【総合】漫画SSスレへようこそpart17【SSスレ】

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1作者の都合により名無しです
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇
SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレや現在の連載作品は>>2以降テンプレで

前スレ
【2次】漫画ネタSS総合スレ16【創作】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1091431809/
まとめサイト  
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/index.htm
2作者の都合により名無しです:04/09/01 08:20 ID:N58D319i
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ
http://page.freett.com/dat2ch12/030718-1040997079.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 2
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/kakorogu/02.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 3
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/kakorogu/03.htm
俺たちでオリジナルストーリーをつくろうぜ
http://1983.rocketspace.net/html/20030806/44/1054870798.html
「バキ」等の漫画SSスレPart 5
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1057568892/
バキスレだよ!! SS集合! Part 6
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1060014208/
バキ小説スレ Part7
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1061813099/
3作者の都合により名無しです:04/09/01 08:21 ID:N58D319i
【総合】バキスレへようこそ Part 8【SSスレ】
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/kakorogu/08.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart9【スレ】(「少年漫画板」移転)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1065104594/
【バキ】漫画SSスレへようこそpart10【スレ】
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1068742694/l50
【バキ】漫画SSスレへようこそpart11【スレ】
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1072026298/l50
【バキ】漫画SSスレへようこそpart12【スレ】
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1075538328/l50
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart13【SS】
http://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1079281359/l50
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart14【SS】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1084370711/
【バキ】漫画ネタ2次創作SS総合スレP-15【ドラえもん】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1088986819/


4作者の都合により名無しです:04/09/01 08:23 ID:N58D319i
現在、連載中のSS目次
※ほぼ連載開始・復活順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

ドラえもんの麻雀教室(VS氏)
 http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/gateway.html
ドラえもん のび太の地底出来杉帝国(うみにん氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dekisugi/01.htm
しけい荘物語(サナダムシ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/sikei/01.htm
4×5(ユル氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/4x5/1-1.htm
ラーメンマン青年記(名無し氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/ra-men/01.htm
ザク(ザク氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/zaku/01-raou.htm
超格闘士大戦(ブラックキング氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/tyo-kakuto/01.htm
バキ:ネクストステップ(ネクスト作者氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/next/01.htm
ぼくのかんがえたブラックキャット(NB氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/blackcat/01.htm
ドラえもん のび太の神界大活劇(サマサ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/sinkai/01.htm
5:04/09/01 08:29 ID:N58D319i
とりあえず立てました。
何か漏れがあったら追加お願いします。
6作者の都合により名無しです:04/09/01 08:36 ID:rNSWaKcF
7作者の都合により名無しです:04/09/01 09:36 ID:1mWr7tjr
8作者の都合により名無しです:04/09/01 10:14 ID:rNSWaKcF
9作者の都合により名無しです:04/09/01 10:21 ID:1mWr7tjr
2度言わなくてもw
NBです。しかもタイトル一新です。
一番乗り投下させていただきます。
推敲が終わった分だけですが…
では第二話「道士」、張りきってどうぞ。
前スレ506から
だが、当時の自分は人と接する事が出来る人間ではなかった。
「………銃は?」
「は?」
「オレの銃だ。速く寄越せ」
その場の必要最低限の言葉しか言わず、誰にもそれ以上を求めなかった。
興味も無いし訊きたくも無い。彼にとって他人とは、コート架け程度でしかなかった。
その時も、受け取ったらすぐに殺すつもりでいたのだが――
「ああ、ちょっと待って欲しいスね。見ての通りッスから」
バラバラに分解されていたのはトレインの自前の銃だった。

「……何やってんだキサマ。早く戻せ」
苦々しく吐き捨てる。当然だ、速やかにこの場を離れたいのに、何余計な足止め食わせるんだこの女は。
「そう言う訳にはいかないッスよ。キミ、銃の整備してないスね。バレル(銃身)がカスべったりだし、
トリガー(引き金)の板バネも折れそうだし、ネジなんて三本も歪んでたッスよ。
…ハッキリ言って暴発しないのが不思議ッスね」
「……オレはお前の方が不思議だな」
なにしろこの女、初対面の男の前だと言うのにタンクトップとホットパンツだけなのだから呆れる。
下手すれば襲われる可能性も充分に有るだろうに。にもかかわらず、
「ハイハイ腰折っちゃ駄目。いいスか、大体……」

……忍耐のブレーカーが呆気なく落ちる音を聞いた気がした。
痛みを度外視してベッドから立ち上がり、説明を無視して女の前まで歩み寄り、本日最高の殺気を込めて睨み付ける。
安宿の床板が彼の心情を代弁する様に不愉快に軋んだ。
「……いい加減にしろよ馬鹿女、さっさとオレの銃を戻して返せ」
だが女は殺気をするりと受け流し、椅子から立たずにトレインを見上げる。滑稽な物でも見る様に。
「だから、戻せないッスよ。むしろ買い換えるべきじゃないスか?」
やれやれ、とばかりに嘆息する。
―――最早容赦するものか。
その気持ちを拳に込めて女の顔に振り下ろした。だが、
「え?」
突然天地が逆転した。そして意外と頑丈なテーブルに顔面を叩き付ける。
それだけではない、振り下ろした左腕を脇固めに取られていた。
「…………ッッッッツッツツッ!!!!」
「…危ないッスね、命の恩人に何するんスか」
信じられないが、投げられたのだ。手負いとはいえナンバーズ候補の自分が。
暴れても拘束は解けない。想像以上に上手かった。
「殺してやる、手前ェ…」
憎悪の怨嗟を間近に受けても女は調子を崩さない。
「悪いッスね。でも、私も殺されたく無いスから。…そういや君の名前何スか?」
相変わらずの平板が余計に怒りを掻き立てるが、この女は傷とは関係無く強い。何せ巻き付く腕はしなやかな筋肉の固まりだ。
それに答えろと言っても答えられる訳が無い。名前を秘匿するのは暗殺者の一般常識だ。
…………十分程の沈黙が過ぎる。
「…答えてくれないんスか。ならちょっとキツイ事するスよ」
やってみろ、拷問の訓練においては特Aを叩き出した自信がある。この態勢で出来る物など高が知れていた。

――――――苦痛だけしか訓練してないのをとても後悔した。

「………く、この、や…め………はははははははっははははは!!………い、いい…加減に……あっはははははは!!!」
部屋一杯にトレインの笑い声が響き渡る。先刻以上に暴れてもやはりビクともしない。
……女が彼の脇をくすぐっていた。
「ほぉーらほら、笑い死にって傍目にはギャグだけど窒息並に苦しい死に方ッスよ。
さぁ、お姉さんにゲロしないと更なる地獄が君を待ち構えてるッスよ!さあ!!さあ!!!!さあああぁぁぁ!!!!!」
足まで動員して拘束され、唯一自由だが完全に殺された右手は堪える様にテーブルの縁を握り締めるだけだ。
流石にこれでは憎悪も殺意も何にもならない。全く持ってギャグに終わってしまう。
しかも確かに苦しい訳で、程なくトレインは屈した。
「わ、判った!言う、言うから……だから…!!や………め…!!!」
「んー、私は強制したくは無いんスけどねェ」
「強制してるだろうが!」と叫びたいがいかんせんどうにもならないのが現状だ。
「言わ………せ…てくれ!!!………頼む!」
「ふふん、ようやく言ったッスね。言ったら止めてあげるッスよ、特別に」
押し付けられた顔を動かせないので女の顔が見えないが、おそらく今得意げに笑っているのだろう。
状況のイニシアチブを取られている以上、腹立たしいが言う事を聞くしかない。
「ト、トレイン!…トレイン=…ハ、ハートネット!!!おい、言った!!言ったぞ!!!!!」
……ようやくくすぐるのを止めてくれた。のみならず拘束も解いた。
床にくずおれる。僅かな体力を強制的な爆笑に使わされたのだから無理も無い。
酷い疲労の中でふと思い浮かべる。
―――最後にこんな風に他人とじゃれたのも、笑ったのも、いつだったか―――
うつ伏せるトレインの目の前に女――そう言えばサヤ、とか言ったか――の足が映った。
そうだ、確かこの後の科白は……
「朝よ、寝坊スケ」
………あれ?「よろしく、トレイン君」じゃなかったか?しかも声が違う。
顔を上げると、そこには―――
ひとまずここまで。
サマサさん凄ェ!!!もう長編入りですか!!
見習いたいものです。
あと柳龍光のことですが……なんつうか全部です。
関ヶ原の駄目ッぷりまで蝶サイコ―です。
外伝氏の柳は勇次郎とタメ張るくらいカッコイイですね。
ではもう少し早く、且つ面白い物を書ける様精進しますね。
15作者の都合により名無しです:04/09/01 20:21 ID:OkMz9Lxv
NB氏、いつも思うけど銃知識凄いな。
なんかトレインとサヤのじゃれあってるシーンが良かった。
それにタイトルもこっちの方がいい。そして一番乗り乙。

もうすぐ、NB氏もすぐ長編入りですよ。
でも、バレさん今頃海外なんだよなー。
16作者の都合により名無しです:04/09/01 22:39 ID:FiWlXY34
NB氏一番のりおめでとー。そして>>1乙。

サヤと黒猫、ラブコメっぽいのりですね。個人的にこういう雰囲気は好きです。
今までここでラブコメって無かったよね?人魚姫はコメディじゃないし。
べたべたな恋愛物も読みたいな。でも、確かこのあとサヤって・・。
ま、それいうのは野暮ですか。これからの展開楽しみにしてます。
あと、多分あと1回か2回更新すれば長編カテゴリですよ。60KB以上だから。
17超格闘士大戦:04/09/01 23:45 ID:QPAsUGhO
18超格闘士大戦:04/09/01 23:48 ID:QPAsUGhO
第10話「海王の誇り」
独歩VSシコルスキーの戦いが繰り広げられていた頃。夜の某公園。
カップルの集う場所として、都内でも有名なその公園。
しかし、今日の夜は珍しく1つのカップルの姿も見られない。
ガランとしたベンチの下では、人気の無い今がチャンスと言わんばかりに
ねずみ達がせっせと餌集めをしている。一定以上の知能を持った生物ならば、
今夜のこの公園に近づこうという気には死んでもならないだろう。頭のちっぽけなねずみぐらいだ。
公園の中心…。深夜のため止まっている噴水があるあたり。そこからは水しぶきの音ではなく
手榴弾の爆発音のような轟音が何度も何度も鳴り響いていた。
噴水前の広場で拳をぶつけあう2人の巨人。花山薫と、ドリアンである。
2人はお互いに防御も無しに打ち合っていた。
 「こういったファイトも、なかなか味のあるものだナ…」
そうつぶやくドリアン。花山はドリアンの下あごにアッパーをかける。
言葉を発すために開いた口が、猛烈な拳圧によってガチッとしまり、ドリアンの舌は
サンドイッチのように歯と歯の間に挟まれた。プチッというきれいな音を発して
ドリアンの舌が夜空に舞う。
 「これで苦手な納豆も食えるな…」
舌の無くなった口から出た言葉は、入れ歯の取れた老人のようにモゴモゴとして聞きづらいものだった。
 「君は…いい男だナ…」
そう言うと、ドリアンは仁王立ちする花山のほうへと近づく。両手はだらんと下にタレ、
にやにやとうすら笑いを浮かべている。およそ戦闘状態とは言えない負抜けた顔。
花山はそんなドリアンの顔を睨みつけると、近づいてくるその顔を右手で鷲づかみにして
ぐぐっと力を入れた。彼の必殺技ともいえる「握撃」。恐らくは水深数百メートル地点の水圧にも
匹敵するであろう、ものすごい圧力がドリアンの顔に一気にのしかかる。
時間がたつにつれて明らかにつぶれていくドリアンの顔。顔中の血や涙といった水分が
次々と圧力に我慢できず、外へ飛び出している。丁度両の目が飛び出さんとしたその時…
花山は右手に込めた力を抜いた。と同じにドサッとうつぶせに倒れこむドリアン。
ひしゃげたその顔の穴という穴から血液が飛び出し、アスファルトの地面を赤く染めた。
19超格闘士大戦:04/09/01 23:56 ID:QPAsUGhO
花山にとって勝負ありであった。何の抵抗も見せないドリアンを哀れに思ったのか…。不憫に思ったのか。
花山はくるりと向きを変え、その場を後にしようとする。
まるでおもちゃに興味の無くなった子供のように、その表情は険しくもあり寂しさも混じったもの。
 「ハハハ…やはり、ボーイだな…」
ドリアンのその声に反応し、再びドリアンの方向へ足を向けんとしたその瞬間。
花山の意識は一瞬にして刈り取られた。
ドォンという爆発音と共に、うつぶせに倒れる花山。その後ろ首筋には痛々しい傷が出来ていた。
鋭利な刃物で何度も何度もえぐったような、大きな傷。
ドリアンの右手首に仕込んだ小型爆弾の爆発によるものだった。
「握撃」で勝負は決まっていなかったのだ。後ろを向いた花山の首筋はまさにガラアキだった。
うつぶせ状態から一転。ドリアンはその格好の的に対して自分の右手首をぶつけた。起爆装置作動のために。
戦闘中に、敵に対して後ろを向けた甘ちゃんに向けての、ドリアンからの制裁攻撃。
 「あのまま私の顔を潰しておけばよかったものを…」
そうつぶやくと、ドリアンは握撃によってひしゃげた自分の顔を手でいじりはじめた。
半分程飛び出していた目を中へ押し込み、外れた顎を元に戻す。最後につぶれかけた
顔の組織を手で整えて…。即席整形手術完了。そこらの整形医師も顔負けの手さばきで
ドリアンは自らの顔を握撃を受ける前のきれいな状態へと立ち戻らせた。
 「ラヴィ〜♪」うつぶせに倒れたまま動かない花山を見ながら、ドリアンは歌を歌いだす。
いい戦いを味あわせてくれた戦友にささぐ歌だ。小型爆弾の爆煙が晴れた頃、
ドリアンは公園から姿を消した。
20超格闘士大戦:04/09/01 23:59 ID:QPAsUGhO
「君が…烈海王か…」
公園を出てから数分後、薄暗い街灯の下で、ドリアンは本日2人目のごちそうに出会った。
烈海王である。柳に受けた傷の癒えた烈は、尊敬する先輩に挨拶に来たのだ。
欧米人でありながら、海王の名を継ぐ男…ドリアン海王に。
 「あなたの写真を見て、すぐにわかりました。会いたかった。そしてあなたに勝ちたかった」
病院から出てきたばかりなのか、いつもの拳法着ではなくラフなトレーナー姿の烈。
前にいるドリアンの顔を見ながらそう言った。
 「見ての通り、私は手負いなのだが…それでも戦いを挑むのかね?」
 「一通りの戦いは見ておりました…。あなたにはまだ余力があるはず…」
 「よかろう…」
21超格闘士大戦:04/09/02 00:00 ID:a32ry6X4
…「う」の言葉が出終わると同時に、ドリアンは近くに落ちていたビンを拾い、
そのまま烈に放り投げた。そんな小道具は通用せんッと烈は手刀でビンをバラバラに砕く。
キリッとした表情で、宙に舞う、砕いたビンの破片の隙間からドリアンを見据える烈。
突然その視界の中に、一本の光り輝く鮮やかな線が現れ、そして烈の体へと巻きついた。
ぱっと視線を自分の胴体へと移す。胴体に巻きついたそのピアノ線のような細い細い物体。
普段はドリアンのジッポの中に仕込まれているアラミド繊維であった。烈のスキをつき
ドリアンはその金剛石をも切り裂く、か細くも強力な武器を使用したのだ。
 「グッパイ…烈海王」
そうつぶやくと、ドリアンはアラミド繊維を仕込ませているジッポにぐんっ力を入れ
下へ振り下ろした。ジッポから烈の身体へと巻き付いているアラミド繊維にドリアンの力が
伝わり、烈の胴体は大根のように輪切りになる…はずだった。
プツンッっという音が鳴り響いた。その音と同時に力なく地面へと落ちるアラミド繊維。
ドリアンにとって、信じられない光景が目の前で起こっていた。
烈の胴体を真っ二つにするはずだったアラミド繊維が、逆にちぎれている。
亀仙人の修行によって以前にも増して強さをつけた烈の肉体。金剛石をも切り裂くアラミド繊維でも
その身体を二つに分ける事は敵わなかった。
 「何故です… 何故、渾身の一撃を私の身体に与えてくださらなかったのだッッ!」
罵声をあげる烈。彼はドリアンにこう伝えたかった。
スキの出来た私にあなたの渾身の一撃を与えれば勝負は決まっていたかもしれない。
それなのに、何故…何故そんな小道具に頼ってしまったのだ。海王としての誇りよりも
そんな小道具を頼るのか…と。ドリアンは少し目をつぶり、何かを思った後口を開いた。
 「ハハ…耳が痛いナ…」
そう言うとドリアンは、星もわずかにしか見えない東京の空を見上げて、さらに語り始めた。
 「いつだったかナ。この繊維に出会ってしまったのは…。こいつで切った人間の切り口を見た時
 そのあまりの見事さに、自分の拳で勝負をつける事が馬鹿馬鹿しくなってしまってネ。
 それ以来、ナイフ、薬物、爆弾…と続いた。いつからか、私はこの鍛えた拳よりも
 科学の力に頼るようになってしまっていたのだ…」
22超格闘士大戦:04/09/02 00:04 ID:a32ry6X4
「あなたは私の目標でした。わが師劉海王から、あなたの話を聞いて以来ずっとッッ…
 そんなあなたはすでに海王としての誇りを捨てた廃人に成り果てていた。
 今のあなたを見ていることは、もはや我慢できません」
ドリアンの語りの後、間髪入れずに烈がそう返した。
 「ならばどうする?烈海王よ…」
 「あなたには、海王としての誇りを取り戻してもらう…。
 間もなく開催される、大擂泰祭に、私と共に出場することで。それまで、この勝負はお預けです…」
そう言うと、烈は軽くドリアンに一礼した。とたんに声をあげて笑い出すドリアン。 
それは、敗北を知った笑い。
 「私の負けだよ。烈海王。今の私では、君には勝てない。わかるのだよ。あぁ、君に勝ちたいな烈よ…。」
勝負あり。勝敗は、肉体のぶつかり合いだけで決まるのではない。互いの精神面の勝負もありうるのだ。
烈に指摘され、自分の内面を語りだした時点でドリアンは負けを認めていた。
そして初めて思う。誰かに勝ちたいと。初めて芽生えたその気持ち。
大人しくお縄につこう。それが烈に勝つ道へとつながるなら。ドリアンは両手を合わせて
すっと前に差し出した。手錠等もたない烈はその大きな手を掴み、引っ張りながら歩き出す。
街灯の光が照らす薄暗いアスファルトの上。2人の海王が未来に向かって共に歩き出した。
その…数分後の事だった。
 「グゴゴゴゴゴオゴゴゴゴゴサアオガオゴオgjふぁkjか;sssッッ」
突然肺のあたりを両手で抑えて苦しみだすドリアン。丁度、2人が夜のビジネス街を
歩いていた時だった。突然の出来事に、動きが止まる烈。少しして、ドリアンの
身体の中から、黒い物体が姿を現した。その物体は、不気味な発光を始める。
 「れ・・・烈よ・・・。この黒い塊を、私の身体から取り出してくれ…。
 そして、お前の力で空高く投げるのだ…。わ、私は…はめられた…」
烈は素直にその言葉に従う。黒い物体に手をかけ、渾身の力を入れてそれを引っ張り出す。
「グハッ」という叫び声と共に、口から大量の血を吐き出すドリアン。
23超格闘士大戦:04/09/02 00:06 ID:a32ry6X4
ブチッっという嫌な音を立てて、黒い物体はドリアンの身体から離れた。
烈は空を見上げる。ここはビジネス街。周りには何棟もの高層ビルが並んでいる。
「覇ッッ」と勢いよく声をあげると同時に、烈は黒い物体を空高く投げ上げた。
物体はどんどん上昇を続け、地上から200メートル程の地点に達したあたりで大爆発を起こす。
目の前に広がった光の世界。烈は思わずその身を地面へと伏せる。
少しして、光は消えあたりには焦げ臭い匂いが立ち込めた。烈は身を起こし、物体を投げた
上空へ目を向ける。爆発の衝撃で、立ち並ぶ高層ビルの上部はコナゴナに吹き飛んでいた。
 「ビルが…半分になっちゃった…」
信じられない光景を目にし、烈のしゃべり口調が若干壊れた。
 「キャン…ディ…」
ドリアンのつぶやく声がした。生きていたのだ。烈は近くにうずくまっていたドリアンのもとへ走る。
肺のあたりには、痛々しい傷跡があった。黒い物体を取り出したその跡。うっすらと肺のようなものが
見える。それ程深いもの。目の動きもうつろである。
 「キャンディ…キャンディ…」
ドリアンが、それ以降、キャンディ以外の言葉を発す事はなかった。
黒い物体を取り出した際、感情等も共に取り出されてしまったのか。今の烈には
知る良しもなかった。
明けて翌日の朝…。
昨晩の2度の大爆発事件などいざ知らず、幸せを満喫しているカップルがいた。
範馬バキと梢江だ。狭いキッチンで、味噌汁を作る準備をしている梢江と、それを寝っころがりながら
見つめるバキ。2人の戦い…セックス。無事その儀式は終えたようだ。
そんな2人のもとへ来客が現れる。インターホンもノックも無しに現れたその客。
不穏な闘気を感じたバキが、外へ出る。そこには柳龍光がうっすらと笑いながら立っていた。
 「範馬バキさんだね?寝起きの所悪いが、どうか立ち会ってもらえんかね?」
 「柳…龍光さんだったかな?聞いたよ。渋川先生を病院送りにしたそうじゃないか。
 で、立会いの件なんだが、ごらんの通り今は連れがいるんだ。今度っていうわけには…」
 「腐腐腐…君の顔からはそんな弱気な闘気は感じないんだがな…」

24ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :04/09/02 00:12 ID:a32ry6X4
>>1
やっとパソコンの調子がまともに戻りました。
もう2重投稿が連続するということは無いと思います。
バキキャラ同士の戦いも終焉を迎えられそうです。続きます。

遅ればせながら、バレ氏。
作品の補完と長編カテゴリへの移行、ありがとうございました。
25作者の都合により名無しです:04/09/02 00:14 ID:IJhZPrJS
>AnotherAtoraction BC
トレインとサヤの始めてのふれあいがいい感じだな。
原作で中途半端だったこの部分をしっかり書き下ろして欲しい。
>超格闘士大戦
烈、大好きだ!原作の「バキ」では主役の烈が現在戦ってるが、
対ドリアン戦は思いもよらない終わり方でしたね。伏線かな?
バキ対柳も期待しております。
26作者の都合により名無しです:04/09/02 01:05 ID:NsYDFFNu
あのうー
前スレ556なんですが・・・
あんな書き方してしまったばっかりに
どんな大物復活なのかと期待させてしまい
ひじょーーーーーーーーーーーに心苦しいのですが・・・・・・
自分は短くショボイSSを二つばかり書いただけの
ちっこいちっこい小物でございまして。
キャラクタの心情を勝手に妄想しただけのモノでしたので
ほとんどの方は覚えていないかと思われますが・・・

期待させてしまって正直すまんかったです。
出来上がったらこっそり投下させていただきますんで
その時はお願いします。
27作者の都合により名無しです:04/09/02 01:28 ID:KyWhCRRy
ぼんさん?
28作者の都合により名無しです:04/09/02 08:22 ID:+g+N1NRR
>NB氏
サヤ、原作では好きなキャラだったので活躍させてほしいな。
ほのぼのモードですね、今回は。いい感じだ。
「ッス」みたいな口調は嫌いだったが。ガンアクションとか期待。
ところでセフィリアさまはまだでしょーか?

>ブラックキング氏
原作をうまく自分の中に取り込んで、話を盛り上げてますな。
烈対ドリアンはそうきたかって感じ。ガチガチの決着も見たかったけど、
これも次への含みを持たせて面白い。
柳対セックルバキですか。原作のショボ柳でなく、最凶死刑囚の名に
相応しい強さを見せてほしい。
前スレ554より

「うわあっっ!!」
超空間からいきなり地面に投げ出され、ジャイアンは悲鳴を上げる。
「ギャフン!」
その下敷きになったスネ夫がカエルのような声を出した。
「山の中みたいね。ここに、のび太さんがいるのかしら?」
「どうだろうな。―――あれ、ドラえもんは?」
そうこう言っていると、ドラえもんが姿を現した。なんだか、浮かない顔をしている。
「どうしたのさ、ドラえもん」
「え・・・?い、いや、何でもないよ!とにかく、のび太くんの残した反応からして、ここにのび太くんが
いることは間違いないんだ。さあ、さっそくのび太くんを探そう!」
「ねえ、あっちに町があるわ。あそこに行ってみない?」
「うーん、そうだね。じゃあ、<たずねびとステッキ>!」
そう言っておなじみのステッキを倒すと、はたして、町の方向を指して倒れた。
「よし、行こう!」
「おーう!」
「ねえ、この町の人、ちょっとおかしくない?ほら、何だか耳の長い人とかいるよ」
スネ夫が不安そうに言う。
「うーん・・・。ぼくらの世界とは、別の種族がいる世界なのかも・・・」
「それになんだか、こっちをジロジロ見てるみたい」
しかし、それは仕方なかろう。ドラえもんの容姿は、はっきり言って歩く青いタヌキか
ダルマなのだ。注目するなと言うほうが無理であろう。
「こんな所にいるんじゃ、のび太が心配だ。早く見つけてやろうぜ」
「うん、そうだね。きっと今頃、困ってるぞ」

その頃のび太は、確かに困っていた。
ただし、ドラえもんたちの心配とは別な形で。
ついでにもう一人、のび太とともに大いに困っている男がいた。
「ほらほら、カレハ。こんな服はどうかな?」
「まあ、素敵ですわ。亜沙ちゃんにとても似合っています。、稟さんにのび太くんはどう思いますか?」
「え、え〜と、いいんじゃないかと思います。ねえ、稟さん」
「うん、いいと思いますよ」
「もー、さっきからいいと思います、ばっかじゃん。リムちゃんに聞いてみよっと。
ねえ、リムちゃんはどう思う?」
「いいと思う」
「あのねえリムちゃん、もうちょっとこうさ、女の子なんだからさあ・・・」
なんでこんな状況に陥っているのか、のび太は考え直してみる。
今日は7月18日の日曜日。朝に亜沙から電話があったのだ(ダジャレではない)。
なんでも、のび太にこの町を案内してあげたいということだった。
稟やプリムラや楓も来た方が賑やかだから来てほしいとのこと。
のび太とプリムラはもちろんヒマだし、稟も夏休みが近いこともあってヒマ。楓だけは用があって
行けなかった。
そして、待ち合わせ場所にいた亜沙と、彼女の親友であるカレハというお姉さんに連れられ、
「のび太くんに光陽町を案内してあげちゃうツアー・夏の特別編(命名・時雨亜沙)」が始まった。
されど、その実態は亜沙とカレハのデパートでのショッピングであった。
はっきり言って、男にとって女性のショッピングは退屈である。
のび太も稟も参っていた。プリムラも他人の買い物にはあまり興味がないようで、休憩用ベンチに腰掛け、
あやとりをしている。
「のび太・・・ちょっと耳貸せ。・・・ここから逃げよう」
「逃げるって・・・穏やかじゃないなあ・・・」
「このまま付き合わされるより、後でなにか言われる方がマシだ」
「はあ・・・」
すうっと息を吐いて走り去る準備をする稟に、のび太も習う。
そして、一気に駆け出す。
「あ〜、逃げたー!」
「すんません、俺たちはちょっと別の階見てきますんで!行くぞ、のび太!」
「あ、待ってよ、稟さ〜ん!」
駆け出していく二人。のび太は鬼軍曹の元から逃げ出す新参兵の気分を味わった。
「あれ?プリムラも来たのか」
上の階へ着き、一息入れたところで、プリムラも一緒にいることに気付いた。
「稟やのび太と、一緒がいい」
「そっか。じゃあ、三人で見て回ろうよ。ほら、なんか面白そうなことやってるよ。
<世界の大蛇展>だってさ」
そうのび太が言った時だった。
「大変だあ〜〜〜っ!蛇が逃げ出したぞお〜〜〜っ!!」
という声が聞こえてきた。
「・・・稟さん、プリムラ、ぼく、嫌な予感が・・・」
「奇遇だな、俺もだ・・・」
「私も・・・」
そう言った瞬間、その予感が正しいことが証明された。
大蛇が、目の前に姿を現したのだ。
「「「やっぱり〜〜〜〜〜〜っっ!!!」」」
三人は全力で逃げ出した。すると大蛇が狙いすましたように追ってくる。
「きゃあっ!」
その時、間が悪いことにプリムラが転んでしまった。
「プリムラッッ!!」
「・・・二人とも、危ないっ!」
のび太は倒れたプリムラの体を抱きしめてかばい、稟はさらにその上に覆い被さる。
「シャアアアアッ!」
大蛇の声が唸る。三人は、覚悟を決めて目を瞑った。しかし、いくら待っても、
大蛇が自分たちを噛み砕くその瞬間は訪れない。
恐る恐る目を開いた三人は、大蛇が姿を消していることに気付いた。そこにいたのは、
凶暴な大蛇ではなく、小さな小さな蛇だった。
「へ、蛇が縮んじゃった・・・?・・・!まさか!」
のび太は辺りを見渡し―――待ち望んでいた姿を見つける。思わず、嬉し涙が溢れた。
「ドラえもん!それにみんなも、来てくれたんだ!」
そこにいたのは、スモールライトを構えたドラえもんと―――ジャイアン、スネ夫、
そして静香の姿もあった。彼らもまた、涙ぐんでいた。
彼らはへたり込んだままののび太たちに駆け寄る。
のび太も立ち上がり、四人に駆け寄り、手を取り合って喜び合う。
「のび太くん!無事だったんだね!」
「心配かけやがって、このやろう!」
「まったくだよ!ホントに人騒がせなんだから!」
「無事でよかったわ!」
「うん・・・。みんな、ぼくを助けに来てくれたんだね」
「当ったり前だろ!俺たちは心の友だろうが!」
盛り上がっているのび太たちを、稟とプリムラは呆然と見つめる。
それに気付いたのび太が、二人を紹介する。
「この二人は、稟さんにプリムラっていうんだ。色々お世話になったんだよ」
「そうだったんですか・・・。ありがとうございます」
稟とプリムラもようやく立ち上がり、ドラえもんたちと言葉を交わす。
「あ、ああ・・・。俺は土見稟。こっちの女の子がプリムラだ」
「・・・よろしく・・・」
「ぼくはドラえもんです。で、みんなは・・・」
「剛田武だ」
「骨川スネ夫です」
「源静香です」
「ああ、よろしく。・・・ところで、さっきの蛇を小さくしたのは?」
「あ、それは例のドラえもんの道具ですよ。ねえ、ドラえもん」
「はい、この<スモールライト>で小さくしました」
「へえ・・・。話は聞いてたけど、ホントにスゴイ道具を持ってるんだな」
感心する稟。その隣では、プリムラがドラえもんの顔を覗き込んでいる。
「あ、あの、どうかしたんですか。え〜と、プリムラ、さん・・・?」
はたして彼女は一言、こう言った。
「・・・タヌキさん・・・?」
その言葉に、ドラえもんは愕然とし、のび太たちはプウっと吹きだす。
「違いますっ!」
ドラえもんがそう言うと、プリムラはちょっと考えて、言い直す。
「・・・青いタヌキさん・・・?」
「タヌキじゃない!ネコ型ロボットです!」
ムキになって言うドラえもん。プリムラはさらにドラえもんを眺めて、こう言った。
「・・・嘘つき。ネコはそんなのじゃない。もっと可愛い」
ガ―――ン、とショックを受けるドラえもんだった。のび太たちは悪いとは思いつつも、
笑いの発作は止められなかった。
「なんで・・・?ぼくが何をしたっていうのさ・・・」
絶望の表情を浮かべるドラえもんだった。
稟は一同がようやく落ち着いたのを見計らって尋ねる。
「なあ、のび太。友達が迎えにきてくれたってことは・・・もう、帰らなきゃいけないってことか?」
その言葉に、のび太はハッとする。そうだった。
ドラえもんたちが来てくれたということは、つまり稟たちとの別れを意味するのだ。
「のび太、帰っちゃうの?」
プリムラも、悲しそうな顔で尋ねる。のび太は、申し訳なさそうに言った。
「・・・うん、せっかく仲良くなれたけど、これでお別れみたい・・・」
「あ、あのさ、のび太くん」
なぜか慌てた様子でドラえもんが話しに入る。
「いくらなんでもいきなりお別れってのはあんまりじゃないのかなあ?ほら、帰るのはもういつだって
出来るんだし、それに他にもお世話になった人がいるんじゃないのかい?」
「あ、そうだね。ちゃんと挨拶はしていかなくちゃあ」
「じゃあ、まずは亜沙さんたちに事情を説明してから、家に帰るか。神王や魔王のおじさんにも
挨拶していった方がいいな」
「し、神王に・・・魔王!?そんな人がいるんですか!?そういえば、なんだか耳の長い人とかが
大勢いたけど、なにか関係あるんですか?」
「ぼくも最初は驚いたけど、この世界には人間の他に神族と魔族っていう種族がいるんだ。
神王さんと魔王さんはその王様で・・・まあ、会えば分かるよ。親切な人たちだから、大丈夫だよ」
「魔王が親切なんて聞いたこともないよ・・・」
スネ夫がこっそり呟くが、他のみんなも同感だった。
37サマサ ◆.SH2cpNHK2 :04/09/02 09:09 ID:E/rjTJx9
連投規制のせいで書き込み大変でした・・・。
リロードの仕方がよく分からない・・・。

それはともかく>1さん、新スレ乙。
僕もまだまだ頑張って書いていきます。
38サマサ ◆2NA38J2XJM :04/09/02 09:10 ID:E/rjTJx9
自分のトリップ忘れちまった・・・。
ちょっとテストします。
39サマサ ◆2NA38J2XJM :04/09/02 09:11 ID:E/rjTJx9
このトリップで合ってたようです。
無駄にレス消費してすいませんでした。
40作者の都合により名無しです:04/09/02 18:54 ID:oM6bOLqd
ブラキンさん
・ドリアンがドリアンらしくていい。烈の無敵っぷりも素敵だし。
次は柳か。原作でのヘタレっぷりをどう払拭してくれるか楽しみだ。
まさか、ブラキン氏まで柳をむごく扱わないよね?
個人的に死刑囚の中で一番スキなので、怖く強く描いて欲しい。

サマサさん
・まずスネオの「ギャフン」にワラタw
プリムラは天然系ですな。いよいよドラえもんたち到着で「大活劇」が
始まりそうな予感。ここで帰っちゃ冒険にならないよね。
魔王と神王に会う事でどう物語が広がるのか楽しみだ。がんばれ!
41ふら〜り:04/09/02 19:26 ID:b2ygKhyt
>>NBさん
前述のように原作は全っっ然知らないのですが……いいッスね、サヤ姉! 春風の
ような笑顔を魅せつつガラッパチな装い、やることは可愛く、そして強い。いろんな
方面の「女性の魅力」を持ち合わせているというか。こういう人が、追い詰められて
凛々しくなったりするとかなりツボなんですけど。どうでしょNBさん?

>>ブラックキングさん
烈が、烈らしいビシッとした厳しさを張り詰めさせててカッコいい! このカッコ良さ、
次は柳に魅せて欲しいところ。……多分、多くの人に勝ちを望まれてないぞ主人公バキ。
で。独歩の方に続いて、少しずつ黒幕(?)の影がちらついてきましたね。バキ以外の
キャラも絡めて、作品世界が広がっていきそう。楽しみです。

>>サマサさん
颯爽と現れた救世主一行、その手に構えるは御馴染みの懐中電灯型兵器……と。遂に
再会しましたか。でお約束通り帰れない。そういえば、タヌキ呼ばわりもお約束と
いうか恒例行事。それらを済ませたここからが、「神界大活劇」の本編開始! ですね。
サマサさんの腕の見せ所、期待しておりますぞっ。

>>26さん
フッ。ムダです。何を言われようと当方は勝手に期待しますぞ。遠慮も謙遜も不要、
早急に書かれるが宜しいかと。つーか書いて下さい。待ってますんで。
できればその際は、以前のお名前を明かして下さると嬉しいです。再会の喜び。
42作者の都合により名無しです:04/09/02 20:51 ID:YGYvS2nf
>>26
あ、なんとなくどなたかわかったかもw
いや、期待しますって。お待ちしてまーす。
>アナザーアトラクションBC
サヤって人はある意味トレインの初恋の女だろうね。
あの頃の憧憬が、今後物語りにどう関係していくか。NBさんはアクションシーンの描写が抜群なので、
あのシーンがどうなるか。悲しくも美しいシーンにしてね。でも、最後の引きのシーンは誰だろう?
ところで美人のくすぐり拷問を、俺も受けてみたいなw
>超格闘士大戦
ふふ、俺一番好きなんだ、このお話。死刑囚が怖くて強い。これを貫いて欲しい。
他漫画のキャラがどう絡み、そしてどう核心へ近づいていくか楽しみだー。
そしていよいよバキ対柳か。柳をかっこよくお願いします。別にバキは殺してもいいよw
それは冗談として、列に続きバキを主人公らしく描いて欲しいですな。
>のび太の神界大活劇
ほのぼのとした出会いから、いよいよ本格的に大ドラマが動き出しそうですな!
ドラえもんの道具があちらの世界をどう救っていくか?非常に楽しみです。
のび太の勇気や、ジャイアンの男気や、しずかちゃんの優しさについ期待。
この壮大な舞台で、どんな出会いと戦いと別れが待っているのか。楽しみです。
>ふらーりさん
前々からファンです。SSも人柄も。次回作お待ちしております。
今回の作者様方への感想、ふらーりさんをお手本にしましたが、うまくいかないですねw
13から

「リンス…」
少し前から一行に無理矢理加わった泥棒女の機嫌悪そうな顔が、トレインを見下ろしていた。
「全く、このアタシより長く寝てるなんていい度胸じゃない。ま、コレを使わせなかったのは評価するけど」
そこは記憶の中の安宿ではなく、もう少しランクの高い……やはり安宿。
眠たい目を射す朝日がトレインの認識を完全に覚醒させていく。
「ほらほら、イヴちゃんとスヴェンはもう朝食にいっちゃったわよ。アンタもさっさと起きなさい」
タバスコの瓶を弄びながら催促され、トレインは病み上がりの体を起こした。
「一ついいか?」
リンスの目の前で着替えながらトレインは訊いた。
「何よ?」
全く臆せずリンスは聞き返す。
「………それ、何に使う気だったんだ?」
「ああ、鼻にちょっとね」
……今後寝坊は出来ない、と頭の隅で思った。

宿の一階。そこはちょっとしたレストランになっており、朝は宿泊客やら出勤前のサラリーマンやらでごった返す――
筈だが、今はトレイン達とマスター以外誰も居なかった。
「…なんか、殺風景だな」
シュガートーストを齧りながらのトレインの呟きに、リンスとイヴが同意する。
「何でもな、この街で連続殺人事件が起きてるんだそうだ。初めに来た時もなんか活気が無かったろ?」
ブラックコーヒーを啜りながらスヴェンは閑散としたテーブル達を見渡した。
「犠牲者は34人…まあ氷山の一角だろうがな。うち18人が女子供、六人が警官、ときたもんだ。
スイーパーギルドは顔も知らん殺人犯をランクAに分類したぜ」
ランクAとは大した物だ。
――スイーパーが捕える犯罪者は凶悪さに比例してランク付けされる。
最低のDは――スリやカッパライ規模。殺したら換金できないのは勿論、状況次第では減額もなされる。
Cは――強盗クラス。裁判が出来れば多少の怪我は大目に見てもらえる。
Bは――傷害、あるいは殺人。生きていればいい。
Aは――大量ないしは猟奇殺人犯。死体でもいい。
最高のSは――国家転覆のテロリストレベル。とにかく現状のそいつを持ってくれば問題無い。……ベストは首だ。
Bからは人権剥奪に近いので、その手の団体から非難されている。
A以降は減額はしても支払われる。…つまり裁判は行われない、即刻死刑だ。

「じゃあさ、それを捕まえてみない?アタシ達で」
リンスが目を輝かせて身を乗り出す。
「Aって事はさ、それだけお金になるんでしょ?だったらアタシの為に捕まえなさいよ。ねえ」
ちゃっかり本音を言うのがこの女らしいと云うか、何と云うか。
「駄目だ」
スヴェンがにべもなく反対した。
「…俺達はな、この街から逃げなきゃならん。早すぎても、遅すぎても例のクリードとやらに見つかりかねん。
で、だ。待ってる間はここに待機、当然出歩くなんぞご法度だ。いいな」
今はまだ潜伏の時期だ。急げば後を追われるし、いつまでも居れば見付けられる。匙加減が重要なのだ。
「…心配するな。宿代も足跡消しもしっかり予定の範疇だ。ここに居れば今しばらくは大丈夫だ」

その言葉に渋々応じるリンスを尻目に、スープに匙を入れるトレインだったが、突然指が滑る。
かちゃん、とスープに沈む音にイヴが反応した。
「……トレイン?」
トレインの目は外を凝視していた。釣られて見るが、人通りの無い静かな街中だけ。
いきなりトレインが席を立つ。
「? どうした?」「トレイン、何よ一体?」「…どうしたの?」
三人の問いかけにも応じず、トレインは外に向かって歩き出す。
「お、おい。外に……」
「悪い、すぐ戻る」
静かに有無を云わせぬ気迫を言葉に込めて、彼は表に出て行った。
歩く、只歩く。まっしぐらに。
そこは一風景の筈の路地裏。昼なお暗きビルの谷間を迷い無く突き進む。
そして遂に立ち止まる。トレインの前に立つのは、長身巨躯のトレンチコートを纏う長い銀髪の精悍な中年男。
「…表裏一体、数は何ぞ?」男が問うた。
「…絵札の頭より三番目、そして下より一番目」淀み無くトレインが答える。
「…我の数は何ぞ?」
「…頂点に屈し、且つ頂点よりも大きなもの」
「汝と我を合わせて何ぞ?」
「十と五つ、黒き男の悪手なり」
……そこまで言って、ようやく周囲の緊張が解けた。
「久しいな、トレイン=ハートネット。いや、No13黒猫(ブラックキャット)」
「まだこの合言葉使うのか、ベルゼー=ロシュフォール。いや、No2眠れる獅子(スリーピングレオ)」

「ああ、僕だ。…ん、ああ、見付けたか。勿論だ、その時は……うん、好きにしてくれて良い」
同時刻の同じ街。高級ホテルのロイヤルスイートを最上階丸ごと貸し切った中に、クリードは居た。
ついさっき浴びたシャワーの残滓を高級なバスローブとタオルに吸わせ、切った携帯電話をベッドに放った。
「……奴か」
音も立てずシキが後ろの暗がりに立っていた。
「ああ、シャルデンとキョーコに当たらせてる。駄々こねないといいんだけど」
ベッド脇のクーラーから蝋封の年代物らしいシャンパンを取りだし、注ぎ口をなぞる。すると魔法の様に
コルクと蝋で封じた部分が切り落とされた。
「どうだい、キミも?」
「遠慮する。外の酒は口に合わん」
拒絶を気にするでもなく、ガスの作用で絨毯に溢れる美酒を特に惜しみもせずグラスに注いだ。
一息に呷る。シャワーで火照った体に極上のアルコールと冷たさが心地良く染み込んだ。
「……ブルートパーズ、80年物か。ふふ、祝杯には良い酒だ」
手の中の瓶のラベルにも確かにそう書かれていた。全く見ていないのに。
NBです。
勝手にコードネーム付けました。今後の連中も付けます。
なんかセフィリア人気ですね。
まあ、原作よりも早く出す予定ですのでお待ちください。
コードネームの件ですが、なるべく各々にピッタリなのを俺の感性でやりますので
………皆さん、引かないでね。
引いた時はノーカンてことで。
4742:04/09/02 21:22 ID:YGYvS2nf
>アナザーアトラクションBC
わ、鬼更新モードですね。嬉しいけどさっき感想書いたばかりだw
リンスがリンスっぽいですね>タバスコ壜のところ
合言葉のセンスがいいな。(オリジナルですよね?)感心しました。
ベルゼーとAクラス犯罪者、クリード一味がどう絡んでいくか。
大捕り物が始まりそうですな。
キョーコ来ましたか。イブとセフィに並んで好きなキャラ。
黒猫は、女キャラはみんな可愛かったな。見所はそこだけだったがw
NBさんがこの破綻してた知欠ストーリーをどう展開させていくか、
お手並み拝見です!(えらそうですみませんw)
48作者の都合により名無しです:04/09/02 22:22 ID:IJhZPrJS
>神界大活劇
ほのぼのとした出会い。個人的にお約束の「たぬき」に笑った。
当然このまま帰れる訳無いですね。「大活劇」、期待してます。
>AnotherAtoraction BC
矢吹より設定細かいですね。いよいよメインキャラ揃い踏みですか。
もうすぐセフィリア様来るのか。楽しみ。主役の登場遅いってw
>ふら〜りさん
いつも暖かい感想乙。SSも待ってますよ。
>前スレ556さん
いえいえ、お待ちしてますよ。頑張って下さい。
49超格闘士大戦:04/09/02 23:35 ID:nyiKmI4l
>>23の続き
50超格闘士大戦:04/09/02 23:36 ID:nyiKmI4l
第11話「拳を合わせた恩人」
 「すぐ帰る。うまい朝飯、頼んだよ」
台所に立ち、味噌汁の具の大根を切っている梢江に、バキはそう告げた。
包丁のトントンという音が止まる。手にしていた大根をまな板に置き、梢江がバキの方を向いた。
 「闘いに…行くのね?」
 「ああ…」
ドアのノブに手をかけ、今にも外に出ようとしているバキに梢江が問いかけた。
バキは静かな口調で答える。ドアノブを持ったまま、後ろ向きで梢江に答えた。
しばしの沈黙が流れた。味噌汁を煮込むぐつぐつという音が静かな部屋に響く。
 「がんばれバキ」
梢江の目に写る、大きなバキの背中。それに向けて梢江は今思い浮かんだ精一杯の送り言葉を言った。
バキはそれに答えるように、梢江に背を向けたまま拳を握った右手を大きくあげた。
そしてそのままドアノブを回し、家の外へ。目に入ってきたのは柳龍光の姿だった。
 「お別れはすんだのかい?」
柳の問いに、バキが黙ってこくりとうなづいた。そしてじっと柳の顔を見据える。
 「いい目だ…。近くに空き地がある。さぁ、行こうか」
先導する柳の2、3歩後ろを歩くバキ。黙ったまま歩く両者だったが、内に秘める闘気は
臨界点へと達す寸前。興奮冷めやらぬ2人の闘気は、歩きながら出る汗と共に暖かい蒸気となって
外へ飛散した。蒸気機関車のように、白いもやに囲まれながらあるく両者に、ジョギング中の
一般人は恐怖し、そばを離れていった。
数分後、人気の無い空き地に到着する。
 「いい面構えだ。自信に溢れている。バキさん、いい経験をしたようだな…」
 「最高の夜だったさ」
雑草もまばらしか無い荒れ果てた空き地。5メートル程間合いを置き、両者は対峙した。
くわえているタバコを口から取り、そばの原っぱへ投げ捨てる柳。その場で寝ていた野良犬に
火のついたままのタバコが当たり、熱に驚いた犬がワンワンと雄たけびをあげた。戦闘開始の合図!
51超格闘士大戦:04/09/02 23:40 ID:nyiKmI4l
無手勝流の構えをとったまま、一足飛びでバキは柳との間合いを詰める。
構えから放たれるローキックが、柳の右足を叩いた。衝撃でよろける柳の身体。
好機。バキはすぐさま追い討ちをかけた。
打ってくださいと言わんばかりに、がらあきの柳の下あごにバキのアッパーが決まる。
下からの打力に持ち上げられ、柳の身体は2メートル程上に叩き上げられ、そのまま
受身も取らずに草の生い茂る地面へと落下した。よしっという表情を浮かべて、バキはその状態を見つめる。
 「腐腐・・・強いな、バキさん」
仰向けに倒れたままそうつぶやくと、柳は衝撃で折れた歯をぷぷっと血と共に吐き出した。
そしてすっと立ち上がる。まるで、今の攻撃でまるでダメージを受けていないかのように、あっさりと。
 「だが…思った通り偽りの強さだ…」
言葉を発しながらバキに近づく。途中、柳の右腕に触れた雑草花が一瞬にして腐り落ちた。
いや、花だけではない。柳が倒れこんでいた草むら。丁度柳の形の分、草が枯れている。
ゆら〜りと近づく柳の目を見たバキは、身体が金縛りにあったような感覚を覚えた。
自由が効かない。蛇に睨まれた蛙とはこの事だろうか。近づいてくるこの男…。強い。
その強さに、目があっただけで圧倒されてしまっている。そしてそれに気づいた自分がいる。
 「知るかよッッ!!」
いつの間にか、自分の間合いにまで侵入してきていた柳に、バキは思わず蹴りを入れる。
焦りから出てしまったテレフォンキックであった。真の入っていないその蹴りを柳は左手で
掴み、今度は自分の攻撃をバキに加える。瞬間、バキの右肩と脇腹に激痛が走り
両部位の皮膚が破れて血が吹き出した。その攻撃…。柳龍光必殺の技、鞭打が命中したのだ。
自らの腕を鞭のようにしならせ、攻撃する技。鞭と同等の殺傷力を持つこの技の前では、堅いガードも無意味。
打ち破るには、痛みに耐えるしかない。だが柳龍光の放つ鞭打は、まさに水銀の鞭程の威力。
痛みに耐える間もなく、次の痛みがやってくる。休む暇がないのだ。
初弾を受けたバキが、想像を絶する痛みに目をしかめた時、柳の連打が始まった。
第2撃、2撃、4撃、5撃。音速並の速さの鞭撃が、バキの身体のあらゆる部位を破っていった。

52超格闘士大戦:04/09/02 23:41 ID:nyiKmI4l
対するバキも、反撃するチャンスを見つける。猛烈な鞭打の嵐がやんだコンマ1秒の時…。
一瞬だが、動きの止まって見えた柳に、戦いの始まりと同じくローキックでの右足破壊をかける。
顔面、胸、脇腹、太腿、上腕…とあらゆる所に受けた鞭打の傷から、血が漏れ出して地面の草を
赤く染めた。鞭打の攻撃は、身体内部にダメージを与えるものではない。あくまで表面。
皮膚を破った痛みで、相手の精神を壊す。その事はバキも気づいていた。骨や筋肉に決定的な異常はない。
ほぼ万全の状態で放った一撃であった。柳を再び地面にひれ伏す…はずだった。
 「腐腐腐… 甘ちゃんだな。君は。初弾を受けたやったのは君の力をためすため」
バキにとって、渾身の力を込めた右足ローキック。柳の足に届く事なく、あっさりと止められてしまう。
その後も攻撃を続けるバキ。若干ムキになっているものの、腹、脳天、金玉…。正確に狙ったはずの
攻撃は、全て柳の両の手によって防がれて命中することはなかった。
 「最大トーナメント優勝という誰もが認める強さを持つあなたが、何故これほどまで私に
 遅れをとるのか…」
そうつぶやくと、柳はそれまでぶらんと垂らしていた鞭打の拳を、握り拳に変えて
バキのみぞおちに突きを入れた。寸分のくるいもなく、急所へと打ち込まれた突き。
ワイヤーで後ろから引っ張られているかのように、バキの身体は力なく数メートル飛ばされ、仰向けに倒れた。
 「それは…あなたが偽りの強さに目をとられ、本来の力を発揮出来ていないからだ。
 女を知ることで強くなったと錯覚する気持ちはわかる。男なら誰でも芽生える感情。
 だがなバキさんよ、それは流星のように一瞬の輝きしか見せないのだ。
 あんたの目は自信に溢れていた。だがその自信は、女を知ったという男の優越感から来るもの…」
草むらに倒れこみ、ぐったりとしているバキに対して、柳は言葉を続ける。続けるに連れて
その口調は段々と荒立ってきていた。
 「これから先、真の武人として生きるのなら…。そんな偽りの強さ等に溺れずに
  自ら鍛えた肉体と精神のみで勝負してみせろッッッ!!」
53超格闘士大戦:04/09/02 23:43 ID:nyiKmI4l
柳のその言葉に何を思ったのか、バキは倒れこみ目をつぶったまま動かない。
そんなバキの姿をしばらく見つめると、柳はぺっとつばを吐き出して空き地の出口の方を向いた。
 「糞…所詮は坊主ってことかい。ではこちらにも考えがある…」
数メートル先の、空き地の出口へとゆっくりと歩き出す柳。バキはまだ倒れこんだままだ。
歩きながら後ろを向いてちらっとそのバキの姿を見た柳は、再び言葉を発し始めた。
 「君の偽りの強さを作り出している要因…。あのお嬢ちゃんを利用させてもらおうか…。
 私は敗北を知りに来たのだ。私を負かす事の出来る人間は、今日本には君だけだと思っている。
 手荒な真似はしたくないが…仕方ないッッ」
梢江の身体を使って、バキの力を引き出すつもりだ。どのように使うか…。
柳は考える。鞭打で体中を痛めつけるか…。それとも閉め技をつかって失神させておくか…。
いや、もっと有効な使い方がある。それは梢江の身体を犯すこと。俗に言うレイプだ。
愛する人の辱められた姿を自分の部屋で見れば、バキには当然怒りの感情がこみ上げてくるはず。
レイプ…という方法が脳裏に浮かんだその時、柳の足が止まった。
丁度空き地の出口から5メートル程手前の地点だった。「しかし…それでは…」柳がそうつぶやく。
足を止めた要因は、柳の良心だった。死刑囚とはいえ人間。奥底に潜んでいた良心が
これから柳が行う残虐行為をストップさせるために、前へ前へと乗り出してきたのだ。
柳はブルブルと首を振った。そんな良心など消えてしまえ。自分は悪魔に魂を売った身。
敗北を知るためなら、なんでもするつもりで脱獄した。だから、私は範馬バキの女を犯すッッ
数秒後、首を振るのをやめて前を向いた柳の顔は、狂気に満ちた悪魔の顔に変貌していた。
梢江を襲うため、バキの家に向かう。その一歩を再び踏み出さんとしたその時…。
柳は自分の周囲の空間が、捻じ曲がっているような感覚を覚える。
口ではうまく表現出来ないその感覚…だが、目に映る景色は歪んでいた。空間が、生きているかのように
どろりと捻じ曲がる瞬間が目で確認できた。
直後、柳の首に何か太い物が巻きついた。自分の首元に目を向ける。歪んでいる視界に入ってきたのは
図太い人間の足。範馬バキの足だった。
54超格闘士大戦:04/09/02 23:46 ID:nyiKmI4l
ぱっと上に顔を向けると、そこには先ほどまで倒れていたはずのバキの顔があった。
巨凶の血、覚醒である。柳の言葉から、梢江の危機を悟ったバキの頭には柳の思惑通り怒りの感情がこみ上げた。
梢江を利用する…。どんな方法かはわからないにしろ、その言葉はバキの中に眠る巨凶の血を
目覚めさせるのに十分な力を持っていたのだ。範馬バキの逆襲が始まる。
上を向いている柳と見下ろすバキの目が合う。憎悪に満ちた目を柳に向けるバキ。
その目を見た柳は、まるで蛇に睨まれた蛙のように金縛りにあう。さっきとは逆の光景だった。
上を向いたまま動かすことの出来ない柳の頭から、冷や汗が流れバキの太腿に落ちた。
次の瞬間、柳の首にあぐらをかいた状態で巻きついているバキの身体が、大きく右下方向へ傾いた。
と共に、グキリっという嫌な音を発して、柳の首も同じ方向へと傾く。烈海王の技、転蓮華が決まった。
首の骨の曲がった柳は、力なくその場にひざをついた。 バキは柳の首にからめている足をほどき
口から泡を吹いて、死人のようなだら〜っとした顔をしている柳の正面に降り立った。
 「そうだ…。それでいいバキさん」
55超格闘士大戦:04/09/02 23:47 ID:nyiKmI4l
小さな声でそうつぶやくと、柳は自分の頭に両手をかけ、曲がっている首を元の方向へとひねリ始めた。
またもやグキリっという嫌な音を出した後、U字に曲がっていた首は元に戻り、柳の顔も正気に戻った。
「その力を望んでいたのだよッッ!さぁ味あわせてくれ!私に敗北というものをッッ!!」
そう叫びながら、両手足をタコのようにくねらせる。鞭打の発動だ。
両手に備える水銀の鞭をしならせながら、柳は正面にいるバキに突撃する。バキの間合いに侵入すると同時に
音速並みの速さの鞭撃が、再びバキの身体に襲い掛かった。するとどうだ。
数分前、顔面、胸、脇腹、太腿、上腕とバキの身体の部位を次々と破壊していった鞭打が
今度は逆に全て受け流されている。もちろん、バキの両手両足によって。
 「もう終りかい?」
数秒後、何百発も打ち込まれた柳の鞭撃を全て受け流したバキが、驚きの表情を見せる柳にそう尋ねた。
 「柳さん…。確かに俺は童貞を捨てた事で、少しいい気になっていたかもしれない。
 たかが、それだけの事で。言いづらいが、ついさっきあんたに始めてあった時、一撃で倒せる自信があった。
 誤った自信だったけどね…。けどね柳さん、梢江と1つになることが出来て、得た物もあるんだよ…
 それは愛する者を死を賭してでも守りたいという気持ちだッッ!!」
56超格闘士大戦:04/09/02 23:49 ID:nyiKmI4l
連打。連打連打連打…。バキの反撃が始まった。
鞭打を全て防がれ、あっけにとられてぽっかりと開いている柳の口元に、
強烈なバキの右ストレートが入った。
瞬間、ボキッっという鈍い音があたりに響く。鼻骨が折れた音だ。
右ローで柳の両足を砕き…左フックであばら骨を数本砕き…顔面への2度目のストレートで
頭骨には微細なヒビが…。バキの連打が終り、柳の身体が力なく、ふらっと仰向けに地面へと倒れた時
彼の全身の骨はほとんどバラバラの状態だった。
 「あんたの言葉で気づいた。今までは、漠然としか考えていなかった愛する人を守るという気持ち。
 今なら言える。梢江を守るため、梢江のためなら、俺はいくらでも強くなれるッ」
 「フフ…。バキさんよ。新たな境地を切り開いたか…。それもまたよし。  …敗北ってなぁ
 こんなあっさりとしたものだとは…。と、いうより身体がバラバラで痛み以外の感覚がないがな…」
勝負ありであった。柳の身体は、すでに戦闘不能の状態だった。
両足の骨は恐らくコナゴナに粉砕骨折しているだろう。立とうとしても足に力が入らない。
空気を吸うだけで、胴体に激痛が走る。折れたあばら骨が、肺にささっているのかもしれない。
だが傷の状態はともかくとして、今のバキに柳は勝てる気がしなかった。
どうしょうもなかった甘ちゃんに、ちょっとばかりの成長の機会を与えて
そして自分も楽しむつもりだった。だが、範馬バキの巨凶の血の目覚めは、柳にとって予想外の誤算だった。
だが、それでもいい…。柳は思う。敗北を知ることが出来た。もう自分で認めてもいい。
激痛に負けそうなそのあっさりとした喜びを、柳は寝転がり目をつぶりながら堪能した。
 「短い立会いだったが、あなたには色々な事を教えられた気がする…。いい戦いだった。
 梢江を、一生大事にするよ。ありがとう、柳さん…」
目をつぶっている柳に対して、バキが深々と頭を下げた。
そしてくるっと向きを変え、柳に背を向けると空き地の出口に向かってゆっくりと歩き出した。
 「バキさん…。私の右手での打撃を受けてしまったあなたには、まもなく人生最大の試練が
 訪れるはずだ…。果たして君はその試練を乗り越える事が出来るかな…?」
ぱっと目を開け、去っていくバキを見つめながら柳がそう尋ねた。
57超格闘士大戦:04/09/02 23:52 ID:nyiKmI4l
「…産まれて17年。俺の人生=試練の連続だった。どんな試練だか知らないが
 乗り越えてみせるさ。むしろ感謝するよ…」
柳の問いに、バキが背を向けたまま少し大きな声で答えた。
フッフッフ…ハッハッハ…。不気味だが、どこか可愛げもある笑い声が空き地内に響いた。
柳は思う。どっしりとしているバキの大きな背中を下から見つめながら。
この男…。どんどん強くなるぞ…。恐らく、立ちはだかる障害が大きければ大きい程に…。
不思議な男だ。そして、偉大なる漢だ。そう思った後自然と、柳の口からは笑い声が出ていた。
 「バキさんよ、中国へ行くのだ。刑務所脱獄後、我々に真の武道を教えてくれた男がいる。
 我々は、その男からあなた方の話を聞いたのだ。そして抹殺を命じられた。
 最も、私の目的は敗北を知ること。命令など関係なかったがな」
バキは柳のその言葉を聞くと、すでに空き地外へと出ていた足を止めて柳のもとへと戻った。
 「そ、それではあなた達5人は全てその男の指導を受けて、日本に来たというのか?」
 「5人…?私と共にその男の修行を受けたのは、他に2人だけだ。スペックとドイル…。
 彼らもこの日本に来ているとは聞いていたが…」
スペックとドイル。スペックと言えば、バキが倒した死刑囚の1人だ。
あとの2人。シコルスキーとドリアンは、他の者の修行を受けたのか…。脱獄してからそのまま
日本に来たのか…。
 「大擂泰祭…。まもなく開かれるこの武道大会に、奴はきっと現れる。だがバキさんよ…
 あなたに立ちはだかる敵は、奴の他にもまだたくさんいるはずだ。気をつけるのだぞ。
 それから、警察に電話しておいてくれるか?この身体では、身動きが出来ん…」
バキは黙って頷くと、再び向きを変えて空き地の外へ歩き出した。
 強くなるのだ…強くなるのだぞバキさん…。柳は、ぷるぷると震える右手をゆっくりと上げて
 去っていくバキに向けてかかげた。
歩き出したバキの細かい傷だらけの頬に、目から溢れた一筋の涙が流れ落ちていた。
 (柳さん…。幾多の戦いを経てきた俺だが、敵にこれ程暖かい気持ちにさせられた事はない…
  今なら、はっきりと言える。あなたは…俺のかけがえのない恩人です…ッッ!!)
58ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :04/09/02 23:57 ID:nyiKmI4l
私も、柳が死刑囚の中で一番好きでした。
続きます。
59作者の都合により名無しです:04/09/03 08:24 ID:w58A3q96
ブラックキング氏、乙。
見事に柳の敗北を書ききったな。
60作者の都合により名無しです:04/09/03 11:47 ID:m3O7b49m
乙。鬼更新モードだな。
後で読もうととりあえず下までスクロールしたら・・・
柳負けたのかorz
まあいいや。結果分かってても楽しめるだろうし。
61作者の都合により名無しです:04/09/03 12:55 ID:m3O7b49m
>超格闘士大戦
シコルスキーとドリアン、この二人は爆弾仕組まれた奴らか。で、他の死刑囚は
まともな修行を受けたと。
てっきり今回も柳爆発するかと思ってたから意外だった。
爆弾を仕組んだ奴と柳達に修行をつけた奴。少なくとも二人の黒幕がいるのか。
段々背景が明らかになってきたね。それでもまだ全貌は見えないけど。
62HOPE!:04/09/03 14:16 ID:uwI6sXaR
希望なんてこの世に本当に在るのだろうか。
トランクスは心の中でまた呟いた。
人造人間に支配されたこの世界、
毎日のように人々が無残に死んでいくこの世界、
これを地獄といわずしてなんと云えば良いのだろう。
こんな世界に希望なんて在るのだろうか。

希望よ、と彼の母は言う。
「孫くんはね、この世界の希望なのよ」
孫くんが病気にならなかったら。
孫くんさえ生きていれば。
―――この世界は救われる。
そう言って彼の母親は笑う。

タイムマシンを造るのだという。
過去に行き、トランクスの会った事の無いその人物を救うため、
地球を救うため、そして未来を救うため、
彼の母は正に不眠不休で研究を続けている。
実現不可能と言われたタイムマシンを、
ついに理論を確立させ、そして実際に完成間近だ。本当に天才なのだ。

63HOPE!:04/09/03 14:17 ID:uwI6sXaR
きっとこれは母の闘いなのだろう、とトランクスは思う。
タイムマシンさえ開発すれば、その人物さえ救えればこの世界は変わるのだと、
そしてそれが出来るのは自分しか居ないのだと、
その一心で研究に打ち込んでいるのだ。
物心付いて以来、自分の世話をしてくれる以外は
ひたすら研究に励む母の姿しか見たことが無い。

だけど、とトランクスは思う。
それは母の希望的観測に過ぎないのではないだろうか。
母の仲間たちはあっさりと人造人間たちに殺されたという。
それが一人増えたところで何になるのだろう。
母はその人物さえ居れば違ったのだと、
そう思いたいだけなのでは無いだろうか。

64HOPE!:04/09/03 14:19 ID:uwI6sXaR
実際に過去へ行き、彼のその思いは強くなった。
予定通りに現れたフリーザとその父親は
トランクスにとっては大した敵では無かった。
これでもフリーザはその人物がやっと倒したときよりも
パワーアップしているのだという。
その上、その人物がスーパーサイヤ人に目覚めたのはついこの間だという。
トランクスが初めて目覚めたのはもうずっと前だ。
そんな人物が病を逃れたところでなんだというのだろう。
―――希望なんてやはり無かったのだ。
あの絶望的な世界で、母は過去に希望を持たなければ生きていけなかったのだろう。
託された薬を渡して事情を話してそれで早く帰ろう、とトランクスは思った。
その人物が帰ってくるにはもう少し有る。

ちらりと周りを見ると、
若い母と初めて見る父とその仲間たちが興味深げに彼を見ていた。
特に母はトランクスに興味津々である。
CCのジャケットとこの時代にはまだ無い冷蔵庫のカプセルの所為だろう。
このころから好奇心旺盛なのだ。
どうしても、目の前の快活な母と未来の疲れきった母を比較してしまう。

65HOPE!:04/09/03 14:21 ID:uwI6sXaR
が、
「どっかで見たこと有る気がするのよねえー」
と間近で顔を覗き込まれてそんな思いは吹き飛んでしまった。
若い、結婚前の母親なんて会うだけで気恥ずかしいのだ。
しかもかなりの美人である。
「若いあたしに惚れちゃ駄目よ、美人だから。今もそんなに負けてないけど」
そう悪戯っぽく笑った母の顔を思い出した。
父以外の男性と付き合っている母を見るのも、
結婚前の互いに気が無さそうな父と母を見るのも非常に恥ずかしい。
さらに云うなら注目されているのも恥ずかしい。

思わず眼を逸らすと父と眼が合った。
「プライドの高い人だったわよ。物凄ぉく、ね」
よく母はそういった。
初めて見る父。
プライドが高かったらしい父。
そして数年後には死んでしまう父。
母が言っていた通り確かにトランクスの眼元は父親譲りだ。
そうと思うと少し可笑しかった。
―――父さん。
聞こえないと分かっていても心の中で呼びかけてしまう。
―――僕は貴方の息子です。僕が分かりますか。
―――貴方に似ているとよく母さんに言われました。
―――未来の貴方の奥さんは本当に苦労しているんです。
―――貴方は後数年で死んでしまうんです。
―――父さん、

見つめすぎてしまった所為だろうか、父が不快感を顕にした。
「すみません」
そう呟いてトランクスは再びうつむいた。
―――若い母さんを、幸せにしてあげてください。
66HOPE!:04/09/03 14:21 ID:uwI6sXaR
やがて、予定時刻になり、「彼」の船がやってきた。
周りの母たちは非常な喜びようだ。
母の「希望」。未来の「希望」。
けれど彼一人で何が出来るのだろう。何が変わるのだろう。
結局未来は変わらないのではないだろうか。


しかし。
その人物を見たとき、トランクスは全てを悟った。
何故、母があんなにまで彼に固執したのか。
何故、母が彼に希望を託したのか。

彼が現れただけで空気が変わった。
彼が現れただけで場が明るくなった。
彼は皆の心を照らす光だったのだ。
彼の強さが「希望」なのではない、彼の存在自体が「希望」だったのだ。

希望。
母の希望。
僕の希望。
未来の、希望。
―――これで未来は救われる。
トランクスは少し泣きたくなった。
なんとしても彼を救わねばならない。あの、忌まわしい病から。

「初めまして、孫悟空さん」
67ぽん:04/09/03 14:31 ID:uwI6sXaR
こんにちは前スレ556こと26ことぽんと申します。
以前ちこーーーーーーっとだけお邪魔しました。

相変わらずへっぽこな文章ですが
職人さんたちに影響されてまた書きたくなってしまいました。
お眼汚し失礼しましたッ!!

あまり量産できるタイプではないのですが、
もしまた次に思いついたらお邪魔しますんで
こんなんでよろしければお願いします。
題材が思いつかないんですよね・・・

やさしいコメントを下さった方々ありがとうございました。
68作者の都合により名無しです:04/09/03 17:55 ID:m3O7b49m
>HOPE!

悟空との出会いをトランクス視点で書くってのがいい。
そういやどっかで見たけど、心臓病のウイルスはトランクスが運んだものだって説があった。
因果なことだな。
あと、
>お眼汚し失礼しましたッ!!
謙虚なのはいいけど、作品読んだ後でそういうこと言われるの見るとすごく萎える。
69作者の都合により名無しです:04/09/03 18:35 ID:uwI6sXaR
>68
自分としては全力投球で書いたつもりなのですが、
どうしてももっと巧く書けんもんかなという思いがありまして、
ちょっと悔しくて書いてしまいました。
すみませんでした。
確かに小説読んであとがきで作者がそんなこと言ってたら萎え萎えですね。
気をつけます。
ご指摘ありがとうございました。
70作者の都合により名無しです:04/09/03 19:19 ID:2OncksT4
>ブラックキング氏
ドリアン、柳と勝者の心に残る敗北をしたね。
そして背後に見え隠れする黒幕たち。まだお楽しみは一杯ありそうですね。
大擂泰祭には寂海王の「勝ったー」を是非。無理かw
>ぽん氏
いえいえ、結構なものをありがとうございます。
トランクスの苦悩と希望、母の優しさとべジータへの愛情を見せるブルマと、
良質な短編でしたよ。自信をもってくれ。次回は長編で着てくれると嬉しい。



71ザク誕生編〜終章〜:04/09/03 19:27 ID:m3O7b49m
72ザク誕生編〜終章〜:04/09/03 19:28 ID:m3O7b49m
「その後ザクは10年間男塾で修行を重ね、ここを卒業していった。彼奴は貴様らの大先輩である」
 30年後の男塾の校庭。並び立った全校生徒は、その全員が頬に涙の伝った跡を残していた。
 剣獅子丸も、その例外ではない。
「奴はその後も自身を鍛え、闘って、闘って、闘い抜き、さらに腕をあげた。それは全て打倒範馬勇次郎
と『真苦露西手意』の阻止のためである。そして奴は今、東方不敗マスターアジアと範馬勇次郎を追って
香港へと向かった。最初の死闘がそこで繰り広げられることになるであろう」
 江田島はそこでかっと目を見開き、耳をつんざく怒声をあげた。
「我ら男塾の使命はザクを助け、『真苦露西手意』に立ち向かうことである!その為にも我々はザクとは
別行動をとり、総力を結集して藤堂兵衛を討つ!」

 東シナ海を海岸沿いに南西に下っていたザクUはふと、己の右手に目をやった。何も持っていない、
空の手であった。
――30年前、俺はヒートホークと共に誓った。運命に抗ってやると。
 そして思い出す。ガリィ、ラオウ、ヤムチャ、ガッツ、江田島、バキ、覚悟との闘いを。
――俺を鍛え上げてくれた、俺を支え続けてくれた相棒ヒートホーク。今はもう、お前がいない。俺の拳が
ようやく範馬勇次郎に届こうという時に、お前はいなくなってしまった。
 葉隠覚悟との対戦にてヒートホークは砕け散った。ザク本体とは違い、ザクの武器には自己再生能力
は備わっていない。
 ザクにとって、ヒートホークとの別れは長年付き添った相棒との別離に他ならなかった。
――空の彼方から見守っていてくれ、ヒートホーク。俺は必ず範馬勇次郎を倒すよ。
 ザクは視線を前方に戻すと、バーニアを噴かして香港を目指した。
73ザク誕生編〜終章〜:04/09/03 19:30 ID:m3O7b49m
 東方不敗に呼び出され、範馬勇次郎は香港の郊外の一画へと姿を現した。
 大擂台祭が終わった、その直後のことだった。
「東方不敗マスターアジア。ガンダムファイト史上最強の格闘家。随分と懐かしい野郎から呼び出された
もんだぜ」
 勇次郎は周囲を見回し、東方不敗の姿を探した。だが、目に付くのは荒廃した街の風景ばかりだった。
 家々は倒壊し、電信柱は斜めに傾いで電線を垂れている。瓦礫が地面を埋め尽くし、空には灰色の雲
が一面に広がり太陽光を遮断している。
 勇次郎は、己の足元にころげ落ちている小さな熊のぬいぐるみの存在に気づいた。かがんで手に取り
砂埃を払う。持ち主だった子どもは随分とこれをかわいがっていたらしく、毛は短くごわついており、黒い
目玉が取れかけ、ほころびが目立った。
 それを眺め勇次郎が何を考えているのか、無表情なその顔からは何も感じ取ることができなかった。
「この荒廃した街並みを見てお前はどう思うのだ、勇次郎よ」
 勇次郎は驚くことも無く声のした方向に顔を向けると、ぬいぐるみを投げ捨てる。
 目線の先、瓦礫の山の天辺に紫の武道着を着た白髪の男が立っていた。腰には白い布を巻き、口髭
をたくわえ、後ろ髪を一本の三つ編みに結っている。
 勇次郎は笑みを浮かべ、言った。
「ようやく来やがったか、東方不敗マスターアジア」
 その言葉を受け、東方不敗はふむ、と唸った。
「久しぶりの再会だな、我が弟子範馬勇次郎よ」
74作者の都合により名無しです:04/09/03 19:34 ID:m3O7b49m
今回up分終了。
都合により東方不敗の年齢設定を49歳→60代へ。
75作者の都合により名無しです:04/09/03 19:37 ID:2OncksT4
>ザク氏
終章って書いてあったから終わりかと思ってガックリきたけど、まだ続くみたいだね。
地上最強の塾長に教えを得、どう勇次郎とザクが決着つけるか楽しみだ。

でもあの勇次郎に師匠?マスターアジアってのはそんなに強いの?
76作者の都合により名無しです:04/09/03 19:38 ID:e/FF9gCJ
>マスターアジアってのはそんなに強いの?

素手でモビルスーツぶっ壊せる。
77 ID:2OncksT4:04/09/03 19:43 ID:2OncksT4
>>76
信者だからかも知れんが、それくらいなら塾長の方が絶対強いな。
教えてくれてありがとう。

とりあえずザク氏お疲れ様。まだまだがんばってね。
78作者の都合により名無しです:04/09/03 20:12 ID:fRjQYLxd
上がってると思ったら色々来てるんだ。嬉しいな。
ザク氏も来てるし。
HOPE!って、トランクスのタイムマシンに書いてあった文字だっけ?

ほんとに最近盛況だね。
ここってもしかして住人やロム多いんですか?
79作者の都合により名無しです:04/09/03 20:31 ID:m3O7b49m
>>78
>HOPE!
タイムマシンに書いてあったね。
ぽん氏の短編おもろかった。出来れば長編も書いて欲しい。

まとめサイトのHIT数見る限り、ROMは多いかもね
>36から

「そっか・・・。のびちゃん、元の世界に帰っちゃうんだね」
「せっかく会えて残念ですけど、やはりご両親の元に戻られた方がよろしいですね」
「はい・・・。短い間だったけど、楽しかったです」
のび太は亜沙に別れの挨拶をしているところだった。
この前にドラえもんを見た亜沙とカレハは、例のごとくドラえもんをタヌキと言ってしまったのだが、
そのあたりはドラえもんの名誉のために割愛させていただこう。
「それじゃボクらはこれで帰ることにするね・・・。それじゃあね、のびちゃん。
もう会えないかもしれないけど、元気でね」
「はい、亜沙さんとカレハさんも」
そう言って二人と別れたあと、のび太たちは家に向かう。
「いつかはこうなると思ってたけど・・・ホントにそうなっちまうと、名残惜しいな」
「・・・悲しいけど、やっぱりのび太は元の世界に戻った方がいいんだよね」
「うん・・・きっと、パパやママも心配してるから」
のび太、稟、プリムラの三人は、ドラえもんたちよりも三歩ほど前を歩きながら最後になるだろう
会話を交わしている。
「のび太さん、名残惜しそうね」
「そうだな。随分色んな人と仲良くなってたみたいだし。・・・おいドラえもん、
なに黙りこくってるんだよ」
「え・・・?い、いや、なんでもないよ!」
「あ・・・もう家に着いちゃった・・・」
のび太の声に辺りを見回すと、やけに豪勢な日本家屋と西洋建築の家に両隣を挟まれた、
ごく普通の家の前だった。
「じゃあ俺はおじさんたちを呼んでくるから、家に入ってリビングで待っててくれよ」
稟はそう言ったのを聞いて、のび太たちは芙蓉家に入っていった。
「おうのび太!例のドラ助とやらが来たそうじゃねえか!」
「突然だから、ビックリしちゃったじゃないか!」
ドタドタと足音が響いたかと思うと、稟とともに神王と魔王がリビングへと入ってきた。
「の、のび太くん、あの人たちが・・・?」
「うん、おっきい方が神王さんで、髪の長い方が魔王さん」
「あのおっちゃん、強そうだな・・・」
「な、なんだ。魔王ってわりには普通の人じゃないか」
口々に感想を述べるのび太の仲間たちだった。
その場の全員が互いに自己紹介し合った後で、神王は言った。
「しっかし、本当に次元を超えて友達を助けにくるたあ、見上げたもんだ。・・・しっかし、なあ、
ドラ助よお」
「は、はい、なんでしょう?」
仮にも一世界の王に名指しで呼ばれ、ドラえもんもあらたまって答える。
「おめえはあれか。タヌキか?」
「・・・・・・」
やはり言われたドラえもんだった。
「おいおい神ちゃん、失礼じゃないか。どう見たってタヌキじゃないだろう」
「そ、そう!タヌキじゃないんです!いやあよかった、分かってくれて!」
「ほら、神ちゃん。間違っちゃだめじゃないか、お地蔵さんをタヌキなんて」
ピシッ・・・と固まるドラえもん。その顔には、もはや絶望を通り越して怒り狂っている。
ついさっきからタヌキタヌキと言われて、しかも地蔵発言だ。無理もなかろう。
「ぼくはネコ型ロボットだあ!誰も彼もばかにして、もう許せない!
<スーパー手袋>!」
「ちょ、ちょっと、何そんなの出してんのさ、ドラえもん!仕方ないじゃない、
タヌキや地蔵に見えるんだから」
と、のび太がフォローにならないフォローを入れたのがまずかった。
手袋をはめたドラえもんが、まずはのび太を弾き飛ばす。
「わあっ!た、大変だ、のび太が壁にめり込んだぞ!?」
「・・・青玉、怒ってる?」
と、稟とプリムラが言ったとき(ドラえもんにはどうやら青玉というニックネームがついたようだ)、
既にドラえもんは神王たちに殴りかかっていた。
スーパー手袋の効力を知るジャイアンたちは、軽々と吹っ飛ぶ神王たちを想像した―――
が、現実は違った。
なんと神王は、生身の左手一本でドラえもんのパンチをあっさり受け止めていたのだ。
「おいおい、確かに俺たちが悪かったが、そこまでするもんじゃねえだろ?
ちょいと冷静になれって」
「・・・は、はい・・・」
ドラえもんも、その非常識な腕力に怒りを静めるしかなかった。
「す、すげえ・・・スーパー手袋をはめたら、ゴリラをぶん回せるくらいになるのに・・・」
「・・・マジですか・・・?」
ジャイアンの言葉に、稟は目をむいて驚きをあらわにする。
「もードラえもんったら、いきなりなにするんだよ」
ようやく壁から体を離したのび太が言う。
「のび太も、よく平気だったな・・・」
「案外丈夫・・・」
呆れたように稟とプリムラが言った。
とまあ、このように心温まる異文化コミュニケーションの場面があったわけだが、しかし
本題は別のところにあった。
「で・・・のび太はやっぱ、帰るんだな」
「はい・・・。こうやってみんな迎えに来てくれたわけですし」
「そうか・・・寂しくなるけど、そうした方がいいだろうね」
神王と魔王は、名残惜しそうだった。
「俺ぁてっきりこのままずっと、のび太は稟殿の家にいるもんなんだと思っちまってたんだが・・・
そうか、帰っちまうんだな・・・」
「仕方ないさ、神ちゃん。出会いは別れの始まり、笑って見送ってやろう」
「い、いや、あのですね・・・」
そこへ割り込んできたのは、ドラえもんだった。
「あのお、実は言いにくいことがあるんだ・・・」
「言いにくいこと?なにさそれ」
のび太が聞いた。ドラえもんは本当に言いにくそうに答えた。
「実は・・・帰れないんだ」
「ええ〜〜っ!ど、どういうこと、それって!?」
「おいドラえもん、なんでだよ!?」
「ちゃんと説明してよ!」
「ドラちゃん、本当なの!?」
詰め寄るのび太たちに、ドラえもんは説明する。
84サマサ ◆2NA38J2XJM :04/09/03 20:57 ID:P142F/jk
短いですが今回はここまで。
内容的にはここからちょいとスランプで、出来はあんまよくないですねえ・・・。
ただ、短い分早めに続きを投下するつもりです。

それにしても新スレになってからみなさん鬼更新モードだなあ・・・。
僕も頑張らねば。
85ふら〜り:04/09/03 21:48 ID:LjrJW60n
もうちょっとで、二つに分けなきゃならないこの分量……嬉しい悲鳴です♪

>>NBさん
コードネームに合言葉、賞金首な犯罪者、そしてバスローブに年代もののシャンパン。
ハードボイルドというか、アダルツな雰囲気が漂ってますなぁ。後は葉巻と口紅かな、
とか。そんな中で異彩を放つ鼻タバスコ。口ではなくて、鼻。光ってたぞ、リンスっ。

>>ブラックキングさん
同じ場所で同じシチュで、結果も殆ど同じなのに。どうして、原作とこうも違うのか! 
カッコ良かった、柳! ちらりと良心なんかを覗かせつつ、大人というか人生の先輩と
いうか、そんな顔も見せて! 応じたバキも含めて、期待を超える面白さでしたっっ!

>>ぽんさん
お久しぶりです! 今、まとめサイトで読み返しましたよ〜。しみじみ・じんわりの
ポエマーっぷり、お変わりないようですな。悟空の強さに疑問を持ち、それが氷解する
過程……悟空の「希望」っぷりはその強さのみにあらず、と。確かにそうですね、彼は。
♪青い風の HOPE! 見えない明日を照らすのさ 君が 希望……♪ 

>>ザクさん
だから勇次郎を倒さねばならぬ。だから無限の強さを求める! 仲間たちへの愛、
勇次郎への怒りを確かめた回想から、スペランカー・ザクが只今帰還した!! ですね。
「修行編」当時とは全然違う目で彼を見てます、今。心底、健闘を祈るっっ! 

>>サマサさん
遂に実力行使に出たネコ型ロボット。まあここまで気にしていることを連呼(しかも悪化)
されたら仕方ないかも。でもあっさり止めた神王。今後の戦力っぷりを象徴、ですかね? 
のび太たちの行く手に暗雲、我々読者には盛り上がり、で以下次号! 待ってますぞ! 
86作者の都合により名無しです:04/09/03 22:07 ID:ijz8HCaG
>HOPE!
こんにちは!。いや、お帰りなさい、ですか。
謙遜されてますが、叙情的で良かったですよ。大満足です。
トランクスの母への想い、父への憧れ、悟空への希望。
一縷の望みが悟空にあった時、大きな光になったのがわかります。

>ザク誕生編
「最強」が目白押しで豪華ですね!塾長、勇次郎、マスターアジアまで!
最弱のスペタンカーから屈強なザクへと魂を受け継ぎ、狙うは地上最強の首。
燃えるシュチュエーションですね。さて、勇次郎と東方不敗は戦うのか?
そして次編はどうなるのか楽しみです!活目して待ってます!

>ドラえもん のび太の神界大活劇
正直、18ゲーのキャラという事でオリジナルキャラという感覚で見てますが、
キャラ立ってますね。会話の流れがいいので、頭の中でタレントに当てはめて動かしてます。
でもドラえもんキレ杉wしかも神王に向かってwそして王道の不帰還トラブルw
さて、どんな冒険が待ち、どう帰還するのか、注目します。

しかし感想は難しいですね。ふらーりさんはすごい。
87作者の都合により名無しです:04/09/03 22:28 ID:JUSg3ItJ
>ブラックキング氏
薄々感じてはいましたが、やはり死刑囚編は序章に過ぎなかった…
しかしながら、堪能させてもらいました
いよいよ、話が大きく動きだす新展開に期待します

>ザク氏
こちらも長かった過去編が終了し、いよいよ本格的な戦いが始まる!
そして、オープニングバトルがいきなり地上最強vs宇宙最強とは……
正直、塾長・散・グリフィス・東方不敗と、
宇宙規模の怪物がひしめいている本作での勇次郎のランクが気になってましたが、
流派・東方不敗を修得してると判明し、今作の最強が勇次郎であると確信できて安心しました
しかし、次回の冒頭でいきなり2人が、
「流派東方不敗は!」「王者の風よ!」
とかやり出したら、どうしよう(笑)
88作者の都合により名無しです:04/09/03 22:31 ID:m3O7b49m
>>87
>しかし、次回の冒頭でいきなり2人が、
>「流派東方不敗は!」「王者の風よ!」
>とかやり出したら、どうしよう(笑)

腐腐腐・・・
89作者の都合により名無しです:04/09/03 22:40 ID:ijz8HCaG
ザク氏、きたー
ザクさんにはもう少しはじけて欲しいな、塾長みたいに。
男塾じゃなくてSS塾の方のねw
90作者の都合により名無しです:04/09/03 23:19 ID:yIWLGyPX
おお、今日も大漁だ。嬉しいな。
ザク氏、ぽん氏、サマサ氏、お疲れ様です。堪能しました。
実力者のザク氏やブラックキング氏、
超新星のNB氏やサマサ氏が大活躍で嬉しいね。
ぽん氏もいずれ連載してくれると嬉しいなあ。他職人さんも期待上げ。
91超格闘士大戦:04/09/03 23:39 ID:sEyyAYrE
92超格闘士大戦:04/09/03 23:40 ID:sEyyAYrE
第12話「愚者のささやき」

午後6時30分…
東京の街を一心不乱に走り続ける1人の拳法着姿の男がいた。
烈海王である。
この日の朝、バキの家に向かった烈は梢江からバキと柳が立ち会っている事を聞く。
男の勝負に手助けは無用…とそのまま待つ事にした烈だったが、夕方になってもバキは帰らない。
不審に思った烈は、バキの家を出て捜索を開始したのだ。
もう何時間走りっぱなしだろうか。いつの間にか夕日も落ち、あたりは薄暗くなり始めていた。
さすがの烈も、数時間休憩も無しに走り続けるとなると体力の衰えが出てくる。
乱れた息を整えるために、一旦走りをやめる烈。目の前に小さな公園が見えた。
水呑場の一つぐらいあるだろう…と烈がその公園へと足を踏み入れた時…
 「バキッッ!!」
烈は思わず叫んだ。水呑場の蛇口の近く。うつぶせに倒れこんでいる男がいた。
白いTシャツはボロボロ。体中には鞭で叩かれたような大きな傷がいくつもある。
一歩間違えれば死体とも見間違えてしまう程の状態だ。だが、烈がゆっくりと覗き込んだ顔。
血と汗と公園の砂にまみれたその顔は、明らかに範馬バキの顔だった。
 「れ…烈さんか。た、助かったよ。あんたが来てくれるなんて…」
烈の叫び声に気づき、バキが目を覚ましてそう言った。「助かったよ」その言葉を聞いた烈は
「何があったんだ?」という喉まで出ていた言葉をごくりと飲み込んだ。
そして何も言わずに、バキを抱きかかえ着ていた拳法着を紐がわりにして
自分の背中に身体をくくりつけた。そのまま公園を出て走り出す。
仮にも最大トーナメント覇者であるバキから出た「助かったよ」という言葉。
バキの身体の状態が、尋常ではない事は明白だった。烈は自分の知る、最寄の病院への
最短ルートを頭ではじき出し、それに向かって一心不乱に走り出した。
 「烈さん…。悪いんだけど、ちょっと家まで寄ってくれないかな?梢江に一言言いたいんだ…」
93超格闘士大戦:04/09/03 23:41 ID:sEyyAYrE
今にも消えてなくなりそうなバキのその言葉。烈は黙ってバキの家の方へと走る向きを変えた。
バキの言葉に、戦地へ旅立つ前の兵隊の言葉のような重みを感じたからだ。
自分の今の身体の状態が、思わしくない事を悟って、愛する人へ会いたいのだろう。
死ぬかもしれないこの身体。
途中目に入ってきた花火大会の花火。鮮やかな輝きを残して一瞬で消え去っていく花火に、
烈はバキの今の状態を重ねた。しばらくして、バキが再び小さな声で話し始めた。
 「柳さん…が言っていた…。中国に行けと。そこに、我々を指導した男がいる。
 大擂泰祭。この大会に出場し、黒幕を倒せ…と。ハハ、烈さんあんたの故郷に行けるな…」
中国にいるというこの戦いの黒幕の1人。大擂泰祭。海王である烈にとって、最も関わりの深い
武道大会である。その大会に、黒幕の1人が現れるとでもいうのか。
少し考える烈だったが、すぐに走る事に集中力を戻した。背中越しに感じるバキの体温が、
段々と下がってきている事に気づいたからだ。「今は何も考えるな」そう言うと、烈は
自分の背中をゆさゆさと揺らして、バキの身体を動かした。
 「ありがとう、烈さん」
バキの礼に、烈が黙って頷いた。
数分後、バキの家の輪郭が見えてきた。さっきまで澄み切っていた夜空が
いつのまにか暗い雲に覆われて、稲妻の音が鳴っていたがこの時はさほど気にしていなかった。
家の前で手を振っている女性がいる。梢江だ。
 「バキよ!梢江さんが手を振っているぞッッ!お前も答えてやれ!」
バキがゆっくりと手をあげて、梢江に答えようと手を振る…その瞬間だった。
突然、バキの家の数メートル真上にプラズマのような物体が現れた。
耳を裂く、激しい音の稲光と共に現れたその物体。うっすらと中に人の姿が見える。
ただ事ではない状況を察知した烈は、急ぎ梢江のもとへ走った。
 「梢江。後ろに下がっているんだ」
烈の背中から降りたバキが、梢江を手で払いのけながらそう言った。
「はい…」愛する男の言葉に、素直に従う梢江。
 

94超格闘士大戦:04/09/03 23:42 ID:sEyyAYrE
あたりに薄気味悪い笑い声がこだまする。バキと烈が、宙に浮かぶプラズマに目を向けたその時。
プラズマの中から奇妙な格好をした小さな老人が現れた。老人はバキと烈を見下ろしながら
うすら笑いを浮かべた。
まさに見下ろしているのだ。宙に浮いているその老人の姿を見て、2人は開いた口がふさがらなかった。
亀仙人の修行を受けて、人知を超えた力の存在を知った2人。だがこうもまじまじとそれを
見せ付けられると、目から入る衝撃はすさまじい物だった。
 「クックック。我があるじ、ミストバーン様も考えが甘いのう。こんなヒヨコ共の始末。
 あんな2人の人間の死刑囚なんぞにまかせずに、ワシ1人で十分だったものを…。
 最も、あの時はワシもまだ大陸から1歩も出られない状況じゃったがな…」
相変わらず薄気味悪い笑い声をあげる老人。いや、妖怪じじいと言ったほうがいいだろうか。
 「バキよ。お前は激しく消耗している。ここは私に任せろ」
そう言うと、烈はバキをかばうように前に立ち、宙に浮かぶ妖怪じじいを見上げた。
 「貴様は何者だ?死刑囚…と言ったな。ドリアン海王の身体に奇妙な爆弾を仕込んだのは貴様か?」
 「クックック。あれを爆弾とはな。やはり貴様ら人間の知能等その程度よ。
 我が名は妖魔司教ザボエラ。ミストバーン様の邪魔になるであろうヒヨコ共を始末しにきてやったわい!」
妖魔司教ザボエラ。ミストバーン。産まれてこのかた聞いた事の無い単語が続き、2人は再び開いた口が
ふさがらなかった。少し前まで、単なる一般人だった自分達が、今では未知の世界の中心にいる。
改めて実感した2人。その現実に、少しばかりの恐怖を感じていた。
ザボエラが、そんな2人に右手に持つ小さな杖を向ける。
 「ワシの死のささやきで、永遠の眠りにつくがいい!!(ザラキ・・・・・・!!!)」
次の瞬間、「う〜う〜」という不気味なうめき声がバキ達の耳を襲った。
思わず耳を塞ぐ2人。ホラー映画等に出てくる死霊のうめき声。あれに似ている。
だがそんな生易しいものではなかった。気を抜けば、そのまま意識を刈り取られる。そんな気がする。
どんな魔術を使ったのかは知らないが、まさに死のささやき。ザボエラの歌う
地獄への誘い歌。2人は耳を塞いでも入ってくるその声に耐えるのに必死だった。

95超格闘士大戦:04/09/03 23:43 ID:sEyyAYrE
少しして、バキ達がその声にも慣れ始めた頃。うめき声が突然やんだ。
耳を塞ぐ手を戻し、構えを取る2人。宙に浮くザボエラは、少しばかり驚いた表情をしていた。
 「ほう…。ワシのザラキに耐えるとは。元々一定以上のレベルの者には効果が薄い呪文じゃが…。
 なかなかやるではないかお主達。じゃが、後ろのお嬢ちゃんはどうかな…?」
その言葉に、血の気の引くバキ。うかつだった。梢江を守る事を怠っていた。
くるりと首の向きを変え、後ろにいるはずの梢江の方へと顔を向ける。
そこには仰向けに倒れこんでいる梢江の姿があった。目は白目を向き、口からは泡が吹き出ている。
 「梢江ー!!」彼女の名を叫びながら、バキが飛んだ。
梢江を抱きかかえて、頬をはたく。反応は無い。ぐったりと垂れている梢江の手を両手で
握り締めて、バキはギュッと目をつぶった。目からは涙が零れ落ちて動かない梢江の身体に落ちた。
 「ヒーッヒッヒッヒ!人間というのは不便な生き物だのう!愛だの友情だのくだらない感情に
 いちいち付き合っていかなければならんのじゃからな!小僧!今すぐ貴様もあの世に送ってやるわ!」
ザボエラは右手に持つ杖を、今度は上にかかげた。まもなく杖の先から燃えさかる炎がほとばしりだした。
火炎呪文、メラゾーマを唱えたのである。強大な魔力から生み出された火炎が、
悲しみに溺れるバキと倒れた梢江を焼き尽くさんとしていた。
 「焼け焦げろ!(メラゾーマ!!)」
ザボエラが心の中で呪文発動を叫び、杖の先の火炎をバキ達の方へ向けた。その時だった。
 「覇ッッ!」という掛け声をあげて、烈がザボエラの身体めがけて飛び上がった。
狙いはザボエラのどてっ腹。自分を狙ってくる烈に気づいたザボエラが、メラゾーマを撃つ
方向を烈の方へと変える。だがコンマ1秒、烈の攻撃の方が速かった。
空中での右足回し蹴り。身体を空中で一回転させた遠心力たっぷりのその蹴りは
ザボエラのか細い腕のガードをコナゴナに砕き、見事腹のど真ん中に命中した。
瞬間、ゲハアァ!っという叫び声を発して地面へ落下するザボエラ。
腹をおさえてもがき苦しんでいるザボエラの近くに、烈も降り立つ。
 「貴様は魔術は得意なようだが、身体自体は普通の人間と変わらないようだな…」

96超格闘士大戦:04/09/03 23:48 ID:sEyyAYrE
「ゲホッ、ゲホッ…おのれ…」
腹の痛みが落ち着いたのか、ザボエラがもがくのをやめて前で自分を見据える烈に顔を向けた。
その顔からは、あれほどあった余裕がまったくなくなっていた。回し蹴りの衝撃で
身体内部から逆流した血を吐き出したのだろうか。うっすらと口の周りが赤い。
 「終りだ、ザボエラとやらよ。両手を破壊された今、妙な魔術は使えんだろう。
 大人しくお縄につくのだッッ!そうすれば命だけは助けてやるッッ!!」
うつぶせで倒れこんでいるザボエラに対して、烈が罵声をあげた。ものすごい気迫だ。
数メートル離れているザボエラの場所にも、烈の気迫が突風となって伝わってくる。
 「フ…クックック…。どぶ臭い人間なんぞに、ワシが頭を下げると思うのか…」
そうつぶやいたザボエラは、口から小さな羽根のような物体を吐き出してそれを吐息で宙に舞わせた。
と同じにザボエラの肉体が青く発光し、宙に浮かび始める。キメラの翼と呼ばれるアイテム。
使用すると、自分の行ったことのある場所に瞬間移動できるという代物。緊急時脱出用に
腹の中に仕込んでいたそのアイテムを、ザボエラは使用したのだ。
 「今日の所は退散するしかあるまい…。じゃが貴様らに明日はないぞ!我々の長、ミストバーン様の
 野望は必ず達成される!これは神話の時代から決まっていたことなのだ!貴様ら人間ごときが
 悪魔の復活を阻止できると思うなよッッ!ヒーヒッヒッヒ!」
そう捨てゼリフを吐いた直後、ザボエラの身体がどんどんと上空に上がっていった。
様子を見ていたバキが、立ち上がり叫ぶ。
 「ザボエラアアアアアアッッッ!!てめえは俺が必ずぶち殺してやるッッ!」
叫び声を聞いたか聞かなかったか…。地上50メートル程の地点に到達した直後、
ザボエラの身体はふっとその場から消えた。

 「大丈夫だ。脈は正常通りに動いている。さぁ、はやく病院に行こう!」
烈が今だ意識の戻らない梢江の手首に指を当てながらそう言った。悪夢のような時間が終った。
ザボエラが去ってから数分後。バキは「ちくしょう、ちくしょう」とつぶやきながら涙を流している。
97作者の都合により名無しです:04/09/03 23:51 ID:jwaZ9o32
すげえ。行数同じだ。
98超格闘士大戦:04/09/03 23:52 ID:sEyyAYrE
そんなバキの身体を、烈は強引に引っ張り、再び拳法着を使って自分の背中へとくくりつけた。
そして倒れている梢江を腕に抱き、近場の病院に向かって走り出す。
午後7時…。あたりはすっかりと闇に包まれ、野良犬の遠吠えが不気味に響いていた。

午後11時。都内某病院…。
5階にあるVIP専用の病室のきれいなベッドに、バキは横たわっていた。
すでに消灯の時間だ。電気は消えている。薄暗いその部屋のドアを開いて、長髪のドクターが部屋へ入ってきた。
鎬紅葉である。バキの家から最も近場にあった病院は、たまたま紅葉の勤めている所だった。
烈が抱えてきた尋常でないバキの様子を見て、紅葉はすぐさまこのVIP専用の病室を手配したのだ。
ベッドの横にたたずんたまま、紅葉はすやすやと寝息を立てながら眠るバキの顔を見つめていた。
 「バキの病状はどうなっているのか?」
ゆっくりとドアを開けて病室へ入ってきた烈が、紅葉に尋ねた。
 「…思わしくないな。血液から、大量の毒素が検出された。致死量をはるかに超える量でだ。
 正直、命の保障は出来ない。体中に回ってしまっている毒素を除去することは不可能だ」
 「梢江さんは…どうなのだ?」
 「…」
紅葉は烈のそばを黙って通り抜け、病室を出て行った。烈の2つ目の問いに答えることはなかった。

数分後…病院内の自室での残り仕事を終えて、紅葉が帰宅の準備をしていた時だった。
 「紅葉さん、梢江はどこだ?」
ドアの付近から聞こえるその声に反応し、紅葉が座っている回転椅子ごとくるっと振り返った。
ベッドで寝ているはずのバキがそこにいた。全身に包帯を巻いた痛々しい姿。
点滴のチューブが半分腕についたままだった。恐らく腕を振り回して引きちぎったのだろう。
 「来るんだ」
ただ一言、バキにそう告げると紅葉はデスクに散乱しているカルテをファイルにとじ始めた。

99超格闘士大戦:04/09/03 23:55 ID:sEyyAYrE
白衣を脱ぎ、通勤用のスーツに着替える。身支度を整えてカバンに荷物を詰めると、
紅葉は自室の電気を消し、廊下へ出て歩き出した。そのあとをバキが追う。
向かった先は集中治療室だった。紅葉はカバンから取り出した鍵で治療室のドアを開ける。
そこは梢江の病室。集中治療室内に入り、梢江の横たわる姿を確認したバキは、
すぐにベッドの脇にかけよった。そして顔をなでる。若干青ざめているその顔。しかし、暖かかった。
 「梢江…よかった…」
梢江は生きている。バキの目が、涙で濡れた。
 「バキ君、君もすぐ気づいてしまうだろうから今言っておこう」
険しい顔を浮かべながら、紅葉がそう言った。
 「な、何をだい?紅葉さん」
バキが涙でぐしゃぐしゃになっている顔を振り向かせて尋ねた。
 「ザボエラという男が使った魔術…。詳しくはわからないが、敵の脳の血液の流れを一時的に
 ストップさせてしまう術のようだ。梢江ちゃんの脳の写真を見てわかった。
 脳細胞の半分以上が死滅している…。わかるかい?バキ君。今の梢江ちゃんの状況が…」
 「い…いや…」
 「植物状態…という言葉を知っているか?今の梢江ちゃんは、首から下は、もはや全く動かない。
  かろうじて言葉を発す能力と感情だけは残っているが…まさに半植物状態だ」
突然、バキの身体が震え始めた。紅葉の言葉を聞いた後、全身がまるで冷凍庫に入っているかのように
震えだし、身体の自由がきかなくなった。
言葉が出なかった。紅葉の言うことが信じられなかった。
 「ばぁひふん」突然、後ろから梢江の声が聞こえた。「いいかげん言ってんじゃねえぞ…このヤブ医者…」
バキは口に出そうとしたこの言葉をごくりと飲み込んだ。震えは止まり、バキは梢江の顔を見る。
 「ばぁきふんだぁ。おふぁえりなしゃひ…。ひま、ばんごはんちゅくるかりゃね…ヒシュ、ヒシュ…」
バキ君おかえりなさい。今晩御飯作るからね。こう伝えようとしているのだろう。
しかし、ヨダレを垂らしながらうまく動かないで必死にしゃべろうとしているその姿は、あまりにも痛々しかった。
バキは「うおおおおお」とう大きな叫び声を出しながら泣いた。その叫び声は、病院内に響き渡り
しばらく消えることはなかった。
100超格闘士大戦:04/09/03 23:58 ID:sEyyAYrE
>>99 最後から4行目。
うまく動かないのあとに「口」という単語が抜けてました。すいません。
続く。

101作者の都合により名無しです:04/09/04 00:40 ID:FE0Fiy7h
ザボエラ登場。相変わらずの卑劣さで嬉しい。
ミストバーンが主人ってことはハドラーとかはいないのか
それにしても、今回はヤバい
前から結構キツイ展開だったけど、今回は極めつけ
梢江嫌いの俺でも、さすがに眉をしかめてしまった
こんだけやりたい放題されると、敵の巨悪っぷりが際立つね
102しけい荘物語:04/09/04 02:00 ID:pY1RAh9h
第二十二話前スレ>>512
103しけい荘物語:04/09/04 02:01 ID:pY1RAh9h
第二十三話「選択できぬ道」

 洗練された刃に秘められた、比類なき切れ味。古来より伝承された美麗なる得物、日本
刀。血肉を欲するかのように、いかにも挑戦的な輝きを帯びている。
 頼もしき相棒を手に入れた途端、主人である本部が闘気を増大させる。シコルスキーに
は彼の大きさが自分と同等、もしくはそれ以上に見えていることだろう。
「あらかじめ埋めていやがったのか……」
「本当は貴様の両手足をへし折ってから、ゆっくりと右腕を刈り取るために準備しておっ
たのだがな。少々出番が早まってしまった」
「いくらホームグラウンドとは言え、みみっちい真似しやがるぜ」
「ククク、的外れなことを抜かしおるわ。互いにこのルールを承知の上で、公園に足を踏
み入れたはず。……だが、一つだけ言っておくぞ」
 まるで名刀が一体化したかのような、ただならぬ殺気が本部の眼光に宿る。
「素手での高潔なる敗北と、武器による薄汚い勝利……。ホームレスの誇りを守るためな
らば、わしは迷わず後者を選ぶッ!」
 砂場から一歩だけ踏み出す本部。たったそれだけであった。まだまだ間合いには程遠い。
しかし、たったそれだけの行為が、シコルスキーが必死に押さえ込んできた恐怖と絶望を
呼び覚ます。
「うわあぁぁぁぁ!」
 闘争からも、仲間からも、全てから逃げ出すため、シコルスキーは走り出した。

 目的地は公園の出入り口。短距離走において最良のフォームを、本能は選び抜いていた。
人類に限らず、地球上の主要な生物が歩行だけでなく走行を覚えた理由。それは決して世
界記録に挑み続けるためではない。追跡するためか、逃避するため。究極的に突き詰めれ
ば、この二つだけとなる。つまり、シコルスキーは正しいのだ。
 あと数メートルもない。公園から出てしまえば、敗北は喫するが命は助かる。
 だが、突然のブレーキ。今まで疾走していた両足が、石膏で固められたように動かなく
なる。この予想外の事態に、もっとも戸惑ったのはシコルスキー自身であった。
104しけい荘物語:04/09/04 02:03 ID:pY1RAh9h
 ここから逃げなければ、殺意を具現化したかのような本部と戦わねばならない。現在の
弱り切った精神で、とても勝利は望めない。殺される可能性だってある。そこまで的確に
自分の危機を把握しているのに、シコルスキーは動かない。
 背後から迫る足音。こうして立ち止まっている間にも、距離は確実に縮まっている。
「逃げぬということは、右腕を失う覚悟は出来たというわけだな」
 なおも執拗に闘争心を揺さぶる本部。それでなくとも、シコルスキーは試合から逃げた
かった。こんなにも心は怯えているのに、正体不明の何かが逃走を阻止してしまう。
「分かったよ……。こうなったら、もうどうなってもいい」
 シコルスキーが振り返る。シャツを脱ぎ捨て、豪快に地面へと叩き付ける。最後の仕上
げ。ゆっくりと両手を広げ、母国語にておなじみのフレーズを絶叫する。
「ダヴァイッ!」

 真正面から本部が斬り掛かる。待ち構えてガードを上げるシコルスキーだが、ふと気づ
く。刃物相手に素手による防御が通用するはずがない。慌てて全身を脱力させ、脳天狙い
の初太刀をかわす。
 安心するのは束の間、すぐさま斬撃の嵐が荒れ狂う。触れることすら許されない。一つ
一つを見切りつつ、危なげなく回避していくシコルスキー。
 しかし、全く反撃には移れない。中途半端な踏み込みをすれば、刀の餌食となるのは目
に見えている。となれば、捨て身での一撃必殺を狙うしかないが、それは本部とて十分に
承知している。思い切った一撃を放てるような隙など作るはずもない。
「威勢は良かったが、手も足も出んようだな……小僧ッ!」
 シコルスキーが刀を見切っているのと同様に、本部も彼の動きを見極め始めていた。巧
みに緩急や軌道を変化させ、反射神経だけでは出し抜けない斬撃を組み立てている。
 このままでは追い詰められる。そうシコルスキーが悟った刹那──斬られた。
 左肩から右脇腹にかけての惚れ惚れするような一閃。傷口は浅いが、出血は激しい。シ
コルスキーの額に、じわりと脂汗が浮かぶ。
「切っ先が触れただけか。次は一刀両断としゃれ込みたいものだな」
 すると、またしてもシコルスキーが本部に背を向けて猛然と駆け出した。
105しけい荘物語:04/09/04 02:05 ID:pY1RAh9h
 今度は逃亡ではない。あのまま刀と格闘を続けても、絶対に勝てない。シコルスキーは
真剣と対等に渡り合える武器を探していた。しかし、相手は刀剣類の最高峰。子供のため
に造られた公園で、なかなか見つかるものではない。
 公園中を全力疾走したシコルスキーは、息を切らしながら近くのベンチに腰掛ける。彼
の徒労をあざ笑うかのように、ゆらりと近寄る本部。
「何を血迷ったかと思えば、ただ走り回っていただけか……」
「いや、もう手は見つけたぜ」
「ほう……面白いことをほざきおるわ」
 立ち上がると、シコルスキーは座っていた木製のベンチを右腕一本で持ち上げた。
「こういうのも悪くないだろ?」
「お、おい……まさか……!」
 明らかな動揺を見せる本部。シコルスキーは天高くベンチを掲げ、更にそこへ左手を添
える。そして、ベンチから一本だけ飛び出た釘を引き抜いた。
「これだッ!」
 長さ数センチの釘を、シコルスキーが不敵な笑みで誇らしげに見せびらかす。
 理解不能。重量のあるベンチを片手で操る腕力を持ちながら、本人は小さい釘を持って
はしゃいでいる。とても演技とは思えない。刀を構え直し、本部は一つの結論に達した。
 このシコルスキーという男、非常に優れた闘争本能と身体能力を持ち合わせている。
 ──が、どこか抜けている。
「釘ってのは頼りない外見とは裏腹に、意外と丈夫に……」
「アホウがッ!」
 シコルスキーの釘に関する豆知識を待たずして、本部が滑らかな突進から袈裟切りを放
つ。即座に反応するも、シコルスキーは左肩を深く切り裂かれた。筋肉と血管の隙間から、
うっすらと骨までも姿を見せている。
 日本刀と釘。世界中どこの武術史を見渡しても、両雄が立ち合った記録は残されていな
いだろう。しかし、その幻の対決がここに実現したのだ。大将を務める二人によって。
106サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :04/09/04 02:09 ID:pY1RAh9h
第二十三話終了。
新スレ乙です。

今のスレ、こりゃスゴイ勢いですわ……。
107作者の都合により名無しです:04/09/04 08:15 ID:k7PV1teo
>超格闘士大戦
妖怪ジジイが妖怪娘に制裁を下しましたか。痛快だ。いっそこのまま蛸は治らないで欲しいw
それは冗談として、つぎはライタイ編ですか。トーナメントかな?
今回は次シリーズへ導入部という気がしました。いよいよ動き始める黒幕か。
主役の烈先生がどんな活躍で黒幕を倒していくか楽しみ。バキもついでにかっこよく書いて下さい。

>しけい荘
シコルスキーが主役っぽいぞ。今までのへたれっぷりはここでの勇姿を浮き上がらす為の演出か。
さすがサナダムシさん、業師ですね。しかしただでさえ戦力差のあるシコルと本部に、
更に釘と刀。どうするんだろう、シコル。まさか投げるだけじゃないだろうし・・?
しかしいつも思うけどサナダムシさんは、文章が描写細かいのに読みやすいですね。感心します。


108作者の都合により名無しです:04/09/04 16:53 ID:SN0GtWhB
>ザクさん
最強中の最強の塾長にみっちり鍛えられたザクが、マスターアジアや勇次郎とどう戦うのか?
男塾はどう動くのか?壮大なストーリーですね。本当にザクさんが復活して良かった。
>サマサさん
今回は次回からの大騒動への小ねたですね。ドラかわいい。でも、いきなりスーパー手袋かw
サマサさんの書く会話シーンはほのぼのとしてて本当に好きです。
>ブッラクキングさん
いよいよザボエラやミストたちが本格的に動き始めましたね。
「大戦」っぽくなってきました。どんなバトルが待ってるか予想つかない。
>サナダムシさん
最終決戦?らしく、緊迫してきましたね。魔王本部に虫けらシコルがどう立ち向かうか。
でも、シコルの中の人がすっかり変わったなー。別人のようだ。
>ふらーりさん
早く復活してください、職人として。

109作者の都合により名無しです:04/09/04 20:12 ID:tUbdyzmg
皆さんいつもお疲れ様です。
今夜は職人さん来ないのかな。
110作者の都合により名無しです:04/09/05 00:02 ID:idH950ZB
土日に弱いバキスレか。
あげておくか。
111作者の都合により名無しです:04/09/05 01:14 ID:vLCGHPvo
更新ごとの平均感想レス数です。

ブラキン 5
NB 4
ザク 7
ぽん 6
サマサ 3
ふら〜り 3
サナダムシ 2

ザク氏、ブラックキング氏はやはり実力者。
NB氏はまさしく大型新人ですね。
めでたく復活したぽん氏も期待値が大きいですね。
ふら〜り氏は作品は上げてないのに、この人気は流石の一言。
サマサ氏とサナダムシ氏はこれにめげずに一生懸命頑張って下さい。
112作者の都合により名無しです:04/09/05 01:26 ID:4aXI9jg8
何事もなかったかのように再開↓
>83より

「正確に言うと、帰る手段はあるんだ。もう一度次元断層に飛び込めばいいだけだからね・・・
問題は、次元断層がいつ出てくるかってことなんだ」
「でもドラちゃん、あたしたちが飛び込んだ次元断層はどうなの?」
「・・・もう消えちゃってた。今度はいつこの世界に現れるか・・・。統計では、五年に
一度くらいの確立で現れるんだけど・・・」
「五年!?」
その場の全員が叫ぶ。
「ご、五年もここにいなきゃいけないっていうの!?」
「・・・人工的に次元断層を作る方法は、一応あるんだけどね・・・」
「じゃ、じゃあそれを使って・・・」
「無理」
ドラえもんは、あっさり否定した。
「その方法ってのは、空気中に強烈なエネルギーを発生させることなんだ。次元断層は空気中に
超高密度のエネルギーが発生することで作られる。けどそのために必要なエネルギーは
ハンパじゃないんだよ」
「ドラちゃん、一体どれくらいのエネルギーが必要なの?」
静香が恐る恐る、という風に聞いた。ドラえもんは、言いにくそうに答えた。
「ざっと・・・世界中で一日に使われるエネルギーくらい必要かなあ・・・」
「なんだそりゃあ!?」
そのデタラメな数値に、全員が絶句する。
「さらに、それだけのエネルギーがあったとしても、それを超高密度に圧縮しないといけない。
そんなことが出来るかどうか・・・」
「いや、なんとかなるかもしれないよ、ドラちゃん」
そう言ったのは、魔王だった。
「我々の間でも次元に関する研究は行なわれていてね・・・。次元断層も例外じゃあない。ドラちゃんの
いうとおりの方法で次元断層が作られるのなら、その実験を行なうという名目でエネルギーを集めることは
出来る」
「でも、それを圧縮する技術は・・・」
「あるよ」
あっさり魔王は答える。
「実験用に空気中に圧縮したエネルギーを放出する装置は既に使われているんだ。それの大型のものを
作れば、ドラちゃんの言ってた条件をクリアすることはそう難しくないだろう。問題はどれだけの時間で
出来るかなんだが・・・まあ、五年よりはずっと短くてすむさ」
「でも、魔王さん、そこまで面倒を見てもらうわけには・・・」
「おいおい、水くせえこと言うなよ、のび太」
答えたのは神王だった。
「ここまで関わっちまったからにゃあ、最後まできっちり面倒見てやらなきゃあ気持ち悪いだろうが」
「そうそう、親切は素直に受け取りなさい」
魔王もそう言って微笑む。ドラえもんは少々申し訳なさそうに言った。
「はい・・・じゃあ、お言葉に甘えます」
「おっし、決まりだな!まあ、気長に待ってなって。・・・ところでよ、さすがに
この人数になっちゃあ全員稟殿の家にいるってわけにゃあいかないだろう。
何人かは俺やまー坊の家に来るといいぜ」
「あ、じゃあさ、俺、神王のおっちゃん家にいってもいいか?」
そう言ったのはジャイアンだった。その顔には神王への尊敬のようなものが見える。
「そんでさ、出来たら俺を鍛えて欲しいんだけど」
「ほお?俺に鍛えて欲しいってのか」
「ああ、さっきドラえもんのパンチをあっさり止めただろ?俺もあんくらい強くなりてえんだ」
「おう、そいつぁ見上げた心がけだ!やっぱ男は強くねえとな!うん、タケシっつったな、
おめえは体も中々でけえから、俺が鍛えれば世界一のガキ大将になれらあ!」
「本当か、おっちゃん!」
「おう、俺が保証してやる!」
大声で笑いながらジャイアンの肩を叩く神王。どうやらジャイアンを相当気に入ったようだ。

「よし、じゃあスネ夫、お前もおっちゃんの世話になれよ」
「ええっ!?な、なんでボクが!?」
「おう、そりゃあいい。おめえはちょっとひ弱すぎるみたいだから、きっちり鍛えてやらあ。
よおし、これで俺ん家に来るのはタケシとスネ夫ってわけだな」
「・・・とほほ・・・」
悲しげにうつむくスネ夫だった。
「と、なると後はしずかちゃんとドラちゃんってわけだね」
「あの、ぼくはのび太くんと一緒でもいいですか?」
ドラえもんが言うと、稟は少し考えてから言った。
「ん〜・・・そうだな。楓に聞いてみてからになるけど・・・まあ、あいつは嫌だとは
言わないと思うから、多分大丈夫だよ」
「ありがとうございます」
「じゃああたしは魔王様のところに行こうかしら」
「そうだね。歓迎するよ」

このように決まったところで、神王が突如言い出した。
「よーし、じゃあ今日はのび太の仲間が来た記念に、盛大な歓迎会を開いてやろうぜ!
シアやネリっ子も呼んでこようじゃねえか!」
「よし、決まりだね!呼んでこよう呼んでこよう!開始は・・・よし、三時間後にしようか」
恐ろしく勝手に決めてしまうと、二人は足早に去っていく。
「すごい人たちだね・・・色んな意味で・・・」
「うん・・・ぼくも最初そう思った」
言葉を交わすのび太とドラえもん。そこにプリムラが声をかけてきた。
「のび太・・・すぐに帰れないのは残念だけど、これからもしばらく一緒にいれるんだね」
「うん・・・そうなるみたい。これからはドラえもんたちも一緒だね」
「・・・みんな、よろしくね」
プリムラがそう言うと、ドラえもんたちも笑顔で答える。
「うん、こちらこそよろしく」
「仲良くしてくれよな」
口々に言う彼らを見て、稟はプリムラに言った。
「友達がたくさん出来て、よかったな」
プリムラは、笑顔で答えた。
「うん・・・。友達がいっぱいで、嬉しい」
そして、三時間後。
飲み会を経験したことのある方ならば分かるであろう混沌とした空間が、
芙蓉家のリビングを包んでいた。
メンバーは先ほどの会談(?)のメンツに加え、シアにネリネ、楓も加わっていた。
「よっしゃあ!稟殿、飲め飲めえ!」
「い、いえ、ちょっともう・・・」
「もう、お父さんったら無理に勧めるのはよしなさいって」
「どうだいのび太ちゃんたち、ちょっと飲んでみるかな?」
「いえ、ぼくらはちょっと・・・」
「そこ!子供に酒を勧めてるんじゃない!」
・・・この辺りの描写は彼らの名誉のために割愛しよう。酒に支配された時間は、
後から思い返すものではない。
気付けば既に日付が変わっていた。
その場のほとんどの人間はもうそのまま眠っていたが、神王と魔王はまだ酒を飲んでいた。
二人とも、相当飲んでいるようなのに、顔が少し紅いだけで、まるで平然としている。
その時、のび太とドラえもんは不意に目を覚ました。
「おう、なんだ。起こしちまったか?」
「いえ、勝手に目が覚めちゃって・・・。それにしても、二人とも仲がいいですよね」
「まあ、子供の頃からの付き合いだからね」
魔王は笑って言った。
「へえ・・・。神界と魔界って、仲がいいんですね」
「ああ・・・。今は、な。けど、数千年の昔にはいがみ合ってばっかだったらしいぜ」
「数千年前・・・ですか?」
「今となってはおとぎ話のようなものだけど・・・聞いてみたいかい?」
「聞いてみたいよね、ドラえもん」
「うん、ちょっと興味あるね」
同意を求められたドラえもんも、特に反対はしなかった。神王と魔王は語り始める。
「数千年前、神界と魔界は大戦争の真っ只中だった・・・。お互いにいがみあい、傷つけあい、
殺しあった。とんでもねえ悲劇だった」
「神族も魔族も、ありとあらゆる戦闘用の魔術や兵器を生み出した。それこそ、際限なくね」
「どこまでも戦いはエスカレートしていき・・・ついに神族と魔族は、お互い最悪の兵器を
創り出しちまったのさ・・・」
「な、なにを、ですか・・・?」
ゴクリ、と唾を飲み込みながらのび太は尋ねた。
「古代文明の技術全てを結集した究極にして最悪の二つの超兵器・・・それらは
<機神王>と<機魔王>って名を付けられた。そして、その二つの存在によって・・・
たった数日間で、古代文明は壊滅に追いやられたそうだよ」
「まあ、そのおかげといっちゃなんだが、そこまで破壊し尽くされた世界じゃあ、生き残れた
神族と魔族も、いがみあう余裕もなくお互い助け合って生きていかなきゃならなかった。
結果的に、古代文明は消滅しちまったが、神族と魔族の歩み寄りのきっかけともなったのさ」
そこまで語ったところで、神王は笑って言う。
「ははは、まあ、その時代の文献もそうそう残ってねえし、ホントにそんな兵器があったのかどうかも
眉唾もんだがな。・・・やれやれ、酔った勢いで喋りすぎたぜ。ほれ、もう遅いから、ガキはきっちり寝ときな」
「はあ・・・」
気のない返事をしたものの、ドラえもんとのび太は一種異様な不安を感じていた。
<機神王>。<機魔王>。
その二つの言葉が、嫌な予感となって、二人の心を包んでいた。
―――それは、確かに予感だった。
「―――なるほど、人間界にそんな動きがありましたか。どうも気になりますね」
研究所の一室で、アザミは部下からの報告を聞き終わり、腕を組んだ。
「考えすぎでは?たかだか子供数人に・・・妙な青タヌキが来ただけでしょう?」
「・・・そうかもしれません。少し気になるだけですよ。ご苦労でした、
下がってよろしい」
部下を下がらせた後、彼女は一人呟く。
「・・・とは言ったものの、やはり気になりだすとどうもよくありませんね。不確定要素―――
私の一番嫌いな言葉です」
そして、嘲るように笑う。
「一応、監視をつけてみるとしますか―――不確定要素は、排除するに限りますからね」
120サマサ ◆2NA38J2XJM :04/09/05 06:33 ID:om6qd4fi
三部構成で考えて、これでようやく第一部完、といったところです。
ここまで書くのに時間がえらいかかったなあ・・・。

それと、ここまで相当なペースで投下してきたわけですが、ここで一旦
充電期間に入ろうと思っています。
長くても2週間ほどでまた再開できると思います。

それでは次回からスタートの第二部を楽しみに・・・してくれる人がいるといいなあ・・・。
121作者の都合により名無しです:04/09/05 07:30 ID:soecdMg5
おつ彼さまです!
機神王、機魔王
まさかあのキャラが!?と予想をふくらませてみる

前スレ391で希望したように更新ペースを確保してくださってdクスです。
充電期間の間は読み返したりして待ってます。
122復讐鬼の騒動記:04/09/05 10:24 ID:YYi1a9Jq
第一話『男』

文明社会から隔絶された、と表現しても過言ではない山奥。そこに、古い寺院がある。
男は現在、ここで多くの弟子たちを指導している。かつては、仲間たちと共に
世界の命運を賭けて戦ったこともあった。だが今は、あの時のような凄惨な事件も
起こっておらず、日々平穏に過ごしている。
ここで男に師事し、巣立っていった若者たちは、厳しい修行で得た力を駆使して、
そして師の教えを忠実に守って、世界各地で世の為人の為に尽くしている。
男はそれが何より嬉しく、またそれで満足していた。それ以上、何も望まなかった。
……今日、この日までは。

男は、もう七十を越える歳であったが、外見的にはとてもそうは見えない。筋肉質な
体を独特の武闘着に包んだその姿は、せいぜい五十代前半といったところである。
そしてその身体能力は、常人を遥かに越えている。今日も、朝日を浴びつついくつもの
山を駆け巡り、崖を越え、河を潜り、滝に打たれて、ふう、と一息ついたところ。
滝のそばの小屋で、長い白い髪を拭き、紐で一つに括って、服を着替えた。さて、
自分の修行はここまでだ。そろそろ寺院に戻って、弟子たちを見てやらなくては
ならない。そう思いつつ小屋を出た、その時。
「やあやあ。探しましたぞ」
のそのそと、老人がやってきた。耳が妙に長くて尖っている以外は、縁側で茶を
啜るのが似合いそうな、ごくごく地味な普通の老人である。
……いや、違う。普通の老人であるはずがない。ここは屈強な若者でも簡単には
辿り着けない険しい山奥であるし、それより何より、
『何だ……? この私が、接近に気づかなかっただと?』
男は、一切の気配を絶って平然と歩いてきた老人に、ただならぬものを感じた。
だが老人は、にこやかに平和的に、男に話しかけながら近づいてくる。
「突然ですが、このワシと戦って貰えませんかの。ああ、断るのは自由ですが、そう
なるとアンタの可愛いお弟子さんたちがみんな、死にますぞ。……こんな具合に、の」
言いながら老人が、軽く手を振り上げた。するとその手から、丸い光の玉が撃ち出される。
男はその光の玉を、目で追いかけた。玉は岩壁にぶつかって、爆発! 大穴が開いた。
123復讐鬼の騒動記:04/09/05 10:26 ID:YYi1a9Jq
男が、目を見張って息を飲み込む。老人は、ニコニコして話を続けた。
「解ってくれたかのぅ? アンタが戦わねば、アンタのお弟子さんたちが、ああなる」
「お……お前は、一体、何なんだ」
「ホッホッ。実は、ワシの宿敵……宿敵と書いてライバルと読む。良いか、間違っても
『とも』なんて読むなよ。あんなの、友達じゃないんでの。あぁ思い出しても胸クソが」
「いいから説明しろ」
「ああ、すまんすまん。その、ワシの宿敵が、この手口にかかって発奮したそうなん
じゃ。で、ワシも真似させて貰うことにした。アンタを本気にさせる為に」
男は、老人を見た。相変わらずニコニコしているが、確かにその裏には殺気がある。
「私と戦いたい、その理由は?」
「今言った、宿敵に勝ちたいからじゃ。恥ずかしながら、ワシは一度敗北しておる。
今、リベンジの為の修行中なんじゃ。で、適当な試合相手を探していたところ、」
老人が、男を指差した。 
「その歳にしてその強さ、のお前さんに目をつけた。そして時空間を越えてやってきた
のじゃ。言っておくが試合と言っても真剣勝負。殺し合いでやらせて貰うぞ」
男は、先程老人が空けた岩壁の大穴を見た。どう見ても人間業ではない。
「……拒否はできないのだろう?」
「無論。お弟子さんたちの命が惜しければの」
男が、腰を落として構えをとる。
「解った、戦ってやろう。……確認しておくぞ。殺し合いでいいと言ったのはお前だ」
「ホッホッ。ワシを殺せるおつもりか。結構結構。そうでなくては」
老人も、構える。が、男が手を上げて制した。
「待て。始める前に、そのヘタクソな変装と演技をやめろ。鬱陶しい」
「ほほう? これは少し見くびっていたようだな。ま、深い意味はない。悪く思うな」
老人は、ニヤリと笑うと顎に手をやった。そして、顔の皮膚と髭とを一気に毟り取る。
と同時に、ジャンプ! すると老人の全身が爆発し、その爆煙の中から……
「私の名は、美しき魔闘家・鈴木! いくぞっ!」
髪を逆立て、厚い化粧をし、顔の半分を覆面で隠した、ド派手なピエロが現れた。
124復讐鬼の騒動記:04/09/05 10:26 ID:YYi1a9Jq
「サイクロン・ウエエェェイブ!」
鈴木の手から、妖気の波動が滝のように迸った。先に見せた、岩壁に大穴を空けた一撃
よりも強力な妖気が、輝きを伴った渦となって男に向かって飛来する。
だが男はそれを紙一重でかわすと、一気に間合いを詰めて攻撃態勢に入った。
「威力だけはあるようだが、そんな単調な攻撃は私には通じん!」
「と、一旦追い詰められて見せるのが、一流のエンターテイナーの証明だっ!」
鈴木の前面に、まるで鈴木を守る盾のように、光の六芒星が出現した。その六つの頂点に、
ゆらゆらと揺れる炎のような妖気が灯る。
「受けて死ぬことを光栄に思うがいい! 私の華麗なる1000の技の中でも最高級の
逸品を送ってやろう! その名も、アナグラム・サイクロン!」
六芒星から六つの光の玉が、妖気の砲弾が発射された。それらは上下左右から包み込む
ように、男の退路を絶ちつつ襲い掛かる。鈴木は、得意げにキメポーズをとって、
「ジ・エーンド」
六つの爆音が、轟いた。と、その爆音を切り裂いて、男が拳をかざして向かって来た!
「な、何っ!?」
鈴木は、見た。男が、滑るように軽やかな動きで、分身が見えるほど素早い身のこなしで、
鈴木の六連弾を全てかわしたのを。
人間でありながら、人間離れしたその動き。
「こ、これは、もしや噂に聞いた、流水の動き? あるいは残像け……」
「喰らえッ!」
動揺していた鈴木の顔面に、男の拳が叩き込まれた。一瞬輝いたその拳は、電撃の
ような奇妙な衝撃を鈴木に与える。
鈴木は吹っ飛び、意識を粉砕されそうになりながら、
「で、電撃? というと、どこかの中学校で男子体育の時間に教えているという……
いや、虎柄ビキニ鬼娘と関係が……? って、分析してる場合か私!」
何とか着地して、踏みとどまる鈴木。男は追撃を加えんと向かってくる。
125復讐鬼の騒動記:04/09/05 10:27 ID:YYi1a9Jq
鈴木は、考えた。実を言うとアナグラム・サイクロンをあっさりかわしてしまう
相手に、確実に当てられる技など持ち合わせていなかったりする。六方向からの
同時攻撃をかわす敵。それを仕留めるには……どうしよう? とか考えていると、
「ぁぐっ!」
また一撃、拳を喰らって、電撃のようなダメージを受けた。おそらく人間なら、
一ヶ月以上は昏睡状態に陥るところだろう。やはり事前調査通り、この男は強い。
だが、その事前調査の結果故に、負けられない。
全力を出した「今のこの男」を、絶対に叩き伏せねばならないのだ。
「一か八か……まだ未完成だが、あの技で……」
「トドメだ、鈴木とやら!」
男が、必殺の気迫を拳に込めて向かってくる。よく見ればその武闘着の端々が焦げ、
あるいは裂けている。どうやらさっきのアナグラム・サイクロン、そう楽々と
かわせた訳ではないらしい。男にとっても、限界に近い動きだったようだ。
ならば、イケる! と鈴木は妖気を爆発的に高めながら男に対峙して、
「六方向からの攻撃で倒せぬなら、七方向にするまでだ! 美しい新必殺技、
レインボー・サイクロンっっ!」
鈴木の全身から溢れ出した妖気が、今度は七つの妖気砲弾となって飛び出し、
男に襲い掛かった。
男は焦り、何箇所かの肉を抉られながらも、それでも急所への直撃だけは避けた。
妖気砲弾が地面に着弾し、七つの爆音が轟き、爆煙が辺りを包み込む。と、
その爆煙を切り裂いて、鈴木が拳をかざして向かってきた!
「今度はこっちの番だ! 受けるがいい、この美しい鉄拳をっ!」
「ぬうっ!」
腕や脚にダメージを受け、体勢を崩しながらも、男はカウンター狙いの拳を
繰り出した。が、鈴木はいきなり手を広げて、
「なぁんてね♪ サイクロン・ウエエエエェェィブっ!」
至近距離からの、一撃。男はまともに胸に喰らって、血を吐き散らしながら吹き飛んだ。
126復讐鬼の騒動記:04/09/05 10:28 ID:YYi1a9Jq
倒れている男を、鈴木が見下ろす。頬の汗を拭いながら、ニヤリと笑って言った。
「全力で戦ってくれたようだな。約束通り、弟子どもには手は出さん。気分がいいから、
お前の命も助けてやろう。……いや、生き恥をさらして貰うとしよう」
「い、生き恥、だと?」
「フフッ。実は、私がお前と戦ったのは、修行の為だけではなくてな」
鈴木は、懐から一枚の紙切れを取り出した。
「お前は今、歳を取っても強いつもりだろう? が、若い頃はもっと強く、美しかった。
若い頃のお前なら、最後のサイクロン・ウェ−ブもかわせたはずだ。あるいは喰らっても
耐え、逆襲しただろう。が、今は弱く、醜くなった。それを証明する為に、あえて
この時代のお前に会いに来たのだ。やはり人間も妖怪も、老いたら終わりということだ」
「……」
「じゃあ、な。せいぜいムダに長生きして、その醜い姿を晒し続けるがいい」
鈴木は、倒れている男の胸に、紙切れをヒラリと落として、去って行った。
男は、胸元に落とされた紙を見る。それは長い黒髪の、美しい青年の写真だった。
「……老いた……私が? 弱く、醜く、なった……?」
男は起き上がり、写真を持って河に向かった。水面に己の姿を映し、写真と見比べる。
差は、歴然だった。同一人物とはとても思えない。白髪も、皺も、瞳の輝きの弱さも。
「……く……っ!」
男は、写真を握り潰した。
自分は、常人とは違う。厳しい修行に耐え、超人的な能力を身につけた。そう思っていた。
だが、現実はどうか。普通の人間より、ほんのちょっぴり、優れているだけではないか。
「私は……私は……」
男は、うつろな目で呟きながら、寺院へと戻っていった。
その頃寺院では、一通の手紙が男を待っていた。差出人は男の古い知り合いのアメリカ人。
手紙の内容は、メキシコで見つかった、ある遺跡を調査して欲しい、という依頼である。

……『波紋法』の継承者ストレイツォが、若さに渇望して悪魔に魂を売り渡すのは、
このすぐ後のことだった……
127ふら〜り:04/09/05 10:30 ID:YYi1a9Jq
予定を変更して、幽遊白書のを先に持ってきました。といってもご覧の通り、
他作品への出張ものですが。
鈴木の技については、ゲーム版や私のオリジナルが入ってます。ご了承のほどを。

>>ブラックキングさん
梢江の惨状が……直接的な、痛みとか出血とかとは違う痛々しさ……堪えますね、
これは。独歩に続いてバキも、これで完全に火がついたことでしょう。意地でも正義
でもない、純粋な「怒り」で戦う主人公たち。物語が、重く熱くなってきました。

>>サナダムシさん
ホームレスの誇りを守るため、ときましたか。友情に支えられ、勇気を振り絞って
戦うシコルと、自分たちホームレスの誇りを背負って戦う本部。火花散ってますねぇ。
で、釘。ウンチクの途中で攻撃を喰らうという稀有な事態を経て、どういう展開がっ?

>>サマサさん
修行を申し出るジャイアンと、引きずられるスネ夫。微笑ましいくらいいつも通りの二人、
ですね。でもその日常的幸せ空間が、間もなくひっくり返ってしまう、と……さあ、
子供数人と青タヌキの運命や如何にっ? 充電後の第二部、楽しみに待ってますよっ!
128作者の都合により名無しです:04/09/05 15:22 ID:idH950ZB
>ドラえもん のび太の神界大活劇
おお、古代の記憶に残された戦争の、最終兵器。壮大に動き始めましたね。
これがどう後々の大きな流れに関わって来るのか、そしてドラたちはどう動くのか。
いよいよ本編突入って感じですね。でもちょっと休養ですか。うーん。
また元気に復活して、この勇壮な物語を完結して下さい。お待ちしてます。

>復讐鬼の騒動記
ふらーりさんお帰りなさい。これからも頑張って下さい。
それにしても、鈴木かwてっきりゆうすけか飛影あたりが出てくるかとおもいきやw
ゆうはく+ジョジョですか。ストレイツオがこの先どう鬼に変貌していくのか。
この話、さらにゆうはくキャラが出てくるのでしょうか。先が見えませんね、期待してます。
129作者の都合により名無しです:04/09/05 16:25 ID:ImyPiSFG
>サナダムシさん、サマサさん
二人とも大変すばらしいSSでした。
あなた方の実力はこのスレの方が相応しいのでは、と思ってしまうほど。
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1094208219/

>ふら〜りさん
鈴木、明らかな負けパターンだったのに勝っちゃいましたね。
自己突っ込みも鈴木のアホっぷりがよく出ていて面白い。
男がストレイツォとは最後まで分かりませんでした。
130作者の都合により名無しです:04/09/05 16:55 ID:gZzGZFXy
サナダムシさん
・最終決戦らしく、大将が大将らしく振舞ってますね。絶対不利と思われたシコルが、
何か一発かましてくれそうだ。ホームレス対しけい荘、どっちのキャラも濃くて好きですが
やっぱりここはシコルに勝って欲しい。いけ、シコル。釘で刀に勝て!
でも本当に最終回が近そうな予感で悲しいな。もう少し続けて欲しい、30話位まで。
サマサさん
・第一部、お見事でした。いろんなキャラを「立たせた」オープニングでしたね。
個人的にプリムラが気に入りました。原作のゲームは知りませんがw 
そしてほのぼのとした雰囲気から一転、物騒な話題が出ましたね。おそらく物語の核心。
でも2週間の休養か。待ち遠しいけど、十分に休んでまた楽しませてください。
・ふらーりさん
幽遊白書ですか。でも、ストレイツォが主役っぽいですね。最初はなんか
ダークな雰囲気と思いましたが、せりふの端々に「ふらーりさんらしさ」が現れてますね。
鈴木がどう絡むのか、他の幽遊白書のキャラはいつ出てくるのか、楽しみです。
これからも作品に感想に頑張って下さい。
>>129さん
あまり他スレの事は出さない方がいいですよ。ここはここ、あちらはあちらです。

131作者の都合により名無しです:04/09/05 17:08 ID:ImyPiSFG
>>130
いえ、お二人にはもっと実力に見合った場所に移って欲しいと思っただけでして。
あちらもここに負けないくらいの良スレですし。
悪気はありませんでした。
でも、時には正直になることも大切ですよ。
132作者の都合により名無しです:04/09/05 17:09 ID:0gZKa6di
確かにあっちは凄い良作品じゃないとまず叩かれるからな。
そういう意味では、おふた方は移っても問題なくやっていけるだろう。

でもな、あっちは「ヤムチャ」スレなんだ。わかるな?
漫画スレじゃないんだ。
133作者の都合により名無しです:04/09/05 17:17 ID:ImyPiSFG
あちらにもトグサとかありますけどね。最終的には職人さんの判断に任せます。
失礼しました。
134作者の都合により名無しです:04/09/05 17:18 ID:gZzGZFXy
>>132さん
もうやめましょう。>>131さんはそういう意見なんでしょう。
私はサナダムシさんのしけい荘やサマサさんの神界大活劇を
すごく楽しみにしてるので、こちらでずっと続けて欲しい、それだけです。

あまりこの話題が続くと作品が来辛くなるので、私もあなたも>>131さんも
この話題は止めましょう。では、

何事もなかったかのように再開↓
135作者の都合により名無しです:04/09/05 17:43 ID:gZzGZFXy
一呼吸おくために上げとこう。
旧スレ保守あげしたので。
久々に続きを投下させていただきます。

前の話
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dekisugi/11.htm
突然現れた少年忍者は八方斎の予想していた通りの人物であった。

「やはりきり丸か。おのれ、なぜこんなところに・・?」
「はて?そうだ!バイトの休憩時間になんだか小銭の堕ちる音がして、
本能の赴くままに追いかけてみたらいつの間にかここにいたような・・・。」

きり丸と呼ばれた少年は、ゼニの音につられて爆走してきた経緯など、あまり
はっきりとは覚えていないようだ。それでも八方斎はいぶかしげに悩んでいる。
「さ、さっき落としたゼニの音か。しかし、ここは地底世界。いくらドケチの
お前といえど、地上にまで聞こえるはずはないのだが・・・。はて・・・?」
「そう言われたって聞こえたもんは聞こえたんだもん。」

「う〜ん。不思議だなぁ。ん?待てよ?バイトだと!? まさか貴様・・・
“たけこぷたあ”工場のパートに混じって働いていたのではあるまいな!?」
「え?あの竹トンボ工場のこと?オレはだんご担当だったけど。」

「ぬぬぬ・・・。ぬかったわ。まさか忍たまが紛れこんでおったとは・・・!」
「それはそうと八方斎。こんなところで何をしてたんだ?
ど−せまた、悪巧みしてるんだろー。やーい、悪だくみー!」
「ギクリ!はてさて、なんのことやら。ワシは大事な使命があってな。」

弁解する八方斎の頬にタラリと汗が一滴滴るのを、きり丸は見逃さなかった。
あたりを見渡し、状況を確認すれば、そばには真ん丸い青い狸みたいなのが
一匹。友達のしんべえそっくりの体型だ。乱太郎にどこか似ているメガネの
少年もいる。そして、仮面を身につけ、肌を大胆に露出させた奇妙な女の子。
もちろん、ドラえもん、のび太、ワンダー・ガールの三人である。
そう。きり丸はちょうどドクタケ忍者隊が取り囲んだ中心に飛び込んでしまっ
ていたのだ。
きり丸はドクタケ忍者隊に囲まれたドラたちに向って、語りかける。
「へっ、やっぱり、なーんか悪巧みしてるみたいだな。
ってことは、あんたら今、こいつらに狙われてるの?」
「うん、そうだけど・・・。」
「こいつらドクタケ城っていう悪い城の雇ってる忍者で、いっつも悪だくみ
してるんだ。そいつらに狙われてるってことは悪い奴でもなさそうだな。」

「ええい、うるさいぞ。このいつもいつもいいとこで邪魔する忍たまめが!
ふん、まぁよい。貴様もついでにひっ捕らえてやるまでよ。貴様らの
頼みの山田も土井もさすがにこんなとこまではやってくるまい。」
「ゲゲッ、そ、そういえばそうかも。ひょっとして、きりちゃん大ピンチ?」

そう。ピンチである。しかし、いつもなら慌てふためいて逃げ惑うだけの
きり丸が、珍しく余裕しゃくしゃくである。なにか切り札があるらしい。

「へへーんだ!捕まってたまるか!忍法、操忍の術!」
少年忍者は、そう叫ぶと同時に四つんばいになり、地面を
じっと凝視している。そして、なにやら地面をキョロキョロと探す仕草。
何をやってるのかわからないドラたちはキョトンと眺めているだけである。
しかし、ドクタケの首領は、わなわなと拳を震わせ、恐怖に目を見開いて
焦燥している。どうやら、その場にいる中でただ一人、その術の恐ろしさ
を理解しているらしい。さすがに悪の忍び集団の首領である。

「き、貴様・・・その姿勢は・・・まさか・・・!?」
おびえる八方斎。地面を睨んだまま、ニヤリと不適に笑う少年忍者。
「貴様、まさか・・・コンタクトレンズを落としたというのか・・!?」

『へ?』
声を揃えて口をあんぐりさせるドラ、のび、ワンダー・ガールを
気にすることもなく、ドクタケ忍者部隊は全員、慌てふためいている。
「ぐぬぬぬ。おのれ。卑怯な・・・。お、お前たち、
絶対に動くんじゃないぞ!そーっと、そーっと探すんだ。いいな!?」
「はい。八方斎様!」

「さっ。今のうちに逃げよう!」
いい大人が大勢、必死こいて地面をカサカサ這い回っているのを尻目に
ちゃっかり、逃亡をうながす少年忍者であった。

「はぁ・・・。なんというか・・・。」
「バッカみたい。」
「ロードさん・・・。なんであんな人たち雇ったのかしら?」
ドラたちは、それぞれ口々にあきれながら駆け足でその場を離れていく。
「さ、なんだかわかんないけど、あなたもいっしょに捕まって!」
「? なんだなんだ? うわぁっ!?」
ブローチから発射された仁丹だけをその場に残し4人は別の場所へと
一瞬にして移動する。

「ふう。これでもう都市の外にまでは脱出できたはずよ。」

と、転移完了後、ワンダー・ガールが安堵の吐息を吐いたその瞬間、
目の前に突然小さな丸い穴が開いて真っ白いなにかが飛び出してくる。
「わぁっ!?」「きゃぁっ!」「なんだーっ!?」
真っ白いなにかは次々に4人を絡めとって穴へと引きずり込んでいく。
140作者の都合により名無しです:04/09/05 18:44 ID:gZzGZFXy
うみにんさん、キターーーーーーーーーーーーー
相変わらずギャグとシリアスの配分が絶妙ですね。今回はギャグ方面ですかw
アクションも多彩で、なんといってもキャラの動かし方が読んでて気持ちいい。
ドラたちの呆れ顔が目に浮かぶようですw
でも、>>139まで読みましたが、まだうぷの途中かな?途中でしたらすみません。
とにかく、まだ先は長いと思いますが、頑張って下さい!
「いててててて。なんだいったい・・!?」

「うふふ、安心して。“取り寄せとりもち”で引き寄せただけよ。」
暖かい、慈愛に満ちたやさしい声。
あわててあたりの様子を探る4人の視線の先には・・・
にっこり微笑む未来の黄色い猫型ロボットの姿があったのだった。

「・・ドラミちゃん!無事だったんだね。」
「ドラミ!よくぞ無事でいてくれた。」
感動の再会。ドラえもんとのび太は泣きながらドラミの元へ駆け寄っていく。
ドラミは落ち着いた聖母のような眼差しで、ニコニコ笑っている。

「知り合いなの?へぇ。かわいらしい子ね。」
ワンダー・ガールも一緒に、のんきに話しかけたりしている。
得体の知れないアイテムを使われたというのに、さほどの警戒も
抱いていないようだ。

そして、きり丸は空間移動なんかよりも別のことに脅威を感じていた。
「うげっ!?青いタヌキと黄色いタヌキがしゃべってるっ!?」
ゴン!感動の再会に泣き濡れるドラえもんと笑顔のドラミのダブルげんこつが
忍者少年、きり丸を襲う。どうやらこの忍者少年、一言多い性格のようだ。

「いてっ! あーん、なにも二人で殴んなくても・・・。」
「そうだ!すっかり忘れてたけど、ドラミちゃんはなんでここに?」

のび太の質問を遮ってドラミが、早急に次の行動をうながす。
「待って。説明する前に、早くみんなと合流しなきゃ。」
「でも、みんなちりぢりになっちゃって、どこにいるやら・・・。」

のび太は困ったような、泣きそうな顔でそう訴えた。
無理もない。リルルと二人であてもなく、散々に地底世界をさまよっても、
仲間の居場所は手がかりさえ掴めなかったのだから。いや、最悪のケースは
あまり想像したくはないが、無事生存しているかどうかさえ定かではない。

しかし、あいかわらず、にっこりと菩薩のような穏やかな笑顔のままで。
ドラミはあっさりと、のび太の心配を吹き飛ばす女神な発言を繰り出した。
「ジャイアンくんとスネオくんの居場所なら一応つきとめておいたわ。
そこで、みんなといっしょにゆっくりお話しましょ。」

ドラミのあまりの手際の良さに一瞬、
あんぐりと口を開け、固まっていたドラえもんとのび太であったが・・・
ドラえもんは“男眉毛”全開で先の再会の感涙とはまた別の、
熱い“男涙”を流しながら絶叫した。

「マジかよ!? 愛してるぜドラミー!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>>140
感想感謝です。すみません。改行多過ぎって出たので二つに分けて修正する
のに手間取ってしまって。(1レスが短くなるので少し書き足してました。)
間が開きましたが、続きは明日か、早ければ今日にも、もう少しうP予定です。
144作者の都合により名無しです:04/09/05 19:30 ID:X89TqUwZ
乙!つーか久々!忍たまはギャグ担当か。でもいい味出てる。
話が進むにつれギャグ色が強くなってきてる気がするなw
この流れだとついにいつものメンバーが集まって最終決戦か?
145作者の都合により名無しです:04/09/05 19:51 ID:idH950ZB
>うみにんさん
お久しぶりー。復活うれしいですよ。
なんか全員集合の流れになってきましたね。大詰めも近いのか。
今回は荒らしの前の静けさ、というか嵐の前のギャグの回、ですか。
また明日のうぷとの事、楽しみに待ってますよ。
NBです。
皆さんに忘れん内に一つ。
やっぱりスペル間違ってました!
アトラクション>「ATTRACTION」が正解です。
二番目のTがOになってて「アトーラクション」になってました。
猛省します!
……続きはもう少しお待ちを。
147作者の都合により名無しです:04/09/05 20:14 ID:VjTAIttr
ふら〜りさん、うみにんさん復帰おめ!

>ふら〜りさん
期待の幽遊白書来ましたか。しかも鈴木かよ!w
ストレイツォといい、あいかわらずマニアックですな。
>「で、電撃? というと、どこかの中学校で男子体育の時間に教えているという……
>いや、虎柄ビキニ鬼娘と関係が……? って、分析してる場合か私!」
ふら〜りさんらしいオタクちっくなギャグにワロタ

>うみにんさん
こちらもあいかわらずほのぼのギャグが切れてますな。
みんなでコンタクトを探してる忍者軍団も想像すると笑えるw
神界でも使われてたけど、タヌキはやはり基本ですか。
>ドラえもんは“男眉毛”全開で先の再会の感涙とはまた別の、
>熱い“男涙”を流しながら絶叫した。
ドラえもんの表情が、他のどんな表現で書かれるよりわかりやすいですw
148作者の都合により名無しです:04/09/05 20:28 ID:0ZKkecTO
>>146
そこは猛省するところじゃない。
むしろ空気を読んで欲しい。
149作者の都合により名無しです:04/09/05 23:23 ID:vMHNhZ4y
ユルは夏厨だった、というと酷く納得できる
150作者の都合により名無しです:04/09/05 23:32 ID:LPtYV+dx
いつも期待してない日曜なのに今日は賑やかだな。
>ふら〜りさん
新作乙!オレもメインキャラが主役とばかり思ってたw
どんな物語になるのかまだ見えてこないですが、期待してます。
ストレイツォはこれで出番終わり?
>うみにん氏
復活乙!ギラーミンのような渋い敵と間抜けな敵と敵サイドも
バリエーション豊かですね。いよいよバラバラになってた
ドラえもん一味が全員集合ですね。期待。
151作者の都合により名無しです:04/09/05 23:35 ID:oRNyYIqW
みんなふらーり氏の作品に、続きに期待とかいってるけど
これ短編なんじゃないの?
152作者の都合により名無しです:04/09/05 23:40 ID:oRNyYIqW
なんかぶっきらぼう過ぎたな。違ってたらごめん>住人&ふらーり氏
153作者の都合により名無しです:04/09/05 23:50 ID:LPtYV+dx
幽白の前にバキの短編をはさむとか言ってたから幽白は長編と思ってた。
みんな続きに期待って書いてるし。確かに短編にも見えるね。
154作者の都合により名無しです:04/09/06 01:59 ID:1c/JAjpu
作品期待age
155作者の都合により名無しです:04/09/06 08:25 ID:InXZ+u3J
おお、知らぬ間にサナダムシさん、サマサさん、ふらーりさんにうみにんさんまで!
皆様お疲れ様です。大学に遅れるから、帰ってきてからじっくり読みます。
土日は作品来ないと思ってたのに、嬉しい誤算だ♪
156リ・バース:04/09/06 21:07 ID:jkjCZY6q
私たちはいわば2回この世に生まれてくる。
一回目はただ存在する為に。二回目は、生きる為に。  ルソー


誰でも一度はふと考える事がある。
この自分の人生は、本当に、「本当」の自分の人生なのだろうか?
あの時、もしああしていれば、人生は光溢れていたんじゃないだろうか?
選択ミスの連続で、今の「偽り」の自分があるんじゃないのか?

もし予め自分に起こる事件。生涯の系譜を、最初に知っていたとしたら。
最初から、絶対に迷わない成功へのコンパスを握っていたとしたら。
人生は劇的に変わるんじゃないだろうか?

詮無き事。
どんな成功者も、一度も後悔無しには人生を終えられないように、
どんな人間も、人生のやり直しも出来やしない。
これから起こりうる事を予測など出来やしない。

だけどもし、ある男が過去にさかのぼって、これから起こる歴史を全て、
「知っている」としたら。
そして、その男が超人的な能力を持っていたとしたら。
そして、その力を使い、歴史を自分に都合よく変えるとしたら。

この世は、その男の者となるかもしれない。
なぜならその男は、歴史の改ざん者であり、未来の絶対なる預言者なのだから。
157リ・バース:04/09/06 21:08 ID:jkjCZY6q
プロローグ・死なない男

あれ?

初夜を沿い遂げた初心な花嫁の下のシーツのように、赤く胸の辺りが染まり始めた。
痛い。決闘相手の手首の辺りまでが、俺の胸に沈んでいる。
大丈夫。こんな程度の傷、今の俺には通じないはず。今の俺は不死身のはずだ。

3日前。そいつに決闘を申し込んだ。
無謀だ、雑魚めとその決闘相手本人に鼻で笑われた。
そんな事分かっているさ。戦闘能力では絶対の差がある事は。だが勝算はある。
それに、やはりおまえとは戦わないと前へ進めない。

結局のところ嫉妬だった。
昔の恋人に見限られて、恋人のその女¬を――名前はブルマというが――、寝取られた。
しかも、相手は昔地球を侵略しに来た宇宙人だ。
その宇宙人と――名前をベジータという――、ブルマの間に子供が生まれた時、
激しい嫉妬に駆られた。殺してやりたいと。

決闘。
そんな言葉が頭に浮かんだ。
だが、戦闘民族サイヤ人のエリートであるベジータと、
地球人である俺では力に差があり過ぎる。そこで、思いついた。
どんな願いも叶える神の龍に、ベジータを倒す願いをする事を。

そして、程なく神の龍を呼び出すためのドラゴンボールを7つ集めて、
俺は神龍を呼び出し願い事を叫んだ。
158リ・バース:04/09/06 21:10 ID:jkjCZY6q
「神龍、俺にベジータを超える力を授けてくれ」
「無理だ。私は神によって生み出された。神の力を超える願いは叶えられない」
「では、俺のへたれを直してくれ」
「もっと無理だ」

最初の2つの願いは簡単に却下された。
それは分かっていた。もしや、と思い言ってみただけだ。
どうせベジータの抹殺を願っても一緒だろう。
ならばもうひとつの願い。こちらの方を叶えてもらおう。

「俺を不死身にしてくれ。決して死なない運命にしてくれ」
俺がそう叫ぶと、神の龍は頷いた。俺の肉体に一瞬の痛みが走った。
そして龍は煙のように消え、願いは満たされた。

俺が決闘を挑んだとき、ベジータはいつもの見下した笑みで拒否した。
俺の事なんか敵とすら思ってないのだろう。だが俺のこの一言で奴の顔色が変わる。
「サイヤ人の王子は、挑まれた戦いから逃げるのか?」
その一言で、決闘はあっさり成立した。
159リ・バース:04/09/06 21:12 ID:jkjCZY6q
そして決闘の日。

ベジータは余裕の笑みを浮かべて俺の前に立っていた。
「ヤムチャ、覚悟はいいのか?逃げ出すならいまのうちだ」
奴は哀れみにも似た台詞を吐いた。
言い忘れていたが、俺の名はヤムチャ。地球を数々の危機から救った、Z戦士だ。

決闘が始まってすぐ、奴が急に空を舞い、突進してきた。
動きが早すぎて見えない。ドンマイ、俺は不死身だ。
奴が一発殴ってきた。蹴飛ばされた犬のように転ぶ俺。
ドンマイ、俺は不死身のはず、だ。
起き上がった俺に、奴が手刀を見舞った。手首まで胸に沈んでいる。
ドンマイ、俺は、ふじみ……。

あれ?力が、抜けていくぞ?
血がどくどくと抜けていき、意識が朦朧とし始める。腰が落ち、倒れた。
大丈夫、俺は不死身だろ?あ、れ?
目の前が真っ赤に染まり、暗闇が俺を覆い始める。

最後に俺の網膜に映ったのは、べジータの顔。
蔑んだ顔をすると思っていたが、案外曇った顔をしていた。意外だった。

こうして、俺は一回目の死を迎えた。
この先、俺は何度か死ぬ事になる。何度も、何度も。

そしてその度に、新しい生誕の朝を迎える事になる。
160フンコロガシ ◆bfYCBT6bFU :04/09/06 21:18 ID:jkjCZY6q
お初にお目にかかります。フンコロガシです。
拙い作品ですが、「リプレイ」という小説を元に書きます。
主人公が主人公だけに、バキスレかあちらか悩みましたが、
僕はふら〜りさんの大ファンなので、感想をぜひ頂きたくこちらにしました。

コテハンは一番好きな作品を書かれるサナダムシさんの押しかけ弟子、という意味でw
同じ新人でもNBさんやサマサさんのようには書けませんが、完結は必ずさせますので
よろしくお願いします。一週間に一回以上は更新するようにします。頑張ります。
161作者の都合により名無しです:04/09/06 21:19 ID:oioz+mUS
ついにキター!
俺応援するよ。これから読む。
162作者の都合により名無しです:04/09/06 21:30 ID:oioz+mUS
>決して死なない運命にしてくれ
これが余計だったんだな。
でも何回もリセットしてやり直せれば人生必ずうまくいくだろうな。
いい願いかもしれん。
163作者の都合により名無しです:04/09/06 22:04 ID:tY6suhuB
俺も応援する。まさかあそこから職人が出るとはw
読んで見たら、いい意味で読みやすいよ。一回目としてはいいんじゃないかな。
設定は少しありふれてるけど、これからの展開で驚かせて下さい。

しかしふらーりさんは偉大だなw
164超格闘士大戦:04/09/06 22:38 ID:5T9x80gk
>>99の続き
165超格闘士大戦:04/09/06 22:41 ID:5T9x80gk
第13話「集められた聖闘士達」

明けて翌日。
バキと烈は徳川光成の車で、とある場所に向かっていた。
昨夜、梢江の容態を知ったバキは数時間絶望の涙を流し続けた。
梢江が眠った後も、バキは集中治療室を離れることなく一晩中梢江の顔を見つめ続けた。
午前9時。集中治療室に烈海王と徳川光成が現れる。
 「バキよ、今すぐワシについてきてくれ」
光成が目の下が真っ黒になっているバキの顔を見て言った。
黙って首を横にふるバキ。光成は治療室内に入り、小さな椅子にチョコンと座っている
バキに一通の手紙を差し出した。バキはぶっきらぼうにそれを受け取り読み始める。
 「バ…バカな…克己さん達が…」
手紙の送り主は愚地独歩だった。死んだ克己達の仇を取るため、オーストラリアへ
向かった彼は、日本をたつ前に光成に手紙を渡していた。バキや烈などの仲間に向けたものだ。
手紙には克己達の死、独歩の旅立ちについての事が書かれていた。
そして最後に、「お前らに日本は託す」と大きく筆書きされた文字が…。
 「悲しいのはお主だけじゃないのだ」
手紙を読み終えたバキに、光成がそう言った。その言葉を聞いたバキは、ゆっくりと
立ち上がり自分を見上げる光成の目を見た。
 「行くって…どこへ?」
 「下に車を用意しておる」
くるっと振り返り、ベッドに眠る梢江の寝顔を見るバキ。
 「ちょっと、行ってくる。すぐ帰るからね」
数分後、病院の地下駐車場に止められていた黒のベンツが、バキ達3人を乗せて走りだした。
行き先は城戸邸。アジア最大のグラード財団の実権を握る、城戸家の屋敷…。

166超格闘士大戦:04/09/06 22:43 ID:5T9x80gk
グラード財団。アジアで最大規模の企業である。
数年前に、創始者である城戸光政が他界したあと、20歳にも満たない孫娘が
全実権を継ぎ、その運営まで行っているという。
都内にある城戸邸は、徳川光成の屋敷の面積を遥かに上回る広さであった。
東京ドーム3,4個分の敷地はあるのではないだろうか。その敷地内には
城戸家の屋敷だけでなく、孤児院や闘技場などの娯楽施設も存在しているという。
バキ達を乗せた黒いベンツが、城戸邸の巨大な表門の前に到着する。
そばに立っている大柄な警備員が近寄ってきた。光成は、車のウインドウをあけて
その警備員に少し茶色がかった封筒を手渡す。封筒を開けて、中にある手紙を読み始める警備員。
 「お待ちしておりました。どうぞお入りください」
しばらく手紙を読んだ後、警備員が満面の笑みを浮かべながらそう言った。
封筒の中身は招待状のようだ。どうやらバキ達はゲストとして招かれているらしい。
まもなくして、ベンツの行く手を阻んでいた大きな門がガラガラと音を立てながら開き始めた。
VIP専用の駐車場に止められたベンツから、バキが烈に肩を抱かれながら出てきた。
体内に入った「毒」は解毒されていないのだ。植物状態となってしまったが
生命維持装置をつけていれば命に別状がない梢江よりも、バキの身体の異常は深刻だった。
バキ、烈、光成の3人が向かった先は城戸邸の迎賓館。北欧の宮殿を思わせるような
作りの建物内に入る3人。案内された晩餐会の会場には、バキ達の他にも数人の人間が招待されていた。
豪勢なシャンデリアの下の椅子に座っている人達。警視庁の斉藤一。自衛隊のガイア。
バキ達の師でもある亀仙人。浦飯幽助らを育てた、霊光波動拳の幻海。
バキ、烈、光成は、亀仙人に軽く挨拶すると用意されていた椅子に座った。
学校の体育館のような形に並べられた椅子。バキ達の前には教壇のような台が設置されていた。
 「全員揃ったようだな。…と言っても、これだけか…」
台の後ろにあるドアから、少し大柄な男が現れて言った。そしてそのまま台に手をかける。
警視庁の園田警視正であった。軽く自己紹介をすると、園田はバキや烈が座っているほうを向いて
話を始めた。
167超格闘士大戦:04/09/06 22:46 ID:5T9x80gk
「この度は死刑囚脱獄事件に協力していただき、ありがとうございました。
 警視庁を代表して、私からお礼を言わせてもらいます。不幸にも重傷を負ってしまった
 渋川先生、花山薫、加藤清澄氏に関しては、警視庁が全ての費用を出してその治療に
 あたらせてもらいます。ありがとうございましたッッ」
そう言うと、園田は台の前に立ちバキ達に深く頭を下げた。それに反応し、バキ達も軽くえしゃくする。
 「さて、本題に入るとするか」
園田は再び台に手を置き、今度はこの場に集まっている全員に向けて話し始めた。
 「ご存知の通り、世界は今危機的状況に陥っています。死刑囚達が暴れるなんて事は
 序の口なのです。ここに集まる一部の方しか知らない事ですが、人間の中にも
 混乱に乗じて戦乱を起こそうとしている集団がいくつか確認されています。
 わが国の自衛隊も、実はすでにほとんど壊滅状態なのです。ある集団との戦いによって…」
言葉を止めると、園田は一番前に座っている斉藤の顔を見た。
 「斉藤君、あの男が京都で暗躍している。以前君に暗殺を依頼したあの男だ。
 そして、例のロトの遺産のひとつ…。それもあの男に奪われてしまった…」
斉藤がピクリと反応し、首を上げた。園田が話を続ける。
 「斉藤君、そしてガイア君。今一度、京都に向かってくれ。必ずあの男を倒して
 遺産を取り戻すのだ。警視総監から承諾は受けている。行ってくれるか?」
 「承知…」
斉藤は座ったまま、園田の問いに答えた。周りに座るバキ達を見て「失礼」と言うと
胸ポケットから取り出したタバコを口にくわえ、火をつけた。煙に包まれたその顔には
うっすらと笑みが浮かんでいた。

 「さて、範馬バキさん、烈海王氏。あなた方には中国へ行ってもらうことになった。
 知っているかと思うがバキさん、あなたが倒した柳龍光が中国にいる黒幕の存在を吐いたのだ。
 チャーター便はすでに用意してある。大擂泰祭へのエントリーもな。今すぐに
 現地へ飛んでくれ」
168超格闘士大戦:04/09/06 22:48 ID:5T9x80gk
「ちょっと待ってくれよ」
一連の話を静観して聞いていたバキが、口を開けた。
 「黒幕の存在はわかる。俺も柳さんに中国に行けと言われた。けどなんであんた達が勝手に
 俺達の行動を決め付けているんだ?」
椅子を倒しながら、ばっと立ち上がるバキ。園田をじっと睨みつける。
視線を感じた園田は、さっと下に顔をそらした。顔からは脂汗がにじみ出ている。
 「なんだよ、答えられないのか!?園田さんよ!」
バキがそう罵声をあげた直後…

 「それは、あなた方が運命に選ばれた者達だからです」
晩餐会会場の大きなドアの向こうから、バキ達に向けて声が発せられた。
バタンと開かれる大きなドア。すると数人の少年に囲まれながら、優雅なドレスを着た女性が
バキ達の前に現れた。女性は場に集まっている全ての人間と顔をあわせると、静かに語り始める。
 「そう…あなた方は私の後ろにいる聖闘士達と同じく、悪に対抗する為に選ばれた戦士達なのです。
 斉藤さん、ロトの遺産は絶対に取り戻さねばなりません。5日後の皆既日食の日までに
 なんとしても取り戻してください。氷河、、瞬、あなた達2人も
 斉藤さん、ガイアさんのお手伝いをして下さい」
後ろにいる少年2人が、女性の前に出てくる。2人共16歳程の年齢だろうか。
氷河と呼ばれた少年は白鳥の描かれた箱を。瞬と呼ばれた少年は、鎖にからまれた女性が描かれた箱を
それぞれ背負っている。
 「そういえば、兄さんはどこへ行っているんですか?」
瞬と呼ばれた少年が女性に尋ねた。
 「一輝には別の任務を行ってもらっています。ある意味、あなた達よりも重要な任務を…。
 恐らくは彼にしか出来ない仕事です」
そう言ったあと、今度はバキ達のほうを見る女性。立っているバキはその目を見た瞬間
「あんたは誰だ?」という喉まで出ていた言葉をごくりと飲み込んだ。
169超格闘士大戦:04/09/06 22:50 ID:5T9x80gk
圧倒されていた。おそらく自分とたいして変わらない年齢のこの女性に。
外見ではない。何か、彼女の内側から感じるオーラのようなものに、バキは圧倒されながらも
少しの安心感を感じていた。
 「人々を苦しめる悪は許してはなりません。バキさん達、どうか中国へ飛んでください。
 星矢、紫龍、こちらにはあなた達がお供してください。大会へのエントリーも済んでいます。
 バキさん達をサポートしてください」
 「あいよっ!」
元気よく前に出る星矢と呼ばれた少年。紫龍と呼ばれたほうは対照的に黙って前に出る。
先の2人と同じように、大きな箱を背負っている。星矢の箱にはペガサスが。
紫龍の箱にはドラゴンが描かれていた。
淡々と進んでいく展開に、納得いかないのか。バキが不機嫌そうな表情を浮かべる。
そんな彼の肩を、烈がポンと叩いた。
 「バキよ、お前の身体を治すためにも中国へは行かなければならんのだ」
そう言いながらバキを見つめる烈。その真剣な眼差しを見て何かを感じたのか、バキは黙って頷く。
 「今日から5日間。ここにいる方々、いえ世界中にもまだ存在している戦士の方々全てに
 とても厳しい戦いが待っているでしょう。命を落とすこともあるかもしれません。
 ですが、あなた達の使命は再び地球が闇に包まれるのを阻止すること…。
 今日この時から、あなた達の指揮は私が取ります。アテナの化身である、この城戸沙織が…」

直後、バキ達は中国へ。斉藤達は京都へと旅立った。
それぞれの予想を上回る厳しい戦いが待ち受けているとは知らずに。
ラディッツが倒れてから約1年。残る2人のサイヤ人の乗る宇宙船は、すでに太陽系内に入らんと
していた。その接近を、地球の天文台のどれもが今だに察知していなかった。
サイヤ人達とは別に、遠く離れたとある星雲から真っ赤に光る球体が
地球に向けて旅立ったこともまた、人々は知るよしもなかった。       第1部「完」

170ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :04/09/06 22:53 ID:5T9x80gk
ということで第1部完です。
出張に行く前に第1部を終らせることが出来てよかった。
第2部は一週間以内には開始できると思います。では。
171作者の都合により名無しです:04/09/06 22:58 ID:tY6suhuB
>ブラックキング氏
よかった。すぐ第二部へ続くんですか。
ここまで風呂敷広げられて
「俺たちの戦いはこれからだ!」みたいな終わり方するかとw
しかしバキ軍団に斉藤に亀仙人に幻海に、セイント軍団ですか!
どう収拾つけていくんだろw楽しみだ。
しかしパソコン直ってから絶好調ですね。
>>142の続き

要塞内部の薄暗い通路に、人知れず信じられない光景が広がっていた。

通常の人間の6600倍のパワーを誇り、天下無敵のはずのパーマンが・・・
その中でも最も、頭脳と身体能力共に優れているはずのパーやんが・・・
たった一人の人間との格闘戦に敗れ、床を舐め、はいつくばっている。

「クゥッ、あ、あかん。信じられん。こいつホンマモンの化け物や。」
「どうやら、オレたちを裏切ったお前の本当の仲間は表のパーマンども・・・
ってわけらしいな。あきらめな。たった今、お前の怖がってたギラーミンの
野郎がそいつらの掃除に向ってるぜ。」
「なんやて!?」

(大変や。ミツオはんたちは、ギラーミンの恐ろしさをわかっとらん。
なんとか・・・助けに・・・・ なんや? げんごろうはんの肩に・・・
あの肩にいくつも浮き出てきたアザは・・?・・・星・・・?)

朦朧とする意識の中、げんごろうの肥大した巨大な肩に、いくつもの奇妙な
斑点が浮き出て見える。ただのアザである。それ以上でもそれ以下でもない
のだろう。しかし、なぜこんな窮地にただのアザなどが気になったのだろう。

それは星の形をしているように見えた・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
173作者の都合により名無しです:04/09/06 22:59 ID:oioz+mUS
第1部完か。
ついに物語が核心に近づいてきたね。
中国チームと京都チームに分かれたか。

ところでスペック・ドイル・柳に武道の指導をした黒幕がいるよね。
で、「中国ではキング・オブ・ハートの称号を持つ日本人闘士が、モビルファイターとやらを駆って戦っている」。
よもや黒幕の1人は東方不敗・・・
彼がライタイに出るのだろうか?
兵隊長になりすましたバンホーは、単身、そのまま要塞の裏手に回りこみ、
内部への進入方法を模索していた。その際、なにやら必死に地面を睨みつける
ように、なにか探し物でもしている様子の忍び集団とすれ違う。

「お疲れ様です。」
「ああ、いや、お疲れ様です。すみませんが、この辺コンタクトレンズ
落としちゃったみたいで、気をつけて通ってくださいね。」
「あ、はい。どーも。(コンタクト?よっぽど大事なものなのだろうか。)」

さりげに挨拶しながら通りすぎるおちゃめなバンホーさんであったが、
通り過ぎた直後、背後から先の忍び集団の頭の叫び声が聞こえてくる。
「・・・って・・・。あ―――――っ!?きり丸!?小娘ども!?
おのれぇえ、逃げよったかぁ――――っ!?」

バンホーは、全く気にすることなく、聞き流した。

 ―――――――――――――――

八方斎の叫びを無視し、バンホーは黙々と要塞の様子を探っている。
そこへ、声をかけてくる一兵卒がいた。いや、兵卒ではない。部隊長クラスで
あろうか。しかし、その男がかぶっていた兜を外して話しかけてきたとき・・・
バンホーはわずかに動揺した。知っている人物だったのだ。
「どうされたのですか? バンホー隊長。いや、元隊長ですね。」
「お、お前は・・・ノヴァ・・・!」
ノヴァと呼ばれた兵士。兜の下から現れたのは精悍な顔だちの竜人の若者。
キスギーが現れ、帝国が誕生する以前、自らの直属の部下だった男である。

「よりにもよって兵隊長に化けるとは相変わらず大胆ですね。
しかし、元直属の部下である私の目までごまかせるとは・・・
まさか本気で思っていたのではありますまいな。」
「ふふふ、さすがに上手くいきすぎて怖いくらいだとは思っていたよ。」
「ロードの目的は理想郷の創造です。」
「ノヴァ・・・。」
「多くの竜人たちがそれに賛同しています。
後は、バンホーさん。あなたの協力さえあれば・・・」

「まだそんなことを言っているのか!・・・ノヴァよ。目を覚ませ。
キスギーのやっていることはしょせん、理想郷とは名ばかりの、
多くの人間の犠牲の上でしか成り立たない、ただの侵略にすぎん!
本当の理想郷とは地上に血を流させずとも築くことが出来るもののはずだ。
あの日、太古の地上を襲った巨大な彗星を目の当たりにした我等は
ようやくそれに気づき、誓ったはずではないか・・・!」

「私は、ロードの提唱する理想郷を信じます。
たとえ、今この場で、あなたと闘う事になったとしても・・・。」
「ノヴァ・・・・・。」

無言で剣を構える両者。竜騎士バンホーとそのかつての部下ノヴァ。
避けられぬ決闘は、静かに、重く、開始された。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「全くどうなってるのよ。この要塞はぁ!」

相変わらず騒がしい状況の中、イライラした表情でパー子が愚痴をこぼす。
「ダメだ。グルッと一周回って見たけど、入り口どころか
窓ひとつ見つかんないや。」
と、パーマン1号もお手上げポーズである。
1号の言葉にパー子が皮肉まじりに付け加える。
「ちっちゃな通風口さえもね。」
「ウッキー・・・」
1号と同じようなお手上げポーズでパーマン2号、お猿のブービーもやってくる。
「そうか。ブービーもダメだったか・・・。」

哀しげな表情でかぶりを振っていたブービーであったが・・・
ふと、目を丸くすると、
「ウッキー・・・  ・・・ウキ!?
ウッキ――!ウキ!ウキー!!」
突然、なにか発見したのか興奮した様子で騒ぎ出す。
「なんだなんだ!?何を見つけたんだ!?ブービー!」
そのブービーが指さしたその場所に・・・
ムニョリ・・・・!

なんとも言えぬ奇妙な感覚。ちょうどパーマンたちの浮かんでいるその真正面。
要塞の表面、入り口どころか線や切れ目すら見当たらなかった部分が奇妙な音を
立てて歪む。開く。円形状に。地上からはかなり離れた高い位置に現れたその穴から、
バルコニー状の小さな足場がせり出てくる。人ひとりやっと立てる程度であろうか。

そんな不安定な足場にたった一人・・・
黒いテンガロンハット。全身黒ずくめ。長身痩躯。
幽鬼のような、死神のようなそんな不気味な外見の男・・・。

目が合った。その瞬間。1号の動きが止まる。それまでの余裕がまるで嘘であった
かのように。その凍てつくような殺意に射すくめられ、ただ恐怖に支配されている。
脳裏をよぎったのは、ただ一言。

(殺られる・・・!)

その見開かれた瞳を。脳へと直結する額の中心を。風が通りぬけた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
更新終了です。もうちょっとで話の核心に迫ってくると思うんですが、
なんとかそこまでは間をおかずに書き上げようと思っています。
179作者の都合により名無しです:04/09/06 23:17 ID:tY6suhuB
おお、うみにん氏まで!今日も絶好調ですなバキスレ。
パーやん、たじたじですね。敵もパーマン陣営以上に恐ろしく強い奴ばかり。
正直、知らないキャラばかりだけど、うみにん氏はキャラの動かし方が上手いので
気にせず楽しめます。
いよいよ核心間近ですか!しかし、年内に終わるかどうかの超大作ですな。
最後まで注目して待ってますので、頑張って下さい。
180しけい荘物語:04/09/06 23:29 ID:r8M3Lt2b
第二十三話>>103
181しけい荘物語:04/09/06 23:30 ID:r8M3Lt2b
第二十四話「死に物狂い」

 まずはシコルスキーが仕掛けた。眼球や首筋などの急所を、指で握った釘のみで攻め立
てる。本部も刀でそれを受けるが、今度は逆に反撃へ出られない。
 一切の迷いを感じさせぬ、シコルスキーの踏み込み。これは単に釘を手に入れたからで
はない。日本刀という絶望に立ち向かう、釘という小さな希望。たとえ、どんなにちっぽ
けであろうとも、希望は前進する勇気を与えてくれる。
「なるほど……。釘をきっかけに、刃に対する恐怖心を払拭しよったか」
 本部とて百戦錬磨である。敵の心理を読み取る能力には長けている。
「じゃが、たかが釘でわしに勝てると思うかッ!」
 激昂した本部が、再び脳天への一撃にて仕留めに掛かる。大きく振り上げられた日本刀。
しかし、これは同時に最大の好機でもあった。
「ここだァッ!」
 幹竹割りに一歩先んじて、右フックが顔面にめり込んでいた。刀による呪縛から脱した
シコルスキーにとって、怒りに身を委ねた本部は隙だらけも同然だったのだ。
「ぐぼッ!」
 真横に吹き飛ぶ本部。しかも受け身に失敗し、右手から刀を落としてしまう。
 盛者必衰。大打撃を与えられ、重大な戦力も失った。年老いた柔術家から感じ取れる闘
気は、もはや微弱そのもの。あれだけ猛威を振るっていた威圧感も、夢幻の彼方へと消え
去ってしまっている。

 勝ちが確定したかのように、腹を抱えてスペックが大声で笑う。
「ハハハハハッ! 釘デドウスンノカト思ッタガ、コリャ勝ッチマウゼ」
「うむ、そのようですな。しかし、あの程度ならば……中堅や副将の方が手強かったとい
う気もしますがね」
 武術家である柳は、むしろ本部の実力を疑問視していた。すると、それを聞いたジャッ
クが柳に歩み寄り、不気味に言い放つ。
「確かにな。路上や試合場でのファイトならば、俺やガイアが上だろう。しかし、この公
園での戦いとなると、話は全く変わってくる」
 戦いはまだ終わっていない。ジャックの眼差しはそう訴えていた。
182作者の都合により名無しです:04/09/06 23:30 ID:J+3dqlQe
ギラーミンとげんごろう強すぎだろw
特にギラーミンのインパクトは絶大だね。
パーマンはもうダメなのかな。
183しけい荘物語:04/09/06 23:31 ID:r8M3Lt2b
 まだ起き上がれない本部から完全なる勝利を奪わんと、シコルスキーがゆっくりと歩を
進める。見下ろすシコルスキー、見上げる本部。視点までも逆転している。
「わしは……まだ……」
 必死にもがく本部だが、無情にも肉体は命令を聞き入れない。
 意識を根こそぎ吹き飛ばす──頭部狙いのサッカーボールキックが迫る。
「まだ負けるわけにはいかんのだッ!」
 右手で蹴りを捌き、左手にて蹴り足を捕える。そのまま足首を捻るように、豪快に投げ
飛ばした。足首を軸にした遠心力で、シコルスキーは顔面から地面へと──衝突。
 窮地を脱し、本部は近くの蛇口に駆け寄る。水を浴び、失いかけた意識を整える。
 シコルスキーとてダメージは大きい。そこで気付けのため、持っている釘で自分の爪を
刺し始めた。十指全ての爪が鮮血に染まったが、意識もまた鮮明となった。
「互いに目が覚めたようだな」
「ふぅ……。すげぇ痛いけどよ、爽やかな気分だぜ」
 半歩ずつ、間合いを縮めていくシコルスキー。対する本部は、蛇口の下に備え付けられ
ている排水口の蓋を開けた。中から取り出されたのは鎖──ではなく鎖分銅。
「さぁ、始めようか」
「まだ武器があったのか……来いよ」
 手によって誘導され、鎖を介して荒れ狂う分銅。手始めに、側にある蛇口が水道管ごと
粉砕された。大噴火ならぬ大噴水、高密度の水道水が舞い上がる。
 液体にて構築された防壁。水圧は動作を制限し、水流は人影を掻き消し、噴射音は耳の
機能を妨害する。
 ──本部以蔵を見失った。
 どこにもいない。凝視するシコルスキーに、水壁を突っ切った分銅が飛来する。
 胸に突き刺さる分銅。胸骨は陥没し、心臓にも衝撃が走ったのかシコルスキーは血を吐
き散らす。間断なく飛び込む第二撃。顔面をかすめるだけで済んだが、当たった箇所の皮
膚が抉り取られている。
184しけい荘物語:04/09/06 23:33 ID:r8M3Lt2b
 水飛沫に遮られ、術者から分銅の軌道を読み取ることは不可能。ならば、飛沫そのもの
を見極めるしかない。次に分銅が繰り出される時、必ずどこかに歪みが生じるはず。
 手の中にある釘を握り直し、神経を研ぎ澄ませるシコルスキー。
 絶え間なく豪雨のように降り注ぐ水道水。ほんの一瞬、その一部が乱れた。
「来たかッ!」
 乱れた方向へ手を伸ばす。シコルスキーは超人的な指の力で、黒ずんだ分銅を命中寸前
で捕えた。間髪入れず、全力で鎖を引っ張る。が、本部は鎖分銅を捨てたらしく、もう片
方の分銅を得ただけであった。
 舌打ちし、シコルスキーは破裂した水道管周辺から脱出する。そこには、日本刀を拾い
正眼の構えで待ち受ける本部の姿があった。

 互いから発せられる闘気は、もはや生ける修羅と呼べるもの。本部が吼える。
「負けんぞッ!」
「前々から思ってたんだが……。アンタの異常な執念、どこから沸いてくるんだ」
「わし以外の四人。彼らはここにいるべき男ではない」
 この予想外の返答に、怪訝な表情を浮かべるシコルスキー。
「ショウは家出人だ。ズールは出稼ぎに失敗。ガイアはとある任務を仕損じたため、戒め
にてここで生活している。ジャックはドーピングと骨延長手術で金を使い果たし、途方に
暮れているところを誘った」
 四名のホームレス。各々の事情により、各々が課せられた十字架。
「あいつらが社会復帰した時、ここでの生活を負い目に感じるような人間になって欲しく
はないのだ。そのためにも、公園の長たるわしが強さを示さなければならんッ! ホーム
レスの誇りを……守り抜かねばならないのだッ!」
 両者、示し合わせたように同時に踏み出す。本部の初太刀、シコルスキーの額が一文字
に切り裂かれる。傷は深くない。このまま右ストレートをぶち込めば勝てる。 
 だが、額から流れ出た血液がシコルスキーの視界を封じる。同時に動きも止まる。
 その刹那、シコルスキーは右腕から凄まじい熱を感じ取った。次いで生じる激痛。そし
て、肘より下からの感覚が遮断される。己の身に何が起きたか、すぐに理解出来た。 

 ──右腕を斬り落とされた。
185作者の都合により名無しです:04/09/06 23:43 ID:tY6suhuB
今日は、イチローが5安打したみたいな日だなw
サナダムシさんまでいらっしゃるとは。

しかしシコル、釘で刀を翻弄するとは。虫けらのようだったギャグパートとは
えらい違いだ。そして本部、彼もまた重い物を背負っていたのか。
負けられる両者のクライマックスに、切り落とされる右腕。重い場面だ。
どうシコルが逆転していくのか、それとも公園の魔王が勝ち切るのか、必見ですな。

あとサナダムシさん、お弟子さんが出来ましたよw>フンコロガシ氏
186サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :04/09/06 23:45 ID:r8M3Lt2b
波に乗らせて頂きました。
大縄跳びに順々に入っていく、あの遊びを思い出します。
これより一週間程度、私情により更新出来ません。

>>フンコロガシ氏
名前を見た瞬間、何らかのシンパシーを感じました。
引用から始まるプロローグ、本格的ですね。
「エリート」「プライド」の権化たるベジータの反応がヤムチャと同じく意外でした。
元ネタを知らないので、これからどうなっていくのだろう。
187ヤムチャのお話 真夏の夜の夢:04/09/06 23:49 ID:/9LP1/gb
 前日までの雨もあがって、空はすっかり晴れた。ヤムチャはお弁当とおやつ
をリュックに詰め込んで、水筒をぶら下げて元気に家を飛び出した。
「ハイキングだー!」
 直後、暴走トラックに轢かれて病院に担ぎ込まれた。リュックと水筒はその
場に残って、いつまでも主の帰りを待ち続けたという。

「風邪ですな」
 重傷のヤムチャを一瞥して、医者が言った。誤診を誤診と感じさせない重厚
果断な口調であったが、駆けつけたヤムチャの友人達は決して納得しなかった。
「先生、ヤムチャは風邪なんかじゃねえぞ! ヤムチャの身に万一のことがあ
ったら、オラ絶対に先生を許さねえぞ! オラ悟空だ!」
 悟空は医者の胸倉を掴んでまくし立てた。仙豆をを与えればヤムチャの怪我
などすぐに治ってしまうのだが、それは出来なかった。今年は仙豆の大豊作で
カリン塔には仙豆が捨てるほど余っているのだが、あいにくヤムチャにくれて
やる仙豆は一粒もなかった。悟空達は医者にヤムチャの手術を要求した。
「えー。手術ー?」
 全く乗り気でない医者であったが、悟空達の迫力に押し切られた。面倒くさ
そうに手術の道具を用意して、輸血用の血液保冷庫の扉を開けた。缶ビールし
か入っていなかった。
「先生! オラ達の血でよければ使ってくれ! オラたぶん悟空だ!」
 悟空は包丁で腹をかっさばいて、流血を洗面器で受け止めた。クリリンに天
津飯にチャオズ、ピッコロとベジータも腹を切って同じ洗面器に血を溜めた。
みんな揃って修行とセックスにしか興味がないので、血液型に関する知識は皆
無である。
「この血は有難く使わせてもらう。みんなの友情、決して無駄にはせんぞ!」
 こんな連中が出入りする病院なので、医者も当然ヤブ医者であった。医者は
悟空達を部屋から蹴り出して扉を閉めた。手術中の赤いランプが点灯した。悟
空達の腹の傷は仙豆を食べたら治った。
188ヤムチャのお話 真夏の夜の夢:04/09/06 23:50 ID:/9LP1/gb
 半日にも及ぶ大手術は無事成功した。時間の大半はビールを飲みながら漫画
を読んでいたのだが、医者はそれは言わなかった。一命を取り止めたヤムチャ
の、辛く苦しいリハビリが始まった。
 日を追うにつれ、ヤムチャの体に様々な変化が表れた。満月を見るとほんの
少し毛深くなって、超能力でラッキョウを転がせるようになって、物凄く悪そ
うな顔をしたもう一人のヤムチャが分裂して、ケツに三個目の眼ができて、ツ
ルツルのハゲ頭になった。いずれも輸血の副作用だと思われたが、命に別状は
ないのでヤムチャは気にも留めなかった。驚異のスピードで完全回復したヤム
チャであったが、医者はなかなか退院させてくれない。ヤムチャはその理由を
医者に訊いてみた。
「それはねヤムチャ君、キミのことを愛しているからだよ」
「バカー!」
 照れ隠しに軽く小突いただけなのに、医者はコンクリートの壁を突き破って
地平線の彼方にすっ飛んでいった。輸血の最たる副作用は、ヤムチャの戦闘力
の大幅アップであった。医者がいなくなったその日の内に業者が病院に押しか
けてパチンコ屋に改装してしまったので、ヤムチャはやむなく自主退院した。

 社会復帰を果たした以降のヤムチャの活躍を、新聞やテレビは大々的に報じ
た。地球侵略にやってきたフリーザとその手下共を、
「てー!」
 頭突き一発でぶっ倒して、間髪入れずにしゃしゃり出てきたセルと人造人間
の極悪軍団を、
「どーん!」
 諸手突き一発で土俵の外に押し出した。あっという間に世界的英雄となった
ヤムチャであったが、そんなヤムチャを快く思わない人間も少なからずいた。
どことも知れぬ闇の中で、誰かが誰かに囁いた。
189ヤムチャのお話 真夏の夜の夢:04/09/06 23:50 ID:/9LP1/gb
「ヤムチャの野郎、ちょっと調子に乗りすぎなんじゃねーか? オラ悟空だ」
「輸血をしてやった俺達に礼の一つもない。どうやらお仕置きが必要なようだ
な。俺も悟空だ」
「でもさ、ヤムチャさんが強かろうが人気があろうが、俺達が困ることは何に
もないんじゃないか? 俺も悟空でいいや」
「そんなことはない。政府からの報奨金をヤムチャに総取りされて、俺はナメ
ック星への仕送りが出来ずに大変困っている。俺はピッコロか? それとも悟
空か?」
「そりゃ悟空に決まっているさ。で、どうやってお仕置きするつもりだ? 俺
もチャオズも喜んで悟空だ」
「俺にいい考えがある。明日の夜、ここで落ち合おう。ヤムチャも悟空だ」
「よし、解散! 生きとし生けるもの、みんな悟空だ!」
 闇の中の気配は消えて、重たい静寂が辺りを包み込んだ。

「いえーい!」
 デコピン一発で魔人ブウを破滅においやったヤムチャの家に、賊が侵入した。
真夜中の闇に黒装束を溶け込ませた賊達は、眠りこけるヤムチャの腕に特大の
注射器を突き刺して体中の血を全て抜き取り、音もなく窓から去っていった。
賊の抱える注射器にはヤムチャの血が詰まっているはずだが、なぜか空になっ
ていた。
 第一発見者は芸能雑誌の記者だった。インタビューの為に訪れたヤムチャ宅
の呼び鈴を押しても反応がない。しかし玄関の鍵は開いている。不審に思った
記者がそっと家の中に入って様子を窺うと、寝室に変わり果てたヤムチャの姿
があった。記者は思わず叫び声をあげた。
「スクープだー!」
 ヤムチャは巨大なネズミに頭をかじられていた。ネズミのケツには三個目の
眼があって、頭部はツルツルに禿げ上がっていて、足元には小さなラッキョウ
が転がっていた。ヤムチャがネズミに敗北を喫したニュースは瞬く間に全世界
に発信されて、人々のヤムチャ信仰は崩れ去った。ヤムチャブームは終わりを
告げて、もはやヤムチャのことなど誰も覚えていなかった。どことも知れぬ闇
の中で、誰かがニヤリとほくそ笑んだ。
190ヤムチャのお話 真夏の夜の夢:04/09/06 23:51 ID:/9LP1/gb
 ヤムチャは元のヤムチャに戻った。畳の上に寝転んで、つまらなそうに新聞
をめくっている。悪い宇宙人を悟空がやっつけたとか、リュックと水筒が銅像
になったとか、どれもヤムチャには何の関係もない記事ばかりだ。ヤムチャは
大あくびをかましてつぶやいた。
「あーあ。だりーなー」
「チュー」
 ヤムチャの隣には、大きなネズミがヤムチャと同じ恰好で寝そべっている。
ヤムチャの天敵であるはずのネズミだが、話してみると実にいい奴だった。今
はヤムチャと一緒に暮らしている。ヤムチャの血によって無限大のパワーを得
たものの、所詮はネズミなので地球のために闘う気なんて毛頭なかった。
 ヤムチャとネズミは同じように鼻毛を抜いて、同じように吹いて飛ばした。
191作者の都合により名無しです:04/09/06 23:52 ID:/9LP1/gb
うえーい。
ところでみなさん、ニョクマムという調味料をご存じですか?
192作者の都合により名無しです:04/09/07 00:13 ID:WGvlfQC3
知ってますが?
193作者の都合により名無しです:04/09/07 01:47 ID:Uo134RjA
もう122か。さすが。がんばれ。
194作者の都合により名無しです:04/09/07 08:17 ID:wria8uar
>しけい荘物語
シコル優勢かと思いきや・・・
これでまた戦意喪失したりしないだろうか?
本部とシコルでは背負ってるものの重みが違うのかもしれない。

>ヤムチャのお話 真夏の夜の夢
あいかわらず笑い所が満載で。
悟空は最初の「オラ悟空だ!」が一番笑えた。馬鹿かお前はw いや、悟空がね。
今気づいたが、副作用って仲間達の特徴が現れたのね。
195作者の都合により名無しです:04/09/07 08:20 ID:87naG6nq
なんだ、この昨夜の鬼のような作品量は・・w
うれしいけど、バラしてくれるとありがたかったなあ。
全部読むのに1時間かかったよ。

>フンコロガシ氏
いらっしゃいませ。主人公がヤムチャだけにあちらで書いて欲しかった、
というのはありますが、ここではタイムスリップ物は初めてなので期待します。
リプレイ、読んでますよ。名作ですね。どう原作が生かされるのか、楽しみです。
>ブラックキング氏
堂々の第一部完ですね。バキたちメインキャラと、聖闘士たちがどう絡み合って
巨悪を倒していくのか。ライタイはどうなるのか。2部への期待が大きく膨らみます。
でも真の黒幕はサイヤ人?強すぎでしょwでも聖闘士には光速で動ける奴もいるかw
>うみにん氏
壮大な物語に、多くの人物がそのキャラらしく動いてますね。その技量に感嘆します。
ギラーミンとげんごろうの敵役が強すぎて、パーマン一座がヘロヘロだなあ。
しかし藤子漫画に詳しいですね。亡きF先生の魂が乗り移ったかのようだ。
>サナダムシ氏
シコルが渋くてかっこいい。試合前までは試合になるかな、と思ってたのに、強くて嬉しい。
しかし本部も悪いだけのキャラでは無かったのか。ホームレスの誇り?を賭けてたのかw
右腕が切られて、絶体絶命のシコル。盛り上がりますな。原作もこれくらい盛り上がればなw
お弟子さんともども頑張って下さい。
>VS氏
VS氏の作品は途中経過のデンパっぷりも大好きだが、オチの寂寥感の感じる所が好きだ。
しかし悟空が黒いな!全員悟空だし。相変わらず調子良い時のVSさんは仙人の域だ。
ニョクマムおじさん、一話目は大好き。2話目はうーん。ドラ麻雀は投げましたか?w
196作者の都合により名無しです:04/09/07 18:02 ID:DO4lubot
しかしサナダムシ氏の師は真・うんこだからな。
なんつーか、汚物繋がりで笑えるw
197作者の都合により名無しです:04/09/07 18:44 ID:EF1GgkUq
昔からここの作者は程度が低いな…。
>>72-73より

今回から「香港編」です

「くぅああああああああああつッッ!!答えい勇次郎ぉ!!」
 突然、東方不敗は活を入れて左拳を突き出した。勇次郎はにやりと口元を歪める。
 あれをやるのかッッ!!
「流派ッ!東方不敗は!!」
 勇次郎は足を広げて踏ん張り両手を掲げ、全力の構えでこれに答えた。
「王者の風よッッ!!」
 東方不敗は瓦礫の山から飛び降り、勇次郎に向けて下降しながら無数の拳を繰り出す。勇次郎もまた
同等の手数の拳を繰り出し、応じる。拳が交差し、ぶつかりあう盛大な音が大気を揺るがす。
「全新!」
「系裂!!」
「天破侠乱ッッ!!」
 最後の一撃が両者の中間で重なる。拳と拳の接触点から稲妻がほとばしり、二人の闘志が炎となって
周囲を囲う。そして二人は同時に叫んだ。
「見よッッ!東方は赤く燃えているぅぅぅぅ!!」
 しばしの間、視線がぶつかりあった。両者は沈黙したが、闘志の炎は燃えたぎり唸りをあげる。
 そして不意に炎は消え、廃墟と化した地に再び静寂が訪れた。
 数秒の後、東方不敗が語りかけた。
「勇次郎よ、腕を上げたな」
 拳が離れ、両者は直立に姿勢を正す。勇次郎はふん、と鼻を鳴らしてしゃべる。
「たかだか1、2年稽古をつけた程度で師匠面をするのかい? 東方不敗よ」
 それを聞き、東方不敗はおかしそうに笑い声を上げた。
「はっはっは!言うようになったではないか勇次郎!」
「で」勇次郎は笑いもせずに言った。
「俺に何の用だ?」
200作者の都合により名無しです:04/09/07 19:08 ID:6EZ9T63O
しかし、昨日の夜はすごかったんだなー。2回に分けて全部読んだよ!
新人さんにブラックキングさん、うみにんさんにサナダムシさん、
とどめはVSさんか。すげえ豪華。満足。じゃあ一言レビュー。

・リバース
何回も人生をやり直す、という事でしょうか?最後まで完結させて下さい!
・超格闘士大戦
ライトサイド集合で一部完結ですか。このメンバーでどんな死闘が展開するのか?
・出来杉帝国
ギラーミンとげんごろう強すぎる。パーマン軍団の逆襲に期待。いよいよ核心ですか。
・しけい荘
予想以上の激闘ですね。シコル、あっさりやられるかと思いきや、ハードな展開だ。
・ヤムチャのお話
相変わらずのデンパっぷりだな。VSさんは会話のセンスが異次元。悟空だらけかよw

ところで、>>191のニョクマムってベトナムの魚醤じゃなかったけ?違った?
正解ならVSさんはドラ麻雀をこのまま投げ出さない、というのを賞品でお願いします。

「6歳のころに我が流派東方不敗に入門し、わずか2年でわしの元を離れたお前がいまや地上最強の
生物と呼ばれるまでになったとはな、感慨深いものよ。お前ならば、わしの持つキング・オブ・ハートの
紋章を受け継ぐ資格があると踏んだのだが……残念なことだな」
 勇次郎は「ケッ」と漏らした。
「人類の歴史を裏から守り続けてきた、5人の戦士により構成されるシャッフル同盟。その主格、キング・
オブ・ハートの称号か。俺には興味が無ぇ。今更そんなことを確認しに呼び出したわけじゃああるまい」
 東方不敗は周囲に目をやり、勇次郎に話しかける。
「なぁ勇次郎よ、今の世界の状況、お前はどう捉える?大地殻変動により各国の主要都市は破壊され、
世界中どこもかしこも確実に破滅が迫ってきておる。にも関わらず人々はやれ大擂台祭だのガンダム
ファイトだのと浮かれるばかりで現状に目を向けようともしない。その認識の甘さが藤堂兵衛だのの跳梁
を許すというに。人間とはつくづく度し難い生き物だとは思わんか」
「興味無ぇな」
 東方不敗はそれを鼻で笑った。
「お前らしいな勇次郎よ。だがな、近年わしはある兵器と出会った。その兵器は一機あらばこの世界全土
を制圧できようというもの。わしの目的を果たすためにはその兵器、すなわちデビルガンダムとお前の力
が必要不可欠なのだ」
「で?」
「デビルガンダムには強靭な生命力を持ったパイロットが求められる。地上最強の生物と呼ばれるお前
ならば、十分に役割を果たすことができるであろう」
「強靭な生命力を持ったパイロットだぁ?」勇次郎が首を傾げる。「だったらアンタが乗れよ」
「それが出来れば苦労は無いのだがな……。デビルガンダムには重大な欠点がある。パイロットとして
搭乗した者は、デビルガンダムの生体ユニットとして完全にとりこまれてしまうのだ」
 そこまで聞いて、勇次郎は含み笑いを漏らした。
「馬鹿かいアンタ。そんなこと聞いて『はい乗りますよ』なんて言うとでも思ったのか?」
「どう説明しても、どうせお前には断られると思っておった」東方不敗が答える。
「だから勇次郎よ、力ずくでもお前をデビルガンダムに搭乗させてやるわ!」
 東方不敗は腰に巻いた布をほどいて両手で掴み、それをピンと張った。
202作者の都合により名無しです:04/09/07 19:10 ID:wria8uar
今回up分終了。

☆東方不敗マスターアジアとは
・第12回ガンダムファイトにネオ香港代表として参加し、優勝する。
・最強武闘集団「シャッフル同盟」の頭、キング・オブ・ハートの称号を持つ(原作では弟子に継承)。
○身体能力
・コアランダー(ドラゴンボールでいうスカイカー)と同速で走る
・布でモビルスーツを破壊する
・モビルスーツの放った銃弾を素手で受け止め、銃口に詰めて暴発させることができる
・モビルスーツの放った銃弾の上を飛び跳ねる
・中空をバタ足で進むことができる
・高層ビルを地下から拳で殴り飛ばすことができる

203200:04/09/07 19:26 ID:6EZ9T63O
ああ、ザクさんごめんなさい。途中に入って。
しかし、勇次郎があの儀式をするとはw
香港編は勇次郎対東方不敗からのスタートですか。派手ですね。
東方不敗といえば塾長を除けば最強の人類。勇次郎、勝てるか?
204作者の都合により名無しです:04/09/07 20:28 ID:q6kY9PQ9
いや塾長除かなくても、十分人類最強だろw
アレに勝てるのはスーパーサイヤ人くらいなもん

ともあれザク氏乙
205復讐鬼の騒動記:04/09/07 21:12 ID:9iwCY83R
第二話 『女』

鈴木のアジト。洞窟の奥深くに、様々な文献と実験器具、鉱物植物動物の標本などが
山積みになっている。まるで童話に出てくる、怪しい魔女の家のようだ。
そんな中で、鈴木は溶接の継ぎはぎだらけの、自作PCに向かっていた。無論、ただの
PCではない。鈴木特製、『超時空何でも調査&そこへ行くぞマシィーン』である。
「そういえば、ドクタァ石垣だか糞餓鬼だかいう奴が、生物兵器の研究してるって
話だったな。昔ちょっとやってみたが……またやってみようかな。とすると、」
鈴木が、カタカタとキーボードを叩いた。するとディスプレイには、時空間を越えて
様々な世界の様々な者たちが、次々と映し出されていく。
「……お、こいつがいいか。美しいし、なかなか強そうだ。では早速……と、その前に」
鈴木は、本棚の中から一冊のノートを取り出した。昔研究した生物兵器の資料だ。
「これでよし、と。ではでは」
鈴木は、ディスプレイに手を触れて妖気を送り込んだ。そして立ち上がり、身を乗り出す。
そのまま、まるで底なし沼に入っていくように……鈴木はディスプレイの中に入り込んだ。

山脈のような摩天楼の隙間から、強い日差しが差し込んでくる。森の木漏れ日と
街のビル漏れ日、同じ日光なのにどうしてこうも感触が違うのか。
などと風情のあることを考えている人間は、この騒がしく忙しない街には一人もいない。
『やれやれ。空気が悪くて肺に良くない。日光が強過ぎてて肌に良くない』
女は、溜息をついた。ここは健康に良くない。いっそ引っ越そうか、などと考えていると、
信号が変わった。女は人込みに押されながら、広い交差点の横断歩道に歩き出す。と……
「!」
咄嗟に、女は跳んだ。数メートルの高さと、距離を。一瞬後、女のいた場所には、別の
男が立っていた。というか、降って来た。まるで隕石か何かのように。
「お見事。今ので踏み殺せるかと思ったが、さすがに甘かったな」
ざわめきながら、まるで引き潮のように人込みが男から離れていく。交差点の真ん中に、
ぽっかりと人のいない空間ができた。その中心にいるのは、ピエロの格好をした妖怪。
片手に生物兵器研究ノートを抱えた、美しい魔闘家・鈴木である。
206復讐鬼の騒動記:04/09/07 21:13 ID:9iwCY83R
「さて。今のお前の跳躍、こいつらには見えなかったようだが」
鈴木は、人込みの中に向かって言った。
「この鈴木の目はごまかせんぞ。潔く出てきて、殺されろ。言っておくが、お前が
普段、自分の正体を隠しているのは調査済みだ。こんなところでは存分に闘えない
だろう? それを解っててやってるんだ、私は。ヤジ馬どもも利用するつもりでな」
人々のざわめきが、強くなった。鈴木は言葉を続ける。
「今回の私の目的は、お前の細胞、というか肉片の採取なんでな。生け捕りに
拘ってはいない。だから手段は選ばんぞ。さあ、観念して大人しく、」
その時。人込みの中から、「とうっ!」と女が跳び出した。そして鈴木の前に降り立つ。
「細胞の採取ですって? 面白い。あなたもどうやら人間ではないようだし、
こちらこそあなたの細胞を研究させて貰いましょうか。あなたを殺してね」
と言った、その女の姿を見て、鈴木は思わず唾を飲み込んだ。
飛び立つ白鳥の翼のような肌と、雨に濡れた烏のような下着。鮮やか過ぎる白と黒。
そう、女は、その瑞々しく起伏に飛んだ肢体を惜しげなく晒した、下着姿だったので
ある。人込みの中に、ズタズタになったスーツを残して。
そしてその女の顔は、足首まで伸びた長い黒髪に半分方覆われていた。隙間から覗く
ギラついた目は、冷たい殺気を放っている。首から下の色気とは対照的……いや、似合う。
美しい。ちなみにその美しい目は四つあり、口は耳元まで裂け、耳は三角に尖っている。
「ふ〜む。服を裂いたのも、髪を伸ばしたのも、顔を変えたのも、正体を隠す為か。
首から下には何もできないそうだな? 情報通りだ」
「あなたが何を知っているのかなど、どうでもいい。大人しく、倒されなさいっ!」
女が、鈴木に跳びかかった。その速さは、確かに人間レベルではない。
が、鈴木も無論人間ではない。余裕でノートをパラパラと捲って、
「実は、お前みたいなタイプの生物兵器を、昔魔界で研究したことがあってな。
これによるとお前の弱点は……首を切られると死ぬ、か」
「普通誰でも死ぬわよっ!」
ツッコミながら、女が突っ込んできた。鈴木はとりあえず後方に跳んで間合いをとる。
と、着地した鈴木の肩が、ぱくりと裂けた。衣装だけだが、鮮やかに切り裂かれている。
207復讐鬼の騒動記:04/09/07 21:14 ID:9iwCY83R
む? と思う間もなく、二本の鎌の刃が鈴木を襲う。
「おっ、とっ、とっ、」
ノートを懐にしまいつつ、鈴木は左右にステップを踏んで刃をかわす。その正体は、
女の髪が長く伸びて変化したもの。女自身も動きながら、鈴木を追い詰めていく。
「ほうほう。それで、間合いの外から攻撃しているつもりか? 生憎だが、」
鈴木が、優雅な動作で両手を振り上げた。
「私には、こういう技があるっ! レインボー・サイクロン!」
鈴木の手から、七つの七色の、妖気砲弾が飛びだした。女は一瞬、髪の刃で弾こうと
したが思い直して身をかわした。妖気砲弾はそのまま直進して、ビルに激突、爆発。
壁が壊れてガラスが砕け、爆撃を受けたかのような惨事となる。二人の戦いを
遠巻きに見ていたヤジ馬たちが、悲鳴を上げて一斉に逃げ始めた。
「お前も逃げるか? まあ私としては、仮にお前に逃げられても、他のサンプルを
頂くつもりだがな。お前の他にも、同類はいるようだし」
「……確かにね。けど私は、あなたに興味がある。逃げはしないわよ!」
と言いながら女は、逃げ惑うヤジ馬たちを追いかけた。そして、その中に飛び込んだ。
鈴木が、一瞬呆気に取られてから、追いかける。
「こらこら待てい! 言ってることとやってることがバラバラ……」
「ぅぐあっっ!」
悲鳴が聞こえた、と思ったらヤジ馬の中から、血塗れの男が突進してきた。いや、違う。
この男は既に死体だ。後ろから心臓を突き刺され、串刺しのまま持ち上げられ、
盾にされているのだ。よく見ると男の後ろに、あの女がいる。
女は男(の死体)を前に突き出して、まっすぐ鈴木に向かってくる。
「肉の盾、という訳か。非情なのは結構だが、この美しい魔闘家・鈴木に、
そんな小細工は通用しないっ! 正面から打ち砕いてくれよう!」
鈴木は躊躇わず、サイクロン・ウェーブを放った。男の死体が砕け散り爆裂する。
血と臓物が花火のように咲き誇り、手足と頭はそれぞれ四方、いや五方に飛ぶ。
これを隠れ蓑にして上に飛ぶか背後に廻るか、と思ったが、なんと女は前にいた。
男の肉体だけでは止められなかった威力を、髪を前面に集めて防いで、向かってくる。
208復讐鬼の騒動記:04/09/07 21:14 ID:9iwCY83R
「な、何だ? 何を考えて……ええい、面倒だ!」
肉の盾がなくなった今なら、もう一発撃てばあの髪ごと粉砕できるだろう。おっと、
細胞採取細胞採取。コナゴナのコゲコゲにするのはマズい。手加減しないと。
「というわけで、もう一発サイクロン・ウェ……ぶっ!?」
鈴木の動きと言葉が、止まった。あと呼吸も、止まった。
「ぁ……が……な、う、ぐ……っ!」
鈴木が、苦しそうに首だけ捻って後ろを向く。そこに転がっているのは、先程撃ち砕いた
男の生首。……その口の中から、長〜い手が伸びて、鈴木の首を後ろから握り締めている。
「さっき、殺した時に仕込んでおいたのよ。わたしの一部をね」
鈴木の真正面に立つ女が、ゆっくりと歩いてくる。
「あなたのあの技なら、きっと五体バラバラにしてくれて、その罠をきちんと設置
してくれると思ってね。頭も含めて全身を完全に跡形なく砕かれそうなら、逃げるつもり
だったんだけど……もしかして手加減してくれたのかしら? わたしの細胞採取の為に」
鈴木が、首を締められながら正面に向き直った。先が刃になった長い髪をもつ、
真っ黒な下着姿の真っ白い肌の女が、静かな笑みを浮かべて歩いてくる。
その顔はもう元通り、普通の人間の女性のものだ。ヤジ馬たちが残らず去ったから、
隠す必要がなくなったということか。
露わになったその顔、殺気と自信に満ち溢れた殺戮女神の微笑に射抜かれて、
『……ぅ……う、美しい……』
美しい魔闘家・鈴木は、不覚にも他者の美しさを認めつつ……締め落とされ、倒れた。
209ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :04/09/07 21:19 ID:9iwCY83R
凄い。神モード、いや超神モードですな。質量共に。ここまで凄いと、
正直なところ自分の作品が出しにくいというか、少々恥ずかしいというか。
……ま、贅沢な悩みですね。

>>フンコロガシさん
冒頭から、ドえらくシリアスに迫ってて。「花嫁の下のシーツ」「手首が胸に」辺りで
ただならぬものを感じて。で思わず身を乗り出したら……神龍とのやりとりでコケました。
ギャグもシリアスも、その並立もお見事。今後どちら方面に向かうにせよ、楽しみです。

>>ブラックキングさん
これはまた、一っっ気にズラリと、豪華絢爛になりましたね。個人的には斉藤(5代目)
に一番注目してます。ご先祖様絡みの台詞とか因縁の敵とか、そういうの好きなもので。
まだいるらしい「戦士の方々」も楽しみです〜。この調子だとどこまで広がるか♪

>>うみにんさん
バンホーさん&ノヴァ氏には失礼ながら。今回はもう、「操忍の術」が全てを掻っ攫って
しまいました。楽しすぎ。可愛すぎ。バンホーさんのリアクションがまた、トドメを
刺してて。……でもそんな中、遂に敵方真打登場。ここでパーマンを崩し、一気に逆転!?
210ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :04/09/07 21:20 ID:9iwCY83R
>>サナダムシさん
可愛いシコルがカッコ良くなった、と思ってたら悪役然としてた本部が、またえらく
カッコよくなってて。四人の理由、ジャックのところでオチか、と笑ってしまいましたが、
すぐ姿勢を正されましたよ。で溜息をつきつつ見守ってたら……シコルの右腕っっっっ!?

>>VSさん
輸血による乗り移り。よくあるネタなのに、さすが……悟空たちはドス黒いし、当の
ヤムチャは妙に落ち着いてるし。最後のネズミが、綺麗に幕引きしてますね。後味良。
>未完で終わらすつもりはノン!
……なんですよね。お待ちしておりますぞっ。

>>ザクさん
解説どうもです。勇次郎に対して「力づくで」なんて言うから、どれほどの御仁かと
思いきや……納得。中空バタ足、だけは何だか可愛らしく想像できてしまいますが。
勇次郎の言葉とは裏腹に、きっちり師弟に見える二人。弟子による師匠越え、か?
211作者の都合により名無しです:04/09/07 22:14 ID:RrzzjTNi
ザク氏
お疲れ様です。>流派ッ!東方不敗は
本当にやっちゃたねこの挨拶、勇次郎。しかし東方不敗か。
塾長に近い力の実力者が勇次郎の師匠。こりゃ、ザク勝てんw

ふらーりさん
お疲れ様です。魔闘家鈴木がひょっとして主役?
でも最後の女誰だろう。えらく強かったけど。
しかし、スレ好調でふらーりさんも感想大変ですね。
212作者の都合により名無しです:04/09/07 22:16 ID:DO4lubot
ふらーりさん頼む。
ヤムスレの作品にもレスをくれ!
213作者の都合により名無しです:04/09/08 08:11 ID:VDiugXf5
ザクさん、ふらーりさん、いつもお疲れ様です。
お体に気をつけて、更新頑張って下さい。
214作者の都合により名無しです:04/09/08 08:20 ID:6Np0BC5z
東方不敗って知らなかったがこんなに強かったのか・・・
登場キャラの中でひとりだけ次元が違うじゃん
これに対抗できるのって作中だと散様かフリーザ様くらいじゃ・・・
215作者の都合により名無しです:04/09/08 19:03 ID:pPEb8YOj
ザク氏、新編突入おめ!いきなりクライマックスって感じのぶつかり合い。あの男に勇次郎勝てるの?
ふら〜りさん、新作好調ですね。しかし鈴木をメインキャラにするのはふら〜りさんくらいだろうなw

>>214
東方不敗は強いよ。生身で簡単にモビルスーツを破壊する男。
塾長はスケールが違うから勝てないだろうけど、勇次郎程度なら強さ原作準拠なら瞬殺出来ると思う。
216作者の都合により名無しです:04/09/08 19:18 ID:pPEb8YOj
ところでNBさんはどうしたんだろう?
サマサさんはしばらくしたら復活するとおっしゃってたから
心配はないけど、NBさんは心配。スペルミスなんて気にしない、気にしない!

あなたのブラックキャット、原作の10倍面白いので、頑張って下さい!
(原作がアレだから、褒め言葉になってないけどw本当にあなたのファンなんで)
217作者の都合により名無しです:04/09/08 22:15 ID:vdlAfWp2
ただ、少し休養してるだけでしょ?>NB氏
サマサさんともども期待してる。がんがれ。

>>215
いくら塾長でも、マスターアジア相手だと楽勝は出来ない。
10回戦えば3回はマスターアジアが勝つと思う。
218作者の都合により名無しです:04/09/08 23:52 ID:h8rkjoGk
マジレスすると塾長や勇次郎じゃ、マスターアジア相手に瞬殺されるのがオチだがね
塾長厨はID変わっても、内容が同じだからバレバレだな
219作者の都合により名無しです:04/09/09 00:30 ID:P+PFSUVn
どっちもどっちじゃねぇかよ
塾長厨もマスター厨も痛い

塾長はMSを破壊した事が無いだけで、マスターも生身で宇宙に出たりした事が無いだけ。
実際は出来るかもしれないよ。
220作者の都合により名無しです:04/09/09 00:49 ID:vNBWThwl
まあ、1985さんの作ったFLASHでも見ながらマタ−リ。

バキ死刑囚編
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/swf/baki.swf
麻雀教室
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/swf/majyan.swf
221作者の都合により名無しです:04/09/09 07:58 ID:Wj8JonH/
昨日は来なかったかー、作品。
月曜日が恐ろしすぎたな。あれだけの内容が5本。
火曜日もザクさんとふらーりさんが来たし。
NBさんとサマサさんは、週末に来ると予想。期待してる。
>>220
いい仕事するな、1985さん。
もうすぐ彼もここで書いてくれるらしいね。マジ期待。
45から
無人の街角で、一人の男が携帯電話を切った。
丈の高い帽子。丸眼鏡。スーツ。全てが黒で統一されたファッションを纏う中肉中背の美青年は、静かに呟く。
「…ヤハリ、この辺に居る様デスね」
意外に発音が悪い。だが、足元に座る少女はそんな事は気にせず返す。
「……シャルデンさん、その…何とかってヒトの事を捕まえればいいんですかぁ?」
少女の出で立ちは、東国ジパングの高校の制服。先刻から没頭している携帯ゲーム機もジパング製だ。
間延びした語尾が心の幼さを窺わせる。
傍から見て全く整合性の無い二人が親しく会話する様は、奇妙の一言に尽きた。
「イエ、交渉デスよ。星の使徒に入ってクレ、となるべく穏便にネ」
「…まどろっこしいですねぇ。大体私、会った事ないんですよぉ。…あ」
安っぽい電子的な爆発音がゲーム機から迸る。そしてその後黒地に白でGAMEOVERの文字が画面一杯に現れる。
「ううー、ムカツク。…それにそのヒト、十日前から送ってるエージェントの皆を一人も帰してないんでしょ?
………殺っちゃってもいいと思いますけどぉ」

そうなのだ。
同士とするべく脱獄させ、道の力を与え、しばらく娑婆の自由を与えたのに、その恩も忘れただ暴れ放題。
挙句、送った星の使徒のエージェント達にまで牙を剥く始末。
怒りの余りシキが出向こうとしたのを、クリードが押さえて二人を派遣したのだが……
「…ここに来るはずなのに、全っっ然来ないじゃないですかぁ。女の子待たす奴ってサイテー」
「キョーコ、本人の前でそんな事言ってハ駄目デスよ。我等の同志になるカモ、デスから」
「………でもぉ…」
―――不意に、二人の周囲が暗くなった。

道士として得た反射神経に従い、二人は左右に飛ぶ。―――そして、一拍遅れて大きな破砕音。
二人がさっきまで居た石畳を、上から落ちてきたアフロの巨漢が不自然に巨大な腕で破壊していた。
「おお、やるじゃねェか…コイツぁ活きが良い……」
石畳から引き抜いた拳は傷一つ無い。明らかに異常だ。
「…落ち着いて、ギャンザさん。私デスヨ」
シャルデンが状況の余韻も残さぬ声色で話し掛けた。
「………ああ?……ああ、そうそう。あの色男と一緒に居た黒いのじゃねえか。
悪りィ悪りィ、声掛けてくれねェから殺っちまうトコだったぜ。気ィ付けな」
巨漢――ギャンザの後ろのキョーコは辟易どころではない。殺しにかかりそうなほど怒っている。
当然か。約束を忘れているばかりか物の弾みで命を狙い、しかも全く悪びれない。怒らぬ奴は馬鹿か聖人だ。
…シャルデンはそのどちらかの様に平板だった。
「…使い走りバカリ送って申し訳ナイ。デスので、今日は道士二人で参りマシタ。
……今日こそ色好い返事を聞きタイ物デスね」
「―――変な奴だなアンタも。今頃オレを殺しに来たのか?」
トレインは敢えて飄々とベルゼーを揶揄した。勿論それには訳が有る。
任務遂行能力の高さゆえ、ナンバーズに前歴の無いイレギュラーナンバー“13”を許される栄誉を受けながら、
個人的感情で、超金属“オリハルコン”の武装を奪ってクロノスを逐電した―――
組織に言わせれば十二分に粛清の対象だ。なのに三年もほったらかしな事が疑問だった。
「……あの日からずっと、クリードを追っているそうだな」
禁句にも等しい核心の言葉に、トレインの瓢げた雰囲気が掻き消える。そして現れるのは殺気めいた怒り。
「…何で知ってる」
「……“星の使徒”はお前が思っているより完成した集団だ。一個人で相手出来る物では無い」
ベルゼーは質問に答えず、懐からA4サイズの封筒を取り出した。
フリスビーの要領で投げ寄越されたそれを、トレインは返答と判断し受け取る。
「そこにクリードがこの街に来た理由がある」
開けると、中に入っていたのは数枚の紙束と一枚の写真。写真に写るのは「ギャンザ=レジック」と書かれた
ネームプレートを持つ痩せぎすでアフロの凶相持ち。
「…そいつはな、十数人の女子供を殺した罪で先々月死刑になる筈だった。しかし、だ。
執行前日、他の凶悪犯十四人と共に忽然と刑務所から掻き消えた」
トレインは何も言わず紙束を無造作に捲る。だが耳はしかとベルゼーの話を捉えていた。
「その三日後、近くの廃ビルに十四人の変死体が発見されたが、そいつだけは見つからなかった」
何枚目かの紙にその状況のコピー写真が有った。打ちっぱなしのコンクリート床に倒れる死体達は
どれもこれも異常な共通点が唯一つ。

―――焼け焦げ、歪な骨がせり出し、腐り、ひとつとしてまともな死体が無かった。
「神氣湯(しんきとう)の不適合作用だ。しかし奴は恐らく…いや、間違い無く道士になっているだろう。そして…」
「…そいつは、何故かこの街で殺人犯やってるって訳か」
二の句どころかその後の言葉全てを飛ばして結論に到る。
「話が早いな。そして、似たような集団失踪、あるいは殺人事件が各地で起きている事が最近判った」

組織の完成度は情報戦の上手さで判る。ブレインの冷静さと優秀さ、そして部下の練度無しには出来ぬからだ。
…世界を治めるクロノスにもまだこの程度しか掴ませない、と云う事は相当の規模の組織なのだ。 
「……だからアンタがここに居るのか」
トレインは少しこのギャンザなる男に同情した。ベルゼーが相手なら肉片さえ残るまい、と思っていたが…
「いや、それは私ではなくお前達にやってもらいたい。我々には他にやる事があるのでな」
「………何だと?」
冷めつつある怒りが再び勢いづく。成る程、既に関係ない奴なら死んでも痛くも痒くも無い、という事か。まあ、それはいい。
問題はそれが「仲間も含めて」だと言う事だ。
「…既にスイーパーズギルドにも通達した。その賞金だけでなく、こちらから更に2千万イェン払おう。
………望むと望まざるに関係なく、な」
話はそれだけだ、とばかりにトレインに背を向けて歩き出す。
トレインがその背中をよっぽど撃ってやろうと思ったとき、ベルゼーが不意に足を止める。
「二、三言って置くが―――上層部はどうあれ、少なくとも私はお前が抜けたとは思っていない。
それに、クリードから逃げおおせたのは今の所お前たちだけだ。………死ぬなよ」
そして歩みを再開する彼の背中に、胸中の怒りが失せていった。
そう言えば忘れていた、ああいう上司だった事を。
――町外れの廃屋、ここが今町を騒がせる大量殺人犯にして星の使徒に所属候補の道士、ギャンザ=レジックのアジトだった。
そして集うは三人、廃屋の主と男と場違いな少女。
「で、ギャンザさん。もう充分でショウ、早く切り上げて我々と来て下サイ。クリードが待っていマスヨ」
そう言われてもギャンザは悪辣に笑い返すだけだった。…クリードに比べればまるで浅いが。
「…………あのよ、やっぱその話ナシにしちゃくんねェか?今充実してんだよなァ、オレ」
キョーコの眉がつり上がる。勿論彼はそんな事は露知らず、朗々と下卑た演説を続ける。
「おんなじ殺すならよォ、自分でやったほうがいいんだわオレ。命令されてってのは柄じゃあ無ェし、
人の下ってのもいけ好かねェ。……それによ」
そう言って足元の石を掴み取ると、勢い良く握りつぶした。
「こんな力がある奴が、人の下に就くのはおかしいよなァ?」
―――これがこの男の道、全身の筋肉を自在に強化出来る。そのついでに体表も硬化するらしい。
警官に撃たれた時、胸板が銃弾を跳ね返したのにはまず自分が驚いた。
次いで狂喜―――あれほど恐れた警察も自分を止められないと知った時、この世の帝王になった、と本気で思った。
「……デスが、そういう契約の元に道士になったのデショウ?」
……心地良い思い出を邪魔されて、ギャンザは一気に不機嫌になる。
「うるせんだよオメェ、その細い首ブチ折られてェのか?命令キライだっつったろうが。そっちの小娘と一緒に殺すぞ、マジで」
そこでようやくキョ―コの怒りの視線に気付く。それを見てあっさり機嫌を直した。
「いい目するじゃねェか、そういう女ぶっ殺すのが大好きなんだぜオレ。ま、最近は野郎も殺るけどな」
殺気と下卑た悦びを視線に孕ませ、キョーコを見据える。
一触即発―――大気の温度が二人の殺気で増していく様な状況……だったのだが、
いきなり空気が氷点下にまで下がった。その寒さに思わず二人が身震いする。
そして双方寒さの風上を見れば、二人が見慣れた黒衣の男がただ平然と立っていた。
「…二人トモ、喧嘩はいけません」
ひどく静かなそれは、黄泉から吹く風の様に冷たく重い。
二人はやむなく殺気を解いた。

「デハギャンザさん。ビジネスを一つ依頼したいのデスが…よろしいデスか?」
「……あ?」
ようやく固さがぬけたギャンザにシャルデンは異な言葉を発する。
最悪この場で殺し合いになると言うのに、何で商談に持っていくのかギャンザには理解出来ない。
「とりアエズ、コレを」
取り出したのは四枚の写真。そしてこの町の地図。
「ココに潜伏する連中を殺して欲しいのデスヨ。人数は四人、但し黒髪の男にはノータッチデス」
ギャンザはそれを受け取る。カメラを向いていない上雑踏の中に丸で囲っているのを察して、恐らく盗撮だろう。
「…前金で七百万イェン、済めば三倍。その後はアナタと我々は一切関わりナシ………どうデス?」
懐から魔法のように取り出した札束をポン、と気安く放られ、ギャンザは慌てて逃がしはすまいと空中で掴み取る。
すべて番号不揃い、おまけに指が切れそうな新札だ。覚えず破顔した。
「……マジかよ?」
「エエ、きちんとこなしてもらえレバ…………お嫌デスか?」
最早一も二もなかった。
NBです。
今はここまで。
推敲に時間食いすぎました、済みません。これこそ猛省です。
あと、道とナンバーズの武器にも手間取ってしまいました。
しかもまだ出来てないのが有るという駄目っぷり。
ともかく、以後はスピードアップを心がけます。
ではでは。
229作者の都合により名無しです:04/09/09 18:49 ID:gInpS4a4
おお、お久しぶりNBさん。待ってましたよ。
いよいよシャルデンまで動き始めましたか。
キョーコがキョーコらしいしゃべり方でかわいっすね。
快楽殺人者っぽいギャンザがどう暴れるのか、楽しみです。
更新、ゆっくりでもいいから完結だけはお願いします。
応援していますので。
「あ――――っ! 危ない!?」
パーマンたちの動向を探って待機していたアンパンマンたちが叫ぶ。

それは一瞬であった。それまで、近代兵器を相手に傍若無人に暴れまわっていた
パーマンたちが、無敵とも思える余裕を見せ付けていたパーマンたちが・・・
文字通り、蚊取り線香に捕まった虫けらのごとく打ち倒され墜落していく!

「大変だ!助けにいかなきゃ!カレーパンマン!」
「やれやれ。あいつらまだ味方かどうかわかんないけど・・・
やっぱヒーローたるもの、ほっとけないよなぁ。」
「アキームさん!あとは頼みましたよ!」
「わ、わかった・・・。」

窮地に陥ったパーマンたちの救出に二人のヒーローが飛び出していく。
あっという間に、地底帝国の戦力を切り裂いてパーマンのいるその場に辿りつく。
しかし、その二人を待っていたかのごとく、突如、あたりの地面が盛り上がり
大きなシェルターが現れた。中から飛び出してきたのは銀色に光る巨大な物体。

「はぁーひふぅーへほぉ〜〜♪」
陽気な声とともに現れたのは、バイキンのような形をした巨大なロボットである。
手足は細いが、その大きさは優にザンダクロスを超えている。

操縦者の名はアンパンマン、カレーパンマンの二人とも知っている。同時に叫ぶ。
『バイキンマン!』
「 あ♪ やっぱり追いかけてきてたみたいだな。アンパンマンにカレーパンマン。
ここのロードと協力してつくりあげた改良型ダンダダーンの力を見せてやる!」

「なんだって?バイキンマンめ!やっぱりここのロードと手を組んでいたのか。」
「そぉーれ!バイキンバルカンを食らえーい!」
巨大ロボットの胸が開き、中からバルカン砲のようなものがせり出してくる。
強力な弾丸の速射砲の前に、さしものアンパンマンたちもかわすのがやっとの
状況である。

「うわあーっ!?大丈夫かい?カレーパンマン。」
「おう!大丈夫だけど、ちきしょう。なんだこりゃあ!?近寄れねぇぞ!」
「な――っはっはっは♪ 愉快愉快♪」
「まずは、カレーパンマン!お前から仕留めてやる!」
「そうはいくかよ!よっ!はっ!」
狙いを定められたカレーパンマンであったが、なんとか上手くかわしているようだ。
「ムキー!ちょこまかちょこまか避けやがってぇ〜!くそぉ〜!」

バイキンマンがカレーパンマンに気をとられているその隙に、
アンパンマンが巨大ロボット、ダンダダーンに突撃する。
拳を思い切り振り上げ渾身の力を込めてブン殴る!叫ぶ!

「アンパーンチ!」

ゴキン!止まった。いつもなら有無を言わさず吹き飛ばす威力のアンパンチが
あまりの固さと重さに止まってしまった。時間がたち、じょじょに拳の先から
体がしびれていくアンパンマン。しびれが残ったまま、力なくつぶやく。
「ダメだ。歯がたたない!」
その時、ようやく砲撃の対象から外されたカレーパンマンが異変に気付いた。
「あれ?おーい、アンパンマン!パーマンたちがいなくなってるぞ!?」
「なんだって!?はっ、あれは・・・?」

物凄いスピードで飛び去っていく人影がアンパンマンの視界に見えた。
それは、3人のパーマンを抱えあげて・・・あっという間に空の彼方へと・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「クハァッ・・・!」

うめき声と、共に吹き飛ばされる一人の竜騎士。ノヴァである。

ボロボロの体で地に這いつくばるノヴァに、剣をつきつけバンホーが問いかける。
「ノヴァ。今のお前の腕では、私に決闘で勝つことはできない。
そう知っていながら、なぜ1対1の戦いを挑んできた・・・? お前自身、
迷っているのではないか?果たして、キスギーのやろうとしていることが、
本当に正しいのかどうか確信できないでいるのではないか?」

バンホーは熱く、諭すようにノヴァに語りかける。
ノヴァはいまだ立ちあがれぬままに、じっと無言でうつむいている。

刹那――――遠くから、一本の青い煙が立ち昇った。

「あれは・・・? あの色は出木杉くんの・・・。」
バンホーは、そう呟くと、ノヴァに背を向けた。
「バ、バンホーさん!?」
「すまない、ノヴァ。私は引き返さねばならん。決着はまたの機会につけよう。」

「バ、バンホーさぁ――――ん!!」
思わず顔をあげ、叫ぶノヴァ。
追いすがるノヴァの叫びを背にバンホーは走り出した。
もと来た反乱軍の拠点へと向って・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アキーム率いる別働隊は、飛び出していったアンパンマンたちのまさかの大苦戦に
一同固唾を呑んで見守っていた。その場からも、やはり遠くに青い煙が見える。

「青いのろし・・・出木杉どのからの脱出の印だ!救出は成功したのか!?」
「いや、そうであればいいのだが、このタイミング、不測の事態の可能性が高い。」
「なんにしろ、撤収か。オレたちはなんのためにここに来たんだ?」

突入に際し、各々の得意な武器の他にメンバーが携えていたのは、発煙筒。
リモコンのボタン一つで発動できるバンホー自ら開発した特殊な品である。
バラバラに散開するゲリラ戦のため、目的達成をしらせるべく、前もって、離れた
場所に埋め込んでいたのだ。中でも、指揮官であるバンホー、アキーム、そして
参謀として参加した出木杉の3人はそれとは別に、特別な色のついた発煙筒を
用意していた。その意味は、「総員撤収」。有無を言わさぬ撤退命令である。
3人の信頼を託された者たちそれぞれが、大きな戦局の変化に遭遇し、戦略的に
撤退すべきと判断したときのみ、それは発動されることになっていた。

アキームはその場にいる全員に号令を下した。
「撤収だ。」

「!!」
「・・・しかし、アンパンマンさんたちが・・・!」

戦局になにが起ったのか、それはアキームには判断できない。
ならば、この場は“のろし”の意図を信じ、従うより他にない。
「いかなる場合でも“のろし”があがれば即退却。それが決まりだったはずだ。
彼らもそれをわかっているはず。むしろ、心配するのはかえって彼ら英雄たちに
失礼だ。なぁに、彼らものろしの意味はわかっている。きっと戻ってくる。」
「結局、我々は今回、戦闘にも加われず、何も出来なかったというわけですね。」

「しかたあるまい。戦略上の問題だ。それに全くの無駄というわけではない。
我々が無事戻ることが出来れば、外から客観的に見た戦況を分析できる。
今後の戦いにも十分に生かせるはずだ。みんなバラバラに散れ。当初の予定通り、
別々のルートを辿ってアジトへ戻ってこい。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パーやんを倒したはずのげんごろうは依然通路に佇んでいた。
しかし、その場に倒れ臥しているはずのパーやんの姿がない。

「チッ・・・逃がしたか。」
大きく残った顎の打撃痕をさすりながら、忌々しく吐き捨てるげんごろう。
それまでダメージらしいダメージは一切受けていなかったはずなのだが、
窮鼠猫を噛まれたのか、不覚をとって逃げられてしまったらしい。しかし、
ここはそれほど狭くないとはいえ、しょせんは通路である。すぐに追えば、
今のげんごろうの力ならば、たとえ相手が空を飛べるパーやんであっても
追いつくのは難しくはなかっただろう。しかし彼はそれをしなかった。

「まぁいい。やつには借りがあるからな。これでチャラってことに
しといてやるぜ。だが・・・次はねえ・・・!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
魔土災炎はげんごろうとはまた別の通路をドタドタと走っていた。

「くそっ、ギラーミンのやつ!パーマンを殺さなかったのはいいものの、
撃ち落としたあとは、知らんぷりかよ! ふん、まぁいい。それよりも
はやく誰かに命じて、パーマンセットを回収せねば・・・。」

ちょうどそこへ一人の兵士が走りよってきて魔土に戦況を報告してきた。
「パーマンはパーやんどのが捕らえたようです。」
「なに?そうか!それはよかった。さすがはパーやん。で、パーやんはどこに?」
「それが・・・様子がおかしくて、3人とも抱えあげると一目散に
空の彼方へと・・・・」

「なんだとぉー!?おのれ、やはり裏切りおったかぁ・・・!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドラえもんたちを逃がしたあと、戦いの真っ只中にも関わらず、なんとなく
暇になってフラフラしていた八方斎のもとに、一人の竜人兵士がやってきた。

「稗田どの。ロードからの伝言です。そろそろ“彼ら”が到着予定とのこと。
取り急ぎ、ドクタケの城へ戻って出迎えの準備を・・・。」
「おお、そうですか。思ったよりも、はやかったですな。
大至急、ドクタケ城へ戻りますわい。者ども、ひきあげるぞ!」

「なお、ロードより“タケコプター”の使用許可も出ております。」
「おお!そうでしたか。これは心強い。わはははは。者ども!ついに
空飛ぶドクタケ忍者部隊の誕生だ!いくぞ!我らがドクタケの出城へ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
236作者の都合により名無しです:04/09/09 19:53 ID:gInpS4a4
うみにんさんお疲れ様です。
まだうぷの途中っぽいですね。投稿規制、うざいですね。
前回のパーマンたちに続き、今回はアンパンマンたちの活躍ですか。
しかし、敵も強いですね。
もしギラーミンがパーマンセット使ったらどうなるんだろう?
最後までしっかりと楽しませて頂きます。がんがれ。
「兵士どもの、このていたらくはどうした。
戦力強化は順調に進んでいるのではなかったのか?」

パーマンたちをあっさりと撃退したギラーミンは、再び通路を戻り、
将軍の一人――恐らくは編成担当であろう――に戦力状況を問い正していた。
徐々に強まっていく怒気に、対応する将軍も気圧されてしまっている。

「手なづけた恐竜どもとやらはどうしたのですかな。」
「ハッ!一応、一通り行き渡らせましたが、なにぶん兵士たちも慣れて
ないもので。まだ実戦投入は早いかと。」
「慣れ・・・ですか。そのようなもの、実戦で慣れさせれば、なんとでも
なるものです。この国のやり方は少々手ぬるいようですな。」
「な・・・?それは・・・」
さすがにカチンときたのか将軍も反論の声をあげかける。

しかし、それを遮り、ギラーミンは有無を言わさぬ強い調子で後を続ける。
「兵士どもも元があれだけ無能ならば、それでも少しはマシになるでしょう。
あの程度で二度と私の手をわずらわせないでいただきたい。」
「・・・・くっ・・・。」

「そういえば、捕らえていたノビ太たちも逃がしてしまったようですな。
あれしきの騒ぎに気をとられて監視を怠ってしまうとは・・・。」
「うぐ・・・そ、それについては、真に・・申し訳ない・・・」

しかし、ギラーミンはそれに関しては特に責める様子もなく、
いや、むしろ喜びをおさえきれない様子で独りごちた。
「そうか・・・。スーパーマン、ノビ太。逃げたか。そうか・・・」

ニヤリ・・・! と不敵で強烈に歪んだ笑みを浮かべながら。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帝国の中心であるキスギーの要塞のさらに再奥部。
そこに偉大なるロード・キスギーはいた。

王者の威厳。知的で優雅な佇まい。ロード・キスギーは独裁者にありがちなゲスな
雰囲気はまるで感じさせない静かな男であった。強化された特殊なガラスの檻の中、
一人の少年の姿が見える。美麗かつ豪壮な装飾が施された玉座に座らせられている
その少年は、どうやら、意識を失っているようだ。

その気を失ったままの、返事など望めるはずもない少年を前にキスギーは一人、
静かに声を紡ぎ、語リ出す。優雅に、大仰に、その両手を大きく広げながら。

「フフフ、ようこそ我が地底の城へ。私はバンホーでもなく、ドラえもんでもなく、
キミを待っていたのだよ。機は熟した。・・・変わる。そう。生まれ変わるのだよ。
予定通り・・・この国は、劇的に・・・フフ、フハハハ・・・・」

やがて、その笑い声は・・・知的な誇り高き独裁者のそれから、野蛮で下卑た、
それでいてなぜか荘厳で神秘的な、巨大な哄笑へと変わっていく・・・!

『フフフフ、フハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・・
ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

形はどうあれ、反乱軍は、ドラえもんの救出に成功した。
無事帰還できた者は反乱軍隊長バンホー、副隊長アキーム、他19名。

・・・その中に、出木杉の姿はなかった。   (第一部・完)
第一部終了です。構成の都合上、2部に分けさせてもらいました。
もちろん、このまま間をおかずに普通に続きます。

これからが、ドラたちの戦いの本番です。そして、核心です。
今までの戦闘シーンはあいまいに終わらせてましたが、これからは、
あいまいには終わらせません(たぶん)。よろしくお願いします。
240作者の都合により名無しです:04/09/09 20:56 ID:eSMKvEd+
GJ!!!!!!!!!!!!
キスギーの二面性が出てて素敵スギー
241作者の都合により名無しです:04/09/09 21:46 ID:wbGyFDPD
>AnotherAttraction BC
参報役のシャルデンが動き出して、いよいよ星の使徒が本格的に動き出したか。
原作ではベルゼー、最終決戦に顔みせ程度しかしなかったから、NBさんには
もっと彼を活躍させてあげて欲しいな。もちろん、セフィリアも♪

>出来杉帝国
動き始めた帝王、キスギー。最強の部下ギラーミンを従えて、いよいよ本格決戦か。
第一部完結おめ。長かったね。そして、2部突入で、更に盛り上げて下さい!
個人的にはジャイアンが好きなので、活躍をもっとさせて欲しいな。
242作者の都合により名無しです:04/09/09 22:50 ID:p7grMK6l
>出来杉帝国
乙です。これだけ冒険しといて、これからが本番とは本当に大長編ですな。
ドラえもんサイドも帝国サイドもしきり直して、いよいよ最終決戦ですね。
パーマン軍団もこのままでは終わりそうにない雰囲気なので期待してます。
243作者の都合により名無しです:04/09/09 23:14 ID:cjj4s+iG
>NBさん
久しぶりー。スピードアップは嬉しいですが、ゆっくり無理せず完結お
願いしますよ。原作のシャルデンは消化不良の代表格だったからこっち
では活躍して欲しいな。

>うみにんさん
宣言通り9月に入ってハイペースですね。こちらも完結お願いしますよ。
アンパンマンやギラーミンの影で、バンホーさんが地味にかっこいいなw
第一部完にはびっくりしましたが、普通に続くとのことで安心しました。
244作者の都合により名無しです:04/09/09 23:31 ID:FLHMhPvW
長期間にわたって好調すぎるな。イチローみたいだw
今日はさすがに2作品で打ち止めか?
245作者の都合により名無しです:04/09/10 01:06 ID:GpN6aVX/
ばいきんメカはダンダダーンじゃなくてだだんだんだったハズ。
わざとだったらごめんなさい。
246作者の都合により名無しです:04/09/10 08:06 ID:s/NJNz+l
NBさん、実は意外と原作好きだったので期待してます。
キャラの特徴、うまく原作から取り入れ、ご自身なりにアレンジしてますね。
特にキョーコやサヤなど女性陣の個性がGOOD。
247作者の都合により名無しです:04/09/10 09:56 ID:fXpNaD0C
>>245
詳しいなw
248作者の都合により名無しです:04/09/10 18:45:16 ID:mjC26fjy
NBさん、うみにんさんお疲れ様。
NBさんはちょっとコメディなハードアクション、
うみにんさんは壮大な冒険ロマンって感じで楽しかった。

さて、今日はどなたが来るかな。楽しみだ。

あと、バキスレサイト80000突破しましたね。おめでとう。

249復讐鬼の騒動記:04/09/10 19:33:02 ID:6Qy+HO6x
>>208
どれぐらい眠っていたのか。はっ、と気づいた時鈴木はうつ伏せで…………全裸だった。
「ぬどぐわぁぁっ!?」
がばっ、と起き上がろうとした鈴木だったが、両手足を後ろで縛られ、動けない。
辺りを見れば、ロウソクの炎が揺れる、薄暗い石畳の部屋。どうやら地下室らしい。
「な、な、ななななんだ、何が起こったっ!?」
「おはよう。調べさせて貰ったわよ、あなたのこと。いろいろとね」
あの女が、バスローブ姿で偉そうに脚を組んで椅子に座っていた。
鈴木を見つめるその目、鈴木に語りかけるその声は、何だか妙に艶っぽくて。
「い、いろいろと、って」
「ふふ。近年、女性エロゲーマーが増えたとはいっても、どうせ純愛ものやショタもの
ばかりやってんだろう……なんてのは男どもの愚かな幻想。そんなところよ」
鈴木の顔色が、さっと変わった。
「う、うわああああぁぁぁぁっ! もうおムコに行けないっっっっ!」
「という冗談はさておいて」
「冗談言ってるようには見えないぞっ!」
鈴木の切実な訴えは無視して、女は傍らのテーブルを視線で指し示した。
そこには鈴木の服と、服の中に隠していた鈴木特製の闇アイテムが並べられている。
「いろいろ面白そうなものがあったけど。あれ、あなたたち専用のものみたいね?」
「あ、当たり前だっ。妖気も霊気も全然宿してない、この世界の住人に使える
ものなんか持ってない」
「ふ〜ん、残念だわ。てことは、どんなに調べてもムダってことね」
だから今すぐ開放しろ、と言いかけた鈴木の言葉を、女が遮った。
「じゃあ、ここからは研究じゃなくて趣味に走らせて貰うとするわ」
「え」
「あなた、さっき言ったでしょ? 冗談言ってるようには見えないって」
女は、にっこりと笑うと立ち上がりながらバスローブを脱いだ。エナメル質で
黒光りしてて、変に扇情的な、独特の下着に包まれた女の肢体が露わになる。
女は鈴木に背を向けると、壁沿いに並んでいる棚をあさった。
250復讐鬼の騒動記:04/09/10 19:34:34 ID:6Qy+HO6x
「さて。被虐度は後でムチとロウソクを使うとして、まず基本は淫乱度からよね」
「お、おい。なんだその薬瓶は」
「ただの催淫剤よ。あっと、恥辱度も忘れずに上げなきゃ」
「かかかか、浣腸とオマルを何に使う気だっ?」
「ふふふふ。浣腸とオマルの使い道なんて、一つしかないでしょ」
言いながら女は振り向いて、鈴木に近づいてきた。嬉しそう〜な笑みを浮かべて。
「こういうの、リアルで楽しめるとは思わなかったわぁ。ボーイズや乙女ゲーは
ほんとに増えたけど、『これ』の男の子版ってなかなかないのよね。さすがに」
「こ、これ、って」
「ふっふっふっふっ。ちょ・う・きょ・う♪」
女が、にっっっっこりと笑って…………鈴木の、絶叫が地下室に轟いた。
「た、た、た、た、たすけてええええええぇぇっ!」

数日後。「飽きた」の一言で放り出された鈴木は、泣きながら魔界に逃げ帰った。
そして地下室では、女が、電話をかけている。
「……そうよ。例の件、どうやら実現のメドがついたわ。いい資料が手に入ってね」
と語る女の手には、鈴木からガメた生物兵器研究ノートがある。その中の、
『合成生物』のページを見ながら、女は言った。
「完成の暁には……そうね、五体合成だから『後藤さん』なんてどう? じゃ、ね」
女は電話を切ると、再びノートに目を通した。見れば見るほど見事な研究ぶりである。
「鈴木、か。逃がしちゃったの、惜しかったかな?」
弄びまくった男のことを思い出し、またちょっと笑ってみる。なかなか気分がいい。
人間のように笑ってみるのも、悪くない。寄生生物・田村玲子は、ちょっとそう思った。

そして、魔界某所では。
「け、結婚するまではって決めてたのに……決めてたのにいいいいぃぃぃぃっ!」
とベッドに突っ伏して泣き濡れる男がいたとか、いなかったとか。
いと、哀れ。
251ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :04/09/10 19:37:20 ID:6Qy+HO6x
寄生生物は好奇心旺盛。故に、己が所持していない側の肉体について並々ならぬ関心
がある、ということで。……すみません。好きなキャラは苛めたくなるんです。
ちなみに、解説しておきますと↓
ボーイズ……俗に言うや●いです。以上。ただ、ソフトで感動的な名作もあるので注意。
乙女ゲー……逆ハーレム状態の、逆ギャルゲーのことです。コーエーとコナミが有名。

>>1985さん
FLASH、拝見させて頂きました! 「誰かが思った」で始まる死刑囚編……そうなん
ですよね。そこから全てが始まって……あぁ走馬灯。死刑囚たちは本当に迫力ありますし、
被害者M氏でしっかり笑えましたし。今後、初めてパオさんの死刑囚編を読まれる方には、
ぜひこのFLASHを見て、期待に胸膨らませてから読んで頂きたい、です。
そしてドラ麻雀。迫力満点の死刑囚達と同じように描かれていて、それが似合って
しまっているのが凄い。各々のコピーも、各々を鋭く抉ってて何とも。個人的には
アカギのがツボでした。話は逸れていく、ルールなどお構いなし! ……それが醍醐味。
で。次はこちらでSSを書いて頂けるとのこと。お待ちしておりますっ。

>>NBさん
エグいスプラッタ描写、だけではなくて「命の軽視っぷり」が黒さの演出になってますね。
敵に対してはもちろん、味方間でもいつでも簡単に殺す・殺しあう・殺す気アリ、な感じ。
冷たい迫力が、何となく心地よいです。……でも。書かれるペースは、ご無理なさらずっ。

>>うみにんさん
ギラーミンとげんごろうはまあ、予測もしてましたが、ばいきんまんまでこれ程の強さ
とは驚き。パーマンが倒されアンパンマンは歯が立たず、主力(?)のドラえもんが不在
とはいえこんなに……で、遂にタイトルに触れそうなヒキで第一部完。第二部待ってます!

>>まとめサイト
10万ヒット記念の何か、考えとかないとあっと言う間ですなぁ♪ うん、何かやりたい。
252作者の都合により名無しです:04/09/10 19:50:01 ID:mjC26fjy
ふら〜りさん、お疲れ様です。ギャグになっちゃいましたか。
ちょっと残念なような気もしますが、「ふら〜り節」らしくて良かったと思います。

1985さんのフラッシュ、見ましたよ私も。素敵な出来でしたね。
100000ヒット到達は年内は間違い無いですね。11月かな。サイトのゲーム復活して欲しい。
253作者の都合により名無しです:04/09/10 20:16:51 ID:OXpO6ycU
>ふら〜りさん
お疲れ様です。面白かったけど、もう終わりなのかな。
鈴木の活躍がもっと見たいのでできれば続きよろしくお願いします。
鈴木は確かに貞操にお堅いイメージがありますねw
254作者の都合により名無しです:04/09/10 22:30:33 ID:BKKE3rLq
ふらーりさんお疲れさま。
バレさん、職人さん、住民さん80000ヒットおめでとう。
10万ヒットの際はゲームをぜひ復活させて下さい!
2551985 ◆8BVPwsPs7s :04/09/10 22:37:07 ID:F3uNZBzY
どうも。1985です。ようやくジョジョのが書き終わったんでこちらに投下させて欲しいんですが、
ちょっと話の性質上、あまり更新に時間を置くとつまらなくなる恐れがあるものなんです。
全部で大体25レスくらい。今日明日は暇なので4回に分けて
明日までに全て投稿させてもらおうと思ってるんですが良いでしょうか?
256作者の都合により名無しです:04/09/10 23:30:21 ID:kXHza5WE
>>255
反対する理由は無い、やりたまえ
つか、やって下さい
257作者の都合により名無しです:04/09/10 23:30:40 ID:zfm6KoMI
いいと思います
 カーテンを閉め切った暗い部屋。男がベットの上でまどろんでいると
 突如、部屋にあるパソコンから安眠を妨げるメール音が響く。
 男は気だるげに体を起こすとパソコンのディスプレイに目をやった。

***************************************
名前;グイード・ミスタ
概要:新「パッショーネ」の幹部。スタンド使い。
能力:「セックスピストルズ」弾丸の軌道を変え、弾丸によるスタンド攻撃を可能にする。
仕事内容:万全を期すため、まず対象を能力を使って拘束し、安全のため期間を過ぎてから殺害。
***************************************

 男はニヤリと笑い、ゆっくり立ち上がると指を折り、順番に鳴らしていく。
 そのあと、いつものように前髪をかきあげ、彼の仕事始めの儀式は終わった。

――――それから一週間後。エマラテッドホテル。
 
 【エマラテッドホテル】
 2階〜4階の客室と地下のバーで構成された小さく古ぼけたホテル。
 通称:マフィアホテル。利用者はその筋の関係者しかおらず、
 一般人は閉め出されている。(といっても頼まれても泊まる物好きもいない)
 その事はマフィア達にとっても都合がよく逆に経営を支援している連中もいるおかげで
 今もなお経営は問題なく運行されている。
 室内完全防音でたとえ発砲音が鳴っても通報されることはない。
 逆に今では金さえ払えば秘密裏に殺人を処理してもらう事もできる。
――――エマラテッドホテル地下バー。
 閑散としたバーでたった一人の客が入り口近くのテーブルに前屈みで腰掛けている。
 まどろんだ目で静かなBGMに合わせるように酒を喉に流しこんでいく。 
 男はふと何かに気づき、後ろの方に立てかけてある時計に目をやる。
 時計の針を見、軽く舌打ちしたあと、「ミスタ」はつぶやいた。

「……あと13時間か。そろそろ酒はやめにしないとまずいな……」

 【グイード・ミスタ】
 元ブチャラティチームの一員のスタンド使い。
 飄々とした性格ながらも確実性を追求する有能な暗殺者。妙にゲンを担ぐ癖がある。
 前ボスを倒したあと、ジョルノと共に新生パッショーネを設立。
 当然、風当たりも強く、しばらくの間、組織内でのもめ事が続いたが、
 それをことごとく沈静化させ、今では少しづつ組織としてのまとまりもでき始めている。
 幹部なのだが、今でも以前と変わらず各地で組織の為の暗殺にいそしんでいる。

 ゆっくりとグラスを机の上に置く。微妙に耳が熱い。酒が回っているのだろう。
 しばらくこのまま机に体をあずけて酔いを醒まそう、そう思い、ゆっくりと倒れようとしたその時。
 ―――入り口の方から何者かが階段でおりてくる音が響いてくる。
 
 酒の高揚感は吹き飛び、暗殺者としての本能からか一瞬で意識が覚醒する。
 このホテルはその性質上、驚くほど客がいない。
 しかもそんな場所で酒を飲もうなんて人間は自分くらいなものだ。
 弾の数は…4発。思わず息を飲み込む。「4」 その数字にいささか嫌な予感を覚えるが仕方ない。
 諦めてゆっくりと銃身を握りしめる。
 そして、それに申し合わせたかのようにゆっくりと入り口のドアが開く。
 バーのドアがゆっくり開いていく。ドアから出てきたのは22.3の妙に鼻がでかい長髪の男。
 男は何も言わずミスタを見つめている。その目に明確な殺意は……ない。
 すこし安心して銃身の握りを甘くした瞬間。長髪の男から何かが飛び出す。

 両腕が生えた四角形の植物のような「スタンド」
 謎のスタンドは素早く大口を開け、口の奥からまるで「種」のようなものを吐き飛ばす。
 急いで長髪の男に銃口を向けるが既に遅かった。謎の種はズブズブとミスタの頬に食い込んでいく。
 酒のせいだろうか、それともここ最近の容易い仕事から生まれた油断のせいだろうか。
 痛恨の失策。取り返しのつかない苛立ちに思わず歯が軋む。だが。

「な、なにするんですか?ミスタさん!」
 
 突如、銃口を向けられた長髪の男は素っ頓狂な声を上げる。
 思わず目を丸くするミスタ。そこかしこから疑問が生まれる。
 ? 俺の名前を知っている? しかも敬語? こいつは誰だ?
 不可思議な情景を理解しようと頭を総動員させる。そしてようやく、「思い出した」

「……あ……フィ、フィオーレか?」
「そうですよ!というか早く銃を降ろしてください!」

 長髪の男に言われるまま、銃をおろす。そうだ。こいつの事を忘れていた。
 ―――――こいつの名前はステファノ・フィオーレ。
 今回の仕事で「役に立つ」という理由でボス、ジョルノにパートナーとしてあてがわれた新入り。
 実際、こんな素人をお供にするなんて冗談ではないのだが、そこはボスの命令。
 組織の体裁の為にも断る訳にもいかない。それにこいつの能力はなかなか便利なものだった。
「 あー悪い。 でもお前も突然スタンドなんか人に向けるんじゃねーよ。ビックリすんだろうが。」
「あ、すんません。でもミスタさん。なんか右頬に切り傷があったもんですから。」

 フィオーレの言う右頬に手を当ててみる。なるほど。「思い出した」
 たしかに今朝、ヒゲを剃るときに失敗して、できた傷が消えている。
 こいつのスタンド、『スーサイダル・テンデンシーズ』相手の体の異状を治す能力。
 これのおかげで多少の無茶をしてもこのホテルに戻ればどんな傷も完治する事ができる。 
 ジョルノがわざわざこのど素人を自分のパートナーに選んだ理由もよくわかる。
 フィオーレは一息つき、ミスタの座っているテーブルの向かい側の席に腰掛けた。
 
「で、ミスタさん。俺まだ今回の仕事の内容を良く聞いてないんですけど。」
「あー、そうだったっけ? えーとな。まず、今日から3日間の間。
 この街に3人の男がやってくる。トラパットーニ、ディノゾフ、マルディーニ。
 この3人はうちの組織の幹部でもあるが、同時にとんどもない反乱分子でな。」
「反乱分子ってことは……まだいるんですね。ボスを殺そうって奴が。」
「そういうこった。こいつらは近々、俺たちのボスを暗殺しようと準備を整えているらしい。
 今日からの3日間の間、一人ずつこの街に入ってきて何食わぬ顔で合流して、
 そのまま一気にボスのとこまで攻めこもうって魂胆なわけだ。
 いくらボスでも大量の重火器で攻められたら勝ち目はない。で、俺の出番だ。」
「……俺は何をすれば?」
「お前はここで俺の帰りを待っててくれれば良い。んで怪我したときにお前のスタンドで頼む。
 ま、そんな事はまず無いだろうがな。とりあえず今晩。最初の一人目、トラパットーニだ。」
「? 一人ずつやるんですか? 3人合流したときに一気にやった方が楽じゃないですか。」
「いくら俺でもそんな危険な事できるかよ。いいか? 少しだけそのふやけた頭使って考えてみろ。
 普通マフィアの幹部が3人も揃ったらその分警備も厳重になるだろうが。
 俺の任務はとりあえずこの計画を止める事だ。分かるな? 計画を止める事だ。皆殺しじゃねえ。
 もし最初の一人がやられれば他の連中はこの町に来ねーかもしれねーんだ。」
「……なるほど。」
 慣れない新人教育からくる苛立ちにまかせ、酒の入ったグラスをもつ。
 だが、ふと時計の針が気になり、グラスを止める。

(……さすがにこれ以上飲むとまずいか。さっきみたいに動きが鈍っちまう……)

 ミスタの行動に何かを察したフィオーレが机の上におかれた酒の瓶をつかみ、
 ミスタのグラスにさらに酒を注ぐ。
 
「おい! なにすんだ!? もう今日は酒は……」
「大丈夫ですよ。たとえ泥酔したって俺の『スーサイダル』で直せますから。」
「……そんな事できんのか?」
「ええ、自分のスタンドは厳密に言うと『生物を元の状態に戻す』能力なんです。
 だからミスタさんがいくら酔っぱらっても種一発でしらふの状態に戻せます。」

 正直、フィオーレの言葉に心が踊った。泥酔になるまで飲める?
 しばらく暗殺続きで泥酔状態になるまで酒を飲むなんてとてもではないができなかった。
 思わず、自分でも分かるほど大きな音で喉が鳴った。すると。
 
「アギャー」「ミスターークレー」「ギギャギャー」
「……そういや、もう昼飯の時間だったな。」

 ミスタの服の中から妙な鳴き声が聞こえてくる。おそらく自分の飲食欲にでも触発されたのだろう。
 仕方なくテーブルの上に置いてあるサラミをナイフで6枚、切り取る
 その様子を首を傾げ、不思議そうに眺めるフィオーレ。
 視線に気づいたミスタは6枚のサラミをテーブルの皿の上に置いた。
「ほーら。お前ら、昼飯だぞ。」「!!」
「ギャー」「アギャー」「ギャギャアー」「ギィ」「ギャーーー」「ギャアアァ」

 机の上のサラミに群がる6人の白い小人。それぞれ123567と頭に数字がふってある。
 唖然とするフィオーレ。そんな事はおかまいなしにサラミをむさぼる小人達。
 そんなフィオーレの様子に得意げにミスタは小人達を指差す。

「これが俺のスタンド、『セックス・ピストルズ』だ。」
「……へぇ、これが。……なるほど。こいつらが弾丸の軌道を自由に変えてくれるんですね。」
「ああ。……ん? 見るのはお前初めてだよな。なんで俺の能力知ってるんだ?」
「ええ、見るのは初めてです。でも話はボスから聞いてましたから。しかし、凄いな。」

 フィオーレは興味深く机の上の「ピストルズ」の様子を観察している。
 そんな事はおかまいなしに変わらず「ピストルズ」達はサラミの奪い合いをしている。

「ところでこいつら、頭に数字がふってありますけど、全部で6匹ですか? 4番は?」
「4番は不吉だからいないんだよ。あと『匹』って言うな。
 ちゃんと人扱いしないとこいつら機嫌が悪くなるんだ。」
「へぇ。 ……完全に自律して活動してるんですね。」
「まぁそうだな。 ああ、そうだ。お前、弾持ってる?」
「へ? 弾ですか? ええ、いくらか手持ちありますけど……」
「実はここに来る前に弾補給するの忘れててな。今ちょうど、4発しか持ってねーんだよ。
 なんというか、縁起悪いだろ? 良かったら分けてくれねーか。」
「……忘れてた、って……分かりました。ちょっと待ってください。」
264作者の都合により名無しです:04/09/10 23:49:14 ID:zfm6KoMI
ユル乙。
4×5は投げ出し?
 フィオーレはポケットをまさぐり、片手いっぱいにミスタと同じ型の弾を取り出し、手渡す。
 8個の弾丸。持っていた4個の弾丸と合わせて12個。

「それでも仕事するには少なすぎますね。ひとっ走りして仕入れてきますよ。」
「いや、これでいい。」
「え、でもたった……」
「今回の相手はうちの組織の人間と言ってもほとんどスタンドが使えねー連中だ。
 それにどうせ殺すのも一人。俺の能力なら相手の死角から軌道変えて被弾させれば良い。
 そうすりゃ相手も弾がどこから飛んでくるか分からないからしばらくの間、膠着状態が作れる。
 俺はその間に楽々逃げればいい。分かるか? だから一日一発くらいで十分なんだよ。」
「……そういうもんですか。」 
「ああ、俺の能力も相手側は知らないだろうしな。今回の仕事は楽な方だ。」

 そう言い終わると、ミスタは目の前のなみなみと酒の注がれたグラスを一気に飲み干した。
 久々の本気の飲酒。口に、喉に、内蔵に、全身に快感が広がっていく。
 今、こいつを自分に付けてくれたジョルノに心から感謝したい。
 ミスタはそのままグラスを立て続けに空にし続け、
 仕事の時間が来るまで、夢見心地でテーブルに突っ伏した。

エマラテッド・ホテル 一日目 昼  弾丸、あと12個。

―――――――― TO BE CONTINUED.....
2661985 ◆8BVPwsPs7s :04/09/10 23:52:30 ID:F3uNZBzY
ではこのまま、あと3回。明日中には全て投稿します。(正確にはもうすぐ今日ですが)
今日はまだ起きてるのであと数時間後にでも。

>>264
すいませんが自分はユルさんじゃないですよ。
267作者の都合により名無しです:04/09/10 23:56:50 ID:sp0flhss
>>1985
一気に張っちゃってください。わける必要もないでしょう。
投下したい職人さんもいるかもしれませんし。
2681985 ◆8BVPwsPs7s :04/09/11 00:01:39 ID:y/IVHWZx
もう一気にやった方が良いですか?
それならまた一晩かけてでも一気にやりますが
269作者の都合により名無しです:04/09/11 00:03:49 ID:aX0+mpx6
どうぞ
270【ありふれたテーブルの上で】 2話:04/09/11 00:05:33 ID:y/IVHWZx
 テーブルに腰掛けて、全員で食事をとる。それが当然のようだった。
 いつもにぎやかなナランチャとフーゴ。黙って食事を口に運ぶアバッキオとジョルノ。
 そして、自分の向かい側で茶を飲む、リーダー・ブチャラティ。
 懐かしい、だが、まるでつい最近だったようにも思える風景。
 またいつか、皆とごくありふれたテーブルで。

 ふと、ズキリと頭に鈍痛が響く。
 目が覚めるとホテルの柔らかいベットの上。

「……ん? あれ?」

 なぜベットの上に? なぜ自分は寝ている?
 ……昨日の記憶、ぼんやりと思い出せない。頭が寝ぼけている。
 昨日は確か、トラパットーニを……。
 記憶を呼び起こすため必死に脳みそを巡動させていく。

(どうなってやがる? たしか昨日、たくさん酒を飲んで……
 それから時間になって……たしかフィオーレに種撃ってもらって……)
 
 そうだ。記憶がきれいに一致していく。「思い出した」
 昨日、フィオーレに酔いを直してもらったあと、
 すぐさまトラパットーニの泊まってるホテルに行って……。

(……そうだ。簡単な仕事だった。護衛も少なくて予定通り一発で終わった。)
271【ありふれたテーブルの上で】 2話:04/09/11 00:06:06 ID:y/IVHWZx
 久々の大酒に体が疲れたのだろうか? 着の身着のままベットの上に寝ていた事に気づく。
 試しにポケットをまさぐり、弾丸をベットの上に広げて数を数えてみる。
 …9…10…11。一つ弾丸が減っている。確実に仕事は終えたようだ。
 やはりどうも寝ぼけていたらしい。…今度ジョルノに頼んで休みをもらうのも良いかもしれない。
 洗面所で顔を洗い、地下のバーへ降りると既にいつもの席にフィオーレが座っていた。

「あ、おはようございます。ミスタさん。」
「……よお。」
「そういやミスタさん。昨日どうかしたんですか?」
「……ん?」
「昨日言われた通りここで待ってたんですけど、いつまでたってもミスタさん来なくて。
 それで気になってホテルの人間に聞いたらミスタさんはもう部屋に戻ってるって。」

 ……確かに言われてみればホテルに帰ってフィオーレと会話した記憶が無い。
 仕事が終わったあと、そのままベットに向かってしまったような気がする。

「……あー、悪い。ちょっと疲れててな。お前の事すっかり忘れてたわ。」
「…………」

 怒っているのだろう。フィオーレの無言の圧迫感が伝わってくる。
 といっても謝ってもしょうがない。今更許してもくれないだろう。仕方なく話題を変える。

「あーそういえば。俺このあと出かけるから。お前ここでのんびりしてていいぞ。」
「何か用事ですか? 武器の買い出しなら俺が……」
「いや、おとといパッショーネから連絡があってな。何か用があるんだと。
 それで今日、組織の人間と会う事になってんだよ。」
「それだったらなおさら俺が行きますよ。そういう雑用は任せてください。
 じゃないと今回、ミスタさんの酔い覚まししか仕事がなくなっちゃいますから。」
「そうか? そんじゃ頼むわ。俺はここで飲んでっから。そこの3番地の路地裏分かるか?」
「はい。3番地ですね。分かりました。」
272【ありふれたテーブルの上で】 2話:04/09/11 00:08:11 ID:y/IVHWZx
 フィオーレはそう言うと、すぐさま立ち上がり、そのまま3番地へと走っていった。
 その後ろ姿を不思議そうに見つめるミスタ。

「怒ってたんじゃないのか? 変な野郎だな。」
「ギャギャ」「ギ、ミスタ」「メシー」
「ん? ……随分今日は早いな。ちょっと待ってな、今すぐ用意してやるからよ。」
 
―――――――― 数分後、3番地路地裏。

 足の短い、スキンヘッドの男が壁にもたれて指の関節を鳴らしている。
 暇なときについやってしまう癖のようなものなのだろう。取り憑かれたように指を鳴らし続ける。
 すると、ふいに何かの気配に気づき、スキンヘッドの男は体の向きを変える。
 足音。何者かが路地裏に侵入してきた。細い目で先を見つめる。
 だが、どうやら目当ての男では無かったらしい。
 スキンヘッドの男は路地に入ってきた男を無視して、またくるりと体の向きを戻す。が。

「あんたパッショーネの人だろ?」「!?」

 スキンヘッドの男が再び体の向きを戻すと突如、顔面に小石のようなものがぶつかる。
 気にせず路地の入り口を睨むと長髪の青年。眉間にしわを寄せ、警戒する。

「初めまして。フィオーレと言います。」
「…………」
「ミスタはここには来ません。俺は代理のものです。」
「……代理? お前は誰だ? 連れがいるなんて聞いていないぞ。」
「お前とミスタを会わせちまうと俺のボスが困るんだよ。
 ―――――悪いが死んでもらうぞ。」
「!?」

 その言葉を言い終わると、フィオーレの姿が煙の様に視界から消える。
 慌てて銃を取り出して、あたりを見渡すスキンヘッドの男。すると後ろから砂を踏む音が。
273【ありふれたテーブルの上で】 2話:04/09/11 00:08:52 ID:y/IVHWZx
「…『アリス・イン・チェインズ』」

 次の瞬間、スキンヘッドの男の体から人の形をした鎖のスタンドが飛び出し、
 音の方向へ15本の鎖をのばしてフィオーレの体を巻き取り、拘束する。
 全身余す所なく鎖で拘束されたフィオーレ。
 スキンヘッドの男は何も言わず、そのまま拘束したフィオーレの眉間を3発、銃で撃ち抜く。
 鎖の拘束を解き、地面に落ちるフィオーレの死体。
 ゆっくりと近づき、スキンヘッドの男は確認するようにフィオーレの顔を眺める。

「……こいつ、何者だ? ……ここには一人で来ていると聞いていたんだが……!」
「殺し合いの最中に呆けやがって。自殺願望でもあるのか?」
「!!」

 後頭部に冷たい銃口の感触。スキンヘッドの男の後ろに確かに殺したはずのフィオーレが立っている。
 もう一度視線を戻すと、先ほどあったはずのフィオーレの死体がどこにも無い。
 口をパクつかせ、疑問を投げかけようとした瞬間、路地裏に銃声が響く。
 自分の血で染まった壁に再び全身で、もたれかかるスキンヘッドの男。
 フィオーレは振り返る事無く、そのまま路地裏をあとにした。
274【ありふれたテーブルの上で】 2話:04/09/11 00:09:54 ID:y/IVHWZx
―――――エマラテッドホテル地下バー。
 テーブルの上。ミスタが丁寧にナイフで切ったサラミを平らげていく『ピストルズ』
 そしてその様子を何気なく眺めるミスタ。ふと疑問に浮かぶ。こいつらはなんなのだろう?
 自分の意志を持ち、さらに飯を食わないと機嫌を悪くして働かない。
 ほとんど普通の生物となんら変わらない。よく考えてみれば実に不思議なスタンド。
 
 自分の意志を持っているスタンドは見た事がある。(実際そういうスタンドを持つ女も知っている)
 だが、こいつらはさらに平然と飯を食らう。不満も言う。実に不思議だ。
 もしかしたらこいつらはそんな意志を持ったスタンドとも一線を画すスタンドなのかもしれない。 
 こいつらは自分の感情を持ち、自分の個性をもち、自分の理念で行動している。
 現にNo.1とNo.2は大変仲が良いし、No.3はよく気弱なNo.5をいじめている。

 以前、自分と同じ自律型のスタンドをもつ女・トリッシュからこんな話を聞いた事がある。
 トリッシュは昔、自分のスタンドから「私はあなたです」と言われた事があるらしい。
 スタンドとはなんなのか? そんな事は俺には分からない。だがスタンド本人が言うのだから多分そうなのだろう。
 「自分自身」 一言そうつぶやいて再び『セックスピストルズ』を眺める。

 品性のかけらも無く、本能のままにサラミをモシャモシャとむさぼり食っている。
 いち早く食事を終えたNo.3など気弱なNo.5からサラミを奪おうとすらしている。
 
「……これが俺かよ。」

 思わず、ため息が出る。俺はこんな人間なのだろうか?
 仕方なく気を持ち直し、子を諭す親のようにNo.3を注意をする。

「おい、No.3。ダメじゃねーか。No.5の食い物を横取りしちゃ。」

 食事中、毎度毎度行われるような、ごくありふれたやり取り。
 だが、この日は少しばかり勝手が違った。ミスタの注意にNo.3が両手を出しながら答える。
275【ありふれたテーブルの上で】 2話:04/09/11 00:11:09 ID:y/IVHWZx
「ミスター。腹ヘッタ。モット食ワセロー。」
「……あ? No.3。お前もうサラミ一枚食べただろうが。」

 こいつらに胃なんてものがあるのかは知らないが、
 一度の食事の量はいつもだいたいサラミ一枚分くらいで十分だった。
 No.3の言動に戸惑っていると食事が終わった他のピストルズもさらなる食事を要求する。

「ウエーン、ミスタ」「ギィ。モット」「モット食ベタイ」「食ワセテヨ」「腹ヘッタ」
「……まぁいいか。」

 根負けし、「ピストルズ」に急かされるままに再びサラミを6枚切り取り与える。
 がっつくようにサラミをくわえる「ピストルズ」 まぁ、こういう日もあるのだろう。
 半ばあきれながら「ピストルズ」を眺めているとバーのドアが開き、フィオーレが帰ってきた。
  
「すいません。遅くなりました。」
「おう。んで? 何だって?」
「いや、この仕事が終わったらミスタさん、しばらく休んでも良いそうですよ。」
「なんだ、そんな用か。 ……まぁ、いいか。少し俺も疲れてるみたいだしな。」

 最近、よく昔の夢を見る。懐かしい、しかし感傷的な夢。
 今朝も起きるときに少々時間がかかった。体が夢から覚める事を拒否しているのだろうか。
 それにどうも今日の「セックス・ピストルズ」も様子が変だ。
 もしスタンドが自分自身と言うのなら、この異常も自分が関係してるのだろう。
 2枚目のサラミを食い終わり満足そうな『ピストルズ』を見ながら、
 再びテーブルの上にある酒の入ったグラスを一気に空にする。

「そんじゃ、フィオーレ。今日も仕事の時間が来たら頼むぜ。」
「はい。それが俺の仕事ですから。」
276【ありふれたテーブルの上で】 2話:04/09/11 00:12:37 ID:y/IVHWZx
―――――――場所は変わって、エマラテッドホテルのある街からかなり離れた町の外れの一軒家。
 ほどほどに広い部屋の中。開いた窓からは涼しげな風が流れてきている。
 男が二人。イスに腰掛けた若い、意志の強い目をした青年と、頭の良さそうな白いスーツの男。
 
「大丈夫でしょうか?」

 スーツの男がイスに深く腰掛けている青年に声をかける。
 青年は天井に向いていた視線を再び戻し、少し間を置いて不思議そうに訪ね返す。

「……何が?」
「ミスタの事です。裏でスタンド使いが動いているとか。心配ではないんですか、ジョルノ様。」

 【ジョルノ・ジョバーナ】
 元・ブチャラティチームの一員。正体不明だった前ボスを追いつめ、ついに倒す事に成功し、
 現在、若くして新生パッショーネのボスに昇りつめた男。

「ああ、その事。心配なんてしてませんよ。無駄ですから。自分が知る限りミスタが任務を失敗する事なんてあり得ない。
 それはよく知ってるでしょ? 彼の凄い所は『確実に相手を殺し、そして確実に生きて帰ってくる』事です。
 それに一応護衛も新しく一人付けたんだし。心配すること自体、無駄ですよ。フーゴ。」

 ジョルノに言われ、白いスーツの男、フーゴは自分の杞憂を苦笑する。 

「……フフフ、たしかに。案外もう逆に暗殺者を殺してしまっているかも。」

エマラテッド・ホテル 二日目 昼  弾丸、あと11個。

『アリス・イン・チェインズ』
能力:強力な無数の鎖で相手を拘束し、力を吸い取る。
能力者:スキンヘッドの男  死亡。

―――――――― TO BE CONTINUED.....
277【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:14:16 ID:y/IVHWZx
 なんなんだろう? 頭が痛い。外を走る車の音。それに頭の奥が感応する。
 重いまぶたを無理矢理開ける。白い天井。自分の部屋の柔らかいベッドの上。
 体がだるい。空気が重しのようにのしかかってくる錯覚を覚える。 
 だが、いつまでもこうしているわけにもいかない。無理に体を起こし、洗面台へ向かう、が。

 ――ふいに足下に頭痛すら吹き飛ばす激痛。思わず声にもならない声で悶絶する。
 目をやるとベッドの角。鈍く尖った装飾部分に足の爪をぶつけ、青黒く割れ、出血している。

「……グウゥゥ。」

 ベッドの横にあるティッシュをかき集め、割れた爪に添え当てる。
 少々、時間がかかったもののじわじわと痛みが引いていく。……これなら仕事には支障はない。
 絆創膏で適当に止血して、洗面台に向かう。
 鏡の前に立ち、石けんを泡立て顔に刷り込んでいく。ひげは剃らない。
 最近ヒゲを伸ばしてみようと、もう一ヶ月ほどヒゲは剃らないようにしている。
 一応、自分は幹部。少しくらい威厳というものも欲しい。
 
(……でもなかなか伸びねーんだよな。もう諦めて剃っちまうか。)

 そんな事を考えながら顔についた泡を洗い流すと幾分、思考がすっきりしてきた。
 すると、突然『ピストルズ』のNo.2が服の裾を引っ張る。

「なんだよ? NO.2。」「メシー、ミスタ、メシ食イタイ」

 ベッドに備えて付けてある時計に目をやる。
 自分がいくら起きるのが遅いといっても昼飯の時間にはまだ3時間近くある。

「おい、No.2。まだまだ飯の時間じゃねーじゃねーか。我慢し……」
「ギャー」「ミスター、オレモクイタイ」「ウエーン」「腹ヘッタ」「食ウ食ウ」
278【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:15:24 ID:y/IVHWZx
 突然ミスタが言葉を遮るように他の『ピストルズ』も騒ぎだす。
 やかましく甲高い声が先ほどやんだ頭痛を刺激する。

「ああーッッ! テメーら昨日もちゃんと飯食っただろうが!
 ガタガタ文句言わずに昼まで我慢しやがれッッ!!」
 
 『ピストルズ』の声をかき消すほどの大声。『ピストルズ』は気圧され呆然としている。
 しかし、『ピストルズ』から返ってきた言葉は予想外の物だった。

「ミスター、食ッテナイヨ。」
「……あ?」
「俺タチ昨日、三回ゴハン食ベテナイヨ。」
「……何言ってやがる。ちゃんと晩飯食ったじゃねーか。」
「食ッテナイ!」「ギギ」「食ッテナイ」「ミスタ」「食ッテナイ」

 口々にミスタの言葉を否定する『ピストルズ』
 思わず、眉をひそめるミスタ。

「……何言ってんだ? 昨日、夜に飯食ったじゃねーか。
 酔いを醒ましてもらって、そのあと仕事に出る前に食わせてやっただろうが。」
「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」

 『ピストルズ』全員で「食ッテナイ!」と大声で主張する。
 ……勘弁してくれ。甲高い声がますます頭に響いてくる。
279【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:16:09 ID:y/IVHWZx
「……分かった。もういい。食わせてやる。食わせてやるから。」
 
 ミスタは根負けし、仕方なく部屋を出て、地下のバーに向かう。
 階段を下り、ドアを開けるといつもの席にいつものようにフィオーレが座っていた。

「おはようございます。ミスタさん。」

 ズキッ。フィオーレの声が頭に響いておもわず机の上に吐瀉物をぶちまけたくなった。
 ……もはやあいさつするのも億劫だ。無言で手を少し上げ、そのまま席に座る。
 
「……おい、適当にもらうぞ。」

 机の上を見渡し、『ピストルズ』の食料になりそうな物を物色する。……これだ。
 既にフィオーレがつまみに注文していたサラミをつかみ、さらに細かく6枚に切る。
 
「……ミスタさん。『ピストルズ』の飯の時間はまだまだ先だと思うんですけど。」
「ああ。知ってるよ、クソ。こいつらがそれでも食うって言うんだよ。昨日食ったくせに……」
「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」「食ッテナイ!」
「あーッ!もう分かったから黙ってろッッ!!」

 ……もう限界だ。こいつらにさっさと飯を食わせて黙らせてしまおう。
 そうしないと頭の中がどうかしてしまいそうだ。慣れた手つきでサラミをばらしていく。
 フィオーレはひとしきり『ピストルズ』を不思議そうに観察したあと、ミスタに話しかける。

「……なにがあったんですか?コレ。」
「……なんか知らねーけどよ。こいつら昨日晩飯食ってないって言い張るんだよ。
 昨日ちゃんと支障が出ないように仕事の前に食わせてやったってのに。」
280【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:17:11 ID:y/IVHWZx
 『ピストルズ』はもはや目の前のサラミに夢中になってミスタの言葉が耳に入っていない。
 フィオーレは少し考えたあと、一瞬表情をこわばらせミスタに問いかける。

「……ミスタさん。こういう事って以前にもありましたか?」
「……いいや、なんかおとといくらいからこいつら変なんだよ……それがどうかしたか?」

 押さえきれない、といった様子で、切られていくサラミを眺める『ピストルズ』
 フィオーレはひとしきり考え込んだあと、真剣な表情で問いかける。

「ミスタさん。スタンドって何なのか、って考えた事ありますか?」
「……スタンド? ……いや、そんなに深くは……ん…そういや、確か……自分自身、だっけ?」
「まぁ、俺もよくは知らないんですがね、実際『スタンドとは何なのか』なんて
 考える奴はいても調べる奴なんていないですから。でも、そう言う話はよく聞きます。」
「いや、俺も人から話を聞いただけなんだけどよ。なんかスタンド自身がそう言ったらしいぜ。」
「……もし、スタンドが本体の精神だとすると……」
「……?」
「……確かに、凶暴な人が凶暴なスタンドを持っていたり、
 スタンドはその持ち主そのものだ、という人も結構いるんです。」

 凶暴なやつには凶暴なスタンド。……思い当たる人間が一人いる。
 フーゴのスタンド『パープルヘイズ』はまさにそれだった。
 実際奴自身も一度キレると何をしでかすか分からない、危ない奴だった。
 まるで病気の告知でもするように沈痛な面持ちでフィオーレは話を切り出す。
281【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:17:47 ID:y/IVHWZx
「……ミスタさんは考えた事ありませんか?」
「……なにを?」
「ミスタさんのスタンドは6人に分割されてます。さらにそれぞれが意志を持っている。
 これがどういう事か考えた事ありますか?」
「……?」 
「確かにミスタさんのように複数に分かれたスタンドというのも珍しくありません。
 実際、そういうスタンドも知ってます。ごくごくありふれたタイプですから。
 でも、それぞれ自分の意志を持ったスタンドというのはミスタさんが初めてです。」
「……何が言いたい?」
「六分割された精神。六分割された記憶。六分割された思考。
 そして今、そのスタンドの記憶が明らかに異常を起こしています。
 食べたはずの物を食べていない。記憶障害の初期症状ともいえなく無い。
 ……ミスタさん。今何か、あなたの体に異常はありませんか?」

 思わずサラミを切るミスタの手が止まる。
 ……たしかにさっきから頭が割れんばかりの頭痛が響いてくる。
 体も、そういえば今朝から指の先からつま先まで重りを付けているようにも感じる。
 全身を見回すミスタに、心苦しそうにフィオーレは言葉を付け加える。

「それにミスタさん。覚えてますか? あなた昨日もこのバーに帰ってきてないんですよ?」
「……え?」
「自分はここでちゃんと待ってました。こないだと同じです。
 でもあなたは時間になってもここには来ず、気がつけば自分の部屋のベッドで眠っていた。」
「………」
「あなたはどうも仕事のときになると様子がおかしい。いつもこうなんですか?」
「……いや……俺は……」
282【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:21:52 ID:y/IVHWZx
 ……昨日の夜の事を必死に思い返す。たしか……昨日は………うん、「思い出した」。

(昨日の夜はビルの3回の窓から道路を走るディノゾフの車を狙って……。
 ……そうだ。一発で狙撃は成功した。そのままホテルへ……?)

 仕事をすべて終えたあとの記憶がない。どうして?
 ホテルに戻り、バーへ行って、フィオーレと会話した記憶が……ない。
 仕事に集中しすぎて? 違う。俺はそういうタイプじゃない。殺しは日常だ。
 緊張する事などまずあり得ない。なら……なぜ? 

「ミスタさん。ちょっと『ピストルズ』をここら辺に並べてくれませんか?」
「あ? 何をするつもりだ?」
「忘れましたか? 俺の能力は『生物を元に戻す』能力ですよ。
 とは言っても、流石にスタンド相手というのは初めてですがね。
 厳密にいえば生物じゃないでしょうし。でも自律型ならもしかしたら……」

 ……そう言う事か。それなら確かに『ピストルズ』を直せるかもしれない。
 というか、他に方法が思いつかない。藁にもすがる思いで『ピストルズ』に命令する。

「……おい、お前ら。ちょっと飯はあとだ。そこのお兄ちゃんの言う通り一列に並べ。」
「エエー」「ソンナー」「ギィ」「エーン」「ハラ減ッターーー」
「いいからさっさと並べ。飯はそのあと食わせてやるから。」

 ミスタに言われるまま、渋々フィオーレの前に横一列で並ぶ『ピストルズ』。
 一発づつ、手際よく『ピストルズ』の体に『スーサイダル』が種を打ち込んでいく。
 その様子を固唾をのんで見守るミスタ。最後の一発がNo.7の体に打ち込まれる。

「……どうだ?お前ら?」
283【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:22:30 ID:y/IVHWZx
 ミスタの問いかけに答えず、ただ黙ってお互いを見つめる『ピストルズ』
 ダメか。思わず大きなため息を吐くミスタ。

「まぁ、いいや。お前ら、ホラ、サラミ食っていいぞ。」
「……」「……」「……マダイラナイヨ、ミスタ」

 先ほどまでがっついていたのが嘘のように冷静にサラミを見つめる『ピストルズ』
 ミスタの顔を不思議そうに見つめている。

「マダイイヨ」「マダオ昼ジャナイ」「ミスタ」「今イイ」「モウオナカ減ッテナイ」
「…お前ら、元に戻ったのか?」
「ふぅ、どうやら成功みたいですね。」
「昨日晩飯何食ったか覚えてるか? No.3。」
「……昨日モ……サラミ!」「サラミ!」「サラミ!」「サラミ!」「サラミ!」

 ミスタの問いに『ピストルズ』が声をあわせて答える。
 ホっと一息。テーブルの周りに安堵の空気が流れる。

「なんだか思ったより簡単に直っちまったな。」
「ですね。正直、スタンド相手で自信はなかったんですが……」
「……ん……」
「どうしました?」
「いや……おかしいな。『ピストルズ』の方の異常は直ったんだがどうも頭痛がまだ……」
「……今回の『ピストルズ』の異常から考えてミスタさんのスタンドと、
 ミスタさん自身にはけっこう隔たりがあるのかもしれませんね。
 その頭痛はミスタさんの心因的なものなのかも。ま、気晴らしに酒でも飲めば治りますよ。」
284【ありふれたテーブルの上で】 3話:04/09/11 00:23:21 ID:y/IVHWZx
 そういってフィオーレはテーブルの上のグラスに注文していた酒を注ぐ。
 全身はだるいし、頭痛もする。正直、酒を飲む気分ではない。 
 だが、東洋では酒は薬だとも聞く。ここは無理してでも飲んでおいた方がいいのかもしれない。
 実際、シュワシュワと酒の立てる音に自分の口の中の唾液が明らかに増えていっている。
 ……気がつけば体はすっかり酒を受け入れる体勢を整えていた。

「……まぁ、いいか。」

 流石に一気は無理なのでチビリチビリとグラスを空にしていく。
 ……3杯、4杯、5杯。すっかり耳が真っ赤に染まった頃。
 気がつけばいつの間にか全身に取り巻くダルさや頭痛は消え去っていた。 
 フィオーレの「スーサイダル」のおかげか、はたまた酒好きの業のなせる技か。
 とにかく、景気よくいつものように酒を飲み干し、
 顔を真っ赤に染めて、そのまま仕事の時間が来るまでテーブルの上に突っ伏した。

エマラテッド・ホテル 三日目 昼  弾丸、あと10個。

―――――――― TO BE CONTINUED.....
 また、目が覚めるとベッドの上。もはや慣れっこである。
 ポケットの中の銃弾の数を数える。やはり一つ減っている。当たり前の事ながら思わずため息が出る。
 俺は疲れているのだろうか? まぁ、ちょうどいい。これで仕事も終わった。
 昨日、確かに最後の一人、マルディーニも殺した。これで全てが終わった。
 
 だが、やはり頭が痛い。体もだるく症状は一向に改善されていない。
 フィオーレの『スーサイダル』は生物を元に戻す能力。
 やはり精神的なものまでは完治できないのだろうか。
 幸い仕事も終え、ジョルノからも休みをもらった。しばらく長い休養をとるとしよう。
   
 すると、静寂を破る腹の音。気がつけば昼。『ピストルズ』が騒ぎだす前に飯にしよう。
 そう、ベッドから足をおろした瞬間、突如、走る激痛。「!」
 
 一体何が? ソックスを脱ぎ、足の患部をあらわにする。
 爪。昨日、足をベッドにぶつけたときに割れた爪。
 なんだ。そう言えば忘れていた。ほっとし、安堵のため息をつく。
 ―――――だが、ある疑問が浮かぶ。一つの、矛盾。
 
「あ? なんで……あれ?」

 一つの疑問。その疑問に触発され、次々に疑問が浮かんでいく。
 思考が錯綜し、回転していく。止まらぬ回転。思考が加速していく。
 あれ? なんで? そういえば? なぜ……?
 そして、思考がぴたりと止まる。辿り着いた一つの結論。
 それが一番自然。そうでなければこの『矛盾』は説明できない。

「……ククク、ッハッハッハッハハッハッハッハッハハッハ!!!」
 突如、気が触れたように笑い出すミスタ。次の瞬間、すっと無表情に戻り、
 ベッドの横にあった銃を手に取り、思い立ったようにそのまま部屋から飛び出る。

「……確かあの野郎の部屋は……」

 二つ隣の部屋。フィオーレの部屋。その扉の前に立ち、5発の銃声。
 鍵を破壊し、無理矢理、部屋の中に踏み込むミスタ。
 突如飛来するティッシュの箱。しかし、それを事も無げにたたき落とす。
 すると、ミスタに向けられた銃口。
 
「……あれ? ミスタさん?」

 フィオーレは突然の来訪者に完璧な迎撃の体勢を整えていた。
 しかし、その相手はミスタ。安心し、銃をテーブルの上に置く。
 
「ミスタさん。なんか急ぎの用なら分かりますけどそれにしても扉壊すのはやり過ぎですよ。」
「……えらく余裕じゃねーか。フィオーレ。」
「へ? 一体何が……」
「殺すんだよ。今すぐテメーをな。」
 
 ミスタは言葉が終わる前にフィオーレに銃口を向ける。
 冷静に。極めて冷めた目で目の前の標的を睨む。鈍く光る、ミスタの拳銃。
 部屋内の空気が逼迫していく。変わらずミスタは表情を崩さない。
 フィオーレは動揺しながらも深呼吸をし、癖なのか、指を順番に鳴らしてから髪をかきあげた。
 一連の動作で落ち着いたのか、フィオーレはなおも向けられた銃口に説得を繰り返す。
「ミスタさん。どうしたんです? 俺何か気に障る事しましたか?
 勘弁して下さいよ。少し落ち着いて下さいよ。」
「……そういえば挨拶するのを忘れてたな。『はじめまして』。フィオーレ。」

 『はじめまして』 その言葉を聞き、フィオーレの笑みも消える。
 ミスタと同じように、フィオーレの顔からも一瞬にして喜怒哀楽が消える。
 そして浮かび上がる。今まで見せた事もないような凶相。
 
「……そこまで気付いてるならもう言い訳はやめるか。一体なんで気付いたんだ? ミスタ。」
「…自分でも反吐が出そうなくらいに上手く騙されてたからな。 
 気付いたのは、たまたまだ。昨日起きる時にベッドの角で足の小指の爪を割ってな。
 おかげでしばらく悩んだぜ。足の爪が『治って』ねーんだからよ。」
「……なるほどな。確かに凡ミスだ。もう少し考えて嘘つくんだったな。
 まさかお前がホテルの中で怪我するほど馬鹿だとは思わなかったぜ。」
「……やっぱ俺は4日間。ずっとホテルの中にいて酒飲んでただけか。
 わざわざ毎日弾一発ずつ抜くなんて気が利いてるじゃねーか。フィオーレ。」
「ああ。だからお前は『誰一人』殺せていない。今日が何の日か分かるか? 
 もう遅い。3人とも合流して今晩にもお前のボスは殺されるだろう。」
「……………」
「少し考えてもみろ。ミスタ。もうお前一人じゃどうしようもない。
 今この部屋に入る為に何発銃を撃った? 弾は後何発だ?お前の今の状況を説明してやるよ。ミスタ。
 もうこの街は完全に俺のボス・トラッパトーニさんの傘下に入った。
 お前に武器を売ってくれる店などどこにもない。弾を補充する事すらできないんだよ。
 しいて敵じゃないのは中立を保っているこのホテルぐらいなもんだ。
 さらに、お前はその残り少ない弾数で俺を殺し、3人を殺さなければならない。
 分かるか? 不可能なんだよ。どうだ? それなら俺の仲間にならねーか?
 最初に弾の補充を忘れたと聞いた時は呆れたが、今考えてみれば恐ろしい話だ。
 弾なんて人数分あれば十分なんだろ。お前が初心者ってんならともかくよ。
 今までもそうやってやってきたんだろ? 見てなくてもお前の腕が凄いと言うのは分かる。」
「………本当、えらく余裕だな。フィオーレ。お前のボス達を殺すのは無理でもお前一人くらい簡単に……」
「…やっぱさっきの話は無しだ。ミスタ。お前のような馬鹿はいらないな。
 俺のスタンドの能力を忘れたのか?」

 ミスタの眼前。気がつけば至近距離に『スーサイダル』が漂っている。
 ミスタが銃を撃つ前に『種』を被弾させる事ができるほどの。
 
「ククク。どうしたよ? ミスタ。お前こそさっきの余裕はどうした?」
「……さっきよぉ、ここの扉の鍵を壊す為に何発弾を撃ったか、ちゃんと数えたか?」
「? あ? 何言ってやがる。」
「教えてやるよ。撃った弾の数は5発。扉の鍵を壊すのに平均的な弾数なんてあるのかは知らねーが、
 ちょっと多すぎるとは思わねえか? そして俺のスタンド……『セックスピストルズ』」
「…?……あ……」
 フィオーレはその時、確かに後ろから風を切る音を聞いた。
 視線を自分の後ろにそらす。するとそこには『セックスピストルズ』
 ミスタの拳銃から放たれた弾を、二手に分かれて交互に往復させ滞空させている。
 さきほど、扉の鍵を壊す前に撃った弾を。
 思わずめまいを起こしそうなほどの、危機。ノドの奥から声がひり出る。 

「……ああああああああああ!」
「お前みてーな馬鹿の仲間?  こっちから願い下げだ。ホラ吹き野郎。」

 次の瞬間、フィオーレの脳天を『ピストルズ』の蹴った弾丸が貫く。
 なすすべもなくフィオーレは崩れ落ち、ミスタの眼前を漂っていた『スーサイダル』が消滅する。
 
 足下にはフィオーレの死体。今なお、奴から流れる血液が床の絨毯の上を「滑る」。
 ポケットの中をまさぐり、全ての銃弾を取り出し拳銃に込めていく。
 時間はない。あと数時間もすれば暗殺計画は始動する。
 全ての銃弾を込め終えたあとに、ミスタはある事に気付く。

 4発。残り4発の銃弾。本来なら「不吉」なので使いたくない数。
 鼻をぽりぽりと掻き、再び足下のフィオーレに目をやる。
 有無を言わさず、一発。銃声とともに再びフィオーレの脳天を貫く銃弾。
 すると先ほどまでと違い、おびただしい量の血液が絨毯に「染み」込んでいく。

「やっぱりか。抜け目ねー野郎だ。でも、これで『3発』 もう大丈夫だ。」
 うって変わって先ほどまでは無かったフィオーレの右耳。
 「銃弾」がかすってできたような傷ができている。
 おそらく、この部屋に入った瞬間に。
 ティッシュの箱でも投げた時に同時に「種」を飛ばしていたのだろう。
 結局、ここまでもが嘘の記憶だった訳だ。

 そしてミスタはフィオーレの死体がもう一度本物かどうかを一応確認して。
 3発の銃弾を手にエマラテッドホテルをあとにした。
 
 ―――――――そして、その後。 
 数時間後に遠く離れた町で、全ての仕事を「終え」、ありふれたテーブルを買う所を目撃されたあと。
 グイード・ミスタの足跡は依然として不明である。

エマラテッド・ホテル チェックアウト 弾丸、残数なし。

『スーサイダル・テンデンシーズ』
能力:種を植え付けた相手に嘘の記憶を植え付ける。
能力者:ステファノ・フィオーレ  死亡。

―――――――― TO BE CONTINUED.....HOWEVER, I KNOW NOTHING.
2911985 ◆8BVPwsPs7s :04/09/11 00:39:05 ID:y/IVHWZx
こういう話の性質上、今回のように大量投稿してすいませんでした。
あまり時間を置くと頭の良い人にはバレバレになってしまいますから。
凄い分かりづらいでしょうが、何回か読んでもらえれば話が分かってもらえると思います。
292作者の都合により名無しです:04/09/11 00:59:53 ID:r9Kft82V
>>291
初めからわかったがそれでも、だからこそかもしれんがハラハラして読めたよ
GJ
293作者の都合により名無しです:04/09/11 07:50:40 ID:SHGdc5VX
>1985氏
おお、もうバキスレにいらっしゃったんですyか。
大作お疲れ様です。不良のときから思ってたけど、氏はキャラの掘り起しが上手いですね。
それぞれのキャラの「役回り」を演じさせるのが本当に上手い。ちょっとミステリっぽいのもいい。
ジョジョの4部以降は正直あまり詳しくないですが、それでも楽しく読めました。
今度はいよいよ「バキ」ですか?この作品は大好きなので、頑張って下さい。

あと、フラッシュも面白かったです。音楽の選択センスいいですね。
294作者の都合により名無しです:04/09/11 16:51:30 ID:2tcv1PSH
>1985さん
まだ来るのは先と思ってた。うれしい。
あなたはうみにん氏とともに俺のマイフェイバリット職人なので、本当に大歓迎。
以前から構成力とか伏線の引き方とか感心してたけど、文章も本当に見やすくなった。
俺は最後のオチ、というか仕掛けに感心したよ。あんまり頭よくないもんでw
いい仕事をありがとう。次のうぷ楽しみにしてます。


295ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:31:12 ID:DDDR9Eeg
今日は、今のところSSの投下もないようなので、この機会に
出木杉帝国の登場人物の補足させていただきます。第一部を終え、
登場人物も一部の例外を除いて、ほとんど出揃いましたので。

☆登場人物補足☆
作中での描写だけではわからないかもしれないキャラの補足です。

☆ドラえもんのいつものレギュラーメンバー

【ドラえもん・野比のび太・源しずか・剛田たけし・骨川スネオ】
説明省略。いつものメンバーです。

【出木杉英才】
成績優秀・スポーツ万能・ルックス、性格も良しと非の打ち所がない完璧人間です。
初期の名前は太郎。出木杉ではなく出来杉で検索した方が多くヒットするのが悲しい。
アニメのスタッフロール等でさえ出来杉と間違われることも多い。

【ドラミ】
ドラえもんの妹。兄より高性能でしっかり者です。普段は22世紀にいます。
296ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:31:52 ID:DDDR9Eeg
☆大長編ドラえもん

【リルル】
大長編「鉄人兵団」のゲストキャラです。地球侵略を企てる鉄人兵団のスパイとして
巨大ロボット、ジュド―(ドラえもん命名:ザンダクロス)と共に送り込まれた人間
型ロボットで、外見は人間そっくり、というかかなりの美少女のようです。のび太た
ちと出会い、のび太やしずかの優しさに触れることで、少しずつ人間らしい心を手に
入れていきますが、最後は地球を救うため、自らの消滅という重い選択肢を選びます。
「今度生まれかわったら、天使のようなロボットに。」「あなたはもう、天使よ。」
というしずかとの涙の別れのシーンは、ドラえもん映画史上に残る名シーンでした。
最後にのび太の前に現れたリルルは、きっと生まれ変わった天使だったのでしょう。

【バンホー】
大長編「竜の騎士」のゲスト。地底世界の竜人。妹の名はロー。
かっこよくて頼りになる。そんなキャラですね。軍人としての位も高いようです。
竜人世界の創造主でもあるドラえもんたちには、全幅の信頼を持っています。

【ギラーミン】
大長編「宇宙開拓史」の敵役。地球の10分の1の重力で育ったにも関わらず
スーパーマン・のび太と互角のガンマン対決を演じ、惜しくも敗れ去りました。
297ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:32:52 ID:DDDR9Eeg
☆ドラえもん

【ズル木】
ドラえもんの代わりにドラミちゃんが出たときにしか出てこないキザなキャラです。
なので、ドラえもんとの共演はなし。ドラえもんがいないときは、スネオが消えて
代わりにズル木が登場?キャラクター的には、スネオと「キテレツ大百科」のトン
ガリくんを足して2で割ったような感じで、議論大会を開いてはのび太を負かして
いた。ドラミに「ズル木さんは頭がいい」と言わしめた実績を持つ。

【げんこつげんごろう】
となり町のあばれんぼうで、ジャイアンをもボコボコにした強者です。ジャイアンは
負けたことの悔しさと、再び負けることへの恐怖でびくびくしていました。その状況
に危機感を覚えたのび太が「ジークフリート」という強力な薬を使ってげんごろうと
戦います。その結果、げんごろうが、へろへろになって逃げ出そうとしたところへ、
タイミングよくジャイアンが意を決して突撃!さしものげんごろうもたまらず「参っ
た!もう乱暴はしない!」と降参してしまいました。なのでジャイアンはまだ直接は
勝っていないことになります。SS内でのキャラは元のキャラの面影はほとんどあり
ません。性格設定などは、ハンター×ハンターのウヴォーギンを意識しています。
298ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:33:43 ID:DDDR9Eeg
☆アンパンマン

【アンパンマン】
正義のヒーロー。作者いわくアンパンマンワールドの住人は全て妖精なんだそうです。
ジャムおじさんもチーズもミミコ先生もカバオくんも。

【カレーパンマン】
「オレは辛いぜ」アンパンマンと同じくらい強いヒーロー。

【しょくぱんマン】
ナウシカやクラリスと同じ優しい声です。アンパンマン・カレーパンマンたちとは
互角の力の持ち主ですが、優しくておとなしいのであまり戦うことが好きではない様子。
子供たちの人気者。ナルシストで顔が欠けると美しくないので絶対に食べさせません。
そのため、いつも別に食パンを持ち歩いています。アンパンマンたちと違って、ジャム
おじさんに生み出されたわけではなく、トースター山から一人で勝手に生まれました。

【ジャムおじさん・バタコさん・名犬チーズ】
優しいジャムおじさんは、アンパンマンとカレーパンマンの生みの親です。他にメロン
パンナちゃんや、ロールパンナちゃんなども生み出してますが、しょくぱんマンは別です。
バタコさんは、その助手。チーズは名犬なので、アンパンマンカーの操縦などもできます。

【ドキンちゃん】
声は無印時代の若いブルマの声とほぼいっしょです。バイキン星からバイキンマンの
手伝いに来たらしいのですが、今ではただのわがままな居候状態です。バイキンマンと
共に罠をしかけて食パンを奪おうとした際にしょくぱんマンに人目ぼれしました。

【バイキンマン】
言わずと知れたアンパンマンのライバル。頭はいいけど、間の抜けた憎めない悪役です。
299ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:34:30 ID:DDDR9Eeg
☆パーマン

【パーマン1号:須羽みつ夫】
パーマンの主人公で、正義感あふれる少年です。

【パーマン2号:ブービー】
チンパンジーの子供。かなり頭がいい。

【パーマン3号:パー子】
気が強くておてんばな3号の正体は、実は国民的アイドルの星野すみれ。のび太たちも
大ファンです。1号も大ファンなのですが、最終回まで気付くことはありませんでした。

【パーマン4号:ぱーやん】
もっとも頼りになるのは、ズバ抜けて賢い、この4号(パーやん)のようです。
パーやんの登場する回はけっこう多いのですが、他の3人が必死で駆けずり回っても
解決できないような問題を後からやってきて、一人であっさり解決してみせたりする
こともしばしば。人間、見た目ではわかんないもんです。

【魔土災炎】
パーマンを敵視するマッドサイエンティスト。
パパンダーという巨大ロボットを作成するも、予算不足のため下半身が安定せず。
300ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:35:23 ID:DDDR9Eeg
☆忍たま乱太郎(原作名:落第忍者乱太郎)

【忍たま3人組】
乱太郎・きり丸・しんべえの忍術学園落ちこぼれ3人組。
今回、ドラたちと共に戦うのはこのうち一人だけです。

【きり丸】
忍術学園1年は組の名物3人組のうちの一人。両親を戦でなくし孤独な身のため、10歳
にして学費などは全てアルバイトで工面している頑張り屋でもあります。タダ・小銭な
どの言葉に弱い。現在、身寄りがないのを心配した担任の土居半助先生のもとに居候中。
声はワンピースのルフィやクリリン、古くは魔神英雄伝ワタルのワタルなどと同じです。

【稗田八方斎】
忍たまたちの宿敵です。悪の城、ドクタケ城の忍者軍団の頭領。劇場版乱太郎では
空飛ぶ忍者部隊による世界征服を企てていました。頭がでかすぎるのが特徴です。

☆エスパー魔美

【ワンダー・ガール】
正体不明のエスパー少女。

【佐倉魔美】
売れない画家の娘に生まれた、そそっかしくもかわいらしい中学生の少女。
母はかなりの美人。フランス人の血を引いているため、赤毛。でもエスパー。
まだ半人前のため、秀才の高畑くんと二人三脚で超能力を開発している。

【高畑和夫】
勉強しなくても頭が良い。けど、運動神経はない。魔美の超能力開発に協力。
301ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:52:06 ID:DDDR9Eeg
☆その他

【坂ノ上おじゃる丸】
平安京からタイムスリップしてきた、みやびなお子様。
その際、地獄のえんま大王から仕事に使うしゃくを奪った。返す気はなし。

【キスギー】
帝国のボスです。フルネームは、アーサー・D・キスギー。ひらがなにすると、えいさい・
でぃー・きすぎー。えい△い・で○すぎ?って、別にダジャレにするつもりもなかったの
ですが、偶然にもダジャレっぽくなってました。決して、決してダジャレではないですよ。
アーサーは確かに英才からきてますけど、“D”には一応、ダジャレではない別の重要な
意味があります。

これで補足は終了です。
注:説明文の長さと作中での活躍度は全く比例しません。

>>245
ご指摘ありがとうございます。アンパンマン大研究で調べたところ、確かに「だだんだん」
でした。以後、訂正します。ひらがなだと、文章で使いづらいので表記は「ダダンダン」
にするかもしれません。あと、ジャイアンはほっといても勝手に自分で活躍してくれると
思うのですが、サマサさんも仰ってましたが、やはり問題はスネオですね。第一部では影が
薄かったスネオですが、次回の更新では大活躍してい・・・たらいいなと思ってます。
302ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/11 20:55:07 ID:DDDR9Eeg
あ、ひょっとして間違いや勘違いもあるかもしれません。
その時は遠慮なくご指摘ください。では・・・
303作者の都合により名無しです:04/09/11 22:09:41 ID:Zc/RdkxI
>1985氏
大作の一気掲載、お疲れさま。
最後の大物職人って感じのあなたがバキスレに来てくれて嬉しいよ。
でも、個人的に5部のジョジョあんまり好きじゃないんだよなw
それでも十分楽しかったので、次のバキにはつい期待しまくっちゃう。
フラッシュもよかったよ。あんなのよく作れるな。

>うみにん氏
おお、便利だ。この一覧はありがとうございます。
作品はとても楽しんでるけど、半分以上キャラを知らないので、
(本当に申し訳ないけど)思い入れの出来ないキャラもあった。
ユーザーフレンドリーだwしかし、この出演数見ると改めて大作だな。
まだ一部終わったばかりだから完結まで時間かかりそうですが、
フィナーレまで頑張って下さい!


304作者の都合により名無しです:04/09/11 23:30:26 ID:R2jqLEJU
>>295-302
乙です。
こういうふうに説明がまとめてあると嬉しいですね。
これだけの癖のあるキャラを活かしつつ
読みやすい話にまとめてあるのは
改めてすごいと感じました。
305作者の都合により名無しです:04/09/12 00:13:04 ID:yUSWGYUW
うみにんさんおつ。ある意味、SSより大変な回でしたね。
でも分かりやすくて助かります。

NBさん、長編カテゴリ移行おめでとうございます!
これからも頑張って完結させて下さい。
サマサさん、ここ最近来ないな。心配。
306作者の都合により名無しです:04/09/12 15:02:18 ID:yUSWGYUW
ありゃ、昨日の夜は来なかったか。
期待を込めてあげときますか。
307作者の都合により名無しです:04/09/12 15:45:43 ID:7+BqA8+a
>>ありふれたテーブルの上で
面白かった。二日酔い、髭剃り、ピストルズの空腹、スキンヘッド、
爪の傷と、謎解きのヒントとなるギミックが随所に散りばめられて
あるのには感心した。
ただ一つ、スキンヘッドの男が暗殺者であるとミスリードさせた
かったのだろうが、その場合ジョルノがミスタを呼び出した用件が
何だったのか分からなくなってしまう。そこだけ残念だった。
308307:04/09/12 15:47:04 ID:7+BqA8+a
あ、ごめん。ネタバレっぽい感想になっちゃった。
309307:04/09/12 15:53:18 ID:7+BqA8+a
さらに前言撤回。
「少し休んでもいいですよ」ってのが用件になるんだな。きのう
読んだばっかりなのにすっかり忘れてた。
失礼しました。
310作者の都合により名無しです:04/09/12 18:50:19 ID:n/Fs2H1G
今日は作品まだ来てないか。
夜来る事を祈って上げとこう。
311作者の都合により名無しです:04/09/13 01:50:15 ID:Lf/2ApAe
おい、お前らヤムスレ荒らすな。
>119から

七月の終わり。
この世界でも、当然に夏休みというものはある。
のび太たちは、神王たちに誘われて無人島に来ていた。
参加メンバーは芙蓉家・神王家・魔王家と、やはり誘われてきた時雨亜沙である。
「おらおらー!待てやまー坊ー!」
「ははははは!捕まえてごらん、神ちゃーん!」
青い海。白い砂浜。夏の太陽。追いかけあう王様二人。
稟はあさっての方向を見ながら言った。
「・・・・・・のび太、ドラえもん。俺たちはなにも見てないよなあ?」
「ええ、なにも見えません。ねえ、ドラえもん」
「いや、ほんとに。太陽が眩しいから、他になにも見えませんねえ」
ここが無人島で本当によかった。普通の海水浴場だったら、本気で他人のふりをしなければ
ならなかったろう。
「おーい。三人とも、早く来なよー」
亜沙が海からあがって声をかけてくる。
「そうだな。いくか、のび太」
「え、あのー。ぼくはちょっと・・・うん、お医者さんから止められててさあ・・・」
「のび太くんは泳げないんだよね」
「うるさいなあ!」
そのやりとりにプウッと亜沙は吹き出した。
「あらら、のびちゃん泳げないんだあ〜。なんかそれっぽいかんじだもんね」
どれっぽいかんじなんだと思ったが、泳げないのに変わりないのでのび太はムスッとするしかなかった。
「それにしてもさあ、もう会えないかも、なんて言って別れたってのに、普通にこうやってるってのも
変な話だよね。しばらく帰れないのは残念だろうけど、それまではこの世界で楽しくやろうよ」
「そうですね」
そう言った時である。いつの間にやら背後にいた神王が、突然こう言ったのだ。
「おうお前ら、スイカ割りするぞスイカ割り!海と言えばスイカ割りだろうが!」
相変わらず前後の行動に脈絡のない神王であったものの、特に反対する理由もなかった。
海で泳いでいたり、砂浜で遊んでいた連中も集まってきたところでドラえもんはスイカを取り出し、
叩き用の棒も出そうとした。しかし―――
「あれ、これじゃないや」
ドラえもんが取り出したのは、チープなかんじのおもちゃの刀だった。
「お?なんだそりゃあ」
「これは未来のチャンバラごっこで使う道具なんです」
「ほお〜、ちょっと貸してみな。・・・未来のおもちゃってわりに別にどうってことねえな」
そんなことを言いつつ、神王はひょいっと何気ない動作でのび太の首に刀を振り下ろしてみた。
もちろん冗談のつもりであったが―――のび太の首が、ポロリと落ちる。
「・・・・・・」
ザ・ワールド。時が止まった。全員、口をあんぐりと開けたまま、身動きひとつ出来ない。
恐ろしいまでの<やってしまった感>が、この場を支配した。が、しかし、さらなる事態が起こった。
のび太の首が、何事もなかったかのように喋ったのだ。
「もお〜。いきなりなんてことするんですか」
「どわああああああっ!?」
当たり前だがこれにはさすがの神王も驚いた。他の連中もパニック状態に陥る。そりゃあそうだろう。
なにせ生首が喋ったのである。むしろ平然としている方がおかしい。
「みんな、落ち着いて!大丈夫、のりでくっつくから」
「ば、ば、ば、バカ野郎!のりでくっつくはず・・・」
あった。のりで本当にのび太の頭と胴体は、元通りにくっついた。
「あれは<チャンバラ刀>といって、本当に斬れるけど、のりでくっつくんです。もちろん、
体に悪影響はありませんから安心して下さい」
「はは、なんだ・・・。脅かすなよ、ドラ助」
「それ以前に、未来世界の倫理観はどうなってんだ・・・?」
当然のように説明するドラえもんと、当然のように納得する神王であったが、稟は呆れたように呟くだけだった。
その数時間後。のび太は山の中で、ヒイコラ言っていた。
「まったく・・・ジャイアンが山を探検してみようなんて言うから・・・」
その提案に従って、のび太達子供組と稟、プリムラは、山中探索と洒落込んだのだったが、のび太は
早くも後悔していた。
「そう言うなって。ほら、早くみんなに追いつこうぜ」
「そうそう。元気出して」
稟とドラえもんは笑いながらのび太の肩を押す。既に他の皆は先に行ってしまった。
いや、もう一人ここにいた。
「のび太、疲れてる?私もちょっと疲れたから、休む?」
プリムラがそう聞いてきた。彼女は割と元気そうだったから、自分が休みたいというよりは
のび太に気を使ったのだろう。
自分より年上とはいえ、女の子に体力面で気を使われるというのはどうもかっこ悪いものがあるが、
疲れているのは事実なので、四人で地面に腰を下ろした。
「いい天気だなあ・・・。このまま昼寝でもしたいなあ・・・」
「まったくだな。いつも騒がしい連中に囲まれてるから、こういうのもいいな」
のび太の言葉に、稟も同意を返す。そのまま、しばらく静かな時間が流れた。
「・・・あ」
突然、プリムラが声を上げた。
「どうしたの?」
「・・・あれ・・・」
彼女が指差す方に目を向けると、そこには山猫と思しき子猫がいた。それだけならともかく、
その子猫は足を滑らせてしまったのか、切り立った山肌の出っ張りのところに引っかかるような
状態だった。
「大変だ!助けないと!」
「よし、俺が行くよ」
稟がそういって立ち上がる。のび太たちは稟を心配そうに見つめた。
「だ、大丈夫かなあ・・・?」
「なーに、心配するなって」
稟は安心させるように笑い、子猫の方へと向かう。のび太たちも後に続く。
稟はそのまま山肌に足をかけて慎重に進んでいき、子猫の元へ辿り着いた。
そのまま子猫を抱き上げ、道で待っているのび太たちに手渡す。
「よし・・・後は俺が戻るだけだな・・・」
その時だった。子猫が助かったことで気が緩んでしまったのか、稟は足を滑らせてしまった。
「稟さん!」
咄嗟にのび太は手を伸ばし、稟の腕を掴んだが―――子供の力で、高校生男子の体重を
支えきれるものではない。のび太も稟に引きずられるようにバランスを崩す。
のび太と稟は、そのまま山肌を転げ落ちてしまった。
「の・・・のび太くーーーん!稟さーーーん!」
「稟・・・のび太・・・!?」
落ちていく二人を、ドラえもんとプリムラは呆然と見つめた。
316サマサ ◆2NA38J2XJM :04/09/13 13:32:57 ID:zTGXB44V
充電期間完了で、第二部スタートです。
正直今回投下した部分は全然キーボードを打つ手が動かないほどの大スランプでした。
とにもかくにも、これから始まる第二部を気合入れて書いていきたいです。
第一部の時みたいな鬼更新はさすがにもう出来ないと思いますが、
出来る限りのペースで続けていきたいと思います。
317作者の都合により名無しです:04/09/13 13:59:54 ID:RNRUjX9i
乙です
ちょっと作風かわりました?
青玉のあたりは大丈夫だったけど
ギャグのノリについてけない感じ。
今回は導入部のジャブだと思うので
ストーリー部分に期待。
318作者の都合により名無しです:04/09/13 15:21:12 ID:tJp1q/52
>1985様
機会があったら他のSSにもフラッシュを作ってもらえないでしょうか?
個人的にはザク、出木杉帝国を希望します。
319作者の都合により名無しです:04/09/13 16:36:32 ID:UEbFF2cc
>ドラえもん のび太の神界大活劇
>のび太の首が、ポロリと落ちる。
チャンバラ刀知らんかったからびびった。

今回から何か話が進展しそうな雰囲気。
山登りにつき物のいかにもな展開だけど、どうなるんだろう?
ドラえもんとプリムラだけで助けに行くんかな?
3204x5:04/09/13 19:04:55 ID:K+Zf4gNW
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/4x5/2-6.htmn
の続き


 呼吸の一つ一つが心地よかった。多めの湿気を含んだ夏の外気が、天使の息吹のように体を癒す。
 そう、螺旋の息吹だ。渦は波紋を呼び、呼吸は血液へ、血液は体中の細胞へそれを伝達する。
 水面と化したジョセフの体に、一息ごとにエネルギーの波が立つ。
 そっと力を込めるだけで、今度はすんなりと立ち上がることが出来た。
 先ほどまで絶えず溢れて暖かだった血は、だんだんと熱を失ってゆき右足を冷やした。膝の出血が止まっていた。
 また深く息を吸う。怪我の痛みも完全に消えた。
 先ほどとはうって変わり、今のジョセフには無限の時間が存在した。
 脳内における電子移動はしごくスムーズに行われ、幾つもの思考が交錯、衝突しあった。
 だが導かれた答えは極めてシンプルなもので、『あのスタンドを倒す』
 何を迷う必要があるだろう、それだけだった。
 考えてみれば、いたって何のことも無い。
 こんなことに先ほどは四苦八苦していたのかと思うと、ジョセフは苦笑した。
 軽く釣りあがるジョセフの唇を、ベイビィ・フェイスはた呆然と眺めていた。
3214x5:04/09/13 19:06:39 ID:K+Zf4gNW
 ホテルの一室では、親子の会話に早くも亀裂が生じ始めた。
「落ち着けよ、ベイビィ・フェイス。お前は天才なんだ。考えろ、考えるんだ。考えろ、考えろ……」
 メローネは、半ば自分へ呟いた。
「情報が欲しい。ジジイの変化をもっと詳しく教えてくれ」
 父の問い。
 そして数秒の間を置き、
「……元気 です_
 彼は すごく元気そうです_」
 やはり一定の速度で坦々と文字が画面に現れた。
「ふざけるな!」
 それが目に入るや否や、メローネは拳をテーブルへ叩きつけ、自信の喪失から来るストレスをぶつけた。
「うるせえぞ!」
 叫びは壁をつきぬけ、隣の住人を刺激した。だが帰ってきた怒声もメローネの耳には入らない。
「なあ、ベイビィ・フェイス、たいそうな脳みそ持ってたって有効に利用しなけりゃ意味が無いんだ! そうだろう?」
「……はい_
  しかし 今の私の表現は 極めて適切です_
  映像を 送れないのが 残念です_」
「もういい」
 冷めた口調でメローネが返す。
「もういい。ジジイの変化は、やつのスタンド能力だ。これでいい。何の問題も無い」
「……しかし_」
「つべこべ言わずに、とっととバラしてこい! 文字通りな」
3224x5:04/09/13 19:07:30 ID:K+Zf4gNW
 父の焦燥に、とりあえずベイビィ・フェイスは復習を始めた。
 まず知ったのは、自分の能力――生まれた時から知っている『解体する』能力は、あまり威力をもっていないということ、
 対象に接触でもしなければ、致命的ダメージを与えられないだろう。
 通常の『ベイビィ・フェイス』よりも小柄らしい自分にとって、デメリットと呼ぶには軽すぎた。
 次に、地形について。
 雑草が伸ばし放題の、荒れかけた寺の境内。脇にはやはり手入れされていない木々。
 直接武器になるようなもの、無し。だが、あの木は使える。
 ベイビィ・フェイスは、自分の能力を知るのが楽しくてしょうがなかった。
 お父さんの言った通りだった。
 親に報いる。
 ベイビィ・フェイスの人生においての第一目標は、それだった。
3234x5:04/09/13 19:09:34 ID:K+Zf4gNW
 夕べの境内に、男が一人に女が一人。そして一つ。
 男、ジョセフ・ジョースターは齢79歳となっていた。
 年齢差79歳である、一人と一つが対峙していた。

 先に動いたのは、「一つ」だった。
 「一つ」、ベイビィ・フェイスが虚を突き、一気に老人へ飛びかかった。
 瞬間、ベイビィ・フェイスの眼前には拳が。
 老人の対応は素晴らしいものだった。
 体当たりにぴったり合わせた直突きを放っていた。
 絶対のカウンター、それでも拳は空を切っていた。
 人外との戦いには、この先があった。
 「一つ」が四散した。霧散と言ったほうが近い。
 何十何百と言うキューブとなって散り、突進の勢いを殺さずに拳を交わしたのだった。
 塵となったベイビィ・フェイスは老人の体を擦り抜け、そして再び集合した。
 バックを取っていた。
 雑草生える地面を蹴り上げ、老人の無防備な背中へ襲いかかる。
 接触されればそこで終わる。
 だが、いまや老人も人外であろうか。
 わかっていたかのように振り向き、裏拳を放っていた。
 ベイビィ・フェイスは、やはり寸でのところで自らを解体、回避する。
 先程と同じ流れだった。
 電撃が、走った。
 それを深く知覚する前に、ベイビィ・フェイスは着地していた。
 そして、片膝をついていた。
 水面下で、流れは確実に変わっていた。
324ユル ◆jxmVRmKxVc :04/09/13 19:11:22 ID:K+Zf4gNW
2,3時間後に、また。
325殺助:04/09/13 19:31:38 ID:UJ0pfc0N
ユルさんお疲れ様です。
同じジョジョねたが続くのは申し訳ありませんが、久しぶりに投下させて頂きます。
ユルさんすみません。すぐ出掛けないといけないんで。
326DIOの世界:04/09/13 19:32:12 ID:UJ0pfc0N
DIOの世界
『第二話 ゲブ神・水のンドゥール』

ある日、己の中に恐怖と忠誠を埋め込まれた。
たった一人の、この世の王となるべきお方に、2つとも、だ。
おれは無敵だった。特異な能力があったからだ。
誰にも忠誠を誓わず、何者にも束縛されず、20年もの人生を生きてきた。

その方にお会いするまで、おれは無敵だった。
そして無敵というのは、存外退屈なものだった。
おれがほんの少し能力を見せるだけで、赤い血がドクドクと流れ、敵は絶命する。
警官、殺し屋、ギャング、権力者、貧民。
おれは権力の座などまるで興味がなかったが、全ての生きる者は俺の手の内だった。
おれの能力に狙われて、生存できるものはいないからだ。

おれの能力は、スタンドと呼ばれる超能力のようなものの一種であるらしい。
おれのスタンドは水を意のままに操る事が出来る能力だ。
自在に形を変える事が出来、そして水流を鋭く尖らせナイフと化す事が出来る。
ほんの少しの水溜り。水筒の中の飲み水。飲み残しの缶ジュース。
それら全てが、おれにとっては万物に勝る兵器となる。

別に殺人が趣味ではない。大して楽しくも無い。だが、殺した。
生きる為に、殺してきた。「排除した」、という言い方が正しいかも知れない。
327DIOの世界:04/09/13 19:33:06 ID:UJ0pfc0N
おれは7歳の頃に自ら盲目になった。自分の手で目に硫酸を浴びせたのだ。

貧しい街の、さらに最下層の家でおれは生まれた。安い売春婦が俺の母だった。
栄養不足でカサカサの肌を安絹で隠しながら、母親は必死に客を取っていた。
豚のエサ代にもならないような春代で、垢だらけの客に乳首に舌を這わせ、
ペニスにしゃぶり付き、尻の穴を嘗め回し、狂ったように腰を振っていた。

その母が体を売る光景を、俺は醜いとは思わなかった。
おれを必死で育ててくれている、という感謝の気持ちで美しい、とさえ思えたほどだ。
おれに人間的な感情と、視力がまだあった頃の愚かな話。人間の醜さを知る前の話。
母が、まだ壊れる前の話だった。

春代は最初は俺の養育費にだった。だがそれが少しずつ、安物のヘロインに化けていった。
最初は、客が面白半分に打ったらしい。だが、その快楽に母親は溺れていった。
体を売る事でしか生きていけないという哀しみに、耐えられなかったのかも知れない。
ヘロインを打ちながら体を売る母親の顔は、もう人のそれではなかった。
快楽に母の精神は蝕まれ、肉体は薬の中毒性に壊されていった。

ヤクが切れると、「薬を寄越せ」、と母親は暴れ狂った。
おれはどうしたらいいか分からず、取り合えず水を汲んで母に飲ませようとした。
母はおれの手からコップを奪い、それを俺の顔に思い切りぶつけ、また暴れ狂った。
母親が壊れていく姿も幼いおれを傷つけたが、喚きながら言った言葉が胸を抉った。
「お前なんか生むんじゃなかった、客相手に失敗した」と。

おれは始めて知った。いや、今まで怖くて知ろうとは出来なかった。
うすうす感ずいていたが。
おれは、誰かに望まれてこの世に生を受けた人間ではない、という事に。
328DIOの世界:04/09/13 19:34:15 ID:UJ0pfc0N
それでもおれは母を愛していた。本当に愚かな事だったが。
母の稼ぐ僅かな春代を倹約し、自分の食い物もそこそこに母へ精の付く物を買って来た。
だが、その食い物を見ても母の答えはいつも一緒だった。
「そんな物買う金あったら、クスリを買って来い」

おれは毎日、泣いて暮らしていた。能力が発動する前の事だ。
ちょうどその頃から、母のおれを見る目が変わり始めている事に気付いた。
道端の、ゲロを見る嫌悪の目。道に居座る毒蛇を睨む憎悪の目。
およそ実の息子へ向けるとは思えぬような眼光が、いつも幼いおれを貫いていた。
そして、あの日が来た。家に、まったく知らない男が来た、あの日だ。

その男を見て、体を買い求める客とは違うと本能的に感じた。
それにその男は、母ではなくおれを品定めしていた。おれはその目に身震いをした。
人を見る目ではないのだ。純粋に、物の真贋を見極めるような情の通わぬ目。
おれは不安になって母を見た。今となってはその愚かさに笑えてさえくるが。

だが母親は笑っていた。ここ数年見たことも無いほど、上機嫌な顔で笑っていた。

男はおれを観め廻した後、おれの肉体を触り始めた。
おれは拒否しようと暴れるが、大人の男に叶う訳は無い。それに母の一喝が利いた。
「ンドゥール、良い子だから大人しくなさい」
久しぶりに聞くような母の「良い子」という言葉。おれはその言葉に喜び、耐えた。
329DIOの世界:04/09/13 19:34:56 ID:UJ0pfc0N
やがて男は、懐から財布を取り出して、母に言った。
「売買成立だ。いいタマだな。旦那衆の性玩具用にも、肉体労働用にも、役立ちそうだ」
母親の手には見た事も無い札束が握られていた。満面の笑みの母。男は笑って言った。
「良いビジネスだったな、お互いに」

なんの事は無い。おれは売られたのだ。実の母親から、奴隷商人に。
この街では、よくある話といえばよくある話だが。

おれは次の瞬間、夢中で駆け出していた。
母親は商売上、護身のための道具は常に身近に置いている。ナタ、ナイフ、そして強酸。
おれはその中から硫酸のビンを選び、自らの目にそれを浴びせた。
強烈な熱さを感じた後、おれは永遠に光を失った。唖然とする母と男におれは言った。
「これなら、ぼくは行かなくていいでしょ?」

男は首を振った後、母から札束を奪い戻して去っていった。
母親は泣き狂い、死ね、死んでしまえとおれを永遠とも思えるほど殴り続けた。

この時が、おれの人生の真の誕生日だった。
330殺助:04/09/13 19:38:28 ID:UJ0pfc0N
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dio/01.htm
の続きです。

投げ出そうとも思いましたが、サマサさんやNBさんたちも来て
楽しそうな雰囲気なので、参加させて頂こうと思って復活しました。
のんびり完結させます。

ユルさん、直後投下ごめんなさい。
331作者の都合により名無しです:04/09/13 20:08:32 ID:UEbFF2cc
>DIOの世界
復活おめ。
殺助さんはダークな話を創るのが巧い。さらにキャラの造形も。
今回はまだ導入みたいだけど、引き込まれるものがあった。

・・・ところで1話と2話は今後繋がっていくんでしょうかね?
332作者の都合により名無しです:04/09/13 21:11:22 ID:gg6/QtEc
>サマサさん
2部開始おめ!
王道って感じの開始ですね。2部のつかみとしては上出来と思います。
ギャグについては人それぞれのツボがあるので、合わない人は仕方ないですね。
私は面白かったですよ!鬼更新でなくとも、マイペースで完結させて下さい。
最後まで楽しませて頂きますので!壮大な物語期待してます!

>ユル氏
おお、実力者の帰還嬉しいです。アバッキオとかの短編も素晴らしかったですが、
やはりこちらを終了させて頂かないと!文章本当に上手ですね。引き込まれます。
ベイビィ・フェイスの人生の目的と、これからの物語がどう関わっていくのか楽しみ。
また後で続きを投下して頂けるのですね。楽しみに待ってます。

>殺助氏
今日はバキスレファンとしては本当に素晴らしい日だ。サマサさん、ユルさんに続き
あなたまで帰ってきてくれるなんて。お帰りなさい!
相変わらずな黒い雰囲気。ンドールの暗い過去、一人語りの妙、最高です。
さていつディオ様と出会うのか。どう従順な部下になるのか。楽しみ楽しみ。
333ユル ◆jxmVRmKxVc :04/09/13 21:25:37 ID:K+Zf4gNW
しばらく投下します。
334:04/09/13 21:26:43 ID:K+Zf4gNW
「やあ」
 男がそう言う。
「やあ」
 花京院典明は、とりあえずそう返した。
 激痛が次第に引いてゆく。腹に空いた穴が、とても寒かった。
 そして、男を血混じりの半目で見ながら思考する。
 花京院の体は、まだ動かない。鉄のタンクにめり込んだままだ。
「何故、僕は生きてるんだ?」
「いいや、死んでるさ」
 最大の質問はたやすく返された。
 だけれど花京院は少しも驚かなかった。
 その時、男と目が合った。
 光を喰らう黒がそこにはあった。
 冷たい瞳は、何よりも闇。
 この男、瞬きをしない。
 開け放しの暗黒に、ふと呑まれそうになった。
「とりあえず、行こうじゃないか」
 男の言葉に我に帰る。
 手を引かれ、花京院はゆっくりと体を引きぬいた。
 体は信じられないくらいに軽かった。
335:04/09/13 21:28:11 ID:K+Zf4gNW
 夜の帳が街を包み始めていた。
 この国のパトカーが、先程から何台も忙しく走っている。
 数種類のサイレンも鳴り響いていた。
 怯える者、泣く者、原因にただ興味を示す野次馬連中。路上に溢れかえる人々と取り仕切る警官たち。
 喧騒と悲鳴の渦中を二人は歩いていた。男が先導し、花京院はそれに続いた。
 人々の間を縫うように、気持ち良いくらいすんなりと歩を進めていた。
 耳障りな喧騒が、花京院にはとても名残惜しいものに感じられた。
 そうして二人は一つの料理店の前へ出た。
「公共の場に差別はないさ」
 そう言う男に連れられ、店内へ。
 店のテーブルは殆どが空きで、わずかな客もガラスの向こうの事件に目を奪われていた。
 花京院を隅のテーブルへ座らせると、男は余所見をする一人の客へ近づき、何食わぬ顔でハンバーガーを盗ってきた。
 手もつけていない料理が消えたのに客は気付いていないのか、騒ぎから視線を変えない。
「ほら」
 差し出されるハンバーガー。
「いや、いい」
「いいから食べなよ。これから必要になる」
 押し付けられ、しぶしぶ花京院は口にする。
「なにか、リクエストは?」
 テーブルの対面に座った男が聞く。あいまいな質問だったが、返事は自然と浮かんできた。
「紙に、ペン。それに、花を買いたい」
 聞きながら適当な相槌を男は打っていたが、ふと、
「なんの音だ?」
 先程からパンが花京院の口に消えるたびに、ポトリポトリと緩い落下音がしていた。
 花京院に尋ねてから、男は原因に気付いた。
「僕の腹はこれ以上は減らないみたいだ」
「俺が悪かった」
 空いた腹から零れたパンクズを足で蹴り片付けると、男はやはり先立ち、こう言う。
「とりあえず、行こうじゃないか」
336:04/09/13 21:29:31 ID:K+Zf4gNW
 今度は閉店間際の花屋の前に、二人は居た。
 閉じかけたシャッターをくぐり、花京院は芳しい店内を物色しだす。
 他の片付けをしているのか、店員は一人もいなかった。
 そうして選んだのは、すべて違う色をした6本の花。
「黙ってもってくればいい」
 入り口で待つ男が声をかける。
「気持ちの問題だよ」
 懐を探ると、血で赤く染まった数枚の紙幣を見つけた。
 ありったけのそれを無人のレジに置く。
「ここにそういうもんがあるのか知らんが、都市伝説の誕生かな」
 男の軽口と共に、二人は店を出た。
337:04/09/13 21:30:36 ID:K+Zf4gNW
 二人の下で、大河が悠悠とたゆたっていた。
 大きな石造りの橋。その縁に花京院と男は立っていた。
 淡い月明かりが降り注いでいる。血の香りがした。
 街の騒ぎも、ここまで来ると耳に届かなかった。
「ここが、最後の場所なのか?」
 しばらく無言で耽っていた花京院が、隣の男に問う。
「そうだ。ここで終わった」
 月を眺めながら、男が答える。
「そうか」
 感慨深くうなずくと、花京院は手にした花を一本ずつ、河へ投下し始めた。
 一つ落とすと、戦友の名を一人口ずさみ、死の別れを惜しむ。狂おしいそれが四度続いた。
 次の一本は、橋の上へそっと置いた。白い花だった。
 そうして、最後の一本。
「これは、僕の緑の旧友に……」
 ちらりと後ろに視線を送り、優しく微笑むと、緑色の一本を投げ捨てる。
 緩く大きな流れに呑みこまれ、すぐに花は見えなくなった。
 それでも花京院は、眼下の流れをじっと見ていた。

 何分ほどそうしていたろうか、
「こっちの用件に入ろうか」
 男が口を開いた。
338:04/09/13 21:31:09 ID:K+Zf4gNW
 会話。

花京院:「僕は?」
男:「お前が初めてというわけじゃない。よくあることだ。
  心残りなんだろうな。お前の魂は、事の結末を感じているはずだ。
  だからお前はここに居る。あれも……よくあることさ」

花京院:「あなたは?」
男:「探偵、ガイド、公証人、処刑人。そこらへん全部」

花京院:「他の仲間は?」
男:「他の奴らの魂は、囚われてると思う」
花京院:「……?」
男:「穏やかな死ばかりってわけではないのさ」
花京院:「助け出してくれ。頼む」
男:「嫌だね。それは俺の仕事じゃあない。自分の運が良かったことに感謝しなよ」

花京院:「僕に出来ることは?」
男:「いいか。人の信念なんてもんはそうそう廃れ消えるわけじゃない。
   怨念にしろ希望にしろ、少なくとも世界に傷跡を残してく。
   その傷に触れて、痛みを受け取る奴もいる。そいつの出現を願うんだな」

花京院:「これからどうなる?」
男:「さあね。俺にも、お前にも関係無い」

花京院:「あとは?」
男:「なにも」
339作者の都合により名無しです:04/09/13 21:31:13 ID:lEEJWcm7
ウンコ
340:04/09/13 21:33:30 ID:K+Zf4gNW
 花京院は再び視線を落とした。
 大河は相変わらずそのうねりを見せている。
 不変の流れに、憧れを感じた。
 花京院は、そして、胸ポケットから紙を取り出すと、
「これを、家族に届けてもらえないだろうか」
「ま、それくらいのアフターケアなら、な」
 簡易な紙に書かれたメッセージを、男は受け取った。
 向かい合う二人。
 男の黒い瞳に月光が反射し、そこに小さな夜が完成していた。
 先程とは変わり、惹きつける闇があった。
「やってくれ」
 男は、そっと花京院の額に触れた。
「魂の連鎖を願って……」
 どちらが言ったのだろうか、
「ありがとう」
 それが最後だった。
 風が吹き、そして花京院典明は消えた。
341:04/09/13 21:34:20 ID:K+Zf4gNW
 魂の残り香が、男の鼻腔を擽った。
 久々の甘ったるい仕事を終え、ふと自分のことを思う。
 これだから感傷的な仕事は嫌いだった。
 思い返すには、男の記憶は断片すぎる。忘れかけていた歯がゆい思いが顔を覗かせた。
 生前、男は吉良吉影と名乗っていた。それだけだった。
 自分が何をし、何を生きがいに生きていたのか。
 また、何故死んだのか、いつ死んだのかすらわからない。過去か、未来か。
 死は時間なんぞに囚われない。生なる時間軸は死者には無関係だ。
 彼は、今現在、ここで死んでいるのだ。それ以外の何でも無い。
 仕事をこなすことが、彼の存在の理由だった。宿命だった。
「また、あの小娘のところへ行かなくては……」
 手にした手紙を破り捨てると、吉良吉影はその場を去った。
 紙片は風に吹かれ、塵のように舞い、夜に散った。
 エジプトの夜だった。
342ユル ◆jxmVRmKxVc :04/09/13 21:35:32 ID:K+Zf4gNW
終わり・続く

>>334の目欄はミスです。
343作者の都合により名無しです:04/09/13 21:36:47 ID:UEbFF2cc
スペース















344ザク〜範馬勇次郎VS東方不敗(二)〜:04/09/13 21:37:48 ID:UEbFF2cc
>>199-201より
345ザク〜範馬勇次郎VS東方不敗(二)〜:04/09/13 21:38:32 ID:UEbFF2cc
 東方不敗は跳躍し、勇次郎に向けて布を放った。
「デビルガンダムの生体ユニットとなれぃ!勇次郎!」
 勇次郎はわずかに身をよじるだけで布を避ける。布端は瓦礫を砕き、大地を裂く。だが。
「甘いわ!」
 東方不敗が手元で布を操ると、地面に突き刺さった布先が蛇のように鎌首をもたげてズッと抜け、螺旋
を描いて勇次郎の胴体に巻きついた。
 さらに東方不敗はその常人離れした筋力をもって勇次郎を中空へと引き寄せ、みぞおちに蹴りを喰ら
わ――
 勇次郎はそれを両腕でガードした。骨がミシリ、とかすかにきしむ。さらに東方不敗の足を押しのけると
掌に全神経を集中させ、手刀で東方不敗の気が込められた布を斬る。
 勇次郎が、続いて東方不敗が着地する。両者間の距離は5メートル。東方不敗は一気に間合いをつめ
蹴りの連撃を加える。勇次郎はそれをかわし、手ではじき、防御する。そして一瞬の隙を見抜き、ジャブ
より早いネリョチャギを放つ。東方不敗は紙一重でそれを避けた。
「この東方不敗をただの一撃で倒せると思うな!馬鹿弟子がぁぁぁ!!」
 両者の拳が高速で繰り出され、交差する。東方不敗の拳が勇次郎のこめかみの表皮をかすり、勇次
郎の拳は東方不敗の顔面を捉えた。東方不敗は弾き飛ばされるが、10m程吹き飛んだところで地に
手をつき、着地する。その顔面には損傷した跡もない。
 勇次郎は余裕の表情を見せ、言った。
「老いたな、東方不敗」
「つけ上がるなぁッ! 」
 距離を置いたまま、東方不敗は左手で大きく円を描いた。
「秘技!十二王方牌大車併ぃぃぃ!!」
 円の描かれた跡に「十二王方牌大」の6文字、その中心に「車」の字が浮かぶ。そして円状に並んだ6
文字はミニチュアサイズの東方不敗へと変身し、弾丸よりも速く勇次郎に襲い掛かる。
「チェリャッッ!!」
 勇次郎の回し蹴り。ミニ東方不敗達が叩き落とされる。が、1体がその中をかいくぐり、勇次郎の顎へと

飛び蹴りを喰らわせた。
346ザク〜範馬勇次郎VS東方不敗(二)〜:04/09/13 21:39:55 ID:UEbFF2cc
 東方不敗は後方に跳びながら両手を広げ、叫ぶ。
「帰山!笑紅塵ッッ!!」
 ミニ東方不敗6体が気へと変化して東方不敗の肉体に還る。それから深い溜め息をつくと、勇次郎を
睨みつける。
 範馬勇次郎はうなだれていた。
「どうした勇次郎、もう終わりか」
 一拍おいてから、押し殺したような笑い声が響く。声の発生源は勇次郎。
 そしていきなり、勇次郎はがばっと顔をあげた。その顔に満面の笑みを浮かべて。
 左のこめかみ、それから顎に打撃による出血が見られる。
「流石は東方不敗。俺の顔面に一撃加えるとはな」
「ふん、これはまだ挨拶代わりに過ぎん。わしは全力を賭して必ずやお前を――」
 突然、東方不敗は口に手をあててむせ始めた。咳は止まらず、東方不敗は片膝をつく。
「アンタ……」
 勇次郎の表情に、わずかに困惑の色が浮かんだ。が、すぐさまそれは消え去り、代わって憤怒がその
表情を歪めた。
「病んだ身でこの俺に挑んだのかッッ!!」
 勇次郎が激昂する。東方不敗はよろめきながら立ち上がり、口を拭う。
「お前はできることならわしの手でものにしたかった……だが、もはや手段は選べぬようだな」
 東方不敗は左手をすっと天に掲げた。そしてパチンッ、と指を鳴らす。
「出でよ!デビルガンダァァァァァァァァムッッ!!」
 大地が揺れ、瓦礫が音を立てて崩れだした。東方不敗の背後数十メートルで地が裂け、地響きを立て
巨大な何かが地上に姿を現す。
「これは……」
 範馬勇次郎が、地上最強の生物が絶句する。
 それは巨大なガンダムだった。大きなガンダムの顔を下半身とし、そこから蛇のような細い胴体が伸び
ガンダムの上半身へと繋がる。全長50メートル超の巨体。
347ザク〜範馬勇次郎VS東方不敗(二)〜:04/09/13 21:40:48 ID:UEbFF2cc
 東方不敗は背後の巨大ガンダムに視線をやり、それから勇次郎に向き直る。
「見たか勇次郎!これが我らが最終兵器、デビルガンダムだ!」
 でけぇ。勇次郎は心の中でこぼす。だが、壊せねぇもんじゃあ無い。俺ならこいつを倒せる。
 それよりも。
「東方不敗よ、アンタ今『我ら』っつったな?協力者でもいるのかい?」
「デビルガンダムはわしと葉隠散の共有兵器よ。だが、生体ユニットとなり合身するはお前だ!」
 突如デビルガンダムの胸部が左右にバカッと開き、そこから無数の触手が勇次郎に向かって凄まじい
スピードで伸びた。勇次郎を捕らえ、コックピットに引きずり込もうとしているのだ。
 避けるまでも無ぇ。全部叩き落してやるッッ
 獣の連撃がデビルガンダムの触手を叩き落――
 拳が触手に触れることは無かった。触手は勇次郎の拳をたくみにすり抜け、その腕に、足に、胴体に
絡みつく。
「チィッッ」
 振りほどこうともがけばもがくほど鉄の触手は強く絡みつき、その数を増す。1本が勇次郎の口内へと
進入する。勇次郎はそれを噛み千切ろうとするが、正に歯が立たない。触手の先から麻酔液が迸り、
筋力を著しく低下させているのだ。
 瞬く間に勇次郎は触手の塊と化した。そして触手は収縮し、勇次郎を胸部のコックピットへと引きずり
込む。胸部が音を立てて閉じる。
 捕獲完了。デビルガンダムの目が赤く光る。
 勇次郎は完全に生体ユニットとして取り込まれた。
「そうだ、これでいい……。ついにデビルガンダムは地上最強の生体ユニットを取り込んだのだ!」
 東方不敗は笑い声を上げた。それが体に障り、再びむせる。しばらく咳き込み、落ち着くと笑みを浮か
べる。
「デビルガンダムの『自己増殖』機能を用いれば、すぐさま取り込んだ生体ユニットを元に勇次郎のアンド
ロイドを量産することができる。さすれば、地上最強のデビル勇次郎軍団が誕生するのだぁぁぁぁぁ!!」
 東方不敗はデビルガンダムを仰ぎ見て、両手を掲げて叫んだ。
348作者の都合により名無しです:04/09/13 21:41:59 ID:UEbFF2cc
今回up分終了
349332:04/09/13 21:52:08 ID:gg6/QtEc
>ユル氏
おお、後半も力作ですな。会話をわざとシナリオ調にするあたり、構成に気を配っている。
おそらくラストまでもう頭の中まで出来ているんでしょうね。これからの展開が楽しみだ。

>ザク氏
強い、さすが東方不敗。あの勇次郎に先制の一打を喰らわすとは、流石は塾長に次ぐ実力者。
しかし病んでましたか。デビルガンダム駆る勇次郎、シャア以上の彗星になるでしょうな。
それにしても不敗は熱いですな。暑苦しいくらいだ。デビル勇次郎軍団か。恐ろしいな。
不敗は一体何を考えているのだろう。しかし勇次郎、あっという間に捕まりましたねw
350作者の都合により名無しです:04/09/13 22:03:46 ID:m7QdKOA1
一年前なら、「こんなの勇次郎じゃねえ!」と言う人がいたでしょうね。
しかし勇次郎軍団はヤダな。
351作者の都合により名無しです:04/09/13 23:30:28 ID:NXHMZNm4
おいおい、すごいな今夜は。鬼のようだ。
サマサ氏の第二部開幕に始まって、ユル氏と殺助氏の復活、
そしてとどめがザク氏かよ。好調すぎて恐ろしいな。
ふらーりさんも感想大変だw

個人的にドラえもんが好きなので、一番楽しかったのはサマサ氏だけど、
どの職人さんたちも面白かった。みんな腕が立つな!

352復讐鬼の騒動記:04/09/13 23:51:55 ID:Cf1u5lK9
>>250
第三話 『復讐鬼』

「ほらほらどうした。お前で最後だぞ? ほら、かかって来いよ」
……楽しんでいる。こいつは、楽しんでいる。
辺りに漂う血の匂いは、息が詰まるほど。辺りに転がる死体の数は、十を越えている。
俺の、かけがえのない仲間たちを惨殺して、今、こいつは心底楽しんでいる。
「ハアッハッハッハッハッ! お前ら如きが俺を殺そうなんざ、百年早ぇんだよ」
血の滴る刀を振り上げて笑うこいつに、せめて一太刀、浴びせたい。
だが、だめだ。大量の出血と無数の骨折(骨斬というべきか)で、体が動かない。
神よ! 本当にいるのなら、今、ほんの少しでいい、力を貸してくれ…………!

魔界某所、鈴木のアジト。
前回、心に深い深い傷を負った鈴木であったが、不屈の闘志で見事復活。またまた
『超時空何でも調査&そこへ行くぞマシィーン』で、時空を越えた世界を見ていた。
「おお、こいつもなかなかいいな。復讐する気なんかない、とか言いながらその気
マンマンだ。復讐を志すもの同士、いい勝負ができそう……ん?」
マシィーンのディスプレイが、調子悪い。画像がブレている。
「ちっ。あのジャンク屋め、不良パーツを寄越したな。まあいい、こういう時には、
の○太のママチョオオォォップ!」
鈴木の手刀が、ディスプレイの隅に命中。途端に、画像が正常に戻った。
「これでよし、と」
鈴木はディスプレイに触れて妖気を送り込み、その中に入り込んだ。亜空間を
泳いで時空を越えて、さっき見ていた男の下へと飛んでいく。
が。突如亜空間が歪んで捻じれて、鈴木は姿勢制御ができなくなった。
「な、何だっ? さっきのチョップ、角度が悪かったかっ?」
と暴れるがどうにもならず、鈴木は歪んだ亜空間を真っ逆さまに落下していった。
「ぅわああああああああぁぁぁぁ…………」
353復讐鬼の騒動記:04/09/13 23:53:01 ID:Cf1u5lK9
ごぃん! と何かで頭を打って、それから鈴木は地面に落ちた。
「あいたたたたぁ……っと、痛がってる場合じゃない!」
鈴木は大きなタンコブを摩りながら立ち上がって、辺りを見渡した。マシィーンが
制御できなくなった以上、即刻帰らないとこの異世界に置き去りになってしまう。
と、丁度頭上に、空間の歪みが見えた。だがどんどん閉じていく。
「ま、まずいっ!」
慌てて鈴木がジャンプしようとすると、服の裾を掴まれて止められた。
「ま、待たれよ。そこもとは一体、何者でござる? 何故に天から降って……」
「ええい放せっ! 私は今忙しいのだっ!」
鈴木は、全身血まみれですがりついてきたその男の手を振り払い、時空の歪みに
飛び込んだ。ギリギリでどうにか間に合い、その体は亜空間へと消えていく。
残された男は、思わずぽか〜んと見送って、
「……神……? っと、呆けている場合ではないっ!」
先程まで血刀を振り上げて高笑いしていた『あいつ』は今、頭に大きなタンコブを作って
気絶している。今、天から降って来た神の使者が、頭突きを食らわせて倒してくれたのだ。
この機を逃してはならない。男は、懐から油の瓶を取り出して『あいつ』にぶちまけ、
火打石を使って着火した。生肉の燃える、なんとも言えない臭いが立ち込める。
「やった……こ、これで、この国は…………救われ、た…………」
男は力尽き、永遠の眠りについた。その顔に、使命を果たし終えた微笑みを浮かべて。

そんなこんなで、時は流れた。鈴木の、超時空復讐修行も終わりを告げて……今。
「どうした? 怨爺」
老人に変装した鈴木が、背後から声をかけられた。
鈴木は振り向かず、しみじみと答える。
「いや。ここまで来るのに、いろいろあったなと思って」
時空を越えて、いろんな奴に出会った。男と女と……あれ、もう一人は……ああ
そうだ、慌てて帰ったから何もしなかったんだっけ。頭をぶつけただけで。
「あの時のアレ、どうなったかな……?」
354復讐鬼の騒動記:04/09/13 23:53:38 ID:Cf1u5lK9
あの時のアレ↓
「不意打ちを頭に喰らい、昏倒したところに火をかけられてな。だから同じ轍を
踏まないよう、頭は重点的に固めてある」
「不意打ちを喰らった? 案外マヌケだな」
「いや、あの時は周囲に誰もいなかったはずで、殺気も何もなかったし、いきなり
空間に現れたとしか……って、んなことはどうでもいい! とりあえずお前は、
調べが足りなかったということだ! 新撰組三番隊組長よっ!」
「阿呆が! 調べが足りぬのはお前の方だ! この包帯ぐるぐるミイラ男っ!」
あの時のアレは、一国の命運を賭けた戦いを繰り広げていた。鈴木は知らんことだが。

そして。
「おいおい。感傷に浸るのは、全てが終わってからにしてくれよ」
「そうだぜリーダー」
「俺たちは、絶対優勝するんだ。浦飯も、戸愚呂もブッ倒してよ」
「それまで、気ィ抜かねぇでくれよ」
鈴木は、振り向いた。そこには頼もしい仲間たちがいる。
「そうじゃったな。済まなんだ。……では、行くとするかの」
「応!」
五人は、暗く長い控え室通路を抜けて、明るい闘技場へと足を踏み入れた。
「さあ、暗黒武術会もいよいよ準決勝! 裏御伽チームの入場です!」
わああああぁぁ……っ、と歓声の轟く中、鈴木は歩いていく。

吸血鬼と、最強合成寄生生物と、明治の魔人を生み出した、騒動振りまきの張本人は。
今、遂に、己の復讐を成就させる、その目前に立っていた。
『全てはこの時の為。待っていろよ、戸愚呂! 浦飯チームなんざ、
ちょちょいのぷいっとやっつけて、お前を、必ず、ブッッッッ倒す!』
復讐の鬼と化し、心の中で中指を突き上げる鈴木であった。浦飯チームなど、
ハナから眼中にない。
…………はずだったのだが…………
355ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :04/09/13 23:58:45 ID:Cf1u5lK9
……すみません。都合のいい日が重なる偶然、あるんですねということで。何卒。
鈴木はこれでおしまいです。少し日を置いて次は刃牙+某作品いきます。

>>1985さん
いろんな感想を見ましたが、私はコロンボ的に楽しみました。多分フィオーレが
敵なんだろうな、え、でも、どうなって……? と。>>287前後が、読んでて気持ち
良かった。それがこういう作品のキモで、それは充分満たされていると思いました。

>>サマサさん
のび太に歩くペースを合わせたり、子猫を助けに行ったりで、凛は優しい。泳げ
なかったり体力なかったりで、のび太はもろい。そんな二人が落ちていった先で……
第二部開幕、と。期待するのは凛の頼れるお兄ちゃんぷり、そこに憧れるのび太、とか。

>>ユルさん
おぉ、お久しぶりです。冒頭の、波紋の描写がリアル……というか真に迫ってますね。
存在しないものなのに、実感できます。力湧いてきます。条太郎には、いや他のスタンド
使いたちにはない能力。かつて究極生物と渡り合ったその力で、戦えジョセフっ!
で。デッドマンズQとやらは知らないのですが、死神……「死の神」っぽいですね。でも
そんなことよりパンクズです。キましたねこれは。叙情的というか幻想的というか、
そんな雰囲気の中にこんなエグいものがあるので。引き立ってましたよ〜。
356ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :04/09/13 23:59:56 ID:Cf1u5lK9
>>殺助さん
これまたお久しぶりです。……しかし相変わらず、濃密重厚暗黒激痛ですねぇ。痛々しい
ものみたさ(心身両面)で、目が文章に引き付けられます。痛い痛い。でも見たい。この
悲惨な少年が、あの一種上品なンドゥールにどう変わっていくのか。続き待ってますっ!
あと、
>投げ出そうとも思いましたが、サマサさんやNBさんたちも来て
>楽しそうな雰囲気なので、参加させて頂こうと思って復活しました。
その雰囲気、今度は殺助さんが一翼を担っておられるんですよね。で、それを見て
またどなたかが復活、あるいは新しい方が……と。「楽しそうな雰囲気」の連鎖、
本当に喜ばしいです。

>>ザクさん
デビル勇次郎軍団、か……嫌過ぎて見てみたい光景ですなそれ。クローンが不完全で、
人格がいろいろだったら楽しいかも。弱気な勇次郎とか理知的な勇次郎とか。にしても
東方不敗、病んでいながら勇次郎の顔面に一撃。勇次郎もまだ本気でないとはいえ、凄い。

>>そして
次の刃牙短編が終わったら、しばしSSはお休みします。いい加減何とかしないと、
副業がヤバいもので。もう忘れられてるかなぁ……とか。うぅ。
でも感想は続けさせて頂きますので。よろしくお願いします。
227から
道を歩きながら、キョーコは不機嫌だった。
「ムカツク」
その呟きにシャルデンは肩を落とす。
「…機嫌直して下サイ、そもそも商談の方が真の狙いなのデスから」
「だって、ムカツクじゃないですかぁ!! 何ですかあの態度。シャルデンさんにも私にもケンカ売って、
自分が世界一強いみたいに振舞って………も―――――っ、ムカツク!!!!」
手足をばたつかせて喚く様はまるで幼児だ。
「あんなの、私だって勝てますよぉ! あんな筋肉ばっかのヒト、なんだってんですか!!」
「落ち着いて………それにしテモ、あの程度の道とは…クリードがガッカリしマスね」

――――――道。それは己の氣と生命力のエネルギー変換といってもいい。
そしてその形は渇望の形。あるいは己が望む本当の姿。
それを秘薬“神氣湯(しんきとう)”によって引き出すのだが、全てが全てというわけでは無い。
シャルデンが思い出すのはあの先々月。脱獄させた死刑囚達に神氣湯を飲ませた時の事。
廃ビルの中で地獄の苦しみにのたうちまわる彼らを、クリード、シキ、シャルデンの三人が値踏みする様に見守っていた。
「…酷いねえ。さっきまで“死刑だって怖くない”とかいってたのに、“死にたくない”“助けて”…だって。
笑っちゃうよねえ、そう思うやつが死ぬのに」
「やはり、こんな下種共では無理か」
「……ん? 二人とも、あそこなんカどうデス?」
シャルデンが指差す先には、這い蹲りながら手から火が揺らめく巨躯の男。たしか連続放火魔だった。
「いや、あれはダメだ」
シキがそう断じた瞬間―――男は火達磨になった。
他にもあちこちで各々の死を迎える死刑囚達。
「……安いチンピラが多すぎる。不作だな」
そんなシキの言葉を聞いてか、手から無数の鋭利な骨を突き出した男が怨み満面で襲い掛かる――が、
前触れも無く彼の体から飛び出した何かが男の首を斬り飛ばす。それはあの支離滅裂色のクワガタムシ。
やがて、動くものは三人以外居なくなる…かと思いきや。
「おや、あそこの……生きてるんじゃないかい?」
クリードが指し示す先に、痩躯の男。だがどんどん筋肉が盛り上がっていく。
「う、うう……うおおおぉぉぉおおおおォォォぉおぉぉォ!!!!!!!!」
叫びと共に立ち上がった時には、筋骨隆々の巨漢になっていた。
その様にクリードは思わず拍手した。
「おめでとう、ギャンザ=レジック。ぎりぎり合格だ」
「……地獄の苦しみは己が迷い。そういう意味では失格だがな」
「…確かに。私の時はすぐデシタからネェ」
三種三様の感想を述べ、やがて夜は明けていく。
そして日が昇る頃。そこに残るは異形の死体ばかりだった。

「……ちょっとぉ、聞いてますかシャルデンさん」
シャルデンは我に返った。どうやらキョーコの話を聞かなくなるほど回想に没頭していたらしい。
「ああ、失礼。なんデスか?」
「……やっぱり聞いてない。だからぁ、なんであのヒトウチらに来ないか、ってことですよぉ」
つまり「あのまま殺人犯でいればいずれは軍隊でも来るだろうに、何故星の使徒に来ないのか」と言う事らしい。
シャルデンは思わず感心した。この少女、なかなかどうして心得ているではないか。
「ソレはね、彼にも事情があるのデスヨ」
「事情?」
「そう、事情デス」
結局シャルデンはそれ以上何も言わなかった。

―――その頃、ギャンザの廃屋から少々離れた林の中。一人の男が携帯電話に耳を傾けていた。
「そうか、判った。監視を続行する。…ああ、それでいく。いいさ、仕事に安いも高いも無い。
なに、見つかっても問題無いし、第一そんなヘマはせん。……奴が出て来た、切るぞ」
通話を切り廃屋を見れば、アフロの巨漢がうっそりと戸外に現れた。
そして、己の筋力を活かして凄まじい速度で町に向かい走り出す。常人では追いつけない速度だった。
だが、男は常人ではなかった。余裕を持って付かず離れず、且つギャンザの視界に入らぬ巧みさで追いかける。
「この程度か。情けない」
男はつまらなそうに小さく吐き捨てた。
NBです。
訳有って中途半端に投下です。
遂に俺も長編扱いですか…凄ェ。
もう少しで第二話終了です(ちょっと短いかな?)。
応援して下さる皆さん、サイトを管理していらっしゃるバレさん、そして共にSSを書く皆さん、
今更ながらに感謝です。
360作者の都合により名無しです:04/09/14 00:32:44 ID:qVmGty2Q
ふらーりさん、お疲れ様です。
作品も勿論ですが、相変わらず感想も素敵だなあ。
しばらく感想のみですか。うーん。バキss期待してます!

そして、NBさん!長編カテゴリおめでとうございます!
しかし、キョーコ可愛いなあ。原作より仕草とかが可愛く感じる。
恥ずかしながら原作のブラックキャットも好きなので、
ビジュアルが浮かんでくる。シャルデンとのやり取りとか。うまいっす。

それにしても月曜日ってバキスレ爆発するなあ。
ユルさん、殺助さん復活おめでとう。これからもよろしくお願いします。
ザクさんは古豪の(失礼)実力を発揮して、勇次郎と不敗が楽しい。
そしてサマサさん!いよいよ2部スタートですね。冒険譚期待してます。

でも、パオ氏とVS氏の御大2人はどうしたんだろう。
特にパオ氏はここにも語ろうぜスレにもサイトにも来ないから、心配。
361作者の都合により名無しです:04/09/14 01:23:19 ID:O5XWFWvF
日曜に書き溜めてんじゃないんすかね。
日曜に投下しない暗黙の了承があるみたいだ。
362作者の都合により名無しです:04/09/14 08:27:02 ID:sTeQEBu8
昨日の夜は鬼モードだったみたいですな。

ザク氏とふらーりさんの両ベテランが実力を見せて、
殺助氏とユル氏が華麗なる復活を遂げ、
サマサ氏とNB氏の強力新人が最初と最後を勤める。

今日会社休みだから、ゆっくりと楽しもうっと。
職人様たち、いつもありがとうございますです、本当に。
363作者の都合により名無しです:04/09/14 08:34:29 ID:k7vjZlmO
凄い量ですね、月曜日は本当に神がかっている。
仕事行く前に読もうかと思ったけど、とても全部は読みきれない。
感想は全部読んでから書きます。
364作者の都合により名無しです:04/09/14 12:20:25 ID:v4F1iA99
>363 早く書けゴルァ!!
365作者の都合により名無しです:04/09/14 12:25:30 ID:O5XWFWvF
>>364
せかすなって
仕事に行くってかいてあるし
全部読むのにはそれなりに時間かかるだろう
366作者の都合により名無しです:04/09/14 20:17:08 ID:weuYgCmV
月曜日の鬼のような更新に比べ、火曜水曜はまったりだね。
殺助さんとユルさんが復活してよかったー♪
サマサさんとNBさんの大期待の作品も面白かったー♪
ふらーりさん、ザクさんもさすがの実力ですね♪

皆さん、本当にお疲れ様です、いつも。
特にバレさん、更新疲れでお体など壊しませんように。
前話
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dekisugi/13.htm

地底世界にも朝は毎日やってくる。さんさんと降り注ぐ朝の光は、とても
源がコケであるとは思えぬ光量である。そんな穏やかな陽気には不似合い―
――いや、むしろ似つかわしいか―――な無邪気な喧騒が響き渡る。

「待てぇ!それはオレの肉だぞ!」
「へへーんだ!ドケチたるもの一度手に入れたものはあげまっしぇーん!」
「なんだとてめぇー!」

巨大な軍事力に対して、抵抗する少数勢力、反乱軍の拠点。となれば当然、
空気は重苦しい張り詰めたもになってくる・・・はずなのだが・・・・。
そこは、緊張感とはまるで無縁の、さながら保育園のような場と化していた。

食事の肉を少年忍者きり丸に奪われ、憤慨して追いかけまわしているのは
ジャイアンである。どちらも10歳程度か。さらに同じくらいの歳の子供が
あちこちで、やはり騒いでいたりくつろいでいたり。中には幼児の姿も見える。
なんとか場をとりなしている、しずかやローの様子はまるで保母さんである。

しかし、みんなに子どもらしい元気さと明るさが戻ったのはなによりである。
つい先程までは、重苦しい嫌な空気に包まれていたのだが・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「捕まったなんて・・・馬鹿じゃないのか!?
竜人でも訓練した兵士でもないのに調子にのって出かけるからだ!」
あきれたようにスネオが声を荒らげている。

なんとか、無事に帰還できたドラえもんやバンホーたちとの再会を終え、ひと
しきりの喜びに包まれた後、要塞の内部に深く切り込んでいたゲリラ部隊の
報告により、帰還が遅れていた出木杉が捕まってしまったことが判明したのだ。
さらに、数人の兵士と、アンパンマンたちもまだ戻ってきていない。

「ちょっと、スネオさん。それは酷いわ。出木杉さんだってそれは、重々
承知の上で出ていったのよ?」
「そうだぞ。スネオ。出木杉は勇気ある男だ。結果として捕まってしまった
が、オレはやつを尊敬する。ここでのんきに過ごしていた俺たちに出木杉を
非難する資格があると思うのか?」

「うるさーい!だいたい、お前らだって、僕は信用してないんだからな!
とくに女!ちょっと前まで敵の手先だったやつなんて信用できるか!」
しずかとジャイアンに諌められたスネオは、ヒステリックに叫ぶや、今度は
矛先を変え、新しくその場に加わった二人、ワンダー・ガールと少年忍者を
責めたて始める。言ってる事はもっともなのだが、こうヒステリックだと、
どうも八つ当たりにしか見えない。

止まらないスネオのヒステリーに、このままでは拉致があかないと思ったのか、
当事者のきり丸はなにやら怪しげな行動を開始しはじめた。
「しょうがないな。こうなったら山田先生お得意の・・・」
少年忍者きり丸はこっそり物陰に隠れて忍び装束を着替え始めた。忍術学園の
忍び装束はリバーシブルになっていて、裏返すと変装できるようになっている。
きり丸の装束の裏は主に、村娘に変装するための女の子の衣装である。
あいかわらず興奮してわめきちらすスネオの前に一人の少女が現れた。
もちろんきり丸である。
「ひどいわ。わたし、ドクタケの工場で偶然、働いてただけなのに・・・」
「え?な、なんだなんだ?突然?」
いつのまにか突然現れた少女にスネオは戸惑っている。
「わたし、本当は男の子じゃなくて、くのいちなの。名前はきり子って言うのよ♪」
もちろん、大嘘である。
「わたし、このままじゃ地上に帰れなぁ〜い。ねぇ〜ん。助けてぇ〜〜ん♪」

甘えた声ですりよってくる少女?に、スネオは硬直して固まった。
ギクシャクしながらジャイアンの方に顔を向けると、
「ジャ、ジャジャ、ジャイアン・・・。か、かか、かわいい子じゃないか。」
「へ?」
「こ、こういう困った時は、たた、助け合いの心が必要だよね。」
スネオは顔を真っ赤に上気させ、ポーッとした顔で、突然180度態度を変えて呟いた。
その口元は心なしかしまりない笑みを浮かべている。うーむ、これはもしかして
女装したきり丸(♂)に惚れてしまったのかもしれない。

そんなスネオはとりあえずほっといて、バンホーが話を元に戻した。
「つまりきり丸くんは、帝国とは全くの無関係で、たまたま巻き込まれてしま
っただけ、そういうことなんだね。しかも、小銭に目が眩んで爆走してきたから、
自分がどうやって、やって来たのかもよくわからないから帰れない、と。」
「はい。」
あきれたように溜め息をつきながら、尋問するバンホーさんであったが、
きり丸については、元々それほど追求するつもりはなかったらしい。
「・・・ようし、わかった。信じよう。キミのことは私たちが保護する。」
と、あっさりと、きり丸を受け入れた。
「え?いいの?バンホーさん!やったぜ!」
バンホーさんの言葉に、はしゃぎながらも、きり丸は、抜け目なく確認する。
「もちろん、タダですよね?」
「う、うむ。もちろん子どもからお金などとる気はないが・・・。」
「ひゃっほーい♪」
冷や汗を一筋たらして、戸惑いながら答えるバンホーさんに
きり丸は喜びのダンスで応えて(?)いる。
きり丸に助けてもらったドラえもんとワンダー・ガール、そして関係ないのに
なぜかもう一人、スネオはバンホーさんの言葉にホッと胸をなでおろした。
スネオはきり丸の大嘘をすっかり信じこんでしまったようだ。普段は、とても
疑い深い性格の彼を、これほど信じ込ませる変装は、さすがに忍者のたまごの
実力・・・といったところなのかどうかは定かではない。

「きり丸くんのことはそれでいいとして・・・問題は、ワンダー・ガールくん。
キミの処遇のことだ。詳しい話を聞かせてもらえるかな?」

ワンダー・ガールはこくりと唾を飲み、意を決したように重い口を開いた。
「信じてもらえないかもしれませんけど・・・私が、あのお城のロードさんに
使われてたのは・・・大事な友達が捕まってるからなの。」

「なんだって?・・・その友達とは?」
「名前は高畑さん。ロードさんに頭の良さを気に入られたらしくて、さらわれ
ちゃったの。兵器の開発とかの研究所で使われてるみたい。それで、なんとか
助けようと潜り込んでみたんだけど・・・強い殺し屋がいるの。
超能力だけでは対抗できない、本物の殺し屋が・・・。
それで・・・ヒック・・私の・・・力じゃ・・・助けられなくて・・・」
あまり理路整然とはしていないが、言いたいこと、そして悔しい気持ちは痛いほどに
伝わってくる。話しているうちに、泣き出してしまったワンダー・ガールの最後の方
の声は、ほとんど聞き取れないほど、か弱いものになってしまっていた。

「高畑さんは今、要塞の研究室にいます。お願いです。私のことは信じられなければ、
拘束してもらってもかまいません。高畑さんを助けてあげて下さい!」
その真摯な瞳をバンホーはじっと見つめている。

「これ、高畑さんからの手紙です。」
おもむろに、少女は1通の小さな手紙をバンホーに差し出した。
「こっそり受け取って、なくさないよう大事にしまってました。」
周りで見ている一同は、緊迫感の中、無言で胸中で突っ込んだ。
(「しまってた」・・・どこに?)
少女の格好は、布を纏っている部分などほとんどないビキニスタイルである。

「手紙の他に、写真が数点入っているね。それに、これは・・・?
むう。・・・要塞内の見取り図!?」
バンホーは興奮を隠せない様子で、後を続けた。もちろん、現時点では額面通り
に信用してはいないが、もしも本物であればこれからの戦いに大いに役に立つ。
「・・・素晴らしい!かなり詳しく書き込んであるようだ。
これがもし、信用に足るものならば、戦局は大きく変わるかもしれん。しかし、
こちらの写真の意味は、私にはわかりかねるな。いったい何の写真なのだろう。
要塞内部の写真のようだが・・・。なにか乗り物のようなものが写っているね。」

少し離れて傍観していたドラミが間に入る。
「ちょっと見せてもらえますか?」
「ああ、こういったものは、我々よりもキミたちの方が詳しいだろう。」

ドラミは写真を受け取り、眺めた。刹那、顔色がサッと変わる。
「お、お兄ちゃん!見て! この写真・・・」
「これがどうしたんだ?ドラミ。」
写真には、バンホーの言ったとおり、なにか一人乗りの乗り物のようなものが
写っている。思い当たらないドラえもんは首をかしげてドラミに助けを求めた。

「わからない?これたぶん・・・」
ドラミは少し間をおき、軽い深呼吸で気持ちを落ち着けてから、
真剣なまなざしで皆に告げた。

「この写真に写っているものはたぶん・・・
22世紀の歴史博物館に展示してある世界初のタイムマシーンと同じものよ。」
373ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/14 20:59:54 ID:SoCd5Lme
第二部開始。そして、今回分終了です。

昨日は凄かったみたいですね。入り込む隙間もありませんでした。
鈴木SSは終わってしまいましたか。残念です。
374作者の都合により名無しです:04/09/14 21:07:56 ID:weuYgCmV
うみにんさん、お疲れ様!そして第二部開始、おめ!

最初の暗い雰囲気を吹き飛ばすような子供たちのジャレ合いから、
少しずつ様相が変わり始める物語。そして最後のヒキ!
いよいよ、核心に迫り始めた感がありますね。ちょっぴりミステリですね♪
最後の世界初のタイムマシンがどんな鍵になるのか、すっごい気になります。

うみにんさんの文は丁寧に書いて下さるから、本当に情景が目に浮かびやすいです。
正直知らないキャラも、いますけどねwそれは前の人物紹介からの想像で。
375作者の都合により名無しです:04/09/14 22:26:00 ID:sar0iAen
今回特にすっごく楽しかった。うみにん氏おつ。
うみにんさんは俺のツボを突くのが上手いなあw
今回は本当に伏線だらけって感じだね。2部のスタートにふさわしい。
それにしても、まだまだ続きそうな感じで嬉しいよ。
タイムマシーン、何を意味するか?
気になるから無理ない程度に出来るだけ早く更新してね←ファンのわがままスマヌ
376作者の都合により名無しです:04/09/14 23:35:30 ID:R3ZkJzDE
第二部乙。二部開始早々賑やかですな。
忍たまも想像以上にとけ込んでてよかった。
オレはタイムマシーンよりもスネオの今後の方が気になるけどw

今のバキスレ長編10本以上連載中?
これだけ連載抱えてれば月曜みたいなことがあっても不思議じゃないな。
377作者の都合により名無しです:04/09/15 00:24:20 ID:2oAhEy5M
バキスレは、ええのう。
昨日の鬼投下で楽しませて頂いて、
今日もうみにん氏に楽しませて頂いた。
嬉しい。ありがと、職人ズ。

ところでもうあと残り、200kbだよね。
今週中には次スレかよ?早過ぎ。
378作者の都合により名無しです:04/09/15 00:33:42 ID:uZrwnwTk
リ・バースってどうなった?
379作者の都合により名無しです:04/09/15 05:56:19 ID:AtAie2sT
>>378
今日更新がなければ投げ出しとの事。
380作者の都合により名無しです:04/09/15 08:17:05 ID:0VBOqpuW
さすがうみにんさん、手馴れているという感じがする。
2部へ向けての上々の滑り出しだ。お疲れ様。

>>378
応援はしているが、あそこの出身者だからな。
色眼鏡で見てはいけないけど。
そういえば、師匠のサナダムシさんも10日位来ないね。
パオさん○さんVSさんみゅうさんも来ないしな。心配。
381作者の都合により名無しです:04/09/15 16:05:14 ID:Dw0tNKtq
やっぱ月、金以外はマターリなのかな。
そろそろしけい荘にも来て欲しいころだ。
382しけい荘物語:04/09/15 17:01:31 ID:RPZ4zo2i
第二十四話>>181
383しけい荘物語:04/09/15 17:02:22 ID:RPZ4zo2i
第二十五話「全ての終焉」

 半分ほどの長さになった右腕。切断面から噴出する自らの血を、死んだ魚のような目で
眺めるシコルスキー。
 冷静であった。片腕を失ったにもかかわらず、脳細胞は混乱することなく正常に活動し
ていた。状況を立て直すために間合いを広げ、手頃な大きさの石ころを拾う。それを腕と
脇とで挟み、動脈を圧迫させ止血する。
「まだやる気か……」
 公園に侵入したシコルスキーの右腕を奪い、ホームレスの誇りを堅守する。目的こそ達
せられたものの、本部が渋い面持ちを見せる。──が、そこを鋭いハイキックがかすめた。
「意外に甘っちょろいんだな。これだけ盛り上がってるのだから、たかが腕一つで中断す
ることはないだろう」
「どうやら、貴様にもアパート住民としての誇りがあるようだな」
 研ぎ澄まされる殺気。刀身の血痕を払い落とし、シコルスキーを睨み付ける。
「ならば……命もろとも誇りを奪い去ってやろう」
 飛び交う斬撃。あらゆる角度から、白刃が疾風のように舞い込んでくる。
 シコルスキーも見事な体術で応える。大気の流れを感じながら、流麗な動きで刀をかわ
し続けている。
 だが、激しい攻防にて地面へと垂れ落ちた血液。土と血は混ざり合い、泥となる。シコ
ルスキーは不運にも泥と化した土壌に足を取られてしまった。左手で受け身を取るも、闘
争中に転倒することは致命的。
「こういうアクシデントで決まっちまうこともあるんだよ」
 本部が浮かべるは、正邪どちらとも付かぬ会心の笑顔。
「往生せいッ!」
 下される一閃。シコルスキーは左手一本で肉体を持ち上げ、倒立するような格好で上空
へ蹴り上げる。天誅を下す者、天命に屈せぬ者。
 ──日本刀が真っ二つに折れた。
「並みの刀なら悪くすれば粉砕、名刀でも曲折は免れぬタイミングで蹴った」
「こ、小僧ォ……ッ!」
「あと、一つ言っておくぜ。俺はしけい荘に誇りなんか持っちゃいない」
384しけい荘物語:04/09/15 17:03:26 ID:RPZ4zo2i
 地面に捨て置かれた右腕を見やり、本部が怒りに身を震わせ質問をする。
「ほう……誇りも持てぬ住居のために、何故そこまで戦えるのだ」
 シコルスキーは一笑した。
「しけい荘の奴らってのは、ひどいもんなんだぜ。毎日のように殴られ、蹴られ、切られ、
刺され、燃やされ、爆破され……。およそ人間性ってものが欠如している」
 独白はさらに続く。
「家賃が安くなきゃ、あんなアパートとっくに逃げ出してた。暴力に次ぐ暴力、日々増え
続ける生傷。あんな危険地帯に、一体どうやって誇りを持てばいいんだ」
 ここで一呼吸し、シコルスキーはしけい荘の面々を見渡す。彼の文句を聞き、珍しく罪
悪感に包まれた表情となる四人。そして──シコルスキーは言った。
「いや、だからこそかな……。一般の住居とは比べ物にならない劣悪な環境、核爆弾より
も危険な住人ども──普通は嫌いになるべきなのだろう。でも、いつしか気づいちまった
んだなぁ……俺はしけい荘を好きになっていた」
 ここで話を断ち切り、シコルスキーが左手を握り込む。鉄をも切り裂く一本拳。
「説明はここまでだ。最終ラウンドへ進もうか」
「くっ……望むところよ!」
 五分と五分。若者は片腕を奪われ、老体は相棒を葬られた。あとは決着を残すのみ。
 
 アパートとホームレス。対立する両陣営。その各々から、いつの間にか沸き起こる応援
合戦。死闘を演じてきた八人が、必死に声を上げる。
 スペックが、柳が、ドイルが、ドリアンが、シコルスキーの名を連呼する。
 ショウが、ズールが、ガイアが、ジャックが、本部の名を連呼する。
「これは……たまんねぇな。ハハ」
 シコルスキーが照れ臭そうに小刻みに笑う。本部の反応も同様であった。
「わしも長年戦ってはいるが……こういうのこそがオイシイんだよな」
 声援を吸収するように、二人が闘気を増大させる。手助けされているわけでもないのに、
こんなにも心強い。仲間という存在の大きさ。今なら理解出来る。
 全てを終わらせるため、シコルスキーが突っ掛けた。
385しけい荘物語:04/09/15 17:04:55 ID:RPZ4zo2i
 冴え渡る一本拳。肉体が次々と、中指によって深く削り取られていく。苦痛に顔面を歪
ませる本部。彼も残った左腕を破壊しようと、積極的に関節技を狙う。が、圧倒的な力の
差で返される。
 あれだけ植え込んだ恐怖心は克服され、研究し尽くした打撃ではなく斬撃を使用するシ
コルスキー。素手同士ならば、やはり本部に勝ち目は薄い。
 誇りを“守りたい”という執念が、しけい荘を“好きだから”という単純な原動力に敗
れ去ろうとしていた。
「──否ッ! この大将戦、わしが勝つッ!」
 敗北のイメージを振り払い、本部がシコルスキーの小指を掴んだ。そのまま全体重をか
けてへし折ろうとする。──が、指は微動だにしない。
「へっ……俺にとっちゃ、大サービスだぜ」
 シコルスキーの不敵な声。気づくと全身は宙に浮き、指一本で投げ飛ばされていた。
 起き上がるなり、再び指を取る本部。今度はその指先に噛み付く。しかし、強引に指を
引き抜かれる。入れ歯が丸ごと持って行かれた。ならばと、左腕に足を掛け腕ひしぎ逆十
字へと移行する。シコルスキーは本部ごと腕を地面に叩き付け、あっさりと技を外した。
 全く通用しない柔術を、未練がましく繰り返す本部。
 ──惨めであった。
 それでいて美しい。才能では決して得られない、底が知れぬ谷のような深さ。谷底から
忍び寄る不気味な力は、若きシコルスキーを徐々に侵食していた。
 シコルスキーは直感する──ここで決めねば殺される。
「スパスィーバ……最高だった」
 執念と恐怖が生み出した屍が、最後に見たもの。迫る巨大な足裏が二つ。
「え……ッ」
 ──何もかも全て吹き飛ばされた。暗黒へと消え去った。終焉の証。

 ドロップキック炸裂。オリバは一瞬だけ笑みを浮かべると、高らかに宣言する。
「……勝負ありッ!」
 緊張の糸が切れ、達成感を噛み締めながらシコルスキーが膝を付く。勝利者となった雄
が真っ先にすべき仕事、それはひたすら吼えることであった。
「ウオオォオオォォオオッ!」
386サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :04/09/15 17:10:36 ID:RPZ4zo2i
第二十五話終了。
387作者の都合により名無しです:04/09/15 18:18:13 ID:AtAie2sT
>>381
召喚師おつ。

>しけい荘物語
よっしゃ、読むぞ
388作者の都合により名無しです:04/09/15 19:49:21 ID:d2YVx9PR
このスレの職人さんたちは
どのくらい来ないと投げ出し認定されるの?
遅筆な人もいるんじゃないかな。
まあ神がかってる職人さんたち多いから求められるレベルも上がるんだな。

俺も期待してたりするわけだが・・・
389ユル ◆jxmVRmKxVc :04/09/15 20:02:09 ID:v16+qnTu
しばらく投下します。
390特異点:04/09/15 20:03:59 ID:v16+qnTu
 中東の一国だった。
 夜である。
 街外れに、二人の男が対峙していた。
 屈強な男二人だった。
 二つの人種。
 視線と視線。
 豪々と空間が流れていた。
 満ちた豪気で石張りの地面が破砕しかけていた。
 二人の会話。
 そして。
 拳。
 脚。
 雷鳴にも似た音が響いた。
 そして、一人。
 世界が揺れた。
391α(アルファ):04/09/15 20:06:10 ID:v16+qnTu
 1

 時は流れる。
 空は、永遠の被覆を受けていた。
 昨日の太陽はもはや存在しない。雲から突き抜けるのは、青みがかった異形の陽光。
 始まりは二十年も前だったろうか。
 荒廃に順応できない弱者は死に絶え、また生き残った者も第2、第3の脅威に晒され数を着実に減らしていった。
 開発の停滞した建造物は不朽し、変異の雑草が瓦礫の合間を支配した。
 ここ、ヨーロッパは死への階段を何処よりも早く駆け上がっていった。

 イギリス。
 嘗てロンドンと呼ばれていた地区。汚れた地に、大英国の誇りは腐れ落ちた。
 針を失った時計台がそう遠くない距離に伺える。昼間であるが、悲しいほどに光は薄い。
 その内、巨大なコンクリート片の波間に二人の男がいた。
 一人は中年にさしかかった男だった。薄汚れた黒のカトリック系神父の衣を纏い、首には銀光りする十字がかかっている。
 短く刈りあげられた、白に近い金髪。黒人ほどではないものの褐色の肌をしていた。
 硬い顔つきから得る印象は、厳、だった。大振りの唇や瞳がそこに不必要な色気を付け加えている。
 その二つが相殺し、最終的に凛なる男が完成していた。
 彼には右腕が無かった。肘までを最後に中身の無い袖だけが揺れている。
 場違いな聖職者がそこにいた。
392α:04/09/15 20:06:57 ID:v16+qnTu
「だれか来たぜ、神父さん」
 横にいるのは一人の若者だった。こちらは白色の肌である。二十歳前後か。年齢不相応の冷めた表情が現れてた。
 丸くまとめられたクリーム色の頭髪、伸びた後ろ髪だけは二又にまとめている。
 白色のジャンパージャケットを羽織っていた。体格としては神父とさほど変わらない。180cm前後である。
 若者が指すほうを向けば、なるほど一組の男女が崩れた石畳の通りを歩いていた。神父達からは50メートル位の距離だ。
 その態度から見て恋人同士なのだろう。襤褸切れをマント代わりに羽織り、簡単な荷物を抱え、二人ひしと寄り添い、倒れそうな体を庇い合い進んでいた。
 女はすらりとしたバランスの良い肢体を持ち合わせていた。女性としては長身である。
 黒く輝く長髪が、歩くたびに揺れ、妖しげな舞を見せていた。十二分に美しいと表せる容姿に見えた。
 隣の男の方は遥かに背が低く、姉弟かとも思わせる。先程から男は何やら呟いているが、片割れを励ましているのだろう。
 二人の肌と顔つきで遠巻きながらにアジア人だとわかる。
 彼らはまだ物陰の神父たちに気付いていないようだった。
「キャンプに誘うよな?」
 駆け寄ろうとした若者を、神父が制した。
 若者の視線の文句に、神父は無言のまま顎で前方を指す。
 その顎の先、瓦礫の影の中から第2の脅威が姿を表した。
「あれは良いテストになる」
 神父が呟いた。
393α:04/09/15 20:08:12 ID:v16+qnTu
 それは、一見して人のようだった。
 大きな鍔を付けた帽子。瞳の無い眼。体をすっぽりと覆うローブに、そこから突き出る細い腕。
 外見の特徴は多々あれど、あれを表現するにはもっと適当な言葉が合った。
 黒。二次元の暗影から立体の黒へ。黒なるスタンド、ブラックサバスが出現していた。
 影から生まれた黒子は、男女へゆっくりと歩み寄る。もうあと数10歩先のスタンドは、常人の目には映らない。
「得体の知れないスタンド使いを招くわけにはいかん」
「もう十分だろ? スタンド使いなら、もうサバスを見つけてるはずだ」
 ヴェルサスの言葉通り、カップルは弱弱しい歩を進めているだけだった。待ちうける黒に向かって。
「まだだ、ヴェルサス」
「ふざけるなよ!」
 若者の名はヴェルサスと言った。指示に激昂したヴェルサスは声を張り上げた。
 冷めた態度はいつしか消え、熱い感情を露わにしている。
 飛び出しかけたヴェルサスの前に神父が立ちはだかる。神父に唯一残された左腕がヴェルサスの肩を掴んだ。
「黙れ。私はテストだと言ったのだ」
 テスト。検査。
 彼らが能力者かどうか調べるため。それだけだ。ヴェルサスは自然とそう思いこんでまっていた。神父は違った。
 ヴェルサスは、いつか映画で見たロシアンルーレットを連想した。有無を言わせぬデスゲーム。
 彼の眼前でそれが行われようとしている。
「それに私は人命などを救うつもりは無い」
394α:04/09/15 20:08:54 ID:v16+qnTu
「なん……」
「人類そのものにためには、少しでも力が必要なのだ。
 それともお前がキャンプ地の人間たちに頼んでくれるか。矢の試練を受けてくれ、生死は問えません、とな」
「……あんた、聖職者だろうが」
「そうだ。だからこそ私はこうせざるを得ない」
「……」
「訊こう、ヴェルサス。あの人間達は今、確実に死に向かっている。それでは、あの人間達はもうすでに死んでいるものなのではないか?
 もしくは、我々が彼らを助ける運命だとでもいうのか? いいや、違う。
 ヒトがヒトを助けるのは、返礼か自己満足、罪悪感からの逃避にすぎない。私利私欲、それがお前だ。ヴェルサス。
 そんなことで運命を左右させるわけにはいかない」
 司教を行うように、穏やかで流れるような呟きだった。
 人間という単語を使用した神父に、ヴェルサスは嫌悪を覚えた。
「あんたこそ人間なのかよ……」
「いいから黙るんだ。子供みたいに私を困らせるな。……幸い彼らはこちらに気付いていないようだな」
 神父も、そしてまたヴェルサスも、ブラックサバスに襲われた者がどうなるのかよく理解していた。
 死か、力かだ。
 ヴェルサスは従い、そこに留まった。彼は留まってしまった。感情は急速に冷えゆく。
 神父の言葉に異様な説得力を感じた。いや、言葉など関係なく、この男がいうからこそなのだろうか。
 死には慣れれなかった。サーレーのことを思い出す。
 そして、影ながらに薄幸な男女を見つめた。己が憎悪を掻き立てるのだ。心の氷結を溶かすために。
 怒りにはもう慣れた。飢えすら覚える。決して喜ぶべきではないとも思う。
 それでも、ヴェルサスの幸福論に力とは無くてはならないものだった。

 女が、男になにやら話しかけようと口を開いたところだった。
 まず男が掴まれた。ブラックサバスの口が無機物のように空く。
「矢の試練をををををを……」
 呪いの言葉と共に口内から伸びた矢は、状況すら掴めない男の頭を貫いた。
 生卵を素手で握り潰した音、それも粘っこく尾を引くような嫌な音がヴェルサスの耳にまで届いた。
 女の短い悲鳴が聞こえた。そして、不快音がもう一度。
 すでにヴェルサスは飛び出していた。
395α:04/09/15 20:10:04 ID:v16+qnTu
 ヴェルサスは兎にも角にもヘトヘトだった。
 13歳に家出して以来、幸せだとか、喜びとかいうものをまったく味わうことがなかった。
 あのまま最悪な居心地の家庭にいたところで、どうにかなっていたわけではあるまい。
 ではなにがいけなかったのか。答えをしるよしも無かった。
 災い、失敗、苦痛。
 傷は必ず膿み、誤解は拗れ孤独を生んだ。
 不幸の合間に人生を送ってきたヴェルサスは疲れる事にも疲れ始めた。
 それでも彼は自殺しようなどとは思わなかった。
 心の、本当に奥底にあった希望が彼を生かしていたのだろうか。
 生きていれば、生きてさえいれば、きっと幸せは振ってくる。
 そう考えたのだろうか。
 そして4年前。
 丁度成人を終えた彼の前に、唐突な世界の終焉が訪れた。
 ヴェルサスはキレた。
 自分に何一つ与えず、ただ死に向かう世界に激昂し吠えた
 理不尽なエンディングに憤慨した。
 結果、彼は尖った。
 溜まりに溜まった激情は内から絶え間無く溢れてきた。
 今までの不服不満苛立ちを拳に込め、そして発散させる。
 滾りは、今のところの支配者へと向けられる。
 そしてヴェルサスは、隻腕の神父と出会った。

「おああああっ!」
 ヴェルサスは拳をブラックサバスの顔面へ叩きこんだ。
396α:04/09/15 20:11:00 ID:v16+qnTu
「ヴェルサス、無駄なことをするんじゃあない」
 神父が言う。殴る。
 聞こえない。殴る。
 聞くものか。殴る。
 気が済まない。殴る。
 五発殴ったところで右腕を掴まれた。
「矢の……試練をををを……」
「アンダー・ワールド!」
 悲惨と激情の落とし子、ヴェルサスのスタンドが発現する。空いた左手は地を掘った。
 地表には、日々新たな情報が刻まれ蓄積して行く。地面は何でも知っている。
 地球は巨大な脳髄だ。そしてアンダーワールドは記憶を発掘する。
 掘り起こしたのはかつてのロンドンの切片だった。純白の街灯だった。
 小洒落た灯りは、影を打ち消す絶対の攻撃手段と成り変る。
 媒体を失い他の影へと逃れようとするブラック・サバスだったが、ヴェルサスが許すわけもない。
 首根っこを掴まれ、光源の真下へぐいと押さえられた。
 数秒のたち、低い断末魔をあげると完全に消滅した。
 倒したとはいっても、移動操縦型のスタンドであるがゆえ、本体自体はなんの影響も受けないだろう。
 やるせないまま、魂を貫かれ、倒れ伏す二人を見た。
 十字でも切ろうと側らに跪くヴェルサスだったが、
「生きてる!」
 緩く胸が上下していた。息が有った。それも二人ともだ。
 とりあえず少年の頬を平手ではたきつつ問う。
「おい、おい、あんた。名前言えるか?」
「あ……う……、僕は……ヒロセといいます……」
 ここまで意識もはっきりとしているのならば回復も早い。そして賭けに見合った報酬も、二人は獲得したのだ。
「なあ、あんたの出番はないようだな、神父さんよ」
「いいからゾンビが来る前にキャンプへ運ぶのだ」
 自分事のように嬉々するヴェルサスに、しかし神父は表情を変えなかった。
397ストーリー補足:04/09/15 20:14:27 ID:v16+qnTu
【ヴェルサス】
 彼の不平な人生への怒りは、世界の荒廃によって爆発した。
 その矛先は事を招いた者へと必然的に変わり、彼は神父側に付くことになる。
 自らの力で幸福へ向かおうという意志の元で行動しており、幸せへの執着心は誰よりも高い。
 だが、彼を突き動かす怒りとは、一瞬の爆発力こそあれぞ、所詮は付け焼刃に過ぎないのである。
 その為、彼の気弱な面はしっかりと残っている。
 この世界が、又きっかけが違うものだったならば、彼がどうなっていたかは想像できない。
スタンド名「アンダー・ワールド」
 地面が経験した出来事を掘り出す能力。
 本体の意思の影響をもろに受け、肉弾戦にも特化している。

【神父】
 右腕と妹を失った。
スタンド名「ホワイト・スネイク」


【お詫び】
通常の時間軸で言うと、数名の登場人物の年齢について矛盾が起きます。
今回ので例を出すと、実際は、ヴェルサスよりもあの少年の方が年上になります。
これに関しては修正をいれると、どうもちぐはぐになってしまいますので、あえて矛盾のあるままにさせてもらいました。
言い訳して申し訳ありません。
398ユル ◆jxmVRmKxVc :04/09/15 20:16:58 ID:v16+qnTu
うp終了です。失礼しました。それではまた来月にでも。
399作者の都合により名無しです:04/09/15 20:40:58 ID:UqHcXR3r
しけい荘
シコルスキーがこんなにシコルらしい強さを発揮してるのは
今作が初めてじゃなかろうか。
あと、
>入れ歯が丸ごと持って行かれた
ここでチョトワラたよ。

>ユル
タイトルは特異点?Q?AOB?
400作者の都合により名無しです:04/09/15 20:46:54 ID:EcbIFUfz
>サナダムシさま
お疲れ様です。10話以上の激闘も、シコルスキーの鮮やかなドロップキックで
決着つきましたね。本人は否定しつつも、シコルの中に力強く流れるしけい荘魂。
それを真っ向から受け止め敗北した、本部のホームレスの意地。正に名勝負でした。
でも、もうすぐこの物語終わってしまうのかな。残念。オリバの戦いとか見たかった。
あと、お弟子さんどこ行ったか知りません?w

>ユルさま
お疲れ様です。ユルさんは、どちらかというと短中篇に力を発揮するタイプかな?
勿論、4×5も好きですが。淡々とした中の「薄暗さ」みたいな不気味さを、
高い描写力で描ききっていると思います。ジョジョはあまり詳しくはないんですが、
この登場人物はジョジョの設定を借りたオリジナルキャラなんですか?
私はオリジナル作品として楽しませて頂きました。また来月ですか。待っています。


週末には、次スレぽいですね。今回早いですね。

401作者の都合により名無しです:04/09/15 20:56:08 ID:Zr9GCHQj
前話>>367

「!? ・・・ほ、本当だ!!」

ドラミによると、写真に写っている謎の乗り物。それは22世紀の博物館に展示して
あるはずの、世界初と呼ばれるタイム・マシーンと同じ型のものだという。

「??? こんな写真がいったいどうしたの?」
二人の様子にただならぬものを感じながらも、具体的に何がどうなのか
周りのみんなには、さっぱりわからない。

ドラミが解説を始めた。
「“アーサー・D・キスギー”。
21世紀半ばにタイムマシーンの原型をつくったとされる研究者よ。」
ドラミのその説明に、ドラえもんもようやく理解したようだ。
「!! 思い出した!! 21世紀最大の謎とされる大科学者!!」

「そうなの。名前以外はその顔も素性も国籍さえもわからない謎の大研究者。
唯一わかっているのは、その作品に刻まれたその名前だけ。それすらも本人の
ものとは限らなかったんだけど・・・。」

しずかが恐る恐る尋ねる。
「それが、帝国の要塞内部のどこかにあるってこと・・・?」

ジャイアンが、のび太が、スネオが、口々に後を続けていく。
「キスギーって・・・帝国のボスと同じ名前じゃないか。」
「だとしたら、キスギーはタイム・トラベラー!?」
「というか、キスギーがひょっとしてその大科学者・・・本人ってこと・・・!?」

「う〜ん、確かに偶然とは思いにくいな。名前の一致、タイムマシンの現物が要塞に
あるってことだけでも同一人物の可能性は限りなく高いかもしれないね。」
ジャイアンが叫ぶ。
「じゃあ、今度の敵は、未来世界の大科学者か!?」
スネオもまた、おびえたように深刻な表情でまくしたてる。
「ギガゾンビみたいな時間犯罪者とは今まで何度も戦ってきたけど・・・
自らタイム・マシンを開発できるほどの頭脳の持ち主となると・・・
こりゃあ、かつてない程の、とんでもない強敵なのかもしれないぞ!?」

「・・・しかも、そんな人が、お兄ちゃんのポケットの中身、つまり22世紀の
科学技術を解析して軍事兵器に応用してたとしたら・・・。」
「い、一体どうなっちゃうんだよ、ボクたち・・・」
ドラミの言葉に次第に事態の深刻さを飲み込み始めるのび太たち。
その表情は一様に蒼白である。

「あ、そうだ。お兄ちゃん。忘れてたけど、はい。これ。」
「あれ?スペアポケットじゃないか。」
「一応、押入れから念のために持ってきておいたの。役に立ってよかったわ。
お兄ちゃんたちが無事に脱出できたのを見計らって、まだ中に残ってた秘密
道具だけは私のポケットに移しかえておいたわ。残ってた道具の数から考えて、
まだ研究はそんなに進んでないみたいね。」

「え?それじゃあ・・・」
「これで最悪、これ以上の秘密道具が相手に解析されることはないはずよ。」
「さっすがドラミちゃん!抜かりはないね♪」
「ドラミちゃんは本当に頼りになるなぁ。」
「やっぱり、ドラえもんとは一味違うよね。」

「ふん。どうせボクは頼りないですよーだ。」
口々にドラミを称えるみなの態度に、ドラえもんは、なんとなく
やるせなくなって、部屋のすみっこでいじけてしまった。
いじけたドラえもんは気にせずにのび太がドラミに質問を続ける。
「まだ、同一人物かどうかはわかんないけど、その未来世界のキスギーってのは、
タイム・マシーンを発明しただけなの?」

「彼の研究はそれだけにとどまらず、その後の科学文明に大きな貢献を果たして
いるわ。“妖精学”という新しい研究ジャンルを確立させ、その結果生まれた秘薬
“悪魔の実”シリーズ。たしか、お兄ちゃんも記念品として貰ってたわよね?」

「悪魔の実?」
話題をふられたドラえもんは、高速でみなのもとに舞い戻って答えた。
「うん。こっちに来てから、のび太くんたちが飲んだアシュラドリンクって覚えてる?」
「アシュラドリンク?」
「ほら、のび太くんとジャイアンとスネオが合体して変身したやつ。」
「ああ、あれか。とんでもない威力の薬だったね。」
帝国に捕らえられかけた窮地を救った強力なドリンクである。のび太、ジャイアン、
スネオの三人が合体し、わずか1分間ではあるが、魔界の悪魔の力を得て、窮地を
脱することができたのだ。

「あれも実は、その悪魔の実シリーズをベースに改良して作られたものなんだ。」
「なんだって!?」
「ということは・・・どういうこと?」

「キスギーが開発したとされるオリジナルの悪魔の実シリーズは、あまりにも効果が
強力すぎて、飲んだ人間の体が耐えられないから危険だってことで開発・販売が中止
されたんだ。だけど・・・その後、別のプロジェクトチームの開発によって、効用と
負担を大幅に抑えた新薬が開発された。今で言う栄養ドリンクの強力版ってとこかな?」
説明を始めたドラえもんの後を、ドラミが続ける。
「中でもアシュラドリンクは3人の人間を合体させることで負担の軽減に加えて、
従来のオリジナルにも負けないパワーアップ効果を得ることに成功したの。それでも、
安全のためには、1分という短い時間が限界だけどね。」
さらに、ドラえもんが一言付け加えた。
「高級品なんだぞ。」
「ふむふむ。」

「でも、オリジナルの悪魔の実の力はたった一人の人間が、それ以上の能力を、
それも長時間引き出せるんだ。直接、精神に異常はきたさないけど、体への負担は
強力な麻薬の比じゃないくらい。まぁ、結局はその肉体への負担が、精神までも
蝕んでしまうことになるだろうね。」
「・・・怖いわ。そんな薬・・・」
「“悪魔の力を得られる”なんて・・・
キスギーってやつは、そんな危険思想の持ち主だったのか。」

それまで、じっと黙って話を聞いていたワンダー・ガールが口を開く。
「・・・たぶん、それね。」
「え?」
「ずっと不思議に思ってたの。研究所の面々のように優れた頭脳を持つわけでも、
ドクタケの忍者さんたちの忍術や、私の超能力のような特別な力も持たない、普通の
人間にすぎないげんごろうさんとズル木さんの二人が呼ばれた理由がなんなのか。
きっと、その悪魔の実の力が関係しているんだわ。だって、適応力がどうとか言って
それと同じようなビンをもらってたもの。」
「じゃあ、やっぱり目的は軍事利用なのか?」
「・・・うん。たぶん・・・。」
「じゃあ、あのときもその悪魔の実とかいう薬使ってたのかな?」

のび太たちは、地底帝国で初めて、キスギーの軍団を見たときのことを思い出した。
その際、げんごろうは、たった一人で竜人の精鋭部隊を相手に鬼神のような力を
見せつけたのだ。まるで紙人形を引きちぎるかのように・・・。

「それで、げんごろうは、あんなに強くなっていたのか。」
「いくらなんでも鍛え抜かれた竜人の軍隊が、たった一人に歯が立たないなんて
変だとは思ってたけど。」
「・・・・・・・・・・」
げんごろうの名前が出てから、ジャイアンはずっと押し黙っている。
やはりげんごろうに対しては特別な感情が支配してしまうらしい。

「悪魔の実シリーズは、軍事力強化には最適だものね。
でも、兵士の体の負担なんてまるで考えてはいない。」

「未来の大科学者、そして、悪魔の実・・・か。
どうやら我々、地底世界の住人には、すぐには理解できそうにない話のようだな。
ドラえもんくん。すまないが、後で詳しい話を聞かせて欲しい。」
「はい。もちろんです!」

「そして、ワンダー・ガールくん。高畑くんからの手紙は読ませてもらったよ。
キミの言った内容とほぼ一致する。」
「は、はい。」
「しかし、それも含めてキミたちの謀略でない保証はない。」
バンホーの厳しい口調にワンダー・ガールは落胆の色を隠せない。
うつむいて、唇をかみしめている。
「・・・が。キミの眼はどうやら嘘は言っていないようだ。」

ワンダー・ガールは、ハッとした表情で、思わず顔をあげた。
目に映るバンホーの顔は先程までの厳しい表情から一変して、
力強く暖かい笑顔に変わっていた。
「えっ?そ、それじゃ・・・?」
「ああ、信じよう。しかし、他の兵士たちがどう思うか。拘束まではしないが、
みなが納得するまでは、しばらくおとなしくしといてもらうことになると思う。」

「あ、ありがとうございます。ありがとう・・・」
ワンダー・ガールは涙をぬぐうことも忘れて、何度も、何度も頭を下げた。
ドラえもんたちはみな笑顔でその光景を眺めていた。ワンダー・ガールの
真摯な想いとそれを受け入れるバンホーさんの度量の大きさに感嘆しながら。
彼女を最も疑い責めていたスネオも、バツの悪そうな顔で頭をかいている。

ようやく、ギスギスしていた空間に穏やかな空気が流れ始めた。
少しずつ、少しずつ、みんなに笑顔が戻ってきた。
ジャイアンとスネオがなんとなく、きり丸の体をつついてみたり
しずかとローはワンダーガールのための洋服を用意してみたり。

なごみ始めた空気の中、長く捕まっていたせいでボロボロの、のび太や
ドラえもんの格好を見て、思いついたようにローが提案した。
「疲れてるんじゃない?温泉にでも入って、くつろいでみたらどうかしら。」
407作者の都合により名無しです:04/09/15 21:24:36 ID:EcbIFUfz
>うみにん様
ワンピースまで絡ませますか。そういえばうみにんさんはファンでしたね。
薄皮を一枚一枚むくように、秘密が明かされていきますね。
そしてそろそろ決戦っぽい。だけど、このメンツのなごみモードの場面も
好きなのでずっと続いて欲しいです。でも、なんか途中っぽいですね。
また投稿規制に引っかかりました?w 続き待ってます。
408作者の都合により名無しです:04/09/15 21:31:10 ID:AtAie2sT
>>388
投げ出し認定なんてもんは無いよ。
ただ、フンコロガシの場合は「水曜日にupしなければ投げ出しと見てください」と公言してるが。

あと知ってるとは思うが、保管庫では2ヶ月の放置で未完扱い。
409ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/15 21:35:47 ID:Zr9GCHQj
今回分終了です。実は、第二部から気分一新サブタイトルを用意していたのですが、
ネタバレになってしまいそうなので、次次回の更新後にします。
>>407
ワンピースは絡まないですよー。“悪魔の実”は名前だけ使わせてもらいました。
ちなみにアキームとノヴァも名前だけダイの大冒険からとらせてもらってます。
温泉。ローの提案にのび太は驚いて聞き返した。

「え?ここって温泉なんてあるんですか?」
「ええ。ここは地底だから、温泉はわりとどこにでも湧いてるの。
しずかさんやジャイアンさんたちは、もう何度か入ってるわ。」
「チェッ。僕たちが捕まってる間に自分たちばっかりいい思いして。」
「なんだよ。オレたちだって苦労したんだぞ。文句あるか!」

ケンカになりそうな空気を察したのか、バンホーさんが割ってはいる。
「まぁまぁ、のび太くんとドラえもんくんは特に、ずっと捕まってたのだからね。
精神的にもそうとう、参ってるだろう。先に入ってきてみてはどうかね。」
「ええ、まぁ、はい・・・そうですね。(う〜ん、ホントはずっと気絶してた
からあんまり疲れてないんだけどね。)」

「ドラえもんくんはどうするかね?」
「あ、ボクはロボットなんで遠慮しときます。」
「そっか。じゃあ、ジャイアン、スネオもいっしょに入る?」
「おう。そうだな。」
「そうだね。ボクも入らせてもらうよ」

3人が温泉に向った直後、きり丸がローに大切なことを聞いた。
「温泉って、 タ ダ !?」
「え?もちろん、タダだけど・・。」
「ねーねー、じゃあオレも入ってきていい?」
「もちろん、いいわよ。」
「やった―――!ウヒョーイ!温泉待ってろよぉ――――っ!!」

タダであることを確認したきり丸は、三人の後を猛烈に追いかけていった。
目立たない場所にひっそりと温泉はあった。しかし、小さいながらもその造りは
なかなか風流である。まわりの殺風景さを気にしなければ、であるが。温泉の周り
には柵がこしらえてあって、一応外からは覗けないようになっている。ローたち
数少ない女性への配慮であろう。そこに隣接された簡素な脱衣所でのび太とジャイ
アンはあっという間に服を脱いで、真っ裸で温泉へと飛び出していった。

「やだねぇ。温泉くらいでがっついちゃって。もっとボクみたいなゆとりが必要なん
だよね。あの二人には。」
スネオは一人、ぶつぶつと不満を洩らしながら、ゆっくりと服を脱いでいる。

「ここが温泉かぁ。不肖、きりちゃんも入らせていただきまっす!タダで。」
ようやく服を脱ぎ終えたスネオの前に、スネオにとっては唐突にきり丸が現れた。
まだ村娘の格好をしたままである。つまりスネオにとっては、きり子ちゃん。

「え?あのちょっと、ここって、こ、混浴なの?」
慌てて、前を隠しながら戸惑いまくっているスネオに、きり丸は無愛想に切り返した。
「は?なに言ってんだ?お前。へんなやつだな。」
どうやら、村娘に化けてスネオを騙していたことはすっかり忘れてしまっているらしい。

村娘は真っ赤になって固まるスネオなど全く気にならない様子でスルスルと
着物を脱いでいく。視界を遮るべく、目を覆ったはずの両手の指の隙間から、
荒い息と少々血走った目で、ついつい凝視してしまっているスネオであった。

きり丸がついに服を脱ぎ終えた、その時!
ゴクリとつばを飲み込みながら、スネオが見たものは・・・!?

    ☆★☆★☆

「うぎゃああ―――――――――――――――――――――!?」

悲痛な叫び。そして、間をおいて、ジャイアンの大声があたり一帯に響き渡る。
「大変だぁ!風呂場でスネオが倒れたぞぉー!!」
413ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/15 22:14:17 ID:Zr9GCHQj
すみません(汗。改めて読み直すと、あまりに中途半端だったので、
キリのいいところまで投下させてもらいました。続きは明日うPします。
414作者の都合により名無しです:04/09/15 23:14:44 ID:7CnXv1ca
サナダムシさん、シコルかっこいい!
あの、バキ2巻頃のシコルみたいだ。でも、ヘタレシコルも好きです。

ユルさん、文章力の高さが雰囲気を増してますね!
こういうショートで世界観を出せるのは高い実力のたまものでしょう。

うみにんさん、受け継がれる意志、って感じのノリですねw
序盤のシリアスと後半のユーモア感のテンポが素敵ですね!

次スレは、450Kbくらいで立てるのがいいかも知れませんね。
415作者の都合により名無しです:04/09/15 23:45:00 ID:PaPjMC5q
サナダムシさん、ユルさん、うみにんさん乙!
今夜もサイコーだったな。

バトル物の(前はギャグだがw)しけい荘、
ジョジョだけに叙情的なアルファ、
冒険ファンタジーの出木杉と職人の個性が違ってていいな。
おのおの違った味を楽しめていい。
416作者の都合により名無しです:04/09/16 08:33:46 ID:PL5qWrVa
昨日も盛況だったか。よき事だ。
サナダムシ氏、ユル氏、うみにん氏、いつも楽しませてくれてありがとう。
これからも頑張って下さい。
しかしフンコロ氏は来なかったか。うーむ。
417リ・バース:04/09/16 20:44:18 ID:fiEoUFP4
一話・未来地図(>>159の続き)

時間が過ぎ去っていくのではない。
我々が過ぎ去っていくのだ。    西洋の諺


薄汚れた匂いを感じた。どこか、懐かしい匂いだ。
その匂いに刺激され、俺の脳のゼンマイがゆっくりと稼動する。
意識がクリアになっていく。
次第に記憶が蘇ってきた。ズキンと胸が痛む錯覚に陥る。

あれ?俺は、ベジータに殺されたんじゃなかったっけ?

思わずベッドから飛び起きた。だが周りの様子がいつもと違う。
カプセルコーポレーション内にある、俺の部屋とは明らかに違っていた。
居候の身ながら、あの家の俺の部屋は贅沢そのものだった。
一級品の家具、高級感溢れる調度品、最新の電気機器、全てが揃っていた。

418リ・バース:04/09/16 20:45:35 ID:fiEoUFP4
深呼吸をして、もう一度あたりを見回した。質素そのものの部屋だ。
原始的な造りの部屋に、必要最低限の家財がこじんまりと転がっている。
空調が完備されていた部屋とは違い、少し蒸し暑い。

あれ?ここは、俺の部屋か?

記憶の中の俺の部屋と、まったく真逆な粗末な今いるこの部屋。
だが、不思議と落ち着く。何故だか、涙がこぼれそうにもなった。
何故だ?何故この事態に、俺は感動してる?

だが、感動してる場合では無い。俺は出来の悪い脳みそを必死に働かす。
答えは出ない。全く訳が分からない。
相変わらず使えない奴だぜヤムチャ、と哀しい自分突込みを入れた時、
不意に背後から声が掛かった。カン高い声にギョッとして振り向く。

「ヤムチャさま、おはようございます!今日は早いですね!」
声の主はプーアルだった。
419リ・バース:04/09/16 20:46:35 ID:fiEoUFP4
おかしいな。ヤムチャさまって言ったのか、こいつ?
俺はその言葉に違和感を覚えた。
ここ最近のプーアルは、俺を「ヤムチャさん」と呼ぶようになったからだ。
何故そういう風に呼ぶようになったかは、怖くて聞いてない。

「プーアル。今、俺を様付けで呼んだか?」
「何言ってるんですか?いつも呼んでるじゃないですか」

俺は更に違和感を感じた。その言葉にではなく、プーアルの声にだ。
元々奴は高い声だが、その高さにハリを感じるのだ。不思議に思ってると奴が言った。
「今日は、盗賊の仕事はどうします?パンツアーファーストももう用意してますよ」

少しずつ、俺の頭の中で整理が出来てきた。昨日殺された俺。目覚めた後の俺。
俺は、ゆっくり立ち上がって鏡の前に立った。
知らないはずの部屋なのに、ごく自然に洗面所の場所が分かっていた。
鏡の中にいる俺を見る。そこには、顔に傷の無い、十数歳は若々しい俺がいた。

そうか。ドラゴンボールの願いはこういう事だったのか。
神龍のいう「不死身」とは、この事を差していたのか。

俺は腹の底から笑った。楽しかったのだ。
俺は、一度死んで、そして生き返った。だが、ただ生き返っただけじゃない。
若返った。いや、それも少し違う。時代を逆に戻ったのだ。

魂の記憶を持ったまま、若い頃の自分に乗り移ったのだ。
420リ・バース:04/09/16 20:47:27 ID:fiEoUFP4
一人だけの、魂と記憶だけの、タイムスリップ。歴史への逆走。

いい。その方が、都合がいい。ただの不死身より、よほど都合がいい。
俺は全てを知っている。これから起こる事、歴史の成り立ちを。
そして俺は知っている。俺が、どれだけ惨めな生活をしていくのかを。

これは復讐だ。自分自身への。

俺はこれからの歴史を己の好き勝手に改竄して、自分の世界を作り出す。
このヤムチャさまの手で、ヤムチャさまのだけの為の世界を作り出す。
邪魔者は全て排除する。そう、たとえ悟空でも、ブルマでも。

歴史は全て俺の手で造られ、世界は俺だけの為に存在するんだから。

俺はひとしきり爆笑した後、冷静さを取り戻した。
まず、把握だ。世界の現状と、今の自分の力を。
プーアルに今日の年月日を聞いた。俺はその日時を聞き、更に喜んだ。

(明日は、俺と悟空とブルマの、初めて出会った日じゃねえか)
相応しい。この世の帝王となる第一歩に。復讐の開始に。まずは、ブルマだ。
(俺はあいつの好みも性癖も全て知っている。まだ今の時点では処女だが、
 それだけに簡単に俺に溺れさせてやるぜ、裏切り者のメス豚が)
421リ・バース:04/09/16 20:48:13 ID:fiEoUFP4
だが、ブルマをメロメロにさせる前に敵がいる。孫悟空だ。
現時点で俺が奴に勝てないと、話にならない。ブルマは俺に惚れないだろう。
あの尻軽を惚れさせるには、まず強さを見せ、そして・・・・。

俺は虚空に向け拳を突いた。現時点でのパンチの強さと速さを測ったのだ。
空気を切り、凄い音を立てて風を巻いた。迫力にプーアルが驚く。
だが、俺は失望した。肉体の力は当時のままらしい。
肉体のバイタリティとエネルギーは若い今の方が上だが、
破壊力と速さは、昨日の修行をたっぷり積んだ俺とは比較にならないほど弱い。

このままで、俺は勝てるか、あのサイヤ人の化け物に?
俺はふと気付いた。肉体は若いままだが、経験と知識は脳の中に納まっている。
ならば、もしかして?あれが使えるのか?
「界王拳、2倍!!」
俺は大声で叫んだ。プーアルがびくつく。俺の体が光る。俺はまた拳を虚空に突く。
ビュっと、先ほどよりかなり速く、力強い拳が出た。

出来た。界王拳が。俺はにやりと笑う。成功だ。
ならば他の技も出来るだろうからだ。この技が、一番気のコントロールが難しい。
だが、体が痛くなった。今の弱い体では、2倍の界王拳でも一瞬しか無理らしい。
それでも俺はもう一度、違う技を試した。目を瞑って気を集中する。
「舞空、術!」

ふわり、と俺の体が浮いて、狭い部屋を飛び回った。プーアルが興奮する。
「凄い、どうしたんですかヤムチャさま、空を飛べるなんて!」
俺はその言葉を流し、プーアルに言った。
「街へ行くぞ。明日、俺の女になる奴がここの砂漠を通るからな。
 プレゼントを用意しないとな」

俺はブルマを肉奴隷にする為、街で必要品を揃える事にした。
422フンコロガシ ◆zCS1o.kilU :04/09/16 20:53:38 ID:fiEoUFP4
新人の分際で、間をずいぶん空けてすみません。
父が急に入院したので。でも、投げ出しと思われても仕方ありませんね。
反省します。NBさんやサマサさんを見習って、これから精進します。
内容は未熟ですが、完結だけはします。
師匠(サナダムシ氏)温かい言葉ありがとうございます。
423作者の都合により名無しです:04/09/16 21:10:33 ID:WMOXgt24
424作者の都合により名無しです:04/09/16 21:50:02 ID:f8vYWL4h
ていうか↑に投下よろ。レベル的にもスレ的にも。
425作者の都合により名無しです:04/09/16 22:14:49 ID:o2UrwDF+
……100%18禁な展開かよ
426作者の都合により名無しです:04/09/16 22:48:13 ID:Fi+qz3Up
>フンコロガシ氏。
乙。前回よりこなれてきたね。界王拳とかは伏線かな?
タイムスリップ物と格闘系をどう合わすのか期待してる。
最後の一行で気になったけど、適度なエロシーンはともかく、
あんまり過激なのはちょっと止めておいた方が良いかもね。
20歳以下も読んでるだろうし。

応援してるので頑張ってくれ。
427ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/16 22:48:30 ID:mSsV0Woj
>>401の続き
「ダメだわ。やっぱり、無理みたい。」
ドラミは、かぶりを振って、お手上げの仕草で振り向いた。
「なにかの力でガードされてるわ。時空間の表面を上手くねじってあるみたい。
内部からの脱出はどうにか可能みたいだけど、外部からの進入は困難なはずよ。」

「私のテレポーテーションでも地上への転移は無理と思います。」
ワンダー・ガールの言葉にドラミが別の可能性も付け加えた。
「テレポートも、原理としては、“どこでもドア”と同じようなもののはずよ。
この分だと要塞内への転移もたぶん無理なんじゃないかしら。」
「・・・え?」
「お兄ちゃんとのび太さんを助けにいったとき、当然“取り寄せバッグ”
での救出や、“どこでもドア”や“通り抜けフープ”での進入は試みたわ。
でも、そういった空間転移は全部、バリアに弾かれてしまったの。
・・・でも、ひょっとしたら大丈夫かもしれないから、後で一度試して
みた方がいいかもね。」

「空間転移を制限するバリア・・・か。そんなものまで用意しているとなると
ロードの正体はやっぱり、アーサー・D・キスギーで間違いなさそうだね。」
「違うにしても、それと同等の強敵なのは間違いないわ。」
「どうする?のび太くんたちに伝えた方がいいかな。このままじゃ帰れないって。」
「う〜ん、もう少し様子を見よう。せっかく雰囲気が良くなってきたのに
またパニックになっちゃうかもしれない。」

「きり丸くんのやって来た工場の場所はなんとかわからないかな?」
「もう既に人を配して、調べさせてはいるが・・・今のところ手がかりなしだ。」
「でも、地上世界は巻き込めないよ。相手が時間犯罪者ならなおさらだ。
「でも21世紀の人間には22世紀のタイム・パトロールも手出しできないし。」

バンホー、ドラえもん、ドラミ、そしてワンダー・ガールの4人は
あーでもないこーでもないと議論し続けていたのだが、事態はあまり
好転してはいないらしい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
のび太たちは温泉を出て引き返す途中、ジャムおじさんたちと出くわした。
リルルやしょくぱんマンもいっしょである。どうやら、いっしょにどこかへ
出かけていたらしい。しょくぱんマンにはなぜか、赤い体のかわいい女の子、
ドキンちゃんが傍にベッタリくっついている。目をハートにして。

「のび太くん、疲れはとれた?人間の体のメンテナンスって大変なのね。」
「やあ、リルル、“改造”は順調なのかい?」
「ええ、順調よ。ジャムおじさんってば、私なんかより全然機械のことに詳しいの。
どうやって勉強したのかわからないけど。」
「はっはっは。長生きしていれば、自然と色々なことを覚えてしまうものだよ。」
「へぇ。そうなんですか(どんな人生を送ってきたのかしら・・・)。」

みんなでいっしょにドラえもんたちのもとへ戻ると、キスギーの情報について
話し込んでいたバンホーさんが、実に申し訳なさそうに出迎えてきた。

「おお、ジャムおじさん。このような事態になってしまい、まことに申し訳ない。」
「はっはっは。困ったときは、お互い様ですよ。それに、アンパンマンもカレーパン
マンもきっと大丈夫です。ただ・・・なんらかの理由で力を使い果たしているかも
しれません。バンホーどの。今度は我々も一緒に戦いに行きますぞ!」

「いや、しかし、それは・・・」
バンホーのセリフを遮り、しょくぱんマンが力強く宣言する。
「戦いはあまり好きではありませんが・・・私は正義のヒーローです。
そこに悪があれば戦います。」
「ああ〜♪しょくぱんマン様ぁ〜・・・なんてお凛々しい・・・!」
「しょくぱんマン・・・かっこいい・・・。ポッ」
いつも通りのドキンちゃんの影で、少し頬を赤らめてリルルがこっそり呟いた。
「え?リ、リルル・・・?」
のび太はリルルのその反応に、微妙な嫉妬心を覚えたのかあわてて声をかけた。
「ハッ?わ、わたし今なにか変なこと言ったかしら。」
しょくぱんマンに続けてジャムおじさんもまた、宣言した。
「アンパンマンたちの救出には、新しい顔を生み出す我々の力が必要です。
このジャムおじさん特製の戦闘仕様☆スペシャルアンパンマンカー。
無事、完成しました。これで、いつでも我々も戦いに参加できますぞ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
長い長い一日を終え、地底世界に夜が近づいている。

温泉にゆっくりつかって、みんなの雰囲気もよくなって・・・
すっかりご機嫌になってしまったジャイアンは元気に叫んだ。

「くよくよしたって、始まらないぞ、みんな!しかし、人間、そう簡単に
元気が出るものじゃない。そこでだ!オレはみんなを元気づけるため、
久しぶりに一夜限りのジャイアン・スペシャル・リサイタルを開こうと思う!」

『な、なんだって――――!?』
予期していなかった衝撃。ドラえもんに、のび太に、スネオに、しずかに!
戦慄の稲妻が走る!

「はっはっは。いいではないか。歌は疲れた心を癒してくれる。」
何も知らないバンホーさんが、気楽に許可してしまった。
「話が、わかるぜ。バンホーさん!今日はいつもと趣向を変えて、
心癒すバラードをみんなに贈ります。曲名は“乙女の愛の歌”。」

―――“ジャイアンの歌”――――

それは一言で言い表すならば、人類が生み出した最強最悪のリーサル・ウェポン
である。生けとし生ける者全てを屠る魔性の歌。その犠牲者は人間だけではない。
かつて出会ったことのある、どのような巨大で強靭な怪物でさえも、その凶悪な
破壊の波動の前には、ことごとく打ちのめされてきた。その破壊の権化が、
今、再び牙を向いて襲いかかってくるという。潔く、のび太たちは覚悟を決めた。
悲壮な決意で立ち向かった。

結局、その場にいる全員を観客に臨時リサイタルが行われることになった。
パチパチパチ。
のび太たちがげんなり舌を出しながら、力ない小さな拍手をおくる横で、
バンホーさんとジャムおじさんが、力強く手を叩いて声援を送っている。
何も知らないきり丸やワンダー・ガールも笑顔で拍手を送った。

そして、悪魔の祭典が始まった。

 『   ボ ☆   ★ ♪   』

友情、愛情、癒し、感動。それら伝えたい熱い想いを歌に込め、彼は熱唱した。

   『   ゲェ   ェ エ☆ ☆ ♪
         ♪  ボ    ☆  エ  ★  ♪  』 

しかし、彼の熱い、切なる想いとは裏腹に、不安、焦燥、嘔吐感、目眩・・・

             『    エ  ★ エ エ ♪    』

考えられる限りの不快感だけをあたりに撒き散らしながら、彼自身の満足と
恍惚と、そして会心の笑顔と共に、それは終焉の時をむかえた。

悪魔の祭典は終わった。

パチ!パチ!パチ!

拍手が鳴り響く。・・・たった一人だけの。
「素晴らしい! 感動したよ。ジャイアンくん。」
涙さえ流しながら、拍手を贈り続けるバンホーがふと周りのみんなを見やると・・・
「ん?みんなどうしたんだ?寝てしまったのか。よほど疲れていたんだな。」
ドラ一行、リルル、ロー、ジャムおじさんたち、アキーム他反乱軍兵士一同。
バンホーさん以外、みんな失神していた。かろうじて、死傷者が出なかったこと
だけが救いであったという・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
434作者の都合により名無しです:04/09/16 23:04:59 ID:Fi+qz3Up
今週のうみにん氏は、質も量も鬼のような更新振りだな。ハラハラするぜ。

衝撃の事実が明かされた後の、またーりモードの楽しい夜をぶち壊す、
恐怖のジャイアンリサイタル。阿鼻叫喚の地獄絵図ですな。
もし、この第六サティアンの修行みたいなリサイタルでメインキャラが
全員ダウンして、そのまま完結ならある意味うみにんさんは神だw
いえいえ、ずっと続くのを期待してますよ。
435ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/16 23:13:21 ID:mSsV0Woj
すみません。あと3レスほど一気に投下させていただきます。
そんなこんなで今のこの状況である。失神していたみんなは、軽い頭痛は残っては
いたものの少し睡眠がとれて、体の方はかえって元気になってしまったようである。
同じく別の宿舎で休んでいた兵士たちも数人、こちらにやってきているようだ。
子どもたちの多い空間は自然、笑い声が絶えない。

保母さん状態のローやしずかも大変そうではあるが、楽しそうである。
気さくなバンホーさんはもちろん、兵士たちも気の良い連中が多いのか、
中には、いっしょにわきあいあいと遊んでいる者もいる。遠く離れた
竜人の街に残してきた家族のことを思い、涙を浮かべる者さえいた。

そんな中、のび太はかすかに抱いていた疑問をアキームに尋ねてみた。
「アキームさん。」
「なんだい?」
「ここの人たちは、バンホーさんが“信じる”と言ったら、みんな反対は
しないんですね。きり丸くんのことも、ワンダー・ガールさんのことも。」
「不思議かい?でも、我々反乱軍はみな打算ではなく、我々地底世界の住人のため、
そして、バンホーさんという人物そのものに惹かれて集まっているんだ。バンホー
さんの人を見る目は確かだよ。」

「じゃあ、僕たちのことも信頼してくれてるんだね。よかった。」
「・・・それは、バンホーさんが信じる信じない以前の問題さ。」
「え?」
「我々反乱軍のメンバーは皆、あの日・・・君たちが巨大彗星の余波から我々の
祖先を救ってくれた、その一部始終を最前線で目の当たりにした者達なんだ。」

「君たちは大げさでもなんでもなく、我々にとっては神にも等しい存在なのだよ。」
「そんな、神だなんて。僕たちはただ、できることを精一杯やっただけです。」
「ふふふ、どうやらキミたち自身にも自覚がなかったようだね。
・・・改めて礼を言わせてもらうよ。・・・・ありがとう。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地底世界にも夜はやってくる。光ゴケの光が徐々に薄れ、やがて完全な暗闇へと
変化したころには、すでにほとんどの者が眠りについていた。これから行われる
であろう厳しい戦いに備えるために・・・。そんな中、かすかなランプの明かり
の下で、反乱軍のリーダーであるバンホーと、その副隊長アキームだけはいまだ
眠りについてはいなかった。

「なぁ、アキーム・・・」
「なんですか?バンホーさん。」

「・・・帝国領内でノヴァと会ったよ。戦った。」
「・・・!!」
「お前は特に目をかけていたからなぁ。・・・強くなっていたよ。
・・・・安心しろ。死んではいない。戦いの途中でのろしがあがった。」
「だが、次に出会った時にはどうなるか・・・。」
バンホーは珍しく、力ない瞳で虚空を見上げている。戦いにおいて、たとえ敵で
あっても出来る限り血を流したくないと願っている彼にとって、かつての仲間との
戦いは、この上なくつらくて仕方がないことなのだ。

「バンホーさん・・・。」
「すまない、邪魔をしたな。さ、今日はもうゆっくりと休め。戦いは近い。」
「・・・はい。バンホーさんもあまり無理をなさらないよう。」

バンホーが去っていったその後、アキームは一人薄明かりに物思いにふける。
どれほどの時が経ったのか、ふと顔をあげ星も月もない地底の夜空を見上げながら、
彼は、かつてかわいがっていた部下の名を呟いた・・・。

「・・・・ノヴァ・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
闇の中、パキパキと不気味な音をたて、“ソレ”は変化しつつあった。
見つめる指先は野獣じみて鋭く尖り、体色は黒と灰の混じった褐色へと
変わっていく。額が赤く輝き、星型のアザが数点、浮かび上がる。

「・・なんだよ?どうしたんだよ?オレの体・・・!?」
うずくまり、震える。答える者のない問い。

「怖いよ。アキームさん・・・ バンホーさん・・・・・」
求める。助けを。誰に?

「・・・・怖いよ・・・・・」

夜の闇を覆うさらなる漆黒の中、ありとあらゆる全てが変わり始めた。
ノヴァのそのかぼそい呟きは、大海に浮かんだ小さな泡のように儚く、
無情に、かき消えていく。

一夜にして、地底都市は大いなる変貌を遂げた。
いや、変貌ではない。それは ――――“転生”―――――

夜の闇にさらなる深い闇が重なっていく。そして、蠢く。轟く。
大地が、岩がきしみ、不気味な瘴気を撒き散らしながら鳴動する。
肉の裂ける音、骨の砕ける音、血の滴る音、それらは痛みである。
全てのものが、生まれ変わるために必要とする痛み。
耐えがたき苦痛を代償に、人は魔に、竜は魔竜に―――――――
―――忌むべき存在へと姿を変えた。

それは、はるかなる異界にて、滅びたはずの魔の都――――――
我々の科学文明とは異なる“魔法”と呼ばれる文化を育む異界の人々は、
その存在に、伝説に、畏敬の念を込めて、ふさわしい名を授けたという。

その名は ―――――――“魔界”―――――――
439ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/16 23:27:21 ID:mSsV0Woj
今回分の更新終了です。7レス程度で終わると思っていたのですが、
行数が多すぎて、思ったより長くなってしまいました。すみません。
ようやくこの話にまで到達できた、といったところです。長かった。
次回更新はまた少し間があくと思いますが、よろしくお願いします。
第二部のサブタイトルは、「のび太の滅びの魔都」です。

また、ヤムチャスレは時折読んでますが、作品を投下したことは
まだありません。「最後の戦い」は別の方だと思われます。
440ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:04/09/16 23:29:58 ID:mSsV0Woj
>>434
>全員ダウンして、そのまま完結
えっと、何度か頭をよぎりましたが、なんとか思いとどまりましたw
441作者の都合により名無しです:04/09/16 23:39:14 ID:AC+okbAF
うみにんさん乙です。
最後の大転換が書きたかったのですね。いよいよ、2部の本当の幕開き!
と思ったら、少し空きますか。うーん、残念ですがここ最近凄かったから
仕方ないですね。でも、なるべく早いご復帰をお待ちしてます。

フンコロガシさん、いろいろ言われてるみたいですが、頑張って下さい。
私は今回分楽しく読みましたし、応援もしてますよ。
いい意味での「裏切り」を期待してます。完結は絶対させて下さいね。
442作者の都合により名無しです:04/09/17 00:08:06 ID:I/Oi2inO
うみにんさん、フンコロガシさん乙です。
うみにんさんしばらくお休みか。少しショック。
443作者の都合により名無しです:04/09/17 00:09:53 ID:R5pXaqeM
出来杉凄い展開になってきたな
444ふら〜り:04/09/17 00:34:49 ID:mzlmrjuh
>>NBさん
む、遂にギャンザが戦いますね。筋骨隆々で大口叩き、とくれば噛ませ犬の条件が
キッチリ整っているのでヤバそう。でも「ぎりぎり合格」ではある、と。はてさて?
今回のヒットは支離滅裂色のクワガタムシ……首を切るクワガタ刃。想像すると、もぉ。

>>サナダムシさん
そうでしたそうでした! シコルの得意分野は指の力、そこに指取りの本部な訳ですから、
実はシコルにとって相性のいい相手だったと。で……ボコボコに評しながらも「好き」
だと断言したしけい荘を、見事守り抜いたシコル。おめでとう、本当にカッコいいぞっ!

>>ユルさん
いつもながら、内容は結構シビアというかエグいというか、なのに文章は詩的ですね。
描写が克明というのとは少し違う、けど頭の中に次々と絵が描かれていくるような。
キャラについては解らない(知らない)ところもありますが、じっくり読ませて頂きます。

>>うみにんさん
ラスボスその他のことが少しずつ明かされて、決戦への足音が聞こえてきましたねぇ。
しかも過去との比較でキッチリ『難敵認定』されている。気が引き締まります。……と
思ってたら、スネ夫とジャイアンがやってくれました。こういう足払いは好きですよっ。

>>フンコロガシさん
再開再会にホッとしてます。まだ物語は幕が開いたばかり(ですよね)、頑張って下さい!
で。なるほど……こういう遡り話はいろいろ見ましたが、記憶や能力の設定が微妙ですね。
短時間でも戦闘力二倍なら、悟空に勝てる可能性は大かも。それで勝った後……どうなる?
445作者の都合により名無しです:04/09/17 01:12:20 ID:IDVeFsmR
>うみにん氏
連日更新乙!決戦前にあわや全滅かw恐るべしジャイアンだな。
これまでの流れが全部最後の魔界のための伏線になってたんだな。
最初から計算してたのか。ちょっと読み返してみるわ。
446ドラえもんスレの住人:04/09/17 01:56:05 ID:LcrLbYa/
>うみにん氏
更新乙です。
魔界ですか・・・かなり設定きついですよ・・・
大長編の魔界はもしもBOXで作った魔法の世界にあった世界です。
つまりのび太の魔界です。あの世界の魔法は大体「チンカラホイ」で構成されています。
(のび太とドラえもんはチンカラホイが魔法の合言葉だと考えていたと思えます。)
もしも出木杉(大人)が作った魔界なら、それは狂気を超えている魔界になるかも・・・
よくよく考えると、静香、ジャイアン、スネオこの3人は魔界では、違う人物として書かれています。
つまりキスギーがもしもBOXで出したのなら、他の人物(ダブリ)が出てしまう危険性があるかな。
他の方法での魔界の出し方は・・・設定によりますね・・・美夜子さんもうまく出てくれることを期待します。
そしたらのび太、リルル、美夜子、静香の関系に注目することにしますw
447ドラえもんスレの住人:04/09/17 02:15:55 ID:LcrLbYa/
と書き込みしたらサブタイルは決まってますね。
となると「ある魔物」が使用したある方法くらいか。
そういえばあの魔物はのび太に倒されていませんね・・・期待大です。
がんばってください。
>315より

「二人とも、大丈夫?」
ドラえもんが心配そうに聞く。ドラえもんとプリムラが駆けつけたとき、幸いにも二人に大きな怪我はなかった。
少なくとも、見た目は二人ともピンピンしているとは言えないが、大事には至らずにすみそうだった。
「ごめん・・・私が子猫を見つけたから・・・」
プリムラが申し訳なさそうに言った。
「何言ってんだよ。俺が勝手に落ちちまったんだから、誰のせいでもないよ。
むしろ俺のせいでのび太まで巻き込んで落ちたんだから、俺がのび太に謝らないと」
「まあまあ、いいじゃない。ぼくも稟さんも無事だったんだし・・・」
そう言って立ち上がろうとするのび太だったが、その瞬間、足に激痛が走る。
「あいたたた!あ・・・足が・・・!」
「おい、のび太、大丈夫か・・・うっ・・・!」
稟も顔を歪める。見ると、稟の腕は折れてしまったのか、痛々しく腫れ上がっている。
「た・・・大変だ!二人とも、ちょっと待ってて!<お医者さんカバン>!」
おなじみの道具を取り出し、二人の治療を始めるドラえもん。
応急処置が終わって、ドラえもんはため息をついた。
「とりあえずそこまで大した怪我じゃなかったけど・・・すぐに帰ってちゃんと治療したほうがいいね」
「そうだな・・・いてて・・・」
苦しげに顔を歪めるのび太と稟。お医者さんカバンで応急処置は出来たものの、
痛みまでは消すことは出来ないのだ。
そんな二人を、プリムラは沈痛な顔で見つめる。そして―――なにかに突き動かされるように、
二人の前に手をかざした。
「プ、プリムラ、何を・・・?」
のび太が言いかけたとき、プリムラの手から光が放たれる。その光に包まれた瞬間、
のび太と稟の痛みが急激に和らいでいく。
そして光が消えたとき、二人の怪我はすっかり治っていた。
「・・・痛く、なくなったみたい・・・」
「い、今のは・・・ひょっとして、治癒魔法か!?」
「魔法!?・・・今のが、ですか?」
驚くのび太とドラえもん。二人とも、魔法の存在は話に聞いていたが、実際に見たのは初めてだった。
その力は、まさに魔法と言うほかない。一瞬であれだけの怪我を治してみせたのだ。
「ああ・・・けど、いきなりどうしたんだ?今まで、プリムラは全然魔法が使えなかったのに・・・」
稟の問いかけに、プリムラは答えた。
「分からない・・・ただ、二人が苦しんでるのをなんとかしたいと思ったら・・・出来るような
気がしたから・・・」
「そんなんでいきなり出来るもんなのかなあ・・・」
訝しがるドラえもんとのび太だったが、稟は多少は納得しているようだった。
「魔法っていうのは、使う本人の感情で制御するものらしいんだ。プリムラは俺たちを助けたいと
強く願った。それが魔法を制御するきっかけだったのかもしれない。元々、魔力自体はとんでもない
ものがあったんだからな」
「うーん・・・よく分かんないけど、とにかくプリムラが助けてくれたってことでいいんだよね」
「ああ、そうだな。細かいことは抜きにして、プリムラに感謝しなくちゃな」
「わ、私はそんな・・・」
「ほらほら、そんな謙遜しないで。二人とも感謝してるんだから、照れなくていいじゃない」
素直に自分なりの感謝の想いを口にするのび太と稟。そしてドラえもん。
恥ずかしそうに笑うプリムラ。
―――そんな彼らを冷めた眼で見つめる存在があった。
「ほう・・・まさかあの小娘が、こうも早く魔法制御に成功するとは。あのガキどもと
青ダヌキには感謝せねばなるまいな」
その男は物陰から三人の行動を監視していた。アザミが放った密偵である。
「早速、アザミ様とグロキシニア様に報告せねばなるまい」
くっくっく、と声に出さずに笑う。
「いよいよ、アザミ様たちが世界を制する時が来た、ということか」

のび太たちはまだ知らない。自分たちがこれから巻き込まれる大事件を。
奇しくも迷い込んだこの世界で、彼らは毎度の如く大きな流れの中に巻き込まれていく。
―――プリムラが初めて魔法を使ったあの日から、二日後の夕方。
のび太たちいつもの五人に稟、プリムラを加えた七人は、芙蓉家で談笑していた。
他愛のない話で盛り上がる子供たち。それを見守り、時には自分から話題を振ったりもする稟は、
さしずめ元気な弟たちの世話を焼くお兄ちゃんといったところだ。
あまりにもありふれた、どこにでもあるような風景だったが、全員実に楽しそうだった。
その時。まるでその空気を遮断するように、チャイムの音が鳴った。
「あれ、誰か来たみたい」
「ちょっと出てくる」
いつものように、何気ないふうに稟が玄関に出て行く。突然の訪問者は神王、魔王、そして―――
「―――今晩は、土見稟さん」
「あ・・・あなたは・・・」
神王と魔王と共にいたのは―――神族の研究者、アザミだった。
「少し大事なお話がありましてね―――突然ながら、参りました」
「大事な話・・・?」
訝る稟。よく見ると、神王と魔王も、いつになく真剣な表情だ。いつもは出会ったハイテンションで
飛ばしまくる二人が黙り込んでいるというだけで、そこはかとなく身が引き締まる思いだ。
「分かりました。立ち話もなんですから、リビングにでも」
「ああ・・・そうさせてもらうぜ。・・・ガキたちも、みんないるのか?」
「ええ、みんなして遊んでます」
「そうか・・・みんないるんだね。・・・プリムラも、いるんだね」
「ええ、すっかりみんな仲良くなったみたいで」
神王と魔王はそれを聞いて、更に表情を険しくする。それはまるで―――罪悪感と責任感に押し潰されそうに
なっているのを、無理にこらえているようだ。
その中でただ一人、まるで表情を変えないアザミの存在が不気味だった。
リビングに四人が入っていくと、途端に子供たちの視線がそっちに移った。
「あ、神王さんに魔王さん。・・・あれ、その人は・・・」
アザミに全員の視線が集中する。それを受けてアザミは自己紹介した。
「私はアザミ・・・そちらの眼鏡の少年とは、一度お会いしましたね」
「は、はあ・・・」
のび太は曖昧に頷く。相変わらず彼女の持つ冷たい雰囲気は変わっていない。
「まあ、私のことはいいでしょう。それより、大事な話があります。あなたたちも無関係では
ありませんから、聞きたければこの場にいても構いません」
「大事な話・・・?おっちゃん、なんの事なんだ?」
ジャイアンが神王に尋ねる。神王は一瞬言いづらそうに唇を噛んだ。
「―――私が説明します。失礼ながら神王様も魔王様も、こんな話をするには優しすぎる
方ですから」
アザミがそれを取り繕うように話し始めた。
「実はプリムラが、やっと魔法を使えるようになったという報告がありましてね・・・
そうなんですね、プリムラ」
その視線を受けて、ビクッとプリムラは震える。元々彼女はアザミに対して恐怖感を抱いていたのだから、
この反応も当然かもしれない。
そんな彼女をかばうようにして、のび太と稟が代わりに答える。
「ええ、そうなんです。俺たちが怪我したのを、助けてくれて・・・」
「そうそう、すごいんですね、魔法って!」
言い連ねる二人を制して、アザミは続けた。
「そう・・・。やはり本当だったんですね。それなら、私の用件は一つです」
そして、彼女は―――それまでの、そしてこれからも続くはずだった日常を―――たった一言で
壊してみせた。
「プリムラは研究所に帰ってもらいます。―――二度と、ここには戻ってこれないでしょう」

453サマサ ◆2NA38J2XJM :04/09/17 03:01:39 ID:kKiBt80D
第二部第二話、こんな夜中に投下です。
ここに来て、ようやく話が転がりだしたかんじです。
前振り長すぎたかも・・・。
さて、日常編はそろそろ完結。冒険編へとそろそろシフトしていきます。

454作者の都合により名無しです:04/09/17 18:28:30 ID:kABhmjDZ
>サマサさま
プリムラが健気で、そしてどこかはかなげでいいですね。
いよいよ、「邪悪な感じ」のものが本格的に動き出した、という感じですね。
日常編で、個々のキャラを読み手に把握させておいて、いよいよ冒険の始まりですか。
プリムラたちにどんな運命が待ち受けているのか?
そしてドラえもんたちがどうその運命に関係して、立ち向かっていくのか?
いよいよ本番って感じで、すごく期待してます。頑張って下さい。


455作者の都合により名無しです:04/09/17 19:49:19 ID:FZJSfWPG
↑キモっ!
456作者の都合により名無しです:04/09/17 21:09:16 ID:AkLuVOm8
・ドラえもん のび太の神界大活劇
このボリュームで前ふりかよ!すごいな。
元ねたゲーは知らないけど、個々の個性が出てていい雰囲気と思う。
いよいよ、冒険編のスタートか。
またーりしてた今までの中でも、どこか感じてた「危うさ」が
どう展開されていくのか。魔法はどう絡むかが楽しみだ。ガンバレ。
457作者の都合により名無しです:04/09/17 22:11:23 ID:I/Oi2inO
サマサさん、お疲れさま!
今から考えると日常編、これから始まる冒険編への
大いなるオープニングって感じがしましたね。
そして「魔法」のキーワード。ファンタジーロマンの
香りがしてきます。更新、これからも楽しみにしてます!
458精液:04/09/17 23:13:06 ID:kABcLb5D
確かに、日常編はこれから始まる冒険編のオープニングって感じでしたね。
魔法というキーワードがどう顔を出してくるのか。
ワクワクしてきますね
うんち漏れそうでしたよ!
459作者の都合により名無しです:04/09/18 00:03:46 ID:u2zb0snP
今日はSS来ないのかな
460作者の都合により名無しです:04/09/18 01:25:00 ID:pOOl0mLS
今日は過疎ってるな…。
うみにんさん、NBさん、フンコロガシさん、期待してます。

サナダムシさんとサマサさんはヤムスレに移籍するそうですね。
頑張って下さい。
461作者の都合により名無しです:04/09/18 02:35:00 ID:Ze2ml/d4
突然ですがバレ氏にお願いがあります。
実は先月辺りからお題スレの管理人がいなくなってしまったようで、
おかげで補完がされなくなってしまいました。
せっかくVS様や1985様などが参加してくれたのに消えてしまうのは少々惜しいと思っています。
多忙である事は知っていますが、是非一度、お題スレの補完を検討してみてはもらえないでしょうか?
462作者の都合により名無しです:04/09/18 06:47:35 ID:/8h/U3nu
>>461
余計なこと言うな。
んなこと言われるとバレさん、人がいいから断れないだろうが。
お題スレのことはお題スレで処理してくれ。
463作者の都合により名無しです:04/09/18 08:16:33 ID:YrQ6Y+Ta
サマサさんのキャラクター、ドラえもんやプリムラを筆頭にかわいいけど、
少しずつシリアスになってきましたね。冒険編、期待してます。
460とかは気にしないで下さいね。
464作者の都合により名無しです:04/09/18 18:10:14 ID:qvMJWbth
SS期待age
358から

―――夜はとっぷりと更けていた。
トレイン一行は宿の一室に集まり、例の賞金首について話し合っていた。
「で、さ。この資料があれば結構楽にコイツを捕まえられると思うんだけど」
リンスが、ベルゼーからトレインに渡された筈の資料をちらつかせてテーブル向かいのスヴェンに意見した。
「オレは嫌だぞ」
その右に座るトレインはふて腐れて毒づいた。何せこの女、帰った途端に根掘り葉掘り訊く振りしてあっという間に掏り取ったのだ。
…彼女が言う所の「儲けの匂いは逃さない」とか何とかの才能をただただ怨む。
そんな物が無ければ連中の思惑に乗らなくて済むのに。
そう、“連中”。この町に来たのはベルゼーだけではなく、まだ居るのだ。
その証拠に、ベルゼーは「我々」と確かに言った。
「……その前に、一ついいか?」
スヴェンが神妙な面持ちで切り出した。

「結論から言おう。お前クロノスでどんなポジションに居た?」
トレインにとってその言葉は正に寝耳に水だった。慌ててスヴェンに顔を向ける。
「な、な……何だよいきなり。何でそんな事今更……」
実際隠し事が有る故か、悪戯を咎められた子供よろしく狼狽した。
「……なあ、“お互いの事は訊かない”がルールだけどな、こればっかりは訊きたい。
 お前、クロノスに居たと云ってたがどんなポジションに居たんだ? ……訊くのは勿論訳が有る。
 どこの情報屋がこの“道”とやらの資料まで持って来れる? そして何故お前に提供する?
 しかも、例のクリードの名前まで有る。そして、最終的に言って……」
リンスから資料を取り、テーブルの真ん中に置いた。
「……この情報の殆どが、金払って得られるモンじゃない。下手すりゃ“世界の”クロノスの粛清を食らうしな。
 ……とすれば、可能性は一つ“この情報を有効利用出来て、且つ口が固い奴”だな」
正に正鵠、グウの音も出なかった。
しかし言える訳が無い、秘匿戦闘部隊「時の番人(クロノナンバーズ)」の一員だったとは(何せ探るだけで粛清の対象だ)。
大体何故ベルゼーはこの事態を想定せず自分に協力を求めたのか。……頭に重いものがのしかかる。
「…暗殺者だったんだって、そいつ。それも凄腕の」
不意にリンスが切り出した。
「あの気狂いに聞いたから間違い無いわ、クロノスじゃ相当の使い手だったそうよ。
 ……だからいいでしょ、この話は。どっちにしろコイツがコイツだって事に変わりは無いんだから。
 今は過去より未来の話がしたいんだけど、アタシは」
ぶっきらぼうに言い放つ彼女の言葉は正解ながらも核心を反らしていた。そして、意外にも優しかった。
「だがな…」
「もういいっつってんでしょ! いつまでも男がグジグジ言ってんじゃないわよ!!
 理屈っぽい上に絡む男は嫌われるわよ!! この話はもう無し、いいわね!!」
意外とも言える剣幕にスヴェンは気圧された。 

勿論彼女はクロノナンバーズの事など知りはしない。ただ、トレインがしょげ返るきっかけを作った事に
罪悪感を感じていただけなのだが、それは結果トレインを、そして全員を助けていた。
「とにかく、今はこのアフロを捕まえる事に専念しましょ。…七百万イェンは魅力的だもの」
――仕方ない。その気持ちを溜息として吐きだし、スヴェンはその話を絶った。……だが、
「リンス、俺はやるとは言ってないぞ」
彼女の「一気に流れをやる方に持っていく作戦」もついでに断ち切った。

「―――大体だ、コイツよりも今の状況の方がヤバいんだ。雉も鳴かずば何とやら、潜むに越した事はないさ。
 それにその、道士って奴になってるなら一層危ない橋じゃないのか?」
スヴェンはジパングの故事を持ち出してやんわりと突っぱねた。
これ以上に無い正論だ。トレインは密かに心で喝采を送る(ついでに追加ボーナスの件を言わなかった自分にも)。
リンスは朝と同様しおれた。しかし――
「……わたしは、捕まえたい」
トレインの驚き、リンスの喜び、そしてスヴェンの非難の視線がイヴに殺到する。
特にスヴェンの隻眼は「余計な事言うな」と雄弁に物語っていた。
自分が二周りくらい小さくなった気がしたが、それでもなんとか言葉を紡ぐ。
「わたし、このひと許せない。わたしの時でも、こんなひどいことしなかったもの」
自分が「死の商人」トルネオ=ルドマンの所に兵器として居た時、性能を見るためと称し何人も殺した――いや、殺させられた。
但し、あくまで一瞬で。精密に、正確に、迅速に、苦痛を感じる間も無く。…時には命令に反してでも。
それが、彼女のそこでの最高レベルの自己主張であり、洗脳でも消せぬ根底の慈悲だった。

しかしギャンザの殺しはそれとは違う。
写真を見れば、手足の損傷が激しく、腹、顔、胸に無数の刺し傷があった。
人間の急所を熟知するイヴには判る―――被害者の苦しむ様が手に取る様に。
何より、責め殺す事に悦びを感じるこの卑劣漢の歓喜が。
死体から伝わる不愉快な悪意に、イヴは憤りを覚えていた。

「―――駄目だ」
やはりスヴェンの言葉は冷たかった。だが、声のトーンが視線の感情と一致しない事に気付く。
冷たくは有る、しかしどこか優しい。例えれば、なだめる様な。
「わたしの時」という台詞、そして平然と死体の写真を眺めるイヴが、スヴェンは少々悲しかった。
「…こいつが何で女子供中心に狙うか判るか?」
ギャンザの写真をテーブルの真ん中に置き、三人に示す。
「見ろよこの頭、髪で大きく見せるのは多くが自分の内面に対する虚勢だ。……さぞ怖がりだろうに。
 この強面もだ、整形して目を吊り上げてる。……戦い無しでただ勝ちたい、って感じかな。
 そしてこの体、その辺のチンピラにも負けそうな程ヒョロヒョロだ。……性格がこうならガキの頃はイジメにでも遭ってたろうな。
一つ一つ指し示しながらの解説は、現役の心理分析官並だった。全員が思わず舌を巻く。
「まとめて言うと、“根性無しのへっぴり腰。その癖他人を圧倒的に虐げたい”ってとこだな。
 さて、後になったが…女子供を狙う理由だ」
そこで煙草を咥えた。火を点けないのはイヴがいるからだろう。
「ま、云うまでも無いかもしれんが………仮初めでも何でも自分の強さを証明したいんだろうな。
 被害者が苦しんでる間がこいつの至福。それをなるべく長くするためにじわじわ殺る……
 でも、普通の大人じゃ返り討ち―――だったらもっと弱いのを、と言う事さ」
スヴェンは嘆息した。分析は自分の特技だが、こんな人間の屑のために披露するのは流石にうんざりだ。
「…イヴ、こんな奴と自分を一緒にするな。それに―――」

不意にスヴェンの解説が止まる。当然聞き惚れていたイヴの意識も覚醒した。
「…スヴェン?」
「ン」の時点でスヴェンは彼女を弾かれた様な速さで抱きかかえる。
その行動にイヴが驚く間も無く、先刻までスヴェンの居た席の後ろの壁が爆発したかの如く吹き飛んだ。
リンスは一瞬でテーブルを倒して全員を守る盾にする。
トレインは椅子をそのままに愛銃ハーディスを連射した。
スヴェンもイヴを抱えたまま手首に仕込んだ予備銃(バックアップ)を壁の向こうに撃ち尽くす。
―――三人の挙動は示し合わせた様に淀み無かった。それこそ銃の機構の様に速やかに正確に。
やがて、舞い散る破片は皆落ちた。
そして、スヴェンの銃から落ちた最後の薬莢が床で乾いた金属音を立てて転がり、止まる。
言い知れぬ沈黙が場を支配する。
「……クソ検察の野郎とまるきり同じ事言いやがって」
壁の大穴の向こうの部屋は暗い、電気を点けていないのだろう。だが、発せられた声は重油の如く粘ついて重い殺気でなお暗い。
「手前ェ、元犬ッコロ(警察)だな? 気に入らねェ匂いがプンプンしやがる」
現れたのは、アフロの巨漢。撃たれたにも関わらず傷一つ無い体躯は写真とまるで違うが、凶相は間違い無くギャンザ=レジック本人。
その凶相がリンスとイヴを見て醜く歪む。
「……いいねェ、写真通りの気の強そうなツラだ。おまけに大した上玉ときてやがる……せいぜい長生きしてくれよ」
吐き気催す下卑た評価だった。イヴは怒気満面に睨み付ける。
しかし、リンスは違った。いかにも会うんじゃ無かった、と言う顔をしている。意外にも失望で。


―――同刻。無人の夜の街を歩く男が一人。
「……ああ、奴の方から接触した」
朝とは違い、黒いナンバーズの制服に身を包んだベルゼーは受信機を見ながら携帯電話に話し掛けた。
…封筒に仕込んだ盗聴発信機はフィルム並に薄いので絶対に見つからず、且つ高性能だ。
受信機から伸びるイヤホンから部屋の会話、挙動、状況に到るまで筒抜けだったのだ。
「………いや、いい。こっちには私が行く。……何? おい、待て! そんな事は…!!」
彼の語彙が荒くなるより早く、受信者は通話を切った。
何てことだ、と急いでリダイヤルを押すが、既に電源を切られていた。
ベルゼーは肩を落とす。
…トレインには悪いが切り替えと効率が大事なのだ。まさかたった一人の道士に構い過ぎる訳にもいくまい。
止む無く彼はトレイン達の宿とは別方向に歩いていった。
――正直気が重い、アレとトレインが会ったら最悪殺し合いだろう。
あの資料も、状況次第では一行皆殺しの口実になるのを承知で渡した物なのだ。
「…くれぐれも軽率な真似は謹んでくれよ」
誰に言うでもない言葉が夜の闇に吸い込まれ、消えた。
どうも皆さん。
今や国際的に有名なネコが大活躍するスレで国民的大迷惑ネコの話を書くNBです。
今回やっつけです、済みません。
推敲はしたのですが、どこかおかしい所が有るかも、です。

さて、今回で第二話「道士」は終了です。
次回は第三話「二局」を乞う、ご期待!
……説明はもうヤダ…
471作者の都合により名無しです:04/09/18 22:06:56 ID:GKxBNH2z
過度なエロシーンは不評の場合が多いからな今まででは。特に無駄たと判断された場合
もちろん展開上のことも合わせてのみんなの判断だろうが
フンコロガシ氏のはまだ読めてないのでなんとも言えませんな
472バレ:04/09/18 22:47:56 ID:fEhJ6hl8
少年漫画板で移動してからもうすぐ一年。早いものですね。

>>AnotherAttraction BC
第二話終了お疲れ様です。やっつけというのが少し残念ですが。
今回はスヴェンの分析が面白かった。こういう論理立てて分析するシーンは好きです。
でもクソ検察とスヴェン双方に心理分析されたギャンザは気分良くないでしょうね。

あとサイトの画像ですが、私は原作を全く知りませんので、NB様のSSの雰囲気から
作ってみましたが、イメージが違うようなら言って下さい。


>>461
ちょっと様子を見させて下さい。
スレが出来た当初ならともかく、今は管理人がいる状況。
私にその方を差し置くことは出来ません。
ここしばらくサイトの更新が無いという事ですが、他のまとめサイトを見る限り、
一ヶ月位更新が空くことはザラのようですし、何か事情もあるのかもしれません。

ひとtまず1〜2週間ほど様子を見て、全くサイトに動きが無いようでしたら、
『管理人が出てくるor復帰するまでの代理』として動かさせて頂きます。
それまでは只の「ROM兼たまにSS書く人」としてスレに参加させて下さい。
(何を投下したかはヒミツです)
473作者の都合により名無しです:04/09/18 23:48:58 ID:mE7EHjCh
バレさんええ人や。
無理することはないですぜ。
474超格闘士大戦:04/09/19 00:17:48 ID:sfNe1PrS
>>169の続き

475超格闘士大戦:04/09/19 00:25:06 ID:sfNe1PrS
東京を急襲した死刑囚達は、バキ達地下闘技場闘士の活躍によって倒れた。
さらなる戦いの地、中国へ旅立つバキ、烈。
舞台は変わってオーストラリア。この地上最悪の戦場で闘い続ける2人の戦士がいた…


第2部開始。
476超格闘士大戦:04/09/19 00:37:08 ID:sfNe1PrS
第15話「滅びの大陸に現る武士達」

南半球に位置し、日本の21倍の面積を持つ国、オーストラリア。
グレートバリアリーフやコアラ、カンガルーといった世界に類を見ない壮大な自然景観と
多種多様な珍しい動物達の楽園…。
そしてオリンピックを成功させ、活気に溢れるシドニーなどの近代都市。
自然も都市も楽しめ、1年中観光客の絶えない裕福な国。それがオーストラリア。
そう、1年前までは…。
かつてサンゴが輝きを発していたきれいな海も、カンガルーが跳ね回っていた草原も、
活気に溢れていた都市も、今は存在していない。
あるのは草一本生えていない砂漠地帯のみ。コアラも、サンゴも、人間さえも死に絶え
この世の地獄と化したかつての楽園。それが今現在のオーストラリアの姿。
1年前、オーストラリア大陸の砂漠地帯に突如巨大な竜が現れる。
その名は冥竜王ヴェルザー。彼が大陸中に放ったモンスターは、群れをなして各都市を襲撃。
瞬く間に都市を、草原を、そしてその場に住む全ての生き物を灰へと変えていった。
モンスター軍団の圧倒的な物量と、攻撃力の前に救援に来た各国の軍隊はことごとく壊滅。
大陸はヴェルザーの支配下におかれてしまう。その後、突如現れた謎の剣士によって
ヴェルザーは倒れる。が、指揮系統を失ったモンスター軍団は大陸に留まり、破壊活動を繰り返していた。

首都、キャンベラのあった地点。そこには廃墟と化したビルを使用した簡素な基地が建設されていた。
今も尚大陸に留まり、かろうじて生き残っている人々を苦しめているモンスター軍団残党に
対抗するべく、各国の軍隊の生き残りが集結しているのだ。
そのキャンベラから数キロはなれた砂漠地帯…。
キャンベラからの救援要請を受け、現地へと向かっている2人の戦士がいた。
自称勇者の家庭教師、アバンとその弟子のポップである。
477超格闘士大戦:04/09/19 00:39:46 ID:sfNe1PrS
見渡す限り続く灼熱の砂漠地帯に、うっすらと残る道の跡。
かつては大陸を縦断していた主要道路の痕跡だ。
シドニー、キャンベラ等の主要都市をつないでいたいわばライフラインである。
しかし、今ではうっすらと残る道の輪郭と、アスファルトのかけらしか残っていない。
巨大なモンスター軍団は、街や自然だけでなく人々の生活の糧全てを奪いさっていったのだ。
魔物の物と思われる、奇怪な骨がゴロゴロと転がっているその道の跡をそうように
かつての首都、キャンベラ方向へ向かって歩く2人の男。
 「先生、キャンベラにはまだ着かないんですか?俺喉カラカラですよ〜」
緑色の法衣を纏った見習い魔法使い、ポップ。共に歩く、師であるアバンに悪態をつく。
頭に巻く黄色のバンダナがトレードマークの明るい、悪く言えばお調子者の少年である。
師であるアバンに作ってもらった立派な法衣を身につけているものの、外見だけ見ると頼りない。
まさに見習いという感じである。
 「もうすぐですよポップ。水はさっき飲んだばかりでしょう。私のを少しあげます。
  これで我慢なさい。のろのろしてると、また魔物達の襲撃を受けることになりますよ」
ポップの師であるアバン。貴族のように高貴な外見を持つ、自称勇者の家庭教師。
この1年あまりの戦乱で、家や家族を失った子供を引き取り、勇気と力に溢れた青年に
育て上げていく活動をしているという。弟子であるポップも、戦乱で親を失い、アバンに引き取られた口だ。
最も、その活動内容は一部の人間にしか知られておらず、世間一般からはただの怪しい男という
烙印を推されており、引き取った孤児の人数はポップただ1人であった。
持っている革の小さなバックの中から、銀色の小さな水筒を取り出すと、アバンはそれをポップに差し出した。
受け取ると同時に水筒の蓋を開け、中の水をガブガブと飲み始めるポップ。
「魔法」を使えるとはいえ、身体能力は普通の人間とたいして変わらない。
この灼熱の砂漠を何時間も休憩無しに歩くのは、ポップにとってつらいものだったのだろう。
 「仕方ない…。もうすぐ日も暮れるし、ここらでキャンプを張るとしますか…」
そう言うと、アバンは近くにある少し大きな岩に向かって歩き出した。
478超格闘士大戦:04/09/19 00:43:10 ID:sfNe1PrS
「先生、その岩の日陰の部分にキャンプを張るんですね!俺も手伝います!」
やっと訪れた休息の時。疲労の限界に達していたポップが、喜びに満ちた明るい声をあげた。
その直後…
アバンに向かって歩き出そうとしたポップの周りに、巨大な影が空から包みかぶさった。
近くに障害物はないはず…。奇妙に思ったポップが、くるくると首を回してまわりを見る。
 「ポップ!その場からすぐに離れろ!!」
20メートルほど離れた地点にいるアバンの叫び声が、ポップの耳に入る。
と同時に耳に入ってきたバサッバサッという音。真上から聞こえるその音の方へ、ポップは顔をあげた。
ペタンと腰をつく。そして叫ぶ。
 「ド…ドラゴンだぁぁぁぁぁっっ!!!」
腰を抜かして地べたに尻をつけているポップの真上。
口からヨダレを垂らしながら、翼を羽ばたかせている巨大なドラゴンがそこにはいた。
 「先生ッ!助けてください!!」
右手に持つ、マジカルブースターと呼ばれる小さな杖を振り回して、ドラゴンを威嚇するポップ。
震える声で、アバンに助けを求める。ドラゴンの目線はポップに向いたまま。
恐らくそうとうお腹をすかせているのだろう。カパっと開いた巨大な口からはヨダレが垂れ落ちて
砂漠の地面にどんどんしみこんでいく。顔を見せたドラゴンの鋭利な歯を見て、ポップはさらに声をあげた。
 「先生ッ!はやく来てくれよおッ!せ…」
アバンはすでに戦闘を開始していた。ドラゴンはもう一匹いたのだ。
口から火炎を吐き、アバンを攻撃するドラゴン。アバンは剣を抜き、向かってくる炎を振り払う。
ちらちらとポップのほうを気にはしているが、火炎の勢いが強くポップの援護には行けそうもない。
師のそんな様子を見て、ポップも覚悟を決める。腰が抜けて身動きの不自由な今、出来ることはただ一つ。
「魔法」である。震える右手を左手で抑えながら、マジカルブースターをドラゴンに向ける。
その動きに反応したドラゴンが、大口を開けて襲いかからんとした瞬間…
マジカルブースターの先っぽについている赤い宝玉から、巨大な火の玉が飛び出した。
 「火炎呪文(メラゾーマ)!!!!!」
479超格闘士大戦:04/09/19 00:46:28 ID:sfNe1PrS
ポップが得意とする、そして今現在習得している呪文の中で最強の呪文。
それがメラゾーマ。巨大な火の玉を作り出し、敵を攻撃する火炎呪文である。
マジカルブースターから飛び出した火の玉は、ドラゴンの上半身を全て飲み込んだ。
そして燃焼を続ける。苦しみを感じたのか、ドラゴンは翼を羽ばたかせるのをやめて
地面に降りはじめる。全長15メートルはあろうかという巨体が、腰をついている
ポップの目の前にドスンと落ちた。
 「これでダメなら終りだぜ…さぁ、ぶっ倒れてくれよ…」
自分に今出来る最強の呪文を繰り出した今、それが破られた時他の攻撃の手立ては無い。
業火に焼かれているドラゴンの上半身を見ながら、その身体がそのまま燃え尽きてくれることを
ポップは神に祈った。だが、その願いがかなうことはなかった。
 「グゴオオオオオオオオオオ!」と雄たけびをあげて、ドラゴンが勢いよく首を振りだす。
すると、燃えさかっていた炎がみるみるうちに消え去っていく。
「炎」を攻撃の主とするドラゴンというモンスター。当然、自らも炎の攻撃に対する耐性を身につけている。
並の火炎では、ドラゴンの堅い皮膚を焼き壊すことは不可能なのだ。
蛙を見つけた蛇のように、ポップを睨みつけるドラゴンの目は、赤く血走っている。相当ご立腹の様子。
ポップは正に蛇に睨まれた蛙状態。自分の最強呪文が全く通用しないという目の前の現実が
ポップの戦意を奪い、死への恐怖が身体を金縛り状態にしていった。
 「ポップ!」
もう一匹のドラゴンを倒したアバンが援護に向かおうとするも、時すでに遅し。
空腹感と怒りに耐えられなくなったドラゴンの口が、ポップの身体を飲み込もうと大きく開いた。

 「この国の動物は、少々行儀が悪いようだな…」
どこからともなく聞こえてくるつぶやき声…。ドラゴンを含めた、その場にいる誰もが声の主を探す。
少しして、キンッ…という金属音がした。甲高いその音を聞いて、ポップが我に返る。
目に入ってきたのは、目の前にいたドラゴンがドサッと倒れこむ様子と、続けざまに現れた
髭面の長髪中年の姿だった。
480超格闘士大戦:04/09/19 00:53:57 ID:sfNe1PrS
「この血なまぐさい感覚…。これこそが戦場よ…。自らを鍛えるため、この世の地獄である
 ここオーストラリアに本部以蔵、参った」
右手に日本刀を持ったその中年。自らの修行の為、オーストラリアを訪れていた本部以蔵だった。
数日前に大陸に到着し、アバン達と同じくキャンベラを目指していた本部が、偶然にもこの戦いの場に
通りかかり、命の危険にさらされていたポップを手にしていた日本刀で救ったのだ。
 「少年よ、大丈夫か?」
そう言いながら、本部は左手をポップに差し伸べた。ポップはその手をつかもうとしない。
 「どうした? 手を差し伸べなくとも、自分で立つ…と言いたいのかな?」
本部がそう言ったあと、ポップはすうっと右手をあげて前を指差した。手は…震えている。
指の差す方向…。丁度本部の真後ろにあたる。ぱっと振り返る本部。…言葉を失った。
ドラゴン、2度目の復活劇である。本部の日本刀の斬撃を受け、衝撃で倒れたものの
鋼鉄よりも堅い皮膚は、炎を通さないのと同様に日本刀をも通さなかったのだ。
「チエィッッ!!」両手持ちにした日本刀を、一気にドラゴンに向けて振りかざす本部。
その勢いもむなしく、名刀はドラゴンの皮膚の前にバリンッという音を立てて砕け散った。
刀身がすっぽりと無くなった刀を見て、あっけにとられる本部。
その身体を、ドラゴンの巨大な手のひらが包み込む。鷲づかみである。身体を包む物凄い圧力を前に
本部は成すすべがなかった。 「…あひいいいいいいいいいいいいいッッ」
あたりに本部のうめき声、そして圧力で折れていく骨の音が響く。
死ににきたわけじゃない…。こんな所で死ぬわけにはいかない…。身体を押しつぶされる
地獄の苦しみと、必死で戦う本部。襲い掛かる激痛に、思わず目をぎゅっとつぶる。
その時…
 「意外な所で会ったな、本部よ…」
またもやどこからともなく聞こえる声…。
その声を聞いた瞬間…目覚まし時計が鳴った直後のように、本部はぱっと目を開ける。
そして、その聞き覚えのある声が聞こえてくる方向にゆっくりと顔を向ける。
 「ゆ…勇次郎ォォォォォォッッッ!!」
本部を鷲づかみにしているドラゴンの頭の上。地上最強の生物、範馬勇次郎が仁王立ちしていた。

481ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :04/09/19 00:57:38 ID:sfNe1PrS
第2部開始。
投下する間がちょっと長くなってしまってすいませんでした。
482作者の都合により名無しです:04/09/19 00:58:49 ID:Xtt1tTJD
あれ? 14話じゃないの?
483ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :04/09/19 01:02:57 ID:sfNe1PrS
>>482
すいません。14話の間違いです。ご指摘どうもです。
484作者の都合により名無しです:04/09/19 01:04:29 ID:Xtt1tTJD
ども。
しかし本部は2部でもギャグキャラになりそうな勢いですね。
485作者の都合により名無しです:04/09/19 02:20:49 ID:4t+fBo4w
最初だけかよ、本部・・・。
「キャンベラにはまだ着かないんですか」という台詞がツボ。
486ヤムチャのお話 月と六ペンス:04/09/19 05:21:14 ID:gCxL6J2f
 東武東上線成増駅で電車を降りて、改札を抜けた。駅前の商店街でお土産を
買っていこうかと思ったが、ブルマの好物がなんだったのかよく覚えていない。
「あー、面倒くせー」
 ヤムチャはお土産をあきらめて、商店街を通り過ぎて先へ進んだ。川沿いの
道をしばらく歩いて交差点を右へ曲がると、白い大きなマンションが見えた。
オートロック式の正面玄関を蹴破って、エントランスホール右手のエレベータ
ーに乗って三階のボタンを押した。
「あー、俺もスーパーサイヤ人になりてーなー」
 ブルマの部屋は一番奥の312号室だった。「ブルマ工学研究所」の看板がか
かっている。小娘が何を生意気な、と悪態をつきながら、ヤムチャはインター
ホンのボタンを引っぱたいた。すぐにスピーカーから元気のよい声が返ってき
た。
「ヤムチャ? ちょっと待っててね」
 ドアが開いて、ブルマが姿を見せた。作業服とゴーグルという出で立ちのブ
ルマは、挨拶もそこそこにヤムチャを家の中に引っ張り上げた。
「ヤムチャに見せたいものってのは、これ! ジャーン!」
 元はダイニングだったに違いない20畳の空間は、最新テクノロジーを完備し
た工房に改造してあった。ブルマが差した先には、得体のしれない大きな鉄の
塊が鎮座していた。
「何これー?」
 ヤムチャがロクに興味もなさそうにブルマに尋ねると、ブルマは両手を腰に
当てて大いばりで答えた。
「ふふーん。何だと思う?」
「きつねうどんー」
「残念! タイムマシンでーす!」
 ブルマはリモコンのボタンを押して、タイムマシンのハッチを開けた。座り
心地のよさそうなシートと、シンプルなコンソールが見える。どうやら一人乗
りらしい。
487ヤムチャのお話 月と六ペンス:04/09/19 05:22:06 ID:gCxL6J2f
「一応動物実験はすませたんだけど、栄えある人体実験第一号はヤムチャにし
てあげようと思ったの。ヤムチャ、ニッポンの歴史に興味があるって言ってた
でしょ?」
「ふーん」
 ヤムチャは大して感動もせず、なんとなくコックピットに乗り込んだ。マン
ションの最寄り駅は成増だが、ヤムチャ達が今いるここは日本ではない。じゃ
あどこなんだと言われると、それは何だかよく分からない。
「俺、タイムマシンの免許なんか持ってねーよー」
「免許なんていらないわよ。難しいことは全部コンピューターが制御してくれ
るし、いざとなったら私が遠隔操作できるようになってるから」
 ブルマがハッチを閉めると、コンソールのランプに緑の光が灯った。天井の
スピーカーからブルマの声が聞こえてくる。
「ニッポンの江戸時代に飛ぶようにセットしてあるから、後は出発のボタンを
押すだけ。さあヤムチャ! 人類初のタイムトラベラーになるのよ!」
「へーい」
 ヤムチャは鼻くそをほじりながらコンソールのボタンを押した。工房の空間
が一瞬歪んで、タイムマシンはブルマの目の前から消失した。
488ヤムチャのお話 月と六ペンス:04/09/19 05:23:17 ID:gCxL6J2f
 軽い振動があったが、それだけだった。ヤムチャはしばらくコックピットの
中でボケッとしていたが、これ以上何がある訳でもなさそうだった。いつまで
もブルマにつきあってやる義理もないので、ヤムチャは家に帰ってクソして寝
るつもりでハッチを開けて外に出た。
「攘夷じゃー!」
 鋼の棒切れがヤムチャの頭に落ちてきた。鈍い金属音がして、棒切れは真っ
二つに折れて地に転がった。棒切れは日本刀の刀身だった。
「痛ってー」
 ヤムチャはおでこをさすりながら正面を見た。浅葱色の羽織をまとった武士
が呆然と突っ立っていた。「近藤」と染め抜いた鉢巻きを巻いている。
「折れよったー!」
 武士は折れた日本刀の柄を握ったまま、わなわなと震えている。ヤムチャは
ドラゴンボール世界の住人なので日本刀など通じる道理がないのだが、そんな
事情は武士には分からない。同じく浅葱色の羽織を着たもう一人の武士がヤム
チャをじっと見て、言った。こちらは「斎藤」という鉢巻きを巻いている。
「お主、長州の手の者か?」
「えー? きつねうどんー?」
 武士はヤムチャの答えを吟味していたが、やがて顔色から殺気が消えてうや
うやしく頭を下げた。
「そうでござったか。いや、同士がとんだ勘違いをいたして、面目しだいもご
ざらぬ。近藤殿も謝って下され」
「絶対イヤじゃ! 攘夷がワシのアーバンスタイルなんじゃい!」
「謝れっつの」
 武士の右手がわずかに動いて、幾筋もの光の線が宙に走った。刀の折れた武
士の着衣が細切れになって風に吹かれて飛んでいって、全裸になった。
「どーもごめんちゃい」
 刀の折れた武士はヤムチャに向かって頭を下げた。
489ヤムチャのお話 月と六ペンス:04/09/19 05:24:05 ID:gCxL6J2f
「拙者、新撰組の斎藤一と申す。こっちの全裸は新撰組局長の近藤勇」
「俺、ヤムチャー」
 自己紹介もつつがなく終わり、斎藤はヤムチャに改めて詫びの言葉を述べた。
全裸の近藤は腕を組んで忍の一字である。
「どうですヤムチャ殿。和睦の意味を込めて、これから一局打ちませんか」
 斎藤はどこからか雀卓を取り出して席についた。全裸の近藤も空いている席
に腰を下ろした。冷たいシートが生のおケツに心地よかった。
「えーよー」
 江戸時代の日本に麻雀があったかどうかは疑問だが、ヤムチャにはそんな知
識も勘ぐりを入れるつもりもない。特にする事もないので付き合ってやること
にした。
「さてと、あと一人メンツが必要でござるが」
 斎藤は辺りを見回したが、死体と野良犬ばかりで目ぼしい人間は見当たらな
い。ヤムチャはブルマの言葉を思い出した。
『難しいことは全部コンピューターがやってくれるから』
 背後のタイムマシンを見た。タイムマシンは雲一つない青空の下、陽射しを
いっぱいに浴びて鈍い光沢を放っている。
「破ー!」
 ヤムチャはかめはめ波をぶっ放した。粉々になったタイムマシンの残骸をほ
じくり返して、四角形の鉄の箱を取り出して空席の上に置いた。
「メンツ揃ったー」
「ヤムチャ殿、こりゃ何でござるかな?」
「コンピューター」
「ま、よいでござろう」
 斎藤がOKを出して、これでメンツは揃った。いよいよ対局開始である。東一
局、親は全裸の近藤。ドラは四萬。
「ポンじゃ!」
 コンピューターの第一打、東を全裸の近藤がポン。
「それもポンじゃ!」
 ヤムチャの第一打、四萬も全裸の近藤がポン。早くも親のマンガンが確定し
た。
490ヤムチャのお話 月と六ペンス:04/09/19 05:25:15 ID:gCxL6J2f
「第一打からドラ切りとは、ヤムチャ殿もやりますなあ」
 斎藤が本気で感心したように言った。ヤムチャは得意気に胸を張った。
「カンじゃボケ!」
 五巡目、全裸の近藤は嬉々として四枚目の四萬をポンに横付けした。嶺上牌
をツモろうとした近藤の手を、コンピューターの無機質な声が遮った。
「ロン」
三五(1)(1)(3)(4)(5)(5)(6)(7)345
「チャンカンサンショクドライチ。マンガン」
「むがー!」
 吼え猛る近藤のもとどりが切れて、ざんばらになった髪が逆立った。全裸の
近藤はスーパー全裸になった。
「ははは。近藤殿は相変わらずタコでござるなあ」
 同士の受難を目の当たりにして、斎藤は春風のように優雅に笑った。東二局、
親は斎藤。配牌を取り終えた斎藤は雀卓の下で思わず拳を握った。
一六九(1)199東南北白白発
 斎藤の第一打、九索。四巡目に中、六巡目に九筒を引き入れて、国士無双を
テンパイした。場には西が一枚。
「いける!」
 同巡ヤムチャ、打七筒。
「ロン」
七八九(2)(3)(4)(5)(6)45666
「ピンフノミ。1,000テン」
 コンピューターのクズ手が炸裂した。東ニ局終了。斎藤は黙って手牌を崩し
て、ヤムチャの手牌を覗き見た。
二二(5)(5)(6)(6)223344西
「ヤムチャ殿は、どうしてそこから西を切らないのでござるかな?」
「迷彩ー」
「ぎゃおー!」
 斎藤の体が膨れ上がって羽織が破れた。マゲも乱れて総毛立って、斎藤もス
ーパー全裸に変身した。
491ヤムチャのお話 月と六ペンス:04/09/19 05:26:58 ID:gCxL6J2f
「近藤! 突撃ー!」
「うおー!」
 近藤と斎藤のスーパー全裸タッグが、ヤムチャに白刃を振り下ろした。斎藤
の刀はヤムチャに小指で弾かれてポキンと折れた。近藤の刀はとっくの昔に折
れている。
「ふん」
 ヤムチャは近藤と斎藤をコテンパンにやっつけて、コンピューターに呼びか
けた。
「ブルマー。帰るぞー」
 コンピューターのLEDが点滅して、スピーカーから怒った声が流れた。ブル
マの声だ。
「あんた、タイムマシンぶっ壊したでしょ」
「壊したー」
「なんてことしてくれんのよ! しばらくそっちで反省してなさい!」
 通信は途絶え、コンピューターはそれきりウンともスンとも言わなくなった。
近藤と斎藤は何となく事情を察したのか、気の毒そうな目でヤムチャを見つめ
ている。ヤムチャはコンピューターにアゴを乗せて、だるそうにつぶやいた。
「あーあ。腹減ったなー」
 ヤムチャはいつしか眠りに落ちた。スーパー全裸の近藤と斎藤も、互いに寄
り添うようにしてそっと目をつぶった。
 日本に維新の嵐が吹き荒れる、そんな時代のお話。
492ヤムチャのお話 月と六ペンス:04/09/19 05:56:17 ID:gCxL6J2f
書いたー。
493作者の都合により名無しです:04/09/19 10:25:28 ID:9qwnLlJm
だからヤムチャの話はあっちでやれって何度も言ってるだろうが。
いい加減にしろよ。
何の悪びれもなく、何度も何度も堂々と載せるのはどうかと思わないのか。
リハビリのためだか知らないが、ちょっと常識知らずなんじゃないかな?
494作者の都合により名無しです:04/09/19 10:34:56 ID:jfwPKFvp
そういうことならフンコロガシ氏にも言ったらどうだ?
というか、どっちに載せるかは職人の勝手だよ。
こっちは漫画SS総合スレなんだから。
495作者の都合により名無しです:04/09/19 15:37:39 ID:G8OIudRK
>AnotherAttraction BC
設定が細かいですな。話法や表現を大切にしてるというか。
原作では絵の魅力に頼って大まかな内容しか語られなかった部分を、
会話や人物描写を細かくして、物語を読ませるというか。
いよいよ、次の展開はアクションっぽいですね。イブ活躍よろしく。

>超格闘士大戦
冥竜王ヴェルザーはさすがのブラキン氏でもやっぱり書き辛いのかな?
原作でもなんの情報もなかったからね。謎の剣士か。誰だろう?
アバンとその使徒に絡む本部。出はカッコ良かったんだけどな、本部。
やはりこの運命かwそこに現れた地上最強の生物、勇次郎。どうなるのか?

>ヤムチャのお話
VSさんですか。最初の小ねた「きつねうどん」「タイムマシン」に笑った。
しかし、新撰組と攘夷と麻雀の話でなぜサブタイが「月と六ペンス」なのか。
わからん。VSさんのセンスは我々常人には理解できん。でも面白かった。
ところでこれは麻雀のエクストラステージですか?本編の最終回はマダァ〜?

>>494
同意。書く書かないも、どっちに載せるも職人の自由。

それにしてももう残り100KBですか。テンプレでも作るか。
496次スレテンプレ1:04/09/19 15:54:44 ID:G8OIudRK
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇
SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレや現在の連載作品は>>2以降テンプレで

前スレ
【総合】漫画SSスレへようこそpart17【SSスレ】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1093994320
まとめサイト  
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/index.htm
497次スレテンプレ2:04/09/19 15:55:20 ID:G8OIudRK
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ
http://page.freett.com/dat2ch12/030718-1040997079.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 2
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/kakorogu/02.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 3
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/kakorogu/03.htm
俺たちでオリジナルストーリーをつくろうぜ
http://1983.rocketspace.net/html/20030806/44/1054870798.html
「バキ」等の漫画SSスレPart 5
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1057568892/
バキスレだよ!! SS集合! Part 6
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1060014208/
バキ小説スレ Part7
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1061813099/
【総合】バキスレへようこそ Part 8【SSスレ】
http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/kakorogu/08.htm
498次スレテンプレ3:04/09/19 15:56:19 ID:G8OIudRK
【バキ】漫画SSスレへようこそpart9【スレ】 (「少年漫画板」移転)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1065104594/
【バキ】漫画SSスレへようこそpart10【スレ】
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1068742694/l50
【バキ】漫画SSスレへようこそpart11【スレ】
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1072026298/l50
【バキ】漫画SSスレへようこそpart12【スレ】
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1075538328/l50
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart13【SS】
http://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1079281359/l50
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart14【SS】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1084370711/
【バキ】漫画ネタ2次創作SS総合スレP-15【ドラえもん】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1088986819/
【2次】漫画ネタSS総合スレ16【創作】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1091431809/
499次スレテンプレ4:04/09/19 15:59:16 ID:G8OIudRK
現在、連載中のSS目次
※ほぼ連載開始・復活順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

ドラえもんの麻雀教室(VS氏)
 http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/gateway.html
ドラえもん のび太の地底出来杉帝国(うみにん氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dekisugi/01.htm
しけい荘物語(サナダムシ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/sikei/01.htm
4×5(ユル氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/4x5/1-1.htm
ラーメンマン青年記(パオ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/ra-men/01.htm
ザク(ザク氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/zaku/01-raou.htm
超格闘士大戦(ブラックキング氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/tyo-kakuto/01.htm
ぼくのかんがえたブラックキャット(NB氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/blackcat/01.htm
ドラえもん のび太の神界大活劇(サマサ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/sinkai/01.htm
リ・バース(フンコロガシ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/hun/01.htm
AoB(仮)(ユル氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/yuru/03-1.htm
ディオの世界(殺助氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dio/2-01.htm 
500テンプレ4改変:04/09/19 16:07:02 ID:G8OIudRK
現在、連載中のSS目次
※ほぼ連載開始・復活順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

ドラえもんの麻雀教室(VS氏)
 http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/gateway.html
ドラえもん のび太の地底出来杉帝国(うみにん氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dekisugi/01.htm
しけい荘物語(サナダムシ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/sikei/01.htm
4×5(ユル氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/4x5/1-1.htm
ラーメンマン青年記(パオ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/ra-men/01.htm
ザク(ザク氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/zaku/01-raou.htm
超格闘士大戦(ブラックキング氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/tyo-kakuto/01.htm
ぼくのかんがえたブラックキャット(NB氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
ドラえもん のび太の神界大活劇(サマサ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/sinkai/01.htm
リ・バース(フンコロガシ氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/hun/01.htm
AoB(仮)(ユル氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-short/yuru/03-1.htm
ディオの世界(殺助氏)
 http://www1.u-netsurf.ne.jp/~hinomoto/baki/ss-long/dio/2-01.htm 

 
501テンプレ作った奴:04/09/19 16:12:48 ID:G8OIudRK
すみません。>>499は一部リンクしません。
4×5と格闘大戦とブラックキャットが。短編から長編へ今スレ中に移行した作品。
だから、スレ立てる人は>>500を使ってください。

>>500も間違いがひとつ。
NB氏の、ぼくのかんがえたブラックキャットを、AnotherAttraction BC に。
もう連載作品が多過ぎて訳が分からなくなってきたw

スレタイは、【総合】SSスレへいらっしゃいpart17【SSスレ】とかでいいんじゃないですか?
502作者の都合により名無しです:04/09/19 16:46:39 ID:H28aMLIp
NB氏。文章がうまいな。スヴェンの特徴良くつかんでる。今回は静かな展開だが、次回から動き出しそうだ。
ブラキン氏。2部、いきなり勇次郎降臨か!本部がやっぱりなって感じだwポップ好きなんで活躍して欲しい。
VS氏。相変わらず飛ばしてるね。麻雀良く分からないけど、それでもドラ麻雀好きなんで、そっちも宜しく。
バレ氏。いつもご苦労様です。お題は今の所様子見が正解でしょうね。


>>501
乙。だけど次はパート18な。
夜9時くらいまで待って、異論が無さそうなら俺が立てるよ。

【総合】SSスレへいらっしゃいpart18【創作スレ】でいいですか?

503作者の都合により名無しです:04/09/19 18:07:30 ID:jfwPKFvp
「漫画」がタイトルに入ってなきゃわけわからん。
504作者の都合により名無しです:04/09/19 18:38:49 ID:aChz9f4u
>>503
だね。「漫画」は必須でしょ。

【2次】漫画SS総合スレへようこそpart17【創作】
505502:04/09/19 20:46:35 ID:H28aMLIp
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart18【創作】で立ててみるわ。


506502:04/09/19 20:50:16 ID:H28aMLIp
あかん、ホスト規制で立てられなかった。
すまん、誰か頼む。
507作者の都合により名無しです:04/09/19 21:24:30 ID:prMUUIIH
508作者の都合により名無しです:04/09/19 21:29:42 ID:C6tn0OML
>>507
新スレにも書いたけど、スレ立てお疲れ様です。
残り100KBを切った時点でっていうのは
ベストタイミングかもね。
このスレ、どの作者さんも一回の更新分量多いし。
なぜか連なって3作、4作と来る日もあるし。
509作者の都合により名無しです:04/09/19 22:09:14 ID:VhfuTRvK
VSさんにしてはストイックなまでの削りと推敲がないな
510ふら〜り:04/09/20 09:57:48 ID:IabXuBtY
>>507さん
おつ華麗さまです。part18ではまたSS書かせて頂きますね。
……リアルで仕事がキツくなるほど、ここでの読書が楽しいです。読んで書く、
で『読書』。とりあえず今回書くのは感想だけですので、こちらに。

>>サマサさん
優しく手を翳しての治癒魔法。なかなかヒロインらしくて良いですぞプリムラちぁん。
とか思っていたら、一気に雰囲気が冷たくなってきました。あの神&魔が大人しいし、
研究所から来た美少女ってのは、「悲惨もの」のパターンですし……どうなるっ?

>>NBさん
リンスの過去、スヴェンの分析。血生臭さの密度がどんどん上がってきたところで開戦。
これは、さぞ血みどろな戦いになるんでしょうなぁと期待しております。あとリンスの、
「殺させられた」が……血みどろとは対照的、精神的痛々しさで。結構刺さりましたよ。

>>ブラックキングさん
うおぉおぉおぉ本部カッコいい! アバン先生の目の前でポップを助けるだなんて……
と盛り上がったら即座に落としてくれて。で、そこにまさかの勇次郎。二転三転ですな。
でも最初の衝撃はかなり爽快でしたので、できれば本部、復活して頂きたいところです。

>>VSさん
冒頭のぼやきからして、てっきりヤムチャもスーパー全裸になるのかと思いきや。でも
スーパー全裸の二人と並んで寝ているサマは、何だかほのぼのなので良し。あと
結果的に国士を阻んだ迷彩は見事。迷彩という言葉の意味はどうあれ、見事ぞヤムチャ。
511作者の都合により名無しです:04/09/20 10:24:35 ID:50Th6soX
おいおい、ふら〜りさん、イブとリンスを混同してますよ
512ふら〜り:04/09/20 10:40:40 ID:IabXuBtY
>>511
うぉ、確かに。すみませんNBさんっ。
513作者の都合により名無しです:04/09/21 08:14:58 ID:B+dey51/
まあふら〜りさんは黒猫知らないから仕方ないかもね。
NBさんの小説だけ読んで、原作は読まない方がいいかも。
間違っても単行本買ってはいけない。
514作者の都合により名無しです:04/09/25 14:04:55 ID:ra7LWJ/u
このスレ…死んだのか?
515作者の都合により名無しです:04/09/25 14:32:38 ID:ozibrsyN
そりゃあ死んでいますよ。
前スレですから。
516作者の都合により名無しです:04/09/25 16:01:12 ID:ra7LWJ/u
>>515
次スレはえーよorz
517作者の都合により名無しです:04/10/01 00:12:04 ID:3wgTro/M
あげ
518作者の都合により名無しです:04/10/02 21:53:18 ID:zdcOr1H2
あげ
519作者の都合により名無しです:04/10/15 23:36:46 ID:IA2/0red
確かに早いな
まだ70KB近くあるじゃないか
520作者の都合により名無しです:05/02/05 17:06:46 ID:TCtRFNTr0
残りの容量どうすんだ?
521観測帯:05/02/11 20:26:11 ID:JgUq6cx40
9時で消えるぞ
御前らアピールがあったらしなさい
522作者の都合により名無しです:05/02/14 00:13:47 ID:VuUYhDM/0
保守
523作者の都合により名無しです:2005/03/21(月) 04:28:07 ID:sUijachaO
524作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:11:47 ID:zA+ODI7N0
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525作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:12:30 ID:zA+ODI7N0
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526作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:13:32 ID:zA+ODI7N0
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527作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:15:11 ID:zA+ODI7N0
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528作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:16:16 ID:zA+ODI7N0
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529作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:47:43 ID:zA+ODI7N0
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530作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 20:50:47 ID:zA+ODI7N0
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531作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:01:21 ID:zA+ODI7N0
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532作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:02:52 ID:zA+ODI7N0
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533作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:06:13 ID:zA+ODI7N0
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534作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:09:09 ID:zA+ODI7N0
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535作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:11:49 ID:zA+ODI7N0
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536作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:16:22 ID:zA+ODI7N0
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539作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:26:34 ID:zA+ODI7N0
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540作者の都合により名無しです:2005/10/01(土) 21:28:14 ID:zA+ODI7N0
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541作者の都合により名無しです
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