>>502 時は夕刻、場所は大阪の港近くの山中。ここに、自然の洞窟を利用した志々雄一派
の密輸品倉庫がある。先ごろ、京都へ向けて荷を送ったばかりなので、今は殆ど
空っぽだ。が、もちろん警備兵は常駐している。
敵が、ここと港のどちらを襲うか判らないので、とりあえず警備兵と打ち合わせを
する為、蝙也と鎌足はやってきた。麓で馬車を帰らせ、夕闇の山道を上っていく。
鳥や獣の声以外は何も聞こえない中を二人は黙々と歩き続けて、やがて洞窟(に
見える倉庫)に到着した。
そして見つけた。無残に切り刻まれた、警備兵たちの肉塊を。
そして感じた。無数に蠢いている人の気配、重く渦巻く殺気を。
「まあ、予想はしていたが。どうやら結構な数のようだな」
蝙也が、漆黒の外套の内側で、手甲剣の装着具合を確かめる。
「上等。手柄の立てがいがあるってものよ」
鎌足も、肩に担いでいた大鎌を下ろして、両手で握って構える。
それから二人は、左右に分かれて歩き出した。二人とも、戦法が広範囲攻撃型
なので、近いと互いの攻撃の巻き添えになってしまうからだ。
「武運祈るぞ」
「それはいいから、恋愛運祈って。お風呂でいろいろ考えて、大体の計画は纏まった
のよ。女の子のカラダでの、志々雄様へのご奉仕の仕方」
「……出陣直前に、そういうことを真顔で言わんで欲しいのだが」
蝙也の頭の中に、浮かんできた。浴場で見た鎌足女の子Verの、予想以上の
綺麗さというか可憐さというか……艶っぽさが、その。もやもやと。
思いっきり首を振って、雑念を払うべく努力しつつ、蝙也はスタスタ歩いていく。
一方、そんな彼の苦闘など知らず、鎌足は張り切って大鎌をぶんっ! と一旋回させる。
「さ〜、かかってきなさいっ!」
その声に応えるように、周囲の殺気が実体化した。隠れて隙を窺っていた黒ずくめの
暗殺者たちが、姿を現したのだ。その数、約二十。
「志々雄とやらの組織は、余程人材不足らしいな。お前のような小娘を戦わせるとは」
「ふっ。小娘、ですって? やあねぇ勘違いしちゃって。私は……っと、」