【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】5

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1通常の名無しさんの3倍
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんが好きな内容でSS・ネタを書いてください。
長編の連載もできます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
投下作品には「つまらん」と言わずアドバイス等感想レスを付けて下さい。
面白いものには素直にGJ! をお願いします。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長にも感謝の乙! をお願いします。

前スレ
【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】4
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1178450679/

まとめサイト
ttp://pksp.jp/10sig1co/
雑談所
ttp://pksp.jp/rookiechat/
2通常の名無しさんの3倍:2007/06/13(水) 17:03:01 ID:???
2ゲーッツ
3通常の名無しさんの3倍:2007/06/14(木) 02:18:23 ID:???
>>1
スレ立て乙!そして投下待ち!
4通常の名無しさんの3倍:2007/06/14(木) 14:30:48 ID:???
前スレ埋めた糞野朗氏ね
5週刊新人スレ:2007/06/14(木) 16:06:21 ID:???
間に合わなかった・・・
コテ名をちょっと変更。わざとだったんだからねっ

>>4
そんなに怒るな
6週刊新人スレ:2007/06/14(木) 16:08:29 ID:???
DION大規模長期規制記念号 目次(※目次は全て前スレ【4】です)

 シミュレーションに明け暮れるシン。その彼を気遣うレイの、その方法とは。
せめて、夢の中だけは
>>413-417,476-481

 息子の死に悲しみの日々を過ごしていた私は、ある日彼の残していったモノを見つける・・・。
Exploration of Personality
>>418

 天駆ける深紅の機体、サーシャの胸中に去来する思いは・・・!遂に堂々の最終話!!
彼の草原、彼女の宇宙(そら)
>>425-432
あとがき>>433

 人気アイドル、カガリさんとディナー! 苦労人シンにも遂に運が向いてきた、のか・・・!?
アスカしっかりしなさい(未完)
>>438

 オーブ本島東端の岬、金髪を風になびかせて歩く女性。彼女の思いは・・・。
せめて、君に(還題)
>>449-450

 疲弊しきったオーブ国防軍、15隊もまた例外ではなかった。そんな中15隊へ下された命令とは・・・!
CE大戦秘話
>>484-486

 カガリの元へと急ぐアスラン。だが、既に彼はオーブの市民でさえなかった。
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜

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お知らせ
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。

編集後記:
考えた末にメモリスティックにコレを入れて会社に持ってきた。根性があるな、俺
そしてぢおん氏ね
7通常の名無しさんの3倍:2007/06/14(木) 21:57:06 ID:???
 編集長へ魂の 乙! そしてまとめの中の人も乙です。
8通常の名無しさんの3倍:2007/06/15(金) 22:20:21 ID:???
ブギーポップとのクロスを書いてみたいな。
9通常の名無しさんの3倍:2007/06/16(土) 00:15:19 ID:???
 いいんでない?
 一応クロスssスレもありますけど。
10機動戦史ガンダムSEED 27話 1/7:2007/06/16(土) 00:35:23 ID:???

 オーブ連合首長国<ホワイト・ヒル>代表首長府兼総司令部――代表府執務室――    ]

 いつもの通り、私カガリ・ユラ・アスハは、オーバル・オフィスの自分の専用デスクの
上で自分専用のパソコンへ送られてくるパーソナル・リンクからの膨大な量の政務報告
と業務決済に目を通し、承認処理を続けていた。
 この時代、情報の交換は、大は国家間の内外政策や小は場末の役所仕事まで、全て
ネット・リンクによるHIS通信網と呼ばれる世界規模の通信システムによって網羅されている。

 だが、最終的決定や業務報等、重要な懸案の処理は、未だに紙による書類と本人の
決済印及び自筆によるサイン、花押ともいうべき本人が承諾したという許可印以外は
公的に認められていない。

 無論、私の専用のパソコンは、幾つものプロテクトが施されていて、更にメインホストが
別で機密保全には、考えられる限りの万全の対策を施されている。例えば、パソコンを
私以外が触れて、その人物に正式な代表府権限が与えてなければ自動的に全データが
削除される仕組みとなっている。だがそれでも対策としては万全ではないのだ。

 その原因の一つとして、ここ10数年の間、地球圏に於ける国家間の間で多発している
『ターミナル』と呼ばれる非合法組織による相次いだ機密データ強奪事件が問題の一角と
なっているのだ。 その中心的人物がラクス・クラインと自称『歌姫の騎士団』としている
ラクシズの連中である。
 『平和と自由』の名の元に彼女達は世界を騒がせ、混乱に陥れていったのだ。その手先
ともいうべき存在の一つこそが『ターミナル』なのである。
 その機密データがラクス・クラインの手に次々と奪取され、連中に渡るという不祥事は、
地球連合強国は無論のこと、他の中立勢力等、諸外国の間に疑心暗鬼を招く事になったのだった。
 
 ラクス・クライン一派のその手品の原因の一つにはキラ・ヤマトにもある。
この歪んだ造物主によって、最高の性能として創られた天才ハッカーは、次々と各国の国家機密の
プラテクトを破り、軍事重要機密を次々と奪取していった。

 だが、その過程もあってソフトウェアのプロテクト技術とハードウェアが未曾有の発展を遂げてゆく事は
ある意味皮肉でもあったが。

 そのお陰でもはや人間の能力ではどのように逆立ちし様とも、ハードの能力に追い付かなくなり
これによって、コーディネイタ―とナチュラルの垣根の幅を遥かに狭まる未来が生まれる事に
なったのは、人類に取って幸いであっただろう。現在のコーディネイタ―の創られた能力など、
子供が簡易ノートパソコンを持つか持たないか程度に過ぎなくなったのだから。
11機動戦史ガンダムSEED 27話 2/7:2007/06/16(土) 00:37:08 ID:???

 ふと、パソコンの画面から目を離し、明るい日差しの射す窓辺へと私は視線を向ける。
外は明るく光彩に満ちているのに、自分の心の中では土砂降りの雷雨だ。

 宇宙では、戦況は優位に進んでいるという。後で正式に報告をもらうが前回の大敗北を
覆すだけの作戦展開が行なわれており、前線の戦場の士気は極めて高いのだと言う。
 だが、前回の敗北でオーブが蒙った傷は思ったより深かった。未開発宙域の拠点衛星基地
を奪取されたことを始め防衛の要でもある要塞<ヘリオポリスU>が破壊され、機動艦隊
も第2艦隊は、ソガ司令は戦死し、艦隊はほぼ全滅。第3艦隊は辛うじて崩壊を免れたが、
戦闘継続は不能となり、現在オーブ本国に帰還の途にあると言うのだ。
 
 その報告書を読みながら、私は思わず深々と溜息を吐いていた。

 基地や要塞、艦隊などを使い潰したり、破壊されたりする限りにおいては、国を統治する指導者
としての立場と識見にしても、そして個人的な自分の良心、或いはそれに近い模造品においても、
さして心が痛むものではない。

 だが、その艦隊に搭乗していた将兵の戦死及び行方不明者の数は、笑って済ますことが
できない衝撃を自分に与えていたのだ。
 
 自己満足に過ぎないとしてもソキウス司令と第3艦隊が戻って来たことは個人的には、嬉しい。
そして、同時に政治的見解から見ても。
 どちらにしろ軍の士気を高める為には彼等を賞賛せねばならない。人としては不純であり、
政治家としての立場としては、幾らかの政治工作を含めた正しい行為である。

 ……時折このように人道的な行為と無縁な事をする度に、政治的な悪臭を纏い、自らが腐臭を
放つ元となる事が堪らなく嫌になり、自己嫌悪に陥ることがある。
 人道的と無縁な事ばかりしていると、精神的疲労が溜まりまくり、吐きそうになってくるのだ。
 
 その精神的な疲労と体の疲れを誤魔化す為に、私は椅子に座ったまま背伸びをして
大きく体を反り返していた。すると、デスクかコール機が響き、秘書から伝言が入った。

『代表――サハク閣下がいらっしゃいました。いかが致しますか?』

「お通して」

『畏まりました』

 相変わらず時間に正確ね,と思いながら秘書の問いに返答する。彼女を呼んだのは勿論、
私である。気分展開と言うか、愚痴を吐きたいというか、ようするに日頃の鬱憤と不満をぶちまける
相手に私は飢えていたのだ。そうと察して来てくれるミナもミナだけど。
12機動戦史ガンダムSEED 27話 3/7:2007/06/16(土) 00:38:31 ID:???

 ――オーバル・オフィス。

 オーバル・オフィスとは閣議室などもある代表府が設置されているホワイト・ヒル
西棟(ウエストウイング)に位置し、代表首長が日常の執務を行う部屋である。
 楕円(だえん)形(オーバル)の形状から「オーバル・オフィス」と呼ばれている。
各国首脳との会談が行われることでも知られ、民間人や一般官僚、軍人がこの部屋に
招かれるのは、極めてまれなのである。
 
 私がこの執務室に人物を迎える事は、面会が「私的な訪問」ではなく、「公式会談」と
同等の重みがあることを示しているのだ。

 そして、もう一つ自分にとって、ここで親しい人物と共にお茶を取るの事が日常のささやかな楽しみでもあった。
本日のお相手は、私的には大切な親友であり、公的には首席補佐官のロンド・ミナ・サハクである。

「ようこそ、ミナ――」

「来たぞ」
 
 恭しくホストとして、私は客に対して礼儀を取る。笑いを含みながらも。
ミナは邂逅一番、相変わらず素っ気無いほど無愛想である。それが彼女なのだから仕方が無いのだけど。

 ――ロシアン・ティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で。
 
 その格言通りに今日のティー・タイムの主役はロシアン・ティーなのだ勿論、給仕など
無粋なのは置かずに私は、自分自身の手で客人にお茶を入れるのだ。お蔭で美味しいお茶の
沸かし方や上手にカップに注ぐ方法等、お茶会関係の技量は格段に上がった。
 
「代表自らのお手からの茶とは、大変恐縮だ」

 ミナは口元に微笑を浮かべながら、珍しく冗談を言った。

「どういたしまして」

 私も微笑しながらそれに対して可笑しげに答えた。彼女とは、もう随分長い付き合い
になるのだ。ティーカップを片手にもう片手には詩集を持つという優雅な午後の一時を……
といいたい所なのだけど、結局、話題となるのは現在、行われている戦術論へと話は移行するのだ。

立場上、仕方が無い事だけど、自分たちの青春は戦争と政治だけと言うのもある意味シュールだと思う。
 
 昔はもう少し、年相応の女性としての趣味や話題などを話してみたいとも思う時もあった
が、自分がそのような贅沢をすることを許されない身だと知ったのは、その直後だった。
13機動戦史ガンダムSEED 27話 4/7:2007/06/16(土) 00:39:55 ID:???

「――という訳で戦況は我が軍に優位に進んでいる」

「さすがは、サイね」

 ミナは、現在行われている第4機動艦隊の作戦行動の結果を軍事機密に触れない程度を
話してくれた、最終的な報告は、総合作戦本部から代表府へと提出されることになって
いるがこの程度の規則違反は想定内である。少しばかり早く経過報告聞いた所、
どうと言うことはないのだ。
 
 そして、私がそう無邪気にサイを褒め称えると、その言葉にミナは自分の眉毛の角度をやや鋭角にした。

「サイ・アーガイルに付与した戦力は敵前衛部隊の3倍の規模だ。勝利して当然だろう」

「でも、手持ちの戦力の殆どを失わずに、拠点衛星基地2ヶ所を取り戻しているわ。
――それも短期間の内に。その事が逆に彼の手腕が卓絶しているのは、示しているのでなくて?」

 ミナは、いささか憮然とした面持ちで、自分達が与えた兵力ならば、サイが勝利して
当然だと言うが、私はサイを弁護する為に自分の見解を反論として述べてみた。
無論、私自身、所詮は軍事に関して素人なんだけど。

「……確かに現在、宙間戦闘に於ける戦いの基本は、航宙戦闘艦とその搭載機である
モビル・アーマーを主流とした機動兵器を用いた戦闘だ」

 ミナはいったんここで言葉を切り、優雅な動作で楕円形のテーブル上からティー・カップに取ると
口元にカップを近づけて、ゆっくりと琥珀色の液体を口に含む。

「――ことに周辺宙域の空間や地形を利用した、機動兵力を繰る用兵家としてのあの男の実力と
声望は極めて高い。これが一昔前のMSが主流だった時代ならば、考えられんないことだろうな」

 私もこの事については、黙って頷くだけだ。”モビルスーツ”と呼ばれた非常識な人型の
機動兵器が一時期、隆盛を誇っていた時代が確かに存在していた。人の形をした兵器など常識
で考えれば、全く戦闘に適していないのは当然であるのに、何ら疑問を持たずにいたとは
今、考えてみると不可思議なことである。

「それにあの男自身、”自分の趣味がたまたま地形図や宙域図を眺めたり、ジグソーパズル等、
チェスが上手いだけで、機動兵力の戦闘運用など、たまたまその趣味が高じただけ”と言っていたがな」
14機動戦史ガンダムSEED 27話 5/7:2007/06/16(土) 00:42:54 ID:???

 私は噂で聞いた事があるサイのついての逸話を思い出した。これは軍内部では公然
の噂になっているようだ。

 ――この瞬間、この位置に兵力を投入すれば敵が崩れる。

 この判断をサイが下して誤ったことはないという。これが天が彼に与えた異端の才能で
あろう。当時、私は彼にそのような才能があった事に驚嘆し、新設した機動部隊総司令に
任命したのだった。それが彼の”戦えば勝つ”の始まりでもあったという。
 
 以前の少数でも、性能が高いMSを投入すれば勝利していたという戦術が主流の時代では
考えれないことである。
 
 現在、兵器の性能はどの諸勢力でもほとんど均一化され、高い性能を誇るがコスト高
な兵器は製造されていないのが現状だ。1機や2機、突出した性能など何の意味もないから
である。必要なのは部隊行動が可能な機動力であり、ナチュラルだろうとコーディネイタ―
だろうと操縦技能に差が出ず、一画的行動ができる兵器なのである。
 そして、それを統括し指揮できる司令官の能力が重要となっている時代なのだ。

 一昔前ならば、モビルスーツの操縦も出来ない輩は戦いには、全く役立たずだったと
ミナは言うのだ。確かに、核動力搭載のMSと卓絶したパイロットがいるだけで戦局が覆
い返されるなど、今の若者達に話してみれば、馬鹿にされ、嘲笑されるだけであろう。
 
 私もある意味、その夢の時代に生きてきた一人なのだ。追憶に浸りながらも、

「個人の勇を誇る時代じゃなくなった訳だものね……MSを操るのが上手いだけで戦争に勝ててたのが、
何だか夢のよう。……そういえば、ミナも昔はMSで暴れていたわよね?」

 と少し茶目っ気をだして、ミナの方に話を振ってみた。

「……所詮、匹夫の勇に過ぎん。だが人の事は言えぬぞカガリよ。お前も昔は散々
無茶な行動ばかりしていたのだぞ?」

「……言わないで」

 ……どうやら、やぶ蛇になっていしまったようだ。それよりも……とミナが続ける。

「――敵将のディアッカ・エルスマン。我々を翻弄した男だ。プラントとの不可侵条約の
失効直後で油断があったとはいえ、奴のお蔭でこちらは多くの将兵を失い、ソガが倒され、
ソキウスまで失うところであった」
15機動戦史ガンダムSEED 27話 6/7:2007/06/16(土) 00:45:23 ID:???

「……ミナ」

 敵将であるディアッカ・エルスマンかつて3隻同盟と呼ばれていた頃のラクシズの同士
でもあり、現在は敵味方に分かれて戦っている。長距離支援モビルスーツのパイロットでも
あった男だ。天性に砲術士官の才能があったのだろう。プラントでは珍しく時代に適応に
長けた兵士であったという。その彼は、今ではプラント宇宙軍の至宝とまで謳われている存在だそうだ。

「奪取された拠点衛星基地に備蓄した物資やエネルギー資源。失ったヘリオポリスU。
――極論すれば、単なるモノに過ぎぬ。また新たに建設し、採取すれば取り返しのつかぬ問題ではない。
だが、失った人員は戻らぬ。サイ・アーガイルの言葉通り、我等は取り返しのつかない油断をしてしまったのだ」

 淡々としていたが、彼女の口調には珍しく苦渋が含まれていた。

「私は自分が首席補佐官を辞任をするべきだと考えていた」

「ミナ……!何を言っているのを!」

 この発言に私は驚愕する。

「この大敗の責任を誰かが取らねばなるまい。だが実際のところ私の後を託せる人材がいないのも、
また事実なのだ。サイ・アーガイル。……あの男は自身が首席補佐官を引責辞任する時に私に
責任を押付けていったが……」

 と、額に青筋を浮かべたミナは、ここで一端言葉を切ると私に向かって、笑いながら提案をして来る。

「……取り合えず、あの男を機動艦隊総司令に改めて任命する。軍の最高指揮権を与える事となろう。
あの男は嫌がるだろうが、絶対に断わらせるなよ、カガリよ――」


 
>>続く
16機動戦史ガンダムSEED 27話 7/7:2007/06/16(土) 00:48:12 ID:???

中盤における登場人物紹介 

 サイ・アーガイル(ナチュラル)
 最新型機動戦艦<クサナギW>を駆り、対外諸勢力の侵略に立ち向かう異端の才人。
 かつて代表府首席補佐官兼機動部隊総司令の要職にあった時期に、オーブを新国家に
生まれ変わらせる為、大規模な改革を断行した――。
 その際に周囲の恨みを買い、政府から追放された過去を持つ。洒落っ気が多い詣謔家。

 カガリ・ユラ・アスハ(ナチュラル)
 オーブ連合首長国の若き代表首長。かつてラクシズの傀儡だったが、その後、ラクス
たちと決別し、独自の路線で優秀な部下を多く登用し、その中から意見を取捨選択して
行動するという独特の政治姿勢を取るようになった。
 サイに対しては、性別を超えた友情を持つ一方で、その能力に絶大な信頼を寄せている。

 ディアッカ・エルスマン(コーディネイタ―)
 ザフト宇宙軍機動部隊の至宝とまで謳われた異才の戦略家。
 だが、自身が第3市民階級であるという事と、常日頃、ラクス・クラインの思想や
プラントの領土拡張政策に異論を唱えている為に、軍上層部における政治的立場は極めて弱い。
 毅然とした強固な意志を内に秘めており、上に媚びない性格の持ち主である。

 ラクス・クライン(コーディネイタ―???)
 プラント統治機関の『歌姫の騎士団』の頂点である終生最高執政官『天の女神』。
 ザフトを初めターミナル、ファクトリー等の武装非合組織を内包し、かつて地球圏
を混乱に陥れた武装テロ勢力であるラクシズの教祖とも言うべき存在。
 統一戦争以前には、オーブにもその勢力が及んでいたという。
 圧倒的で不可思議なカリスマを誇り、プラントの市民から盲目的で熱狂的に崇拝されている。

 ロンド・ミナ・サハク(コーディネイタ―)
 オーブ連合首長国・代表府首席補佐官兼総合作戦本部長。
 アスハ代表の補佐をする冷徹無比の宰相。他を圧する威厳を持ち、かつ冷徹な理論家でもある。
かつて首席補佐官だったサイ・アーガイルによって代表府の大幹部としてアメノミハシラから招聘された。
アメノミハシラ派閥の総帥でありオーブの実質の要。私的にはカガリの友人でもある。
 その冷徹ぶりに周囲から『鋼のミナ』と呼称されている。

 グゥド・ソキウス(コーディネイタ―?)
 オーブ宇宙軍第3機動艦隊司令官。
 以前は、アメノミハシラ派閥に属していたロンド・ミナ・サハクの直属の部下であったが、
ロンドがオーブ代表府への招聘に応じた際に同行し、その能力からロンドと共に軍部の重鎮となる。
 個人的にサイ・アーガイルと親しく、その才幹を敬慕していた。若手士官の憧れであり、
将校のホープでもあるが、その半生の経歴は謎に包まれている。

17通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 04:14:47 ID:???
オーブの地を最後に踏みしめたのは2〜3年も前の事だった。だからというわけではないけど、仮に僕の事を知ってる人と出会っても、その人はおそらく気づかないと思う。
本当なら、僕はもう二度とオーブに来るつもりなどなかった。この国は罪人の僕には優しすぎるからだ。でも、僕は戻らなければならなかった。彼女を止める為に。


彼女と初めて出会ったのは、戦争が終わって初めてマルキオさんの孤児院に行った日だった。
外は快晴だったにも関わらず、ただ一人家に篭っている少女。肌が雪のように白かったせいか、その燃えるような赤い瞳が一層引き立てられていた。

「どうして外で遊ばないの?」

僕は尋ねた。彼女は突然現れた僕に驚きもせずに、一言呟いた。

「空が嫌いだから」

僕は当然「何で?」と聞き返した。そして、その後彼女から返ってきた答えは今でも鮮明に思い出せるぐらいに強烈だった。

「空の色した化け物が私のパパとママとお兄ちゃんを殺したから」

僕は一瞬で理解した。彼女の家族を奪ったのは、おそらく僕なのだろうと。そして、それと同時に僕の目からは大粒の涙が溢れ出してきた。
僕は世界の救世主にでもなったつもりでいた。でも本当は、彼女の家族を守る所か殺していた。僕は世界で一番の愚か者だった。
そして、僕はその日の夜に旅に出た。別に許されたいからではない。許されたいのなら、おそらく100万回死んでも足りないだろう。ただ、その時の僕は罪を背負って歩いていく事だけしか考えられなかったからだ。


ロード=ジブリールの首が欲しいが為にオーブに襲い掛かるザフト。そして、その中でも一番有名な部隊――ミネルバ隊。彼女はこの隊に所属し、かつての僕の愛機を駆っている。
家族を奪ったMSのパイロットが奪われた者なんて、全くもって奇妙な組み合わせだ。だが、おそらくこれは彼女自身が望んだ事なのだろう。
蒼翼の天使――フリーダム。目の前に立ってみて、改めて恐怖を覚えた。そして、これを僕は他の人々に味合わせていたのかと思うと僕は自分自身に嫌悪感を抱いた。

「金色のMSなんて……相変わらず気持ち悪い趣味をしてるのね、オーブは」
「久しぶりだね、マユ。僕のこと、覚えてるかな?」
「あなたは……キラさん?そっか、やっとマユに殺されに来たのね」
「違うよ。僕は……僕は君を止めに来たんだ。君にだけは僕と同じことをさせたくないんだ!」
「……綺麗事なんて言わないでよ!」

空を舞う2機のMS。互いのビームサーベルが重なり合う。瞬時にお互いに距離を取って、ビームライフルを撃ち合いながら牽制する。

「やめるんだ、マユ!君は……君と同じ想いを他の子どもたちにさせたいのか!」
「そんなの知らないわよ!何でよ……何でマユだけがそんなパパもママもお兄ちゃんも失わなきゃいけないのよ!」

背筋に悪寒が走る。まさかと思ったけどやっぱりそうだった。
フルバースト――甘い考えしか持ってなかったかつて自分が使った、最も簡単に敵の動きを止める方法。
18通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 04:15:39 ID:???
光の束がオーブに向かって放たれた。頼む、間に合ってくれ。
次の瞬間、僕はアカツキを光の束の前に投げ出す。しかし、貫くはずの光はアカツキを貫かず、フリーダムの方へと跳ね返っていった。

「何よ……何なのよそれ!」

返ってきた光の束を避けて、すぐにマユが叫ぶ。無理もない。ビームを跳ね返すMSなんて常識では考えられないだろう。
ヤタノカガミ――この技術自体は2年前に既に完成していた。だが、実用されなかったのはモルゲンレーテに最大限の力を貸す事を拒んだ僕の責任だろう。

「マユ、もうやめるんだ。このアカツキの装甲じゃ、フリーダムでは分が悪すぎる」
「黙れ!……ビームが効かないなら接近戦で仕留めるまで!」
「……ッ!君は戦うような子じゃないだろ!だからもうやめるんだ!」

2機のMSが交差する。フリーダムの右腕が切り飛ばされ、爆発する。後はメインカメラを破壊するだけ、僕がそう思った瞬間だった。背後から何かとてつもないものが来るのを感じ、思わず大きく横に飛んだ。そして、アカツキが元いた場所を赤い光が通過する。

「マユ、大丈夫か!……ここは一旦引くぞ、命令だ」
「レイ待って!まだコイツとの決着が……!」
「マユ命令だ、今すぐ戻れ」
「……了解した」

狙撃してきたMSは、まるで世界を呪うような禍々しい顔をしていた。そして、そのMSのパイロットからは何故かラウ=ル=クルーゼに似た感覚を僕は覚えていた。
1917&18:2007/06/17(日) 04:18:06 ID:???
初めて書いたんで、よかったら感想お願いします。
舞台は種死の40話辺りで、それを色々とリメイクしてみました。
20通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 12:19:14 ID:???
いまマユスレに投下するのはちょっと…な状況だから別にいいんだけど
いろいろ隻腕と被ってますな、こりゃ。
もっとも、向こうを読んでなくても普通に思いつきそうなネタではあるんですが、ね。
2117&18:2007/06/17(日) 12:39:24 ID:???
>>20
すみません、隻腕って何ですか?読んでみたいんで、読める場所を教えてほしいんですが……

僕が思いついた奴は、とりあえず自由とAAは連合とザフトに返してそれから原作からマユとシンを入れ替えたってカンジです。
22通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 14:13:40 ID:???
>>20
いやいや、マユが「昔マルキオのとこにいてキラと会ったことがある」のと
「自由に乗る」程度では被ってるとは言えないのでは

>>17
隻腕はここの住人がひどく嫌っているスレにあった作品
23通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 14:39:57 ID:???
虎の首かとオモタ

それはさておき指摘をば。
CEのビームサーベルでは鍔迫り合いできませんよ。
24通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 16:09:48 ID:???
>>19
マユ主人公ならば此方にどうぞ。

もしシンじゃなくてマユが主人公だったら21
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1174857452/
25通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 16:14:23 ID:???
>>23
>鍔迫り合い
その辺は、特に気にしなくていいんじゃないかな?

鍔迫り合い出来たほうが見栄えがいいし。

確かに設定上では出来ないけど、他の職人さんでも、敢えて無視して鍔迫り合いさせてる人もいる。

だいたい、本編で、ビームブーメランをビームブレイド(?)で、破壊ではなく、弾いてる。

ビーム同士は干渉しませんと言われても、説得力がない。

と、自分は感じる。
26通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 16:18:12 ID:???
だいたい、ビーム同士は干渉しないんなら、ビームシールドでビーム防げないジャン、と素人考えするの自分だけ?
27通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 18:52:06 ID:???
いくら嫌ってるからって荒らすのはどうかと思うな
28通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 18:54:37 ID:???
>>27
???
29通常の名無しさんの3倍:2007/06/17(日) 19:42:42 ID:???
荒らしているのは隻腕のころからマユスレに粘着している連中だよ
ここの住人じゃないだろ
ついさっき容量オーバーになったが
30通常の名無しさんの3倍:2007/06/18(月) 18:25:13 ID:???
>>21
投下乙
先ずはタイトルを付けよう。編集長を困らしちゃいかんww

表現にちょっと回りくどい部分があるな
ワザとそうしたいのはわかるがリズムが悪くなるぞ
それと改行は出来れば40〜45字ぐらいでして欲しい
好みの問題ではあるだろうけど俺は読みづらく感じる
携帯ならば難しいかも知れないけどさ

あと、隻腕はマユスレのまとめ辺りからどーぞ

>>24
新人ならばいいんじゃないかと思うが。隻腕を知らないと言ってるのに誘導せんでも・・・
31週刊新人スレ:2007/06/18(月) 22:32:19 ID:???
目次

 カガリの元へと急ぐアスラン。だが、既に彼はオーブの市民でさえなかった。
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜 【アンカー抜けの為再掲】
>>531-537(アンカーは前スレ【4】のものです)

 オーバル・オフィスのカガリを訪ねるはロンド・ミナ。ティー・カップ越しに話し合われる内容とは・・・。
機動戦史ガンダムSEED 
>>10-15 中盤登場人物紹介>>16

 オーブ防衛の為アカツキを駆るキラ。それを落とさんと舞うフリーダムを操るのはかつてキラが出会った少女・・・。
無題
>>17-18



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当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
32通常の名無しさんの3倍:2007/06/18(月) 23:59:00 ID:???
>>戦史
 美容と健康の為に、食後に一坏の紅茶を窘んでおられるミナ様とアスハ殿ですな。
戦史さんの書くカガリは本当に原作とは性格が変わっていて同一人物とは思えません。
が、もはや違和感を通り越してこれ以外には考えられない位の性格に思えてきたこの頃です。
 投下乙。
 表面的な能力の差がハードの進歩によって画一化され、より大きな視野で物事を考える
才能が重要になってきた、というのは作品の中で何度も言われているテーマですね。
しかしその具体的な例が無いので少し分かりにくい設定だなと思います。
 ミナ様引退発言に驚きつつ、次をお待ちしております。

>>17,18
 はじめまして投下乙です。
 リメイクとしてはありがち、短編としては掴みはまあまあ結びに問題あり、という感じです。
マユの事を知ったキラの心情にもう一ひねり加えるのが良いかと思います。改行に関しては
他の方が指摘されている通りです。

>>編集長
 乙です。


3317&18:2007/06/19(火) 00:03:49 ID:???
皆さんありがとうございます。
隻腕読んできました……確かに被ってると言われてもおかしくないですね。

すみません、単発だからタイトルは要らないかなと思ってたんで考えてませんでした。
「金色の守護者」でお願いします。
34通常の名無しさんの3倍:2007/06/19(火) 23:29:57 ID:???
完全オリジナルなんかもいいのでしょうか?
35通常の名無しさんの3倍:2007/06/19(火) 23:59:36 ID:???
>>34
好きな内容(ry
36通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 00:24:10 ID:???
>>35
ありがとうございます。それじゃあ、

・時代はUC450年ぐらい
・連邦の弱体化とコロニー最強だったザンスカールの消滅で、絶対的強者が存在しなくなった世界。
・方々で戦争や紛争が頻発するも、勝ったり負けたりでさっぱり決着がつかない。
・文明そのものが長らく続く戦争で停滞・退廃しつつある。
・混乱の中で幾度も技術的断絶が起きているためにV以前との技術的つながりはほぼ皆無。
・ニュータイプはスパロボの特殊技能なみの地位まで貶められ、人の革新はなかったことに。


こんな感じの設定で、何か書いてみようと思います。
よろしければ、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします
37通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 01:01:17 ID:???
まさかUC物とは予想外
38通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 01:05:54 ID:???
旧板行けよ
39通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 01:06:49 ID:???
Gセイバーわすれてね?
あれも一応宇宙世紀だぜ。
40通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 07:20:54 ID:???
>>36
種とユニコーン以外なら板ちに成るんじゃ無いか?
よく知らないので旧板の何処に行けとは言え無いが

>>39
素で有った事すら忘れていた
41通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 17:24:22 ID:???
難しいところだなぁ
完全オリとなると……いや、しかしここ以外に適当な所も……
42通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 23:40:18 ID:???
>>36
まぁ、否定意見も少なそうだし取りあえず投下してみろ
設定見る限り、もはやガンダムを名乗るモノかどうかも微妙な気がするがねw
43通常の名無しさんの3倍:2007/06/20(水) 23:40:42 ID:???
>>36
 CE、オリキャラオリMSを想像してました。
CE200年くらい。連合の弱体化とプラントの消滅で……。コーディネーターはスパロボの……。
とすれば板の壁を越える必要は無いと思いますよ。
 UCの影響を排して書こうとしておられるようなので、NTを使う必要が無ければ問題ないのではと
思いますが、どうでしょうか?
44弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 21:56:39 ID:???
ちょっとテスト
45弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 21:58:38 ID:???
少女は砂漠を走る!

プロローグ〜落ちる橋〜

 響き渡る爆音、絶え間なく聞こえてくる怒号。オーブ軍の制服を着た男達が拡声器で叫ぶ。
『ライフジャケットが足りませんっ! 皆さん中へ入ってくださいっ!! 甲板上は危険です!』
オーブの護衛艦。その甲板の上。一人の少女が手すりを握りしめながら目の前の光景を見つめる。
優秀だった少女。きっと中央政府かモルゲンレーテに入るのだと人に言われ続け、飛び級を適用された。
その時点で自身も最近はそう言われる事に違和感を感じない程度に自信を持っていた。それに宇宙へ
行きたかった彼女が夢を叶えるには政府かモルゲンレーテに就職することが早道なのは間違いなかった。
 命あっての物種。果たしてテキストの何ページにあっただろう。旧世紀の東洋のことわざだったはずだ。
燃える住宅街、崩れていく市街地のビル。空には人のカタチの兵器が飛び回り、それがチカチカ瞬く度に
舗装をめくれあがらせ、森をはぎ取っていく。死んでしまっては確かに夢を叶えることは出来まいが、だが。

 彼女の見つめる先には空へのレールが伸びる。空への橋。そう表現したのは友人の誰だったか。
そこを滑るように加速していく箱のようなモノ。いつかはあそこを私の乗ったシャトルが走っていく日が来る
のだろうか。そう思った刹那、そのレールは地上に近い部分から順に崩れ始まる。
レールの出発点付近にあった建物も冗談のように地上に吸い込まれると火を噴き出す。
箱は白い筋を残して天空へと消え、レールもまた跡形もなく海へと消えた。
彼女が渡るはずだった空への橋。それは彼女が渡るのを待たずに無くなってしまった。

「もう、オーブには戻れんかなぁ」
「連合に占領されるならば、ムリでしょうね。ナチュラルの皆さんはともかく、私たちコーディネーターは」
「ウズミ様に何かあれば、その時はプラント領に亡命するしか無いのだろうが、しかし」
「私たちは仕方ないでしょうけど、でもミツキは……」
 父と母の話を聞くともなく聞きながら、きつく手すりを握る彼女の両手は既に血の気を失い蝋のように
白くなっている。自宅も、国も、将来の夢と希望も全て失った。それを自身で目の当たりにした少女は、
その場から一歩も動けなくなっていた。手すりを離すことさえ、もう出来なかった。

『皆さん甲板は危険です!! 狭いですけど船の中へ、お願いです! 中へ入ってください!! ……』
46弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 22:00:46 ID:???
第一話 野菜を売る少女(1/5)

「おじょ〜おさ〜ん! 今日は何か持ってねぇか?」
 声の方向に振り向くと軍服をだらしなく来た数名のザフトの人たちがこっちを見ている。
最近よく果物を買ってくれる人達だ。近づく。
「ごめんなさい、売り切れです。今日は野菜の大規模搬入の日だから細かい分はあまり積めませんでした」
「まぁ、いいや。明日は一番でココに回れよ? 昨日のリンゴは旨かった」
「ありがとうございますっ! あれ、お父さんの自信作なんですよ?」

 砂漠の真ん中、何故か緑に包まれた町。それが私の住む町、実験農場都市『セブンスオアシス』。
名前のセブンスは、此処と同じく農業実験を行っていた、かのユニウスセブンから頂いたのだそうだ。
 名前はオアシスだがそもそもはただの砂漠。地上のプラント領には砂漠が多い。なので井戸を掘り、
水をパイプラインで山から引き、緑を繁茂させそこで農業を行えないかと考える人がいても不思議は無い。
そして実際に作ったのがこの町。軌道に乗ればプラント本国への食糧の供給も問題が無くなる。
但し、強引に作った環境のこと、毎日いろんな問題点が噴出し、お父さんとお母さんも含めた
技術者達は毎日右往左往している。ただそれも楽しんでやってるように見えるのが救いだ。
技術者の多くは大戦時にオーブから亡命してきた人達。
コーディネーターでありながらいろんな意味で砂時計には住めない人達であり、我が家もその範疇に入る。
現在のところ住人は約2、200人。どうにか自給自足に近いところまでこぎ着けた。
 リンゴが収穫出来るようになるまでプラントの最新技術ならば最短2ヶ月。だがその技術を持ってしても
セブンスオアシスで収穫出来るまで1年以上かかったのだ。お父さんはそのチーフ。大変なことを知って
いる以上、褒められれば、やはり嬉しい。

「明日からは当分、彼女は此処にはこれないぞ?昼過ぎからだろ、荷物の開封」
「あぁ、そういやそうだったな。残念だな、果物よりも彼女の顔を見たかったんだが」
「ロリコンか? 社会の敵だな」
「違うよバカ、人聞きが悪いじゃねぇか! 妹を思い出して何が悪い!」
 むぅ、わたしの容姿はロリコン趣味の範疇なのか。ちょっと心外。笑いながらやり合う人達に声をかける。
「あのぉ。明日はわたし、来れないんですか?」
「今日の午後から一週間前後、船の周りと町の西側は立ち入り禁止になるぞ。ちょっとした試験があるんでな」

 今朝大きな飛行機が置いていった荷物が試験の機材なのだろう。
レセップス型と言うのだと聞いた、砂漠を走る大きな船が2隻。町の西の出口に止めてある。
盗賊からの警護などの目的で駐屯しているザフトの部隊。
今話しているのは、町からの入り口を見張っている人達だ。その後ろにはMSが立っている。
 実際の彼らの仕事は土木工事が主で、戦闘になったのは見た事がない。とはいえ反政府ゲリラや
盗賊団に襲われる被害は最近、近隣の町でも増えている。盗賊団までもがMSを使う時代である以上、
彼らに駐屯してもらうのはかなり安心ではある。大きな部隊なのは何かのテストが有るかららしい。
確かにココならば食料と水に心配はない。普段はMSが5機ぐらいの部隊が呑気に駐留しているのだが。
 セブンスオアシスは技術者と農家で全人口の70%を占める。残りの30%は、ほぼ子供。
全人口が町の維持の為になにがしかの役割を持っている。とても自警団などは組織する余裕は無いし、
まして傭兵を雇うお金など無い。そしてセブンスオアシスはプラント政府直轄領扱いで、最新の農業技術が満載。
水だって潤沢にある。砂漠の真ん中で噴水に使うくらいにあるのだ。おかげで毎日砂漠の町で虹が見れる。
もっとも噴水自体は見せるためではなく環境対策の一環で打ち上げているのだが。
 ともかくそんなわけで、ゲリラにも盗賊団にも、襲ってくださいと頼んで回っているような成り立ちの町。
それがセブンスオアシスなのだ。
47弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 22:03:00 ID:???
第一話 野菜を売る少女(2/5)

「なぁ、ミツキちゃん。午前中にもう一度お願い出来ないかな?」
 トラックの運転席のおじさんは、勉強が忙しくなければだけど。と如何にも取って付けたように付け加えた。
学校は農繁期なので来週いっぱいは休み。生徒達はわたしを含めてアルバイトに精を出している。先生達も
自分の研究室や畑で何かをしているはずだ。セブンスオアシスの掟。働かざるもの喰うべからず。
 野菜の搬入はトラック一台分では収まらなかったらしい。駐屯地に明日から入れなくなるので有れば尚の
ことたくさん野菜が欲しいのだろう。そしておじさん一人では午前中にもう一台分は積み込みも含めて絶対
ムリだ。本当は搬入はおじさんの仕事、わたしのアルバイトは一緒に駐屯地に入ってさっきみたいな小口販売
なのだが時間もないだろうし、仕方がないか。別料金でくれるかな……?
「良いよ。勉強し無くとも頭いいもん、わたし」
「そんなこと言って、あとでお父さんに怒られるのは俺だぞ、全く。ホントに良いのか?」
 
 搬入自体はザフトの人達がやる。船の中に入らなければいけないからだ。わたしはモチロン入れない。
おじさんがIDカードを受け取って検品に行ってしまうと、だから暇になった。
周りを見渡せばさっきとはだいぶ空気が違う。かなりピリピリと張りつめた感じがする。

「ファング1は後回しだ! ファング3の起動準備を先行しろ! まだ動力封印は切るなよ!?」
『……30分で交代です。交代要員はブリーフィングルームに集合してください』
『ジン・オーカーの起動準備急げ! 時間がないぞ!』
『憲兵隊西ゲート前に集合! 立ち入り禁止措置の準備を開始しろ』
『隊長、大至急ブリッジに連絡願います』
「……【ガイア】が正式名称ですが、今回の試作3機については設計段階から【ファング】で通してます。
まぁコードネームみたいなものだと思えばいいでしょう。地上での試験は不要の筈だったのですが……」

 優しげな口調の方に顔を向けると、暑いのに赤い詰め襟をピシッと着た、口調に違わず優しげな表情の
男性がファイルを持って立っている。顔をこちらに向けるとふわりと前髪がなびく。目が合っちゃった。
「おや、まだ立ち入り禁止になってなかったのかな?」
「や、野菜の搬入の手伝いですっ。終わったら、すぐに、すぐに出ますっ!」
 何故声がデカくなる、わたし。何故顔が赤くなる、わたし。
「そうなのか、ご苦労様。この辺も機械が動くから危ないな……。30分くらいで済むのかな?」
「たぶんそうだと思いますっ」
「怪我をしてはいけないからね、あの倉庫の庇の下に居ると良い。日差しも防げるだろう?」

 言われたとおりに倉庫の陰でおじさんを待つ。他の人達のようなシャツでなくて、この暑い中詰め襟の服なのは
偉い人なのだろうか?服の色だって黒と緑しか見たこと無かったが、あの人は赤かった。たぶん偉い人だ。
わたしより2,3コ上くらい? いずれにしろあんなかっこいい人は町には居ない。それはもう、絶対に居ない。
写真に撮れば良かった。そしたら学校でみんなに自慢出来たのに。
お父さんのカメラならここからでも狙えそうだな。ただカメラはそもそも持ち込みが出来ないし、
持って入ってもお父さんのあのカメラは使い方がわからない。やっぱだめじゃん。


 おじさんのトラックが空荷で出てきた。わたしを見つけたようだ。ハンドルを切ってこちらへ向かってくる。
午後から友人達と町の真ん中のセントラルタワーに遊びに行く約束になっている。時間がもう無い。
こちらからトラックに向かおうとしたわたしは、まっすぐ歩けないのに気づいた。
48弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 22:05:29 ID:???
第一話 野菜を売る少女(3/5)

 まっすぐ歩けないのがわたしの問題で無い事はすぐにわかった。聞いたことのある爆音が聞こえる。
駐屯地の倉庫や宿舎が炎を吹き出しながら崩れていく。こちらに向かっていたはずのトラックも気が付くと
骨組みだけになって燃え上がっていた。
「おじさんっ!!」
 わたしは涙を流しているようだがよく判らない。拡声器やスピーカーが何かを叫ぶが全く意味が取れない。
もと居た倉庫の陰に引き返して耳を押さえてうずくまる。
「イヤァアアアアア!」
 どうやらわたしは叫んでいるようだが耳をつんざく爆発の音以外何も聞こえない。
目は開いていても何も見えない。もう何も考えることは出来ない。
どうして? わたしから橋を取り上げただけでは足りなかったの!?

「………りしろっ! しっかりするんだっ! 怪我はしていないな!? おい、僕の声が聞こえるか!?」
 目の焦点がぼんやりと合ってくる。赤い服を着た人が強引にわたしの手を取ると、こちらを見つめている。
見た事ある気がするが誰だろう、いい男だ。その人は後ろを振り向くと誰かに話しかける。
「ファング全機の動力封印解除! ワンとスリーは起動出来るはずですっ! ツーはまだロックされているので
自分が起動しますっ! おい、僕が見えるな!? さぁ怪我をしていないなら立って。走るぞ!?」  

 引きずられるようにして立ち上がった視線の先、二階建ての倉庫の更に上。巨大なトサカを付けた特徴的な頭。
何より印象的な赤く輝く一つ目でこちらを睨む巨人。その手には巨大なライフルが握られている。
「な、ジン・オーカーだと? 襲ってきたのはザフトだというのかっ!」
 右肩にブランケットのようなものがかけてある。それが爆風を受けてずり落ちる。
「サンドベージュに赤い右肩……。マーセッド隊長、ありゃ【赤き風の旅団】です」
「今朝、マーカス隊長の言っていた反政府組織か! クソッ何故接近を許した! 只の傭兵団だろうが!」

 赤き風の旅団……その名前は聞いたことがあった。反政府組織ではあるのだが連合、プラント双方に対して
レジスタンス活動を行う訳の判らない組織。だからといってオーブの理念を掲げるわけでもなく、その実態は
傭兵団であるらしい。また盗賊団のような行為も行うため、各方面から賞金クビになっている。
 MSを多数持っているらしいがそれを運用出来る様な潤沢な資金が何処から出ているのかは謎だとニュースで
言っていたはずだ。全機砂色のMSは右肩だけが赤く染められ、パイロットの腕前は一般のそれを軽く凌駕する。
らしい。警備関係者でも軍関係者でもない、只のハイスクールの生徒のわたしが知っているのはこの程度。
けれど、こちらを見下ろすMSの顔には見覚えがある。駐屯地の入り口で立っているのと同じだ! 

 町を守っていたのと同じ顔のロボットはこちらに向けて無造作にライフルを構える。
「走らなきゃ死ぬぞ!? いいな? 僕の手を離すな! さぁ立って、行くぞ!!」
マーセッド隊長と呼ばれた赤い服の人に引きずられるようにして走り始めた次の瞬間、誰かに背中を思い切り叩かれた。
背後で爆発があったのだ。と気が付いたのはもう一度立たせられた上で走り始めた後だった。
 何度か吹き飛ばされてその都度立たせられると再び走れ、と怒鳴られる。
何度か繰り返すうちに巨大な箱の近所まで到達していた。
49弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 22:08:22 ID:???
第一話 野菜を売る少女(4/5)

「ワンの起動が出来無い様です! エディ!」
「落ち着け、エリオット! E−23以降手動でスキップさせるように伝えろ! ワンは他とは手順が違うぞ!」
『アンコールワット、臨界まで後5分。アトランタは3分で移動開始!』
『ディンはまだ出せないか! アジャイルからのデータはどうなってる!?』
『全部で何機だ! まだわからんか!?』
「ファング3はシルビオか? エディだ! 起動が出来たらアトランタへ機体を移せ!!」
 どうやら赤い服のこの人はエディさんであるらしい。そして初めに思った通りかなりエライ人の様だ。
 
 立ち上がりこそ遅れたが、どうやら本格的に戦闘が始まった様だ。そして立ち上がりが遅れたその数分の間に
駐屯地は船を残してほぼ壊滅してしまった。のみならず見やった限り町の様子もかなり変わった。
 中心部にそびえていた町のシンボル、セントラルタワーが無くなっている。そして畑は無事なものの各実験棟が
集中する町の西側からは黒い煙が盛大に上がっている。今の時間、人口の7割以上が集中しているはずの2カ所が
無くなってしまった。と言うことは……。お父さんとお母さんは、友人達は……。
膝から力が抜けるとその場にへたり込む。涙で前が見えない。

「さぁ、もう少しだ、走れるな?」
 またしても、わたしの右肩を引きずりあげるエディさん。
「だって、お父さんとお母さんが……。セントラルタワーが……」
 うまくしゃべれない。バカになってしまったのかも知れない。
「助かった後で泣け! キミが死んでも僕はご両親の為には泣かんぞ! それはキミにしか出来ない!」
「なんてコト言うのよバカッ! まだ死んで無いかも知れないじゃん!!」
 立ち上がるとエディさんに叫ぶ。そう思ってたって人に言われると頭に来る!
「ならば尚のこと走れっ! あのコンテナだ!」
 うぅ、乗せられた、みたい。ただ立ち上がることは出来たならば、走らなければいけないだろう。
せっかくわざと憎まれ口を聞いてくれたエディさんの為にも。
 走り出した次の瞬間、いきなりエディさんが覆い被さってくる。ドアップになる顔。
「ちょっ…あぐぅ!」
いきなり真っ白になる視界。目の前5cmに有るはずのエディさんの顔も見えない。

 三つ並んだコンテナ。その横腹にはこれでもか、と言うくらいに大きなザフトのマーク。視界を失う前に見ていたのは
そうだった。視界が戻ると一番手前と二番目のコンテナは粉々になって中からたくさんの機械がこぼれている。
ただ二番目のコンテナは箱のカタチはなくなっているが荷物は無事な様だ。シートを被った荷物の上にはたくさんの瓦礫。
一番奥のコンテナはよく見ると天井のフタが開いている。
「ぐっ、ふ、ワンが、やられた……。シルビオ! 起動出来たんだな? ……わかった、そのまま船の直縁!」
 インカムマイクにそう喋ると肩で息をつく横顔のエディさん。一気に顔色が悪くなったな、と思う。
ものすごい音に振り返ると同じカタチのMS同士が巨大な剣を手に戦っている。迫力だけなら格闘技なんか目じゃない。
問題はわたしから100mしか離れていないところでやり合ってる事だ。冷静になるとかなりコワイ。

 おい! キミ、と呼ばれて振り返ったわたしはホンキでびっくりした。エディさんの右腕が、無い……。
服の袖は肘のあたりまで残っているが中身はどうやら肩の下あたりから入っていない。
ちぎれた袖からは赤い服を黒く染めながら、赤い液体がしたたり落ちて砂に吸い込まれる。
50弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 22:10:22 ID:???
第一話 野菜を売る少女(5/5)

「だ、大丈夫ですかっ!」
 どう見ても明らかに大丈夫ではない。我ながらバカだ、と思うが他に言葉が浮かばない。
「かすり傷だ。……とは言わないが当面死にはしない、そう言う意味では取りあえず大丈夫だ。ありがとう」
 付いてこい。と言うとヨロヨロしながら走り出す。わたしは彼の右側に付くと背中を支える。
「済まない、……この中だ、入れ!」
 荷物のシートをはがすと人一人が入れるぐらいの穴。躊躇していると背中を押されて穴の中に落とされる。
乗り物の中だろうか、シートが上を向いてる? と、エディさんも降りてくると左手だけでスイッチを弄る。
入り口にフタが閉まり中に照明がつく。シート正面のモニターにザフトのマークが浮かび意味不明な文字列が流れる。
Generation
Unrestricted
Network
Drive
Assault
Module
 特に速読を学んだこともないが、わたしは目が早い。意味が繋がらないが縦に読むのだろうか。
ならばガンダム? やはり意味がわからない。軍内部の言い回しなのかも知れない。
エディさんがキーボードをつらそうに弄るとVPS装甲稼働開始の文字が脇の小さなモニターに表示される。
「……。済まないがここを縛ってくれ。ぐぅぅうっ。気にしないでもっと……。僕はエディだ。キミの、名前は?」
 腕の付け根をどこから出したのか包帯の様なヒモで縛れと言う。言われるとおりにするわたし。
「ミツキ、……あっ痛くないですか? ミツキ・シライですっと。コレで良いですか?」
「ミツキさんか、ステキな響きの名前だ。オーブに、ゆかりの人かな? ありが、とう、当分コレ、で……」
「え? エディさんっ! ちょっと、エディさんっ!」
シートから落ちるとそのまま気を失うエディさん。わたしは、どうすればいいんだろう……。

 突如『ワーニング!』の文字とともに大きなモニターが点く。ライフルを構えるMS。げっ撃たれた……。
何とも、ない? 小さなデータ画面を見る。同等の被弾約24発でVPS装甲の稼働は停止します。
みたいなことが書いてある。銃口が光りガスッ、ゲシッと音が鳴るたびに数字は小さくなり文字は白から黄、赤に変わる。
 上向きのシートに座る。考えてみる。必死でエディさんがスイッチを入れたのはたぶんこの【VPS】と言う機構なのだろう。
今撃たれても大丈夫なのはこの【VPS】が弾を弾いてくれるから? じゃあこの数字がゼロになったら……。
言い知れない恐怖が背中をはい上がる。表示は既に後11発になっている。
 そのモニターに【パイロット認証をして下さい】の文字を見つける。睨んだだけで字が最大の大きさになる。 
[ZGMF-X88SP-T2 Gaia-pt v.2.01 網膜、掌紋、声紋の限定起動認証を行いますか?【はい】・【いいえ】]
 そんなつもりはなかったが一瞬の後【はい】の文字が赤く点滅した。
「うそぉ!」
モニターには認証中の文字。慌ててモニター画面凝視してをばんばん叩く。ちょっとちょっと!
[パイロット登録確認 全認証完了 パイロット登録名?]
 やけくそで「ミツキ!」と叫ぶとシートがわなわなと震え始める。
「……っ! 何をしたんだ、キミは!?」
 エディさんの声が聞こえる。わ、わたしは、なにもしてませんっ! 多分……。

次回予告 第二話 少女は戦う
心ならずもファング2を起動してしまったわたしは腕自慢の傭兵団『赤き風の旅団』を向こうに回して
戦う羽目になった。しかも武器が何もない? うそぉ! わたしはどうすればいいですか、エディさんっ……!
51弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/21(木) 22:13:12 ID:???
今回分以上です。ではまた
52通常の名無しさんの3倍:2007/06/22(金) 23:59:39 ID:???
>>51
投下乙

・・・今回はまた字が多いなww
空白行をもう少し使っても良いかも知れない
コレはあくまで俺の好みだが

説明が回りくどい気がするが限度かも知れんね
俺はスピード感はキミにはもとめんので心行くまでねっとりと描写してくれ
53通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 01:15:50 ID:???
>>弐国
 投下乙です。巻き込まれ型ロボット主人公のテンプレートがてんこ盛りで少し笑いました。
シナリオの作り方は堅実で、安定安心して読むことが出来ますね。そして珍しく一人称。
 頭が良い割に混乱するとうっかりミスでどつぼはまってしまうミツキに期待です。
54Bright Lights,Pray the Earth ◆8voT9TZJqQ :2007/06/23(土) 09:40:08 ID:???
#1 1/3

──宇宙世紀105年、オーストラリア・アデレート郊外──。

東の空が次第に白みを帯び始めて、暁の光が鈍く淀んだ色を沈ませるアレキサンドリア湖を照らし始める。
まだ二十代半ば程であろう青年が、スポットライトの光に照らされながら一本の柱に縛り付けられている。
その青年は痛々しく火傷を負っており、額に脂汗を滲ませて時折苦悶の表情を浮かべている。
一人の軍人──ケネス・グレッグ──が彼に近付き、厳かに口を開く。
「……マフティー・ナビーユ・エリンだな?」
「……そうだ」
この様なやりとりは形式ばった物であまり意味はない。
。ケネスはマフティーの正体がハサウェイ・ノアである事を知っているし、彼がやった事には賛同は出来ないものの思想には共感出来る部分がある。
そしてなによりハサウェイは知り合ったばかりではあるが友人である。

「では、地球連邦政府参謀本部の命令によって、貴下の処刑を実施する」
ハサウェイは火傷による絶え間無い痛みに顔を歪ませながら、そっと空を仰ぐ。
「最後に言いたい事はないのか?」
ケネスは遺言があるならば、と付け加えながらハサウェイの顔に自分の顔を寄せた。
「マフティーとして言いたい事は言った。いつかは、人類の健やかな精神がこの地球を守ると信じている。それはでは人の犯した過ちは今後ともマフティーが粛清し続ける」
ケネスはその言葉を聞き、顔を歪ませる。
彼の言葉はこれから処刑をされる男の強がりの言葉などではなく、純粋に人類を信じ、その行く末を案じているているらだ。
ここで彼が草場の露と消えても、必ず遺志を継ぐ者が現れると信じている。
恨み言の一つでも言われた方がまだ気が楽になっただろうが、ケネスはその言葉が悲しかった。
55Bright Lights,Pray the Earth ◆8voT9TZJqQ :2007/06/23(土) 09:50:54 ID:???
#1 2/3

「ン……ハサ、好きだぜ?いつまでも友達だと思っている。忘れないぜ?」
「ああ、僕もだよ……大佐」
ハサウェイの顔に僅かな喜色か見えたが、ケネスはその言葉に眉をしかめた。
ケネスと名前で呼ばすに大佐、と階級で呼んだのは何故だろうかと心の中で思ったが、ハサウェイがケネスとの間に引いた線引きであると納得した。
そしてゆったりとした足取りで離れる。
せめてこれ以上の苦痛を与えないように、とロクに間もおかずに合図を出す。
「撃てーっ!」
乾いた銃声が響きわたり、硝煙の匂いが鼻孔を擽り不快な気分になる。

「じゃあな、ハサ……。お前は純粋過ぎたんだよ。生まれ変わったらもう少し上手く生きるんだな……」
ケネスは旅立った友人に言葉を送ると、これから彼の父親に会わねばならない事を考えて気分を重くさせた。


──C.E.70年、ヘリオポリス──

「おい、ハサ! なにぼーっとしてるんだよ!」
「いや、最近変な夢を見るんだ……。寝不足なんだよ」
ハサウェイはカレッジの友人であるトールに背中を叩かれて口ごもる。
「キラもいつまでもパソコンいじってんなよ!」
「あ、ああ……ゴメン」
キラはパソコンを閉じて皆に振り返る。
「どうせまたニュースでも見てたんだろ戦争なんて俺達には関係無いって。」
トールは屈託の無い笑顔でひょうひょうとコメントする。

「ほら、早くしないと遅刻するしちゃうわよ?」
ミリアリアが急かすと皆は急いでエレカポートに向かう。

「そう言えばフレイがサイから手紙貰ったんだって。キラ、強敵出現ってカンジ?」
待ち時間の間に他愛のない話の中でミリアリアがキラに話題を振る。
「……え?サイが?いや、でもなんで僕に話を振るかな……」
キラは内心慌てるが表面上取り繕う。
「そんなんじゃリアクショを覗きこむ。
「だってハサがキラはフレイの事が好きだって言うんだもの。トールじゃネタだろうけどハサが言うんだから信じない訳にはいかないじゃない?」
ハサウェイは時々人の心の内を見た様な事を言う事がある。だからこそ皆信じるのだろう。
もっとも、ハサウェイが真面目な性格だという事もあるのだろうが。
「おい!俺の言葉はネタなのか?俺はこんなにもお前の事を愛してやまないのに!」
トールはがっかりと肩を落としつつ、泣き真似をする。
「愛の言葉だけは信じてあげる。だってトールだもんね」
56Bright Lights,Pray the Earth ◆8voT9TZJqQ :2007/06/23(土) 09:54:59 ID:???
キラはミリアリアとトールのやりとりを見ると付ける薬は無いと一人ごちる。
「ごちそうさま。この二人は夫婦漫才で売れるかもね」
空を仰いで嘆息の溜め息を吐くとハサウェイに視線を移す。
すると、ハサウェイは胸を押さえ額に玉の様な汗を浮かべ、青ざめた苦悶の表情を浮かべていた。
皆が心配そうにハサウェイの様子を伺う中、ハサウェイは何かに耐えるように声を絞り出すように口を開いた。
「……何か……嫌なプレッシャーを感じる……何か嫌な物が来る……」


──to be continued──
57通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 17:53:12 ID:???
>>54-56
クロス先が分からないよ。
58通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 18:01:46 ID:???
>>57
閃光のハサウェイじゃないか。
59通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 18:36:22 ID:???
ハサウェイはチェーンをヌッコロシタから嫌い。
前スレの『せめて、君に』の続きがありました。
諸事によりタイトル変えました。

皆様をチキンスキンで虫歯な世界へ…
61女神が住まう国(オーブ編) ◆w43rHqzb0U :2007/06/23(土) 19:19:20 ID:???
「ねぇ? なぜこの岬には君の名前が…、いや違うな。なぜ君の名前は、この岬と一緒なんだい?
ただの偶然、ってワケじゃないんだろう?」
大海原で戯れるように跳ねているイルカ達を眺めながら、僕はふと疑問に思ったことを口にする。
僕の愛しい女神の名。そしてこのカガリ岬。たぶんなんらかの関係があるのだと思っただけなのだが。

「…知らないのか?」
彼女は驚きの視線を投げてよこす。僕は肩をすくめてみせる。
「あいにくと」
「…そうか、貴方も生まれる前の話だからな。…聞きたい?」
僕は間を置かず答える。
「君と。君に関わることなら、すべて」
そう。君を見る為に僕の眼はあり、君の声を聞く為にこの耳はある。
そして僕のこの腕は、指は、君を抱きしめる為についているのだ。
僕の身体のパーツ。このすべては君の為にある。そして僕の“心”は…。
初めて君を見た時に、君が奪っていった。…ああっ、君はなんて美しく酷い簒奪者なんだ。

「じゃ…、話す変わりに、その…」
「 ? 」
彼女は立ち上がり、僕の眼の前に来て、なぜか頬を染める。
「なんだい?」
「…その…、…『抱っこ』して欲しいんだ。今は誰もいないし…駄目…か?」

君の朱に染まった頬。宝珠と言う名のこの国で、そのさらに上をゆく、僕の…僕だけの宝物。
僕は返事をしない。ただ自分のこの両手を広げる。それが僕の答えだから。

「え…えへへ♪」
微笑み、背を向け僕の胸に収まる君。僕と君の背の間に隙間が無い。
当然だ。僕らは神が作った2ピースのパズル。一度合わされば離れることは無いのだから。
でも彼女の重みを胸で感じると僕は両の腕(かいな)を彼女の前に廻し、握る。
彼女をこのままここに捕らえて離さない。彼女専用の愛の牢獄の完成だ。

首を曲げ、照れたように僕を見上げる君。僕はそっとこめかみに口づける。

やがて、君の唇が天界の調べを奏でる。高く低く、甘く切なく。それは風に乗り僕の耳をくすぐる。

それは美しくも哀しい、愛の物語(ストーリィ)。 古(いにしえ)の淡い恋のエチュード。
僕は眼を閉じ、静かにその調べに耳を傾ける。

僕は“幸せ”の意味を考える。腕の中のオーブの、眩しく温かい光に目を凝らす。女神の微笑みが僕を見る。

…答えは“君の瞳に僕がいる”、だ。君の瞳に僕が写っている間、僕の瞳にも君がいる。だから僕は今とても…幸せだ。

そんな時間を僕は今過ごしている。

62女神が住まう国(オーブ編) ◆w43rHqzb0U :2007/06/23(土) 19:20:19 ID:???
麗しきこのオーブの地で。君と。…君の名が付いたこの岬で…。

                         …Fin…
63 ◆w43rHqzb0U :2007/06/23(土) 19:28:34 ID:???
1スレに入りきらなかった。ごめんなさい。
編集長…こんななのにまとめに載せてくれるなんて…(涙)
64通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 19:31:35 ID:???
>>54-56
テロリスト賛美主義者乙

>>63
内容がポエミィで良く分からんかった
65通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 20:01:25 ID:???
>>54-56
閃光のハサウェイを見れるとは!
>>64
小説版CCAの続きだから別物と考えたほうがいいと思う
66通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 20:08:50 ID:???
閃ハサはテロリストの主人公がテロを失敗して銃殺されるお話ですが?
67通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 20:19:37 ID:???
Wも種死もテロリストが勝利する物語って叩かれてるわけだが<66
そんなに気に入らないなら見なければ良いだろ?

ベルトーチカ・チルドレンの続きである閃光のハサウェイか
見た感じ生まれ変わりか記憶喪失ネタ?続きを楽しみにしている
68通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 20:30:45 ID:???
職人が種厨だからテロリスト賛美するのかwww
69通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:01:38 ID:???
>>68
うるせえ野郎だな、語るスレ辺りで騒いでろ
てか消えろやカス二度とくんな
70通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:02:32 ID:???
>>「ン……ハサ、好きだぜ?いつまでも友達だと思っている。忘れないぜ?」
「ああ、僕もだよ……大佐」

どう見ても婦女子ですありがとうございました
71通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:15:10 ID:???
ハサウェイに女神が住まう国グッジョブ!
おもしろかったぜ
ところで他のSSスレを見てテンプレがいいなと思ったものがあった
次スレのテンプレにこれを入れてもいんじゃね?

荒れ防止のため「sage」進行推奨
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー
エロ、グロ、やおいは禁止
本編および外伝の叩きは厳禁
スレ違いの話はほどほどに
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう
72通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:21:28 ID:???
閃ハサクロスはタイトルにセンスを感じるな。
内容も良さげだけどまだ序盤が投下されたばかりだからなんとも言えない。
73通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:28:14 ID:???
>>69
お前がゆとりなのは分かったから一本抜いて落ち着け
74通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:28:55 ID:???
>>70
それ閃ハサの原文まんまだぞw
75通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:34:01 ID:???
>>74
>>70は無知で恥を知らないゆとりだから相手にしない方がいいよ。
76通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 21:54:06 ID:???
ゆとりという言葉を軽々しく使ってるようじゃ(ry
77通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 23:05:01 ID:???
>>65
閃ハサはベルチルの続きだ。小説にはハイストもあると知らんのか?
浅薄な知識を振りかざすのは自分がゆとりだと宣伝するのと同じだぞ。

職人がマフティースレを回避したのは正解だと思う。頑張れ!
78通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 23:30:49 ID:???
我が名はカズイ! 

校門の手前100m程のところに学生が一人、斜め前方45°の角度で空を見上げながら口を半開きにし、
涙を流しながら呆然と立っているのを登校中のシン・アスカは見掛けた。
「カズイさんか?」

長く激しかった戦いも終えようとしている。敵勢力も残るはジェネシスとその前に立ちはだかるMS一
機だけとなった。
国際救難チャンネルを使用し、モニターに写し出されたパイロットに向かってプラント評議会議長で
あるアスラン・ザラは叫んでいた。
「やめろシン! これだけの数を相手に運命単機で勝てるはずがないだろ? 頼むから投降してくれ!
 お前を死なせたくはない! シン!」
続けてラクス・クラインが話しかける。
「もし、今すぐ投降して下さるのなら罪は問いませんわ。わたくしは貴方の能力を高く評価していま
 す。今後、わたくし達の為に力を貸していただけませんか?シン・アスカ」

モニターの中のパイロットが一瞬笑った様に見えた。
そして目を据えて大きくハッキリと言葉を発する。
「告ぐ、アークエンジェル。これ以上ジェネシスへの接近は許可しない。近付く者は全て葬る。我は
 シン・アスカに非ず。我が名はカズイ!! カズイの魂を背負う者。カズイの強き意思を引き継ぐ
 者。我が名はカズイ・バスカーク! 」
そしてディステニーはアークエンジェルを中心とした大艦隊にただ一機で突っ込んで行った……

「……ずぃ……カズイさんてば!!」
「――んぁ? あぁっ!? シン!! 生きていたのか? この私が死んだというのに…… だが、よ
 くぞ私の名を継いでくれたね。これで奴らも分かるだろう、第二第三のカズイの名を引き継ぐ者が
 現れる可能性が有ると言うことを!」

  どすっ!!

シンのボディブローが見事に決まる。
「あふぅぅぅ…… あれ? やぁ、シン君おはよう!」「おはようじゃないですよぉ。カズイさん昨日映画とか見てました?」
「昨日はねぇ、ネットでSS読んでたんだ」
「SSですか…… それより正門が閉まっちゃいますよ、行きましょう」
「うん、そだね。でも不思議だなぁ、閉まる30分前に着くハズだったのに……」
そして二人は校舎の中へと消えていった。

ひとたび妄想モードに突入すれば妄想と現実の区別がつかなくなる男カズイ。
妄想の物語が終了するまでは現実に戻ることはない。だがなぜかシンのボディブローによってのみ妄
想中でも現実世界に戻る男カズイ。

妄想男カズイ・バスカーク!
79通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 23:36:45 ID:???
ある日の放課後、シンは学校近くのハンバーガー店の前でコーラを飲みつつルナマリアを待っていた。
ほんの一月前までは道路をはさんで向かいにあったコンビニで時間を潰していたのだが、今は改装さ
れ別の店になっている。
 (そう言えばあの渋い隻腕義足の店長、アチコチにコンビニが開店して売り上げ悪いから商売替え
  するって言ってたっけ……)
そう思いながらシンはコンビニから改装された店を見ていた。

 【 大人のお店 アンディ 】
 DVD高価買取り・激安販売!
 大人のおもちゃ・コスチューム種類豊富在庫多数!
 年中無休24時間営業中!!

さすがにあの店は入れないなぁ…などと見ていると、向かいの通りをノシノシとナゼか偉そうに歩い
ている小柄で地味な灰色のジャージ上下(ファッションセンターしまうま1980円)にビーチサンダル
(ワスントン靴店500円均一品)ばきの男性が入店するのが見えた。

「真っ昼間から何考えてんだよあの人は!」
おそらく、あの男カズイは妄想モード中だろう。どんなトラブルになるか分かったものではない。
早く店から連れ出さなきゃ! と思っても横断歩道の信号が赤になったばかりか片側二車線の広い道
路のため結構信号待ちが長い。
こんな時は信号待ちが長く感じる。早く早く! 俺も大人のオモチャを見てみたい! いやいやいや
いやそうじゃないそうじゃない。カズイさんカズイさん。
すると店の自動ドアが開き、アンディとプリントされた前掛けエプロンをした隻腕の男性がカズイの
襟首を掴んで店から出て来るのが見えた。
80通常の名無しさんの3倍:2007/06/23(土) 23:40:16 ID:???

「何をする貴様! 私は学生ではない! 私を誰だと思っているんだ? 後で後 悔するぞ!」
「面白い事を言うじゃないか? どう後悔するのか聞かせ貰おうか坊主」
「坊主? 失礼にも程があるぞ! 私は国家代表首長カガリ・ユラ・アスハの首席補佐官カズイ・バ
 スカークである!」
「お前が学生服姿で毎日のように外から覗いてるのがレジからまる見えなんだよ。高校卒業してから
 来い! その時は歓迎してやるから。分かったか? 坊主」
「ああああああああっコスチューム! コスチューム! メイド服が着たいってカガリは今泣いてい
 るんだぞ!」

   ぼふうっ!!

カズイの背後から回り込んだシンのボディブローが決まる。
「あふぅぅぅ…… あれ? シン君? えっと、此処はどこ? 」
あぶないあぶない。もう少し遅ければ妄想のカガリとのプレイ内容まで喋りかねない。
そして現実に戻ったカズイは家に帰って行った。

「あの坊主と友達か? しかし君に会うのも久しぶりだな。事務所でコーヒーでもどうかな?」
もちろん断らない。買い物ため入店するのではなく、事務所へコーヒーを飲みに行くのだ。
赤い瞳をらんらんと輝かせて店内を見て回っていたシンは店長がコーヒーを煎れながら自分を見て苦
笑いしているのに気がつき恥ずかしくなった。だってしょうがないじゃない。俺だって男だもの。

コーヒーをご馳走になった後、店長が中古コーナーから手慣れた手付きでDVDを3本選び袋に入れ
てくれた。いい人だ。
高校卒業したら今度はちゃんと買いにきますね。お礼を言いながらニコニコ顔で店の外に出た瞬間冷
たい視線が突き刺さる。
店の前の道路を行き交う車の音は聞こえないのに、後ろで自動ドアの閉まる音だけがナゼかハッキリ
と聞こえる。
道路を挟んで真正面のハンバーガー店のウインドゥにもたれかかり、両手を胸の辺りで組んで見たこ
とがないくらいの冷たい目でルナマリアが見ていた。
赤赤赤赤、信号壊れろ赤のまま壊れろ。頭の中で強く念じたせいかアッサリ緑に変わる。へへへ……

横断歩道を渡って来たルナマリアが冷たい目で黙ったままだ。
「えっと、これには深い訳が…… い、何時からあそこに……」
「ダッシュで横断歩道渡ってカズイさんのボディに一発。カズイさん追い払って仲良く二人で店に入
 るあたりからかな? じゃ、私帰るから!」
あれから一週間。ルナマリアは口を聞いてくれない。

妄想男カズイ・バスカーク
そして何故かグッドタイミングで妄想モード中に居会わせるシン・アスカ。
二人の物語はどこまで続くか分からない。
81通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 08:49:17 ID:???
>>54-56
お前のせいでこのスレで腐臭が漂った。
氏んで詫びろ。
82通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 09:56:11 ID:???
>>81
あなた、likeとloveの区別が付かないなんて、可哀想なまでにおつむが弱いのね。
>>54-56のあれは閃ハサの原文引用じゃないの。
嫌よねえ、ゆとりって。
83通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 10:25:15 ID:???
>>82はガチホモ
84通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 10:27:38 ID:???
>>54-56はもしかして虎キラ様?
85通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 10:58:16 ID:???
ホモSSがありならエロエロなSSもありだよな?
86通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 12:37:36 ID:???
雰囲気悪くなって職人様が投稿できなくなるからこの話題は終了。
それとゆとりってのはゆとり世代を示しているのか?
87通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 12:42:04 ID:???
>>86
ゆとりのニート乙。
88通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 13:03:29 ID:???
てめえらSS投下されたのに何の反応も無しかよ
89通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 13:13:23 ID:???
>>78-80のことか?
反応ってどう反応すりゃいいんだよこれ……
90通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 13:25:45 ID:???
カズイよりシンに笑ったw
これでいい?
91通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 14:30:29 ID:???
>>閃ハサクロス
 「〜〜も要求されたでしょう?」の台詞が一番記憶に残っております閃光のハサウェイ。
クロスの仕方としては生まれ変わり。話が未だ進んでいないので、次回に期待します。
 改行を整えればもう少し読みやすくなると思います。

>>女神が住まう国
 詩的な表現を多用するのはともかく、話の筋が見えにくくなってます。

>>妄想カズイ
 シンが通りかからなければ、或いはボディーブローが炸裂しなければ、カズイはどうなってしまうのか
興味のあるところではあります。

 皆さん投下乙でした。
92通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 15:41:34 ID:???
>>88
投下された作品にどう反応しようが個人の自由。
93通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 15:48:23 ID:???
>>弐国さん
確かオーブは日本語が公用語だったので、「命あっての物種」は母国語の
ことわざになりますよ。
94通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 15:48:50 ID:???
>>54-56
荒らしに粘着されるなら此方に投下されたらどうでしょうか

もしもマフティーが種・種死世界に来たら 其の参
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1176011107/
95通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 16:32:01 ID:???
>>54-56が変な腐臭の漂うSSを投下したせいでスレの空気が悪くなっちまったな。
職人は反省して消えた方が良い。
96通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 16:42:16 ID:???
>>88
お前みたいな自治厨のせいでスレが過疎っていくんだよ。
97新人 ◆3O2FShg0Cs :2007/06/24(日) 18:20:58 ID:???
 豪華な邸宅の地下、暗い一室に彼、ジブリールは居た。
 ロゴスの存在を暴露され、煽られた近隣住民がもう直ぐここに駆けつける頃を見計らって脱出の準備をしていたのだ。
 そして、ヘブンズベース行きのヘリが用意出来たので乗り込もうとして、ソレは現れた。
 暗い敵意を剥き出しにして、昏い殺意を剥き出しにして、現れた。
「待っておくれよジブリール。少し話そうじゃないか」
 暗い室内に響き渡る声は四十過ぎの男の声。歓喜に震えているようにも聴こえる。
 そして聴こえる機械的な駆動音。男の近くから聞こえてくる
 ジブリールは静かに息を呑んだ。忘れもしない。
 悪意の象徴たる声。
 傲慢の象徴たる声。
 溢れ出る恐怖、畏敬の念を押し隠して、ジブリールは男の言葉に応える。
「アル……いや、死にかけの機械人間か……よく、あそこを抜け出せたな」
「クックック……いやあ、持つべきものは友って言うだろう?」
 愉悦を含んだ哂い。
 その声は聴く者をぞっとさせる声。
 ソレは殺すことに慣れた兵の声とも、殺すことに快感を覚える殺人鬼の声ともとれる。
「傭兵仲間、か? だとしてもあの厳重な警備体制を?」
「嗚呼、迷える子羊よ、友に感謝せよ……ってね……お願いがあるんだよ」
「……手短に言え」
「アークエンジェル級と部隊を一つ私に預けろ」
 昔からこういう性格なのは知っていたが、未だ馴れない。
 何時首をへし折られるかもしれない状況下で、ジブリールは不謹慎ながらにそう思った。
「パワーは未だ調整段階だ。それに預けるにしても人員が……いたか。お前の忠実な部下が。理由は?」
「この体ももう保たない。死ぬ前にどでかいことやらかしたくてね。機体は調整段階に入りつつあるウィンダムの改良型がいいな。あれは確かNJC搭載型だろう」
 どこまで識っている。ジブリールは焦りを悟られないように慎重に切り出した。
「あれは四機ロールアウトしたが……私側のメリットがない」
「おいおい、しっかりしてくれよ。私達が協力してやるんだぞ? それとも実験体シリーズの中からのベッドの上でのお相手を募集してやろうか? 男でもいいぞ?」
「……」
「冗談! じょーだんだ! クックク、ヒヒィ!」
 男はより一層哂った。
 吐き気がこみ上げてくるのを辛うじて抑える。
 男は哂うのを一旦止めて、しかし無理だったのか哂いながら続けた。
「任してくれたなら女神様を堕としてやるよ」
98新人 ◆3O2FShg0Cs :2007/06/24(日) 18:24:01 ID:???
「……出来るのか?」
「連中、天使様を落とす気満々らしいからな」
 ジブリールの問に答えないまま男は哂った。
 やると言ったからにはやる男だ。ジブリールはそう思い男の──体の半分以上は機械の食えない男、アルの要求に応えた。

せめて、夢の中だけは
第四話 食えない男

 青天をバックに蒼翼の白い天使は躍る。躍る。撃てど撃てど総ては虚空をよぎるのみ。当たりはしない。
 電光石火の如し速さで天使、否、機械仕掛けの巨人、モビルスーツ『フリーダム』が近付いた。
 気付いた時には既に左腕はない。瞬時に速度を上げ降下する。
 そこで降り注ぐバラエーナ収束ビーム砲の火線に右足が飲み込まれた。
 一旦距離を置く。
 俺は特訓──詰まるところシミュレーションをしていた。だがこれがいやはや。
 まさか反応速度を5%上昇させただけでこちらの攻撃が当たらないとは、どうしたものか。
『相手はあのパワーを使いこなしている、実戦ではこれを上回るはずだ。とすればシン、答えは簡単だ。それを上回れ』
『相手の動きをよく読め。回避機動のテク、癖を覚えるんだ』
 そうは言われても、フリーダムはなかなか尻尾を掴ませてくれねぇしゆっくり見させてもくれねえッ……!
 その動作の一つ一つが俺を小馬鹿にしているように思えてならない。
 フリーダムの隙を突く所か、フリーダムに翻弄されるばかり。畜生っ!
『シン、積極的に行け。動きを読めとは言ったが消極的になれば機体の差で必ず押される』
「んなこと言ったってぇっ……!?」
 警報音、瞬時に身を反らすがルプスビームライフルを胸部に掠める!
 間を空けず勢いを付けてフリーダムが空を飛んだ。
 空を翔る。
 空を疾る。
 不味い、衝撃で回避運動なんて──!
 フリーダムの斬撃が迫る一秒の何分の一にも満たない刹那、意識が弾けた。
 総てがスローモーションに思えるほど、時の流れがゆっくりに感じられた。
 めくるのが遅いパラパラ漫画かのように繰り広げられる。
 振り降ろされる斬撃をどこか醒めた目で見る俺。これは無理に避ける必要はない。身を反らすだけでいい。
 虚空を切る斬撃。二撃目は身を反らした際の流れに委ね上半身から倒すようにしてやり過ごす。
 そのまま爪先でフリーダムの顎を蹴り上げる勢いに身を委ねて半回転。
 フリーダムと距離を取り睨み付けあう形になる。
99新人 ◆3O2FShg0Cs :2007/06/24(日) 18:27:10 ID:???
 フリーダムは油断なく十枚の翼を広げて構えている。ああ、しかし、それですらも──
「何て、隙だらけなんだろうなぁ……」
 ぼんやり考えながらバラエーナを身を反らして避ける。
 そのまま続けざまに発射されたクスィフィアスレールガンを避ける。
 更に続いた直撃コースのビームライフルをシールドで受け止めた直後、フリーダムが翔け出す。
 射撃戦では埒があかないと判断したのか。どの道俺には関係ないけどな。
 ビームライフルを構え、フリーダムに向けてトリガーを引く。
 二発目はフリーダムの″右隣″に向けて。
 当たり前のように直進する火線は虚空を突っ切るかのように見えた、が。
 違った。一発目の火線を軽々避けたフリーダムは、しかし二発目の火線に右肩を貫かれた。
 慌てて距離を置こうとするフリーダム。だが遅い──!
 スラスターを最大限に吹かして、そのままフリーダムを蹴りつける。
 フリーダムはその衝撃に耐えきれず、仮想の海へ。
 容赦なくその肢体にビームライフルを叩き込む──!
「見事、だな」
 シンの戦いの一部始終を見ていたレイ・ザ・バレルは誰にともなく呟いた。
 癖を覚えろとは言ったが、まさか数十秒後にやってのけるとは思っても見なかったのである。
 まるで人が変わったような動き。いつもは怒りで己を強くさせるシンが、完全なまでに冷静に動いた。
 まるで勝つために感情を捨て去り、勝つために冷静な機械となったかのように突然に、だ。
 そう、この適応力は、まるで──
 そこまで考えてレイは首を振った。有り得ない。
 シンは、唯のコーディネーターだ。
 戦闘よりも工学に長けている。
 工学に長けているコーディネーターが最高の存在であるスーパーコーディネーターを打ち破る。
 そうでなければならない。そうでなければ──
 ──それで、いいのか?
 ギルの考えている計画は極端な話ナチュラル・コーディネーターを適当な人事で適当な仕事場に送り込む職安(あくまで極端な話)。
 ならばシンが倒してしまっては。
 ギルは、ギルバート・デュランダルはまさか、まさか……!
「自らの考えを否定してもらいたいのか?」
 レイの疑問は、しかし誰にも聞こえることなく格納庫に訪れた喧騒に。かき消された。
 何があった?
100新人 ◆3O2FShg0Cs :2007/06/24(日) 18:29:25 ID:???
 事態を把握しようと周囲を伺えば、何時の間にやら格納庫に積み込まれたバビとグゥル。
 そして人々の視線の先に在る連絡艇。
 そこでレイは、ようやく事態を把握した。
 アスランが要請したエリート整備員達が、アスランが要請した補給のバビとグゥルが。
 フリーダムによって負傷した十何人かの整備員の補充が来たのだ。
「お手並み拝見、といったところだな」 周りの視線も何のその、連絡艇から降りてきた十八名の整備員は周りの好奇の視線に負けないぐらい格納庫を見回していた。
 ややあって、その中の一人、二十そこらの青年がおずおずと出て来る。
 温厚そうな外見。整備員よりも学者等が着込む白衣がよく似合いそうだ。ブラウンの色眼鏡もしている。
 青年は手を叩くと皆の注目を一心に浴びながら喋り出した。
「いいか。皆も知っての通り、この船はガルナハンの英雄にして連合の部隊から恐れられる救世主にして恐怖の女神、ミネルバだ」
「くれぐれも迷惑はかけないようにな。正直厄介事が起きたら庇ってやれないし庇うつもりもないし面倒だし」
 少なくとも判ることは二つ。
 恐らく彼がこの整備員達を率いていること、恐らく彼が外見に似合わず辛辣な言葉を発すること。 別段意識した素振りを見せない事からそれが彼の地なのだろう。整備員も口々に、
『うぃーす』『さーいえっさー』『へいへい』と応答しているところからもそれらが伺え知れる。
 纏まりを得たかに思えた一団は、結局元のまま、格納庫内を見回し続けた。
 そのまま五分が経過して、格納庫内に別のさわめきが生まれた。視線の先は赤服を着込んだ青年。
 襟元にFの勲章のような物を身に着けている。青年はたむろしている一団の方へと足を運び、
「……なっ……?」
 その顔色を困惑へと変えた。
「あ、丁度よかった。あなたは、えーと」
「……あ、ああ失礼。私はアスラン・ザラ。艦長から現整備員との共同作業の為の打ち合わせを始めるようにとの言伝を預かった……あなたは?」
 アスラン・ザラは我に返ったように述べ、それから疑問を口にした。その目は、疑惑に満ち溢れている。
 味方か、敵かどうかを見定めるように──
 疑惑が、正しいのかを確かめるように──
「僕、ああいや私はサイ。サイ・アーガイルです」
 ブラウンの色眼鏡をかけ直して、当然のように青年、サイ・アーガイルは言った。
101新人 ◆3O2FShg0Cs :2007/06/24(日) 18:30:21 ID:???
 アスラン・ザラはやはり、といったような顔をして溜息を吐いた。
 彼は、恐らく、いや、確実に自分の予想通りの人物なのだ。まったく、どうしてなかなか……
「あなたは、やはり……いえ、では早速打ち合わせに入りましょう。えーと……エイブスさん!」
 内に秘めた感情を抑え込む。今必要なのはそんなことじゃない。今は──
 “艦長さえも知らない作戦”について必要なことをするまで。そう考えて彼はマッド・エイブスに声を掛けた。
 唯一真面目に働いていたエイブスがザクファントムの側から顔を出し、レンチ片手に手を振りながら応える。
 そのままエイブスが召集をかけてこの場に来るその間に──
「いや、あなたに会えるとは思っていませんでしたよ」
 サイ・アーガイルは声を掛けてきた。
 その声に込められた思いは解らない。その瞳に込められた想いは解らない。
 声は、瞳は、まるで、
 再会を懐かしむように、
 出方を伺っているように、
 脅威なのか見定めるように、
 こちらを包み、射抜いていた。
 アスランはなんとか舌打ちしそうになるのを堪えた。
 判る。サイは強い。
 能力とか、威圧感とか、そういった範疇で強いと言っているのではない。その程度ならばアスランは臆しない。
 サイは、彼は、何もかもが強いのだ。考えを伝えるのに便利で、想いを伝えるのに不便な言葉では表現しきれない。
 本能が告げる。刃向かうな、と。だが、屈しはしない。屈してたまるか……!
 絞り出すようにして彼は言葉を紡いだ。
「俺もです。なぜ此処に?」
 サイは困ったように笑いながら、しかし答えた。
「いや、大戦が終わってから旅をしていたんだよ。その時に、負傷したザフト兵と損傷していたディンを見つけてね」
 遠い過去を見つめるかのよいな瞳。色眼鏡がなければ飲み込まれてしまいそうな瞳。
「哨戒中に攻撃にあったらしい。何かの光を見つけて低空を飛んでいて、そこへロケット弾が二発。レジスタンスかな。戦争は終わったってのにさ」
「……元々、付近に、というか目前に小規模の廃工場あってね。でも兵士は骨を幾つかと破片が突き刺さってて歩けなかったらしい。あ、ディンが不時着した次の日に僕が見つけてね」
 慌てて訂正するサイ。
 後何十秒かで整備員は全員集まる。アスランは多少苛つきながら次の言葉を待った。
102新人 ◆3O2FShg0Cs :2007/06/24(日) 18:32:04 ID:???
「僕が彼を治療して、ディンの信号弾発射装置を直して、助けがきた。おしまい。続きはまた今度」
「……はい」
 食えない男。それがアスランの第二印象だった。



続く
103新人 ◆3O2FShg0Cs :2007/06/24(日) 18:38:13 ID:???
ん、トリが変わっている。変えてないのに(汗
とりあえず、新人の投稿、ということでお願いします。原因は次回の投稿には解明いたしますので(汗
104通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 19:42:30 ID:???
シンと自由の戦いがいいね
やっぱ王道の話が来ると安心するよ。
105通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 19:51:38 ID:???
>>104
禿同。腐臭の漂うSSに気分が悪くなったが王道な話が来ると嬉しいもんだ。
読者の意見を聞く謙虚な心があるのなら>>54-56は反省して氏ぬべきだよな。
106通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 20:14:11 ID:???
このスレってBLを投下してもいいんでしょうか?
107通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 20:23:07 ID:???
板の壁に阻まれる筈。直接描写が無ければ何とかなる……と思う。
下される評価は心地よいものではない可能性が高い。
投下するのを阻止する方法は無いと思うけれど、それだけによした方が良いかな。
108通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 20:37:57 ID:???
>>107
勿論直接描写はしませんよ。キス迄ですね。
書きたいのは片想いのドキドキ感なので。
109通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 20:48:18 ID:???
キスまで行くとまずいだろ、名前を出さないとか色々できるだろうが
とりあえずテンプレにこれを入れよう、マユスレのようになって欲しくはないし

荒れ防止のため「sage」進行推奨
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー
エロ、グロ、やおいは禁止
本編および外伝の叩きは厳禁
スレ違いの話はほどほどに
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう
110通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 21:22:26 ID:???
クロスも禁止っぽいなあ。これでジュド―がZZで種世界に来るSSなんて投下された日にゃまた荒れそう。
111通常の名無しさんの3倍:2007/06/24(日) 21:41:30 ID:???
 二スレ目で既にZZinCEが投下されたりしてますので、問題は無いでしょう。
112通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 00:56:54 ID:???
22/

 輸送艦モーガウルの腹中に、孤独な女が一人居た。

「な、なんでこうなるんだよ、どうしていつもアタイだけこんな目に合うんだよぉ!」
 相棒の識別反応が消えた表示板を前に、半狂乱の女はモビルスーツの操作スティックを
無茶苦茶に動かした。
「これも大将があんな胡散臭い奴の話に乗るからだ。何が上手い話だよ、
いっつも、いっつもできもしないのに危ないヤマばっかり踏んでてさあ!」
 リミッターを切ったマニュピレイターが散らばる部品を粉砕しながら内壁を叩き、
皹の入った壁から空気が漏れて行った。ワークスMSの外部気圧が急低下を見せて、
モーガウルが折角運んできた資材とその破片が流れ出した。

 アドレナリンの匂いが充満するヘルメットの中で顔中に汗が吹き出し、目元の化粧を溶かした
斑の跡を作っている。換気装置の具合が悪いのか、湿気が篭って気分が悪い。作業用MSの
コクピットは軍用MAほどには狭苦しくなかったが、息苦しさが孤独感をいや増していた。
「そもそも、ジャンク屋崩れにアタイがなっちまったのも、大将の所為じゃないか! 
部隊が全滅したのも、今から思えば全部あいつの所為じゃないかあ!」
 挌坐した戦艦を襲うという話にもろ手を挙げて賛成したという事も忘れて、
彼女は既に反応の無いジャンク屋のリーダーに向けて毒づく。
 通信機越しに、襲った輸送艦の艦長が投降を呼びかけてきた。優しく。

「うるさいね! アタイの味方が居なくなったからって、急に大人ぶってるんじゃないよ!」
 軍に入れば部隊が全滅して漂流する。ジャンク屋に拾われていつの間にか海賊暮らし。
 状況に流される事に慣れる内に、後戻りの出来ないところまで来たと気付いたのは、
戦争が終わってしばらく為てからだ。
 戦時中の混乱期に旨く地球に戻ることさえ出来ていれば! 戦争を恐れてジャンク屋に
身をやつし、軍籍を失った事が恨めしい。戦後に難民が移動した僅かな期間を最後に、
宇宙と地球とを結ぶルートは規制が厳しく、非公式の方法で地球に変えることも難しくなった。
 毎晩眠る直前に幾度も悔いながら、結局は自分からは何も変えること出来なかったのだ。

 相棒の識別が消えた場所に、ザフトの新型の識別が浮いている。
 怖い、恐い、離れたい。
 連合軍に居たてMAに乗っていた頃、鋼の巨人に追い回された記憶が蘇り、女は叫んだ。

「引き返せ、さもないと船を壊してしまうよ!」
『此処から引き返してどうするというんです。貴方の状況は私どもも理解しています。
もう充分でしょう? 貴方には裁判を受ける権利があります。ナチュラルの弁護人をつけ――』
「うるさい、うるさいうるさい……! 黙って船を反転させろ、方向を変えるんだよ!」
 艦長の勧告を遮り、只管に自分の意向だけを叫ぶ。その動機は恐怖に過ぎない。
 投降すればどうなる……つかまればどうなる? 分かりきった事だ――宇宙の化け物共が
ナチュラルの自分にまともな裁判を行う権利など与えない。宇宙の闇の中で生活していた自分が
より暗いところへ追いやられるだけだ。
 思い出す噂。プラント管理化にある秘密のコロニー、ナチュラルの重犯罪者を使った人体実験。
113通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 00:57:53 ID:???
23/

「そうだ、逃げるんだよ。あいつらだって船を離れてちゃあ追っては来れないさ、逃げるんだよ!
コイツに残ってる電力を全部使えば、こんなちんけな輸送船の半分くらいは壊せるんだ。
そんなことをされたくなかったら、早く――戦艦の連中にも、動かないように伝えるんだよ!」
『もう一度言います。我々ザフトには自軍の艦船を容易に追跡できる能力があります。
識別を切ろうと何をしようと最終的な結果は変わりませんよ――』
「あんたらには関係ないだろう!? コールドデブリのベルトまで行けば、船でも何でも高く買ってくれる
場所があるんだよ、其処まで行けばアンタ達とも、戦争とも、ジャンク屋なんて底辺の仕事ともおさらばだよ!」
 自らの致命的な失言に気付かないまま、彼女はモビルスーツのライフルを振りかざして脅した。
 思えば既に仲間は、つるんでいた連中は居ないのだ。どこかに消えてしまって居るのだ。
 ならば自分が此処で頑張っていてもどうしようもない、むしろここまで粘っていた"ご褒美"を
貰って然るべきではないか。

 如何にも合理的で理性的な提案に見えた。最早残った海賊もどきは自分ひとり。
この輸送船に残った部品を売ってひと財産、分配に頭を悩ます必要も無い。
 しばらくの時間をおいて、モーガウルの船長が要求を呑む旨を伝えてきた。
「死んで溜まるものか……アタイは生き残るんだよ。こんなに苦労してるんだ、
此処からは良い目を見て生きてけるんだよ、そうに決まってる!」
 表示板の中のモビルスーツ二機も、警告どおりに動いていない。モーガウルの加速Gが
無くなったことをワークスMSのセンサーが捉えた。

「そうだよ、アタイは…………あ――?」
 彼女が軽い旋回の遠心力を感じたとき――
「あ……ああ――」
――赤と黒が見えた。
 ハッチの向こう、何も無い宇宙へ空気と血が流れて行く。胴体を中央でほぼ分断された
ワークスMSからは、ビーム光を放つ刃と長大な柄が突き出ていた。
「え……なん……?」
 血が流されて行く、命が引かれて行く。
 悪態をつこうとして、腹腔から迫りあがる塊に喉が詰まった。苦しさに喉をかきむしろうとして、
手首から先を失った右腕を持ち上げる。動脈から噴出する鮮血が機能を失ったパイロットスーツを汚し、
血の玉が開けたハッチから外に吸い出されていった。
 左腕は……? コントロールスティックと一緒に、自分の腹に突き刺さっていた。
「げぼっ――! 痛いよ、お……かあ、ちゃん……」
 喉を塞ぐ血塊と最後の言葉を吐きながら、海賊の女は息絶えた。
114通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 00:59:07 ID:???
24/

 ――ミネルバ艦橋

「敵、沈黙しました。モーガウル艦長から回線が開きます」
「後処理にレイを向かわせて。武装はルナマリアが持って帰りなさい。アレックス機に帰還要請を」
「分かりました」

『これで……いいでしょうか、艦長』
 映し出されたザクは、甲板の上で大きく右マニュピレイターを突き出した投擲体勢のまま、
アレックスの声を伝えてきた。
「協力感謝しますわ、ミスター=アレックス」
 こめかみから冷たい汗を垂らしながらタリアは感謝の言葉を送る。

 味方機への帰還指示、主帰還の出力調整など、戦闘終了後のルーチンワークを行う艦橋にて
声を挙げたのはデュランダルだった。
「……アレックス君と言ったかね……流石だな彼は」
「確かに頼りになる人材です、本当に私には勿体無い」
 モーガウルの中にいた敵MSの性能は最後の最後まで不明だった。
 例えば敵が海賊には不釣合いなほどのセンサーを搭載した目と耳の良いMSであった場合、
先発したレイとルナマリアのザクがビーム兵器を使用した瞬間にモーガウルを破壊される
可能性があった。

「いやあーーそれにしてもモビルスーツって物はいろんなことができるんですねえ!
ザクでビームトマホークを投げて遥か遠くに離れたモーガウルを狙撃するなんて事が、
本当に出来るとは思ってもいませんでした」
 説明的な副長の言葉通り、ミネルバの観測情報をデータリンク越しに受けていたとはいえ、
実際にザクの挙動を制御して投擲を成し得たのはアレックス=ディノである。
 ザクの"オルトロス"にとってさえも必中距離ぎりぎりであるモーガウルに向けて手投げで
命中させるその操縦技量はミネルバに乗るザフトレッド三人と比べても、遜色が無いどころか
隔絶したものが在る。

「……とにかく状況は完了。モーガウルに連絡を取りましょう。シンとデイルは?」
「NJ、ECMの濃度低下によりゲイツR各機とのデータリンク再建しました。
情報来ます。一号機、二号機ともに損傷はあるものの健在です……あれ?」
「どうかした?」
「データの量が一桁大きいです。これは……MAとの戦闘データ!?」
 メイリンが表示した詳細を眺めたタリアは、深いため息と共に台詞を吐き出した。
 ワイヤーフレームのみで表示されたMAが、ゲイツRと大きさを比較されて映し出され、
細かい性能諸元が次々と現れてくる。
「これは……色々と裏がありそうね。情報部をとっちめてやらなくちゃ気がすまないわ」
「全くです、艦長」プラントを覆いつつある陰謀の気配を憂う艦長にアーサーが和した。
 警戒を解かないまま順次休憩に入るようにとタリアが命じる。コンディションイエロウへの
移行を告げるメイリンの声によって、この小惑星付近で行われた一連の戦闘行動は終結した。
115通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 01:00:23 ID:???
25/

 ――ミネルバ格納庫

「緊急事態だったとはいえ、結局二度もザクに登場した上戦闘行動を行ってしまいましたが……」
『法的な問題はザフトの緊急項目でカバーできます、これ以上オーブの方々にご迷惑をおかけする
事は無いように勤めますわ』
「は……どうも有り難うございます」
『ミスター・アレックス。ザフト式の敬礼が出てますわよ』
「あ……ハッ! 失礼しました」
 無意識に掲げた右手を引っ込めて、アレックスは艦橋との回線を断った。
 艦長との会話を終えると、作業している格納庫の喧騒が耳に入り、アレックスは整備班長が
メカニックを怒鳴りつける声を懐かしんだ。何処の国のどの船でも、格納庫を掌握しているのは
結局のところ頑固な完全主義者で、彼らの言う事も大して変わりはしないのだ。

「敵さんが今度は何時来るかも分からんのだぞ、気を抜くなよ!」
「はい!」
「三十分でレベル4のチェックまでアガらなかったら、てめえらをインパルスのジョイントに
組み込んでやる、光栄に思ってシルエットを支えるんだぞ!」
「あい!」
 複雑な表情でアレックスの乗った機体を受け取った整備班たちも、今はたかだか一パイロットを
気にする暇も無く各自の作業にいそしんでいる。ゆっくり休みたいアレックスにとっては
少しありがたかった。

「一番から二号機、二番から一号機入ります。MSベッドはエコーとフォックストロットで!
部品のセットは何処に置いてんだよヨウラン、コクピットからだから上に置け、上に!」
「悪ィヴィーノ、直に動かすから二十秒待ってくれ。クールダウンの用意も!」
 圧搾空気の移動する甲高い音と、シャッターの開く重々しい振動が連続して、洗浄を終えた
二機のゲイツRが両舷のカタパルトから出てきた。無駄の少ない動きで鋼の巨体をベッドに
立てかけたパイロットが、ハッチから素早く体を出す。入れ替わりにコクピットに潜り込んだ
メカニックと肩を叩きあった赤いパイロットスーツの人影は、ヘルメットを脇に抱えて格納庫を
見渡していた。

「だあーーーー、シンの野郎折角三色にしたゲイツちゃんを真っ黒焦げにして帰って来たあ。
小麦色の美人所じゃねえ、純白のお肌が真っ黒ヤマンバなビッチに化けてやがる。だけど生きて
帰って来てくれて嬉しいぜ、おっ帰りィ――!」
 前髪をケチャップか何かで染めているらしいメカニックが、検査器具をかかえたまま、
半壊したゲイツRを前に異常なテンションでザフトレッドのパイロットを労っていた。

「ん……?」
 視線の動きに疑問を感じたアレックスはグラディス艦長の顔を写していた端末の前から離れ、
更衣室に向かう通路を一本外したスペースに入り込んだ。
 気配を殺して壁を背に。腕組みして待つこと数十秒。シン=アスカがブリーフィングルームに
向かう通路へ入って来て、薄く笑いを浮かべたアレックスに見られて飛び上がった。
116SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/06/25(月) 01:02:05 ID:???
26/

「ブリーフィングルームには誰もいないよ。忘れ物なのかい?」
「あ……アレックスさん……」
 天井に激突しそうなシンを捕まえて床に引き戻しながらアレックスがとぼけると、シンは
言葉に詰まって話題を引き出し損ねているようだった。
「分かって居るよ、俺に用なんだろう? 驚かしてすまなかった」
 暇つぶしの少ない宇宙戦艦では、人間同士の付き合いこそ最高の娯楽となりうる。

「……あの?」
 言いたい事は分かっている。この年若いザフトレッドとの共通項といえば今のところ
カガリ――アスハ代表しかいないのだ。具体的なことを考える前に勢いで来てしまった、
そんな風の少年を前に根気強く言葉を待った。

「とりあえずお礼を言っておきます。ミネルバも、仲間……ルナマリアも貴方に助けてもらいました」
 ためらいがちに口を開く少年は、かつての仲間と敵達の、一体誰に似て居るだろうかと考えた。
「気にする事は無いし、ザクを使ってしまって君たちに怒られやしないかとびくびくしていた
のはこっちの方だよ。それに先ほどの戦闘……妙な新型と戦ったんだろう? 君達が居なければ
ミネルバは大変な事になっていただろう。感謝しているよ。俺も……アスハ代表もな」
「……!」
 うつむき加減のシンが、弾かれたように真っ直ぐとアレックスの瞳を覗き込んできた。
「話があるんだろう? 代表に」
 少し性急だったかも知れないが、パイロットのうちに話をしておきたかった。

「……いいんですか?」
「良くなかったら話を振ったりはしないよ」
 国を焼いた指導者の娘と国を焼かれた国民が話し合う。その事がカガリ=ユラ=アスハにとって
有意義な事になってほしいという、臣下としての思いが一つ。もう一つ考えたのは、この不安定な
"後輩"に自らの道を迷うことなく進んで欲しいという事だった。

「それからもう一つ質問なんですけど、真逆オーブでヤシガニみたいなMAを開発――」
「していない――!」
 シン=アスカ、結構失礼な奴だった。それとも度胸があるというべきか。
117通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 01:03:37 ID:???
27/

 数時間の後、アレックスとシズルは士官室の外に出ていた。
 上司曰く――
『サシの話し合いを邪魔するものじゃない』
――のだそうだ。
 シズルは手元の形態端末で中の映像をひろっているが、音声が繋がっていないので
話し合っている内容までは分からない。

「随分と落ち着いてはりますなあ、アレックスはん不安やあらへんの?」
「シズルさんの紅茶のお陰でしょうかね、特には……」
 香り深い湯気を立てるカップをその手にしている。何時の間に淹れたのか、
虚空から生じたようにしか思えない紅茶を手渡される事に、行政府の人間ならば
誰でも慣れて居る。何時までも疑問に思っていても仕方が無いだけだが。

「中の様子はどうです?」
「二人とも落ち着い取るようやね。言いたくはあらへんけど、アレックスはんが
もっとしっかり表についとかないかんのやない?」
「代表が自分だけを頼りにするわけにはいかないでしょう。個人としても政治家としても、
良い意味で孤独に慣れてもらわなければこれからが辛い」
「甘えるところは甘えてもらわんとね」
「……そうです。自分の限界を代表は未だ分かっていない」
「そのための手段があの赤服の子どすか……あんさんもそれでなかなか厳しい人やね」
「シズルさんに言われると背筋がぞくっとしますよ」
 本当に。
「代表がそれだけ思われとるゆうことやね。部下としても一個人としても、ね」
 貴方に言われても何故だか安心できません、とはいえません。

 ……一個人として、か。

「シズルさんにも個人……プライベートというものがあるんですか?」
「ウチの事を聞くやなんて……めずらしおすなあ」
 シズルとはカガリの側近になって以来の付き合いだったが、互いにそれ以前を聞いた事は無い。
「いやあ、そろそろ自分の正体がばれそうなんで……」
「ま、そうやろうね。プラントの人たちからあんさんの身分を隠すんは、無理やとウチでも
思います。ウチは自分ひとりの事は、母校に残してきたさかい……」
 シズルの母校。氏族の子女も多数同窓生に含まれる学園にカガリも一度放り込まれたのだが、
一ヶ月で逃げ出したらしい。理由は躾の厳しさ、本当にアスハの一女なのかどうか気になった。

 士官室にカガリとシンの二人を残してから、二十分が過ぎようとしていた。
118SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/06/25(月) 01:05:44 ID:???
28/

 ――ユニウス7

 安定軌道に取り残された二十万近いコーディネーター達の静かな墓標である。
 凍りついたその大地に一体誰が残したのだろうか? 花を象った色とりどりの折り紙が、
かつてプラントの海であった場所にひっそりと咲いている。
 核に焼かれたユニウス7を訪れようとする者は決して多くはない。
 濃密なデブリの海に包まれてしまったこの大地を踏もうとするものは、切なる平和への
祈りを捧げようとする慰霊団か、そうでなければ――

『同士諸君』

――新たな戦火を望む者達でしかなかった。

 人の手になる大地の欠片に、鋼で出来た異形の巨人たちが降り立つ。
『われらが二年の旅路を支えた船に向かい……敬礼!』
 憤怒を籠めてユニウス7に広がる声にあわせ、十機を越えるMSが一斉に疲労した船へと
振り向いた。老朽化した輸送船は主機関の火も落されて機能を停止している。
 彼らはこの大地から旅立つ手段を既に捨てていた。

『行くぞ、我等の思いを、彼らの無念を地球のナチュラル共に思い知らせる為に――!』

 二十万の眠りを覚ます巨人たちは、各々の重斬刀を天――地球へと向けて抜き放つ。
即座に輸送船のコンテナブロックが外側から破壊され、次々にユニット化された物資が
運び出されて行く。

 虚空に浮かぶ追悼の花が、二十メートルの巨人達に踏み潰された。
119通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 11:40:44 ID:???
>>106,108
臭わすトコまでで終わり。直接表現はキスであろうが一切アウト
コレで表現出来ないならば、残念だが該当する板へ行くしかない

おかしな輩を呼び込まない為にもご協力の程を
砂場には砂場の、便所の落書きには便所の落書きなりのルールがある
烏ハネトは美しくない。そう言う事
120通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 19:16:14 ID:???
>>109
ノンジャンルのスレで制限つけるなんてナンセンスじゃね?投下された奴が気にくわないならスルーするだけだろ。

マユスレみたいに誘導しておいて職人に対して酷い扱いするスレとこのスレを一緒にすんな。あのスレはペド公や荒らしの巣窟なんだよ。
121通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 19:29:26 ID:???

319:通常の名無しさんの3倍 :2007/06/24(日) 19:57:04 ID:??? [sage]
投下しようと思ったら、腐臭が漂うSSが投下されててやる気が失せた。
あの職人消えてくれないかな。スレの空気が悪くなって困るよ。

職人スレより抜粋。心当たりのある腐臭の漂う職人は恥を知り消えるべきだな。
122通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 19:39:43 ID:???
自演乙
毎日精が出るね
123週刊新人スレ:2007/06/25(月) 21:59:23 ID:???
目次

 その砂漠の少女は否応なしに戦闘に巻き込まれて・・・。新人スレの奇才が放つ最新作!
少女は砂漠を走る!
>>45-50

 マフティの処刑は執行された・・・。そしてCE70年、へリオポリスに立つハサウェイ。
Bright Lights,Pray the Earth
>>54-56

 彼女の名前を頂く岬。その岬に佇む彼と彼女。
女神が住まう国(オーブ編)
>>61-62

 妄想と現実の区別がつかなくなる男カズイ。ツッコミ役のシンの気苦労は今日も耐えず・・・。
我が名はカズイ!
>>78-80

 豪華な邸宅の地下の暗い一室、ヘブンズベース行きの準備を進めるジブリールへ話しかけるのは・・・。
せめて、夢の中だけは
>>97-102

 モーガウル内部に残る海賊の残党。その要求に無言で答えを返すものは・・・!!
SEED『†』 
>>112-118

各単行本も好評公開中
詳しくはttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス!キミのお気に入りはどれだ!
感想、批評。それこそが職人達の原動力!たった今から一行でも思った事を書き込め!
読者と職人の交流スペース開設。愚痴れ!職人!!
ttp://pksp.jp/rookiechat/?o=0&ss=KVdtiaPjKYHFMSBu

お知らせ
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
124通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 22:17:36 ID:???
>>120
別にテンプレに入れても問題ないと思います、他のSSスレでも同じようなものがありますし
そもそもその制限があまり無いようなきがするんですが・・・

と、それよりSEED『†』氏に編集長乙!
125通常の名無しさんの3倍:2007/06/25(月) 22:38:05 ID:???
>>124
禿同。このさいテンプレを充実させて腐臭を一掃した方がこのスレの為になるよな。
126通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 02:48:45 ID:???
編集長いつも乙!



と、ついでに。俺は基本感想指摘は他の者に任せているが、今回はみんなホモ叩きで忘れてないか?
指摘や詳しい感想もないと職人様も……ね?
いや、なら自分が書けば良いんだが自分はそういうの向いてなくて……自分勝手な意見スマソorz
127通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 03:27:42 ID:???
腐臭ねぇ……
どうみても禿御大全否定ですありがとうございました
128通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 03:49:56 ID:???
>>120
でも職人さんが投下してもスルーして雑談してんのはマユスレと似てるよね。
129通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 04:28:00 ID:???
閃ハサ知らない奴が無知指摘されて火病→便乗発生
こんなとこか
さすが新シャア住人
130通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 09:54:45 ID:???
>>129
で?おまいさんはどこの住人だい?
131通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 14:24:57 ID:???
>>せめて、

投下乙
つまんない事だが改行を見直そう
それと地の文の一字下げは要らないんじゃないかな
その辺は好みとかエディターとかの問題だろうけど
それと台詞回しにちょっと気を付けてな

これからの展開に期待

>>SEED『†』 

投下乙
チラ裏の説明云々の話を見たが
説明を説明臭くなく地の文に取り込むのが上手いな
『海賊』の描写を見てそう思った

ブレイク・ザ・ワールド事件の前後をどう描写するのか期待している
132通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 17:40:35 ID:???
一字下げって基本じゃなかったのか…?
初心者とベテランを区別する基準のひとつですらあったんだが。
133131:2007/06/26(火) 18:51:09 ID:???
>>132
あくまで個人的な好み
専ブラで見る分にはあまり気にならないしさ

ところで全部下げるのは意味がよくわかんないんだけど
何か意味があるの?
スゴク基本的な質問だったらごめんなさいだけど
134通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 21:33:37 ID:???
まだ腐臭の漂う職人は反省して無いのか。
スレの総意として腐臭の漂う職人はいらないんだよ。
135通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 22:43:48 ID:???
NGワード推奨 つ【腐臭】
136通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 23:26:10 ID:???
>>133
>全部下げるのは何か意味があるの?

憶測だが多分「つけて科白がずれるのに合わせる為にスペース取ってるのだと思う。
小説の形式を踏まえて、というよりは作者の美意識なんじゃないか
137通常の名無しさんの3倍:2007/06/26(火) 23:47:03 ID:???
いいぞ、その調子で火病れ半島人wwwww
138新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/06/27(水) 00:13:21 ID:???
あ、全部下げるのは市販の作品がそうでしたし友人もその手法なのでそのように……
半ば癖のようなものですが、読みにくい、または気が食わなければ以後止めますので(^^;
139通常の名無しさんの3倍:2007/06/27(水) 04:31:55 ID:???
 読み易さに関わってくるのは、むしろ行頭一字下げよりも改行だと思います。
段落を意識してみては如何でしょうか?
140通常の名無しさんの3倍:2007/06/27(水) 05:36:21 ID:???
>>134
閃ハサもしらない何時ものやつかな
141女神が住まう国(オーブ編):2007/06/27(水) 11:41:41 ID:???
(…それでウズミ様は養子を取られる際、男の彼ではなく彼女を迎え彼女にこの岬の名を…?)

正直、彼女が物語る話は衝撃だった。ウズミ様(?)の若かりし頃そんなことがあったなんて。
彼女とはまた別の次元で、僕が敬愛するウズミ様。なるほどそれならウズミ様が再婚されなかった理由も納得だ。
「…その…、軽蔑するか? お父様を…そして私を…」
僕の腕の中で、不安そうに僕の顔を見上げる君。まるで行き先が分からず震える盲目の小鳥。
なぜそんな顔をするのだろう。僕の瞳には君は変わらず眩しくさえずる金のハミングバード。
そして…オーブの獅子と呼ばれた、かの方の遺児。獅子の意志と総てを包み込む翼持つ麗しき鳳凰。

僕は返事の代わりに腕にチカラ込め、この愛の牢をさらに狭くする。わずかに身もだえする君。
願わくばこの牢に君を一生閉じ込めておきたい。これは僕の願い。我が侭だ。それは分かってる。
ましてや僕は“エノク・オーブ”の煌光。オーブと、オーブの太陽たる君を護るが定め。
太陽なくして輝けぬ僕ら。が、太陽の光あるが故に、僕らを知る者はほとんどいない。それはいい。
太陽の光の恩恵は等しく万人に与えられるもの。独り占めしようとすれば、そのほかの煌光と太陽の熱で焼かれるのみ。
それは罪。その罪に僕は焦がれる。あらがい難い甘い毒が、僕の全身を叛馬のごとく駆けめぐる。
もし許されるなら。その毒に酔ったまま、誰でもいい。この身を一瞬で焼いてほしい。
僕はそれで永遠(とわ)の幸せを手に入れる。まさしく本望。
だが、それは赦されない。

「……っ。……ってば。…どうしたんだ?」
腕の中の小鳥がさえずる。その音色が僕を現実へと戻らせる。
「…僕のことは“コカビエル”と呼ぶように、何度も言っただろ?」
「わ、解っているっ。けど、でも私は貴方を名前で呼びたいっ!。せめて、せめて2人だけの時は…」
「…………」
器用にその華奢な身体を曲げ、僕の胸に顔を埋める君。
もう一度、僕は自分の指に、君の髪を絡ませる。流れるように僕の指の間を滑る金の髪。
まるで夜空に身を横たえる、天の大河のようだ。
僕はその煌めきのひとつであればいい。僕は“コカビエル”なのだから。

142女神が住まう国(オーブ編) ◆w43rHqzb0U :2007/06/27(水) 11:43:12 ID:???
「…時間だ。そろそろ準備をしよう」
「……う…」
そう、この檻から君を解き放たなければいけない瞬間(とき)がきた。
「今日は君が正式なオーブの代表首長となる継承式の日。…そして彼らも今日を狙ってくるだろう」
ピクン…。僕の言葉に君の肩がわずかに跳ねる。

先の大戦が終わり、プラントと地球。コーディネーターとナチュラルの戦いは終わった。だれもがそう思った。
それから一年ののち、突如ラクス・クラインは、プラントを『神聖帝国ラクミア』と名乗り、
その武力と“彼”を背景に、連合政府からの独立と、地球に於ける領土を要求してきた。
当然、連合政府は要求を断った。なにをバカなことを、と一笑した。
その途端、先の大戦後、解体されたと思われていた“レクイエム”がその音を奏でた。
連合政府直轄地、ウェールズと65万人の命を冥界へと誘う為に。
おかげで地球は、いまや未曾有の混乱の中にある。もはや連合の威信は地に堕ち、その機能を果たさない。
いくつかの国は割れ、あるいは消滅し、あるいは吸収され、新しい地図の作成もままならない状況にある。
ラクス・クラインが何を思い、何故このような行動を取ったかは解らない。
ただ、その矛先が盟国であるオーブに向けられたとなると話は別だ。
彼女は伴侶である“キラ・ヤマト”を、どういう理屈か“ウズミ様の正当な後継者”と宣言したのだ。
そしてまさにオーブが彼らの手に落ちようとした時、僕ら“エノクの煌光”は目覚めた。
ウズミ様が残したものは、モビルスーツ『暁‐アカツキ‐』だけでは無い。僕らもまたウズミ様の遺産。
ウズミ様が生前、僕らの事をこう言っていたそうだ。

『パンドラの箱の底に輝く光』――と。


今日この日。僕の胸の中の小鳥は、正式なオーブの代表首長となる。彼らは必ずなんらかの行動を起こす。
例えどんな主張をしようとも、ハウメアの名の元で彼女の継承が宣誓されれば何人もそれを覆すことは出来ない。
オーブは彼女のものとなる。だから…彼らはやって来る。

「私は…、怖い」
僕の胸に顔を埋めながら君は呟く。その肩が震えている。
「大丈夫。君は必ず僕らが護る。確かにラクミアの武力は圧倒的だけど、僕らだって…」「違うっ。…いやラクスやキラのチカラは私も良く知っている。確かに恐い。
だが私が本当に恐れているのは…、お父様の意志を継ぐこと。私の一言でオーブやオーブの臣民の命運が動く事。
143女神が住まう国(オーブ編) ◆w43rHqzb0U :2007/06/27(水) 11:45:01 ID:???
そして…そして万が一、その為に貴方達“エノク”が…、いや“貴方”が…貴方が…っ」
そこから先の言葉が出てこない。言えば実際にそうなると感じているのか。
「…………。…泣いているの?」
フルフルと首を横に振る、君。だがその肩の震えは大きくなる一方だ。

「君は僕を…僕らを信用していないのかい? 僕らはそんなに頼りがないかい?」
「そんなことは無いっ!。だがっ…んんっ!?」
僕は“エノクの誓い”のひとつを敢えて破った。
どうしても、僕の胸をさっきから濡らす、この雫を止めたかった。オーブに雨降りは…似合わない。

一瞬驚きの表情を浮かべる君。やがて眼を閉じ、僕の首に手を廻す。
君は不器用に、でも力強く、そして優しく押しつける。僕もしっかりとそれを受け止める。
口の中に拡がる君の味。言葉にしなくても伝わってくる君の想い。
(行カナイデ、離サナイデ、コノママ、ズットコノママ二人デ…)

====================

…やがて、どちらからともなく、静かに離れる僕らの顔と顔。ホゥとした君の表情。
僕は親指で雫の通り道の跡を拭ってあげる。
「…僕の眼を見て。これが死にゆく男の眼に見えるかい? 大丈夫。僕は…死なない。死ねるものかよ」
「…でも」
少し上気した君の顔が綺麗だ。
「右手を…」
僕はそう言い何か言いたげな君の手を取る。そして僕の小指と君の小指を絡ませる。
「 ? 」
「僕らがかつて眠りにつく前…ウズミ様が教えてくれたオマジナイだ。こうするんだ…」
『♪指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ます♪ ♪それが嫌ならフジヤマ抱えて海渡れ〜♪ 指切った♪』
歌いながら腕を上下に揺すり、歌い終わると同時に小指を離す。
僕はひとつの誓いを破ったが、ここに新たな誓いを文字通り結んだ。
ウズミ様が教えてくれた契約の歌。約束の歌で。

「…顔、赤いぞ」
「そ…そうかい?」
…赤い、のだろうか? そう言えばこの歌を教えてくれた時のウズミ様の顔も…。

クスッと君が笑う。そしてだんだん大きな声で笑いだす。僕もつられて笑う。
岬に二人の笑い声が響く。

144女神が住まう国(オーブ編) ◆w43rHqzb0U :2007/06/27(水) 11:46:23 ID:???
僕は“幸せ”の意味を考える。僕の眼の前でお腹を抱えて笑う、オーブの金絹の女神。

…答えは“君の笑顔が僕を生かす”、だ。君の笑顔を見る為に僕は戦おう。そして生きよう。
だから僕は今とても…幸せだ。

そんな時間を僕は今過ごしている。

麗しきこのオーブの地で。君と。…君の名が付いたこの岬で…。

                         …Fin…
145 ◆w43rHqzb0U :2007/06/27(水) 12:06:58 ID:???
申し訳ない。>>142の改行を一ヶ所間違ってしまった。

携帯から落としたもので…。脳内変換してくださいませ。
146弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/27(水) 21:09:34 ID:???
少女は砂漠を走る!

第二話 少女は戦う

「MSに乗ったことは!?」
「ありませんっ! って言うかコレ、MSなんですか!?」
「う……。まぁ、そうなんだが。……動かし方は判るか!?」
「モチロンわかりませんっ!」

 シートだけでなくこの小さな部屋全体が振動している様だ。みゅいぃぃんと言う変な音が終わると振動も止まる。
真正面のMSには矢印が付いてその先に【ジン・オーカー/所属不明】の文字が表示されている。
その【ジン・オーカー】は相変わらず何かを確かめる様に一発ずつライフルを撃ってくる。
「先ずは立ち上がろう、むざむざやられるよりは良い。ミツキさんもそのつもりだったんだろう?」
 確かにそうだ。やられたくないと思ってて最終的に起動しちゃったんだけど。けれどどうすれば。
「操作要求、基本操作変更、メインテナンスモード・イージー。戦闘ステイタスでソフトリセット、全ロック解放」
 後ろからこう言えと言われた通りに言ってみる。するとスイッチなど何処も触っていないのに各部のランプが
明滅を初め、モニター画面は次々情報を表示して激しく文字が流れ出す。
「両手、両足の操縦桿とペダル。今キミの触ってるそれらがコイツ、ファング2に繋がってるイメージだ」
「ふぁんぐつう……。あのぉ。どういう、コトでしょう?」
「ファング2はこいつの名前だ。操縦桿とペダルで手足がそのまま動く。キミの考えたこともある程度機体が
汲み取ってサポートする。さぁ立ち上がってみよう。それが出来なきゃ、いずれ僕とココで心中だ」

 今、わたしは仰向けに寝転がっている。そう言うイメージ。起きあがる為には、どうしよう。
スティックを斜めに引いてペダルを踏み込む。不自然に上を向いていたシートがまっすぐになる。
ジン・オーカーはひるんだ様だ。2,3歩後退する。唐突にカチンと来る。上体を起こしただけでひるむ?
 さんざん女の子に銃弾を浴びせておいて!?
完全に立ち上がる。動かし方は何となく判った。一発喰らわさなきゃ、気が済まない! 
と思うと何処も触らないのにウェポンのタイトルの付いた画面が立ち上がる。ずらりと並んだ項目を探すが。
……全項目エンプティ。若しくは未装備。あれ? あの、何ですか、コレ。

「動かせた、か……。まぁいい、動かせるならこのまま逃げよう。船に向かって歩く、立ち上がるより簡単だ。
予備のシートが無いから。……済まない。服に血が付いてしまうのは勘弁して欲しい。あとで弁償するよ。」
 エディさんは片手だけなのに器用にヒモで自分とわたしをぐるぐる巻きに縛りながら言う。何処までも気を使ういい人だ。
それに血が付くも何も、既に服はぼろぼろで雑巾にするのさえむつかしい状況。これが新しくなったら詐欺だ。
 カッコイイ人はやはり言う事もステキだ。けれど言われた事の前半部分は無視することに決めた。
しかし武器が……。コンテナの骨組みが目に入る。アレを拾ってぶん投げたらどうだろう。
 何故か自分の体の様に動かし方が判る。サブモニターにぐるぐる流れる文字列も十分に読み切れる。
ファング2と言われた大きなカラダに普通に腰をかがめさせると、ねじくれた鉄骨を拾う。
「おい! ミツキさん、何をするつもりだ! ヤメろ! マスター権限によりファイアリングシステムロック!」
「ファング2! どうやって狙い付けるのっ!?」
 ファング2はエディさんを無視、一方わたしの言った事には理解をしめした。照準の丸い蜘蛛の巣の様なものが
メイン画面に現れ、サーベルの簡単な攻撃方法が画面下に流れる。ジン・オーカーはこちらに対してまた銃を構えている。
「なんで動かせるんだっ!? ヤメろっ!」
「ふざけるなぁ!」
147弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/27(水) 21:11:43 ID:???
第二話 少女は戦う

 完全に相手の意表をついたのだ。と、後にわたしの師匠になったエディさんは、ビデオ画像を見ながら
やや厳しい顔で解説してくれた。アレが毎回うまくいくなら軍人が訓練する必要など無くなってしまう、
偶然に頼る奴は長生き出来ないぞ。と。

ともあれジン・オーカーの頭には鉄骨が刺さりライフルを取り落とすと後退していく。
ぶん投げた鉄骨は過たずに赤い一つ目を砕いて頭の後ろまで貫通した。確かに奇跡の類だろうとそう思う。
取りあえず、何となくライフルを拾う。コネクティング失敗の為命中率30%減。残弾数不明。使用処理中。
ファング2はライフルの型番とともにそうわたしに伝えてくる。どうでも良い話だ。使う気なんか毛頭無い。
自分が今やった事で膝が震えてるくらいだ。

「……い、一機、中破?」
 頭の後ろ、やや上から多少混乱した口調のエディさんの声。ヒモが苦しい。のけぞってるの?
深呼吸が数回聞こえると元の声に戻る。ヒモもちょっときつめに戻る。今度はこっちが深呼吸。
「コントロール、こちらファング2、マーセッド隊のエディ・マーセッドです。ジン・オーカー一機を中破……
敵の概要は? ……ともかく火器がない、戦闘続行は不能だ、何でも良い、援護を。それと戦況をこちらにも……」
 どうやらインカムマイクは捨てずに頭に付けていた様だ。通信の間にもモニターには状況がどんどん入ってくる。
敵のMSはジン・オーカーが5機。そのうち1機はさっきやっつけたがもう一機がこちらに向かっている。
「細かい説明は後程、ファング2は自分が動かしている訳ではない。戦闘続行は不可能、以上ファング2」
 モニターを眺めると町の状況に切り替わる。着弾点と被害状況を見て気が遠くなりそうになる。
研究棟と住居が密集している地区はセントラルタワーにかけてほぼ壊滅。
そして町で一番大事な水管理センターにはご丁寧に5発着弾があったと説明の矢印が付いている。
もう、セブンスオアシスは……。終わりだ。

「どうした、ミツキさん。さぁ歩くんだ。船の近所まで行けば拾ってくれる」
 エディさんの声は聞こえない。わたしはこれからどうしたらいいんだろう。
またしてもファング2が今度は勝手に映像をピックアップすると拡大する。町へ向けてライフルを構えるMS! 
これ以上何を壊すつもりだ!!
「み、ミツキさ、んっ! 方向が逆だっ。何をするつもりだ! なんで走れる!? 走るんじゃない、止まれ!」
 走りながらライフルを構える。命中精度16%の表示。上等! 町を撃たせなければそれで良いんだ!
赤い瞳のみがこちらに向く。横目でこちらを見る生意気な態度。ムカつく! 当たんなきゃぶん殴ってやる!
〔MMI-M8A3 ready バースト【on】〕
 引き金はどれ!? わたしの声に反応して画面に操縦桿の簡単なイラストの表示が出る。
そしてわたしはライフルを撃った。そしてほんの一瞬で残弾全てを撃ち尽くした。

 弾は15発残っていた。そしてファング2が16%と計算した命中率だったが、実に7発が命中した。
その結果、的になったジン・オーカーは爆発炎上。赤き風の旅団は引き上げていった。
そしてファング2はエディさんが何か小難しい事を言った後、最後に「降着姿勢の後、関節ロック。動力停止」
と言った言葉に従って膝をついて操縦席のフタが開くと止まった。

 MSから見渡すと小さくても活気のあふれる農場都市は、砂漠に飲み込まれるのを待つだけの死の町になっていた。
絶対に泣かない! 泣くもんか! 両親や友達が死んだかどうか、まだわからないんだから……。
148弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/27(水) 21:15:00 ID:???
第二話 少女は戦う(3/6)

 モニターの中では小さな会議室に人が詰め込まれて何か話し合っている。責任の所在、とか救援を優先
と言う言葉が頻繁に聞こえる。だいたいの事を説明してくれたエディさんは今は眠っている。
 アンコールワットと呼ばれる船の中。わたしはエディさんに付き添って病室にいた。
 軍人でないのに戦闘を行うと、それは犯罪になるのだそうだ。のみならず撃墜までしてしまったわたしは
かなりの極悪重犯罪人で場合によっては銃殺になる。のだが。
「緊急避難の条項で何とかなりませんか? 自分も搭乗していた訳ですし。指揮は自分と言うことなら」
 と言うエディさんの言葉で当面処分保留になった。みんなが忙しいので当分付いててくれ。
と医者に言われれば此処にいるのはむしろ当然かも知れなかった。結果的に銃殺刑から守ってくれた命の恩人である。

 アンコールワット、アトランタ。2隻のレセップス級の被害は、実は対したことがなかったのだ。
とエディさんの病室に来た黒いシャツの軍服を着たマーカス隊長という人は言った。
「地上施設は壊滅したがね。いくらか落ち着いたかな? 彼は」
「はい、顔色はかなり良くなりましたね」
 右腕が無くなったことに変わりはないが、それ以外は順調に回復している様に見える。
たった2日で見違える様な顔色になった。さすがは軍人。と言うことだろうか。
「二つ、キミに伝えねばならんが。彼を起こそうか?」
 何故か此処ではわたしの保護者と言うことになっているエディさんである。モチロン首は横に振る。
怪我は腕だけではないし、その怪我もわたしをかばってのものは間違いのないところではある。
さらに四六時中、誰かがお見舞いと称して打ち合わせに来ている。
せっかく眠れたのだからわたしの為に起こすことはない。二人で廊下に出る。

 一つ目の話。わたしは日付を遡り強制的にザフトに編入されることになった。そうしないと殺人罪の適用も
あり得るのだと隊長は言った。軍人でないものが戦闘行為を行った。機体にログも残っているし戦闘記録の
改ざんは最新鋭の試作機である為ほぼ不可能。だいたい改ざんがバレれば最悪銃殺刑だ。
そう言うと隊長はため息をついた。
「ほとぼりが冷めるまで当面うちの隊にいてもらう。キミでなければファング2の起動は出来ないしな。
キミのサイズの制服を後で持ってこよう。暑い中詰め襟しかないんだがスカートとパンツは両方あったはずだ」
 そう、起動認証をわたしがやってしまった為に、ファング2は他の人には起動出来なくなってしまったのだ。
只移動するぐらいならば大丈夫だが、走ったり戦闘したりは、コレはもう絶対無理なのだそうである。
解除の為には大きな基地に持っていくしかないそうで、それなら此処を離れなければいけないのだけれど。

「もう一つ。キミにはこちらの方が重要かも知れない」
「はい」
「セブンスオアシスの水管理システムは完全に停止。調整池も貯水槽も使用不能。山からの水は来ているが
人工的な水量調整はもう不可能だ。砂漠のオアシス程度の規模でしか水を供給出来ない。町としては、機能を
停止したと言わざるを得ない。そして、……生き残り372名の中にシライ姓を名乗る人は……居なかった」
「……っ!」
 当然覚悟はしていた。あの時間ならお父さんは果樹生産管理センター。お母さんは水資源管理室。
どちらもファング2のモニターでは着弾ありのマークが付いていた。だけど簡単に、はいそうですか。とはいかない。
 またしても。暮らす場所をMSと爆発によって失ってしまった。今度は両親まで……。
絶対泣かない。と決めたのは昨日だ。今泣く訳にはいかない。唇をかんで隊長の目を見る。
「我々が居ながら……。謝って済む問題でもないのだが」

 隊長は悪くないです、気にしないで下さい。そう言うとエディさんの部屋に戻って声を出さないで、泣いた。
149弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/27(水) 21:18:27 ID:???
第二話 少女は戦う(4/6)

「…で、これが砂漠戦に特化したジン・オーカーだ。あぁキミにはいろいろとお馴染みだったな……。」
「写真にあったゲイツ、でしたっけ? あれは、うちの隊にはいないんですか?」
「地上に限定すればジン・オーカーの方が扱いやすいからな。地上戦限定なら本当はさっき見たバクゥだろうが
アレは乗り手を選ぶからな、かなり難しいんだ。。……うん? あぁ、あれはディンだ。確かにシグーに似ているけど、
こちらはMSながら空中戦がメインなんだ。畳んであるんだが、背中の羽が見えるかい?」

 緑の詰め襟とタイトスカート、アタマに帽子を乗せたわたしは、エディさんに付け焼き刃MS講座を開いてもらっている。
予備人員とは言え登録がパイロットなのだから、先ずは知識だ。と言うと、彼は机ではなく格納庫にわたしを連れてきた。
実物を見ながらの方が早いだろう?と言いながらNJCとかユニウス条約とか難しい話がさりげなくはいる。
聞き流してはいけないとメモを取るものの、あとで誰に聞いたら良いんだろう。
エディで良いと言われたもののなんか呼び辛くて、当面は師匠と呼ばせてもらうことにした。
MSの師匠であることに間違いはないのだし。

「カオスとアビス。ですか?」
「あぁ、それとさっき話したガイア、いずれもこれからのザフトの象徴になる機体だ。セカンドステージシリーズ
と呼ばれている。そしてファングはガイアの試作型で、キミは最新型機密兵器の専属パイロット、そういう訳だ」
 灰色のファング2を二人で下から見上げる。ゴツゴツしてるのに何故か女性っぽく感じられるこの機体。
電源が入るとデザートイエローとマルーンの砂漠の兵器っぽい色になる。どうして色が変わるかはよくわからない。
 ファングはガイアと呼ばれる機体の試験用の機体であるらしい。そしてさっき格納庫に居た
(あった。とは思えなかった)バクゥの様な四足獣モードへの変更が可能なのだそうだ。早速やってみたい! 
と思ったがシミュレーターや座学がまだたっぷり残っている。当分『わたしの』ファング2は起動出来そうにない。 
【彼女】はただ黙ってその二つの目でこちらを見下ろしている。

 メカマンが師匠に手を挙げると何事か声をかける。元々、技術畑の人間であるらしくこうなると師匠は長くなる。
ここ2,3日でそれはわかった。もっとも立ち話が出来るほどに回復したと見るべきか。右手の袖はゆらゆら揺れているが
それ以外は隙無く着込んだ赤い制服。もっとも医者に言わせれば、見えない部分のダメージがかなりある。
と言う話ではあるのだが。
 師匠は元々テスト部隊を率いる隊長として此処に降りてきた。隊長と言うからには隊員も居たはずだが
ほとんどが腕を無くしたときの攻撃でファング1と運命をともにしたそうだ。結局メカマン含めて35人居たはずの部下は、
今やファング3をコンテナから出したシルビオさん只一人。わたしの直属の先輩と言うことになる。
 その師匠がファングを見上げると何事か左手でメモを書き始める。のぞき込むメカマン。


 MSファング。ガイアの試作機。プロトガイアV2.01。新型動力機関と変形機構、VPS等の動作を確認する為に3機製造。
出力こそ機関部が初期の暫定仕様である為初期設計値に到達していないが、機動性と可変機構による各種作戦への
対応の柔軟性は従来型MSを凌ぐ。ガイアの当初設計装備に加え四足獣モード時顎部、下方向にビームサーベルを
2基展開可能。ファングの通称はここから。
※既にファングのデータをふまえ正規型ガイアの生産は始まっている。
当部隊に配備されているうちファング2は基本形であり外見上ガイアと変わるところはない。
ファング3はテスト統括機としてバックパックにコパイロット席が設けられているが、専用バックパック排除後は
シルエットシステム用のオプションが使用可能である。

 自分のメモの【ファング】の項を読み返す。
自分で書いておいてなんだが、何が書いてあるのかよくわからない……。うぅ。
150弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/27(水) 21:20:45 ID:???
第二話 少女は戦う

 シミュレーターに揺すられ続けて気分が悪い、体力も限界。よろけながらシミュレーターから出るわたし。
四足獣モード、あんまり楽しいものでは無かった。床にお尻を付けるともう動けない。
操縦性はバクゥとほぼ同じ、簡単でないとは確かに師匠が言ってたな。
「どうだい、様子は」
 隊長がデッキまで様子を見に来る。珍しいこともあるもんだ。出発まで後数日と聞いている。
とにかく海沿いの大きな基地。その基地まで行けばファング2とわたしは切り離され、ザフトからもお役ご免。
MSからは縁がなくなり師匠ともお別れになる。今後の大まかな予定。最後以外は大歓迎だ。
で、隊長は出発の用意に追われていたはずではないのかな?
「たまにですが居るんですよ。練習も無しでいきなりMSを動かせる彼女の様な子が。それに加えて彼女はそもそもが
優秀です。アカデミーで鍛えればあっという間にザフトレッドですよ。人材は埋もれているものですね」
 師匠がいつも通りさわやかに返す。ザフトレッドとは師匠と同じ赤い服を着るエリートの総称なのだと聞いた。
何か自分がすごく優秀になった気分。
 頭に血が上りやすいのが玉に瑕ですけどね。と笑う師匠。余計な事言わなくても良いじゃないですか……。
「練習中の所悪いな、エディ。例の赤き風の件だが今、良いか?」

 赤き風の旅団について情報部が調べていた。規模が小さいとはいえプラント直轄領を襲われたのである。
結果彼らは反政府組織を標榜しているものの只の傭兵団という結論に至った。ならば彼らに依頼をしたのは誰か。
情報部の捜査線上に蒼(あお)の息吹と言う連合系の政治結社が浮かんだ。名前からブルーコスモスの関与も
考えられるが今のところは不明。依頼が砂漠の農園技術の破壊。となれば尚のこと、ブルーコスモスっぽくはある。
 襲撃自体についてはもう一つ、ファングの奪取を狙った可能性も出てきた。地上で試験をすることが事前に
リークしていたらしい。こちらは赤き風単独の問題らしいのだが、ともかくジャンク屋に売り払えば、最新技術の塊の
ファングならかなりの金額になる。ならば位置を変えてもつきまとわれるのかも知れない。
 そしてファングはしばらくの間わたしの機体だ。そうなればめんどくさい事この上ない。


「ところで隊長、あのとき赤き風の接近に気づかなかったのは何でですか?」
「わかってみれば簡単なことだ。砂嵐の日に近づいて丸3日砂の中に潜っていたんだ」
「……。」
「キミは気にくわないだろうがそう言うことだ。有視界が効かない状況でジャミングをかけられれば気づけない
通常の索敵の怠慢は勿論あるだろう。金属反応はカムフラージュシートだけでは完全には消せないのだからな。
町に対する防衛の方向性が破壊ではなく強奪にウェイトをおいていた事もあるが、いずれにしろ結果は
こうだ。それについては本当に済まないと思っている……」


 どうせ見られて困る誰かが居る訳でもない。隊長に再度謝られて滅入ってしまったわたしは、着替えるのも面倒なので
ザフトの制服のままセントラルタワーのあった場所に来てみた。瓦礫も遺体もかたづけられて、只の広場みたいだ。
何がしたくて、町を壊したのだろう。民間の人達が巻き添えになるとは思わなかったのか。
反政府ゲリラを名のる彼らにとっては直轄領はプラント政府そのものなんだろうか。
 何気なく空を見上げる。いままでならば噴水の時間。虹の橋が空を渡っていた。
そうか、わたしのお気に入りの橋を取り上げられたのは、今回で2回目だ。
脇に寄せてある瓦礫の中から干涸らびた野菜が見える。
誰にも目を向けられずに人知れず干涸らびさせる為に野菜を作ったのではあるまい。
ちょっと取っつきにくい、でも悪い人ではなかったおじさんの顔を思い出す。
151弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/27(水) 21:22:28 ID:???
第二話 少女は戦う(6/6)

「ミツキちゃん!? やっぱりそうだっ!」
 瓦礫を弄っていると名前を呼ばれる。一緒にタワーに行くはずだった友人のうちの一人。生きていてくれた!
「わかんなかったよ。なんでその格好? ……コスプレ?」
「……あの、コレ、本物。つーか今ザフトのコスプレする意味、……無いでしょ?」
 ザフトに編入された経緯は説明しづらいし、そもそも人に話してはいけないのだ。唯一ザフトに所属してることは
喋っても良いのだが、いつから。はNG。だけど、わたしはそんなに器用に立ち回れないよ。
「あの船でアルバイトしてたんだ。そんでさ、家もなくなっちゃったし、親も死んだし。本格的にやろうかと」
 近くに見えるのはアトランタ。その陸上戦艦を指さす。わたしの部屋があるのはアンコールワット。
だけど、きっと彼女にはその辺の違いは関係ない。
「じゃぁ、どっかいっちゃうの? 学校どうすんのよ!?」
 ホントどうしよう、考えてなかった……。聞けば彼女は両親とも健在で、その両親は此処に残るつもりなのだという。
そして彼女も。

「ミツキくん、ココにいたのか。ずいぶん探したよ?」
 赤い服の右袖を揺らして師匠が歩いてくる。
「師匠! どうしたんですか? こんなところまで」
「予定が変わってね。交代の部隊が到着したから、僕らは今晩中に出発する。だから伝えに来たんだ。
静かなところで無線をならすのも無粋だと思ってさ。ちょっと僕自身も散歩がしたかったし。友達?」
「同級生のサリーちゃんです。こっち、わたしの師匠、エディさん」
「師匠って、なんの師匠なの? まさか……」
「そんなわけないでしょ! 目の前で変なこと言わないでよバカ! その、いろいろ師匠なのっ!」
 彼女が何を言いたいか、わかってしまったわたしは赤くなって反論する。そりゃ好みのタイプなのは否定
しないし、一緒にいるのはそれだけで嬉しいけれど。だから師匠と呼んでるんだ。わたしが勘違いしない様に。

「じゃぁ、準備があるからコレで……」
「もう、あえないの?」
 いつも明るい彼女の瞳が曇る。
「臨時雇いだから、……だからすぐに帰るよ? 家が無くたって、わたしのふるさとはココだもん」
 涙が流れないうちに笑顔で抱き合う。ご学友をお預かりします。隣では師匠が真顔になって
律儀に左手で敬礼していた。

 彼氏とケンカしちゃダメよぉおお! 大きな声が背中に突き刺さる……。
「な、なんか勘違いしてる、様で、すね。は、はは……」
帽子につばがないから表情が隠れない。夕日がまぶしいから、顔が赤いのは気づかれないだろう。
でもこの人はそう言うのは全然気にしない。と言うか気付かない、か。フリじゃなくて天然。
 わたしはふと足を止めると振り返ってわたしの『ふるさと』を眺める。後ろから唐突に声が聞こえる。
「キミのふるさと……虹の町、セブンスオアシス、か。」
 わたしより一歩前で立ち止まってやはり町の残骸を見る師匠。

 町の跡を眺めるわたしを、師匠はそれきり何も言わずに立ち止まっていつまでも待っていてくれた。

次回予告 第三話 砂漠の町にて  
砂漠の海に出航したわたし達。けれど船は途中で立ち往生。修理の間に買い物に出たわたしと師匠。
ところで師匠、その女の方、誰ですか?
152弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/06/27(水) 21:23:36 ID:???
今回分以上です、ではまた。

>>93
石碑を見てびっくりした通りw 公用語はそうらしいですけど
慣用句とかことわざの類は無くなっちゃってて古典の授業とかで習うかなぁ。
等と思ったもので、ミツキが(勉強が出来ると言う意味で)アタマが良いと言うのを
のを説明するつもりでああいう表現にしました。違和感があったならすいません。
153通常の名無しさんの3倍:2007/06/28(木) 00:31:08 ID:???
 投下乙です。あくまで個人的な感想を行きます。

>>女神が住まう国
 是非は別として表現の多彩さは長所だと思います。
 なんとなく感じていた違和感の正体が掴めた気がします。
巧言令色少なし仁を地でいっている感じです。シナリオの隙間を埋め尽くすように
脳内ポエムが展開しているので、シナリオも詩も頭に入りにくいのです。
 元々狂言回しが似合うようなキャラを主人公に据えているので、表現か描写を
もう少し考えた方が読者に優しいと思います。

>>弐国
 毎回の事ながら序盤はキャラの境遇やメカの説明が多くて大変ですね。
非常に賢いMSのAI、幸運に助けられて人生初のMS撃破を成し遂げたミツキ嬢ですが、
それゆえに軍から無関係に戻るわけには行かなくなり、なし崩し的にパイロットへの道を
ひた走る、と。此処まではテンプレートの範囲だと思います。此処からの味付けに期待です。
 設定メモは良いアイデアだと思いますが、メモのままならもう少し大雑把に手書きっぽくする、
若しくはメモからノートに書き写してより丁寧に書いておく、等するのもいいのではないでしょうか。

 お二方とも、続きをお待ちしております。
154通常の名無しさんの3倍:2007/06/28(木) 10:12:35 ID:???
>>女神
投下乙
地の文、セリフ。善し悪しは別にして主人公は男だろうけど、ノリが少女漫画なんだな
そう思ってみるとセリフもあまり臭く思えなくなってくる
一部『ガンダム』や『種』から外れる様な特殊な設定は
地の文でもう少し説明してくれると感情移入しやすいかも

>>少女
投下乙
こちらは女の子の一人称だけどノリがモロ少年漫画
女神との連続投下のコントラストがこのスレらしいww
上の人も言ってる通り巻き込まれ型主人公のお約束を外すような流れではないが
むしろお約束通り進む感が良いと思う
説明の部分が地の文から若干浮き上がって見えるのは仕方ないかも
そういう意味でメモってのは考えたね
155河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/28(木) 23:46:08 ID:???
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜

第7話 「少女 −いつわり−」
(1/10)

 ルナマリアは、ミネルバへ辿りついたアレックス、いや、アスラン・ザラを艦長室へ案内する
役目を買って出た。
 アスランなら艦長室の場所くらい周知なのだが、そこは形式というものだ。
 アスランは正式にはミネルバへの乗艦は初めての筈なのだから。
 アスランがザフトに戻り、しかもフェイスとなった。
 ルナマリアにとってそれは当たり前のことで、何も疑問には思わなかった。
 彼はコーディネイターなのだから。プラントに──ザフトにいるのが当然なのだ。
 通路を歩きながら、オーブからの出港時に自分たちがどんな目にあったかをアスランに説明して
いるうちに、ルナマリアの思いは確信に変わる。
 オーブが世界安全保障条約機構に加盟するというのなら、あの国はコーディネイターにとって
住みよい国ではなくなってしまうのだ。
 だが、ルナマリアがオーブの同盟締結を話すと、アスランは「そのせいか……?」と一言呟いた
きり、それ以後はの話はあまり身を入れて聞いてくれなくなった。
 それがルナマリアには何故だか面白くない。
 自分の話をちゃんと聞いてもらえないことなど、レイやシンでもしょっちゅうなのに。
(きっと、アスランにこういう態度をされることには慣れていないだけよ)
 ルナマリアはそう納得付ける。
 しかし沈黙が続くのにも何となく身が持たなくて──ふいにルナマリアは思い出した。
「あの、アスハ代表って、どんな人なんですか?」
「えっ?」
 ルナマリアの質問に、アスランが反応した。
 が、アスランがそこにいるのがルナマリアだと初めて気が付いたような表情なのに、少しばかり
傷つく。
「オーブがわけわかんない国なのって、代表のせいなのかなぁと思って」
「?」
 アスランが怪訝な表情に変わったのを見て、慌ててルナマリアは付け足した。
「わざわざ謝罪しに来たり、手紙くれたり、かと思うと攻撃されそうになったり。
 さっきの話に少し戻りますけど、連合軍との戦闘中にオーブ艦隊が援護してくれたんですよ。
 もっともシンに言わせれば、代表の命令じゃなくて、オーブ軍の良心がそうさせたって」
「……そうかもしれないな。今のカガリでは閣議の決定には逆らえないだろう……」
156河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/28(木) 23:47:24 ID:???
(2/10)

 自分でも意地悪な言い方だな、と思っていたルナマリアは、アスランの暗い声音に何故だか
胸が痛くなる。
 と、アスランが何かに気づいたように顔を上げた。
「手紙って?」
「あ、アスランさんはご存知ありません?
 ほら、ユニウスセブンが落ちてるって聞いた時、レクルームでちょっともめらじゃないですか?
 あの事で」
 ルナマリアは先ほど思い出した物──ヨウランに返してもらってからずっとポケットに入れっ
ぱなしだったカガリからの手紙を差し出した。
 アスランは軽く文面に目を通した。
「いや、俺は何も……。でも、これは間違いなくカガリの字だ」
 ルナマリアは嬉しくなった。
 手紙がやはりカガリの直筆だったからなのか、それとも彼の顔に少し明るさが戻ったからなのかは
分からなかったが。
「君はこれを読んでどう思った?」
「うーん、何て言うか……意外な感じがしました。だって相手は国家元首ですよ?」
 それはルナマリアの正直な感想だ。
「カガリはそういうヤツだよ」
 アスランの表情が、優しげな──というより愛おしいものでも見るような──笑みに変わったのを
見て、ルナマリアは顔が熱くなるのを感じた。
 ルナマリアは現在地表示を確認する振りをして、アスランから軽く顔を逸らす。これで多分
赤面していることには気づかれない筈だ。
 アスランはそんなルナマリアの様子には気づかず、言葉を続ける。
「呆れるくらい真っ直ぐで曲がったことが大嫌いで。感情の起伏が激しいから、すぐに泣くし、
すぐに怒る。だけどそれを引きずったりはしない。
 代表首長の肩書きがなければ、普通の十八歳の女の子だよ」
 アスランの声が少し誇らしげに聞こえて、ルナマリアはもう一度彼の顔を見た。
 しかし、アスランはやはりルナマリアがどんな表情をしているのか気づかない。
(気づく訳ないわ。だってあたしのことなんてさっきから見てもないもの……)
 ルナマリアは不思議に暗くなりそうな気分を振り払うようにわざと明るい声を出す。
「なんか、シンに似てますよね? シンの方が沸点低そうですけど。オーブの国民性なのかしら?
 あ、これ、シンには絶対に内緒ですよ」
「わかってるよ」
 ルナマリアの率直な物言いに、アスランの笑みに苦笑が混じった。
157河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/28(木) 23:48:35 ID:???
(3/10)

 ルナマリアは続けて最新の、しかしアスランならば知っていて当然の話題を口にする。
「それにしても、ホントに変わった人ですよね。突然結婚しちゃうし」
 だが、アスランの反応はルナマリアが想像していたものとは違っていた。
「結婚っ!?」
 アスランは驚きのあまり鞄を手放したことにも気づかぬ程に、血相を変えたのだ。
「え、ええ、婚約者と今日。ご存じなかったんですか?」
 ルナマリアの問い掛けなどアスランはまったく耳に入っていないようだった。
 深刻な表情で何かをじっと考え込んでいて、エレベータが止まったことにすら気づかない。
「あの……?」
 ルナマリアが声をかけると、アスランははっとしたように足元の鞄を持ちエレベータから降りる。
 そのままルナマリアの形式的な先導すら忘れて、艦長室へと入って行ってしまった。

 一人取り残されたルナマリアは、来た道を戻る。
 ルナマリアには、カガリの結婚に対するアスランの衝撃の大きさこそが衝撃だった。
 そして、カガリのことを話す時のアスランの表情。
(もしかして、アスランはアスハ代表のことが……?)
 頭をよぎる考えを首を振って否定する。
(そんな筈ない。あれは、そう、自分の上司っていうか元首に対する敬愛みたいなものに決まってる。
あたしだって議長のことは尊敬してるけど、恋愛感情を持ってるわけじゃないんだもの)
 自分で勝手に結論付けた理由にルナマリアは納得する。
(結構仲良さそうに見えたんだけど、代表は結婚するわけだし。ああ、そっか。イワユル仲間意識って
やつね、きっと。だから結婚を知らされてなくてびっくりしだだけよ)
 少し元気を取り戻したルナマリアは、突然ある事実を思い出した。
(あれ? アスランさんもあのラクス・クラインと婚約してるんじゃなかったっけ……?)
 いきなり両足から力が抜け、その場にへたり込みそうになる。
(やだな。あたし、何で今、こんなにショック受けてるの……?)
「しっかりしなさい、ルナ!」
 内心とは逆に自分を叱咤する。両膝を叩いて、脚も背筋もしっかりと伸ばす。
「よしっ。やっぱり口に出すとしゃきっとするわねぇ」
 真っ直ぐ前を向き、また歩き始めた。
(あたし、何で?)
 その答えを、ルナマリアは考えない。
 今は。
158河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/28(木) 23:49:41 ID:???
(4/10)


  ◆ ◆ ◆

 ガルナハンの街がローエングリンゲート開放の声に沸き立つ頃、アークエンジェルはアフリカ
大陸に程近い場所を潜航していた。
 ブリッジに戻ってきたカガリにマリューが声をかけた。
「キラ君は? カガリさん」
「少し疲れてるみたいだから、無理やり寝かしつけてきた」
 カガリはオーブを出て以来すっかり定位置になってしまった管制士席へ腰を降ろす。
 最近やっとこの席にも慣れて、チャンドラ二世のサポートなしでも通常処理くらいならこなせる
ようになってきたところだ。
「大丈夫、大丈夫ってちっとも大丈夫じゃないじゃないか、キラ。
 やっぱりまだ完全じゃなかったんだな……。すまない。私のせいで無理をさせてしまって」
「カガリさんのせいじゃないわ。私たちも彼を止めなかったし、なによりも彼自身が望んだこと
ですもの」
 キラはオーブを出て以来、数回パニック症状発作を起こしていた。
 この艦内にいる間ならいい。カガリもマリューもその対処には慣れているからだ。
 しかし、もしも誰もいない場所──例えばMSのコックピットでその発作が起きてしまったら?
 亡きウズミの伝手を頼りにスカンジナビア王国に匿われ、そこを出てから一週間、幸いアーク
エンジェルはまだ一度も地球軍にもザフトにも見つかってはいない。
 しかし今彼らが向かっている場所は、両軍の勢力が入り乱れる激戦区である。
 この先もずっと無事でいられる保証はない。
 だが、今彼らの気を重くしているのは、その事ではなかった。
「それにしても、キラにどうやって伝えるか、だな」
「そうね……」
 バルトフェルドの言葉にカガリの視線がサブモニターの一つに移る。
 そのモニターはブリッジの入り口からは見えない位置にある。
 万が一キラが突然入室してきても気づかれないようにする為に、その映像はそのモニターでのみ
映す事がブリッジ内での暗黙の了解となっていた。
 そして今、そこにはピンクの長い髪の少女が歌っている姿が映し出されている。
 この艦に乗る者なら、よく知っている顔──ラクス・クラインの姿だった。
「彼女がいなくなってから、もう一年になるのか」
「キラ君もやっと落ちついてきたところなのにね」
 しかし、ラクスの顔を見つめる皆の顔に懐かしさはない。
159河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/28(木) 23:51:31 ID:???
(5/10)


  ◇ ◇ ◇

 ラクス・クラインが大戦の終結後にオーブに移住したのは、ひとえにキラがオーブに戻った
ためだ。
 両親や友人、更には親友であるアスランがオーブに移るとなれば、キラがオーブに戻るのは
至極当然のことであったし、もはや真の意味でラクスを待つものがいないプラントよりも、
キラのいるオーブを彼女が選んだのもまた当然であった。
 そのラクスが病に倒れたのは、終戦からわずかに八ヶ月後のことだった。
 病名はナチュラルなら誰でも一度は罹ったことのある単なる「風邪」である。
 しかし、それまで彼女はプラントの清浄な──しかも上流階級の出自である彼女は一般市民よりも
はるかに厳しく管理された──空気の中で暮らしていた。
 芸能活動でプラントから出ることもあったが、行き先は別のプラントであり、移動は宇宙船で
である。
 プラント以上に限られた空気しか持たない宇宙船内では、病の空気感染を防ぐために徹底的な
空気洗浄がされている(酸素発生装置もあるが、それは船体が破損した際の空気漏れ対処等の
緊急時用である)。
 つまりラクスは地球に住むものならばごく普通に摂取している空気と──その中に含まれている
わずかなウィルスや細菌に対する免疫が殆どなかったのだ。
 もちろん彼女もコーディネイターであるから、基本的な遺伝子操作として様々な病気に対する
抵抗力をつけられている。
 しかし、それは三大疾病や発病すると重篤となる病を中心としたものであり、地球上のありと
あらゆる病に対応したものではない。
 またラクスの場合、その強化された抵抗力が更に悪い結果をもたらした。
 軽いうちに症状が出ていれば、通常の投薬でなんとかなったかもしれない。
 しかしそれは、ラクス自身さえ気づかぬ間に彼女の全身を蝕んでいたのだ。
 それは「病気に罹ったことがない」と言う者が病気になると酷くなるのと似ていた。
 更に体力が落ちていたラクスは、様々な──オーブの風土病も含めた──伝染病を同時に発症して
しまう。
 カガリの手配によりオーブの国立病院の無菌室で最新の治療を受けたが、回復には至らなかった。
 そして、最後の手段としてオーブよりも──少なくともコーディネイターの治療に関しては──
優れた技術を持つプラントへ搬送され……しかし永遠にキラの許へ戻ることはなかった。
160河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/28(木) 23:56:16 ID:???
(6/10)


  ◇ ◇ ◇

「キラは、まだラクスのことを?」
「ええ、自分の所為だと思ってるわ。自分が地球に連れてきてしまったからだって」
 マリューが沈痛な面持ちで答えた。
「そんなこと……絶対にそんなことないのにっ!」
 カガリは思い出していた。ラクスからの最後の手紙。その中に何度も書かれていた「キラを
お願い」という言葉。
 ラクスは決してキラを恨んだり責めたりしていなかった。
 ただ自分がいなくなることで、大戦で傷つき、ラクスを頼みとしていたキラがどうなるのか、
それだけを心配していた。
 そしてキラはラクスの懸念通りに、未だにその傷を癒せないでいる。
「本っとに信じられないわ。一体誰が何のためにこんなことをしてるの!」
「さあな。これを企んだ者は果たして『ラクス・クライン』の名を高めようとしているのか、
それともその逆か、それすらわからんよ、まだな」
 モニターの中のラクスはマリュー達が知る彼女とはまったく違い、アップテンポで歌い、
ステージ上で踊っている。
 マリュー達が顔をしかめているのとは逆に、観客たちは大喜びのようだ。
「ま、今までと同じだとぼろが出るから、それを誤魔化すための路線変更ってだけかもしれんがね」
 カガリもまたマリューと同様、もしかしたらそれ以上に憤ってはいる。
 ただカガリは、自分が激昂してしまえばキラの前で何を口走ってしまうかわからない、と
思っている。
 だから自分を必死に押さえつけていたのだ。
 しかし、そのカガリの気持ちを逆撫でするような言葉をラクスは発した。
「勇敢なるザフト軍兵士の皆さぁん。平和のため、わたくしたちも頑張りまぁす。皆さんも
お気をつけてぇ〜!!」
「ラクスは、こんなことは言わない! ラクスは平和だけを願っていたんだ。こんな……
一方だけを応援するようなこと、絶対にラクスは言わないっ!!」
 しかしこれが誰の企みであろうとも、カガリ達にそれを抗議することはできなかった。
 モニターの中のラクスが偽者であること。それを証明するためには本物のラクスの死を
公表しなければならなくなる。
 だが、それはできない。
 ラクスの死を隠すこと。
 それはラクスの──真実のラクスの遺志だからだ。
161河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/28(木) 23:59:49 ID:???
(7/10)


  ◇ ◇ ◇

 ラクスはプラントの人々が自分に課した役割を知っていた。
 それは一言で言ってしまうならば「希望」だった。
 ナチュラル・コーディネイター共に、互いの存在を完膚なきまでに消し去ろうとしていた
あの大戦。
 それを停戦させた英雄達。
 その中でも力の象徴となったのがキラとアスランであるならば、思いの象徴となったのは
ラクス・クラインである。
 彼女の名は元々の知名度の高さも相まって、プラントの多くの人々に絶対視され続けている。
 それは、大戦の終結後に就任して以来善政を布いているデュランダル議長ですら、未だに
クライン派と呼ばれている事実にも如実に現れている。
 そして、プラントも個の集合体である以上その思いは決して一色ではない。
 犠牲を悲しみながらも平和を望む者、ナチュラル排斥を心に誓う者、その両者の間に平和を
望みながらも犠牲を許せないでいる者も多く存在する。
 ラクスは、その中間地点にいる者がナチュラル排斥に傾かないための楔となっていた。
『ラクス・クラインが望むのだからナチュラルとの平和を守ろう』
 その思いは多少形を変えてもプラントの人々の中にまるで宗教のように浸透していた。
 そのラクスが「地球で」病に倒れ絶命したなど、なんとしても隠し通さねばならなかった
のである。

  ◇ ◇ ◇

 カガリはモニターのラクスに視線を転じた。
 彼女は、何を考えて、どんな目的があってあの場所にいるのだろう?
 どんなに考えたとしても詮無い事を、それでも考えずにはいられなかった。
 本物のラクスがここにいたら、彼女はこの偽りの少女に何を言うだろう?
 そして、キラは何を思うのだろう?
162河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/29(金) 00:01:22 ID:???
(8/10)


  ◆ ◆ ◆

「カガリッ、心配したんだぞ」
 アスランはやっと見つけた少女に駆け寄った。
 だが、少女は彼女を抱きしめようと伸ばしたアスランの腕の中から、するりと抜け出した。
「カガリ?」
 問いかけるアスランを少女は不思議そうな目で見つめる。
 もう一度伸ばした腕を避けるように、少女はアスランから離れた。
 その傍らには何時の間にかあの男が立っている。
 男は少女の肩を抱いて、アスランに背を向けて歩き出す。
 それは、見覚えのある光景。ミネルバで帰国した時にアスランの眼前で行われた光景。
 しかし、少女の表情はその時とは違う。
 少女はアスランを一顧だにしなかった。
 少女は隣の男に笑顔を向ける。
 プラントへ旅立つアスランに向けた笑顔。
 少女にその笑顔をさせられるのは自分だけだ、ユウナがどう頑張ったとしても無理に決まって
いる、と内心で誇らしくさえ思っていた笑顔。
 二人は遠ざかって行く。
 アスランは一歩も動けない。
 ただ、少女の名を叫ぶだけ。
「カガリーッ!!」

  ◇ ◇ ◇

 目が、覚めた。
 起床時間に点る蛍光灯の人工的な光ではなく、カーテン越しにやわらかい朝日が差し込んで
いる。
 久し振りに飲んだワインの所為か、それとも艦のものとは違う格段に心地よい寝台の所為なのか、
普段よりも大分寝過ごしたらしい。
 アスランは先ほどの夢を思い出す。
 カガリがアスランから遠ざかって行く夢。カガリの結婚と拉致を知って以来、その夢を見ない
日はない。
 しかも夢の中のカガリはいつも笑顔で、あの男──ユウナの手を取るのだ。
 毎晩見ているというのに、夢の中のアスランはそれを夢だとは思えないでいる。
 結婚はともかく、カガリは今あの男の傍にはいない。その結婚だってカガリの意思だとは
思っていないのに、夢はアスランの心を突き刺し続ける。
 それにしても今朝の夢はいつもよりもリアルに感じられた。
 多分それは思いがけず実現したデュランダル議長との会談が原因だろう、と、アスランは思った。
163河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/29(金) 00:06:11 ID:???
(9/10)


 ミネルバへの着任時に、アスランはタリアから現在の世界情勢を聞かされた。
 その時アスランは、自分の知識が開戦以降には役に立たなくなっていることを知った。
 先の大戦では中立だったスカンジナビア王国や赤道連合が世界安全保障条約機構に加入した
ことにより、戦況は地球vsプラントの様相を示していること。
 しかし、否応もなく地球軍に組み込まれたことを不服とするユーラシア大陸の各地で
レジスタンス活動が行われており、地球軍とザフトとの戦闘よりナチュラル間での局地的な戦闘
(と言うより虐殺行為)が多く勃発していること。
 そして何よりもオーブの動き。
 大西洋連邦との同盟締結の決定、代表首長カガリの結婚と挙式中の拉致、その後に発表された
同盟の撤回。
 アスランがプラントへと旅立ってから一週間と経っていないにも関わらず、オーブで起こった事は
すべてがアスランのまったく知らないことばかりだった。
 また、昨日議長から聞いた話では、まだカガリの行方はまったくわからない、という。
 事件から一ヶ月にもなるいうのに、オーブは何故か未だにザフトからの捜査協力だけでなく
情報公開さえも拒んでいるのだ。
 プラント内部では、カガリの拉致は同盟破棄を察した地球軍側の報復措置ではないか、という
意見さえ出ているらしい。

 アスランはザフトに戻ったことを後悔しない日もなかった。
 何も出来ないままオーブにいるよりも、少しでも出来ることがあるなら、とザフトに復隊した
あの日。
 あの日にカガリの許に戻っていれば、カガリの拉致など何としてでも阻止しただろう。
 いや、結婚だって自分がいたなら止められたかもしれない。
 決して安易に決心した復隊ではないが、それでも悔恨の思いは消せない。
164河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/06/29(金) 00:09:03 ID:???
(10/10)

 思い悩むアスランの脳裏に唐突に昨日の光景が浮かんだ。
(そうか。議長と話せたことばかりではないかもしれないな……)
 それは緑服の少年兵の姿だった。
 このディオキアの保養施設にシン達と共に連れてこられたアスランが、ロビーでちらっと見かけた
だけの少年兵。
 顔は見えなかったが、無造作に一つに縛っていた金髪の色や身長ががカガリと良く似ていた。
 少年兵を案内していたのが黒服の将兵でなく、またシン達がそばにいなければ声をかけて顔を
確認するくらいはしていたかもしれない。
 一瞬後姿を見ただけの少年兵を思い出すなど、実は内心ではひどく気になっていたのだな、と
アスランは苦笑する。
 しかし、今となってはその少年兵を探すのは不可能だ。
 何せ緑服と金髪という以外、名前も顔すらも知らないのだから。
 第一、探し出せたとしても話すことなど何もない。
「ロビーで見かけたんだが、顔を見たくて」
 などと言ったら、変人扱いされることは間違いないだろう。
 そう考えていたアスランは、自分のベッドの上にとてもリネンだけには見えない大きな塊が
あるのに気づいた。
 しかもその塊が微かに動いたような気がする。
 恐る恐る毛布をめくったアスランの目に、ピンクの長い髪の少女が映る。
「ミーア!?」
 驚愕とその後に起こった悪夢の為に、アスランの脳裏から金髪の少年兵のことはすっかり
消え去った。

==========

連投に引っかかるのでこちらに失礼します。

()記述については何度もご指摘いただいてますが、今の自分ではこれが精一杯です。
アドバイスを生かせず、申し訳ありません。

次回は7月初旬の予定です。

>前スレ540様
気づいてくださってありがとうございます。w
165通常の名無しさんの3倍:2007/06/29(金) 00:59:33 ID:???
>>河弥さん
 前半
 ルナマリアの青い恋心が中々上手く描写できていたと思います。括弧を使わないように出来れば
なお良かったですが、まだ練習中との事で次に期待です。恋は盲目というわけで、自分に都合のいい
解釈でアスランと付き合っていこうとするルナマリアかなり応援したいです。
 文は読みやすくて、アスランとルナマリアの会話シーンがすんなりと頭に入ってきました。

 後半
 ラクスが居ない事で、キラを筆頭として周りの人間のプラントに対する、或いは偽ラクスに対する
スタンスも変わってきていて、ラクスの居ない種運命という主題が上手くかけていますね。ラクスの
死因も納得できる説明がなされていました。贅沢を言うならばその説明がいささか説明臭いと言う事です。
登場人物の台詞でにおわせる程度のやり方でも良かったかと思います。
 キラの病状は後々の伏線かな? 続きを期待しております。


 そして本当に厠だったんですね、投下乙。
166続・実録!プラントザフト軍 ◆JOaW6wYxoc :2007/06/29(金) 04:28:07 ID:???

「オラァッ!お前はなめてんのか?もっと腹から声を出さんかい!」

突然ですが自分はヨウラン・ケントと申す者であります。
本日はヴィーノと共に副艦長殿の特訓を受けているのであります、押忍!

「L・O・V・E ラブリー ラクス!」
「お前のラクスちゃんへの愛はそんなもんか?魂込めんかい!」

副艦長殿は栄誉あるラクス・クラインファンクラブ会員番号一桁でありまして、
巷ではザフトにアーサーありとうたわれる程のお方でございます。
そんなお方に御指南をして頂けるのは会員番号六桁である我々にとって大変喜ばしいものであります。

「よし、お前ら今日の所はこれで上がりだ!応援グッズ、用意しとけよ!」

副艦長殿が立ち去りますと、我々は心地好い疲労を抱いてへたり込んでしまいます。
「ヨウラン、お前はもうグッズ揃えたか?」
「勿論。ハッピにハチマキ、ペンライトだろ?」
「ペンライトぉ!?お前なにシャバイ事言ってんの?コンサートにはウチワだろ?」
自分の言葉にヨウランは怒気を露にして睨みつけてきやがります。
そうなると自分も負ける訳にはいきません。「お前こそ脳味噌腐ってんじゃね?ウチワなんて用意してどうすんだよ。
コンサートにペンライトってのは血バレの前から決まってんだぞ? ボクゥ!?」
「……もう一度だけ聞く。ウチワだよな?」ヴィーノは立ち上がり、笑っているような、悲しんでいるような目で自分を見ています。
「冗談。死んでもウチワなんて認めねえ」
不意に空気が粘り着く様な感覚を覚えます。ヴィーノから放たれるものは……殺気とでも形容すべきものでありましょうか?
「……そうか。なら、死ね。」
ヴィーノはいきなり手刀を放って来ました。CE73年の空手チョップであります!
とにもかくにも自分は避ける事も出来ず、食らってしまいます。
口の中に血の味を感じると、自分は立ち上がり間合いを取ります。
「それかお前の答えか……。褒めてやろう、貴様の戦いを!悲しんでやろう、貴様の死を!」


押忍、ベッドの上から失礼致しますが自分はヨウラン・ケントと申す者であります!
あの後、二人してと拳で話す肉体言語で語らい、お互いに分かりあったのでありますが残念な事に負傷が酷くてラクスちゃんのコンサートには行く事が出来ませんでした。

噂だとコンサートでポロリもあったとか……。
自分は悔しくありません!ええ、悔しくありませんとも!男の友情の方が大事です!
167通常の名無しさんの3倍:2007/06/29(金) 10:16:26 ID:???
吹いたw
168通常の名無しさんの3倍:2007/06/29(金) 12:20:55 ID:???
>>166
あんたホントにメガテン大好きなんだな……。とにかく笑えたwww
169通常の名無しさんの3倍:2007/06/29(金) 23:34:57 ID:???
>>彼女
投下乙
たった数回の投下でかなり読みやすくなったな。すごいなキミは
設定変更部分の説明も上手くいってる。今後に更に期待

>>実録
投下乙
微妙な差異が容認出来ないのがマニア。今回も笑わして貰った
台詞と改行、もしかすると携帯から?
170続・実録!プラントザフト軍 ◆JOaW6wYxoc :2007/07/01(日) 08:22:17 ID:???

押忍!自分はヨウラン・ケントと申す者であります!
今、自分はザフトの未来を憂いているのであります。
戦争はどうにか終わりましたが、ザフトに未来を感じる事が出来ないのであります。

まず、新しく議長になったラクス・クラインに不満があります。本物なのか偽者なのか分かりませんが、胸がナインです!
たの豊満なたわわな二つの果実は何処に言ってしまったのでしょうか?
自分が密かに調べた所、七桁を数えるラクス・クラインファンクラブ会員の大多数がアレを偽者だと思っとります。勿論、自分を含めての事であります。
そして新しくザフトの白服になった馬の骨、キラ・ヤマトという男はアカデミーで地獄を見ておりません。
ザフトというのは、一部の例外を除きまして魔法の薬「ビンタ」や特効薬「ヤキ」を大量に接種した、鋼の精神を持つ者のあつまりです、押忍!
、誰一人追いては行かないでしょう。後ろから刺しそうな人間は掃いて捨てる程いるのは間違いありません。
前の前の議長が議長なら子供は子供でございまして、前の議長が議長なら議長でごさいました。
今の議長が議長ならいったいどうなるのでありましょうか……。

人の悩みは白浜の砂の様に尽きる事はございません、押忍!

>>完
171通常の名無しさんの3倍:2007/07/01(日) 14:11:06 ID:???
完結乙。今回も笑わせて貰った。
次回作に期待してます。
172通常の名無しさんの3倍:2007/07/01(日) 16:05:33 ID:???
実録氏投下&完結乙。よく分からないノリが凄い。

>>168
何処がメガテン?
173通常の名無しさんの3倍:2007/07/01(日) 18:17:59 ID:???
>>179
自分で調べろ。
174通常の名無しさんの3倍:2007/07/01(日) 21:35:45 ID:???
179に期待w
175通常の名無しさんの3倍:2007/07/02(月) 01:30:52 ID:???
>>170
完結乙です! 毎回笑わせて頂きましたw
次回作に期待してます!
176通常の名無しさんの3倍:2007/07/02(月) 09:59:34 ID:???
>>172
>褒めてやろう、貴様の戦いを!悲しんでやろう、貴様の死を!

この台詞
原典は真・女神転生2屈指のネタキャラ、レッドベアの名台詞で、正しくは、
「褒めてやろう、貴様の戦いを!悲しんでやろう、貴様の最期を!」
177通常の名無しさんの3倍:2007/07/02(月) 13:43:32 ID:???
>>179
努力しろよ?
178通常の名無しさんの3倍:2007/07/02(月) 15:19:38 ID:???
そして>>179に編集長が!!
179週刊新人スレ:2007/07/02(月) 15:22:37 ID:???
さて、エロスレの目次でも作るか・・・

と言う訳で、おまえらのお気に入りを教えて下さい


>>178
仕事中に呼ぶなよ。照れるじゃないか
180通常の名無しさんの3倍:2007/07/02(月) 16:05:25 ID:???
編集長ww仕事しろよww
181通常の名無しさんの3倍:2007/07/02(月) 20:20:44 ID:???
>>170
 あのさ…締めの部分。
 「石川や浜の真砂は尽くるとも 世に盗人の種はたへせじ」の上下句がごっちゃになってない?
 (石川五右衛門の辞世の句といわれている)

 浜の砂は波に洗われ消えるんだよ。 まったく意味が逆ですよっと無粋なツッコミをひとつだけ。
182週刊新人スレ:2007/07/02(月) 20:55:46 ID:???
目次

 僕らはパンドラの箱の底に輝く光。女神を守護する者。そして僕は・・・。
女神が住まう国(オーブ編)
>>141-143

 銃殺刑は免れたものの強制的にザフトに編入されたミツキは、緑の制服で崩壊した町を見つめる。
少女は砂漠を走る!
>>146-151

 アスラン・ザラを艦長室へ案内する ルナマリア。アスランを見る彼女の心中は消して平穏ではなく・・・。
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
>>155-164

 血と汗と涙の上に立つプラントの守護者達!! あの大人気作が満を持して帰ってきた!!
続・実録!プラントザフト軍
>>166,170


感想、批評書き込み強化月間。ROMだけの時代は今日で終わり! 君も作品作りに参加しよう!
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当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。

編集後記
たまたま開いたら呼んでたので2秒で考えて脊髄反射で書き込んだので
オチが弱くてスイマセン。今後も精進いたします・・・
183通常の名無しさんの3倍:2007/07/02(月) 22:07:17 ID:???
>>彼女
もしかして以前は漫画書き?
ルナマリアの括弧書きセリフ見てそう感じた
ラクスの死因が風邪というのは結構強引だが気にならないレベル
説明臭いのは>>165氏と同意
だがオリ設定を省略しすぎると単なるご都合展開になるので注意

>>実録
完結乙
最後まで笑わしてもらった
最終話 途中1行抜けてる?(下記の間)
>ザフトというのは、〜ry
>、誰一人追いては〜ry
184通常の名無しさんの3倍:2007/07/03(火) 22:03:37 ID:???
>>実録
 周りの人間にはどうでもいい事に命と友情を掛けるヨウラン、ヴィーノに激しく笑わせて貰いました。
魔法の薬「ビンタ」、特効薬「ヤキ」を大量摂取……というか中毒な彼らなら、彼らを育てたザフトなら、
きっと地球連合にも勝利できると信じて――!
 次回作をお待ちしております。

>>編集長
 すばらしいタイミングの登場に脱帽。いつも乙です。
185新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/05(木) 19:59:20 ID:???
二日の静寂を打ち破って、投稿せよ、新人!

…それは置いといて…行きます。
186新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/05(木) 20:00:34 ID:???
 ザフト軍所属艦、ミネルバは新たなる剣、「バビ」と、新たなる翼「試作型大推力グゥル-ファトゥム仕様」を受け取り、新たなる任務に就いた。
 それは、溜息がでるほどさっぱりとした内容で、理解し難い内容。
 テロリストが駆るアークエンジェルを落とせというものだった。
 つまり──シン・アスカの復讐は予想よりも早く果たされることとなったのである。

せめて、夢の中だけは
第六話 己が正義

「サイ坊、おまえは凄いな。まさかこうも指示できるとは」
 溜息を吐きながらマッドは言った。
 それを横目に、サイと呼ばれた青年は苦笑しながら手元の資料に目を通す。
 ザクのパーツとザクファントムのパーツは同一の物を使用している部分が多い。今行っているのはそれを利用した作業。
 つまり、ザクを解体(ばら)してザクファントムの足りない部分を補うということだ。
 まあ、比較的容易ではある、が。大破した機体と中破した機体だ。
 更に当初作業は慣れない指揮系統に困惑するサイの班のせいで難航する、マッドはそう考えていたようだ。
 しかし、そのことごとくをサイの班は否定して見せた。
 それはもうミネルバの整備クルーを上回る働きぶりだ。ザクファントムは瞬く間に紅白色へと染まり、調整も済んだ。
 これらはサイの班の能力が高いのもある。しかし、それだけではなかった。

 サイはベテランのマッドも唸らせる指揮の腕を誇っていた。
 堅実、慎重、かつ確実な彼の指揮は、それこそ艦隊の総司令官のように見える。
 まだ二十歳いかない青年とは思えない思慮深さ。二手三手先を見るその眼。教科書のような指揮。
 マッドは、そりゃ驚愕した。
 何せ艦にいる若いのは生意気な赤服小僧とてんで駄目な現在風の赤服女。
 いまいち信頼されていない生え際の危うい赤服隊長。
 出来るのはいいが感情の起伏が無くコミュニケーションを取らない赤服坊主。
 お喋り好きで仕事に熱中しない部下。
 舌っ足らずのオペレーター。
 全員二十歳以下の若者。それに比べてサイときたら、下らないよた話もすれば的確な指示もこなせる。
 全く、ザフトの人員不足ももう少しは保つな。マッドがそんなことを考えていると、
「おやっさん、インパルスのデータとっていいっすか?」
「……インパルスだぁ? 別に良いが、なにかあるのか?」
「セカンドステージの機体に興味があって、へへ」
「好奇心旺盛だな。勝手にやるといい」
「どーもっす!」
「まったく、他称選りすぐりエリート戦艦のウチの整備士共よりも仕事熱心なこった」
 だからこそマッドはサイを信頼し、そのようなことを許したのだが、それは置いておくことにした。
187新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/05(木) 20:06:24 ID:???
 サイはよく注意して、MSインパルスの中核を為すコアスプレンダーに駆け寄った。
 本来は人型であるはずの機体。 MS形態時の機体を思い浮かべる。
 光を灯さないツインアイ。角のように延びるアンテナ。
 友が言うにはガンダムという名の機種。さしずめインパルスガンダムかな?
 サイは考えながらコックピットによじ登る。新型の筈なのに使い古されているようにも見えるシート。
 実戦はまだ十数回の筈だからシミュレーションのものか。
 そう断定して、無遠慮に乗り込んだ。
 パイロットに許可を取るのは、建て前は時間が勿体無いから。本音は面倒だったから。
 乗り込んでデータを見てみる。表示される複雑な文字と数字の羅列。
 OSもよく改良されているのが解る。解る、が、OSに関してはチンプンカンプンなので置いておくことにした。
「スペックはどうかな……って、こりゃ……」
 言いながら、溜息を吐いた。サイの目の前に表示されているインパルスのスペック。
 基本、新世代型のMSだからシルエットなしの状態でもゲイツRとは十分戦える。
 試作機としては十分過ぎるパワーだ。
 各シルエットを装着すれば、データ上グフ五機以上とは戦える。
 しかし、戦局の流れに合わせてシルエットを換装するのは面倒に思える。
「新型の完成は未だ先だし、やってみるか……」
 言って、サイはおもむろに一枚のディスクを手に取った。
188新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/05(木) 20:07:42 ID:???

 訓練の合間を縫って俺はルナとレイと共に食堂で食事を摂っていた。そりゃ、食堂なのだから、食事を摂るのは当たり前だが。
「シン、今度の作戦内容知ってる……わけないよね」
 人が楽しく食事をしていたらいきなり何を言いますか、この大飯食らいが。
「ルナ、少し考えればそのことは判るだろう」
「うん、レイの言う通り。ごめんね? シン」
「……聞いてりゃお前ら好き勝手かつ人にたいする思いやりが籠もってるような籠もってないような人様のことを馬鹿にしたようなことほざきやがってぇ!」
「俺は気にしない」
「うん、あたしも」
 おーこいつらなんと自己中心的な考えをさらりと述べやがりますね。殴り倒したい。出来る訳がなかった。鬱だ。
 代わりにルナの疑問に答えて憂さばらしする。自分で思うのもなんだが、情けない。
「知ってるさ! アークエンジェルを落とすんだろう!」
 こらそこ、心外な目で見るな。
 辺りを見回せばみんなの視線が俺に! こいつら揃いも揃って……!
「シン、成長したな」
「エラいエラい!」
「聞きました奥様?」(ヨウラン)
「なんてことざます! 今日は槍が降るざます!」(ヴィーノ)

(何かが勢い良く駆けて、何かを殴ったり蹴ったり踏み潰したりする音)

「………………みんなして、みんなして、見んな見んな見んなコッチ見んな! 生暖かいようで冷たい視線を向けんなぁ!」
 とりあえず足元でぴくぴくしている緑色の物体を無視して、俺は激しく叫んだ。
「煩いぞ。早く食え」
「未だ食べてんの? おっそーい」
 人がシリアスやってんのにこいつらは、てか、なに? もうくったですと?
「お前ら、食うの早くないか?」
「おまえが遅いだけだ」
「そうよ。遅すぎ」
「いやいやいや、レイはともかくルナ、おまえ片腕怪我してんだろうが!」
「やーねー。怪我しててもみんなこんなもんよ。ね、レイ? ちょっと、レイ?
 顔背けないでよ。目合わせなさいよ。ちょ、殴るわよ」
「落ち着けルナ。俺はかなり錯乱して……」
「問答無用ッ!」
「ま……ぐあっ!?」
 いいストレートだ。
 俺は間髪空けずに繰り出されたストレートを見ながら、マユ、俺も逝くよ、と心の中で呟いた。

 とりあえず、骨が変な音を立てたりとしたが、生憎俺は生き延びてしまった。
 レイはルナと格闘戦に移行している様子。まるで虎と豹だ、と心にもないことを思ってみる。
 とりあえずレイの助けを請う視線を無視して格納庫に行こうと思うもの也。
189新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/05(木) 20:09:27 ID:???
 レイを見捨てて格納庫に向かう途中、俺は先程のやり取りを思い出していた。

 ――アークエンジェルを落とす。そう、それが今この艦に課せられた使命。
 ロゴスを討つことには関係のないことだ。だが、だが。
 俺の怒りは収まらない。あいつらは殺しすぎた。
 亡くなった整備員達が話してくれたあの与太話を聞くことも。
 ポーカーで俺に勝ち誇るように見せたあの笑みを見ることも。
 悪態を交えながらも整備してくれていたあの姿を拝むことも。
 もう出来ない。
 皆良い奴らだった。戦場で死ぬことは少なくは無い。地球軍のせいなら、まだ怒りを抑えることは出来た。
 だが……何故……?
 何故、あんな理不尽な理由で、あんなに良い奴らが殺されなければならないんだ?
 ステラだって、何故殺されなければならなかったんだ?
 ただ怯えていただけなのに、脅えていただけなのに、何故……?
 仕方が無いとは思う。こればっかりは理不尽な怒りだとも、理解できる。だけど……
 俺の怒りは収まらない。
 あいつらは……あいつは殺しすぎた。整備の良い男達を、整備の良い女達を、ステラを。
 殺しすぎた。 
 ようやく──と言うほど長い期間ではなかったが──復讐が果たせる。そう思えば、気が楽になった。
 待っていろ……! アークエンジェル……! 待っていろ……! フリーダム……! お前達は、お前は、必ず俺が──
 殺す!

 ――それは、暗い、昏い、冥い、燃えるような、炎えるような、焔えるような――
 ――怒りと憎しみの。
 ――正しき怒りだった。正しき正義だった。

「僕たちは、もう元には戻れないんだろうね……」
 オーブに向かう道中のことである。
 アークエンジェルに備え付けられた温泉「天使湯」のほど良い温度の湯につかりがなら、キラは呟いた。
 嘆いても、アスランはもう僕たちと同じ道を歩もうとはしないだろう。
 それが当たり前で、悲しくて、キラは泣きたい気持ちになった。
 自分達の行いが正義だとは思わない。正しいとも思わない。自分の行動なんか、傲慢だとも思ってもいる。
「だけど……」
 だけど。もう、どうにもならない。一度決めたことだ。今更それを捻じ曲げるなんて、もっと傲慢だ。
 もう、変えられない。止まらない。例え無駄であったとしても、例え傲慢であったとしても。
 立ち止まってはいけない。
 僕たちは、それだけの業を積み重ねてきたから。それだけの罪を重ねてきたから。
 例え。
 嘆きの声を聴いても。憎しみの叫びを聴いても。殴られても。蹴られても。何をされようとも、赦されてはならない存在。
 ならば、最後まで、己の正義を貫き通す――!

 ――それもまた、正しき覚悟だった。正しき正義だった。
190新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/05(木) 20:10:50 ID:???
続く。

と打ち忘れたorz

>>182
編集長乙です。
191実録!アカデミーの仕組み ◆JOaW6wYxoc :2007/07/05(木) 23:14:06 ID:???

押忍!突然だがジュール隊隊長のイザークだ。
本日はアカデミーの仕組みについて説明をしようと思う。良く聞いておけ!
誤解している人間が多いのだがアカデミーはエリートを育成する場ではない。
エリートを選別する場だ!
アカデミーは冷酷なまでに実力主義だ。実力と言うのは銭に他ならない。
一番最初に、入学する際に入学金の他に寄付金を出したか出さなかったかで選別される。
寄付金を払えない貧乏人はまともな遺伝子の調整を行える筈がないだろう?
裕福な者は素晴らしい遺伝子の調整を行えるのだ。
故に、多額の寄付金を払った者は入学した時点で赤服になる事が決定する。
このシステムを知らないのは貧乏人のみだ。
しかし貧乏人にもチャンスはなくもない。
一人か二人はアカデミーの成績によって選ばれるのだ。
例え貧乏であっても少しくらいは夢を見させてやらなければ可哀想だろう?
つまり、貧乏人の代表格はミゲルであり、エリートの代表はこのイザークだ。

基本的に貧乏人には厳しい訓練を受けさせて能力を開花させ、エリートは伸び伸びと教育させると言うのがアカデミーの方針であると言える。
貧乏人には魔法の薬「ビンタ」や特効薬「ヤキ」を大量に接種させて限界まで成長させないとエリートに及ぶことはない。
それらを大量に接種した為に中毒になり特異な性癖に目覚めてしまう人間も少なからずいるがな。
それの代表格はアスランだ。あの情緒不安定振りを見てもらえば理解出来るだろう?
あいつの家は決して貧乏ではなかったが、親父が真面目過ぎた為に寄付金を払わなかったのだ。

次回はザフトの仕組みについて説明をしたい。きちんと予習をしておけぇぇぇっ!
192通常の名無しさんの3倍:2007/07/06(金) 18:10:45 ID:???
>新人
嫌いじゃないがデモベ混ざりすぎwww
そしてまさにそのデモベ要素がなんだかおかしな流れを作っている気がしないでもない。

シンは自分の怒りをエゴと認識しているはずなのに「正しき怒り」とはこれいかに?
193新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/06(金) 19:24:15 ID:???
フライ食って胸焼け真っ最中の新人です。
>>192
そこは、神視点、のつもりです。
神から見たらエゴだろうとなんだろうと、どんな怒りでも正しき怒りなのかなぁ、と。
そして……デモベ、自分としたら意識してなかったのですが、どうやら体から抜けていなかった様子ですねorz
流石にこれは大変……ということで今現在デモベを禁止している最中です……



追記
第七話、「アストレイ」は今日か明日には投稿できると思います。
194週刊新人スレ:2007/07/06(金) 21:48:08 ID:???
私事により来週分の刊行は火曜日以降となります
悪しからずご了承の程を
195弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/06(金) 22:41:23 ID:???
少女は砂漠を走る!

第三話 砂漠の町にて(1/6)

 砂漠の、無限とも思える変わらぬ景色。その上を2隻のレセップス級が滑る様に進む。
その先頭の艦の甲板。わたしは手すりにもたれながら風になぶられ、日差しにあぶられている

 陸上戦艦レセップス級。船体は半没式構造で、砂を振動・液状化させるスケイルモーターを底部全面に配し
砂漠を進む。またスケイルモーターにより同級は海上航行も可能である。当初よりMSの運用を前提に設計され
多数のMSカタパルトを持つ、艦載数は移動基地と言って良い程。武装は40cm連装砲や対空ミサイル、
魚雷発射管等。他に同機構を使用した陸上戦艦にピートリー級がある。
※ネームシップがバルトフェルド隊の旗艦であったことでも有名。←誰?

 既に5冊目になった【パイロット秘密ノート】。自分で書いておきながら意味のわからないノートが手元に5冊
もあると言うことだ。更にメカニックやパイロットの若手がいろいろと教えてくれるものだから、赤の注意書き
やらアンダーラインやらで、やたらにぎやかになって何が書いてあるのか判らなくなっているページさえある。
そのノートのレセップス級の項をもう一度眺めては見たもののまたしても、やっぱり意味が、取れない。

「砂漠と海が走れてMSいっぱい積める戦艦がレセップス! 良いじゃんコレで。わたしは艦長じゃないし!」
「ちなみにマーカス隊に限って言えば、2隻とも最大積載MSの半分も積んでいないがね。ミツキくんにしては
投げやりだなぁ。イヤなことでもあったのかい?」
 わたしの隣、同じく手すりにもたれた師匠はこちらを振り向く。わたしもさすがに暑くて襟元をあけているのだ
けれど、彼が一度でもそんなカッコをしているのは見たことがない。寝るときもそのままなんじゃ無かろうか。
隙のない赤い制服のその右腕だけがひらひら揺れる。わたしの様にスカートをはいている訳ではもちろんない。
「いえ、そんなんじゃないですけど、景色が変わんないなぁって」
「機関不良で速力60%ダウンだそうだ。次の町で止まって修理するそうだよ?」
「けど治ってスピードあがっても、景色は変わらないじゃないですか。風が強くなるくらいですよ」
「それは、まぁそうだろうけど。……飽きてきたってトコかな? ご機嫌斜めの原因は」

 本当はファングの試験終了後にカーゴが回収に来る予定だったのだそうだ。但しセブンスオアシスが襲撃
されてしまった以上、そこにはもう居ることは出来なくなったので、大事なファングちゃん達は基地までお届け。
と言うことになったらしい。わたし専用になってしまったファング2のロック解除も基地でないと出来ないと言う
事情もある。位置も悪かった。ほぼ砂漠の端から端まで縦断した上で海まで渡らなければいけない。
そんな訳で砂漠のただ中を横断中の船の甲板。景色に飽きるのも当然と言えば当然だ。

 パイロットとしては、実機での練習もさせてもらっている。ファング自体、そもそもがMS隊の数の内に入って
居ない上、ジンやディン等とは操作系がかなり異なるらしい。つまり起動認証のことが無くとも他に誰も
動かせない。と言うことだ。なので何かあれば自分で逃げられる様にしておけ。と言う意味での実機練習である。
とはいえ以外と筋が良い。と師匠が言うのは別にお世辞ではない様でシルビオさんにも褒められた。
 考えてみれば師匠がわたしにお世辞なんか言う必要はないし、そう言うキャラクターでもない。
ニコニコしながら下手だねぇ、くらいのことは言いそうだ。まぁだからMSについては多分才能はあるのだろう。
自惚れるのは良くないだろうが、自信を持つのは良い事だ。
特にわたしの場合は、それを取ったらこの船にいる理由は無くなってしまうのだから。

「次の町まで持つのかな? エンジンの音がおかしい……。僕はブリッジにあがるよ?」
 わたしはもう少しココで、すねてます。と返事をするといくら進んでも変わらない砂の海を眺める。
196弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/06(金) 22:43:57 ID:???
第三話 砂漠の町にて(2/6)

「師匠、大丈夫だったんですか? 出てきちゃって」
 砂漠の町の入り口。クルマに並んで乗るわたしと師匠。運転するのはわたし。免許とか良いのかな……?
「飽きたのはキミだけじゃないと言うことさ。それに知らない町を散歩するのは、趣味でもあるしね」
 ブラウスにスカートのわたしの横、クソ暑いのにジャケットを羽織って相変わらず涼しい顔の師匠である。

 ザフトの勢力圏ではあるのだが、いろいろと後ろ暗いマーカス隊である。隊長は巨大な2隻の船を町の近所
には止め無いことにして本格的な修理を開始した。そして部隊内で一番暇なわたしには大量の買い物メモが
押しつけれられた。「配達してもらえばいいからな?」とは言われたものの町を買い占める気じゃなかろうか。
と言う程の量である。優に大きなトラック数台分はある。女の子がお買い物に行く量では絶対、ない。
ただ、ザフト勢力圏内ならば現金を持ち歩く必要がない。わたしにお鉢が回ってきたのはそう言うことだろう。
確かに何も出来ないのではあるが、だからといって何もしなくて良いと言われるのは、わたしだって困る。

「砂漠の町ならシーリング関連の部品は豊富なはずだけれど、後は値段だな」
 一方、助手席に座る師匠もメモの束を持ってきている。こっちは技術系の買い物が主であるらしいが、
砂漠の真ん中の町に軍用に使える電子部品など、求める方が間違っていると思う。
でも、当人もどうやらその部分はわかった上で助手席に乗った節がありありと伺えるんだけど。
 一応、それなりに仕事はありそうな師匠ではあるが、飽きた。もどうやら本当らしい。自分が手をかけてきた
ファング1は粉々になって、腕もなくしてしまえばMSにも乗れず、データチェックと全くのど素人のわたしの訓練
がメインの仕事。シルビオさんに聞いた話では、本来はかなり腕の立つパイロットなのだそうだ。
いくら赤い服がエリートだとは言え、イヤにならない方がどうかしている。とは確かに思う。


 師匠と別れた後、午前中で3件ほど『商談』をまとめた。多分この方面でのわたしの起用は大成功だ。
かなりの予算節約に成功している。砂漠の民は財布のひもが堅いのだ。砂漠の民歴は一年ちょっとだけど。
昼下がりのオープンカフェ。只でもらった日傘を脇に置いて、おまけですと言って渡されたサングラス越しに
これまた、よろしければ。と渡されたペンダントの値踏みをする。ふふん。カワイイと生きていくのには得だ♪

 少し苦いコーヒーをオトナぶって啜りながら町並みを見ていると、何か違和感を感じる。
なんだろう、このイヤな感じ。目が見るのを拒否してたんだな、と気付く。師匠が女の人と歩いていた。
大きなつばの帽子にサングラス。表情はまるで伺えないがカラダのラインは誰がどう見てもオトナ。
わたしは弟子だから師匠の私生活など関係ない! 一応タテマエでそう思ってみたが体は勝手に行動を
開始する。コインを数枚、テーブルに置くと荷物を纏め始める。

 雑貨屋さんからもらった帽子を被って立ち上がる。変装なんてレベルじゃないがきっと彼は気付くまい。
だが後をツケてどうするつもりなのだろう、わたしは。
すげーイヤな奴じゃないか? エディさんのコトが好きだというなら、尚のことイヤらしい奴じゃん……。
 どんなに思考がぐるぐる回ろうがそれでも足は、もう止まらなかった。

 大きなウインドー。飾ってあるのはウエディングドレス。尾行対象者の二人はその前で足を止めると
話し始める。元からの知り合いなのだろうか、ウエディングドレスを眺めて話をするなら、それはかなり高レベル
な知り合いだ。ポッと出の弟子なんぞがどうこう出来るものではない。と思いながら少し離れたバス停で日傘を
開く。次のバスまでは3時間。わたしの他にバスを待つ様な酔狂な客は居ない。わたしは、何がしたいんだろう。
この距離では話は聞こえないかと思ったが、何故か師匠の声だけはボソボソと聞こえてくる。
 開き直ったわたしは聞き耳を立てる。
197弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/06(金) 22:46:46 ID:???
第三話 砂漠の町にて(3/6)

「では、サトー隊長はもう行動を開始されたと……の数はどうなって……んはいまにゅ……。まだ原隊……。」
「………」
 師匠が何か紙の様なものを渡すのがガラスに映る。
「大丈夫、不足ぶ……れあもーたーは話が付いてます。あと5台前後ならそのルートの公社の……」
「………」
「もう僕には。ただ……りですから、それまでにはそらに……。いや、目を付けられては色々と……」
「………」
「……すせぶんには僕だって! まぁ、確かにこのざまでは迷惑を……にそらのぼひょ………。」
「………」
「……わかっているよ。それでは、また」


 ……う〜ん。色っぽい話には聞こえなかった。もっとも初めから聞いてた訳でもないし、師匠の声しか
聞き取れず、しかもその声も半分以上聞き取れなかったのだから、ホントのところは良く判らないのだけれど。
隊長とか言ってるとこを見ると相手もザフトの関係者? 言われてみればアンコールワットで働く女性達の
ように良い感じで筋肉が付いてみえた。でも筋肉女は師匠には似合わないなぁ。
一番、気に食わないのは最後の方。腕が一本ないくらいで師匠をソデにするとはバカも良いところだ、あの女。
彼は確かにニブチンだけれどそこまでひっくるめて色々いい男なんだ。わからないのはダメ女だ!
 ……ま、とにかく会話の流れとしてはフラれた様だし、ならば知らんぷりして顔を出しても良いだろう。
と思いながら日傘をたたむ。師匠はまだぼんやりと女の人が去った方向を見ながら立っている。

「こんなところで突っ立って、何をしてるんですか?」
「……? ミツキくん? キミか、わからなかったよ」
 帽子さえいらなかったかも知れないな、この人には……。帽子とサングラスを外す。
「日射病になっちゃいますよ?」
「悪いが、部品の調達に手間取ってね。合流の時間を一時間、延長してくれるかな……?」
「え? えぇ。構いませんけど?」
「済まないな」
 そう言うと、表情もなくすっと歩き始める師匠。
フラれたのが相当ショックだったんだな。そっとしておいてあげよう、うん。


 メモの買い物は全て済ませた。明日の朝にはトラックが徒党を組んでアンコールワットに攻め入るだろう。
予算が40%以上余ったが、だからといってスカートなんか買ったら隊長は怒るだろうか。
まぁ買ったところで、どうせ緑のスカート以外の服は当分着ることはないのだろうけれど。
メインストリートのワカモノ向けのお店のショーウインドー。その前でリュックをヨイショと背負いなおす。
リュックの中身はそれ自体も含めて全てもらい物。もらわなかったのはスカートくらい。
なので、スカートもらえればカンペキだったのになぁ。などとどうでも良いことを考えている。

「あと二時間もあるのか。ただは良いけど、荷物多すぎだよねー。やっぱり」
 大きなガラスに映る姿は田舎から買い出しに来た女の子。時間が余ったら師匠よろしく散歩でも。
と思ったのだが、荷物を肩に食い込ませて炎天下の町を歩くなど、なんの訓練だ。却下却下!
しかし、余った時間をどうしよう?

198弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/06(金) 22:49:12 ID:???
第三話 砂漠の町にて(4/6)

「あのう、もしかしてシライさん、かな?」
 驚く。砂漠では近所の町以外の交流などはないに等しい。比較的人の出入りの激しいセブンスオアシスでさえ
そうだった。それに不調だったとはいえ陸上戦艦でも此処まで3日かかったのだ。
砂漠の移動でレセップス級に勝つには飛ぶしかないし、飛行機なんてザフトのもの以外見たことがない。
つまり、わたしの名前を知っているのは今、この町では師匠ぐらいだ。おずおずと振り向く。
「………ユースケ!? なんでっ!! 無事だったんだっ!!」
「やっぱりそうだ! 良かったな、生きてたかっ! お互い様だぜ、俺もミツキは死んだと思ってたしな」
 あの日。MSが飛び回りわたしの夢の橋が落ちた日。その日まで隣に住んでいた同級生、ユースケ。
オーブで住む所を失った幼なじみ同士は、最果ての砂漠の町で再び出会った。
「えぐれた胸ですぐわかったよ。コーディネーターなのにな。あははは…」
 〜〜〜っ! いきなりご挨拶な話だ。口の悪いのはちっとも変わってない。どうして気にしてる事がピンポイント
でわかるんだ。そうでなくともここ暫く、ロリコンとか幼児体型とか言う単語に過剰反応気味なわたしではある。
「アンタも相変わらず背が伸びてないのね。コーディネートがそう言う設定なの?」
 お互いイタイ所を突かれて黙り込む。生きてることを確認するならば素直に喜び合えばいいものを。
二人でうつむいて黙り込む。わたし達は多分、バカだ……。 

「そうか、おじさんとおばさんが…」
 炎天下の路上で、お互いの身体的欠点をあげつらっていても仕方がない。お昼のカフェに戻ってきた。
「うん、だけど運命だと思ってさ。ところでユースケはあれからずっと一人で?」
「あぁ。けど拾ってくれる人が居たから、何とか生きて来れた」
 ジャンク屋の様な事をして暮らしている、だから仕事場は砂漠全体だ。と言った彼は、よく見れば黒く日焼け
した肌にあまり背は変わらないが筋肉質の体。わたしの知ってるユースケは、ひょろっとしたお坊っちゃん。

「いつかオーブに帰りてぇと思って貯金もしてるけどさ、いまや金の問題じゃなくなってるしなぁ」
 自治権が返還され、今はウズミ様の娘が代表首長のオーブ。国民の評判はともかく傀儡政権には違いない。
そして現体制は、心ならずとも国を出たコーディネーター達からの評判はあまりよろしくない。
『表面上コーディネーター蔑視政策をしていないだけだ。カガリ様一人では抑え切れまい』
とはお父さんも言っていた。確かに帰れるものなら帰りたい。好んで国を捨てた訳ではないのだから。
「オーブに帰る、か。……そうだね。そう言う考え方もアリだよね」

「そういや、おまえこんなところに何しに来たんだ?」
「職場ごと移動してきたんだ。今、あそこで住み込みのアルバイトしてるんだよ?」
 かなり遠くにあるはずだがレセップス級の巨大な艦体は十分ここからでも見える。
「……っ! アンコールワット! おまえ、ザフトの船に!? じゃあ、おまえが住んでた町ってのは……」
「虹の都ぉ、セブンスオアシス〜っ。ってどうしたの、いきなり?」
 真面目な顔になって椅子から腰を浮かせるとこちらを見つめる。
「悪い事は言わない、怪我なんかする前にあの船からは下りろ!」
「ちょっと、何をいきなり……」
「黙って聞け! 幼なじみのよしみだ。住むトコと仕事は探してやる。あのMSがある限り、あの船は的に
なるんだよ! いいな? 明日夕方までには船を降りてあのホテルに行け、金はあさって俺が払ってやる。」
 椅子を鳴らして立ち上がるとホテルを指さす。
「あさって、今ぐらいの時間に此処で合おう。じゃあな」
険しい表情のまま、人混みに紛れて消えていく彼。いったい……。
199弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/06(金) 22:51:53 ID:???
第三話 砂漠の町にて(5/6)

「襲撃は明日の夜、か。赤き風の旅団、構成員は彼の様なワカモノが多いのかな。わかり易いのは結構だが」
 自分だってワカモノの範疇に入る師匠が、いつの間にか後ろに立って年配者の様な台詞を喋っている。
「し、師匠。でもあいつは……。」
「気持ちはわかるが、僕らがこの町に立ち寄ったのは偶々だ。この距離からメジャーでない艦名を言い当てた。
それにもう一つ。僕等以外でアンコールワットとセブンスの町がイコールで繋がる様な思考回路の持ち主。
それはどんな人物だと思う?」
 言われて気が付いた。確かにわたしは意識的にその想像は避けていた様だ。だけど。
「『あのMS』がファングを指すなら、さっきの会話もスッキリすると思わないか? 逃げてしまえばいいのだ
けれど、あと3日は動けないだろう。奪取が目的ならば艦内にも入り込まれるか…。となれば……」
「じゃぁファングがあると船が……」
「逆だ。むしろファングで打って出る。二度とつきまとう気なんか起こさない様にしてやろう。最新鋭のガンダム
が2機と優秀な乗り手。傭兵なんかに遅れはとらないさ」
「え? 師匠も出るんです、か?」
「モチロンだ。ファング3は定員2名、キミのノートにも書いてある。ガンナーだったら片腕でも仕事は出来る。
僕の赤服が伊達ではないのを見せてあげよう。それと当然、ファング2はキミに任せるぞ? ミツキくん!」

「師匠ぉ、ホントに来るんでしょうか?」
 四足獣モードでうずくまった灰色のファング3が写るモニターには23:24の文字が重なる。
『赤き風の本体は来ないんじゃないかな? 色々気付く事が出来ないでは傭兵団など運営できないからね。
ただ、金に目がくらんだ連中は来るだろうな。そうなれば来るのはMSとは限らない話になるが』
 アンコールワットから少し離れた砂漠のただ中。コックピットハッチをぽっかり開放してわたしのファング2は
ただ突っ立っている。撒き餌だ。と不吉な事を言う師匠の提案でこんな事になっている。不安な事この上ない。
 不安要素はもう一つ。今回は他の武器の使用は禁じる。モード変更もダメだ。と言う師匠のお言葉によって
サーベル以外の武器は取り上げられてしまった。練習でも射撃の成績だけはギリだけどAが付いたのに。
 とは言え、隊長の話を信じれば既にセンサーの類はカンペキに設置し終わり、何もないように見える砂漠には
手持ちのバクゥとガズウート全機が文字通り伏せている。甲板の上にも見えないがジン・オーカーが銃を構え、
ディン全機も発信態勢で待機。更にニンゲンが直接乗り込んで来た時用に、ライフルを構えた人達が砂に潜っている。
ならず者を排除する。と言う名目で町の協力は取り付けた上でのこの陣容だ。
『そんなに緊張しないでも良いよ。VPS装甲の有効性はキミはよく知ってるだろう? それに機体の奪取が目的
ならば、向こうもキズモノにはしたく無かろうからひどい目にはあわんさ。奪取されなければな』
 さすがは師匠。恐ろしい事をさらっと仰る。確かに奪取されてしまえば中身のパイロットなんか要らない。
盗賊団に拉致された【美少女パイロット】の運命など、想像もしたくない。

『全隊に通達、センサーに感有り。熱紋からジンの初期型が2機。その他車両が5台。ファング2まで5分』
 やがて投光器が光を放ち賊を捕らえると、ファング3は灰色から本来のマルーンとサンドイエローになって
立ち上がり、名前の由来になった牙を頭の下に生やす。既にバクゥは賊をぐるりと取り囲んだ。
『自分の指示が有るまでMSには手出し無用で願います』
 間違いない、楽しんでる! ヒトデナシ!! 大体が赤き風が来ない時点で騙された気がしないでもない。
要するにチョロい敵が来る事をわかった上で実戦での演習をやらせたかっただけなんじゃ……。
さぁ、行こうか、ミツキくん! ヒトデナシの人の言葉に反応したかの様にディスプレイには文字がめまぐるしく流れる。
〔PilotCheck.... "MITSUKI-S" -ok "V.P.S.System" -ok. ZGMF-X88SP-T2/ Gaia-pt "Fang02" .....Status.F ready〕
「ぐ…戦闘ステイタスレディ、確認。……ミツキ・シライ、ファングツゥっ!いっ、行っきまぁああす!」
 30分の後、シールドに数カ所の傷を付けたファング2は他の援護は受けずにジン2機の制圧に成功した。
その後、まさか戦闘報告書までわたしが書かされるとは、その時点では思っていなかった……。
200弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/06(金) 22:55:02 ID:???
第三話 砂漠の町にて(6/6)

「あ、おはようございます」
 食堂。師匠がつやのいい顔で入ってくる。報告書はついさっきまでかかった。
睡眠不足はお肌の大敵だというのに。
「結果的に非道い目に遭ってしまったな?」
「え? シールド以外にもどっか壊しましたか? わたし」
「結局、一睡も出来なかっただろう?」
 非道い目に遭わせた張本人がいけしゃあしゃあと良くもまぁ。
「食事をすましたら午前中は寝てると良いよ。ただ午後からはちょっとつき合って欲しいんだが」

「う、赤服……。どういう事だ、ミツキ!」
 おとといのカフェの前。赤い制服の師匠とブラウスにスカートのわたしがユースケと対峙している。
「逃げたり、不審な行動をすると即座に撃つ。そうは見えんだろうがここは囲ませてもらった。まぁ座りたまえ。
コーヒーぐらいおごろう」
 もちろんココには二人で来たのだが、師匠が言うとホントに狙撃班がこちらに狙いを付けているかの様に
思えた。何も喋るな。僕の方は見ないで良いし、言う事に相づちも打つな。彼に合う少し前、師匠はそう言った。
テーブルの向こう、完全に混乱した風情のユースケの顔が見える。
「赤き風の構成員だな? 自分たちはセブンスにいた部隊の人間だ。とんだ恥をかかせてもらった」
 わたしをちらっと見たあとうつむいてコーヒーをかき混ぜる彼。
「喋りたくない、か? 直接関係ない赤き風の為に、昨日彼女は非道い目に遭ってしまったぞ?」
「……っ! そいつに何をした!」
 ……師匠は嘘はついてない。確かに赤き風の為に非道い目には遭った。徹夜で報告書を書いただけだが。
「そいつは関係ねぇだろうが! だいたいセブンスにしたってMSを見つけねぇテメェらが悪いんじゃねぇか!」
「大声は出さずとも聞こえるよ。やはりそうか。ならばキミのボスに伝えてくれ。今後我々の前に姿を現すならば、
ザフト地上軍全勢力を持ってアジトごと潰す。夕べの様に他の連中に情報を流す様な汚いマネも同様だ」
 うつむいた彼は何事か考えると顔を上げて、既に場所の見当もついてるんだ。と言う師匠を睨む。
「頭(かしら)に伝える変わりにそいつは解放しろ。そもそも関係ないじゃないか」
「いいだろう。キミには関係のない所で、時期を見て解放する。それまでの彼女の身柄は自分が保証しよう」
「信用できるんだろうな!?」
 伊達に赤い服は着ていない、任せてもらおう。師匠がそう言うと彼は静かに立ち上がり、背中を向ける。

「まってユースケ! 一つだけ教えて!」
 驚いた表情の師匠。ユースケは立ち止まる。
「あんた、セブンスの時あそこにいたのっ!?」
「信じてくれ、俺は行かなかったし、やめてくれって頼んだ。おまえんちがあるなんて事、知らなかったんだ!」
 彼は背中越しにそれだけ言うと、表情は見せずに走って人混みに紛れた。

「彼らにつきまとわれる事はなくなるだろうが、友人を一人無くしてしまったな。悪い事をした」
 そう言うと師匠は、あとは黙って左手でコーヒーカップを持ち上げるとコーヒーに口を付ける。
確かに結果はそうだろうがユースケと殺し合う事はだけは避けられた。生きてる事が大事なんだ。生きてさえ
いればまたあえるかもしない。それこそ『命あっての物種』だ。コーヒーはすっかり冷めてしまっていた。

次回予告 第四話 ミツキ、転職する
補給物資とともに赤い服のエリートパイロットが新型MSザクと共に降りてきた。
えっと、そうすると師匠。わたしはもうパイロット、しなくて良いんですか? 
201弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/06(金) 22:56:59 ID:???
今回分以上です、ではまた。

>>153-154
少年漫画のお約束ですか……。意識してなかったですけど、言われてみればそうかも。
むしろ意識してみると面白かったりしますかねぇ。意識的にやるのは自分の筆力ではむつかしそうですが。
202新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/08(日) 16:45:24 ID:???
 深い闇。何の光も姿を見せない闇。孤独の闇。恐怖の闇。                              w
 その闇の中に、私、いや、私の心はあった。
 何時からだろうか。私の心がこうして外界の光を遠ざけるようになったのは。分からない。分かりたくもない。
 ふと、目が醒めた。いや、誰かに起こされたのだ。
 間を空けず、何かが忍び足で走りぬける音。銃声が響き渡る。
 とりあえず平然と服を着替えだす。私は、恐れてはいけない。恐れてはいけないんだ。凄く怖かったけれど、それはおくびにも出さない。
 誰かが悲鳴を漏らしながら死んだ。銃声が近くで響き渡った。冷や汗が頬を伝うのを感じながら、辺りに目をやる。
 死んでいた。何故か私の間近で、バルトフェルドさんが、その右腕を、その首を地面に転がしながら、死んでいた。
 マリューさんが何かを睨むような目つきのまま、壁に背を預けて、死んでいた。
 子供たちが、まだ生きる私を羨ましそうな目で見詰めながら、死んでいた。
 戦闘服を着込んだ男たちが、下卑た視線で、私を見詰めながら、銃口を額に突きつけていた。

 銃声。男達が倒れていた。怖い。私を射殺さんばかりの目つきで、口惜しそうに死んでいた。
 キラが微笑を浮かべながら、立っていた。私は初めて心に光を入れることを許した。自然と顔が綻ぶ。このままキラと何処かに行きたかった。
 キラが近付く。鈍い音を立てて、何かが私の体を突き破って貫通した。キラの涼しげな声が聞こえる。
「ラクス。君といると、僕も危ないんだ。だからさ……」
 もう喋ることすらできない。何故だろう。死んだはずのバルトフェルドさんやマリューさんや子供たちの声やキラの声が重なって聞こえる。
『死んでよ』

 目が醒めた。何の変哲も無い、私の体。ここはエターナルの、私の部屋。
 また悪夢だ。ありもしない声が、姿が私の目と耳に焼きつく。
 体中から吹き出る冷や汗をハンカチで拭きつつ、恐怖を強靭な精神で押し隠した。
 さあ、行こう。
203新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/08(日) 16:46:24 ID:???
せめて、夢の中だけは
第七話「アストレイ」

「御機嫌よう、バルトフェルドさん」
「おはよう、我らが麗しき歌姫どの」
 いつもどおりの光景だ。彼は生きているし、私も生きている。キラやマリューさんも地上で頑張っている。
 だと言うのに、この恐怖は拭いきれない。
 耳を澄ませば、亡者の嘆きが聴こえて来る。

 始まりは二年前の、何時もの様に歌を歌っていたときだった。
 不意に、誰かの泣くような叫び声が聞こえて、不意に、誰かの怨めしそうな叫び声が響いたのだ。振り向いても誰もいない。何をしていても途絶えない声。
 一時は街中で泣き叫んだときもあった。怖かった。
「助けろ」「助けて」「なんで俺が」「その命が欲しい」「もう嫌だ」「死にたくない」
 だから、ラクスは、己の、まだ幼い、憐れで力の無い少女としての心を、必要ない心を強靭な精神で押し隠した。それから数週間して、傷だらけのキラを保護した。
 キラのまっすぐな瞳を見て、新たな剣を授けた。理由は解らなかった。
 それから、戦争を終わらせる為に、戦った。いや、違う。もっと我侭な目的の為に。
 私を蝕む亡者の叫びを終わらせる為に。勝手な理由だと、思う。皆私が本気で戦争を終わらせる為に頑張っているんだと思っている。

 本当のことを言えばどんな顔をするだろう。怒るだろうか。
 嫌だ。怖い。怖いの。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い――
 だから、私は隠す。壊さないまでも、隠す。

 そんな恐怖を、いつもの様に強靭な精神で押し隠していると、不意に声がかかった。
「ラクス、君も飲むかい?」
 目をやればバルトフェルドがストローの付いたカップを手に持ってにやりと微笑んでいた。
 この男には勝てない。ラクスは無理やり笑顔を取り繕って、応えた。

「はい、お願いしますわ」
「はいきた! いやぁねぇ、今日のは良い出来なんだよ。ダコスタ君も珍しく頷いていてね、なぁ? ダコスタ君」
「ダコスタさんは貴方が調査に行かせましたでしょう?」
 ダコスタの代わりに若い女性オペレーターが答える。ラクスよりも若い。
「あいやそうだったかぁ〜、残念だよ。ところで君も飲んでみるかい? いやね、実はこれ、初歩的な物でね……知りたいかい?」
 バルトフェルドがコーヒーをラクスに手渡しながら、嬉しそうに言う。
 そして、オペレーターが言葉を発するよりも速く、バルトフェルドが続けた。自慢したくてたまらないようだ。
「マンデリンってのは、どんな奴にも好かれるいい豆なんだよ。それとモカマタリってのは非常によく組み合わさってね……」
「基本的な奴だから、僕はもっと冒険したかったんだが、いやあ、初心に帰るとはまさにこのことだねぇ……」
「いい味なんだよなぁこれが」
「そうですね。どうでもいい話でした。私はココア派なので遠慮しておきます」
「やれやれ、これだからお子様は……あー、嘘ですすいません」
204新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/08(日) 16:47:07 ID:???
 このような大変滑稽で和やかな日常を見ていると、ラクスも幾許か『声』から開放される。
 生命力を感じさせる。という表現がよいのだろうか。ラクスは考えながら、ストローを口に咥え、一口。
 バルトフェルドにしては珍しい、苦味の薄い、だが芯がしっかりしているコーヒーだ。
 この香りも味わいたくなるが、ここは宇宙空間。そんなことはできない。
「シンプルっていいよねぇ……いやまぁ、それに固執しなくてもいいとは思うがねぇ」
「ようするに、多種多様が一番ってコトですね」
「君、いいこと言うねぇ! と、そうだ、ラクス、少し話があるんだ。ちょっと来てもらえないかい?」
 突然話を振られて、ラクスは戸惑いがちに応えた。
「え? あ、ああ、はい。いいですわ」
 ラクスは直感した。この男が、何かを企んでいることを。

 エターナルのブリッジから離れた、レクリエーションルームにラクスとバルトフェルドは居た。
 今は朝、大抵が食堂にいってたりするので人は居ない。
「ふぅ……それで、お話とはなんですの?」
「ああ……長い話、でもないがね。今のラクスの偽者、あれをどう思う?」
 妙な質問だ。どう、とは、雰囲気についてか? それともあの行動の真意についてか?
 ラクスが困惑した表情を浮かべていると、
「雰囲気だよ。僕は陽気って言葉が思い浮かんだ。それゆえ利用されやすい……」
「……確かに、明るい、太陽のようなお方ですわね」
 バルトフェルドが指を突き立て、目の前で振って見せる。慣れた仕草だし、様になっていた。
「なら今の君は、そうだな……清楚だ。美しい。だがそれゆえに近寄りがたい雰囲気を持つ存在。そんなところかね?」
「……なにが?」
 言葉の真意が分からず、困惑するラクス。はっきり言って回りくどい。
「昔の、エターナルに所属する前の君はどうだったかね? 清楚で、美しいというよりは可愛くて、純粋で、誰でも近づけるような雰囲気を持っていた」
 何かが音を立てて崩れ去る。この男、歴戦の強者足るこの男には、何もかもが、気づかれていた。
 この男は何というだろう? なんと私を責めるだろう?
 ラクスが表情を固まらせたままで居ると、やはりバルトフェルドから声がかかった。
「今の君は、レジスタンスが恐怖を無理やり怒りで押さえ込んでいるのと同じ状態だな。何らかの恐怖を強靭な精神で押し隠している。以前の職業柄、恐れる奴を見るのには馴れちまってね」
「んー、そうだな。君には、頼れる仲間がいるだろう? 僕やラミアス艦長、さっきの彼女やカガリにキラもいる。そういった一部の仲間には、完璧である必要なんざぁこれっぽっちもないと思うがね」

 言われて、幼い頃父によく言われていた言葉を思い出した。
『いいか、もしお前がいぢめられるようなことがあったら、すぐにパパに言いなさい。趣味の格闘技で蹴散らしてやるから、心配するな!』
 さすがに蹴散らされてもたまらないし、いぢめられるようなことは無かったが、この父の言葉と、バルトフェルドの言葉は何処か似ている。
 怖いことがあったら皆に言え、と。隠さずに言え、と。
 言える訳が無い。私は今、この艦を支えているのだから。怖いなどと、言える筈もない。
「まぁ、何事も戦わなきゃいかんからな。皆に言うのがいやなら、先ず戦う。戦うと逃げるじゃぁ、ずいぶん違うからな」
 逃げてなどいない。声が出そうになった。
「怖いものがあるなら、とことん戦え。相手が嫌味なやつなら、お前の蹴りを食らわせてやれ。相手が悪夢なら、それがどうしたと胸を張れ。相手が軍隊なら、どうすりゃいいんだろうねぇ?」
「胸を……張る?」
「ああ、そうさ。どうせはぐれ者の僕らだ。いまさらどんなことが起きようが、胸を張ってればいい。どんな悪夢だろうと、相手が臆さないと判った瞬間、悪夢ってのは消えちまうもんだ」
 罵声を浴びせられることを覚悟していたラクスにとって、バルトフェルドの言葉は意外だったし、ありがたくもあった。相手がなんだろうと、胸を張れ。
 そう思っただけで、悪夢が消えるような、亡者の嘆きが和らぐような気がした。
「まぁ、ラクスには胸を張るほどないけど、痛っ!?」
205新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/08(日) 16:48:18 ID:???
「なんとおっしゃいましたの? ちょっと、聞き取りずらくて」
 腹部にやばい感じの痛み。
 目の前を見れば、ラクスが、ラクスの父親、シーゲルクラインが趣味で学ばせていたと噂される武道の形をとっていた。
「冗談だ、ラミアス艦長のようなあれもいいが別にラク、ぐはっ!」
 なんて素早い回し蹴りだ! 右大腿がいい感じに痛みを訴えていた。
「冗談ですすいませんごめんなさいぃっ!」
 ラクスの目がぎょろりと俺を睨む。夢に出てきそうで怖かった。アイシャとも会えそうな気がしてきた。
 と、何を思ったか、ラクスが方向転換。そのまま歩き出してしまう。
「つつ……どこに行くんだ?」
「少し星を見に。来ないでくださいね」
 完璧な拒絶だ。触れれば俺の体は廃塵に帰すだろう。戦略的撤退、急げ!
 俺は何も言わずに急いでブリッジに逃げ込んだ。

 もう五分間そうしていた。目に映る広大な闇。生き物は呼吸することさえ出来ないまま死んでいく、恐ろしき闇。
 どれだけ長い時間闇を眺めていても、あの亡者の声は聞こえなかった。
 以前は、暗いところに居ただけで聞こえてきたはずの声が。
「強くなった、ということでしょうかね……」
 たまには、この強靭な精神で心を押し隠すのをやめて、普通にしてみようか、とラクスは思った。
 そして、ラクスが目を瞑り、再び開いて、正真正銘のラクスに戻る。
「あらあら……綺麗ですわねぇ」

 広大な闇以外の物が、目に入った。星だ。あの中には人工的に作られた星も含まれるのだろうか。分からない。そんなことはどうでもいいくらいに、綺麗だったから。
「世界はこんなにも美しいというのに……私、損でしたわね」
 ガクッとうなだれる。同時に、
『ぐうぅ〜』
 腹の音が響いた。顔を赤らめる暇もないぐらい速く、声が降り注ぐ。
「ラクスも人間なんだねぇ」
「セクハラです」
 バルトフェルドと先ほどのオペレーターがいた。微秒に笑っている。
 頬がかっと赤くなるのを感じながら、何かを言う前に話しかけられた。
「ラクス様、一緒に食堂行かれません? 私お腹空いちゃって」
 断る理由はなかった。ラクスは微笑を浮かべ――
「その、ラクス様って、どうにかなりませんの?」
「え? じゃあ、お嬢、ラクス嬢、閣下、大佐殿」
「いや、普通にラクス、でお願いしますわ。私大佐じゃありませんし、潜水艦の艦長でもありませんし」
「分かりました。ラクスさん、でいいですよね? 私のことは気軽にアビーって呼んでください」
「分かりました、アビーさん」

 何故か気分がよかった。久々に自分と年齢の近い女の子と話したからだろうか? 分からない。
 ラクスは、自分でも気付いていないが、ゆっくりと雰囲気を変えつつあった。近寄りがたい雰囲気から誰でも仲良くなれそうな、そういうものへと。
(ラクスさん、何だか変わったな。昔みたいに)
 そんなアビーの思いにも、ラクスは気付かない。
206新人 ◆ysCBLmhzdM :2007/07/08(日) 16:49:01 ID:???
「おいおい、僕を除け者にしないでおくれよ。はぐれ者の集う艦の中でもはぐれ者なんて、洒落になってないからな」
 そういって、はっはっはと笑うバルトフェルド。失礼だが、ラクスは一瞬本気で忘れていた。
 と、そこで、はぐれ者、について疑問が沸く。
「はぐれ者、ですか?」
 またバルトフェルドが指を突き出して、横に振った。ふふん、と笑ってから、
「そう、はぐれ者さ。この艦と大天使の連中は、連合やザフト、ジャンク屋連合にも属さない、はぐれ者さ。格好良く言うなら、アストレイだねぇ」
「はぐれ、者……」

 はぐれ者。アストレイ。王道ではない。そう、私達は王道ではない。はぐれ者の集団。
「何だかいい言葉ですわね」
 ……一瞬空気が止まって、二人がぷっと吹き出した。訳が分からず混乱するラクス。
「そうだな、いい響きだ、ふっ、ふっ、ふ」
「くす……そうですね」
 何だか居心地が悪くなって、とっとと食堂へ行くことにした。
 アビーは控えめな笑みをいつまでも浮かべていたし、バルトフェルドは煩い笑い声を何時までも続けていた。
 流石に食堂に行っても騒がしかったので鳩尾に拳を叩き込んだのは……内緒である。



 この十分後、彼女らにとっては最悪のニュースが、二つ同時に届くこととなるのは、彼女らには知る由もなかった。



 その数時間前、地球でアークエンジェルが猛攻に遭っていた事など。
 その数時間前、各地でザフトのMSによる無差別破壊活動と、ザフトの兵士による拉致事件が起こっていたことなど。
 彼女らには、知る由もなかった。

 世界は、ゆっくりと、確実に、更なる混迷の一途を辿り、破滅の扉を明けようとしていたことも、彼女らには知る由もなかった。

第八話 交差する想い に続く
207通常の名無しさんの3倍:2007/07/09(月) 21:30:59 ID:???
乙です


皆、帰ってきたよ!僕らの待ち望んだラクス・クラインだ!!
208通常の名無しさんの3倍:2007/07/09(月) 23:07:46 ID:???
>>新人
なかなか良い感じでよませてもらった。
シンの一人称とラクスのセリフ回しがたまにふらつくので注意。

ま、ラクスについてはもともと微妙に文法が間違ってるのでかえって難しいんだけどw

>>弐国
いつもの事だが一話の中でキッチリ起承転結の流れを創るのはおみごと。
次回予告も含めて作風がハッキリしてるのも好感。

見てくれの説明が殆ど無いのにミツキに萌えそうだww
209週刊新人スレ:2007/07/10(火) 20:45:29 ID:???
目次

 ミネルバが受領した新たな任務、それはアークエンジェルを落とす事。シンの、キラの内なる『正義』は・・・。
せめて、夢の中だけは
>>186-189,202-206

 エリート代表イザークの語るアカデミーの本当の姿とは・・・! 大人気実録シリーズ最新作!!
実録!アカデミーの仕組み
>>191

 砂漠の町で偶然幼なじみと出会ったミツキ。それを発端にミツキは実戦へと狩り出されて・・・。
少女は砂漠を走る!
>>195-200


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お知らせ
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。

編集後記:
来週は通常通りの月曜日発刊予定ですので、週末にかけてたくさん投下していただけます様に。
かしこ
210機動戦史ガンダムSEED 28話 1/9:2007/07/10(火) 23:52:35 ID:???

 ――プラント・ラクス本軍大本営・機動要塞エターナル―― 

 ラクス付きの首席秘書官を務めるメイリン・ホークは、報告書を携えてラクス・クラインが
滞在する要塞内の居室へと向っていた。広大な要塞内部は全自動で動く道は設置されておらず、
全て歩行による無意味な移動が原則である。

 これは要するにラクス・クラインの意向でもあった。歩く事は人にとって意義があるというのだ。
確かに長期間の航海する航宙艦には、運動は不可欠だが、これは余りに無意味であろう。
 しかもこの機動要塞であるエターナル内部では、1Gの重力が常に安定しており、
下手なコロニーよりも充実した設備と機能が備わっているのだ。

 更に、通路用廊下のその光景は要塞内部とはとても思えない程で、無駄に高価な大理石に
模した特殊金属を利用した廊下と、古今の名画を模した絵や、高名なデザイナーが精魂を
込めて作り上げた芸術品等、アート関係類が鎮座していた。
 
 廊下の要所、要所にはラクスがデザインし、特別あつらえた軍服に中世の騎士のように
マントを纏った屈強の衛兵達が直立した姿勢で立っていて、彼らは、メイリンが通り過ぎる度に
恭しく礼を施してゆく。
 
 今のプラントではラクスに近しい者ほど地位が高く、尊敬される慣習となっている。
 
 その最上位はやはり、ラクスの愛人であるキラ・ヤマトが筆頭であり、元三隻同盟の
古くからのラクスの同志ほど、プラントでの地位は高く、優遇されているのだ。
 
 メイリン自身は、運良くアスランがデュランダル前議長を裏切り、ザフトを脱走する際に同行し、
いち早くラクス達の懐に入る事に成功した。確かに途上に命の危機のも多少あったが、
予め、旧オーブやクライン派の手引きで素早く回収された為に何とかなったのだ。

 今では見事にラクスの側近の一人となって、恋人であるアスラン共々に出世しているのだから。

 
211機動戦史ガンダムSEED 28話 2/9:2007/07/10(火) 23:57:00 ID:???

 ちなみにその時、彼女達を救出したのがキサカだというのは、歴史的に見ても皮肉としか
言いようがないであろう。キサカ自身は、現在ラクス・クラインと完全に決別したカガリ・ユラ・アスハの
側近であり、対ラクス軍の急先鋒の一人である総合作戦部参謀本部長として、ラクス達と敵対しているのだ。

 キサカ自身はあの時はアスランとメイリンを救出した事は、カガリとオーブの為になる事だと
思い、彼らを回収したに過ぎないのだ。もしも、この時に将来になって彼らがオーブとカガリとを
敵にすると分かっていたのならば、躊躇なく見捨てていたはずである。

 無論彼は、今現在は、アスランもメイリンともども敵対勢力の一人としか見ていない。
今となってはラクシズと決別したことは、オーブにとって幸いであったと公言してやまないのだ。

 メイリンは極彩色のピンクで染められた廊下を進みながら、一際大きな扉の前で立ち止まった。

 無意味で豪奢な装飾で飾られたそのラクスの居室の扉には、特に選ばれたFAITH(フェイス)の
徽章を衿に付けた赤服の金髪と銀髪の美少年達が二人、扉の両側に立っていた。

 メイリンがその扉に前に立つと、彼ら二人はメイリンに向って敬礼を施す、そして更に
恭しく頭を下げるのだった。

 「――メイリン・ホークです。ラクス様にお取次ぎを」

 メイリンは彼らのその態度に鷹揚に頷く。言葉の内容は丁寧だが昂然とした態度で、
まるで使用人に命じるように、彼らへと向って二人に言い放っていた。

 普段は、護衛であるFAITH(フェイス)のその二人も、メイリンのその態度は当然である、
というように、受け入れて丁寧な口調と物腰で応対している。

 だがこの時は金髪の少年の方が一瞬、口篭もって彼女のその要請とも、命令とも
取られる態度に対して、応じかねない姿勢を取ろうとしていた。

212機動戦史ガンダムSEED 28話 3/9:2007/07/11(水) 00:01:54 ID:???

 「――メイリン様。只今、ラクス様はキラ様と大切なお話し合いをなされておられます……。
ご面会は……その、後ほどになされた方がよろしいかと……」

 その彼の態度に、メイリンは、カッとなった。公の報告を携えてきたこともあるが、
彼のその態度が、自分に対してのラクスの拒絶と受け取ってしまい、彼に対して
感情的に気に障ってしまったのだ。

 自分はラクスの側近でありプラント統治機関『歌姫の騎士団』の重鎮の一人である。
事前に何の約束も無くラクスと自由にお目通りができる立場。
 そう、言わば、数少ない”ラクスの一族”の一人ともいうべき存在であるのだ。

 それを、たかが護衛の召使風情が口答えするとは……。メイリンは、キッと強い視線で見下すと、

 「構いません。緊急の要件があるとラクス様にお伝えなさい。キラ様にも聞いて頂きたいことなのです。
――言っておきますが、これは作戦参謀部からの連絡でもあり、これは公務でもあるのです――。
軍人である貴方がたは、そんな簡単な事も理解できないのですか?」 

 と昂然と命じる。そして、心の中で兵士ごときが自分に対して僭越だと思っていた。

 「ですが……」
 
 「おい……」

 まだ躊躇する同僚に対して、銀髪の少年が肘でわき腹を突付いていた。たしかに自分達は、
誇りある『天の女神』であるラクス・クラインの護衛ではあるが、所詮は衛兵に過ぎないのだ。

 終生執政官である『天の女神』ラクス・クラインの側近中の側近の一人でもあるメイリン・ホークに
対して口答えするなど、間接的にラクス様に逆らっていることになる。
 自分たちはラクスに意見や反論を言うような恐れ多い事はできないのだ。

 「……失礼致しました。只今、ラクス様にお取次ぎ致します。暫しお待ちを、メイリン様」
213機動戦史ガンダムSEED 28話 4/9:2007/07/11(水) 00:05:32 ID:???

 そう素早く目配せで金髪の同僚を窘めると、銀髪の少年は大急ぎでラクスに取次ぎ、
上奏する旨をメイリンに伝え、慌てて、薄く大きな扉を開き、隙間の奥へと消えていった。

 どちらしても、側近であるメイリンの取次ぎならば、その内容は自分達には直接関係が無いことなのだから。

 暫くして銀髪の少年が再び扉の外に出てくると、メイリンに一礼する。そして金髪の同僚と共に恭しく、
そのピンクの豪奢な扉を開いた。無論この扉には自動ドアではなく、ちゃんと手で開閉する高価な
バロック調ぽい、アンティークな扉である。
 勿論、要塞内にそのような無意味な手動で開く、豪華な装飾の扉は、必要ないはずであるのだが。

 「ラクス様がお会いになるそうです。メイリン様どうぞ中へ――」

 メイリンがラクスの居室へと足を踏み入れると、相変わらず、”ハロ”と呼ばれる色とりどりの
円形状の物体が飛び跳ねていた。
 このハロは、形態はソフトボールの球よりやや大きいサイズであり、彼女の恋人であるアスラン・ザラが製作している。
アスランが、以前からラクス・クラインへと幾度かプレゼントしていたのだ。

 見ての通り、複数のカラーバリエーションがあり、ラクスには特にピンク色の物を携帯しているのだ。
他にもグリーンやイエロー、ネイビー、オレンジなどのハロがいた。ラクスによって、それぞれのハロは
そのボディーカラーで「ピンクちゃん」「ネイビーちゃん」などと呼び分けられているのだ。
ちなみにメイリンのはツインテールに赤紫の”ハロ”である。

 メイリンは、「なんでやねん」「まいど」「おおきに」「オマエモナ」「ミトメタクナーイ」と飛び跳ね、
喚きまくるハロを乱暴に掻き分けながら、ラクスの元へと向っていった。

 丁度その頃、ラクスはキラと午後のお茶の時間を楽しんでいる最中だった。プライベートと言っても
特に重要な話もなく、のんびりとした午後のひと時を過ごしているだけである。
 
 バロック調の貴族形式の館を最新の技術で再現した部屋の中央には、白い小さな円卓状のテーブルが設置され、
その上には、洗練された香気を放つ紅茶が華奢な陶器のカップに注がれていた。
 
 同時にケーキも並べられていた。以前メイリンが相伴した時に口にした事があるラクス自らの手作りである。
214機動戦史ガンダムSEED 28話 5/9:2007/07/11(水) 00:10:09 ID:???
 
 この光景を見たら、とても最前線の総司令部の風景とは思えないであろう。

 「――ラクス様。……キラ様……いえ、総司令官閣下」

 メイリンは、ある意味その異様な光景に一瞬、立ち尽くしたが改めて丁重に部屋の主へ挨拶をした。

 そして、やはりそこにはラクスと共に今回の遠征軍の総司令官であるキラ・ヤマトも同席していた。

 彼は、相変わらずラクス・クラインの愛人としての権利を主張するかのように尊大な態度で、
入室してきたメイリンを一瞥すると、彼女の無礼な態度を咎めるかのような視線を向けていた。
 
 メイリンは主であるラクスの名前を口にし、続けてキラの名前を口にするが、ゆっくりと言い直していた。
自分が携えてきたこれは、戦況報告なのである。しかも不名誉な敗戦報告の内容であるのだ。
 本来、この敗戦の責任の所在は、総司令官であるキラになるはずなのだが、
恐らくは、ディアッカへと無理に押し付けられる事であろう。

 メイリン自身は、キラを余り好きではない。

 一つは、自分の恋人であるアスランとも関係があるという噂が絶えないのだ。

 そのように自分の恋人がキラに唯々諾々と従ってる様は余り嬉しいことではない。
それともう一つ、気に入らない事は、この男は、公の場でもラクスと抱き合うような真似をする。

 それは、神聖不可侵であるラクスを汚しているような、嫌な気持ちにさせられるのだ。
もはや、暗黙の了解とはいえラクス愛人という地位を嵩に切る態度……。
周囲はラクス様がお認めになっているのだからと、既に公認済みなのだが。

 その他諸々の理由があるが、メイリンはキラを好きではない。その事をキラは
敏感に感じ取っているらしく、メイリンに対して彼は結構冷淡なのである。

 キラにとって彼女が世間認識で、アスランの恋人という立場なのが気に入らない要因の
一つかもしれない。その様子にメイリンは戸惑ったが、思い切ってキラについては、
ラクスの付録のような態度で望む事を決め、自分の本来の主人へと報告をする事にした。
 
 
215機動戦史ガンダムSEED 28話 6/9:2007/07/11(水) 00:15:25 ID:???
 
 「あら、メイリンさん。どういたしました?」

 「……ラクス様。総司令官閣下、御報告があります」
 
 「――なにか?」

 ラクスは、変わらずプラントの誰もが好かれるような笑顔をメイリンに振りまき、
キラはと言うと憮然とした態度でメイリンにその先を促した。

 「エルスマン隊長率いる前衛部隊が新たなオーブ軍の敵艦隊と遭遇。激戦の末、占領宙域を放棄。
後方へと撤退し、ザラ司令の第4軍との合流を果たしたとの事です……」

 メイリンは、これらは事実上の敗北であるが、部隊自体の被害は軽微であり、大局には変化は無いとの
作戦参謀部からの見解も付け加えておいた。

 「――オーブ軍は新たに、最新鋭の機動艦隊を投入したそうです。規模も前衛部隊の3倍との事、
これでは、いかにエルスマン隊長といえでも……」

 「普段、あれだけ大きな口を叩いておきながらこれかい――」

 そのメイリンの報告を遮り、キラはディアッカを冷笑していた。キラは、年々その傲慢さが顕著になっていた。
その傲慢さと独善性が顕になる素養もあったのだろう。しかもあの傲慢なユーレン・ヒビキの遺伝子を持って、
最高傑作として創造された存在でもある。更には前大戦やメサイア戦役を自らがラクス達と終わらせたという
”勘違い”が更に自尊心を肥大化させていった。

 周りにはイエスマンしかいないのだ。勘違いを増長させる要因は周りに多数ある。
それ故に自分に逆らう意見を云う者に良い感情を持つはずが無いのだ。

 そして、普段から自分やラクスの方針にことごとく逆らっているディアッカに対して
キラ自身、暗い情念が溜まっていたのだった。それは密かに周囲へと広がっており、ディアッカに対する
感情はプラントの上層部では冷ややかだった。

 先頃のディアッカが要請していた援軍や補給物資もキラのその意向を迎え入れ、後方作戦本部の
エリート連中によって密かに滞らせていたのだ。

 メイリンは、キラのその態度に内心は、眉を寄せていたのだが表向きには、
全く表情を変えずに、普段どおりの有能な秘書官の表情としての態度を取っていた。
 続けて報告がオーブ軍の事に移ろうとする。

 
216機動戦史ガンダムSEED 29話 7/9:2007/07/11(水) 00:20:54 ID:???

 「そして、――敵軍であるオーブの新艦隊の指揮官は、サイ・アーガイル将軍……とのことです」

 「なに?」

 キラは一瞬、眉を斜めにし、凄まじい憎悪の表情をする。が、直ぐに表情を冷笑を浮かべ、
余裕に満ち自信溢れる態度へと自分を造り上げた。メイリンは横目でそのキラの百面相を
見ない振りをしながらも、報告を続ける。
 その彼女の耳へと、キラと向かい合った反対側から鈴を鳴らしたように、可憐で戸惑ったような声がした。
 
 「……サイ・アーガイル……?」

 ラクスの方はというと、キラとは逆に訝しげな表情をし、小首を傾げていた。確かにどこかで聞いた事の
ある名前なのだが自分では、良く思い出せないでいるようだ。

 メイリンも気になって独自で調べてみた。 ――サイ・アーガイル。
 
 かつて三隻同盟に属していたのは確かなようだが、その頃は目立った功績も無く、
キラやアスラン達の輝かしい業績とは裏腹に地味なオペレーションや補給物資の整理など、
日陰の仕事ばかりしていたようだ。モビルスーツの運用実績もゼロに等しく、モビルスーツ戦の公式記録も無かった。

 サイ・アーガイルの表の活動が露わになったは、メサイア戦役後の事であった。
オーブの代表付き首席補佐官に就任すると地味ながら公務実績を残し、アスハ代表を
着実に補佐しながら荒廃したオーブを復興させ、アスハ代表と共に軍備を充実させつつ、
各国がメサイア戦役で混乱している最中にいち早く、太陽系の宙域開発にも着手しオーブ発展に尽力していたという。

 と、ここまでは教科書やニュース紙の紙面に載っている公式の見解である。
 
 だが、アングラや裏社会の情報等の、噂などによるとサイ・アーガイルと言う人物は
相当に汚い人物であり、権謀策謀によってオーブを根本的に権益優先の資本主義国家へと
改造した人物として極めて悪評が高かった。

 彼の策謀よって犠牲になった人物は数知れず。相当数の人間が失脚や破産、
社会的に抹殺された人物は、数え切れないほどであったという。
 本国のオーブでは、官僚の多数のリストラや公職追放。先祖より功があった氏族の地位の剥奪、
財産没収など悪評に暇が無い。ブルーコスモス系の企業の買収など、人倫に反する行為もしていた。

 しかも、軍を率いて彼に対する反乱を鎮圧していた実績もあった。”統一戦役”と呼ばれた
オーブの内戦を極めて短期間鎮圧し、反乱軍を撃破。
 反乱軍とその首謀者と周りの人物の殆どを全てが戦死及び、処刑されていた。
 
 更に信じられない事だが、その直後に軍の改革断行し、統一戦役を共に戦った功臣であるはずの
士官系軍人の半数以上を軍から追放していたのだ。
217機動戦史ガンダムSEED 28話 8/9:2007/07/11(水) 00:24:59 ID:???

 そして、その事を切っ掛けに、オーブ連合議会と国民総会議の場で大々的に弾劾され、
代表府からも首席補佐官の解任と軍総司令の地位を解任され、政界から追放されるという、
いわば小悪人の独裁者が辿る、典型的で散々な経歴となっていたのだ。

 メイリン自身も調査した結果、この経歴を見てサイ・アーガイルという人物は、傲慢で地位を
嵩に着た小人というイメージができあがっていたのだった。

 「……サイ・アーガイルという方は、確かディアッカさんからの報告を受けていたあの……?」

 「はい、エルスマン隊長は要注意人物と指摘されているようですが……。
――オーブ国内では、相当に評判の悪い人物のようですね……」

 メイリンは、サイ・アーガイルの事をディアッカは買い被り過ぎでは?という思いがあった。
彼女は、ディアッカの力量をある程度評価している人物であり、ディアッカの撤退は理にかなった
見事なものだと考えていた。伊達にミネルバ、エターナルとオペレーターを務めていた訳ではないのだ。

 ディアッカは、サイ・アーガイルの率いた艦隊の数が自軍より多かったので被害の拡大を防ぐ為にも、
ここは一旦後退しただけだろうと、考えていたのだ。
サイ・アーガイルについて、メイリンは自分の思案も付け加える事も忘れなかった。

 「そして、わかっていることはもう一つだけあります。かなりの長期間、軍役から離れていたとか……」

 とメイリンは苦笑いをしながら報告を終えた。それ程の長期間、軍役を離れた人物を司令官に据えるとは、
正気の沙汰ではないと。

 ラクスもそれを聞いて驚きの表情をした、こちらには百戦錬磨のバルトフェルドやイザークを始め、
戦巧者の将が多く居るのだ。皆、ヤキン大戦やメサイア戦役を戦い抜いた猛者達なのだ。

 しかもこちらには、大戦の英雄であるキラやアスランもいるのだ。彼等に対して
取るに足らない人物を登用するとは……。

 「まぁ……?そんな方を司令官に……。カガリさんは、何を考えているのでしょうね?」

218機動戦史ガンダムSEED 28話 9/9:2007/07/11(水) 00:28:01 ID:???

 ラクスは。カガリが自分たちと袂を別ち合った時から、既に10年の年月を経ているのを
思い出していた。自分たちと意見を異なるなんてどういうことなのだろう?当時は彼女も思った。
当時のキラやイザークたちもカガリは、裏切ったと嘆き、怒っていた。

 ラクス自身もその時のカガリの心変わりが理解できなかった。それから、暫くして、
随分と酷いことをオーブでやっているとキラから聞いた事があった。

 『ウズミ様の志を踏みにじった裏切り者だよ、カガリは……いやカガリじゃない、
カガリはきっと騙されているんだよ、サイの奴に……』


 「――ジュール作戦司令の作戦参謀本部も彼を、予備役のロートルだと断定しています」

 メイリンの続けての言葉に、ハッとラクスは回想から引き戻された。 メイリン自身も首を竦めながら
カガリが何を考えているかわからないと、ラクス同様に思っていた。

 「――地球連合強国宙域方面の防御に戦力の大半を裂かねばならないのが、オーブ領宙域の
地政学的特長ですしね。――心配せずとも、前線の戦力をこのまま維持できましょう」

============================

 ……このように、総司令部は戦況を楽観視し、本軍大本営である機動要塞エターナルでは、
厭戦気分が蔓延しているのだった。我が艦隊の撤退理由をも正確に捉えず、しかも敵戦力を過小評価し、
上層部は何より相対する、敵指導者と敵将の力量を完全に見誤っていたのだ。

 ……無能な人間が何人集まろうと、結局は無能なのだという良い見本であろう。
 
 ――ディアッカ・エルスマン航海日誌より


>>続く
219CE大戦秘話:2007/07/11(水) 14:08:37 ID:???
おひさしぶりです。
最近スパロボにハマってまだ作品は書き終わってません。
今夜か明日ぐらいで投下したいと思います
220通常の名無しさんの3倍:2007/07/11(水) 16:22:35 ID:???
>>せめて
投下乙
台詞周りについては上の人が言ってるので割愛
ラクスと虎の会話がなかなか良い感じ
今後ミネルバとアークエンジェル双方が
どう絡むか。サイをどう動かすかも含めて、期待

>>砂漠
投下乙
アンタの表現は一人称には向いているかも知れんな
ただ字数を抑える努力は必要かも知れない
字数削った跡は見えるのだけれど、あえて言っておく
いろいろと大変だろうが次回以降の展開を楽しみに待つ

>>戦史
何故ラクシズが無能であるのか良くわかる
ヘイト臭をあまり感じないのがむしろ良いのだが
地の文はもっとヘイト感を削って第三者視点に徹しても良いかも知れない
その方が最後のディアッカの日誌が効果的になると思う
221弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/12(木) 01:36:31 ID:???
少女は砂漠を走る!

第四話 ミツキ、転職する

 MS格納庫の中、ファング2の足下。わたし用に持ってきたデスクと椅子。その横には師匠ことエディさん
用の机もある。本来は、この時間は暑いのでわたしの『座学』はやらないし、師匠に事務仕事があれば一応
椅子が用意されている以上、ブリッジに居るべき時間だ。そしてその場合、わたしは師匠の付属品であるので
用事が済むまで、後ろであまり休まらない軍隊式の「休め」の姿勢のまま立ってる。そう言う時間なのだが。
「隊長がご機嫌斜めだと我々外様はブリッジには居ずらいものな。済まないな、暑くないか?」
「文句言えませんよ? 師匠。メカマンの皆さんはいつだってココじゃないですか」 
 どうやら会話が聞こえたらしくメカマンの一人がこっちを向くと微笑む。取りあえず手を振っておく。
ユースケと遭った日から5日。砂漠の町からちょっと離れた場所。マーカス隊はまだココに留まっていた。

 話は簡単だ。取り替えるはずの部品の不良率が高かった。しかも民間の市場で調達できない部品
ばかりが。コレにより基地への到着は無期限延期になり、セブンスで大きく株を落とした隊長の評価が
また悪くなる。と、そう言う事らしい。
 もっともセブンスでは当初から盗賊団からの警護に重点を置いており、更に軸足はファングのテスト支援。
まさか敵が町を破壊するとは思わなかったので住人の生活を優先したが故の大失態。そしてアンコールワット
は壊れない筈の部品が壊れ、2組あった補修部品は両方不良品。しかも近所の基地に在庫はゼロ。
 コレで評価を落とされると言うのでは、さすがにマーカス隊長でなくとも機嫌が悪くなろうというものだ。

「見込みはどうなんです?」
 通りがかったメカマンチーフに師匠が声をかける。
「俺たちが直しても信頼性に著しく問題があるんですよ。放熱の機構は工場でないとねぇ。だからアレに関して
はアッセンブリーで交換しないと」
「で、モノは届きそうなんですか?」
「ジブラルタルは今回、どうも当てに出来なそうでしてね。直接上から落として寄越すようですぜ、エディ」
「ならば暇だし、僕も拾いに行こうかな」
「A1コンテナが2基ですぜ? アトランタが出張らなきゃ回収はムリですな。MSもあるそうだしね。
それにコイツだって動かないって訳じゃないですぜ。いつ止まるかわからんだけで。はっはっは」
「ミツキくん、こないだ話をしていたゲイツRが見られそうだぞ?」

 バクゥ3機の一番後ろにファング2をつけろ。隊列は乱すなよ? と課題を出されている以上必死になって
半べそで食らい付いているが、問題はバクゥのパイロット達が居る前で師匠がそれを言った事であった。
「絶対にみんな面白がってる! うぅ、こんなの訓練じゃないよぉ。イジメじゃん……」
 バクゥのコンビネーションは完璧でごく僅かな先頭機の動きの変化に併せて綺麗に編隊ごと変化していく。
端から見て、わたしの機体のみが浮き上がって見えているのはほぼ間違いないだろう。投下されたコンテナ
の位置の確認がホントの任務である。砂漠だし、バクゥなのだから最大速度でまっすぐ前進ならば5分も
かからず着く筈なのだが、ジグザグの機動を繰り返してなかなか前に進まない。
『評定が基準点下回ったらシミュレータ2時間、宜しくね』
 師匠の無線でイジメ確定だ。訴えてやる! ……って誰に。今現状、好んでそうなった訳ではないが
只飯を食わせてもらってる分際ではある。結局投下ポイントまでは9分23秒かかった。
評価ポイントはギリギリアウト、筋トレも追加な? シルビオさんは無線でそう言うと笑った。ちぇ。
 2基のコンテナの上、真っ赤なMSがライフルを構えて立っていた。ジンとは違ってのっぺりとした頭に
羽根飾りの様なアンテナを着け、大きなリュックサックの様なモノを背負ったそのMSはわたし達を見つける
と一つ目で睨み付けてきた様に見えた。
222弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/12(木) 01:38:34 ID:???
第四話 ミツキ、転職する

「実際、ミツキちゃんは運が良いよ。俺なんか最前線部隊だし、隊長は実際何考えてるか良くわかんないし、
先輩は陰険で暗いし。だけど二人ともタイプは違うけど両方美人でさ、そのギャップがまた……」 
 格納庫でノートを片手にファング2のデータチェックをしていると赤い制服を着た少年が声をかけてくる。
丸い頭、深紅とアクセントに黒のMS、ザク・ファントムでコンテナと共に降下してきた同年配の、
カワイイ顔をした割には気の強そうな少年。ティモシー・チェンバレンだ。と自己紹介をした後、
マシンガンの如きいきおいで喋り出した。わたしを録音機材か何かだと思ってるんだろうか、全く。
約10分間喋るとブリッジへと上がっていった。大部分聞き流したのだが年齢が一つ上である事だけはわかった。
意外にちゃんと聞いてたな、わたし。

 師匠に聞いた所によれば、どうやら彼は吹きだまりだ掃きだめだと、好き勝手に言われている対テロリスト
専門の最前線部隊に所属している。隊長もMS隊の統括も女性であり、双方かなりの切れ者であるらしいが、
隊長などは気に食わなければ偉い人にも直接文句を言うのだそうで、彼の話の何を考えているのか、
と言うのはこの人のことなのだろう。で、彼はその『吹きだまり』の部隊からも余されてカプセルでの大気圏突破と
地上戦を体験してこい。との理由をつけて体よく放り出されたらしい。
 彼の言いぐさはともかく、先輩はいい人であるらしく、自分用の最新鋭の機体ザク・ファントムを貸して
寄越した。但し戦闘になったならキルマークを増やして返せ。と非常に冷静に言われたのだそうでその辺、
先輩さんは師匠と同じタイプの人間なのかも知れないな。コンテナの中には部品の他にはザク・ウォーリアが
2機。念願のゲイツくんにはまたしてもお目にかかれなかった。
 個人的な好みで行けば男のお喋りは趣味じゃない。師匠と同じ色の服を着ているのはやはりエリート
であるのだろうが、ちょっと赤服のありがたみが低下するよなぁ。わたしの机。ザクの諸現表を見ながら呟く。
「そんな事を言ったらいくら何でもかわいそうだと思うけどな。MS技能だけは優秀だそうだぞ?」
 だけ、にアクセントを置く師匠。むしろ身も蓋もないと思います。

 備蓄の食糧はまだあるのだけれど機関が復旧次第ノンストップで基地を目指す!と隊長が言うならば
若干生鮮食料品が寂しいかも知れんな。との調理班長の仰せでまたしてもメモの山を受け取った。
師匠は別口で既に朝から出かけている。今回わたしの隣でハンドルを握るのはティモシー。前回の話を
ちらっと話した所、俺がボディガードだ。と言ってわたしの横を離れなくなってしまった。
 要するに彼も暇なんだろう。どうして女性クルーがキャーキャー言うのか理解に苦しむ所だ。
おねぇさま方とは絶対趣味は合わないなぁ。
「ティモシー・チェンバレンよりコントロール、ミツキ・シライ同行で食料調達に出発します。2番、開放乞う」
『コントロール了解。車両確認、2番ゲート解放開始。解放完了まで40秒。ティモシー君、気を付けてね?』
 ともかく羨望のまなざしを受けながらアンコールワットを後にするわたし達。

 そして、もはやお馴染みになってしまったカフェの白い丸テーブル。何もする事のないわたしは、今度は
大きな旅行鞄を脇に置いてコーヒーを啜っている。
 自分でも言ってた様な気もするが、ティモシーはお坊ちゃんだ。『値切る』と言う行為が存在する事すら、
そもそも知らなかった。だがそこは腐ってもエリートである。わたしの買い物を2軒分観察した後、今度は
自分が実践を始める。結果、わたしの手元には中身もぎっしり詰まった旅行鞄がある。あなた、砂漠の民に
向いてるよ……。で、現在彼は自分で運ぶからもっと引け! と言った責任を果たすべくトラックを調達に
行った。多分あの勢いならば、3輪バギーの値段でトレーラーを引っ張ってアンコールワットに向かうだろう。
そして一人で帰れは良いのだが、わたしのボディガードじゃなかったの?
 と、またしても師匠がこの間の彼女と共に歩いてくるのが見える。そして相変わらずわたしの存在には
気付く気配もなく、わたしに背を向けて座る。彼女はわたしの正面だが師匠の体で顔どころか姿さえ
見えない。但し今回は師匠の声だけはほぼ全部聞こえる。いずれコレではここから動けない。
 わたしは鞄の中からファッション雑誌を取り出すと、読んでる振りをして耳をそばだてる。
223弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/12(木) 01:40:58 ID:???
第四話 ミツキ、転職する

「そんなに急ぐ必要が……いやわかっているつもりだよ、しかし、使う機材だってある、根回しだって必要です。
現状僕は動けない、……義手となれば時間が……。それでは僕は直接関与出来ないし、それは困るっ!」
 いったい何の話だろう。前回同様少しも艶っぽい話には聞こえない。強いて言えば結婚式?
「別に生き残りたいとは思っている訳では無い。覚悟はある。お互いそれはよく知ってるでしょう!?」
 今度は無理心中? ちょっと違うか。彼女がまた何事か言う。
「認識はしてるよ。……そうじゃない、本当に事を成すなら僕も現場で立ち会いたいと、そう言ってるんです!」
 赤ちゃんの認知の話? 出産に立ち会いたいのかな。それもどうも違う様な……。 
「わかりました、とにかく日取りが決まったら連絡を。それと一つだけ。当然察知してるでしょうが、
どうやら対テロ専、それもモンロー隊が動いている様子です、くれぐれも注意を。では」

 多分彼女はナチュラルで連合の政治家の娘。師匠と好きあって何とか結婚式を挙げようとしているが
各方面から妨害を受けている。彼女のお腹に赤ちゃんまで抱えた二人は、なんとなれば心中まで考えている。
また、いかなニブチンエディさんと言えど赤服ともなれば、状況からいって対テロ専に目を付けられる……。
 こんなところだろうか。我ながらよろめきドラマ風な安っぽい設定ではある。
「……っ! ミツキくんか!? いつから居たんだ?」
 見つかった。つーか、真後ろ1.2m。気づかないで座る方がどうかしていると言うものだ。
「さっきの方、どなたですか?」
「……話を、聞いていたのか?」
 珍しくコワイ顔になる。まぁ二人を応援するならば今は知らんぷりが一番だろう。
「いいえ、声は聞こえませんでしたけど。ところでわたしの質問には答えてくれないんですね?」
 ふっと表情がゆるむ。この瞬間、わたしは知らんぷりを押し通さなければいけない事が決定した。
「あぁ、何を勘違いしているのかは知りたくもないけど、彼女は友人のお姉さんだ。この町に住んでいたとは
知らなかった。さっき偶然会ってね……。いろいろ背負ってる人なのでこの事は内緒にしてもらえると助かる」
 この表情で言い切るからなぁ。知らない人が聞いたら信じるぞ、コレ。ニブい癖に以外と狸だな、師匠は。

 帰りの車内。ハンドルは当然わたしで助手席には師匠。
「ところで、キミはユニウスセブンについてどの程度知っている?」
「……血のバレンタイン、ですよね? ハイスクールの教科書とか新聞に載ってる程度なら」
 突然なんの試験を始めたんですか? 師匠……。
「僕の両親はプラント宗主国に禁じられた農業の技術者だった。その血のバレンタインで犠牲になった」
「あの、いきなり何の話を……」
「僕らの境遇が似ているという話さ。……ファングと縁が切れたら僕と一緒に宇宙(そら)にあがらないか?」
 何故急にそんな話を、……一気に顔が真っ赤になったのが自分でわかる。
そりゃエディさんが言うならわたしは何処でも! あぁ!でもさっきのお姉さんの結婚話は?
いくら何でも、三角関係が当初から確定してるのはちょっとアレです。そうでしょ?
「あぁ、済まない。そう言う意味じゃない。僕に言い寄られてもキミも迷惑なだけだな、ははは……。プラントで
市民権を取ってあっちで暮らさないかとおもってさ。ミツキくんなら優秀だし、こう言ってはなんだがご両親の
様に入国に難色を示される事もないだろう。なんと言ってもキミは今、プラント籍でザフトの軍籍もある」
 お父さん達は非公式ではあるがプラントに住む事を拒絶された。だからセブンスの町を作った。
プラントの都合はともかく、先ずは自分たちの為に、自分たちが住むべき場所を。そしてわたしは……。
「キミのセブンスオアシスへの愛着はよく知っている。だから今すぐとは言わないが、基地に到着する前には
結論を出してくれ。一応赤服なんでね、それくらいのコネはある。まぁ考えておいてくれ」
 宇宙へ出る夢なんて忘れていた。夢ってこんなに簡単に叶って良いものなのかな。
急がなくてはいけないだろうが慌てる事はない。まだ時間はある。
224弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/12(木) 01:43:06 ID:???
第四話 ミツキ、転職する

 休まらない休めの姿勢でブリッジに立っている。目の前の席にはインカムをつけた師匠。窓の外では
ザク3機がジン・オーカー5機を相手に演習中だ。若干押され気味に見えるザクチームの中で唯一赤い機体
のみが気を吐く。MSだけは、と言った師匠の言葉に嘘はなかった。エース色の軍服を纏う少年、もしかすると
ホンキで経験を積ませる為に地球に下ろされたのかも知れないな。彼の隊長の考えは誰も読めないそうだし。
「キミも座っていて良いぞ? ……隊長、修理の進捗状況はどうです?」
 戦況を見ながら評定をつけている師匠。初めから儚げな印象の彼ではあるが、今日はまた一段と顔が青い。
終わったら医務室に行く様に勧めた方が良いだろう。この頑固者は自分では絶対に行くまい。
「順調ではないが明後日には動けそうだ。ところで単刀直入に聞くがファング2と3、大事なのはどちらだ?」
「……? もっともガイアに近い構成でデータ的にもリンクしてるのは2の方ですね。設計からも最低1か2は
宇宙(そら)に返す様に言われていましたが」
 いきなり【彼女】が話に出てきて驚く。そんなに大事な機体だったんですか? 【彼女】は。
「ザクに目処が付けばファングは封印したいんだよ。大事な荷物ではあるからな」
「ファング3は予備機としてシルビオと共に待機。ファング2は動力封印。こんな感じですかね?」
「胃痛の種が一つでも減ってくれれば助かるよ」

 格納庫に降りる廊下。師匠の後ろについて歩いているわたし。医務室へは後で行く。と言って聞かない師匠
ではあるが一応先生には連絡を入れて、向こうから来てくれる様に約束した。
「で、わたしは今後何をしたら良いんですか?」
 やっとファング2に慣れてきたのに。それに動力封印されてしまえば機体整備さえ要らないはず。
ならばやることが無くなってしまうし、それは困る。
「当面ファング2に乗らないことになるだけだ。引き続き僕の補佐をして欲しいし、勉強も継続。実技はバクゥと
ザク・ウォーリアの実機を借りるつもりだ。限定認証がかかって居ないからファング3も使える」
「でも基地に着いてしまえば、もうMSの勉強は要らなくなるんではないですか?」
 ファングを動かす必要があると思えばこそ勉強だってしてきた。乗れないのであれば、もう要らない。
基地に着けばファングの起動認証も解けて、この緑の制服ともおさらば。だったはずでは?
「そうはいかない。基地に着いた所で解放されはしないぞ? 最高機密に手を触れてしまったのだからな
マーカス隊長について砂漠を回るか、僕について宇宙(そら)に上がるか。現状キミの選択肢は二つだ」
 起動認証解除とザフトの軍籍抹消をセットで考えていたがどうやら違うらしい。
「なんか詐欺にあった気分です……」
「そう言うな。パイロットとしてはキミは優秀なんだから、ザフトの何処に行っても仕事を干されることはない。
それに正直ファングから降りればつまらない怪我をする可能性もぐんと減る。Gタイプは戦場では的になる」
 退役まで2年ぐらいは我慢しなきゃいけないかな。そう言って振り返る師匠の顔は真っ青である。
「師匠、取りあえず話はわかりました。それより医務室です! 行かないと言うなら力ずくで連行しますっ!」

「ミツキさん、良く連れてきてくれた。まぁ、心配はいらん、ちょっと疲れがたまってるだけだ。今のところはな」
「だから大したことはないと……」
 ベッドの中から血の気の引いた顔で大したことがないと言われても説得力のカケラもない。
と、非常警報と共に女性の声が艦内に響き渡る。ベッドの横のモニターに自動で灯が入る。
『マーカス隊、全艦コンディションイエロー発令、戦闘要員は直ちに部署に着け。』
 何かあったんですか? 師匠のコールサインで隊長にインターホンを直に繋ぐ。
「赤き風だ。センサーには現在6機。大したことはないからエディには寝てるように伝えてくれ」
 それだけ言うと向こうから通信は切られた。
「隊長としてキミに命令する、僕の代わりにブリッジへ上がれ! ラジオを持っていって状況を逐一僕に報告。
そして一つ約束だ。基地に着くまで君はファング2には乗らないし、実戦にも参加しない。良いね?」
225弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/12(木) 01:45:49 ID:???
第四話 ミツキ、転職する

「敵の陣容はMSが6、ピートリー級陸上戦艦が1、だそうです。現在距離200のまま膠着状態」
 師匠のデスクでインカムを付け、のど元にもマイクを着けたわたしは、見て聞こえたデータ全てを口頭で
師匠に伝える。
《ピートリー級の艦名を特定できないか?》
「隊長も同じコト言ってましたがダメな様です、エンジンまで改装されてる可能性が高い、だそうです」
 既に光学的観測、つまり望遠鏡で見える範囲に赤い肩のジン・オーカーが居るのが見える。見えるんだけど
動かない。むしろこっちの動きを観察してる様にさえ見える。そう師匠に伝えると隊長にそのまま伝えろと言う。
「やはりそうなのだろうな。だからあえてこっちも動かんのだが」
 隊長はそれだけ言うとデータの画面に目を落として何事か考え始める。
「この間の、つきまとうなというメッセージが伝わってないんでしょうか?」
《それはない、おそらく状況が変わったんだろう。どう変わったのかが問題だが》
 2時間ほど睨み合った後、ジン・オーカーは砂丘に消え、陸上戦艦の反応もまた消えた。

「でもわたしは、師匠の……」
「構わないみたいよ。逆にあなたのお師匠様、マーセッド隊長から頼まれてるから」
 何故かオペレーターとしての仕事を仕込まれているわたし。自分で書いておいて意味がわからないノートが
また増える。今度の表紙は【オペレーター秘密ノート】だろうか。はぁ……。どうやら師匠は自分が動けない
のでブリッジ内の情報を漏らさず全て知らせろ。というつもりらしい。なので首のマイクは外していない。
ココでのやりとりはわたしの言葉のみならず師匠に全てモニターされてる訳だ。なんかヤナ感じではある。

「あれ? パイロット見習いじゃないんだっけ?」
 ティモシーが赤いパイロットスーツのままブリッジに上がってくる。撤退しちゃったの?と聞いてくるので
簡単にモニターに出したデータを見せながら状況を説明する。
「キミはザクで待機していてくれ。おそらく夜に勢力を増やしてもう一度来るだろうからな」
 隊長の声にティモシーが振り向く。
「夜陰に乗じて、と言うことですか?」
「有象無象を寄せ集めるなら暗い方が良いだろう。今日は新月だ、暗視スコープがあるにしても夜なら見えにくい。遠くからミサイルを撃つだけなら車両でも良い訳だしな。只のミサイルならば迎撃に目視は要らないが」
《隊長に楽観視しすぎだと伝えてくれ。こちらが動けないのを確認していったんだぞ?
絶対に何かを仕掛けてくるつもりだ》
 確かに、この間わたしが対峙したMSの様なつもりで居たら全滅させられるだろう。セブンスオアシスでは
偶々意表をついて撃退できたが、本来赤き風は戦闘能力とMS保有数では指折りの傭兵団である。
陸上戦艦を持っているならレセップス級ほどではないにしろ、MSは10機以上と見るのがきっと正しい。
それに赤き風の旅団にはユースケが居る可能性がある。出来れば何もおこらないで終わって欲しい。


『マーカス隊、全艦コンディションイエロー発令、戦闘要員は直ちに部署に着け。繰り返す……』
「師匠、出ました! 距離150にピートリー級1。ジャミングが激しくてクリアじゃないですが推定MS数8!」《キミは絶対にブリッジを離れるな。ファング2は凍結! 良いな? チェンバレンくんのザク・ファントムと
医務室を直接つなげ、出来るね? それと生データで良い、レイヤー3以下の情報をこっちに送れるか?》
226弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/12(木) 01:49:41 ID:???
第四話 ミツキ、転職する

「師匠、そっちの画面でデータ読めてますか?」
 データを送れと言われて病室の小さなモニターに強引に送り込んでいる所である。ジンが2、
ジン・オーカー6の赤き風に対しバクゥ5、ジン・オーカー4で対抗するマーカス隊。
《大所だけ読めればいいから問題はないよ。指揮を執る訳じゃないしね。ザクはもう出てるのか?》
「布陣と地形が気になると言って右翼に回ってます。装備は……、ブレイズウィザード。ですね」
 隊長はどうせ員数外だ、好きにやらせろ。と多少機嫌が悪い。
《多分彼の読みは正解だと思う。一機じゃ不味い。シルビオをチェンバレンくんの援護に回すと隊長に伝えて
くれ。同じく員数外だ、許可は下りる》
 
「隊長、右翼にMSの反応多数! オーブのアストレイ系と思われます! 総数5機以上っ!!」
《ディンと残りのバクゥで左翼を警戒する様に伝えろ! 地形的に右翼の出現位置がずれているのが
気になる。直縁のオーカーは動かしちゃダメだぞ?》
 さっきのファング3のこともある。今度は何も言わずに、隊長から左翼に展開する様に指示が出る。
「映像確認。非正規タイプのアストレイ、これも右肩赤いです! 正面のバクゥ接敵、げん、きゃぁあっ!」
 カタパルトから飛び出したディンに直撃。ブリッジは横殴りの衝撃に包まれ、光で一瞬何も見えなくなる。
「痛ぁ……。データ、見てますか。左翼にダガー系と思しき機影、10以上……。あれ? 大丈夫ですか!」

 戦術なんか素人だけど赤き風の旅団は二手に分かれてうちの主力を釣りだした。それはわかった。そして
まんまと主力のバクゥは二手に分断され、虎の子のザクとファングは遙か彼方へ。戻ろうにも後ろを見せれば
撃たれるので撤退にも手こずっている。狙撃されるとわかればディンも出せない。そして本体はきっと左翼だ。
 【GAT-1 ?】と表示された機体の一部は既にバクゥのラインを抜けジン・オーカーと戦闘中。明らかに
ダガーに押されている。腕はともかく、オーカーとでは性能的に開きがあるのはわたしの目で見てもわかる。
だからといってわたしのファングを今から起動してもかなりかかる。けれど、準備はするべきだろうか。
《ぐ、うぅ……。ミツキくん、大丈夫だな?》
「師匠! 無事だったんですね!?」
 思わず涙が零れそうになるのを押さえる。しっかりしろ、わたしは、弟子だ、弟子!今なんか只のマイクだ!
《ベッドから落ちてしまったよ……。それより、ファング2は動かすなよ? チェンバレンくんに仕込みを
お願いしてある。うまくすれば間もなく発動する筈だ。ブリッジからは絶対出ない、いいね?》
 師匠が喋り終わった直後。いきなり周りが明るくなる。一瞬送れて轟音。ザクとファングの居るあたりだ。
『ザク01からコントロール。アストレイがうまく地雷原に引っかかった、4機の稼働不能を確認。
これで7機全て稼働不能。車両が3両残っているが、ザク01、ファング3とも中破の為帰投する』
「左翼のダガー、引くようです。正面の赤き風の部隊も撤退します!」

 ブリッジに力無くよろめきながらあがってくる師匠。わたしは慌ててインカムを放り出すと肩を貸す。
「ミツキくん、ご苦労だった。怪我はないね? ……隊長、連合の部隊が出たと?」
「わからんがな、ダガーの新型だ。連合の中でも精鋭部隊にしか配備になっていないと聞いてる」
「赤き風は反プラント政府ではあるでしょうが、だからと言って連合と組むとも思えませんね」
「確かに、な。調べてみるか……。シライ君は休んで良いぞ? ご苦労だった」
 結局、マーカス隊はジン・オーカー2機とディン、バクゥ各1機を失い、他のMSも損傷多数。出発は当初の
予定より更に4日遅れることになった。そして戦闘の翌朝、そんなことはお構いなしに【彼女】は封印された。

次回予告 第五話 師匠の考え、弟子の想い。
わたしには師匠との約束の意味がわからない。わたしだって出来るのに! そんななか再び敵は
マーカス隊の2隻の船に襲いかかる。いったい何がしたいのさ! ただ殺したいだけなの!?
227弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/12(木) 01:52:50 ID:???
今回分以上です、ではまた。

>>200
自分のチカラでは字数は現状で限界です……
お察しの通りかなり削ってますけど
228通常の名無しさんの3倍:2007/07/12(木) 15:56:53 ID:???
弐国氏、投下乙です

>ファングと縁が切れたら僕と一緒に宇宙(そら)にあがらないか?
ひょっとしてエディはミツキをザラ派に迎え入れるつもりなんだろうか?
229河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 22:46:29 ID:???
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜

第8話 「少年 −かいきゅう−」
(1/9)


「君に預けたいんだがね」
 髪を整え、軍服の襟を直し、今まさに彼の前を辞そうとしていたタリアは、前振りもなく
かけられたデュランダルの言葉に足を止めた。
「私に? 何を?」
「このディオキアには来られなかったが、次のスエズへの移動中に合流できる手筈になって
いてね」
 デュランダルの顔にはいつも通りの笑みが浮かんでいる。
 心にやましい所がある者が見れば全てを見透かされているように、彼を信頼する者が見れば
彼からも信頼されているように見える、その捉えどころのない笑みがタリアは嫌いではなかった。
 だが自分がその対象になると、微かだが苛立ちを感じてしまうことは否めない。
「彼はフェイスではないが、十分に相応しいと私は思っている。だから彼にはフェイスと同等の
権限を与えてある。君には苦労をかけるがそのつもりでいて欲しい」
「フェイスと?」
 タリアの声につい険が混じる。
 一艦にフェイスが三人もなど聞いた事がない。
 艦内での指揮系統も難しくなるし、他の艦とのバランスも悪い。
「色々と問題を抱えていてはいるが、君と似ているところもあるから気が合うだろう」
「…………」
 それはもちろん気が合わないよりは合う方が良いのは言うまでもないが、その前提が悪すぎる。
 軽くデュランダルを睨んだタリアは、彼の瞳に悪戯を隠している子供のような色が浮かんで
いるのに気づいた。
 果たしてそれは本当に何かを隠しているのか、それともタリアをからかっているだけなのか……。
 タリアは小さく溜め息をつく。
「それで、持ち場は? まさかまたパイロットを増やすつもりでもないでしょう?」
 ミネルバがアーモリーワンを出た頃には五人のパイロットがいた。
 そのうち緑服の二人はボギーワンとの戦闘で喪ったが、その後アスランが着任したことにより、
戦力的にはかつてと同等以上になっているだろう。
 しかしまたフェイスと同等のパイロットが乗艦するとなると、控えめなアスランとはともかく、
シンとの衝突が懸念される。
 かと言ってブリッジ要員だとすると、苦労することになるのはタリアかそれともアーサーか。
230河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 22:47:53 ID:???
(2/9)

「オールマイティかな、彼は」
「は?」
 タリアは思わず聞き返した。オールマイティとは一体どういう意味なのだろう?
「言葉通りだよ。ブリッジ要員もこなせるし、整備員としての腕もなかなかだ。パイロットと
してもアスランにも引けは取らないだろう」
「まさか」
 タリアはデュランダルの言葉を受け流す。
 そんな人物がザフトにいるのなら、噂くらいは耳にしている筈だ。
 しかし、別の考えが頭をよぎった。
 かつてのオーブからの移民のように、今度の開戦で祖国にいられなくなった地球育ちの
コーディネイターがザフトに入隊した、ということも考えられる。
「その彼の名は?」
 タリアの質問にデュランダルは何故か少し考えるような素振りを見せる。
「……通称は『ダブル・アルファ』とでもしておこうか」
 答えたデュランダルの顔は完全に楽しんでいる。
「はいはい。わかりました」
 こうなってはもう彼からはもう重要なことは何も聞き出せないだろう。
 そう判断してタリアはドアへと足を向ける。
「もう行ってしまうのかい?」
「ええ」
 どこに、とデュランダルは聞かず、タリアも言わなかった。
 軍の保養施設とは言え、艦長かつフェイスのタリアの部屋はそれなりのものだった。
 だが、議長のために用意されたこのロイヤルスイートとは部屋もベッドも格や広さが段違いだ。
 僅かでもこの部屋で過ごしてしまった後では、あの部屋に独りで戻っても寂しくなるだけだろう。
 そう思うと、タリアには慣れたミネルバの方がマシだった。
 次の約束も別れの言葉を交わすこともなく、タリアは部屋を出た。
 それでも、名残を惜しむかのような彼の言葉が少しだけ嬉しかった。
231河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 22:49:31 ID:???
(3/9)


  ◆ ◆ ◆

 スエズに向けて出港した翌日。
 アスランはディオキアで更に増えた悩みを抱えつつ、上部デッキを目指していた。
 考え事があると少しでも自然に近い場所に身を置きたくなるのは、ここ二年の間に──オーブで
暮らすようになってから身についた習性だった。
 フェイスとしてミネルバに着任し、その流れでMS隊隊長と呼ばれるようになった。
 今まではそれを極自然に受け取っていた。
 他の三人よりも年長であり実戦経験も積んでいる自分が彼らの導き役になるのは当然だ、という
思いもあったからだ。
 それが、今は重い。
 アスラン自身が解決できない悩みを抱えているというのに、シンとは衝突を繰り返し、更に
あの一件以来ルナマリアの態度も硬化している。
 正直に言えば、アスランにはルナマリアの態度を理解できないでいる。
 確かに誤解されても仕方のない状況だったと思うし、その誤解を解く術もない。
 しかし、何故ルナマリアはあれほど怒るのだろう?
 アスランにとってルナマリアは同じ隊の部下というだけの存在だ。
 対してミーア、いやラクスはアスランの婚約者ということになっていて、それはルナマリアも
認めている。
 褒められた行動でないのは重々承知しているし、事実無根であるとも言い切れないが、それでも
いささか理不尽に感じてしまう。
 こんな時、例えばディアッカなら上手くフォローができるのだろうが……、と考えたアスランは
かつての仲間のことを思い出す。
 プラントで再会した時には、彼らは最前線にいると言っていた。
 幸いなことにあれから地球連合軍がプラント本国に攻撃をしたという話は聞かない。
 それは当然とも言える。
 開戦時のような奇襲ならばともかく、あそこで戦闘があるなど本来ならばあってはならないこと
なのだ。
 あそこは一度戦闘が始まったら、敗北も退却も許されぬプラント守備の最後の砦なのだから。
 戦闘になることは滅多になく、しかし一時も緊張を解けない場所。それが彼らがいる場所だった。
 イザークのことだからさぞかしストレスを溜めているだろう、と思うと、アスランは顔も
知らない彼の部下に少し同情する。
232河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 22:51:19 ID:???
(4/9)

 しかし、ディアッカが側にいるなら案外大丈夫かもしれないとも思う。
 士官学校を卒業した当時は他人を見下し嘲笑するような態度も多く、アスランともよく衝突した
彼だが、先の大戦を経て大分変化したようだ。
 そう言えば、とアスランはかつての仲間と現在の仲間を比べてみた。
 ストレートの切り揃えられた銀髪にアイスブルーの瞳のイザークと、癖のある黒髪に燃えるような
紅い瞳のシン。
 容姿こそ正反対の二人だが、性格は似ているかもしれない。
 そして、イザークの側らにディアッカがいるように、レイの冷静さとルナマリアの明るさがシンを
フォローしている。
 ルナマリアからシンの行動について苦言を聞いたこともあるが、あの程度は同期の馴れ合いのうち
だろう。
 士官学校の同期生という強い絆で結ばれた三人の輪の中に入るのは難しいだろうが、次の作戦行動
までには、少しでもわだかまりを無くしたい。
 そんなことを考えながらデッキに出たアスランの目の前に、シンがいた。

  ◆ ◆ ◆

 誰かの気配を感じて何気なく振り返ったシンは、そこにアスランの姿を見た。
 アスランは少し驚いたような顔をしたが、すぐに軽く頬を緩めてシンに近寄ってきた。
「なんだ、シンもここにいたのか」
 前にもあったようなこの光景に、シンは何となく気まずくなる。
「俺がいちゃいけませんか?」
「そんな事は言ってないだろう」
 殆ど無意識に反発するシンに、アスランが呆れたような口調で言う。
 こんな遣り取りも以前と同じだ。
 もう少し素直になれないだろうか、と自省しかけてシンははっとした。
(素直? 素直って何だ? こういう場合、素直って、俺、どうしたいんだ?)
 シンにとって「素直さ」とは、例えばマユやルナマリアのような言動のことだ。
 楽しければ笑い、腹が立てば怒る。時には甘えてみせたりもする。
 怒りや反発の感情だけはある意味素直に出しているような自覚がないこともないが、自分が
アスランに甘えかかるところを想像したシンは鳥肌が立った。
「どうかしたのか?」
「なんでもないですっ」
 いぶかしむようにこちらを見やるアスランに、シンは慌てて頭(かぶり)を振った。
 しかしそれ以上会話が続かず、どちらも無言になる。
 かと言って話をしたくないというわけでもなく、シンは何か話題がないかと頭をひねった。
233河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 22:53:07 ID:???
(5/9)

 ちら、とアスランを盗み見ると、彼は踵を返しかけている。
「あ、あのっ!」
 シンが慌てて声をかけると、アスランは驚いたように立ち止まった。
「えっと、その……あ、そうだっ。ロゴスの事なんですけどっ!」
「ロゴス?」
 無理矢理ひねり出した話題にアスランは興味を持ってくれたらしく、シンは内心で安堵する。
 だがその安心がまずかった。つい勢いのまま、思っていたことを口走ってしまったのだ。
「ロゴスってどこにあるんでしょう?」
「どこって、お前……」
 アスランが呆気にとられたように言うのを聞いて、シンは耳まで熱くなった。
 ロゴスを構成するのが、軍需産業中でも大企業のトップクラスの人間たちだ、というのはまるで
どこかの小説にでも出てきそうな話ではあるが、多分そう大きくは違わないだろう。
 それくらいはシンにも想像がついているし、「ロゴス本部」と書いた看板が出ている建物が
どこかにあるわけでもないのも十分にわかっているのに……と頭を抱えたくなる。
「だから、そのっ」
 シンは体勢を立て直そうとできるだけ急いで、しかしまた馬鹿を言わないようにと考えながら
言葉をつむぐ。
「だから、ロゴスって死の商人たちがいて、そいつらが戦争を起こしたがっているんでしょ?
 だから、その死の商人たちを潰せたら……って、そりゃ簡単なことじゃないでしょうけど……」
 シンが懸命に話すのにじっと耳を傾けていたアスランは頷いた。
「そうだな。簡単じゃないだろうな……」
 アスランは視線をシンから海原へと移す。
「それに、それだけじゃ戦争は終わらないさ、きっと……」
「え?」
 シンは驚き聞き返した。
 ロゴスが戦争を始めたのなら、ロゴスが無くなれば戦争は終わるのではないのだろうか?
「それを潰すことができたとしたって、もう既に踊らされてる者はいる。そうでなきゃ、一度
終わった戦争がたった二年で再開戦するなんてことにはならないだろう?」
 アスランの言葉にシンはユニウス・セブンを思い出した。
 今度の開戦のきっかけとなったブレイク・ザ・ワールド事件。それを起こしたのはコーディ
ネイターだ。決してナチュラルだけが戦争をしたがっていたわけじゃない。
234河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 22:58:35 ID:???
(6/9)

「『殺したから殺し返して、それで最後は平和になるのか』」
 唐突にシンが呟いた言葉を聞き、アスランは目を丸くしてシンを見た。
「……でしたっけ?」
「あ、ああ」
 シンの問い掛けにアスランは頷いて答えた。
「ディオキアで隊長からこの言葉を聞くまで、俺はそこまで考えてなくて。
 やられるから、やり返すんだ、それで正しいんだって思ってて。だから、何て言うか、その」
 感動した、とまで言うのは大げさな気がしてシンは口を閉じた。
 何か的確な言葉は無いだろうかと考えを巡らせていると、アスランが口を挿んだ。
「カガリだよ」
「は?」
 シンは何を言われたのかわからなくて聞き返す。
 カガリ? カガリ・ユラ・アスハ? あの馬鹿女がどうかしたのだろうか?
「あの言葉は、カガリが俺に言ったんだ。俺もそれまでは今のお前と同じように、やられたから
やり返した、だから正しい、仕方ない、と思ってた。
 だけどカガリにそう問われて、初めて戦争ってものに疑問を持ったんだ」
 シンの全身を一瞬血の気が引くような感覚が襲い、その一瞬後にはそれが幻覚だったかのように
身体中が熱くなる。
「毎度毎度、アスハは綺麗事ばっかりだっ!」
 感情のままに吐き捨てたシンをアスランはちらりと瞥見し、
「綺麗事、か……」
 と呟く。
「どんな理想だって『綺麗事』の一言で片付けられてしまえば、どうしようもないだろうな」
「っ!…………」
 シンは咄嗟に言い返そうとし、しかし、言葉にならず黙した。
 自分でもそれが理不尽な怒りだと感じたのだ。
 綺麗事、と切り捨てたその言葉に感動に近い思いを持っていたのだから。──アスハの名を
聞くまでは。
「そうやって、カガリやオーブのすべてを否定し続けるのか?」
「でもっ!!」
 シンは思わずアスランに食って掛かる。
「確かに自分はオーブやアスハに対し、敵対心を持ってます。でも、それは仕方ないじゃないですか。
 オーブは、アスハは国民を──家族を守ってくれなかった。俺の家族はオーブに殺されたんだ!!」
 できるだけ冷静にと努力を試みるシンだったが、結局最後には激昂して声を荒げてしまう。
 家族の死についてだけは未だに平静に話をすることすらかなわないでいる。
235河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 23:00:47 ID:???
(7/9)

 シンは一度大きく深呼吸をして、昂った気持ちを押さえつけた。
「隊長はアスハとかオーブに何か幻想持っちゃってないですか? あんないい加減な国、他にない
じゃないですか」
「いい加減?」
 シンはアスランの声に心持ち険が混ざったように感じた。
 期間の違いはあれど、オーブ市民として過ごし、そしてザフトへ所属したアスランと自分。
 それなのに何故オーブに対するスタンスは正反対に近いのか、とシンは思う。
 それは家族を殺されたか、殺されなかったか、の違いだけなのだろうか?
 シンが祖国オーブを捨て去ったのは二年前。アスランはその後にオーブに移った。
 大戦前のオーブを知らないアスランと、大戦後を知らない自分。
 一市民だった自分と、多分アスハの仲間としてオーブの行政を身近に見ていただろうアスラン。
 一つ一つを思えば、確かに相対した境遇にあった。
 そんな自分たちの間には如何ほどの差があるのだろう?
 だがシンは引かなかった。引くわけにはいかなかった。
「だってそうじゃないですか。今度の事にしたって、同盟を結ぶって言った直後に白紙撤回ですよ?
 振り回される国民はいい迷惑ですよ」
 アスランがシンに向き直った。
「それでも、あの国は今の地球で唯一戦わないことを選んだ国なんだぞ」
「それはっ……そうかもしれません……けど」
 シンは釈然としない気持ちのまま口をつぐむ。
「家族を失ったお前の気持ちも分からなくはない。
 が、議長も仰っていただろう?
 『戦いを終わらせることは、戦うと決めるよりはるかに難しい』と」
 アスランは溜め息のように大きく息を吐き出した。
「俺は実際に見てきたからな。前の戦争を」
 アスランの視線がまた海原へ──更にその向こうへと向けられる。
「地球軍はプラントを核で狙い、ザフトもまたジェネシスの照準を地球に向けた。どちらも軍人──
戦う力を持った者だけじゃなく一般市民をも皆殺しにしようとしていたんだ。
 そして、当時ザフトを──プラントを統率していたのは、俺の父、パトリック・ザラだ」
 確かに先の大戦を始めたのは、パトリックではなかった。
 だが、それを最悪の形で終わらせようとしたひとりだ。
 またユニウス・セブンを落下させた者達は、彼の言葉を正しきものと掲げていた。いや、表に
出ていないだけでまだその同志は存在しているのかもしれない。
236河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 23:02:51 ID:???
(8/9)

「俺は『アスラン・ザラ』なんだ。あのパトリック・ザラの息子なんだよ」
「そんなこと! 確かにザラ、いえ、ザラ元議長は間違ったかもしれません。でも中世じゃ
あるまいし、父親が戦犯だとか罪人だとか、そんなこと今の世の中じゃ関係ないじゃないですか!」
 そう言い切った後、シンは自分の言葉に愕然とした。
 自分が今言ったことは間違っていないと確信している。
 では自分は? ウズミ・ナラ・アスハの執った行動の責任を、娘のカガリに負わせようとして
いたのではなかったか?
 しかし、シンは自分の考えを自分で否定した。
 違う。俺は今のアスハ──カガリ・ユラ・アスハの言動に疑問を持っているんだ。だから違う。
違う筈だ。

「なあ、シン。お前はどうしてほしいんだ、オーブに」
「俺は……」
 問われて、シンは考える。
 二年前家族を殺されてから、ずっとオーブを、アスハを憎んでいた。
 理想だけの『理念』ではなく、国民を──家族を守って欲しかった。
 けれど、そのオーブが『理念』を捨てたと聞いたとき、それまで以上にアスハを憎んだ。
 シンの願ったとおりに、『理念』よりも国民を選んだというのに。
(違う。今更そんなことをして何になるって思って。だから俺は!)
 そうだ。もう遅いのだ。今更『理念』を捨てたとしても、シンの家族は還らない。
(でも、それは、誰が何をしたって同じことで……)
 たとえオーブが同盟を結ぼうと結ぶまいと、シンの家族は還らない。誰にもシンに家族を還す
ことはできない。
(だけど、オーブが同盟を結べば、もう誰も泣かずにすむのかもしれない)
 地球連合軍の一員となってしまえば、もう国は焼かれない。
(だけどそうしたら……ザフトの敵になる?)
 オーブの軍事技術力はザフトにとっても脅威だ。オーブが敵になるのなら、ザフトはオーブを
積極的に攻撃するだろう。もしかしたら、それはシンの手によって行われるかもしれない。
(そうしたら、また国は焼かれるのか? また誰かが泣くのか? 俺の手で?)
 オーブが敵になるのなら俺が滅ぼしてやる、と思った。
 しかしそれはアスハを倒す、というだけでは済まない。シンが二人目のシンを作り出すという事。
237河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 23:04:13 ID:???
(9/9)

(同盟に参加しようがしまいが、どちらも同じ?)
 どちらの道を選んでも、オーブに未来はないのだろうか?
(だから、だからオーブはどちらの道も選ばなかった?)
 オーブは連合に与しなかった。もちろんザフトの味方でもない。オーブは三つ目の道に光を
見い出したのだろうか?
『じゃあ、シンはあの時、オーブがどうするのが良かったって思う?』
 唐突にルナマリアの声が脳裏に閃いた。
 その答えは今もまだ出ていない。
(じゃあ俺は、今、オーブがどうすればいいって思うんだ……?)
「シン……?」
 気が付くとアスランが驚いたような心配するような顔でシンを見ていた。
 何かくすぐったいような感触が頬を伝い、シンは自分が泣いているのに気づく。
「し、失礼しますっ!」
 慌てて顔を袖口で乱暴に拭ってそれだけ言うと、アスランに背中を向けてシンは走り出した。
 シンは思い出していた。
 花と緑でいっぱいの春の草原。日差しが痛いほどに眩しい夏の海。紅葉と春と見まごう程に花が
咲き乱れる秋の並木道。いつもよりも冷たい、しかし決して凍えるほどではない冬の風。
『南海の楽園』、『南の宝珠』とまで謂われた祖国。
 そして気づいてしまった。
(俺は……俺はあの国には平和であって欲しかったんだ……)

  ◇ ◇ ◇

 シンをただ呆然と見送ったアスランは、混乱していた。
 何かシンの気に障るようなことを言ったとしたら、彼の性格上言い返してくることは必至だ。
 しかし、そのシンが涙した。
 とすれば、自分は何か途轍もなくシンを傷つけてしまうようなことを言ったのではないだろうか?
 そのアスランの逡巡を嘲笑うかのように、突然アラートが響き渡る。
「コンディション・イエロー発令。パイロットはブリーフィングルームで待機してください」
 胸の中に新たな重石を加えたアスランは、シンを追うように艦内へと走り出した。
238河弥 ◆w/c45m7Ncw :2007/07/12(木) 23:06:43 ID:???
規制解除ヤホーイ!!

納期が2週間以上早まってしまったんで、しばらく仕事モードに突入します。
次回は7月末くらいになると思います。
239CE大戦秘話:2007/07/13(金) 02:25:34 ID:???
「ドッキングを急がせろ!アークエンジェルを持たせる訳にはいかない!」

宇宙、
オーブを脱出したクサナギとアークエンジェルはクサナギのドッキング作業で動けなくなっていた
ドッキング作業で忙しい中、クサナギの艦長、レドニル・キサカ一佐は自軍の戦力をコンピュータで見ていた。
「やはり本艦に15隊が確認できない。乗り遅れたのだろうか?」
当時、15隊はたしかにマスドライバー前にいた事は確認していた。全滅してしまったのか?
そんな時、一人の整備兵がブリッジに入る

「リィータ・アーシェン一曹、報告に参りました」
リィータはキサカに敬礼をする
「アークエンジェルからマリュー・ラミアスとムゥ・ラ・フラガがデッキにおいでです」
「来たか。今いく」
「そして15隊の件なんですが……」
「その事だが、15隊はクサナギへは乗っていない。すでに確認した」
「そう…ですか」
リィータはそのままキサカに敬礼をして、ブリッジを出る
「せっかくお父さんに頼んでマコトをクサナギへ配置してもらったのにマコトが部隊ごといないなんて…」
廊下を歩く途中、リィータの動きは止まり、地球を見下ろした
「死んだ、わけないよね」
リィータは溜息して、呟いた
「マコト、あなたは何処にいるの?」


3話 《大島》
240CE大戦秘話:2007/07/13(金) 02:27:31 ID:???
「………!」
眠りから起きたマコトは周りが狭い事に驚いた
コクピットで寝ていたからである
「そうか、俺はたしか…」
昨日の出来事が脳に再生する

連合軍との激戦、隊との別れ、そして崩れるマスドライバー………

「あれから丸一日、か」
マコトは起動ボタンを押し、
正面画面から外の状況を映し始めた
見えるのは海、海、海
周りに敵がいないとはいえ、
いつでも迎撃できるため、MSパイロットは降りるのは禁じられている
起動したのを気づいたのか、もう1隻の甲板に乗っていたM1から通信が入った
「よう小僧、どうやら起きたようだな」
「すいませんクラタ二尉、疲れが溜まってましたので」
「なあに、状況はちっとも変わっとらんよ」
「まだ助けが来てないって事ですね」
マコト達の護衛任務の最終地点は海のど真ん中であった
近くには陸は無く、とても助けが来るような所ではない
しかし、命令は命令であり、ひたすら待ち続けるのであった


「ん……これは!」
マコトのレーダーに巨大な反応をキャッチした
「二尉!」
「ああ、俺も確認した、デカイのが来るぞ」
「戦艦2隻とMS2機だけで迎え撃つんですか!」
マコトは焦り始めた
これほど巨大な戦力を持つのは連合軍だけしかない
「視界確認………おいおい、なんなんだありゃ」
「えっ」
マコトの視界にも見え始めた
島のような物が近づいてくる
「なんだ、あれは?」
島ではない。今までに見たことの無い巨大な浮体構造物であった。

――ちら……ギ………ォト………――
「全方通信?あの島からか?」
――………こちら、ギガ・フロート。オーブ艦、応答してください。こちら、ギガ・フロート。避難民を受け取りに参りました――
241CE大戦秘話:2007/07/13(金) 02:29:32 ID:???
「こんな物が作られていたなんて……」

ドックでは船から多くの民間人が下りていき、マコトは現地の責任者、ジャンク屋組合によって機体から降ろされてしまった。しかし彼らは決して強引でやつたのではなく、話し合いでマコトが納得したのである。

組合から案内された場所はギガ・フロートの本部。そこにいた者達は既にオーブから脱出し、先にやって来た軍人が大半であった。
そしてそこにはマコトの知っている人物もいた。
「ラム三尉か?」
「あなたは、トダカ一佐!」
マコトはトダカに敬礼した
「一佐もここへ着いたのですね」

マコトとトダカはしばらく話し合い、外の公園まで歩いていた

「本国での戦いで、我々は多くの物を失った」
トダカは動きが止まり、目を瞑った。
「我々は国を、理念を、仲間を、そして家族を失った」
(仲間……)
マコトは15隊を思い出す
「失った者達は軍人だけではないのだよ」
そう言い、トダカは公園のベンチに座っていたある人物を見つめた
彼の見つめた先は14,5歳程の黒髪の少年
ただ下を向いたまま、何も動じず、まるで抜け殻のようだった
「あの少年は?」
「戦争の犠牲者だ」
トダカは両手を握り始めた
「彼は家族を失い、生きる意味を失った。私達オーブの軍人が守るべきはずの市民を守れなかったのだ」
怒りと悲しみの声で言うトダカにマコトは何も言えなかった
「彼にはせっかくの人生を無駄にしてはいけない、それは無論、君も同じだ」
その時、ジープが一台やってきた。
「迎えだ、では私はこれで………」
マコトはジープに乗るトダカに敬礼をし、
「ラム三尉!」
トダカは走り出すジープからマコトに呼び掛ける
「軍と言う鎖に縛られてない今、お前は自分の判断で行動しろ!死ぬような事はするな!」
ジープが消えるまで見送った後、マコトはどうすればいいのか分からなくなっていた

「今の俺にできる事は一体何なんだ?」

マコトはそう言い、遠くに立つジャンク屋の旗を見つめた……
242CE大戦秘話:2007/07/13(金) 02:31:42 ID:???
3話投下完了。
なんかヒドイ 
グスッ
243通常の名無しさんの3倍:2007/07/13(金) 22:15:11 ID:???
編集長がキャンペーン中だと言うので書いてみるww
気に障ったらごめん

>>弐国
主人公のキャラがしっかり立って見えるのは一人称だけの所為じゃないな
伏線を張り巡らせてるようだが、あなたの場合最終回のプロットはもうあるだろう
と思うので回収に期待する。クライマックスはアレ、かな。やっぱりw

>>河弥
カッコ外してもそのまま成立するんじゃないかい?
それも個性と言われればそうなんだけど個人的には読みづらい
『ダブル・アルファ』が話にどう絡んでくるのか楽しみ

>>大戦
携帯で打ってる、かな? 俺からは一つだけ
句読点の扱いに気を付けてくれ。『。』があったり無かったりは見苦しい
アストレイまで含めて設定自体は良く拾ってる。オリジナル要素の味付けが肝だな
244通常の名無しさんの3倍:2007/07/14(土) 08:47:53 ID:???
弐国氏
正直、前二作はあまり好きじゃなかった。けど今作は凄く面白いです。
ミツキに惚れそうですよw 続き楽しみにしています。
245女神が住まう国(帝国編) ◆w43rHqzb0U :2007/07/15(日) 00:34:56 ID:???
「そうですか。やはりカガリさんはこちらの要求を聞いては戴けませんか…」

薄桃の髪に白銀のティアラを付けた乙女…、否。今はこの神聖帝国の美しき女帝、
――“ラクス・クライン”――
彼女はそうつぶやき、紅茶の入ったカップを静かにソーサーに戻す。
「今日のお茶、少し苦いですわね…」
彼女は紅茜の液体を哀しげに見る。

そんなはずは無い。茶葉はいつものロワイヤル。お湯の温度と量、淹れ方、砂糖とミルクの加減。
すべていつもどうりなのだ。間違うハズが無い。何より、先ほどまでラクスさん、
『今日も美味しい』と、アタシに微笑みながら言ってくれたではないか。
先ほどと唯一違うのは、今の報告…。こちらからは見えないが、ラクスさんのサイドテーブルに置かれたモニター。
そこには映っているのは、アタシの未来の旦那様(予定)…がいるはずだ。
ラクスさん、少しでいいから替わってくれないかな…。……。…って、今あの人なんて言ったのぉ!?

『――ああ。オーブ政府は明後日、正式にカガリ・ユラ・アスハの、オーブ代表首長への就任を発表した』
モニターの声はもう一度、同じ内容を繰り返す。あえて感情は込めず、淡々とした声色で。
そっかぁ。カガリさん、やっぱりオーブの代表になるのかぁ。…って、それって!

「…カガリさんの代表首長就任。それは即ち、カガリさんが統一地球連合の代表になる―と、同義なのでしたわね?」
『…いずれはそうなると推測されます』

3年前、ラクスさんやアタシ達は、自分の母国『プラント』と戦った。
アタシや彼は、“元”ザフトで…。あ、ザフトってのは…ま、簡単に言うとプラントの軍隊。
そして、なんやかんやがあって、で、アタシや彼はザフトの仲間から追われ、撃墜…殺されたんだ。
でも運良く生きていて。やはりザフトから追われていた、“プラントの平和の歌姫”ラクスさん…。
彼女とその仲間の人と一緒に、悪いコト企んでたプラントのデュランダル議長をやっつけたの。
その時、戦力の乏しいアタシ達と“アークエンジェル”に協力し、共に戦ってくれたのが“オーブ首長国宇宙艦隊”
言わずとしれた、カガリさんの国の軍隊。つまりカガリさんはアタシ達の大切な仲間だった。

地球・プラント双方が互いの殲滅を唱え、レクイエムが破滅の歌を奏でようとしたその時…。
246女神が住まう国(帝国編):2007/07/15(日) 00:38:32 ID:???
みんなの活躍で、プラントも地球も最悪の結果を免れた。…え? 話をはしょり過ぎ?
詳しいことは『C.E.73 地球とプラントの抗戦史 著 A.トライン』でも見てください。
ともあれ、地球とプラントは、平和になった。なったハズなんだけど…。

その後、ラクスさんはプラント評議会議長に就任したんだけど。約1年後、ラクスさんは評議会の解散を宣言。
プラントを一国家とし、地球連合からの独立を宣言。国名『神聖帝国ラクミア』を名乗ったの。
そして、連合に地球における帝国領土を要求して…。連合はその要求は受け入れず。その時…。
ラクスさんは、領土予定地だった“ウェールズ”に向けて、封印していたレクイエムのタクトを振るったのだった。
ウェールズの地は消滅した。…60万という人命とともに。
ラクスさんは『しかたがなかったのですわ』、としか言ってくれないんだけど…。
その行為で、当時プラントの同盟国だったカガリさん…オーブは即時、同盟を破棄。
混乱する連合の先頭に立ち、ラクスさんを『侵略者』と呼び、レクイエムの中継ステーションを、
その突出した軍事力…、オーブ宇宙艦隊ですべて破壊した。
プラ…ラクミアとオーブは一転、敵対する間柄となってしまった
247女神が住まう国(帝国編):2007/07/15(日) 00:41:51 ID:???
「彼女やオーブの方の命が欲しいわけではありません。ただあの“チカラ”だけは存在してはいけないのです」
『…“エノク・オーブ”、か…』

レクイエムの中継ステーションが破壊されたあと、帝国はその報復としてオーブ本土への上陸制圧作戦を行なった。
ラクスさんも苦渋の選択だった。地球へ、帝国のチカラを誇示する必要があったのだ。
その為の作戦であり、そしてそれが九割方成功した時…彼らは現れた。

――エノクの煌光――
彼らはそう名乗り、わずか一部隊―16機のモビルスーツで、上陸作戦に参加した帝国三個師団を壊滅させた。
以降、何度かオーブと刄を交えたが、その都度、帝国軍は彼らに辛苦を舐めさせられた。

『…アイツが2機墜とした、と聞いてますが』
ラクスさんの伴侶であり彼の親友は、あの“ストライク・フリーダム”を駆り、
エノク・オーブと闘い、まさに鬼神のごとき強さを見せた。
ラクスさんが頷く。
「はい。ですがそのせいでストライク・フリーダムは中破。命に別状はありませんが、彼も重傷を負いました」
「…アイツにそれほどの手傷を負わせるなんて。侮るワケにはいかないな」
彼は顎に手を当て、唸る。
「ですから、今あの“エノク・オーブ”に対抗出来るのは、帝国には貴方しかおりませんの…」
『…解った。命令を。ラクス…いや、ラクス様』

彼の言葉を聞き、ラクスさんは頷く。そして凛とした声で彼に告げる。

「神聖帝国ラクミアの名に於いて、私、“ラクス・クライン”が命じますっ。
帝剱赤騎士“アスラン・ザラ” これよりオーブへ赴き“エノク・オーブ”を壊滅、
そして、カガリ・ユラ・アスハのオーブ代表就任を阻止してください!」
「…はっ!! ラクミアの為にっ!」
敬礼をし、そう言うとアスランさんは通信を切る。

…ああ、結局お話出来なかったなぁ…。ちぇぇ。
そんなアタシの表情を見て、ラクスさんが困ったように苦笑する。
「…では、私達も参りましょうか」
は…? あの…どこへでしょうか? アタシは首をかしげる。
ラクスさんは自分のティアラを外しながら告げる。

「…エターナルへ。アスランに新しい剣…“サイレント・ジャスティス”を届けに…」




―― F I N ――
248女神が…:2007/07/15(日) 00:47:49 ID:???
いやもうなんて言うか…。

も、多くは語らない。作品で伝えるしかない。
249通常の名無しさんの3倍:2007/07/15(日) 08:09:57 ID:???
「ついに……ついに来た! 否、着た! 幾百年もの長き眠りを経て、俺の三ヶ月分の給料をはたいて……遂に! 見ろ、ディアッカ!」
 ボルテールの艦内のイザークの部屋で、部屋の持ち主イザークは声高らかに叫んだ。
 ディアッカは室内を見渡し、何を見ろと言っているのか分からないのでイザークに訊ねた。するとイザークは忌々しそうに舌打ちし、
「判らんのか、これだから……見ろ!」
 おもむろに机に置かれていたケースを開き始めるイザーク。
(いくらなんでも見つけられないぜ……)
 中には何かの古びた……オーブの母国語たる日本語で何かを書かれたうすっぺらい物があった。
「それで? このばっちいのはよ……ちょ、マテよ!」
 黄金の右ストレートを受けてディアッカはくずおれる。立て! 立つんだ俺! ミリィのナイフ捌きに比べりゃこんなの!
「……判らんか? これは東共和国の日本という地区のお守りでな。かなり昔のものらしく、俺の給料の三ケ月分をはたいてやっと手に入れたんだ!」
「ぐぅっ……ぬぅ……そんなことか……ぐふ……」
「探し始めて四ヶ月間、ユニウスセブンの落下被害のせいで探すことは困難になり(以下省略)更に同業者がこれに多額の金を(以下省略)しかしそれを乗り越えたと思ったらシホが仕事をしろと煩くて(以下省略)だった訳だ」
「で……俺にどうしろって?」

せめて、夢の中だけは
第八話 交差する力

「シン、ちょっと付き合え」
 ……ったく、人様が格納庫に行ってブルジョワなシミュレーションを繰り広げてやろうとしているときにこのどこぞのアスランは。
「……なんすかぁ?」
「あからさまに不機嫌そうな顔と不機嫌そうな声で対応するというのは、性格云々以前に少々礼儀知らずじゃないか……?」
 明らかに引いている。そりゃそうだ。こんな人でも人の子。のはず。
「用ってなんですかぁ?」
「いや……フリーダムな……一つだけ、助言できることがある。負けの経験なんて要らないと思うなら、止めとこう……」
 ぬぬぬ……。
 普段嫌いな奴が控えめに物を頼んでくると気になる。というか可哀相になる。てか可愛く思える。
 ……はっ! いやいや、いかんいかん! まぁ、一応聞いとこうかなぁ……。
「一応聞いときます。それで、助言って?」
「……実はな……フリーダム、あの機体は必ずお前を落とさない」
 ……ああ、あの傲慢なやり口か。
「知ってますよ……」

「だろうな。なら、これは知っているか? あの機体は、自分が絶対危険粋にでも状態が移らない限り、“コックピットへの攻撃を逸らしたり”、“取り止めたりする”」
 ニヤリと微笑むアスランを前に、俺は何か嫌なものを見ているような気がした。
 だが、しかし。何てことだ。まさかあのフリーダムに、そんな弱点があろうとは。いや、あるいは気づけたのかもしれない。そう、あの“闘い方”から――
「これはあくまで俺の負けの経験と、予測、憶測でしかない。どう戦ろうとも、お前の勝手だ」
 まったく、こんな、一歩間違えたら俺が即死する考えを、この人は。
 英雄なんてモンじゃない、もっとひでぇもんだ。しかし、待てよ……?
「変わりましたね……?」
 これにもやはり、アスランはニヤリと笑って答えた。
「別に、吹っ切れただけさ。原因は、君と、新しく来た整備員の彼さ」
 彼。誰だか分からないが、この男に影響を与えるほどの人物らしい。俺は別に影響を与えたつもりは無いのでなんか勝手にほど良くいい感じで勘違いしちゃってるんだろう。
「フリーダム、落とすのはお前に任せたぞ」
 また、この生え際が怪しい青年はくすぐったいことを言ってくれる。だから、だろう。俺は照れ隠しの意味も込めて、顔を背け、どもりながら、その声に応えた。
「……お、応よっ!」
250通常の名無しさんの3倍:2007/07/15(日) 08:11:59 ID:???
「AWACS○○六より入電! セクションスリーポイント一八三六にアンノウン、アークエンジェルです」
 吹雪でその身を覆い隠していたコンプトン級に偵察用ディンからの報告が届いた。その隊の隊長、ウィラード嫌味ったらしく微笑を浮かべて、頷いた。
「やはり動いたか……」
 一応、これで作戦目標の三分の一は達成したような物だ、とウィラードは微笑を消し、内心思いつつ、だがそんなことはおくびにも出さずに的確に指示を下す。
「司令部へ報告。それとデータベースを直しておけ」
 ブリッジ要員が息を呑む。
 目の前に敵機が訪れ、その砲口を向けられた時のものとは違う、恐怖ではなく、驚愕のそれ。
「現時刻を持って、あの艦はアンノウンより、エネミーへと切り替える」
 アンノウンよりエネミー。不明艦より敵艦へと切り替える。つまり、あの艦は敵。
 かつてはプラントをも救った英雄の乗る艦を、敵と断定し、攻撃を加える。
 その呑み難い命令を、ブリッジ要員たちは僅かな抵抗を見せることなく――やはり、流石はプロ、といったところか――こなしていった。
 エンジェルダウン作戦が、いままさに、発動されようとしていた。 





「えいわっくすろくろくまるよりにゅ〜でん! せくしょんすりーにあーもう面倒臭いから適当に読み上げろ」
 そのコンプトン級からそう遠く離れていない海、その奥深くに、それはいた。
 全長400メートル近く、細長く、しかし、絶対に折れない刃を思わせる体。
 それはアークエンジェル級にも似ていて、イズモ級にも似ていて、ガーティ・ルー級にも似ていた。
 そのブリッジに、悪意の根源たる“それ”は居た。
 それ、右手を白い手袋で覆った男は艦長席に居座り手をひらひらさせながら隣で立っている女性に声をかけた。

「……つい先程アークエンジェルを捜索していたウィラード隊が、コンプトン級所属機、AWACS○○六から、セクションスリーポイント一八三六にアンノウン、つまりアークエンジェルを確認したとの報告を受け、移動を開始いたしました」
 女性は全く、表情どころか、声のトーンすらも、変えることも無くそれに答える。
 述べてから、ソナー室からの連絡を伝える伝達員に目を走らせた。伝達員はそれに目線で答える。依然艦のソナーに反応は無い。
「ふーん、周囲の上空には?」
「はい。今のところは何も。海中も付近の海に潜水艦と思しき物体は……はい、いいえ。六時一七マイルから一八マイル先にザフトの潜水艦と思しき音源を探知。恐らくボズゴロフ級です。天使様の待ち伏せでしょうかねぇ……?」
「戦力分析……ゾノ三、グーン五辺りが妥当と思われます。」
「つまらないなぁ。なんのためにパワー借りてきたんだか」
 それっきり、男は黙り込んだ。女性も、黙り込んだ。重たい沈黙がブリッジに齎されるが、ブリッジ要員は特に気にした様子もなく自らの仕事をこなしている。どうやら、これを見る限りいつものことのようだ。
 何分かして、通信士が、僅かに頬を緩めて二人に報告した。
「艦長、天使落とし、始まりましたわぁ。こりゃ大部隊ですね」
「女神様が来てねぇんなら興味ねぇ」
 あっけからんと言いのけた男を冷ややかな視線で見下ろしながら、女性も、一応、の労いの言葉をかける。
「……ご苦労」
 と、突然、空気に乱れが生まれる。原因は席から身を乗り出している男だ。まるで新しい玩具を与えられた子供のような顔。反射的に女が顔を歪める。
「ククッ、ひひっ! 気が変わった。レッド2に回線繋いでやれ。」
 また唐突に男が喋りだした。言われて、女性が復唱し、通信士が手元の装置を操作する。
 三秒経って、モニターにゴツイヘルメットを被った人影が映った。バイザー越しに見えるその赤い瞳は、血に植えた肉食獣を連想させる。
『んだぁ? こちとらイラついてんだよぉっ! 獲物は何所だっ!? ドイツを食わしてくれる!? とっとと出しやがれぇぇェッ!』
 いきなり叫びまくる人影を尻目に、気にしたそぶりを見せることなく男が軽く手を振って答えた。
「フォビドゥン・ヴォーテクスMKUで暴れてみたいか? 六時、一七マイルから一八マイル先にがザフトの潜水艦がある。落とそうとしてバレルのも不味いが、じっとしていて見つかるのも不味い……」
 遠まわしに落とせと言っているようなものである。しかし、ゴツイヘルメットを被ったフォビドゥンヴォーテクスMKUのパイロットはその瞳を見開いて、狂った、狂気った叫び声をあげた。
『ひゃぁぁっはっハアァァ! イイぜぃ! とっとと出せやぁ!』
 が、馬鹿みたいに喚き叫ぶので、ブリッジ要員の目が細まり、それを察したかのように通信士が無断で回線を閉じた
251新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/15(日) 08:14:13 ID:???
「現在、深度五〇〇。速力二ノット」
「海上はやや強風。先ほどから警戒に当たらせているAWACS○○二を付近の平野に着陸させます。許可を」
「うむ。どーぞ」
「了解」
「レッド2、第二気密室に入りました。ハッチ閉鎖。気密確保。注水準備整いました」
「ごぉくろぅ。やれ」
「第二気密室に注水を開始して」
「了解」
 この艦、能天使パワーの中で、てきぱきとMSの発進準備が進められていた。この艦は、水中・水上・宇宙での運用を主としているからか、設備がアークエンジェル級と比べるときっちりしている。
「注水完了」
 あとは、指示を下すだけだ。男はそれこそ怒鳴りをあげるように、命じた。
「出撃用ハッチ開放。沈めてこい!」
 今、狂気った従者と共に、禁断の力を秘めた獣が解き放たれた。
 暗く、昏く、冥く、闇く、仄い想い(狂気)を秘めた獣が解き放たれたのだ。

 パワーから発進したフォビドゥン・ヴォーテクスMKUは、ゆっくりと加速し始めた。
 最初は緩やかに、段々と速く、そして、基となったフォビドゥン・ヴォーテクスよりも、現存の魚雷よりも、疾く。
 そして徐々に浮上し始める。ノット数はかなりの物になっていた。ソナーに映るボズゴロフ級の影も段々と近付き始める。
 敵がヴォーテクスMKUの存在に気づき、MSを発進させると同時に魚雷を発射。
 如何に最新のトランスフェイズ装甲を持っていて、新型エンジンを搭載しているヴォーテクスMKUといえど、魚雷を丸々食らえば吹き飛んでしまう。だが――
「オセェんだよぉっ!」
 その心配は無かった。高速で接近しつつある魚雷を軽々とかわして見せたヴォーテクスMKUはモニターを有視界戦闘に切り替える。
 迫るグーン。それが放つ魚雷を僅かに身を反らして避けると、速度を弱めることなく肉迫し一閃。トライデントを軽く振って見せ、グーンを追い越す。
「オォチロォッ!」
 遅れて、かなりの水圧に耐え得るはずのグーンの機体が真っ二つに割れた。一瞬置いて爆発。
 それを見たゾノやグーンがその場に“静止”し、一斉射撃を試みるも、ヴォーテクスMKUの機動性に追いつくことはままならない。一機のゾノがそのクローを勇ましく振るうも、それは海水を切るだけで留まり、コックピットを一突きされて機動を停止する。
「雑魚がァッ!」
 そのままゾノを盾に、グーンに迫る。これもまた軽く振られたトライデントに身を切り裂かれ爆破した。
 流れるような動作で瞬く間にヴォーテクスMKUはザフト軍のMS部隊を全滅して見せた。



「馬鹿な! グーン五機にゾノ三機だぞ!  数で勝っているはずが、何故!」
 ボズゴロフ級の艦橋で艦長は怒りを露に叫んだ。
 そもそも、あの機体は急にソナーに反応を示したのだ。しかも魚雷を超える速度で迫り、こちらのMS部隊を撃破して見せた。
 例え機体が強かろうが、パイロットは所詮ナチュラル。パイロットの質と数で勝るこちらが敗れることなど、在り得ないとも艦長は考えていた。
 しかし、違うのだ。実はこの部隊は、実に錬度が低かった。いや、ザフトの中では高い方でも、客観的に見ればわかるほど、低かったのだ。
 何故MSが戦艦に勝るのか。小回りが効くからだ。何故MSが戦車に勝るのか。自由に移動できる上に、移動能力が高く、射角が広いからだ。
 何故MSが戦闘機に勝るのか。戦闘機よりも火器が豊富で、小回りが利くからだ。
 MSの基本は移動だ。移動、つまり機動だ。彼らの部隊はそれができていなかった。MSの戦闘は極一瞬の物だ。
 相手を捉え、機体を走らせ、引き金を引き、横っ飛びに飛んで、迫る砲弾を避け、相手を探し、相手を捉え。突っ立ってただ撃つようなことは、しないのだ。
 機動性と、運動性と、豊富な火器が魅力的だったMSの効力を、彼らの部隊は活かしてはいなかった。別に彼らは前大戦時はこうでもなかったのだが、大戦初期の圧倒的な大勝が彼らをこうも陥れた。
 その豊富な経験、即ち油断が、彼らの敗因だった。
 動くことすらままならず、紙切れのように吹き飛んでいくMSに目を見やりながら――ここは深度が浅いので船体随所にあるカメラで戦闘を捉えている――艦長は静かに絶望した。
 そして――
252新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/15(日) 08:20:42 ID:???
 ボズゴロフ級に一瞬で肉迫し、ヴォーテクスMKUがその厚い装甲にトライデントを突き立てながら船体を疾り回る。やがてそれは艦の装甲を突き抜け、内部構造に支障を来たし――
「死ねええぇぇぃ!」
 最後にフォノンメーザー砲を食らって、呆気なく、ボズゴロフ級は沈んだ。
 堕ちて行く残骸に背を向け、青い、しかし、所々に赤い塗装を施されたヴォーテクスMKUが再び海の中を疾り始める。
「多少の暇潰し程度にはなった。後は女神様に期待するかねぇ……」
 そう呟くパイロットの声には、先程までの凶暴的な類の物は微塵も感じられなかった。



 その頃、雪が降り積もる山々の合間を縫う様にミネルバは突き進んでいた。



「君がインパルスのパイロットだよね?」
 何か今日は良く呼び止められるな。今度は誰だ? 振り返れば色眼鏡をかけた整備員、人の良さそうな青年が立っていた。
「おっと失礼。僕はサイ。新しく来た整備員さ。あの機体は良く使いこなされているね」
「戦闘ごとにデータを更新して、それに適した対策を練った形跡が見られるし、特にフリーダムとのシミュレーションデータが多かったかな」
「パーツの予備は危ういけど、新型の四種シルエットを使えば何とかなるし」
 何か一気にまくし立てられた。
「ど、どもっす。って、新型の四種シルエット?」
 どことなく目を輝かせたサイという青年は、ぐっと握りこぶしを作って語り始めた。
「そう! 新型の開発が予定外の事故で遅れてるから没になったガイア、アビス、カオス、この三機のデータを盛り込んだシルエットさ」
「はっきり言って実働データが(なんか壮絶な専門用語の羅列を聞かされること4分少々)それにこれはデスティニー(愚痴を聞かされること8分少々)なんだ」
「そ、そっすかー。すごいっすねー(棒読み)」
 恐らくソッチ系の人だ。語らせるとだまりゃしないから逃げるが良し。てことで逃げようとした時――
「――君は、人を撃つ、という感覚を知ってるかい?」
 冷たい声が俺の心を引きとめた。
 人を撃つ? 知ってるに決まってる。何を今更。
「モビルスーツと戦ってるから解りづらいけど、そのモビルスーツの中には、家族を持った人が乗っているんだ。それを撃つ、ということが、君にわかるかな?」
 わかる。わかるけど、戦わなきゃいけないから今迄こうして戦ってきた。そんなこと、考えないようにしてきた。
 そんなものは戦士には不要だからだ。当たり前だろうが。
「はん、何を今更! 相手を殺さないように戦えってのか!」
「そうは言わない。相手を殺したら、悲しむ人がいる。戦ったら悲しむ人がいる。そのことを、考えて戦って欲しいんだ。無理な提案だとはわかってる。でも、そうしない限り――」
「あいつには、フリーダムには勝てない」
「え……?」

 その時、辺りに耳を劈く警報音と共にメイリンの可愛らしい声が響いた。
「コンディションイエロー発令。パイロットはブリーフィングルームへ集合、各自自分の持ち場についてください。繰り返します。コンディション――」
 始まった! だけど、この人の話も……
「行くといいよ。僕の話は、アスラン辺りに聞くといいかもね。じゃ、仕事があるから、これで」
「え? あっ、ちょっ……行っちゃった……」
 これからって時に、あんな話聞かたら……。
 どうすりゃいいのかわかんねぇよ……。
 とりあえず俺はブリーフィングルームへと急ぎ足で向かうことにした。
 結局、格納庫には辿り着けなかった。
 内心、ちょっとばかしショックだった。
253新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/15(日) 08:23:04 ID:???
 同時刻、アークエンジェルもまた、雪が降り積もる山々の合間を縫う様に突き進んでいた。
 突如放たれた幾重もの砲火に晒されながら。
「右舷後方より、バクゥ四! バビ二! ディン六!」
 ミリアリアの声がブリッジに響き渡る。マリューが指示を下す前にノイマンが舵を切り、多数のレール弾やミサイル群を避けるも、いくつかが分厚い装甲に当たって船体を揺らした。
「バリアント、撃てー!」
 マリューの指示と同時にアマギがバリアントを操作してバクウの前方を吹き飛ばし、イーゲルシュテルンが迫り来るディンを追い払い、ミサイルを撃ち落す。
 やはりこれも、全てを防ぐことにはならず、衝撃がブリッジを襲う。
 ――やはりきたか! それもこんな大部隊を!
 マリューは内心そう思いつつ、襲い来る被弾、破損、損害状況、残弾、迎撃状況等の報告と多数のMSと戦う。
 キラが頑張っているが、この数。本艦が援護に回れない上に、この地形。本館の援護、敵機の戦闘能力を削ぎ落とすだけを目的とした戦闘。
 いくらなんでもこの悪条件では!
 しかし、とマリューは首を振った。四の五の言って入られない。
 再び衝撃がブリッジを襲う。かなり激しい物だ。
「何!?」
「真下に備え付けられたミサイルランチャーです!」
「なんて用意周到な……ッ!」
 雪で殆ど閉ざされた視界に、大きな山が見えた。ギリギリ通るか通らないかのスペースをアークエンジェルは抜けて行き――


「隊長、アークエンジェルがトラップを敷いた、ポイントA2を通ろうとしています。如何いたします?」
 ウィラードは多少考えてから、副官に指示を下した。
「バクゥ隊に一斉砲撃の後、後退するよう命じろ。後退の後、発動させる」
「了解。そう伝えます………………バクゥ隊、後退に入ります。発動の許可を」
 副長が通信士に伝え、通信士からの返答を復唱した。そして、こちらを見て発動の許可を請う。
「発動させろ」
 ウィラードは一片の慈悲無く告げた。


 ――山を曲がりきろうとしていたアークエンジェルを、突如雪崩が襲った。それは凄まじい衝撃となりアークエンジェルを襲う。両舷のバリアントはひしゃげ、いくつかのミサイル発射管もその重圧に耐え切れず潰れ、誘爆した。
「敵の地雷ですっ! これで故意に雪崩を作って……! バリアント1番2番破損!ミサイル発射管は……なんてこと! 殆どが誘爆しています!」
「バクゥからの砲撃来ます!」
「衝撃に備えて!」
 言い終わるか終らないかで更なる衝撃がアークエンジェルの艦底部を襲う。
 雪崩のお陰で排熱効率は上がった物の、実弾に対してはただ厚い装甲、というだけのラミネート装甲はどんどん削られていく。更に数瞬置いて、目の前に迫っていたミサイルが爆裂した。

「センサーが! これは……ジャミング弾です!」
 センサーがやられた。しかもこれは前方から発せられた物。別働隊か何かか。
 別働隊がいる場合、どんな状況になるかを予測してマリューは絶句した。した、が。
 ここで良いニュースと悪いニュースが彼女の耳に届くこととなる。
『マリューさん、あらかたの敵は片付けました。他も皆後退して……なっ、この艦は!』
 敵の後退と、キラの驚愕。何が起きたのか分からないマリューはキラに問う。
「どうしたの?」
『これは……ミネルバ……』
254新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/15(日) 08:31:22 ID:???
連騰規制のため携帯支援
255新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/15(日) 08:34:34 ID:???
 ――ミネルバ!

「どうやらザフトは、どうあっても私たちを落としたいようね……」
 マリューのその声には、どこか諦めたような、そんな色が混ざりつつあった。無理も無い。もしこのまま戦えば、あのザフトの英雄であり最新鋭艦足るミネルバ相手に既に損傷率50%越えのこの艦が保つはずなど、道理が無かった。
 もし保ったとしても、潜行は無理だろう。
 しかし、なんとしてもカガリを送り届けねばならない。マリューはそう自分に言い聞かせた。
 その直後、ミネルバの艦首が視界に入る。同時に、雪にまみれたバビがその砲口をこちらを向いていた。
 このコース。不味い……ッ!
 マリューが指示を下そうとするのと、ノイマンが舵を切るのと、副砲が火を噴くのはほぼ同時だった。

「あれをかわすとは……」
「流石は大天使ね。しかもバレルロールしてこちらの吶喊を避けるとは。なかなか」
「インパルス、ザクファントム、両機フリーダムを良い具合でひきつけています」
「バビも敵の装甲の薄いところを上手い具合で攻めています」
 こちらの攻撃をかわされたにもかかわらず、アーサーとタリアは冷静だった。
 冷静に艦を反転させ、追撃に移る。
 冷静に相手の損傷具合を吟味し、対策を練り、指示を下す。
 相手に情けをかけるようなことはしなかった。

第九話 狩りは狡猾に、残忍に、確実に に続く
256通常の名無しさんの3倍:2007/07/16(月) 08:51:25 ID:???
唐突にアスランが黒くなってるな
257週刊新人スレ:2007/07/17(火) 21:33:34 ID:???
目次

 機動要塞エターナルの中、戦況報告を聞くラクスとキラ。彼らが下したサイへの評価とは。
機動戦史ガンダムSEED 
>>210-218

 不審な女性とエディの逢瀬を再度目撃したミツキ。そして忘れていた彼女の夢が突如目の前に・・・。
少女は砂漠を走る!
>>221-226

 お互いの関係を気にするシンとアスラン。シンがこうあって欲しいと思うオーブの姿とは。
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
>>229-237

 マコトを気遣うクサナギのリィータ。一方、艦艇護衛任務につくマコトの前には巨大な影がせまる!
CE大戦秘話
>>239-241

 神聖帝国ラクミア。その女帝、ラクス・クライン。彼女がモニター越しに会話をするのは・・・。
女神が住まう国(帝国編)
>>245-247

 能天使(パワー)が見つめるなか、オペレーションエンジェルダウンが発動。女神対大天使の戦い。
せめて、夢の中だけは



感想、批評書き込み強化月間。ROMだけの時代は過ぎ去った! 君も職人とのワンツーを決めろ!
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お知らせ
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。

編集後記:
私事により更新遅れました
専ブラ使いましょう皆さん。2chのみならず、したらばBBSとか行き来する人なら特に。便利です
人大杉規制にかかる人が多い様なので老婆心ながら
258P.L.U.S. SS ◆EWxNN5VMR6 :2007/07/18(水) 00:05:39 ID:???
 向かったハンガーには馴染みのプロトジンではなく、ザフトの量産機ゲイツRの姿があ
った。
(より実戦に近い状況で最後の演習という事か。いいだろう。そのハードル、越えさせて
貰う!)
 新たな決意を胸に唇の端に笑みさえ浮かべ、レイはゲイツRへと歩み寄る。
「なんだよ、プロトジンじゃないのか! ゲイツRなんて聞いていないぜ? シミュレー
ションだってしたこと無いのに。あっちのプロトジンにしようぜ?」
 ハンガーの奥で整備中のプロトジンを目ざとく見つけたシンが喚く。心ないその言葉に
思わずレイは眉をピクリと動かした。
「シン。これは俺達に課されたハードルだ。万全とは言えない状況で如何に戦況を切り開
けるかを問われている。ゲイツRで演習を成功させる事が、今回の俺達の任務だ」
「そう言われたってよ、これじゃベストな演習なんて出来る訳無いだろう? 今までの総
仕上げなら今までの機体で戦うのが筋じゃないのか」
「言いたい事は分かる。だが俺達は気分や状況で戦うんじゃない。不測の事態に備えてこ
そ、プロの軍人と言えるだろう?」
 その至極当然の理屈も、筆記試験が頭から離れないシンにとっては耳障りだったようだ。
面倒臭そうに前髪を掻き上げ、子供のように口を尖らせて愚痴をこぼす。
「はいはい、わかってるよ。ちょっと言ってみただけだろ? 議長が来るくらいで何だよ。
ムキになっちゃってさ」
「なんだと?」
 渋々ながら先を行くシンの言葉に、思わずレイは足を止めた。
「そりゃお偉いさんだから、良い格好したいのもわかるけどさ。でも俺は正直そこまで必
死に成り切れないんだよな。実技は今までの成績で十分だし、筆記が取れなきゃザフトに
上がれないしな。演習なんてしてる場合じゃないっての」
 シンの寝不足で濁った目からは覇気や生気は感じられない。あるのは現状への不満だけ
だ。深いことなど考えてはいない。
 だが、言われたレイはそこまで冷静ではいられなかった。
「俺が偉い人が来るから、良い格好をしたいから戦う。お前は本当にそう思っているのか、
シン!」
「なんだよ、急に」
「俺はお前の境遇を聞いて、力を欲する心は純粋で強い思いだと思ってた。そんなお前と
トップエースを目指したいと思う俺の想いを、俗っぽい考えだと感じているのか!」
「――レイ」
「お前が本当にその程度の考えしか無いなら、俺の思い違いだったようだ。どこへなり好
きに行くがいい。演習は俺一人で十分だ」
 振り払うように踵を返し、レイはゲイツRへと向かう。最終チェックをしていたメカマ
ンがそのやり取りに振り返るのが視界の端に映る。

<続く>
259P.L.U.S. SS ◆EWxNN5VMR6 :2007/07/18(水) 00:08:10 ID:???
 少し大人気なかったとも思う。だが議長の事を引き合いに出されて黙っていられなかっ
たし、そんな物の見方をしたシンに失望したのも事実だ。苛立った気持ちを静めるように
コックピットに体を押し込むと、背後からシンの声が聞こえた。
「あのー、こいつのマニュアルとかってありますか?」
「マニュアル? そんなのシートの脇に差してあるだろうが」
「すいません」
 灯が入ったゲイツRのスクリーンには、隣のゲイツRに乗り込むシンが映し出される。
後ろではメカマンが大きく手を振り、パイロット搭乗を合図している。
「嫌々だったら出撃するな。俺一人でも何とかしてみせる」
 レイは冷徹な声色でうそぶいた。
「お前の言う通りだ」
 モニターの向こうのシンは片手でマニュアルを探しながら、空いた手でゲイツRを起動
させていた。
「目の前の試験だけじゃ無く、自分の信じる道に向かって最善の事を尽くす。考えてみれ
ば当たり前で当然の事だ。だから今は、俺達二人でこの演習を最高の成績で通過する。筆
記が全滅でも認めて貰えるくらい圧倒的な成績でな!」
「フフ、シン、それで良い」
 顔を上げ前を見据えるシンの目は獲物を見つけた鷹のようだ。もう大丈夫だろう、と、
レイは内心安堵した。
「レイ・ザ・バレル、シン・アスカ、ゲイツR発進! ゲート解放願います!」
「了解! ゲート解放! ゲート解放!」
「……ZGF−601R、ゲイツR。メイン兵装はMA−M21Gビームライフル、サブ
兵装はMMIーM20SポルクスWレールガン。他にはMAーMV05ビームサーベル内
蔵複合兵装防盾システムか。プロトジンなんかと違って、名前だけでも高級感が漂うな」
 徐々に開くゲートを横目にシンがマニュアルを読む声が聞こえる。ザフト製モビルスー
ツの基本兵装は覚えさせられた筈だが、物珍しそうなシンにレイは敢えて無言を通した。
「なんだってーっ! そんなバカな!」
 そんな沈黙も空しく、重苦しいゲートの解放音を押しのけ、シンの突然の叫びが耳に刺
さる。
「どうしたシン」
「動力に『高性能バッテリー』ってあるぞ!」
「それがどうした」
「どうしたって、電池だぞ電池! 電池で空が飛べるか! 電池で77.3tもあるモビ
ルスーツが動いて堪るか! 電池で戦争なんて出来るわけないだろ!」
 無知とは角にも恐ろしいモノなのか。あまりの衝撃にレイは軽い貧血を覚えた。
「……だが、それが現実だ」
「ウソだ〜っ! こんな世界、間違ってる!」
「レイ・ザ・バレル、ゲイツR発進する!」
 喚き散らすシンを置いて、レイは自分のゲイツRを発進させた。アーモリーワンの人工
の空は何も知らずに、どこまでも澄んだ青空を演出していた。

<続く>
260通常の名無しさんの3倍:2007/07/18(水) 23:11:07 ID:???
>>戦史
 ラクス側の内情が伝わってきてとても良い回だったと思います。
 途中地の文でキラの傲慢さ云々と書いてありますが、全てメイリン視点からの
キラに対する感想という形に為ておけばヘイト臭が抜けてもう少しすっきりすると
思います。その必要は無いのかも知れませんが。

>>少女
 第三話
 たった六レスの中で短いストーリーに決着がついた事に脱帽です。
少し練りこめばそのままOVAのシナリオにつかえそうな程起承転結のつけかたが
上手だと思いました。そしてようやくエディの立ち位置がはっきりしてきて目が離せなく
なってしまいました。

 第四話
 全体を流れる大きなストーリーと、表面化する短いシナリオとのかみ合わせ方が
自然で凄いと思います。プロットがしっかりしている事だろうと思いました。
 ミツキの外見的な描写は殆ど成されていませんが、彼女に対する周りの反応が
しっかりしているので色々と想像の余地があり、かえってこの方が良いんでしょう。
 ミツキを状況に巻き込んでしまい、深いかかわりを持つこととなったのがエディに
どういう影響を与えるのか、続きが気になります。

>>新人
 やっぱりマリューの指示よりも早く動いていたのか、ノイマン。結婚指輪並みに
気合入れてお守りを仕入れるイザークに笑った。

>>PLUS
 シンとレイの対比が短い中に良く効いていて、読み甲斐がありました。
シンはC.E.の常識に馴染めない人間なんですね。

>>女神が住まう国
 >>154のお陰で貴方の作品の読み方が分かりました。成る程少女マンガのノリを
受け入れれば結構面白い。
261機動戦史ガンダムSEED 29話 1/7:2007/07/19(木) 01:09:50 ID:???

 オーブ連合首長国<ホワイト・ヒル>――オーバル・オフィス

 「……取り合えず、あの男を機動艦隊総司令に改めて任命する。軍の最高指揮権を
与える事となろう。 あの男は嫌がるだろうが、絶対に断わらせるなよ、カガリよ――」

 ミナは、そう言い終えると喉を潤す為に再びカップへと手を伸ばした。
 
 ……私としては、サイを代表府に復帰させるのは諸手を上げて賛成だ。没落氏族が
主体となっている下部議員会議や連合総議会の連中が難色を示すかもしれないが、
今回の戦功を土産代わりにすれば、代表府の幹部に復帰してもお釣りが来ることだろう。

 それにあくまで私の希望だが、サイには代表府の首席補佐官として再び辣腕を揮って
もらい、尚且つ軍部の重鎮として機動部隊の統括をして貰いたいのだ。

  そうなっても現在の代表府のスタッフは実力派揃いなので、彼の復帰に文句を言う
人間は一人もいない筈であろう。今回の事を見るだけでも、彼の手腕が些かも衰えていない筈なのだから。

 そう内心で考えていたら、私の端末に客の来訪を告げる通信が入ってきた。

 「――はい」

 私が、そう応じると、馴染みの首席秘書官の声が端末から流れてきた。

 『――失礼致します。第3機動艦隊のソキウス司令が面会を求めておられますが……』

 「ソキウス将軍が?――すぐにこちらへお通して頂戴……」

 『畏まりました』

 私は端末の通信を切ると、ミナの方へと視線を向けた。
262機動戦史ガンダムSEED 29話 2/7:2007/07/19(木) 01:15:38 ID:???

 ソキウス司令の来訪。だが、実際のところ第3機動艦隊司令官のソキウス将軍と
直接に会っておきたいのは、実際は私の方だったりするのだ。
 
 こちらの総司令部の致命的な判断ミスで艦隊の半数を失いながらも、
多くの兵士や破損したとはいえ大半の艦艇を無事本国に帰港させた彼の功績は大きい。
 このような事は、偽善と承知の上の事で……自分のちっぽけな良心を庇いたい
行為だということは、無論自覚してはいるつもりだ。

 ミナもティーカップを片手に私の方へと向き直ると、

 「戻ったのか、ソキウスは――」

 「ええ、大いに労わないとね」

 ミナがそう呟くのを耳にして、私は少し冗談じみた口調でそう応じた。続けてミナは
苦笑しながらも辛辣な言葉を吐いてきた。 
 
 「……奴は敗軍の将だぞ?」

 「負けたから。だからこそよ……」

 「フム……」

 「大いに持ち上げないと。……緒戦の大敗北を国民の目から逸らせる為にもね――」

 そう言い終えると、私は内心で凹んでしまった。また、今日の夜から躁鬱になりそう……。
こんな事ばかり思いつくのだ最近の私は……。こうやって純情可憐なものを失い、
根っからの政治家になるのだろう。これもサイの教育の賜物だろう、と思うと何故かムカムカしてきた。

 「初歩的な情報戦の一環だが……。正しくはある。現在、サイ・アーガイル本人が本国に
不在な以上、次点としてソキウスの奴を撤退戦の英雄として称えるというのも有りだな」

 緒戦の大敗北から目を逸らす為には、『英雄』が必要だ。次いでに本国で代表府の広報手段
をフルに使って、マスコミにと大々的に宣伝せねばならない。
 だがその肝心の『英雄』さんは、本国を遥か離れた宇宙(ソラ)の彼方なのだった。  
263機動戦史ガンダムSEED 29話 3/7:2007/07/19(木) 01:22:42 ID:???

 そこへ、またもや連絡音が鳴り響く。今回の発信源はミナの胸元からのようだ。
ミナは優雅にティーカップに向けて手を伸ばしていた手をすばやく乱暴に引っ込
めると胸元に隠していた携帯電話型の特殊通信機器を取り出した。

 「――私だ」

 苛立ち、そう答えていると暫くしてミナの顔付きが突然、厳しいものとなる。

 「――わかった。詳細は総合作戦本部に回せ。それと、キサカ参謀本部長へ
の連絡は済んでいるな?ウム、結構だ。30分以内に総合幕僚会議を開くぞ。
――ああ。無論、アスハ代表も参加なされる」

 通信をそこで切ると、ミナは思案顔となった。

 「……何か緊急事態が?」

 「うむ……」

 思案げな顔のミナを見ながら、私はまたやっかいな事が起きたのだろうと嫌な
予感に身を焼く事となる。まったく、代表に就任してから嫌な予感程当たるのだから始末が悪い。

 ……また頭痛薬が必要になるのかしら。と溜息を吐くのだった。


 ==========================

 どの国の国家首席の例に漏れず、オーブの代表首長も大抵は多忙な為に、重要機
密の類の緊急報告であろうと首席補佐官のロンド・ミナ・サハクの所で一旦は止まり、
そこで代表府のスタッフ達の判断によって、一気にトップまで報告が回されるかが決まる。
 
 しかし、この制度システムは、外から見た場合は首長の判断を仰がずにスタッフによる
独断専攻が批判が指摘されるだろう。
 だが、どのように優れた人物であろうとも、代表首長は、一人だけであって、古(いにしえ)
の東洋の島国の皇子のように同時に四方からの報告を聞いて、即時に判断できると云う訳
ではないのだ。その為に代表府首席補佐官以下のスタッフであり、役目である。
264機動戦史ガンダムSEED 29話 4/7:2007/07/19(木) 01:30:13 ID:???

 同時にそのような風評や批判が出る事も、ロンドは首席補佐官として承知しており、
その都度スタッフ間で検討した報告は、必ずどのような要項でも、雑多な情報や報告
書を纏め上げ、最終的な決定権を代表首長のカガリに委ねるのが常であった。

 彼女、ロンド・ミナは首席代表補佐官に就任して以来、彼女の下した判断は、自らの
感情を全く入れずに常に精確であり冷徹であった。
 国家の事を第一の優先規準にする彼女は、自らの私利私欲を含めた独自の判断を
下したことなどは一度も無かったのだ。

 それはあまりに人間味が無く”鋼のミナ様”と呼ばれる所以でもある。

 彼女の専用パーソナル・リンクは特別性で、二重三重どころか最新鋭の数十数百の
プロテクト・システムによってガードされている特別製のものである。ロンド自身は記録を
全てその頭脳に残す、そして必要であるならば紙による記録媒体として残す事を常としている。

 彼女はコンピューターによる記録媒体の記録保持を信用していない。アナクロと笑われ
そうだが『ターミナル』と呼ばれるラクシズの下部組織による軍事技術や重要な情報の奪
取が昨今で相次ぐ中、最新の記録媒体を信用しなくなっているのだ。

 今回の連絡も各地に派遣している間諜の一部からの重要な報告である。連絡方法は、
アナログな暗号方式である。これならばハッキングされても解読される可能性は極めて低い。

 この情報は判断を一箇所でも怠れば、下手をしたらオーブ一国が亡国となるどころか、
このC・Eを冠した人類世界全てが、再び大動乱に包まれる可能性を秘めていた。

 それに比べれば、ラクシズなどは、辺境の田舎軍団の烏合の衆に過ぎず脅威に値しない。

 ロンドにとって、ラクシズ自体は実際は、それ程の脅威ではなかった。ラクス等などは実際
に辺境の田舎軍団程度の認識しかなく、サイ・アーガイルと彼に貸与した最新の機動戦力で叩
き潰すことは、それ程難しい事ではないと判断していたのだ。

265機動戦史ガンダムSEED 29話 5/7:2007/07/19(木) 01:34:15 ID:???
 
 今回の件でロンドは自分の勘を優先させるか、それとも更に時間を置き、綿密な
情報収集の上で行動するのか……悩んでいた。
 
 しかし、ソキウスが率いる第3機動艦隊が帰着したのを契機に、自らの勘を信用
することにした。これは自分にとって博打に等しい事であるのが腹は立つのだが……。


 ==========================

 オーバル・オフィスの中央の扉が開き、外から、整ったいるが、やや無個性な
顔立ちを若い男が入室してきた。軍服と襟には少将の地位の階級章を示したも
のが付けられている。彼は私に一礼すると、側にミナが居る事に気が付き彼女
に対して恭しく敬礼をした。

 「――失礼致します代表、首席補佐官。第三機動艦隊司令官グゥド・ソキウス
少将、只今、戻りました」

 彼は、どこかサイによく似た声で柔らかく帰着の挨拶を述べてきた。
 
 「――ソキウス将軍。良く無事に帰って来てくれましたね……」

 私もそれに応える様に、親しみと心を込めて彼にねぎらいの言葉を掛けた。 

 「はっ……」

 「本当は、ソガ司令も一緒に戻って来て欲しかったんだけれど……」

 「……お詫びの申し様がありません。僚友を失い、多くの兵士を生きて故郷に帰す事が
叶いませんでした。無能非才の身、どのような処罰を受けようとお恨みいたしません……」

 「将軍……」

 そこに感傷を振り払うかのように強い声が割り込んでくる。

 「――そのような事はどうでもよい」

 「……ロンド様?」

 ソキウス将軍もミナの強い言葉に戸惑いの声を上げている。いつも冷静なミナが声を荒
げるのを聞くのが珍しいのだろうか?

 「――直ぐに防衛艦隊を編成せねばならない事態が発生した。今は一人でも多くの有能
な艦隊指揮官が必要なのだ。お前を罰する暇なんぞ今のオーブにあるか!」

266機動戦史ガンダムSEED 29話 6/7:2007/07/19(木) 01:38:04 ID:???
 
 ――第4機動艦隊旗艦『クサナギW』艦橋――

 『――閣下。御命令通り艦隊の再編成を完了致しました』

 「ご苦労さん……。お前さんも少し休んでくれ」

 『では――」

 司令とスクリーンに映るアラヤ二佐との会話を横目に、副官としてのオペレーターの
仕事をこなしながらも、私の目には無数の光点が、艦隊の後方へと下がって行くのが
よく見えます。はい。

 「――増援艦隊が、順次撤退していきますね……」

 艦橋の窓に張り付きながら、私はそう呟く……。状況はこれ以上ないほどに最悪です。
それで、どよーんとなった私の後ろから、シモンズ主任と司令の明るい声が追い討ちをかけてくる。

 「ロンド様もやってくれるわよね〜」

 「全く、ものの見事にこちらの梯子を外してくださったよ」

 と何ら緊張感のない会話が耳に入ってくる。本当にこれからどうするの……?

 「……どうしましょう司令?」

 何時になく、私は気弱な一言を吐いていた。首席補佐官であるロンド様の命令で、本来は
第4機動艦隊に配備される予定ではなかった増援用の予備艦隊が根こそぎ持って行かれて
しまうのだ。一応は、必要な艦艇の種類はこちらのフリーハンドで選べるという選択肢は残し
てくれたようだ。ロンド様もそこまで鬼ではなかったのだろう。……いやそう信じたいんだけど……。

 「取り合えず防御を固めるしかないかしらね?」

 シモンズ主任がてんで緊張感の無い提案を司令にしてきた。司令の方はというと……。

 「――いんや、前進だ」

 「えぇぇぇ?!」
267機動戦史ガンダムSEED 29話 7/7:2007/07/19(木) 01:41:11 ID:???

 私は絶望……もとい、驚愕の余り思わず声を張り上げてしまった。自分では気が付いて
いなかったのだが。それを聞きとがめた司令は……。

 「――逃げるわけにはいかないだろうが?後方からの援助があてに出来ない以上、
前進あるのみ!!――そうだろ?」

 「あの……その、艦隊戦力は半数以下になったんですけど……?」

 景気良く法螺を吹かす司令に私は恐る恐る、控えめな意見を述べるが……。

 「――伊達にこの<クサナギW>も、最新鋭戦艦の名を冠してはいないだろうが?
機動戦艦てのは、攻撃兵器だぜ?ならば突貫あるのみだ!なぁ?」

 「はぁぁ!?」

 私が更に大声を上げると、司令は器用にウィンクしながら、

 「――まぁ、これから先はこの通り、サイ・アーガイルのやり方でいくだけださ」

 と仰るのだ。

 「あの〜」

 「大丈夫。私ぁは、”天才”だからな」

  おいおい……!ちょっと待って!――シモンズ主任!止めてぇぇ!

 「そう願いたいわよね。さて、そろそろ”天才”の本領の発揮してもらわないと」

 「お任せあれ」

 ……ぉぉおお!誰か助けてぇぇ!

 艦橋の外に広がる無数のお星様や誰かさんに向かって私は、必死にお祈りをするが
もちろん誰も答えてくれなかった……。すぐ側には尻尾の無い悪魔がいるだけで、幸福
なんかこれっぽっちもないということなのだ。

 ――それにしても、何と遥かなる世界にまで来たことやら……。
 ここがオーブ連合首長国の最前線。決して破られてはならない防御線……。

 ――でも手持ちの戦力は最低。――本当にこれからどうするんだろう司令?


>>続く

268戦史:2007/07/19(木) 01:57:05 ID:???

申し訳ありません、以下だけ修正させてください。

29話7/7

×「――まぁ、これから先はこの通り、サイ・アーガイルのやり方でいくだけださ」
○「――まぁ、これから先はこの通り、サイ・アーガイルのやり方でいくだけだ」

 

269弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:24:23 ID:???
てすつ
270弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:26:59 ID:???
少女は砂漠を走る!

第五話 師匠の考え、弟子の想い。(1/6)

 封印されて【解放/操作・禁止】と書かれたテープが各ハッチ毎にべたべた貼ってあるファング2の足下。
わたしのお勉強机の向かい。こちらに背を向けて右袖にも中身が入った赤い制服が立っている。
彼の視線の先では左腕がもげてしまったザク・ファントムをメカマン達が盛大に火花を飛ばして修理中。
真っ赤なザクの胸元、簡単な白い線で描かれた踊る少女のマークの横。何げに星マークが二つ増えている。
 たった2機で7機のアストレイと戦闘車両17両を押さえたのだからティモシーもシルビオさんも両方凄いんだろう。
更にティモシーに至っては地雷を敷設しつつ敵を誘導しながら、の話である。次元が違いすぎる。
ザフトにおける赤服の立場を再認識した。彼らに対する普段の扱いはスーパーエースだからこそ、なのだ。

 彼を見て思い出したので師匠に借りた【MS図鑑】(本当は難しい名前が付いている資料)でM1アストレイの
項を開く。本来はオーブの主力MSであるらしい。顔つきはファングと似た二つの目に額のアンテナ。
装甲が相対的にもろいものの機動性は良好で汎用性も高いとの評が書いてあった。オーブに住んでたのに
名前さえ知らなかった……。今回使われたのは民間の作業用途に再設計されたものを更に戦闘用に再改造
したものであるらしく、ブリッジで言っていた非正規型。とはそう言う意味なのだろう。メカマン曰く、本国の
防衛軍仕様に比べても足りないのは絶対的なパワーだけ。なのだそうで、ならばあの数ならかなりの難敵で
あったはず。机の前にたたずむ彼の赤い服はだから、やはり伊達ではなかったらしい。

「簡単に治りそうで良かったね?」
「これで跡が残ったりしたら、それこそサーシャにいびり殺される……」
 ただ本人は戦闘の内容より、先輩さんの機体を壊したコトの方が気になってる様子。
明らかに口数が少ない。エリート然としてるよりは親しみが持てて良いけど、ねぇ。
【MS図鑑】をパタンと音を立てて閉じる。間もなく会議だ、師匠を迎えに行かなくちゃ。
 
 隊長室。休まらない休めのカタチで椅子に座った赤い服の背中を見るわたし。師匠の肩越しに隊長の顔。
「先ず襲ってきたMSはダガーLと呼ばれるダガーの最新タイプだ。105とか言う高性能型と同じく、ザクの
ウィザードと同じ様なシステムを使ってる。そしてコレを運用するのは連合の直轄部隊である可能性が高い」
「この辺りの部隊は未だにストライク・ダガーの定数さえそろわない。の様な話は、自分も聞きましたね」
 彼らは連合なのか。わたしの家族をオーブから追い出した、あの連合だと。一瞬、やはり師匠の約束など
無視して出るのだった! と思ったがオーカーがあっさり落とされるのを【実況】しながらこの目で見た。
わたしが出ても、ただの的にしかならなかったのは間違いない所だろう。
しかし、連合ならばどうしてコーディネーターのゲリラ組織である赤き風の旅団が協力するのか。
この先、政治向きの話になるなら聞いててもちんぷんかんぷんになるのだが。

「そして赤き風なんだが、裏ルートからの情報によれば、数日前から連絡が不通になってるそうだ」
「うーん。どう理解したものでしょうね。……彼らの勢力はどれくらいですか?」
「実行部隊だけで約150人、MSも総数20を越える。確かに名前負けせずに旅団規模ではあるだろう」
 マーカス隊と規模が互角のゲリラ部隊と言うことか。傭兵としても反政府ゲリラとしても確かに規模が
大きすぎる。非戦闘員が居なければ組織としてはやっていけないだろうが、それまで含めたらいったい
どれだけの規模になるのか。昔ニュースで言っていたことがようやく実感として頭に染み渡る。どこから
これだけの予算が出るのだろう。MSは想像以上にお金がかかるし、赤き風は陸上戦艦まで持っているのだ。
「ともかく、連合は非公式ではあるが関与を否定してきた。今は修理を急いで、ココを離れるしか無いだろうな。
いずれ向こうさんの目的がわからん以上、議論で時間を使うのは無駄だ」
「まぁ、確かに」
271弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:29:18 ID:???
第五話 師匠の考え、弟子の想い。(2/6)

「才能ってのはおまえの言う通り、やはり埋もれてるもんだな、エディ?」
「偶然とは言え僕らが拾ってあげなければ普通の女の子か。そう考えれば確かに勿体ない話ではあるが」
「あぁ、只の学生なんて能力の無駄ってもんだろ? もうスコアだけなら俺も抜かれそうだ。後は体力、な?」
 シミュレーターから息も絶えだえで降りてくると師匠と話をしていたシルビオさんと目が合う。謙遜の一つも
言いたい所だがとても息が続かない。と、師匠ではないもう一人の赤い服が目の前に歩いてくる。
「大したもんだな、ホントにMS初心者?」
 しゃべれないので取りあえず頷く。あなたほどじゃ無いけどね。あなたぐらい動かせたならセブンスの町を
救えたかも知れない。でもそのころはただの女の子。気にする必要はないのだろうけど気持ちが萎える。 
「ウチの先輩の話はしたっけ? Gタイプをゲイツで仕留めたって話。ミツキはそう言う素質があると思うな? 
あれ? そもそも乗ってるのがGタイプか。ならラウ・ル・クルーゼなみに伝説の撃墜王だな」
「おいおいチェンバレン、せめて砂漠の虎くらいのことは言えよ。いきなりルーキーを戦争犯罪人にするな」
 シルビオさんが言うとみんな笑うがわたしにはよくわからない。この後、7冊目の【パイロット秘密ノート】に
Gタイプと砂漠の虎とラウルクルーゼの文字を増やさねばなるまい。

 ドリンクボトルを手に持ってシミュレーターの評価画面を眺めつつ雑談を聞く。なにげな話の中にパイロット
としてのヒントがあるかも知れない。なんと言っても喋っているのは三人ともエースパイロットだし。
などと自分を誤魔化しつつ、ホントは疲れて会話に加わりたく無いので、画面から目を離さずに居るのだが。
「アストレイとやり合った時のあの動き、パイロットはコーディネーターだよ、間違いない」
「ま、赤き風の構成員ならそうだろうけどな。アストレイなぁ、練度が高いと言うならめんどくさいな」
 オーブの主力MSアストレイ。ココまで聞き流していたが、祖国オーブがわたしを襲ってきている様な錯覚に
囚われて怒りと悲しみないまぜの感情がぐるぐる回る。わかっているのに、回る。
「ジャンク屋経由ならば、フォーマットも出回ってるし一番手に入れやすくはあるだろうね。確かに」
「ただ、それを戦闘用に改造するってんならメカニックもそれなりの腕が必要になる。って話だろ、エディ?」
「あぁ、それに費用だってかなりかかる。反政府ゲリラとしてはともかく、傭兵団としてはそんなに有名な訳では
ないだろう? どこから予算が出ているのだろうな。あのアストレイは映像で見る限り新品にみえたが」
「感触から言って多分新品だよ。既に部品の回収は終わってるから購入者がわかるかも知れないよね?」
「ダミーの購入者、だろ?」


 わたしたちを襲うことに関してスポンサーが居るのかも知れない。とシャワーを浴びながら思う。
 ファング強奪が目的でアストレイ7機をお買いあげならば改造費も必要だそうだし、それは多分イリーガル
なものだろうから更にお金がかかるはずだ。結果、値段は見当も付かないが大赤字は間違いない。
多分、もうファングが目的ではない。
それに【お買いあげ】、が7機だけとは限らない。ダースやグロスで買っていない保証など無いし、
アストレイがダースで買えるくらいなら機種だってアストレイに限った話では無くなる。
 但し連合がセカンドシリーズの機体を欲しているのならば話は別だが、しかしナチュラルの、それも砂漠に
根を張る場末の部隊ではなく、連合軍直轄部隊からの依頼を傭兵団の側面があるとは言え赤き風が受けるだろうか。
彼らは連合政府に対してもゲリラ活動を行って居るのだし、連合軍は言うまでもなく連合政府の軍隊だ。

 シャワーを止め体にタオルを巻き付ける。あまり谷にならない胸元を見て、ユースケが胸の無いのを
バカにしていたのを思い出す。彼は、今何を思って何処にいるだろう。死んでいなければいいのだけれど。
272弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:31:50 ID:???
第五話 師匠の考え、弟子の想い。(3/6)

 砂漠の、無限とも思える変わらぬ景色。その上を2隻のレセップス級が滑る様に進む。
その先頭の艦の甲板。わたしは手すりにもたれながら風になぶられ、日差しにあぶられている

 あれから1週間。その後襲われることこそ無かったが修理は難航した。ようやくアンコールワットの修理が
終わり、失われた時間と隊長の信用を取り戻すべく、船は最大船速で走っている所だ。
「……わたしはどうしてこの船に乗ってるんでしょうか?」
「哲学かい? ……悪かったよ、そんな顔しなくても良いじゃないか。キミがココに居るときは大概ご機嫌斜め
なんだな。利き腕を無くした哀れなザフトレッドの補佐官、兼パイロット候補生。では御不満かな?」
 わたしの隣、同じく手すりにもたれた師匠はこちらを振り向くと、珍しく自虐的な台詞を吐いた。相変わらず
隙のない赤い制服。その台詞の元になった右の袖が、長い上着の裾と一緒にひらひら揺れる。
「両方、この船には必要ない気がします」
「パイロットはどんな部隊でも必ず必要だし、候補生も必要だろ? それと高性能の義手はそれなりの所
でないと作れないのでね、しばらくは僕の補佐で居てくれないと困る。キミは意外と機転が利くから助かってるよ」
「意外と、が余計ですっ! ……この船で【仕事】がないのはわたしだけなんですよ?」
 まぁ確かに、機密漏洩防止の為に殺されたり監禁されたりしていてもおかしくはないのだけれど、隊長と師匠
は現地採用兵士として制服をくれることにした。ならば隊の為になにか仕事をしなければならないと思うのだ。
「キミが船中掃除をして回ってるのは有名だし、パイロット候補生ならMSの訓練をするのが仕事だ。
既に十分以上に仕事はしていると思うがなぁ。ファング2の件かな、ご機嫌斜めの原因は?」
「それもそうですけど、なんで戦闘に出ちゃいけないんですか? わたしも出来る以上、戦いたいです!」 

 手すりを離すと完全にこちらを向いてじっとわたしの顔を見る。負けずに睨み返すわたし。
師匠は真面目な顔で、一つため息をつく。
「表だった理由は三つ。一つ目はキミ専用の機体、ファング2が重要な軍事機密で、かつデータフィードバック
の為に壊さず持ち帰らねばならないので実戦で使いたくないこと。これに伴って二つ目、ルーキーパイロットに
回す機体がないこと。三つ目は僕の体が自由にならないので補佐をして欲しい。……まぁ、こんなところだ」
「オーカーとバクゥに予備機が一機ずつあるじゃないですか。そりゃわたしじゃディンは乗れないでしょうけど、
アジャイルなんか3機もあります。ザク・ウォーリアーだって、まだ2番機はパイロット決まってません。それに
さっきも言いましたけど師匠に補佐は実質要らないです。今だって何でも自分で出来てるじゃないですかっ!」
 
 師匠はわたしから目をそらすと、真面目な顔のまま横を向いて砂漠を見つめる。
「……本当の理由は二つ。一つにはキミの友達とキミが殺し会う様なことになるのは避けたい。彼は見た限り
だが、多分パイロットだ。友人同士が殺し合うなんて不毛以外の何者でもないし、キミにはやらせたくない」
 ユースケは赤き風の構成員。確かにそうだけど。
「もう一つ。ミツキくん、キミにケガをして欲しくない。一番正直な理由だ。……だから約束は守ってくれよ?」
 そう言うと入り口のドアへ歩き始める。ドアに手をかけた所で止まると、こちらを振り返る。
「ミツキくんには、本当は普通の女の子として普通に暮らして欲しいんだ。戦闘に出ればリスクはケガだけでは
勿論無いし、これは僕の身勝手な感傷ではあるだろうが、キミが感情をむき出しにして戦う所も見たくない。
それにミツキくんがパイロットになってしまったのは、それは多分に僕の責任だしね」
 片手で重いドアを開けると上官の口調になって言う。
「僕はブリッジへあがる。45分以内にキミもあがってくれ」

 師匠は、後は何も言わずに鉄のドアをくぐる。何が言いたかったのか、師匠の本意をつかみかねたわたしは
ドアが閉まる音を聞いた後、37分間手すりにもたれて、それから廊下へ繋がる鉄のドアを開けた。
273弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:34:39 ID:???
第五話 師匠の考え、弟子の想い。(4/6)

 インカムを着け、更に首にもマイクを巻いて管制デスクから戦況を眺めるわたし。
『2時の方向にもジンの派生機と思しき機体、最低3機以上! シルエットからいわゆるD装備の可能性あり』
「イエロー12アルファのMS群、ダガーLと確認、数は5機以上! ブレイザー隊は回れませんか!?」
「速度は維持しろ! 砂丘の底に止まるわけにはいかん、狙い撃ちにされる!」
「師匠! 前回と同じく三方向から敵襲。但し、今回は時間差無しでっすうっうぅぅはぅぅぐぅぅ!」
 腹に響く轟音と共にブリッジが揺れる。椅子から落ちない様にデスクにかじり付く。モニターからは目を
離さない。オペレーターのおねぇさん方から教わった技だ。プロ根性があるのはパイロットだけではないのだ。
「うぅ、ひた噛んだ……。敵MSは最低12以上、戦闘車両は集計不能だそうです……。大丈夫でしたか?」
 師匠はまたも蝋人形の様に白くなって医務室に居る。先生が病院での専門的な治療が必要だと言っている以上、
彼の為にも早く基地に着かねばならないのだが、たった一日半、全速力で走っただけで敵襲となった。
 今回からファング3とザク01、員数外の2機の選任管制官をやらされている。とは言ってもジャミングが
激しすぎて音声通信さえまともに通らないので、あまり仕事になっているとも思えない。
結果『データを医務室に送る係』の仕事しかないわけで、前回とやっていることはあまり変わらない。
《……心配ない、大丈夫だ。チェンバレンくんは動いてないだろうな、シルビオは何処にいる?》   

 最短コースだったので隊長はその砂丘を越えることにきめた。一応アジャイルやディン、無人カメラが先行
して異常のないことは確かめた。ちょうど大きな釜の様になっているその底に到達しようとした時、行く手を
塞いで赤い右肩のジン・オーカーが砲撃してきた。その時には既にマーカス隊は3方を囲まれてしまっていた。
 全速力で走行中である以上、ジン・オーカーは降ろせない。なので今はティモシーも一緒に甲板で移動砲台
をやっている。もっともブレイズで出れば彼の腕ならジャンプで付いていけるのだろうが、偶々装備がガナー
だったのと、彼曰く戦術的な意味合いがあるのだとの事で、ケーブルを引きずったまま甲板にいる。
 地形の関係でバクゥも大規模に展開出来ない。シルビオさんがバクゥ2機を率いて出ているが敵の砲撃を
かわすのがやっとという有様。
 さらには先手を取られてしまったので、狙い撃ちを避ける為に偵察で出した以降はディンやアジャイルも
出せないし、初めに出た部隊は帰れない。双方のパイロットからは不満の声が5分に一回ずつオペレーターに
聞こえてくる。まさに八方ふさがりである。敵の狙いはどうやらマーカス隊の全滅。何故なのか理由はさっぱりだが。

「正面の砂丘を越えるぞ! 開けた地形に出なければ的になるだけだ、強行突破!」
 正面、赤き風のオーカーは5機だが無人観測機は戦闘車両を10台以上捕捉している。全車両からミサイル
を一斉に撃たれればいくら何でも迎撃はムリだ。ティモシーに期待する所が大きいのであろうが、いくら
エリートでスーパーエースが駆る最新鋭の機体とは言え出来ることと出来ないことがある。ガナーウィザードで
はその類の期待をされても迷惑だろう。ケーブルを繋いだままとは言え連射速度には限りがある。
《隊長に【ファング2】を……。いやバクゥ3機を正面に突っ込ませて道を開く様に進言しろ、艦長に当艦の
詳細コースの確認!》
 言い間違いではないのだろう。師匠の頭の中には、船の強行突破をサポートすべく赤き風のただ中
に突進する【ファング2】の絵が浮かんだはずだ。確かに敵の主力がジン・オーカーならVPSと機動性を
生かせば穴をあけることは出来るかも知れない。きっと数は少ない方が良い。そしてシルビオさんはわたしが
言うのもなんだけど、他はともかく四速獣モードでの高速戦闘はあまり得意ではない。
 わたしはインカムを外して立ち上がると隊長の前に歩く。踵を鳴らして直立不動で敬礼一発! 
そして意を決して口を開く。
「隊長。真正面の敵を混乱させて船の強行突破をサポートする為、ファング2の出撃許可を下さい!」
《っ!? おいっ! ミツキくん、何を言い出すつもりだ!? よせっ!!》
「……それはエディの判断か?」
274弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:37:12 ID:???
第五話 師匠の考え、弟子の想い。(5/6)

「いいえ、わたしの判断です」
「エディには聞いたか? 彼はなんと言っている?」
「敵の目的が当部隊の殲滅と思われる以上、検討の余地はあるとのことです」
《また頭に血がのぼったな? 僕はそんなことを言った覚えはないぞ! ミツキくん、いい加減な……》
 隊長から目をそらすと首のマイクを押さえて小声で反論する。
「わたしはいつだって冷静です! それに思ったのは事実じゃないですか、言わなかっただけで」
《言わなかったことをどうしてキミが知ってるんだ!?》
「以心伝心です。弟子ですから!」
《なんだそれは!? いいから隊長にマイクとイヤホンを渡せっ!》

「むぅ……。シライくん、ファング2の出撃を許可する」
「!?」《!?》
「但し、船の減速は考えない。飛び降りて出て行って自分で戻ってこい。そうでなければ置いていく。
それから機体は出来る限り壊すな。俺の立場はともかく、キミに怪我をさせてはエディに怒られるのでな?」
「はいっありがとうございますっ。格納庫に機動準備お願いします。……その、師匠。まだ聞いてますか?」
《……。なんだ?》
「ごめんなさい。……わたしは、約束を破ります!」
 首のマイクは管制デスクに放り出すと格納庫まで走る。

 パイロットスーツを着ている暇はない。わたし用の緑のヘルメットを抱えると、封印のシールを切って
コクピットへと滑り込む。オールシステム・スタート・アップス! モニターに右手を置き叫ぶ。わたしの声に
反応して正面のモニターに灯が入る。シートにお尻の位置を合わせる。スカートの下半身がちょっと違和感。
Generation
Unrestricted
Network
Drive
Assault
Module
 ザフトのマークとお馴染みの暗号文字列。素直にガンダムと読む事に意味があるらしいことが最近わかった。
技術者がガンダムと言う言葉の何にこだわっているのかは、正直よくわからないのだが。
モニターに今度は意味のある文字列が忙しく流れ出す。緊急発進シーケンス。飛ばすのは何番からだっけ。
〔Pilot Check.... "MITSUKI-S" -ok  ......ZGMF-X88SP-T2/ Gaia-pt "Fang02" All Systems Are Go!〕
『ミツキくん、聞こえるか? 僕だ』
「え、師匠ですか? 無線が使えると言うことはブリッジに? 大丈夫なんですか!?」
『いや、端末だけこちらに持ってきてもらった。それはさておき、新しい約束だ』
「えっ? あ、はい。……なんですか?」
『実戦に出ても良いが死ぬな。僕らは一緒に宇宙(そら)にあがらなきゃいけないんだ。良いね?』
「あのぉ。怒って、……無いんですか?」
『今怒っている暇はない、チェンバレンくんがキミの援護、シルビオは左翼を牽制する。キミにはもう、逃げ場も
時間も無い。隊長としてキミに命令する。前方の敵に突貫! マーカス隊の道を切り開き、なるべく早く
片付けて帰ってこい! 怒られたいと言うなら、その後で好きなだけ怒ってやる! ……ミツキくんいいね?』
「命令、拝領しましたです。なるべく早く帰ってきて怒られます! ……カタパルトセット、確認!」 
 ベルトを締めながらモニターを見回す。ステイタスオールグリーン。ヘルメットのバイザーを下げる。
「……ミツキ・シライ、ファング2! 行きまぁすっ!!」
275弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:40:00 ID:???
第五話 師匠の考え、弟子の想い。(6/6)

『現在観測出来るMSはジン系が5。間もなく通信途絶。ミツキちゃん頑張ってね! ファイト!……』
 オペレーターのおねぇさんの励ましの言葉と笑顔を最後に通信が途切れる。
どうせならば師匠の指示を回して欲しかったが、まぁ良い。強引に割り込んでこない所を見れば伝達事項は
無いのだろう。そう言う人だ、彼は。

 最大出力であっという間にジン・オーカーの群れに迫る。事前の光学観測では5機となっていたが見える
だけでも7機居る。だが相手が実弾兵器主体のジンとジン・オーカーならば恐れることはない。VPS装甲が
残り燃料と引き替えに攻撃は全て受け止めてくれる。と、索敵モニターが2機の新手を捕まえる。
「姐さんの嘘吐きぃっ!」
 右肩を赤く染めたアストレイがオーカーの後ろでビームライフルを構えるのが目視でも確認出来る。
でも止まるわけには行かない。ビームライフルがなんだ、コッチなんか牙だ! どうだ、ビビったかっ!
 正式なガイアとの唯一と言っていい相違点、顎のビームファングを展開する。サーベルタイガーを連想させる
見た目は強そうに見えてお気に入りではあるのだが、ホント、どうやって使えば良いんだろう、これ。

 ビームを避けつつ車両を吹き飛ばしながらオーカーの群れに突っ込む。背中の両翼に時間差で手応え。
と、真正面。距離のない所にアストレイが居る。避けられない! ジャンプと同時にビームファング最大展長。
アストレイを飛び越えると着地しながら180度ターンしつつMSモードに移行。こちらのスピードに
ついて来れないジンをビームライフルで砂に沈める。爆発して砂を巻き上げるジン。
 オーカーの下半身を二体分と、頭を中心に三枚に下ろされたアストレイが倒れていくのを確認する。
ビームファングの使い方と正式採用されなかった理由は理解できた。あんな事、普段やれと言われたって
出来っこない。絶対師匠の意向で付けたに違いない。普通の人間には使えないよ、こんなの。
一部のバクゥに同じようなサーベルの付いてることは後で知ったが、頭が3つで牙だらけの見た目。
あんなの、絶対乗りたくない。
 後方に気配を感じて振り向くと、サーベルを構えたアストレイが腹の部分に大穴を開けて倒れていく所だ。
「ミツキ! 360度全体を見なくちゃダメだ! 接触まで1分30秒。併走して飛び移る、イケるな!?」
 ジャミングに邪魔されながらティモシーの声が聞こえる。かなりの距離からの精密射撃は彼の仕事か。
状況からいってかなりヤバかった気がする。こちらを振り向いたオーカーが太いビームをまともに喰らって
上半身を吹き飛ばされる。再度四足獣モードへ変形。足下の車両を追い散らし踏みつぶして行く。
ジンがこちらにライフルを向けた直後にミサイルの雨をまともに喰らって砂漠に崩れ落ちる。一気に大きくなる
陸上戦艦のシルエット。赤き風は陣容を立て直す為にファング2を中心に多少ポジションを引いた。
 船の通る穴は、空いた。
 
 甲板に飛び上がるのと入れ替わる様にバクゥの群れが飛び降りていく。データによればダガーの部隊は
またしても何もせずに引いていった様だ。取りあえず赤き風の部隊は後方に置き去りにしたわけで、それなら
バクゥの帰還を待たずともわたしの今回のお仕事は終わりだろう。さて、怒られに行きますか……。

「キミならば良かろう、本当は面会謝絶だぞ? 起こさない様にな」
 帰ってきました、怒って下さいよ……。白い顔を苦しげにゆがませて眠る師匠。
「まぁ、明日には起きられる様になる筈だ。正直普通ならば命に関わることはないのだが、この状態が長引けば
多少危ない。オペをしなくてはならんのだが、此処では機材も薬もたらんのだ。腹を開けるわけにはいかん」
 短期的には命に別状がないとは言え、長引いたら不味いらしい。
起こすなと言われれば、わたしはただベットサイドに立ってその白い顔を眺めているしかなかった。

次回予告 第六話 知る事の代償
ティモシーが優秀さを遺憾なく発揮して赤き風との直接対話をセッティングする。
わたしはそれを尻目に会談の行方よりも大事なモノの為にファング2を走らせる。お願い! 間に合って!!
276弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/19(木) 22:41:48 ID:???
今回分以上です、ではまた。
277新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/20(金) 00:48:08 ID:???
 ミネルバの周囲にミサイルが着弾する。いずれも、ギリギリのコースだ。
 タリアはそれらに鋭く目を尖らせ、やけに落ち着いているアーサーに言い放った。
「大丈夫。下手に動かなければ当たらないわ」
「はい、ええっ……? あっ、狙って……!」
 そう、アークエンジェルによる攻撃はミネルバの進路を妨害する物ばかり。船体にダメージを与えるつもりはないのだ。
 これをどうとったのか、アーサーが目を光らせながら呟く。
「余裕……とは違いますね。一体何が……?」
「……彼らは、戦いたくはないのよ。恐らく、目指す物が同じだから」

 年老いた老婆のような声で告げてから、俯き、タリアは一瞬、更に目を鋭くさせる。
 もしくは、挑発か何かか……迎撃する、そういった行動さえ必要ないという意味か? あるいは新たな悪役になるのが怖くて?
 物思いにふけるタリアを、アーサーが怪訝そうに見つめた。その視線に気付いて、慌てて顔を上げ、指示を下す。
「お膳立てはウィラード隊がしてくれたわ。後は私たちの仕事よ。アスラン、聞こえる?」
 少しの間を空けて、バビに搭乗しアークエンジェルに張り付いているアスランから返答があった。張り付いているとは思えないほど余裕な表情を浮かべながら、
『はい。海岸線まであと一二。敵も満身創痍です。しかし、満身創痍といえどアークエンジェル級です。対空機銃の四割が沈黙しているようにも見えますが、か――』
 通信が途絶える。シグナルは健在していたので通信状況が芳しくないのか。
『――失礼。これより攻撃を再開します。トラップのコントロールを自分に』
「了解。頼んだわよ」
『任せてください。オーヴァー』
 自分達はこれから追撃するだけだ。アスランは、自分を気にせず攻撃してくれてかまわないと出撃前に言った。ならば、アスランの願いどおりにするべきだ。
 タリアは、アスランの思いに応えようと、皆に指示を下した。

せめて、夢の中だけは
第九 駆りは狡猾に、残忍に、確実に。

 アークエンジェルの周辺に砲弾が着弾する。だが、その高度な操舵により直撃はしない。
 立て続けにミサイルが発射されるも、それは全てがアークエンジェルの付近で爆破する。
 どうすればいい? ウィラード隊の援護も虚しく、海岸線には着々と近付いてゆく。
 タリアは黙考する。その時、アークエンジェルの右舷方向から何かが高速で放たれた。
 アスラン! あの迎撃網の中、よく! 放たれたミサイルは一秒の経過も許さず着弾した。
 アークエンジェルの右舷側に。そのどてっ腹に。見事だ。タイミングも、その据わった肝も。
 この後アスランはブリッジを攻撃する手筈になっていたが、タリアはそこまで期待していない。十分だ。容赦なく、アークエンジェルに攻撃を仕掛けてやろう。

「今よ! 機関最大、ミネルバをアークエンジェルに突っ込ませて!」
「はい、しかし、ええっ!? そんなことをすれば……ッ!」
「命令よ。ここでやらねば、皆の努力が水泡に帰すわ」
「……はい、どこまでも!」
 マリクがタリアの懇願に負けて、ミネルバをアークエンジェルに衝突させるコースを取る。
 アスランとは連絡が取れない。レイもシンもメイリンの報告によるとまだ戦闘中らしい。
 ウィラード隊も今は下がっているようだった。確認してからタリアは副官に指示を下す。
「左舷全砲塔、一方向、撃ち方用意!」
「了解、左舷全砲塔、一時方向、撃ち方用意!」
 十秒あったかないかでチェンが撃ち方用意完了の報告をした。目前にはアークエンジェル。
278新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/20(金) 00:53:00 ID:???
「……」
 耐える。耐える。まだだ。まだだ。一秒一秒を支配する。一秒を十秒と思え。そこから絶妙なタイミングを。
 まだ。まだ。まだ。まだ。まだ。
 アークエンジェルが接触を避けようと左側に傾く。今。
「っぅてぇー!」
 砲弾が発射される、が、衝撃がミネルバを襲い、微妙にミネルバの砲撃コースがずれた。
 数瞬の間を空けて、左に四十五度傾きかけていたアークエンジェルの艦底部に幾つもの砲弾がめり込んだ。爆発。
 煙が視界を妨げる。視界が晴れて、其処には――
 
 ――アークエンジェルの姿はなかった。損傷は激しいものの、あの数秒で、機関を最大にしてミネルバの目前にいた。
「くっ、仕留め切れなかった。今、何が――」
 タリアの声を、別の何かが遮った。
 それは衝撃。何所から? 彼らは此方への直撃を狙わないはずでは? やはり見せ掛けだけだったのか?
 違う。それは地球軍の戦闘機から放たれた物だった。スカイグラスパー。何故ここに……!
 しかし、その姿は急速に後方の山間に消えていく。どういうことだ?
 一体何が――
 その考えは、タリアの目の前に、アークエンジェルと雪に覆われた海が広がって消え失せた。
 今からではパルジファルは意味ない。いっそ――
「魚雷発射管一番から四番にウォルムラフ装填。同時に、一番から二番撃ち方用意」
 アーサーの表情が驚きの物に変わる。
「はい、しかし、ウォルムラフは合計で六発と少なく……」
「今使わなければ宝の持ち腐れだわ。復唱、よろしく」
「……はっ、魚雷発射管、一番から四番ウォルムラフ装填。及び、魚雷発射管一番から二番撃ち方用意」

 ウォルムラフとは、ボズゴロフ級が装備するような一世代前の魚雷とは訳が違う。
 最高速度何十ノット? まさか、何百ノット、だ。本来大規模作戦に使用されるような、超強力な兵器だ。捉えられれば超高機動が可能な潜水艦か超ベテランの艦長でもない限り、回避は不可能の代物。
 アークエンジェルが潜行を開始する。どうやってあの形状で、あの損傷で潜れるのか実に不思議だ。
「ウォルフラム撃ち方用意完了!」
「着水用意」
 既にアークエンジェルはブリッジ以外の全てを海に沈めていた。
 アークエンジェルが姿を隠してから十四秒近くしてミネルバが着水完了。タリアは、大きく息を吸って命令した。
「ウォルフラム、撃てーっ!」
279新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/20(金) 00:55:06 ID:???
「不味い、艦底部、既に3区画が損傷が激しく浸水発生! 現在食い止めていますが、これでは深くは……!」
「艦底部付近の避難は?」
「既に完了しています」
「艦底部、3区画を隔壁閉鎖!」
「了解!」
 不味い、マリューは静かに歯噛みした。彼の協力がなければこの艦はすぐさま展開されるはずだった攻撃の網に失われていただろう。
 だが、何も変わらない。ルージュが弱々しく近付いてきてはいるが、それまで艦が保つかどうか。追撃を振り切れるかどうか。
「これは、魚雷か!? 速すぎる! 数二、距離後僅かしかありません!」
 チャンドラが告げた。何かの接近を示す警報がだんだんと勢いを増す。
 ぴっ、ぴっ、ぴぴっ、ぴぴぴっ、ぴぴぴぴっぴぴぴぴぴ。
 マリューは黙考する。 数二? 少なすぎる。では、一体――

 最早目覚まし時計のように鳴り響く警報音の中、誰もが絶望に顔を染め上げたその瞬間、マリューは素早く告げた。
「デコイ発射! 同時に緊急浮上!」
 デコイが放たれる。さらにアークエンジェルの巨大な船体が急浮上する。一発はデコイへ向かい、もう一発は緊急浮上した際の気泡に惑わされて海底へ。
 タイミングが速すぎても、遅すぎてもアウトだった。だが、それも束の間、チャンドラが、更に絶望的な報告をする。
「更に魚雷二、来ます!」
 この状況で逃れられるか? 答えは否、だ。
 こんなにも騒音を立ててしまっている以上、最早デコイも通用しない。大体、後距離が十数では――
 が、その魚雷は着弾することなく消えた。
 その原因は――
『なんで出たんだ!? まったく、カガリは昔っから莫迦でドジで突っ走ったら止まらなくて!』
『莫迦って言ったほうが莫迦なんだ! こんのぶわぁか野郎!』
 ――センサーに映し出されたのは、盾も、ビームライフルも、片翼も、片腕も、片足も失い、頭部も半分が削り取られているフリーダムと盾もビームライフルも失った満身創痍のルージュだった。
 ほっと一息。だが、安心して入られない。急いでルージュとフリーダムを収容して、離脱しなければ。
 彼の存在を頭の隅に追いやりながら、マリューは指示を下す。

「フリーダムですね。満身創痍ながら、仕留め切れなかったか。でも、シンやレイはよくやったと思いますよ」
「……そうね。どの道作戦は成功よ。キース隊に連絡を。そちらに大天使が向かった、と」
 ふぅ、と息を吐いて椅子に深く座るタリア。戦艦同士でドッグファイトなど、馬鹿げている。寿命が一気に五年縮んだ気がした。
 そして、アーサーの言葉を聞いて更に寿命を縮めた気がした。
「何? キース隊と連絡が取れない? シグナルロスト? 莫迦な、それじゃ何の為にここまで追い込んだか!」
280新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/20(金) 01:00:43 ID:???
 そう、作戦はこういうものだった。
 陸地でウィラード隊がアークエンジェルを追い込み、低空を飛行するミネルバが更に追撃し、ここで仕留めれば良し。
 仕留めれなければ、水中でキース隊率いる水中MS八機とボズゴロフ級が止めを刺す。
 確実なものだった。そのために地雷やミサイルランチャーなども用意して、万全な状態で狩りに取り組んだ。
 まさに、陸海空含めた壮大な包囲網、壮大な追撃戦となるはずだったのだが――
 海が欠けては、決定打に欠けてしまう。
 すぐさまタリアが残りのウォルフラムを装填するように呼びかける、
 直前、バートの声が追い討ちをかけた。
「これは……ソナーに感! 下に何かがいます! 三時、距離数百、大きい! これは……っ!」
 突如、ミネルバの右舷側に、何かが湧き出てきた。大きい。直径四〇〇メートル以上。潜水艦じゃない。これは、あの形は、
 ボギーワン!? いや、アークエンジェル!? まさか、イズモ級!?

 その答えは、直接、一切手続きを取らずに流れてきた叫びと共に訪れた。
『べりぃー! ぐっど! べりぃーぐっど! おめでとう女神殿、汝らは我、アル・ダ・フラガとその愉快な仲間達が駆るこの能天使との、狂おしい、愛おしい、硝煙と血のむせ返るような臭いと黒煙と血の色で満たされた舞踏会に参加する権利を得ました!』
 ブリッジの皆が一瞬呆けてしまうような言葉。しかし、ベテランのアーサーとタリアだけは、この言葉の裏に潜む悪意、敵意、殺意、狂意に気が付けた。
 それは、不幸なのか、幸なのか。それすらも、考える余裕は彼らにはなかった。
『拒否権は認められまちぇーん! 潔く、諦めて、今であり、現在(いま)であり、未来(いま)でもあり、過去(いま)でもあるイマを噛み締めっろ〜! 諦めの悪い子はお兄ちゃん、き・ら・いっ!』
 彼らは、全く持って、超展開を呼び起こす、デウス・エクス・マキーナだった。



第十話 紅き獅子、紅き騎士 に続く。
281通常の名無しさんの3倍:2007/07/20(金) 12:53:33 ID:???
>>編集長
投下乙
専ブラを入れてみた。もうIEには戻れない・・・w

>>戦史
投下乙
前にも誰か書いていたが、俺もカガリはこのイメージになってしまった
鋼のミナ様もカッコイイ
小娘くんの出番とキャラが薄まってない?
何も考えてない風なサイの次の一手に期待

>>砂漠
アク禁を乗り越えて投下乙w DIONだったのかwww
相変わらず字が多いが、文に独特のリズムができてきたな
意外とあっさり読める
今後の展開が『種死のセカイ』にどう絡むか楽しみに待つ

>>せめて
投下乙
アル・ダ・フラガだったか・・・
いきなり本文でデウス・エクス・マキナを宣言するあたり
何をやらせるのか期待
282新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/22(日) 17:18:11 ID:???
 遡る事十数分。アスランはミネルバから飛び立ち、攻撃の機会を狙っていた。
「アークエンジェル……すまないとは思っている。だが!」
 それこそが、最大の報いといわんばかりに噛み締めてアスランは機体を出す。
 先ず右舷側へ向けてミサイルランチャーを放ち、迎撃させる。
 全弾迎撃される。そこにミネルバの砲撃。変形して接近。イーゲルシュテルンが此方に対する牽制として放たれる。しかし、無視。装甲が軋みをあげるが、これも無視。
 22.5mm銃身機関砲四基をイーゲルシュテルンに向けて撃つ。数拍置いて爆破。立て続けにミネルバの砲撃。急上昇させ、間合いを取る。
 アルドール複相ビーム砲を使いたいが、そんな隙を見せてしまっては駄目だ。ビームライフルを連射。ラミネート装甲に弾かれる。ガンランチャーから砲弾が吐き出され、分厚い装甲に弾かれる。
「……ふぅ、思い切りが大事だぞ、アスラン!」

 なにやら狙ってるのか素なのか分からないことを呟きつつも、降下。
 再びアークエンジェルの右舷側に飛び込み、しかし彼の瞳は別の何かを見定め、何かをじっくり待っていた。
 イーゲルシュテルンが彼の機体を捉え、火を吹く。しかし、彼は引き金を引かない。じっくりと待つ。
 時間にして僅か数秒にも満たない。しかし、ただひたすらに彼は何かを待つ。
 待ち、耐え、待ち、耐え、待ち、耐え、待ち、耐え、待ち、耐え、待ち、耐え、待ち、耐え、待ち、耐え、待ち、耐え――
 一秒を十秒に一秒を一分に一秒を十分に一秒を一時間に一秒を十時間に一秒を一日に一秒を十日に一秒を一ヶ月に一秒を半年に一秒を一年に――
 彼の瞳が極限まで見開かれた。
 アスランは鍛え抜かれた直感に身を委ね、カチッ、とスイッチを押し込んだ。と、同時にアークエンジェルの右舷側の雪原から何かが飛び出る。
 目をやる暇もなく、頭部からレーザーを相手の右舷、横っ腹に放つ。高速で吐き出されたミサイルがバビのレーザー誘導によって的確に横っ腹を貫いた。

「あー、えっと、こういう時はぁ……ぐぅれいと? だな」
 間を空ける必要も、情けをかけるつもりもない。着弾、爆発と同時に一気にブリッジの前に躍り出る。
 遅れて爆煙がたちこめる。アスランは冷静に、ブリッジがあるであろう場所へビームライフルの銃口を向け、自動的に引き金を引き――
「ッ……!? これは!?」
 かけて、別の何かが真横からビームライフルを貫いた。驚愕を露にするアスランの視線の先に、黒煙に紛れてそれが姿を現す。

 それは、薄い赤の塗装が成されていた。それは、肩に獅子のエンブレムを持っていた。それは、一部でガンダムと囁かれている形状をしていた。
「ルージュ……」
 尤も殺り合いたくない者と、殺り合うのか。
「カガリの言ったとおりだ……俺は、俺たちは、とことん莫迦だ!」
283新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/22(日) 17:19:42 ID:???
せめて、夢の中だけは
第十話 紅き獅子、紅き騎士

「ルージュ、今再び、私の我侭に付き合ってくれ!」
 ストライクルージュの中でカガリは吼えた。それに呼応するようにストライクルージュの瞳もより一層輝きを増す。
 紅き獅子、そして黄金の獅子が再び、自ら戦場に舞い降りた。
 同時にアークエンジェルから通信が入った。直後にかなり動揺しているマリューの声がコックピット内に響き渡る。
『カガリさん! 貴方をオーブまで送り届けることが私たちの使命です、戻りなさい! それに、撃たせることが目的だと――』
 カガリは歯を食いしばった。そう、そのために皆は今傷ついている。

「私の為に死ぬつもりか!? 私たちは生きなきゃいけない! それだけの罪を積み重ねてきただろうが!」
『けれど……』
「なぁに、この乱戦時、ちょっとばかし平気だ。それに、私はキラよりも腕相撲強いし体力あるしマナーだってあるし働いてたし銃の扱いにも慣れてるし莫迦じゃない! な、平気だろ?」
 目の前のバビが上空に躍り出た。そのガンランチャーをこちらに向けている。
『……分かりました、でも危なくなったらっ、え? ちょっと待って……え? 曹長が、少佐? どういう――』
 通信が途絶えた。何かあったらしいが、気にする暇もない。バビのガンランチャーが火を吹く。シールドを構え、バビに向かって飛ぶ!
 シールドを構えた状態でビームライフルを連射。しかしバビはその持ち前の加速性能で容易くかわす。敵はそのまま飛行形態に変形してミサイルを放つ。
 だが、この程度でやられるほどお人好しではない。即座に回避。追撃に入る。
 相手が反転。此方を向いてまた加速。立て続けに機関砲が火を吹くが、そんなもの、PS装甲の前では砂をかけるのと同じ。
 せめて戦艦ほどの連射速度があるのならまだしも。
「そんな幼稚じみた豆鉄砲が通用するのは幼稚園までだぞ、小僧!」
 言ってから、相手が女なのか男なのかも知らないことに気付いた、が、ぶっちゃけどうでもいいので無視することにカガリは決めた。


 一方、アスランにその言葉は伝わらない。しかし、喜びの笑みを口元に浮かべ、笑っていた。
「そう、そうでこそカガリだ! だがな、そんなガキ大将みたいな仁王立ちが許されるのは、幼稚園までだ!」
 勢いは緩めない。スピードは落とさない。今になって、ルージュが慌てて距離をとり始める、が。
「これが俺の……神風! トランスフォーム!」
 ちょっと恥ずかしそうに言って、アスランのバビが非常識な速度で接触寸前に変形しシールドを蹴り飛ばした。
 凄まじい衝撃をもろに食らった敵を短い腕で引き止め、ビームライフルをガンランチャーで叩き落す。更にガンランチャーを数発。だが――

 効果なし。しかも、ルージュは再起動して逆にこちらの腕を取った。
 空中で回し蹴り、膝蹴り、正拳突き、裏券を食らうと、バビが一瞬動きを止めた。頭部胸部腕部腰部肩部両大腿部関節部各種センサー駆動系統エネルギー系統一切合財全て不調(エラー)を訴える。
284新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/22(日) 17:20:43 ID:???
 不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調不調

 プログラム再設定再修正改善誤差修正再テスト損害状況確認――

 不調起動不調起動起動不調不調不調起動不調不調起動起動不調不調起動不調不調起動起動

 プログラム再設定再修正改善誤差修正再テスト損害状況確認――

 起動起動起動起動不調起動不調起動起動起動起動起動起動不調不調起動起動起動起動起動

 システムオウルモストグリーン。アスランが素早く機体を操作する。今まさにその四肢が切り落とされんというところで急速離脱。
 胸部腰部損傷。右大腿部破損。
「やるようになったな! カガリ!」

「痛いだろぉがぁ! 飛び蹴りしたけりゃ仮面つけてバイク乗れ!」
 言いつつ、カガリはビームサーベルを展開する。逃げるバビをルージュが追う。加速性能はいいが、持続性もトップスピードもその程度。
「甘い……ッ!」
 PS装甲に与える電力を最小限の物にしスピードとパワーをマックスにする。
 相手の腕もなかなかよかったが、機体がな、と思うカガリ。しかし、と声に出そうとして、首を振った。そう、そんな、相手を馬鹿にするような言い方は良くない。非常に良くない。ならば――こうだ!
「そう、相手が悪かったな!」

 そう言い放った直後、相手が此方を向いた。まるで、開き直ったように。その構えは、唯でさえごついバビがよりごつく見えた。
 だからだろう。私は直感で悟った。こいつは、強い。私よりも、ずっとずっと。けど、けど。負けられない。
 私は、アークエンジェルの命を背負っている。私が負ければこのバビはその手足を駆使して、ミネルバと連携してアークエンジェルを沈めようとするだろう。
 させない。させてたまるものか。そんなこと。
 意識が弾けるのを感じた。アサギ、マユラ、ジュリ、最高であり最好の彼女らを失った時と同じ、しかしどこか醒めた感覚。
 私はもう、これを理解していた。キラやアスラン達と同じ、同じ領域、同じ立場に立った証だ。
 それに、私は嬉しい。
 そう、何故か、己の半身と相見えるような、そんな感じなんだ。離れ離れになったのに、再び逢えたような錯覚。
 そう、私はこいつと戦うのが、悲しい。しかし同時に、嬉しい!
 例え、オーブの獅子の娘として不謹慎であろうと、知ったことじゃない。戦いたい。闘いたい。殴(たたか)いたい。蹴(たたか)いたい。拳を交え合いたい。
285新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/22(日) 17:21:43 ID:???
「相手が悪かった……こんな機体じゃあ!」
 せめてムラサメならば、とアスランは思う。
 カガリのような適応力が高い、否、高すぎる相手を前に、先程のような急襲は通用しない。その上弾薬を使い果たしたバビはほとんど無力だった。
 せめて、シールドとビームサーベル。せめて決定打を与えられる物。だが、贅沢は言っていられない。
 弾切れのガンランチャーを放り捨てる。ミサイルもない。ビームライフルもない。22.5mm短銃機関砲も弾切れ間近。アラドールを使う暇なんてない。装甲も限界。駆動系も今は大丈夫だが、何時崩れるやもしれん。
 そこで、はたと気付く。そうだ、何を甘ったれたことを。俺にはまだ、ある。

「俺にはまだ、ある」
 この、己の唯一信頼出来る、最強の武器にして防具が。矛にして盾が!
「まだ俺には、俺には!」
 俺にはまだ、このバビにはまだ手足がある! 相手をキッ、と睨む。
 武装も、機動性も、運動性も、敵わない。だからこそ。
「……少なくとも、この長年培ってきた技量、経験、感覚だけは、負ける気がしない!」
 相手の気配がこちらを侮るようなものから警戒するそれに変わった。
 逃げることをやめて、ゆっくりと身構える。紅き獅子も此方の雰囲気に圧倒されて間を取った。間を取る紅き獅子を見て、俺は思った。
 そうか、俺は嬉しい。そう、カガリと、形はどうであれ、こうして共に時間を共有するのが、嬉しい。そして、それは等しく悲しい。悲しいし、口惜しいし、愛おしい。でも、結局は、嬉しい!
 例え、ミネルバが落ちようと、キラが落ちようと、知ったことじゃない。戦いたい。闘いたい。斬(たたか)いたい。突(たたか)いたい。刃を交えあいたい。


「はあぁぁぁぁアアア!」
「だあぁぁぁぁアアア!」
 
 バビとルージュの距離が縮まる、
 バビとルージュが交わる、
 その直前、
 それは放たれた。

 緑色の閃光。放ったのは何者か。その意図は一体。
 二機がほぼ同時に原因を見やった。そこには――

 空を超高速で翔るスカイグラスパー。
「へへっ、契約は契約だからな。そこの嬢ちゃん!」
 ネオ・ロアノークその人だ。
『嬢ちゃんじゃない! カガリだ! なんでお前が!』
「約束なんだよねぇ、お前を生かして帰らせる。その代わりに俺は解放される。っーね!」
『そんな! 艦長は!?』
 はぁ〜っ、とネオは深い溜め息をついた。軽く手を振って見せる余裕もある。
「ごたごた煩いなぁ、それじゃ貰い手がいなくなるぞ? そんときゃ俺も、お前さんみたいなのと付き合ってあげてもいいけど、夜の方は如何なのかなぁ? やっぱりまだ未体……」
『前から思ってた! お前は本当にウザイ奴だ! 今ここで落としてやる! 貴様は糞汚物だ糞悪夢だ世界中の女に糞手を出し糞足を出しハァハァしてる危険域を軽く糞突破した糞猛毒を兼ね備えている人類史上最低最凶最悪最狂の動く糞汚物糞卑猥糞ったれの糞変態だ!』
「なっ、お兄さんに向かってなんて口を! せめてエレガントな変態お兄様とか、もっと、こう、言い方はないのか!」

「シリアスかつ山場の真剣勝負が台無しだな、監督が黙っちゃいないぞ……」
 ほぅ、と溜め息をついてから、アスランは機体を退かせた。いまだ言い合いを続ける二人を尻目に山陰に身を隠す。
286新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/22(日) 17:23:59 ID:???
「俺だって、人のことは言えないがな……ミネルバは、どうした?」
 周囲の音を拾うと、断絶的に砲撃音が鳴り響いていた。
 しかしかなり遠い、海岸線まで残り、二もない。ここからかなり離れていた。
 助太刀することはおろか、追いつくことすらままならないであろう。
 少々投げやりになって、
「バルサミコ酢……」
 なんて呟いてみるが、事態は急転しない。
 再び溜め息をついて、ふと、シン、どうしてるかなと思ったアスランだった。

 そうしていて何分が経っただろう。カガリも少佐もいない。砲撃音も止んだ。
 試しに機体を上昇させて様子を見ながらミネルバに帰還しようとした、そのとき、
 それは、
 余りに、
 唐突に、
 現れた。

 それは悪意であり、
 それは殺意であり、
 それは敵意であり、
 それは狂意であり、
 それは苦しみも狂しみも悲しみも哀しみも怒りも喜びも悪意も殺意も敵意も狂意も狂気的な何かで狂喜し信仰し乱舞し敬愛し虐殺し嘲笑し狂笑し憎み殴り蹴り刺し斬り突き嬲り――――――

 ――それは天使だ、とあなたは言った。それは悪魔だ、ときみは言った。これは天魔たる闇(かみ)だ、とワタしはいっタ。

 あれは、何だ?
 ミネルバの隣に居る戦艦のことじゃない。
 今、目前に、いる、ある、存在する存在(もの)は何なんだ?
 禍々しい、いや、まるで、まるで、この怖気は、
 クルーゼ隊長を初めて見たときと同種の、それよりも遥かに上の感覚じゃないか……!

 目の前には、暗い、冥い、昏い、闇い、黒い、歪な機械仕掛けの巨人、破壊と再生の象徴、モビルスーツが浮かんでいた。
 滑らかな肢体。刺々しい肢体。破壊。破壊。破壊。
 紅い一つ目がこちらを向いているのかもしれた。れた。た。
『ん? 御機嫌よう、アスラン・ザラ。紅い騎士よ。私はまいっちんぐ先生ことアル・ダ・フラガだ!』
『いまミネルバに向けて死刑を告げていたのだが……こなきゃ殺さなかったのに、ま、運が悪かったね! どのくらいかというと、小学生時代に『好きな子とペア組んで〜』って言われた時に誰も組んでくれなかったときぐらい!』
 何故だ、何故体動けのう。動。動く。動き。動く。動け。動。動き。動。動。動。動けく。
『お祈りは済んだかな? ああ、悲しいよ。君とは完全な状態で戦いたかった。だから逃してあげよう。なんちって! お兄ちゃん、往生際が悪いぞ!』
『観念してお縄についてあーれーで甘酸っぱい一夏の学園生活を送るがいい! ヒヒッ、ヒヒヒャハア! きれるなよ、きれるなコヨーテ! ぶふっ!』
 こいつは、何なんでありなんなんだ。
『じゃあ……迷える子羊よ、せめて狩人にジンギスカンにされて食われないように逝ね……あれ、ジンギスカンって山羊の肉だっけ? あれ、牛? 鳥? 豚?』
『まぁいいや、ミンチにすりゃ全部挽肉だかんなっ! 今夜の晩御飯ハンバーグ定食三人前だぜ! お父さん、がんばっちゃうよー!』

 紅い塊が、MSがが、此方の方へは体を向けず、左右に突き出た大きく滑らかな肩部を、細い五指をこちらに向けて差し出したのかもしれない。
 光が灯る。紅 一  が   を向い い 。
287新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/22(日) 17:26:27 ID:???
 ――アスラン!

 声が、俺を呼び戻す。放たれた閃光を間一髪で回避。

 咄嗟に相手の機体を見やる。美しい形をしていた。胸部は紅い塗装が施されておらず、黒い塗装が施してあって、そこ以外は見事な真っ紅。
 あの腰から踵まで覆う装甲は何なのだろう。内部に幾つもの物体が見えた。小さい。MSサイズのナイフ程度の大きさ。キラに聞いたことのあるドラグーンのようなものか。
 女王、という言葉が似合う機体だ。神々しささえ感じられる。
 そこで、俺を助け出した人物が誰なのかに気がついた。

『アスランさん……っ! ボーっとして、どうしたんすか!?』
 闇から俺を助け出したのは、シンだった。遠くにインパルスの姿が見えた。ザクの姿は見えない。
「シン……」
 ああ、あいつは強い。これ程の悪を視ながら、まだ戦う。そう、強い。シン・アスカ。
 どんな悪にも屈しない、心。どんな悪にも負けない、心。どんな悪をも消し去る、強い、心を持った戦士。
 彼が俺の心の怯えをある程度まで消し去ってくれた。だから、俺は応えよう。
「すまない。ありがとう。大丈夫だ!」
 彼の真っ直ぐすぎる心に応えるように、俺は身構えた。
 体の震えは、武者震いだと言い聞かせた。
 心の怯えは、勘違いだと言い聞かせた。
 さぁ、やるぞ……!



第十一話 偽善の自由、怒りの衝動 に続く。



あとがき:
この大天使編、獅子編、自由編三話分、つなげれば読みやすかったか……時間移動は結末がわかっちゃうから取り入れないようにしてたのに……orz
精進せねば。
288週刊新人スレ:2007/07/23(月) 22:26:02 ID:???
目次

 遂に卒業演習開始! ゲイツRを前に気合い充実のレイと裏腹に、まるで気乗りのしないシン・・・。
P.L.U.S. SS
>>258-259

 オーバル・オフィス。カガリとミナの会談中に帰ってくるのは【敗軍の将】ソキウス。その彼にカガリのかける言葉とは。
機動戦史ガンダムSEED 
>>261-267

 ファング2が封印され自らの存在意義を見失うミツキ。だが赤き風は容赦なくマーカス隊に襲いかかり・・・。
少女は砂漠を走る!
>>270-275

 かつての思い人、カガリと対峙するアスラン・ザラは・・・。 更に狂気を撒き散らす『悪』が彼に襲いかかる!!
せめて、夢の中だけは
>>277-280,>>282-287

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当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。

編集後記:
専ブラ使いましょう皆さん。2chのみならず、したらばBBSとか行き来する人なら特に。便利です
人大杉規制がうざったければ是非
289通常の名無しさんの3倍:2007/07/23(月) 23:51:29 ID:???
>>戦史
 さあて少ない戦力でどうやってこれからを乗り切っていくのか?
 影の薄くなってきた小娘君を憂いつつ乙して続きを期待します。

>>弐国
 >>『――僕らは一緒に宇宙にあがらなきゃいけないんだ――』
此処だけ聞くとまるでプロポーズですね。
 ミツキが覚悟を決める三十七分に今回の全てが込められている感があります。

 投下乙でした。
290通常の名無しさんの3倍:2007/07/24(火) 23:06:44 ID:???
>>せめて
投下乙
確かに今回ちょっと読み辛かった
構成というかもっと単純に見せ方の部分だよな
素人なりに思うのはアルの登場シーン〜VSミネルバ、アスラン、シンのシーン
これを一話にしてしまったらわかりやすいのではないかと思う

第八話〜第十話まではそれぞれの主役にスポットライトを当てておいて
アル自身は登場させない。時間を巻き戻してデウスエクスマキーナ編として
他との絡みの部分まで一話として再構成

ただ話の展開に動きがなくなるのは否めないか・・・
291新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/24(火) 23:13:52 ID:???
>>290
やはり……
一話にまとめれればよかったんですがね……そうすればあまり違和感なくなり……
無理やり三つに分けた(一つにまとめれなかった)のが今回の落ち度ですね。

なんとか上達するよう精進いたします……
292290:2007/07/25(水) 17:17:24 ID:???
>>291
落ち度というわけではないぞ
あくまで俺の嗜好であって正解は書いてるヤツが投下したモノ

と俺は考える

試行錯誤は勿論必要だろうがな
293通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 03:21:37 ID:???
「フリーダム、キラ・ヤマト、行きます!」

同時にキラを重圧が襲う。フリーダムがカタパルトによって加速されているのだ。
そのまま意識まで持っていかれそうな重圧に、キラは思わず顔をしかめる。

――これだけは、何度やっても慣れないな――

やがてフリーダムは飛翔に十分な加速度を得る。重圧がピークに達した次の瞬間、 突如感じる浮遊感。彼の愛機は空を翔けた。
機体の各部にチェックを走らせるとペダルを蹴る。翼持つモビルスーツは、バーニアの光と共に増速し、一路オーブの中心へ向かった。

「待ってて、カガリ。今行くから」

事の発端は、嘗ての大戦を共に戦った、戦友とも言える少女、カガリからもたらされた一通の手紙だった。

「私は結婚することになった」

要約すればそういった内容の手紙。だが、キラとラクスにはわかっていた。カガリが望まぬ結婚に、どれほど心を痛めているか。
カガリは明らかにアスランを愛している。だというのに、 ユウナ・ロマ・セイランという男はアスランを遠ざけ、
その隙にカガリとの結婚を強行した挙句、オーブの理想を破棄して連合と同盟を結ぼうというのだ。これが許されていいのか?
否、であった。政治の道具としてカガリが利用されることなど、 ラクスやキラにとっては容認しがたいことである。
こうして二人は密かに保管していた戦艦アークエンジェルとフリーダムを使い、 花嫁強奪を実行することになったのだ。

「護衛のMS・・・いた、ムラサメに・・・あれはミネルバのMS」

レーダーが野外結婚式場の護衛につくMSを次々と捉える。ただ一機のフリーダムで突破は困難、それが常識だろう。
だが、キラは自分が常識の外にあることを疑わなかった。

「可哀想だけど・・・こんなことを許しちゃいけないんだ!」

レールガンが、ビームが、背中に背負った羽の如き砲身が煌く。放たれた弾丸は、
吸い込まれるように各所に展開するMSに直撃――全てのMSを大破に追い込んだ。
だが、ただ一発のコクピットへの直撃もない。敵機全滅、死者はゼロ。それは正に神業だった。
294通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 03:25:09 ID:???
「くっそぉー!なんなんだあんたはぁーっ!」

ただ一機、被害を免れた赤いMSが巨大な剣を振りかぶって接近する。
初撃を回避したからには、それなりの腕を持つパイロットなのだろう。
だが、それはキラとの戦いのテーブルにつく権利を手にしただけに過ぎない。
勝てるかどうかは、別問題だった。

「行かせてくれっ!こんなことしたくないんだ!」

赤いMSの大振りの一撃を回避すると同時に、叩き込まれるビームサーベルによるカウンター。赤いMSはメインカメラを
頭部ごと喪失し、行動不能に陥って落ちていく。僅か五分余りで、オーブ上空の防衛は壊滅した。

「よし、カガリを助けないと」

何事もなかったかのようにキラは無傷のフリーダムを走らせる。無論彼とて、たった今打ち落としたのが護衛の全てとは思わない。
だが、如何なる敵が現れようと、自分とフリーダムならば対処できると確信していた。

――この瞬間までは――

突如として黒い影がフリーダムを覆う。とっさにキラは機体を右に曲げ、即座に応戦の態勢をとる。

「無駄だっていうのに・・・!」

焦燥が彼を襲った。幾ら彼が強力でも、一国を相手にするのは少々骨が折れる。なればこそ、カガリの救出は速度が大事なのだ。
こんなところで護衛にかまっている暇はない。キラは即座に叩き落すべく、機体を敵の正面に向けた、だが・・・

「な、なにあれ!?」

それは、見るからに不細工なMSだった。

ダンボールで子供が作ったような真四角のボディに、品質の悪い塗料でも塗りたくったような煌きにかける赤白青の塗装。

短く、太い脚もまた真四角であり、しかも間接というものが見当たらない。人間のように膝を曲げることができるかどうかはかなり怪しいだろう。

両腕にもまた、肘にあたるものが見当たらない。のみならず、手首から先にはマニュピレーターの代わりに、
固定武装の鉄球とドリルがついている。マニュピレーターはある意味でMSの命である。それを捨てたからには、
MSと呼んでいいかすら怪しいのだ。その上鉄球とドリルとは!キラは非合理性の余りに眩暈がした。

そして、頭部。これもまた真四角であったが、そんなことはもう気にもならない。それよりもキラが唖然としたのは、「顔」だった。
一応はツインアイにブレードアンテナ、そして「口」とフリーダムにも見られる「ガンダム顔」である。
だが、そのデッサンは一言で言えば狂っていた。小学生か幼稚園児がへのへのもへじを書いたかの如く、余りに適当な「顔」。
その上、目や口は明らかに塗料で描いただけ・・・カメラとしての役割は絶対に果たしていないことは、明らかだった。

一言で言えば、それは、ガンダムを適当にリデザインした、まがい物感がぷんぷん漂う不細工なMSだった。
295通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 03:28:31 ID:???
「な、なんて酷いMSなんだ・・・!いや、本当にMSなのか!?」

人を馬鹿にしたデザインだが、そんなものがここにあるというシュールさに、流石のキラも笑うどころではなかった。

「こ、こっちにくる!」

見れば見るほど、幼稚園児の落書きじみた――否、幼稚園児の落書きには統合性がない。だからこそ、それは落書きなのだ。
しかるに、目の前のそれは断じて落書きではない。バランスのとれた、ただの不細工なMSだ――MSがフリーダムに急接近する。
キラは慌ててファイアコントロールをいじると、フリーダムの全砲門を「それ」に向けた。

「あたれぇっ!」

次の瞬間、閃光が「それ」を包み込む。
フルバーストと呼ばれるフリーダムの奥の手、回避進路を全て塞ぐように放つ、一斉射撃。
ただ一機に向けるのには過大な火力の束がひとつ残らず「それ」に吸い込まれ、大規模な爆発の花を咲かせた。

「ふう・・・よく考えたら、ただのMSじゃないか。ぼくは何に怯えていたんだろう」

キラの表情に余裕がよみがえる。今までこのフルバーストを受けて無事だったMSはいなかったのだ。
だが、視界が晴れるにつれ、キラの表情が凍りつく。

「ま、まさか!?無傷だっていうの!?」

そう、「それ」は全くの無傷でフリーダムを見下ろしていた。

「・・・れじゃない」

「え?」

不意に飛び込んできた通信に、キラは首を傾げる。

「これじゃない・・・これじゃない・・・!」

同時に、フリーダムに相対する「それ」から、何か得体の知れないオーラが立ち上るのをキラは感じた。
296通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 03:30:04 ID:???
「ま、まずい!」

蛇に睨まれた蛙。という言葉が脳裏を掠める。圧倒的な恐怖に突き動かされるまま、キラはトリガーを引き絞り、
フリーダムの全火力を「それ」に振り向けた。

だが、「それ」は傷つかない。

全くの無傷のまま、寧ろ勢いを増したかの如く、「それ」は猛り狂った。

「これじゃない、これじゃない、これじゃない!」

「それ」が走る。フリーダムの全火力を不細工なボディの頭からつま先まで満遍なく受け、それでも止まらない。

「な、なんで!?なんで、なんで、なんでっ!?」

キラの声は既に絶叫である。理解できる範疇の外の物を目の前にすれば、例えスーパーコーディネイターでも何ができようか。
そして、距離は指呼の間に縮まった。

「欲しかったのは・・・・・・これじゃなーい!!」

鉄球とドリルが、フリーダムをガラクタに変えるのに五秒とかからなかった。


『もし種死にコレジャナイロボがいたら』


多分続かない。一発ネタ。
297通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 09:53:41 ID:???
コレジャナイロボtueeee!!!

まさに自らの成り立ちを払拭するかのような活躍ww
でもフリーダムなら 欲しかったモノ なのでは……壊しちゃったけどwwww
298通常の名無しさんの3倍:2007/07/26(木) 11:55:07 ID:???
「俺が乗りたかったのはこれ(コレジャナイロボ)じゃなくて、お前のそのフリーダムだったんだ!恨めしいぞ!」パワーじゃね?
実際問題、愛野鉄拳がコレジャナイロボごとCEにきたら、格好いいMSの群れに、コレジャナイロボのパワーも数倍に膨れ上がりそうだw
299弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/26(木) 20:28:42 ID:???
彼の草原、彼女の宇宙(そら)番外編
 左遷 〜ティモシー・チェンバレンの場合〜(1/3)

「ふーん。ウチに来るって事は、要するに左遷されたわけだ。赤服だそうだけど」
 白い軍服に身を包む意外に若い女性がブリッジの中、航宙図の脇を流れながら言う。
「多分そうでしょう。MSの腕のみは優秀だそうですが。上はウチを更正施設か何かと勘違いしているのでは?」
 赤い軍服に黒い髪、多少幼さを残した面差しの女性は表情も姿勢も崩さず直立不動のままかえす。
「ザフトレッドが二人ねぇ。知らない間に何処の精鋭部隊になったのかしら、ウチは。口とMSの腕はたつ、
と言う話ではあるけれど。天狗の鼻は早いうちに折ってあげた方が当人の為かしらねぇ、サーシャ?」

 白の軍服はモニカ・モンロー。ナスカ級3隻を預かり、艦隊名に自らの名前を頂く、20代前半の女隊長。
白い服の襟飾りに金の刺繍とフェイスのバッジ、そこだけ見ればエリート隊長である。前大戦時に艦2隻を失うも
人的被害を損耗率26%と言う驚異的数値に押さえ、更には連合のGタイプ2機撃墜等の輝かしい功績を
ひっさげて特務隊に編入された。現在は対テロ組織専門部隊の長としてプラント宙域を飛び回る日々である。
 勿論カミソリモンローの渾名は善し悪しは別にして、相も変わらずザフト全体に轟き渡っている。
 一方赤の服はサーシャ・ニコラボロフ。撃墜数25を誇るエースでMS隊11機の隊長、更にはGタイプ撃墜の
実績もある押しも押されもせぬエースである。大戦終了後にはそのまま長期休暇に入り、退役の噂もあったが
2ヶ月後に何事もなかったかの様に、わざわざモンロー隊を指名して復帰。現在彼女のゲイツRは特異な機動
と真っ赤な機体から戦場の踊り子の二つ名を取り、特にMSを運用するテロリスト達から恐れられている。

 いずれ員数外の最前線部隊がモンロー隊の実情である事に代わりはなく、だから素行不良や仕事に問題を
抱えた者が偶に島流しよろしく配属になることがあるのだ。サーシャの当時がそうだった様に。

 実際問題そのサーシャの動向を一番気にしていたのがモニカである。生真面目なお嬢さんが精神的に
潰れてしまったのではないかと心配していたのだ。だからモンロー隊を名指しての復帰を一番喜んだのは
端からどう見えるかはともかく、だからモニカであった。
 復帰した彼女は髪を伸ばし、キツイ眼差しは愁いを帯びて、長い上着にパンツで隙の無かった制服の着こなしは
赤の短い上着とタイトスカートに変わり、襟元を少しあけて、ペンダントの鎖が見える。全体的に凄みを
感じる様になった。実際復帰してから1ヶ月足らずでクルーは誰もお嬢さんとは呼ばなくなった。7割方が
旧モンロー隊からの持ち上がりであるにも関わらず、である。服装規定はあるのだけれど襟を開けることで
何かから解放されるのであればそれも良いだろう。とモニカは思う。生真面目な所はちっとも変わっていないから
職務上も問題ない。もっとも、もうちょっと胸が大きければ襟元を大きくあけても映えるとも思うのだが、
それは口に出せば今度こそ泣きながら退役しかねない。隊員のココロのケアーもあたしの仕事だものね。
 と、サーシャのココロを大きくえぐる様な考えを口に出したくてウズウズする彼女を呼ぶ声がする。
「ティモシー・チェンバレンです、着任の挨拶に参りました。モンロー隊長はいますか?」

 MSデッキ。肩にMのマーク。胸元に簡単な線画で踊る少女が書き込まれた深紅と黒のゲイツRの足下。
「いいですねぇ、パ−ソナルカラー。却下されちゃったんですよねぇ、俺」
「ねぇ、2番シミュレーター空いてます?……ありがとう。ティモシーくん? 腕試しに私と模擬戦、やってみない? 
資料によればかなりの腕前みたいだけれど。シミュレーターならイコールコンディションで純粋に腕の
善し悪しがハッキリするでしょ。赤服だし、ホントに腕が良いというなら私の代わりにMS隊を任せても良いし」
「ニコラボロフ隊長、そう言う事なら全開で行きますよ。隊長は別に要らないですけど腕は自信ありますから」
 ゲイツでGを仕留めたウワサの凄腕美人パイロット。輝く黒髪に控えめな喋り方、予想以上の上玉だ。
一気に主従関係を作ってその後は……。ありがちな妄想だが彼にはそんな妄想を補強するだけの腕がある。
「私のことはサーシャで良いわ。初めに言っておくけど、一応ヤキンで生き残ったのはマグレじゃ無いと思ってる。
裏付けの無い自信は後で惨めなことになるわよ……?」
 数十分の後、MSデッキにはサーシャの「一の子分」として絶対服従と忠誠を誓う彼の姿があった。
300弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/26(木) 20:31:48 ID:???
彼の草原、彼女の宇宙(そら)番外編
 左遷 〜ティモシー・チェンバレンの場合〜(2/3)

「ウチに監査立ち会い、ねぇ」
 国防委員会からの命令書を見てモニカはあごに細い指を当てる。モニカ自身はフェイスであっても下っ端で
あるので議長からの直接命令などは来ない。ならば作戦立案実行の権利をたてに、好き勝手にやって良いか
と言えばそうは行かずに国防委員会の駒として機能している。そして主にモンロー隊を所管する国防委員の
名はガスコインと言った。唯一彼女が反抗出来ない相手がモンロー隊を押さえる。モニカに鈴を付けたのだ。
と彼女に関わる誰もが思った。そして鈴は以前と変わらずに、今日も人知れず胃を痛めている。

 その鈴、ことガスコインが発行した命令書。建設機械の横領横流し容疑の監査に立ち会えとは書いてあるが
毎度の事ながら詳細な命令の中身など、やはり無い。
「サーシャに来たザク・ファントムだっけ?……初期設定終わってる? あ、そう。じゃ12時間以内でお願い。
あと、ハイマニ2の予備機もザクの整備完了に合わせて一機準備。サーシャとティモシーをブリッジにあげて」

「で、どういう事ですか? サーシャ」
「フレアモーターの数が著しく合わないらしいのよ。あんなデカイもの、持って歩くにも大変よ? だからといって武器に転用できるでも無し、売っても二束三文。ティム、キミがテロリストなら何に使う?」
 一応襟元をただしたサーシャと並んで、背広姿の男数人の後ろについて歩くティモシー。
「任務は一緒に隊長に聞いたじゃないですか。そうじゃなくて、聞きたいのは何故俺たちが。と言う部分です」
「資金の流れの中にザフト内部の要注意人物や、テロリストとの繋がりを疑われる脱走兵の名前が散見される
そうよ? 今のところウチは対テロ専門部隊でしょ?」
 思わず拳銃の位置を確かめるティモシーを冷ややかな眼差しで見つめるサーシャ。
「だからといってコロニー内部で何かがあるとは思わないけどね。私は」
「……あのぅ。だから、MSはなんの為に持ってきたのかって話なんですけど」
 結局、今回は書類上3機のフレアモーターが行方不明になっている事が確認出来た。全体ではかなりの数
になる。何に使うと言うのだろうか。既に機械管理の担当者は当然の如く行方をくらましている。
「問題はどうやって持ち出したかだけど……。検察官、この辺から我々の仕事でしょうか?」

 真っ赤なザク・ファントムとジン・ハイマニューバ2がコロニーの外壁周辺を索敵モードで飛ぶ。
『ティム、本当にそう言う場所があるの?』
「以前、聞いたことあるんです。係留するだけで見えなくなっちゃう死角が。……。アレ、そうじゃないですか?」
 MS数機分の大きさの機械、フレアモーター。それが3機、カムフラージュシートをかけただけで無造作に
係留してある。確かにコロニー内部からは見えないだろうし、通常の点検のコースからも微妙に外れている。
更に資源搬入口のごく近く。これならジャンク屋か公社のフリをすればいくらでも持って出ていける。
こんなデカブツを持ち出す連中ならば、船のナンバーなんかいくらでも誤魔化しようがあるのだろう。
モーメントバランスのデータをどう誤魔化しているのかに興味を引かれるサーシャだが任務には関係がない。
『お手柄ね、ティム。……モンロー隊ニコラボロフよりガ・ショー財務検察官へ。……。』

 モンロー隊旗下のナスカ級リンドバーグの士官用個室。心当たりがあれば教えて下さい。但しリストの内容
については口外無用です、閲覧はあなたと隊長のみに願います。と言う背広の男からもらった資料を眺めて
固まるサーシャ。並み居るエースパイロットの名前が参考人として並んでいる。それだけでも肝を冷やすには
十分であったがそのリスト上位に見知った名前があった。アカデミーの先輩で人心掌握とMSのエキスパート。
人脈がとにかく広く技術にも明るい。資料では現在、新型MSのテスト部隊の隊長であるらしいその名前。
「エディ・マーセッド……。エディ。まさか、あなた……」

 彼はユニウスで両親を亡くし、前大戦時は特務隊所属。自ら標榜はしていないが、資料上は対ナチュラル
強行派に分類される。確かに嫌疑がかかるには十分なのだが、隊長には報告すべきであろうか……。
301弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/26(木) 20:37:36 ID:???
彼の草原、彼女の宇宙(そら)番外編
 左遷 〜ティモシー・チェンバレンの場合〜(3/3)

「むぅ、フレアモーターか……。重さで買い取ってくれるならおいしいけど、ねぇ。制御機器の流れはどう?」
 モンロー隊旗艦イアハートのブリッジ。取りあえずサーシャとティモシーの二人が任務完了の報告を
している所である。モニカは細い指を顎に当てて何事か考えるようにして報告を聞く。
「私には地球への隕石落としぐらいしか使い道が思いつきません。それで一応衛星軌道上の資源衛星他大小
合わせて118個についてシミュレートしてみた所、大気圏突入前に全て感知されて撃ち落とされます。初速が
足りません。目標をプラント本国最外苑コロニーにしても同じ事です。勿論アプリリウスには全く届きません」

「初速が無くてもバレない隕石に、ダメージがデカイ目標。そんなのありますか? 俺には……」
「これだけの数のフレアモーターでしょ……? あたしなら、ユニウスセブンを地球に落とすけどね」
 さすがにぎょっとする二人にモニカは続ける。
「いかに設置するかが問題だけれど、地球に落とせばナチュラルが限定的に被害を被るのはほぼ確定。
コーディネーターは比率で行けば数字が出ないほどしか地球には住んでない。質量の大きさが桁違いだから目標も
適当でOK、で被害は全地球規模。動いてしまえば止めるのには、もう破砕するしかないだろうけどジェネシス
が使えない以上メテオブレーカーが必要でしょ? MSが数機あれば設置の阻止は簡単だと思わない?」
 防衛目標が限定的であればあるほど作戦遂行率は高くなる。だいたいあの質量だ。多少割れた所で効果
に変わりは無い。完全に阻止する必要さえないではないか。そう言うと二人の顔を見比べるモニカ。
「なーんてね。一部の強行派テロリスト達はユニウスを空の墓標なんて呼んでるくらいだし、それを落とすなんて、
可能性としては考えづらいわよねぇ。やっぱり」
 近々に行動開始は間違いないだろうけど何をしたいのかしら。そう言うとモニカはむぅとうなって考え込む。

「荷物運びだそうよ?」
 地上の部隊への補給物資の投下作戦を称して自らの隊長が言った言葉を、サーシャはそのまま伝える。
「はぁ、そうなんですか。……つーか、なんで俺も降りなくちゃいけないんですか!? イクサバノオドリコの
子分として心機一転、頑張ろうと思ってたのに! ここから更に左遷される理由が、無いじゃないですか!」
「多分その辺が原因じゃないの?隊長、押しつけがましいのキライだし。……左遷された意識はあったんだ」

 その一日前の隊長室。
「彼、エディと言ったかしら。ちょっとガスコイン氏に頼んで調べてもらったけど、確かに怪しいわねぇ。で、あなたは
どうしたいの? コレのおかげで大概のことは出来るわ。今の所、彼には力業で下に下りて貰ったけど」
 襟のバッジを指さしながら振り向くモニカ。確かに立場上テロ絡みとなればほぼ何でも出来る彼女である。
「彼の動向をモニターしたいのですが、私ではまずいでしょうし、隊の他の人達では力不足。……ティムをエディの所に
送れませんか? ゲリラにつけ狙われてるそうですし、地上戦の訓練にもなって一石二鳥です」
「彼で良いの?」
「事が起これば、エディが相手では生半可な腕の人間では押さえられません。それにティムは自覚が足らない
だけでザフトレッドにふさわしい人間だと、私は思いますけど」
 あなたはむしろここしばらく自信たっぷりね。と声に出さずにモニカは思う。昔の自分を彼に投影してる?

 結局、命令の詳細は伝えないことにしたサーシャである。様々な状況判断も赤服に求められることの一つだし、
口を滑らしたりしたら困る。それに向こうは対テロ専のモンロー隊所属と言うだけで警戒するはずだ。
「定期連絡は忘れないで。詳細な状況説明は必ずテキストで。それとザク・ファントムを貸してあげる。戦闘に
出るならば、壊しても構わないけどキルマークは増やす事。……なんて顔してんの、左遷なんてあり得ないでしょ。
キミが降りる事に意味があるのよ。ウチの隊長は意味のない命令は絶対しない。……気を付けてね?」

 コンテナが赤い尾を引きながら落ちていくのを見送ったナスカ級3隻は新造戦艦進宙式に出席する
最高評議会議長護衛任務の会議の為に本国方面へ梶を切る。時代が大きく転換する、その少し前の出来事である。
302弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/07/26(木) 20:42:59 ID:???
今回分以上です

サーシャ復活編。草原でボツにしたエピローグの一部です。
保守替わりに投下させていただきました。
ではまた。
303通常の名無しさんの3倍:2007/07/27(金) 21:44:41 ID:???
>>コレジャナイロボ
投下乙
笑わせて貰った。ギャグであっても丁寧に言葉を選んでる感が好感
あえて言わせて貰えばちょっとオチが弱いかな
書き慣れてる雰囲気なので次のネタにも期待しよう

>>弐国
投下乙
ボツにしたのが勿体ない。きっと『草原』エピローグの最初の数行部分なんだよな?
前提として大きな事件を起こせないし、ティムの存在によって砂漠との整合性もある。
その上でキチンとサーシャ復活編になってる。お見事
難を言えばやたらに話が凝縮されすぎて見える事
砂漠本編とは逆に少し字数が増えても良いのでは?
304新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/28(土) 20:28:37 ID:???
「いける……いける……イケル!」
前置き、今回は書き方を試験的に変えてみました。読み方が醜い、との意見がありましたらチラ裏か、此処でお願いします。では……

 コアスプレンダーの出力を上げる。メイリンの声が響き渡る。
 怖いものなんか何もない。相手を射抜く。もしくは貫く。OK。オーケー、シンアスカ。ここまできて
逃げは赦されない。
 なら、やるしかないじゃないか!
「シン・アスカ! コア・スプレンダー、地球と未来の平和を背負い、少年漫画並みの王道で片をつけてくるっかふだぁ!? いれぇ!」
 本当に痛い、口内炎出来そう。あたちちょんぼりぃ、とはミスタ・カリウムことゲ■ツ様も言ったもの
だぜ!
 ……いや、マジで痛い。
 そんな絶望的な痛みと予想外の急なGに苛まれつつも、発進前のブリーフィングのことを思い出す――
 
 ――ブリーフィングルームに入ると、既にレイとアスランが集合していた。どうやら俺が一番遅かった
ようで、俺を認めるとアスランはそそくさと説明に入る。
(作戦を説明する。先ず、ミネルバがアークエンジェルに発見される前にレイ、シンはインパルスでフリーダムを引きつけ、俺とミネルバがアークエンジェルを狙う)
(二人にはミネルバがアークエンジェルに発見される前に低空を滑空してもらい、気づかれないようフリーダムの間近へ。フリーダムがウィラード隊のMSを撃退したところに攻撃に入ってもらう)
(これは奇襲という形になるな。戦闘開始後の判断は二人に任せる。それと、万が一の場合は生きることだけを考えてくれ)
 と、アスランが一息吐いた。
 それを見計らってレイがおずおずと手を上げた。
(アスラン、俺の乗機はバビでしょうか)
(な訳ないだろう。俺がバビだ。ちなみに、ザクの、仮称ファトゥムウィザードはジャスティスのリフターと似通っている為、ジャスティスと運用法が酷似している。俺が扱えばいいのだが、俺にあいつは荷が重い。ああ、ジャスティスのデータは出撃前に渡しておく)
 レイが納得したように頷き、再び黙り込んだ。どうやらアスランのぼやきに近い言葉は完全にスルーし
た模様。強いな。
(フリーダムもアークエンジェルも強い。俺にはそれが判る。だが、隊長として、これだけは言わせて欲しい)
 一旦咳払いしてアスランは続けた。貫禄あるけどない、そんな矛盾点が頭の中を駆け巡る。俺、話し
真面目に聞いてないよなぁ……なんて考えてる余裕もある。
(死ぬかもしれないと思ったら、逃げろ。一つしかない命、もっと有効に扱えよ。分かったな? あ、嘘。やっぱ死ぬ気でやれ。死ぬつもりでやれ。いっそ死ね。生きて帰らないつもりでやれ)
(おおい!? さっきと言ってる事が究極完全完璧完膚なきまでに矛盾してるよ!? それでいいんですかおにいさーん!?)
(シン、君は喧しいな)
(シン、煩いぞ)
(こ、この物語の主役は俺だろう!?)
 見えざる神の手が働いた模様。そんな俺に目もくれず、しかしレイが失笑を漏らした。
 ――神様、この世には雨の似合う女性とそうでない女性がいると思わない? レイは男だけど、俺、レ
イは似合う方だと思うんだ。現実逃避しなきゃやってらんねぇ。

 ――若気の至りというか、ほんの数十分前の俺が阿呆に見える。そこに、いつもとなんら変わらぬレイ
の声が聞こえてきた。
『シン、俺が後に出る形になる。準備はいいか?』
 準備はいいさ。ただ、出撃前にサイに言われたことが気になっていた。
 相手を撃つ覚悟。相手にも己の信念があるのかもしれない。守りたいものがあるのかもしれない。確か
にそんなこと考えようとは思わなかった。きりが無い。
 しかし、フリーダムには勝てない? 何を。俺は確かにフリーダムよりも弱かった。だが、勝てないだと?
 いいだろう。倒してやろうとも。俺がどんな思いでインパルスと一緒に戦ってきたか。サイに、今迄力を
求め続けた俺の気持ちが、分かるのか?
「いつでもいける! あいつを倒すぞ!」
『ああ、倒そう。あいつを』
305新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/28(土) 20:33:51 ID:???
せめて、夢の中だけは
第十一話 偽善の自由。怒りの衝動。

 目前のフリーダムは丁度ウィラード隊のバビを蹴散らし終わったところだった。疲弊しているのか、動き
に切れがない。インパルスのパワーをマックスに。一気に決める!
 俺はインパルスを疾らせた。フリーダムが振り返るが、遅い!
 ビームライフルを放つもフリーダムが掲げたシールドに弾かれビームは四散する。だが、俺は止まらな
い。
更に一発。また四散するが、当たり所が悪かったのかバランスを崩していた。そのまま一気に左肩からタッ
クル!
「せぇぇぇあぁぁぁやぁあ!」
 更に膝蹴り。回し蹴り。フリーダムが急速に離れる。だがその後ろに――
「今だっ!」
 新たな翼、ファトゥムを背に授かった赤白のザクファントムがいた。精密射撃。慌ててフリーダムが上昇
するが、既にそこは俺の射程範囲内。ビームの霰を受けて、フリーダムが見事な回避機動を取る。
 さらにこちらに対してビームを浴びせかけようとする――も、
「上手い……だけど!」
 俺はインパルスを三つに分離させてこれを避ける。機関銃が、ミサイルランチャーが火を吹く。ザクのビ
ーム突撃砲が火を吹く。
 ぱっと見数は四。しかもこっちは戦闘機。狙いどころがわからずフリーダムがうろたえていた。何時も何
時も、くだらない自己満足に浸りやがって!
「傲慢なんだよぉぉぉ! フリィィダム!」

「くっ!」
 思わず舌打ちをするキラ。相手のMSは戦闘機形態で近付き注意を引いて、ザクが攻撃し、ザクに注意
が行ったと確認するやMS形態になって攻撃する。
 機体の特性を最大限に生かしきれている。
 しかもこちらが砲口を向けると、その位置にコックピットを持ってくる。しかし自分はコックピットを狙わない
ため撃てない。こちらが直撃を狙わないのも知っているようだった。
 ザクはザクで、良い具合に役目を果たしている。決してオフェンスには参加せず、フォロー、つまり牽制、
注意を引く等に徹している。そう、彼ら――彼女らかもしれない――は、お互いを信頼しあっている。
 だが、こうしている間にもアークエンジェルは猛火に晒され、武装と弾薬を補給したバビもこちらに対して
攻撃を試みる。
 多勢に無勢だ、とキラが思っていると――
『下らない偽善で戦うのは、そろそろ止めにしたら?』
 自分の声が脳内に直接響いた。

『アークエンジェルを助けたくないの? 大切な人たちが乗ってるんだよ? こんな、僕たちの話を聴きもしない奴ら、排除したって構わないじゃない』
 自分の声にさいなまれながらもバビの武装を破壊し、回避機動をとりはじめる。装甲は良いが、数々の攻
撃でフレームががたがたになってきていた。
『せめてあのガンダム。あれだけ落としちゃおうよ。君、友人を見捨てる気?』
 ビームが肩の装甲を掠る。それだけで一部分が蒸発した。当たり前だ。ビームなんだから。
『そんなことしたって無駄なんだよ』
 確かに、そうだろう、とキラは思う。もし相手の生命の危険性を問わず攻撃すれば、少なくとも後数分足
らずでこの部隊は全滅できるだろう。
 しかし、それでは意味がない。
『アークエンジェルに艦長さんが、ムゥさんが、カガリが、ミリィが、死んじゃうんだよ? 諦めなよ。犠牲はつきものさ。今度頑張れば良いじゃないか』
306新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/28(土) 20:38:10 ID:???
 そうだろう。そう。そうだ。だから、キラは大きく息を吸った。

「いちいちいちいち…………うぅるっさい! シャァラップッッ! 諦めてたまるかぁっ!」
 そして、ためた息を総て吐き出した。
『無駄だよ。何も変わりゃしない。無駄だ』
「無駄だから諦めるのか!? 下らない!」
 バビの武装を破壊。迫り来るミサイルの雨を避け、ガンダムの武装めがけて発砲。当たらない。しかし即
座に背後に回り込んでいたバビの手足を両断。
「今度頑張れば良い……? 一度でも諦めたやつに、何ができるって言うんだ!」
 キラは何もかもを吐き捨てた。その様は泣いているようにも見え、啼いているようにも見える。
『じゃあお前はその下らない意地のために仲間を見殺しにするんだな。何一つ変わらない、餓鬼』
「見殺し? はっ、まさか! 見殺しじゃない! 信頼しているからこそ、いまこの戦いに専念する! 僕はこの戦い方を変えない!」
『詭弁だよ』

 なおも食い下がる姿の視えない自分に、キラは苛立ちを隠さず舌打ちした。バビの武装を破壊。バビは全
機後退。ザクとインパルスがこちらの動きを見て慄いている。発砲。しかし寸でのところで両機は空に逃れる。
「何とでも言え! 誰かが変わらなきゃ、誰も変わろうとしない! だからみんなに見せ付けるんだ! たとえ下らない偽善だろうと意地だろうと、人は変われるんだって!」
『その為に、それ迄に、何人の奴らが死に、泣き、怒り、刃、銃を執るんだろうな』
「そのときもまた、こうやる! たとえどれだけの年月が伴おうと! 少しでも犠牲を抑えられるのなら!」
『なら、なんで戦争が終わってからそうしなかった? 何故だ?』
 何故? ほんの数分前の自分なら言葉に悩んだだろう。しかし、それはどうでもいいことだった。
 所詮過去は過去。現在(いま)も直ぐに過去となる。過去は過ぎて行った日々。現在は過ぎていく日々。未
来はまだ見ぬ日々。
 過去は思い出で良い。そして、過ちに気づき、それを栄えに自分は強くなる、変わる。現在は未来への道
に過ぎない。悩んでいる暇はない。未来は願いで良い。願いをかなえようと努力すれば良い。
「……何故? 簡単さ! 僕が……弱かったからだ! 逃げていたからだ!
 目を背けていたからだ! それじゃあ駄目なんだ! 以前みたいに戦友(とも)を失ってしまう!
 もっともしてはいけない過ちを犯してしまう! だから僕は変わる! 変わって魅せる!」
『どうだか』
 もう一人の自分の嘲笑う声。いいだろう。嘲笑え。嘲笑って、慄くが良い。キラは、
「変えて、魅せぇるさ! そこで視ていろこの糞しつこい糞ねちっこい糞面さげた糞下衆野郎! このちっぽけな、下らない、意地を、偽善を、自分にとっての正義を貫き通してやるんだ! だって僕は……僕は……っ!」
 叫んだ。叫んで、ヘルメットを脱いで自分の顔に思いっ切り拳を叩き込んだ。口の中を切ったのか鉄の、
血の味と死の匂いが口に広がる。
「人間(ひと)だからァッッ!」
 姿の視えない自分は、一度だけ微笑んで、闇に帰っていったような気がした。

「強い……何で、急に、こんな!」
 フリーダムが、強い。いや、強くなった。今、俺は、はっきりと感じる。フリーダムの力を。フリー
ダムの闘志を。フリーダムの想いを。
 俺は――
307新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/28(土) 20:41:00 ID:???
「怖れている? 恐れている? 畏れている? そんなっそんなはず!」
 怖い。恐い。畏い。痛いぐらいにこわい。
 違う。あいつがこわい。けど違う。俺は、あいつの想いを壊すのがこわいんだ。倒すどころか追いつく
ことすらできないくせして、倒すことがこわいって、傲慢だとは解ってる。理解ってる。
 でも、あの想いを向けられたら、あの姿を視たら、誰でも決心が鈍る。そうだろう? だって、あいつは、
あんなにも傷ついていて、ぼろぼろで、疲れてるのに、
 あんなにも綺麗なんだ! あんなにも美しいんだ! あんなにも強いんだ! あいつは……!
『シン! 危ない!』

 戦闘中に、ぼうっとフリーダムの姿を眺めていた俺に、レイの言葉が聞こえてきた、時にはもう遅かっ
た。
 フリーダムが目前に迫る。こちらの攻撃手段を失くし、アークエンジェルをまもるために。
 護るために。まもるため? そうか、ああ、そうか。こいつは、誰も傷つけないという覚悟とともに、仲間
を護るという覚悟も背負っているんだ。勝てないわけだ。

「は、はは……アイツ、は……」

 勝つために戦うのではなく、護るために戦っていたんだ。だから強い。美しい。綺麗だ。振り下ろされる
斬撃を、やはり俺はぼうっと見上げていて――
 間に入ったレイのザクが、代わりに四肢を、ファトゥムを切り落とされるのを視た。
 おそらくファトゥムまで切り落とすのは予想外だったのだろう、フリーダムが落ちるザクの姿を追い、捕
まえ、抱えてゆっくりと地上に降ろした。
 それはどうでもいい。大事なのはレイが俺を庇って落ちたということだ。生きているのか? たしかにフ
リーダムのおかげで衝撃は少ないと取れる。しかし、何が起こるかはわからない。
 レイが、もし死んでしまっていたら? 俺のせいだ。フリーダムが遠くからハイマットフルバーストの構
えをとる。

 俺はこれを知っている。どこで視た? いつ視た?
 散らばるピースを必死に集める。何だ? 俺は何かを忘れている。何をだ? たしか、オーブで、オー
ブ? オーブ、おーぶ、かぞく、ながれだまで、おれのめにうつるもの、あおいつばさをもった、しろいて
んしさま。
「マ……ユ……?」
 俺は、長い、永い一瞬を経て、
 総てを、

 思      い


          出   
              す
                。
308新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/28(土) 20:42:14 ID:???




 ――それは、何時か少年が視た悪夢。
 ――それは、何時か世界に訪れた崩壊。
 ――それは、何時か少年が視た地獄。
 ――それは、何時か世界に訪れた孤独。
 ――それは、何時か少年が視た悪魔。
 ――それは、何時か世界に訪れた破壊。

 ――それは、平和に終止符を打った、総てを消し去る、天使。
 ――それは、かけがえのない両親を、妹を奪い去りし、天使。
 ――それは、思い出すことをオソレ、自らが封印した、悪夢。

 ――父を、
 ――母を、
 ――妹を、

 ――――――奪った天使!

 今、ようやく思い出した。あの時、俺たちを撃ったのは、お前か。

 赦さない……。
 殴り、蹴り、折り、剥ぎ、斬り、貫き、嬲って、裂いて、割って、潰して、殺して(けして)、滅して(けして)、浄して(けして)――!
 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」

「フリーダムッ……お前は……貴様は……殺す!」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺すッッ!」

 其処にあるは、復讐の狂気い(おもい)に駆られた、復讐の狂気いに身を委ねた、少年。
 
 一気に断つ。一息に断つ。確実に断つ。今此処で!
 刃を用い、確実に、絶対に、此処で! 今此処で!
 傲慢な、貴様を――! 今、現在、未来永劫その糞ったれた姿を視ないでいいように!

 ――たった今、この場は、血が、肉が、覚悟が、憎悪が、意地が、怒りが飛び交う戦場と化した。

 インパルスが斬る。斬る斬る斬る斬る。斬ってかわして撃って斬ってかわして斬って突いてかわして斬って撃ってかわす。

 フリーダムがかわす。かわすかわすかわすかわす。かわして避けてかわして斬ってかわして身を反らして斬ってかわして避けて斬る。
309新人 ◆CtcY.CRZDQ :2007/07/28(土) 20:49:39 ID:???
「速い! 動きも良くなってきている! だが!」
 動きは、良くなってきてはいる。が、荒い。 怒りに総てを任せてしまっている。あれでは、先ほどの方
がまだ強い。キラは自然と目を細めた。繰り出される斬撃をかわす。しかし、これは、
「バーサーカー……」
 かつての強敵が言い放った言葉。そう、敵は、まるでバーサーカーだ。もしこれに、あの機体に、理性
が存在していたら、自分は確実に死んでいるだろう。敵が空から襲い掛かる。此方は海へと逃げる。既
に片翼、片腕、片足も失っていたが、やはり怒りに駆られたパイロットから逃れるくらい。
「猿でもできる!」
 そのままフリーダムは残ったバラエーナとビームライフルを海面に向けて、放った。

 
「あああああああああああ! アアッ! アアアアッッッ!」
 逃がすか、逃がすか、逃がすか逃がすか逃がすか逃がすかッ!
 俺はビームサーベルを抜き、展開。一気に加速する。何も考える必要はない。想えば良い。こいつを殺
す、と、念じれば良い。
 だが、ビームサーベルの切っ先が触れる直前、水蒸気爆発がインパルスを襲った。それと同時に、フリ
ーダムの姿も消える。それと同時に、バッテリーも危険域に突入する。逃げられた。結局、逃げられた。
インパルスは海中に半身をつけたまま佇む。
「……ッゥ……ぁぁあ! あああああああああ! ガアアアアアアッッ!」
 総てが、無駄になった。妹の、両親の、ステラの、みんなの仇も取れずに逃げられ、俺はのうのうと生き
延びてしまったんだ。
「畜生……畜生……ッ!」
「あああああ………………ッッッ!」

 ――だから、総てを忘れよう。
 少年の内に眠る何かが彼を救おうと尽力する。その出来事に鍵をかけ、重厚な壁で隠し、忘れさせる。

『シ……聞こえ……返事を……』
 友の声が聴こえて俺は我に返った。俺は先ほどまで何を叫んでいた? 何を憎んでいた? 何を悲し
んでいた?確か、誰かが、大切な誰かがフリーダムに殺されたんだけど……わからない。忘れちまって
る。空白だ。虚無だ。空っぽだ。がらんどうだ。誰だ? 確か、確か、確か――
 解らない。それよりも先ずはレイだ。
「レイ! 無事か! 今助けにッ!」
『違……アヅラ……じゃない、アスラ……助け……』
「面倒だから突っ込まないが、アヅ……アスランが何だって!?」
『敵……ろ……』
 敵?
 そこで、初めて、俺は、純粋悪と呼ばれてもおかしくはないものと、出会った。出遭った。出逢った。
 あいつは紅かったんだ。黒かったんだ。漆黒の赤だったんだ。紅い闇色だったんだ。あいつは満身創
痍のバビにその腕を突きつけている。判る。判るとも。あいつは、殺すつもりだ……っ!
「アスラァンッッ!!」
 だから俺は無我夢中で叫んだ。



第十二話 死にかけの断罪者 に続く。

後書き:前置きの通り、読み難いと感じたらチラ裏、もしくはこの場で仰って頂くと作者は大変感謝します。
310名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 14:07:49 ID:???
最近あちこちのスレでSS食傷気味になってた俺が、今のところ唯一文章に魅せられて読んでる話だ。
どうか己の道を突っ走ってくれ。ブレーキは暫く踏まなくていい。
311通常の名無しさんの3倍:2007/07/29(日) 22:37:05 ID:???

でも改行が少し変でね?
312通常の名無しさんの3倍:2007/07/29(日) 23:04:22 ID:???0
 投下乙です。

>>弐国
 こういう番外編がとても上手だと思います。本当に短いのが勿体無い。
モンロー隊はアーモリー・ワンにいたナスカ級ですか、深いですね。

>>せめて
 改行よりも、言葉の繰り返しが気になりました。文章は独得のリズムがあって
面白いです。
 少し状況が分かりにくいところがあるかと思います。
313通常の名無しさんの3倍:2007/07/30(月) 15:18:39 ID:???
>>せめて
素人の戯言だ。論理的に説明は出来ないのを先に断っておく

言葉の繰り返しで焦燥感などを表現しようと言う方向性は間違っていない
ただ、言葉の選択とそれをやる場所によっては全体のリズムが悪くなって
あんたの持ち味、文章のスピード感が無くなる
やるならば響きで言葉を選ぶと言うのも当然有りではないかと
前話のアル登場シーンの様にワザと変則的にするのは有りだろうな
まぁ前置きを見た限り全部ワザと、だろうけどな

それとセリフ、独白の部分はキャラがぶれないように注意して欲しい

話も面白くなってきた、次回も期待するぜ
314週刊新人スレ:2007/07/30(月) 18:45:09 ID:???
目次

 カガリ奪取の為フリーダムを駆りオーブ、ザフト双方を蹴散らすキラ。その彼の眼前に現れたモノとは。
もし種死にコレジャナイロボがいたら
>>293-296

 サーシャの復帰したモンロー隊へ赤い服の少年が左遷されてきて・・・。『砂漠』と『草原』を繋ぐエピソード。
彼の草原、彼女の宇宙(そら)番外編
>>299-301

 フリーダムを追いつめるシン達。一方のフリーダム、キラはもう一つの『敵』と戦っていた・・・。
せめて、夢の中だけは
>>304-309

感想、批評書き込み強化月間。本スレ、チラ裏どちらでもお気軽にどうぞ
形式不問。一行レス歓迎。全てにレスをする義務も無し。気に入った、気にかかる作品のみにどうぞ。

各単行本も好評公開中
詳しくはttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス!キミのお気に入りを一気に!
読者と職人の交流スペース開設。ぼやきたい職人、突っ込みたい読者。双方を待つ。
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お知らせ
当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。
315生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/07/30(月) 20:58:05 ID:???
第二話 綺麗事の裏に潜むもの 2―1

「――うわあああああっ!」
 室内にシンの叫び声が響いた。哀しみや怒りの入り混じった声色に、トダカは思わず息を飲んだ。
 シンの手からナイフが落ちて乾いた金属音が聞こえた瞬間、シンは膝から崩れ落ちた。
 赤くに染まったシンの目はトダカの心を強く揺さぶった。
 トダカはいてもいられなくなり、シンの元へと駆け寄りしゃがみ込みシンの肩ををきつく抱き締めた。
 シンの体はガチガチと震えており、言葉にならない鳴咽を放っている。
 ただ、シンの体からは温かい体温が伝わってくる。トダカはシンの感情が爆発した影響で体が火照っているのだと思った。
「シン・アスカ。私はお前に約束する。お前の為に、国民の為に私は哀しいのない世界を作ってみせよう。だから、憎しみに囚われないでくれ」
 カガリの声が聴こえる。シンはその言葉を聴き、トダカの胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
 トダカはシンの頭を優しく撫で続けた。今は泣くだけ泣いて良い。泣いた後には笑顔を見せて欲しいと思った。
 キサカがナイフを拾い上げるのにトダカは気付いた。トダカはシンを抱き締めたまま立ち上がった。
「トダカ。この少年についてはお前に一任する。お前なら導ける筈だ。宜しく頼む」
 カガリはトダカに笑顔で振り返った。トダカは醜態を見せてしまったと思い顔を赤らめつつも、シンを左手で抱き直し敬礼をした。
「今日は少年の側についていてやれ。」
 キサカはトダカの肩を軽く叩きカガリと共に部屋を退出した。
 確かに今日はシンに付いているべきだろう。今のシンの心は硝子細工のように脆い。そんなシンを放って置くことは出来やしないし、自分が今の心境で業務に戻ってもシンの事が心配になってまともに仕事が出来ないだろうと思った。
 シンを抱えて退出しようとした時にトダカは軍医に睡眠導入剤を手渡された。トダカは軍医に向かって会釈し医務室を後にした。
316生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/07/30(月) 21:08:58 ID:???
第二話 綺麗事の裏に潜むもの 2―2

 部屋に戻るとトダカはシンをベッドに座らせた。寄り添う様にトダカも腰を下ろした。
 シンの瞳に視線を移すと、先程の涙の影響か真紅に黒を混ぜたような色合いを呈しているのに気が付いた。
 トダカはその色に魅せられたかの様にまじまじと凝視した――目が離せなかった。
 思わず喉を鳴らし生唾を飲み込む。胸の鼓動が加速していくのをトダカは感じた。
 長い間沈黙が流れる。互いの呼吸の音と鼓動だけが聞こえた。
 トダカは初めて感じる気持ちを持て余している。だが、どうして良いのか分からずただシンを見つめていた。
「――トダカさん。俺、力が欲しい。人を殺す力じゃ無くて、傷付いた人を救う力。俺なら傷付いた人の気持ちを判ると思うんだ」
 トダカは黙ってシンの手を握り締めた。熱を帯びた手の平から生きる力が生まれて来るのだと思った。
 シンがトダカの手を握り返して来た。無意識にトダカはシンの肩に空いている手を回していた。
 シンは回された手をじっと見つめた。慈しむ様に自身の手をトダカのそれに重ね合わせ愛おしそうに撫でてきた。
「トダカさんの手って大きくてゴツゴツしてるんですね。俺とは大違いだ」
 シンの呟きがトダカの耳に入った。トダカは逆の手をシンの眼前に出した。
「色々と経験してきたからな。恰好悪くてダサいてだろう?」
 トダカは自嘲気味に喉を鳴らした。汚い仕事もやって来た。そんな手を誉められても何の感慨も沸かなかった。
「そんな事ないです。トダカさんのこの手がなかったら、俺……死んで……いたか……も……」
 トダカは密かに自分を恥じた。薄汚れてしまった自分の手だからこそあの場所でシンを救う事が出来たのだ。
 だからこそシンの純粋さを守りたいのだ。
 不意に肩に重みを感じる。シンがトダカの肩に頭を預け寝息を立て始めた。トダカはシンの無防備な姿を間の辺りにした。
 トダカはシンを起こさぬようにベッドに寝かし付けた。
「おやすみ。良い夢を見るんだぞ」
 トダカは誰にも見せた事の無いような安らかな笑顔を浮かべた。柄に合わないかも知れないが、シンの事を導いて行けるのは自分だけだと思った。
317通常の名無しさんの3倍:2007/07/30(月) 21:45:15 ID:???
腐った種の匂いがひでえwww
318通常の名無しさんの3倍:2007/07/30(月) 22:05:57 ID:???
>>317
情熱〜の作者にはその言葉は誉め言葉になると思う。
次回の投下の時にはこってり濃厚描写にパワーアップしてたりして。
319通常の名無しさんの3倍:2007/07/31(火) 01:09:22 ID:???
>>316
ぬ ふ ぅ
320SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/07/31(火) 13:55:02 ID:???
1/

 二度三度体を左右に振ると、フェイントを読んだ鋭いジャブがカウンター気味にこめかみを掠めた。
燃え出すような熱を感じて一歩退き、当たった場所を指先で確認しながらルナマリアの隙を伺うが、
"鷹の目"と渾名されるザフトレッドの構えには一分の乱れもなかった。
 簡素な真紅のトレーニングウェアに包まれた体は全身汗に塗れているものの力を失っておらず、
指の出るグローブを嵌めた拳は軽く握られ、いつでも神速の突きを繰り出す用意だ。軽快なフットワークの
原動力となる健脚が腿まで靴下に覆われて居ることが、シンとの相違点と言える。

「それでさ……お客さんとどんな事を話してたのよ?」
 シンとアスハとの対談は、既に整備班やメイリンを通じてるルナマリアの耳にまで入っているようだった。
「よしてくれよなルナ。ゴシップに手を出すなんて、やっぱり女の子だったんだなって思っちまう」
 そのオンナノコと殴りあい(スパー)を始めてから、かれこれ十五分が経っていた。
 にらみ合いは構わない、持久力ではシンが圧倒的に有利で粘れば粘るほど勝機が出てくる。
「単なる興味本位よ……言いたく無いなら秘密もいいけ――ど!」
 台詞の終わりと共に、マットの擦れる甲高い音が響き、ルナマリアが低い体勢から放った拳がシンに迫ってきた。
――右。意識する間も無く上体を振って躱す――と右脚に違和感、踏まれていた。こんな時までニーソックスなのは、
もう何かの宗教だとしか思えない。直後、左脇にブローが叩き込まれた。
「汚ねえ――!」痛烈な衝撃に体を揺さぶられながら毒づく。
「実戦形式よ!」満面の笑みを浮かべてルナマリアが叫んだ。

「肩、膝、脇、鳩尾……のふりして肝臓、腿、胸、腹、そして顎をもらったー!」
「させ……るかあッ!」
 息も付かせぬ連打に次ぐ連打で押し込まれ、サポーターを当てた肘で振りほどこうと試みる。
「甘い、甘い、マック○コーヒーより甘いわよお!」
 息切れの瞬間に狙ってあわせたが、先を読んだルナマリアに逆を捕られて捻られた。腕力はシンが上、
しかし全体重を掛けて倒れ込むのを支えるにはシンの平衡は崩されすぎていた。

「しま――!」
 電光石火――シンが一言を終えるまでに完全な腕十字を極められてしまった。

「――くそ、そろそろ息が切れ掛かってたのに!」
「あと百秒、続いていたら形勢逆転してたけど……余力を残す積もりで動きを抑えすぎなのよアンタは」
 先にやられちゃ意味無いわ、と続けられ反論の余地も無い。
「さあて、それじゃあアスハ代表と何を話してたのか……教えて貰おうかしら」
「言いたく無いなら秘密でも良いんじゃなかったのかよ?」
「別に秘密でも良いのよ?」
 そう良いながらすでに伸びきっていた肘関節が、限界近くまで極められる。崩壊まで後五ミリだ。
 拷問じゃねえか! 汚いと文句しても実戦形式の一言で片付けられる、完璧な敗者の図が此処にあった。
 シンには三つの選択肢が残されて居る。その1、惨めな敗者シン=アスカは聞かれた事をべらべら喋る。
その2、仲間思いのシン君はルナマリアの思いやりを信じて(まさか折らないだろう?)沈黙を守り通す。
「一番はやっぱり却下だろ。かといって二番は不安要素があるし」
「シン、独言で時間稼ぎなんて三流……通用しないわよ」
「うおっ!」三ミリまで破断界が近づいた。最早余裕は無い。
 選択肢その3、押しも押されぬザフトレッドたるシン=アスカは絶体絶命から大逆転を果たす。
 これに決めた。
321SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/07/31(火) 13:57:12 ID:???
2/

 反撃の糸口を探ろうと全神経を集中し、思索を深め……遂に、その事実に考えが至る。
 死中に活ありの言葉通り、シンにとっての光明は完全に固定された己が右腕の、悲鳴を上げる肘の先に在った。
つまり……その、激しい運動でほんのりぬっくりと暖まった上に汗で蠱惑的な湿り気を帯びたなんとなくそれだけでも
いい匂いのしそうな結構筋肉ついてるルナマリアの体で運動着のパットを越しても充分わかる程破壊的なまでに
やーらかい神秘の双丘がシンの腕を手首を手の甲をあたかも左右から挟み込み包み込んでいるかの如く――
「――ルナ……当たってるぞ」
「……当ててんのよ」限界を一ミリ超えた。不吉な効果音が骨を通して体に響く。極められた腕とルナマリアとの
密着度も上がって天国なんだか地獄なんだかもうわかんねえ。幸せな激痛に耐えられなくなったシンは降参を決意する。
「ノオーーっ! ギブアッ……!」
 首にルナマリアの脚が食い込んだ。喉を圧されて声が潰れ、言葉が出なくなる。
 待て待て本気でヤル積もりかこの女ァ――!?
 脳内に今は亡き妹の声でコンディションレッドが発令。答えは4、甘ちゃんのシン=ザ=チェリーボーイ(15)は
エロスでバイオレンスな同僚の手によってMSパイロットとラッキースケベの座をしばらく開店休業いたします。

 本当に頼むからやめて、く……れ…………
 靭帯と覚悟と意識がマジで切れちゃう五秒前――
「流石に冗談では済まなくなるぞルナマリア、其処までにして置け」
 ――助け船はそれまで静観を決め込んでいたレイから出された。
「話さずに居られるなら秘密にしたい事の一つ位、シンにも在って良いだろう。
というか本当に痛々しいから早く止めてやれルナマリア――!」
 即座に腕が解放された。『シンの秘密以外は総て分かっているぞ』とでも言うような台詞だったが、
兎にも角にも逆方向に捻じ曲げられつつあった肘関節は喜びに打ち震える。二三度曲げて異常無しを確かめた。
「レイ、心の友よ――!」
 真顔の冗談で心を冷やされた今までの経験を、総てチャラにしてもいい。

「野試合泥試合はザフトレッドのする事では無いからな。審判役をやったまでで感謝には及ばん」
 伏目がちに右手を挙げて"気に為るな"と合図を送ったレイは、冷えた表情のまま何故か照れて居るように見えた。
「……まだ決着は付いて無いと思うんだけど?」
 息を整え、汗で額に張り付いた前髪をかき上げながら収まりがつかないのはルナマリアだ。
「シンのギブアップが俺の耳にはちゃんと入ったぞ。タップは鷹の目にも見えなかったようだがな」
「ちぇッ……入れるのは好きだけど入れられるのは嫌いなのよね、横槍」
 ルナマリアの文句を笑顔で流す事の出来る者を、シンはレイの他に知らない。
「それに、赤服二人の叩き合いを俺一人で観戦するのは勿体無くてな」
「あら……参加したかったの? 良いのよぉ、私は二人同時に相手でも」
 アドレナリンに浮かれて頬を染めたままのルナマリアが、軽い挑発を飛ばした。
「生憎と、俺はお前たちほどストレスの溜まらない性質でな。それに打ち合えばどちらかが只では済むまい」
「多分……レイがね」
 赤手空拳の格闘技をスポーツではなく非常時における抵抗の術と割り切るレイ、ミネルバ内格闘ランク一位の実績で
裏付けた自信に満ちるルナマリア、それぞれの台詞だった。シンはといえば五千mを十四分位で逃げる積もりなので、
本当に殴り合いをするのは追いつかれた時だと思っている。
322SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/07/31(火) 14:03:35 ID:???
3/

「……観客が居た方が良いだろう? もし続きをやりたいなら、暇なクルーを集めてくるぞ」
「やめとくわ。見世物みたいであまり気持ちよくないもの。見るのは好きなんだけどね」
 その目は「たまにはアンタ達が闘りなさい」と告げていた。CEの世でも最高の娯楽は人間そのものだ。
「人を集めてレイが審判をして……ってのは却ってストレスが溜まるよ。俺も遠慮する」
 シンの全身から力がどっと抜けていくのを感じた。渇きを覚えた喉が手探りで飲料パックを取り寄せる。
汗を絞れそうなトレーニングウェアをこの場で着替えてよいものかどうか、ルナマリアの姿に迷う。
「いや、その場合俺は審判などしないぞ、忙しいからな」
「……? スナックとドリンクでも配って歩くのか?」
 クーラーボックスを抱えて、人の群れを練り歩くレイの姿を想像するのは大層愉快だった。
「決まっている、どちらが勝つかで賭けの胴元を――」
「――小遣い稼ぎかよ!」
 艦長の主催で規律として角が立つので、時折ザフトレッドがクルーのガス抜きイベントを催す事もある。
 シンの先輩、或るザフトレッドは時として狡猾に残忍に賭場を支配し、退役して地球に降りる迄の間に
一財産を築いた者も居たようである。流れる噂にいはく、内訳は多少の現金とお守り23個、新曲の譜面2枚に
愛玩用ペットロボット8体、仮面2枚と成人雑誌38冊、コナが三樽そしてMS一機。
「その伝説だけど、最後のMSのせいでガセだってわかっちゃうわよね」
「いくらなんでもな――」
「だが、そんな赤服が居たというのは確かだ。一説によると地球に降りた直後、初めて自分で賭けて敗北し、
ナイフ一本と引き換えに全財産を巻き上げられたらしいが……」

 ふ……と、間に流れる空気が弛み、弾む。レイの投げたタオルを受け取り汗を拭い取るルナマリアは、
一房だけ跳ね上がる前髪の角度を整えると、シンの手から奪い取ったスポーツドリンクを一気にあおった。
「十五分動きっぱなしは疲れた……かな? シンが殆ど疲れて無いみたいなのが、無意識にスタミナを自慢されてる
みたいでちょっと悔しいけど」
「はいはい、今度からもっと疲れた振りをしとくよ」
「頼んだわよぉ?」
 実のところを言えば、スパーリングに誘ってきたのはルナマリアであったが、それは何処となく不機嫌なシンの
鬱憤を晴らす為の事と思えなくも無い。明らかに原因である事柄に直接触れてくるのはルナマリア流だ。

「別にさ、隠さないといけないような事は何も話して無いんだよ」
 吐息が零れる様に、そんなことを口にしていた。
「シン……別に今更聞かなくってもいいわよ」
 いつの間にか上を着替えていたルナマリアが、脱いだニーソックスを丸めながら言った。
 ルナマリアの側からシンへと踏み込むのは終わりで、それにわざわざそれに付き合って話す"義務"は無いと
言ってくれているようにも思えた。果たして甘えた勘違いかも知れないが、口を開くのも噤むのもシンの勝手で、
話すなら仲間として聞くし黙るなら友人として放っておく、というような突き放した優しさを感じる。
323SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/07/31(火) 14:06:53 ID:???
4/

「アスハと……オーブの代表とサシで話してたんだ。士官室。あの人……シズルさんだっけ?
……紅茶をテーブルに置いてくれてさ、結局口はつけなかったけど良い香りが為てた」
 もとより弁が立つ方ではない。カガリ=ユラ=アスハを問い詰める筈が、あっさりと話の主導権を握られていた。
「オーブを離れる事になったいきさつは流石に聞かれなかったけどさ、プラントでの生活は苦しくなかったかとか、
ザフトに入ろうと思ったのは何時どのあたりで、赤服を着るのにどんな苦労があったかとか……」
「それで……話したの?」
「言えない事は話さなかった、言いたくない事は黙ってた、言える事は全部聞かれた……気がする」
 そして最後に、向こうの言いたい事だけを叩きつけられたようにも思う。仮にも政治の世界に立つ一人だ、
今だに力を求めてザフトに依りかかるだけのシンを、話し合いでは歯牙にもかけない、と言う事だろうか。
「……向こうには何て言われたの?」
「……」
「……そう」
 どうしてルナマリアは、沈黙だけで納得してくれるのかと不思議に思った。ルールの中で殴り合いを演じるときには
激しく自己主張をしてくるのに、こうして話して居ると時折、シンには全く実体を掴ませないまま核心を衝いて来る。
そうしてあやふやな感覚を覚えさせる事が、女の共通項としての性質かと疑うと、軽い畏怖と共に混乱してしまう。

 レイが口を開いた。
「シン、一つだけいいか?」
「……ん?」
「今から言う事が間違っていたら、俺を殴っても良い」
「……ん」
「彼女は……アスハ代表はお前に謝ったのだろう?」
 レイ――お前は。
「だからお前は余計にあの国に対して不安になるんだ。違うか?」
 応えない事を、肯定と受け取ったのだろうか。

「すまん……他意は無い」
 言い置いてレイは、天井から吊り下げられたサンドバッグに向き合い、軽く腰を落して構えた。
 両掌を正中線の前方に添えるような独得の構えを固めた後、長い吸気に入る。高まり行くレイの集中が二人に伝播し、
空調装置の駆動音すら忘れるほどの張り詰めた緊張がトレーニングルームに満ちた。
 穏やかな呼気、完全な脱力に至る――静。
 停止から一転、緩やかに全身が掠む――動。
 人体がぶつかったとは想像できないほど低い音が響き、くの字に折れ曲がったサンドバッグが天井に当たって落ちた。
掌底を打ち込んだままの体勢で止まっていたレイに抑えられ、やっと動きを収める。
 管理機構からの警告――訓練室内での火器の使用は禁止されて居ます――打撃の振動はシンの腹にまで響いていた。
「大道芸だ」そう呟くレイは、集中した状態から一気に弛緩した為か全身に汗の珠を浮かべている。

 まさか、三人一緒に汗だくだ。という事の為に今のをわざわざやって見せたんだろうか?
 恐らく合っているだろうその想像に至ったシンは、恐ろしいほどの不器用さに呆れ果てると同時に軽い尊敬の念を覚えた。
324SEED『†』  ◆WZm3jzCkZQ :2007/07/31(火) 14:10:42 ID:???
5/5

「ああ……あいつ謝りやがったんだよ。あの国と、俺に」
 ――すまなかった。
 ――すまない。
 たった二言がシンを混乱させていた。
 憎きアスハを屈服させ、その言葉を絞りださせる事は、シンの内に宿る昏い情念の向かう先であったはずだ。
それが人生のかなり早い段階で、あっという間に達成されてしまった。然もそれはシンの行動の結果ではなく、
あくまで向こうの意志によってである。
 押し通る為に体当たりを仕掛けた門が向こう側から開かれ、然も敷居を跨いだ瞬間にゴールテープを切ってしまった。

「オーブは正しかった、そう言って欲しかったのか?」
「そうかもしれないけど……違うよ、きっとそれじゃあ納得できない」
 未だにオーブの国内で暮らしていたならば、誰かにオーブの焼かれた国土は間違っては居なかったと言って貰う事で、
確固たる反発力とささやかな誇り、僅かな救いを得る事が出来たかもしれない。
「でも俺はコーディネーターで、プラントの人間で、ザフトだから……」
 自分がオーブに行く事はあっても戻る事はもう無いと、静かに確信を持っていた。

「アスハ代表がコーディネーターであったなら、どうだ?」
 レイの言いたい事は遠まわしに、アスハがナチュラルであるが故に認められないのかと言う事だ。
「それも違うんだよな。ナチュラル全部を否定するって言うのは、俺とっては父さんと母さんを否定するって言う事だぜ?
第一世代だからさ。地球の他の国に暮らした事は無いから事情が良くわからないけど、生まれた時からオーブに住んでると、
ナチュラル全部が悪い種族で俺の親だけが特別だったって考えるのはとても不自然なんだよ」
 どうしても、ナチュラルは根本的なところではコーディネーターと変わりが無くて、
たまたまお互いを嫌い合っている者達がいる、という風に考える。
「俺はさ、どうして第一世代のシーゲル=クラインがNJを地球のそこら中に落したり、
パトリック=ザラが地球のナチュラルを滅ぼそうとしたのか、ぜんぜん分からなかったよ」
「そうか……」レイの悲しそうで居て穏やかな笑顔の理由をシンが分かるのは、ずっと後の事だった。
 自分は果たしてアスハに何と言って欲しかったのか……それはきっと答えの出ない問いなのだろう。或いはその問いに
自分で答えを出せたとき、シンは家族の死と捨て去った故郷の事を乗り越えられるのかも知れなかった。
 答えは無い……だからレイに向けた答えを用意するのには、心の中で少しだけ時間が必要だった。
「結局のところ俺はさ……アスハが嫌いなんだよ。それだけなんだ」
 結局のところ、オーブが嫌いなのだとは言わなかった。
 それが何故なのかについては簡単に答えが出るだろうが、今は考えなくてもいいとシンは思った。

 三人して椅子に座ってクールダウンしていると、ドアの開閉音と叫びが同時に飛び込んできた。
次いで訓練器具の向こうから息を切らせたヴィーノの姿が現れる。
「シン、レイ、ルナマリア! 此処に居たのかよ……た、大変な事になってるぜ!」
 慌てふためくヴィーノの様子に、三人の顔が素早く変じた。十代の少年少女から、ザフトレッド――兵士の顔へ。
 レイが事情を尋ね、シンがドリンクのパックを渡す。ツナギの汚れもそのまま走りこんできたヴィーノは、
息を整えてただ一言、告げる。

「ユニウス7が……地球に落ちていってる」
325通常の名無しさんの3倍:2007/07/31(火) 14:54:46 ID:???
住人でもない、寄ってみただけの通りすがりですが…
人物描写が凄く良いですね。
三人の交流が丁寧に描かれて、各々にとても好感が持てます。戦争ものというよりジュブナイル小説の印象を受けました。
読んでいて、夕焼けに染まる放課後の体育館を幻視してしまったり。
この場面だけだと三人とも、本当に思春期の少年少女ですね…。
最後には軍人に引き戻されてしまうわけですが、ほんの一時でも等身大の子供らを見られた気がします。
GJでした。
326通常の名無しさんの3倍:2007/07/31(火) 21:58:23 ID:???
>>コレジャナイ
 僕らの望んだコレジャナイロボだ!
 楽しかった。GJ。

>>情熱
 お久しぶりの投下乙。
 こってり濃厚描写はご遠慮願いたいが、この雰囲気が中々面白いです。
327弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/08/01(水) 18:11:31 ID:???
少女は砂漠を走る!

第六話 知る事の代償

 砂漠の、無限とも思える変わらぬ景色。その上を2隻のレセップス級が滑る様に進む。
その先頭の艦の甲板。わたしは手すりにもたれながら風になぶられ、日差しにあぶられている

 急に3時間ほど休みになった。する事がないのでここにいる。ここにいるからと言って、師匠が言うように
不機嫌な訳ではない。多少暑くはあるが格納庫で蒸し焼きになるよりは、甲板で鉄板焼きにされてた方が
マシだと思うだけだ。他にわたしの居場所はない。自室にこもった所でする事がある訳でもないし。
 船は最大の4割引程度のスピードで進む。なにやら命令の変更があった様だが、今のところ隊長以外には
命令の中身を知るものはない。早く大きな町に着いてくれればいいのに。時折具合を悪くする師匠のことが
気がかりだ。スピードが落ちたのは命令の所為だろうか? ふと横を見れば5分前から同じ姿勢で佇む人影。

「なんで黄昏てるのさ、らしくないよ?」
 わたしから少し離れて赤い服が同じく手すりにもたれて長い裾を風になびかせている。
わたしの師匠ではない、もう一人のザフトレッド、ティモシーだ。

「宇宙(そら)の隊長から命令が落ちてきた。どうしたもんかと思ってさ」
 口数すくなで浮かない顔。どうにも彼には似合わない。まぁティモシーだって、難しいことを考える時はある
だろうけどさ。考えてみれば対テロ専門部隊所属のエリートな訳で、赤き風の旅団が目の前で好き勝手に
暴れられては彼の面目だってあるだろう。まして彼の隊長は、カミソリの渾名でザフト全軍に名が知られるキレモノ
なのだと聞いたし、ならばこの状況下で何か言われれば浮かない顔にもなるかも知れない。オペレーター
のおねぇさん達の情報では偶に見たことのない程の強度の暗号で、自分の隊とやりとりしているらしい。
ならばきっと内容はそれだ。色々考えて合わせてみると、左遷されて降りて来たのではなさそうだな、彼は。
「悩み事なら相談に乗るよ? つったってあなたの場合、仕事絡みのはムリだろうけどさ」
「むしろ、それを言い出せなくて困ってたんだけど……。まぁいいか、うん。なぁ、取りあえず聞いてくれ!」

 彼を悩ませていた命令はごく簡単で「赤き風の旅団の構成員と接触せよ」が全文であったらしい。
が、彼を悩ませていたのは命令書ではなくその方法だった。要するに。
「例のミツキの幼なじみ、彼の名前と出来れば写真があると良いんだけど。貸してもらえないかな?」
 それだけで何が。と言ったわたしに、たった3ヶ月の在籍ではあるが対テロリスト部隊の所属である自分には
既にノウハウもあるし、部隊にはデータの蓄積もある。それだけのデータがあれば確実に本人か、
それに近い人間との接触は十分可能だ。とティモシーはいつもの調子を取り戻して饒舌にまくし立てる。

 彼がマシンガントークを展開しているさなかに考える。接触が出来るのならばそれはユースケが生きている
と言うことだ。話が出来るならばマーカス隊への攻撃に加わらないように説得することも可能ではないか。
もし仮に死んでいたとしても、近い人間への接触が可能だというならば生死の確認のみは出来る事になる。

「これ、はい。通話記録とかボイスコーダーとかメールのデータとか覗いたり消したりしないでよ?」
 オーブにいた時に使っていた、限定色の白なのが自慢だった携帯電話。勿論使える訳もないのだが、捨てる
ことが出来なくてあの日も肌身離さず持っていた。この船の中、砂漠の町で貰ったもの以外で唯一の私物。
少し焦げた跡が白い本体にくっきり浮き上がる、今はもう会えない、友人達の声や写真の詰まった携帯電話。
その画像データの中、ユースケを中心に数名の悪ガキ達が写った写真のデータがあった。
「3つ約束して? 彼と接触しても殺さないで。それと出来ればウチへの攻撃に加わらないように説得して
欲しいの。最後にわたしのことは秘密。良い?」
 わかったわかった! と言いながら携帯電話を片手に鉄のドアをくぐるティモシー。ホントにわかったのかな。
……まぁ、彼だってザフト将兵の多少のやっかみと尊敬を集める赤い服を着ているのだ。彼を信じてみよう。
328弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/08/01(水) 18:13:16 ID:???
第六話 知る事の代償(2/6)

「進宙式ですか。ミネルバ、ですね? 艦長はやはりグラディス女史なのでしょうか」
「聞いた話ではそのようだ。進宙式自体はデュランダル議長の肝いりらしいな。セカンドステージのお披露目も
含めての話ではないかと思うが」
「インパルスはともかく、セイバーは間に合わないのでは無いですかね。そのスケジュールだと」
「さすがは開発担当だな。だが戦闘をする訳ではない。良い所立って歩くだけだし、それなら問題あるまいよ」
 アンコールワットの隊長室。当面のスケジュールの話だったはずだが、師匠と隊長は新造戦艦の進宙式の
話をしている。
「しかし、今の時期は不味い気がしますが」
「フェイスの対テロ専の主要なところも反対しているらしい。特にモニカは大反対だそうだが、彼女が何かを
言った所で俺のところまで話が降りてくるくらいだ。もうスケジュールは変わるまい」
 モニカ・モンローと言えばティモシーに一行だけの命令書をおくってよこした彼の隊長だ。誰に聞いても
滅茶苦茶な人だという回答しか帰ってこないが、意外に要職に付いているらしい。そして金髪碧眼の凄い美人
だとも聞いた。更に先輩さんは黒髪の似合うクールな美形だとも。両方ともどんな人なのか会ってみたいな。
 ……自分がオッサンみたいだと思ってちょっと凹む。会ってみたいのはホントなんだけど。

「ところでだ。その進宙式に伴って機密事項に違いはないがセカンドステージ各機が最重要機密から外れた。
試作機各機も同様、君らのファングも当然扱いは同じになる」
「それでは……」
「あぁ、データを纏めて上に送れと言う指示が来ている。その後は運用自体に一切の枷が無くなって一般の
MSと同じ扱いになるとの事だ。我が隊はムリにジブラルタルを目指す必要が無くなった。なので今はもっとも
近隣の大きな町を目指している。おまえを入院させねばならんからな」
「隊長、それは……」
「ありがとうございますっ!」
 取りあえず師匠が何かを言うのを遮る。やっと体を治してもらえそうだ。それに大きな病院ならば義手だって
作れるかも知れない。とにかく青白い顔をしてるのはこの人には似合わない。わたしの補佐の仕事は無くなって
しまうかも知れないがそれはそれ。好きな人には元気でいて欲しい。と思うと顔が熱くなる。わたしの、バカ。

「その辺の細かい部分はシライ君に任せる。先生と打合せしておいてくれ。ところでチェンバレンの件だが」
「……それについてはミツキくんから直接話をさせます。……ん? ミツキくん、どうした」
 頭をぶるぶる振って取りあえず背筋を伸ばすと、隊長にティモシーと交わした会話のいきさつを説明する。
 ティモシーはあの後、指が見えないくらいの勢いでキーボードを叩いて数回通信をやりとりした後、ジープで
何処かに出て行った。一枚だけ管制デスクに残された通信記録を拾って読むでもなく読むと、
【具体的ノルマ:戦闘一回につきキルマーク3個増。現在マイナス1。fromサーシャ】
とあった。原隊では虐められてるのかなぁ、彼は。帰ってきたらちょっとは優しくしてあげよう、うん。

「チェンバレンの動向にも寄るが、ついさっき届いた命令書によって我々は赤き風の旅団の実体調査を行う
事になった。抵抗するというのならば実力行使も当然やむを得ないと命令書にはある」
「調査、なのですか? 殲滅ではなく」
「彼らはコーディネーターでありながら連合の一部にも通じている。何かに使いたい向きもあるのだろうさ。
それに俺の情報では、ザフトの一部部隊が汚れ仕事を押しつけているらしい。その報酬の一部がMSだそうだが」
 関節に布を巻き付けたジン。サーチライトや何やらをごちゃごちゃと付けたジン・オーカー。新品のまま
戦闘用に改造されて右肩を赤く塗られた民生用アストレイ。全部ザフトがあげていたという事なのだろうか。
そしてそれらはプラント直轄領を破壊して、優秀な赤服の右の腕を奪ったのだ。少し頭がクラクラした。
329弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/08/01(水) 18:14:28 ID:???
第六話 知る事の代償(2/6)

「通信を送ってくると言うのだな?」
「先ずはそうです。すぐにもと言う話でした。最終的には隊長との直接会談が希望のようですが」
 アンコールワットのブリッジ。彼は生きてる、その点は安心しろ。詳しくは後からな? 
スレ違いざまにわたしに携帯を渡しながらそう呟いた後、私服のまま隊長に首尾の報告をするティモシー。
ユースケは言うに及ばず赤き風の首領にまで会えたようだ。
「俺といったい何を会談しようと言うのだろうな。他にも話す相手はいるだろうに」
「それは直接会った時にと言う話でしたが……」
「前方で爆発、爆発光2番から映像でも確認! 距離150! 爆発パターンからミサイルと思われます!」
 いきなりオペレーターのおねぇさんが叫ぶ。
「全隊にコンディションイエロー発令! 状況の確認を最優先! アジャイルの当番は誰の隊か!?」

 既にカタパルトにセットされたファング2の中。わたしが使っていた師匠用【盗聴】マイクを『わたしの管制デスク』
においてきたのでブリッジのやりとりが聞こえる。その後の爆発は観測されていないし、どうせ待機で終わる
だろうと思って暇つぶしのつもりで交信先をファング2に設定しておいた。 
《保護を求めてきているだと? どういう事だ。……連合軍の攻撃を受けているとの事ですがこちらとの
会談の為に武装解除の状態だと言っています。……連合の陣容はどうか!?》
 なるほどこんな感じに聞こえるのか。ハッキリ言って聞こえ辛い。コレでよく師匠はベッドに寝たままで
ブリッジの空気まで読めるな。
 しかし赤き風がマーカス隊に保護を求めるとは……。どのツラ下げて、って言う奴だよなぁ。最低だ。

《……現在確認が出来るのは2機ですが最低4機以上と思われます。……MSはジン・オーカー、搭乗者は
パイロットがオオグロ氏、他に赤き風の旅団首領のジークフリート氏の計2名との事……隊長、保護が最優先
事項では? ……わかっている。無人カメラはどうか? わかった、コンディションはレッドに移行。艦長、
取り舵10、増速20%、対MS戦用意! カメラは追加で3機放出、カメラの40秒後にアジャイル出撃。
バクゥ、アンドレ隊も240秒後に出撃開始。ジークフリート氏の保護を全てに於いて最優先!》

『繰り返す、コンディションレッド発令。全艦対MS戦用意! 非戦闘員は速やかに中央ブロックへ待避……』
 既に体は勝手に出撃シーケンスを開始している。オーカーのパイロットの名前はオオグロなのだと言った。
如何にもオーブ人なファミリーネーム。そしてユースケの姓もオオグロなのである。砂漠の真ん中にそうそう
ある名前ではない。生きているのはついさっき確認出来た以上、彼である事にほぼ間違いないだろう。
 砂漠の町で、方法はともかくとして彼は彼なりにわたしを助けようとしてくれた、たった一人の幼なじみ。
その彼の気持ちはよくわかる。だって、今わたしがしようとしていることもそれだから。

 カタパルトに乗っている以上強制射出は簡単に出来るし、わたしがそれをやるとは誰も思わない。
だから始めてしまえば対応が間に合わないはずで、阻止は出来ない。そして部隊のMSの中でもスピードは
ファングが一番早い。とにかくわたしが何とかしてあげる! システムにかけられたロックは簡単に解除出来た。
『……っ! おい、ミツキくん! ロックを解除して何をするつもりだ! キミに出撃命令は出ていないぞ!』
「ミツキ・シライ、ファング2! 行きまあぁすっ!!」
『シライくん! 何を考えている! 敵の数が正確に把握出来ておらんのだぞっ! 戻れっ!』
 四足獣モード速力最大! 上空で様子見をしているアジャイルを追い抜く。現地到着は45秒後。

 お願い、間に合って!!
330弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/08/01(水) 18:15:52 ID:???
第六話 知る事の代償(4/6)

 砂埃の中、アストレイのものらしいシールドを手にした右肩の赤いジン・オーカーは5機のダガーLに
囲まれていた。そのうち2機はザクで言う所のガナー・ウィザード装備で多少距離を取っている。残り3機の
ブレイズ・ウィザードに当たると思しき羽のたくさん付いたヤツを背負った機体もたった一機を追いつめ
きれないでいる。機体性能の差はわたしの目からも歴然だが、とにかくオーカーは端的に言ってウマい。
ダガー5機の連携の取れた矢継ぎ早の攻撃を次々かわし続け、追い込まれるのを防いでいる。
 だが、武器がないでは攻勢に出られる訳もなく、こんな状態は長く持つものでも無いだろう。
わたしは一番手前の砲撃型の機体に目標を定めると突っ込んでいった。

『そこのパイロットっ! キモチはありがたいがバクゥ一機で何をするつもりだ!』
 聞いたことのある声が公開チャンネルに飛び込んでくる。
「取りあえず2分少々耐えて! 援軍が間もなく来るの! 何機か引き受けるから逃げ回って!」
『女……? 何機かってあんた』
「説明は、あとっ!」

 右のビームブレイドにダガーの背負ったバックバックを引っかけると、そのまま変形して振り向きざまライフル
を撃つ。一瞬早くパージされたバックパックにビームが吸い込まれ砂を巻き上げながら爆発。その砂の中から
ビームが飛んでくるがそれは読んでかわす。更に別方向からのビームもかわしながら四足獣モードに戻ると
全速で移動。とにかく足を止めたらやられる。ファングの機体性能のおかげで何とかなっているが、敵は腕前が
半端じゃないし連携も見事だ。ゲリラとは動きがまるで違う。2機目をやり過ごして180°ターン、と同時に
頭を大きく上げてビームファング展開。いくらでも目立ってこっちに引きつけ……。
 ヤバイ。目視は出来ないがファング2は更に5機のダガーがこちらに向かってきているのを感知した。
既に元々居たうち3機はこちらに目標を変更している。アレを8機はいくら何でも無理だ。バクゥ到着まであと
90秒、逃げ回るのにも限界がある。わたし一人でどうやって持たせれば……。

 と、目の前に迫った高機動型の頭が吹っ飛ぶ。振り向くと頭を低く下げ、ビームファングを光らせて最大速度
で一気に迫るファング3。スピードを維持したままビームブレイドでバックパックの無いダガーを両断すると、
そのまま走り抜けオーカーへと向かう。
 ファング3に気を取られたわたしの一瞬の隙を逃さず、もう一機の高機動型がライフルを構えて迫る。
しまった、やられた! と思った瞬間、ダガーのライフルは腕ごとビームがもぎ取り、多数の小型ミサイルに
絡みつかれてそのまま爆発する。それをやったのであろうグゥルに乗った真っ赤なザクはわたしの前に
飛び降りながらライフルとミサイルを連射。着地と同時にまだ視界に捕らえられないMSの反応が2機分、
消える。

「ボケッとすんな! 周りをよく、見ろ!! っと……弟子が弟子なら師匠も師匠だよ、全く。ムチャするなぁ」
 いつの間にかビームアックスで頭の無いダガーを切り伏せて、わたしを庇うような位置取りをする赤い
ブレイズ・ザク・ファントム。
「……えっ? ちょ、ティモシー! じゃあ、あれ、シルビオさんじゃないの!?」
「そうだよ? いくら操縦系のプログラムを弄ったとは言え、片手であれだけ操縦出来るってどうなってるんだよ、
化け物か何かか! エディは!?」
 新型MSガイアの高性能ぶりをいかん無く発揮してダガーを掃討するファング3。状況を知らなければ
片手で操っているとは到底思えない。
「じゃぁ、両手がキチンとあったらどれだけ凄いのさ。師匠は……」

 バクゥが到着した時には、既にダガーLは数を半減されて射程外に撤退していた。
レセップス級の巨大な船影が迫る中、サンドイエローに赤い肩のジン・オーカーはマーカス隊のMSに囲まれて
コクピットハッチを開放する
331弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/08/01(水) 18:17:22 ID:???
第六話 知る事の代償(5/6)

「やったことの言い訳をしようとは思わない、初めに言ったが銃殺になる覚悟で来たのだからな」
 まだ50には成るまい。意外に若い、髭面の赤き風の旅団、その首領。ジークフリート氏はそう言うと隊長の
顔を正面から見つめる。アンコールワットの甲板上。MPの腕章を着け銃を腰溜めにした隊員達に周りを
取り囲まれながら隊長と対峙するジークフリート氏は、わたしをちらちら見ながら落ち着きのない隣のユースケとは
対照的に落ち着き払っている。少なくともユースケ自体には銃殺になる覚悟は見えないな。下っ端とは言え
マーカス隊の隊員として何とか彼を助けてあげられないだろうか。師匠の顔を見上げてみるが、
じっとジークフリート氏を見つめるばかり。銃殺になると決まった訳ではないが、さて、どうしたもんだろう。

 ジークフリート氏が甲板で語った話の概略はこうだ。
 まず、セブンスオアシスを襲ったことについては蒼の息吹を名乗る組織からの依頼であったらしい。
依頼内容についてはセブンスはザフトの基地であるので壊滅されたし。であったらしく、実際調査をした結果
レセップス級2隻とMS多数を確認した為、基地と認めて攻撃した。ただの民間主体の農業実験都市とは
知らなかったのだ、と氏は語った。町が目標だったから、だから船は無傷だったんだ……! 偶々大きな部隊
が居たのが仇になった……。わたしが叫ぼうとするとシルビオさんに口を塞がれた。
 その後やはりMSが目当てでマーカス隊を追っていたが師匠の忠告はキチンと伝わっており、その時点で
追撃は一反取りやめた。

 セブンスを襲って13日目に赤き風の旅団はアジトを連合の特殊部隊に急襲され、非戦闘員、特に女子供が
町ごと捕虜になった。解放の条件は新型MSをテストしているザフトの部隊を殲滅すること。報酬は人質の解放
とは別途に支払う用意がある。と蒼の息吹の交渉人から連絡が入り、改造アストレイ9機が支給された。
以後うちの隊を付け狙うことになる。ダガーLは彼らとは関係ない部隊だが作戦上連携を取った事は認めた。
 そして3日前。捕虜になった住人の代表とユースケが極秘裏に会う機会を得た。そこでユースケは誇りなき
戦いに荷担する気はないと言われた。それを受け、捕虜の存在を無視する事にして反抗のタイミングを伺って
いる矢先にティモシーが現れた。なのであえて戦力を残し、反抗ではなく脱走に見えるよう偽装して此処まで
来たのだ。非戦闘員の救助に手を貸して欲しい。そこまで話すと氏は隊長の顔を見て黙りこむ。

「何故うちの部隊を執拗に付け狙ったのかの説明が弱い気がするが、その辺何か言いたい事は?」
 結局、概略を甲板上で話し終わった後、ジークフリート氏は応接室、ユースケは空いている士官室に連行
されて詳細な事情聴取に入ることになった。連行される背中に隊長が聞く。
「地球全体に対する大規模なテロだ。その首謀者と思しき人物が新型MSと共に地上に降りたと奴らは
言っていた。テロの内容まではしらん、本当かどうかも確かめる術はないが、報酬も出すと言われれば戦う
動機にはなった。旧ザラ派の連中ならば地球に住んでる俺たちのことなど、お構いなしにやりかねんからな」
 そう言いながら船の中へ消えていくジークフリート氏。
「エディ・マーセッド、並びにシルビオ・ホセ・ダ・シルバ。両名、悪いが嫌疑が晴れるまで拘束させて貰う。
シライ君は自室で待機だ、俺の許可があるまで外に出るな。チェンバレン、話がある。あとで俺の部屋に来い」
 黙って左手を挙げる師匠と両手を頭の後ろで組むシルビオさん。憲兵達の銃が今度は彼ら二人に向く。
わたしが口を開きかけると師匠がこっちを見て微笑む。
「ああ言われては仕方がないさ、無実なんだからすぐに解放される。キミも隊長の命令に従う。いいね?」

「俺がおまえの部屋まで送る」
 連行するって訳じゃない、気にするな。そう言いながらティモシーは、わたしの隣に着くと歩き始める。
「エディに水を向けるとは驚いたよ。確かに彼は強引に線引きすれば旧ザラ派になるんだけどね」
「……大規模テロって何をするつもりなの?」
「今のところわかってない。ただ大量のフレアモーターが行方不明になってるし、一部の部隊からMSごと
脱走者が出てるのも事実だ。うちの隊長は近々何らかの行動を起こすんじゃないかと言ってるけど……」
 フレアモーター。何だかよくわからない機械だが、単語だけは聞いた事がある。誰に聞いたんだっけ。
332弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/08/01(水) 18:20:16 ID:???
第六話 知る事の代償(6/6)

 自室待機が解除になったわたしは取りあえずブリッジにあがった。一応管制担当でもあるので当番がある。
待機解除の20分後が当番入りの時間とは隊長なりに気を利かせたんだろうか。今は止まっている船の廊下。
数日不眠不休で走り続けたのだから、単に他のオペレーターを休ませたいだけかも知れないが。
あれから12時間、まだ師匠達は拘束されたまま。窓の外は完全に夜になっている。

 赤き風の旅団の本拠地はザフトによって開放され、人質の1/3がザフトMPによって再度捕縛された。
と一人でブリッジに残っていた隊長から聞いた。少なくともオーカーに襲われる危険性はかなり減った訳だ。
……と、艦長か隊長しか受けられない緊急コールが鳴る。なにやら難しい顔で話し込む隊長。
「意味がわからん、議長が同行されているとはどういう事だ? ……公式発表は? ……取りあえず了解だ」
 怪訝な顔の隊長がハンドセットを置いてこちらを振り向く。今のところブリッジには隊長とわたしのみ。
「シライ君、マーセッド隊以外の幹部全員に総員おこしをかけてくれ。30分後に俺の部屋に来るようにと」
「何か大変な事があったんですか?」
「詳細はわからんがそらの上で正式ガイア以下3機のMSが強奪されたらしい。……あぁ、いかん。こりゃ
レベル2だった。おほん、なんだ。マーセッド隊の代表として、話を聞いた以上キミには守秘義務の尊守を命じる。
あぁ、ローズ=マリーも起こしてあがるように言ってくれ。ブリッジに君一人という訳にもいかん」
 わたしのファング2のデータも入っているだろうガイアが盗まれた……。彼女から見れば妹が誘拐された
様なモノだろうか、可哀想なファング2。ところで議長って誰だろう。取りあえず隊長にはこくんと頷いてみせる。
「その辺はご心配なく。ティモシーはどうします?……。了解。こちらはアンコールワット・コントロール……」

 朝焼けの砂漠を甲板から眺める。まだ寒い。太陽が見えた瞬間から一気に温度が上がるのだが、
今はまだ太陽の姿は見えず、穏やかに地平線を浮かび上がらせているだけだ。
 結局、無線の交信記録や状況証拠の分析などから師匠は白という結論になったらしい。シルビオさん共々
自室に帰って二人とも今は眠っているだろう。
 だが抜け道なんかいくらでもある。無線の交信記録にしても師匠はファング2機の統括責任者だしその2機
のチーフメカニックでもある。特にファング3のコパイロット席は師匠以外の誰かが整備で乗り込んだのさえ
見た事がないのだ。テストや演習の時に船から距離を取ってファングで無線を発信すればアンコールワットには
当然ログは残らない。自動で発信できるなら、事前に電文を作っておけば自分は外に出る必要さえない。
そして往信の確認も、証拠を消す作業だって堂々と格納庫で出来る立場だ。
 フレアモーターにしても彼が地球に降りてから、更に数機が行方不明になっている所から関与無しの結論に
なっているようだが、既に段取りが終わっていただけかも知れないではないか。実行部隊でない限り、それなら
宇宙に留まる必要はない。疑ってかかればそれこそきりがないのだけれど。
 それに気がかりはもう一つ。そのデータの分析や突き合わせはティモシーがやっている事だ。ザフトにおいて
赤い制服は絶対。半端物には絶対着る事の出来ない服なのだ。人となりは別にして、彼はぼんくらでは無いし、
むしろキレモノ。任務となれば命がけになろうが大まじめだ。わたしが気づく事を見逃す彼ではない。

 胸騒ぎを隠せない。事実無根とは言い切れない状況をわたしはこの目で見ている。
砂漠の町で師匠と話し込んでいた女性、フレアモーターという単語もそこで聞いた気がする。
このまま師匠に対して疑心暗鬼では、わたしには師弟関係の維持は出来ない。だが師匠と話すと言っても
何をどう話せばいいのか。それに、もし仮にそうだと言われたら……。そしたら、わたしは……。
 いつの間にか太陽はいつも通り顔を出して、無限の砂粒一個一個を丹念に焼き始めた。

次回予告 第七話 正直者の宴
師匠はテロリスト? じゃあ私の立場は? 師匠との、ティモシー、ユースケとの会話、そしてわたしは……。
えぇい! 考えたって仕方ない、師匠はわたしが護りますっ! 
333弐国 ◆J4fCKPSWq. :2007/08/01(水) 18:26:11 ID:???
今回分以上です、ではまた。
334通常の名無しさんの3倍:2007/08/01(水) 20:42:38 ID:???
>>弐国
 投下乙です。GJでした。
 始めと終わりに描かれた砂漠の風景が印象深かったです。無限にもおもえるような
広がりがある砂漠の中で生きている人間の、濃密なつながりがシナリオを作っていますね。

 >えぇい! 考えたって仕方ない
 この一言が、ミツキとこの物語の根っこだと思います。そのひたむきさがどんな風に
周りの人間と物語に結末を与えていくのか、続きに期待です。
335生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/08/01(水) 21:56:02 ID:???
第三話 傷付いた少年と少女のポルカ 1―1

 いつの間にか眠ってしまったらしい。トダカはぼんやりとした頭を振りつつ体を起こした。
 傍らには安らかに眠るシンの姿がある。窮屈なベッドを二人で分け合っていたのだ。
 アンダーウェアが汗で濡れている。着替えようかと思ったがその為には明かりを付けなければならず、明かりを付ければシンを起こしてしまうと思いトダカは着替を諦めた。ただ、服を脱ぎ捨てるに留めた。
 再びベッドに入る。シンと向かい合って眠るのに若干の生恥ずかしさを感じ、トダカはシンに背中を向けた。肩越しにシンの息遣いが聞こえ、耳元に温かい寝息が掛かる。トダカは深々と溜め息を吐いたが悪い気はしなかった。
 不意にトダカは背中に温かな感触を感じた。シンの躯がトダカに触れたのだ。シンの体温を受けてトダカ自身も熱を帯びて行くのを感じた。
 トダカは舌打ちをしながら再び躯を起こし、暗闇の中手探りで収納から下着を取り出した。
 アンダーウェアは汗で躯に張り付いており脱ぎ難かったものの強引に脱ぎ去った。
 外気の冷たさは心地よく火照った躯をクールダウンさせるのに有効だった。
 トダカはシンに振り返った。シンはトダカの心境を知る由はなくぐっすりと眠っている。
 手際良く着替を済ませベッドに潜りこんだ時にはすっかり汗が引いていた。
 明日からは仕事がハードになる。早く休まなくては。トダカは目を閉じた。だが、先程の余韻が残っているのか眠気は降りて来なかった。
 トダカは無造作に寝返りを打った。トダカの眼前にシンの顔がある。
シンの寝息が頬に当たる。シンの体温がダイレクトに伝わって来るようで、トダカはモゾモゾと躯を動かした。
 夜はまだ始まったばかり。トダカに朝が訪れるのは当分先の様に思えた。
336生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/08/01(水) 21:59:08 ID:???
第三話 傷付いた少年と少女のポルカ 1―1

 それは果たして悲鳴と言って良いのだろうか。突如シンの口からあえぐような呼吸が漏れた。
 安らかな笑顔はそこに無く、眉をしかめ顔をくしゃくしゃにして額に玉のような汗を滴らせているシンの顔ががそこにあった。
 呼吸は激しさを増し躯を震わせるシンの姿を見て、トダカは突差にシンの肩を掴んだ。
 何が起きているかは判らないが、トダカはシンを自分の胸元へ引き寄せた。
 早まるシンの鼓動を落ち着かせようと必死に鳴って抱き締めた。
 その時だった。
 突如シンの目が見開いた。瞳には光が無く、虚無の色合いを呈していた。
 室内に絶叫が響く。トダカの胸の中でシンは暴れ始めた。何かから逃げ出すような力強さをトダカは感じ取った。
「――大丈夫だ、大丈夫だ!怖くない、怖くない……」
 トダカは自分の鼓動をシンのそれに寄り添わせようと躯を密着させた。互いの額を擦り合わせ、シンの背中を優しく擦った。
 シンの瞳からは涙がとめどなく溢れ、トダカの頬を濡らす。トダカはひたすらシンをなだめようと必死だった。
 トダカの努力が効を奏したのか、シンの鼓動は徐々に落ち着いて来る。トダカは背中を擦るのを止め人差し指でシンの涙を拭った。 落ち着いてきた呼吸は艶やかさを増した。トダカの瞳には先程の荒々しさとは違うシンのあどけなさが映った。
 シンは悲鳴の中で家族の名を叫んでいた。きっとあの時の夢を見たのだろう。
「大丈夫だ、私がお前の側にいる……」
トダカはシンに微笑んでみせた。シンはぎこちないながらも笑顔を返してきた。
「――すみません、俺……」
「良いんだ。気にしなくても。その前に下着を替えないとな」
 シンの下着は汗で躯に張り付いていた。トダカは灯りを付け、シンの下着を優しく脱がせた。
 シンは恥ずかしそうな素振りを見せたが、トダカは気にする風でもなくタオルで躯中の汗を拭ってやり、手際良く下着を着せた。
 トダカは再び灯りを消す。トダカはシンの手を重ね合わせ眠りに着いた。

 トダカの長い夜は一応の終わりを告げた。だがその裏で一人の少女に何が起こったかをトダカに知る術は無かった。
337生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/08/01(水) 22:01:49 ID:???
すみません。
>>336は「生きる為の情熱としての復讐 第三話 傷付いた少年と少女のポルカ 1―2」
が正解です。
338通常の名無しさんの3倍:2007/08/02(木) 00:14:12 ID:???
アッー!!
339あげ:2007/08/02(木) 00:18:19 ID:bZC+JEtU
>>情熱
 こってり濃厚ですね。ブレーキを掛けてしまうのかこのままいろんなものを
突き抜けていってしまうのか……投下乙でした。
340通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 19:52:31 ID:???
そろそろ要領がやばいから新スレ建てないとな
一応テンプレだけまとめておく
こんなんでいいか?

【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】6

新人職人さん及び投下先に困っている職人さんが好きな内容でSS・ネタを書いてください。
長編の連載もできます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
投下作品には「つまらん」と言わずアドバイス等感想レスを付けて下さい。
面白いものには素直にGJ! をお願いします。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長「所長」にも感謝の乙! をお願いします。

前スレ
【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】5
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1181720670/

まとめサイト
ttp://pksp.jp/10sig1co/
雑談所
ttp://pksp.jp/rookiechat/

荒れ防止のため「sage」進行推奨
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー
エロ、グロ、やおいは禁止
本編および外伝の叩きは厳禁
スレ違いの話はほどほどに
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう
341通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 20:04:40 ID:???
>>340
つまり、お前は情熱氏に消えろと言いたいんだな。
勝手に禁止項目を作るんじゃない。
342通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 20:12:31 ID:???
>>341
これって前から言われてたぞ、お前さんこのスレ全部見てないの?
それにこのテンプレに情熱氏出て行けは通用しないよ
そういう描写をするなとかそういうんじゃなくて
343通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 20:22:56 ID:Wkd+xty5
>>342
日本語でおk
344通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 20:25:09 ID:???
例えで言うならマユスレのPP戦記ってこと?<342
345通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 20:33:21 ID:???
>>342
反対意見があった事も忘れるな。
禁止項目は一読者が決めるんじゃなくて、職人に任せてしまえば良い。
ああ、ひょっとしたらBright Lights,Pray the Earth◆8voT9TZJqQを追い出したかったのか?
346通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 20:39:37 ID:???
要は340のテンプレに
エロ、グロ、やおいは禁止
を外せばいいんだろ?それで十分だろうが
347通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 21:18:39 ID:???
アツクナッタカラマケタワ
348通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 21:26:01 ID:???
>>345
おまえ・・・
349通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 21:35:51 ID:???
340氏のテンプレを修正、修正と呼べるものではないかもしれませんが

【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】6

このスレは新人職人さん及び投下先に困っている職人さんが好きな内容でSS・ネタを投下するスレです
短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を、投下作品には「つまらん」と言わずアドバイス等感想レスを付けて下さい。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長「所長」にも感謝の乙! をお願いします。
荒れ防止のため「sage」進行推奨

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁
スレ違いの話はほどほどに
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう

前スレ
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350生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/08/03(金) 21:47:43 ID:???
第三話 傷付いた少年と少女のポルカ 2―1

 心地よい疲労感は眠気を誘うエッセンスであるのに、カガリ・ユラ・アスハはベッドの中に横たわり一心不乱に宙を睨んでいた。
 原因は解っている。先程の少年だ――シン・アスカ。彼の絶叫がカガリの胸の一番深い所に突き刺さっているのだ。
 彼はカガリに自分の哀しみや怒りをぶつけて来た。非常にプリミティブな物だった。
 私は彼の想いを受け止める事が出来たのだろうか?カガリは自問する。幾ら考えても答えは出ない。
 否、答えが簡単に出せる問題では無いのだろう。人間はそんな簡単な生物ではない。
 だからこそ、こうやって戦争は今もなお続いているのだ。単純な生物であれば幸せだったのかも知れない。
 カガリは宙に手をかざした。日に焼けており、ガサガサと荒れている。武骨な手だ。
 カガリはそんな自分の手を誇らしく思っている。蝶や花やと育てられたのではなく、自分の力で生きて来た証だ。
 自分の誇りを掛けて掴みたい。オーブの平和を、哀しみや涙のない世界を。
 ――それにしてもだな。
 カガリは思う。不謹慎かも知れないが、例のシン・アスカ少年は興味深い存在だ。
 このクサナギの中で、否、今までのカガリの人生の中でカガリにあれ程の激しい感情をぶつけられたのは初めてだ。
 人を愛する瞳は青く、人を憎む目は紅いと云う話を何処かで聞いた事がある。
 アスハと云う名に平伏したり卑屈になる訳でなく、一心に感情をぶつけて来た少年。
 彼の持つ毒こそアスハの名ににふさわしいのだとカガリは思った。
 例えば日和見主義が大手を振って歩いて居るようなユウナ・ロマ・セイランでもなく、またアスラン・ザラやキラ・ヤマトと云った連中とも違う存在。
 カガリは宙に伸ばした手を力強く握り締めた。
「――面白い奴だ。シン・アスカ……」
351生きる為の情熱としての復讐 ◆FdMSq8OJJA :2007/08/03(金) 21:49:01 ID:???
第三話 傷付いた少年と少女のポルカ 2―2

 シン・アスカは夢を見ていた。
 父がいて、母がいて、妹がいて。他愛の無い日常がそこにはある。
 朝の寝覚めは母の作るパンケーキと濃厚なバターの香ばしい香りだ。
 父の飲むコーヒーの香り、妹の飲む新鮮なグレープフルーツフルーツジュースの香りもする。
 シン・アスカはそのような香りに包まれて朝の始まりを迎えていた。
 誰にでもある幸せ。ちっぽけで他愛の無い幸せ。何処までも続くと思っていた日常。
 それは簡単に崩れ去る。一筋の光が全てを壊した。
 次の匂いは何かが焦げるような不快な匂い。砂埃が漂い白煙が舞い上る中かいだ匂い。
 覚えているのは妹の腕と手に握り締めた妹の携帯電話と躯の痛み。
 ――皆、死んだ。自分だけが生き残った。
 胸の中にぽっかりと穴が開いたようで、何の感情も起こらなかった。ただ、呆然と立ち尽くしていた。
 何故か笑いが込み上げてくる。おかしくて仕方がない。
 簡単に人は死ぬんだ。まるでゴミのように。
 自分までゴミみたいになった気がして、何故かずっと笑っていた。
 笑っていた――違う!
 泣けなかったのだ。余りにも哀し過ぎて涙が出なかったのだ。家族が死んだと云うのに泣けない自分がおかしくて哀れで笑っていたのだ。
 ほら、笑い過ぎて息が詰まった後に頬に熱いものが伝った。止めどなく涙は溢れ、大地を濡らす。
 俺はおかしくなんかない。泣けるんだ。泣けるんだ。泣けるんだ。
 シンは絶叫した。言葉に鳴らない気持ちを叫んだ。
 そして匂いが再び変わる。
 汗の匂い。それは全然嫌なものでなく、自分を包み込んでくれる逞しさを感じた。素直に甘えられる――そんな匂いだった。
 不意に肩を揺す振られ朦朧としている意識は急速に覚醒して行く。
 躯がきつく締め付けられる痛みは嫌いじゃなかった。とても温かくて力強くて。優しさと慈愛に包まれている気がした。
 シンは気付かぬ内にその大きな背中にそっと手を回していた。
「――トダカさん……」
352通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 22:10:06 ID:???
これはやおいなのか?
353通常の名無しさんの3倍:2007/08/03(金) 23:08:12 ID:???
耽美な雰囲気は濃厚ですが、けっしてやおいでは無いかと……。
354通常の名無しさんの3倍:2007/08/04(土) 00:06:11 ID:???
直接描写は勘弁
355通常の名無しさんの3倍:2007/08/04(土) 06:08:15 ID:???
カガシンフラグ立った?
356通常の名無しさんの3倍:2007/08/04(土) 15:10:48 ID:???
情熱氏は今までに直接的な描写をした事あったっけ?
357通常の名無しさんの3倍:2007/08/04(土) 17:54:28 ID:???
無かったし、その積もりは無いとも言っていた。
線引きは氏本人がしている。
まあそれはおいておいて、投下乙です。>>情熱
358通常の名無しさんの3倍:2007/08/04(土) 21:47:28 ID:???
>>356
情熱氏は直接的な描写はしてないいんだが、耽美的な描写は盛り沢山だな。
その割にはカガシンフラグを立てている。
果たしてトダシン再構成なのかカガシン再構成なのか俺には解らん。
359通常の名無しさんの3倍:2007/08/04(土) 23:08:57 ID:???
同性愛物みたいなのは個人的には勘弁して欲しい。
360通常の名無しさんの3倍:2007/08/04(土) 23:24:31 ID:???
まぁその嫌悪感を越えて読ませる実力があれば問題ない……よな?
361通常の名無しさんの3倍:2007/08/05(日) 00:25:57 ID:???
閃ハサクロスはどうなん?前に叩かれていた箇所は原文のママだったんだけどね。
あの文体なら許せる俺はマイノリティ。
362通常の名無しさんの3倍:2007/08/05(日) 00:53:02 ID:???
>>361
あれ以来更新ないね…
363通常の名無しさんの3倍:2007/08/05(日) 12:15:23 ID:???
閃ハサクロスは期待していただけに投下されなくて残念。
あの職人さんのセンスが好きなんだよね……
364通常の名無しさんの3倍:2007/08/05(日) 19:20:38 ID:???
てかエロ、グロ、やおいメインだったら他所でかけで終わるはずなんだがね
あの作者には戻ってきて欲しいな
365通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 16:49:29 ID:???
>>361
あれくらいなら普通の範疇でしょ?
むしろマジョリティではないかと思うが、もしかして俺もマイノリティ。なのか・・・?
366通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 17:50:13 ID:???
何にせよ、あれだけ叩かれたらなぁ……何であんだけみんな暴走したのかが分からん。
likeとloveの違い云々以前に原文すら理解できない奴がいるようだ。
367通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 18:29:40 ID:???
>>366
×何であんだけみんな暴走したのかが分からん。
○何であんだけ自演厨が粘着したのかが分からん。

一応多分、と前置きしておくが。多分一人だ
この系統のスレに出入りして禿の著作に目を通さないヤツは少ないと思うんだ
それに真性の住人は微妙ならば、黙るwww
368週刊新人スレ:2007/08/06(月) 19:06:29 ID:???
目次
 
 絶叫するシン、トダカには彼を抱きとめる事しか出来ない・・・。一方のカガリはシンに興味を持つ。
生きる為の情熱としての復讐
>>315-316,335-336,350-351

 シンとルナマリア、本気のスパーリング。だがルナマリアの真の目的は訓練ではなく・・・。
SEED『†』
>>320-324

 赤き風と隊長との直接会談。その直前、ミツキは大事なモノの為、ファング2を駆って飛び出す! 
少女は砂漠を走る!
>>327-332


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369通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 19:24:38 ID:???
誤解を恐れずに言うと、閃ハサクロスは後半のC.E.の部分の方にやおい的なものを感じた。
あからさまな描写の情熱よりも腐女子が食い付きそうだと思う。
つまり、作者さんカムバック!
370通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 19:35:40 ID:???
>>369
俺はむしろ禿テイストを感じたのだが
そうか、御大はやおいの走りか・・・ww

作者氏は粘着など気にせず帰っておいで
371通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 19:49:01 ID:???
>>370
自分がやおい的なものを感じたのは前半のU.C.の部分じゃなくて後半のC.E.の部分の事ですよ。
前半部分は御大テイストを感じたけれど後半部分は文体がさっくり変わってライトなものになってて、そこにやおい的なものを感じたんだよ。

ぶっちゃけ、情熱よりも萌えた。
372通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 20:03:34 ID:???
話変えるけど次スレどうする?ブランド鍋を騙った埋め荒らしが着たらヤバイと思うが
373通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 20:32:10 ID:???
>>372
先生!意味が分かりません><
374通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 20:34:17 ID:???
>>372
まぁ来てもスルー。チラ裏で様子見
こんなトコじゃねぇか?
次スレ無しって訳にもいかんしさ
俺当分建てらんないみたいだから誰か宜しく
375通常の名無しさんの3倍:2007/08/06(月) 21:49:16 ID:???
ル・クルーゼって言うブランド鍋があるらしい
ここも一回埋められたことがあるというかほとんどのSSスレが被害にあってる
VSスレのシン・アスカと同一人物といわれてるみたい
376通常の名無しさんの3倍:2007/08/07(火) 03:45:29 ID:???
次スレ立てました。

【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】6
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1186425541/

まとめですが、前に1ページあたり2000文字と書きましたが1000文字の間違いでした。
えらい勘違いしてすいませんでした。
377通常の名無しさんの3倍:2007/08/07(火) 03:50:00 ID:???
訂正
1000文字じゃなく1200文字です。眠くて訳分からんゴメン
378通常の名無しさんの3倍:2007/08/07(火) 09:27:28 ID:???
379通常の名無しさんの3倍:2007/08/07(火) 12:46:36 ID:???
>>371
私も後半のC.E.の部分で801的な要素を感じたよ。
あからさまじゃない所が萌えますよね。
情熱氏(虎キラ様?)は数字板の方が良さが生きるんじゃ無いかな。
本当に書きたいものが書けていない感じ。
380通常の名無しさんの3倍:2007/08/07(火) 13:55:40 ID:???
>>379
щ(゚д゚щ)カモーンSSなんでしょ、本音は。
381通常の名無しさんの3倍:2007/08/07(火) 14:33:00 ID:???
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382ラウ・ル・クルーゼ:2007/08/07(火) 14:34:01 ID:???
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383ラウ・ル・クルーゼ:2007/08/07(火) 14:35:01 ID:???
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384ラウ・ル・クルーゼ:2007/08/07(火) 14:36:02 ID:???
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385ラウ・ル・クルーゼ:2007/08/07(火) 14:37:02 ID:???
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386ラウ・ル・クルーゼ:2007/08/07(火) 14:38:03 ID:???
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387ラウ・ル・クルーゼ:2007/08/07(火) 14:39:03 ID:???
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388ラウ・ル・クルーゼ:2007/08/07(火) 14:40:04 ID:???
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389ラウ・ル・クルーゼ
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