1 :
前スレの1:
(それにしても、あっけなさすぎる)
と、シャアはおもわざるをえない。どこに手違いがあったので
あろう。シャアのアクシズ落としの計算は、計算として精緻なつ
もりであった。しかしあくまでも計算は現実ではない。計算は計
算にすぎなかった。
(そういうことらしい。最初から、間違いのうえに立って算用を
立てた。あやまりは根本にある)
シャアは、うすうす気づいていた。計算の根本にある自分につ
いてである。どうやら新しい宇宙世紀史の主人になるにはむいて
いないようであった。
(そうらしい) (国盗り物語 四〜小栗栖)
あれから数年の刻が流れてしまいましたが・・・
余裕が出来ましたので。
3 :
前スレの1:2008/06/03(火) 23:01:48 ID:???
仕事が多忙だからといって、言いわけばかりしていても前に進まないと
思いまして。
どうも坂の上の雲も映像化が確定したようですし、需要ありとの見込み。
4 :
前スレの1:2008/06/03(火) 23:11:40 ID:???
文修文庫刊「サイドを紀行する」
宇宙世紀――ジュドー・アーシタを筆頭に、‘ビビッドな感性‘で
つっ走ったサイド1。デギン・ソド・ザビ、ギレン・ザビと大人の知
恵を発揮したサイド3。マリア・ピァ・アーモニアを頂点としたサイ
ド2の滅びの美学――危機の時ほどそのスペースノイドの特質が明瞭
に現れる時はない。風土とスペースノイドとのかかわり合い、その秘
密、ひいてはスペースノイドの原形質を探るため、宇宙世紀史上に名
を留める各コロニー、地域を歴訪し、シバ史観を駆使して語る歴史紀
行。
5 :
前スレの1:2008/06/03(火) 23:25:42 ID:???
文修文庫刊「月忘じがたく候」
ディアナ・カウンター帰還の100年程前、女王ディアナ・ソレルに伴っ
て、月世界より地球へ降下した、護衛者の一団があった。以来100数年、
やみがたい月への念を抱きながら異郷地球に生き続けた、その末裔たちの詩
「月忘じがたく候」ほかに、宇宙世紀0087、クワトロ・バジーナのダカ
ール演説に共鳴したティターンズパイロットの悲惨な結末「撃墜」エルピー・
プルの薄幸の生涯「レモンピープルに兵器」二篇を収む。
6 :
前スレの1:2008/06/03(火) 23:32:43 ID:???
慎重文庫刊「伍長の夢」
公国軍特殊任務部隊「サイクロプス隊」に補充要員として配属されたバー
ナード・ワイズマンは、サイド6・リボーコロニーの初戦闘で被弾墜落し、
その際に一人の小学生と出会う。情報収集という名ばかりの任務と、もう一
人の隣人との接点の中で、友情とも愛情とも似つかぬ感情を抱きながら、
「ガンダムと戦ってみたくなった」と、愛機MS−06FZ・ザク改をもっ
てRX−78−NT1・ガンダムアレックス撃破に立ち上がったが……。
様々な可能性を持ちながら、ガンダムタイプMSを‘量産機‘で戦闘不能に
追いこんだ数少ない学徒動員兵を、鮮やかに描き出した長篇小説。
7 :
前スレの1:2008/06/03(火) 23:41:46 ID:???
文修文庫刊「昇天」
クロノクル・アシャー〜〜ザンスカール戦争で苦闘したこのモトラッド艦
隊司令官・帝国軍大尉は、輝ける女王の軍人として登場した。開戦当初はカ
スタムMSシャッコーをあたえられ、イエロージャケット所属、リガ・ミリ
ティアの要人オイ・ニュング拘束、姫様救出、有線式MS操縦など、母系社
会樹立の任を負っていた彼が、女王マリアの崩御に殉じて、その愛すべきカ
テジナ・ルースを残したままみずからの命を絶ったのはなぜか。‘青年将校‘
の内面に迫って、人間像を浮き彫りにした問題作。
‘目次‘ T〜べスパの青年将校 U〜天に召されること
8 :
前スレの1:2008/06/04(水) 00:05:23 ID:???
N放送出版協会刊「種というガンダム」
――リアルロボット物といわれるアニメーションの製作現場に、21世紀
の初頭ぐらいから本篇の放映終了まで、暗黒魔導士が召喚されてポンと暗闇
の雲でおおいつくしてしまったのではないでしょうか。
その現場全体を暗闇の空間にしてしまった。発想された設定、演出、ある
いはファンダムの操作、これらは全部変な、いびつなものでした。
暗闇の空間から種が現れ、狂気の801も現れ、種死も現れた。
全てのガンダムファンのみならず、全てのアニメファンを相手に‘みにく
い戦争をしかける‘ということになりました。
ガンダムという創作ジャンルを土足で踏みにじり、ののしりあい、利用す
べきものであるとするひとびとがいました。
暗闇の空間の、悪しき魔導士に呪いをかけられてしまったひとびとの心理
だったのではないか。
‘目次‘ 第一章「何が呪術をかけたのか」
第二章「‘脱原理主義‘私の読みかた」
第三章「商業主義と電卓感情」
第四章「昭和ガンダムと‘圧搾思想」
第五章「1stガンダムのつらさ」……版権問題
第六章「ひとり歩きする台詞」……専門用語、名台詞
第七章「製作の基本部分を曲げたもの」
第八章「少年信仰とブランド兵器」
第九章「模倣し続けた手法・表現」
第十章「理想像に落ちた影」
第十一章「日本サンライズ・作品の多様さ」
第十二章「自己反省の勇気」
〜付論一「名台詞・名言について」付論二「兵器のリアリティ」
なんという良スレ
細々とでいいから長く続いてほしいものだ
完走まで
サイド1に、アルバニアンというスペースコロニーがあった。政庁がおかれ
ている(略)
いまも樹木が多いが、宇宙戦国時代のころはとくに樹木が鬱然(うつぜん)
と地をおおい、晴れた日でも地面が黒く湿っていた。
いまの地理関係からいえば西に崖があり、その上にテレビ局の社屋があり、
家はその崖下の蔭に入りこんでいる。この位置ではわずかに午前中、東からの
陽射しを受けるだけであろう。その場所はいまは小公園になっており、公園の
中に、ザンスカール帝国の軍人であるクロノクル・アシャーがここにうまれた
という旨の小さな碑が立っている。通りがかりにそれを見つけた筆者には、そ
の碑のある風景がひどく陰鬱(いんうつ)なようにおもえた。クロノクル・ア
シャーという、生涯家の中で灯をともしていたような、そういう数奇なにおい
の人物のうまれそうなところであるようにおもえた。
クロノクル・アシャーは軍事指揮官・パイロットとしてほとんど無能にちか
かったとはいえ、その美声は第一級の声楽的才能にめぐまれていた。その国軍
唱歌の際のテノールのうつくしさと正しさは、「古来、軍人としてはまれでは
ないか」と、当時のオペラ歌手でさえほめている。
筆者はある年の夏、右のテレビ局の崖下を通過し、同行している友人のN氏
に教えられ、帝国軍大尉・女王の弟クロノクル・アシャーというザンスカール
の軍人のうまれた土地がそこであることを知り、この将校についてわずかな感
概をもった。
じつはわずかでしかない。
唱歌に出てくるような筆者の青年将校クロノクルへの関心は、少年のころの
感傷以上には成長しなかった。筆者はいわゆるクロノクルファンではない。
しかしながらザンスカール戦後の文士がひどく毛嫌いしたような、あのよう
な積極的な嫌悪もない。ただこのひとが自分の叔父かなにかであれば、閉口し
てその家は敬遠したにちがいない。もし、無人島にこのひとと二人きりで流さ
れるとすれば――いや、どうもこの想像は趣味がよくない。
初めてリアルタイムでVガンダムを視聴したとき、そのころから持ちつづけ
てきた疑問を感じた。なぜ、これだけのガンダム作品にこのひとが無能な軍人、
情けない人物として描かれそのイメージが定着してしまったのか、ということ
である。むろん、これは――この疑問はクロノクル・アシャーそのひとの問題
とはなんのかかわりもない――このクロノクル・アシャーもまた、その意味で
は犠牲者なのだが。
以上、筆者はこの書きものを、小説として書くのではなく小説以前の、いわ
ば自分自身の思考をたしかめてみるといったふうの、そういうつもりで書く(略)
そういうふうに以下のことどもを書く。筆者自身のための覚えがきとして、
受けとってもらえればありがたい。
クロノクル・アシャーの年譜のおもしろさは、ザンスカール帝国成立後、10
代ですぐにべスパの士官学校に入校していることである。
それ以前の経歴はさほどではない。
この時期におけるこの若者――士官学校三期生――ほど輝きを反映していた
ものはない。第一に、かれは女王マリア・ピァ・アーモニアのじつの弟である
ことであった。
ほどなく内命があり、クロノクルは参上し、帝国軍大将ムッターマ・ズガン
の私邸によばれ、
――貴殿は、あすから帝国軍中尉である。
といわれた。事実、その翌日に任命があった(略)
諸事容儀のすきなクロノクルはこの日を予想し、すでに帝国軍中尉の軍服だ
けはあつらえており、任命のその日にもうそれを着用して記念写真をとり、さ
らにアメリアの町を歩いた。写真ができあがると士官学校の先輩アルベオ・ピ
ピニーデンをたずね、その帝国軍中尉の写真を贈り、ピピニーデンをつれてデ
ィナーをおごった。
考えてみると、クロノクル・アシャーがもしサイド6かそれ以外の地域にう
まれていれば、宇宙戦国時代の変動のために無名の生涯を送ったにちがいない。
この年、年齢でいえば19歳である。
余談だが、この時期、一般の感覚としては――ムッターマ・ズガンでさえ―
―MS・MAはさほど尊貴なものとはしていなかったであろう。ザンスカール
戦争での降伏によってべスパ――Ballistic Equipment & Space Patrol Armory
(弾道研究と宇宙偵察部隊本部)――帝国軍は終焉したが、いわゆるザンスカ
ール帝国軍の特徴のひとつは、MS・MAを異常に神聖視し、あたかもそこに
女王の神聖霊が宿っているがごとくあつかったことであった。この精神的慣習
はおそらくクロノクル・アシャーから始まったのであろう。0153年4月、
ZMT−S12G・シャッコーを敵にうばわれたがために青年将校が決死の覚
悟でリガ・ミリティア、カミオン隊に潜入し功績をあげ詫びようとした、とい
うことで、世間も軍も、その尊貴さを発見した。同時に――話は別だが――こ
の事件は、クロノクル・アシャー自身の歴史にとっても重要であった。かれは
これ以前にはごく普通の快活な、人並み以上に派手ごのみの軍人であったにす
ぎず、のちの精神主義者としての形相はすくなくともその行跡からは片鱗もみ
られなかった。が、これ以後、あきらかに変化している(略)
しばしば大酒をし、酒を飲むとかならず荒れ、常住、なにか痛刻なものを宿
している様子の人物になった。それまでかれ自身のなかで背を屈(かが)めて
いた精神家が、このあたりから顔をもたげたようにおもわれる。
22 :
前スレの1:2008/06/10(火) 02:25:34 ID:???
書けるときに書いときます。
23 :
前スレの1:2008/06/10(火) 02:30:10 ID:???
文修文庫刊「オーロラ」(一)
第一次ネオジオン抗争終結とともに再出発した地球連邦政府は、
内外に深刻な問題を抱え、絶えず崩壊の危機を孕んでいた。宇宙
世紀0090、長い間くすぶり続けていた不満が爆発した。シャア・
アズナブルが主唱した「革新論」は、地球の存亡を賭けた抗争に
まで沸騰してゆく。革新論から、第二次ネオジオン抗争の終結まで
地球圏を根底からゆさぶった、激動の時代を描く長編小説全十冊。
――いちど、スウィート・ウォーターに、行かれたらどうです。
という言葉であったか、サイド3・海(9バンチ)にいる知人に、難民
収容施設として造られたスウィート・ウォーターという辺境コロニーに行
くことをすすめられた。
スウィート・ウォーターはレズン・シュナイダーという、この小説の後
半まで登場する体育会系の女性が強制的に移住させられた、密閉型コロニー
と開放型コロニーを連結した改造コロニーである。
そのころ私は三十前でレズン・シュナイダーについて知識も関心もなく、
ただ老朽化しているというスウィート・ウォーターの連結部分に浮遊すれば、
宇宙の感覚というものを心の蔵から感じることができるということだけをき
いて出かけたのである。
私にスウィート・ウォーターゆきをすすめてくれた知人も、四十がらみ
の巨漢のくせに、連結部分の浮遊物に気をつけなさいよ、白ユリの花やら
ヤーパン・フードとかがたまに流れてきたりしますから、というようなこ
とを言い添えた。このヤーパン・フードという妙に低カロリーな食事が好
きな知人は、同時に、
「ジオンに栄光あれ」
と、ひき裂くような掛け声で敵機を撃つジオン訛りのはげしいMS・エ
ースだという評判があった。
スウィート・ウォーターの連結部分に、ノーマル・スーツで浮かんでみ
ると、なるほど浮遊物が異常なほど多い。私の知人はヤーパン・フードを
強調しすぎるほど強調していたが、かれがかんじんなことを言わなかった
ことに気づいた。元来かんじんなことはなるべく口中に含んで言わないと
いうこのサイド3の古いしきたりを私の知人も身につけていた。
花やらヤーパン・フードよりも、じつは眺望であった。このスウィート・
ウォーターの連結部分に浮かぶと、何十基も浮かぶサイドの密閉型コロニー
群と青く光る地球光が、どの映像をも見すぼらしくさせてしまうほどの凄み
をもって迫ってくる(中略)
ところがこれら密閉型・開放型コロニーを強引に連結させた代物であるた
めに、コロニーの質自体がわるく、しかもこのコロニーが建造されてまだ1
00年あまりしか経っていないのである。
この密閉型・開放型の連結タイプの簡易コロニーに住むスペースノ
イドは、
「棄民」
と自嘲していた。富裕階級に属していた者も度重なる戦役に巻き込
まれ、ときに圧制者の力によるコロニー潰しにしてやられ、事実上住
むべき場所をうばわれたがために多くの者が難民と化した。旧世紀の
地球上に存在した難民と同等であり、げんにこの連邦政府の‘温情対
策‘によって造られた簡易コロニーに強制移住させられたスペースノ
イドたちはジオン独立戦争以前から自分たちこそ独立すべき権利と意
志を持ちえていると自認し、アースノイドこそ劣等種であるという感
覚をもち、グリプス戦役の頃になるとティターンズに対する憎悪から
ひそかに地球そのものを覆してしまおうとする気配もあった。
かれらは自分たちの願望を実現してくれる英雄の登場を期待し、げ
んにネオジオン総帥としてその男が抗戦し、抗戦の渦中に消滅しても
この領域は連邦政府の直轄地でありながら半独立の精神を保ちつづけ
た。
「君たちの持続力、潜在能力はおそろしい」
このスウィート・ウォーターのレズン・シュナイダーの掘立小屋の
ようだったという簡易住宅のあとを訪ねたとき、正直なところそう思った。
29 :
前スレの1:2008/06/24(火) 23:06:25 ID:???
書けるときに。
サイド1にとって最悪の年であった宇宙世紀0085は過ぎた。故郷を散っ
て諸方に流れた反政府者たちは、この惨禍このかた、かつては思いもかけなか
ったさまざまな人生を歩んだ(中略)
かれら反政府者たちは、大志をもっている。
当然、ティターンズ総帥ジャミトフ・ハイマンを討つということであった。
流亡の反政府者たちがジャミトフを誅殺(ちゅうさつ)しようとしたことに
ついては、他にも例があった。デラーズ紛争が橄定(かんてい)されてのち、
ジャミトフが地球各地を巡遊してホンコン・シティに小憩したさい、たち現れ
たジオン残党らしきテロリスト二人が拳銃をかまえ、同時に火を噴き、と共に
ジャミトフの周辺を固めていた数人のガードを斃(たお)した。しかしジャミ
トフには傷をさえ与えなかった。
しかし反政府者たちが不幸であったことはこの復讐をかれら自身の手ではな
く、もしくは他の反政府運動家のどの連中によってでもなく、かれらとは全く
無縁の、パプティマス・シロッコという男の手で遂げられたことであった。
宇宙世紀0088・1月25日、ジャミトフはグワダン艦内で死んだ。
30バンチ事件以来、ようやく3年が経つ時期である。
ジャミトフ・ハイマンによって、故郷・肉親という人生の基礎を奪われ、し
かもそのジャミトフを殺すことに賭けてようやく人生に望みをもち、一転のの
ちジャミトフの死によって反政府者たちはそれらのすべてをうしなった。
反政府者たちが考えるジョン・バウアーはふしぎな運の恵まれ方をした。立
身の運のみではない。それのみならば、一介の資本家から身を起こしてジャミ
トフのティターンズ寄りの議員になるだけが精一杯の限度であったろう。バウ
アーは宇宙世紀0088、RGM−86R・ジムV量産を提言してエゥーゴの
戦力強化をはかり、その物量でもって間接的ではあるがジャミトフの仇ハマー
ンを討伐した。同時に、ジャミトフの系列議員や軍人、政府高官ホワイトやア
デナウアーなどを差しおいて、亡きジャミトフ・ハイマンの地位に代わろうと
した。事実上の軍閥政治屋であるという点、かれのロンド・ベルはジャミトフ
のティターンズとなんら変わらない。しかし、亡きティターンズ寄りの軍人・
ほとんどの連邦政治家たちはティターンズ派の一議員であったこの連邦政府高
官に対して、翕然(きゅうぜん)と従った。いつに、バウアーの力よりも、バ
ウアーが握っているカネ(クレジット)の力であったと反政府者たちは考えて
いる。
ティターンズ成立以前から、バウアーはアナハイムやビック・ウェリントン
社をはじめ名だたる企業、マスメディア、コロニー公社と密接な関係をもって
いた。同時にその利潤を惜しみなく自らの派閥議員たちや関係者らに撒いた。
もともと資本家であったころから、部下が功をたてるとボーナスとしてカネ
としかるべきポストを与えたこの男のことである。カネがどれほど人間の心を
魅惑するものであるかを熟知していた。
反政府者たちは、カネがバウアーに時勢をとらしめたと考えている。したが
って、このクレジットの力が崩れるときに成り上がりのロンド・ベルの土台も
崩れ去ると思った。さもなければ、バウアー以上の影響力を持った男が世に現
われたとき、カネで眩惑されたいわゆる連邦の主要人物の大半はその男の側に
走るにちがいない。
そういう男は、居るか。
(シャア・アズナブルか。――――)
考えたが、いかにシャアがジオン・ダイクンの後継者とはいえ、それほどの
財力はもつまい。ただここに重大な可能性がある。……ルナリアン衆の結集で
ある。シャアの行動に対して月企業体の富力が裏付けられたとき、ひとびとは
シャアを信用するにいたろう。反政府者たちにすれば、そのときこそバウアー
とロンド・ベルは亡ぶ。
バウアーは、ハマーンがほろんでから憑(つ)かれた者のごとく、外郭新興
部隊設立の準備に熱中した。準備が進むにつれて、サイド1・ロンデニオン、
ラサ、月の人の往(ゆ)き来ははげしくなり、戦いに縁のないひとびとまでが
騒然たる物情の中へ巻き込まれた。そういう宇宙世紀0089秋。
――戦争準備に沸き立つ旧式コロニー・ロンデニオン。「荒れた土地」の意味
をもつこのコロニーで、反政府者たちがしずかに、しかもたゆみなく仕事をつ
づけていた(略)
この男たちは、営業マン、伝道師、マスコミ関係者、アルバイト、物乞いな
ど、あらゆる職業に身をやつして、機会をとらえては世論を反連邦に追い込む
ことにつとめた。
それだけではない。
バウアーのロンド・ベルを愚弄するために、あらゆるサイド、ウォーター
アイランド(小型コロニー群の俗称)でテロや調査妨害をはたらきはじめた
のである。エグム・NSPらジオン系テロ組織と共謀して、各コロニーで天
誅と叫んで活動した。
ヤベェ懐かしすぎる…
エニルは、さきにのべたように、フリーの女性MS乗りだった。
エニルよりもほんの数年ほど前、バルチャー(注・ハゲタカの意)のなかか
らローザ・インテンソというキャプテンが出て女性バルチャーのモトをひらい
たように、エニル・エルも諸地域をまわって、雇われれば戦い、戦利品を持ち
帰り、報酬をもらった。
ときに、色を売ることもないではない。エニルは北米をまわっているときに
女になり、バルチャーと接触したときにはじめて男を知った。旧大戦の生き残
りを名乗る男にだまされて持ち金をぬすまれたこともあった。
ある男には妻にしてやるといわれ、男が待ち合わせようといったバーで待っ
た。しかし、ついに男は来なかった。さまざまなことがあった。エニルは、今
年(A.W.0015)でもう19になる。
夜の闇のなかで、エニルは、この戦場の血しぶきを浴びたバルチャーのリー
ダーに犯された(略)
左手でエニルの首の根をおさえ、右手で自分のヒモを解き、ブーツをずらし、
その作業がおわると、いきなりエニルの細い、白い腰を大きな両手で掻きつか
んだ。その白い腰を、無造作に自分の下へ押しあてたのである。
「あ、まだ、まだ早い」
「なにが早いものか。おれほどおんなにやさしい男はないぞ」
ひどく力のつよい男で、エニルのからだがまるでマシュマロのように自在に
された。
やがて男がエニルを離した。エニルは胸元の紐がちぎれたビスチェを引寄せ、
身づくろいしながら、
「手荒なのね」
といってみたが、声音にどこか楽しそうな艶めきがあり、それに気づくと、
エニルは闇のなかで、ひとりきつい表情をした。
「べつにひどいことをした憶えはないぞ」
男も、つい吊りこまれたのか、場違いなほど明るい声を出した。ひょっとす
ると、よほど野放図な男なのかもしれない。
「女は、男に犯されるためにある。おお、名を聞くのをわすれたわ。それに、
ひと目、顔もみておかねば」
男は、暗闇のなかで、自分のふところをさぐって、ライトを取り出そうとし
た。しばし探すのに手間取っている男の背へ、エニルはビスチェごしにその豊
かな美乳を押しつけ、男の耳を噛み、小声で自分の名前を囁くと、男は背をむ
けたまま、
「エニル・エルか。いい名だ」
が、ライトを点けふりむいたとき、男はしばらくエニルを見つめて茫然とし
ていた。自分の犯した女が、これほど美しいとはおもっていなかったのであろ
う(略)
「おれは、近頃に無(の)う、いいことをしたわい」
おどりあがるようにいった。その語調に、このバルチャーの正直な性格が出
ている。巨乳美女を犯したことを素直によろこんでいるのだ。
「名前は、なんていうの?」
「おれか。おれはな、炎の時計部隊のリーダー、ザコット・ダットネルという
わい。この縁で今度の稼業がうまくいけば、エニルにもたんまり報酬をやるぞ」
「ふふ」
と、エニルは口もとをゆるませ、この楽天家をさらにその気にさせるため、
話題をはずませることにした。
43 :
前スレの1:2008/07/03(木) 00:07:24 ID:???
書けるときに。
ララァはむしろシャアよりも相手のニュータイプをえらんだ(かとシャアは
思えたかのように)死んだ。RX−78ー2・ガンダムのビームサーベルに貫
かれ、永眠した日(これは正確でないかもしれないが)がちょうど終戦協定締
結の数日前であったが、シャアはそれに関する記憶はなかった。宇宙世紀00
79・12月30日の自分を思い出すにつけ、国家の、ひいては戦争行為など
は、個人の人生にとって世に数すくない理解者の存在に比すればはるかに卑小
なものではないかと、奇妙な感動をもって考える。同時に、その国家たるジオ
ン公国に関する、いわゆる父の仇討ちという復讐を自分の生涯の目的としてき
たことに、舌を噛み切りたいほどの虚しさを覚えた。この虚しさはかれが上官
たるキシリア・ザビ少将と会談したときに、ふとガルマを罠にはめたときに覚
えた虚しさをキシリアに洩らした述懐である。
ララァの死はかれにとって大きな打撃であったが、それだけではなかった。
悲しみのほかに別な掻き傷を、かれの胸の内壁に残した。傷跡それ自体は生涯
癒えた形跡はなく、その怒りの矛先は、ララァを殺したMSパイロット、あの
アムロ・レイにむけられることになったのである。
明確な目的をもって歩んでいたシャアの前半生は、ドズルによって軍籍を剥
奪されその浪人的境涯に落ちていたときに、カバスで出会った少女と会い、人
類の革新・ニュータイプへと開花させることが真実の達成すべき目的であると
悟ってより方向性が変化した。が、正しくは、かれの在りようすべてを受け入
れてくれた最愛のララァの死をもってかれの後半生が始まったと云わなければ
ならぬ。それほど、ララァがあの宇宙空間で、ほとんど出会ったことがないは
ずであるガンダムのパイロットと思いを通じあい、一瞬で理解しえたことは、
シャアにとって名状の仕様のない驚愕(きょうがく)であった。
あの敵パイロットの共感によるララァの幸せそうな姿を、シャアは記憶の網
膜を剥ぎ取っても忘れることができぬ。目をつぶれば、闇のなかにあのララァ
と敵パイロットのふれあいがらんとして光ってくる。それはララァのすべてが
わかっているつもりでいた一見万能すぎるかにみえる男が、ララァの側からす
れば肝心なところが大佐にはおわかりでないという、なにかを激しく渇望して
いる目であった。
ララァの内部に突如、いっぴきの粗毛のあら立つケモノが這入りこんだとし
か思えなかった。自分が求めていた優しさというものを、アムロ・レイという
敵パイロットに見出したララァの目からいえば、シャアもやはり欠陥のある、
男性らしい男でしかなかったのだろう。そのララァが「許していた」愛すべき
仮面貴公子はにわかにMS−14S・先行量産型ゲルググを駆って、ララァの
搭乗するMAN−08・エルメスと、アムロの搭乗するガンダムの間に割り込
もうとした。そのとき、ララァは今まで従順だった姿勢をすててシャアに反対
する姿勢をとった。
「大佐、いけません!!」
これはなんの意味なのか、シャアは執拗に考えている。詮無いことであろう
が、あのなんでも受け入れ、うなずいてくれたララァが、向かってきた敵との
接触によって示した自分への反逆が、彼には耐え切れぬ悲しみになっている。
ララァが自分に抗うことは、天地が覆るとも有りえぬことと思ってきた。如
何なるニュータイプの意識が、如何なる因によって触発されたものか。そのニ
ュータイプ同士の共感が、なぜララァを心から愛している自分とではなく、あ
のまるで他人ともいえるアムロ・レイと共感しえたのか。
シャアは、ララァとのあまりにも短すぎるふれあいの日々を振り返ってみた。
それは他人からすれば拍子ぬけするほど波瀾のない日々の連続であった。最初
の出会いから波瀾がなかった。すんなりと、気がついたときには落ち着いてい
る自分がそこにいた。
そのどの部分をきりとってみても、ララァは自分との生活に満足し、自分の
すべてを愛し尽くしてくれた穏やかな歴史であったとしか思えぬ。自分もまた、
ララァの愛情に恥じるような行為は濠末(ごうまつ)もなかったように思われ
る。世のいかなる良人が、数十年の歳月を振り返ってみても、これ程のことが
言い切れるであろうかとシャアはむしろ自分を誇らしくさえ思えるのである。
そう思い至ると、ララァにとどめをさした最後の一撃……アルテイシアの乱
入とあわせてさまざまな不幸の要因が積み重なったあの一撃、あえてあのパイ
ロットの悪意と思いたい。いや印象としてはそれ以上のどす黒い不快さがあっ
た。その要因が積み重なった不幸な結末を招いたのは、あのアムロ・レイであ
ろう。アムロ・レイというガンダムのパイロットがいなければ、ララァはあの
ような非業の死をとげることはなかった。そのアムロを殺さねばならぬと彼は
思う。それは二度とあらわれることのないかけがえなき人をうしなった革新主
義者としての自分の責任ですらあろうと。
かれは、思念のなかのアムロにむかってあざけって問いかける。ふん、貴様
は真実のニュータイプではないのか?ならばなぜ殺した!革新を成したはずの
者がその革新をひろげるであろう女性を殺すなどと、そんな阻害行為をするは
ずがない。貴様には守るべきものもない。己の成すべき道も知らぬ愚か者だ。
私は貴様を許すことができない。だがな、ただ一つ、私とともに同じ道を歩む
というのなら、考えてやってもいい。その勇気ある決断をするだけの度量が貴
様にあればな!
思念のなかのアムロに問いかけるたびに、アムロはシャアの目の前で、みる
みる巨大な黒い姿をひろげてくるようであった。
50 :
通常の名無しさんの3倍:2008/07/19(土) 17:48:04 ID:pfMzXwIj
51 :
前スレの1:2008/07/20(日) 23:12:01 ID:???
還流は嫌いですね。
というか、もうとっくにブームは滅んでるのかな?
この中年になりかけている女性は、ラサの連邦政府では、
「ジオン嫌い」
で有名であったが、こと女性士官に関しては、実力があると判断すればサ
イド3出身者でも積極的に活用した。
アリス・ミラー連邦軍中佐である。
白人系であるために背が高く、ショートカットとその容姿から、一見する
ときつい印象を与えかねないきらいがあった。連邦軍へウェーブとして仕官
したての頃は可愛げのある部分を見せていたため、多くの男性士官から誘わ
れ、ときにはセクシャル・ハラスメントに発展しかねないこともしばしばあ
った。このためヘビースモーカーになった。本来は酒豪で、喫煙をはじめて
からも飲酒をひかえることをしなかったため、生活のやりくりに苦心した。
「おまえは本当に女か」
と、ティターンズ全盛の頃などはよく言われた。
「女か」
と侮辱されても、アリスはつねに軽くあしらっていた。かのじょはまぎれも
なく女としての魅力と資質を充分すぎるほど備えていたし、たとえ反論したと
してもこの女性はかなりの自信を自己に対してもっていたから、そういう質問
には正直に答えなかったにちがいない。
アリスは宇宙世紀0089、中枢移転中の連邦総司令部・チベットのラサに
極秘裏に移動していた。
ラサに近づくにつれて寒さがひどくなり、
(ダカールとはまるで逆だ)
と思い、ひざに赤い毛布をかけた。そのころ、身体をねじりたくなるほどに
尿意を催した。
(ラサまで、あとどのくらいだ?)
と考えてみたが、かのじょの思考を決定する材料があまりにも不足していた。
しかもこの機内には(旧式機のためか)トイレが設置されていない。
機体のわずかな震動も、アリスにはこたえた。かのじょはすわり心地のわる
くない椅子から、わずかに尻をもちあげていた。が、ついにはそのようなごま
かしがきかなくなるほどにアリスの尿意は急を告げはじめた。アリスは身体中
の血流が下へさがる思いがした。
(人というのはなぜ汚物を排泄しなければならないのか)
と、アリスはなさけなくなった。人は決して高雅ないきものではない。旧世
紀史でいう大統領も美人といわれているハリウッド女優も、その排泄という場
所からとらえればことごとく悲惨である。ついでながらアリスは連邦政府高官
の示唆で、ネオジオンの機密を報せるべくダカールからきたのである(中略)
が、ついに我慢の極がきた。
かのじょは急場しのぎで造られた旧式輸送機に乗るとき、渡された尿瓶をも
っていた。それを床の上に置いた。
やがて毛布を肩までかぶり、毛布の中でGパンを脱ぎ、腰をすこしづつずら
せて下着を取った。尿瓶を取り、毛布の中に入れ、尿瓶の口を合わせた。大い
に発した。叫びをあげたいほどの解放感であった(中略)
すべては、おわった。
ネスカ・コールマンは連邦情報部の中では数すくない一年戦争以来の生き残
りである。かつてサイド6のジャーナリストであった。一年戦争後、フリージ
ャーナリストとして各サイドの取材に回った。ついでながらネスカはのちに自
治権を放棄したサイド3にて、事実に立脚した取材と活動を行なったジャーナ
リストということのほかに、この混沌つづく地球圏の抗争にあっては類まれな
る幸運に恵まれた人物でもあった。
一年戦争の頃のアリスは連邦情報部少佐ながら、その実力・行動力・報告の
部分においてはネスカを凌駕した。
「かのじょはたいそうな情報将校だ」
という定評が、この時期にすでに連邦政府内にあり、であればこそかのじょ
はスペースノイドでしかも一年戦争では局外中立の立場をとっていたサイド6
に所属していながら連邦情報部に入ることができた。連邦政府は多くの戦役で
極度の人材不足であり、構成するにあたって大量の経験者を必要とした。その
情報提供・情報収集に長けているものの多くは、スペースノイドであった。
ネスカ・コールマンは中立勢力サイド6・リーア人であることの誇りをもっ
ていた。同僚の情報将校が、早々、
「連邦政府は、スペースノイドの精神というものがどういうものであるかがま
ったくわかっていない。ネスカ君でさえ理解されていない。そんな理解されな
い状況の中で政府の体制保全を最優先として動かなくてはならないというのは
理不尽にすぎる」
と批判的なことをいうと、ネスカは逆に声をはげまして同僚の弱気を叱り、
「サイド6は連邦・ジオン双方の抗争の中、中立を保ち、自存自衛の困難な道
を自らの選択で選んだ。わたしはその誇り高きリーア人の一人であり、いまか
らわたしたちが成そうとしていることは、かつて局外中立に向けて尽力したわ
たしたちの先達がなしとげたこととかわらない。いまのわたしたちが連邦政府
の中枢にあって存在すら理解されないのは不幸に似ているわ。でもそれは枝葉
に過ぎない。わたしたちは、この眼があればこのアースノイド中心の政府の実
状をみることができ、その地球中心の考えに凝り固まっている状態をよりよく
する方法を考えることができる。要はスペースノイド・アースノイド云々とい
うこだわりこそすぐにやめるべき」
と長広舌をふるったとき、すみにいたアリスが不意に、
「そうよ!」
と叫んだ。賛成という意味がこめられている(中略)
「あなたは、この事態をよく観察している」
と、アリスはほめた。
アリスは、ラサでの業務を終えた後、かのじょ自身もその渦中に入る第一次
ネオジオン抗争終結後最大の艱難――シャア・アズナブルをかつぐジオン残党
の大叛乱――というものが待っていようとは、夢にもおもわなかった。
ネスカ・コールマンと同様、かのじょの生涯は40代で終了し、決して長く
はなかった。さらにネスカと同様、その生涯は、絶えず抗争の中にあるような
激烈なものであったことも共通している。
すこし余談をしてみたい。
革新論とはなにかということである。
革新論という、このジオン独立戦争以来の地球圏をゆるがした精神的課題と、
それが現実的課題に転化されて大火焔をあげるにいたるというこの問題を黙殺
しては、この物語に登場する人間群がその舞台を失う。
しかしその舞台装置を逐一こまごまと説明することがこの物語にとってどれ
ほど重要かということになると、正直なところ筆者自身にとっても疑問である。
極端にいえば筆者自身、旧世紀のネット右翼・左翼のブログを読まされるよう
な思いがする。
しかしさらにひるがえっていえば、以下のようなことは可能であろう。革新
論という、この当時の血の気の多い地球圏の人民を沸き立たせた問題を通じて、
いまもむかしも変わらない普遍のニュータイプという課題がひきだせはしない
かということである。
人類は、宇宙と言う弧絶した環境に生きている(中略)
弧絶した環境にある地球圏、ひいてはスペースコロニーにおいては、人の革
新は単純なヒッピー思想のごとき通過儀礼的な流行というよりも、多分に希望
的もしくは怨念の部分がこめられたものであった。
たとえば、
「ニュータイプ」
という。ジオン独立戦争におけるニュータイプとは、常人よりも強い直感力
と洞察力によって戦果を飛躍的に拡大できる人間、つまり軍事的な側面が強く、
その後に出現する強化人間も多分に人工的とはいえこの延長線上に属する。
ジオン独立戦争時、ジオン公国の特殊機関によって作られたこれらニュータ
イプパイロットたちが現実では考えられない戦果をあげたとき、お茶の間・リ
アルタイムで本編を見ていたファン・ガノタレベルにいたるまでリアルロボッ
ト史上空前の沸騰がみられた。本編中の木星帰りやカバスでシャアに買われた
インドの少女のワンシーンをふくめた思想的昂揚は、「人は変わっていくわ。
私たちと同じように……」という台詞もあって一大昂揚を発し、宇宙という新
しい環境を手に入れた人類の旧世紀からの課題(どうしたら人同士はわかりあ
えるのか)を、肉体的・精神的にあらゆる物事を理解する能力を身につけたひ
とびとの相互理解によって成しえるという革新の本質が、強化人間的な部分に
変質してしまっていた。ニュータイプという言葉の独り歩きと戦争という場所
でその能力を発揮したひとびとの思念が最終的な本編の目的だということで、
これによって独立戦争は連邦政府の勝利に終わり、独り歩きした革新論の行き
着いた場所が、強化人間と、奇妙なオーラの描写・悪鬼のような怨念によるグ
リプス・第一次ネオジオン抗争であった。人の革新という革新論の本質がつね
にただの相互理解に行き着かず、かならず不幸のシーンを用意するという怨念
の部分をもち、問題解決にむかって強力な(偏った、といっていいのかもしれ
ないが)エネルギーを発揮するという点で、人の革新という課題はきわめて特
異であり、本編の‘ちょっとしたエスパーのようなもの‘からエキセントリッ
クな要素が噴出した特別な過程をたどったものとしてみなければ、革新論とい
うものはわからない。
61 :
三橋智樹:
8.7は司馬遼太郎氏の誕生日です。司馬氏の戦国ものの代表作が「国
盗り物語」ですが、現代の作家が類似した題名で現代人を主人公にし
た小説があります。(水野麻里著「超・国盗り物語」・林真理子著「ト
ーキョー国盗り物語」)。その他、司馬氏の戦国ものですぐれたものに
、「妖怪」(主人公・熊野源四郎)・「尻啖え孫市」(主人公・雑賀
孫市)等があり、雑賀門徒の1人・雑賀市兵衛を描いた「雑賀の舟鉄砲」
という作品もあります。ノン・フィクションの歴史書では、藤木久志著
「日本の歴史15・織田・豊臣政権」が、"石山戦争"にかなりのウエイトを
置いていて、斎藤道三・織田信長の会見も、「信長が真に対したのは、
道三ではなく、一向宗寺内」と、会見した聖徳寺が一向宗の寺であった
ことを強調しています。司馬氏「国盗り物語」発表ののちに、道三の
国盗りは父親と2代で行われたことや濃姫生存説が発表されていますが、
小説の魅力はそのまま維持したいものです。