハッピーエンドとなりそうな雰囲気ですが、終幕間近で鎌足が
自らの男根を切除するという展開だけはカンベンしてやって下さい。
あれは痛いなんてもんじゃありません。

200作者の都合により名無しです:2005/05/28(土) 23:50:12 ID:vmBbVcpF0
>その5からその12まではここできっちり落とし前つけますよ
わーい。そんな無理を言う気はありませんが出来れば、
会社辞めて彼女と別れてでもハイペースでお願い
201作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 00:25:30 ID:hhmucPog0
>ドラえもんの麻雀教室
最後の著作権を恐れないオチに笑いました。
織田信長の説明にさりげなく真実を混ぜるのに感心したな。
ホモとか。あの時代、男色は普通でしたが。

>おとめごころ
ホモ繋がりという訳ではないのでしょうが(シシオは由美一筋か)
鎌足の恋は実を結びませんね。当たり前か。
帳が原作と同じようにいい味出してますね。
202作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 02:02:53 ID:Jtg+uHfv0
全盛期の神掛かりVSさんが帰ってきた。
これでバキヤクバレ再開してハンター打ち切れば完璧だな。

ふらーりさんは次回で最終回か。
シシオが死んでからの話になるのだろうか
203作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 22:02:20 ID:EzFOxO500
ハンタバレ好きよー
モラウが良いよー

「キルアというガキがいる。〜
どれくらい強いのかというと〜くらい弱い。」

でVSさんだなーって思ったー
204作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 23:08:30 ID:hhmucPog0
最近、ぴたりと来なくなったな
あげとくか。来週はたくさんくるように
205北の果てより:2005/05/30(月) 21:44:42 ID:JCfdhkqF0
『第一話  超人とKGB 』 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/kita/01.htm

俺は、こんなところで一体何をしているのだろう。
ウォッカ独特の鮮烈臭と、程好く大粒な最高級のキャビアが遠慮なく食欲を刺激する。 
が、彼はキャビアを口に運ぶ事もグラスを呷る事もしないまま、ぼんやりとそう思った。
目の前ではぴしりと軍服を纏った大柄な男が、親しげな笑みをこちらへ向けている。
しかしその目はまるで笑ってはいない。 
射るように、刺すように油断なくこちらの動向を警戒し、またその様子を嬲って楽しんでいる。

そうだ。私は貴様らに助けられた。それを何倍にして返させる? 五倍か? 十倍か?
それとも、一生掛けて半ば強制的に払わせようと? 利子をたっぷり付けて?

心の中で死ねなかった自分を罵倒する。あのまま、谷底に消えていればどれだけ楽だったか。
己の肉体の強さが疎ましかった。鍛えぬいた反射神経が、磨きぬいた受身の技術が疎ましかった。
普通の人間ならば死ねるのに。何故私は、超人として生まれてきたのだろう。 
いや、もう言うまい。その自己嫌悪は私の歩んできた人生をも否定する。
そして私を倒した、あの素晴らしいライバルとの2度渡る死闘すらも……。

グランドキャニオン頂部から1600メートルの落下。並の人間ならば人型も残らずバラバラになる。
が、私は超人である。しかも、あの男に敗れるまでは超人界の第一人者とも言われていた…。
それが落魄れたものだ。まさかこんな連中に救出され、命を取り留めるとは。
イギリス超人の代表とも言える私が、ある意味敵国側の人間の、しかもその秘密機関に。

少しの呪詛を込めてその機関の名を口走る。
ソビエト連邦閣僚会議付属国家保安委員会。俗称、KGB。
諜報活動や暗殺など、今私のいるこのモスクワの、ソビエトという国の暗部を支える機関。
そして目の前の男。このKGBの要職を務める男であろう。彼が微笑みながら私に問い掛けた。

「どうされた? 出来れば自分の国にいると思いリラックスして欲しい。 …ロビンマスク君」
206北の果てより:2005/05/30(月) 21:45:23 ID:JCfdhkqF0
私は促されるまま、静かにウォッカがなみなみ注がれたグラスを飲み干した。
別に酒が欲しい訳ではない。間が持たなかっただけの事だ。
存外拵えの良いソファに深く腰掛け、目の前の男の次の言葉を待つ。私は知らない。
目の前の男の名前も、その肩書きも。が、個室を用意されている所を見ると重席だろう。

「私たちは、本来ならば敵国側の人間であるあなたの命を助けた。どういう意味かお分かりで?」
おもむろに男が語り始める。視線はあくまでグラスに注がれたまま、だが声に油断はない。
今は紳士的な態度だが、敵に回すと非情な肉食獣に豹変するのだろう。
これはKGBだけでなく、何処の国の諜報機関でもそうだ。私は静かにその問いに答えた。
「取引きなら、さっさと条件を提示して貰いたい」
単刀直入に言った。鉄の仮面で包まれている私の顔から表情は盗めないだろうが、
明らかに声に殺気を込めた。しかし目の前の男は微塵も動揺する事はない。手強い。
「私を殺すのは超人のあなたなら簡単だ。だが、ここからは逃げられませんよ。
 熟練の戦士で、囲んでいる。しかもあなたは相当な手負いだ」

その言葉に反応するかのように肉体の節々が痛んだ。
地面激突時の強大な衝撃は、たとえ超人でも並の者なら即死していただろう。
私も地面に叩き付けられ、瞬時に意識を失った。
反射的に長年の戦いで身に染み付いた受身をしたらしい。それが死からは救ってくれたようだ。
再び目を醒ましたのは3日後の事。モスクワにて。そしてこの境遇に至っている。
207北の果てより:2005/05/30(月) 21:46:00 ID:JCfdhkqF0
今の私には戦闘力は無い。
並の人間なら物の数ではないが、訓練された兵士数十人相手では脱出しようが無い。
諦め、しかし頭の中では冷静に計算を働かせる。ここは奴らに従うべきだ。
「そんなつもりは無い。ただ、私のこれからの処遇を知りたいのだ。
 失礼ながらあなた方がモラリズムで敵側の者を助けるとは思えない。それに……。
 手回しが早すぎる。あの落下から、モスクワへの移送のまでの」
「ただ、あの試合を渓谷下で張っていただけですよ。それだけの事だ」

男は事も無げにそう言った。私はしばらく無言でいたが、根負けして言った。
「私に、何をせよと? 言っておくが、イギリスを裏切るような真似は殺されてもしない」
「フン。享楽に溺れる資本主義者が、いっぱしの愛国心を気取りよる」
その言葉で私と彼の間に緊張が生まれた。沈黙が場を支配する。が、折れたのは彼だった。
「失敬。どうも私は、イデオロギーの違う者と話すのが苦手でね。先ほどの言葉は撤回する」

また沈黙が流れた。が、しばらくすると男はおもむろに立ち上がり、デスクの引き出しから
書類を2束手にすると、再びソファに腰を下ろした。ガラステーブルにその書類をパサリと置いた。
その書類は、人物ファイルのようだった。私を一瞥すると男は語り始めた。

「この国は、一枚岩だ。世界一の広大な領土に、様々な民族が高邁な意思統一され
 理想的な国家を形成している。その歴史と力は我々の誇りだ。
 しかし、これだけの広さの中には、共産主義の偉大さを解しない哀れな者も存在する。
 そして愚かにも、国家に反逆しようとする輩も存在する。 …それが、この2人だ」
208北の果てより:2005/05/30(月) 21:46:51 ID:JCfdhkqF0
私はひとつのファイルの手にし、表紙を捲った。
40代の男の写真と、彼の簡単な履歴が記されていた。白黒でやや不鮮明な写真だ。
軍の登録写真だろうか。バストアップで写されているその写真は、一目で歴戦を感じさせる
古強者の軍人の姿を捉えていた。金髪で目つきは鋭く、腕と胸は鍛え抜かれているのがわかる。

「君への要求はひとつ。そのファイルの男2人を葬って欲しい。テロ組織の中心人物だ」
忌々しげに男は口を開いた。ふと違和感が襲う。
そもそもKGBとは、そのような事態を制圧する為に組織されたものではなかったのか。
男は私の疑問を悟ったのか、聞かれてもいないのに語り始めた。
「ほんの数十人のテロ組織だ。制圧は数分で済むと思ったよ。だが、何度も返り討ちにされた。
 ゲリラ戦に慣れ過ぎているのだ、奴らは。特にその男、元アメリカの軍人出身だが
 ベトナム戦争の際、そういう戦いを骨身まで身に付けたらしい。 …北ベトナム側で」

北? 私は馬鹿のようにそう叫んだ。この男はアメリカ軍人だろう。ならば何故、北ベトナム側だ?
ベトナム戦争とは、1960年から1975年までベトナムの地で続いた、北ベトナムと南ベトナムの
武力衝突の事を指す。が、実態はアメリカとソビエト・中国との政治戦略戦争だった。
南ベトナムを支援したアメリカと、北ベトナムを支援したソビエトとの代理戦争と言い替えても良い。
支援のみならず、アメリカはピーク時に年間50万人以上もの兵をかの地に送り込んでいる。
……結果として、アメリカは敗れたが。

当然、写真の男が元アメリカ軍とすれば、南ベトナム側、即ちアメリカ軍で無いとおかしいのだ。
私の疑問を見透かすように、目の前の男がふわりと言った。
「ソンミ。ソンミ村の大虐殺事件。その事件を切欠に、この男はアメリカ軍を裏切り
 ベトコンに走ったらしい。フフフ、何が民主主義だ。あれだけ人道外れた大虐殺をするのが、
 君たちの民主主義かね? 我々ではとてもそんな残酷な」
「ソビエトとて、スターリン時代大粛清と称し虐殺を重ねたはずだ」

209北の果てより:2005/05/30(月) 21:47:45 ID:JCfdhkqF0
私の言葉に口ごもる目の前の男。何か言いたげな男を無視し、私は写真の男に目を落とす。

そうか。君は、あの虐殺事件でアメリカの民主主義の欺瞞を知った。人間の醜さを知った。
だからアメリカを離れたのだな。裏切り者の汚名を甘受してまで。
写真の男に私は好意を抱いた。少なくとも目の前のKGBのロシア人より、遥かに。

ロシア人は写真のアメリカ人の男の名前を言った。妙に響きのある名前だった。
「その男の名はガイル。テロ組織の実質的リーダーだ。だが、問題はそいつではない。
 所詮その男はアメリカ人、精神的支柱にはなりはしない。真のリーダーはもう一人のガキ。
 圧倒的なカリスマと戦闘力を持つ、セルゲイ・キーロフの再来と呼ばれる男」
210北の果てより:2005/05/30(月) 21:49:05 ID:JCfdhkqF0
『セルゲイ・キーロフ』という名前は、どこかで聞き覚えはある。昔読んだ本だろうか。
だが、その記憶は私の脳の奥底に沈んだまま浮かび上がらない。
ふと『英雄』『革命家』という単語が思い浮かぶ。おそらくその言葉に追する人物だろう。
だが記憶の輪郭は掴めども、内容までは思い出せなかった。男が忌々しげに言った。
「ふん、あんなテロリストの反逆者風情の若造が、我が祖国の英雄の再来などと」

私はKGBの男の独り言を無視し、もうひとつのファイルを手に取った。
純粋に興味深かった。その、アメリカと並ぶ最強国の中枢政権から疎まれるほどの男が。
表紙を捲り息を呑んだ。確かに、目の前の男はガキと吐き捨てた。
それを聞き私は、20そこそこの青年と思っていた。しかし、これは……。
まだ年端もいかぬ、少年ではないか。

写真を食い入るように眺めた。利発そうな眼差しの中に、仄暗い光を感じる。
おそらくは生まれたその瞬間から、凄絶な人生を歩んで来たのだろう。
だがまだほんのり残るあどけなさは隠せない。整った顔立ちであるが成人のそれではない。
男が私の驚きを先読みしたように、望む回答を口にした。
「13歳だ。そして、我が国の歴史上、最年少の死刑囚でもある」

死刑囚? この13歳の少年が、か? この少年を、私に葬らせようと?
私は叫びそうになるのを堪え、ジッと目の前の男を睨んだ。男は不承不承口を開いた。
「死刑囚。確かに私とて、子供をそう断じたくは無い。が、こうは考えられないかね?
 それほどまでに危険な少年だと。近い将来、我が国の獅子身中の虫に成りえると。
 現にその少年が戦地に立ってまだ半年しか経っていないうちに、特殊部隊すら
 退ける力をテロリストどもは身につけた。恐るべきカリスマ性により」

私はその言葉に答えず、視線を少年の写真に戻した。男の声が響く。
「その少年、偉大なる英雄、セルゲイ・キーロフの再来などととんでもない。
 私は、かつてロマノフ宮廷を食い荒らした怪僧ラスプーチンの転生にも思えるよ」
211北の果てより:2005/05/30(月) 21:49:51 ID:JCfdhkqF0
かつて、ロシア革命直後のロマノフ宮廷に現れ、悪党の象徴と呼ばれる怪僧ラスプーチン。
だが、私は知っている。真実のラスプーチンは慈悲深い男だった事を。
そして彼を悪魔に仕立て上げたのは、他ならぬ当時のロシア議会であるという事を。
そして、今またこの少年を悪魔に仕上げようとするのだろうか。この国家の犬どもは。

「先ほど葬ってくれ、といったが、その少年だけは生かして連れてきて頂きたい。
 無論、じきに処刑するがね。だが非常に魅力的な素体なのだ、彼は。
 少年ながら、特にその身体能力は素晴らしい。人間の域を超え、君たち超人の
 レベルまで踏み込んでいる。 …処刑の日まで、我が国の研究に役立ってもらうとする」

モルモット、人体実験にこの少年を使おうとしているのか。
その為に死刑囚に彼を仕立て上げたのか。反乱鎮圧だと?嘘を付け。
この少年がレジスタンスにいるのは、貴様らにとって本当は幸運な事なのだろう?
どれ程レジスタンスの戦闘力が高いにせよ、数十人の反乱でこの最強国が揺るぐ訳は無い。
だが、テロリストとすれば、死刑囚に仕立てれば、思い切りこの少年にメスが振るえる。
多少のKGBの犠牲など、数倍返しでペイ出来る……。

反吐が出た。だが、今の私には怒りに任せ暴れ狂う力も、不正を糾弾する知も無い。
歯噛みしながら、三度写真の少年の顔を見据えた。
史上最年長の死刑囚の少年。英雄の再来とも、悪魔の転生とも呼ばれる少年。
蟷螂の斧にも劣る戦力で、最強国の権力に抵抗するモルモットとして生まれてきた少年。

写真の横に書かれた、ファーストでもミドルでもない、ただの名前を口にした。
「シコルスキー、……か」
212パオ ◆oIVyz8LOXE :2005/05/30(月) 22:01:08 ID:JCfdhkqF0
魔界編やらガラやらの倍は時間掛けて書いている作品だけど、
まず9割の人は読み飛ばされるんでしょうな。いい。覚悟の上の作品だ。

セルゲイ・キーロフ、ベトナム戦争のソンミ村事件、スターリン大粛清、
KGBの暗躍などは物語に関わる重要なファクターですが、
詳しく書くと誰も読んでくれないだろうな…。

元々が超人アーリーデイズのウォーズマン編として考えていたネタだが、
どうしても反体制側の人間を書くのが好きなので、シコルスキーが主役になる。
てなわけで変えました。ウォーズマンは出てこない可能性が高いです。

多分、私の書く最後の長編になります。
出来ればガラは読まなくていいから、これを読んで欲しいなあ。
213作者の都合により名無しです:2005/05/30(月) 22:47:04 ID:Bs4uVonJ0
まさか漫画板でスターリンやベトナムソンミ事件を見るとは思わなかった。
ベトナム戦争自体、知っている人間が限られるだろう厨板だからなw
しかしえらく壮大なテーマだな。ちゃんと風呂敷たためるのか?
読む人を選ぶ作品だろうけど、バトル物になったりせずこの路線でいってほしい。
でも、はっきりいってロビンマスクの存在はこの作品には違和感感じた。
214作者の都合により名無しです:2005/05/30(月) 22:53:41 ID:pbuwAEjaO
俺も感じた。
もうだめぽ
215作者の都合により名無しです:2005/05/30(月) 23:08:24 ID:Bs4uVonJ0
いや、俺は大いに期待しているからこそ疑問を呈したのだが。
「革命」とか「レジスタンス」とか「戦争の悲劇」を浮き彫りにしたいなら
人間のみでメインキャストを固めるべきと思ったから。


・・・スルーすべきだったか?
216作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 05:03:41 ID:VbUvn1ez0
携帯はスルーが基本
217作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 13:13:54 ID:ZupvJKo90
壮大そうな話乙です。今回はかなりシリアスそうな路線でしたが、ガイルの登場でちょっと吹き出してしまいました。
これも2ちゃんでガイルを見かけることが多いからかな?
ウォーズマンからシコルスキーに主役が交代してしまったのは個人的に残念だったり。
どちらも好きなキャラですが、どちらかと言うと前者の方が好みですし、原作での扱いも
シコルスキー:もう更生のしようがないへタレ
ウォーズマン:ポテンシャルは高そうだが作者がその人気に気づかず、へタレにさせられた
とこんな感じなのでウォーズマンの方が活躍できそうだったので。

>出来ればガラは読まなくていいから、これを読んで欲しいなあ。
そうするつもりです。だってバキとかキン肉マンとかスト2は興味あるけど、バスタードはもう読んでないのでw
218作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 14:38:00 ID:ASoLXoy20
>パオ氏
精神年齢20歳以上しか楽しめなさそうな雰囲気の作品ですね。
SSとしてそれは正解なのかどうかわからないけど、個人的には期待。
他の作品の連載も期待しております。
219作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 16:18:23 ID:SGqlEwEU0
分からない単語も多いけど、普通に期待してるから頑張って欲しい。
出来ればこの雰囲気のままで最後までいって下さい。


ザクさんやブラキンさん、サマサさんやゲロさん銀杏丸にサナダムシさん。
上記以外の方々も最近姿を見せませんね。出来れば最後まで頑張って下さい。
220作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 20:19:59 ID:g3S1BI4+O
( ゜Д°)プチュー





























( ゜Д°)ビローン
221作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 20:38:53 ID:O1M72WKj0

>「シコルスキー、……か」
この最後の台詞、大マジに喋っていると分かっていても笑っちゃいました。
カリスマ性のあるシコルスキー… 想像できない
正常が絡む話は好きですね。この雰囲気のまま最終回まで行ってほしい。

ガラともども続きを楽しみにしてます。
222作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 00:17:29 ID:BV7hHk+70
しかし、いよいよ来なくなったな職人部隊。
好きな作品多いのに・・
223蟲師 果てなき闇:2005/06/01(水) 02:34:27 ID:PlS2tN6V0
>>87より続き。


 暗い。
 どこか灯りのない建物の中にでもいるのか。
 周囲に何人かいる。皆、上を見上げている。
 何かあるのか。何もないじゃないか。
 何もないのに、上を見ずにいられない?
 何故だ。
 何もない。何もない筈なのに、何故目をそらすことができない。
 思い出せない……それとも、知らない?
 この上に何があるのか分からない。
 何故上を見る? 一体、何を求めている?
 分からない。

224蟲師 果てなき闇:2005/06/01(水) 02:35:02 ID:PlS2tN6V0

 分からない。
 何もかもが分からない。
 太陽が昇り、沈んでいるのか。
 生物が動いているのか。
 風は吹いているのか。
 俺は生きているのか。
 世界が、分からない。
 自分が、分からない。
 何も掴むことのできない暗闇の中で唯一出来ることは、自分との対話。
 その自分さえ分からなくなっては、一体何を物差にして他を測ればいいのか。
 何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。
 自分さえ、朧。
 俺はなんなんだ。
 ここはどこなんだ。
 なんでここにいるんだ。
 くらい。
 みえない。
 きこえない。
 かおがうごかせない。
 なんなんだ。
 くらい。
 ゆめってなんだ。
 いきるとは。
 やみ。
 じぶん。
 くらい。
 ああ。
 わからない。
 なにも。

225蟲師 果てなき闇:2005/06/01(水) 02:35:59 ID:PlS2tN6V0
















 おなじだ。














226蟲師 果てなき闇:2005/06/01(水) 02:36:42 ID:PlS2tN6V0


 光。日の光だ。俺は手をかざし、陰を作り瞼を開く。
 眼が利くようになってから、周囲に眼をやる。
 どこからどう見ても、まず見紛うことはない。それは典型的な森だった。何の変哲もない森だった。
「なんで、こんな処に」
「あたし、なんで……」
 俺以外にも、何人かいた。やはり皆、訳が分かない、といった呈でいた。
 俺は、他の連中より気を取り戻すのが速かったせいかは知らないが、段々と思い出してきていた。
 俺は、大穴の中に棲むという蟲を探しに潜ったのだ。そして……そして――そして?
 そこから、どうなった?
 分からない。そこから先が。
「狐狸にでも化かされたんだ」
 ある者の言葉に皆頷き、それぞれ自分の村へ戻っていった。皆、何か理由が欲しかったのだろう。
 俺は何も言えなかった。これは蟲の仕業だ。そう、言いたい気持ちもあった。だが、それを言ってどう
なるというのか。
 俺は、穴が開いていた筈の地面をただ見ていた。


227蟲師 果てなき闇:2005/06/01(水) 02:37:14 ID:PlS2tN6V0


 ギンコは森を行く。
 意識を取り戻してから数刻経っても、空白の記憶が埋まることはなかった。記憶を探ろうにも、肝心要
の穴がもうない。
 何かあったのかもしれない。なかったのかもしれない。
 素晴らしい経験をしていたのかもしれない。筆舌に尽くし難い、艱難辛苦を舐めたのかもしれない。
 何かがあったにせよ、それを裏付けるものは何もない。幻の時――。
 それは消え去るとかではなく、はじめからなかったのか。
 ギンコに分かるのは、何かがあった、ということくらいだった。
 彼は既に過去同じような経験をしていた。
 きっと何かあったのだろう。それはもしかしたら、自分の一生を決定付ける程の大きなことだったかもし
れない。だが、その記憶はない。
 ギンコには、幼少期の記憶がない。ある出来事によって根こそぎ奪い取られてしまったからだ。
 だが、彼に失われた記憶への執着はない。
 彼は蟲師。一所に長く留まることを許されない流浪人。彼は流れるように生き、決して一つに執着する
ことはない。それは、自分のことに関しても同様だ。
 ギンコは流れ続ける。そしてそれは、彼が死ぬまで続くだろう。
 生きてさえいればいい。
 全てが同じ流れに根ざしているのだとしたら、いつかきっと辿り着く。
 ギンコは流れ続ける。





228ゲロ ◆yU2EA54AkY :2005/06/01(水) 03:07:05 ID:PlS2tN6V0
少々間が空きましたが、これで『蟲師』終了です。
浮遊感というか、つかみどころのない感じで終わらせようと思っていたのですが、うまくいったのかどうか。
一応続く感じで終わらせたので何事もなく続きを書くことも出来ますが、今のところはあまりやる気が湧き
ません。書きたくなった時、また宜しくお願いします。
と書くと、もう書かないのかと思われそうですが、蟲師以外の漫画SSは書きますよ。

最近は色々書いてました。数年ぶりにエロパロも書きました。どこに書いたかは恥ずかしいので秘密です。

>>89
虚無の闇の中には、何もありませんでした。でもギンコや他の人は『何もない』ということすら分からずこれ
からも生きていくわけです。
ご愛読有難う御座いました。

>>92
この最終回がどう判断されるのかは分かりませんが、個人的にはある程度思い通りにいったので満足です。
ご愛読感謝します。

>>99
まあ、後者になるのはしょうがないですねwそうせざるを得ないといいますか。
また色々書きます。その時は宜しくお願いします。

>>153
あっさり感重視だったので書かなかったのですが、穴を作った蟲は気分屋だったんですね。
自分以外の生物を生物と思わず、罠(穴)を仕掛け捕らえる。そんな凶悪な面を持ちつつ、ただなんとなく
飽きたのかは知りませんが、罠を解いて解放し、自分はどっか行ってしまう。
この蟲は証拠を残さないので、ギンコには一生分からないでしょうが。
ふら〜りさんの感想には感心してました。こちらの意図を的確に読み取ってくれる優れた読み手だなあと
いつも思ってました。有難う御座いました。またお世話になるかもしれません。

また間が空くかもしれませんが、その時は宜しくお願いします。
ぶっちゃけ次は99.9%『魔女』か『成恵の世界』どっちかだと思います。
『蟲師』ご愛読有難う御座いました。
229作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 10:23:32 ID:Q8YW1s4bO
うんこ
230作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 15:10:38 ID:Q8YW1s4bO
( ;´Д°)ブチャア
231AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 20:43:50 ID:cRCcZxo20
74から
―――夜。
大衆食堂「騎士修練場」にて三日間の皿洗いと厨房とウエイターと客呼びとクレーム応対と配達を終え、
疲労困憊のトレインは自室のテーブルに突っ伏していた。
「くっそ…あの二人。目一杯働かせやがって」
あの巨漢と長髪の副店主に毒づいてみたが、別に何かどうなる訳ではない。疲れに任せてこのまま眠ってしまおうかと思ったが…
「……あ、そうだ…」
よろよろと起き上がると、自分の荷物を漁り始めた。
取り出したのは――――
45口径の鉛弾、薬莢、自分で複数の火薬を調合した強装火薬、雷管(弾丸の尻に填め込む衝撃爆発する火薬)、とそれらを詰めた缶類。
計量秤、薬匙、ピンセット、交差部分ではなく先端に蝶番を付けた奇妙なやっとこ、と使い込まれた工具類。
そろそろ手持ちの弾丸が乏しくなってきた所だ、作らないといけない。


…まず薬莢の尻の窪みに、小さな鉛の器に入った僅かの火薬――雷管――をピンセットで摘んで押し込む。
次に、慎重に計量した火薬を薬莢の反対の大きく口を開けた方から注ぎ、鉛弾で蓋をする様に押し込む。
そして、例のやっとこに弾丸を縦に挟み込み、強く握る―――45口径強装弾を使いこなせる握力ならこれで充分だ。
最後に、電灯の光にかざし異常が無いかを丹念に確認――――――…この工程を経て、やっと一つの弾丸が出来上がる。
全てを終え、テーブルの上に立てて置く――――――………と、其処には、

ずらりと並んだ完成済みの弾丸が、出撃を待つ兵卒の如く規則正しく置かれていた。

そもそも彼は市販の弾を信用しない。これは、ナンバーズになる前からの彼の拘りだ。
そして、この時ばかりはトレインの目は普段の飄逸を無くす。クリードやセフィリアに近い冷厳たる眼差しは、昔はともかく
今は他人に見せたい物ではない―――――銃弾に込めている物は、火薬だけではないからだ。
更に、幾つかの銃弾をすぐ使えるよう三発ずつ三日月状のクリップに填め込んでいき、その日の作業は終わった。
弾丸を仕舞う最中、ふ、と思い出す。
――――それは、春風のような笑顔。
――――それは、福音のような声。
――――それは……………彼の人が、自分の中に残した物―――――
232AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 20:44:37 ID:cRCcZxo20
「……なぁにやってんスかッツッッ??! トレイン君ッッ!!!!!!」
 
突然背後から大声で呼ばれ、今よりいささか歳若いトレインは椅子から無様に転げ落ちた。
「な………なな、ななななななななななんッッ…で、お前、此処に!!???」
如何な窮地にも一定を刻む筈の自慢の心臓をなだめながら、驚愕と問いを一遍に吐き出した。
無理も無い、此処はクロノスがエージェント用に取った高級ホテルの中―――勿論セキュリティは磐石、しかも十七階だった。
トレインは其処を仮の住まいにしていたのだが、潜入されるばかりかすぐ後ろを取られて気付かないとは。
しかも、会う度付いて来るこの女――サヤ――を完全に撒いたと思っていたのに……はっきり言って、殺し屋失格の大失態だ。
「ふふん、甘いっスね。お姉さんを撒こうなんて無駄無駄無駄ァッ! …ッスよトレイン君」
カットソーを穿いた長い足を肩幅に開き、革ジャンとシャツに包まれた胸を組んだ腕ごと反らして尊大に見下ろした。
それを見て彼はとんでもないのに関わった≠ニ心の中で辟易した。
233AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 20:45:14 ID:cRCcZxo20
―――何せこの女……戦って勝てない。理屈では負ける。そして今回、逃げても追い付かれる――――
………もう身長と体重ぐらいしか勝る物が無かった。
「……しかしキミいいトコ住んでるっスね。どうやらこれはお姉さん、しばらく留守番してあげないといけないと言う
 天の声を聞いちゃったようっスよ、うん。……ああもしもし、ルームサービス頼みたいんスけど」
げんなりするトレインの心など知らず、訳の判らない事を言い出した挙句、勝手に内線にルームサービスを頼み出した。
さながら我が家のくつろぎ振りに、ますます彼の心は沈む………と、思いきや、
「ちょっと待て! お前、ここに住む、だと!!?」
「――――サーモンのカナッペ? いいっスねえ…と、どうしたんスかトレイン君」
立ち上がって吼え猛るのを、受話器の話し口を塞ぎながら鷹揚に聞き返す。
「ふざけるなよ、今すぐ出て行け!!」
「――――あ、いや、大丈夫スよ、ええ。あと、相方の子に白魚のコンソメゼリー寄せを……」
ようやく受話器を置いて、激昂するトレインに向き直る。
「大丈夫、イライラ盛りのトレイン君のためにカルシウム多そうなの選んだスから。いやー、お姉さんって優しい!」
「いい加減にしろ、お前の面倒見るなんて真っ平だ!! 出て行け!!!」
「………んー、どっちかと言うと、私の方がキミの面倒見る運びになりそうスけど」
サヤが周りに目をやれば――――――、
ぐしゃぐしゃのシーツ、飲みかけのまま放置された酒瓶、サイドテーブルにはうっすらと埃が積もり、
床には洗濯物が散乱、ルームサービスを頼んだまま返さない食器には食べ掛けのラザニア、エトセトラ、etc―――――
「キミ、清掃サービスもこの部屋に入れないんスね。このままだと部屋とは名ばかりのゴミ箱になるっスよ?」
言い得て妙の発言に流石に口を噤んだ。こうなれば何を言おうと無駄な言い訳に終わる。
…誰も入れないのは、心の警戒態勢を解かない証拠だ。ルームサービスも無言でチップを渡して帰すだけだし、
清掃等のサービスに至っては、きっちりとその旨を言い含めてある。
従って、今この部屋に他人が居る事は彼にとって無視出来ない大事件だった。
「清掃サービスを呼ぶ、だからお前なんぞ……!」
「どうせ最初の一回で終わりっスよね? ダメダメっスよ、それじゃ」
…………限りなく現実に近い仮定を述べられ、トレインはもう何度目か判らない白旗を心中で揚げた。
234AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 20:46:05 ID:cRCcZxo20
ルームサービスの料理は美味い筈だが、カナッペを満面の笑みで口に放り込むサヤに対し、トレインは不味そうに詰め込んでいた。
……全く以って不思議だった。クロノスの中でも誰からも敬遠され、畏怖され、上辺だけの賞賛を受け、
かのクロノナンバーズにすら忌み嫌われる自分が、あろう事か(一方的に)親しく女と食事――――悪い冗談以外の何物でもなかった。
―――いや、そう言えば眼が別の世界にイってしまっている相方が居たか。あれもやたらと纏わり付いて来た。
それはさておき、どうもこの女と居ると調子が狂う。
普段の自分は冷静にして寡黙、にも拘らずこの女の側に居ると激昂したり憔悴したりと忙しい。
琥珀色のコンソメゼリーと透き通る白魚が織り成すとろける食感と喉越しを楽しめる筈も無く、トレインは溜息をつく。
「それも美味しそうっスね、ちょっと貰うスよ」
彼のそんな精神的疲労もお構い無しに、備え付けのスプーンを取って勝手に自分の口に運ぶ。
「…うん、美味しいじゃないスか。なのにあんまり食べないんスね、小食なんスかキミ」
「誰の所為で食えないと思ってる?」
もう食事を放棄してトレインは呻いた。
「……さて、誰の所為スか?」
――――ブン殴ってやろうと思わず拳を振り上げた――――…が、やめた。うんざりの体で拳と肩を落とす。
「おや、何でやらないんスか? ほらほら、お姉さんはこの通り無抵抗ッスよ〜」
勿論一撃食らわしてやりたいのは山々だが、これまでそのたびに投げ飛ばされ、「良い子の皆は真似すんな、地獄悶絶くすぐりの刑
(サヤ命名)!」とやらの餌食になり続ければ流石に学習すると言うものだ。
………もうこの女は無視する事に決めた。先刻まで取り掛かっていた作業に改めて取り掛かるため、席を立つ。

「……あれ、トレイン君自分で弾を作ってるんスか? そんなの銃工(ガンスミス)に任せればいいのに」
相も変わらず軽すぎる疑問句を背中に受けても聞き流し、トレインは作業に集中する。
無視だ、こうなればもう徹底的に無視だ。取り合わなければこんな女どうと言うことは無い。
235AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 20:48:17 ID:cRCcZxo20
……淡々と銃弾を作って、もう三十分は経過しただろうか。
こうなるとあらゆる雑音が耳に届かない。自分がこのためだけの機械になっているような気にさえなる。
―――――そう、機械だ。殺意を形にして全ての命に撃ち込んで終わらせる、それだけの機械だ。
喜怒哀楽なぞとうの昔に捨て去った――――これ以外の生き方は絶対に許されないから。
だから心を凍らせる―――――涙も血も流し尽くしたから。
だから生きているのではない―――――存在しているだけだ。
先刻までの不可解な現象を、いつも通りの精神状態に修正していく。
鋼の様に堅固で、刃の様に鋭利で、氷の様に冷徹で、獣の様に獰猛――――命無き殺傷機械たる自分に。
その事を、己の心に徹底的に牢記する…………筈だったが、
236AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 20:50:43 ID:cRCcZxo20
一時中断。
少々お待ちを。
237AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 20:53:25 ID:cRCcZxo20
「はぐッツッ!!」

思考を無理矢理断ったのは、両脇下に滑り込んだサヤの両手だった。
「………無視するなんて酷いじゃないスか、トレイン君。――イジメ? イジメッスねこれは。先生に言いつけるスよ」
先生なんぞ何処に居るか知らないが、トレインはこれまでさんざん味わわされた痛痒こもごもの責め苦を受ける事と相成った。
「やッッ……止めろォォッッ! 火薬扱ってるんだぞ!」
「…じゃあ、こう言ったら止めてあげるッスよ」
言い様耳元で囁いた言葉に、トレインの顔が羞恥とも激昂とも取れる赤に染まる。
「……ッ! 言えるかこのクソ馬鹿女がァッ!!」
工具を置くと同時に背後のサヤに向かって裏拳を見舞った―――…しかし、居ない。だが手は確かに脇下にある。
「…ストラーイク。そんなじゃファウルも打てないスね」
どうやら常に背中側を確保しているらしかった。

ならば、と一計を講じトレインは壁に向かって走る。無論彼女も同じ速度で付いて来て手を休めない。
膝が抜けそうになるのを必死で堪えると、壁を地続きの様に駆け登った。
付いて来れまい、今度こそ引き離して一撃――――と思いきや、
「甘いッ!」
胴を抱え込まれた、と知覚した瞬間、ブレーンバスターの要領で投げられ、足から何事も無く着地。それも壁に登る前の状態で。
…………後方確保はまるで揺るがない。
今度は後ろ蹴り。前に倒れこむ力で本来なら股間を狙う所を敢えて水月―――喩えかわされても距離は稼げる。
しかしそれを繰り出したと同時にサヤが背中に抱き付いた。
必然、自重+サヤの体重+自己の遠心力を一本の足で支えられる訳が無い、あっという間に潰された。
「が……は……!!!」
「おやー、肺の空気皆出ちゃったスね。どうせ最後は白旗なんスから早めの参ったをお勧めするスけど……どうスか?」
言うまでも無くくすぐりは止んでいない訳だから、途轍もなく苦しい。
だが、ここまでされて引き下がれるか? 答えは否だ。
矜持云々以前に、単純にここまでされて言う事を聞くのは魂の屈辱だ。降参しようと一噛みくらいはしないと収まらない。
立ち上がり、捕まえようと手を伸ばす。

―――――徐々に、機械の思考が無くなって行く事に気付かずに。
238AnotherAttraction BC:2005/06/01(水) 21:13:05 ID:cRCcZxo20
萌えたよ………真っ白に、萌え尽きちまった(深い意味は無いが、挨拶)。
萌え業界って凄ェですね皆さん、NBです。
それはさておき、なんか今回は自分の文章とは思えません。
話的に必要とはいえ、皆さんが真面目に(特にパオさんの。マジ格好良い)書いてるのを尻目に
甘々チュッチュはどうよ、俺。

まあこんな所で、今回はここまで。ではまた。
239作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 21:27:40 ID:AMHTHcIn0
大好きな2つの作品、蟲師とBCが来たけど、蟲師終わりかあ。
いや、ゲロさん前から告知してたし覚悟してたけどね。でも寂しいなあ。

・蟲師
1レス目、2レス目と少しずつ何かが消えていき、3レス目の「同じだ」で
純粋な何かが残って、またギンコは流れていく。そんな印象を受けました。
でも、「生」に対するギンコなりの処し方を垣間見れて良かったです。
次作、そしていつかの続編と期待しております。ひとまずお疲れ様でした。

・BC
おお、昔のハードとソフトの同居するトレインだ。しかしガンに対する
造詣が深いですね。しかしキャラのつかみ方が上手いなあ。作者より上手い。
サヤは原作で最重要キャラなのに、どこか宙ぶらりんの印象があったけど
NBさんの作品で脳内保管できます。ところで何に萌えたんすか?w
240作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 23:06:57 ID:BV7hHk+70
ゲロさん、長期連載完結おめでとうございます。素晴らしいSSでした。
最後の次第にくだけていく文章は夢枕獏みたいでした。終わり方もこの作品らしかったと思います。
またギンコの活躍も見たいですが、今は新連載に期待します。お疲れでした。


NBさんは調子を取り戻しつつありますね、文体も本人のキャラもw
でも、今回はNBさん得意のアクションでなく、ほのぼのした触れ合いで魅せましたね。
文章うまい人はやっぱりせりふ回しもうまいな・・
241作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 23:45:27 ID:PZFMJa590
>蟲師
乙!です。
ギンコの流浪の生き方を象徴したような話ですね。今回は私には内容が半分も
理解できなかった。
ゲロさんが書いたエロパロって何処なんだろう?


>黒猫
弾丸は手作りですか。そういやゴルゴも市販の弾丸をそのままは使わなかったな。
サヤのキャラがいい感じに変換されててGJな話でした。
クリードの場面がピリピリしてるだけに、一層ギャップがw
242作者の都合により名無しです:2005/06/02(木) 00:32:28 ID:VUuH3CM40
ゲロさん、力作乙でした。
原作は知りませんでしたが、(でも、ゲロ氏の影響で読みました)
それでも私の好きな歴代SSの五本の指に入る作品になりました。
「味わい深い」という言葉がふさわしい作品でしたね。
特に、「循環」をテーマにした回が印象に残ってます。
また、良い作品をよろしくお願いします。


NBさんもエンジン全開ですね!サヤとトレインの微妙な関係が
よく書けていると思いました。これからも頑張って下さい。


今回どうしても最終回のゲロさんに偏った感想になってしまいました。
NBさん機嫌を損ねないで下さい。この作品も勿論大好きな作品です。
243おとめごころ:2005/06/02(木) 17:37:15 ID:1b+BTGm30
>>196
張が、目を見張って蝙也を見た。今の蝙也の言葉、声、そして表情が語るものを、
感じたからだ。蝙也が、ずっと胸に抱いてきたもの。それはつまり、
「ワレは最初っから鎌足のことを……? ほな、お前何で、鎌足と志々雄様との、」
「俺が誓いを立て、目指したのは『鎌足の幸せ』だ。それ以外は何も望んで
いない。だが結局、その誓いも潰えた。俺は、東洋の武士道も西洋の武士道も、
全うできなかったというわけだ」
先ほどの、寝台の上の鎌足と同じぐらい、あるいはそれ以上に、今の蝙也は小さく、
弱い。張の目にはそう見えた。
そんな蝙也の肩を、ぽんと叩いて張が言う。
「無知な蝙也先生に教えといたるわ。ワレの言うとんのは『騎士道』っちぅねん。ほいで、
ワイから見ればワレは充分、『騎士(ないと)』やで。『ぷりんせす・鎌足』のな。
せやけどその真価は、まだまだこれから試されると思とる」
「どういうことだ」
「志々雄様を失うた鎌足が、この先生きていくのに、ワレが必要やと言うとんのや」
「……俺などに、そんな役が務まるものか。今の俺にできるのはせいぜい、鎌足がせめて
生き抜いてくれること、新しい幸せをみつけてくれることを、祈るだけだ」
二人は、病院を出た。院内は薄暗かったが、外は日差しが眩しい。張も蝙也も、
思わず日光に目を細めた、その時。
蝙也の頭に、ぱさ、と何かが落ちてきた。紙のように薄い、軽い何かが。
何かと思い、蝙也がそれを手に取る。どうやら包帯のようだが、何か書いてある。

【人知れずカッコつけたつもりなんでしょうけど、お生憎様。自分自身の噂話に
関しては、地獄耳なのよ。おカマって人種はね】
244おとめごころ:2005/06/02(木) 17:37:42 ID:1b+BTGm30
「!」
蝙也が、そして張が、頭上を見上げる。眩しい日の光の向こう、蒼い大空を背負って、
鎌足が窓から身を乗り出していた。
「よぉく聞きなさい、蝙也君! 大陸に渡ったら、政府の仕事なんか適当に片付けて、
あの行商人が言ってた呪泉郷とかいうのを探しに行くからね、二人で!」
「……か、鎌足……」
「何よその顔は? まさかあんた、嫌だっていうんじゃないでしょうね?」
鎌足は、自分の鼻先を指差して、
「この、ぷりんせす・鎌足の護衛、見事務めてみせなさい! あんたの武士道、
じゃなくて騎士道の誓いは、私が生きてる限り、終わらないんだから!」
「……っ」
「って、こら! 黙ってないで、何とか言いなさいよっ!」
鎌足は、元気に大声を投げかけてくるが。
蝙也は、とても返事をするどころではなくて。
代わりに張が、大げさに肩を竦めて言った。
「や〜れやれ、っと。まあ要するに、ワレは志々雄様と違うて、どっちでもイケるっ
ちぅことか? どうせ知らんやろけど、そういうのを西洋では『ばい』ちぅんやで」
「な、なんだそれは」
「ええからええから、今度こそホンマの二人旅してこいや。必要とあらば、また
『ぷれい』色々教えたるさかい。いつでも聞いてくれ」
ぼぼぼぼっ! と蝙也の顔が朱に染まる。
「き、き、貴様っ! まだそんなことを、し、しかもこんな状況でっ!」
「お〜コワ。馬に蹴られて死んでまわん内に、ワイはとっとと退散しよか。ほなま、
せいぜいキバれや蝙也!」
「あ、こら待ていっ! 今日という今日は許さんっっ!」
245おとめごころ:2005/06/02(木) 17:38:11 ID:1b+BTGm30
逃げる張と、追いかける蝙也。そんな二人の追いかけっこをしばらく見つめてから、
鎌足は病室に戻った。
『……ありがとね蝙也君。私、もう少し生きてみることにする。君がいてくれるから』
静かに目を閉じて、志々雄との思い出を、由美への憎悪を、緋村剣心たちとの戦いで
負った心の傷を、少しずつ少しずつ、胸の奥へとしまっていく。
決して消えはしない、けれどもそれは取り出す必要の無い古い日記帳。今、これから
新たに書き込む真っ白な日記帳には、必要のないもの。
そう、これから書く日記帳の中身はというと。
「うん、そうね。やっぱり、呪泉郷を探すかどうかはまだ決められないわ。本当に
その必要があるのか……蝙也君のシュミ、性癖を確かめてからにしないとね、っと♪」
鎌足は楽しそうに目を開け、嬉しそうに顔を上げて、微笑んだ。
『漢女心』を胸に抱く、おカマの鎌使い本条鎌足。
どうやら、完全復活を遂げた模様である。
246おとめごころ:2005/06/02(木) 17:41:02 ID:1b+BTGm30
病院前で追いかけっこしてる二人と、それを見下ろして妙に元気になったらしい
重傷患者と。
そんな三人の一部始終を、木陰からじっと見ていた黒ずくめの行商人が一人。
「……やれやれ。一体何なのでしょう、この展開は。私としては、あのお嬢さんが
志々雄さんとやらの後を追って、ノド突いて自決するとか。あるいはあの病室で、
狂ったように笑い泣きしたまま暗〜くフェード・アウトとか。そういうのを期待
してたんですけどねぇ」
西洋の言葉で言うところの「せぇるすまん」、喪黒福蔵である。
鎌足が元気になって病室に引っ込んだのを確認して、喪黒はゆっくりと歩き出した。
「想う者と想われる者。双方の手にある紅い糸と紅い糸とが、巡り合い結びつくの
には、様々な山や谷や波がある。今ここで、新しいちょうちょ結びがひとつ、
できあがったということですか。……って何だか私、らしくないこと言ってます?」
喪黒は、ぴたりと足を止めて振り向いた。
鎌足の病室を、じっと見て。あの窓から身を乗り出していた、鎌足の顔を思い出して。
それから再び、振り返って歩き出した。
「……ま、いいでしょたまには。こ〜ゆ〜のも。ホーッホッホッホッホッ…………」
247ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2005/06/02(木) 17:42:15 ID:1b+BTGm30
以上です。ここまでおつき合い下さり、ありがとうございました!
いやぁ鎌足が多分に女の子っぽいとはいえ、遂にやっちまいましたよヤの字を。♂×♂を。
今回はいつにも増して、書かせて頂けたことに感謝です皆様っっっっ。

>>パオさん
外伝さんを彷彿と……つくづくとことん、パオさんの芸風の広大さに感服至極。ロビンは
イギリス人だ、なんて普段は全然意識してませんが、ここではそれが一つの柱。そして
ガイル、でシコル。春成同様、強くカッコ良くなっているであろうシコルに夢膨らみます。

>>ゲロさん(いつかは私も挑戦したい、えろぱろ。……ゲロさんの、読んでみたいっス)
あっさり爽やかにも見えるし、昔のA先生版ドラえもんのようなブラックにも見えるしで。
最後の蟲は強大というよりも壮大で、それこそ自然そのものみたいな奴でした。流浪の
蟲バスターストーリー、と簡単に言えないこの作品、ひとまず幕ですか。お疲れ様でした! 
それと。過分な御言葉、光栄のいったりきたりです。また次作で楽しませて下されぃ。 

>>NBさん
お〜ひ〜さしぶりのサヤ姐! 原作ではどーだか全っ然知りませんが、私の中ではこの人
とスヴェンがダントツのツートップ。強いし楽しいし、外見のみならず言動も色っぽいし、
えぇ萌えますともよ。今回なんかもう場所が場所だし、青少年に何を囁いたんだ姐さん!?
248作者の都合により名無しです:2005/06/02(木) 18:09:45 ID:lHhpKji60
ふらーりさんのも終わったか。寂しくなるなあ。
次回作も期待しております。

ゲロ氏、お疲れ様でした。またの作品でお会いできるのを楽しみにしてます。
249作者の都合により名無しです:2005/06/03(金) 13:32:21 ID:uiTDx0YkO
お疲れ様〜
最後はうまくまとまりましたね。
でも個人的には前回の壊れた鎌足が結構好きだったなあ。


しかし、連載終了が続きますね。
250作者の都合により名無しです:2005/06/03(金) 15:55:39 ID:HgLfELVXO
うみにん!ブラキン!ザク!サマサ!ミドリ!
うみにん!ブラキン!ザク!サマサ!ミドリ!
うみにん!ブラキン!ザク!サマサ!ミドリ!
うみにん!ブラキン!ザク!サマサ!ミドリ!
うみにん!ブラキン!ザク!サマサ!ミドリ!
うみにん!ブラキン!ザク!サマサ!ミドリ!
うみにん!ブラキン!ザク!サマサ!ミドリ!











ぬるぽ
251作者の都合により名無しです:2005/06/03(金) 18:47:11 ID:PxnU8WeA0
鎌足と張の掛け合いが好きでした。
お疲れ様でした、ふらーりさん。またの作品をお待ちしてます。


個人的にはまた書いてくれるだろうゲロさんとふらーりさんより
しばらく来ない方々の方が心配だ。
252不完全セルゲーム:2005/06/04(土) 00:45:05 ID:n87a/PPe0
>>56より。
253不完全セルゲーム:2005/06/04(土) 00:45:31 ID:n87a/PPe0
第六話「スタートライン」

「ヘルズフラッシュ!」
 セルが持ち帰った手掛かりは、大別すると二つとなる。一つは、クリスタルは名称に関
連した地域にあるということ。そしてもう一つは、クリスタル探しは地上に限定されたと
いうことだ。
 決して満足いく成果ではない。哀れセルは、またしても16号による制裁を受けるはめ
となった。
「おいおい、程々にしておけよ。死んでしまってもつまらんからな」
「そうだよ、服も汚れちゃうし」
 17号と18号に制止され、16号も舌打ちしながらもセルを許すことにした。瀕死と
なったセルを車内に放り込むと、またもや旅はスタートする。
「もう少し走れば、北の都に着く。そこで色々と調べてみよう」
 リーダーらしく、皆に指示を送る17号。こうして、ワゴン車は北の都へと向かう。
254不完全セルゲーム:2005/06/04(土) 00:46:01 ID:n87a/PPe0
 似たような景色が続く、単調な峠道をひた走るワゴン。運転する17号も少し退屈して
きたのか、皆にちょっとした遊びを提案する。
「なぁ、しりとりでもやらないか」
「……あんた、本当にガキっぽいよ」
「フフ、そうか?」
 セルと16号も参加し、しりとりは始まった。まずは17号。
「しりとり」
 次は18号。いかにもやる気がなさそうな声で応じる。
「……りんご」
 セル。他愛ないゲームではあるが、ここは格下である人造人間たち(少なくとも、セル
はそう思い込んでいる)に知能を示す絶好の機会。しばし考えてから、単語を発した。
「ゴルフ」
 想定外の単語に、困惑する16号。絶対に「ゴリラ」が来ると決めつけていたので、他
の可能性など考慮すらしていなかった。彼のようなロボット型はプログラムには忠実だが、
こういうアクシデントには弱いのだ。
「ちょっと待ってくれ……考える」
「くっくっく、どうした16号。いっぱいあるだろ、考えるまでもあるまい」
 策が成ったことを悟ったセルは、意地悪く16号を急かす。だが、16号はなかなか答
えない。相当悩んでいるようだ。
「例を挙げてやろうか? 風呂とか、フライパンとか、どんどん出てくるぞ。おっと、今
私が教えたのは使うなよ」
 さらに図に乗るセル。自分にはこういう役が似合っていることを、本人もどこかで感じ
取っているのかもしれない。
「ふ、ふ、ふ……」
 いくら連呼しても、単語は出てこない。が、ついに16号は閃いた。
「フルズフラッシュ!」
 ──新技が誕生した。
 威力も性能も、ヘルズフラッシュと全く変わらぬ大技。当然ながら、セルもワゴンも大
破してしまった。
255不完全セルゲーム:2005/06/04(土) 00:46:21 ID:n87a/PPe0
 乗り物と荷物を失った一行。北の都までは自力で飛んでいかねばならない。もっとも、
彼らの飛行速度は自動車の比ではないのだが。
 数秒と経たぬうちに、セルたちは都へと着地する。
「よし、手頃な施設で調べてみるか」
 まず17号が歩き、さらに16号と18号も続いていく。セルもしぶしぶ従うが、どう
にも面白くない。本来ならば、彼らを統率するのは自分であるはずなのに。

 都内にあるコンピュータ施設。必要な手続きを済ませれば、無料でコンピュータ端末を
利用することが出来る。
 セルたちはここへ入り、さっそくクリスタルに関係がありそうな地名を検索する。
 ちなみに、人々はセルを見てもさほど驚くことはなかった。17号たちが一緒にいたた
め、単なる仮装だと判断したためだろうか。
「世の中、無関心になったもんだ」
 社説に掲載されそうなコメントを吐くセル。
 一方、セルを無視して17号たちはいわくありげな地名を発見していた。
 今でこそ消滅しているが、かつて灼熱の業火に包まれた山があった。涼景山、通称“フ
ライパン山”である。
「ここなんか、怪しいんじゃないか」
「でも、もうなくなってるって書いてあるじゃない」
「だが、行ってみる価値はあるかもしれんぞ。火か炎、どちらか一つくらいはあるかもし
れない」
 モニターを眺めながら、盛り上がる人造人間たち。完全にセルは蚊帳の外だ。
「では、行くとするか」
 目的地は決まった。17号たちは外へ出て、フライパン山を目指すために飛び去った。
「くそっ……! とことん俺を軽く扱いやがって、完全体になったら真っ先に殺してやる
からな!」
 すると、施設に勤めている中年男性がセルに声を掛けてきた。
「む、何か用か。もっと私を恐れていいんだぞ、尊敬するというのもありだがな」
「ここは公共の場ですので、お静かに」
「は、はい……」
256サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/06/04(土) 00:47:47 ID:n87a/PPe0
次回はフライパン山(跡地)です。
セルも多少は活躍します。
257作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 11:03:41 ID:w8h6OFACO
フルズフラッシュわらた
258作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 13:12:48 ID:FE1oWKlu0
これってドラえもんの有名な最終回のやつ?
ttp://ww51.et.tiki.ne.jp/~west_sato/doraemon/01.html
259作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 14:04:53 ID:BoiqPXpG0
お疲れ様です、サナダムシさん。ちょっとお久しぶり。
しかし毎度の事ながらセル哀れですねw
唯一勝てそうなしりとりすらも、力技で終了させられて・・
しかし、どう考えても完全体への道は遠いな・・
しけい荘のシコルみたいに裏返るのはいつの日かw

260作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 14:25:52 ID:chqHnSdK0
16号がガキ臭くてワラタ。
フライパン山なら火も炎も両方ありそうだな。
261作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 15:24:20 ID:qM0DyqBP0
サナダ虫氏おひさしぶり&乙ですー

フライパン山って牛魔王の住処だったところかな?
懐かしの場所ツアーですね。
多少じゃなくて、(たぶん)主役だからセルを活躍させてやって下さい。
あ、でも、18号が活躍するんならセル活躍しなくてもいいや
262作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 19:23:08 ID:Y3Tv3HTB0
サナダムシさん帰ってきてくれたけど、他の方々はなかなか現れないね
下手すれば未完だらけになるな
263作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 16:00:15 ID:0wyP/0qGO
大丈夫じゃない?
俺は楽観視してるよ。
たしかに続きを早く読みたい作品多いけど。
264作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 17:35:54 ID:osAFjjSA0
そうだな。のんびり待ちますか。
HP見ると、うみにんさんは続き書き始めているらしいね
265作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 20:05:28 ID:Nu5mTpoU0
騒がれたくてここで話題ふる連中よりゃまし
266ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :2005/06/06(月) 00:49:11 ID:C8/7JeIL0
土日に書こうと思ってたのですが、体調崩してしまった無理でした。
もうしばらくお待ちください。すいません。
267作者の都合により名無しです:2005/06/06(月) 04:52:54 ID:QcgFK2qW0
ブラキンさん、まず体調を治して下さいね。ご本人のお体が一番ですので。
元気になったら、またお願いします。
268作者の都合により名無しです:2005/06/06(月) 12:46:07 ID:hgttioFsO
うーん、格闘大戦とデスゲームは気に入ってる作品だけに、続きが見れないのが
残念だなあ。
でも体調のよい時の方が面白い作品が書けるだろうし、楽しみに待つしかないか。
269作者の都合により名無しです:2005/06/06(月) 17:40:06 ID:lFOM9EUOO
そろそろ終りにする時期なのかもな。このスレ。
270作者の都合により名無しです:2005/06/06(月) 18:59:59 ID:kAFAMWXB0
みんな!がんばろうぜ!!!!!

ageeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
271作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 00:16:52 ID:Q3KQoW5L0
ageとくか。
まだまだ連載作品多いし大丈夫。
ヤムスレなんか(泣
272人鬼と野生:2005/06/07(火) 06:47:27 ID:+sB+mwS+0
「どうも。安永先輩」
昼下がりの東京は赤坂にあるとある喫茶店・・・パンチパーマにスーツ姿の青年が、少し肥満気味の髭面な男に声をかけた。
「おう。多河。最近の景気はどうだい?」
肥満気味の男は煙草を取り出しながら、青年が座っている席の真向かいに座った。
「いや、そこそこ稼いでいるのは聞いてるよ。さすが、全日本オープン覇者だな。で、今日はなんの用だい?」
「はぁ・・・実は連盟から麻雀漫画の原案を受けてしまって・・・。」
「煮詰まった、てわけか」
パンチの青年は、多河芳典。先日行われた全日本麻雀連盟が主催した全日本オープンの覇者である。
今、一番に乗っている若手麻雀プロであろう。
そして、向かいに座る髭面の男。全日本麻雀連盟の6段位を持ち、最近では理事に任命され、そして多河の師匠である。
名は安永萬。タイトルこそ持っていはいないが、決して負けない麻雀を打つ、ベテラン雀士である。
そして、二人ともここ赤坂の地を中心に裏麻雀・・・すなわち高レート麻雀を主戦場とする雀士であった。
「麻雀漫画の原作ね・・・。そりゃ、煮詰まるかもな。もっとも俺は文才がないから、たいしたアドバイスなんてできんぞ」
「いや〜、話が煮詰まったら誰かの実体験を聞いて、それを元に文章にすればいいと知り合いの作家に聞いたもので・・・。先輩ほど裏に詳しい人間はいないから、面白い話を聞けると思いましてね」
多河は置いてあったコーヒーを啜りながら言った。安永は煙草に火を点けながら喋った。
「面白い話ね・・・。最近の裏の話をしてもつまらんからなぁ。何か面白い話・・・面白い話・・・」
安永は煙草を2,3服し、灰皿におしつけた。そのまま腕組をしながら考え込んでいる。
「あの先輩・・・別に無理して仰らなくても結構っすよ。自分から呼び出しておいてなんなんですが、今日は気分転換したかっただけですし・・・」
「あのなー俺だって年中暇じゃねえんだぞ?」
安永は膨れつつも新たな煙草に火をつける。
273人鬼と野生:2005/06/07(火) 06:49:04 ID:+sB+mwS+0
「まぁ・・・最近聞いたやつで、一つ面白い話があるぞ」
「本当ですか!?ぜひ聞かせてください!」
「よっぽど煮詰まってんだな・・・オマエ」
半分呆れつつも、安永は滔々と喋り始めた。その前に、ウェイトレスにアイスコーヒーを注文する。
「こないだ同卓した不動産の社長に聞いたんだがな・・・まあ土地を転がす商売ってのはなにかと厄介な事が多いらしくてな。そういった取引にもなると必ず出てくる連中がいるだろ?」
「ヤクザ・・・ですか?」
「そうだ。まあそういった連中が出てきてイロイロ話をつけるんだが・・・最近では談合やらなんやら過激なことはできないらしくてな。ま、今も昔も変わらない‘平和的’なやり方で決着をつけるわけだ。平たく言えば博打で決着つけるんだわな」
安永が喋っている間にアイスコーヒーが届いた。一口飲み、人心地ついたところで、安永の話がつづく。
「札やらサイコロで普通はやるもんだが・・・最近では麻雀で白黒つけることが多いんだよ」
「麻雀で決着ですか?」
「おうよ。昔はサマやらなんやらで廃れちまったやり方なんだがな。自動卓が出てきてからそういったサマをつかう連中がいなくなって、また牌で決着つけることが多くなったんだ」
「へぇ・・・麻雀でねぇ」
多河もウェイトレスに追加の注文をする。ちなみに頼んだのはチョコレートパフェだった。
「あ、このやろう。人が甘いものを絶っている時にそんなんものを注文しやがって」
さっきよりも膨れた顔で、安永が文句を言う。彼は大の甘党でもあった。
「甘いものを食べているから虫歯が治らないんですよ。まだあの女医先生の所に通ってんでしょう?」
「いや、あそこにはもう通ってないよ。診察うける度に麻雀打とうなんて言われたくないからな。で、何の話だったっけ?」
「ヤクザが麻雀で」
「あーそうだったそうだった」
安永は、アイスコーヒーを一気に飲み干し、ウェイトレスにストロベリーパフェを注文する。
「先輩・・・」
「うるせえな。目の前で甘いものがあると歯がうずくんだ。そんな思いするくらいならさっさと食っちまった方がいいんだよ」
アイスコーヒーのコップに残っていた氷をバリバリと食べながら、安永はまた新しい煙草に火を点けた。
274人鬼と野生:2005/06/07(火) 06:51:50 ID:+sB+mwS+0
「ま、そこでヤーさん達は凌ぎを削るわけだわな。で、実際に打つ連中を決めるわけだが、自分達の組にそうそう麻雀が強いやつがいるとも限らん。そこで外部の代打ちに依頼するんだが・・・」
ぷかぷかと煙草を吸いながら、安永はウェイトレスが運んできた多河のチョコパフェに視線を合わせる。そんな視線はおかまいなく、多河はうまそうにパフェをつつき始めた。
「先輩は代打ちの経験はあるんですか?」
パクパクとパフェを食べ始める多河。そんな多河をうらめしそうに見つつ、安永が答える。
「ヤクザの代打ちなんてもんはもっと殺伐としたやつがやるんだ。なんというか、麻雀を打って金を儲けようっていう俺たちとは違って、麻雀を打って自分を追い詰めるというか・・・つまり、危険が好きなやつがやるもんなんだ。
代打ちの報酬がいいというものあるが、そんなものは高レートをハシゴするのと変わらん。ま、俺みたいなスタイルの麻雀打ちとは縁のない世界だよ」
「なるほど・・・。俺も族時代にそんな連中がいたの覚えてますよ。ウチは走りが主体なチームでしたけど、中にはバイクより喧嘩が好きってチームがありましたよ」
ようやく安永のパフェが届いた。うれしそうにパフェを貪る安永。
「まーその代打ち連中にもいろいろと勢力があるらしくてな。そのうちの一つが・・・なんというかあくまで聞いた話だから俄かには信じられないんだがな・・・」
「・・・?」
多河は、パフェを食べる動きを止めた。安永は一口食べるたびに、しかめっ面をする。どうやら虫歯の所がしみるらしい。
「いちち・・・やはりパフェなんか頼むんじゃなかったかな・・・。で、代打ち連中ってのは普通裏で狩り飽きた元裏プロとか、自分の組で打ってた麻雀得意なヤクザくずれだとかがやるんだが・・俺が聞いたその連中、なんと高校生が打ってるんだとよ」
「こ、高校生ですか!?」
おもわず素っ頓狂な声を上げる多河。といってもこの時間帯は客が少ないのか、多河の声に反応する客などなく、ウェイトレスがすこし視線を送ってきただけであった。
「にわかには信じられないっすね・・・高校生が代打ちやってるだなんて・・・」
「俺もだよ。だが驚くのはまだ早いぞ。なんとその高校生連中には女子高生もいるんだとよ。それだけじゃない。なんと現役女子中学生もいるんだとさ」
「女子高生に・・・中学生もですか!?」
完全にパフェを食べる動きが止まった多河は、ますます呆然とした顔つきになる。
275人鬼と野生:2005/06/07(火) 06:53:02 ID:+sB+mwS+0
「信じられん話だよなぁ・・・。しかもそいつらはほぼ常勝らしい。かなり打てるやつらがそろっているみたいだな。ま、俺が聞いたその社長も又聞きだったらしいから本当の事とは限らん」
「うーん・・・高校生や中学生の代打ち集団かぁ・・・。代打ちねぇ・・・」
安永はパフェを1/3ほど食べ終わったところで、多河に強い口調で言った。
「追うなよ。多河」
スプーンを置いて、コップの水を飲みつつ安永は続けた。
「代打ちが凌ぐ世界ってのは裏の中でも‘人で無し’の世界なんだよ。そこでは自分の命が他人の命と同じくらい軽いんだ・・・オマエは表でトップを取ったとはいえ、まだまだ手にしていないタイトルだって沢山ある。わざわざ危険を冒してまで行くほどの世界じゃないんだ」
「・・・ハイ」
安永は言い終わった後、パフェを食べ始める。
「ま、そんなところだな。どうだ、少しは参考になったか?」
「そうですね。大分参考になりましたよ。ところで、その高校生代打ち集団には名前とかってないんですか?」
「ああ・・・確かそいつらの名は・・・ZOOだ」
「ZOO・・・動物園か・・・」
神妙な顔つきでなにやら考え込む多河。一体高校生代打ち集団とはどんな連中なのか。いや、そもそも実在するかも怪しい。
しかし、実在したとしてプロですらひるむ代打ちの世界に生きる高校生がいるとは・・・そんな連中がいるならプロとしての矜持にかかわってくる。そんなことを考えている内に、自分のパフェを食べ終えた安永が唐突に口を開いた。
「なあ・・・多河・・・」
「ハ、ハイ先輩」
自分の考えを見透かされたとおもった多河は、つい声がうわずってしまった。
「そのパフェ・・・アイスが溶けてるゾ」
「あ!」
あわてて自分のパフェを見る多河。まだ半分も食べていないのに、パフェは形を崩し、殆ど液体になってしまったのであった・・・。
276人鬼と野生:2005/06/07(火) 06:54:07 ID:+sB+mwS+0
どうも初めまして。ここでSS書くのは初めてです。以前、映画板で少々SSを書いていた事があります。
以前からROMっていたスレでして、書きたい欲求が溜まっていき、とうとうSSを書いてしまった次第であります。
まだまだこちらの作者様にはおよばないですが、これからもドゾヨロです。
ちなみに元ネタは近代麻雀で連載中の「むこうぶち」と「兎」です。もっとも「兎」は連載してるのかしてないのか分らんところがありますが・・・。
H×Hですら最近まともに連載し始めているのに情けないものです。
ていうか少年漫画板なのに麻雀漫画のSSなので元ネタ知っている人がどれだけいるのだろう・・・(´Д`;)ヾ
てか麻雀漫画のSSなのに冒頭からして麻雀描写がまったくないってのもどうかと・・・orz
とにかく一生懸命書いていく次第でありますので宜しくです。
277作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 07:49:49 ID:xx2VyOT6O
( ´,_ゝ`)フーン
278作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 12:34:59 ID:kJxfR1DT0
近代麻雀か。
アカギ目的で立ち読みすることがいくらかあるくらいで、他は何が連載してるかさえ知らんなぁ。
SSの方はまだまだ始まったばかりといった感があるけど、なんとなく味は感じた。
しかし、潜在的な書き手ってのはまだいるもんなんだなぁ。

で、映画板のSSスレってどこ?
検索してすぐみつかるものなら言わなくてもいいけど。
279作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 15:40:54 ID:xx2VyOT6O
(゜Д°)ペッ
280作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 23:06:48 ID:EtSX3KCg0
久々の新人さんですね。乙です。
面白そうな出だしに期待(導入なのでまだ分かりませんが…)

「むこうぶち」は殆ど読んでませんが大体内容は分かります。傀はでてこなさそうですね。
281ふら〜り:2005/06/07(火) 23:51:19 ID:A3gMa//M0
ちょっと皆様小休止か、と思ってたら新人さんご来場。めでたし。

>>サナダムシさん
確かに、「りんご」とくれば「ゴリラ」と流すのが定型というか定石というか。言われて
気づいた意外な常識。今日も今日とていらんトコで調子に乗って、いらんダメージを受ける
セルが可愛い。次は火か炎に関連した何か……に、盛大に焼かれてくれるんでしょね。彼は。

>>人鬼さん(天獅子先生のSNK漫画は大っっっっ好きでした。また読みたいいぃぃっ)
麻雀漫画はアカギ以外あまり知らないんですが、何だか多河って爽やかな印象です。「裏」
ではないと断言されてますし、口調も後輩キャラっぽいし、パフェとか食べてますし。で、
女の子たちが麻雀……即座に「脱衣?」とか考えてしまいましたが。果たしていかなる?
282魔女 grassy:2005/06/08(水) 09:04:45 ID:4RSLNyJR0
 むかし、魔女がいた。
 そして、いまも魔女はいる。
 魔女の、話。






283魔女 grassy:2005/06/08(水) 09:05:30 ID:4RSLNyJR0

――首都より遠く離れた森――


「サーラ、世界ってなんだか分かる」
 ミスティは、寝る前よく私に大事なことを教えてくれる。
「木が風に吹かれて揺れるとか、そういうこと?」
「そうね、それもあるわね」
 ミスティの言葉はとても抽象的だけれど、だからこそ私も自由に回答
してもいいのだと思えた。
「川の流れとか、太陽の浮き沈み……全て世界があるから起こること。
世界は物事一つ一つに存在しているともいえるし、逆に物事一つ一つが
世界だともいえる」
「全てが尊い、ということ」
「そう。よく分かったわね。さあ、もう寝ましょう」
 答えが出た頃、眠りに付く。


284魔女 grassy:2005/06/08(水) 09:06:10 ID:4RSLNyJR0

――某国・首都――


《謎の怪生物が“生えて”来た!?》
 大衆紙の片隅に、こんな見出しが躍った。
 街の道端から、人型に見える雑草が生えてくる。それは触れてみると
ただの草だと分かるが、風に吹かれて揺れる姿など、一見すると立って
いる人ではないかと思ってしまうほどに似ている。
 そんな雑草が、今首都に溢れている。

「各国で話題になってるみたいですね」
 某出版社喫煙室。若手の記者がベテランの記者に言う。
「まあ、我が国で何か珍しいことがあると皆注目しますからね。それ
だけここが世界の中心だという証明ですかね」
 ベテラン記者が、口に銜えた煙草を置き、口を開く。
「ただのゴシップじゃ終わらなさそうだぞ。今回の件で、幾つか怪しげな
組織が動いてる」
「怪しげ? また例の組織ですか? 色々と噂レベルで聞きますけど……」
「『検邪聖省』――あまり大っぴらに言えることじゃないがな。批判染みた
記事など載せたら、これよ」
 ベテランは、指で首を横一文字に断つ動作をした。タブー、ということだ。
「試しに記事にしてみたら、どれだけ反応ありますかねえ」
「バカ、お前殺されるぞ」



285魔女 grassy:2005/06/08(水) 09:07:44 ID:4RSLNyJR0

――検邪聖省・本部――


「今回の件、由々しきものだ」
「ここのところ、生命が異常を来している。何時ぞやの“生命の石”……」
「忌わしき“魔女”を排斥出来たのは幸いでしたが」
「神を冒涜する不心得者のせいだ」
「そうだ、神がお怒りである」
「魔女はまだ存在する」
「使いますか」
「あれらは、神に迫る力を持っている。故に危険だが、使いようだ」
「用が済めば、始末すれば良い」
「神は、あれの存在をお許しになっていない」
「何れ、魔女は絶やさねばなるまい」

 検邪聖省は、異物の存在を許さない。

「サーラ」
 ミスティは、サーラを呼び付けた。
「ちょっと遠出するわよ」
「街に行くの?」
「そう。可愛い格好してらっしゃいね」
 サーラは、いつものミスティと少し違うな、と感じていた。


286ゲロ ◆yU2EA54AkY :2005/06/08(水) 09:26:51 ID:4RSLNyJR0
『魔女』スタートです。『grassy』ってのは、今回のサブタイですね。
『蟲師』と同様、短編〜中編の連作という感じになるので、サブタイは変わります。

この作品における魔女の定義って、かなり曖昧なんですが、物事をよく理解できる人、見える人、
世界に触れることの出来る人が魔女なのかな、と思って俺は今のところ書いてます。
詳しくは原作読んでください。小学館IKKIコミックスから今2巻まであります。作者名は五十嵐大介。
凄まじい作家さんなので、お薦めします。

そういや、蟲師はなんかアニメだか実写映画かは分かりませんが、映像化するみたいですね。
>>239
予定よりちょっと早く上げてしまいましたが、今日は都合が良かったんです。
もし宜しければ、これも読んでやって下さい。

>>240
夢枕獏って読んだことないですね(前もこんなこと書いたような……)。
プロの方には到底敵いやしませんが、少しでも質を上げようとは思ってますので宜しければ。

>>241
理解できなくても仕方ない……というか、俺も自分で書いておいて完全には把握できていないという。
でも、最終回はなんというか感じて欲しかったので、それくらいでいいんじゃないかなあ、と。
エロパロは秘密です。

>>242
有難う御座います。これを読んで原作を知った、とか聞くと嬉しいものです。
当たり前ですが、原作のほうが全然上なので、読んでない方は是非。
しかし、こんな下手な作品を五本の指に入れてくれるとは……有難いです。

>>247
有難う御座います。魔女もお世話になると思いますが、また宜しくお願いします。
最後の蟲は、自分でも気に入ってます。

では次回。最初なんで、原作2巻の最初の話に限りなく近いです。次シリーズからはなんとかしたいですね。
287作者の都合により名無しです:2005/06/08(水) 21:28:35 ID:XbK7orYn0
>新人さん
新連載、乙です。しかしむこうぶちわかる人ってこの板に何人いるかな?w
兎ではジャッカルが好きなので彼女を活躍させてくれると嬉しいです。

>ゲロさん
おお、早速の新連載ありがとうございます。ファンタジーぽいですね。
原作はまったく知りませんが、また呼んでみる事にします。
288作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 00:06:57 ID:VpgLX5WM0
むむ、ライトノベルというか少女漫画というか、奇異なる書き出しですな。
純粋なファンタジーかな?原作は蟲師以上に知らんな…
でも、短編のクオリティに関しては蟲師で鍛えられたゲロ氏だから安心。
またしみじみとした作品になりそうですね。期待しております。
289不完全セルゲーム:2005/06/09(木) 01:21:30 ID:TTcMuVSS0
>>255より。
290不完全セルゲーム:2005/06/09(木) 01:21:57 ID:TTcMuVSS0
第七話「ガーディアン」

 拍子抜けするほど、あっけない結末が待っていた。
 かつて、武天老師によって消し去られたフライパン山。その跡地には、紅い輝きを帯び
るクリスタルが寂しそうに佇んでいるだけであった。高さは一メートルほどもあり、かな
り大きい。こんなにも早く出会えるとは、セルたちも予想だにしない事態であった。
 あまりにも目立ち過ぎている。初めは罠かと勘ぐった一行だったが、16号の「セルに
行かせればいい」というアイディアが採用された。もちろん、セルも嫌がったのだが、彼
ら三人に逆らえるはずもなかった。

 一歩ずつ、細心の注意を払いながら、クリスタルとの距離を縮めていくセル。気配を殺
しつつも、いかなる状況にも対応出来るよう気を練ることも忘れない。
 十メートル、五メートル、三メートル。接近するにつれ、比例してクリスタルは存在感
を増していく。
 やがて、セルは手を伸ばせば届くところにまで到達する。冷や汗を垂らし、おそるおそ
る人差し指が──触れた。すると、異変が起こった。 
「触りやがったな……?」
 どこからともなく降り注ぐ、鋭い声。いつのまにか、周辺には強大な気が発生している。
パニックに陥るセル。
「ち、ちょっと待ってくれ! コンピュータに命令されて、仕方なくやっていただけなん
だよ!」
 見苦しく弁解を試みるセルだが、努力は報われない。
「ふん、往生際が悪い野郎だぜ」
 天空からクリスタルを守らんと、戦士が降臨する。フライパン山で待ち受けていた守護
者は、かつて惑星ベジータで天才と呼ばれた王子──ベジータ。
「てめぇのような化物に細胞を使われているとはな……不愉快極まりないぜ。火のクリス
タルを手に入れることは出来ん。何故なら、貴様らはここで死ぬからだ」
 ベジータが気を解放すると、激しい黄金のオーラが彼を包み込んだ。初めから困難が予
測されたクリスタル探しだが、いきなり超サイヤ人と立ち合うことになってしまった。
291不完全セルゲーム:2005/06/09(木) 01:22:27 ID:TTcMuVSS0
 超サイヤ人を眼前にしたセル。てっきり怯えるのかと思いきや、何故か不敵に微笑んで
いた。
「くっくっく……。知っているぞ、超サイヤ人か。まさか、おまえまでもがなれるとはな」
「ほう、まだ笑っていられるのか。よほど鈍いらしいな」
「ふん、勝算がなければ笑いなどせんさ。……16号、あとは頼んだぞ!」
 セルの切り札。それは人造人間16号であった。セルは最初から、戦う気などなかった
のである。が、現実とは常に希望を超える。
「断る」
 ごく自然に、あっさりと断られた。もちろん、セルは必死に16号を問い詰めるが、彼
は冷たく突き放す。
「俺は孫悟空を殺すために造られた。標的以外と交戦する理由はない」
「くっ……! だったら17号か18号、どちらかが戦ってくれ!」
 多少戦力は落ちるが、二人はセルよりも強い。しかし、ゲロから解放された彼らが協力
するはずもない。
「悪いが、おまえの命令に従う義務はないな」
「元々はあんたの問題だろ? ま、せいぜい頑張りなよ」
 予想に反し、ボディガードから見捨てられたセル。こうなれば、頼れるのは自分しかい
ない。勇気を振り絞り、セルはベジータに向き直る。
「たかがサイヤ人など、部下を使うまでもない。私が直々に相手をしてやろう」
 どこか妙な台詞を吐き、セルも気を開放する。大地を若干揺るがし、大気を少々乱れさ
せるほどのパワー。ついに、両雄が激突する。
292不完全セルゲーム:2005/06/09(木) 01:22:48 ID:TTcMuVSS0
 地を蹴り込み、セルが一気にベジータへ迫る。が、ベジータはセルが放ったストレート
を軽々と捌くと、逆にボディに猛烈なラッシュを叩き込む。肉を斬らせず、骨を断つ。
「ぐえぇぇ……おのれぇッ!」
 攻防は終わらない。セルも吐き気を抑えつつ、拳を握り込んで反撃を試みる。腰を切り、
捻じ込むように鉄拳を放つ。起死回生の右フック──ベジータを完璧に捉えた。
 右拳には感触がある。決定打とはいかないが、流れを引き戻すには充分なはず。
「よし、手応えあったぞ!」
「……くっくっく」
 笑うセルに対し、笑うベジータ。右手で口から出た血を拭うと、誇らしげに呟いた。
「やはり、この程度か……。どうやら、俺は強くなり過ぎてしまったらしいな」
 まるで効いていない。次元が違い過ぎる。恐怖で現実を見失ったセルは、ベジータに尋
ねる。
「おまえはベジータだろ……? ち、違うのか……?」
「違うな……。俺は超ベジータだ!」
「どう違うんだ!」
「説明するのも面倒だ。てめぇで勝手に想像しろ」
 サイヤ人の王族たる迫力に呑まれ、沈黙するセル。もはや、彼に残された手段は「想像」
しかなかった。
293サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/06/09(木) 01:29:35 ID:TTcMuVSS0
セルゲームとワールドカップ……共通点……ナシ。
次回へ続きます。
294作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 02:30:16 ID:VN5eZc+X0
>ゲロさん
なんとなく、ファイナルファンタジー8を思い出しました。
現代の東京?を舞台とした魔女の物語のプロローグですか。
原作私も知りませんが、蟲師以上の作品になるのを期待してます。

>サナダムシさん
クリスタル探し。やはりファイナルファンタジーを連想しましたw
べジータ相手では、このシコルセルではキツいでしょうねえ。
16号たちはあくまでセルに厳しいですね。セル無情ですなw
295作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 06:14:57 ID:sb/yqW260
>魔女
新連載おめでとうございます!
「自分の中で五本の指に入るSS」といったのは偽りのない本当のことです。
今回の作品も大変期待してます。ゆっくりでいいので最後まで頑張って下さい。

>不完全セルゲーム
深夜にいつもお疲れ様です。
この救われないセルの扱いに、逆にサナダムシさんのセルへの愛を感じる・・
いつかベジータや16号たちに反撃する姿を楽しみにしてますよ。
296作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 07:47:52 ID:YJsiBTTWO
個人的な意見だと、第一形態のセルはどんなにヘタレ化してもいい気がするが、完全体セルのヘタレは見たくない気がする。
最終的にはセルにかっこよくなってもらいたい。
297DIOの世界:2005/06/09(木) 10:37:54 ID:1YOI5k3v0
DIOの世界  
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dio/2-06.htmの続き

7歳の頃に自ら盲目になった。10歳の誕生日に能力が目覚め、母親を殺した。
それ以来、おれは天然の殺し屋として、この薄汚れた世界を彷徨っている。
ただ、店先で売られる良い匂いの林檎が喰いたい。殺して奪い取る。
ただ、すぐ目の前を通る美しい声の少女に触れたい。殺して犯す。
そんな獣の生が10年続いた。そして流れた時間の分だけ、死体は増え続けた。

いうなればおれは死の壁だ。少しでも触れれば死ぬ。

盲目のおれを、哀れに思い施しをしようとする馬鹿な善人も何人かいた。
おれはそういう類の連中には容赦はしなかった。
おれを軽く見、侮蔑する連中はすぐ殺してやる。何の痛みも感じぬままに、一瞬に。
だが、おれに優しく接する奴にはたっぷりと苦痛と絶望を与え、時間を掛けて殺した。

絶妙の傷の負わせ方で苦痛と流血だけを与え、死を与えないように。
意識を失わせないように細心の注意をしながら、絶望を何時間も味わうように。
最低でも、丸一日は切り刻み、絶叫を楽しみながらじっくりと殺した。
羊の肉を美味くローストするように、丁寧に、時間を掛けて拷問した。
298DIOの世界:2005/06/09(木) 10:38:38 ID:1YOI5k3v0
重ねて言うが拷問は善人だけだ。悪人はしない。
何故ならば、善人ほど罪深い。悪人はまだ救いようがある。自分を偽らないだけ。
しかし善人はおれに嬲らて当然だ。仮面を剥いでやる為に。

おれが善人どもを拷問してやると、奴らは必ず決まってこう叫ぶ。
『何故だ、俺はお前を助けてやったのに、施してやったのに』
やったのに ……いつも、そうだ。スタンドを身に付ける前から、そうだった。
奴らは、自分が善人と確認したい為に施すのだ。おれの事を思ってじゃない。

ただ、奴らは自分が救われる価値のある人間と思いたいから施すのだ。
自分より弱い立場に見えるおれを、犬や猫にエサを投げつけるような感覚で。
人間に善などは無い。おれは、そう確信している。

だからおれは、悪人を殺し、それ以上に善人を殺す。おれの、おれの信じる悪の為に。
299DIOの世界:2005/06/09(木) 10:39:51 ID:1YOI5k3v0
その日、おれは誕生日を迎えた。この世の物差しで言えば20歳ということになる。
だが、おれの真の誕生日は10歳の頃だ。
能力が発動し、ヤク中の母親を殺し、本当のおれ≠ェ目覚めたあの時だ。
つまりまだおれは10歳という事になる。そして、あの予言の日が今日だ。

おれの中の最後の何かを奪い、おれの中の能力を萌芽させたあの老婆の予言した日。

何かを、朝から感じていた。
腹の、丹田と呼ばれる部分から感じる沸々とした感覚。何かが生まれる予感がする。
あの素晴らしい能力が発動した時と同じ高揚感を感じる。
おれは、また誕生日を迎えるのだろうか。おれは2度誕生日を迎えている。

一度目は、ヤク中のクソ婆あの股から、この地獄に這い出ちまった不幸な日。
二度目は、能力が目覚め、おれという存在がこの世から自立した記念すべき日。
そして今日。はっきりとはわからない。だが確信めいたものがある。
三度目の今日は、精神の誕生日だ。おれの真っ暗闇の心の中に、光が生まれる日。

今日は素晴らしい日になりそうな確信がある。人生の中で待ち望んだ、最高の日。
おれは鼻歌を歌いながら、街の中心地に向かい、いつもより余計に人を殺した。
道を歩きながら水の龍を乱舞させる。ばたばたと人が頚動脈を斬られて倒れていく。
悲鳴が上がる。恐怖がうねりとなりパニックが引き起こされる。

心地よいコーラスだ。今日聞く人が死ぬ声は、天使のハミングにすら聞こえる。
自分を抑えきれずに走り出した。盲目なので何度も躓き、転がり回る。
おれは大きな声で笑ってみた。人が血を噴出して死んでいくその傍で、高らかに笑う。
(今日はおれの誕生日だ、楽しく行こうぜ)
300作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 10:43:18 ID:6tmDsHWc0
サナダムシ氏、更新乙。しかし、べジータはなんでフライパン山なんぞにいたんだろ?
そこら辺りは突っ込まないのがお約束かな。
>>296
原作の完全体セルもへタレっていたような。まぁ、それこそ少年漫画ボスの特に鳥山漫画の定番パターンなんだけど。
301DIOの世界:2005/06/09(木) 10:44:23 ID:1YOI5k3v0
いつもは静かな態度を宗とするおれが、らしくなく狂笑を続ける。
記録が出来そうだ。今までは一日で20人ほど殺したのが最高記録だ。
今日は軽くその4倍はいく自信がある。負傷者も含めれば4ケタ行くかな?

おれはこの世に地獄を創造していた。そしてその地獄の中で、おれは神だった。
おれは待っていた。神であるおれが仕える、更に上位の神の存在を。

早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、
早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、
早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い、早く来い……

まるで輪唱のように、おれはその単純なフレーズを何時までも口にしていた。
そしておれが『早く来い』と唱える度に、また人が血を噴出し転がっていく。
おれのペニスは興奮で最大限に怒張している。今にも発射しそうだ。

もう駄目だ、イッちまう。いい、今日のおれは何度でもイケる。何度でもエレクトする。
何人でも犯せる。何人でも殺せる。何でも出来る。

何人でも、何度でも、何人でも、何度でも、何人でも、何度でも、何人でも……。
おれは神、おれは破壊の神、おれは死神、俺は創造の神、俺は更なる神を待つ神……。

302DIOの世界:2005/06/09(木) 10:49:42 ID:1YOI5k3v0
おれは神。すべてを赦された存在。たかが強姦や殺人など、おれの力の前では赦される。
おれを裁けるのは、おれより上位の者のみ。
おれを裁ける方こそ、この世の真の神。そして真なる純粋な悪。おれが憧れる存在。

興奮が抑えきれない。確信がおれの魂を揺さぶり、粗野な激情がおれを突き動かす。
もういい、面倒くさい。その辺の女を押し倒しちまってここでやろう。

たとえ今が昼間だろうが、周りで何人おれの強姦を見ていようが構わない。
警官が来ようが軍隊が来ようが、来た人間が死ぬだけだ。それだけの事だ。
今日のこの素晴らしい気分を、誰にも邪魔はさせはしない。

おれは、突然の死体の山に怯えて座り込んでいる女の髪の毛を、鷲掴みにして押し倒した。
悲鳴の声からすると、多分10歳前後といったところだろう。
おれは少女の服を強引に剥ぎ、抵抗する少女の顔を張り付ける。ガキは言った。
『助けて下さい、まだ11歳です、ここで破瓜されれば天国にいけなくなります』と。

甘えるな。
おれの育った街では、お前くらいの年なら立派に娼婦として客を取っている。
犯されると天国にいけないだと?
そんな度量の小さなしみったれた神様なら、最初から祈りを捧げたりするな。
祈るならおれを、いや、おれがもうすぐ出会う至高の存在に祈りを捧げろ。

おれの中の獣が昂ぶり、おれはペニスを未成熟な少女のヴァギナに差し込もうとした。
だがその時、おれの背後から声がした。待ち望んでいた、福音。神の使いのしわがれた声だ。

「ひゃっはっはっはっ、腕を上げたのう。あの方もお喜びになるわ」
303DIOの世界:2005/06/09(木) 10:55:28 ID:1YOI5k3v0
久しぶりに書いて見ました。覚えておいででしょうか、前の展開。
私はすっかり忘れておりました。

正直、この作品は書いてて欝になる部分があるのであまり好きではないです。
前に4部構成+DIOのエピローグと書いたような気がしますが、撤回します。
たぶん、ンドール編が終わったらマライヤ編、そしてエピローグです。
マライヤ編はJガイルやンドールに比べて、明るいスラップスティックな話になる予定です。
女詐欺師(スリ師)の話かな。このペースでは来年になってしまいますが・・

ま、投げだしはしませんので長い目でごゆるりとご拝読お願いいたします。
304作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 11:59:29 ID:VpgLX5WM0
おお、ディオの世界キター

この狂いっぷりが好きです。こういう分野は書き易そうですね、パオさんw
この世界観を大事に、最後まで突っ走って下さい。楽しみにしてます。
305作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 19:10:23 ID:nDrzl73K0
あ、DIO来てる。結構うれしい。
俺も内容半分忘れていたが、相変わらずエグいな。
次回はいよいよDIO様降臨か?
あんまり間を空けないでくれな。
306300:2005/06/09(木) 23:22:46 ID:bThteQji0
ああ、DIOの世界の更新に割り込んでしまった。今更だけど申し訳ないorz
しかし次に予定しているマライヤ編は明るい話か。今の話とのギャップでンドゥールが可哀想な奴に見えたりは
…しないだろうな。
307作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 23:53:12 ID:RdlIKy6C0
パオ氏だか殺助氏だか乙。狂人が狂人を書くとリアルで面白いな。(一応ほめ言葉です)
明るい話か。このままいって欲しいような、そろそろ方向転換して欲しいような。
308作者の都合により名無しです:2005/06/10(金) 15:41:25 ID:TTEbPD8x0
ここ数日は割合と豊作だな。

でもサマサ氏とかザク氏とか五氏とかZ戦士氏とか銀杏丸氏とか鬼の攪乱氏とか、
最近姿見せないなあ。ブラックキング氏は週末あたり姿を見せそうだけど。
ユル氏は、もうだめっぽいな・・
309ふら〜り:2005/06/10(金) 21:20:36 ID:zuvuxtqE0
>>サナダムシさん
確かに、「りんご」とくれば「ゴリラ」と流すのが定型というか定石というか。言われて
気づいた意外な常識。今日も今日とていらんトコで調子に乗って、いらんダメージを受ける
セルが可愛い。そんな彼の超ベジータへの反撃は、加藤VSドリアン状態になりそうな?

>>ゲロさん
電光石火な新連載、お見事&おつ華麗様です。予想としては、異能力者迫害モノ……です
かね。そのものズバリ「魔女」ですし、権力者からの魔女狩り的な迫害。とはいえサーラ
には何やら不敵なものを感じます。逃げつつも反撃、という展開かも。乞われずとも期待!

>>殺助さん(にしておきます)
「自分が最強、頂点」という思考がない辺り、なかなか珍しい思考かと。ここまで傍若無人
に暴れておきながら、自分より上の存在に憧れる……包容力を求めるようなものか? あと、
>そんな度量の小さなしみったれた神様なら、最初から祈りを捧げたりするな。
これに関しては真面目に、ど〜いですね。もっと日常的なレベルでも通用しますよ、これ。
310作者の都合により名無しです:2005/06/11(土) 01:11:08 ID:EZQKYhRc0
>>308
この状態が普通でしょ。毎日2本も来てた頃が異常。

>サマサ氏とかザク氏とか五氏とかZ戦士氏とか銀杏丸氏とか鬼の攪乱氏
正直、この中で何人かは投げ出しになってしまいそうだがな。
とりあえず近々来てくれそうなブラックキング氏に期待。
311作者の都合により名無しです:2005/06/11(土) 10:19:47 ID:dlp4V4v90
さて、週末だ
格闘大戦くるかな
312サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/11(土) 22:58:08 ID:1KuKqlIs0
最近忙しくて書けませんでした・・・
近いうちに続きを書きたいと思います。
313作者の都合により名無しです:2005/06/11(土) 23:20:10 ID:HZzRsiIEO
お久しぶり〜、と思ったら、続きはまだなんだ。残念。
314作者の都合により名無しです:2005/06/11(土) 23:28:35 ID:+Y72TcSg0
おお、書いてくれる意思があるだけで大歓迎>サマサ氏
仕事や勉強や遊びの合間にのんびーり書いて下さい
315ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :2005/06/11(土) 23:52:06 ID:hDWoXCe90
すいません、この土日は書けません。明日も仕事入ってしまったので・・・
来週のどこかで代休もらうので、その時にがんばります。
期待に答えられなくてすんません。
316作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 01:39:32 ID:WMcuhJ0J0
サマサ氏もブラックキング氏も真面目だなあ。
のんびり書いてくれればいいですよ。こちらものんびり待ってますので。
楽しみに読んでますけど、書く人も楽しんで書いてもらうのが一番です。
317作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 02:01:09 ID:PRTa3ytr0
>>316
その通り・・・・ってIDがジョジョwwwwwwwwwwwwwwww
318魔女 grassy:2005/06/12(日) 03:26:49 ID:K1mIt3y70
>>285より続き
319魔女 grassy:2005/06/12(日) 03:27:25 ID:K1mIt3y70

 首都は相変わらずめちゃくちゃなところだった。
 慣れていないので多少の不安は感じたけれど、そんなときはミスティを見た。
 ミスティの歩き方や歩幅、テンポ。その全てに私の心まで軽くしてくれるような
不思議な力があった。
「サーラ」
 ミスティの足が動きを止めたので、私も止めた。見上げると、大きな建物。
「このホテルに泊まるわ。中に入って、従業員に私の名前を言えばいいから。はい、
チップを忘れずにね」
 ミスティは、お札を数枚私に渡した。
「ミスティは?」
「私はこれから行く所があるから」
 不安だった。一人でいなくちゃならないなんて。
「私も付いて行っちゃダメ?」
「ダメ」
 これからある用事には、私が邪魔だということか。
 そう思って、少し悲しくなってしまった。
「サーラ。あなたは強い子。強い子なんだから。慣れない場所でも、自分を常に保って
いれば何も恐れることは無いわ。あなたはそれが出来る子なのだから」
 ミスティは私の心中を察してか、励ましてくれた。
「…待ってるから」
 ミスティは微笑んで、また足を動かし始めた。ミスティのリズムが、地表を刻んでいく。
私の目には、ミスティに踏まれたコンクリートがわらわらと動き出したように見えた。
 
 
320魔女 grassy:2005/06/12(日) 03:28:07 ID:K1mIt3y70

 街外れ。ここが、約束の地だった。
「どういう心境の変化ですか?」
「ん?」
 人通りの極端に少ないこの場所に、茶色のコートを羽織った二人の男がいた。
 一人はまだ若く、長身で見栄えも良い。もう一人は若い男の肩くらいの身長で、無精髭を
生やし煙草を銜えている中年男であった。
「喫煙室で言ってたじゃないですか。この件に首突っ込むなって。あれから何日も経っちゃ
いないのに、随分急な変化だなと思いまして」
「…啓示だよ」
「啓示?」
「夜、頭に声が響いたんだ。美しい声だった。透き通っていて、全く嫌味のない声質だったよ。
その声が、教えてくれた。今日のこの時間、この場所に“魔女”が来ると。そしてその魔女が、
何か大事なことを教えてくれると」
「…なんですか?」
「それは分からない。魔女が教えてくれるとさ」
 長年記者として鳴らしてきた男。社内屈指のリアリストと呼ばれた男が、こんなことを言い
出した。若手記者は、目の前にいる中年が、本当に同一人物なのだろうかと思った。
「…お前は心中で俺のことを馬鹿にしただろう。俺だって自分が馬鹿だと思ったよ。真実しか
信じてこなかった俺が、何のソースもないただの声に動かされるなんて、な。だが、俺如きの
そんなちっぽけな思いが軽く吹き飛ばされるくらいに、その声には真実が詰まってた。逆らえ
なかった」
「こんにちわ、ロベルトさん」
 二人はふいの声に驚き、声のしたほうに目を遣った。美しい女がそこに立っていた。
「…あ、あんたが魔女……?」
「実際会うのは初めてね。初めまして。私はミスティ。数日前から貴方達を見ていたわ」



321魔女 grassy:2005/06/12(日) 03:28:58 ID:K1mIt3y70

 あれは、魔女の声だったのか。
 ロベルトは、見た瞬間そう思った。
 初めて見た女と、あの声が瞬時にリンクして、まるで数年来の友人を見るかの如く見慣れた
姿に彼の中ではなっていたのだ。
 あの声なら、この外見しかない。ロベルトは、直感でそう感じていた。
「今日貴方に――いや、貴方達に教えたかったのは、今首都で起きている生命の暴走について」
「例の人型の雑草の件?」
 個人的に追っていた(記事にすることは無かったが)事件なので、まず若手記者が食い付いた。
「ええそうよ。あれはただの雑草ではないの。あれは命のボタンがどこかで掛け違えられた姿。こ
の世に本来存在してはいけない命の塊」
「ただの異常成長じゃない?」
「そう思うのも無理は無いけれど、私には分かる。それ以外に掴んでいる者がいるとしたら――」
「そうだ、検邪聖省! 検邪聖省は魔女を異端として排斥しようとしている」
 ミスティは若手記者の目を一瞥して、直後足を鳴らし始めた。
 リズムはミスティの思うが侭。時に激しく、時に緩やかに――。
「ロベルトさん、少し外して頂ける?」
 その声はとても澄んでいて、一片の淀みもない。ロベルトに逆らう術はなかった。声を上ずらせ、
煙草を吸いに行くと言って去っていった。
「…煙草、やっぱり嫌ですか」
「そうね。好きじゃないわ」
「じゃあ、話の続きを」
 とん。

322魔女 grassy:2005/06/12(日) 03:29:38 ID:K1mIt3y70
「あなたが今ここにいるのは」
 ととん。
「検邪聖省の依頼を受けたため?」
 すたん。
「彼らは私が首都にいることをまだ知らない」
 ミスティは、そう話す間にも足で地面を叩き続けている。彼女にかかれば大地さえ楽器になって
しまう。
「じゃあ……何故ここに」
 ととすたん。
「何のために?」
 すったた。
「あなたは何のために首都に来た?」
 すととんととん。ミスティは、足を鳴らすのを止めた。
「異なる生命と交わる為よ。ジョージ=マッケンジー」
 ミスティの生み出したリズムに呑まれ、若手記者――ジョージの動きは一瞬完全に停止した。
「貴方達二人には道化になって貰いましょう」
 ミスティは、そう言って笑った。

 同時刻――サーラは一人ホテルの部屋に居た。足でリズムを刻みながら。
 自らが何かを作り出すことが、世界と繋がる方法。そうミスティに教えられた彼女は、自然とミス
ティの真似をするようになっていた。
「…地下水路……そこに……」
 世界と繋がる方法を知れば、世界の声を聞く事も出来る。
 サーラもまた、普通とは違っていた。

323ゲロ ◆yU2EA54AkY :2005/06/12(日) 03:47:48 ID:K1mIt3y70
第一話中盤くらいまで。次でとりあえず一話目完結かな? 
第二話は、現時点ではかなり人を選ぶ話になる予定です。

>>287
原作はお薦めしますよ。なんつーか、明らかに凡人じゃない人が描いてるとでもいいますか。

>>288
ライトノベルも読んだことないですね……しみじみとは……どうかな。

>>294
舞台は原作同様明記してないですけど、まああの大国です。

>>295
有難う御座います。書く気分になったときに書いてきます。忙しくてもなんとかなる!

>>309
またお願いします。ただ、そういう展開じゃ多分無いですね。

では次回。
324作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 04:31:22 ID:WMcuhJ0J0
お疲れ様です。
文体というか文書形式が、あっさりしたタイプに変わりましたね。
お話に応じて変えているのかな?

第一話はとりあえず主要人物や舞台の紹介ってところですかね?
原作知らないけど、読む限りはミスティが主役でいいのかな?
325作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 20:43:54 ID:41ufN3nX0
ゲロさん真夜中に乙。

検邪聖省とか魔法とか現代と異世界風のクロスマッチな雰囲気でいいですね。
今度原作も読んで見ます。まだ話がどう動くかわ分かりませんが、
蟲師からゲロさんの短編連作は好きだったので楽しみにしています。
326不完全セルゲーム:2005/06/12(日) 21:01:44 ID:5CFjqPxq0
>>292より。
327不完全セルゲーム:2005/06/12(日) 21:04:22 ID:5CFjqPxq0
第八話「おしゃべり」

 突然だが、ここでセルが想像した超ベジータについて紹介しよう。
 まだ地球上に神すら存在しなかった頃、地球上を我が物としていたのは超ベジータであ
った。
 強大な武力と知力を併せ持つ超ベジータに、逆らえる者などあるはずもない。他民族は
奴隷として虐げられ、地獄のような日々を送っていた。
 だが、とある夜に宇宙から落下してきた隕石によって状況は一変する。この隕石で地球
に運び込まれたウイルスは、何故か超ベジータだけに脅威をもたらすものだったのだ。
 かつて総人口一千万を誇った超ベジータは、ウイルスにより急激に個体数を減らしてい
った。さらには、混乱に乗じて決起した他民族によって追撃を受け、超ベジータは絶滅し
てしまった──はずだったが。
 超ベジータはわずかではあるが、辺境にて細々と生存していた。とはいえ、ウイルスに
よって肉体は世代を重ねるごとに衰え、かつての栄光を取り戻す力は失われていた。本当
に滅亡する時期も近い。
 過去を呪い、運命を呪い、未来をも呪い続けた悲しき一族。
 今セルと戦っているベジータも、きっとウイルスに蝕まれながら生きてきたに違いない。
滅びゆく定めにある「超ベジータ」という看板を背負って。

 ──セルは泣いていた。

「なんという悲劇だ……。ベジータ、おまえは今や立っているだけでも辛いはずだ!」
「いや、辛くないが」
「え、マジ……?」
 ベジータが突撃する。対するセルはろくに反応も出来ず、急所へ次々にクリーンヒット
を許してしまう。ウイルスどころか、病気になっている様子すらない。
 やがて、強打を顔面に喰らい、派手なダウンを喫するセル。激しく吐血しながら、想像
が持つ限界を悟ったらしい。
「やはり想像力では、戦闘力を超えられんか……」
328不完全セルゲーム:2005/06/12(日) 21:04:51 ID:5CFjqPxq0
 ふらふらと立ち上がったセルに、ベジータは執拗な追い討ちを掛ける。
 左右からフックを連打、セルがガードを上げるとボディブローを決める。動きを止めれ
ば、すかさず強烈に蹴り込む。手も足も出ず、吹き飛ばされるセル。
「ちっ、話にならん。つまらねぇ戦いだったぜ」
「す……すまなかった。もっと修業して強くなるよ」
「もう消してやる。てめぇの不細工な面は、もう二度と視界に入れたくないからな」
 ベジータは左手にエネルギーを集中させ始めた。散々打たれたセルに、エネルギー波を
避ける体力は残っていない。
「わ、わ、ちょっと待った! こんなの人権無視だ! いや、人権じゃなくて虫権か……。
と、とにかく、エネルギー波を中止しろォ!」
「……やかましい野郎だ。この超ベジータのビッグバン・アタックで消し飛びやがれ」
 まもなく、エネルギーが放出されようとしている。セルは脳をフル回転させ、口八丁で
切り抜けようと足掻く。
「ベジータ! おまえは超サイヤ人になったが、まだまだ宇宙一には程遠いぞ!」
「ふん。後ろにいる人造人間も、カカロットもすぐに消してやる」
「クク……バカめ。おまえとの宇宙一決定戦に相応しいのは、そいつらなどではない!」
「ほう、じゃあ誰だというんだ?」
「俺だ」
 一秒足らず、空気が完全に停止する。が、すぐに高笑いするベジータ。
「ハッハッハ……てめぇは今から殺されるんだ。とうとう本当に狂いやがったか」
 しかし、セルは動じない。彼にはベジータが、話術に引き込まれつつあることを分かっ
ていた。
「教えてやろう。怨念が造りし究極生命体、セルの正体をな……!」
「な、なんだと……?」
 舌と虚勢とが一体となり、今まさに実態なき最強戦士が誕生する。
「おまえは超ベジータらしいな、だったら私は──グレートセルだ!」
 ベジータの脳天に、雷鳴が轟いた。
329不完全セルゲーム:2005/06/12(日) 21:05:44 ID:5CFjqPxq0
 かつて地球やナメック星で、プライドを打ち砕かれたベジータ。
 純粋な怒りによって超サイヤ人に覚醒し、ようやく砕け散ったプライドを収集し終わっ
た矢先の事件だった。
 超サイヤ人“超ベジータ”をさらに超越した、人造人間“グレートセル”との出会い。
 完成間近にあったパズルは無残にも打ち壊された。ベジータはセルを睨みつけ、口惜し
さを吐き出す。
「く、くそったれ……! どいつもこいつも王子である俺を出し抜きやがって……!」
 歯軋りし、気を最大限に高めるベジータ。充血した眼光が、異様な殺気を放つ。
「いつか必ず借りは返すぞ、セル! てめぇを殺し、俺が宇宙一になってみせる!」
 吐き捨てると、ベジータは飛び立った。やや判断が難しいが、これはセルに軍配が上が
ったとして良いだろう。
「うおおおォォォ! 殺されるとこだったァ!」
 ──セルは絶叫した。

 勝利したセルに、17号たちが歩み寄る。
「まずは火のクリスタルか。わりと好調だな」
「そう? いきなり殺されかけてたけど……まいっか」
 普段は冷淡な二人だが、今回はわりと柔らかい態度を取る。が、ここでも壁となるのは
人造人間16号である。
「セルよ」
「ん、どうした」
「グレートセルというのは何者だ?」
 不敵に笑うセル。しかも、まるでベジータが乗り移ったかのように誇らしげだ。
「説明するのも面倒だ。てめぇで勝手に想像しろ」
「ヘルズフラッシュ!」
 情熱を宿したかの如く、真紅に染まった火のクリスタル。そこへ大流血したセルも加わ
り、めでたくフライパン山決戦は終結したのであった。
330サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/06/12(日) 21:14:29 ID:5CFjqPxq0
食中毒。ナマモノに気をつけましょう。
近いうちに、短いのを一つ投下するかもしれません。
331作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 21:44:22 ID:41ufN3nX0
サナダムシさん乙です。

セルはミスターサタンやヤムチャ並みのキャラになっているなあ。
なんとなく「最強伝説黒沢」を思い出した。口だけ番長のところが。
短編まってます。「ジャブ」みたいな斬新な作品がいいな。

332作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 23:54:32 ID:HYo1EZj80
>魔女
プロローグのような感じですね。ミスティがどのような能力を持ち、
検邪聖省とどのように敵対していくかがまったくわかりません。
バトル物になるのかな?個人的には蟲師みたいなドラマものがいいな

>不完全セルゲーム
セルが落ちる所まで落ちているwしかしべジータも負けず劣らずあほですな。
ところで、短編を近いうちに書いてくれるのですか。サナダムシさんは
長編も短編もうまいから楽しみ。でもうんこものは勘弁w
333ふら〜り:2005/06/13(月) 17:44:43 ID:rROh/5ZK0
>>ゲロさん
じわじわと見えてきてますが、まだまだ霧の向こうですね。ミスティの印象なんか、冒頭は
サーラとの絡みで保護者的、母親風だなと思ってたら、記者コンビと会った途端に一気に
研ぎ澄まされ、最後なんかこのまま何かの術で操るか殺すかしそうで。彼女の地や如何に?

>>サナダムシさん
想像で勝手に涙を流すセル、なかなか心優しい……のかも。ベジータはベジータで、セルの
口先(とゆーほどのものかどーか)にころころ乗せられてる辺り、何だか素直な子してます。
しかし、純粋マシィーンたる16号には心も素直さも想像力もなく。虫権のなき身、哀れ也。

>>サマサさん、ブラックキングさん
忙しいこともあれば、筆が乗らないこともあるのが人の常。書きたい時に楽しんで
書いて下されぃ。さればこそ、作品にも楽しさが宿ろうというものにござれば。
334作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 19:16:46 ID:DlQeo4P90
サナダムシ氏の短編、楽しみなような怖いような。
>食中毒。ナマモノに気をつけましょう
後書きのこれが短編の内容の伏線のような気がするw
335作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 18:06:27 ID:cirWNYUN0
バキスレのまとめサイトが見えない。
バレさん、なにかあったのかな?
336作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 21:10:48 ID:MrCo50M+O
ホントに見えない。
バレさんどうしたんだ?
いるなら返事をくれると嬉しい。
337作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 22:13:40 ID:yaaG13yG0
心配性だな。
多分、なにかの調整か何かでしょ。その内復帰するでしょ。
前にも確かこんなことがあった覚えがある。

それにバレさんは黙って急に投げ出すような人じゃないよ。
いつか閉鎖するということになっても、告知して一定期間の
猶予をあけてからだと思うよ。

ま、心配要らないって。
あまり言うとバレさんにプレッシャー掛かってしまって
それこそ彼の負担になってしまうぞ。

仕事や遊びのほんの合間に、生活の負担にならない程度で
管理してもらえば十分。俺はいつも感謝してるし。
338バレ ◆sssssssDAo :2005/06/14(火) 23:15:05 ID:w0sxVCqx0
申し訳ありません。
投げ出し……たわけではなく、私からのサーバー側への連絡が不十分だった為、
契約の更新の手続きが上手くいっておらず、一時的に切断となったようです。
サーバー側に連絡を入れて今週中には復帰&更新するように処理しますので、
スレ住民の方々にはご迷惑をおかけいたしますが、ご了承の程、宜しくお願い致します。

 by バレ
339作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 23:28:03 ID:MrCo50M+O
>338
バレさん、ドンマイ。頑張れ、応援してるぞ。
340バレ ◆sssssssDAo :2005/06/14(火) 23:30:47 ID:w0sxVCqx0
追記:
BBSについては、利用可能です。
http://jbbs.livedoor.jp/movie/3830/
341作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 10:24:13 ID:vATDwVOi0
今更気付いたんだが、バレさんのトリップって「SSSSSSSだお」なんだなw

画箱の懐かしアニメ板にアニメ版男塾のOP・ED動画がうpされてる。
興味のある方はどうぞ。
342作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 18:42:52 ID:nU+Vd6ap0
バレさんいつもお疲れ様。
仕事もお忙しそうだし、たまにはこんな事もありますよ。
のんびりと気長にやって下さい。


でも少しだけ心配してたw
バレさん信じ切れなくてごめん。

343作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 20:27:08 ID:3oBE+fCP0
バレさんいつも乙。
仕事も忙しそうですががんばって下さい
344戯言遣いとオーガの賭け事:2005/06/16(木) 17:19:33 ID:JSU4LMqN0
>>144から

「・・・てめえの、勝ち、だと?」
「はい・・・ぼくの出した条件を覚えていますか?ぼくの口から<ぼくの負けです>と言わせられれば、それで
あなたの勝ち―――だけど」
ぼくは一拍の間を空ける。
「あなたはその勝利条件を満たしていない―――満たさない内に、自分から闘いの終わりを宣言した―――それは、
投了ということ。敗北を認めたということじゃないんですか?」
そう―――これがぼくの策戦だった。無駄に足掻いてみせたのも、挑発を繰り返したのも―――最後のこの仕掛けを
見破れない程度に、彼の集中力を奪う必要があったから。彼の精神を揺さぶる必要があったからだ。
例え最強だろうとも―――名前はあって、言葉は通じる。戯言は通じる。揺さぶりをかけるだけなら、そこまで難しくない
という目算は確かにあった。
けれどこれは、自分でも笑ってしまうようなやり方だ。相手が王手の状態で将棋版を引っ繰り返しておきながら
「お前は勝ってないんだからぼくの勝ち」と言ってるのと理屈は同じだ。
負けじゃないのなら、ぼくの勝ち。我ながら―――なんて最悪な戦法。
この勝負は、賭け事の場ですら、なかった。ただぼくによる、詐欺の場だった。
まあそんなどうでもいい解説はさておいて、心配なのは範馬の反応だった。彼のことだから、激昂してぼくを殺しに
かかってもおかしくない。つうか、その可能性はシャレにならないくらい高い。
範馬は―――ぼくを見下ろしたまま、黙っていたが―――チイッと舌打ちした。
「ああ、そうだな―――。この勝負、てめえの勝ちだ、くそったれが」
それは負けを認めたというより、もうぼくの相手なんかしてられん、というような諦観が漂うセリフだった。
それはそうだ。こんな敗北、彼にとっては敗北とも思えまい。ぼくだって思えない。今のこの状況、誰がどう見ても
ぼくの負けだ。勝手に作ったルールの上で勝ったからといって、そんなものに誰が価値を認めるのか。
それきり彼は、何も言わない。ぼくも何も言わないでおこうと思ったが―――
345戯言遣いとオーガの賭け事:2005/06/16(木) 17:20:14 ID:JSU4LMqN0
「―――オーガさん」
「なんだよ」
「悪いですけど、出来たらぼくの携帯でちょっと電話してくれませんか?最近知り合ったお医者さんにちょっとここまで
来てもらいたいんで。ほら、ぼくこのままじゃさすがに死んじゃうし」
そのまま黙殺されるかも、と思ったが、意外や意外、彼はぼくの懐から携帯を取り出した。
「・・・どの番号にかけるんだ?」
「名前で検索したらいいですよ。ええっと―――確か鎬―――えっと、もみじだかこうようだか―――」
「ああ、もういい、分かった。てめえが人の名前も覚えん阿呆だってな」
範馬はうるさそうに言って、携帯を操作した。数秒で繋がったらしく、範馬は手短に現在地を告げた。
その後「そこでバカが死にかけてるからさっさと治療してやれ」と、実に暖かい言葉を残してくれやがった。
しゃがみ込んでぼくに携帯を返しながら、範馬は言う。
「さて、それじゃあ俺は行くが―――てめえ、結局、なんでこんな馬鹿な真似やらかしたんだ?ここまでボロクズになって、
何がしたかったんだ?」
「・・・黙秘権の行使・・・」
「ふん・・・」
範馬は鼻を鳴らすだけだった。彼も別に答えを求めていたわけではないだろう。
「てめえにだけは、二度と会いたかねえな。戯言遣いどころか、ただの詐欺師じゃねえか」
「そいつはどうも・・・。ぼくも出来たらあなたには二度と会いたくないですね。けど、困ったことに、ぼくがもう
会いたくないって思った人には、また会っちゃったりするんですよ」
「日頃の行いが悪いんだろ。もうちょい品行方正に暮らすんだな」
「あなたのように?」
「ああ、そうだな。自慢じゃないが俺は未だかつて悪いことなんざやったことがないぜ」
ふん、と鼻を鳴らして、範馬は立ち上がった。
346戯言遣いとオーガの賭け事:2005/06/16(木) 17:20:59 ID:JSU4LMqN0
範馬はぼくに背を向けて歩き出す。その姿はどこまでも力強い。
ああ―――そうだ。最強の存在とは、やはりこうあるべきなんだ。白鳥は水面下では必死に脚をバタつかせている―――
そんなのは嘘っぱちだ。白鳥は水面下でも蝶のように優雅に泳いでいるに決まっている。
白鳥がどこまでも優雅であるよう。彼はどこまでも最強だった。
「―――そうだ、戯言遣い。最後に聞いとくぜ」
「何ですか?」
「お前―――結局、なんて名前なんだ?」
範馬が最後にぼくに問うのは、ぼくの名前だった。ぼくは答えた。
「それは永遠の秘密です」
「・・・ケッ」
範馬は舌打ちして―――そして、笑った。狂笑ではない。凶笑でもない。鬼の笑顔ですらない。
ただの、笑顔だった。
「喰えねえガキだぜ、全く」
範馬の姿が、消える。ぼくはここで―――ようやく目を閉じた。
『てめえ、結局、なんでこんな馬鹿な真似やらかしたんだ?』
その問いに、今更答える。誰に向けるでもなく、敗北者の戯言遣いは語る。
「・・・あなたに一泡、吹かせたかっただけですよ。恨みとか、憎しみとか、何も抜きで。ただ、そうしなきゃ
いけないと―――そう思っただけです」
身体中の感覚が麻痺している。ひょっとしたら死ぬかもしれない。それはそれで仕方ないかと思うのだが―――
「・・・やっぱ、出来れば、生きたいよなあ・・・」
死にたくないわけではない。ただ、もう少しばかり生きていたかった。けれど、こればっかりは。
後は神様の気分次第。
さて―――ここまでお付き合い下さって、読者の皆様ありがとう。
CMの後も続くかどうかは分かりません。だけれども、縁があったらまた会いましょう。
347サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/16(木) 17:25:13 ID:JSU4LMqN0
久々の投下完了。
戯言シリーズの新刊で、恐ろしいほど辻褄が合わなくなりました。
どうしようかと思ったけれど、もう今更どうにもならないので、このまま書ききることにします。

>バレさん
いつも大量の作品の保管ご苦労様です。
僕も無責任なりに応援させてもらっています。
348作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 20:18:52 ID:skJs8ITf0
サマサさん久しぶりです。
ちょっと勇次郎らしくは無いと思ったけど、「投了」という言葉に
戯言使いとしての本領を見た気がします。
あと、最終行で「ここで終わりかな?」と思ったけどまだ続くみたいですね。
良かった。のんびりとがんばってください。

349AnotherAttraction BC:2005/06/16(木) 20:38:44 ID:+nhrZXeU0
237から
「……『もう今後絶対無視しません。許して下さい』……」
「心が籠もってないし言葉も足りないスね、もっかい」
息も絶え絶えに倒れ伏すトレインの棒読みに、見下ろす形のままくすぐるサヤの手が、今度は首筋に伸びた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッツッツッ!!!! 判った、判った!!! 『もう今後絶対無視しません! 許して下さい!!
 ……………お―――…ッ! お姉様!!!!』」

…あの後呼吸困難寸前の大爆笑を強要され、挙句にこんな事を言わされる屈辱。いっそ死んでしまいたかった。
大体、身体能力はこっちの方が上の筈なのに、なぜか全ての攻撃をかわされ、逸らされ、返される。
―――――彼女の行動にまるで殺気が存在しないからだ。
トレインは面と向かって戦う際、いつも相手の殺気に対応して戦う。そうする事によって行動の全てが意識の外で
行われるため、戦う折に極めて都合がいい。
しかし彼女はあらゆる敵意が無い。故に全ての攻撃が後手に回って、先の先・後の先を見事に奪われる。
それは喩えて、いきなり口を閉じられた蝙蝠に近いだろうか。
以上を総合すれば………………「神域のいたずらっ子」………と言った所か。かなり嫌だが。

「…其処までお願いされたら仕方ないっスねえ、"特別に"許してあげようじゃないスか。
 これに懲りたらもう、お姉さんの言う事に逆らうんじゃないスよトレイン君、良いスね?」
ようやく離れたサヤに対し、散々罵倒を吐き掛けてやりたかったが―――生憎口は呼吸に精一杯、体は疲労困憊でまるで動かない。
忌々しい事この上ないこの女の前では、鋼の忍耐も神域の体技も意味を成さない。それ故諦めと敗北感、そして訳の判らない
不思議な何かがない交ぜになり胸中にわだかまる。
―――――今まで、たったの一人もこんな奴は居なかった。
強くて、隙も無くて、優しくて、何より………彼から何一つ奪わない。
強いと言うだけで、相手は自分にとっての略奪者―――それが、今までのトレインの常だったと言うのに。
良い奴、悪い奴、強い奴、弱い奴、狡い奴、馬鹿な奴、金持ち、貧乏人。
これまで殺してきたどれにも似ている様で、似ていない。
―――否、どれにも似ているからかもしれない、この女から感じる不思議なものは。
だからかもしれない――――――…負けたのに、悔しくも恐ろしくも無いのは。
350AnotherAttraction BC:2005/06/16(木) 20:39:33 ID:+nhrZXeU0
「さて、トレイン君。キミがこんなじゃもうリロード(弾丸の製作)は無理だろうから、
 お姉さんが一肌脱いであげようじゃないスか。面白そうだし」
……そういう事か。だとしても、ここまでやらなくてもいいだろうに。
工具一式の揃ったテーブルに向かっていくサヤの背中を見ながら嘆息した。
 
―――――五分後。
作業を行うサヤの背中を見て、トレインは慌てて立ち上がる。
「えと……ちょっと、この…おや? む、ここを………こうして――――あれれ?」
およそ正しい手順を想像させない不必要な擦過音や金属音、首を傾げたり肘が横に飛び出す背中、疑問符連発の言葉――――

すぐにでも爆発させそうな雰囲気だった。

「お…おい! もういい!! オレがやるからちょっとどいてろ!!!!」
「う、五月蝿いなあもう。この位お姉さんには何てことないスからキミこそどいて欲しいスよ」
二人はまたしてももつれ合う形になった。そして―――
「あがっ!!」
瞬く間にトレインの右腕が体全体で腕を極め、腰で肘を破壊する関節技――腕十字――に極められた。
「…どうスかトレイン君、柔道にはこんな技もあるんスよ!! さあ、お姉さんに仕事を続行させたくなってきたスよねッ?!!」 
「ふざけるなァッツツッ!!! オレはバスケットマ…じゃなくて! お前みたいなぶきっちょに任せられるか!!!
 ここで騒ぎを起こしたら追い出されるじゃ済まないんだ! もし爆発でも起こしたら………!!!!」
「わーわーわーわー、聞こえなーい聞きたくも無ーい。……いいからキミは、私の邪魔をしなければいいんスよ。
 大体さっき『お姉さんの言う事に逆らってはいけない』って言ったじゃないスか、もう」
一流の技が展開しているのに、会話の内容は酷く陳腐で馬鹿馬鹿しい。
「邪魔とかどうとかの問題じゃないだろうが!!! お前気は確かか!?? いい加減にしろこの野郎!!!」
「――こっ…この野郎って言った方がこの野郎なんスよ!!! やーいこの野郎!!!」
「訳判んねえよ! 頭ン中膿んでんじゃねえのか!!?」
「なにお〜、言ったっスねェ!!」
…………とても中身の無い不毛な会話が、三十分以上白熱した。
351AnotherAttraction BC:2005/06/16(木) 20:40:55 ID:+nhrZXeU0
「で、それをきっちり計量して………違う、二グラム多い!!」
「い、いいじゃないスかその位!! 大体なんでキミ銃はぞんざいにするのに弾に拘るんスか!!??」
――――どうやら、トレインが付いて見るという事でお互い妥協したらしい。
「馬鹿かお前は、それだけ多けりゃ手が吹っ飛ぶんだぞ。弾ってのは銃よりずっとデリケートなんだからな」
大体が爆発物なのだから、それは当然だ。機構が精密且つ頑健ゆえに爆発を射出へと転化するのが銃と言う利器―――
それにも物質強度が存在するため、それを超えた火力は単なる爆発にしか成り得ない。
或いは、少なすぎては射出そのものが起こり得ないか、弱いか。
従って、射撃と言う行為に最も最大限の注意を払う部分は、実に銃弾なのだ。これさえ大丈夫なら、人によっては
水道管で狙撃をする奴も居るくらいだ。

「……オレは工事現場の鉄パイプで撃った事も有るからな。要するに、銃でなくても弾を撃てればいいのさ」
「だから銃にあんまり敬意が無いんスね。こう言っちゃ何スけど、銃はやっぱり大事スよ」
何時の間にか、場に先刻までの緩さは無くなっていた。だからと言って緊張感一色な訳でもない。
トレインにとって生まれて初めての、温良な静謐。工具の音と時折交わされる二人の言葉以外の全ての音が二人に遠い。
まるで世界が、二人に向かって閉じていくようだった。
「銃が有るって事は、狙い通りの所に狙えるって事スから」
「ま……そうだな」
確かにサヤの言う通り、銃を持って行った方が急所に当てるのが楽だ。やはりその為にある道具だ、目一杯活用するのは
理に叶っている。偶にはまともな事を言うんだな、と胸の奥で感心した。

「…その方が、死ななくて良い人を死ななくて済む様に出来るし、助けたい人を助けられるって事スから」

―――――思っても見ない考え方だった。
だが当時の自分には、この考えは言葉でしか理解出来なかった。死ななくて良い人なんて見たことも無いし、
助けたい人なんてそれこそ何処にも居はしない。
どいつもこいつもが屑で、ゴミ虫で、寄生虫で、糞袋で、裏切り者で、残り全てがどうでもいい物=c
それが彼の世界の全てであった以上、何一つトレインの心には響かなかった。
352AnotherAttraction BC:2005/06/16(木) 20:41:38 ID:+nhrZXeU0
「ほぉら、出来たっスよトレイン君! メイドインサヤの第一号!!」
誇らしげに揚げた右手に、聖火の如く銃弾が摘ままれてある。トレインはその手首を掴まえ、自分の眼前に持っていく。
――――――――開口一番、
「……うわぁ…」
酷い有様だった。薬莢も銃弾も傷だらけで、あちこちの角は潰れ、表面は火薬カスがまばらにこびり付いている。
なのに当のサヤはと言うと、得意満面にふんぞり返っていた。
「ふふん、どうスかトレイン君。お姉さんの鮮やかな手並みにビビっちゃったスか? いやー、やっぱりお姉さんは
 何やらせても天下一品――――――…って、トレイン君?」
……トレインは、ペンチで弾丸をバラそうとしていた。

「ちょ、ちょっと!! 何するんスかトレイン君!!!! お姉さんの血と汗と涙の結晶を!!!!!」
「やかましい、こんな暴発しそうなモン使えるか!!! 火薬が勿体無いからバラす!!!!!」
「だ………駄目っスよそんな事!! この子は私が守るッッッツッ!!!」
「やっ………止めろ、この馬鹿!!!! 目蓋引っ張るんじゃ……!!!! 痛痛痛たたたたッッ!!!!」
サヤの必死の抵抗は留まる事を知らず、それに圧倒されるトレインの手が、完成済みの弾丸を収めた箱をひっくり返した。
幾多の金属音と共に絨毯の上にブチ撒けられる銃弾達を見るなり、サヤは良策に目を輝かせる。

――――件の弾を、その中に投げ込んだ。

「あ――――――――ッッツッッツツッ!!!! 手前ェ、何て事を!!!!」
「ふっ、これでもう捜せないスね」
最早例の不良品はワラ山の一針に等しい。捜そう物ならどれだけ掛かるか判らないし、捨てよう物なら百何十発を
まとめて捨てなくてはならない。一気に気が滅入った。
353AnotherAttraction BC:2005/06/16(木) 20:43:05 ID:+nhrZXeU0
「……じゃ、まずは洗濯っスね」
渋々弾を拾うトレインを尻目に、サヤは床に散らばった洗濯物を持ってバスルームに向かっていく。
「いやしかし、随分と溜め込んでるっスねキミ。何回か往復しないと駄目みたいスね―――と、トレイン君?」
俯くトレインの背中が震えている。泣いているのか、と思ったその時、
――――――――笑った。
寧ろ呵々大笑と髪を掻き上げ盛大に笑い出す。これまで笑わなかった分を取り戻すかのように。
この世の悲哀全てを彼一人で吹き飛ばさんばかりに。

「………何か、変だよな」
ひとしきり笑い終えたトレインの顔には、殺意はおろか空虚さえ無かった。
一言で言うなら――――清浄。遠い目は何処と無く悟りを開いた賢者の感すらある。
「お前と一緒に居ると、真面目にやってるのが馬鹿らしくなってくる」
……恫喝で覆い隠した言葉が消え失せ、今正に赤心赤裸のトレインが其処に居た。
「今さっきまでの事を思い出すと、『馬鹿みたいだな、オレ』って思えてさ。
 ――――正直もう、笑う事なんて出来ないと思ってたからな………変な話だ」
それだけだ――――トレインはそう言って話を切った。だが彼の貌には、これまで一度も見た事の無い穏やかな笑みが浮かんでいた。
それを見て、サヤも微笑む。
「…………結構良い顔出来るじゃないスか」
  
354AnotherAttraction BC:2005/06/16(木) 20:44:00 ID:+nhrZXeU0
  だが、今のトレインは逆に涙を零していた。
今、彼の人は何処にも居ない。捜しても、絶対に巡り会う事は無い。
許し難いあの男。殺し尽くしても尚足らず、責め尽くしても満たされない。
奴は奪った―――あの笑顔を。
奴は奪った―――彼女がこれから成していく筈の全てを。
奴は奪った―――まだ、何一つ返し切れていないのに。
 
汲めども湧き上がる怒りは、全ての弾丸に込めている。奴に撃ち込む一弾一弾が彼の憎悪の形容だ。
奪われた者は決して帰ってこないし、この胸の空虚を埋める物など何処にも無いのは判っている。
…しかしそれでもしないよりはマシだ。絶対零度の復讐の炎は、奴の死を求めて胸中に渦を巻く。
「……サヤ………畜生……」
怨嗟も悲哀も混ぜこぜに、彼の人の名を呟く。

―――――何十回目かの眠れぬ夜が、又してもやって来た。

355AnotherAttraction BC:2005/06/16(木) 21:05:19 ID:+nhrZXeU0
団体競技なんて…大っ嫌いだ―――ッツッッ!!!!(号泣しながら、挨拶)
NBです。今回の挨拶も深い意味は有りません。…いやホント。
心情表現の為に心理学の本を読んでますが………何か俺の知ってるのと違うなあ…
別の本では、俺はアリクイじゃなくてヤマアラシだったのに。

……え? どういう本かって? 
「貴方の内面が判る! 究極心理テスト」とかいうやつだけど。
いやァ、俺って読書家。
ま、戯言はここまで、ではまた。
356作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 21:32:09 ID:sCX7gI4HO
ちょいウザイ
357作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 21:57:28 ID:WBF3ZzCq0
今回ばかりは携帯厨に同意。
NBって痛い奴だな。今に始まったことじゃないが。
いやァ、俺って読書家w
358作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 23:07:37 ID:fPOSEQgjO
第6話前スレ>>157より

「と、まぁ、こんな事があった訳だが…。」
人目に付かない、喫茶店の奥の席。当然、窓も無ければ壁の際。更にはキャスター付きの
移動壁で仕切られているため、都合三方が塞がれていることになる。そんな環境で。
「ふふ、うふふふふ…。」
オリバは微笑んでいた。虚ろな目で、落書きやひび割れすら無い
真っ白な壁を見ながら。
「オリバさん、あんた…。」
バキの口から言葉が漏れた。
思えば最初からおかしかったのだ。バキの知るビスケット・オリバという人物は、
確かに横暴なところがある人物である。しかし、勝手に他人の家に上がり込んで
冷蔵庫を漁ったり、路駐してあるバイクを掠め盗るような人間ではない。
有り余る腕力と知力を持って権力と財力を成し、囚人でありながら地上最自由とまで
呼ばれるに到った人物が、どうしてそのような卑小な行いをしようものか。
彼ならば、喉の渇きに水を欲すならば最高級のワインを取り寄せ、
人を追う為に足を欲すならばヘリコプターを呼びつけるだろう。
たしかにどちらも横暴とくくれる行為には違いが無いが、差は一目瞭然である。
よって、今、バキの目の前で笑っているビスケット・オリバを、バキは正常と
とらえることはできなかった。
「…アンタデモ。」
続いて口を開くジャック。彼もまたオリバの異常に気が付いたのだろう。
しかし、オリバの異常に等しく気が付いている筈の兄弟の表情は、全く違っていた。
「人並ミニ動揺スルノダナ。」
ジャックは目を見開き、信じられない、といった感じの表情でオリバを見ている。
普段の彼ならまず見せないであろう表情が、この異常を際立たせている。一方。
「兄さん、違う、それは違う。」
バキは半眼で顔をしかめながらオリバを見ている。更には異常な汗。彼が、現状の自分で
理解、打倒しづらい驚きに瀕した際に見せる表情。
ただ、範馬勇次郎に向けられる筈の表情。そして、それもまた、この異常を際立たせていた。
359作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 23:10:19 ID:fPOSEQgjO
不意に、カシャ、と金属が擦れる音がした。
「動揺?ふふ、動揺だと?動揺などするものか。たかが地震を起こしたくらいで。
相手は範馬勇次郎だ。地上最強の生物だ。例えビームを出して山火事を消そうが
雲のマシンで空を飛ぼうが今更だろう?
ふ、ただ、ふふは、私は、はははは。」
渇いた笑いと共にクシャクシャと、音を立てながらオリバの手の中で金属製の灰皿が
たたまれていく。
「ドウイウコトダ?」
「ああ、臓物が煮えくり返って穴という穴から蒸発して出て行きそうな気分だな。
最高だ、全く清々しい気分だッ!ははは、地獄へ堕ちろ糞野郎ッッ!!」
「…気に入って買った新しい別荘壊されて頭に血が昇って仕方が無いが、
かといって、あんな親父をどうこうするわけにもいかず、ただ腹に淀みがたまるだけ、
ってとこ、かな…。」
「…スマート、デハナイナ。」
「ガッデムッッ!!」
オリバの手から離れたピンポン玉程度になった灰皿が、弾丸と見紛わんばかりの速度を
もって、喫茶店の壁を貫いた。
一方そのころ。
「本部さん、と。はい、確かにここは貴方の所有地のようですね。」
「一体これはッ!?何で儂の道場が、儂の家がッッ!!」
「え〜と、目撃者の話によると…。一応放火でしょうかね、いや、事故になるのでしょうか?」
「そんな事はどうでもいいッッ!!なんで、なんで儂の道場がッッ!?!?」
「えーと、なんでも空からバイクが降ってきたとかで…。
オイルか何かに引火したのでしょうね。見ての通りの消し炭ですが、
まあ不幸中の幸い、息子さんも貴方も出かけていて無事だったようですね。
いや、良かった良かった。」
本部道場、本日の天気は晴れ時々バイク。
なお、本部以蔵の心の降水確率は100%の模様。
360鬼の霍乱 第7話:2005/06/16(木) 23:17:54 ID:fPOSEQgjO
タイトル入れ忘れました。鬼の霍乱 第7話です。
いろいろあって暫く書けませんでした。投げ出しではないのであしからず。
361作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 23:51:34 ID:LQ9i76Qp0
ありゃ、お久しぶりの3連発ですか。
サマサさん、NBさん、鬼のかく乱さんお疲れ様です。
しばらく空いていたので少し心配していたのですが一安心。

皆さん、夏に向けて本調子になってきたかな?
あと俺はNB氏のコメント好きだけどね。
少し位ハジけてくれた方が後書きも面白い。原作リスペクトしてくれてればOK。
362作者の都合により名無しです:2005/06/17(金) 00:28:45 ID:tpYBl6cj0
>サマサさん
なんとなく、バキになってからお人よしになった勇次郎って感じですね。
ただの笑顔、郭との対戦が終わったあと見せた笑顔を想像しました。
勇次郎が相手の名に興味を持つのは相手が強者の証ですね、ある意味。

>NBさん
NBさんはアクション書くのすごくうまいけど、もしかしたらご本人は
こういった感じの場面書く方がお好きかも知れませんね。いい感じだ。
サヤとトレインが仲良く触れ合うほど、後の別れが際立ちますねえ。

>鬼の霍乱氏
法の外にいるはずのオリバが、ただのヤンキー中学生みたいですね。
俺の地元にはこんな奴よくいます。しかしみんな壊れているなあw
本部は本当にどの作品見てもこういう扱いですね。定番って奴ですか。


>>361
俺も職人はどちらかというと普通じゃない感じの人の方が好き。
363作者の都合により名無しです:2005/06/17(金) 07:28:10 ID:fG/IJGe70
サマサさん・NBさん・鬼の霍乱さんお久しぶりです。
皆さん忙しいそうだから週1なんて無理はいえないけど、
月2くらい書いてくれると嬉しいな。

・戯言遣い
物語前半の山場といったところが終わったのかな?>VS勇次郎
あの勇次郎を前に言葉責めで切り抜けようとするのがすごい。
西尾維新って読んだ事ないけど、一度目を通してみようかな。

・ブラックキャット
原作では断片的にしか描かれていなかったサヤとトレインとの
どたばた劇ですね。サヤの死ぬシーンも書かれるのかな?
描写力の高いNB氏が死のシーンをどう書くのか楽しみです。

・鬼の霍乱
なるほど、タイトル通りにみんなかく乱をしっ放しだ。
オリバはもともと愛嬌あるからギャグシーンで書かれても
なんとなく可愛いな。ま、本部にはかなわないけどw
364作者の都合により名無しです:2005/06/17(金) 08:39:46 ID:xeCv2H/90
あ、サイトなおってる。バレ氏乙。
365サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/17(金) 10:04:57 ID:CkCMNfYN0
最終回なのかまだ続くのかよく分からない終わり方かもしれなかったので、一応言っておきますと、
あと1〜2回で終わる予定です。
それでは。
366作者の都合により名無しです:2005/06/17(金) 17:21:17 ID:KOVILBji0
さすがバレ氏、仕事速いな。それにしてもサマサさんもうすぐ完結か。寂しい。

>戯言使いとオーがの賭け事
タイトル通りの展開になったな。原作とどう違うのかはわからないけど
俺は原作知らない分オリジナルみたいな感じで楽しめたからいいや。
ちょっとオーガがいいやつ過ぎる気もしたが

>AnotherAttraction BC
とりあえず、後書きから察するに絶好調状態に戻ってきた気がする>NB氏
原作殆ど読んでいないが、恋人未満の姉弟っぽい雰囲気が伝わってくるな
そろそろガンアクションが読みたいところだけど

>鬼の霍乱
オリバや本部がいい味出してて、勇次郎やバキの影が薄いなw
個人的にこの作品で一番まじめな感じのジャックが好きだ。(みんなトボけてるが)
原作でも雑魚キャラ屠ったし、オリバあたりとぶつかると面白いかも
367ふら〜り:2005/06/18(土) 10:37:25 ID:alz9feQ40
バレさん、毎度おつ華麗様です。作者読者のどちらにとっても気持ちの支えとなる
まとめサイト、ありがたく思っております。

>>サマサさん
ほおおぉぉう。これはまた、見事也「策戦」。確かにスジは通ってますな一応。勇次郎が
少々度量広すぎな気もしますが(←人のこたぁ言えないですが)、でもカッコいいから
許す。電話をわざわざかけてあげたのも、去り際の笑顔も、楽しくカッコいいのでOK!

>>NBさん
いやはははは。トレインには悪いけど>>354は横に置いといて……非常ぉに珍しく、普通に
男女のラブコメで萌えましたよ。いやほんとに。無邪気で世話焼きで不器用で、強くて
優しくて主人公を子ども扱いしつつ、笑顔へと導く。実に良いお姉さんです、サヤ姐はっ。

>>霍乱さん
お久しぶりですっ。灰皿を潰すでも割るでもなく、「たたむ」ところがオリバならでは。
さらりと何気なく悲惨な巻き添え食らってるところが(バキスレSSの)本部ならでは。
今回は出てませんが、霍乱さんならではの、あの変貌勇次郎をまた楽しみに待ってますぞ。
368メディカルマシーン:2005/06/18(土) 15:03:18 ID:+CqkeLCE0
 惑星フリーザ。
 強大な兵力を背景に、強引な惑星売買を生業とする惑星群。今もなお繁栄を続け、癌細
胞の如く銀河中に勢力を轟かせている。
 彼らは多くの戦争を生み、多くの財を生み、多くの悲劇を生み出した。
 絶えず進化を遂げるフリーザ軍。いつしか、宇宙には彼らに抵抗しようとする者すらな
くなっていた……。

 惑星フリーザNo.19──ここは支部である。
 護衛を引き連れた宇宙船が、衝撃を吸収するマット上に着陸する。戦闘服に身を包んだ
兵士たちが出迎える中、鋼鉄製の扉がゆっくりと開け放たれる。
「おはようございます、博士。ついに完成なされたのですね」
 マントを羽織った上級兵士に博士と呼ばれた老人──満足感に満ち溢れた表情で、背後
に潜む装置を見やる。
「うむ。新型メディカルマシーンは完成した。とりあえず、ここで一ヶ月ほど試運転をさ
せてもらうが……よろしいかな?」
「もちろんです。ではさっそく、先ほど負傷した兵がいるので試してみましょう」

 あらゆる栄養素がブレンドされ、細胞増殖を促進させる効果を持つ液体──によって満
たされたカプセルに、大小様々な傷を持った兵士が入れられる。
「……ではスイッチを」
 博士がスイッチを押すと、マシーンは作動した。液が泡立ち、酸素吸入器を取り付けら
れた兵の治療が開始される。
「あまり旧型と変化はないようですが」
「ふっふっふ。このマシーンの真価は、彼が一番良く分かっていることじゃろう」
 老博士はマシーンの中で眠っている張本人を指差した。
369メディカルマシーン:2005/06/18(土) 15:04:07 ID:+CqkeLCE0
 やがて半刻ほど経過すると、マシーンは自動的に停止した。治療を終えた合図だ。
 たしかに治療速度は向上している。が、革新的というほどでもない。周囲を囲んでいた
ギャラリーは、誰もが博士に疑惑の念を浮かべた。
「さあ、出てきなされ」
 全快した戦士がカプセルから出てくる──第一声。
「気持ちいい! これ本当に最高だよッ!」
 恍惚に溺れた兵は、博士に握手を求めた。もちろん、博士も応じた。
「ありがとうッ! ありがとうッ! ありがとうッ!」
「喜んでもらえて、わしも嬉しい」
 治療液やマシーンの性能は、いくら改良しても限界がある。そこで博士は着眼点を変え、
マシーンがもたらす快感を増大させる方面に開発を進めたのである。

 新型メディカルマシーンは好評だった。
 以前はマシーンに入るのを面倒臭がった兵士たちも多かったのだが、新型になってから
は多少の怪我でもきちんと治すようになった。
 一ヶ月にわたる試運転期間も無事に終え、マシーンは量産されて各地に配備されること
になった。博士が歓喜したのはいうまでもない。

 ──だが、歯車は狂い始める。

 治療者が以前とは比較にならないほどに増加した。マシーンに立ち並ぶ長蛇の列は、今
や日常的な光景となっている。
 自傷する者も続出し、わざと任務に失敗しようとする者まで現れた。
 こんな病理現象をフリーザの耳には入れるまいと、幹部連中も制限事項を作るなどした
が、全くの無意味。ついにフリーザは、この失態を知ってしまう。
370メディカルマシーン:2005/06/18(土) 15:04:39 ID:+CqkeLCE0
 当然ながら、フリーザは激怒した。
 手頃な支部に立ち寄ると、メディカルマシーンに群がる餓鬼どもに呆れ返った。だが、
中毒者(ジャンキー)はフリーザが来ても気にも留めない。
「早くしろよ、こちとら右腕が斬り落とされてんだ!」
「ばっきゃろう、俺なんかエネルギー波で腹が貫かれてるぜ」
「甘いな二人とも。俺は下半身が消し飛んじまった」
 容態を危惧しながらも、彼らは笑っていた。負傷とは、現在では快感を味わうための通
行手形。たとえ死に直面していても、笑わぬはずがない。
「いい加減になさい! 役に立たぬ者は、私が片っ端から殺します!」
 地獄よりも恐ろしいフリーザの一喝。が、効果はなかった。
 しかも、無謀にも部下の一人がフリーザに反論する始末。
「あなたはまず苦戦なんてしないから、分からないでしょうね。このマシーンが持つ魅力
を──」
 顔をしかめると、フリーザは即座に彼の心臓を抉り取った。
「やった……これでマシーンに入れる……」
 呟きながら、哀れな部下はあの世へと旅立った。誇らしげな死に顔で──。

 よほど気に食わなかったのだろう。フリーザは次々に餓鬼を殺していく。彼らは恐怖な
ど感じぬまま、マシーンが与える快感を想像しつつ、笑みを浮かべて死んでいった。
「どいつもこいつも……あなたの責任は重いですよ!」
「ヒィッ……申し訳ありません!」
 この支部を治める幹部を厳しく叱責するフリーザ。幹部は震えながら土下座するだけで
ある。
 ひとまず整理がついたのか、今度はフリーザがメディカルマシーンをまじまじと眺める。
「……どうかしましたか?」
「このふざけたマシーンに、少し入ってみようと思います。どうにも、死んだ彼らの態度
が気に入らなかったのでね……」
「し、しかし……」
「黙りなさい!」
 幹部は光線によって焼き払われ──自身に軽い傷を付けると、フリーザはマシーンへと
進み出た。
371メディカルマシーン:2005/06/18(土) 15:05:01 ID:+CqkeLCE0
 惑星フリーザはまもなく機能を停止した。
 頂点に立つフリーザはメディカルマシーンに入り浸る日々。近づく部下があれば、すぐ
さま消されてしまう。父でさえ例外ではなかった。いつしか、誰も近寄らなくなった。
 リーダー不在の軍は分裂を起こし、統制が取れぬまま散り散りとなり、静かに消滅した。
 責任を厳しく追及された博士は精神を病み、自ら研究所に爆薬を仕掛けて犠牲となった。
 大量生産され、宇宙中に散らばった新型メディカルマシーンは、今日もどこかで治療と
快感を与えていることだろう。

 ──こうして、メディカルマシーンは宇宙に少しだけ健康を取り戻させた。 

                                 お わ り
372サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/06/18(土) 15:20:13 ID:+CqkeLCE0
元ネタは「ヘソリンガス」です。
オチは数種考えましたが、こうなりました。

バレさん、投下する者としていつもお世話になってます。
これからもよろしくお願いします。
373作者の都合により名無しです:2005/06/18(土) 15:34:50 ID:4SjNrHZU0
「ヘソリンガス」という元ネタは知らないけど、一読して
江川なんとか(東京大学物語書いた人)のゴールデンボーイや
狂四郎(ターちゃん書いてた人)を思い出した。

人は快感には溺れ易いですね。宇宙人だけど。
今回の短編も発想豊かで楽しめました。また長編ともどもお願いします。


うんこネタでは無かった事に安心している俺と、
心のどこかで残念がっている俺ガイルw
374作者の都合により名無しです:2005/06/18(土) 15:48:10 ID:4SjNrHZU0
今検索で調べたらドラえもんの道具なんだな、ヘソリンガスって。
あんな子供の漫画でヤク中の物語を書くとは、故・藤子F先生はやはり天才か。
375作者の都合により名無しです:2005/06/18(土) 16:42:10 ID:MidWFcOf0
うん、ドラえもんで読んだことあるきがする。>ヘンリンガスの回
しかしうまいなサナダムシさんは。
オチはちょっとありがちだけど、兵士の命より快感をとる描写とかうまい。
うんこねたはお好きな人にはストライクなんだろうな。俺はちょっときつい。
376作者の都合により名無しです:2005/06/18(土) 21:26:45 ID:F0KjQGlN0
俺は今回の作品は少し物足りなかったが。
いや、相変わらず上手いとは思ったけど。
「ジャブ」が元ネタが存在しないような発想のネタだっただけに。
面白かったけどね。どうしてもサナダムシさんには点が辛くなる。
ま、それだけサナダムシさんの技量を買ってるんですが。
生意気言ってすみません。うんこねたも期待して待ってます。
377作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 16:17:48 ID:ZefPIEGx0
あれ?ブラックキングさん来てないね。
まだ体の調子悪いのかな?大丈夫かな?
378作者の都合により名無しです:2005/06/20(月) 17:41:15 ID:w8jtWev60
一気に3本くらい来るかと思えばしばらく来ないね。
うみにんさんやザクさん、ミドリさんもご無沙汰だし
379作者の都合により名無しです:2005/06/21(火) 02:33:02 ID:TAJtAsX70
そのうちにきっとみんな来るさ。そう信じてる
380作者の都合により名無しです:2005/06/21(火) 12:33:09 ID:I30QwJ6V0
俺もだ。支援あげ
381作者の都合により名無しです:2005/06/21(火) 22:24:41 ID:L68CczNm0
3日ほど作品来ないだけで、大袈裟すぎだよ
382眩く儚い花火のように:2005/06/22(水) 00:21:02 ID:EYGWZN2g0
「うわーーん、待ってよ、みんな〜」
情けない声を上げたのは、眼鏡をかけた間が抜けているがどことなく憎めない顔の少年だった。
両手に一杯の花火を持って、前を行く友人たちの後を必死についていく。
「遅いぞのび太!さっさとしねえと、置いてくぞ!」
乱暴に答えたのは大柄な、いかにもガキ大将といった趣の少年。彼の手にも花火がたくさん握られている。
この二人の他にあと三人いたが、やはり全員花火を持って歩いている。
―――要はいつもの五人組。ドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫、そして紅一点のしずかであった。
神族と魔族と人間が仲良く暮らすあの異世界から帰ってきて、はや数週間。そろそろ残りの宿題も気になる
夏休み中盤のある夜。
河原辺りで子供だけで花火でもやろうかと集まった次第である。
(ちなみに花火を提供したのはスネ夫である。「パパの友達の親戚の従兄弟の友人が花火を作ってる会社の
何とか」らしかったが、そこまでいくと全然他人じゃねーか、という突っ込みは誰もしなかった)
まあとにかく、楽しい事なら大歓迎の彼らである。ジャイアンにしても声を荒げてはいるが、本気で怒ってる
訳ではない。その証拠に、その顔は笑っている。
河原に到着し、バケツに水を汲み、ロウソクを立てたところでジャイアンが仕切る。
「よし、みんな、準備はいいかあ!?」
「「「「おーーーっ!」」」」
元気な声を上げて、花火に火を点ける。
バチバチと音を立てて、キラキラと光が走る。
数々の冒険を戦い抜いた猛者達とはいえ、まだまだ子供には違いない。すっかりはしゃいで楽しんでいる。
「おらおらあ!二挺拳銃だあ〜〜〜っ!」
「うわああーーー!なんでぼくを追いかけんのさ!?」
ジャイアンなどはすっかりふざけて、両手に花火を持ってスネ夫を追いまわしたりしている。
そんな様子に苦笑しつつも楽しんでいたドラえもん、そしてしずかだったが、ふとのび太の様子がおかしいのに気付いた。
さっきまで一緒にはしゃいでいたのに、どことなく元気がない。
383眩く儚い花火のように:2005/06/22(水) 00:21:49 ID:EYGWZN2g0
「どうしたの、のび太くん?沈んじゃってさ」
「あ、ドラえもん、しずかちゃんも・・・。うん、ちょっとね・・・」
言葉を濁すのび太だったが、やがてポツリと語りだした。
「ほら、今回もそうだったけど、ぼくらっていつもどこかおかしな世界に迷い込んでるじゃない。それで、そこで
色んな人に出会ってさ・・・」
「そうね、ホントにたくさんの人がいたわ」
「それがどうか?」
「うん。ホントに色んな人がいて・・・仲良くなれた人たちもいる。その人たちを思い出すと、とても暖かい気分に
なれるんだ」
そこでいったん言葉を切って、花火に火を点ける。
「けど・・・どれだけ会いたくなっても、もう会えないだろう人たちも、たくさんいる。そう思うと・・・つい、ね・・・」
その出会いは、今思えば、まるで花火のように眩く、儚い。
どれだけ再会を望んでも、きっと叶わないからこそ、彼ら―――あるいは彼女らへの想いは募る。
花火の向こうに、誰かの顔が見える気がした。
それはあるいは、開拓星で逞しく生きるあの少年か。あるいは、魔法世界で出会った、凛々しくも可憐な少女か。
あるいは、機械の星の天使となったあの少女か。あるいは、動物たちの楽園の星で出会ったあの少年か。
あるいは、大海原を行く大海賊たちの姿か。あるいは、新天地を求め銀河を彷徨うあの少年か。
あるいは、自分に良く似た太陽の国の王子か。あるいは、勇気と言う名の翼で空に羽ばたいた鳥人の少年か。
あるいは、自らを犠牲にして世界を救った風の子か。あるいは―――
あのお人好しの青年と、元気な少女と、どこか妖精めいた、儚げなあの少女か。
のび太の目から、涙が一粒零れ落ちた。
「のび太さん・・・」
そんなのび太に、しずかは声をかける。
384眩く儚い花火のように:2005/06/22(水) 00:22:30 ID:EYGWZN2g0
「あたしだったら―――そんな風に、泣いてほしくないわ」
「え・・・?」
はっとしたように顔を上げるのび太に、しずかは言う。
「あたしだったら、誰かに思い出してもらう時に、涙を流されるような思い出にはなりたくないわ。
できたら―――笑って思い出してもらえる思い出になりたいわ」
「・・・・・・しずかちゃん」
「きっと―――あたしたちが出会った人たちだって、同じよ。ね?」
「うん。ぼくもそう思うよ、のび太くん」
ドラえもんもしずかに同意する。
「・・・うん、そうだね」
のび太は涙を拭って、笑顔を見せる。そして、思い出す。彼らが―――彼女らが―――最後に見せた顔を。
みんな―――笑顔だったじゃないか。
みんな―――笑ってくれたじゃないか。
その笑顔に―――きっと、ぼくは救われてきた。報われてきた。
「みんなみんな―――素敵な思い出だもんね」
眩くて、儚くて―――だからこそ、素晴らしいんだ。
花火の輝きは一瞬。夜空の星のように、いつまでも輝くことはできない。
だからこそ、その一瞬は永遠に心に刻まれる。
「・・・そうだよね、みんな・・・」
のび太は心に刻まれた彼らに向けて、涙は見せずに微笑んだ。
385サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/22(水) 00:26:18 ID:EYGWZN2g0
投下完了。
いーちゃんの歪んだ性格を書いてると気分が滅入るので(笑)気分転換に書いた短編です。
神界の後日談的な話。
途中でのび太が思い出してる人たちに、このキャラが入ってねーぞ!という声があるかもしれませんが、
単に長々書くとアレだったので、自分が特に好きなキャラと、神界の連中だけ思い出させました。
しかしやまなしオチなし意味なしの見本のような作品になっちまった・・・。
386作者の都合により名無しです:2005/06/22(水) 00:34:11 ID:8xc8lBAB0
おお、サマサさんお疲れです。
私が気に入ってた神界のアフターストーリーですか。嬉しいです
いつもの仲間との日常の中に、どこか寂しさの吹き抜ける様子が
切なくていいですね。

やまなしオチなしというより、淡々とした感じの作品ですね。
意味なしなんてとんでもない!

でも個人的には、のび太たちよりプリムラや稟の方が気にかかるなあ
387作者の都合により名無しです:2005/06/22(水) 08:07:13 ID:JyYs2fBe0

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            いままで2chのご利用  感謝します    


388作者の都合により名無しです:2005/06/22(水) 14:29:05 ID:IugbJxh50
サマサ氏乙です。
のび太としずかの会話がいいですね。未来の夫婦って感じで。
回想、神界だけでなくて映画版ドラのキャラも思い出してるんですね。
いい感じです。でも、俺も神界でのゲストキャラのあれからの方が気に掛かるw
389ふら〜り:2005/06/22(水) 21:53:54 ID:wDN7siEj0
シビアにブラックなのと、ほわほわしてふんわりしたのと、両極端な二作が並んで。
どちらもそれぞれ「ニヤリ」と「にっこり」できて。
いやはや、さすがです。

>>サナダムシさん
ヘソリン。あれは確かにヤバかったですな。ヤクでハイになった女の子が……でした実際。
正に麻薬。一国を滅ぼしかねないもの。でもそれがフリーザ軍だった為に、宇宙の平和に
貢献。実はフリーザに滅ぼされた星の生き残りが、正体隠して博士に入れ知恵してたとか。

>>サマサさん
神界以外までも含めての、大〜きな振り返り型エピローグ。しんみりしっとりな雰囲気
ですが、内容はかなり壮大ですね。ほのぼのしつつ溜息でました。神界の皆、どうしてます
かねえ……ちなみに特撮ヲタとしては、「星空のメッセージ」という歌がぴったりきます。
390作者の都合により名無しです:2005/06/23(木) 00:12:21 ID:LG2y+bHg0
宇宙刑事ギャバンかw>星空のメッセージ

サマサ氏はほのぼのした感じというか切ない感じというか静かな描写がうまいね。
上でも何人か書いてたけど、プリムラとかの後日談を次回は希望。
391ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :2005/06/23(木) 06:44:09 ID:Dsvtawz30
申し訳ありません。
今週末にはなんとかします。
ちょっとあせってきた。
392作者の都合により名無しです:2005/06/23(木) 09:50:29 ID:UqrirsBA0
いやいや、焦らずにw
急かすような真似してすみません。
生活優先、空いた時間でのんびり完結目指して下さい。

楽しみにしてますが、プレッシャーになるようなら
クレクレ厨は控えますw
393魔女 grassy:2005/06/23(木) 13:02:43 ID:x9WrP94w0
>>322から続き
394魔女 grassy:2005/06/23(木) 13:03:42 ID:x9WrP94w0

――某出版社――

「おいどういうことだ」
「ロベルト、ロベルトはどこだ!?」
「なぜあんな記事を通した」
「きゃあ」

『異変の裏に検邪聖省の影』――この日、センセーショナルな見出しが紙面に躍った。
 それを書いた張本人・ロベルト――記事を載せることを許可する権限を持つ――は、喫煙室
で首を吊っていた。

 女子社員の叫びを聞き、喫煙室に皆集まる。
「編集長……!」
 編集長は頭を抱えた。
「ロベルト……どうなってんだ、一体」
「抗議の電話が鳴り止みません」
「脅迫の手紙がこんなに……」
「…ジョージは?」
 今日、ジョージは出社していなかった。
395魔女 grassy:2005/06/23(木) 13:04:08 ID:x9WrP94w0

 街に異常発生する人型の雑草は、その数をどんどん増やしていた。
 成長力もまた異常で、一日で大人二人分の身長くらいに伸びた。そしてそれは街のあらゆる建造物
に絡みつき、強力な力で破壊した。
 街は崩壊の一途を辿っていた。
 住民の避難が完了したその街で、狂ったように雑草をチェーンソーで刈り続けている男が居た。
「お前たちは無為だ! 無味だ! 無能だ! 無謀、無才、お前たちには何もありはしない」
 その男は、若手の記者・ジョージであった。
「何の意味も無い……いや寧ろお前たちは障害でしかない……私にとって」
 ジョージではない――彼を知る者ならば、みなそう思うであろう。
 そんなときだった。
「おい貴様! 一体何をしているか」
 巡回に来ていた検邪聖省の巡回員二人が、その光景を見て駆け寄ってくる。
「検邪聖省か」
「気でも違ったのか? 貴様のしている事は神への冒涜である」
「お前達の出番は無い」
 ジョージの声は、女の声であった。
「ぎゃあ」
 ジョージのチェーンソーが、巡回員の腹を裂く。大量の血液と内臓が滴り落ちる。
「貴様」
 残ったほうが叫ぶ。
「私が同化を果たすには、お前達もこの草どもも邪魔なのよ」
 そう言った後、もう一人の首を刎ねた。
 
 それから数時間後、全ての雑草を刈り終えたジョージはその手に抱えるチェーンソーで自害した。

396魔女 grassy:2005/06/23(木) 13:05:05 ID:x9WrP94w0
 街の地下。
「リズムを刻んで――その音と震動で、繋がる世界が確かにある」
 目の前には、大元の根。
 その中央には、ミスティ。
 ミスティは、サーラの言葉に反応しようとしなかった。
「ミスティ、応えて」
 少女の目には、ミスティが何か別の生物になってしまったかのように映っていた。
「その根っこがそんなにいいの? それが原因で街がおかしくなったんでしょう。なんでそれと一緒に
なっているの?」
「濃縮された命があるからよ」
 唐突にミスティが口を開いた。
「御免ね、今、意識を上のほうに向けていたから」
「ミスティ!」
「サーラ。私はね、生きていたくないの。私は頭がおかしいのよ」
「そんな。おかしくなんてない」
「でもね。生きていたくないのに、不思議と死にたくもないの。だから――」
「それと、一緒になるの? そうすれば、何も考えずに生きられるから」
「賢い子。そう、もうすぐ私はこの膨大な生命を構成する一要素になるの。そうすれば永続的に生きら
れるし、自分から何をすることもない。もう、狂った自我に苛まれることもなくなるの」
「ひとはみんなどこかおかしいよ。ミスティだけじゃないよ」
「私は自分以外はどうでもいいの。私以外皆消えたって構わないとさえ本気で思っている。それでも、
それでも私を好きでいてくれるサーラが私も大好きよ」
「それなら……」
「…御免ね。もう、嫌になってしまったの。何も考えたくはない。きたないものに蝕まれていくのはもう嫌。
これ以上自分以外の存在を嫌悪するのももう嫌。そして――唯一存在を許せるあなたまで嫌いになって
しまうであろう私が、何よりも、嫌――」
 ミスティの目から零れ落ちたそれは、彼女の中で溜まり溜まった鬱屈したものの具現化された姿だった。
「ミスティ」
 ミスティは、何も応えようとしない。
「ミスティ」
 何も応えようとしない。
「ミスティ!」
397魔女 grassy:2005/06/23(木) 13:05:30 ID:x9WrP94w0

「すいません」
 ホテルのロビー。少女が呼び鈴を鳴らす。フロントの奥からどたどたと係員が出てくる。
「はいはい、チェックアウト? お譲ちゃん一人でかい? 帳簿には、ミスティって名前で予約してあるんだけど」
「いいの。ミスティは急用が出来たから、私一人で帰れって」
「あらあら、そうなのかい。ヒドイ人ねえ」
 係員の言葉に、サーラは首を横に振る。
「あんなに優しい人はいないわ」
 そう言って、サーラはホテルを出た。

 風が強い。
「わ」
 サーラはスカートを押さえた。
「一人で……私はこれから一人でこの風を身に受けたり、太陽の光を浴びたりしなくちゃならないんだ。もう、
ミスティは、いない」
 涙はもう十分に流した。
 前を向くだけだ。
 じゃないと、ミスティが悲しむ。
 ぐっと、サーラは前を向き、歩き出した。
 リズムを刻み。
 地面に自らのリズムを刻みながら。
 
398ゲロ ◆yU2EA54AkY :2005/06/23(木) 13:32:22 ID:x9WrP94w0
『grassy』終了です。原作っぽいようで全然原作っぽくない作品に仕上がりました。天才の世界を消化するのは
キツイ物があります。蟲師はまだ原作っぽく、でも別の物に出来たと思うんですが……。
正直、魔女に関してはあまり原作に近づけようと思わないほうがいいような気がしてきました。
もう二話・三話の構想は大体出来ているのですが、これらも全然原作っぽくないです。ただ魔女が出てくるだけです。
まあ、それで十分なような気もしますが。

ちなみに次回は露骨な性描写がかなり多い……というか、それが中核であり、話を形成する上で必要不可欠という
感じなので、苦手な方若しくは18歳未満の方(笑)は、読まないほうがいいかもしれないです。

少年漫画板で書いていいのだろうか。

>>324
変えてます。蟲師と同じ文体(蟲師も変わりまくりですけど)では無理だと判断しました。
五十嵐原作のあの感じを出すには、あまりごてごてとした地の文は邪魔です。
ちなみに、今回出てきたキャラは例によって俺の創作です。原作のキャラはいません。
検邪聖省だけですね、原作からお借りしたのは。人じゃないし。

>>325
どうも。次回は16世紀辺りを舞台にしたお話かなあ、とイメージしております。

>>332
バトルにはなりようがないですねw
ところで、プロローグとのことですが、俺の短編は基本的に、
一回:起   二回:承(転)   三回(転)結
な感じなんで、二回目まではほとんどプロローグですねw

>>333
彼女は自分の大きさに耐え切れず潰れかけていた、という感じで考えてました。
救われたかったんでしょう。身勝手っちゃ身勝手ですが。

では次回。
ああそういえば。蟲師アニメ化おめでとう御座いますとなんとなく。始まる時期になったら一本書こうかな。
399不完全セルゲーム:2005/06/24(金) 01:43:27 ID:xASuYVZa0
>>329より。
400不完全セルゲーム:2005/06/24(金) 01:44:02 ID:xASuYVZa0
第九話「リストラ宣告」

 ベジータを撃退し、ついにセルは火のクリスタルを手中に収めた。
 尻尾に取り付けられたスポイトを最大限に開くと、セルは豪快にもクリスタルを丸ごと
吸収する。
「うおおっ……! こ、これは……ッ!」
 体内にて、マグマのように沸き上がる熱気。セルを火が祝福してくれている。細胞の隅
々にまで熱が行き渡ると、セルは自身が進化したことを感じ取っていた。
「ぬおおおォォォォ!」
 大絶叫。
 姿形こそ変わりはないが、レベルが上がったのは明らかだ。
 こうして火を味方につけたセル。肩を揺らしながら不気味に笑い、17号たちを振り返
る。
「今まで……ご苦労だったな」
 どうも態度がおかしい。怪訝そうに、17号と18号が尋ねる。
「一体どういう意味だ」
「……あんた、ちょっとおかしくなったんじゃないか?」
 セルは相変わらず、口元を薄気味悪く歪めている。
「もう分かっているだろう。今までご苦労だった。もはや私にボディガードはいらぬ。お
まえたちにはここで消えてもらおう」
 一歩ずつ近寄るセル。17号と18号はすかさず構えを取る。
「くっ……! てめぇ、やはり俺たちを殺すつもりだったか!」
「ふん、やってごらんよ! 私たちだって、簡単にはやられないよ!」
「くっくっく……諦めろ。もっとも勝敗が決まってるとはいえ、抵抗がなくてはつまらん
がな」
 鮮烈にして邪悪な気が開放された。若干の火を帯びた拳を握り締め、セルが突撃する。
401不完全セルゲーム:2005/06/24(金) 01:44:36 ID:xASuYVZa0
 三分後、フライパン山には火を自在に操りながら、高笑いするセルがあった。
「フハハハハッ! どうです17号さん、煙草でも吸いませんか。火ならいくらでもあり
ますぜ」
「いや、俺は吸わないんだ」
 結果は惨敗であった。火を操る能力こそ手に入れたが、セルの実力自体は全く伸びてい
なかったのだ。しかも、火力はライターに毛が生えた程度。これでは人造人間たちはおろ
か、一般人ですら倒せない。
 この一件で、元々乏しかったセルの発言力は皆無となってしまった。もはや、相手にす
らしてもらえない。
「で、次はどうすんの?」
「そうだな、次は風のクリスタル辺りを探ってみるか」
「でも、風が有名な地域なんてあるか?」
 すると、16号がぼそりと発した。
「……ユンザビット高地だ。あそこは常に強風が吹き荒れている」
「へぇ、あんた詳しいじゃない。実はフライパン山も知ってたんじゃないの?」
「あぁ……。だが、ゲームでいきなり正解に近いヒントを出すのも無粋だろう」
 巨体に似合わぬ静かな声で、16号は微笑んだ。これには17号も感心する。
「よく分かってるじゃないか。とてもロボット型とは思えないぞ」
 笑い合う三人。人造らしい冷たさと、人間らしい温かみが混じり合った、実に奇妙な空
間が出来上がっていた。
 一方セルは、火の味を知ろうとして舌を火傷した。
402不完全セルゲーム:2005/06/24(金) 01:45:40 ID:xASuYVZa0
 さて、一行はユンザビット高地へと飛び立つ。
 上空にて、セルは人造人間たちにひたすら媚びを売っていた。普段は彼らの理不尽にて
惨劇に巻き込まれるセルであるが、今回ばかりは自業自得。殺されなかっただけでも幸運
である。
「18号さん。どうです、肩でもお揉みしましょうか」
「ふざけるんじゃないよ」
 当然ながら、碧眼が鋭く光った。だが、セルは諦めない。
「へっへっへ、17号さん。かわいい女の子を紹介しますぜ」
「どうせ、アブラゼミのメスとかだろ」
 当然ながら、図星だった。ところが、セルは退かない。
「16号さん、またしりとりでもしませんか。今度は手加減しますよ」
「ヘルズ……」
「すっ、すいませんでしたァ!」
 当然ながら、セルは平謝りした。しかし、発射を中断させるには至らなかった。

 ユンザビット高地──地球上で初めてナメック星人を受け入れた、強風が吹き荒む荒涼
とした地域。岩と崖だけで造り上げられた、まさに“地球の果て”というキャッチコピー
に相応しい秘境である。
 フライパン山からおよそ数分でここへ降り立ったセルたちは、再びクリスタルを発見す
る。赤々とむやみに派手だった火のクリスタルに比べ、今回は穏やかな深緑色をしている。
「よし、さっさと吸収して来い。ヘルズフラッシュ五連発を喰らいたくなければな」
「わ、分かってるよ……」
 16号に兵器で脅され、セルは慌ててクリスタルに手を触れる。
 すると、やはり新たな守護者が空から降臨した。
 背中に剣を差し、小奇麗なジャケットを着こなす若者。ベジータに劣らず手強そうな青
年だ。
「父さんを倒したらしいな、人造人間ども。だが、風のクリスタルは絶対に渡さんぞ!」
403サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/06/24(金) 01:50:52 ID:xASuYVZa0
第九話終了。

『メディカルマシーン』に色々と感想を頂きありがとうございます。
うんこSSもライトなやつをいずれ書きたいですね。
もっとも、『紙を求めて』はかなりライトなつもりだったんですが……。
404作者の都合により名無しです:2005/06/24(金) 12:01:23 ID:6F90zsNn0
>魔女
まあ、原作ぜんぜん知らないからOKですw
でもミスティの存在証明がテーマのひとつになるのかな?
「自分以外がどうでもいい」のがどう変わっていくのか、
もしくは変わらないのか。この文体も見易くていいですよ。

>不完全セルゲーム
最初にタイトル見たとき、17号たちがリストラ宣言すると
思ってたら、逆でしたか。結果は予想通りでしたが。
しかし一般人以下の火力しかないのか。こんなん集めても・・w
クリスタルのガーディアン、一つにサイヤ人一人ずつかな?


>『紙を求めて』はかなりライトなつもりだったんですが……。
マジかw
405作者の都合により名無しです:2005/06/24(金) 13:37:17 ID:PTluK8bv0
>ゲロ氏
なるほど、次回がネタの総結集なのですか。結の部分ということで。
正直魔女という話は読んでないけど、いきなり初回から話暗いねw
いなくなったミスティがどう復活するか楽しみです。
>サナダムシ氏
セル迫害されてるなあ。思い上がりの源の炎も100円ライターかw
ラスボスは悟空かな、やっぱり?セルが間全体にならない限り、戦うのは
無理そうだ。後、短編は楽しみだけどうんこはやめて下さい。

406作者の都合により名無しです:2005/06/24(金) 22:17:25 ID:cG5Pa5Lv0
ゲロさん、サナダムシさん(どんなコテ名だよ2人ともw)お疲れ様です。

・魔女
ミスティとは自傷癖or自己嫌悪癖のあるキャラでしょうか?
サーラとの会話が痛ましかったですね。今度一度原作読んで見ます。

・不完全セルゲーム
セルは自分がわかってないですね。その点、シコルよりも下かも。
しかしうんこネタは怖いものみたさで読みたいような読みたくないような。
407作者の都合により名無しです:2005/06/25(土) 23:03:22 ID:6NTekQDw0
なかなかこないねえ、他の方。あげとくよ
408作者の都合により名無しです:2005/06/26(日) 07:50:45 ID:bz+SCMdLO
うんこおおお
うんちいいい
うんこ
うんち
うんこうんこ
うんちうんち
うんこうんこうんこ
うんちうんちうんち

ぶりぶりー
409ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :2005/06/26(日) 23:15:53 ID:euznCBOr0
明日大事が起こらない限り必ずあげます。
410ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :2005/06/26(日) 23:22:52 ID:euznCBOr0
身内にかかわることなんで、詳細は言えないんですが、もし明日更新がなかったら、2,3日は更新ないと思ってください。
ほんとすいません。
411作者の都合により名無しです:2005/06/27(月) 01:19:20 ID:UfQZTErf0
数日前にあった麻雀SSは続きないのかな?
「むこうぶち」好きなんだけどなー。

ブラックキングさん、家族は大事にしてくださいね。
412作者の都合により名無しです:2005/06/27(月) 01:24:44 ID:bjdI8E/50
「御無礼」は確かに俺の周りでも流行った。麻雀好きだからあの作品期待してたんだが

ブラキンさん、ひょっとして身内に何かあったのか?
だったら当然そっち優先で。SSなんて二の次でいいですよ。
無論、期待はしてるけど、家族が一番大事。
413戯言遣いとオーガの賭け事:2005/06/27(月) 14:06:41 ID:xQF/IT290
>>346から

その後鎬先生によって治療が施されて、ぼくは最早指定席となった病院のベッドにいた。
鎬先生の腕は一流の水準をも遥かに上回るものだったらしく、ぼくはあれほどダメージを負いながらも後遺症は
全く残らなかった。
ただし、鎬先生には一生分怒られまくったが。
「しかし・・・寝てる間に大変な事になってるな」
ぼくは読んでいた新聞をたたみ、溜息を吐いた。まさかあの二人、京都タワーを完膚無きまでに破壊してしまうとは。
そこまで常識外だとは―――まあ、分かっちゃいたけど。
「まさかこの勝負をセッティングしたぼくに請求が来ないよな?」
呟きながら、崩子ちゃん、萌太くん、そして出夢くんのことを考える。
崩子ちゃんと萌太くんは既に意識を取り戻し、ぼくの病室にまで見舞いにこれるほどに回復していた。
その時崩子ちゃんがかけてくれた暖かい言葉が胸に染みる。
『あなたはなんでそんなアホなことをしてアホなほど怪我してアホな格好で寝転んでるんですか。
あなたはアホですか』
「・・・・・・」
暖かいなあ。暖かくて胸に染みて、そう、うっかり密室で煉炭でも炊いてしまいそうな気分だ。
そして出夢くん。驚いたことに彼はもう退院した―――というか、脱走した。
『もうちょい入院してろって言われたけど、こんな辛気臭いとこ、僕はごめんだね。ま、おにーさんの方も一応カタは付いた
みたいだし、僕はこれで帰るとするよ、ばいばいきーん!』
と、全身に包帯とギプスを巻いたままぼくの病室を訪れ、そのまま姿をくらませた。
彼もまた、常識の枠外で生きる男(身体は少女)だった。
「そして―――哀川潤と、範馬勇次郎―――か」
あの二人が如何なる闘いを行い、如何なる結果に終わったのかは、誰も知らない。けど、それでいい。
このくらいは曖昧なままにしておいたって、バチは当たらないだろう。
後は皆様のご想像にお任せします。
―――と。病室のドアがノックされた。
「どうぞ」
ぼくが返事をすると、その人物は無遠慮に入ってきた。
414戯言遣いとオーガの賭け事:2005/06/27(月) 14:07:23 ID:xQF/IT290
「よお―――邪魔するぜ、欠陥製品」
入ってきたのは少年―――顔面刺青、染めた髪、低い身長、そして何故か全身に巻かれた包帯―――
人間失格、零崎人識。
「久しぶりだね、殺人鬼。きみに会えてすごく気分が悪いよ」
「かはは、奇遇だな。俺も今、やっぱ来なきゃよかったっておもいっくそ後悔してるところだ」
「そいつはご苦労。しかしなんだ、その包帯は。ボノレノフのコスプレか?」
「生憎だがそんな趣味はねえな。まあ、ちょっとな。いきなり怖いおじちゃんに因縁つけられて、ボコられたって
ところだな。そういうてめえだって俺と似たような格好じゃねえかよ」
軽口を叩き合う。零崎は備え付けのパイプイスに勝手に座った。
「しかしなんだ。お互い色々あったみたいじゃねえか。全く、お前みたいな嘘吐き野郎が酷い目に会うのは因果応報だが、
俺のような善良な殺人鬼がこんな大変な目に会うとは、神様ってのは何を見てるのやら、なあ?」
「ホントにね。ぼくのような正直者がこんな目に会って、きみがその程度の目にしか会わないとは、神様が死んだって噂は
本当らしい」
「言ってくれるね。まあいいや。俺ァ今ちょいと長話できる状況じゃねーんだよ。実は筋肉達磨みてーな黒人に追われててな、
今にもこの病室に入ってくるかもしれねーぜ?それに大将とおねーちゃんも待たせてるしな。
つーわけで、一つだけ聞きたいことがある。それだけ聞いたら出て行くぜ」
「そっか。ぼくも今危篤状態でこうして話をするだけで命の蝋燭が短くなっていくのを感じてるんだけど、一つだけきみに
聞きたいよ。それだけ聞いたら出てってくれ」
ぼくらは言う。
「「今回の一件―――お前はどんな感想を持ってる?」」
415戯言遣いとオーガの賭け事:2005/06/27(月) 14:11:39 ID:xQF/IT290
「言わずとも、分かるだろう。ぼくがどう答えるかなんて」
「てめえだって分かってるだろ。俺がどう答えるかなんて」
「分かってるけど、聞きたいんだよ、きみの意見を」
「そうかい。じゃあ答えよう。完膚なきまで、正直に」
今回の一件についての感想なんて、一言しかない。
ぼくらは同時に言った。
「傑作だぜ」
「戯言だね」
416サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/27(月) 14:17:09 ID:xQF/IT290
投下完了、そして最終回でした。

前回書いた短編「眩く儚い花火のように」の感想に、稟たちの後日談も見たい、という
感想が多かったので、短編で一つ書くことにします。

そして今現在、新しいドラ長編を構想中です。
大長編キャラや他作品のキャラ、そしてもしかしたら神界のキャラも・・・?
神界よりは明るくてバトル要素の多い話になりそうです。オリ要素もかなり出そうです。
では、また今度。
417作者の都合により名無しです:2005/06/27(月) 20:09:37 ID:HWsoFJf90
サマサさん、連載終了お疲れ様でした。
勇次郎を謀ってよくぞ生きていられましたね。さすが鎬先生先生の手腕ですな。
萌子の萌えセリフが俺に取ってツボでした。(あなたはアホですか、とか)
原作は知りませんでしたが、半分サマサさんのオリジナルと思って楽しみました。

でも、新ドラ長編に早くも心を移している俺ガイルw
418ふら〜り:2005/06/27(月) 22:21:12 ID:lcefgk6f0
>>ゲロさん
「自分以外はどうでもいい」と本気で思いつつ、というか思ってしまうから「自分以外を
嫌悪するのが嫌」で「狂った自我に苛まれ」……思考の袋小路というか、どうしようもない
っぷりが完璧ですなこれは。華々しい(?)チェンソー自害が霞んでしまう重さでした。

>>サナダムシさん
いやまあ、どーせ勝てっこないとは思いましたけどね。しかしライター代わりにしかなら
ないとは、いつもながらセル哀れ。でも考えてみたら、肉体的にも精神的にも凄くタフなの
かも。これだけ希望と絶望を繰り返して尚、思いあがる元気があるのだから。根性だ、セル。

>>サマサさん
普通は激闘の後のエピローグといえば、その激しかった闘いを振り返りつつ静かに幕を
引くとこなのに、この火花散る丁々発止……何とも彼らにふさわしい。『神界』の優しさ
とは対極なシビアさ、お見事です。次はその『神界』、で新長編。楽しみにしてますっ!

>>ブラックキングさん
律儀ですなぁ。されど焦ることはございませぬ。心も体も環境も、全てゆとりのある時に
こそ、良き物語が綴られるものかと。我らは期待を胸に、静かに待っておりまする。
419作者の都合により名無しです:2005/06/27(月) 23:03:53 ID:BHQpwc+k0
サマサ氏、二本目の長編完結おつ。
前回の神界は叙情感たっぷりのラストでしたが、
今回は割合とあっさりと終わりましたね。
最後の「戯言」の一言が物語り全体のオチですね。


次の新作ドラえもん長編と、神界のもうひとつの
アフターストーリー楽しみにしてます。頑張って下さい。
420作者の都合により名無しです:2005/06/27(月) 23:10:09 ID:Vg9tNIr3O
サマサさんは新しいドラ長編に、他の作品を入れると言いましたよね。
モシカシテ、戯言シリーズですか?
421作者の都合により名無しです:2005/06/27(月) 23:11:20 ID:BHQpwc+k0
今確かめたら戯言使いって長編カテゴリにまだ行ってなかった。
サマサ氏すみません。
でも、感覚としてはもうとっくに長編なんだけどなあ?
422サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/27(月) 23:23:48 ID:xQF/IT290
>>420
戯言のキャラも入れます。やっぱ自分にとってのバイブルなんで。
他作品については基本的に「キャラクターだけ」登場させるつもりです。
世界観まで融合させる技量が残念ながらあんまないので(苦笑)

>>421
序章の「鬼事」含めたら多分長編行きますからね(笑)

それではSS書きのでしゃばりはウザイので退散!
423作者の都合により名無しです:2005/06/27(月) 23:32:41 ID:BHQpwc+k0
サマサ氏フォロー乙。
最後の一行は俺の中で2、3人の職人の名が浮かんだw
でもバイブルにするほどそんなに戯言って面白いのかあ。
今度読んでみます。
424作者の都合により名無しです:2005/06/28(火) 15:02:12 ID:z5Zc2ntC0
サマサ氏、創作意欲に溢れてますね。完結お疲れ様です。
勇次郎と相反するような戯言使いたちのキャラが好きでした。

ドラえもん長編、本当に期待してます!
ドラ長編はこのスレの花形だと思うし、前の神界大活劇も大好きだったので。
プリムラの短編も(正直、稟より彼女の方が気にかかる)期待してます。


ドラ長編といえば、うみにんさんどうしたんだろ。
425作者の都合により名無しです:2005/06/28(火) 22:47:37 ID:FW55y0Vz0
ブラキンさん…
426作者の都合により名無しです:2005/06/29(水) 00:49:37 ID:zZ8XFxZh0
その男は怒っていた。
殺し合いなどという馬鹿げた行為に。
その男は激怒していた。
そんな残酷な舞台に、力無き子供達を巻き込んだことに。
その男、防人衛ことキャプテンブラボーは怒りに燃えながら町を歩く。

守るべくは正義、貫くも正義。
悪を打ち倒し、罪無き者を守る。
例えシルバースキンがなくとも、自分にはこの鍛え抜かれた戦士の肉体がある。
この信念を貫き通すのに何の問題もない。

「いやあぁぁぁぁ!!」
突然、闇を裂くような少女の悲鳴が響き、ブラボーの思考は中断された。
そして、その声を聞いたCブラボーは、迷うことなく悲鳴の聞こえた方向に向かって走り出した。

「いや…! 来ないでッ! 誰か! 真中、助けて!」
少女は叫びながらリュックを振り回す。
小柄な男はそれを全く意に介さず、ゆっくりと少女に近づいてゆく。
「ククク…安心しろ、女はすぐには殺さん。ゆっくりと、少しずつ、少しずつ。
 その肉を剥ぎ、目玉を潰し、歯を全て抜き取り、俺愛用のおもちゃにしてやる」
「ヒッ…!」
その男の地獄の底のような笑みを見た少女は、余りの恐怖に顔を引きつらせる。

ゆっくりと小柄な男が、卑屈に顔を歪ませ少女に迫る。
そして、その手が少女に届こうとした瞬間。

「流星・ブラボー脚!!」

上空から突然声が響いた。
同時に闇夜から流星の如く一人の男が降り注ぐ。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
427作者の都合により名無しです:2005/06/29(水) 00:50:41 ID:zZ8XFxZh0
「そこのヤツ、殺る気がないなら出てきな。あるんならそのままでいいぜ」
闇夜の中、空条承太郎は建物の影に向かって声をかけた。
「僕は人を殺す気なんてないよ」
その声の後、建物の影から、一人の青年が両手を挙げながら現れた。
「OK、手を下げな。俺もこんなゲームに乗るつもりはないからな」
承太郎は相手に敵意がないことを確認すると、青年のほうに近づいていった。

「僕の名前は大空翼、君は?」
「俺は空条承太郎だ、JOJOとでも呼んでくれ」
「うん、わかったよJOJOくん」
翼は爽やかに笑い、片手を差し出した。
僅かに躊躇った後、承太郎はそれを握り返した。

「もう一度確認するが、お前はゲームにのってないんだな?」
「うん、こんなことは間違ってる! 11人の仲間を集めてあの3人を倒すんだ!」
拳を握り、翼は高らかにそう叫ぶ。
「ああ、仲間を集めるのは良いとして、何で11人なんだ?」
「? 決まってるじゃないか、サッカーは11人でやるものだよ?」
その言葉の意味がわからず、承太郎は眉をひそめる。
「おいおい、ふざける場合じゃあないだろ。こんなときに下らない玉遊びの話をしてどうする」
呆れたように言い放つ。
「…下らない玉遊びだって?」
そう呟き、翼は俯きナワナワと震え始めた。
428作者の都合により名無しです:2005/06/29(水) 00:51:11 ID:zZ8XFxZh0
どことも知れない森の中、二人の男は出会い、そして同時に思う。

(怪しい奴!)
「おい お前はこのゲームとやらに参加する気か?」

 蝶々仮面をつけた細身の男…パピヨンが尋ねる。

「んー…どちらかと言えば 参加する気は無い、かな」

 異様な服装に身を包んだ男…奇術師ヒソカは答え、続ける。

「ボクは戦いが好きだし、人を殺すのはもっと大好きだ
 だが…ボクは自分の獲物は自分で選ぶ。
 それに、あの主催者達の自分は最強なんだよって目…気に入らないね
 ああゆうのこそ、ボクの手で殺してやりたいね」

 パピヨンはその男の異様な雰囲気に圧され、一瞬恐怖する。
 彼もまた、彼自身が言った様に「自分は最強なんだよって目」をしていた。

「なるほど どこかの偽善者の言葉よりよっぽど信用に値する
 …よければ手を組まないか? オレもこんなくだらないゲームはさっさと終了したいんでな」
「いいよ ボクとしても断る理由は無いし、さすがにあの3人を同時に相手はできないだろうしね
 とりあえずは知ってる名前と合流したいんだが…」
「決まりだな まずは人の集まりそうな場所を目指すか
 どうもこの世界はオレがもといた国を縮小したものらしいんでな、案内しよう」
「それは助かるよ、ボクには何も解らない未開の土地なんでね」
429作者の都合により名無しです:2005/06/29(水) 00:54:41 ID:84zOFPg50
>>426-428
キチガイ荒らしなんでお気になさらず。
SS持ってきた場所もこいつに荒らされて困ってますんで。
430北の果てより:2005/06/29(水) 08:36:05 ID:ededvTK10
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/kita/01.htm の続き
北の果てより 『第二話 萌動』

誰でも一度は、ふと考えるひとつの疑問がある。
運命とは自らの手で切り拓く者だろうか。それとも定められたものだろうか。
血気盛んな若者なら前者と応え、隠者のごとく聡いし者なら後者と応えるかも知れない。
正解は誰もわからない。わかるはずがないからだ。

子供の空想から高位の哲学・思想学に至るまで、その問いに正解を出したものはない。
解がわからないからこそ、我々は運命という得体の知れないものに惑う。
操られ、翻弄され、寵愛され、時には絶望し、感謝し、歯を食いしばって抵抗する。

この物語の主人公は、運命に抵抗する者である。
宿業に押し潰されそうになりながらも、血を流しながら前へ進む者の生き様の物語である。
運命という呪縛を必死に振り解こうとして、前へ進む物語である。

主人公の名は、シコルスキー。
ファーストネームもミドルネームもない、ただのシコルスキー。
1917年のソビエト社会主義共和国連邦の建国以来、最年少の死刑囚。
類稀なる身体能力と、英雄的カリスマを持つ13歳の少年。
彼が国家と戦い、倒れるまでの物語である。

舞台は1980年代初頭。場所はソビエト連邦の首都・モスクワの北西区の片隅。
政治的思想を旗印に上げる小さなレジスタンスの、儚い抵抗から始まる。
431北の果てより:2005/06/29(水) 08:37:13 ID:ededvTK10
レジスタンスの戦略的リーダー・ガイルは疑問に思っていた。
いや疑問というより、違和感と言った方がいい。

目の前に確かにKGBの子飼いの特殊部隊・ヴィンペルは牙を剥いている。
その手にAK74Sを手にし、その銃口はこの脆弱なレジスタンスを非情に狙ってはいる。
既にこちら側の戦死者は2人、ケガ人はその数倍だ。
だが、おかしい。……本気で俺たちを制圧に来ているとは到底思えない。
歴戦の軍人であるガイルはそう直感した。いや、それは今回だけではない。

この数十人の戦闘員のレジスタンスが反逆の牙を上げて一年ほどになる。
『このロシアの地に、自由な民主主義の空を。本当の労働者の幸せを』
そんな、チャイルディッシュな噴飯物の旗印をあげて、革命は産声をあげる。
民主主義に憧れる若者たちにその反逆は支持され、水面下で組織は育っていった。

そして7ヶ月前、武装勢力と呼ぶには慎ましい装備に身を包み、国家に実力行使……。
いわゆる武力による改革を目指し、ついに若者たちは決起する事となる。
それから数回の陸戦を繰り返し(体制側はテロと呼んだ。当然だが)幸いにも連勝する。

そして一ヶ月前、いよいよ首都・モスクワまで攻め寄せてきた。
改革という名の美酒に酔いながら若者たちは民主主義という言葉の魅力に取り付かれ、
出来もしない革命の後に思いを馳せていた。
なにせ、この小さな部隊は全戦全勝である。物知らぬ若者たちが活気付くのは無理はない。
432北の果てより:2005/06/29(水) 08:38:43 ID:ededvTK10
だが戦闘豊富な元アメリカ空軍のガイルは、その頃からとっくに違和感を覚えていた。
何故、こんなチャチな反乱軍を体制側は本気で潰さない? 軍勢たった数十人だぞ?
KGBの持つ対テロ鎮圧部隊を2個師団ほど送れば一時間でケリがつく。
俺たちごとき、いつでも潰せるからか? だが、なんの為にだ?
今回の戦闘もそうだ。何故、その腰の9ミリ口径のサブマシンガンを使わない?

押し寄せる疑念を、ガイルは脳裏に閉じ込める。ここは戦場だ。しかも自分は指揮官。
敵の部隊がどうあれ、最も効率的で有効な指揮を執るべきではないか。

市街戦という地の利を活かし、各施設にレジスタンスは潜み、ヴィンペルを討っていく。
ガイルは嘆息した。その中の一人の余りの手際の良さに。
そもそも、戦闘能力という点で特殊部隊と即席兵が勝負になる訳はない。
だが、たった一人の飛び抜けた能力を持つ者が戦局を左右することもあるのが事実だ。

その男の動きにはまるで無駄がない。
物陰に潜みながら、まるで幽鬼のように気配無く動き、いつの間にか敵兵の後ろを取る。
(大したモンだな。あれが12、3歳のガキの動きかよ。一級品の暗殺者だぜ)
ガイルは薄笑みを浮かべた。その動きの静けさが逆に、少年の底知れなさを物語る。

市街戦、そして暗殺の極意。それは戦闘技術でも、殺人技術でも銃の腕でもない。
求められる一番の能力、それは完全なるストーキング能力である。
気配を消し、闇と自然に乗じ、敵兵の背後を取る能力。それこそが求められる。
即ち、相手が襲われた事も、殺された事すらも感じさせず頚動脈を掻き切る能力だ。
433北の果てより:2005/06/29(水) 08:39:45 ID:ededvTK10
(だがな、そんなのはどれだけ訓練したって出来るもんじゃねえ。恐ろしいや。
 神か悪魔に魅入られてないと出来ねえ。 ……良い事か、悪い事かは知らねえが)
戦場で10年選手のガイルが、自分の子供ほどの少年に敬意と恐怖を持つ。
少年の顔は幼く、白い。美少年といっていい。
その立派な体躯と体に染み付いた返り血が、少年の白さと幼さを更に強調させる。

(アメリカに俺と交換で生まれてりゃあ、どんな物でも出に入れられたろうに)
ガイルはふと不憫に思った。少年の未来が、血に染まっていくのに、である。
皮肉なものだ。自分は、あの戦争から逃げて、アメリカから逃げて、ここへ辿り着いた。
だがこの少年やこのレジスタンスは、民主主義を、アメリカを求めて戦っている。

俺の人生と、こいつらの未来と、どっちが、幸せか……。
ガイルは首を振った。今はそんな事どうでもいい。俺はこの地に死ぬ為に来たのだから。
せめて、俺の死がこいつらの未来の糧になれば、それでいい。上等な死に方だ。

ヴィンペルが兵を引く。若者たちが勝利の歓声を上がる。ガイルは煙草に火を付けた。
今日もレジスタンスは勝った。いや、勝たせてもらったのか。
吸い飽きた煙草の煙を大きく吸い込みながら、ガイルは物憂げに笑った。
434北の果てより:2005/06/29(水) 08:40:41 ID:ededvTK10
レジスタンス達は数グループに散らばり、彼らを支援する民家で歓待を受けていた。
皆、どれほど働けど決して楽にはならない生活に嫌気が差しているものたちである。
「何が万国の労働者よ団結せよ≠セ、バカバカしい!」
家の主が、ソビエトの標語を揶揄して叫んだ。若者たちはそれを聞き大きく笑った。

夕げ。食卓には質素な料理が並んでいる。
シチ、と呼ばれるキャベツのスープに小麦粉からつくったバーミセリという料理。
それにきのこ料理や魚のプロソリナヤ(塩漬け)。
戦場で疲弊し切った肉体にはいささか物足りない量と質である。
だが、誰も文句は言わなかった。これがロシアの庶民の一般的な食事だからである。
粗末な食事でも戦勝の興奮から、若者たちはしこたま安酒を喰らい、そして大いに歌った。

ガイルは喧騒の中、辺りを見回した。ふと気付いた。近くの青年に尋ねる。
「おい。お前たちのリーダーはどうしたんだ?」
「ああ、シコルスキーならさっき外へ出たまま、帰ってこないな」
青年はそれだけ応えると、また宴に加わり下手なロシア流行歌をうなり始める。
ガイルは居た堪れなくなって席を立った。
アメリカ人の自分、というよりも、希望ある者たちの中に自分がいるのが辛かったのだ。
435サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/29(水) 19:58:55 ID:d1eRAHOY0
今から投下しますので、一つ間を空けます。
パオさん、失礼します。
436SPECIAL THANKS:2005/06/29(水) 19:59:37 ID:d1eRAHOY0
のび太たちが元の世界に帰ってから、はや一ヶ月以上経った。
俺はと言うと、あの戦いが嘘だったかのような、いつも通りの毎日へと戻った。
朝から寝坊しそうになって、楓に優しく起こされて、学校へ行けば樹や麻弓、シアやネリネとふざけ合い、
亜沙先輩にその様子を冷やかされたり。
放課後になればぶらぶら商店街を歩いてみたり。
夜になれば家に乱入してきた神王と魔王のおじさんがエンドレスで宴会を開いて、高校生の分際で二日酔いに
悩まされてみたり。
そんな当たり前の、騒がしくも穏やかな日常―――あいつらと一緒に戦って、守り抜けたもの。
俺が生きる―――俺の大切な人達が生きる世界。
以前は当たり前のようだった平和が、今は限りなく尊く思える。
ただ一つだけ、気になることがあった。
プリムラが最近、元気をなくしていた。俺や周囲の人間が話し掛けても、どこか上の空で・・・。
のび太たちが行ってしまった後、二、三日はふさぎ込んでしまっていたが、今になってぶり返してしまったのか。
俺は心配しつつも、どうにも出来ずにいた・・・・・・。
そんなある日だった。
俺は日も暮れかけた帰り道を歩いていた。考えることは割と色々あったが、やはり今はプリムラのことが一番
気にかかる。どうにかならないものか・・・。
と。ふと目を向けると。住宅地の中にある、人気のない小さな公園で。
ブランコに揺られている彼女を見つけた。
その姿は、どこかが痛んでいるような。何かが痛んでいるような。
俺は思わず声をかけた。
「何一人で黄昏てるんだ?」
「・・・・・・りん・・・・・・」
プリムラはゆっくりと俺を振り向く。その頬には、涙の跡があった。
437SPECIAL THANKS:2005/06/29(水) 20:01:09 ID:d1eRAHOY0
「・・・泣いてた、のか・・・?」
「・・・・・・りん、私・・・・・・」
プリムラは震える声で言葉を紡ぐ。壊れてしまいそうな様子で。
「私はまだ―――やっぱり、胸が、痛い、よ・・・」
「・・・プリムラ」
「分かってる・・・分かってるの。あれでよかったんだって。のび太や青玉は、元の世界に帰るのが一番
いいんだって。けど・・・それでも・・・!」
とうとうその瞳から、涙が零れそうになる。
「泣いちゃだめだって―――悲しんじゃだめだって―――分かってるけど―――でも・・・!」
「・・・・・・」
俺は―――
「・・・あ」
俺は、彼女を抱きしめた。その心を、壊してしまわないように。
「今だけ―――泣いたっていいぞ」
「・・・りん」
「今なら、俺しか見てないから」
「・・・うん」
そして彼女は、どこまでも泣いた。泣きじゃくった。
生まれたばかりの赤子のように、何を憚ることもなく。
今まで耐えてきたものを、全て吐き出すように。
俺はただ、そんな彼女を、さらに腕に力を込めて抱きしめた。
彼女はただ、壊れたように泣き続けた。
438SPECIAL THANKS:2005/06/29(水) 20:01:50 ID:d1eRAHOY0
辺りはすっかり暗くなった。
プリムラはようやく泣き止み、俺の腕から離れていった。
「・・・もう大丈夫か?」
「うん・・・もう平気」
そう言って笑ってみせる。どこか悲しみを湛えたままの笑顔だったが、それでも笑えるようになっただけ、
俺は安心した。
「―――きっとまた、会えるよね」
「・・・・・・」
「未来のどこかで―――また、青玉や、しずかやタケシやスネ夫―――それに、のび太にも、会えるよね」
「ああ・・・会えるさ。またいつかきっと―――あいつらに会えるよ」
「うん・・・だからもう、泣かないよ。いつかまた会えたときに、笑えるように」
そして、俺たちは、二人して。
心から、笑った。
―――そう、悲しむよりも、出会えたことに感謝しよう。
そして、笑って、その思い出を語ろう。
いつか、笑顔でまた会えるように。

――――――俺たちはこの時、まだ知らない。
そう遠くない未来で、再びのび太たちと出会い、そして、更なる戦いに巻き込まれていくことを―――。
439サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/29(水) 20:11:02 ID:d1eRAHOY0
投下完了。
タイトルはGLAYの曲から。
神界のアフターストーリーにして、次回作へのプレストーリーみたいなかんじで読んでくださると
幸いです。

次回作はタイトル「ドラえもん のび太の超機神大戦」
ドラえもんでスパロボをやったら・・・みたいなノリで書きます。
登場人物を一部書きますと、
ドラ以外では
ガン種キャラ(デスティニーの方は多分出ない)  ムスカ  バカ王子(レベルE) シュウ・シラカワ(スパロボ) 
神界大活劇のキャラ(おっちゃんたちは多分出ません、残念ながら)  その他多数

ドラ(あるいは藤子作品)では
リルル  ペコ  フー子  USDマン など

こんなところです。フー子については原作とはかけ離れた姿で出るかもしれません。
その辺りは作者のノリで。
それでは長すぎる後書きはこの辺で。
次回作で会いましょう。
440作者の都合により名無しです:2005/06/29(水) 20:22:13 ID:2wCjB4AT0
うっわ・・・
種とかスパロボオリジナルとか出てる辺りでもう・・・
441パオ ◆oIVyz8LOXE :2005/06/29(水) 20:22:46 ID:ededvTK10
すぐの投下サマサさんすみません。
朝、出勤前投稿規制にやられたんで。また今から出ないといけないし。


お世辞ではなくプリムラや亜沙は好きなキャラクターでした。
原作のゲームは知りませんでしたが、開発元のシャッフルのページを
覗きにいって自分ルール「18禁ゲームに手を出さない」の禁を
破りそうになりました。PS2で出る(出た?)みたいですね。買おうかな。
次回策も期待しております。

>>434の続きを投下します。1レスだけですが。

442パオ ◆oIVyz8LOXE :2005/06/29(水) 20:23:42 ID:ededvTK10
リーダー。例え小さなレジスタンスでも、僅か13歳の少年が。

普通なら考えられる事ではない。だがその少年、シコルスキーは誰もがそう認めている。
天与の運動能力と知力、そしてカリスマ性。圧倒的な才能により。
ふとガイルは思う。このレジスタンスの為にシコルスキーがいるのではなく、
シコルスキーの為にレジスタンスが存在しているのではないかと。
(考えすぎだな、おい)

ガイルは外に出た。寒い。もうすぐ厳寒期が来る。アメリカ人には辛い。
体を竦めたまま、シコルを探して裏手に回る。 …いた。水道で手を洗っている。
(なんでえ、ションベンでも引っ掛かったのかね)
そう思い声を掛けようとした。しかしすぐに異常に気付き唖然とし、次に大声を出した。

「おい、シコル、お前いつから手ぇ洗ってやがるんだ!」
手が真っ赤に腫れ上がっている。肩に手を掛け制止しようとするガイル。
だがそれでも手洗いを止めようとしない。ガイルは無理やり水道から引き剥がした。
「バカ野朗……。凍傷で手が落ちるぜ。一体何で、何十分も手洗いなんざ」

ガイルはシコルスキーの顔を見て声を失う。子供のように半ベソを掻いている。
先ほど戦場で見た、死神のような手際を持つ少年と同一人物とはとても思えない。
やがて教師に叱られる大人しい生徒のように、シコルスキーは神妙に言った。
「取れないんだよ……。何度洗っても、何分洗っても、血の臭いが、取れない」

風がシコルスキーとガイルの間を吹き抜けた。鉛のような沈黙が、2人の間に横たわった。
443パオ ◆oIVyz8LOXE :2005/06/29(水) 20:25:57 ID:ededvTK10
お騒がせしました。投稿規制の解除、ますます遅くなっている気がする。
前は10分位で解除されたのに。

ミルコVSヒョー決まりましたね。勝ち目は薄いでしょうが、ミルコ勝ってくれ。
あとクロマティ選手、久しぶりの大爆笑をありがとう。
444サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/29(水) 21:48:27 ID:d1eRAHOY0
>>パオさん
こちらこそ、変なタイミングで投下してしまったようですいません。
ちなみにShuffleを買うつもりなら僕の書いた神界のことは忘れてプレイして下さい。
全く別物になっちまってるので。

>>北の果てより
天与の運動能力と知力、そしてカリスマ性。
原作でも初登場時はこういう言葉が似合う男でしたよね(笑)
この作品の少年シコルは色々背負ってそうでかっこいいです。
445作者の都合により名無しです:2005/06/29(水) 23:25:37 ID:ZJTVhhRz0
パオ氏といい、うみにん氏といい、ミルオタはどこにでもいるなw
ま、一番の盛り上がりは入場と開始前の睨み合いで試合始まったら
空気嫁ないヒョーがあっさり関節で勝つ確立が高いがwww

>サマサ氏
王道っぽいアフターストーリーですな。相変わらずプリムラは健気で可愛い。
そしてこの作品が次の長編の序章みたいな感じになってるな。美味い。
次の超機神大戦でプリムラやりんたちがまたのびたとどう再開するか楽しみだ。

>パオ氏
ガイルがバキの独歩ぽいなwでも、ソ連の特殊部隊ってスペツナズじゃないか?
最初の1レス目が気合入った感じでよかった。この路線で言ってほしい。
でも、シコルスキーってリアル路線では名前がアダとなるなwしけい荘がちらつくしw
446作者の都合により名無しです:2005/06/30(木) 00:24:12 ID:pVcd1A/70
>北の果てより
少年シコルとそれを導くガイルという趣ですね。超人的な力を持ったシコルと熟練の兵士が
どう絡み合うか楽しみです。たまに難しい用語が出てくるので、後書きとかで解説してくれると幸いです。

>スペシャルサンクス
しみじみとプリムラ寂しい感じですね。でも次回作でまた再登場する感じ、2回目の別れとかに
なるんでしょうか。次の長編は神界の続編っぽい感じかな?また大冒険楽しみにしてます。
447うみにん:2005/06/30(木) 01:57:30 ID:I7tnsrH30
448ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 273:2005/06/30(木) 01:59:03 ID:I7tnsrH30
出木杉の眼が赤く光った。出木杉の肉体に宿る闇の王が、唐突にその者の名を告げる。
『この少年を救う術はただひとつ。我の、我の真の名を呼べ―――――“のび太”よ!』

「え? な、なな、なんで僕!?」
予期せぬ指名にのび太は戸惑いを隠せず、狼狽している。だが、魔王はさほど
気にも止めずに言葉を続けた。
『真の魔界とこちらの世界とをつなぐ生命ある――――たった1つの架け橋。
お前こそが―――お前の存在だけが、我のかつていた世界とこの世界とを結ぶ、
たった一つの架け橋なのだ!』

「ドラえもんもジャイアンもしずかちゃんもスネオだっているのに―――」
魔王の一方的な口上にのび太は、せいいいっぱいの反論を試みようとした。が―――
『そこの青ダヌキは機械生命体。そしてお前を除く3人は全て、お前の知る3人とは
全く別の存在――――』

にべもない魔王に、のび太に代わってドラが問いただす。
「だけど、それならなぜ?なんでのび太くんを殺そうとした!?」
「そ、そうだよ。僕はここに辿りつけずに死んでいたかもしれないんだ!
なにより、ギラーミンに殺されててもおかしくなかった!」
『殺すつもりだったわけではない。本来、お前だけは確実に生かして捕らえておく
つもりだった。が、ワンダー・ガールとパーやんの裏切りは我にも誤算だった。
フフフ――――神話の時代より、人の心だけは思い通りにはならぬものよ。』

芝居がかった仕草で自嘲気味な笑みを浮かべ、魔王は一人、言葉を続ける。
『我の目的はこの地上の殲滅。それに必要なだけの力さえあればいい―――――
魔力を取り戻せずとも新たに手に入れた科学の力だけでもそれは可能。
かつての我を打ち倒した危険因子が消えてくれるならばそれもまた良し。』
追い詰めたはずの獲物。しかし、魔王は静かに王者の風格を持って佇んでいる。
確かにチェックメイトしたはずのキングの、考えられないその傲慢な態度に
しびれを切らし、最前線に踊り出て叫んだのはやはりこの男だった。
449ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 274:2005/06/30(木) 02:00:01 ID:I7tnsrH30
「やいやいやい!魔王!偉そうにしてんじゃねえぞ!?」
ジャイアンである。
「のび太!迷うことはねえぜ!名前を呼んでやれよ!」
「ジャイアン!?」
ジャイアンはニヤリと笑ってみなに告げた。
「なあに。出木杉を助けて魔王を倒す!順番通りじゃねえか!!」
「・・・!!」
全員が心を1つに頷いた。ドラえもんが代表して言葉を発す。
「そうだよ。恐れることはない!僕らは一度はあいつを倒したんだ!」

のび太が強いまなざしで、ジャイアンのさらに手前へと歩み出る。
「い、いくぞ!しっかり聞けよ!魔王――――――――――――――・・・」
ところてん並の脳みそしかもたないと思われるのび太の記憶力。
しかし、その恐ろしい名前だけは、決して忘れない。忘れるはずがない。
心強い仲間たちに後押しされて、強い勝利への決意を込めて、のび太は叫んだ。
その瞬間、出木杉の顔をした魔王が薄く改心の笑みを浮かべた。
ドラたちは固唾を呑んで見守り、仮面の老人はずっと無言を貫いている。
そして、ついに強力な“言霊”は放たれる。

「・・・―――――“デマオン”!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
450ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 274続:2005/06/30(木) 02:00:42 ID:I7tnsrH30
空間は鎮まりかえっている。
魔王に乗っ取られた出木杉の体に変化は起こらない。

「・・・?」
「なんだよ、何も変わんないじゃねえかよ!」
『フフフ・・・フハハハハハ・・・・・
あわてるな。この肉体はもう必要ない。だが、私の“真の姿”を披露してやるには
ここは、少々狭すぎる―――――――――』

空間が破砕された―――――!

それは――――
それは―――――――――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
451ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 275:2005/06/30(木) 02:02:25 ID:I7tnsrH30
要塞外――――
パーマン1号の拳がパパンダーの上半身に深くめりこんだ。しかし、
極度に柔軟性と弾力性のあるパパンダーの装甲に“やはり”あっさりと
はじき返される。あきらめにも似た面持ちで1号は呟いた。
「ハァ・・・ハァ・・・ダメだ・・・・・頑丈すぎる!」

思わず弱音を漏らす1号のもとへ、パーやんとしょくぱんマンが駆け寄ってくる。
「前は弱点だったはずの下半身にも隙が見当たりまへんなあ。」
「アンパンマンたちを動力源にしているせいか、全くスタミナ切れを
起こしそうな気配もないですね。」
「くっそ〜、魔土災炎め。とんでもないものつくりやがって!」
『ハーッハッハ!パーマン軍団め!ついにあきらめたか!?』

勝ち誇る魔土災炎に、パーマン1号の負けん気に火が灯る。
「なにおう!?まだまだあきらめるもんか!」
「ええ心がけや1号はん!みんな!しょくぱんマンはん!
もうひとふんばりしまっせ!」
パーマン軍団としょくぱんマン。5人の英雄は再び気力を振るって立ちあがった。
『おお!』

―――――――その時要塞の頂上が―――――――
静かに、そして盛大に吹き飛んだ。まるで火山が噴火するかのごとく―――――――――

その姿は――――
その姿は―――――――――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
452ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 275続:2005/06/30(木) 02:05:49 ID:I7tnsrH30
森の闇に潜み、様子を伺う者たち。
忍術学園・山田伝蔵、土井半助とその教え子たちである。
まだ幼い教え子たちは恐怖に震える声で師に問いかける。
「せ、先生・・・あれは・・・・・・・!?」
歴戦の戦忍である山田伝蔵は表情を変えない。

破砕された黒き要塞から生まれたそれは――――――――――ー

その光は――――
その闇は―――――――――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
453ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 276:2005/06/30(木) 02:11:01 ID:I7tnsrH30
朝日と共に始まったこの戦い。まだ夜は遠く、光ゴケの発光は衰えてはいない。
――――にも関わらず突如として地底世界を覆う色濃い闇。

溢れ出す力の奔流は、地底に存在しうるはずのない黒き雷雲を生み出した。
大気中の物質がイオンに変化し、プラズマが発生する。稲妻が轟く。
現時点で既にあまりにも巨大な、そのシルエットは地底帝国を覆わんばかり
に膨張し、さらにその質量をさらに増大させ―――――ある一定の大きさに
達した後、ようやく安定を見せ始める。

形状はいびつな人型。黒い紙切れを哄笑の形にくり抜いたような頭部からは
その面積に倍するほどの、傲慢にねじれた角らしきものが生え、その威圧感を
増している。鋭角に怒らせた肩は“人型”であることを拒否し、その尊厳を
誇示するかのごとく力強い広がりを見せている。

要塞の最上階にいるドラたちでさえも“見上げる”しかない巨大な質量に対し、
激闘にボロボロに傷ついた反乱軍の面々はただ、呆然と見上げるだけであった。

巨大な闇の人影はそのいびつな腕を振り上げ、ひとさし指を天にかざした。
黒き雷雲から膨大な電光が一点に集う。一点に集中した雷は巨大な球形を成して
スパークする。

「 ヤ バ イ ! ! 」
誰が叫んだのか、それはわからない。が、それと同時。放たれたあまりにも
巨大なエネルギーを持った雷が、絶望的な戦いを必死に生き延びてきた反乱軍を――
―――無慈悲に――――冷徹に吹き飛ばした――――――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
454ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:2005/06/30(木) 02:29:37 ID:I7tnsrH30
遅くなって申し訳ありません。しかもまだこれだけしか書いてないです。

>サマサ様
おお、またも新作ですか。その創作意欲素晴らしすぎです。
今からフー子に注目してます。ムスカってラピュタの七三メガネさんですか?
あの人、近所の小さなおもちゃ屋のおっちゃん(なぜかいつもスーツ着てる)に
そっくりなんですよね。おっちゃんもなんか企んでくれたら面白いのですが。

>ミルヒョー
決まったとはいえ、半信半疑ってとこですね。格闘家ってある一敗を機に、
嘘みたいに弱くなってしまう選手がたくさんいますが、ミルコヒョードル
両者のとってそんな節目になる一戦の予感がします。その後も強くあって
欲しいですが。どちらにしろ歴史に残る激闘になって欲しいものです。

さてそんなことよりもラブコメの主人公はなぜ、その辺ですれ違った
女の子と都合良く知り合えるのか、その秘訣が知りたい今日このごろ。
名前も住所も学校もなんも知らない。二度と会えるわけねー!
455作者の都合により名無しです:2005/06/30(木) 15:49:05 ID:LIi7bdJ90
うみにんさん復活キター!
クライマックス突入で開いたのは痛かったけど、最後まで書いてくれる気で
良かったよ。でも、また気になるヒキですね。
今度はもう少しだけ早く書いてくれるといいな。爆発の後気に掛かるだけに。

ここで唐突にオシシ仮面出動か?w
456ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/06/30(木) 15:53:36 ID:9pqIYpWA0
プロローグ「狐面の男」

ここは地球から遥か遠く離れた国、メカトピア。
かつて地球人を奴隷として捕らえようとしていた悪徳の国は、修正された歴史にて生まれ変わっていた。
ロボットのみならず、わずかな数ではあったが、人間も平和に暮らす理想郷が実現していた。
小さな諍いはどうしてもあったものの、そこはたしかに天国といえた。
しかし―――その楽園が今―――

どこかの工場のような機械に囲まれた屋内で、三人の男女が<敵>と激しい闘いを繰り広げていた。
「くそっ!クルーゼの手先め!」
一人の端正な顔立ちの少年が光線銃を乱射しながら悪態を吐く。闇雲に撃たれたかに見えた光線は、その実素晴らしい精度で
襲いくる敵―――鉄人と呼ばれる、意志をもたぬ一般的ロボット―――を屠っていく。
「アスラン!大丈夫!?」
気遣わしげに声をかけたのは、前を行く少年だ。アスランと呼ばれた少年よりは幼く、可愛らしいと言ってもいい
顔立ち―――しかし、その顔は今、緊張によって固く引き締められている。
その少年の側には、少女。どことなく神秘的な雰囲気を持った少女だった。
「キラ・・・俺なら平気だ。リルル、きみは?」
「わたしも大丈夫よ。・・・呑気に話してる暇はないわ。急ぎましょう」
こくりと頷き合い、三人は目的の場所へと走る。目指すは彼らの<相棒>のもとだ。
「・・・なんでこんなことにっ!みんな・・・平和に暮らしてただけなのに!」
キラと呼ばれた少年は瞳に涙を浮かべ、叫ぶ。後に続く二人は何も答えない。ただ、悲しみと怒りの色を浮かべ、
唇を噛み締めるだけだった。
その時だった。突如放たれた熱線が、キラを襲った。突然のことに彼は反応できない―――
「キラっ!!」
だが、アスランは反応した。咄嗟にキラを突き飛ばし、地面に伏せる。リルルも身をかがめて、辺りを見回す。
物陰に隠れていたのか、無数にさえ思える鉄人が姿を現した。
「くっ・・・なんて数なの!」
リルルが絶望を押し殺した声でうめく。キラも愕然と鉄人たちを見つめるだけだ。だが、一人―――
アスランだけは、光線銃を手に、立ち上がった。
「・・・アスラン?」
457ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/06/30(木) 15:54:21 ID:9pqIYpWA0

「キラ。リルル。お前達だけで逃げろ。俺はこいつらを足止めする」
その言葉に、キラとリルルは表情を強張らせる。
「そんな!嫌だ、そんなの!みんなで一緒に・・・!」
その言葉は、途中で断ち切られる。アスランがキラの胸倉を掴んだからだ。
「キラ!ここで全員やられたら、それこそおしまいだ!甘ったれたことを言うな!」
キラはその剣幕に、何も言い返せない。
「―――お前達だけでも、生き延びろ!生き延びて、クルーゼを倒し、平和なメカトピアを取り戻すんだ!」
そしてアスランは、鉄人たちに向けて走る。
「――――――っっ!」
キラはグッと手を握り締める。わなわなと肩が震えた。
「―――キラ、行きましょう!」
「リルル・・・けど!」
「アスランの意志を―――思いを、無駄にしてもいいの!?」
「――――――いいわけ・・・ないだろ!」
そして二人は走り出す。友の<思い>を胸に抱いて―――
「アスラン!」
キラは声を張り上げる。必死で、親友の元にその声が届くように。
「きっと―――きっと、助けに戻るから!それまで―――無事でいて!」
その声が聞こえたのか―――アスランは振り向き、笑った。悲壮感などまるでない、一点の曇りもない笑顔だった。
その笑顔を振り払い―――キラとリルルは、走った。それを見届けて―――アスランは鉄人たちに向き直る。
同時に、彼の中で何かが弾けた。頭の中が急速に冷えていき、視界が360度全てに広がるような超感覚が生まれる。
敵のあらゆる動きが、手に取るように分かる。自分に襲い掛かる熱線の軌道さえも読めた。
「うおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーっっっ!!!」
獣のような雄叫びをあげ、彼は敵を屠り続けた。敵が全て沈黙し、彼自身も動けなくなるまで―――

全てが終わった後、倒れ付したアスランの元に、一人の男が立っていた。
「ふふーん、恐ろしい戦闘能力だ。さすがはレジスタンスの中心的存在だっただけはある・・・ふむふむ。こいつは
最高の木人形(デク)になりそうだなぁ〜?はあ〜〜〜はっはっは!」
男は卑しい笑い声を上げて、アスランを担ぎ上げた。
458ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/06/30(木) 15:55:04 ID:9pqIYpWA0
―――平和だったメカトピアに突如現れた<仮面の男>ラウ・ル・クルーゼ。
彼はどこからか生み出された強力な兵器の数々を以ってメカトピアを一瞬の内に支配した。
そして、彼が掲げたのは―――宇宙に住まう全人類の、滅殺。
彼に対抗すべく生まれたレジスタンスも、あるいは戦死し、あるいは散り散りになり、最後にはキラ、アスラン、そして
リルルしか残っていなかった。
そして今、アスランも自分達を守るために―――
キラはそんな考えを必死で打ち消した。そして、目の前にそびえる偉容を見つめる。
それは、巨大な三体のロボットだった。キラはその中の、白と青にカラーリングされた、背中に付いた鋼の翼が印象的な
機体に乗り込む。
彼の相棒<フリーダム>だ。
リルルはその傍らの、フリーダムに比べると肉厚の、重厚そうな機体に乗り込んだ。
それはかつて、地球の少年達によって改造され、人類支配を企む鉄人兵団と戦ったロボット―――<ザンダクロス>。
そしてもう一機―――真紅の機体。それはアスランの愛機だった<ジャスティス>。
だが―――今、これを操る者は存在しない。
「―――リルル。どこへ行く?」
キラは苦い思いを断ち切るかのように言う。
「地球・・・地球に行きましょう」
「地球か。確か・・・そこにも人間がいるんだよね?」
「ええ、そして・・・クルーゼが次の標的にすると、もっぱらの噂になっていた星よ。でも、わたしにとっては
それだけじゃないわ」
「え?」
「・・・信じてもらえないかもしれないけど・・・わたしには、前世の記憶・・・みたいなものがあるの。わたしは
かつて、地球で、友達に―――出会った。おかしいかしら?ロボットのわたしが前世の記憶だ、なんて?」
「・・・いや、おかしくないよ。とても、素敵なことだと思う」
「そう言ってくれると嬉しいわ―――それじゃあ、目的地は―――」
「地球だ!」
そして<フリーダム>と<ザンダクロス>は、力強く空へと飛び立つ。その先に、自由と未来があることを信じて―――
459ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/06/30(木) 15:55:54 ID:9pqIYpWA0
「・・・キラ・ヤマトとリルルは、どうやら脱出したようだな・・・」
メカトピアの一角。三人の男がそこにいた。
一人は無機質な仮面を付けた男。その仮面と余りに非人間的な雰囲気は、まるで生物としての暖かみを感じさせない。
この男こそがラウ・ル・クルーゼ―――メカトピアを地獄に変えた張本人だった。
「脱出したところで、彼らはどこへ行く気でしょうね?この冷たい星の海に、辿り付ける場所が果たしてあるものか。
―――あなたはどう思いますか、狐」
二人目はまだ年若い、紫の髪の男だった。泰然とした態度でありながら、その身に纏う一種の凄みと冷徹な美貌が
あいまって、強大な威圧感を感じさせずにはいられない。
そして、最後の三人目―――<狐>と呼ばれた男は、その名の通り、精巧な狐の面を被っていた。
190cmを超える長身に涼しげな浴衣を羽織り、下駄まで履いている。その印象は、まるで亡霊のようだ。
「 『あなたはどう思いますか』―――ふん。決まっている。こいつらの元へ行ったのさ」
狐面の男は浴衣の裾から五枚の写真を取り出し、芝居っ気たっぷりに広げる。
そこに映っていたのは、三人の少年と一人の少女、そして、一匹の良く分からない丸くて青い物体だった。
「こいつらの周囲ではありとあらゆるトラブルが舞い込み、ありとあらゆる災厄が降り注ぐ―――
この世界が何か出来の悪い小説で、その主人公たる彼らに、作品の眉目となる事件を提供している。
そんな仮定を立ててしまうほどに、奴らの元には混沌が付き纏う。―――さらに言えば、リルルとかいう娘には、
どうやらこいつらとの縁があるそうじゃないか。ここまで舞台が揃ってるんだ。間違いなく、奴らは出会う」
くっくっく、と、最悪の狐が犯しそうに笑う。
「その時こそ、お前らを含む<十三階段>には存分暴れてもらいたいが―――そのためには、まだまだ仕込みが足りない。
さーて、今回はクルーゼにやってもらったが、次はどの<階段>で、どいつにちょっかいをかけてやるかな・・・」
最悪の狐は何でもないように言う。クルーゼを使い、メカトピアを地獄に変えたことを<ちょっかいをかけた>と、
軽く評した―――それを最悪と言わずして、なんと言おうか。
「さあ―――未だ俺のことを知らぬ俺の敵達よ。すぐさま俺のこと以外、考えられなくさせてやるさ」
狐は写真の中の少年達に、狐面の向こうで無邪気なまでの笑みを向けた。
「そして俺は主人公たる貴様らを殺して―――この物語の終わりを、世界の終わりを、見届ける」

これから始まるは、機械の神々の物語。
最悪の狐とその手足たる<十三階段>と、物語の主人公たる五人の少年少女と、彼らと共に戦う仲間たち。
それらが紡ぐ――――――――――――
鋼鉄の御伽噺。
460サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/30(木) 15:58:51 ID:9pqIYpWA0
投下完了。
やたら調子が良くて、二時間ほどでプロローグが書けたので、投下します。
初回からアレな出来ですが、どうかよろしく。
タイトルは超機神大戦ですが、生身での戦いもそこそこ入るかもしれません。
作者にもこの先どうなるか分かりませんが、頑張って書いていきたいと思います。
それでは。
461作者の都合により名無しです:2005/06/30(木) 16:33:14 ID:H+LVmGFU0
うみにん氏復活おめ。そしてサマサ氏、絶好調だねえ。

>パオ氏
シコルやガイルが完全にオリキャラっぽくなっているけど、このテーマなら
原作の金玉シコルでは不釣合いですな。人間ドラマに重点を置いているみたい。
革命がどう展開するのか、ロビンはどう絡むのか楽しみです。

>うみにん氏
前回より約一ヶ月強ですか、待ってましたよ。物語終盤の緊張の連続ですな。
出木杉の方がのび太にコンプレックス持ってる感じですね、なんとなく。
デマオンの言霊はラピュタのオマージュかな?いよいよ最終盤突入ですね。

>サマサ氏
プリムラは言葉が少ない分、重みが他とは違いますね。泣くシーンが似合う。
そして、いよいよ「鋼鉄の御伽噺」の開幕ですか。まだのび太たちは出てきてないけど
主役は次の章から登場かな?
あと、シード知らないので神界の時みたいに登場人物の解説あるとありがたいです。

462サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/06/30(木) 16:47:58 ID:9pqIYpWA0
今戯言シリーズで確認したら、狐面の男が着ているのは「浴衣」じゃなくて「和服」でした・・・
わー恥ずかしー・・・

>>461さん
種に関してはキャラの性格や搭乗機以外はかなりオリジナル設定で行くつもりなので、
知らないのならオリキャラと思って見てくれた方がいいと判断します・・・
ごめんなさい。
ただ、ぐぐれば紹介サイトは一杯あるのでそこを参考にすればいいかと。
463作者の都合により名無しです:2005/06/30(木) 19:19:24 ID:cYJ43NTz0
お、うみにんさんが復活してる!

クライマックスに近づいているという事は美夜子さんの再登場は
近いと言う事ですか
464作者の都合により名無しです:2005/06/30(木) 21:26:44 ID:ZEJ+9NdO0
よりによって種ェ!?
とりあえず本編のキラは電波すぎるから、サマサさん風に少しはマトモになるようアレンジして欲しい
465作者の都合により名無しです:2005/06/30(木) 21:28:01 ID:F+BVbkxi0
種ネタなのが残念でならない
466作者の都合により名無しです:2005/06/30(木) 22:01:15 ID:Ud56V1Sf0
俺は種ネタいいと思うんだけどねー、なんで皆そんな嫌うんだ?
467ふら〜り:2005/06/30(木) 23:03:01 ID:VSVt2ANd0
新作開幕サマサさん、主役登場パオさん、クライマックスうみにんさん。
今日も今日とて絢爛な作品群、嬉しいことです。

>>サマサさん
この期に及んでというか、ここまで来ても「青玉」なプリムラが良。ぜひとも、再会の暁
にはとびっきりの笑顔で呼んであげて欲しい。で「超機神」、おっちゃんズの不在は残念
ですが、ムスカですか。出るか、「ゴミのようだ!」フー子は、もしかして擬人化とか?

>>パオさん
「魔界編」や「ラーメンマン」の熱さではなく、「DIO」のように悲惨陰惨でもなく。
戦ってはいますが何だか冷たい。戦い方も、そしてヒタヒタ迫ってるらしい未来の危機も。
少年ゲリラなシコルは、強さと危うさに独特な雰囲気。キレたら怖い、か逆に脆い、のか。

>>うみにんさん
ラスボス、顕現……いやはや、直接的視覚的に威厳ありますね。魔王というより魔神って
感じです。魔の神。各所各員の反応感想をじっくり見たいとこですが、バーダック&惑星
ベジータを潰した時のフリーザもかくやな一撃、はたして次回冒頭はどれほどの惨劇が?
468魔女 うつろいびと:2005/06/30(木) 23:22:04 ID:NiwEA8gj0
 とっぷりと暮れたこの時間、街の裏側では闇に紛れて淫行が蔓延っている。
 そうして、生きていかねばならない者もいる。
「…オメェ、本当にガキか……?」
「うん」
 男はひどく驚嘆していた。確かに子供なのだ。その子供に、絶頂間近まで
持っていかれている自分。無表情で一物を弄り続ける子供を見て、男はどこか
背筋が寒くなるのを感じていた。
「おじさん、気持ちいい?」
「……くっ!」

「…うん、確かに3ペニー!」
 子供に戻った少女が今日も一仕事終えたといった感じで嬉しそうに言った。
 当時のヨーロッパでは、1ペニーで茶が飲めた。
 この場合、茶を3杯飲むのを我慢すれば女を買えたのである。
「安いな」
 男がそう呟いたのにはわけがあった。
 この町の売春婦は容姿・年齢などにもよるが、大体平均して5ペニーで買われる
者が多かった。勿論美しいほど、若いほど高い。
 この少女の場合、取り立てて美しいわけではないが、どことなく男の本能を掻き
立てる顔付きをしていた。年相応の隙のある幼い顔付き。しかしいざ事に及べば、
とても子供とは思えない表情を見せる。そのギャップにやみつきになる男達が多か
った。
 そして、発育途中の体。現代のようにモラルの発達していない時代、少女は公然と
男達に性の対象とされていた。罪の意識は希薄であった。
 この少女の安いわけ――それは、体を一切触らせないという約束のためだ。
「じゃあ……行くか」
「また来て下さいね!」
 末恐ろしい娘だ――。
 無邪気な笑みを浮かべ元気な声で見送る少女を見ながら、男はそう思っていた。
 男が去っていくのを見送りながら、
「そう……たくさん溜めて、また来てね」
 先ほどとは違う種類の笑顔で、そう呟いた。
469魔女 うつろいびと:2005/06/30(木) 23:22:56 ID:NiwEA8gj0

 朝。
 少し町を出ると、牧歌的な風景。
 青空の下、牛は鳴き、木々は揺れる。
 そんな風景と共に生きる少年がいた。
「…うん。今日もいい乳が出てるね」
 いかにもよく育った乳牛。
 その牛の乳房を手馴れた手付きで搾っている少年。
「――そして、今日もいい顔して覗いてるね、アニー」
「ばれたか」
 窓から中を覗いていたのは、あの少女であった。

「毎日うち来るけど、そんなに食うに困ってるの?」
 搾りたての新鮮な牛乳を二つのカップに注ぎながら、少年は言った。
「ううん。クライドの搾りたての牛乳が飲みたくってつい……」
「毎日来られても困るんだけどねえ」
 クライドが何の気なしに言った言葉に、音もなく立ち上がるアニー。
「ゴメンね。今度からは三日に一回にします」
「それでも三日に一回は来る気なんだ?」
「一週間に一回にします」
「嘘だよ。毎日来てよ。どうせ一人じゃ多すぎる」
 クライドの言葉を聞いて、アニーはパッと向き直り、
「あたしも嘘を言ったの」
と言い、笑顔を見せた。
「アニーは怖いね」
 クライドは、アニーにカップを手渡す。
「これが好きなの。鼻を近づけて臭いを嗅ぐと……濃い風味。口に含むと……
舌に纏わり付いてくる感じ。クライドの牛のお乳、すごくいいよ」
 クライドの中がざわついた。
 アニーにはこういうところがある。彼女の言動は、男をざわつかせる何かがある。
それはとても不用意にも思えるし、同時に用意周到に仕組まれたことにも思える。
 
470魔女 うつろいびと:2005/06/30(木) 23:24:06 ID:NiwEA8gj0
 アニーとは小さい頃から友達として付き合っているが、未だに慣れる気配がない。
というか、むしろ大きくなっていく程にざわめきが大きくなる――
 クライドは、この感情の正体を理解できる歳である。しかし、認めたくはなかった。
「どうしたの? ボーっとして。飲まないの?」
「…いや、ところで、今日はあの影みたいな子いないね」
 クライドはカップの中を見る。自分が搾り出した白濁色の汁が、不思議といやらしく
見えてしまう。アニーがあんなこと言うからだ。そう思っていた。
「ミスティ? 今日起きたらいなかった。どこかに用事でもあるんじゃないのかなあ」
 アニーの話など、耳に入らない。
 クライドはカップの中の乳を飲めずにいた。
 手が微かに震えだしている。
「…アニー、君、人前であの子と喋ったりしてないだろうね?」



471魔女 うつろいびと:2005/06/30(木) 23:24:41 ID:NiwEA8gj0
 クライドは、気を紛らわすためにアニーと取り留めのない話をしつつ乳を飲める精神
状態にもって行こうと考えた。
 なんで――自分が搾り出した汁が飲めないんだ!
 彼は、そんなことで自分に憤っていた。
「なんで? 話しちゃいけない? ミスティはちっちゃくて可愛いコだし、あのコ全然喋
らないけど、あたし達の言ってることは分かるみたいだし」
「ミスティは僕ら以外の人間に見えてないよ。傍から見たら、君は一人で馬鹿みたいに喋
ってるように見えてしまうよ」
「構わない。あたし達が話してあげなきゃ、ミスティは世界に一人ぼっちなんだよ。それ
くらい――」
「魔女狩り――」
 ようやく。クライドが、乳を一気に飲み干す。
「――知ってるだろ」
「あたし魔女じゃないもん」
「魔女なんていないさ。だけど……今、この国の人はおかしいんだ。皆疑心暗鬼で、互いに
訝しがっている。皆、やられる前にやれって、そう思っている。その結果が魔女狩りだ」
「なんでそうなるか、分からないなあ」
「僕だって分からない。だけど、確かなことは一つ。少しでもおかしな行動をとれば、密告
されて魔女狩りに遭うんだ。街中で独り言とか、悪魔に憑かれたとか言われても仕方がないよ」
「それだけで処刑なんて」
「皆おかしいんだ。だから、僕は人と離れた所に住んでいる。なんなら、君もここに――」
 クライドの言葉を遮って、アニーは席を立った。
「あたしも、おかしいの」
 濃いお乳ありがとう、と言って、アニーは外へ出て行った。
「…聞けよ」 

472ゲロ ◆yU2EA54AkY :2005/06/30(木) 23:25:23 ID:NiwEA8gj0
魔女二話目です。もう原作の空気微塵もないな……まあ、実力以上のことはできません。
できるだけ「直接描写は」控えましたが、どうにもアレなので苦手な方は回避して下さい。
二話目は性関係が話の中心に据えられているので、次回以降も多分こんなノリですので。
ちなみにミスティ出てきましたが、一話目のミスティとは別の存在じゃないかなあ……と。多分ですが。

>>404
前回の話はあれで一応は完結していますが、あの続きも思いついたら書こうと思ってます。

>>405
前回はまだマシなほうかと思ってましたが……w
『魔女』を下敷きにする以上、完全なるハッピーエンド(誰も死なないようなの)は無理ですね。

>>406
前々回連載の終盤辺りからこのコテでしたっけね。テキトーな仕事はよくないですね。ええ。
ですが、元々名前考えるの苦手なのです。
原作はお薦めしますよ。

>>418
ある意味人を超越しているからこその悩み。うまくそれを書けたかは分かりませんが、伝わったでしょうか。

次回も大体こんなノリです。では。
473作者の都合により名無しです:2005/07/01(金) 00:33:35 ID:xjVa5G/00
・うみにんさん
復活きたーーーーーーー!復活早々に大盛り上がりですね。ラスボスバトル近しか。
いろいろな福泉が絡み合って感動のラストへと。出来れば今年中には終わってねw

・サマサさん
俺はサマサさんの神界大好きだったから期待してますよ。亜沙とか好きだった。
いきなり激動のスタートでいい感じ。シードはオリキャラで見ますからぜんぜんOKです。

・ゲロさん
いきなり18禁止っぽい出だしですね。魔女って作品知らないけど、アダルトな
雰囲気がぷんぷん。退廃的な雰囲気がかっこいい。随分とハードな話になりそうですね。
474作者の都合により名無しです:2005/07/01(金) 08:44:27 ID:v1RwgRHc0
>地底出木杉帝国
お久しぶりです!うみにん(さん)節がのっけから利いてますね。最後の強敵に相応しい
出木杉の威容。爆発のカタストロフ。のぶ太たちがどう逆転するのか、続きが待ち遠しい!

>超機神大戦
神界のクライマックスからスタートのような感じ。バトル物の色合いを濃く感じます。
シードも好きなのでバンバンキャラ出して下さい。神界を凌ぐような作品になるのを期待。

>魔女
アニーは年不相応なアダルトな雰囲気ですが、どことなく清楚さと可憐さも感じますね。
そして決して幸福にはなれそうにない儚さも。「魔女狩り」という言葉に不吉な予感がします。
475ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/01(金) 14:13:10 ID:69JF35Ly0
プロローグ2「ラーメンを啜りし悪魔」

かつてのび太たちとともに故郷である<犬の王国>を救ったクンタック王子―――ペコ。
彼はその後バウワンコ百九世としてこの王国を立派にまとめ上げ、今や若くして<偉大なるバウワンコ一世の再来>とすら
称されるほどの名声を得ていた。
まさにここ犬の王国は全盛時代を迎えていた―――

「ふ〜ん・・・ここが犬どもの国か・・・。中々いいところじゃんか」
その男は思いっきりラーメンを啜りながら、眼下に広がる平和な王国を見下ろす。
驚いたことに、その男は何もなしに空中高く浮かんでいたのだ。その一見人の良さそうな顔に、狂った笑みが浮かぶ。
「さてと。それじゃあ今夜あたりちょっかいをかけてやるとするか。<十三階段>が一人としてな・・・
ひゃ〜はっはっは!」
476ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/01(金) 14:13:50 ID:69JF35Ly0
その夜ペコは城のテラスにて、眼下に広がる街並を見ていた。
平和な、静かな我らの王国―――それを取り戻すために共に戦ってくれた彼らのことを思い出す。
―――否、思い出すまでもなく、彼らのことはいつでも覚えている。
彼らがいなければ自分は何も成せぬまま、この王国は暗闇に閉ざされていたことだろう。それどころか、世界すらも
危うかった。本当に、いくら感謝してもし足りない。
この恩を返せぬままにしていることに、罪悪感さえ覚えてしまうほどだった。
「―――王様」
柔らかな声をかけられ、振り向く。そこにいたのは彼の妻となった、麗しきスピアナ姫―――
「また、彼らのことを考えていらしたのですか?」
「うん、そうだけど・・・どうしたの、なんだか不機嫌そうだけど」
「不機嫌ですわ。だって・・・」
スピアナ姫はペコの言葉に、やや口を尖らせる。そして、すっと彼に身を寄せた。
「わたくしだけを、見ていてほしいのに・・・」
「・・・姫」
ペコはその身体を抱きしめる。重なりあった温もりを感じながら、ペコは思う。
―――ずっと、こんな時間が続いてくれたら―――
だが、彼の望みは破られる―――突然の物音によって。
はっと顔を上げ、身体を離した二人の元に、一人の兵士がやってきた。
父の代から親衛隊長を務め、今もペコの親衛隊長を務める、ペコの第一の側近―――ブルススだ。
勇猛で知られる彼が、冷や汗をかいて荒く息をついている。それだけでただならぬことが起きたのだと分かった。
「どうしたブルスス!何があった!?」
「王様・・・大変です!侵入者です!」
「なっ・・・!?」
ペコは絶句する。―――侵入者だと!?この平和になった王国で!?一体、何者が!?
混乱する頭を必死に静め、すっと腰に携えていた剣を抜き出す。
「・・・ブルスス!お前はスピアナ姫についていてくれ!・・・敵は、何人くらいいるんだ?」
テラスを出て、部屋を通り、階段を下りながら、ブルススに問う。
「・・・それが・・・」
言い渋る。そこまで多いのか?だが、帰ってきた答えは―――
「・・・たった、一人です」
477ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/01(金) 14:14:36 ID:69JF35Ly0
その答えに、ペコはまた絶句する。
「・・・一人、だと!?馬鹿な、一人で侵入してくるなんて・・・」
そこまで言ったところで城の大広間に降り立ち―――その光景に、三度絶句する。
そこには、城の兵士達が累々と積み重ねられて、大きな山が出来上がっていた。そしてその頂には、一人の男が
まるでそこが自分の玉座だと言わんばかりにあぐらをかいていた。
その男は、犬の王国の住人ではない―――人間だった。
モジャモジャのパンチパーマ、眼鏡、何かヒーローでもイメージしているような服装に、マント代わりに風呂敷を
付けていた。
そして何故か、ラーメンを啜っていた。
プウー、と息を吐いて、男は山から降り立ち、硬直しているペコ達に語りかける。
「あー、まずはかっちょよく自己紹介といくか―――俺様はUSD(ウルトラ・スーパー・デラックス)マン。
<十三階段>が十一段目さ。よろしくな」
「―――ふざけるな!何を目的でこんな―――」
「あーあー、そんな怒るんじゃないよ、王様。で、ないと―――こうなっちゃうよ?」
男―――USDマンはラーメンの汁を口に含み―――プウっと吹き出した。
それは壁にブチ当たり―――壁を爆砕した。
「なっ!?」
ペコはその馬鹿げた光景に目を見開く。まるで爆薬でも使ったかのような破壊力―――
だがそれを成したのは、単なるラーメンの汁だ。
ただの食物を恐るべき兵器へと変えるほどの超暴力―――城の兵士達が、成すすべもないはずだ。
「さて、王様。俺の頼みを聞いてくれるかい?そしたらまあ、そのかわいこちゃんとおっさん、そしてここで
ヘタレてる奴らの無事は保証しとくぜ」
「・・・何を」
「簡単さ・・・この国にある、あの巨神像。あれで俺とちょっと戦ってほしいのさ」
「馬鹿な!あれはそんなことのためにあるのではない!戦えと言うなら―――ぼくが相手だ!」
478ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/01(金) 14:15:19 ID:69JF35Ly0
ペコは激昂し、剣を構えてUSDマンに飛び掛る。そして振り下ろされた剣は考えうる限り最速で、最良の
軌跡を辿り、最高の一撃を首筋に叩き込む。
それは正に達人の一撃―――だが。
「いい太刀筋だけどよお―――そんなんじゃ俺は殺せねえよ」
USDマンは軽く指一本で、その剣を受け止めた。
「俺の身体にゃあUSD細胞とやらが寄生しててよ・・・そんなんじゃ、全然死ねねえんだよ」
そしてフウっと息を吐き出し―――その時生じた衝撃波で、ペコの身体が吹き飛ばされる。
地面に激突する寸前にブルススが受けてくれたおかげで、そこまでダメージは受けなかったものの、精神的な
ダメージは大きい。
きっと睨み付けるペコに動じる様子もなく、USDマンは言い募る。
「な、大人しく巨神像で勝負しなよ。今すぐに、よお?懸命な王様なら、どうするか分かるよなあ?
忠実な家来共と可愛い奥さんの命にゃあ変えられねえだろ?ん?」
ペコはキッとUSDマンを睨み付けながらどうすべきか思考し―――
ここは、相手の要求を飲む他ないと判断した。
「・・・いいだろう。巨神の怒りを以ってお前を倒してやる!」
479サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/07/01(金) 14:18:01 ID:69JF35Ly0
投下完了。
このテンションが続けば今日中にさらに投下できるかもしれません。

種についてはキャラクターの性格から、できるだけ電波を消して書いていきます。
しかし電波ゼリフ以外はわりと面白いと思うんだけどなあ、種・・・。
480作者の都合により名無しです:2005/07/01(金) 16:01:37 ID:cdJ1l8oZ0
>魔女
蟲師の淡々とした感じとは違い、背徳な雰囲気が満ちてますな。芸幅広い。
このエロいアニーはこれからレギュラーキャラになるのかな?
確かに中世の時代は性に関してどの国も乱れてましたね。娯楽が少ないのもあるが。
ダークな連載は好きなので期待してます。


>超鬼神大戦
サマサ氏テンションたけー!いい事だ。
バウワンコって映画版ドラのキャラでしたっけ?聞き覚えがあるな。
小池さん最強バージョンがまさかメインキャラになるとは。
確か、サイヤ人並みに強かったよねウルトラスーパーデラックスマン。
481作者の都合により名無しです:2005/07/01(金) 20:21:41 ID:S+77wUBS0
USDマンっつったら核兵器を寝てる間にくらってもピンピンしてたやつだよな?
巨人像でも勝ち目ないだろ
482作者の都合により名無しです:2005/07/01(金) 23:38:29 ID:J4Tfs6rp0
ゲロさんの魔女のエロくて黒い雰囲気が楽しみだな。エロい幼女は好きだ。

サマサさんの新作、確かにUSDマン作中最強キャラとして君臨しそうだw


そして、うみにんさん復活!待ってたよー。今度は放置プレイやめてね。
せっかくのクライマックスなんだから。
483作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 07:25:29 ID:y6zPCBy90
>>USDマン
でも肩書きを見るとまだ上がいそうなんだよな
484作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 07:44:15 ID:gxPu2bqM0
>>483
十三階段に序列は無いから、数が若いほど強いとかそういうことは無い
原作だと、半分くらいは非戦闘員だったりするし
485ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/02(土) 10:06:33 ID:Kz4VD5Hb0
プロローグ3「ペコの旅立ち」

ペコは巨神像の操作室で、あの日のことを思っていた。あの日―――巨神の心を動かした時のことが思い出される。
圧倒的な巨神の力―――彼はそれを二度と使いたくはなかった。これを使うとき、それは即ち、それほどの危機が
迫っているというのに他ならない―――だが―――今がその<危機>なのだ。
彼は胸に下げた、巨神像を操るためのペンダントを握り締めた。

「はっはー!こりゃあ凄い。これが巨神像かよ!大したモンだ!」
USDマンは力強く歩み出した巨神像を睥睨し、感嘆の声を漏らす。
「仮面野郎の<プロヴィデンス>やシュウの野郎の<ネオグランゾン>にゃあ比べられんが、中々どうして、
こんなモンが存在してんのかねえ!精々楽しませろよぉ?」
「訳の分からないことを・・・っ!巨神よ、怒れ!」
巨神像はその強大な腕を振り上げ、目の前のUSDマンに振り下ろす。
USDマンはそれを―――真正面から受け止めた。
「なっ!?」
「そら―――お返しだっ!」
そのまま巨神の指を掴み、投げ飛ばす。必死で受身を取るようにコントロールしたおかげで、なんとか体勢を崩さずに
済んだが、ペコは改めて戦慄した。
―――巨神像を軽々と投げ飛ばしただと!?
ペコは驚愕しながらもペンダントに強く念を込め、新たな命令を出す。巨神像はゆっくりと両手を広げ、その掌から
高圧電流が放たれる。
そしてそれは意志を持つかのようにUSDマンを襲い、直撃する!
「やったか!?」
歓声を上げるペコだったが―――次の瞬間、顔を歪ませる。
「ひゃ〜はっはっはっは!今のは良かったぜぇ!いいアンマ代わりになった。肩凝りがい〜い具合にほぐれたぜぇ!」
「くうっ・・・!!」
「それじゃあ次はこっちからっ・・・!」
486ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/02(土) 10:07:13 ID:Kz4VD5Hb0
その時だった。USDマンは突如動きを止め、服のポケットを探る。そしてそこから取り出されたのは一見ただの
紙コップ―――いや、違う。
ペコは知らなかったが、それは未来の道具―――<糸無し糸電話>だった。
「あ〜ん?何だよ、狐の旦那よお?今いいところ―――何ぃ!?そんくらいにしとけ、だあ!?おいおい、あんたね、
―――ああ!?―――あん!?―――ちいっ、分かったよ。今日はここでお開きにしとくよ」
「何を喋っている!?」
「ああ―――王様よお。悪いけど旦那が<今はこの辺にしとけ>だとよ。名残惜しいがこれで退散させてもらうぜ」
「なんだと!?貴様っ・・・・・・!」
USDマンはペコの怒号に耳を貸さず、空へと飛び上がる。そして、思い出したかのように言った。
「ああ、そうそう―――俺の―――つうか、俺らの目的つうべきだな―――目的、教えといてやるよ―――」
「目的―――!?」
「ああ、俺らの目的はなあ―――――――――――――――――――――」
そして彼は―――告げる。
「野比のび太と、その仲間達の、抹殺さ」

朝日が昇り―――ペコは玉座で一人悩む。
(のび太くんたちが―――危ない―――)
だが――――――
(ぼくは―――この国の王。その責務を―――この国の民を放り出す事など―――出来ない・・・!)
ぐっと手を握り締める。爪が食い込み、血が流れる。
「―――何を迷っておられるのです」
その声にはっと顔を上げる。そこにはブルススをはじめとする側近達がいた。後ろには兵士たちの姿も見える。
「彼らは救国の英雄―――それを見捨てたとなれば、この国において最大の汚点となりましょう―――王が不在の
間の守りは我らにお任せを」
「ブルスス―――」
そこで、集団の中から進み出る姿に気付いた。
「―――スピアナ」
487ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/02(土) 10:08:11 ID:Kz4VD5Hb0
「―――本当は、行ってほしくなんてありません。けれど―――わたくしが愛した方は―――友を見殺しにするような
人ではないと分かっています。だから―――」
「・・・・・・」
「だからわたくしは―――あなたが帰るその時まで、あなたを想って、お待ちしております」
「・・・ありがとう」
ペコは溢れそうになる涙を必死で堪えた。
「ありがとう、みんな―――スピアナ―――!」

そして―――ペコが旅立つ決意をしてから、数日。
国民が戦場へ向かう勇敢なる王を一目見ようと大挙して押しかける中、ペコは巨神像に入ろうとした。
その時だった。
「王様」
「ブルスス―――どうしたんだ?」
「実は先日、城から古文書が見つかりましてな―――そこにはこう記されておりました。
世界に暗黒が迫りし時、巨神は石の身体を脱ぎ捨て、金色に輝く裁きの神<アヌビス>となる―――と」
「・・・石の身体を脱ぎ捨て―――アヌビスに?何だろう、それは?」
「詳しい事は何も分かりませんが―――巨神像には、更なる秘密の力があるのではないか、と」
「そうか・・・」
ペコはもう一度巨神像をゆっくりと見上げ、中に入った。
―――正直、迷いはまだある。だが―――彼はもう決めた。
今こそ、彼らに恩を返すべき時だ。
彼の決意が乗り移ったかのように、巨神像は力強く歩み出した―――。
その先に待ち受ける、戦いに向けて。
488サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/07/02(土) 10:11:14 ID:Kz4VD5Hb0
前回は>>478より

投下完了。
小池さんとのライバルフラグや巨神像のパワーアップフラグを立てつつ、次回へ。
うみにんさんの「出木杉帝国」におけるジャイアンとげんごろう的な関係になりそうな。

十三階段の何段目とかは、原作では単に入った順番です。
この作品でも、特に序列とかは決めずに設定してます。
489作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 10:34:45 ID:0mwDpXqoO
サマサさんお疲れさん、早いペースでの更新。調子良いですね。このままのペースを保ってもらいたいです。
十三階段はもう全員決まっているんですか?

あと、連絡の無いブラキンさんが心配だ
490作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 10:50:05 ID:7/T/4Dm+0
ターボかかってるな、サマサさん。乙。
とりあえずまだ前作の神界とは直接つながってないみたいですね
単語的に共通のワードはあるけど。プリムラたち期待してます


>>489
ブラキンさんは家族絡みみたいだからな。大事無ければいいが。
491不完全セルゲーム:2005/07/02(土) 17:51:58 ID:0bjFeuf70
>>402より。
492不完全セルゲーム:2005/07/02(土) 17:52:39 ID:0bjFeuf70
第十話「誇り高き遺伝子」

 父と同じく、超サイヤ人へと変貌を遂げるトランクス。台風にも似た強風の中にもかか
わらず、彼の集中力は全く乱れていない。
 すでに、気を読めるセルと、パワー測定器が内臓された16号は見抜いていた。

 ──ベジータよりも強い、と。

 すかさず、セルも全力で気を高めるが、差はまるで埋まらない。
「くっ……何故だ。データによれば、おまえはベジータよりも劣るはずだ!」
「残念だったな。俺はとっくに父さんを超えている」
「な、何だとッ!」
 すると少し寂しそうに、トランクスは秘めた力について独白を始めた。
「父さんですら到達出来なかった境地──修業を重ねるうち、俺は超サイヤ人をさらに超
えてしまった。プライドが高い父さんに、こんなことを話せるはずもない」
 恐ろしい告白に、ただ呆然と立ち尽くすセル。
「だが、父さんが倒れてしまった今、もはや秘密にしておく必要はない! セル、おまえ
だけは全力で叩きつぶす!」
 両手を握り締め、ジャケットを脱ぎ捨て、深呼吸をするトランクス。すでに最大限だっ
たはずの気を、さらに高めんと吼える。
「はあああぁぁぁ……!」
 大気が掻き乱され、急激に気が膨張していく。同時にトランクス自身も、肉体が激しく
膨れ上がる。凄まじい圧力に押され、対するセルはもはや立っていられない。
「ち、ちょっと待ってくれよ……」
 か弱い声で呟いてみるも、無情にもトランクスは変身を完成させてしまう。父をも凌駕
した“超トランクス”が、ここに始動する。
493不完全セルゲーム:2005/07/02(土) 17:53:16 ID:0bjFeuf70
 気で生成された烈風を帯びるトランクス。肉体も逞しく進化し、今や16号も敵わぬほ
どの体格を持ち合わせている。
 元々厳しかった戦力差が──到底埋めがたいまでに広がってしまった。
 セルとトランクスが立っている場所は同じではない。セルが地上に座するならば、トラ
ンクスは遥か雲上にある天の頂に君臨している。それほどの差なのだ。
「さぁ行くぞ、セル!」
「くっ……!」
 セルは危機を脱するべく、脳細胞を働かせる。
 勝利はまず望めない。たとえセルが持つ全技を、全力でノーガード状態へと叩き込んだ
としても、今のトランクスは倒せまい。
 次に考え付くのは逃走だが、これも無謀に近い。
 ならば、どうにか口先でトランクス自身に超サイヤ人を解かせるしかないが、彼は油断
や慢心をしない気質なのでやはり難しい。
 八方塞がり。思索を巡らせるほど、導き出される“死”という一文字。
「どっ、どうすれば……!」
 相手は超サイヤ人を超越し、異形と化した筋肉で包まれた戦士。勝てる道理、いや生還
出来る道理などあろうはずがない──だが、ふと光が差し込む。
「……いや、ちょっと待てよ」
 絶望の淵において、セルは閃いた。この逆境を打開出来るもかもしれぬ、奇跡の一手を
編み出した。
「うむむ……。危険だが、やはりこれしか頼るしかなさそうだ」
「どうやら、覚悟は出来たようだな。では、終わらせてもらうぞッ!」
 トランクス、突撃。
 初弾──彼が突き出そうとしている右ストレートさえかわせば、セルの策略は成就する。
全細胞と全神経を注ぎ込み、セルも回避体勢に移った。
494不完全セルゲーム:2005/07/02(土) 17:54:50 ID:0bjFeuf70
 セルを打ち砕かんとする巨大な拳。セルもかろうじて軌道を見切り、サイドへ避けよう
とする。が、やはりスピードは段違いで間に合わない。
 ところが、あまりの威力が逆に災いし、拳から生じた風圧がセルを助けた。
 ──回避成功。
 大きく体勢を崩しながらも、セルは避けた。命中すれば自身を粉砕したであろう一撃を、
紙一重でかわした。
「……ちっ、外したか!」
 まさか外すとは──トランクスは即座に振り返り、第二撃を放とうとする。が、ここか
らセルの舌先は踊り出す。
「もう止めておけ、トランクス!」
「な、何だと……?」
「私は見切った。筋肉を異常発達させたことにより、おまえは肝心のスピードを殺してし
まった。それでは、永久に私へ攻撃を当てることは出来んぞ!」
 堂々たる忠告。確かに、トランクスは膨れ上がった筋肉でスピードを致命的なまでに落
としている。が、それはあくまでもトランクスが同等以上の相手と戦った場合。今のセル
程度が相手なら、全く問題ない(むしろ、充分すぎる)速度なのだ。
 ようするに、ただのハッタリである。
「パワーアップだけの変身では、何も生み出せない。バカだ、おまえは……」
 あえて挑発的な言動を取ることにより、セルは精神をじわじわと揺さぶる。しかし、ト
ランクスとて易々と屈服するはずもない。
「……だったら、当たるまでやってやるまでだ!」
 もっとも危険な返答だった。当たるまでというより、多分セルはもう二度と避けられな
い。こうなれば、意地でも戦意を削がねばならない。
「ここでおまえが死んだら、田舎で待っているお袋さんはどうなる?!」
「母さんは西の都出身だ! 田舎じゃない!」
「え、えぇっと……都会で待っているお袋さんはどうなる?!」
「くっ……!」
 やはり、根が単純なベジータとは一味違うトランクス。セルはこの強敵から、風のクリ
スタルを奪い取ることが出来るのだろうか。
495サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/07/02(土) 17:56:15 ID:0bjFeuf70
ようやく十話となりました。
これからもよろしくお願いします。
496ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 277:2005/07/02(土) 18:58:19 ID:FBumvgpF0
サナダムシさん、続けて失礼します。

>>447-453
<お兄ちゃんものび太さんも無事見つかりました。心配はいりません ドラミ>

タマ子は居間でのんびりせんべいをかじったりなどしながら、ドラミからの
言伝を眺めていた。誰に言うでもなく、ぼんやりと独りごちる。
「ドラミちゃんがそう言うんなら安心ね。でも何やってるのかくらい教えてくれ
てもいいのに・・・あら?」
わずかに床に揺れを感じる。
「地震かしら?怖いわ。のび太たちも早く帰ってくればいいのに・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「クッソー!ゴリライモめ!野球で負けたくらいで何もそんなに怒んなくたって
いいじゃな・・・うわっ・・・!」
少年は部屋で一人、なにやら憤慨している様子であったが、突如強い震動を感じ、
動揺する。本棚から一冊の漫画本が転げ落ちて、少年の鼻っ面に見事に激突した。
少年―――須羽ミツオはシュルシュルと縮みはじめ、その姿は忽然と消えうせた。
その場には、目も耳も口もない、特徴といえば丸く小さな赤い鼻らしきものだけ
しか見当たらない奇妙な人形が転がるだけであった―――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

強大なる魔王デマオンの覚醒と共に、地上の各所で変動が見られ始めていた。
今はまだ誰も気に留めないほどに微細なものではあるが―――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
497ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 278:2005/07/02(土) 18:59:29 ID:FBumvgpF0
『“ 万雷よ! ”』
デマオンが吼え、その指先が僅かに動くたびに、膨大な量の激しい稲妻が降り注ぐ。
まるで幾筋もの流星群が流れ落ちるように、その雷の群れは美しい。デマオンが不気
味な呪文を発するたびに、雷の流星たちは反乱軍の面々を無慈悲に的確に襲った。
『 “ マ・マ・ラ・ガ・ン ! ” 』

各所で無残に吹き飛ばされる反乱軍を、破砕された要塞の上部でドラたちが
なすすべもなく見守っていた。タケコプターも奪われ、使い切ってしまった今、
再び来た道を戻る以外に地上に降り立つ術もない。

「おいおい、なんだよ?あれ。あれじゃ、味方だって巻き添えだぞ!?」
「というかテキオー灯を浴びてないから、あっちの方が被害大きいんじゃない?」
そう。反乱軍の面々はみなテキオー灯の恩恵を受けている。そのため、本来ならば
一撃で絶命は免れないはずの巨大な雷の直撃を受けてもかろうじて持ち堪えていた。
むしろ、この雷の乱発は、テキオー灯の光を浴びてない帝国の魔兵士たちの方こそ
危険な状況なのである。――――が、ドラはあっさりとそれを否定した。
「いや、乱発してるように見えて、その実、的確に反乱軍だけを狙ってる!」
確かに、見事なまでに帝国への被害は皆無である。強大な力に加えて恐るべき精度。
その事実がさらに深刻な未来を容易に想像させた。
498ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 278続:2005/07/02(土) 19:00:28 ID:FBumvgpF0
「まずいぞ。」
「え?」
「テキオー灯の効果はある程度一定ではある。だがそれはあくまで“ある程度”に
すぎない。どうしても時間と共に若干薄れていってしまうんだ。ジャイアンならわか
るよね?深海での生活は24時間ピッタリはもたなかっただろ?」
深海でテキオー灯の効果が切れ、スネオと共になすすべなく死にかけたときの恐怖
を思い出し、ジャイアンはわずかに身震いを覚える。
「それでも通常考えられるような使い道程度なら問題ないはずなんだけど・・・
“連続する落雷”なんて想定外の事態に対して果たしてどこまで持つことか・・・」

実際、反乱軍の兵士たちは、即死こそ免れてはいるものの、少しずつ体力は削られて
いる。テキオー灯の効力を稲妻の殺傷力が上回っているのだ。
「このままじゃ、テキオー灯の効果もいつまで持つか・・・・少しでも効力が弱まれば
その次の一撃が致命傷になるかもしれない・・・!」
499ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 279:2005/07/02(土) 19:01:19 ID:FBumvgpF0
「みんな!落ちついて!今はともかく出木杉さんを!」
しずかが叫ぶ。ドラたちもハッと我に返ってあわてて駆け寄る。
「そうだ、出木杉くんは無事なのか!?」
魔王の肉体からようやく解放され、地に倒れ伏す出木杉。ドラたちがパニックに陥って
いる間にも、しずか、リルル、仮面の老人が精一杯の介抱を試みていた。
「おい!出木杉!出木杉!大丈夫か!?助けにきたぞ!」
「出木杉くん!」
口々に声をかけるが出木杉はピクリとも動かない。一抹の不安、死という言葉が脳裏を
よぎる。が、見たところ外傷は特になにもなく、呼吸も安定して行われている。どうやら
精神を消耗しきっているだけらしい。命に別状なさそうなことだけは判明し、みなわずか
ばかりの安堵の吐息をもらす。介抱している3人以外の者は、再び天へと視線を向けた。
現状、最大の危険因子である闇の巨王に。その瞬間―――――――

つい先ほどまで傍若無人に荒れ狂っていた闇の王の視線が要塞最上部、ドラ一行へと
向けられた。口の端を凶悪に捻じ曲げ、傲岸不遜に言い放つ。
『ふふふ、再び手にした絶大なる我が力に酔いしれ、すっかり忘れていたぞ。
お前たち・・・・・人のことを気にしている余裕があるのかな?』

「なんだと!?てめえ見下ろしてやがれ!絶対ぶっ倒してやるからな!!」
怒りに喚きちらすジャイアンをさらりと無視し、魔王はわずかに要塞へと顔をよせてきた。
『フフフ。“テキオー灯”か。22世紀の“科学”の力。素晴らしいものだな。
が、どうやら我の“魔力”の威力が若干勝っているようだ。』
地上で苦しむ反乱軍をチラリと見やり、満足そうな笑みを浮かべながら言葉を続ける。
500ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 279続:2005/07/02(土) 19:02:29 ID:FBumvgpF0
『人の身に堕ちて学んだことがある。“研究”というものは実に楽しいものだな。どれ、
実験してみようか。一見無敵にも思えるそのテキオー灯とやらの効力にもいくつかの
弱点も推測される。例えば――――単純な“落下”という環境にも耐えられるのかな?』

デマオンの言葉にドラえもんの背筋が粟立つ。理屈ではない直感が危険を知らせる。
「ハッ!?マズい!出木杉くんとおじいちゃんにもテキオー灯を・・・・!」
あの雷をこちらに向けられては、テキオー灯の光を浴びていない二人はひとたまりもない。
「早く、早くこれを――――――!」
ドラは、あわててポケットを探り、テキオー灯を照射する。それはまさに間一髪であった。

『 神の裁き―――――“ エル・トール ”!! 』
再び奇怪な呪文。そして、わずかにデマオンが目配せしただけで、雷が要塞を直撃する。
それは、つまりドラ一行を容赦なく。そして、さらにデマオンの攻撃は続く。
『 “ 風 よ !!” 』
はじき飛ばされた一行に、容赦なく襲いくる激しい暴風。8人はデマオンの思うがままに
宙空に無防備に投げ出された。さしもの歴戦の一行もパニックに陥った。出木杉はドラの
とっさの機転で、なんとか瞬殺こそ免れたものの、依然気を失ったままである。
501ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 280:2005/07/02(土) 19:10:19 ID:FBumvgpF0
刹那――――フワリと風が舞った。デマオンが操る暴力的な風とは全く異質な―――
優しい、優しくて暖かい風――――――

膨大な魔力の復活とその恍惚に酔いしれていた魔王デマオン。
その傲慢なる闇の王は初めてわずかな動揺を見せた。
『む!?これは――――科学の力ではない・・・!我の力と源を同じくする――――――
“魔力”!?―――――――何者だ!?』

聞こえる。勇敢に戦い続ける戦士たちの体に。心に。天から舞い降りる美しい声明が
響き渡った。美しく―――気高く―――凛とした―――――――――――

―――――“ 我が名を呼べ!幼き勇士たちよ!! ”――――――

空中で死の恐怖にもがいていた、のび太とドラえもんがハッとして顔を見合せる。
「こ、この声は―――――――!?」
「み、みみみ、み―――――――――――!?」
『“美夜子”さん!!?』
二人の声が一致した。その名―――いや、“言霊”が唱和される。
502ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 280続:2005/07/02(土) 19:11:03 ID:FBumvgpF0
『ウ・・・!?ウゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?』
言霊の発現と同時に魔王が苦悶の咆哮をあげた。デマオンの胸が神秘的な緑色の光に包まれる。
天をも飲み込むかと思えるほどの巨大な口蓋から、緑色に淡く輝く光の玉が飛び出した。

『ウゴォ・・・!ガ、ガハァッ!!ハァッ・・・ハァッ・・・』
うめきながら、現れた光球をギロリと睨む。偉大なる闇の王の瞳が驚愕と怒りに揺れた。
『む――――!?き、貴様は―――――――――!?』

美しく幻想的な緑色の光はドラたち7人を優しく包み込み、そっと大地に舞い降りた。
呆然とする7人の最前に佇み、凛として叫ぶ美しき少女!偉大なる魔王デマオンを前にしても
なお、なんら臆すことなく睨み据え、決然と戦闘に名乗りをあげる。

「我が名は美夜子!“大魔道師”満月美夜子!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
503ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:2005/07/02(土) 19:25:22 ID:FBumvgpF0
今回分終了です。展開が慌しくて申し訳ありません。

>>455
むう、オシシ仮面とは・・・?と思いながらチラッと読み返してみると
デマオンの登場シーンがシシ神のダイダラボッチ化っぽく思えてきました。
ひょっとしてシシ神のことでしょうか?このシーンのイメージは知ってる
方おられるでしょうか、RPG「ボクと魔王」を少し意識しています。

>デマオンの言霊はラピュタのオマージュかな?
ああ、なるほど言われてみれば・・・。しずかかリルルあたりといっしょに
言わせてれば“まんま”そのシーンっぽかったかもしれないですねえ。

>>463
はい。ようやく再登場しました。これでだいぶ集まってきましたね。最終決戦に。
思えば美夜子さんは特に出すつもりもなかったのが、たしかふら〜りさんの
一言でなんとなく出してみただけだったのですが、いつのまにか重要っぽいキャラに
なってしまいました。まあ、デマオンとの因縁が最も強いキャラなんで当然
と言えば当然の話ですね。むしろ、出さない方が不自然だったかも・・・

後書きが無駄に長くなってしまいました。サラッと読み飛ばしてくださいませ。
では・・・
504作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 19:31:31 ID:Kz4VD5Hb0
うみにんさんお疲れ様です。
デマオンが使ってる攻撃はエネルのアレですよね?
1ページぶち抜きで凄い顔してるデマオン想像したら吹いたw
美夜子さんもカッコよくて素敵。
メドローアとか使ってほしい(さすがに無理かな)

オシシ仮面は多分ドラえもんの話で、オシシ仮面という漫画があって、

主人公オシシ仮面ピンチ→助っ人登場→助っ人やられる→ピンチ→助っ人登場(以下略

な展開が繰り広げられたっていう話だと思います。
505ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:2005/07/02(土) 19:51:26 ID:FBumvgpF0
>>504
おお、丁寧な解説感謝です。恐らく未読だと思うので今度探してみます。
エネルは、う〜ん。あそこで終わるにはもったいないキャラだと思いました。
最近いまいちなドラクエのラスボスにでも使って欲しいくらいです。
で、“大魔道師”はお察しの通り、ポップ&マトリフの肩書きからきてます。
なので一応メドロ―アも出せる展開や理屈をなんとなく考えてはおりますよ。
出すかどうかは全くの未定ですが。
506作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 21:00:33 ID:GqE2JKbn0
うみにんさんがオシシ仮面知らないとは少し以外だった。有名なAAもあるよ

>サナダムシさん
セルから見たらべジータもトランクスも強大すぎて一緒だと思うがw
クリスタル4つ集まる前にチリと化すか、パワーアップするのかわかりませんな。
連載も短編もうんこもw楽しみにしてます。こちらこそこれからもよろしくお願いします。

>うみにんさん
魔王対大魔導師ですか。いよいよ本当に最終局面ですな。楽しみだけど少し寂しい。
激闘の後に、どう出木杉が救われるのか、エンディングが今から楽しみです。
一気にドッとうぷして休んでの繰り返しだけど、今度はノンストップだと嬉しいな。
507作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 21:10:56 ID:y6zPCBy90
  .ト、.  /ヽ |\  /ヽ  /”゙ォv' .// // /
  |. ヽ./ | ヽ! .`、/  ヽ,/     '     /_  _
: --!          ,,,,, ,,,,,               ̄./
\      ,illllli,,,,,,,,, lllll llll               /
_ヽ    ,llllllllllllllll!' ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,             ̄ ̄ ̄''_,-
\    ,illll!' ,illll!'  !!!!lllll!!!!l゙`     ,,, ,,,     ,r-'''゙ ̄
  >   ゙゙゙゙' .,illlll゙    lllll|  llllllllll!!!!!  llll !ll! iiii,, <_.
/_   .,illlll'   ,,,,,,,llllll,,,,,,,,,,      ,,,iillll!!゙   >
 ̄/   ,llll!!'    lllllllllllllllll!!!l_      :ll!!!゙゙゜   <_
      (ヽ、 _ヽ、  )\     ヽヽ
     _ヽ、     ⌒  ヽ、     \\
     \ ̄     __    )ノ     ヽヽ
    ∠⌒     / )    ⌒ヽ     | |
     )   / ゙̄- く       \   ノノ
    /  /ノ^)___)ノl       ヽ_//
   /   //(/ !_|_|       ヽ三ヽ
   レヘ  |j(/l_/    |ノヽ      |──)
    ノ (/l_/  /⌒| | | |  !   |二 二ヽ
  /   |_/__| |  | -| | ノノ    ノ── 、)
  /    `───| | ノ -| |   |/(())   ヽ
 /⌒) ∧    ヽ/_//  /j()ノ_   (()) i
    // ノ     |_// / ̄ ̄`\ (())  j
      (ヘ       ̄   |   ヽ   \   /
       )/(/) / ⌒ |⌒ヽ |\  /i\ /|   )ヽ

いっぱいいすぎてどれが何仮面か分からないよ
これはオシシ仮面だっけ?
508504:2005/07/02(土) 21:15:49 ID:Kz4VD5Hb0
あ、ちょっと訂正。
主人公はオシシ仮面じゃなくてライオン仮面でした。
ちなみにオカメ仮面というのも出てきます。
509作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 23:03:16 ID:Dor+sjg70
うみにんさん、調子上げてきたみたいで嬉しいねえ
ラストまでこの盛り上がるのまま一気によろしく。

サナダムシさんはいつも確実に楽しませてくれるね。
うんこもよろしく。うんこ書かせたら日本一だ!


ライオン仮面とオシシ仮面、違いがよくわからんw
510作者の都合により名無しです:2005/07/02(土) 23:29:52 ID:s1TyjSlW0
>うみにんさん
地底出木杉帝国、盛り上がってきてますね。

ついに登場した美夜子さん。しかも大魔道師ですから
強大な力を得ているデマオンとはいい勝負をするのでしょう。
次回が楽しみです。
511ミドリ ◆5k4Bd86fvo :2005/07/03(日) 00:26:04 ID:0tQrbO6C0
ごきげんよう、皆様。お久しぶりです。
大変申し訳ないのですが、今月いっぱいは続きを書けそうにありません。
体力がない身としては、月200時間労働をこなしながらSSを書くことは出来ないのです…。
マリみての新刊も、サマサさんの影響で購入した戯言シリーズも読む体力すらありません。

途中でやめることはないので、気長に待って頂ければ幸いです。
続きもちゃんと考えています。
今まで待っていてくださっていた方、本当に申し訳ありません。

それでは、皆様、お体だけはご自愛ください。
ごきげんよう。
512作者の都合により名無しです:2005/07/03(日) 11:03:12 ID:Tz8UVp5o0
ミドリさん、のんびりとやって下さい。
お体を大切に。
513作者の都合により名無しです:2005/07/03(日) 11:30:10 ID:+DgN5+980
ゴリライモ?
514作者の都合により名無しです:2005/07/03(日) 13:53:21 ID:pvpmmYznO
うわああああああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああ
515ふら〜り:2005/07/03(日) 15:12:43 ID:xUGKAhUH0
>>ゲロさん
予告に違わず、なかなかの十八禁っぷり。直接的行為ではない、体は触らせないという辺り
が微妙。それが安い理由、というのがまたリアル。この先はその条件が変わっていく? と
想像が膨らみます。しかしモラルの低さに魔女狩りに、どんどん世界が重暗くなってますね。

>>サマサさん
初代ピッコロのキングキャッスル殴り込み、はたまた勇次郎の首相官邸襲撃か。圧倒的な
「単純な暴力」が迫力かつ爽快です。ずっとラーメン啜りながら、というのがペコたちに
とってはさぞ逆撫ででしょうね。こんなに強く悪く面白いのがあと十二人、楽しみです。

>>サナダムシさん
おとぎ話に時々あるパターンを思い出しました。鬼とか天狗とかを、舌先三寸でどうにか
するというもの。原作DBでも巨大マジュニアに対して悟空がやってましたが、このセル
は……でも実力では絶っっ対勝てない以上、知恵と勇気に頼るしかないわけで。頑張れっ。

>>うみにんさん
デマオンが思いっきり、巨大で凶悪な大魔王っ! して暴れているだけに……そんなとこ
へ舞い降りた天使が、何ともカッコよく美しく。「魔界大冒険」では挿入歌のイメージも
あって可憐な雰囲気でしたが、こちらは凛とした戦乙女。萌え&燃えます、この美夜子は!

>>ミドリさん
体力的精神的に辛い時期には、休める時にきっちり休むのが肝要というもの。いずれ、
時間に余裕もできましょう。SSを書くのは、休んだ後の「余暇の余暇」で充分。
その時が来るまで、お待ち申しておりまする。
516作者の都合により名無しです:2005/07/03(日) 18:36:10 ID:f5GqpJxV0
ミドリさん、完結させてくれるというだけで結構です。
お体に気をつけて、ごきげんよう
517手酌:2005/07/04(月) 01:14:11 ID:r8/MFY160
 孤独は人を癒やしてくれる。
 こうして独りぼっちで座っていると、過去に出会った人々や事件が思い返される。反省
しようが、後悔しようが、失われた時間が戻ってくることはない。むろん、それくらい百
も承知ではあるが。
 私は過去という美酒に酔いしれる空しさが、たまらなく好きなのかもしれない。
 だが、昔を振り返ってばかりもいられない。私はここへ立ち寄ったのは、実は他に用件
があったからだ。
「さて、出すもん出しちまわないとな……」
 ベルトを外し、ズボンを下ろす。尻が丸出しになる。
 私がいる所は、近所にある公園──に備え付けられたトイレだ。遊ぶ子供も多いので、
公衆便所のわりに干したての布団に似た清潔感が漂っている。もっとも、場末の汚い便所
などで、先ほど紹介した“遊び”になど興ずるわけがない。沸き上がる羽虫やら悪臭やら
で、精神を乱されてしまうからだ。

 ところが、使用中は原則的に開かぬはずの扉が、あっけなくも力ずくで開放されてしま
った。
「え……ッ!」
 驚愕する私などに介せず、狭い室内に乱入してくる二人組の白人男性。どちらも身長は
かなり大きい。特に片方は、頭頂が天井を突き刺すほどだ。
「ち、ちょっと何をする気だッ!」
 映画撮影、同性愛者、外国人犯罪者、凄まじい勢いで無茶な推論が浮かび上がる。中腰
で無防備な格好である私は、それほどまでに混乱していたのだ。
「ここならサイズの差はハンデにならない。むしろ、不利なのはそちら……」
「ふん、面白い」
 だが、私の予想は完璧に外れた。何故か、二人は殴り合いを始めてしまった。
 私は身を屈めながら、命懸けで見物する。初めは背が低い方が優勢だったが、壁をも突
き破りかねぬ右ストレートで形勢逆転。アッパーカットで気絶した小さい方の白人は、勝
者となった巨人に担ぎ上げられ、両者ともトイレから立ち去っていった。
518手酌:2005/07/04(月) 01:14:37 ID:r8/MFY160
 ひとまず危機は去った。
 怪力によって金属はひん曲がり、もはや鍵は役に立たない。これからは片手でドアを開
かぬよう押さえながら、用を足さねばならない。
「やれやれ……」
 手と肛門、同時に神経を使うのは結構しんどい。
 この困難な状況に私が辟易していると、突然眼前に金髪で筋肉質な男が立っていた。
「は……?」
「おっ、すまねぇ。ちょっと瞬間移動で来ちまったんだ」
「意味が分からん! 早いとこ出て行ってくれ、非常識だぞ!」
「いやぁ、今度の宇宙人がまた強くってさ。一度体勢を立て直すために慌てて瞬間移動し
たら、こんな所へ来ちまった。おめぇの気は小せぇのに、よっぽどオラ焦ってたんだな」
 初対面にもかかわらず、図々しくも軽快な口調で話し掛けてくる。どうやら、強敵から
避難するためにここへ現れたらしい。逆らっても無駄だと悟った私は、とりあえず彼と同
居することにした。
「おめぇ、大便してたんか。オラにかまわず続けていいぞ、もうすぐ出て行くから」
 と促されるが、続行する気になどなれない。どうも、私は異世界に迷い込んでしまった
らしい。せっかく出口に差し掛かっていた汚物たちも、すっかり引っ込んでしまった。
 やがて、男は礼を述べてから手品のように消えてしまった。
「一体なんだったんだ……」
 私は半泣きであった。
519手酌:2005/07/04(月) 01:14:58 ID:r8/MFY160
 鍵は壊れ、便も引っ込んでしまった。これ以上、ここに留まっている理由はない。
 中途半端な結末に欲求不満ではあるが、私はトイレットペーパーに手を伸ばす。もう終
わりにしよう。残存している汚物とは、自宅で再戦すればいいだけの話だ。
 だが、運命とは残酷なものだ。神は私にさらなる試練を与えてきた。
 ──何もない空間に、穴が発生したのである。
「ま、またかッ……!」
 穴の中にいるのは、耳がなく青色をした狸に、小学生くらいの子供が数名。
「なんか、変なところに出ちゃったなあ」
 私を無視し、頭をかく仕草をする青狸。
「タイムマシンは時間移動と空間移動が出来るけど、どうも空間移動の方が調子が悪かっ
たみたいだ」
 やはりここへ出現したのはミスだったらしく、弁解する狸。一方で、そんな狸を責め立
てる子供たち。そのうち、一人の少女が私を目撃してしまう。
「キャー! エッチーッ!」
 穴の中にいる赤面した少女は、私に向かって鉛筆を投げ付ける。芯は眉間に命中し、突
き刺さってしまった。
 流れる血で我に返った私は、大声で彼らを叱った。
「こら、坊主ども! 勝手に便所に入ってくるんじゃない!」
 すると、子供たちは謝りながら再び穴の中へと消えていった。
「いてて……。参ったぜ、まったく」
 幸い、傷は浅かった。いきなり見ず知らずの他人に鉛筆を投げるとは、とんでもない女
の子だ。だが、下半身が露出している大人を見れば、年頃の少女ならああいう対応をする
ものかもしれない。
 彼女の行動が正常か異常か、いくら考えても私には判断出来なかった。
520手酌:2005/07/04(月) 01:15:18 ID:r8/MFY160
 こうして、ようやく私はトイレから脱出することとなる。
 手を洗い、公衆便所を出る──と、そこはいつもの光景が広がる平和な公園だった。
 遊具に群がる子供たち、彼らを見守る大人たち。ベンチに座るカップルに、昼食を取っ
ているサラリーマン。日差しは良好、雲一つない晴天。
「やっと、現実(こっち)に戻ってこれた……」
 私は帰路についた。
 今日トイレにて、立て続けに起こった奇妙な現象。あれは一体何だったのか。
 だが、あれこれ考えても仕方ない。私の酒棚にまた一つ、新しい酒が加わったというだ
けの話だ。

                                   お わ り
521サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2005/07/04(月) 01:16:08 ID:r8/MFY160
うんこSS……というより、トイレSSです。
こちらの方が期待されてるようなので、少し専念してみるつもりです。
何せこういうコテハンなもので……。

今回もどっかの誰かが主人公です。
どう漫画キャラを絡ますかが難しく、やはりそれが課題ですね。
522作者の都合により名無しです:2005/07/04(月) 01:26:36 ID:ffee1RKU0
恐ろしい。なぜウンコネタだけでここまで豊富なバリエーションが組める…
シコルや悟空たちもまさかウンコネタになるとは思わなかっただろうw

不完全セルゲームともども、続編も期待してますw
523作者の都合により名無しです:2005/07/04(月) 21:40:22 ID:MpM3/QgF0
うんこというより、それに付随するストーリ物でしたね。
描写もそれほどドぎつく無かったし。シコルとジャックの名場面に笑った。
これシリーズ化決定ですか?w楽しみですが、セルゲームもよろしく。
524ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/05(火) 16:05:24 ID:vXzvZ7XX0
プロローグ4「因縁」

タイムマシンの発明により、必然的に発生し始めた時間犯罪。
それを取り締まるべく生まれた組織―――タイムパトロール隊。
そのタイムパトロール隊極東支部基地の廊下を一人の男が鼻歌交じりに歩いていた。
彼の名はムウ・ラ・フラガ。やや癖のあるタイプの人物で、性格に少々難ありと見られているが、その実力は
誰もが認める、凄腕の隊員である。
そんな彼は向こうからやって来た隊員―――なんとそれはピンクのイルカだった―――に陽気な声で挨拶する。
「よお、ルフィン!これから仕事かい?こないだキャッシュとDrクロンなんて大物を捕まえたばっかなのに
ご苦労なこったな」
(こんにちはムウさん。あなたこんな所でのんびりしてていいんですか?部長がカンカンですよ)
その声は直接頭に響く。ムウは苦笑して答えた。
「ありゃ、いっけねえ!こりゃ完全に遅刻だな。こうしちゃいられねえや。それじゃお互い頑張っていこうぜ!」
(ええ、お気を付けて・・・部長は怒ると怖いですからね)
「ちぇ、嫌なこと言うなあ・・・ま、いいさ。怒った顔も可愛いからね、彼女は」
冗談めかして言うと、ムウは小走りに長官室へと足を進めた。

「―――10分23秒の遅刻です、フラガ隊員」
部屋に入ると同時に冷たい声が襲い掛かる。彼女はナタル・バジルール。極東支部長の秘書である。
美人なのにこんな鉄仮面でもったいない、などとムウはやや不埒な事を考えて苦笑した。
「何を笑ってるんですか!きちんと反省しなさい!」
「はいはい・・・」
気のない返事にナタルは眼を吊り上げ、彼女の後ろにいた支部長―――こちらも若い女性であるマリュー・ラミアス―――
はふうっと溜息を吐いた。
「ほんとにあなたって人は・・・。そんなだから腕は確かなのにいつまで経っても平隊員なのよ」
「お、心配してくれてる?」
「呆れてるんです!」
マリューは声を荒げるが、ムウはどこ吹く風、という具合に聞き流す。
はあ〜〜〜っとわざとらしい大きな声でもう一度溜息を吐き、マリューはムウに対し指令書の入った封筒を手渡した。
「ふむ、これが今回の任務ってわけね。どれどれ・・・」
525ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/05(火) 16:06:06 ID:vXzvZ7XX0
軽い調子で封筒を開けるムウ。だが、出てきた資料を見た瞬間、彼の顔が厳しく引き締まる。さっきまでのおどけた
態度は、もはや完全に消えている。
その目は指令書と共に入っていた三人の男の写真に釘付けになっていた。
その男達はいずれも名の通った時間犯罪者だった。中でもムウの目を引きつけたのは、無機質な仮面を被った男だ。
「・・・<狐>。シュウ・シラカワ。そして・・・」
「ラウ・ル・クルーゼ」
ムウの呟きを制してマリューが続ける。
「クルーゼはあなたにとって―――因縁の相手でしょ?」
「・・・ああ」
ムウは厳しい顔付きのまま指令書をめくり続ける。普段の彼からは想像も出来ない熱心な様子に、マリューもナタルも
口を挟めない。
「・・・この三人が20世紀に潜伏している可能性が大きい・・・か・・・成る程ね・・・」
そして、指令書を読み終わったムウは、そのまま踵を返す。
「ちょ、ちょっと待って、フラガ隊員・・・」
「引き受けますよ、この任務。・・・やっと奴の尻尾を掴めたんだ。これを逃がしてなるものか」
「・・・・・・」
「それじゃあ俺の<エグザス>の用意が出来次第20世紀に向かいますんで―――後は宜しく頼みましたよ」
彼はそう言い残し、軽く手を振って部屋を出て行った。

<エグザス>。一言で表すならば<戦闘機型タイムマシン>である。
しかし、普通の戦闘機よりは明らかに巨大で、重厚な構えだった。
さらに背面に設置された<ガンバレル>と呼ばれる特殊兵装―――これはあまりに扱いが難しいため、タイムパトロールでも
使えるのはムウだけであった。
それゆえ、この<エグザス>は、実質ムウ専用機と化している。
「さて、行くとするか・・・」
そう言って背筋を伸ばした時だった。
526ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/05(火) 16:06:48 ID:vXzvZ7XX0
「―――フラガ隊員」
振り向くと、そこにいたのはマリュー・ラミアスだった。
「やあ、どうしたんだい、美人さん?お見送りのチューでもしにきてくれたのかい?」
そんなムウのセクハラまがいの軽口を「バカね」とピシャリと断ち切り、彼女は言う。
「―――この任務を、本当に受けるの?あなた一人で?」
「ああ」
「危険よ。せめてもう少し考えてから―――」
「いちいち考えてちゃ遅いかも知れない。善は急げさ」
「けれど―――」
言い募る彼女を置き去りにする形で、ムウはエグザスのコクピットに乗り込む。
「ちょ、ちょっと!」
「心配しなさんな―――なんたって俺は、不可能を可能にする男だぜ?」
そう言って不敵に笑う。
「帰ったら大手柄でボーナスも大盤振る舞いで出るだろうからな。洒落たレストランでディナーでも一緒しようぜ」
そしてムウは時空移動機能を作動させる。瞬時にエグザスは亜空間へと消える。
「・・・ムウ」
彼女は自分があの男を名前で呼んだことには気付かなかった。

「・・・クルーゼ」
ムウは亜空間で一人呟く。その目に妄執にも似た光を宿して。
「待っていろ・・・俺が貴様に引導を渡してやる!」
527サマサ ◆2NA38J2XJM :2005/07/05(火) 16:11:16 ID:vXzvZ7XX0
投下完了。
種キャラはこれで打ち止めの予定。

>>ミドリさん
戯言買ったとは驚き&嬉しいです。マリみてとはかなり方向性は違いますが、面白い小説なので
気に入ってほしいです。
続きは気長に待ちますので、気長に頑張って下さい。

>>489さん
一応十三人全員決まってます。まだ出てない分は変更あるかもしれませんが。
528作者の都合により名無しです:2005/07/05(火) 21:59:34 ID:HEllWs+W0
俺こういうキャラがいっぱい出る話好きだな
529作者の都合により名無しです:2005/07/05(火) 23:13:41 ID:KGWSgiFa0
むう、種のキャラは全然知らないが萌え要素は高そうだ。
でも、たくさんキャラ出てきてるけどまとめられるのか?
ま、神界でも見事に物語を着地させたサマサさんだから心配ないか。
でも、まだどらえもんキャラやプリムラたち動き出さないね。

ところで!日本一のウンコネタ職人のサナダムシさん、
現在好評連載中のセルゲームが終わった後、うんこで長編とかはどうっすか?w
ごめんごめん、マジで受け取らないでねw今回の短編も見事な出来でした。
セルゲームの続き楽しみにしておりますよ。シコルスキー風味のセルがとにかく可愛い。
530作者の都合により名無しです:2005/07/05(火) 23:34:40 ID:Qhz9cHIq0
お、ナタルさん出た。チョイ役っぽいけど。
でも種で唯一好きなキャラだから嬉しい。
531作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 06:05:12 ID:Wd6nm8ad0
キルマーはそれから2年後に死んだ。
あの戦いから4年たった今じゃ思い出す回数もずいぶんと減った。
みんなとはリキア統一されてからはなかなか会えていない。
最後に会ったのはもう1年も前かな。
一撃ザッパは打撃を買われて日ハムに
ドラフト7位で入団した。バーサーカー初のプロ野球選手だ。
早くも番長とか呼ばれて来シーズンは開幕スタメンらしい。
チャドはエトルリアで浪人生やってる。行きたい大学があるそうだ。
ガントはあの後パパになっちまってオメデトウというか
なんというか‥‥がんばれ。
ジェニーとジードはオレに取り付いてる。
今もオレの背後にいる。
五日に一日は金縛りにしてくれるオソロシイ悪魔だ。
ダナンとマンセルは店を出したらしい。
セシリアおばさんは魔導軍将やってる。。まだ独身だ。
ランスはエトルリアの首都でホストをやっている。
チョンマゲのくせに生意気だが大都会でぜひ一旗揚げてほしい。
ニイメばあちゃんは刑務所ん中だ。
まあ闇魔法の使い手ならそう珍しいことでもねえ。
ゴンザレスはトラックころがしてる。
クルザードは店長になって時々賞味期限切れの弁当を
ゆずってくれる使えるヤツだ。
それともう一人ファ‥‥‥は知らん。

そしてオレは今‥‥
いろいろあって子爵やってる。
そしてティーナと結婚することになってやたらみんな盛り上がってる。
オレにあこがれるのはわかるがちょっとうっとおしい。
オレはあれから竜の力は解放していない。
‥‥でもよ、キルマー。オレは最近思うんだ‥‥
また 竜化してー‥
532作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 06:05:47 ID:Wd6nm8ad0
ひええ、誤爆・・・。
すいませんでした。
533作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 06:46:20 ID:8rvUh+EOO
萌え要素って…

おぇぇ…
534作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 10:46:36 ID:MxTQc0JH0
あ、電波歌姫やDQN国家元首は出ないのね>超機神大戦
ちょっと安心した。でもディアッカはチョイ役でもいいから出してほしい。
535作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 12:28:53 ID:cCyK2uoR0
シードって有名なのか。一度調べてみよう。
(ファースト以外ガンダムじゃねえ!派なので…)
サマサさん、これからも頑張って下さいね。

ところで、ゲロさんの元ネタの「魔女」って漫画が
漫画喫茶で見つからない。マイナーなの?
536作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 13:50:20 ID:x9AZ/AWe0
>>535
ファースト好きならやめておけ。種はガンダムじゃねえ。
けどNBさんの例もあるし、サマサさんには期待してるよ。
537作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 16:05:09 ID:pN3dK83R0
Gガン以外見た事の無い俺はどうでしょうか?>種
あとサナダムシのSS、あのレベルなら許容できるな。
538作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 16:08:32 ID:7SZR37rP0
1stの改悪版だからな、SEEDは。
1st原理主義者が見ても怒りが沸いてくるだけだろう。
539作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 16:56:54 ID:2Sc8ncGQ0
えとね。種はね、見たいならボンボンの漫画版にしとけ。うん
540作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 17:57:38 ID:E28bT0Qk0
ただのキャラ萌えアニメだろ?
541作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 19:30:27 ID:BFNcyR2YO
SS楽しみなんだから萎えること言わないでくれない?
なんか種は叩いとけみたいな風潮嫌いだ
542Iron Fist Tournament:2005/07/06(水) 21:54:42 ID:ODpYDKEv0
プロローグ
夏。その季節は一年の中で人々が最も活発になる季節。
気温は上がり、真夏日が続く事もある。そんな中、一人の高校生が道を歩いていた。
「へっくし!」
少年、遠野志貴は大きなくしゃみをした。くしゃみなど誰でもする事で気にすることでもない。
だが今回は違った。突然、彼を目眩と立ちくらみが襲ったのだ。フラフラになり電柱によりかかる。
「はぁ。」
タメ息をつき、呼吸を整える。こんな事は普通はない。自分の血筋の事を知ってから色々
物騒な事が起こったがそれももう収まっているはず。ストレスや疲労もない。ならば自分の
側によからぬ物があるという事だ。まさか。「彼女」を初めて目の当たりにした時と同じ事が起こっているのか。
仕方ない。やるか。志貴はいつも携帯しているナイフを取り出した。折りたたみ式のナイフで果物ナイフよりは
大きい。そして彼は眼鏡を外した。途端に彼の視界に奇妙な線が現れた。特殊な眼を持つ者だけが見える
「死の線」
周囲を見回し、耳を澄ます。不審な要素はまったく見つからない。一歩動く。何も起こらない。
だが誰かに見られているような感じがする。
「遠野志貴だな。」
声がした方を振り向く志貴。数メートル程前には男が立っていた。ポマードをつけたような黒髪に
スポーツパンツという出で立ちの男だった。志貴は男が一歩こっちに近づく度に頭痛がひどくなる
のを覚えた。
「一緒に来て貰おうか。」男が志貴に呼びかけた。
危険が目の前にある。今は逃げた方が得策だろう。だがこの男は執拗なまでに追ってくるだろう。
どれほどの距離を取ろうが見失うまで追ってくる。ならば相手の足を奪おう。
「断る!そして!」
落ちていた石を相手の顔目掛けて投げ、前に走り出す志貴。石が相手の顔に近づくのと志貴が
突きを繰り出すのは同時だった。直後、志貴は顎に衝撃を覚えた。
「甘いな。相手の視界を奪った後攻撃。三島流喧嘩空手はそれに遅れを取るモノではない!」
言いながら石を握り壊す男。薄れゆく意識の中で志貴は思った。誰なのだ。この男は。
魔族の類か?それとも真祖なのか。
「俺の名は三島一八(みしまかずや)だ。覚えておけ。」
一八は気絶した志貴を肩に抱えるとその場を後にした。
543Iron Fist Tournament:2005/07/06(水) 21:55:07 ID:ODpYDKEv0
第一話 出発

中国大陸奥部 ヒマラヤ山脈 午後2時
「どうしても行くというのか。」
「はい。ここで学んだ事を存分に生かしたいと思います。」
「奴等との戦いは長い事続いておる。我らが持つ術はすべてその為に作られたモノじゃ。」
一人の老人と一人の少女が話していた。二人とも正座をして向き合っている。
「お前はこの10年間家族の元を離れて波紋法の鍛錬をして来た。本来ならば
子供を守る為にワシらが戦うはずなのじゃが若い衆は山を降り家族を養うために
働いておる。屈強な男達で頭も働くのじゃがな。」
「老師。私、静=ジョースターは世界を、人々を守る為に戦います。心配なさらないでください。」
数時間後、静=ジョースターは山を降り、飛行場に向かう汽車に乗る為に最寄りの町へと向かった。


アメリカ ロスアンジェルス カリフォルニア州 

照りつける様な日差しの下、人々は街中で活発に動いていた。
あまり湿気がないのが唯一の救いだろうか。気温が高い為、人々は自然と日向を避ける様になった。
一人の男が空手道場に向かって歩いていた。アメリカでも空手は盛んでありプロの選手から護身術を
習う者まで大勢いる。彼の表向きの目的もその他大勢と似たような者だった。
「押忍!」
掛け声と共に演舞を終わらせる男。男がこの道場に来てから数週間が経つ。基本的に空手の昇級制度は
試験に合格した者のみ昇級を許すというモノなのでいくら優れている人間でもまずは9級からという事になる。
彼はまだ白帯だった。その日は偶然彼一人しか来ていなかった。
「たのもう!」
突然ドアがガラリと空き、一人の長身の日本人が現れた。他流派の道着を着ており、腰をおろし胡坐をかく。
誰がどう見ても道場破りである。
「誰だ・・・お前は。」道場破りに話しかける白帯の男。
「俺の名は武藤竜二。世界中の強者共と試合をする為に来た。」
「俺は風間仁。師範代も師範もいないが俺が相手だ。来い。」
二人の間で火花が散り始め、空気が歪んで行く。二人が突っ込むのは同時だった。
544Iron Fist Tournament:2005/07/06(水) 21:55:42 ID:ODpYDKEv0
今回の投稿はこれで終わりです。
545作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 22:19:44 ID:pN3dK83R0
乙。
新規の方ですか?
546作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 23:35:32 ID:6SnT+z+yO
あとがきからしてユルかと
547ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:2005/07/07(木) 02:45:38 ID:tZsrg75j0
>>513
SS投下直後に失礼します。ゴリライモじゃなくてかば夫くんでしたね。
すみません。バレ様、「ゴリライモ」→「かば夫」で修正お願いします・・・
箇所は>>496です。素で間違えてました。
548作者の都合により名無しです:2005/07/07(木) 05:15:21 ID:67g0jSvOO
>>546 格ゲーキャラ(風間仁)を使うような奴で「今回の投稿〜」と言えば








549作者の都合により名無しです:2005/07/07(木) 07:04:35 ID:lzGJjL8w0
>Iron Fist Tournament
いや、期待してるよ。がんばれ。
武藤竜二ってヤンマガのやつだよね?
トーナメントというからには、16人位は参加者いるのかな?

次スレテンプレ、470KBあたりで作ります。あと作品2本くらい?
550作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 01:07:49 ID:4n3wSmIF0
結構、今スレで作品の入れ替えあったね。
551作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 03:21:01 ID:NELTkQHNO
種を擁護するわけじゃあないが、ザクがまかりとおってる時点で(ry
552ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/08(金) 11:57:13 ID:1uywalzQ0
プロローグ5「悪」

そこは、人と人ならざる者が仲良く暮らす世界―――
<人間><神族><魔族>。三つの種族が交じり合う場所。
そんな世界のごく平凡なとある街に、二人の男が立っていた。二人とも顔立ちはかなり端正で、道行く人々は
女性ならば顔を赤らめて注視し、男性ならばそんな二人にやっかみ混じりのギスギスした視線を送っている。
しかし当の二人はそんなことはどこ吹く風とばかりに何やら話し込んでいた。
「しかし君の頭脳には驚かされる。こうもあっさりと次元の壁を越え、異世界へと入り込んでしまうのだからね」
「誉めても何も出ませんよ。それよりも・・・」
「・・・うむ、例の三人と接触する役目は、私に任せたまえ」
サングラスに仕立てのいいスーツを着た30歳前後と見られる男が手の平の上で紋様の入った青い石を弄くりながら言う。
もう一人の若い男も答える。
「ええ、私はこの世界でやっておかなくてはならないこともありますので。正直助かりますよ、礼を言います」
「ふん、礼などいらんよ。同じ<十三階段>のよしみさ。・・・まあ、お互いにやるべきことはきちんとやらねば。
なあ、シュウ?」
「あなたの仰る通りです、ムスカ。・・・では、私はこれで」
そう言って若い男は去っていく。残されたサングラスの男―――ムスカも彼に背を向けて歩いていく。
その口元に、狂気を含んだ微笑を浮かべて。

「・・・ちょっとー、聞いてるの、稟ちゃん!」
「ええ、聞いてますよ。机の裏にキノコが生えてきたんでしょ?清潔にしとかないから・・・」
「りん、全然聞いてない」
―――談笑する三人。土見稟、時雨亜沙、そしてプリムラ。
あの事件の後、何となく三人で行動することが多くなった彼らは、休日に買い物―――というより亜沙による
ワンマン買い物ツアー―――をしに街に出ていた。
騒がしくも微笑ましい日常の一コマ。稟は思う。
ああ、今日はいい日だ。こんないい日が続くように―――。
「土見稟、それに時雨亜沙にプリムラ―――だね?」
そこに、突如投げかけられた言葉。三人が振り向くと、そこにいたのはあの男―――ムスカ。
553ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/08(金) 11:58:01 ID:1uywalzQ0
「はい、何でしょうか?」
警戒しながら答える稟。さっきまでの気分に水を差されたせいもあって、やや口調は厳しい。ムスカはそんな彼を
嘲笑うかのような軽い口調で語りかける。
「君も男ならもう少し堂々としたまえ。レディーの前だぞ?」
「ちょ、ちょっと!何なんですか、あなた、いきなり。失礼すぎるんじゃないんですか!てゆうか、なんでボクたちの
名前とか知ってるんですか?」
亜沙が見かねて割って入る。ムスカは彼女を眺め、ククッと声を漏らした。
「はっはっは、これは確かに失礼だった。私としたことが、名前も名乗っていなかったね。―――私はムスカ。
<十三階段>八段目、ムスカだ」
「じゅうさんかいだん?」
なんだそりゃどこぞの売れない怪奇漫画家かよ早く原稿仕上げないと拙いんじゃないんですかいと稟は思ったが、
ムスカは構わず続ける。
「君たちのことならよーく調べてある。例えば―――巨大ロボットに乗って戦ったこととか、ね?」
「――――――!?なんで―――そんな事を―――」
三人は驚愕する。その事を知っている者などそうはいない。ついでに言えば、その中にはあれこれ吹聴するような
人物もいないのだ。それなのに――――――
「別に驚くことじゃないよ。調べようと思って調べられないことなどないのさ」
笑う―――ムスカは、笑う。
「こんな天下の往来で立ち話もなんだな―――どこか喫茶店にでも入ってゆっくり話さないか?私が奢らせてもらうよ」
「―――ふざけ・・・!」
「君がうんと言ってくれないと困るんだがね―――手荒なことはしたくないが」
そう言ってムスカはスーツを少しはだけさせ―――そこから覗くモノに稟たちは思わず唾を飲み込む。
それはピストルだった。玩具などでは絶対にない凶悪な拵えの鉄塊―――
「なあ、どうかうんと言ってくれないか―――でないと、君の友人が明日にでも二、三人―――ゴミのように
死ぬかもしれないぞ?」
「・・・・・・っ!」
「り、稟ちゃん・・・」
「りん・・・・・・」
怯える二人を庇うように一歩進み出て、稟はムスカと対峙する。
554ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/08(金) 11:58:40 ID:1uywalzQ0
「用件は―――何なんだ」
「そう怒るものではないよ、土見稟。私としては穏やかに話し合いたいんだ―――そう、例えば―――
私は野比のび太やドラえもんのいる世界から来たんだ、とかね」
「・・・何だって?」
思わぬ所から出てきた名前に―――稟たちは絶句する。野比のび太―――それにドラえもん、だと?
しかも―――あいつらのいる世界から来た?
「君らにとっては、忘れがたき名前だろう?話だけでも聞く価値はあると思うがね?」
「・・・分かったよ。話を聞こう」
ついに稟はそう決心した。得体の知れない男ではあるが、少なくとも自分達にいきなり危害を加える様子はない。
何より―――こいつは、のび太のことを知っている。そして、これは自分の勘だが―――
こいつは、のび太に対し、なにか良からぬ事をしようとしているのかもしれない。
「うむ。そう来なくてはな。―――おや?」
ムスカは稟の後ろにいるプリムラを見て、顔を歪めて笑う。
「そんな怖い顔で睨まなくともいいじゃないかね。せっかくの可愛い顔が台無しだよ?心配するな、こう見えても私は紳士だ。
何も取って食おうというわけじゃない」
「―――あなたは」
プリムラは前に出て、ムスカを睨みつける。彼女の中で恐怖心や警戒心を圧して怒りが湧き上がっていた。
「あなたはのび太に―――何をするつもりなの?」
ムスカはその問いに、答えない。ただ、薄笑いを浮かべるだけだ。
「まあ、そう急くな―――紅茶でも飲んで、ケーキでも食べて、ゆっくり話そうじゃないか」
そして四人は手近な喫茶店に入り、それぞれ注文したものが来たところで、ムスカは唐突に口を開いた。
「さて、私が―――というか、我々の目的から話そうか?それが一番気になっているだろうからね」
「さっさと話せよ」
「やれやれ・・・目上の人間に対する言葉使いがなってないな。それでは社会に出てから困るぞ。・・・おっと、
そう睨まないでくれ、話すよ、話す。我々はね、実は―――野比のび太達五人を、殺そうと思っているんだ」
あまりにもあっさりと放たれた言葉―――それを聞いた時―――三人の背筋を、すうっと冷たい物が走り抜けた。
殺す―――誰が、誰を?こいつが―――彼らを?―――のび太や―――ドラえもん、あいつらを?
考えるよりも先に身体が動き、稟はムスカの胸倉を掴む。だが、ムスカは平然としたものだ。
555ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/08(金) 11:59:43 ID:1uywalzQ0
「そう怒りっぽいと色々損をするぞ?まあ聞け、君らは当然、助けたいと思うよなあ?―――大事なお友達、
だものなあ?」
「―――当たり前だ。なんであんたが―――あんたらか?そんな事をしたいのか知らないけど、あいつらは俺たちの―――!」
「だが君らには、野比のび太の世界へ行く方法はない。それでどうするのかね?」
「――――――っ!」
稟は唇を噛み、ムスカを睨みつける。そんな彼にムスカは冷ややかな一瞥を送り―――
「行かせてやろうか?その世界に」
「・・・え?」
「我々にはその方法があるのさ―――次元の壁を超え、異なる世界へと入り込む術がね。我ら<十三階段>の大半も、
そうして数々の異世界を巡って集められた。そして我々の、まあ一応統率者である<狐>は、野比のび太達を
ただ殺すだけでは駄目だと考えていてね―――彼らの側にも味方をある程度与えておきたいそうなんだ。
何故わざわざそんなことをするのか、理解に苦しむのだがね」
「―――なんだよ、それ―――ゲームか何かのつもりなのか、その<狐>ってのは!」
「いやいや、恐ろしいことに全然そんなことは思っていないんだ、彼は。真面目も真面目、大真面目さ」
「まじめでもなんでも―――」
突然、プリムラが口を開いた。
「のび太や青玉を殺すなんて―――許さない」
その言葉に込められた静かな迫力に、稟と亜沙は顔を強張らせ―――ムスカも何か思うところがあるかのように眼鏡を弄くる。
「そうだよ―――どんな理由があったってあの子達を殺すなんて、ボクだって許せないよ!」
亜沙も背中を押されたように力強く言い放つ。
「ふむ―――では君たちの意見は一致しているようだね。よかろう」
ムスカは伝票を持って立ち上がる。
「では今夜―――そうだな、十二時くらいでいいかな。その時に三人でどこかに集まりたまえ。人目につかない場所なら
どこでもいい。そしたら私の仲間が勝手に見つけてくれる。後は彼に着いて行けばよろしい」
そしてムスカが席を離れようとした時―――
556ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/08(金) 12:00:36 ID:1uywalzQ0
「・・・おや、何かまだ言いたいことでもあるのかな、お嬢さん?」
自分を未だに睨みつけているプリムラに対し、ムスカはおどけた様子で問う。おそらく自分で分かってやっているのだろう、
人の神経を逆撫でする口調だった。
「私は・・・」
プリムラは言う。
「私はあなたみたいなひと―――大嫌い」
「そうかい?私は君のようなお嬢さんが大好きだがね?それにしてももっと喜ばないか。大好きな友達との
再会が叶うんだぞ?感謝してほしいくらいだがね」
くっくっとムスカは嘲けるように笑う。その笑みは・・・悪魔もかくやというほど、邪悪だ。
稟はその笑みを見て理解する―――これこそが。
これこそが<悪>という概念だと。
ムスカはそのまま振り返ることもなく支払いを済ませ、出て行った。後には稟たち三人だけが残された。
「・・・なんだってんだ・・・!何でこんな・・・」
稟は苛立ちを隠そうともせず呟く。
―――あのムスカとかいう男の言う通りなら、自分達はまた―――あいつに、のび太に会える。
だがそれは、のび太達に危険が迫っているということ―――
「だったら―――」
稟は決意した。そして亜沙とプリムラを見る。彼女達は、稟の言いたいことを理解し―――頷く。
「俺たちはみんな、のび太達に助けられた。今度は俺たちが―――あいつらを助けるんだ」
557ドラえもん のび太の超機神大戦:2005/07/08(金) 12:16:01 ID:1uywalzQ0
投下完了。
前回は>>526から。
5回で連投規制か・・・きつい。何分くらいで解けるのか・・・。

ムスカの<悪のダンディズム>とも言うべきいやらしい格好よさが上手く表現できない・・・。
宮崎駿監督は偉大です。

>>顔立ちはかなり端正で、道行く人々は
女性ならば顔を赤らめて注視し、男性ならばそんな二人にやっかみ混じりのギスギスした視線を送っている。

この一文、NBさんの作品にもほぼ同じ表現があったと思います(確かクリードが出てくる場面)が、使っちゃいました。
気を悪くされるかもしれないので、この場を借りてお詫びします。
558作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 17:59:45 ID:pT1ZDwK70
至極ありきたりな表現だからいちいちことわる必要なんか無いと思うがなぁ
559ふら〜り:2005/07/08(金) 19:35:53 ID:SytrFmFW0
>>サナダムシさん
トイレ、というお題からバキ・DB・ドラまで絡ませてしまうその手腕にまず脱帽。訪問
者たちは素直に原作準拠で動いてるだけなのに、巻き込まれた一般人は大パニック。なぜ
なら彼は排泄中だから……と。一風変わった多重パラレルストーリー、お見事でした!

>>Tournamentさん
タイトルからして、鉄拳……がメインの舞台になるんでしょうか? できれば登場キャラ
の解説を頂きたいです。今のところゲームキャラと漫画キャラが集結しつつあるみたい
ですが、バキやKOFとかも出てくれてトーナメント、なら嬉しいんですが。はたして? 

>>サマサさん
いやいや、充〜分過ぎるほど味わい深く出てますよ、ムスカのムスカらしさが。はっきり
「敵」だと名乗っているのに、その「敵」に頼らないと「敵」の魔手から仲間を守ること
ができない。稟たちのどうしようもない、もどかしい逆撫でられっぷりが伝わってきます。
560作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 21:47:13 ID:kxfedATH0
サマサさんお疲れ様です。
ついにプリムラたち出て来ましたね。
と、いうことは次回でいよいよドラたちの登場かな?
ムスカってラピュタですよね?
宮崎作品あんまり観ないから、ちょっと最初わからなかったw
561作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 21:52:53 ID:0dMwdv9O0
ムスカは宮崎作品で1番ネタにされやすいキャラだな
562テンプレ1:2005/07/08(金) 22:44:08 ID:kxfedATH0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart27【創作】


元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇
SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart26【創作】  
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1116060734/
まとめサイト 
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm

563テンプレ2:2005/07/08(金) 22:45:33 ID:kxfedATH0
ほぼ連載開始順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

ドラえもんの麻雀教室(VS氏)
 http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/gateway.html
ドラえもん のび太の地底出来杉帝国(うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dekisugi/01.htm
ザク(ザク氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/zaku/01-raou.htm
超格闘士大戦(ブラックキング氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kakuto/01.htm
ディオの世界(殺助氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dio/01.htm
虹のかなた(ミドリ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
オムニバスSS劇場(バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
忍者の証(青ぴー氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/aopi/01.htm
バキ外伝 デスゲーム(五氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/death/01.htm
564テンプレ2:2005/07/08(金) 22:46:29 ID:kxfedATH0
Z戦士への入門(Z戦士氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/z-fighter/01.htm
鬼の霍乱(名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/oni/01.htm
黄金時代(銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ginnan/01-1.htm
不完全セルゲーム(サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/sanada/08-1.htm
北の果てより(パオ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/kita/01.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
人鬼と野生(名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/majyan/01.htm
魔女(ゲロ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/gero/wi-01-1.htm
ドラえもん のび太の超機神大戦 (サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/04-01.htm
Iron Fist Tournament (名無し氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1116060734/542-543
565テンプレについて:2005/07/08(金) 22:48:32 ID:kxfedATH0
ユル氏と草薙氏が3ヶ月以上連絡無いのでリストから外しました。
勿論、復活を待ってます。
あと、銀杏丸氏とZ戦士氏、五氏もぎりぎりです…。
連載開始順に大体なっていると思いますが、少し間違ってるかもw
他は大体あっていると思います。
566作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 23:26:28 ID:rOYb5Jlv0
ムスカのフルネームってどんなだったっけ?
567作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 23:36:19 ID:0dMwdv9O0
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・
マリア・デ・ロス・レメディオス・シブリアーノ・センティシマ・トリニダード・
ルイス・イ・ムスカ
568北の果てより:2005/07/09(土) 01:36:54 ID:SDcJbsFf0
北の果てより 『第三話 ソンミ』>>442

シコルスキーは瞼に涙を貯めながら、救いを求めるようにガイルに視線を投げ掛けている。
冷水で十数分も手を扱き続けていたのだろう。
本来は白い柔肌の掌が、血の色のように真っ赤に染まっている。

嫌な沈黙が破られる。シコルは視線を外すと、再度蛇口に手を出そうとしたのだ。
「馬鹿野朗、凍傷になりてえのかッ」
ガイルは一喝し、同時にシコルの頬を張り倒した。力無く崩れ落ちるシコル。
シコルは頬を手で摩る。半ば放心状態のまま、目は虚ろで抜け殻のようである。
ガイルは気付いた。いや、気付いていた。
どれ程飛び抜けた能力を有しようと、目の前の少年は12、3歳の子供に過ぎない事を。
気付かない振りをしていただけだ。否、当然それはガイルだけでなく、皆知っている。
この少年が、泣きもすれば笑いもするただの少年という事を。

だが、敢えてガイルも、他のレジスタンスの面々もそれに触れなかった。
ほんの数十人の、軍備も心許ない素人の集まりの軍である。
結束が崩れれば即、それは終焉を意味する。
この半端物の軍の結束を維持するには、強力な求心力が、カリスマが必要なのである。

自分は所詮、アメリカから来たよそ者の傭兵だ。
どれ程キャリアがあろうと、精神的な支柱にはなれやしない。
そうガイルは判断している。だからといって、誰でもカリスマ性を持っている訳ではない。

この小さな軍の中で、たまたまこの少年が有していた。
類い稀なるカリスマ性と、底知れない戦闘センス、高い知力という、リーダーの資質を。
だから皆で祭り上げた。
彼を、13歳の少年を、このレジスタンスのリーダーに。革命の英雄に。精神的支柱に。
そして、……生贄に。
569北の果てより:2005/07/09(土) 01:37:54 ID:SDcJbsFf0
(どこの世界の戦争も、若い奴から死んでいく。クソッタレが)
ガイルはそう心の内で吼えた。そして静かにシコルの頭を撫ぜて、優しく言った。
「取れやしねえよ、その臭いは。俺も、骨の髄まで染み込んでやがる。だがな」
シコルの目に光が戻った。そしてガイルの次の言葉を待つ。

「だがなシコル。その臭いを背負わなくちゃいけねえんだよ。俺たちはな。
戦場の人間として。辛い事だが一生、な。 …だから、俺たちの所で止めようや」
「俺たちで、止める?」
「ああ、こんな臭いも、人殺しの宿命も、革命も…。次の人間に渡しちゃいけねえ」
シコルは思案顔で沈黙している。その顔を見ながら、ガイルは心を痛めた。
本当なら、この少年も『次の』人間の一人だろうに。
これほどの才能があるならば、欧米で生まれていればどれほどの名声を得られたか……。
シコルの涙はとうに止まっている。力強く頷き、そして立ち上がった。
「すまない、ガイル。つまらない姿を見せた」

そして笑顔を見せた。少年らしい、晴れ晴れとした爽やかな笑顔だった。
ガイルはその笑顔を見て、少しだけ救われた気がした。
縁石に座り込み、アメリカから持ち込んだラッキーストライクの封を破り、口に銜える。
火をつけ、ゆっくりと紫煙を吸い込んだ。煙を吐き出すと、隣のシコルが問い掛けてきた。
「成功するのかな、この革命は」
ガイルは億劫そうに煙を吐き出すと、逆にシコルに問うた。
「おめえは、成功すると思ってるのか」
「無理だと思う。それに万が一成功しても、何も変わらないと思う」
「賢いな、おめえは。正解だ。俺たちは犬死で終わるし、変わらねえよ。この国は。
 たとえ何かの切っ掛けでこの国が民主主義になったところで、おんなじさ。
 民主主義も社会主義も、権力者の収益システムって事には変わりねえ」
570北の果てより:2005/07/09(土) 01:40:21 ID:SDcJbsFf0
タバコの煙が沈黙を包む。実も蓋も無いが、正直なガイルの言葉は迫力があった。
「民主主義国家ってのは、治安と国防だけ担当してあとは民に任せるってのが理想だが、
 結局は机上の空論だな。人間に欲と差別意識がある限り」
ガイルが訥々とシコルに語った。シコルは大人しく聞き入ったが、ポソリと言った。
「じゃあ、なんで俺たちは戦ってるんだろ?」
「…さあな。それでも、人は未来に夢を描くものだからな」

2人は押し黙っている。が、沈黙に耐え切れなくなったようにガイルが尋ねた。
「お前、俺が来る少し前にここに突然現れたらしいな。前は何処にいたんだ?」
この少年の素性は誰も知らない。ただその能力により、あっという間に認められたが。
そして誰にも素性を語らない。この時も、ガイルのその質問には無言で通した。
「ハッ。何も言わねえか。結構だ。黙秘権が認められるのは、民主主義のいいところだ」

ガイルはひとしきり笑った後、2本目のタバコに火をつけた。シコルが口を開く。
「ねえ、ガイル。あんたはなんでロシアまで流れてきたんだ?」
オーバーアクションでかぶりを振りながら、ガイルはおどけて言った。
「わがままなガキだな、てめえの事は語らずに目上の人間には語らせるか」
「…ごめん。話したくないなら、いい」

申し訳なさそうな顔で謝るシコル。少年の顔をクシャクシャにかき回した後、ガイルは
真顔になり、静かに語り始めた。
「俺はな……。死に場所を探してたんだよ。この10年以上、ずっと」
「死に、場所を? 10年前に、何があったの?」

タバコの灰がポトリと落ちた。いつも陽気なガイルの顔はそこには無い。
苦渋に満ちた、大きな宿業を背負った罪人の顔がそこにあった。
「もう、13年も前の話になるか…。あの地獄、あの虐殺、あの俺の罪の日から。
 1968年3月16日。 ……ベトナム戦争、ソンミの村、から」

訥々と、だが底知れない哀しみを込めてガイルは語り始めた。己の、宿罪を。
571北の果てより:2005/07/09(土) 01:42:56 ID:SDcJbsFf0
美しい村だった。そこはとても美しい村だった。

広々とした海と豊かな竹林、そして静かにせせらぐ川。何マイルもの金色の砂浜。
人が自然を敬い、自然は人を育む。そんな共生の美しさがその村にはあった。
この世の中で、多分もっとも天国に近い場所だったと思う。
俺たちアメリカ兵が、その村を…、ソンミを蹂躙し、虐殺を始めるまでは、な……。

その頃の俺は、まだ部隊に入りたての新兵だった。まだ童貞でな。
おっと、女を知らないって意味じゃないぜ。人殺しをした事が無いって事だ。
軍人学校じゃあ、いつも上位の成績で戦闘訓練にいたってはトップクラスだった。
鼻っ柱の強えガキだった。早く、実践に投入されたくてされたくて堪らなかった。
ウズウズしてたよ。早くこの戦争で軍功挙げて、故郷に華を飾りてぇってな。
ようは早く敵をぶっ殺して、勲章を胸に飾りてえって思ってたんだ。

愚かだった。何も知らない赤ん坊みたいだった。
多分、ソンミの空を見上げれば分かったんだよ。自然の美しさを感じてればな。
この戦争がどれほど愚かしくて自分勝手な、大国の利益の為の戦略戦争って事が。
間に挟まったベトナムは北にしろ南にしろ、踊らされていただけだ。
そして俺たち下っ端の軍人も、な……。

空気の澄んだ早朝だった。美しい川が、海が血で染まる地獄が始まった。
嵐のようにけたたましく響く、いくつもの銃弾や爆薬がファンファーレだった。
逃げ惑う村人、叫び喚く家畜たち。30分もアメリカ陸軍の砲撃は続いた。
その攻撃で何人ものベトナム人が死んだか分からない。勿論、相手は非戦闘員だ。
だが、そんな砲撃も大虐殺のほんの入り口に過ぎなかった。
572北の果てより:2005/07/09(土) 01:45:21 ID:SDcJbsFf0
ガイルはそこまで一気に独白し、しばらく沈黙した。そして更に語りだした。
地獄を、己が創造に加担した地獄の虐殺を。


村の集落の上で、2機のヘリコプターが旋回した。死肉を狙うハゲタカのように。
俺はその内の一機に乗っていた。眼下の情景がどこか夢のように感じられた。
信じられなかったんだ。この戦争は、大義あるものじゃなかったのか?
俺の乗るヘリは、容赦なく重機関銃の砲口を民間人居留地に向け、雷を落とした。
上官の操縦手がこう言いやがった。
『ベトコン野朗、オレの自慢のガンで地獄にいけよ』

俺の中の何かが激しく揺らぎ始めた。それは愛国心というのか、誇りというのか。
大切にしていたものだった。だがそれが恐ろしく醜いものに感じられ始めた。
俺の中で何かが死に掛けていた。俺自身が、俺自身を葬ろうとしていた。

ヘリが着陸した。俺は命ぜられるまま、木偶のように己の意思無く指示に従った。
上官の指示はシンプルだった。殺せ、と。ただ目の前のものを殺せ、と。
作戦完遂は簡単な事だった。なんせ、相手は武器すら持たぬただの農民だ。
恐竜がアリの巣を踏み潰すようなものだった。地獄の、大虐殺の始まりだ。

あれほど派手な砲撃があったのに、純朴な村民に危機感は無かったらしい。
自分たちはただの農民、戦争には関係ない。そう思ったのだろう。
俺の所属した小隊が粗末な家に突入した。中には朝食中の数人のベトナム人がいた。
まったく何が起きたか分からないまま、唖然としている村人。俺に上官の指示が飛ぶ。
『SHOT!』 ……たった、その一言だった。
573北の果てより:2005/07/09(土) 02:12:03 ID:SDcJbsFf0
俺は腑抜けたままマシンガンのトリガーを引いた。現実感が無かった。
ベトナム人は悲鳴を上げる間もなく、肉の塊になった。その中には子供もいた。
『おい、やっと童貞を捨てたな。おめでとよ』
上官の下卑た声色の祝福が耳障りだった。しきりに喉が渇いた。とにかく水が欲しかった。
外に出た。地獄はどうやらこの世に現出したらしい。俺たちが、そうさせたのだが。

体の弱っている女を、死ぬまで強姦している者。その子供を面白半分に射殺する者。
出産間近の妊婦を強姦した後、その腹に銃剣を突き刺して胎児ごと殺す者。
母親を殺し、まだ生きている赤ん坊のすぐ近くに火をつけ、家ごと焼き殺す者。
逃げ惑う子供たちに向けてこう言った奴もいた。
『おい、あれは俺の得点だ。手を出すなよ』 …そしてその子供たちはすぐ射殺された。

ぐらぐらと俺の視界が揺れ始めた。いや、俺の存在そのものが、だ。
今まで信じていたアメリカの正義が、軍人としての誇りが死んでいくのが分かった。
だが、俺は愚かな上に臆病でもあったらしい。
それでもまだ、上官の命令に逆らえず加担していたんだ。その虐殺に。
574北の果てより:2005/07/09(土) 02:12:52 ID:SDcJbsFf0
『おいガイル、お前は足を抑えろ、俺の後に姦らせてやる』
空虚な体にその言葉が響いた。上官が下半身を剥き出しにして、少女の上に跨っていた。
少女はまだ、見た感じ10歳前後だ。身長も140センチそこそこ。
そんな小さな子供を、180センチもの屈強なアメリカ人が強姦しようとしていた。
俺はそれでも逆らえなかった。言われたまま、少女の足を抑えていた。

その時だ。中年の女が狂ったように声を上げながら、上官に飛びついてきた。
今なら分かる。その女が、その少女の母親だということが。
だが上官は薄汚い微笑で、無言でその女をナイフで突き殺した。少女が泣き喚く。
俺の目にうっすら涙が浮かんだ。俺も、こいつらの一員なんだと。
俺も、こいつらと同じ虐殺者の一人に過ぎないのだ、と。

少女が暴れ回る。だが子供の力で抗える訳は無い。
無残にも散らされ、そして数人で輪姦され、当然のように用が済んだら殺された。
俺は悟った。こいつらにとって、人間とは白人、取り分けアメリカ人だけだと。
軍人とは、国へはマゾヒストを貫き、敵にはサディストを貫く異常者だと。

俺はその虐殺の終わった夜に、密かに隊から逃げた。遠くへ。遠くへと逃げたかった。
だがしかし、俺は戦争しか出来なかった。戦争から逃げられなかった。
数ヵ月後、俺はアメリカと敵対する側にいた。俺には裏切り者のがお似合いだった。
素性を隠し、傭兵として北ベトナム側の南ベトナム開放民族戦線≠ノ参加したんだ。
1975年にベトナム戦争は終わった。アメリカは敗北した。
終戦間際に枯葉剤を撒き撒くって、ベトナムに子々孫々の呪いを掛けた後でな。

そして俺は死に損ねたまま、今、お前の前にいる。なあ、シコルスキー……。
575北の果てより:2005/07/09(土) 02:13:30 ID:SDcJbsFf0
長いガイルの独白が終わった。まるで懺悔するような、身を切り刻むような告解だった。
シコルスキーはしばし呆然としたまま、ガイルを見ていた。
普段の明るく振舞う姿からは、とても考えられぬ十字架をこの男は背負っていた。
寒風が顔を撫ぜた。ガイルがぶるる、と体を震わせる。
「ち、辛気臭え話になっちまったなあ。まあ、生きてりゃ色々あるってこった」

いつもの口調に戻るガイル。だがどこか、その顔には寂しさを感じる。
「まあな、シコル。民主主義だろうが社会主義だろうが、この世は結局地獄だぜ。
 上の連中がふんぞり返って、下の連中は哀れに殺し合う。それがこの世ってモンだ。
 それでも命懸けで、この勝ち目の無い革命ごっこを続けるかい?」
ガイルは口元を緩ませながらシコルに問い掛けた。が、目は笑ってはいない。

シコルは空を見上げた。満天の星が彼ら2人を見下ろしている。少年は言った。
「うん。なんとなく、やらなくちゃいけない気がするんだ。それに」
「なんとなく、か。お前らしい。 ……それに、なんだ?」
「例え大して変わりなくても、黙秘権が認められる分だけ民主主義の方がいいだろ?」

ガイルは大声で笑い転げ、シコルの髪をくしゃくしゃとかき回して言った。
「こりゃ大したモンだ。このガキ、この俺から一本取りやがった」
ガイルは笑いながら思った。この才気溢れる少年を、血で汚していいものだろうか。
欧米に生まれていたら、どんなモノでも手に入るだけの能力があるだろうに……。

今はそんな事を考えても詮無き事だ。だが、願わくば……。
この少年の未来に、幸多からん事を。
俺のように、道を間違えず、まっすぐ光の下を歩いて行ける事を。

ガイルは、ただそれだけを心から願った。
576パオ ◆oIVyz8LOXE :2005/07/09(土) 02:19:25 ID:SDcJbsFf0
民主主義は素晴らしいものですが、爛熟してくると綻びが多々生まれますな。
それにしてもロンドンテロか。東京は大丈夫でしょうか。

ちなみに文中で書いてあるソンミの件は史実。
重い事実をたかだかSSに混ぜるのは心苦しいのですが。
興味があれば「ベトナム戦争」でググって下さい。
あと、私は変に国粋主義にならないアメリカ人は好きです。
577作者の都合により名無しです:2005/07/09(土) 14:32:07 ID:PbyEYDzL0
力作お疲れ様です。
SSにそぐう内容かどうかはともかく、俺は素直に楽しめました。
また力作お待ちしてます。
578作者の都合により名無しです:2005/07/10(日) 01:01:14 ID:QnVqhtZM0
乙。ソンミ村虐殺は教科書にも載ってた(気がする)ので、大抵の人は
知ってるんじゃないかな。
SSの雰囲気に合ってて楽しめた。

しかし、もしこれが南京虐殺だったらレスが凄かったでしょうなw
579Iron Fist Tournament 第2話 焦燥:2005/07/10(日) 01:19:34 ID:6m5EHj3S0
第二話 焦燥

南アメリカ北部。メキシコ付近では気温が暖かい為一年の内殆どを半袖で暮らす事が出来る。
地元住民は半袖半ズボンで暮らす人が多い。リゾート地としても有名なメキシコの近くの為
観光客も多い。広場で遊ぶ子供達や家族連れも多かった。陽気な雰囲気の中、一人、
場違いな服装をした女性がいた。周りは皆半袖だというのに襟付きの長い灰色のワンピースを着ている。
そしてその女性の側には何かの武術の道着を来た少年が座っていた。
「で・・・あんたはその封印から目覚めた存在を倒すのを俺に手伝えってのか。」
話しながらボトルから水を飲む少年。そしてそれを真面目な目でみる女性。
「ええ。全日本格闘大会優勝者、そして元ボクシングヘビー級チャンピオン、そしてヴァーリトゥード優勝者、陸奥九十九
の情報を探っていたらジャングルの中に辿り着くとは思ってもいませんでしたが。」
日差しは強い。普通なら水を買って飲んでいてもおかしくはない。だがこの女性は汗一つかかずたたずんでいる。
二人の上を雲が通り過ぎていった。突如、誰かが叫び声を挙げた。人々は空を指差し、逃げ惑い始めた。
最初、それは巨大な鳥に見えた。近づいてくるにつれそれは人の形を成していった。九十九達の前に降り立った時、
それは角を生やし、黒い翼が生えた人間の姿をしていた。
「コスプレでしょうか?筋肉がある割には変な趣味ですね。」女性が皮肉った。
口から煙を吐きながら辺りを見回す翼人。そして九十九達に矛先を定めたらしくゆっくりと歩を進める。
「あれは人間なのか?どうも雰囲気が獣っぽい気がするがな。」九十九が女性に質問する。
「これは私の予想ですが・・・先刻話したアレに近い気がします。」
九十九と並んで立つ女性。そしてその手から光が出、女性の手には槍が握られていた。
「手品か?」
「魔術です。魔物と戦うためにはこれくらい出来ておかないと。」
九十九達の足元を赤い光が襲った。翼人が額からレーザーを放ったのだ。
「本気でやるつもりらしい。」
ポリポリ頭を掻いて困った顔を浮かべる九十九。その横っ面を何かが掠めていった。
女性が槍を投げたのだ。槍は怪物の足元に刺さった。
「えい!ちゃっ!しゃっ!」
間を置かずに何本も小型ナイフを投げる女性。怪物の足にナイフがグサグサと刺さっていく。
「グゥゥゥ。」
580Iron Fist Tournament 第2話 焦燥:2005/07/10(日) 01:20:01 ID:6m5EHj3S0
呻き声を挙げながらもまだ九十九達に歩き寄ってくる怪物。そして九十九は足元の石を
拾って怪物に投げた。ゴッと音がして石は怪物の左膝の辺りにめりこんだ。
「今のは?」女性が不思議そうに聞いた。
「陸奥の裏の技さ。雹といってね、飛び道具を使う相手に対抗して作られた技だ。めったに使わないけどね。」
片膝をついている怪物を尻目に九十九達は走り去った。
「名前を聞いていなかったね。あんた なんていうんだ?そしてどこからの手の者だ?」九十九が訝しげに女性に質問した。
「私の名はシオン。埋葬機関の者です。死徒と真祖を刈る為に作られた機関の・・・」
シオンの言葉が終わるか終わらないかの内に助けを呼ぶ声が聞こえた。
九十九達が振り向くと先刻の怪物が人に襲い掛かっていた。70歳前後の老人が腰を抜かしてへたりこんでいた。
「ひぃぃぃ。命ばかりはお助けを!」
「あんた・・。シンソがどーのこーの言ってたな。あれってあんた達の専門か?」九十九がシエルに尋ねた。
「真祖ではありませんが異次元生命体の一種だと思われます。」
怪物は今にも老人の頭を掴みそうだった。だが怪物の腕は止まった。シエルの槍が腕に突き刺さったからだ。
ゆっくりとこちらを振り向く怪物。同時にもう一本槍を投げるシエル。
「ちっ。」
シエルの投げた槍に飛び乗り、槍を踏み代替わりにして飛び蹴りを放つ九十九。攻防は数秒程で終わった。
九十九の飛び二段蹴りが怪物の顎に命中したのだ。崩れ落ちるように倒れる怪物を見て九十九は違和感を覚えた。
足の傷が再生を始めている。自然治癒の能力があるのか。
「あんたのいってるソレって人間なのか?」
「ええ人間です。厳密にいえば特殊な力を持つ人間ですが。」
九十九の足元に倒れている怪物に変化がおき始めた。黒い羽と角が引っ込み、怪物の胴体に浮き出ていた黒い模様が消えた。
そして怪物は人間の姿に戻った。
「こいつは確か・・・。」
「知り合いですか?」
九十九はその人間の顔に見覚えが合った。全日本格闘大会選手の志願者リストにもあった顔。
風間仁。三島流喧嘩空手を名乗るだけあって一度は試合をしてみたい相手だった。だがその彼がなぜここに?
「こいつは再生能力があった。てことはあんたのいってたアレは・・・」
「不老不死ではありませんよ。ただかなりタフだと思います。」
シエルの顔に焦りと緊張を読み取った九十九は拳を握り締めた。
「勝ちたいね。ソイツに。」
581Iron Fist Tournament 登場人物紹介:2005/07/10(日) 01:27:35 ID:6m5EHj3S0
陸奥九十九 陸奥圓明流の継承者(出典=修羅の門) 日本格闘トーナメント、ヘビー級ボクシングトーナメント、
ヴァーリトゥードを制した後ケンシンマエダという男を捜しに出かける。

シエル(出典 月姫) 元はパン屋の娘だったのが「ロア」という吸血鬼に憑依され殺戮の限りを尽くす。
その贖罪の為に「埋葬機関」という組織に所属。以降、吸血鬼との戦闘を身を置く。

風間仁 (出典 格闘ゲーム 鉄拳シリーズ) 三島一八(みしまかずや)と風間準との間に生まれた子供。
祖父、 平八から空手を習うも祖父の裏切りから正統派空手を習い打倒平八に燃える。

三島一八(出典 同上) 仁の父。自分の肉体をG社に研究材料にされ復讐に燃える。

武藤竜二(出典 空手小公子供 小日向海流)零南大学空手部所属。黒帯。


今回の投稿はこれで終了です。
582魔女 うつろいびと:2005/07/10(日) 02:08:22 ID:fA7bpTca0
>>471から続き

 町の中央に巨大な塔があった。
 頂点は地上の人間には霞んで見えるほどの高みにあり、そこには十字架が
町全体を監視するかのように突き刺さっていた。
 十字架の上に黒い布の塊が乗っていた。

 もし、お父さんとお母さんが生きていたら――。
 私はもっと真っ当に生きていけただろうか。
 生活は苦しかっただろうけど、それでも、満ち足りた気持ちで生きていけた
だろうか。
 アニーは、客の亀頭に舌を這わせながらそんな有り得ない事を考えていた。
 アニーの両親は、落盤事故で共に死んだ。
 苦しい時代。親戚達は一人の少女を養う余裕もなく、またアニーもそれを拒
んだ。人に迷惑を掛けるのが嫌だったからだ。
 自分の面倒くらい、自分でみたい。
 夜、建物の陰で近所の綺麗なお姉さんが男のモノを弄っていた。昔にそれを
目の当たりにしたアニーはそれで暮らしていこう、と決めたのだ。
 あれなら、簡単にお金が稼げる。
 食べていける。
 ちょっと汚いモノを触るだけで。
 痛くもないし、つらくもない。
 こんなことで食べていけるのに、なんでみんなそうしないんだろう?
――そう、アニーは思っていた。

583魔女 うつろいびと:2005/07/10(日) 02:09:21 ID:fA7bpTca0

 アニーはふとモノを見た。いつもの男達のように勃起していない。
「あの……お客さん、気持ちよくないですか?」
「……」
「なんでも言ってください。お客さんの言うとおりにしますから」
「……」
「この裏あたりがいいですか? 今までの人たちはみんなここがいいって」
「……お前、歳は」
「え」
「歳は」
「14ですけど……それが」
「……」
「あのう……」
 男の眼がぎらつく。
 まだ男との経験のないアニーも本能で感じ取った。
 男のモノがたちまち屹立する。
 アニーは身動き一つとる暇もなく、地面に叩き付けられ、押さえ付けられた。
「ちょ……なにを……」
 叩き付けられた際に頭を強く打ち、朦朧とする意識の中必死に抗うアニー。
「や……やだ、やめてよ」
「動くな」
 男が取り出したのは、闇の中輝くナイフ。それを堅く握り締め、アニーの手首
を押さえる。ナイフの刃先がちょうど喉元に当たるようにしている。
 ナイフでアニーの動きを牽制する間に、空いた片方の手でスカートを捲り上げ、
下着の上から陰部を擦る。
584魔女 うつろいびと:2005/07/10(日) 02:09:50 ID:fA7bpTca0
「や、めてよ……!」
 意識が大分回復したアニーだが、抗う術は現状なかった。ナイフは怖い。恐怖心
を無理やり払い除けて動こうにも、男に乗り掛かられていて身動きが取れない。
「!」
 感覚で分かった。男が下着を剥いだことが。
「まだ開いてないな」
「やめて……いや」
「いつかは通る道だ」
 それが今だったというだけの話だ。男はそう言って腰を上げる。位置調整の為である。
 膝が空いた。
 アニーは、この後どうなっても構わないという覚悟で、思い切り膝を突き上げた。運
よくその膝は睾丸に直撃し、男は奇声を上げ、もんどりうって倒れた。
 断末魔の声――この時の男のような声のことを言うのだろう。
 アニーは男が意識を失ったことを確認すると、汚物を払い除けるかのようにして男を
自分の体の上からどかした。
 アニーは立ち上がり、深く息をつく。そして男の股間に目を遣る。先ほどまで威勢を
上げていたそれは、別物の如く萎み上がっていた。
 アニーは、今まで感じたことのないほどの怒りが自分の中に湧き上がっているのを感じた。
 男の股間から視線を逸らさずに、足を上げ――
「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!!! 死ね!!! 
死ね!!! 死ね!!!! 死ね!!!! 死ね!!!! 死ねッ!!!!!」
 そう叫びながら、何度も、何度も、男の股間を踏み付けた。はじめの内はびくんと動いた男
だが、最後のほうにはぴくりとも動かぬようになっていた。
 死んでいようが生きていようが、それはアニーには興味がなかった。
 男の懐を探り、有り金全てが入っているであろう袋を探し当てると、アニーは足早にして現場
を離れた。


585魔女 うつろいびと:2005/07/10(日) 02:10:16 ID:fA7bpTca0

 ただひたすらに走り続けた。
 息が切れ、手を膝について、アニーは顔を上げた。
 そこには、あの高い塔があった。
「ミスティ!!」
 昼間でも見えない塔の頂点。既に日の落ちたこの時刻では尚更だ。だがそんなことは何の関係
もなかった。
 アニーは感じ取ることが出来た。ミスティが、塔の天辺にいるのだ、と。
「え、どうしたの、って? …少し、悲しくて、怖い、でももっと少しだけど、嬉しいことも
あったの。ほら、見て。これだけあれば、十日は困らないわ。…少しじゃない? そんなこと
……強がっても仕方ないね。ミスティは、なんでも知ってるんだもん。うん。……怖かった。
すごく、すごく怖かったんだ。だって、あいつ、刃物なんて、もってさ…脅すの。こっ、すごく、
すごく、こわかったよ……! 脱がされて、足がすうすうするよ……あれ、もうさ、破れちゃっ
て使い物にならないしさ、安くないのに、さ……ほんとは、わかってた。男の人たちはみんなあ
れじゃ納得しないんだって。もっと、なんていうかさ、その先まで、いきたいんだ、って。でも
私いやなの。それはいやなの。あの人たちと、そんなこと、するくらい、だったら……舌噛んで
死んだほうがマシだ」
 アニーは途中から泣きじゃくりながらも、続けた。
「ずっと……逃げてたんだ。お父さんとお母さんが死んだあの日から、ずっと……悪いのは、私。
汚いけど、アレを舐めるだけで、それなりにお金が貰えて、それで、食べて、なんて……。そんな
甘い生き方で、いつまでもうまく行くわけないのに……バカなんだ、私。ゴメンねミスティ。私、
バカなんだ……そんなことないって? ううん、バカなの。自分の力で生きてる、とか理由付け
ちゃってたもん。ほんとに自分の力でっていうのはさ、クライドみたいなことを言うんだよね。
大変だろうけど、だからこそ、生きてるっていうことなんだよね。わたしも、クライドみたいに
生きたいな……」
 そう言って、目を伏せた。だが、ミスティの一言でまた顔を上げる。
「え……クライドのところに?」


586ゲロ ◆yU2EA54AkY :2005/07/10(日) 02:10:58 ID:fA7bpTca0
Ironさん、続けて失礼しました。

色々ありました。シーザリオがAオークス勝ったり、『電車男』の映画を何も知らずに見てみたり、
あとは……あまりないなあ。元ネタ知らずに見ましたが、『電車男』は大変いいものでした。

次回で二話終わりです。三話は福島県が舞台で、方言が出てくると思います。実際の話とかではないです。

>>473
エロはなるたけ抑えようとしましたが、途中で面倒くさくなりました。

>>474
オチはまだ完全に決めてはいないのでハッピーエンドになるかバッドエンドになるかはまだわかんないです。

>>480
加減しながら書くのは疲れるのでもうやんないですwていうかあまり加減できてないし……。

>>482
14歳って幼女なんですかね? 正直よくわかりません。

>>515
今回なんかはドン底ですね。次回、多少浮かび上がるか、ドン底の底を突き破りさらに堕ちるか。


最後はエロ抜きでやるのだけは決めてます。では次回。
587作者の都合により名無しです:2005/07/10(日) 12:02:29 ID:4Y/M4VDAO
テス
588作者の都合により名無しです:2005/07/10(日) 13:57:28 ID:03xHebC10
新スレ立ててくる。ダメだったら他の人よろ。
589作者の都合により名無しです:2005/07/10(日) 14:02:19 ID:blQ+kARP0
回線繋ぎなおしたせいでID変わったけど、立てた。

【2次】漫画SS総合スレへようこそpart27【創作】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1120971577/
590作者の都合により名無しです:2005/07/10(日) 21:09:24 ID:BimbE0Dh0
>北の果てより
ソンミ事件は有名ですね。HPにも詳しいページあります。
戦争の陰惨さがガイルの語りにより一層表現されててすごいです。

>Iron Fist Tournament
あれ、九十九が出てきた。これは彼を倒す為のトーナメントになりそうだ。
でも、(もし)草薙氏なら前作を補完してからにして欲しいです。

>魔女
ミスティはやはり全体の狂言回しですか。中世にタブーはなかったそうで。
彼女の存在がアニーにどう影響するのか、楽しみです。
591作者の都合により名無しです:2005/07/11(月) 14:46:46 ID:yXkTkZMH0
>魔女
えぐいなあ。蟲師の時とはまったく印象違いますね。
少女売春・レイプ・殺戮と来ましたか。
これから先、ますます救いがなくなっていくような。
出来ればこの話でなくても、救いのある話が「魔女」で読みたいですね。

>>590
>中世にタブーはなかったそうで
でも、現代の日本の少女はもっと乱れてる気もしますがね。
592作者の都合により名無しです:2005/07/13(水) 08:11:44 ID:XHGdSBfG0
ほしゅ
593作者の都合により名無しです:2005/07/13(水) 08:20:51 ID:T0jnJjCI0
バキスレってこの板に10個くらい残ってるなw
594作者の都合により名無しです
まぁ、バキスレだし