もしシンじゃなくてマユが主人公だったら13

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1通常の名無しさんの3倍
このスレは、機動戦士ガンダムSEED DESTINYの主人公がシンではなく妹のマユだったらという
二次創作SS小説そして妄想スレです。
必読事項↓
・マユ・アスカが主役で、運命キャラがメインです。
・概要抜粋型(短い)と小説型(長い)どちらでも可
・シリアス及びギャグ何でも可
・煽り荒らしは、スルーしましょう(重要)
・作者叩きは、禁止
・「○○イイ!○○○イラネ」などの特定職人マンセーはあまりよくないです。
意見がある人は各職人様にアンカーをつけてレスしてみましょう。
その際
「○○○の部分が、○○○のようにおかしい」
「○○○のような書き方は気をつけた方がいいと思う」
等、言いたいところをできるだけ「丁寧に」書いてレスして下さい。
誠意ある質問には必ず誠意ある返答がある筈です。
質問は見やすいようにコテハンをつけておいてもよいかもしれません。
より良い作品・スレ作りにご協力下さい。
「面白い」って意見も、ただ「乙」とか一言で済ませるんじゃなくて、「○がよかった」「○に感動した」とか書き込むと、
物書きにとっては何よりの応援になります。
その作品にのめり込んでるなら、その作品でキャラが起こした行動自体に対して、叫ぶのもいいと思います。

・職人常時募集中

避難所兼雑談所のアドレスは、過去ログ(パート2)にありますのでご自分で探索してください。

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もしシンじゃなくてマユが主人公だったら12
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新キャラメインでDESTINY学園開校5
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まとめサイト兼過去ログ置き場
http://members.ld.infoseek.co.jp/rurukubo/mayukako.htm

絵板
http://bbs4.oebit.jp/mayuseed/bbsnote.cgi
2通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 00:28:40 ID:???
まあ、マユを主人公にすると―― (パート1 710より)

1.子供だけど赤服。努力と才能と、周りのサポートで頑張る努力型の主人公という前作との差別化。
2.1.と付随して周りのキャラが主人公を面倒見ているので戦艦内の人間関係の描写が濃密になる。
3.種持ちとはいえ、決して天才ではないので時には失敗する。その挫折を乗り越えるクライシスと成長ドラマが主軸になる。
4.才能はあるとはいえ、子供。故に戦争というものを多角的に見えない。戦争の現実を直視することにより、視聴者にも問い掛けることができる。
5.戦争で家族を失った遺族側の視点で前作への問題提起。それにより改めて遺伝子操作やそれに伴う差別問題を浮き彫りにできる。
6.5.に並んで国家と国民の有り方、理想と現実。そして、享受できる平穏と犠牲となる存在、為政者の義務、前線で戦う兵士の悲哀などを生々しく描写できる。
7.死んだと思っていた兄との対面、思想の違いによる対立を生む戦争の悲劇。そして、マユという妹から一人の人間としての成長を描ける。
――こんな感じで激動の時代に巻き込まれた一人の人間とそれを取り巻く環境の変動を主軸にしたドラマが描けて面白いんだよね。
シンよりさらに人間的に未熟な分、周りの人間の意見を聞く――色々な視点・意見を知る――ことにより、
現実はそう単純なものではないってことが演出できるわけで。
3通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 01:08:25 ID:???
PP書いてる者です。すみません、わざわざスレを建てて貰っちゃったみたいで……
ご期待に添えていないので恐縮ですが、マユ出ません。ゴメンナサイorz
ディオキア編以降はマユラッシュの予定ですので、暫しお待ちを……
では18話目、行きます。
41/18:2006/02/26(日) 01:09:37 ID:???
ゲンとキラがノフチー共和国での任務を終えた日の翌日……
ユーラシア連邦の西側、黒海沿岸に位置するユーラシア連邦軍のノヴォロシースク基地――
先にこの地に着いていたアウル、スティング、ステラの3人は、基地でMSの整備をしながら二人を待っていた。
時刻は午前10時を過ぎたところ……アウル・ニーダはいち早く期待の整備を終える。

「……よおっし! 整備終了っと」

アウルは愛機アビスの整備を終え、コクピットで声を上げる。
モニターでのチェックのみだが、アビスの機体の何処にも異常は見られなかった。
最もインド洋でのミネルバとの戦闘以降、碌に戦闘らしい戦闘もしていなかったから異常がある筈もないが――
アビスのコクピットから降り、スティングやステラの様子を見に行った。アビスの横にガイアもカオスもある……
程なくしてステラがガイアから降りてきた。彼女の顔を見たアウルが駆け寄る。

「……お、ステラ! 上がり?」
「うん。ガイアは……異常なし」
「そっか。スティングはまだカオスのコクピットの中?」
「……まだ、出てきてない。いつもは……一番早いのに……」
「言われてみりゃ、いつもアイツが一番早いよな。今日はどうしたっていうんだろ?」

いつもは手際よく機体の整備を終え、先に出てくる筈のスティングが今日は遅い……
ステラの指摘を受けたアウルも、言われてから気づきそのことに訝しく思った。
とはいえ、機体の整備にそれほど長い時間が掛かるとは思えず、二人ともそのままスティングを待つことにした。
しかし―――10分経っても、20分経っても彼はカオスから降りてこない。

「……何やってるんだ、アイツ?」
「変……いつもは、こんなに時間かからない」
「だよな。よぉし、ちょっと見てくるわ」

言うや、アウルは整備中のカオスに駆け寄る。メカニック数名が機体の側に張り付いていた。
メカニックが張り付いているということは、まだ中にスティングがいるということに他ならない。アウルは彼らに問う。

「ねえ! スティングのヤツ、まだ機体の整備してんの?」
「オークレー少尉なら、もう機体の整備はとっくに終わっていますよ」
「……え? じゃあ、なんで出てこないのさ?」
「少尉は、今シミュレーションの真っ最中です。ストライクMk-Uの戦闘データから抽出した戦闘記録……
 アレを元にして、仮想の敵に仕立てて模擬戦……ってところですかね。彼是20分はやっていますよ」
52/18:2006/02/26(日) 01:10:37 ID:???
メカニックの言葉どおり、スティング・オークレーはシミュレーションの最中であった。
コクピットに映し出されるのは仮想の海、仮想の空、そして……彼の眼前にあるのは黒いストライク――
ゲン・アクサニスの戦闘データを元にして組み上げられた仮想の模擬戦を、スティングはこなしていた。
最初のうちは、目の前に現れるMk-Uの姿は、仮想とはいえスティングを大いに緊張させはしたのだが……

「……チッ! やめだやめだ、こんなのやってられるか!」

突如、乱暴に言い放ち機体のシミュレーションを止め、コクピットのハッチを空ける。
バシュッ――と、乾いた空気音が響き、外の陽の光りがコクピットに入る……そして、人影も――
カオスから降りようとしたスティングの目の前に、僚友のアウルがいた。タイミングの良さにアウルが目を丸くする。

「……あれ? 終わり?」
「ああ……クソッ! 終わりだ、終わり!」
「……機嫌悪いなぁ。ひょっとして、シミュレーションで、仮想のゲンに負けちゃったとか?」
「……気になるなら、コクピットのモニターのスコアを……見てみろよ。先に上がるぜ、俺は」

スティングの機嫌の悪さに、アウルは顔を顰めるが……スティングの機嫌の悪い原因が気になりはした。
一体どれほど打ち負かされたのか――そう思って、アウルはカオスのコクピットに座り、モニターを眺める。
だが、目の前に表示される数字は、アウルの予想とは真逆のものであった。

「ええと、撃墜率は……いくつかな? ……ん? 73%……!? 凄ぇじゃん!」

モニターに映し出されたのは、破壊されたMk-Uの姿と、カオスが彼の機体を撃墜率――73%という数字だ。
予想とは全く逆の結果、圧倒的なスティングの勝利にアウルは驚き、慌ててスティングの所に向かう。
機体から降りたスティングは、メカニックにシミュレーションの終了を告げ、ステラの元へ向かっていた。
そのスティングに、後からアウルが声を掛ける。

「おーい! 何で不機嫌なのさ? スティングの大勝じゃない!」
「……だからだよ」
「はぁ? 意味わからないよ。なんで勝って機嫌悪いのさ?」
「……最初のうちは、相手がゲンだと思って気も引き締まったし、Mk-Uのスピードにも手を焼いた。
 けどな、時間が経つにつれて段々慣れてくるんだよ、相手のスピードにはな。だから、7割も勝てたんだよ。
 本物とはまるで違う……まがい物の動きだ。ゲンはこっちの予想もつかないようなことをやってくるが……
 所詮シミュレーションはシミュレーション、心理戦とか駆け引きの相手にはならない。パターン化されているのさ」

大勝にも関わらず、スティングの機嫌が悪かったのはシミュレーションそのものへの苛立ちに他ならなかった。
63/18:2006/02/26(日) 01:11:43 ID:???
スティングを待ちくたびれたステラは座り込んでいたが、スティングに促され3人ともラウンジに移動する。
彼らは、他の兵より一足早く仕事を終えてしまっていたため、お茶会になった……と言うわけだ。
ラウンジに備えつけの販売機から各自飲み物を買い、椅子に腰掛ける。3人とも飲み物を口にし……
全員一息ついたところで、先ほどのスティングの機嫌の悪さをアウルが気にかける。

「なあ、コンピュータ相手で不満なら、俺が相手しようか? 模擬戦の許可さえ出れば出来るだろ?」
「……申し出は有りがたいんだけどよ、そいつはあまり意味がない」
「なんでさ?」
「お前の機体は水中戦用に特化しているし、ステラのガイアは陸戦に特化している。
 そして、俺のカオスは、本来は宇宙戦用……大気圏内でも使えるが、主に空中戦に向いている。
 俺たち3人の間で模擬戦をやるってのは、誰かが決定的に有利になり、不利にもなる。だから、無意味なんだ」
「……なるほどね、納得。じゃあさ、ゲンが帰ってきたら頼めば?」

3人の間での模擬戦は意味が薄い――スティングの指摘は完結明快なものであった。
そんな彼に、アウルはゲンと模擬戦をやってみてはどうかと提案してみせるが……スティングは笑って首を振る。

「そいつも……ダメだ」
「ええ!? なんでさ? カリフォルニアベースでもやってたじゃない?」
「まぁな。でも……ゲンより先にやっておきたい相手がいるのさ」
「ゲンより先にって、他には……あッ! お前、まさか……」
「その、まさか……さ」

ゲンより先に模擬戦を行ないたい相手――彼ら3人と、ゲンを除けば残るはただ一人……
先の大戦でストライクを駆り、連合最強とまで謳われるまでの戦果を残した男、キラ・ヤマトしかいない。
つまり、スティングが挑戦をしたい相手というのは、ゲンではなく……

「アウル、俺はオーブ軍と合流した日にキラに挑戦するつもりだ」
「……マジで?」
「大マジだ。伝説のストライクのパイロット……けど、その正体はこれまでヴェールに包まれていた。
 俺もあの温厚そうな人がストライクのパイロットだなんて、夢にも思わなかったが……こいつはチャンスだ。
 勝ち負けなんて問題じゃない。所詮は模擬戦、実戦で勝てば良いだけの話だ。だがな……」
「だが……何だよ?」
「俺は強くなりたい。そのためには、自分より強いヤツの持っている技術を全て吸収したいんだ。
 いずれはキラだけじゃなく、モーガン・シュバリエやレナ・イメリアみたいな名のあるエースともやってみたい。
 最終的に彼ら全員の技術を吸収できれば……俺はもっともっと強くなれる、そんな気がするんだ」
74/18:2006/02/26(日) 01:12:47 ID:???
スティングは目を輝かせて将来の展望をアウルに語って聞かせる。
そんなアウルは、何やらスティングの魂胆が見えてきた気がして、ため息をついた。

「お前さ、キラのこと、キラ"先輩"って呼んでたよね? あれはひょっとして……」
「軍人として、また連合のパイロットとして尊敬はしているぜ。けどな……やっぱり挑みたいんだよ。
 ほら、いきなりやってきて"模擬戦して下さい"じゃ洒落にならねえだろ? 事前の準備ってのは重要なんだよ」
「……似合わない言葉吐いてると思ったら、それかよ」
「勘違いさせちまったか? 悪いな。まぁ、最大の敬意を払いつつ、全力でぶつからせてもらうつもりだ」

スティングの力強い言葉に、アウルはやれやれと想いつつ首を振る。付き合いきれない――と。
ステラは、そんな二人の様子をボーっと眺めているが……そこに、他のユーラシア連邦軍の兵士達がやってくる。
彼らも休憩なのだろうが、彼らが話している会話の内容は芳しいものではなかった。

「おいおい、聞いたかよ。スペインが独立しちまったらしいぜ? プラントと手を組むらしい」
「ったく、何考えてるんだよ。ナチュラルの裏切り者どもは……相手は宇宙の化け物だぞ」
「気の毒なのは連合在籍でスペイン出身の奴らさ。スペインの新政権がどんな方針を打ち出すにしろ……
 連合内にいたら白い目で見られ、国に帰ったところで元連合兵だから白眼視される。板ばさみ状態だぜ、実際」
「辛気臭い話はやめよう。俺たちはコーディネーターを殺しまくって、宇宙に追い返せば良いだけの話さ」
「そうそう、化け物相手だ。降伏したって、情なんてかけねぇ……殺して殺して殺しまくるだけさ」

スペインの独立――ジブラルタル直近の国は、事実上の独立を果たしていた。
ヨーロッパ方面の小国では独立の気運が高まっているというが……その言葉に3人は顔を顰める。
ブルーコスモス思想の広がりか、はたまた連合内での気運なのかは分からないが、殺伐とした言葉が飛び交う。
ただ、アウルが最後の言葉に反応し、ユーラシア兵に食って掛かる。

「降伏した相手を殺したら、そりゃ国際法違反だろ?」
「ああ? 誰だお前?」
「大西洋連邦から来た者さ。あんた達の言っていること、本当にやっちまうのは……やばいぜ?」
「余所者が……国を分割されて、母国がプラントについちまった連中の気持ちが分かるのかよ? ああ!?」

アウルが窘めたのは、ユーラシアの男たちにとっては癇に障ったらしい。
確かにアウルの言葉は正論ではあったが、ユーラシア兵の言ったとおり、彼の国の者は人事ではなかった。
独立を叫ぶ国々が独立し、プラントについた場合……その国出身の連合兵の心境は如何ばかりであろうか。
彼らには戻る場所がなくなってしまうのだ。が、険悪になりかけたアウルとユーラシア兵のやり取りは寸断される。
スティングが手でアウルを制しユーラシア兵達に謝る。また声を荒げたユーラシア兵の仲間も、その男を宥める。
大西洋連邦もユーラシア連邦も同じ連合軍であり、このようなことで争う意味など何処にもないからだ。
85/18:2006/02/26(日) 01:13:49 ID:???
スティングは、ステラとアウルを促しラウンジを出た。ラウンジを出たところでアウルがスティングに食って掛かる。

「……なあ、俺は間違ったこといったかよ?」
「間違ってはいないが……あいつ等の気持ちも察してやれ。俺たちは確かにここじゃ余所者だ。
 それに、スペインだかの国の連中のことも、迂闊に口を挟める身分でもない」
「けどよ……」
「俺達は研究所で言われた筈だ。いつも博士たちから言われた言葉、覚えているか?」

スティングに問われ、アウルはハッとする。かつてエクステンデッドの研究施設で言われた言葉を思い出し……
彼らが慕っていた研究所の博士と呼ばれる人物から言われ、他の研究員もそれに倣い常々言われた言葉――

「……確か、俺たちがエクステンデッドになったのは、ただ殺しの技術を身につけるだけじゃない……だっけ」
「戦争でナチュラルがコーディネーターに勝利することで、ナチュラルが劣った存在ではないことを証明する。
 そして、俺たちがナチュラルもコーディネーターと同じ能力を得られることを実証し、戦争を終わらせる」

アウルが最初に言い、次にスティングがそれを補足する。彼らを育てた人物はそのようなことを言っていたらしい。
だが、彼らは最後にその博士という人物から言われた言葉を、言い忘れていた。最後にステラがそれを話す。

「私達は……兵器じゃない。ナチュラルもコーディネーターも人間……命令は絶対、規則も絶対……法も」
「よく覚えていたな、ステラ。アウル、お前の言ったことは正論だし、研究所で言われた言葉を覚えていた証拠だ。
 けど、連合兵同士で諍いなんてやっていたら、それこそ俺たちはザフトのコーディネーター共に負けちまう。
 気持ちは分かるが、あいつ等だって馬鹿じゃない。そんなこと実際にやるわけがないだろう。気にするなよ」

スティングは改めてアウルを窘め、彼が間違っていないことを強調してみせもした。
もっとも、既にアウルはほかの事を考えていた。かつて自分達がいた研究所のことを……
研究所での訓練は辛く、ときに怪我をすることもあったが、それでも研究所の者は彼らに優しかった。
かつての思い出に浸っている中――アウルは彼らの身を案じる。

「みんな、元気かな? 博士や他の研究者の皆も……」
「多分、元気だろう。お前の……大事な人もな。便りがないのは、良い知らせって言うだろ?」
「それなら……リー艦長とか、ガーティ・ルーの皆も……元気?」

最後にステラが言った言葉で、アウルとスティングは現実に引き戻される。嘗ての僚友達の安否――
研究所から便りがないのは、特に問題もないからであろうが……嘗てのファントムペインの母艦ガーティ・ルー。
彼の艦は最新鋭の宇宙戦艦であり、戦地に赴く艦――しかし、彼の艦からの連絡はこれまで一切なかったのだ。
96/18:2006/02/26(日) 01:14:53 ID:???
ステラが突然話を振った件のガーティ・ルーは何処か……
彼の艦はファントムペインの母艦でありながら、ネオ以下MS小隊とは別行動――月軌道艦隊に配備された。
本来ならば、月軌道周辺でラグランジュポイント周辺から展開するザフト軍を相手に戦っている筈である。
だが……月軌道とは全く見当違いのポイントに、ガーティ・ルーはいた。L4宙域の辺りに……

「……ん? 誰か呼んだか?」

ガーティ・ルーのブリッジ、キャプテンシートに腰掛ける艦長イアン・リー少佐は、誰かに呼ばれたような気がした。
しかし、ブリッジ内では誰もリーを呼んだ者などおらず、ブリッジのクルーは互いに顔を見合わせ、首をかしげる。
周囲の様子に、リーは自分の勘違いであると悟りクルーに謝った。

「すまん、気のせいだ。作戦行動中に悪かったな。誰かに呼ばれたような気がしたのだが……」

リーは気を取り直し、襟を正し咳払いを一つした。周囲のクルーも、艦長の言葉を忘れ仕事に取り掛かる。
航海を続けるガーティ・ルー。彼の艦が月軌道を離れていたのには理由があった。持ち場を離れる理由が――
時計をちらりと見たリーは、メガネを掛けた短髪細面の青年オペレーターに指示を出す。

「予定では目的地まであと30分程だが、このままの速度で予定通り到達できるか?」
「目標が情報どおりの場所にあれば到達できる筈です。あとはザフト軍と鉢合わせしなければ……」
「連中は本国の防衛で手一杯の筈だ。こんな場所を重点的に護る理由はないだろう」
「しかし、アーモリーのコロニー群も近くにあります。アーモリーのコロニーは軍用ですから、楽観は……」
「楽観しているわけではないが、本作戦の成否は作戦要員を送り届けることにある。艦隊戦にはなるまい。
 ……少し早いが、工作隊及びMS隊に発進準備をさせろ。10分後に第一戦闘配備だ」

作戦要員を送り届ける……工作隊……――リーの言葉によれば、今回は戦闘がメインの作戦ではないらしい。
ガーティ・ルーがミラージュコロイドを備えた隠密偵察可能な強襲艦であることを考えれば、適任ではあった。
だが、リーはこの作戦にあまり乗り気ではなかった。新型機強奪のような華々しい任務と比べれば……

「……全く、つまらん任務だな」

リーは小声で本音を呟く。本心ではこんな任務は真っ平であった。軍命だから逆らうわけにもいかないが……
可能なら地球でネオ達と共にミネルバ追撃の任務に当たりたかったのだ。が、軍からその命令は降りなかった。

「艦長! 目標地点周辺に巨大な構造物を確認! どうやら件のコロニーのようです」

オペレーターの声にリーは思考を中断し任務に戻る。目的地であるコロニー……そして、作戦は始まった。
107/18:2006/02/26(日) 01:16:00 ID:???
それから数時間後のL5コロニー群国家プラント――
首都アプリリウス・ワンの最高評議会では、ギルバート・デュランダル主導で定例の会議が催されていた。
先の大戦後プラントの指導者となり、今度の戦争が始まってからも卓越した指揮能力を発揮するデュランダル……
彼は、その手腕をこの日も遺憾なく発揮していた。

「――では、プラント国内の内政についてはここまでとします。次に地球における今後の戦略について……
 目下ザフト軍はユーラシア連邦西側、ヨーロッパの国々の独立を望む国々に兵を送っております。
 先日も、ガルナハン一帯はミネルバ、及びラドル隊の共同作戦により我が国の支配下におかれました。
 まずは、今後の彼の土地の処遇につき……シュライバー国防委員長から、説明を――」

国内の内政については特に問題もなく会議は進められた。
戦争による国民の不安感は拭えないものの、表面化したのは一部市民が早期和平を望むデモを行なった程度。
デモそのものも混乱はなく、市民生活に不安を与えるような性質のものではなかった。戦中とは思えない平和――
プラントではそれが保たれていたのだ。やがて話はユーラシアでの軍事行動に及ぶ。国防委員長が口を開く。

「……ガルナハンの処遇について、簡潔にご説明します。
 ご存知の方もおられるでしょうが、あの土地は、本来は汎ムスリム会議が有していたものです。
 しかし、先の大戦でムスリム会議が一時主権をユーラシア連邦に譲った際、ガルナハンの支配権は移りました。
 この土地が元からユーラシアのものであれば、今後も我々が支配することに差し支えはないのですが……」
「本来はムスリム会議のものだから問題だ。あの国は中立を宣言しましたからな」
「そのとおりです。敵の拠点が本来は中立国の持ちモノであったという事実が、問題なのです。
 後ほどムスリム会議の領土内にあるマハムール基地の処遇についても検討することになりますが……
 つい先日、ムスリム会議から撤退要求がなされております。ガルナハンの処遇と相まって、ご検討願います」

予め各評議員に議題となる資料は渡されていた。意を察した評議員の一人が話しの問題点を指摘する。
その言葉にシュライバーも頷くが……軍を動かす以上、この話は評議会のみで決することはできなかった。
故に、デュランダルも会議を円滑に進めるべく、軍のトップのシュライバーを進行役に押したのだ。
彼の説明に、各員は各々が準備した意見を披露し始める。

「大体、虫が良すぎます。親プラント国でありながら連合の同盟条約に加盟、中立宣言などとは……」
「やむを得ますまい。あの国もまたユニウスセブンの被災国です。隕石となった破片があの国を穿ったとか」
「とはいえ、容易に撤退などはできないでしょう。これは戦争です。先方の都合もあるが、我々にも都合はある」

ガルナハンの処遇も問題ではあったが、それ以前にムスリム会議との関係をどうするか――会議は紛糾する。
言い争っていたわけではないが、ムスリム会議を慮る意見もあれば真っ向から否定する意見もある。
10分ほど経ち意見が出尽くした後、各員はそれとなくデュランダルの方を見る。
118/18:2006/02/26(日) 01:17:11 ID:???
このように意見が纏まらない場合には、最高評議会議長の発言は重みを増す。
議長といえども独断専行が許されるわけではないが、最高決定機関の評議会で意見が割れれば話は別だ。
一応あくまで一人の評議員としての意見である、と前置きした上でデュランダルは話し始めた。

「確かにムスリム会議の方針の変更は一方的ではあります。しかし、これを真っ向から否定することも出来ない。
 被災国である以上、我々と親密な関係を維持し続ければ、彼の国も戦争に巻き込まれかねません。
 北にはユーラシア連邦、西には赤道連合が控えていますから。彼の国の立場も察する必要はあります」

ムスリム会議を挟む形で、ユーラシアと赤道連合という地球連合加盟国が存在している――
その事実を指摘した上で、デュランダルは本題に入った。

「撤退要求ですが、今日明日にも出て行けという話ではなかった筈です。マハムールを始めとする基地から……
 3ヶ月を目処に基地を立ち退いてほしい、というのが先方の意向でした。故に……従いましょう」
「議長、宜しいのですか?」
「どの道、マハムール基地の戦力もスエズ攻略戦に加えておいて損はないでしょう。
 スエズを落とせば……インド洋近くで粘る必要もない。スエズ運河周辺を重点的に固める必要も出てきます。
 情勢の変化にもよりますが、プラントからの回答としては"撤退要求は飲む"ということで、構わないと思います」
「情勢の変化……とは?」
「戦況が我々に有利になるにせよ不利になるにせよ、軍事行動とは想定の範囲内に収まるものではありません。
 仮に、撤退が現実的に難しくなった場合には、外交で撤退期限の延期を願い出ることもありえましょう。
 先方の唐突な要求を飲むのです。彼らとしても我々と事を構えたくはない筈。交渉に差し支えはないでしょう」

建前と本音は別――そう言わんばかりのデュランダルの言葉に、各員は一瞬瞠目するが……
冷静に考えれば、撤退要求を断って新たな敵を作る必要もない。議長の意見に理があると誰もが思えた。
各員の納得気味の雰囲気に、デュランダルは余勢を駆ってもう一つの懸案事項にも触れる。

「ガルナハンの話も同様に扱うのが良いかと思います。彼の土地では希少金属の採取も可能だという。
 ラドル隊を彼の地に移し、希少金属の確保の任を与えようと思います。どうだろう、シュライバー?」
「……議長がそうおっしゃるなら。元々、ジブラルタルとカーペンタリアを繋ぐ補給隊としてラドル隊はいた訳です。
 最低限基地の守備に必要な戦力があれば、補給に差し支えはありません。希少金属は我々としても欲しい。
 特にあの土地で採取されるモノは宇宙には少ない。確保もまた、大切な任務であることに変わりはありません」

デュランダルは話をシュライバーに振る。もっとも、この二人の会話は予め仕組まれたものであった。
公にはしていないが、デュランダルは国防委員長と常に緊密な連絡を取り合っており、この日もそうであった。
予め会議の前から、行政のトップと国防のトップは議題の打ち合わせ等は済ませ、戦局の分析も済ませていた。
あとは評議会の承認を取り付けるだけ――独断専行ではないものの、評議会の主導権は常に議長が握っていた。
129/18:2006/02/26(日) 01:18:12 ID:???
「しかし議長、ムスリム会議から求められた3ヶ月以内に撤退という期限はガルナハンも例外ではないはずです。
 ラドル隊が採掘を始めても、期限が来れば返還しなければならない。無駄骨に終わらないか、不安が残ります」

デュランダルとシュライバーの会話に隠れていた問題点を、評議員の一人が指摘する。
優秀なコーディネーター国家プラントでも12名しかいない評議員たち――プラントの頭脳ともいえる彼らである。
予め退去期限を定められていたことが、ガルナハンでの作業に影響を及ぼさないか――?
その疑問は当然出てくるであろうものであった。デュランダルは一瞬の間をおき、答える。

「……少々狡猾なものの考え方かもしれませんが、あの土地は……実は主権不在の土地です。
 先の大戦でユーラシア連邦とムスリム会議の間で結ばれた借地約定、アレが失効しない限りは……ね。
 イスラム教国の小国の連合体であることに変わりはなく、ムスリム会議は国として纏まっているとは言いがたい。
 国としての統一見解を出してくるのは、次の会議でも難しいでしょう。何せ、あの国は……」

少し口元に笑みを浮かべ――しかし、ハッキリとした口調でデュランダルは言う。自らを指差しながら……

「私たちプラントと、ユーラシア連邦を始めとした連合各国との間で板ばさみになっているのです。
 元々は親プラント国……ガルナハンの地を解放した我々を地元住民も好意的に迎え入れてくれています。
 我々に強く返還を求めるとも思えないし、今更連合の支配に戻すというわけにもいかないでしょう。」
「居座ってしまえば良いと?」
「ガルナハンにユーラシア連邦が基地を作ったのは、ユーラシア方面への防衛と鉱物資源の採掘……
 我々としては、これらは戦略上軽んじることは出来ません。返還を求められれば、主権の話を持ち出せば良い。
 あの土地の問題について、ユーラシア連邦との間で話し合いがついたのですか……とね。
 ユーラシア連邦があの土地を欲する限り、彼の国と戦争状態の我々としては利敵行為など許容出来ません」
「……少しばかり、気の毒な話ですね」

流石に狡猾とも思えるデュランダルの物言いに、質問した議員はムスリム会議を慮る。
元はといえば親プラント国であり、戦争が始まるまではそれなりに友好な関係を築いてもいたのだ。
嘗ての友に、些か冷たい仕打ちではないか――暗に議員はそう言ったのだ。
しかし、デュランダルはその言葉に鋭く反応する。

「確かに、気の毒ではあります。だが、ガルナハンを手に入れるのに我々も犠牲を払っている。
 レセップス級一隻が大破し、犠牲者も出ている。我々の国の若者たちが命を散らせた事実はどうなります?
 我々としても善意で戦争をしているわけではない。撤退要求を飲むのですから、それなりの見返りも頂きましょう」

硬軟織り交ぜた外交方針を執るべし――デュランダルはその方針を明確に打ち出した。
元より撤退要求を飲むという方針を議長が宣言したのだ。見返りを欲することも可笑しい話ではなかった。
1310/18:2006/02/26(日) 01:19:23 ID:???
デュランダルの発言に最高評議会からの再反論はなく、ザフト軍の汎ムスリム会議内での行動が決まった。
マハムール基地の兵は最低限の要員を残しユーラシア戦線に送り、ラドル隊はガルナハン基地に移ることとなる。

やがて、次の議題に移ろうとしたとき――会議室の扉を叩く者がいた。入ってきたのは一人の女性……
豊かな金髪に理知的な双眸の彼女は、遺伝子調整で美男美女の多いコーディネーターの中でも際立っていた。
間違いなくプラントの中でも美女と呼べる部類の人間であった。年のころは三十路にも及ばない。
まだ若年――だが、一方でそんな彼女は評議会員の服を着ている。評議会の椅子は全て埋まっているのに……

突如、彼女を認めた議員全員が席を立ち、礼をする。議員達の後ろに控えている官僚たちも、軍人達も……
彼らだけではなく、最後には最高評議会議長ギルバート・デュランダル自身も彼女に礼をしていた。
同僚同士の挨拶の礼ではなく、明らかに目上の者に対する礼を――更にデュランダルは感謝の言葉を述べる。

「来て下さいましたか、アイリーン・カナーバ前最高評議会議長」
「ギルバート・デュランダル……現最高評議会議長、そのような堅い物言いは結構です。
 今の私は一プラント市民。もうこの場所に来ることもないだろうと、ずっと思っていましたのに……」

デュランダルの礼をやんわりとした口調で拒絶した上で、会議室の全員に向かって返礼をする。

「皆さん、お久しぶりです。最高評議会議長、ギルバート・デュランダル議長の招待に預かりこの場に参りました」

先の大戦後、混乱するプラントを収めユニウス条約を締結した前最高評議会議長アイリーン・カナーバ――
彼女は、自分がデュランダルの招待で来た事を告げると各員は顔を見合わせる。
彼らは事前にそんな話は聞いていなかったからだ。疑問顔の議員たちにデュらダルが説明する。

「今日彼女をお呼び立てしたのは、私の一存です。お知らせするのが遅れたことはお詫びします。
 目下、ユーラシア連邦西側、ヨーロッパ方面で高まっている独立運動の気運。これにどう対処するか。
 外交のエキスパートとして先の大戦から活躍していた前議長に、アドバイザーとして出席を願った次第です」

先の大戦でパトリック・ザラ最高評議会議長が暗殺された後、彼女がプラントの指揮を執った。
半ば強奪の形ではあったが……殲滅戦に入ろうとしていたザラ派をクーデター同然に拘束し、指揮権を奪う。
穏健派と呼ばれたクライン派に属していたカナーバは、長らく外交の舞台で活躍し辣腕で鳴らしていたが――
ある意味では権謀術数に長けていたのかもしれない。彼女の活躍でクライン派は政治の実権を取戻した。

何れにせよ、殲滅戦を止め和平への道を作ったのは彼女――ユニウス条約締結後、一線を退いた身ではあった。
が、今なおプラント市民、またこの場にいる政治家諸氏からも敬愛される人物ではあったのだ。そんな彼女は……
今日は外交上の問題を解決する上でのアドバイザーとしての扱いではあったが、全員が改めて最敬礼をした。
1411/18:2006/02/26(日) 01:20:28 ID:???
「次の議題はユーラシア西側の独立を求める国々との関係についてです。
 皆さんもご承知のようにプラントは、元は大西洋連邦を始めとした連合の宗主国の植民コロニーでありました。
 自由と独立を欲して先の大戦で我々は独立を勝ち得た訳ですが、そのような背景があるからでしょうか……
 ユーラシア西側の小国の首脳たちから少なからず、非公式ではありますがコンタクトがありました」

デュランダルは、ユーラシア連邦から独立を望む小国からのコンタクトが多くあることを説明した。
そのような小国は独立を望んではいるが、独立をしてしまえばユーラシア連邦という巨大国家の後盾は無くなる。
暗に独立への支援と共に、独立後の包括的な支援をも求める国々が続出していることを、デュランダルは伝える。

「しかし、独立を求める勢力といっても様々であります。彼らもまた一枚岩とは言えず、各国ごとに状況も異なる。
 どのような国々のどのような勢力に対し支援を行なうか、これが問題であります。詳しい話を……」

そう言ってデュランダルはカナーバを見る。国防の話はシュライバーとの連携で主導権を握ることが出来た。
だが、外交の話というとシュライバーはおろか、現職の評議員の中でもそれに長けた者がいるわけではない。
得てしてこのような議題は官僚の資料を評議員が検討し、意見を出し合うことで解決策を出すのが常套手段――
しかし、戦時ということであっては生半可な知識では対応しきれない。何より、実務に長けたものの意見も必要だ。
デュランダルがアイリーン・カナーバを呼んだ理由はここにあった。彼女とは同じクライン派としての縁もある。
議長はシュライバー同様、予めカナーバとも通じていた。その意図は推して知るべし……である。

「カナーバ、聞けば君の在職中からユーラシア西側の独立運動家たちはコンタクトを求めてきたらしいね」
「ええ、その通りよ。ユニウス条約が締結される少し前だったかしら……
 多くはヨーロッパの比較的経済力のある国、それらの国々の政治家から話が来たことはあったわ」
「今と二年前とでは状況が異なる部分もあるだろうが……どうだろう?
 良ければ君のほうから我々プラントが行なうべき独立支援の方策があれば、示してもらえないだろうか?」
「例えば……どのような国から、支援を求められているのかしら?」
「まずはスペイン、この国は我々が手を貸すまでもなく独立を果たしてしまった。
 ジブラルタル基地直近の国でもあり、先の大戦でザフトがスペイン領を占領していたこともあったのだろう。
 我々に対しても好意的な国ではあったが、彼らは同時に我が国に経済的支援を求めてきている」
「まだ独立を果たしていない国で、独立への支援を求めている国は?」
「スペインと近いフランス、ドイツ……イタリアもあったか。ほかにも旧EU圏の国々が独立を求めている。
 ただ、それらの国々には様々な勢力がいて、どのような勢力と交渉を持てば良い物か、判断に困るのだ。
 出来れば、どのような勢力と手を結ぶべきか、我々に教えてくれるとありがたい」
「……しかし、私が話してしまっては官僚たちの立つ瀬がないわ」

前最高評議会議長の発言である。一線を退いたとはいえ、その発言に重みが有ることに変わりはない。
それが現職の外務官僚たちの顔を潰さないか――カナーバは心配するが、彼らはただ頭を下げるだけだった。
1512/18:2006/02/26(日) 01:21:32 ID:???
如何に官僚として優秀であろうとも、カナーバほど数多くの外国要人と接してきた者はいない。
穏健派のクライン派は戦中から早期和平を求め、数多くの国と折衝し、和平への糸口を探ってきた。
その矢面に立っていたのがアイリーン・カナーバである。今は、彼女を越える人材に乏しいのが現状であった。
もっとも、デュランダルの台本にはこのような光景はなかった。あくまでカナーバなりの気遣いだが――

「では、簡単にではあるけどご説明します。あくまで私の在職中の話になりますが……
 ユーラシア西側の旧EU圏の国々で独立を求めている国、この多くは経済的自由を求めています。
 ユーラシア連邦の政治体制は福祉政策重視の体制、所謂"大きな政府"を維持する中道左派系の潮流です。
 これに対し先の独立を求める国々の勢力は、逆に経済最優先かつ福祉軽視の政策を求める傾向が強い。
 これらの勢力は、中道左派のユーラシア連邦政府とは真逆に、右翼的な思想を持った者が多いのが特徴です」

独立を望む者達――
彼らはただ無秩序に独立を叫んでいたわけではない。ユーラシア連邦政府の福祉政策に対する反感があった。
ユーラシア連邦西側の旧EU圏の国々は、経済的にユーラシア連邦の東側と比べて豊かな資本を持っていた。
しかし、福祉政策では富の再配分があり、自国の生産活動がそのまま利益になることは極めて少ない。
結果的に、貧しい他国を助けるためにその利益は使われ、自由な経済活動すらままならない――
ユーラシア西側の独立を求める国々には、常にそのような思いが付きまとった。
そのような思いと直結するのが右翼的な思想である。連邦を脱し独自の道を歩むべし――
得てして独立運動に身を投じる者たちは右翼、あるいは極右の勢力に身を投じ、独立の気運を高めていった。

「独立を支援するのであれば、そのような右翼勢力を支援するのが近道といえます。しかし、問題もあります。
 ドイツとイタリア……第二次大戦中この2カ国はファシズムに傾倒したが故に国を滅ぼしかけた経緯があります。
 この二つの国では、極右勢力を国民が排除する傾向が強い。迂闊に極右勢力を支援すると……」
「逆に、その国の人々からは、独立しプラントと協調路線を歩むことに対する疑問も出てくる……か」
「議長の仰るとおり、この2カ国については慎重に支援する相手を見極めなければなりません」
「ドイツとイタリアについては分かったが、例えばフランスはどうかね?」
「フランスは、ドイツやイタリアのような傾向はありません。むしろその逆です。
 古くからド・ゴール大統領以来のゴーリスムの潮流があり、彼の国の国民は右翼や極右に過敏ではありません。
 また、ゴーリスム思想はフランスを中心とした旧EU圏の政治的、経済的な対大西洋連邦の核となる思想です」
「……彼らは、我々の味方になる要素はあると?」
「フランスの政治家の中には、私の在職中からコンタクトを求める声もありました。
 仮定の話ですが、独立後の支援を確約すればユーラシア連邦の一翼は殺ぐことができるでしょう」

途中でデュランダルから話を振られるが、これは予め二人の間で準備されていた会話――
最後のカナーバの言葉どおり、ユーラシアの独立派を支援することは、ユーラシア連邦の力を殺ぐことになる。
半ば内政干渉ではあるが、最早戦争状態にあるプラントとユーラシア連邦の間に差支えがあるはずもなかった。
1613/18:2006/02/26(日) 01:22:32 ID:???
フランスやドイツ、イタリアといった経済的に豊かな国々がユーラシア連邦から独立すれば――
早晩、経済的にユーラシア連邦の戦争継続能力は殺がれ、早期に和平への道筋はつくだろう。
あるいは、ユーラシア連邦の分断そのものが、戦争でのプラントが勝利することにも繋がる。
評議会は、フランスを始めとしたユーラシア西側の独立を求める国々を支援する方向で固まりつつあった。

そんな最中――突如、軍服を着た若い兵士が議場に飛び込んで来る。
何事かと議員たちから視線を浴びる若者は、わき目も振らず軍のトップ、国防委員長の元へ向かう。
彼は何事かをシュライバーに耳打ちし、その報告を聞いたシュライバーは……席を立ち、各員に報告を伝える。

「議長、ならびに評議員の皆さん、たったいま忌忌しき知らせが参りました。
 L4宙域に建造中であったプラントの農業コロニーが、敵の攻撃を受け……壊滅したとの事です」
「壊滅だと? それほどの大軍で攻めてきたのか?」
「いえ、コロニー内部に侵入した敵工作兵が動力部を破壊したのが、壊滅の直接の原因です」
「……やってくれるな。しかし、なぜユニウス市ではなく、辺境のコロニーなどを狙ったのだ?」
「意図は不明ですが、壊滅したのは事実のようです。これでは、我がプラントの食料計画に差し支えます」

プラントは独立前、連合各国の指示で食料の生産は禁じられていた。
高い技術力を背景としたプラントの資本を、連合が食料の輸出を盾に奪い取ることが目的であったが……
独立後、最初の農業プラント計画はユニウス市を中心として進められ、急ピッチで食糧生産が進められた。
幸いにして数年先の食料は確保してあったが、更に長期化した場合の食料のアテになるものはなかった。
一部は同盟国の大洋州連合から輸入していたが、彼の国も戦争状態であるからそうそう余裕があるはずもない。
開戦の前後から、万が一のためにと作られていたL4のコロニー群を改修し、増産体制を作ろうとしていたのだ。

「やむを得んな。当面はユニウス市の食糧生産と大洋州連合からの輸入に頼るほかあるまい」
「しかし議長、万が一戦争が長期化した場合には、我々は……別の食料のアテを見つけなければなりません」
「そうだな……」

デュランダルは想定外の事態にも慌てることなく、シュライバーの報告を聞き、対応策を述べていた。
しかし、シュライバーの反論どおり他に食料を得られる策がない限り、今回の失態は取り返しようがなかった。
代案を求められたデュランダルは、黙考した後答え始める。

「次の議題でユーラシア西側への派兵問題について話し合う予定でしたが……
 この際、我々としてはユーラシアの穀倉地帯を確保する必要があります。フランスへの派兵を検討したい。
 彼の国は欧州の穀物庫と呼ばれるほど生産力がある。派兵をして損をすることもないでしょう。如何でしょう?」

デュランダルの言葉に反対する理由など評議員にあるはずもなかった。そして戦火はフランスにも拡がる――
1714/18:2006/02/26(日) 01:23:37 ID:???
それから程なくしてプラント最高評議会の会議は終了した。
ギルバート・デュランダルとアイリーン・カナーバの2名はそのまま議長室へと移った。二人だけの会合のため――

「相変わらず、話の主導権を握るのがお上手ね。あの様子だとシュライバーにも話は通してあったのね?」
「全ては円滑に事を進めるためだ。ザラ派とクライン派、今はその垣根も低くなったが方針の違いはある。
 君が来る前に少々揉めていてね。件のムスリム会議とガルナハンの処遇についてだが、如何せん……
 ザラ派は強硬外交を主張し、クライン派は穏健路線……ナチュラルに対する考え方の違いだろうか?
 地球の者を慮ることが出来る者と出来ない者、プラントを護ることでは一致していても、考え方に違いはある」
「……両者の相違点を、双方の顔を立てつつ会議を進めなければならない、か。貴方も大変ね」
「だから、前もってシュライバーと君には話を通して会ったのだ。あまり好ましい方法とは言えないが……
 側近たちに出てくるであろう疑問点、意見の相違点など全て纏めさせた上で、君たちに話を通し会議に臨む。
 派閥の枠を超えて挙国一致体制を作るには、こうでもするしかないのだよ」
「でも、今日は思い通りに事が運んで……まずまず良い会議だったのではなくて?」
「最後の一報がなければ……な。あの知らせはフランスへの出兵を手伝ってくれもしたが……
 彼の国の右派勢力が見事に独立を果たしたとしても、我々に食料を提供してくれる保障は何処にもない」
「そうかしら? 独立で恩を売っておけば……」
「戦況が我々に不利になれば、またユーラシア連邦政府に近い者達が息を吹き返すだろう。そうなれば……」
「一日一日で情勢が変化していく……か。戦争とは政治家にとって、頭の痛い話ね」
「君の苦労が、ここに来てようやく分かったよ。こう見えても胃薬が手放せなくなっていてね……辛いよ」

一見元気そうなデュランダルではあるが、彼はそう言うと胃の辺りをさする仕草をしてみせる。
カナーバにとってもその心境は察するに余りあるものがあったのだろう。瞑目し、同情を寄せる。

「今度、良く効く胃薬を持ってくるわ。先の大戦中私が使っていた製薬会社のものだけど……」
「それは有難い」
「それより、例の件はどうなっているのかしら? 今日はそれを聞くために足を運んだのだけど?」
「ふむ……」

同情を寄せる話をした後に、カナーバは双眸鋭くデュランダルを問いただした。
和やかな会合に突如として影がさしたためか、デュランダルは難しそうな顔をして唸ってみせる。

「……ラクス・クラインは以前行方不明だ。大西洋連邦、ユーラシア連邦、オーブ、東アジア共和国……
 連合の主要国の軍偵たちにそれとなく指示してあるものの、彼女を見たというものはいない。一体何処へ――」

デュランダルとカナーバが会合を持った理由は、ラクス・クラインにあった。
プラントの新旧最高評議会議長は、行方を眩ませたプラントの歌姫は重大な懸案事項であったのだろうか――
1815/18:2006/02/26(日) 01:26:43 ID:???
暫しの沈黙が流れる――
デュランダルは何事か瞑目し考えている風でもあり、カナーバは自らの爪を噛みながら忌々しげに呟く。

「あの娘は……放っておけば何をしでかすか分かったものではないわ。早く始末をつけないと……」
「それは分かってはいるが、送り込んだ暗殺部隊は誰一人として帰ってこなかった」
「けど、彼らは最新鋭のMSに乗って襲撃したのではなくて?」
「……監視者が明け方に、ラクスの住居に赴いて見たものは……そのアッシュの残骸だったという話だ」
「やはり、キラ・ヤマトが……」
「アッシュを屠ったのは、どうも彼ではないらしい。あの日、キラ・ヤマトはラクスの住居には居なかった。
 これも監視者の話だが、彼は早朝に帰宅したらしい。セイラン家の若君と一緒に……車でね」
「セイランがフリーダムを修復し、キラがフリーダムに乗りアッシュを屠ったのでは?」
「その可能性もゼロではないが……キラ・ヤマトはなにやら酷く落ち込んでいたらしい。
 監視者が遠目から彼を見たところ、変わり果てた我が家を見て絶望していたようにも見えたという話だ。
 あの日、オーブ軍が動いた気配すらなかった。ひょっとすると、彼は何もしていなかったのかもしれない」
「では……ラクスは何処に行ったというの?」
「アッシュ6機を屠るだけの力を持ち、キラ・ヤマトでもなくまたオーブ軍でもない者……」

穏健派で知られる二人のトップだが……会話の内容はそのような世評を覆しかねない内容であった。
ラクス・クラインに暗殺者を仕向けたのは、会話の内容からするとおそらくはこの二人――
デュランダルが言葉を切ったことで一瞬の沈黙が生まれるが、カナーバは相手の意を察し答える。

「……まさか、連合が? 連合が彼女を殺したと?」
「殺したのか……あるいは連れ去ったのか……
 あの日以来ラクス・クラインを見たものがザフトの軍偵にもいないのだ。その可能性は否定できないな」
「連れ去る?」
「キラ・ヤマトはあの日から程なくしてオーブ軍に入隊したらしい。
 我々がラクスを殺していれば、彼が入隊した動機は復讐……ということになるが、実際はそうではない。
 モルゲンレーテの技術者としての安定した生活があるのに、それをかなぐり捨ててまで軍に入る理由……
 連合が彼女を連れ去ったとすれば、辻褄は合う。彼女の身の安全を盾に、キラ・ヤマトを戦場に……とかね」
「あの女は連合にとっても敵のはずよ? それを生かしておくなんてことは……」
「敵の敵は味方……という言葉を聴いたことはないかな? 何れにせよ、この件はどう転ぶか分からない」
「そんな……馬鹿げたことが、本気であり得ると思っているの?」
「私は、状況から判断しているだけだよ。彼女の生死は不明だが、連合が関わっている可能性が高い」

デュランダルは状況からラクス・クライン暗殺事件は、連合の手によって阻まれたと判断していた。
そんな彼の話にいまだ納得ができない――そんな風に、カナーバは再び爪を噛み始めた。

1916/18:2006/02/26(日) 01:27:44 ID:???
事ラクスの話に関しては、カナーバは執拗だった。なおも彼女はデュランダルに食い下がる。

「状況から推察するのは結構だけど、そんな確証のない話で今後の方針は決められないわ」
「だが、状況から推察した上で私は暗殺部隊を彼女に差し向けたのだ。
 君が話していた例の話……シーゲル・クラインを殺したのは、ラクス・クラインだという話を……ね」
「………」
「ラクスが父親殺しだという話は、数々の情況証拠と……そして、何より君の証言が決め手だった。
 決して公には出来ない話だが、私はその話を信じた。そして、暗殺部隊を差し向けもした。失敗したがね。
 今回についても同じだ。監視者からの報告とラクスを取り巻く情勢の変化、それらを考慮した上での結論だ」

ラクスがシーゲル・クラインを殺した――プラントに住む一般市民がこの話を聞けばどのように思うだろうか。
デュランダルとカナーバの間で、かつてどのような話し合いがもたれたのか、知る術はないが……
二人は最早疑問をはさむこともなく、ラクスが父親殺しであることを確信している風であった。
更にデュランダルは話し続ける。

「――確証も時機に得られる。アンドリュー・バルトフェルドが宇宙に上がったらしい。
 先日、月の中立都市のエアポートに彼が姿を見せたと、軍偵から報告があった。ひょっとすると……」
「まさか、プラントへ? そんな……プラントはラクスの側にいた彼にとって、半ば敵地なのよ?」
「普通はそんなことはしないだろうが、彼も嘗ては砂漠の虎とまで異名を取った歴戦の勇士だ。
 あるいは、それも承知の上で彼はプラントに戻ろうというのだろう。監視は付けてある。好きにするが良い」
「……分かったわ。バルトフェルドについての処遇は私に一任させてもらえるわね?」
「構わんよ。腕の立つ者を数名、用意させてもらおう」

そう言うと、話は終わったとばかりにカナーバは席を立つ。先ほどまでの爪を噛む仕草はもうしていない。
いつもの、美しい――虫も殺さぬ顔に戻り、丁寧に礼をして議長室を後にする。去り際に一言を残して――

「――あの娘の処分に関しては、私の意に従う……貴方に議長職を譲る際にした約束を忘れないで欲しいわね」
「忘れてはいないよ。今この部屋に私がいるもの、君がクライン派に口添えしてくれたおかげだ」
「……もっとも、貴方以外に適任者が居なかっただけの話ではあるけど。適任者の条件は両派閥に顔が利く事。
 クライン派でありながら、ザラ議長の元で遺伝子研究に努めていた貴方なら、両派閥の対立を解消できる、と。
 貴方しか居なかったのよ。今日評議会を見て、貴方を選んだことが間違いではなかったと分かって安心したわ」
「私は両派閥の意図を汲み取り、政治に反映させているだけだ。全てはプラントの為に――」
「プラントの為に――」

新旧両議長の間でどのようなやり取りがなされ、どのような約束が取り交わされたのか――
最後は普段の両者に戻り、デュランダルは議長としての任に、カナーバはバルトフェルドの元へと向かった。
2017/18:2006/02/26(日) 01:29:28 ID:???
記憶――
それは忘れ難い忌まわしい記憶――
平穏だった筈の日常は、唐突に崩れ落ちる――

 『お父様、これは……一体どういうことです!?』
 『お前には関係のない話だ。プラントとしてはこれ以上戦争を続ける力はない。だから、こうする他ないのだ』
 『そんな……!』
 『正義のための戦争と不正義のための平和……その差は明確ではない。
   "彼ら"の存在はそのためにこそある。戦争が平和を呼ぶように、平和もまた戦争を呼ぶ。それだけの事』
 『では……そんな偽りの平和の為に、お父様は私たちを"作った"のですか?』
 『……! それを誰に聞いた!?』
 『今は亡きお母様からです。私たちが、何のために"作られた"のか、何のために"存在"するのか……
  亡くなられる直前に、お父様がいらっしゃらなかったあの日に、お母様からお聞きしたことです!』
 『お前は……プラントの歌姫として為すべきことを為せば良い! この話は他言無用、良いな?』

父去りし部屋に残された少女は、虚ろな瞳で空を見上げる――
彼女の眼に拡がるのはプラント、アプリリウスの空……人口の空、贋物の青空――

 『平和の歌を謳う――そのために作られたのが私……』

支えを失ったように血の気の引いた顔で――
少女は呟き続ける――

  『……でも、現実にあるのは偽りの平和――この作り物の空と同じ、贋物の平和――』

嘆きの言葉を呟き続ける少女――
しかし、彼女は一人の少年との再会に一筋の光明を見出す――

  『キラ・ヤマト……ストライクを駆り、戦争の中で嘆きながら戦い続けた戦士……貴方ならば――』

眠り続ける傷ついた戦士――
その少年の枕元で、少女の瞳は虚ろなものから、希望に満ちた眼差しへと変化を遂げる――

 『お父様、貴方が私を"作った"ことを恨みはしません。しかし、私は貴方に"作られた"平和を謳うモノ――
  言われたとおり、私は歌い続けます……平和の歌を。しかし、それは偽りの歌ではありません。私は……
  もしも、この少年が望むなら"力"を与えます。そして彼と共に謳います……真の平和のための歌を!』
2118/18:2006/02/26(日) 01:31:52 ID:???
暗い部屋――
その部屋には豪華な調度品が並べられ、少女はベッドの上で意識を取戻す。

「……今のは……夢?」

まだ朦朧とした意識の中、ラクス・クラインは覚醒した。
彼女が眠っている部屋は、ゲン・アクサニスに誘拐されてから長い間を掛けてつれて来られた洋館の一室――
おそらくは、ゲンに命令を下したブルーコスモス盟主と言われる男の邸宅……
つい先日、ようやくにして彼女はここに連れられてきたのだ。

「あれは……あの日の夢……
 私が真の平和の歌を歌おうと心に決めた日……キラとの再会で、私の運命が変わった日……」

目覚めたものの、ラクスは夢の内容を反芻しながら呟き続ける。
一しきり呟いた後、ラクスはベッドを抜け出し、身づくろいを始める――この部屋を出るために。
彼女は会わねばならなかった。彼女をここに連れてきた張本人と……
明け方――まだ日も昇っていないうちに、彼女は部屋を出た。
やがて、部屋を抜け出した彼女を一匹の猫が迎える。黒く、艶やかな毛に包まれた黒い生き物――

「……この家の主人の元へ、私を連れて行ってはくれませんか?」

猫は踵を返し歩き出し、ラクスもそれについて行くかのように歩き出す。
猫に連れられた少女はやがて階上に移動し、ひときわ大きいバルコニーに案内された。
そこで彼女を待っていたのは一人の男――早朝にも関わらず身なりを整えた、中年には遠く及ばない歳の男。
彼が恐らくはこの館の主であろう――そう思ったラクスは、彼に声を掛ける。
彼もラクスの存在に気づき、彼女の方に向き直った。男は若干笑みを浮かべラクスを迎える……

「……この猫は、ケット・シーでしょうか? 貴方の元へ連れて行くようお願いしたら、聞いてくれましたわ」
「ははは……ご冗談を。何の変哲もないただの猫ですよ。学名は……ノルウェージャンフォレストキャットです」
「貴方が……この家の主人?」
「ええ、そして貴方をここにお連れした者です。
 お初にお目にかかります――私は、ブルーコスモス盟主……ロード・ジブリールと申します」

丁度東から朝日が顔を出す――ラクスに向かっていたことで、陽の光りを背中に浴びるジブリール。
ラクスからジブリールを見れば、光りに照らし出された彼女とは対照的に、彼は陽の光りで長い影を作っていた。
立ち尽くすラクスを、ジブリールが作った影が覆う――それは恰も二人の未来を暗示するかのようであった。
22通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 01:49:51 ID:???
某スレに誤爆をしてしまいましたorz
ショックで死にたいですorz

あ、補足を一応……
作中でキラたちを監視していた”監視者”とは、キラやラクスの日常生活を監視するザフトの軍偵です。
本来であれば、暗殺者のヨップさんたちの成功を見届けるためにちょっと見に来た程度の人です。
彼はさぞかしビックリしたでしょう。尺の関係でこの人は割愛しました。

前スレでもご指摘のあった、今回のような理屈っぽい話はもうちょっとだけ続きます。
ディオキア編が終われば、あとはドンパチばかりのいつもの拙作に戻ります故、ご辛抱を……

次回ジブラク&虎カナ、その次ディオキアの予定です。




とりあえず、某スレに謝罪に行ってきますorz
23通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 01:52:46 ID:???
PP戦記作者様、乙&GJです!

てか自分もそっちに居たわけですが。
しかしラクスの解釈、これもまた気になる感じで……。
以前の予告でも激しく期待していた部分なので、次回が楽しみです!
24通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 02:15:31 ID:???
PP戦記 GL!・・・誤爆したスレが気になって仕方ないが。。
スティングのキラへの態度にはやはりウラがあったのですね
ラクスとジブリールの邂逅もきになります。
25通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 02:19:36 ID:???
投下キテター!PP戦記作者様、乙GJ!スティングのお兄さんっぷりがいいなぁ…
カナーバ議員、ラクス、ジブリールの動向が非常に気になるところです。
虎カナを一瞬「カナード!?」と間違った解釈をしてしまったけど俺は気にしない。

あと絵板のストライクMk-2の画像、エールできたんでそちらに差し換えておきました。
暇があったら見てやってください…宣伝ぽくて申し訳ない。
26通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 02:30:14 ID:???
誤字が幾つかあったのが悔やまれますが、全体的には期待を裏切らない面白さでした♪
エクステンデッドの生み出された経緯など、今回も唸らされる話ばかりで……。
27通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 03:05:26 ID:???
PP戦記の人乙!
俺も偶然誤爆先を見てて新作キターって驚いて読みに来た次第で・・・
ごめんなさい、向こうのスレでは爆笑させていただきました
28通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 06:52:21 ID:???
向こうのスレからこちらを探して伺いました。
こんないいスレを見落としていたとは不覚…
まずはまとめサイトをじっくり読ませていただきますw
29通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 06:52:48 ID:???
PP作者様乙!
このくらいの長さはけっこう読みやすいですよ。
最近ゲンが出張りすぎだったので、こういう
インターミッション話も箸休めとして必要だと思います。

強さの求道者と化したスティング、原作の借りを返せるか?
気になる歌姫vs盟主の会見の行方は…?
それはそうと誤爆先が気になって仕方ない

>>25
ポーズカコイイ。GJ!
30通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 10:48:41 ID:???
PPGJ!
ラクスの謎激しく気になりまする。



それはともかく、エクステンデット三人組が元気だとなぜかしんみり。
隻腕の印象強すぎ……orz
31通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 13:07:03 ID:???
PP戦記、首を長くして待っておりました。GJです。

うっわ、ラクスがキラにフリーダムを渡したのって、シーゲルの間接的殺害も狙ってたんですか!
おとろしい女ですなー。PP戦記は陰謀説をとるのですな。

この文章から見るとシーゲルはあのタイミングで何らかの方法で講和するつもりだったのでしょうな。
まあカナーバやデュランダルにとって見ればラクスは早期の戦争終結を妨げたテロリストそのもの。
とっとと始末しようとするのはある意味当然でしょう。
『平和は次の戦争の準備期間に過ぎない』、みもふたもない話ですが事実ですからな。
32通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 13:41:50 ID:???
PP戦記乙です!いや〜政治の裏側と申しましょうか権謀術数渦巻く議会の感じが出ていて
GJ!何か、議長がますます「赤い人」と同化してる感じが^^;
本編で殆ど出番が無かったカナーバ前議長にスポットを当てるのは見事といいますか
「PHASE−00」といった感じで奥行きが出ますね。こちらのカナーバさんって
私の中で声が「井上喜久子」さんになってますwテラカッコイイ・・・

そーいえばオクレ兄さんの初期の設定って「努力すればナチュラルでもコーディネーター
に対抗できる」だったはずなので、今回のPP戦記で漸く本来の持ち味が出た感じ
がしますね。返す返すも糞負債のせいで・・・同人版の印象の薄い最期に・・・

隻腕版とは違ったラクス像には興味津々です!では、これからも頑張ってください。
m−−m
『さぁ、愚かな愚民の諸君、ショータイムだ!いますぐ城に来たまえ!!』
携帯、さらには園内放送で男の高笑いが流れる。
「なっ・・、まさか・・・・レオンが?!」
スティングが焦った声を出す、ここはシーなのでランドまで行くのは相当時間がかかる。
「シンハロ!」
『解かった!』
マユはシンハロに飛び乗り、シンハロはマユを抱えたまま一気に走り出す。
「え・・・おい待て!!」
レイの制止も意味はなく、そのまま人外のスピードでランドの方まで走っていく。
「僕もいくね!」
そう言うとキースは障害物となる建物に乗り、そのまま直線にシンデレ○城まで向かう。

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」」

取り残される普通の人間組。

「・・・・えーっと、カルマ。バイクかなんか出せるか?」
「僕ドラえも○じゃないから無理だよ。ゼロあたりがいればどうにか・・・。」
シンの疑問に返すカルマ。ゼロがいたら何がどうやってどうにかなるのだろうか?
「とりあえず無駄口叩かずに走るわよ!!」
「ゲン!いそぐ!」
カルマはミーアに、ゲンはステラに引っ張られながらその場を後にした。
「・・・・・・・あれ、何?」
「いや、ディスティニーだろ。」
「うん、そうだけどさ。それがどうしてこんな所にあってあのグフと対決してるかって事。」
ようやく追いついた面々は呆然とする。いや、なんかディスティニーが派手な装飾のグフと対決してる。
なにがどうなってあんな事になってるのかよく解からない。
「皆。」
「「「「うわっ」」」
背後から突然話しかれて驚くと後ろにはゼロがいた。
よーくみると奥にはパレード用に持ってきたレジャーシートを引いてくつろいでるハイネ達と機能停止しているシンハロがいる。
レオンもなんかいてスーベニ○カップ付きプリン食べてる。
「ごめん、ゼロ。どこがどうなってこーなってるのか説明してくれるかしら?」
グレイシアの質問にゼロは答え始めた。



まず、マユ達より一足先にきていたハイネたち、ゼロはここでハイネ達と合流したらしい。
すると、なにやら城に設置されたステージに男が立っている。レオンを抱えてだ。
『はははは!さぁ、愚民達!この少年が私の手によって殺されるのを見ているがいい!』
マイクをしているのかあたりのスピーカーから声が聞こえる。ただ、時々レオンの
「はらへったー。」とか
「こいつきもいぞ。なんかみんながおれをみてるーとかいうし。」とかの緊張感のないセリフが混じっていてたが。
で、それを聞いていてどーすっかなー、と全員で考えていたところ物凄い殺気を感じ後ろをむくと、そこには炎を背負った
マユがいたのだ。
「・・・・・・・ふざけるなぁっ!!!たかが一回限りの捨てキャラの癖に目立つだとぉっ!!
 この話において一番目立つのは主役であるこの私!マユなのよ!!!」
ぎしゃーーっっと思わず周りの人物がデフォルメ化して震える程の殺気を放つマユ。
「シンハロ!!ディスティニーを呼びなさい!」
『え・・?いや、確かに本気だせば呼び出せるけどそうすると周りの機械に影響が・・。』
「いいからよべぇっ!いくよ!悲しみの宇宙を破りて!」
ビシっとセリフを決めるマユ。
『不変なる思いを抱き!』
「『我らは運命を砕く者となる!』」
そういった瞬間、上空からキラリーンと飛来するディスティニー。ハイネ達はもうデフォルメになったまま呆然とする。
『しまったぁぁぁぁ!ノリで呼んじゃった!』
「ほーら!もう後には引けない!ほら!とっとと体変えて!!」
うなだれながらマユが鞄からだしたハロの体にうつるシンハロ。ちなみに犯人も呆然としています。
「じゃあ、皆!シンハロの体ヨロシク!」
そう言うなりマユはシンハロをつれてディスティニーに乗り込んだ・・・・そうだ。
そして、マユがディスティニーで現われた瞬間、犯人も隠していたあのグフを出してきたらしい。
その場に放置されたレオンをキースが助け出して、現在に至る。
「こわいなぁ・・、始末書がこわいなぁ・・・。」
ふふふふふ、と虚ろな目で笑うアスラン。
「下手したら赤服から緑かもしれないぜ?」
ははははは、と同じく虚ろな目で笑うハイネ。
「なー、あっちにうってたちょこけーきもいいか?」
「おう、食って来い食って来い。」
プリンを食べ終わったのかジョーにさらにおやつをおねだりするレオン。
「まぁ、とりあえずビーム使わないだけ偉いよなぁ・・・。」
「スティング、無駄なフォローは寄せよ。」
がんばって精神の均衡を保とうとするスティングを叩き落すアウル。
「空中戦やればいいのに・・・・飛べるから。」
「そんなことまったく考えてないに決まってるじゃない。」
冷静な判断をするステラにため息をつくマユ。

そろそろ、夕焼けが沈むころだった。
36通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 17:18:39 ID:???
>>35
なんかマユがドッペルしてねえ?
37通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 19:20:40 ID:???
>>36
おそらくゲンと間違えたのでは?
最後の文のことならば。
あ、すいません。最後のマユはルナマリアに変えてください・・。
39通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 20:22:36 ID:???
てかこの犯人何者〜?w
40通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 22:31:13 ID:???
マユ…不憫な子…
41通常の名無しさんの3倍:2006/02/26(日) 23:58:48 ID:???
ふと思ったんだが、ガンダムZZでサイコガンダムMkUをもとにしたドーベンウルフってMSあったよね。あれみたいにデストロイを小型化した連合の量産機が登場するというのはどうでしょうかSS職人の方。連合は量産機の種類少ないし・・・。
42通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 00:51:32 ID:???
>41
想像したらプロヴィデンスとレジェンドが浮かんできた・・・。
43通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 00:56:49 ID:???
ちょっとした改造や武器の持ち替え、色の塗り替え程度ならともかく……
サイコU→ドーベンほどに変化しちゃったら、悪いけど想像が追いつかない
絵師がイラスト込みで提案するのなら別だけど

ストライクMk−Uも色変えと機能追加くらいに留まってるから使いやすいんで
44通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 01:20:47 ID:???
確かに連合は量産機少ないな…
まぁそれだけダガーが優秀ということか?
つーわけででデストロイダガーとかどう?
45通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 02:14:07 ID:???
そういえば、昔MSVで量産型サイコガンダムってのがあったな。
30メートルぐらいにサイズを抑えられた奴で。
46通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 04:20:46 ID:???
個人的意見だが、
最近、PP戦記読むのが辛くなって来ている。
歴史、政治、権謀術数の説明が多すぎで、
こう、自分ではうまく説明ができない上言葉が悪いが、
ウンチクウザイ、知識ひけらかせすぎと言う気分になってくる。
47通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 04:34:20 ID:???
>>41
連合は量産機の規格を統一してストライカーパックで局地戦対応してるから。
エール
ソード
ランチャー
IWSP
ガンバレル
ライトニング
ジェット
ドッペルホルン連装無反動砲


あとアウトフレーム用とテスタメント用に1種類ずつ、合計11種類。
無いもん作るよりはここらへん捏ね繰り回すほうが面白そうじゃね?
48通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 04:56:54 ID:???
>>46
戦争は政治の帰結で起きるもんなので
背景をじっくりたっぷり考察する作品が
一つくらいあっても良いと思う

『なんか悪い奴が戦争仕掛けてきたんで
ぶっ倒したら平和になりました。めでたしめでたし』
じゃ原作と変わらんのじゃないか
49通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 07:37:19 ID:???
自分は考察とか好きだが、作中で1から10まで説明があるとちょっとな…、
設定、資料集内だといくら語られていても良いんだが
50通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 07:48:23 ID:???
説明が多すぎて、流れや勢い、読む時のテンポがなくなっている気がする。
51通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 10:23:29 ID:???
>>46
そこが面白いと思う自分は少数派?
何にせよ、必要な話だからやってるんだと思う。今はこの先話を転がして行くための地盤固めの段階なのかな、と。
それに、設定話のみでやってるんじゃなくて、スティングの野望とかの話も同時進行してるしね
辛けりゃ読み飛ばしていいんじゃないかな
52通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 12:03:23 ID:???
>>51
同意。
俺も限界まで削ったスリムなのよりは薀蓄とか無駄についてる方が好き。
こってり派はそれなりにいるはず。
それになんか書き物とかしてるとわかるが要所だけ盛り込んでると書いててつまらん。
小難しい薀蓄とか入れると意味も無くテンション上がって執筆速度も上がるしな。
無駄、というか遊びを挟むのはテンション維持には必要かと。
まぁ、推敲段階で切るか否かは作者の意思だが。
51の言うとおり本筋に関係無さそうならスルーすればいい。
53通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 15:25:21 ID:???
何か、ラノベ板にいる時の気分だなw
「A作家の文体はくどい」「そこがいいんですが何か?」
「B作家の文体はテンポ良くてイイ!」「あれは薄いってんだよ」

その辺好みだからなあ・・・。
54通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 16:06:40 ID:???
そういう意見が出るようになってきたのも
知名度が上がってきて多くの人が見るようになったから、と取ることも・・・できる・・・か?
55通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 16:34:27 ID:???
意見というか最近は文句に近い気がする。
56通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 17:28:29 ID:???
別のスレから流れ込んで来たんだろうか?
57通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 20:51:05 ID:???
ルージュとアカツキ買ってきたんで、絵板にのってるストライクMk−Uを作ってる。
とりあえず、VPS装甲起動状態の配色にしようと考えてる。

ルージュについてるIWSPで何かストライカーパックとして、
設定にあったIWSP2かミラージュストライカーを作ろうと思ってるが、
ここの意見を聞きたい。
58通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 21:09:35 ID:???
あんまり意見を押し付けるのはなあ…
59通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 22:13:03 ID:???
 ´,. ト ヽ     |'/}ヾ, } ミシ  `ヽ  
  ノ //`ヽミ:、 _,.ノ  ,l::::( ( (     i  文句が出るのはその作品を愛してる証拠だと
  _-ニ -‐ ''´ ,r ^ー' |:::::::ヽ ヽ l    l  
   i` ‐ r-- '  _,〉 |:::::::::ハ  l    }   思っていただこう!!
  、._i  l      ;:=ュ |:::::::i' /' /    ノ    
  ヽ.`、 l    /ニ、l |::::;r'彡-'    `7   
 ::::::::::\. `   l、__,)゙i |::'":::i、      フ
 ::::::/\::::`ヽ、 ` ー ' |::::::/::ヽ     ´ ̄`ヽ、_....._,.--v‐-、/⌒^


60通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 22:16:42 ID:???
愛しているなら出るのは文句じゃなくて意見だろ
61通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 22:20:13 ID:???
前スレでやれよ
スレ汚すな
62通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 23:19:16 ID:???
過疎スレ住人からすればこんだけ活発な意見交換があるのは羨ましい限りです
63通常の名無しさんの3倍:2006/02/27(月) 23:56:25 ID:???
>>62
同意。

だが意見交換するにしても、言い方には気を付けて欲しい。
言葉が悪いと自分で分かっているなら、直すなり自粛するなりして欲しいとこだ。
64付き人 0/12:2006/02/28(火) 00:07:42 ID:???
書いている自分としては、参考に出来る意見や批判がもらえるのは有難いです(よっぽどめちゃくちゃなものでない限り)。
それを採用するかしないかは、結局書いている人間なわけですし。
……すいません、書き始めたばかりで生意気言って。

といったところで(どういったところだ?) 歌姫の付き人 第二話 書きあがったので投下します。
うーん、戦闘描写は難しい。
65付き人 1/12:2006/02/28(火) 00:08:31 ID:???
混乱の広がるアーモリーワンで、七体の巨人が対峙する。
ザクが三体、新型が三体、謎の正体不明機が一体。
誰が味方かは分かっている、味方以外は敵と判断する。
それは常識的で、通常ならば正しい判断。
だが今だけは誤った判断、混乱をさらに加速させる判断。

66付き人 2/12:2006/02/28(火) 00:10:13 ID:???


     歌姫の付き人
    
    第二話  乱戦 アーモリーワン!


「この……」
「待て、ルナ」

先手を取って動こうとした赤いザクを、白いザクが押しとどめる。

「相手は五機だ、突っ込んだら逃げられる。
 こっちには増援がある、彼等が来るまで射撃で牽制して時間を稼ぐぞ」
「分かったわ、ごめん。 艦長!」

『ええ、今聞いたわ』

ルナマリアの呼びかけに、タリアがミネルバから応じる。

『司令部からの命令は機体の奪回……だったんだけど、五機もいるんじゃ不可能ね。
 独断だけど命令を変更。逃がさないことを最優先に、目標の破壊も許可します』
『破壊って……あれセカンドステージシリーズの新型ですよ、いいんですか?』

副長のアーサー・トラインの声が無線に乱入する。

『この状況じゃ仕方が無いわ、責任は私が取ります。
 なんなら、今の命令を録音しといてもいいわよ』
「さすが艦長、話が分かりますね」
『おだてないで! 
 敵の正体不明MSをこれ以降アルファ1とする。
 初陣からきつい仕事だけど、2人ともよろしく頼むわよ』
「はい!」
「了解しました。
 こちらより敵の数のほうが多いため格闘戦は不利、
 射撃戦になる公算が大なので周囲の避難を急がせてください」



67付き人 3/12:2006/02/28(火) 00:11:35 ID:???

緑色のザクのコクピットで、アスランは必死に機材に目を通す。

「おいアスラン、あの赤いのと白いのは……」
「これと同じ機体だ。ザフト軍が来たのか、それともあれも奪われたのか」
「なんか、こっちのほうも睨んでるみたいなんだが」
「当たり前だろ、少なくとも味方だとは思っていないはずだ。
 だがあれがザフト軍なら、完全に敵とも思われていないはず……」
「だといいんだがな。
 とりあえず今は軽率に動かないほうがよさそうだ」
「ああ……くそ、無線はどれだ? 連絡さえ付けばはっきりするのに」

とはいえ初めて触る機体、いくら彼がコーディネーターでも機材の配置までは分からない。
そして彼が無線機を見つける前に、事態はさらに複雑に……




「くっそー、四体目の新型なんて聞いてないぜ!」
「……スティング、どうする?」
「そうだな……アウル、お前の機体が火力は一番強力だな」
「ああ、ビーム砲がやたらと一杯付いてる」

新型機に乗るスティング、アウル、ステラ、事を起こした側の彼等は自分たち以外に襲撃者がいないことを知っている。
ならば自分たち以外は敵、簡単に下せる正しい判断。

「よし、アウルは射撃で白と赤の足止め、その間にステラは緑を仕留めろ。
 相手は量産機だ、出来るな?」
「……わかった、ステラ、やる」
「あれ、じゃあスティングは?」
「あの新型をやる。スペックがわかんねーのは不安だが……
 出来ればあれもネオへの土産にする」
「ちぇっ、ちゃっかり自分だけおいしいところ持っていきやがんの……っておい、スティング!」

無線での打ち合わせで役割を分担、それを実行しようとした矢先……
奪取できなかった四体目の新型がくるりと背を向けて逃げ出した。



68付き人 4/13:2006/02/28(火) 00:12:22 ID:???

「三十六計逃げるに如かず!」
「あれ、マユ、戦わないの?」
「当たり前でしょ!」
「でもマユ、MSの操縦の仕方、習ってたじゃない」
「私が習ったのはMSの動かし方で、MSでの戦い方じゃないの!
 それに大体この機体、鉄砲とか積んでないもの!」
「あ、そっか……ってマユマユ、うしろうしろ、なんか撃ってきた!」




「何だあいつ、敵に背中見せるなんて臆病者だぜ」
アウルのアビスが、逃げる機体に向けてビーム砲を撃つ。

「艦長!」
『六番ハンガー周辺の避難、おおむね完了。射撃、許可します』
「はい!」
ルナマリアのザクが、アルファ1に対してミサイルを放つ。

インパルスはアビスのビームを受けて転倒、さらにそこを補足したザクのミサイルが襲う。
PS装甲によって破壊は免れるものの、その衝撃はコクピットにも伝わる。

「きゃあ!」
「ミーア! 大丈夫?」
「うん……なんとか」



69付き人 5/13:2006/02/28(火) 00:13:08 ID:???

「これは……」
「一体どうなっている?」

混乱した声が上がったのは、緑色のザクの中。

「カガリ、議長の話だと完成しているセカンドシリーズは……」
「ああ、あの奪われた三機だけだったはずだ」

合体して表れた四体目は、もちろん量産機のザクとも違う。
当然、襲撃者側がひそかに持ち込んだ機体だと思ったのだが……

「赤いザクはともかくとして、なぜ奪われたアビスからもあれが攻撃を受けている!」
「仲間割れか……襲撃計画を利用してのプラントへの亡命者か?」

いまだ無線は繋がらず、判断は与えられた情報の中から下すしかない。

「亡命者……ありえるかもしれない。プラントにMSを持ち込めるような組織で一番に思いつくのは連合だが、
 最近では連合内でもそのやり方に不満を持つものも多いと聞いたことがある」

さすがはカガリ、オーブの代表だけあって他国の事情にも通じている……
確かに通じてはいるのだが、それが役に立つかどうかは実は全くの別問題。
かくして『合体したMSは襲撃者(おそらくは連合)側からの亡命者』なる見当はずれの推論から、
緑色のザクは行動を決める。

「よし、あの亡命者が乗っている機体を助ける」
「戦闘に介入するのか?」
「今の時点でここの破壊を目的としていないことが分かっているのはあの機体だけだ。
 あれと共同しこの場を離脱、ザフト軍の保護下に入る……
本当なら今すぐ逃げ出したいんだが、あの赤と白も襲撃者に奪われた機体だとしたら、単機じゃ離脱も困難だ」
「……分かった、任せる」
「多少無茶な動きをするかもしれない、しっかり摑まっていろ!」

亡命者の機体(と、彼等が考えているもの……実際はインパルス)と赤いザクの間にわって入り、ザクの放ったミサイルを防ぐ。
その行動に白いザクが反応、素早くビーム突撃銃を構える。
放たれるビームを後方への跳躍でかわす……が、着地点を黒い影が襲う。

「スティング、言った……ステラ、緑のザク、やる!」

MA形態、四足で地を駆ける獣の姿となったガイアの突撃、
空中でのバーニア制御により何とかかわすものの、機体左手首を持っていかれる。
ガイアは速度を緩めずそのまま反転、ビーム突撃砲を放ちつつ、緑のザクに再度迫る。
対するアスランは放たれたビームを巧みに避けつつ、左腕に残されたショルダーからビームトマホークを取り出し迎え撃つ。


70付き人 6/13:2006/02/28(火) 00:14:34 ID:???

「ちょっと、どーなってるのよ?」
ルナマリアが、ミサイルを撃ちながらレイに訊く。

「おいおい、何だよこれ?」
アウルが、ビーム砲を放ちつつスティングに不満を漏らす。

『自分が見たことの無い――つまりおそらくは敵の機体に、どうして敵が攻撃を加えている?』
両者の疑問はなぜか一致、とはいえそれは攻撃を緩める理由にはならない。
結果、一番割を食っているのはインパルスの中の2人の少女。

「マユ、来る来る来る!」
「分かってる分かってる分かってるー!」

アウルの放つビーム砲は、まだ機体の癖を把握できていないので照準が甘い。
ルナマリアによるミサイルの攻撃は、PS装甲に頼れば何とか耐えられる。
PS装甲にも有効なザクのビーム突撃銃は、コロニーへの被害を考え使用は控えられている。
それらの幸運、さらにマユの巧みな操縦も加わって、インパルスは何とか持ちこたえる。
もちろん乗っている本人たちは、そんなものを幸運だとは思わない。

「ザフトの警備隊とか、まだ来ないのー」

……もう来てます、そんでもって今あなた達にミサイル撃ってます。

「――!」

それでも何とか攻撃を避けつつ後退を続けていたインパルスだが、その動きが突如停止する。

「どうしたの……どこかぶつけた?」

その変化に、ミーアが尋ねる。マユは頭を横に振り、何もいわずに手元の機械を操作する。
その顔に苦悶の表情が浮かんでいることに、ミーアは気付く。
それはここ二年弱、常に一緒にいたと言っていいミーアでさえ、初めて見るマユの表情……。
マユの操作にしたがって、モニターの一部が変化する。
映し出されたのは、インパルス進路下方の拡大映像。そこにいる、多数の逃げ遅れた人々の映像。

「このまま進めば、多分逃げ切れると思う」

そう言ったマユの声は、かすかに震えていた。



71付き人 7/13:2006/02/28(火) 00:16:27 ID:???

レイ・ザ・バレルは整理する、自分たちの置かれた状況を。
この場にいるMSは全部で七機、内ザフト軍のものと確定しているのは、自分とルナマリアの二機のザク。
仮定し得る最悪の事態とは……残りの五機全てが敵であること。
だが今アビスがアルファ1を攻撃し、ガイアが緑のザクを襲っている、これを、どう考える?
敵は奪われた新型三機だけ……という可能性は極めて低い。
正体不明機、アルファ1……その形状は今まで見たことの無いもの。
当然ザフトの機体ではない、アーモリーワンに在るはずがないもの。何者かが秘密裏に、このコロニーに持ち込んだもの。
この機体、そしてそれを先ほどかばったザクは、おそらくは敵。
そして奪われた新型三機を操るのは、間違いなく敵。
問題はその敵同士がなぜか戦っているということ。

「襲撃者が二組いるとしたら……」
「はあ?」

無意識に呟いていた言葉に、ルナマリアがミサイルを放ちつつ反応する。
その声が、逆にレイに自分の正しさを確信させる。

「前の戦争のヘリオポリスは知ってるだろう」
「ザフトが連合の新型を奪ったやつ?」
「ああ、今回の事件は恐らくそれの模倣だ。ならそれを真似ようとした奴等が複数いたとしてもおかしくない」
「つまりあのアルファ1を持ち込んでザクウォーリアーを奪った敵と、新型三機を奪った敵が、
互いの機体を奪おうとして争っている……
あ、やばっ、まずった」

話しながらも攻撃を続けていたルナマリアが、突然ミサイルを放つのをやめる。

「どうした?」
「アルファ1、軍事区画を離脱して市街地方向に……あそこ、まだ住民の避難済んでないのに!」

流れ弾の被害を考えると、確かに射撃の継続は困難。だからといって黙って逃がすわけにもいかない。
周囲を確認、ガイアと緑のザクの戦いは、いまだ決着が付きそうにない。
アビスとカオスを自分一人で止められれば……

「ルナ、格闘戦で三十秒以内にアルファ1を機能停止させろ。その間他は俺が止めておく」

出来るか、とは決してきかない。それが彼なりの、彼女への信頼の証。

「三十秒? 二十秒で十分よ!」

言い放ち、アルファ1へと向かうルナ。その赤い機体を確認しつつ、レイはアビス、カオスと対峙する。



72付き人 8/13:2006/02/28(火) 00:17:41 ID:???

スティング・オークレーは考える。自分たちの果たすべき目的を。
ネオの命令、新型機の強奪。それを無事に持って帰ること。
全てはそのための作戦であり、ほかの事はみな手段に過ぎない。
今行っている戦闘も、迎えが来るまでの時間つぶしに過ぎない。
ならばここで大切なのは、奪った機体を必要以上に傷つけないこと。
そのためには、敵のMS同士がなぜか争っている現状はきわめて有利。
その原因の解明は、少なくとも今やらなくてはならないことではない。
緑のザクは、ステラが抑えている。
四体目の新型はこの場からの離脱を目指している。
赤いザクは、その新型を攻撃している。
ならば今脅威たり得るのは、自分の前にいる白いザクのみ。

「アウル、計画変更だ」
「はぁ?」
「白いザクをやる、援護頼む」
「へいへい、でもあんま期待すんなよ……
なんかこの機体照準ずれてるみたいでさー、小さい的にはうまく当たんないんだよね」
「ああ、なら牽制だけで十分だ」

奪ったばかりで癖とのすり合わせもしていない機体、射撃が当たらないのはある意味当たり前。
だが近距離での格闘戦なら、細かい狙いなどつけずにすむ。
アビスのビーム砲が着弾し、もうもうと土煙があがる。
その中心にいるはずの白いザクに向け、スティングはカオスを突撃させる。



突っ込むカオを白いザクがかわす。ザクの射撃をカオスが避ける。
どちらも、無理はしない。それぞれの目的は足止めと機体の保持。
もっとも避けるべきは敵に倒されること、その点は両者の共通の見解。
倒すよりも倒されないことを目的としたその攻防は、互いに詰めの一歩を踏み出させず、
見た目の激しさにも関わらず、奇妙な均衡を生じさせる。

ステラのガイアとアスランのザク、決め手が無いのはこちらも同じ。
初めて乗るガイアの操縦に手間取るステラ、相手がエース以上だとさすがに攻めきれない。
保護すべきカガリを隣に乗せたアスラン、この状態では急な機動は厳禁。
それでもザクは何度かガイアに迫るものの、そのたびに襲うのは遠距離からのアビスの砲撃。
致命傷は受けないものの、逆に与えることもまた出来ない。
アビスはアビスで照準の癖をつかめていない上、カオスとガイア、両者を共に援護していては、
決定的な戦果はとても望めない。



73付き人 9/13:2006/02/28(火) 00:18:35 ID:???

「このまま進めば、逃げ切れる……」
モニターの中の、進路上の人々を眺めながら、ミーアはマユの言葉を反芻する。
操縦の出来ないミーアにも、マユの言った言葉の意味くらいは理解できる。
進むには、路上の人々の上を進むしかない。
その場合たとえ踏み潰さなかったとしても、この機体を狙った他のMSからの砲撃で、
多くの犠牲が出るのは疑う余地が無い。
だがもし進まなければ――他の六体のMSにより、おそらくは……。
しなければならないのは命の選択。自分たちか、モニターの中の人々か――

――そこまで考えて、思い出す。マユの家族が死んだ理由を。
自分が『ラクス』になるか悩んでいたあの頃、マユが自分に聞かせてくれた話を。

『自分の肉親はオーブで殺された。足もとなんて気にもせずに戦う、青い翼を持ったMSに』

そう言ったあと、マユは久しぶりに泣いた。

自分が決めたことが正しいのかなんてことは分からない。でも思う。
彼女の肉親を殺したのと同じことを、決して彼女にやらせてはならない。
だから強引に微笑んで、それでもこわばっている自分の頬に失望して、そして言った。

「マユ、進んだら駄目。
平和の歌姫が自分の命のために人踏み潰して逃げ出したら、しゃれになんないでしょ」
「……いいの?」
「うん」

『ラクス・クライン』、自分が演じている女性、
本物の彼女ならきっとそうするだろう笑顔で、ミーアはマユにうなずいた。

「……ありがと」
「え、なに?」
「なんでもない。分かった、じゃあしっかり摑まっててよ!」

マユが機体を反転させ、そのまま全速で前進させる。
確かに摑まっていなくては、体をぶつけてあざをつくりそうな強い加速。
何しろ民間機、飛び道具なんて気の利いた代物ビーム砲どころか火縄銃一丁積んでいない。
近づかなくちゃ、どうしようもない。
インパルスの進む正面には、なぜかミサイルを撃つのを止め、こちらに向かってくる赤いザクがいた。


74付き人 10/14:2006/02/28(火) 00:22:07 ID:???

「アルファ1、近づいてくる?」
怪訝に思うルナマリア、が、その疑問はすぐに消し飛んだ。
格闘戦は望むところ、近づいてきてくれるのも、自分にとっては好都合。
射撃戦より被害は少ないかもしれないけど、市街地でMSの格闘戦をやるなんて悪夢と比べたら、
相手の意思がなんであれ、基地区画に戻ってきてくれるのはありがたいことこの上ない。

レイのことが気にかかる。
本人はおくびにも出さなかったけど、複数の新型機を一人で足止めするのは実際は無茶もいいところ。
もちろん振り向くなんて無駄なことはしない。
目の前の機体を速攻で仕留めて加勢にいく。
相手との距離を見計らって、
左肩に付いたショルダーから、
ビームトマホークを引き抜いて振りかぶる。


赤いザクが、左肩から斧を取り出して振りかぶる。
振り下ろされたら、切り裂かれる。
避けようにも速度が付きすぎて止まれない。
だからマユはさらにスピードを上げ、
インパルスの手を前に伸ばし、
斧を持った赤いザクの腕を掴む。


「っ!! こいつ!」
腕をつかまれたルナマリアが唸る。
パワーは相手のほうが上、このままだと逆に押し切られる。
強引に機体を下に俯かせる。
機体に装着したウィザードがアルファ1のほうを向くように。
この距離なら外すことはない。
周りへの被害を気にせず思いっきり撃てる。
「食らえ!」


75付き人 11/14:2006/02/28(火) 00:23:48 ID:???

「きゃあ!」
ザクの撃ったミサイルがインパルスを襲う。
零距離射撃、全弾命中。
揺れる機体、揺れるコクピット。
でも、手だけは離さない。
離したら即切り裂かれる。
機体自身はPS装甲で無事。
パワー勝負なら、こちらに分がある。
操縦桿を押し倒し、インパルスを前に進める。


受けたミサイルを気にする風も無く、アルファ1は前に踏み出る。
その姿が呼び起こす恐怖を、ルナマリアは強引に押さえ込む。
PS装甲は魔法じゃない。
長所もあれば、短所もある。
まして普通のバッテリー機なら……
「フリーダムやジャスティスでもない限り!!」
ミサイルを、さらに浴びせる。
だんだんと相手に押されながらも。
それは全てPS装甲に弾かれるが、
やがて遂に変化が訪れる。
「やった!」


機体の色が、変化する。白と青から灰色に。
装甲に負担を掛けすぎて起こった、エネルギー切れ、フェイズダウン。
一つの戦闘の勝敗が決し、青くなるマユとミーア、大きく息を吐くルナマリア。
その三人傍らで、更に状況は変化する。


76付き人 12/14:2006/02/28(火) 00:25:00 ID:???

一つはコロニーの地に響く振動。やっと着いたザフト軍の援軍。
三機一組が三組、合計九機のゲイツ隊。
マユもミーアもそしてルナも、三人が三人とも待ちわびていたもの。
それを見て僅かに緩んだ顔が、もう一つの変化で再び強張る。

大きな振動、破壊音。空が映し出されていた外壁に、宇宙へと抜ける穴が開く。
「やっと来たぜ、バス」
アウルはついた溜息と共に、アビスの全砲門を開いて斉射。緑のザクを、白のザクを、ガイア、カオスの両機から引き離す。
その隙に、ガイア、カオスは穴から宇宙へ。最後にそこをくぐるアビスが、おまけとばかりにもう一斉射。


アビスの最後の攻撃を避け、レイは状況を再確認。
残った敵は緑のザクとアルファ1。フェイズダウンしているアルファ1には、もう戦闘力は残っていない。
最後の脅威、緑のザク。煙の中にたたずむそれに、レイは素早く近づくと、背後からビーム突撃銃を突きつける。

『おお、ナイス!』

増援のゲイツ隊から通信が入る。緑のザクに対する構えを崩さずに、レイはゲイツ隊の言葉に応じる。

「すみません、奪われた新型機三機を取り逃がしました」
『なーに、その二機は押さえたんだろ? 初陣でそれだけやれりゃあ立派なもんだ。
 追撃は俺たちがやる。その二機の拘束を頼む』
「はい」

そのまま通信を切ろうとして、通信が緑のザクにも繋がっていることに気付く。
乗っているだろう襲撃犯に、レイは自らの意思を伝える。

「ザクウォーリアーの搭乗者に告ぐ」
『え、わたし?』
「……ルナじゃない、緑のほうだ」

ルナマリアの横槍で気勢をそがれ、それでも何とか仕切りなおす。

「緑のザクウォーリアーの搭乗者に告ぐ……」


77付き人 13/14:2006/02/28(火) 00:25:56 ID:???

無線のスイッチが入ったのは、アビスの攻撃をかわしたとき。
急な機動にガガリが倒れこみ、彼女の頭が機材にぶつかり、雑音と共に通信が入った。
その通信に気を取られ白いザクに後ろを取られたものの、無線の内容で相手がザフトと分かりアスランはほっと溜息をつく。

『……に告ぐ。貴官を拘束する、指示に従え。こちらの意思に了承してもらえるならMSの左腕を挙げてもらいたい』

指示通り、機体の左腕を挙げる。

「やはり、敵機と思われているか」
「なーに、説明すれば分かってもらえる。少なくとも殺されることはない。
それより、あの亡命機は?」
「あそこだ、フェイズダウン起こして倒れている。
 カガリ、ぶつけた頭は大丈夫か?」

 やたらと前向きなお姫様、その元気に呆れながら、そっと頭を撫でてみる。

「今はそんなこと言ってる場合じゃ――痛っ!! ……こぶになってるかもしれない」
「落ち着いたら、医務室で見てもらうか」

そう言って、シートに体を預ける。無線機から、軍の通信が漏れてくる。

『では、我々は十番ハンガーに……』
『待って。レイ、ルナマリア、至急ミネルバに帰艦してちょうだい』
『帰艦って、捕獲した二機はどうするんですか?』
『そこらへんにいる部隊に……じゃあ間に合わないわね、いいわ、その二機も艦内に連れてきて』
『了解しました。搭乗者、聞こえたな。指示に従って進め』
『え、この機体もですかー? あーあ、それならフェイズダウンなんかさせるんじゃなかったわ』

久しぶりのMSの操縦は、ひどく疲れた気がした。



78付き人 14/14:2006/02/28(火) 00:27:27 ID:???

エネルギーが切れ、動けなくなったインパルスが、赤いザクにずるずると引きずられていく。
その中で、2人の少女が顔を見合わせる。

「ねえミーア、これってどういうこと?」
「多分……私たち、襲撃犯と間違えられたんじゃないかしら」
「つまり、赤と白のザクはザフトってこと?」

やっと何とか、状況認識。戦闘の緊張と死の恐怖から逃れ、マユはガックリと前に倒れこむ。

「大丈夫?」
「……うん」

何とか気力を引き出して、頭を上に持ち上げる。
目の前にあるのは、エネルギーが切れてもう何の反応もしない操縦機器。その中でただ1つ光っているモニター。
モニターの中に映るのは、破壊された倉庫、燃え盛る工廠。
今のインパルスも加わった戦闘で、破壊されたコロニーの姿。

「ねえマユ」
「うん?」
「キングさんたち、大丈夫かなあ」
「うーん、大丈夫だよ、きっと」

何の根拠も無い言葉、でも今はそう信じるしかない。
赤いザクに引きずられ、たどり着いた先は巨大な艦。
明日進宙式が予定されていた、その式典で『ラクス』のサプライズコンサートが行われるはずだった、
プラトン自慢の新造宇宙戦艦。
インパルスは赤いザクに抱えられ、その艦ミネルバの格納庫へと、強引に収納された。

79付き人 15/14:2006/02/28(火) 00:35:14 ID:???
以上です。

普通、戦闘中にこんな色々喋ったり考えたりしてる暇ないような……
それにしても、迫力やスピード感を出すのは難しい。

補足ですが、この話でルナマリアが乗っているザクのウィザードはブレイズです。
コロニー内でガナーのオルトロス振り回させると大変なことになりそうなので。
80通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 00:35:41 ID:???
おもしれーなあw
全然今までにない展開だったから、結構ハラハラしながら
読ませていただきました。勝手に勘違いされて、攻撃されて
右往左往する二人萌えw

GJ!!
今後の展開に大いに期待
「ふ、私より目立とうとするなんて一億年早いのよ!」
担架に乗せられ運ばれる犯人を見ながら笑うマユ。
ちなみに犯人は金髪の男だった。
なにやら頭からわかめのような黒い髪がはみ出てるように見えるのは気のせいだろう。お願い、気のせいであって。
「放つ光ー♪そらにーおーちるー♪」
「うわっ!ハイネがミーティア歌いだした。」
「止めろ!後ろから真っ二つだぞ!」
もう目に何も映していないハイネの頬をぴしぴしと叩くジョー。
「はらへったー。」
「俺もすいたー。」
カルマとレオンは緊張感のないセリフを言う。
「よし、じゃあそろそろ帰るか・・・・。マユ、お前は晩飯抜きだ。」
「えー?!ひどいよレイ兄ちゃん!」
『うわ・・・。どうやって責任取ろう・・・・。何億アースダラーくらいかな・・・。』
「もういっそのこと何処かで食べてかえらない?」
「さんせー。私中華がいい!」
「ステラ・・・・はんばーぐ・・。」
「俺やきにくー!」



ちなみに、全員園内から一旦でるまでアキラの存在を忘れていたそうだ。

帰りのバスの中でもきゃいきゃいと騒いでいるマユ達。
もちろんアキラもちゃんと迎えにいったのでいる。
アキラ本人は何でもずっとベンチで寝てしまってたらしい。あの時マユ達が見たのは見間違いだったのだろうか?

そんな中、アキラは外を眺めながらずっと音楽を聴いていた。

『風のない青空の下みつけた』

スティングは寝てしまったメイリンの寝顔を眺めていたのをアウルに冷やかされている。

『君の夢 いつかの幻』

ステラはシンに体をあずけすやすやと眠っている。

『さよならの予感に無理矢理背を向けて あの丘で意味を探し続けた。』

ジョー、キース、カルマは三人でトランプをしている。よく酔わないものだ。

『二人の距離は砂時計の仲 もう戻らない 結晶』

シンハロは疲れ知らずなので一人寂しく車の運転をしている。が、後ろに座っているハイネとアスランが声をかけているようだ。

『思いつなぐ 唯一つの はかない絆 見えるかな?』

眠っているミーアの膝枕でこれまたレオンはぐっすり眠っている。グレイシアがそれをみて微笑む。

『空を見ると思い出すよ』

マユはいまだにレイに説教されており、それをルナマリアが笑いながら見ている。

『君がくれた 愛という花』

「・・・アキラ、そのブレス二つもつくったの?」
ふとゼロが聞いてきた。アキラの腕には二本の皮製のブレスレットが。
「違う違う、片方はもらったの。」
アキラが手を振って否定する。」
「誰に?」
「それは秘密です。」
そう言ってアキラは笑った。
≫歌姫の付き人作者様
乙です。自分ミーア大好きなのでこれからも楽しみにしています。

≫まとめ人様
もうしわけありませんが避難所の方に投稿したアキラサイド、まとめよろしくお願いします。

・・・あー、終わった。なんか避難所の方含めるとアキラメインになってる・・・ort
まぁ、でもこれでアキラ関係のイベントは全て発生したとほのぼの脳内攻略チャートには書いてあるので
大丈夫でしょう。さて、ようやく本編ですよ。カガリ登場です(暗黒女帝じゃないほう)
ほのぼのは政治とか苦手なのでぶっちゃけ不安ですが頑張ります・・・。
今回作中にでてる歌はガンダムソングじゃないです、ごめんなさいort
しかもマイナーだよ。でも知ってる人はそれ思い浮かべて聞いてくれると嬉しいです。
さて、ほのぼのマユデスも最終回近いですけど全部終わったら何やるか考え中。
戦後ものやるか魔法少女ものやるかMS擬人化祭りか・・・・。

それでは。
84通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 01:46:28 ID:???
単発設定小話 番外編「機動戦士ガンダムSEED Destiny Astray 〜If Mayu is a heroine.〜」

〜アメノミハシラ〜
ミナ「・・・起きなさい。起きなさい・・・マユ・・・・・・私のかわいいお人形さん」
マユ「・・・ぅ・・・もう、朝?なの・・・・・・?」
ミナ「そうよ。・・・寝坊するのはあまり好ましくないわね」
マユ「・・・っ・・・!?ミナ様!」
〜ベッドから飛び起きるマユ。床にひざまずく〜
ミナ「おやめなさい、そんな態度は・・・。あなたは私の妹のようなもの。それにそんなにかしこまれては私はあなたに何も言えなくなってしまう」
マユ「はい・・・ごめんなさい・・・・・・」
ミナ「さ、朝食にしましょう。今日は忙しくなるわ・・・・・・」
マユ「はい。すぐに支度いたします」
ミナ「ふふ。今日は私が準備しておいたわよ。あなたちっとも起きてこないんだもの。ふふふ・・・」
マユ「・・・ごめんなさい」
ミナ「いいのよ。たまにはこういうのもないとねぇ。・・・とはいうもののトーストとサラダとコーヒーだけよ」
〜ミナの略装に対し、パジャマのまま食卓へむかう二人〜
〜そして朝食を終えた二人はいつもどおりミーティングルームにて今日のスケジュールを確認する〜
ミナ「・・・さてと今の情勢のおさらいを」
マユ「はい。ザフト軍の新型MS・・・ガンダムタイプを強奪した集団は現在も逃走中とのことでしたが、新しい情報によるとザフトの新造艦ミネルバと接触。戦闘に突入したようです。ミネルバは追い詰められていたようですが、からくもその事態を打破。敵艦と痛みわけした模様」
ミナ「ふむ。強奪した連中をマユはどうみている?」
マユ「ガンダムタイプを強奪したのは連合の仕業と考えます。それにここまで強引なやり方はまっとうな人間のすることではありません。私には戦いをもて遊んでいるように見受けられます。おそらく・・・ブルーコスモスにかなり近い部隊の仕業だと思います」
ミナ「・・・そうね。私もそう思う・・・・・・でも」
マユ「でも?」
ミナ「その裏側がもう一つあるような感じがするわね・・・」
マユ「ブルーコスモスの裏にさらにもう一つですか?」
ミナ「うん。・・・まぁ、そのあたりはおいおいみえてくるでしょう・・・。それよりも重要なことがあるわね」
マユ「はい。ユニウスセブンの件ですが、安定軌道から外れつつあるのは間違いありません。ここの観測所でも確認できました」
ミナ「地球に堕ちつつあるのね?」
マユ「・・・はい。このままいくと間違いなく地球に降下を始めます。地球に甚大な影響をあたえることは必至です。たとえ細かく砕いたとしても大きな被害がでることに変わりはありません」
ミナ「それでも砕かないよりはましね・・・」
マユ「はい」
ミナ「・・・それで覚悟はできてる?」
マユ「はい。私はそのために訓練していたのですから・・・」
ミナ「よろしい。では・・・」
〜椅子から立ち上がるミナ〜
ミナ「マユ・アスカに命じる。これよりユニウスセブンの地球落下を全力で阻止せよ。オーブへの被害を最小限にとどめよ。その後はそのまま大気圏内へ突入しオーブへ降りよ。その後の命令はおって指示する」
マユ「はっ!マユ・アスカ、命令を承りました!」
ミナ「オーブへ降りてからはこの人物を尋ねよ。わが国主カガリ・ユラ・アスハを支えよ」
マユ「コンディションブルーからイエローに移行します!」
〜足早にミーティングルームから去るマユ。残されたミナ〜
ミナ「かわいい子には旅をさせろとはいうものの・・・まだ幼すぎかしらね?」

85単発屋:2006/02/28(火) 01:51:36 ID:???
えー最近まじめに続けすぎたので、ここいらで本当に単発小話をば書いてみました。
アストレイを軸としたマユの話もあってもいいのかなと思いまして妄想してみた次第です。
この続きはまったく書く気ありませんので、適当にあしらってくださいませ。
86通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 12:23:13 ID:???
付き人GJ!
なんというか、こんなに締まらぬアーモリーワンとインパルス初戦はないと思ったw(←誉め言葉)
それでいて、各々のMSやキャラが持ち味活かしてるのがナイス。
新型だらけの混戦大会……確かに敵味方全然見当つかないよなァ

ほのぼのさん、まぁ、なんというか相変わらずの彼らで安心しましたw
ほのぼの版のカガリというと……あの困ったお方ですか。どう転がっていくのか楽しみです。

単発屋様……ミナ様キター。
でもなんかこれ、マユに対してだけ猫撫で声出してるっぽくて、逆に怖いんですけど……w
最強傭兵を片手で吊るすお方がこんな口調で少女を愛でる……ザクグフMJ。
87通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 14:10:38 ID:???
>>単発屋
ミナの口調に違和感が……。
割と偉そうな喋り方で「〜だ」とか「〜なのだ」という語尾が多いんで
「〜わね」等の、所謂「女性らしい」喋り方をされるとどうにも疑問符が。
もしくはマユの前でだけそういう口調、独りごちるときは男っぽい口調
……などの使い分けをするだけでも大分自然だったかと。

以上、空気読めない意見屋。
皆様のサイフの中身と、プラモを飾るスペースについての苦情はお受けしておりません。隻腕作者です。

>>前スレ452さん(敵味方の通信について)
ん〜。あまり考えてませんでしたね。
陣営が違っても顔を合わせたMS同士では「会話をすることができる」のは、描写からも確実ですから。
ただ話せるというだけで、別にネットワークに介入なんてできないですよ。それは流石に飛躍が過ぎます。
そんな無茶なハッキング、本編でも例がありませんしね。基本的に会話しかできない代物なのでしょう。
デストレイで出てきた量子ウィルスは、ひょっとしたらセキュリティに穴を開け、会話回線を通じ操作するのかも。

何にせよ、声をかけようと思えばかけることができる、という本編でもあった状況を再現したかっただけです。
他に他意はありませんし、それ以上の使い方はできないことにしておきます。

誤字については確かに。種では副長と呼ぶのでした。指摘感謝です。


では、26話投下です。

ヘブンズベースへの攻撃を跳ね返した連合は、国力にものを言わせてカーペンタリア基地に反撃をしかけます。
ミネルバのアスランとレイも、∞ジャスティスとレジェンドで奮戦しますが、4機ものデストロイの前に苦戦。
そして、デストロイの砲撃がミネルバに放たれようとした、その時――救いの手が。
デスティニーと赤いガイア。連合軍を蹴散らしたそのMSに乗っていたのは、何とシンとコニール。
連合軍は、親連合国家と化したオーブに撤退しました。しかしどうやら、ザフトもさらなる反撃を計画して――!
89隻腕26話(01/18):2006/02/28(火) 21:32:35 ID:???
プラント近郊宙域に浮かぶ、ザフト軍の大型軍事基地。葉巻のような円筒形をした、人造の浮遊物。
ヘブンズベースの攻略失敗とカーペンタリアの防衛成功、そして次なる大規模作戦の噂――
ザワザワと落ち着かぬこの基地の中、ちょうどパトロール任務を終えたジュール隊は、帰還して一息ついていた。

「じゃ、イザーク、お疲れさん!」
「ちゃんと休んでおけよ! いつ次の任務があるか分からんのだからな!」

口うるさい同期の上司と別れて、浅黒い肌の男は自分の私室へ向かう。
白服のイザークは隊の責任者だけに、まだいくつか仕事が残っている。面倒な報告書の作成やら、補給の手配やら。
その気になれば後回しにもできる仕事だが、生真面目な彼のこと、きっと今日のうちに済ましてしまうのだろう。
親友の苦労を想像し、ディアッカ・エルスマンは軽く苦笑すると、人気のない廊下を進む。

「――ディアッカさん」

そんな彼の背に、声をかける人物が1人。
赤いザフト制服に艶やかな黒髪。ジュール隊の同僚、シホ・ハーネンフースだった。

「おやおや何だい、シホちゃん。ひょっとしてこんなところで愛の告白でもする気かい?
 いやいや困ったね、もてる男ってのはさ〜♪」
「……馬鹿言わないで下さい、誰が貴方なんかに。
 任務で出てる間に、手紙が来てたようですよ。貴方にも『同窓会のお知らせ』とか言うのが」
「お、サンキュ〜。助かるぜ♪」

シホの素っ気無い態度もなんのその。ディアッカはウィンクひとつすると、彼女から封筒を受け取る。
彼らのように宇宙を行ったりきたりする部隊の場合、部隊単位で手紙類が整理され、保管される。
きっとシホ自身の手紙をチェックしたついでに持ってきてくれたのだろう。
そのままディアッカは、自室へと身を翻した。背中に突き刺さる鋭い視線に、気付くことなく――


久方ぶりに戻ったディアッカの自室は、散らかっていた。
プラントには自宅があるが、そちらは両親もいるし、いわば実家のような感覚。
長期任務では戦艦の中に自室が用意されるが、これは旅先のビジネスホテルのような感覚。
そしてこの基地の自室は、さしずめ職住近接した独身寮、とでも言った感じだろうか。簡単な自炊設備もある。

彼は片付けや着替えもそこそこに、端末を立ち上げ、シホから受け取った封筒を破る。
「同窓会のお知らせ」との文字以外、何も書かれていない封筒だ。何の同窓会なのか、一言も説明がない。
それでもディアッカは迷うことなく、封筒の中にあったディスクをPCに叩き込み、中のデータを表示して――

「……いつ開かれるんだ、『同窓会』は? 
 そもそもそれは、どこの同窓会なんだ? 誰が参加するんだ? あァン?」

唐突にかけられた嘲りの混じった声に、ディアッカは凍りつく。
振り返らずとも誰だか分かる。分からぬはずがない。
勝手知ったる他人の部屋。いや、他人と呼ぶにはあまりに近すぎる親友。
ノックもせず、勝手に踏み込んでくることもしばしばあったのだが――しかし、今このタイミングというのは。

――口調とは裏腹に、戸口に立つイザーク・ジュールの目は、怒りに燃えていた。別れた時そのままの白服姿。
燃える目で、信頼していた部下を、付き合いの長い親友を睨みつける。
90隻腕26話(02/18):2006/02/28(火) 21:33:27 ID:???

「い……いや、あのな、イザーク。これは」
「ディアッカ。俺とお前の腐れ縁、忘れているわけじゃあるまいな?
 幼年学校からアカデミー卒業まで、俺とお前は、ずっと同じ学校、ずっと同じクラスだったんだッ!
 お前だけに来て俺に来ない『同窓会のお知らせ』なんて、あるわけないだろッ!」

イザークは吼える。激怒を隠さず、吼える。
素早く懐から拳銃を取り出すと、容赦なくディアッカの眉間に狙いを定めて。

「――今はまだ、保安部には連絡しておらんッ。
 だが万が一俺が戻らぬ場合、シホが通報することになっているッ! 洗いざらい、全部吐いてもらうからなッ!」
「……あ〜あ、やっぱりシホちゃんか〜。女って妙にそういうトコ鋭い時あるよな〜。
 最近あの子冷たくてさ、そろそろヤバいかな〜、とか思ってたんだけど。やっぱりねぇ……!」

観念した様子で、大袈裟に肩をすくめてみせるディアッカ。けれど、その態度はいつものディアッカのままで。
イザークの怒りはさらに増す。銃口がフルフルと震えている。

「答えろ、ディアッカ! その封筒は、そのディスクは何だ! 誰と、どんな連絡を取り合っていた!
 おおかた、あの『ラブレター』とやらもそれと関係してるのではないか? 貴様まさかスパイ行為でも――!」
「――『同窓会』ってのは、本当だぜ。イザークの知らない、俺の『同級生』たちからの連絡だ」

ディアッカの顔が、急に引き締まる。
銃口を真っ直ぐ見据えたまま、しかしなおも平然と語る。

「嘘をつけ! 貴様と俺は、ガキの頃から思い返しても、別の場所にいたことなど、ほとんど――!」
「2年前。2年前、確かにあったんだぜ。もう忘れたか?」

ニヤリと笑うディアッカ。その表情に、イザークもようやく思い至る。
思い浮かぶのは、同じように銃を向けたメンデル。そういえば、あの「ラブレター」の相手も……!

「厳密な意味じゃ『同窓会』ってのはおかしいのかもしれないが――
 大体みんな同じような年だったから、そういう名前にしておこう、って決めてな。
 おっさんたちは、さしずめ担任の先生ってとこなのかね? ……ま、確かに半分くらいは、偽装なんだけどよ」
「ディ……ディアッカ……」
「考えてみりゃ、お前も仲間みたいなもんか。ヤキンの時には、アークエンジェルで補給受けたわけだし。
 悪かったな、イザークだけ仲間はずれにしちまってよ」

そう言ってディアッカは、受け取った手紙を映したモニターを示す。手紙の冒頭に書かれた、5文字の略称。

「三隻同盟軍同窓会。Three-ships Alliance Forces Alumni。3SAFA、通称『スリーサファ』。
 かつて一緒に戦った仲間同士、困った時には互いに連絡取って助け合おうぜ、って趣旨の組織さ。
 時々こんな風に援助要請が来たりするんだ。と言っても何の強制力もねぇし、助けるかどうかは個人の自由。
 俺はさ、『プラントを裏切らない範囲でのみ協力する』って自分で決めてっから、今回は傍観だけど――
 これはまた、世界が動くぜ」
91隻腕26話(03/18):2006/02/28(火) 21:35:29 ID:???
――その封筒は、世界中に散らばる『同級生』たちに届けられていた。

復興続くオーブの工事現場で怒鳴り声を上げる、コジロー・マードックの所にも――
メイリンと一緒にどこかの空港で飛行機を待つ、ミリアリア・ハウの所にも――
北アメリカの大きな湖で観光遊覧船の舵を握る、アーノルド・ノイマンの所にも――
宇宙港での整備が続く戦艦クサナギを見上げる、レドニル・キサカの所にも――
南米の山中に篭って1人過酷な修行に汗を流す、バリー・ホーの所にも――
デブリ帯でジャンク屋の面々と行動を共にする、ジャン・キャリーの所にも――
その他、アークエンジェル、クサナギ、ミネルバの各艦にかつて乗っていた、それぞれのクルーの所にも――

……その一部は、居場所が分からなかったり、名前を変えていたりして、本人の手に届かなかった。
モルゲンレーテ造船局に届けられたマリア・ベルネス宛の封筒は、彼女の机の上に置かれたままで。
アスハ家の個人秘書として未だ名前の残るアレックス・ディノ宛の封筒も、郵便受けに突っ込まれたままだ。
けれど、その多くはそれぞれに様々なルートを取り、それぞれの手元まで届けられて。
皆、それぞれに封筒を開ける。それぞれにディスクの内容を開き、内容を確認する。


雪の降り続けるスカンジナビア王国、旧クライン邸。
義足を軋ませながらラクスの所を訪ねた彼女は、桃色の髪の娘がPCを覗き込んでいる姿を見た。
PCの傍には、開けられた封筒。そこに書かれているのは「同窓会のお知らせ」という文字。

「ちょっと、お願いしたいことがあるんだけど……って、何を見てるの?」

アンディならともかく、ラクス自身がこういう端末を弄るというのは珍しい。思わずマユは尋ねる。
ラクスは振り返ると、フワリと笑った。

「良いニュースですわ。キラからの連絡です」
「キラって……あの男から?」

未だラクスにもキラにも微妙な気持ちを抱くマユの表情は、少し険しくて。
それでもラクスは、構わず画面を示す。そこには、電報のように簡潔なメッセージが映されていた。

 『 マルキオ導師からの情報。カサブランカの無事を確認。
   ついては、彼女の復帰に助力を願いたし。キラ・ヤマト 』

カサブランカ――それは、百合の品種の名前。白獅子の横顔と共に、ある人物のパーソナルマークに描かれた花。
その意味するところを理解したマユの顔に、大きな笑みが浮かぶ。
と、そんな2人のいる部屋に、隻眼の男が入ってくる。手には何やら印刷された紙を持っていて。
どうやらこれも、どこかから入ったメールを印刷したものらしい。

「あら、バルドフェルド隊長。良いニュースが入りましたわ。あの方が……」
「コッチは悪いニュースだ。しかもあまり時間に余裕がないと来た」

のんびりとしたラクスの言葉を、不機嫌そうに遮るアンディ。彼は厳しい表情のまま、2人の娘に告げる。

「プラントにいる同志たちからの情報だ。ザフトがまた動くらしい。
 作戦目標、オーブ領内に駐留する連合軍の駆逐。攻撃目標、オーブ連合首長国――!」
「え……!?」
92隻腕26話(04/18):2006/02/28(火) 21:36:35 ID:???

              マユ ――隻腕の少女――

            第二十六話 『 黄金の意思 』


アスラン・ザラは、混乱していた。
ミネルバのデッキの上で手すりに寄りかかり、朝日に照らされるカーペンタリア基地を眺めながら、溜息をつく。

考えなければならないことが、山ほどあった。事態の急変に次ぐ急変に、思考がついていけない。
とりわけ気になるのは――

「シン……お前は、何を考えている……? お前は『どこに辿り着いた』んだ……?」

憎み合い、殺し合い、そして倒してしまったその相手が、自分自身にとっても大切な者だった――
アスランはどうしてもそこに、過去の自分を重ねてしまう。2年前のストライクとイージスの死闘。

あの時――アスランは、キラを殺した。殺したと信じた。
ニコルを討たれた怒りと哀しみを、そのままストライクに叩き付けて――自爆という最後の手段を用い、倒した。
……今でも覚えている。その後、気絶から目覚めた時の感情。
達成感も何もなく、復讐を果たした喜びも何もなく。ただただ、大きな虚脱感だけがそこにあった。
後悔だけが、そこにあった。

後にアスランは、キラの生存を知るのだが――そして後悔を脱し、やがて彼と共闘する道を選ぶのだが――
それでも、考えてしまう。考えずにはいられない。
もしキラが「本当に死んでいた」なら、自分はどこに「辿り着いていた」のだろうか、と。
あの出口の見えない後悔と苦悩を越えて、新たな決意を固めることができたのだろうか、と。
いくら考えても……全く想像がつかない。答えが出ない。

……そして、あの頃の自分と同じ状況、その「想像がつかない」状況に、シンは居るはずなのだった。
いや、シンの陥った苦しみは、アスランの陥ったそれよりも、遥かに深刻だっただろう。

シンには、あの時のアスランにとってのカガリのような存在は、居なかった。
シンが奪われたのは、ただの同僚や戦友ではなく、未来を誓い合った恋人だった。
シンが倒してしまったのは、親友よりもなお関係深い、実の妹だった。死んだと思っていた妹だった。
シンがその仇の正体を知ったのは、アスランの時と違い、全てが終わり取り返しがつかなくなった後だった。

憎しみの相手と慈しみの相手が重なるという矛盾。持って行き場のない怒りと後悔。
「ではどうすれば良かったのか?」と問うても、決して出ない答え。
実際、フリーダムを倒した直後のシンは、明らかに精神の平衡を欠いていた。傍目で見てもおかしかった。
懺悔の叫びを上げたかと思えば、呪詛の呟きを漏らし、笑い出したかと思えば、そのままの表情で泣き出して。
精神の病として病院に送られたのも、仕方がないと思った。静かに療養し、じっくり治すべきなのだと思っていた。

――そんな彼がこの短期間の間に、あんな表情を浮かべ、前線に復帰している。
そしてあの強さ。フリーダムを倒した際の、あの神懸った雰囲気そのままの――あるいはそれさえも上回る強さ。
どう考えてもこれは、普通ではない。何かあったとしか思えない。
93隻腕26話(05/18):2006/02/28(火) 21:37:44 ID:???
「分からないと言えば……彼女もそうか」

シンと共に姿を現し、同じような笑みを浮かべていたコニール。
いささか若すぎるにも関わらず、ガルナハンのレジスタンスの有力メンバーだった彼女。
ゲリラ兵としての実戦的能力なら、かなりのものを持っているとは知っていたが……

何故、その彼女がガイアなどに乗っているのだ? 何故、ザフトの軍服を着ているのだ?
彼女はごく普通のナチュラルだったはずだ。MSなど操縦できなかったはずだ。彼女の身に、何が?

……答えの出ない問いを考え続けるアスランは、ふと、眼下に何やら動きがあることに気付いた。
一群の人々が、何やら大きな機材と一緒にミネルバに向かってくる。
軍事基地には少し場違いな、白衣をまとった人々。卵型の、ベッドにも似たモノが2つ。
どうやらその機材は、ミネルバに運び込まれるようで……アスランは、白衣の人々の中に、見知った顔を見出す。

「あれは……? 確か、ベリーニとかいう……!」
「彼女たちもウチのフネに乗り込むそうよ。『アスカ隊隊員のメンテナンス要員』として」

突然、背後から声がかけられる。
驚いて振り返ったアスランの前には……仏頂面の、ミネルバ艦長タリア・グラディスの姿。
つかつかと歩み寄ってきた彼女は、アスランと並ぶように手すりにもたれ、眼下の搬入作業を見下ろす。

「コニール・アルメタは、今や『エクステンデッド』だそうよ。私もついさっき聞かされたばかりなのだけど」
「エクス……! じゃ、じゃあ、ガイアに乗っているのも……!」
「貴方も議長から聞いているのでしょう? 『デスティニープラン』のことを。
 なんでも彼女はそのテストケースだとか。まだ公表できる段階ではないから、内密な話なのだけれど……」

どこか愚痴っぽいタリアの言葉。おそらく彼女も、コニールのような少女を戦わせることに躊躇いがあるのだ。
彼女が議長のプランを知っていることに少し驚いたアスランだが、同時に彼女の気持ちも良く分かった。
タリアもまた、その立場ゆえに孤独なのだ。彼女にとってもアスランは、本音を吐ける数少ない相手なのだ。

「デスティニープラン……。しかし、まさかこんな……?!」
「……少なくとも、その必須条件の1つを世界にアピールするためには、分かりやすい方法かもしれないわね。
 私も本当は、そういうやり口は好きではないのだけれど……。ま、いかにもあの人がやりそうなことだわ」

必須条件。確かにそうだ。それが机上の空論でないことを示さねば、議長の計画は前には進まないだろう。
コーディネーターと同等の能力があることを示さねば、誰も納得しないだろう。
しかし、ならば……

「……艦長。じゃあ、シンはどうなのですか?」
「え?」
「コニールについては、納得はできませんが、理解はできます。文句はありますが、疑問は解けました。
 けれど……シンはどういうことなのです? あんな状態だった彼が、こんな短期間にあんな風になるなんて……」
「……ごめんなさい。私も彼については聞かされてないわ。ただ……」
「ただ?」
「ただ、『アスカ隊のパイロット2名の心身の管理については、専従スタッフに一任せよ』と言われているの。
 1人はエクステンデッドであるコニールとして、もう1人ってのは……」
「……!? シンも!?」
「詳しいことは、ベリーニ主任にでも聞いてみることね。というか、私も教えて欲しいくらいだわ」
94隻腕26話(06/18):2006/02/28(火) 21:38:45 ID:???
眼下では既にベリーニたち「メンテナンス要員」たちの機材搬入が終わり、続いて弾薬類が運び込まれていた。
食料らしきコンテナも見える。どうやら補給を一気に済ませてしまうようだ。

「……そうは言っても、あまりこの件を調べている時間もないのだけどね」
「時間……ですか?」

少しの沈黙を破って吐き出された溜息交じりの声に、アスランはタリアを見る。
タリアの横顔には、どこか苛立たしさにも似た感情が浮かんでいて。

「どうも、宇宙に上がるのは後回しになりそうよ。公式な発令は、もう少し後になりそうだけど……
 上層部は、オーブへの攻撃を考えているみたい」
「オーブを!?」
「正確には、オーブに居座る連合軍への攻撃、ね。
 カーペンタリアの安全を守るためには、あの位置に連合の拠点があってはマズい、ということのようよ」
「い、いや、しかし……!」
「私が貴方と話をしたいと思ったのは、むしろコッチについてなの。
 どうやらこの艦も、地上での最後の任務として、攻撃への参加を命ぜられる雰囲気なのだけど……
 貴方はどうするの、アスラン?」

タリアがアスランの方を振り向き、射るような目で見る。
アスランの魂の底を見通さんとするような視線。彼女の目が、言葉よりも雄弁に彼を問い詰める。
「お前は信用できるのか?」「オーブ相手に戦うことができるのか?」と。

脳裏に蘇るのは、2年前ジャスティスで降り立ったオーブ。
与えられた任務を棚上げし、フリーダムと共闘した戦場。
あの時のあの判断、アスラン自身は間違っていたとは思わないが……ザフトの人間から見れば、確かに不安だろう。

「スエズ沖で、オーブの姫獅子を倒して見せた貴方を、いまさら疑うべきではないのでしょうけれど……
 それでも、何か嫌な予感がするのよね。予想もしていなかったような横槍が入るような、そんな予感が」
「…………」
「貴方はフェイス特権を持っているわ。貴方が何かを言えば、一般兵は貴方を無視できない。
 もし、貴方が、戦場で不用意な発言をすれば……それだけで、ちょっとした混乱が起こる恐れがある」
「…………」
「戦場では有能な敵より、不安の残る味方の方がよっぽど怖いものよ。
 お願いだから、私のこの心配を杞憂に終らせて頂戴。作戦の実行までに、覚悟を決めて頂戴。
 ――いいわね?」

タリアはどこか嘆願するような口調で言うと、身を翻す。陽光降り注ぐミネルバのデッキを後にする。
1人残されたアスランは、眩い程の光の中、その拳を硬く握り締めた。
95隻腕26話(07/18):2006/02/28(火) 21:40:18 ID:???

「……どうだ、シン。具合の方は」
「ああ、絶好調だ。早く戦いたくてウズウズするよ」
「そうか。良かったな」

ミネルバの上、アスランとタリアが会話を交わしていたのとは反対側のデッキ。ほぼ同時刻。
艦自身の影になって日の差さぬそこに、2人の青年の姿があった。シン・アスカと、レイ・ザ・バレルである。
虚空を見上げ不敵な笑みを浮かべるシンと、その横顔を観察するようなレイ。

「言葉にしづらい感覚なんだけどな。ベタな例えになっちまうが、生まれ変わったような気分って感じか。
 世界が今までとは違って見えてるんだ」
「……どんな風に?」
「全体に色彩がはっきりして見える。で、その上に、うっすら赤いフィルターでもかかってるような感じで」
「…………」
「それで……ヒトを見ると、『殺せそうだな』と感じる。どこをどうすれば死ぬのか、手に取るように分かる。
 モビルスーツを見ると、『壊せそうだな』と感じる。何をどうすれば壊せるのか、手に取るように分かる。
 なんというか……ウズウズしてくるんだ」

実に物騒なことを、楽しげに語るシン。面白そうなオモチャを前にした子供のような表情。
レイは、そんな彼を淡々と観察していたが……急に振り向かれ、ビクッと身体を強張らせる。

「ど、どうした?」
「レイはどうなんだ? 身体の調子は大丈夫か? お前も『普通の身体』じゃないんだろう?
 ……どうやら俺とは、ずいぶん事情が違うみたいだが」

目を大きく見開いた、少し壊れた笑顔を浮かべたまま。シンはレイの眼の中を覗き込む。
思いもかけない言葉に、レイは一瞬絶句する。感情の起伏の穏やかな彼が、珍しく動揺している。
数秒の沈黙の後、彼は視線を逸らしたまま、絞り出すような声を上げる。

「……そのこと、誰に聞いた? いつ、どこで、誰から聞いた!?」
「誰からも聞いちゃいないさ。ただ久しぶりに会って、なんとなく『分かった』。直感した。
 どれだけ長いこと一緒に戦ってきたと思っているんだ? 下手な敵よりもよっぽど良く分かるさ」
「…………」

以前シンの語っていた、「敵の事情が分かる」という共感能力。
これもまたその延長線上にあることなのだろうか。以前にも増して、冴えまくっている。
レイは観念して大きく深呼吸すると、真正面からシンの視線を受け止める。

「……どうやらお前には、隠しても無駄なようだな。
 そうだ、俺もまた、普通のコーディネーターじゃない」
「ほぅ?」
「俺は……クローンなんだ。テロメアが短いんだ」

レイは、天を仰ぐ。直接日の射さないこのデッキ、しかし頭上に広がるのは、残酷なまでに蒼い空。

「俺の居る場所は先のない行き止まりで、俺には残された時間さえも少ない。
 だから俺は、お前に、お前たちに『未来』を託したいんだ。オーバエクス・オメガワン……!」
96隻腕26話(08/18):2006/02/28(火) 21:41:16 ID:???

「『未来』は結局、我々ナチュラルのモノなのだ。だからコーディには道を開けて貰わねばならぬのだよ。
 分かるな、ウナト・エマ?」
「はぁ……」

……オーブ連合首長国、セイラン邸。
その豪華な応接間で長い足を組み、屋敷の主であるウナト・エマ・セイランに滔々と語っているのは。
つい先日、ブルーコスモスの盟主であることが暴露されたメディア王、ロード・ジブリール――

そう、あの騒ぎ以来、「表」から姿を隠した彼は、極秘裏にオーブを訪れていたのだった。
一般には騒ぎから遠ざかり、社会的な糾弾を逃れるために姿を消した、と思われていたが……

『次のニュースです。大西洋連邦の事業家、ルクス・コーラー氏が爆破テロと見られる爆発に巻き込まれました。
 すぐに病院に運び込まれたものの、容態は絶望的と見られており……』

応接間のモニターが、ニュースの映像を垂れ流している。画面に映る被害者の写真。豊かな白い髭に、禿頭。
見覚えのある顔に、ウナトの表情は強張り、ジブリールは冷たい笑みを浮かべる。
それは――かつて議長のロゴス暴露の際にも出てきた人物。ロゴスの中でも、かなりの大物。一派閥の長。

「ロゴスの中でも新参者のキミには、分からないかもしれないがね――
 ロゴスとて、その内部でも微妙な方針の違いというものがあるのだ。意見の対立というのがあるのだ。
 ――彼も『私と戦争の考え方が違う』以外は、優秀な人物だったのだがね。実に惜しいことをした。
 一体、どこの誰がこんな卑劣なコトをしたのだろうねぇ? キミもせいぜい、気をつけたまえ」
「…………ッ!」

まるで他人ごとのように、楽しげに呟くジブリール。その冷たい微笑に、ウナトは脂汗を滲ませる。
言うまでもなく、爆弾攻撃はブルーコスモスの得意とするテロの1つ。しかし、まさか連合の大物をも狙うとは。
ウナトの背に、嫌な汗が流れる。目の前に居るのが本当にテロリストのリーダーであることを、改めて認識する。
コイツは、追求から逃げるためにオーブに来たのではない――そもそも、簡単に逃げだすような奴ではない――!

「……それで、私は何をすれば宜しいのでしょうか? ジブリール卿」
「物分りが良いね。このような指導者に恵まれれば、オーブはしばらくは安泰だろう」

引き攣った表情を浮かべるウナトに、ジブリールは鷹揚に頷く。
現在は事実上オーブのトップであるウナトであるが、一回り以上も年下のこの男には従うしかない。

「いやなに、私とて特別なことを求めたりはしないよ。今まで通りにやってくれれば、それで良いのだ。
 先の作戦こそ失敗したが、オーブはカーペンタリア再攻略のためにも重要な拠点だ。
 国を挙げて連合軍に協力する、その態勢を維持し続けてくれれば、それで良い」
「はぁ……」
「たとえここでカーペンタリアが落とせなかったとしてもね――あと少し時間を稼ぐだけで、戦争は終るのだ。
 あと1月もしない内に『レクイエム』が宇宙(そら)に流れる。そうすれば、コーディどもなど」
「レクイエ……ム?」
「その時、勝ち残っていたければ、今どうするべきかは……聡明な貴方のことだ、語らずともよくお分かりだろう」

葬送曲を意味する、聞き慣れぬ名前。ウナトは意味が分からず首を傾げるが……
ジブリールは、ただ自信に満ちた笑みを浮かべるだけで、それ以上説明する気はないようだった。
97隻腕26話(09/18):2006/02/28(火) 21:42:09 ID:???

――オアシスの街の、病院の一室。カガリが人知れず身を隠す、その部屋で。

「……音沙汰ありませんね」
「マルキオ導師とは連絡が取れたと言っているんだ。あとは待つしかないだろう?」

不安そうな声を上げるアマギに、カガリは汗を散らしながら答える。
既に彼女の服装は、病人用のパジャマ姿ではなく、動き易そうなトレーニングウェア。
広い病室に持ち込まれたエアロバイクを漕ぎながら、カガリははっきりと答える。室内には他にも無数の運動器具。

ジャンク屋の持つネットワークを使い、彼らが発した2つのメッセージ。
片方はマルキオ導師を介し、キラを経由して、かつての戦友たちの所に無事を知らせ。
そして、もう片方は……未だ彼らの手元に届いたのかどうかさえ、分からない。分からないのだが。

「とにかく私自身が帰国しないことには、どうしようもあるまい。
 そのための『彼ら』だ。そのためのリハビリだ。今ここで焦ったところで、どうにもならないぞ」
「それは、そうなのですが……」

他人を信じ全てを任せ、自身は「今できること」であるリハビリ運動に励むカガリ。眩しいほどに、前向きな姿勢。
……アマギ一尉は、つくづく思い知った。トダカ一佐が何としても彼女を守ろうとした理由が、ようやく分かった。

カガリ・ユラ・アスハは、その存在だけで人に希望を与えるのだ。
政治も外交も決して上手とは言えないし、感情に走りがちな部分もあるが、それでも天性のリーダーなのだ。
彼女と一緒にいると、それだけで今の窮地が何とかなりそうな気がしてくる――

と――そんな彼女たちの病室のドアが、唐突にノックされる。
ノックされ、室内の者たちが何か答えるよりも先に、扉が開かれる。
そこに居たのは――アマギの頭に、無数の疑問符が浮かぶ。なんだってこんな場違いな人物が、この部屋に?

「……?? お嬢ちゃん、ひょっとして部屋を間違えては――」
「来てくれたか!」

アマギの不審の声を、カガリの嬉々とした声が遮る。アマギはびっくりして振り返る。
この少女を――こんな少女を、待っていた、と?

そう、そこに居たのは、1人の少女だった。マユ・セイラン三尉よりもなお幼い少女だった。
年齢で言えば10歳にも満たないだろう。髪の短さもあって、下手すれば少年にも見間違えてしまうような外見。
体格も見た目もごく普通の少女。ただその視線だけが、歳に似合わず鋭く、力強い。

その少女が、羽織っていた袖なしの上着を、開いて見せる。
その裏側にあったのは、稲妻のようにも見える蛇の紋章。戦場で知らぬ者無き、最強の傭兵部隊のマーク……!

「傭兵部隊『サーペントテール』、風花・アジャー。ご依頼を受けて参上しました。
 カガリ・ユラ・アスハの本国への護送任務、サーペントテールの全力を挙げ、受けさせて頂きます」
98隻腕26話(10/18):2006/02/28(火) 21:43:44 ID:???
――スカンジナビア王国、旧クライン邸……近くにある、大きな工場。

「もうっ、どれだけ待てばいいのよッ! 時間ないって言うのにッ!」
「だからちょっと見てもらおうと思ってね。『何を待って貰っているのか』を」

廊下を歩きながら、大きな声を響かせる。
苛立ちを隠せないマユ、飄々とした態度を崩さぬアンディ。
その後ろからは掴み所の無い微笑を浮かべたラクスが、車椅子でついてくる。車椅子を押しているのは樹里だ。

カガリ健在、オーブ攻撃間近のニュースに、マユは一刻も早くオーブに帰りたいと申し出て。
けれどもアンディもラクスも、「ちょっと待ってくれ」と言ったきり、何もしようとする気配がない。
どうやら彼らも何かを待っていたようだが……数日経っても動かぬ彼らに、とうとうマユは癇癪を破裂させて。
それで仕方なく、アンディは彼女をここに連れてきたのだった。

「まだ、最終調整の途中なんだがな――まあ、文句は見てから言ってくれよ。
 おーい、ロウ、バルドフェルドだ。明かりつけてくれ!」
「おうっ、ちょっと待ってな!」

カッ! カカッ!
明るい声が応えたかと思うと、工場の中に眩い明かりが灯って――

「アンタがコイツのパイロットかい? どうかな、コイツの仕上がりは」

暗がりの中で作業をしていたらしい、バンダナを巻いた青年がマユに声をかける。
しかしマユは答えられずに。呆然と目の前のMSを見上げる。
その唇が、ふるふると震える。

「ど……どうして……! これは……?!」
「最初はそのまま直そうと思ったんだが、ザフト系の純正パーツが手に入らなくてよ。
 結局フレームから何から全部に手ェ入れた、新規設計みたいなMSになっちまった。
 ともあれコレが――ジャンク屋ロウ・ギュール謹製、『Sフリーダム』だッ!」
「どうですか。マユさんが行きたいと望む道に、この『剣』は必要ではありませんか?」

楽しそうに語るジャンク屋のロウ。静かに微笑むラクス。
マユはしかしそれらに応える余裕もなく、目の前の機体を凝視する。未作動のPS装甲独特の、灰色の姿。

――それは、撃破されたはずのフリーダムだった。そして確かにフリーダムでありながら、全く違うMSだった。
両肩はより上に向けて張り出し、全般的によりマッシブな印象になって。
目立つところでは、背中に背負った翼の形状が全く違うモノになっている。
前腕の形状も大きく変わり、盾と呼ぶにはいささか小さ過ぎる装甲板が張り出して。あとは、腹部に……

「……なぁ、ロウ」
「なんだい?」
「お前さんの腕にケチつける気はないんだがね……あのヘソの所にある、不恰好な大砲は何だ?」
「え〜、そうか〜? そんなに格好悪いかねぇ?」

そう、腹部の中央には、かなり目立つ大きなビーム臼砲が大きな砲口を開いていた。
アンディの言う通り、お世辞にも格好いいとは言い難い。
99隻腕26話(11/18):2006/02/28(火) 21:46:03 ID:???
「背中の羽根、あんたらが持ってきた『追加パーツその1』に換えたから、正面撃てる武器が減っちまっただろ?
 だから火力の足しにと思ってね。ちょうどイイ掘り出し物が手に入ったもんで、組み込んでみた」
「掘り出し物って……ああ、そういえば以前、地上で仕入れたジャンクがあるとか言ってたな」
「おう。この『複相ビーム砲』も、スエズ沖の海底でサルページされたMSについてたモノさ。
 ボディは完全に大破してんのに、この大砲だけは奇跡的に無傷でよ。大きさもまるで計ったかのようにピッタリ!
 『俺を使ってくれ!』っていう『メカの声』が聞こえた気がしたね、俺は!」

ビーム砲の由来を楽しそうに語るロウ。メカの声、などといった妄言について行けず、呆れ顔のアンディ。
と――ずっと無言で聞いていたマユが、俯いたまま一歩前に踏み出して。

「……そのMSって……どんなMSだったの?」
「ん? どんなって言われてもなァ……そうだな、確か……
 俺が手に入れたのは、上半身だけでさ。ちょうど腰のところで爆発かなんかがあったらしくて……な。
 コクピットが吹っ飛んでたから、型番とか名前とかは分かんねーんだけど……
 あれは水陸両用機だったのかなぁ。水圧対策なのか、やけに頑丈なフレームが印象的だったな。
 あとは……PS装甲使ってて……そうそう、なんか両肩に大きなバインダーつけてたな。丸っこい奴」

ロウの説明に、マユは息を飲む。息を飲んで、目の前の新生フリーダムを見上げる。
見上げたマユの目から、ポロポロと涙がこぼれ出して……その涙に、ロウとアンディ、男たちは大いに慌てだす。

「お、おいロウ! てめぇよくもあんな珍妙なモンつけやがって! 泣き出しちゃったじゃねぇか!」
「ちょ、ちょっと待て俺のせいなのか!? 泣くほど酷いのかよ、俺の自信作は!?」
「……ううん、違うの」

ヒソヒソ声で互いをなじり合う男たちに、マユはポロポロと泣き続けながら、微笑む。
穏やかな微笑みを浮かべたまま、なお泣き続ける。

「――嬉しいの。もう、会えないと思っていたから。もう、思い出だけだと思っていたから。
 この子と一緒なら……このフリーダムなら、あたしはどんな時でも1人じゃないって、分かるから――!」


「しかし……フリーダムの修復が済んだのはいいが、どうやってオーブまで帰るんだ?」

マユが泣き止み、一通り機体の性能説明が済んだ後。アンディはぼやいた。
いくらフリーダムでも……Sフリーダムでも、ここからオーブは地球の裏側。いくらなんでも遠すぎる。
地上はどこも戦争の真っ最中で、軍用MSが素直に通して貰えるとも思えない。
ロウは「手段はコッチで確保するぜ!」と言ってはいたが、アンディたちもその方法までは聞いていなかった。

「まあ、任せときなって。今、アイツが手配を進めているとこだから――」
「ロウ先輩! 今帰りました!」

ロウの言葉を遮るように、工場に声を響かせたのは。
色のついた眼鏡をかけた、理知的な雰囲気の青年。ジャンク屋として生きる道を選んだ、サイ・アーガイルだった。
マユにとっては命の恩人だが、こうして顔を合わせるのは初めてのこと。
だがマユは、いやマユに限らず全ての人々は、サイと一緒に運び込まれてきた、巨大な物体の方に目が釘付けで――

「これ……何の冗談?!」
「ヘヘッ。コイツがさっき言ってた『手配してたモノ』さ! さっそくセッティングと調整、始めるぜ!」
100隻腕26話(12/18):2006/02/28(火) 21:47:10 ID:???
――オーブ連合首長国は、夜の闇に包まれていた。
多くの職員が忙しげに働く行政府は、未だあちこちに明かりが灯っていたが……

その最上階の一角。代表首長代理の執務室は、外と同じような暗闇に包まれている。
ユウナ・ロマ・セイランは、壁際に背を預けたまま、ガランとした部屋を虚ろな目で眺めている。

ガランとした部屋。荒れ果てていたあの部屋は、綺麗に掃除がされて。
部屋の中には、もう何も残っていない。豪華な調度品も散らかったゴミも、全て運び出されて何もない。
ただ、以前からあった執務室の机と、机の上の認印だけが残されて。形式上の仕事を果たすために、必要最低限の品物。

本当にユウナの身を案じるなら、専門家の治療を受けさせるべきだったろう。療養させてやるべきだったろう。
しかしウナトは、それをしようとはしなかった。
外での仕事こそ体調不良を口実に断らせていたが、表向きは未だにユウナを形式上の「代表首長代理」に据えて。
その実、彼自身には何の決定権も与えず、ただウナトの認めた書類に判を押すだけの存在に仕立て上げた。
食事さえも摂ろうともしなくなったユウナの所に医師を送り、点滴で栄養を摂らせることさえした。

――この実態は、オーブの中枢に近い、限られた人間だけが知ることだった。
彼らはまた「転んで怪我をした」と公表されていたウナトの頭の傷についても、真相を知る者たちでもあった。
彼らは陰で囁きあった。「ウナトは息子に復讐をしているのだ」と。
「飼い殺しにして死ぬことさえも許さず、いずれユウナが折れて謝ってくるのを待っているのだ」と。
それが本当かどうかは、ウナトにしか分からぬことだったが、しかし――

そしてユウナは、相変わらずこの部屋に居る。泊り込んでいるというか、動く気力も残ってないと言うか。
ただ、生きている。目的もなく希望もなく、絶望すら通り越して、ただ息をしている。
誰かが入ってきて、書類に勝手に判を押して、そのまま出て行くのを、虚ろな目で見守るだけの存在。
お茶目な2枚目半の面影など、どこにも残っていない。キレ者の若き政治家の面影など、どこにも残っていない。
代表首長代理というより、ホームレスとでも呼んだ方が相応しいような外見。文字通りの、生ける屍。

窓の外には、満月が浮かぶ。穏やかな夜。
ザフトの攻撃が近いとか何とか、周囲が騒いでいたのが嘘のような静けさ。
そういえば――オーブ艦隊を送り出す決断をしたあの夜にも、月が煌々と照っていたっけ。
果たしてあれから、何度目の満月なのだろう。ユウナには既に、時間の感覚がない。現実と夢の区別も曖昧だ。

と――
静かに月を見ていた彼は、カラカラカラ、と引き戸が開けられる音を聞いた。
視線を少し動かすのも億劫だ。億劫だから、そっちを見ることもしない。
けれども、音と気配で感じられる。執務室のベランダから、誰かが入ってきたのだ。

「……夜分失礼します。
 ユウナさん、急なお願いで申し訳ないのですが、あなたの判が欲しい書類があるんですよ」

侵入者は丁寧な口調で、壁際に座り込んだ青年に話しかける。
テラスから、という異常な侵入ルートに違和感を感じる感性すら残っておらず、ユウナは無言で机の上を指す。
判が欲しいなら勝手に押して行くがいい、との意思表示。どうせ今のユウナには、決定権などないのだ。

「では、失礼して……。はい、ありがとうございました」
101隻腕26話(13/18):2006/02/28(火) 21:48:04 ID:???
カラカラカラ……。ベランダに出るための引き戸が、再び開かれる。侵入者の気配が、しかし戸口で一度止まる。
ふわり、と夜風が舞って、ユウナの髪が揺れる。

「書類の写しは机の上に置いておきました。ヒマがあったら見ておいて下さい。
 ――ああ、あとそう言えば」

何やらまだ言いたいことがあるらしい侵入者。
もういいだろう、用事が終ったならさっさと帰れ――そう思ったユウナに、侵入者は意外な言葉を告げる。

「カガリとマユは、まだ生きていますよ。
 2人とも遅くなってしまいましたが、こっちに戻ってくるそうです。……じゃあ、僕はこれで」


――その言葉の意味を理解するのに、十数秒かかった。
麻痺しきった表層意識を越え、彼の魂の奥底まで届くのに、十数秒の時間を必要とした。

その意味を理解すると同時に、はッと顔を上げるユウナ。
しかし既にその時には、部屋にもベランダにも、礼儀正しい侵入者の姿はなく。夢か幻のように消えうせて。
無人のベランダ、その手すりにただ1羽、小さな鳥が止まっていた。
いや正確には、それは鳥ではない。月明かりの中、カシャカシャと音を立てて跳ねる、鳥型のペットロボット。

『トリィ! トリィ!』

電子音を上げ、満月に向けて緑の翼を広げるロボット。ふわりと風に乗り、眼下に広がる夜の街へと飛んでいく。
数日ぶりに立ち上がったユウナは、それを追うようにフラフラとベランダの方に進んで……ふと、机の上。
あの侵入者が置いていった「書類の写し」とやらに、目が止まった。

「……い……今のは……?」

震える手で、書類を取り上げる。彼が「代表首長代理の直々の命令」を欲したその書類。
そこに書かれていた名前に、ユウナは目を見開く。
そうか――今のは『彼』だったのか。ならば。

「本当に――彼女たちは、生きてるのか――!」

ユウナの目に、力が戻る。一気に意識が覚醒する。
動かねばならない。戦わねばならない。呆けているヒマなど、もはやない。
彼は執務室に唯一残された調度品、その大きな机の引き出しの中を漁り始めて――

「――あった!」

やがて出てきたのは、1つの封筒。カガリが国を出る際、ユウナに託した「万が一」に備えての最後の手段。
そこには、他に何の説明もなく、ただ『同窓会名簿』とだけ書かれている――

そしてユウナ・ロマ・セイランは、数週間ぶりに、動き出した。
静かに、鋭く、最高の手際で。
102隻腕26話(14/18):2006/02/28(火) 21:50:13 ID:???
――開けきらぬ薄明の中を、艦隊が進んでゆく。カーペンタリアから出発した、ザフト側の攻撃艦隊だ。
数日前に行われた連合軍の襲撃、その際にカーペンタリア基地が発した救援要請。
それに応じてジブラルタル・スエズ両基地から馳せ参じた応援部隊が、そのまま攻撃部隊になっていた。
グフとザクを主力とし、そこに水陸両用機やバビなども取り混ぜた、実に贅沢な構成となっている。

宇宙からは、同時進行的に降下作戦も展開されることになっていた。
失敗に終ったヘブンズベース攻略戦、その際に使いそびれた第2波、第3波攻撃用の降下部隊。
それらに追加の部隊を加えて再編成し、ザフトに残っていた降下ポッドをありったけ掻き集めて。
オーブにはニーベルングのような対空砲はない。空挺攻撃を受けた経験もない。有効な攻撃ができるはずだった。

一応、作戦の目的は「連合軍の駆逐」となっていたが……
そもそも今のオーブ自体が、親連合国家なのだ。オーブ軍もまた、攻撃対象として認識されていた。
さらに、それに加えて……

「ブルーコスモスの盟主、ロード・ジブリールがセイランの屋敷に逃げ込んでいるという情報もある。
 コイツも攻撃目標だ。生死は問わん、決して逃がすなよ!」


「何ボーッとしてるんだ、アスラン?」
「あ……コニールか……」

ミネルバの艦内。パイロット控え室で少し早めに待機していたアスランは、小柄な少女に声をかけられた。
薄緑色のザフト系パイロットスーツに身を包んだコニール。未だに彼には、慣れることができない。

「いや……俺はどうするべきなのかな、とか思って、さ」
「どうするって……何を? 何について?」
「……それが分からないから悩んでいるんだ」
「??」

自分でもまとまらない思考に苦しむアスランを、コニールが不思議そうに眺める。
あれから結局――シンやベリーニを問い詰める時間は、取ることができず。議長を問いただすチャンスも得られず。
アスランは未だ胸にモヤモヤしたものを溜め込んだままで。
しばらくの沈黙の後、アスランはコニールに問い掛ける。

「……コニールは……どうして、その……」
「エクステンデッドになったのか、だろ?」

不敵な笑みを浮かべ、彼の質問を先取りする彼女。
元々強気な彼女ではあったが、何と言うか……どこか歪な印象を受ける、その微笑み。アスランは、少しだけ怯む。

「あ、ああ……」
「力が欲しかったから、に決まってるじゃないか。あんただってそうだったんだろう? もう忘れたのかい?」
「……ッ! だ、だが、その力で何をしたいのか、それが問題なんだッ!」

自らの後悔を踏まえ、アスランは力説する。だがコニールは、歪な笑みを浮かべたまま、はっきりと答える。
その至極真っ当な内容に反し、ひどく不安を掻き立てられるような、そんな雰囲気――

「アタシはただ、平和が欲しいだけ。悪い奴らから、世界を取り戻したいだけ――!」
103隻腕26話(15/18):2006/02/28(火) 21:51:17 ID:???
――開けきらぬ薄闇に包まれた早朝の街に、大きな足音が響く。
オーブの街の中に展開していたのは――ウィンダムの大部隊。
砲戦パックを背負い、海の方から来るであろうザフトの攻撃を想定し、良い位置を探す。
立ち並ぶビルディングを遮蔽物に、一方的に海に向けて攻撃できる位置。

と――その頭上を飛ぶ、1機の航空機。
いや航空機ではない、前進翼を持つそのシルエットは、MA形態のムラサメだ。

『ちょ、ちょっと待て! 誰だそこの部隊の責任者はッ! そんな所に居たら街が戦場になるだろッ!』

連合軍の展開の様子に、思わず声を荒げるムラサメのパイロット。
しかし、その抗議を受けたウィンダム部隊の隊長には、全く動じる様子がない。

『我々は命じられた通りに展開しているだけだ。どこが戦場になろうと、我々の関知することではない』
『命令だと!? こちらは聞かされてないぞ、そんな布陣!』
『オーブ軍の事情は知らんな。おおかた、そちらの連絡が行き届いてないのだろう?
 ともかく我々は正式な命令に従って行動している。文句があるなら諸君らの上の方に言いたまえ』
『…………ッ!』

言葉遣いこそ丁寧ながら、完全にバカにしきった態度。
――今、この場だけではない。
この国に派遣され、オーブの基地を利用している連合軍は、オーブ軍を舐めきった態度を取り続けていた。
横暴で、傍若無人で、高圧的で……2言目には「2年前のようになりたいのか?」
前の戦争でこの国を蹂躙した事実を持ち出し、戦勝国としてオーブ軍を見下して。

派遣艦隊の全滅による甚大な損害。遺体さえ帰って来ない国家元首。象徴的存在だったフリーダムの撃墜。
相次ぐ絶望的なニュースに、オーブ軍の士気は下がる一方だった。
そんな中で、2年前、彼らを打ち倒した軍を相手に、反抗する気力など、残ってはいなかったのだが――

「しかし、冗談じゃないぞ!?
 コイツらにとっては他人の国かもしれんが……
 この街は、俺たちが必死になって復興させ、ここまで持ってきた街なんだぞ……!」


「……連合軍は、街を盾にするように展開しているみたい。オーブ本土を守る気は、まるで感じられないわ」
「そうですか――」
「なんとか機体の方は間に合ったけど、設定の調整は完了してないわよ? それでも行くの?」
「ええ。細かい調整は、出てから自分でやりますから」

――オーブの群島の中の小さな島、モルゲンレーテの隠し工場。
その存在を知る者も限られる、新技術の開発や研究に使われている施設で。
2人の人物が、仕上がったばかりのMSを前に言葉を交わしていた。
片方は、先の大戦でクサナギにも同乗したアストレイシリーズの開発責任者、エリカ・シモンズ。
そしてもう片方、茶色の髪を持つ、穏やかな雰囲気の青年は――
104隻腕26話(16/18):2006/02/28(火) 21:52:10 ID:???
間もなく、陽が昇る。ザフト艦隊の行く先、水平線上に群島の姿が見えてくる。
ザフト艦隊の側から、第一波攻撃用の航空MSが、次々と飛び出して行く。
軽量のディン、大火力のバビ、格闘戦に強いグフイグナイテッド。
どうやら連合側は、島の上で迎え撃つつもりらしい。木々の間や街の中に布陣している様子が見える。
ザフトのMS隊は、何の抵抗もなく海の上を走り、オーブ群島へと迫ろうとする。
迎撃の態勢を整える連合軍。もう少し外側に戦線を築きたいと思いつつ、彼らだけではどうしようもないオーブ軍。
もうすぐ双方が射程圏内に入る、と思えた、その時――

――1つの影が、洋上を滑るように走っていた。一体どこから出現したものか、かなりの高速で。
両軍の間に割り込むように海面を駆ける、たった1機のMS。
連合・ザフト双方、いやオーブ軍も含め誰にも見覚えのないシルエット。黄色みがかかったスマートな印象の――

「――なんだ、コイツは?!」
「連合……ではなく、オーブ軍?!」
「ロイヤルコード! アスハ家の縁者だと?!」

3軍の誰もが驚きの声を上げる。
識別信号はオーブ軍。所属部隊を示すコードは、代表首長の関係者だけに許された、通称、ロイヤルコード。
その謎のMSは、洋上で向かい来るザフト軍の前に、大きく手を広げて立ち塞がる――

「邪魔だ、コイツ! オーブ軍なら我らの敵ッ!」
「バカめッ、たった1機で飛び出しやがって!」

血気に逸ったザフト側の何機かが、問答無用で攻撃を浴びせ掛ける。
バビの胸のビーム砲が大きな光の槍を放ち、グフの腕の4連装砲が続けざまに火を噴く。
謎のMSは、避けようともしない。何本ものビームが、その謎の機体に真っ直ぐ突き刺さる――ように見えた。
だが。

「……プラズマ臨界良し全ビーム回折格子制御良好。『ヤタノカガミ』出力最大で前面に展開。
 着弾予測と敵の移動予測統合し反射角度算出、そこから上方に2.7度修正 続いて下方に1.2度修正――」

MSのコクピットの中で、パイロットの指が恐るべき速度で動く。リアルタイムで書き換えられるプログラム。
同時にその装甲表面が、急に輝きを増して――

「――なッ!?」

バビのパイロットたちが、驚くヒマがあればこそ。
眩いばかりに輝くそのMSに、ビームが触れるか触れないかのところで、急に止まってしまい――
そのまま、逆に撃ったバビ自身のところに跳ね返ってくる。見えない鏡に当たって反射したかのように。。
身構える間も避ける間もなく、バビの頭が、自らの撃ったビームに撃ち抜かれる。
グフの両手両足が、自らの撃った4連装ビーム砲の攻撃で、吹き飛ばされる。
その信じがたい光景に、3つの軍の誰もが、我が目を疑う。

「な――なんなんだ、アレは?!」
「ゲシュマイディッヒ・パンツァーの応用技術?! いやしかし、いったいどんな制御をすれば――」
「ビームが効かない、だと!?」
105隻腕26話(17/18):2006/02/28(火) 21:53:36 ID:???
息を飲む彼らをよそに、太陽が水平線から顔を出す。
朝の最初の光に照らされた、その謎のMSの姿は金色に輝いて。強烈なまでの存在感を万人に示す。

「――僕が必要としていたのは、敵を打ち倒す刀でもない。運命を切り開く剣でもない」

ORB−01、『アカツキ』。2年前の遺産とでも呼ぶべき忘れられた機体。
元々、ストライクのデータとアストレイの基礎技術を融合させ、オーブの次世代MSを作る計画だったのだが……
新型の装甲や様々な武装など、あまりに「欲張った」設計は、前大戦時の技術では実現できなかった。
2年の長きに渡る基礎研究を経て、ようやくこうしてプロトタイプの第1号が完成したばかり。

いや、このアカツキ、未だに「完成」しているとは言い難い。未完成のままに戦場に躍り出てきたようなもの。
あまりに敏感過ぎてコントロール困難な操縦系統。乗り手を振り回す過剰なパワー。不十分な調整。
撃ち込まれたビームを反射させる新型装甲「ヤタノカガミ」は、未だ手動で設定せねば正確な制御ができない。
こんな不良品、マトモに乗れるパイロットなど、他にはまず居るまい。
戦闘の真っ最中にMSのOSを操作してしまうような、この規格外の男しか――

「――僕が欲っしたもの、それは全てを受け止める盾。力無き者たちを、守り抜くための盾――」

青年は、迷いのない目で呟く。歌うように、誓いの言葉を口にする。
2年前の英雄。姿を隠していた男。かつてあの伝説のMS・フリーダムを駆り、前の大戦を終戦に導いた青年。
キラ・ヤマト。

 『そんなに守りたかったって言うなら……避けたりしないで、全部受け止めなさいよ!』

キラの耳に、少女の叫びが蘇る。涙の混じった、血を吐くような叫び声。
守れなかったシャトル。守れなかったスカイグラスパー。守れなかった脱出艇。
そして、守れなかったことに気付くことすらできなかった、隻腕の少女。
それらの悲劇の果てに、彼がやがて望むようになった、「全てを受け止められる盾」こそが――

「もう、戦うつもりはなかった。もう、誰も傷つけたくはなかった。
 けれど、彼女たちが居ないのなら。彼女たちが帰ってくるまでは。
 僕が代わりに、彼女たちが守りたかったものを守ろう。命を懸けてでも守り抜こう。
 たぶん僕には、それくらいのことはしなきゃいけない責任が、あるはずだから――!」

そしてキラは、新たな愛機を身構えさせる。
ストライクの流れを汲む金色のMS、アカツキ。エールストライカーの流れを汲む翼、オオワシパック。
目の前には絶望的な数の、ザフトの大艦隊。
背後には、まるきり国を守る気のない連合軍と、未だ呆然としたままのオーブ軍。
それでも、キラの表情には、絶望はない。ただ真っ直ぐに、正面を見据えて――!

「オーブ軍、聞こえますか。僕の名は、キラ・ヤマト。
 ユウナ・ロマ・セイラン代表首長代理の命の下に、MS『アカツキ』はオーブ防衛に参加します!」
106隻腕26話(18/18):2006/02/28(火) 21:55:05 ID:???
その金色のMSの姿は、未だ控え室で出番を待つアスランとコニールの所にも届けられていた。
パイロット控え室にあるモニターに、ビームを反射する様子が映される。思わず言葉を失うアスラン。

「……どうやら、厄介な敵が現れたようですね」

そこに入ってきたのは、パイロットスーツに身を包んだレイ・ザ・バレル。彼にしては随分遅い控え室入りだ。
もう1人、この場に来るはずのMSパイロット、シン・アスカは、相変わらず顔を見せない。

「珍しく遅かったじゃないか。シンはどうした?」
「発作が……いえ、少し体調が悪かったもので。薬は飲みましたから、もう大丈夫ですが。
 ……シンなら、もうデスティニーに乗っているのでは? 1時間も前に部屋を出ていますから」
「え!?」

アスランは思わず驚きの声を上げる。
彼がこの控え室に来たのは、いつもよりもかなり早い時間。一番乗りのつもりで来ていた。
その目的は、もちろんシンを捕まえること。彼から詳しい話を聞く時間を、作ること。
しかし、まさかそれ以上に早く彼が来ていて、しかも既にMSに乗り込んでいるとは――

「さ――行きましょう。アレは相当に危険な敵です。他の隊に任せられません。我々の手で、確実に仕留めねば」
「あ……ああ。そうだな」

レイに促されるまま、アスランも自分の機体に向かう。向かいながら考える。
何かこの戦い、一波乱も二波乱もありそうな気がする。素直に連合軍を蹴散らすだけでは済まない予感がする。
実際に何が起こるかまでは、まるで見当がつかないのだが――。

アスランがふと見上げれば、そこにはデスティニー。
コクピットハッチから身を乗り出すようにして座っていたシンと、目があった。
シンは黙ってニヤリと笑うと、コクピットの中に身を翻す。言葉をかけるヒマもない。
ミネルバのMS格納庫に、オペレーターのアビーの声が響く。

『各パイロットは搭乗機にて待機願います。繰り返します、各パイロットは搭乗機にて待機願います――』


――急速に夕闇に包まれていく、スカンジナビア王国。
雪の平原の中、アンディが、ラクスが、ロウが、樹里が、サイが、天に向けて飛んでいく影を見上げている。
煙の尾を引いて遥かな天空に上っていく影。もうこの距離では、その大まかなシルエットしか見えない。
旧世紀、宇宙開発の初期に使われた、大型のロケットのようなシルエット。
天に、文字通り天空に向かって消えていくその姿を見送りながら――ラクスは、柔かい微笑みを浮かべた。

「今は僕よりも必要としている子が、あそこにいる……、あの人が言った通りでしたわね。
 ……さて、マユさんも行ってしまったことですし、そろそろわたくしたちも動き出しましょう。
 わたくし自身の責任に、決着をつけるために。あの『彼女』と、決着をつけるために――!」


                           第二十七話 『 集結する光 』 につづく

・タイトル
 別にアカツキの存在だけでなく、出てきた多くの人々の意思を込めて……。

・イザークとディアッカの関係
 幼年学校から一緒、ってのは捏造というかオリジナル設定ですが。なんかそんな感じしませんか?

・三隻同盟同窓会(Three-ships Alliance Forces Alumni、3SAFA、スリーサファ)
 俗に「ラクシズ」などと呼ばれている「あのグループ」に組織名つけてみました。
 ちなみに9話と13話で既に組織名が顔を出しています。

・Sフリーダム
 かなり悩んだのですが、結局外見はそのまんま、ストライクフリーダムです。
 外見以外の設定、映像に影響与えない部分はかなり弄りました。次回以降に説明を回した部分もあります。
 名称も悩みましたが、ロウの過去の命名傾向からこのような形に。「S」に込められた意味は多岐に渡ります。
 (Xアストレイ、ドレッドノートH、アウトフレームD……どれもアルファベットの意味は曖昧かつ多義的です)
 ちなみに腹のビーム砲、こちらで設定弄るまでもなく、実は型番と名称が例のモノと一致してまして……

・アカツキ
 こちらも外見はそのまま、設定は少し調整。8話の頃からキラたちが延々作っていたのはコイツです。
 特に大きいのはビーム反射装甲ヤタノカガミの設定変更ですが……これについては後ほどさらに。

・ラストに打ち上げたもの
 これも次回詳しく。

次回、大戦闘の予定。オーブ攻防戦本番です。
108通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:15:14 ID:???
隻腕作者様、乙です。

こういう事を書くと、嫌ならスルーすればいいと言われるのでしょうが、
いち読者として、前からどうしても言いたくて、26話で我慢できなくなってしまいました。
その、今回の説明のあったスリーサファだったり、シンのオメガワン化だったり、
結局、悪い議長サイドや悪い連合を正義のラクシズが成敗してめでたしめでたしですか?
その主役がキラからマユに変わっただけですか?
キャラをひどい境遇にすればそれで感動ですか?
連合兵だから、街を盾にする事に罪の意識が無い描写をしてもOKですか?
偉そうな感想ですみません。
他の方は肯定的ですので、たぶん、自分の感覚がズレてるだけなのでしょうが。
109通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:21:06 ID:???
隻腕のお人ぉッ!! 蝶乙ですッ!!
ミネルバのメンバーはどことなく不協和音、というより楽器個々の調律が問題かな…
されども強敵シン達にOS調節しながらなんて大丈夫かッキラは!?
サイと3SAFAの面々の姿がなんだがすごい嬉しいです。

どうせ他の人がユウナキターとかアウル・゚・(ノД`)・゚・とかやるから言わない
110通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:24:54 ID:???
>>108
隻腕書いてるものです。

ん〜っと、答えるべきか沈黙を守るべきか、ちょっと悩んだのですが……

とりあえず、今は意図的にちょっと傾けています、とだけ言っておきます。
善悪2元論を素直に信じてるわけでもありませんしね。
ザフト・連合双方について、もう少し「内側から」語る場は用意するつもりでいます。
ただ、全体の構成のバランス、全体のテンポ、話のわかり易さ等々を考慮し、現状はこうなってます、としか。
このまま最後まで行くつもりはありませんが……貴方を完全に納得させられるかどうかまでは、お約束できません。
「マユが主人公」、この基本線は外す気もありませんので。
111通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:26:31 ID:???
隻腕GJ!動き出すユウナとアカツキラテラカッコヨス
112通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:34:46 ID:???
和田も隠者も、追加武装自体は既存のものばっかりだからな。
たとえば隠者のリフターソードはガイアのと完全同型。すねカッターはその前型。
うむ、しかしそのまんまアビスか。中々因縁めいた良い機体になって・・・はいるんだが・・・

やっぱり見た目アレなのはちょっとなぁ・・・ゴツいよ和田
113通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:35:28 ID:???
ならば俺がやろう。アウル・゚・(ノД`)・゚・
114通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:38:51 ID:???
キラの操縦が凄すぎて金色に輝く関節の設定はどうなってるんだろ?
115通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 22:42:11 ID:???
いつもながら隻腕GJ!

Sフリーダムは金色間接さえ止めればそれなりにカッコいいんじゃね?
キラがユウナに押させた書類に「アークエンジェルの譲渡証明書」が混ざってないか
思わず期待してしまう俺。
マユは新生(shinsei?)フリーダムと共に弾道軌道でオーブに行くのでしょうか。
大気圏突入の経験を活かしてうまい事戦闘に割り込んで欲しい。
それにしても「守る」ことにこだわったキラが乗っただけですげえアカツキが
カッコよく見えるよ・・・・・・!!

何か今回は語りつくせないな・・・・・・。
次回、キラ参入でもエース級の足りないオーブ+連合軍がザフト相手にどう
持ちこたえるかも期待。
116通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 23:02:20 ID:???
>>109に代わって、ユウナキターーー!
117単発屋:2006/02/28(火) 23:23:07 ID:???
隻腕作者さま、GJ!です。
盛り上がってきましたね(以前からですがね)

>>87
貴重なご意見ありがとうございます!
・・・白状します。私ミナさまの人となりをまったく知らずに書いております。
バックグランウンドの設定は知っていましたが・・・orz
口調を変更したものをそのうち避難所へ上げておきます。
(こっちに同じ内容のものを載せるのはどうにも気が引けるので・・・)

118通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 23:34:20 ID:???
本編で突然出てきた超兵器達に説得力持たすのが凄いなぁ
内容が濃くてボキャブラリーの乏しい自分ではどこから感想書けばいいのか分かりません
隻腕さん今回もGJでした
119通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 23:39:51 ID:???
来年は忙しくなるとか言いながらこの更新ペース、そんな隻腕作者さんが大好きです。
ていうかアウルのMSパーツのくだりでちょっと涙腺が潤んだり。
無機質の筈のマシンに宿るヒトの魂、萌えます(誤字に非ず)

大切なもののために再び立ち上がる人々、正に「黄金の意思」のタイトルに偽り無しですね。
次の話では今まで積み上げてきた物語の行き先が決まるストーリーになりそうで楽しみです。
120通常の名無しさんの3倍:2006/02/28(火) 23:40:15 ID:???
隻腕キテターーーーーー!!!!
復活したユウナとアカツキを駆るキラカッコヨス。
本当にあなたはキャラの調理が上手い…。
121通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 00:02:37 ID:???
畜生…まさか俺に和田様を買う日がこようとは…
122通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 00:02:58 ID:???
一度絶望に落ち、立ち上がるもの達のなんと
美しいことよ、心躍ることよ!

そして、アウルのパーツが・・・。
いや、素直に上手いと思いました。
感動しましたよ、ここは。素直に

多くの勢力が渦巻き、なんつうか予断を許さない展開ですね。
隻腕さんのジブリは、おとなしくやられてくれるタマじゃないしw

つうことで今回も超GJ!!
123通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 01:46:34 ID:???
>>112
デザインばかりはさすがにしょうがねえべ。
124通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 02:15:44 ID:???
隻腕。
GJという言葉では言い表せないくらいです。
アビスの下り、冗談抜きに目頭が熱くなった……
ストフリのダサさの象徴と言われていた臍ビームをよくもまあ、うまく調理したもんです。
脱帽でした。
125通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 02:26:40 ID:???
>>108
本編のストーリーをどこまでなぞるかは
各人のさじ加減じゃないかな。
どの作者さんも多かれ少なかれ下敷きにしてるのは
あんまりはずすと別物になって読者がついて来れないからで
俺もそんなのは望んでない

隻腕作者氏が提示しようとしているのは、『新訳』種死だと思う
126通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 02:53:11 ID:???
隻腕作者さま、お疲れ様です!
・・・物凄く感動してしまいました!!フリーダム復活!しかも「たいせつな想い」
を受け継いで・・・まだ、動いていないのにも関わらず、
本編の成金趣味と正反対の見事なカッコよさ;;
遂に次回でマユ復活!しかもサーペントテールの護衛付きなら最強ですね!?

そしてアカツキは、未完成が故のキラの神業的操作による反射+オオワシ形態の
ストライクの正当後継機としての登場。これまたご都合に走らない勇姿が
逆にかっこいいです。つーかキラ、隠密侵入しちゃって・・・マジでアニメで
観たい・・・

いずれ動くために牙を研ぐカガリに復活のユウナ。
ディアッカやロウ、更にサイまで登場の豪華版。何か皆「生きている」感じが
バリバリ感じましたよ。

次回は遂にマユ・キラVSシン・コニールとの対決!?(アスランは思考が堂堂巡りだし、
レイだとシンの強烈なキャラのせいかライバル補正がイマイチw)
逃亡中のミリィとメイリン、今は工事現場のマードックさんw
客船の舵取りのノイマンさんは果たしてどうなる?
そして、未だに連合に囚われのマリューさんは!?

正義とは何なのか?護るべきものは?
ところで、Sフリーダムの「S」って私は「一緒」の意味の「society」と
思ったのですが?(だってアウルの機体からのサルベージだしw)
流石に「secand」じゃそのまま過ぎだし、第一アストレイでも出てるし・・・
127通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 06:40:47 ID:???
>本編のストーリー
元作品が、よければ本編そのままでも良いんですよ。
本編は、せいぜい下敷き程度だと思います。

本編そのままだと、キララク大勝利という最悪EDなもんで。

チラシの裏
本編が良ければ、このスレには多分来ないでしょう。
128通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 08:12:23 ID:???
>>108
連合が割り食うのは俺は気にならなかったな、演出的にかなり悪の立場だけど
ジブとギル、そしてラクスやマユそれぞれ思いがあるのは伝わったし・・・
・・・・まぁ分かりやすい敵ってのがないと確かに難しいわな戦争物は
ともかく隻腕GJ!こういう感想が出てくるのもみんなが隻腕に期待してるからだと思う
129通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 09:49:46 ID:???
種死が駄目だったのは連合や議長が悪一辺倒になってるからではなく、それを倒すラクシズやオーブに正義が全く無かったからでしょ
その上、ミネルバ側の事情とか中途半端に描くものだから、ラクシズの無軌道な正義の無さが一層嫌悪感を際立たせていたわけで

これまでのガンダムだって、敵にも敵なりの戦う理由はもちろんあったわけだが基本的な描写は悪だったからな
要は、如何に主人公側の提唱する正義に説得力を持たせられるかが勝負だと思う
このあたり今のところ隻腕は成功してるように思えるが、最大のキモはマユの辿り着いた結論だな
これが成功するかしないかで隻腕の評価は180度変わるだろう
130通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 11:45:46 ID:???
しかしアカツキの設定は上手い
アヌメでは、カガリが乗ってすらシン以外には無敵の厨機体だったのに
こっちではキラが乗ってようやく何とか動かせる、しかもなお不安要素ありまくりの欠陥機体に変更されてるところが

あとSフリーダムの腹ビームの設定にはグッときた
元スティングスレ住人だったから、死んでいった仲間の機体を流用するという展開には弱い
ARMSのドラッケン部隊を思い出した
131通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 13:15:49 ID:???
隻腕読了の勢いで初カキコ。
腹ビームのくだりでじわっと来た。ユウナ復活で燃えた。アカツキ登場でさらに燃えた。
ていうかキラを素直にかっこよく感じたのって初めてだ。
集まりゆく希望の光に思いを馳せつつ、今はただGJと。
132通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 13:21:29 ID:???
あ、いかん。隻腕26話に誤植発見。
×→その他、アークエンジェル、クサナギ、ミネルバの各艦に
○→その他、アークエンジェル、クサナギ、エターナルの各艦に

連カキコ失礼、ご報告までに。
133通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 14:13:46 ID:???
以前、ストフリはカッコ悪いから別物にしちゃえば?とか不注意な事を言ったが
今は「下手にオリガン出さないでくれてよかった」と思っている。
隻腕凄くいい。連合兵の中にも何人かは「オーブ、スマソ」と思ってる奴が居ると脳内補完しておくw
134通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 14:30:32 ID:???
ノイマンの観光船、乗ってみてぇw 途中で回転したりしないよな?w
135通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 15:43:51 ID:???
回転どころか水上でドリフトしますよ
136通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 16:23:00 ID:???
波に合わせてカットバックドロップターンを連続で決める観光船
137通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 17:11:04 ID:???
隻腕書いてるものです。

>>132
…………orz
まさにその通りです。どうしてこんな書き間違いを見逃したんだろう……
まとめ人様、お手数ですが修正お願いします。
138通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 17:24:53 ID:???
HG和田、買っちゃった♪ 買ってきちゃった♪
139通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 17:26:09 ID:???
次はピカフリだな!
140通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 18:08:49 ID:???
>>137
三隻同盟からエターナルが抜けてミネルバが加わる超展開の伏線が無意識に出た・・・とかじゃないですよね?w
141通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 19:06:38 ID:???
隻腕乙!本編以上に熱くなりそうな次回のオーブ攻防戦マジでwktkです!マユの決意、再び相見える兄弟、揺らぐアスランの心情、ラクシズの動向…気になるシーン多すぎw
>>108お前さんはもうちょっと読み深めてからそういうこと言え
3SAFAとは何か、隻腕での議長の目的は何なのか、ブルコスとはどのような団体でオーブはどうゆう場所なのか

あとこれは戦争もののお話ですよ 戦争ってのは必ず誰かがいい目を見て誰かがひどい目にあう
みんなが幸せになれる戦争なんてものは世界中どこにもありません
まさか悪役ならひどい目にあっても許されてその逆はどちらも許されないなんて思ってないよね?

長文スマソorz
142通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 19:08:14 ID:???
>>141
お前はもっと落ち着け。見苦しいぞ。
言いたいことは分かるが
143通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 19:40:28 ID:???
>>141ス物言いが気に食わなくてついやってしまった…スレ汚してすまん

最近、職人さんに対する意見が増えたことは一住人として非常に喜ばしいことだと思うんだが
なんとゆうかもう少し低姿勢で話せないのか?と思ってしまう
144通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 20:02:54 ID:???
必ず低姿勢であることは無いと思うが、建設的ではあって欲しいよな。





だいたい非建設的な意見は高圧的とも思うがw
145通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 20:03:46 ID:???
下がりすぎなのでちょっと浮上しますよ
146通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 21:30:33 ID:???
原作のジブ達は悪役としても三流過ぎるよ。
147通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 21:55:27 ID:???
>>141>>143
もちろん、気持ちは分からないでもないけど、
とにかく隻腕マンセーしろよと言ってるようにも思える。
148通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 22:07:19 ID:???
>>147
誰もそんなこと言ってねっつーのに。
建設的かつ、低姿勢な批評は職人さんをやる気にさせ
スレのためにもなるが、非建設で高圧的な批判は職人さんの
やる気をなくさせるだけだってこと。

ガンダムSSを作るためのガイドライン
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1140681712/l50
参考までに。SS書きの人たちの本音が書いてあって興味深い。

ただ、既出だけど気に食わんSSはスルーが基本じゃねえ?
スレが荒れると、好きなSS書く人も投下しにくくなるんだからさ・・・
149通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 22:22:28 ID:???
>>148
お前さん、>>108ってそこまで否定されるほど高圧的かね?
確かに意見としてはアレかもしれんが
つーか、建設的で低姿勢な基準って、極端な態度のやつ以外は判断が難しいだろ。
俺はあんたの態度が気に食わんって言ったら、以下ずっとループだな。
150通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 22:48:16 ID:???
ん〜。これを書き込むかどうか、名前を名乗るべきかどうか、かなり迷ったのですが……
隻腕書いてる者です。今夜ちょっと覗いたら、荒れてるようなので。

……実は108さんの気持ちも、分かってしまうのですよ。
ちょうどあの時も居たので、110のような回答になったわけですが。

108さんの指摘は、こちらでも迷った匙加減を、まさに突いているお話で。
けれど同時に、ちょっとこれ以上は答えられない問題でもあります。
あまり答えてしまうと、先の展開を晒して驚きと楽しみを減じてしまうことになりますし……。

指摘された部分の一部については、もう少しお話が進めば一応の答えが出せるかな、とも思います。
ある部分については、読者にそういう気持ちを抱かせてしまったことに、自分の筆力不足を感じ、恥じ入りました。
また別の一部については、残念ですが、物語一般に関する基本的な考え方そのものが私とは大きく違うのかな、と。
……ま、色々な人がいて、色々な考え方がある以上、ある程度は仕方のない部分かもしれません。

ただ、108さんの意見は書き手として参考にもなりますし、1つの意見として大事に聞かせてもらいました。
108さんを満足させるためだけに方向転換する気はありませんが、それでも大いに勉強になります。

そして、応援して下さる方々の気持ちは嬉しいのですが……それ以上に、互いに争わないで欲しいな、と思います。
たとえ耳に痛い意見でも、様々な意見が聞こえてくる方が、私にとっては嬉しいものです。
叩かれることを恐れ、発言を躊躇してしまうような空気が生まれるとしたら少し寂しいな、と感じます。

……もっとも、これはあくまで私個人の感覚です。職人の方々それぞれに、感じ方や考え方は違うでしょう。
私も、単純な書き間違いの指摘や、108さんのように深い意見なら歓迎ですが、揚げ足取りで叩かれたりしたらきっと凹みます。
SS書きの気持ちを考えて下さるのは嬉しいのですが、悪意さえなければ、腫れ物に触れるような態度を取らずともきっと大丈夫でしょう。

以上、蛇足かもしれませんが、当事者の素直な気持ちでした。
108さんに意見した方、またそれにさらに意見された方、双方にとって参考になれば幸いです。
151通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 22:57:57 ID:???
みんな仲良くしよーぜ、て事だね。
152通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 22:59:41 ID:???
とりあえず

つ旦~

お茶でも飲んでくださいな
153通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 23:06:22 ID:???
を、お茶thx。
ちょうどアウルの形見の腹ビームを肴に一杯やったところだったんだ。
酔い覚ましにもらっとくよ。
154通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 23:09:38 ID:???
>>151
みんななかようせんとあかんよ・・・ってねw
155通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 23:11:40 ID:???
茶ァ下さいなw

しかしアレだな、人気出過ぎるのもナンだなw
156通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 23:12:57 ID:???
>>154
嬉しいなぁ…強ぇお前らと…一緒だ!
とか言ってもいい?

スレ違いでしたごめんなさいorz
157通常の名無しさんの3倍:2006/03/01(水) 23:20:48 ID:???
水ドゾー

つ旦
158通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 00:26:11 ID:???
>>154
うしおと虎?
159通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 01:43:24 ID:???
>>154
はやてかあさん?
160通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 01:51:29 ID:???
コレだけたくさんの質のいい職人が集まるスレはそんなには無いと思うぞ
だからこの場はもっと大事にして欲しい
1スレから見てる者としてはこの流れは何かさびしい
161通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 02:12:45 ID:???
まあ初期の、スレ存続の危機に晒された時の荒れっぷりに比べれば、この程度は全く大した事はない
あの時が種世界レベルの絶滅戦争だったとすると、今回のはせいぜい街の殴り合いのレベル
162通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 08:54:08 ID:???
隻腕GJ
次回戦闘では、マーレ様の華麗なるご活躍に期待しています。


出るよね。
163通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 10:33:18 ID:???
配慮しすぎるあまりGJしか認めない、ってのは職人のためにもならんからな
164通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 12:19:54 ID:???
とりあえずいきすぎて文句みたいにならなきゃいいわけだ
165通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 12:26:38 ID:???
職人の方もある程度聞き流す、って言い方は変かもしれんが、あまり神経質にならないで貰うとかね。
166通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 13:11:27 ID:???
批評やアドバイスと文句の差ってのは微妙なものだからなあ。
やっぱり言葉使いだろうか。
感情的な書き方より、淡々とした落ち着いた書き方のほうが、批評と受け取られ易いと思う。
あと、文体とかじゃなくて展開やキャラについてなら、別の意見も「ひょっとしてこういうつもりですか?」みたいな感じで入れて、
「先入観ではなく、多角的に見た上での意見だ」ということをアピールしてみるとか。
議論も滑らかに進むし、作者へのフォローにもなるし。


何だかグダグダになった。スマソ
167通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 14:21:22 ID:???
>隻腕
今読んだ。ぬおお、感想出遅れて言いたいことほとんど言われちまったぜ
何はともあれGJ!!
レイをも気圧するようになったシンカッコヨス。どこまで逝くんだこいつは…
168通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 14:21:39 ID:???
隻腕板
SフリーダムのSの意味って・・・・

1 :通常のマユの3倍:2006/02/28(火)22:25:33 ID:???
  何?

2 :通常のマユの3倍:2006/02/28(火)22:27:35 ID:???
  2get

3 :通常のマーレ様の3倍:2006/02/28(火)22:27:38 ID:???
  マーレ様が華麗に2getだ!

4 :通常のマユの3倍:2006/02/28(火)22:29:15 ID:???
  >>3 マーレワロスwww

5 :通常のマユの3倍:2006/02/28(火)22:30:49 ID:???
  相変わらずだなマーレw
  で、何の略なんだろう。スーパー?

6 :通常のマユの3倍:2006/02/28(火)22:31:02 ID:???
  セカンド

70 :通常のマユの3倍:2006/02/28(火)22:40:21 ID:???
  ステイメン、センチネル、スペリオール、シャイニング、シェンロン、サンドロック……

115 :通常の隻腕信者:2006/02/28(火) 22:42:11 ID:???
  新生(shinsei?)フリーダム

126 :通常の隻腕信者の3倍の感想文:2006/03/01(水)02:53:11 ID:???
  Sフリーダムの「S」って私は「一緒」の意味の「society」と
  思ったのですが?(だってアウルの機体からのサルベージだしw)
  流石に「secand」じゃそのまま過ぎだし、第一アストレイでも出てるし・・・

128 :通常の3倍のネーミングセンス:2006/03/01(火)04:01:10 ID:???
  『ストライク・フリーダム』とか

129 :通常のマユの3倍:2006/03/01(火)06:59:43 ID:???
  それはない

130 :通常のマユの3倍:2006/03/01(火)07:12:00 ID:???
  >>128 センス最悪。語呂悪過ぎ
169通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 15:03:35 ID:???
>>168
その手のネタ大好きw
何処のでも笑える
170通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 15:51:05 ID:???
隻腕でサイが運んできたのって、ヴェルヌなんたらって奴?
171通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 15:56:48 ID:???
量産ミーティア? どうなんだろ
172通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 18:06:29 ID:???
>>148
>……批評とかミスの指摘とかはいいんだけど、実は展開予想されると非常に書きづらかったりします。
>読者全員を騙せる・ひっかけられるとは思ってないけど、不意打ち的に出したいモノとかってあるから。
>分かってた人だけ「やっぱそうか!」と後でガッツポーズして欲しい、というか……。溜めが欲しい、とも。
>あと、後々劇中で指摘したいちょっとした「意図的な」破綻(キャラの言動の矛盾とか。後ほど大きなターニングポイントになる予定)とかも、
>嬉々として指摘してくる人いるんですよね……お願いだからもうちょっと待ってよ、と

うはwwwww興奮のあまりいつもやらかした。作者さんスマソ
173DESTINY Side-C:2006/03/02(木) 18:41:13 ID:???
リアルの方の忙しさに感けてすっかり更新停滞してました。ごめんなさい。
トリノのハーフパイプで金取ったホワイト選手を普通に女だと思ってました。ごめんなさい。

それでは、やっとこさ7話の投下です。
リアルの方でようやく落ち着いてきたので、以前よりは遥かに更新スピードが上がりそうな…上がらなさそうな…
174DESTINY Side-C 1/17:2006/03/02(木) 18:42:41 ID:???
燃える空。燃える地球。
悲しみと炎に彩られて、世界は壊れる。
それでも人は歩き出す。それぞれに、決意を込めて。
辿り着ける場所は、限られていても。

小さな箱庭で、何を見つけるのか。



 PHASE-07 壊れた箱庭
175DESTINY Side-C 2/17:2006/03/02(木) 18:43:29 ID:???
オーブの海岸線。
空が赤く燃える。青年は目を細めて、降り注ぐ流星の雨を眺めていた。
「……僕は……」
"許されない存在"――あの人は、そう言った。
そんな僕がここにいて、世界が壊れていくのを傍観しているだけ。
「……ラ……シェルターへ向かいましょう……?」
優しい声に、呼びかけられた。青年は振り返り、声の主に柔らかな微笑みを向ける。
「うん」
彼はそちらに向けて歩き出し――最後にもう一度だけ振り返る。

灼熱の空に、言い知れぬ凶兆を感じながら。



『お疲れさん! 機会があったら、またセッションよろしく』
「あー、ないことを祈ってます……」
『ハハ、フラれちゃったよ』
ルナマリアはユニウスセブンを離脱しながら、一人溜め息をついた。
そりゃ、実際どんな人間かは知らなかったわけだが…尊敬していたディアッカ・エルスマンが、あんな…
「……上手くいかないもんねぇ……」
機体をミネルバに向かわせながら、眼下のユニウスセブンを見下ろす。

結局、砕くと言ってもこの程度……被害は相当な物になる事に違いない。

なんとなく陰鬱な気分になる。自分たちはやれるだけのことをしたので、気に病むことはないのだろうが。
ミネルバのハッチが開く。今回は損傷0。ルナマリアは慣れない手つきで、機体を着艦させた。
「(……あれ?)」
格納庫の機体が少ない。レイとシュウゴのザクだけ?
『ルナァ〜!』
「うわっ!!」
機体をハンガーに固定させたところで、メインカメラに半べそをかいたヴィーノが飛びついてきた。
ルナマリアはコクピットハッチを素早く解放して、格納庫へ出る。
「どっ、どうしたのアンタ!? そんな泣きべそかいて……」
「マユたちが戻らないんだ! それでシュウゴが"もう一度出る"って……」
「マユが!? なんで!?」
見ると格納庫の一角で、赤いパイロットスーツを着込んだシュウゴが、白いパイロットスーツと作業用ノーマルスーツ――レイと、ヨウラン辺りか――と大声で何かを言い合っていた。
「レイが言うには、アレックスさんと最後の1基を起動させる為に残ったって……
 デイルに至っては作業中いなくなって、どこに行ったかも……!」
176DESTINY Side-C 3/17:2006/03/02(木) 18:44:44 ID:???
<タンホイザー起動。これより本艦は、大気圏へ降下しながら破砕を続行――>

そのアナウンスに、格納庫の誰もが凍りついた――ただ1人を除いて。
ルナマリアは素早く艦内通信の通話機を引っ掴み、大声で捲くし立てる。
「ブリッジ! 聞こえる!?」
『お姉ちゃん!』
「今すぐタンホイザーの発射を止めて! それから3分時間をちょうだい!
 首根っこ掴んで、あのバカどもを連れ帰ってくるから!!」
あそこにはまだ、マユたちが残っているんだ。
そうでなくても、このままじゃユニウスセブンと摩擦熱でマズいというのに、タンホイザーなんて撃たれたら…!
『それはできません』
凛とした声。こいつが出てきたらもうダメだ――そう思いながらも、ルナマリアは説得を続ける。
「じゃあ2分、いや、1分でいいから! お願いします!」
『できません。こちらでも呼びかけは続けます』
ルナマリアは、「クソ野郎」と怒鳴りそうになるのを寸でのところで抑え込んだ。
わかりました、とだけ言うと、荒々しく通話機を叩き付ける。
「くそっ、あの石頭!」
ミネルバ艦長、タリア・グラディス。
柔軟にして奔放な物の考え方をするルナマリアは、お堅い彼女がどうにも気に入らなかった。
無論、相応の実力はあるのだろうが。
「なんだってこう……!」
相変わらず男たちが何か怒鳴りあっている。うるさい、ギャーギャーわめくな。
彼女は壁に寄りかかると、そのまま力なく座り込む。

「……お願い、お父さん……」

あの子たちを守ってあげて。
ルナマリアは目を閉じて、ただ祈るしかなかった。



「デイル……アスランさん! ……デイル!!」
口では2人の名前を呼ぶが、本当に見つけたかったのは、1人だけだったのかもしれない。
眼下にはどこまでも青い地球。半壊したインパルスが、大切な仲間を求めて虚空を彷徨う。
衝撃で一瞬意識が飛んだあと、マユはデイルを探した。
まだ生きていて。そんな願いを、何度も、何度も、胸中で繰り返して。
「デイル」

見つけた。
177DESTINY Side-C 4/17:2006/03/02(木) 18:45:53 ID:???
両脚と、左腕と、首を失い、大きくひしゃげた胴体――
コクピットハッチは吹き飛び、グシャグシャに潰れた内部が見えた。
千切れかけていた右腕が脱落し、岩塊とともに上昇していく。装甲は摩擦熱で赤く、融解していた。

「……ばかぁ……!」

かわいそうなデイル。
大切な人を失って……死にたいと思ったのがかわいそう。
生きようと思ったのに――死んでしまって、かわいそう。

せめて彼の魂が、ショーンの所へ逝けますように。

回収しようと思ったが、岩塊に阻まれてそれすらままならなかった。
結局マユはデイルを諦めて、アスランのゲイツを探す。

「アスランさん……!?」
彼の機体は、落下しながら、岩塊に向けてレールガンを撃っていた。
地球に落ちる破片を、少しでも細かく砕こうと。
「何してるんですか!早く姿勢を制御して!」
『何故だ……!!』
「え?」
『何故こんなことをするんだ……!
 何故ここに眠る人たちを……そっとしておいてあげられなかったんだ……!』

悲痛な叫び。
彼は何かを背負っている。それを聞いたマユは直感的にそう感じた。
重くて、重くて。本当は誰かに一緒に背負って欲しいのに……彼は絶対に、それを表に出さない。
――強いんだ。

「……まずはシールドを掲げて、姿勢を制御! 突入角を合わせて……」
『もういい、左腕が言う事を聞かない……君だけでも』
「あなたまでバカなこと言わないで! 生きて帰るの、あなたも一緒に!」

マユはインパルスをアスランの機体に近づけると、右手でゲイツを背中に回す。
尚更死なせてはいけないと思った。こんな強さを持った、この人を。
『マユ……!?』
「インパルスを盾にします!腕や脚がおかしくなったらすぐに切り離して!」
『……了解!』
左手でシールドを掲げる。なるべくゲイツが隠れるように、角度を微調整。
ふとマユは、モニターの端にメッセージが届いてることに気付いた。帰艦命令?いや――
178DESTINY Side-C 5/17:2006/03/02(木) 18:47:19 ID:???
「……タンホイザー!? いけない!」
今までそれに気付かなかった自分の間抜けさを呪う。と同時に、アスランから通信。
『ゲイツのスラスターも使う! 機体をユニウスセブンから引き離せ!!』
「了……解!」
拡散しながら地球に降り注ぐ、ユニウスセブンの残骸。
それらを回避しながら、マユはインパルスをゆっくりと降下させていく。

「(……また、守れなかった)」

炎の尾を引きながら、残骸が目の前を通り過ぎていく。
美しくも見えるそれが奪う命の数を考え、マユは眩暈にも似た感覚を覚えた。

タンホイザーが、その砲口を落ちていく墓標へ向けて――



「……ちくしょう」
珍しくアウルが、静かな怒りを表に出した。
そんなことを考えている自分だって、もちろん悔しい。目の前で地球が焼かれるのを見ているだけなんて。
スティングは大きな溜め息をついて、ステラの頭を優しく撫でる。
ガーティ・ルー展望室。アウル、スティング、ステラの三人は、落ちていくユニウスセブン見つめていた。
ステラは怯えているのだろうか。さっきからうわ言のように何かを呟いている。
「よう、お疲れさん!」
誰かが入ってくるや否や、ステラはそいつに飛びついた。
入ってきた誰か――ネオは苦笑して、ステラの頭をそっと撫でる。
「……ネオか」
「なんなんだよあいつら……なんだって地球に……!」
アウルは眼下の地球を見下ろし、何度も呟く。怒りと呪いを、その言葉に乗せて。

「……俺も出れば良かったかな」
ネオが軽い口調で言うと、アウルは彼をキッと睨む。
「ボクらじゃ力不足だったって言いたいのかよ!?」
「アウル!」
「いやぁ……そういうわけじゃないんだがね、悪い悪い」
激昂するアウル。それを諌めるスティングと、申し訳程度に謝罪するネオ。
アウルはくそ、と吐き捨てると、逃げるように展望室を出て行った。
「あいつ……!」
「気にすんな、苛付いてるんだろ……仕方ないさ。こうなっちゃあ、な」
「……つーか、今のはネオが悪いだろ……そういや、ゲンは?」
「んー、アイツならお前らが持ち帰ったデータ、ストライクに入れてるんじゃないか?
 ほんっと、生真面目だよねぇ、アイツも」
179DESTINY Side-C 6/17:2006/03/02(木) 18:48:36 ID:???
そこでステラが、思い出したように呟く。
「ゲン……?」
「ん?」
「トランプ……教えてもらうの……」
出撃前の約束。それを思い出して、彼女もまたおぼつかぬ足取りで展望室を後にする。
「(ステラとアウルは調整が必要、か……)」
「やれやれ、だな」
「……そう言う割には、やけに嬉しそうじゃないか? スティング」
ネオがからかう様に言うと、スティングは地球の方へ向き直って答えた。
「嬉しいさ……任務には失敗したのに、あいつらがまだ生きてる」
途端に――ネオの顔つきが険しくなる。だがスティングはそれに気付かず、言葉を続けた。
「毎回こうは行かねぇ、ってのは俺もよく解かってる。だから尚更、な……」
彼の話を聞きながら、ネオは胸の内で考える。
仲間同士の結束が固いことは、決して悪い事ではない。
スムーズに連携を取れることは、戦場に於いては大きなアドバンテージとなるからだ。
特にスティングは、ゲンが来る前から二人の面倒をよく見てきた。こうなるのもある意味当然と言える。

だが――
彼らは違う。"普通"ではないのだ。
だからもし――もしも、彼らの内、誰か一人でも欠けてしまったら――

俺は、その記憶を消さなければならないのか――?

「ネオ?」
「ん?あぁ、なんでもない」
「変な奴だな……」
「あー、そうだ。すっかり忘れちまってたな。今後の動きについてだが……」
ネオは意識していながらも、その"最悪の可能性"を思考の隅に追いやった。



「降下シークエンス完了、ミネルバ、着水姿勢に入ります」
ミネルバ副長、アーサー・トラインは下唇を噛んだ。
予期せぬ地球への降下、タンホイザーの使用。まだユニウスセブンにいた、若きパイロットたち。
彼らの安全を確保できてからでも、遅くなかったのではないだろうか?
「アレックス……!」
オーブの代表、カガリ・ユラ・アスハが俯いて、青年の名を呟いた。ブリッジを重く、冷たい空気が支配する。
「アビー、メイリン、3機への呼びかけは続けて。バートもレーダーのチェック、怠らないで。
 ……手の空いてる者は祈りなさい、彼らの無事を」
そう言ったタリア艦長の顔にも、うっすらと……だが確かに、諦めの色が漂っていた。
180DESTINY Side-C 7/17:2006/03/02(木) 18:49:27 ID:???
アーサーは思う。
自分たち軍人は、確かに非情に徹する事が必要な場合もある。
だがこのような――このような結果を許せるような人間であっていいのだろうか。
アレックスという青年も、マユも、デイルも、恐らくは、少しでも地球の被害を減らそうという想いであそこに残ったのだ。
そんな彼らをこの手で死に追いやるなどと……確かに「任務」の一言で許される世界ではある。
だがふとそんなことに気づいてしまった時、アーサーには、自分たちが何か恐ろしい怪物のように感じられてしまう。

「艦長! デルタ56の方向に、機影2!」
メイリンのあげた声に、アーサーの思考は中断された。
彼がタリアに目をやると、彼女は真剣な眼差しでオペレーター席に座るメイリンとアビーを見つめている。
「……確認しました! アレックスさんのゲイツと、インパルスです!ゲイツの損傷度Bクラス、危険です!」
ブリッジに歓声が上がる。アーサーは胸を撫で下ろすと、額に浮かんだ汗を拭った。
生きていてくれた。デイルがいないのは心配だが、きっと彼もまた無事に違いない。
「艦長」
「えぇ、発光信号を。急いでミネルバを寄せて。それから格納庫へ通達、ザクでインパルスとゲイツを回収してちょうだい」
ブリッジクルーが慌しく動き出す。そう、まだ気を抜くわけには行かない。
2機を回収しつつ、ミネルバを着水させる。その後は船体各部の確認と、デイルの捜索だ。
アーサーは席に着くと、シートベルトで自分の体をしっかりと固定した。



眼下には、空の色を映し出す鈍色の海。
容赦ない重力の洗礼を受けて、マユは自分が産まれた大地に帰ってきたことを実感した。
背負ったゲイツは、既に右腕を除く四肢が脱落した状態……所謂「ダルマ」状態に近い。マユは心配になって声を掛ける。
「アスランさん……!!」
『どうした……泣いているのか?』
場違いなほどに落ち着いた声でそう言われて、マユは自分の頬に涙が伝っている事に気付いた。
「ちっ、違うんです……これは、大気圏突入するのなんて初めてだったから、その……!」
『いや、いい、すまない。それより……ここらが、限界みたいだな』
ユニウスセブンの破片の影響で、電波状態が悪いのだろうか。
ノイズ交じりのモニターの中のアスランは、小さく笑った後、再び険しい表情に戻る。
『いくらインパルスでも、2機分の落下エネルギーは殺しきれない。もういい、俺を捨てるんだ』
「……また貴方はそんなこと言ってっ!!」
マユは怒鳴りつけながら、インパルスの姿勢を制御する。
残りのエネルギーをフォースシルエットのスラスターに集めて、背中を下に向け、ゲイツを抱きかかえる形。
「どうしてそう、自分の命を軽んじるんですか!?「俺を助けろ、コノヤロー」ぐらい言ってくださいよ!」
『……ふふ』
「何笑ってるんですかっ!」
『いや……本当にすまない、君みたいなパイロットは見た事が無くて……』
181DESTINY Side-C 8/17:2006/03/02(木) 18:50:50 ID:???

その時。
少し離れた位置で、空が赤、青、緑の三色に光った。発光信号。つまり――
「……!」
雲間を割って、ミネルバがその灰色の巨体を現した。
『マユ、こっちよ!早く!!』
「ルナ!」
よく見ると、カタパルトから白と紫と赤、3機のザクがこちらへ向けて手を伸ばしている。
『助かった、みたいだな……』
アスランが安堵の溜め息を漏らした。急がなければ。さっきから少しずつ海面が近づいている。

マユはなんとか、自分の頬を伝う涙を拭った。
良かった。生きている。私はまだ――何かを、守れる。

伸ばしたインパルスの手を、赤いザクが、ガッチリと掴んだ。



「何してんだよ?」
ストライクMk-2のコクピットでデータを入力していたゲンは、突如かけられた声に顔を上げた。
「なんだ、アウルか」
「なんだってなんだよ。何してんだって聞いてんだろ?」
コクピットハッチにぶら下がっていたアウルは、透き通るような水色の髪を弾ませながら狭いコクピットの中に滑り込んできた。
「あの合体野郎……インパルスのデータ貰ってるんだよ、お前らの機体から」
「あぁ?お前、アイツを追っかけてって倒すつもりなの?」
「お前な……当たり前だろ、アイツは強い。アイツだけじゃない、アイツの所属する母艦――"ミネルバ"もだ。
 つまりだ、これから先は必然的に俺たち……ファントムペインの相手に回ってくる可能性が高いんだよ」
ゲンはなおも手元のディスプレイを弄りながら、"インパルス"のデータを入力していく。
「……って言ってもさぁ、アイツら、地球に降りちゃったぜ?ボクらは宇宙任務だから手ぇ出せないだろ」
「ん?……なんだお前、ネオから聞いてないのか?」
そう言うとゲンは、やれやれと言わんばかりに溜め息をついた。
大方、部下への連絡も徹底できないネオに対してのものだろう。アウルはそう推測した。
「……なんのことだよ」
「俺らも地球行きだとさ。月で補給受けたあと、ガーティ・ルーとは別行動」
「え?……マジで!?地球に降りれんの!?」
狭いコクピットの中で小躍りし始めそうなほど、アウルは表情を明るくする。
そんな彼を見て思わずゲンが笑うと、アウルは慌てて態度を変えた。
「……まぁ、命令だもんな。よっし、ボクも一丁、アビスでも弄るかな!」
「別に構わないが、メカニックたちが困るような滅茶苦茶な調整はするなよ?」
「わかってるって!」
アウルは振り返って、パッとコクピットを飛び出していった。
無重力にその青い髪が揺られる。ゲンはそんな彼を見送りながら、やれやれと溜め息をついた。
182DESTINY Side-C 9/17:2006/03/02(木) 18:52:16 ID:???
「(……そうだな。アイツは、強い)」
あのインパルスは強い。たった1度の直接の戦闘と、アウルたちの戦闘のデータ。
それらが指し示す結果を見て、ゲンは驚きを隠さずにいられなかった。
元々モビルスーツの開発に関しては、ザフトの一日の長があった。
過去の大戦で活躍した名のある機体――"フリーダム"や"ジャスティス"も、元々はザフト製のモビルスーツである。
こうして敵軍のモビルスーツを強奪するような真似をしたのも、上層部もそれを納得しての事だろう。

しかし――気になるのは、そのパイロットだ。

強奪した機体は、3機とも"G.U.N.D.A.M."と称される特別製のOSを搭載した機体。
――そう、同じ物を搭載した、大西洋連邦が開発したこの"ストライクMk-2"と同等のスペックを誇る機体なのだ。
この機体の力は、パイロットである自分が一番よく知っている。

だからこそ、恐ろしい。
コーディネイターとナチュラルとは言え、あらゆる面で"強化"されたこちらを退けた、あのパイロットが。
倒さなければ、自分の――あいつらの未来が奪われるかも知れないという圧迫感に苛まれる。

近頃は妙な夢を見る。
場所がどこだかはわからないが、血の海の中にいる自分。
涙を流して、手を握るスティング。少し離れた位置で泣き叫ぶステラと、それを抑えるアウル。

腹立たしいほどに晴れ渡った空に舞う、翼を広げた死を運ぶ天使。

自分の未来に、暗い影が差したような感覚。

「……倒すさ」
誰にも届かない声で、ゲンは小さく呟いた。



嵐が去ったミネルバの格納庫。
つい先刻まで、轟音が鳴り響いていたそこは、いまや静寂に包まれていた。
183DESTINY Side-C 10/17:2006/03/02(木) 18:53:42 ID:???

「レイ!ごめんね、すぐに戻ろうと……!」
『構わん。それより急いで機体を固定しろ、ミネルバが着水するぞ』
インパルスとゲイツを収容すると、マユはすぐにレイに謝罪しようとした。
だがそうだ。今はそれよりも、一刻も早く機体をハンガーに――
<警報 総員、着水準備に備えてください>
『間に合わねぇ、なんとか踏ん張らせろっ!!』
『そんなこと言ったって!?』
怒鳴りあうシュウゴとルナマリアを他所に、マユは素早くゲイツを抱えこんだ。
「揺れますよ、"アレックス"さん!」
『ッ……すまない』
『何かにつかまれ!ただし、握り潰すなよ!』
轟音。
まるでコンクリートにたたき付けられたかのような、硬い衝撃。
弾みそうになったルナマリアのザクを、レイのザクが無理矢理押さえ込んだ。
『あ、ありがと……』
『構うな』
やがて振動は静まり――ミネルバは完全に動きを止め、どこまでも広がる太平洋にその身を横たえた。

インパルスをハンガーに固定させると、マユは這い出るようにコクピットを抜け出した。
「マユ!!」
ルナが駆け寄ってくる。マユはその声を聞いて、再び自分が生きている事を実感した。
タラップを使って格納庫に降り立つと、ガクリと膝が折れた。
そのまま倒れそうになった所を、駆け寄ったルナが抱きかかえてくれる。
「良かった……ホントに、良かった……!」
「ルナ、大丈夫だよ……」
ルナに強く抱きしめられる。暖かい。お母さんみたいな匂いがした。
「無茶するんじゃないの、このバカ……!」
「……ごめんなさい」
堪えきれなくなって、思わずルナの制服の裾を強く掴む。
滲み始めた視界の隅に、少し離れた場所に立つシュウとレイが見えた。
「……マユ?」
「恐かった……デイルが……!」
拭ったはずの涙が、再び堰を切ったように溢れ出した。
「デイルが、死んじゃったぁ……!!」
情けないと思ったけれど、もうどうしようもなかった。
必死の状況を切り抜けて、気が緩んだのだろうか。ルナが優しすぎたから、気が緩んだのだろうか。
184DESTINY Side-C 11/17:2006/03/02(木) 18:54:45 ID:???
「そう……」
暖かい掌が、そっと頬に添えられる。マユは思わずルナマリアの顔を見上げた。
「でも、アンタは頑張ったんでしょ?デイルのこと、助けようって……」
「うっ……ひっ、ぐ……っ」
「……解かるわよ。アンタ、そういう子だから」
自分も泣きそうなくせに。ルナのバカ、強がって――
今度こそマユは、大声を上げて泣き叫んだ。

少し離れた位置でそれを見ていたアスランは、密かに胸を撫で下ろした。
出撃前にあんなことを言っていたが、彼女にはちゃんと見てくれている仲間がいる。
道を踏み外すような事はない。きっと。そんな思いから、アスランの表情も自然に綻ぶ。
「(……ん?)」
出撃前にマユと一緒にいた、オレンジ色の髪の少年……シュウゴ、と言ったろうか。
彼はマユたちの様子をしばらく見ると、落ち込んだ様子で格納庫をそっと後にした。

なんとなく気になり、追いかけようと思ったが、入れ違いでカガリが入って来た。
彼女は視線を巡らせた後、こちらの姿を認めて――
「アレックス!!」
満面の笑みを浮かべて、こちらへ駆け寄ってきた。
「心配したんだぞ、お前……っ!!」
「すまない……」
「でも、本当によくやってくれた。お前も、イザークたちも」
その言葉に、アスランはどうしようもない後ろめたさを感じてしまう。
多肢蟹自分たちは、よくやったのかも知れない……それでも――

「やめなさいよっ!!」
いつの間にか立ち上がったマユが、涙を拭いながらカガリに向かって叫んでいた。
ルナマリアも、レイも、ヨウランもそれを止めようとしない。ヴィーノだけが、焦った様子で視線をキョロキョロと廻らせる。
「お前……!」
カガリは何が起きたのか解からないといった様子で、マユを見ていた。
「マユ!……いいんだ、すまない……ありがとう」
アスランはそれだけ告げると、憔悴しきった様子で格納庫を後にしようとする。
「アレックス……」
それに追い縋るカガリを見て、マユは再び声を張り上げようとして……
しかし続くアスランの言葉に、彼女はすっかりその気を失った。
185DESTINY Side-C 12/17:2006/03/02(木) 18:55:50 ID:???

「俺たちがいくら頑張ったって……地球の人たちが、これを許してくれるとは限らないから」

カガリはその一言に打ちのめされた様子だった。
きっと彼女は、そこまで気が回っていなかったのだろう。
ただアスランが戻って来てくれた。その事実だけが嬉しい――
無論それもまた、正しい感情ではあるのだけれど……マユには、どうにも腹が立って仕方がなかった。

マユはルナを置いて、1人で格納庫を出て行こうとして――立ち尽くすカガリの隣で、小さく呟いた。
「敵の1人が言ってました。今のこの、クラインの後継者が作り上げた世界は、間違ってる、って」
「え……?」
「どういうことだか、貴女ならわかりますよね?……失礼します」

マユが格納庫を出て行く。
その後を追うように、無表情なレイと怪訝そうな表情をしたルナマリアが出て行くと、クルーたちはそれぞれの持ち場に戻る。

再び格納庫に喧騒が戻る。
だがカガリは動くことができずに、その場に立ち尽くしていた。



『やれやれ……なんということだ』
『パルテノンが吹っ飛んでしまったわ』
薄暗い部屋。いくつものモニターに映し出される老人たちと――

燃える街。泣き叫ぶ少女、あるいは老婆。

破壊し尽くされた、地球の姿。

「あんな古臭い建造物、なくなったところでどうということはありませんよ。
 今の世界にとって必要なのは、過去の栄華の象徴ではないのです。
 明日への糧。ただこの荒廃した世界を生き抜く術……そして我々は、そのための援助を惜しまない」
そう言った男――ロード・ジブリールは、ワイングラスを小さく傾ける。

『そうは言うがね……お前さんの打った手とやらは?』
『デュランダルめの動きは速いぞ。若いくせにやりおるわ』
男たちは口々に彼を急かす。ジブリールはそんな彼らを心の内で嘲笑すると、大仰に手を広げて見せた。
「それに関してはご安心を。ファントムペインが土産を持ってきてくれたようでね」
186DESTINY Side-C 13/17:2006/03/02(木) 18:57:20 ID:???
モニターに、映像が映し出される。
切断されたユニウスセブンのシャフトに取り付けられた赤い光点。
それらを守るかのように、巡回する"ジン"――

『ほっ、これはこれは……』
『やれやれ、と言ったところですかな』
『フレアモーター……結局、"そういうこと"ですか』

ジブリールは堪えきれずに笑いを漏らし、ワイングラスの中身を一気に煽った。
「これを許せる人間など、居はしませんよ。そしてこのカードこそが、世界を一つにする。
 強固な、"人間"のみが作り出す絆です。そう……蒼き、清浄なる世界の為に」



地球に降りてからしばらく経った頃、アスランはどうにもあることが気になってミネルバの中を練り歩いていた。
「(広いな……ヴェサリウスとは大違いだ)」
こうして通路を歩きながら内装を見ていると、懐かしい気持ちになってくる。
ザフトの軍人として過ごした日々。それらを全て裏切って、三隻同盟の一員としてエターナルで戦った時間。
ふとアスランは、デッキへのドアが開け放たれていることに気付いた。そっと顔を出してみると――
オレンジ色の髪の少年が、手摺に寄りかかって、海を眺めていた。
先ほどの格納庫での彼の態度がどうしても気になったアスランは、彼を探していたのだ。
「やぁ」
背後から声を掛けると、少年――シュウゴはびくりとした後、ゆっくりと振り返る。
「アレックスさん……どうかしましたか?」
その表情はどこか陰鬱だったが、ユニウスセブンの破砕作業の前に感じた刺々しさは、何故か感じなかった。
「いや……ちょっと、話をしたいと思ってね」
「話す事なんてありませんよ」
「……そうか」
短い沈黙。アスランも、シュウゴも黙り込んだまま、濁った海を見つめていた。

やがて……
「あの」
「なあ」
2人が同時に口を開く。互いに数瞬見やった後、
「……君から話すといい」
「それじゃあ……」
アスランがシュウゴに先を譲ると、彼は特に迷いもせずに言った。
「さっきはすみませんでした。あんな失礼な態度取って」
そう言うと彼は、深々と頭を下げる。それはアスランにとって予想しなかった言葉だった。
宇宙で初めて言葉を交わしたときに、感じ取った冷たい怒り。それが今はすっかり形を潜めている。
187DESTINY Side-C 14/17:2006/03/02(木) 18:58:36 ID:???
「いや、いいんだ。気にすることはない……ただ、訊きたいんだ」
だがその怒りの矛先は、アスランにははっきりと見て取れた。

「どうして君は、そんなにオーブを憎む?」

そう、彼の怒りはオーブそのものに対する怒り。
彼もまたあの少女と同じように、オーブで家族を失ったのか――あるいは。
「マユの話は、聞きましたか?」
極めて無関心を装った声だったが、微かな感情……悲しみに近い何かが。
「……あぁ、すまないが聞かせてもらった」
「あいつが話したならいいんです……問題は、その中身です」
彼は泣きそうな顔をしながら、空を見上げる。

「俺とあいつの兄貴は友達でした。
 なのにあいつから兄貴を奪ったのは――俺、なんです」

それもまたアスランにとっては、予想できない答えだった。
「……どういうことだ?」
「逃げてる途中にね。あいつの兄貴、怪我したんすよ。重症で……多分、もう助からなかった」
ぽつぽつと彼は語り始める。その目に涙を溜めながら――決して、流そうとはせずに。
「それで言われたんです。「マユを頼む」って。血まみれになりながら笑うんですよ。
 ……見せられると思いますか?大好きな兄貴が、血まみれで倒れてる姿なんて」
「いや……」
「見せちゃいけないと思ったんです。だから俺は、駆け寄ってきたあいつに、兄貴を見せなかった。
 無理矢理引きずって、あいつを兄貴から遠ざけた……それが最後だったんです」
彼は唇を噛みながら、震える声で――それでも涙は流そうとせずに、続けた。
「後は爆発が全部持っていきましたよ。血の海も――"シン"の身体も」
彼はそう言って、ボサボサにはねた頭髪を掻き毟る。
シン。それがマユのお兄さんの名前なのだろうか。
「俺は……今でも、よくわからないんです」
「……何がだ?」
黙って聴いていたアスランが尋ねると、シュウゴは再び空を見上げる。

「あの時あいつを助けて、今こうしてあいつの望むまま"人殺し"をさせるのが正解だったのか。
 ……あの時最期にシンに会わせて、死なせてやるのが正解だったのか……わからないんです。
 だから俺はせめて、シンの代わりとして――死んでも、あいつを守ろうと思うんです。
 オーブには……多分、八つ当たりなんです。自分がどうしようもないから」
188DESTINY Side-C 15/17:2006/03/02(木) 19:00:09 ID:???

「……本当にすまなかった、変なことを訊いてしまって」
「いえ……いいんです。多分俺も、誰かに話したかったんだ。
 礼を言うのは、こっちの方ですよ」
「そろそろ冷えてきた。君も中に入るといい」
そう言うと、アスランは振り返り、艦内に戻ろうとした――だがそんな彼を、シュウゴは引きとめる。
「……あなたは!」
「……」
「あなたは……また一緒に戦ってくれないんですか?俺たちと一緒に……!」

彼はまだ、気付けていないのか。
そう思った彼の胸に宿ったのは、憐憫ではなく。

「君は……誰と戦うんだ?」
「敵とです。俺たちの……」

押し潰されそうになるほどの、責任感。

「……敵って、誰だよ?」

そう言って、アスランは扉を潜ると、赤服の少女――ルナマリアと言ったか――が立っていた。
「確か、君は……」
「あ……しっ、失礼します!!」
彼女はそれだけ言い残し、慌てて駆けていった。

「"アスラン"……」
今度は後ろに、カガリが立っていた。
「……その名前では、呼ばない約束だろう?」
「それは!……その、ごめん……」
アスランは小さく溜め息をつくと、優しく微笑んでカガリの頬に手を添える。
「さっきはすまなかったな……邪険に扱ってしまって」
「いっ、いや、いいんだ!こっちこそ、すまない。お前の気持ち……全然考えてなくって……!」
「しょうがないさ。元気付けようとしてくれたんだろ?……ありがとう、カガリ」
「アレックス……うん」
189DESTINY Side-C 16/17:2006/03/02(木) 19:01:18 ID:???
2人は並んで通路を歩き出す。カガリの足取りは、それでも重かった。
何故か気まずい沈黙。それに耐えられずに、アスランは口を開く。
「今後のことなんだが……」
「あぁ、それについては、タリア艦長たちがミネルバでオーブまで行ってくれるらしい」
「えぇ!?」
彼は思わず呆気に取られる。だが続くカガリの言葉に、納得せざるを得なかった。
「電波障害が激しくて、カーペンタリア基地とのコンタクトが取れないそうだ。
 ここからだとオーブの方が近いという事で……
 無論、オーブとしても可能な限りの補給はさせてもらうつもりだが……」
「なるほどな」
カガリは右手で額を抑えながら、辛そうに続けた。
「私は助けられてばかりだ……国にも迷惑を掛けてしまっているし……」
「……なぁ、カガリ」
アスランはそんな彼女を見て、静かに告げる。

「こんな時にすまないとは思う……でも俺は――宇宙に、戻ろうと思う」

「え……?」
突然のアスランの提案に、カガリは何がなんだか解からずに立ち止まった。
「俺が君の傍にいても、できることは少ない――だから、行かせてほしい」
「そっ、そんな、でも……!」
「カガリ」
アスランは狼狽するカガリの肩を掴むと、真っ直ぐに彼女を見据える。
「世界は……重症だったんだ。俺が考えていたよりも、ずっと。
 俺は自分のことしか考えずに……楽観しすぎてた。デュランダル議長と話がしたい。
 俺もプラントと一緒に、なんとか世界を元に戻す手伝いがしたいんだ」
「アスラン……」
「君が一番辛い時に、君の傍にいることができないのは俺も辛い。悔しい。
 でもきっと……目指す未来は一緒だから」
カガリはその言葉を聞いて、ニッコリと微笑む。
アスランの気持ちが、不思議と安らぐ。カガリの肩に置いていた手を、そっと下ろした。
「わかった」
「カガリ……」
「ただし、気を付けていってこいよ?お前は考え始めると、頭の中ハツカネズミになっちゃうからな」
「あぁ、気を付けるよ……オーブのことは、頼んだぞ」
そう言って微笑むと、2人はふたたびミネルバの通路を歩き出した。
190DESTINY Side-C 17/17:2006/03/02(木) 19:02:23 ID:???


夕陽が差し込む部屋――プラント、アプリリウス市にある行政府の執務室に、その男はいた。
「ローマ、上海、ゴビ砂漠、ケベック……フィラデルフィアに大西洋北部、か……」
男――ギルバート・デュランダルが呟くのは、モニターに表示された、ユニウスセブンの破片が落下した地点。

「なんとも痛ましい事だ……未然に防げなかった、私の未熟だな」

彼は苦々しい表情でそう吐き捨てると、さらにモニターの地図を確認する。
「ミネルバの予測降下ポイント……太平洋……とすると、次はオーブかな」

ひとり呟く彼の後ろには、ソファーに座ってクリスタル製のチェスの駒を弄る少女。
長く伸びたピンクの髪と、美しさと可愛らしさを兼ね備えた顔立ち。
彼女はとても感嘆した様子で、チェスの駒を夕陽に空かして見ていた。

「やれやれ……」
別のモニターに映る"大西洋連邦"から突きつけられた書状を見て、デュランダルは深い溜め息をついた。

静寂が包む部屋に、突然電話の音が鳴り響く。

「私だ……そうか、デスティニーの方はバックアップで……いや、そうだな。
 デルタの方を後回しにしてくれ……そうだ……あぁ、レジェンドの方も……
 ……あの二機は無くてはならないからな……」

通話が終わると、彼は地図を表示していたモニターを切り替える。
「オーブということは……カーペンタリアには、確か"彼女"がいたな」

モニターに表示されたのは、モビルスーツのシルエット。
背中に背負った大きな一対の翼に、2門の砲と2本の剣。両前腕部には少し大きめの外部装甲が突き出している。

「最悪の場合、拾いに行ってもらうとしよう……本当に、困ったものだ」

そう言いながらも、デュランダルは微笑を浮かべる。
モニターに映る機体の脇には、小さな文字でこう振られていた。

   "ZGMF-X56S/θ"
191DESTINY Side-C:2006/03/02(木) 19:09:21 ID:???
というわけで投下完了。政治の話は難しくて書けないSide-Cです。
物語においてスピードってやっぱり重要ですよね。
「次回も楽しみだ」と言ってくれている人が居るにも関わらず、こんなに遅くなってしまったのは本当、申し訳ないです。
ついでにログ見てみたらオリキャラの話やら、物語の運びについてやら色々な意見が……
正直結構考えさせられます。いや、動かし方とかはもう決まってるんで
変えようとかは思わないんですが、これで納得してもらえるのか、という不安が。

というわけで今回、ちょっとオリジナルに突っ込んでみました。嫌いな方、ごめんなさい。
卑屈な十代というのが彼のコンセプトなんですが……感覚的にはシンとレイの中間と思っていただければ。
すっかりアスランが相談屋になってしまっていて、ちょっとアスランに申し訳ない気も。

次回はオーブ入港〜vs蟹戦第一ラウンドまで書ければいいなと思っています。それでは。
192通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 19:20:49 ID:???
Side-Cさん、久々の更新乙
こっそり楽しみにしてました

やっぱ更新速度は速いほうがいいね。その方が物語に熱中できると思うし
このルナいいなぁ…本編で期待してたルナとぴったり一致するw
オリジナルに関してはまだ露出が少ないので、とりあえず見守らせてもらいます
193通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 20:07:58 ID:???
>>"ZGMF-X56S/θ"
これなんでしょうか?
194通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 20:45:40 ID:???
>>193
デスティニーインパルスと言ってフォース、ソード、ブラストを一纏めにしたシルエット。
デスティニーのプロトタイプみたいなもので滅茶苦茶燃費が悪い。
195通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 21:10:14 ID:???
193です。
>>194
デスティニーインパルスですか、回答ありがとうございます。
196通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 21:46:47 ID:???
サイドCさん、来てくれると思ってたよー! GJです!
大気圏突入、やっぱいいですね。犠牲と、覚悟と、避けきれなかった被害が、なんとも……。
ジブリールも出てきましたし、今後が実に気になります。

>>193
ちょっとは自分で検索してみては? 結構ヒットしますよ
197通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 21:56:57 ID:???
“デルタ”の単語に俺の半年に渡る夢が秘められている気がするが
職人さんを阻害しないようあえて突っ込まない事にしよう。
198通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 22:08:10 ID:???
ルナマリアがお姉さん(゚∀゚)してるよ!

デルタというと薔薇社長しか思い出せない自分がいる。
あ、あとはガンダム戦記か。
199通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 22:37:33 ID:???
>>198
三原じゃないのかよwww
200通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 22:45:26 ID:???
ZGMF-X56S/δ(デルタ)と言えば……カオスインパルスか
201通常の名無しさんの3倍:2006/03/02(木) 22:54:35 ID:???
>>191
いいね・・・。ショウゴは丁寧に作ってあるキャラで好感が持てますな。
彼というファクターがどう動いていくのが、楽しみにさせていただきます。
それにしてもルナ・・・、フルメタのマオ姐さんのようだwww
これもいいですね、好きです。

今後も期待させていただきます。GJ!!
202通常の名無しさんの3倍:2006/03/03(金) 00:58:24 ID:???
今週仕事が忙しくてちっとも覗いてなかったから
PP、付き人、隻腕、サイドCと4つも大作が投下されてたなんて知らなかったよママン

おかげで折角今日早く帰ってこられたのにいつもの様に疲れちまったぢゃねーかwwwwwwwwwwww
203ほのぼのマユデス。ろくでもない黄金。:2006/03/03(金) 19:52:15 ID:???
「・・・ひまだなぁ・・・。」
マユはポツリと呟いた。
今はプラントとオーブの会見であって、看板であるミネルバとムセイオンは議長をのせてえんやこらさと
オーブまで来たのである。
『おーい、会場の様子見れるようにしたぞー。』
シンハロにいわれていつもの面子が巨大モニターの前に移動する。
「ハイネもアスランもミーアもあっちだからなぁ・・・。」
ジョーがつまらなさそうに呟く。
「これってやばくないの?」
『ばれなきゃおっけー♪』
ルナマリアの疑問にあっさり答えるシンハロ。

「・・・・確かに、そちらのフリーダムを私の知り合いが勝手に所有していたことは謝罪する。
しかし、わが国自体とブルーコスモスは関係ない。」
とてもではないが18歳とは思えない態度でいうカガリ。
「・・代表、わが国『自体』とは?」
いぶかしく思ったデュランダルが聞く。なぜか包帯だらけで大怪我だ。
「残念な事だが一部の氏族にロゴスをかくまっている物がいてな、まぁ鼠のようにすばやい奴で
こちらが調査に向かったときは既に本人とロゴスのメンバーはいなかった。」
いやぁ、まいったまいったと笑うカガリ。反対にデュランダルは激昂している。
「・・・・・貴様!!」
「まぁ、怒るな怒るな。私とてロゴスを捉え損ねたことは非常に無念に思っているし、申し訳なく思っている。
そこでだ、デュランダル議長。・・・・・・・・・この贈り物はいかがかな?」
パチン、とカガリが指を鳴らすと窓に掛かっていたカーテンが開く。

そこには青い空でも海でもなく・・・・・・。


「な・・・・・・・なにあのギル様専用MS?!」
アキラが驚きの声をあげる。
「うわっ・・、趣味わるー・・・。」
アウルは呆れたような表情でモニターを眺める。


「ウズミ・ナラ・アスハの遺産、『アカツキ』をそちらにお送りしよう。」

不敵な笑みを浮かべてカガリはデュランダルに告げた。
204ほのぼのマユデス。ろくでもない黄金。:2006/03/03(金) 20:04:40 ID:???
「な・・・・・?!よろしいのですか代表?!お父上の遺産とは・・・・。」
流石に驚いたのかデュランダルがカガリに聞き返す。
「あぁ、いらん。わが国には防衛のための力しかいらない。このような物は火種をもたらす。
私はもう二度とこの国を焼かせないと決めた。父上もそのように遺言で言っていたからな。どう使うは私の勝手だ。」
アスランはそう言って笑うカガリを見てずいぶん変わった、と感じた。
彼女はどうやら利益が人を動かすと言う結論に至ったらしい。まぁある意味、カガリらしいか、とアスランは思い直した。
そう思っていた瞬間、突如異変が起きる。
『カガリ様ッ!!侵入者がアカツキに・・・・!!』
部下の焦った声を聞きアカツキを再び見るカガリ、すると、突然アカツキが起動した。
「なっ・・・・・誰だ?!ここのコードは・・・・まさか!!」
『カガリ!ウズミさんの意思をこんな風に使うなんて・・・・・何を考えているんだ!』
少年の声が通信で入ってくる。それを聞いたアスランは驚きの表情を見せる。
「キラ・・・・・?!」
『・・・・・こんなことをするのはザフトのせいだね?なら、大丈夫。全部ぼくがやっつけてあげるよ。』
そう言ってアカツキは大空へと翔けていった。
「・・・・・っ?!あんのいかれポンチ!!ルージュを出せ!私がぶん殴ってやる・・・・!」
カガリはそう言うなり部屋を飛び出す。
「おい!お前ら!どーせどうにかして見てたから事情はわかってるだろ?いますぐムセイオンに戻って出撃しろ!
マユ達もだぞ!なんたって相手はあのオーブ秘蔵のMSだ!!」
ハイネが通信機を通じてハイネ隊やマユ達に指示を出す。それとは反対のアスランはただ窓の外を眺めている。
「アスラン、何ボーっとしてんだ。俺達も急ぐぞ。」
「あ・・・・・あぁ。」
205ほのぼのマユデス。ろくでもない黄金。:2006/03/03(金) 20:11:30 ID:???
微妙に隻腕さんとかぶっちゃったよ。しかもある意味で逆の方向だけど、ほのぼのです。
カガリさん、なんかたくましくなりました。少し嫌な方向へ。
アカツキくん、ごめんね。隻腕さんとの落差がはげしくてごめんね。かっこよくなくてごめんね。
いまだかつてこんな風にふりまわされるアカツキがいただろうか・・・。
キラきゅんについてはほぼアニメと同じと思ってください。虹色ビームの時に敵が止まる効果意外はアニメのキラ。

つまり、最強の敵。

ちなみに勘違いされてる方がいたので補足しておきますとラクシズはほぼアニメと同じです。
ただ、虎とかアークエンジェルはラクシズとは縁を切っています。あくまでカガリの部下です、彼らは。
なのでパワーバランス調整のためこんな感じに。無敵なキラきゅん。
さぁ、アカツキinキラを倒せるかな?!セイバーはそろそろダルマかな?!
206通常の名無しさんの3倍:2006/03/03(金) 22:37:51 ID:???
タイトルにワロタ。なんてイヤシンクロニティ。
これは未だ嘗て無いぐらいに駄目なアカツキデスネ。
この微妙な駄目っぽさがほのぼのの持ち味か。
ていうか、MS真っ二つにされてるのに生きていてもなんら違和感の無いキラてつくづく業の深いキャラだなあ。

ちなみに一つ豆知識を披露。
最近このスレで立て続けに登場したアカツキですが、その最大の特徴は金色に輝く特殊装甲「ヤタノカガミ」。
ビームっぽい攻撃なら何でも跳ね返して相手を自滅させるというPS装甲を超える不思議装甲だ。
さてこの不思議装甲、どうやってビームを反射しているのか?
原理は簡単で装甲表面がナノマシンで覆われていて、そのナノマシンが頑張ってビームを跳ね返しているらしい。
…色々言いたいことはあると思うけど「ああ、ナノマシンならしょうがないな」ぐらいの寛大な精神をもって許容していただきたい。
なお、以下のレスでこのことについての本編叩きは勘弁。
207通常の名無しさんの3倍:2006/03/03(金) 22:56:08 ID:???
>>205
開き直りカガリ、良いねえ・・・
カガリは某スレでは必殺技が札束ビンタになるまで
突き抜けてるから、そっちの路線でも俺は好き。
GJ!
208通常の名無しさんの3倍:2006/03/03(金) 23:01:46 ID:???
ほのぼの作者さま、お疲れ様です・・・ブハハハハハッハ!!笑っちゃいましたよ!
隻腕版アカツキ+キラとは見事に正反対なおバカぶり(褒めてますよ^^;)
理屈抜きで笑わせて頂きました。こーなるとドタバタ最終劇は
マユティニーVSキラアカツキ?うーん頂上決戦の様相が。

>>206
HGシラヌイアカツキの説明書にも但し書きがあったが・・・正直訳わからん。
つーか明らかにあの説明は無理ありすぎだろう・・・
209通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 00:22:40 ID:???
カガリ、いいねぇ…
そういや同人版見たときもアカツキは「オーブの理念を体現してる」とかいってたが、
どう考えても「オーブの理念に逆らいまくってる」としか思えなかったな。

それを「このような物は火種をもたらす」と一蹴したカガリにちょっと惚れた。
ほのぼの作者様GJ!
210付き人 0/17:2006/03/04(土) 00:35:42 ID:???
ほのぼの作者さま……そこでヤマトさん登場ですか!
そしてなにやらアスランの背中に哀愁が……
ここで一句、
       友達が  機体奪って  暴れだす   (季語なし)

          ……失礼しました。


付き人三話、出来たので投下します
211付き人 1/17:2006/03/04(土) 00:36:50 ID:???
「エンジン始動、各ブロック気密確認」

新造戦艦ミネルバのブリッジに、艦長タリア・グラディウスの声が響く。
明日に予定されていた進宙式は、なにぶん儀式的なもの。
全世界が注目するその式典で万が一にも艦に不備があったら、ザフトの顔に泥を塗ることになる。
そのようなことが無いように、艦の整備は既に完璧に済ませてある。

「それが、まさかこんなことに役立つとは思っても見なかったけどね」
「は? 何か言いましたか」
「いいえ、なんでもないわ。それより司令部との情報リンク、急いで」

独り言を目聡く耳にした副官のアーサーを黙らせて、仕事を命じる。

「は! メイリン、アーモリーワン司令部と情報統合、メインモニターに管制塔レーダーのコロニー周辺データを映してくれ」
「はい!」

アーサーの指示でメイリンがコンピューターを操作、モニターに映像が映し出される。

「アビス、カオス、ガイア、追撃しているゲイツ隊と交戦しながらアーモリーワンから離脱中。
――!! ゲイツ隊、一機シグナルロスト! 撃墜された模様です」
「ゲイツ隊以外の追撃部隊は?」
「それが……コロニー周辺のパトロールに出ていたナスカ級二隻が航行不能、連絡途絶。そちらの対応に機体を取られて」
「ナスカ級二隻が? 原因は?」
「調査中ですが現在のところ分かっていません」
「どう見る、アーサー?」
「どう見るったって……一隻ならともかく二隻となると、今回の件と無関係とは――」
「……やっぱり、そうなるかしらね」

アーサーの返答にタリアは頷く。同時に、ブリッジに入ってきた人物に気付く……が、気付かなかった振りをして続ける。

212付き人 2/17:2006/03/04(土) 00:37:44 ID:???
「レイとルナマリアは?」
「ええと……あ、今格納庫に入りました。アルファワンと略奪されたザクウォーリアーも一緒です」
「よし、繋留クレーン外せ。ミネルバ、出港する!」
「出港って、この艦進宙式もまだ済んでないんですよ! それに……」
「いや、私からもお願いする」

アーサーの抗議を、先ほど入ってきた男が遮った。彼に目を向けたブリッジ要員が、慌ててその姿勢を正す。

「あれが今奪われることはプラントにとって色々と不味い。何とかして捕獲、あるいは破壊してもらいたい。
 もちろん、命に代えても、などということは出来ないが……」
「要は敵の手に渡さないようにすれば、よろしいのでしょう?」

男――プラント評議会代表、ギルバート・デュランダル議長にタリアは不遜な態度で応じる。

「お任せください、そのためのザフト軍です」
「そうか……なら、頼む」

繋留クレーンが外され、宙港ハッチからミネルバは出港する。
その間議長と艦長の間には、なんともいえない険悪な空気が漂っていた……
ミネルバ管制官、メイリン・ホークは後に姉のルナマリア・ホークにそう語った。

213付き人 3/17:2006/03/04(土) 00:39:38 ID:???


      歌姫の付き人

     第三話  追うもの、追われるもの


赤と白のザクのハッチが開く。
「あー、つかれたー。お疲れ、レイ」
赤いザクから出たルナマリアに、
「ああ」
白いザクから出たレイが素っ気無く応じる。

「あ、そーだ、レイ。艦長への報告、任せちゃっていい?」
「構わんが、どうした? さっきの戦闘で怪我でもしたのか?」
「ううん、そういうんじゃなくて。あれのパイロット、どんな奴だか見てみたくってさ」

そう言って、自分たちの愛機の隣に置かれたアルファワンと緑のザクウォーリアーを見上げる。
中に乗っているのが何者かは分からない。不測の事態にも対処できるように、二機の周りは兵が取り囲んでいる。

「分かった、艦長のほうには俺から適当に言っておく。だが、気をつけろよ」
「分かってるわよ」
214付き人 4/17:2006/03/04(土) 00:40:41 ID:???
ブリッジに向かうレイを見送り、顔なじみの兵から拳銃を借りる。
弾の装填を確認し安全装置を外したところで、緑のザクのハッチが開いた。
中から出てきたのは、一組の男女。どちらも、まだ若い。少々固めなものの、町で見かけてもおかしくない服装をしている。
彼等に銃を突きつけて、言う。

「そこの2人、動くな! MS略奪計画とその背後組織、お前たちが知っている情報を話してもらう。
一つ言っておく、テロリストに戦争法は適用されない。私にはお前たちを射殺する権限がある」

男が、女をかばうようにして立つ。護衛役なのか? そもそも何故2人で一機のMSに乗っていた?

「銃を下ろしてもらいたい。機体には奪われた新型機から逃れるため緊急避難的に借りただけだ。
勝手に乗ったことは謝罪するが、こちらに略奪の意思は無い」

ルナマリアの疑問に答えるように、男が口を開く。

「こちらはオーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ氏だ。
 俺は随伴員のアレックス……」
「アスラン!」
「あすらん?」

男の言葉を遮った声、その出所は、いつの間にか開いていたアルファワンのコクピット。
そこからはみ出ていたピンク色の髪の毛が、慌てて中に引き込まれる。

「ラクス?」

男の目が、幽霊でも見たかのように見開かれる。アスランとラクス、どこかで聞いた名前の組み合わせ。
それが先の戦争の2人の英雄に結びつくよりも前に、地面が、壁が、振動を始める。
地震……ではない、これは――

「ミネルバ、出港するの?」

銃を男に向けたまま、ルナマリアは呟いた。


215付き人 5/17:2006/03/04(土) 00:41:28 ID:???

ミネルバがその巨体を真空空間に乗り出したちょうどその頃、新型三機とゲイツ隊の戦闘は佳境に突入しようとしていた。
ゲイツ隊は既に一機が撃墜され、一機が被弾のためアーモニーワンに引き返している。
だが新型機のほうもその代償として、かなりのエネルギー消費を強いられている。
そのことは放たれてるビーム砲の数の減少から、ゲイツ隊側にも確認できた。

「確実に仕留める、包囲しろ!」

隊長機の命令に、七機のゲイツが散開する。出来れば捕獲を、という出撃前の命令は、既に無視すると決めていた。
三倍の数であたりながら、こちらが一方的に落とされている。違うのはおそらく機体性能だけではない。
捕獲などという危険を冒してさらに仲間を失うことは、絶対にあってはいけないこと。
現場を知らぬ上層部の命令など、部下の命には代えられない。

ビームライフルの一斉射撃で、新型三機を分断する。一機が欠けて二機編隊になった第二、第三小隊で、カオス、ガイアをそれぞれ拘束。
その間に無傷の第一小隊が、接近戦でアビスに迫る。遠距離砲撃戦用のこの機体も、今はエネルギー不足でさかんな射撃は行えない。
まずはこいつを仕留めてから、残りも一体ずつ処分する。
「いくぞ、野郎共!」
アビスのビーム砲を旋回でかわし、散開していた三機が再び集中、そのままアビスに突撃する。そして――

彼、ゲイツ隊隊長は、戦闘指揮官としては非常に優れた男だった。
新型三機のエネルギーが不足していること、アビスが格闘戦を苦手としていることを見抜き、最適な部隊運用を行っていた。
だが彼は、決してそれ以上の……戦場全体を見渡す視線を持たなかった。
略奪者が奪った機体をどうするつもりだったのか、その略奪劇と同時に何故ナスカ級二隻が航行不能になったのか。
もし彼が、そのことを少しでも考えたなら、もしかしたら戦闘の結果は変わったものになっていたかもしれない。

――爆発したのは、二機のゲイツだった。ビーム砲による被害……といってもアビスから放たれたものではない。
新型三機以外の、第四の敵。戦闘機型MA、エグザス、そしてそれが操る有線ビームガンバレル。
二機のゲイツの頭と足をもいだその凶器は、三機目の、隊長機へと向けられる。
「馬鹿な、こんな機体レーダーでも光学でも……」
それが、強奪された新型機を追撃したゲイツ隊リーダーの最後の言葉となった。

216付き人 6/17:2006/03/04(土) 00:42:27 ID:???

「ネオ、遅いぜ!」
アビスのアウルが、冷や汗を拭って言う。
『なーに、よく言うだろ、ヒーローは遅れて登場するもんだって』
エグザスのパイロットにして彼等ファントムペイン隊の隊長、ネオ・ロア・ノークはそれに軽いのりで答えると、機体を残りのゲイツに向ける。
四機のゲイツは、エネルギー切れ寸前の新型より新たなMAを脅威と見なしたのだろう、合流、密集し、エグザスに対応する。
互いに背を向け死角をなくす、オールレンジ攻撃に対するセオリー通りの隊形。
たちまち一基のガンバレルが、ビームライフルを受けて四散する。が、それすらネオにとっては予定内のことでしかない。
次の瞬間密集したゲイツ隊に、無数のミサイルが降り注ぐ。発射地点はエグザス後方。
先ほどまで確かに何も無かったその空間には、いつの間にかミネルバに匹敵する大きさの宇宙戦艦が漂っていた。


217付き人 7/17:2006/03/04(土) 00:43:16 ID:???

「ゲイツ隊、四機分のシグナルロスト! 残りの三機も中破以上の損害を受けている模様。
 さらに交戦区域の後方10kmに国籍不明の大型艦出現。新型とMAを収容します」

ミネルバのブリッジに、メイリンの声が響く。

「出現って……あれってまさか」
「ミラージュコロイド、でしょうね。国籍不明艦を追うわ、全速前進!
 メイリン、あの艦の諸元をデータベースに登録!」
「はい」
「国籍不明艦……いつまでもこの呼び名じゃあめんどくさいわね、以後あの艦をボギーワンと呼称、その旨、艦内に伝達しておいて」
「は!」

報告を受けたタリアは、てきぱきと指示を下す。その様子は、有能な艦長そのもの……に、見える。
だがもし今の彼女のことを、前の勤務先、巡洋艦ボリーバルのクルーが見たら、おそらく首をかしげるだろう。
雰囲気が、通常よりも明らかに厳しすぎるのだ。気負っていると言ってもいい。
だが新造艦のミネルバでは、そのことに気付くことができるものはいない。
タリア自身は自分の変化、さらにはその原因までもをうすうす感付いてはいるものの、女としてのプライドが決してその事実を認めない。

――私が功をあせっている? 後ろにギルバートがいるから……
  馬鹿な、私は冷静よ!

大きく息を吐き、周りを見渡す。気分を落ち着けるため、偶然目のあったメイリンに声をかける。

「ボギーワンを有効射程に捕らえるまで、どれくらいかかる?」
「はい、現在の速度差から逆算すると……三時間五分後です」
「分かったわ。コンディションをブルーにさげて、手隙のものは休憩を許可します。
ただし二時間後にはイエローにまで戻すので、そのつもりで」
「は! あ、艦長はどこへ?」
「格納庫で、捕獲した機体を確認するわ。アーサー、あとをお願い」

副官のアーサーに後を任せ、タリアは艦長席から立ち上がる。

「格納庫、か。なら、私もお供させてもらおう」

ブリッジを後にしようとしたタリアに、デュランダルが続く。タリアの眉が、かすかにつりあがる。
218付き人 8/17:2006/03/04(土) 00:44:08 ID:???
「どういうつもり?」
人がいなくなったのを確認して、通路でタリアが小声で聞く。

「どういう、とは……質問の意図が分からないのだが」
「他にも避難場所はいくらでもあったでしょ。なのになぜあの襲撃騒ぎの避難場所に、この艦を選んだの?」
「そこが一番安全な場所だと思った、それだけだよ。何せミネルバはザフトの新鋭艦で、その上タリアが艦長をしているんだ。
 アーモリーワンでここ以上に安全な場所など無いだろう」

相変わらずの態度で、はぐらかされる。
議会決定をテレビで発表するのと同じ声で、カレッジ時代恋人として過ごしたときと同じ口調で。
そのことが、そしてそのことにどこか安心している自分が腹立たしくて、タリアは足を速める。

「……つれないな、相変わらず」

取り残されたデュランダルは、いたずらっぽく微笑むと、ゆっくりと彼女の後を……追おうとして、振り返る。

「レイ?」
「ギル! どうしてここに?」

レイ・ザ・バレル、先ほどまで白いザクファントムに乗っていた青年が、驚いた顔で立っていた。


219付き人 9/17:2006/03/04(土) 00:45:03 ID:???

ここで、時間を少しさかのぼらせてもらう。そうでもしないと、とても説明がつかないから。
何しろ、コーディネーターの中でも特に優れた知性を有する女性、タリア・グラディウスさえなかなか理解できなかったのだ。
ナチュラルである我々が彼女が目にした格納庫の惨状の詳細を正確に把握するためには、
時系列にそって丁寧に、事の顛末を追う必要があるだろう。

それでは説明……に、入る前に、基本事項を確認しておきたい。簡単に言えば、前話終了の時点での各員の現状の認識の違いである。

まずはルナマリア、彼女はコクピットでのレイとの通信から、襲撃者は二組いたと考えている。
一組目が新型三機を奪ったグループ、もう一組がアルファワンを持ち込んで緑にザクを奪おうとしたグループ。

次に緑のザクに乗っていた2人、彼等は紅白のザクがザフト軍であることは理解している。
だが彼等の勝手な推測から、インパルスのことは『略奪グループの持ち込んだ機体だが、乗り手はプラントへの亡命希望者』と判断している。

三番目がインパルスに登場していた二人、彼女たちには前述の二組とは異なって、相手について考える余裕はなかった。
自分たちをミネルバに運んできた紅白ザクこそザフトだろうと思っているが、後はきっと略奪者のものだろうといい加減に考えている。

その間違いまくった認識の下、彼等は対面した。奪われた新型三機を追う、ミネルバの格納庫で。
もちろん、まともに話が進むわけが無い。
220付き人 10/17:2006/03/04(土) 00:46:00 ID:???
「アスラン!」
ミーアがそう言った理由は……はっきり言って、無い。
生死の狭間という極限状態の体験直後の現実感の喪失、その状態で目にした人物の名をたまたま知っていたので、
試しになんとなく口に出してみました……無理に理由をつけるとしても、せいぜいがそんな感じだ。
口にした後で、それがおそらくまずいことだということには、さすがに気付いたらしい。
だからマユに慌ててコクピットに引きずり戻された後は、めずらしくじっとしていた。

「ラクス?」
名を呼ばれ、そう呼び返した時点で、アスランは自分が『アレックス・ディノ』であることを忘れた。
仕方が無いといえば仕方が無いのかもしれない、彼に生じた疑問はとてつもなく大きく重要なものだったから。
そして彼は、ためらうことなくその疑問を口にする。
「何故君が、いまさらプラントに亡命しようとする?」

マユにはアスランの言ったことの意味はよく分からなかった。
ただ、彼がラクスの婚約者であり、今彼にミーアの存在を確認されたことは分かった。
このままではミーアがラクスでないことに気付かれてしまう……そう思った彼女は腹を括った。
何とかして彼の注意をミーアから引き離さなくては、そう考えて、言う。
「アスランさん? なんでザフトの英雄が、ザフトのMSを奪うんですか!?」

「誰だ、君は? まさか君がオーブからラクスをさらったのか?」
「オーブって……確かに私はオーブから来ましたけど、それとラクスは関係ないでしょ!」
「オーブから来ただと?」

マユの言葉の内容に、カガリが敏感に反応する。

「まさか、今回の襲撃はオーブが行ったというのか!」
「落ち着け、カガリ」
「え? なんでそうなるの? っていうか、襲撃したのってあんたたちじゃないの?」
221付き人 11/17:2006/03/04(土) 00:47:16 ID:???
「おかわり」
その言い争いを聞いていたルナマリアが、抑揚の無い声で呟いた。
手を差し出された警備兵は少し戸惑って、そして……彼女の据わった目を覗き込んで、慌てて二丁目の拳銃を渡す。
ルナマリアはそれをマユとアスランに向けると、大声で言い放つ。
「無視するな、テロリスト共! 指示に従え」
二丁拳銃で仁王立ち、顔は髪と同じくらい赤いが発射できる弾の数は残念ながら二倍どまりだ。

「だから言ってるだろう、俺はテロリストじゃない」と、アスラン。
「何よ、ザフトの人って善良な一般市民にも銃を向けるの?」と、マユ。
「いい加減にして! 見え透いた猿芝居は止めなさい!」と、ルナマリア。
「何故、わが国がザフトの新型機を……誓ったはずなのに、もう悲劇は繰り返さない、互いに手を取って歩む道を選ぶと……」
ガガリの呆然とした呟きに、マユがキッと睨んで噛み付く。 
「まだそんなこと……アスハの人ってそんな綺麗事しか言えないんですか?
 そんなだから二年前、国を焼かれちゃったのに!」
「なっ!」
絶句するカガリの傍らで、アスランはコクピットに隠れたラクス(実際はミーア)に呼びかける。
「おいラクス、隠れてないで出て来い! 何故オーブから逃げた?」
「オーブって何よ、私はずっとプラントにいたわよ、この裏切り者!」
わけが分からず、コクピットの中からミーアが叫ぶ。
もちろんこの『裏切り者』とは、さっきザフトの機体を奪おうとした(と勘違いしている)ことであるが、
彼は当然そうは受け取らず、
「裏切り者はお互い様だろうが! 先に裏切ったのはそっちだろ。それにそれだってちゃんと理由があって……」
無視されていたルナマリアが、そこに割ってはいる。
「理由があるなら、MSを盗んでいいんですか?(アーモニーワンのことを言っている)」
「なに? 俺がMS盗んだのは裏切る前だぞ(ヘリオポリスのことを言っている)」
「裏切る前だって盗もうとしたんなら裏切ったことになるじゃないですか。それでもザフトの伝説のエースですか、情けない」
「だから一体何の話だ?」
「何の話って、アスランさんがあのザク盗んで暴れてたんじゃ……」割り込もうとするマユを、
「そう言うあなたもその仲間なんでしょ!」ルナマリアが遮って……

格納庫に入ったタリアがそこで目にしたのは、そんなどうしようもない混沌だった。
222付き人 12/17:2006/03/04(土) 00:49:04 ID:???
「……ヨウラン整備兵、これは一体どうなっている?」
とりあえず、手近にいたものに事情の説明を求めるが、もともと彼もよく分かっていないのだ。
「えーと、出撃したルナマリアがラクス・クラインとアスラン・ザラとカガリ・ユラ・アスハと知らない女の子連れてきて、
 それでいきなり口喧嘩始めた?」
「……」
なんだ、それは?
なんだっていったいこの艦に、一国の国家代表と前々議長の息子と前々々議長の娘が来なきゃならないのだ?
ただでさえ現議長を乗せているというのに。もしかしてこの艦が沈んだら、人類の歴史は大きく変わるんじゃないかしら?

痛くなってきた頭を抱えるタリア、しかしそんな彼女を尻目に、この場を収める救世主は現れる。
長髪の青年を傍らに伴って。

「これは……インパルス?」

アルファワンを見上げ呟いた彼に、四人の、八つの、目が向けられる。

「議長さん?」
「デュランダル議長!」
「議長?!」
「デュ、デュランダルさーん」

思わず彼のことを呼び、そして互いに顔を見合わせる。
格納庫の混乱は、ようやくその収束への取っ掛かりを見つけたようだった。


223付き人 13/17:2006/03/04(土) 00:50:08 ID:???

「参ったね、これは」

ミネルバでボギーワンと命名された国籍不明の宇宙戦艦、その実態は地球連合軍特殊部隊、
第八十一独立機動群ファントムペイン母艦、ガーティー・ルーの艦橋で、ネオは頭を抱えていた。
通信機を操作し、連絡を取る。

「三人組の最適化、どれくらいかかる?」
『それが、色々と余計な記憶が入っていまして、出来れば二日ほどかけてじっくりメンテナンスしたいと……』
「はぁ? 長すぎ!」
『しかし最適化時に消去しなかった記憶は、完全に固定化されてしまいますが……』
「戦闘に直接支障をきたすような記憶じゃないんだろ? ならいいよ。もう敵目の前にいるんだからさー、
さっさと終わらせないと記憶どころか俺たち全員がこの世から消えちゃうぜ」
『では最低限の調整だけ、それなら十時間ほどで出来ますが』
「……あっそ、そんなかかるんだ」

「あー、格納庫、格納庫、こちらネオ・ノア・ローク。俺のエグザス、修理どれくらいで終わる?」
『えーと、大体九時間くらいっすかね』
「そこを何とかさ、三時間くらいで終わらせらんない?」
『大佐? 一体何考えてんですか! 終わるわけないでしょう、ガンバレル一基全壊してるのに』
「え、あ、いや、じゃあさあ、新型三機の戦力化後回しにしてもいいから」
『それでも最短で五時間半、それ以上は一分たりともまけられません! 元はといえば壊した大佐が悪いんですよ。
ガンバレルをおとりに使うだなんて、頑張って整備したこっちの気持ちをなんだと……』
「わ、分かりました、ごめんなさい」
224付き人 14/17:2006/03/04(土) 00:51:01 ID:???

「と、言うわけで、しばらく使える機体がないわけだが……」
「約三時間後には敵に有効射程圏内に追いつかれる、というわけですな」
「うーん、実はマジでヤバイっぽいんだよね、この状況」

神妙な顔で応じるイアン・リー艦長に、ネオが言う。
口ぶりこそいい加減なものの、仮面の上からでも本当に参っているのが分かる。
あと三時間で追いつかれる、だがその時にはエグザスの修理も三人の調整も終わっていない。
そんな状態であの新造戦艦に挑むのは、いくらなんでも無謀である。

「時間さえあれば、戦力は整うんだがなー」
「時間というと、どのくらいあれば?」
「そうだな、1日あればエグザスも直るしあの三人も新型で出られるように……て言っても出来ないことああだこうだ言っても――」
「1日程度ならば、何とかなるかもしれません」
「え、うそ! まじ?」

驚くネオに、リーは不敵な笑いを見せる。

「まじ! よっしゃあ、じゃあ頼むわ」
「了解しました。推進剤予備タンク、切り離し用意!
 機械人形が登場する前から宇宙にいた戦艦屋の戦い方というものを、お見せいたしましょう」


225付き人 15/17:2006/03/04(土) 00:51:52 ID:???

何とか騒ぎが収まり始めた格納庫をデュランダルに任せ、タリアは再びブリッジに戻る。
ボギーワンに動きがあったという報告が、アーサーからなされたのだ。

「で、どうしたの?」
「は、これを」

モニターに三つの機影が映る。『ボギーワン』と印された大きなものが一つ、それより小さなものが二つ。

「五分前に、ボギーワンより分離しました。MSかは分かりませんが、慣性でこちらに漂ってきます」
「慣性……推進はしていないの?」
「はい、動きは分離後等速度運動、熱源も感知できません」
「……」
「艦長!」

考え込むタリアに、管制官のメイリンが新しく入った情報を報告する。

「レーダー観測によるデータ出ました。分離された二個の物体、いずれもほぼ同様の形状。
 MSでは……ありません。おそらく推進剤のタンクかと」

その報告に、ブリッジ内に安堵の空気が流れる。
タリアも、大きく溜息をつく……やはりギルバートのことで気が立っているのか、などと考えながら。

「ぶつかったりは、しないわね」
「はい、衝突コースからは外れています」
「よし、進路そのまま」



「ほう、進路を変えんか……新造艦だけあって練度は低いのかな?」
「おいおい、当たんねーぞ」
「いえ、あれでよいのです」

ガーティー・ルーのブリッジで、リーが満足げに笑う。

「右舷予備タンクのミネルバとの最接近時間は?」
「あと十分、左舷タンクはさらにその五分後です」
「よろしい。主砲ゴッドフリート、発射準備。狙い、右舷燃料タンク」

その十分後、ガーティー・ルーはミネルバ方向に向け、二本の高エネルギー線を発射した。


226付き人 16/17:2006/03/04(土) 00:52:46 ID:???

最大射程距離と有効射程距離という言葉がある。両者とも、重火器の射程距離を表す言葉だ。
実態弾の場合(特に重力下では)、弾をどれくらい遠くまで飛ばせるかを表したのが最大射程、
どれくらいの距離までなら弾を当てたい位置に当てられるかを表したのが有効射程となる。
軍で重要になるのは主に有効射程のほうだ(遠くまで飛ぶけどどこに当たるか分からない鉄砲なんて、誰も欲しがらない)。
だが、レーザーなどの光学兵器になると話は変わる。どこまでも直進し続ける(例外もある)レーザーの場合、
上の定義だと最大、有効とも理論上射程が無限になるのだ。もちろんこれは、どんな遠くの敵も撃てるという意味ではない。
レーザーは空間中を漂う粒子によって攪乱されその効果を次第に減耗、最終的には通常の光と同様のものに変化するためだ。
そこで軍では、当たったとき物質に何らかの変化を与えられる距離、脅威に何らかの被害を与えることが出来る距離を、
それぞれ光学兵器の最大射程、有効射程と定義している。
今のガーティー・ルーとミネルバの距離は、互いの主砲の最大射程内ではあるが有効射程内ではない。
ガーティー・ルーの主砲ゴッドフリートは対レーザー防御の施されたミネルバに当たっても何の被害も与えられないが、
ミネルバに近づいた推進剤タンクに当たれば、それを貫くぐらいの力はある。



増進剤タンクを貫いたゴッドフリートは、中に残っていた燃料と接触。それに自身の持つ熱エネルギーを移動させる。
結果、温度上昇により燃料は気化、自らの体積を数千、数万倍に膨張させる。
膨張した燃料が生み出す圧力にタンクの外壁は耐えることが出来ず、崩壊し破片へと変貌して飛散、一部はミネルバへと降り注ぐ。
その過程は、すべて十分の一秒以内に発生した。襲い掛かる破片を回避する余裕など、当然ない。

227付き人 17/17:2006/03/04(土) 00:53:38 ID:???

「……被害確認!」
最初に我に返ったタリアの声が、ブリッジに響く。

「右舷、住居区画で空気漏れ発生!」
「表面装甲、第二層まで貫通」
「第三区画から第五区画までで停電発生」

被害は、予想以上に大きい。艦の状態が攻撃を想定していないブルーで、隔壁閉鎖が行われていなかったためだ。

「コンディションレッド! 取り舵三十度、機関停止!」

ボギーワンから分離したタンクはもう一つある。同じ手に二度もはまる気はさらさらない……が、

「敵艦、進路変更……面舵です!」

再度の主砲発射に変わりもたらされたのは、ボギーワンのミネルバとは逆方向への進路変更。
結果、二隻の距離は拡大する……最大射程距離の三、四倍までに。

「ボギーワンの有効射程距離内への捕捉時間変更。約、十八時間後です」

静まり返ったミネルバのブリッジに、メイリンの報告が淡々と響く。


最終被害集計完了後、ミネルバはコンディションレッドを解除、ただし今度はイエローを維持。
タリアは指揮権をアーサーに預け、艦長室でしばしの仮眠。何かあったらすぐ起こすようにと言っておく。
予備推進タンクの爆発でミネルバが受けた人的被害は、軽傷8、重傷3……そして死者1だった。
228付き人 18/17:2006/03/04(土) 01:04:00 ID:???
以上です……というか、何故タリア? 
まあ、軍人でないマユだとなかなかスムーズに出撃させられないのが原因なんですが、
ギルバートとの関係が書いててどろどろしそうで怖い。

おまけ
光学兵器の有効射程と最大射程、すべてでたらめです、間違ってるかもしれません。

某女賞金稼ぎの漫画によると、二丁拳銃は本当は実用的じゃないそうです
(理由 片手で打つと狙いがぶれる、両手がふさがっているので装填している弾を打ち切ったら補充が出来ない)
229通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 01:21:47 ID:???
>>付き人
GJ!
三組の混沌とした会話で噴いた。
解説がきっちりしててとても読みやすいです。
でも、燃料タンク爆破シーンなんかは、
少し爆破時の状況(効果音とか、ブリッジの反応とか)を入れてみると、もっと入り込みやすくて良いかと思ったり。

次回も期待してます。
乙!
230通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 05:36:00 ID:???
ガルマなタリア吹いた
231通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 09:17:08 ID:???
付き人作者さん乙!
うわ〜リー艦長がテラカッコヨス・・・同人アニメだと空気だったのが、ネオ
と同格・・・というかこっちのネオも普通にカッコいいです(「ヒーローは・・・」
の件が「あの人」との対比みたいでなおGJ!)

最適化の時間があんなに掛かるのは、予定調和とはいえ、流石ですね。
>光学兵器の有効射程と最大射程
これ、間違いでもないですよ。宇宙空間でも物質はありますから、減衰は大気圏
ほどではなくともしますし、ガンダム世界では大量のデブリもありますから。

そして、ここから読んでも粗筋が理解できる読みやすさ、嬉しいですね。
これからも期待しております!

あ、アスランをボケ担当に回すのは新しい切り口で良いかとw
232通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 12:27:33 ID:???
>>228
いやあ・・イイ。
互いに共通に知識を共有してないと悲劇だというのが
会話によく現れてますな。上手い、本当に上手い
不毛な言い合い、楽しませて頂きました。

それに主人公が、完全部外者ってのはホントこれまた
先が楽しみになってくる展開だとつくづく思わされます。

最後に、リーさん、あんた・・・カッコ良すぎ!
GJ!!
233通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 14:48:25 ID:???
爆発シーン、宇宙だから効果音は無くとも
確かに何らかの描写がほしい気はする。
「音波を伝えない宇宙での大爆発。しかし、その衝撃は確かにミネルバを揺さぶった」
とか(適当)
あと、爆発の瞬間格納庫でアスランがコケて頭ぶつけるとか……すんません、冗談。
あくまで個人的妄想に基づく感想なので流し推奨。

でも面白かった。じっくり続きを書いてください。
234通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 15:51:49 ID:???
種宇宙は、確か空気があって月面でキノコ雲があがる世界のはず。

235通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 16:09:07 ID:???
単発設定小話 脇話「カガリとキラ、withノイマン&チャンドラ」

〜ダーダネルス海峡でやっちゃったカガリ〜
カガリ「あ〜!!やっちゃったーっ!あんなこと言うつもりなかったのにー!!」
〜両腕で頭を抱え込むカガリ。後ろからカガリの肩をポンッと叩くキラ〜
カガリ「・・・キラ・・・・・・」
キラ「カガリ・・・・・・オツカレサマ・・・・・・」
〜同情した目でカガリを見下ろすキラ〜
カガリ「うっ、うわっー!そんな目で、私を見るんじゃないっ!ど、同情するならIQをくれー!」
〜あさっての方向へ走り出すカガリ〜
キラ「・・・なんて不憫なんだ・・・(ほろり)」
ノイマン「キラ君・・・君もひどい男だな・・・・・・」
キラ「ノイマンさん。でも、あの子は一回追い込まれたほうがいいいんですよ。僕の片割れなんだから・・・」
ノイマン「追い込むって、ぅおいっ!」
キラ「追い込まれなきゃ強くなれない。それを乗り越えて次が見えてくる人間だっています」
ノイマン「・・・・・・」
キラ「カガリに必要なのは才能とか知能じゃなくて、覚悟なんですよ」
ノイマン「覚悟・・・」
〜立ち去るキラ。給湯室へ向かうノイマン〜
チャンドラ「よぉ〜お疲れさん」
ノイマン「ふぅ。最近の若者ってのは切ないねぇ・・・ん、サンキュ」
チャンドラ「はは、キラ君とカガリさんかい?」
ノイマン「そうそう。やっぱり姉弟なんだね、あの二人。性格がよく似てるよ」
チャンドラ「ふ〜ん、そうなの?キラくんは控えめで、カガリさんはでしゃばりって感じだけどね」
ノイマン「・・・鳥海さ、もといチャンドラも二人と話してみればわかるよ」
チャンドラ「そうなの?千葉く・・・いやいやノイマンさんは観察眼するどいからな〜」
ノイマン「そういやピンクのミニスカはどうしてるんだ?」
チャンドラ「ピンクのミニスカって!?千葉くん!いままで出番なかったからってダメだよ、そんなこといっちゃ!」
〜とりとめのない会話が続く給湯室〜

〜カガリ自室にて〜
カガリ「わたしは、わたしは飾りなんかんじゃないんだ・・・」
(マユ「やっぱりオーブなんてキレイゴトで飾った虚構の国なのよ!」)
カガリ「飾りなんか・・・じゃない・・・・・・」
〜うなだれるカガリ〜

236通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 18:24:52 ID:???
>>228
今回も面白かった。
登場人物紹介で「有能な」という形容詞が当てにならない種世界で
ちゃんと働いてみせるリー艦長GJ!

>>235
キラwwwwやっぱり酷い奴だ
237ほのぼのマユデス。ろくでもない黄金。:2006/03/04(土) 19:14:21 ID:???
「あいつ、危険な感じがする・・・。」
マユがコクピットの中で呟く。
『どんな風に・・・?』
シンハロも神妙な顔(モニター画面の隅だが)をして聞き返す。
「・・・主人公の座を奪い去りそうな・・・。」
『もっと大切な危険性を感じ取れよ!!』
「まぁ、でも【私より下手に目立ったら隻腕さんとこで酷い目に遭う】の呪いをかけておいたからね・・。」
『ハイネ隊の皆が全滅したのはそのせいだったのか?!あとそれは微妙に展開予想なのか?!あと目立ってないアウルは?!』
コクピットの中に怨嗟の声と叫びが響く。ディスティニーは耳があったら塞ぎたかった。
『こらっ!!主戦力がふざけるな!』
ハイネに二人は怒られる、既にハイネ隊が試しに仕掛けているところだった。

238ほのぼのマユデス。ろくでもない黄金。:2006/03/04(土) 19:17:37 ID:???
「がんじがらめになっちゃいなさい!」
グレイシアが複雑な動きでフィッシュ・ボーンをアカツキに絡める。
「ジャンクにしてあげるっ!!」
「金魚のおさしみだね♪」
接近戦専門のミーアとキースがビームナギナタとビームクローを同時に振り下ろす、が。
微妙にアカツキはスラスターを使い、フィッシュボーンを断ち切るのに二人の攻撃を利用した。
しかも、フィッシュ・ボーンは切られたというのに装甲には傷一つ付いていない。
『応援に来たぞっ!』
オーブ軍のムラサメがビームを放つ、が、それは跳ね返りカオスにあたりそうになる。
『うぉっ!!なんだよコイツ!』
スティングが兵装ポッドからミサイルを放つ、が、それでも傷はつけられない。
「PS装甲はともかく・・・、あの金ぴかなんだよ?!」
アウルは持ち前の火力を生かせそうにない敵に焦る。
『あれはうちが作った特殊装甲だ。ビームを跳ね返せるが何処に飛んでいくか解からないっていう困った代物でなぁ・・。
ぶっちゃけ場所もとるし邪魔だったんでそっちにやることにしたんだ。』
ストライクルージュが飛んでくる。その手にはバズーカが。
「なんてもの作ってんだよアスハは!」
シンががーっと悪態をつく。
『文句いうならお父様に言ってくれ、ヘリオポリスはサハクでお父様に罪はないって安心したと思ったらこれだ・・。』
ため息をつくカガリ。
「ハイネ!あんたのスレイヤーウィップならどう?!」
『だめだ!とてもじゃないけど絡めて電気を通すまでの時間がない!!』
あせるルナマリアにハイネは同じような声で答える。
おそらくダメージは与えられるだろうが物理的に破壊するまでの時間がかかってしまう。
「あのスピードだとヴァンプハンマーは隙が多すぎて無理だし、『イタカ』と『クスグア』はビーム兵器。
ヴァイオレットスパークは直接さわらなきゃだし、バルザイは実剣。もう一つの日本刀もただのでっかい日本刀・・・・無理だー!!」
自分の今の装備を後悔するアキラ。こんなことだったらフェイトウィザードで一機に燃やし尽くせばよかった。
「いや、それだと跳ね返って大変なことに・・・メルティパックはサポートタイプだし・・・・。」
『アキラッ!!』
ぶつくさ自分の装備を確認して無防備になっているアキラを守るゼロ。アキラはなんとかダメージを与えられそうな武器を選び続けていた。
「はろえもん!何とかして〜!」
『無理だよー!マユ太くーん!』
目立つディスティニーは真っ先にアカツキの標的となっていた。
それ以上に標的になりそうなレジェンドはミラージュコロイド中。ずるい。
「あの金ぴかさえどうにかなれば簡単なのに!!」
『いや、あいつ・・フリーダムのパイロットだ。』
シンハロは思い出す、あの蒼い羽の、不幸なMS、そして・・・・。
「シンハロ!何でちゃんとしとめないのよ!!」
『文句言うならソードに言ってくれ!!』
シンハロは疑問に思う。自分は、あれ以上なにを思い出そうとしていたのだろうか?
239ほのぼのマユデス。ろくでもない黄金。:2006/03/04(土) 19:30:51 ID:???
「・・・・あ!そうだカルマ!アレやれ!」
突然思い出したようにハイネが叫ぶ。
するとカルマも納得したようにうなずく。
「アレだね・・・うん、もしかしたら・・いくよっ!」
カルマのザクの手に突然マジックに使うようなバトンが現われる。
「イッツ・・・・。」
カルマがステッキをアカツキに向けるとグゥルから四つ砲台があらわれる。
「ショウターイム!!カモン!レインボーキャンディズ!」
カルマが叫んだ途端横の砲台から色とりどりのシャボン玉のようなものが飛び出してくる。
それは次々と飛び出し、アカツキの周りにふわりと浮かぶ。そして、アカツキが触れたとたんにぱちんと割れる。
よけようにも当たり一体がシャボン玉だらけで何処に行こうが触れてしまう。
ちなみにそれはマユ達も例外ではなくハイネのグフなんかオレンジではなくレインボーだ。
「これ・・、びみょーにネバネバしてない?」
マユが付いた色を落とそうと躍起になる。
『元々これさ、暴動とかを治めるためのための対人兵器なんだ。他にも目印とか対ミラージュコロイドとか
色々な使い道があるんだけど・・・・あ!安心して?水でならさっと落ちるよ。ただほっとくと永遠に取れないけど。』
カルマが通信で説明してくる。
『なるほど、これならあの表面の塗装を封じられると言うわけだな。』
カガリが感心したように言ってくる。もう乗っているのはストライクルージュではなくストライクカラフルだ。
あの金ぴかの塗装の上からあらたに塗装することによってその効果を封じたのだ。
おそらくナノマシン身動きが取れないだろう。
「よしって言いたいところだけど・・シャボン玉が邪魔でよく見えない・・・・。」
『一瞬でも動きが止められれば・・・・・。』
マユのがっかりした声とシンハロの困った声が響く。
『それなら俺に任せてくれ。』
アスランが通信を入れてくる。
「ほんとに止められる?」
『あぁ、ただ俺が何をいっても驚くなよ。』
そう言ってアスランはアカツキがいると思わしき方を向き・・・。

『キラ、実は俺、女だったんだ。』

と、ギャルゲーの男装美少女みたいなセリフを言った。
240ほのぼのマユデス。ろくでもない黄金。:2006/03/04(土) 19:41:41 ID:???
『えっ・・・うそ?!アスラン女の子だったの?!』
・・・・・・アカツキのパイロットは回線全開にしてるのかこっちにまで聞こえてくる。
『うん・・、ごめんね。キラ。』
突然女の子のような声でいうアスラン。あぁ、そういえばクリスマス会の時にかくし芸でやってたっけ。
『え・・じゃあカガリとは?!』
『実は私は男だ!』
『まじ?!』
・・・・・・・・・あほだ、こいつ。
『ねえ?!二人とも!!ホントなの?!』

『『・・・・・馬鹿め!嘘に決まっておるわ!』』

ばっちしのタイミングで言う二人、それを合図に全員一斉攻撃、もといリンチ。


一斉攻撃にシャボン玉は全て割れ、そこにはボロボロのアカツキが。
『さぁ、キラ。観念しろ。今ならねーちゃんがどうにかしてやるから。』
そんなことを言いながらアカツキに近づくストライクカラフル。
だが、それを一筋のビームが割く。
空から飛来する赤と青の影、それは・・・・・。
『あ・・・っあああああああああ!!』
シンハロが何か怯えたような声で叫ぶ。
その蒼と赤のMSはアカツキに近寄り、コクピットから出てきた少年を手のひらに乗せる。
そして、その青いMSのコクピットがあく、そこには・・・・誰も乗っていなかった。
少年が乗り込むと、そのまま彼方に去っていく二体のMS。そのスピードにはとてもじゃないが追いつけない。
『なんでっ・・・・!なんで・・っ!!』
子供のように泣きじゃくりながら叫ぶシンハロ。マユはその様子に驚きつつも呆気に取られる。

「何なのよ・・・・・・何なのよーーーーーーーーっ!!」
241通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 21:36:00 ID:???
ほのぼのさん乙〜
アスランとカガリで吹いた。ネタSSではみたことあるけど、ほんとにやるとはww
シンハロが泣きじゃくるなんて…何があったんだシンハロ


隻腕さんのとこのマーレが撃墜&復活するのもほのぼのマユがなにかやってるからだったりして
242通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 21:51:49 ID:???
>「まぁ、でも【私より下手に目立ったら隻腕さんとこで酷い目に遭う】の呪いをかけておいたからね・・。」
ちょwwwwwwwww
ていうかマユ、そういうところで人気を落としているのに気づけ!

今後シリアスっぽい展開がありそうですけどどうなることやら。
あとラスボスはやっぱり某ピンクの悪魔なのかねえ。
243通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 22:50:11 ID:???
>>242
>ピンクの悪魔
孤児院で頑張ってるんだったような
244通常の名無しさんの3倍:2006/03/04(土) 22:57:31 ID:???
付き人、混沌としてるなw 
しかもこの先、収束するより、むしろマユやミーアの扱い考えたら……

ほのぼの、最悪の敵・キラ+アカツキ(乱反射という欠陥機体イイ!)、案外あっけない……w
いやこの先が本番か?! その無人機がアレだとすれば……
しかし貴方の作品は隻腕と対極というか、車の両輪というか、なんというか……w
アカツキとか被ったのも、これむしろ運命?w 
245通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 07:24:29 ID:???
もしかしてマユとシンが共闘する作品て無い?
246通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 08:11:05 ID:???
つ マユif
247通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 11:03:50 ID:???
マユ戦記ラスト
248通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 12:53:00 ID:???
ほのぼの
249通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 13:43:28 ID:???
PP書いてる者です。19話投下します。
2501/18:2006/03/05(日) 13:44:40 ID:???
月面都市コペルニクス――
月のクレーターに造られた大規模な都市であり、自由中立都市として連合・ザフトのどちらにも属さない街……
その街のエアポートにある男が押しかけていた。アロハシャツに身を包んだ、30そこそこといった歳の男――
彼は空港のサービスカウンターで若い女性職員を掴まえている。

「昨日頼んだアプリリウス行きのチケット、手に入っているかい?」
「……失礼ですが、お客様はどのようにご依頼されましたか?」
「ウェブサイトのオンライン決済でやったよ」
「……困りましたね、それは」

応対しているエアポートの職員は困り顔でアロハシャツの男を眺め、やれやれと言った口調で話し始める。

「ご存知のとおり戦時でありまして、ネットワーク上の当社のウェブサイトにも書いてあるとおり……
 現在のところプラントへのチケットは、プラント政府発効の書類をお持ちの方にしかお渡しできません。
 それ以外のお客様は、休戦状態かその目処が立った際に優先的にチケットをお回しすることになっています」
「つまり、俺が頼んだチケットは……今日明日には手に入れることはできない、ってことかい?」
「残念ですが……」

アロハシャツの男は女性職員の言葉に、分かったという風に頷き空港を後にする。
戦時であるから正規の方法ではプラントに入ることは出来ない――その事実は半ば男も覚悟していた。
となると、非正規手段を用いることになる。他にプラントに入り込む手段といえば、ジャンク屋に運んでもらうか……
男は、その方法しかなさそうだと思いジャンク屋組合の出張所に出向こうと歩き出した。

そんな彼の後ろを、二人の男が後をつけるようにして歩き始める――

「……お次はジャンク屋か?」
「だろうな。あるいは我々の知らない方法でプラントに入ろうとするかもしれない。兎に角、見失うな」


だが、後をつけてくる二人の男のことは、先を行くアロハシャツの男も先刻承知であった。
正確には、アロハシャツの男がかつて住み暮らしていたオーブを出国してからずっと、尾行はついていた。
途中尾行者の顔が変わることはあったが、彼らは常にピッタリとアロハシャツの男をマークしていたのだ。
アロハシャツの男は、改めてその事実に思いをめぐらせ、小声で呟いた。

「奴等が勤勉なのは美徳だが……こうも連日ストーキングされるってのは、精神衛生上宜しくないねぇ」
2512/18:2006/03/05(日) 13:45:39 ID:???
アロハシャツの男は歩きながら思考を働かせた。
仮にジャンク屋で運良くプラントに入国する手段を得ても、首尾良く事が成し遂げられるかどうかを――

「俺はどうやら……相当に警戒されているらしいな。無理もないが……
 とはいえ、歌姫を暗殺しようとした輩の正体を突き止めなければならないことに変わりはない。
 さて、どうする? 俺はとっくにマークされているが、下手にプラントの同士にまで手が廻ると……拙いな」

プラントで彼が頼みとしている者達にまで類が及べば、今後の活動に支障が出ることは疑いない。
組織は彼だけのものではないのだ。歌姫と呼ばれる盟主と、そのシンパが頼りとする組織――
最悪の事態を考えれば、同士を巻き込むことは何としても避けたかった。
そこまで考えてから、彼は後をつけてくる尾行者たちのことを考える。

「……未だに襲ってくる気配はないな。オーブを出てからずっと、仕掛けようと思えば仕掛けられた筈だ。
 ということは、奴等の狙いは俺の命ではなく、身柄か? 最も、命の保障なんて今更気にすることではないがな」

自嘲気味に呟いたところで、彼の心中は決まった。出たところ勝負――と。
彼はすぐさまジャンク屋の出張所へ向かうのを止め、路地裏に歩を進める。
その動きは、当然尾行者たちの知るところともなった。

「おい、対象は路地に向かったぞ!」
「チッ……! 尾行に気づかれたか? 見失わないうちに追うぞ!」

アロハシャツの男が入っていった路地を慌てて尾行者は追う。
走りながら、彼らは懐中の得物に手を伸ばす。小型ではあるが強力なオートマチックの拳銃に――
しかし、路地に入ったところで彼らは思わぬ事態に遭遇する。

「「あっ!!」」
「よう! 仕事熱心で精が出るなあ!」

路地に逃げ込んだはずの対象が、なぜか自分達に親しげに声を掛けてきたのだ。そして――
驚きの声を発した尾行者達は慌てて銃を構えようとするが、アロハシャツの男に俊敏に手を押さえつけられる。

「悪いんだけどさ、俺を……お前等の親分のところまで、連れて行ってくれないか?
 ……ん? ダメか? そりゃないだろう。俺はお前達の同胞だぞ? ハハハハハッ! 頼むぜ、ご同輩!」

アロハシャツの男――アンドリュー・バルトフェルドは、唖然とする尾行者たちの背を叩き、豪快に笑い飛ばした。
2523/18:2006/03/05(日) 13:46:38 ID:???
プラントの首都アプリリウス・ワン――
アンドリュー・バルトフェルドが姿を現し、いざ彼を捕まえようと準備をしていたこの人物は肩透かしを食っていた。
バルトフェルドが尾行者にその身を差し出したことで、彼を捕まえる必要は無くなってしまったのだから……
アイリーン・カナーバはギルバート・デュランダルからその事実を伝えられ、驚きを隠せなかった。

「……逃げ切れなくなって、自分から出頭するということ?」
「あるいは、彼には何らかの腹積もりがあるのか……我々という背後関係を探ろうとしているのかもしれない」
「何れにしろ、この件は約束どおり私が処理するわ。そのことは忘れないで」
「分かっているよ。だが、最高評議会議長として言わせて貰えば、プラントのためになる者の殺生は望まない。
 もし彼が……君の説得で翻意し、再びプラントのために働く気になってくれたら、是ほど嬉しいことはないよ」

訝しがるカナーバだが、デュランダルの言葉に眉をひそめる。

「……説得? どういうこと?」
「君が私を説き伏せたように、再び彼を……バルトフェルドを説き伏せようとするのではないか、と思ってね」
「何故、そう思ったの?」
「先の大戦から二年、今だ兵員養成は芳しくない。卓越した指揮官というのは喉から手が出るほど欲しいものだ。
 君が私怨ではなく、プラントの為にラクスを殺そうとしたのなら……彼を説得するのではないか、と思ったのさ」

納得したものの、同時にカナーバの心には目の前の男に対する気味の悪さが残っていた。
鋭い洞察力と、常に二手三手先を見据えた先見の明――気味の悪さというよりも、畏怖の感情であろうか……

「……何もかもお見通しってわけね。一応説得はしてみるけど、あまり期待しないで欲しいわ」

その言葉を最後にカナーバは議長室を辞した。後に残されたデュランダルは黙考した後……
執務用のデスクの上に置かれたインターカムを手に取る。

「……私だ。シュライバー国防委員長を頼む」

繋いだ先は軍司令部、通じようとするのはタカオ・シュライバー――暫くの後、望んだ相手と通信が繋がる。

「シュライバーか? ああ、私だ。聞きたいことがあってね。アンドリュー・バルトフェルドの軍籍はどうなっている?
 ……第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦の折、エターナルとともに行方不明か。 軍籍は剥奪していないのだね?
 ならば、早急に彼の復隊手続きを頼む。 ん? 何故か? そうだな……まぁ、虫の知らせというヤツさ」

先程とは異なった物言いだが――デュランダルは口元に笑みこそ浮かべていたが、顔は笑っていなかった。
2534/18:2006/03/05(日) 13:47:32 ID:???
アプリリウス・ワンにある三ツ星ホテルの一室――
尾行者たちにその身柄を預けたバルトフェルドは、半日の後その最上階のスウィートルームに案内された。
案内した尾行者たちは、バルトフェルドを持て成す為かルームサービスで適当に飲食物を頼み出した。
出された料理、ワインは何れもプラント屈指の品々……

「VIP待遇だね、こりゃあ。驚いたモンだな……。おい、お前等も一緒に食べないか?」

尾行者たちは"任務中につき遠慮する"とだけ言い、そのままバルトフェルドの側で監視を続けた。
あるいは特務の人間なのだろうか――尾行の腕は左程ではないが、彼らは頑なだった。
それ以前に、このホテルに案内されるまで、彼らはバルトフェルドが何を話しかけても押し黙ったままだった。
最後に彼は諦め半分、お得意のジョークを言う。彼らに、ではなく自らの心理状態を解すためのものだが……

「好待遇に不満はないが、これで美人が来てくれれば願ったり叶ったりなんだが……流石に無理か?」
「後ほど、いらっしゃる予定です。飛びっきりの方が」

意外なことに、ここに来てはじめて尾行者は口を開いた。バルトフェルドにしてみれば嘘から出た真か――
しかし、数分のち部屋に入ってきた女性を見たとき、彼は瞠目して二の句が告げなかった。
確かに、プラントでも指折りの美女がバルトフェルドのいる部屋に入ってきたのだが……

「あ、アイリーン・カナーバ!?」
「もういいわ。あなた達は下がって頂戴。
 ……あら? どうしたの? バルトフェルド将軍……私が来るのがそんなに意外だった?」
「……確かに、飛びっきりだが……ちょっと待て。これはないだろう、これは……」
「飛びっきり? 一体、何の話をしているの?」

カナーバは部屋に入るや尾行者たちを退室させ、部屋にはバルトフェルドとカナーバの二人だけになった。
この状況はバルトフェルドの望んだものではあったが、シチュエーションに色気と呼べるものは皆無であった。
まさか、ラクスを狙った人物が嘗てクライン派を率いたアイリーン・カナーバその人であろうとは……

「……カナーバ、お前がラクスを狙ったのか?」
「刺客を放ったのは現最高評議会議長のギルバート・デュランダルだけど、炊き付けたのは私よ」
「何故だ? 何故、お前がラクスを殺そうとする?」
「……そう。貴方は何も知らなかったのね。良いわ、話してあげる。ただし、貴方が知っていることを話してからね。
 ラクス・クラインが生きているのか死んでいるのか、生きているのなら彼女は何処へ行ったのか、教えて頂戴」

時刻はアプリリウスの空が闇にかかる頃――やがて、この二人にとっての長い夜が始まろうとしていた。
2545/18:2006/03/05(日) 13:48:39 ID:???
同刻――囚われのラクス・クラインもまた、ロード・ジブリールの招きによりディナーに預かっていた。
ジブリールの私邸ではあるが、専属のシェフがいるのか出された前菜は立派なものであった。
一日中、ラクスは捨て置かれた。ジブリールはゆっくり休んで旅の疲れを癒せ、と言っただけ――
おまけに監視もついていない。虜囚にも関わらず、あまりに気楽な身の上にラクスも訝しがる。

「……このような厚遇を受けるのは、何故でしょうか?」
「ふむ、ご不満ですか?」
「いえ、そのようなことはないのですが……その、私はあくまで囚われの身。
 なのに、このようなディナーにまで招待される。些か、不思議でなりませんわ」
「イングランド人は、客に対して最上の礼を以って持て成すのが常。それに貴女は女性だ。
 私はイングランド人として……いや、一人の紳士として、貴女という淑女を持て成しているだけですよ」
「……ここは、大西洋連邦の旧イギリス領……イングランドなのですね?」
「おや、お話しませんでしたか? それは失礼。お察しのとおり、ここはイングランドです」

バルトフェルドとカナーバの会合が始まったのは夜に差し掛かる時刻、そしてこの場も同じ時間――
プラントの標準時刻はイギリスのグリニッジに合わせているが故、イングランドとの一致を見ることになったのだ。
つまり、ラクスは元居たオーブから地球を半周するかのように旅をし、この地に辿り着いたという訳だ。

しかし、自らが受ける厚遇以上の疑問を、ラクスはまた抱いていた。彼女は問いただす――

「……ジブリール卿、何故私を誘拐したのですか?」
「その話はもう少し後にして頂きたかったのですが……持て成す側としては、お客の要望に応えるのは当然。
 ディナーの最中ではありますが、宜しいでしょう。今朝の自己紹介ではお話していないことが多すぎる。
 貴女の疑問に思われることを、お聞かせ下さい。それに対し、順次私がお答えしましょう」

ディナーの最中には料理を楽しんで欲しい――そう思いつつ、ジブリールは内心舌打ちしていた。
しかし、誘拐という非合法な手段で彼女を連れてきた手前、遅かれ早かれ問われることは疑いなかった。
自分から話を切り出すタイミングは逸したが、それは仕方のないことと思いなおし、ラクスに話しかける。

「……質問があれば、どうぞ」
「では、まず貴方は何者なのか、何故私を誘拐されたのか……お聞かせ願います」
「……ブルーコスモスの盟主であるということ意外に?」
「ただの男がブルーコスモスの盟主にまでなれるとは思えませんわ。
 貴方がその地位に上り詰め、また私を誘拐して何をされようと言うのか……お答え下さい」

こちらも男女の会食というのに色気は皆無ではあるが……かくしてこの二人の夜も長いものとなる。
2556/18:2006/03/05(日) 13:49:40 ID:???
和やかな会食――ではないのが、アプリリウス・ワンの二人。早くも険悪な雰囲気になり掛けていた――

「……暗殺部隊を葬ったのは、黒髪の連合の少年? 連合に奪われたアビスが、MS隊のアッシュを屠った?
 その黒髪の少年曰く、ブルーコスモスの盟主の命令でラクスを攫ったですって? 冗談も程ほどにして頂戴!!」
「そんなこと言われてもなあ……嘘か真かは俺も知らんよ。
 ただラクスが攫われたのは事実だし、黒髪の少年がいたのも事実、アッシュが全滅したのも事実だ」
「そんなことを言って、貴方やキラ・ヤマトが全てやったことではなくて?
 ラクス・クラインだって、攫われたのではなくて、貴方がどこかへ隠したのでしょう?」
「おいおい、そりゃあ……そうだったら良いなとは思うが……とりあえず、落ち着いたらどうだ?」

熱くなりかけたカナーバをバルトフェルドが諫める。普段は沈着冷静なカナーバだが……
バルトフェルドが話した事の顛末を、俄かには信じられずにバルトフェルドに食って掛かろうとしたのだ。
諫められたカナーバは、冷静さを取り戻しつつ、再び問いかける。

「……あのね、私は今の話は信じられないの。こんな話……ありえないわ」
「しかし、それなら俺は何故ここに来たと思う? 
 ラクスが無事で、彼女が匿われているなら……俺かキラが彼女を護ってなきゃいけない筈だろう?」
「それは……そうだけど」
「俺はどうなったかは知らないが、キラはオーブ軍に入るといっていた。今頃、軍に入っている筈だ」 

バルトフェルドの言葉にカナーバはハッとする。
前日、デュランダルから伝えられた話と符合するキラ・ヤマトのオーブ軍入隊の事実――
カナーバは、キラとバルトフェルドの二人がラクスの元を離れる理由を探してみたが……

「……反論する材料がないわ。確かに今の話にも頷ける点はあるけど……あの男が、そんな指示を出すなんて」
「あの男? 今の、ブルーコスモスの盟主ってヤツか?」
「そうよ。ブルーコスモス盟主のロード・ジブリール。
 出身は、イングランドの貴族の出よ。ナチュラルでありながら、ケンブリッジ大経済学部を主席で卒業。
 HSBCグループのミッドランド銀行に入るや、ものの数年で経営のトップに上り詰める。以後は……
 金融グループであるHSBCの陣頭指揮を執り、ロイズ、ナットウエスト、バークレイズの各行を傘下に収める。
 やがて、第三次世界大戦でアメリカの金融界から遅れをとったイギリスの金融界を一つにまとめ……
 今や、大西洋連邦最大の金融グループの総帥にもなった男よ。非情な金融家らしいわ」
「大したヤツらしいな。そんなに凄いのか、ジブリールってのは……」
「それに、ブルーコスモスの強硬派の筆頭でもあるの。彼がラクスを攫うなんて……ちょっと、聞いてるの?」

ジブリールとはカナーバの話からすると並々ならぬ人物らしい――バルトフェルドは、ただ唸るばかりであった。
2567/18:2006/03/05(日) 13:50:43 ID:???
「……ロード・ジブリール、貴方は素晴らしい経歴をお持ちですわね」
「お褒めに預かり……光栄です、ラクス・クライン」

カナーバがバルトフェルドに話していたこと――それを、ちょうどジブリールがラクスに語っていたところであった。
ジブリールは決して自慢げに話したわけではなかったが、ラクスは素直にその業績を褒め称えた。
社交辞令染みたやり取りではあるが、一応は和やかな会合であった。ラクスが次に口を開くまでは――

「そういえば、私は……ジブリールの名は他にも聞いたことがありますわ」
「ほう、それは何です?」
「地球連合各国を裏で操る軍産複合体ロゴス……ご存知でしょう? 旧世紀から続く彼らの家系を。
 アズラエル、コーラー、リッター、マクウィリアムズ、グロード、ヴァミリア、ネレイス、モッケルバーグ……
 そして、貴方のジブリール家……これら9つの家の者達が、ロゴスを形成し世界を操っている。違いますか?」
「……ほう! やはりご存知でしたか!!」

ラクスの言葉にジブリールは一瞬眼光鋭く光らせたが――
すぐに平素の目付きに戻るや、手を叩きラクスに相槌を打つ。

「ご指摘のとおり、私がロゴスのメンバーに名を連ねているのは事実です。
 ただ……貴方は我が家の起源までご存知ではないでしょう? ジブリールがどのような家なのかを……」
「存じませんわ。ご説明……願えますか?」

ジブリール家の起源――それはAD1600年代末期にまで遡る。
当時のイギリスは、折りしも名誉革命後の対フランス戦の戦費調達、そして植民地支配のための資金調達――
兎に角金が必要であったが、莫大な戦費と植民地支配のための資金の両方を補う術など有りはしなかった。

しかし当時のイギリス政府は、ない袖を振る方法を思いつく。即ち、銀行券の発行である。
イギリスは、国家の債権を担保に銀行券を発行し、紙幣を発行することで金本位制を確立する。
そのために1964年にイングランド銀行を、翌年にはスコットランド銀行を設立し、資金集めに奔走した。

もっとも、これらの銀行は政府公認ではあっても民間の銀行であり、実際の運営に携わったのは金融家たちだ。
例えば、金利目当てに金を預ける者はあっても、その金利支払いには金貨ではなく、紙幣が用いられる。
これは何を意味するのか――

「通貨発行権を国家ではなく、民間の金融家が担った……どういう意味かお分かりか?」
「民間の金融家が、国家の経済システムを自由に操り得る――ということですね?」
「即ち、ジブリール家とはイングランド銀行の設立に携わり、イギリスの経済を牛耳った家柄……ということです」
2578/18:2006/03/05(日) 13:51:53 ID:???
かくして、ジブリール家はイングランド銀行を支配し、世界の経済システムをも動かすようになる。

「世界史を紐解けば、ロスチャイルドグループが国際金融家を支配し、世界の金融を支配した……
 という話が、実しやかに言われておりますが、ロスチャイルド家が歴史に登場したのは1700年代後半。
 最盛期にネイサン・ロスチャイルドが活躍したのは1800年代に入ってから……不思議ですな」
「その一世紀以上も前に、すでにジブリール家はイギリス経済を牛耳っていた……
 つまり、国際金融家と呼ばれる者達のリーダーシップは、常にジブリール家が握っていたのですね?」
「世界経済がアメリカを拠点に移した後は、ジブリール家も彼の国に拠点を移しました。
 世間的には私がイギリスの金融界を纏め上げたといわれているようですが……馬鹿馬鹿しい!
 最初から、世界経済はジブリール家のものであり、国際決済銀行ですら私の意のままに動かせますよ」
「では、何故貴方はわざわざミッドランド銀行に?
 ジブリール家が金融界の支配者なら……そんな回りくどいことをせずとも良い筈ではありませんか?」
「ジブリール家の起源はあくまでアメリカではなく、イギリスにある。そして私もイングランドで生まれた。
 第三次世界大戦後、イギリスの金融界が凋落したのを黙ってみていられなかっただけのことです」

流石にラクス・クラインも驚きを隠せなかった。
ロスチャイルドの名は知っていたし、ジブリールの名も知っていたが……

「私は……ロゴスに金融の世界を支配する者がいるとすれば、ロスチャイルド家縁の者と思っておりました」
「誤った定説を学ばれましたな。
 もっとも、強ち貴女の考えも誤りとばかりはいえません。前の盟主、ムルタ・アズラエルをご存知か?」
「ええ、勿論。彼とも戦いましたから」
「アズラエル……ロゴスの中でもっともロゴスらしい存在。旧世紀から兵器産業を生業とする家系――
 死を告げる天使の名ではなく、もっと一般的な家の名前がありましたが、彼らはそれを戸籍等には使わない。
 最早、我々の間ではアズラエルの名で通って久しいのですが……」
「アズラエルの一族に……何か?」
「あの一族こそ、元はといえばロスチャイルド家に縁のある者達ですよ。
 彼らもまたジブリール家同様に、後に活動の拠点をアメリカに移し、世界の軍需産業を牛耳ったのです。
 そういえば、ジブリール家もアズラエルと同じように戸籍では違う名……ガブリエルの名を使っていますがね」

更に、戸籍と通り名で使い分けをしていることにつき、ジブリールはこう付け加えた。
世界を支配するようになった後、ガブリエルの名は使わずジブリールの名を用いるようになったと。

ジブリールもアズラエルも、元をただせば天使の名を借りているものに違いはない。
世界を支配するようになると、神の代行者として天使の名を冠したくなるのであろうか――
現実感の乏しい歴史的背景を語られたラクスは、そんなことを考えていた。
2589/18:2006/03/05(日) 13:52:52 ID:???
一方その頃――
バルトフェルドはカナーバを逆に問いただし、ジブリールのことをしつこく訊ねていた。
折れたカナーバは、自らが知る情報の一部を教えた。ラクスが教えられたことに比べれば極小の情報だが……

「ロゴス……そんなものがあるのか? ブルーコスモスのスポンサーのような役割を果たしている組織……か。
 今の話を総合すると、ジブリールってのはブルーコスモスの盟主であると同時に、そのスポンサーでもあると?」
「軍産複合体に根ざした組織ではあるらしいのだけど。
 前盟主のムルタ・アズラエルと、ロード・ジブリールの共通点を洗ったら、それしかないのよ。
 大西洋連邦の兵器産業を牛耳っているアズラエル一族と、金融界のトップのジブリール……」
「大方、影で世界を支配しているのは大西洋連邦の財界人……ってところか? まるで三文小説だな」
「事実は小説より奇なり――そう言うでしょう?」

再びバルトフェルドは唸りつつ、黙考して考え始めた。
そんな彼をカナーバは捨て置き、部屋に備え付けのインターカムでルームサービスを頼み始める。
暫くの後、スウィートルームにはカナーバが頼んだ豪勢な料理が並んでいた。

「そんなに頼んでいいのか? この部屋の料金だって高いだろう?」
「気にしないでいいわ」

鷹揚にカナーバは頷いて言った。可愛い顔には不釣合いの一言を、笑顔を添えて――

「――どうせ、税金なんだし」
「……おい、それは職権濫用じゃないのか?」
「今の私はプラントの外交顧問という扱いよ。ここの代金は国防機密費で賄うから、心配しないで」
「……ったく、どういうことだよ。国民に申し訳ないとか思わないのか? 大体、俺が厚遇される理由が――」

自らが厚遇される理由――
そこまで考えたとき、バルトフェルドは一つの考えに辿り着く。

「……まさか、この待遇の良さは――」
「あとで切り出そうかと思ったけど、気づいたのなら調度良いわ。貴方に頼みたいことがあるの」

まさか――
厚遇の理由に思いをめぐらせたが、考えられる答えは一つしかなかった。
そして、バルトフェルドの予想は的中することとなる。
25910/18:2006/03/05(日) 13:53:46 ID:???
笑みはとうに消え、真顔に戻ったカナーバは……
料理を口に運ぶのも止めて、バルトフェルドを見つめながら言った。

「頼む前に聞いておきたいのだけれど、貴方は先の大戦で何のために戦ったの?
 ラクス・クラインのため? それとも、プラントのため?」
「……無論、後者だ」
「本当に? ならば、何故貴方はエターナルを奪ったの? 何故プラントに敵対したの?」
「俺は……!」

バルトフェルドの顔に影が差す。努めて陽気にカナーバとの会話を進めていた彼だが……
かつて祖国に背いたことは、少なからず心に影を落としていたのだろうか――表情が一瞬にして曇る。
数秒の間を置き、彼は意を決したように話し始めた。

「俺はプラントのために戦った。そして、ストライクに敗れ……一度は死んだ身だ。
 俺はアイシャを失って片腕と片足を失ってしまったし、左目も失った。ポンコツ寸前さ」
「………」
「だが、俺は生きている。生きているってことは、まだやるべきことが残っている。
 プラントに戻った俺は、ザラ議長にエターナルの艦長を任されたが……彼は、ナチュラル排斥に傾いていた」
「だから、プラントを裏切ったの?」
「プラントを裏切ったわけじゃない。ザラ議長のやり方では延々戦争は終わらないから、離れたのさ。
 俺とアイシャには婚姻関係を結べなかった。何故か……わかるだろう? 彼女とは適性がなかったのさ」

適性がない――
これはプラントで法制度化された婚姻統制のことを指す。
第二世代以降では自然妊娠の可能性はきわめて低く、適性のある者同士の間でしか子を作れなかった。

「プラントが戦争を続ければ、どうなる? 人口の少ない俺達は、遠からず破滅の道を歩むことになる。
 ザラ議長のやり方ではナチュラルとの融和など、出来る筈のない話さ。だから俺はラクスに従った」
「そう……最後の質問だけど、何故キラと一緒にいるの? 記録ではアイシャを殺したのは――」
「――キラだ。だが、あの時はお互い軍人で、戦う以外の選択肢はなかった。
 アイツが俺から愛する人を奪ったように、俺たちザフトも彼の友人を何人も殺している。戦争とはそういうものだ」

だからこそ、砂漠の虎とまで呼ばれた男は決断した――
ある決意を、己が胸に刻み込み……

「俺の残りの命は、悲しみしか生まない戦争を止める為に使う――そう決めた。それだけだ」
26011/18:2006/03/05(日) 13:54:48 ID:???
バルトフェルドの、信念とも言える言葉にカナーバはただ頷いた。

「これで、貴方に頼むことが出来るわ。アンドリュー・バルトフェルド、貴方にザフトへの復隊を求めます」
「ありがとう……と、言いたいところだが、まだ話は終わっちゃいない」

今度は、バルトフェルドがカナーバを問いただし始める。
彼が今日この場所に来たのは、この問いを彼女にぶつけるためにこそあったのだから――

「カナーバ、穏健派のクライン派の中でも、とりわけ早期和平を目指していたお前が……何故ラクスを狙う?」
「……やはり、それを知るためにプラントに来たのね?」
「そうだ。彼女のやり方は確かに乱暴だった。フリーダムを、エターナルを奪ったのは暴挙には違いない。
 しかし、あの時点でお前たちは何が出来た? ただ、あの殲滅戦を傍観していることしか出来なかった――
 違うか?」
「あの娘の罪がその程度なら……私も寛容でいられたでしょうね。でも、違うのよ」

美しいカナーバの顔が俄かに歪み始める。
その歪みは、憎悪とも取れる憎しみにも見え、同時に悲愴感や寂寥感を漂わせていた。
今だ嘗てカナーバのこのような表情は見たことがない――バルトフェルドはそう思いつつ、更に問う。

「教えてくれ、ラクスは何をした? お前を、ラクス暗殺にまで駆り立てた理由は何だ?」
「貴方は……知らないのね。教えてあげるわ、あの娘は……!」

次第にカナーバの声は震え出し、瞳には光るものがあった。
それでも彼女の顔は醜く歪んだまま――怒りと哀しみが綯い交ぜになったまま、彼女は応えた。

「あの娘は……実の父を、シーゲルを殺したのよ! フリーダムを強奪したことで……!」
「……ちょっと待て! それは違う! あれは結果論だろう!?」
「違う! 違うのよ……バルトフェルド!」

遂には涙まで流しだしたカナーバ――
その言葉は、説明ではなく激情が迸るかのような話し方……

「フリーダムをラクスが奪ったのは、強奪が目的ではなかったの。あれは……手段だったのよ!」
「手段? 何のための手段だ?」
「パトリック・ザラがシーゲルを殺すように仕向けるための、よ。
 あの娘は自分の父親を殺したのよ。ラクス・クラインという娘が望む平和の為に……!」
26112/18:2006/03/05(日) 13:55:43 ID:???
その頃話に上ったラクスと、そしてジブリールは……
メインディッシュが運ばれる頃、二人の会談も大詰めを迎えていた。

「何故、私を攫ったのです? 邪魔なら……私を殺せば済む話ではありませんか?」
「ふむ……貴女ほどの聡明な方なら、私がここにお連れした理由もお分かりかと思っていましたが……」

料理を口に運ぶのをやめたジブリールは、口の汚れを拭い改めて話しはじめる――

「ロゴスをご存知らしいが……
 先の大戦末期、貴女のお父上シーゲル・クライン氏は秘密裏に和平交渉を進めていた――ご存知か?」
「ええ、父は最高評議会議長の職を追われた後は、自宅で仕事をしておりましたから」
「なるほど。では、地球連合から……いや、大西洋連邦からの使者が来ていた事は?」
「……存じております」
「では――」

ジブリールの眼に鋭さが戻る。ラクスがロゴスを知っていると語ったときのそれと、同じ眼光に――

「その使者が、ロゴスの一員であるモッケルバーグ家の者が差し向けた者であることは?」
「………」
「その使者が、とある大西洋連邦の有力な下院議員ではあったことは?」
「………」
「その使者が、和平交渉の役とは名ばかりの、とんでもない"約束"を携えていたことは?」
「……全て、存じております」

次第にラクスの表情は曇りだし、ジブリールからの質問にも応えなくなっていた。
しかし、最後に――絞り出すような声で、彼女は全て既知であることを語った。

「全く、罪深い輩です。モッケルバーグも、下院議員も、貴女のお父上も。
 彼らはとんでもない"約束"を交わそうとしていた……貴女はご存知ですか?
 自国の国民が血を流すのを嫌う余り、その代償を他国の血で贖おうとする……酷い話だ!」

ジブリールは、最後の言葉を放ったときには、ディナーの並んだテーブルを叩かんばかりの語調であった。
それだけ、彼としても腹に据えかねることだったのか――

「まぁ、都合よくその下院議員は不審死を遂げてくれ、モッケルバーグの当主も病気療養を理由に交代……
 そして、真に都合の良いことに、シーゲル・クラインも嘗ての盟友パトリック・ザラが殺してくれたのですよ」
26213/18:2006/03/05(日) 13:56:42 ID:???
「モッケルバーグ……何者だ?」
「ロゴスの一員と名乗る者。正確には、大西洋連邦を拠点として連合各国にエネルギーを供給する連中よ」

バルトフェルドは、カナーバの口から意外な事実を聞かされていた。
あのシーゲル・クラインが、軍産複合体ロゴスと呼ばれる者の一員と秘密裏に交渉していたというのだ。

「モッケルバーグはエネルギー財閥。でも、あの一族は弱っていたのよ。
 戦争で、ザフトが放ったニュートロン・ジャマーのお陰で核による原子力発電も出来なくなったから。
 ロゴスの中でも著しく弱体化したモッケルバーグは、ある大西洋連邦の穏健派の下院議員を炊き付けたの」

後にエイプリルフールクライシスと呼ばれるザフトの軍事行動は、モッケルバーグを追い詰めた。
如何に軍産複合体といえども、肝心のエネルギー産業が死に体では何も出来はしない。
代替エネルギーを原子力以外のものに頼っても、焼け石に水――

「モッケルバーグの意を受けた下院議員の提案は、プラントの独立を認める代わりに……
 ザフトが支配するジブラルタル、カオシュン、マハムールの各基地を放棄すること――」
「……シーゲルは、それらの条件を飲んだのか?」
「飲もうとしたけど、最後に付けられた一つの条件に彼は難色を示したわ。あの忌まわしい条件――
 自国の国民が血を流すのを嫌う余り、その代償を他国の血で贖おうとする……罪深い"約束"よ」

モッケルバーグは和平を進めようとしたが、一方で他のロゴスに対する面目もあった。
ただ自らのためだけに和平を勧めたとあっては、他の軍産複合体の者達に示しが付かない。
とりわけ、強硬派で知られるアズラエル一族の、ムルタ・アズラエルなどには……

「モッケルバーグは、最後にある条件を突きつけたわ。和平をアズラエルが飲むはずがない。
 だから、一時休戦ということにして世界に厭戦の風を流し込み、折を見て停戦・和平を結ぶってね」
「それの、何処が問題なんだ?」
「彼ら軍産複合体にとって、戦争とは甘美な報酬であると同時に負担でもあるの。
 そうしょっちゅう戦争があったら、如何に彼らといえども利益を生み出せるものではないわ。
 それに、国家の財政が悪化すればそのしわ寄せは彼らにも来る。だから、ある条件を付けたのよ」
「……?」
「彼らロゴスにとって戦争って言うのはね、10年に一度起きるくらいが調度良いそうなのよ。
 だから、彼らはプラントに大西洋連邦の仮想敵になることを求めた。そして……
 戦争で分離独立の進んだアフリカを舞台に、10年スパンで戦争を起せって――言ってきたのよ!」

自嘲の笑みか、絶望ゆえの反動か――当時を思い出したのか、カナーバは泣きながら笑って言った。
26314/18:2006/03/05(日) 13:57:48 ID:???
「ところで、ラクス・クライン……アフリカが、今現在どうなっているかご存知か?」
「地球連合寄りの南アフリカ統一機構と、プラント寄りのアフリカ共同体……この二つの勢力が争っています」

今だ青ざめた顔のラクスは、それでもジブリールの問いに答えるだけの気力はあった。
そんな彼女を、愉快そうに目の前の男は眺めている。何が愉しいのだろうか――

「そう。一時的にアフリカ共同体も、ユニウスセブンの落下後は連合に歩調をあわせていますが……
 あの国にはまだザフトの基地が点在している。貴女の見解は間違いではありませんよ」
「………」
「10年単位での戦争が最も儲かる――それがロゴスのモッケルバーグが考えた妥協案です。
 彼は、おそらくはこう思ったのでしょう。アズラエル以外の家の者達を味方に引き込めば大丈夫、と。
 しかし、現実はそう甘くはなかった」

スピリットブレイク作戦でパナマが陥落したことは、ロゴスのメンバーにも不安感を与えた。
このまま戦争を続けるよりも、勝てるかどうかも判らない戦争を終わらせ、本業に戻ろうか――
ジブリールの話では、モッケルバーグに同調する構えを見せるロゴスもいたらしい。
だが――

「あの、殲滅主義者のムルタ・アズラエルがそんなことを赦す筈はなかった。
 彼は、かつてロゴスの中心人物ではあった父親のブルーノ・アズラエルの影響力を借り攻勢に出た。
 即ち、秘密裏に件の下院議員を消し、モッケルバーグの当主に脅しをかけ、引退に追い込んだのです」

全ては未遂に終わるかと思われたが――

「最後に残ったのは、貴女のお父上シーゲル・クライン……彼が問題だった。
 アズラエルを始めとしたブルーコスモスの強硬派の者達にとって、なお彼の存在は非常に困るものでした」
「……何故です?」
「何故か? 当たり前でしょう。戦争で人々の間に厭戦気分が蔓延すれば、講和の気運も高まる。
 その際、プラントで矢面に立つのは……貴女のお父上だ。これは、非情に困るのです。お父上は有能だ。
 彼に生きていてもらっては困る――我々がそう思っていたとき、彼は突然死んでしまった。貴女のお陰で――!」

ジブリールはラクスを射抜くような眼で見つつ、しかし口元には笑みを湛えている。
ラクスはそんな彼の様子に身の毛がよだつのを堪えるのに懸命で――そんな彼女にジブリールは言い放った。

「ラクス・クライン! 貴女は素晴らしい! 貴女がフリーダムを強奪し、お父上の野望を未然に防いでくれた!
 貴女はまさに聖女だ! 戦いを嫌い、平和の歌を謳うディーヴァの名に相応しい! 心から感謝しますよ!!」
26415/18:2006/03/05(日) 13:58:52 ID:???
「―――止めてくださいッ!!」

震える声で泣き出しそうな声で、けれどそれでいて悲鳴に近い声で――
ラクスは叫んだ。その様子に、ジブリールも流石に黙り込む。やがて彼女はポツポツと語り始めた。

「ち、父は……罪を犯そうとしました」
「………」
「だから……だから、私は……ッ! 父を止めようとしたのです!」
「………」
「でも……でも、父は頑なに和平を推し進めようとした。
 私は知らなかったのです! モッケルバーグや、あの下院議員が葬り去られたことは!!」
「………」
「私は父を止めたかった。だから……フリーダムを、キラに渡そうと――でも、殺すつもりはなかったのです!」

ある日、彼女は聞いてしまった――父親と下院議員との話を。
自国の国民が血を流すのを嫌う余り、その代償を他国の血で贖おうとする悪魔の契約を。

 『お前は……プラントの歌姫として為すべきことを為せば良い!』

その父に命じられるままに、彼女は己の為すべきことをしようとしたのだ。
真の平和のための道を切り開くために――

「何が、可笑しいのですか?」
「クックク……いや、失礼。しかし、これはナンセンスだ。ハハハハッ……!」

今彼女の目の前にいる悪魔――ロード・ジブリールは、悲しみに打ち震える少女をあざ笑う。
先ほどまでの紳士的な振る舞いとはまったく別の、悪魔の笑みで彼は嘲笑した。

「ラクス・クライン! 貴女はもう少し秩序立てて物事を考えるべきだ!
 ……考えて御覧なさい。シーゲル・クラインとパトリック・ザラ……二人は盟友だった。
 可笑しいではありませんか? 何故パトリックは弁明の機会も与えずシーゲルを殺したのです?」
「それは……私がフリーダムを……」
「それは違います。それは要素の一つであっても、決定的な要因ではない。
 こういうのはどうでしょう? シーゲルとパトリックの不仲に火をつけるべく、ブルーコスモスのある者が行動した。
 その人物は、事の顛末をそれとなくザフトの軍偵に知らせてやった。そして、こう付け加えたのですよ。
 モッケルバーグとの交渉に、ラクス・クラインがフリーダムを携えて出かけていった……とね」
26516/18:2006/03/05(日) 13:59:44 ID:???
「ジブリール卿、まさか……貴方がそれを……」

顔面蒼白のラクスは、最早抗弁する気力もなく……
ただ絶望し、この世の終わりを見たような表情で――虚ろな瞳でジブリールをただ見ていた。
やがて、悪魔はそんな少女に追い討ちをかける。

「ようやく、お気づきになられたか! ハハハッ!! どうです、中々の趣向でしょう!?」
「………」
「ずうっと、貴女にお教えしたくてウズウズしていたのですよ。漸くこれで胸の支えが取れました。
 何とも……爽快な気分だ! いや、実に清清しい! さあ、ワインを如何です? ……ん? どうされました?」

絶望に支配されている少女の心情を知っているのか、あるいは気づかない振りをしているのか――
ジブリールはワインを勧めるが、ラクスはグラスを取ろうともしない。
呆れ顔でジブリールは自らのグラスにワインを注ぐ……

「……まぁ、お気持ちはお察ししますが、済んでしまったことです。時計の針は、絶対に戻りはしない――
 私にはやるべきことがある。ブルーコスモスの盟主としての職責が、ロゴスの一員としての役目が……ね」
「……何故、私をここに連れてきたのです?」
「先ほどお話した事実を貴女に告げるためです。どんな顔をされるか、見てみたかったもので……
 そして、貴女はプラントの歌姫としての役目を果たしていただきたい。そう思ったから、お連れしました」
「……今更、私にプラントに戻れと?」
「ええ、貴女にしか出来ない役目があるのです。
 敗戦に打ちひしがれるプラントの民人を、その歌声と穏やかな御心で癒していただくという……使命がね」

プラントの迎える敗戦――
その言葉にラクスは我に返る。今だ顔面蒼白ではあるが、彼女の双眸に理性が戻る。

「ラクス・クライン、これからは貴女を利用させていただく。私と共に……シーゲル殺しの"共犯者"としてね」
「……ッ!」
「そうそう、面白いお話を一つして差し上げましょう。キラ・ヤマトがオーブ軍に入りました。
 まあ、例によって私が手を回して、そうなるように仕向けたのですがね」
「ジブリール卿、貴方は私を使い、キラを戦わせようとしているのですか?」
「彼は不確定要素に過ぎない。下手に動かれると困るので、飼い主に鎖を繋がせただけです。
 既に確定的なものが私の手元にはある。アクサニスというカードが。彼が"覚醒"すれば全ては終わること――」
「アクサニス? それは、一体……」
「大西洋連邦が100年の歳月を掛けて作り上げた、最強の生体兵器――!」
26617/18:2006/03/05(日) 14:00:44 ID:???
不意にジブリールはラクスに問う。
キラ・ヤマトの名が話しに上ったころからだろうか――徐々に目の前の少女は絶望から立ち直りつつある。

「プロジェクトNISという話を、ご存知ありませんか? 何せ100年も昔の話ですからねぇ……」
「それは……! 計画は、今も続いていたのですね?」
「ほう! ご存知か! ……まあ、この話は何れ日を改めてしましょう。今日は些か喋りすぎた」

言うや、デザートを平らげたジブリールは、まだテーブルにいるラクスに会釈をし、席を立つ。
ごゆっくり――自分はまだ仕事があるので、これにて失礼――そう言って、ジブリールは部屋を去ろうとする。
しかし、そんな彼をラクスは呼び止める。

「……貴方の真の狙いは何です? アズラエルと同じ、コーディネーターの殲滅なのですか?」
「……既に、一億近くいるコーディネーターの全てを殲滅できると思うほど、私は夢想家ではありません。
 アドルフ・ヒトラーがユダヤ人を殲滅しようとして出来なかったように……ね。私は現実主義者ですよ」
「では、一体何を?」
「差し当たっての狙いは、プラントの現政権とザフト――この二つを潰すことです」
「それだけ?」
「他にもありますが、それは……また、後日――」

一人残されたラクスは、ジブリールの言葉を反芻しながら思考をめぐらせる。
だが、彼女の頭に浮かぶのは、父殺しとジブリールに指摘されたことばかり……
旅の疲れで鈍った思考に、ジブリールとの会談――自分が極度に疲労していることを悟り、ラクスは考えるのをやめた。

「……罪を犯した者は、何れ罰を受ける……こういうことなのですか?」

誰に言うともなく、ラクスは呟く。
答える者もなく、一人彼女は俯くが……

「泣こうが喚こうが、今更消せる罪ではありません……
 この悲しみと苦境を受け入れましょう――これが、私への罰なのでしょうから」

それでも、彼女は絶望から立ち直った切欠となった、ある青年のことを思い浮かべる。
キラ・ヤマト――かつて絶望の淵に居た彼女を救い、歩むべき道を指し示してくれた少年を――

「キラ……! 貴方は……今何処にいるのです!?」
26718/18:2006/03/05(日) 14:01:48 ID:???
一方、私室に戻ったジブリールは、誰もいない暗い自室にて大声で笑い出す――

「クックック……! ハハ……アハハハハッ!! ラクス・クライン、貴女は予想通りの反応をしてくれた!
 素晴らしかったなあ……犯した罪を自覚し、貴女の美しい顔が絶望に歪む様を見るのはッ!! 
 お前にも見せてやりたいよ、アクサニス! おお……そうだ、アクサニス! お前は何処だ? 何処に居る?」

手元のモニターから、現在のゲンについての状況を呼び出し調べる。
先ほど届いていたネオ・ロアノークからの報告書に、それはあった。

「イワン・ザンボワーズを倒したか……あのサーカス崩れを! ん? これは何の冗談だ? キラもいるのか!
 アハハハッ!! ラクスにも後で知らせてやるか? クッ……ククク……ッ!! 楽しみだなぁ!」

笑い声が部屋の外に漏れないようジブリールは必死に堪えたが……
気味の悪い忍び笑いにしかならず、だがそれでも彼の笑い声は止むことはなかった。


―――同刻、プラント――
アプリリウス・ワンにいるバルトフェルドも、カナーバから全ての経緯を知らされた。
といっても、あくまでシーゲルとモッケルバーグの密約を阻止すべく、ラクスがフリーダムを奪ったことのみ――
ジブリールが告げた事の真相だけは欠けていた。

「……これでも、まだ彼女に付き従うというの?」
「証拠がない以上、すぐにハイとは言えないな。だが……」

流石に動揺は隠せないものの、砂漠の虎はそれでもハッキリとした口調で応える。

「ラクスをジブリールの手から取戻す。そして、事の真相を彼女に問いただす。これは、俺の役目だ」

カナーバが去った部屋で、バルトフェルドは一人眠れぬ夜を過ごしていた。
カナーバの話は、バルトフェルドからすればすべて情況証拠に基づいた話で確証はなかったが……
彼にはある種の確信があった。恐らくラクスなら、父親がパトリックに殺されることも覚悟していただろうと――
誰も応える者のない部屋で、バルトフェルドは遠い何処かの地で囚われの身の己が盟主に問いただす。

「アフリカ……俺が送られていたあの戦地で、そんな話が進んでいたとはな。ラクスよ、応えてくれ。
 俺達が目指していたものはプラントの平和か、それとも世界の平和か? 後者ならば……荷が重過ぎるぜ」
268通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 14:03:36 ID:???
やあ (´・ω・`) PP書いてる者です。

ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

うん、「また薀蓄」なんだ。「知識ひけらかせすぎ」で済まない。
仏の顔もって言うしね、後一回くらいやってもいいかなって思ってる。

でも、今日の話でジブリールが悪役っぽい「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした新シャア板で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って 、いつもより早めに話を書いたんだ。

じゃあ、ご意見ご感想異論反論etcを聞こうか 。



以下チラシの表

というわけで、19話は件のご意見を参考に簡易・縮小バージョンでお届けしました。どーだろ?
まあ、ありきたりな話です。ラクスさまは悪党じゃありませんでした。期待させてスミマセン。
ユーラシア編でのグダグダ&政治がらみetcのお話は、後一回くらいで終わるでしょう。
大西洋連邦に場面が移ったときに、さらにややこしい話になると思いますが、それまでに精進します。

あと批難チックなご意見もお待ちしております。
基本的に作者はマゾッ気あるので、凹みつつ悶えます。一応自省もしてますorz
下手糞な駄文書きですが、今後ともヨロシクお願いしますm(__)m

あと、↑のバーボンは冗談です。好きなんです、引っかかるのが。
じゃあ、また次回 (´・ω・`)
269通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 15:14:20 ID:???
乙、そしてGJ

まず良かったとこ。
完全無欠で何でもかんでもお見通しっぽいラクス像を砕いたのはほんとGJ
徐々に余裕のなくなっていく展開に文句なしに拍手。
次に良くなかったとこ。
一言、くどい。ストーリー殆ど進んでない。続きを期待して待っていた者にとっては結構ツラいかと。
盟主の家の起源とかマジでどうでもよかった。
まぁ上のは一般論で私的には雰囲気出すのに一役買ってたんじゃね?といったとこです。

とりあえず一つだけ我侭言わせてくれ。



マ ユ を 出 s(ry
270通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 16:01:34 ID:???
動揺するラクスっつーのが新鮮。
271通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 17:10:25 ID:???
>268
GJ
本編では三流以下の悪役だったジブリールが輝いているよ。
薀蓄?知識ひけらかせずぎ?面白ければ大いに結構。

272通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 18:05:56 ID:???
薀蓄の積み重ねが物語を動かす主軸になっているなっているので現状では問題はないかと。
本編では見ることの出来なかったものを見れるのが二次創作の醍醐味だと思っているので
世界観というものにウェイトを置いたPPの構成は割と好きです。
ただ、この手の話は設定の軸だけが空回りして物語が動かなくなったら最後ですんで気をつけてー。

あとマユをd(ry
273通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 19:31:30 ID:???
ゲンもマユもキラもアスランも出ないのはちときついな。
その部分だけを突っ込むと、本編でシンの出ない回以下ってことになってしまう。
274通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 19:33:39 ID:???
そこらへんはあれだな。
1〜2レスくらう「その頃ミネルバでは」的描写を入れて、マユと姉マリアやレイ兄、
タリアお母さんたちとの日常? シーンを入れておけば万事OKかと。
275通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 19:42:11 ID:???
ストーリーの都合で仕方ないのかもしれないけど、
やっぱり、ほんのちょっぴりでもマユが登場して欲しいです。
276通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 20:54:15 ID:???
PP戦記、まずはGJ!!

こういう政治だの裏舞台だのが大好きな、自分としてはたまらんね
今回のお話は。後、ラクスも上手く料理してあったと思う、
これは非常に好ポイント。

そして、デュランダル、ジブリール、この二人の巨頭がどうこれから
噛みあい、その仲で少年少女がどう生きるのか
それが楽しみだ・・・。

後、脇役しか出ないのも俺は良いと思う
たまには脇役達にもスポットライト当てないとね・・・

超GJ!
277通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 20:59:50 ID:???
単発設定小話 「シンとネオ」

〜ガーティ・ルー〜
ネオ「・・・まあ、あれだ。相手が悪かったかな?」
シン「俺の力不足だ・・・くそっ!」
〜ブリーフィングルームの机を叩くシン〜
ステラ「・・・シン・・・・・・」
アウル「そうだぜ。シンだけじゃないさ。俺だってそうだし。なぁ?」
スティング「お前は負け続けだろ?」
アウル「っ!!」
〜スティングにつかみかかるアウル〜
スティング「ああ?なんだよ、本当のことだろ?フン、詰めが甘いんだよ!お前は!」
アウル「くっそー!!」
ネオ「もういい!二人とも止めろ!!あとで今回の総括を送信するから、それを読んでおけ!解散だ!」
〜ぞろぞろとスティング、アウル、ステラの3人は部屋へ戻る〜
ネオ「・・・お前も何か言いたいことがあるんだろ?」
シン「やられちまってすいませんでした・・・」
ネオ「う〜ん、お前に改まって謝られるとはなぁ・・・どうしたものか・・・・・・」
シン「フリーダムにやられ、ザフトの連中にも遅れをとっちまった」
ネオ「休息なしで戦闘に突入したんだから、その影響もあったんだろう」
シン「大佐!」
ネオ「そういうことにしとけ!次も戦っていたいなら・・・・・・で、まだあるのか?」
シン「ああ、これを・・・」
〜ベルリンで受け取った黒いディスクを取り出すシン〜
ネオ「エクステンデット規格のディスクか・・・?」
シン「ああ。こっちが大佐宛で、これが俺宛のもの」
ネオ「お前のディスクだと?なんでお前宛のディスクがスクステンデット規格の必要がある?」
シン「知らねぇよ・・・。大佐のはなんなのさ?」
ネオ「中を見てみんことにはわからんがなぁ・・・おそらく、スティングたちのパッチファイルだろ?」
シン「はぁ・・・・・・」
ネオ「ん、どした?」
シン「パッチファイルって・・・あの3人はやっぱり生体機械でしかないってことですか?」
ネオ「しかたないだろう。忘れているかもしれんが、俺もお前も戦うための道具でしかないんだぞ?」
シン「・・・忘れてなんかいないさ。俺はそのおかげで運動能力をもらえたんだ。受けた恩を忘れるほど落ちぶれちゃいないよ」
ネオ「そいつはよかった。まだ兵器でいてくれて幸いだよ」
シン「っち・・・」
ネオ「さて、どうだ俺のディスクと一緒にお前のディスクも中身をチェックしてみんか?エクステンデット規格はラボでしかみられんし」
〜ラボへ向かうネオとシン。ラボのコンピュータにディスクを挿入するネオ〜
ネオ「どれどれっと・・・・・・これは・・・」
シン「ん、なになに?」
ネオ「・・・・・・これは・・・俺の記憶・・・だ・・・・・・」
シン「大佐の?なんで大佐の記憶なんかはいってるんです?」
ネオ「・・・ジブリール・・・・・・どういうことだ?」
〜搾り出すように声を発するネオ〜

278通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 21:00:21 ID:???
>>274
俺もそう思った。話が進む間にミネルバの描写を入れるのも大変だと思うが是非そうしていただきたい。以前、マユが初めて種割れした連合艦隊戦も描写少なく残念だったんで。
279通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 22:05:29 ID:???
PP戦記GJ!PP戦記のマユはおとなしいけど心に深い怒りと悲しみを持っている感じがして好きです。ディオキア編の活躍に期待してます。
280通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 22:15:18 ID:???
PPGJ!
あと、原作じゃ人間味の無かったラクスに血が通った感じがしてよかったですな。



バーボンワロタw
281通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 23:45:59 ID:???
PP書いてる者です。ミスがあったので、再び登場ですorz
管理人様、お手数ですが修正をお願いします。

訂正箇所は以下のとおりです。

>>256の7/18
イングランド銀行設立は1694年です。後半の段の……

誤→そのために1964年にイングランド銀行を、翌年にはスコットランド銀行を設立し、資金集めに奔走した。
正→そのために1694年にイングランド銀行を、翌年にはスコットランド銀行を設立し、資金集めに奔走した。

スミマセン……酷いミスです。300年近く誤差が生じてしまうorz


ご指摘のとおり、マユ描写は手薄でした。
最近では名前すら出てこないありさまでして、どうにかならないものかと考えております。
とりあえずは善処します、とだけ約束させていただいて、後日拙作の中で反映させていただこうかと。
では、また後日……
282通常の名無しさんの3倍:2006/03/05(日) 23:56:55 ID:???
PP戦記GJっす。
ジブリールが悪者らしくていいっす。
ところで、C.EってA.Dの何年から切り替わった設定なん?
283通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 00:08:41 ID:???
ここまで押されるラクスはPPぐらいだな。しかも相手はジブだし。
284通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 00:16:52 ID:???
悪役としての風格があるね、ジブリール。

漏れみたいに蘊蓄大好きな人間には、こういうのは大歓迎。
けどそうじゃない人もいて、どっちが正しいというものでも無い以上、バランス取りは難しいと思う。
他の人が前述してるけど、結構タイトロープな感じなんで、用心は常に欠かさないよう気をつけて。
「必要な蘊蓄」と「ただの蘊蓄」とでは雲泥の差だからねー。

唐突に。
PPは角川スニーカー文庫で、隻腕は電撃文庫で読んでみたいとかふと思った。
285通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 01:03:43 ID:???
PP戦記のジブGJ!読んでて気持ち良い位の悪役だ
あとネオのガシャが手に入ったので首撥ねてシンの首を
移植して、黒く塗装したストライクと一緒に飾ったらすげーカコヨス
286通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 02:19:53 ID:???
悪役、ネオと聞くとガーゴイルを思い出す俺がいる。
あのおっさんは悪役としては最高だったなぁ。
287通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 02:25:06 ID:???
し、塩に…?!
288通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 10:36:12 ID:???
PPさんGJ!

ラクスの父殺し陰謀論か……こういう風に持ってくるとはなぁ。予告段階ではてっきりラクスがもっと黒く邪悪に開き直るものかと(ry
しかしマジでこの後のメンツの動き方が分からない。この先の展開に激しく期待です
289通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 15:13:44 ID:???
>>PP作者氏

二カ所の登場人物の台詞が少し冗長に思える。
カナーバとジブリールの知識を同じくらいにしておいて
切れ目なく場面をつなげばテンポが良くなると思った。
でもこういう手法は好きだ。

そしてジブリールがカコイイ…。悪役はこうでなくては!
マユをこういう話に差し込むのは難しいので
「そろそろ出番が欲しいなー」くらいに聞いておいていただければ。

遅くなりましたがGJでした。
290通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 15:15:44 ID:???
PP戦記のジブリールGJ!悪役最高!
薀蓄語りがあればこそジブの悪役ぶりが増すと思うので、個人的には良かった。
ラクスは意外だったなぁ…こんな余裕のないラクス初めて見た。しかしそんなラクスの方が好きだv

後チラシの裏程度のぼやき。
最後の方でラクスがキラの名前を呼んだけど、その直後にキラとついでにゲンの様子もちょっと入れてくれればよかったと思う。
会話とか無くてもいいので、そういうシーンが少し挿入されるだけでも結構変わるんじゃないかと。
291通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 15:15:58 ID:???
>PPは角川スニーカー文庫で、隻腕は電撃文庫

てかスニーカー文庫ってまだやってたのか…
ロードス島戦記テラナツカシス
292通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 15:55:15 ID:???
PP一番好きだ。薀蓄も長すぎる台詞も含めて全部。
でもそんな奇特ばっかじゃないから、作者さんは充分に注意してね。
やっぱ自分の好きな話が批評されるのは、妥当でも忍びないからさ。
293通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 16:14:50 ID:???
>PPは角川スニーカー文庫で、隻腕は電撃文庫
なんか納得するなソレw
電撃文庫版の隻腕、巻頭のカラーページが激しく見てみたいぞ。
ほのぼのは……富士見ファンタジア? それとも徳間?

あるいは新書版になるが、どれも講談社ノベルスでも雰囲気あるかもしれない。それぞれに違う雰囲気の装丁で。
294通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 16:59:45 ID:???
前スレで隻腕opの妄想案書いた者です。
以前投下したものの修正分ができたので懲りずに投下してみます。舞乙opのやつ。
一応修正点等は表記しておきましたが、どうでしょう。
295294:2006/03/06(月) 17:00:48 ID:???
<チラシの裏>
イントロ。
洋上を進んでいくミネルバが映し出され、甲板上に並ぶ4体のMS。並びは左からガイア、正義、伝説、運命の並び。
ガイアRの正面バストアップ、右斜め上からのアングルの無限正義、レジェンドは側面から、 腕を組み画面を睨みつけているような運命。
彼らの見る先には戦闘の光。MSを何機も打ち落とし連結ライフルを構えるSフリーダム、タイトルロゴ(種死のopのアレ)
(レジェンドとジャスティスのアングル変更、インパルスをガイアに差し替え)

歌開始。(〜ここに立ってる〜まで)

砕け散るフリーダム、アウル、ステラ、トダカたちタケミカヅチクルー、最後は笑顔のルナマリア。
散っていった者達の白黒映像(バンク?)をバックに、目を閉じたマユの横顔。
最後にコニールを従え発狂したような様子のシンが画面に向かって手をのばしたところでマユが目を開く。頬には涙。空を見上げ場面転換。
シンのそばに立つコニールは責めているような視線。
(コニール追加、バックの白黒の人々の変更(カガリ等削除、フリーダムとルナ追加)。ルナはマユの夢にでてきたときのイメージで)

(〜本当の意味を〜まで)
豪奢な椅子に座り猫を撫でながら指示を出すジブリール、それを直立しうすら笑いを浮かべ聞くネオ。
ライブにはげむミーアと、劇場のボックス席から見下ろすデュランダル。微笑から、悔やむような表情に。
キラ、マリュー、虎、ラクス、サイ、カガリetcの登場済み3SAFAメンバーが並び、Sフリーダム掌上のマユを見上げている。
(カガリ追加、書いてませんがミリィ、メンバー以外にもユウナやメイリンもいます)

(〜引き返せない〜まで)
憂える表情で義手を撫でるマユ、背景はSフリーダムのフルバースト。
浴びせかけられるビームをことごとく反射するアカツキの見栄切りとまっすぐに正面を見据えるキラ。
ドラグーンを放つレジェンドを背に何かに腰掛考え込むような姿勢のレイ。手には例の薬。
フェイスの証を見つめるアスランのバックでは無限正義が雑魚を切り刻む。
軍服のコニールが不敵に笑い、拳銃を画面に向けて構える。ガイアRが大地を疾駆する。
そしてシンは血塗れのナイフを持って返り血を浴びた顔で笑う姿、デスティニーがアロンダイトを構える。
(この辺種死OPのキャラ立ち絵+MSの見せ場のやつを連想してください)
(シン変化、コニール追加、アカツキとキラ追加、大天使からの発進削除)

(〜光のない世界でも〜まで)
インジャスとアカツキが斬り結び、キラとアスランの姿が二機に重なる。そのまま二機フェイドアウト。
Sフリーダムに降り注ぐ伝説のドラグーン一斉放火。両腕のビームシールドを展開しそれを防御、腹のビームで反撃。
ビームブレードで切り裂こうと迫るガイアRの上にまわりこみ、ライフルを放つ。
体勢を立て直したものの、ビームを回避したガイアと伝説が離れていくのを不審に思った様子でSフリーダムが振り返ると、そこにはアロンダイトを頭上に掲げた運命が。
振り下ろされる対艦刀。とっさに動くことのできないSフリーダム。ライフルを切り裂かれるもサーベルを引き抜き、ドラグーン放出。
実体シールドにドラグーンのビームを受け失い、デスティニー後退。
(ガイアとアカツキ参戦、損傷をなしに。一応マユの決意後=吹っ切れてつよくなってる、の意で。ドラグーン使用)

(あなただけみつけられる〜まで)
Sフリーダムがドラグーンを戻すとともに(↑から続いている)画面二分割され、二機の顔面アップ。それぞれに咆哮し向かっていくコクピットのマユとシン。
Sフリーダムとデスティニーの斬りあう止め絵(前に挙がってた種死三期ラストのアレ)になり、
それを背景に画面両端で、互いを見据えるシンとマユの横顔でop終了。
(止め絵変化、二機の顔アップ追加)
<チラシの裏>
こんな感じで。
296通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 19:28:27 ID:???
最近の進行に歌詞がシンクロしまくり


(2番)
日溜まりのような温もり 求めていたの
いつからだろう? 認めること、とても怖くて

一瞬曇った表情 そして、気づいた
鋭い痛み 身体中を突き抜けていく

迷い込んだ深い森 出口はどこにあるの?
間違いと正しさは 比べられない

出逢ったとき 運命の扉が開いたのね
涙ふいて、確かめる 誰にも負けないよこの想い
綺麗なままで 結晶に変わっていく
297通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 19:51:56 ID:???
す げ え

映像でMITEEEEE!!
298通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 21:07:28 ID:???
マジで>>295の隻腕OP案を完全映像化出来る神はおらぬものか・・・
299通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 22:08:36 ID:???
PP戦記、こんなに早く続編が読めるとは思っていませんでした。
ありがとうございます。
アニメ本編の、ザフトは議長とミネルバ、連合はジブリールとPP、
オーブはラクスとAAしかいないみたいな世界観の狭さが鼻についていた
自分としては、汎ムスリム会議やユーラシア連邦それぞれの思惑や、
テロリストに対する世間の扱いなどの多面的かつ現実的な描写は好感が持てます。
スニーカー文庫でも何でもいいから、本になっていたらなあと心から思います。
あと、マユの出番が少ないというのは私も感じていましたが、某ヘブンズゲート
攻略時の様なブチブチの場面転換になるよりは、まとめるところはまとめたほうが
スッキリすりと思いますので、このままでいいとお思いまいます。
ただ、その場合、あまり前回と時間を空けずに更新していただけると嬉しいのですが・・・
一番わがままなこと言ってますね。すみません。次回作楽しみにしています。
300通常の名無しさんの3倍:2006/03/06(月) 23:21:55 ID:???
あげ
301通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 12:25:13 ID:???
種死も曲だけはいいからな、なにも舞乙なんて持ってこんでも
302通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 14:31:08 ID:???
>>301
闘う女の子の歌が似合うんだよ
303通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 21:11:57 ID:???
>>301
OPに関しては無印も種死も1クールごとにドンドンヤバくなっていたような
304通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 21:26:10 ID:???
転載一部修正
CEの新作は監督西澤・キャラデザ大貫・メカ大河原
全3話各15分
科学者(?)28歳コーディ女性のセレーネと19歳冷徹系(?)ナチュ男
5月の静岡ホビーショーで映像お披露目

ナチュ男はファントムペインのスウェン・カル・バヤン
連合制服(キラが種時代に着ていた服)をきっちり着てる銀髪顔色悪い系

ストライクノワール
GAT-X 105E
ストライクをベースにアクタイオン・インダストリー社にて機体の総合性能の工場措置が取られてる
影色無しの着色だとカーキっぽいグレーと薄いグレーでアンテナとかはオレンジ
影有着色だと黒っぽいから破壊みたいな色

このスレでも、つかえそうなネタがきました。

305通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:10:35 ID:???
ストライクノワールだと・・・?
原作版ガンダムSEEDからパクるなんて許せんなw
306通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:40:01 ID:???
307通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:42:24 ID:???
ノワール(夜)っつーからまさかと思ったけどやっぱり黒ストライクか!
・・・見たことないストライカーパックだけど、何だコレ。ライトニングって奴?
308通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:47:38 ID:???
ホントだ、原作版は傑作スレからパクられてるwwwww
それはそうとコイツはあれか、後半の連合の戦力増強に使ってください、ということk(ry
309通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:50:09 ID:???
>>306
何このMk-Uww
310通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:51:47 ID:???
むしろ勘違いしたデスヘルに見える
311通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:52:26 ID:???
ライトニングストライカーでもないな。全くの新物ストライカーだ。
しかし足が白いのが微妙にイヤだw お顔の作りもちょっと……。
絵板にうpされた模型のMk−Uの方がイイな、個人的な好みとしては。
312通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 22:52:28 ID:???
っつーか、設定、カラーリング、その他諸々見る限り思いっきりMkIIなわけだがw
ストライカーパックは新しい物みたいだが、よーしパパ今まで出てきた奴の中のMkIIぜんぶノワールに脳内変換しちゃうぞー
313通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 23:01:41 ID:???
>>311ありがと
なんつーかなぁ……黒いストライクとか、四人目(?)のファントムペインとか……
疑いすぎなんだろうが、疑ってしまうなぁww 萎えるorz
314通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 23:04:12 ID:???
まあ王道を突いたら同じところに落ち着きました、っつう話に過ぎないだろうな。
どうやらOVAスタッフは負債主導と違って、ウケる王道を外さずにいてくれるようだ
315通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 23:07:39 ID:???
ストライカーじゃなくてハイペリオンの背負い物と同じじゃね?
つまりアクタイオンインダストリー社製のアルミューレを展開するんだろ
316通常の名無しさんの3倍:2006/03/07(火) 23:28:48 ID:???
なんか期待出来そうなのでワクテカして待ってまつ
317通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 07:00:04 ID:???
OP案はなかなか面白いけど舞乙なんて持ち出してきた時点で萎え・・・
318通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 11:24:20 ID:???
種に合う曲なら山ほどある

WEB OF NIGHT
ROUND ZERO
GRENETMOON
PINKROSE
CROSSOVER
青い果実
ペルセウス
魂の慟哭
319通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 14:26:47 ID:???
舞乙には恨みないし、前に聞いた曲は(アニソンとして)悪くなかったけど、歌が下手。これ声優が歌ってるのか?

歌手が声優やる分には気にならないんだけどなァ、声優が歌手やるのはどうにも発声が悪くて萎える。音程が微妙に(1/4音ほど)ズレたりするし
女の声優の「キャラの声」って、大抵は喉から声出してるから。
320通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 17:43:02 ID:???
>>318
1,2,4個めはMADがあるな
後は知らん
321通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 18:23:48 ID:???
>>319
本職がシンガーソングライターだったはずだが。

>>320
全部ある
322通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 18:40:44 ID:???
PINKROSEはマユのイメージにぴったりだろ


なかないで〜 とかかなり
323通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 20:16:18 ID:???
>>306
う〜ん胸部と肩、顔は悪くないが、下半身が微妙にM1臭くて弱そうな・・・
何で素直にMkUにしないのだ?それか下半身ウィンダムならまだ良さげだが。
絵板版の暁改MkUのほうが断然カッコいい・・・
ストライカーはフォルファントリーか?アクタイオン製ということから見ると。
案外ハイペリオンの凍結を不服に思ったアクタイオンが開発費償却の為に
ダガー+ハイペリオンのプランをぶち込んだのがジブの目に止まったのだろうか?w
324通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 20:19:26 ID:???
>>315
つ脚本:森田
どうせまた勘違いした俺様脚本になるだろう。
325通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 20:19:33 ID:???
>>322
PINKROSEはポップンの曲のことだったのか。
なんか納得
326通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 21:09:55 ID:???
泣かないでー 本当のー孤独ーをしーらないー♪
327通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 21:30:53 ID:???
元々「舞乙の新OP曲って、隻腕に合ってるんじゃないか?」ってとこからだからなあ。
今更曲を排斥するのはどうにも。
328通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 21:44:51 ID:???
舞乙って深夜のヲタ向け萌えアニメだろ?
そんな作品のOPテーマと合うっていうのは隻腕作者に失礼かも・・・
329通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 21:49:02 ID:???
とりあえず、君の言動がこのスレの住人に失礼なのは良く判った。
330通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 22:07:44 ID:???
とりあえず、歌ネタは荒れるのは分かった。
それぞれ歌ネタは脳内再生だけですまそうよ
331通常の名無しさんの3倍:2006/03/08(水) 23:55:01 ID:???
ところで話の流れをぶったぎるようで悪いが
第2回人気投票してみるってのはどうだ?
332通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 00:00:39 ID:???
単発設定小話 「ハイネとアーサー」

〜ミネルバ、艦長室〜
タリア「ふ〜ん・・・あなたにばかり頼りたくはないのだけど・・・・・・」
ハイネ「そうですねぇ・・・・・・あ、こんなのが適役なやつがこの艦にいるじゃないですか!」
タリア「ルナマリアのこと?それともレイ?マユ?」
ハイネ「いやいや。パイロット候補生出身者のアーサー・トラインが!」
タリア「アーサーですって!?・・・あなた本気なの?アーサーになんかまかせられないわよ」
ハイネ「大丈夫ですって。俺が保障しますよ。なんてったって俺はあいつのクラスメイトだったんですから。あいつのことはあいつの両親以上に知っていますよ」
タリア「う〜ん・・・。わかったわ。この件はあなたに一任します。アーサーにはあなたから言って」
ハイネ「了解。はは、あいつの本当の力をみさせてあげますよ」
〜疑いの目でハイネを横見するタリア。満面の笑みを浮かべるハイネ〜
〜アーサーの自室へ向かうハイネ〜
ハイネ「おい、アーサー!入るぞ」
アーサー「ハイネ!入るときはノックしろって昔からいってるだろ?」
ハイネ「あーはいはい。・・・お前まだそのゲームやってんのか?『機動新世界ガンダムグーン』だっけか?」
アーサー「いいだろ、今は非番なんだから。・・・ところでなんなのさ?」
ハイネ「ふふん・・・シ・ゴ・ト。持ってきてやった」
アーサー「君が僕に頼むってことは・・・」
ハイネ「ご名答。密偵さ」
アーサー「久々に君とあったと思ったら・・・そんなことか・・・。艦長はご存知なのか?」
ハイネ「Oh〜Yes!大丈夫、大丈夫。俺がバックアップにつくからさ。いいだろ?」
アーサー「・・・・・・わかったよ。ターゲットはなんだい?」
ハイネ「アスラン・ザラ」
アーサー「!?アスランだって?」
ハイネ「っそ。あいつ、俺の助言を真に受けて敵さんに会いに行きやがった。っくっく、単純だなぁ?」
アーサー「・・・相変わらずだな。」
ハイネ「やるべきことはやらないとな。それが俺の仕事だ」
アーサー「わかった・・・・・・」
ハイネ「んじゃ、30分後にな。・・・ああ、そうだ!忘れてた」
アーサー「?」
ハイネ「サラからの伝言だ。『愛してる』ってさ」
アーサー「・・・・・・え、へへ」
ハイネ「はぁ〜。なんであの美人さんはこんな間抜け面が好きなのかなぁ・・・・・・?」
〜アーサーの部屋から退出しつつ、腕組みをし首をかしげるハイネ〜

〜時間はかなりすっとんで、アスランとキラとカガリの会話と盗聴するアーサー〜
(キラ「・・・あのラクスはなんなの?」)
(アスラン「キラ・・・)
アーサー「ええぇぇえぇー!?」
〜グーンで待機するハイネ〜
ハイネ「アーサー!いちいち大声出すんじゃない!お前の叫び声を録音しにきたわけじゃねぇぞ!!」

333通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 00:08:16 ID:???
>>332
アーサー吹いたw
334通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 00:23:52 ID:???
>>332
アーサーの意外な役どころに爆笑www
ハイネとアーサーとは想像だにしなかった組み合わせだけど、なんかしっくりきてる気が・・・w
335通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 02:12:58 ID:???
え、あれ、サラってあのサラ?
でもハイネ、元クラスメイトで実力は保障してても、
鰯の顔は『間抜け面』なんですか……(何気にひどいな
336通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 06:33:15 ID:???
>>331
イラネ。
ってかそもそも人気投票なんてする必要性を感じないのだが。

「それぞれの作品にファンがいて、自分に合わない作品はスルー」ってスタンスなのに
わざわざ序列化する意味がわからん。
337通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 08:21:58 ID:???
もうちょっとオブラートに包んで物言いを心掛けようぜ



まあそういうわけだからあんまりやっても仕方ないっちゃ仕方ない
338通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 12:01:17 ID:???
だいたい、何の人気を投票するんだよ。
得たいデータも一緒に提案しないと、特定信者の自己満足にしかならんよ
作品単位の投票じゃ、弊害がやたら大きくなるし

前にも提案したけど、強いてやるならエピソード単位の投票かなと思う。どんなお話しが「ウケる」のか作者サイドも分かるし。
ただ作者のスタイル的には著しく不利な人もいるので、あんま強く推す気もない
339331:2006/03/09(木) 12:30:07 ID:???
そうか、すまんかったへんなこと言って
340マユ種のひと:2006/03/09(木) 14:01:14 ID:???
前スレ>360、>361、>362

第四十一話
 さる宇宙港で物資の積み込みをするヴェサリウス。そのブリッジには、白服で身を包み、フェイスのバッチをつけたマユがいた。傍らにイザーク、オペレーターの仕事をするアビー、ディアッカもマユの目の届かない場所で仕事をし、艦内の人間は各々の仕事に従事していた。
 表向き、彼等全員がマユの部下だった。この事実に実感の湧かないマユは、自分がプラント最高評議会に出席した日を思い出す。

 マユに対して議員達から刺すような視線が注がれる中、アイリーンは穏やかに語りかける。しかし、それを遮ったエザリアは社交辞令を省き、単刀直入に説明を始める。
 コーディネーターの未来を模索するという生前のデュランダルが固めた下地の上で、マユの演説があった為、プラント国民は顕在、潜在を問わず大きく動揺している。特に低コーディネート層やオーブ難民を始めとした難民層は騒然としている。
 それ故に、マユには彼等の精神的支柱、つまりは第二のラクス・クラインになって貰いたい。これが聞き入れなかった場合、一部市民の暴走を避けるために取締りを強化することになる。
 マユは、それで拘束されるであろう多くの人達の処遇について尋ねる。エザリアは、かつてマユがいた難民キャンプぐらいの扱いになると説明。それから逡巡の間も少なく、マユは新たな偶像となることを受け入れた。

 宇宙港を出たヴェサリウス。心ここにあらずのマユに、イザークはうやうやしく、これからデュランダルの葬儀に出席する以上、相応の態度で臨んで欲しいと述べる。マユは適当に頷いた。そんなマユの視界の隅で、アビーが難しい顔で通信のやり取りをしている。
 マユは説明を求めると、付近の宙域で食料の貨物船団が連合に襲われている、ゲイツで応戦しているが状況は厳しい、とアビー。行って間に合うか、とマユが重ねて問う。アビーは足の速いMSが先行すれば、と言い掛けた所でイザークが怒鳴られ、アビーは咄嗟に口を抑えた。
 後の祭り、マユは踵を返してブリッジから出る。イザークは、出入口でマユと擦れ違ったディアッカに出撃すると言い、アビーには葬儀の出席に遅れる旨を打診するように言った。
 格納庫、突然の出撃で大わらわの整備士達を尻目に、マユはさっき積み込んだばかりの機体、白服とフェイスのバッチ同様に与えられた機体、レジェンドに乗り込んだ。マユは早速、アビーに船団の位置と距離を訊く。
 上手い言い訳やら何やら考え中だったアビーは、マユに訊かれたことを一気に答えた。イザークは通信越しに、もう少し時間を稼げ、とアビーに怒鳴る。実際、マユは出撃準備を済ませており、あとは目的地を聞くだけだった。
341マユ種のひと:2006/03/09(木) 14:05:05 ID:???
 カタパルトに乗るレジェンド。急いでザクを起動させようとするイザークだが、それに待ったを掛けるマユ、自分が単機で先行して敵を引っ掻き回すからイザークは隊を万全にしてくるように命令した。大丈夫なのか、とディアッカは軽口ながらも尋ねてくる。
 性能にものを言わせて逃げ回る、と前置きした上で、自分が駆けつければ警備の人達は一杯やる気をだすのでしょう、とマユは口走る。イザークとディアッカは言葉を失った。そんな二人を置いて、マユの乗るレジェンドは、ヴェサリウスより飛び立った。
 意外と頑張れる。プラント最高評議会に出席する前にあった、あの出来事がなければ、きっとこんな気持ちになれなかった、マユはそう思っていた。

 あの演説の後、マユは連行されて、時計も何もない部屋で、外部からの情報も、外部からの接触もなく、ただ無為の時間を過ごしていた。
 その時、誰かがドアをノックする。入ってきたのはミーアだった。マユは驚いた。ミリアリアの人脈のお陰で、プラントには内緒でお話をしに来た、とミーアは言う。そんな危険を冒してまで会いに来る意味を、マユは真っ先に問う。
 ミーアは、デュランダルの葬儀でラクスの遺言が公開されるので、自分はラクス廃業と告げた。ラクスの遺言とは、デュランダルが画策した偽ラクスが実はラクス本人が画策したこと、と臨終間際のラクス自らが語った映像で、いわばミーアのことが露見した際の保険だった。
 呆然とするマユ。しかし、ミーアが言うには、デュランダルの訃報を受けた時にもうラクスを続けていく気力がなくなっていたので、むしろ調度よかった、と。
 マユはすごく寂しげな眼差しを向ける。ミーアは、自分は平気、元の顔に戻るだけだから、精一杯に作った笑顔で答えた。マユは納得した振りをした。ミーアは最後に、負けないでね、と言った。

 レジェンドで戦場に駆けつけると共に、駆けつけたのがマユ・アスカであることを報せる。喜びの声が上がる。入り乱れる通信の中で誰かが口にした、我等のジャンヌ・ダルク、という言葉はマユの心に苦い思いが湧く。しかし、マユは闘志を鈍らせない。
 敵、アークエンジェルの同型艦ドミニオン一隻とウィンダム五機。まずい、囲まれたら振り切れる相手じゃない、とマユ。それを察したように五機のウィンダムはレジェンドに殺到した。マユは素早く操作、レジェンドのドラグーンが広がる。
 レジェンドを中心に五機のウィンダムをも範囲に収めたドラグーンのオールレンジ攻撃。ゲイツのパイロットはマユの思い切った行動に感嘆の声を上げ、ならば、とビームを打ち込む。マユにしてみたら冗談ではなかった、単なる操作ミスでこうなっただけなのに。
 ウィンダム。一機は逃げ遅れて撃墜。ドラグーンの範囲外に逃れようとするレジェンドを追う二機、一機はゲイツのビームに、もう一機はレジェンドのビームに落とされた。残る二機は別々の方向に逃れるも、マユが操作し直したドラグーンに背後または側面を撃たれて、堕ちた。
342マユ種のひと:2006/03/09(木) 14:09:52 ID:???
 最後の操作でマユはドラグーンの感覚を掴む。そして、前に比べて簡単に扱えるように改良してあると説明されたことを思い出す。前のドラグーンは知らないが、確かに使い易い、これならフライヤーを操作する方が大変だ。

 と、その時、ドミニオンから新手のMSが飛び出した。それは黒いフリーダム。マユは背筋が凍る。あれの凄まじさは身を以て知っている。一刻も早く撃墜しなければ、この規模の船団など瞬く間に全滅だ。
 黒いフリーダムは全砲門を構えつつ、最高速で移動。フリーダムの火力が最大限に発揮される位置を目指して飛び、それを見切ったマユは、そこに重なるようにビームライフルを撃つ。
 レジェンドの一撃をかわしながら、黒いフリーダムはその凄まじいスピードを緩めず、照準が完全に定まらぬまま撃ち込んでくる。船団に当て、掠め、ゲイツを堕とし、傷つけ、レジェンドを牽制した。
 黒いフリーダムの動き、それはオーブ戦でキラが見せたフリーダムの全性能を引き出した動き。だが、短い稼働時間を気にする気配がない。まさか、動力は核。
 それだけではない。まともに狙いが付けられないのを承知の上で、あのスピードを維持。それはドラグーンに囲まれないため。敵はオールレンジ攻撃に慣れている。なら、普通にドラグーンを使ったところで、黒いフリーダムは倒せない。
 ドラグーン展開、同時にレジェンドの突撃。レジェンド自らが肉薄し、黒いフリーダムの行動を制限。その上で諸共、オールレンジ攻撃。ドラグーンの脅威が平等に降り注ぐ中で一騎打ちを仕掛けるマユに、黒いフリーダムのパイロットは気後れした。
 その瞬間、マユは全てを読み切った。ドラグーンを回避した黒いフリーダムの行き先にビームの一撃。掠めて動きが鈍るフリーダム、レジェンドはそれを逃さずビームジャベリンの刺突。フリーダムはシールドで受け止めるが、全ドラグーンの銃口はフリーダムを狙っていた。
 やっぱり強いな、あの人の妹は。八門のドラグーンに撃ち抜かれる直前の、黒いフリーダムのパイロットが漏らした言葉をレジェンドは拾い、マユに届けた。

 まさかのMS隊全滅にドミニオンは遁走するが、間に合わなかった。追いついたイザークとディアッカが駆り、率いるザクと、ヴェサリウスの攻撃の前に、あえなく沈んだ。
 生き残った貨物船団の人間達は、虎口を脱した喜びを、マユ・アスカを讃える声に変換し、高らかに謳った。しかし、当のマユの眼差しは、寒々しいまでに冴えている。
 食料への攻撃、恐らくはエクステンデッドの乗るフリーダムの投入、それが示す事実はただ一つ。戦争は、まだ続く。

マユ「‥‥‥まだ戦争がしたいんだ、あの人達は」
343通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 16:29:31 ID:???
マユ種のひと乙です!
マユが、マユが、白服フェイスのレジェンド搭乗にぃー!!
怒涛の展開に驚きっぱなしです。マユパルス+ミーア引退はちっと淋しい。
レジェンドに聖女マユ…対するお兄ちゃんがどうでるか末恐ろしいものがある
344通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 18:50:28 ID:???
黒フリーダム!?
誰が乗ってるのやら…自由の性能を完全に引き出せる上に対ドラグーン戦になれているというと…
345通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 19:18:40 ID:???
スティングかな?
346通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 21:27:22 ID:???
淡々とした語り口ながら相変わらず情報量の多い話ですなあ。
白服フェイスマユ+伝説、「ラクス」を辞めるミーア、黒フリーダム、etc…
マユ種は既に独自の世界観が出来ているために先の予想がつかないことも相俟って毎回新鮮な楽しみがあります。
ついでに言うなら奇抜な展開があってもキャラクターそのものは揺らがないのも高ポイント。
残り九話でしょうか、ワクテカしながら待ってますー
347通常の名無しさんの3倍:2006/03/09(木) 21:39:23 ID:???
マユ種新作キター
マユが、伝説に搭乗する意外な展開にびっくり。
さようなら?ミーアに、謎の黒自由さてどうなることやら。

ところで、ミネルバ組はいずこに?

次回に期待しております。
348通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 00:13:23 ID:???
絵板の名無しBさんに薦められてPP戦記を毎回楽しみに読ませてもらってます
作者さん勝手にこんなもの作っててごめんなさい・・・

ttp://ranobe.com/up/src/up92985.jpg
349通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 08:08:50 ID:???
>>348
黒シンキタァァァ!!GJですよ!MkUがもう少しはっきり見えると
なお良いですね^^;キラサイドが地味なのは仕方ないかw
350通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 14:38:10 ID:???
>>348
シンの連合服って今までずっとイメージできなかったんだけど、黒だとなかなか似合うなあ
351通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 15:32:10 ID:???
>>348
職人様乙。
シンというかゲンは黒アキトのバイザー姿をイメージしてた。

>>349
前作主人公は量産機に乗って
「機体に頼りすぎだ。よく見とけ、戦いってのはこうやるんだ」
という台詞を吐くから格好いいんですよ
352通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 21:24:48 ID:???
キラ専用ムラサメ(転載)
ttp://seedplamo.sakura.ne.jp/img/img-box/img20060310041310.jpg

PPもこんな感じですか?
353通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 21:28:28 ID:???
>>352
なんかえらく顔がつぶれてないか?ムラサメってキットの出来悪いの?
354通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 23:25:37 ID:???
>>351
そうですね!劇場版Zでもリック・ディアスでアッシマー墜としたアムロが
テラカッコヨスw一応あれも量産機だし(「高級」付きだけど)

>>353
う〜ん全体的なフォルムは悪くないですけど、顔で随分損しているよ。
HJの作例だとHGレッドフレームの頭部使ってるし。
355通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 23:43:54 ID:???
マユ種、絵師GJ

やっぱり圧倒的な敵が原作にはいなかったからラスボスは必然的にシンになるのか…?
隻腕、マユ種はこの流れになってきた様な
レイやキラあたりがラスボスな作品も見てみたいとです
356通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 01:00:12 ID:???
>>353
スレ違いだが、虎サメで改修実験して量サメ弄ってる俺が来ましたよ。

ひさし中央の角度が急すぎるせいでツインアイが隠れてしまってるんで、
その辺のラインを整えればそこそこ見れるようになるぞ。
357通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 14:55:27 ID:???
>>352
ストフリ用ビームライフルがちょっとごついかも?
配色はGJ、どう見てもキラ専用です。
スペックが量産型と同じだろうと絶対そうは見えない感じ
358通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 17:35:26 ID:???
今にしてみると戦闘機形態がまんまZに見える
359ほのぼのマユデス。平和、ぼやけ、MS。:2006/03/11(土) 17:39:53 ID:???
『いい天気・・・わう。』
はやーんとガイアが呟く。
『そうだな・・・。』
南国の太陽が当たるオーブの基地。そこではディスティニー達が外で洗われていた。
全身インクだらけ、しかも細かい部分まで入り込んでいたので手作業で洗われていた。
『うぅ、オーブの人たちに申し訳ないのだ・・・。』
カルーアが呟く、どうやら落ち込んでいるらしい。
『ふむ、汝が気にする事ではないと余は思うぞ。あ、そこのムラサメの彼女ー!名前何?メルアド教えてーv』
『兄上!!』
カルーアを励ましたと思ったら搬入されているムラサメに声をかけるレジェンド。
『何を怒っているかディスティニー?余は何もしていないぞ?』
『兄上!その好色なところをどうにかしてください!いつもいつもそうやって・・・。』
レジェンドをしかるディスティニー。そのパイロットとは立場が逆のようだ。
『何を言うか、そういうお前は恋くらいしろ。どんな悲観主義者も恋をすれば変わるのだぞ?』
『そーそー、恋をすればツンツンがデレデレに、アーサー王だって普通の女の子に、周りの人間が怪物に、異世界の生物が美少女にみえるんだぞ?』
レジェンドの言葉に賛同しよくわからない例えをつけるアルディラ。
『僕でよければお相手するよ?』
『・・・・・レズはどうかと思うけど。』
『MSだから問題ナッシングさっ!』
『・・・・・・いや、そういうことではなく。』
薔薇を散らして話すグラッドにアビスが冷静に突っ込む。
『・・・・・・・・・・・・。』
『んにゃ?でぃすてぃにー、顔赤い?あー!もしかして好きな人いるのー?!』
『え・・・、いやややややややややいやいやいやいや!そんな事は決して・・!つーかどうやって顔色を判断?!』
『こころの目。心眼ってやつ。んふー、そうかそうかー。誰がすきなのかにゃー?』
キティに問い詰められ真っ赤になるディスティニー。修学旅行の終身時間過ぎ状態だ。
『渋いソード?無邪気なフォース?ひょうきんなブラス・・疾風?それともぉ・・・。』
『うう・・・あう・・・・・。』
ディスティニーは問い詰められてまごつく。一気に全員の視線が集まる。
『はう・・・・・。』
・・そのまま倒れる(精神的に)ディスティニー。
『デ・・・・・、ディスティニーが混乱のあまり倒れた!大丈夫か?!』
心配するカオス。
『僕達はMSだからどうすることもできない。』
『解かってるけど・・、心配じゃない?』
ズームの言葉にジャバウォックが返す。
『まったく、戦闘時の意識は何処へいったのだ。兄として情けないぞ。』
きっかけを作ったのにまったく他人事のようにいうレジェンド。
結局、ディスティニーが気づいたのはすっかり整備されてからだった。

360通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 21:06:30 ID:???
ほのぼのさん乙〜
恋をすれば周りの人間が怪物に…ってアルディラの恋愛遍歴はすごそうですね
相変わらず人間味溢れるMSたちにほのぼのです
シンハロ……もといマユは元気かな〜
361通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 21:27:03 ID:???
>>352
キラ専用ムラサメいいなー。
配色がフリーダムっぽいだけで5倍強そうに見えるぜ!

ツインライフルはMS形態の時はちょっと違和感あるけど、MA形態のときは
かっこいい! ので複雑。。。w
362通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 21:38:56 ID:???
キラサメ燃えすww
前主人公は量産機なのにやたら強いキャラってのが個人的に一番いい
フリーダム降板はバンダイ的にありえなかったとしても…
363通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 22:41:37 ID:???
こんばんは、PP書いてる者です。20話投下します。
3641/22:2006/03/11(土) 22:42:32 ID:???
ユーラシア連邦の西トルコ領、現地時刻は早朝――
ザフト軍艦ミネルバは陸路をひたすら西へ向かっていた。
カスピ海沿岸の都市ガルナハンを開放したものの、ミネルバはすぐさまその脚で黒海へ向かうよう命令を受けた。
ザフトが計画しているスエズ攻略戦に伴う地中海方面への戦力増強、そのための移動であった。

ミネルバは最新鋭戦艦だが、本来は宇宙戦を想定して設計されている。その真価は宇宙で発揮される筈――
しかし、ジブラルタル基地への増援を命令されたことで、数日慣れない陸路での長時間の移動を強いられている。
さして地上では脚の早くないミネルバは、数日掛けてようやく、あと一日ほどで黒海にまで達するところまで来た。

そのミネルバのブリッジ、オペレーター席に座るのはアビー・ウインザー。
ミネルバのオペレーターはシフト制で、彼女とメイリン・ホークの二人が交代で勤務していた。
オペレーションの任務は楽に思われがちだが、夜中も通信席を離れられないのが彼女たちの仕事の悲しい所。
この日、夜勤明けのアビーは、自らの肌荒れを心配しつつ、計器類に眼を向けていた。
時刻が朝の8時を差した頃、艦長以下ブリッジクルーが姿を現したころ――

アビーの目の前のモニターが黄色く点滅する――軍本部からのシグナルであった。

「……! 艦長、軍本部から入電です。これは……地中海方面軍司令部からです」
「あら、随分良いタイミングね。 通信? それとも暗号文書?」
「暗号文書です。読み上げます。旗艦ミネルバはこれより――」

文書の中身を要約すると、黒海に出た後に沿岸のトルコの都市ディオキアへ向かえというものであった。
更に、地中海方面軍司令官の名で、ミネルバクルーのこれまでの活躍に報いるべく休暇を与えるとあった。
アビーは艦長に伝えるために読み上げたのだが、それを聞いたブリッジクルーから歓声が上がる。
副長アーサー・トラインは喜色満面、他のマリクやチェン、バートも喜びを隠し切れず――
そんな様子をタリア・グラディスも苦笑しながら眺めていた。彼女も内心嬉しいのだろう。喜びは言葉に表れる。

「良かったわね。就航以来連戦続きだったけど、これで少し休めるわ。他には?」
「あ、はい。ええっと……あっ!」
「……どうしたの? 何かあったの?」
「それが、その……あの国が、オーブが――」

アビーの伝えた文書の最後の一行――タリア以下ブリッジクルーの喜びは、その一報で幾分損なわれた。
タリアはため息をつき、アーサーは帽子を取りやれやれと首を振る。他のクルーも表情が陰る。

そして、暫くの後――その知らせは、ミネルバの幼いパイロットにも伝えられた。
3652/22:2006/03/11(土) 22:43:28 ID:???
ミネルバ艦内のMSパイロット用のブリーフィングルーム。
知らせを聞いた幼きパイロット――マユ・アスカは、その知らせを聞き、反芻した後短く呟いた。

「オーブが……空母と護衛艦4隻で、スエズ運河を渡った? そう……ですか」

ミネルバの中で、軍本部からの知らせを聞き一番悲しんだのは彼女であろう。
オーブ出身であり先の大戦後移民としてプラントに彼女は、13歳という若さでミネルバに配属された。
本来はインパルス専属のテストパイロット扱いの筈が、開戦により有耶無耶のうちに実戦を経験する。
そして、彼女は今日まで戦いの日々を送ることとなる。

嘗ての故郷の同胞達と、刃を交える――
オーブが地球連合の同盟条約、世界安全保障条約機構に入ったことで半ば想定される事態ではあったが……

「まぁ、俺たちとぶつかることになったわけじゃないんだ。余り……気を落とすなよ」
「……ハイ」

隊長ハイネ・ヴェステンフェルスの言葉に返事はしたものの、少女の気持ちは暗澹たるものだった。
また、彼女ほどではないものの、少し前までオーブで済み暮らしていたアスラン・ザラも俯いていた。
彼は、マユとは逆に戦後オーブに移り住み、開戦後にプラントに戻り復隊した者なのだが……

「ホラ、アスランも! 戦う相手を選べるわけじゃない。大体、お前は正規兵なんだから……割り切れよ」
「……すみません」

彼もマユ同様、暗澹とした気分で俯いている。二人が並んで落ち込んでいるので、部屋の空気も微妙に重い。
同僚のルナマリアは二人を慮ってはいたものの、掛ける言葉も見当たらず、やがて彼女も俯いてしまう。
レイはいつもどおり無表情。ベテランのハイネ隊の古参兵、ショーンとゲイルは眉一つ動かさないが・・・…

しかし、そんな沈痛な部屋のムードは、幸か不幸かある男の発言で一遍にぶち壊される。

「……おい、ハイネ! 今オーブって言ったか!?」
「ああ。オーブが艦隊で地中海に来るそうだ。スエズ辺りで戦っていてくれれば良いが」
「冗談じゃねえ! 俺はオーブのムラサメにやられたんだぞ! こっちに来やがれ、あの糞野郎ッ!!」

同席していたヒルダの部下マーズ・シメオンは、先日キラのムラサメに愛機を戦闘不能にまで追いやられていた。
彼としては、そのリベンジの機会が来るものと色めき立っていたのだが、二人の嘆き人はその言葉で一層俯く。
察した彼の僚友、ヒルベルト・フォン・ラインハルトが諫めるが時既に遅し……死人に鞭は、打たれてしまった。
3663/22:2006/03/11(土) 22:44:28 ID:???
だが、その話を聞いてこの人物が黙っている筈がなかった。

「この……大馬鹿野郎ッ!! 少しは、この子の気持ちを考えろッ! 状況を考えてモノを言えッ!」
「す、すんません!」
「大体お前は……ッ! そんなんだから、後の敵に気づかないで、敵を仕損じたりするんだよッ!!」
「いや、アレは不意打ちを食らっちまったモンで! 次はこそは……!」
「そんな台詞は生きているから言えるんだ! 不意打ちだろうが何だろうが、やられたらお終いだろうが!?」

ブリーフィングが終了した後、ハイネ以下、ヒルベルト、マーズ、マユの4名は医務室に向かった。
先日のガルナハンでの戦闘で右足を骨折したヒルダ・ハーケン――ハイネは状況の伝達、他は見舞い……
なのだが、ヒルベルトの密告、もとい報告で一部始終を聞いたヒルダは烈火の如く怒った。

「おい、ヒルベルト! チクることないだろうッ!」
「知らんな。アレはお前が悪い。どう見ても、あの場で言うべきことじゃなかった」
「け、けどなあ! 俺はその……ヤツにお返しを――」
「――馬鹿野郎! そんなことはどうでもいいから、マユに謝れ! 土下座して謝るんだ! この……ッ!」

僚友の告げ口に抗弁するマーズだが、ヒルベルトは相手にしない。おまけにヒルダは激昂している。
骨折しているのに、今にも彼女はベッドから出てきてマーズを叩きのめそうと身を乗り出す。
慌ててハイネたちが宥めるが、彼女の怒りは収まらない。渋々マーズもマユに頭を下げるが……

逆に困り顔のマユは、気にしていないとだけ言い、マーズに頭を上げるよう促した。
見舞いの筈が、何とも険悪な雰囲気になってしまった為、マユはヒルダに出直してくると言って医務室を去る。

「また、後出来ます。お騒がせして……ごめんなさい」
「そうかい? すまないね……こらッ! マーズ、お前は出て行く必要はない! ちょっと残れッ!!」
「か、勘弁してくださいよぉ!」

マユが部屋を去った後、部屋にはマーズの悲鳴が響き渡った。


「オーブ……。まさか、自分の生まれた国と戦うなんて、思ってもみなかった……」

一人、少女はミネルバの甲板に上がり、外の景色を見入っていた。
オーブと戦う可能性が出てきたことで、彼女の心は揺れ動いていた。
そして、少女は彼女の故郷オーブを後にした最後の日を思い出す――
3674/22:2006/03/11(土) 22:45:26 ID:???
ユニウスセブンの落下事件――
後にブレイク・ザ・ワールドと呼ばれるこの事件は、元ザフト軍兵士らテロリストによって引き起こされた。
この事件を契機に、地球連合とプラントの停戦条約という束の間の平和は終わりを告げ……
やがて世界を未曾有の混乱と、凄惨な闘争に駆り立てる大戦が――再び起ころうとしていた。

――開戦二日前のオーブ軍港――

ユニウスセブンの破砕作業を続けたまま地球にまで下りてきたミネルバは、4日前にオーブに着いた。
カガリ・ユラ・アスハとアレックス・ディノを乗せてきたこともあり、彼らを送り届けることが目的の来訪――
ミネルバは破砕作業に入る前に同乗のギルバート・デュランダルはボルテールに移乗していた。
要人二人を届けただけで目的は遂げたが、大気圏突入しながらの破砕作業を続けたミネルバは損傷もあり……
カガリの申し出もあり、結局そのまま今日までオーブで修理と補給を受けることとなった。

ブレイク・ザ・ワールドから既に一週間が過ぎていた。
その間、大西洋連邦以下地球連合各国は、テロリストの仕業とはいえ元ザフトの者達が起した事件を糾弾した。
プラントへの責任追及の声は日に日に高まり、徐々にではあるが軍歌の足音が聞こえて――

その緊張感は軍艦であるミネルバへも伝わっていた。
地球を救った彼らでも、ザフトであることには変わりはない。彼らは救済者であると同時に、加害者でもあった。
連日オーブを通して伝えられる被災報道や、連合各国の糾弾の声にミネルバのクルーの心は重かった。

そんな中、クルーには一日だけの休暇が与えられた。
タリア・グラディス艦長としても、クルーの緊張状態を解したくもあり、また破砕作業の労をねぎらう目的もあり……
所定の任務についている者以外、手の空いている者には休暇を取ることは認められた。即ち、上陸許可――

ミネルバのレスト・ルームには上陸許可を伝え聞いた者達が続々と集まっていた。
整備班のヨウランやヴィーノ、パイロットのルナマリアやレイ、オペレーターのメイリンらも……

「聞いたか? 上陸許可だってさ!」
「ああ! オーブは奇麗な国だからな……海は奇麗だし、観光スポットも多いらしいぜ。メイリンは何処行く?」
「そうね……お姉ちゃん、マユは何処? マユなら、オーブ出身だし、何処行けば良いか教えてくれるだろうし」

賑やかなクルーたちのやり取りに応えるように、メイリンは姉のルナマリアに話を振るが…・・・
ルナマリアはその言葉に若干悲しげな顔を見せ、首を左右に振り応える――

「……悪いけど、マユはもう艦にはいないわ。 今日はあの子は……やることがあるのよ」
3685/22:2006/03/11(土) 22:46:23 ID:???
上陸許可はマユ・アスカにも与えられた。
メイリンの思惑とは裏腹に、彼女にはやるべきことがあったのだ。
上陸許可が出るや、すぐに艦を離れた少女はオーブ軍本部へ足を向ける。
ミネルバが停泊中の港湾ブロックからそう遠くない場所に軍本部はあり、受付で彼女はある人物を呼び出した。

「……失礼します。トダカ二佐という方を探しているのですが、今日はこちらには……」
「トダカ二佐? ああ、第一軌道艦隊のトダカ一佐のことですね?」
「あッ……! 二年前にお会いしたときは二佐だったもので……ごめんなさい」
「謝ることはありませんよ。ご親戚の方でしょうか?」
「……いいえ、違います」
「では、身分証のような者はお持ちでしょうか?
 身内の方以外はお取次ぎする際、身分証を提示していただくことになっております。身分証を――」

言われて、マユはミネルバを出るときに渡された上陸許可証を、受付の軍人に見せる。
それを見せられた受付の軍人は、一瞬眼が鋭くなり目の前の少女と上陸許可証を見比べる。
やがて、訝しげな顔つきに変わった受付の軍人は、少女を問いただす。

「今日は、どのようなご用件でしょうか?」
「……私は二年前、戦災に合ってプラントへ移民した者です。父と母はそのとき亡くなりました。ただ……
 遺体が見つからず行方不明扱いの兄がどうなったのか、トダカ一佐にお尋ねしようと思い、参りました」
「二年前? あの、オノゴロの防衛戦で被害にあわれた方?」
「……はい」

訝しげな顔の軍人は、疑りの眼差しで少女を見ていたことを恥じ、申し訳なさそうに丁寧な口調に変わる。

「し、失礼しました。すぐに取り次ぎます、少々ロビーでお待ちを……」

マユがここに来た訳――それは、無論件のトダカ一佐に会うためであった。
彼は、軍の人間であり、二年前から戦災で行方不明にあった者たちの捜索責任者でもあったのだ。
通常現場の仕事は末端の軍人がやることで、上級将校であるトダカは矢面に立つことはなかったが……
当時マユが両親を失った直後に、トダカは彼女と出会い色々と世話を焼いてくれもした間柄であった。
その伝を頼り今日マユは軍本部を訪れたが、受付の軍人の対応に、マユは悲しい現実を突きつけられた。

「そっか……そうだよね。もう、私はこの国の人間じゃ……ないんだ」

既にマユはミネルバのテストパイロットであり、半ばザフト軍人扱い――すでに、他国の者として扱われていた。
3696/22:2006/03/11(土) 22:47:12 ID:???
数分後待たされた後、マユはトダカとの面会を赦され、軍本部にある彼のオフィスに案内された。
オーブ軍で一佐という階級にある彼は、連合でいえば大佐クラスの権限がある軍人である。
それ故、かなり広めの彼のオフィスであり、応接用の椅子や机も用意されていた。
その席に座り向かい合った両者は、改めて再会を果たした。

オーブの軍人とザフトのテストパイロット――
二年前は軍人と被災者という間柄だったはずが、時を経て二人の立場は似たようなものになってしまった。
先ほどの受付での出来事と相まって、少しうろたえたマユは切り出す言葉を見つけられず……
そんな少女を見たトダカは、苦笑しながら話を切り出した。

「ようやく、来てくれたと思ったら……まさか、ザフトの軍人になっているとはね。驚いたよ」
「……軍人ではありません。テストパイロットです」
「以前君から貰った手紙には……幼年学校に入ったと聞いていたが?」
「色々と、その……運に恵まれて」
「……そうか。何れにしろ、君がその年でテストパイロットになれたのは、素質が認められたのだろう。おめでとう」

咎めることもなく、笑顔のままトダカはマユがテストパイロットに選ばれたことを告げた。
今は敵対関係ではないオーブとザフト、しかしユニウスセブンの落下事件で様相は一変している。
状況が悪化すれば、連合とプラントの間に火蓋が奇って落とされることもありえる。そうなれば、オーブも――
マユはそんな厭な考えを振り切るかのように、無理やりに笑顔を作って応える。

「あ、ありがとうございます」
「……そういえば、今日君が来た要件というのだが」
「はい、兄は……どうなりましたか? その……遺体は、見つかりましたか?」

二年前――

兄のシン・アスカはマユを庇い、MS同士のビーム砲の余波にその身を撃たれた。
マユが最後に兄を見たときは、生きてはいたものの両脚はなく、両腕も折れ曲がっていた。
そのような体となり動けないシンは、それでもせめて妹だけでも逃げるよう言い……
後ろ髪を惹かれる思いのマユを急かす兄の言葉に従った少女は、結果的に九死に一生を得た。

しかし、兄のシンは――
やがて次にその近辺に着弾したMSの光弾に焼かれたのか、今だ遺体すら見つかっていなかった。
オーブが大西洋連邦に降伏しオノゴロでの戦闘が終わった後、オーブ軍は犠牲者の遺体収容もしていたが……
赤十字の人間やジャンク屋らも救助活動に邁進していたため、全ての生存者や遺体の確認に時間が掛かった。
3707/22:2006/03/11(土) 22:48:18 ID:???
トダカらは戦後暫くして生存者の確認は全て終えたが……
遺体の確認となると方々へ連絡をし、見掛けで判別できない遺体はDNA検査をする必要もあり時間を要した。

あれから二年が経ち……暫しの沈黙の後、トダカは俯き加減で瞑目しつつ応える。

「先ごろ、遺体の確認作業もすべて終了した。
 結論を言えば……お兄さんとみられる遺体は見つからなかった。 生存という情報も未だにない。
 戦災ということなので、法的にはお兄さんは昨年死亡扱いになっている。これが、その書類だ」
「そう……ですか」

トダカは前もって用意していた書類をマユに手渡す。
極めて義務的な書類であったが、それには父母の死と、行方不明扱いのシンの死を公式に認めるものであった。
また書類には、家族の死亡保険金の一覧もあり、相応の額が書かれていた。訝しがりマユはトダカに示す。
軍の仕事にしては手が届きすぎている。死亡保険金などは保険会社が執り行うものだからだ。

「ああ、それか。君が幼年学校に行ってしまい、うかうかとこちらに戻れなくなったからね。
 僭越ながら、全て私の方で保険会社と法的処理は済ませてしまった。私に出来る、せめてものことだ……」
「そうですか……ありがとうございます」

それは、トダカの気遣い――
言葉で彼の心中を察したマユは、感謝の言葉と共に頭を下げる。

暫しの沈黙が流れる。
これで、マユはトダカの元に来た目的を全て果たしてしまっていた。あとは、ミネルバに帰るだけなのだが……
ただ一点、トダカの気遣いはマユにある問題を残していた。

「あの……こんな額を貰っても、私には使い道がありません」
「それは、君の今後の為に使えば良い。お兄さんが公式に亡くなられたことで、受取人は君一人だ。判断は……」
「けど、私はもう軍からお給料も貰っています。それに、もうオーブには戻ってこないと思いますから」
「ふむ……困ったな」

多額の保険金は、保険会社からのものと国から支払われたものがあり、合わせると……
数年は何もしないで暮らせるだけの額が、マユに支払われる計算となっていた。
しかし、最早職も得て食うに困ることもなくなった少女には、使い道のない金であった。
地上で使われるアース・ダラーはプラントのマネーにも換金できたが、自分で使う気もなかった。
3718/22:2006/03/11(土) 22:49:09 ID:???
マユが使う気にならなかったのは、ユーリ・アマルフィの存在が原因――
やがて、彼女を養女として迎え入れようというアマルフィ家の申し出を、マユはすでに受け了承している。
出来れば、そのような金はすべてオーブに置いていきたいのが本音であった。全ての哀しみとともに……

しかし、この時ユーリ・アマルフィの死の一報はマユに聞かされていない。
それは、強奪事件以来の強行軍のせいでもあり、マユにショックを与えまいとするタリア・グラディスの気遣い――
その悲報は、この時のマユはまだ知らされていなかった。そんなマユは、受け取りを固辞する。

「もう、私には使う必要のないお金です。お世話になったトダカさんに、使い道はお任せします」
「……私に任されても困るよ。そうだなぁ……」

確かに、トダカが貰っても困る金である。あくまでマユの家族に掛けられた保険金なのだから……
困り顔で苦笑するトダカは、妙案はないかと数秒の間考え、やがてある提案をする。

「……このお金を寄付するというのはどうだろう?」
「寄付……ですか?」
「オノゴロで被害にあった方は未だにその傷が癒えているとは言いがたい。
 家族を失った方たちには国から支援金も支払われているが、身寄りのない方たちへの支援金を募集している」
「……賛成です。けど、その……募集しているのは、どのような団体でしょう?」
「アスハ家だ。今、代表のカガリ様が、そのような人たちの為に奔走して――」

寄付を募集している団体――その名を聞いたマユの顔は強張り、少女はトダカの言葉を遮る。

「――止めてください。私は……アスハなんかに……父や母や、兄のお金を渡したくありません」
「………」
「カガリ代表がどんな方かは存じません。良い人か悪い人かも……
 でも、先代のウズミ代表が掲げた中立策のせいで、オーブが戦場になって……私の家族は皆死にました」
「しかし、それは……」
「私は、アスハが嫌いなんです。だから、そのアスハが募集している支援金団体には、お金を渡したくありません」

こみ上げてくる感情を堪えられず、多少乱暴な言葉になりはしたが……マユははっきりと固辞した。
その様子に、目の前の少女がアスハを嫌っていることをトダカも察し、それ以上己が提案を強いることはなかった。
だが、宙ぶらりんになってしまった当の保険金――困ったトダカは、更に熟考し寄付する先を考えた。
マユが寄付し易い団体を選ぶべく……やがて、トダカは一つの代案を見つけ出す。

「なら、個人で主催されている所はどうだろう? マルキオ導師という方が個人で孤児院を開かれているが……」
3729/22:2006/03/11(土) 22:50:01 ID:???
若干声を荒げた非礼を詫びた上で、マユはトダカと別れオーブ軍本部を後にした。
トダカとて悪気があったわけではないが、彼の親切は少々裏目に出てしまい、些か後味の悪い別れではあった。
その分、マユのアスハ家に対する印象は、更に悪化することとなるのだが……

それはさておき、マユはトダカの提案を受け、マルキオ孤児院へと脚を向けた。
軍本部から大分離れていたため、市街地に出てからタクシーでの移動となった。
タクシーを拾ってからものの30分ほどで、彼女はマルキオ孤児院に到着する。海沿いの広々とした邸宅――

マルキオ孤児院の中は、日中にも関わらずガランとしている。
人っ子一人居ないのだ。皆何処かへ出かけているのだろうか――?
人の居ない気配の家に入り込むのは、何やら邪な気分もし、おずおずとマユはその屋敷の庭に足を踏み入れる。

「ごめんください。あのー、どなたかいらっしゃいませんか?」
「……すみません。少々お待ちいただけますか?」

――人はいた。
まだ若い女性の声だ。おそらくは、彼女は孤児院で働いている人に相違ない。
人の居ることに安心したマユは、暫くその場で佇む。やがて、パタパタと廊下を走る足音がして……
一人の少女がマユの前に現れる。エプロン姿で桃色の髪を束ねた、マユより5,6歳くらい年上の女性が――

「お待たせして申し訳ありません。ちょっとお料理をしていたものですから、手が離せなくて」
「あ……ごめんなさい。お邪魔してしまったみたいで……」
「失礼ですが、子供たちのお知り合いの方? それとも、孤児院の方にご用がおありで?」
「孤児院の方に、用があって……参りました」
「そうでしたか。子供たちならカリダさんがお外に遊びに連れて行ったので、暫くは戻りませんわ。
 マルキオ導師もユニウスセブンの落下の被災地への支援活動をなさっている関係で、夜まで戻りませんよ」

エプロン姿の女性はマユを訝しがることもなく、終始笑顔で丁寧に応対してくれた。
先ほどの軍本部で寂寥感を味わったマユは、女性の応対に安堵しつつ、ここに来た目的を話した。

「私は、マルキオさんの孤児院に寄付をしようと思い、今日ここへ参りました」
「あらあら、それはありがとうございます。では……外でお話しするのも難ですから、中へお入り下さい」

桃色の髪の少女に導かれ、マユはマルキオ邸へと足を踏み入れた。
広々とした家の中には、子供達が散らかしたであろう玩具がところどころにあった。
その間を抜けて……マユは居間に案内され、そこで件の少女と話を始める――
37310/22:2006/03/11(土) 22:50:53 ID:???
居間に通され、少女が運んできた飲み物に口をつけながら、マユはここへ来た経緯を話した。

オーブに住んでいたが戦争で家族を失い、プラントへ移民として渡ったこと――
先日家族全員の死亡認定がなされたが、自分には新しい家族が見つかったことを――

「マユ・アスカさん? このお金……・本当に宜しいのですか?」
「お話したとおり、私にはもう必要のないお金です。
 こちらでは戦災で孤児になった子も、引き取って養われていると聞きました。だから、その子たちのために……」
「そうでしたか。ありがとうございます。マルキオ導師に代わり、お礼申し上げます」

桃色の髪の少女は思慮深い瞳を湛えながら、それ以上マユに仔細を尋ねようとはしなかった。
そのことにマユは感謝しつつ、出された飲み物に再び口をつける。これでマユは、今日すべきことを終えた。
あとは、ミネルバに帰るだけ――マユは少女に礼を言い席を立とうとするが……少女は再度、新たな問いをした。
マユにとってある意味最も問われたくなかった質問を――

「そういえば、アスハ家でも寄付を募っているとか……お聞きになりませんでしたか?」
「それは……」
「あちらの寄付は、何せオーブの国が募集しているようなものですから、そちらに寄付をされるのも……」
「それは、私は……厭です。アスハに家族のお金を渡すのは――」

やむを得ず、マユは今日二度目の同じ問いに、同じ答えで返した。
家族が死んだのはウズミ・ナラ・アスハの失政によるもので、自分は快くアスハにお金を渡せないと――
桃色の髪の少女はその言葉をただ聞いていた。先ほどと同じ思慮深い瞳で……

暫しの沈黙が流れる。
場の雰囲気が一気に重くなり、マユは少しこの孤児院に来たことを後悔していた。
彼女としては、極力アスハ家とそれに関わるものとは接したくないというのが本音であった。
そんな沈黙はやがて……桃色の髪の少女によって破られる。少女は、ゆっくりとした口調で再度マユに問う。

「ウズミ代表のことが……お嫌いですか?」
「………!」

単刀直入、あまりにもストレートな問いにマユは言葉を失った。
先ほどマユについての仔細を尋ねなかった少女は、思慮深い女性だろうと先ほどまで思っていたが……
核心を突く問いに、マユは返す言葉を失い、再びマルキオ邸の居間に沈黙が流れた。

37411/22:2006/03/11(土) 22:51:48 ID:???
しばらくの間をおいて、マユはハッキリとした口調で言いきった。

「――嫌いです」

堰を切ったように、マユは抱いていた思いを目の前の少女にぶつける――

「あの人が、ウズミ代表が……
 大西洋連邦の要請を蹴ったから、中立なんて方針を選んだから、オーブは戦火に包まれました。
 言いがかりみたいな文句で攻めてきた大西洋連邦は大嫌いですけど、ウズミ代表も同じくらい嫌いです。
 あの人が中立を守り抜こうとなんてしなければ、私の家族は死なずに済んだ筈です」
「………」
「父と母はほぼ即死でした。けど、兄は……
 兄は、両脚を失って血まみれで……多分、苦しみながら死んだと思います。
 家族をそんな目にあわせたウズミ代表も、跡を継いだカガリ代表も、アスハ家も……皆嫌いです」

桃色の髪の少女は、口調こそ冷静だがそこかしこに憤りが現れているマユの言葉に聞き入っていた。
父と母の死以上に、おそらくは苦しんで死んだであろう兄の死はマユの心に影を落としていた。
憎しみ――あるいは、そう表現しても差し支えないであろう感情が、マユの心にはあった。

「……辛いことをお聞きして、申し訳ありませんでした」
「私が今日ここに来た用事は、済みました。これで帰ります。失礼します」
「あの……、ちょっと宜しいでしょうか?」
「……何ですか?」

桃色の髪の少女は詫びた後、まだ何か言い足りなそうな視線をマユに向ける。
もうこの場にはいたくない――そう思ったマユだが、少女の視線に仕方なしに話を聞くことにする。
しかし、次に少女はマユにとって予想もしなかった話をはじめる――

「本当に、ウズミ代表が悪いのでしょうか? 私には、どうしてもそうは思えないのです」
「……! 何を言ってるんですか? 私の家族は……ッ!」
「確かに貴女のご家族が亡くなられたことは悲しいことです。そのことに口を挟むつもりはありません。ただ……」
「ただ……何ですか?」

マユは激昂しかかったが、慌てて冷静さを取り戻し……冷淡な口調で少女を問い詰める。その問いに少女は――

「大西洋連邦に従っていれば戦争は避けられたのでしょうか? オーブは戦火に包まれなかったのでしょうか?」
37512/22:2006/03/11(土) 22:52:39 ID:???
マユとは対照的に……
あくまで理性的な口調で、少女はマユに話しかける。マユを諭すかのように――

「貴女のご家族が亡くなられた責任はウズミ代表にもあると思います。けれど……
 確か、大西洋連邦の申し出は、プラントとの戦争でオーブのマスドライバーの使用権を得たいという話でしたね」
「……そうだったと思います。けど、それが何だって言うの?」
「もし、大西洋連邦にマスドライバーの使用権を認めれば、プラントやザフトはそんなことを赦したでしょうか?」
「――え?」

意外な話題転換にマユは戸惑う。桃色の髪の少女は、やがてマユにはかつて考えもしなかったことを話す。

「当時のザフトは、ビクトリアやパナマといった連合のマスドライバーを陥落させていました。
 なぜなら、プラントにとって連合の大量の兵員を運ぶことが出来るマスドライバーの存在は、脅威だからです」
「………」
「あの頃、プラントの実質的な支配者は、ザフトの総帥でもあるパトリック・ザラ。彼は強硬派でした。
 オーブが中立を捨て大西洋連邦の申し出を受けていたら、ザフトはオーブに侵攻したのではないでしょうか?」
「……! そんな!」
「オーストラリアにはザフトの最大拠点カーペンタリア基地もあります。オーブとは目と鼻の先の位置です。
 また、小さな島国で防空能力も乏しいオーブでは、降下部隊を送られてしまえば手の打ちようがありません」

桃色の髪の少女――彼女の言葉は、マユを動揺させた。
仮にも軍用年学校に在籍していたマユにとっては、初歩的な戦術論も既に学習済みであった。
少女の言うように、もしもウズミが大西洋連邦の要請を受け入れていたら……
高い確率で、いや間違いなくオーブはザフトの標的になったことだろう。

その事実にマユは慄然とする。
もし、あのときウズミが別の判断を下していたら――即ち、大西洋連邦の要請を受諾していた場合……
マユの家族の命を奪ったのは、今自分が在籍しているザフト軍であったかもしれない。

「気を悪くなさったのなら、謝りますわ。私も、ウズミ代表の判断が必ずしも正しかったとは思いません。
 けど、絶対に間違っていたとも思えないのです。ウズミ代表は戦いに敗れ、マスドライバーを破壊されました。
 マスドライバーは国民の財産であった半面、当時はオーブに戦争を呼ぶ遠因ではなかったのでしょうか?
 ウズミ代表は……ひょっとすると、国民の犠牲をこれ以上出さないために、そうなさったのでは……」

動揺したマユには、少女の言葉は最早遠くなっていた。
憎しみの対象ですらあったアスハ家――しかし、当時オーブの置かれていた状況は、確かに切迫していたのだ。
37613/22:2006/03/11(土) 22:53:36 ID:???
「……仕方なかったって言うの?」
「――え?」
「貴女は、私の父や母や……兄が苦しんで死んだのは、仕方なかったって言うの?」
「それは……」

ウズミの苦悩は、半ばではあるがマユも理解しようとしていた。しかし――
それでは死んでいった家族はどうなる。当時の状況がそうさせたのだから、仕方ないと割り切れというのか。
やはりマユには、少女の言葉は受け入れがたいものであった。桃色の髪の少女は、諭すようにゆっくりと口を開く。

「私は……仕方なかったとは思いません。政治が間違っているから戦争が起き、人が死ぬのです。
 戦争の責任は、元をただせば政治家にあると思います。だから、ウズミ代表にも責任はあります」
「そんなこと……分かっています」
「貴女が悲しむのは当たり前ですし、その怒りをウズミ代表やアスハ家に向けるのも、間違ってはいません」
「なら、どうしろって言うの?」
「……憎まないでください。人を……憎まないで欲しいのです」

突拍子もなく、少女はマユに頼みごとをした。人を憎むな、と――

「戦争は多くの人の命を奪います。
 そして、戦争が終わっても、愛する人を失った悲しみは生き残った人が受けます。
 ですが、悲しみが憎しみに変わったとき、それは更なる争いの元を生み出します」
「………」
「憎しみは、人の性と言う事も出来ましょう。けど、それを続けていけばどうなります?
 永劫に人と人が殺しあう。それが続けば、世界はやがて破滅してしまいます。先の大戦がそうでした。
 連合は核を、ザフトはジェネシスを……二年前、世界は一度滅びようとしました」
「……それと、私と何の関係があるって言うの? 私は……」
「貴女はウズミ代表を憎んでいるのではありませんか? そして、アスハ家も……」
「……!」
「他者を憎み、自らを憎しみの連鎖の中に組み込むのか……
 それとも、悲しみを、胸に秘めた自分の礎にするのか……貴女が選ぶべきは、果たしてどちらでしょう?」

少女の言葉は、あたかもマユの心を見透かしたかのようでもあり……
マユは、少女の一言一言が胸に突き刺さるかのような感覚を覚えた。
反発し少女の言葉を奇麗事と一蹴したい気持ちもあるが、一方で受け入れたいと思う気持ちもあり……
マユは、次第にウズミやアスハ家に抱いていた感情が薄れていくのを感じ取っていた。
37714/22:2006/03/11(土) 22:54:32 ID:???
やがて、桃色の髪の少女はマユに非礼を詫びる。そして、彼女は告白を始める――

「偉そうなことを言って、申し訳ありません。でも、私がこんなことを言うのには、理由があるのです」
「……え?」
「私は、ある人を憎みました。その人を……心底憎みました」
「………」
「そして、私は過ちを犯しました。そのときの私には、もうそうするしかないと……思い込んでおりましたの。
 あるいは、他に取るべき道が他にあったのかもしれない。けれど、私はその方法を選ぶしかなかった。
 結果として、その人は死んでしまいました。私のせい……なのかもしれません」
「……人を殺したの?」
「私ではありませんが、ある人に殺されてしまったのです。多分、私のしたことが原因でしょう。
 ……その罪は今も消えることなく私の心に残っています。一生消える事のない罪です」
「………」
「人を憎めば、いずれ私のような悲しい目にあってしまう。だから、貴女にはそうして欲しくないのです」

少女がどのような罪を犯したのか、マユには知る由もなかった。
しかし、少女の瞳は徐々に悲しい色を帯び、彼女の言う罪が今も地震を苦しめていることは見て取れた。
なにやら、立ち入ってはならないことのような気もして……マユはそれ以上問おうとはしなかった。

やがて、二人は別れのときを迎える――

「ごめんなさい。寄付に来ていただいた方に、お説教のようなことを言ってしまって……」
「いえ、私も……思うところがありました。今日は、ありがとうございました」
「……ところで、お父様を亡くされたそうですが……どんなお方でした?」

玄関までマユを見送りにきた少女は、最後にマユに問う。
マユにしてみれば、まったく予想外の問いを――

「……え?」
「お優しい方? それとも、お厳しい方でいらしたのですか?」
「父は……兄には少し厳しかったです。けれど、私にはとても優しくて……今でも、大好きです」
「そう……ですか。あ……ごめんなさい、お引止めしてしまって」

父はどんな人だったか――
マユが見た最後の少女の顔は、どことなく儚げで、今にも泣き出しそうな顔に見えた。
そのことに一抹の違和感を覚えつつ、マユはマルキオ孤児院を後にした。
37815/22:2006/03/11(土) 22:55:26 ID:???
二日後――大西洋連邦以下、地球連合各国はプラントに対し宣戦を布告した。
そして、オーブを出航したミネルバに、連合艦隊が襲い掛かる。

「こうなった以上は仕方ないわ! コンディションレッド発令! 対艦隊、対MS戦闘用意!!」

タリア・グラディスの号令でミネルバは臨戦態勢を取った。領海の外で待ち伏せを喰らった母艦――
襲い掛かる敵軍からミネルバを護るべく、少女は白いMSを駆り、戦場へ飛翔する。

「シミュレーションどおりやれば大丈夫、シミュレーションどおりやれば……」

コアスプレンダーの中で、マユはひたすら呪文のような言葉を唱えていた。
幾度かの実戦経験はあるとはいえ、開戦してからの初めての戦闘――即ち、戦争における実戦である。
敵は正体不明のテロリストではない。地球連合の旗印を掲げた、蒼きMSの群れ……

緒戦――不用意に二機のウィンダムが迫る。マユの駆るインパルスへと――

「来ないでよッ! 戦争なんだから! このッ……!!」

ライフルビームを掻い潜り、マユは牽制のつもりでインパルスの砲火を向ける。
フォース・インパルスのビームライフルから放たれた光線が、二機のウィンダムの胸部を穿つ――

「当たった……ッ!? ……パイロットは……死んだ? パイロットは、死んだの……」

ゆっくりとコクピット周辺から火が上り……ウィンダムは糸の切れた操り人形のように海へと堕ちていった。
この日、初めてマユ・アスカはMSを撃墜し――人を殺した。

カオス、ガイア、アビスが奪われ応戦に廻ったとき、追撃戦のデブリ帯で彼らと再び刃を交えたとき――
ユニウスセブンでサトーたちテロリストと戦ったとき――それら全ての戦いで、マユは戦火を挙げていなかった。
前者はファントムペイン、後者は元ザフトの手練……彼らは、マユの手に余る存在ではあった。

しかし、今この時は、マユは追われる側――戦わなければ生きることすら叶わない状況……
マユはシミュレーションどおりにやったとはいえ、新型機に不慣れなウィンダムのパイロット達は、脆くも撃たれた。
緒戦の敗北は組織的戦闘方法をウィンダム隊に選ばせる――遠方からミネルバを狙う戦法に切り替えたのだ。

しっかりと編隊を組んだウィンダム隊が、再度ミネルバに襲い掛かる――
37916/22:2006/03/11(土) 22:56:28 ID:???
緒戦で人を殺した事実に、マユは寒気を覚える。
インパルスの操縦桿越しに、相手を殺したと思しき感覚が伝わる。ライフルの引き金を引いた感触が――

「くッ……! 今はそんなこと、考えているときじゃないのッ!!」

その感覚を振り払うかのように、マユは機首を敵MS隊へと向ける。
しかし、20を越えるMS部隊にたった一機のインパルスでは圧倒的に不利。
編隊を組んだ彼らは、組織的にインパルスを捉えようとビームライフルを放つ――

「…・…ッ! 避けるので精一杯なんて!!」

悲鳴をあげるマユとは対照的に、連合の指揮官は余裕の表情であった。
連合艦隊旗艦艦橋――大西洋連邦所属のこの艦の指揮官は、満足げに戦闘を眺めていた。
ミネルバは応戦に必死、インパルスもウィンダム隊を突破できず、圧倒的な数差の前に逆に逃げ惑うばかり……

「頃合だな、ザムザを出せ。あの飛び回っている白いヤツを潰せば、決着は付く」

やがて、ザムザ・ザーが空母から飛び立つ――


ミネルバも、圧倒的な戦力差を自覚していた。不利な戦況を覆すためには、強引な戦術が必要となる――
戦っているMSは実質マユだけ。飛べないザクのルナマリアとレイは、MS発射区画からの応戦であった。
絶望的な数の差を覆すべく、タリア・グラディス艦長は断を下す。

「タンホイザー起動! 敵艦隊をなぎ払う! 目標大型空母、アーサー……照準任せる!」
「了解! メインエンジン最大、出力最大……タンホイザー発射ッ!!」

旗艦と思しき空母を狙ったミネルバの陽電子砲は、巨大な光の束となり一直線に襲い掛かった。
膨大な水しぶきが連合艦隊とミネルバを包み……ミネルバが形勢逆転する――筈であった。
しかし――

「ええええエッ!? 艦隊が……無傷!? ん……アレは……モビルアーマー!!?? 嘘おっ!?」
「やられたわね。陽電子リフレクター装備の、モビルアーマーとは……!」

アーサーの絶叫と、タリアの嘆声……ザムザ・ザーの陽電子リフレクターはミネルバの一撃を阻み……
戦況はミネルバにとって絶望的な状況へと向かっていった。
38017/22:2006/03/11(土) 22:57:26 ID:???
「このままじゃ……ミネルバが沈んじゃう! どうすれば……どうすれば……」

インパルスのコクピットで、マユは戦況の劣勢を悟る。このままではミネルバは沈む。
降伏すればミネルバクルーの命は助かるかもしれないが、ミネルバはザフトの最新鋭戦艦……
仮に、この艦が連合に渡れば、プラントの最新鋭戦艦が連合にそのまま渡ることになる。
プラントの技術力の粋を集めて作られた艦が、その技術の結晶が――
タリアはそのような事態を避ける為、最悪の場合自沈を選ぶ筈であった。

「そんなこと……絶対にさせられない! インパルス……いくよッ!!」

ユーリ・アマルフィが手がけたMSと一緒に戦っている――その事実がマユを支えていた。
敵MS全てを撃滅することなど不可能、ならばやるべきことは唯一つ……

「敵の旗艦の空母を撃って……あの人たちがミネルバを撃つのを止める!」

そして、インパルスは海面スレスレを飛ぶ。
ウィンダム隊がそれを阻もうとライフルの一斉射を放つ。いくつもの光線がインパルスを掠める。
それを辛くも掻い潜り、マユは敵空母に迫ろうとする。


その様子はザムザ・ザーのコクピットでも確認される。3人乗りのコクピットで、パイロットがそれを見咎める。

「敵一機、来ます!」
「例の……ファントムペインから報告のあった新型です。隊長、どうします?」
「ザムザで前に出るぞ。ヤツの白い機体を……握りつぶしてくれるッ!」

艦隊に迫るインパルスの前に、大型MAが現れる。巨大な蟹のような巨体――
一見して高出力機体であることを悟り、マユは回避すべく速度を上げMAのサイドに回り込もうとするが……

ガシッ――

機械的な音がインパルスのコクピットにまで響き渡る。
巨体に似合わぬ速力を誇るザムザ・ザーのクローが、回り込もうとしたインパルスの胴体を掴み上げる。

「こんなの、聞いてないよッ!? 離せッ……離してよッ!!」
38118/22:2006/03/11(土) 22:58:21 ID:???
ザムザ・ザーのもう片方の腕が、インパルスの右手に握られたビームライフルを掴み、放り捨てる。
MAから逃れようと必死でもがくマユだが、インパルスの胴体をつかまれているため、分離も出来ない――

「離して!!」
『それは出来ん相談だ。ザフトの兵よ……』
「……貴方は!?」
『このMA、ザムザを動かしている者だよ。残念だったな、お前の母艦ももうすぐ沈むぞ』

接触回線で敵の声が聞こえることにマユは驚愕するが……
敵パイロットの隊長は、意外にも応答する。更に、マユの母艦も沈むと言う。
マユが振り返ると、インパルスの後でウィンダム隊の猛攻を受け、至る所から煙が上がっている。

「そんな……!」
『帰る場所を失ってはお前も仕方ないだろう? お前も一緒にあの世へ送ろう。仲間と一緒のところへなぁ……』
「……殺すの?」

少しずつ、マユは自分の意識が遠のいていく感覚に捉われる。だが――
逆に指先や神経は張り詰め、徐々に操縦桿を握る手にも力が込められていく。そして……

『お前達コーディネーターの生きる場所など、この世にはない。そのことを教えてやるための戦争だ』
「……また、殺すの?」
『また? どういう意味だ?』
「……前の戦争で、貴方たち連合の大西洋連邦に私の家族は殺された……
 今度は私を殺すの? 私だけじゃなく……ミネルバの皆も殺すの? まだ……殺し足りないの?」
『……そのとおり、殺し足りないのだよ。ハハハッ! お前達化け物どもは、生きていてはいかんのだよ!!』

ザムザのコクピットで中央に座る年かさの隊長格の男は、ブルーコスモスのシンパであった。
彼は、その思想の中でも過激な派の思想を指示する人物で、己の信条に従いつつ任務を全うしようとしていた。

しかし、その言葉を聴いた少女の両目は、一瞬カッと見開かれ――

「そうなんだ。なら――」

静かだが激しい怒りと共に、マユ・アスカは己の中に眠る力を呼び起こす――

「なら――死になさいッ!!」
38219/22:2006/03/11(土) 22:59:17 ID:???
インパルスは右手でフォースに備え付けのビームサーベルを引き抜き、一瞬にしてザムザのクローを切り裂く。
ザムザのパイロットたちは慌てるが、彼らが反応する間もなくマユは左手のサーベルを引き抜き、コクピットを貫く。
絶命の悲鳴をあげる間もなく――勝利を手に仕掛けたザムザのパイロット達は散っていった。

「まだよ……まだだわ。コイツを殺っただけじゃ、艦隊は止まらない。狙うのは……旗艦ッ!」
『マユッ! 大丈夫なのッ!?』

ミネルバのオペレーター、メイリン・ホークの声が響き渡る。
彼女はザムザに捕らえられたインパルスと連絡を取ろうと通信を繋いだが……マユは窮地を脱していた。
いや、脱するだけではなく――

「調度良かった。メイリン、ソードシルエットを射出して。ただし……低空で、敵の空母に向けて」
『……え?』
「――ソードを! 早くしてッ!!」
『は、はいっ!』

自分の身を案じたメイリンの声は意も介さず、マユはただ指示を出した。敵を沈めるための指示を――
メイリンはタリアの許可も得ず、勢いに押されソードシルエットをすぐさま射出する。

その間、インパルスはフォースの速力を生かし敵空母に迫る。
途中、インパルスの行く手を阻もうとウィンダム4機が迫り来るが……

「邪魔しないで……」

両手に握られたサーベルのうち、片方を放り投げ一機のコクピットを貫き、頭部バルカンの一斉射で二機を……
最後のウィンダムは、インパルスのサイドから回りこみ目の前に立ちふさがるが、横ナギにサーベルで切り裂く。
爆散するウィンダムの炎に包まれるインパルス――しかし、少女は意に介さず、ただ前へと進む。

「……掴まえた。逃がしは……しない」

声を荒げることもなく、マユは呟くようにして艦隊をその視界に捉える。
艦隊の前衛、6機の空母と護衛艦艇が目の前に展開されている。艦隊はインパルスの前身を阻もうと発砲する。
実弾のバルカン砲がいくつもインパルスを掠め、中にはインパルスを捉えるものもあったが……
フェイズシフト装甲のインパルスを駆るマユは、臆さずに空母に狙いを定める。

そして空母に取り付く直前、フォースシルエットを排出させ――後から来たソードシルエットに身を包む。
38320/22:2006/03/11(土) 23:00:14 ID:???
「何だ!? 何なんだコイツはッ!!??」

大西洋連邦の艦隊司令は、空母の艦橋の前までその勇姿を現したインパルスに瞠目し叫んだ。
あっという間にザムザ・ザーを撃破し、ウィンダム隊の護りも突破し、自らの喉元に剣を付きたてようとするMS。
先ほどとは異なる武装をしたMS――ソード・インパルスは対艦剣エクスカリバーを構え、マユは言った。

「聞こえる? 聞こえているなら、降伏しなさい」
「……降伏だと!? 馬鹿を言うな! まだこちらが数の上では圧倒的に有利なんだ!!」
「……それがどうしたの? 帰るところがなくなればMSもただの鉄屑……バッテリーが後何分持つと思う?」

冷徹な声でマユは告げる。形勢はこの時点で五分と五分か――
いや、堅牢なミネルバの守りとは異なり、すでに旗艦空母に対艦剣を突きつけられている状況では……
明らかに形勢は逆転している。マユはそのことを確認せよと言うかの如く、更に問う。

「この状況で……降伏しないのね?」
「誰がするか!? 貴様らコーディネーターなんぞにッ!」
「……貴方達は同じことを言う。まだ、殺し足りないのね。なら――」

操縦桿を握る手に力が込められる。パイロットスーツ越しに、生身なら血が出るかのような力を込め――
少女は渾身の一振りを愛機の手に伝え――

「――ならッ!!」

聖剣は残光を残し――
狂信の思想に取り付かれた大西洋連邦の指揮官もろとも、艦橋を両断した。
更に、艦隊の残りの空母と護衛艦に次々と飛び移り、艦橋や武装化された船首の主砲を潰していく。

数分で決着は付いた。
指揮官を失い、帰るべき空母を失ったウィンダム隊の残存部隊は、慌てて後方に控える艦隊に向かう。
マユたちとって幸いだったのは、この連合艦隊が大西洋連邦と東アジア共和国で編成されていたことだ。
後方に控えていた東アジア共和国の軍司令官は、直ちに全軍撤退の命令を下した。
よしんばミネルバを撃てても、艦隊6隻を失い、更なる損傷を受ければ……
本来は対カーペンタリア攻略に向け用意されたこの戦力を、完全に喪失してしまいかねない状況であった。
東アジア共和国軍司令官の英断で、この日の戦闘は終わった。

そして、ミネルバは生き残った――
38421/22:2006/03/11(土) 23:01:01 ID:???
「私は……今日人を……初めて、殺した。そして……大勢殺した」

ミネルバの医務室――
戦闘を終えミネルバに帰還したインパルス、そして愛機から降りたマユ……
歓声を上げ迎える整備班のヨウランやヴィーノたち、僚友のルナマリアやレイも小さなヒーローを笑顔で迎える。
しかし――

機体を降りてくる少女の顔は蒼白に青ざめ、ネルバの格納エリアの地に脚をつけるや、少女は嘔吐し始める。
取り巻く者達は驚き、すぐに慌てて駆けつけるルナマリアに付き添われ、マユは医務室へと運ばれた。

医師の診断では、マユは開戦後初の実戦で極度の緊張状態にあり、それ故の嘔吐であろうということだった。
だが、ただ緊張から吐いたのではない。今更ながら、人を殺した事実を思い出し、全身に悪寒が走る。

――人を殺す

連合の兵士たちを殺したことで、かつて自らが家族を失ったように……
肉親の死を嘆き、愛する者を殺した者――マユを恨み、彼らはこれから悲しみの日々を送るのだろうか――
人を殺した事実に改めて愕然とするマユ――少女は再び、己の行為を悔い呟く。

「私は、人を大勢殺したんだ……あのMAのパイロットも、ウィンダムのパイロットも、空母の艦橋の人たちも」
「仕方ないじゃない。戦争なんだから、マユがアイツらをやっつけてくれなければ、私達が死んでいたわ」
「……仕方ない?」
「そうよ、戦争なんだから。あ……ごめん。本来は正規の軍人でもないマユには……辛いね」

慰めようとするルナマリアの言った言葉――仕方ないという言葉……
その言葉に聞き覚えがあり、マユは二日前のマルキオ孤児院での出来事を思い出す。

「仕方なかった……仕方なかったから私は……連合の兵士たちを殺した。それと同じように……
 仕方なかったから、他にやりようがなかったから……ウズミ代表は大西洋連邦と戦う道を選んだの?」
「え……?」
「あ、ううん。何でもない。何でもないよ……」

小声で桃色の髪と少女と話したことを反芻するマユ――
ウズミとアスハ家に抱いていたマユの憎しみは最早薄れ、代わりに己の罪を自覚する少女がいた。

「私は……今日人を殺したんだ」
38522/22:2006/03/11(土) 23:01:56 ID:???
――そして、時は今へ戻る――

ディオキアへ向かうミネルバのMS格納庫、コアスプレンダーの操縦席でマユは愛機のチェックを続ける。
オーブとの戦闘にならないことを祈りつつ、マユはオーブでの最後の日々を思い起こしていた。
そして、それからの戦争の日々を――

やがて、少女はあることに気づく……

「人を殺したとき、鈍い鈴のような音が聞こえた。けど、インド洋での戦いではあの音は聞こえなかった……
 この間の……ガルナハンでの戦闘でも。私は……もう既に、人を殺すことに慣れてしまっているの?」

インド洋での戦いで4機のMSを撃墜した後は、最早吐き気も何も感じなかった。
ガルナハンでの戦闘でダガーLを撃墜したときも、嘗て味わった不快感が呼び起こされることはなかった。
それらの事実から、人を殺すことに対する嫌悪感が薄れているのではないかと、少女は不安になる。

「今は戦わなくちゃ、皆死んでしまう。戦争を終わらせないと、皆で明日を生きることさえ出来ない。
 私はもうテストパイロットじゃない……軍人。だから、戦わなくちゃ……でも……」

不安を振り払うかのように、決意を込め軍人としての自覚を持とうとするが……
それでも、少女の人を殺すことに対して、嫌悪感を消し去ることは出来なかった。

「でも、やっぱり……人を殺すことに、慣れたくはないな。オーブの人たちとも……戦いたくないよ」

俯き、マユはコアスプレンダーの操縦桿をギュッと握り締める。


しかし、現実は残酷にも少女の願いに背き――

「トダカ一佐、間もなくスエズ運河を抜けます。この先には敵影もありません」
「そうか……第81独立機動軍との合流ポイントは?」
「レーザー通信で先ほど。マルタ沖を指定してきました」
「よし、このままの速度を保ちつつ警戒を怠るな」

艦橋で指揮を執る男、嘗てのマユの恩人でもあるトダカは、第一機動艦隊タケミカヅチの艦長に就任していた。

――やがて、運命は過酷な巡りあいを少女に強いる。そのことを、この時のマユは知る由もなかった。
386通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 23:05:41 ID:???
後書きのようなものです。

久々にマユ。
こういう風にマユが一杯出ていたのが昔のPP戦記なんですよね。
最近は作者が存在を忘れかけているから困る。(AA省略)

……というわけで、話は進んでいません。最近私の更新が早いのと相殺ということでお許し下さいorz
いつかマユの回想という形で連合艦隊戦は入れたかったのですが、タイミングを逸しズルズルと延期……
一度はボツにしようかと思った話ですが、ボツ考を修正しつつようやく出来ました。
ルナマリアとレイも出したかったけど、尺の関係で切りました。ゴメンネ。

>>348
ありがとうございます。絵版のサーベル構えたMk-Uも凄いですね。保存させていただきましたm(__)m

>>352
アムロの駆るリックディアスのようなものをイメージしていましたが、まさにこれですね。
もっともデカい連結ライフルは要りません。拙作のキラは通常の装備だけで十分です(ぇ

>>282
石油資源が枯渇した頃がADの終わりと年表にはありましたが……
オイルショックの頃から無くなる無くなる言われて、中々無くなりませんね。
最近の試算では2100年ごろに無くなるのではないかという説がありますが、私の脳内ではコレです。
どうなんでしょうね、実際のところ。詳しい方いたら、補足お願いしますm(__)m

次回はディオキア編です。まったりとやります(ぉぃ
387通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 23:25:17 ID:???
PPさん乙!
PP版マユ久しぶりにキターー
ところで14の地震→自信てところと21のミネルバのミがぬけてましたよ
388通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 23:25:40 ID:???
PP、GJ!
マユ祭りですな! ラクスの言葉も、先の一話があるだけに重い……!
いやはや、毎度震えさせてくれます
389通常の名無しさんの3倍:2006/03/11(土) 23:30:57 ID:???
PPさん乙。
ぶっちゃけ、PP版マユのキャラを忘れかけていたw
にしてもマユくらいの年の子供に対してああいう事を言ってしまうのがラクスクォリティだなぁ。
原作通りのキャラだと思います。
つーか、ろくでもナス
390通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 01:20:06 ID:???
PP戦記作者様乙です。
久々のマユを堪能させていただきました。
ただ、2と3で誤字がありましたので挙げときます。
× ハイネ・ヴェステンフェルス→○ ハイネ・ヴェステンフルス
× ヒルベルト・フォン・ラインハルト→○ ヘルベルト・フォン・ラインハルト
× 「また、後出来ます。お騒がせして……ごめんなさい」 →○ 「また、後で来ます。お騒がせして……ごめんなさい」
構成力などは抜群なだけに損してらっしゃると思います…お気をつけください…。
391通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 01:43:21 ID:???
age
392通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 02:50:49 ID:???
単発設定小話 「ファントムペイン」ロドニアのラボ編@

〜ガーティ・ルー〜
リー「なにっ!?ロドニアのラボが敵の調査を受けているだと?」
スティング「ラボ?」
アウル「ロ、ロドニアのラボ・・・う、ううわぁぁー!」
〜突然暴れだすアウル〜
リー「!?なんなんだ!」
スティング「!?やばいぜ!くそっ!おい、アウルやめろ!落ち着けって!」
アウル「ラボが、。あぁぁああぁぁ!ママ・・・ママがぁっ!死んじゃうよっ!」
ステラ「!・・・死ぬ・・・の?死ぬの・・・やあぁっ!」
〜ステラも暴れだす〜
スティング「くそっ!ステラにまで感染にしやがった!」
リー「だから私は反対したんだよ!中途半端な生体兵器なぞっ!軍曹!なんとかしたまえ!」
スティング「なんとかしたいのはやまやまですがねぇ!おいっ!ステラが逃げたぞ!?」
〜MSデッキへ走るステラ〜
兵士「艦長!ガイアが艦外へ!」
リー「何!まったく、こんなときに大佐も少尉もいないとは!」
〜ロドニアへ一直線に向かうガイア〜
ステラ「いやぁー!はぁはぁはぁ・・・うっ。いやいや、死ぬの・・・死ぬの・・・・・・いやぁぁあー!!」

〜ミネルバでは〜
メイリン「艦長!本艦に接近する機影あり!シグナル・・・ガイアです!」
タリア「ガイアですって!?アーサー、艦に残ってるパイロットは?」
アーサー「マユとアスランです!」
タリア「よし。両名ともMSにて緊急発進!ガイアを捕縛すること!やむをえない場合は撃破も認めます!」
〜ミネルバ、艦内廊下。MSデッキに急ぐアスランとマユ〜
アスラン「マユ!出撃、大丈夫か!?」
マユ「はいっ!いけます」
アスラン「とりあえず、相手の出方をうかがうぞ」
マユ「了解!」
〜ミネルバ、ブリッジ〜
メイリン「セイバー、発進どうぞ!・・・コアスプレンダー発進どうぞ!つづけてレッグフライヤー、チェストフライヤー発進。装備はフォースシルエット、発進どうぞ!」

〜出撃するセイバーとインパルス〜
アスラン「連中の狙いはなんなんだ?まさかガイア一機ではあるまい?」
マユ「・・・なんかむちゃくちゃに動いているだけのように見えますが?」
アスラン「・・・そうだ・・・な。まあいい。マユ!なるべくダメージを与えないで捕らえるぞ!」
マユ「ええっと・・・なるべく致命傷を与えない程度にがんばります!」

〜コックピットで一瞬物思いにふけるマユ〜
マユ「(生きて捕らえる!あれには・・・絶対、絶対お兄ちゃんの手がかりがある・・・はず!)」

完   


えー、この話の前には、以前投下した「マユとシンと不可能を可能にする男」2005/10/27(木)が入ります。
393通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 04:30:32 ID:???
久々にスレがのびてると思ったら…PP作者様乙!

PP戦記マユは癖がなくてスレ初期の頃のイメージが新鮮。
暗黒面を垣間見せた今回、それとどう戦い克服していくか…
394通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 09:40:19 ID:???
PP戦記乙です。
久しぶりにマユが出てきましたねー。
すっかり忘れてました。PP戦記にもマユがいたことを。
葛藤するマユがGoodでした。



後、誤字を発見したので。
14の、
>しかし、少女の瞳は徐々に悲しい色を帯び、彼女の言う罪が今も地震を苦しめていることは見て取れた。
×地震
○自身
だと思いますので。
395通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 09:48:08 ID:???
PP戦記GJ!
PPのマユってなんか弱弱しい印象が強かったけど、今回で返上したかな?
次回以降もマユに注視してますよ

どーでもいいですが、
・・・なんかPP戦記の感想って誤字の指摘が多くね?・・・チョイウザス。
396通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 11:16:01 ID:???
単発設定小話 「ピンクの携帯電話」ロドニアのラボ編A

〜戦闘場面はとばして、地面にたたきつけられたガイア〜
マユ「!あのパイロット・・・・・・ステラ姉ちゃん?」
アスラン「・・・結局ガイア一機だけだったか。マユ、近づくのはいいがまだ油断するなよ?」
マユ「はーい。・・・あなた連合のパイロットだったの?」
〜ガイアにのりかかるように着地するインパルス〜
マユ「よしっと、これでガイアも動けない。・・・生きているよね?」
〜銃を構え、コックピット前面へ降りる〜
マユ「動かないで!やっぱりステラ姉ちゃんなのね?・・・大きな外傷はないみたいだけど」
ステラ「・・・ぅ・・・・・・」
マユ「ガイアに乗せたままでは・・・まずそうね」
〜インパルスの横に降り立つセイバー〜
アスラン「マユ。どうだ?・・・・・・この娘は!?」
マユ「ええ、ディオキアで私が助けた人です・・・」
アスラン「・・・そうだよな。なんでガイアなんかに乗っている?」
マユ「ということは向かえに来た人たちも・・・」
アスラン「連合・・・とゆうか、ボギーワンの連中だろうな」
マユ「そうですよね・・・」
アスラン「詮索は後にしよう、マユ。パイロットの怪我は?」
マユ「・・・アスランさん。目だった外傷はありません。・・・でもガイアに乗せたまま搬送するのは」
アスラン「だめそうか。・・・メディカルパックをもってこい」
マユ「メディカルパックですか?」
アスラン「搬送途中で目覚められてもこまるからな・・・鎮静剤を打っておこう」
マユ「りょーかい」
〜インパルスのコックピットへメディカルパックを取りに戻るマユ〜
マユ「持ってきました」
アスラン「うん・・・これでよし。」
マユ「アスランさん、この人の搬送をお願いします。私はガイアを持っていきます」
アスラン「ああ。じゃあ先に戻ってるぞ」
〜コックピットにステラを乗せ発進するアスラン〜

〜ガイアのコックピットに潜り込むマユ〜
マユ「・・・何か、何かないの?お兄ちゃんの手がかりは?」
〜操縦桿付近をさばくるマユ〜
マユ「・・・なんで携帯電話なんか?・・・この機種、わたしの持っていたやつと同じだわ。でも壊れてるじゃない・・・」
〜何気に携帯電話を分解しはじめるマユ〜
マユ「そういえばバッテリーの裏側にくまさんのシールを・・・・・・シール・・・貼ってあるなぁ。わたしの携帯電話!?」

397通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 21:34:00 ID:???
短編GJ!
携帯という手がかりからどのように進むのか……

>>395
良作だからな、そういうのを気にしてしまうのは仕方ない
職人も誤字があっと恥ずかしいだろうし、指摘は大切なことだろ
だが、二回も指摘するってのはいただけないな
一度言えば(書いてあれば)十分かと
398通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 22:03:51 ID:???
しかし今回はちと誤字が多かったような。流石に気になった。
良作なのに勿体無い。
399通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 22:46:41 ID:l0xFyRUD
まぁーペース早くしてくれてるから仕方ないと思おうよ。
なので職人さんも落ち着いて自分のペースで大丈夫ですよ。
400通常の名無しさんの3倍:2006/03/12(日) 22:50:23 ID:???
>>399
すみません
sage忘れました・・・
401通常の名無しさんの3倍:2006/03/13(月) 08:39:52 ID:???
誰かが急かしたからだと思うよ〜w
402通常の名無しさんの3倍:2006/03/13(月) 20:11:00 ID:???
PP書いてる者です。
急かされたわけではありませんが、時間が空いたので遅筆を取戻そうとしたのは確かです。
dでもない誤字脱字の嵐で申し訳ありません。(虎状態で推敲したせいでもありますがorz)

ハイネについては、以前から彼の名前を完全に間違えて覚えておりました。
ご指摘がなければずっと気づかなかったことでしょう。ありがとうございます。
他は……素面なら気づいたかもしれないミスです。申し訳ありませんm(__)m


管理人様、私からお願いするよりも早く修正いただきありがとうございます。
以後気をつけます。
403通常の名無しさんの3倍:2006/03/13(月) 22:47:48 ID:???
>>402
そんなに何度も謝らなくても良いと思うよ・・・

404通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 00:37:37 ID:???
稀にいるが開き直ったり、今後の展開のための伏線ですとか見苦しいこという奴より
卑屈なほど低姿勢のほうが百倍マシ。
なんだけども
>>402
度が過ぎると鼻につきますよ。そうでなくても実力あるんですから。
次回は読者にリベンジしてやる、くらいポジティブでも問題ないと思います。
405通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 02:09:49 ID:???
先生、このスレのマユに陰毛ははえていますか?
……いや、ガンダム世界なんでお守りは重要アイテムなんだが、無いものはどうしようもないからなあ

ハウメアの守り石はハゲそうで嫌だし、恋愛成就にも使えないし……
つか、むしろ不幸になってるだろアスラン……
406通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 02:18:36 ID:???
お守りといえば遺作がオーブで買ってたってエピソードがあったな
渡された相手は当時のザラ隊かジュール隊の面子らしいが
ザラ隊だとしたら効能はニコル死亡痔MIA凸自爆

ハウメア含めてオーブのお守りは呪いのアイテムな予感
407通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 08:10:10 ID:???
そもそもハウメア自体、実は邪神ですから
あんな神を信仰してるオーブっていったい・・・
408通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 08:33:23 ID:???
>>405
そんなこと気にするのは禿(凸でなく監督の方)だけです

そういやこのスレのマユってエロスなシーン少ないな。ガンダムのお約束なのに
409通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 14:17:47 ID:???
>>408
マユ種ではマユとステラの海ダイブはあったけど傷跡が痛々しいからなぁ
隻腕のとこだったら、シャワーとかスクール水着があったけど、もっとエロい
オトナのカガリ(やすっぽっぽんのおじ様たち)が側にいたからマユのエロスなシーンとはいいにくいかもw
410通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 14:22:06 ID:???
ほのぼのにも水着シーンならあったよね。
ルナマリアのインパクトが強すぎたけどw
411通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 14:50:40 ID:???
凸スネークとミーアが(ry
412通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 15:08:14 ID:???
>>408
心の目で見れ
ちゃんとOPで裸ダイブしてる
413通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 15:49:28 ID:???
>>412
見えた!見えたぞ!!水の一滴!!!
414通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 18:10:10 ID:???
>>407
桑敷く
415通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 18:58:24 ID:???
>>405
アニメキャラなんだからツルツルに決まっている。
年齢的にも。
416通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 20:10:08 ID:???
>>414
ハウメアってのはハワイの神話に伝わる、豊穣と多産の女神で息子や孫とも交わり多くの土着の神々を産んだ
だが一方で、こいつは人間の子供を何百という単位で攫っては喰い殺してしまうという鬼子母神のような一面がある
417通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 20:50:25 ID:???
>>416
ハウメアにちょっとだけ萌えた(*'∀`)
418通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 21:44:17 ID:???
ハウメアってほんとにいた神だったんだ。
いや当てっきりオーブは南太平洋にあるから
海底神殿にいるたこの頭にこうもりの羽がついた神
を崇めているかと思ってたよ。
419通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 22:35:36 ID:???
のわりにオーブって言語感覚的にも服装的にも南太平洋上らしさが無いよな
種死はどこの国でもあんま代わり映えしないけど
420ほのぼのマユデス。ようやくお姉さん。:2006/03/14(火) 22:36:07 ID:???
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるー るるいえ うがふなぐる ふだぐん。いあ。」
『ルルイエの館にて、死せるクトゥルー夢見ながら待ちもうけたり、かくあるべし。』
「む、じゃあこれはどうだ。ああい いがとぅ りる ろかなー しゅぶ=にぐらす。」
『才長けた種族に汝の契約を果たしたまえ、シュブ=ニグラス』
「あんた達さっきからなんて何やってんのよ。」
二人の話していた内容を聞いて思わずルナマリアは突っ込む。
『「旧支配者の言語訳ゲーム。」』
「・・あんたらアニメ化するからってはしゃぎ過ぎじゃない?」
ルナマリアが額に手を当ててため息をつく。ここはオーブの電気街、そこにあるゲームショップのひとつである。
「だってBLコーナーに付き合うのつまないんだよ、なぁシンハロ。」
『てけ・りり。』
「さっきから人外の言葉ではなすなぁ!いや、シンハロは人外だけど。」
ルナマリアはそう叫ぶといくつかのソフトとドラマCDを持ってカウンターに持って行った。
「人外つったら小説読んだ?俺マジ続き気になるんだけど・・・。」
『それよりザスニだろ、ただ竜・・・・。』
「ほらっ!さっさと持って!行くわよ!」
あきらかにさっきより量の多い袋を渡される二人。
「・・・・・はぁ、なんでホワイトデーに買い物に付き合うなんて言ったんだろ。」
『素直にお返しわたせばよかった・・・・。』
先ほどから女性向けショップを巡ってうんざりする二人。
地下の店からでて人通りの多い通りにでる。すると、ふと向こうに見覚えのある影。
「・・・あれ?スティングじゃない。」
ルナマリアがたっっと駆け出し、それを両手に大量の紙袋を持って追いかけるシンハロ、アキラは息が切れかけている。

「スティング、何パソコン見てるの?」
「うわっ!」
突然ルナマリアに話しかけられびっくりするスティング、どうやらパソコンを見ているらしい。
「何だ・・、お前かよ。」
はぁ、とスティングは息をつく。ルナマリアはスティングが見ていたパソコンを見る。
「別にスティング、パソコン壊れたわけじゃないわよね?何で見てたの?」
「いや・・・、ホワイトデーにメイリンに贈ろうと思って・・・。」
「はぁ?!正気?!」
スティングに目を見開いて驚くルナマリア。そして少し頭を抱えて話し出す。
「あのねぇ・・、スティング。いくらなんでもこれはやりすぎ。あんまり高いもの貰うと反対に困るわよ?」
「そうなのか?」
「そ・う・な・の!」
まるで子供を叱るようにルナマリアはスティングに説教をする。
「仕方がないわね・・・、こうなったら私がお返しを一緒に見てあげる。確かデパートがあったはずだから。」
そう言ってルナマリアはスティングを引っ張る。
「お・・おい!」
「ほら!じゃあ行くわよ!付いてきなさい下僕一号二号!」
『「俺達そんなあつかい!?」』
その後その光景をステラとネオ(荷物もち)と買い物に来ていたメイリンに見られ、昼メロも真っ青の状態になるのであった。



421ほのぼのマユデス。ようやくお姉さん。:2006/03/14(火) 22:43:43 ID:???
PPさんとはまったく違う方向に薀蓄話、それがほのぼのクオリティ。ほのぼのです。

いやね、しばらく書いてなかったからMADでも作ろうかなと思ってムービーメイカーつけたんですよ。
そしたらね、あんまり思いつかない。うん、ゲンのMADは曲はあるけど素材がない。隻腕シンも微妙。
かといってほのぼのだとマユとシンハロの素材がない。ハイネ隊はザクだけで。
だから発作的に書いたのがこれ、やまなしおちなしいみなし。

だからもしこんなマユのMADが見たいってのがあったら避難所で叫んでください。
素材もあったらうれしいなぁー、とか思ったり。
それでは。
422通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 22:54:56 ID:???
>>421
発作的でしたか、1行目でいきなり吹きましたよw
423通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 23:01:01 ID:???
で、ほのぼのマユに陰毛は生えてるんですか?
メル欄でもいいのでコソーリ教えて
424通常の名無しさんの3倍:2006/03/14(火) 23:02:39 ID:???
>昼メロも真っ青の状態になるのであった。
メイリンがルナマリアに腐ったバナナを差し出して「生ゴミ女には生ゴミがお似合い」と言い放つ、
「新・風のロンド」的展開を期待。。。
425通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 01:45:54 ID:???
単発設定小話 「エクステンデット」ロドニアのラボ編B

〜ガイアを抱え帰還するインパルス〜
ヨウラン「よーし。ガイアはここでいいぞぉ、マユー」
ヴィーノ「やっと一体強奪されたMSが戻ってきたってわけか・・・」
ヨウラン「だな。やられてんのコックピットぐらいだし、直せばすぐに使えるぜ」
ヴィーノ「パイロットがいないけどな・・・」

〜艦長室にて〜
タリア「報告ご苦労様。あのパイロットの容態は?」
アスラン「今は落ち着いているようですよ。もちろん拘束ベルトはつけさせてもらってますがね」
タリア「・・・それは仕方ないわね。どういう経緯でここに向かったのかはわからないし」
〜艦長室の扉が開く〜
マユ「マユ・アスカ、ただいま戻りました」
タリア「マユ、お疲れ様。今アスランから聞いていたけど、あなたがディオキアで助けた女性ですって?」
マユ「えぇ、はい。それは間違いないと思います」
タリア「そう。やはり、あの研究所となにか関係があるのかしらね?」
アスラン「あのパイロットはいわゆるエクステンデットじゃないでしょうか・・・」
マユ「エクステンデット?」
タリア「連合が狂気の沙汰で生み出した、身体能力などを人工的に強化した人間のことよ」
アスラン「前の戦争で連合がすでに実用化して投入していたんだ」
マユ「それって後付のコーディネイターってことですか?」
アスラン「ああ。遺伝子操作ではないがな」
タリア「その研究をあそこで行っていたわけね。で、何か問題が発生し連合はあそこを破棄せざるをえなくなったわけね」
アスラン「・・・おそらくは。まぁそれはハイネたちの報告を待って話し合いましょう」
タリア「そうしましょう。マユ、通常シフトにもどってちょうだい」
マユ「了解しました。通常シフトに戻ります」
〜艦長室をあとにするマユ〜
マユ「エクステンデット・・・まさか・・・ね。・・・・・・それよりもこの携帯直んないかなぁ?ヴィーノ兄ちゃんに相談してこよ・・・」
〜MSデッキに戻るマユ〜

〜再び艦長室〜
タリア「あなたは私に用があるんでしょ?」
アスラン「ええ。・・・艦長はどこまでご存知なのでしょうか?」
タリア「・・・どこまでってどういうこと?」
〜顔を曇らすタリア〜
アスラン「・・・議長のこと、ラクス・クラインのこと。そしてマユ・アスカのこと」
タリア「待って待って。前の二つはまだわかるんだけど、三つ目のマユのことってなによ?」
アスラン「ご存じないのであれば、それはそれでかまいません・・・ディステニープランという考えをご存知ですか?」
タリア「・・・知らないわよ。そんなプランなんて」
アスラン「そうですか・・・」
タリア「二つ目の質問には答えてあげれるわよ。あなたはもう知っているようだから隠しても無駄でしょう。あのラクス・クラインは本物ではないわ」
アスラン「いつそれを知りましたか?」
タリア「そこまで答えなきゃいけないの?・・・そんなの・・・・・・秘密よ。さる情報筋からってことにしておいてほしいわね」
アスラン「そうですか」

426付き人 0/16:2006/03/15(水) 20:16:11 ID:???
付き人第四話、出来たので投下します。
427付き人 1/16:2006/03/15(水) 20:17:40 ID:???
『……の責任は、すべて自分にあります。
 我々は彼の犠牲を無駄にすることなく、その意志をついでこれからも……』

書きかけの手紙をくしゃくしゃに丸め、ゴミ箱に投げ入れる。これで、五枚目だ。
一体何を書いたらいいのか、さっぱり分からない。自分のしている偽善が、いやでいやでたまらなくなる。
タリアが今書いているのは死亡報告書。戦死したクルーの死亡時の状況、艦での生活の様子などを書いて遺族に送るもの。
これの作成も、艦長として果たすべき、重要な義務の一つである……一つでは、あるのだが、

「私に……この人の何が分かるって言うの?」

嘲るように、呟く。一人きりの艦長室に、その言葉はむなしく響く。
進宙式も終えずに出撃してきた新造艦、艦長もクルーも皆配属されたばかり。訓辞を行ったことはおろか、顔を合わせたことさえない。
分かることなど、何一つないのだ。
そしてそれなのにも関わらず、彼を殺したのは間違いなくタリア自身。
彼の死因は居住区画の空気漏れによる窒息死、コンディションをブルーに下げなければ間違いなく防げていたはずのもの。

あの時ミネルバはボギーワンを捉えていたのだ、普段の彼女なら、決してイエローより下げるはずはない。
それを下げたのは、新型艦を任された自分への慢心。そして久しぶりにギルバートに会ったことによる気持ちの浮かれ。
そんなもので、一人の人間を、部下になるはずだった男を死なせてしまったのだ。悔やんでも悔やみきれるものではない。
その後悔を内に押し込め、半ば強引に元凶となった存在へと思考を移す。恥辱で唇をきつくかみ締め、呪詛を吐くような低い声で言う。

「ボギーワン、この借りは返させてもらうわよ」

ミネルバがボギーワンを有効射程圏内に捉えるまで、あと十五時間ほどの予定だった。

428付き人 2/16:2006/03/15(水) 20:19:08 ID:???

        歌姫の付き人

       第四話 宙塵戦域


「どういうことだ、これは!?」
カガリが、デュランダルに聞く。非難と困惑が一対一の割合で混ざり合った口調だ。
「どういうこと、とはどういうことでしょう?」
「説明するつもりなどないということか!」
「いえ、そうではなくて……私としても戸惑っているのですよ。どうも相当な混乱があるようで。
 それに、私としても説明してもらいたいことはありますし」
落ち着いた口調で、デュランダルは言う。その視線が一瞬カガリから自分のほうへと向けられたのを、アスランは感じた。

ここはミネルバの士官用個室。ただし入室する予定だった人間は急な出港でアーモリーワンに取り残されており、
今は成り行きで同行することになったデュランダル用の個室として使われている。
同様に主となるはずのものが乗り遅れて空き部屋となっている部屋は多数あり、
カガリとアスラン、マユとミーアにもそれぞれ一室ずつが供されることになっている。

「お二人はあのザクに乗られていたわけですか?」
「ああ、騒ぎに巻き込まれたときにたまたま近くにあったのでな。勝手に乗ったことに関しては謝ろう」
「いえ、お2人を騒ぎに巻き込んでしまったのはこちらの責任ですので。とにかくご無事で何よりです」
「無事、か。確かにあの状況からたんこぶ一つで抜け出せたのなら安いものなのだろうな。
 とはいえ、ザフト軍にはなかなか鮮烈な歓迎をしてもらったが……ああ、もちろん冗談だ。
あれがこちらを敵機と誤認した結果だということは理解している」
「ありがとうございます」

と、まずここまでは小手調べ。既に分かっている話題での様子見。互いに、相手の出方を窺っている。
もっともそんな我慢比べ、カガリにしてみれば一番苦手とするところ。
ちまちまするのは性に合わないと、一つ小さく深呼吸してすぐに本題へと踏み出す。

「聞きたいのはあのもう一つの機体、そしてそれに乗っていたラクス・クライン……いや、あれがラクスであるはずはない――」
――なぜならラクスは、キラと一緒にオーブにいるはずなのだから――
うっかり口から出かけた秘密を、慌てて止める。その事実は、プラント議長のデュランダルには決して知られてはならないもの。
一方のデュランダルは、カガリの狼狽に気付く素振りも見せずあっさりと頷く。
「やはり、分かりますか?」
「なに?」

あまりにもストレートな返答に、カガリは思わず聞き返す。彼女が驚きから抜けきれない間に、デュランダルはミーアについて説明する。
自分が立てた、偽者であることも。プラントのため、働いてもらっていることも。
「先の大戦で彼女と共に戦われた代表ならご理解いただけるはずです、戦後のプラントにおいて彼女の力がどれだけ大きなものとなったか。
 お恥ずかしい話ですが、今のプラントには彼女の存在が必要なのです。私などよりも遥かに」
429付き人 3/15:2006/03/15(水) 20:23:36 ID:???
その言葉に、カガリは黙り込む。
偽者という驚きから抜け切れないうちの、今の話。しかもプラントからラクスを奪いオーブにかくまったのはほかならぬ自分。
ある意味デュランダルに偽ラクスを用意させたのは、カガリ自身なのだ。
それに代表という地位にありながら国を一つにまとめられずにいるのは自分も同じ、とても、彼を責める気には……

「そういうことなら……」

仕方が無い、そう言おうとしたところで気付く。その事実は確かに仕方が無い、だが……
――何故、それを自分に話すのだ?
議長はラクスがオーブにいることは知らないはず、ならそのミーアという少女をラクスと偽り通すことも不可能ではないはず。
なのにこうもあっさりと、真相を話す。その意図は、議長の本音とは一体なんだ?

「事情は分かった、だがそれを明かした上で、議長は私に何を要求したいのだ?」
「要求したいなどとは……いわばこちらは秘密がばれて弱みを握られた側ですからね、そのように強くは出られませんよ。
 ただ、お願いしたいだけです、このことはどうかご内密にしていただきたいと……同じ平和を愛するものとして」
「平和を、か。だがラクス・クラインの存在に頼らねばならないほどプラントの平和とは危ういものなのか?」
「……残念ながら。今は何とか抑えてはいるものの、ナチュラルに対してもっと強硬な姿勢で当たるよう主張するものも多いのです」
「そうか」

うなずいて、その内容に動揺して、
そして怪訝に思う、『ナチュラルに対してもっと強硬な姿勢で当たるよう主張するもの』などという彼の回りくどい言い方に。
そして気付く、彼の視線が自分の後ろのアスラン・ザラに向けられていることに。
そして分かる、今この場でジョーカーのカードを握っているのは、彼のほうだということに。
気付かれているのだ、アスランのことを。脱走の容疑がかかった彼をオーブが匿い、それどころか自分の護衛役として用いていることに。
だから『ナチュラルに対してもっと強硬な姿勢で当たるよう主張するもの』という、長ったらしい言い方をする。
その通称、アスランと同じ姓が付けられた『ザラ派』という言葉を使わずに。

「分かった、そのことは内密にしておこう。だが代わりといってはなんだがどうか彼のことも」
「分かっています、ここに何故彼がいるのかということは不問に伏せましょう。
また、今後アスラン・ザラに関しての一切の追求をしないことを、プラント議長として約束いたします」
「かたじけない」

ジョーカーとはいつ出されるか分からないから怖いもの。
なら逆にこちらから出すように促してやれば、出されることによる被害を覚悟すれば、そこまで怖いものでもない。
とりあえず、懸念事案を二つ相殺し、そしてふと、気になったことを聞いてみる。
430付き人 4/15:2006/03/15(水) 20:24:33 ID:???
「そういえば、あの二人が乗っていたMSは? 紹介してもらった新型とはまったくの別物だったが」
「ああ、あれですか。あれも新型といえば新型ですが、今のところは軍用機ではないのです」
「軍用機では、ない?」
「はい。ラクス・クラインによる催し物にMSを使ったら面白いのではないか、という話から始まったものなのですが、
 そのうちにせっかくだから専用の機体を設計しようだとか、分解、合体が出来るようにしようだとか勝手に話が大きくなりまして……」
「なるほど、だがPS装甲までついているとなるとかなり高価な機体のようだが、よく予算が下りたものだな」
「それは……」

カガリの言葉に、それまでポーカーフェイスを保っていたデュランダルが極めて嫌そうな顔を見せる。
カガリはそれを意外そうに見つめ、そしてやがて何かに納得したかのようにうなずく。

「ああ、なんとなく事情は分かった。わが国でもよくあることだからな」
「……お分かりいただけると、幸いです」
「うん、幸いだな。わが国としても今プラントが荒れるのは好ましくない、このことは内密にしておこう」
「ありがとうございます」

では、と、席を立ち、カガリとアスランは部屋を後にする。
彼等が立ち去ったのを確認して、デュランダルはほっと一息……入れるまもなく、部屋の扉は再び叩かれる。

「どうぞ」
「失礼しまーす」

扉の外で待っていたマユが、ちょこんとお辞儀をして部屋に入ってくる。四人目の、そして最後のお客さんだ。
赤いザクのパイロットには既に事情説明は済ませてある(ミーア関連は伏せているが、レイが適当にごまかしてくれるだろう)。
カガリ代表とアスラン・ザラも、一応あれで納得してくれたはずだ。
あとはマユに事情を話し、彼女からミーアに伝えてもらえれば、格納庫での混乱は全ておさまりがつく。
それで万事解決、では確かにあるのだが、一つだけ疑問が残らずに入られない。
――新造宇宙戦艦の格納庫で起きた口喧嘩を仲裁することは、いつからプラント評議会議長の仕事になったのだろう?


431付き人 5/15:2006/03/15(水) 20:25:36 ID:???

「すまなかったな」
与えられた部屋に戻る途中、アスランはカガリに声をかける。
「何がだ?」
「いや、交渉に不利になる道具になってしまって。俺がいなければラクスの件の秘匿と引き換えに、
案件交渉を進められたかもしれなかったのに」
「案件……オーブ戦の折流出した人的資源の本国への帰還問題か。
 だが仕方があるまい、お前がいなければ私はアーモリーワンで死んでいたのかもしれないのだから。
 お前は、十分よくやってくれている」
「だといいんだがな」
自虐気味に笑ってカガリを見て、そして頭にあてられた彼女の右手に気付く。

ちょうど、前からやって来た赤服の女性とすれ違う。先ほど赤いザクを操縦していたものだ。
おざなりな敬礼をしてすれ違おうとする彼女を、アスランが呼び止める。
「君」
「はい、なんでしょうか」
「すまないが、医務室の場所は分からないか?」
「この通りをまっすぐ行って三つ目の角を右、それから二つ目の角を左に行くと左側にあります」
彼女は義務的に説明すると、彼等を避けるようにして足早に立ち去った。

「……嫌われたかな?」
それも当然かと思う。誤解とはいえつい先ほど、銃を突きつけられて罵りあっていたのだから。
「医務室? どこかぶつけたのか?」
「俺じゃなくてお前だ。MS内でぶつけたところ、こぶになっていたんだろう」
「ああ、忘れていた」
「お前の頭がこれ以上悪くなったら大変だ」
「おい、これ以上とはどういう意味だ?」

話しながら医務室へと向かう。

「そういえば、さっき議長と最後に話してたあれは、一体なんだ?」
「最後に話していた……ああ、あのMSの開発予算のことか。多分あれ、議会は通っていない」
「何?」
「おおかた趣味に走った開発者が、出所の怪しい金を勝手に流用して開発資金の足しにしたんだろう。
 もともと後ろ暗いところのある金だから、議長としても開発者に強く出れなかった……」
「それって、やばくないのか?」
「ああ、やばい。公になれば評議員クラスの首が飛ぶスキャンダルだ」

このカガリの推測は、実は正しい。ちなみにインパルス開発長イレムテが流用したのは外交機密費、
その使用実態を考えると、使い方としてどちらが有益だったのかは判断が難しかったりする。
432付き人 6/15:2006/03/15(水) 20:26:28 ID:???
「だが、そんなことよく分かったな」
「ああ、わが国ではわりと自然にやってることだからな。
小さいころはお父様が国防予算で買った自家用ジェットでよく家族旅行に行ったもんだ」
「おい!」
「な、なんだよ、うちだけじゃなくてセイラン家やサハク家だってやってることだぞ。
 それにマルキオ導師の孤児院の運営費やラクスに頼まれて保管しているフリーダムの維持費だって
 オノゴロ島再開発のための公共事業予算から出てるんだし」
「……さすが、国費流用は五大氏族のお家芸だな」
「国費流用だなんて人聞きの悪いことをいうな。
 ただ税金の使い方が一任されていて、国民への情報公開義務が無いだけだ」

その答えに、アスランは頭を抑える。彼の頭痛に気付くことなく、カガリは言葉を続ける。

「それに、うちだってそこまでむちゃくちゃやってるわけじゃないぞ。
 やるのは基本的に国の役に立つと思ったことだけだし、金額は総予算の10パ−セント以内に収めるし。
 少なくとも今のアスハ家では、まったく新しい専用MSを極秘裏に開発することなんてない」

……果たして、本当にそうなのだろうか?


433付き人 7/15:2006/03/15(水) 20:27:27 ID:???

「じゃあミーアのコンサート急に中止になったのも、あの人たちが来たからなんですか」
デュランダルの説明を聞いて、マユが納得したようにうなずく。
「彼等はラクス嬢に特に近いものたちだ。そのものたちを前にしてのコンサートは危険が高すぎたからね。
 まあ、結局あんなことになってばれてしまったわけだが」
「ごめんなさい、私がインパルスで出たばっかりに」
「いや、今回のことは不可抗力だよ。それより、よくミーアを守ってくれた」
うなだれるマユを議長は慰める。とはいえその言葉は本心からのもの。
実際に今回のマユの行動には、たいしたものだったと感心している。

「でも、ひどいんですよ、あのザフトの女軍人。インパルスから降りたら話も聞かないで、いきなり銃を突きつけるし」
「ハハ、それは災難だったね」
「あー、笑い事じゃないんですよ。機体に乗ってた時だって、コロニーの中なのにいきなりミサイル撃ってくるし!」
「まあ、彼女のほうにも事情があったのだ、堪忍してやりたまえ」
「そんなこといったって、外れた弾が他の人に当たったらどうするつもりなんですか!」

両の頬を膨らませて、怒る。そのわけは、ミサイルを自分に撃ったことよりも周りの被害に構わず撃った所にあるようで、
そのことはやはり彼女がオーブで失った肉親と関係があるのだが、
しかしそれを知らないデュランダルは、彼女の反応に若干の違和感を覚える。
それでもそれを胸にしまい、机の書類をパラパラとめくり、少し考えてからマユに聞く。

「今、ミーアはどうしているかね」
「使わせてもらうことになった部屋に。防音じゃないから発声練習は出来ないんで、基礎体力作りの腹筋二百回をやらせてます」
「そうか」

うなずいて、顔を上げる。まっすぐにマユの顔を見つめる。その視線を正面から受けて、しかし彼女はたじろごうともしない。

「前に君にした話は覚えているかね?」
「インパルス軍用化計画、ですか?」
「ああ。単なるコンサート用で終わらせるには惜しいという声が技術班からやはり強くてね。
 そこに、今度の新型機の強奪だ。今回の事件による技術流出を考えると、更なる新型の早急な開発、戦力化が必要となる。
 まだ正式な話ではないが、おそらくは本決まりになると思う。その場合一番インパルスの動かし方を知っているのは君だ。そこで……」
「はい、テストパイロットの話、受けさせてもらいます」

デュランダルの言葉を最後まで待たず、マユははっきりした声で言う。
それには、逆にデュランダルが驚いた。
434付き人 8/15:2006/03/15(水) 20:28:14 ID:???
「本当に、いいのかね?」
「はい。軍用化計画があると知らされたときから、実現したならテストパイロットをやらせてもらいたいと思ってました。
 ラクスとして頑張ってるミーアを見ると思うんです、やれることがあるなら、自分も頑張らなきゃって」
「そうか……分かった。いずれ本決まりになりしだい、改めて連絡をする。そのときは、よろしく頼む」
「はい!」

マユは元気よくうなずくと、一礼して扉のほうへ向かう。
「一つ、聞いていいかい?」
扉を開けようとする彼女を、デュランダルが引き止める。

「先ほど格納庫でカガリ代表に向かって怒鳴ったそうだが……」
「あ……もしかして、まずかったですか?」
「いや、ただ少し気になっただけだよ。やはりまだ、オーブやその指導者だったアスハのものを怨む気持ちというのはあるのかね?」
「あ、いやー、あの時は何とかその場をごまかそうって気持ちで一杯で、半分くらいは適当なこと言ってたから
 ……でも確かに、半分くらいは本音だったかもしれませんね」

そう言って、少し笑う。一礼して、そのまま退室する。部屋に一人残されたデュランダルは、溜息と共に椅子に腰を下ろす。
『半分くらいは本気だったかもしれません』、そう言った時のマユの顔はあまりに大人びていて、
あまりにも大人びすぎていて、そのことにデュランダルはショックを受ける。
あの子は、まだ十三だ。十三のとき自分は何をしていただろう? 十三のときレイはどんなだっただろう?
それに比べて、あの子は違いすぎる。そうなった理由は一体何か? 考えるまでも無い、戦争だ。
戦争で両親を失って、自分の力で生きていくほかなくなって、だから大人になったのだ。ならざるを得なかったのだ。
彼女のような人間は、おそらく他にもいるだろう。彼女のようになれなくて、そのため死んだ人間はきっともっと多いだろう。
だがそれなのに、そのことから人は学べない。こうしている今もザフトの機体は奪われて、新たな争いの火種はまかれる。
だから、思わずにはいられない。このままこの世にあり続けるには、人はあまりにおろか過ぎると。
だから、考えずにはいられない。そのおろかさをなくすにはどうすればいいのかと。
考えて考えて、そしてたどり着いた彼なりの結論。先の対戦中は当時の議長に提案したが、戦争のドサクサで忘れられた計画。

『思うんです、やれることがあるなら、自分も頑張らなきゃって』

「そうだ、な」
先ほどマユが言った言葉を思い出し、自らの意思を確認するようにうなずく。
私も頑張ってみよう、自分に出来る限り……このデスティニープランの実現のため。


435付き人 9/15:2006/03/15(水) 20:29:12 ID:???
「あ、さっきは……」
廊下を歩いていたルナマリアは、向かいから来たマユに声をかけた。
格納庫では険悪なムードで怒鳴りあったりもしたものの、その事情が誤解ということは既に議長から聞いていた。
すまないことをしたと素直に謝ろうと思ったのだが……。
「あー! さっきの赤いザクのパイロット!」
と、こうまで警戒されては謝るにも誤れない。

「ちょ、ちょっとー、なんでそんなあからさまに避けるのよ!?」
「いきなり人に銃を突きつけるような人、普通は避けます!」
「え、いや、だって……」
「それにアーモリーワンじゃあコロニーの中なのにミサイル撃つし!」
「それは……仕方ないじゃないの、あの状況じゃあ」
「仕方ない? 仕方ないなんて言葉で済ませるんですか、それた弾に当たって死んだ人だっているかもしれないのに!」

マユの姿勢はルナマリアが思っていた以上に強硬で、言うだけ言うと目をあわせようともせずにそのまま廊下を駆けてゆく。
ルナマリアも、仕方がなしにパイロット控え室へと向かう。くしゃくしゃと自分の髪をかき回しながら。

控え室には誰もいない……誰も、といったって自分のほかにはレイしかいないのだが。
予定では後三人配属されるはずだったが、その三人が乗るはずだった新型機は奪われてこの有様だ。
今ミネルバが乗せているのは二機のザクだけ、パイロットは両方とも新人だ。果たして、これで大丈夫なのだろうか?
湧き上がった不安が、先ほどのマユの言葉を思い出させる。
『それた弾に当たって死んだ人だっているかもしれないのに!』

『六番ハンガー周辺の避難、おおむね完了』
ミサイルを撃つと決めたとき、艦長が彼女に言った言葉。『完了』に『おおむね』が付いていたことを、彼女は確かに聞いていた。
それでも、ためらわずに撃った。『おおむね』でない人々を無視して。彼等が死んでも構わないと思って。
そしてその事実にすら、あのマユという子に言われるまでは気付かなかった。
そんな自分に、ミネルバが守れるのか? 守る資格が本当にあるのか?
436付き人 10/15:2006/03/15(水) 20:30:12 ID:???
「どうした、ルナ?」
いきなり、後ろから声をかけられる。レイだ。いつの間に来ていたのだろう。
「うん、ちょっと自己嫌悪中」
「アーモリーワンでのことか?」
「……なんで分かったの?」
「なんとなくだ」

部屋のすみの自販機でコーヒーを買って、それに口をつけながらレイは言う。
「ルナ、お前は正しい。あの時は、打たなければさらに被害が広がっていた可能性が高かった」
「ホントにそう思うの?」
「ああ。そうでなければあの時点で俺が止めている」
「なによそれ、まるでレイの判断のほうが私より絶対に正しいみたいじゃない」
「そう思ってもらって構わない。状況判断と戦術構築のアカデミーでの成績は、俺のほうが上だったからな」
「言ったわね、男の癖に私より白兵戦の成績低かったくせに」
「男女差別的発言だな。それにそういうことは調理演習で一度でも俺よりいい点を取ってから言ってくれ」
「あ、人が気にしてることを!」

冗談めかして怒って見せて、そしてそのまま少し笑う。
「ま、あんま終わったことくよくよ考えててもしょうがないか。それで過去が変わるわけじゃないんだし。
 そんな暇あったら、これからのこと頑張んないとね」
「その意気だな……なんだ?」
レイの言葉の後半は、ルナマリアではなく部屋のスピーカーに向けられたもの。
やはり新造艦らしく、艦内放送一つとってもまだまだなれていないらしい。
手間取りながらそれでも何とか、流れてきた声は副長のもの。
『ボコ、ボコ、ボン!(何かを叩く音)
おい、変だぞこのマイク……え、うそ! もうこれ流れてるの? ……失礼しました!
コホン! ボギーワンの動きに変化発生、減速しながら前方のデブリ帯に向かっている。
予想到達時間は五時間後。状況確認とそれに伴う作戦立案を行うので関係するものは第一会議室に集まってくれ』
 

437付き人 11/15:2006/03/15(水) 20:31:02 ID:???
デブリ帯に向かうガーティー・ルーの艦橋では、作戦の最終確認が行われていた。
既にエグザスの修理も三人組の調整も終了し、戦闘準備は万全である。ならばもう逃げ回る必要は無い。
むしろこちらから戦闘を仕掛け、戦いにおける主導権を握ったほうがいい。
追撃してくるミネルバは、新造艦のため練度は低い。操舵の難しいデブリ帯に誘い込めば、ミスを犯す可能性は十分ある。
しかもこちらはミラージュコロイド搭載艦、姿を隠した不意打ちにも、障害物の多いデブリ帯は向いている。

「いいか、ミネルバがデブリ帯に入ってくるまでは手を出さずにじっとしてデブリにまぎれてろ。
 入ってきた段階で展開しておいたMS、MA、ガーディー・ルーで包囲して沈めるぞ」

ネオの命令に従って、デブリ地帯に侵入したガーディー・ルーはMS、MAを発進させる。
さらに自身もミラージュコロイドを展開し、姿を隠してミネルバが入ってくるのを待つ。
だが、彼等がやっているのは戦争である。敵がいつも、自分たちの都合よく動いてくれるとは限らないのだ。



『レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!』
発進していく僚機を見ながら、ルナマリアは溜息をついた。
『何やってんの、お姉ちゃん。さっさと出て出て』
管制官にして妹のメイリンが、彼女の発進を促す。
「ガナーがよかったのに……あー、もー、分かったわよ、しょうがないわね!」
ぶつくさ不満を言いながら、ルナマリアも自分のザクを出す。ボギーワンの潜むデブリ帯までは、まだだいぶ距離がある。
「まったく、それにしてもなんでまたブレイズなのよ!」
『オルトロスを持ったままじゃ作業が出来ないからだ』
ルナマリアのぼやきに、レイが律儀に答える。今回のザクのウィザードは二機ともブレイズ、その手に複数の円柱状の物質を抱えている。
彼等が手にしているのはスターシューター、メテオブレーカーと並んでザフトが開発した、対隕石用機具である。
破砕を目的としたメテオブレーカに対し、小型推進器であるスターシューターの目的は軌道をずらすこと。
取り付ける相手は隕石だけでなく、大破漂流している艦のサルベージ作業にも使用されている。
そのスターシューターを、レイとルナマリアは手近なデブリに取り付ける。ザクの指で入れられるスイッチ、
スターシューターは赤い炎を上げて始動、デブリをボギーワンの潜むデブリ帯へと進ませる。
「さー、どんどんいくわよ!」
ルナマリアが二個めのデブリに取り掛かる。そのスイッチを入れるのとほぼ同時に、後方のミネルバが主砲を発射、
デブリ帯へと進んでいたスターシューターつきのデブリを打ち砕いた。

438付き人 12/15:2006/03/15(水) 20:31:53 ID:???
打ち砕かれ四散したデブリは、そのままデブリ帯へと進んでいく。そこでデブリはデブリに当たり、運動エネルギーを伝達する。
動き出したデブリが他のデブリにぶつかって、結果そのデブリもまた動き出す。
安定状態にあったデブリ帯、その安定は脆くも崩れ、そこに生じるのは宙塵の嵐。
高速で飛び交う小デブリが、存在するものすべてを穿つ。たとえ姿を消していても、その例外にはなりえない。

「こりゃあすごい! これならきっとボギーワンも……」
「油断しないで! ナイトハルト装填、トリスタン、イゾルデ起動!」

感心するアーサーを戒めて、タリアは更なる一手を打つ。

「これは……!」
背後で上がる声、と、同時に五人の客人たちが遮蔽ブリッジに入ってくる。
「これより本艦はボギーワンと戦闘状態に入ります。危険を避けるため、皆様にはここにいてもらいます」

それだけ言い、すぐに戦闘指揮へと戻る。同じミスを二度繰り返す積もりはない。
一瞬の判断ミスが命取りになる戦闘、今彼等に構っている暇はない。



「くそ!」
デブリの陰に隠れたエグザスで、ネオは唇をかみ締める。彼の作戦は完全に裏目に出た。
このままここに潜んでいれば小デブリになぶり殺し、だがとび出せば、あの戦艦に狙い撃ちだ。
進むも地獄、引くも地獄、特に巨体のガーティー・ルーは、飛び交う宙塵で受ける影響も大きい。
「しょうがないねー、俺のミスだし。やっぱ責任取るしかないか」
さすがにワンサイドゲーム狙いは調子に乗りすぎだった。多少の被害は覚悟しよう。
四基のドラグーンを起動させ、ネオはエグザスをデブリ帯の外へと機体を走らせる。


デブリ帯からとび出したその機体は、すぐにミネルバのレーダーにも捉えられた。
「トリスタン、イゾルデ!」
「照準、つけました」
「撃っ!」
即座に五門の砲が放たれる。二門がビーム砲、残りが実体弾だ。それは見事狙いを誤らず……
「命中、目標消滅……ですが、後方より更なる機影四!」
メイリンの声がブリッジに響く。

439付き人 13/15:2006/03/15(水) 20:32:42 ID:???
ガンバレルが一基破壊され、残りのガンバレルとエグザス本体が飛翔する。その光景は、デブリ帯内からも確認できた。
ミネルバの火力はエグザスが引き付けている。この機を逃がす愚か者は、ファントムペインには存在しない。
「チャーンス! 行くぜ!!」
「……今のうち」
「出るぞ!」
「ミラージュコロイド遮断、機関最大高速反転! ゴットフリート起動急げ!」
アビスが、ガイアが、カオスが、そしてガーティー・ルーが、思い思いの方向にデブリ帯から一斉にとび出す。


「上方よりガイア、下方よりアビス、正面からカオス、左からはボギーワン!」
次々ともたらされる情報。その量は、練度の低いミネルバの処理能力を容易に超える。
「アーサー、ターンホイザーおよびナイトハルトの指揮任せる!」
「は! ナイトハルト一番から十番はガイア、十一から二十番はアビスを狙え!」
「トリスタンは継続してMAを、イゾルデはボギーワンに狙い変更」
結果生じる指揮系統の一部委譲、さらに、火力の分割運用。
始めに狙ったMAこそ三基のガンバレルを落とすものの、残りは目立った被害を与えられない。
ボギーワンは主砲を放ち始め、MSにも交戦距離に迫られる。
「CIWS起動。レイ、ルナマリア、MSを抑えて!」
次々と発せられる命令、それに従い動くクルー。その戦場の只中で、ただ見つめるしかない男女が五人。
その中の、最年少の栗毛の少女は、何も出来ないわが身を呪い硬く両手を握り締める。

――何も、出来ない? 本当に私は何も出来ないの?

そんなことは、ない。何か自分にもできることがあるはずだ。
固めたそれは、決意というよりも蛮勇。
しかしマユはそんな事実に気付くことなく、そっとブリッジを抜け出して、格納庫へと走り出す。

440付き人 14/16:2006/03/15(水) 20:37:20 ID:???
「行くぞ、ルナ」
『分かってるわよ』
迫る四機の機体に対し、迎撃に出るのは二機のザク。二倍の敵は分が悪すぎる、なんとしても早く一機落としたい……
『って、レイ、どうしたの?』
「!?……いや、なんでもない。援護頼む」
急に感じた妙な感覚、しかしそれを強引に引き剥がし、目前のMAに意識を集中させる。
ルナマリアの放ったミサイルが敵機に迫り、回避のための強引な旋回を迫る。
ミサイルをかわすため側面を見せたガンバレルをビーム突撃銃で破壊、そのまま一気に距離をつめる。

「させない、よ!」
先行するネオに急接近する白いザク、さらにその後ろには赤いザク。
それを後方から認識したアウルは、ミネルバへの肉薄を中止し援護射撃。白と赤を引き離し、攻撃しようとした白を牽制。
『すまん、アウル』
「昨日のお返し。あれ、ネオどうかした?」
『いや、急にめまいが……』
「おいおい、もう歳なんじゃねーの?」
『俺はまだ若いっつーの!』

アビスのビーム砲の援護射撃を受け、エグザスがレイを、ガイアがルナマリアを抑える。
「ガンバレルの無いMAなど……ビームサーベルだと?」
「残念! エグザスはただのガンバレルの母機じゃあないんでね」
「この、落ちろー!!」
「ああ、もう。オルトロスがあればこんな奴!」
「ネオ、ステラ、もっと離れろ! じゃないと一緒に撃っちゃうぜ!」
もつれ合う五機のその脇を、カオスが一機すり抜ける。
「ここは任せるぞ、俺はあのでかぶつを!」
441付き人 15/16:2006/03/15(水) 20:38:57 ID:???
「面舵四十度!」
リーの命令でガーティー・ルーが、ミネルバに左の側面を晒す。被弾面積は増大するが、反面ゴットフリート十二門全てが使用可能に。
「交互撃ち方。手を緩めるなよ!」

「まずーい! ターンホイザー起動!」
ボギーワンの火力が上昇したのを見て、アーサーは陽電子砲の充電を命じる。
『機関部被弾、推力50パーセントダウン!』
『モビルスーツハッチ開けてください!』
「モビルスーツハッチ開放、ターンホイザー起動完了しました!」
『艦長、正面からカオス接近中!』
「回避、面舵二十度!」
「よーし、目標ボギーワン! 発射!」

アーサーの命令で陽電子砲が放たれるが、直前にタリアの出した回避命令によりそれは大きく目標からずれる。

『速力30パーセント低下!』
『マユ・アスカ、インパルス、出ます!』
『カオス、さらに接近!』
「トリスタン、目標をカオスに変更」
「間に合いません!」
「ローエングリン第二射、充電急げ!」

「って、マユ!?」

背後で上がったラクス・クラインの声に、アーサーは思わず振り向いた。驚きで見開かれた彼女の目、それが向けられたメインモニター、
そこに映しだされていたのは、どさくさにまぎれて格納庫からとび出したアルファワンだった。
442付き人 16/16:2006/03/15(水) 20:39:47 ID:???
「そらぁ、これで終わり……って、なに!」
側面に回りこんでミネルバへの攻撃態勢に入っていたカオスに、インパルスが突っ込む。
「まだ残ってやがったのかよ、それなら……」
MA形態に変形し、距離をとる。体勢を整えて再度攻撃に……
移ろうとしたスティングの目に、ガーティー・ルーから上がった青い光が入った。
「っち、時間切れか。命拾いしたな」
青い信号弾は撤退の合図、あと一歩のところだったが命令じゃあしょうがない。
機体を旋回させミネルバの砲火から素早く逃れる。追撃を避けるため、大きく迂回してガーティー・ルーへと帰艦する。
同時に、他のメンツも戻ってくる。ネオのガンバレル四基以外、目立った損害はなさそうだ。


「退いてく……助かったの?」
インパルスのコクピットで、マユは呆然と呟く。
とりあえずとにかく跳びだして、近くにいた敵に突っ込んでみたはいいものの、
そのあとどうすればいいかなど、分かってもいなければ考えてもいない。
そのまま宙を漂って、何とか姿勢維持だけはしているうちに、だが幸い敵は引き上げてくれたようだ。
それをようやく理解して、ほっと息をつく。操縦レバーを握り締めた手が震えていることに気付く。
どうやら緊張していたようだ。

「きゃっ!」

そのまま浮いていたインパルスの腕を、戻ってきた赤いザクが掴む。そのままインパルスを引っ張って、ミネルバのほうへと連れて行く。
機関部に被弾したミネルバは、若干速度を落としながらも、それでもまだまだ健在な様子だった。
443付き人 17/16:2006/03/15(水) 20:51:01 ID:???
以上です。これでアニメ版でも第四話まで……この話見てなかったのでかなり好き勝手やってしまいました。
それにしても登場人物が多い多い、書いていてもなかなか一人ひとりの掘り下げまでは手がまわらなそうです。

――それはそれとPP戦記の孤児院はちゃんとしてそうだな……うちとは資金調達方法がが大違いだ。
444通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 20:55:54 ID:???
GJ。
「インパルス開発長イレムテ」で一笑い、
「国防予算で買った自家用ジェット」に二笑いしました。

てか、孤児院運営費とフリーダム維持費はともかく、
自家用ジェットはむちゃくちゃ以外の何なのかとw
国の役に立つわきゃないww
445通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 21:41:59 ID:???
>金額は総予算の10パ−セント以内に収めるし。

ちょwww
446通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 21:57:14 ID:???
微妙に世間離れした感覚のカガリにワロタwwwww
ところどころにちりばめられた小ネタやユーモアがイイね! GJ!!
447通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 22:16:59 ID:???
デブリぶつけの戦術も良かったけど、ちゃんと新兵しているミネルバがいいなあw
どさまぎでマユの出撃認めちゃってるしww
マイク入っていることに気付かないお茶目なアーサー君は…新兵じゃないけど
448通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 22:43:56 ID:???
相変わらず付き人は面白いなァ
キャラが壊れていながら不快感がないw
449通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 23:09:26 ID:???
>>447
だってアーサーなんだぜ?
450通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 23:10:32 ID:???
付き人GJ!
今までにないインパルス誕生の仕方にびっくりだ

あ、あとターンじゃなくてタンホイザーです
おそらくルーツはこれです
歌劇「タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦」
451通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 23:29:47 ID:???
付き人書いてるものです。
≫450
誤字指摘ありがとうございます、完全に覚え間違えてました。
さらに15/16 下から六行目
「ローエングリン第二射、充電急げ!」 →「タンホイザー第二射、充電急げ」
でした。纏め人様、お手数ですが訂正お願いします。
452通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 23:30:06 ID:???
おいおい何でMS開発長が外交費を流用できるんだよ

とか思って読んでたら
カガリの爆弾発言で吹っ飛んだw
オーブは個人商店以下か!w
453通常の名無しさんの3倍:2006/03/15(水) 23:39:30 ID:???
これは何処の北朝鮮ですか?
454通常の名無しさんの3倍:2006/03/16(木) 06:26:02 ID:???
ハウメアのお導きだろ
455通常の名無しさんの3倍:2006/03/16(木) 09:45:58 ID:???
予算使い込みのインパクトには負けるが
タリアが遺族に手紙を書くのはいい演出だと思う
456通常の名無しさんの3倍:2006/03/16(木) 12:06:36 ID:???
>>455
うむ。そこは非常に良いと思った
部下想いで、責任感が強い女性というキャラが一気に
立った気がする。

レイとルナマリアのコンビが先に出来上がっているというのも
面白いなあ。
ここにマユが入って、どう変わるのかとか話の先が
ものすごく気になるよ
457ほのぼのマユデス。青少年の悩み。:2006/03/16(木) 19:32:07 ID:???
「そりゃあ、お前が普通だからだろう。」

アウルはそうハイネに告げられた。
事の始まりは、アウルのさりげない一言だった。
女子は毎日あきることなくオーブ観光、マユとシンは知り合いの所を回ったり、しかしその他男性陣はめんどいのでホテルでごろごろしていた。
すると、アウルがふと呟いた。
「僕ってさー・・、このスレ一目立たないアウルだよね・・・・。」
この一言から『アウルのキャラ開発会議』が行われることになったのだ。

「確かに、アウルはそんなに本来のキャラを崩されていないからな。目立たないのは当然だ。」
レイがお茶をすすりながら言う。
「そもそも、アウルの本来のキャラってどんなのだ?」
アスランもせんべいを齧りながら言う。
「んーーー、同人的に見れば・・・・ショタ?童顔だし。あーとーはー、襲い受?」
アキラが真剣に言う。真剣に。
『でもショタはカルマがいるからなー、後は・・バスケ?』
「○西先生・・・バスケが・・・したいです。」
シンハロのセリフにノリノリで言うジョー。
「・・何気にマユのいる所では一人称が『俺』だとか・・・・・って!」
暴露してしまったスティングはアウルに頭を殴られる。
「あー、僕っていうと子供っぽいから?」
「まぁ、アウルくらいの男なら普通だろうね。」
ほのぼのと言うキースとカルマ。
「ま、ようするにアウルは『普通』が個性ってことガッテンしていただけましたでしょうか?」

『ガッテン!』
『ガッテン!』
『ガッテン!』

ハイネのセリフにどこからともなくだしたボタンを押すメンバー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プチン。

「お前ら真面目にやれーーーーーーーーー!!」


458ほのぼのマユデス。青少年の悩み。:2006/03/16(木) 19:50:02 ID:???
「大体さぁ!!他のアウルは何??!隻腕さんのとこでは死んでなおかつアレ!
なのに僕ってただの殴られ要員じゃん!別にサンドバックでいいじゃん!」
ダンッとグラスを思いっきりテーブルに叩きつけるアウル。
酒でも飲ませりゃ大人しくなるか、と思いきや興奮したアウルにその理屈は通用しなかった。
「ぶっちゃけシンハロいわく俺よりアビスのほうがキャラ立ってるって言うし!なんだよそれ!
パイロットよりすぐれたMSなんて存在しねー!!もうMFに改造してやるっ!!」
そのまま机につっぷし、ゴガンっっと盛大な音を上げる。
「おい、いけよカルマ。一番年上でカウンセラーだろ?」
ジョーがそういったのを筆頭に次々にアウル止めるのを押し付けようとする。
「いやだよ、お兄ちゃんでしょ?スティング。」
「・・・・いけ、頑丈なシンハロ。」
『アキラ、お前の魔術でどうにかしろ。』
「アスラン!いまこそフェイスの実力を見せる時です!」
「ハイネ、この個性的な面子を纏め上げているお前ならできるはずだ!」
「えーっと、ゼロ。ほら、ぐるぐる巻きにしろ。」
「やだ、酔わせたのはキースだ。責任を取って。」
「・・・・レーイv同い年くらいだからほら、がんばって!」
「俺ぇっ?!」
そう言って無理矢理レイはアウルの前に押し出される。

「・・・・・・・・えーっと。アウル?もうそのへんで・・・・。」
レイがそう言って肩に手を乗せようとしたその瞬間。
「母さん?」
「はい?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・しばしの沈黙。
「かあさーーーーーーーん!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!」
アウルは行きなりレイに飛びついた。
『ルナマリアがいなくてよかったなー。』
「そうだな、いたらまず大変だ。」
はははははーと笑いあうアスランとシンハロ。
「母さん!母さん!母さん!」
「えーいっ!お前はセフィロ○か!!それとも思念体か!!誰か助け・・・ってだれもいないーーーー?!」
いつの間にか消えている野郎ども。
「くそっ!!覚えてやがれ!!脳みそ引きずり出してやる!!」
レイは既にキャラを維持するのも放棄している。
「かーーーーさーーーーーーん!」
「ぎにゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

その後、レイが片手にアウル、片手に金属バットをもって部屋から出てきたそうだ。
459通常の名無しさんの3倍:2006/03/16(木) 23:44:45 ID:???
そういや、どの作品でもアウルって影薄めの方?
ステラはどこでもヒロインクラス、スティングは三人組のリーダー格ということで存在感があるし。
アウルだけがピンで目立っているシーンって少ない気が。


でもこのスレではマユ×アウルが王道っぽいようなんでカワイソスとは言ってやんない。
460通常の名無しさんの3倍:2006/03/17(金) 01:28:54 ID:???
>>459
隻腕さんのは言うまでもないけど、
PP戦記ではアッシュ部隊を屠ったりして意外に目立ってるんじゃない?
最近はキラが出たことでスティングの方が焦点当たってるっぽいけど。
461通常の名無しさんの3倍:2006/03/17(金) 08:26:49 ID:???
もともとファントムペインの男2人ってキャラ的には不遇だからなー
いまいちキャラだけで突っ走ることが困難っつーか
462通常の名無しさんの3倍:2006/03/17(金) 20:00:46 ID:???
セフィロ○クソワロスwwwww
463通常の名無しさんの3倍:2006/03/18(土) 03:42:26 ID:???
age
464ほのぼのマユデス。生きろ、マーレ。:2006/03/18(土) 22:59:12 ID:???
俺の名はマーレ・ストロード。ザフトのエリート赤服にして『元』アビスの正規パイロットだ。
あの連合の奴らに邪魔をされ・・・・入院していたが華麗に復活!
なんと今度はインパルスの新装備のテストパイロットになったのだ!!
宇宙でのテストを終え、いよいよ地球での運用テストである。
しかも俺のために(注:新装備のテストのためです。)丸々二つの部隊が強力するそうではないか!
そんな気分に浸りながら基地についた俺を向かえたのは・・・・・・・あのクソガキだった。
「久しぶりー!マーレお兄ちゃん!」
『オウ、ヘタレ。』
・・・くそ生意気なポンコツロボット付きで登場したのはマユ・アスカ、本来ならば俺が乗るべきだったインパルスに
乗っている憎たらしい小娘だ。機械の頼りナシには戦えないくせに生意気だ。
「何だ、お前らか。迎えはどうした。」
「えーっとね・・・・・。

     ようこそ、ミネルバ&ムセイオンチームへ。
     このポーショ○はサービスだから落ち着いて聞いて欲しい。
     うん、「また」なんだ。すまない。
     絶対マーレお兄ちゃんはあの調子じゃ生きて宇宙へ帰れないしね。謝ってもらおうなんて思っていない。
     でも、こう喋り始めた時に「やべ、またおれピンチ?」とか感じてくれたと思うんだ。
     のほほんとした日常でも、そういう気持ちを忘れないで欲しい。
     OK、それじゃゲームスタートだ。             」

そうガキが言った瞬間、俺の頬を弾丸がすった。

最悪だ。
465ほのぼのマユデス。生きろ、マーレ。:2006/03/18(土) 23:16:53 ID:???
『オォ、アスラントスティングノヤツケッコウホンキダナ。』
ソファーの陰からひょっこり相手をみるポンコツ。
「マーレお兄ちゃん、いっとくけどしばらくミネルバとムセイオンの面子と暮らすんだからこれくらいでびびっちゃだめだよ?
そうそう、相手は接近戦得意な人もいっぱいいるからナイフとかも持っててね、たぶん死にはしないとは思うけど。よし、いくよ!」
敵のいる方へむかって煙幕をなげるガキ。そのまま俺を引っ張って走り出す。
俺は泣きたくなった、何でMS主流のこのご時世に映画顔負けの肉弾戦をしようとしているのだろう、このガキは。
いや、そもそもミネルバの奴らは何なんだ。ハイネ隊と言うのは聞いた事がある。軍のなかのろくでもない奴らを
ごった混ぜにした部隊だ。そしてミネルバ、たいしたことなさそうな赤服二人にガキ。脅威となるのはアスラン・ザラ。
あとナチュラルどもがいるらしい、まったく、コーディネイターとしての・・・うわぁっ!!
「ぼけっと突っ立ってると・・・・・来るよ!」
ガキが急に飛んできた矢を避ける。まてよまてよまてよ!なんで今時矢なんて飛んで来るんだよ!
『アキラノヤツカー、マユ、オレハナレルワ。カラダトッテクル。』
そんなこと良いながらポーンポーンと何処かへ去っていくポンコツ。
「いいけど急いでよー、あ、ステラだ!」
なんかどっかで見覚えのあるような女だ。前でぼけーっと立っている。
「おい!味方なのか!」
「いやだばぁ、今のマーレお兄ちゃんに私達以外味方はいないんだよ?」
帰るー!宇宙へ帰るー!!なんでおればっかこんな目に遭うんだーーー!!
「ハァッ!!」
目の前の女がナイフで切りつけてくる、しかし、それは俺には当たらなかった。
恐る恐る前を見るとガキがB級映画でよくあるような格闘家の武器でナイフを止めていた。
「マーレお兄ちゃん!ゴールはギルパパ・・じゃなくて議長の部屋!まっすぐ言ってエレベーターに乗ればすぐだから!!」
そう言って金髪の女とマジで戦い会うガキ。

もう俺は必死に走るしかなかった。
466ほのぼのマユデス。生きろ、マーレ。:2006/03/18(土) 23:26:27 ID:???
「どーお?そのマーレって人。」
グレイシアがモニターを眺めながら言う。
「なんつーか・・、やっぱ生身での戦いになれてないね。ステラにやられたのも解かるなー。」
アウルがため息をついた。
「まぁ、仕方がないでしょ。そもそもザフトで生身での戦いに慣れてるのってうちくらいじゃない?」
ミーアは涙目で逃げるマーレを平然と見ている。
「あれ?この先にいるのは誰だっけ?」
「ジョー。たぶん、ちょうど良い相手じゃないかな。」
シンの疑問に答えるゼロ。ちょうど画面の中のマーレはエレベーター前のホールに着いたところだ。
目の前に立っているジョーに必死にナイフを構えて立ち向かおうとしている。
「どっちが勝つと思う?」
「うーん、やっぱ赤服だからマーレじゃね?」
「いやジョーの奴は喧嘩慣れしてるからなぁ・・・。」
「むしろこれくらいのハプニングで混乱してる時点でこれからが心配な気が・・。」
「・・・・・これくらいのハプニングで混乱しないって相当むずかしいと思うけど。」
勝手な感想を言われながらも、必死にマーレは慣れていないナイフ線を頑張るのであった。
467通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 01:59:47 ID:???
さすがネタの坩堝、早速バーボンもポーションもネタにいれてくる
ほのぼのさん乙です。
ついにマーレお兄ちゃんが満を持して登場だ! でもなんか早々に心配だ!
468通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 02:00:54 ID:???
ほのおぉぉっぉおぉおぼのおっぉおっぉおっぉおっぉぉぉぉおおお


ねぇ



いい加減にうざいから〜やめてぇぇっぇぇよねっぇぇぇぇっぇぇ
あぁあぁっぁっぁっぁあ〜
469通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 10:19:09 ID:???
>>468
           ,e===e、
        ,/ ̄ ̄ ̄l`\
____eブ′     | ||
               | ||
                | ||
.              | ||
            | ||
            ♀Eiヲ   ___,. ---、ノー- 、
               / / /   >          \
           / / /    /フ ,スフノY゙ヽ  }i>、 {
             / / /      {/´/      }ノ\ハ/      金勺
         / / /       /:..,_ノ ,!"´     ヽ
           / / /       { ('_,>`  vー-、  }       才乙
        /./^ヾ      _,(.` `" __,、 ゙Fリ  /
       ,/,./^Y´!  / -ー ゙エ三フ´ } l、ノ  イヽ       ナ-
      /(二!)ド { ノ '/7^ノー-  /´ ノ     |〉 ヽ        ̄
      /.}‐-'イ   ) /-‐__>ー---------一''"  }     ツ
   _,/^ぐ)`7´_,.イ〉// ̄,_,. -―-、__,. -‐‐-、.__,,. イ
   ハ〈  ヽY^\,∠-ー'´_,. -―--、_        ,.ィ′    />
   〉i }  , ノ/-'´_,,ニ-‐'"゙ , -―‐- 、 ー-  ̄`二ニ´/     o′
   `)/⌒Y/''"´      / ,.'´    ∨        /
  /〉/^ヽ,. -――-/ , '゙       }:}     /
 ̄  } i  /,. - ‐ - ...'<.        ノノ  /
   ( Y/         `丶- ,.ィ´/ /
   /V    -‐'_,,,二=-‐''"´‐''´ /
 /  `ーァT ̄   ,,/  r一''"
470通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 16:37:41 ID:???
まったく同じことを繰り返す>>468は大馬鹿者

過去ログ嫁
471通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 17:05:40 ID:???
>>470
>>1
・煽り荒らしは、スルーしましょう(重要)
472通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 21:15:11 ID:???
>>468
そう思っても口に出さないのが大人の対応。
473通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 21:19:22 ID:???
てか何故にマーレ?! やっぱ隻腕の影響!?

でもどうやら異常なのはミネルバとハイネ隊だけで他のザフトはマトモらしいことが透けて見えてちょっと安心
474通常の名無しさんの3倍:2006/03/19(日) 22:13:59 ID:???
単発設定小話 「ラクス 宇宙への脱出編@」

バルトフェルド「ラクス・・・レッスンの集大成をみせろよ?」
ラクス「はいっ!ぴっちぴちのきゃっぴきゃぴですわね」
バルトフェルド「よぉーし。行くぞ!」
〜サングラスにカツラを着用するバルトフェルド、比較的露出の多い洋服のラクス〜
バルトフェルド「あーいや、はいはい。まぁ皆で抑えんでぇなぁ。頼むでほんま。さ、ラクス様」
ラクス「はい、ありがとうございます」
ザフト兵A「タケダさん。予定より早い到着のようですが・・・」
バルトフェルド「ああ、前の仕事が予定よりはよう終わりましてなぁ。せっかくやから早めに切り上げさせてもろうて、ラクス様にお休みいただこうと。こう思うたわけですわ」
ザフト兵A「そうでありましたか。ただいま奥のほうへご案内いたします」
バルトフェルド「おおきに。頼むで?」
〜奥の特別待合室へ通されるバルトフェルドとラクス〜
〜ラクスにささやくバルトフェルド〜
バルトフェルド「ラクス。もっとオーバーに笑いかけろ。手も振るんだぞ?ポップに、キュートにだぞ」
ラクス「ええ、わかっていますわ。・・・・・・みなさーん!ありがとうございます!プラントへ戻ってからも応援をお願いいたしますわー!」
愚民ども「わー!」
バルトフェルド「そうそう、それでいい」

〜一方その頃の本物のミーア達〜
タケダ「いやぁーほんまよかったでぇ。完璧やな!」
ミーア「地球ではこれが最後だったわよね?」
サラ「ええ、ラクス様。14時までは休憩をお取りいただきまして、16時30分のフライトでプラントへ帰還いたします」
ミーア「わかったわ。ふぅー・・・なんだかひっさびさな休憩ねぇ。・・・あの娘は私以上に大変よねぇ」
〜ソファに深く沈み、くつろぎだすミーア〜
〜タケダとサラは小声で会話を交わす〜
サラ「チーフ。私は先に空港へ向かいます。くれぐれもラクス様を宜しくお願いいたします」
タケダ「はいな、おまかせしてちょーや」
サラ「・・・いいこと?くれぐれもあの娘にボロをださせないこと。それがあなたの役目なんですからね」
タケダ「サラはん、わかってまんがな・・・」
サラ「・・・あなた、そのイントネーションなんとかならないの?」
タケダ「無理いわんどいてくださいよ。これはもう遺伝子に刷り込まれてしまってますんやさかいに」
サラ「・・・ああ、そう・・・・・・。まあいいわ。じゃ、先に行ってますからね」
タケダ「はいは〜い」
〜のんきに手を振るタケダ〜
サラ「もう。これだから地球人って人種はっ・・・・・・」
〜バッテリースクーターで空港へ向かうサラ。騒々しい空港〜
サラ「ん・・・やけに騒がしいわね?・・・ねぇちょっと、何かあったの?」
空港職員「いやぁ申し訳ございません。ラクス様が空港にいらしておりまして・・・ただいま混雑している次第です」
サラ「!?・・・ラクスですって?・・・ちょっと!どきなさいよ!」
空港職員「あ!ちょっと〜ここは駐車禁止ですよー!!」
〜その場でスクーターから降り、空港ロビーへ駆け出すサラ〜

475通常の名無しさんの3倍:2006/03/20(月) 00:27:43 ID:???
単発設定小話 「ラクス 宇宙への脱出編A」

〜ゲートを飛び越えるサラ〜
サラ「まさかっ!本物のラクス・クラインなの?・・・」
ザフト兵「そこの女!止まれ!」
〜サラの前に立ちふさがるザフト兵〜
サラ「ったく、いちいちまじめなんだから!・・・ほら、このピンでわかるでしょ!?」
ザフト兵「!そのピンバッジ・・・失礼いたしました!しかし、なぜゲートを飛び越えるなど無謀なことをする必要が!?」
サラ「あ〜・・・もうっ、ここに来ているラクス様は本物ではないのよ!わかったらどきなさい!」
〜サラの前から退くザフト兵〜
ザフト兵A「ラクス様が本物じゃないだって?」
ザフト兵C「あ、そういえば髪飾りが以前のものに戻ってなかったか?」
ザフト兵D「普段は元に戻してるんじゃないのか?」
〜どうでもいいことで悩むザフト兵たち〜

〜サインに対応中のラクス〜
ラクス「あら〜なにか騒がしいですわね?」
バルトフェルド「ああ・・・!まずいな。ラクス!シャトルに移動するぞ!」
〜ラクス達に迫るサラ〜
サラ「まちなさい!偽者のラクス・クライン!」
バルトフェルド「なんて脚の早さだ。もう追いついてきやがる。ラクス、先に行け!ここは俺が引き止める!」
ラクス「はい!バルトフェルドさんも急いでください!」
バルトフェルド「わかってるよ!」
〜バルトフェルドに追いついたサラ〜
サラ「まさかこんなことをしでかすなんてねぇ!どきなさい!」
バルトフェルド「若い女性がこんな乱暴しちゃいけないな?」
サラ「わけのわからないことを!なにをたくらんでる!?あのラクス・クラインはっ!!」
〜バルトフェルドのづらとグランサンが床に落ちる〜
サラ「!その顔・・・バルトフェルド・・・・・・隊長!?」
バルトフェルド「久しぶりだな。まだ覚えていてくれるとはな。なぁ、ここは元上司の顔を立てちゃもらえないかね?」
サラ「っぐ、何をくだらないことを!売国奴がっ!」
バルトフェルド「ダコスタもお前と会いたがっているんだがな!」
サラ「あんなガキと一緒にしないでほしいわねっ!どきなさいっ!」
〜二人の格闘戦に銃声がわってはいる〜
サラ「きゃっ!」
ダコスタ「隊長!急いで下さい!このままでは空港が封鎖されてしまいますよっ!」
バルトフェルド「ダコスター!」
サラ「あいかわらず邪魔が得意ね!あんたはっ!」
バルトフェルド「余所見してちゃだめだって前もいったろ!?」
〜鳩尾に一発、そして後頭部から地面に叩きつけられたサラ〜
サラ「ゥゴフッ!」
〜ダコスタと一緒にシャトルへ急ぐバルトフェルド〜
ダコスタ「いまのってサラ先輩じゃないですか!?」
バルトフェルド「ああ、そうだ。・・・・・・女を殴るのは不本意なんだがな・・・状況が状況だ。仕方あるまい」
〜なんだかんだでフリーダムに護衛され宇宙へあがるシャトル〜

476通常の名無しさんの3倍:2006/03/20(月) 03:28:37 ID:???
あぁ駄目だ
書こうと思ったけど運命キャラメインじゃない…
>>2にもあんまり当てはまらない…
477通常の名無しさんの3倍:2006/03/20(月) 07:23:01 ID:???
>>476
とりあえず書きたい内容を書き込んでみて、住人の反応を聞いてみては
いかがでしょうか?
478通常の名無しさんの3倍:2006/03/20(月) 18:05:23 ID:???
479476:2006/03/20(月) 19:27:22 ID:???
スレタイに入っていないだけで「SEED DESTINYの」っていう大前提が付くのだということを忘れていた
いや、ちゃんと種死のストーリーにはなるんだけどそれ以前から描こうとしていた
そのせいで種死のキャラがメインになりません…

>>477さんの言う通りパイロット版的なものを落として反応を窺ってみます
それとも>>478さんのスレに行った方がいいのだろうか?
マユが主人公だけど
480通常の名無しさんの3倍:2006/03/20(月) 21:28:12 ID:???
>>479
制約がない分SSスレの方が自由度はあるかもしれないが・・・
あなたの書きたいことがこのスレで表現出来ると思えば、是非投下してちょ
481通常の名無しさんの3倍:2006/03/21(火) 04:19:03 ID:???
マユが主人公なら、こちらではないでしょうか?
482通常の名無しさんの3倍:2006/03/21(火) 17:32:18 ID:???
マユが主人公ならここでいいと思うが種死じゃないことに過剰反応する奴もいるかもな
まぁとりあえず投下してみれ
483通常の名無しさんの3倍:2006/03/21(火) 19:17:23 ID:???
今の時期はマズくないかな?
変なのが沸きやすい時期だし
484通常の名無しさんの3倍:2006/03/21(火) 20:06:17 ID:???
四月になるまで待ってもらった方が賢明かなぁ?
485通常の名無しさんの3倍:2006/03/21(火) 22:19:41 ID:???
単発設定小話 番外編「STARGAZER」

〜地球に降るユニウスセブンのチリの中で〜
マユ「あのMS・・・あの声・・・おにいちゃんなの・・・?生きているの・・・?でも、でもあんなに優しいおにいちゃんが・・・人を、私を見捨てるなんて・・・・・・」
〜落ちてゆくコアスプレンダーを見続けるアプレンティス〜
シン「っち、取り逃がしちまった。あ〜あ、スウェンにまた馬鹿にされちまうぜ・・・くそっ。まぁいいや、あとはザフトに任せて被害を最小限にしてもらうとするか」
〜再びチリとともに地球へ降下するコアスプレンダー〜
マユ「・・・これが重力に引かれる力なのね。・・・・・・って感傷ににひたってる場合じゃないのよ、マユ!とりあえず生き残らなきゃねっ!やれることはやっとかないと」
〜比較的大きいチリの裏に移動し、緊急降下体制に移るコアスプレンダー〜

〜地球に降るチリを冷たい目で見続ける男〜
スウェン「きれいなもんだな。さすがはコーディネイター、俺たちナチュラルではとてもできない芸術だよ。・・・シンは仕留められなかったか。ふん、オーブの作ったポンコツに乗ってるから仕留められないんだよ」
〜「ピーッ!」スウェンのMSに通信が入る〜
スウェン「ストライクノワールだ」
リー「中尉!我々はこのまま地球へ降下する。戻るなら一緒に載せていくがどうする?」
スウェン「地球・・・か。いいだろう、いつまでもこんなコーディネイター臭い空間に居たくはないしな。艦長、すぐにガーティ・ルーに合流する」
リー「了解だ。降下後は君の任務をまっとうしたまえ」
〜ガーティ・ルーに合流するストライクノワール〜
ネオ「よぉスウェン。ノワールの調子はどうだ?」
スウェン「ああ、悪くはない。少なくともシンのポンコツなんかよりもな」
シン「あれは俺のせいじゃねぇだろ!システムダウンなんてさっ!」
スウェン「いやいや、運の無さがそういうのを招くんだよ」
ステラ「シン・・・・・・運悪い・・・?」
アウル「ほんっと運ないよねぇ」
スティング「まあな。組み立て前のMSなんて初めて見たぜ・・・」
スウェン「スティングとステラはよくがんばってたな。あんなもんだろ。アウルは・・・」
アウル「なんだよ〜」
スウェン「・・・お前は地球でがんばれ・・・・・・」
アウル「なんだよそりゃ・・・」
ステラ「・・・・・・アウルのは・・・お水の中がすきなのよね・・・・・・?」
ネオ「そういうこと。はいはい、お前らは持ち場に戻れ。かいさんかいさん」
〜スティング、アウル、ステラの3人はブリッジから退出する〜
スウェン「大佐・・・これからどうなる?」
ネオ「ん・・・ザフトと・・・オーブの出方しだいだろ」
〜首を横に振るスウェン〜
スウェン「そうじゃない。俺にはまだ星は動いていないように見える」
ネオ「星・・・?」
〜地球へ降下を始めるガーティ・ルー〜

〜DSSD技術開発センター〜
セレーネ「ちょっとちょっと!発射台はどうなのよ!?」
技術スタッフA「セレーネ!外は危険だぞ、研究所の中に戻るんだ!」
セレーネ「なにいってんのよ!私のスターゲイザーが打ち上げられなくなったらどうすんのよっ!!星が、星が動きだしたのよ!」

完   ・・・こんなSTARGAZERのプロローグはいかがでしょうか?
486通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 00:14:28 ID:???
>>479
とりあえず投下してみちゃいかがかね?
ここも残り50KB無いしな。いんじゃねぇか。
487479:2006/03/22(水) 03:21:34 ID:???
色々とレスくださってありがとうございます
投下はこのスレにして様子見をしてみることにします
やってみないことには良いか悪いかもわからないので

では今から投下させてもらいます
488I and I and I(1/7):2006/03/22(水) 03:23:53 ID:???
音が聞こえる…
荒い息遣い、靴の音、地面を蹴る音……
それに、爆発の音。
空にはモビルスーツが飛んで、撃ち合い、戦っている。
走っていたのはわたしと、他に三人。
ずっと走り続けで、わたしは息切れを起こし、立ち止まってしまった。
「マユ!頑張って!!」
わたしの目の前にいる誰かが、誰かを呼んだ。
また走りだす。
しばらく走っていると、肩かけ鞄から携帯電話が落ちた。
そして、山の斜面を転がっていく。
「あぁ!マユの携帯!」
わたしが誰かの名前を口にする。
マユ……
それは誰の名前?
「そんなのいいから!!」
「いやー!」
わたしは駄々をこね、その場で立ち往生。
すると、後ろにいたフードを被った人が、見かねて斜面を駆け下りていった。
だが次の瞬間、わたしの体は言いようのない衝撃に全身を包まれる。
わたしは、モビルスーツの放ったビームの爆風に、吹き飛ばされたのだ。
立ち込む砂煙。そして、周りを染める血。
489I and I and I(2/7):2006/03/22(水) 03:26:57 ID:???
ゆっくりと瞼を閉じると共に、わたしは意識を手放した。



〜I and I and I〜 第一話「サヨナラ、コンニチハ」



瞼を開くと、天井が映る。
何処なのかはわからない。
身を起こそうとした途端、ワタシはある異変に気付いた。
右腕の感覚が一切無い。
ワタシは左腕を使い体を起こし、右腕のあるはずの場所に目をやる。
だが、やはり右腕は無かった。
「あ!あんまり動かない方がいいよ」
丁度、部屋に誰かが入ってくる。
「ちょっと待っててね。人を呼んでくるから」
ワタシを横にさせると、そう言ってその人は行ってしまった。
静かな波の音が聞こえる。
ワタシはどうしてここにいるのだろう。
そんなことを考えていると、さっきの人が誰かを連れて現れた。
「ありがとうカズイ君。貴方は代えの包帯を持ってきて」
「わかりました」
カズイ。そう呼ばれた人は、ワタシをチラッと横目で見ると部屋を出ていく。
「やっと目が覚めたわね。私はカリダ・ヤマト。あなた、お名前は?」
残った方の人は笑って、そう問いかけてきた。
490I and I and I(3/7):2006/03/22(水) 03:29:41 ID:???
「……」
ワタシは名乗ろうと、自分の名前を思い出す。
けど、思い出したい答えは、いくら探しても見付からなかった。
しばらく考えても何も出てこない。
「……さぁ?」
「さぁ…って、どういうことかしら?」
「ワタシ、自分の名前を知らないんです。というか、自分のことは何も」

ワタシは、一週間近く眠っていたらしい。
長い眠りから覚めて一ヶ月以上経った今でも、自分の素性は何一つ思い出せなかった。
何故、右腕を失うほどの怪我をしているのかも、何も思い出せないのかも。
カズイさん達の説明では、モビルスーツの戦闘に巻き込まれたのだろうと。
ワタシを発見する数分前に山にビームが直撃し、その爆発が原因ではないか。
そう言っていた。
「なぁなぁ」
「え?」
思い出せない記憶や、どうしてこうなってしまったのか。
色々考えていると、ここの孤児院の子が話しかけてくる。
ワタシより、たぶん少しだけしか年の変わらない子達。
491I and I and I(3/7):2006/03/22(水) 03:31:44 ID:???
マルキオという人が本当なら保護者という立場らしいが、今は宇宙にいるという。
子供達の世話は、カリダさんやカズイさんがしている。
「砂浜に遊びに行こうよ」
「ずっと暗い顔しててもつまんないだろー」
腕や服を引っ張られ、せがまれてしまった。
ワタシ、そんなに暗い顔しているのだろうか?
「あの、カズイさん…この子達と外に行ってきます」
「わかった。でもまだ腕の傷が完治してるわけじゃないからあまり激しくはしないで」
「はい」
ワタシ達はマルキオハウスを出ていく。
その時、カズイさんが少し深刻そうな顔をしていることに、ワタシは気付かなかった。

未だ身元不明者のままであるマユ。
名前もわからぬままの捜索は、オーブ内の混乱も相まって困難を極めている。
連合が撤退した後でマユを発見した場所に向かったが、全く別の風景に変わっていた。
ビームや実弾が直撃したか、それともモビルスーツが地を踏んだか。
山は無惨に掘り返されたようになっている。
「全生活史健忘…ですか」
「お医者様の話だとね。病気に強いコーディネイターでも記憶障害までは、ということよ」
492I and I and I(5/7):2006/03/22(水) 03:34:53 ID:???
静かになったマルキオハウスで、カズイとカリダは話をしていた。
「読み書きも計算もできる。この戦争のことも知ってる。
…なのに、自分の名前すら思い出せないなんて」
カズイは机を強く叩いた。
「カズイ君…」
「俺は戦争から逃げたんです。でも、自分にできることはちゃんとしようって…」
叩いた拳は、震えていた。
アークエンジェルを降りたカズイ。
だが、それが全て本意だったというわけではない。
ただ戦いが恐かった。トールという友人も失ってしまった。
自分も同じ目に遭うのではないかと、恐怖していた。
「だから俺は…俺は…」
「貴方が気を落とすことじゃないわ。あの子が少し…災難だっただけよ」
カズイに近付き、カリダは優しく肩に手をやった。
アークエンジェルを退艦後、カズイはカリダの紹介もあってマルキオの孤児院に来ることした。
戦争から逃げた分、戦争の被害にあった人々のために尽せたらと、そう心に決めて。
だが、その決意の間もなく、マユという壁が彼の前に立ちはだかる。
(でも、悩んでしまうのは仕方ないことなのかしら…)
カズイの肩に添えたカリダの手が、一瞬だけ震えた。
493I and I and I(6/7):2006/03/22(水) 03:37:31 ID:???
フリーダムに乗っているのがキラだという知らせを聞いている。
そして、フリーダムとカラミティが放ったビームがあの山に…
(キラ、貴方の戦いがあの子を巻き込んでしまった。そうだとしたら、貴方は?)
今は宇宙にいる息子のことを思って、カリダは心の中で尋ねてみる。
そんな時、勢いよくドアを開いて、子供達が駆け込んできた。
「おねえちゃんが!!」
心配する子供達のただならぬ空気を感じ取って、カズイとカリダは飛び出す。
外ではマユが蹲り、苦しそうに呻いていた。
「人が…人が流れ込んでくる……」
カズイがマユを抱え上げる。
「どうしたんだ!?」
「お空の光を見てたら、急に…」
一人の子供の言葉に、カズイもカリダも空を見上げた。
そこには流星ではない、光の線の束が月へと伸びていた。
それは、ジェネシスの放射。
「いやぁ…たくさんの人が……人がっ!」
「だ、大丈夫。君には、何もないから」
苦しむマユをなだめるカズイ。
マユはしばらく呻き続けた後、糸が切れたかのように気絶した。
コズミック・イラ71年9月21日。
ヤキン・ドゥーエが陥落し、停戦した日である。
494I and I and I(7/8):2006/03/22(水) 03:40:18 ID:???



それからまた数ヶ月。
あの出来事の後、すぐにマユは目覚めた。
だが、記憶が戻ったわけでもなく、何故苦しみだしたのかもわからない。
マユの現状は維持されまま、淡々とした日々が過ぎている。
世界はといえば、連合とプラントの協議が続き、このままいけば終戦となるだろう。
オーブを含め各国も落ち着きを取り戻し、マユの親類関係の本格的な捜索が予定されている。
そんなマユは、カリダからの言いつけで買い物に出掛けていた。
海岸沿いの歩道を、マユは歩いている。
すぐ近くに、兄であるシンがいることも知らずに。
「マユ、父さん母さん、俺さ…プラントに行くことにした」
海岸には小さな慰霊碑。
連合がオーブへ侵攻した際に死亡した人々のために作れたものである。
シンは花束を添えた。
死亡した両親と、そしてマユのことを想って。
「どうしても、アスハのことが信じられなくて……」
それは家族を殺された憎悪と、ウズミのとった行動への疑念。
シンはそれを忘れることも割り切ることもできなかった。
495I and I and I(8/8):2006/03/22(水) 03:42:07 ID:???
だから、憎悪と疑念の矛先であるオーブとは決別する。
それが、彼の選択だった。
亡くしたと思っている妹の携帯電話を握り締め、シンは歩きだした。
その遠くにはマユがいる。
慰霊碑へ向かう道などとうに通り過ぎていた。
シンはマユに気付くことなく、マユとは別の方向へ歩いていく。
もしその時、マユがシンに出会えたしても、彼女がシンを認識できるかは定かではないが。

496479:2006/03/22(水) 03:47:15 ID:???
うわっ…3/7二つあるし1レスの分量間違えてレスひとつ増やすしグタグタ……
文章も去ることながらダメダメすみません
続くとしましたが続くがどうか皆様の判断を仰ぎます
スレ違い・ツマンネって感じでしたらどうぞ遠慮なくお願いします
497通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 04:00:57 ID:???
卑屈すぎ卑屈すぎ。
もっと堂々と投下していいと思うぞ。

久しぶりにカズィの名を聞いた…
498通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 05:04:14 ID:???
期待させる新作登場!
カズイとカリダママンは渋すぎるところを持ってきましたな。

とりあえずのんびりじっくり次を待つです。
499通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 09:45:57 ID:???
I and I and I、お疲れ様です!しかし、カズィにスポットを当てるとは盲点ですね。
マユが記憶喪失というのも今までと違った切り口(エクステンデット化して「記憶
を消される」というのはあったが、戦争が元で「記憶を喪う」というのは無かった)
でこれからに期待大。しかし、ここからどうやってマユが物語に参入する
(MSに乗るもしくはそれに近しい状況に追い込まれる)のかが気になります。
のんびりお待ちしますね〜
500通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 10:37:45 ID:???
おそらく右腕にARMSが移植されると見た。
501通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 11:13:41 ID:???
いや、シェルブリットが使えるように……


って、おい!w
502通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 12:00:31 ID:???
スクライドの時はカエル顔だなんて言われてなかったのに
503通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 12:47:09 ID:???
マユは義手を付けて守り屋になるんだろ?
504通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 15:13:59 ID:???
種のときに「もっと目を大きく」っていう注文があって、それからだな
その癖が鮒でも抜けてないし
505通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 16:03:01 ID:???
元の絵のままだったら多分種見てた。
スクライドは途中まで普通に見てたし。
506通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 16:27:55 ID:???
まぁここの場合は絵板もあるし絵師さんもたまに来る
マユその他の絵に関しては文句はないがな
507通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 17:30:40 ID:???

例えばこんな連ザのCM

『はい、マユでーす。でもごめんなさい。今マユはお話できません』

マユ1「何故ならただいま連合 VS Z.A.F.Tをプレイ中だからで〜す!」

マユ2「私は隻腕の少女マユでいくよ!」

マユ1「あ、ズルイ!じゃあ私は運命の舞踏マユでいくんだから!」

マユ2「なかなかやるわね!」

マユ1「そっちこそ!」

マユ3「もちろん他の作品も入ってます♪みんな買ってね!
   あ!次やるやる!じゃあ私はゲン・ヘーアン!」

508通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 21:34:42 ID:???
前回投稿から大分日数たったが…
隻腕と舞踏投下マダー?
509通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 21:40:40 ID:???
急かすのはイクナイが容量の関係で投下できないのでは?
残り50kbもないでしょ?
510通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 21:43:12 ID:???
あー、隻腕を書いてるものです。
ナイスタイミングというか何というか。

現在最終推敲の真っ最中。でもどうも容量ヤバそうですね。
次スレ立ったら投下します。
511通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 21:57:54 ID:???
新スレのテンプレは、避難所にあるまとめ人様の置いたアレでいいのかな
ちょっとスレ立て挑戦してくる
512511:2006/03/22(水) 22:01:07 ID:???
立てられなかった…… orz 誰か頼む


もしシンじゃなくてマユが主人公だったら14

このスレは、機動戦士ガンダムSEED DESTINYの主人公がシンではなく妹のマユだったらという
二次創作SS小説そして妄想スレです。
必読事項↓
・マユ・アスカが主役で、運命キャラがメインです。
・概要抜粋型(短い)と小説型(長い)どちらでも可
・シリアス及びギャグ何でも可
・煽り荒らしは、スルーしましょう(重要)
・作者叩きは、禁止
・「○○イイ!○○○イラネ」などの特定職人マンセーはあまりよくないです。
意見がある人は各職人様にアンカーをつけてレスしてみましょう。
その際
「○○○の部分が、○○○のようにおかしい」
「○○○のような書き方は気をつけた方がいいと思う」
等、言いたいところをできるだけ「丁寧に」書いてレスして下さい。
誠意ある質問には必ず誠意ある返答がある筈です。
質問は見やすいようにコテハンをつけておいてもよいかもしれません。
より良い作品・スレ作りにご協力下さい。
「面白い」って意見も、ただ「乙」とか一言で済ませるんじゃなくて、「○がよかった」「○に感動した」とか書き込むと、
物書きにとっては何よりの応援になります。
その作品にのめり込んでるなら、その作品でキャラが起こした行動自体に対して、叫ぶのもいいと思います。

・職人常時募集中

避難所兼雑談所のアドレスは、過去ログ(パート2)にありますのでご自分で探索してください。

前スレ
もしシンじゃなくてマユが主人公だったら13
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1140881256/

その他関連スレ↓
新キャラメインでDESTINY学園開校7
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1141559512/
【SS】新シャア板の職人相談室【イラスト】
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1141485657/
まとめサイト兼過去ログ置き場
http://members.ld.infoseek.co.jp/rurukubo/mayukako.htm
513通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:01:40 ID:???
OK、ちょっと行って来る
514通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:05:05 ID:???
立った立った新スレが立った
515通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:06:18 ID:???
513だ。ミッションコンプリート。

もしシンじゃなくてマユが主人公だったら14
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1143032598/l50

長編はこちらへ。
516通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:06:20 ID:???
>>513
乙!
517通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 22:29:59 ID:???
隻腕書いてるものです。新スレ立てに関わってくれた皆さん、感謝です。
メモ帳のテキストファイルで48kb。やはり新スレ立ててもらって良かったようで。

ではまた

ノシ
518通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:06:12 ID:???
恐いかあ・・・
確かにあの反応は恐いなぁ
でもそれは隻腕の人の力量がなせる技だし
このままアクセル踏み続けるかそれともブレーキをかけるか・・・
ともかく隻腕さんガンガレ!
519通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:27:48 ID:???
てか速攻で読んで速攻でレスする奴多いな
520通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:32:35 ID:???
リアルタイムっていうくらいだからね
暇な時に読めるけど、実況と同じで「見て(読んで)すぐに」って椰子も多いだろうさ
521通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:35:28 ID:???
で、褒めるのも責めるのも反射的、と。
アニメの実況感想って内容薄いしな
522通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:44:32 ID:???
隻腕乙。
これがアニメやったら、まず作画が追いつかんだろうけど素晴らしかった。
流石にマーレ様はデストローイされた直後にカーペンタリアまでは行けなかったか・・・。
そこが残念だが、レクイエム編(?)に期待。
あと、サイも登場したんだから、そろそろブルーコスモス真☆盟主のK様が登場してもいい頃じゃないか?
523通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:47:57 ID:???
でも、ちょっと前だったらかなりの勢いでGJが並んでたから、
それだけ今回は納得しかねる人が多かったって事じゃ?
524通常の名無しさんの3倍:2006/03/22(水) 23:55:16 ID:???
てか、何言ってもいいって感じの香具師が増えた気がするなぁ
批判にしたって、負債版への憎悪やアンチをそのまま持ってくるのはちょっと待った方がいい
ラクスも再登場の時にはああなるとは思ってなかったしな
525通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 00:17:09 ID:???
たしかに最近は職人様方への感謝の気持ちが薄れてる気もするね。
マンセーばかりじゃなく批判も大事なんだろうけど、それも言い方やタイミングってものがあるし。

あと、現在はそれほど表立っていないが、これからを考えて作者様方に。
仮にも設定やキャラクターなどを勝手に「使わせてもらっている」立場だということを努々お忘れないよう。
毎日決まった時間に福田邸に向けて祈りを捧げろとまでは言いませんが、相応の配慮をお願いします。
私の個人的な、二次創作をやる上での心構えですが。
526通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 00:51:37 ID:???
単発設定小話 「Planetarium」携帯電話編@

〜マユの携帯電話を調べているヴィーノ〜
ヴィーノ「・・・う〜ん。ICはまだ生きてそうだし・・・電気の通り道が切れてるだけみたいだけどなぁ・・・」
マユ「修理できそうかなぁ?ヴィーノ兄ちゃん」
ヴィーノ「大事な携帯電話なんだろ?1日預かってもいいか?」
マユ「うん、いいよっ!じゃ頼んだからね!」
〜ヴィーノに携帯電話を預けてシフトに戻るマユ〜
ヨウラン「よっ!なにマユを口説いてんだよ!」
ヴィーノ「わあっ!いってぇな!」
ヨウラン「なに?その携帯電話?」
ヴィーノ「マユが修理できるかって聞いてきてんだよ・・・」
ヨウラン「ふ〜ん・・・ちょい貸してみ?」
〜ヴィーノから携帯電話を取り上げるヨウラン〜
ヨウラン「・・・ずいぶんと型落ちした携帯だなぁ。10年以上前の携帯じゃないのか、これ?」
ヴィーノ「物持ちいいってことじゃん。なんとか直りそうなんだから返せよ」
ヨウラン「ああ。直ったらもう一回見せてくれよ。」
ヴィーノ「マユよりも前に見る気かよ?」
ヨウラン「いいからいいから。いいもん見せてやるからさ」
〜休憩を終えるヨウラン。シフトから開放されたヴィーノ〜
ヴィーノ「さ〜てと、ちゃっちゃと直してみせようかな」
〜机の引き出しから工具一式を取り出し、携帯電話を分解しはじめるヴィーノ〜
ヴィーノ「やっぱりね。ここをつなぎなおせば・・・楽勝だぜ!」

〜早速ヨウランに見せにいくヴィーノ〜
ヨウラン「お、直ったのか?どれどれ・・・」
ヴィーノ「なんか面白い機能でもあんの?」
ヨウラン「まあまあ・・・部屋の電気消してくれるか?」
ヴィーノ「なんか光るの?」
ヨウラン「ここを押してっと・・・ほらっ」
〜暗くした部屋の天井に無数の光の点が映し出された〜
ヴィーノ「おお、すげぇ!プラネタリウムだ!」
ヨウラン「な、すごいだろ?・・・?なんだ・・・文字がでてきたぞ・・・」
ヴィーノ「体温?脈拍?脳波レベル?精神状態?・・・そんなのまで測定できるの?この携帯電話・・・?」
ヨウラン「いや、そこまでは詳しく知らないけど・・・そんな機能もついてたのかなぁ・・・・・・?」
〜部屋の電気を点け、携帯電話を閉じる〜
ヴィーノ「まぁいいや。とにかく直ったんだし、マユに返してくるよ」
ヨウラン「ああ・・・・・・」

〜マユの部屋のドアをたたくヴィーノ〜
ヴィーノ「マユー?携帯電話直ったぞ〜」
マユ「ヴィーノ兄ちゃん!直ったの?携帯電話?」
ヴィーノ「ああ、はい。一通りのチェックはさせてもらったけど、メモリーなんかはチェックしてないから残ってるかどうかは保障しないぜ?」
マユ「うん・・・消えてたら消えてたでいいの。ありがとう!ヴィーノ兄ちゃん!」
〜携帯電話のメモリーチェックを始めるマユ〜
マユ「うんうん。電話帳も消えていないし、映像データもOKね・・・」

Aへ続く。
527通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 17:23:38 ID:???
スターゲイザーのバスター改(仮)、デュエル改(仮)がイイな
このスレでも出てこないものか
528通常の名無しさんの3倍:2006/03/23(木) 21:33:10 ID:???
このスレもあと少しで終わり。
作者さん達&纏め人さんお疲れ様でした。
次スレも頑張ってください

あと、纏め人さん、アンタ仕事速いなあ。
スレの最後くらいにしかこういうことは書き込めないけどいつも感謝しておりますです。
529479:2006/03/24(金) 03:47:35 ID:???
なんか恐くてスレが開けなかったんですが暖かく迎えてくださって安心しました
期待大というお言葉も感謝感激です
というかARMSからアルターの流れは笑いましたwww

470KBって微妙だけど隻腕さんほど長くないし大丈夫だよな…
投下します
530I and I and I(1/7):2006/03/24(金) 03:51:39 ID:???
知らないわたしにサヨナラ。
今のワタシにコンニチワ。
何も思い出せないまま、もう何ヶ月も経ってしまった。
戦争も終わって、マルキオハウスはワタシが来た時より更に賑やかになる。
帰ってきたマルキオさんに、キラさんにラクスさん、マリューさんとアンドリューさん。
様々な人が、マルキオハウスや孤児院で暮らしている。
それにカガリ様やアスランさんやサイさんやミリアリアさんもたまに来てくれる。
初めて会った人達ばかりだけど、みんな優しくしてくれる。
でも初めて会ったって、何も覚えてないから当たり前なんだけど。
あと、ワタシ、カリダさんから名前を貰ったんだった。
今のワタシの名前、ヴィアっていいます。



〜I and I and I〜 第二話「砂漠の大地と今の自分」



マユの家族の捜索は難航していた。
身元不明なのは元より、プラントに移住するコーディネイターが増えたことも要因の一つ。
マユというこの名前も、皆は知らない。
捜索が長丁場になることを悟って、カリダはマユに一時だけの名前を決めることにした。
「いつまでも名前が無いままじゃあ、可哀想だものね」
531I and I and I(2/7):2006/03/24(金) 03:55:00 ID:???
名前がわかるものでもあればその名で呼べるのだが。
生憎、マユはそれらしい物を持っていなかった。
「ヴィア…なんてどうかしら?」
「ヴィア?」
「そう。私の姉の名前なの。少しね、あなたに似てるのよ」
こうして、ヴィアという名前を貰ったマユ。
キラとカガリの実母の名前だが、二人には馴染みのない名前だからと命名したらしい。
「ヴィアちゃんか。んー、いい名前だ」
「あ、アンドリューさん」
「ちょっといいかな?」
アンドリューに誘われ、マユは一緒に外を出た。
砂浜を二人並んで歩く。
「どうかしたんですか?」
「君も義手が必要なんじゃないかと思ってね。僕もそろそろ義手にしようと考えてる」
アンドリューも、戦時中に片腕を失っている。
肩腕の者同士、不自由なのは理解できるということなのか。
マユは少しの間考え、口を開く。
「義手なんて、必要ないです」
「ん?どうしてだ?」
「…亡くしたモノは、還ってこないと思うから」
ぽつりと言ったマユの言葉に、アンドリューは黙り込んでしまった。
マユの言葉が何を指しているのかははっきりしない。
家族のことか。
それとも、腕のことか。
532I and I and I(3/7):2006/03/24(金) 03:59:50 ID:???
あるいは、思い出せない記憶のことなのか。
「確かにそれは一理あるかもしれないな」
黙っていたアンドリューがゆっくりを話を始める。
「僕も大切な人を亡くしている」
アイシャ。アンドリューの愛した女性。
大切な存在を亡くしたのは、アンドリューだけではない。
キラもラクスもアスランもカガリもマリューもミリアリアも…
「だが、僕の想い出の中に彼女は生きてる。残った人間の勝手な考えかもしれないがね」
苦笑しつつ、アンドリューはマユにそう言った。
想い出すらも無いマユには酷な話かもしれない。
しかし、それは一時的なものと、アンドリューは考えていた。
「君は忘れただけだ。決して無くしたわけじゃない」
だから還ってくるさ。
そう付け足して、アンドリューはマユの頭をぽんぽんと叩いた。

旧・南アフリカ統一機構、現・アフリカ共同体の砂漠を、ジープが走る。
ジープにはカズイ、サイ、ミリアリア、そしてマユが乗っていた。
戦争も終わり、アークエンジェルクルー達は今、それぞれの道を進んでいる。
ミリアリアは記者を目指し、サイはカズイと共に支援活動に力を入れることにした。
533I and I and I(4/7):2006/03/24(金) 04:03:30 ID:???
この地に来たのも、かつての戦地の取材や戦災による復興作業の手伝いのためである。
マユはそのことを聞いて、同行すると言い出した。
生きているかもしれない家族や親戚関係を探してくれるのはありがたいと思う。
だが、マユにはそれが他人事のように感じ、自分のことだという実感が持てなかった。
今のマユは、マユであって、マユではない。
マユという人間だったことを忘れ去ったマユ。
「ヴィア、ここであたし達は地球に降りたのよ!」
ジープのエンジン音に掻き消されないように、ミリアリアが声を上げた。
ヴィア…今のマユの呼び名。
マユという名も知らぬマユの名前。
「確か、カズイは地球は初めてだったんだよな」
「今はもうだいぶ慣れたけどね」
サイの言葉に、カズイは苦笑する。
海すらよく知らなかったのも今では懐かしい話。
「てかさ、自分だってあんまりいい思い出ないんじゃない?」
「うっ……」
「ちょっと!ヴィアがいんのよ!」
険悪なムードになりつつある前部座席を、ミリアリアが制止した。
マユは聞いているのかいないのか、そっちのけで外を見ている。
534I and I and I(5/7):2006/03/24(金) 04:06:13 ID:???
「砂漠かぁ…」
暑い風、照りつける日差し、流れる汗、全てが新鮮だった。
オーブで淡々と暮らすよりもこちらの方がずっといい。
マユはそう思っていた。
「あっ!」
ふと、マユが何かを発見する。
見えたのは、砂漠の大地に立つ女性。
その女性はマユと目があうと、艶のある笑みを浮かべた。
「どうかしたの?」
「あそこに人が…」
ミリアリアに声をかけられ、マユは振り返る。
そして、もう一度先程の場所を指差した。
だが、そこにも周りにも、誰の姿も存在しない。
「あれ…?見間違いだったみたいです…」
訂正するが、本当に見間違いだったのだろうかと、マユは疑問に思う。
何故かマユには、誰かがいたよう気がしてならないままだった。

一夜を明かす予定のタッシルに、ジープは到着する。
「サイーブさん、お久しぶりですー」
「よう。なんかお前等随分と大人っぽくなりやがったなぁ」
ジープから降りる面々を待っていたのか、髭を蓄えた中年男性がやってくる。
アークエンジェルに手を貸したレジスタンス・明けの砂漠のリーダー、サイーブである。
「艦のみんなは元気か?あの規律正しそうな副長さんは?」
535I and I and I(6/7):2006/03/24(金) 04:08:02 ID:???
「…バジルール中尉は、戦死されました」
「そうかい。なんか嫌なこと聞いちまったな。まぁゆっくりしていってくれ」
ミリアリアとサイーブは話を続け、カズイとサイはガソリンの調達に向かった。
残ったマユは一人ジープに残り、携帯電話を取り出す。
地球の電波妨害もある程度は解消され、長距離電話もかけられようになった。
以前はオーブ国内でギリギリ電波が届く範囲だったというのに。
今マユが持っている携帯電話はカリダから渡された物である。
「あ、カリダさん?今タッシルっていう所に着きました」
今のマユにとってはどうでもいいことになりつつある過去の自分。
その情報が入っていないか聞くために、定期的に連絡を入れている。
「はい、わかりました。いえ…じゃあ、また」
電話を切り、マユは溜息をついた。
「もうそんなことわからなくていいのに…」
過去の自分も、確かに大切かもしれない。
しかし、今を生きている自分の方が、大切だと感じる。
日々を重ねていくごとに、その思いは強くなっていった。
「あ…メールが来てる」
そんな中で、マユはお互いに顔も知らない相手とメール交換するようになった。
536I and I and I(7/7):2006/03/24(金) 04:11:59 ID:???
偶然知り合った、ハンドルネームと性別と年齢ぐらいしかわからない相手。
しかもそれが正確なのかもわかりはしない。
『件名/Dear ヴィアちゃん
 本文/元気にしているかい?
 僕は今日、昼の会議が長く続いたせいでくたくただよ。
 ヴィアちゃんはもう昼食は済ませたかな?』
日に何通も着くわけでもなく、一言二言の内容。
それでも、マユは嬉しかった。
過去の自分のことも知らないし、聞いてもこない。
今の自分だけを知ってくれる相手。
『件名/Re:足長お兄さんへ
 本文/会議お疲れ様です。毎日忙しそうですね。
 ワタシもまだお昼は食べていません。何食べようかな?
 今、旅行中なので、この辺の特産料理でも食べようと思います。』
利き手ではなかった左手でボタンを打つのももう慣れてしまった。
返信が完了すると、マユは携帯電話を閉じる。
何気なく見上げた空には、澄んだ青空と、太陽が輝いていた。
空を望むマユのその顔は、笑っている。
ヴィアとして生き始めたマユの、何かが変わりだした日だった。

537479:2006/03/24(金) 04:24:33 ID:???
なんか余裕でしたね
ついでに後書きでも…

名無しのままでは寂しいので命名してみたが…名前がわかる物持たせればよかったかな…
名前についてはヴィアママンとマユは似ている気がしただけだったり
それが平井クオリ(ry
一話で二話でわかる通りマユは受信しちゃったり見えちゃったりする子です
ニュータイプ…じゃなくて空間認識能力かな?ん?霊能者か?
そして伏線でモロバレな謎の女性…
わかってても内緒でお願いします
538通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 04:42:03 ID:???
女性?
まぁともあれ乙。今までスポットライトの当たってない人たちが中心になるのは新鮮で良いね。

ところで空間認識能力ってのは空間を立体的に把握する(たとえば野球でフライを取るために使ってる)能力のこと。
特別な力でも何でもないぞ。ムネオとかは「異常に発達」してるだけ。
というわけで素直に霊能にしておこうぜ。
539通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 10:17:28 ID:???
感謝の気持ちが足りないってのはよく分からんけどな。
むしろ今までがベタ褒めばかりで不自然だったから、これくらい賛否両論入り混じる方が健全だとは思うが。
540通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 11:34:14 ID:???
>>足長お兄さん

!? ユウナ? それともギry(お兄さんはちとキビシイw)
541通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 18:38:43 ID:???
今までにないパターンの内容で、読んでてワクワクしますね。
前作キャラへのスポットの当て方もいい感じだなぁと思ってます。

そして謎の女性より足長お兄さんの正体の方がものすごく気になりました(ぉ)
続き期待しています! GJ!!
542通常の名無しさんの3倍:2006/03/24(金) 20:04:09 ID:???
足長お兄さんワロタ。
多分あの人なんだろうな、と思いましたがこれいかに。
一つつっこみ。
「君は忘れただけだ。決して無くしたわけじゃない」
中々いい台詞ではありますけど、思い出せないだけ、と言った方がいいような気がしました。いや、何となく。
SSも書かない部外者の指摘するこったぁないとは思いましたが。スレ汚しすみませんでした。
543通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 05:30:38 ID:yZRI25ZV
投下するのも、それに意見を出すのもそんなに卑屈になる必要はないと思うんだがなぁ…
544通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 12:25:15 ID:???
卑屈って相手は思ってないかもしれんよ?
545通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 18:46:12 ID:???
投下する側は常に怖いもんよ、何を投下するにしても
完全無視とか袋叩きとか弱い考えばかり浮かぶ
卑屈っつーより怯えてるってことなの
546通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 18:53:42 ID:???
読者の反応っつーとしのはら氏の時を思い出す
そして今の隻腕
正直どっちも恐いね
547通常の名無しさんの3倍:2006/03/25(土) 22:20:27 ID:???
今の、絶賛だけじゃなくてある程度批評が許される空気は歓迎すべきことだと思うけどな。
書き手より読み手の方が耐性が足りないと言えばいいのか。
548通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 01:30:32 ID:???
>>546
作者、支持者共に悪乗りしての最後だったからな…
549通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 01:31:56 ID:???
隻腕の感想は名ありキャラが大量死した所から急に空気変わったな
550通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 02:07:05 ID:???
まあもうちょっとバラバラボチボチ死んでいってもとは思った
551通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 02:34:14 ID:???
個人的にちょっと、ほんのちょっとだけど、
在庫一掃処分な感じがした
552通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 03:41:55 ID:???
言いたいことはいろいろあるがそれがその人の特色だったりするからね
良いか悪いか別として
553通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 21:05:30 ID:???
物語が一気に動乱する予感でwktkしてたな、オレは>大量死

まあ、空気が変わるのは仕方ないんじゃねーの?
そもそも、人(というか、まあキャラなんだが)が死んで空気がいつもどおりだったら、
そっちのほうが報われないと思うのは俺だけか?
554通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 22:12:24 ID:???
それだけ感情移入してる奴が多いってことだからな。
555通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 23:13:43 ID:???
あそこから始まった鬱展開で、図らずもバッドエンド好きばかりが選別されたのかも
鬱過ぎてもうついていけない、とか書いてた奴いたし
それで残された鬱好きが、最近の勧善懲悪な展開になりそうな流れに文句言ってるとか
556通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 23:18:09 ID:???
隻腕にトミノ臭を感じてた奴らが再び香り始めた種臭に文句言ってるだけだろw
557通常の名無しさんの3倍:2006/03/26(日) 23:23:05 ID:???
結局は手のひらの上で踊らされてるんだよ
隻腕の人にも負債にもね
558通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 01:08:00 ID:???
とりあえず何でもかんでも、本編の逆をつけば良作、
本編に倣えば駄作、みたいな無思考アンチもいそうだけど
559通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 09:28:41 ID:???
皆、現時点の作品の素直な感想を言ってるだけだと思うが
560通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 12:20:14 ID:???
死んだキャラのキャラ厨が暴れてるように見えるってのは禁句?
561通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 13:33:32 ID:???
>>560
確かにキャラがバタバタ死に始めた辺りから徐々に感想とも批評とも言えないチラシの裏に書くべきレスが増えたとは思うな

そもそも戦争を題材とした作品でキャラが死ぬのを鬱だ何だと騒ぎ立てる馬鹿がわざわざここにいるわけがないことを考えれば
誰が1人で必死に踊ってるのかは容易に予想がつく。多分犯人はしのh(ry
562通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 13:36:36 ID:???
>>560
安易に厨決めつけをすると荒れてしまうかもしれないからやめときましょう。
世間は春休みだし、些細な事で何が起きるかわからないから。
それにしても、批判が増えるのはそんなに異常な事なんでしょうか?
563通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 14:31:05 ID:???
批判以前に、レスの増え方が異常だったからな
564通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 18:19:45 ID:???
最初から最後まで同じ味しかしないコース料理なんて即飽きる
途中で酸味のある料理が出ても全体を通してみればバランスとれていたりする

作中でキャラが成長していくお話なんだからそんなに過剰反応しなくていいじゃない
565479:2006/03/27(月) 21:41:53 ID:???
あらら…どうやらみなさんメル友の方に興味があるようで…
たぶんご想像通りだと思いますw
謎の女性は今回のゲストキャラのようなものですからね
すぐにわかっちゃいますが

>>538
調べてきましたがご指摘通りです…
種世界のピキーンてしたり精神体になったりする人達の一人
…という感じでマユを見ていただければと思います

>>542
表現が遠回し過ぎましたね
ここは直接的な言い方よりは…と思ったんですが
逆に伝わりづらかったことをお詫びしますorz

まだこちらが大丈夫そうなのでこちら投下しま〜す
566I and I and I(1/7):2006/03/27(月) 21:45:26 ID:???
昼の砂漠は暑くて、夜の砂漠は寒い。
なんだかとても不思議で、素敵だと思いませんか?
なんて、今の自分には何もかも素敵に見えているのかもしれない。
でも、それでいいんだって、ワタシは思いたい。
今を生きてるのは、記憶があった頃のわたしじゃないんだから。
今のワタシが、ワタシなんだって思う。
砂漠のサラサラな砂みたいに、時間は流れていく。
だから立ち止まっていなくない。
あ…砂漠で思い出したけど、あの時の女の人は本当に見間違いだったのかな?
時間が経った今でも、気になっている。
誰なんだろう。



〜I and I and I〜 第三話「白い猫」



タッシルで夜を明かしたその翌日。
質素な朝食を済ませ、マユ達は移動のための準備をしていた。
次の目的地はタッシルとさほど遠くはないバナディーヤという街。
「お話、参考になりましたぁ」
「大した話じゃねぇがな」
ミリアリアが一礼し、サイーブが軽く返す。
二人共笑ってはいるが、少し疲れ気味の表情だ。
夜通しでアークエンジェルが砂漠を離れた後のアフリカの状況を伺っていたせいである。
「よし、積み込み終わったぞー」
サイが皆に声をかけた。
567I and I and I(2/7):2006/03/27(月) 21:48:30 ID:???
サイーブに別れを告げ、ミリアリアはジープに向かう。
カズイが後部座席のドアを開くと、マユが乗り込んだ。
「そんな過保護にしなくても大丈夫ですよ」
「でもさ、ヴィアはいろいろと大変だろ?」
心配そうに言うカズイの顔を見て、マユは笑いながら首を振った。
「左手だけの生活も、もう慣れちゃいました」
着替えも食事もトイレも文字を書くことも、携帯のボタンを押すことも簡単にできる。
コーディネイターの適応力の高さだけではない。
今の自分として生きようとしているマユが、必死に慣れようとした結果だ。
全員が乗り、ジープが発進する。
「隻腕の少女、か……」
砂漠の中に消えていくジープを見送りながらサイーブが呟いた。
思うのはバルトフェルド隊に対して抵抗していたあの頃。
仲間も、まだ若かった命も、失った。
なのに敵だったその人物が、今では好意的な仲であるというのはおかしな話である。
様々なものを失ったというのに生きている少女。
それが今の現状を表しているようで、思わずサイーブは溜息混じりに笑ってしまった。

オアシスの街と呼ばれるバナディーヤ。
戦時中はバルドフェルド隊の拠点だったこともあった街に、ジープが着いた。
568I and I and I(3/7):2006/03/27(月) 21:51:15 ID:???
「あたし達は街に出られなかったのよね」
「確か…サイがストライクを動かそうとしたんだっけ」
「ハハハ……」
それぞれが当時のことを思い出す。
マユは新しい街に、心踊らせていた。
タッシルではあまり名産品などは見れていなく、賑やかなこの街ならと期待が高まる。
「バルトフェルド隊長の話だと、ザフトが復興作業に来ているのよね」
「まぁ、隊長が手配した旧クライン派の人ってことだけど」
「俺達も手伝えないかな?」
「あたしもちょっと取材したいな」
カメラを片手にうずうずするミリアリア。
マユはそれを感じ取って、笑ってみせる。
「ワタシ、ちょっとお店見て回りたいです」
「じゃあ一時間後に合流しましょ。それじゃ!」
「行っちゃった…。ヴィアも一人で行くのか?俺かサイがついてくけど?」
走っていくミリアリアに呆れつつ、カズイはマユに訊いてみた。
マユは先程と同様に首を振る。
「さっきも言いましたけど、ワタシは平気です」
くるっと回って、大丈夫なのをアピール。
「それに、一時間も女の子の買い物に付き合えますか?荷物全部持たせちゃいますよ」
そう付け足されると言うに言えず、カズイとサイは互いの顔を見る。
569I and I and I(4/7):2006/03/27(月) 21:54:00 ID:???
二人は苦笑しつつも、どうやらマユを行かせるつもりらしい。
「じゃあ、一時間後に」
「あんまり無理はしないようにね」
カズイとサイはそう告げて、マユと別れた。
一人になったマユは楽しげに歩を進め始める。
オアシスの街ともあって活気がある人々。
民芸品や瑞々しい果物と野菜を眺めつつ、マユは観光気分を満喫していた。
そして、とあるオープンカフェの前でふとマユは立ち止まる。
「ドネルケバブって、なんだろう?」
食べ物らしいことはわかるが、どんなものなのかは想像できない。
街の人やザフト兵士などの客が食べているのがそうなのだろうか。
メールフレンドに送る話題になるだろうと、マユは席についてドネルケバブを注文した。
しばらくして、ドネルケバブが届く。
削げ切りされたジューシーな肉が挟まれたサンドイッチのような印象。
そして置かれる二つのソース。
「どっちをかけるのかな?両方?それともかける順番があるの?」
「好きな方をかければいいのよ」
食べ方がわからず困惑しているマユに、誰かが声をかけてきた。
睨み合いを続けるケバブからマユは顔を離す。
目の前には、女性が座っていた。
マユが砂漠で見たあの女性である。
570I and I and I(5/7):2006/03/27(月) 21:56:45 ID:???
「チリソースかヨーグルトソース。好きな方をかけて、ガブッといっちゃいなさい」
あの時視線があったのだから、この女性も自分のことを知っているはず。
だからこうやって話しかけてきているのだろうか。
色々と訊きたいが聞くに聞けず、マユは諦めて、またケバブに向き合う。
二つのソースを皿の隅につけ、それぞれ舐めてみた。
ピリリと辛いチリソース。
酸味のきいたヨーグルトソース。
チリソースは辛すぎる気がするし、逆にヨーグルトソースは酸っぱすぎる気がする。
「……どっちもかけちゃえ」
マユはチリ、ヨーグルトの順でソースをケバブにかけ、そして一口頬張った。
「うんっ。美味しい!」
「アハハハハッ!!」
マユの一連の出来事を見て、女性は笑いだす。
「あなた面白いわねぇ。こんなに笑ったの、あの時以来よ」
「あの時?」
「その二つのソースとお茶を被ったを女の子がいてね、
その子をお風呂に入れてドレスを着せてみたのよ。
態度は男の子みたいな感じなのに、凄く似合ってた。
でも一緒にいた男の子が君、女の子だったんだねって」
笑い続けながらも、女性はそう話した。
マユもつられて、思わず笑ってしまう。
571I and I and I(6/7):2006/03/27(月) 22:00:04 ID:???
最初は不思議な感じがしたが、今はすっかり打ち解けていた。
ケバブも食べ終え、そろそろ約束の時間も迫っている。
「ごちそうさま。ワタシ、もう行かなくちゃ」
「そう…残念ね」
女性はそう呟いて、淋しそうな表情を浮かべた。
その横顔を見ると、マユは途端に名残惜しくなる。
だが、淋しそうな横顔は、すぐに一変した。
「…伏せて」
「え?」
「いいから」
言われるがまま、マユはテーブルの下にしゃがみ込む。
その時だった。
「死ね!宇宙のバケモノォ!!」
「蒼き清浄なる世界のために!!」
突然、武装した男達がカフェを襲撃する。
客としてきていた数人のザフト兵士達は慌てつつも応戦し始めた。
テーブルの下で震えるマユ。
目を瞑り、耳を塞ぎ、ただただこの事態が終わることを祈る。
オノゴロ島でのことを体が覚えているのか、激しく体が震え続けた。
しばらくして、マユは辺りを窺ってゆっくりと顔を上げる。
事態は収まっており、武装した男達はザフト兵士達に取り押さえられていた。
浅いか深いかわからないが、互いに傷を負っている。
だが、皆が無事であったことにマユはほっとした。
そして、女性のことを思い出す。
「あの、さっきはありがとう…」
572I and I and I(7/7):2006/03/27(月) 22:03:10 ID:???
事態を察して教えてくれたことに、お礼を言おうと振り返った。
だが、しかし……
先程までいたはずの女性は、あの時と同じように忽然と消えていた。
「…ございました」
全ての言葉を言い切っても満たされない。
その言葉を聞いてもらいたい相手が、いなくなってしまっていたから。

それから数日が経ち、バナディーヤを出発する日がきた。
荷物を積んで、全員がジープに乗り込む。
「次はどこ?」
「ガルナハンてとこよ」
「ユーラシアだっけ?じゃあアフリカとはお別れか」
カズイ達が会話している。
マユはバナディーヤの街を眺めていた。
ふと、こちらを見ている白い猫に気が付く。
短いような長いような時間の経過の中、見つめあいが続いた。
「アイシャ、やっと見付けたぁ!勝手にどこか行っちゃメでしょ〜」
そんな時間を遮るように、やってきた少女がその猫を抱き上げ、家に入ってしまう。
それと同時に、エンジンがかかりジープが発進した。
マユは心の中で、感謝の言葉を呟く。
ありがとうございました、と。

573通常の名無しさんの3倍:2006/03/27(月) 22:05:24 ID:???
GJ!彼女は猫になったのね……

新スレのほうに更新報告しときました。
574通常の名無しさんの3倍:2006/03/28(火) 21:42:02 ID:???
ゲン・アサニクスの成分解析結果 :

ゲン・アサニクスの56%は気の迷いで出来ています。
ゲン・アサニクスの19%は気合で出来ています。
ゲン・アサニクスの13%は媚びで出来ています。
ゲン・アサニクスの7%は税金で出来ています。
ゲン・アサニクスの5%はマイナスイオンで出来ています。

シン・アスカの成分解析結果 :

シン・アスカの60%は見栄で出来ています。
シン・アスカの23%はハッタリで出来ています。
シン・アスカの7%は月の光で出来ています。
シン・アスカの4%は媚びで出来ています。
シン・アスカの4%は利益で出来ています。
シン・アスカの1%は宇宙の意思で出来ています。
シン・アスカの1%はカルシウムで出来ています。


575574:2006/03/28(火) 22:36:47 ID:???
すいません、ゲンの名前が間違ってました。
パート14が、正解です。
576通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 00:10:32 ID:???
なんでこの時期にageるんだろ…
春厨だろうから仕方ないけどさ
577通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 02:25:32 ID:???
早く埋めるためだろ。
すぐに春厨認定したがるのはそれこそ「春だなあ厨」の症状。


とりあえず埋めage
578通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 02:46:09 ID:???
だからageんなよ
579通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 02:53:52 ID:???
一つ上のレスも読めないとは恐れ入った
580通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 02:56:08 ID:???
>>577
新スレのことなんだけど
このスレおまいがageるまで土曜から上がってないよ
ログちゃんと読んでる?
それとも新スレを早く埋めるの?
つか埋めるってこのスレに見せたくないものでもあるの?
新スレ立つの中途半端に早いから埋めがこんなグダグタになるんだよ
投下なかったら490KBもいってないよ
それと埋めageって何?
ageたら容量完走するの?
1000逝くの?
581通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:00:10 ID:???
穏便に意見を言い合いましょうよ。
互いに譲り合えば、きっと上手にまとまりますって。たぶん。
状況を考慮することと、他者を思いやることが大事。
582通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:01:59 ID:???
ねぇ、ちょっと思うんだけどさ
こんな事でガタガタ言っても始まらないじゃん。
大体これだけ長く続けば人の出入りも激しくなるしさ。
好き勝手やっていいってわけじゃないけどこっちはそろそろ埋まるんだし
きもちはわかるけどちょっと落ち着こうぜ。
583通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:03:48 ID:???
>このスレおまいがageるまで土曜から上がってないよ
この指摘から

>ログちゃんと読んでる?
>それとも新スレを早く埋めるの?
どうやったらこう飛躍するのかが分からん。

>つか埋めるってこのスレに見せたくないものでもあるの?
レッテルを貼っておきながら

>新スレ立つの中途半端に早いから埋めがこんなグダグタになるんだよ
>投下なかったら490KBもいってないよ
突然批判対象を変更

>それと埋めageって何?
>ageたら容量完走するの?
>1000逝くの?
490KBからどうやって400レス以上稼ぐのか逆に教えて欲しい
584通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:07:51 ID:???
つか、こういう言い争いはスレ埋め時の風物詩みたいなもんだから。
埋め論議から感想・批判の是非まで。
要は次スレに話題を持ち越しさえしなければ自分の主張言い放題でおk。

意外に人が潜伏してたみたいなんで朝までには埋まるかな?
585通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:12:05 ID:???
>>582
まぁ一理ある
ゆうこともわからなくもない
が、無意味にageる必要もない
良スレだからことsage進行が必要だと思う
いい加減住人ならそれくらいわかれよ
586通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:17:22 ID:???
議論しつつも遊び心を忘れないみなさんが大好きだ。
587通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:20:36 ID:???
>>583
だからageんな

>>584
次スレでって…その次スレで言いたくなかったらこっちで言ったのに…

それに成分分析のヤツはこっちにしとくべきだと思った
なんのための前スレなんだって話になる
その上新スレ立った時にろくに埋めもしないくせにやっと限界近付いたら埋め埋めて…
588通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:20:54 ID:???
>>585
スルーや任意sageは空気読んで自主的にやるもんなんだがなぁ。
マジ最近どこ見てもそういう事ができない輩が多い。
なまじ休みの最中だからかも知れないけど、だからこそ
いまのうちに空気の読み方とか勉強するべきなんじゃないかな。
589通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:39:45 ID:???
>>588
気がつけない椰子もいるわけで・・・
にしてもまだ500kbいかないか
すごい話してると思ったのにな
ん〜・・・飽きてきた・・・
なみだの数だけ強くなれるよアスファルトに咲く花のように
590通常の名無しさんの3倍:2006/03/29(水) 03:46:23 ID:???
もう無理ネタ切れw

見るもの全てに怯えないで 
明日は来るよ 君(マユ)の為に
591通常の名無しさんの3倍
                    ̄ ` ニ_−- ,,_ \  、
               __,,... -―――‐ニ=-:、:::`ヽヽ、丶
          ,. -‐''"____;;;::::-‐::::::::::::::::::::::::::::::::`::::ヾ:',
        ‐'"´ ̄ ̄  ,.- '"´.::::::: .: :: :: : : : : ::::::::::::::::::::::::ヽ
             ,.-'´.: . . .:  . .: .: : .:::..::::::::::::::::::::::::::::::::::',
           /::::/: .: ..: .::.:::: .:::::.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
           /::; ィ:::::: .:: .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
         /::/ /::/:::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::;::::;::::::::::::::::::::::',
          /'´  /:/j::::::::::::l::::l、:::l::::l:::::::::::::::::l;:::トハ::lヽi::::::::::::::::::::',
            /:/ l::::l:::::::::;:::l_ヽト、ト、:::::::::::::lヾT''リ〒l::::::::::::::::::::l     
           〃 l:::::!:::::::::ヽirT_フ〒\:、:::::l  ゞ‐'‐ l/l::::::::::::l}::!     埋めるならAAでも使えばいいじゃない?
          /   .! ::;l::::::::::::', ‐''" ̄  ,`ヽ::',     j:::::::::::::l:;:l       縦読みなんて時代遅れだし、やめてよね
              l ::ハ :::::::::::ヽ    、   ``     j:/:::::::::l::l`        「投下キター」とか思っちゃったじゃないか
          _,、    .l.::! .l ::::l:::::::トヽ    ..       /´!;:::::::::!リ
.     /゙} .// l     l:l  ';:::ハ::::::ヽ    '´_ ̄`    /'/::/l/-‐ ┐
    / /.//. /. /゙} .l:l  ';:l ヽ、l';:丶、        , '´ ,.イ:/    |
    / 〃/ ,' ./ .,'  リ  rヘ‐くヾ`';:lハ`ヽ ___ ∠ -ァ'´ ノ′     .|
 r-、/ ./ / / / ./     i  丶、<`_~ ̄__,,..-‐'         |
 ヽ l / /  y' /      l    ` − T {           , - ┴―-  __
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   {        ',      ,. - へ_      l l      /          _ -
   ∨ ̄i    l , ‐7´     ヽ、   ヽヽ,,..  -‐'´      __  -‐ _
.   ', : : ',   「   └  __      ̄ ̄ 「          , - _  -‐'"   `ヽ
.    ', : : :',   ∨ ̄_,`−-、 ヽ        l           / /
      }: : : :',  〈 r'"/   ,ヘl        l           / /
    rゝー ┴--ヘ/ _∠   ', ',        !       / /
.    i         ',ト、___}   ', ',      l         / /
    l         ̄`!l    ヽ/ ̄丶、 l         { {
      l          l,ヽ   /     丶、       ', ',
      ',        l ``ヽ、/        ヽ、    ', ',
      ',       トl  //           ヽ、   ', ',
       i      /!丶 / 入             ヽ、....ゝ ゝ
.      l    / i ヽ、」_> 、_
       l  r''´    i  ヽ      ` ‐ ,- 、