もしシンじゃなくてマユが主人公だったら14

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507通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 20:34:43 ID:???
なんか最近俺ニュータイプな厨多いね バカのくせに何を根拠にんなこと言ってるんだ?不思議で仕方ないんだが
508通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 20:52:00 ID:???
別に誰もνtypeきどっちゃいねーよw
509通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 21:03:08 ID:???
まとめのひともう次スレ立てちゃってください
510はまじ役熱演!猿ガキを宜しくお願いします!:2006/04/19(水) 21:17:46 ID:+MTYF4TJ
誰か猿ガキの行方知りませんか?
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1129685306/
511通常の名無しさんの3倍:2006/04/19(水) 23:07:43 ID:???
4スレぶりぐらいに来て見たんだが何時の間にかつまんんねスレになってますね
512通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 00:20:38 ID:???
ごめんね
513通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 00:55:56 ID:???
そこは

「ごめんんね」

じゃね?
514通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 01:31:27 ID:???
こんんなやり取りでスレ埋めるつもりかお前ら
515通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 19:03:42 ID:???
507 :通常の名無しさんの3倍 [sage493だけど] :2006/04/19(水) 20:34:43 ID:???
なんか最近俺ニュータイプな厨多いね バカのくせに何を根拠にんなこと言ってるんだ?不思議で仕方ないんだが


ワォ!
間違って煽った恥ずかしさのあまり自分を差し置いて他人をバカ呼ばわりですわ!
516通常の名無しさんの3倍:2006/04/20(木) 19:13:12 ID:???
>>515
おまいさんもまぁ落ち着けよ。
517通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 19:41:47 ID:???
hosyu
518通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 19:46:14 ID:???
保守んね
519ほのぼのマユデス。SEEDの代償。:2006/04/21(金) 21:25:55 ID:???
「失礼します。」
アスランは議長の執務室に入っていく。
他のメンバーは休みなのだが、アスラン、そしてラクスとして活動を続けているミーアは違った。
「やぁアスランくん。すまないね、せっかくの休みだったのに。」
議長は机の上の書類から目を離してにこやかに話す。
「いえ、それより議長。自分に用があると聞いてきたのですが・・・。」
敬礼をし、議長に話すアスラン。すると、議長は神妙な顔つきをして話を始めた。
「あぁ、これは君と・・・・ご友人、キラ・ヤマト君に関わる事だ。」
その途端、アスランの顔色が変わる。議長は話を続ける。
「前大戦の時、君たちはジャスティスとフリーダム、さらにミーティアを操りすばらしい戦果を上げた。
しかし、私は気になったのだよ。君たちは確かに強いがそれでも他のエースで何とかなるレベルだった。
だが突然ナチュラルも、コーディネーターでさえ越える力を発揮する。それは何故か?」
アスランは黙って議長の言葉を聴いている。
「それは、SEEDと呼ばれる因子によるものだ。昔、とある学者が発表したものでね。
何でもさらなる、進化した人類だそうだ。
だが、アスラン君。疑問に思わないか?あんな突然、なんの代償もなく超人になれるかどうか。」
その瞬間、アスランの表情が変わった。なんともいえない、驚きと不安が入り混じった表情。
「議長・・・!それは・・・!」
「私は、シンハロにあるシステムを組み込むよう指示した。『擬似SEEDシステム』というものだ。
一時的に普段の機能の数倍の処理能力やボディのリミッターをはずす事の出来るシステム。
520ほのぼのマユデス。SEEDの代償。:2006/04/21(金) 21:27:33 ID:???
その結果、今までシンハロは二度そのシステムを発動し結果膨大な負担が彼に掛かることが判明した。
これは君たちにも言えることだ。いくらなんでも体が、脳がついていけないのだよ。
数回の発動ならともかく、君たちはシンハロとは違い、メンテはできない。つまり負担をかけすぎた脳は
廃棄処分行きというわけだ。
アスラン君、君は今までの戦闘結果から見てどうやら平常のようだが・・・・・キラ君、フリーダムは君から見てどうかね?」
そういわれて、アスランは考え込む。
おそらく今まで自分とキラがSEEDと呼ばれる現象を起していたのは前大戦末期。
それも感情が高ぶった時だ。そして、あのフリーダムの戦いぶりからして・・・・。
「議長、キラは!あいつはどうなるんですか?!」
無意識のうちにアスランの声は大きくなる。そして、議長は彼に告げた。
「あくまで理論上の話だが・・・・思考能力の低下、性格の大幅な変化。さらに幼児化などの精神的な変化がまず来る。
しかも今まで得た技術や知識はまったく消えない。もし彼がこの通りになっているとしたら・・・・。」
うつむく議長。それを聞いていたアスランは絶句するしかなかった。
「だって議長!あいつは普通の奴なんです・・普通の・・!」
そう、確かにキラ・ヤマトは普通の学生だった。
普通に友達とバカな話題で盛り上がって、課題に文句を言って、宿題もなかなかやらなくて・・・。
だが、それを奪ったのは誰だ?彼から普通の生活を奪ったのは?

彼が彼であるための要素を全て奪ったのは誰だ?

「あ・・・・、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アスランの頭の中でぐるぐると色々なことが浮かぶ。
戦争のせいで、自分は悪くない。そう思うのは簡単だ。
だが、それでいいのか?間違いなく自分は人殺しでしかも大勢の民間人を巻き込んだ。
キラの他にも、ミリアリア、サイ、その恋人たち、その友達、アキラ。
自分はなのに、相手が優しいから甘えていたのでは?その責任から逃げていたのでは?
マユでさえ憎しみを受けることを自覚しているのに、自分は甘えていた?
遠くから声が聞こえる、でも、何を言っているのか解からない。


アスランは、そのまま倒れこんだ。
521通常の名無しさんの3倍:2006/04/21(金) 22:17:59 ID:???
おお、シリアスだ。
522通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 00:36:01 ID:???
いまだかつてないほどほのぼのの続きが気になる
523通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 07:50:35 ID:???
今更住人に媚びてシリアス路線で来られても。
524通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 08:20:29 ID:???
媚びてないし>>523は住人じゃないから問題ないよ
525通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 12:30:32 ID:???
いまさらって…ほのぼの氏は以前にもシリアスな話を書いてたじゃあないか
それにマイペースな人だから媚売るようなことはしないっしょw
526通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 13:10:17 ID:???
ギャグもシリアスも一切の躊躇無くごちゃ混ぜ。
それがほのぼのデスマユクオリティ。
ていうか議長がさりげなく酷いことを言っていて吹いた。
いや事実そのまんまだけどさw
527通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 20:37:22 ID:???
とりあえず、
嫌な雰囲気を絶ち切ったほのぼの氏に拍手。
528通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 22:09:49 ID:???
てか、あのキラの壊れ方に理屈つけてくれたのが嬉しい
単なるキャラヘイトの暴走じゃないって分かったし
529通常の名無しさんの3倍:2006/04/22(土) 23:56:51 ID:???
流れの豚切りはほのぼの氏のお家芸だからな
しのはら云々の時も躊躇わず投下
自分のアンチが騒いでても投下
思い切りの良さに清々しささえ感じる
530通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 01:12:30 ID:???
単発設定小話 「再演」クレタ沖海戦C

〜つばぜり合いを続けるセイバーとフリーダム〜
キラ「・・・・・・アスラン!・・・君はまだっ」
アスラン「キラ!なぜまた!・・・なぜ出てきた!
キラ「まだ・・・僕にもカガリにもやることがある。僕は、僕はカガリを助けたい。それでも君が、まだわからないというなら!」
〜フリーダムの背後からオレンジ色のポッドが現れる〜
キラ「できるなら撃ちたくない・・・アスラン。撃たせないで!」
〜そんなことを呟きつつも、セイバーに向けて乱射するガンバレル〜
アスラン「ガンバレルだと!?・・・光学兵器に改良までしているのかっ!」
キラ「避けた?・・・やっぱり重力下では・・・動きが遅い!」
アスラン「セイバーの機動力のほうが上だなっ!」
〜フリーダム本体に突進するセイバー〜
キラ「!?アスラン!後ろだっ!」
アスラン「!?・・・灰色のアストレイ!」
〜セイバーの背に向けてビームを放つアプレンティス〜
シン「借りはきっちりと利子つけて返してやるよっ!堕ちろっー!」
キラ「アスラン!どいて!」
〜セイバーをひらりとかわし、アプレンティスの正面に構えるフリーダム〜
シン「っは!わざわざ前に出てくるとはな!そうだ!赤い雑魚なんか後でいいっ!まずお前からだっ!」
キラ「・・・!?なに?このざらざらする感覚!・・・君は!?」
〜ガンバレルで応戦するフリーダム〜
シン「そんなものー!ドラグーンのできそこないなんかいまさら引っ張り出してくんなよなっ!」
〜アプレンティスは周囲に配置したドラグーンでフリーダムのガンバレルを撃ち落す〜
キラ「なっ!ガンバレルが!?」
〜そこに割り込むセイバー〜
アスラン「キラ!大丈夫かっ!?」
シン「雑魚が五月蝿いんだよっ!」
〜フリーダムを切りつけるつもりだったサーベルを、割り込んできたセイバーに振り落とす〜
アスラン「なっ!?」
シン「フンっ!だるまになって海底で座禅でも組んでろ!」
キラ「アスランー!!・・・・・・君はっ君は一体・・・<シュパーン>・・・このぉー!!」
シン「そうそう!本気になってくれなきゃな!スーパーコーディネイターさんよっ!?」
〜種割れしたキラと対等に渡り合うシン〜
〜ミネルバ〜
メイリン「セイバー、信号消失!」
タリア「アスランまでやられたっていうの!?アーサー!状況報告!」
アーサー「グフ、セイバー信号消失!ザクは2機とも本艦艦橋にてオーブ軍へ応戦。インパルスは手薄になっている敵艦隊に近づいています!」
タリア「アークエンジェルの影響はあまりわたしたちには関係なさそうね。あの灰色のアストレイのおかげかしら?」
〜ガーティ・ルー〜
ネオ「・・・シンのやつ!倒す相手が違うだろ!」
リー「しかし・・・オーブ軍のなんと非力なことか。大佐。このあたりで・・・」
ネオ「ああ!そうだな!?スティングはどうなってる?」
ブリッジ兵「カオス、インパルスと交戦中!押されています!」
ネオ「・・・潮時だな。・・・・・・リー、撤退だ。オーブ軍は・・・・・・ほっとけ」

完  ・・・クレタ沖海戦Dへつづく
531舞踏の人:2006/04/23(日) 21:41:54 ID:???
運命の舞踏12話投下開始します
532舞踏12話 1/13:2006/04/23(日) 21:44:19 ID:???

新設された月面都市『セレネ』へと向かう地球からの移民船団を突如襲った災厄。
プラント製の無人MS部隊による、非武装の移民船団に対する攻撃行為。
先の戦争によって生まれた戦争難民たちを乗せた船舶のうち、半数以上が大破するほどの被害。
――『セレネの悪夢』と。 マスコミによって名付けられたその衝撃的な事件は
パニック映画の如き凄惨な映像を伴って、瞬く間に世界中へ伝わっていった。

この事件に対し、特に反響が大きかったのは大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国やアフリカ共同体に属する地域だった。
セレネへの移民予定者の9割方は、ユーラシアや東アジア、アフリカからの難民や、大西洋連邦からの移住希望者。
プラントとの戦争に巻き込まれた難民たちが、新天地へ向かう道中にプラント製のMSに攻撃されたのだから
当然のように、それらの国ではプラントに対して敵対感情が一気に沸点寸前にまで高まった。

船団の中で生き残った船に乗っていた報道陣が撮影した、間近で繰り広げられる破壊行動の映像。
命無き襲撃者たちを鎮圧した、大西洋連邦軍がマスメディアへと提供した戦闘記録。
惜しみなく、次々と公表されていく情報がその気運を加速させつつあった。



『昨日、大西洋連邦軍はセレネ移民船団を襲撃したMSが、全てザフト製であった事実を公表しました』

『本事件における犠牲者は、現在までに85721人確認されていますが、今後も増え続ける模様です…』

『――当局のインタビューに対し、原因等については現在調査段階で、
 詳細の発表を控えるとのコメントをプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル氏は……』

長き年月を釉薬のように丹念に塗り重ねた、セピア調に統一された一室のサロン。
薄暗く照明落された室内の所々に点在する光源。 それらはホログラフ投影されたニュース画面だった。
チャンネル、言語、国家。 映し出されるニュースは全て異なるものだったが、ただ一つの点において統一されていた。
――それは報道されている内容。 番組で取り扱われているのは『セレネの悪夢』に関する情報ばかりだった。
533舞踏12話 2/13:2006/04/23(日) 21:45:43 ID:???

電子機械が紡ぐ様々な言語が飛び交う中、ひそやかな笑い声が方々から立てられる。
俗っぽい大笑いとは無縁の、上品さ漂う微笑を隣人と交し合う彼らは、礼服姿の男たち。
その大半は白頭であったり、あるいは髭を蓄えた老年の紳士だった。

「ははは、これは滑稽だな諸君。 デュランダルの若造の、あの狼狽振りときたら」
「ここまで上手くことが運ぶとは、少々心配にすらなってきますな」
「これはまた良いビジネスチャンスですな。 忙しくなる」
「…ジブリール、本当に見事な手並みだったよ」

報道される事件に対しての歓喜、そして賞賛の言葉を綴る彼ら。
すっかり上機嫌な様子の客人たちに対して、サロンの主人は席を立つと優雅に一礼した。

「皆様からお褒めに預かり、光栄の至りにございます」

マオカラースーツを纏う、30代前半ぐらいの年頃の男は、室内の人々へと晴れやかな笑顔を向ける。
ロード・ジブリールと呼ばれるかの男は、この館の主にして今回の集会を主宰した人物だった。
今、彼の胸中は実に爽快なものだった。 心地良い達成感と、人々からの賞賛を受けての喜びに満ちていた。
――それもそのはず。 彼こそが、皆の褒め称えるこの大事件を企てた仕掛け人だったのだから。



「三ヶ月前に君が、ザフトの言い逃れを許さない完璧な開戦理由を作ると宣言した時には、正直無理だと思っていたよ。
 戦争を厭うこの世情、各国からの反論を抑えることも出来るはずがないと思っていたが…上手くやったものだよ」
「一体、どのような奇術を使ったのやら。 …それともあれは本当にザフトの仕業なのかね?」
「その経緯については、仕掛けた当人に種明かししてもらいましょうか……それでは、頼んだよ」

促され、壁を背に立つジブリールの陰から静かに歩み出てきたのは、軍服姿の人物。

「彼の名はケイ・サマエル。 大西洋連邦軍に所属する将官です。
 この計画において私の右腕として、仕掛けの考案と実行を担当してもらいました。
 此度の成功は、彼の手腕によってなされたことです」
「ほう、かような若者が……」

紹介を受け、深く一礼した人物を見て、老人たちの間にざわめきが起こる。 皆、一様に驚きの表情で。
それは、今回の仕掛け人と紹介された人物が、二十歳にも届かないほどのうら若い青年だったことによるだろう。
軍人というには線の細い、優男風の彼を前に、人々は顔を見合わせ囁きを交わす。
自分へと向けられる奇異の視線を…ケイと呼ばれた青年は気にした様子もなく、説明を開始した。
534舞踏12話 3/13:2006/04/23(日) 21:46:57 ID:???

「まずは、セレネ移民船団を襲撃したプラント製のMS部隊について説明いたします。
 あれはザフト軍が開発を進めていた、無人兵器統括システム『レギオン』のトライアル機です。
 MSの運用を、パイロットの操縦ではなくAIによる操作によって行うことを目標としたシステムです。
 これにより、彼らは地球連合に対して人的資源で劣っている面を改善しようと試みていたのです」

マホガニー製のデスクの上に置かれたモバイルを片手で操作し、資料映像をホログラフで投影しながら
ケイは映像を注視する老人たちを見回しながら、言葉を続ける。

「これらの情報は、半年前にはプラントの内通者たちより入手していました。
 その事実を知った我々はレギオン開発部門へと工作員を派遣し、システムプログラムを入手。
 それを元に、レギオンシステムに介入し命令内容の改竄を行うウィルス『グレムリン』を開発しました」
「なるほど…それを使い、あの事態を引き起こしたと?」
「御明察です」

続く言葉を待たずに推論を口にした老人の一人へと視線を向けながら、ニコリと笑顔を見せる。

「完成したウィルスは工作員を仲介して、レギオン開発部に所属する旧ザラ派信望者へと提供しました。
 これでレギオンシステムの命令内容を、月周辺の連合哨戒艦隊への攻撃に書き換えられると伝えた上で…。
 彼らとて、こちらとの戦争の口実を作りたかったのです。
 その点では僕たちと彼らは、立場は違えども同志と言えましょうか」
「ははは、なるほど確かにな」

おどけたように語られた後半の内容に、人々の間から笑い声が立ち起こる。
その様子を横目に、ケイはモバイルのキーを叩き、新たな映像を映し出す。

「…そして、ウィルスはレギオンシステムの試験当日に、トライアル機の一機に侵入。
 感染はそこからホストシステムへと進み、統括ネットワークを介して無人MS全機へと広がります。
 ホストシステムを掌握したウィルスは、全体への命令を書き換えました…母艦と護衛部隊への攻撃と。
 万が一、ホストコンピューターを調べられ、ウィルスの存在を知られてはいけませんからね。
 ホストコンピューターを積んだ母艦と護衛部隊を殲滅後、
 レギオンはウィルスによって命令変更された際に追加された、もう一つの命令の実行に移ります」
535舞踏12話 4/13:2006/04/23(日) 21:48:23 ID:???

ここからは、誰もが見飽きるほど目にした映像。
大小様々、何百隻もの船舶が航行する最中に飛び込んでくる、ザフト製のMS部隊の姿。
装甲を近接武器で斬りつけ、あるいは行く手を阻み隣接する船と針路をぶつけ合わそうとする。
抵抗の術を持たない民間船へと襲いかかる、無慈悲な機械人形たちが行う殺戮風景だった。

「命令変更不可能な状況を作り、完全にウィルスの支配下に置かれたレギオンはデブリ帯に身を隠し、
 静止軌道上まで移動し、宇宙に打ち上げられて間もないセレネ移民船団を攻撃するという命令を実行します」

更に切り替わる映像。 今度は先ほどよりしばらく経った後の結末…
船の破壊に回ろうとする無人MSを行動を阻み、撃破していく黒いウィンダムやGタイプの姿が映される。

「…ある程度、地球全体が一致団結するほどの『怒り』に足るほどの成果が上がったあとは
 こちら側があらかじめ事件現場近くまで呼び寄せていた処理部隊…
 何も知らない、ただ正義と使命感のまま立ち向かう彼らによって、レギオンは全て大破されました。
 これによってホストコンピューターと無人機のOSに感染していたウィルスは跡形もなく隠滅されたことになります。
 もちろん、ウィルスを持ち込んだ工作員はこの時以前にプラントから退去し
 直接的に関わった旧ザラ派の人間も、母艦と共に藻屑と消えています。
 つまりは…プラントが我々の関与を突き止めることはまず不可能。
 たとえ世論に対して自らの潔白を訴えようとも不明瞭な点が多く、人々を納得させることは難しいでしょう」
 
そこまで語るとケイは室内の面々を見渡し、以上です、と説明を締めくくる。
途端、老人たちから沸き起こる拍手と賞賛の声。

「いやいや、実に面白い。 痛快じゃあないか!」
「見事な計画だな。 君には策士としての才能があるよ」
「まったくだ。 君のような有望な若者が軍にいるとは。我々も安心できる」

降り注ぐようにかけられる賞賛の言葉を受け、青年は流麗な仕草で一礼をし、応じた。
536舞踏12話 5/13:2006/04/23(日) 21:50:03 ID:???

「お褒めに預かり、光栄です。
 …しかし、こう上手くいったから良かったものですが、実際には危ない綱渡りな作戦でした。
 もし、レギオンのテストが延期されたり、ディスクの到着が間に合わなかったら元も子もなかったので。
 一応それを想定し、プランBとして隠密行動可能なミラージュコロイド搭載戦艦を用い
 前大戦で鹵獲したザフト製MS部隊を静止軌道上まで運び、同様に船団を攻撃する計画も用意しておきました。
 しかし、こちらの手段をとる事態にならなくて良かったです。 こちらの関与が露呈する可能性が高かったので…」

謙遜するように淡く笑みながら語っていたケイ。
破壊活動の映像を繰り返し再生するホログラフへちらりと視線を流すと、表情を硬質なものへと変える。

「それに、このような悪しき兵器が存在することを僕は許せませんでしたから。
 人間の手に頼らずに人殺しをする機械人形なんて、卑怯極まりないですからね。
 …自分たちの手を汚さずに、戦争をするようなものだと思います」
「確かにのう。 彼奴らの美徳を疑うわ」
「実用化されたりでもすれば厄介だったが、このような事になってしまっては、さすがに開発を続けはせんだろう」
「こんな危険なものを開発中だったと知れ渡れば…大衆の心は、宇宙のバケモノどもへの憎悪に染め上げられるだろうな」

青年の静かな熱弁に、老人らは深く頷き、あるいは互いに予想を交わす。
そんな中、ケイの横に立っていたジブリールは前へと進み出ると、一際高らかな声を上げる。

「そう、皆様の仰る通りでございます!
 この痛ましい事件は、地球人類を束ねる、この上なく強固な絆となることでしょう。
 そして、皆の思いを我々が導き、憎きコーディネーターたちを屈服させるのです!」

宣言するような彼の熱入った言葉に、周囲からは拍手が飛んできたが
所々に見える、少し呆れたような笑いの表情は、彼らとジブリールの温度差を示していた。



青年からの経緯の説明が終わったあと、集まった人々はこれからの具体的な方策について話し合いを始める。

「さて、開戦は皆望んでいることなのだが……問題は、最終的にどう落し所をつけるかだ」
「私としては先の大戦のようなことは望みませんな…ムルタ坊やの掲げたような、コーディネーター撲滅は。
 彼らが住んでいるプラントに関しても、我々は多くの投資をしてきました。 あまり傷つけたくはないですな」
「そうじゃな、一番得するのはなるべく無傷で取り返すことじゃ。
 あるいは、彼らを再び『理事会』で支配し、我々の支配下に置くことかの」
「邪悪な者たちとはいえ、有している技術力は魅力的ですからな…せっかくの宝の山、潰すのは惜しい」
「確かにの……ジブリール、お主の意見してはどうだ?」

卓に両肘を立てながら、それぞれの意見に頷いていた老紳士の一人が、近くの席につく主催者へと問う。
537舞踏12話 6/13:2006/04/23(日) 21:51:47 ID:???

「…私としては、彼らから歯向かう術を全て奪い、再び地球連合の主要国で管理すべきだと考えております。
 あくまで我らが滅ぼすべきは『プラント』という枠組みのみです。
 結束の拠り所をなくし、なおかつそれをなるべく余計な禍根を残さぬように行うのが最良かと思います。
 圧力をかけるよりも、丁重に飼いならした方が役立つ者たちだということは、皆様も既にご存知のことでしょう」

紫のルージュが彩る薄い唇をついと吊り上げながら、
ブルーコスモスの現盟主、ロード・ジブリールは己の意志を語った。


それは、以前のブルーコスモスが掲げてきた理念とは大きくかけ離れたものだった。

最初のコーディネーター、ジョージ・グレンが語った自らの出生の告白、
六十年ほど前に世界を揺るがしたその出来事以来、コーディネーター排斥運動の中心的な組織だったブルーコスモス。
彼らがずっと掲げてきたのは、遺伝子操作という邪悪な技術の完全なる抹消であり
ひいては、それによって生み出されたコーディネーターをも滅ぼすということだった…世界を清浄にするために。

『不浄』なる者たちを排除すべく、彼らは歴史の舞台上で絶え間なく活動し続けた。
圧力団体らしくデモ行進や集会、マスコミを通しての訴えかけといった真っ当なものから
コーディネーターを目標とした暴動、テロ行為……疑惑のかかっている事件を含め、非合法な活動まで。
はてや、軍の上層部にまで同志を持つ彼らは、プラントとの戦争にも深く関係していると言われている。
もっともそれは、誰もが知っていて口に出さないような、公然の秘密であったのだが。

現に、先のブルーコスモス盟主だったムルタ・アズラエルは民間人であるにも関わらず、
地球連合軍の戦艦に搭乗し、プラント破壊を目的とした核武装部隊ピースメーカー隊を、自ら指揮するほどだった。
…だが、最終的にプラントへの核攻撃はザフトと第三者の手によって阻止され、
アズラエルを筆頭とした、ブルーコスモス内の強硬派軍人たちの大半は戦火に散る結末となる。
これにより、強硬派と穏健派のパワーバランスに大きな変化が生じたブルーコスモスは
結成当初よりずっと掲げ続けてきた看板を、新しく書き換えることとなる。

それが、先ほど現盟主の語った内容。 
コーディネーターを『撲滅』するのではなく、『管理』するという方針。
これが、現在穏健派が強硬派を上回りつつあるブルーコスモスが、総意といった形で示した新たな世界の図であった。
538舞踏12話 7/13:2006/04/23(日) 21:53:24 ID:???

それを聞き、周囲にいた老人たちの大半は満足げな表情を浮かべたり、頷きで肯定の意を示す。
……もっとも、中にはジブリールを侮蔑の視線で睨みつけ、
苦虫を噛み潰したような顔で唸る『強硬派』の人物も、幾人かはいたのだが。

しかし、サロンに集う人々の間における長老格と思われる、見事な髭を蓄えた人物は席を立つと
ぐるりと全体を見渡し、その通りだ、とはっきりとした声で言った。

「わしもジブリールの考えを支持しよう。 …異存はないかね?」

意見を聞こうという姿勢を示しながら、老人は面々の顔を見渡す。
先ほどジブリールの言葉に不愉快な様子を示していた者へも視線を合わしたのだが、
相手は気まずそうに目を逸らし、黙り込んでいた。

おそらくは、賛同の雰囲気が優勢なこの場で異を唱えても、無力と悟ったのか。
あるいは、穏健派が掲げる軟弱な方針に不満を感じながらも、半分は自分たちの望みと一致するので一時的に妥協したか。

――どちらにせよ、プラントを屈服させるための戦争を再び起こすことには間違いないのだから。
このサロンに集う人々の共通の願い。 それは自分たちに巨万の富をもたらす、戦争を起こさせることだった。

「各々異論はない様子じゃな。
 では、我々『ロゴス』はプラント再植民地化を最終目的とした戦争を起こすプランを承認する。
 詳細な計画立案は任せたぞ、ジブリール」
「はっ、必ずや皆様のご期待に応え、彼らを屈服させてご覧にいれます」

長老格が伝えた決議に、ジブリールは恭しく頭を垂れ、そう答えた。
539舞踏12話 8/13:2006/04/23(日) 21:56:19 ID:???

会議が終了し、人口密度が一気に一割以下まで低下したサロンの中
屋敷の玄関側に面した窓際で、ジブリールとケイは眼下の庭を見下ろしながら、言葉を交わしていた。

「……はあ、退屈な集まりでしたね。 おじいさんたちのお茶会になんて、混ざるんじゃなかった」
「君からの説明が必要だったのだから、仕方ないではないか。
 それに君は気に入らなかったようだが、向こうは大層君のことを買っていたよ?
 そのうち、大企業や有名貴族の御令嬢との縁談が舞い込んでくるやもしれないな」
「嫌ですよ絶対。 僕には心に決めた娘がいるんですから」

クク、と愉快そうに喉鳴らしながらの男の言葉に、青年はあからさまにつまらなさそうな表情で顔を背ける。
…そんな彼らのやり取りを聞きつけて、家具の陰からするりと音もなく歩み出てきた黒い姿。
一目散に足元へと駆け寄って、うなぁんと鳴いた黒猫を抱き上げると、ケイは再び口を開いた。

「しかし、こうもあっさりと開戦が決まるとは思いませんでした。
 あの人たち、国家や大企業の偉い人ばかりなんでしょう?
 自分の周りにも戦火が及ぶかもしれないとか、想像しないんでしょうか」
「直接自分の頭上に砲弾が落ちてくるか、あるいは自分の金庫が燃やされない限りは他人事のようなものだよ。
 それ以上に、多大なビジネスチャンスを与えてくれるのだからな。戦争結構、大歓迎…というわけさ」

後ろ手を組みながら窓辺に立つジブリールは、眼下に望む庭園の小道を歩く先ほどの老人たちへ
まるで醜いものでも見るような蔑みの眼差しを向けていた。
彼の言葉を受け、ケイもまた眉をひそめて不快そうな表情を浮かべる。

「……貴方も、その中の一人ですよね。ジブリールさん」
「ああ、そうだな。 …だが私は彼らとは違うよ。金勘定などにはさほど興味はない。
 それよりももっと重要なことがある…何としてでも果たしたい目標があるのだよ」
「コーディネーターの完全な管理、ですか?」
「その通りだ。 我が物顔で宇宙にいる、あのミュータントたちを上手く飼い殺すことが私の理想だ。
 歯向かうための牙を全て抜き、ナチュラルからの抑圧から保護すると見せかけて自由のない籠に閉じ込める。
 今度こそ、地球連合による完璧な管理体制を確立させるのだよ。 恐怖と抑圧に頼らない支配をな…」
「それを聞いて安心しました。
 ジブリールさんもあの人たちみたいに自分の商売しか考えない人だったら、ちょっと失望したでしょうね」

その顔に強い自信と、自らの考えに対する誇らしさをあらわにしながら語るジブリールの横顔を
腕の中でくつろぐ黒猫の喉を撫でつつ眺めていたケイは、眉目を緩めてにこりと笑顔を見せた。
540舞踏12話 9/13:2006/04/23(日) 21:57:55 ID:???

「ケイ。 我々はもっと柔軟であるべきなのだよ。
 ただ一つ、高潔な正義を掲げ、それを成すために邪魔なもの全てを否定し、なぎ払うだけだった昔のやり方では駄目だ。
 利用できるものは全て利用する。しかしただ馬車馬のように働かせ、使い捨てるような扱いでは組織に亀裂が生じる。
 彼らのように利潤のためだけに戦争を求める商売人だろうが、支配対象であるコーディネーターだろうがそれは一緒のこと」
「……『黒き鉄風』のように、ですか?」
「それだけじゃあないさ。 今回の作戦を裏から支えた功労者…対プラントの工作員たちもだ。
 かつてザフト軍であった彼らだからこそ、プラントの懐奥深くまで潜入することが出来た。
 彼らからもたらされた多くの有益な情報があったからこそ、我らは有利な状況で開戦にこぎつけられるのだよ」

――前大戦末期、自ら戦線に赴き軍を主導していた前盟主ムルタ・アズラエルと多くの強硬派たちが戦死した後。
強硬派に属する上級軍人、主要幹部を失い、ブルーコスモス内部は大いに混乱した。
戦争集結直後の不安定な時期に降りかかった危機的状況を打開すべく、後任として据えられたのがジブリール。
新たな盟主となった彼は、安定を失った組織内に大きな改革の風を起こす。

彼は前盟主が掲げていた理念…コーディネーターの殲滅を良しとせず
プラントの再植民地化、及びナチュラルによるコーディネーターの管理を主張する穏健派と手を組んだ。

そして、安定した地盤を手に入れたジブリールが次に実行したのは、地球にいるコーディネーターへの対策。
元々、一部の穏健派の手によって地球に残るコーディネーターやそのハーフの少数は、安全な場所に保護されていた。
彼らの中にはブルーコスモスの穏健派の動きに賛同し、軍人や技術職として従事する者が多くいた。

自分たちを迫害から救った穏健派に対する厚い忠義、そして類ない能力を発揮する彼らの存在を知ったジブリールは
同様に、地球で迫害から逃れながらひっそりと暮らすコーディネーターを探し出し、話をもちかける。
彼が目をつけたのは、ザフトから離脱した元駐留兵……地球で暮らす道を選んだ脱走兵だった。
541舞踏12話 10/13:2006/04/23(日) 22:02:50 ID:???

ユーラシア西部、オーストラリア、アフリカといったザフトの占領下にあった地域では
基地に駐留するザフト兵とナチュラルの現地人が恋仲となり、ハーフの子どもをもうけることも、そう珍しくはなかった。
しかし、そうはいっても『ナチュラル帰り』と呼ばれ蔑まれるハーフの存在がプラント社会で認められるはずもない。

妻子を母国へ連れて帰ることは絶対的に不可能という現実を前に、ザフト兵は保身のために妻子との関係を断ち切るか
あるいは自分の立場をかなぐり捨て、軍を脱走し妻子と共に地球で暮らすかの選択を余儀なくされた。

もちろん、脱走兵が国民として認められるはずもなく、国籍も福利・厚生といった国家の恩恵も受けれず
人里離れた場所で、ひっそりと隠れ住んでいた彼らを保護しようと申し出てきたのが、ジブリールだった。
彼は、妻子含めて安全な住居と十分な生活保護を約束し、その代わりに自分のために働いてほしいと求めてきた。

…元々、家族のために国を捨てた脱走兵たちは、ナチュラルとの関係を周囲に気付かれた時点で
自分たちの国家に深く根差す差別意識、選民思想の存在に気付き、嫌気が差している者も多かった。

脱走兵たちの協力を得たジブリールは、彼らから多くの情報を引き出し、
更には工作員としてプラントへ送り込み、ザフトの軍事機密や兵器開発事情など、貪欲なまでに情報を得ていった。

「古来から、戦争であろうと政治であろうと…物事全ての成否を左右したのは情報だよ。
 アズラエルは潔癖症のように彼らを忌み嫌い、近づこうとも利用しようともしなかった。
 だから、ジェネシスの存在をあらかじめ掴むことが出来ず、身を滅ぼしたのさ。
 戦いを有利に進めるためには正確な情報が必要。 正確な情報を得るためには、内通者が必要なのだ」

この持論を掲げ、彼は多くの工作員を送り情報を集め、それらを元に策謀を進めていった。
今回成功を収めた一大作戦についても同様で、彼らの密かな活動なくしては
プラントの風評を貶め、地球側が有利な状況で開戦することも実現できなかっただろう。
542舞踏12話 11/13:2006/04/23(日) 22:04:33 ID:???

「――さて。 今回の一件、本当にご苦労だった。
 君と手を組んで本当に良かったよ、ケイ・サマエル……いや、キラ・ヒビキ」

腕の中に身を預けくつろぐ黒猫の片手を、ちょいちょいと指先で動かしもてあそんでいた青年へと振り返り、
口元に笑み刻んだジブリールは、スーツの懐からシガレットケースほどの小箱を取り出した。
手の平に置かれたそれを見せ付けるように差し出され、キラと呼ばれた青年の片眉がひくと動く。

「どうやら、覚えているようだね」
「…忘れるはずないでしょう? それ一つで、貴方はどこにいようとも僕の命を消せるんですから」
「そうだな、当然だったな」

端麗な顔に微かな不快の色を映しながら、ため息混じりにそう漏らした青年。
彼の様子を愉快そうに見やりながら、くくと笑い声を零した男は小箱の蓋を開けた。

「確かそう…一年前だったな。
 私の部下になり、計画に協力したいと申し出てきた君の忠誠と覚悟を試すために身に着けてもらった物。
 もし、君が私に対して叛意を抱いたり、使えない存在だと思った場合は即座に処理できるようにした。
 しかしまぁ正直な話、君が躊躇いなく自分から付けた時は驚いたね。 超小型爆弾を仕込んだチョーカーを」
「思い出話は結構ですよ。 過去を振り返ることは、邪魔にしかならないと思っているんで」

ふるると首を横に振りながら、そう言ったキラの眼差しは氷片のように冷たく、鋭いもので。
小箱の中身…スイッチの配され小型のリモートコントロール装置に触れているジブリールを、無言のまま見据えていた。

「君の働きは本当に見事なものだったよ。 褒美をやらねばならんな」

そう言うとジブリールは、装置のスイッチの一つをカチリと押した。
543舞踏12話 12/13:2006/04/23(日) 22:06:43 ID:???

――だが、変わらず漂うのは静寂の空気。
爆発の音も硝煙もなく、サロンの中はまるで一枚の絵画のように僅かな変化もない。
室内で向き合う二人の男も、微動だにせず一言も発さず。

数秒の間を置いて、ただ一つ起きた異変は
カチ、と音と共に金具が外れ、するりと首筋から床へと滑り落ちた一本のチョーカー。
青年の首に巻かれていた爆弾付きの首輪は、その役目を行使することなく束縛を解いたのだった。


「……もう少し、慌てるとか怒るとかそういう人並みの反応は出来ないのかね、君は」

結局、騒ぐどころか一言も発さなかったキラを見やりながら、ジブリールは苦笑する。
そう言われた当人はというと、一年前からずっとチョーカーを付けっ放しだったことが気になるのか
首筋に跡や傷が付いていないか、指で触りながら確かめているという胆の強さ。
その姿を前に、苦笑から困惑へと男の表情が変わる頃、青年は顔を上げてニコリと笑った。

「自分の価値ぐらい、把握していますよ。
 貴方に役立たずと切り捨てられるほどの仕事はしていないはずですけど?」
「…本当にかわいげないな、君は。 賢すぎるのも問題だぞ」

いっそ無邪気ともいえる明るい笑顔と、正反対に憎らしいほど聡い言葉を発したキラを前に
ジブリールは一瞬呆気に取られ、そしてつまらなさそうに顔をしかめた。

「でも、いいんですか? これ外してから、僕が貴方に何もしないとは限りませんよ?」
「君が切り捨てられない自信を持っているように、私も君に反逆を企てられるような主じゃない自信があるからさ。
 目的を果たすためにも、私の後ろ盾はまだまだ必要だろう?」
「……仰るとおりです、盟主殿」

今度は立場が逆転し、余裕の笑顔を浮かべていたキラはジブリールの言葉に目を丸め、そして苦笑う。
その様子を見ながら、ジブリールはしてやったりと満足げな表情で頷いてみせた。

「まあ、お互いの能力も立場も必要とする間柄で、そして目指す目標も同じ道だ。
 これからは対等な同志として付き合っていこうじゃないか、ケイ・サマエル」
「……なるほど、そういうことですか。
 いいですよ、ジブリールさん。僕も貴方の考えには賛成ですし、目的を抜きにしても協力する価値はあると思ってます。
 一緒に付き合いましょう。 貴方の描く理想の世界を創る戦争に」

それは今までの、利用する側とされる側の立場からの脱却宣言。
相手を駒として使うのではなく、お互いの目的を果たすために尽力する、対等な立場の人間と見ることを意味していた。
その言葉を交わす彼らの表情には晴れやかな笑顔があり、やがて握手を交わしたのも、自然な流れだったろう。
544舞踏12話 13/13:2006/04/23(日) 22:07:59 ID:???

「あの、ジブリールさん。 忙しい時期に申し訳ないんですけど、一つお願いしたいことがあります」

その後、テーブルに着き二人で今後のプランについて意見を交わしていた最中、ケイはふと思い出したように口を開く。
手元の資料に視線を落していたジブリールは、その言葉に顔を上げ、内容を語るよう視線で促す。

「少しの間でいいですから、『彼女』の所に顔を出したいんです。
 これからは仕事も多くなって、容易に行けなくなるでしょうし…なんとかなりませんか?」

その言葉を受け、男は顎元に手を当て、ふむと唸る。
彼も自分同様、ブルーコスモス内では非常に忙しい立場にあり、スケジュールも詰まりに詰まっているのだが…

「…そうだな。これからの事態を考えれば心配だろう。 構わんよ、行ってきたまえ。
 ただし、寄り道は極力避けるように。 何分予定が詰まっている、あまりサボるとアウグストがうるさいぞ?」
「あー…そうだった。 この間大きな貸し作ったばかりだし、怒られるようなことはしたくないなぁ」

小言の多い上司のことを指摘され、ケイは苦笑しながら頭に手をやる。
そして、膝の上に寝転がっていた黒猫を抱き上げ、床に下ろしてから席を立った。

「それでは、お言葉に甘えて行ってきます。 出来るだけ早く帰りますから」
545あとがき:2006/04/23(日) 22:08:54 ID:???

今回は短めの内容でお送りいたします舞踏の人ですっ。
またもやマユちゃん出てきませんが…次回は、次回は必ず出てきますので!!(汗

とりあえず今回の内容はセレネの悪夢事件の振り返りと、舞踏におけるブルーコスモスの体制についてです。
ジブリんが本編とはえらく異なった考え方となってます。 あちらでは前任と同じで撲滅派でしたが…。
こう、もう少しクールに行きたいと思い、このような方向性となりました。

ユニウスセブン事件の変わりにセレネ事件を考えたのは連合側がある程度の準備を整えた上で起こす
連合側に有利な状態で挑む為の自作自演の開戦理由
そして被害にあった国とそうでない国の温度差を出す為にオリジナルの展開にもっていきました


それと、>>337様。 大当たりですw
サマエルという名は、天使の名前で探していた時に見つけました。
『神の毒』『死の天使』なんてフレーズを見て、これしかない!!と思い使いました。
神話によっては、サタンとも同一視されてるようで…なんとも彼らしい。
ちなみに余談ではありますが…『ケイ』というのはただKiraの頭文字を取っただけだったりします(ぉ


最後に、ふと思いついたNGシーンを。

「……もう少し、慌てるとか怒るとかそういう人並みの反応は出来ないのかね、君は」
「だって、爆発させるはずがないですから。
 ここにはちゃんと人質ならぬ猫質がいるんですよ?(ぬこ様抱えながら天使のスマイル)」
「……………賢すぎるのも問題だな。 君は外道か(ワナワナ)」

…お粗末さまでした。
546纏め人 ◆rw1maYUY1g :2006/04/23(日) 22:09:57 ID:???
新スレたてました。
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1145797262/

運命の舞踊作者様、投下お疲れ様良い形で新スレ移行です。
547通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 23:47:06 ID:???
舞踏作者様GJです。
キラのお相手はやはりあの方なのでしょうか?
それにしても、マユがどんどんミラコロ主人公にw
548通常の名無しさんの3倍:2006/04/23(日) 23:51:48 ID:???
やっぱ敵の首領が有能だと盛り上がるな。
原作のジブは……
549通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 20:52:22 ID:???
やはり敵役は「冷静」で「冷酷」で「有能」なのが一番だねぇ。
ジブがこんなに格好いいの、初めて見た。
舞踏、GJでした!
550通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 21:00:35 ID:???
正しく「敵役」だな、「悪役」じゃなく。
551通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 21:21:58 ID:???
テレビのジブは悪役どころかただの能無しに見えた。
552通常の名無しさんの3倍:2006/04/24(月) 23:28:19 ID:???
舞踏GJ!
冷酷で有能な盟主殿が素敵でした
彼とキラがこれよりどんな策謀を廻らすのか楽しみです!
553通常の名無しさんの3倍:2006/04/25(火) 12:25:00 ID:???
俺、初めてジブを応援したくなったぞ
554通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 22:32:38 ID:???
マユ・アスカが
555通常の名無しさんの3倍:2006/04/26(水) 22:33:52 ID:???
       ヾ  /    < 仮面ライダー555が >
       ,. -ヤ'''カー、   /Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Yヾ
 ー―ァ  /r⌒|:::|⌒ヾ
   _ノ オ{(  |0|  )} オオオォォォォ!!!!!
     __,ヽ,ヾ,_|V|,_ノ、/ ,r-,,=
    ,゛==ゝ_ViV_ノ~i/ 〃 `ー―-、
    /  /⌒`//´⌒c/^^^ ))))))))))
 ,,―イ  {ー''"~{ {~゛`ー`/'`'~/ー--―'
))   ,./ゝ_/∧ゝ_ノ  ノ
 ー''"  |ロ  ロ    |
 人,_,人,_,人,_,人,_,
< >>555ゲットだ!! >

556通常の名無しさんの3倍
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                ` ‐-/ミ三彡: :::l        ::::. ヒTリl'"l::::::::::::::::::/リヽ
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