司馬遼太郎著「コロニーを行く」(六)

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442“プラモ屋”の商業主義:05/02/17 16:35:30 ID:???
アニオタに対して売ったのは売ったのは、食玩(それも中国製)とか、
CDとか、その他の日用雑貨品が主なものであった。食玩やガンプラを
売るために登録商標を冒涜する商業主義がどこにあるだろうか。

“アニメショップ”が儲かるようになったというのは、詐欺の合法化
とも言うべき右のからくりのことをこのモノは言うのである。
その商品たるや――2005年の段階で――なおトレカとDVDと雑貨がおもだった。
このちゃちな“商業主義”のために企業そのものがほろぶことになる。
一人の御大も出ずに、大勢でこんなばかなアニメをつくった会社があるだろうか。
443“監督権”の無限性:05/02/18 11:07:56 ID:???
 たとえば最近、“メカデザイン”的な用語としてつかわれる「カトキデザイン」
などというえぐいことばも、多分にこの非連続的なイメージの核になっている。
――あんなアニメはガンダムではない。
と、理不尽なことを、ガンプラでも叩きつけるようにして叫びたい衝動が私にある。
サンライズのいかなるガンダムともちがうのである。
 さきに“異胎の時代”ということばをつかった。
 その二、三年をのけて、たとえば、ファーストやゼータが放送された時代と
こんにちとは、十分にアニメ史的な連続性がある。また0080や0083が
発売されたガンダム中期とこんにちとは文化意識の点でつなぐことができる。
つなぐとは単純接着という意味でもあり、また電流が通じうるという意味でもある。
「司馬さんにはコズミック・イラが書けませんね」
 と、いつだったか、丸谷才一氏にいわれたことがある。
 なさけないが、うなずくしか仕様がない。
444実地的なコロニーの教育:05/02/20 10:24:20 ID:jMe8y1Fx
オオェ 僕は月のフォン・ブラウンの生まれ、育ちですが、そこで子供のときは、
自分は月と、低重力の文化圏にいると思っていました。宇宙、そしてコロニーと
いうものは、自分の生きている月面とはすっかり違うと思っていたように感じます。
 最初にコロニーを見たのは、学校の遠足で行ったときです。帰りに先生が一人一人に
コロニーを見た感想を述べろと言った。僕は変なニュータイプで、いや、たいていの
ニュータイプにそういうところがありますが、先生の喜ぶような答えは何となく
わかっているわけですね。

シバ ニュータイプというのはどうしてあんなにかしこいのかなあ。

オオェ そのとき僕は、宇宙で生活する人たちはみんな不安じゃないだろうかと思う、
と言ったんです。宇宙はあんなに動いている、あんなに動いている大きいひろがりが
そばにっては、生活するのに安定感がないんじゃないかということを、僕は言った
わけです。

シバ ああ、しかしそれは基本的なことですね。

オオェ その先生は、とくに僕が怖がっていた先生の一人だったですが、
「コロニーの中に住んでいる人に失礼じゃないか」と言って、僕は修正
されました。


445:05/02/20 22:55:06 ID:???
お久しぶりです。
数ヶ月スレを放置プレイしておくのもどうかと思うのですが、仕事が忙しく新作
を書く余裕がありませぬ。
よって、過去に自分が書きましたSSを少しづつ出していこうかと考えています。
(過去ログがいつまでたってもHtml化されませんので)

怠慢で申しわけありませぬ。
>>439
なにやらサタカっぽい感じがしますが・・・
>>443
これいいですね。
446:05/02/20 22:59:08 ID:???
文修文庫刊
「グリプス」

「宇宙はときに、血を欲した。このましくないが、パイロットも、そのパイロットの搭
乗するMSの一撃に斃れた死骸も、ともにわれわれの歴史的遺産である。そういう眼で、
グリプス動乱とそのすぐあとにおこった戦闘を見なおしてみた」(あとがきより)
真夏の夜を血で染めたエゥーゴの指導者ブレックス・フォーラ暗殺を沸騰点とする狂瀾
の時代を、十二の戦闘で描く連作小説。
447:05/02/20 23:02:44 ID:???
文修文庫刊
「昇天」

クロノクル・アシャー ――ザンスカール戦争で苦闘したこのモトラッド艦隊司令官、
帝国軍大尉は、輝ける女王の軍人として登場した。開戦当初はカスタムMSシャッコー
をあたえられ、イエロージャケット所属、リガ・ミリティアの要人オイ・ニュング拘束、
姫様救出、有線式MS操縦など、母系社会樹立の任を負っていた彼が女王マリアの崩御
に殉じて、その愛すべきカテジナ・ルースを残したままみずからの命を絶ったのはなぜ
か。゛青年将校゛の内面に迫って、人間像を浮き彫りにした問題作。

目次
T べスパの青年将校 U 天に召されること
448:05/02/20 23:09:23 ID:???
文修文庫刊
「ア・バオア・クー」

各地の戦闘できわどい勝利を得はしたものの、連邦軍の戦闘能力は目にみえて衰えはじめていた。
補充すべき兵、MS、艦船は底をついている。そのとぼしい戦力をかき集めて、ジオン公国軍が腰
をすえる最後の防衛ライン、宇宙要塞ア・バオア・クーを陥落させようと、老将レビル亡き連邦軍
は捨て身の大攻勢に転じた。だが、果然、逆襲されて連邦軍はS、Nフィールド上で寸断され、時
には敗走するという苦境に陥った。

449:05/02/20 23:12:11 ID:???
慎重文庫刊
「ジュピトリス」(上)

戦後の混沌冷めやらぬ頃、地球から資源採取のため木星圏へ輸送船団が発進した。その
船団に所属する若きエリート将校でもあったこの男、パプティマス・シロッコは、多く
のことを学びながら、文学、軍人カリキュラムなど単なる司令官になるための勉学は一
切せず、歴史や地球圏の動きなど、ものごとの原理を知ろうと努めるのであった。近代
のフェミニズム思想にも通じ、卓抜した感性とセンスを持つ天才ともいうべき彼は、や
がて一士官の身の上ながら時の実力者ジャミトフ・ハイマンによって地球圏に召還され
る。
450:05/02/20 23:13:58 ID:???
慎重文庫刊
「ジュピトリス」(下)

フェミニズム論者であり、ニュータイプの新しき流れが起こりはじめていることを見通
しながら、シロッコがティターンズを掌握してエゥーゴと戦ったという矛盾した行動は、
真実のニュータイプとして生きなければならないという強烈な自己規律によってニュー
タイプ主義に生きたからであった。シャア・アズナブル、アムロ・レイやブライト・ノ
アのような大衆の英雄の蔭にあって、一般にはあまり知られていない天才ニュータイプ、
グリプス動乱史上最も壮烈なコロニーレーザー争奪戦に散った最後のフェミニストの生
涯を描く力作長編。
451:05/02/20 23:30:21 ID:???
慎重文庫刊
「ギンガナムとロラン」(上)

月世界の重鎮アグリッパ・メンテナーは黒歴史とよばれるものを過去の遺物とし、長くつづいて
いたガンダムの世界から争乱の一字が消えた。しかし彼の事実上の主である、女王ディアナ・ソ
レルによって黒歴史の扉は徐々にひらかれ、かのじょによる地球帰還作戦が開始されると、地球
圏・月世界は再び争乱の時代に入る。――これは、はずれムーンレイス上がりのロラン・セアッ
クが、サムライ・戦闘神ギム・ギンガナムと抗争して、敗北しつつもついにターンXを破り泰平
を樹立するまでをとおし、世を制する゛母権゛とは何かをきわめつくした物語である。



452:05/02/20 23:39:57 ID:???
慎重文庫刊
「ギンガナムとロラン」(中)

女王ディアナ・ソレルの地球降下後、月世界でアグリッパと提携しつつ軍権を
握ったギム・ギンガナムは、月面より黒歴史最強のMSとされるターンX発掘
に成功した。一方、箱舟ウィルゲムに∀と乗船するロラン・セアックは、宇宙
にあがり月へと還ってくる。この一行を出迎えたギンガナムは、挑発的な態度
で一行に接し、メリーベルを焚きつけて女王権力を骨抜きにしようとするが・・・。
日本刀と武士道で行く所敵なしのギンガナム。温和だがその仁徳で仲間に恵ま
れたロラン。いずれが乱世を終わらせるか?
453:05/02/20 23:50:36 ID:???
慎重文庫刊
「ギンガナムとロラン」(下)

ミリシャ・ギンガナム隊の争乱は勝負がつかない。圧倒的なターンXの性能の前に、エース・ロラン
がついに∀にて出撃しこれに対峙する。長き問答の末、両機から発せられる月光蝶発動の危機を乗り
こえついに両機は地上に落着する。地球の大地に立ったこの夜、ディアナによる包囲軍の圧倒さと月
光蝶発動が未発におわったことを悟ったギンガナムは、愛用の日本刀をもってロランに一騎打ちをい
どみ、サムライとしての最期を飾ろうと決意する。あらゆる人物の典型を描出しながら、絢爛たる「文
明の相克」の世界を甦らせた歴史大作。
454:05/02/20 23:56:37 ID:???
とりあえず↑まで。タイトルのみ考えてみますた。
上記の中で要望の多いものを挙げていこうかと思いまつ。
455通常の名無しさんの3倍:05/02/21 00:17:37 ID:???
乙でござる。
456通常の名無しさんの3倍:05/02/21 00:57:35 ID:???
1さんの時代小説風ガンダムがまた見られるなんて。
こんなに嬉しいことはない。
457通常の名無しさんの3倍:05/02/23 06:36:02 ID:???
ターンは見てないから、446「グリプス」 と449、450「ジュピトリス」がいいな。
458:05/02/24 22:06:23 ID:???
長々とお待たせ致しました。
それでは446から始めたいと思いまつ。
459グリプス(幕末より):05/02/24 22:34:57 ID:???
 目次

 ダカールの変
 奇妙なりバスク
 キリマンジャロの襲撃(加筆修正予定)
 マラサイ突入
 フランクリン撃墜(加筆修正予定)
 反感
 アレキサンドリアの閃光
 シャイアンの日々(加筆修正予定)
 死んでも死ねぬ(加筆修正予定)
 オーガスタ研の強化人間(本スレに掲載済み)
 メールシュトローム
 シャングリラのニュータイプ(未執筆)

 あとがき
 このダカールの変からティターンズの事実上の崩壊とそれを加速するエゥー
ゴの反撃が開始されるのだが、その史的意義を説くのが本篇の目的ではない。
ただ、暗殺という政治行為は、史上進歩的な結局を生んだことは絶無といって
いいが、この変だけは、例外といえる。シャアの叛乱にいたるまでの、一連の
(エゥーゴをふくめた)スペースノイド側の武力蜂起を肯定するとすれば、そ
の機運が一気に加速したのはダカールの変からである。撃たれたブレックス・
フォーラは、その史上稀有といってもいい清廉な革命家の歴史的役割を、不運
ではあるが撃たれたことによって果たした。スペースノイド側の希望の星であ
ったエゥーゴは、数人の暗殺者にブレックスを撃たれその偉大な指導者を失っ
たことによって、反ティターンズの推進者を躍動させ、そのエネルギーがティ
ターンズ崩壊を早めたといえる(中略)
 歴史はブレックスに犬死をさせていない。
(おれには天運がついている)
 バスクはまじめにそう思った。そういう男であった。自分の器量が万人より
すぐれていることは、かれはたれよりもよく知っていた。その上、公式には戦
争は終結してはいるものの、各地でジオン残党が跳梁跋扈し、アースノイドの
気分のなかに反スペースノイド感情が沸騰して、世はすでに乱れのきざしをみ
せはじめている。
(まさか、旧世紀の戦国の世ではないから、覇者などは望めぬが、とにかくお
れほどの男だ、世に驥足(きそく)をのばしてみよう)
 それには一介の士官では、いざ風雲が到来しても、飛び立つ足がかりがない。
権門に近づく必要がある。

 ゴーグル鋭しという当のバスクはその後、連邦軍内の各部署をまわったあと、
准将ジャミトフの部屋に入った。
 これまでジャブローで、ゴップ(今はコリニーが継承している)派の策士と
して連邦軍財政部門に幅をきかしている主従同然の関係であるジャミトフ・ハ
イマンと数夜語りつづけているうちに、たがいが抱いている正義という名の陰
謀を実践してみようとの結論に到達した。
「この賊徒どもの叛乱を利用しよう」
 というのだ。(中略)
 この二人が考えた密謀とは、この叛乱を利用して連邦軍の威信を失墜させ、
かつ敵対派閥に属するコーウェンの一派を功名に追い落とし、それによって生
じるであろう「強い連邦政府」を実現するための軍事組織をつくりだし、多数
の力あるアースノイドのパイロットや将校をスペースノイド憎しの気分でまと
めあげ、一挙に気運とともにコロニーサイドと残党どもを根絶やしにし、つづ
いて連邦政府、ひいては地球圏そのものを乗っ取るというのである。
 宇宙世紀史上、最も壮大な想像力に富んだ陰謀がここにはじまった。
「おもしろいですな」
 バスクはいきなりゴーグルをはずした。
「む、その醜態を私にさらすことに意味があるのか?」
「見てくだされ。この憎しみの傷跡があるかぎり、閣下、ひいては私の意志は
必ず実現します。いや、むしろこの傷こそが、自分の決意をゆるぎないものに
してくれたのです」
「うむ……なるほどな……」
 このとき、バスクが放屁をした、というはなしがある。
 いくら特務部隊指揮官とはいえあまりの非礼に連邦正規軍の士官がとがめる
と、部屋を出て行こうとしたバスクは正規軍士官に一瞥もくれず、
「屁ではない。糞が咆えたのじゃ」
 といった。
(なるほど、バスク大佐の糞が叫(おら)びなさったか)
 と、後日、この話をきいてカクリコン・カクーラー中尉は、さすがはバスク
大佐らしいと思った。
 ちかごろ下っ端たるべき正規軍将校どもが増長しすぎる。あれらは、糞のよ
うなものだ。バスク大佐は、連中に口で一喝するよりも、胎中の糞をして一喝せ
しめたのだろう。
 よもや自分を撃とうとするものが背後にしのび寄っているなどとはバスクは
予想だにしない。
 このとき、シロッコのジュピトリスから飛び立つ数十機のMSの編隊があった(中略)
 そのなかで指揮をしているのがパラス・アテネに搭乗する元エゥーゴパイロ
ット、レコア・ロンドである。シロッコがついにティターンズ掌握のために動
き出した。
 ドゴス・ギア艦橋で、バスクは強化人間のロザミア・バダムを出撃させるよ
う、指示した。バスクは帽子を脱いで、ゲーツとローレン・ナカモトのコント
ロールするロザミア・バダムの戦果報告を待っていた。
 かれの神経は、アクシズの進路を変えようとしているエゥーゴに集中してい
る。そのとき、
「た、大佐!!う、うしろから、MSの編隊が!!!」
 と、目の前に座っていたローレン・ナカモトが悲痛な叫びをあげた。
「なんだと!?」
「シロッコの部隊です!!!」
 シロッコの罠にまんまとはまった格好になった。バスクはヤザンに出撃を命
じた。
 こうなっては藁をもつかむ思いである。ローレンの制止もきかず、ロザミア・
バダムをコントロールしていたゲーツのバウンド・ドッグを強引にMS部隊阻
止にむかわせた。
 とたん、レコアのパラス・アテネが腕のビーム砲をかまえながらドゴス・ギ
アの前に躍り出た。
 一撃一撃、徐々に艦橋へとビームを撃ちこんでゆく。そして、バスクが叫び
をあげるのと同時に閃光が走り、ドゴス・ギアの艦橋は四散した。
「へん、バスクの野郎、みたか」
 致命的だったのはヤザンの存在だったろう。シロッコにバスクの情報を流し
つづけ、出撃命令の際にも襲いかかるMS編隊を防ごうともせず、傍観し、あ
ろうことかバスクの阻止命令を伝えず、わざとドゴス・ギアのMS部隊の出撃
をさせなかったのである。
 戦場には、大型戦艦ドゴス・ギアの残骸が無残に残るのみであった。
 レコア・ロンドはシロッコの野望達成の手段として利用され、ヤザンもシロ
ッコに帰服し、ティターンズの実権はシロッコに移行することとなった。
 バスクは、素朴すぎるほどのわなにかかったことになる。自信家だっただけ
にかえって油断した。
 おそらくかれ自身が不審だったろう。ひとが自分をだますなどとは、夢にも
おもっていなかったにちがいない。
465:05/02/24 23:23:58 ID:???
今日はここまで。
「なにぶん、地球にいた期間が長かったからな。宇宙にはまだ馴れん」
 それだけ言って、カクリコンは、大きなからだを音が鳴るように折った。
 宇宙に馴れぬ、といえば、ちかじか、ジャブローを発(た)ってティターン
ズ総帥として要塞グリプスを視察されるカクリコン・カクーラー中尉の主人ジ
ャミトフ・ハイマンもそうだし、ティターンズ将兵のほとんどはそうである。
 地球出身者ばかりで構成される軍隊であり、連邦正規軍以上に、ティターン
ズほど武骨な集団もない。
 そのティターンズが、この年、大規模な戦力強化を図ろうとしている。
 カクリコンとジェリドがひきいるMS部隊は、エゥーゴの降下部隊をとらえ
た。予定通りである。
 地球が青く美しくひかっている。
 マラサイの赤色が宇宙にめだつ。
――いいか。
 と、カクリコンはいった。
――MS部隊はそれぞれ降下するエゥーゴを叩け。俺とジェリドはマークUを
やる。
(来たな……)
 と、カクリコンは気負うジェリドとともに大気圏上空に機体をむかわせる。
 宇宙のむこうに数十機、いや、それ以上のエゥーゴの降下部隊が大気圏へ突
入しようとしている。そのなかに、ウェーブライダーに乗るガンダムマークU
の姿を発見した(中略)
 見出してよりジェリドのマラサイが執拗に攻撃をかける。
 (ええい、なぜ当たらんのだ)
 地球の重力に引っ張られてゆくなかで、カクリコンはジェリドと歩調をあわ
せ、マラサイを突入させてゆく。 
 その間、マークUへの射撃と斬りこみをおこなったが、今ひとつ一撃をあた
えられない。そのうち、大気圏上の限界に達し、舌打ちしながらもジェリドは
マラサイのバリュートを展開した。この時点でカクリコンもバリュートを展開
していればたすかっていたろう。が、功をあせったカクリコンはさらなるチャ
ンスをもとめて、バリュートを展開せぬままなおもマラサイそのままの状態で
マークUに突撃してきた。カクリコンは獲物にくらいつきすぎていた。ライフ
ルを撃ち、目標をマークUにさだめながら、
――落ちろ!
 と、気合を入れ、マークUにとりつこうとした。
 だが大気圏の熱はマラサイをそのままにはしなかった。結局、とりつくこと
ができなかったカクリコンはマラサイのバリュートをひらいたものの、刻すで
に遅く、摩擦熱に機体が耐え切れなくなっていた。
 マラサイの燃えゆくなかで、
「ア……アメリアァァァァァーー!」
 と、地球にのこっている女の名を叫んだ。ジェリドの叫びもむなしく、カク
リコンのマラサイは、大気圏にて燃え尽きた。
4691:05/03/05 15:59:31 ID:???
チョト小休止
470反感(祇園囃子より)壱:05/03/05 16:06:19 ID:???
 地球連邦軍大尉で、ライラ・ミラ・ライラ。
――といえば、一年戦争からグリプス戦役初期にかけて連邦軍・ティターンズ
のあいだで高名なパイロットである。
「ライラの技量、粗剛なれども気品あり」
 といわれた女性軍人である。
 搭乗MSは、ガルバルディβといい、旧ジオン公国軍MS・ガルバルディα
を改修、外装を全面的に再設計し軽量化を図ったため、運動性がたかい。
 彼女はこれに乗り、巡洋艦ボスニアにてMS部隊・ガルバルディ隊を指揮す
る。
「ボスニアのライラ大尉」
 といえば、ジオン残党やエゥーゴでさえおそれた。
471反感(祇園囃子より)弐:05/03/05 16:15:15 ID:???
 そのライラが、エゥーゴとおもわれる部隊を臨検した際、しくじった。
 グリーンノア襲撃事件のあとのことである。4機のガルバルディ隊をひきい
て、アーガマと接触、停戦信号を出し、所属をあきらかにするよう要求したが、
「好きなことを!」
 かけ声とともにクワトロのリック・ディアスがクレイバズーカで応戦、ライ
ラは持ち前のテクニックでガルバルディβをあやつり射撃をかわした。
 ライラは飛び出してきたMSが赤いMSであることに衝撃をおぼえた。相手
はあの赤い彗星ではないのか、まさか………。
 はっとしたときには、ガルバルディ隊のうちの一機が落とされていた。その
こととタイミングを合わせるかのようにボスニアから撤退命令の信号が出た。
(のせられてしまった。あの赤いMSに)
 母艦の支援がなければ勝てないのかと思いつつ撤退した。一機とはいえ、部
下の乗るガルバルディβを落とされてしまったことがなによりも衝撃的だった。
事実、赤い彗星でなければ立つ瀬がなかった。
472反感(祇園囃子より)参:05/03/05 16:31:58 ID:???
 ジェリドは、ブリーフィングルームのドアを開けた。
 不愉快なことに、なかにいる連邦軍士官たちが大勢でせせら笑っている。
 ジェリドは、だまって身を入れて、ライラの隣の席にすわった。ライラは軽
蔑するかのような台詞をはき、「出戻りのジェリド中尉といったらもう有名だ」
と、ライラはわざとらしく、となりにすわっているジェリドに聞こえるように
皆にいった。出戻り、といわれた言葉が、ジェリドのかんにさわった。
 決定された作戦で、ライラの小隊はジェリドの指揮下におかれることとなっ
たが、納得がいかなかった。
(あんな甘ちゃんでも、ティターンズだからあんな風に厚遇されるのか)
 ライラはいらいらした。さっさと作戦を済ませてボスニアに帰りたかった(中略)
 と、いきなりである。後ろからかけ声とともにジェリドが拳を突き入れてき
た。ライラはそれを軽々とかわし、逆にジェリドのあごに強烈な蹴りをいれた。
 ジェリドはなおも諦めきれないのか、ライラに対してまるで子供のように理
由を問うた。ライラはかれの雑すぎる行動が馬鹿馬鹿しいと思えたのか、
「あたらしい環境、相手、事態にあえば違うやり方をしなくちゃならないんだよ」
 と、対応の仕方を諭した。
 ジェリドにとって、おそらく初めての経験であったのだろう。今まで自分が
付き合ってきた女のなかで、このようなことを言い、行動する女がいただろう
か。
「お願いだ。教えてくれ。俺はティターンズをこの手にしたいんだ」
 本気であると悟ったライラはボスニアから作戦を始動させることを約束させ、
承諾した。可愛らしいと思った。けなげな奴もいるものだ。
473通常の名無しさんの3倍:05/03/09 10:06:42 ID:???
反感 (゚∀゚) イイッ!
早く続きをキボンヌ!
474反感(祇園囃子より)四:05/03/13 02:21:21 ID:???
 ジャマイカンへの戦闘報告後、ジェリドはライラの部屋へ行った。
 扉が開けられ入ってみると、ライラはバスタオル一枚の姿でいた。
「いや、すまない」
 と、あやまった。ライラがジャマイカンがどうしたって?と問いかけると、
「俺はいつか、ティターンズをこの手にするって言っただろ。手にするために
は、ジャマイカンとだって一人で対応したい。それを庇うそぶりを見せるなん
て、あんたらしくないじゃないか」
 濡れた髪をタオルでふきながら、ライラはまだまだ甘いと思った。
「まったくわかってないようだね。アーガマの事実を説明したまでだよ。あん
たのことなんて、考えちゃいなかったさ」
「ニュータイプのことはすでに聞いていた!」
 こっちを向くんじゃない!ライラの言葉にジェリドは顔をそむけた。
475反感(祇園囃子より)五:05/03/13 02:29:07 ID:???
「ですから、艦隊を三つに分けて・・・」
 ライラは発言した。
「大尉!作戦参謀は私だ!軽々しい口の聞き方はやめたまえ」
「ガルバルディ隊をアレキサンドリアで修理していただいた分だけ、我々は働
かねばなりません。我々はティターンズではありませんから、ボスニアに帰還
し、別ルートでアーガマを追います」
「いい覚悟だ。だが敵を捕捉したときに戦い急ぐなよ。大尉は戦争を好む性質(タイプ)
であると聞いている。戦争屋は焦りがちになるからな」
「それは少佐の偏見です!」
 ライラの表情に怒りが表れた。
「よかろう。もしアーガマとの接触ができたときの判断は君に一任する。我々
との合流を原則にな」
「はっ」
 出撃しようとするライラにジェリドが話しかけた。これがライラとジェリド
の最期のふれあいとなった。
 ゆっくりと酒でも飲まないかというジェリドに対しライラはOKを出した。
「いい男になってくれれば、もたれかかって酒が飲める。それはいいものさ」
 ライラはジェリドに素質を見出したのだろう。愛情というものかどうかは筆
者にはわからない。
 ジェリドのほうは気があったであろうが。
 ライラのガルバルディβはボスニアに帰還した。
476反感(祇園囃子より)六:05/03/13 02:35:55 ID:???
 これが、宇宙世紀0087・3月18日のことである。ライラのガルバルデ
ィ隊を載せた巡洋艦ボスニアは、サイド1の空域へむかった。
 焦るライラを艦長のチャン・ヤーがなだめた。ライラとは気のあう上官であ
る。
 サイド1・30バンチにアーガマが入港したとの報がはいった。ライラは偵
察したいとチャンに言い、迂回して工業用ハッチにボスニアをつけるように要
求した。戦況報告ができたほうが土産になると言うライラをチャンはとめるべ
きであったかもしれない。だがライラの強気の発言にチャンは折れ、あくまで
エゥーゴの拠点があるかどうか確認するだけだぞと言い渡し、ライラは出撃し
た。
477反感(祇園囃子より)七:05/03/15 01:25:17 ID:???
 ライラは30バンチに入った。30バンチはかつて連邦政府に対するデモ運
動が華々しく展開されたコロニーであったが、いまは毒ガス注入により住民は
全滅、電気は生きているが、無残にも荒れ果ててしまっている。強風がやまな
い。
「ここに、エゥーゴの拠点が?」
 人がいる。ライラは銃をかまえた。だが、その人らしき物体は強風にあおら
れて飛ばされた。死体のようだ。
「このコロニーは死んだままだ。ということは拠点の一つとしては格好の場所
になるわけだな」
 ライラはこの当時の連邦軍将校の例にもれず、30バンチ事件の張本人がテ
ィターンズ、つまりバスクの手によるものであることを知らない。
478反感(祇園囃子より)八:05/03/15 01:38:56 ID:???
 不意に、人がいることに気づいた。ライラは、物陰にかくれた。見えたのは
白いパイロットスーツをまとった男である。ちらっとライラの方をみた様子だ
ったが、気がつかぬようであった。町の住民は全員死亡している。だとすれば
エゥーゴの兵士だろうか。と、そこへ死骸が飛んでいったため、つい声をあげ
てしまった。男は反応を示した。ライラは拳銃をかまえながら言い放った。
「そこのパイロットスーツ!」
 と、相手がふりむくと同時に「エゥーゴの者か」と付け加えた。相手の男は
両手をあげた。よく見ると、少年である。こんな歳の子が戦争をやっているこ
とに、ライラは衝撃をおぼえた。
(まだ子供じゃないか。こんな子供が……)
 やはり、予測したとおりだ。ライラは先のジャマイカンへの報告で、あの戦
艦はかつてのホワイトベースのように感じられると報告した。そのホワイトべ
ースのエースパイロットがわずか15歳という年齢でありながら、正規軍をう
わまわる功績を打ちたて、連邦軍の勝利に貢献したことを当然ライラは知って
いる。そのアムロ・レイというパイロットも、成り行き上戦争に参加せざるを
えなかったということも。この少年があの戦艦のパイロットであるなら……
 そのとき、むこうから人の話し声がきこえた。ライラは少年に拳銃を突きつ
けながら建物に連れ込み、様子をうかがった。
「ティターンズの方ですか」
 少年は拳銃を突きつけられながら言った。
「ティターンズなものか」
 警戒しながら、さらに拳銃を頬にくいこませ、いった。不快な一言であった。
ライラは憤った。なぜこうもティターンズと聞くと嫌な気持ちになるのか。
479反感(祇園囃子より)九:05/03/15 01:50:44 ID:???
「あれは、エマ・シーン……」
 知ってるんですかと、少年は問うた。ライラはまあなと返した。それにして
も、拳銃を突きつけられながらも少年は肝がふとい。ライラは聞き耳を立てて
様子をうかがっている。
「なぜここまでする必要があったんです?納得できません」
 エマと、赤いパイロットスーツの男が話しはじめた。
「連邦の人々は、宇宙というあたらしい環境を手に入れてそこに適応していこ
うとする人間を恐れたのだ」
「ニュータイプのようになるからですか?」
「そうだ。ニュータイプをエスパーのように考えているから、いつかそのニュ
ータイプに主権を侵害されることを恐れているのさ」
「たった、それだけのために、これだけの人たちを殺せると」
「殺せるさ。ちょっとした借金のために人を殺すよりもよっぽど理性的な行為
といえる」
 ライラは隠れながら、会話をきいている。ライラには納得できなかった。偽
りを言っているとしか、おもえない。
 ライラは飛び出し、「偽りを言うんじゃない!」と叫んだ。
「たったそれだけのために、バスクがこれだけの人を殺したりはしない」
 赤いパイロットスーツの男はしごく冷静な態度で、
「見てわからないのか」それにライラがザビ家の残党連中にだまされているだ
けだと反論すると、
「地球連邦、ひいてはティターンズが第二のザビ家になろうとしているのだぞ」
「なんだと!?」
 我慢できなくなり、少年をつきとばしてライラは走り去った。今まで自分が
聞かされてきたことと、まったく違うことを彼らは言っている。やはり彼らは
敵だ。
 自然に気持ちが反感へとつながっていることに、この時点ではまだライラは
気がついていなかった。
480反感(祇園囃子より)十:05/03/15 02:06:36 ID:???
 ガルバルディβを発進させたライラは、感情の高ぶりがおさえられないまま
30バンチの空域に飛んできたガンダムマークUを発見した。えらそうな声が
きこえている。
「生意気な口をきいた士官が乗っているとでもいうのか」
 と、ライラはマークUのバズーカの一撃をかわしながら言った(中略)
 そのマークUが、眼の前に接触してきた。正確には抱きついてきたというほ
うが正しいが、接触したマークUのパイロットは激しい口調で、「あなたも先
ほどのクワトロ大尉のことを聞いたでしょう」と、説教するかのようにライラ
に言った。
 その一言が癪にさわった。
「なにゴタクをならべて!!」
 ライラのガルバルディβは、少年のマークUを突き飛ばした。突き飛ばされ
たマークUは「抵抗するんなら、撃ちますよ」と、ハイパー・バズーカをガル
バルディβにむけて放った。
 ライラはかろうじてガルバルディβを回避させたが、内心焦りを感じている。
妙な力を、圧迫を感じている。この圧迫感、マークUの動き、やはりニュータ
イプなのか。
「あんな子供に!あんな子供なのに!!」
 と、ライラの前に躍り出たガルバルディ隊の一機が偶然にもマークUに落と
された。
「私は正規軍のパイロットだ!あんな子供に負けてなるものか」
 正規の軍人であるという彼女の執着が、彼女自身気がつかぬかたちで反感を
育てていた。嫉妬とでもいいかえられるかどうか。
「大尉。あなたは逆上しすぎている」
 少年の一言とともに、マークUはコロニーのミラーよりみずからの機体をか
くした。ライラはまたもや動揺した。
481反感(祇園囃子より)十一:05/03/15 02:16:17 ID:???
 コロニーの穴にかくれたマークUは、少年の息遣いとともにしずかにライラ
のガルバルディβを待ち構えていた。
 その宇宙の鼓動を感じた瞬間、少年はビームライフルの引き金をひいた。
 ビームのエネルギーが、ライラのガルバルディβに命中した。
「うわぁぁぁぁ」
 ライラは不意をつかれた。たちまちガルバルディβは衝撃でとんでゆく。マ
ークUはそれを撃つべくコロニーの穴から飛び出し、ライラはガルバルディβ
の体勢を姿勢制御によって整えたが、いち早くマークUが飛び出してきて、ラ
イラの隙をつくかのように頭部のバルカンをあびせかけた。
「負けるものか!あんな子供に!!」
 背中からビームサーベルを抜いて振りおろしたが、瞬時にマークUにかわさ
れ、空振りとなった。それをみて少年は、マークUのビームライフルを撃ちこ
んだ。
 そのビームがとどく前に、
「私がジャマイカンに言ったとおりだ。ジェリド!油断するな。こいつはただ
者じゃない!!」
482反感(祇園囃子より)十二:05/03/15 02:22:37 ID:???
 ビームの一撃が、コクピットに命中したとき、ライラはオールドタイプのあ
りようがどういうものであるかを瞬時に悟った。
「そうか……私が今あの子のことをただ者じゃないと言った。このわかり方が
無意識のうちに反感になる……これが……オールドタイプということなのか」
 覚醒したといえるかもしれない。ライラはビームの閃光に貫かれ、散った。
ほとんど意識していなかったことを、彼女は死の瞬間に意識し、理解したので
ある。
 その感じ方こそ、本来のニュータイプたるべき素質であったといえるのかも
しれなかった。 
483反感(祇園囃子より)終:05/03/15 02:26:12 ID:???
 その戦闘を、遠くアレキサンドリアの艦橋で見ていたジェリドは、悲痛な声
をあげながら泣いた。自分を呼ぶライラの声が聞こえた。何を言おうとしたか
ったのか……ジェリドにはわからなかった。
 ライラは唐突に、足早に駆け去って、宇宙に散った。
 ジェリドの復讐も、この日を境に、ますます強烈なものとなってゆく。
4841:05/03/18 11:19:31 ID:???
書き込めるうちに
 独断でアーガマヘ奇襲をしかけたとき、アーガマから、可変MSの出来損な
いの機体がとびだして、ヤザンのギャプランの前にふさがった。見るからに中
途半端なMSである。足蹴りをかまして突き飛ばし、執拗に追いかける。
「同じ変形MSでも、こっちの能力はちがう」
ピッタリと背後にくっついてビームを放つ。相手が不慣れであることは、動き
をみればわかる(中略)
 ヤザンは知るよしもないが、追いかける可変MSメタスのパイロットの名は
「ファ」軍曹という。この少女がのちに模範的看護婦長として月都市でその名
を不動のものとしたファ・ユイリィである。当時17歳であった。
(自分の失敗を棚にあげて・・・・)
 ジャマイカンは、エリート参謀を自負しすぎているからこそ、自分よりも才
能の溢れる人間に複雑な苛立ちを覚えるのだろう。
(あの野郎が優秀なら、この俺を冷遇はすまいし、グラナダへのコロニー落と
しも見事にやってのけただろう。ジャマイカンはいままで、甘い汁を吸いすぎ
た)
 しかも今は優遇の極にある。バスク大佐も総帥ジャミトフ・ハイマン大将も
ジャマイカンだけは特別扱いし、作戦参謀としては特権をあたえ、好きなよう
にさせすぎている。上層部からこれほどの優遇をうけているジャマイカンが、
これ以後討伐を続行したところでうまくやれるはずはない。
(殺(や)るか)
 と、ヤザン・ゲーブル大尉が決意したのは、この日の出撃前のことである。
 漂流していたグワジン級大型戦艦の艦内で、ヤザンのギャプランは不覚にも
不意討ちをくらい、片腕をZガンダムのビームサーベルで斬られた。
 艦内から離脱したヤザンのギャプランはまっすぐにジャマイカンのアレキサ
ンドリアへとむかう。
 背後から追撃してくるのは、カミーユのZガンダムである。もう一機はGデ
ィフェンサーに乗るカツ、これはエマ中尉のマークUと合体している状態であ
る。
(このままで終わらせるつもりはないんだよ)
 不敵な笑みをもらしながら、モニターに映っている敵MSの姿をみる。いい
子だ、ちゃんとついてきてくれている。
(来た)
 ヤザンは自らのギャプランを、アレキサンドリア艦橋のブリッジのまえに静
止させ、敵MSの出方をうかがった。
 ギャプランへむけて、エマはスーパーガンダム(Gディフェンサーとマーク
Uとの合体時のMS名)のロングレンジライフルをかまえる。
 撃てよ、ガンダム。ヤザンの役回りは、敵がビームを放てばそれでしまいで
ある。この近距離なら素人ですら外すことはない。
「エマさん」
 とカミーユがZガンダムごしに声をかけたとき、照準が合い、合うと同時に
スーパーガンダムのロングレンジライフルの閃光がはなたれた。
 ジャマイカンは、まだおのれの運命がヤザンごときに弄ばれていることすら
知らずにいる。
 閃光を確認したヤザンはすばやくギャプランを回避させた(略)
 ついに栄光むなしく、この瞬間が驕りたかぶっていた作戦参謀の最後の姿と
なった。
「うおぉぉぉぉー!ぎゃあぁぁぁぁ!」
 声が沸きあがると同時に、必死に逃げ出そうと閃光に背をむけたジャマイカ
ンを、閃光がつつんだ。
 ブリッジのガラスが、宇宙にはじけとんだ。
 ヤザンはギャプランのコクピット内で、ジャマイカンが消えゆくのを満足げ
にみた。ここは戦場だからな、と思い、不慮の事態は起こりうるものだ、それ
に対処しておくのが本当に優秀な参謀というものだと、あちこちにむなしくビ
ームを放出しつづけている重巡洋艦アレキサンドリアをみてあらためて思った。
490通常の名無しさんの3倍:2005/03/26(土) 11:06:01 ID:???
保守
(いったい、何のようかしら)
 レコアの部屋へ少女は入室した。まだ実戦経験がとぼしく、アーガマのクル
ーから、
「ファ軍曹」
 と呼ばれていた。
 黒髪で、母性がにじみでている顔に、東洋系の黒い瞳孔がくまなく動いてい
る。体はやせがたであるが、どちらかといえばふくよかな印象があった。この
少女らしい肉体が、97歳まで寿命を保とうとは、むろん、レコアなどは想像
もおよばなかったであろう(中略)
 入ってくるなり、
「ジャブローに行ったあと、今度はジュピトリスですか?」
 と、強い口調で問うた。無駄足だったけどね、返答を聞きさらに話を聞くべ
く椅子にすわる。
「エゥーゴのクルーだということが・・・・わかってしまったんですか」
「当然でしょ。相手はプロよ、甘くはないわ」
「よくご無事で」
 ファは正直に感心した。大人だと思えた。未熟な自分とくらべて、なんとい
う高い意識をもっていることか。
「カミーユには、強く言い過ぎたかしら?」
「そんなことありません。カミーユって無神経なんです。少尉がジャブローで
受けた屈辱をそそごうなんて」
 ファは心の底からレコアに同情し、カミーユのいかにも男らしい態度をなじ
り、レコアをなぐさめようとした。この相手をなじってかばおうとするところ
が、いかにも少女っぽいのである。レコアは少し気が楽になった。
「ありがとう、ファ。でも、それは言わないで。メタスはあなたに任せますか
ら」
「レコアさん……」
 やっぱり、相当の辱めを・・・。古傷が痛むのだろうか。
「あたしにはこういう任務が適任なの。だから選ばれるのよ」