カガチをつきとばし、銃をむけながら、シャクティは連れてかえりますと
言うウッソ。そのウッソに、その自惚れが人類をまちがわせたのだぞと語
るカガチ。老人と孫のような少年の、うめることのできない考え方の差異
がうかがえる。と同時に、カガチはウッソに、自分の若き頃を想起させら
れたのではないか。かつて自分もウッソのようなひたむきな情熱と夢をも
っていた。だが、人の世の中で変質し、失望し、いつのまにか極論をこの
むあやしげな老人にカガチはなってしまっていた。ウッソに期待をかけた、
いや、かけたと筆者は思いたい、思いたいのだが、やはり筆者の推論と期
待でしかなかった。
この老人は結局、己の業を優先したのである。今さら、実験をやめるとな
れば、後世、フォンセ・カガチの名は歴史の彼方にきえたかつての木星帰
り、パプティマス・シロッコとおなじ運命になるにちがいなかった。
まだ、サイコウェーブの波動は消えてはいない。
大気圏を突破しエンジェル・ハイロゥとザンスカール主力、ズガン艦隊・
モトラッド艦隊は地球へ降下した。その間、シャクティのいないエンジェル・
ハイロゥはなぜか順調にサイキッカーのエネルギーを放出し、稼動していた。
主力艦隊旗艦ダルマシアンにてカガチはムッターマ・ズガンにクロノクルの艦
隊を積極的に守備させるよう要請、ムッターマはすでに督促させたと返答した。
まさかクロノクルが失敗の要となるなどたれが予想しただろう(中略)
さらにカガチの予期せぬところで、エンジェル・ハイロゥを「正しき方法」で
使うべくシャクティが自らの意志でもどり、祈りを捧げはじめた。
「私にしたがって、このように疲れる祈りをなさる皆様方、もともとの平和とは、
たましいがそれぞれが家へ戻ることでありましょう。父が、母が、連れ合い寄り添
うことのできる世の中でありましょう」
いままでおきたことのない、巨大な光がエンジェル・ハイロゥよりおきてきたこと
を、ダルマシアン艦橋からフォンセ・カガチはみた。予想外だ。
リング全体のかがやきとともに、流れゆくひなげしの花の歌。
もはやカガチには先々の想像すらできない。
「みなさまに聞こえておりましょう。大地に宿る力が私たちをつつみはじめて
います。大地の精霊たちが、このリングにあふれた私たちの祈りを、より強い
ものに育てています。そしてこの力を、冷えきった戦士たちになげ与えましょう」
手をひろげるシャクティの全身が軸となり、その巨大な力は、エンジェル・ハイロゥ
近辺をつつみこんだ。
ほぼ同時に、ゴメスらの特攻でモトラッド艦隊は消滅、ムッターマ・ズガンは歯ぎし
りしてくやしがったが、あとの祭りであった。
あたたかい光が、エンジェル・ハイロゥから流れてくる。誰しもがまったく
予期できないまま事態はながれてゆく。
エネルギーを放出していくエンジェル・ハイロゥは、空中で自然分解をはじ
めた。
カガチの計画にはまったくないことだった。きれいに分離されてゆくエンジェル・
ハイロゥ。その分離の意志はサイキッカーとシャクティにある。
うめき声とともに空中をながれてゆくサイキッカーと各ブロック。
カガチは科学者らしい欲求にとりつかれはじめていた。この老人の頭には、実験
や検証といった要素が常人ぬくらべ濃厚すぎるのかもしれない。
サイコウェーブの光が、おそろしいほどに輝きひかっている。シャクティは祈り
つつ、ガチ党員たちに退避するように要請した。この言葉をきくかぎり、シャク
ティがかならずしも中心となってエンジェル・ハイロゥを動かしているわけでは
ないようだ。
サイキッカーの意志(還りたいという本能)に手をかしているのだろうか。
カガチはズガンの旗艦ダルマシアンにいたが、ブロックの激突とサイキッカー
によるものと思われる鮮血をみておびえが出たのか、自分ひとりだけエンジェル・
ハイロゥに帰還するといいだした。無謀といい諌めるムッターマ・ズガン。
そこへ、大破したムバラクの旗艦ジャンヌ・ダルクがあちこちを爆発させつつ迫っ
てきていた。ゴメスらの意地とおなじく、ムバラクの鬼気迫る決死の執念は、怨念
のようにムッターマの旗艦ダルマシアンへとからみ、轟音とともに沈んだ。
いち早く脱出したカガチだったが、爆風でふきとばされ、あやうく死にそうになった。
ザンスカール帝国軍将兵は分離した破片に乗り、あるいは潰されて消え、
その宇宙へ還りゆく姿を見とどけた上で中心となったシャクティはカサレ
リアにウッソの手によって還されている。フォンセ・カガチの巨大サイ
ミュ要塞によるふしぎな作戦は、かれ自身予期せぬかたちで幕をおろした
のである。
稿が予定の紙数に至ろうとしている。
筆者は、この老人の末路を書きたいために、えんえんとここまできた。
いつごろ死んだか、よくわからない(中略)
フォンセ・カガチは、崩壊直後、かつてマリアが座っていた玉座にむか
い、独り言をくりかえして問い、思念のなかのマリアにむかってののし
ったというが、さすがに頭がいかれはじめていたのか、
「顔をあげんかマリア。お前を占い師からここまで育てた恩を忘れて、
こうしむけたのか」
と、たれもいない玉座にむかい銃を連射した(中略)
分離したブロックが命中しその衝撃で息をひきとったというが、その最期
がどうであったか、たれにもわからない。おそらくたれにも看とられるこ
となく死んだのであろう。
248 :
1:03/06/15 23:58 ID:???
終了です。
これをもって(一旦ですが)ネットから離れます。
復活予定は来年の一月か二月ごろになりそうです。そのときに次スレを立てようと
思ってますので。
それでは、他の職人さん方よろしく。
お疲れさーん。
……ところで、>1さん以外の職人さんって何人いるのん?
1様、ずっと楽しくROMしていました。悲しいですが、しばしのお別れですね…
前スレ(だったか)で、このスレに出会って司馬遼を読みたくなったと書いた者です
すばらしいアレンジを、どうもありがとう!
今『殉死』とか読んでます。
いずれは私も職人やってみます。
センチネルとの絡みは工夫しがいがありそうですね。
「ニュータイプを否定せよというのか」
やがて脚本を読んだ高松は表情を、凍らせた。
「富野との関係も、それでしまいになる」
253 :
通常の名無しさんの3倍:03/06/21 19:33 ID:F2SLbOJr
保守
254 :
通常の名無しさんの3倍:03/06/22 19:38 ID:sfmLL3ur
保守
255 :
通常の名無しさんの3倍:03/06/23 15:52 ID:Ekqnwozw
保守(現在494なので)
256 :
通常の名無しさんの3倍:03/06/24 17:36 ID:OqGvZDV/
保守
257 :
通常の名無しさんの3倍:03/06/26 01:15 ID:BXswYyW2
m
>>1 おツー。
すばらしい作品をありがとう!
早い復帰を願ってますー
259 :
通常の名無しさんの3倍:03/06/28 19:23 ID:8zqW4Ah7
保守
グレミーは出生があいまいであった。グレミーはサイド3出身で、ネオジオン戦争の数年ばかり以前
アクシズにながれてきて、士官となり、しだいに勢力を培った。姓はトトであるという。
このためグレミーは最初グレミー・トトと称していたが、天下を略取できる可能性がみえはじめたころ、にわかに、
――わが家は、ザビ家である。ギレン・ザビから出ている。
とその出自を変更した。理由は、ミネバ・ザビを擁するハマーン・カーンをほろぼして
その天下をひきつぐにはザビ家でなければならない。当時、ザビ家の正統性というものが
ネオジオンの支持者のあいだで信ぜられていた。グレミーはその俗信に乗り、利用し、天下への機運を醸そうとした。
グレミーは部下に命じて系図をつくらせたが、なぜザビ家であるかという点で苦しかった。
そこで、ギレン・ザビのクローンという説を創り上げた。グレミーはア・バオア・クーで死んだギレンのクローンで
あるとし、ジオン公国滅亡のとき、幼い少年であったが、その代理母に連れられアサルムで脱出した。
その後、アクシズの長マハラジャ・カーンがグレミーの境遇をあわれみ、マシュマーの部下とした、
というのが、グレミーがつくらせた自身のクローン伝説であった。
おお、新しい職人?
出典は?豊臣秀吉?
『豊臣家の人々』に所収「大和大納言」の
織田家の創氏のくだりではないかと。