【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】2
好きな内容でネタ・SSを書いて下さいよ。
投下された物につまらんとか言うな!アドバイスしてやれ!
容量いっぱいになってしまったので立てましたorz
本当に本当に申し訳ないorz
気を取り直してプロローグ最初から投下します。
機動戦士ガンダムSEED ラスト・リゾートinC.E.(以下LRCE)
プロローグ(1/4)「邂逅」
意識が途切れる前。認識できていたことは、そう多くない。
傍らに居る彼女の温かみ。
アプサラスIIIに決定的な損傷を与えたこと。
最後に強い衝撃を受けて彼女の上に覆い被さり……シロー・アマダの意識は途絶えた。
「ああもう、どうしてこうなるんだよ!」
この日ユウナ・ロマ・セイランが公道を外れ、山中をドライブしていたのは全くの偶然
だった。車内には彼一人だけ。気ままな旅といえば聞こえはいいが、些か寂しくもある。
留学先の大学は夏期休暇中で、早々に課題を済ませた彼には特にやることも無い。本当なら
友人たちと同様に帰郷すればよかったのだが、世界の情勢がそれを許さなかった。ユニウス7
への核攻撃、エイプリルフール・クライシス、世界樹戦役……ザフトと連合の全面戦争は
あらゆる地域に飛び火しており、このためつい先日にユウナは留学先から出ないよう父の
ウナトに厳命されていた。夏期休暇になれば暖かいオーブに帰れるしカガリにも会える、と
楽しみにしていたユウナにとっては不満だったが身の安全には代えられない。
どうせなら国許では出来ないことをしよう。
そう考えての一人旅としゃれ込んだのだが三日目にしてさすがに飽きが来ていた。元々
賑やかしの性分があるユウナだ、いかにスカンジナビア王国の自然が観光資源の一つである
ほど豊かとはいえ限界がある。
とにかく誰かと喋りたい。
その一心で町への近道を探したところナビゲータがあるルートを示した。それは山間部を
抜けて小さな町へ行くルートで、細い道の連続になるがほんの二時間ほどでたどり着けると
あり、渡りに船、とばかりにユウナは広い道を外れて脇道へ入ったのだった。
結果を言えばこれが大失敗で、ナビのデータが古かったのかもう三時間以上も山中を彷徨っていた。
熱くなった頭を冷やすために道端に車を止めて外に出る。
整備された道があるということは、ここがどこかに通じているという事でもあるがこの
数時間、まったく他の車に行き会わない事実がユウナの不安を増大させていた。これで行き
止まりとかだったら笑い話にもならない。
それでもボンネットに腰掛けスカンジナビアの短い夏の空気を胸一杯に吸い込むと、気分も
落ち着いてくる。特に意味もなく周りを眺めつつひとりごちた。
「とにかくあと一時間走ってみて――?」
ユウナが言葉を切ったのは人の声がしたのもあるが奇妙なものが視界の隅に映ったからだ。
木々の向こう。
カーキ色の何かは大きな人型に見え、ユウナは茫然と呟くほかなかった。
「まさかあれは……モビルスーツ?」
(2/4)
「ジンじゃない、ザフトの新型か?」
ふらふらと何かに魅入られたように近付くユウナ。
遠目には人の姿に見えたそのMSは、近付くにつれて大きく損壊している事が分かった。
左腕は無く足もひしゃげてまともに歩けるようには到底見えない。
何より、胸部装甲が無くコクピットがむき出しになっている。
声はそのコクピットから聞こえてくるのだった。
無意識にユウナは上着の隠しをまさぐった。手応えはない。
そこでやっと銃は車のサイドボードに放り込んだままなことを思い出す。
護身用に、と持ち歩いている小口径の拳銃だったが今から車に取りに戻るのは怖かった。
背中を見せれば、パイロットに見つかって撃たれるのではないか
――そんな妄想が頭をもたげたからだ。
「……女?」
進むことも下がることもできずに立ち尽くしてしまったユウナの耳に聞こえたのは、必死に
誰かの名前を呼ぶ美しい女性の声だった。
その声に込められた切実な色に誘われ、ユウナは恐る恐るコクピットに近付いていった。
コクピットにはユウナより少々年上の男女が居り、女の方はアイナ・サハリンと名乗った。
男はシロー・アマダというらしい。
アイナは目の覚めるような美人だが、男が目覚めないのだとユウナに訴える様子が明らかに
恋人のそれであったので早々に興味が無くなった。
それでも、ユウナも男である。
美人のお願いに応えるのに吝かではないが、この場合状況が特殊すぎた。
MSといえばザフト。ザフトといえばコーディネイターであり、プラントだ。
普通に考えればこの二人はコーディネイターのはずである。しかしユウナはプラントと
スカンジナビアが交戦状態に入ったなどとは聞いた事がなかった。
留学中とはいえセイラン家はオーブの有力家系のひとつ、嫡子のユウナにもコネや人脈の
一つや二つはあり、また情報収集を怠ったつもりはない。
無論極秘だったり電撃作戦だったりという可能性もあるが、いまスカンジナビアを攻めて
プラントに何か利があるとは思えなかった。
ひょっとしたら自分を引っ掛ける罠なのかも。その可能性を一瞬考えてすぐにまさか、と
否定する。
今日この場に自分が居るのは単なる偶然にすぎない。
もし詐欺だとしたらあまりにも不確実すぎる。まだテレビのバラエティだと言われた方が
納得できる。
しかし故郷のオーブでよくある悪趣味なバラエティのように看板を持ったタレントが彼の
前に現れたりする気配は一向に無い。
それに加えて、目の前のMSは充分以上に現実の戦場の匂いがした。
……無論彼自身は戦場に出たことなどないから単なる勘でしかないのだが。
(ま、いいか。もしペテン師か何かならそうと分かった後で放り出せばいいだろ)
何よりその方がはるかに面白そうだし。
そう楽観的に考えてユウナは休暇中ずっとオフにしておくつもりだった携帯電話の電源を
入れた。
(3/4)
その日から暫く、モルゲンレーテ・スカンジナビア支社の技術者は世界がひっくり返った
と思うほどの衝撃を受けた。
事の始まりは一本の電話である。
優雅なことに一人旅に出たはずのセイラン家のボンボンが電話を掛けてきてセイラン家と
縁のある医者、それに重機とトレーラーを要求してきた。
医者と重機、というあまりにも脈絡のない要請に首を傾げつつも、「至急」という言葉と
支社長の鶴の一声により直ちに派遣されることになったのだが。
現場に着いた技術者はスカンジナビアの山奥でMSが大破している事実にまず驚き、ついで
そのMSが体積の割に軽すぎることに首を傾げ、工場に持ち帰りひとまず簡単な調査を終えた
ところで担当者は揃って言葉を失うこととなった。
「信じられねぇこの装甲、なんて軽さだ! ありえない……」
「それでいて実に強靭だ。発泡金属並の比重でこの強度……
ええい、このMSは化け物か?! おい、サンプル取っとけ!」
彼らの驚愕と悲鳴はこの機体の動力源を知るにあたって極限に達した。
年配の技術者など感極まって卒倒するなどの騒ぎとなるがそれはまた別の話。
一方その頃。
「……えーと、ミズアイナ? 繰り返すけど、つまりこういう事でいいのかな。
君たち二人はそれぞれ地球連ご……連邦か、それとジオン公国の軍人で、
戦場で出会って、紆余曲折あったけど恋人同士になって?
東南アジアでアプサラスとかいう巨大なMAを倒した後、気付いてみればあの山の中に居たと?」
「ええ、そうです。信じてはもらえないでしょうが……」
「まぁ、そりゃ普通ね」
東南アジアとスカンジナビアはユーラシア大陸の反対側もいいところだ。
それ以前に彼の常識ではMAは宇宙用の戦闘艇であってそんな大軍を圧倒するような化け物は
『モビルアーマー』とは呼ばない。
「ところで、本当にジオン公国という名に心当たりは?」
「無いなぁ。確かにコロニー国家はあるけど、僕らはプラントって呼んでるし。
そもそもコーディネイターが居ないってのがなぁ……」
「私たちにとっては、遺伝子を弄ぶそちらの方が理解できません」
ユウナはアイナと二人あまりにも食い違う互いの認識を前に頭を抱えていた。
「パラレルワールド、というのでしょうか、こういうのって」
「『夏への扉』かい? そんな、旧世紀の超古典SFじゃあるまいし」
「ユウナさん、それはタイムトラベルですよ」
「ああ、そうだっけ? というかハインライン居るのかそっちも。
……って話ずれてるよ!」
つい突っ込んでみたりもするが、目の前の現実は変わらない。
セイラン家の顔が利く病院に担ぎ込まれたシロー・アマダの怪我は重傷ではあるものの
命に別状は無いとのことで胸をなで下ろしたのも束の間アイナ・サハリンから事情を聞いた
ところがこれだ。
(4/4)
(やばい人間に捕まっちゃったかなあ)
正直な話そういう気持ちが強い。ユウナが心持ち引いたのを敏感に察してアイナは言葉を
継いだ。
「信じられないのでしたら、私たちの乗っていたあのMSを調査してみてはいかがでしょう?
もう取り掛かっておられるのかもしれませんが」
「いや……まぁ、ね。僕も一応、人の上に立つ人間だから善意ばかりじゃないし」
ユウナは図星を刺されまたアイナの強い視線に圧されて微妙に意味の通らないことをぼそ
ぼそと呟いた。将来政治、またはビジネスに携わる者としてそれなりの教育は受けているが、
彼にはまだまだ経験が足らない。
アイナは一見して柔らかげな雰囲気の女性だが、ここぞという時に見せる顔は人の上に
立ちなれた者のそれでありある種の威厳、いやカリスマと呼べるものさえ有している。
それに圧されたせいでもあった。
元の世界ではノリスとともに兵の精神的支柱となっていた経験は伊達ではないのだ。
「まぁ、今日はこちらで休んで、明日MSの調査の立会いをお願いしますよ。
それじゃ」
気まずくなったユウナはこれ以上余計な事を言う前に立ち去る他なかった。
翌日。
支社長からの報告を受けたユウナが掌を返したように親密に振舞う事にアイナは目を丸く
することになる。
CE70年、初夏。
スカンジナビアの山奥での邂逅が、やがてこの世界の『運命』を大きく揺るがしていく。
乙です
前スレ
>>505さん
まとめサイト作成お願いします
LRCE氏投下&スレ立て乙であります。復帰を待っていました。
へうげものとのクロス此処に投下して良いかな?
へうげものとのクロス……いかん想像付かん
>>9 見たいから投下お願いします
第一話「セイランの胎動」(1/7)
山中の邂逅からしばらくが過ぎたある日の朝。
ユウナの姿はスカンジナビア支社支社長室にあった。
「既存の物より軽くて強固な未知の合金。
僕らには無かった発想の教育型コンピュータ。
MSのオペレーティング・システム。
そして、理論は完成しながら結局実用化に至らなかった核融合炉と発電システム!
きわめつけ、未発見の粒子を元にした物理学!
いやいや、現代の宝の山だねまったく」
「このMSから得られるデータだけでわが社はあと10年。
いや20年は戦えますな」
たった1機の大破したMSの調査報告書はそれとは思えないほど膨大な量となった。
調査は機体の動力とそれにコンピュータが活きていた事でとんとん拍子に進んだがこれは
アイナ・サハリンの協力を得られたところが大きい。
転移以前に兄の下でテストパイロットを行っていた彼女は、一般のMSパイロットの水準を
はるかに超えたレベルでの技術的知識を有していたのだ。
特に核融合炉に関しては、知らずに調べていたなら大惨事に発展していた可能性がある。
ユウナ、そして支社の技術陣にとっては僥倖といえよう。
得られたデータがデータだけに、解析には非常に時間が掛かるというのが技術陣の一致した
意見であり、そのために彼らは支社の設備人員では到底要件に足らないとして本社への人員
派遣の要請を上申してきていた。
「で、いかがいたしますか、ユウナ様?」
「父に掛け合う間、もう少し抑えててもらえます? それほど長くは待たせませんから」
「了解しました。……何とぞ、お父上によろしくお伝えください」
「分かってますよ。そちらも機密保持には気を付けてください」
親子以上に歳の離れた彼に頭を下げる支社長へ愛想よく応え、ユウナは部屋を出た。
廊下を歩きながら思う。今のやり取りの意味を違えてはならないと。
彼は報告義務を怠ると約束したのだ。いうまでもなく重大な背信行為である。
半国営企業であるモルゲンレーテでのそれは国家そのものへの背信行為に等しい。
もちろん、危険を冒すには無論それだけの理由がある。
彼はどうしても本土へ戻りたいのだ。
支社長はサハクでもセイランでもない非主流派の人間である。
やり手であり一時はモルゲンレーテの重役の座をウナトと争ったこともあるのだが、主流
から外れていたが故に彼は栄転という形でもって本土から遠ざけられることになった。
上流階級相手の痛くもない腹の探りあいの経験もあるユウナにとっては分かりやすいこと
この上ない。しかし分かりやすい相手だけに期待に応えられないとなれば掌を返すのも早い
だろう。そのくらいの予想は容易く付く。
ならば、掌を返される前に出来るだけ早く手を打たなくてはならない。
そのくらいはこなしてみせなければ。
独り、ユウナは思う。
そのくらい出来なければ、カガリとの釣り合いが取れないというものだ、と。
(2/7)
ユウナ・ロマ・セイランはアスハ家の姫であり次期当主でもあるカガリ・ユラ・アスハの
婚約者、ということになっている。
これは正しく政略結婚であった。セイラン家は有力五家に次ぐ位置にあり現当主ウナトは
確かにやり手だがそれだけでは決して選ばれない。より重要なのは、セイラン家がサハク
よりの勢力ということなのだ。
アスハ家現当主にして代表首長の座にあるウズミは『オーブの獅子』と呼ばれ国内随一の
勢力を持っているが、近年有能な後継を得たサハク家の台頭を許している。
それに比べアスハの後継であるカガリはまだ若年に過ぎ、またその真っ直ぐすぎる気性は
個人としては好ましいもののおよそ政治家向きの資質を持っているとは到底いえないのが
実情であった。
このためサハク家の足元を切り崩すと同時にアスハの、というよりはカガリ個人の地盤を
固めるため、ウズミが打った手がユウナとカガリの婚約だった。
現在のところ内々の事とされ、カガリ成人の折に大々的に公表される手筈になっている。
特に当事者の一方であるはずのカガリには極秘とされた。元々カガリは社交界嫌いで通って
おりドレスを着るよりはラフな格好で市街をうろつく事を好んでいたので労は無かったが、
この処置に関しては活発すぎる姫の反発を見越してのこと、と専らの噂である。
知らぬはカガリばかりなり、であった。
またこの婚約にはさすがに他の有力五家からも批判が出たがサハク家が動かなかった事や
ウナトの快諾、何よりウズミの強い意向もあって既に決定事項とされている。
もはや撤回はウズミ自身にも難しいといえた。
故に、ユウナにとってあの二人との出会いは千載一遇のチャンス、偶然転がり込んできた
掌中の珠にひとしい。
この珠くらい物に出来なければ、いや自分にはその義務があるとさえ考えていた。
それは実にこの若者らしくない意地であり、気概であった。
誰からも後ろ指を指されること無くカガリとの婚約者として立つ。
オーブにユウナ・ロマ・セイランありと、決して家の事情のみで結ばれるのではないと
知らしめる。
そんなことを考えているとはおくびにも出さず、しかしユウナは静かに燃えていた。
そのためにはまずこの報告を父に、自分の最大の後援者に知らせ、協力を取り付けなくては
ならないのだが。
「まさか『拾った』なんて信じるわけないし、どうしたもんかなぁ……」
ユウナはウナトへどう報告したものか悩みつつ、最近日課となりつつある見舞いのために
支社を出てタクシーを拾った。
ユウナ・ロマ・セイラン。
世界が彼の名を知るのは、そう遠くない未来のことである。
(3/7)
シロー・アマダがその世界ではじめて覚醒したとき、彼はちょうど救急車に担ぎ込まれ
病院に搬送される最中だった。
覚醒はほんの一瞬だったがわずかに開いたその目は彼の手を握り締めたアイナ・サハリンの
横顔をしっかりと捉えておりそのため彼は非常に安らかな気持ちで意識を手放すことができた。
だが、まさかここが彼の生きた世界とは異なっているとはさすがに夢にも思わなかった。
送付されたデータを見、支社長の報告を読んだウナト・エマ・セイランは今やっと息子の
話を聞き終えていた。説明を受けている間中一言も発しなかった彼がまずしたことは、いつも
掛けている眼鏡を取って眉間を揉み解す事だ。
そうやってたっぷりと間を取った後、画面の向こうで緊張した面持ちで待つユウナに対し
彼はおもむろにこう言った。
「……随分手の込んだ冗談だな」
「いや気持ちは分かるよ父さん。
僕ももし人づてに聞いたなら絶対に信用しなかっただろうしね」
完全にこちらを疑って掛かっている父親に対しユウナは大仰に肩をすくめ、苦笑をこぼす。
実際、半月ほど経過した今でも夢でも見ているのではないかと思う事がたまにある。
昔読んだ小説の主人公のように、実は自分は山中で事故に遭っていて、今までの事は全て
死の間際の妄想だったのではと。
アマダ夫妻の見舞いに毎日行くのも、毎日支社へ顔を出すのも夢ではないという確かな
証拠が欲しいからなんだろうな、と自己分析めいた事さえ思うのだ。
「山中で出会った謎の男女。大破した謎のMS。
その正体は異世界から流れてきた恋人たちだった!か。今時マンガでもやらん脚本だな。
少なくとも私がスポンサーなら脚本家を変えるよう要請するよ」
「父さんは僕とスカンジナビア支社の人間が全員狂ったとでに思うのかい?」
「まだしも、そちらの方が信憑性があるさ。このデータさえ無ければな」
ウナトは財界人でありまた政治家ではあったが技術者ではない。
だが優れた経営者というのはバランスシートの読み方だけ知っていればいいというもの
ではない、とも知っていた。
無論データの場合、数値を誤魔化すことが出来る。映像は改ざんが可能だ。
そして人間は騙すことも、買収することも出来る。
スカンジナビア社の人間が全て狂ったという可能性はおよそ現実的ではないにしても何かの
ペテンに掛かっているのではないか、という疑念は拭えるものでもない。旧世紀には会社の
組織ごと偽造されたという笑えない話も実在する。
いくら疑っても疑い足りない。
それほどにそのデータが示すところは途方も無いものだ。
「これが事実存在するなら、世界はひっくり返るがな……」
まるきり信じていない口ぶりでそう慨嘆してみせるウナト。
「僕がこちらを抑えておけるのも、そう長くはないんだ父さん。
今は支社長が本社への報告を遅らせてくれてるけど」
疑いの眼差しを隠そうともしない父親を半ば無視してユウナは話を進める。
「いや、実際信じられないのも無理はないと思うよ。
ちょっと様子を見に来るなんてわけにもいかないしね」
だがそれでもひとまずは信じて、人員を派遣して欲しい。ユウナは言い切った。
「責任は全部僕が取る」
「それこそ馬鹿な事だ。まだ学生のお前がどうやって責任を取るというのだね」
「忘れたのかい父さん。一応僕も株主だよ? 僕が所有する株式を売ればいい」
(4/7)
ユウナはモルゲンレーテの株式を0.5%所有している。
それはセイラン家が有する株式のほんの一部でありユウナが当たり前の権利として所有
しているものだ。仮に捨て値で売り払ったとしても一財産にはなる。
「馬鹿者が。お前は私も巻き込むつもりか?
それに手を付ければ他の家にばれないはずがなかろう」
「そう、そのとおり。もしこれがすべてペテンなら、僕はオーブ中の笑い者だ。
カガリとの婚約も白紙に戻るだろうね」
わずかに気色ばんだウナトだが、静かにそう告げるユウナにこれまでのどこか道化じみた
感触と違う雰囲気を感じた。黙って目で先を促す。
「でも、このまま黙って本社の連中に渡したら、結局僕はオーブ中の笑い者だよ。
今ならセイランが全てを手に入れることが出来る。
僕らが親で、アスハや他の連中は僕たちが手の中にエースを持っていることにさえ気付いて
ない。今なら親の総取りも可能なんだ。
どうしても信じられないというなら仕方無い。たしかに突拍子もない話だからね。
ただ、僕は私財を全て売り払って、セイランの名を使い倒してでもやるつもりだ。
それだけは知っておいてほしい」
「お前は私を脅迫する気か?」
「それだけこれに賭けてるってことだよ、父さん。それだけの価値が、あれにはあるんだ」
モニタの向こうで強く訴えるユウナの姿に、ウナトはわずかながら瞠目した。
ウズミにとってカガリがそうであるようにウナトにとってユウナはただ一人自分の跡を
継ぐ事の出来る唯一の存在だ。できるかぎりの教育はしてきたつもりである。
それでも甘い所がかなりあり、自分が老いた後のことを考えると気が気ではない。
だからこそサハクの不興を買うのも承知で見え透いたウズミの策にも乗ってみせた。
実際、今も一方的かつ身勝手な話をしてきている。交渉というものはもう少し上手くやる
ものだ。これでは単に親子の情にすがっているに過ぎない。
ただそれでも。このように強い視線を自分に向けてきた事は彼の記憶になかった。
これまで自分の言葉に従順であったユウナがと軽い驚きすら感じている。と同時に、その
ペテン師とやらに対して興味が涌いてくるのを感じた。
(まぁ、よいか)
いつのまにか、そういう気分になっていた。少しは息子のわがままに付き合ってやっても
罰は当たるまい、と。彼自身は今オーブを離れるわけにはいかないがその点は信頼のおける
人員を派遣すればいいだけの話である。
後はそちらに任せれば、ユウナ本人に勝手に動かれるよりはるかに安心だ。
もし何かあった時の隠蔽も楽に済む。ペテンの類であるなら尚更だ。
ひとまず好きにさせ、御目付けを派遣してフォローできる範囲にあるうちに事を収める。
それならば必要以上に傷を負うことなく、またユウナにもいい薬になるだろう。
(……まさか事実である可能性はあるまいが)
常識的にそう結論付け、モニタの向こうで熱弁を振るうユウナに了承の意を伝えるべく
ウナトはわずかに身を乗り出した。
(5/7)
ユウナはモルゲンレーテの株式を0.5%所有している。
それはセイラン家が有する株式のほんの一部でありユウナが当たり前の権利として所有
しているものだ。仮に捨て値で売り払ったとしても一財産にはなる。
「馬鹿者が。お前は私も巻き込むつもりか?
それに手を付ければ他の家にばれないはずがなかろう」
「そう、そのとおり。もしこれがすべてペテンなら、僕はオーブ中の笑い者だ。
カガリとの婚約も白紙に戻るだろうね」
わずかに気色ばんだウナトだが、静かにそう告げるユウナにこれまでのどこか道化じみた
感触と違う雰囲気を感じた。黙って目で先を促す。
「でも、このまま黙って本社の連中に渡したら、結局僕はオーブ中の笑い者だよ。
今ならセイランが全てを手に入れることが出来る。
僕らが親で、アスハや他の連中は僕たちが手の中にエースを持っていることにさえ気付いて
ない。今なら親の総取りも可能なんだ。
どうしても信じられないというなら仕方無い。たしかに突拍子もない話だからね。
ただ、僕は私財を全て売り払って、セイランの名を使い倒してでもやるつもりだ。
それだけは知っておいてほしい」
「お前は私を脅迫する気か?」
「それだけこれに賭けてるってことだよ、父さん。それだけの価値が、あれにはあるんだ」
モニタの向こうで強く訴えるユウナの姿に、ウナトはわずかながら瞠目した。
ウズミにとってカガリがそうであるようにウナトにとってユウナはただ一人自分の跡を
継ぐ事の出来る唯一の存在だ。できるかぎりの教育はしてきたつもりである。
それでも甘い所がかなりあり、自分が老いた後のことを考えると気が気ではない。
だからこそサハクの不興を買うのも承知で見え透いたウズミの策にも乗ってみせた。
実際、今も一方的かつ身勝手な話をしてきている。交渉というものはもう少し上手くやる
ものだ。これでは単に親子の情にすがっているに過ぎない。
ただそれでも。このように強い視線を自分に向けてきた事は彼の記憶になかった。
これまで自分の言葉に従順であったユウナがと軽い驚きすら感じている。と同時に、その
ペテン師とやらに対して興味が涌いてくるのを感じた。
(まぁ、よいか)
いつのまにか、そういう気分になっていた。少しは息子のわがままに付き合ってやっても
罰は当たるまい、と。彼自身は今オーブを離れるわけにはいかないがその点は信頼のおける
人員を派遣すればいいだけの話である。
後はそちらに任せれば、ユウナ本人に勝手に動かれるよりはるかに安心だ。
もし何かあった時の隠蔽も楽に済む。ペテンの類であるなら尚更だ。
ひとまず好きにさせ、御目付けを派遣してフォローできる範囲にあるうちに事を収める。
それならば必要以上に傷を負うことなく、またユウナにもいい薬になるだろう。
(まぁ、まさか事実である可能性はあるまいが)
常識的にそう結論付け、モニタの向こうで熱弁を振るうユウナに了承の意を伝えるべく
ウナトはわずかに身を乗り出した。
(6/7)
シロー・アマダの怪我は右肩脱臼・右腕・右大腿部骨折と右半身に集中しており文句無く
重傷と診断された。覚醒後のシロー本人の話と転移前(この頃には既にそういう共通理解が
なされていた)の状況、そしてアイナの傷がひどく軽かったことからアイナを庇ったために
負った傷と推測されている。
担当医師の話では折れた右足の骨が神経を圧迫しておりもうあと数時間放置していた場合、
不随か下手をすれば壊死で右足切断という可能性もあったというが、病院に搬送される途中
受けた救急医療士の的確な処置により最悪の事態は免れた。
これにはアイナのみならず、ユウナも心から安堵したものだ。
ユウナも男であるから美人の悲しむ顔はあまり見たくないというのもある。
しかしそれ以上に大事なのは彼が前線で生き残れるほどのベテランMSパイロットであると
いう事実だ。
アイナ自身もテストパイロットだが一人よりは二人の方がいいに決まっている。
またより現実的な問題もある。
MSの解析によりセイラン家は何枚もの切り札を得たが、これらのデータがすぐに恩恵を
もたらしてくれるかといえばそうではない。
こちらの世界に無い技術の再現は容易ではなかった。
調査につぐ調査、解析、それらを元にしての試行錯誤。
未知、『未だ知らぬ技術』とはそういうことでもある。
ウナトの支援や伝手によりオーブ本国やスカンジナビアからコーディネイターを中心とした
優れた科学者や技術者が集まっているが、目途が立つのは早くとも来年になるとユウナは
考えていた。
ただ、比較的すぐに利用できるものもある。
ソフト面……すなわちMSのオペレーティングシステムと教育型コンピュータに記録された
戦闘データ。そして実際にあちらの世界の前線で戦い抜いたベテランパイロットが持つ経験
である。
ウナトの協力を取り付けてからまた時間を掛けて二人の話を詳細に聞きだしたユウナは今
この時点において彼らに勝る対MS戦闘の経験を持つパイロットは存在しないと確信していた。
それだけで、彼ら二人の価値は計り知れない。
この時期、MSはザフトが一方的に握っている新兵器である。連合側も戦場で鹵獲したMSを
元に対MS戦闘を構築中であるが、『MS対MS』という状況が発生する戦場はそう数がある話では
ないのだ。なのに、彼の手には今それを既に持つ者が二人も存在する。
ある意味、存在自体がカンニングペーパーに等しい。
一方でユウナは彼ら二人が平穏な生活を望んでいる事も承知していた。
父ウナトが聞けば甘いと言うだろうがユウナとしては二人に再び戦えと言いたくなかった。
ユウナが彼ら二人の話を聞くにつけ感じるのはその強靭な意志の力だ。
特にシローの行為には、その是非はさて置くとしても衝撃を受けること大であった。
ユウナは自分を現実的な人間だと思っている。今でこそ夢のような経験をしているが、
いかに夢のように思えても目の前の事実をしっかりと受けいれるのが真に『現実的』であると
信じてきた。これまでのユウナにとって信ずるべきものとは主に目に見えるものだったのだが、
しかしシローとアイナを見ていてその考えが揺らぐのを感じていた。
信ずるべきものを持つ人間はこうも美しく、あるいは愚直になれるのか。
これが愛があれば何でも出来る、などと子供じみた事を少しでも匂わせる人間であれば
ユウナの良心が痛むこともない。
だが何かを為すには何かを犠牲にしなくてはならない、という事も彼らは弁え、また実行
しているのだ。
アイナは実の兄を。シローは戦場を共にした部下たちの信頼を、なげうってまで貫こうと
したその重さ。
(7/7)
その彼らに、再び戦場に立てとはユウナは言いたくなかった。
これが正しく偽善であることは承知していたが、だからこそ最後の一線として彼らを直接
戦火に晒す真似はしたくなかったのだ。
だから、ウナトがその話を持ってきた時、渡りに船と考えて飛びついてしまった。
それが孕む可能性に気付く事なく。
「ところで、今日はどんな御用ですか?」
当初は1日に一度かならず見舞いに来ていたユウナも最近は4、5日に一度、それも20分も
居ればいい方だ。
ユウナは多忙なのである。
これは現在、ユウナがウナトの肝煎りでスカンジナビア支社のオブザーバーに就任して
いるためだった。
名目上はオブザーバーだが実質上はウナトの名代といっていい。
無論優秀なブレーンや補佐が野球チームが結成できるほど付いてはいるのだが重要な案件の
過半数はユウナに委ねられている。
このためユウナは大学には休学届を出し、今はそちらに専念していた。
「まだ先なんですが、お二人にお話がありましてね。仕事のことで」
「仕事……ですか」
「ええ。リハビリが終了し次第、宇宙に上がってもらうことになりそうです。
今日はそれをお伝えしたくて」
シローの雰囲気がわずかに硬くなる。宇宙はアイナと初めて出会った場所であると同時に
家族を失った苦い思い出のある地でもあった。そっとその肩に手を置くアイナ。
大丈夫だ、とでもいうふうに彼はアイナに僅かに頷きかけた。
「セイランさん。ここまでお世話になった貴方にこんな事をいうのは我侭が過ぎると分かって
います。ですがおれたちは」
「待った。勘違いしないでください。前線に出てくれ、なんていう頼みじゃないんですよ」
「しかし、宇宙はコロニー……いやプラントと軍が戦争中でしょう?」
「いえ、あなた方ご夫妻にはヘリオポリス、ああうちの国のコロニーなんですが、そこに
上がって欲しいんですよ」
「それはまた、何故?」
実はですね、とユウナは心持ち声を潜めた。
「そのコロニーで、連合とオーブ……うちじゃなく他の家ですけどね。
それが秘密裡にMSを開発してるんですが、OSとオートバランサーの提供をうちが、という
ことになりまして。
ほら、戴いたデータは陸戦が中心でしょう?
それで御二人には宇宙用のOS調整のために上がってもらいたいわけですよ。ご安心下さい。
ヘリオポリスは中立コロニーです。あなた方が戦争に行くようなことにはなりません」
ユウナは渋る二人を安心させるために最大限の笑顔でそう断言し、更に好条件を並べて
説得していった。
後日、ユウナはこの決断を激しく悔やむことになるがこの時はまだ知る由もない。
乙です。
ぜひ頑張って最後まで続けてください!
>>19,20
乙です
うちのPCから見ると
他は中央揃えなのに戦史のリンクが左寄りになってます
>>20さん、乙です
ついでに
>>21さんと同じく、自分も戦史の分が左寄りになってます
>>20さんまとめ乙です。
5分後から第三話投下します。
第二話「悔恨と未来と」(1/5)
笑いさざめく家族や友人たち。
突如として苦悶の表情を浮かべる彼ら。
助けようと伸ばした手は届かない。
焦燥にかられる彼に、誰かが言い放った。
『シロー・アマダ。お前は何者だ』
その言葉になんと答えることもできないまま――
シロー・アマダは夜中にふと目が醒めた。
夢を見ていた気がするが中身はよく覚えていない。
ただ、最後の言葉だけははっきりと覚えていた。
「おれは何者か、か」
それはかつて故郷から救い出されたときの言葉だったか。
士官学校で教官に言われた言葉だったような気もする。
(そんなに昔の話じゃないはずなんだがな……)
自分はまったく何者なのだろう。暗い室内で、シローは天井を眺めて思う。
故郷を奪われ、軍人となった。
友軍を見捨てられず、無謀とも思える出撃を行って相打ちに持ち込んだ。
敵パイロットと出会い、アイナを知った。
隊長となり、部下の信を得た。
アイナと偶然再会し、彼女を愛し、軍に疑われた。
愛するもののために全てをなげうち――
そして、どういうわけか異世界に来て、また戦争に関わっている。
感傷と切り捨てるには、この世界のありようは元居た世界に似すぎていた。
アースノイドとスペースノイド。
ナチュラルとコーディネイター。
地に住むものと宇宙に住むもの。
旧人類と人類の革新を名乗る者。
遺伝子操作や生得能力という差こそあれ、その本質は結局のところ無理解だ。
そう。シロー自身がそれを目の当たりにしてきたように。
やるせない思いにシローは眉をしかめた。
ふと、柔らかく温かな重みが左腕にかかる。ついで視界の横からのびた青白い手が目を
ふさいだ。
「アイナ?」
「シロー……」
「起きてたのか」
「はい、少し前から。シローの横顔を見ていました」
そうか、と頷くシロー。
「怖い目をしていました」
そうか。ただ頷く彼の耳に、
「シロー、貴方がお嫌なのでしたら、……逃げませんか?」
囁きが落とし込まれ、シローは口を噤んだ。
逃げる。
その選択肢が浮かんでいなかったといえば嘘になる。
むしろ頭の片隅に常に浮かびながら、今まで考えないようにしてきた。
(2/5)
「私は、シロー。あなたさえ居てくれたら、それでいいのです」
耳に落とし込まれるアイナの声は狂おしいまでの熱があった。
彼女の愛を目眩がするほどに感じる。
「ああ。おれもだよ、アイナ」
目をふさぐアイナの手に自分の手を重ねる。重ねた手が互いが確かにここにいることを教え、
こうしているとこの宇宙に彼と彼女の二人だけのようだ。
が、シローはしかし、と彼女の言葉を否定した。
「ここで逃げるのは、おれは違うと思う」
「ですが、シロー」
「聞いてくれアイナ。おれたちは一緒に生きるために互いにすべてを捨てた。
何の因果かこんな世界に居て二人とも無事だがそれだけは間違いない。
そんなおれが今また戦争に関わってるのは、ひょっとしたら罰なのかもしれないと思うこと
がある」
「そんな、いったい誰が私たちに罰を与えられるというのです」
「……おれ自身だ」
アイナが息を飲む気配がした。それは最近彼がたびたび思うことだった。
自虐癖は無いつもりだ。ただ、シロー・アマダという不器用な男は、ただ自分がつらいから
という理由で再び人とのつながりをなげうつ事を赦せなかったのだった。
目をふさぐアイナの手を取り顔を向ける。真摯だが思いつめたような硬い表情の彼女は、
そうしていてさえ美しいと思う。
「これはおれの我侭だ。アイナまで付き合う必要はない」
こう言えば、この女性がどう答えるか分かった上で告げる。果たして彼女は慈しむように
微笑んだ。
「いいえ、私はあなたについていきます。どこまでも、きっと」
「すまない」
互いにわずかに顔を前に寄せ、唇をふれあわせようとしたその時、無粋な電子音が部屋に
鳴り響いて二人は反射的にびくりと体を離した。
いつのまにか、セットした起床時間になっていたようだ。手を伸ばしてアラームを止めると
アイナは身を起こした。シーツがはらりと落ちて薄暗い部屋に真白い裸の背が浮かぶ。
「先にシャワーを使います。シローはいつもどおりですか?」
「ああ」
同じく上体を起こしながらシローが答えた。リハビリが順調に終了し日常生活なら支障
なくなった今も毎朝の日課としてのロードワークは欠かせない。
素肌の上にローブを羽織ってシャワーへ向かうアイナを見送り、シローはベッドから降りて
カーテンを引き開けた。途端に部屋を、赤道直下の国特有の強い日差しが満たす。
今、彼ら二人はヘリオポリスへ向かう準備のためオーブ本国の地を踏んでいた。
(3/5)
「ウナト。いったい何を考えている」
「お言葉の意味、少々わかりかねますが」
ウズミ・ナラ・アスハの非公式な会談の要請を受けて赴いたウナト・エマ・セイランは彼の
性急ともいえる詰問をやんわりといなした。室内には彼ら二人だけ、という状況から非常に
内々の会見であると分かる。
ここはオーブ本島ヤラファスの郊外に建てられたアスハの私邸の一つ。
眼下にオーブの美しい海をおさめ、海外からの公人を迎えるのにも使用される瀟洒かつ
セキュリティレベルの高い邸宅で、このような密談にはもってこいの場所といえた。
ご丁寧にもカーテンまで締め切っている。
狙撃避けという明目だが、ウナトには部屋の空気を重くするための演出にすら見えた。
「とぼけるでない。
スカンジナビア支社で何が行われているか、分からぬとでも思っているのか?」
それに、と言葉を継ぐ。
「ユウナ・ロマが大学を休学してスカンジナビア支社に入り浸っていると聞く。
セイラン家が単独で資金を注入しているとの話も来ておる」
「あれには将来セイラン家の事業を背負ってもらわなければなりませんからな。
今から経験させておいて遅いということは――」
「私が問いたいのはそういうことではない」
淡々と事情説明をはじめたところで遮られ、ウナトは眼鏡の奥の目をわずかに細めた。
「それでは、どういうことですかな」
アスハとセイランでは確かに家格も権能も違うが、それでもふつう有力氏族の当主同士が
相手の言う事を一方的に遮りはしない。それが温厚で知られるウズミとなればなおさらだ。
声を荒らげられたわけではないがままあることではない。
そのためウナトとしては珍しく内心のおどろきを率直に表してみせたのだが、ウズミは
すぐには答えず閉ざされたカーテンの向こうを眺めやるかのような仕草を取った。
しばらく、部屋に沈黙が下りる。
普段温厚にみせてその実主張するべき場では相手を糾弾することを厭わぬさま、特にその
獅子吼でもってときに論敵を粉砕するパフォーマンスからオーブの獅子と呼ばれた名政治家は
たっぷりと間を取ってからおもむろに核心に触れた。
「……スカンジナビア支社がMSの開発をしていると、そう聞いた。
それもいずこかから技術の提供を受けているようだと」
「MSの開発についてはサハクがヘリオポリスで行うことを黙認されたのでは?」
「黙認したわけではない」
「結局見逃しているなら同じことではないのですかな?」
語気を強めて否定したウズミをばっさりと切り捨てる裏でウナトはかつての友に老いの影を
感じざるを得なかった。
ウナトの切り返しを受けてオーブ代表首長は軽くため息を吐く。
彼としては珍しく、微苦笑にも似たものを口の端に浮かべてウナトを眺めやった。
「この場には私とお前の二人しか居らん。かつてのように話せぬものかな、我が友」
「時が経ちすぎたのだよウズミ。
お前をしてわが子の将来のため、つまらん策を弄するほどにはな」
思わぬタイミングで放たれた痛烈な皮肉にわずかに瞑目するウズミ。
その間隙をついてウナトは今回の目的を果たすことにした。
(4/5)
「連合との軍事同盟について、いまだ考えは変わらんか?」
「くどい。オーブは理念を徹す、これは先の会議でも確認した話だ」
先ほどのわずかに打ち解けた様子とは打って変わって、いつもどおりウズミはにべもない。
「武装中立の一国平和主義が通る時代ではないぞ。
連合を、いや大西洋連邦を敵に回して、ではどこと貿易する?
ユーラシア? 遠すぎる。スカンジナビアも同じだな。
東アジアか? 奴らの領土的野心が伝統的にどこに向いているか忘れたわけでもあるまい。
赤道連合は貧乏国の集まりだ、市場たりえん。
大洋州連合? ザフトの膝下にある上に連合に大義名分を与えてしまう。論外だ。
……まさかプラントとか言うまいな?」
矢継ぎ早に言葉を放つウナト。これに対しウズミも波涛を叩き付けられてなお揺るがぬ
巌のような響きで応じた。
「理念なくしては国は成り立たん。オーブはこれまでもそうしてきた。
これからも永遠にそうであるべきだ」
「他国はそんな事は知らんよ。考えもするまい」
(理念を抱いて国民に餓えよというか? それは政治ではなく為政者の我侭なのだぞ!)
そう言葉を叩きつけることができたら。そうウナトは一瞬夢想する。
だが彼は論破しに来たわけではない。口に出しては相手の矛盾を速やかについた。
「そうであるならば、何故サハクのやることを黙認する?
ばれぬ秘密などない。もし暴露されれば、中立という理念も地に落ちよう」
「む……国を割るわけにもいくまい」
痛いところをつかれ、苦しげになるウズミ。世界が戦争状態に突入したことでサハクの
権能が強化され少なくともヘリオポリスとアメノミハシラで行われていることにアスハも
黙認せざるを得ないという現状が、彼にとっては認めがたいが事実であることを如実に表していた。
その様子を眺めて、やはり、とウナトは思う。
(やはり、ウズミは平時の能臣か)
平時においてはカリスマ性を有し能く国を治める才人である。
しかし刻一刻と情勢の変化する今この時においてはウズミの長所の一つであるその強い
信念は頑迷な執念にたやすく転化し、国を誤らせる一因にもなりうるのだ。
情勢を見るという一点のみにおいてははるかに若年であるサハク家のロンド姉弟に劣り、
また今まさにそれが問題なのである。ウズミ、引いてはオーブ行政府の大部分が認識できては
いないが、オーブの立場は現在国際社会において非常に微妙な位置にあった。
開戦以降連合は押しに押され反撃の糸口を掴もうと躍起であり、またザフトはザフトで
その少ない戦力が仇となって連合を押し切ることができず、結果として今は双方ともに
オーブに構っている余裕が無いだけなのだ。
その間隙にあって、オーブは平和を謳歌しているにすぎない。
世界がエイプリルフールクライシスの影響で混乱にある中、オーブ一国が平和を謳歌できた
のはこの国の地勢と特性が原因だった。
まず地熱発電等がエネルギー事業のメインだったためそれほどの痛手を受けなかった。
次に島嶼国家であるため国土が狭く、また無資源国であったため当座の戦略的価値なしと
してプラントの攻略目標から外れた。
これはカーペンタリアと大洋州連合の近くであったため、制圧の必要があればすぐに対処
できるという判断と、連合とぶつかる前にわざわざ小国に兵力を割く余裕が無かったという
純粋に物理的な理由に基づいている。プラントに余分に振る袖など無い。
オーブは技術立国を国の基本とし高い技術力を有する国家だったがプラントから見れば
所詮は地上のナチュラルが主権を握る国家に過ぎずその工業力の程度を過小評価されて結局
実利なしと判断されたという面もあった。
(5/5)
連合に関しては、自国内の復興に精一杯でそもそもオーブにかまける暇も人も居なかった。
上記のような様々な理由からオーブは連合・ザフトの双方から丁重に無視されたのである。
こうやって無視された形のオーブであったが、他方ではエネルギーに苦しむ他国の工業を
後目に必要な消費財や物資を生産してそれを輸出し大きな利益を上げた。この数ヶ月で、その
シェアは飛躍的に伸びたとする報告もあるほどだ。
そのおかげで世界が疲弊しつつある今の状況でもオーブは戦火も知らず、戦禍に遭わずに
ここまでやってきている。
だが、この先この状態が長く続くことはありえない。今の状況は控えめに見ても歪すぎる。
出る杭は打たれるのが運命でありそれが外交というものだ。
この点に関してオーブは些か以上にやりすぎた、そうウナトは感じていた。
こういった不満を逸らすには他国の復興援助が常道なのだが、しかし現在のオーブには
それもできない。
あらゆる地域に戦火が飛び火している現状ではオーブの理念の一柱である『他国の争いに
介入せず』に抵触するためだった。
それでも辛うじて赤道連合に対しては援助も可能だったが、理念を拡大解釈したアスハ派の
反対で大幅に規模を縮小して実行され外交を預かる関係筋をして『焼け石に水』と称される
結果に終わっていた。
こうして、様々な国内外の様々な要因が絡み、オーブという国家に対する悪感情が好むと
好まざるとに関わらず澱のように積もっていくという悪循環が発生していた。
誰もがどうにかしなければ、と考えながら動けないでいる。
ウナトはこれを機にセイラン家の力を伸長させ、事態を好転させようとしていた。
「ならば、セイラン家のみが掣肘される道理はない。そうではないか?」
「……平時に乱を起こす気か、ウナト」
唸るウズミ。
「これはおかしなことを言うなウズミ。
ヘリオポリスでサハクがやっているのは技術提携による共同開発だ。戦力の供与ではない。
どこが理念に反する?
だいいちこれが理念に反すると言うのなら、国防軍は主要兵器を手放さなくてはならなく
なるではないか」
オーブ国防軍の主力は連合から輸入した兵器である。
「それとこれとは話が違う!」
「違わんさ。まぁ、いい。それと何かを勘違いしておるようだから訂正するが
スカンジナビアで進めていたMS開発に連合は関わっておらん。サハクもな」
「何だと!?」
ウナトはこれだけは、と持ち込んだブリーフケースを足元から取り上げた。
「さてウズミ。未来について話そうではないかね? 互いの愛する子供たちのためにな」
その日、私邸には遅くまで灯りが付いていた。
この数日後、モルゲンレーテ本社にてオーブ行政府の肝煎りで正式にMS開発が開始。
スタッフ中核にはスカンジナビア支社から多くの人員が合流。
ヘリオポリスからのフィードバックも得てオーブ独自のMS開発を加速させていく事になる。
間違えて第三話を投下するところだった私です。気付いてよかったorz
今夜中に第四話を投下する予定です。
……第四話「まで」ですたorz
ダメダアタマシンデルorz
ガンバ!
GJ!ガンバです。
取り合えず修行の一貫として短編投下します。
第一席 君は“種”のために死ねるか!? 1/2
──この古田佐介……この先をどういきる!?C.E.なる世界に迷いこんだ以上……やはり目指すは天下にその名を轟かす数寄者……そう、宗匠・千宗易殿の様に!
鉄の船の上で佐介様はぬべえっとした顔で海を眺めていました。信長様の作られた大安宅船を思い出していたのでありましょうか。
「この海のモシェーッとした景色はたまらんのう……大金時殿が起き上がって来るではないか!」
おやおや、モシェーッでありましたか。千には数寄の事は少しばかり難しゅうございます。
「おい、雑兵!ムルタ殿が呼んどるぞ!」
佐介様を呼んだのは荒木道糞様にございます。
佐介様と荒木様は何故か日ノ本からC.E.と言う不思議な世界に行ってしまわれたのでございます。
神ならぬ千には理由など分かりませぬが、お二人の物欲ゆえといった所にございましょうか。
因みに荒木様は死病を患っておりましたが、此方の世界のお医者様にかかるとあっと言う間に治られたそうにございます。
「ムルタ殿が……?」
佐介様が眉を潜め目を見開いたような顔で振り向きますと、荒木様は鬼のような髭をしごきつつ、
「あのオーブっちゅう国に軍使としていけっちゅうこっちゃ」
と答えます。お日様が荒木様の剃りあげた頭に光ると、佐介様はキシェーッという顔で笑いを堪えます。
荒木道糞ではなくて荒木禿照るだ……などとお思いなのでしょうか。
「然らば荒木殿、参りましょうぞ」
荒木様は怪訝な顔をして佐介様と共にムルタ様の元に向かわれたのでありました。
「ムルタ殿?御用とは……」
佐介様と荒木様は改まった表情でムルタ様に拝謁します。
お二人はムルタ様をじっと見ていますが、そこはそれ。数寄者のお二人でありますれば服装を値踏みしているのでございましょう。
──あの色の薄汚いこと。あれならば柴田殿の方がマシでございましょうな。やはり此方の者はわび数寄を理解しておりませぬぞ──
とは佐介様。荒木様といえば
──名物の一つも持っとらんとは……器が知れとる──
と目線で話し始めます。
34 :
へうげたね:2007/02/17(土) 22:31:57 ID:???
第一席 君は“種”のために死ねるか!? 2/2
「お二人さんにはオーブに降伏勧告に行って貰えるとうれしいんだけど?」
ムルタ様がそう口を開きますと、お二人は武人らしくキリッと締まった顔になりまする。しかし、お二人は顔付きとは裏腹に、
「それがし、未だ此方の事に疎く、お役目は果たせぬかと」
「わしは病み上がりゆえ……ゴホンゴホン」 と拒否をなされます。お二人の心を代弁いたしますと
──俺は武よりも数寄の道に突っ走りたいのだが──
──命あってのモノダネじゃ。誰が好き好んで火中の栗を拾いにいくかい──
でありましょう。
ムルタ様はお二人の様子を見ると、プハァ―っと溜め息をお吐きになられ、
「駄目駄目と言うわけですか。まあ、別に良いですけど。褒美に用意したコレも無駄ですね。捨てちゃいましょうか」
と、3つの箱から何やら茶器を取り出されます。
「そ、それは……!」
「天下の3肩衝……」
お二人は身を乗り出し茶器に見入ります。ムルタ様はそれを満足そうに見て、
「おや?ご存知でしたか?『新田』『初花』『楢柴』……お二人が成功したら差し上げようと思ったんですけど、ゴミですね。」
と退屈そうにおっしゃいます。
「それがし、日頃の恩を果たさねばならぬと思っておりました。是非、やりましょう」
──わび数寄に目覚めた俺だが……名物を前にすると器気におされてしまうわ──
「わしも働かんと体が鈍って仕方ないわい」──この荒木道糞にこそ三肩衝はふさわしいわい──
お二人は物欲に負けてしまいまする。げに恐ろしきは物欲といった所にございましょうか。
とにもかくにも、佐介様と荒木様は、オーブに調略に向かう事になられたという事にございます。
今宵は此れ迄にいたしとうございます。
取り合えず短編になると思う。マイナーな作品とのクロスですまん。
へうげたねふいた。何故千のしてんなんだwww
>>35 兄さんあんた芸風広すぎ。……GRの再開をして欲しいよ。俺はあのノリが好きなんだ
38 :
通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 00:28:32 ID:kUoNCogI
元ネタがワカランがとりあえずGJ!
今から第三話投下します。
第三話「集う戦士たち」(1/5)
砂塵が渡る荒野を3体の巨人が走っていた。
陽光が特徴的な頭部に当たって煌めく。ザフトの量産型MS、ジンだ。
先行する一機はシンプルな機構の機関砲を、やや下がって後方を走る二機はそれぞれに
大型のバズーカを手にしている。3機とも、本来ジンは持たないはずの盾を装備していた。
「ジュリ、マユラ! 遅れてるよ!」
アサギ・コードウェルは僚機にそう声を掛けた。
陣形はアサギ機を先頭に置きジュリ機・マユラ機で後方と側面をフォローするワントップ。
『わかってるって』
『前方から高熱源体接近! 数は10!』
「右に回避!」
三機は右へステップを踏み方向転換を掛けるが。
『ダメ! ついてくる!』
「二人は盾を構えて回避行動!」
指示を出したアサギは独り更に先行、高熱源体、すなわちミサイルに対し弾幕を張りつつ
前進を選択した。1発、2発と叩き落されるミサイル。
(やれる!)
そうアサギが判断した瞬間彼女らの機体は頭部や武装を吹き飛ばされた。
最高速で移動していたためひとたまりも無い。もんどりうって転倒する。
「きゃああっ!」
そこへ残りのミサイルが降り注ぎ、三機は木っ端微塵に爆砕した。
『コードウェル小隊の全機撃墜を確認。ミッション失敗。野戦パターンBを終了します。
ババ小隊は用意してください』
「……生きてるー?」
『死んでます』
『鞭打ちになりそう……』
「ジュリ、あんたちゃんとシートベルトした?」
着弾や転倒によるショックさえ再現するシミュレータは一部に受けが悪かった。
むろん軽減されているのだが慰めになるものでもない。
先程のように全力移動時に転倒すればシートベルトの痕が痣になるほどの衝撃を受けるのだ。
『うちの開発陣ってどう考えても遊びすぎだよね。
単なるシミュレータにどれだけ手間かけてるんだか』
『このシミュレータ、コクピットのテストも兼ねてるって話だから……』
『コードウェル組、話は後にしてまず出ろ。後がつっかえてんだぞ!』
シートにもたれてお喋りを開始した3人に係員が声を掛けた。はーい、と声だけはそろえて
返事をし、完全密閉型のシミュレータから身体を引き剥がすようにして外へ出るとオーブ空軍の
階級章を付けた3人組の男が既に待っている。
お疲れ、仇は取ってやるぞ、などといったいつものやり取りの後シミュレータに入り訓練を開始する。
訓練を行うパイロットは無論彼らだけではない。
テストパイロットいわく『無駄に凝った』シミュレーションの様子をリアルタイムで映す
モニターの前ではこれも試製であるMS用パイロットスーツに身を包んだ20人ほどが結果を
真剣な表情で見ながら、戦闘時の回避機動やシミュレーションパターンの攻略方法について
時に静かに時に喧喧諤諤の議論を行うなどしていた。
それぞれMSパイロットとなるべくオーブ国防軍陸海空宇宙四軍から選抜されたテスト
パイロットたちである。アサギたち3人の所属は陸軍だが、彼女らは元々モルゲンレーテに
テストパイロットとして出向していた流れでの参加なので彼らとは経緯が異なる。
モルゲンレーテ本社地下汎用シミュレーションルームは今、異様な熱気に満ちあふれていた。
(2/5)
訓練を終えたアサギたちは休憩を取っていた。
「で、結局私たちを撃破したのはなんだったわけ?」
「長距離ミサイルによる飽和攻撃と遠距離からのリニアガン・タンクによる狙撃」
「うわー何それMSの意味無いじゃない」
「結局支援の無いMSって的ってことなのかなあ……じゃ、これどうしよ?」
「どこ?」
「リストの37ページ。今回の失敗原因」
「装備選択の失敗、かな。あと回避機動に再考の余地ありってあたり?」
シミュレータによる訓練とそれに並行して行われる問題箇所の洗い出しが彼女らの仕事だ。
分厚いチェックリストへの記入内容は即座に開発部のエリカ・シモンズ主任に回され、量子
コンピュータによる検討に掛けられた後不明な点や不審な点があればテストパイロットたちも
交えて会議が持たれる。
彼女らが居るのはテストパイロットのための控え室兼休憩室だ。シミュレータを終えた
テストパイロットたちの休憩や仮眠のために割り当てられた場所で、機密保持のため社員と
言えどもこことシミュレーションルームに出入りすることは原則禁じられていた。部屋の
一角には壁で仕切りを作って簡易仮眠室が設けられている。
チェックシートの内容と訓練記録がダイレクトに自分たちが乗る機体に反映されるとあって
内容の記入について喧々諤々の議論が交わされ、時にはチーム内ですら意見の相違から
つかみ合いになる事も珍しくない。
その中では、彼女らは割合平穏にやっている方だと自負している。
コピペミスったorz これが本当の(2/5)っすorz 投下終わったら吊って来よう……
アサギらにしてみればこの二月ほどでまるで世界が変わったように思える。
当初モルゲンレーテ本社内ではこの計画について黒い噂が流れていた。
本社開発の中核スタッフの一角にセイラン家の嫡子が就く事が発表されたためだ。
現五大氏族に次ぐ家柄とはいえ嫡子本人は未だ学生の身であり、また一度はウズミ本人が
連合からの提携の話を蹴ったMSの開発計画である。セイラン家を快く思わない者でなくとも
オーブ国民なら誰もが胡散臭く思うのは当然といえる。
しかしながらその噂はスカンジナビアから帰国したユウナの『成果』によって覆った。
ナチュラルによってMSが動かせるOS。
パイロットの戦闘経験を学習し平均化して最適な動作を割り出しフィードバックして機能が
進化していくという触れ込みこそ眉唾とされたが、現在ではそれも頷かざるを得なくなって
いる。総訓練時間が30時間を越えた辺りから当初に比べ確かに動作が滑らかになったという
意見がちらほらと出始めていた。
何より関係者のほとんどが懐疑的な気持ちで迎えたデモンストレーションにおいて、OSを
インストールして調整を施された鹵獲ジンがシロー・アマダというれっきとしたナチュラルの
手により軽快に機動してみせた事が決め手であった。
この時、つまりCE70年10月時点においてザフト以外でMSを運用している例は公式には無く、
ナチュラルにMSを扱う事はできないという常識が覆った歴史的瞬間でもあったからオーブ軍
関係者の驚きはいかばかりか想像に難くない。
事態は連合首長国という政治体制ならではの速度で動いた。結果、ユウナを始めとする
セイラン家は計画の重要なポストを誰はばかることなく占めることに成功する。
機体の試作はこれまでどおりヘリオポリスで行われる事、並行してソフトウェアの開発と
パイロットの育成をオーブ本国で行う事、そして試作機完成後はデータを元に量産化が
行われる事が確認され、MS開発計画は多少の問題や各派閥の思惑を孕みつつも次のステップへと
進んでいた。
訓練を終えたアサギたちは休憩を取っていた。
「で、結局私たちを撃破したのはなんだったわけ?」
「長距離ミサイルによる飽和攻撃と遠距離からのリニアガン・タンクによる狙撃」
「うわー何それMSの意味無いじゃない」
「結局支援の無いMSって的ってことなのかなあ……じゃ、これどうしよ?」
「どこ?」
「リストの37ページ。今回の失敗原因」
「装備選択の失敗、かな。あと回避機動に再考の余地ありってあたり?」
シミュレータによる訓練とそれに並行して行われる問題箇所の洗い出しが彼女らの仕事だ。
分厚いチェックリストへの記入内容は即座に開発部のエリカ・シモンズ主任に回され、量子
コンピュータによる検討に掛けられた後不明な点や不審な点があればテストパイロットたちも
交えて会議が持たれる。
彼女らが居るのはテストパイロットのための控え室兼休憩室だ。シミュレータを終えた
テストパイロットたちの休憩や仮眠のために割り当てられた場所で、機密保持のため社員と
言えどもこことシミュレーションルームに出入りすることは原則禁じられていた。部屋の
一角には壁で仕切りを作って簡易仮眠室が設けられている。
チェックシートの内容と訓練記録がダイレクトに自分たちが乗る機体に反映されるとあって
内容の記入について喧々諤々の議論が交わされ、時にはチーム内ですら意見の相違から
つかみ合いになる事も珍しくない。
その中では、彼女らは割合平穏にやっている方だと自負している。
(3/5)
「すまない! 馬場三尉は居るか?」
控え室のドアが開き、オーブ陸軍の常装をラフに着こなした東洋系の男が放った声に
アサギたちの近くでリストを手に同僚と話していた男が手を挙げた。
「ここです、アマダ教官」
「シモンズ主任が上申の内容について話が聞きたいと言っている。今大丈夫か?」
「はっ、問題ありません」
軍人らしいきびきびとした応答の後、チェックリストを置いて控え室を出る馬場の後を
見送ったシロー・アマダが自分のリストを手に席に着く間部屋の喧騒が幾分静かになったのは
故の無い事ではない。
オーブ国防陸軍シロー・アマダ三尉。ただしMS戦技・戦術教官としての任に就くにあたり
待遇は一尉に準じている。同格である馬場が上官への礼を取るのはこのためだ。
彼は、オーブ本国の人間にとって何から何まで謎の男であった。
この場に居るのはオーブ国防軍の生え抜きである。多くはサハク派に属するがアサギや
馬場らのようにアスハ派の軍人も少なくない。その誰もが、彼の事を知らなかった。
公表されている経歴では世界樹戦役により故郷を失い難民となり、その後傭兵として各地を
転戦した後スカンジナビアにて事故で重傷を負い知己であるユウナ・ロマ・セイランの庇護を
受けて妻とともにオーブに亡命したとされている。
不審に思った一部軍関係者が調べたところ、スカンジナビア支社近くの病院に長期入院と
リハビリを受けており全くの虚偽ではないと判明してはいる。残念ながらそれ以上の調査は
不可能と判断され打ち切られた。
エイプリルフールクライシスによる世界の混乱がこれ以上の調査を拒んだのだ。
調査が不可能とはいえ、謎が尽きるわけでもない。
シロー・アマダは卓越したとは言い難いものの経験に裏打ちされた確かなMS操作技術と
戦闘技術、そして未だ誰も構築しえないはずの対MS戦術を知り尽くしていた。
その知識が陸戦に限定されるとはいえ、異質さがぬぐえるものではない。
実際に話してみれば気さくな人物でありまた細君を非常に大切にする愛妻家であり、教官と
しても熱心であり、二心がある物とは到底思えない。
妙な陰の無いことがかえってその奇妙さを際立たせ、テストパイロットたちは時折奇妙な
居心地の悪さを感じる毎日を過ごしていた。
(4/5)
数日ぶりにセイランの本邸に帰宅したユウナ・ロマ・セイランはスカンジナビア支社から
帰郷という名目で訪れた社員の報告に、少々落胆の色を隠せないでいた。
「要するにM系列技術の再現に関しては年単位の期間が必要ってことですか」
Mとはミノフスキー物理学の隠語であり、また同時に核融合炉のことも指す。
「平たく言えばそうなります。粒子の検出の目途はついたという報告もありますが」
「なかなか上手くはいかないか……分かりました。ご苦労さまです。
これで向こうのメンバーに御土産でも買ってあげてください」
財布から適当に紙幣を抜いて社員の手に押し込む。
「よろしいのですか?」
「車代ですよ車代。じゃ、またよろしく」
「分かりました。ありがたく戴きます」
互いに気心の知れた相手だけにそこに遠慮は無い。上司と部下とはいえ、スカンジナビア
ではともに限られた人員の中で動いた仲でもあった。
以前のユウナであれば、ただの部下を玄関まで送り出して見せるような事はしなかった
はずだ。支社長を始めとして優秀なブレーンに短期間ながら接した彼は意識して人を使う
ことを少しずつ学びつつあった。
しかしいかに中身が成長しようと彼も人の子。
若いとはいえ疲労が溜まっていれば注意力が散漫になっても仕方無い。
部下を見送り、今度こそ寝ようと身を翻しかけたところで横合いから突き飛ばされ玄関先で
つんのめる羽目になった。
「と、と……うわぁっ!?」
堪えきれずに結局転ぶ。したたかに膝を打って顔をしかめた彼の視界に白いパンツスーツの
足が飛び込んできた。
「な、何が……あ?」
「あ? じゃない!」
理不尽に怒鳴りつける声で、ユウナは相手の正体にようやく気付いた。
痛みをこらえて立ち上がるとなんとか笑いを取り繕う。
「や、やあ久しぶり、カガリ。相変わらず元気そうで何よりだよ」
ほぼ半年ぶりに会う幼馴染にして婚約者であるはずのカガリ・ユラ・アスハは不機嫌な顔を
まったく隠そうともせず、腕組みをしてユウナを睨んでいた。
「それにしても乱暴だね。久しぶりに会った幼馴染を突き飛ばすかいふつう?」
「少し勢い余っただけじゃないか、いつまでも文句を言うな!」
ユウナが年下の幼馴染のいつもの理不尽さに苦笑する。そんな彼の笑みを見て笑われたと
思ったか、カガリは殊更胸をそらしてユウナを睨んだ。
「私のように鍛えてないからそうなるんだ。なんだったらトレーニングに付き合うか?」
「遠慮しておくよ。
コーディネイター相手に腕相撲して勝つ君に付き合ってたら僕なんか死んじゃうね、きっと」
「人を化け物か何かのように言うな!」
「いや事実だし」
カガリと言葉のキャッチボールをしながら、ユウナは内心かるい郷愁にかられていた。
思えばこのようなやり取りをしたのはいつ以来だったろうか。
立場の違いと留学、そして秘密裡に決められた婚約。
それらを心の理由にして遠ざかっていた時間がいつのまにかかなり長くなっていた事に
気付き、ユウナは顔には出さずに再び苦笑した。
「それで、今日は何の御用ですかな姫様は」
不毛な言い争いに終止符を打つために多少おどけて言う。
カガリは先ほどまでの雰囲気を一変させてやけに深刻な表情をした。
「今日はユウナに聞きたいことがあって来た」
「何かな。お役に立てればいいけど」
「お前じゃないと分からないことだ」
ユウナは何故か急に嫌な予感を覚えた。
何か、非常に既視感を感じる展開であるにも関わらず思い出せない。
彼が何とか思い出そうと記憶を探り終える前に、カガリは致命的な言葉を口にしていた。
「オーブが連合と手を組んでMSを開発してるっていうのは本当か知りたいんだ。
ユウナ、力を貸してくれ!」
カガリの真剣きわまりない表情を見ながら、ようやくユウナは思い出していた。
彼女が深刻か、又は真剣な表情で頼みごとをして来る時、そういえば碌な目にあった試しが
なかったっけ、と。
ミスしまくり……第四話は1時間くらい置いて投下したいと思いますorz
GJ!!
早く続きが読みたい!!!!!!
新人がどんどん投下しづらくくなってますねこのスレ
第四話、12分割とかなっちゃいました……
今から投下。
第四話「ユウナとカガリ(前)」(1/6)
「さてさてどうしたもんだか」
本邸の自室にてユウナ・ロマ・セイランはそう独りごちた。
睡眠を取るためにベッドに横になったものの妙に目が冴えて眠れないのだ。
あれから、下手をすれば今すぐにでもモルゲンレーテに殴り込みかねない勢いのカガリを
あの手この手でなだめすかし(最も効いたのはウズミの名前だった)とにかくユウナの伝手で
関係各所に当たってみるから暫く待つように、と納得させたまではよかったのだが
「結果が出るまで私は家に帰らない」
と言い張るカガリに閉口し、結局メイド長を呼んで色々と丸投げして自室に逃げ込んだ。
色々と成長したつもりだったんだけどなあ。
ユウナとしてはため息が出る思いだ。
カガリに押し切られるようではこの先が思いやられる、と鬱になりかける彼だった。
まぁでも、と思い直す。暴走を事前に食い止められたのは我ながらよくやったと思う。
何しろ無限の行動力と活火山のようなエネルギーとコーディネイターを稀に上回る身体的
ポテンシャルとどこに飛ぶか予測のつかない思考を持つ彼女のことだ。思い立ったが吉日と
ばかりにヘリオポリスへのシャトルに乗り込みかねない。
また困ったことに、オーブのあちこちにはそうやって突発的に起こるカガリの『お忍び』を
好意から見逃してしまうアスハ派が居るのだから始末に負えなかった。
首長家の人間が度々自国の法規に違反して咎め立てを受けない悪癖はオーブが地上最後の
封建国家と言われる所以でもある。
そういった『他国から見たオーブ』について彼は国外留学中存分に思い知らされていた。
「こまったもんだよなあ。
国民に愛される、っていうのはああいうのを言うのかもしれないけど」
だが今回の訪問に限り、カガリの選択はそれほど悪くないと思う。
今回の件で彼女が頼みとするレドニル・キサカを頼らずにユウナの元へ来たという事は、
キサカの軍人という立場を理解してのものと彼は考えた。
フォローする側に頭が回るようになれば無茶な行為は減ってくるはずだ。
あふ、と欠伸が漏れる。ようやくにして忍び寄ってきてくれた睡魔に身をゆだね、ユウナは
寝息を立て始めた。
(2/6)
さて一方のカガリである。
実は、彼女はユウナの考えとは違い深い思惑があって彼のところに来たのではなかった。
そもそも彼女の計画としてはキサカに協力を頼み、準備が出来次第ヘリオポリスへ向かう
予定だったのだ。
これまでも似たような家出を何度か行い、成功しているので今回も、と意気込んだのだが
彼女の思惑に反して事はそう上手く運ばなかったのだ。
理由は主に二つある。
まずMS開発計画が開始された関係で軍の警戒レベルが引き上げられていた事だ。オーブの
行政府には諜報部に類する物が無く、非常時にはサハクの有する軍憲兵が機密漏洩等に当たる
事に(慣例として)されていた。このため人や物の行き来にサハク家のチェックが厳しく入る
事になり、常態化してきたアスハに対する『好意的なお目こぼし』が抑制されたのだ。
次にMSの配備へ向けて国防三軍の間で戦力の再配置やMS配備予定数についてなど様々な
折衝が開始されていた事だ。
カガリが頼みとし、自身もカガリ・ユラ・アスハの護衛官と自認するレドニル・キサカも
陸軍の佐官である以上は軍内部の動きに無関係ではいられない。特に彼はアスハ派にとって
貴重な佐官以上の軍人であるためその重要性はいや増すばかりだった。結果として、下手な
行動が取れなくなったのだ。
幾度かの間の悪さも手伝い、カガリは彼に協力を要請する機会に恵まれず時間を浪費する
こととなった。
元よりあまり忍耐する事に慣れていないカガリである。
しかし社交界嫌いから他に頼りになる伝手もコネもあまり持っていない。目的を考えれば
他の身内には頼れない。
結局、アスハの姫ではあるが意識して権力を使う事を善しとしない彼女には、何故か大学を
休学し帰国したユウナに頼る他に道が無いように思えた、というだけの話だった。
ユウナに告げた『お前じゃないと分からないこと』というのも何か確証があっての事では
なく、単にモルゲンレーテ本社重役を父に持つユウナなら、という予測に基づいたに過ぎない。
つまりは勘だったのだ。それで正解を引く彼女の強運もここに極まれり、とも言えるのだが
ともかく以上のような事を翌日、朝食の席にて何でもないような事のように述べるカガリを
前に、ユウナは頭を抱えたのだった。
(3/6)
この日、テストパイロットたちは通常任務であるシミュレータを全て中止し、ある会議室へ
集合していた。服装もパイロットスーツではなく常装が中心である。
その多くは尉官であったが稀に下士官も混じっており、一見すればまとまりの無い集団と
いえたがこれには理由があった。
一般に戦闘機パイロットは尉官以上とされる。
海軍と空軍から選抜されたテストパイロットも同様に三尉以上なのだが、陸軍において
選抜された者には下士官が含まれていた。これは陸軍がMSパイロットとして戦車兵を選んだ
事から生じた齟齬だ。これを解消するため彼らは(シミュレーションの成績次第とはされる
ものの)特例として短期速成士官教育を受け士官へ昇進する事が決定している。
もっとも彼らはまだ軍人であると一目で分かるからまだよかった。
会議室の最前列に固まるようにして着席した他の出席者たちから離れて最後列に座る一団
から見れば。
量のある前髪をまとめて横に流したかなり特徴的な髪型でスーツを着こなした青年。そして
室内だというのに野球帽を目深に被ったラフな格好の少女。それに一目でSPと分かる数人の
男性と来れば怪しさも極致といっていい。彼らが入室の際サハク派の高級士官が遠まわしに
詮索無用と釘を刺した事もあって声高に疑問の声を上げる者は出なかったが、人間気になる
ものはどうしたって気になるものだ。故にわずかにざわめきがあったが、壇上の人物が入室し
『講義』を始めてからはしわぶき一つ上がらなくなった。
「……貴官らが受けた戦術シミュレーションの結果を見れば分かるように、陸上戦における
MSは機動力を持った砲戦力兼機甲戦力でありそれ以上でもそれ以下でもない。これは周知の
事実と思う。MSは万能の兵器ではない。
従来の兵器であっても火力の集中により撃破は十分に可能だ」
シロー・アマダの合図により会議室のスクリーンが映像をいくつか映し出す。
ジン3機による拠点制圧を目的としたそのシミュレーションにおいてリニアガン・タンク
中隊がテストパイロットたちをことごとく撃破する様子が流れた。野戦パターンBと呼ばれる
そのシミュレーションパターンは先日アサギらが挑んで失敗した映像である。
「故に、陸戦においては他の兵科との密な連携が重要だ。それによってMSの利点を最大限に
活用することができる」
それはある意味奇妙な『講義』であった。
誰よりも、それを受ける側であるパイロットたちが強く感じていることだ。
「ではMSの利点とは何か?
まず一つは装備の交換により柔軟な戦術が可能という点だ。従来のあらゆる兵器に優越する
のがこの装備交換による万能性といえる。
これに関しては既にザフトのジンという前例がそれを証明しているな。
二つ目は高い不整地踏破能力を有する事。
地形に左右されにくい、というのは陸戦兵器としてはアドバンテージになりうる。
二足歩行により不整地踏破性が高いのはもちろん、スラスターを利用しての長距離跳躍に
より一時的に地上掃射も可能となる。
もちろんそういう目立つ行動を取れば的になる可能性も高いから実際には危険度の高い機動
となるが、緊急回避能力に関しては従来兵器と比較にならない。
……そろそろ時間だな。
昼食後はこの時間の内容に対する質問を受け付けた後、陸戦においてMSを運用する上での
注意点や陥りやすい事例について講義する。では解散」
そう言葉を締めくくり、シローはひとまず午前の講義を終わらせた。
「総員起立! シロー・アマダ教官に礼!」
(4/6)
実に奇妙な講義であった。彼、シロー・アマダはザフトですら体系的に構築できているとは
言いがたい、対MS戦闘すら見越した戦術概論を講義しているのである。
起立し敬礼する一同に対しシローが答礼して会議室を出た後、 ジュリがぽつりと漏らした
言葉こそが彼らの胸中を代弁していた。
「アマダ教官っていったい何者?」
その一言は未だ沈黙の中にあった会議室に意外と大きく響いてしまい、会議室中の視線が
彼女へと集中する。慌てて視線を伏せた彼女だが意外なところから助けはあった。
「現在ナチュラルで確認されている中で最高の経験を持つMSパイロット。
それが彼、シロー・アマダ三尉です」
いつの間にかスーツの青年が立ち上がっていた。強い笑みを浮かべている。
「ユウナ様?」
サハク派の軍人がそう答えることでようやく彼の名前が一同に周知された。
あれがユウナ・ロマ・セイランか。
そういう呟きが各所で洩れる。スカンジナビアにてOSの開発に成功しシロー・アマダを
伴い帰国した、一部ではMS開発計画の立役者と呼ばれている青年。
実のところ開発に関する経緯が全く公表されない(開発者の名前すら無い)ため様々な噂が
流れており『国外留学は建前で、実際にはOSの開発に赴いていた』というやたらと持ち上げた
内容の物から『実は拾った』『実は盗んだ』『実は異世界からやって来た人間から貰った』
というペーパーバック紛いな内容のものまで諸説紛々あるのだった。
何か言いたげではあるが立場上問い詰められない雰囲気を察したのか、青年は殊更大仰に
肩をすくめる。
最近、彼は好んでこの手の芝居っ気じみたパフォーマンスを取るようになってきていた。
「色々聞きたい事があるのは理解してますよ? 謎ですからね、彼。
MSの戦闘経験、戦闘技術がどこで培われたか……まぁそれは軍機ということでお願いします。
謎は謎のままがカッコイイじゃないですか」
あっさりと告げたあまりといえばあまりな内容に座が一瞬で白けた。
何だそりゃと口走り慌てて口を塞ぐ者まで現れ、そうでない者にも如実に表情に表す者も
居たが一部の聡い人間はその言葉の意味するところを考えて顔色を変えた。
ユウナは冗談じみた声色ではあるものの『彼の正体は軍機である』と言ったのだ。
軍機である以上、追求は軍人にとってご法度である。後刻気付いた者も含め、サハク派の
軍人はユウナの意外な器用さに驚かされた。芝居じみた態度の中に警告を潜める。
いつの間に彼の坊ちゃんはそんな腹芸が出来るようになったのか、と。
「ま、そんなどうでもいい事はさておき。彼から余す所なく吸収するようお願いしますよ。
そうそう、一ついいニュースをお教えしましょう」
指を一本立てる、という芝居じみた動作の彼に対し今度は何だと言いたげな視線で応えた
一同だったが、次の言葉を受けて居住まいを正した。
「ヘリオポリスで試作一号機から三号機までが完成したそうです。残念ながらこちらに入る
のはデータだけですがね。明日からのシミュレータではそちらを使用できますよ。
これをもって開発計画は新たなステージ――つまり量産化へ向けた大きな一歩を踏む事に
なります」
言葉の内容を噛み締める一同に、ユウナは打って変わって引き締めた表情で告げた。
「貴方がたが、護国の第一の剣となります。期待していますよ」
「……一同、ユウナ・ロマ・セイラン氏へ、敬礼ッ!」
(5/6)
「いやあ、ああいうのも悪くないね」
現場の熱さというのはスカンジナビアで味わっていたが軍人というのもまた違った熱さを
持つ人間だ。ユウナはその事を少し面白く感じていた。
「機嫌が良さそうだな、ユウナ」
背後から聞こえたカガリの声に爆発寸前の爆弾のような危険さを感じて内心びくりとする
自分をやや恨めしく感じる。ユウナは振り返らずに答えた。
「と、いうか。よく爆発しなかったねえ、カガリ」
「……お前、私を馬鹿にしてるだろう」
「いやいや、まさか。意外だっただけだよ」
「ところで彼がお前の言う、その、彼なのか?」
「そうだよ?」
一見すると意味不明な会話だがそれは致し方ない。『シロー・アマダは異世界から来た人間
である』など聞かれた日には正気を疑われても仕方ないのだから。
朝食の席にてその簡素すぎる行動論理を露呈したカガリに対し、ユウナはついに腹を括って
真実を告げた。
これは一度認識を叩き直さなければならない。そういう義務感にも似た思いからだった。
彼としては、将来彼女と結婚して生涯を彼女のサポートに回る事に特に後悔も気後れも
無い。だが今のままでは、支える端から厄介ごとを引きこみそうな嫌な予感しかしないのだ。
しかしまともに話してもどこに話が飛ぶか分からない。
そこでユウナはもっとも奇抜な手を取った。
つまり――ありのままの事実を、カガリに話したのである。
結果として、あまりにも突拍子の無い内容だったにも関わらず上手くいった。
真剣な表情で『ユウナの目は嘘を言っていない』とさえ言ってくれたのは少し嬉しかった
が、同時にそれはどうだよカガリ、と思ったのも事実ではあった。
ひょっとして国民に愛されてるのは生暖かい視線で見られてるからじゃないだろうか。
そんな愚にも付かない考えにユウナが浸っているとは全く気付いてない様子でカガリが次に
要求してきたのは自分の目でシロー・アマダを確かめる、という一事だった。
ユウナにとってある意味分の悪い賭けではあった。実のところSPが付いている理由は身辺
警護ではなくカガリが暴発する前に抑えるためだったのだ。
彼の予想に反して講義中カガリは全く模範的な聴講生をやっておりその出番は無かったが。
思ったより平静な声が出せて安堵したユウナはカガリの応えも待たずに続ける。
「それで、次は何が見たい?
といっても他に面白いものはないけどね。
シミュレーションは今日はやってないしコンピュータルームは許可取るのが面倒だから
ダメだし。ああその前に昼食かな? 僕は仕事があるから社内で取ることになるけど」
カガリの応答が無いことに不審を感じて言葉を切り、後ろを振り向く。
「……は?」
間抜けな声が出るのを抑えられなかった。彼が見たのは、廊下を遁走するカガリの背だ。
角を曲がってあっという間に見えなくなってからようやく我に返る。
「に、逃げた!?」
「なんで君たちまで驚いてるんだ! 追いかけ……いや、待て、行くな!」
「しかし!」
「どうせ重要区画は兵士が居るんだ、入れやしない。連絡回した方が早い!
ああもう、ホントに厄介な事しかしないなバカカガリ!」
これでウズミ様に、カガリにばらした事を知られるかな。
どさくさに紛れて不敬な事を口走りつつ、ユウナの頭の隅をちらりとそんな思考がかすめた。
(6/6)
「……地形の問題なのですが、飛行能力を持たせる方向で調整しようかと」
エリカ・シモンズの言葉にアイナは軽く目を見張った。
「可能なのですか?」
「ええ。そちらの世界のグフ飛行試験型でしたか?
それと同じく推力で無理矢理飛ばす事になります。
ですから飛行できたとしても短時間ですね」
「では、島嶼部間の移動を前提に?」
「ええ。幸い、連合から得たデータに追加武装とバッテリーパックを一体化させる構想がありまして。
追加装備として設計する予定です」
ユウナはMS開発計画への参加に先駆け、MS設計の全体を統括するエリカにアイナとシローの
『素性』を伝えていた。最初は当然信じなかった彼女だが、彼女の知る技術史とは異なった
進化を遂げたMSそのものを見、自分で検証して確かめたからには信じざるを得なかったようだ。
最初の頑なさが嘘のように今はアイナから主にあちらの世界でのMS知識を吸収しようとして
いた。アイナはなんと割り切りが早い人なのだろう、と感じている。
「元々アストレイの基本コンセプトは発泡金属の使用による大幅な軽量化と推力の大きな
スラスターを設ける事で高い機動力と運動性を持たせて攻撃を受けないようにする、という
物なのですけど……お二人のお話を聞く限り、余程の腕の持ち主でないかぎりそれは無理
そうですから」
エリカの苦笑の度合いが深くなるのへ、アイナは淡々と思うところを告げる。
「いえ、一撃離脱戦術を使うかぎりはそれも間違いではありません。ですがそれは戦域が
広くまた遮蔽物がある……例えば山岳や森林のような状況下での運用が前提となります。
拠点防衛や戦場が限られる国土防衛用MSならばまず考える事は生存性や耐久性の向上という
のが妥当ではないかと考えただけです」
言葉を受けてエリカが軽く笑った。苦笑ではなく何かおかしなものを笑う笑みだ。
「設計段階では本気だったのですけどね。試作機はそれをコンセプトとして完成していますし。
でも量産機には可能な限りお二人の意見を反映します。戴いたデータ、決して無駄にはしません。
それにしても本当に残念です、もうすぐ宇宙へ行ってしまわれるんですよね……
確かに、宇宙用にOSの調整は必須なのですけど」
シローとアイナの二人が宇宙へ上がるのはOSの連合への提供の際その操作特性の説明の
ためでもあった。シミュレーションを重ねているとはいえ、それにはシロー以外に適任が
居ないという理由がある。
「そう言っていただけると嬉しいです、エリカさん」
心底残念そうなエリカへ、アイナは柔らかく微笑む。やはりこの人は良い人だと思えた
のだ。エリカだけでなく、この世界に来てから触れた者たちは皆それぞれに良い人だと思う。
それぞれに野心や思惑があるのは当然の話だ。自分たちとてそうなのだから。ユウナに
してもエリカにしても、純粋に良心のみから二人に接しているわけではなく自分たちの
持つものが有用だからこそだろう。だが、その思惑の範疇の中でも彼らは自分たちの事を
真剣に考えてくれている。それだけで涙が出そうなくらいに嬉しい。
かつて彼女の親代わりだったノリス・パッカードという男は『人の生は何を為したかで
決まる』と言って死地に赴いた。
アイナにとってシローが唯一無二の相手であることに変わりはない。
だがそれと友人たちに手を貸す事は相反するものではないと思う。
自分自身に何が為せるのか。それを考えた末にアイナが取った行動がエリカ・シモンズ
への協力であった。 名目上はオブザーバとして扱われている。
彼女は今、この良き友人たちの役に立ちたいと真剣に思っていた。
(それでいいでしょうか。ノリス、シロー……)
……なので第四話と第五話に分割、と。第五話は明日の朝に投下予定です。
>>48 気にせず臆せず投下してほしいと思います。切に。
遅くなりましたが
>>35◆YqJJJk6AAw氏GJ!
>>35 元ネタ知らないから全然分からないよ。やめてくれよう……
ここは新人さんスレだからいいじゃないか。
新人さんだから専門スレなんて怖くて立てられないよ。
クロス元を詳しく知らないから自分の知っている
作品を書けっていうのも、なんつーか、どうよ?
短編で終わるらしいし、むしろクロス元に興味を持って
調べて、話に追いつこうとするかスルーするべきだと
俺は考え取るんだがなあ、……俺釣られた?
自分がSSで最近興味持ったので
08:視聴済み
イシュタム:注文済み
とりあえず08は見て損なかった。
新人が練習の為に文章を見てもらうスレだと思うんだが…
クロスだからって投下しちゃいけない事は無いはず
元ネタ知らんでも楽しめる俺は勝ち組
つうかね、新人には思えないんだぜ?此所は新人の為のスレだろうに。
クロスでも08は該当スレがあるし、GRとか
>>35なんてネタそのものだろうか。
まあその言い分ももっともだし、たしかにこなれた作品ばかり
で新人さんが入りにくい雰囲気になってるけど、ちゃんとアド
バイスも前スレからしてきたろ。
元々行き場のないSS投下所の側面もあったわけだし、多めに
見るべきじゃないか。本来のスレでは投下しづらくなってこっ
ちに来たんだし、そうギスギスせずに。まったり以降よ
ああ、申し訳ない。スレがゴタゴタするのは俺としても不本意だから、去る事にする。
まとめサイトの管理人氏、cross GRとウンメイノカケラの削除をお願いします。へうげたねは登録しないで構いません。
LRCE氏、申し訳ないが俺はイシュタムは本スレに投下する事にするよ。
私としても不和を呼ぶのは本意ではありません。
同じく去りたいと思います。
再々投下先は、ちと考慮します。本スレに投下してまた荒れてはどうにも……orz
……両氏ともお疲れ様です。
>>63 該当スレがあったりするのにこちらに投下していたって理由、察してあげようよ……。
>>63 連載期間を考えたら、新人の範疇だろ。そんなんだったら戦史もダメになるじゃねえか。
ネタだから駄目ってなに勝手な理屈を押しつけてんだよ。
あんたみたいなこと言ってたら誰も来なくなっちゃうよ。
ここのスレは色んな意味で職人に対して懐が深いと思っていたんだが
どうやらそうじゃなかった様で。
まあまあ。このまま罵り合い宇宙しても益はなかろうて。
まだまだ言いたい事はあるだろうけど、そこは呑み込んでもらって。
またーり待ちましょうや。
あれれっ?
「好きな内容」でSS、ネタを投下していいスレだよね?
新人大歓迎、ベテランさんもいらっしゃいで…
いくらなんでもへうげものはまずいだろう。あれとクロスするのはかなり無理がある。
>>73のような自治厨気取りの厨房がいるから
職人さんのネタをマターリ楽しみたい住人と「罵りあい宇宙」になるわけで
>>66 LRCEさんもやめるの?ここでやれば良いのに。
自分の前に投下されたSSと自分のSSの投下はどのくらい時間あけたらいいんでしょうか?
どうやら二人は添い遂げる事は出来ないようだ。
誰かへうげものとやらを説明してみせろ!
週刊モーニング
>>82 するってえと今の職人密度だと投下のタイミングが難しいな
そっか。じゃあ自分に都合のいいタイミングで、これから投下しますと言って投下すれば良いと思うよ
85 :
78:2007/02/18(日) 13:56:13 ID:???
>>82-84 回答ありがとうございます。事前に予告すればOKですね。
今、へうげものを読んできた。
種にへうげものはマジヤバイwww
オーブ連合首長国<ホワイト・ヒル>代表首長府兼総司令部――代表府執務室――
私が山のように積み上げられた、通常政務の執務を取っていると、
専用デスクのコンソールから直接の呼び出し音が鳴った。
私の直属の首席秘書官や次席秘書を通さずに直接連絡を入れてくる人間は、そう多くはない。
「――はい」
私が、そう応じると、聞き慣れた声がスピーカーが流れてくる。
『――代表、忙しいところをすまぬな――』
それは、お互いさまでしょうに……
で、何かあったのだろうか?
『――ミナ……?どうしたの?何か急変が?」
私がそう聞くと、
『――この『オーバル・オフィス』宛に直通のホットラインが入って来たのだ』
「――それは<クサナギW>のサイからなの――?」
――何か戦況に急変があったのか?
サイがいるならば、滅多な事はないと思うんだけど……
『――いや、『オーブ連合総議会』のカトウ議長からだ。
向こうは、代表に直接会って話したいと言って来ているのだが――』
私は一瞬考え込むが、直ぐに結論を出す。
「……わかったわ。それと至急、貴女とキサカには、
オブサーバーとしてここへ来てもらえるかしら――?」
『――承知した。3分でそちらに向かう』
――3分後――
「――ほう、『プロフェッサー・カトウ』がな……
『連合総議会』の議長がいったい何の用なのだ?」
執務室に現れたキサカは開口一番に、それについてミナに尋ねて来た。
「……一番の可能性は、『ラクス軍』侵攻の水際防御を失敗した、我々代表府への非難だろう――」
ミナの方は手に顎に載せて、眉を寄せながら、自分の見解をキサカに答えている。
「――うむ、有り得そう事だな……」
そうしたミナとキサカの会話を聞きながら、私は、
「……とりあえず会って話さなければ、何にもならないわね。
――ミナ、私のデスクに議長への通信を繋げて」
と指示を出す。ミナも頷き、
「了解した――繋げるぞ」
その言葉と同時に、壮年で白髪の男がデスクのモニター映る。
『――『連合総議会』議長カトウです』
その眼鏡を掛けた男は、かつてヘリオポリスの大学で教鞭を取り、多くの教え子を育てたと言うのだ。
そして、――あのサイも昔は、この男の下で師事していたという。
「――お久しぶりです議長――」
もう一つ、彼は非公式ではあるが、かつて時代を風靡した『モビルスーツ』と呼ばれる人型機動兵器のオーブでの国産開発と
オペレーション・システムの開発にも従事したというのだ。
だが今や、その『モビルスーツ』はコロニー建設や土木作業などの、
現場作業場の一部に使われる程度の存在になっている。
人型の兵器が戦うなどと言う非効率的で無意味な事は、もはや、夢のような時代の話として成りつつあるのだ。
自分が、かつて乗っていた淡い真紅配色の『モビルスーツ』も今頃は、
場末の博物館の片隅で埃を被って展示されている事であろう――
『――仲介を通さずに、代表執務室へと直接連絡を入れた非礼をお許し願いたい、アスハ代表――』
「いいえ、カトウ連合総議会議長。勿論、こちらは、いつでも歓迎を致しますわ……」
と互いに儀礼的な挨拶を交わす。
そして、挨拶が終了し、カトウ議長は開口一番に、
『では、本題に入らせて頂くが……近頃の戦時体制下における代表府の政策に、
僭越ながら『民間』と『連合総議会』を代表して、一言意見を申し上げたいと思い、通信を差し上げたしだいなのです――』
と切り込んできた。来たな、と私も内心で身構えてゆく。
心の中で精神武装を終えると、
「――勿論です。この国家危急の非常事態の折に代表府では、どのような些細な事でも、
『連合総議会』内の意見を拝聴する事をやぶさかではありません」
と無難にも、礼儀を適度に包み込みながら、相手を牽制するかのように、
受け答えた。……我ながら役者になってきたと思う。
『――『オーブ連合首長国』とその国民の安全を第一に考慮する立場の者として、
いかなる事があろうと『ラクス・クライン』の『オーブ』領宙域への侵略行為は看過できぬことであります……』
「……」
流石の古狸も『ラクス』の行動については、『侵略者』として認定してくれている。
どうやら『連合総議会』とこちらとの思案とは、基本的に異ならないようだ。
逆に『ラクス』を『解放者』だと思われるとこちらの方が困るのだから。
『――そして、私は直ちに反撃の体制を整えて、被害を最小限に食い止めた、
代表府の作戦指揮能力を評価しております』
「――恐縮です、カトウ議長」
と、此処までは互いを、ある程度持ち上げながらの会話術の交渉である。
外交手法の基礎的なやり取り。自分が、もはや星の数程にこなして来た事だ。
そして相手は、
『……ですが、緒戦からことごとく撃ち破られた、我が『連合総議会』や愛すべき『オーブ国民』等が政府を信頼し、
預けた税金等による莫大な巨費と資産を投じて建造された<ヘリオポリスU>等の戦闘要塞型コロニー……』
と、含みと響きを持たすかのように、間を空けて、
『そして、機動艦隊等、これらが『オーブ領宙域』防衛に際して有効に機能しなかったことを
『連合総議会』及び国内の『民間加盟』勢力等の国内諸勢力は大いに失望しているのだ……』
と、カトウ議長は本格的に本題へと切り込んで来たのだった……
だが、内心で来たか、と思うのだが、この程度の事でオタオタする程の初々しい時期は、
私の中では遥か昔に過ぎ去っている。
「――現在、戦況は好転しつつあります。そのご心配は、もはやご無用です……」
そのように、全く顔色を変えず答える自分。
カトウ議長の方はそれに対して、
『――もちろん我々は、前線で戦う『オーブ軍』に対しては、全幅の信頼をおいて、
その戦いぶりを眺めています――』
と、話題を詰問からやや方向に逸らす。切り込むのやめて、やや引く姿勢を見せる。
「……安心いたしました』
と私は言うが……
これは、互いに、心にも無い事を言っているのだろうか……?とも思う。
『――それに私達、『オーブ連合首長国』と国民一同は、これまで代表府の行動を全く疑う事はなかったし、
また疑う事があってはならぬと堅く信じているのです……』
「――この戦争におけるオーブ全軍の軍事行動の全責任は、私にあります……」
と、カトウ議長の粉飾した美麗に対して、
私は、自分にオーブ全ての責任を取る立場である事を明確にさせる。
『――無論の事です。『連合総議会』は、代表とその政府を信じることによって成り立っているのですぞ。
そう、アスハ代表にはその期待に何卒、応えていただきたいものですな?』
「……ありがとうございます、カトウ議長。貴方のアドバイスを肝に銘じておきます――」
『信じておりますぞ。――では』
と、ここで通信は終了した。狸と狐の化かしあいは、ここで一応の終結をする。
私は大きく息を吐くと、信頼する友人である、側近達に向かって、
「……ミナ、キサカ」
「――うむ」
「はっ」
話は横で全て聞いていた二人は、もはや、どのような処置を取る事を、
予め予想している事であろう。無論、私の個人の考えもあるが、彼らの意見も拝聴したい。
「……此処に来て、カトウ議長のこの強気の姿勢は……これは、一体なんだと思う?」
と私は彼等に質問をしてみる。私の中にも幾つかの候補はあるのだけど……
最初にキサカが発言をする。
「――順当に言えば、この『ラクス軍』侵攻の国内混乱に乗じて、
『連合総議会』の権限強化を狙っているものかと――」
私が頷くと、次はミナが、
「――うむ。その通りだろう。付け加えるなら、『連合総議会』のみならず、
それに組する諸勢力もこの機に乗じて、一気に政府内の権限と発言権の拡大を狙っているとみるべきだろう」
キサカとミナはそれぞれの見解を述べてくれた。
私は、その意見を聞き、彼らの意見と自分がほぼ同等の結論に辿り着いている事を内心で、
ホッとするのだった。
「……で、こちらが打つべき手は?」
と改めて、意見を聞いてみる。
最初にミナが発言する。
「――『連合総議会』カトウ議長……あの男に敵に回られては今回のラクスとの戦争遂行は困難となろう……」
それには、私も心から納得する。
そして、次のキサカの意見は、
「……あの男は、オーブ国内の排水溝の数まで知り尽くしているのみならず……
氏族、豪富層、中級階層、国内の各勢力集団との強力なコネと調整能力をもっています」
ここでキサカは話を一区切りして、大きく溜息を吐くと、
「……正直言って、現段階で打てる手はそう多くはありませんな……」
ミナの方も眉を寄せながら、キサカの話を続けるように発言する。
「――今現在で、打てる手と言えば、この程度しかあるまい……
……一つ目は、オーブ政庁内で課している『連合総議会』の拠出金の減額だ――」
これは、政府内の通常予算枠の中でも3割を占めるほどの重要な国の財源でもある。
これを減額する事は、年度予算枠を縮め、今回のような国外緊急対策にも影響が出ることだろう。
ひいては政庁に於ける『連合総議会』の発言権の拡大と、代表府の影響力が縮小する事を意味するのだ。
「……二つ目は、代表府が現在のところ、全権を握っている、
『連合総議会』に対する『強制解散権』を放棄すること――」
ミナが唱えた事は、代表府が政治的絶対基盤を確保している権利を放棄する事である。
この『強制解散権』を握っている事によって連合総議会の議員達は表向きは代表府に従順な姿勢を示しているのだ。
これを放棄する事は、代表府の政治的基盤が緩くなる恐れがあるのだ。
キサカは舌打ちを堪えるような表情で、
「……この10年余りで、推し進めてきた『オーブ統合政策』の事実上の後退となりますな」
「……ええ」
私も同意する。
ミナの方も顔を歪めながら、深刻そうに、
「『連合総議会』……元はと言えば、オーブ統合後の国内の意見を汲み上げる為にと、
我々が創り上げた制度だが、此処に来てから、急速に思わぬ牙を我々に剥きつつあるのかもしれんな……」
そのミナの意見に対して頷きながら私は、
「それ以外は――?」
と更に彼等の意見を汲み取ろうとする。
「やはり――事の推移を見ながらその都度、慎重に手を打ってゆくしかないだろうな。
……事は今や流動的な事態になりつつある――」
やはり、明確な方針の対応策を講じるには、情報が足りない。
臨機応変で、悪い意味では行き当たりばったりと言う事になるのだろう。
だが、現時点で即座に効用がある対応策は、無いようだ。
私は一つ頷くと、
「――ええ、それでゆきましょう」
そう決断をする。これが私の役目なのだ。
ミナは私に向かって頷き、賛同の意思を示してくれる。そして、
「――『連合総議会』カトウ議長も現在のオーブの危機的状況を理解していないわけでもあるまい。
……一度、連合総議会の真意を探ってみる必要があるぞ?」
と、私に確認了承を取ってくる。彼女はどうやら『連合総議会』を探ってく来るようだ。
私は一応の内諾を与えながらも、
「――長年、積み上げてきた改革の成果を無駄にするわけにはいかないわ。
なんとか妥協点をみつけないとね……」
と些か希望的な観測述べ、余り無茶はしないようにという柔らかな牽制をミナにする。
そして、キサカに方は、
「『プロフェッサー・カトウ』……あの男は筋金入りの政治家です。
迂闊な言質を与えるような真似は、できませぬぞ代表――」
と、私に忠言をしてくれた。
私は、頷く。彼に対しては些かも言質を取られてはならないのだ。
「『オーブ全軍』の統帥権をこちらが握っている限り、あくまでも国内政治の主導権は、
こちら側にあることを努々お忘れならなきよう……」
「ええ。勿論――」
キサカは私に向かって丁寧に一礼をしてくれる。
「安易な妥協は、こちらの命取りになるからな……」
ミナの方もキサカの意見に同意しながら、私に気遣ってくれている。
私は二人に思いやりを微笑ましく思いながら、
「まぁ、心配はしないで。彼だってオーブで暮らす同胞よ。一応はね。
――カトウ議長には、与えた権限の数倍はする働きをして頂かないとね――」
と、彼等に答えるのだった。
>>続く
96 :
通常の名無しさんの3倍:2007/02/18(日) 16:55:38 ID:JQ8Xu57S
GJ!
政治家の腹芸ほどパンピーが想像し辛いものはないな、GJだ
このプロフェッサーカトウって、もしや種時代のヘリポリでキラにOS組ませてたヤツ?
GJ!これもまた種死に欠けている(あるいは描こうとして失敗している)ものだな。
>>97 > もう一つ、彼は非公式ではあるが、かつて時代を風靡した『モビルスーツ』と呼ばれる人型機動兵器のオーブでの国産開発と
> オペレーション・システムの開発にも従事したというのだ。
多分そうでしょう。
モビルスーツを否定したガンダムはありなのか……別にネガティブな意見じゃないよ。
そんな設定だからこそ、このスレで投下すべきだと感じた。
……それともその状況下でもモビルスーツを乗り回す猛者たちがいるってことなのか!!
そうだ! 対艦用の大型ビームソード『アロンダイト』とかが活躍できるじゃないか。
MSが無用になりつつあるってだけで、もうないって訳じゃないし。
>>へうげたね
クロス元が全く分からないものの、マイナー作品だからと言って冗長な説明など
することなく、むしろ完全にぶっちぎってくれたのが却って心地良かったです。
物欲に塗れた人であっても、突き抜けていればむしろ清々しい。
もっと読みたかった、と言うのが本当のところですが、とりあえずはお疲れ様です。
>>LRCE
オーブMSの黎明を描いたシミュレーター周りのシーンや、シローの戦術講義、
アイナとエリカの打ち合わせ、腹芸を覚えたユウナなど見所が沢山でよかったです。
再び引っ越しというのも大変でしょうから、気にせず臆せず此処に投下して欲しい
ものですが、とにかく今はGJでした。
>>戦史
先ずはGJ
カトウ氏の華麗なる転身振りに脱帽です。種の辺りからキラにOS開発を任せていた辺り、
技術屋としての才能よりも、部下の能力を把握して有効に仕事を割り振る事に才覚が
在ったのだろうと思いました。
一つ残念なのは、戦闘シーンが短くて物足りなく感じてしまうところです。
特に艦隊戦のシーンでは、サイ(指揮官)周りに視点を固定しているために、どのように
指揮を取っているのかはかなり詳細に描写されていましたが、一般の兵士にも少し
焦点を当ててはどうか、と思いました。
モビルスーツが時代遅れになっている辺りの設定からも、個人の武力による
活躍という要素を排除して戦術、戦略的なものを重要視していると思うのですが、
例えば撃沈される戦艦の一乗組員の視点に入り、戦闘中にどういうことを為ているのか、
どうやって逃げようとするのか等を描写すれば、物語に厚みが出ると思います。
十二時辺りから続きを投下します。
1/
居住用重力区画の端に、宇宙船艦ミネルバの医務室がある。つい先ほど、
演習と健康診断以外で初めての出番を迎えたばかりである。
入り口の脇にある端末には、艦体全体に張り巡らされた連絡用の回線が
届いており、そこで一人のザフトレッドが艦橋への直通回線を開いていた。
端末越しの報告を終えたルナマリアは画面を切った瞬間、
ぽん。
と、両肩に手を置かれた。
「ひゃあっ!」
奇声を上げて振り向くと、藤色の正装に身を包んだシズル=ヴィオーラが
柔和な笑みを浮かべて立っていた。背筋を伸ばし、力を抜いた両手を腰の前で
組み合わせている。
思わず悲鳴をあげてしまったのは、近寄ってきたはずの彼女の気配を
ルナマリアが捉えられなかったからに他ならない。
言葉の出ないルナマリアに向かってシズルは語りかける。特徴的な訛りが
ルナマリアの耳朶をうった。
「ありがとさん、うちらの世話をしてもろうて――」
「あ……ああ、気になさらないで下さい。むしろこの騒ぎを早い段階で
制圧出来なかった責任は我々ザフトにあることは瞭然ですから」
――十メートルは離れていたはずよね。
報告内容(一応機密)が聞こえないように離れた入り口の端末を使っていた。
視界の端でオーブの代表と一緒に随員が治療される様を見ていたはずの彼女が、
一体何時の間に背後に回ったのか、そんな疑問は口に出さずに居た。
そこに医務室の扉が開き、パイロットスーツ姿を肩に担いだ人影が一つ入ってきた。
「レイ! それにシン、よね? 怪我したの?」
白皙の美貌をもつ同僚は、形の整った顔立ちの端を纏った服の色に血で染めている。
「ルナマリア、お前も怪我をした――わけではないな。そこに居るのは見たところ、
民間人のようだが?」
「あ、そうか。事情を聞いていないのね」
壁から引き出したベッドにシンを横たえ、看護婦からの傷口を消毒されるレイに
簡単に説明する。説明しながらルナマリアは、改めて状況の複雑さに辟易する。
戦闘に巻き込まれ止むなくMSに搭乗、ザクで戦場を抜けてミネルバに到達した
カガリ=ユラ=アスハ以下代表一行――重傷を負い治療を受けている随員。
そして正確な情報と安全性を求めてミネルバに乗り込んだデュランダル議長。
あくまで事務的な態度でただ情報を入手しているという風だったレイが、
唐突に表情を変えたのは、デュランダルの話を聞いた瞬間だった。
「何! 議長がこの艦に!?」
「ええ、モニター越しに見つけたときはびっくり……って何処に行こうとしてるの?」
「決まっている。挨拶をしてく――」
「待ちなさい」。頭に巻きかけの包帯を引きずり医務室を出ようとしたレイを、
ルナマリアは手刀で止めた。
2/
「グッ――! 何をする、ルナマリア!」
「慌てない慌てない。私たちはミスター・アレックスにまだ礼を言ってないわ。
もし彼が居なければ、私たちを援護してくれなかったら、プラントが受ける被害は
もっと大きかったかもしれない、私達が此処で顔を合わせる事は無かったかも知れない、
貴方が議長閣下の身を心配することが無かったかも知れない――そうじゃない?」
視線でサインを送る、伝えたいことは三つ。一、赤服が取り乱したところを見せるな。
二、プラントが向かえた賓客を無視するな。三、世話になった人にはちゃんと感謝しろ。
レイの顔に冷静と理解の色が見えた。
「そうか、確かに――」
そういってレイはシズルのほうを向く。
「――俺からも礼を言わねばならんだろうな、おかげで大きな損害を受けずにすんだ。
……コイツが暴走しなければ殆ど無傷で帰ってこれたのだがな」
大人しく椅子に座って治療の続きを受ける。看護婦はと言えば、こうしたパイロットの
わがままには慣れているのか、小さく文句を呟きながらもほどけた包帯を巻きなおした。
シンを見遣るレイに向かっても、シズルはたおやかな雰囲気を崩さない。
「それやったら、うちらの代表に感謝するんやね。アレックスはんの反応も速かったけど、
アスハ代表が『行け!』ゆう一言であんた等の手伝いしはったさかい」
そしてシズルはカガリがアレックス=ディノを見守っているのを眺めた。
「もし礼を言わはるんやったら、目を覚まさはった後にすればええと思います。
うちらの代表も今は余計な事考えられへんやろから」
意外と部下思いなんよ、とシズルは難しい表情で付け加えた。
成る程、上に厳しく下に優しい、若しくは甘い人なのか、ルナマリアは
代表の為人について考えた。後は、自分に厳しい人間なのかどうかで評価は随分違う。
「うちらとしては、もっと自分の部下は駒として扱うべきと思うんやけどね、
代表は人の上に立つ御方やから――粗茶ですけどどうぞ」
何処からともなく湯気を立てるカップを出して、レイとルナマリアに薦めた。
その動作が余りに自然だったが為に、ルナマリアですら疑問を忘れて受け取る。
礼を口にしつつ、一口すする。
地球産の紅茶だ――ルナマリアは思った。豊饒な大地の香りが医務室に漂い、
歴史と伝統を感じさせる清らかな味わいが口の中に広がる。宇宙の農業コロニー、
人口の大地では出せない味だ。農業生産品、特に珈琲やお茶などの嗜好品に関しては、
地上と宇宙とで品質の差は顕著であった。
「ああ、それから」シズルは付け加える。
「もし後でアレックスはんを見舞うゆうことがあるんやったら一つだけ、
気をつけて欲しいことがありますな」
後ろのカガリに聞こえないように配慮しているのか、声を潜めるシズルの方に
前のめりになりながら聞き入るルナマリア。
「――なんです?」
「大丈夫ですか、とか元気ですかとか言わんと、なるべく普通の人を見るように、
自然に振舞って欲しいんどす。アレックスはんはそう聞かれると必ず大丈夫やとか、
元気やとか言わはるから……」
3/
「それはそうと」ルナマリアは話題をレイの方に戻す。「それって、戦闘中の怪我よね」
レイ=ザ=バレルが負傷するほどの相手だった、ということか。
「それについては、後で話そう。客人の前で言うことではない」
言える事ではない。政治的な話はルナマリアたちにとっては専門外だが、
敵パイロットに対する考察などは明らかに軍機なのだった。
「後でショーンとデイルを交えて話そう。それぐらいの時間はあるはずだ。
次の戦闘までにはな……ああ、薬は結構だ」
看護婦から差し出された鎮痛薬をレイは丁重に突き返した。
数時間以内に戦闘がありえるというのに判断を鈍らせてはいられない。
「あと九千秒って所よ」とルナマリア。先ほどの報告の際に伝えられている。
「二人は出撃しなかったのか? ゲイツは格納庫にあるのを見ていたが」
「式典用装備だったのよ、儀仗兵の代わりをするはずだったものね」
シズルから受け取った紅茶を味わいながら、「出てこなくて幸運だったわ」と
付け加えた。
「音と光だけ派手な、虹色ビームなんかあの戦場で発射されてたら、ザクの操縦席で
爆笑して戦闘どころじゃなくなってたもの」
プラントの式典においては、見栄えのするモビルスーツが号砲をあげることがある。
その際に使われる色とりどりのビームは当然貫通力がないように出力を調整されて
居るため、実戦には使えないものとなっている。
「ご馳走様です、有り難う」ルナマリアはカップを置いた。
「出たかっただろうがな、調整が間に合わなかったのは残念だったろう。
――そろそろ起こした方がよいのではないか?」
今だベッドで気絶したままのシンを指差した。悪い夢でも見ているのか、
全身に汗を浮かべながらうなされている。
「それもそうね、それじゃあ――」
ルナマリアは、ベッドに仰向けに寝かされ気絶したままのシンに近寄った。
「何時までも寝たままにしておくわけにはいかないもの、ね――」
意識を失ったシンの上体に左腕を回して抱き起こす、優しくいたわるように、
その様はまるで恋人同士に見えて――
ルナマリアは右手を振りかぶった。
4/
悪夢は何時も、明確な五感を伴ってシンをうめかせる。
閃光。
シンは幻視する。砕ける体、砕ける命。
シンは幻聴する。妹の悲鳴、両親の叫び。
シンは幻覚する。体を襲う衝撃、全身に纏わり着く熱風。
ああ、また何時もの夢を見ているのだな、と思う。そんな醒めた感情が無ければ、
あの地獄をたとえ幻視の中だといえども直視することに耐えられないのだ。
夢には色がないなどと言ったのは誰なのだろうか、全くの出任せだ。
森の緑も血の色も炎の模様もはっきりと、夢の中に再現されている。
悪夢はシンが目を覚ますまで、何度も何度も一番シンが見たくない場面を繰り返し、
一番シンが忘れられないものを繰り返す。
家族がばらばらになって、シンが只一人オノロゴに残されて――
そして再びオノロゴの森を走るところから始まる。
遠くに聞こえる戦場の音――段々と近づいてくる。恐怖が近づいてくる。
そのときが近づいてくる。
走っている、逃げている、父が先頭にたって、母が妹の手を握って。
マユ、落とすな、大事な携帯電話なんだろう? NJの所為で使えなくなっていても
大事に大事に持っている。いつか戦争が終わったら真っ先に友達にかけたいんだろう?
だから、落とさないで。
そして――
『あー! マユの携帯!』
頼む、たった二年前の自分。マユを張り倒してでも、どれだけ後で文句を言われる
事になっても良い、今はすぐに逃げろ! ほら、上空をMSが飛んでいる。行くな!
ああ。
繰り返される。止めることが出来ない。過去は変えられない。
爆風が、シンの体を襲う。
頬に、熱を感じる。頬に、衝撃を感じる。右頬に衝撃と熱を感じる、
左頬に衝撃と熱を、右に、左に、右に、左に……
おかしい、これは夢のはずなのに、いや、幻覚にしても異常に感触が――硬い。
右、左、右、左、右、左、右……顔が打撃のたびに振られて――
「痛てえ――! ってルナ、一体何すんだよ!」
「――あ、やっと起きた。良かったわね、脳に異常が無くて」
そしてシン=アスカは覚醒した。
5/
ルナマリアは平手打ちの構えを解除し、シンの襟首から手を放す。
「起きたか、シン――」
頭に包帯を巻いたレイがシンの意識を確認した。覚醒直後で呆と為ているシンが、
頬に走る痛みを再確認しつつ、気絶する直前に見た映像を思い出す。
「……レイ――? さっきはよくもミネルバに向かって投げてくれたよなあ!」
「緊急着艦だ。気にするな、俺は気にしない」
「一寸待てよ、言葉の使いどころを間違えてるだろ!」
レイ=ザ=バレルは気にしない。
「それより機体――インパルスは無事だろうな!? 壊れてたら只じゃおかないぞ!」
MSは精密機器の塊であり、普通カタパルトに放り込んで着艦させるものではない。
シンが自分の体よりも自機の事を心配するのは、ある意味では当然といえた。
睨み付けるシンの威圧を微笑で受け止めて、レイは答えた。
「安心しろ、お前よりは丈夫だったようだ。整備班が格納してくれている。
……少し合体機構が壊れて、次の戦闘にフォースは使えないらしいがな」
微笑みは爆弾だった。
「レイ! お前なんて事を――!」
「騒ぐな、頭が痛くなる――戦闘中の怪我に障る、な」
「ぐっ――!」
芝居がかったレイの台詞に、シンの怒りが一瞬そらされる。
そこにルナマリアが追い討ちをかけた。
「あ、それとソードは私が借りるわ。だからは次はブラストシルエットで出てね」
「おいルナ、勝手に決めるなよ!」
ミネルバ搭載のスラッシュウィザードが調整中で数時間以内の使用が不可能と知った
ルナマリアは、再びインパルスの対艦刀――エクスカリバーを借りるつもりでいた。
機敏な動きでベッドから立ち上がり襟首に掴みかかろうとしたシンを、ルナマリアは
腕一本で軽くいなした。1m以内の接近戦では負けない。
レイが更に挟み撃ちにかける。
「――そうそう、誰かかが勝手に追撃してくれたおかげでミネルバが敵を捕捉しきれず、
またにザクとインパルスにもかなりの損傷があった。その辺りを踏まえても、
チームの意見も聞かずに何事かを勝手に決める、これは断じて許されるべきでは無い。
恥ずべき行いと言えるだろうな」
「…………すいませんでした」
流石に反省して折れるシンであった、がそれでも頬が膨れている。
この辺りはルナマリアから見ても若さ以前にシンの幼さが表れていて、
まるで年が近くて手の掛かる弟を相手にしているような気分になるのだ。
6/6
民間人のシズルが、カガリの様子を視るために離れたので、ルナマリア達は
パイロット同士の会話を始めていた。
「いいわよシン、アンタがセカンドシリーズを足止めしてくれていたからこそ、
ボギーワンのトレースに成功して、再戦も出来るって話なんだし」
ルナマリアは簡単にフォローを入れておいた。シンとレイがカオスとガイアを
足止めしていなければ、目的を達したボギーワンはすぐに離脱し、ミネルバが
追撃に動く頃には既に宙域から姿を消していたことだろう。
「でもやっぱり壊れやすいのよね、インパルスは。ザクだったら少し位
いい加減に振り回してもそうそう壊れないわよ」
ついでに、壊れたと言うインパルスのことにも質問をぶつけてみる。
「合体機構があるせいで重量にもフレーム強度にも限界があるし。
――合体する事に何の意味があるのかしら?」
重くなり、もろくなる。それはMSの使い方から言っても決定的な欠陥となる。
ルナマリア達ミネルバ組みのザフトレッド三人は、テストパイロットとして
インパルスの調整に携わった。
ルナマリアの担当はほとんどが接近戦における戦闘機動の調整で、サーベルや
対艦刀のモーション、更にはブーメランの投擲動作等を組み込んだのだが、
時折インパルスが抱えるフレームの脆弱性のために実装できない動きが在った。
「それは違うぞルナマリア、インパルスは意味があるから合体するのではない」
「レイの言うとおりだぞルナ、合体することに意味があるんだ」
「…………」
ルナマリアには理解できなかったが、そういう事になっているらしかった。
ザフトレッドともあろうものが命を預けるMSに対してそれでいいの? とも思ったが、
疑問がうまく言葉にならない。
「――まあいいわ、もうすぐ議長がアスハ代表とお話なさるでしょうから、
それまでMSの調整に回りましょう。貴方たちみたいに元気なのが医務室に居たって、
騒がしくて本当のけが人が休めない――」
「――ちょっと待てよルナ」。シンが口を挟む。「アスハ代表だって!?」
「ええそうよ……ってそうか、先にシンを起こしてからまとめて説明するべきだった」
そのときだった。医務室の扉がモーターの作動音と共に開き、長い黒髪をなびかせる
長身痩躯の男が黒服の士官を従えて入ってくる。
「――やあ、レイ。矢張り君もミネルバに乗っていたのか」
「――議長!」
男は、ギルバート=デュランダルは医務室の中にレイの姿を認めると、薄い笑みを
浮かべながらそう語りかけた。
GJ!
や〜、やっぱレイいいキャラしてるわ〜
シズルさんの不作為の機転でシンとカガリの対面は先延ばし?
先行き楽しみ。
よくも、よくもよくもラスト・リゾート氏をォオオ!追っかけてきてWkTkしてたのに!
氏ね氏ね氏ね死ねぇえ
>>109 リゾート氏はこんなすぐに死ねとか言う住人ばっかりのとこに居たの?
そんなスレじゃ投下したくなくなるわな
>>109 ラストリゾートさんは自分から出ていったんじゃないのか?
誰もも出て行けって言ってないよ。
>>110>>111 ウチのスレの古い衆がとんだ無作法を致しました。
この様な者ばかりでは無い筈ですのでどうかご容赦を。
SEED『†』氏投下乙です
メ欄にくすりと笑わせていただきました
この作品のレイ&ルナはシンがカガリに暴言吐いても
その場でツッコミ入れて軌道修正してくれそうな気がしますよ
SEED『†』氏GJ
ルナの平手打ちの手数の多さにワロタ
あとレイが饒舌でおもろいです。
あまりいい作品ではないが出すべきなのだろうか・・・悩むところである
以前もそうだがあまりのクオリティの高さに諦めた(滝汗)
>>115 自分で出来が悪いと思っても周りもそう思うとは限らないのです。
是非投下をおながいします。
主人公:ライ・ガーキンス
年齢:25
身長・体重:180cm・75kg
好きな物(事):緑茶 愛機 読書 機械弄り
嫌いな物(事):甘い過ぎる物 愛機を勝手に弄られる事
特徴:金髪で髪を切るのが面倒なため長髪。そのため幾度か女と間違われる事もあった。
甘い物は嫌いではないが甘すぎる物は苦手である。
一見何でも出来そうなプロフィールではあるが実は料理が苦手。人並みには出来るとは言っているがバリエーションがかなり少ない。
戦闘は常に射撃で行なっている。格闘はどうも苦手。
AC世界での最後の戦闘でエネルギー兵器のみ装備した理由は・・・資金がそこを尽きかけたからである。(笑)
AC世界には他にも【サイリス】が存在し、こちらは実弾のみで形成されている。
【サイサリス】
パーツ名不明につき現在調査中・・・OTL
特徴:重量二脚であり、エネルギー兵器のみで形成され、かなり使い勝手が悪い機体ではあるが、CE世界のMSにはそれなりに有効である。
主に使用するのは右腕武器のエネルギーマシンガン・左腕武器のエネルギーライフルである。両肩についているプラズマ砲は整備できない事も考え現在のところは使用していない。
武器の威力:バランスを崩壊させない為にもエネルギーマシンガンはスラッシュザクファントムのビームガトリングと同等とする。(若干上で5発ほど当たれば撃破できる)
エネルギーライフルはビームライフルと同等(こちらも若干上) 両肩のプラズマ砲はフリーダムのバラエーナより少々上程度です。(おそらくほとんど活躍しないと思います。エネルギーマシンガンとエネルギーライフルのみでほとんどの状況が対応できると思うので・・・)
補足:弾切れの心配はないが念のためにムーンライトを副武装として持っている。
【サイリス】
こちらもパーツ名不明のため調査中です・・・
特徴:こちらは実弾のみで形成された機体です。CE世界では一見有効では無い様に見えますが武器の威力が違いますので問題ないです。燃費は・・・言うまでも無いと思います。
主に使用する武器は左右共に装備しているスナイパーライフル(武器腕ではない)です。両肩にはグレネードが装備されています。グレネードは最初に装填されていた弾のみですがかなりの威力を誇っています。
こちらは、メンデル付近に漂っているところを某組織が発見し研究していますがほとんどの項目が不明と出ています。この時弾薬も製造されております。威力は格段に劣りますが・・・、PS装甲系統以外には有効です。
スナイパーライフルのみ弾薬の変更による威力に変更はありません。
武器の威力:グレネード(AC世界の弾薬)は、PS装甲系統採用機でさえ一撃で倒せます。ただ倒せるといっても間接など装甲で覆い難い場所が千切れ、パイロットは衝撃で死ぬという形です。
スナイパーライフルはフリーダムのクシフィアスと同等です。
補足:こちらにも念のためにムーンライトを持たせている。
とこんな感じです。
≪ライside≫
「ん? ここは・・・どこだ? 俺は死んだはずではないのか? あの瞬間確かにコックピットにグレネードが直撃したはずだ。」
辺りを見回すと戦車らしき残骸と砂漠が広がっていた。
「まぁいい。とりあえず移動するとしようか。」
そう考え、遠方の町らしいところへACを移動させることにした。
町まで10km付近まで接近すると武装した人が乗る車が接近してきた。そしてそのうちの一人が声を掛けてきた。
「おい! 聞こえるか?」
ゲリラのようなものなのだろうか?
少しの間考えた末に応じることにした。
「なんだ?」
「見たところMSに乗っているが、お前はザフトなのか?」
「MS? ザフト? それは何だ? 俺はレイヴンだ。」
「レイヴン? それは何だ?」
「傭兵・・・のようなものだな。ところで先ほど言ったMSやザフトというのは何だ?」
「傭兵か・・・。それなら雇うことは出来るのか? MSやザフトについては雇った時に説明する。」
「現在はフリーだ。雇うのなら付いていくがどうする?」
「分かった。それではこちらの誘導にしたがってもらうぞ。」
「了解」
そして車は町に戻る進路を取った。
町に案内された私は町の奥に存在する洞窟へと案内された。そこに武器などを隠しているらしいことが移動中に説明された。
到着すると歓迎されていないのか完全武装したゲリラ兵がいた。
「降りろ。」
そう言われた私は素直にACから降りた。すると先ほどまで話していた男とは別の男が接近して来た。どうやらこの町のリーダーのようだ。
「もう一度聞くがお前は本当にザフトではないのか?」
「私はザフトという者ではない、レイヴンだ。」
「そのレイヴンとは一体何だ?聞いたことがないぞ?」
「(聞いたことがない? どういうことだ?)レイヴンというのは一種の傭兵だ。常識ではないのか? そんなことよりもザフトとは何だ?」
「ザフトとはプラントが所有する軍隊のことだ。」
「プラント? それは何だ?」
「プラントまで知らないのか・・・。お前さんもしかして異世界から来たとか言うことないだろうな?」
「異世界か・・・その可能性もあるな。(だが、どうする? 現状では当てになりそうな物はこの【サイサリス】だけだからな・・・)」
「そういえば、お前は傭兵らしいが雇うことは出来るのか?」
「雇われることなら出来るが・・・どういう仕事だ?」
「この付近には【砂漠の虎】が率いるザフト軍の部隊がいるのだが、その部下が稀にここに来て食料などを持って来いと言って来る。それを撃退してほしいのだが・・・可能か?」
「ふむ・・・それぐらいなら可能だが期間と報酬は?」
「金は渡せないがその代わりに住む場所と食料と水でどうだ? 期間は【砂漠の虎】が撃退されるまでだ。」
「(ふむ・・・悪くない条件だな。ここは雇われたほうが賢明か)いいだろう。それで雇われよう。」
「だがこのMSモドキはどうする? 持って行く事は出来ないぞ?」
「それならこの洞窟に置いておこう。万が一の事を考えてなるべきこの洞窟に近い場所に住ませて貰うと助かるのだが・・・。」
「大丈夫だ。そのことも考えて一番近い場所に案内する。」
「助かる。」
「それと最後に、この【サイサリス】には触らないでくれ。壊れると仕事が出来なくなる。」
「ふむ・・・そのMSモドキは【サイサリス】と言うのか・・・。分かったそう指示しておく。」
「頼む。」
そうしてそのリーダーらしき人物は最初に会話していた男と少し会話してから洞窟から去っていった。
会話が終えたのか最初に話した男性が近づいてきた。
「案内するから付いてきてくれ。」
「分かった。」
案内された場所は・・・洞窟から出て5歩のところだった。
(まさかここまでしてくれるとは・・・)
「ここなんかどうだ? これ以上ないほど近いと思うのだが。」
男は笑いながら話してくれた。
「嗚呼、これ以上ないほど近いな。いい場所だ、ここに住ませてもらえると助かる。」
「それじゃあ食事のことだが・・・俺の家で食うことにするか?」
「それで構わない。」
「それじゃ、今日は歓迎会だな。俺の息子が喜ぶだろうな。」
「そうか、息子か・・・。」
「ん? どうした?」
「いや、なんでもない。これからよろしく頼む。」
「おう! それじゃ又後でな。」
そう言いその男は部屋から出て行った
( 呼ばれるまでしばらく時間がかかりそうだな、とりあえず一眠りするか)
そう思い、私は眠りにつく事にした。
≪side out≫
投下してみました。ちなみにこの小説は某サイトにも投下する予定ですが、こちらにはおそらくその試作品を投下することになると思います。
駄作なのは分かってますがなるべく完結させようと努力しますのでなにとぞ・・・よろしく御願いします
>>121 GJ
キャラはよくわかりませんが、話の筋が面白そうなので楽しみにしてますです。
なんとなくひと昔前のRPGみたいな懐かしい感じがした
これからに期待
>>124 そういうのがあったのか・・・知らなかった
ちなみにパーツのベースはAC2、話はラストレイブン(バットエンド)
からスタートって事で・・・
パーツ名と話の流れを完璧なほどにまで忘れてしまった為つい先ほど中古屋を6件を探しラストレイヴンを購入するが帰ってきて公式HP見ると・・・泣きそうになった OTL
「おーい、歓迎会の準備が出来たんだが・・・って寝てるのか?」
「ん? 準備が出来たのか。」
「おう、でもよかったのか? 起こして」
「構わない、食わせてもらっている身分だ。文句が出るわけがないだろ?」
「そんなもんか?」
そう言って男は今思い出したように話してきた。
「そういえばまだザフトやMSの説明を聞いていなかったな。」
「そうだったな。んじゃ説明するぞ。」
「頼む。」
「えーと、まずザフトだがプラントの軍隊と考えてくれると分かりやすい。現在プラントと地球連合は戦争状態だ。MSとはザフトが開発した人型機動兵器の事だ。元は作業用機械だったらしいがそれを作り直したようだな。」
「すまない、そのプラントとは何だ?」
「そこまで分からないってことはもしかしてコーディネーターまで知らないんじゃないのか?」
「コーディネーター? それも知らないな」
「そっか、そうなると一から説明する事になるな。」
「今後の事を考えると説明してもらった方が助かる。」
「任せとけ。コーディネーターだがこいつらは遺伝子を弄って作られる人間の事だ。まぁ世間一般ではこういう風に思われているが正確には第一世代だけだな。第二世代からは第一世代同士から生まれた子供だ。そしてプラントはそのコーディネーターの国だ。」
「ほう、強化人間みたいなものか(この世界でも俺のようなのが居るのだな・・・)」
「まぁ、簡単に言えばそうなるな。ちなみに遺伝子を弄っていないのがナチュラルだ。最近はナチュラルで形成されるブルーコスモスって環境保護団体が過激な行動をしているな。」
「過激な行動?」
「そ、≪蒼き正常なる世界≫ってのを目指しているらしくてな。その為にはどうしてもコーディネーターを排除する事が必要らしい。最近は各地でコーディネーターを狙ったテロを起こしているな。」
「(この説明から推測すると、ブルーコスモスとプラントの戦争のようだな。)それのどこが環境保護団体なのか疑問に思うが・・・説明感謝する。」
「しゃべっている間に家に着いたな。入ってくれ。」
そういって男は先に入っていった。中には妻らしき人物と子供が二人居た。
「すまない、世話になる。」
「いえ、お気になさらないでください。この馬鹿が勝手に決めた事ですから。」
「ちょっと待てよ。お前も同意したじゃないか。」
「あら、そうでしたっけ?」
笑いながら会話し始めたところを見ると、どうやら夫婦仲は円満のようだ。
「そういえば自己紹介してなかったな。俺はタクト・ナイトウだ。妻はサナエ、子供は男の子の方がユウキ、女の子の方がアオコだ。」
「妻のサナエです。よろしく御願いしますね。」
「こら、ユウキ・アオコ挨拶しなさい。」
「ユウキ、8歳です・・・。」「アオコ、7歳です・・・。」
そう言いすぐにタクトとサナエの後ろに隠れてしまった。
「すみません、この子達人見知りが激しくて・・・。」
「気にするな。それと私も自己紹介していなかったな。私の名前はライ・ガーキンス、傭兵をやっている。」
「傭兵、ですか・・・。」
「今回はこの町を防衛するために雇われた。【砂漠の虎】が壊滅すると契約は解除されるはずだ。おそらくそれまでは厄介になるだろう。」
「分かりました。悪い人には見えないので信用します。」
「感謝する。」
「んじゃ暗い話はこれで終わりにして歓迎会するか!」
と言うとタクト夫婦は揃ってキッチンのほうへ向かった。取り残された子供達とライの間には気まずい空気が漂った。
(む、幾つになってもこれぐらいの子供は苦手だな。どう扱えばいいのか分からん。)
「準備が出来たぞ〜。」
「オジサン、行こ。」
「分かった。(オ・・・オジサン。俺も、もう年なのか。まだお兄さんのつもりだったのだが・・・)」
どうやら心に重症を負わせる言葉だったようだ。
≪ライside≫
歓迎会が終わり。支給された住居に戻る途中、町が急に騒がしくなった。近くに居た男の一人に話を聞くとどうやら地球連合の新型戦艦が近くに降り立ったらしい。集めて新型戦艦への対応を決めているとの事だ。
話を終え住居に入るところでタクトが声を掛けてきた。どうやら私も呼ばれたようだ。大人しく着いていくとリーダーのほかにも中核らしき人が数名話をしていた。
「連れて来ました。」
「そうか、ある程度話は聞いていると思うがこの近くに地球連合の新型戦艦が降り立った。こちらとしては【砂漠の虎】の撃退が目的である為、この新型戦艦と共同戦線を張りたいのだが・・・お前はどう考える?」
「そうだな・・・。それが現状で一番良い対応だろう。」
「分かった。では実行するとしよう。念のためお前さんにも出てもらうつもりだが構わんか?」
「了解した。出撃準備に30分ほど時間がほしい。」
「聞いてのとおりだ。30分後に新型戦艦に接触を図る。それまでに準備を整えておけ!」
その声にその場に居た全員が肯き準備に入った。それを見て私も【サイサリス】の出撃準備に入った。
≪side out≫
そして30分後ライはリーダーに指定された場所にACを移動させ始めた。リーダー曰く、戦闘になった場合こちらに敵を誘導するらしい。
ライは指定された場所に向かっているところで、遠くから爆音が聞こえてきた。それは地球連合とザフトが交戦を始めた事を告げる音だった。
どんどん投下したいところだが・・・飯の準備があるため一時中断です(汗)
見直している時に感じたが、見てて虚しい。次は戦闘だがACはまったく活躍しません。
「どうやらここはアフリカのようね。」
「完全にザフトの勢力圏だな、こりゃ。どうする? これから。」
「そうね・・・。任務の事を考えるとアラスカに向かうべきなのよね・・・。」
「そうだな・・・それが一番だと思うな。」
「では、夜明けと共に移動を開始しましょう。」
「了解〜。」
そういい終わった直後、敵接近の警告が鳴り響いた。
「敵?! フラガ大尉、格納庫へ!」
「了解、艦長もブリッジへ!」
そう言い二人はそれぞれ別の場所へ向かって行った。
マリュー・ラミアスはブリッジ到着すると指示を出しながらキャプテンシートに座った。
「(こんな時に襲ってくるなんてついてないわね、私も。だけど黙ってやられるわけにもいかない。なんとしてもストライクとこのアークエンジェルをアラスカまで届けなければ・・・)総員戦闘用意! キラ君はどうしているの?」
「キラは今格納庫へ向かっているそうです。レーダーに反応、これは・・・バクゥです! 数は5機です。」
「ゴッドフリート・バリアント・イーゲルシュテン起動、艦尾ミサイルランチャーにウォンバットを装填。それからキラ君に連絡を!」
「了解。通信開きます。」
モニターにはストライクのコックピットに座っているキラ君が発進準備をしているところが映された。
「キラ君、情報によればバクゥ5機がこちらに接近しているわ。行けるわよね?」
「戦わなければいけないんでしょ? でしたら行くしかないじゃないですか。」
「ごめんね・・・」
「カタパルト接続、ストライカーパックはランチャー。進路クリア、ストライク、発進どうぞ!」
「了解。ストライクガンダム、行きます!」
発進したストライクに向かってバクゥ5機が接近していた。だが地上戦をまだ体験していなかったキラではバクゥ5機同時に相手することが出来なかった。
手間取っている内にバクゥ2機がストライクを抜いてアークエンジェルの方へ向かっていった。それを見たキラはアークエンジェルが危険だと判断し、戻ろうとする。しかしバクゥ3機はストライクを行かせまいとミサイルで攻撃を始める。
「このままだとアークエンジェルが! どうにもならないのか?!」
脳裏にアークエンジェルが爆発する光景が浮かんで消えた。するとキラは頭の中で何かが弾けたように感じた。
「設定を変えれば、対処できるはず!」
そう言いキラはOSの設定を弄り始めた。その作業は自分の限界を超えた速度で行なわれている事にキラはまだ気がついていなかった。
「これでどうだ!」
そしてキラはアークエンジェルに向かったバクゥの一機にアグニを撃った。回避行動をする事が出来なかったバクゥをアグニが貫き、その姿を残骸へと変えた。
それを確認したキラはすぐさま次の行動へ移った。回避行動を取りつつアークエンジェルに向かったもう一機のバクゥに接近し、バクゥの腹部を蹴り上げた。そして仰向けになっているバクゥの腹部にアグニを突きつけ引き金を引く。
その時開いたままの通信からミサイル接近の知らせが入った。キラはそれを聞いたと同時にアグニをミサイルの方へ向けビームを撃ち出した。そのビームはアークエンジェルに直撃する寸前だったミサイルを全て撃墜した。だがそれと同時に警告が鳴り響きPS装甲がダウンした。
どうやら残存エネルギーが危険域まで来てしまったようだ。するとどこかで聞いた声が通信に割り込んできた。
「おい、もし生き残りたかったらこちらの言うとおりにしろ!」
すでにエネルギーが尽きかけているストライクではバクゥ3機を相手する事は無理だった。キラは無言でその言葉に従い、指示された方向へ向かっていった。
≪ライside≫
(MSの性能はあれぐらいが標準なのか?もしそうだとしたら【サイリス】で来なくてよかった、あれはこちらの世界では性能が高すぎる。)
私は【サイサリス】を戦闘プログラムで起動させ、こちらへ進んで来るMSの方へACを移動させ始めた。どうやらストライクもこちらに気がついたようだ。
私はある程度バクゥに接近するとブースターを吹かし、バクゥの距離を詰め、マシンガンとライフルでバクゥ二機を同時撃墜した。残ったバクゥは、レジスタンスの罠によって破壊されていた。
(初仕事としては案外あっけない物だった。いや、今後の問題を事前に解決できる点からすると受けてよかったのだろうな)
こうして私の初仕事は終わりを告げた。
≪side out≫
戦闘が終わり地球連合のMSから15・6歳ぐらいの少年が降りてきた。それを見た少女の一人が彼を殴った。
ライは特に興味がないように見えるが、少々冷や汗をかいている所を見るとどうやら興味がないのではなく関わらない方がいいと判断したようだ。
133 :
kinn:2007/02/19(月) 23:02:32 ID:???
とりあえず戦闘物まで投下してみました
何か感想などありましたら書き込み御願いします。
名前欄の記入ミスまだ残ってたのか・・・(汗)
出来ればスルーしてください(滝汗)
AC2なのか?2だと左腕銃器と副武装(格納)の概念は無いが・・・まぁいいか
とりあえず
>>117の事を一般的に脳内設定と言い、
必要もないのにひけらかすと叩かれるよって事を忠告する
設定はSS内で説明していったほうがいいな。
あくまでACの原型のモデルです。
ラストレイヴンでAC2の時に使っていたACを記憶を元に組み立てた事があるので、モデルというのは間違っていないと思いますが・・・(滝汗)
勘違いをされやすい書き方をしてしまって申し訳ないです。
ACかよ……。俺も書いてみようかな。FF辺りで。
>>crossAC
とりあえずはGJ、投下お疲れ様です。以下は批評と感想です。
個人的な意見である上にかなり長くなったので、不愉快でしたら読み飛ばして下さい。
一、設定だけなら誰でも書ける。
年齢身長体重、好き嫌い、これは人間であれば普通誰でも持っているので、
列挙してもキャラクターを構成しません。ライ=ガーキンスは緑茶を――
常に手づから急須を使って淹れ、淹れ方や葉の種類、作法には一家言ある位なのか。
飲み物の中では一番好きで、自販機で買うなら緑茶にする、という程度なのか。
緑茶を馬鹿にされる発言を聞いた瞬間ぶち切れて周囲を血の海に変えるほど執着しているのか。
一言に『緑茶が好き』と言っても色々在ると思います。
キャラクターを前面に出したいのであれば、其処を本編の中に描写するべきです。
二、設定は描写の代わりにはならない。
読者にしてみれば、物語の一番最初に設定資料を持ってくるというのは、
「描写はしないがこういうキャラクターだから、それを暗記してからSSを読め」
と言われたに等しいです。描写が読みたいのに。
「おねえちゃん――」
呼ばれて振り返ると、十歳ぐらいの男の子が立っていた。ライの顔を見ると
慌てて「おじさん」と言い直す。百八十センチの身長は立っていれば先ず女だとは
間違えられないが、座っていたために肩まで伸ばした金髪がそう思わせたのだろう。
「なんだい?」
「お母さんがね、飲み物は何がいいですかって、おじさんに聞いて来いって」
「そうか……もしあるなら緑茶を頂こう」
そう告げると、少年は走り去って言った。それにしても『おじさん』か、
それほどまでに自分が老けているとは思いたくないが――
数分して戻ってきた少年は、湯気を立てる器を盆に乗せている。礼を告げて受け取ると、
かすかな香りが鼻をついた、嫌な予感がする。
注意を払いながら最初の一口をすする――甘い。この地方では普通なのかも知れなかったが、
これでもかというように砂糖が放り込まれたお茶は、確実に緑茶ではなく、そして甘すぎた。
「緑茶は無かったんだって……どうですか?」
きらきらした瞳で聞いてくる少年の純粋さに耐え切れず、「おいしいよ」と言ってしまう。
意を決して一息に飲み干した。甘みが喉を通る。三日分位の糖分を一気に摂取した気がする。
「有り難う、もう十分だよ」
引きつる笑顔で器を返したときの顔が青くなって居なかったか、それだけが気になった。
適当ですが、上の描写を纏めると「身長百八十センチで金髪を伸ばしているために
時々女と間違われ、緑茶が好きで甘すぎるものが嫌いなライさん」という設定になります。
矢鱈長文で失礼しました。言いたい事は一つ、
「物語は面白そうなので、続きではもっと色々読みたい」ということです、とにかくGJ。
>>140 頭を冷やしてから読むと案外あっさりいけましたよ。(笑)
現在感想・批判(どちらも少ないけれど)を参考に改造作業をしていますが、上手く書けるかどうかは分かりません
なるべく期待を裏切らないよう努力します(汗)
正直に言うと、これ・・・実は処女作なんです。
大まかな流れしか考えていないので、これからどうなっていくのか正直自分にも良く分かりません。(苦笑)
GJ!先行き楽しみだと思わせるものはある。←めっちゃ偉そう
どうしても設定書きたいor書いとかないとなんか不安というなら、
一話分投げ終わってから書くとまだましだと思うよ。
あるいは仮想戦記で文中で兵器のスペック紹介するやり方参考にするとか。
一番いいのは
>>140氏の言う通りストーリー描写で表現することだが。
データそのものがストーリーの伏線として効いてくるならともかく、
単に羅列されても読者は置いてけぼりだからね。
ここがACスレならゲームのファンも多いだろうからまた反応はちがうかもしれんけど。
それと、北アフリカで愛飲されてるクソ甘いミントティーだけど、
実はアレ「緑茶」にミントと砂糖を大量にぶち込んだものなんだ。偶然の一致ってやつだけど。
(だからどうしたといわれりゃそれまでだが)
なんというか新人スレっぽくていいな
≪ライside≫
どうやら私を雇っている町は【明けの砂漠】というレジスタンスの一部らしい。今回接触した連合の新型戦艦【アークエンジェル】と一緒に私は【明けの砂漠】の活動拠点に案内された。
私が【サイサリス】から降りると先ほどMSパイロットを殴った少女がやって来た。
「お前はここで何をしている? なんでこんな物に乗っている? それとこのMSは何処で作られた?」
「私は傭兵だ。これは俺の知人が俺にくれた物だ。何処で作られたかは知らない。」
「そうか・・・。」
(似た質問をこれからもされる時があるだろうな、その時に使う言い訳を今の内に考えておくべきだな。それと【サイサリス】を触らせるわけにはいかない、何せ使用されている技術が違うのだからな。
そういえば機体のチェックをしていないな。どうやら私も動揺しているようだな。何時もしている機体のチェックを忘れるとは・・・)
まだ機体のチェックをしていない事に気がついた私は苦笑した。
【サイサリス】のコックピットに戻ろうと考え行動に移ろうとしたが、そこへ今度は連合の軍服らしき服を着た女が話しかけてきた。先ほど来た少女と似た様な質問をする気なのだろう。
「このMSは貴方のですか?」
「そうだが、何か用でもあるのか?」
「いえ、用事では無いのです。ただ少々このMSの事が気になりまして・・・、これでも少し前までは技師をしていたんです。」
「この【サイサリス】は俺の知人が俺にくれた物だが、俺も【サイサリス】の事はよく解っていない。」
「そうですか。」
「用が済んだのなら向こうへ行ってくれないか? これから機体のチェックをするつもりなのだが。」
「分かりました。では失礼します。」
女が去ったのを確認した私はコックピットに戻り、ある特殊なプログラムを使用して機体を起動させた。
【サイサリス】と【サイリス】には特殊なプログラムを入れてある。プログラムを使い機体を起動し動かす事により、各部品の損傷をある程度把握する事が出来る。
プログラムは元の世界で親しくなった整備班がいつの間にか入れてくれた物だ。その為、時間は掛かるがある程度の整備は一人であっても可能だ。
(元の世界に戻る事が出来たら、もう一度礼を言わねばならないな)
私は【サイサリス】の手足を動かしながら軽くブースターを吹かしてみた。少しの間動かしているとAIが結果を知らせてきた。どうやら現在の時点では特に問題はないようだ。プログラムを終了させ、コックピットから出た私にタクトが声を掛けてきた。
「みんなにお前の事を紹介するから一緒に来てもらえるか?」
「分かった。」
案内された所には地球連合の軍人が二人、それから各町のリーダーらしき人物達が居た。その中に居た雇い主である町のリーダーがこちらに気がついたようだ。
「お、来たか。コイツが今日雇った傭兵のライだ。」
「ライ・ガーキンスだ。現在は町の防衛を依頼されている。」
「ライ、その依頼は解約したい。その代わりに、アークエンジェルに乗って【砂漠の虎】を倒して欲しい。」
「ふむ・・・、その報酬は?」
「報酬は・・・物資と食料と日給500ドルだ。そうだったよな?」
雇われていた町のリーダーがそう言うと先ほど話しかけてきた軍人らしき女が「そうです。」と答えた。
「(悪くない、断る必要は無さそうだな)分かった、その依頼受けよう。」
ところがもう一人の軍人が反対した。連合の機密であるアークエンジェルに傭兵を乗せたくないのだろう。
「艦長、アークエンジェルは地球連合の機密の塊なのですよ? 傭兵を乗せるのは軍規に違反するのではないでしょうか?」
「重要な場所の立ち入りを禁止すれば問題ないわ。それにね、今のアークエンジェルで戦える人はキラ君とフラガ大尉だけなのよ? 二人だけで【砂漠の虎】を倒せると思っているの?」
「それは・・・。」
黙ってしまったが、苦い顔をしたままの所を見るとやはり納得できないようである。両方が納得した事を確認して私は契約書を書くことを提案し、双方が互いに契約条件をリストアップした。
「契約書にある機体には触らないと言う項目なのですが、整備はどうするのですか? ご自分で為さるとでも?」
「その通りだ。整備のほとんどは私がする。手助けが必要な場合は連絡する。
もし勝手に触った場合は契約書に記入されている通り、契約を破棄させてもらう。攻撃する可能性もある、気をつけてくれ。」
「分かりました。整備班などに言っておきます。では機体をアークエンジェルに搬入しましょう。」
「了解した。(効果があるといいが・・・。そういえば、元の世界で「条約は破る為にある。」と豪語した奴がいたな)」
契約が終わると私は【サイサリス】をアークエンジェルに搬入するための準備に掛かった。
【サイサリス】の搬入が終わりそうになった時に、ちょっとした事件が起こったらしい。どうやら「一般兵が貴重なパイロットに手を出した」との事だ。パイロットに怪我は無かったようだが、一般兵は独房に入れられたそうだ。
少々厳しすぎるとは思うが、これが軍という物なのだろう。
搬入を終えた私は自分に食事を取る為に食堂へと向かった。そこには会話をしている少年兵が二人居た。その内の一人が食堂に入った事に気がつき、こちらに顔を向けた。
「あ、こんにちは。えっと・・・?」
「今日雇われた傭兵のライだ、しばらくの間世話になる。」
「俺はトール・ケーニッヒです。」
「始めまして、キラ・ヤマトです。ストライクのパイロットをしています。」
簡単な自己紹介を終わらせると食事を取りに行った。
元の世界でもそうだったが、私は喋る事があまり得意ではない。そのため初対面の人にはどうしても恐怖感を与えてしまう。今回も例外ではなかった。
気まずい雰囲気に耐えつつ、食事を済ませると食堂を出て支給された部屋へと向かった。
表札に「キラ・ヤマト&ライ・ガーキンス」と書いてある。どうやら先ほどのキラ・ヤマトという少年と相部屋のようだ。
(パイロット同士の相部屋か、こういった所はこの世界でも同じなのか。)
そんな事を考えているとキラ・ヤマトが部屋に入ってきた。否、入ろうとした。どうやら部屋を間違えたと勘違いしたようだ。
「ここは君も部屋でもある。間違いではないぞ。」
そうライが言うとキラは恐る恐る部屋に入ってきた。
「(怖がられるのには慣れているが、やはりいい気分ではないな)相部屋だそうだ、よろしく頼む。」
「よ・・・よろしく御願いします。」
「では、私は寝る。何かあれば起こしてくれ。」
「分かりました。」
≪side out≫
ライが寝るのを見届けるとキラは音をしないように気をつけながら部屋から出て行った。移動先は・・・フレイ・アルスターの部屋であった。
第3話 上げてみました。
修正してみましたが・・・微妙ですね(苦笑)
感想・改善すべき点など有りましたら書き込み御願いします。
>>crossAC
先ずはGJ 好みの問題も含めて幾つか。
「○○。」のように、鉤括弧 」 の前には 、や 。 を入れない。
……(三点リーダー)や――(ダッシュ)は、普通偶数個ずつ使います。
このSSはライさんの一人称なので、地の文は全てライさんの考えたことです。
ライの考えたことを表すのに、括弧(と)で括る必要は無いと思います。
ついでに、これは読む人の環境が一定ではないので一概には言えないのですが、一行が余りに長すぎるとこのよ
うに言葉の途中で改行してしまい、それが少しずつ読み手のストレスになります。
目安は大体四十から五十文字で一行だと思います。
ルームメイトが寝付いたら即座に夜這いを掛けるキラに笑わせてもらいました。
続きは結構楽しみです。
149 :
109:2007/02/20(火) 23:08:11 ID:???
以前の悪口雑言、頭を冷した今猛烈に反省している、すまない。
ただ結果追出したような物なので(いくら自ら引いた形になったとは言え)ソコントコに怒りを覚えた事は後悔はない。
銀英伝モドキは面白かった
――第4機動艦隊旗艦『クサナギW』艦橋――
私たち、『第4機動艦隊』は奪還に成功した拠点衛星基地『ヘーリオス』を後にし、
全艦隊を第二の進軍目標であり、敵に占拠された拠点衛星基地『ポラリス』へと向けて出発しました。
その間に司令は、先に多数の先行偵察部隊を放ち、入念な情報収集を行っていたのでした。
司令曰く、『彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず』だそうです……
その意味は、敵を知り尽くし、自分を知り尽くして戦に臨めば、100戦100勝、間違いなし、だそうですよ。
『統一戦没』前の『前代表』時代のオーブは、それを無視した為に一旦は、滅んだといいます。
『何とかなる』という柔軟性も一部では必要ですが、だからといって、
全く準備なしに臨むのは、『無謀』と言われても仕方がありません。
司令は、収集した情報を解読してから、臨機応変に戦術を立てるみたいです……が、
私は、こった肩を大きく回しながら、うーんと猫のように背伸びしました。
――ああ――疲れた!!もう!
……私は、司令の方へと視線を向けます。すると、そこにはコンソールデスクに両肘を載せて、
手を組み顎を載せて、先程から『ずーっ』とぼんやりと思案し続けている司令の様子が目に映りました……
……ちょっと、ムッとしますね――
そう――実は偵察部隊の編成と出撃指示は、私が全部やったんだから!
肝心の司令の方と言えば、簡単に『偵察部隊を先行させるように』としか、
私に指示を出していなかったりするのです!!
私が、必死に偵察部隊の編成や部隊発進の確認を行っている間、
司令はずっーと、あの姿勢のまま、ぼんやりとしていた訳なのです!
もう、『ご苦労様』とか『よくやったな』とかくらい言って欲しいもんです!!
……先程、私が偵察部隊の出撃を終えたと報告すると、司令は、『ああ――』としか言わなかったんだから!
くさくさして、『どよーん』と疲れきった私は、自分で自分のお茶を入れる事にしました。
ふと、鏡で自分の顔を見たら……目の下に隈が出来ていた……お化粧し直さないと……
ヨロヨロとしながら、私は隣にある司令部用の給水室へと向かい、お茶を沸かそうとします……
「――うぇーい、疲れた……」
そう言いながら手早く、簡易キッチンで『ポッ、ポッー』とお湯を沸かして、
戸棚から大きく『寿』という字が描かれた、変わったカップを取り出し、お茶を注いでいました……そうしたら、
――何時の間にか、カップを二つ用意していた自分に気が付きます……
……まぁ、いいでしょう。優しい私は、あんな横暴な上司にでも、お茶入れてあげることにします。
――う〜んと濃くて熱いやつをね……ククククッ……
私は、お盆に二つのカップを載せて艦橋へと戻ると、真っ直ぐに司令がいる指揮官デスクへと足を向けました。
そうしたら……まだ司令は、同じ姿勢でぼんやりとしていやがったのです!そこで私は大声で、
「――司令!」
と、声を掛けますと司令は、目をパチクリさせ、組んでいた両肘をデスクから離してから、
指揮シートごと私の方へと向き直りました。
そして、いつも付けているバイザーを顔から外すと、パチクリと私の方を眺め、
「あ……?うん」
と、寝起きのような声を出してきたのです……
その様子を見て、マスマス、ムカムカとしてきた私は、やや乱暴な手付きで、
それでも一滴も『寿』カップの中身をこぼさずに、
「――お茶です!」
と、どーんっ!とコンソール前のデスクへと、どでかい『寿』カップを叩き付けるようにして、
丁寧に置いて差し上げました!ふん!
それを見ていた、司令は、一瞬、面食らった様子でいましたが、
お茶の入ったカップを見ると、やや嬉しそうに、
「お……悪いな。気をつかせてしまった……か?」
と司令の言葉は途中で途切れました。
その理由は、やはり『寿』カップの中身を確認したからでしょう。
普段は泰然自若の厚顔無恥の司令の顔が、見事に引きつり始めましたよ……
「いーえ。どういたしまして!」
私は、意識して最高の笑顔で司令に答えてあげました。
ふむ、『ぐつぐつ、ごぼごぼ』……そういう音がしていますね。カップの中は――
「……何かおかしな音がしているんだけど……?」
「――気にしないでくださいな。さっ、さっ!一気にグッと飲んでみてくださいよー!」
舌が焼け爛れるような、おいしーお茶ですよーと言いながら、更に私は司令にお茶を勧めました。
そうしたら、引きつった顔の司令は小さな声で、
「復讐か……?これは復讐なんだな……?」
と、可笑しな事を呟いていますよ。そうして、
「……もう少し冷ましてしてから飲むよ……」
と言うまでに、少ぉーしだけ間がありましたとさ。
――復讐は、ここまでにしておきましょう。可愛そうですからね。やっぱ私は優しいな……
そこで、私はお盆を胸に抱きつつ、司令に向かって、
「で……司令は、さっきからずっと『ぼ〜』としてましたよね……?
……勤勉で『可愛い』副官だけを一人だけ働かせてどうするんですか?」
そう言いましたら、奇妙な顔で司令は、
「……『可愛い』……?」
と呟きます。そこ!何で疑問符なんですか?!
「――何か?」
「……いーや、何でもないよ」
そう言いながら、司令は『寿』カップを持ち、一口、『ズズッ』と啜ります。
――口は災いの元と、百戦錬磨の司令なら良くご存知だと思いますけどね。
煮えたぎったお茶は流石に、冷めてきて、丁度良い温度になったみたいです。
司令は、『グビグビ』と喉を鳴らしながら、お茶を一気に飲み干していきました。
「まぁ、何だな……」
と、呑み終えると司令は、渋い顔をしていました。
そうして、『うぇー』と喉を鳴らすと、一つ咳払いをしました。
「はい?」
私はお茶がそんなに好みの味でしたか?と、尋ねようとした矢先に、
「……私は、現在までの戦況を眺めながら、今までずっと考えていたんだがな――」
と、突然、司令は真面目な話題へと入ってきました……現在の戦況についてですね?
「で、どうなんですか――?」
私は、身を乗り出して、司令の言葉の続きを待ちます。
司令は、額にかかった髪を手櫛で後ろにまとめ上げると、改めて愛用のバイザーを掛け直しました。
そして、指揮シートにもたれ掛かりながら、
「君はどう思っているかしらんが――敵軍は、――『ラクシズ』は『オーブ領内』宙域における戦力配備について、
少々、詳し過ぎやしないかと……そう、私はずっと考えていたんだよ――」
と、胸の内を吐露してくれたのでした。ですが、後で思えば、それは司令が私に語ると言うよりも、
司令ご自身が、」自分自身を納得させる為の一種の代替行為だったと思います。
「――そう云えば……言われて見れば、確かにおかしな事ですよね……?」
私も首を傾げながらも、その司令の疑問には賛同します――司令は続けて、
「……開戦の初っ端で陥落(お)ちた<ヘリオポリスU>もそうなんだが……」
「……」
と、私はコクコクと無言で頷きます。
「――そう、いくら奇襲を受けたとはいって、一日すら持ち堪えられないとは……
――あの戦巧者のソガらしからぬところだ……」
「……はい」
と、取り合えず私も余計な事は言わずに、司令の独白を拝聴しています。
<ヘリオポリスU>と第2艦隊は、一日と持たずにやられてしまいました……
私は単に『ラクス軍』が強かったからだと思っていたんですけど……どうやら司令はの考えは、違うみたいですよね?
「……第一に、定期的に防衛ポイントや駐留ポイントを変更している筈の
第2艦隊の戦略行動を、なんでこうも容易く『ラクシズ』は、行動位置を補足できるんだ――?」
「――奇襲されたという事実自体が、解せない……と言うことですか?」
と、私は司令との会話の合間に一言だけ、自分の意見を鋏んでみた――
そうしたら、司令は感心したかのように私に向かって、
「お、少しは頭が回ってきたな?――ああ、その通りだ……」
ぶー!それは酷いですよ司令!
そんな、私の無言の抗議を無視するかのように司令は、
「――なら、やはり、考えられる事は一つ……」
バイザーの奥で司令のその眼光は、鋭く凝縮しました……
私がその様子に息を呑んでいると、
「……『ラクシズ』は、領内宙域の『防御システム』の体制の穴や癖を見切っている――そうとしか考えれられない」
――司令は、厳しい表情と態度で断言しました……その迫力に圧倒されながら、私は、
「……どこからか、情報が漏れているのでしょうか?」
と、改めて司令に聞き返します。ですが、司令はそれに対しては即座に、
「――いや。そこら辺の管理は、あの『鋼のミナさま』が、しっかりとガードしている筈なんだ。
そんな『重要機密』が、そう簡単に漏れているとは……ちょっと考え難い事だな……」
と、否定的見解を述べます。
あれ?おかしいです?ふと疑問が湧き上がります。
確か……司令とサハク首席補佐官は……
「そのお話が本当だとすると、……司令は――サハク首席補佐官をずいぶん信頼していますよね?
噂じゃ、司令と補佐官の仲は険悪な関係で、『とぉっても』仲が悪かったと聞いてはいたんですけど……?」
と私が余りに不思議と思い、思わず不躾な質問してみたら、司令は苦笑しながらも、
「――『アレ』が居たからこそ、5年前に私は、安心して『政界』や『軍』から身を引く事ができたんだよ……」
と仰いました……むむ。何か意味深です。
うーん……自分なりに整理いたしますと、
――サハク補佐官と司令は実際に、世論の噂とは違い仲は悪くない。
――その司令は、自分がいなくなっても大丈夫のように、5年前にオーブを万全な体制に整えてから身を引いた……
と、云う事になるのでしょうか?
「――なら……」
「どうした?」
ですが、その司令の顔を見ると私は、何となくその事を言いそびれてしまい、
「……敵前衛部隊の総指揮官はあの『ディアッカ・エルスマン』と聞きました。
彼なら、オーブの事も通暁しているかもしれませんよ……?」
と私は別の事を口にしていました……そして、司令の方は、
「――或いは……それ以上に、オーブについて熟知している人物が『ラクシズ』に加わっているのか……?」
と、私の先を読んだように続けて来たのです……そして、
「――もしかしたら、『裏切り者』がいるんでしょうか……?」
私は一番、嫌な事を遂、口にしてしまいました……
オーブの仲間を疑う事は、最低の行為だと自分でも思いますが……
疑念がどんどん自分の中で渦巻いてゆきます……何か嫌だなぁ……
私のその暗い疑念に対して司令は、暫くの間、黙っていましたが不意に、
「……わからん。私は推測だけで、物事の勝手な判断はしない主義なんでね。
……何か確証がないことにはな……」
と、司令は溜息を吐きながら、そう直接の回答を避けます。
推論だけで戦争をやるのは、なるべく避けたい――
そんな事が、何度もまかり通れば、『メサイア戦没』の二の舞となってしまう――
「……それにどっちにしても、な。このまま敵の手の内が分らない事には、厄介だ――」
そして、指揮シートに深く腰を下ろし、両腕を組みながらその場で考え込んでしまいました。
私が、そっと、司令の顔を覗き込むと、バイザーの中の司令の瞳は鋭く細められ、
強く鋭い視線は、虚空の一点を凝視していました。
私は、軽く息を呑んで、静かに側を離れます。
このように『思考時間』へと入る司令の側には、なるだけ近付かないようにしているからです。
そう、今のところ、何もかもが、推論の域を出ないのです……
そうして、不安と疑念を抱きながらも、戦いは激しさを増してゆくのでした……
>>続く
>>crossAC(カメレスでごめん)
うむ。これだけ書ければ及第点は……まだあげられません。
これは書く人間の好みの差もあるので。批判や批評ではないと受け取って欲しいですね。
===以下本文抜粋====
『私は【サイサリス】の手足を動かしながら軽くブースターを吹かしてみる。少しの間動かしているとAIが結果を知らせてきた。
どうやら現在の時点では特に問題はないようだ。プログラムを終了させ、コックピットから出た私にタクトが声を掛けてきた。 』
=============
これを失礼ながら、私流にちょっといじらせてもらうと、以下のようになります。
『【サイサリス】の四肢を動かし、各部ブースターをブリッフィングさせてみる。5分もすると試験結果をAIが告げてきた。
現在の時点では特に問題はないようだ。 自己診断を終了させ、コックピットから出る。昇降リフト上の私にタクトが声を掛けてきた』
ブリッフィング動作は、まあ、車とかの用語ですが。(自動的にエンジンを吹かして回転をあわせてくれる)
1)ときには 「私は」を省略してもいい。
語り手が一人称のときは、頻繁に「私は」が出てくるとテンポが悪いです。
前後のつながりの状況や、他に登場人物がいない場面では省略してもいいでしょう。
2)状況にあまり影響しない形容や描写は、思い切って省いてみる。 複数の文章を連続でつなげずに、時には短く区切る。
あいまいな表現や、長く繋がった文は、引き締まらなく見えることがあります。
3)時には小難しい用語だって使ってみる。(マテ)
間違って使うと目も当てられないですが。 雰囲気をかもし出せるということもあるわけで。
今回は適当にそれっぽいのを充ててるだけで、間違っていますけど(おひ)
…私もえらそうに書ける身分ではないですが。参考まで。
>>150〜
>>157 GJ
初心者の私が言えることは・・・なかったので(あるはずが無い)、これだけを「投下お疲れ様でした。これからも頑張って下さい。」
>>149 意見ありがとうございます。
第4話からそれも考慮して改造してみます。
>>158 いえいえ、うれしい限りです。未熟なのは自分自身で分かっていますので(苦笑)
何か他にも問題点がありましたら(山済みの気もするが)指摘御願いします m(_ _)m
161 :
通常の名無しさんの3倍:2007/02/21(水) 01:20:11 ID:IsMOKeth
>>戦史種
お疲れ様。
ひょっとして書きながら落としてるの? SS投下は、一旦メモ帳などにまとめ書きしてからの方がよいですよ。推敲もし易いですし。
総評としては。『必要以上に空白行が多い』です。 読みやすくする配慮かもしれませんが、文ごとに空白行をはさむのはよくないです。
その空白のせいで、文のとおりが悪くなっている箇所もあります。
文頭に「と、〜」で始まる表現が多すぎます。 表現の仕方の工夫と、推敲をいまよりも、もう少しだけした方がよいです。
こう書いても、何が何やらだと思いますので。
===以下、引用===
司令は、額にかかった髪を手櫛で後ろにまとめ上げると、改めて愛用のバイザーを掛け直しました。
そして、指揮シートにもたれ掛かりながら、
「君はどう思っているかしらんが――敵軍は、――『ラクシズ』は『オーブ領内』宙域における戦力配備について、
少々、詳し過ぎやしないかと……そう、私はずっと考えていたんだよ――」
と、胸の内を吐露してくれたのでした。ですが、後で思えば、それは司令が私に語ると言うよりも、
司令ご自身が、」自分自身を納得させる為の一種の代替行為だったと思います。
==========
これを私が気になった部分を勝手に直してみると、以下のとおり。(斜め読みなので、意図と違う解釈・表現していたらごめんなさい)
===========
司令は、額にかかった髪を手櫛で後ろに撫で付けながら愛用のバイザーをかけ直すと、口を開きました。
「君がどう思っているかは知らんが。敵軍――『ラクシズ』が、『オーブ領内』宙域の戦力配置について、 少々詳し過ぎやしないかと。
……そう、私は考えていたんだよ」
指揮シートの背もたれに身を預けながら、胸の内を明かしてくれたのでした 。後で思えば、それは司令が私に語ると言うよりも、
ご自身を納得させる為の儀式だったのかもしれません。
===========
まあ、『こんな風に推敲する奴もいますよ』程度で見てもらえれば。
該当する掲示板があるけど、練習のためにこっちに投下するのはアリ?
>>162 いいんジャマイカ?
むしろ、そういう人の練習場になって此処で自信をつけて
他の板でも新作を書いて欲しいところだし
真面目な返信ありがとうございます。
投下は夜の方になると思いますんで宜しくお願いします。
>>20 まとめ見て来たけどcross GRとLRCEは削除した方がよくないかな?
作者が削除してくれって言ってるし、LRCEさんはまた向こうでやるみたいだし。
ライがアークエンジェルに来た数日後、アークエンジェルの艦長室ではナタルがある報告をする為に来ていた。
どうやら物資が不足しているという報告がナタルに来たらしい。
報告を聞いたマリューは町で物資を購入する事にした。そしてそのメンバーをナタルと共に決めていった。
不足している物資のリストに避妊道具があることにマリューとナタルは頭を痛めたが、それは又別の話である。
数時間後、ライとカガリとキラの三人は化粧品などの日用品を買うために町を歩いていた。
ライとキラの二人はなにやら疲れたような感じがしていた。
女性用下着売り場や化粧品売り場などにも連れ回されているのだ、仕方ないようにも思える。
何故その様なところへいく事になったかと言うとフレイの報告書に書いてあったからである。
ちなみにカガリも自分の分を買っていたが、ライとキラはその事を知らない。
(たかが買い物に何故これ程まで疲れるのだ。それ以前に何故この様な事になったのだ。)
そんな事をライが考えている内にカガリは今居る店で揃う品を買い終えた。そしてつい先ほど購入した物が入っている買い物袋をキラに渡し次の店に移動しようとした。
「それじゃ、次行くぞ。」
「まだあるの? 少し休ませてよ。」
「まったく男の子なのにだらしないな。」
「(荷物全てを男に持たせてそのセリフは少々問題があると思うぞ)もう正午も過ぎている、休憩のついでに食事をするのはどうだ?」
「それもそうだな・・・。では、あの店で食事をしよう。」
そうして3人は近くにあった店に立ち寄った。
そこでキラとカガリは【ドネル・ケバブ】という料理を注文したようだ。
それに対し、報酬をまだ受け取っていないライは飲み物だけを注文していた。
料理が持ってこられるとカガリはケバブがどんな料理なのかをキラに説明していた。
そして説明を終えたカガリはキラのケバブにソースを掛ける事を宣言し、実行しようとした。
そこへ派手な服を着た男が現れそれを強引に止めた。その事にカガリは怒りを感じたのか口論し始めた。
(下手に関わると面倒な事になりそうだな、このまましばらく放置しておくか)
そう思ったライは口論の止めに入らずに、注文した飲み物を味わいながら飲んでいた。
しばらくすると隣で何か破裂するような音がしたのでライは何事かと思い音のした方へ目線を向ける。
するとそこにはソースまみれになったケバブと呆然とするキラ・カガリ・男の姿があった。
さすがに此処まで来るとライも黙っていることは出来ず、注意する事にした。
しかしライが注意しようと口を開いた所で、銃声が鳴り響いた。
驚いたキラとカガリを他所にライと男はすぐさまテーブルを横に倒し、盾の代わりとした。
その際キラのケバブがカガリの頭に落ちたが、その事を気にしている余裕など無かった。
「蒼き正常なる世界のために!」
(どうやらブルーコスモスのようだ。となると近くに居る誰かがコーディネーターと言う事になるが・・・)
そんな事を考えているとカガリと口論した男はライとキラに話しかけて来た。
「なるべく身を隠していてくれたまえ。これは私の問題だ。」
それを聞いたライ達はテーブルの陰に身を隠していた。
ところがキラは何を思ったのか飛び出し、突撃銃を構えている敵に借りた拳銃を投げつけ、敵を蹴り倒した。それが合図だったかのように銃声が鳴り止んだ。
そしてカガリと口論していた男が蹴り倒された敵に接近して行き、持っていた銃の銃口を敵に向け質問をした。
「君達の所属は何だ?」
「コーディネーターは滅べばいいのだ!」
そう言い倒れている敵は隠し持った拳銃を撃とうとした。しかし、それよりも早く撃たれ死んでしまった。
「隊長、ご無事ですか?」
「大丈夫だ。それよりもすまないね、君達を厄介事に巻き込んでしまって。」
「気にしなくてもいい。」
「そうだ、君たちをこれから招待しようと思うのだが構わないかね? もっともそのままでは帰れそうにないと思うがね。」
そう言いカガリの方に目線を向けた。それに釣られ私も同じ方向に目線を向けた。
するとそこにはソースまみれのカガリの姿があった。
「(確かにこれではそのまま戻る事は出来ないな)どうやらそのようだ。その招待受けるとしよう。」
そうして私達は車に乗せられ【砂漠の虎】の活動拠点へと案内された。
案内された場所は宮殿のような場所だった。
そしてライとキラは応接室へ案内された。カガリはどうやらシャワールームに案内されたようだ。
「特性ブレンドコーヒーと普通のブレンドコーヒーどちらを飲む?」
「普通ので御願いします。」
「(緑茶は・・・、無いのか)私は特性のを頼む。」
「了解〜。 こう見えてもコーヒーには凝ってるんだよね。」
案内された部屋には高価な家具が置いてあった。
その部屋の隅に飾ってある化石を見たライはそれについて聞いてみた。
「その化石は何だ?」
「これが気になるのかな? これはEvidane01だ、実物を見た事はあるかね?」
「いや、私は見たことがない。キラはどうだ?」
「僕もありません。」
そうしている間にコーヒーが出来上がったらしい。
キラは何とも言えないというような表情をしていたが、ライは少々驚きつつも味わいながら飲んだ。
どうやらキラはコーヒーはあまり好きではないようだ。
「ふむ、そちらの男性には気に入ってもらえたようだね。」
「良い入れ方をしているな。」
「ありがとう。そうそう言い忘れていたけど、この部隊を指揮している【砂漠の虎】ことアンドリュー・バルドフェルドとは僕の事だ。」
(やはりそうか・・・。だがまだ何もしてこないところを見ると今回は接触をしに来たと捉えるべきだな)
そんな会話をしている扉の外から声がし、二人の少女が入ってきた。
入ってきたのは御上品そうな格好をしたカガリとバルドフェルドと親しそうにしていた少女だった。
「お・・・女の子。」
「てめぇ!」
「え・・・えっと、だったんだねって言おうとしたんだよ。」
「・・・それじゃ一緒だろうが。」
(気にはしているのだな)
「えっと・・・どうかな? 似合うかな?」
「似合っているとは思う正直ここまで化けるとは予想外だった。」
「あ・・・ぅ・・・(褒めたいけど、言葉が思い浮かばない・・・どうしよう?)」
キラが黙ってしまった事にカガリは少々落ち込んでしまった。だがキラが黙ってしまったのも無理はない。
カガリは黄色を主にしたドレスを着ていた。この服装だとカガリはどこかの令嬢のように見えた。
その間にバルドフェルドはキラが飲んでいるコーヒーと同じ物を用意し、カガリに渡した。
「お前は本当に【砂漠の虎】か? 何で人にこんな格好をさせる? それとあれはお遊びか?」
「質問は一度に一つにしてもらいたいのだが、まぁいい。
最初の質問だが、先ほど君の連れにも言ったが、僕がこの部隊を指揮する【砂漠の虎】だ。
次の質問だがそのドレスを選んだのはアイシャだ、私ではない。
最後の質問だが、君が言うお遊びの意味が分からないから答えようが無い。」
「変装して町に出たりする事だよ!」
「それは、遊びと言うより・・・暇つぶしかな?」
(平和なのかそれとも部下が優秀なのかな・・・どちらだ?)
そんなやり取りをしているとバルドフェルドが急にこう切り出した。
「少年、君はこの戦争どうやったら終わると思う? 連合のMSのパイロットとしては。」
「何でその事を?」
(誘導尋問に引っかかってどうする。素直なのは良い事だが、レジスタンスとしては問題だな)
「そんな事よりも質問に答えてもらおうか。
戦争には制限時間も得点も存在しない。スポーツやゲームではない。そうだろう?
ならどこで決着をつけるべきだと思う?」
「・・・分かりません。」
(確かに戦争は時間制限も得点も存在しないな。)
「そちらの彼はどう思っているんだ?」
「そうだな・・・。当初の目的を達成できれば戦争は終了すると思うのだが、この戦争は簡単には終わらないかもしれない。」
「何故そう思うんだい?」
「この戦争はコーディネーターとナチュラルの戦争に近い。
おそらくこの戦争、どちらが勝ったとしてもいずれ又戦争が起こる。」
「なるほど、そういう意見もあるのか。」
「あくまで推測だ。必ずそうなるとは限らないが、可能性は十分あるだろう。」
「そうか・・・。すっかり話し込んでしまったね。表に車を用意させる。次は戦場で会うことになるだろうな。」
「こちらとしては避けたいところだが、そうなるだろうな。」
車に乗り込む時、カガリの服は返却された。ドレスはそのまま貰う。
こうして三人の買い物は終わりを告げた。
アークエンジェルではカガリがなかなか戻らない事に慌てているキサカが居た事は、又別の話である。
第4話投下してみました。
感想・改善点などがありましたら書き込み御願いします。
改訂など努力はしてみますが、上手く書けるかは・・・分かりません(苦笑)
では、御言葉に甘えて…
プロローグだけでも投下します。
「あーあ、つまんねぇ……」
小型戦闘機『コア・スプレンダー』パイロット、シン・アスカは現在、アーモリー・ワン外部のパトロール中である。
ぶっちゃけ暇だった……
「ハァ、こんな事をするためにザフトに入った訳じゃ無いのに……」
彼はため息を漏らす。
戦争で、家族を失った彼は、何もできなかった自分を呪い、力を求めてザフトに入隊した……
しかし、戦争が集結して2年、未だ水面下での小競り合いはあるものの、表立った戦闘などは行われていなかった。
せっかく努力の末に『赤服』をもらったのに、これでは意味がない……
「しょうがないじゃない、戦争起きないんだし……それに、何事も平和が一番!!」
僚機の人型兵器『ザク』から通信が送られる、彼女、ルナマリアの言うことはもっともだったが、シンは納得がいかなかった。
「なぁ、レイはどう思う?」
シンはもう一方のザクのパイロット、レイに通信を送る。
「ルナマリアの言うことは正論だが、世界が今平和だとは言い切れないな。
現にこうしている間も、連合がどこかのプラントを破壊しているかもしれない……」
「ちょ、ちょっと止めなさいよ」
レイが脅すと、ルナマリアが反応する。
「そうならないためのパトロールだ、わかったかシン?」
レイの言葉にシンはしぶしぶ頷こうとした瞬間……
ゴゴゴゴゴ……
突然の振動が三人を襲う!!
「な、なんだ!!」
シンが慌てた声を出す。
「くそっ!!、レーダー使用不可、通信不能……どうしたというんだ!?」
レイが珍しく狼狽の声を出す。
「あれを見て!!」
ルナマリアのザクが指を指す方向を見る。
「宇宙が……」
「割れる??……」
何が起きているかと聞かれれば、そうとしか形容出来ない。
宇宙空間が、文字通り割れているのだ!!
その瞬間、とてつもない衝撃を受け、彼らの機体は吹き飛ばされた。
シンが最後に見たものは巨大な黒い船体にドリルのついた戦艦……彼らの世界では「クロガネ」と呼ばれた戦艦だった……
172 :
162:2007/02/21(水) 17:43:20 ID:???
頑張って書いてみました。
スパロボクロススレは余り人が居なさそうなんですよね……
トロンベ兄さんクルー!(・∀・)
どの機体がトロンベになるんだ!?
>>171 投下お疲れ様です。スパロボ結構好きなのでがんばって欲しいです。
クロガネって所からするとトロンベはヒュッケバインMk-V・・・?
あとエルザムと部下の日常を期待してみたり(笑)
いや・・・もしかしたらOG2の方か?!
えーとね、スネーク……じゃない、
>>162殿。
あくまで個人的意見というのを念頭において、気になった点をば。
・擬音語は表記しない
これは上の分で言う「ゴゴゴゴゴ」の部分です。大体の場合、こういった音は
「地鳴りのような音」みたいに別の音に例えてみたり、「身体を芯から揺さぶる重低音」
などと「どんな音か」を言葉で表現するのが通例だと思われ。
スレの雰囲気とかによってはむしろ入れたほうがウケが取れたりするけどギャグ重視ってほど
ぶっ飛んでるようには見えなかったので。
…ところで、宇宙なのに音が聞こえてるのは何らかのエネルギー放射で機体が揺れてるって
解釈でいいんだろうか。
・クエスチョンマークとエクスクラメーションマークは全角で一つずつ
これははっきり言って嗜好の問題です。読むほうも俺みたいなスパコー級神経質でなければ
気にしないと思う。それでも、半角で連続入力されていると少々読みにくく感じます。
理由としては『文末と記号の間に空間が無いから』です。あまり単位面積あたりに詰め込まれた
情報量が多すぎると、小説に限らず読む気を削がれます(あなたのはそこまで極端じゃないです)
後者の「一つずつ」という所ですが、これは単に自分の読んでる小説で記号の連続を
見た覚えが無いためです。ギャグ系・萌え系のラノベで多用されてるからというのも大きい。
総じて二つ以上これらのマークが並んでいると、叫びや疑問が「胡散臭く」感じてしまいます。
例えばクルーゼの台詞で
「それがヒトだよ、キラ君!」と「それがヒトだよ、キラ君!!!」では
なんか後者の方が必死っぽく感じてしまわないでしょうか。嘲弄の台詞なのに。
注意してたのに、書き終えたらやっぱり偉そうだな俺…。
まあ、あくまで参考程度です。自分の書式に合わないと思ったらヌルー推奨。
どもども名無しです。
ふと思ったのですが
今まで意図的に「!」や「?」の数を一つにしてきましたが、2個使うべきなのでしょうかね?
それと会話文でないところでもなるべく使わないようにしてましたが、これからは使うべきなのでしょうか?
ちょっと気になったので書き込みをしてみました。
意見などあれば書き込み御願いします
だから該当スレがある奴は該当スレに行けっつーの!
>>177 ここにはそんなルールはない、SS書きたい職人さんならだれでもウエルカム。
お前が出てけ。
断る。スレ違い職人が出ていけ
180 :
162:2007/02/21(水) 21:10:36 ID:???
どうも
>>162です
皆さん様々のご指摘サンクスです。
これを元に、続きを書き始めようと思いますが、引き続きこのスレに投下してもよろしいでしょうか?
約一名馬鹿がいるけど、投下しても大丈夫だろ。
該当スレに投下せよ
雑音はスルーして投下よろ。
全く。何故該当スレがあるのに此処に投下するのだね?理由を聞かせて貰おうか
>>185は何故こんなに物言いが傲慢なんだろうか?
理由なぞない。さあ、該当スレに投下しい理由をお聞かせ頂こうか。
新人職人さんへ、粘着さんがいますがスルー技術を身につけるため
と思って頑張ってください。
色々なスレで様々な人が居ます。まさに練習と思って負けないで
投下しましょう。
さあさあさあさあ理由をお聞かせ頂こうか
>>187 該当スレがあるとは知らなかった。
もし良かったら該当スレのアドレス貼り付けてくれ、そうしたらそちらに行くつもりだ。
練習が足らんと思うならいいんじゃないの
練習は終わったと思うなら巣立ちすればよし。
自分で判断するか、住人の判断を仰ぐかは自分で決断するのがよろし
>>190 もちっとスルー力を身につけた方がいいと思われ。
まあ、自信つくまで幾らでもここで練習してくださいな。
ここは元々、スレがあろうとなかろうと自信の無い人が練習に使えるとか、
事情があって該当スレで書くのが難しくなった人が投下するとか、
そういう趣旨の場所だったはずだから。
>>190 待て、まだ時期尚早だ、ここで経験を積むんだ。
194 :
162:2007/02/21(水) 22:19:34 ID:???
第二話その1
夢の中で俺は家族と港を目指して走っていた。
『あの日』の夢だ。
「シン!!もうすぐだ、」
「マユも頑張って!!」
両親が俺達兄妹を励ましつつも、走る速さは緩めない。
途中、妹が斜面に携帯を落とす。
「俺が取ってくる!!」
ダメだ……行くんじゃない……
俺は叫ぶが、その声は俺には届かない……
俺が妹の携帯を拾い上げた瞬間……閃光と轟音……
俺は吹き飛ばされ、木に叩きつけられる。
意識を取り戻した俺が見たものは、吹き飛ばされた両親、妹の片腕と……
「気が付いたのか……食事はできるかね?」
……ヘンなグラサンをかけた妙な男の顔だった……
「うわっ!!」
少年、シンは思わずベッドからずり落ちそうになる。
「大丈夫かね?、元気なのは解ったが、余り動かない方が良いと思うが?」
その奇妙な男はシンに対し、冷静に諭す。
(あんたに驚いたんだよ!!)
シンは心の中で男にツッコミを入れつつ、辺りを見渡し、
「ここはどこだ!?、あんたは!?、それに俺の仲間は??」
男にまくし立てる。
「少し落ち着きたまえ、私の名前はレーツェル、この艦の名は『クロガネ』、そして君の友人達は食堂で君を待っている」
よろしいかな?とまたもや冷静に対処する。
「詳しい話は後だ。さっきも聞いたが、食事は出来るかね?」
その言葉に、シンは自分が空腹なことに気付き、顔を真っ赤にしながら頷いた。
男、レーツェルは嬉しげな顔をしつつ、
「久しぶりの客人だ。腕に寄りをかけて作ろうではないか」
と意気揚々に、部屋を後にした。
後に残されたシンは、
「あの人が作るのか?
なんかイヤだなぁ……」
と、とっても失礼な事を呟いていた……
どうやら医務室らしい部屋をでて、歩き始める。どうやら重力が働いているらしく、シンは普通に歩くことが出来た。
この艦の技術に驚きつつも、シンは食堂を探して歩いた。
数分後、
シンはふと、扉の前で足を止めた。
その扉には『ハンガー』と書かれている。
シンは興味を押さえきれず、扉をくぐる。どうやらロックはしていないようだ……
キャットウォークから格納庫全体を見渡せる位置に移動すると、シンは驚きに我を忘れていた。
自分達の機体の他に、今まで見たこともない様なMSがずらりと並べられているのだ!!
否。自分が力で見つけて見せよ!他人を頼って如何にする!
>>195 ウゼエから黙れ。
どこに投下しようが職人の勝手だ。
162さん 俺のせいで中断するような事になって申し訳ない。
>>195 たとえどんな事だろう投下している途中で分断するような事はどうかと思うぞ
それとアドレスが提示しないのなら無視させてもらう。
199 :
その2:2007/02/21(水) 22:47:33 ID:???
そのどれもが、黒に赤と黄色というカラーで統一していた。
シンはたまらなくなり、キャットウォークから、格納庫に降り立った。
シン達世界の技術とは全く異なった技術で作られている起動兵器達を、シンは童心に帰ったような目で見て回った。
少ししてシンが突然足を止めた。
格納庫に一際巨大な扉があり、大きく
『GG』
と、書かれており、その真下に言葉が書かれている。
「……『この力を、地球を背負い立つ者に授ける。』ビアン・ゾルダーク」
ふと、背後に気配を感じる……振り向くと、この船に似つかわしくない、いたって普通の格好をした青年が立ち、大扉に書かれた文字を読んでいた。
「俺は会ったこと無いけど、凄い人だったらしいぜ……」
青年はシンに語りかける。
「お前は、レーツェルに助けてもらった……」
「シン、シン・アスカだ。お前じゃない」
青年の言葉を切り、シンは名乗った。
「そうか、シン。俺はトウマ、トウマ・カノウだ。お前も日本人なのか?」
ニホン?、シンの記憶の中にそんな国の名前はなかった。
シンが首を傾げていると、トウマは
「そうか、こっちには日本は無いのか……」
と、ばつの悪そうな顔をしたが、シンにはその言葉の意味がよく分からなかった……
「ともかく、レーツェルが探してたぜ、食堂なら連れてってやるよ。」
と、シンは青年、トウマに半ば強引につれて行かれてしまった……
(地球を背負う者の『力』……か)
シンの頭の中では、未だ見ぬその『力』の正体を夢想していた。
続く?
つーか投下に間を開けすぎwww
トウマがいるということはOG世界から来たんじゃないのか!?
それともOG2の未来?
先ほど投下させて頂いた
>>162です。
皆さんの疑問も最もなので、答えさせて頂きます。
私は、スパロボもガンダムも両方好きなのですが、
どうやらこの掲示板内のスレでは、余り感想や、問題点などを話す流れではありませんでした。
私は、SSの練習をしたいために、このスレにてあえて、上記のクロスSSを書かせて頂きました。
ご不満ならば、自分のクオリティが十分になり次第スレから退場させていただきますので、それまでは、生暖かい目か、白けた目で見守って下さい。
>>202 いや約一人がわめいてるだけなので気にせず続けてくれ。
>>201 『スパロボキャラ』
とのクロスです。
一応第三次の後という設定です。
パソコンぶっ壊れて、わざわざ携帯からスマソ
>>194>>199 GJ 投下お疲れ様です。
どういった影響をCEに与えるのか、気になる所です。
それと勘違いの連鎖が起こっている見たいなので出来れば
>>176に関する事はスルーしてください。
>>201 一応第三次の後という設定です。
クロガネは活動の拠点が必要だったためあえてだしました。
パソコンぶっ壊れて、わざわざ携帯からスマソ
謙虚なのはちっとも美徳じゃねーぞ。荒らしに釣られないスルースキルをまずは身につけるべし。
いつか別のスレに投下するようになったとき、変なのが湧いたとしてソレに一々気にしてたらスレが潰れる。
他のサルファ主人公にwktk
では自分も続けて投下しますね〜
【砂漠の虎】ことアンドリュー・バルドフェルドはアークエンジェル討伐の為の出撃準備をしていた。
本国から送られたイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン。ジブラルタルから受けた補給。そして支給されたザゥート2機。多そうに見える戦力が実際はそうではない。
アークエンジェル接触の時に出現した謎のMS、鬼のごとく戦うストライク。この二機だけでも十分な障害になるとバルドフェルドは推測した。
現在の所有する戦力は、バクゥ10機・ザゥート2機・デュエルアサルトシュラウド・バスターだが、あの二機とやり合うのは少々厳しいと思える。
「まったく、この前の報告はしっかり上層部に入ったのかね? あれは今後、ザフトの障害となるのだがな。」
「ジブラルタルも大変のようですよ。どうやら連合が反抗作戦の準備を始めたようですから。」
「狙いは・・・小型マスドライバーかな?」
「おそらくそうでしょう。」
確かに戦略としたら有効だろう。しかし理解できたとしても納得は出来ないものである。
ザゥート2機しか補充されなかったのだ、納得できるはずが無い
それともう一つバルドフェルドを悩ませるものがあった。
プラントから派遣されるイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンである。イザークとディアッカは赤服であるから技量としては申し分ないのだろうが、地上戦を体験していないらしい。
そんなパイロットがこの戦いの役に立つと思っているのだろうか?だが戦わなければならない。
「隊長、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンが到着していますがどうしますか?」
「顔合わせはしておくべきなのだろうな。行って来る。」
バルドフェルドは諦めたような表情をしながらレセップスの甲板を目指した。甲板にはザゥート・デュエルアサルトシュラウド・バスターが搬入され始めていた。見渡すと赤服を着た二人の少年が居た。彼らはバルドフェルドに気がつくと駆け寄って敬礼した。
「イザーク・ジュールであります。」
「ディアッカ・エルスマンです。」
「宇宙からの長旅ご苦労さん、知っているとは思うがアンドリュー・バルドフェルドだ。」
「・・・バルドフェルド隊長、足付は今どちらに?」
やはりイザークは気になっているのだろう、ストライクの事が。
「貴様、隊長に向かって「ダコスタ君。」・・・失礼しました。」
多少問題が起きつつもバルドフェルドは出撃の準備をしていた。
そして準備の終えた部隊はアークエンジェル出撃の報告がされたと同時にアークエンジェルへと移動を開始した。
一方、アークエンジェルでは【砂漠の虎】攻略の準備をしていた。
バルドフェルドは必ず仕掛ける。これが、艦長以下ブリッジクルーの全員の意見だ。
その為、機体の整備は入念にされていた。
アークエンジェルが行動を開始する前、【明けの砂漠】が参戦を言いに来たがマリューは断った。
軍と軍の衝突にゲリラが加勢したところで戦力にはならない。ゲリラにはゲリラ、軍には軍の戦い方があるのだ。
すると、今度はキサカとカガリを乗せる事を要求した。
当然これもマリューは断ろうとしたが、「乗せなければ勝手についていく」と言われ渋々承知した。
後々この二人の存在がアークエンジェルにとっての起死回生の一手になるとは夢にも思わなかったようである。
そしてアークエンジェルのレーダーがザフトの戦艦らしき物を捉えた。
どうやらレセップスとその随伴艦のようだ。
それを確認したマリューは格納庫との通信を開きムゥに偵察を指示した。
「ムゥ・ラ・フラガ、スカイグラスパーソードパック、出るぞ!」
数十秒後、スカイグラスパーから通信が入った。
「こちらフラガ、敵はレセップスに護衛艦が1、戦闘ヘリが数機出ている。
バクゥ10機とそれに似たMSが1機にザゥートが2機。それからデュエルとバスターがいる!」
「デュエルとバスターですって?!」
デュエルとバスターがこんな所にいるとはマリューは考えもしなかったようである。
驚いて固まっているマリューを他所に、ナタルがCICから指示を出し戦闘準備を進める。
「ゴッドフリート・バリアント・イーゲルシュテン起動、艦尾ミサイルランチャーにウォンバットを装填。」
「了解!」
全ての兵器が起動するのを確認するとナタルはキラとライに出撃命令を出した。
「ストライク、【サイサリス】カタパルト接続の接続を確認。ストライカーパックはエール。ストライク、【サイサリス】発進どうぞ!」
「了解、キラ・ヤマト、ストライクガンダム、行きます!」
「【サイサリス】、ライ、出るぞ!」
着地した二人にナタルは通信を入れた。
「ヤマト少尉、傭兵、フラガ大尉から送られたデータを転送する、うまく使え。
戦闘ヘリはフラガ大尉が相手をする。ヤマト少尉と傭兵はバクゥに専念しろ。」
「了解。」「分かりました!」
出撃した二人を出迎えたのは、バクゥ10機だった。少々散開しているため二人は二手に分かれて戦闘する事にした。
二人が戦闘を開始する頃には既に戦闘ヘリ全て残骸へ変わり果てていた。
そしてムゥはキラの援護に向かった。ライの戦闘を見て援護は必要ないと考えたのだろう。
「キラ、援護する。一気に倒すぞ!」
「ムゥさん、助かります!」
そしてキラはムゥと協力しバクゥを撃破していった。
一方、ライは意外な事に追い詰められていた。
攻撃時に発生する熱量の関係であまり攻撃が出来なかった為である。
「(砂漠か・・・厄介な所だ。それに連携も上手い。援護を要請した方がよさそうだな)
フラガ大尉、こちらも援護してもらえないか?」
「了解! すぐに行く。(余裕があるように見えたんだが、そうでもなかったようだな)」
そしてライはムゥの攻撃で出来た隙を狙い一機ずつ確実に仕留めていった。
ライとライがバクゥを全機撃破した時、バスターとデュエルアサルトシュラウドが接近してきた。
それに気がついたムゥとライはそれぞれどちらを相手するか話し合った。
「どちらの相手がしたい?」
「そうだな・・・デュエルを相手する事にする。バスターは任せた。」
「分かった、それじゃ行きましょうか!」
そう言い二人はそれぞれ決めた相手の方へ機体を進めた。
≪ライside≫
私が立ち塞がるとデュエルは外部スピーカーから警告を言ってきた。
「どけ、俺の邪魔をするな!」
「邪魔とはどういうことだ?」
「俺はストライクを討たねばならない!」
「こちらは黙ってやらせる訳にはいかないのだ。通りたければ俺を倒してから通れ。」
「ならば貴様も倒す!」
相手がどうあれ私には関係はない。だが契約している為、相手をしなければならない。
どうやらこのMSパイロットはまだ地上戦には慣れていないようだ。
接近しようとはしているが砂に足を取られて上手く動けていない。
先ほど使用時に発生した熱がまだ武器に残っていた為、私は左腕武器をムーンライトに切り替え、距離を詰めた。
無理をすれば使えるのだが、故障する可能性が高かった。
この世界で故障した場合、修理する事が出来ない可能性が高い。その為私はムーンライトを使用する事にした。
デュエルはビームサーベルを引き抜き辛うじて振り下ろされたムーンライトを受け止める。
だがビームサーベルのパワーではムーンライトを防ぐには些か出力が不足していた。
やがて限界が訪れビームサーベルが爆発し、出来た隙に私はデュエルの腕を切り落とした。
そして止めをさそうとムーンライトを構えたところで撤退の合図が出た。
「撤退か、運がよかったな。」
そう言い残して私は撤退した。
≪キラside≫
バクゥを倒し終えた僕のところにバクゥに似たMSがストライクに接近してきた。
「又会ったな、少年!」
「バルドフェルドさん? 止めてください! 何でこんな事をするんですか?」
「何を言っている? これは戦争だ。戦わなければならないのだよ!」
そう言ってバルドフェルドさんは攻撃を仕掛けてきた。
攻撃をシールドで防ぎながらビームライフルで反撃していたが、MSは動き回っている為当てる事が出来なかった。
そうこうしている内に機体に警告音が鳴り響いた。残存エネルギーが危険域になった事を知らせる物だった。そしてついにPS装甲がダウンしてしまった。そこへMSが口からビームサーベルらしき物を展開し接近してきた。
(もうだめなのかな?)
そう思ったら僕は頭の中がクリアになるような印象を受けた。
そして僕はビームサーベルを引き抜きMSとの距離を詰めた。
MSは戸惑いながらも回避しようとするが、間に合わず背中に付いていたビーム兵器を失う事になった。
「もう止めてください、勝負はもう決まったでしょう!」
「まだだ! まだ終わってはいない!」
そう言いバルドフェルドさんはもう一度接近してきた。
擦れ違う瞬間にビームサーベルで相手のビームサーベルらしき物を受け止め、腹部にアーマーシュナイダーを突き刺し距離をとった。そしてMSは少しの間火花を散らし、終には爆散してしまった。
「どうして・・・。何故です、バルドフェルドさん。」
≪side out≫
ザフト軍はキラを襲ったMSが撃破されたのを確認して撤退を始めた。どうやらあのMSが撃破されたら撤退するよう指示されていたのだろう。
アークエンジェルはライとキラを収容し終えると、次第最大戦速でこの区域を離脱する手はずになっている。
だがここに来て一つ問題が出来た。ザゥート2機がアークエンジェルに帰還しようとしたキラとライに対して猛攻を仕掛けてきたのである。
これを見たカガリは勝手にスカイグラスパーで出撃し、牽制に行った。撃墜までは出来なかったものの行動不可能と言う状態に追い込み帰還する。
カガリが無断で出撃した時、マードックとナタルが怒り狂いそうになったのは・・・秘密である。
4つでいけると思ったら改行が長すぎますと言われ、区切っていくと5つに増えてしまいました。
申し訳ないです。
改良点などありましたら指摘御願いします。
乙です
いくつか気になる点を指摘させていただきます
一文の中で名詞を列挙する場合は「・」ではなく「、」のほうが相応しいと思います
「イザーク・ディアッカ」のすぐあとに「イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン」では混乱するし統一性がありません。
それから【】はよほど意図的な事がないかぎり多用は避けた方がいいかもしれません。
これは好みによるかも知れませんが見栄えの問題です。
また同じ名詞を丁寧に何度も使う必要はありません。
代名詞でもかまいませんし、敢えて省略するのも手です。
以上で終わります。続きが楽しみです。
>>戦史
何よりも、CEの時代になっても『寿』の湯飲みが健在なところに笑ってしまった。
思考に集中しているサイに、お嬢さんが心を籠めてお茶を淹れてあげるのは、
果たして何時になるのか。そしてお嬢さんの本名が明かされるのは何時になるのか。
続きが楽しみです。GJ
>>crossAC
」の前は、や。で終わらない、というのは二次創作に限らない作文のマナー
みたいなものなので、余程のこだわりが無い限りは注意するべきところかと思います。
それからACを知らない読者としてもう一つ、
ムーンライトってなんやねん?
【サイサリス】の外見や武装に関する説明描写が無いので、イメージが湧きません。
>>144 のような場面で、主人公の目を通して機体の外見や持っている武装の事を
書いてみては如何でしょうか?
>>162氏 crossSRW
GJ はじめまして、投下お疲れ様です。
まださわりの部分なので、シナリオ的にはなんとも言い様がないですが、
面白そうです。シンとトウマがどういう風に絡んで行くのが楽しみです。
台詞を句読点で終わらせないというところが一点。
シンの機体が吹き飛ばされる描写はあっても、気絶する瞬間が書かれていないので、
いきなり目覚めのシーンになるのは場面が飛びすぎて、レスを読み飛ばしたかと
思ってしまいました。
お三方とも、とにかくGJ 続きを楽しみにお待ちしております。
>>217 助言ありがとうございます 早速修正してみます。
>>218 」の前につけていた。は修正し忘れでした・・・
そしてムーンライトについてですが、こちらも「近接武器のムーンライト」って書き直すのを忘れていました・・・lilililorzlililil
申し訳ないです。
220 :
162:2007/02/22(木) 03:01:39 ID:???
夜分遅くですが投下します。
第3回そのいち
「ルナ!!、レイ!!」「「シン!!」」
トウマにより、半ば強引に食堂まで案内されたシンは、無事同僚と再開する事が出来た。
「怪我は大丈夫なの?」
「心配かけたみいだけどもう大丈夫だ」
不安そうなルナマリアに対し、シンは元気よく答える
「シン、余り無理はするな……」
心なしか、レイも心配そうだ。
「諸君、揃ったようだな。」
レーツェルが厨房から数人の男とともに現れた。
「さて……シン、君たちの事情は先ほど二人から、大筋説明してもらった。」
どうやらシンが寝ている間にルナとレイが先に説明したらしい。
「今度はあんた達がしゃべる番ってことか……」
レーツェルは頷き、部下の一人に指示を出す
「ユウキ、正面のモニターを……」
指示された部下はモニターのスイッチを操作する。
口で説明するより目で見た方が早い、と言うことなのだろう、映像を写しているであろうカメラには、巨大な輪のような物体が映し出されている……その大きさは途方もなく、カメラからは全体図が把握しきれないほど大きい。
数秒後、突然輪の内部が青く光輝きだし、カメラが内側に引きよせられていく……カメラは抵抗するように、ゆっくりと下がり始めるが、時既に遅く完全に光に呑み込まれてしまった……
「これは数時間前の実際の映像だ……」
レーツェルがつけ加える。
映像は続く……光の先に黒い点が見え始め、段々と大きくなっていく。
どうやら光の出口のようだ……黒い穴が画面一杯になり、また何の変哲もない宇宙に戻り始めた。
映像の最後に吹き飛ばされていく3つの見覚えのある機影が見えた。
「まさか……コレって」シンはようやく気が付いた……この映像はこの艦からとられたものだったのだ。
「何なんですか?あのわっか?」
ルナマリアがレーツェルに訪ねる。
「我等の内では、あれは『ゲート』と呼ばれている。詳しいことは未だわかっていないが、一種のワームホールらしい。」
「じゃあ何だよ?あんた達は地球のどっかからプラントまでワープして来たっていうのかよ?」
と、レーツェルの話を聞いたシンが訪ねる。
「それは違うぞシン……映像はおそらく宇宙空間から撮影された物だ、」
そのに
シンの発言をレイが否定する。
「だが、この宙域、ましてや地球圏にも、あの様な建造物は確認されていない……」
レイは彼等の言いたいことがはっきりしてきたらしい。
「じゃ、じゃあ……」
シンは向かい側に座るレーツェル達を見やる
「この短時間であの映像を捏造する事は不可能だ。考えられるのは一つ…彼等は俺達とは違う世界から来た人間だということだ…
少なくとも俺は……そう考えている。」
リアリストであるレイがこの様な予測をしたことにシンは驚いたが、格納庫でみたあの起動兵器達やトウマの不可解な発言の説明がつくと考え、シンはレイの考えに同意した。
「俺もレイを信じる……ルナは?」
先ほどから一言も喋らないルナマリアに対し、シンは話を振った。
「私は……正直まだ混乱しててよく分からないけど、あんた達二人が信じるなら、私も信じる。」ルナも信じるようだ。
レーツェルは頷きながら彼等に真実を話し始めた、『ゲート』の調査中に起動するはずのない『ゲート』が起動し、この世界に来てしまったこと、
自分達の世界と彼等の世界は似ているようで、大きく違うこと、そして彼等とその仲間達が、地球の危機を数多く救って来たことを……
「それで……これからどうするんですか?」
話が終わった後、最後にシンはレーツェル達に問う?
「我等は戦士としての、人としての意地を貫き通す……それが、この世界に迷い込んだ我等ができる事だ」
彼の後ろに佇む銀髪の大柄の男は、そう呟いた。
反論はなく、皆頷く。どうやらそれがクルー全員の総意らしい。
その後、ささやかながら、レーツェルの手料理が振る舞われたのだが、そのあまりの美味しさに、最初に感じた疑念を申し訳なく思ってしまうシンであった……
数時間後、機体の修理が完了したため、シン達は一旦アーモリー・ワンに帰還することとなった。出発の間際、シンはトウマに『力』とは何か?と聞いてみた。
彼は笑いながら「それは答えられない」と一蹴されてしまった。
「まぁいいさ、考える時間は沢山ある……」
シンはそう思いながら、コア・スプレンダーを発進させた。
しかし、この邂逅から数日後、この問いに答えを出す間もなく、シン達は否応無しに戦火に巻き込まれてしまうのであった。
>>220 221
先ほどまとめた文章を手直しして、投下しました。
己で読んでみてご都合主義が否めない…… orz
指摘や評価お願いします。
ムーンライトね。まぁ知ってる方からすると利点欠点からどのような機体で運用するかまですぐ思いつくが・・・
今のところ「ビームサーベルで受け止められる」「威力の高いもの」という情報しか出てないかな。
どんなブツかイメージさせるには◆NBwe12OQEUの今後の描写に期待か。
>>222 まとめた文章で投下間隔10分か・・・もしかして携帯?
長い行があるね。分かりやすい区切りがあるんだから切っていこう。
自然改行はなるべくIEで見て0回に抑えたい。
最初見たときもちょっと感じたけどやっぱり「……」の使用頻度が目に付く。好みにもよるが、多用しすぎないのが美しいかと。
句読点ですむところは句読点で。
>>165 了解です
>>188 まとめで題名を勝手に「何でも屋ドミニオン」にしたのですがいいですかね?
まとめのこと、本当にありがとうございました。
題名はあのままでいいです。凄いうれしいです。
まとめで自分の文章読み直すと凹むなあ。
あれだね、書いてから一晩置いて読み直すべきだね、
書いた直後のハイテンションのままじゃまずいね……
>>223 ご指摘サンクスです。
確かに三点リーダの多用は文章がクドくなるみたいですね。
次回からは少し控えてみます
このスレを投下専用スレにした方が良くないか?アドバイスとか雑談スレ別に立ててさ。
ここ数日読んでてそう思ったんだが…
分けるとまたゴチャゴチャしそうな気がしますが
>>227 そこまでするほどスレの流れ早くないだろ
職人さん側からすればどうかな?
21時ぐらいから投下します。
1/
ガーディ=ルー艦内。ネオの部屋において報告を終えたスティングは
アウル、ネオと一緒にステラの着替えが終わるのを待っていた。
手にしたストローパックから時々飲みこむ清涼飲料は酷い味で、殺虫剤を
飲まされたらこんな味かと思うほどだ。
ネオとは別のパックを専属の医師に直接渡されたから、果たしてどんな薬品が
入っているか知れたものではない。しかし渡されたなら飲まずには居られない、
というのもエクステンデッドの業である。
泥水をすする気分で水分を補給している顔を、ネオが心配そうにのぞいている。
「スティング、お前が一番消耗が激しいんだ。先に休んでいても良いんだぞ?」
「言ってろ。俺は勝手にする。あんたも勝手にする。約束だろ?」
労う声を聞くだけでも精神がある程度は安定するのは、条件付けの
ステージが進んでいるスティングだからである。
戦闘からかなり時間がたっていて、涼しい顔をしているアウルと対照的に、
空調の聞いた部屋で額に汗を浮かんでくるのを感じる。
「ネオ、スティングはアンタがステラにどんな服を着せたかったのか、分かるまでは
気になって眠れないんだってさ」
「何! 俺のセンスが気に入らないと言うのか!?」
ネオが"この世の終わりだ"と言う顔をするのが、仮面の上からでも分かった。
「違う、宇宙戦艦の中でミニスカートなんか着せるんじゃねえと言ってるんだ!
ステラは、ステラはな……隠す気が全く無いんだ! 無重力でステラに好き勝手
させてみろ、ガーディ=ルーの乗組員が混乱するだろうが!」
宇宙空間ではパンツスタイル――出来てタイトなスカートが普通だ、
ひらひらしたスカートを無自覚に着ていると当然翻る、そして見える。
「ネオ、スティングはアンタがステラに可愛くって"ろりろりー"な服を着せるのが、
むらむらして嫌なんだとさ」
「――そうだったのかスティング!」
ショックを受けた様子で背後に集中線を浮かび上がらせるネオ。
「分かった、ようく理解したよ。……アウル、スティングにこう伝えてくれ。
『今度はボーイッシュに格好良くびしっと決める』とな」
「勝手に俺の通訳するなアウル、しかも誤訳だ! ネオも仲介を頼むな!」
2/
びしっとポーズをとったネオを無視してアウルに当身を入れようとしたが、
あっさりと躱されてしまった、握り拳が空を切る。
上官に暴行を加えることが出来ないスティングは更にストレスを募らせた。
パックを飲み干し、握りつぶしてダストシュートに投げた。
外れた。
「へへッ! まだまだだね」
アウルがそう言いつつ壁に反射した容器へと向かって自分のパックを投擲すると、
二つのパックは空中で衝突して互いの進路を変え、スティングの投げた方は壁に開いた
穴、「燃えるごみ」と書かれた四角い枠に吸い込まれた。
生意気なメンバーに向かって、スティングはもう一度拳を上げた。今度はよけなかった。
「おいおいスティング、目下のものには暴力腕力に訴えるんじゃなく、
寛容な態度で――うわち!」
ネオの説諭は軽い水音に遮られた。天井に当たって跳ね返ったアウルのパックが、
今度はネオの顔面――正確には仮面を直撃したためである。
「アウル! 中身が入ってるのを投げるんじゃない、此処は無重力だぞ」
「へへ、悪い悪い!」
空中に水分が球となって浮かび、自動的に作動した換気装置によって吸引されてゆく。
目の前に漂ってきた水玉をに向かって細く息を吹き付けると、水球は細かく分裂して
互いにぶつかりながら吸気口に吸い込まれていった。
「ほらよ、スティング――」そう言ってアウルは小さなストローパックを差し出す。
それはネオが飲んでいるものと同じものだった。
「くすねてきたのか、アウル? バレたら危ないぞ」
「心配ないって!」
スティング達三人の動きは常に監視されているはずであったが、アウルが心配ないと
言うならば本当に心配ないのだろう。その気になれば、艦内のいたるところに設置された
監視カメラに一度も映らないまま端から端まで移動できる奴だ。
とりあえずアウルを小突き、ネオが水浴びした様を見て、心の中で暗雲の如く
立ち込めていたストレスが晴れた――正直に言ってすっきりした。
すがすがしい気分でパックを受け取り、口をつける。
随分ましな味のするスポーツドリンクが、喉を通り抜けた。
3/
「――今の、わざとか?」ネオがアウルに聞いた。口調はあくまでも軽く。
エクステンデッドは上官に対して暴力を振るうことは許されない。
例えばスティングがネオを殴るにはネオの更に上位者から命令が必要だし、
ネオが自分を殴れ、と言った時には命令と相反する条件付けによってストレスが生じる。
アウルが狙ってネオにパックをぶつけたとすれば、アウルに課せられる条件付けは
更に厳しいものとなり、投薬内容もより強力なものとなってしまう。
口ぶりとは裏腹にネオの内心が視線に表れていた、アウルは視線を軽く逸らして答える。
「そんなわけ無いジャン、偶然だよ、ぐ、う、ぜ、ん。
俺達がそんな事狙って出来るわけ無いだろ?」
上官に対してうそをつく事も、当然出来ないようになっている。
「そうか、まあそうだろうな」
とそれだけ言ってネオは――
仮面を、外した。
仮面の下から、傷だらけで精悍な二十台後半の、若い男の顔が現れる。
………………。
「「って、仮面外して良いのかよ! ネオ!」」
「――ん? どうかしたのか、二人とも」
何を言っているんだ、と言う風のネオに、スティングは問う。
「いや、いきなり素顔晒してもいいのかよ? 今まで何のために仮面つけてたんだ?」
「いや、濡れちゃったしな。このままつけていても、顔面が蒸れて気持ち悪いだろう?」
むしろ突っ込まれたのが以外だと言う、ネオの言葉だった。
「そうじゃねえ! その仮面はもっとこう、後々まで嫌味ったらしい位に伏線を
振りまいておいて、その後割れるとか奪われるとかして、既にバレバレの正体を
晒しまくるのが筋ってもんじゃねえのか!?」
とは、納得のいかないスティングの言である。
そうでなければ、これまで何のためにつけていたのだろう。もっと重要な意味があると
思ったからこそ、PPのメンバーは誰もそのことに触れずに居たというのに。
このままでは只の怪しい趣味を持つ男になってしまう。
「そんなこと言われたってねえ……正直、この顔を見て俺が誰だかわかるのか、スティング?」
「――いや、そんなことはねえが……」
見覚えは――無い。
「だったら、お前たちの前で素顔を気にしてもしょうがないだろう?」
スティングの剣幕に寸とも押されず、ネオは平然と懐からハンカチ(花柄)を取り出し、
ドリンクに濡れた仮面と顔を拭った。
――ある意味では当然と言えば当然の行動、なのか? 自分のブロックフレーズを自分で
口に為ることは出来ないのだが、それと似たような感覚で疑問が上手く言葉にならなかった。
喉に引っかかったフィッシュアンドチップスの骨のように、疑問を飲み込む。
4/
更衣室からステラが出てきた。ネオが私物として持ち込んでいた衣装のうち、
先ほど任務達成の"ご褒美"として手渡された一着を纏っている。
ガーディ=ルーを出発する前に纏っていた服は潜伏先で始末が済んでいるし、
作戦前に来ていた青いドレスは血に塗れて残念ながらダストシュート行きとなった。
ネオを見る。凝視。眉間にしわが寄った。
「――! だれだ、お前!」
「……」
仮面でしかネオを認識していなかったらしい。
「俺だよ、ステラ」ネオは声を出して正体を明かしてやる。とたんに額に寄った
しわが解けて、年相応の可愛らしい表情があらわになる。
「ネオ……なの? 本当に? 素顔を始めて見た」
頬がぽっと赤くなる。ネオの顔を縦横に走る傷跡に目をやった。
「顔に酷い傷だね、痛くないの?」
「ん? ああ、これは結構古い傷だからね、もう痛くは無いよ」
そう言うと、ステラはおずおずと右手を伸ばしネオの顔に触れた。
遠慮がちに顔の傷に触れ、溝のように穿たれた傷跡を優しくなぞる
「痛くないの……本当に?」
「ああ、本当だとも。……少しくすぐったいがね」
「ごめんなさい!」ステラは即座に手を放した。まるで自然に手を触れていた物が、
実は火傷しそうなほど熱かった事に気付いたようだった。
「……どう?」
そうつぶやいてステラはその場でくるりと回った。フリルがふんだんにあしらわれた
スカートの裾を両手で押さえて、上目遣いにネオを見る。
袖についているリボンが無重力に舞った。
「おお、かわいいじゃないか、ステラ。逆方向に回転して御覧。うん、たまには
純白のドレスというのも悪くは無いなあ」
「ひらひらしてんな、一体何着持ち込んでやがったよ、ネオ」
「ふりふりだねえ……本当にボーイッシュ風味のもあるの?」
趣味全開の衣装でガーディ=ルーの倉庫を埋め尽くしたネオはともかく、
アウルとスティングに気の効いたコメントなどを期待するのは無理であった。
正直に言ってスティングの感想は「縫うのが面倒臭そう」である。
「……そう」
ステラとしては、ネオさえ好意的に見てくれるならば後は如何でもいいらしい。
自分では全く興味がないというわけでもなく、うれしそうにいろんな角度から
服を眺める様は年相応の少女そのものである。こんなこともあろうかと、PP用の
休憩室兼ネオの私室には全身を写すことの出来る姿見が搬入されている。
つい1時間ほど前には十人単位のコーディネイターを血祭りに上げていたとは、
全く想像も付かないだろう。
誰も彼女が一級の戦闘機械だとは思わない、それがステラの存在意義である。
5/5
無重力でいろいろなポーズをとって遊んでいたステラであったが、ふとした拍子に
大きな欠伸を洩らす。それはアウルとスティングにも伝染して、ネオに苦笑させた。
「そろそろお昼寝の時間かな、坊やたち」
「餓鬼扱いするんじゃねふぇえ……よ」
目の端に涙を浮かべながら、スティングは不平を洩らした。
その額には薄く汗が浮いていて、息が少し荒い。見れば、ステラも同じような状態だった。
唯一アウルだけは、眠そうな顔をしてはいるものの涼しげな表情を保っている。
「うん、そろそろ私も寝る」
物憂げなステラがネオに告げた。
「ま、ここまで潜伏に一週間と、長丁場の戦闘をこなしてくれたからね、
ベッドに入って嫌な夢はきれいさっぱり忘れるがいいさ」
すると、ステラが何かを問いかけるような目でネオを見た。
「なんだステラ、艦全体に見せびらかしてくる積もりか?」
「……」無言で肯くステラ。
「うーむ、まあ若い男連中は喜ぶだろうが……」
何と言っても宇宙戦艦だ、男女比は大きく男の側に傾き、悪く言ってしまえば
売り手市場である。鼻息の荒らい男共が多数乗り込むガーディ=ルーで、
見た目だけは可憐なステラはある種の清涼剤となっているが、ステラの態度に
何かを勘違いしたクルーが医務室の世話になる事もしばしばだ。
現場を目撃したアウルやスティングに腕をねじられた者はまだ運が良い方で、
外見に惑わされてステラが一人のときに声をかけたものが最も酷い目にあっている。
「あの新型艦が後ろに張り付いていてな、追いつかれるまでにあまり時間が無いんだ、
だから居住区を一周するだけだぞ」
「うん……」
そしてモーターのドアを開け、無重力ならではの飛び方で部屋を出て行くステラ、
そのとき、無重力になびくスカートの裾が大きくめくれ上がった。
今日もまた白を晒すのか、そう思っていたスティングは、口にくわえていたパックから
盛大に飲料を吹き出した。アウルも、ネオも。そしてむせる。
飛び出して行ったステラを追いながらスティングは叫んだ。
「ちょっと待て、ステラ……せめて下着を履け!!」
>>戦史の人
前から思ってたけどやっと調べる気になったので一つだけ。
せん‐ぼつ【戦没・戦歿】
[名](スル)戦争で死ぬこと。戦死。「―した兵士を弔う」「―将士」
せん‐えき【戦役】
戦争。役。「日露―」
恐らく勘違いされてると思うので。
クロスオーバーですけど、投下してもよろしいでしょうか?
OK!忍!!
大歓迎。
#Prologue
宇宙世紀0089――後に第一次ネオ・ジオン戦争と呼ばれることとなる大戦が終結した。
敗北を喫したアクシズに残された者たちは、亡命を夢見て逃走する者と
その討伐に当たって再興を夢見る者に二極化したのだった。
「俺から離れるなよ!」
フォンブラウンから出港した木星探査船『ジュピトリス』もその煽りを受けていた。
目的地の都合上、逃亡先にはうってつけであり、亡命の申し出とその追撃は後を絶たなかったのだ。
そして、ジュピトリス唯一と言っていい戦力であるZZはその度に駆り出され、ジュドーは亡命の尻拭いをさせられていた。
「しつこい!!」
バシュゥ!! 金属が粒子になっていく音だ。
デリンジャーを彷彿とさせるダブルビームライフルから放たれた閃光が、一機のMSを飲み込んで彼方へと消えて行ったのである。
「な、なんだ!?」
ジュドーがそれを見届けた時、ある異変に気付いた。
頭でなく、体で。
「うおおおお!!」
敵MSの爆散と共に機体の制御が利かなくなったのだ。
そしてジュドーは戦慄する。
敵の術中に嵌ったのか、それとも何かのトラブルが起きたのか
と疑念が錯綜すると同時にモニターはホワイトアウトし、その役目を果たさない。
そして次にジュドーを襲ったのは、経験したことの無い強烈な重力加速だった。
内臓は悲鳴を上げ、喉は警鐘を鳴らし、意識は朦朧とし始める――!
「ぐぅぅ……!」
低く鳴った悲鳴は虚空に吸い込まれ、そのまま消えた。そこでジュドーの意識は途切れた。
………………
……………
………
……
…
『警■■る!直■に武■■解■■よ!』
「ううっ……」
うめき声とも取れる音を出しながら、ジュドーは目覚めた。
ジュピトリスはどうなったのか、亡命者は無事だったのか、そして自分はどうなったのかと働かない頭を使って思索を巡らせようとしたが――
『もう一度警告する!直ちに武装を解除せよ!』
「ええっ!?」
――状況がそれを許してはくれなかったのだ。
コンソールは被ロック警告をけたたましく告げ、モニターは復活し、現実を写し出していた。
――眼前には銃口――
「ちょ、ちょっと待った!」
――モノアイの鈍い光と黒いボディ――
『よし。武装解除を確認した。これより貴様を連行する。妙な真似はするなよ』
「……あのさぁ」
『んっ?』
――そしてそれらは――
「あんたら……何処の軍だい?」
――全く見覚えの無いデザインであった――
#Prologue end
#1
体を預けた壁は冷たい。
ベッドは体を休めるのに似つかわしくない硬さで、本来の役割を十分に果たしていない。
この部屋に、窓と呼ばれるものは一切なかった。
ドアにちんまりとした正方形がくり抜かれているが、それは格子窓と呼ばれるものである。
要は、ジュドーは営倉に押し込められたのだった。
不可解な勢力の、それも偽装隕石で隠された戦艦の営倉である。
「ルー……。心配してんだろうなぁ」
ベッドを座布団代わりに、壁を背もたれ代わりにして、ジュドーは一人ごちた。
切り揃えた前髪が特徴的な、豊かな紫髪。
透き通るような白い肌に、活力のある艶がかった声。
普段のそれらが、今頃は崩壊しているだろうと容易に推測できた。
幸い、最愛の妹の耳に入ることがないというのが唯一の救いか――
「おい!尋問だ!」
野太い声――ジュドーは現実に立ち帰らざるを得なかった。
手錠が両腕の自由を奪い、腰には運命を共にする腰縄ががっちりと食い込む。
「ったく!逃げやしないよ!」
「無駄口を叩くな!」
やはり軍は嫌いだ、とジュドーは再認識する。
第1次ネオ・ジオン戦争で軍部の腐敗、人間のエゴイズムを嫌というほど味わったからである。
「さぁ、入れ!」
「うわっ!乱暴にするなよ!」
背中を押され、ジュドーは危うく転倒しそうになったのだ。腰縄は既にほどかれていた。
毒づいて後ろを睨むと、兵士はふんっ、と鼻を鳴らして去っていった。
「まぁ、かけてくれ」
「……!!」
予期せぬ高い声色に、ジュドーはぎょっと体を強張らせた。
声の主はくたびれたアルミの机の上に頬杖を作り、光った瞳と真っ暗な瞳の両方でジュドーを見ている――女は隻眼だった。
ジュドーは軋むパイプ椅子を引き、どっしりと腰をかけた。
しかし、疑問点ばかり浮かぶ組織に囲われた故に警戒心を持った瞳は緩めない。
尋問が始まった。名前、年齢、所属組織など、典型的な質問が大半を占めた。
ジュドーは余計な口を滑らせ、あらぬ誤解を生まぬように注意を払いながら回答をしていた。
意外にも尋問はスムーズに進行したのだが――
「はぁ……」
「……また溜め息ですか?」
「当たり前だ。溜め息もつきたくなる」
隻眼女は、ジュドーが答える度に肩をすくめ、溜め息を漏らしていたのだ。
「木星探査船ジュピトリス、月面都市フォン・ブラウン、ネオ・ジオン……。
まるでアニメの世界だ」
「アニメなんかじゃない。
俺に言わせれば、あんたたちの乗ってるモノアイの方がアニメだぜ」
「……やはり、そうか」
はあっ、という大きな溜め息が室内に充満する。
「さっきからなんなんだよ!?おばさん!!」
流石に苛立ち始めたジュドー。
手錠を机に叩き付け、金属の衝突音が周りの空気を振動させる。
「……おばさん?」
女の周りの空気は、また違った何かで振動していた。
それは、大気の震えと呼ぶにふさわしいほどである。
「あたしゃまだ22だよ!このガキンチョ!」
ヒルダは目を吊り上げながらジュドーに詰め寄る。
『おばさん』は彼女の逆鱗に相違なかった。
「そこはつっかかる所じゃないだろ!」
ジュドーも負けじと睨み返す。
最早二人は喧嘩腰で、暫く睨み合いが続く。
熱くなった故か、ジュドーの警戒心は何処かに消えてしまった。
その時、ドアノブを捻る音が二人の間に割って入った。
「おい、ヒルダ。ラクス様から通信が入ったぞ……
って、何をしている」
ドアの隙間から身を乗り出した、眼鏡を掛け、何故かボルトをくわえた男は、
呆れたように女――ヒルダ・ハーケンを見ながら肩をすくめる。
それでもヒルダの熱は引かなかった。
「このガキンチョがナマ言ってんだよ!私をおばさんだってね!」
「間違ってはいない。同世代には母親になった奴もいるだろうに」
「キィィィィ!ヘリベルト!あんた」
「ラクス様の通信はいいのか?」
「……わかったよ!」
扱い慣れている――ジュドーがヘリベルトから感じた第一印象である。
ヒルダは不機嫌に席を外すと、ジュドーを横目で見下ろしながら部屋を去っていった。
「済まないな。ああ見えてデリケートなんだ。
お姉さんと呼んでやってくれ」
ヘリベルトはヒルダの体温残るパイプ椅子に座ってニカッと歯を見せた。
「俺、どうなるんですか?」
ジュドーの質問に、崩れた顔が引き締まった。
そして口のボルトを掌に握り締め、もてあそぶのを止めた。
「今、我々の歌姫……いや、指揮官からの通達が降った。
その内容次第だ」
「まな板の鯉か……」
ふっ、とジュドーの顔から活力が消える。
ヒルダとの会話から、自分はおかしな場所に来てしまったのだとジュドーは予想する。
故にその待遇は未知数であるのだ。
ヒルダとかいう女と口論したことを少し後悔した。
「『まな板の鯉』とは、難しい言葉を知ってるんだな」
ヘリベルトの顔が再び和んだのである。
ジュドーは、体から余計な力が抜けていくのを感じた。
「馬鹿にして!」
二人して笑い合う――ジュドーは、胸に渦巻く危機感がほぐれていくのがわかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「釈放だ」
ジュドーが営倉のベッドに顔をしかめながら寝そべっていると、
先程自分を尋問室まで連行していった兵士の一人がそう言いながら鍵を開け始めたのだ。
ひどくばつの悪そうだな、とジュドーは感じた。
「釈放って、なんで?」
尋問からそれほど経ってはいかなかった。
「知らねぇよ!お前を客人として向かえろだとよ!」
「ふぅん、客人にそんな言葉使いでいい訳?」
先程受けた少々手荒い扱いへの反撃とばかりに、ジュドーは皮肉を漏らす。
「ちっ!へいへい!こちらですよ!」
兵士は舌打ちしながらジュドーを応接室に案内した。
応接室は尋問室とは雲泥の差であった。
硬いパイプ椅子は、ふかふかのソファに変わり、
冷たいアルミの机は、温かみのある楠木に早変わりしていたのだ。
「ジュドー・アーシタ」
ジュドーは椅子に腰掛けながらヒルダの表情を伺ったが、あまり好ましくはなかった。
「なんですか、お姉さん」
「ふんっ!」
(あちゃー)
ヒルダは頬を赤らめそっぽを向いてしまい、ジュドーは内心頭を抱えた。
また機嫌を損ねた、そう思ったのだ。
しかし、ジュドーから見て左に位置する鋭い眼をした男と、
右に位置するヘリベルトはにやにやと笑みを浮かべていた。
「ツンデレって怖いよなぁ、少年。
俺はマーズ・シメオン。よろしくな」
鋭い眼の男――マーズの差し出す手に、ジュドーは応えた。
「おっと、俺も自己紹介がまだだったな。
ヘリベルト・フォン・ラインハルト。ヘリベルトでいい。
ほら、ヒルダも」
「……ヒルダ・ハーケン。この戦艦、『エターナル』の臨時艦長代理だ」
「臨時艦長代理?」
「本来の艦長代理である副長が、ちょっと外出しててな」
二人もジュドーに握手を求め(ヒルダはしぶしぶだったが)、ジュドーの処遇を語りだした。
「エターナルの艦長、我等の旗印がお前に会いたがっている。
オーブ連合首長国へ向かってくれ。
その間、あのMSはこちらで預からせて頂く」
「……わかったよ。選択肢はないんでしょ?」
「そうだ。宇宙のチリになりたいなら話は別だが」
「……ちぇっ。ダブルゼータ、壊さないでよね!」
「……」
こうして、ジュドーはオーブへ向かうこととなった。
ジュドーが応接室を去っても、ヒルダらはソファから立ち上がろうとしなかった。
「あんなボウヤが、あんな化け物に乗っているなんてな……」
端を発したのはマーズであった。
神妙な面持ちで、机に頬杖をついた。
「動力源、未知数。装甲材質、未知数。OSシステム、未知数。
……信じたくないが、パラレルワールドってのはあるらしいな」
ヘリベルトの表情も憂かず、空を仰いでいた。
「まぁ、ラクス様に任せるしかない。私たちが、考えても仕方ないよ」
ヒルダの言葉でその場は締め括られた。
――この数日後、アーモリーワンで強奪事件が起きるのであった。
――To be continued
第一話まで投下してみました。
感想等頂ければ、嬉しい限りです
GJ!
ただ、この場合未知数ってのは表現としておかしくね?
ヘルベルトじゃないか?
GJ。お疲れ様でした。
雰囲気が非常にらしくて良いのですが、不必要な改行が多いと思いました。
所々に挟まれる小ネタがライトな感じで良かったですね。
トールと女キラ、どっちが主人公として楽しいのかな?
どっちもヤバいくらいありがちなんで好みで決めるといいんじゃない?
書けよ職人!
勃てよ住人!
GJ!ジュドーがどんな悲惨な目にあうか今から楽しみです
SEED『†』氏GJ
PPの喜劇に激しくワロタ
ZZ in C.E氏GJ
ニュータイプの修羅場が見られそう
住人のみなさまに質問
その昔続編スレで妄想プロットを書いてたものですがそのうち一つを思い立って肉付けして見ました
ただ妄想OVAがコンセプトだったものですから話が重くてテキストもデカくなっちゃいまして
ライトな感じのここにはあまりふさわしくないかなぁなんて
新人職人の部分はおkです。SSとかいままで一回も書いたこと無いです
いいんでね?
問題が出てきたらまたそのときに独立するなり何なり考えれば
>>259 私見だが
ここは「投下先に困ったSS書き」の受け皿としても設計されていると思っているので
たぶんおk。
ZZ in C.E氏
GJ!
Zスレで読んだ時から続きを楽しみにしていました。
読めて嬉しいです。
何でも屋ドミニオンはモビルスーツの戦闘から土木事業まで、割と幅広く活動している零
細企業である。
構成員は脛に傷を持つものが多く、上から順番に、元ロゴスでブルーコスモスの盟主をや
っていたムルタ・アズラエル。
何故、生きていられるのか分からない人物だが、そこはそれ、金持ちを舐めてはいけない。
若くして軍需産業の頂点に至った才覚を侮ってはいけない。
本人曰く、
「いいですか、確かにコーディネイターは先天的に天才や、オリンピック選手の体力を持
って生まれてきます。
ですが、いくら遺伝子をいじくることができても、知識を蓄えることができても、頭脳の
明晰さを生み出すことはできないんですよ」
遠まわしに自慢とコーディネイターが嫌いだと言うだけの存在なので、従業員からは1割
も話を覚えてもらえないのが現状だ。実に悲しい会社のトップである。
どうして有り余る資産や資金を持つ彼が、こんな怪しげな会社を立ち上げたのかは分から
ない。もしかしたら彼なりの感傷なのかもしれない。
余談だが、妻子がいると言う噂がある。しかし実際に見たものは誰もいない。
アークエンジェル級2番艦ドミニオンの艦長で、戦時任官とはいえ少佐だったナタル・バ
ジルール。
管理職としてはとてつもなく優秀な人間で、何でも屋ドミニオンの人材をうまくまとめて
いる。彼女無しには会社は成り立たないだろう。まさに大黒柱である。
もしも連合軍人として活動していたのなら、今頃ろくでもない目に遭っていたの間違いな
いと断言できるほど生真面目な人間だ。さっさと退役して正解だったと思われる。
どうしてこの会社に就職したのかは甚だ疑問だが。
戦艦ドミニオンに配属された、生体CPUになる前の記憶が吹っ飛んでいる三人組。オル
ガ、シャニ、クロト。シンと一対一で互角に白兵戦ができる変人どもだ。
善悪の区別なく行動するタイプで三人で喧嘩も頻発する。ただし命令は意外とよく聞く。
教育というか躾のたまものかもしれない。
なお精神疾患の可能性があるとかないとか、病院嫌いなので確証はない。
ザフトに殺された大西洋連邦事務次官ジョージ・アルスターの一人娘、フレイ・アルス
ター。
その美貌とあいまって悲劇のヒロインとして戦意高揚に使われたこともある。ただし本人
はずっと戦艦にいたので地球のTVは見れなかったのだが。
なお夜のパックや美容体操などは欠かしません。ついでに嘘吐きなコーディネイターは許
しません。洗顔しかする必要の無いコーディネイター美女は………分かりません。
ザフトに住処を吹っ飛ばされ、たまたま目撃したGタイプのせいで技術仕官に銃口突きつ
けられて脅迫された挙句、ザフトに殺されたくないからと通信士になってしまったカズ
イ・バスカーク。
なおオーブ防衛戦の前にアークエンジェルを離脱している。
オーブで暮らしていたのだが、カガリのゲリラ時代を直接目撃していたため、オーブの理
念など信じられるはずが無い。
さらに元友人がオーブで将官クラスの待遇を与えられたり、ヘリオポリスを吹っ飛ばした
連中と友人関係を築いていたりする現実に耐えられなくなり、オーブを出奔したのだ。
端的にいうと、アークエンジェル上層部の面々と疎遠な関係だと、オーブに居づらいとい
う事になるだろうか。
年に数回、友人のサイ・アーガイルがカズイを訪ねに来る。
───というのは建前である。サイの本命はフレイで、毎度修羅場が発生している。
そしてオーブ生まれのコーディネイター。自軍に所属していた義勇兵の流れ弾で家族を吹
き飛ばされたシン・アスカ。
彼は難民としてプラントに移民。ザフトに所属してCE73年の動乱を最前線で戦い抜い
た。最終的にデュランダル派の筆頭たるフェイスに上り詰めた人間だ。
ラクス・クラインの信奉者にも良く知られた名前でもある。
主にかませ犬として、冷酷無比、残虐非道な悪のパイロットとして語られている。
キラ・ヤマトの無駄に相手を殺さない、圧倒的な強さや技量と対比するのに都合の良い存
在だったのが運のつきであった。
追記すると、シンの家族を吹き飛ばしたのはキラ・ヤマトである。
ルポライターであるサイ・アーガイルに独占インタビューを受けたことがあり、その中で、
「強すぎる力が戦いを生む? なら核(フリーダム)を捨ててから言え!」
「自爆するぐらいなら先に降伏しろ、いや交戦する前にマスドライバーを壊しておけばい
いだろうが!」
「住民の避難経路ぐらい味方に教えておけば良かったんだ!」
「中立なら他国に関わるんじゃない。自給自足できるようになってから言え!」
などと叫んだのは、未だ世にでていない。何年か経って自由な主張ができる時代が来たら、
『怒れる瞳』という題で出版するとサイは約束してくれた。
サイとフレイの修羅場を目撃しているシンとしては、あまり期待はかけていない。
そんな怪しげな面子で運営されているのが、何でも屋ドミニオンなのだ。
てな感じで続きを書いてみようかなと思ったり。
前回ぐらいの長さの短編にしたい。なおプロットは前回と同じく、無い。
ついでにアイディアも、無い。あんまり重たい話は、辛い。
ぼんやり考えているのは、ヴィーノがザフトに居づらくなって、ツテを頼りに何でも屋ド
ミニオンに面接に来て、就職するお話を考えていたりする。ただし彼の本編描写はとてつ
もなく少なかったので考えるのが難しい。ヨウランはジャスティスリフターの直撃で死亡。
ヴィーノはいつもヨウラン手袋(ノーマルスーツの手の部分)を持ち歩いてる。ってな感
じ。……彼ら整備士の台詞ってもしかして十行無い?
GJ、待ってたよ何でも屋ドミニオン!
GJ!ドミニオン待ってたよ!盟主王がはぶられてるのはテラカナシス
うーむ。話としても新人スレには惜しい人材だ。何か該当スレでもありゃ良いんだが
ちなみにヴィーノはルナマリアの事が実は好きだったらしい。
後、台詞は序盤は多かったから、前半のでキャラクターを居れば良いかも知れないね。
ところでフレイとサイの修羅場はどういう修羅場なんだろうか?
サイ→フレイは無いだろうし、フレイ→サイも在り得ないからな。悪口の罵りあいか?
フレイがキラのことをどう思ってるかがポイントかな
>>263 GJ!!
むこうで一瞬分からなかったw
続きを楽しみに待ってます!
>>263 ドミニオン復活キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!
楽しみにしてます!w
投下すべきでは・・・ないのでしょうが、あえて投下します。
生暖かく見守っててください・・・OTL
【砂漠の虎】を撃退した事によりライとアークエンジェルの契約は終わった。
その為、ライはアークエンジェルから降りる手続きをしていた。
そこへキサカがやって来た。どうやら依頼を持ってきたらしい。
「何だ、キサカ。俺はこれからこの艦から降りるのだぞ?」
「それを承知で依頼したい、カガリ様の護衛をしてほしい」
「カガリ様? どういうことだ?」
「カガリ様は、【オーブの獅子】ウズミ・ナラ・アスハの子供だ」
「(先日見た資料に載っていたな。だが何故それほどの権力者の娘が此処に居る?
やはり権力者は一般市民とは根本的に考え方が違うのか?)俺は傭兵だ、報酬がなければ動かんぞ?」
「報酬は日給200$、それと戦闘一回につき100000$だ。期間はオーブに着くまででどうだ?」
「分かった、請けるとしよう」
「助かる。だが、この事は内密に頼む。カガリ様はこういう事があまり好きではないのだ」
「了解した」
こうしてライはアークエンジェル残ることになった。
≪ライside≫
最近キラがフレイ・アルスターという少女の部屋によく行くようになったな。
だが、どうも普通の恋人のような関係には見えない。何かあるのだろうな。
だが私には関係ないことだ、今の所は放置するか。
そう思いつつ私は格納庫へ足を進めた。前回の戦闘で消費した推進剤などの補給をするつもりだ。
格納庫では整備班が忙しそうにストライクの整備をしていた。
「マードック、推進剤と衝撃吸収剤を分けてもらえないか?」
「ライか、一寸待ってくれ。今、手が離せないんだ」
「分かった。機体の横に持ってきてもらえるか?」
「あいよ。」
少し時間がかかりそうなので私はコックピットに入り、プログラムを起動させチェックに入った。
異常が無いのを確認して、コックピットから身を乗り出した所へ整備班の一人が推進剤と衝撃吸収剤を持って近寄ってくるのが見えた。
それを見た私はサイサリスの脇に置いてもらえる様に頼んだ。
置かれた推進剤と衝撃吸収剤を入れている時、ある事に気がついた。
それは、この世界の物は元の世界の物に比べて質が良い事である。
その事に少々驚きつつも作業が終了させる。
そして私は礼を言う為に、マードックの方へ近づいた。
「マードック、補給感謝する。」
「気にするなよ。お互い様だろ? それより、良いのか? 手伝わなくても」
「あれには触らないでほしい。もし必要な場合はこちらから連絡する」
「そうか、分かった」
補給作業などを終えた私は部屋に戻った。
戻った部屋が無人だった事から考えると、キラは又フレイの部屋に行ったようだ。
毎日夜這いをする事を注意すべきなのか、放置すべきなのか悩むところであるがあえて放置する事を選んだ。
≪side out≫
ライが降りない事を聞いたマリューとナタルは喜んでいた。
先の戦いでライが見せ付けた戦闘力は凄まじい物だった。その為二人はライを留める方法を考えていた。
そこへライが残ると言ってきたのだ、喜ばないはずが無い。
待遇について多少揉め事があったようだが再契約する事で決着がついたようだ。
再契約時にマリューとナタルが提示した条件の中に「連合兵に志願する」という項目を見たライが激怒する。
そして、それをキサカが宥めるという貴重な場面があった。
一方その頃、宇宙から部隊編成の為に降りてきたアスラン・ザラとニコル・アマルフィは部隊を率いるモラシムへの挨拶を済ませると、既に地球に降り立っているイザークとディアッカとの合流を果たしていた。
イザークはどうやらライに瞬殺にされた事に怒りを感じたのか、ひたすらディアッカに文句を言っていた。
ディアッカは最初の頃はなだめてはいたが、既に諦めたようだ。
イザーク自身、本来ならば死んでいる事は理解していたが、プライドの存在がそれを認めようとはしなかった。
曰く、「あの時、ビームライフルを使っていれば。」「地上戦に慣れていれば。」との事らしいが、後の祭りである。
それを見たアスランとニコルは冷や汗をかきつつも、イザークをなだめる事にした。
「イザーク、もう良いだろ。次会った時にやり返せばいいじゃないか」
「そうですよ。前回は負けましたが、次回負けるとは限りませんよ」
「・・・確かにそうだな」
「そんなことをしている暇があるなら地上戦の慣らしをしていた方がいいと思うぞ、俺は」
「模擬戦でしたら付き合いますよ」
「では、今から模擬戦をするぞ」
どうやらなだめる事には成功したようだ。
だがこの模擬戦で負けたアスランをなだめる事になろうとはニコルは思いもしなかったようである。
模擬戦が終わり、負けたアスランをニコルがなだめていると、モラシムが近づき次の作戦の内容を伝えた。
次の作戦はどうやらアークエンジェルの追撃の様だ。海上で確認されたようである。
今度の作戦は空中と水中からの同時攻撃のようだ。ところがこの攻撃部隊にはザラ隊の名前は無かった。
「これはどういうことですか、モラシム隊長? アークエンジェルには謎のMSも確認されています。全戦力を当てるべきだと思います。」
「謎のMSだと? そんな報告聞いていないが?」
(どういうことだ、これは? 報告がされていないだと? 本国は何をやっている!)
「・・・そうか、ならばこうしよう。
攻撃を開始し、一定時間が経過したらディン3機をアークエンジェルに向かわせる」
部下の進言を考慮している辺り、意外と良い隊長のようである。
こうしてアークエンジェル攻撃の準備が進められた。
ちなみに、攻撃部隊にザラ隊の名前がない事に気がついたイザークが怒り狂ったが、それは又別の話である。
以上第6話でした。
感想・改善すべき点など有りましたら書き込み御願いします。
読み返して悲しくなってくるのは何でだろう・・・orz
読み返して悲しくなるなら止めればいいじゃない。
努力あるのみですよ。
第四回「竜巻」
部屋の外に気配がする。
男は書類に目を通しつつ扉に意識を向けた。
数秒後、聞き覚えのある青年の声がした。
「議長、レイ・ザ・バレルです。
先日お話ししたレーツェル・ファインシュメッカー氏をお連れして参りました」
男は青年と客人に入室の許可を出し、扉を開けた。
――――――――――
彼とレイが執務室に入ると、デスクに座るまだ若い黒髪の男が資料を片手に自分を見つめていた。
「『クロガネ』艦長、レーツェル・ファインシュメッカーです。以後、お見知りおきを……」
「こちらこそよろしく、『謎の食通』。
できれば本当の名が知りたかったがね……
こうして会うのは初めてだが私の名はギルバート・デュランダル。
プラント議会の議長をしている。」
デュランダルは苦笑しつつ、握手を求める。
レーツェルはそれに応じつつ
「自己紹介はそこまでにしておいて、本題に入りましょう。」
話しを切り出した。
「議長……我が『クロガネ』のデータベースに侵入し、起動兵器のデータを流失させた者に心辺りは?」
そう、異世界のテクノロジーの塊である彼等のデータを盗んだ者がいたのだ………
シン達との接触と同時刻、
プラント外輪部から観測された謎のエネルギー反応の中心部に、
巨大な人工物、おそらく戦艦らしき物を発見した観測室は、一時騒然となった……
つい先ほどまで、艦影のかの字もなかった空間から突然現れたのだ。
しかもミラージュコロイドを使わずに!!
異星人か、はたまたナチュラルの新兵器か、ザフト中央指令室は混乱を極めた………
が、直後該当宙域をパトロール中に消息を絶ったシン達が帰還し、
彼等の正体と突然現れた訳、彼等に戦闘の意志が無いことを伝えた。
上層部は彼等の存在を市民や地球側に秘匿すると共に、
コンタクトを取るべく通信を送り、プラント側も戦闘の意志の無いことを明確にした。
その直後、プラント側からハッキングがかけられ、
搭載していた機体や元の世界での戦闘データが流失してしまった。
あまりに突然、しかも抗戦の意志が無いことを伝えた瞬間に行われたこの行動に、
原因を究明すべく、レーツェル自らプラントに赴いたのである。
「正直、思い渡る節が多すぎて断定出来ないのが現状です。
全く、まだ各地の戦災も鎮火したばかりだというのに………」
278 :
その2:2007/02/24(土) 00:18:20 ID:???
レーツェル自らプラントに赴いたのである。
「正直、思い渡る節が多そう言ってデュランダルは溜め息を漏らす。
「申し訳ない、議長
我々がもう少し警戒していれば……」
「いや、こうなってしまったのも、我々の危機管理に問題があったからです。」
自らを悔いるレーツェルに対し、デュランダルは諫めるように言う。
「ザラ派か『彼等』かそれとも『歌姫』か…
誰であれ、急がねば……今この世界は、脆弱すぎる……」
そう言うと、デュランダルは執務の窓を向き、静かに語り出した。
「艦長、私は……このままでは地球は滅びてしまうかもしれないと考えている……
互いが互いを罵り、傷つけあう。
コーディネーターの自分が言うのも難だが、
たかが遺伝子をいじくったか、そうでないかだけで、
優越感を抱いたり、劣等感を持つのはおかしいと思うのだよ。」
デュランダル人生最大の目標は、『ヒト』という種の発展だった。
「お互いに、お互いのことを知ろうとする人間が少ないのさ……」
彼の親友のナチュラルは、今の地球の現状に絶望し、世界を破滅に導こうとした。
デュランダルは、そんな彼を止める事が出来なかった。
故に、デュランダルにとってナチュラルとコーディネーターの融和とは、
彼に対する贖罪と挑戦という意味も含まれていた。
「ギル………」
レイは長年デュランダルを見続けて来たが、
こんなに弱気な彼をみたのは初めてだった。
デュランダルは自嘲気味に続ける。
「私は自分勝手な人間だよ。
彼の本心を知っていながら止めなかった。
しかし今になってから、彼に対する後悔が自分を攻める……
本当に自分勝手な…「いや……」
彼の言葉を遮りレーツェルは語り始めた。
「私は貴殿の過去など知りはしない。
だが、その親友が真に願い、望んだことを受け継ぐことは
貴殿にしか出来ないことだ……」
そう、自分と同じ道を信じ、志半ばで倒れていった者達の意志継ぎ、彼等は戦って来た。
それは誰でもない、自分達の意志でそれを継ぐことを決めた。
それを自分が諦めたら、彼等の意志を無駄にする事になるのだ。
レーツェルはデュランダルにそうなって欲しくはなかった。
自分達と同じように、
彼もまた、大切な人間を失ったのだ……
「ナチュラルとコーディネーターの完全なる融和、
「貴殿がそれを成し遂げた時、きっと胸を張ってその者
279 :
その3:2007/02/24(土) 00:21:44 ID:???
を親友と呼べると思う。」
レーツェルが締めくくる。
デュランダルは暫くのあいだ顔を伏せていたが、
「……フッ、そうかもしれないな……」
どうやら吹っ切れたようだ。
デュランダルは清々しい笑みを浮かべている。
それはレイも彼の親友も今まで見たことのない、彼の本心からの笑みだった。
そんな彼にレーツェルはサングラスを外す。
「……エルザム、
エルザム・V・ブランシュタインだ……」
「エルザムか……
『エル』……この火種を消しとばすために、私に協力してほしい。」
ゆっくりとその手を握り返した。
「無論だ……我が竜巻(トロンべ)の力、見せてやろう!!」
レーツェル、いやエルザムは自信に満ちたな笑みを浮かべた。
ガンダムSEED・D・G・G第3話投下しました。
表示のほうが第四話になっていますが、ただの勘違いです………orz
ご指摘、ご意見、よろしくお願いします。
種世界の技術でクロガネのハッキングなんてできるのか?
ただでさえNJの電波妨害があるんだし、無線では不可能じゃないのかな。
というか、重要なデータはオープンな回線から隔離しておくんじゃ。
>>274 話の筋は悪くないと思うのだけれど、今の描写だと少し淡白すぎるので
例えば主人公一人称のパートを増やすとか
マリューやナタルが喜んでいた、という部分を地の文だけで流さずに
会話を交えて描写してみるとかどうだろうか
それと報酬について、
具体的な(しかもゼロの並んだ適当臭さ漂う)額を書いてしまうと
余程相場に見合っていない限りは日本円換算の後ツッコミを受けることになるので
これぐらいで、とか後で交渉しよう、とかぼかした方が無難
また即断即決は決して悪いことではないのだけれど
今の主人公の立場を考えると少しぐらいは交渉を渋ったりしてもいいのでは
そこで額を吊り上げるもよし、あえて即決にするのなら
例えばキサカの提示した額が破格の報酬だったとか、
そういう風に文章を膨らませれば見返して寂しい、ということも少なくなるとは思う
283 :
259:2007/02/24(土) 00:47:04 ID:???
>>280 二次創作のクロス作品にて往々にあることであり
個人的には完全に耐性のついてしまっている事柄なのだが
権力者と打ち解けるのが早すぎると思う
レーツェルが去った後に議長がポツリと弱音を吐き、レイがそれを聞いて、
といった光景は想像が容易だが、
仮にも国家(もうプラント独立してるよね?)のトップに立っている人間が
初対面の不審者にいきなり心情を吐露してしまうのはいささか想像のしにくい事柄である
もう少しこう、それらしいやり取りを経て友情が、とかなら分かるのだが
時間や物語の都合上書けない、主題でないので書きたいわけでもないのなら
せめて、積み重なる問題に突然現れた異邦人
そして新たに生まれた問題にすっかり弱ってしまった議長が
相手が異邦人であるが故についこぼしてしまった、という風に
読者を納得させられる描写を入れてみてはどうだろうか
ノリと勢いだけの話でないのなら
重要なのは話にそれなりのリアリティ、説得力を持たせることである
あくまでそれなりなので、専門的な知識が無かったりする場合は素直にぼやかしたり
キャラクターの力や夜の高いテンションを借りて乗り切ろう
後、前の話を読み返すのに便利なので
名前欄に題名やコテを入れてくれると非常に助かる
投下のタイミングももう少し詰めてくれると助かる
頑張ってくれ
>>276 とりあえず今の所は完結する事を目指してます。
できれば・・・良いのですが(苦笑)
>>282 意見の書き込みありがとうございます。
報酬はこれでも破格にしたつもりでしたが・・・微妙のようでしたね(苦笑)
次またそういう話が出た場合、参考にさせてもらいます
>>249 GJ!なんだけど、よりにもよって桃色汚物の手先どもの所…
自分達以外を信じないハマーン様を否定したジュドーが
このままラクソマンセーになることはまさかないとは思うけど、
まだ始まったばかりだからガクブルしながら続きを待ちますぜ。
>>285 いや、破格なのは分かるんだが、いきなり十万ドルとか言われても
子供銀行の〜億万円みたいな幼稚さみたいなものを感じてしまうんだ
>>284にも書いたが、現実性が感じられないってこと
だから地の文で明記するとか当人を驚かせるとかして少しでも説得力を持たせてほしいわけよ
日当と出撃手当だけで雇用契約を結んでしまうというのも
社会人として迂闊すぎてありえない
あと(苦笑)とか書かなくてもニュアンスで分かるので勘弁してくれ
>>280 >>220のユウキってもしかしてパピヨンな紅茶男!?
だとしたら奴が何に乗ってるのかが蝶気になるぜ!レーツェルのお下がりのヒュッケバインMKVだったら蝶サイコーだけど。
続きをwktkしながら待っとく。ただ、スパロボスレにも投下してくれるとより嬉しかったりもする…
申し訳ない、まだオンラインゲームの癖が抜けてないようだ。
これから気をつけることにする。
290 :
>>280:2007/02/24(土) 02:00:58 ID:n3LJ0Br9
>>281 『OSや、ソフトウェア自体は前大戦を経て、大して差がない……』
設定でお願いします。
ハッキングについては……どうしたら、彼等を戦場に引っ張り出せるかを主に考えてたため、肝心な所に頭が回りませんでしたorz
>>284 御指摘ありがとうございます。
ストーリーも、描写共に、一人前まで先は長そうです。
議長との対談は、同じく彼等を戦場に引っ張り出すための苦肉の策でした…
次回の投下はもう少し先になりそうですが、パソコン復活まで、携帯で頑張らせていただきます。
291 :
>>280:2007/02/24(土) 02:02:24 ID:n3LJ0Br9
>>281 『OSや、ソフトウェア自体は前大戦を経て、大して差がない……』
設定でお願いします。
ハッキングについては……どうしたら、彼等を戦場に引っ張り出せるかを主に考えてたため、肝心な所に頭が回りませんでしたorz
>>284 御指摘ありがとうございます。
ストーリーも、描写共に、一人前まで先は長そうです。
議長との対談は、同じく彼等を戦場に引っ張り出すための苦肉の策でした…
次回の投下はもう少し先になりそうですが、パソコン復活まで、携帯で頑張らせていただきます。
改行の見にくさと連投の遅さは目を瞑って下さい………
しまった!!
焦って重複スマソ!!
293 :
>>280:2007/02/24(土) 02:15:41 ID:???
>>288 一応某トレーナーも出す予定ですが、
文章力が半人前以下なので、次回はいつ頃になるか……
>>288 そう言われると操舵なww
>>292 まあ権利者との接触はぼかしてもいいと思うし、ハッキングは技術の違いから未遂に終わったけどこのまま放っておくこともできない、みたいな形でもよかったと思います。
ところでマジで空が大好き野郎とポケモンマスターも来てるんですかwwww?
295 :
>>293:2007/02/24(土) 02:55:07 ID:???
「なぁシン!!」
「何ですか?トウマさん?」
「ここらで一番上手く紅茶を入れる店知ってるか?」
「まぁ、知ってますけどどうしたんですか?」
「今、ちょうど三時だ……アイツは必ずいる!!。」
「ハァ??」
次回をお楽しみに!!
などという予告を張ってみる……
DWではカーラも顔見せだけはしてるのに、前番組ではっちゃけてるせいか
存在がバニシングなユウキをα主人公にした俺にはなんとも嬉しい展開だ!
なんとなくだがレイとかと気が合うんじゃないかという気がしてならないww
そこには、でっぷりとした、肥満な男がい。手には何やら紙袋を手にしている。
彼は辺りを伺うように、キョロキョロとしている。挙動不審である様にも見える。
やがて視点が一ヶ所に定まると、呼吸が荒くなり、弾のような脂汗を流し始める。
「……本当にやるんですか?止めましょうよ。俺、マジで殺されますよ?」
くぐもった悲痛な声で無線で連絡をいれるが、返答は「任務を果たせ」である。
沈痛な面持ちで空を見上げると、うっすらと涙が浮かんでいる。
上司の命令は絶対であり、指令に背く事は出来ない。
今までも数多くの修羅場をくぐり抜けた彼であっても、今回の指令は果たせるかどうかも解らない。
睡眠を充分に取れてない彼の頭脳では、正確な判断は不可能であり、非常に空腹でもある。
再び、視線が一点に定まる。
その先にはプラントの歌姫、ラクス・クラインがいる。
彼が名前も知る由も無いが、キラ・ヤマト、シン・アスカ、ルナマリア・ホークもいる。
4対1。数の上でアドバンテージを取られている。
様々な格闘かと戦い死線をくぐり抜けてきた彼であっても、勝のは不可能だろう。
しかし、任務だけは果たさなければならない。 ジレンマが彼を襲い、思考が段々とボンヤリとしていく。
深呼吸をして、荒れる呼吸を調え、次々に溢れてくる生唾を飲み干す。
──ええい、ままよ!
彼は意を決し、身を翻してラクスに向かい走り出す。
「うぉぉぉっ!ラクス・クライン覚悟っ!」
不意に現れた男に、ラクスを始めとした一同は警戒を伴った瞳を向ける。
緊張感が走るが、何故かルナマリアだけは唇を歪めて笑っている。
男は、一生懸命走っている様だが、進みは遅く、ドタドタと醜いフォームである。
キラは男の前に立ち塞がり、組伏せて腕を捻りあげる。
「やめてよね。ラクスに何の用があるのさ」 男は悲鳴を上げ、キラに向かい助命の哀願する。
「た、助けて下さい!命だけは勘弁して下さい!て、TVの企画なんですよ。ホント、勘弁して下さい!」
「──TVの企画?」
ラクスは小首を傾げ男を見つめる。
「は、はい!『ラクス・クラインにラスクを食べて貰いたい』って企画なんですよ。電波、知らないっすか?」
キラは男を解き放ち、蹴りを入れながら男に言葉をかける。
「松村じゃないか!電波、僕大好きですよ。毎週見てるよ!何で猿岩石じゃないのさ」
「俺も見てます。物真似しろよ。アスランやれアスラン!」
シンは手を叩きながら喜ぶ。
ルナマリアはカメラを探しながら、見映えするように松村を助ける。
「松村さん、大丈夫?怪我はしてない?」
「ありがとうございます!マジでありがとう」
ルナマリアはこれでお茶の間は私の虜よ、と思いつつラクスが目立たない立ち位置に移動する。
松村は、新しい指令が入ったのか、ルナマリアを見つめる。
「ルナもおだてりゃ木に上る……ブーっ!」 その言葉を聞き、ルナマリアは松村を投げ飛ばしマウントポジションを取り、松村に拳を振り下ろす。
「このぉ……恩知らずがぁーっ!」
キラは笑いながら松村に蹴りを入れ続け、シンは手を叩きながら笑う。
ラクスのみが一人蚊帳の外でキョトンとしている。
松村は、暗転する意識の中で、紙袋の中のラスクはもう食べてもらえないと知り、スタジオでアッコさんに突っ込まれるなと思った。
──to be continued?──
>>291 >『OSや、ソフトウェア自体は前大戦を経て、大して差がない……』
スパロボとクロスしといて、これはありえない。
どう考えても歴史と技術が違いすぎるっしょ。
電波少年かよ!テラナツカシスwww
ゆとり世代にゃ多分元ネタ解らんぞ。
アンタの何でもクロスする意欲に脱帽。
投下乙ー。変り種で面白かったw
>>301 その辺を決めるのは職人さんだ。俺ら読者じゃない。
>>301 別にそこまで細かいことに話がつづかなくなるような言い掛かりつけんなよ
>>301 たとえ厨過ぎる設定でも作者の自由。いちゃもん付けるくらいなら自分でSS書いてみろってこった。
>>299 電波ふいた。何でアレでクロス書けるのかツラを拝んでみたい。
プロローグ
C.E.85。
未だ争い続けるコーディネイターとナチュラルの間に転機が訪れることになった。
外宇宙よりやって来たと思われる生命体、通称〈クジラ〉の侵攻により地球圏は大打撃を受けたのだ。
侵攻当初は、連合、中立国家群、プラントの足並みが当然のように揃わず、クジラに敗走し続けることになった。
その結果、地球、プラント合わせて最低でも二億人が死亡という事態を招いてしまった。
この事態に、プラント最高評議会議長、ラクス・Y・クラインの声に歌姫の騎士団が、ブルーコスモス盟主、フレイ・アルスターの声に蒼天の騎士団が設立された。
両軍の反撃のもと、一時は地球圏からクジラを押し返すが、その数ヵ月後、クジラの中に今まで確認されていなかった新種・ドール型が出現し、人類は再び劣勢に立たされた。
その後、人類は劣勢に立たされたまま四年の時が過ぎた。
被害は増す一方で、民衆の間のモラルが低下していった。勿論、一部の地域に限定されたことだが、これは人類の足並みが揃わない象徴として世界に報道されていった。
情勢の不安定化、増え続ける被害、占領された月。
ここまで来て、遂に二つの騎士団が手を取り合うことになった。
二つの騎士団は、星の騎士団と名を改め、守護神キラ・Y・クラインを中心とした精鋭中の精鋭で月奪還作戦を展開した。
多数の被害を出しながらも、遂に人類は月をクジラから解放することに成功した。
が、守護神が墜とされ最強の剣を失った人類は、程なくして再び月を占領されることになった。
愛する男の死に、二人の最高責任者は、秘密裏に人類の決戦兵器を造り上げた。
対クジラ戦において最強の五機、AGシリーズはその圧倒的な力と引き換えに、極端な操縦難度となってしまった。
そこでラクスたちは人類の未来を切り開く可能性を持つ者、「SEEDを持つ者」を全世界より探索することになった。
そしてC.E.93、まるで運命に吸い寄せられるかのように出会った五人の勇者は、人類勝利の希望となって、今、戦場へと羽ばたこうとしていた。
下手くそだっていいじゃない。
たまにはこんなのだっていいじゃない。
だって新人なんだもの。
全人類を巻き込んだ、女帝と女王による壮絶な男の取り合いだなおいw
続き書けよw
これくらい突き抜けてる話なら期待できそうな感
まだアスランとシンが残っているんじゃないかってツッコミは無し?
何はともあれ続編期待してますよ。
>>306の設定だと、シンも凸も40近いからな
普通だったらMSパイロットとしてはとっくに引退の年齢だ
凸は髪の毛も引退しています
第一章「君がくれたもの」
時は少し遡る。
C.E.92の暮れ。
本来ならこの一年に別れを告げ、新しい年に備える時期だ。
町は活気に溢れ、仕事納めに忙しなく走る大人たち。子供たちは新年に想いを馳せながら、友人たちと共に楽しげな声を上げるという光景が見られるはずなのだ。
しかし、その少年の周りには何も無かった。
見渡す限りの瓦礫が広がり、そこにかつてあった筈の都市の面影はない。
「…………」
くすんだ黒髪はだらしなく伸びており、元の色が分からないほどに汚れた肌、その身を覆う布切れはぼろぼろで、服としての機能を果たしているかは疑問を感じるところだ。
しかし、長い前髪に隠されているが、時折見える真紅の瞳は綺麗の一言に尽きた。
その、どこか遠くを見ているかのような瞳だけは澄んでいた。
その真紅の瞳の少年は、浮浪児だった。
かつては、少年の両親は英雄の仲間として、多くの人々から尊敬を集めていた。
クジラに対する奇跡の戦果は人類の士気を高め、そんな両親が少年の自慢であった。
だが、月解放戦において、母親が英雄であるキラ・Y・クラインを誤射。辛うじて直撃はしなかったという話だが、それが原因で英雄は無残な最期を遂げた。
その事件は瞬く間に世界に広がり、少年の母親は戦友の一人に殺されてしまった。
父親はその横暴に怒り狂ったが、結局は月防衛線の最前線に送られ無念の最期を遂げたという。
更に、不条理にもクジラによる月の再侵攻の敗北は父親の部隊に責任が押し付けられた。
その子供であった少年も、人類反逆の大罪の連帯責任によりプラントを追放された。
地球に下りてからも少年の苦難は変わらなかった。
いや、もっと過酷なものになったと言ってもいい。
少年の顔と罪状は全世界に公開されており、どこへ行っても正義を名乗る民衆の私刑から逃げ回る毎日だった。
季節が巡る度に、少年の表情は冷たく、硬いものになっていった。
「…………」
最初の頃は泣いた。涙が枯れ果てるまで。
涙が枯れてからは両親を怨んだ。
自分をこんな境遇に追い込んだ事に。
こんな境遇になっても死なない体に弄った事に。
怨むことに意味が無いことを悟ったら、少年には何も残らなかった。
いや、一つだけ。この不幸の原因となった人物。全ての元凶。クジラと星の騎士団への怨み。
しかし、それを晴らすことが叶わないことも、意味がないことも少年は知っていた。
少年には力が無かったのだ。
その日を食い繋いでいくことしかできなかった。
死にたいと思っても、死ぬことなんてできなかった。
それすら無意味。
少年の毎日は孤独にして虚無だった。
少年がいつも通りの虚ろな毎日を送る中で、その少女との出会いはまさに奇跡と言って良かったのかもしれない。
「あなた、誰?」
その少女は少年とは少しずれた誰もいない空間へ、そう口にした。
訝しげに見る少年は、すぐに一つのことに気付いた。
その少女の目には、光が届かなかった。
恐らくは足手まといということで捨てられたのだろう。
今の世の中、そう珍しいことではなかった。
「すみません。私が先に名乗るべきですよね。私はリリー・バスカーグといいます」
その場違いな明るい声は、少年の心に波紋を広げた。
「父さんがここで待っていなさいといってどこかへ行ってしまいました。きっともうすぐ来ると思うのですけど……」
妙に明るいその声は、きっと誤魔化しなのだろう。
少女の服はズタボロで、その肌に浮かぶ無数の痣が痛々しい。幼い顔に似合わず質感あるその身体つきと盲目という障害。
良く見れば、少女は微かに震えていた。
(犯された、か)
恐らくはそうなのだろう。
しかし、少年にとってはどうでもいい事なので、さっさとその場を離れようと思った。
首を突っ込むつもりは無く、何よりここは匂いがきつい。
少女は未だに哀れな誤魔化しを続けているようだが、そんなものは少年の耳には届かない。
少年が一歩を踏み出すと、その音が聞こえたのか少女は身体を強張らせた。
「……あ、いや、い、や、もう、やぁ」
壊れたように拒否の言葉を繰り返す少女を見て、少年は足を止めた。
少女の様子があまりに哀れだったのか、理由は少年には分からなかった。
それは、ただの気まぐれ。
少年は少女に近付くと、自分の上半身を寒さから守っていた布を少女に放り投げた。
「え?」
そのあまりの突然の行動に、少女は呆気に取られたようだった。
いつの間にか止んだ言葉の代わりに出るのは、何故という疑問。
その問いかけに、少年は短くこう答えた。
「……風邪を引く」
「え?」
「そんな格好では風邪を引くと言ったんだ」
そのどこかずれた思いやりに、少女は何を感じたのか。
少女はその小さな顔をくしゃくしゃにして、まるで今まで抱えていた悲しみが溶かされたかのように、布切れに顔を押し当てて泣いた。
少年は、少女が泣き疲れるまで傍についていた。
これが二人の出会い。
短くも暖かな時間を二人に与える、一つの奇跡。
悲劇と偶然と気まぐれが、二人の少年少女を引き合わせたのだった。
あれ?おかしいな。叩かれるネタとして投下したやつなのに。
一人受けたかたがいるようなのでなので慌てて続きを書いた。
求めた方向性とは違うが勘弁してくれ。勢いで書いちゃったんだよ。
新人スレだから内容が痛くてもそんな叩かれないでしょ
むしろそこから神作品が生まれるかも知れない……
内容が痛いを通り越して、ある意味完成されていると思う。自分は結構期待するね。
なるほど・・・でもキラも(以下略)
てか自分も結構本気で期待してますよ?
流れを読まずに申し訳ない。
皆さんの様々指摘を基に色々考えて、三話を今一度、一から書くことにしました。
自分も納得の行く様な話しにするので、宜しくお願いします。orz
あいよ
つスパロボスレ
>>322 まてまて
初心者にいきなり行かせるのはどうかと思うぞ?
ここはあくまで練習用スレだろ?
何を投降しても良いじゃないか
私見だけど、温室の温さで職人が育つもんかね。一回ビシッと言われて来た方が良いだろ。
養殖モノより天然モノってね。
しかし、ここで修行するのも悪い事ではない。
新人職人さん達に一つアドバイス。
長編をいきなり書くんじゃなくて、短編から書いた方が良いぞ?
中編でもいいんじゃないか?
まぁ、長編と中編の差が人それぞれだから何ともいえないがね。
何でも屋ドミニオンはモビルスーツの運用を得意とする、傭兵にして土木作業の会社であ
る。そこには戦犯として裁かれかけた、元ザフトレッドも就職していた。
何でも屋ドミニオンに務めるシンは、会社を有給休暇を使って休んだ。
彼にしてはとても珍しい事だ。だが同僚はもう何も質問しない。
シンにとって、否、残される者にとって大事な日。縁の深かった人の命日であることを皆
知っているからだ。エイプリルフールクライシスや、ブレイク・ザ・ワールドの日付の前
後に、同じように職場を休んで墓参りに赴く人間は多いだろう。
シンは例年通りに花束を入手し、レンタルしたスノーモービルで雪原を疾走していた。
花は今の時代、安いものではない。全世界の社会システムが大混乱に陥る中、のんきに花
を愛でる連中は少なかった。よって市場の需要と供給のバランスが崩れたのだ。
普段の生活にゆとりがなくても、墓参りや、ここぞというときに使用される花はやはり必
要で、生きた花はどれほど高価になろうとも需要は消えなかった。
雪山に行くのならモビルスーツを使って構わないと許可をくれたが、生真面目なシンは社
の備品を使うのを良しとせず、個人でレンタルしたスノーモービルで目的地まで移動して
いた。
もしかすると会社に気兼ねしたのではなく、その日だけは、会社という”現在”と離れた
かったのかもしれない。
かつてのザフトレッドはひた走る。
かつてディオキアの海で会った人の処へ。かつて戦場で再会した人の処へ。かつて幸福で
あって欲しいと祈った人の処へ。
そして守りきれなかった人の処へ。
その湖にたどりついた時、すでに太陽は頭上にあった。
街から随分とかかるものだ。毎度シンはそう思う。
インパルスだったらひとっ飛びだったのになと、三年目、三度目の苦笑いを浮かべる。
スノーモービルから降りて、腰の辺りまで雪に埋まりながら湖まで歩き、凍る寸前の冷た
い水面に花束を投じる。
花はチャプンという音を立てた後、ゆっくりと水に飲まれ、彼女の眠る水底へと沈んでい
った……。
「ステラ……
一年ぶりだ。僕だよ、シンだ。
……僕はまた一つ歳をとったよ。……ずっと君は変わらないな、変わらないままだ……。
……マユと仲良くやってるかな? 割といたずら好きだからステラと気が合うと思うんだ。
ネオはやっぱり見つからないよ、昔のツテに連絡もしてるんだけどさ。もしかしたらもう
そっちに行ってるのかな。だったら馬鹿なことしてるよな僕は。
───僕は元気にやってる。最近さ、また盗賊団が現れて───」
シンの対話は小一時間ほど続いた。
シンはとうに分かっている。
死者は答えない。死者は返らない。死者は現世に影響を与えない。ただ生きる人の感傷に
住むだけだと。
それでもシンはこの墓参りをやめる事ができない。
たとえ彼女の姿が記憶から薄れても、たとえ彼女の声が思い出から薄れても、ここで溢れ
る涙があるうちは、この墓参りをやめることはできないだろう。
両親と妹のように、彼らが死んだ日に胸を痛めるだけになるには、まだ時間が足らない。
「さよならステラ。
また来年、来ちゃうと思うんだ。
僕は弱いから…………」
静かな湖に別れの言葉を響かせると、シンは振り返り、スノーモービルへと歩いていった。
”現在”のシン・アスカの日常に戻るために。
シンの両頬には凍った涙の跡が残っていた。
いつか涙を零れない自分になることができるのだろうか。
胸の隙間がふさがる日が来るのだろうか。
シンは自分への問いに答えることができない。
ただ時間に身を任せるだけだ。
スノーモービルの駆動音は、無音の湖から遠ざかっていった。
今回の投下分でした。
>>305 厨臭さを自覚した上であえてその道を極めるのと
自覚しないで厨臭さを振りまくのとは天地ほどの差があると思うんだ。
だから、職人がここから巣立つ(変な表現だがw)ときに、読み手の嗜好以外の点で
叩かれることはない程度のレベルに到達してるのが望ましいと思うのね。
>>301のは柔軟性無さ杉な感を受けるけど、厨な雰囲気を感じ取ったら
少なくともこのスレでは一度指摘してみた方が作者のためにもなると思うんだが…。
「グランゾンの(ry」の人か「それも私だ」の人が背後にいるならハッキングもできんこともないと思う。
あのタイミングでハッキングを仕掛けられるのは事前に来るのが分かってないと準備間に合わないし。
>>329 それは厨臭さを通り過ぎてしまったcross GRの事かい?あれは面白かったんだがな……
何でも屋ドミニオンGJ。良いな。こういうしんみりした話も。
ただ、シンは一人称俺だった気がするが僕にしているのは演出?
>>331 通り過ぎたというか、読者がものすごい勢いで置いてきぼりをくらったというかw
>>332 演出でしょ、シンの一人称は元々そうだし本編でも何度か口にしてたって
いい話を読ませていただきました
某所でも頑張って下さい
あそこで首を長くしながら続きを楽しみに待ってます
>>332 アニメでも要所で僕を使っている。普段は意識して俺と言っているようなことを想起させる台詞まである。
>「そっか。きっと君も、怖い目に遭ったんだね」
>「怖い目?」
>「ああごめん!今は大丈夫だよ。僕が、うーんと俺がちゃんとここにいて守るから」
>「ステラを守る……死なない?」
>「うん、大丈夫。死なないよ」
21話「さまよう眸」より
他にも過去の回想やらで僕と使っているシーンあり。
あの置いてきぼりが良かったんだよな。細かい設定に突っ込む気力すら起きなかったぜ。つーかトウコウ装甲って何だったんだ?教えてくれ。
電波サイコーッ!
何でも屋ドミニオンGJ
シンの独白がセツナス
ある家族連れが走っていた。
俯瞰視点で、後方から眺める構図であることに違和感を感じた瞬間、これは夢だとシンは
気づいた。
その家族は後ろ姿だったが、シンが見間違う筈がなかった。
両親とマユと、マユの手を引く金髪の女性の姿───ステラだ。
ステラがアスカ一家と共に必死で駆けていた。
場所は、忘れもしないオノロゴの森の中。港まで距離を全力で走り続けていた。
シンはそっちの道を行くなと叫んだが、幽霊になったかのように誰の耳にも届かないよう
だった。
嫌な予感が膨れ上がり、最高潮に達した時、彼女達の前方からフリーダムが飛び立った。
夢らしく、地中から突如現れるという荒唐無稽ぶりだ。
暴風に煽られ、一様に伏せるステラたち。
天に舞い上がったフリーダムは何者かと交戦しているらしく、きらびやかにビームを撃ち
放っていた。
その姿を確認したアスカ一家は再び港までの道のりを走り始めた。
やった、もうすぐ港だ。助かる!
幽霊となって傍観していたシンの心に希望が満ちて───
ステラ達は閃光に薙ぎ払われた。
結末はいつもと同じ、残るのはマユの腕だけ。
シンはいつものように憤怒の視線をフリーダムに向けると、そこには
ブラストインパルスの姿が───
シンはその光景を最後に、現実に帰還した。
「──────!!!?
ッハア、ハア、ハア、ハァ……
またおかしな、……ったく」
ろくでもない夢見から覚めると、時計を確認する。
時刻はいつもの起床時間より2時間ほど早かった。
二度寝する気にもならず、シャワーを浴び終えるとパソコンの電源を入れて、プラントの
ニュースサイトを閲覧することにした。
ストレスホルモンの分泌を抑えてくれるような愉快な記事は見つからない。どれもこれも
似たようなもので読んだ事があるものばかりだ。
海鮮ジョンゴル鍋の新作。出生率の低下問題。自由結婚の是非。第三世代コーディネイ
ターの現在数。農業コロニーの稼動状況。宇宙の海賊の鎮圧。そして問題山積にも関わら
ず支持率95%オーバーのラクス統治。まことにつまらないものばかりだ。
「くそ、なんかないのかよ!」
イライラが頂点に達し、他の情報を求めて地球連合のニュースサイトを開いてみるが、相
変わらず世界の行く末は曇り空。治安悪化と隕石落としによる地球寒冷化現象など、沈む
話題が世界中を占めている。
「っち、……」
もう情報収集はやめて、朝飯食って、倉庫のダガーの整備でもするか。
などと考えて始めたところで、珍しい記事を見つけた。
アマゾンのとある村に、ナチュラルとコーディネイター、そしてハーフコーディネイター
がなんの差別もなく、極々自然に暮らしているという記事だった。
ほんの数行で終わってしまう記事だったし、場所は極秘らしく詳しいことは解らない。写
真を見たところで、本当にそれらがナチュラルとコーディネイターなのか、判別がつくは
ずも無い。
仮にでっち上げだったとしても、それでもシンはその記事を信じて見たかった。
書いた記者の名前は、ディアッカ・ハウ。
どこかで聞いた名かもしれない。残念ながらシンには思い出せなかった。
その短い記事を何度も読み返し、写真を拡大して眺めてから、パソコンの電源を落とした。
シンは朝食と身支度を整え、上機嫌で今日は出勤した。
しかし、その上機嫌は出勤後、社の就業開始時刻寸前に打ち破られた。
「げっ、社長」
そう何でも屋ドミニオン設立者である、ムルタ・アズラエルが珍しく姿を見せたのだ。
役員報酬はほとんど受け取っていないので、別に彼が出勤する必要はさらさら無いのだ。
会社の最高責任者として経営状態が気になるのは当然の事だし、熱心で素晴らしいと誉め
るべきなのだが、従業員の士気が落ちることが多いのでナタルですらも敬遠している。
彼の訓示の内容は、会社の現状に対しての苦言が4割。自慢とプラント憎いが半分。胡散
臭い激励の言葉が1割となる。
そんなもの聞きたくも無い。ついでに聞いてる奴は半分もいない。
「全員整列、社長よりお言葉がある」
それでも元軍人のサガか、それとも部下としてのけじめか。ナタルは間髪いれずに集合を
かける。ナタルさんは偉いなあ。
「ああ、別に並ぶ必要はありませんよ。ちょっとした報告だけですから。
皆さんにビッグニュースです。アクタイオン社からスローターダガーと七つ道具パックが
まとめて三機分入荷することになりました。有効に活用してください。
今日の午後二時にこちらの倉庫に届きますから」
社長にしては稀な、建設的な話であった。
わりとすらすらかけたので投下。
>>306 キラとラクスの名前にあるYって…Yamato? Yome?
猥褻のYだろう
グッジョォォォォォォブ!!
盟主相変わらずですねww
あれから数ヶ月が経過していた。
寒く厳しい冬は終わりを迎え、まもなく暖かな春がやってくる時期。
鳥たちが囀り、色鮮やかな花々が咲き乱れる湖の畔に、彼ら二人の姿はあった。
「ふふ、綺麗で新鮮な空気。まだこんな場所が残っていたなんて」
盲目な目を細めながら、リリーは穏やかな笑みを浮かべる。
その傍らに寄り添うように立つ少年もまた、あの頃とは比べるべくも無いほど穏やかな表情をしていた。
それでも、平均的な「笑み」と比べると、彼の表情は笑っているという範疇に入らないのかもしれない。
しかし、リリーには少年の感情が伝わったし、少年もリリーに伝わるのなら問題はないと考えていた。
「リリー」
右手に止まる鳥と戯れていたリリーは、少年へと視線を向ける。
「何ですか?」
「今日は、何を食べようか?……君の好きなものを採ってこよう」
その不器用な優しさ、もといコミュニケーションに、リリーは頬を膨らませて不満を示す。
「もう、せっかくいい雰囲気なのに。あなたったら食べることばかり考えているのね」
その呆れたといった言葉に、少年も眉をピクッと動かす。
「いや、違う。今の俺たちの生活を考えれば、食料調達の事を常に考慮するというのは……」
大真面目に正論という言い訳を重ねる少年を見て、リリーは膨らましていた頬を萎ませ、代わりに先ほどより深い笑みを浮かべる。
「ごめんね、冗談。あなたが頑張ってくれるから、私は生きていけるの。だから」
その真剣な声に、少年は黙りこむ。
風が木々を撫でる音が、その言葉に一拍という時間を与える。
少女特有の瑞々しい唇が、ゆっくりと言葉を紡ぎだす。
「ありがとう」
その言葉に、少年は弱かった。
彼女に言われると、何故か気力が充実してくるという事実が認識できた。
(……よくは分からないが、決して嫌な感情じゃ無い筈だ)
少年はリリーの頭に手を載せ優しく撫でる。
「すぐに戻る。それまで待っていてくれ」
「はい。いってらっしゃい」
それが彼らのいつものやり取り。
リリーを二人の「家」まで送ると、少年は森の中へと駆けて行った。
森の中で獲物を追いながら、少年は想いを巡らす。
この小さな楽園を見つけたのは、まったくの偶然と言っていい。
不思議な二人の関係を続けていく中、少年への罵倒や少女を襲おうとする輩から逃げ続ける中、二人はここにたどり着いたのだ。
とある山中の谷間にある湖の周りに広がる花畑。
ここは、今では数少ない人の手が入り込んでいない、戦禍の爪痕無き場所だった。
逃げ続けた果てに、辿り着いた二人の居場所。
水は目の前に嫌と言うほど溢れているし、周りの豊かな自然の中には様々な食料が存在していた。
二人はとりあえず簡単な「家」を作り、そこを生活の基点とした。
ここでの生活を始めてからまだ一ヶ月も経っていないが、今では長年そこに住んでいたかのように、周囲の地理は少年の頭の中に入っていた。
少年にとっての何よりの変化は、世界に色がついたことだろう。
少年の凍った心をゆっくりと、本当にゆっくりと、この環境が、彼女の笑顔が、溶かし始めていた。
特に彼女に拠るところが大きい事は、少年も自覚していた。
だから最近は、少年はリリーを支えていると思った事はない。
出会った当初は、そのハンデに苛々したものだが、今では良い思い出ということにしてある。
(数ヶ月前の自分に教えてやりたいものだな)
虚ろな世界で燻っていた自分が恥ずかしい。
(自分が変われば、世界はこんなにも変わるんだと)
他人にはそうと判断できない笑みを浮かべながら、少年は森を駆け巡る。
そこには確かに、生きているという充実感があった。
暗い部屋に、無数のモニターの明かりが灯り続ける。
その闇に、一人の女性が座っていた。
年の頃は四十に差し掛かるのだが、その外見は二十代といっても充分通用するほどの若さを保ち続ける。
女性が座っているのは過剰なまでの豪奢な造りの椅子、いや、部屋にある装飾品の全てが、一般人には到底手が届かないほどの最高級品だ。
そのような豪華絢爛な部屋の中にいて尚、その女性の輝きは廃れない。
むしろ、それら全てが女性の美しさを引き立たせるために存在しているのかもしれないと思わせるほどだ。
そんな一つの完成された空間に、一人の不躾な男が入ってきた。
が、女性は特に咎めるでもなく、その男の提示した情報に目を奔らせる。
「やはりですか」
全てを見終えた女性はため息と共に、そのレポートを男に返す。
「予想はしていましたが……確証が取れた以上、最早躊躇している場合ではありません」
先ほど見せたため息はどこかへ消え、女性の顔には決意が満ちていた。
「だが議会の連中を抑えきれるか?それに民も納得しないはずだ」
「それを何とかするのが私たちの仕事でしょう。違いますか?」
何とも簡単に難しい事を言ってのける女性に、男性は苦笑する。
男が視線を向ける先。
モニターに映る一人の少年。
かつての戦友であり、最も許せない人間である者達の子供。
複雑な面持ちでそれを見やるアスランに、ラクスは告げる。
「頼みますよ、アスラン。私たちの正義を何者にも邪魔させるわけにはいかないのです」
「ああ。難しいが何とかしてみせよう。ラクス、君も無理し続けるなよ」
ラクスの激励に対し、言外にもう若くないのだからという言葉を残して、男、アスランは退室した。
部屋を異様な沈黙が支配する。
アスランの気配が遠ざかってから、ラクスはポツリと一言だけ漏らした。
「余計なお世話ですわ」
その手は固く、指先が赤くなるほどに握り締められていた。
おかしいな、MSが出てこない。もうちょい続くこの冗長パート。耐えて欲しい。
ちなみに今気付きましたが、ラクスが言うよりも早くアスランって出てきますがミスです。ごめん。
この世界ってモビルスーツはどんなのが出てくるんだろう。
オリMSばかりになるだろうけど、逆にここまで突き抜け
んだから、オリ揃いでもアリだと個人的に思う。
楽しみだ。
GJ!!種キャラも絡んできて続きが楽しみ。
五身合体で物凄い力を発揮したりしても一切文句は無い
風呂敷を広げ過ぎて畳めなくならなきゃどうでも良い。
>>347 待つことを断りはしないが、次に書くことがあったら思い切って構成をもう少し考えた方がいいよ。
説明が饒舌で、導入が冗長だと、読み手は厭きて放り出しやすいから。
>>347 序盤で全てを説明せずに、少しずつ小出しで説明するのも1つの手段。どれだけ読者を引き込む事が出来るのか考える事も必要だよ。
何でも屋ドミニオンという会社がある。ベルリンに本社を構える零細企業だ。
瓦礫の撤去が終わった後の見通しが立っておらず、未来は薄暗い。
その会社の社長が、珍しく吉報を持って朝礼を行っていた。
「これが新しい機体のスペックです」
にこにこと資料を皆に渡す社長。
随分と上機嫌で、今回の仕事にかなり満足しているのだろう。
回された資料に全員が目を通すと、誰からともなくアイコンタクトが始まる。
妙な雰囲気が支配する職場になったが、ナタルが咳払いをひとつして、社長に問う。
「社長。七つ道具パックは確かに素晴らしい代物だとは思うのですが。このスローターダ
ガー、つまり105ダガーのマイナーチェンジは一般業務と戦闘業務,
どちらで使用するおつもりなのですか?
それに七つ道具パックが壊れてしまった場合のメーカー保証について何の記載も無いので
すが?」
我が意を得たりと言わんばかりの社長。
彼はこういう突っ込みを、さも大物らしく受け答えするのが好きなのだ。
実際大物のアズラエルなので、わざわざ零細企業の独立愚連隊のようなところで偉ぶる必
要は全く無い。
もっと別な場所で自慢話をしていて然るべき人物なのだが───
彼の胸の内は従業員には分からない。
「もちろん戦闘業務です。このスローターダガーを戦闘用にして、今までのダガーLに七
つ道具パックをつけて一般業務に回す。完璧じゃありませんか」
予想通りの返答に、ナタルは一度大きく息を吸うと、機関銃のように捲し立てた。
「ただの105ダガーならばいいでしょう。委託している整備工で何とかなるレベルです。
しかしマイナーチェンジが施されているために、整備難度、補給部品の入手が難しく、一
定の能力を保持するには、今まで以上に密度の高い整備が必要になってしまいます。
つまり維持費が高騰します。
よってこのスローターダガーは売却か、バラしてバスターダガーとダガーLの予備部品に
回すのが適当と考えます。予備パーツとしてみるならば実に優秀ですから。
試作機やマイナーチェンジなどというものは、潤沢な資金と専属のメカニックが念入りに
整備して初めて実戦に耐えうるもの。ノーマルの量産型の信頼性、安全性、整備性、耐久
性とは雲泥の差です。
それと七つ道具パックついては、発想力は見事ですが、未だ市場に出回っている代物では
ないので、ベルリンで直せる者が誰もおりません。市場販売されてから半年以上経過した
のならば喜んだのですが、現状ではすぐに壊れたあと、メーカー修理に回るだけでしょう。
使い潰す気ならば別に構いませんが……。
そして問題なのはバックパックをつけるダガーLの方です。一般業務に虎の子であるダ
ガーLを回して損耗させたくはありません。今まで通り一般業務はストライクダガーを使
用します」
久しぶりのマシンガンナタルに滅法うろたえる社長。
「しかしですね常務」
「しかもです、搬入するのはいいですが対価については一言も仰られていません。
一体いくらで! あんな希少な機体と試作パックを手に入れたのです! 社長!」
ずいっと詰め寄るナタル。ものすごい迫力だ。
「も、もちろん格安ですよ。一般的な卸値の半額ですから、す、すごいと思いませ」
「高い! 元値が半端ではないでしょう!
名前からして、連合の暗部の証拠隠滅を兼ねているでしょうに。
この機体の名前付けにはブルーコスモス強硬派の匂いがします。
どうせファントムペインあたりでしょう。どうです! 社長!」
「あ、いや、うん、まあ、落ち着いて下さいバジルール君
そ、そうだ試作パックは無料提供なんですよ」
「条件は!?」
「毎日の動作データの提供です、いずれ量産化するための粗探しも兼ね」
「つまり、我々に仕事をもっとしろと言うのですね! 社長!」
「も、もちろんパックの耐久性は保証すると」
「それは量産されてから判断します」
「パックが壊れたときは無償修理なんですよ、素晴らしいでしょう」
「当然です!」
「はい」
ドミニオン最強のナタル・バジルールにかかっては、ロゴスの偉い人も形無しである。
元々ナタルは軍人で、不満のある上官に対しても丁寧に対応していたらしいのだが、民間
業者になってからはタガが外れてしまう傾向にあるらしい。
なにせナタルがいなくなるとこの会社が潰れてしまう。よってアズラエルはナタルを首に
はできないのだ。
それに従業員からみると、アズラエルはナタルとの掛け合いを愉しんでいるように見えた
りもするのだ。社長は社長なりに、ナタルの事を気に入っているのではないかと予想され
ている。
フレイが不倫の可能性があるかどうかで盛り上がっていたこともあったか。
「何より! どうして一言の相談もせずにそんな高い買い物をしたのです!」
「ま、前に言ったじゃありませんか、手に入りそうだって」
「それは相談とは言いません!」
「す、すみません」
「……私たちの事を思いやって新しい機体を入れてくれたことには感謝しますが、お願い
ですから勢いで資産を購入するのはやめて頂きたい」
ムルタ・アズラエルから勢いを取ると、ただの冷静なビジネスマンになってしまうので、
土台無理な相談である。
「フレイ、カイト・マディガンに連絡を入れてくれ。
とても貴重なMSを手に入れたとな。なるべくまとめ売りできるように交渉しろ」
「わかったわ、彼、コーディネイターにしてはいい男だし」
カイト・マディガンとはフリーの傭兵である。
幼少から訓練を重ねてきただけあって、MSでの戦闘力は世界でもトップクラスだ。
彼はモビルスーツコレクターの側面もあり、珍しいMSを買ってくれることがある。
以前バスターダガーというマイナー機体を買い取ってくれた例もあり、贔屓にしていた。
困ったときの金持ち傭兵。それがカイト・マディガンなのだ。
続く。
GJ!!
ナタルと盟主のやりとりがイイ!
みんな生き生きとしていてとても面白いっす。
GJ、ナタルさんつえぇ〜www
盟主王もなんとなく楽しげなのがイイ!
なんでも屋さんGJ
ナタル常務と盟主王の絡みがいい
GJ! 弱い、弱いぜ盟主王! でもそれがいい。
つかナタルさん活き活きしすぎw
GJ!
ナタルもいいがフレイも味がある。
たくましく生きてるな、みんな。
買ったMSをすぐさま売却wwwナタル容赦ねー
――第4機動艦隊旗艦『クサナギW』艦隊司令官室――
――ズズズッ。
自室でお茶を啜りながら、俺は資料の束に目を通し、手持ちのコンソールを操作しつつ、
現在の戦況を確認し、戦線の情報整理をしているところである。そして、相変わらず茶が渋い。
オーブ茶というものは、苦味と甘さのギリギリ線のせめぎ合いのブレンドを、絶妙かつ、微妙に配分して入れなければならないのだ。
それも違いがわかる男の俺にとっては、特にである。
彼女のお茶の入れ方は、俺に対する悪意なのか、常に思いっきり渋めに入れて来る。
これを狙っているのならば、その絶妙さは名人芸であろう。
あの小娘は、ブッチョウ面で資料と同時に、乱暴にお茶をここに置いていきやがったのだ。
まぁ、それはいい。現在の俺は、『ラクシズ』に対する戦略と戦術の再構成を行っている最中だ。
今、風向きは俺たちの方へと上手く吹いているように見えるとしても、それは薄氷を踏むような、
危ういバランスの上で成り立っている。
その理由の一つとして、戦略を防衛ラインの形成から攻勢ラインへと、時間短縮の為の戦線構築として、
組み立て直さなければならないからだ。これがまた厄介なことなのだ。
正直、言って拠点衛星基地『ヘーリオス』の攻略は、時間がそれなりにかかると思っていた。
だが、結果としては、
「――やるな、エルスマン。こちらの魂胆と攻勢の勢いを見抜いた上で、一気に撤退にかかったのか」
と、一旦、手にした情報資料をデスクに置き、敵将に対する賞賛を口にする。
資料の紙の束を見ながら、2000年以上の時が流れても、紙以上の現存記録媒体を人は、
未だに見つけることが出来ていない事実と同様に。
エルスマンの奴は、こちらがこの一戦で、先遣隊の中枢に、壊滅的な打撃を与えようとした事を見抜き、
予め撤退の指示を決断したのであろう。撤退準備が入念でなければ、あれ程の迅速な対応はできまい。
最初の『ヘーリオス』での小競り合いは、奴が本拠地にしている拠点衛星基地である『ミカサ』が、
遠距離の為に、統率が行き届いていなかった際に発生した小さなアクシデントに過ぎないのだろう。
そして前回の戦闘は、命令系統のタイムラグが発生したことによる、一部の将校や兵達による暴走の結果、
偶然の散発的な戦闘が発生しただけなのだ。
その証拠として、短いが激烈な戦闘が行われた直後に、見事な撤退戦を奴等は、俺達に見せ付けたのだ。
俺は、右手に持った赤ペンを指先で回しながら、
「――直接、撤退の指揮を執ってはいないとは云え、あの手際、見事なものだった」
あれは、凡将のよくするところではないであろう。俺自身が指揮を執っていたとしても、そうする。
エルスマン率いる、『ラクシズ』先遣隊は、完璧な逆撃の体制を取っていた為に、こちらがあのまま追撃をかけていたら、
間違いなく双方にかなりの被害が出ていたであろう。
だが、結果として艦隊の被害は軽微で、拠点を取り返すことが可能となった。
そして、この戦闘の結果が、俺の名声というか声望を高める事が、ロンド・ミナの思案の一つだったはずだ。
確かに、殆どこちらが無傷に近い戦果で『ヘーリオス』の奪還にした事は、
オーブ軍に広がりかけていた厭戦気分を一気に解消する事に繋がったのだった。
ふと、ある事を思い浮かべてしまった。『メサイア戦役』の前後で、プラントで流行ったという言葉である。
恐らくは、『ラクシズ』の誰かが垂れ流した言葉が、そのまま噂として口から口へと流れていったのであろう。
『未来をつくるのは、運命じゃない』
――最悪の妄言ではないか、と俺は思う。
これ程、人間と云う存在を馬鹿にした言葉は、ないと思うのだ。
誰が呟いたかは知らんが、蒙昧で恥知らずな言動であろう。
『運命』という言葉の意味と、『未来』の意味を無理にこじつけて取り違えている。
『運命』とは、本来その本人自身が『戦って』切り開くものであって、そこに元から、存在するものではないのだ。
更に、未来を切り開く過程に於いて『戦い』とは必然的に発生する。そして、それが『歴史』と言う名の『未来』となり面々と継がれてゆく。
本来、『未来』と『運命』とは表裏一体のものであるのだ……。ふと、苦笑してしまう。
「柄じゃあないな……」
後頭部を手で押さえながらも、俺は思わず呟いてしまった。
――俺は、哲学者でもなければ、神に使える神官や神父でもないのだ。
この世の倫理ではなく、生臭い政治社会や血生臭い戦場で戦う、俗世の垢に染まりきった凡夫に過ぎない。
俺の今の仕事は、『オーブ』の平穏を護り、それを脅かす者は何者であろうと容赦はしない事にあるのだから。
『俗世間』の人間が何を偉そうに『世界の為』とか『平和の為』とか口にするのは、吐き気がするのと同時に滑稽であろう。
俺が言うのも何だが、『ラクシズ』の連中が特にその勘違いが甚だしいのだ。連中は、自分等を何様だと思っているのだろうか?
自分達が、選ばれた存在だと云う『妄想』に酔っているだけに過ぎないだろうに。
そして、かつて自分も、その一員であったとは、笑い話にもなりはしない……
俺は、『寿』のカップにあるお茶の残りを一気に飲み干す。嫌な事も飲み干すように。
その苦味と渋さは、俺の過去を表しているかのようだ。
「さてと……お仕事、お仕事」
コンソールを叩きながら、周辺宙域の星図を出し、これからの戦略を練り始める。
>>続く
今日の夜にでも投下するぜぃ。
職人さんたち乙です!
370 :
259:2007/02/26(月) 22:39:49 ID:???
いきおいで書きあげたらあまりにもデカくなったので半分まで圧縮しました
また種死は実はTV本放送一回コッキリしか見ていなかったりするので
一部意味がつながらなかったりしたらご容赦を
間もなく行きます
371 :
259:2007/02/26(月) 22:41:48 ID:???
森の娘が見た光(全8回)
プロローグ〜森の娘〜
凍てついたユニウスセブンの上でミネルバがサトー隊と邂逅を果した、ちょうどその頃。
プラント、連合双方が学術的見地から自然保護公園として領有権を放棄し、特別自治区と名付けた大きな原生
林の森の中。MSがビームで戦争をしているCEにあって未だ電気やガスに縁の無い人々が30人ほど、焚き火
を囲んで何かの宴を開いている。時は夜。上座に収まったやや年配の男性が立ち上がる。
「お前たちが神の祝福を受けて結婚できることを一族の長として喜ばしく思う。特にお前達は頭も良いし彼らの
言葉も喋れる。全てを受け入れては神に背く事になろうが一族の反映には彼らの力を借りることもやむを得まい。
お前達の力で一族が更に栄えんことを」
彼らは基本的には自給自足では有るが学術調査隊のガイドのようなことも偶にやる。そういえば新郎新婦と思
われる二人は民族衣装ではなく男性はサファリジャケットの上下、女性は赤のチェックのシャツをワンピースの
ようにして着ている。まだ二人とも幼さが残る面差し、ハイティーンには少し届かないのかもしれない。
暫くすると皆から冷やかされながら新婦が大きな瓶を持って立ち上がる。明日の朝食に使う水を汲んできたら
新郎とともに新居へと向かうのだ。そして翌朝朝食を食べたことを新郎がみんなに報告したところで正式に結婚
となる。水はたくさん汲むほど良い結婚になると小さい頃から聞かされるので女性はできる限り大きな瓶を持て
るよう訓練する。そして彼女はかなり大きな瓶であっても軽々と零すことなく運べるのが自慢だった。
そしてその彼女が瓶のふちを小川に浸した瞬間、空が光った。思わず振り返った森は自ら光を発する。次の瞬
間経験したことも無い突風が轟音と共に彼女を吹き飛ばし村そのものを森ごとなぎ払った。(あぁ瓶が割れてし
まった、あたしは不幸になるのか)小川の土手に叩きつけられ、上から木々の破片と泥を被りながら彼女はそう
思った。夫となる人間の安否を気遣おうとしたところで、全てが暗くなり、考えることも出来なくなった。
ブレイクザワールド事件は連合にもプラントにも、文明にさえ無関係な人々にも容赦なく襲い掛かった。見渡
す限りの自然保護特別自治区の原生林は後の調査によればその瞬間1/5になってしまった。貴重な動植物や虫、
鳥、そして未調査の古代遺跡と現住民7部族もその殆どが影響を受け、消滅した。
372 :
259:2007/02/26(月) 22:43:41 ID:???
第一回 落ちてきたもの(1/5)
「コレが原生林かよ・・・落ちたのは何処だろう。水の確保にさえ手間がかかりそうだな。駐屯地の設営はどうか?」
「あと三十分程でエアコン稼動まで完了です。機材の方は、日暮れまでには約半数が完了予定です」
高台に立って去っていく輸送機の編隊を眺めながら少佐の階級称をつけた連合の軍人が背中越しの報告に振り
向かずにうなずく。背中に敬礼をするとクリップボードを抱えて現場へと戻る黒髪の女性の下士官。
「この状況下で何をどうしろというんだ」
ブレイクザワールド後、プラントの動きは早かった。次の日にはプラント領のみならず中立領にまで支援物資
の配給と復興支援を開始した。地球連合政府とて手をこまねいていたわけではなく即日支援は決定したのである。
ただ実際に支援部隊が出発を始めたのがプラントよりも2日遅かった。動かすのはザフトのように身軽な軍隊で
はない。指揮命令系統が人類史上最も複雑な連合軍であったところが初動の遅さに繋がって居る。初動の遅さは
救助が命令にあれば致命的なのだが、そのこと自体は指揮を取るイシカワ少佐には確かに関係の無い話ではある。
少佐が振り返ると都市迷彩の初期型のストライクダガーが2機、デザート迷彩の同じ機体が3機自分が立つべ
き仮設ハンガーを重機と共に設営している。そして足元にはスカイグラスパーと呼ばれるトリコロールに塗られ
た戦闘機が2機。車両関係もやはりというか全くカムフラージュには成らない色合いの迷彩色。
「MSも飛行機も必要以上に目立つな…ザフトの基地が近いと言うのに。要らないものを寄越せとは言ったつも
りは無いのだが。まぁ戦闘が頭に無ければこんなものか」
頭をめぐらすと既に出来上がったハンガーにはブルーの機体が納まっている。普通のダガーより目つきが悪い
な。悪役顔だ。通称105ダガーはそんな自らの隊長の思惑も知らず唯立っている。アレの故障は直らないのだ
ったな、だったらあんな悪趣味な戦闘機は要らんのだが。居るはずのパイロットを探すが機体の周りには居ない
ようだ。大体あいつが請求しなければ新しい機体など来るはずも無い。もうどこかでサボっているのか、全く。人の
良さそうな顔を苦笑させるがふと真顔に戻る。
「そのためにつれてきたのは確かだが、あいつが活躍する状況は困るな」
少佐はそこまで呟くとゆっくりと出来上がりつつある本部に向かって高台から降りていく。
373 :
259:2007/02/26(月) 22:46:30 ID:???
第一回 落ちてきたもの(2/5)
特別自治区をはさんだ反対側。イシカワの気にするザフトの駐屯地があった。
痩せぎすの黒い制服を着た男が眉だけを動かして副官と思しき人物に声をかける
「連合の動きはどうか?それと我が方の残存兵力の確認はまだ上がらんか?プラントには帰る気は無いのだな?
お前らは。左遷されたという意識が無いならここに骨を埋めるかっ!」
あわてて敬礼をして手にした端末に目を落とす
「はい!あ、いいえ!連合はどうやら当初の位置に駐屯する模様です、機材、展開状況から見て戦術的な展開で
は無いようです。えっと、稼動機についてはジン・オーカータイプ2、バクゥ4、ディン2、ガズウート2、ア
ジャイル3個小隊、それからパイロット不在ですがラゴゥが1。修理中のディン1。以上です」
既にこの基地からも災害救助の名目で戦力の2/3が出動している。戦力的には報告の通りであれば圧倒して
いるが、出来ることなら連合の部隊には係わりたくない。そう、さっきの特命が無ければ。
「それから修理、点検中の機体ですが…」と続けようとしたのを遮る。既に私の手元にも有るデータをただ読
み上げてなんの役に立つというのか。
「アジャイルとディンにはスクランブルに対して即応できる体制を取れと伝えろ。ナチュラルどもの動きは継続
して監視。それと車両系の報告はどうしたか!報告が上がらんというなら自分で調べて来い!」
敬礼もそこそこに慌てて飛び出して行く緑の服を見送ってため息をつくと、モニターに「重要」と書かれた命
令書を呼び出す。ザフト正規のものではない。今更ザラ議長閣下の命令書が出て来るとはどういう事だ、しかも
ユニウスの欠片と一緒に落ちてくるとは・・・。この人物フリードリッヒ司令は優秀な男であったがザラ派であっ
た。優秀であったが故にクライン派に対して間諜のようなポジションに送り込まれ、故に戦後処分されることも
無く、但し、危険人物の扱いを受け辺鄙な駐屯地の司令を押し付けられていた。
【ユニウスにクライン派殲滅の秘密命令書があり、それが隕石と共に落下した可能性がある。発信機の最後の発
信位置が貴官の基地の周辺であるので隠密裏に確認のうえ回収、若しくは破棄されたい end】
燃えずに落ちてくるような素材に命令書を入れておくだけでも愚行だと言うのに、わざわざ発信機を着ける余
裕が有るなら早く回収すれば良かったのだ。デスクの引き出しを開けると何かを受け取る彼と渡しているパトリ
ック・ザラの写真が写真立てに納まっている。
緊急コールがなる。写真を仕舞ってコールを受けた顔が強張り、マイクを取る。
『基地全域にコンディションレッド発令!ディン全機、アジャイル、ケンウッド隊にスクランブル!ガズウートはどうか?
パイロットに直接つなげ!・・・』
374 :
259:2007/02/26(月) 22:48:19 ID:???
第一回 落ちてきたもの(3/5)
『こちらグラスパー2。特に反応は無いですねぇ。むしろダガーのセンサーの方が拾いませんか?』
「広範囲は空からの方が効率良いだろ?D-3、反応無いか?30人規模の集落が有ったはずなんだ」
『こちらD-3、ホントにこのあたりなんですか?デビットの方が本命じゃないですか大尉?』
「そうかも知れんな、ラジオが飛ばないのも困るか・・・。グラスパー2は中継ポイントへ戻ってよし」
『5分オーバーです少佐に怒られますよ?ハハハ・・・中継ポイントAで待機します。オーバー』
既に惨劇から4日。もはや生存者は無いかもしれないがそれでも確認する必要はある。と力説した105ダガ
ーのパイロット、フランクの提案で生存者の調査が行われている。もともと植物学専攻で軍の研究所で研究に明
け暮れていたのを、前大戦が佳境に入った頃イシカワに半ば強制的に任官『させられた』学者崩れパイロット。
ではあるが前大戦ではダガーでジン3機を撃墜し、この機体を拝領して更にスコアを5つ伸ばしたエースである。
大戦後士官としての即席教育を受け、撃墜数の功績もあり大尉の階級章を着けてはいるが、最近では上層部から
も部下からも昼行灯呼ばわりされており、自身もいつ退官しようかぐらいにしか今の立場を思っていない。今回
もイシカワに名指しで引っ張り出されなければ、自身では絶対に手を上げなかったろう。森林の被害調査が名目
で専門家が必要と言われれば、如何に強制命令ではないとは言え、軍服を着て給料を貰う身では断りきれない。
学術調査の色合いが濃い部隊なので、生存者無しと割り切ればすぐにそちらにシフトできるが、調査をしてか
らだ。と強引に押し切ったのは実は彼である。本人も不思議に思っているのだが、無残な森の姿を出来る限り調
査したくなかっただけなのかも知れない。
「やはり誰も生きてはいないか。本部へ中継、30分後に…! D-2!熱源センサー!わかるか?左だ、赤外
線、その距離なら利くぞ、人体に害の無いセンサーは総動員しろ!どうだ?」
『ん〜と・・・!見つけた!地表面下約800mm、温度約28度、…カタチは、人間みたい!』
「グラスパー2、要救助者発見を伝えろ!D-3周囲警戒!D-2、ソフィ!降りて掘り出せ!俺も行く!」
375 :
259:2007/02/26(月) 22:50:33 ID:???
第一回 落ちてきたもの(4/5)
20分後、スコップを持って肩で息をつく金髪の女性士官の隣で、毛布に包んだ少女を抱き上げるフランク
の姿があった。赤いチェックのぼろぼろになったシャツを着たローティーンに見える少女。意識は無いが間違
いなく息は有った。切り傷擦り傷の類はあるが骨折も無さそうだ。頭部の損傷が心配だが今はわからない。
「ちょうど繭みたいに成ってたんだな、枝がクッションになったのか。神様に好かれてるぞ、お前さん」
「そのくらいの子供が居てもおかしくないよね、フランク。お似合いよ」
少女に対して柄にもなく破顔したのを見て、D-2 のパイロット、ソフィはそう言って楽しそうに笑う。前大戦時は
衛生班の腕章を巻いていたのだがひょんな事からMSを操縦してしまいその後MS師団に転属になった変り種
である。そういった曰く付きの人間が集まる電波でも出しているのか、配属先はイシカワ少佐の部隊であった。
フランクより1つ年下であるはずだがそれよりはずっと若く見える。自称機械たちの女王、通称機械オタク。
外見に反して浮いた話一つ出ない原因は、きっとこの辺にあるのだろう。
そしてこの二人は作戦遂行に必要だとして今回イシカワが半ば強引に召喚した二人でもあった。
「まだ30前だ!いくつで作ったらこんなにデカクなるんだよ!ところでさっきから無線が何か言って無いか?」
「ジャミングが激しすぎてグラスパー2も音信不通。さっきグラスパー1も回すとは言ってきたけどそれっきり」
D-3と呼称された機体を見やりながら「マイクと喋るのにも双方向が使えないなんてどうなってんのかしら」
とぼやく。状況がきな臭い。とっとと戻った方が良さそうだな。こんなに幸運が重なるヤツは他にはもう誰も居
るまい。と、不意に少女が目を開けると上体を起こしてフランクにしがみ付く。
「なん……っ!」
一瞬視界が白くなり、ゆっくり普通に戻る。嗅いだ事のあるイオン臭。音を立てて発火しながら倒れる木だったモノの残骸。巻き上がる埃。そして【ラジオ・オンエア】のマークを出す無線機。
376 :
259:2007/02/26(月) 22:53:53 ID:???
第一回 落ちてきたもの(5/5)
『通告に従わないので警告のため威嚇射撃を行った。再度繰り返す。当公園内は現在ザフトが掌握している。3
0分以内に連合軍関係者は採取したものを全て放棄し公園外へ退去せよ。通告に従わない場合は当部隊に対する
敵対行為とみなし、攻撃を開始する。』
無線機から固い文きり口調の声がいきなり飛び込んでくる。いつの間に展開したのか攻撃ヘリが空の一角を埋め
ている。砲撃は、大口径ビーム、砲台?公園内は特別自治区だろうが!どうしてザフトが掌握している?アジャイル
は一個小隊程度?、グラスパーが今来ると危険だ。地上にもMSが展開しているだろうか、もしもバクゥだったらアウ
トだ。だいたいライフルはソフィしか持って無い。機体に飛び乗りながら思考をめぐらす。
『D-3からD-R。公開チャンネルは封鎖されてます。こっちの話は聞いてくれないようです』
考えている暇は無い。緊急起動シーケンスの画面を目で追う。戦闘なんかこっちだって真っ平ごめんだ。
シートの後ろの少女を見る。救助したのだ。採取したものではない。ならば『放棄』しなくともよかろう。
「後方警戒しつつ駐屯地まで後退、マイク!ヘリから目を離すな!試料は捨てろ!ソフィ!絶対撃つなよ!」
ぼんやりと意識を取り戻しつつあった少女は夫がなぜか機械を運転している後姿を不思議に眺めた。ヤッパリ
何でも出来るんだ。アタマ、いいものね。いつ練習したの?みんなに自慢しなくっちゃ。瓶はどうしたかな。
朝ごはんの用意を。そこまで思うと彼女の意識は揺れるD-Rのコクピットの後ろで暗い世界に帰っていった。
予告
第二回 世界の思惑
そこに集まったものは、皆自らの思惑とは異なる方向へ導かれる
地に落ちた空の墓標は戦乱を呼ぶものなのか
377 :
259:2007/02/26(月) 22:57:35 ID:???
キャラの名前は総とっかえしてます
オリジナルMSは最後の方でつまんないのを一機のみ予定
これは変えてません
その昔を知ってる方がいるとも思えませんが一応
ではまた
こりゃあイイ!
GJ!
春に別れを告げる時期。
動物、植物が来るべき夏に備えて英気を養う頃、少年たちは相変わらず穏やかな時間を過ごしていた。
照らす光が日に日にその強さを増していくことに、リリーが不満の言葉を漏らす。
「何だ?暑いのは苦手か?」
「ううん、嫌いって訳じゃないけど……」
言いよどむリリーの体からは仄かに匂いが漂ってくる。
汗ばむリリーは妙に艶かしく、その表情にもどこか色を感じさせる。
その事を少年が指摘すると、リリーは顔を真っ赤にして少年を叩き始める。
「もう!もう!なんで!あなたは!そう!デリカシーが!ないの!」
一句一句区切り、強調しながらの指摘には微かに楽しそうな響きが混じっていた。
「……いや、俺としては事実、のぉ!」
馬耳東風、人の言いたい事を分かっていない少年に、乙女の鉄拳が炸裂した。
その威力、正確さは、とても盲目な少女が放ったものとは思えない。
少年はその制裁から逃げるように「家」から飛び出していく。
「ああ!まだ話は終わっていないわよ!」
活力漲るその声に、少年は苦笑しながら今日の食料調達への出発の意を示す。
そう言われては強く出られないリリーは、渋々引き下がる。
毎日のように繰り返してきた、いつもと変わらないやり取り。
二人の関係は確実に縮まっていた。
遠慮無きそのやり取りはお互いへの甘えの証。
リリーはそれを自覚しているが、少年の方は恐らく気付いていないだろう。
(まったく、もう)
内心の憤慨は一瞬、すぐに少年への淡い想いへと染まっていく。
リリーにとって、少年は自分を救ったヒーローであり、気の休まる家族であり、この世で一番大切な男性だった。
その想いを明確に感じ取った当初は、盲目というコンプレックスに悩まされたが、少年への独占欲とも言うべき想いは容易にそれを上回った。
ある晩、リリーは思い切って少年に想いを伝えようと強襲したが、結果は不戦敗。
伝える前に、いつものような会話の流れになり、そのまま二人で寄り添うように寝てしまった。勿論それだけ。何もなかった。
あの日以来、リリーが再戦を仕掛けた事は無い。
良く考えれば、今でも充分自分たちの繋がりは強い。それならば、そこから無理する事はないのではないか。
一度頓挫した作戦が、そんな思いをリリーの中で強めてしまったのだ。
リリーにとって、今の関係こそ心地良いものであることには変わりが無い。
そこから本当に一歩を踏み出したとき、もしかしたら壊れてしまうかもしれないという恐怖。
(穢れた私に、こんなにも光をくれた)
自分に向かって手を振る少年に、リリーは笑みを返す。
(戦争なんて関係ない。クジラなんて関係ない。他のことなんていらない)
小さくても幸せな世界。
永遠に続くはずだった、続かせるはずだった世界。
それが、あまりに呆気無く破壊されることになることを、この時の二人には知る由も無かった。
森を駆ける少年は、しばらくして違和感の正体に気付くことになる。
「何だ?これは……」
いつもは騒がしい森が、今日に限ってやけに静かなのだ。
動物たちの、虫たちの鳴き声がまるで聞こえない。
「……嫌な感覚だな」
少年は踵を返し、リリーの元へ帰ろうとする。
だが。
「ん、あれは?」
遥か彼方、太陽の光に紛れて見づらいが、こちらに向かって何かが接近してくるのが見えた。
急速に大きくなるその姿に、少年は心当たりがあった。
「馬鹿な……」
いや、少年でなくても全世界の人々が知っているものだ。
「何で、ここにいるんだ……」
最悪の侵略者。外宇宙の生物。災いの根源。
そう、それは。
「クジラ……」
悠々と空を飛ぶ悪魔。
その体格は全長80メートルに達するほどの巨大な生物。
最も初期から確認されていた種類であり、俗称の由来となった型。海洋生物の鯨に酷似していることからホエール型と呼ばれるクジラ。
あれはその中でも新種と言われているアクリスという種族だ。
その本来の鯨ではあり得ない異様な口が開かれる。
横と縦、まるで花びらのように開かれた口の奥に、無数の赤い光が灯る。
そして、次の瞬間。
空に響き渡る咆哮と共に、閃光が放たれる。
その全てが地上に突き刺さり、着弾周囲を粉微塵にしてしまう。
少年にとって最悪だったのは、それらの内一つが自分の近辺で炸裂したことだろう。
圧倒的な衝撃を前に、少年の体は紙切れのように吹き飛ばされる。
悲鳴すら上げることを許されない程の痛みが全身を駆け巡る。
それでも少年の悪運は強かったらしく、少年が落下した場所は木々で生い茂っており、それらが落下の衝撃を抑えてくれた。
そのおかげで、少年は何とか命だけは取り留めるが、どうやら意識は保っていられないらしい。
(ぐ、ここで気を失ったら、アレが……)
遠く、未だ土煙で隠された自分を吹き飛ばした衝撃の中心地点で蠢く「何か」を見据えながら、少年は意識を失った。
自分の語彙の少なさに脱帽。
次回はついに出てくるMS。戦闘しちゃいます。
>>381 傷口に塩を塗り込むようだが、脱帽は他者に対する敬意や降参の意を表す言葉だよ。
君が自賛したいのでなければ別の表現を使うべきだと思う。
大辞林 第二版 (三省堂)
だつぼう 【脱帽】<
(名)スル
(1)帽子をぬぐこと。
「―して礼をする」
(2)(帽子をぬいで)敬意を表すこと。また、降参の意を表すこと。シャッポをぬぐこと。
「君のねばり強さには―する」「彼の博識には―だ」
自嘲する意味であえて使ったのかもしれないし
そういう表現は小説にもままある。
明治時代にとある表現を逆の意味で書いたらそれが
定着してしまって現代の言葉になっているのもある。
芥川の小説だったと思うがそれは何の言葉かは忘れたが・・・
だから正しい日本語論議ってのは流行ってるがある意味で間違ってる
(2)の降参の意味を表すこと。を
さじを投げる、と同じ意味合いで使うことは良くある
自分が自分に脱帽するなんて普通言わないでしょ
まあ、小説の中ならともかく職人は余計なことを言わない方がいいってことだ。
謙譲すぎても叩かれるし謙譲表現を間違えれば他人を不快にさせる。
細かい事気にしたら負けなんだぜ。
いらん擁護したり尻馬に乗ったり
自己顕示欲の強い奴ばっかだなこのスレ
>>388 中でも飛び抜けて自己顕示欲が強い人、乙
>>389 わざわざレスくれる君もナカーマ(AA略
>>389 荒らしは放置が基本、構うと粘着するから。
やめろよ。そろそろDQNな職人が泣き始めるじゃないか。
投下町
1/
一体自分は何を為ているのか。ミネルバの通路を歩きながら、レイ=ザ=バレルは
自分自身にそう問いかけた。決まっている、ミネルバが迎えた賓客を案内しているのだ。
後ろには敬愛すべきデュランダル議長と、"オーブの代表殿"が並んで歩いている。
ちらりと後ろを視ると、不機嫌顔のアスハ代表と目が合った。
この気分はそうだ、何時だったかルナマリア、シンとで賭けをして負けてしまい、
罰ゲームをやらされているときに似ている。内容はミネルバのアーサー副長から
ゲームを借りてそれをクリアするという、まさに罰ゲームそのものだった。
ソフトを選んだのは副長だ、西暦時代のゲームでタイトルは「螺旋回廊」、
見かねたシンが肩を叩いて賭けを"無かったこと"にしてくれた。
初めて上官に殺意を覚えた瞬間だ。
「機関部は機密によりお見せできません。入り口までで我慢してください」
扉を三つ挟んだ向こうが完全な真空状態なので、案内が出来ない。
後ろを付いて来る代表と議長に説明を行うと、二人は話を止めてレイを見た。
笑みを崩さないデュランダルと、不機嫌な態度を隠そうともしないアスハ代表とを
順に見ると、政治家としての格の違いを感じる。
それもこれも、アスハ代表の姿を確認するや否やインパルスの調整を理由に
医務室を飛び出したシンが悪い。
勿論、デュランダルの命令を受けるにはやぶさかではないし、近くに居られることに
喜びを感じていない訳でもない、しかしレイには先にやるべきことがあった。
他のパイロットたちとのミーティングを先に済ませておきたかったのである。
アーモリー・ワンを襲った賊たちの腕は尋常ではなかった。
シンが暴走したために深追いする事となったが、並みの敵であればレイとシンを相手に
逃げる事は不可能であっただろう。ましてカオスとガイアはテストステータスだったはずだ。
ルナマリアは宇宙での敵の動きを見ていない、シンでは冷静な観点から敵の動きを
分析することは不可能だ。先ほどの戦闘に参加していないパイロット、ショーンとデイルに
敵パイロットの特性を伝えるには、自分が話すのが一番だと思っている。
そして戦闘中に感じた不思議な直感、ガンバレルを使うMA――嫌な予感を通り越した
明確な危機感を覚ている。
――まともなミーティングになっているだろうか?
「こちらです――ゲートは回転しておりますのでご注意ください」
心配を押し切って、レイは重力ブロックへのゲートを抜けた。
2/
一体自分は何を為ているのか、重力区画への細いゲートをくぐりながら、
カガリ=ユラ=アスハは自分自身にそう問いかけた。決まっている、
成り行きで乗り込んでしまった戦艦の中を案内されているのだ。
作り笑いのデュランダル議長と無愛想なザフトレッドが案内してくれている。
ちらりと後ろを見ると、無言でつき従っているシズルが笑みを返した。
此処まで来る間に説明されたミネルバの構造を思い返す。大気圏内での運用を
考慮しているため、外観からも分かるとおり、明確な上下が存在する。
上から艦橋を含めた兵装ブロック、居住ブロック、MS格納ブロックであり、
下にある物ほど大きなスペースを取る。兵装、指揮ブロックとMS格納庫及び
カタパルトは推進器と共に後方に固められ、居住ブロックと艦首主砲が前方に
大きく突き出している。
見た目のイメージは、左右に羽を生やし、喫水線で分断した海上戦艦だ。
「こちらがミネルバの右舷、パブリックスペースであります」
赤服レイ=ザ=バレルが、長い廊下に並ぶ電動の扉を指し示して言った。
艦尾側から医務室、理髪室、食堂、シャワー室、更衣室と移動しながら、
重力区画の大きさを説明してくれる。
「ミネルバの中、左舷と右舷それぞれに、直径二十メートル、全長二百メートルの
円柱が入っていると考えてください。それが毎分約十回転することで擬似的に
1Gを作っています」
「小さなコロニーが入っているようなものだな」
「はい、プラントにおいてはバイタルシャフトと呼びます。まさに生活の支柱です」
「連合では知らないが、オーブの宇宙軍でもそう呼んでいた」
レイは複雑そうな顔をした。何か気に障るような事を言っただろうかと気になる。
「バイタルシャフトは五メートルおきに区切られており、それぞれに独立した
循環系が確保されています。隔壁は区画二つごとにあり、両側の区画から遮断されても
二百時間は酸素が供給され続けます」
「ああ、こういうつくりをジョージ=グレン型というのだったか?」
「そうです……地球ではツィオルコフスキー型という呼称の方が
一般的だと思っていましたが」
――猿がシェイクスピアをそらんじて見せたような顔をするな。
カガリは些か傷つきながらも、うわべだけ無表情を取り繕った。
「レイ、代表は我等の立場に合わせて物を仰っているのだよ。素直に聞くといい」
デュランダルがそうフォローを入れたが、何ということはない。
コーディネイターが多く、また基幹産業に広く関わっているオーブにおいては、
プラント式の専門用語が一般的だと言うだけである。
3/
「どうですかな、アスハ代表。先ずは居住ブロックの感想をお聞かせ願えますか?」
デュランダルが余裕に満ちた笑顔でカガリに聞いてきた。
――ふん。
言わせたいことは分かっている。それからデュランダルが何を話したいのかも
予想がついた。癪だが、ここはデュランダルの思惑にあえて乗ることにする。
「ええ、議長。私が乗っていたクサナギよりかなり広い生活スペースは
実に快適です。文句はありませんね」
「そうでしょうとも」満面の笑みを浮かべる。我が意を得たりと言う顔だ。
「我々プラントは慢性的に人手不足でしてね、このように住環境を整備しておかねば、
ザフトに志願しようと言う若者も少なくなるのですよ」
――はいはい、プラントは人を大事にします、大事にします。
当たり前のことだ。出生率が右肩下がりで落ちているのに何を言っているのか。
頭の中でデュランダルの長髪を三つ編みにした"ギルバートちゃん"を想像しながら、
「うむ、人材を大事にするという姿勢はすばらしいものだと思う」
などと、当たり障りのないことを言っておいた。
――この非常時に腹芸がやめられない、か。
今の状況で会談の内容を蒸し返すなどとは、カガリは考えもしなかった。
政治家としては自分より遥かに有能なのだろうが、職業病だと思う。なにより
本心を隠して生きていくのは嫌だ。人間は心と心でぶつかり合うべきだ。
なるべくならビーム兵器を使わずに、だが。
ふと、考えにいたる。こうして表立って告げる事無く、互いに本心を察し合う関係、
それもありえるのではないか、と。そう、まるで恋人同士の如く――
「どうかなさいましたか、代表?」
考え込んで、いつの間にか立ち止まっていたらしい。前を行くレイが声を掛けてきた。
「いや、なんでもない。つづけてくれ」
「左舷には私室が用意されており、右舷とは五箇所に用意された通路で結ばれています。
現在、代表のための部屋を整えさせておりますので、後ほど案内させていただきます」
それには素直にありがたいと思った。流石に世間体があるのでアレックスと相部屋、
というわけにはいかないだろうが。
「バイタルシャフトが二本、か。間にはエレベーターがあるのか?」
「ええ、それと無重力を利用したいくつかの設備があります」
レイの話によれば、使用に無重量状態を必要とする設備や、三次元的に
バスケットボールをやるコートなどがバイタルシャフトに挟まれるように設けられている。
空間の有効活用というわけだ。
4/4
「この部屋は何なのだ?」
話題を変えるために、大人しく案内されることにする。
「手前から、図書室、トレーニングルーム、娯楽室です。図書室の書籍は全て
電子化されており、紙製の本は乗組員が趣味で個人的に持ち込んだものです」
簡素な端末が三つ並んだだけでインクの匂いがしないその部屋は、カガリの
常識にある図書室とは大きく異なっていた。辛うじて壁際に備えられた本棚が
数冊のハードカバーを抱き、つつましく自己主張するに留まっている。
「うむ、コンパクトにまとまっていて機能的だな」
狭苦しくて味気ない、という感想を述べるのは見送っておいた。
どちらかといえば、隣のトレーニングルームの方がカガリの目を引いた。
十メートル――区画二つ分のスペースがある部屋の壁一面に設けられた訓練器具は、
磁石とバネによって負荷を生み出す形式なのが地上と違うところである。
「航宙期間の長期化は必ずクルーの体力低下を招きます、それを予防するために、
一定量の運動が義務付けられています」
「それは何処の宇宙船でもおなじことだろうな」
それよりカガリは、トレーニングルームの奧にある部屋の存在が気になっていた。
ガラス張りの部屋には、人間をかたどった標的が用意されている――射撃練習場だ。
「この先は娯楽室です。此処を含めていくつかの設備は利用にIDが必要ですので、
カードを後でお渡しします。状況が復帰すれば、いつでも御利用いただいて結構です」
それこそ結構な話だった。わざわざ他国の戦艦に乗り込んでゲームをするほど
暇ではない。それより気になったのは――
「何故娯楽にIDが必要なのだ。何か監視しているのか、それとも年齢制限が?」
「……余り遊びすぎると、電子音声に注意されます」
カガリはレイがゲームに熱中する余り、無機質な声にたしなめられる光景を想像する。
あかふくのれいざばれるくん、よくないですよ。げーむはいちにちいちじかん。
――幼児でもあるまいに。それぐらい口頭で注意してやれ。
宇宙空間で上下を考えるというのも変な話であるが、人間が上下に
対称ではない以上、エレベーターにも昇りと降りが存在する。
「こちらからエレベーターを降りれば、モビルスーツの発進デッキに行きますが」
其処まで言うと、レイはデュランダルを見た。
「構わないよ、是非アスハ代表にも見せてくれたまえ」
隠すまでも無いと思われている――デュランダルの余裕に、品のいい悪意を感じた。
――どうせナチュラルのお姫様には見ても理解できないものばかり、か。
後ろのシズルに視線を送る。強い意志をもって互いに肯きあった。
――相手がこちらをなめているのならば、それも利用させてもらうまでだ。
こうなれば隅から隅まで視察してくれる。後でレポートが書けるぐらいに、だ。
カガリはシズルと共にエレベーターの狭い筐体に入った。
このスレで三人目っていう職人引き取ってくんない?
>>399 乙です。
カガリも少し変化してますね。
こういう細かい描写が思わぬ所でなにかに繋がるといいなと思いました。
粗大ごみか
そこまで言われるまで堕ちたのか、あの作者は
せっかく職人さんが投下してくれても
>>400みたいなバカが居るのがムカツク
406 :
259:2007/02/28(水) 00:05:18 ID:???
どうしようかと思いましたが
2話の整形が終わりましたので
間もなく参ります
407 :
259:2007/02/28(水) 00:07:30 ID:???
森の娘が見た光
第二回 世界の思惑(1/6)
「だから知ってることを全部教えろよ!あんたの命令書に何が書いてあるか読み上げてやろうか?被災民の救出、被
災地の復興支援、並びにそれに付帯する支援全般、また当1025特別機動大隊にあっては被災地に対する詳細な調
査、必要に応じて資料の採取、分析その他…何処にもビーム砲で撃たれるとは書いてない!」
「そうよ!生身で撃たれたんだからね!死ぬかと思ったんだから!」
駐屯地内、隊長室の札のついた建物の中こめかみを手で押さえるイシカワの前にはフランクとソフィが居た。命令書にそ
んな文章を書いた覚えはないのも事実だが、だからと言って直接噛付いて来る部下と言うのもどうなのだろうか。誰にも
文句は言えない。そういった人物をわざわざ選んで呼んだのは、俺だ。コーヒーに口をつけて小さくため息を吐き出すと、
二人の顔を見渡して漸く喋り始める。
「ザフトがどうして公園内を我が物顔で飛んでるかなんぞ知らん。直接ザフトに聞いて来い。威嚇射撃については一応公
式にプラントに苦情をあげてもらう事にした。効果の程は期待出来んだろうがな。あのさぁ、お前らが思うほど俺はエラくな
いんだよ。あっちに直接抗議したのだって本当はヤバイくらいなんだぞ?」
全く持って嘘は吐いていない。むしろ俺が教えて欲しいくらいだ。冷めたコーヒーを飲み干しながらそう思う。
「まぁ、せっかく来たんだ。報告書は後でいい、簡単に今回の報告を。大尉?」
「ヘイヘイ。調査の結果、01小隊で生存者一名発見、02小隊でも洞窟に避難していた4名を保護。結果5名の保護を完
了。このエリアの生存者確認は以降なし。無人センサー等で生存者の調査は継続中。被保護者中現在2名が病棟にて治
療中。内一名はいまだ意識の回復無し。全員、回復後は政府の難民センターへ送致の見込み。威嚇射撃の話は?」
「もう良いよ、さんざん聞いた。後は書類にしてくれ。今後は被害調査に力点を移す方向でいいな?あと、コーヒーのおか
わりが要らないなら出て行ってくれ。エラくないなりに仕事があるんだが」
コーヒ-を注ぎ直した紙コップをもっておざなりな敬礼と共に二人が出て行くのを見送ると、命令書を呼び出す。
『追加命令について』
『・・・特別保護区内の制空権の確保、維持について可能な限り注力せよ。またザフトと交戦が避けられないと貴官が判断
した場合、特別保護区内に限定し戦闘を許可する。交戦状態となった場合は出来る限りこれを排除、殲滅せよ・・・』
「ヤッパリ俺はエラくないな…この戦力で殲滅、か。そんな事言うならGATシリーズとは言わんからロング・ダガーでも寄
越しやがれっつんだ。何を考えてるんだよ、エライ人達は」
言われてみれば、MSはともかく普通科の人数やランチャー車、高機動装甲車等の類はやたらに充実している。色は気
に喰わないが。
「……ならなきゃ良いんだよな、交戦状態に」
408 :
259:2007/02/28(水) 00:09:29 ID:???
第二回 世界の思惑(2/6)
「落下点の特定、周辺確保は完了しました。連合の部隊は現状あそこから動く気は無い様です」
非公式に抗議をしてきた意外に若い少佐の困ったような顔を思い出す。学術調査中心、か。嘘では無さそうだ。かえっ
て目立つ迷彩もそれなら頷ける。もっとも、だからこそ厄介だったりするのだが。
「さっきも言ったが、フレアモーターの一部が、突入角度から言ってそのまま落ちた可能性がある。ナチュラルどもに先に
発見されるわけにはいかん。全装備の使用を許可する。先ずは有無の確認を急がせろ」
敬礼をして出て行く副官の動きに合わせるように通信が入る。モニターの隅に【テキスト・オンリー】の文字。
【例の件については捏造された可能性が大。墓標にそういった形で存在する事自体が不自然。またZ派に分類される少
なくとも三名の隊長に同様の命令書が発行されていることを確認。現在発行元を特定中。行動には細心の注意を払われ
たしend 《オートデリート》 】
消去されていく文字列を見ながら命令者は何がしたいのだろう、としばし思う。やはりパトリック・ザラ以外は全て無能だ
ったのだ、だからこんなチャチな手に引っかかる。自分も含めて。
『金属反応はありません、フェーズ2に移行、捜索半径を7kに縮めます』
『了解、ケンウッド隊は監視怠るな。対空監視は30分後に予定通り交代』
訳のわからないものに命をかけさせている。自らの隊長の資質を疑わなければならんな。黒い上着に袖を通しながら
そう思う。現場で自分も命を懸けなければ部下に申し訳ない。見る見る不機嫌な顔になっていくのが分かるが隠す必要も
無かろう。そもそも部下から見ればいつだって怒っているのだろうから。
409 :
259:2007/02/28(水) 00:12:00 ID:???
第二回 世界の思惑(3/6)
シャミッリッルルイアポーレスマソクルッント。名前を聞かれたのでそう言った。ベットといわれる寝床の上に座るあたし。
白い服を着た人と×のマークの着いた腕輪をした女の人が自分を見つめている。言葉が旨いと褒められたあと名前が
聞き取れなかった。と白い服の人が頭をかく。結局名前は三度聞かれてシャミィと呼んでいいか?と言われた。断る理
由も無いので頷くとニコニコしながら後で、と言って四角い部屋から出て行く。
その後、村で助けられたのがあたしか居ないことを教えられた。見たことの無い色(金色というらしい)の髪をした綺麗
な女の人が優しくしてくれたがかえって寂しくなった。そしてお父さんのようなお兄さんのような人を連れてきてあなたの
命の恩人だと教えてくれた。その人は『良かったな』といって頭を撫でた。馬鹿にしてる!あたしは大人なのに。でも何故
か少し安心した。彼に似ているから?似てるかな?
「ふーん、エリザに理容師の才能があったなんてね」
シャミイの部屋の前で鉢合わせした女性二人。黒髪で制帽を左手に持った女性が敬礼して、その後立ち話を始める。
「だって可愛そうじゃないですか、アレに巻き込まれたせいであんなに可愛いのに、何回洗って、何回とかしてあげても髪
の毛クシャクシャで。でもショートも似合ってよかったですけど。軍医中尉殿も…」
「別にソフィで良いわよ。歳だって変わんないしMSが無ければ上等兵なんだから。伍長だったら上官でしょ?」
この人は、ホントに。エリザベートは内心ため息をつく。何故か衛生班所属に拘りイシカワ少佐も誰も迷惑しないし構わ
んだろう。などとあっさり許したのだが、迷惑を被る人がここにいる。あなたの専属事務官が。あの人を見ていると司令本
部直轄部隊を預かるエリートには到底見えない。大体、ソフィに関して言えば衛生班長よりも階級が上になってしまってい
る。既に事務処理だけの話ではない。何故うちの隊の人はみんな面白がって終わりなんだろう。司令本部まで何も言わ
ないのは、自分の上司がそれだけ影響力がある事を示しているのであろうが。
歳が、と言ったが私より5つは上のはずだ。見た目は確かに同級生くらい。端的に言って可愛い。天使のような見た目
でみんなが騙される。この人に協調性など、無い!きっと、だからモテ無いんだ…
「今度私もお願いね♪」
そう言うとこちらの返事は待たずに居なくなる。何処までもマイペースな人だ。見習った方が、良いんだろうか。
生真面目を売りに此処まで生きてきたエリザベートの悩みは尽きない。
410 :
259:2007/02/28(水) 00:13:45 ID:???
第二回 世界の思惑(4/6)
働きたいと言った。何もせずに御飯を食べるのは怠け者だしいつか地獄に落ちる。あたしは落ちたくない。
困った顔をしたそふぃちゃんはイシカワサンという人を連れてきた。神様の次の次の次くらいにエライ人らしい。
「喋るのはちょっと苦手なようだが、こっちの言うことはわかるし、常識もある。本人が良いならば俺の秘書と言うことでど
うだろう。軍属というにはちょっとアレだが、雑務をしてもらって俺が給料を出す分には構うまい。現地採用で雇用創出だ、
政府も喜ぶだろ?14歳ならキミの村ではもう大人だそうだな?怪我が治ったら俺の手伝いをしてくれ、期待してるぞ」
呪文のような言葉が次々出て来る。何故呪いをかけるのだろう、あたしは悪いことはしていない。
そふぃちゃんは良かったねといってギュゥッてしてくれた。呪いではなくて怪我の治るお祈りだったようだ。
411 :
259:2007/02/28(水) 00:15:19 ID:???
第二回 世界の思惑(5/6)
「ごはんデスよー」
ガンガンと鍋を叩きながらハンガーの周りをシャミィが回る。ほんの一週間で普通の光景になった食事の合図。機体
からフランクとソフィが降りてくる。既に調整は作業用ではなく実戦用である。他の整備の連中もわらわらと出てくる。
「今日はジシンサクなのダとゆっていたのですが、ジシンサクとはおいしいデスか?ボクもタベル?フランク」
「自信作なら旨いだろうし多分お前も食えるよ。あとお前を食べると、どっちの意味でも犯罪だ」
「間違いましたデスか?フランク食べル?ボク」
「ハハハ、やはり俺が捕まる運命は変わらんようだな・・・」
「変態に付き合ってると変態になるわよシャミィ?」
「ヘンタイとは空を飛ぶマス!イシカワサンがとんでヤガルといってオッコッテいまシタので、ボクも?」
「安心しろ、誰も怒こりゃあしないよ。変な言葉を教えるな、馬鹿!」
ピンクの女性制服をワンピース風に直したものを着て素足にブーツをはいた彼女はすぐに部隊のマスコットになった。
大きな瞳と微妙に間違った言い回しが絶妙で、時間が空くと彼女と喋るのがすっかり流行っていた。言葉を覚える事も
重要だと思っている彼女の意思もあり、たった一週間ですっかり部隊に馴染んでいる。
ジープの扱いを誰かが教えたらしく建物の間を器用に回って書類の配達もこなす。10時と3時にはイシカワの部屋に
コーヒーを入れに行く。エリザよりも上手いな。と褒めたのだが、これは褒められた本人が喜ぶ以上にエリザにダメージが
あったらしい。時間が空くとコック長にくっついて偏屈な彼に俺の一番弟子だ!と言わせ、夜は夜で、誰も発音できない名
前を誰が教えたのか、自分の名前を書くことに熱心に取り組んでいる。シャミィを見習え!が最近のイシカワの口癖であ
ることの理由は、だから説明など要らなかった。
「さっきのシャミィの話だと、まだアジャイルが公園中飛びまわってるのか、何がしたいんだ奴らは」
コック長の『自信作』を口に運びながら少し顔つきが険しくなる。
「さぁ?イシカワさんはその話になるとすぐ怒るからわかんないけどさ、何かありそうだよね、グラウンド・ゼロ」
眉をひそめるソフィを見ながら今度村に行ってみよう。とシャミィは思う。でもイシカワサンにお願いしてもどうだろう。グ
ラウ何とかは多分村のことだし、村の話をすると怒ると今言ったばかりではないか。あの人は優しそうに見えるが怒ると
怖い。あのソフィが直立不動で怒鳴られてるのを物陰から見てしまった事を思い出す。きっとお父さん、いや若いけどココ
の長老みたいな人なんだ。ならば怒られても怒らせてもいけないだろう。いまのお仕事も楽しいが妻として早く夫と瓶を探
さねば。
412 :
259:2007/02/28(水) 00:17:18 ID:???
第二回 世界の思惑(6/6)
既に調査開始から一週間。捜索範囲がかなり限定されてきた。センサーをぶら下げてゆっくり飛ぶ2機のディンを睨み
付ける。本当であれば三日でココまでこれるはずであるが人手不足である。災害救助に派遣した部隊は帰ってこないどこ
ろか、追加派兵要請の可能性まで打電して来ている。長引くほど何故こういった作業が必要だったのかという報告が難し
くなる。全員に緘口令などはいくらなんでも、敷けまい。
『出ました!金属反応!B−6ブロックやや左より!中心より下に約200!カスパー!センサー位置をもっと下げろ!』
ホントに出たか。と、これは口に出さずに思う。果たして機械か、アタッシュケースか。
『ポールのジンは下がれ!反応が反射してる!』
『もう少し右に触れ!センサー水平を維持しろ!ゴーストが出てるぞ、これでは数字が取れない』
『対象物特定まで対放射能、対爆発防御は解くな!爆発物処理班は現状待機、分析班各センサー稼動!』
【ピピッ アラート、アラート。確認して下さい】
『サーベイカメラ17番、18番からアラート!連合の戦闘車両と思われるものがこちらに来ます!』
このタイミングで来なくとも良いものを。と思うが、こうなれば仕方があるまい。邪魔なナチュラルは駆除される運命にあ
っただけだ。インカムを付け直したフリードリッヒ司令は無人探査機数機を飛ばすよう指示を出す。
「連中の狙いはコレだと言うのか?どんな価値があると言うんだ、なにを知っているんだお前らは・・・」
「単独のようですが斥候でしょうか?まさか連中、ユニウスの欠片を!?」
「今はわからん、出られるディンはあるか?」
狙いはフレアモーターか、命令書か。どちらにせよ、いずれフリードリッヒの利益とは全く反する事だけは確かである。
但し、やりようによっては利用価値はありそうだ。墓標の欠片か。
そう思うとフリードリッヒは静かに思考をめぐらせ始めた。
予告
第三回 戦いの火蓋
シャミィはひとり夫を探し村へと向かう
そして1025特機大隊とフリードリッヒ隊の間に戦端が開かれてしまう
戦端さえ開けば双方に戦う理由はあった…
413 :
259:2007/02/28(水) 00:19:49 ID:???
エリザベートだったら愛称はリザとかリズの方が自然ですかねぇ
でもエリザの語感が気に入ったのでそのままです
リズだと拳銃の名手みたいですし
ではまた
>>413 いやいや。 リズ?ベス? と訊いて、エリィと答えられた某有名デザイナー兼漫画家がいるからw(実話らしい)
そこら辺は語幹のいいものでよいのですよ。
415 :
259:2007/02/28(水) 00:38:15 ID:???
>>414 thx
実はリズで最後まで書いて、読み直したら気持ち悪いので全部直しました
この先、見せ場。無いんですけど彼女・・・w
416 :
259:2007/02/28(水) 00:59:34 ID:???
>>413 あれ?鷹の目の人はリザですね逆ですた
使いたかったのもホントはこれ
ではまた
誰か居ないの?さびしくて氏にそう
:::::/\\ .〃.⌒ノノ / / /ヽ::::::::::::
:::: ヽ \\ !(((!´゙リ) / / / /::::::::::::::::
:::: ( \ \\ ノ リ.゚ ヮ゚ノリ l 三 / / ):::::::::::::::
:::::::ヽ ヽ . ミヽヽ( (_`| |´ノノ / 二 / /::::::::::::::::::
::::::: ( \ ヽミ ヽヽ | .| / 二 ___/ヽ ...::::::::::::::
::::... /ヽ ヽ ニ ヽヽ |,,,| ┼ // ニ _______/ ...:::::::::
:::. ヽ____ ニ ヽ`l ヽ__// ニ ____ノ .....::::::::::
ヽ___, ニ l :: ′ ニ ___ノ ....:::::::::
ヽニ -‐ ,l :: __ ≡ __ノ ┼ * :::::::::
ヽ---'''ヽ、 ,,,;''''='''''__ ┼ .::::::::::
:::::... ┼ EEタ'!Q.Qー-、___~'''''ー-、 :....::::::::::::
:::::::.... ┼ EEi. Q. Q ~~'''ヽ ..:...::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::..... EEカ Q. Q ┼ :....:::::::::::::::::
::::::::::::::::::::....: * EEi Q Q .....:::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::... EE! Q @.....:::::::
::::::::::::::::::....::....::. Eダ @...::::::::::::::::
>>417よ、お前は氏ぬのです
次に生まれ変わるのはオーブ軍人です その次はザフトのギル派軍人に その次は連合のブルコス派に。
そしてその次は歌姫の騎士団に…
もう二度と宇宙世紀のキャラになる事はありません、ウェーハッハッハ
謎の美食家と蝶紅茶男と親分はまだですかwww
420 :
417:2007/03/01(木) 01:05:31 ID:???
BCの世界もいいぞー!(ギャートルズ)
なーんにもなーい なーんにもなーい まーったくなんにもなーい
うーまれーたー うーまれーたー なーにがうーまれーたー
FCの世界でいいんじゃね?
ファミコンの世界か・・・ドットが荒くて蛙顔でも気に成らんな
1/
手にしたデバイスが示す数値は異常なし。整備スタッフのヴィーノ=デュプレは
担当機であるザクの順調な仕上がりに笑みを浮かべると、コックピット脇の端子から、
デバイスに繋がるコードを引き抜いた。ザクの胸部装甲を両足で蹴り飛ばして、
ブリーフィングルームに流れて行く。
「此処を良く見て、私のザクは死角からグレネイドを投げた。にも拘らず爆発の
その直前にガイアは下がって、爆風から逃れているわ。もう一度流すわね……
ほら、とにかく異常な反応速度よ」
「ルナマリア君の投擲動作を読まれていたのではなく、純粋な反射神経だけで
回避して見せたと、そういう事かい?」
「それもテストステータスのガイアで、よ」
レイを除くミネルバ所属、四人のパイロットたちが、先ほどの戦闘記録を
モニターに流しつつ敵パイロットに対する考察を深めていた。ヴィーノは邪魔を
しない様、扉の影で息を潜めて話の成り行きを聞くことにする。
「君の見立てではガイアのパイロットは何らかの強化処置を受けている、
そうだったな、"鷹の目"(ホーク・アイ)?」
ルナマリアを"鷹の目"と呼ぶ声は、デイル=ホッパーのものだ。
「私はアビス、カオスとは交戦してないから全員が、とはいわないけれどね」
「うーん、シン君の話してくれたカオスと言いMAといい、一筋縄では行かない様だね、
襲撃してきたMSの機種からして連合軍縁の部隊なのは間違いないだろうけれど」
「ショーン、そんな事は政治家に任せれば良い、俺たちの仕事ではない。
重要なのは今の戦力で奴等に対抗できるのか、だが――戦闘データを機体に
反映させることは出来るのか、其処に突っ立っている整備班?」
技術的な問題に言及するとデイルは、陰に隠れていたヴィーノに声をかけた。
気付かれていたとは思っていないヴィーノは、飛び上がって報告する。
「――は、はい! 今、整備班長が並列化作業を行っており、ザクとインパルスは
既に完了。ゲイツRが運動野のパラメータ更新に手間取っていて、あと十分だそうです」
得られた戦闘データはザクとインパルスのものだ。ゲイツRは式典用の設定を
していた事で少し調整が遅れている。
「うんうん、じゃあルナマリア君とシン君は先に行っておくと良いよ、どうせ
パラメータの細かい調整はパイロットの仕事なんだし」
「オッケイ」、「分かりましたよ」シンもルナマリアも、無重力の中を流れて行った。
2/2
悲しいかな男の本能、無重力を泳ぐルナマリアの肢体に視線が向かう。
おお、健脚ながら柔らかそうな下肢が描く曲線の美よ、何故ニーソックスに
包まれているのか、隠されているのか! 却って際立つではないか!
そしてソックスとスカーとの間に横たわるすべやかな太ももよ、素肌よ、
無限の想像力はあんな事やそんな事を……ええいむらむらする!
天の加護よ、その全能を以ってわれに黄金の三角地帯を拝ませたまえ!
…………無理か!
――畜生、本当にルナマリアのソックスとスカートとの間は絶対領域だ!
悪戯っ気の在る神様は、その奧に広がる全て遠き桃源郷を拝ませちゃあくれねえ!
ルナマリア=ホーク、無重力でミニスカートを愛用する剛の者である。
しかしその下着を実際に確認したクルーは未だかつて一人も居ない。
整備班で下着の色を賭ければ、何も穿いていない、スカートの下など存在しない、
という意見が確実に票を集めるという、ミネルバに生まれた伝説の一つであった。
凝視するヴィーノの頭に、ごつん、と書類を挟んだフォルダーが振り落とされる。
「目線だけでもセクハラになるはずだが……見ているだけで満足か、整備班?
見つめただけで女を落すのはいかなエースにも無理な話だぞ」
涙目で振り返ると、デイルがあきれた顔でヴィーノを睨んでいた。
「同じ男として、君の気持ちは痛いほどに良く分かっているんだけどね、ヴィーノ君。
残念ながら彼女のスカートは鉄壁さ、中身が見たければ必死に口説くんだね」
「――っと、そんなつもりじゃあ……お二人は見ようとしたことがあるんですか?」
ショーンも後ろに立っていた。パイロット二人に睨まれてたじろぎつつも、
ヴィーノは好奇心に駆られて聞いてしまう。
「ま、艦長の下着より挑戦のし甲斐が在る事は確かだねえ。唯一の方法は彼女と
ベッドに入ること、かな? いかな飛び跳ねる人(ホッパー)にも無理でしょう」
「俺を視るな……お前は見られる(ショーン)方が好みだと思っていたがな」
「……ハハッ!」
釣られて笑ったヴィーノの肩を、ショーンが力強く抱いた。
「それじゃあゲイツRの調整に行こうか」耳元にささやくように告げられる。
「とにかく戦闘から帰ってこないと、ルナマリア君の下着談義もできないからねえ」
GJ!
下着談義ワロス
つか、ルナのスカートは凛並かよ、と思った俺型月厨
へうげたねの続きを待ってるの俺だけかな...
俺もだ!
431 :
259:2007/03/01(木) 21:54:41 ID:???
何か出にくい流れですねw
へうげたねですか、個人的にワタクシも見たいww
10分ほどしたら第三回、貼ります
ルナのパンツを見るために連合とザフトが同盟。
434 :
259:2007/03/01(木) 22:05:59 ID:???
エディターが落ちた為一時投下休止します
後ほどまた
435 :
259:2007/03/01(木) 22:15:21 ID:???
森の娘が見た光
第三回 戦いの火蓋(1/6)
金属反応は結局ほんの1300gの鉄の塊だった。現地でひとまず鑑定作業を始める。
「結果、でました。まだ推定の段階ですが恐らく大半が構造材、一部に後期ジンシリーズの装甲材と思われる反応
がありますが詳細は」
モーターでもケースでもなかったか。先ずは一安心だ。
そして今回の作戦に対する本国への言い訳もあのジープのおかげで何とかなりそうだ。ユニウスの欠片をナチュラル
どもの手から守るのだ。この駐屯地に右寄りが多いのは周知の事実だし、それを絡めれは包囲陣も調査も戦闘開始の
経緯も説明が着く。最初の威嚇射撃はやりすぎたかもしれないが、それも当てた訳ではない、【組織】が何とかするだろ
う。そしてこちらの言い訳の材料になってもらう以上、彼らを生かしたまま対峙する選択肢は、もはや無い。
「分析は持ち帰って継続。先ほどの連合の車両はどうしたか!」
「くそったれ!何でこんなに遅いんだよ!マルコ軍曹、整備サボってやがったな!」
カーキ色のオフロードバイクを駈ってフランクが荒野を走る。如何に高性能とはいえ、走っているのは元原生林である。た
だの荒野ではない。当然出せるスピードも出せない。ハンドルに付けられた小さなディスプレイの地図には自分の通って
きた青いスジのほかにかなり先行する赤いスジが伸びている。そしてそのスジは間もなくザフト勢力圏を示す黄色の円の
縁に接触しようとしている。
「まっすぐ行きゃぁ良いじゃねぇか!何でわざわざ遠回りするんだよ!」
シャミィはジープを持ち出して駐屯地の外に出た。彼女が向かう先は村のあった場所以外有り得ないだろうし村があっ
たと思われる場所まではそこを経由する必要などは無いのである。そもそもそこに道があったとしてもいまはただの荒
野。シャミィが太陽と山の位置を確かめながら走った結果なのだが、わざわざ元の道をトレースする必要は少なくともフラ
ンクは感じない。「バカヤロウ!せっかく助かったんじゃねぇか!」それ以上は何も言わず歯を食いしばってアクセルを更
に開ける。
436 :
259:2007/03/01(木) 22:17:11 ID:???
戦いの火蓋(2/6)
一番大きなオロポン山の形が若干変わっているのに気付いたのでジープを高台に止めた。長老に教えてもらったやり
方で此処まで来たのだけれど目印の形が違えば、どうだろう。ずっと走っていたので疲れた。足で走るよりはラクチンだが
疲れるものはしょうがない。えりざべとちゃんがくれたうでどけいをみる。記号二つ分走ったんだ。あと一つ過ぎたらお昼
で、多分村に着く。そしたら昨日コック長から貰ったパンをみんなで食べよう。前にもパンは貰ったことがあったが、こんな
に美味しくなかった。ジシンサクを連発するあのコック長はスゴイ。一番エラいイシカワサンが褒めるのだからやはりスゴ
イのだろう。貰ったパンも当然ジシンサクだ。
ジープに立ち上がって伸びをするとシートの上を横切る棒にもたれる。ふと頭の上でガチャガチャなっていた槍のような
ものが気になる。いつものジープには着いてなかった。握る部分がついている。握ってみるとあたしの手には、少し大き
い。フランクが腰につけている『人殺しの道具』に似ていると思ったので手を離す。
『これは人殺しにしか使えない道具だ。お前が触ることは無いし、触るな。こんな物があるから人を殺したくなるんだ』
不機嫌にそういったフランクの顔は怒ってる様にも泣いている様にも見えた。フランクは恩人であるから泣かせることをす
ると長老が怒るだろう。
フランクも人を殺したの?絶対に聞いてはいけないことだと思いながら、いつか聞いてみたいと思う。でも何故聞きたい
のだろう。殺したといわれたらどうすればいいのだろう。あたしは人殺しに助けられたの?
さて出発しよう。みんなに会って明るいうちにイシカワサンのところに帰らなければならない。だっていまはあたしはイシ
カワサンのヒショだから。言葉とパンの作り方を覚えるまではこれでいいと思うし、パンを一口食べればみんなわかってく
れるだろう。鍋をガンガン鳴らすヒショの仕事は楽しいし。でも結婚してヒショなのは変なのだろうか。
今度そふぃちゃんに聞いてみよう。
無人機が連合のジープを補足したのとほぼ同時にジープは唐突に止まった。気付かれた!?ラジコンのオペレーター
は冷や汗をかく。止まって数分、落下地点を見つめていた連合兵士はやおら立ち上がると対戦車ライフルを何の予備動
作もなしに構える。真正面で向き合う形になった無人機。慌てて高度を取る。次に補足したときは既にジープは走り出し
ていた。そして間もなくラジコンからもカメラからもセンサーからも消えた。気配を感じてオペレーターが振り返るとフリード
リッヒが魂の冷えるような笑いを浮かべて立っている。
「全てお見通しのつもりか。いいだろう。だが次は威嚇で済むと思うなよ」
437 :
259:2007/03/01(木) 22:19:43 ID:???
戦いの火蓋(3/6)
壁の一角を占めるモニター。左の隅に【サウンド・オンリー】の表示が出ている。その黒い画面に向かって直立不動で
背筋を伸ばして立つイシカワ少佐。
『…それは良い。貴官の裁量に任せる。いま話題にしたいのは追加命令の件だ。話をそらすな、少佐』
「お言葉ですが、現状我が部隊は特に交戦状態にはありませんし、故意にその状態を作り出すのは違うのでは無いか
と。まして建前上、ではありますが、特別自治区は戦闘機が飛行することさえ…』
『その辺の駆け引きが貴官ならば出来るという上層部の判断があったと言う事だ』
今更褒められてもうれしくない。姿勢はそのまま仏頂面になる。どうせ見えやしない。ちょっと間違えば大変な事になる
任務だ。その意味で隊の規模も俺の階級もちょうど良いって事か…
『追加の装備は間もなくそちらに送れる手筈になっている。何も犬死しろと言っている訳では無い』
「一つだけ質問を。何故こんな辺鄙な場所の制空権が必要なのですか」
『滅多な事は言えんが、女王を頂く南の国がヒントだ。これ以上の質問は却下する。次回定時はコードA。通信を終わる』
敬礼の腕を下ろすと電気がついてモニターが収納される。襟を緩めてため息をつく。やり取りの最後、アレはオーブだ
ろう。政治的なことは知らんが『また』侵攻するのだろうか。ならば此処の制空権に拘る理由も合点がいく。大規模な輸送
機隊が飛ぶというのであれば、何処の基地から出るかにも拠るだろうが此処を通過するのが一番早いし、あの駐屯地の
高射砲は規模に不似合いなほど強力だ。もう一度ため息を吐くと椅子に体を沈める。
今日はコーヒーを入れにこないな。みんなで雑用ばかり押し付けやがって。給料は俺が払ってんだぞ。
秘書がコーヒーを入れにこない理由は5分後にソフィが飛び込んでくるまで、彼にはまだわからない。
438 :
259:2007/03/01(木) 22:21:37 ID:???
戦いの火蓋(4/6)
高台に出た瞬間、ディスプレイに大きなアラートの赤い文字が出る。戦闘ヘリがいきなり発砲して来たのを辛くも交わす
と崖をそのまま下り降りて森を目指す。監視されていたのは俺か?シャミィか?考える暇は無い。バックミラーを上に回し
てヘリを捉える。地図にはセンサーが右にもう一機を捉えたことを示す点が増えている。バイク一台になに考えてんだ
よ!毒づいて180度バイクを回すと頭上のアジャイルをやり過ごす。森に飛び込んでしまえばとりあえず息はつける。生
き残った森に入る手前で、突然、真正面から片腕の無いディンが現れ銃を構える。狙いは勿論フランクだ。銃口が丸く口
を開けているのが見える。
逃げられない!と思ったその時爆音と共にディンのギリギリ横を飛び去っていく影。体勢を立て直すディン。
何とか転倒を免れたフランクはアクセルを握りなおしてインカムに叫ぶ。
「っ!グラスパー2、イワノフか!カミカゼでもやるつもりかっ!」
『残念、私よ。借りてきちゃった。カミカゼなんかやらないわよ。全ての機械は私の可愛い下僕だもの』
「ソフィっ!?お前!グラスパーなんて操縦できたのか!?」
『うふ。本物は今日が始めて!」
エールストライカーをつけたスカイグラスパーはまるで曲芸飛行のようにくるくると回っては敵の只中へ突っ込むと大推
力にものを言わせて、速度と衝撃波で敵を混乱させる。但し、攻撃はおろかロックオンさえしない。ミサイルも弾薬も積
んであるが攻撃命令が無い以上、戦闘行為は出来ないのだ。まして此処は特別自治区上空。今の曲芸飛行にしても軍
規違反ギリギリ、解釈によってはアウト。である。
『早く森の中へ。撃てないのがバレたら、持たないわ!』
「すまないソフィ!恩に着る!」
439 :
259:2007/03/01(木) 22:23:46 ID:???
戦いの火蓋(5/6)
戦闘指揮車の中、マイクのボタンに指をかけてそのまま逡巡するイシカワの姿がある。ジャミングが緩いのか彼の前方
のディスプレイには【ライブ/グラスパー2】表示の出たグラスパー2からの映像が映っている。咳払いを一つして眉の間
にしわを寄せてから、さも重いもののように腕ごとボタンを押す。
「本部からグラスパー2、応答せよ、こちらはイシカワ少佐だ」
『グラスパー2、ソフィです。どうぞ』
「現時点を持って公園内に展開するザフト軍は敵と見なす!作戦遂行に支障になると判断した場合、これを手段を問わ
ずに排除せよ。全責任は自分にある。攻撃を許可する!繰り返す。現時点を持って公園内に展開するザフト軍は敵と見
なし、これに対する攻撃を許可するっ!」
『ちょっ…イシカワ、さん…』
「グラスパー2、ソフィ・ゲインズ中尉!命令の復唱はどうしたかっ!自分の声が不明瞭だったなら再度繰り返す!」
『…現時を持って公園内のザフトは敵と見なし、必要であればっ、攻撃、許可!ゲインズ中尉、了解!』
「無理はしないでフランクを逃がしたら一度帰還しろ!体勢を立て直す!以上連絡終わり」
『グラスパー2、オーバー!』
村の入り口。ダガーの足跡の残る大地に1025のマークのついたジープがあった。その隣にバイクを止める。ジープの
運転席にしゃがみこんで何かのスイッチを切る。足元には小さな足跡。彼女を見つけること自体は簡単そうだがその後の
ことは…まだ誰も具体的に村に何があったか説明したものが居ないことに思い当たる。まして村を出た時、彼女は意識不
明。それまでは土の下に居たのだ。何かを覚えている方がおかしい。あいつは賢い、本人が何も言わなかったのは助け
てくれた1025の面々に気を使ってくれてのだろう。泣いて村に帰りたいと言えばそれで良かったのに、だ。
夫も水瓶も、村さえも、全ては失われた。
誰も彼女に言えなかった一言。
フランクはシャミィの足跡を追って村の跡地へと重い足取りで進む。
440 :
259:2007/03/01(木) 22:26:02 ID:???
戦いの火蓋(6/6)
いつものユルイおじさんの顔では無く指揮官の顔で振り返るイシカワ。もう後戻りは、出来ない。
「現時を持って戦闘体制に入る!MS全機起動!非戦闘員は後送する。車両の準備を急げ!2番以外の輸送機も全部使
って良し。時間は無いぞ!」
指揮車にいた三人の下士官は直立不動で敬礼をするとインカムに向かって指示を出し始める。戦いは始まった。
「全部署に通達。当部隊は戦闘体勢に入ります。非戦闘員は全ての作業を現時点で放棄、速やかにBエリア付近に集合
して下さい」
「第4小隊、小隊長は直ちに会議室へ」
「整備班は全員ハンガー前に集合。1号から3号全指揮車起動準備。マルコ班長は隊長室に連絡してください」
デスクに座り、両の手を組んで口元を隠すようにするとイシカワが呟く。
「フランク、早く帰って来い。俺一人では、潰れる。」
予告
第四回 花嫁の故郷
フリードリッヒはついに1025に対して攻勢をかける断を下す。
その頃、生まれ故郷で現実を目の当たりにしたシャミィは…
乙!
緊迫感が感じられてよかったです。
442 :
259:2007/03/01(木) 22:32:48 ID:???
戦闘シーンは字数を喰うんですね。戦闘、して無いけど。
やってみなきゃわからない事だなぁ
>>441 thx
漫画家や小説家の言うキャラがかってに。を今回は実感しました
イシカワさん、上手く字に出来なくてごめん
頭の中ではもっとかっこ良かった
ではまた
>>425 乙です!毎回楽しみにしてますが…
むっつりスケベ…
×スティング・オークレー
〇45氏
異議は認めないww
むむむ、むっつりスケベちゃうわッ!
じゃあ、ただのすけべでFA?
どすけべえという説もある
かわいそうじゃないか。
むっつりクールガイとかそのあたりにしてあげようぜ。
3/
「ヴィーノ君、本当は君、駆動系周りがやりたいんじゃないのかい?」
コックピットの端子に検査デバイスを接続し、ゲイツRに調整用のプログラムを
流していると、ショーンが不意に問いかけてきた。
「……俺の仕事じゃ不安ですか?」
「そんな顔するなよヴィーノ君、別に君を虐めたいわけじゃないし、僕の担当から
外れて欲しいわけじゃないんだよ。これは只の質問さ」
聞き返すヴィーノに警戒の意識を感じたのか、ショーンの口調が和らいだ。
「君はコードを打っているより、モーター周りをいじくっている方が幸せそうだったから、
なんとなくそれを確認したくてね。それに整備班の人員に口出しなんか出来ないよ、
マッドの親父さんがいるからね。ここで勝手をやれば、怖くてMSに乗れなくなるよ」
例え上官に喧嘩を売っても、コックとメカニックの機嫌だけは取るのがパイロットである。
ヴィーノはデバイスの小さな画面から少しだけ目線を外し、ショーンを見る。
ゲイツRの操縦席に収まるショーンは、右手でコントロールスティックを、左手で
小さなお守りを弄んでいた。
「まあ、MSの腕やら足やらを触らせてくれるってんで志願したのは本当ですよ。
家から勘当されてて行く当てが無かったのも確かですけれど」
ショーンはヘルメットを被り、バイザーを突いてHUDの表示を確認しつつ
「何をやったんだい?」と訊いた。
恥ずかしい話ですけど、と前置きしてヴィーノは答える。
「どうも市販のモーターでラジコンなんか作っているのに飽きてですね――」
父親の命より大事な車を改造して、TVのリモコンで動かせるようにしてしまった。
「完成したその日の内に、お袋がラクス=クラインのライブ中継を見ようとして……」
あとは、語るまでも無い光景が広がったというわけだ。
惜しむらくは、スイッチの切り忘れだ、それが無ければ今後十年はバレなかったと、
今でも本気で思っている。
「その日の内に荷物をまとめさせられて、家を追い出されましたよ。それ以来帰ってません。
でも、池の中で仰向けの愛車を見た親父の顔は、一生の見物だったなあ」
「はははッ――! その時に親父さんは何て言ったんだい?」
「『生まれたときに、ヴィーノ、お前にこそアンテナをつけておくべきだった』です!」
両手は調整作業をサボっては居なかったが、 二人して馬鹿笑いしてしまう。
4/
「それからどうしてザフトに入る事になったんだい? マイウスあたりに行っても
良かっただろうに」
ショーンは、機械工学に特化したプラントを話題に上げる。
「まあ、確かにそうなんですけど、しばらくは地元のジャンク街で、廃棄処分された
エレカをいじって遊んでいたんですよ」
三台の四輪電気自動車を、四台の三輪自動車に組みなおしているところで、
ザフトの軍服を肩にかけたマッド=エイブスにスカウトされたのだ。
「まあマッド班長に誘われようと無視されようと、遅かれ早かれ、俺はザフトに
入っていたと思いますよ」
「それはやっぱり……こいつかい?」ショーンはゲイツRのディスプレイを軽く叩く。
「ええ、一度機械いじりに取り付かれた身としちゃあ、MSってのは……
気にしないで居るにはちょいと眩し過ぎます」
ゲイツRの巨体を、うっとりとしたまなざしで見つめる。震えるほどに凶暴で、
力強く、頼もしく、恐ろしい、全身に無重力合金の装甲を鎧うメカニズムの巨人。
MSに触れて居ない自分というものは、今となっては想像も出来ない。
「もうすぐ民間用にもMSが導入されるでしょうが、やっぱりこの迫力がいいですから」
例えどのような時代に生まれていたとしても、自分はMSのような、圧倒的な
鋼鉄のメカニズムに引かれていただろうという実感が在る。
デバイスのモニターを流れる文字と数字の奔流が止まり、オールグリーンの表示が点る。
「……終わりました」調整も、身の上話も。
その時の事だ、
「流石奇麗事は、アスハのお家芸だな!」
シンの怒声が格納庫内に反響した。ヴィーノを含めた整備員の手が止まり、
視線が一斉に声の主であるザフトレッドに集中する。
「シン!」
上部フロアーからレイ=ザ=バレルが床に降り立った。シンの襟を掴み、
言葉を正すように無言の圧力をかける。
格納庫が静まり返り、雰囲気が逼迫したその瞬間、ミネルバ全体に緊急放送が響き渡った。
敵艦を発見。格納庫内が一斉にあわただしくなる。
シンがレイの腕を振りほどいてインパルスの格納スペースに向かって飛び上がった。
レイがステップ上のデュランダルに向けて頭を下げる。
シンが格納庫の床を蹴り、インパルスの格納庫へと上がって行く。その途中で
ゲイツR――ヴィーノのすぐ傍を通った。
「おい、シン――」声をかけようとして心臓が一つ脈打つ間ほど迷い、
結局呼びかけたときにはシンは既に過ぎ去っていた。
5/
「まあまあ、今のシン君に声をかけるのはやめておきたまえ、ヴィーノ君」
「でもショーンさん……何が在ったんだよあいつ?」
普段から気の短い奴ではあったが、人前で取り乱す様を見るのは初めてだった。
「ま、シン君がオーブ出身で、あそこのステップに居るのがオーブのお偉いさんだ、
ということが分かれば、後は想像に難くないね」
そういえば――ヴィーノは艦内に向けた通告で、オーブのアスハ代表と
デュランダル議長がミネルバに居ると言う知らせられた事を思い出す。
ヴィーノが格納庫入り口のほうに目をやると、金髪の少女を連れた目の覚めるような
美女が、デュランダル議長と共に格納庫内の様子を見ていた。
「オーブのアスハ代表ってあんな美人だったんですね……シンはどうしてプラントまで
来たんだろう? いい国みたいなのに」
「権力者の顔だけで国の価値が決まるなら、エザリア=ジュール議長の誕生が
心から待ち望まれる所だが……」
ショーンはヴィーノの視線を追ってため息をつく。
「一応君の勘違いを正しておくと、藤色のスーツが良く似合うあの美人さんじゃなく、
その隣の頭に包帯巻いた、ヴィーノ君と同じくらいの女の子が代表だよ」
「ええッ――!?」
ヴィーノの驚きを言葉に直すとこうだ――あのちんちくりんが!?
「それはそうと、だ」
ショーンは、急にMSパイロットとしての声と迫力をヴィーノに向けた。
「パイロットがあんな状態になったら、下手に声をかけるんじゃない。
特にシン君のような不安定なパイロットはな――」
「えっと……どういうことですか?」愚かしいことだと思いつつも聞き返す。
「パイロットにはパイロットの世界が在る、ということさ。
少しぐらい苛々していた方が、却って実力が出る奴もいるものなんだよ。
怒りに燃えるなら、それだけで純粋に、怒りだけで動いているほうが良い。
友達に話を聞いてもらうってのは日常生活ではいいことだけれど、
感情が中途半端になるのは良くないな」
出撃直前の格納庫において、ショーンとヴィーノの居る其処だけが、
喧騒から拒絶されたかのようにしんとしていた。
6/
「愛でも友情でも忠誠心でも義務感でも怒りでも悲しみでも殺意でも、何でも良い。
真空の宇宙で方向性を失うと、時として自分の位置すら見失う。
其処に飛び出してゆくには、確固たる精神的な支柱が必要なのだよ」
そう言うとショーン=マクドナルドは難しい顔をほころばせた。
「そんじゃヴィーノ君、これを預かっていてくれたまえ――」
ショーンは右腕をヴィーノに向けて差し出した。ヴィーノが慌てて出した右手に
小さなお守りが一つ乗せられる。表面に解読不能な文字が書かれた四角形のお守りで、
何処かに吊り下げる為だったのか、千切れた紐が通されている。
「――あの、ショーンさん。これは一体?」とヴィーノ。
「ふっふっふ、聞いて驚いてくれたまえ」ショーンはわざとらしい前置きを入れた。
「これは何とあのイザーク=ジュール殿から直々に頂いた、貴重なお守りなのだよ。
何でも地球のとある由緒正しい寺院が極限られた数だけ配布しているのだそうだ」
何処がすごいのか分からないヴィーノに向かって、ショーンはお守りを貰った
そのときの状況から、如何に自分がイザーク=ジュールなるエースパイロットの
世話になったかを、喋りつくそうとした。
そこで格納庫内に放送が入る、パイロットは機体に搭乗せよ。
「普段は首からぶら下げているんだが、この間紐が切れたのをそのままにしてしまった。
今から出て行って、無くすと困るからヴィーノ君、持っていてくれ!」
そう言ってショーンは機体の起動に入った。ヴィーノはハッチの脇でチェックを行う。
預かったお守りはつなぎの胸ポケットだ。
パワーオン、真空設定のMSは冷却の為に排気を行わない。輻射放熱機構が低回転で
動き、MS特有の甲高い駆動音を洩らす。MSが熱紋によって照合できるのは、
この放熱機構がMSの機種それぞれについて専用に設計されているためである。
「――書いてあった言葉が日本語のようなんでシン君に見せたんだがね、
何やら難しい顔をして分からないと言っていたから、余程難しいことが
書いてあるんだろうなあ。トップエースに頂いたものだ、大切に持っていてくれよ!」
「――はい、任せて下さい」
そう言われてヴィーノは、もう一度胸ポケットからお守りを取り出して表面を眺めてみた。
材質はやわらかい布製なのだが、内側に何やら少し固めの薄い板が入っており、それがお守りの
形を四角く保っているようだ。それには確かに『安産祈願』と書かれていた。
「それでは行って来ようかね――」
ショーンの宣言と共にゲイツRのハッチが閉じられる。パイロットを胎内に抱くMSは、
そうして初めて単なるメカニズムの塊から、真空をゆく鋼の騎士となった。
7/
『オールウェポン、ロックオフ』ハッチ越しにショーンの声が響いてくる。
「オールウェポン、ロックオフ!」復唱しながらヴィーノは、ビームライフルの
弾倉に付いているピンを抜き放った。次いでゲイツRの両腰にマウントされた
レールガンにも同様の事を行う。物理的に遮断されていた電子回路が接続され、
火器が準備状態に移行した。ハンドシグナルで、操縦席のショーンへと合図を送る。
「グッドラック、ショーンさん!」
胸部装甲を両足で蹴り飛ばし、整備員が集合する区画へと泳いで行った。
待機所には機体の情報を整備員に向けて表示するチェックモニターがある。
スクリーンを流れるコードの羅列を追い、『601R−01 SHAUN M』
に連なる表示を見て、ショーン機の状態が万全であることを確認した。
流れる表示が切り替わり、パイロット全員の搭乗が完了した事を告げる。
チェックモニターは、ミネルバとMS部隊との間に安定したデータリンクが
通じていることを示している。今回の戦闘は遭遇戦に近い。
指揮官とのブリーフィングはリンクを介して、MSのコックピットの中で行われている。
格納庫の端で乗る者の居ないまま出撃を待つザク一機を除く、合わせて四機の
ザクとゲイツRがキャリアに乗ったまま両舷のカタパルトへと移動して行く。
二機のゲイツRが先行して、カタパルトへと続く窮屈な減圧室――通称"ロッカー"
へと入って行った。壁の向こうで圧搾音が聞こえる。"ロッカー"から排出された空気は
バイタルシャフトの間に在る余剰区画へと導かれる。内部が低真空に落ち着くにつれて
MSの駆動音が小さくなってゆく。
ショーン=マクドナルドとデイル=ホッパーの乗るゲイツRがカタパルトに収まった。
戦闘ステータスで全機能を起動。メインの推進器に火が入る。定常出力で安定。
バッテリーがすべての兵装に最大出力でエネルギーを供給するべく戦闘状態に移行した。
FCSコンタクト。これより全力起動で僅か数十分間、内に秘めた炎の尽きるまで、
鋼鉄の騎士たるMSはCE最強の宙間機動兵器となる。
チェックモニターにショーン機発進のサイン。ヴィーノは預かったお守りを握りつつ、
操縦席に居るショーンの声を、幻の中に聴いた。
『ショーン=マクドナルド、ゲイツ発進する!』
A、むっつりすけべ B、ただのすけべ
C、どすけべえ D、むっつりクール
………………オーディエンスを使わせて下さい。
ついでに感想も頂ければ嬉しいです。
ショーンは死亡フラグ?
>>453 GJ!
安産祈願てw
本日仕事終了まで少し変更させていただきますw
458 :
259:2007/03/03(土) 19:13:27 ID:???
>>454 ワタクシもそう見えますたが
安産祈願って・・・どういう伏線なんでしょwww
第4回、間もなく行きます
459 :
259:2007/03/03(土) 19:18:52 ID:???
森の娘が見た光
第四回 花嫁の故郷(1/6)
開けた台地を彼女は歩いていた。地面がゆるいとジープはササる。駐屯地で何回か見た光景。
だからずいぶん手前でジープは降りた。でも川も、子供の洞窟も無い。神の木のあったはずの場所にはクシャクシャにな
った草のようなものしかない。本当に此処は村なのだろうか。山のカタチが違ったから間違えたのかもしれない。ならば今
日は帰らなければイケナイのだが素直には帰りたくなかった。自分の中の違和感が自分で良くわかって居ない。地面の
盛り上っているところが気になる。ブーツでこするとと中から見慣れた切り株が出てくる。その瞬間彼女のこれまでずっと
押さえていた感情は一気に爆発した。【自信作】のパンが入った袋を放してしまった事さえ気がつかない。
460 :
259:2007/03/03(土) 19:20:45 ID:???
第四回 花嫁の故郷(2/6)
やはり向こうはハナから一戦交える気だったらしい。そうなればアジャイルであの戦闘機は荷が重い。まさか3機がか
りであっさり振り切られるとは思わなかったが、戦闘機はかなりの腕前だった。ならばこそ数を揃える必要がある。まして
向こうは仮説駐屯地で補給も無しだ。数で押されれば耐えられまい。ディンの修理が終わらないのはどうしてだ。たかが
腕をつけるだけでどれだけかかっている。ディン3機とアジャイル3個小隊ならば航空戦力もほぼ圧倒できる。やるならば
徹底して殲滅しなければならない。整備は何をやっている。
「フリードリッヒ司令!お願いです、出撃許可を出してください!奴らの駐屯地ごと潰してやります!」
「ケンウッド隊長、気持ちはわかるが落ち着け。貴官にも後ほどきっちり仕事はしてもらう」
曲芸飛行でおちょくられ、ロックオンで脅されて、挙句あっさり振り切られては頭に血も上ろうというものだ。
「失礼します!保留になっていたディンの2号機完全補修とザクのオーバーホール、予備機のジン2機の状態確認、整備
まで完了しました。いつでもいけます。ディン5号機は引き続き整備続行中、24時間下さい!」
「パイロットが足りん、5号機の整備は一時中止、メカマンは全員既存機体の整備にかかれ!各隊長をブリーフィングル
ームに集めろ。ケンウッド、頼むぞ?」
肩を叩くと『ありがとうございますっ!』と叫んで走っていく。この私にもあんな時期があっただろうか。ザラ議長がまだラウ
・ル・クルーゼを重用する前はそうだったかも知れない。そして私は情熱を持ってスパイ活動に身をやつしたのだ。その挙
句が辺鄙な未開の地の基地司令だ。情熱は必ずしも人を正しい方向には導かないぞ、ケンウッド。
「ブリーフィング中の連合の動きは全て補足しておけよ?ロストは許さんぞ!」
461 :
259:2007/03/03(土) 19:23:38 ID:???
第四回 花嫁の故郷(3/6)
この切り株は長老の切り株。長老しか座っちゃいけないし、掃除はあたしの仕事。でも今は綺麗にしてる暇は無い。切
り株の後ろは長老の家だったはず。たった一本、柱がだけが残ってる。あたしがつけてしまった傷が…あった。あたしの
家に走る。涙がこぼれてくる。お父さんとお母さんは!走った。家は残っていた。屋根以外の材料だけになって倒れて泥
を被っていた。
みんなに作ってもらった新しい家まで走る。歩いていたらみんながいなくなる!場所ははっきり覚えてる。占いばぁにあ
たしが決めてもらったんだ。何も無いところを狂ったように掘った。指から血が出たけど痛くなかった。見ると緑色の欠片
が指に刺さっていた。あたしのために隣の長老がわざわざ自分で運んできた壺がこんな色だった。欠片を取ったら血がた
くさん出たのだと思う。けれど涙で指なんか見えなかった。
川も平たくなっていたからさっきわからなかったんだ。川も広場も変わらなかった。川が無かったらもうあたしは朝ごは
んの用意は出来ない!結婚したばかりなのに、、あたしはもう最初のごはんが作れない!!
結婚を認めてもらえない…認めてくれる人がそもそも居ないことに気づくと頭の中が白くなっていった。水を汲む瓶さえ
無いんだ!お父さんが一年もかけて作ってくれた瓶も!
それから何をしていたかはよく覚えて居ない。気がつくと狩の槍を作る時に枝を取る槍の木の前にいた。葉っぱは無か
ったけど槍の木だ。白いものがひっかかっている。何故か取りに上った。ザラザラの木で足と腕に傷がついて血が出たけ
どやっぱり痛くない。脇に挟んで下に下りる。涙はどんどん出てきて止まらないので前が見辛い。これは何?あたし、何で
取りに行ったの?袖で涙を拭く。不意に彼の言葉を思い出す。
『これ、ぶ厚いから虫に刺されないんだ。でも洗濯はちょっと大変だな、お前には洗えないよ?』
手にとった白く厚い生地。服の手首からひじの部分のようだ。チョウサタイから貰った彼のご自慢の服の袖に似ている。
千切れた部分にはどす黒い汚れがついていた。【中身】が入ったままそれごと引き千切られた血の跡の様な汚れが。
「いやぁあああああああ!」
そのあとは完全に覚えていなかった
【…以上の事から、シャミーについては自身の属していた村、約30名のみならず、彼女の部族約120名の最後の生き
残りと思われる。他6部族合わせて800人前後いた住民は彼女を含めて現在30人ほど。うち11名は現在、政府難民セ
ンターにて保護されている。残った森林内に20名弱が居る筈であるが、詳細は今後の継続した調査を要す。また…】
数ヵ月後にイシカワに届けられた第三回目の報告書の『被災者の少数部族について』の項の一部にはそう記載されていた。
462 :
259:2007/03/03(土) 19:26:41 ID:???
第四回 花嫁の故郷(4/6)
「発信機は死んでるのか?」
「距離は大丈夫ですがメイン電源を落としたようですね、敵の動きを見れば賢明な判断でしょう。最終発信位置から推測
すればもろに例の村ですが」
「ザフトが動きました。ロボットカメラ7番破壊。予測どおり2手に分かれたようです。MSの数は予定よりも若干多いようで
す。現在単純彼我戦力差2.4:1。戦力差は更に拡大の予測」
「グラスパー1、ボブソン少尉間もなく帰還、グラスパー2、出撃まで7分、準備よろしとの事」
「了解だ、イワノフには右を回らせろ、偵察で刺激しないように言っとけ。ダガー全機スタンバイ。ヘリはそろそろ全機戻せ」
1−02と肩にレタリングされた都市迷彩のダガー以外の4機はゆっくりとハンガーから離れる。ソフィが自室に篭ってい
るのも気になる。何をしている?一応、機動兵器中隊長代理だろうが。
「ソフィはまだ寝ているのか!エリザ、叩き起こして来い!勝手に出て行って疲れたとか言わせるな!」
R−00と書かれたブルーの機体には人がまだ着いている。パイロット不在のために後回しになったのか。フランクとシ
ャミィは心配だが、だからと言って。しかしフランクはエースで現場指揮官だし、ならば。そうであれば。俺の中で言い訳が
通用するか?少佐殿。
「だが、村が侵攻進路に入る、迎えに行くわけにも……命令変更、グラスパー2、イワノフにつなげ」
グラスパーは目立つ上に人が乗れない。果たして輸送機、いや、ヘリで良い、飛ばす余裕は、有るか?
463 :
259:2007/03/03(土) 19:28:50 ID:???
第四回 花嫁の故郷(5/6)
特にすることは無いので埃と砂が入ってジャリジャリする上着を払っていた。ただ目は蹲って泣き続けるシャミィを見て
いた。彼女の埋まっていた場所は大きな水溜りになっている。地下水脈のようにでも成っているのか、掘り出すのが遅れ
たら危なかったんじゃないか。
口には出さなかったが、彼女は村のみんなが生きていると思っていたのだ。楽しげに鍋を叩いていた彼女からはまった
く想像できない姿。さっきから何かを抱きしめて嗚咽を続けている。ただ見つめることしか、出来ない。足元の袋に気付いて
拾い上げる。中身は彼女お気に入りのパンが6つと、3つのケースにわけて収まったシチュー。
「コック長。1025を代表してあんたを自慢したかったらしいぞ、彼女は…」
いつの間にか彼女は泣くのをやめて呆けたように座っている。そろそろ良いだろうか。ゆっくりと近づく。足元で枝がな
るとハッとして音の方を振り返る。丸い可愛らしい顔はすっかり頬がこけている。
「すまない、俺だ」
一瞬間があって走ってくるとフランクにしがみ付いて、そしてまた泣いた。そのままどれくらいたっただろう。
フランクから離れるとしゃくりあげながら顔を見上げる。お前は生きなければならない。思った通りを口する。
「悲しむのは悪い事では無い。それだけお前がみんなを好きだったから悲しいんだ。けれど今はもう良いだろう。お前の
神様はお前に生きろと言ったんだ。だから今は、先ず生きることだ」
可哀想だがここに居ては生きられないし、自ら死なずともいずれ殺されてしまう。
「涙を拭いてよく見て覚えておけ。みんなも、村も、今はお前の中だ。だからお前が生きてる限り無くならないし、もう、だれ
も居なくなったりしない。」
袖でゴシゴシ擦ろうとするのを止めてハンカチを渡す。使い方が解らない様なので目の下に右手ごと持って言ってや
る。懸命に毀れる涙を拭って目を見開くシャミィ。見る見る色が変わるハンカチ。振り返る。
「生きるゆいまシタか?ボクだけかみさまにオッコッテみんな、だんなサンだって」
「そうじゃない、お前が怒られたわけでも選ばれたわけでもない。今はただ生きろ、そのうちに生きる意味だってわかるさ。
俺だってソフィだってエリザだってそんなもん、まだわかってない。みんな、お前も一緒に、これからだ」
「ボクはおしごとをタコさんしマスと、カナシイこといっぱい、忘れる、マスか?」
「やっぱりお前は俺なんかよりかしこいな、そういう事だ。がんばって何かをしてれば悲しいことも、いつか忘れられるさ。
ただ、忘れるのは悲しいことだけだ。だんなの事も、村の事もお前は忘れない。此処はいつまでもお前の故郷だ」
シャミィはフランクの腰に手を回して上着にぎゅっとつかまりながら村の残骸をいつまでも見ていた。
464 :
259:2007/03/03(土) 19:31:49 ID:???
第四回 花嫁の故郷(6/6)
本当であればカタチだけでも墓位作ってやりたいが今、このときには時間が無い。シャミィを半ば引きずるようにして歩
きながら思う。パンを広場に置いただけではキチンとわかれの挨拶をしたともいえないだろうが、位置を補足されて居ない
とは限らないし、補足されていれば、もういつ撃たれてもおかしくない。向こうはシャミィも俺も関係ない。
もう一度来る時があれば、その時はきちんと弔わせてもらう。そしてこの娘は当面俺が守ってやる。心配するな。
腰にぶら下げた無線機。
急にノイズがのり、ディスプレイに明かりがともる。表示が出る。周波数と【ラジオ・オンエア】の文字。
『フランク、傍受してるなら応答はせずに聞いてくれ。現在ザフトの部隊が進行中だ。もし例の村に居るなら接触まであと
190分。中継ポイントAまで出て来い。拾ってやる。時間は今から60分以内だ。それまで待たせる。間に合わないなら無線
を入れろ、その時は陸戦隊を回す。以上イシカワ』
ディスプレイに【待機】の文字。数秒後ディスプレイも消える。
予告
第五回 瞳の中の命
落とされるダガー、吹き飛ぶ調査機材、圧倒的な戦力差に、エースのフランクまでもが窮地に追い込まれる。
戦火の中、シャミィはハンカチを握り締め一人戦場を見つめる、1025の誰一人消えてしまわないように…
465 :
259:2007/03/03(土) 19:34:51 ID:???
今回の反省
*ワタクシには泣かせる話を書く才能がないorz
*しかも今回MSも動かない
また推敲に入ります。次回こそは!・・・orz
ではまた
「お疲れ様でしたー」
俺ことシン・アスカ(役名)はドラマ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の収録を終えて他の出演者の人やスタッフに挨拶をする。
新人ながら主役に抜擢をされたけれど、調子に乗ることは出来ない。下手をしたら干されるかも知れないからな。
しかし何故か最近少しずつ出番が減ってきてる様な気がするんだ。気のせいだと良いけど。
「シン、お疲れ様。この後飲みに行かない?」
俺を誘ってきたのはルナマリア(役名)。 彼女はグラビアアイドルだけど、ヒロイン(?)に抜擢されたんだ。
何かと気をかけてくれる良い人だ。でも、彼女と飲みに行くと二日酔いじゃすまない位に飲まされてしまう。俺は未成年だからあまり飲みにはいかないけどね。
「すみません。俺は未成年だから……」
「なーに堅い事言ってんのよ!固くするのは、此処だけで良いのよ?」
「ちょ!何処触ってんすか!」
「え?何処って……口で言わないと駄目?」
彼女は結構下ネタが好きで、俺にセクハラじみた事をしてくる。でも、嫌ではない。むしろ嬉しい。だって俺は男だからな。
「……………」
「うわっ!キラさん?なんすか?」
無言で俺の後ろに立っていたのはキラ・ヤマト(役名)さん。彼は舞台俳優だ。演技力は物凄く尊敬出来る人なんだけど、素の時は非常に無口で暗い。どよーんとした空気を漂わせている。
「…………」
「え?この前出した写真集を買った?綺麗だったです?ああ……ありがとうございます」
ルナマリアは少し緊張しながら受け答えている。確か、この前彼女が出した写真集って着エロな感じだったような気がする。いや、間違いなくそうだ。
ムッツリだったんですね、キラさん。
「……………」
「え?アスランさんが俺を呼んでる?マジっすか?」
「……………」
キラさんはコクリと頷き、ささやかに指をさす。
そちらを見るとアスラン・ザラ(役名)さんがふんぞり反ってこっちを見ている。
アスランさんは有名アイドル事務所に所属していた元・売れっ子アイドルで自称ビッグな芸能人だ。
トラブルがあってゴタゴタの末に事務所を移籍して仕事を干されていたけど、このドラマに再起を賭けている。
広い額を使った自虐的なギャグでお茶の間を寒くしているのは内緒だ。
でもアスランさんは俺に一体何の用だろう?気が重いな……。
もしかしたら──to be continued──
御二方GJ!
>>466 もしかしたらじゃなく、ぜひ続きを! しかしこれもむっつりですかw
>>456 まとめ乙ww早く元に戻してあげなきゃww
>>森の娘が見た光
戦闘の緊迫感と戦争の悲しさが一つの物語の中で対比され、両立している事にGJです。
1025と森の娘の行く末が気になります。MSがまだ動いていませんが、むしろ
うまい具合に『引き』になっていて続きが気になります。MSの稼働率、というのがさりげなく
描写されているところも、良いと思いました。
物語は書き上げていて、推敲したものを投下しているのでしたら、言葉の途中で
改行しているのを少し見直してはどうかと思います。
>>アスカしっかりしなさい
こ……これは! 種キャラの現実世界へのクロス、とでもいうのでしょうか、兄さんの芸風の
広さに脱帽です。人物設定が生々しいのに吹きました。アスランの凸はやっぱりもちネタなんですね。
是非続きを……ああでも、他スレの作品の続きも読みたいような。
そして、◆NBwe12OQEU殿の続きを待ち望んでいる一読者が此処に一人居ります。
ちなみに俺は
新機動戦士と前スレ385氏を待ってるが、385氏は続きないのかな?
「四月その1」
まどろみから抜け出すと、そこはいつもと同じベッドの上だった。
いつもと変わらない部屋を眺め、俺はため息をつく。
「はあ、嫌な夢だったな」
俺は、今しがたまで見ていた夢を忘れたくて頭を振る。
まったく、冗談じゃないよな……俺が戦争するなんて。
夢の中での俺は、悲惨な戦争の中を戦っていた。
「ん?」
頬に感じる違和感。手で触れると
「おいおい……」
頬には涙が流れた跡があった。鏡を見れば、充血した目も見られるかもしれない。
こんな所をマユにでも見られたら心配させてしまうな。
俺は洗面所に向かうために、ベッドから抜け出した。
俺が部屋のドアを開けると同時、隣の部屋のドアも開いた。
「あ、お兄ちゃん?珍しいね、こんなに早く起きるなんて」
今日は雨か、雪か、といった驚き様を見せながらこちらに近付いてくるのは、妹のマユだ。
可憐な容姿に、炊事、洗濯、掃除、何だってできる、俺の自慢の妹だ。
マユの笑顔を見ることが俺の楽しみだが、俺の顔の状態に気付いたのか、マユのその愛らしい笑顔が突然消える。
「どうしたの、その顔?」
笑顔の変わりに浮かぶのはこちらを案じる表情だ。
ああ、マユにはそんな表情を浮かべて欲しくは無かったのに。
「いや、これはな、夢見が悪くてな」
焦る俺の様子を気にするでもなく、マユはその白魚のような指を俺の頬に滑らせる。
「お、おい!マユ?」
俺は多分、顔がすごく赤くなってしまっているだろうことを自覚しながら、一歩後ろに下がる。
だが、俺が下がると、マユは少し頬を膨らませた。
「もう!……どんな夢かは知らないけど、辛かったら私に言ってくれなきゃ嫌だよ?一人で抱え込まないでね?」
「ああ、分かったよ」
「うん。それなら良し!」
マユは再び満面の笑みを浮かべると、台所へと向かって行く。
「朝御飯作っちゃうから、仕度が終わったら降りてきてね」
階段の下に消えていくマユを見送ってから、俺も一階に用があることを思い出した。
見送らずに、マユと一緒に行けば良かったと思いながら、俺は階段を降りて行った。
朝御飯も食べ終わり、いつもよりゆっくりとした朝を過ごす俺たちに、一本の電話が入った。
「もしもし、アスカですけど」
「おお、シンか。父さんだ。実はお前達に言っておかなければならないことがあってな」
「?」
「実は父さん達急に出張が入ってな。それがちょっと長くなりそうなんだよ」
「はあ?そんな急に……」
「いやぁ、すまん。だが家の事はマユがいれば大丈夫だろう?そういうわけでよろしく!」
「あ、おい!」
父さんは言いたいことだけ言うとさっさと電話を切ってしまった。
いつもながらの勝手さに、俺は頭を抱える。
「どうしたの?」
電話のやり取りに興味を示したマユが、見ていたテレビを消してこちらに来る。
「実は……」
俺は簡単に事情を説明すると、マユは困ったように笑った。
「ったく、家の両親は勝手なんだよな」
「父さん達のことだし……きっと向こうでラブラブだよ」
「いや、そういう話じゃ……」
まあ、今更どうこう言ったところで遅いし、それにもうすぐ学校に行く時間だ。
今までだってこんなことは何度もあったことだし、別段騒ぐことでもないのだが
「なんか、納得がいかないんだよな」
「?」
「いや、なんでもない。それより、そろそろ行くか」
「うん!」
毎日、二人で学校に行くのが密かな楽しみなのだ。
今日は邪魔者には入られたくないし。
俺たちは戸締りを確認すると、二人で学校へと歩き出した。
が、その楽しみはすぐに破られることになった。
「おーい、シン!」
朝っぱらからの大声に、俺は顔をげんなりさせる。
隣ではマユが苦笑している。
「聞こえているのか?シーン!」
「聞こえていますから、人の名前を大声で呼ぶのは止めてください!」
嫌々ながら振り返ると、悔しいながらも端正な顔立ちと言わざる得ない青年がこちらに向かって全力疾走してくるところだった。
「奇遇だな。これも何かの縁だ、一緒に行くか」
「いえ、決して奇遇ではないと思いますけど」
「はは、じゃあ、運命か?」
「いえ、アスランさんが俺たちの登校時間を知っている時点で、そういう問題じゃないでしょう」
その青年、アスラン・ザラは大仰に驚くと、何の断りも無く、さも当然と言った様子で俺達の隣を歩き出した。
「まあ、気にするな」
「はあ」
俺はため息をつくと、何事も無かったようにマユとの会話に戻る。
マユと話している最中、隣で何やらアピールしている奴がいたが、お言葉に甘えて気にしないことにした。
だが、少しするとアスランさんは号泣しながら
「俺の言い方が悪かったのか!?シン、頼む、無視しないでくれー」
と、近所迷惑なほどの大声で喚きだした。
「お兄ちゃん、そろそろ可哀想だよ」
「はあ、仕方ないな」
可愛いマユに言われては無碍にはできない。
アスランさんも悪意があってやっているわけじゃないだろう(多分)。
結局いつも通り、俺たちは三人で学校に行くことになった。
申し訳はありません。体験版はここまでです。
続きは製品版でご覧ください。
どうして俺は、このようなものを書いてしまったのだろう……
体験版?!
製品版はギャルゲ?エロゲ?BLゲ?
>474
製品版は何処かに投下してあんの?
それともこのスレでこれから続けるの?
>>474 ちょwwww体験版っておまwwwwwwwwww
溢れる創作意欲は抑えずに吐き出すが良い
そのためのココだ
>>475 OPのマユでギャルゲと思わせながらBLの展開とか
騙された!見たいなw
この凸もストーカーですか?www
ハードゲイザーに見えて吹いたw
その眼差しは遥か星の彼方、後輩の股間へ
どんな作品が投下されてもいいから完結させてほしい。
一話か二話で放り投げるくらいなら投下しないでくれ。
>>481 ここはそんなことはどうでもいいんだよ。
練習場みたいなもんだしな
484 :
259:2007/03/04(日) 20:10:00 ID:???
>>469 thx
だからと言って戦闘シーンがどうかと言うと
全く自信はないのでございますがw
今のところ、なんつうか字ばっかり・・・w
字数で改行してたんですが
確かに言葉で折り返した方が読みやすいかもしれませんね
やってみないとわからないことばかりで楽しいです
>>480 ハードゲイザーにコーヒー吹いたw
完結させてこそ一人前のSS職人だ!
と言ってみる
だってここ新人スレだし
試しに書いて続かなくても、別の作品、他のスレで昇華してくれればいいさ。
自分なんかいきおいで書き始めちゃったけど最初の方なかったことにしたい(-o-;
>>485 ある意味そうかもしれんが、それだと短編ならともかく長編だと1%ぐらいしか
ネット上に一人前はいないぞ。商業でも終わらない人いるし。
ああ、終わりそうもなくなったら三州候をパナマに向かって突撃させたらしょうがないな、と
思ってくれるかもしれませんね。
先生の次回作にご期待下さい!
「おい、シン。お前芸能界で人脈作りたくないか?」
アスランさんは不気味な笑みを浮かべながら俺に話しかけてきた。
「はい……それは勿論ですよ」
この業界を生き抜く為には広い人脈を作らなければならないと思う。
だけど今のアスランさんに人脈……?
「ん?お前、俺の顔を広いと思ってるのか?広いのは顔だけじゃないぜ!」
俺が黙っているとアスランさんは髪を後ろにかき上げて額の広さを強調するいつものネタを披露した。
すみません……それ今日は4回目です。
「人脈はあれば嬉しいですけど……」
「よし、決まりだな。今度ディナーショーやるからお前も来いよ」
アスランさんは笑いながら俺に茶封筒を渡す。
中を確認すると10枚チケットが入っている。
「こんなに貰って良いんですか?」
「バーロー!1枚タダでやるから9枚捌けや。じゃ、頼んだぞ?売り上げはちゃんと貰うからな?」
アスランさんは非常に過酷な宣告をして去っていく。……誰も買わないよこんなの。
途方にくれて溜め息をついていると、急に肩を叩かれた。振り向いた時其処にいたのは……。
「パ、パトリック・ザラさん(役名)!?」 パトリックさんは芸能界きっての有力事務所、パトリック軍団のボスだ。小さい時に見た刑事ドラマの主役が目の前にいる。感激のあまり言葉が出ない。
「最近頑張ってるらしいな。俺の若い時を思い出すぜ。こいつ、ウチの若い衆だ。宜しく頼むな」
「スティング・オークレー(役名)です!宜しくお願いします!」
礼儀正しく自己紹介をしたのは元プロボクサーで日本ランキング3位まで行ったけど惜しくも網膜剥離で引退したスティング・オークレーさんだ。
パトリック軍団に入って芸能界入りした今売り出し中の若手俳優だ。
「此方こそ宜しくお願いします!」
俺もスティングさんに負けないように礼儀正しく挨拶をする。
「お前ら、年も近いしお互いに切磋琢磨しろよ?若い時に出来た仲間は一生物だからな」 パトリックさんは俺を認めてくれているのだろうか。頑張らないと。
「じゃあ、またな。スティング、行くぞ」
「ハイ!じゃ、シン君。お互いに頑張ろう!」
「勿論ですよ!負けませんよ!」
パトリックさんは大物のオーラを振り撒きながらスティングさんを連れて去っていった。
それにしてもこのチケットどうしよう。またマヨネーズライスの生活かな……。
──to be continued
GJ!
元ネタは見たことないが楽しいぜ。ちょっくら調べてみるぜ。
GJ
シンの苦難はまだまだ続くw
GJ!
凄い馬鹿ネタだ!
>>494 こいつも元ネタはあまり関係ないぞ。
あくまでモチーフにしたパロディだ。
497 :
259:2007/03/04(日) 23:53:46 ID:???
テキストはでかいわ、改行は美しくないわ
何か初心者と言うより実験みたくなってしまいましたが
第5回、間もなく張ります
498 :
259:2007/03/04(日) 23:56:13 ID:???
森の娘が見た光
第五回 瞳の中の命(1/7)
「遅れてすまなかった!エリザ、状況はデータでそのまま送ってくれ。少佐の首席秘書官殿は頼んだぞ?
D-2、さっきは助かった!状況、掴んでるな?D-1、小隊ごとにまとまって行動しろ。敵の数が多い、
バラされたら集中砲火を浴びる。…了解少佐、出来る限り俺が引き付ける。グラスパー2、聞いた通りだ、
俺を援護しろ!コンビで一番敵影の濃い所に突っ込むぞ、落とされるなよ?
グラスパー1、ソフィの隊と共に本部防衛。少佐の指揮車を吹っ飛ばされるような嬉しいことをするんじゃないぞ?
少佐は構わんがシャミィも乗ってる、頼むぞ!
…マルコ軍曹、左手のバランス悪い!シールドの重量計算間違ってないか?純正じゃないぞ?
エリザ、ラジオチェック!2号指揮車に繋がらん。…シフレ!データ通ってるか?例の変数か?
原因が特定できて無いなら使うな!」
輸送機からシャミィをつれて降りてきたフランクは、エリザにシャミィを渡すとまっすぐハンガーに来た。
そして突如階級章どおりの現地指揮官然とした声で各部署に指示を飛ばし始める。皆面食らっているようだが、
そうじゃない。フランクが昼行灯な【フリ】をしてるのは真面目な自分が嫌いだからだ。とソフィは自分の考えを思い出す。
そう、本当は真面目の上にくそがつく程の、彼女からしたらうざったいタイプの男なのだ。
エースと呼ばれるスコアをあげたのも真面目だからだ。MSのシュミレーターから降りてすぐ戦術論の教科書を読んで、
寝る間を削って機体調整のデータを用語込みでチェックする。真夜中に用語とデータの読み方を教えろと言って部屋に
来た時は本気でビックリした。更に2時間その話だけをしてジュース一本を講師料に、そのまま帰っていったのはもっと
驚いた。私を辞書かなんかだと思ってるのか!当時も男に興味は無かったが、だからと言ってこんな扱いを受けたのも
初めてだった。『食事おごる約束くらいするでしょ、普通は!』枕はドアに当たる。出会った当時のフランクはそんな男だった。
『努力しても人殺しの役にしかたたない。誰の役にも立たないまつぼっくりの研究の方がまだマシだよ』
戦争終結直前、こけた頬をブリーフィングルームのライトで強調しながらそういって笑った顔はいまでも覚えている。
その後、エースとして表彰を受けて階級章も偉くなった。けれどMSの扱いだけなら今でも私の方が上だ。
仲は良かったし作戦上もコンビを組むことが多かった。そのおかげで私の階級章も中尉になったのだが、
戦後はアドレスを交換する事も無く、お互い別の部隊に配属になった。
要するに真面目な癖に、生きる事それ自体には興味がないのだと思う。
その彼がシャミィに生きることを解いていた事は彼女には知る由もない。そしてソフィも何かに気付きつつある。
落ちた空の墓標は人の心にも影響を及ぼしていたのかも知れない。
499 :
259:2007/03/04(日) 23:58:44 ID:???
第五回 瞳の中の命(2/7)
みんなは極端に違いすぎる彼の顔に違和感を持っているようだが、そうじゃない。フランクはアレが本当なのだ。
多分隊長としての心得もココまで本を読み漁って来たに違いない、きっとどこかでジュース1本と引き換えにして講義を
受けてきたのだ。彼の本質が理解できているのは1025では私の他は、昼行灯をわざわざ呼び寄せたイシカワさんくらいだ。
懐いているのを見ればシャミィも本質を見抜いているのかもしれない。彼女もまた、そうは見え辛いがいたく真面目だ。
そして残念ながら同じ真面目でもエリザは言動に可愛げがある分、このカテゴリーからは外れる。
混ざりたくはないだろうが。
ライバルがシャミィか、これは分が悪いな。とふと思う。そしてライバル、という言葉に引っかかる。そうか。イシカワに
呼ばれて駐屯地に来てからの、いやアドレス交換の前に部屋が空になったときの、、夜中にMSの講義をしたときからの
収まりの悪いもやもやした感じに、やっと答えが見つかる。確かに生まれてからこのかた、そんな事は思った事も
なかったのだ。気付かないのも無理はない。どうやら一年ぶりに夕食をおごってもらわなければ、収まらない。
私が男を好きになって何が悪い!と、思うと少し顔が熱くなる。真面目一本の学者崩れと看護婦になりきれなかった
機械オタク。社会からの落伍者同士。思った事も無かったが、並べてみればそんなに悪くない組み合わせではないか!
『…そういうことだから指揮車の直援、真面目に頼むぞ?ミサイルを直接打ち落とすなんて芸当、お前でなきゃ出来ない』
音声のみの単独通信。せっかく生まれて初めての気分に気付いたのに画像が、無い。顔が見たい。
「戦闘前に直接通信なんて、バレたらイシカワさんに怒られるわよ?」
『中隊長は作戦細部の話をするために認められてるぞ、中隊長代理のお前もな』
「うそ、知らなかった…」
『おいおい、本気で言ってるんじゃないだろうな?大丈夫かホントに。今回は俺は最前線だ。コンビは組めないぞ?』
「だから大丈夫だってば。フランクこそちゃんと帰ってきてよね?まだこないだのカードの負け分、貰ってないわよ?」
『ハハハ、出世払いにしといてくれ。おっと、少佐からだ。D-Rオーバー』
「どうせ出世なんかしないでしょ?そのうち指輪ぐらい買ってもらうわよ!D-2終わりっ!」
そうだ、帰ってこなければ困る。写真の一枚だって持ってないのだから、顔を見たいなら、合うしかない。
500 :
259:2007/03/05(月) 00:00:56 ID:???
第五回 瞳の中の命(3/7)
無人カメラ同士がかなりの高空でお互いを見つける。少しずつ距離をつめ、お互い小さなミサイルを発射して、
それはお互いの翼の一部を吹き飛ばす。バランスを崩して落ちていく2機の無人機。地上に土煙が二つ上がる。
次の瞬間通常のサイズのミサイルが行きかい始める。
アジャイルとディンの数の見積もりが甘かった。イシカワは胃を押さえて己の無能さを呪う。まだ敵は地上の主力が
到着して居ない。だが既にこちらはフォーメィションをズタズタにされた。ソフィが直援でなければ1号指揮車も3発ほど
直撃を喰らった筈だ。フランクのみが当初の行動を継続しているがいつまで持つか。
「戦闘車両はBラインまで後退、接近戦になったら勝ち目は無いぞ!2小隊もラインを下げさせろ!」
『敵MSを目視で確認、現在、あっ……』
バクゥと思しき敵ののスピードが上がった。到着すればダガー3機はあっさり抜かれるだろう。いくらソフィが上手い
とはいえ、型遅れのストライクダガーがたった2機ではソフィと心中だ。フランクに怒られる。戦端を開くところまでが
命令だろうからこれで良いのかも知れないが、全滅は勿論命令に入っていないし、そんな命令はする気も無い。
『グラスパ−1、D-2よ!前にでて!ココはダガーだけで良いから!ランチャー隊が抜かれる!早くっ!』
「高速で接近する敵4、バクゥと確認。左からミサイルっ来ます!数10以上!フレアあげろっゲインズ中尉、頼みます!」
『Eブロック被害拡大!第2研究棟崩壊、倉庫もやられた!くそ、機材は放棄だっ!』
「左から接近するMS4!ザク1とジン3、他2ですが詳細不明!…了解、Cブロックの施設は全面放棄!退避急げ」
『歩兵は一旦下がれ!狙い撃ちにされてるぞ!ジンに勝てるわきゃねぇだろうが!』
「当初の最終ラインまで全部隊後退。ラインを設定しなおせ!C、Dブロックの研究棟はどうなっても良い!」
『D-4、指揮車!アジャイルを撃墜。目視でなお5機を確認!』
『Cブロック早く退避しろ!データと命、どっちが大事だ!』
「おい!エリザ!」
10面以上のモニターに囲まれた1号指揮車の中。ハンカチを握り締めてシャミィがモニターを文字通り睨んでいた。
涙が止まらない。しゃくりあげ続けて呼吸も苦しい。けれど長老のイシカワが忙しいのならば自分が見ていなければ
いけない。秘書は長老のお手伝いをする仕事だ。それに自分が見ていなければ、覚えていなければ。
赤い光が上がる度にみんなが消えてしまう。仲良くしてくれた、言葉を教えてくれた、一緒にごはんを食べたみんなが。
既にハンカチは涙を吸いきれずに床に小さな水溜りが出来ている。指揮ブロックから出そうとするエリザベートの手を振り払い、
肩で息をして更に涙を零し、左の握りこぶしに力を入れ、更にモニターを睨みつけるシャミィ。
501 :
259:2007/03/05(月) 00:04:01 ID:???
第五回 瞳の中の命(4/7)
2−01と書かれたデザート迷彩のダガーはディンを一機落としたが、他の2機とは距離が開いてしまった。
「ちっ深追いしすぎたか、D-4 、D-1だ現在位…なに!」
いきなり飛んできたミサイルはシールドで受けるしかなかった。シールドは紙のように折れ曲がり左腕はそのまま
稼動不能になる。そして息つく暇も無く、バクゥのビームサーベルが真正面からダガーの機体を襲う。かわして右手の
ライフルを構える。「取った!」叫んだ瞬間左から来たもう一機がコックピットを中心に、機体を上下に切り裂いて行く。
爆発もせずにそのまま地面に叩きつけられる上半身と、まっすぐ倒れていく下半身。
1025の稼働MSがこの瞬間、5機に減った。
「敵のMSは全部で6機、うち1機撃墜、2機を中破。都合3期を稼働不能。当方の被害は現在ディン1機撃墜、
アジャイル3機撃墜、2機小破。ガズウート予定位置で待機中。3分以内にオマリー隊長のザク/ジン隊が作戦域到着です」
「アジャイルの被害が大きいのはどうしたか?どうしてこんなに落とされている?」
「先ほど報告のあったダガーの後期型です。スカイグラスパーとの連携切り離しに失敗しています」
「ロクサン隊長に連絡、青いMSと戦闘機を優先して叩け。カスパーのディンも回せ。オマリーにはガズウートと連携して
地上施設を徹底して潰すように言え。ケンウッドにアジャイルは撹乱と陽動に徹するように伝えろ。
MS以外の戦力が意外に侮れん」
502 :
259:2007/03/05(月) 00:07:03 ID:???
第五回 瞳の中の命(5/7)
『大尉!アジャイルは引きました。これで補給の…っ!センサーに感!バクゥ、3ないし4機こっちに来ます!
狙いは大尉です!一時引きましょう!一機じゃ無茶です!』
「馬鹿いうな!今引いたら次は無い!あと30分は戦える。いくらでも数を減らして後はソフィの仕事だ。」
『左から再度ディン、来ます!更にもう一機、その後方から最低75秒以内に射程内!』
ディン1機に翻弄されているのにその上バクゥ4機では勝ち目は無い。出来るのは数を減らす事だけだ。ディンの翼
をライフルが削る。不安定になったのを無視してエールストライカー最大推力で逆に飛び上がる。ストライカーパックを
取り替えることが出来れば、頭の上にはランチャーストライカーが飛んでいる。燃料の心配も無い。だがこのエールは
もう外れない。外せば機体も止まるだろう。機械的故障とソフトのバグの複合原因だと聞いて、むしろ自分にあっている。
と笑ったものだが、こんなことになるならダガーLぐらい請求するのだった。
ディンにビームサーベルで切り付ける。余裕を持って交わされたその瞬間、太い赤いビームがディンの装甲を貫いて
行く。「旨いぞ!イワノフ!」だが次の瞬間スカイグラスパーに四方からミサイルが殺到する。
直撃。いくつかの火球となって落ちていくグラスパー2と呼ばれていたものの残骸。こちらに飛んできたミサイルは無意識
にかわした様だ。エールの羽をいくつか持って行かれた様だが機体に影響は無い。
地上に降り立った瞬間にバクゥに囲まれたのがわかった。低く構えると『口』にサーベルを生やすバクゥ。
下手に飛びあがれば的になる。余計な動きが隙になるのを嫌って真正面の機体へと突っ込む。至近射撃!
ちっ安定翼を削っただけか。そのまま飛びあがる。【無敵のストライク】のパイロットは始めて出あったバクゥ4機を3分で
倒したそうだが、俺はそこまで優秀ではない。「くっ!」増援のディンの存在を忘れていた。砲撃をギリギリシールドで受ける。
歪みながら崩壊していくシールド。ラッチを開放するとシールドをディンに投げつける。かわした瞬間バランスを崩す
ディン。その瞬間を逃さずライフルはディンの胸を貫く。弾切れのライフルは投げ捨てる。
着地点には野犬どもが待っている。ソフィならば全てかわすだろうな。何故かソフィの顔が浮かぶ。
ただ直撃は狙わない、あいつなら、。操縦自体は俺より上手いがMS乗りは向かない。いや、戦争自体が向かないのだろう。
多少変わってるから誤解されやすいが、優しいヤツなんだ。変わり者だから看護婦は、まぁ一生無理だろうが。
一度ぐらい食事に誘っても良かったかも知れない。いつも楽しそうな、人気者のソフィと俺ではつりあわない、か。
…ハハハ、柄にも無い。選ぶ権利はあっちにある。何故か照れている自分に気がつく。生きる意味、か。
シャミィにいえた義理ではなかったな。落ち着いたらカードの分だと言ってソフィを食事にでも誘って見よう、
1、000k先にしか町は無いが。だからお前も落とされるんじゃ無いぞ!
躾けてやる!野良犬ども!初めて生きることに執着したフランクは、サーベルを持つとそのまままっすぐに降りていく。
503 :
259:2007/03/05(月) 00:09:27 ID:???
第五回 瞳の中の命(6/7)
「司令、本国より緊急通信です!」
「後にしろ、現状を伝えてやれ」
「それが、国防委員会からの直接通信でありまして」
「わかった、此処に回せ」
モニターには程なく金の縁取りのついた白い詰襟の人物が映る
『フリードリッヒ司令ですね?委員会直属情報隊のヒル隊長です』
「現在戦闘中です。手短にお願いしたい」
『その戦闘に対してですが発生の経緯について疑問があります。連合政府、並びに自然公園管理公社から
当初の威嚇射撃について正式に抗議の文書が回ってきています。現在当方で調査中です』
正規の抗議文書だと?あの少佐、政治は関係が無いような事を言っていたがとんだ食わせ者だ。
「今話し合う事では、無いでしょう?」
何故落ちない!バクゥを駆るロクサンは苛立ちを覚える。旧型の高性能タイプ、対峙したのは初めてでは無い。
右腕をもぎ取り、バックパックに損傷を与え、頭も吹き飛ばした。装甲も石が当たれば穴が開くほどぼろぼろだ。
それでもまだ残った腕にサーベルを持ちコクピットハッチを開放し、直接目視でこちらの攻撃をかわし続ける。
こっちは4機だぞ!突然前のめりに倒れ始める。電池切れか、長かったな。とどめは刺しておくか。
前のめりのままいきなり背中の残ったスラスターを吹かすとそのまま突入してくる。
【右前足に損傷。修理の要を認む】くそ!そのまま倒れて動かない機体にターゲットを合わす。死ね、ナチュラル!
トリガーを絞る一瞬前に発光信号を確認するロクサン。何故だ…
『司令、いま現状の、プラントと連合、その周辺各国とオーブ、微妙な関係がお分かりですか?』
「自分は駐屯地の運営以外には興味がありません!」
紫の詰襟の見たことのある人物が画面に割り込む
『国防委員長名義の命令書だ。現時点を持って戦闘は即時中止。展開した部隊は全て撤退。3日後そちらの時間で
1900より通信回線経由で、戦闘開始命令についての査問会を行う。司令としての権限は撤退完了と同時に凍結。
司令代行はオマリー隊長。これについての抗議は一切認めない。やりすぎたな?以上』
クライン派の間諜だったヤツが国防委員だと?不戦がクラインの旗印ではなかったか?
デュランダルの犬に成り下がったか、見下げ果てたヤツだ。クラインもまた部下は無能ばかりか。
娘は優秀だと聞くがそれもどうだか。
「…戦闘は即時中止、全部隊撤退!信号弾上げよ!…オマリー隊長を呼び出せ」
504 :
259:2007/03/05(月) 00:12:14 ID:???
第五回 瞳の中の命(7/7)
「なんで、引いたんだ…?」
助かったことに文句を言うつもりは無いが、戦略的には引く必要は無い。あと2時間あれば、1025は
非戦闘員を後方に残して壊滅だったはずだ。とイシカワは思う。ともあれ生き残った以上、なすべきことはたくさんある。
「けが人の救助、残存戦力の確認、部隊の再編、急げ!MSの回収準備開始!ボサっとするな!次はすぐ来るぞ!」
「待って!シャミィ、お願い!外に出たらいけないっ!!」
またもエリザベートの腕を振り切ったシャミィは、今度は外に飛び出していった。
『人殺しの道具』が着いて無いいつものジープが一台だけ残っていたはずだ。
自分では読めないが、誰かが赤い字で書いた【秘書専用車】の落書き。
山のカタチと場所はよく見た。フランクが何処に居るかはわかる。ジープに飛び乗るとハンカチを握っていたことに気付く。
背負ってきたバッグには大隊長室の隣の自分の部屋によって、前に貰っておいたパンを4つ入れてきた。
育ち盛りだ、腹が減ったら食べろ。そういったコック長の顔が浮かぶ。彼は生きているだろうか。
ハンカチを胸のポケットにしまう。雨が降ってきたようだ。あれから何日たったのか良くわからないが
そろそろ雨の時期だったかもしれない。
煙の上がる灰色のダガーの横を通る。腕が両方なくなって全身焦げた跡だらけだ。
1−02のレタリングはシャミィには読めないが、ソフィの機体なのはわかった。また涙が溢れてくる。「…そふぃちゃん」
と黄色と赤のパイロットスーツを着てバッグを手に提げた金髪の女性が目の前で両手を広げる。ブレーキ!
「シャミィ!フランクなの?生きてるの!?場所がわかるのね?」
「そふぃちゃん…!生きてアルます!でもイタイのです!ボク、パンでフランク食べてアゲます!……そふぃちゃん?」
何で涙が出るのだろう。今生きているとはっきり聞いたではないか。怪我をしているようだが問題は無い。
私はそもそも衛生兵だし、そのつもりの救急パックだ。それに指輪を買って貰うまで、せめて顔を見るまで。
死なれては、困る。
「私も乗せていって!お願い!」
D-R識別信号ロストの無線を聞いて、戦闘終了後早々に輸送機かヘリを強奪するつもりだったソフィである。
フランクの位置はその後。ぐらいにしか考えていなかった。位置がわかるなら話が早い。
やがて二人を乗せたジープは、静止する憲兵を無視すると炎と煙の上がる駐屯地から走り去った。
予告
第六回 果たすべきこと
ソフィとシャミィは土砂降りの中フランクを見つける。三人を欠いたまま戦闘準備を進める1025。
一方命令書の出所と本国からの命令に愕然としたフリードリッヒは…
505 :
259:2007/03/05(月) 00:16:27 ID:???
3話分を1話にまとめたのですが字ばっかりで説明くさいです
簡潔な文章はむつかしい・・・
ではまた
>>470 待ってくれてる人がいるとは思いませんでした。
少しずつ書いてますが、忙しいのと遅筆なのでもう少し待ってください(^^;
……その前に次スレ行くかも知れませんが。
あと、超遅レスですが、他スレに出没したりしていないので、
もし家庭用のネタを話した方がいれば、それは自分ではないです。
”サイ・アーガイルが戦線の再構築を図っている傍ら、オーブ本国では、
代表首長府に国家経済団連とも言うべき『連合総議会』のカトウ議長から通信が入っていた。
カトウ議長は、『プラント』との間の戦争が無制限に拡大する事を危惧し、
緊急に解決策を講じるように、圧力をかけて来たのだ”
”無論、オーブ屈指の政治屋でもあるカトウ議長の事である。彼は今回の件を骨の髄まで利用するつもりであったのだろう”
”アスハ代表以下のオーブ代表府首脳部は、カトウ議長の思惑が、この機会を利用し、
代表府の中央集権化に対する対抗手段として、他の野党勢力を迎合して、
『連合総議会』の発言力や影響を高める絶好の機会であると、その本心を正確に捉えていたのだが、
戦争が長引けば、肝心の『地球連合強国』への備えへの支障が出るという彼の主張には、代表府にとっても、それは一理あったのだ”
”一方の『第4機動艦隊』を率いるサイ・アーガイルは、オーブ軍が被った緒戦の手痛い敗北の事を気に掛けていた”
”奇襲を受けた上に、まるでこちらの手の内を見透かしたかのような、『ラクス軍』の作戦を見た彼は、
『ラクス軍』内部に、オーブ軍の機密情報を知っている者がいるのではないか?という疑惑を持つに至ったのだった”
”しかし、現在のサイ・アーガイルには、その疑惑を解明する証拠と手段がなかったのだ。
”だが、『ラクス・クライン』のように、証拠も物証も無く憶測だけで、決め付け、行動するという方法もまたある。
しかし、そのような憶測だけの判断し行動をする人間は、愚劣であり、卑劣でもあろう。
そして、現在のところサイ・アーガイルは、幾つかの憶測に留めるより他はなかった”
”それが最悪の結果として彼の前に現れるのは、そう遠くない将来の事であった”
『C・E80年代』戦史評論より
――第4機動艦隊旗艦『クサナギW』艦橋通路――
艦橋通路をノシノシと歩いている俺は、大きく背伸びをしながら、
「ふぁぁぁぁ……」
とデカイ口を開けるのを隠そうともしない。そう徹夜明けである。
仮眠もろくに取ってないのだ。頭の中が程よくシェイクしてやがる。
徹夜で戦略の再構築作業に従事した俺は、その後、一時間程の仮眠を取ると、
すぐさま艦橋へと足を運ぶ事になった。戦闘開始予測時間は、凡そ3時間を切っていたのだから。
仮眠前に敵襲以外は起こすなと予め言っていたので、まぁ、小一時間は一応は眠れた。
この後は、不眠不休の戦闘に突入することになるだろう。簡単な方法として、短時間で疲労を抜く、無重力ブロックのベット睡眠もあるが、
『アレ』をすると俺は酔ってしまうので、なるべく使わないようにしているのだ。
戦闘中に宇宙酔いなど、冗談じゃぁない。
――もう、十代の若い頃と違うのだ。
俺も年を取ったと、そうしみじみと思いながら艦橋の指揮ブリッジへと早足で向けていると、
反対側から例の『小娘』……もとい、お嬢さんが駆けつけて来た。
しかも、このアマ……もとい彼女は、ハァハァ……と息を吐きながら大声で、
「司令――!」
と……ありがたい事に、徹夜明けの脳に堪えるキンキン声を放って下さる。
徹夜の頭に良く染みる……お陰で目が覚めたよ。ありがとう。
「――よう、おはようさん」
何食わぬ顔で俺は、彼女に朝の挨拶をした。一パーセントは、憎悪が混じってるかも知れない。
だが、俺のその態度とは逆に、彼女の方は表情がクルクルと変わってゆく。それは見てて面白い。
まるで、百面相だな、とのんびりと思っていたら、
「もう!何呑気に構えているんですか!」
……怒られた。しかも、俺が内心で罵っていた事に、気がついたかのように文句も言ってきやがる。
彼女は、俺が寝こけている間に、分艦隊司令の連中に締め上げられて、散々だった!とマシンガンのような愚痴トークを俺に繰り出して来た。
また、頭痛がぶり返して来る……
そして俺は、何とか彼女の『口撃』の弾奏交換の合間を縫って、
「――こっちも必死なんだけどね……」
と俺は、フォローにもならない事を馬鹿正直に答えてあげるが、このお嬢さんは、本気にしてくれないだろう。
案の定、彼女は、表情を目と口を器用に逆三画形にして、もう!と怒った様に、両手に腰を当てて薄い胸を逸らしてくる。
……どうやら、ここは、素直に謝った方がいいだろう。素早く、俺は体勢を立て直すと、
「スマン……」
と、頭を下げた。兵法曰く『三十六計逃げるに如かず』と言うからな。
流石に、彼女も俺がここまで折れれば溜飲を下げたようだ。
お嬢さんも、仕方がありませんね。と両腕を組んで偉そうに胸を逸らしやがった。この貧乳が。
「なにか?」
「いいえ。何も」
超能力者か?お前は!と俺は心の中で喚きながらも、
波風が立たないよう、態度を崩ささずに頑張っておく。
「……で、司令。分艦隊指揮官達に対してのミーティングはどうするんです?」
もう、戦闘開始3時間を切っています!と言う。
その彼女の懸案に対して俺は淡々と、
「――もう、作戦は考案してある。彼等は、俺の指示通りの作戦行動をしてくれるだけでいい」
突き放したかのように断言する。言うことは何もないのだ。何の為に俺が徹夜したと思う?
「はぁ――司令……その、本当に彼等と何の打ち合わせもしないでよろしいのでしょうか?」
「――軍隊の指揮系統の頭脳は一つで十分。手足は、頭の考えた通りの動いてこそだ。
作戦指導の集団分担など聞いた事がないぞ。俺はな」
と俺は、内心の僅かな苛立ちを抑えながらも彼女に答えた。
その態度にお嬢さんは、流石に心配そうにする。
「私は司令のことを信じています……ですが、彼等から、文句が出ないでしょうか?」
「――出るだろうよ。音量が壊れたスピーカーで喚くようにな」
俺には、アスハ代表から授かった兵の生死の与奪を握り、命令できる絶対的な『命令権』がある。
軍というのは、上の命令は絶対という完全な縦社会の構造で出来ているのだ。但しと俺は、小声呟く。
「――無能な指揮官に従う義理はない」
これは、俺の数少ない『心得』でもある。内容は、別にそんな大層なものではない。
要は、政治や軍事にとっては『無能』は害であるということだ。
トップが『無能』だと下が悲惨なのだということに繋がる。
そう、トップに立つ立場にある者は常に『結果』を下にいる者に示さなければならない。
それは上に立つ者の必然の『義務』でもある。
俺たちが『新国家建設』の名の下に築き上げた、新生『オーブ』は、この方針を国是として今までやって来たのだ。
でなくて、小国の『オーブ』が『地球連合強国』に囲まれて、どうやって今まで生きて延びてこれたのであろうか?
――動乱の時代、『国家』という生き物は、冷徹な『強権』を欲する。
動乱時に曖昧で甘い『理想』とやらで、国家を運営しようとすれば、ろくな事にならないのは、歴史を見ても必然なことである。
そして、『国家』という生き物は、『生き延びる』ために形振りかまわない力として、トップに『強権』を求めるのだ。
その動乱の過程において『生き延びる』という『結果』を出せないトップを持つ国家は、滅んでゆく――そう死ぬのだ。
だが、いつの時代でも『結果』より、『過程』を重視しやがる輩のなんと多い事か。
今、俺に対して喚いている連中もそうであろう。
「――そういう連中でも勝てば黙るものだ」
どんな五月蝿く、声高く批判を叫びまくろうとも『勝利』という二文字は全てを飲み干してしまう。
最近のよい例では、『プラント』が挙げられだろう。
『メサイア戦役』における『ラクス・クライン』と『デュランダル』前議長との『政治闘争』も、
結局のところ『C・E73年』時の『世界混乱』の中で『ラクス』の武装蜂起によって、前議長が討たれた事によって終結したのだ。
一説に拠れば、『ラクス』側の暗殺者によって前議長は殺されたという説もある……
結果、前議長の死により混乱した『プラント』は『ラクス派』によって支配される事となった。
戦後に『プラント』側が、『ラクス』を招聘して議長に就任して頂いたという眉唾モノの噂が広く流布されていたが、
俺はそんな如何わしい話を信じた事は、一度も無い。所詮は、『ラクス政権』のプロバガンダであろう。
――『歴史』というものは、勝者が作るものである。例え捏造でも。
そして、『政治』や『軍事』は『結果』が全てである。
過程がどれだけ立派に輝いていても、結果が最悪だったら『無能』のレッテルを貼りつけられるのだ。
かつてのオーブを崩壊へと追いやった『前オーブ代表』のように……
>>続く
GJ!!
短いですが投下します。
自分では改善点が全く分からなかったので何かアドバイスもらえると助かります
やはり襲撃というものは突然来るものである。
敵接近に気がついた当直のノイマンは、すぐさま敵接近の警報を鳴らした。
(こんな時に来るとは・・・)
つい先ほどまでライはキサカと将棋をしていた。どうやらライが優勢だったようだ。
ちなみに今のところ勝敗は5勝4敗だ。
ライが格納庫に着いたときには既にムゥが出撃し、キラが出撃準備に入っていた。
「すまない、遅くなった。すぐに用意する」
そう言いライはすぐさまサイサリスに乗り込み、AIを起動させ戦闘モードに切り替える。
そこへミリアリアから通信が入る。
「今回はどうやら空と海からの同時攻撃のようです。上空だけではなく海上の方にも注意してください」
「了解。ライ、サイサリス、出るぞ!」
サイサリスで出撃したのだが、この機体は重量級のACだ。
長期の空中戦には向かない為、必然的にアークエンジェルの直援に当たる事になる。
その為、ある程度敵が接近するまでアークエンジェルの上で待機する事になった。
ムゥの偵察により敵の戦力の一端が判明した。
空から攻めてくるのはディン6機、水中のソナーには5つの反応があった。
「キラは水中から向かってくるMSの相手をしてくれ。サイサリスは水中では活動できない」
「分かりました」
どうやらその事も考慮したのか、バズーカを装備していた。
そうこうしている内に機体のメインカメラがディンの姿を確認した。
それと同時にストライクもグーンの姿を捉えた。
「フラガ大尉はキラの援護を優先してくれ」
「分かった、やられるなよ」
そうして3人はそれぞれ別の行動に移った。
キラは水中に入り、ムゥはキラの援護をする為に高度を少し落とす。
ライはムゥを狙わせないようにディンに向かって攻撃はするがアークエンジェルからはあまり離れなかった。
キラがグーン4機、ライがディン4機を倒したところで、空からはディン3機がさらに接近してきた。
グーンを倒し終えたキラは一端アークエンジェルに戻りエールパックを装備して再出撃し、ライの援護に向かった。キラが到着する事、既にディンは残り2機という状況になっていた。
ライはキラが到着するのを確認するとエネルギーマシンガンで牽制を掛けた。
そして回避運動をしたディン2機にアグニとビームライフルのビームが貫いた。
敵が居なくなったのを確認した3人はアークエンジェルへ戻った。
一方モラシムは、予想外の強さを見せたアークエンジェルへの対策を考えていた。
戦力はまだある程度残ってはいるが、アークエンジェルを撃沈するには少々厳しかった。
だが、このまま黙って見過ごす訳にもいかない。
今後の戦況の為にもアークエンジェルがアラスカに到着する事はなんとしても阻止しなければならない。
しばらく考えたモラシムは現在所有する全戦力で攻撃を仕掛ける事にした。
先ほど本国からグゥルが4つ送られてきた為、飛行能力が無いG4機もこの作戦に使用できるようになった。
その事も考慮した結果、モラシムはこの作戦が一番有効だと判断したようだ。
(厳しい戦いになるが、プラントの為にも逃げるわけにはいかない)
そう思ったモラシムは、アークエンジェルに再度攻撃を仕掛ける為の準備に入った。
モラシムが決断をした頃アークエンジェルは何事も無かったかのように平穏だった。
どうやら大半の人がすぐには襲ってこないと判断したようだ。
当然ライもその一人であり、今はキサカと将棋の勝負をしていた。
現在、9勝10敗でライが1敗している。
「これで詰みだ、今回は私の勝ちの様だな。これで10勝10敗だ」
「そうだな。だが、そろそろ将棋にも飽きてきたな」
「同感だ。・・・それではオセロでもするか?」
「あるのか? それならそうしよう」
どうやらこのような物は両方の世界で存在していたようだ。
ライはマグネット式の将棋をしまうと携帯用のオセロを上着のポケットから取り出した。
「キサカ、ルールは知っているよな?」
「もちろんだ」
そう言い二人はオセロを開始した。偶然近くに居たムゥはオセロを見て懐かしんだ。
「オセロか、俺も昔よくやったな。観戦させてもらうが構わないか?」
「フラガ大尉か、つまらないと思うがそれでもいいのなら構わない」
どうやらムゥもオセロをよくやったらしい。そして3人は会話こそ少なかったが、充実した時間を過ごした。
それ以降、この3人が一緒に何かしているのが頻繁に目撃されるようになった。
その頃カガリは格納庫へ来ていた。
それに気がついたマードックはカガリに注意するがカガリはその注意を無視し格納庫の隅に置いてある訓練用のシュミュレーターの中へ入ると、起動させた。
どうやら少しでも役に立てるようにとカガリなりに考えたのだろう。
シュミュレーターに入ったカガリは機種をスカイグラスパーにし、訓練を始めた。
以前、【砂漠の虎】との戦闘を終え、撤退するアークエンジェルの支援をする為に出撃したのを見ても分かるように、カガリの技量はエースとまでは届かないが十分戦闘で通用するほどの物だった。
しばらくカガリが訓練をしていると、この事を耳にしたキサカが現れカガリを連れて格納庫から去っていった。
ちなみにこの時出したスコアはムゥには及ばない物のかなり高得点だったらしい。
だが、敵接近の警告が平穏の終わりを告げた。
なんか、ずいぶん読みやすくなったね
ただちょっと展開が唐突かもしれない
物語の中の時間
を読んでる方にわからせる努力は必要かも
時間が飛んではいけないということではないけどね
518 :
517:2007/03/06(火) 21:30:15 ID:???
一方 とか そのころ とか場面転換には使いやすいんだけどね
>>517>>518氏、意見ありがとうございます。
アイデアを書き連ねている為、とてもSSとはいえない状態ですが9~10話は場面転換が多いのでなるべく使うようにします。
521 :
517:2007/03/06(火) 22:51:13 ID:???
>>519 ごめん、言葉が足らなかった
多用すると安っぽくなるよって事を言いたかった
ちなみに「その頃」みたいなカタチで繋いだら
二つが同時進行する必要性を読み手に
教えてあげないといけないよ
>>521 そういうことでしたが、勘違い申し訳ないです。
今は、なるべく時間関係では『その』をなるべく使わないようにしていますが、
未熟な自分ではやはりまだ曖昧な表現を多用してしまいますね・・・
最初からその形式で通すのが重要になるが
改行挟んで
同時刻 ○○沖
とかって方式もあるにはあるね。
524 :
259:2007/03/07(水) 00:07:41 ID:???
毎回出にくい流れ・・・w
時間関係はとくに怪しいワタクシです
間もなく第六回参ります
指摘がないようなので、私から
>>514にちょっとだけ。
以下、問題の部分抜粋。
===========
ライが格納庫に着いたときには既にムゥが出撃し、キラが出撃準備に入っていた。
「すまない、遅くなった。すぐに用意する」
そう言いライはすぐさまサイサリスに乗り込み、AIを起動させ戦闘モードに切り替える。
そこへミリアリアから通信が入る。
「今回はどうやら空と海からの同時攻撃のようです。上空だけではなく海上の方にも注意してください」
「了解。ライ、サイサリス、出るぞ!」
===========
【「すまない、遅くなった。すぐに用意する」】 は誰に言ったのでしょう? 描写として不足があるようです。
【そう言いライはすぐさまサイサリスに乗り込み、AIを起動させ戦闘モードに切り替える。】
他でも指摘あったので強くは言いませんが、「そう〜」を安易に使いすぎですね。
残りのほとんどは「表現の工夫をもう少しした方がもっとよくなるのではないか」程度です。
簡潔な文を並べるだけでなく、二つの文を一つの文に整理しなおしてもいいかもしれません。
説明的セリフをあえて入れることで省略もできます。
もう少しがんばって推敲してみましょう。
上記の抜粋部分を私なりにいぢると次のような感じです。(作者の意図外の修正を加えているかもしれません)
================
ライが格納庫にたどり着いたときには、既にムゥが発進し、キラが出撃体制を整えていた。
「すまない。遅くなった。すぐに出る」
ハッチ脇に立つメカマンに声をかけると、サイサリスの狭いコックピットにもぐりこむ。
シートのハーネスを締めながらシステムを起動し、発進シーケンスを立ち上げる。
「バンディット(敵機)は上空と海上に反応があります。上空の迎撃だけではなく、海上の方にも留意願います」
サブモニタにミリアリアからコールが入るが、計器とディスプレイ表示を見ながら了解とだけ返す。
スクランブル時に、悠長にチェックリスト読み上げをやっている暇はない。ざっと流し見で異常がないことを確認。
「出撃シーケンスチェック完了。サイサリスは重量がありすぎる。上甲板で艦の直援に入る!」
「了解しました!サイサリス発進どうぞ!」ミリアリアのコールを耳にしながら、サイサリスを発進させた。
ムウの先行偵察の結果、敵の戦力の一端が判明した。 (以下略)
================
増やした分と減らした分で文字数はあんまり変わってないかもしれません。
ただ、自分の機体特性は知ってるはずですから、「発進してからよりも最初からそう判断するかもしれませんね」という前提で
三行にわたって説明してたところをセリフひとつで片付けてみました。
526 :
259:2007/03/07(水) 00:10:30 ID:???
森の娘が見た光
第六回 果たすべきこと(1/6)
シートベルトを外す。次の瞬間、そのまま地面まで落ちる。ヘルメットに嫌な音が響くが痛くは無い。
ハッチが開いていたことを思い出す。下が柔らかくて助かった。雨が降っているようだがちょうど機体が
陰になる。何故引いたのかはわからないがともかく、目の前に敵は居なくなった。ソフィは大丈夫だろうか。
すまない、1025のエース様はディン1機が精一杯だったよ。一気に眠気が襲ってくる。左腕にパイロット
スーツが破けて血が出ているのが見えるが、先ずは眠った方が良かろうと思う。敵が居ないのならば睡眠
もパイロットの仕事だ……
「…ですからMSに限っても稼働可能は一機のみ、グラスパー1もすぐには使えません。作戦遂行は
もはや不可能です。撤退を進言します」
いまの時点で撤退はありえない。増援部隊が来るまで離れるわけには行くまい。戦端は開かれたのだ。
「話はわかるが撤退は無い。細かいことは言えんが上からの命令だ。マルコ軍曹、MSの回収準備は
進んでいるか?」
「105はロスト位置が遠すぎる、その上カメラとヘリで探してるが見つからん。それ以外の機体は位置を
確認したから明日中に全機回収する。しかし2コイチで機体を作るのは良いが誰が動かす?」
敵が引いた理由が不明である以上、たった今襲ってきたとしても不思議はない。隊長格のフランク、ソフィ
の両名は現在行方不明、デビッド、キム、マイク、イワノフが死亡。その他のパイロットの資格持ちも、いま
全員病院のテントにいる。はたして、時間はどれだけ取れるものか。
シャミィも飛び出したまま行方不明。きっとフランクを探しに行ったのだろう。モニターをじっと見ていた
以上、場所を特定した可能性はある。いや、D-Rは信号ロスト後も頭を潰されるまで画像を送ってよこして
いた。山の稜線と太陽の方向だけで村にたどり着いた彼女だ。多分特定したからこそ飛び出していった
のだろう。見つけてくれればそれはそれでありがたいのだが。憲兵隊の話ではソフィも一緒のようだから、
フランクが怪我をしていても致命的でなければ何とか成るだろう。ああ見えて以外に衛生兵としても優秀だ。
だが、今度は迎えに行くわけにはいかない。
全く、シャミィにジープの運転教えたヤツは落ち着いたら懲罰房行きだ!
そして被害はMSとパイロットだけでは、勿論無い。
「司令部より緊急入電。これより96時間以内に補給隊を回すとの事で…す?少佐?」
「何を今更!」
見てから動くなら簡単じゃないか。何が司令部か!こっちはこれでも作戦開始をギリギリ引っ張ったのだ。
指揮車の外版を蹴飛ばすとイシカワは不機嫌を隠そうともせず大隊長室の中に消えた。
527 :
259:2007/03/07(水) 00:13:00 ID:???
第六回 果たすべきこと(2/6)
査問会自体は非常にあっさり終わった。初めに結論ありきの裁判ならば当然だろう。20日以内に本国に
更迭。その後更に詳しい調べを行う。指揮権は正式に剥奪。拘束はしないが行動は慎むべし。
指揮権の無い指揮官なぞ居場所が無い。むしろ拘束された方が気が楽だ。自室に篭って引き継ぎの書類を
作る。別に義務があるわけではないが部下が路頭に迷うのも後味が悪い。辺境の地だが唯一制空権のみ
は非常に軍事的価値がある。そこに管理上の空白が出来るのはプラント全体にとって脅威になりえる。
現政権は確かに気に喰わないが、だからと言って別に私はプラントの敵ではない。
「組織」からの命令書が届いたようだ。何を今更いって寄越したのか。
【例の件の発行者はターミナルと呼称される旧クライン派の攻性組織の可能性が大。既に我が組織もほぼ壊滅。
本部も時間の問題である。これより先は各各が自身のしんずるところにしたg end】
不戦がお題目のクライン派が攻性組織だと?いまのデュランダルに流れなかった旧クライン派は
今は娘が仕切っているはずだが。あの見た目に反して、以外に清濁併せ呑む覚悟があるのか。ターミナル
が攻性組織だというならばあの砂漠の虎がついていると言う噂も頷ける。そうなれば行方不明のエターナル
も彼女が抱えている可能性が高くなるな…
いずれ全ては終わりだ。こうなれば本国の取調べなぞ、受ける訳には行かない。私はここで死ぬ!
と何故か口元に笑みが浮かぶ。本国送致までまだ数日あるし、ただ死ぬ訳にも行くまい。私が一声かけ
ればある程度の人数は揃う。なんといってもここは旧ザラ派の巣窟で、私はかつてその中枢に居たのだ
そして死ぬなら貴様らも道連れだ。ナチュラルども!
久しぶりに情熱が燃え上がるのを感じる。そして今回も情熱は私を正しく導くことはしないだろう。
そう思うと今度は本格的に可笑しくなって声を上げて笑う。
「ハハハ…そうだとも!一人でも多く地獄に引きずり込んでやる!」
528 :
259:2007/03/07(水) 00:14:21 ID:???
第六回 果たすべきこと (3/6)
横倒しになったMSは以外に簡単に見つかった。三方が開けた崖のたもと。こんな場所でどうやって
バクゥを4機も一人で引き付けていたのか。エースを簡単に語ってはいけないとソフィは思う。
そして機体の下に横たわる青いパイロットスーツ。
土砂降りの雨は台地を流れ彼の体も水に浸されつつあった。
シャミィはずぶぬれのまま心配そうに横に立っている。
「雨のかからないトコに居なさい?外傷は、見た限り左手だけね…心配ないわ、生きてるから、ね?」
フランクの上体を抱き上げる。間近で顔を見られたは良いがこの状況はあまり嬉しくない。うん、大丈夫。
息はある。ただ眠っているだけ?パイロットスーツを切り裂いて簡単に腕の応急処置を済ます。
服を脱がしてみないといけないが此処で大丈夫だろうか。
「ダメでごザイますぅ!そふぃちゃん!」
見ると真っ赤な顔をしてシャミィが怒鳴っている。大丈夫、取りゃしないわよ。と思ったがしきりに下を指差し
ているのが目に入る。どうやら水を言葉で表現できなかったようだ。確かに一気にぬかるんできた。
恥ずかしい。顔を赤くしてシャミィに向き直る。「ど、何処なら大丈夫?」指を差したのは崖の上の洞窟。
背負って行けという事らしい。ちょっとだけ、ツライな。
「そふぃちゃん?フランク、ボクもあげタイです」
「無理に決まってるでしょ、服のせいで見た目より重いわよ?それに私はあげてないし、
アナタはあげると犯罪になっちゃうの!持ち上げたいって言いたかったんでしょ?」
まぁ、私はあげても良いのだけれど。そう思うと何かこみ上げてきて吹き出した。つられてシャミィも笑う。
「…んもう!どうしてソッチ系の間違いばっかりなのよ?」
二人で笑いながら坂を上る。そう、彼が生きていた以上悲しい顔をすることは、いまは無い。
鉄のこすれる音が聞こえて振り返る。105ダガーが唐突に動き出したように見える。
いや、少しずつ動いていた。
「底なし沼、だったのね」
表面に積もった土が雨で流されたのだ。表面がゆるくなればMSの重さには耐えられない。
横倒しのままコクピットにも泥が入り込んでいく。さっきまで居た場所は105ダガーの胸に押しつぶされて
いる。雨はますます激しくなる。ソフィは眦を決してフランクを背負いなおすと洞窟への細い道を急ぐ。
529 :
259:2007/03/07(水) 00:16:12 ID:???
第六回 果たすべきこと(4/6)
「確かに引渡しを完了しました!」輸送中隊の中隊長はイシカワに敬礼を送ると自分の機に帰っていく。
ウィンダムが2機、スカイグラスパーが1機、そして【無敵のストライク】をコピーした機体105EXが一機
そのほか車両系、物資系も山のように積み上げてある。建物の2/3が被害を受けたため大半がシートを
かけたままこのまま置かれる事になる。パイロットの補充が無い理由の説明は無い。折を見て直接、部隊を
送り込んで一気に敵を叩く腹積もりだろう。噛ませ犬確定か…ならば、なおのこと生き残ってやる。
不明瞭で連合全体に影響があるような危険な命令と、的確で無い補給の件で更迭に追い込んでやる、
くそ爺ども。生き残れば、だがな。雨の中ため息をつく。
ともあれ手足の色の違うダガーを2機でっち上げ、最新鋭のウインダムが2機、スカイグラスパーが2機、
なんの役に立つのかわからないX105ストライクの劣化コピーが1機。数だけは揃った。
105EXか、ソフィが泣いて喜ぶな、整備班が電源を入れて灰色から青と白に色を変えた機体を見ながら
思う。だがあいつはグラスパーだ、もう扱えるのはソフィしか居ない。問題はフランクが怪我をしているか
どうかだが。全くコーヒーはいつ入れに来るんだ?コーヒーメーカーは無傷なのに。
3人が帰ってこないことなぞ考えもしない。土砂降りの中腕を組むイシカワはその場で機動兵器の運用を
考え始める。
機嫌は幾分良くなったようだ。と傍らのエリザベートは息を吐く。これなら1500からの作戦会議は開けそうだ。
でも私がコーヒーを入れたらまた機嫌が悪くなるだろうか。そう思うとエリザベートは今度は少しげんなりする。
「アレは送っても良かったのですか」
「ストライクのコピーか、構わん。同じものを作ろうとして失敗したモノだからな。重量が1.3倍だ。PS装甲
はそもそも連合の専売特許だったのにだ。オーブも予備部品ベースで1機組み上げたと言うのに。技術力
が低すぎるな。我が工廠は」
連合軍本部の直轄工廠とはレベルの差は歴然だ。初期型Xシリーズのコピーさえもまともに出来ないとは
情け無い。
「高性能機なのでしょう?もしザフトに鹵獲されたら」
「心配は要らん。PS装甲を考えなければトータルではウインダムの方が性能は上だ。ザムザザーを投入
したわけではない。今後も軍服を着て給料を貰うつもりなら、もう少し兵器体系について勉強しておけ。
それにザフトはXシリーズのデータならば4機も持っているではないか…。ストライクの形をしていれば
前線の連中は頑張ってくれる。」
1025はそもそもわが国軍部の司令部直轄部隊、言い方を変えれば連合全体はもとより、わが国に
おいても員数外だ。世情がきな臭くなる中、他にまわせるMSが無いと言うのもまんざらウソではないし、
今はまだ増援部隊も送れない。イシカワならば何とかするだろうと言う甘えがある事も、ある程度自覚は
している。配備が始まったばかりのウインダム2機はそのせめてもの罪滅ぼしのつもりだ。
「イシカワ少佐は納得していまいが、それは話が別だ」
そういった後、司令部付きのエリートである以上、当然イシカワも105EXの素性は知っているだろう事に
思い当たった。
その参謀飾緒を肩から吊った大佐の階級章の男の脳裏には、イシカワの憮然とした顔が浮かんだ。
530 :
259:2007/03/07(水) 00:17:45 ID:???
第六回 果たすべきこと(5/6)
ニコニコしながら満面の笑みで見つめるシャミィと、体が動くのを観察するかのようなソフィ。
二人の視線の先には寝袋から上半身を出して座るフランクが居た。
「今更なんだが、お前ら、あっちを向いていてくれないか?」
「気にしなくていいわよ?もともと看護婦なんだから男の裸なんか珍しく無いし、二人で脱がしたんだし♪」
「そういう問題じゃない!せめてパンツ履くとこぐらいは見ないでほしいんだが…」
フランクの服を脱がせて全身の検査、治療をしたのはソフィである。珍しくないはずの裸の胸を見て
顔を擦り付けたい欲望と戦っているさなか、それを自然ににするシャミィをうらやましく横目にしながら治療
をした。今にして思えばどうせシャミィしか居なかったのだしすればよかった。と、後悔しきりなのだが。
それはさておき、その後服を乾かすためにそのまま寝袋に押し込んで寝かせた。そして発見から1日半、
ようやく目を覚ましたフランクが先ずは下着を着けようとしているところである。
シャミィはパイロットスーツを半分着込んだフランクに走って行くと嬉しそうにバッグを差し出す。
中身は勿論彼女お気に入りのコック長入魂のパン。涙で汚れたハンカチは今は胸のポケットの更に奥
にしまってある。泣いていたのを知られるのがなんとなく気恥ずかしく思ったからだ。何故そう思ったのかは
自分でもわからない。
フランクが救急パックの水でパンを胃袋に流し込むのを待ってシャミィが言う
「イシカワサンがオッコッテいるデスので帰りナイとシマす!」
「う〜ん、怒ってるかしら、ヤッパリ…」
「お前ら、また勝手に飛び出してきたのか…」
コレは俺のせいになるんだろうか…多少複雑な心境のフランクである。
「失礼致します。えっ?ロクサン隊長?」
フリ−ドリッヒの自室を訪ねたケンウッドは、赤い軍服を着た厳つい顔の先客が居た事に驚く。
「お前もそうか、ケンウッド。さて司令、あの部隊相手なら頭数は十分じゃないですか?」
「本国がなんと言おうとユニウスの欠片に手を付けようとした、あのナチュラルどもだけは度し難い。
生きては帰れぬかも知れん作戦だ。協力を感謝する。」
そういってフリードリッヒが崩れた敬礼をしてみせると2人は姿勢を正し、かかとを鳴らして敬礼を返す。
「バクゥ全機とラゴゥ、そしてディンも一機何とかなります。そしてケンウッドのアジャイル隊。コレならば」
確かに頭数は十分だ。生き残ってしまうかも知れんな。そう思うと笑みが毀れそうになる。
「実弾を装備した演習の許可は出ています。ラゴゥとバクゥを追加したのはロクサン隊長だったんですね」
基地さえ出てしまえばこっちのものだ。オマリーには彼らを止めるカリスマも大儀も無い。
優秀だった男は、少しずつ暗い情熱に背中を押され、予感の通り間違った方向にいざなわれ初めていた。
531 :
259:2007/03/07(水) 00:19:49 ID:???
第六回 果たすべきこと(6/6)
「フランク・フルブリッジ大尉以下3名ただいま帰投致しました!続けてフルブリッジ大尉報告します!
アジャイル4機、ディン一機を撃墜するも貸与いただいたGAT-01A1ダガー、部隊呼称D-Rを毀損、
回収不能となりました。申し訳ありませんっ!
なお、ソフィ・ゲインズ軍医中尉、少佐の私設秘書シャミィ女史に救命措置を施され一命を取り留めた事
を申し添えます!……だから二人は怒んないでやってくれないか?」
敬礼を崩すと厳しい顔のイシカワを下から覗き込むようにするフランク。その他2名は直立不動だ。
「帰投報告ご苦労!」
敬礼の手を下ろすと、帽子を脱いで厳しい大隊長から人の良さそうなオジサンの顔になるイシカワ。
「お前ら、馬鹿やってないでこっち来て座れ、エリザ?こいつらにコーヒーを、シャミィは紅茶で良いか?……」
そのまま腰を下ろすフランクと、おずおずと椅子を引っ張り出す女性二人。
「フランク、新しい機体が届いてる。コーヒ−飲んだらすぐマルコ軍曹のところに行け。シャミィ、フランクを
助けてくれてありがとう。感謝する。ソフィは…まぁ一時間ほど、お説教でも聞いてもらおうか」
予告
第七回 少女の涙(前)
死闘を繰り広げる1025とフリードリッヒ隊。イシカワの指揮車が吹き飛びソフィのグラスパーが直撃弾を浴びる…
そして炎を瞳に写し少女はただ、戦場を見つめる…
妄想設定補完
GAT−01E1−05 『105EX』
前大戦時の【無敵のストライク】ことGAT−X105を大戦後に若手技術陣の能力育成と技術研鑽のため
にコピーして作り上げた機体。外見は胸の装甲形状以外にはX105と変わるところは無い。PS装甲の調整
のために若干青の面積が広い。大戦後の製作である為、使用部品の関係で出力はX105に比べ若干大き
いが、ピーキーな操縦性は更に悪化。地球連合軍本部に無許可で製作がなされたので、プロジェクト秘匿
のため形式番号はストライクダガー系列のもの。
1.3倍の重量以外はほぼ同じ性能を確保できたが、既に戦術のトレンドは、ウインダムやグフのように機
動力が重視される方向であり、重量増は致命的であったため、公式にはMS扱いさえされず部品として保管
されていた。GAT−01A1(105ダガー)の時点でストライクとほぼ同じ性能と言われた事から見れば劣化
コピー呼ばわりも仕方の無いところではある。テストの評価はPS装甲以外はほぼウィンダムの方が上。
「ブレイクザワールド事件」の調査のための特別編成部隊である第1025特別混成機動大隊に、【補給物
資】扱いで投入された一機のみが存在する。
532 :
259:2007/03/07(水) 00:24:18 ID:???
今回の反省
自分用に書いた設定を貼り付けてしまったこと。
本文内でどうしても『105EX』がイラナイ子であることが
表現できなかったのでつい
小説のような形であれば反則、ですよねぇorz
実は各キャラと各勢力分も書いてあったりする設定厨です。すいません
張らないのでお許しを
533 :
259:2007/03/07(水) 00:30:05 ID:???
ついでにもう一つ
イシカワさんたちの所属、連合の何処なんでしょw
自然公園の位置は設定作ってないんで内緒と言うことで
偉い人達の台詞はあえて削りませんでした
それではまた
>>522 金にもならなきゃ売名もなし、ならば
自分の読みたいものを書いてるはずだよな
ごく普通に、書いたら読み返す
そして気に喰わないところを直す
きっとそれの回数を増やすだけで、おまいの場合は一気にクオリティが上がる
気がする
正直あんまりしてないだろ?推敲
書いた瞬間に慌てて貼る必要は無いんだぜ
ちょっと参考までに。
1レスに書ける文字数がいくつかは正確にしらないけど。
某スレに自分が落としたSS(1レス完結)で数えてみると1200字は確実に書けます。
つまり、原稿用紙3枚分は1レスで収まるということです。
私が、SS書きの練習に大いになったと思っているのは、ショートショートを書くことでしたね。
1600字(原稿用紙4枚分)制限で、テーマに沿って1つお話を作る。
最初はなかなか収まらないと思いますが、慣れると800字〜900字で一つ書き下ろすことが可能です。
この練習は、推敲の技術を高めることが目的です。
『書いた文の中の形容詞ひとつ取り除いても問題ないか』程度の作業ではお話になりません。
どこまで本筋に関係ない贅肉となっている文をそぎ落としても大丈夫か。そぎ落としても意味が通じるか。
通じなくなるなら、何故通じなくなるのか。 それを埋めるために少ない文字数で同じ表現が出来ないか。
そういった厳しい目で推敲というものはやるべきものです。
一旦書き上げたものを壊して再構成する。そのくらいの覚悟も必要かと。
大スランプで推敲程度ではどうしようもなく、最初から書き直したのですが気に入らず。結局、それを4度繰り返したということもあります。
ただ、大事なのは。 『推敲のために読み直して、自分が楽しいと思える作品が書けているか』ということ。
推敲の過程で詰まらなくなるのならば、ネタの展開か、推敲の仕方が拙いということです。
『直してさらに面白くする』 これが推敲を厭きずにやるためのモチベーション維持のポイントです。
>>crossAC
かなり読み易くなっていました。注意事項は他の方が大体言われているので、
私からはGJを。続きを待っていますが、無理はしないように気をつけてください。
>>森の娘が見た光
フランクが生きていてとりあえずほっとしました。全八回との事ですので、後二回ですね。
イラナイ子扱いの105EXをどう使うか、楽しみです。
お二方とも、投下お疲れ様でした。
「あれー?シンじゃん。こんなトコにつっ立って何してんだよ」
チケットを手にして哀愁を漂わせる様に立っていると、アウル君がやって来た。
「……………てな訳でさ。参っちゃったよ。アウル君、一枚どう?」
俺はアウル君に事情を話し、営業してみる。上手くいけばマヨネーズライスにソースもかけれるかも知れない。
「……へぇー、アスラン君のディナーショーーね……。シン、そんなの捨てちゃえよ」
アウル君は笑いながらチケットを奪い取って捻り潰してゴミ箱へと投げ捨てる。
「ああ!?」
俺は恨みの目付きでアウル君を睨む。
しかしアウル君は俺の視線を跳ね返して肌にまとわり付く様な殺気を放ってきた。
「え?何?文句あんの?シン、僕の事務所知ってるでしょ。……事務所の力見せちゃうよ?」
そうだった。アウル君はアスランさんが前にいた事務所の所属で、その事務所は1、2を争うほど力のある事務所だ。
僕みたいな弱小劇団員を抹殺するのは朝飯前かも知れない。
「めめめめめめ、め、滅相もありません!僕はアウル君に文句なんてありませんヨ?」
僕はガタガタ震えて噛みながら答える。
……抹殺は嫌だ。
「だろーねー。悪いのはどーせアスラン君でしょ。今度あのハゲに会ったら言っといて。サイさんがムカついてるってさ」
アウル君は笑いながら僕に話しかけてくるけど、目が笑って無い。非常に怖い。
因みにサイさんはアスランさんと同期で、芸能活動だけでなくにカーレースをしたりと多彩な活躍をしてる人で、かなりの権力もあるらしい。
アスランさん、ご愁傷さま。絶対に俺を巻き込まないで下さいね。
俺はアウル君にイエスと答えながらその場を逃げ出すように走り去った。
……寿命が縮んじゃったよ。
──to be continued──
GJ!しかしこのシンは肩身が狭いなw
539 :
259:2007/03/07(水) 23:50:37 ID:???
>>536 thxです
ホントはガラクタを送りつけられて
イシカワさんが頭を痛める展開のはずだったのですが
今読み返すとソフィの反応を想像して喜んじゃってます
そこは削りたくないので偉い人達のシーンで入れてみたら
今度は作ってない設定に触れると言う・・・
難しいですねぇ、そうやって頭痛めるのが楽しいですがw
アスカしっかりしなさいを当初、
題名だけでツヨシしっかりしなさいとのクロスだと思った俺がいる。
というか、未だに読んでると頭にあのオープニングが・・・w
なにはともあれ、GJ!
「四月その1の2」
「でだな、シン。俺はその時こう言ったわけだ。俺もです、ってな。あの時の父上の顔をお前にも見せてやりたかったよ」
目の前で大笑いするアスランさんに俺は半笑いで相槌を打つ。
どうやらこの男の話によると、昨年の試験の時、自分の父親の受け持つ科目の解答を入手しようとしたらしい。
こそこそせずに、堂々と教師である父親に向かって「解答教えてください」と。
それに対してアスランさんの父親、パトリック先生は「見損なったぞ」と言い激怒したらしい。
まあ、本当に不正をしたわけじゃないらしいので笑い話と認識できるが、超笑顔で語られても困る。
俺とアスランさんの一番の緩衝となるはずのマユも、先ほどの分かれ道で別々になってしまった。
ため息ついでに隣を盗み見れば、アスランさんが笑顔で話し続けている。
学園では寡黙ながら、頼れる男と人気が高い人なのに。
周りを歩く他の生徒には聞こえていないのか?
「ん、どうした?」
「いえ、何でもないですよ」
まったく、こっちの微妙な思案も見逃さないからな。尚のこと始末が悪い。
アスランさん以上に俺について分かる人間は、この世界に二人だけだろう。
一人はもちろんマユ。
で、もう一人はあまり関わり合わないならそれに越したことの無い人物だ。
何せ、二人の姫様の内の一人、下品な姫様なのだから。
「お」
突然、アスランさんが後ろを振り向く。
俺もそれにつられて振り向くと
「おーい!お前達ー!」
「って、噂をすれば」
自転車で全力疾走する少女。周囲に迷惑がかかりそうな危険行動だが、何故か彼女なら仕方がないと許されてしまう。
それが、カガリ・ユラ・アスハという女性だ。
「おい、呼んでいるんだから返事をしろ!」
「いや、ブレーキを……」
その下品な姫様は、自転車の勢いそのままに、俺に突撃をかましてきた。
「危ない!」
アスランさんが俺を突き飛ばすと同時、アスランさんはカガリの自転車に撥ねられてしまった。
宙を三回転し、アスファルトに叩きつけられたアスランさんを、周りにいた女子生徒がすかさず介抱する。
俺はその光景を気にせずに、たった今交通事故を起こした犯罪者、カガリの方に向き直る。
「毎度毎度危ないですよ。何考えているんですか?」
「はは、すまん。今度からは気をつけるぞ」
にこやかに言うその台詞を聞くのは果たして何回目だろうか?
カガリは自転車を折り畳むと背中に担ぎ、俺の隣に陣取る。
「ほらほら、ぐずぐずしていたら遅刻だぞ」
そう言って走り去っていくカガリ。
「まったく、あの人は」
まあ、アスランさんを屠ってくれてし、今回は見逃そう。
のびたままのアスランさんに形ばかりの礼をし、俺は学園へと再び歩き出した。
が、すぐに大きな音が前方から聞こえてきた。そして、人がざわざわしている。
「まさか」
俺は嫌な予感がして、立ち止まっている学生たちをすり抜けてざわめきの中心地に向かう。
そこには、木にぶつかったであろうカガリがのびていた。
おまえもかよ。
俺は仕方なしにカガリを助け起こす。
「大丈夫ですか?」
カガリの頬をビンタする。またビンタする。もう一つおまけにビンタする。
「う、っ、っと……おお、シン?」
どうやら気が付いたようだ。さすがは強靭な肉体を持つことだけはある。
「よっと。はは、恥ずかしいな」
木にぶつかって転んだのが恥ずかしいらしく、顔を赤らめながら頭をかいている。
周りの皆も微笑ましいものを見た、といった雰囲気で、再び自分たちのグループに戻っていく。
「ああ!」
「今度は何ですか?」
「ルージュ(自転車)が……」
カガリが指差す先、そこには赤いジャンクが転がっていた。
まあ、あの勢いでぶつかれば、ああなるのは当たり前だろう。
「お気に入りだったのに」
物凄くどよーんとするカガリ。
その珍しい光景に少々戸惑う。
いつもあはははは笑いながら溌剌としたところしか見ていないので、この反応は予想外だ。
「ああ、その、新しいのを買えば……」
「お気に入りだったのに」
うわ、重症だ。
周りに助け舟を求めても、皆知らない振りして避けていく。
というか、いつまでも時間を食っていると遅刻してしまう。
ここは俺も避けたいところだが、ここまで関わっておいて、それは人として失格だろう。
だが、時間は刻々と迫る。
仕方が無い。
「あ、コホン。そのですね、俺が直しましょうか?」
「……え?」
「ですから、俺が直しましょうか?」
「……直るのか?」
自転車の惨状。はっきり言って普通は直せるレベルじゃない。
だが、アスランさんに頼めば修理してくれるだろう。
「多分ですけど直せるでしょう」
「っっっシン!」
「いっ!?」
ガバッと抱きついてくるカガリに呆気にとられてしまった。
「お前って奴は、すごくいい奴だな」
力の限り抱きついてくるカガリ。いや、力の限り腕で首を絞めてくるカガリ。
「苦、し」
「ありがとう!」
本人は最上級の感謝を表そうとしているらしいが、マジ苦しい。
「お……」
意識がゆっくり遠のいていく。
学校、遅刻かな。
この先待つであろう生徒会長の説教にげんなりしながら、俺は意識を失った。
すみません。体験版その2はここまでです。
製品版はとある事情のため発売延期です。本当に申し訳ない。発売日は未定です。
ていうか何で全受け?
>>544 いやいや、おもしろいんでゆっくり練ってください。
>>537 本編もSSも、どこまでもうかばれんな、シンwww
>>544 何処へ行きたいんだ・・・ww
やはりギャルゲーな展開だがBL系のかほりが仄かにww
そしてシンはヤッパリうかばれないw
シンは苦労人がよく似合うwww
GJ
>>アスカしっかりしなさい
GJ
ああもう、色々立場が変わりすぎてて笑った。そして本編だけに飽き足らず、こんなところでも
いじめられているのか、シン。
せめてこれぐらいはあげよう つふりかけ
>>オーブ学園
褒め言葉としてバカらしい。発売日の情報を求む。
550 :
259:2007/03/09(金) 00:13:29 ID:???
第七回、間もなく参ります
551 :
259:2007/03/09(金) 00:15:24 ID:???
森の娘が見た光
第七回 少女の涙(前)
高台に立って右手にはハンカチを握り締め、たった一本生き残った木に手をつけて戦場を見つめる少女。
彼女は本当はもっと長い名前だったが誰も発音できないのでシャミィと呼ばれていた。
「パワーはあるが重い!PS装甲の分か!?」
結局十分に訓練することなぞできなかった。105EXは現在、フランクが操縦桿の感触とカタログデータを
頭で突き合わせて動かしている。上空ではソフィのグラスパー02がランチャーストライカーをつけてアジャイル
と遣り合っている。最大推力で更に足を踏み切って飛びあがる。エールの推力は変わらないならやはり
重いのだろう。「しまった!」真正面にバクゥが回りこむとミサイルを撃つ。直撃を喰らったはずだがPS装甲
稼働とエネルギー消耗の表示のみで終わる。そのまま真正面に突っ込むと今度はバクゥが避ける番だが
「逃がすか!」イーゲルシュテルンで動きを規制されたバクゥはライフルの射線の前に流れて来るしかなかった。
地面をえぐりながら火球と化すバクゥ。重い上にやたらパワーがあって、操縦系もナーバス。扱いづらい機体
ではあるが、敵が実弾兵器主体である以上PS装甲は使える。ただし、頭でわかっていても直撃を喰らう時の
精神的苦痛はかなりの物だ。少なくともフランクにとっては、慣れでなんとかなるレベルではない。
「エリザ!何機残ってる!?02、ソフィ!換装するぞ!用意良いか?」
別のバクゥが突っ込んでくるのをかわしながら飛びあがる。
『投下するわよ!捕まえて!』
最大に飛びあがったところでエールを切り離すとそのままランチャーストライカーを背中に装着する。
一瞬遅れてミサイルが当たるが既にPS装甲は復旧している。
『後方ラゴゥは変わらず、バクゥ残り3、ディンが1、戦闘ヘリは目視で残り7、センサー分でプラス3です』
「ウチは何機残ってる?」
ラゴゥの砲手席、コクピットカメラに見たことのある人物が移っているのを司令代行のオマリーは見た。
『おい憲兵隊!フリードリッヒ氏は何処にいる!大至急確認しろ!ロクサン隊長、演習は中止だ!大至急もどれ!
命令だぞ、コレは反逆罪だ!ケンウッド隊長!えぇい!何故無線が繋がらんか!』
ちょっとした仕掛けをしてきたのでザクは当分起動出来まい。稼働機はジン・オーカーの他はガズウート。
アジャイルさえ一機も無しでは追跡もままならない筈だ。今の彼の手元にはバクゥとラゴゥに強制出来る程の
戦力など無い。高射砲を味方に向けて水平射撃するような根性もあるまい。
帰っては来れないかも知れないし、帰ってくれば逮捕だろう。いずれナチュラルどもとやりあうより他、道は
無いのだ。黒いザフトの制服に黒い帽子を被った男の顔には既に笑みが毀れる。
「しっかり」はなんと言うか、涙出てくるな
「学園」はとりあえず攻略キャラは体験版で教えて欲しいですわ
553 :
259:2007/03/09(金) 00:17:53 ID:???
第七回 少女の涙(前)
EXとは少しはなれたところでウインダムとバクゥがやりあっている。ソフィの援護にはミサイルランチャー車
が一個小隊回っているはずだ。ならば当面ウインダムに加勢するべきか。
『ウインダムは両機とも健在、グラスパー02も健在、グラスパー1は被弾戦線離脱、ダガーは2機とも大破、
パイロットは全員無事です』
くそ!敵の数は減っていない。だがもうダガーがやられたというのか。アジャイルがソフィの曲芸飛行のせい
で自由に動き回れないのは救いだが地上のバクゥは厄介だ。ラゴゥが動かないのは指揮を取っているのか、
温存しているのか。
『エールに換装、急いで!打ち上げてくれれば勝手にやるから、そう言って!』
『曹長!左に感!高速接近中!至急確認してください!』
『ランチャー隊ラインを上げろ!まぐれで良い、一発当てろ!』
『バクゥが指揮車に肉薄してるぞ!3小隊!何してる!』
「なに!?エリザっどうなってる!」
一機だけ戦列を離れたように見えたバクゥはいつの間にか1号指揮車の横に回りこんでいた。広域レーダー
の画面では既に2つの点は重なりそうだ。
『いつ回り込まれたのかわかりません!距離2、000、一気に詰まりますっ!3、4小隊援護願います!』
自分に迫るMSの動向を報告するエリザ。いつも冷静な声が流石にうわずる。
「指揮官座上車だとバレてるか!ウインダム、オルト少尉。此処は任せる!こいつらをこれ以上近づけるなよ!
間に合え!」
ランチャー装備で更に重い機体を引きずる様な感覚を不快に思いながら、バクゥを目指す105EX。
554 :
259:2007/03/09(金) 00:19:12 ID:???
第七回 少女の涙(前)
「あんたたちぃっ死にたくなければ帰りなさい!」
エールを装備したグラスパー02は群れというにはさびしくなりつつあるアジャイルを掃討していた。
圧倒的に火力と推進力はあるものの運動性能がヘリは特殊だ。残ったのはこの辺がきちんと理解できている
パイロットであり、ソフィの曲芸飛行に心を揺らされる者は既に撃墜されていた。そしてソフィは扱いがいかに
上手かろうと本職の戦闘機乗りでは無い。実は、彼女の撃墜スコアは前大戦時もジン1機撃墜のみ。
それもフランクとのコンビがあっての功績である。アジャイルの数が減っているのも、地上のミサイルランチャー隊
の支援あってのこと。そもそもが彼女の操縦は実線向きではないし、既にそれはアジャイルのパイロットにも
気付かれている。
「こっちの動きが読まれてるの?ウインダムは?」
バクゥとウインダムが2対2になっている。高性能ではあるが慣れない機体、完全な地上戦ならばバクゥに
分があるように見える。いずれ援護は頼めないだろう。地上のランチャー車とはかなり離れた。コレでは
彼らは誤射の可能性がある以上撃てない。だがそれに気付いているのかアジャイルはどんどん
地上の支援部隊からソフィを引き離していく。
「っ!」
ストライカーパックをかすった!本気で動きが読まれてる!離脱しても進入時にまた喰らう。
機動は自由なはずだが心理的に恐怖を感じてしまったソフィは、取りうる動きを徐々に限定されつつあった。
555 :
259:2007/03/09(金) 00:22:03 ID:???
第七回 少女の涙(前)
「すぐ横にいるだと!馬鹿者!何をしていた!直ちに移動!こいつが落ちたら部隊がばらばらになる!」
車高の高い大型トラックの見た目の指揮車はアンテナや機材のケーブルを引きちぎりながら走り出す。
対戦車ライフル、バズーカ、携帯ランチャーが火を噴くがバクゥは巨体を揺らしてあっさりかわすと一気に
指揮車に迫る。指揮ブロックの扉を開けてイシカワがランチャーを構える。
「あえてミサイルを使わんだとぉ!?ふざけるな!」
腹に赤い火球が膨らむがバクゥは意に介せずそのまま距離を詰める。
最大望遠でもまだ小さなバクゥとただの塊にしか見えない指揮車。もう間に合わない、ココからだ!
アグニを背中から引っ張り出す。火気管制は拒否したが小さな犬のようなシルエットに手動で照準する。
ジャンプで進んできた機体は着地と同時に射撃姿勢をとる。
「射程は良いが威力がデカすぎる…えぇい!考えても仕方が無い!指揮車に当たるなよっ、いけぇっ!」
ランチャーストライカーから生えた巨大な砲塔が火を噴く。
サーベルを生やした頭が指揮車を切り裂くその一瞬前、横腹と後ろ足を太いビームが削ぎとっていく。
そのまま前のめりに転がると、火を噴き部品を撒き散らしながら転がってゆくバクゥ。
指揮車はそのあおりを食って6回転したあと、イシカワが開けた扉を下にして横倒しに滑った後、止まった。
『あえてミサイルを使わんだとぉ!ふざけるな!』
「え、イシカワさん!何?」
一瞬気が抜けたのを見逃してはくれなかった。ストライカーパックに直撃弾を貰う。
「そんな!私が!?ありえないっ!」
排出した瞬間いきなり爆発するエールストライカー。爆発のあおりを受けて機体が一瞬不安定になる。
ここまではソフィのギリギリの操縦で直撃を避けてきたグラスパーではあるが、だからこそアジャイルの
パイロットたちには機体がソフィのコントロールから外れたほんの一瞬で十分だった。機体後部に直撃弾が来る。
爆発の衝撃でキャノピーにヒビが入り、コクピット内でも一部煙が上がる。
ヘルメットのバイザーもいとも簡単に割れた。
額から血を吹き出したソフィは、それでもまだコントロールを諦めない。
だが、努力を無視するかのように完全に失速したスカイグラスパーは斜めにぐらりと揺れると、
もうもうと黒い煙を吐き、ヒィィイインと悲しげな音を発しながら落ちていった。
556 :
259:2007/03/09(金) 00:23:49 ID:???
第七回 少女の涙(前)
「エリザ!エリザベート!応答しろ!イシカワ少佐!少佐ぁっ!……くそっ!C-3!3号指揮車、生きてるか?
こちらEX」
『3号指揮車シフレ中尉です。こちらは大丈夫ですが、少佐は、その』
「状況はわからんが、少佐は指揮の続行不能と見なし、現時よりそちらをメイン指揮車に切り替える。
俺では手が回らない、シフレが全体指揮を執れ。各小隊を路頭に迷わすわけにはいかないからな。
判断に迷ったデータは俺にそのまま回せ。敵の残りは?」
期せずして現状、1025の最高階級になってしまったフランクである。もとよりイシカワに何かあれば
全体指揮を執ることは当初から決まっている事ではあるのだが。
『アジャイルが7にディン、バクゥが各1、後方のラゴゥは変わりません。その他の部隊の展開は、現在まで
確認されていません』
「こちらはどうだ?」
『そのぉ、機動兵器中隊は大尉のEX一機のみです』
「なっ…!、ソフィは、02はどうした!?ウインダムは!」
「ウインダムは2機はバクゥ1機と相打ち、目視で確認。パイロットは不明。グラスパー02は詳細不明ですが
2分前にメイ・デイを一瞬確認しました。その後識別信号ロスト。あ、いえ、あの…大尉」
「っ…!戦闘中に指揮官が不明瞭な会話をするな!部隊は分隊規模で散開してアジャイルに集中!
バクゥとは無理にやりあわずに俺が行くまで逃げ回れと伝えろ、この展開なら敵の増援部隊は恐らく来ない。
余裕が有ればロボカメを何機か飛ばして遠方を索敵。ラゴゥに動きがあればすぐ知らせろ。」
『了解です。…敵の目的は何でありましょうか』
既に仮設のプレハブや研究棟などは半分以上が吹き飛ばされて煙を上げている。連合の旗の上がった
大隊長室もコーヒーメーカーを設置したまま無くなり、ただの窪みになっていた。もう地上には目標になるもの
など無い
「この状況ならば俺たちの殲滅、だろうな。」
もしそうならば、相打ちで自殺したいとも見える戦力ではあるが、そんな訳のわからない命令はソフィが隊長
だって出さないし、少なくとも俺ならば従わない。目的がわからないがそれをシフレに伝える必要も今は無い。
「だがMSこそ無いが戦力的にはウチの方が上だ。未来の参謀候補だそうだな?むしろチャンスだと思って
キッチリ仕切って見せろ!それと1号指揮車に何人か回せ、少佐はともかくエリザは助けてやれ。
俺はディンの方に回る。EX、いったん終わる!」
『1号指揮車の件、了解しました。お任せを。以上C-3シフレ中尉』
557 :
259:2007/03/09(金) 00:25:11 ID:???
第七回 少女の涙(前)
機材や車両がくすぶる中、移動する105EX。
「ソフィ、今度はなんの冗談だ。たちの悪いのは止めろと言ったじゃ無いか、カードの負けはどうすりゃ良い…」
ヘルメットのバイザーをあける。頬に流れているのは汗だけでは、無い。
「少佐も少佐だ、何で指揮車でバクゥとやりあう。馬鹿かっ!?あんたはっ!……畜生ぉおおおっ!」
フランクが何を思おうと、いま現状では105EXは止まることは許されない。
ソフィを探す事も、イシカワのもとへ駆けつける事も出来ない。
パネルをこぶしで叩きつけながらディンとアジャイルのいる地域へ105EXを全速力で向かわせるしかなかった…
高台に立つ少女は、そのふっくらとした頬に涙をつたわせながら赤い炎と黒い煙の上がる台地を見つめていた。
その炎の中に消える命までをも透視するかのように。
流れる涙をハンカチで拭って、炎と煙をいとおしいものを見る眼差しでただ一人、見つめていた…
=続く=
予告
最終回 少女の涙(後)
フランクは疲労の中単機戦い続ける。シャミィを守る、その約束を果たすために。
だがフリードリッヒの暗い情熱に追い詰められ、ついに切り札105EXも力尽きる。フェイズシフトダウン…
558 :
259:2007/03/09(金) 00:36:15 ID:???
意外と良い出来になって浮かれてたようです。
番号入れ忘れと数箇所表現のおかしいところは許してください
ではまた
・新人でなくても投下先のない作品投下おk
・投下中の割込み禁止
次スレのテンプレに入れたら良いと思う。
どうしてこんな事になったのでしょうか?
一人救命ポッドの中にいる。先ほど起きた事を思い出す。
ユニウスセブンの追悼式典の準備のため現地へと視察へ向かうと、連合の艦隊と接触しそ
のまま戦闘を行いました。
私はここで死ぬと思いました。だけど乗組員の人が私だけを救命ポッドのせようとします。
「あなた方はどうするんですか?」
「ここに残ります」
と私の質問に笑顔で乗組員は答えます。
「なら私も」
「それはなりません」
「どうしてですか」
「あなたはプラントの歌姫なのですから」
「わかりました」
私は乗組員の指示に従い、救命ポッドに乗り込んだ。
「絶対助かりますから」
乗組員が私を勇気付けるために笑顔で言う。
扉が閉まると救命ポッド全体が揺れ始める。どうやら宇宙へと飛び出したようだ。
人がいない救命ポッドは薄暗く、とても怖い。
「アスラン」
と私はいる筈もいない婚約者の名を呼ぶ。
私はハロを抱きかかえると、額を押し付ける。
「プラントの歌姫」
この言葉を聞く度に私は体を締め付けられるような錯覚を覚える。
好きでこんな事をしている訳ではない。いや最初は私も好きだったのかもしれない。
父に言われ、私も興味があった。私の歌がプラントの人々に聞いてもらえるのだから。
だけど、戦争が始まり全てが変わった。戦争で私の世界が変わった。
アスランはザフトに入り、私はプラントそしてザフトの為に歌う。
私の今の生活は苦痛でしかない。だけど元の生活には戻れない。私が選んだ道なのだから。
561 :
552:2007/03/09(金) 12:38:16 ID:???
259さん
割り込みご免なさい・・・
携帯から書き込みして、今仕事場のPCで分かった・・・
本当に御免なさい・・・・
吊ってくる
562 :
259:2007/03/09(金) 16:48:55 ID:???
>>561 ちょっ!待った待った!そんなことで吊ってはイケマセ・・・・
タイムスタンプお昼じゃないですか!もう間に合わない・・・?
では、改めまして、ご冥福をお祈りいたします・・・w
少なくともワタクシは気にしてませんので、気に病まないで良いyp!
563 :
259:2007/03/10(土) 13:32:56 ID:???
ワタクシの個人的都合で最終回のみ時間を変更してお届けします
では、まもなく参ります
564 :
259:2007/03/10(土) 13:34:32 ID:???
森の娘が見た光
最終回 少女の涙(後)(1/4)
少女は、高台に立って右手にはハンカチを握り締め、たった一本何故か生き残った木に手をつけ戦場を見つめ続ける。
火の手が上がるにしたがって、なくなっていく大切なものたちが、せめて彼女の記憶から消えうせてしまわないように。
ディンとアジャイルは意外に簡単に数を減らした。EXが現れたことで地上部隊への注意が疎かになったからだ。
【無敵のストライク】の見た目。こけおどしは結構効いたようだ。結果、フランクはスコアを伸ばすことなくディンが爆散
したのを見て、アジャイル2機を残してバクゥへと向かう
「シフレ、バクゥの現在位置!それと何でも良い、ストライカーパックはまだあるか?エネルギーがキツイ!」
キツイのはエネルギーだけではない。既に戦闘開始から3時間以上。単機で走り回って1時間にもなる。
「ソフィに下手糞呼ばわりされるのは我慢ならんからな……わかったセコハンで構わん、打ち出せ!」
部隊の唯一の希望となったEXは、もはや自らの意思では止まることは出来ない。
「ストライク、だと…?」
確かにあのラウ・ル・クルーゼの経歴に修復不可能な傷をつけ、たった一機で『足付き』を守りきった機体ではある。
だが、そのストライクにしてもパイロットはコーディネーター、聞く所によれば、のちのフリーダムのパイロットだったそう
ではないか。それに今となっては旧式の機体、ナチュラルが形だけ真似をしてどうなるものか。
黒い服の男は無線に答える。
「臆するなロクサン、ストライクを潰せ。それで全て終わりだ。後は私とお前の2機で地上のゴミを踏み潰す」
『了解』
「司令、我等はまだ動かなくて良いのでありますか?」
「殲滅戦の一番嫌な部分を我等が受け持つ。心の準備をしておけ」
生き残ったその時は、私がパトリックザラの果たせなかった思想を引き継いでも良かろう。
その時はデュランダルもクラインの娘も私に跪かせてやる!もはや毀れる笑みを隠すことが出来ない。
565 :
259:2007/03/10(土) 13:36:28 ID:???
最終回 少女の涙(後)(2/4)
『ヒャッホー!最後のアジャイル、撃墜!』
『まだMSが2機残ってるぞ!最後まで気を抜くな!各隊!EXとの位置関係を再確認せよ!』
『本当に増援は来て無いだろうな!索敵範囲はC-3中心に最大まで拡大。ロボットカメラはあるだけ飛ばせ!』
『C-3シフレです、大尉、データの確認を願います』
敵は機動兵器のみ。もう1ヶ月以上の付き合いになるザフトの動きが今日はおかしい。地上への展開も無い。
ただ、戦力的に負けている此方にとっては理由はともかくそれはありがたい。
「その位置で良いんだな。2−2分隊?モルト曹長か!良いトコ見せてくれよ、オヤジ!」
『年季が違うぜっ大尉殿よぉ!全車照準!フランクに当てやがったら只じゃおかねぇからな!』
既にシフレが地上部隊の再編を終えている。意外に優秀だ。そしてバクゥを歩兵部隊と機動車両部隊の十字砲火の
位置におびき出した。撃墜の必要は無い。足を止めればそれで良い。
「ならば動きを止めるまでだ!」EXは背中のソードストライカーから巨大な対艦刀を握るとバクゥに正面切って突撃する。
バクゥもサーベルを伸ばすと頭を下げて速度を上げる。と、EXは対艦刀を投げつける。軽くかわして突進しようとすると
既に目の前にはEXがいる。サーベルをかわすとビームブーメラン、マイダスメッサーを投げずにそのまま横に払う。
後ろ足一本を切り取ると一気に離脱していくEX。バクゥはバランスを崩す事は無かったが、後を追おうと方向転換に
ほんの少し手間取った。その隙を逃さず、小さな狩人達の十字砲火は巨大な獣の腹を食い破り、足を引きちぎった。
ひしゃげて行くレールガン。この瞬間、パワーバランスは完全に1025に傾いた。
顔に当てていたハンカチを外して握り締める。ハンカチから土に落ちた涙は吸い込まれて土を黒く染めて行く。
やや埃っぽくなったピンクの服をパタパタとはたく。イシカワのデスクから持ち出したペーパーナイフが入った右側が
少し重く感じる。ブーツの紐をギュッと締めなおすシャミィの顔にはもう涙は無い。
そもそもなくならなければ自分が見つめる必要は無い。思い出にしなければいけないのは、死ぬからだ。人の死を嫌
と言うほど見つめ続けた彼女の、彼女なりの結論。ならば守る!大事なものがなくならないように。思い出の中でなくとも、
普通に会える様に。フランクが嫌がりながら腰に拳銃をつけている理由もきっとそれだ。ソフィはつけて居ないがフランク
のケガを治して死なないようにした。イシカワも若いのに長老の仕事をしている。自分にも出来ることはあるはずだ。
左のポケットから緑色の欠片と長方形の布を取り出すと木の根元にそっと置いて大きな石で重しをかける。
木の根元に何事か話しかける。ふと立ち上がり、振り返るとハンカチを左手に握り締め、彼女は崖に向かって走り始める。
ひょいと飛び降りると、それが普通のことであるかのようにカモシカのように崖を飛びはね、走りながら降り
566 :
259:2007/03/10(土) 13:38:41 ID:???
最終回 少女の涙(後)(3/4)
『最後です』と言われたエールストライカーを背負っているのでもう換装は出来ない。ラゴゥはやはり温存していたようだ。
凄まじいまでの機動に目がついていかない。だが今此処で抜かれては意味が無い。少なくともシャミィだけは守らなければ。
彼女の村で誓ったではないか。だからラゴゥを此処から逃がす訳にはいかない!こちらにはもうMSは無いのだ!
もう何時間こうしているのだろう、などと思った瞬間、集中が切れたのを見透かすかのように直撃が来る。エネルギー
残量は3分を切った。もう一発喰らえばその時点でフェイズシフトダウンだ。シフレが何かを言っているようだが聞いている
余裕など無い。エールの推進剤もとうに底をついた。「くそっ目が追いつかん…しまった!」ライフルごと肩から右腕を
持っていかれる。直撃を避けるので目いっぱいだ!サーベルをギリギリで交わす。シールドの下半分を切り飛ばされる。
苦し紛れにイーゲルシュテルンを撃つがかすりもしない。ラゴゥは再度反転、サーベルが襲う。腰にかする。
やり過ごしたと思った瞬間、ミサイルが来る。避け切れない!衝撃。そして。
ピー。電子音が響く。フェイズシフトダウン。のみならず機体も一気にパワーが落ちる。せめてアーマーシュナイダーを
取り出そうとするが、動きはまるでスローモーション。次々ゼロやオフの表示を出し始めるモニター。くそ!いきなり全体が
落ちるなんて、どんな電源系だ!『ちょっと手をかけてあげれば意外と良い子になると思うんだけどなぁ』『確かに操作系
だけでも手を入れたいな。ニコイチダガーよりは面白そうだが、今は時間がな』ソフィとマルコが話していたのを思い出す。
そうする間にも一気にラゴゥは真正面から間合を詰める。
次の一撃は、かわせない。此処までか…
とりあえず火気管制だけは復旧した。右手が肩から動かないにしては上出来。ただ額の血が止まらない。
流れる血のせいで目がかすむ。まぁ大きな問題は無い。落ちた向きも良かった。ターゲットは勝手に火気管制が
追いかけるし、味方に『よつあし』のMSなど居ない。私はただトリガーを引くだけだ。【命中】と表示が出たようだが
よく見えないのはきっと血のせいだけではないだろう。
ついに電源が死ぬ。暗いコクピット。突然キャノピーが吹き飛ぶ。降りろ。というのね?でも無理。
多分左足も骨折してるから、動けない。ごめんね、落としちゃって。でもけっこう上手く動かせたでしょ?
『撃墜1、しかも指揮官機!どんなもんよ。あんたより、上手い、んだ、か、ら… 』
暗いコクピットの中、女性パイロットは血にぬれた顔に笑顔を浮かべ、ゆっくりと焦点の合わない瞳を閉じる。
片膝をついて灰色になったEXの真正面、横腹から火を噴出してサーベルを展開したまま停止するラゴゥ。
少しずつ各所に小さな爆発が起こるにつれてサーベルも短くなって行く。
EXからはパイロットがよろめきながら降りていた。
やっとの思いでEXの足に寄りかかるとヘルメットを投げ捨て、そのままうずくまって動かなくなる。
567 :
259:2007/03/10(土) 13:41:08 ID:???
最終回 少女の涙(後)(4/4)
痩せぎすのザフトの黒い軍服が拳銃を右手にMSから降りる。ストライクから降りたパイロットが居たはずだ。
操縦士が降りようとコクピットから顔を出した瞬間、ラゴゥは全体が炎に包まれる。居た。銃を構える。
やつを殺せば私がパトリック・ザラだ。優秀だった男はもはや暗い情熱に支配され、まともな思考など微塵も無い。
「アンタが指揮官か。もうよせよ、無駄に死ぬ事も殺す事も意味が無い。終わりだろ?」
「お前が死ねばとりあえずの終わりだ、ナチュラル」
動けない。全身が鉛のようだ。右腕一本さえ上がらない。ヤツの声色は、多分本当に撃つ。
「おいおい、なんて最期だよ。ココまで俺が生きてきた事に、意味は無かったって訳だ。それでもシャミィだけは守れたか。
…ソフィ、すまなかったな、いろいろ」
上目使いのまま頭を上げる事もせずに男が呟く。哲学の続きはあの世でやってもらおう。男の頭に銃を構える。
ついに私が。と、自分が銃を取り落としたのに気付く。右手の甲から銀色の凝った装飾の着いたナイフが生えている。
少女がどこからかいきなり現れ男の前に立って両腕を広げる。着ているのは連合の制服だろうか。軍属か?まぁ良い。
標的が一つ、増えただけだ。
「イケナイ!ボクっオッコッテまス!」
意味が良くわからないが含まれる怒気だけは、はっきりとフリードリッヒにも伝わる。男ははっとして頭を上げる。
「お前!何で山から下りてきた!」
「ダメ!ボクもガンバルて生きるとイミ、フランクとそふぃちゃんとみんなと!これカラ!」
右手からは一気に感覚が無くなり唯一冷たい感触が上がってくる。だが私は両利きだ。訓練こそして居ないがこの距離
ならば外すまい。左手で銃を拾うと先ずは少女に照準する。
「仲良くあの世で語り合うが良い」
「俺に構うなっ!逃げろ!」
銃声。一瞬の後、胸から血を噴出しながら後ろに崩れ落ちたのはフリードリッヒ。
「俺は重症なんだぞ?手間をかけさせるなよ、全く。大丈夫か?二人とも」
そこには頭と左腕を包帯で巻いたイシカワと、ライフルを構えたエリザが立っていた。
後ろには【秘書専用車】と誰かが赤い字で落書きしたジープ。
『敵MS全機撃破確認!現時を持って戦闘態勢を解除し厳重警戒態勢に移行する。憲兵隊は3号指揮車前に集合!』
仰向けのまま笑いを唇に貼り付けて絶命しているフリードリッヒ。イシカワは、その手が握っていた拳銃を取り上げると、
黒い軍帽を拾い上げ、その顔にのせる。自分のペーパーナイフに気付くと手の甲から抜いて、遠くに放り投げた。
シャミィはそのまま座り込むと、今度は何も見る事も無く、ただ声をあげて泣いた。
ハンカチは左手に握り締めたまま、使う事も無く。
568 :
259:2007/03/10(土) 13:42:40 ID:???
森の娘が見た光 エピローグ〜生きてゆくこと〜(1/2)
あれから1週間。シャミィの村の跡に1025のマークの付いた小型の高機動装甲車と数名の人影。
シャミィ以外は全員包帯やギブスでまともに制服を着ているものは居ない。みんな上にかけているだけだ。左手に包帯は
巻いているものの、体の動きに規制の無いエリザが代表して花束を切り株の前にそっと置く。プラチナブロンドを包帯
から無造作にはみ出させて、左手に杖、右手は三角巾で吊られたソフィは涙を拭くことが出来ない。地面にパタパタと
涙のしずくを落とす。イシカワも状況は似たようなものだ。唯一自由な右手の二本の指で目の間を摘む。サングラスで
眼帯を隠したフランクは、黒のスカートに白のブラウスを着てリボンを結んだシャミィが、一抱えほどある石を持ってくるのを
見ていた。彼女は、広場だという場所の真ん中にその石を置くと石の前に穴を掘って、なにかを埋めるとそのまま土を
かける。エリザが何事か話しかけ二人で草で編んだ環を石の上にのせている。不意にシャミィがハンカチを顔に当てる。
洗濯してアイロン掛けしてあるが、あの日フランクの渡した何の変哲も無い、だが彼女の悲しみを受け止め続けたハンカチ。
フランクの発案で此処にきている。書類が通れば来月から『シャミー=ポ−レス・イシカワ』の名前を名乗ることになった
少女の生まれ故郷に、とりあえずのお別れをさせてやりたい。と、らしくないことを言ったのが始まりである。
世界が戦争に向かう中、1025特機大隊は、連合特令第75号特別環境調査隊と名前を変えて此処に残っている。
任期は正式に3年と通告があった。また自然保護特別自治区内とその周辺は戦闘行為は全からく禁止。但し飛行制限
は解除。この条項に連合政府、プラント双方で3日前に合意した。当面彼らには戦争は関係がなくなったのである。
結局ザフトから非公式にではあるが謝罪と反乱者を倒したことへの感謝が直接イシカワの元にあったようだ。
司令部からは何の功績かは知らないが中佐に昇進の内定も来た。だからなんだと言うのだ。とイシカワは怒ったものだ。
『謝ろうが偉くなろうが死んだものは帰りやしねぇよ。そうだろ、フランク?』
倒木に座り頭の上を編隊を組んで飛ぶ輸送機を見上げる。ハナから仲良くしとけば制空権なんか関係ないじゃないか…
「これからまた戦争が…?」
「多分、な。俺はエラく無いから細かいことは知らんし、知りたくない。ところでお前らはコレが終わったら、やっぱり…?」
「俺は軍は向かんよ。あんたが隊長でなきゃ合わないし、MSでドンパチももう沢山だ。生きるだけなら何とか成るさ。
年金も人よりはもらえるだろうしな。ソフィは俺も驚いたよ。軍を抜けて機械がいじれなくなったら、自分が困るんじゃないか?」
「…気付いて無いならそれでも良いさ。時間もあるしな。せいぜい変人同士仲良くしとけ」
本気で困惑した顔のフランクを見て、傍らでイシカワの杖を持っていたエリザベートが顔をゆがめる。
「中学生みたいなもんか?なぁエリザ」
こらえていたエリザベートは吹き出してしまった。
「何の、話だよ…」
569 :
259:2007/03/10(土) 13:44:42 ID:???
森の娘が見た光 エピローグ〜生きてゆくこと〜(2/2)
「そふぃちゃん?帰りは、ボクがジープでお仕事、オケー?」
微妙に言葉が上手くなっている。丸い顔の下、黒いリボンがゆれる。結局、生きる以上は環境に合わせるしかなくて、
シャミィは今の環境は、少なくとも自分で選んだものでは。何故か涙が溢れそうになる。さっき自分でふけなくてフランクに
拭いてもらったではないか。あんな恥ずかしいのはもう沢山だ。夕べ、水瓶の話なんか聞くんじゃなかった!
それにコイツは当面『ライバル』であることに変わりは無い。相変わらず時間がある限りフランクにくっついている。
しかしこちらはオトナだ。やり方は他にある。指輪でも買わせて、お礼をなんて言いながらなし崩しにオトナの既成事実を。
と彼女らしく非常に大雑把な『作戦』を考えてはいた。が、現状包帯とギプスで固められた指には、指輪なぞ当然はまるわけ
も無く、服を脱いでも包帯だらけでは『オトナの既成事実』もちょっと無理がある。第一、脱ぐだけでもかなり大変だし、
脱いだところで痛々しいだけでセクシーには到底見えない。別に介護されたいわけではない。
夜に並んで星を眺める、とか、二人で語り合ってみるとか、この二人の場合はそんな事で良いのだが、そこに全く思考が
及ばないのは、やはりソフィだから。であろうし、そもそもそんな事にはまるで気が付かないのがフランクである。
大体何で私がこんなガキにヤキモチを。そう思うと涙は引いたが、代わりに腹が立ってきたので少し怒った声で言う。
「却下。アレはジープじゃないし、今日はエリザがいるでしょ?今だって無理に繋いであるのにあんたの運転じゃ体が
ばらばらになっちゃうわよ。可愛い服着た時くらい、おとなしくしてなさい!」
「ぶぅー。えりざべとちゃんは、手がイタイのですのでかわいそ、です。ボクは仕事でウリタイですぅ」
「すねてもダメ!今日は仕事は休みの日って言ったでしょ?つーか売るんじゃない!犯罪よ!運転したい、でしょ!」
去り際に、サングラスを外すと村だった場所を振り返る。
気象観測班は雨季の初めなのだと言っていたな。静かに降り出した雨が小さな墓標と草の環、花束を静かに濡らす。
シャミィとソフィがまた何か言い合っている、相変わらず仲が良い。エリザの笑い声も聞こえる。
あの娘は当面みんなで面倒を見る。彼女が自分で生きる力を身に付けられる、その時まで。
だから、だんなも親御さんも長老さんも安心して眠ってくれ。
シャミィを命の危機から守った穴は、静かに瓶のように水をたたえてゆっくりと波紋を広げる。
そう、彼女はこの森が自らの身を呈してまで生かした、『森の娘』だ……彼女の生きる意味ならきっとある。
そして彼女の名前や生活が変わろうが、此処が彼女の故郷なのはいつまでも変わらない。
帰ったらコック長に旨いパンでも焼いてもらおう。
自分のことを措いてまでみんなのために泣き、笑ってくれたシャミィのために
そして、これから改めて生きる事の意味を探し始めるシャミー=ポーレスが、いつか自らのために笑えるように。
空の墓標の欠片が引き剥がした原生林の後には、いつの間にか雑草が生い茂っていた。
=終=
570 :
259:2007/03/10(土) 13:47:37 ID:???
まずは最後まで貼れました。みなさまthxでございます
そしてワタクシの分まで上げていただいてまとめサイトの中の人も非常に乙でございます
一月前に書き上げた時は16話構成でゲーム風に言えば全滅エンド
3話まで投下した時点でバッドエンドA、B(シャミィのみフランクのみ生き残る)みたいな感じでした。
でも何故かソフィを殺せなくなってしまい、グランドフィナーレに変更。そうなると中盤からすべて書き直し・・・
更に自分の決めた字数制限に引っかかり、キャラの性格が歪み・・・
エピローグにいたっては10時間以上かかりました。当初は三行しかなかったのに
ポケ戦や08みたいなふいんきが出れば良かったんですがまだまだですねぇ
その辺が目標だったんでソフィはホントは赤服だったとかそういう話は内緒にします
過去の妄想プロットだけはまだありますので、もしも次が出来たらまた貼りに来ますね
ではまた
GJ!乙カレー様!
読み応えのある中篇でした。
本編キャラ主体もいいけどこういう全編オリジナルもいいなぁと。
話としては完結していてあれこれ付け足しても蛇足だけど、
この際敵方の裏事情とかももちっと詳しく聞きたいなと。
……もしかして次のネタ?
> ポケ戦や08みたいなふいんきが出れば良かったんですがまだまだですねぇ
充分狙いは満たしてると思いますよ。
>>森の娘の見た光
GJ 感動しました。 だらだらとせずに良く纏まっていた中編だったと思います。
堪能させてもらいました。
始めから最後まで、きっちり締めたシャミイは本当にいい子。
そしてPSダウンを起こしたら動かなくなる105EXは本当にイラナイ子。でも
良くやってくれました。
もう一度GJ、お疲れ様でした。
「「少女の涙(後)(2/4)」が途中で切れちゃって、かなりの抜けがあるようなんですが……
容量がそろそろなんで次スレ立ててみます
576 :
259:2007/03/10(土) 22:35:40 ID:???
>>573 すみません、コピペ失敗しましたorz
以下全文掲載します
て行く。
…変に期待持たせてすいません、コレで全部です
さん…
>>577 ゴバク乙
そして新スレの
>>3もお前だな?
取り合えずポエムでも貼り付けて落とそうぜ
そして職人さんはおくせず新スレへどうぞ
579 :
259:2007/03/11(日) 23:44:52 ID:???
>>571-572ホントにthxです
まとめサイトで初めてエディター以外でまとめて読んでみました
なんて読みづらい文体、なんて美しくない改行・・・orz
>>571 >この際敵方の裏事情とかももちっと詳しく聞きたいなと。
フリードリッヒ司令は単純に悪者として設定しましたので深く見えますが
実はあんまり…だったりします
>……もしかして次のネタ?
この一言で今書いてるネタをちょっと変更しました
つうことでプロローグから書き直してます・・・
あと本編キャラもクロスも才能的にダメなワタクシですので
むしろこういった形の物しか多分書けません
>>572 書いててあんまり自己主張しなかったんですよね、シャミィは
「一話に付き一回MSを必ず出す縛り」
を自分で設定したからかも知れません。彼女はMS、関係ないですしね
ただネタに詰まった時は彼女を入れると勝手に話が動き出すみたいな
こういった部分、SS書くおもしろさ。なんでしょうね
つーか259出過ぎ。ウザいよ
おまえがネタを貼れば良いだけの話
さぁ、落ちるまで貼り続けるんだ
暇つぶしにあちこち覗いてたらACクロスの人の作品を発見した。
丸ごとそのままで載せてあると、どういうリアクション取っていいか分からなくて困る。
>>582 君はリアクション芸人には向いて無いようだね。
「ラクス殿とミーア殿は双子でござるか?」の巻
「胸の大きさがずいぶん違うようでござるな」の巻
「何か割れた音が聞こえたでござる」の巻
「誰かに狙われている気がするでござる」の巻
「キラ殿久しぶりでござる」の巻
「からくり人形でお出かけでござるか?」の巻
「あの、ちょ…待っ…」の巻
「さらばケンイチ氏」の巻
「拙者、生きているでござるか?」の巻
「我輩が助けたナリよ」の巻
「かたじけないコロ助殿」の巻
「二人でプラントに乗り込むナリ」の巻
「忍者をナメた事を貧乳に後悔させてやるでござる」の巻
「シャトルで行くナリ。シャトルに乗れるナリ〜」の巻
「楽しそうでござるな…」の巻
「そ、そんな事ないナリよ」の巻
「シャトル!シャトル!ナリよ〜」の巻
「嬉しそうでござるな…」の巻
「ラ、ラクスをやっつけるのが楽しみなだけナリよ。本当ナリよ」の巻
「そろそろ離陸時間でござる」の巻
「あそこに浮かんでいる赤い船は何でござるか?」の巻
「エターナル…ナリね…」の巻
「大砲のような物がこちらを向いているでござる」の巻
「急用が出来たナリ。降りるナリ」の巻
「拙者は一人でも行くでござる」の巻
「光りが向かって来るでござる」の巻
「さらばケンイチ氏」の巻
「コロッケ買って帰るナリ」の巻
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