【小説】ZOMBIE ゾンビ その25【創作】

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1empty ◆M21AkfQGck
このスレは、ゾンビ好きな人がゾンビをネタにした小説をupするスレです。

◆前スレ
【小説】ZOMBIE ゾンビ その24【創作】
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1226074508/

◇過去ログ
(1)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】
http://curry.2ch.net/occult/kako/1030/10304/1030468085.html
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako1.html (ミラー)
(2)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その2
http://curry.2ch.net/occult/kako/1034/10343/1034309472.html
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako2.html (ミラー)
(3)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その3
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1036704369/
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako3.html (ミラー)
(4)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その4
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1047896148/
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako4.html (ミラー)
(5)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その5
http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/occult/1052060297/
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako5.html (ミラー)
(6)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その5.5
http://makimo.to/2ch/hobby3_occult/1053/1053501319.html
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako6.html (ミラー)
2本当にあった怖い名無し:2009/06/17(水) 00:59:06 ID:T6R+eP9N0
(7)zombi ゾンビその6
http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/occult/1054460858/
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako7.html (ミラー)
(8)zombie ゾンビその7
http://hobby4.2ch.net/test/read.cgi/occult/1055955467/
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako7a.html (ミラー)
(9)ZOMBIE ホームセンター攻防編 八日目
http://hobby4.2ch.net/test/read.cgi/occult/1062185351/
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako8.html (ミラー)
(10)zombie ゾンビその9
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1083297464/
http://ime.st/ruku.qp.tc/dat2ch/0501/22/1083297464.html (ミラー)
(11)【かゆ】ゾンビの世界で戦う小説【うま】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1100529954/
http://ime.st/ruku.qp.tc/dat2ch/0503/19/1100529954.html(ミラー)
(12)【小説】ZOMBIE ゾンビ その11【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1108381059/
(13)【小説】ZOMBIE ゾンビ その12【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1113141723/
(14)【小説】ZOMBIE ゾンビ その13【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1117637335/
(15)【小説】ZOMBIE ゾンビ その14【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1124753567/
3empty ◆M21AkfQGck :2009/06/17(水) 01:00:03 ID:T6R+eP9N0
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/occult/1211430743/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その23【創作】
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/occult/1221059476/

○作品保管庫
【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/
○避難所/雑談所
【小説】zombie ゾンビ【創作】分室
http://ime.st/jbbs.livedoor.jp/movie/5375/
○2ちゃんねる オカルト板 ゾンビ小説スレ保管庫
http://ime.st/zombiesurvival.fc2web.com/
4empty ◆M21AkfQGck :2009/06/17(水) 01:01:24 ID:T6R+eP9N0
【スレのお約束】

1 基本的にsage進行でお願いします。
2 作品投稿のage・sageは、作者の判断にお任せします。
3 作品には感想をお願いします。感想についての批判は作者・読者ともに控えましょう。
  「感想・意見・批評」と「誹謗中傷」は異なります。
  よけいな争いごとを持ち込まぬよう、表現にはくれぐれも気をつけましょう。
4 煽り・荒らしは放置、反応なしでお願いします。

【マナー。その他】

1 連続投稿数は5〜10レスを目安にしましょう。
2 作品投稿は間隔に気をつけてください。場合に応じて間隔をあけましょう。
  投稿前と投稿後に宣言すると、スレの流れがスムーズになります。
3 自分の意見に返事を期待する作者は、トリップを付けたほうがいいでしょう。
4 個人攻撃、的外れな批難の類は流したほうが無難です。
5 496KBで警告メッセージが出力されます。
  512KBでスレッドが終了なので、950からか450KBを過ぎた時点で新スレッドへの
  移行を話し合いしましょう。
5empty ◆M21AkfQGck :2009/06/17(水) 01:02:21 ID:T6R+eP9N0
『電話に出ることができません。発信音の後にメッセージを――』
「…」
ぴーっ、という音が鳴る。
ドキドキした割にはあまりの結果。
そのまま切るのも癪なので、とりあえずメッセージを入れておくことにする。
「えっと、もしもし? こちら生存者です。少なくとも現時点では。
 そちらは生きてますか? 無事なら折り返し電話下さい。それでは」
ぽち。
ツー、ツー。
切れたのを確認してから携帯電話をズボンのポケットに突っ込む。
成果は無かった。これでまた振り出しに戻ったわけだ。

「とりあえず今日はここに泊まるかなぁ…」
食料と水はあるし、寝苦しくなったら冷凍庫から氷を持ち出せば良い。
着替え――特に下着類が無いのが残念だけど、安全で快適な寝床が確保できただけで万々歳だ、しばらくはここで暮らせるかもしれない。
「毛布があった。奥に休憩室があったからそこで寝れるよ」
どさ、とカウンターに毛布を置く友人。ぱっと見、あまり使われたことのない感じがする。
カウンターチェアをくるくると回しながら、ここの食料が尽きた後のことを考える。
水に関しては出る内にできるだけ多く冷凍保存しておく、という方針で固まった。
現に、今も冷凍庫の中ではペットボトルに入れられた水が冷やされている。
食料は腐るのが早いものから食べていけば良い。缶詰などの保存食もあるにはあるが、期待できる量じゃなかった――二人だと尚更。
食料に関しては一週間もしないうちに尽きるはず。尽きそうになったら、凍らせた水と保存食を出来るだけ、なおかつ機動力を削がない程度に持ってここを離れる。
ここを離れたら、次に食料がありそうな場所を探す。それまではひたすら保存食をちまちま食べるしかない。
6empty ◆M21AkfQGck :2009/06/17(水) 01:03:25 ID:T6R+eP9N0
―――キツいなぁ。
生鮮食料品は簡単に生み出せるものじゃない。
それに、簡単に腐ったりして駄目になってしまう。
保存食だけだと、どうしても味でも栄養面でも偏りが出るから、生鮮食料品は要ると思うのだけど…。
と、そこで我ながら名案が思いついた。
スーパーマーケットだ。
大通りに沿って歩いていれば、割とすぐに見つかるに違いない。そうでなければ売り上げが見込めないだろうし。
ここの冷蔵庫がまだ動くことからして、電気はきちんと通っているはず。あの混乱の中でいちいち電源を切っていくとも思えない。
「よし、スーパーに行こう」
「何を唐突に」
ぽかんとした顔だった。
「あそこなら食料品が沢山ある。出入り口を補強すれば、しばらくは篭城できるはず」
「………それって囲まれて脱出できなくなる典型的なパターンだよね」
む。
アレが知能を持っていることは明らか。
だとしたら、兵糧攻めは勿論様々な方法で攻めてくるだろう。
そして武器は無いし大抵のスーパーには生憎と置いていない。
「………立てこもるのなら、スーパーもあってその他色々も入手できる場所じゃないと。そう、ショッピングモールとか!」
急に熱くなりやがった。
しかし、そんな都合のいい場所――。
「――あった」
「ん?」
「ほら、何本か道を挟んだところに」
「………あぁ!」
ぽん、と手を叩く。
あそこならば、侵入経路は限られているしスーパーはあるし家電量販店はあるしゲーセンはあるし100円ショップがある。
100円ショップや家電量販店でなら、良い感じの武器になりそうな何かが置いてあるはず。
7empty ◆M21AkfQGck :2009/06/17(水) 01:04:17 ID:T6R+eP9N0
「よっし、そうと決まれば早速!」
「移動しないよ?」
「うえー」
そんな不満顔をされても。
まだ食料が十分にあるから、無理に移動することは無い。
移動するってことは、それだけ見つかる可能性もあるのだから。
「でもさ――」
ぴりりりりりりりりりりり。
友人の反論を遮る形で電子音が鳴り響く。
そして、ズボンから感じる振動。
慌てて携帯電話を取り出して開くと、画面には電話番号が表示されていた。
さっきかけた番号だ。
「――どする?」
「出てみたら?」
………。
―――相手がアレじゃありませんように!
そう強く願いながらボタンを押し、スピーカーモードに切り替える。
ドキドキと心臓が高鳴る中、スピーカーから聞こえてきた声は、
『―――――もしもし?』
まさに天使の声。
『伝言は聞いた。こっちも人間だから安心して』


というわけでやっと次の方向が決まるの巻。
ついでに主人公達以外の人間(声のみ)も登場の巻。

出てくる人達は基本的に逃げ回る=ゾンビと対峙しない、なので本当にゾンビ小説なのか悩むところ。


あと、限界なので立てさせてもらいました。
8セイレーン:2009/06/17(水) 22:20:45 ID:JA7evFF4P
スレ立てありがとうございます!
気合入れて書かせていただきます!
9セイレーン:2009/06/17(水) 22:21:34 ID:JA7evFF4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(38)

確かに進むに従って、死者の数は増えていった。
最初の二、三体は袁紹と数名の兵が駆け寄って速攻でけりをつける。
矢を節約するために、数が少ないうちは弩は使わない。
しかしすぐに現れる死者の数が多くなり、弩隊が前に出ることが多くなった。弩である程度数を減らしてから剣で突っ込もうかと思ったが、多方面から次々と現れるのでやめた。
「正面だ、正面を優先せよ!」
袁紹は自ら弩を構えながら叫んだ。
照準を合わせて引き金を引くと、鋭い矢が真っ直ぐに飛んで死者の頭を貫く。弩が弓よりも強いところは、威力もさることながら命中精度のよさにある。特にこんな、頭のみを確実に狙う状況では、非情に心強い。
正面の敵がほとんど倒れると、そろって移動していく。
元より矢で射きれる数ではないことは承知のうえなので、進行方向以外の敵には捕まらなければよい。全て射ようとして矢が尽きたら、それこそ命取りだ。
前方のテントの影から、またわらわらと死者が現れた。
「止まれ、撃て!」
素早く指令を下しながら、自ら撃って先頭の一体を倒す。
そしてすぐ横にいる郭図に弩を渡し、代わりに郭図が矢をつがえた弩を受け取る。
袁紹が撃ち、その間に郭図がもう一つの弩に矢をつがえる。改良型の弩はそれほど腕力がなくても、体重をかけてペダルを踏めば弦を引けるようになっていた。
逢紀は郭図や弓兵たちに、一本ずつ矢を配っている。
あっという間に死者の一団が倒れると、袁紹は弩を下ろして走り出した。
無言の指令だが、兵たちも一斉にそれに続く。
もうすぐ、沮授の檻車だ。
(沮授よ、どうか無事でいてくれ!)
この惨状の中、無謀とも言える希望をもって、袁紹は駆けた。
10セイレーン:2009/06/17(水) 22:22:57 ID:JA7evFF4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(39)

袁紹が官渡に布陣して間もない頃、沮授は一人幕舎に入ってきて言った。
「曹操軍の兵糧が乏しいとの情報です。
ここは、あえて戦を挑まずに食糧が尽きるのを待ち、相手の動きに合わせてたたくのが最良かと存じます。」
出陣の前に袁紹を奮い立たせた審配の意見とは、全く逆だった。
そう言えば、沮授は出陣自体にも乗り気ではなかった。
自分と同じ意見の田豊が引きずられていくのを見て、しぶしぶ反対意見を取り下げ、せめて戦で進言しようとついて来たのだ。
「兵力を温存しておけば、ここで勝ってそのまま許昌に攻め入るも容易です。
ここは、持久戦が宜しいかと。」 
それは、戦って打ち破る気満々で出陣した袁紹の神経を逆なでする意見だった。
袁紹はたまらず、立ち上がって叫んだ。
「ええい、うるさい!!
せっかく曹操を討とうと皆も意気上がっておるのに、この期に及んで士気を下げるとは何事か。
誰か、こやつを閉じ込めておけ!」
袁紹はすぐさま、沮授を檻車にぶちこんだ。

しかし、戦の進展は沮授の意見が正しかった。
初戦で勝った袁紹は様々な策で城を落とそうとしたが、それはことごとく曹操に退けられた。結局、袁紹は沮授が言ったとおり、持久戦に切り替えざるを得なかった。
作戦を切り替えてからも、沮授は檻車から出されなかった。
憎き沮授の言うとおりだったと認めたくない、袁紹のつまらない意地のために。

突然、視界が開けた。
その広場は、罪人を閉じ込めておくために柵で囲まれている。
しかし、柵はかなりの部分がなぎ倒されていた。
(沮授は・・・?)
袁紹は素早く広場に視線を走らせた。その視線はすぐに、お目当ての檻車を探し出した。
しかし、その檻車は・・・木でできた檻の部分が、バラバラに壊されていた。
11セイレーン:2009/06/17(水) 22:24:32 ID:JA7evFF4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(40)

檻車の台車部分だけが、取り残されたようにそこにあった。
檻はただの木片に変わり、そこら中に散らばっている。
そして、地面には木片と一緒に大量の血痕がばらまかれていた。
間違いなく、ここで惨劇が起こった跡だ。
(まさか、沮授は・・・!?)
袁紹の脳裏を、血まみれで助けを求める沮授の姿がよぎった。死者に檻から引きずり出され、苦痛に顔を歪める沮授の姿が。
(いや、まだ決まった訳ではない。)
袁紹は必死でその残酷な像を打ち消した。
もしかしたら、暴動が迫った時、誰かが気を利かせて檻から出し、移動させたのかもしれない。戦闘に巻き込まれて檻車が壊れた時、運良く逃げ出せたかもしれない。
それなら、きっとどこかでまだ生きている。
だいたい、血痕など今となってはどこにでもあるものではないか。
袁紹は弩を構えたまま、ゆっくりと広場の周囲を歩き回った。
突然木箱の陰から死者が顔を突き出したので、袁紹はびっくりして引き金を引いた。
死者は一瞬で本来の死体に戻り、どさりと倒れた。その横顔が沮授でないことを確認し、袁紹は再び歩き出す。
沮授がこの辺りにいるかどうかは分からないが、とりあえず死体がないことだけでも確認しておきたかった。
もちろん、それほど長居していい状況ではない。
探索する間にも、死者の小集団が現れて弩の矢が減っていく。
沮授が生きている確率がとてつもなく低いことは、袁紹にも分かっている。
しかし、それでも袁紹にはあきらめきれなかった。自分が沮授の意見に耳を貸していれば、そんな罪悪感が袁紹の武将としての勘を狂わせていた。
不意に、袁紹の視界の隅に沮授の姿が映った気がした。
「沮授!?」
沮授は倒れた兵士に膝を貸して、向こうをむいて座っていた。
袁紹は無意識のうちに、走り出していた。
12セイレーン:2009/06/17(水) 22:25:59 ID:JA7evFF4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(41)

「沮授、すまなかった!助けに来たぞ!」
やっと見つけた沮授の姿に、袁紹は止める間もなく駆け寄っていった。
「殿、危険です、お待ちくださーい!」
郭図の的確な呼びかけも、もはや耳に入らなかった。
声が届いたのか、沮授がゆらりと立ち上がり、袁紹の方を向く。
手を握ろうとして間近で顔を合わせて、袁紹は凍りついた。
振り向いた沮授の顔は、まぎれもなく死者の顔だった。
目は白く濁り、肌は青白く乾いている。今しがた膝を貸していた兵を食べていたのだろう、口は血で真っ赤に染め上げられている。
それだけではない、頬を食いちぎられて穴から歯が見えている。沮授が咀嚼するように口を動かすと、その穴から肉片がぽろりとこぼれた。
後ろで郭図と逢紀が悲鳴を上げる。
彼らの目には、破れた着物からのぞく沮授の足の傷が、骨を露出させているのがはっきりと見えた。
「は、早くあれを仕留めて!」
郭図が命令を下すも、弩兵たちは動けなかった。
「だ、だめです・・・あれでは、殿に当たってしまいます!」
不運なことに、沮授の体は袁紹の体のちょうど向こう側にある。いくら弩の精度がいいとはいえ、この状態で沮授だけを射るのは無理だ。
沮授は歓迎するように両手を挙げ、袁紹の肩をつかんだ。
袁紹の顔に、腐った吐息がかかる。
それでも袁紹は、沮授を振り払えなかった。
自分は沮授の意見を聞かず、沮授を無残に死なせて化け物に変えてしまった。ならばその沮授に殺されるのは、自分の運命なのかもしれない。
「殿はもうだめだ、みな私を守って逃げるのだ!!」
逢紀が何か叫んでいるが、もうどうでも良かった。
沮授は恋人に口付けでもするように、袁紹の首に顔を寄せて大口を開いた。
(すまぬ、沮授・・・。)
消え入りそうな声でつぶやいて、袁紹は静かに目を閉じた。
13本当にあった怖い名無し:2009/06/19(金) 01:30:26 ID:tSGTejw50
相変わらず素晴らしい作品乙であります!
14本当にあった怖い名無し:2009/06/20(土) 21:35:50 ID:br4Mohlu0
【小説】ZOMBIE ゾンビ その15【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1129125869/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その16【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1137418562/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その17【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1149172575/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その18【創作】
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1162726951/
【小説】ZOMBIE ゾンビ そのX【創作】
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1171025209/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その20【創作】
http://www.hobby10.2ch.net/test/read.cgi/occult/1185269625/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その21【創作】
http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/occult/1196923264/
15本当にあった怖い名無し:2009/06/20(土) 21:40:04 ID:br4Mohlu0
次立てる人はテンプレにこれ↑を入れてください
16本当にあった怖い名無し:2009/06/21(日) 00:17:28 ID:acwNgsuKO
17セイレーン:2009/06/21(日) 19:19:29 ID:RTNbWwV1P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(42)

地下牢での惨劇を見た後、曹操の頭の中はある不吉な予感に支配されていた。
(袁紹軍は、総勢70万・・・。)
(噛まれて死んだ者も同じように動く死体に・・・。)
(知人が襲って来るんですよ!?冷静に対処できる人間など、いようはずがない!!)
曹操の頭の中で、いろいろな情報がぐるぐる回る。
それらを統合すると、袁紹軍の兵はすでにほとんどゾンビに変わり、誰構わず生きた人間を襲っていることになってしまう。
降ってきた張郃と高覧も、まさにそうなっていると証言した。
(袁紹は無事だろうか・・・。)
曹操はさっきからそればかり考えていた。
曹操と袁紹は旧友である。
今は敵だが、子供の頃はよく一緒に遊んだりいたずらをしたりし、大人になってからも漢帝国がまとまっていたころは仲の良い同僚だった。
むしろこれまでの人生の半分以上は、親友として過ごした時間だ。
そのため、曹操は袁紹のことをよく知っている。幼い頃、困惑した表情で手を差し出した時の顔。もう少し大きくなって、一緒に遊びに行った時の弾けるような笑顔。親友に寄り添って眠りかけた、無防備なぼーっとした顔。
体格には袁紹の方が恵まれていたのに、家柄でも袁紹の方が恵まれていたのに、それでも袁紹は曹操の後ろについてきた。
二人で過ごした時間は、宝石よりも輝いた日々だった。
敵となった今も、単純に憎いだけではない。
お互い相手に一目置いて、それはライバルのような関係だった。
(違う!おれはこんな決着を望んだ訳じゃない!!)
天下をかけて争い、互いの武勇と知略の全てを出し尽くして、悔いの残らぬよう勝負をつけるつもりだった。
それがたった一人の将の裏切りにより、その将の一存で使った悪魔の新兵器により、袁紹の陣は一日で死者に支配されてしまった。
もしかしたら、袁紹自身すらも。
18セイレーン:2009/06/21(日) 19:21:45 ID:RTNbWwV1P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(43)

はるか昔、曹操と袁紹は並んで馬をとばしていた。
曹操の腕には、さらってきた若い花嫁が抱かれている。
二人は大胆にも、結婚式に乱入して花嫁をかっさらってきたのだ。今思えば、よくあんなことをして捕まらなかったなあと感心する。
しかし袁紹は捕まった。
人の手にではなく、野ばらの茂みに落ちてしまったのだ。
野ばらの数知れぬ棘が袁紹の体を捕らえ、ひっかいて傷つけていく。袁紹は馬上にいる曹操に、助けを求める視線を送った。
しかし曹操は助ける代わりに大声で叫んだ。
「おーい、花嫁どろぼうがここにいるぞ!!」
それを聞いたとたん、袁紹は血相を変えてもがいた。
痛みも忘れてもがいてもがいて、あっという間に野ばらの茂みから脱出した。
それは、平和な日々の記憶だった。

今、袁紹は再び捕まってもがいていた。
あの時とは違う一面の野ばらの中、袁紹は数知れぬ棘に刺されて苦しんでいた。
棘の一本一本があの忌まわしいゾンビの爪と歯に変わり、袁紹の体を傷つけ、肉をこそぎ取っていく。己の流す血で、袁紹の体はどんどん赤く染まっていく。
いくらもがいても、そこから抜ける事などできはしない。なぜなら、野ばらは一面に広がっている・・・袁紹の陣は数十万の死者に埋め尽くされているのだから。
遠くで見つめる曹操の耳に、悲痛な叫び声が届く。
袁紹の手が力を失い、死者の群にのまれた。
(そんな事があってたまるか!!)
曹操は止めどなくわいてくる悪夢を、必死で押し返した。
袁紹は自分の親友なのだ。こんな理不尽な悪夢に屈してほしくはなかった。
曹操はありったけの祈りをこめて、頭の中で叫んだ。
(死ぬな、袁紹ー!!!)
19セイレーン:2009/06/21(日) 19:23:35 ID:RTNbWwV1P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(44)

遠くで、誰かに呼ばれた気がした。
袁紹の意識が、急速に呼び戻された。
目を開けると、相変わらず死んだ沮授の顔が側にあった。しかし目を閉じる前よりは、遠くにあった。
「認めません・・・こんなの、私が認めません。」
郭図だ。
郭図が沮授の首に腕をかけて、懸命に引っ張っているのだ。
おかげで沮授は袁紹に噛みつけず、逃れようともがいていた。
郭図は恐怖でくしゃくしゃになった顔を涙と鼻水でべたべたにして、それでも袁紹を殺させまいと沮授を引っ張っていた。
「認めません・・・あなたが、殿を殺すなんて!
殿は、あなたを殺したかもしれません。
でも、あなたは殿のものでも、殿はあなただけのものじゃない!!」
ほとんど泣き声だ、しかし決意は揺るぎない。
「私だって、あなたと同じくらい殿が好きなんです・・・きっと、審配も・・・。
それなのに、今ここで私たちから殿を奪うなんて、許しません!!」
郭図がぎりぎりと引っ張るうちに、袁紹をつかんでいる沮授の手がゆるむ。
一度は虚無に沈みかけた袁紹の心にも、再び気力が注ぎ込まれた。
袁紹は全身に力をこめて、沮授の手を振り払った。
支えを失った沮授の体が、勢い良く後ろに倒れこむ。同時に、勢い余って郭図の体も地面に打ちつけられた。
生者は苦痛に動きを止めるが、死者は苦痛を感じない。郭図が起き上がる前に、沮授が起き上がって郭図の足をつかんだ。
「殿、お逃げください!!」
しかしその時には、袁紹はすでに剣を抜いていた。
「沮授も郭図も我が部下だ、死者が生きた部下を殺めてはならぬ。」
袁紹は剣を高く振り上げた。
「沮授よ、安らかに・・・!」
袁紹の涙とともに、沮授の首が落ちた。
20本当にあった怖い名無し:2009/06/22(月) 07:05:57 ID:Jz/HzmuzO
りゅうびは死んでて欲しいとおもた
21本当にあった怖い名無し:2009/06/23(火) 20:14:29 ID:OOrL6cu8O
状況が違うとこんなにも人間関係が変化するものなのか…。
ここまで袁紹が皆に好かれてる作品は初めて見たww
かくいう私も袁紹好きなのでこれからの展開、期待していますぞ!

郭図も今までにない良い郭図で新鮮だ…。カッケェー
22セイレーン:2009/06/24(水) 22:08:43 ID:hWg34FsFP
劉備は情に流される人間だからね・・・この状況では事態を悪化させるよ。

ところで、三国志に少しでも関心がある方に問います。
ずっと先、夷陵の戦い(劉備VS孫権)に、関羽がタイラント的な化け物になって乱入するシナリオを考えております。
ただ関羽は軍神として崇められているので、下手にいじると私が四面楚歌に陥る恐れがあると思います。
関羽のタイラント化はありですか?

だめな場合は、以下の代替案から選んでください。
タイラントが
・龐徳→馬超、趙雲の行動に無理が生じる
・許褚→元曹操軍メンバーが悲惨
・太史慈→赤壁辺りから無理が生じそうな予感
・ゾンビ赤兎馬で十分
・いらない
23本当にあった怖い名無し:2009/06/25(木) 00:13:29 ID:t1yTuU/M0
>>22
それはやめた方がいいと思います。
関羽が好きか嫌いかに関係なく、荒らす事が目的で「関羽のタイラント化」を理由にする人は出てくると思うからです。

でも、強い敵(タイラントなど)が関羽や劉備と戦うのは面白そうなので、いらないってことはないと思います。
まず力だけは関羽に匹敵するなどのオリジナルのキャラを作って、それがタイラント化ってのが無難かと。
どちらにしても、作品の続きを楽しみにしています。
では。ノシ
24本当にあった怖い名無し:2009/06/25(木) 02:35:41 ID:sx+Sj/aj0
>>22
ゾンビ強化版出すのはいいと思う
けど代替案を選んでこの先のネタバレがわかるのはちょっと・・・
と思う
こいつまでゾンビになるのか〜!!!という先の見えないwktk希望www
あくまで俺個人の希望です
楽しみに読ませてもらってますので頑張ってください
25セイレーン:2009/06/26(金) 22:29:36 ID:sRNlgS1zP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(45)

沮授は、もう動かなかった。今度こそ、本当の眠りについたのだ。
袁紹は震える手で沮授の口を閉じ、まぶたを下ろしてやった。
これで、安らかに眠っている顔になった。
沮授にしてやれる事は、そこまでだった。
「ありがとう・・・わしの愛しい臣、郭図。」
袁紹は死の淵から救い出してくれた忠臣に心からお礼を言った。
まだ自分を必要としている人がいると、気付かせてくれた郭図。悲しみに沈みかけた袁紹の心を再び奮い立たせてくれた郭図。己の身を投げ出して、袁紹の命を守ってくれた郭図。
その行動は、まさに天下の大忠臣と讃えるにふさわしかった。
袁紹はへたりこんでしまった郭図に、自ら肩を貸してやった。
そして、連れてきた兵たちに高らかに言った。
「悲しいことに、沮授は死んだ。
しかし我らの希望はまだ潰えた訳ではない!
今、我々がここに、そして弩隊の兵もまだ生きている!
我々はこれから再び弩隊の残りと合流し、共に生きる道を探すのだ。あきらめるな、生きる道は必ずある!!」
勇気を奮い立たせる言葉に、疲れ気味だった兵たちの瞳に覇気が戻った。
何よりも、変わったのは袁紹自身だ。
袁紹はすでに、さっきまでの希望に引きずられるだけの優柔不断な袁紹ではなかった。
揺ぎ無い光を秘めた目はつり上がり、貪欲な生への執念が燃え盛っていた。そして戦闘を楽しむかのように、口角が少しだけ上がっていた。
まるで、敵軍の総大将が・・・曹操が乗り移ったかのように。

一人逃げ出そうと思っていた逢紀にとって、それは全く予想外だった。
しかし、生きられる確率が上がったのは確かなようだ。逢紀はすぐさま袁紹の後ろについて、おべっかを使い始めた。
しかし兵の一人は見てしまった。
袁紹が一瞬、修羅のようなすさまじい形相で逢紀をにらんだのを。
逢紀はもう自分が言った不忠な言葉を忘れてしまったようだが、袁紹はちゃんと聞いていたのだ。
26セイレーン:2009/06/26(金) 22:32:06 ID:sRNlgS1zP
タイラントの件はじっくり考えてみます。
代替案にない人物で・・・。

それ以外の展開も面白くなるようがんばりたいと思います。
27本当にあった怖い名無し:2009/06/27(土) 00:39:31 ID:XftRMwZX0
・太史慈→空を飛びそうな予感

いやね、卓ゲ板で、「太史慈が領地侵犯」を「太史慈が領空侵犯」と言い間違えたって話が出て、以来そこでは太史慈は空を飛ぶってネタが定着してしまった。
28本当にあった怖い名無し:2009/06/27(土) 15:53:53 ID:EeUPtrZMO
ううう…

やっぱり袁招カコイイ!
29セイレーン:2009/06/28(日) 21:45:48 ID:WXbKKjukP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(46)

袁紹たちは帰ると決めたものの、死者たちは袁紹を帰す気はなかった。
ありとあらゆる方向から、大勢の死者が迫り来る。
来た時と同じように進行方向の敵しか相手にしていないが、それでも弩の矢は驚くほどの速さで減っていく。
「逢紀、矢を!」
「も、もうないぞ・・・。」
あれだけ大量の矢を持たせていたはずの逢紀が、ついに手ぶらになった。
残る矢は各自の腰に着けた矢筒にある分である。
袁紹はついに弩をベルトで肩にかけ、剣を抜き放った。そしてまだ矢が残っている矢筒を、郭図に手渡す。
「あの、わわ私は何をすれば・・・?」
「自分で考えろ!」
情けない質問をする逢紀に短く答えて、袁紹は後ろから迫る群に切り込んだ。
死者が自分をつかもうとする寸前で身をかがめ、剣を大きく振りぬく。たちまち、数本の足が切断されて散った。
前列にいた死者の一部がばたばたと倒れ、死者の流れがそこでつまる。
細い道で渋滞を起こすには、先頭のニ、三体をたたけばよい。
「槍兵、前へ出よ!」
すぐさま弩隊が左右を向き、槍兵が死者の頭を貫く。
一列では終わらない、次を突いてもさらに次が来る。
しかしその列を突いたら、そこからは少し空いていた。
「弱気になるな、弩隊のテントはすぐそこだぞ!」
兵たちは奮い立って前方の死者たちに突っ込んでいった。矢を切らした弩兵たちも、剣を抜いて前線に加わる。
死者の数が徐々に少なくなってきた。
辛評軍の本隊を抜けたのだ。
しかし、地獄が終わった訳ではなかった。
30セイレーン:2009/06/28(日) 21:47:11 ID:WXbKKjukP
ソンビ・オブ・ザ・官渡(47)

前方にまた、数人の死者がいた。
しかし彼らは皆、体がひどく損傷していた。
両足が折れて這いずっている者、岩にでもつぶされたように体の半分がつぶれている者、腕が肩から引きちぎれて肺の向こうの心臓まで見えている者。
生きている時死者に噛まれただけでは、説明し難い傷だ。
しかもそれが集団でいる。
「うわっ!?」
兵の一人が這いずっている死者に足をつかまれていた。
「ちっ!」
袁紹は曹操のように下品に舌打ちして、臆することなく死者の首を踏みつけた。そして、首の骨に真上から剣を突き刺して折る。
「あ、ありがとうございます・・・。」
「ふん、礼などいらん!」
品格や礼儀を重んじる袁紹とは思えない受け答えに、助けられた兵も戸惑っている。
とはいえ、袁紹も助けを求めた兵を責めている訳ではなかった。
這っている死者は確かに厄介だ。首が地面すれすれにあるため槍でも弩でも狙いにくいし、姿勢が低すぎて見落としてしまう危険性も高い。
しかし袁紹が気にしているのは、死者たちにこんな傷を負わせた何かが近くにいるのではないかということだ。
味方ならば心強い、しかし味方でなかったら・・・。
「皆、一層警戒して進め!」
何が潜んでいるか分からないが、進むのを止める訳にはいかない。
歩みを止めれば、死より他に道はない。
袁紹は自らも油断なく周りを見回しながら、テントの間を進んだ。
何本目かの横道の奥に、それはいた。
「馬?」
通路の奥にたたずむ大きなものは、一頭の馬だった。
31セイレーン:2009/06/28(日) 21:48:18 ID:WXbKKjukP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(48)

最初は、皆それが敵だとは思わなかった。
むしろ拍子抜けして、それから安堵した顔になった。
しかし、戻りかけた血の気はすぐに引いていった。
その栗毛の馬は、倒れた人間の腹に鼻先を突っ込んで口をもごもごと動かしていたのである。人を食っているであろうことは、誰にでも分かった。
これは普通の馬ではない。
馬は草食の獣であり、虎や狼と違って人間を襲うこともないし、肉を食べる事もない。
「静かに、音を立てずに通り過ぎよ。」
幸い、馬はまだこちらに気付いていない。
ならば、相手にしない方が得策だ。
馬の力は人よりはるかに強い、相手にすればさっきのボロボロになった死者と同じ目に遭うことは目に見えている。さっきの死者はおそらく、あの馬の食べている人間を襲おうとして、馬にはねられたのだろう。
袁紹たちは足音を立てないように、慎重にそこを通り過ぎようとした。
「ひゃあ!」
突然、逢紀が悲鳴を上げた。
単純に、死者の肉片を踏んでびっくりしたのだ。
「静かに!」
慌てて郭図が口を押さえたが、もう遅かった。
馬が長い首をぬっと起こしてこちらを見た。今まで何度も見てきた死者と同じように、目は真っ白に濁っている。
間違いなく、死んだ馬だ。
「走れ!!」
袁紹たちが走り出すのと同時に、死馬も走り出した。
人間の死者たちはあんなにゆっくりしているのに、死馬の脚力は生前と比べてそう衰えてはいないようだ。
全員が十字路から出る前に、死馬が走りこんできた。
後ろから数人の兵が、豪快に跳ね飛ばされた。
馬はそのまま勢い余って、テントの陰に姿を消した。
32本当にあった怖い名無し:2009/06/29(月) 16:09:48 ID:MMV/6KPV0
【生物】アカカミアリをゾンビ化して操るタイコバエ
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1242398005/
33本当にあった怖い名無し:2009/07/02(木) 23:34:54 ID:HsWTtVW+0
保守っときます
34本当にあった怖い名無し:2009/07/03(金) 00:42:49 ID:EAg1iV1l0
なんか作者さんもセイレーンさんだけになっちゃったね・・・

わっちが書いてみようかしら・・・
35本当にあった怖い名無し:2009/07/04(土) 00:35:37 ID:CNixsa5a0
書けるモノがあって書きたいんなら書け。
ただそれだけだ。

SSなんてーのは、保守だの賑わいだののために書くモンじゃない。
他人を楽しませうるだけのモノが書けて、自分が書きたいと思うんだったら書けばいいさ。

と、叩かれて早々に立ち去った自分が言ってみる。
36セイレーン:2009/07/04(土) 19:28:54 ID:2GSp7KViP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(49)

「止まるな、弩隊の残りと合流するのだ!」
幸い、死馬は生前と同じように、急に止まったり曲がったりできないようだった。
おかげで、死馬が走りすぎたスキをついて、少しは遠くに逃げることができる。しかし死んだとはいえ馬にとっては、多少距離を置かれても一瞬で追いつけるだろう。
振り向かずに直線的に逃げるのは最悪だ。
「止まれ、弩隊は後ろに並べ。」
横道のあるところに来ると、袁紹は文官たちを横道に入れ、自分は弩を取って立ち止まった。
「馬が見えて走り出したら、一斉に射よ。」
馬は一直線に走ってくるのみである。
横から射るのは至難の技だが、正面から射れば動かぬ的に近い。
馬の性質は、公孫瓚の白馬陣で嫌というほど思い知らされている。
テントの間から、死馬がのっそりと姿を現した。
そして袁紹たちの姿を認めると、馬と思えぬ濁ったいななきを発して、一直線に突進を開始した。
「撃て!!」
弩兵たちが一斉に矢を放った。
馬の首から胴にかけて、強力な矢が勢い良く打ち込まれる。
運悪く、頭には一本も当たらなかった。
それに馬も倒れなかった。少し速度を落としかけただけだ。
ある程度予想はしていたことだ。人間の死者が苦痛を感じないのと同じように、死馬も痛みによる制動は期待できないようだ。
「退避!」
袁紹はすぐに横道に駆け込んだ。弩兵たちもそれに続いた。
しかし、一人が転んだ。
助けることはできなかった。すぐに死馬が目の前を通り過ぎ、腐臭の混じった風が袁紹のほおを撫でる。
馬に踏みつけられて、転んだ兵の背骨がボキッと音を立てて折れた。
その音に後ろ髪を引かれながら、それでも生きるために袁紹は走った。
37セイレーン:2009/07/04(土) 19:30:15 ID:2GSp7KViP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(50)

「横道を探せ、早く!」
袁紹は叫んだ。
死馬から逃れるためには、次々曲がって突進を避けることが重要だ。
しかし、今回はおそらく次の突進までの時間が短い。
弩によって少し速度を落とさせたせいで、止まって向きを変える時間は、全力で走っていた場合より短くて済んでしまう。
「殿、横道です!」
先頭にいた兵が横道に入り、手招きする。
文官たちと兵の大部分が横道に入ると、袁紹はちらりと後ろを振り返った。
死馬はもう通路の入り口に現れ、こちらに向きを変えていた。
袁紹は大急ぎで横道に走りこんだ。
「死ぬものか・・・!!」
低くドスのきいた声でつぶやき、両側に立っていた旗を切り倒し、入るのに邪魔になる程度の障害物を作る。
生き延びるには、全力であがき抜くしかない。
かつて袁紹は、野ばらの中で傷だらけになってそれを学んだ。
袁紹の精神は、ここ二十年程ないくらい高揚していた。自分の思うとおりに行動し、それが己の命そのものを支えている感覚・・・名門袁家の当主になってからは、久しく忘れてしまっていた。
しかし、昔はあった。
曹操と二人で不良行為に精を出した日々に、それはあった。
それがなければ、今頃は自分も死者の一員になっていただろう。
「くっくっく・・・感謝するぞ、曹操。」
喉の奥で笑いながら、また自分の姓が書かれた旗を切り倒す。
己の名を傷つける罪悪感など、今は完全に心の外だ。
這いずる死者の手を踏み潰し、杖をつくように自然な動きでそいつの頭に剣を突き刺す。
細い道の先には、光が見えていた。
38セイレーン:2009/07/04(土) 19:31:38 ID:2GSp7KViP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(51)

細い道から出ると、そこは広い道になっていた。
光がまぶしいのは、遮るものがないからだ。
袁紹は青くなった。
遮るものがないということは、隠れる場所がないということである。
広い道には障害物になりそうなものがほとんどなく、すぐに入れそうな横道も見当たらない。馬の突進を妨げられそうなものは、己の武器くらいだ。
「あ、あそこは弩隊の幕舎です!」
兵の一人が、広い道の先を指して言った。
袁紹たちはいつの間にか、弩隊の待つ場所に戻ってきていた。
数人の待っていた弩兵がこちらに気付き、手を振っている。
「おい、すぐに助けを求めよ!」
袁紹の命令を受けて、走れる兵が弩隊の幕舎に向かう。
しかし、さっき出てきた細い道からは、すでに死馬のひずめの音が聞こえ始めていた。
「間に合わぬか・・・郭図、弩を!
矢の残っている者は、全員弩を構えよ。急げ!」
袁紹は郭図から矢をつがえた弩を受け取り、広い道の中央に走った。他の弩兵たちも大急ぎで矢をつがえる。
地獄の底から響くようないななきとともに、死馬が細い道から走り出てきた。
袁紹は自ら兵の先頭に立ち、死馬に矢尻を向けた。袁紹とともに弩を構えている兵はわずか五人、それだけしか矢が残っていなかったのだ。
死馬が道の中央まで走って止まり、向き直って袁紹をにらむ。
「撃て!!」
六本の矢が祈りをこめて、死馬に撃ち込まれる。
しかしその瞬間、死馬が走り出して頭の位置が少しだけずれた。矢の半分は空を貫き、残りの半分も頭には当たらなかった。
(万事休す、か・・・。)
その時、後方から声が聞こえた。
「伏せろ!」
反射的に屈んだ袁紹の頭上に多数の矢が飛来し、死馬の頭を串刺しにした。
残っていた弩隊の、一斉射撃だった。
39セイレーン:2009/07/05(日) 22:16:26 ID:8AZPw9CYP
寂しいであります。
誰か他の作家さんカモン。
40empty ◆M21AkfQGck :2009/07/05(日) 22:56:08 ID:W48B0FS40
投稿テスト。
…うわっ、凄い進んでますね………。
41empty ◆M21AkfQGck :2009/07/05(日) 23:59:58 ID:W48B0FS40
ひょい、と塀の端から鏡を突き出す。鏡に映し出された世界には、これといって何も映っていない。
通ってきた道と大して変わらない。家々と塀とたまに追突している車、転がっている自転車に道の端に追いやられている汚れきった包帯。
ごくごく稀に血の跡と思しきどす黒い染みがあったりするが、そんなものは一日歩き回って3つも見つかれば多いほうだ。
「よし、大丈夫」
路地から頭を出し、念のために肉眼で確認してから告げる。
「えーと、どこだっけ?」
「あと少し先。もうすぐ住宅地を突っ切るから、そこからすぐ」
鏡をナップザックにしまう。いちいち面倒だけど、いざという時に両手が使えるようにしておきたい。
かつん、と右手に持った棒がアスファルトを叩いた。しかしその音は、周囲でやかましく鳴いている蝉の声でかき消される。丁度いい隠れ蓑だ。
―――ま、あっちが出す音も聞こえなくなるのは辛いけどね。
棒を反対側の手に握りなおす。流石に辛くなってきた。
「…どうしてこんなことになってるんだろうね」
友人が、先に柳葉包丁をくくりつけた棒をぶんぶん振り回す。…危なっかしいことこの上ない。
「そりゃあ、あっちから指定してきたんだし、そもそも行きたいって言ったのは…」
「あー、うー、んあー、そうだけどさー、こう、もっとこう、車とか無いの?」
「車は注意を引きすぎる」
移動するには楽なことこの上無いけどね。

『そっちはどこに居んの?』
「えーと、国道沿いの料理店」
一応店名も言っておく。…言った所でわかるのかという疑問はつくけど。
『ふーん。国道か…』
42empty ◆M21AkfQGck :2009/07/06(月) 00:00:29 ID:W48B0FS40
電話の相手は、何やら考え込むように唸っていた。
そりゃあ、こんな曖昧すぎる情報だけではどこか把握できないだろう。
「そっちは?」
友人が乗り出してくる。
『今居るのはね――』
告げられたのは、自分もよく知る施設だった。何せ、この付近で一番大きなプールがある。こんな事態になっていなければお世話になっているはずだ。
『ずっとここで隠れてるんだけど、不思議なことになーんにも来ないのよね。
 そっちはどう?』
「こっちはかなり遭遇してますよ」
少なくともこの二日間では。
『最初の…えっと、こんな事態になった初日には、こっちにもかなり居たんだけどね。その日のうちに、ぜーんぶ出て行っちゃった』
ということは、アレは場所を選んでいるということだろうか。
例えば、人間が多そうな場所、とか。
―――だからこっちに密集していた?
確かに国道付近ならば、どんな時にも最低限の人通りはある。いや、住宅街に行けばそれこそ獲物を選び放題だろう。待ち構えていれば、獲物が通りがかることも多い。
一方、電話の相手の居る施設は田んぼのど真ん中。
人通りなんて無いに等しい上、施設内の人間を全員襲ってしまえば、こんな事態になっているのだから待てど暮らせど獲物は来ないはずだ。
「プールかぁ…」
横で何か聞こえた。嫌な予感がする。
『うーん、何とかして合流できれば…こっちに食料は無いのよね。幸い、水には困らないけど。プールの浄水装置だって動いてるし』
「じゃあ、こっちから行く! というか是非!」
予感的中、ひゃっほぅ。
『…うん、こっちもそれが有難いかな。食料とか持ってきてくれると嬉しいんだけど』
「りょーかいっ!」
ぷつっ。
あ、切れた。というか切りやがった。
「さぁて、そう決まったからにはさっさと移動しよう! 日が高くて暑いうちならアレも動かないだろうしね!」
テンション高ぇー。
43empty ◆M21AkfQGck :2009/07/06(月) 00:01:57 ID:W48B0FS40
「待てい」
何かの音楽を口ずさみながら今にも飛び出していきそうな友人を抑える。
あ、凄い不服そうな顔。
「何で勝手に決めてんのさ。…いや、もう、そう決まったからには文句は言わないけどさ。
 …少しは相談して物事を決めようとかさ、そういう気持ちって無」
「あー、そういえば武器が要るね。動かないって決まったわけじゃないし」
「いや人の話を聞け」
ぴゅー、と擬音が付きそうな勢いですっ飛んで行く友人。十秒数える間に、両手に包丁を持って帰ってきた。何故か指と指の間に挟んでいる。
「ウルヴァリン!」
片手だけな。
「…どうすんの、それ」
「ざくって刺してぐりって抉ればいいって聞いたことが」
包丁を持って宙でその動きを実演する。
「それでアレが死ぬと思う?」
「あー、そうだよね、掴みかかられたら終わりだよね」
「ねぇ、会話が噛み合ってないような」
「うーん、槍にしようか。棒あったし」
「いや槍って。それ素人が扱っていいものじゃ」
「紐無いかな、こう固定できそうなの」
「ねぇ、人の話を聞こうよ」
「そういえば短い間隔で複数の傷を付けられると治りが云々ってどっかにあったな…」
ぐるぐるっと身長より少し低い棒の先に二本の包丁を縛りつけている。それが解けて落ちてくるという可能性を考慮して欲しい。
「はい完成。…あー、そういえば手鏡とか欲しいな」
「…」
もう何も言えなかった、というか言わないことにした。

「上手く抜けれた…」
後を振り返る。いつ何がどこから飛び出してくるかと気が気じゃなかった。今の経験だけで今日一日分の気力を使い果たした気がする。たとえ誰も居なくても、今日はここに泊まろう。
「うあー、足が泥まみれ」
友人が嘆いている。
44empty ◆M21AkfQGck :2009/07/06(月) 00:02:44 ID:8xGaeH2U0
田んぼから抜いた水を流すために他よりも低くなっているのを利用して、用水を歩いた結果だ。照りつける日差しを遮るものが無いのが欠点だけども、そう簡単に見つかりはしない。
―――施設の中にアレは居ない、って言ってたけど…。
駐車場を見ると、まだそこそこ車が残っていた。ただし、無事な車は無いに等しい。
「さっさと入ろうよー」
友人はもう自動ドアを潜っていた。慌てて後を追う。
「離れちゃダメだって。言ったでしょ、一人で行動するのは危なすぎる」
館内に入った途端、冷気が押し寄せた。クーラーがかかっている。
「ふー、天国―」
友人が受付カウンターの裏で寝転がっていた。一応、身を隠さなければならないという意識はあるらしい。
「聞いてる? 二人で行動すれば一人じゃ対処できないことに対処できるかもしれないし、互いに見えない範囲をカバーできる。それだけでも生存率はぐっと上がるんだけど」
映画だと、一人で行動している時に後から襲われたりするのをよく見る。
現状でそれを馬鹿にできない。
「わかってるって。でも、このエントランスは――」
こんこん、と指で床を叩いている。
「――入った段階で、何も居なかった」
「そう見えているだけで、隠れてたのが飛び出してきたら?」
「対処してくれるんでしょ? そのための二人一組なんだから。あー、もう今くらいは、せめて今くらいは何も言わないでよ…。この涼しさを堪能したら、ちゃんと守るから」
緊張感の欠片も無かった。ある意味羨ましい。
――かたん
かすかな音が聞こえた。
がば、と友人が起き上がる。
45empty ◆M21AkfQGck :2009/07/06(月) 00:05:32 ID:8xGaeH2U0
「………どこから?」
「………多分、あっち」
聞こえたのは、プールの更衣室がある側から。
何かが落ちた、ということも考えられるが、こういった場合は最悪のことを考えたほうがいい。…と、何かで言っていた。
つまりは、アレが居る。
すぅ。
自分を落ち着けるために深呼吸をする。ただし、あくまで眼は更衣室から逸らさない。
友人は更衣室以外に注意を払っているようだった。陽動、という可能性を考慮しているのだろうか。
「よし、行こう」
「…やめたほうがいいと思うけどなぁ」
いつになく弱気だ。何か怖気づくことでもあったのか。
「電話の相手だってここに居るんだ。こうやって警戒してばっかだと、いつまで経っても会えないよ」
「そりゃそうだけどさ…、その相手が、アレじゃないっていう確証は? アレが自分達をおびき出したとか、もしくは移動している間にアレに襲われたとかは?」
考え出すと切りの無い、後ろ向きな発想。
「―――じゃあ、ずっとこのままでいる?」
「それもどうかと思うけどね」
苦笑する雰囲気。
「行くか、行かないか。どする?」
「うーん…、まぁ、こういう事態のためにコレを作ったんだし」
ぐっ、と即席の槍を握る手に力がこもる。
「―――行こうか」
かちゃん、と包丁の先が受付に当たった。


お久しぶりです。
地味ーに、本当に地味ーに進んでいます。
物語としては別に一週間もかかんない予定なのでこんなにゆっくりやっていますが、長期間だったらどれだけの長さになるのやら…。
その間に、ゾンビと合間見えることもある…予定ですがやっぱり逃げに専念。
ゾンビ側にも色々と設定を作ってはいるのですが、全くと言っていいほど出さずに終わりそうです。
46本当にあった怖い名無し:2009/07/06(月) 03:07:31 ID:JBuWcJCY0
投下ありがとうございます
乙であります
つか作者さんに寂しい思いをさせていたとわ!
前々からゾンビ小説を書きたいと思っていたけど急がなきゃ…(汗
47セイレーン:2009/07/07(火) 20:56:48 ID:RyPF2KmKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(52)

「殿、よくぞご無事で!」
整然と並んだ弩兵たちの中央で、弩隊の隊長が手を振っている。
袁紹は急に体の力が抜け、めまいがするほど安心した。
「ああ、でかしたぞ・・・その忠誠、心から感謝・・・する・・・。」
急速にアドレナリンが引いていき、袁紹の体は支えを失ってぐらりと揺れた。
そのまま倒れかけた袁紹の体を、弩兵たちが慌てて支える。疲れきった袁紹をいたわりながら、幕舎の中に引き入れた。
そこには、途中うっかり裏切ってしまいそうになった、もう一人の大切な臣が待っていた。
「殿・・・生きていて良かった、殿ー!!
あなたが死んでしまったら、私は・・・私は、うっうわああぁーっ!!!」
幕舎に入ったとたん、審配が泣きながら胸に飛び込んできた。
「私は、何と愚かな事をしたのでしょう!
もし私の見ていないところで殿が死んでしまったら、それ以上悲しいことはこの世に存在しないというのに!!」
死者につかまれたショックで一時は生きた屍のようになっていた審配も、正気に戻ったようだ。審配は袁紹の胸にすがって、子供のように泣きじゃくった。
そんな審配をうるさく思ったのか、郭図がちくりと皮肉をとばした。
「別に、あなたが同行しなかったことは罪ではありませんよ。
あなたは一番ヘビーな足手まといですからね。
むしろ行く方が罪です。」
「何だとぉ!?」
審配は即座に泣き止んで、真っ赤な顔で郭図をにらんだ。
それを見て、兵士たちがどっと笑った。今まで死闘の連続で張り詰めていた心が、少しだけほころんだ瞬間だった。
袁紹は少しうろたえた顔で、それでも郭図に感謝の微笑を向けていた。
(あ・・・いつもの殿だ。)
少し離れて見ていた逢紀は、ふと思った。袁紹の目は、もうつり上がっていなかった。
48セイレーン:2009/07/07(火) 20:58:44 ID:RyPF2KmKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(53)

袁紹はとりあえず、審配と残っていた弩隊に今までのことを話した。
沮授は動く死体に変わり果てていたので、袁紹が責任を取って安らかに眠らせた。そして帰る途中で、あの恐ろしい死んだ馬に出くわした。
まとめてみると、思った以上に悪い状況だ。
沮授がいないので、彼と共に助かる道を探すことはもうできない。そのうえ、あの死んだ馬は他にもいると考えた方がいいだろう。公孫瓚の白馬陣の威力に感心して騎馬隊を多く連れて来たのが、完全に裏目に出た。
「あああ・・・どうすれば良いのだ、もはや打つ手はないのか!?」
絶望的な状況を自分で説明しているうちに、袁紹は頭を抱えてしまった。
嫌な事を考え始めると止まらなくなって混乱するのは、袁紹の悪いくせだ。
「殿、私たちも軍師です。
沮授がいなくなった分、我々が考えますから。」
審配はそう言って袁紹を落ち着かせると、自分の考えを話し始めた。
「だいたい、沮授がいてもいなくても、我々がまず第一に取るべき行動は決まっています。
この死者の群に襲われない安全なところに逃げること、それが最優先でしょう。
死者の群をどうするとか、これだけの損害をどうするとか、それを考えるのは我々の命の安全を確保してからでしょう。」
「ええ、正解ですね。」
郭図もそれにうなずいた。
審配の状況判断はまさしく、現状を冷静に分析できている。
これからどうするか、特に未来のことを考える時は自分たちが生きていることが前提なのだ。根本的な問題はそこだ。
「ですから、今は全力で河北に帰りましょう。
死体どもを見る限り知性は失せているようですし、我々が黄河を渡ってしまえばもう追っては来られぬかと。
噛まれた者がすでに河北に入っていたとしても、ここよりは少ないはずです。だいたい、河北には70万の人間がこんな密度で集まっている場所はないですからね。
つまり我々がとるべき行動は、早急に黄河に向かって逃げることです!」
「それは、即死級の不正解ですね・・・。」
今度は郭図はうなずかなかった。
49セイレーン:2009/07/07(火) 21:01:07 ID:RyPF2KmKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(54)

(全く、審配ときたら、根本的なところで抜けているんだから・・・。)
郭図は審配に見せ付けるように、大げさにため息をついた。
意見を否定された審配が、我を忘れて食らいついてくる。
「何だと、私の何が間違っていたぁ!?
言ってみろおぉ!!」
郭図は数時間前の舌戦と同じように、耳栓をしながらちくりと返した。
「黄河まで逃げるってあなた・・・それは死ねと言っているのと同じですよ。
だいたい、ここから黄河に行くには、直線距離でどれだけ時間がかかると思ってるんです?直線で結ぶと、どこを通ることになると思ってんですか!?」
「あ・・・!」
さすがの審配も、はっと口を押さえた。
官渡から黄河までは、それなりに距離がある。行軍の時はさほど気にしない距離だが、直線でも一時間や二時間で着ける距離ではない。
それに、直線で一番近いところを結ぶと、袁紹がついさっき死ぬような目に遭ってきた辛評軍の本隊をまた通ることになる。他にも、死者が多そうな場所がいくつもある。
かといって、迂回すればするほど時間も危険も増す訳で・・・。
確実に逃げるために、生きるという根本が刈られてしまう。
「そうですねぇ、黄河までは無理でしょう。
だいたい、行くまでに日が暮れてしまいます。」
弩隊の隊長も言った。
「日が、暮れる・・・。」
その言葉に、袁紹も文官たちも真っ青になった。
戦いに集中していて気付かなかったが、日はもう西に傾き始めているのだ。おそらくあと三時間もすれば、日が沈んでこの地は闇に支配されるだろう。
夜闇の中であの死者たちに襲われるなど、考えるだけで身の毛がよだつ思いだ。
恐怖に黙ってしまった一同に、郭図は落ち着いて提案した。
「日暮れまでに逃げ込めそうな場所が、一ヶ所だけあります。
私の策を聞いてください。」
50本当にあった怖い名無し:2009/07/09(木) 03:58:48 ID:Afbcz/+JO
保守∩(・ω・∩)
乙です
51セイレーン:2009/07/09(木) 19:18:06 ID:Oe5NPsREP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(55)

「何、そんな場所があるのか!?それはどこだ!?」
すがるように聞いてくる袁紹に、郭図は一度大きく息を吸ってから答えた。
「日暮れまでに入れる堅牢なる避難所・・・それは、官渡城です。
我々は一時的に曹操に降伏し、城に入れてもらうのです!」
「降伏だと!?」
とたんに、周りにいたほとんどの者が目を丸くして声を上げた。
「郭図殿、恐怖で頭がおかしくなったのですかな?
それとも、殿を売り渡して、自分だけは助かろうと?」
逢紀がここぞとばかりに嫌らしい顔でたたいてくる。さっき沮授から袁紹を守ろうともしなかった、その汚名をここで晴らそうとでもしているのだろうか。
殿を売り渡す、という言葉に反応して、袁紹がびくりと肩をすくめる。
不安につぶされかけて混乱している袁紹は、ささいな讒言を真に受けて猜疑心に溺れてしまいやすい。
郭図もよく知っていることだ。
しかしその時、審配が逢紀を制した。
「ほう、そういうことを言うからには、おまえにはそれ以上の策があるのか?」
「あ、いえ、私はただ殿を・・・。」
審配の的確な突っ込みに、逢紀は言葉を失った。
郭図は審配に目でありがとうと伝えて、続きを話した。
「降伏といっても、一時的に従うふりをするだけです。
まず私たちの命を守れる場所に入っておいて、全てはそれからです。
死者をどうにかしてから逃げ出して河北に戻るもよし、この死者を利用して曹操軍の武将を殺してしまうもよし、曹操が帝に手を出す瞬間を狙って政権を乗っ取るもよし。
表面上降伏しても、選択肢はたくさんあります。
ですから、まずは殿の命を守るために、官渡城に入りましょう。」
郭図の優しい呼びかけに、袁紹は警戒を解いてうなずいた。
「うむ、分かった。官渡城に向かおう。」
52セイレーン:2009/07/09(木) 19:19:09 ID:Oe5NPsREP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(56)

袁紹は生き残った者と共に、官渡城へ向かった。
文官三人と自分は馬に乗り、疲れた兵は五頭の馬に交代で乗るようにし、残りの馬二頭に荷車を引かせた。荷車には、予備の弩と矢、それに弩の整備具が入っている。
官渡城に向かって進む間にも、日はどんどん西に傾き、空は夕焼けの赤に染まっていく。
無言で袁紹の後ろについている郭図に、審配が横から声をかけた。
「良かったな、信じてもらえて。」
「ええ・・・まさか、あなたが助けてくれるとは思いませんでしたよ。」
郭図が答えると、審配は遠くを見るような目をしてつぶやいた。
「いや、まあ・・・殿を助けてくれたお返しってことで。
沮授の死体が殿に噛み付こうとした時、おまえが命張って止めたと聞いてな。私はたぶん、そこにいても同じ事はできなかった。
初めは、おまえにもできる訳がないと思っていたが・・・そんな証拠を見せられてはな。その血、沮授と組み合った時についたのだろう?」
「ええ、そうです。」
郭図の藤色の着物には、赤黒い血の汚れがべったりとついていた。
郭図はその血を指でなぞりながら、審配をにらんで言った。
「この汚れは私の忠誠の証・・・私は、殿のためなら何でもしますよ。
もし、あなたが強引に黄河への逃亡を主張してそれが通ってしまったら、私はあなたを弩で撃ち殺そうと本気で思いました。
矢をつがえるのだけは、今日一日でだいぶ早くなりましたからね。」
郭図の目の奥には、残酷なほど熱い忠義の炎が渦を巻いていた。
大切な殿だけを守り抜く、殿に害をなす者は味方であっても徹底的に排除して焼き尽くしてしまうような・・・。
常に自己中心的でマイペースな審配も、この時ばかりは寒気を覚えた。
「さあ、これからは力を合わせて、殿の進む道を開きましょう。」
「・・・そうだな。」
郭図と審配は微笑を交わして、殿に遅れまいと馬をせかした。
53セイレーン:2009/07/09(木) 19:23:06 ID:Oe5NPsREP
だんだん人の本性が露わになっていきます。

郭図は別に意図してみんなの足を引っ張る訳ではないと解釈しています。
ただ、袁紹への忠誠心がアブノーマルな域に達しているだけなんです。
54本当にあった怖い名無し:2009/07/11(土) 01:26:01 ID:NLIDE8Wq0
wktk!
あまり書き込みが無いと、荒れないのは良いけど寂しいっすね
55本当にあった怖い名無し:2009/07/11(土) 03:19:52 ID:ud0N7CPeO
乙です。続きを楽しみに待っています。
56本当にあった怖い名無し:2009/07/11(土) 15:51:02 ID:R24149eGO
セイレーンさん乙&GJGJGJ!


続きが楽しみでしょうがないのです。

57セイレーン:2009/07/12(日) 17:01:42 ID:XlitfR00P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(57)

官渡城の広間には、曹操軍の武将たちが集まっていた。
袁紹軍が壊滅した事が分かった今、これからどうするか話し合わなければならない。
曹操はまだ少し気分が悪かったが、それでも気を張って上座に座っていた。今は伏せっている場合ではないと、曹操もよく分かっていた。
一堂に会した武将たちに、曹操は声を張り上げて問う。
「諸君、聞いての通り、袁紹軍は許攸の新兵器で壊滅した。
しかし同時に、袁紹の陣であった場所には数十万のゾンビがひしめいている。
そこで我々はこれからどうすべきか、皆の意見が聞きたい。」
曹操は部下たちに強い視線を送った。
曹操はいつもこのような軍議には自分の考えを持って参加しているが、今日は珍しく何の考えもなかった。今までの人生の中で一度もこんな事態は起きなかったし、考えたこともなかったのだから当然だ。
しかし、それは他の武将たちも同じである。
曹操が頼みとしている武将たちは、皆一様に黙って何も言えなかった。
と、袁紹軍から降ってきた高覧が手を挙げて前に出る。
「拙者の意見としては、すぐにでも都に帰って防備を固めるべきだと思う。
我らの陣で発生したゾンビどもがこのまま大人しくしているとは思えん、奴らが来る前にできるだけ備えをした方が良いと思う。」
同じく降将の張郃も、それにうなずく。
「そうだな、奴らは人のいる所に集まる。
あの陣から最も近い餌場といったら、今は間違いなくこの官渡城であろう。
下手をすればこの城も、今夜にもゾンビどもに囲まれてしまうかもしれん。出られるうちに出ておくのが得策と思います。」
その意見に、曹操軍の武将たちはひどく衝撃を受けた。
「ちょ、ちょっと待て・・・それじゃ、まるでおれたちも襲われるみたいじゃないか!?」
勝利を導いてくれた兵器に自分たちも殺されるなど、夢にも思わぬ事だった。
58セイレーン:2009/07/12(日) 17:03:00 ID:XlitfR00P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(58)

「お、おい、どういうことだ!?
あの兵器は袁紹軍を滅ぼすためのものじゃないのか!?」
夏侯淵が目を白黒させて高覧に詰め寄る。
高覧は顔をしかめて、嘲うように言い返した。
「はん?あんたらもさっき地下牢で見ただろ。
ゾンビは人間を食うのに、人間を区別したりしないんだよ。」
そう言われて、夏侯淵は青くなってふらふらと自分の位置に戻った。
確かに地下牢でゾンビが発生した時、ゾンビたちは曹操軍の将たちに向かってきた。それに何より、死亡確認のために中に入れて食われてしまった衛生兵も曹操軍だ。
それに気付いたとたん、何人かが口を押さえて広間の外に走った。
広間の中にいる将たちも、ひどく動揺しているようだ。
それを見て、荀攸が李典の肩をたたく。今度こそ、黙らせてみろというのだ。
「え・・・あ、あの、皆様お静かに・・・。」
今度もまた、李典は動揺してしまってだめだった。
見かねた于禁が李典の肩をたたくと、自ら広間の中央に出て大声を響かせた。
「おらおら、静かにしろ!!
荀攸殿のご意見を聞けぇい!!」
これは効いたようだ。
少し時間はかかったものの、将たちはとりあえずしゃべるのを止め、貴重なご意見を持っている荀攸に注目した。
荀攸は軽く頭を下げると、曹操の正面に立って言った。
「殿、我々はゾンビというものをこの目で見ましたが、詳しい事は何も知りません。
孫氏曰く、敵を知り己を知れば百戦危うからず・・・と。
つまり最善の策を練るには、敵の情報を知ることが不可欠なのです。ここはゾンビを最もよく知る許攸殿に、ゾンビの性質について教えてもらうのが第一です。
武将の皆様はゾンビについて質問したい事をまとめられますよう。」
「うむ、なるほど・・・早々に質問をまとめよ!」
曹操は感心して自ら紙と筆を持ち、武将たちと相談を始めた。
李典はただ、己の無力を恥じるばかりだった。
59セイレーン:2009/07/12(日) 17:04:23 ID:XlitfR00P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(59)

少し時間がたって、曹操はとりあえず今知らなければならない事項を絞り込んだ。
許攸が夏侯惇に手を引かれて、曹操の前に出される。
曹操は上座から許攸を見下ろして言った。
「許攸よ、おまえの作った兵器で袁紹軍は壊滅した。
しかし、ゾンビはどうやら我が兵たちをも餌とするようだ。
知らずに対処しようとすれば、我が軍が袁紹軍の二の舞になる恐れがある。それを防ぐのは兵器を使ったおまえの義務である。」
それを聞くと、許攸はにやりと笑ってこぼした。
「情報の対価として、恩賞ははずんでくださるでしょうな?」
あまりに不遜な物言いに曹操は内心腹を立てたが、そこは抑えて皮肉で返した。
「何を言う、我が軍が壊滅すれば、おまえの恩賞もなくなるのだぞ?」
「ああ、それはそうですね・・・失礼いたしました。」
許攸は一度頭を下げると、自信たっぷりに言った。
「さあ、何でも聞かれい!開発者の私が、包み隠さず答えましょうぞ!」
それを聞くと、曹操は矢継ぎ早に質問を始めた。
「まずはゾンビが人を狙う時の事だ。
ゾンビの目は濁っているが、あれで人の姿は見えているのか?見えていなければ、どのように人間を感知し、襲うのか?
それから次は移動だ。ゾンビの移動する速さはどれほどか?人が逃げられる程度か?自発的に長い距離を移動することはあるのか?
とりあえず、これだけ答えてみよ。」
許攸は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑みを浮かべて答えた。
「感覚についてですが、ゾンビの目はあれで一応見えているようです。ゾンビが人を感知するのは主に視覚と聴覚・・・耳はよく聞こえているようで、音に反応します。まあ言ってみれば、目で見えて耳で聞こえる範囲で感知するのでしょう。多少、においもあるようです。
それから移動速度ですが・・・はっきり言って遅いですよ、人が走れば十分逃げられます。自発的な長距離の移動は、ないですね。あったら使った方も危険です。
長距離の移動に見える現象として、感染者が長距離を移動した先でゾンビ化する事はあるでしょうが。」
許攸は見事に答えきった。
しかしその顔は笑っているにも関わらず、額に脂汗が浮かんでいた。
60セイレーン:2009/07/12(日) 17:06:11 ID:XlitfR00P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(60)

「ふむ、なるほど・・・まずは十分だ。」
許攸の答えに、曹操はとりあえず満足していた。
まず知りたいのは、自分たちがすぐさま襲われる危険にさらされているのか、そうでないかということだ。それを知るのに必要な情報は、そう多くない。
自分たちが危険ならすぐ逃げ出す必要があるが、そうでないなら焦るのは良くない。
許攸の情報によれば、今はまだ自分たちが狙われる事はなさそうだ。
いかに多くのゾンビが発生していようと、それが自分たちを感知していないのであれば慌てる必要はない。
曹操は安心してほっと一息ついた。
広間の緊張が解けると、荀攸が一礼して発言した。
「では、本日は城に留まって様子を見ることにいたしましょう。
どちらにせよ、これから日が暮れますので、夜の行軍は避けるべきと思います。我々を感知していなくても、数十万のゾンビのうちには長い距離を歩く者がいるかもしれませぬし、闇の中では一見して死者と生者の区別がつきませぬ。
夜が明けて周りが見える状況で、安全に引き揚げるべきかと。」
「うむ、そうだな。
食糧もあと三日はもつ。」
曹操は荀攸の意見を採用し、少しだけ顔をほころばせた。
自分には優秀な軍師がいて、初めての事態でも冷静に対処してくれる・・・それは、自軍の誇りでもあった。
荀攸のおかげで、武将たちも落ち着きを取り戻しつつある。
曹操は荀攸に心から感謝して、広間を後にした。

軍議が終わると、許攸は一人自室に戻って持ってきた包みを開いた。
「ふう・・・製作者を演じるのも楽ではないわい。
回答はあれで良かったはず・・・。」
包みの中には、何冊もの本が積み重ねられていた。
許攸が開いた古めかしい本の筆跡は、許攸のものではなかった。
61本当にあった怖い名無し:2009/07/13(月) 09:52:24 ID:N3UtrukU0
ふぅやっと規制解除された。

セイレーンさん、いつも楽しみに読ませてもらってます。
いよいよ新展開ですね。

他の作家さんも楽しみに待ってますよ〜〜〜〜〜〜
62本当にあった怖い名無し:2009/07/15(水) 06:45:58 ID:MXM3Tr5lO
63本当にあった怖い名無し:2009/07/16(木) 14:03:58 ID:QidtzryHO
しゅ
64本当にあった怖い名無し:2009/07/16(木) 22:35:10 ID:Z4wbq/cc0
ゾンビってウンコするの?
65本当にあった怖い名無し:2009/07/17(金) 19:36:52 ID:1MRjviuu0
ウンコしないよ!中学生のオンナノコと一緒で、ウンコしないよ!!
66セイレーン:2009/07/17(金) 22:14:53 ID:BbfvBhrXP
ウンコ以前に、いろんな所からいろんなものが漏れてそう。
67セイレーン:2009/07/17(金) 22:16:00 ID:BbfvBhrXP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(61)

曹操が寝室に戻ると、弟の曹洪がやって来て隣に座った。
曹洪は兄に身を寄せて、どことなく不安そうな顔をしている。
「兄上、大丈夫ですよね・・・。」
か細い声でつぶやいて、じっと曹操の目を見つめる。
状況が状況だけに、不安を拭えないのは特におかしい事ではない。しかし曹操は、曹洪の目の奥に何かを感じ取った。
曹洪は確実に、ひどく気にかかる事があると目で訴えていた。
曹洪は非常にケチであると同時に、鋭い観察眼の持ち主なのだ。
その曹洪がおかしいと感じた事は、裏に何かしらある可能性がかなり高い。決して、ただの不安として見過ごしていいものではないのだ。
「どうした、遠慮せずに言ってみよ。」
曹操は優しく曹洪の肩を抱いてささやいた。
すると案の定、曹洪は注意深く辺りを見回してから話し始めた。
「許攸殿が・・・気になるのです。」
「どのように?」
「兄上の質問に答えた時、あの威張り方がわざとらしい気がして・・・。
それに、説明のし方もおかしいです。
だって、ゾンビが長い距離を移動するかなんて、あんなにきっぱり断言できるものじゃないと思うんです。普通は学者とかでも、はっきり証拠を示せない事は断言しませんよ。
荀攸殿が言ったようにゾンビは数十万いる訳ですから、数万分の一の確率でもあり得るとして警戒するべきじゃないでしょうか?
・・・何だか、ヤミ金融にはめられるみたいで・・・。」
曹洪はそう言って下を向いた。
曹操はこんな表情を見たことがあった。
昔、羽振りのいい男から金を借りようとした時も、曹洪がこんな顔で警告した。その時は金を借りる話しを保留にしておいたら、後でその男が詐欺師だと分かった。
今回もそれと同じであるとしたら・・・。
曹操は背中に冷たいものが流れるのを感じた。
68セイレーン:2009/07/17(金) 22:16:53 ID:BbfvBhrXP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(62)

曹操はとりあえず、許攸の行動を室内まで見張るように命令を下した。
そして一度尋問しようと思い立ち、荀攸を呼びに行った。
荀攸は自室で机に向かい、今までの事を記録している真っ最中だった。今までにないできごとを詳細に記録しておくのは、非常に大切な仕事だと荀攸は言った。
そして曹操の意見を聞くと、静かに首を横に振った。
「お止めなされ、事をせいてはなりませぬ。」
「ほう、なぜだ?」
曹操が問うと、荀攸は少し声をひそめて答えた。
「許攸は間違いなく、利益を求めて我らに従っております。
そのような者を証拠もなく罪人扱いなどすれば、失望して我らを逆恨みする事は目に見えております。
許攸はまだ、手の内を明かしておりませぬ。
最悪の場合、この城が袁紹の陣の二の舞になりますぞ!」
「むうう・・・!」
曹操はうなってしまった。
思い返せば、許攸は袁紹に濡れ衣を着せられたと言ってここに降り、袁紹の陣を地獄に変えてしまったのだ。
危うく同じ轍を踏むところだった。
荀攸はそんな曹操に、ほがらかな笑みを浮かべて告げた。
「実は私もその事は気になっていて、先に彼に相談に行ったのです。
だからこれは私ではなく、彼の功績ですよ。」
「おお・・・あやつが!」
彼と言われただけで曹操には分かった。
元から病弱なせいで今も体調を崩して城の一室で伏せっている彼・・・しかしその軍師としての才は、荀攸をも上回る。
「それから彼は、あなたが袁紹の生死を気にしていらっしゃるであろうと・・・。
だから今は、無理に退かずとも良いと申しておりました。」
そのうえ彼は、曹操の気持ちを誰よりも分かってくれている。
仲間からの温かい支えを感じながら、曹操は寝室に戻った。
69セイレーン:2009/07/17(金) 22:18:12 ID:BbfvBhrXP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(63)

「はああぁ・・・私には、何も変えられないのか。」
李典は櫓で一人ため息をついていた。
眼前には、袁紹軍の大陣営が広がっている。
朝見た時はまだ少しは炊煙が上がっていたが、今はすっかり沈黙して、まさしく死の陣と化している。
その光景が今の自分の心と重なるようで、李典はもっと憂鬱になった。
前線で策略を提供したくて武将に転向したものの、肝心な時に何も言えないではあの陣にいるゾンビと変わらない・・・そんな風にさえ思ってしまう。
そんな李典を、後ろから于禁が慰めてくれた。
「まあまあ、焦らなくてもいいさ。
人間、そんな急には変われねえって!」
「変われません・・・死体は腐ってく一方ですよ。」
半ばふてくされた李典に、于禁はなおも声をかけた。
「死体とか言うなよ、おまえは生きてるって。
ほら、袁紹の陣にもまだ生きてる奴いたみたいだし。
見ろよ、逃げて来るぞ。」
「へえー・・・まだがんばってる人がねえ。根性ありますね。」
そう言って顔を上げた李典の目に、城に向かってくる一団が映った。
それは数十人ほどの集団で、袁紹の旗を立てている。まだこれだけの人が生きていたんだと、李典は感心した。
近付くにつれて、姿がはっきりと見えてきた。
その先頭にいる将を見たとたん、李典は思わず身を乗り出して目を見開いた。
くすんだ灰青の鎧、その下からのぞく水色の着物、そして兜の上のふさは気品を表すかのような純白・・・これは見たことがある。
慌てて隣を見ると、于禁も同じような顔で逃亡者の一団を見ている。
二人はそろそろと顔を合わせて叫んだ。
「まさか!!?」
70本当にあった怖い名無し:2009/07/20(月) 19:08:42 ID:dfz7HdM/0
オラwktkしてきたぞ!
71本当にあった怖い名無し:2009/07/20(月) 22:03:10 ID:x2osGrnq0
つづきwktk
72本当にあった怖い名無し:2009/07/23(木) 11:39:24 ID:PKrWgoGQ0
続きマダー?
73セイレーン:2009/07/23(木) 17:40:45 ID:qLfXOs2dP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(64)

「え、袁紹が降って参りました!!」
物見の報告を聞いた時は、夢かと思った。
すぐに曹洪とともに、息が切れるほど走って櫓に向かった。
曹操が櫓から下を見ると、先頭にいた武将が顔を上げた。
「袁紹・・・!!」
武将ではない、君主だ。
たもとを分かってからだいぶ長い時間が経ち、それからは戦場でちらりと見る程度だが、それでも分かる。まぎれもなく、本物の袁紹だ。
袁紹はすがるような目で曹操を見つめ、口を開いた。
「河北四州の太守、袁本初と申す!
そなたの軍門に降りたく、参った。
罪無き命がかかっておるのだ、速やかに開門願う!」
とたんに、城門に集まっていた将たちが歓声をあげた。
総大将が降伏したということは、この戦は間違いなく曹操の勝利だ。どんな事情であれ、それは喜ぶべきことなのだろう。
将たちの様子を確認すると、曹操は門番に命じた。
「開門せよ!」
ギイギイと門が開く音を聞きながら、曹操はものすごい勢いで階段を駆け下りた。
袁紹が生きていた、曹操は心の底でそれをとても嬉しく思った。
心の底に起こったその感情はすぐに表に湧き出して、曹操はいつの間にかとびっきりの笑顔になっていた。
袁紹があれだけ多くの死者から逃れてきたのは、奇跡だった。
こんな事を、誰が想像できただろう。
おそらくほとんどの者の脳内では、袁紹はなす術もなくゾンビに食われ、自らも魂を失ってふらふら歩き回っていただろう。
そうならないよう祈ったのは、曹操だけだったかもしれない。
曹操は心の底から、天に感謝した。
74セイレーン:2009/07/23(木) 17:41:53 ID:qLfXOs2dP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(65)

「袁紹!」
曹操は親友の名を呼び、二人を隔てていた門の外に踏み出した。
袁紹はすでに、馬から下りて曹操を待っていた。
曹操が手を差し伸べると、袁紹も手を伸ばして曹操の方に踏み出した。
「おお、曹操・・・うっ!?」
突如として袁紹の体がふらつき、足がもつれる。曹操と手が触れ合う前に、袁紹の体は倒れて地面にたたきつけられた。
「袁紹!?」
「殿!?」
曹操は誰よりも速く、袁紹に駆け寄った。
それより運動神経の問題で少し遅れて、袁紹配下の文官たちが駆け寄ってきた。
そのうちの一人が、袁紹にすがりついて泣き叫ぶ。
「ああ、申し訳ありません、殿にこんなに負担をかけてしまって!
私たちが自分で自分の身を守れぬのが何よりの罪だったのです、そんな私たちを守るために殿はご自分の体に鞭打って・・・。」
袁紹が連れてきた者たちを見ると、確かに武将が一人もいない。
袁紹にすがりついている文官とすぐ横にいる文官、それに馬から下りたまま動かない文官を除けば、あとは全員雑兵だ。
「申し遅れました、私は袁紹様に仕える審配と申します。
横にいるのは、同僚の郭図です。」
袁紹にすがりついている審配が自己紹介すると、横にいた郭図という文官も軽く頭を下げる。
「・・・お世話になります。」
少し離れた所にいた文官も、慌てて頭を下げた。
「同じく逢紀と申します。ご無礼をおかけしました。」
しかし曹操には、逢紀が主君が倒れるのを見て助けようとしなかった事の方が、よほど無礼に思えた。
こんなメンバーで生き残るために戦ったら、袁紹が倒れるのも無理はないだろう。
75セイレーン:2009/07/23(木) 17:42:46 ID:qLfXOs2dP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(66)

曹操は自分の親衛隊長で怪力を持つ、許褚という武将を呼んだ。
「袁紹をどこかベッドのある部屋に運び、休ませろ。
このままでは話しもできぬ。」
「は、承知した。」
許褚は鎧をまとったままの袁紹を軽々と抱き上げ、揺らさないように歩いていった。大の男をこんなに丁寧に運べるのは、許褚くらいのものだ。
それから、ついてきた者をどうしようかと考えていると、審配が声をかけてきた。
「恐れながら、水浴びをさせていただけるとありがたいのですが。
替えの着物も、いただけると助かります。」
審配の着物にはいくつもシミがあり、特に下半身には大きな黄色いシミがある。
「漏らしたか・・・。」
夏侯惇がつぶやくと、審配は顔を真っ赤にして言い返した。
「う、うるさぁい!!
生きてるだけマシだ!!それとも、漏らさないゾンビの方がいいのかぁ!?」
「い、いや悪かった。」
審配のあまりの剣幕に、夏侯惇はたじろいだ。
それを見て、曹操軍の武将たちがどっと笑った。誰が見ても分かるほど見事に漏らした男がこんな元気に言い返すのが、意外で面白かったのだろう。
もはや体のいい見せ物だ。
同じ袁紹軍のはずの逢紀も、声をあげて笑った。
その瞬間、審配がすさまじい目つきで逢紀をにらんだ。
「郭図、頼む。」
審配がこっそりと耳打ちすると、郭図は首を振ってゆっくり歩き出した。そして突然、逢紀に向かって走り出した。その速さたるや、武将たちには止まって見えるのろさだ。
しかし、逢紀の反応はそれに輪をかけて鈍かった。あーと伸ばして言う間に、逢紀は郭図にはがいじめにされた。
審配がニヤニヤ笑いながら近付き、逢紀の股の前に下がっている厚い錦をめくり上げる。
「おあいこだな!」
錦の下の着物には、黄色いシミがばっちり浮き出ていた。
76セイレーン:2009/07/23(木) 17:43:40 ID:qLfXOs2dP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(67)

袁紹軍の文官たちによる面白い自虐ショーが終わった後、于禁と李典は文官たちを水場に案内した。
そして、文官用の予備の着物も与えた。
さらに優しいことに、彼らの汚れた服を洗ってやることにした。
あまり汚くて臭いと、自分たちが不快だからである。
しかし着物を水に漬けようとすると、郭図が慌てて叫んだ。
「それはあまり丁寧に洗わないでください!!
その血のシミは、私の大切なものなんです!!」
于禁と李典は顔を見合わせた。
二人は許攸から、ゾンビの血がついたものは特によく洗い、最期に熱湯で消毒しろと伝えられたのだ。
ゾンビの体液は大量のウイルスを含んでいるため、早急に取り除かねばならない。
このままにしておく訳にはいかないのだ。
「申し訳ありませんが、それはできません。
感染を防ぐために、消毒しないといけないので・・・。」
李典が説明すると、郭図はうんざりしたように言い返した。
「洗わなくても、消毒だけすればいいでしょう。
そんな事も分からないんですか?
消毒は熱湯で、その時ぐらぐら煮立った湯の中にこの着物を放り込んでくれれば、文句は言いません。」
于禁はびっくりして目を丸くした。
「そんな事したら、シミが取れなく・・・。」
「だから、それでいいんです!!」
血のシミを湯で洗うと、固まって取れなくなってしまう事は、戦場に生きる者なら誰でも知っている事だ。于禁もそれで失敗したことは何度もある。
それだけに、シミを取りたくない郭図の気持ちは分からなかった。
とたんに、郭図がくすくす笑い出した。
「これは、私の忠誠の証・・・これから郭家の家宝にする予定なんです。」
あまりに理解不能な行動に、于禁はぎくりとした。
「何だか、変わった奴だな・・・。」
于禁はそうぼやきながら、文官たちの水浴びが終わったらじっくり話を聞こうと決意した。
77本当にあった怖い名無し:2009/07/24(金) 01:28:34 ID:nbrebc+MO
乙!!
78本当にあった怖い名無し:2009/07/24(金) 07:40:29 ID:hnhtq6l50
なんて読み応えがあるんだ!

79本当にあった怖い名無し:2009/07/26(日) 18:04:59 ID:SOlcAcnU0
ちょwww
このスレ、イイ!!
作者が戻るまで過去スレ読んでくるわwww
80本当にあった怖い名無し:2009/07/26(日) 19:35:16 ID:MlTU63Dy0
>>79
保管庫読み出したら当分戻ってこれんぞw

昔の遊園地シリーズ好きだったなぁ
81セイレーン:2009/07/26(日) 19:39:47 ID:1xRr0WkTP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(68)

(68)
曹操の寝室にほど近い一室で、袁紹はベッドに横たわっていた。
目を閉じると、死して自分を食おうとした沮授の顔が浮かんでくる。
沮授の手が袁紹の肩をつかみ、耳元に腐った息を吐きかけられる。
(なぜ、あなたは生きているのですか?
私をこんなにしておいて。)
恨みのこもった声が、袁紹の耳から脳を侵食する。
(私はあなたを助けようとしたのに。
あなたに警告したのに。
それには全く耳も貸さずに、私をあんな所に閉じ込めて逃げる術さえ奪ったくせに、あなたは私を捨てて逃げ延びると?)
(ああ・・・すまぬ、沮授!!)
袁紹は必死で沮授に謝った。
しかし、沮授がそれを許してくれるはずもなく・・・。
(お恨み申し上げます。
その血肉を、私の弔いにくださいませ。)
袁紹を見上げる真っ白な瞳の奥には、深い悲しみが宿っていた。
自分はあんなに袁紹に忠節を尽くしていたのに、それを無視した君主が自分の思った通りになってしまって、それが未練で仕方がないというのだ。
だから次からはもうそうならないように、袁紹を自分と同じところに引き込んで、ずっと一緒にいようというのだ。
沮授の唇が袁紹の首筋に触れ、歯が肉に食い込む。
袁紹の首から血が噴き出し、沮授の体にぼたぼたとかかる。
袁紹は涙を流し、沮授を抱きしめた。
(本当に、すまなかった・・・今おまえの所に行く。
だからどうか、このわしの血肉で他の者を許してやってほしい。)
そう語りかけたとたん、突如として沮授が袁紹を突き放した。
(本当に、そうお思いか!?)
気がつけば、沮授は腕の中から抜け出ていた。
82セイレーン:2009/07/26(日) 19:41:13 ID:1xRr0WkTP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(69)

沮授は少し離れた所に立ち、涙をぐっとこらえて袁紹を見つめていた。
その姿は、もう死者ではなかった。
いつも袁紹を思って策を献じてくれる、人間の姿だ。
沮授はつかつかと袁紹に歩み寄り、ぺしんと袁紹のほおを打った。
(我が殿ながら、情けのうございます!)
こぼれた涙は、沮授のものだった。
(あなたの血肉を私に捧げて他の者を助けてくれですと、そのような事できる訳がないでしょう。お気づきになられぬのですか!?
これは私が起こした事ではないのですよ。それに私は、もうこの世にいない。
これをどうにかするのは、生きているあなたの役目でしょう!!
せっかく郭図が助けたというのに、そのような弱気では、すぐまた他の者に食われてしまいますぞ!!
心を強く、お持ちなされ。)
袁紹はしばらくの間、あっけにとられていた。
(わしを、恨んでいないのか?)
沮授は袁紹の前にひざまずいて答えた。
(なぜ私があなたを恨みましょうか。
あなたはちゃんと己の過ちを認め、私のことを案じてくださいました。そして自らの命を省みずに、私を助けに来てくださいました。
そして、魂を失った私の体を救ってくださいました。
あなたは私のために、十分すぎることをしてくださいました。)
それだけ言うと、沮授は微笑んで袁紹を見上げた。
(もう、お戻りなされ。
いつまでもこのような所にいてはなりませぬ。
私も天に昇り、あなたのご武運をお祈りしております。)
袁紹の周囲に光が満ちていき、沮授の姿は光に溶けるように消えていった。袁紹は胸がいっぱいで、別れの言葉すらかけられなかった。
はっと目を開けると、何人もの人間が心配そうに自分を見ていた。
袁紹は、長い夢を見ていたのだ。
83セイレーン:2009/07/26(日) 19:42:43 ID:1xRr0WkTP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(70)

「あ、気がついたみたいです!」
袁紹のすぐ枕元に、曹洪の顔があった。
袁紹がぼんやりと視線を向けると、曹洪は固く絞った布でほおを拭ってくれた。
「うむ、先ほど息が止まりかけた時はどうなるかと思ったが、持ち直したようだな。
さすがは殿の宿敵よ、この程度で死なれてはつまらぬ。」
そんな不適な言葉をかけたのは、曹仁だ。
気が付けば、袁紹の周りには顔なじみの曹一族が集まっていた。
曹操の弟である曹洪、親戚の曹仁、それに曹操の父の生家である夏侯氏の者たち・・・曹操と親友だった頃はよく顔を合わせた面々だ。
今は自分の味方ではない。
しかし、顔なじみの者に囲まれていると、それだけで安心できるものだ。
それに袁紹は曹操に降伏し、曹操の配下に入った身なのだ。そう考えれば、味方と言えなくもない。
「これは・・・見苦しいところを見せてしまったな・・・。」
袁紹が体を起こそうとすると、夏侯惇が押しとどめた。
「慌てるな、ゆっくり休め。
文官たちから話は聞いたぞ、ほぼ一日戦い続けたのだろう?
それほど消耗しているのだ、今は疲れに正直になった方がいい。」
夏侯惇の言葉からは、温かい思いやりが感じられた。
ふと体を見ると、袁紹の体はきれいに拭かれ、白い単(ひとえ)を着せられている。この様子では、曹操の一族の者はずっと側にいてくれたのだろう。
実家に帰ったような安心感に、袁紹の顔から少しだけ笑みがこぼれた。
夏侯淵が思い出したようにつぶやく。
「そう言えば今、他の皆は夕飯食ってるんだが、おまえも食うか?
腹が減ったままじゃ、疲れもとれんぞ。」
そう言われて初めて、袁紹は自分が朝食しかとっていない事に気付いた。
84セイレーン:2009/07/26(日) 19:48:37 ID:1xRr0WkTP
袁家の、特に田豊と沮授ファンの方がいるようなので、ボーナス沮授です。

85本当にあった怖い名無し:2009/07/27(月) 14:50:54 ID:4yRP0HP00
>>84
読みやすいくていいよー
楽しんでるよー
これからも頑張ってください
待ってるよー
86本当にあった怖い名無し:2009/07/27(月) 15:06:53 ID:3gbHjBOZ0
最下層に潜りこんでるから保守w
87本当にあった怖い名無し:2009/07/28(火) 04:20:45 ID:FnWT5U2KO
保守
wktkしてます
88本当にあった怖い名無し:2009/07/29(水) 11:54:33 ID:Exe5d8gy0
>>84
俺の田豊はまだか!
89本当にあった怖い名無し:2009/07/29(水) 13:34:26 ID:ZVSGWdSa0
土日まで楽しみにしてます。
90本当にあった怖い名無し:2009/07/29(水) 15:42:00 ID:ObcEBxyXO
しっかし、クオリティー高けーわ。

今までの作者さんの中で5指に入ると思います。
(個人的には)

願わくは焦らずに完結目指して続けて下さい。
91本当にあった怖い名無し:2009/07/29(水) 18:17:04 ID:Exe5d8gy0
つか、他の作家さんのも楽しみにしてるんだけどな。

皆さんやめちゃったのかな。
92本当にあった怖い名無し:2009/07/29(水) 21:57:07 ID:kEYAEFJL0
PIP ◆dve/1Ebaqs さんの尚也扁は完結していないのかな?
2005/11/21(月)に投稿された#シーン11-4以降がみちかりませぬ‥
きになるぅっ
93本当にあった怖い名無し:2009/07/30(木) 02:05:13 ID:bnw7gJW70
ほっしゅほっしゅ
面白いよー
94本当にあった怖い名無し:2009/07/30(木) 06:47:49 ID:dUtDQvVG0
>>92
http://zombie2ch.hp.infoseek.co.jp/log002.shtml
ここの中は探した?

まぁ無かったらないんだろうな
昔はココもテンプレに入ってたけどなぜか外された保管庫

95本当にあった怖い名無し:2009/07/30(木) 17:51:21 ID:gjAToO/L0
>>94 有難う
なかったよ
断筆宣言があって後,分室で再開ってあったら復活したのかしらって
wktkしながら探したんだけどね。残念。
96本当にあった怖い名無し:2009/07/31(金) 18:31:38 ID:JzFZYJkwO
empty ◆M21AkfQGck 様の作品の続きwktk
97セイレーン:2009/07/31(金) 23:36:41 ID:7NFY3gqTP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(71)

袁紹が夏侯惇たちに連れられて官渡城の広間に行くと、曹操軍の他の者たちは勝利の宴の真っ最中だった。
夏侯惇に支えられてふらふらと歩く単姿の袁紹は、将たちの好奇の的だった。
中には、袁紹に向かって汚いヤジをとばす者もいた。
しかし、それは夏侯惇と曹仁が制してくれた。
袁紹は宴席の真ん中を通って上座に向かった。上座には、真紅のマントを羽織った総大将の、曹操の姿があった。
「おお、袁紹!」
曹操が袁紹の姿を認め、立ち上がって迎えた。
夏侯惇が手を放すと袁紹は膝から崩れ落ち、はからずも曹操にひざまずく格好になった。
夏侯惇と曹洪が慌てて両脇から支え、起こしてやる。
曹操は自ら段上から下り、曹洪に代わって袁紹を支えながら、諸将に向かって言った。
「皆の者、よく見よ!
この者こそ、降伏した敵の総大将、袁紹である!!」
その声に、広間にいる諸将が一斉に袁紹の方を見る。
程なくして、勝利を祝う拍手が巻き起こった。
しかしそれを遮って、曹操はなおも続けた。
「諸君も知っての通り、袁紹の陣はゾンビの巣窟と化した。
袁紹はその数十万のゾンビの中から、ここまで逃げ切ってきたのだ。
それも戦のできぬ文官を三人も守りながら、そのうち誰一人として失うことなく、己がただ一人の武将として戦い抜いたのである。
この戦いぶり、まさに武将の鑑よ!
部下を守り通したこと、君主の鑑よ!
これから我が軍で共に戦う、称えるべき名将である!!」
その言葉を聞いたとたん、曹操軍の将たちは驚いてしーんと静かになった。
そして、お互い顔を見合わせてしばらく考えた。
そのうち広間のところどころから小さな拍手が聞こえ始め、たちまち大きくなって宴席全体に広がり、さっきの勝利を祝う拍手をはるかにしのぐ大喝采となった。
98セイレーン:2009/07/31(金) 23:39:01 ID:7NFY3gqTP
規制中に書き溜めた貯金を使いきったので、これから投下速度が遅くなります。

でもこの作品は必ず完成させるつもりでいきます。
袁紹様への愛にかけて!!
99本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 03:46:39 ID:iQ/BozwrO
あー、やっぱり袁招様LOVEだったのねw
100本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 18:46:12 ID:28TR7COy0
>>98
いつまでも待ち続けますw
がんばってください!
袁紹様ラビュ〜
101セイレーン:2009/08/01(土) 19:01:32 ID:zSCaR2IRP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(72)

考えてみれば、袁紹が降伏してきたのはすごいことだ。
降伏したということは、生きてここまでたどり着いたということである。
官渡城の地下で曹操軍の将たちを恐怖に陥れたゾンビが、檻の中ではなく自由に歩き回っている陣など、想像するだけで正気を失いそうになる。
(私はおそらく、助からなかった。
ゾンビになった仲間を助けようとして、餌になっていただろう。)
李典は地下牢でのことを思い出して、己の弱さを認めた。
あの時李典は、ゾンビになってしまった部下の死を受け入れられず、自ら死地に飛び込んでしまいそうになった。檻で隔てられていなかったら、于禁が止めてくれなかったら、おそらく李典の命はそこで終わっていた。
袁紹はそうならずに、生きてここに来た。
(おれも、多分だめだったろう。
人の姿に惑わされて、同じように戦おうとして、何と戦っているかも分からぬうちに奴らの仲間になっていた。)
曹仁は武勇を誇るがために、人との戦いにおいては絶対の自信があった。
人の姿をしたゾンビに対し、人を殺す時と同じように胸を狙って攻撃を繰り出し、効かないことに気付いて戸惑ううちに食われてしまった可能性が高い。
(私は、守れなかった・・・。
自分は守れても、助けを求める者は自分を守るために捨ててきてしまった!!)
袁紹より先に降ってきた張郃は、陣でのことを思い出して目頭を押さえた。
張郃と高覧は逃げる途中、文官を一人見捨ててきたのだ。
同じように暴動鎮圧に駆り出され、死者の群にのまれて、助けてくれとすがってきた辛評・・・張郃は彼に背を向けて逃げた。
自分が生き残るのも難しいのに、そのうえで文官を守ろうとする勇気はなかった。
袁紹と同じ結果を出せる者が、この広間の中に何人いるだろうか。
そう考えれば、袁紹は紛れもない名将だ。
皆それに気付いて、袁紹に惜しみない拍手を送った。
102セイレーン:2009/08/01(土) 19:04:12 ID:zSCaR2IRP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(73)

曹操は袁紹をいすに座らせると、宴席の料理を勧めた。
「戦い続けて腹が減っておるだろう、遠慮せずに食え。」
「うむ・・・ならば、粥をいただこう。」
袁紹がそう言うと、曹操は一杯の粥を持ってこさせた。
もちろん白粥ではない。
野菜の青みがあり、クコの実の赤みがあり、他にも体をいたわる食材が入った薬膳に近い粥だ。疲れきった袁紹にはちょうどよい料理だ。
一さじすくって口に入れると、優しい味が体中に広がった。
その強烈な癒しに、袁紹は思わず涙をこぼしそうになった。
「おまえにこれほど優しくされるとは、思わなかったぞ。」
袁紹がつぶやくと、曹操は晴れやかな顔で言った。
「勘違いするな、おれは才ある者を愛する、それだけだ。
別におまえに限ったことではない。
おれは、才ある者ならば誰でもこのように迎える。暴れまわるだけの呂布軍にいた張遼や、ゴミのような董卓の残党にいた徐晃も、今は頼もしき我が部下だ。
おまえもこれから、そうなるのだ。」
生きていてくれて良かった、とは言わなかった。
今は周りに人が多いから、個人的な喜びは後で伝えようと思った。
そのためにも、袁紹には早く元気になってほしかった。
「さあ、もっと食え。」
曹操が色とりどりの料理をすすめると、袁紹は思わず苦笑した。
「良いのか?
沮授の情報によれば、おまえの軍の食糧は乏しかったはずだが。」
「気にせずとも良い。
戦は今日で終わったのだ、明日にもこの城を離れて許昌に戻るつもりだ。食糧など、この地を離れればすぐに調達できる。
明日の分さえ残れば良い。」
曹操はそう言って、宴席を見回した。
この宴席に、官渡城に残っていた食料はほとんど使われてしまったのだ。
103セイレーン:2009/08/01(土) 19:06:11 ID:zSCaR2IRP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(74)

「袁紹殿、拙者の杯を受けてくだされ。」
噂をすれば影が差す、曹操がさっき口に出した徐晃という男が袁紹の側にやって来た。
「これからは仲間でござるな。
よろしくお願い申す。」
徐晃は近くにあった杯に酒を注ぎ、袁紹に手渡した。
物腰は少し武骨だが、凛とした強さをたたえた大柄な男だ。その目には、強き者を前にして輝きがあふれていた。
袁紹は気品あふれる笑みを返して、その酒を飲み干した。
「ありがとう、ではこちらからも。」
今度は、袁紹が徐晃の杯に酒を注いだ。
徐晃はよく日に焼けた顔に弾けるような笑みを浮かべて、その酒を一気に飲み干した。その威勢のよさに、周りから歓声が上がった。
胃を温めるアルコールも手伝って、袁紹は心の中にこみ上げる幸せを感じた。
(酒とは、こんなに美味なものだったのか・・・。)
昨日一人で飲んだ酒とは、一味も二味も違った。
酒の質でいえば、昨日飲んだ酒の方がずっと上質だっただろう。しかし、今日こうして飲む酒の方が、ずっと心と体を温めてくれる。
敵に屈したはずなのに総大将だった時より幸せだなんて、おかしくて心の中がくすぐったくなった。
「お、酒を飲んでるのか?
だったらつまみがないとな!」
曹仁が楽しそうに大きな皿を持ってきた。
「体中の筋肉を酷使した後は、やはり肉だろう。
モリモリ食って筋肉を補給せい!!」
皿の上に乗っていたのは、大きなステーキだった。
(に、肉・・・!?)
記憶の中からのぞいたどす黒いものに、袁紹は体をこわばらせた。
104セイレーン:2009/08/01(土) 19:08:08 ID:zSCaR2IRP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(75)

皿の上では、ステーキがジューシーに肉汁をしたたらせていた。
純白の皿の上に、鮮やかな赤い液体が映える。
これよりは濃いけれど同じように鮮やかな赤を、袁紹は今日嫌になるほど見てきた。
袁紹は胸に不快感を覚えて、単の合わせをぎゅっとつかんだ。
「ん、食べないのか?」
何も気付かない曹仁に、横から徐晃が声をかけた。
「曹仁殿、それは大きすぎであろう。
どれ、拙者が切って差し上げよう。」
徐晃は鈍く光るナイフを取り、ステーキに押し当てた。
刃が肉に沈み、肉から紅の汁がじゅわっと湧き出てくる。刃の後から現れた切り口は、まさに鮮紅色の生肉だった。
(い、生きた肉・・・赤、が・・・あふれて・・・!!)
単のさらさらとした布地の下で、袁紹の肌に鳥肌が立った。
「曹仁殿、これは生焼けではないか。」
「うむ、厚すぎたかもしれんな。
しかし、おれにはこのくらいの方が・・・。」
曹仁は袁紹のすぐ近くに腰掛けて、肉汁したたる肉片を口に放り込んだ。そして、うまそうにその肉を噛み砕いた。
(ううっ!!)
袁紹の眉間にしわが寄った。
距離が近いので、聞きたくなくても聞こえてしまう。
曹仁の口の中で肉が切られ、つぶされ、引きちぎれる音・・・肉と血汁を飲み込む音が、頭の中で何度もリピートされる。
袁紹の喉に、焼けつく不快感がせり上がってきた。
袁紹はぐっと前かがみになって、必死で耐えた。
しかし、ちらりと顔を上げた時に見てしまった光景が・・・曹仁が指についた血汁をなめる姿が、忌まわしい死者と重なった。
それを皮切りに、恐ろしい記憶が次々と再生されていく。膨張した死体の皮が破れるように、恐怖と苦痛が袁紹の脳を打ちのめし、喉を突き破って噴出す。
「うげぇぇえ!!?」
袁紹はさっき食べたものを全て床にぶちまけ、自らの体も床に打ち付けた。
105本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 19:33:03 ID:/zxMVNvcO
初めて来たんですが、ここ面白いですね。
新人賞に投稿する日々に疲れてたんですが、気づくと元気になってましたw
息抜きに俺も書いてみようかな?
106本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 19:58:26 ID:7hDQdulJ0
>>105
あぁ、そうだね息抜きは大事だよ。
だが手抜きは無しだぜ。
107本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 20:40:44 ID:/zxMVNvcO
手抜きはしませんが、間隔は多少空くかもしれませんね;
ここで書くにあたって、テンプレ以外に気をつけることとかありますか?
108本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 21:06:12 ID:aE8hXibw0
109本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 21:13:33 ID:aE8hXibw0
>テンプレ以外に気をつけることとかありますか?
自分のよく知らない設定が出ると、途端に不機嫌になって荒らす人がいるから注意。
現代日本や類似の文明国を舞台にしたものや、有名な三国志あたりなら大丈夫ですが、あまりにも日常とかけはなれ過ぎた舞台だとそういった荒らしが発生することが、まれにあります。
110105:2009/08/01(土) 23:19:46 ID:21ls+3b40
>>108
見れないのですが…;

>>109
了解しました。現代日本のパラレルワールドでいこうかと思っているので、その点は大丈夫かと思います。
では、早速書いてきます。
111本当にあった怖い名無し:2009/08/01(土) 23:46:11 ID:aE8hXibw0
『ゾンビ大事典 VSゾンビ生存マニュアル』笠倉出版
幾つものゾンビ映画とゲームを参考にした、まさにこのスレ向きのネタ本。
ゾンビの分類、ゾンビハザードで生き残るためには(必要なモノ、各場所ごとの対応)、もしゾンビが出現したらのシミュレーション、等々。
112本当にあった怖い名無し:2009/08/02(日) 00:36:28 ID:qaeEMm68O
早速 ゾンビ生存マニュアル買いました
113新人さん:2009/08/02(日) 01:13:03 ID:fNNC6pMs0
ちょこっとですが、書いてみました。
息抜きなので、自分の普段書いているものとは毛色の違うものにしようと思い、軍隊物です。
ただ、ミリタリーは好きなのですが、知識が乏しいので、おかしい点が多々あるかと思います。
これは純粋に知識不足、情報収集の下手さが原因なので、あたたかい目で見ていただければ幸いです。
では、以下導入部です。よろしくお願いします。
114新人さん:2009/08/02(日) 01:13:53 ID:fNNC6pMs0
2004年、1月7日。ブラジル連邦共和国、アマゾン地帯、マナウスにて殺人事件発生。犠牲者は3名。確認できる最初の感染者【ファースト】による殺人として、後世に【ターニング・ポイント】と名づけられる。
2004年、1月10日。同地域、【ファースト】に殺害された3名の内、2名が第二次感染者となる。遺体安置所の職員7名、警察職員4名が死亡。軽傷者3名。
 第二次感染者2名、射殺。
2004年、1月11日。軽傷者2名。心臓発作にて死亡。
2004年、1月13日。第二次感染者に殺害された11名の内、9名が第三次感染者となる。殺傷・殺害された人数、不明。

2004年、1月30日。ボリビア、ペルー、コロンビア、スリナム、ガイアナにて多数の感染者発見。国連議会において、南アメリカ共和国への移動規制開始。および、国連治安維持軍出動。感染者の掃討作戦開始。
2004年、2月20日。第二次国連治安維持軍出動。および南アメリカ共和国への空爆開始。
2004年、2月29日。国連治安維持軍、南アメリカ共和国より撤退。
115新人さん:2009/08/02(日) 01:14:46 ID:fNNC6pMs0
2004年、3月3日。アメリカ軍籍パイロット、ジョージ・ニクソン、心臓発作にて死亡。
同年同日。イギリス軍籍陸軍大尉、ケビン・ホフマン、心臓発作にて死亡。
他、同日の心臓発作による志望者、各軍あわせ14名。共通項は撤退時の感染者との攻防戦において軽傷を負う。
2004年、3月6日、アメリカにて感染者発見。
同年同日、イギリスにて感染者発見。
他、各国において感染者14名確認。

2004年、5月1日。日本にて第一感染者発見。
2004年、5月9日。霞ヶ浦壊滅。国会開催中の感染者襲撃のため、総理他大多数の大臣、議員が死傷。その中には防衛庁長官も含む。
2004年、5月15日。総理および防衛庁長官の死亡により、自衛隊による自主出動。生存者救出、および感染者の除去開始。
2004年、6月25日。横須賀における感染者の大量発生を確認。
2004年、6月26日。横須賀、海上自衛隊横須賀教育隊、連絡途絶。
同年同日。同地域、陸上自衛隊武山駐屯地、連絡途絶。
2004年、6月28日。同地域、防衛賞技術研究本部、連絡途絶。
116新人さん:2009/08/02(日) 01:15:32 ID:fNNC6pMs0
同年同日。同地域、陸上自衛隊久里浜駐屯地、連絡途絶。
同年同日。自衛隊統幕議長、および他2名の幕僚長との連絡途絶。海上自衛隊横須賀基地司令、大谷博海将の独断により、横須賀米軍基地への救難要請。
2004年、6月30日。海上自衛隊横須賀基地職員および避難民、全2094名の横須賀米軍基地
移動完了。
 その中には本編の主人公、大学生の伊藤博康と、横須賀海上自衛隊籍幹部候補生、石田和也三尉も含まれる。
 
 そして、5年後。
117新人さん:2009/08/02(日) 01:17:12 ID:fNNC6pMs0
と、こんな感じです。
バックボーンをしっかりしておきたかったのと、軍隊ものなのでかなり細かな情報が必要でした。
なるべく省略するために年表式にしてみたので、ご了承ください。
次からはきちんと小説になります。文才がない点はご容赦ください。
次は来週の土曜日に書き込めれば、と思います。
118本当にあった怖い名無し:2009/08/02(日) 10:15:17 ID:mRgCvHjB0
       ヽ|/
     / ̄ ̄ ̄`ヽ、
    /         ヽ
   /  \,, ,,/    |
   | (●) (●)|||  |
   |  / ̄⌒ ̄ヽ U.|   ・・・・・・・・ゴクリ。
   |  | .l~ ̄~ヽ |   |
   |U ヽ  ̄~ ̄ ノ   |
   |    ̄ ̄ ̄    |
119本当にあった怖い名無し:2009/08/03(月) 05:50:17 ID:/b+/Ik6nO
>>117
感染症と認識してるのに派遣軍を通じて広がるのは可笑しいと思います。
病原体の特定により、安全が確認されるまで隔離されるでしょう。
それに派遣が早過ぎます。
この期間では、隣国と米海・空軍以外本格的な攻撃は不可能です。
世界最速の米海兵隊も、後詰めが無くては、大規模な地上軍派遣は無理。
普通に、発症前の民間人が持ち込んだとかの方が自然でしょう。
120どんぐり ◆zRMZeyPuLs :2009/08/03(月) 07:10:29 ID:gF0TX+DtO

つ続きを,読みたい。。。 
たのむ!
121本当にあった怖い名無し:2009/08/03(月) 14:50:59 ID:P5cxZWbF0
>>117
雑音は気にせずに・・・・
待ってるぞ。
122本当にあった怖い名無し:2009/08/03(月) 17:25:20 ID:nR5AZH21O
>>117
ひたすらリアリティを追求するなら>>119のような指摘も参考になるけど、
これから書き続ける上では気にする必要はないと思うよ。
設定や整合性の枝葉に気を取られると、概してつまらなくなるもんだ。
頑張れ。
123セイレーン:2009/08/03(月) 19:09:51 ID:7C4Ej14aP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(76)

曹操は一瞬、何が起こったのか分からなかった。
突然袁紹がしぼり出すような音とともに嘔吐し、いすに座ってもいられず崩れ落ちたのだ。
「な!?どうした袁紹!!?」
驚いてのぞきこんだ曹操の鼻を、胃酸のにおいが焼く。
手が汚れるのも構わず顔をこちらに向けると、袁紹は苦悶の表情を浮かべてひどく苦しそうにあえいでいた。
閉じたくてたまらないのに無理矢理開いた目からは、涙が筋を描いている。肌は血の気が引いて青白く、冷たい汗でわずかに湿っている。
曹操の指先がほおに触れると、袁紹は恐ろしい勢いでそれを打ち払った。
「袁紹・・・!?」
己のした事が分かったのか、袁紹がかすれた声を発する。
「あ、すまぬ・・・こんなつもりでは・・・。
ち、違うのだ・・・許してくれ触らないでくれ食べないでくれ!!
嫌だ嫌だ許してくれる訳がない見逃してくれる訳がない!!わしの血・・・肉・・・いっそ人のまま殺せえぇ!!!」
袁紹の表情は、どうしようもない恐怖にカチカチに固まっていた。
曹操はこの顔を知っている。
明らかに、恐怖を制しきれなくなって恐慌状態になっている。
こうなってしまうと、袁紹はただ感情の爆発に振り回されるばかりで、まともに話もできなくなってしまう。
再び袁紹が金切り声をあげ、少量の胃液が口から水鉄砲のように飛び出す。
胃がよじれるのが相当痛いらしく、体をくの字に折り曲げて、それでも疲れきった体では起きて膝を抱えることもできない。横向きに転がったまま、体をガクガク震わせている。
(なぜだ・・・一体何に反応したというのだ!?)
曹操は苦しむ袁紹を前に、戸惑うばかりだった。
袁紹は昔から時々恐慌を起こす、それは分かっている。精神が不安定な時に何か地雷のようなスイッチが心の中にでき、それを踏むとこうなることも分かっている。
だが、今回はその地雷が何なのか曹操には分からなかった。
分かっても、これをその場で治めるのはといてい無理なことではあるが。こうなった袁紹は静かな場所に移して、自然に治まるのを待つしかない。
(くそっ・・・また話ができぬではないか!)
124セイレーン:2009/08/03(月) 19:11:09 ID:7C4Ej14aP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(77)

曹操はとりあえず、徐晃と曹仁に袁紹を取り押さえるよう命じた。
しかしその時、後ろから甲高い笑い声が響いた。
「ほっほっほ!これのどこが名将なのです!?
こんな無様な男は、豚小屋にでも放り込んでおけば良い!」
許攸だ。
許攸はあっけにとられている曹操軍の将たちの前で、袁紹を指差して言い放った。
「見なさいこの汚くて恥知らずな男を!
こんな奴が名将だといえるのですか?言える訳がない!こんなのを名将というなら、天下の七割は名将ですよ。
だいたい、この宴の主役は勝利を導いた私でしょう。
それを言葉巧みに曹操様に取り入って・・・厚かましいにも程がある。
ねえ、ゲロまみれの破廉恥ジジイめ!」
聞くに堪えない悪口だが、全く的外れでもないので始末が悪い。
袁紹は確かに吐物まみれだし、宴席で吐かれた曹操軍が迷惑していることも確かだ。単姿のまま体を折り曲げているため足が太股まで露出し、これは破廉恥と言えなくもない。
それにしても、かつての君主だというのにひどすぎる物言いだ。
かつて張遼が呂布に死を促した時も、ここまでひどくは言わなかった。
曹操は胸の中に、燃え上がる怒りを感じた。
しかし、今ここで手を出すことはためらわれた。ゾンビについて許攸しか知らないことがまだ多すぎる、下手に怒らせればここにいる皆が袁紹軍と同じ目に遭うかもしれない。
曹操が何も言えずにいると、許攸はますますひどく袁紹をののしる。
周りで見ている将たちも気を悪くしているが、許攸はそれすら気付かない。
ふと、許攸がののしるのを止めた。
「おや、何のつもりです?」
見れば、李典が怖い顔をして許攸の腕をつかんでいた。
「その辺にしておきなさい、私たちも気分を害するのが分からないのですか?」
李典の声はいつになく低く、静かな怒りをにじませていた。
125セイレーン:2009/08/03(月) 19:12:30 ID:7C4Ej14aP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(78)

「ほう、勝利の立役者であったこの私に、ずいぶんな物言いですね。
私がいなければ勝てなかったくせに!」
許攸はきつく言い放って、李典の手を振りほどこうとした。
しかし、武将の握力を文官の腕力でほどくことはできない。
「ええ、確かにあなたのおかげで勝ちました。
しかし、戦はもう終わったんです。あなたの働きには、相応の恩賞が与えられることでしょう。でもその恩賞は、まだ額が決まった訳じゃない。」
「な、何が言いたい・・・?」
慌てる許攸に、李典はゆっくりとした口調で言った。
「つまりあなたの働きは終わったけれど、恩賞はまだ変動するって事ですよ。
変動の要素は、私たちの心証とこの戦が袁家に与える影響・・・。
あなたが袁紹をののしって、袁紹が自殺でもしたらどうなると思います?袁紹の息子たちが復讐に燃え、徹底抗戦してきたら?袁紹には、スムーズに傘下に入ってもらわないと困るのですよ。
まさか、豊かな河北をゾンビで埋め尽くす気ではないでしょうね?」
欲望に訴える李典の言葉に、許攸は思わず耳を傾けた。
確かに、袁紹を生かして後々利用した方が、許攸の恩賞はより大きくなるだろう。
「ははは、それは・・・失礼いたしました〜。」
李典が手を放すと、許攸は欲にまみれた笑いを浮かべて去っていった。
曹操は苦々しい顔で、その後姿を見送っていた。
袁紹の吐いた物以上に吐き気を催させるのは、許攸の欲深さとあさましさだ。今更ながら、こんな男に頼って良かったのかと思えてくる。
ふいに、李典が曹操の前に出て頭を下げた。
「袁紹殿にあのような事を言って、申し訳ありません!
ただ、許攸殿を穏便に引かせるためには・・・。」
「良い、分かっておる。」
曹操は李典に優しく声をかけた。
李典の言葉が許攸を引かせる策であることは、分かっていた。むしろうまく許攸を追い出してくれた李典には、心から感謝していた。
曹操は安心して袁紹を休ませ、自らも宴席を後にした。
126セイレーン:2009/08/03(月) 19:17:20 ID:7C4Ej14aP
おお、新しい作家さんが・・・!
楽しみに待ってます。

袁紹に仕える文官のうち、今まで登場した人物の大まかな人格設定です。
 頭脳明晰・性格はノーマル・・・沮授、田豊
 頭脳明晰・性格がアブノーマル・・・審配、郭図
 頭脳いまいち・性格もアブノーマル・・・許攸、逢紀
127新人さん:2009/08/03(月) 20:04:10 ID:2P4oH18nO
昨日新人賞用のプロットに詰まってゾンビ書いてしまったので、予定より早いですが今日投下予定です。>>119の指摘を踏まえて書き直したものと合わせ、帰宅次第投下しますね^^

>>119
指摘に対する答えですが、感染症とは認識してない設定です。ただ、流れがそう見えなかったので、その点変更しました。
派遣の早さに関してはキプロス平和維持活動において3日で臨時派遣がなされていますし、vs動く死体(異常事態)ですのでさほど違和感はないという判断です。
また、アメリカ軍は即応体勢の軍隊ですので、24時間もあれば完全に準備可能な場合が多いです。展開後の準備も可能ですから、状況が逼迫しているなら、文字通りの即応も可能でしょう。
文でそれを表現できていなかったので、修正しています。

スレ汚しにならないようなるべく頑張りますので、意見感想等頂けるとうれしいです。では、また帰宅後に。
128新人さん:2009/08/03(月) 23:52:06 ID:d9zlGEb+0
ゾンビと横須賀(タイトルです。今決めました)(1)

2004年、1月7日。ブラジル連邦共和国、アマゾン地帯、マナウスにて殺人事件発生。犠牲者3名。確認できる最初の感染者【ファースト】の起こした事件として、後世に【ターニング・ポイント】と名づけられる。
2004年、1月10日。同地域、【ファースト】に殺害された3名の内、2名が第二次感染者となり、蘇る。遺体安置所の職員7名、警察職員4名が死亡。軽傷者3名。
 蘇った第二次感染者2名、射殺。
2004年、1月11日。軽傷者2名が心臓発作にて死亡。
2004年、1月13日。第二次感染者に殺害された11名の内、9名が第三次感染者となる。殺傷・殺害された人数、不明。
2004年、1月15日。在ブラジル アメリカ合衆国大使館との連絡途絶。および、ブラジル政府との連絡途絶。
同年同日。アメリカ合衆国籍偵察軍事衛星KH-13(キーホール13)が、ブラジル国内および周辺各国における死者の蘇りを確認する。
2004年、1月30日。アメリカ陸軍による国境線封鎖完了。
同年同日。南アメリカ大陸沿岸にアメリカ海軍巡洋艦72隻、および戦略核搭載潜水艦22隻の展開完了。
同年同日。アメリカ大統領令により、南アメリカ大陸各国家の首都への核攻撃が行われる。
2004年、1月31日。アメリカの圧力に屈する形で、臨時国連議会において南アメリカ大陸への移動規制決議。および、臨時国連治安維軍による空爆開始を決議。
2004年、2月29日。国連治安維持軍、空爆中止。南アメリカ沿岸より撤退。
2004年、3月3日。国境封鎖中のアメリカ陸軍籍第一機械化歩兵師団および第一機甲師団、連絡途絶。偵察軍事衛星KH-13により、壊滅が確認される。
129新人さん:2009/08/03(月) 23:53:04 ID:d9zlGEb+0
ゾンビと横須賀(2)

2004年、4月20日〜5月1日。アメリカ国籍72名がイギリスに亡命。同じく、アメリカ国籍計349名がフランス、ロシア、中国、日本、他34ヶ国に亡命。
 内、60名前後が心臓発作にて死亡。詳細不明。
2004年、5月1日。亡命後心臓発作にて死亡した11名のうち、9名が蘇る。
2004年、5月9日。東京、霞ヶ浦壊滅。死者蘇生の対策のための国会開催中の感染者襲撃により、清水茂総理大臣および、鳩矢秀夫防衛庁長官、他大多数の大臣、議員が死亡。
2004年、5月15日。総理および防衛庁長官の死亡により命令系統が崩壊したことを受け、桂木一成自衛隊倒幕議長が自衛隊の出動を決定。生存者救出、および感染者の掃討作戦開始。
2004年、6月25日。横須賀、海上自衛隊横須賀教育隊、感染者の集団を確認。横須賀駐屯自衛隊各隊に警戒警報および、救助要請が発信される。
2004年、6月26日。横須賀、海上自衛隊横須賀教育隊、連絡途絶。
同年同日。同地域、陸上自衛隊武山駐屯地、連絡途絶。
2004年、6月28日。同地域、防衛賞技術研究本部、連絡途絶。
同年同日。同地域、陸上自衛隊久里浜駐屯地、連絡途絶。
同年同日。桂木一成自衛隊統幕議長、および他2名の幕僚長との連絡途絶を受け、海上自衛隊横須賀基地司令、大谷博海将は横須賀米軍基地への救難要請を決断する。
2004年、6月30日。海上自衛隊横須賀基地職員および避難民、全2094名の横須賀米軍基地移動完了。
 その中には本編の主人公、大学生の伊藤博康と、横須賀海上自衛隊籍幹部候補生、石田和也三尉も含まれる。
 
 そして、5年後。
130新人さん:2009/08/03(月) 23:53:45 ID:d9zlGEb+0
ゾンビと横須賀(3)

『ゾンビなんて糞くらえっ。薄闇を照らす孤高の美人DJ、ヨシコ姉さんのゾンビ・パラダァイスの時間だよ! みんな、今日も生きてるかい?』
 はるか後方の横須賀基地難民居住区から、ラジオのハスキーボイスが聞こえてくる。
 生活に必要なあらゆるライフラインが停止したいまとなっては、唯一のラジオ放送局。DJはヨシコ姉さんと自称する女性ただ一人だったが、陽が落ちると必ず流れ出すその力強い声は、暗闇に怯える人々にとって女神のそれに等しい。
 ただ、ほんの少し自画自賛が過ぎるきらいがあるが。
 このラジオ番組が始まったということは、横須賀基地日本人居住区の長い戦いの夜が始まったということでもある。
 横須賀基地の日本人居住区は、海を背にしたアメリカ人居住区を扇状に取り囲んで配置されている。居住区といっても、濃緑色の軍用テントが立ち並ぶだけなのだが、横須賀基地の外に広がる無限の死の荒野を前にすれば、味気ないテント生活でさえ天国に思えてしまう。
 その生活を守るのが自警団の役割であり、彼らの目下の仕事は居住区の周囲に隙間なく張り巡らされたフェンス上の3つのやぐらの上で、事が起こるまで待機することだ。
 元横須賀海上自衛隊籍幹部候補生で、現日本人地区自警団副隊長の石田和也はあくびをかみ殺しながら3mはあろうかという骨太の棒を肩に担いだ。
 先を鋭く尖らせた硬い木の棒はもはや槍と呼ぶに相応しく、長さ相応の重量があり、手にぶらさげるには向いていない。多少の見目の悪さに目をつぶれば、肩に担ぐのは理に適っている。
「そろそろ来るね」
「そうだな」
131新人さん:2009/08/03(月) 23:54:37 ID:d9zlGEb+0
ゾンビと横須賀(4)

 ツーマンセルが原則の自警団で、結成当初から相方をつとめる伊藤博康の声にはまるで気負いが感じられない。
 それもそのはずで、自警団にとってはこれから起こるであろう長い戦いの夜は毎日繰り返される、いわばお約束である。どんなに陰惨で、凄絶を極めようとも、人間はすべからく慣れるという特性を持っているのだ。
 もっとも博康の場合、ただの大学生だったというのに、ゾンビを初めて目にした時もまったく物怖じすることのない肝っ玉の据わった男だった。
「ああ、見えた」
 5年間の歳月で近場のビルというビルが崩されている。その瓦礫の狭間で蠢く人影が見えた。
 雲間から差し込む月明かりとはいえ、自警団員達にはそれほどの障害ではない。暗闇に慣れ親しんでいるのは、やつらだけではないのだ。
 やつら。
 そう、やつらだ。
 人の皮膚を破り、肉を千切り、血潮を浴びて悦ぶ狂気の怪物。元が人間だったなど、とても信じられない醜悪な姿のモンスターだ。やつらは、やつらが世界を荒らし始めた頃から、誰もが知っている怪物映画になぞらって『ゾンビ』と呼ばれていた。
「ゾンビどもが来るぞ。用意はいいかっ」
 和也が叫ぶと、3つのやぐらにツーマンセルで待機している隊員達と、各バディに2人づつ交代要員としてやぐらの下に待機する自警団員達が一斉に声を張り上げる。
「よぉし、死に体な野郎からかかって来いっ」
「副隊長、やつら全員死体ですっ」
 自警団にしか通用しないブラックジョークで笑いを取りながら、和也は全身に力をみなぎらせた。
「来るぞ、博康」
「はいはい」
 ゾンビの群れは獲物に向かって直進することしか知らない。段があればそれにつまづき、立ち上がることもせずに這って獲物に襲いかかる。
 その特性を利用して、フェンスの約10m前から緩やかな坂になり、最終的にフェンスの前で1mほどの崖になるように堀が掘られていた。あとは、1m強のやぐらの上から身を乗り出し、槍を眼下に向かって思い切り突き出すだけだ。
132新人さん:2009/08/03(月) 23:56:52 ID:d9zlGEb+0
ゾンビと横須賀(5)

 身の詰まったかぼちゃに箸を思い切り突き刺したような音がして、ゾンビの頭蓋に穂先が埋まりこむ。
 傷口から水鉄砲のように飛び散る脳漿が吐き気を誘うが、和也達はかまわずに木槍を引き抜いた。
 そして、また眼下へ突き出す。
 突きだす。突き、突き、突き、突き、突き、突き、突き出す。
 肩へ、頭へ、胸へ、どこに刺さろうともお構いなしだ。元よりこの暗闇でまともに狙いなんてつけられない。
 脳を潰せば奴らは動かなくなる。
 極論すれば、頭にうまく刺さるのは100回に1回でも構わない。要領は悪くとも、突けば突くほど奴らは死ぬ。
 そして、1体殺せば倒れた仲間の体が邪魔になって数体の行動を阻害できる。これは、死に物狂いの時間稼ぎだ。
 体の細胞という細胞が活性化するのがわかる。腕が熱を持ち、徐々に重くなる。ふつふつと視界の端から闇が迫る。体の最大速を出すために、呼吸は一切しない。肺に思い切り溜めた酸素を使い、ただひたすらに全力疾走するのみだ。
 ただし、動いているのは各やぐら一人づつ。バディは木槍を肩にかついだままだ。
 博康も例外なく、気炎を吐く和也の背中を見つめながら、踵でとん、とん、と地面を打っている。
 その回数が27回を数えて、博康はようやく動いた。同時に、他のバディ達も動き出している。3人はやぐらから身を乗り出しながら、やおら槍を下方に向け、思い切り突き出す。
「下がれっ」
 それぞれバディの声に、攻撃に回っていた3人が飛び上がるように後ろに下がった。
 和也もやぐらの端まで後退しながら、枯渇した酸素をあえぐ様に口にいれた。肩は大きく上下し、その疲労が容易に伺えた。
 だが、まだこれからだ。
 人間の無酸素運動が可能な時間は35秒。
 自警団では、余裕を持って30秒置きにバディと入れ替わる。人数の少ない自警団で、いかに切れ間のない攻撃をするか、それを追求した結果の戦法だ。
 そして、この戦法はここで終わりではない。
 呼吸を整えながら27秒数え、3秒で槍を突き出しバディが後退する。そしてまた30秒でバディが前進し、自身が後退する。
 その繰り返しをきっかり30回。
 単純計算で15分戦うと、やぐらの下に待機していた自警団員がやぐらにのぼり、バディの代わりに前進する。
133新人さん:2009/08/03(月) 23:58:48 ID:d9zlGEb+0
ゾンビと横須賀(6)

 ここからは、この交代要員の自警団員2人が戦う。和也と博康はやぐらを降り、体力の回復に専念するのだ。
 そして、また15分経つとやぐらにのぼり、疲労困憊した自警団員と交代する。
 この流れが朝まで続く。
「いつもながら、ぞっとするぜ」
 やぐらの下で荒い息を整えながら、和也が毒づいた。
 同じく、乱れた呼吸を平静に近づけようと深呼吸をしながら、博康が笑った。
「それがあいつらの仕事だもん。仕方ないよね」
「腐った仕事もあったもんだ。ああ、ゾンビだからいるだけで腐るんだったな」
 とても居住区の子供達には聞かせられない言葉だが、ジョークが出るならまだ気持ちは折れていない。
 しかし、二人の気持ちなどお構いなしに、フェンスの向こう、ほんの1、2m先でちらつく白濁した網膜は段々と近づいてくる。
 倒れたゾンビの上にゾンビが倒れ、さらにその上にゾンビが倒れる。そしてそのまた上にゾンビが倒れ、自警団員達が1週間をかけて掘った穴が、わずか2時間ほどで埋まっていく。
 そして、ゾンビ達は新しくできた地面を歩いてやってくる。
 その時だ。
「落ちた! 落ちたぞ!」
 張り裂けそうな絶叫が耳朶を打つ。
「どこだっ?」 
「チャーリーっ。飯田が落ちたっ」
 すぐに帰ってきた声に、2人は走り出すことで答える。
 3つのやぐらにはそれぞれ名前がつけられており、横須賀基地を背にして、右からアルファ、ブラボー、チャーリーと呼ばれている。
 和也達のやぐらは真ん中のブラボー。
 つまり、目指す場所は左のやぐらだ。
 全力で2分の距離を駆け抜け、やぐらの根元に備えつけられている盾をつかむ。すでに、チャーリーのやぐらの交代要員は盾を携えている。遅れてやってきたアルファの交代要員もすぐさま盾を装備した。
「いくぞ、野郎どもっ。一人も死ぬな!」
 やぐらの横にあるゲートを一瞬だけ開放し、機動隊訓練所から拝借してきたジェラルミン製の盾を思い切り突き出してゾンビを弾き飛ばしながら前進する。
 6人が全員フェンスの外に出たところで最後尾の自警団員がゲートを閉じた。
 周囲は肉の壁だ。
 その肉の一つ一つが明確な意思、食欲に従って和也達に迫る
134新人さん:2009/08/03(月) 23:59:33 ID:d9zlGEb+0
ゾンビと横須賀(7)

 荒れ狂う集団の中で、個人の技など意味はない。
 和也達は目の前のゾンビを盾の前面ではじき飛ばし、円陣を組んだ。
 機動隊の持つ盾は、使い方さえ心得ていれば防御と同時に攻撃を可能にする。
「亀だっ。隙間を空けるなっ。攻撃は最小限でいい、とにかく進めっ!」
 6つの盾を180度にぐるりと構える、亀の甲羅を思わせる陣形。
 集団には、集団で対抗する。
 肉の壁を力づくではじき飛ばし、こすり上げ、隙間を見つけては無理矢理に回転させて跳ね上げる。
 腐ったゾンビ達の体はそれだけで千切れとび、腐敗液と肉片を撒き散らす。
 並の神経ならば嘔吐を催すような異形の壁を叩き壊しながら前進する。
「あそこだ、副隊長の右斜め前、2mっ」
 やぐらの上から届く指示に従って、進行方向を転換する。
 途端に増した密度は、そこにゾンビが集まる何かがあることを示している。
「押されてるよっ。みんな玉ついてるかっ。こじ開けろっ」
 博康の力の抜ける叱咤を聞きながら、和也は地面に横たわった血色のいい腕を見つけた。迷う暇はない。眼前のゾンビをはじき飛ばしながら、つかんだそれを思い切りひっぱる。
「ぐぅっ」
 くぐもった悲鳴をあげて、腰に2体のゾンビを連れた見知った仲間が円陣に引きずりこまれる。
「かち上げろっ」
 即座に左右にいた博康と自警団員が盾の角を使ってゾンビの額を打ち据え、引き剥がす。
「飯田、もう少しだっ。頑張れっ。お前ら、下がれ下がれっ」
 再び通る道は再び肉の壁だ。
 絶叫をあげながらはじき飛ばし、ただ前進する。
135新人さん:2009/08/04(火) 00:04:04 ID:nRryG8UK0
以上です。スレに書き込むように簡略化しようかとも思ったのですが。。。
自分の持ち味はねちっこい文章表現だと言われたことがあるので、あえて原文のままで。
ただ、このままだといつ終わるかわかんないですね;
気長にやるつもりなので、よろしければお付き合いお願いします。

あと、肯定的な意見をくれた方、励みになりました。ありがとうございます^^
セイレーンさんもわざわざ挨拶していただきまして・・・つたないですが、頑張りますのでよろしくお願いします!
では、また〜
136本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 00:54:32 ID:mMb50NDn0
作者さん方、乙であります!
そして、あたしい作者さんの作ひんも、かゆうま……
137本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 05:42:15 ID:y2VWrTYGO
>>127
動く死体の原因が分からないのに派遣は有り得ないでしょ。
自国民の安全がかかってるのですよ。
米軍でも地上部隊で即応態勢に有るのはごく一部です。
万人規模の大規模派遣なら三ヶ月はかかるでしょう。
現地や周辺政府との交渉、兵站線の構築には時間がかかるものです。
138本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 06:26:05 ID:4U85wA5HO
>>137
パラレルという言葉を知らんのか?
知らんならググってこい!カス!
139本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 07:51:34 ID:mpidV8bcO
>>137
それはどうかな?
君は米軍の司令部ではないし、その指摘も憶測でしかない。

君の意見は建設的じゃないな。
140本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 08:31:43 ID:nUDpN9yt0
ほんと軍関係の話になると沸いてくる奴なんなの?
しんでゾンビの仲間になればいいのに
ゆうえつかんに浸りたいのか、自分の知識通りでないと納得いかないのか

かいてる人にアドバイスとかならもっと別のとこの視点向けて欲しいもんだ
ゆってることがガキと一緒
うんこでも食ってろって感じ
まじ気に入らないならスルーしろよって感じ
141本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 09:02:12 ID:mMb50NDn0
ここは、リアルなシミュレートをもくてきとしたスレではない…ず。
小説をよんで、かゆうま……あれ、おれどうなっt
142本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 09:09:27 ID:eKQTqZCo0
>>137
ここは創作ですよ・・・書き手の自由じゃん。
気に入らないならスルーするか自分で書いてよ。
>>140
同意
143新人さん:2009/08/04(火) 10:56:12 ID:nRryG8UK0
>>119>>137はアドバイスじゃなかったんですね。喧嘩腰だ^^;
自分は軍事板の住人でもないですし、調べたことを膨らませてしか書けませんが。。。
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ発生。12日、対テロ戦争宣言。10月7日、有志連合諸国による不朽の自由作戦開始。
アメリカは犯人がどこにいるかわからない状況でも20日ほどで大規模軍の展開を可能にしてます。
アメリカ単独であればもっと早いでしょうね。場所が南アメリカ大陸(地続きの隣)だったら、さらに早いでしょう。
あえて15日の準備期間を取っているのは、アメリカ軍特殊部隊による動く死体の調査期間でもあります。
もちろん、詳細が判明するわけもなく、食われたら感染するよ、危ないよ、ぐらいしかわからないでしょうが。
>自国民の安全がかかっている
だからこそ即応してもおかしくないのでは?
三ヶ月もかけてたら壊滅します。アメリカナメタライケマセン。
事前に予定された軍事行動であればゆっくり三ヶ月かけるでしょうが、調べた限り、緊急で戦争状況に移行する場合、準備と派遣は同時に行われてます。
距離的に後方支援が容易に行える状態なら、準備期間はさらに短くなるでしょうし。
>現地や周辺政府との交渉
してないです。文章良く読んで。
アメリカ大統領は「やばい、俺の国死んじゃう。良し、攻撃しよう」ってことで攻撃してます。
他の国?「自分が良ければそれで良い」わかりやすいアメリカ理論だと思うんですが。
国連軍にしても、アメリカの圧力に屈してるわけで、これだけの危機的状況であれば、その圧力が「核攻撃」などの可能性もあります。
実際に、作中ではアメリカが核攻撃してるという設定なわけですから、その圧力半端ない。
相手はゾンビなわけですから、「仕方ない。俺も攻撃しよう」と決めるのは容易でしょう。
アドバイスじゃなくて批判をしたいんであれば、ソースもよろしく。
参考程度にはします。

はなっから馬鹿にした態度が鼻について、ちょっとムキになりました。
スレ汚しすいません。今後スルーします。

ところで、あまり批評がないのはもしや小説の内容が。。。?
144本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 11:56:18 ID:mpidV8bcO
そもそも、死体が人を襲うなんて状況時に、米軍がどう判断し行動する、
なんて事は>>137の知る所ではない。

のびのび書きましょう。
145本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 12:27:03 ID:+ws33cQlO
まぁ空気嫁ってこったな。

>>143
すぐに感想求めちゃあかんよ。
淡々と書き進めた後にこそファンはつくし、それに対する賞賛があります。
モテ期は必ず来るからそれまで頑張れ。
146すまいる ◆uF7zrUquPo :2009/08/04(火) 12:56:05 ID:XphKgV+fO
こんな流れの中で、僕も初投稿しちゃいますw

更新は暇な時するぉ><
147すまいる ◆uF7zrUquPo :2009/08/04(火) 12:59:36 ID:XphKgV+fO
【人は二度死ななければならない】(1ページ)

その夜はめくるめく日常の歯車を噛み合わす、いつもと変わらぬ静寂の闇だった。
数秒前まで……
正確には把握できぬまま、数秒が私の目の前を嘲笑うかのように経過する。
漆黒の夜の帳を切り裂くように、静かなる安息の時を引き裂くかのように、そして何かとてつもない不安を引き連れながらややかん高い女の悲壮、恐怖、絶望に満ち溢れた悲鳴が私の鼓膜へと突き刺さり、脳をぶち抜きながら貫通する。

私はいまだ覚めやらぬ眠気が大海荒ぶる波の如く押し寄せる脳内を一気にフルに回転すると、まさしくベッドから飛び上がるようにして自分の部屋の板張りの床へと立った。

今確かに女の悲鳴が聞こえたはずだが……?

夢……か?

出来れば夢であって欲しいと、私は夜空に浮かぶ無数の煌めく星たちに切実に願う。
しかし、渇いた部屋に二発目の悲鳴が鉄の扉越しに聞こえた時点でこれは夢などではなく、現実に起こっている現象なのだと認識する。

ここはマンションだ。私のこの部屋は13階。
ゆえに、マンション外ではない。
もっと悲鳴の場所を特定するのならば、廊下。
もっともっと限定するなら、私の部屋の前にあるマンションの廊下。
そう、女の悲鳴はこの私の部屋の扉一枚挟んだ向こう側のかなり近い位置にて発せられた。

不安という、孤高の山の中腹辺りから、恐怖という雪崩が猛烈な勢いで下る。

全身から嫌な汗が流れ出し、足元はガクガクと震え体は一時ばかり麻痺した。

『一体、何だってんだ……』
148すまいる ◆uF7zrUquPo :2009/08/04(火) 17:35:06 ID:XphKgV+fO
【人は二度死ななければならない】(2ページ)

冷たい水に濡れた長い女の髪に幾重にも巻かれる錯覚へと陥り、数秒が過ぎた。いや、数分?いやいや数時間?
とにかく、我が身硬直し指一本さえもまるで石膏で塗り固められたかのょうに動かない。

あの女の弾叫は何だ?
すぐそこから聞こえた……気がする。
人として助けに行くべきだろうか?
いやいや待て待て、助けるといってもどうやって?
私だって女だ。腕力に自信なんて皆無。
こんな時に家族でもいれば私も軽く悲鳴でも飛ばして援護願うところだが、あいにくと私は独りぼっちである。

警察?そうか、警察などというものがこの世の中にはあった。

私は体の奥底から、勇気と呼ばれる精神を振り絞り恐怖に身がすくんだ体を押さえ込み震える手で携帯電話を取り出した。
今まで生きてきた経験上、今だかつて無いほどの腕の震えは真っ赤でラメが入った携帯電話を上下へと揺さぶり、折り畳み式のそれはパカパカと口を開けながら光を放っては消え、放っては消え私を見つめて笑う。

悲鳴のひとつやふたつに、なんて様だ……
しかし、これ……
携帯のキー押せるの?

小刻みに左右に触れ動き狙い定まらぬ親指で『1』と『1』を無理矢理押し込み、続け様に『0』を押そうとしたその時であった……


私の部屋の扉が叩かれた……
149本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 20:03:43 ID:mMb50NDn0
wktkなんだぜ
150本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 20:34:23 ID:AXO1eGFaO
かゆうまってどういう意味だ?
151本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 20:54:00 ID:1japdgBE0
君の携帯のWebブラウザに検索機能ついてるだろJK
か ゆ  う   ま ・・・・・
152本当にあった怖い名無し:2009/08/04(火) 22:03:13 ID:AXO1eGFaO
飼育員の日記だよね?
元ネタはわかるけど、使い方がわからない
新人さんの作品がかゆうまってどういうこと?
153136:2009/08/04(火) 22:24:14 ID:mMb50NDn0
>>152
新人さんの作品がかゆうまっていうより、読んだ感想としての「かゆうま」だたけど
まぎらわしかたね。
さいきん、かきこみが、むつかしいい
154本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 07:46:57 ID:PgugW+LiO
>>143
大規模な地上部隊の投入は大分後だと記憶してますが?

南アメリカにろくな拠点はありません
中東よりも寧ろ困難でしょう

体液で感染するなら派遣後に厳重な隔離がとられるでしょうね
それ以前に地上部隊の派遣は無いでしょうが
だって危ないですもん
現地人が幾ら死のうが関係ないし

現地の港湾や後方・前線基地の用地確保に現地政府の協力は不可欠です
でないと用地の調査から始めなくてはいけません
航空港湾インフラとの接続は勿論、上下の水の便、電気
全てを補給で賄うのは不可能だし、非効率

国際世論を何とも思わないなら、気化爆弾と焼夷爆弾で
パナマ辺りの森を焼き払って、阻止線を構築するでしょうね
無闇に戦力投入するよりもずっと効率的
155本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 07:48:23 ID:UcBqYALEO
>>152
投稿を楽しみにするあまり、ゾンビ化してしまった時に使う。
156本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 10:01:55 ID:N9PjtG04O
>>文章と空気嫁
157本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 10:03:44 ID:N9PjtG04O
ミス。>>156>>154あて
158本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 10:08:55 ID:Wll52d7q0
>>143
変な反論するからまた変なのが来たぞ
絶対スルーしろよ
絶対だぞ!
見ちゃダメ!触ると危険よ!!
159本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 10:50:16 ID:40WD5K2T0
>>154
毎回粘着してるひとですね。わかります。
ここはシミュレーションスレじゃないから、他所行ってよ。
作者を煽るのはスレ違いですわ。
160すまいる ◆uF7zrUquPo :2009/08/05(水) 12:04:23 ID:M4glP6EdO
【人は二度死ななければならない】(3ページ)

その音は切迫した心臓の鼓動よりも激しく鳴らされた。
扉をノックするというよりは殴る蹴るといった乱雑な衝突音。
我が目の前にある頑強なる鉄の扉を破壊するべくようなほどに強く、激しく、鳴らされた。
携帯電話、小さい枠の中、右上を覗けば午前3時。先程の絶叫といい、とてもとても来訪客とは思えない。

私は数分ほど、その場に立ちすくみ居留守を決め込む。
そして、扉からの衝突音が途切れた時、私は駆け足にて扉へと駆け付けた。

扉の向こうには何がある?
いや、何が起こった?

心の中にある恐怖と興味の天秤がグラグラと揺れ、それが興味の方へと少しばかり傾いた時、私は灰色で塗りこんだ鉄の扉の上方、真ん中にあるレンズを恐る恐る覗きこんだ。

覗き穴から廊下を凝視すると、薄暗い空間の中で青と白のタイルがパズルのように散りばめらた壁、いつもと代わり映えせぬ景色が広がった。

誰も居ない……?

少し私の中で恐怖という感情が勢力を弱め、安堵という感情が芽生えはじめる。
しかし、すぐに様々な疑問が私の頭上あたりをクルクルと回りはじめる。

じゃあ、あの悲鳴は何だったんだ?
幻聴だろうか?
それとも、いわゆる霊現象などという非科学的な事象が私に起こってしまったのか?
どちらにしても、厄介だ。
明日は仕事を休んで、病院でも行ってみるか……

私は首を左右に振りながら、もう一度確認のためにちっぽけなレンズをそっと覗きこむ。

『まあ、何もいるはずはないのだが……』
161すまいる ◆uF7zrUquPo :2009/08/05(水) 14:19:58 ID:M4glP6EdO
【人は二度死ななければならない】(4ページ)

ほら、やっぱり誰も……
と、勝ち誇るように心中にて言葉を呟いたその時、私は「あっ!」と思わず一言発する。

今、確かに人影がレンズ越しに横切った……
そいつは何かに追われるように走っていた。
そいつは女だった。
やや、色の落ちた褐色の長い髪、少しばかり釣り上がる細い目、みずみずしい林檎のように光る口元、ひとつひとつの顔のパーツもそうだが、全体を通して美人ともいえる顔立ち。
実は私は彼女に見覚えがある。
彼女は隣の女だ……
私の部屋の右隣りに住む女。名前はもちろんのことながら苗字も知らないが、レンズを横切ったのは間違いなく彼女だ。

じゃあ、悲鳴の主も彼女か?
と、問われればそれは甚だ疑問である。

とにかく、彼女は曇り、傷だらけのレンズの中、右から左へと歪みながら現れ、歪みながら消えていった。
一度、冷静を取り戻し治まりかけた私の心臓は再び激しいリズムを刻みだし、逆流したそれが口から飛び出してきそうな感覚に捕われる。

そして、数秒後さらにレンズの中の映像は展開を見せた。

暗闇でよくはわからなかったが、先程と同じように長い髪の女が右端から左端へと通過したのである。

隣の女をこの女が追っている?
いや、この女も逃げている?
何から?

全く理解不能な状況ではあるが、尋常ではない状況なのは確かだ。
外には出ない方がいいだろう。
162本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 14:28:14 ID:/OoAxkXH0
ああっ!>>159が触ったぞ。奴も感染した!
緊急隔離だ!

>>161
いいね〜
なんだかドキドキしてきたぜ!
163新人さん:2009/08/05(水) 14:51:08 ID:rJIW+7430
ゾンビと横須賀(8)

 ゾンビの群れがいなくなったのは、まだ夜の帳が退けられる気配さえ感じられない時間だ。朝まではまだまだ時間がある。
 やつらは太陽の光に弱い。
 どういう原理なのかは分からないが、太陽の下にさらされると、やつらは腐敗した肉体がちぎれ飛ぶのもかまわずのたうち回り、汚液を撒き散らしながら暗がりを目指す。
 隠れられるような場所がない場合は、ものの数分で動かなくなり、10数分で汚液の水溜りに変わる。肉片の、骨の一欠けらすら残らない。
 知能が残っているようには見えないのだが、ゾンビ達は太陽がのぼる前にねぐらへ帰る。ねぐらが遠い場合は、夜が明けるかなり前から姿を消す。
 その為、横須賀基地周辺3kmの建物は自警団の手により取り壊されている。少しでもゾンビが横須賀基地を襲う時間を短縮する目的だが、それは確かな成果を挙げている。
「よし、警戒解除っ」
 最後の1匹がきびすを返したのを確認して、和也は腕を振り上げて合図した。
 夜とはいえ、真夏の気温での戦闘で全身汗だくだ。やぐらを降りると待機していた自警団員が海水や雨水を蒸留・濾過した飲み水を配っていた。
 使い古しのペットボトルに詰められた難民地区名物のまずい水だ。荒廃した世界では安全と味は両立しない。
 和也はそれを一息に飲み干し、空になったペットボトルを博康を押し付けた。
「朝だ、全員起床させろ。日が昇る前にやつらの死体を片付ける。ローテーションはどうなってる?」
「1班が農作業員の警護、2班が破損フェンスの補修、3班が武器補修、4班が探索、5、6班がオフの予定です」
「その通りでいい。フェンスの破損は?」
「2箇所」
「すぐ終わるな。終わったらフェンスの調達をして来い。車は使うな。リヤカーでいいだろう」
「了解」
164新人さん:2009/08/05(水) 14:52:01 ID:rJIW+7430
ゾンビと横須賀(9)

 矢継ぎ早に指示を出したあと、和也と博康は負傷した自警団員の元へ急いだ。
「どうだ」
 端的な質問だが、意図は明白だ。
 飯田のそばにいた自警団員が、小さく首を振る。
「息はあります。傷も大したことはありませんが、やつらの体液が体内に侵入しています。終わりです」
「そうか」
 やつらに噛まれるということは、同時にやつらの体液が体内に侵入するということだ。それは、やつらの仲間になることを意味している。
 噛まれて1日で心臓発作を起こし死亡。
 死亡後3日で、60%の確率でやつらの仲間入りだ。
「副隊長…」
 飯田の苦しげな声に、博康は目をそむけた。仲間のゾンビ化は何度目にしても慣れることはない。
「飯田。わかってるな?」
 和也は、横たえられた飯田の体を冷徹に見下ろしている。
「お前は死ぬ。今日一日、ゆっくり休め」
「……はい」
 死に行く仲間にかけるには酷な言葉だろう。和也の態度も情に欠けるかもしれない。
 だが、そのきつく握り締められて青白く変色した拳に、自警団員達はすべてを理解する。
 誰かを守るために、すべてを犠牲にする。それができるからこそ、和也は自警団の副隊長として5年もの歳月を生き抜いている。
「飯田の看取り人と執行人を呼べ」
「同人です。奥さんですね」
 自警団に入隊する際、看取り人と執行人を登録する。もしも自分がゾンビになる時、あらかじめ決められた看取り人が死を看取る。そして、死を迎えた後、執行人が頭を砕く。登録がなければ適当な自警団員が行うことになる。
 通常は、愛する者に看取り人を頼み、執行人は自警団員に任せることが多い。
 だが、まれに愛する者に殺されたいと思うものもいる。
 同人。
 看取り人と執行人に登録された人物が同じであることを指す、自警団用語だ。
「よう…子…」
 飯田は空ろな視線を虚空にたゆたわせながら、力なく言葉をもらしている。
 意識レベルがかなり低下していた。急がなければ、同人登録するほど愛している奥さんと、最後の別れをすることもなく意識を失うだろう。
165新人さん:2009/08/05(水) 14:53:00 ID:rJIW+7430
ゾンビと横須賀(10)

「運べ」
 和也の指示に従って救護所へと運ばれる間も、飯田は意識を失うまいとするように、声を発し続けた。
「よう…子…。子供…でき…たら、海…行こ…な。きっと…お前…似て…カワイ…」
 誰もなにも言わない。
 聞こえないフリをするしかない。
 救護所までのたった10分の距離がひどく遠い。悲しみだけが募っていく。
「死に…たくねぇ。ちくしょう…」
 嗚咽だけが、白み始めた空に流れていく。
 最悪の朝だった。

 血に染まる杭を持ち、よう子は立ちすくんでいる。
「大丈夫かい…」
 救護所のそばにいた老婦が声をかけるが、反応がない。
 昨日の惨劇から一昼夜が立つ。
 夫が死に、その頭を潰すまで、妻のよう子は一切涙を見せなかった。
 執行人を代わろうと申し出た自警団員にも、笑顔で断りをいれるほどの余裕を見せていた。
夫が自警団に入隊した時から覚悟していたのだろうが、その気丈さには誰もが心を痛めるしかなかった。
「…死にました。ご迷惑おかけしました」
 抑揚のない、力ない声。
 誰も、なにもいえなかった。
166新人さん:2009/08/05(水) 14:54:24 ID:rJIW+7430
ゾンビと横須賀(11)

 腹の底に響くような重低音。
 ゾンビの潜むアパートの一室に投げ込まれた、手製の爆弾の炸裂音だ。
 麻袋の中に廃工場で集めたアルミの粉を詰め、火薬を仕込んだこよりを埋めてある。
 あとは麻袋の口をわずかにゆるめ、こよりの先に火をつけて放れば、落下と同時に飛び出したアルミの粉に火が引火して凶悪な粉塵爆発を起こす。
 その威力は小麦粉で行う粉塵爆発の実に20倍だ。
「よし、踏み込むぞ」
 鉄片と細い鎖が縫い付けられた服を着込み、フルフェイスのヘルメットをか被った一団がアパートに乗り込む。
 横須賀基地日本人地区自警団第6班の面々だ。
「博康。窓を蹴破れ」
「はいはい」
 とりあえず閉まっているドアは開けず、一直線に窓に向かい、蹴破る。
 ゾンビは陽光の下には出ないから、これで安全圏が広がった。
 差し込んだ光に、地面に倒れた人影がうめく。
 見れば、爆発で両足をなくしたゾンビが、地面に横たわり、陽光に照らされた腕をよじっている。
 和也は腹と思しき部分に持っていた銛を突き刺し、返しに引っかかったのいいことに思い切り陽光の中に全身を引きずり出した。
「よし、二人一組を忘れるな。一部屋づつ潰せ」
 和也の指示で、自警団員達が閉じられた扉を開けて中に入っていく。
 すぐに自警団員のどなり声と、ゾンビのうめき声で部屋は喧騒に包まれ、続々とゾンビが陽光の下に引きずり出される。
「博康、奥行くぞ」
 このアパートの間取りは3LDKだ。
 他の団員が3部屋に分かれたから、残るはいまいるリビングと、その奥にある台所、風呂場、トイレだけだ。
 長年の埃と砂利、腐敗液に汚れたフローリングが歩く度にきしんだ。
「びびってんのか?」
「まさか」
 軽口を叩きながら、和也がトイレのドアを思い切り開ける。
167新人さん:2009/08/05(水) 14:55:17 ID:rJIW+7430
自分のせいで荒れたみたいで申し訳ない。今後スルーします。
あと、書き溜めた分の投下です。ではノシ
168本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 20:14:36 ID:Pe+9cuC20
なかなかいいじゃない。そのペースで投下してちょうだい。
あと必ず最後まで終わらせること。
分かったわね?
169セイレーン:2009/08/05(水) 21:47:42 ID:5uboupUsP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(79)

袁紹が恐慌状態になって吐いたという話は、別室で休んでいた袁紹配下の文官たちにも伝えられた。
粥だけの食事を済ませていた三人は、思わずそれを吹き出しそうになった。
詳しい経緯を聞くと、審配は激怒して立ち上がった。
「血のしたたるステーキだと、ふざけんな!!
そんなものを見せたら血まみれの死者を連想するに決まっているだろうが!!
私たちがなぜ粥しか欲しがらなかったと思っている!?」
すさまじい剣幕で怒鳴られて、伝えに来た兵はたじろいでいる。
審配はびびって動けない兵を押しのけ、高いくつ音を響かせて部屋の入り口に向かった。そして、青筋を立てて振り返った。
「徐晃と曹仁だな、ちょっと文句言ってくる。」
言葉が終わるやいなや、審配は彼なりの全速力で走っていった。
「ちょっとでは済まないでしょうねえ・・・。」
逢紀は審配のすさまじい説教を思ってため息をついた。
郭図は少し疲れた顔をしている兵士に、優しく微笑みかけた。
「驚かせてしまって、すみませんね。審配は元からああいう人なんで、気にしないでいいですよ。」
郭図の柔らかい物言いに、兵士はほっと胸をなで下ろした。
兵士が安心すると、郭図はそのスマイルにまま兵士に聞いた。
「で、それを見ていた張郃と高覧は、止めなかったんですね?」
「あ、はい・・・。」
それを聞いたとたん、郭図の目に一瞬どす黒い光が走った。
郭図は何も言わずに席に戻り、しょうがないなあというように、くすくす笑った。しかし特にそれ以上怒る様子はなかったので、兵士は安心して部屋から出て行った。
「全く、審配の奴はしょうがな・・・あれ?」
逢紀が声をかけようとすると、郭図はいつの間にかいなくなっていた。
そして少し離れた机に置いたはずの、弩も消えていた。
170セイレーン:2009/08/05(水) 21:49:11 ID:5uboupUsP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(80)

騒ぎは、二ヶ所で起こった。
まず徐晃と曹仁のいる部屋に人だかりができた。
「よくも殿にあんな事をおぉ!!」
審配が頭を突き抜けるような大声で、二人にわめき散らしたのだ。
徐晃と曹仁は素直に謝ろうとしたが、審配がマシンガンにように言葉をぶつけ続けるので、口があまり回らない二人はどうにも割り込んで謝れない。
二人はもう悪かったから許してくれという顔をしているのに、審配は一方的にしゃべり続ける。
見かねた荀攸が、審配が息つぎをしたわずかなスキに割り込んでどうにか止めることができた。まさしく舌戦のプロの腕だった。
そうして一つの事件が治まったころ、兵士が息を切らして駆け込んできた。

二つ目の事件は、張郃と高覧のいる部屋で起こった。
曹操がかけつけると、部屋の前で于禁が郭図を押さえつけていた。
部屋の中では、高覧が息を荒げて剣を抜いていた。郭図の足元には、袁紹軍の弩が落ちていた。そして張郃と高覧の後ろの壁には、一本の矢が生々しく突き刺さっていた。
「か、郭図が・・・いきなりおれたちに矢を・・・!」
「くっ・・・討ち損なったか!」
なんと、郭図が二人を弩で撃ったというのだ。
足音もなく部屋の前に立ち、張郃が気付いて声をかけようとするといきなり矢をつがえた弩を向け、ためらう事なく無言で撃ったのだという。
幸い矢は二人に当たらなかったが、高覧は完全に頭に血が上ってしまった。
そして激昂した高覧が郭図を斬ろうとしたところで、于禁が走りこんで郭図を取り押さえたのだ。
どこか一ヶ所でも間違えたら、大惨事だ。
集まってきた曹操軍の将たちは、背中に冷水を浴びせられたような気分になった。
171セイレーン:2009/08/05(水) 21:51:24 ID:5uboupUsP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(81)

郭図は押さえつけられながらも、修羅の顔で張郃と高覧をにらんでいた。
「なぜこのような事をした?」
曹操が聞くと、郭図はさも残念そうに答えた。
「この二人が、殿を害する不忠者だからです。」
「ほう、どうして?」
郭図は憎らしげに顔を歪めた。
「この二人が殿を捨てて先に降伏したことは、あなたもご存知のはずです。
これは重大な職務怠慢です。だってこの二人は、武をもって殿を守ることと引き換えに給料をもらっているんですよ?
・・・まあ、今回は状況が状況ですから、謝れば許そうと思っていました。」
そこで一息ついて、次の瞬間、郭図は身を震わせて吼えた。
「でも、二人は謝らなかった!!
それどころか、宴席で弱った殿がののしられるのを見て、それを止めようともしなかった!!
どうして?決まってます。
この二人には元々、殿への忠誠心なんて無かったんですよ!きっとこれからも、この調子で殿を痛めつけるに決まっています!
そうなる前に、私が討ち取らないと・・・。」
郭図は完全に、張郃と高覧を裏切り者と思い込んでいた。
張郃が慌てて弁明する。
「ま、待て、そういう訳ではないんだ!
私たちも殿のことは心配で・・・。」
「嘘だっ!!!
よくもそのような詭弁を・・・私は絶対にだまされないぞ!」
もはや何を言っても、郭図は聞く耳を持たないようだ。
思えば郭図は、今日の惨禍の中で命をかけて袁紹の命を守ったのだ。張郃と高覧がいなくなった状況で、何としても自分の手で殿を守ろうとしたのだろう。
その忠誠心の強さが災いして、殿に害をなす者は何としても排除しようとして、疑心暗鬼に陥ってしまっている。
これはどちらも悪気がないし、かといって放置する事はできない。
曹操は悩んだ末、荀攸に高覧をなだめさせ、郭図の手に縄をかけて李典に監視させた。
172セイレーン:2009/08/05(水) 21:54:11 ID:5uboupUsP
作家さんが増えて、にぎやかで楽しいことです。

さて、ゾンビ官渡もしばらく人間模様が続いていましたが、
次からまたゾンビが出てきます。
でも籠城できるかは・・・曹操軍の食糧をお考えください。
173本当にあった怖い名無し:2009/08/05(水) 22:27:24 ID:cuid3oRRO
>>172
乙!また袁家の人達が好き勝手フリーダムしてるwwいいぞもっとやれwww
しかしセイレーンさんの袁紹像は珍しいな。かなりメンタル面弱めなんだね。
袁紹は何が起きても割と前向きで丈夫な奴だと思ってた。
ま、ゾンビなんか出ちゃ誰だって参るだろうが…。

1日スレの方も見させてもらってるよ〜。どっちも続き楽しみにしてる。投稿頑張れ!
174本当にあった怖い名無し:2009/08/06(木) 00:58:56 ID:MD4BViOP0
>新人さん
楽しみにしてます。
日光という弱点で、人類に勝ち目があるのか興味深いです。
ところで、死んだゾンビには日光はきかないんでしょうか?
175本当にあった怖い名無し:2009/08/06(木) 00:59:11 ID:NkXFsZmxO
お!作品ふえてるね
書いてる人 乙ですノシ
176本当にあった怖い名無し:2009/08/06(木) 10:23:12 ID:YZOdMKer0

阿鼻叫喚、絶望、混乱悲しみ、そしてかすかな希望にwktkする俺

かゆ・・・うま・・・


177本当にあった怖い名無し:2009/08/06(木) 17:15:09 ID:a5HhbyGRO
>>174
ありがとうございます。
作中ではまだ言及してませんが、死体は日光の影響を受けません。
これはゾンビ化する原因が○○○で、脳あるいは心臓を破壊されると○○○○できなくなり、生存に○○を必要とする○○○がすべて死滅し、ゾンビではなくただの死体になるためです。
伏せ字の部分はネタバレなので、説明微妙ですがご理解よろしく。。。^^;
178本当にあった怖い名無し:2009/08/06(木) 17:59:36 ID:GNUveb8FO
>>167
おやおや、反論できなくなったらスルーですか
リサーチ不足が露呈しましたな
179本当にあった怖い名無し:2009/08/06(木) 19:20:58 ID:YZOdMKer0
やべっ!なんか近くに餌にありつけなくて
腹空かせたゾンビがいる気がする!!!!
みんなも気をつけろよ
目合わせると噛み付いてくるぞ!!!
感染した奴は南無南無
180本当にあった怖い名無し:2009/08/06(木) 19:45:04 ID:Z8e/UIlk0
すまいる ◆uF7zrUquPoさんの続き気になります
181本当にあった怖い名無し:2009/08/07(金) 09:04:53 ID:mN21alKv0
>>178
新人さんの>>113を読んでください。
それでも非難するならあなたはスルーしないんですよね?>>138>>142に対し
ての反論として新作うpして下さい。楽しみにお待ちしております。

新人さん続き待ってます!!頑張ってください。
セイレーンさん篭城編?それとも阿鼻叫喚の地獄編?楽しみにしてます。
emptyさんはどこ行っちゃったんだろう?お待ちしてします。
182本当にあった怖い名無し:2009/08/07(金) 10:00:42 ID:QMZwXDn6O
あぁ、ついに感染者が出ちゃったよ

>>177の伏せ字が気になる件について
なんとなく1つは分かる気がする
183本当にあった怖い名無し:2009/08/07(金) 17:59:20 ID:8HGQgI5X0
>>181
>籠城できるかは・・・曹操軍の食糧をお考えください。

>>182
試しに言ってみてよ。
184本当にあった怖い名無し:2009/08/07(金) 21:39:24 ID:cTSs6gtNO
>>181
非難とは心外ですな
私はアドバイスして上げてるのですよ
185本当にあった怖い名無し:2009/08/07(金) 21:51:13 ID:s90/sCft0
>>181
やっぱ噛み付かれたか南無南無
おとなしく成仏してくれよ
186本当にあった怖い名無し:2009/08/07(金) 22:11:13 ID:QMZwXDn6O
〜しましたな、〜ですな、〜してあげてるのですよ

どこの爺やかと
いや、誰がとは言わないんだが
しかしこれで作者減ったらどうするつもりなんだろうな
いや、誰がとは言わないんだが

>>183
> これはゾンビ化する原因が「さんそ」で、脳あるいは心臓を破壊されると「こきゅう」できなくなり、生存に○○を必要とする○○○がすべて死滅し、ゾンビではなくただの死体になるためです。

これでどうだろう
187sage:2009/08/08(土) 08:36:36 ID:XitFDiak0
181なんだけどやっぱ俺噛まれたのか・・・・
じゃあ成仏できないな・・
新人さんのお話しに登場できないかな?新人さんうpして〜
あれ?なううか・・mmぽう・・か・ゆ・う・ま
188本当にあった怖い名無し:2009/08/08(土) 08:39:45 ID:XitFDiak0
連投すまん!sageでageちまったよ。
ROM専に戻ります。
189本当にあった怖い名無し:2009/08/08(土) 10:49:36 ID:PgKeQUzwO
気づいた時には自分がゾンビになりかけてて、正気がある内に原因や予防、初期症状などを調べる主人公。

自分が人間からどんどん離れていく悲しみ、葛藤を題材にした話って今までありましたか?
190セイレーン:2009/08/08(土) 11:22:04 ID:xf9qsDsoP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(82)

「疲れた・・・。」
寝室に向かって歩きながら、曹操はぽつりと漏らした。
今日一日で、あまりに多くの事が起こりすぎた。
特に昼前に張郃と高覧が降伏してきてからは、次々と大変な事件が起こり、息をつくひまも無かった。
そのうえ、受け入れ難い恐ろしい怪物を生まれて初めて見た。
人間の形をしていながら人間を食うゾンビという生き物・・・いや、許攸曰く彼らはすでに死んでいるので、生き物というのはおかしい。
とにかく、あんなものが現実にいると受け入れるだけでだいぶ精神力を使った。
しかも、明日からはその問題に正面から向き合わなければならないのだ。
今日はとにかく早く休みたかった。
しかし、こんな時ほど事件は起こるものである。
「殿、一大事でございます!」
「・・・またか。」
曹操は頭を抱えながら、兵について城壁に向かった。

城壁の上から見ると、袁紹の陣から少し離れた森が真っ赤に燃えていた。
「あれは・・・烏巣の辺りか。」
夜闇のせいで詳しいことは分からないが、大火事になっているのは確かだ。ごうごうと舞い上がる火の粉が夜空を焦がしている。
見に来ていた逢紀が、残念そうに言った。
「あー・・・あれは我が軍の兵糧庫ですねえ。」
「何、兵糧庫だと!?」
曹操は驚いて目を見開いた。
腹が減っては戦にならぬという言葉どおり、70万の大軍である袁紹軍の弱点は兵糧庫だった。そこさえ発見できれば、曹操軍にも勝機はあったはずだ。許攸の恐ろしい兵器に頼らずとも、勝利をつかめたはずだ。
「そうか、あそこが兵糧庫か・・・。」
曹操は残念そうに唇を噛んで、燃え上がる兵糧庫を見つめていた。
191セイレーン:2009/08/08(土) 11:23:23 ID:xf9qsDsoP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(83)

袁紹軍の兵糧庫を守っていたのは、淳于瓊という一人の武将だ。
つい数時間前まで、淳于瓊はのん気に酒を飲んでいた。
兵糧庫を守るという重要な役目のおかげで、暴動鎮圧に駆り出されずに済んだのである。そのうえ兵糧庫は本陣から離れていたので、ゾンビ化の波が連続して広がることはなかった。
さらに淳于瓊は元々ふまじめな男だったので、本陣の危機を聞いても自分から助けを出そうとはしなかった。
それらが幸いして、兵糧庫は袁紹軍で最後まで生き残っていたのである。
「あの、本当に救援を出さなくてよろしいのでしょうか?」
「放っておけ、わしの仕事はここを守ることだ。
わしはここさえ守ってりゃいいんだ。
何、心配する事はない。なんたって我が軍は70万もいるんだぞ、ちょっとやそっとの暴動で崩れるもんか。」
淳于瓊もまた、今朝の袁紹と同じように兵力を過信していた。
しかも袁紹とは違って、依存症と言える程酒好きだった。
「この調子なら、今日は誰かが抜き打ちで見に来る事もないだろう。
よし、酒でも飲むか!」
淳于瓊は昼過ぎから、もう酒を飲み始めた。
誰も来そうにないのをいい事に、大好きな酒を好きなだけ飲んで、だいぶ酔いが回ったころ、兵士が幕舎に駆け込んできた。
「た、大変です!
本陣から来た兵士が、仲間の兵士に噛み付いています!」
「何だと、そんなもんは縛ってそのへんに閉じ込めとけ。
兵が多少傷ものになっても、兵糧さえ無事なら構わん。」
淳于瓊は適当に指示を出して、また酒を飲み始めた。しかしそれからいくらも経たないうちに、兵が半泣きで飛び込んできた。
「し、死体が起き上がって、おれたちを食おうとしたんです!!」
「はあ?死体が動く訳ないだろう。
そうか・・・お前も酔ってるんだな、じゃあ一緒に飲むか!」
淳于瓊はもうべろべろに酔っていて、まともに指示を出せる状態ではなくなっていた。
192セイレーン:2009/08/08(土) 11:24:54 ID:xf9qsDsoP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(84)

どうにかしてくれと泣きつく兵士を追い出して、淳于瓊はまだ酒を飲んでいた。
その間にも、兵糧庫の兵は次々にゾンビに噛まれ、すでに死に支配された本陣からも次々とゾンビが押し寄せた。
淳于瓊がさすがにまずいと重い腰を上げた時には、すでに兵の半数以上が負傷し、残りはすでにゾンビの仲間入りを済ませていた。
酒で鈍った鼻でも分かるほど、濃い腐臭が漂ってくる。
「うわああぁ助けてください将軍!!」
目の前で、うつろな白い目をした兵士に別の兵士が噛まれた。
見る間にうつろな目で血まみれの兵が足を引きずりながら集まってきて、噛まれた兵をぐちゃぐちゃに引き裂く。
「な、何だこれは・・・何が起こっているというのだ!?」
「将軍、ここは危険です!
お逃げください!」
わずかに生き残った兵が淳于瓊のもとに走り寄って言った。
淳于瓊は青くなって逃げようとしたが、さっきまでしこたま飲んでいたので足がふらついて走れない。馬に乗っても、おそらく落ちてしまうだろう。
そうしてもたついている間に、死体がわらわらと集まってくる。
「ふ、防げ!」
生きている兵士たちが必死で応戦するが、死体どもは斬っても突いても動くのを止めない。
それ以前に、すでに食いちぎられてボロボロの体になっている者も多い。
「どうしよう・・・一体、どうすればいいのだ!?」
淳于瓊は完全にうろたえてしまった。
動く死体はあちらこちらからぞろぞろ集まってくる。逃げろと言われても、どこに逃げたらいいかすら分からない。
なお悪いことに、時刻はもう夜である。
松明の光から離れると、どこに死者が潜んでいるか分からない。
(松明・・・そうだ!)
闇に灯る明かりを見て、淳于瓊は酒でもうろうとした頭で何かを考え付いた。
193セイレーン:2009/08/08(土) 11:26:24 ID:xf9qsDsoP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(85)

「そうだ・・・斬っても突いてもだめなら、燃やしてしまえばいいのだ!
おい皆の者、あの怪物どもに火矢を射かけろ。
無ければ燃えるまきでも構わん!」
兵士たちはそれを聞くと、あかあかと燃える松明からまきを引き抜いて、あるいは旗や槍に火をつけて死体の群に投げつけた。
食いちぎられた傷口からてらてらと流れる脂に、火がついた。
人の死体とは、意外によく燃えるものである。
しかしすぐに、淳于瓊は誤算に気付いた。
死体はめらめらと燃えながらも、歩みを止めないのである。どんなに体が損傷しても平気な死体どもは、おそらく熱すらも感じていないのだろう。
火は死体を焼くことはできても、すぐ歩みを止める事はできないのだ。
炎をまとわりつかせた死体が、淳于瓊に迫った。
「お、おい、嘘だろ・・・冗談だろ!?
お、おれぁ・・・まだ・・・いぎゃあああ!!!」
千鳥足で逃げることも叶わず、淳于瓊は死体の歯にかかった。
泥酔していて感覚が鈍っていたのと意識をすぐ手放せたことが、せめてもの救いだった。
死体は兵糧庫を歩き回った。自身の体にまとわりついた炎を、旗だのテントだのそこかしこに移して練り歩いた。
その炎はやがて、兵糧庫じゅうに広がった。
穀物も干し肉もゾンビの腐肉も全てを包んで、ごうごうと燃え上がった。
おかげで淳于瓊は起き上がることもなく体が燃え尽きてしまい、白い骨だけを残して煙とともに天に昇った。
その時、ゾンビの一部は一緒に灰になった。
しかし、その数は元の大軍からすればほんの一部でしかない。
淳于瓊が火をつけろと指示してから、兵糧庫じゅうに火が回るまでに、兵糧庫に生きた人間はほとんどいなくなった。そのためゾンビはもうここに餌がないことを感じ、兵糧庫で新たに仲間入りした者を加えて、もっと大きな餌場に移動を始めていたのだ。

こうして、籠城中の曹操がのどから手が出るほど欲しがり、袁紹が大切に隠しておいた兵糧は、見事に全焼してしまったのである。
194セイレーン:2009/08/08(土) 11:29:00 ID:xf9qsDsoP
烏巣が燃えなきゃ官渡じゃない!
ということで、兵糧庫全焼です。

ちょっと旅行に出ますので、次は少し間が開きます。
195本当にあった怖い名無し:2009/08/08(土) 13:55:35 ID:hZachhwOO
セイレーンさん乙
いつまででも待つよー

>>187
その書き込みは少し行き過ぎだろJK
新人さん書き込みづらい
196新人さん:2009/08/09(日) 00:18:58 ID:Gv4OgkDB0
ゾンビと横須賀(12)

 何もいなかった。窓が割れ、長年風雨にさらされ朽ちたトイレがあるだけだ。
「残念。はっずれ」
「うるせ」
 次は風呂場だ。
 押し扉を博康が蹴破る。
 人影。
「お、当たりだよ。やっほい」
 おどける博康に舌打ちを返し、和也はゾンビの胸に銛を突き立てた。そのまま地面に引き倒し、陽だまりまで引きずっていく。
 知能などほとんどない。これから自分がどうなるのかすら分からず、ただ目の前にいる獲物を追い求める。暴れ狂い腕を振り回す姿は、いっそ滑稽ですらあった。
「次行くぞ、次」
 凄惨なゾンビの駆除作業はまだまだ続く。
 台所にゾンビがいないことを確認してから、和也達は隣の部屋の扉を蹴り開けた。
 怒声と、複数の物が落ちる音。
 そして腐臭。
197新人さん:2009/08/09(日) 00:19:52 ID:Gv4OgkDB0
ゾンビと横須賀(13)

 太陽が頂点に達する頃、ようやくすべての部屋の探索が終わった。
 ここからは博康の仕事だ。和也達はアパートから30mほど離れた場所で博康の仕事が終わるのを待った。
「終わったよ。いつでも吹っ飛ばせる」
 日に焼けて赤茶けた長髪を髪になびかせながら、博康は飄々と歩いてくる。手にはアパートまで続く黒いコードを持っていた。
 その先には、元自衛隊の工兵隊所属の智樹という自警団員が作成した低性能爆薬がつながっている。アルミ粉で粉塵爆発を起こす手製手榴弾と違い、簡単には材料が手に入らないため、使用が厳しく制限されている自警団の虎の子だ。
 しかも、爆薬の扱いはひどく繊細だ。熟練した者が行わなければ、その効力を最大限に発揮することはできない。誰もが使用できるわけではない。
 もちろん、件の元工兵隊員がもっとも爆薬の扱いに長けているわけだが、3年ほど前に爆薬製造中の事故で両足を失い、彼が現場に出てくることはない。
 そこで白羽の矢が経ったのが博康だ。
 自警団発足時からの初期メンバーであり、副隊長補佐というそこそこの立場、さらに目端が利き、小器用で度胸と繊細さを合わせ持つ。
 爆薬の製造こそできないものの、こと爆薬の使用に関しては、智樹が一人前と太鼓判を押すまで1年もかからなかった。いまでは自警団での爆薬製造はもと工兵隊員の智樹、爆薬の運用は博康の仕事だ。
「安全確認は?」
「したした。完璧。もともと、こんな住宅地のど真ん中にいる人間なんていないよ」
「そりゃそうだ」
 軽口を叩きながらも、博康の手は軽やかに作業を進めていく。素人目に見ても、その手際の良さは際立っていた。
198新人さん:2009/08/09(日) 00:20:46 ID:Gv4OgkDB0
ゾンビと横須賀(14)

 黒いコードを適当な長さで切断し、先端5cmほどの表皮をペンチで剥ぎ、中の銅線をむき出しにする。それだけでも一苦労だろうに、一瞬ですべてが行われる手馴れた動きはひどく簡単なことのように見えた。
「なに見てんの?」
「いや。なんでもない」
 褒めるのも癪なので、言葉を濁す。
 博康が簡単そうにやるので、和也も以前に試してみたことがあった。結果、何度やっても不器用な和也は銅線ごと表皮を剥いだ。というよりも、切断したといったほうが正しい。
 博康に散々に笑われ、あっちへ行けと言われた苦い記憶はいまだに憎々しい汚点だ。
 ほんの少しだけ苦渋に顔をしかめているうちに、30cm程度の真四角な黒い鉄の箱の上部にあるプラグにコードがつながれていた。
「ok、終了。右よし、左よし、前よし、後ろよし。みんな耳塞いでね、はい爆破」
 手際が良すぎて誰もついていけない。
 あれよあれよという間に、していないも同然の安全確認が行われ爆破スイッチが押される。
 全員が耳を塞げたのは僥倖だ。
 最初に襲ってきたのは地面を伝って感じる振動だ。距離があることと、使用した爆薬が少量だったことで、足の裏がやや震えている、程度にしか感じない。
 だが、爆発音と建物が粉塵を巻き上げながら倒壊する様はかなりのインパクトがある。
 爆薬といえど、相当の量と破壊力がなければ建物一つを破壊することは難しい。破壊力の低い爆薬、しかも少量でそれを可能にするには、建物の基部を効率的に破壊することが必要だ。
 博康曰く、天才の緻密な計算で設置された爆薬は最大限の破壊力を持ち、5年という期間を放置されても十分に使用に耐えうるであろうアパートを一瞬にして倒壊させた。
199新人さん:2009/08/09(日) 00:21:39 ID:Gv4OgkDB0
ゾンビと横須賀(15)

 建物の外側に設置していたら、こうはいかないだろう。一度建物の中にいるゾンビをすべて駆除し、安全を確保してから爆弾で建物を破壊する。
 建物の規模が大きくなればなるほど、入り組めば入り組むほど危険性が増し、大部隊が必要になるが、事実この方法がもっとも効率的に、しかも素早くゾンビの巣窟を減らすことができた。
「うん、我ながら完璧な爆破。見てよ。横の民家も潰れてるでしょ。珍しく3階建てだったから、横の民家に向けて倒したら一石二鳥だと思ったんだよね」
 瓦礫の山を指差しながらうれしそうにのたまう博康に、六班一同ため息をつくしかなかった。

 毎日の戦闘こそあるものの、すでにそれが日常となった自警団にとって、平和な日々がしばらく続いた。
 特に目新しいこともない。
 深夜の戦闘で破損したフェンスを修理し、武器を用意し、堀に溜まった死体を海に投棄する。
 昼になれば、自警団の警護の元で動ける者は総出で、横須賀基地の外の広大な伐採地に作られた畑で農作業に従事する。
 さらに自警団員達は街に繰り出し、ゾンビ達の駆除に勤しみ、ゾンビ達の襲撃時間を少しでも減らすために、陽光のあたる瓦礫の荒野を広げる。
 何もかわらない、生きるための毎日。
 日々が忙しく過ぎていき、小難しいことを考えることはない。
200新人さん:2009/08/09(日) 00:25:42 ID:Gv4OgkDB0
ゾンビと横須賀(16)

 皮肉なことに、世界が変わり、いまの生活に人々が慣れ始めると、自殺者が激減した。統計の人数自体が減ったためとも考えられるが、日々の生活と、生きるか死ぬかという現実に追われ、自分が生きている意味、などという哲学を論じる暇がもてない為だといわれていた。
 それが幸か不幸かはともかくとして、だ。
 勤勉な日常をすごしていた横須賀基地に大事件が起きたのは、ちょうど3つ目の台風が通過し、秋の到来を感じ始めたころだった。
 横須賀基地アメリカ人地区はおろか、日本人地区にも激震が走る。
 それだけのニュースだった。
 横須賀基地アメリカ軍司令部が、横須賀基地の外からの救難信号と、無線を傍受したのだ。
201新人さん:2009/08/09(日) 00:31:16 ID:Gv4OgkDB0
忙しかったので少し短いですが、投下です。
>>186
伏字部分は全部漢字になります。若干おしいです。

あと、元々自分が悪いのですが、お願いなので面倒なところはスルーしてください。
自分が原因で雰囲気悪くなるのは本意ではないので、あまり荒れるようならほとぼりさめるまで投下控えようかと思います。
お願いします。では、またノシ
202本当にあった怖い名無し:2009/08/09(日) 10:27:46 ID:dBkjyPuy0
>>201
雑音は気にせずどんどん投入するよろし。
一番よくないのは投入したものの途中中断すること、

自分で決めて始めたものはちゃんとどこかで区切りをつけて終わらせるように。
203本当にあった怖い名無し:2009/08/09(日) 17:10:41 ID:W4DyfqQI0
>>189
ゾンビじゃないけど、スペクトルマンの
「悲しき頭脳怪獣ノーマン」が、
そんなふうなストーリーだったっけ。
204本当にあった怖い名無し:2009/08/11(火) 22:31:36 ID:NzfMvdLAO
205本当にあった怖い名無し:2009/08/12(水) 01:02:22 ID:xqoJbJrE0
206本当にあった怖い名無し:2009/08/12(水) 17:06:09 ID:FJjUg2clO

また過疎ったな
207本当にあった怖い名無し:2009/08/12(水) 20:41:27 ID:VrHWKefy0
書いてみたいけど、どうもまともなゾンビものは書けないな。
・キノコゾンビ
 寄生キノコによる。知能が低く基本草食だが、人間を見ると助けを求めてすがりついてくるので感染。
 紫外線と乾燥に弱いので、霧の立ち込める孤島に生息。
・電気ゾンビ
 三流ホラー映画ノリ。感電死した人間が脳に損傷を受けた状態で復活。
 手から放電して感電により仲間を増やす。ときどきコンセントから電気を補給。
・呪術ゾンビ
 ある意味正統派。感染はせず、ある程度の知能を持ち、人間を見ると普通に殺す。
 死体を前にすると、邪教の簡易な儀式を行い悪霊を憑依させてゾンビを作る。
208本当にあった怖い名無し:2009/08/12(水) 22:12:02 ID:ndsVlKPD0
「俺、ゾンビなんだ」
真夜中の山を越える道でSが突然、口を開いた。
「ゾンビ?」
私は意味無く見続けていたヘッドライトに
浮かぶ巨人にも見える木々から意識を戻してSの顔を見る。

「ゾンビだよ。ほらゲームとかあるじゃん」
Sは思いつめたような眼差しで私を見ると
ポケットからタバコを取り器用にライターで火をつける。
「俺さあ、今、考えてたんだよ。俺がゾンビじゃないかって
それで分かったんだ。間違いない俺はゾンビだって」
――また下らない冗談か
私は思った。こいつにはうんざりだ。道は間違えるし
謝りもしない。その挙句の果てにゾンビだと。
私は溜息混じりに言う。
「詰まんないから」
「いや、詰まるとか詰まらないとかの問題じゃないんだ。
つまりさ。そうテーゼ、私はゾンビである
それを今から証明してみせる」
そう言ってSは笑った。
209本当にあった怖い名無し:2009/08/12(水) 22:13:03 ID:ndsVlKPD0
「定義。人間の肉を食うのがゾンビか?」
「いや、違うね。熊だってサメだって人間の肉を食うだろう。
それに人間の肉にありつけないゾンビだっているだろから
その定義は間違いだね」
「そうその通り。人肉を食うのがゾンビではない。なら
人間でありかつ、死んでいながら歩くというのはどうだ?」
「曖昧になってきたな。つまりさ、
人間というものが何なのか良くわからないわけだ。
生物としてか、ヒューマニズムとしてか哲学としてか」
「もちろん、生物としてだよ。我々が今、話してるのは
たぶん哲学だろうが」
「うむ、死んでいながら歩くね。どうだろう? ゾンビと言って
いいんじゃないか?」
「それみろ、俺はゾンビだ。つまり俺は死んでいる」
「はあ? お前は生きてるよ。少なくとも死んだ人間は運転しない」
「そう? さっき俺は死んだ人間と言ったが死んだというのは
精神のことだろ? そして歩くぜ?」
「ちょっと待って。それは言い掛かりだ。クレーマーだよ。
そんなこといったら話にならない」
「まあ、良く聞いてくれよ。ゾンビの精神は死んでいる。それは
間違いないな? そして肉体は生きている。というか動いている。
そして俺の精神は死んでいるけど体は動く、生きている。
それなら俺がゾンビだという証明にならないか?」
「ちょっと待って。タバコはどこだっけ?  ふうー。
なかなか興味深い考察だよS君。まさに驚天動地、霹靂の晴天。
二回から目薬だね。そうだね……、そう、ゾンビは思考しないというのはどうかな?
君は思考している。ゆえに君はゾンビではない。
定義は精神が死んでいて肉体は生きているが思考しないのがゾンビだ」
210本当にあった怖い名無し:2009/08/12(水) 22:15:08 ID:ndsVlKPD0
「甘いな。甘すぎるよF。
では俺が寝ているときは思考しない。
俺が寝ているときはゾンビじゃないか?」
「寝てるときは思考しないか。夢遊病もあるし
寝返りもうつ、良い着眼点だね。
では寝ているときのSはゾンビだ。証明終わり」
「ちょちょw俺、ゾンビほんとは嫌w だから続き続き。
精神が死んでいて肉体は動いて思考しない。そして……」
「ところで精神が死んでるって言ったけどどういう意味だ?」
「……」
「お前は精神が死んでるのか?」
それにはSは答えなかった。
私達はしばらくフロントガラスにうつる闇を見ながら黙っていた。
私はゾンビか? 私は自分自身に問う。分からない。
現代人はゾンビなのか? だからこんなに映画やゲームで
ゾンビをあつかったものが多いのだろうか? それは
わからない。答えは闇の中だ。
「わかった! ゾンビは夢を見ない!」
Sが喜んで私に顔を向けたが私は笑えなかった。その証明も脆く見えたからだ。
211ポメラニャ:2009/08/12(水) 22:45:11 ID:mWMpN9dk0
久しぶりに少し続きを。

ゲルティナンドの前方に、一人の男が立ちはだかっていた。
大男だ。年の頃は30前半くらいだろう。外人のような骨格を分厚い筋肉が覆い、身長はゆうに190はある。
髪は軍人のように短く刈り込まれ、鋭い眼光と、氷のような雰囲気を持つ男。
「ゲルティナンド・鬼島だな」
暗く、静かな地下駐車場に響く男の声には、明確な怒気と殺意が秘められていた。
ゲルティナンドは否定をしない、無言によって肯定の意を示す。
「5年前、お前が殺した拳法家の、弟子だ」
男は言いながら、ゆっくりと歩をゲルティナンドへと進めた。
「この事件に乗じてお前を、殺す」
だらりと下げられていた手は言葉にこめられた殺意を具現するかのように上段の構えをとり、足は軽快なフットワークを刻む。
しかし、そんな男を見てもゲルティナンドは構えはおろか、表情すら変えなかった。無表情の上の冷たい目はじっと男をただ写す。
「いくぞ」
2人の距離は十分に縮まっていた。男の後ろ足が地を蹴り、反作用の力が男を前方へと運ぶと同時に、右の逆突きをゲルティナンドの水月へとうつ。
予備動作はなく、常人が捕らえられるはずもないその攻撃はしかしゲルティナンドのコンパクトなバックステップによって空を切った。
直後、ゲルティナンドが1歩踏み込んでボクシングのワンツーを男の顔面へと放つと、男の後ろ手がそれを受ける。
裸拳を相当鍛えているのか、筋肉の厚い部分で受けたにも関わらず男の腕に鈍い痛みがはしった。だが、ここで隙をつくればつけこまれる。前の手を顔面付近にもどし、右の前蹴りを放ち、ゲルティナンドを突き放し距離をとる。
が、ここで一気にゲルティナンドが男へ両手刈—―タックルをしかけた。男の下半身めがけ、ゲルティナンドが抱きつきにくる。蹴りの直後で膝蹴りをうつことはかなわず、両手で男の両足をがっちりとホールドしたゲルティナンドが、すぐさま押し倒そうとする、が、
上から、風斬り音とともに嫌な予感を感じ、動作を中断すると同時に横へと転がる。
直後半秒前までゲルティナンドがいた場所に、レンガをも砕く拳法家の肘が振り下ろされた。ゲルティナンドはそのまましばらく転がり、男と約3メートルほどの距離を持って立ち上がると乱れた呼吸を整えた。
「あれから組技、柔道対策をさんざんやった。お前は今日、確実に殺す」
212セイレーン:2009/08/13(木) 15:15:47 ID:ubCh3p2ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(86)

異変が起こったのは、真夜中の事だった。
宴の片付けも終わって将たちは皆眠りにつき、官渡城は静まりかえっていた。
その静寂の中で、うとうと眠りかけていた門番は、突然の物音で目を覚ました。
「う・・・ん、何だ?」
ドンドンと鈍い音を立てて、何者かが門をたたいている。
しかも普通にたたいているのではない、テンポが妙にのろく、しかも時々体当たりでもするように重い音が混じる。
門番はちょっと考えて、思い出した。
(そう言えば昼前に、曹操様が斥候出してたな。)
張郃と高覧が降ってきてゾンビのことを話した後、曹操はその真偽を確かめるために多くの斥候を出した。
そして今まで、誰一人として帰ってきていない。
帰ってくる前に門を閉じてしまったせいで、閉め出されて怒っているのかもしれない。
門番はそう思って、門を開けようとした。
「悪い悪い、すぐ開けるから・・・。」
「おい待てって!」
後ろから相方の兵が止めた。
「何でだよ?」
門番が聞くと、兵は青い顔をして言った。
「それが、仲間だって保障はあるのか?
もし袁紹の陣から来たゾンビだったら、どうするんだよ?」
それを聞いて、門番はぎくりとした。
許攸はゾンビが長距離を移動することはないと断言したらしいが、それがどのくらいの確率で安全なのかは分からない。今こうして門を閉じているのも、万に一つの事態に備えてだ。
いや、万に一つでも七十人は来てしまう計算になる。
しかし、もし本当に斥候が帰ってきたのであれば、入れてやらないと危険だ。
「これは・・・上の指示をあおいだ方が良い。」
相方の兵は、足早に城内に向かった。
213セイレーン:2009/08/13(木) 15:17:03 ID:ubCh3p2ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(87)

静まり返った城内に、兵の足音だけが響く。
誰か起きている将に指示をあおごうと思ったが、戦の緊張が解けてみんなぐっすり眠り込んでしまっている。
兵は困ってしまった。
起きている上司に聞くのは容易いが、眠っているのを起こすのは気が引ける。
それにいかに頼りになる将といえど、起こしてすぐはぼーっとしていて正しい判断ができないかもしれない。今回の件に関しては、判断の誤りは命取りだ。
兵がどうしようかと悩んでいると、後ろからコツコツと足音がした。
「ひい!?」
思わず悲鳴をあげて振り向くと、そこには李典が立っていた。
「どうしたのですか、こんな時間に?」
「あ、李典様。実はかくかくしかじかで・・・。」
兵はほっとして李典に事情を説明した。
脳ミソに筋肉しかつまっていない人だったらどうしようかと思ったが、李典なら安心だ。そもそも李典は元から武人ではなく、始めは文官としてキャリアを積んでいるのだから。
話を聞き終わると、李典は少し真剣な顔になった。
「そうですか、それは自分で判断しないで正解ですよ。
ですが、私にもゾンビのことはよく・・・そうだ、ちょうどいい人がいます。彼に聞きましょう。」
李典はそう言って、手に持った縄をくいっと引っ張った。
縄の先は、郭図の両手首につながっていた。
「この方は、袁紹軍の・・・!」
「ええ、軍師の郭図殿です。
弩の一件で縛られてから、殿を守れなかったとずっと泣いていたんですけど、泣きすぎて軽く脱水状態になっちゃって・・・。今、水を飲ませて来たんですよ。」
郭図は不機嫌そうだったが、話は聞いていたようだ。
「分かりました、見に行きましょう。
その代わり、今李典に聞いた事は内緒ですよ。」
214セイレーン:2009/08/13(木) 15:18:30 ID:ubCh3p2ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(88)

兵が李典と郭図を門に連れて行くと、音はまだ続いていた。
相変わらずドンドンと音だけが続いている。
「音が始まってからこれまでに、言葉での呼びかけはありましたか?」
郭図の問に、門番は首を横に振った。
「いいえ、一度も・・・。」
それを聞くと、郭図は険しい顔をした。
「そうですか、それは良くありませんね・・・。
はっきり言って、外にいるのはゾンビの可能性が非常に高いです。」
「えっ!?」
驚いている門番に、郭図は説明した。
「私が今日見てきた限りでは、ゾンビは知能が乏しいようです。ゾンビは唸り声を上げることはあっても、言葉を話すことはありませんでした。
つまり、人間かゾンビかを判別する方法は声をかけることです。
・・・まあ、声をかければ確実に狙われますけどね。
試しに、呼びかけてごらんなさい。」
それを聞くと門番は急いで櫓に登り、声を張り上げて呼びかけた。
「おーい、開門を望むなら名を名乗れ!!」
返答はなかった。
代わりに、門をたたく音が一層激しくなった。しかも音が一人分ではなく、明らかに人数が増えている気がする。
郭図の表情がいよいよ険しくなった。
「良くないですね・・・これはほぼ確実にゾンビでしょう。
大声で呼びかけたために、門の近くをうろついていた奴らも集まってきたようです。
李典殿、門をたたく者があっても絶対に開けないように、彼らに命令してください。私は指示を出せる立場ではないので、よろしくお願いしますよ。
それから・・・門はここだけではありませんね?城外と通じる全ての通路を守る者に、封鎖命令をお願いします。」
李典と門番たちは、背中に冷水を浴びせられた気分だった。
すぐさま数人の兵が、各門と通路に走った。
それから夜が明け始めても、門をたたく音が止むことはなかった。
215セイレーン:2009/08/13(木) 15:20:59 ID:ubCh3p2ZP
私も「ゾンビ大事典」を買って移動中じっくり読んでました。
いやあ参考になりますね。

ちなみにうちのゾンビはロメロ系で、動きはのろいです。
疾走系だと一瞬で中国滅亡するので。
216本当にあった怖い名無し:2009/08/13(木) 17:36:43 ID:/VJJwEOy0
うは
wktkが……みなぎっってwきwたw
217本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 00:02:38 ID:wDdt5o9F0
なんかこんなスレが出来てるぞ

ゾンビパニック物でリレーSS part2
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1249914285/l50
218セイレーン:2009/08/16(日) 11:28:22 ID:e7CtmKgCP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(89)

「大変でございます曹操様、早く櫓におこしくださいませ!!」
翌朝起床したばかりの曹操のもとに、兵士が血相を変えて走りこんできた。
昨日もよくあった事だが、今日は兵士の表情が尋常ではなかった。
「分かった、着替えたらすぐ行く。」
曹操は手早く平服に着替えると、櫓に走った。
(ゾンビが現れたか・・・。)
だいたい何が起こったかは、想像がついた。許攸はゾンビが長距離を移動する事はないと言っていたが、それで完全に安全な訳がなかった。
日が暮れる寸前の時間帯に袁紹が降って来たのが、その証だ。
つまりあの時点でもまだ、袁紹軍に生きた人間の集団はあったと考えられる。それがゾンビに襲われながら官渡城に向かって逃げ、城の近くでゾンビ化する事は大いに考えられる。
それを考えれば、数十人程度は到達してもおかしくない。
曹操はそう思いながら櫓に登った。
そして外を見たとたん、驚愕して叫んだ。
「な、何だこれは!!?」
事態は、曹操が思っていたよりはるかにひどかった。
官渡城はゾンビの大群にすっかり囲まれていたのである。
数十人などという数ではない、数千か、悪くすると数万かもしれない。しかも袁紹の陣があった場所から、まだぞろぞろと歩いてくるではないか。
それは、恐ろしい行進だった。
「な、何ということだ・・・!!」
ゾンビの多さに圧倒されている曹操に、荀攸が横から声をかけた。
「殿、すぐに軍議を開きましょう。
もはや一刻の猶予もありませぬ。」
「うむ、全将を集めよ!
それから・・・食事は最低限の粥と昨日の残りだけにせよ!」
曹操は冷や汗を拭い、めまいに耐えながら広間に向かった。
219セイレーン:2009/08/16(日) 11:29:35 ID:e7CtmKgCP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(90)

こんなはずではなかった。
広間に向かって歩きながら、曹操は心の底からそう思った。
昨日袁紹が降伏した時点で、この戦は終わったはずだった。今日はもうこの城を出て、都に凱旋するはずだった。
だからこそ、城に残っていた食料をほとんど空にしても将兵のために宴を催した。
それなのに・・・まさかこんな最悪のタイミングで城から出られなくなるとは思わなかった。
思い返してみれば、昨日の軍議で張郃と高覧はこうなる事を予測していたのに、その進言を退けたのは他ならぬ曹操である。
彼らの進言を受けて昨日の夕刻に城を飛び出していれば、少なくともこうはならなかったはずだ。昼夜兼行で都に帰れば、一兵も失わずに帰れたかもしれない。
(くそっ機を逃したか!)
悔やんでも悔やみきれない失敗だ。
頭を抱えてしまった曹操に、荀攸がまた声をかけた。
「殿、幸いまだ城内への侵入を許してはおりませぬ。
先ほどは急がせて申し訳ありませんでした・・・。
まだ城内は安全に保たれておりますので、ここは腰を据えてじっくり対策を練りましょう。いくら急いだとて、もう容易に突破できる状態ではありませぬ。」
「そうか・・・。」
曹操は思わず嘆息を漏らした。
そして、ふと気になって聞いた。
「門を開けぬようにとは、誰が指示したのだ?」
人とは、外で怪しい事があれば、様子を見たくなるものである。それを防いでくれた者こそが、今この瞬間も城にいる全員の命を守っているのだ。
荀攸は笑って答えた。
「指示を出したのは李典、判断したのは郭図ですよ。
夜中に言葉もなく門をたたく者があり、郭図がそれをゾンビと判断してすぐさま城の出入り口を封鎖するよう進言したそうでございます。」
「そうか・・・二人を縄でつないだのが福と出たか。」
曹操は思わず笑みを浮かべた。
これはまだ最悪ではない、生きている以上、あきらめる訳にはいかないのだ。
220セイレーン:2009/08/16(日) 11:31:19 ID:e7CtmKgCP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(91)

曹操が広間に行くと、審配と逢紀、それに李典とつながれた郭図がもう席についていた。
「・・・早いな。」
「ええ、うちでは会議に遅れると田豊がひどく怒るので。
全くあのジジイときたら、会議の一時間前から席についてるのはおまえだけだっていうのに・・・まあ許攸のような図太い人間にはそれでいいのでしょうけど。」
逢紀が眠そうに目をこすりながら言った。
曹操はなるほどと思った。
袁紹軍では文官同士の衝突が多いと聞いていたが、その原因は郭図や審配のような過激派ばかりではないようだ。
田豊は非常に聡明な人物ではあるが、他人にも厳しく、しかも言い方がきついという。田豊はよかれと思ってそうしていても、許攸のようなルーズな人間には面白くなかったのだろう。
その辺りも、許攸が袁紹軍を嫌悪した原因の一つかもしれない。
「ところで・・・許攸は昨日酔いつぶれてまだ寝てるようですけど。
あいつ、身柄を確保した方がいいのでは?」
郭図が発言した。
表面上は落ち着いているが、内面にはすさまじい怒りをたぎらせているようだ。
審配も同じような顔で言った。
「そうだな、あいつのことだ・・・自分だけが知っている方法でゾンビに襲われずに、今度は曹操を殺したといって劉表か孫権あたりに降るかもしれん。
私たち全員の首を手土産にな。」
確かに、今までの許攸の態度を見ると、それくらいはやりそうだ。
しかし、曹操にもそれは分かっている。
「心配するな、許攸にはすでに監視をつけてある。
逃げられぬよう、引き立てるその時まで起こさぬつもりだ。」
「ご賢察恐れ入ります!」
郭図と審配はそろって頭を下げた。許攸よりよほど正常な反応だ。
過激派ではあるが礼は知っているし、知能はそれなりに優れているようだ。曹操はこの二人がうまく許攸を追い込んでくれるように、心の半分くらい期待をかけた。
221empty ◆M21AkfQGck :2009/08/16(日) 22:10:04 ID:DHXJgfPb0
ご無沙汰です。
ちょっと色々あって投稿できませんでした。
その上にデータは消えるし散々で。
明日から投稿を再開するので、またよろしくお願いします。

まずはどこまで投稿したのか見直してこないと…。
222本当にあった怖い名無し:2009/08/18(火) 19:15:19 ID:RDNAymJl0
は、はらへ た
からがかゆ しょうせつ どうな て
wk kしてい のに
223セイレーン:2009/08/18(火) 20:55:43 ID:3VEz1YBvP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(92)

官渡城の広間には、続々と将たちが集まってきた。
その中には、昨日と同じ鎧姿に着替えた袁紹の姿があった。
「曹操!」
「おお、袁紹!体はもう良いのか?」
曹操が問うと、袁紹は少し目を伏せ、しかしすぐに顔を上げて答えた。
「疲れはだいぶ取れたぞ。
起きてすぐあの死者どもを見たせいで、腹には粥と果物しかつめておらぬがな。しかしそうも言っておられぬ。」
袁紹も状況はしっかり受け止めて、心を奮い立たせているようだ。
「よし、共に許攸を問い詰めようではないか!」
曹操と袁紹は互いの目を見つめあい、がっしりと手を取り合った。
思えば、この状況で袁紹の協力が得られることは生存に不可欠だろう。曹操は袁紹と親友であったことに心から感謝した。
それを見て、また郭図が発言した。
「殿意外に力を貸すのは本意ではありませんが・・・殿が同意したのであれば仕方ありません。
でもその代わり、殿を曹操殿と同じように壇上に座らせてください。」
「なっ!?」
曹操は思わず言葉につまった。
昨日の一件からも分かるが、郭図はやはり袁紹最優先の過激派だ。こんな状況でも袁紹の立場にこだわるようでは、軍を越えた連携に不安が生じてくる。
しかしその次の瞬間、荀攸が興味深そうに言った。
「悪くないかもしれませぬな。
我らには、許攸の悪魔の兵器を歓迎してしまった事実があります。それを考えると、許攸を問い詰めるのに力を発揮できるのは被害者に当たる袁紹殿でしょう。
それに、自分が裏切った人間に問い詰められた方が許攸の動揺も大きいでしょう。
許攸により圧力をかけるためには、袁紹殿に見下ろさせるのが非常に有効かと。」
荀攸に言われて、曹操ははっと思い直した。
「ふむ・・・それはいい。
早々に予備の王座を用意せよ!」
224セイレーン:2009/08/18(火) 20:56:47 ID:3VEz1YBvP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(93)

こうして、許攸を問い詰める準備は着々と整えられた。
曹操もより圧迫感を与えるために、平服から鎧姿に着替えた。
そして、将たちの並び方も変更した。入ってすぐびびらせるのと出口を守る目的で、たくましい武将たちは広間の入り口近くに配置した。逆に許攸を尋問するために、荀攸と、同じく文官の楊修をすぐ側に置いた。
さらに王座を二つ並べて配置し、袁紹が座る方の列には袁紹軍の将を並ばせた。
それから郭図が武器を持たないことを確認したうえで、両手を縛り付けていた縄を解いてやった。
「生存の道を探すために、よろしくお願い申す。」
荀攸と楊修が手を重ねて差し出すと、その上に郭図、審配、逢紀が手を重ねた。
「我らも蛮勇の徒なれど、混ぜてくれい!」
「あいつにはひどい目に遭わされた。
このまま殺されては、死んでも死にきれぬわ!!」
さらに張郃と高覧が手を重ねた。
「あの野郎、勝利どころか両軍を皆殺しにする気か!?
そんな事は断じて許さぬ!!」
「人間を誰構わず人食いの化け物に変えてしまうなんて・・・そんな天に反する所業を許すことなどできません!」
于禁と李典が手を重ねたのを皮切りに、曹操軍の武将たちも次々と手を重ねた。
「生きるぞ、オーッ!!!」
両軍の気合が広間に響き渡った。
曹操軍5万、袁紹軍70人の心が一つになった瞬間だった。
許攸はそんな事も知らず、のん気に眠っているのだろう。
許攸がどんなつもりでこんな恐ろしい兵器を使ったのかは分からないが、自分以外を皆殺しにするような暴挙を許してはならない。
必ずや許攸から生存の方法を聞かねばならない。
曹操と袁紹は昔のように、視線を交わして互いの意志を確認した。
たもとを分かってから、再びこんな日が来るとは思わなかった。
二人は一度顔を合わせると、声をそろえて命令を下した。
「許攸を引き立てい!!」
225セイレーン:2009/08/18(火) 20:58:04 ID:3VEz1YBvP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(94)

しばらく経って、許攸が広間に連行されてきた。
とたんに、全員の恐ろしい視線が許攸に突き刺さる。
「ひいぃ!?」
許攸は思わず身を引いて悲鳴を上げた。
曹操軍の主な将と袁紹軍の降将全員が整然と並び、怒りに燃える目でにらみつけてくる。そのうえ、たたきのめしてやったはずの袁紹が曹操と並んで王座につき、自分を見下ろしている。
(な、なぜだ・・・なぜこうなった!?)
許攸は混乱した。
どうしてこうなったのか、彼にはどうしても分からなかった。
「こ、これはどういうことでございます・・・?」
許攸は震える声で問う。
すると、曹操は普段より一段低い声で言った。
「とぼけるのもいい加減にせよ。
袁紹を滅ぼすと語って我らにつけ込み、我らをも滅ぼそうと企むとは言語道断!断じて許すまいぞ!!」
「あ、あなたを滅ぼす、ですと・・・?」
曹操の言っている事が、意味が分からなかった。
許攸が何も言えずにいると、袁紹が恐ろしい笑みを浮かべて言った。
「わしと曹操に生きる道を示せ。
でなければ・・・貴様を城壁の外に放り投げるぞ。
おい、誰かこやつを城壁に連れて行って来い!奴らの悪臭に囲まれてみれば、我らの気持ちも分かるであろう。」
槍を持った兵士が両側から許攸を引きずって行った。
許攸には何もかも分からなかった。袁紹軍はともかく、曹操軍の者がなぜあんなに怒っているのか。昨日まで客の待遇だったのに、どうしてこんなひどい扱いを受けるのか。
考えているうちに、城壁についてしまった。
そして下を見たとたん、顔をしわくちゃにして絶叫した。
「うぎゃあああ!!!」
こんなはずではなかった。
こうなるとは、夢にも思っていなかった。
226セイレーン:2009/08/18(火) 21:01:41 ID:3VEz1YBvP
だんだん真実が見えてきます。
ウイルスの真の開発者は悪の軍師○○、そして許攸の意図は・・・。

emptyさん、大変でしたね。
私もデータの管理は気をつけたいと思います。
227本当にあった怖い名無し:2009/08/18(火) 23:32:42 ID:WYg9fs4V0
全てはビッグファイアの為に
228本当にあった怖い名無し:2009/08/19(水) 17:52:23 ID:IgxJLh5R0
うおっ!
スレ立てして以来emptyさんがこないと思ってたら、なんと言う悲劇w

新人さん、最近どうしてるかな。。。
たまに息抜きで投下おながいしまつ。
229うぇっはー♪:2009/08/20(木) 01:46:40 ID:UrdLzPnm0
うぇっはー♪
230新人さん:2009/08/20(木) 02:23:35 ID:6LUQfPJV0
皆さん、お久しぶりです。
すいません、一応、定期的に書くようにはしてるんですが、最近やることが多くてなかなか。。。
ストーリー的にはかなり先のほうまで決めてあるので、時間だけが問題です^^;
なんとか、来週の中盤には投下できるような量を書き溜めたいと^^;

重要なキャラとしてヨシコ姉さんも出す予定です。
今後は、和也、博康、ヨシコの3人の視点をめまぐるしく入れ替えながら、過去、現在、未来を描写していきます。
最終的に、3人の邂逅で世界と、ゾンビ、人間の行く末がどうなるか決まる、という流れにもっていこうかと。
新人賞追い込み中なので時間かかりますが、のんびり待っていただけると助かります。
231本当にあった怖い名無し:2009/08/21(金) 02:13:34 ID:4eYwL1ms0
ゾンビがいたらどうなるの?科学者の論文に賛否
ttp://rocketnews24.com/?p=13582
232本当にあった怖い名無し:2009/08/22(土) 10:15:50 ID:13oJAudy0
 その日、死者が、蘇った──

「殺せ、殺せ、殺せ!」
「な、なんで死なねえんだよ……体中穴だらけなのによ……」
「頭だ! 頭を狙……ぎゃーっ!!!」
「救援を! 救援を! 本部、応答どうぞ……」
「誰か、誰かいないのかっ! 救援を……救援を」

「おやすみベイビー……死にくさりやがれクソ野郎」

 あなたはこの世界を、生き残れるか──?

 World of the Dead.
 coming soon……
233セイレーン:2009/08/22(土) 15:45:16 ID:DF8+PBCqP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(95)

許攸の絶叫は、官渡城の広間まで届いた。
それを聞くと、武将たちは思わず失笑を漏らした。
しかし文官たちは、皆驚いて顔を見合わせた。
「荀攸様・・・これはどういう事でしょう?」
楊修が不安げにささやいた。
「許攸は、こうなる事を予測していたのではないのでしょうか?
今の悲鳴、演技にしてはあまりにできすぎております・・・これではまるで、許攸自身もこうなることを知らなかったようで。」
荀攸は苦々しい顔でうなずいた。
「うむ、わしも今それを考えた。
しかし・・・そうだとしたら、容易ならぬ事じゃ。
だとすれば、許攸はただ何者かに手駒として使われ、詳しいことは何も知らされていないのかもしれぬ。我らが逃れられぬようにな。」
それを聞いて、楊修はごくりと唾を飲み込んだ。
許攸がもし何も知らなければ、それは生存の道がないということになってしまう。
それだけは避けたかった。
「・・・まあ、私に言わせれば、その可能性は低いな。」
審配が言った。
「許攸が殿の怒りに触れてここに降ったそもそもの原因として、奴の甥が公金を横領していた。
もし許攸を裏で操っている奴がいるなら、そこにも目をつけていろいろと情報や資金を手に入れようとするはずだ。ゾンビで中枢を潰した後、効率よく残党を消していくために。
しかしその件について調べたところ、本人とその親族に金が流れているだけで、それ以外の金や機密情報の外部流出はなかった!
それを考えると、裏から操られている可能性は低いだろう。」
郭図と逢紀もそれにうなずいた。
荀攸は一度深呼吸をすると、戸惑っている楊修を叱咤して言った。
「事情がどうあれ、わしらは許攸の知る全てを聞き出すのみじゃ。
良いな!」
234セイレーン:2009/08/22(土) 15:46:28 ID:DF8+PBCqP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(96)

許攸が再び、広間にひきずられて来た。
恐怖で顔がしわくちゃになり、昨日の審配に負けないくらいちびって着物を汚している。
それを見て、荀攸は思わず息を飲んだ。
許攸は曹操と袁紹の前に引き出され、両側の兵がつかんでいる手を放すと、へなへなとその場に座り込んでしまった。
「己のした事が分かったか?」
曹操が言った。
「貴様は昨日確かに、ゾンビはおれたちを感知していない、長距離を移動することもないから安心だと言ったな?
しかしこの有様はどうだ!」
許攸はガタガタ震えながら思い切り肩をすくめた。
袁紹も言う。
「のう許攸、おまえは曹操を勝たせたいのではなかったか?
だったら、このようにしては意味がないではないか。
貴様は知っているだろう、我が軍に70万の人間がいたことを。その一割でもここに来れば、5万の曹操軍では太刀打ちできぬことも。
貴様は全てを知ったうえで、我ら全員をだましたのだ!!」
「ちょちょっと待ってください、私はそんなつもりで・・・!」
許攸は慌てて弁明しようとしたが、袁紹と目が合ったとたん声を失った。
袁紹は許攸がこれまで何十年も付き合ってきて一度も見たことがないような、氷のように冷たい目で許攸を見下ろしていた。
「あ・・・た、助け・・・。」
助けを求めようにも、許攸は声帯まで硬直してしまって、妙に高いずれた笛のような声しか出なかった。
代わりに、涙が滝のようにあふれて川のようにほおを流れた。
曹操も心の中ではそれと同じくらい必死で、許攸に提案した。
「本来なら首をはねても足りぬ大罪、しかし今回は特別に許す条件をやろう。
我ら全員が生きられる方法を教えよ!!」
235セイレーン:2009/08/22(土) 15:47:22 ID:DF8+PBCqP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(97)

それを聞くと、許攸は必死で何かを考え始めた。
そして、ぱっと顔を上げて言った。
「か、簡単なことです!
ゾンビの体はほら、く、腐っているでしょう?10日も放っておけば、肉が腐りきって動けなくなるはずですから、それまで待てば・・・。」
「今日の食糧も不足しているのに、ですか?」
郭図はぴしゃりと突っ込んだ。
10日も食糧なしで過ごせば、ゾンビが動けなくなっても、自分たちも動けなくなってしまう。
実に初歩的なことだ。
「じゃあ・・・そうだ、犬とか馬とかに手紙をつけて、外部に救援を求めるのです!
ゾンビはほら、人を食べるでしょう?だから、食べられない動物を使って、外と連絡をとればいいんですよ〜!」
「私たち、馬のゾンビを見たんですけどねえ・・・。」
今度は逢紀が突っ込んだ。
死者に支配された袁紹の陣で、袁紹たちは馬のゾンビに追い回されて逃げ回ったのだ。
その時一緒にいた郭図と逢紀の脳裏には、その事実がすっかり焼きついている。忘れようとしても、忘れられない恐怖だ。
つまり、ウイルスは動物にも感染するのだ。
「じ、じゃあ・・・えっと・・・。」
半狂乱になって頭を抱える許攸のほおを、郭図が怒りをこめて打った。
「いい加減になさい、あなた死にたいんですか!?
私たちは事実を知りたいのです。それに基づいて行動し、生きたいのです。
分からないことを無理矢理作って話しても、それでは生き残れないでしょう!
これからは、真実だけを口にしなさい。一つ嘘をつくたびに、指を一本切り落としますよ!!」
それを聞いたとたん、許攸の鼻から鼻水がぶっと吹き出た。
許攸は床に頭を打ち付けて、泣きながら叫んだ。
「私の、私のせいじゃありませえぇん!!
こ、このウイルスを作ったのは・・・わ、私じゃないんですう〜!!」
広間の空気が、一瞬で凍りついた。

236本当にあった怖い名無し:2009/08/23(日) 09:48:24 ID:Rnpt/3Ee0
ニュース「番組の途中ですが予定を変更してお送りいたします、今日未明・・・」
警察無線「仲間が噛まれた!救急車をよこせ!」
リポーター「あたり一面暴徒で溢れ返っています!今警官隊が発砲しました!・・・ん?何とまだ動いています!信じられません!・・」
237本当にあった怖い名無し:2009/08/23(日) 10:03:08 ID:Rnpt/3Ee0
一時間後 日本某所
市民「騒がしいな、何事だ?」
慌ただしい町並みいたるところで声が聞こえる
彼は外に出ていった
外には親友のピーターが居た
市民「やぁピーター何が起きてる?」
ピーター「知らないのか?日本各地でゾンビが発生してるって話だ、まるでゾンビ映画だぜ。お前も早くニュースで言ってる通りに家に帰って窓ガラス何かを補強し、家に鍵をかけといた方がいいぞ
今から俺もそうするところだ」
市民「じゃあピーター、一緒に買い物に行かないか?」
ピーター「いいぜ」
238セイレーン:2009/08/24(月) 20:22:48 ID:szdglkrFP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(98)

今、この瞬間に許攸が言い放ったこと・・・それは、曹操と袁紹の考えを根本からくつがえすものだった。
許攸はウイルスの開発者ではなかったのだ。
「おい、てめえ・・・昨日確か言ったよな?
開発者の自分が何でも答えてやろうって・・・あれは嘘だったのか!!」
夏侯淵が許攸ににじり寄り、襟首をつかみ上げる。
荀攸はすぐさまそれを制した。
「待て、こちらの話はまだ終わっておらぬ!
許攸を罰さねばならぬのは確か、しかし今はまだその時ではない。開発者でなくとも、許攸に聞かねばならぬ事はまだ山ほどあるのだぞ。」
夏侯淵は一瞬荀攸をにらんだが、チッと舌打ちして許攸を放した。
許攸はいずれ殺すことになるだろうが、今は自分たち全員が聞きに瀕しているのだ。
その危機を乗り越えるためには、どんな小さな情報も残らず聞き出さねばならない。
楊修が許攸の前に出て、次の質問を始めた。
「で、あなたは誰からこんなウイルスをもらったんです?」
それを聞くと、許攸は驚いて首を振った。
「もらったなんてとんでもない!
あのウイルスは私が作ったんですよ。材料と作り方、管理のし方を知っていれば、あんなものは作れます。」
楊修は少し言葉に詰まったが、咳払いをして続けた。
「ほう、それは誰に教わったのですか?」
それを聞くと、許攸は卑しい笑いを浮かべた。
「教わったですと?
これだから頭の悪い方は困りますねえ。
私は誰にも教わってなどいませんよ。私はあなた方と頭の作りが違いますからね、本を読んでその通りに作り上げて成功したまでです。」
「そうか、本か・・・。」
曹操はつぶやいた。
想定していた展開ではないが、生存の鍵にほんの少し指先が届いた気がした。
239セイレーン:2009/08/24(月) 20:23:46 ID:szdglkrFP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(99)

「して、その本はどこにある?」
楊修が手際よく質問を続けていく。
楊修は頭がきれるだけでなく感情に流されずに淡々と行動できるので、多少気に障る事を言われてもそれで尋問を止める事はない。
さっきの言葉に少しでも相手の動揺を期待していた許攸は、たじろいで答えた。
「あ、そ、その本なら、私の寝室に包んで置いてあります。」
「そうですか・・・では、あなたはただその本に従って兵器を作ってみたところ、予想に反してこうなってしまったと。
よろしいですね?」
楊修の口から出た都合のいいシナリオに、許攸は大喜びでとびついた。
「は、はぁい、その通りです!!」
「分かりました・・・が、証拠が必要ですね。
許攸殿、その本をお持ちになって私たちに見せてください。」
楊修がすました笑みを浮かべて命じると、許攸はすぐに本を取りに行った。
許攸が部屋から出ると、荀攸は一息ついて文官たちに声をかけた。
「ご苦労であったぞ、よくやった楊修。
それと・・・もう良いぞ、郭図。」
それを聞くと、郭図はにっこり笑って審配の前からどいた。
「うぇっぷ、ぷはぁー・・・やりすぎだぞ郭図ぉ・・・。」
審配は大きく息を吐き、口の周りについたよだれを拭った。
郭図はやれやれというように、歯形のついた指をひらひらと振って見せた。その指と手には、審配の唾液がたっぷりついていた。
「仕方ありません、あの時あなたが怒りに任せて怒鳴りつけたら、許攸がへそを曲げてしまいかねませんでした。」
許攸の言葉に腹を立てた審配が言葉のマシンガンを撃とうとしたため、郭図はとっさに許攸と審配の間に押し入り、審配の口に指を突っ込んで無理矢理黙らせたのだ。
「相変わらず過激な・・・しかし、今はやむを得ぬ。」
生存のためには、どんな手も許される。この場の全員が、それは理解していた。
240セイレーン:2009/08/24(月) 20:24:56 ID:szdglkrFP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(100)

少したって、許攸が風呂敷包みを持って戻ってきた。
包みを開くと、中にはぶ厚い本が何冊も重ねられていた。
「あの兵器について、分かっていることは全てここに記されております。
どうぞご覧ください。」
許攸が差し出した本を、逢紀と審配が手分けして壇上に運び、曹操と袁紹の間にある机の上に積み上げた。
「私はただ、この本に従っただけです。
この惨禍の根源は、この本を著した者にあります。
おそらく曹操様がお探しの生きる方法も、その中にあるに違いありません!ですから、それごと差し上げます。」
ひたすら責任転嫁しようとする許攸に腹を立てながら、曹操は一番上の本を取った。
それには、こんな表題が記されていた。
<大乱徒の生成目的、及び研究時の安全管理ガイドライン>
「大乱徒だと・・・?」
意味不明な言葉だが、とにかく読んでみるしかない。
曹操はとりあえずページをめくった。
<注意:これから記すのは、私の倫理を捨てた研究の記録である。
もし君が人としての道を踏み外したくないならば、この本のことは忘れてすぐに手放すことをお勧めする。
それから、この巻にある安全管理を守る自信のない者にも、研究を継ぐ資格はない。そういう者はおそらく天下万民を危険にさらし、もしかしたら世界の終わりを招く事になるかもしれない。
繰り返す、これは確かに有用だが、危険を孕んだ研究である。
この書が、天下を滅ぼす事無く大乱徒を完成させられる者の手に渡る事を望む。
漢丞相董卓の軍師・李儒>
文末に記されたその名に、曹操は驚愕した。
曹操にとっても袁紹にとっても、その名は悪夢と共にあった。
そして今、また二人を悪夢へと誘っているのだ。
241本当にあった怖い名無し:2009/08/24(月) 21:12:59 ID:VCQVmrJp0
やっぱりタイラント出るのかよw
でもかまわねえからやっちまえw
242208.209.210:2009/08/24(月) 21:34:42 ID:5yiJ4S3g0
こういうのつまんないですか?
自分では新しくて気に入ってるんですが、、、

スレの趣旨と合わない?
243本当にあった怖い名無し:2009/08/24(月) 23:40:38 ID:34oCctID0
>>242
哲学的なゾンビは斬新だから興味はあるよw
襲ってこないゾンビにどういう落ちをつけるのかとか。
これで完結しているのかな?
途中のように見えたので、完結するまでは感想を言ってないです。
244本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 08:52:16 ID:NAyjfivU0
>>242
243と同じくストーリーの展開が見えないので感想は言えないです。
ただスレの趣旨というか現在までの方向性はやはりロメロゾンビなのでは?

セイレーン様
悪の軍師は李儒だったか・・・盲点でした。面白すぎ!!続き待ってます!!
頑張ってください。
245本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 09:43:04 ID:NAyjfivU0
新人さんが来なくなったの〜面白かったのになぁ

242さんへ236・237を読んでわかる様に続くのか、やめたのかわからないものは
感想の言い様がないです。是非投下してみて下さい。
246本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 09:49:50 ID:NAyjfivU0
まとめ見ながら書いてたら同じ内容連投してしまいました。
すいません。

今読み直しても「まこしろ」「おやじ」は最高だ!!
247237:2009/08/25(火) 17:08:55 ID:ahmll/sv0

何故か規制されて書き込めなくなってた
すまない
248237:2009/08/25(火) 17:20:54 ID:ahmll/sv0
市民「取りあえず得体の知れないゾンビ共に備えて補強するように木の板を買っておこう」
ピーター「後日持ちする食料と水、武器もいるな」
市民「おいおい、ピーターここは日本だぜ、武器なんかある分けないだろ。ゾンビ映画の見すぎだよ」
ピーター「だが刃物くらいはあった方が良いだろ」
市民「まぁそうだな・・・お、着いたぞ、混んでるな・・ここからは手分けして買い物をしよう
俺はベニヤ板や鉄格子、工具セットを見てくる
ピーターは水、食料、武器を頼む」
ピーター「イエッサー!」
249237:2009/08/25(火) 17:36:34 ID:ahmll/sv0
日曜大工コーナー 16時36分
市民「ベニヤ板に、工具セット、鉄格子と。これで良いだろう」

食料品コーナー
ピーター「おいおい嘘だろ、食いもんが無いじゃねぇか、買い占めUZEEEE
まぁ残り物だけでも良いか」

市民「ピーター、買えたか?」
ピーター「ああ一応」
市民「じゃあ次は武器だな」
バリーン!!
市民「何だ!」
ゾンビが窓ガラスを割って侵入してきた
ピーター「おいおいマジかよ!」
市民「急いで武器取ってずらかるぞ!」
ピーター「万引きは許さない」
市民「そんな事言ってられるか!早く!」
市民はバットとゴーグルを装備した
ピーターはハンマーとゴーグル、帽子を装備した
市民「よし!早く行こう」
ゾンビの大群がホームセンターを包囲する前に2人は脱出した
プロローグ完
次 籠城
250本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 18:27:43 ID:XRPWzGO00
>>237
すまないって・・・誰も君には期待してないみたいだよ。
文章がただの報告みたいになってるし・・・
251本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 18:44:57 ID:3sd6wzgO0
>>250
感染者ハケーン! 隔離隔離!!
252本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 20:02:58 ID:7DgCinfD0
>>250
おいwそれは言ったらひどいぞw
謝っとけ、煽りよりひどいぞ

大人として生温く見守ろうぜ
253208.209.210:2009/08/25(火) 21:32:30 ID:spQzERu40
>>243,244,245

なるほど。
続きは無いつもりだったんですが
書けそうだったら書いてみます。

254本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 22:02:29 ID:+ivsDauF0
元よりemptyさんとセイレーンさん以外に誰が期待しようか
255本当にあった怖い名無し:2009/08/25(火) 23:15:26 ID:ja+eRD020
しかし仮にも中国の古典歴史小説ベースで、ウイルス≠ニかステーキ≠ニかの
単語を使うのはやめてくれ。萎えるw
256本当にあった怖い名無し:2009/08/26(水) 00:19:02 ID:+rEu3nxr0
>255
はっはっは。
んなもん前スレで「ゾンビ」という単語で既出だ。
諦めろ。
257237:2009/08/26(水) 13:55:55 ID:PQvIlvyI0
>>250
ウアアアアアア!
酷いこと言うなよ
分かった。もう終わりにする
258非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:44:58 ID:3O35WzJ10
猛烈に久しぶりですね
少し時間出来たのでうpります

「あの… その… あの… えぇと…」 おぉぉぉ? なんだぁ? なんなんだぁ?
何か言いたいのだろう。
言葉を選んでいるようだ。
ま、まさか…
彼氏がこの近くに住んでて無事か見に行きたいとか…
いや、既に結婚してて旦那が気になるとか…
でも、そんな事言ってなかった… 聞いてないから言わなかったのか…
指輪もしてないし… でも指輪してない人もいるしな…
「た、助けてくれて有り難う…」 へ? そんな事?
「な、なんだ。 急に改まるから何事かと思いましたよ」
「いや! あの… そんなんじゃなくて… その…」 またモジモジしだしたぞ。
オレも言いたい事言ってないな… 今がその時なのかな…
「あの…」
「森さん!」
「は、はい!」 急に背筋をピンと伸ばした。
深呼吸して…
「森さん。 突然こんな事言われて迷惑だろうけど。
 離れている間ずっと森さんの事思ってた。
 森さんの笑顔を思い出すと力が出た。 頑張らなきゃって。
 オレ… 森さんの事、大事にしようと思ってる。
 西田みたいな強い男じゃないけど絶対守ろうと思ってる。
 だからその… あの…」 言っちゃったぁ(;´∀`)

うわ! 俯いちゃった! あぁやべーかな… どうしようかな…
「オレと… オレとずっと一緒にいて欲しい。 駄目かな?」
おぅ!
す、ストレートすぎじゃんか!!
やってもぉたぁぁぁぁぁ…orz
259非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:45:48 ID:3O35WzJ10
しばらく沈黙が続いた。
沈黙を破ったのは彼女だった。
「…私ね。 女子校に通ってたから男性とお付き合いした事ないんです。
 デートとかもしたことないし。
 ホームセンターで働きだしてからも、なぜかチャンスがなかった。
 私が臆病だったからなのかもしれなきけど…
 でも、あの時川本くん達と出会って電気が走った。
 この人…もしかしてって…」
森さん…
「川本くん… こんな私でよかったら… お願いします…」
うお! うおぉぉぉぉ!!
「森さん…」
「川本くん…」
オレは森さんを優しく抱きしめた。
森さんの温もりが伝わってくる。
暖かいな…
絶対に守るぞ。 オレはこの女性を守る。
森さんを…
そしてオレ達は唇を重ねた。
何度も何度も…
260非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:47:04 ID:3O35WzJ10
「ずっと、こうしていたいけどまだやらなきゃならない事あるんです」
4号倉庫までの脱出ルートの確認と増えた人数分の食料を持ってこなければいけなかった。
「逃げ道確認と食べ物取ってきます」
「…はい」
管理室を出た。
「上原さん、4号倉庫までのルートを教えて欲しいんですが」
上原さん親子はソファーでくつろいでいた。
「あぁ、そうですね。 脱出ルートは確保しておかないといけませんものね」
さすが分かってらっしゃる。
「ここからだとどれぐらい掛かります?」
「外に出ると5分程度ですね。 建て屋内からだと少し回り道になります」
「建て屋内の方が安全だと思います。 最悪防火扉を上手く使えば逃げられますしね」
「渡辺さん、少しの間お願いしますね」 (`・ω・´)ゞビシッ!!
「分かった! 川本くんも気を付けて」 (/ω・\)チラッ
一瞬森さんに目をやった。
森さんはとても不安そうな顔をしていた。
「すぐ戻ります」
そう言って二重扉を抜け、建て屋内を移動した。
ふと時計を見る。
18時を過ぎたところだ。
そろそろ辺りが暗くなる。
暗くなる前にルート覚えなきゃな。
261非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:48:02 ID:3O35WzJ10
思ったほど時間掛からず4号倉庫まで辿り着いた。
「うわ! 大量に仕入れてますね〜」
「これでも少ないかなと思ってるんですよ。 持久戦でしょ」
「それもそうですね」
追加の食料を用意しクリーンルームへ向かう。
外の道路が見えるところを通る時、我が目を疑った。
「う!上原さん! あれ…」 オレはそれ以上言葉が出なかった。
疎らだが、工場前の道路を奴らがうろうろし始めていた。
「まずいな。 そろそろじゃないかとは思ってたんだが…」
「どういう事です? なにか知っているのですか?」
「動物の習性で帰巣本能ってあるでしょ。 あれじゃないかと思うんです。
 避難した後に自宅に戻ろうとしているんじゃないかと…
 というのもね、うちの社員が出社してくるんですよ。 そして夜になると帰って行くんです。
 中には入ってこないんで害無いと思って放置してました。
 その社員が出勤してくる棟を避ける為に移動してたら川本さんに出会ったんです」
なるほど、そう言う事だったのか。
それでさらに奥の棟に移動したのか。
「奥のクリーンルームへの移動も関係が?」
「はい。 あそこだと監視モニタもあり、自家発電施設もあるので少々の事では破られないと思ったので。
 それと夜間に明かりが点いていると目立つでしょ。 クリーンルームだと奥で敷地外からは分かりませんから」
いくつかの会話を交わしながらクリーンルームへ向かう。
クリーンルームに着いた。
異常はない。
セキュリティカードを通し外側の扉を開いた。
その時、後方から何か音がした。
262非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:48:47 ID:3O35WzJ10
ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…

!?

犬!?
振り返った瞬間、奥の通路から三頭飛び出してきた。
上原さんに押されるように中に転げ込む。
扉が閉まると同時に犬が扉に激突する。
空気が勢いよく吹き出す。
慌てて起きあがり、外を覗くとそこには変わり果てた犬の姿があった。
「う、上原さん… こいつらもやられてます…」
上原さんは腕を抱え起きあがってきた。
「ぐっ… まずいな… 人間だけじゃないのか…」
その間にも扉に何度も体当たりしてくる。
「大丈夫。 こんなんじゃ壊れないですよ」
ようやく内扉が開いた。
上原さんと荷物を押し込む。
「上原さん、腕大丈夫ですか?」
かなり痛そうだ。
「せっかく持ってきた荷物の半分を外に置いてきてしまった… うぅ… すいません…」
「なに言ってるんですか! そんな事よりキズの手当を!」
別室で休んでいた直美さんが慌てて駆け寄る。
「だ!大丈夫!?」
「あぁ、大丈夫。 ちょっと打っただけだ」
犬だった化け物は外側扉に体当たりを繰り返している…
263非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:49:34 ID:3O35WzJ10
簡易的にだが、備え付けの医療箱で手当をした。
その間も外では体当たりを続けている。
「冷たい湿布が気持ちいいですね。 まだ体当たり続けてますね。
 扉大丈夫だろうか… いくら頑丈でもあんなに衝撃加えられたら…」
「すいません。 怪我させちゃって」
「あ、いえいえ構いませんよ。 お互い様なんで。 とりあえずロックはしておきました。
 ですが、大きな音に釣られて此所に集まってくるかもしれませんね」
確かにそうだ。
やつらは音に敏感に反応する。
かと言って今飛び出したら餌をやるようなもんだ。
ハンドガンは使いたくない…
その時、大きなブザーが鳴った。
「うぐ… 外側扉が壊れたようだ」
慌てて外を覗く。
二枚の扉が合わさる箇所に大きな凹みが出来ていた。
その隙間から化け物が覗く。
ぎらりと光る目が見えた。
オレは背筋が凍るような恐怖を感じた。
「や!やばいですよ!」
「奥へ、奥へ行きましょう。 反対側の休憩所へ行けば外に出られます」
「ちくしょう! 飯も食えねぇのかよ!」
「なぁに慌ててんだよ!」
西田がゆっくりと起き上がる。
264非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:50:27 ID:3O35WzJ10
「お、おい無茶すんなよ」
「そんなに慌てられちゃゆっくり寝てられないよ。
 もう大丈夫だよ。 こんなところでドタバタしてたら治るものも治らないよ。
 上原さん?でしたっけ。 こっち側のドアだけ開ける事できませんか?」
「出来ますけど… どうするの?」
「へへ、やりますよ。 移動しても着いてくるでしょ。
 川本、用意しろ。 いつものホローポイントだ」
仕方ないか… 出したくはなかったんだが…
「川本さん、それ…」
「ええそうです。 狩猟用のライフルです。 皆は監視室に避難してください」
上原さんは扉横の操作パネルを開いた。
「このスイッチを切れば手動で開きます。 外側の扉は既に制御出来ないと思います」
そう言うと監視室に入っていった。
窓から外を覗く。
相変わらず体当たりを繰り返している。
「バカだよな」 言い終わると同時に扉のスイッチを切った。
扉を開け外に出る。
出てきたのが分かったのか空いた隙間に頭を擦りつけ中の様子伺っている。
まさに“的”だ。
オレ達は真正面から撃ち込む。
もろにヒット。
次の個体がまた覗き込む。
また撃ち込む。
あっという間に二頭片付けた。
「あと一頭だ。 なにしてる。 早く来い」
265非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:51:14 ID:3O35WzJ10
「まさか、移動したのか?」
外はもう真っ暗だ。 奥の通路の状態も分からない。
ここから出ないと状況が掴めない…
どうしたものか…
「左奥の通路に移動しています。 こちらの様子を伺ってますよ!」
声の主は上原さんだ。
どうやら監視カメラに映っているようだ。
「通路の照明は点けられませんか?」
「外のセンサーエリアに入れば自動で点灯します」
ここを出るのか…
躊躇してても埒があかないか…
「出るぞ」 西田はそう言うとドアに手を掛けた。
「私が開けます。 二人は標的に集中してください」
上原さんが外に出てきていた。
「う、上原さん!? 危ないですよ!」
オレは上原さんを押し返そうとしたが上原さんはそれを拒んだ。
「なに言ってるのですか。 二人だけに危ない橋を渡らせるなんて事出来ませんよ。
 私にだって守るモノがあるのです。 お手伝いさせてください」
その目は本気だ。
「…分かりました。 動き早いですから二発しか撃てません。 それ以降は接近戦になります。
 それでも構いませんか? 死にますよ。 まじで」
いまは冗談なんて言ってられない。
綺麗事なんて通用しないんだ。
「それで家族やあなた達が逃げられるなら構いません!」
そんな覚悟があるなら…
「行くぞ!」 掛け声と同時に上原さんがドアをこじ開ける。
266非日常 ◆P0IfHjzAm. :2009/08/26(水) 14:52:09 ID:3O35WzJ10
まずオレが先に出る。 少し進むと周囲の電灯が点いた。
と、そこには獲物が待ちかまえていた。
低いうなり声を上げてこちらの様子を伺っている。
素早く構える。 その間に西田も出てきた。
「うまくやれよ」
「んなこと分かってるよ」
「川本、お前からいけ。 次弾装填時間はお前の方が短い」
「了解!」

ぱしゅ! どさ!

「ぬぉ!! 当たった!!」
どうやら頭部に命中したようだ。
犬“だったもの”は、その場に崩れ落ち動かなくなった。
安全の為、少し近づいて頭部に3発撃ち込んだ。
「やったな!」 西田がオレの肩をぽんと叩いた。
とりあえずの危機は脱した。
だが、この休憩所も安全ではなくなってしまった。
「なんとかしのぎましたね。 これからどうします?」
上原さんは痛む腕を押さえながら問い掛けてきた。
「とりあえず… 飯食いますか!? 腹減りましたよ」
緊張の糸が切れたのか急にお腹減ってきた。
ぐぎゅるぐぐぐ…
「のぉ!? は、恥ずかしい…」 腹が鳴ってしまった…
皆は大笑いしながら休憩室に入っていった。
外扉はロープと机で軽く固定し、中扉も取っ手同士を針金で括り付けた。
それから食事の用意をした。 男性はカップ麺を。
女性は即席パスタを選択。 良文くんはレンジグラタンを選んだ。
267新人さん:2009/08/26(水) 15:31:57 ID:9BScYELc0
【良子'sルート】
「・・・・・・っということで、今日の放送はここまで。みんな、ヨシコ姉さんの為に明日も元気に生き残るんだよっ」
 威勢のいい声をマイクに叩きつけ、音源機材の電源スイッチを落とす。
 ぱちんっ、という小気味良い音とともに、さきほどまでの喧騒とは打って変わった気だるげな雰囲気が室内を覆った。
 そこに男がいれば、知らず唾を飲み込むほどのじっとりと汗ばんだ、妖艶な匂いに気づくだろう。
 その中心にいるのが良子だ。
 見た目には20代後半というところか。
 腰まである明るい栗色の長髪と、175cmの長身、わずかな疲れをにじませた切れ長の瞳が印象的だ。
 美人という部類に入るのは間違いないが、おしとやか、という言葉は到底似合わない。
 例えるなら、獣。狩りを終え、一息ついた狼が石にでも寝そべっているかのような、怠惰だが溢れるような生気を秘めている。
「良子さん」
 音を立てて扉を開け、部屋に少女が飛び込んでくる。
 年の頃は12、3というところ。
 良子とは違い、小動物のようにころころと表情の変わる、華奢な少女だ。
「可奈。ダメじゃないか、まだランプは消えてないよ」
 扉の上で赤く灯る「ON AIR」のランプを指差し、良子は眉根を寄せ口を尖らせた。
 表情とは裏腹に、声はまったく怒ってないところに、可奈と呼ばれる少女への親しみが見て取れる。
「ごめんなさい」
 可奈はおもちゃのように勢いよく頭を下げると、でも、と続けた。
「お客さん来てるから」
「……あいつか」
268新人さん:2009/08/26(水) 15:34:24 ID:9BScYELc0
ゾンビと横須賀(18)
 苛立ちに舌打ちが飛び出す。
 怯える可奈に身振りで謝罪しながら、良子は部屋を出た。
 地方のラジオ放送局の一角をバリケードで区切っただけの、簡単なアジトだ。ゾンビの進入は防げるが、逆にここから出ることもできない。
 娯楽はない。周囲はゾンビに囲まれている。動く気もない。やることもない。
 操作説明書を読みながら手探りで始めたラジオ放送は、良子にとっての楽しみであると同時に、塞ぎ込みがちな可奈を元気づける手段でもある。
 居住用の部屋を3つすべて通り過ぎ、階段フロアに続く扉を開けた。
 濁った空気が部屋に押し入ってくるが、良子はかまわずに階段を2段飛ばしに上った。
 各階への出入り口を溶接した階段フロアは、良子達の暮らす3階と屋上からしか出入りができないようになっている。誰かの侵入など考える必要もなかった。
 屋上に出るなり、良子は大またに落下防止の柵に取り付き、眼下を見下ろした。
 ゾンビの群れ。
 群れ。群れ。群れ。
 よくもまあこれほど集まったと感心するほどに、放送局の周りは腐った人だかりができていた。
 それぞれがもらす小さなうめき声が、不協和音となって増幅され、遠く離れた良子の耳にもはっきりと聞き取れる。
 辺りが暗く、細部が見て取れないのが唯一の救いか。
 だが、良子が探しているのはそんなものじゃない。ゾンビなんて、良子にとっては恐れる対象ではないのだ。
 良子が探しているのは……
 いた。
 ゾンビの群れの真ん中に車が停まっている。ライトはついていないが、かすかに聞こえるアイドリング音でエンジンがかかっているのがわかる。
269新人さん:2009/08/26(水) 15:35:51 ID:9BScYELc0
ゾンビと横須賀(19)

 それは、その天井に座っていた。
「良子さーん」
 ゾンビの群れに囲まれているというのに、車の天井に座っている青年はのんきに手を振っている。
 良く見えないが、その声だけで誰かははっきりと分かった。
「黙れ、クサレイ○ポ野郎っ。二度とここに来るなって言ったのがわからねえのかっ」
 握った鉄柵が振動するほどの大音声に、青年は小さく首をすくめた。
「そんなこと言わないでよ、良子さん。仲間じゃないか」
 見えなくても、前髪に1房赤のメッシュを入れた青年のにやけ面が目に浮かぶ。
 良子は苛立ちを隠そうともしない。
「仲間じゃない。仲間にしたんだろうがっ」
「それよりさ、報告があるんだぁ」
 青年は車の天井に立ち上がり、ことさら人に聞かれてはまずい、とばかりに周囲を見回した。どうせ大声で言わないと聞こえないのだから、そんなことをしても意味はないのだが。
 良子は青年のそんな芝居がかったところも大嫌いだ。
「実はね、もうすぐ攻めることにしたんだ。用意が整ったからさ。良子さんは参加しないと思うけど、仲間だから報告だけでもと思って」
「だから、仲間じゃないっ」
 即座に切り返しながらも、良子は青年の言葉の意味に戦慄した。
 まずい。
 良子と可奈がやつらの元から離れて3年。冗談だと思っていた計画が、実行に移されるという。
 もしもそんなことになったら、と考えた瞬間、恐怖に全身が総毛立った。
270新人さん:2009/08/26(水) 15:36:37 ID:9BScYELc0
ゾンビと横須賀(20)

 めまぐるしく頭の中で対応策を考えている内に、青年はまたね、と叫んで車に乗り込んだ。
 まるでゾンビなどそこにいないような軽やかな動きだ。
 青年を乗せた車が視界から消えてから、良子はようやく我に返った。
 予想外に逼迫している現状に、舌打ちする。 隠遁生活を送っている女子供に何ができるとは思えないが、やつらを止めなければいけない。
 汗ばむ気温の中で、汗がまったく流れない。
 良子はきびすを返し、放送室へと戻った。
 脳裏に焼きついた青年のにやけ面に、苛立ちが止まらない。
「真一の糞野郎……」
 良子は、副島真一を殺す決意を固めていた。
271新人さん:2009/08/26(水) 15:38:36 ID:9BScYELc0
短いですが、投下です。
一応、次からは和也と博康が基地外に出て行く話になるので、ゾンビ物っぽくなるはず。。。
のんびり待ってください^^
272本当にあった怖い名無し:2009/08/26(水) 16:57:51 ID:mAzKsNRr0
ゴクリ・・・・
273本当にあった怖い名無し:2009/08/26(水) 20:01:52 ID:0EAZ61UG0
>>271
誰も待ってないから心配しなくておk
274本当にあった怖い名無し:2009/08/26(水) 20:06:52 ID:pBSoOs+20
あれ? 俺は待ってるけどw
275本当にあった怖い名無し:2009/08/26(水) 21:03:51 ID:k5g1XBWD0
俺も待ってるよん。
276本当にあった怖い名無し:2009/08/26(水) 22:01:31 ID:/AFcexAW0
じゃぁ俺も俺も!!
277本当にあった怖い名無し:2009/08/26(水) 23:23:31 ID:h3rGchHb0
このスレは、ゾンビ好きな人がゾンビをネタにした小説をupするスレです。

以上。
278empty ◆M21AkfQGck :2009/08/27(木) 00:49:43 ID:1vbayu0Y0
やっとのことで投下できます。何か長かった…!
話が進むごとにゾンビの出番が少なくなるので、本当にゾンビ小説か考え物ですね。


「どっち?」
「さぁ」
男子更衣室の入り口と、女子更衣室の入り口。
来てみたはいいものの、どちらから音が聞こえたのかはわからない。そもそも、本当に更衣室から聞こえたのかもわからない。
―――分かれて入る?
馬鹿馬鹿しいにも程が有る、二人だからこそ死角をカバーできるというのだから。
「誰かいるー?」
友人が男子更衣室に向かって呼びかけた。当たり前といえば当たり前かもしれないけど、何も返ってこない。
次に女子更衣室に向けて呼びかけてみるものの、やはり何も返ってこない。
―――男子更衣室から調べるか。
無言で進もうとして、友人に止められた。
「声から男だってことはわかるでしょ。じゃあ、普通に考えてそっちに入るよね?
 自分なら、とりあえずこっちに逃げ込むかなぁ」
小声で言うのは、潜んでいる何者かを意識してだろう。
友人が、できるだけ足音を殺して女子更衣室へと進んでいった。
自分もそれに続いて――何故だか、猛烈な緊張感に襲われた。
多分、男なのに女子更衣室に入るという背徳的行為に対してなのだろう。今は仕方ないと心の中で呟きながら友人の後を追ってゆく。
279empty ◆M21AkfQGck :2009/08/27(木) 00:51:28 ID:1vbayu0Y0
女子更衣室と言っても、何も変わりはしなかった。入り口の案内板を入れ替えても、誰も疑問を抱かないに違いない。
縦長のロッカーに、排水を考えた網目状のマット。本当に、何も変わらない。
足音を殺す努力をしてみたものの、マットから肌が離れる瞬間に出るぺたぺたという音は防ぎようが無かった。むしろ、足音を殺そうとゆっくり動いてしまっているせいで友人との間にかなり距離ができている。
――キィ
何の前触れも無く目の前のロッカーが開いた。
思わずのけぞり、握っていた即席の槍を目の前に突き出す。がしゃん、という軽い音がして、その衝撃で即席の槍を手放してしまった。
からからとマットの上に転がった槍が揺れる。
「大丈夫―?」
大したことじゃないとわかっているらしい、どこか気だるげな友人の声が聞こえた。
「あぁ、大丈夫…」
まだどきどきと高鳴っている心臓を落ち着けるため、ゆっくりと深呼吸をする。大丈夫、何も起ってない。何も変なことはない。
そして槍を拾おうと屈んだ瞬間、視界の端に何かが入り込んだ。
思わずそちらを見る。
―――うわ。
そうだ、忘れてはいたけど、ここは女子更衣室だ。
じゃあ、ロッカーの中に何があるかなんて考えればわかることじゃないか。
屈んだままだった姿勢を直して、再び深呼吸。落ち着け、自分。相手はただの繊維の塊だぞ。
目に入ってきたのは、包丁に引っ掛かって落ちてきたに違いない衣類だった。
流石にシャツはハンガーにかかっていたために落ちては来なかったが、無造作に置かれていたに違いない下着はロッカーの下に無造作に置かれた水着の上に落ちていて――。
280empty ◆M21AkfQGck :2009/08/27(木) 00:54:29 ID:1vbayu0Y0
待て。
何かおかしい。
よく考えろ、何かが、最初から何かがおかしかった。
今見た記憶を読み返し、そして下に広がる現場を眺める。何かが間違っている。それも、かなり最初の段階から。
―――そうだ、どうしてロッカーが開いている?
こんな簡単なことに気づかなかった自分が馬鹿らしくなった。
ロッカーが開いているということは、鍵が開いているということだ。
扉を閉じてみる。散乱した下着が挟まってしまったせいで完全には戻らなかったが、それでも見たいものは視界に入れることができた。
ロッカーの鍵が、刺しっぱなしになっている。そして、その鍵についているタグにはまだうっすらと水滴がついている。
周囲を見れば、何かあったのだろう、鍵が刺しっぱなしだったり鍵が落ちていたりはするが、思い切り乾いている。
再び開いて、水着に触れてみる。やはりというか、思いっきり濡れていた。それどころかまだ体温が残って――。
――ひた。
まさしくそんな音がした気がした。
首に、何か鋭利なものが当たっている。
「動かないで。動いたら刺すから」
槍に手を伸ばそうとしたのが読まれたのか、釘を刺されてしまう。
まずい、万事休す。
「声も出さないでね?」
囁かれる。吐息がかかるほどの距離で。
手は無くなった。心臓がどきどきを越えてバクバクと鳴っている。今にも破裂してしまいそうだ。
息を吸おうとして、上手くできないことに気がついた。震えて、深呼吸することができない。
友人が気づいてくれるのを願うしかないが――もう更衣室から出て行ってしまったのか、足音が聞こえない。
「そのまま立って」
ゆっくりと、ノロノロという表現がぴったりな感じで立とうとするが、痙攣して上手く立ち上がることができない。
ロッカーに手をかけて無理矢理立ち上がる。
扉の内側につけられた鏡が見えた。
281empty ◆M21AkfQGck :2009/08/27(木) 00:57:57 ID:1vbayu0Y0
自分の後に、女の人が立っていた。
首元には、果物ナイフらしきものが当てられている。
落ち着け、自分。
この窮地をどう脱するか考えろ。
相手はアレではないらしい、そして自分もそうでないことを伝えなければならない。
もしくは、怪我をするのを覚悟で不意打ちして、そのまま床にでも押し倒すか――。
ダメだ、この案は使えない。危険すぎる。読まれて首を刺されたら一巻の終わりだ。
どうする、考えろ。
鏡を見る。
と、自分と女の人以外にも何かが映っているのに気がついた。
かすかに、ほんのかすかに。
ロッカーの最後尾から、包丁の先端が覗いていた。


この小説のゴールが次で明かされます。どこまで行けば終わりなのか、それが果たして本当に「終わり」なのか。
あとこの中のゾンビに関するちょっとした設定も次で出てくる予定です。
基本的なゾンビの上から色々付け加えて、更にあちこちいじくったので別の何かの気もしますが、基本がゾンビなのでやはりゾンビ小説なのかなぁ…。
282本当にあった怖い名無し:2009/08/28(金) 01:24:12 ID:u2xiC2H6O
戦国ゾンビなる漫画を発見した
意外に面白いんだが…
読んでるとセイレーンさんの小説を読みたくなるw
283本当にあった怖い名無し:2009/08/28(金) 06:12:53 ID:y+UYLlJH0
こないだサービス開始したカウンターストライクオンラインやってみw
ゾンビvs人類モードがゾンビ好きな俺にとってハマったw
最大32人の兵士の中からランダムで3人がマザーゾンビに選ばれて
人間を全員ゾンビに増殖させるか時間内人間は逃げ切れば勝ち。
無料だしスペックそんなに高くないからゾンビ好きなら絶対やるべきw
284本当にあった怖い名無し:2009/08/28(金) 20:19:41 ID:EqweRt3f0
ところでこのスレ的には、ゾンビ屋れい子は必読の書か?
285本当にあった怖い名無し:2009/08/28(金) 23:10:58 ID:hQDYl/QU0
必読ではない。
だが、読んでて損はない。
初期のネクロマンサーな読み切りも、後期のJoJo風バトルも。
必読というなら、むしろ「巨乳ドラゴン」だな。
286セイレーン:2009/08/29(土) 13:41:50 ID:iuGbp56ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(101)

「李儒だと・・・!?」
曹操の顔から、みるみる血の気が引いていく。
曹操は李儒にひどい目に遭わされたことがあった。
かつて袁紹を盟主として董卓討伐連合軍を組んだ時、曹操は袁紹が止めるのを振り切って単独で董卓を追撃した事があった。
その結果、曹操は李儒の策略にかかって死の寸前まで追い詰められた。
あの時ばかりは、袁紹の消極的な意見が正しかった。
袁紹も李儒の名を聞いて青ざめていた。
董卓を討とうと洛陽に連合軍が攻め寄せた時、洛陽には袁一族の者が多くいた。李儒は袁紹への見せしめとして、袁一族を皆殺しにしてさらしものにしたのだ。
あの時袁紹がどんなショックを受けていたか・・・曹操はよく覚えている。
二人にとって、李儒は確かに悪夢の使いだった。

だが、李儒は死んだ。
董卓が呂布に裏切られて殺された時、逃げようともせず董卓に殉じて地獄までついて行ったのだ。李儒の命は間違いなく、そこで終わった。
しかし、彼の遺産は生き続けた。
本人が死んでも知識だけが生き続けて、また二人を悪夢に捕らえようとやって来た。
死んだと思っていた者が、再び襲いかかってくる・・・まさしく墓から蘇ったゾンビだ。
董卓が死に、董卓を殺した呂布も殺し、董卓の残党はほぼ解体して、その勢力は駆除されたはずだった。それなのに、こんな形でまた襲われるとは思ってもみなかった。
隣から、声にならない吐息だけの悲鳴が聞こえる。
袁紹が、他の者に聞こえないように叫んでいるのだ。
だが、曹操は叫ばなかった。
むしろ必ず生き残ってやると、強く強く心に誓った。相手が屍だからこそ、そんなものに負けたくなかった。
287セイレーン:2009/08/29(土) 13:42:39 ID:iuGbp56ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(102)

曹操は、とりあえず次のページをめくった。
李儒は確かに悪逆非道な軍師だったが、頭はきれる男だ。
前文からも分かるように、李儒自身もこのウイルスの危険性はしっかり認識していたようだ。ならば、万が一の事態に備えて対策も記してあるはずだ。
李儒にとっても、主君である董卓にゾンビの魔の手が伸びることは避けたかっただろう。
その対策がすなわち、生きる道につながるはずだ。
次のページからは、研究を始めた目的が書いてあった。
<この研究は、一体で世界を手にできるほどの超人兵器、大乱徒(タイラント)を作るのが目的である。
兵の一人一人はもろい。
どのような強兵であっても、圧倒的な数には勝てない。
いずれ力尽き、気力も萎えて、弱気になって消耗して死んでいく。
私はこれらの欠点を持たない・・・疲れを知らず、飽くなき欲求で人を襲い、傷ついても臆することなく戦い続ける兵士を作ろうと思った。
これがあれば、たとえ支持する者が少なくとも、天下を手中にしていられるだろう。>
「なるほど、李儒らしい・・・。」
曹操は思わず感嘆の息を漏らした。
董卓は確かに政権を手にしたが、漢帝国全体でいえばそれほど大勢力ではなかった。
洛陽を占拠する時には20万の大軍を率いてきたが、董卓の軍はそれが全てだった。董卓自身の暴虐もあって、支持する民はほとんどいなかっただろう。董卓は少ない味方で、天下を押さえつけていなければならなかった。
「そうか・・・李儒は自軍の欠点を知り、それを補う兵器を作ろうとしたのだな。」
袁紹もそれに気付いたらしい。
思えば、今回の戦のために袁紹は70万の兵を動かしていたのだ。
曹操軍は7万でそれに対抗したが、知略の全てを尽くしても敗北寸前まで追い詰められた。董卓軍にはそれほど人材がいなかったので、20万の軍でももっと弱いだろう。
率直に言えば、今の袁紹なら董卓軍など簡単に踏み潰せるだろう。
李儒はそうならぬために、こんな恐ろしい兵器の研究に手を染めたのだ。
288名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 10:01:36 ID:FN4u3kfvO
作者さん方乙です
ところで、このスレの過去作でゾンビ化の理由として秀逸だったのってなにがある?
ウイルス〜とか
289名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 15:51:16 ID:UZSplXelO
昔ガチホモにやられるとゾンビになるという話があってだな
290名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 16:24:37 ID:WEaXL4ai0
ああ、読んだ気がする。しかしアレはガチホモに襲われたからなのか?
ガチホモゾンビが男しか襲わないってだけじゃなかったっけ?
だからゾンビになるのは男だけw しかもゾンビになったらおしなべてガチホモ体型にw
まあオチは、人類の50%には大変安全な町になりました、だったが。
しかし女だけじゃどっちにせよ、人類は絶滅だなw
291名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:28:31 ID:RYQ2Hnze0
それは秀逸って質問には合ってないだろw
292名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:29:22 ID:RYQ2Hnze0
sage忘れたスミマセン
293名無しさん@そうだ選挙に行こう:2009/08/30(日) 17:58:53 ID:UZSplXelO
>>290
あんなレアな話覚えてた人が俺以外にまだいたとはw
まとめにも載ってない作品だった気がするw

ゾンビ発生理由はだいたい荒れる理由になるから昔からあまり突き詰めてなかった気がする
覚えてるのでは
パラレルワールドではゾンビ当たり前
ウイルス(軍の細菌兵器他細菌の類)
寄生虫
オカルト(呪術魔術地獄が死者で溢れたなど)
変わったのでは鏡の世界から自分のゾンビが出てきた
くらいだったと
294セイレーン:2009/08/30(日) 19:59:25 ID:8hMobWxPP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(103)

「・・・が、今は目的は関係ない。
必要なのはゾンビの対処法だ。」
「安全管理の辺りにあるのではないか?」
もう少し読みたい欲求を抑えて、曹操は安全管理へとページを進めた。
兵器とは味方を有利にするために敵を殺すものであり、敵味方見境無く被害が広がっては元も子もない。コントロールできる事が、兵器である事の重要な条件だ。
兵器が危険であればあるほど、徹底した安全管理が必要になる。
李儒なら、それはきちんと考えてあるだろう。
安全管理のページの最初に、<ゾンビについて>という項目があった。
<この研究は超人兵士を作るためのものであるが、実験に失敗作はつきものである。あるものを作ろうとして別のものができてしまうのは、よくある話だ。
私は大乱徒を作るために、あるウイルスを作成した。
そのウイルスを正しい手順で適した材料に使えば、大乱徒ができるはずである。
ゾンビとは、その副産物だ。>
「何と、あれは作ろうとして作ったものではないのか!?」
袁紹が驚きの声をあげた。
曹操は別に驚きもせずに言った。
「作りたいものでなくても、できたものが有用ならば使おうとするのが人の性だ。
世の中にそんなものはごろごろしている。」
少し恥ずかしそうに目を伏せた袁紹を横目に、曹操は続きを読んだ。
<ゾンビとは、私が開発したウイルスに感染した結果として人間が変化した、ひたすら生きた肉を求めて動く死体である。
キョンシーのように夜に限って動く訳でもなければ、他の妖怪のように知性がある訳でもない。よって、異国の言葉を借りてゾンビと名付けた。
この章に記した安全管理とは、すなわち、ゾンビ発生への対策である。
この研究における安全管理とは、感染防止とゾンビの処理に尽きる。>
「おお、やはり・・・!」
曹操の顔が、喜びにぱあっと輝いた。

295セイレーン:2009/08/30(日) 20:00:29 ID:8hMobWxPP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(104)

ゾンビ対策は思ったとおり安全管理の一つとして載っている。
曹操は嬉々としてページをめくった。
次のページには、わざわざ太い枠で囲ってこんなことが書かれていた。
<この研究において、絶対にやってはいけない事>
「ふむ、警告か・・・これ程危険な研究なのだ、さすがに真っ先に書いてあるな。」
曹操は感心して読み進めた。
<くどいようだが、この研究は世界を滅ぼす程の危険を秘めたものである。人間が安心して生きられる世界を維持するため、以下のことは決して行わないように。
一つ、ウイルスを管理区域の外に持ち出す事。
一つ、感染の疑いがある者を管理区域から出す事。
一つ、管理区域内で発生した死体を焼かずに埋葬する事。
一つ、実験施設を他に出口があるかもしれない洞穴等に設ける事。
一つ、この研究について無知な者を管理区域に入れる事。
一つ、感染した実験動物を管理区域の外に逃がす事。>
「ちょっと待ってください!」
突然、郭図が叫んだ。
曹操が少し苛立って目を向けると、郭図は許攸の首をつかんで言った。
「今、感染した実験動物とありましたね?
ということは、このウイルスは動物に感染するとそれを読めば分かるんですよね。でも許攸はさっき、感染しない動物に手紙をつけろと言いました。
これは許攸が嘘をついたのでしょうか?
それとも、本当に感染しない動物がいるのでしょうか?」
これは正直、今自分たちが探している道にはつながらなさそうな質問だ。
曹操としては先に進みたかったが、郭図の表情を見るとそうもいかない感じだ。無視すれば後で弩の矢が飛んで来そうな表情だ。
曹操は仕方なく、さっきの警告の参照としてあるページを探した。
何はともあれ、生きる道に近付いている事は確かだ。
曹操は心の中で、焦るなと自分に言い聞かせた。
296セイレーン:2009/08/30(日) 20:02:17 ID:8hMobWxPP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(105)

動物がウイルスに感染するかについては、安全管理の後ろの方にあった。
<実験動物の取扱について。
このウイルスは本来ならば人間にのみ感染するのが望ましいが、どうも哺乳類全般に感染するようにできてしまった。
材料に天然痘のウイルスを使えば良かったところを、天然痘は人に対して危険すぎるため、牛痘を代わりに用いたのが良くなかったのか・・・。
とにかく、このウイルスは獣を通じて広まる危険を持ち合わせてしまった。
おかげで人間を手に入れなくても、動物実験が可能になった利点はあるが。>
「むう、これでは脱出に馬は使えぬな・・・。」
曹操は小さく唸ってしまった。
郭図に言われて仕方なく調べた事ではあるが、これは有用な情報だった。知らずに牛馬とともに脱出しようとすれば、ゾンビ化した牛馬に食い散らかされていたところだ。
寄り道したら落とし穴を見つけたといったところか。
郭図が薄笑いを浮かべて、許攸の首を締め付ける。
「さあて、あなたの言った犬も馬もだめでしたね。
最初からこんなにとばして、切り落とす指、両手で足りそうですか?」
「ひっひぎいいぃ!!?」
許攸は踏みつけられた豚のような声を出した。
「ちょ、待って、これは数に入らないでしょ!?
今のは、あなたが嘘をつくなと言う前のやつじゃないですか!」
「あーそうでした・・・まあ、他にもいくつかありそうなんで今は待ちますけど。」
郭図が残念そうに許攸を放すと、荀攸は曹操に元の話に戻るよう促した。
曹操は再び警告のページを開き、読み始めた。警告の内容のほとんどは、ウイルスが外部に漏れるのを防ぐための項目だ。
そして、やってはいけない事の最後に、こんな項目があった。
<一つ、ゾンビ化そのものを兵器とし、ウイルスをばらまく事。
これが行われた時、世界の終りが始まる。>
297セイレーン:2009/08/30(日) 20:04:23 ID:8hMobWxPP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(106)

曹操と袁紹は一瞬、頭の中が真っ白になった。
ゾンビ化そのものを兵器とし、ウイルスをばらまく・・・これは許攸がやった事ではないか。
しかし、これが行われると世界の終りが始まるとある。
それでは、世界の終りが今始まっているのか。
世界の誰もが、もう抗う術を持たぬというのか。
「ひっ・・・!」
袁紹の表情が、みるみる恐怖に歪んでいく。
曹操はそんな袁紹を叱咤して言った。
「あきらめるな、あきらめたらそこで終わりだ!
おれたちは今生きているのだ、この命を簡単に手放してたまるか。何としても脱出し、生き長らえてみせる!」
荀攸もそれにうなずいた。
「その通りです、このような理不尽な終わりに屈してはなりませぬ。
ウイルス漏洩の対策は必ずあるはずです。そこからヒントを得れば、生きる道はきっと見つかるはずです。」
曹操はうなずいて、再び本のページを繰り始めた。
程なくして、曹操はウイルス漏洩・ゾンビ発生時の対処法を見つけ出した。そこには、事故の段階ごとに封じ込めの対策が記してあった。
<ウイルス漏洩の可能性が生じたら:即座に半径20m以内の人間を退去させて二週間拘束し、様子を見る。動物は殺す。感染が無ければ、ウイルスは水中や空気中では速やかに失活するので問題ない。
感染者・ゾンビが出たら:首を切るか頭を潰して、遺体は焼く。
感染拡大したら:ゾンビ〜10体なら、実験施設の全員を殺せ。
一般人に感染があれば、その地区を封鎖して焼き払え。
〜100体なら、その城は捨てて、門を固く閉ざして誰も出さず、城ごと焼き払え。焼いた後も昼夜を通して監視し、最終的にその城を高い壁で囲め。それでも封じ込められるかは五分五分だが。
〜千体なら、確実に感染していない者と共に大河を渡って渡し場を封鎖せよ。そなたの寿命を全うするくらいは長らえるかもしれない。そこに至る道の村々を皆殺しにする事も忘れずに。
それ以上は、もう人の手に負える話ではない。>
そして今、官渡に発生したゾンビは・・・70万体。
298セイレーン:2009/08/30(日) 20:13:01 ID:8hMobWxPP
李儒については、郭図や審配と同様に頭脳明晰・性格アブノーマル・君主に忠実としています。

今日、無双5エンパを袁紹でやっていたら、審配が敗走しまくってイライラしました。
放っておくと本陣に突っ込むので食糧庫に他の武将と行かせたら、それでも敗走する始末。
だからゾンビワールドで足手まといにしかならないんだ!

昔の小説で秀逸だと思ったのは、さんげりあさんの籠城ですね。
家族を失っていく主人公の感情描写がとても胸を打ちます。
299本当にあった怖い名無し:2009/09/02(水) 10:41:30 ID:dMH9lh2ni
三国志苦手な俺にはなにがおもしろいのかさっぱりだ
300本当にあった怖い名無し:2009/09/02(水) 12:42:53 ID:adjDsK/o0
オイこそが 300へと〜
301本当にあった怖い名無し:2009/09/02(水) 13:09:35 ID:aKLDjHVK0
苦手どころかまったく知らない漏れはどうしろと。
まあ、テキトーに人物を想像して楽しんでいるが。
302本当にあった怖い名無し:2009/09/02(水) 19:52:24 ID:BNHoCLcT0
右に同じ。
三国志はNHKの人形劇と横山漫画でしか知らず、それもうろ覚えだ。
最初は飛ばしてたが、今はワクテカが止まらない。
303新人さん:2009/09/02(水) 21:19:07 ID:v1M9hAjV0
ゾンビと横須賀(21)

【和也'sルート】
2009年、9月2日。横須賀市内。
 和也が蹴り飛ばした空き缶が、甲高い音を立てて廃墟となったビルの壁に跳ね返った。
 誰がどう見ても和也は苛立っている。
 元々、和也は温和な性格ではない。知的レベルは決して低くはないが、その一本気な性格が災いして、人の道にはずれた行為にはすぐに激昂してしまうところがあった。
 そんな和也の性格は同じ自警団員には周知の事実となっているわけだが、残念ながら、いま和也の周囲にいる横須賀基地所属アメリカ軍特殊作戦群選抜チーム”フォックス”の面々には知られていない。
「何を興奮しているんだ、ジャップ」
 明らかな侮蔑の色が見える言葉を吐くのは、フォックスの部隊長だ。胸元にはケビン・スタナーの名前が彫られたドッグタグが下がっている。
 現場一筋の特殊作戦の部隊長としては珍しい細身の体躯は、筋骨隆々とした熊と見紛うような隊員達の間にあって、華奢にさえ見える。
 だが、灰と白を基調とした野戦服の下には、鍛え上げられ、古傷で覆われた戦士の肉体がある。技と経験、極限まで鍛えあげられた肉体は、潜在能力の差など物ともしない圧倒的な戦闘力を秘めていた。
「うるせえよ、ヤンキー」
 和也がこめかみに浮かぶ青筋を自覚しながらやり返すと、銀縁メガネ越しに鋭い視線が叩きつけられた。
「さすがジャップだな。お上品な礼儀作法だ。禅、とか言ったか? 猿はどこまでいっても猿ということか」
「さすがヤンキーは手前勝手な物の見方をするな。禅は礼儀作法じゃない。知識不足が露呈してるぞ」
「ああ、そうなのか。すまなかったな。猿の文化など興味がなかったものでな。曖昧に覚えていたようだ。修正しておくよ」
 ああ言えばこう言う、とはまさにこのことだ。
 淡々としたケビンの言葉には、感情のこもっていない分、必要以上の破壊力がある。
 これ以上は自分が苛立つだけで分が悪い。和也は舌打ちを一つして話を切り上げた。
 まったく、不運極まりない。
 行方不明の特殊部隊の残した観測データを持っているという情報提供者が、交渉役に日本人を指名してこなければ、和也はこんなところにはいなかったはずだ。
「最悪だ……」
 暗雲立ち込める空を見上げながら、和也は小さく独白した。
304新人さん:2009/09/02(水) 21:19:47 ID:v1M9hAjV0
ゾンビと横須賀(22)

2000年8月31日。横須賀米軍基地、アメリカ軍司令部内、第1会議室。
「詳細は理解したか?」
 横須賀基地所属アメリカ軍特殊作戦群選抜チーム”フォックス”の部隊長であるケビン・スタナーと名乗った男は、手入れの行き届いた金髪をオールバックに撫で付けた。
 神経質なのか、先ほどから説明をしながら銀縁メガネの位置を直すことに気を使っている。
 言葉の端々から切れ者であることは感じ取れるがそれ以上にいけ好かない人間であることは、ほんの短時間で理解できた。
「ジャップ。返事はどうした?」
 これだ。
 この呼び方が気に食わない。
「理解したよ、ヤンキー」
 和也が吐き捨てると、すぐさま車椅子に座って横に控えていた大谷博海将、もとい横須賀米軍基地日本人地区自警団隊長が身振りでたしなめてくる。
 隊長の大谷は足を悪くしていて、車椅子生活を余技なくされている。現場仕事はすべて副隊長の和也に一任されていた。大谷の仕事はたった一つ、米軍との折衝役である。
 ここは、政治事には疎い和也には良く分からない世界だ。暴言を吐かれて平然と対処することのできる大谷を尊敬すると同時に、若干の軽蔑も感じる。和也はこの部屋に入り、わずか5分で自分に隊長は無理だと痛感していた。
 ケビンの冷たい視線を真っ向から受ける。和也にできるのは、やはり喧嘩だけだ。
 とにかく、所々に挟まれる暴言をのぞけば、大まかに現在の状況は把握できた。
 アメリカ軍司令部に情報提供者から連絡があったのは5日前。日本人の女で、ヨシコと名乗っていたらしい。アメリカ人は信用できない、という彼女の要望で、接触する特殊部隊に日本人、つまり和也が編入されることになったというわけだ。
「それで、観測データっていうのは?」
305新人さん:2009/09/02(水) 21:20:31 ID:v1M9hAjV0
ゾンビと横須賀(22)

 ケビンがふん、と鼻を鳴らした。
「特にお前がそれを知る必要はないが……あえて話しておいてやるから感謝することだな、猿。我々の作戦目標は、3ヶ月前に消息を絶った”イーグル”隊の観測情報を入手することにある。彼らの作戦目標はオメガゾンビの観測、およびアルファゾンビの発見・観測にある」
「イーグル隊にオメガゾンビにアルファゾンビ?」
 聞きなれない言葉のオンパレードだ。
 和也が目を白黒させると、ケビンはぎろり、と和也をにらみつけてくる。当然、負けじと和也もケビンをにらみ、またぞろ険悪な雰囲気が部屋を包んだ。
 その空気を破ったのは、快活な初老の白衣の研究員だ。
「ほれ、2人ともそんなにかっかするもんじゃないよ。出来の悪い生徒ほど教え甲斐があるってもんじゃろ。のう」
 ケビンもそうだが、この博士も流暢な日本語を使う。
「どうした、小僧っ子。豆鉄砲でも食らったかの」
「あ、いや。日本語上手い……ですね」
 慌てて取り繕ったように敬語にする。ケビンはいけ好かないが、この老人には他意はない。年長者への敬意を忘れてはいけない。
「なに、10年ほど日本で暮らしておるからの、日常会話ぐらいは覚えるわい」
「日常会話ってレベルでもないようですが……」
「おや、お世辞にしてもうれしいわい。だが、小僧っ子はそれより聞きたいことがたくさんあるじゃろう?」
 にんまりと笑う老人は愛嬌たっぷりだ。悪戯好きの少年のようにさえ見える。
「ゾンビの研究をしている。オード博士だ」
 ケビンが咳払いをして、遅ればせながら紹介すると、オードはまたにんまりと笑った。
「元々は免疫学の博士じゃがな。色々あってゾンビの研究をして、今じゃあ色々な方面をかじっておるよ」
 差し出された手を握り返し、和也も簡単に自己紹介をしようとするが、それはあっさりとさえぎられた。
「小僧っ子は小僧っ子で十分じゃろ。観測データを持って帰ってきてくれたら名前を聞いてやるわい。ほれ、それよりさっさと説明するぞ」
 オードは机の上に無造作に置かれていたファイルケースを和也の下に滑らせた。
306新人さん:2009/09/02(水) 21:24:37 ID:v1M9hAjV0
投下。遅々と進まない。。。
次回は自分の小説の中でのゾンビの位置について説明していきます。
というか、>293に自分が考えている理由がある。。。
みんな考えることは大体一緒なんですね^^;

自分は三国志途中で挫折した人間ですが、登場人物絞ってあるし、作中で説明してあるし、楽しいと思うんですが。。。
自分の作品も楽しんでもらえてるとうれしいけど^^;
では、また今度〜ノシ
307本当にあった怖い名無し:2009/09/02(水) 21:52:38 ID:m+PypXWc0
>>306
乙。拝読しましたよん。やっぱりゾンビ物は現代がマッチしてるね。
αゾンビとΩゾンビか…聖書の「我はαでありΩである」という某唯一神の言葉を思い出すな。
まΩといっても、ゾンビ化した最後の一体、というわけでもなかろうが。

続き待ってますよん。
308セイレーン:2009/09/02(水) 22:26:39 ID:k1ivvFKrP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(107)

李儒は君主の権勢を守るために、恐ろしいウイルスを作った。
しかし頭のいい李儒はウイスルの危険性をきちんと理解し、君主と彼を支える天下万民に被害が及ばぬよう、厳格な安全管理ガイドラインを作った。
そして自分の死後研究を受け継ぐ者にも、それを守れと口を酸っぱくして注意した。
しかし、守られなかった。
李儒は小さな間違いに備え、小規模なウイルス漏洩時の対策をも残した。
大規模な感染の対策は残さなかった。大規模になってしまったらもう打つ手はないと、李儒は理解していたから。
今起こっているのは、その大規模な感染なのだ。
「対策が、ない・・・だと?」
曹操は絶句した。
ウイルスを作った許攸は、その危険性をよく知らなかった。
その許攸が知識を得た元の本こそが、生きる道を探す最後の綱だった。
が、残酷なことに、その本に今使える対策は記されていなかった。
今回ばかりは、曹操も動揺を隠せなかった。
動揺は部屋中に広がっていき、武将たちは目を白黒させてうろたえ、文官たちは悲痛な表情で目頭を押さえた。
曹操ははっとそれに気付き、拳を机にたたきつけて呼びかけた。
「静まれ、騒いだとてどうにもならぬ!!
本になければ、道は己の手で切り開けば良い。
我々は先人の知恵のみで生きているのではない。己の知勇をもって苦境を脱するは、いつもの事ではないか!」
曹操の言葉に、広間にいた将たちはどうにか我に返った。
道がないなら切り開け、それは乱世においてよくある事だ。
そう思えば、まだ生きる道はある。
ほっとした曹操の隣で、袁紹が不気味に低い声でつぶやいた。
「・・・が、その前に一つやる事がある。」
袁紹の吹雪のような怒りの視線は、許攸に向いていた。
309セイレーン:2009/09/02(水) 22:28:27 ID:k1ivvFKrP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(108)

袁紹はにわかにスクッと立ち上がり、壇上から下りていった。
「とにかくこれで、許攸が本の注意書きすら守らず、危険な兵器をでたらめに使用してこの危機を招いた事が分かった。
わしを裏切って我が軍を陥れた事も罪だが、これは桁違いの大罪だ。
この様子では、どちらの軍に使おうと遅かれ早かれ天下に危機を招いたであろう。
我らが生き延びるにしろここで死ぬにしろ、貴様だけは許さん!!」
袁紹は恐ろしいほどしっかりした足取りで、じりじりと許攸に歩み寄った。
「ひ、ひいぃ!」
許攸はすでに、後ずさりを始めていた。
しかし少しもいかないうちに、許攸の背中にどん、と何かが当たった。
恐る恐る振り返ると、片目のない顔がそこにあった。
「城からも出られぬのに、どこに逃げる気だ?」
そこにいたのは夏侯惇だった。
たちまち許攸の体めがけて、四方八方から手が伸びてくる。あたかもゾンビが人を捕らえるように、武将たちの手が恐ろしい力で許攸を引き倒した。
許攸は必死で謝った。
「も、申し訳ありません!
こんなに危険なものだとは、思わなかったんです!!
すみません、本当にごめんなさい、かか必ず償ってみせますから、どうか命だけは・・・。」
「見苦しいぞ、許攸。」
袁紹はにっこり微笑んで見せた。
「分からぬか・・・生きる道を知らぬ貴様に、もう生かしておく価値はないのだ。
それに、わしも曹操もここで死ぬ気はない。
我々が生き残ってこのできごとが世に伝わった時、貴様のような男がのうのうと助かっていてはならぬのだ。
罪には、それにふさわしい罰を・・・頭の良い貴様なら、分かるな?」
袁紹の整った微笑みは、今まさに落ちてこようとする美しいつららのきらめきだった。
袁紹のきれいな指が、蛇のように許攸のほおを這った。
310セイレーン:2009/09/02(水) 22:32:34 ID:k1ivvFKrP
三国志が分からなくても、オリジナル的なものとして読めば、
だいたいの人物関係は分かるように書いてるつもりです。

あと、横山光輝マンガでは官渡の戦いが省略されて2コマで済まされてるので、
なら自分で書いてやるわ!という感もあったりします。
311新人さん:2009/09/03(木) 02:38:04 ID:r1hfjh4wO
重大なミスを発見したので修正
>>305
ケビン「彼らの作戦目標はアルファゾンビの観測、およびオメガゾンビの発見・観測にある」
脳内変換お願いします。。。

三国志苦手な方は漫画の龍狼伝読んでみては?
とんでも漫画ですが、三国志の世界が好きになれます^^ノ
312本当にあった怖い名無し:2009/09/04(金) 11:06:05 ID:Bvxskor1i
三国志のNGにしてやっと読みやすくなったわ‥ 他の方の作品探すのが大変だ
313本当にあった怖い名無し:2009/09/04(金) 13:42:48 ID:UJWfiuCA0
三国志好きとしてはwktkが止まらないんだが、
俺の田豊はいつでるのかね?

314セイレーン:2009/09/04(金) 23:22:19 ID:ZlpGrd/LP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(109)

袁紹は、そばにいた忠臣に声をかけた。
「郭図、許攸のついた嘘を数えよ。」
「はい、お任せください!」
待ってましたとばかりに、郭図が許攸の手を取った。
そして、今まさに人をかまどに放り込もうとする悪魔のような笑みを浮かべて、品定めするように許攸の指をなぞった。
「ではこれから、切り落とす指の数を数えたいと思います。
まず一本、私のせいじゃありません。これはとんでもない、この惨禍は間違いなくあなたのせいですね。
二本目、このウイルスを作ったのは私じゃありません。これが嘘、あなたは開発者ではありませんが、今回使ったウイルスはあなたが作ったものでしょう。
三本目、私はただこの本に従っただけ。注意書きすら守らない人が、よく言いますね。
四本目、この惨禍の原因はこの本を著した者にある。・・・著者はきちんと安全管理に気をつけて、惨禍を起こさぬようにしていました。
最後に、お探しの生きる道もその本の中にあるに違いありません。本当に残念です、ありませんでした。」
狙撃手のように一つ一つの失言を逃さず突いて、郭図は罪状を宣言した。
その記憶力たるや、背筋に寒気が走るほどだ。
郭図はうっとりとした表情で、許攸の手を持ち上げて言った。
「さて、切り落とす指は五本ですが、私は武器を持てません。
張郃殿、高覧殿、殿への忠誠を見せるチャンスですよ!」
「言われなくとも!」
怒りで目をギラギラさせながら、高覧が勢いよく剣を抜いた。
「てめえのせいで、おれが育ててきた部下たちがほとんど死んじまった!!
本当は死んだ部下の数だけてめえを切り刻みたいところだが、今殺しちまう訳にいかないんでな。覚悟しな!!」
高覧が力任せに許攸の手をつかみ、指を一本ずつ切り取った。
「ぶぎゃあああ!!!」
城を揺るがすばかりの悲鳴とともに、許攸の悪事に染まった指が落ちた。
315セイレーン:2009/09/04(金) 23:24:54 ID:ZlpGrd/LP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(110)

「さて、これで最後だ。
許攸を城壁に連れて行け。」
曹操が命じると、親衛隊の許褚が許攸の首根っこを掴み上げた。
許攸は片手を血で真っ赤に染め、痛みに縛られて抵抗もできなかった。もっとも、抵抗しても仕方ない状況ではあるが。
許攸は満足に息もできぬ痛みに苦しみながら、それでもなぜ自分が悪いのか分からなかった。
(な、なぜだ・・・どこで間違えたというのだ・・・!?)
あの本を手に入れた時は、運が巡ってきたと思った。
古本屋に押し付けられてしぶしぶ読んだ本には、素晴らしい兵器の作り方が書いてあった。
さっそく安全管理に従った実験施設を作り、研究に打ち込んだ。
何年もかかってやっとウイスルができた時、許攸は狂喜した。
これがあれば、自分は誰よりも大きな戦果を上げて富と栄誉を手にできる。田豊や沮授など目ではない。自分が一番になれるのだ。
しかし、大乱徒は作れなかった。
適した素体が、手に入らなかったのだ。
次第に焦りを感じながら、ガイドライン通りに拘束したゾンビと向き合う毎日・・・。
ひらめきは突然起こった。
316セイレーン:2009/09/04(金) 23:26:33 ID:ZlpGrd/LP
ゾンビは人を襲う、人を襲うという事は敵に被害を与えることができる。
ゾンビに噛まれた者も感染してゾンビになる、つまり敵同士で殺し合いをさせ、自分は手を下さずに敵を皆殺しにできる。
これはすごい事だと思った。
大乱徒を作る事などない、このウイスルをばらまくだけで戦に勝てるのだ。
やってはいけない事にこの行為が挙げられているのには、気付いていた。
しかし許攸には、なぜやってはいけないのかが分からなかった。分かる冷静さを失っていた。こんなのろくて知能もないものが、手をつけられなくなる訳がない・・・最初からガイドライン通りにゾンビを管理していた許攸には、ゾンビの恐ろしさが分からなかった。
それに、先人の教えを破ってこそ革新的な技術が手に入るのではないか。
そうして許攸は、ウイルスを量産する方向に研究を切り替えた。資金が足りなかったので、甥が公金を横領している事を知ると、口止め料としてその一部を巻き上げた。
許攸には、自分が出世して富と栄誉をつかめる事なら何でも正しかった。
そしてそのためなら、何でも自分の都合のいいように考え、深く考える事はなかった。
それが最大の誤りだった。
317セイレーン:2009/09/04(金) 23:27:41 ID:ZlpGrd/LP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(111)
許攸の眼前に、城壁の端が迫ってきた。
許褚は乱暴に許攸を下ろした。
許攸が座らされた城壁のすぐ下では、すさまじい悪臭を放つゾンビが餌を求めて群がっていた。
許攸の姿を見て、捕らえようと一斉に上に手を伸ばす。
「おお、あやつらもおまえを待っておるようだ。
行って謝ってくるが良い。」
袁紹がわざとらしく言った。
「ふむ、こやつらの生みの親はおまえだ。
子が親を求めるのは当然のことであろう。」
曹操も嘲笑して言った。
許攸は恐ろしくて恐ろしくて、もう声も出なかった。
こんなはずではなかった。
許攸の考えでは、自分は今頃曹操軍の皆から賛辞を浴びながら、袁紹軍を打ち破った天才として胸を張って都に向かっていたはずだ。
そして帝に謁見して高い位につき、歴史に名を残す英雄になれたはずだ。
それなのに・・・。
今許攸の目の前では、曹操と袁紹がこれ以上ないくらい怒りを浮かべて並んでいる。
二人はゆっくりと顔を見合わせ、うなずいた。
次の瞬間、二人の足が勢い良く許攸の胸を蹴りつけた。
「この役立たず!!」
曹操と袁紹の声が、見事に重なった。
息の合った二人分の脚力をくらって、許攸の上体が大きくのけぞった。そしてそのまま支えを失い、後ろに転がるように落ちていった。
許攸の体はゾンビの腐った体にたたきつけられ、数体のゾンビがつぶれた。
そこにかぶさるように周りにいたゾンビが手を伸ばし、許攸の手足をもぎ、腹を裂いた。許攸はあっという間に、バラバラの肉片に成り果てた。
身に合わぬ野望に任せて生きた、愚かな男の最期だった。

318セイレーン:2009/09/04(金) 23:35:39 ID:ZlpGrd/LP
田豊は袁紹が河北に帰ってからであります。

今更遅いかもしれないが、簡単にキャラ解説。
袁紹軍、武将:張郃、高覧(曹操軍に袁紹より先に降伏)
    文官:審配、郭図(過激派)、逢紀(ダメ人間)、田豊(牢屋で留守番)、沮授(ゾンビ化して死亡)
曹操軍、武将:曹洪(弟)、曹仁、夏侯惇、夏侯淵(一族)、許褚(親衛隊)、李典(元文官)、徐晃、于禁
    文官:荀攸、楊修、許攸(袁紹軍から降伏)
319本当にあった怖い名無し:2009/09/05(土) 14:37:20 ID:5DVGR0W9O
私も三國志知らず、セイレーンさんの飛ばしてましたが、、、読んでみたらおもしろすぐるorz

頑張って!
320本当にあった怖い名無し:2009/09/05(土) 22:15:11 ID:mbwYned20
>>318
河北に帰れるのか・・・これは楽しみ!
321セイレーン:2009/09/06(日) 18:38:57 ID:sW7CZb0NP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(112)

許攸がゾンビに八つ裂きにされるところを、皆城壁の上から息をのんで見ていた。
「・・・仕方ない、あいつはそれだけの事をやったんだ。
当然の死に方だ。」
夏侯淵がつぶやいた。
「身内が犯した罪の責任も取れず、君主を裏切って恩人を皆殺しか・・・これほど腐った男はそうはおるまい。
生きながら地獄に落ちるとは、このことか。」
曹仁もつぶやいた。
少し離れて見ていた荀攸も、はーっとため息をついてこぼした。
「袁紹も不運なものじゃ、あのような男にだけは仕えられたくないわい。
思えば、我が軍にあんなのがいなくて本当に良かった。」
それを聞いた楊修が、ちょいちょいと荀攸のそでを引っ張った。
「ええ、でも・・・あれを見てください。」
楊修の視線の先には、袁紹軍の文官たちが並んでいた。
そして楊修の言わんとする事に気付いたとたん、恐怖で体が固まった。
「ねえ荀攸殿、思いません?
確かに許攸も相当イカれた男でしたが、郭図もあれはあれでなかなかにヤバい人物でございますね。
というか、袁紹軍文官の皆様、全体的に・・・。」
許攸が引き裂かれる光景を、審配と逢紀はいい気味だというように笑って見ていた。
状況が状況だけに、これはまだ分かる。
しかし郭図の表情は・・・まさに、喜悦。
人が死ぬところを見てこんな顔をするのは、明らかに尋常ではない。
それでも郭図だけがとびぬけて異常とはいえないのが怖いところだ。審配もどう見ても普通とは言い難いし、逢紀は許攸に似た言動がたびたび目につく。
「袁紹殿は・・・ヤバい文官を集めるフェロモンでも出してるんでしょうか?」
楊修の言うことを話半分に聞きながら、荀攸は嫌な予感を覚えた。
許攸という共通の敵を失った今、彼らは素直に協力してくれるものか・・・。
正念場はここからだ、荀攸は今一度気を引き締めた。
322セイレーン:2009/09/06(日) 18:41:05 ID:sW7CZb0NP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(113)

許攸の体が原形を失うと、曹操はふーっと大きく息を吐いた。
「これで犯人は始末した。
しかし・・・おれたちにはまだ、考えねばならぬ事がある。
これだけのゾンビに囲まれた城から、いかにして我々が飢えぬうちに脱出するかだ!」
曹操は改めて城壁から外を見回した。
腐った死体どもは城壁を厚く取り囲んで、皆一様に中にいる人間を求めている。ただ人のいる方向に行こうとして、アリの這い出る隙間もないほど密集している。
しかも、全方向がそんな状態だ。
脱出しようと門を開くや否や、ゾンビは壁のように城内に押し入ってくるだろう。
とても押し返せる数ではない。
地に足をつけての脱出は、どう考えても無理そうだ。
しかも官渡城にはもう食糧がない。今日の分で全部だ。
兵が少数なら、城内の民から食料を徴収すればいくらかはもつ。しかし官渡城はそれほど大きな城ではないため、民が少なく食糧の備蓄もないに等しい。
曹操軍の5万の兵でも、この城の民より多いのだ。
「そうですな、それに・・・我々は一刻も早くここを出て、都を守らねばなりませぬ。」
荀攸はそう言って、遠くを眺めた。
ゾンビの多くはこの城に集まっている。しかし、遠くを見るとこの城とは別の方向に歩いていくゾンビがちらほら見える。
そいつらが向かう先は、ここ以外の人が住んでいるところだ。
「我々は一刻も早く、外に住む者にこれを伝えねばなりません。
死体が動いて人を食うなど、常識では考えられぬ事。
我々が伝えなければ、何も知らぬ者はすぐさま死者の牙にかかり、またたく間に感染が拡大するでしょう。
感染が都に及ぶ前にどうにかしなければ、手遅れになってしまいましょう。」
それを聞いたとたん、袁紹の顔が引きつった。
「都だと・・・それでは、帝の命が・・・!!」
今、漢帝国の都は許昌に置かれている。許昌はこの官渡城からそれほど遠くない場所だ。
いくらゾンビがのろいとはいえ、何日も手を打てずにいたら・・・。
曹操は苦々しい顔で、唇を噛んだ。
323セイレーン:2009/09/06(日) 18:43:04 ID:sW7CZb0NP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(114)

早く脱出しなければならないのは分かっている、しかし・・・いくら考えても簡単に脱出の方法が見つかる状況ではない。
荀攸は苛立っている将たちに、一時休憩を勧めた。
「皆疲れてきたようですし、ここで一時中断といたしましょう。
少し頭を休ませてから、再び考えた方がようございます。」
それを聞いて、武将たちは一斉に力が抜けて肩を落とした。
文官たちですら完全に理解したとは言い難いこの状況を、武将の頭で把握するには少し時間が必要だろう。きちんと状況を理解してからでないと、まともな作戦は立てられない。
武将たちが休みに行ってしまうと、荀攸は小声で曹操に声をかけた。
「皆が休んでいる間に、私は彼の考えを聞いて参ります。
この状況、私の頭では少々手に余りますので。」
「そうか・・・あやつに心配をかけたくはなかったが、止むを得ぬ。」
曹操の許可が下りると、荀攸は急ぎ足で彼の横たわる部屋に向かった。

彼というだけで曹操軍の皆に通じる、最終兵器とも言える軍師がいた。
通常の兵器として使えないのは、彼が病弱であまり多くの仕事をさせることができないからで、現に今も彼は体調を崩して寝込んでいる。
しかしその才能は人材豊富な曹操軍の中でも突出しており、荀攸のさらに上を行くほどだ。
荀攸は彼の部屋に入り、寝台に横たわる彼に声をかけた。
「郭嘉よ・・・どうか力を貸してくれ。」
それを聞くと、彼は・・・郭嘉は頭をもたげて荀攸の方を向いた。
その澄んだ瞳を見たとたん、荀攸は天からの光を見た気がした。
荀攸は、彼に今の状況を説明した。
郭嘉に無理をかけたくなくて今までは黙っていたが、郭嘉も城の異常な雰囲気を察し、すでに心の準備ができていたようだ。どうやって逃げれば良いかと問うと、郭嘉は笑ってさらりと答えた。
「袁紹がこの城に侵入しようとしたのと、同じことです。」
荀攸は、目からうろこが落ちた思いだった。
324セイレーン:2009/09/06(日) 18:44:58 ID:sW7CZb0NP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(115)

今この城は周りをすっかりゾンビに取り囲まれており、地上からの脱出は絶望的だ。
しかし、地上を歩かなくても脱出の手はある。
袁紹はこの戦いの最中、どうにかして官渡城に侵入しようとモグラ作戦を使ってきた。
つまり、地下にトンネルを掘ってきたのである。
地上にどんな障害物があっても、その下はどこも土だけである。袁紹はそれに目をつけ、地下を進むことで地上のあらゆる防備を無効化し、城に侵入しようとした。
実際、これはかつて袁紹が宿敵の公孫瓚を滅ぼすのに使った手だ。
公孫瓚は幾重にも城壁を巡らし、多数の櫓を立てた易京楼という難攻不落の要塞に立てこもった。しかし、櫓の兵からも見えず壁もない地下を掘り進む袁紹軍の前に、あえなく侵入されて自害するはめになった。
今回は幸い、袁紹が地下道を掘っている事が途中で分かった。
曹操は城の前面に溝を掘って水を流し込み、袁紹軍の掘ったトンネルを水没させて対処したのだ。

「・・・という訳で、トンネルを掘ってゾンビの少ないところに出るのが上策かと。
時は一刻を争います、武将の方々は早速兵たちに作業にかからせてください。」
再び集まった将たちの前で荀攸が策を発表すると、将たちはおおーっと歓声をあげた。
「分かった、すぐ掘らせよう!
おいみんな、行こうぜ。」
方法が分かったなら、後はやるだけだ。夏侯淵は嬉々として広間から出て行こうとした。
すると、荀攸は夏侯淵を引き止めて言った。
「兵たちも何も食わずに作業をするのは辛かろう。
穴を掘る兵たちには、軍馬や荷運び用の牛を解体して食わせてあげなさい。どうせ一緒に脱出はできぬ、ゾンビに食われるよりは我々が食べた方が牛馬も浮かばれよう。」
「おう、分かった!
そいつは士気も上がりそうだ。」
とりあえず脱出の方法は分かった、後はそれがうまくいくよう祈るだけだ。
荀攸はほっとして、武将たちの後姿を見ていた。
325セイレーン:2009/09/06(日) 18:56:00 ID:sW7CZb0NP
ゾンビ官渡参照 袁紹VS公孫瓚の戦いについて
公孫瓚は袁紹のもっと北にいた人です。
曹操、劉備、呂布とかが河南でドンパチやってる間、ずっとこの二人は河北で戦ってました。

袁紹軍:物資、人員とも豊富で文官が多い。
公孫瓚軍:数では袁紹軍に劣る、武力に任せて突き進む、白馬で揃えた騎馬隊(白馬陣)が自慢。

公孫瓚軍が白馬陣で突進→袁紹軍が弩で掃射→白馬陣あぼーん
公孫瓚が易京楼に籠城→敵を城内に入れないために公孫瓚は自軍の兵を見捨てる→兵が大量に袁紹に降伏
袁紹軍が地下を掘って易京楼に侵入→公孫瓚は逃げ道もなく、妻子を殺して自害した(終)

上(地上)がだめなら下(地下)を見ろ!
袁紹様の神軍略にひれ伏せ!
326本当にあった怖い名無し:2009/09/06(日) 21:20:58 ID:gwrL69sl0
・・・袁紹が考えついた策とは思えんがw
327本当にあった怖い名無し:2009/09/08(火) 14:40:58 ID:ORbKTKInO
328本当にあった怖い名無し:2009/09/09(水) 11:03:14 ID:HowOP6fb0
続きを・・・続きを早く・・・
329セイレーン:2009/09/09(水) 22:37:00 ID:cqjPhkwuP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(116)

人の姿がまばらになった広間の片隅で、袁紹軍の文官たちは何やらひそひそと相談していた。
「脱出の方法は分かりました。
さあ、勝負はここからですよ。」
郭図の言葉には、力がこもっていた。
審配もいつになく真剣な顔でうなずいた。
「分かってる・・・脱出後の殿のお立場を、どうするかだな。
殿はこの城に入るために降伏を宣言してしまったから、今は曹操の配下だ。命がかかってたから、これは仕方ない。
だが、今は両軍が負けそうな状況。
共闘を口実に、うまく話を持っていけば、殿を再び君主に戻せるかもしれん!」
袁紹を最も大切に思う郭図と審配にとって、袁紹がこのまま曹操の配下になってしまうのは耐え難い屈辱だった。
生きられる可能性が出てきたなら、袁紹の立場を元に戻したい・・・そう思った。
元より二人は、袁紹の命令意外聞きたくないくらい袁紹至上主義者なのだ。
曹操の命令を聞くなど、とんでもない事だ。
さらに、袁紹を河北の君主に戻す事にはもう一つ意味があった。
いまいちやる気のない逢紀に、郭図がささやいた。
「いいですか、曹操に従うという事は、都に連れて行かれるという事ですよ。
多数のゾンビがうごめく河南に、ずっといろという事ですよ。
でも殿を独立した君主に戻せば、私たちは殿について河北に帰れます!
昨日審配が言ったように、まだ河北にはゾンビが極めて少ないはず。そして李儒が対策に記したように、ゾンビを防ぐのに大河で隔てるは有効・・・。
つまり、殿を君主に戻して即行で河北に帰って手を打てば、最悪河南が滅んでしまっても袁家と我々は生き残れます。」
「そ、そうか、なるほど!!」
逢紀の目の色が変わった。
審配と郭図は顔を見合わせてうなずき、がっしりと手を取り合った。
「必ずや、殿を再び王座に!!」
330セイレーン:2009/09/09(水) 22:39:04 ID:cqjPhkwuP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(117)

武官が皆出て行ってしまうと、審配はにわかに荀攸に声をかけた。
「少し今後の事について話し合いたいのだが、良いかな?」
審配の目は、誰が見ても分かるほどメラメラと燃え盛っていた。
しかし、荀攸は落ち着いて応じた。
「良いでしょう、まあ腰掛けなされ。
楊修もそこに座りなさい。」
すかさず楊修を隣に座らせ、囲まれない位置をとっておく。
荀攸も、こうなることは予想していた。昨日の夜、袁紹を傷つけようとした者に彼らがとった行動から、容易に想像がついた。
正面に向き合うように座って、審配はさっそく口上を述べた。
「さて、これで脱出の算段はついた。
して、これは誰のおかげかな?
我が殿が武勇をふるってここにたどり着き、ゾンビについて我が陣で学んだことをことごとく教えたからではありませぬか。
その功をもって、殿の降伏は帳消しにしていただきたい。」
「・・・ほう、これは大層な事を申されますな。」
荀攸は苦笑した。
これは想定の範囲内だ。
「殿が降伏したのは命の危険に迫られての事、本心からでない事はお分かりでしょう。
そして殿が意地になって討死していたら、あなた方も解決の糸口をつかめず全滅していた事は火を見るより明らか。
あなた方が生きていられる理由は、殿の度が過ぎた寛大さに他ならぬ。」
荀攸は、おかしくて笑いそうになるのをこらえた。
袁紹が果たして今、そんな傲慢な事を考えているだろうか。
(本人がいないのをいい事に、君主の心まで言いたい放題か・・・大した忠誠じゃ。)
昨日の宴席で袁紹が見せた、穏やかな微笑み。今日のこの広間で見せた、曹操を頼りにして信じきった眼差し。この臣下どもは君主の変化に気付かないのだろうか。
それをわざわざ切り離していい結果が出るものか・・・荀攸は挑発するように審配をにらみつけた。
壮烈な舌戦の火蓋が、切って落とされた。
331本当にあった怖い名無し:2009/09/10(木) 00:46:49 ID:PyBo7rqb0
キタ−−−−−!
今後の展開が楽しみです。
「人類は共通の敵を持つと共闘する」が覆されるエピソードをワクテカしながら待っております。
332本当にあった怖い名無し:2009/09/10(木) 09:58:53 ID:THqgEiQ60
もう関係ないだろうから書くけど、
ゾンビは張角の妖術が関係してると思ってたw
333本当にあった怖い名無し:2009/09/10(木) 23:24:06 ID:aQtMQpDI0
俺は孔明の罠だと思った
334本当にあった怖い名無し:2009/09/11(金) 20:37:14 ID:OR4g75Zh0
続き....
読みたい
335empty ◆M21AkfQGck :2009/09/12(土) 01:36:06 ID:BwvjrtG20
うわーい絶賛投下し難いけど土日あたりに投下する予定ですと予告しておきます。
セイレーンさんペース速っ!
時間かかった割にはいつもの如く長くないのであしからず…
336絶体絶命ゾンビ:2009/09/12(土) 05:21:15 ID:ZPSuconR0
俺のこと、覚えてるかな
337本当にあった怖い名無し:2009/09/12(土) 07:32:14 ID:ENkqQOt80
!!!!
懐かしい方
338セイレーン:2009/09/12(土) 22:25:51 ID:Hup7Bym5P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(118)

「正直に言って、それはできませんな。
功があるなら、我が軍の中で高い位につけましょう。」
荀攸ははっきりと、審配の提言を拒絶した。
とたんに、郭図がぎりっと唇を噛む。
その時の郭図の顔をまともに見てしまった楊修は、思わず身を引いてしまった。荀攸はチッと小さく舌打ちした。
(いかんな・・・郭図相手に、楊修では気圧されてしまう。
少し厳しいが、わしが二人とも相手にするか。)
素早く判断すると、荀攸は楊修に反対側の隣に移るよう促した。
「これ、楊修よ。少しどいてくれぬかな。
わしは少し目がしょぼしょぼしてのう、明るい方が良いのじゃ。」
それを聞くと、楊修ははっと我に返って逢紀の正面に移った。
楊修は冷静さを保ってさえいれば、ふっかけられても目的を見失わない男である。郭図や審配と違ってそれほど恐ろしくない逢紀に当て、逢紀の動きだけ封じてもらえば良い。
荀攸が楊修の席を替える間に、郭図と審配も視線を交わして作戦を確認した。
(私が口火を切りますから、審配はそのままマシンガン説法につなげてください。
割り込まれたら私が助けます。
相手にしゃべるスキを与えず、たたき伏せればこちらの勝ちです!)
(了解、防御は任せたぞ郭図!)
楊修が腰を下ろすやいなや、郭図が口を開いた。
「そうですか、ではあなたは、命の恩人に仇で返すと言われるのですね?
殿が今まで河北を平定してきたのは、曹操に捧げるためなどではない!!」
「その通りだ!!
貴公の行為は例えて言えば、飢えたる時に食物を恵んでくれた者に対して、雇ってこき使ってやると言っているのと同じだぞ!
いや恩を知らぬ人間を人間とは呼ばぬ、畜生でも恩は忘れぬというのに!
そのような獣以下の輩に仕えてたまるか!!」
339セイレーン:2009/09/12(土) 22:27:21 ID:Hup7Bym5P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(119)

審配のマシンガン説法が火を吹いた。
相手にしゃべるスキを与えず、しかも反撃できないように思わず言葉に詰まるような罵声を混ぜて攻撃してくる。
元より理論で勝とうなどとは思っていない、ただ相手を打ちのめすだけの舌だ。
相手が一つの話を考えている間にも、審配はしゃべり続けて話題を細かく切り替えてしまう。
そのため相手は話についていけず混乱してしまい、不本意でもうんと言わされてしまうのだ。方法はどうでもいいからとりあえず勝てばいい、恐ろしく力づくな戦法だ。
「ほうら、己の内にやましい部分があるから何も言えぬのだ!
我らは貴公らとは違う、己の内に忠義あればこそ・・・。」
「黙らっしゃい!!!」
審配の息継ぎを狙って、荀攸が割り込んだ。
荀攸の渾身の大声に、審配が一瞬びくりとひるむ。
その一瞬を狙って、今度は荀攸がしゃべり出した。
「おぬしらは袁紹への忠義で物事を語りおるが、袁紹も元を正せば我らが主と同じく漢朝の臣である!
おぬしらは帝を誰が守っているか知らぬのか?我らが主、曹丞相であろう!
おぬしらの行為は、袁紹の帝への忠誠を失わせ、逆賊となすものである!」
「それは少しおかしいですね。」
帝を擁している曹操軍のみが使える、帝を盾にした荀攸の話をも郭図は止めた。
そして嘲笑するように顔を歪めて、すぐさま反撃に移る。
「あなた方が帝を守っているですと、笑わせる。
帝を力で押さえつけていいように操っているくせに、逆賊はどちらでしょうね!?」
「ああ決まっている、曹操こそが逆賊だ!
知っているぞ、少し前貴公らが朝廷の重臣に対して行った蛮行を。
帝の信頼も厚い車騎将軍の董承殿をはじめ、漢朝の忠臣たちを殺しまくったらしいな!なぜ董承殿が貴公らを殺そうとしたか分かるか、帝が曹操を疎んでいるからだ!
それを貴公らが勝手に・・・。」
郭図は見事なまでの滑らかさで審配のマシンガンにつないだ。
この二人の組み合わせは思った以上に厄介だ、荀攸は思わず拳に力をこめた。
340セイレーン:2009/09/12(土) 22:29:32 ID:Hup7Bym5P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(120)

袁紹軍の文官たちに舌戦を挑まれた時、荀攸にはそれなりに勝算があった。
郭図と審配はキレやすい過激派、逢紀はただ保身に走る凡人だ。
1対1なら、誰と戦っても荀攸の圧勝だろう。
しかし郭図と審配がここまで強力なタッグを組むとは、計算外だった。
郭図が口火を切って、審配のマシンガンに相手が割り込めないほどスムーズにつなぐ。マシンガンが中断されたら郭図がまた話を取り戻す、しかも審配がマシンガンを繰り出しやすい話題を選んで。
そのうえ、郭図はこちらの言葉の中でつけ込みやすい所を狙撃手のように的確に狙ってくる。さっきの帝の話もそうだった。
漢帝国は群雄割拠の状態になったとはいえ、まだ帝はいる。
曹操軍はその帝を保護しているため、官軍を名乗って勅命を出す事ができる。
この官軍とか勅命とかいうのは形式上の問題だが、帝に忠誠を誓うと言っている連中には非常に効果がある。南にいて時々かみついてくる劉備などは特によく反応するので、勅命を使っていいように引っかき回してやれる。
しかし、郭図と審配には帝の権威すら無効だった。
そのうえ、以前あった朝廷とのいさかいを持ち出されて反撃されてしまった。
帝が曹操を良く思わないのは事実だ。
一昨年、朝廷の重臣たちが曹操を暗殺しようとした事件があった。
曹操はその中心となっていた董承たちを一族郎党皆殺しにしたが、本当は帝が董承に曹操を殺してくれと依頼していたのだ。
しかも、帝の尊い血で書いた密書で。
曹操はすぐさま密書を焼き捨て、口封じをしたが、曹操軍に多くの密偵を送り込んでいた袁紹軍には事実が筒抜けだった。
その袁紹軍の謀臣相手に帝の話を持ち出したのが、間違いだったかもしれない。
荀攸はひしひしと劣勢を感じた。
(これは・・・一時中断して立て直した方が良い。)
それに、上手に勝とうとしたら明らかに戦力が足りない。
荀攸はしゃべり続ける審配の前で、にわかに立ち上がった。
341セイレーン:2009/09/12(土) 22:32:23 ID:Hup7Bym5P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(121)

「やれやれ、喉が渇いてしまったわい!
ここらで一休みせぬか。」
それを聞くと、袁紹軍の文官たちはすぐに黙って顔を見合わせた。
「構うな、私はまだやれる・・・。」
「いえ、休みましょう。無理はいけません。」
続けたがる審配を遮って、郭図が休憩の申し出に応じた。
よく見れば、審配はすでに肩で息をしている。
いくら舌戦とはいえ、あれほどすさまじいマシンガンをいつまでも撃っていられる訳ではない。銃身が真っ赤に焼けてしまうように、審配のただでさえ乏しいスタミナが尽きてしまったら、もう袁紹軍に勝機はないだろう。
郭図としても、一時休ませたい頃合だったのかもしれない。
「少し、風に当たって来ますね。」
袁紹軍の文官たちは、連れ立って広間から出て行った。
そのスキに、荀攸は楊修に耳打ちした。
「この勝負、我々だけではちと危うい。
彼を、ここへ!」
「ええっ彼を!」
驚いている楊修に、荀攸は早口でささやいた。
「理に従わぬ戦いとはいえ、あの横殴りの雨のような説法はちと脅威じゃ。審配のスタミナ切れを狙うのも手だが、その前に押し切られたら元も子もない。
あれに対抗するには、わしらだけでは正直きつかろう。
彼か、どうしてもだめなら李典をここへ連れて来い!」
楊修は無言でうなずき、郭嘉の部屋へ走った。
荀攸はとうとう、最終兵器を繰り出す事に決めた。
曹操軍には他にも優秀な軍師がいるが、都を空にする訳にいかないので連れてきてはいなかった。この状況で舌戦に加えられるのは、郭嘉か、元文官の李典だけである。
かくして袁紹軍の文官たちが喉を潤して戻ってくると、見慣れない男が一人、前に座っていた。
彼は寝起きで乱れた髪をかき上げ、軽く頭を下げた。
「初めまして、私は郭嘉、字は奉孝と申します。
いざ、お相手しましょう。」
342empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 00:59:52 ID:Ped34tie0
さてお久しぶりに。
目的が明らかになる、とか言ってましたが次回に持越しです。
相変らず稚拙ですが平にご容赦を。


「えー…と、ちょっと話を聞いてくれる気とか…」
「無い」
そうですか。
この状況を打開しないと皆死にかねない。
ここにずっと居たってことは、アレとはあまり会ってないということなのだろうか。
だから、判断がつかないとか。
…いや、でも、電話で話したときは判断がついていたような気もする。
思い出せ、あの会話を。
――こっちも人間だから安心して。
うん、間違いない。判断はついている。
とすれば、上手く説得して…。
「あー、えっと、その、自分達はアレじゃないですよ?」
「分かってる」
そうですか…。
じゃあ、どうしてこんなことをされているんだろう。
「それじゃあ、何でこんなことを…」
「そっちは二人こっちは一人、一度に来られたら勝ち目が無い」
「そんなことしませんって」
「信用できると思う? どうして何の目的でここに来た?」
「いや、あなたが電話で――」
「電話?」
首筋から感触が消えた。
鏡を見ると、ははーん、といった感じの目と視線が合った。
…あ、後から。
343empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:00:30 ID:Ped34tie0
「伏せろっ!」
言われるまでも無い。
鏡に槍を構えて走ってくる人が見えたらかわそうとするのは当然です。
――ひゅん
頭の上を何かが通り抜け、それがロッカーに当たる。がしゃ、と騒がしい音がした。
伏せたまま顔を上げる。
今まさに、友人が槍を突き出すところだった。
「ちょ、落ち着いて!」
女の人が逃げ回りながら叫ぶが、友人は止まらない。
脅されていた自分を救おうと、奇声を上げながら槍を振り回し孤軍奮闘している。
…それは一人相撲なのだが。
「動くな」
壁際に追い詰めた女の人の首筋に、槍の先端、包丁の刃をぴたりと突きつけた友人が言う。
本人としては脅しているつもりなのか、低い声だった。
これが震えていなければ良かったろうに。
「どうして脅していた? 目的は? 素性は? 何でここに居る?」
さっきとはまるっきり逆だ。
「え、えっと、話を、」
「黙れ」
うわ。
「えっと、アレ、じゃないよ?」
「見ればわかる。質問にだけ答えろ。何故脅した? 目的と素性とここに居る理由を言え」
少しだけ、包丁が女の人に近づく。
目が合った。助けて、と訴えている。
―――仕方ない。
「大丈夫、その人電話の人だよ」
「…本当に?」
「電話、って単語に反応したからこの人だと思う。それに、これだけ騒いでも誰も来ない。この人しかここには居ないんでしょ」
包丁とロッカーがぶつかってがしゃがしゃ鳴っていた上、友人がこれでもかと奇声を上げていた。
人が多く騒がしい時ならそこまで響かないかもしれないけど、誰も居ない今となっては施設の隅々に響くだろう。
そして、もし仲間が居るのなら寄ってくるはずだ。
…それが仲間じゃなくても、だけど。
344empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:02:17 ID:Ped34tie0
「落ち着いた?」
「うん」
「電話の相手ってわからなかったから襲われたみたい」
「…まぁ、この状況じゃね」
ほぅ、と友人が溜め息をついた。
そこに、
「え、えっと、納得してもらえたんなら、そろそろ下ろして欲しいんだけど…」
件の電話の相手が、槍を指差しながら割り込んだ。

「…あ、食料とかは?」
「持ってきてますよ」
ナップザックを下ろし、ロッカーに立てかけた。ようやく落ち着けそうだ。
友人はさっきの運動で疲れたのか、部屋の壁際に備え付けられているベンチに座っている。
若干魂が抜けているけど、まぁ仕方ない。
女の人は躊躇無く目の前で着替えている。よくよく考えればさっきは裸にバスタオルのみという格好だったのだけど、よくその格好で機敏に動けたものだ。
「…というか、羞恥心とか無いんですか?」
ぼけっと眺めてる自分もアレだけど。
一応言っておくと、背を向けている間に何か場合のためにそちらの方向を警戒しているに過ぎない。
目を逸らしている間に襲われたりする「お約束」のために用心しているというわけだ。
映画なんかと混同するな、と言われるかもしれないが、既に映画に入り込んだような世界に居る身としてはきっちり反論したい。
345empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:03:15 ID:Ped34tie0
「いや、こんな状況で羞恥心とか言ってる場合じゃないでしょ」
そして、彼女はとことん物分りが良い様だった。
しゅるしゅると衣擦れの音を立てて服を着込みながら、
「別に欲情したければしてもいいよ? 女として見られてるってのはそれだけ魅力があるってことだし、こんな世界になったんじゃ娯楽も限られてくる。
 だから、やれる範囲での“面白いこと”や“新鮮なこと”はやって損は無いとおもうわけよ。精神が死なないためにも。ゾンビ映画は見る?」
首を縦に振る。
元はといえば友人に強制的に見せられたり、ガンシューにゾンビ物が多かったりするので知識として知っているのだが。
「アレなんか見ててわかるけど、どこかに篭城して内部を安全に使いやすくして、それで外から入られないように対策をした後は、ひたすら暇になるわけね。
 だから色々な娯楽に、例えばバスケットボールとかサイクリングとかゲームとかに手を出すの。毎日が繰り返しの生活を送ってたら飽きるでしょ? それをずっと続けてたら精神がダメになるから、新しいことに手を出してリフレッシュするってわけ」
「…はぁ」
「そういえば。ドーン・オブ・ザ・デッドにあったかしらね、そういったシーンが。直接的な表現で」
…そういったシーン?
「このまま篭城するのならそういったことも考えておきなさいな。初体験もしないまま死にたくないでしょ。お姉さんに欲情してもいいよ?」
そういうことですか。
だけど、これに関しては言わせて貰おう。
「その件に関しては大丈夫ですよ」
笑顔で。
「性欲無いんで」「二次元にしか興味が無いんで」
………。
後で口から魂を吐き出していた誰かが、タイミングを計ったように、というか明らかにタイミングを計って言葉をかぶせてきやがった。
それを聞いた女の人はというと、
「ふーん」
興味が無い様子でシャツを羽織っている。うっすらと透けて見える下着が眩しい。
そういえば、今の会話で気になったのだが、
「“お姉さん”って、自分達よりも年上なんですか?」
「そうじゃないの? …まぁどうでもいいけど」
346empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:04:05 ID:Ped34tie0
そういえば自分も気がついたら敬語だ。いや、これは、初対面の相手だったから使っていたのだけど、この短時間のうちに、敬語を使っていても違和感の無い相手として認識してしまったらしい。我ながら難儀な。

待合室に置かれていた、紙パックを押し出す式の自販機のガラスが叩き割られていた。
「ま、これでも飲んでくつろぎながら見て」
ガラスを叩き割ったに違いない犯人は、そこから抜き出したアクアブルガリアを押し付けてくる。冷蔵が聞いているらしく冷えているのだが、ああも盛大にガラスが叩き割られていては電気の無駄遣いというものだろう。
友人は、早くもストローを突き刺してすすっている。順応性の高い奴だ。
女の人はというと、待合室に置いてあるテレビにどこからか持ってきたビデオデッキを取り付けていた。説明書も無しに配線とかわかるんだろうか。
「よしよし、じゃあ再生するよー」
これまたどこからか持ってきたビデオを文字通りデッキに叩き込み、ボタンを押す。
すぐに再生が始まる。カラーで、中には人がプールで蠢いている映像。
これは――、
「監視カメラ?」
きゅきゅると早送りで進む映像を眺める。プールの天井の隅につけられている固定カメラらしく、人がかなり小さく見える。
監視カメラの記録は数秒ごとに切り替わるものとばかり思っていたのだが、そうではないらしい。
やがて目当ての場面についたのか、通常再生になった。
「…うん?」
友人が画面を食い入る様に見つめる。
347empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:04:56 ID:Ped34tie0
画面の中では、人が右往左往に走り回っていた。時折倒れる人やうずくまる人が出ている。
明らかに死んだと思える、プールに浮かんだ人もいた。
やがて縦横無尽に走っていた人々は、唯一の出口、更衣室へと殺到する。
そして再び早送り。
右下の時間表示を見るに、一時間少し経過した後。
倒れていた人やうずくまっていた人、プールに浮かんでいた人が動き始めた。
そのまま、割としっかりとした動きで更衣室へと入ってゆく。
「分かった?」
「さっぱり」
暴動か何かが起きたようにしか見えない。
そして、暴動が起きる理由もわからない。
「じゃあ、こっちね」
そういうと、別のビデオを取り出してデッキに叩き込んだ。次はエントランスの映像だった。
やはり早送りの後。
更衣室のある方から、水着の人々が駆け出してくる。
それをぽかんと見つめる受付嬢。
やがて、その後からやって来た、
「…なんだ、これ」
襲っている人々。
やはり水着だが、逃げ惑う人に時には集団で掴みかかっては、何かをして放り捨てる。
何割かは水着のまま施設の外へと走っていったが、残りは施設の他の場所へと走り出した。
何人かが、受付嬢にしがみ付いている。
人数が少ないから、何をしているのか動きがよくわかった。
「そう、噛み付いてる」
心を呼んだかのようなタイミング。
肉を引きちぎるでも無く、ただ噛み付いた人々は、どこかへと去っていった。受付嬢が首を抑え、その隙間から血が出ている。
友人がどこか感心したように言った。
「まるでゾンビだね」
348empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:05:43 ID:Ped34tie0
まさしく。
そして、この一連の動きは――。
と、再び早送り。
やはり一時間程過ぎた時。
カウンターに突っ伏していた受付嬢が起き上がった。首からの血は止まっている。
受付嬢はそのままカウンターを出ると、どこかへ歩いていってしまった。
そこで画面は暗転、ビデオが吐き出された。
「気づいたと思うけど」
ビデオを抜き取り、その辺に放り投げながら。
「私達を襲っているのは、コイツらよ」
「いやいやいやいや!」
声を荒げ、ついでに立ち上がって反論する。
だって、映像に映っていたのは人間だったのだ。
確かに人を襲っていたけど、それでも、人の形をしていたのだ。
「自分達が襲われたのは、人間じゃなかった。人の形をしてなかった!」
思い出すだけで吐き気に襲われる様な醜悪な姿かたち。
忘れたくても忘れられるものじゃない。
「そんなことはわかってる。私だって襲われたもの」
「だったら何でここに居る?」
友人が立ち上がり、警戒するように女の人を見やる。
「トイレに逃げ込んだのよ」
腕を組み、机においてあったオレンジジュースの紙パックをすすり。
「アイツら、トイレのドアをぶち破ろうとしてきたんだけどね。
 諦めたのか、出て行っちゃったのよ。後は気が抜けてそのまま気を失ってたから感染したのにも見つからなかったし」
349empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:07:45 ID:Ped34tie0
「感染?」
「そう呼んでるの。だって、ゾンビみたいでしょ? 噛まれたらアイツらになるなんて」
「それは、確かに…いや、そこじゃなくて、自分達が襲われたのは、」
「今気づいたんだけど、面白い一人称ね。自衛隊にでも入る気だったの?
 そして、私にもよくわからない。確かに私が見たのは、化け物としか言いようのないヤツだった。
 でも、こうして映像を見ると、映っているのは人型なの」
「…目に直接映るものと、何かを通して見たものとでは認識が違う?」
友人が同じように腕を組み、拳を唇に当てながら呟いた。
「恐らくはね。どんな原理でそうなるのかわからないし、解明もできないけど」
「だったら、声は」
「同じよ。私が聞いたのは、今思い返すだけで耳がどうにかなりそうな音の集合体。
 でも、録音されたのは――」
ズボンのポケットに入れていたプレイヤーを再生。この人は何でも持ってるな…。
『大丈夫ですか、助けに来ましたよ』
「――この通り、ちゃんととした日本語。
 どうしてこうなるのかはわからないけど、まぁその辺は専門家に任せるしかない」
そういって、プレイヤーをどこかへ全力投球。床にぶつかって跳ねる、硬質な音が聞こえた。
「………そういえば、あの日、人が噛まれてた」
「…あぁ、あの時は気にしてもなかったけど、今思い返せば」
だから追いかけてきたのか。仲間を増やすために。
これは、本格的にゾンビ映画の世界になってきたな…。
って、
「ま、待って。何かを間に挟んで接触した場合は普通に見聞きできるってことは、電話で話した段階だと、自分達が人間じゃない可能性もあったんじゃ」
「えぇ、まぁ、そうね。賭けだったの」
何て危ないことをする人なんだ。
呆然と見ていると、くすっと微笑んで。
「あの時は誰とでもいいから接触したかった。一人だったら寂しさに耐えられないだろうし。
 それに、アレらだったら逃げればよかったし」
「でも思いっきり見つかってるじゃないですか」
350empty ◆M21AkfQGck :2009/09/14(月) 01:13:04 ID:Ped34tie0
「それはまぁ、失策ね。プールで暇を潰しすぎたわ」
何と言うか…。
再び呆然と見る。もしも、自分達が本当にアレらだったら、この人はまず間違いなく感染していただろう。
そんな危うさを感じさせる人だった。
「とりあえず、今日はここに泊まるんでしょ? 夜間は危ないし。
 ラウンジに行こ。それから、明日以降の作戦会議」
「え、プールは?」
友人が愕然と言った。
そういえば、それに釣られて来たんだっけ。
「行きたければ行くといい、この施設に誰も居ないのは確認済み。
 入り口は電源切っとけばいいしね」
「おっしゃー、ちょっくら行ってくる!」
びすっ、と片手を上げて走り去ってゆく友人は、どこか輝いている風に見えた。
…水着は? もしや裸で泳ぐつもりなのか?


これが今回の分ですね。
…思ったより少し長かったかな。

とても読みにくいですがマジでご勘弁下さい。

次回予告としては、ひたすら作戦会議。やはりゾンビは出ません。
今度こそ終着点が。あと序盤で置き去りの包帯とかも少しだけ。

或いは、ちょっと気が変わって短いのを1つ…かな?
ゾンビ物にはよくある閉鎖的な空間でのパニックを。学校か遊園地か…。どっちにしようかな。
前の短いのみたいに部外者視点から淡々と、というのとはまた違います。今ので主人公2人とかヒロインとか場所とか描写をひたすら削ってるので普通に描写したのを…。

いずれにせよシルバー・ウィークに書いて投下という流れになりそうです。

ではまた。
351本当にあった怖い名無し:2009/09/14(月) 10:29:14 ID:5GInGM7z0
おお!!
352本当にあった怖い名無し:2009/09/14(月) 18:30:26 ID:W1jnLQEhO
ふむ・・・面白いな。
353本当にあった怖い名無し:2009/09/15(火) 22:58:20 ID:Tk5vO9Vr0
潜伏期間と、その間の行動が変ってるのか?
感染後、ある程度は普通に過ごしつつ次第に食人衝動を基にする異常言動(未感染者が逃げないようにするとか)が目立つようになり、やがては発症(ゾンビ化)というのが流れだったはず。
実際、主人公の弟は次第に言動が異常になりつつも発症まで噛みつかず、発症前後でもメールするだけの知能は有していだ。
まあ、何にせよ乙!
今後の展開を期待しております。
354empty ◆M21AkfQGck :2009/09/16(水) 00:06:14 ID:XwcBHxRv0
うわ、素直に嬉しいですこういう反応!
>>353については当然ながらネタバレになるので詳細は言えませんが…。
最初は普通のゾンビ小説を考えていたのですが、少し変わったのをやりたくなってあちこちいじったらこうなったわけです。
ごった煮にしてそれぞれの長所だけを抽出して組み合わせた、みたいな。
ただそれだとあまりに無敵すぎるので直接接触した場合の視覚異常及び聴覚異常という設定を付け加えました。

他の設定については物語の中で明かしていく予定ですが、当然ながら全部が明らかになるわけじゃありません。
終わったら裏設定まとめて公開、というのもありかな?

ちなみにこの小説のプレ版(今よりアクション強め)を知り合いに見せたところ「これは本当にゾンビなのか?」という意見が取れました。万歳。
355セイレーン:2009/09/16(水) 20:45:52 ID:T7uBaCX4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(122)

袁紹軍の文官たちは、思わず目を疑った。
誰かしら援軍が来るとは思っていた、しかし・・・これは病人ではないか。
白い単に包まれた不健康な青白い肌、今までずっと寝ていたのか髪は結ってもおらず乱れっ放しで、額に濡れた布を乗せていたのか前髪が少し濡れている。
目の下には薄いくまができ、唇にも血の気がない。
しかし、それでも背筋はしゃんと伸ばして、目には凛とした光が宿っていた。
「ふん、人材がなくて病人までかり出したか。
まあいい、さっきまでの通りたたき伏せるだけだ!」
審配は嘲笑したが、郭図は少しだけ背筋が寒くなった。
「ええ・・・そうですね、一気にやってしまいましょう。」
郭図は、念を押すようにささやいた。
郭図には分かる、さっき少し休ませて少しはましになったが、審配のほおはまだ紅潮したままだ。審配は少々興奮しすぎている。
審配は舌戦でマシンガン説法を始めると、徐々に自分の言葉に引きずられて興奮し、冷静さを失っていく。
あまり興奮しすぎると、自分でも何を言っているのか分からなくなる事がある。
又は、喉がつぶれて息もままならなくなって初めて疲労に気付く。
審配がそうなるのをできるだけ遅らせつつ、そうなる前に勝負を決めるのが郭図の役目だ。
しかし・・・審配はもうだいぶ自分に酔って感覚を失いつつある。
現に、目の前の相手が強いかもしれないという事が考えから抜けてしまっている。
いつもの審配ならば、気付くのに・・・。
(急がなければ・・・とにかく、早くたたき伏せないと!)
郭図はそう思いながら、郭嘉の正面に腰を下ろした。
逢紀はさっきと同じ楊修の前、審配は荀攸の前になる。郭嘉は病人にも関わらず中央に座っている、これはかなり手強そうだ。
しかし、殿を守るためには退く訳にいかない。
郭図は大丈夫だと自分に言い聞かせて、口火を切った。
356セイレーン:2009/09/16(水) 20:46:57 ID:T7uBaCX4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(123)

「さて、帝の話からでしたね。
そもそもあなた方が都を無理に移したりしなければ、都のすぐ近くで一大決戦が起こって、その余波で帝を危険にさらしたりしなかったんですよ。
つまりあなた方の判断は・・・。」
「お待ちください、今は袁紹殿の話をしているのですよね?」
郭図がさっきの続きから始めようとすると、郭嘉はそれをやんわりと止めた。
そして、話を振り出しに戻してしまった。
(これはまずい!)
郭図の額に、冷や汗が流れた。
さっきは荀攸が帝の話を持ち出したので、揚げ足を取って有利に進める事ができたが、これではさっきまでの努力が水の泡だ。
またさっきのように有利な状況に持っていくためには、だいぶ話を引っ張らなければならない。
しかも荀攸が一度はめられて学習しているので、おそらく同じ流れでは通じない。
それに、それほど長い時間審配を保たせられるかは微妙だ。
(しかし・・・とにかく、勝つためにはたたかなければ。)
郭図はどうにかして、郭嘉の言葉の中からつけ込めそうな所を探し出した。
そして審配のマシンガンにつないでほっとしたのも束の間・・・マシンガンはすぐさま中断されてしまった。
郭図はまた慌てて荀攸の相手をしなければならなかった。
そうして郭図と審配を一時的に荀攸に引きつけておいて、郭嘉は逢紀に声をかけた。
「そうですか、河北が大切なのですね。
でも、それならば、こちらで手柄を立ててあなたが河北の太守になればいいのでは?
どちらにしろゾンビの件は全国に知らせねばなりません。袁紹殿が我が君の配下となっても、誰かを河北に帰す事になるのは確かです。」
「なんだ・・・河北に帰れるのか。
だったらもう、袁紹につく理由はないな・・・。」
逢紀の戦意の源は、河北に逃げたかったから。
それを満たせるよと言われて、逢紀は一瞬でこの勝負を放棄した。
357セイレーン:2009/09/16(水) 20:48:28 ID:T7uBaCX4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(124)

「ちょっと二人とも止めなさい!
曹操様への心証が悪くなるでしょうが!!」
「ええっ!!?」
いきなり逢紀に横槍を入れられて、郭図と審配は動揺した。
味方のはずなのに、どうして・・・。
それを考える間もなく、郭嘉が舌戦を続けていく。
「ああ、それで・・・袁紹殿の事ですけどね・・・。」
こうなると、もう郭図がいくらがんばっても流れを取り戻す事はできなかった。
一度混乱した頭はいくら冷静になろうとしても言う事を聞かなくて、そうしてまごついている間に話は先に進んでいって。
しびれを切らした審配が一人でマシンガンを撃とうとして、タイミングを間違えてまた揚げ足を取られて、窮地に追い込まれて。
さっきまで味方だったはずの逢紀は、こちらをたたき伏せようと罵声を浴びせてくる。
まるで初めから曹操軍の味方だったかのように、荀攸や郭嘉を親しげに褒め称えて。
「てめえは、どっちの味方だあぁ!!」
ついに審配が逢紀に銃口を向け、暴発を始めた。
もう完全に、自分が何と戦っているのか分かっていない。
郭図も頭の中でいろいろな情報がむやみに飛び交って、耳から入ってくる言葉を理解できなくなっていた。
「あ、あ・・・わ、私は・・・。」
「このクソがぁえ!?く・・・けふっ!?」
郭図の隣で、審配が咳き込んで体を前屈みに折り曲げる。
開いたままの口からぽたぽたと涎が落ち、喉が壊れた笛のような音を立てる。
もう、終わりだ。
郭図は涙がこみ上げてくるのを感じながら、絞り出すような声で終わりを告げた。
「ま、負け・・・ました・・・!!」
358セイレーン:2009/09/16(水) 20:50:00 ID:T7uBaCX4P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(125)

一つの大きな戦いが終わった。
曹操軍の文官たちは笑顔を合わせ、ほっと胸を撫で下ろした。
荀攸と楊修は、改めて郭嘉の強さを思い知らされた。この人がいてくれたからこそ、自分たちは勝つことができたのだ。
二人は感謝の意をこめて、郭嘉に深く頭を下げた。
一方、袁紹軍の文官たちは悲惨だった。
郭図は打ちひしがれて床に座り込んでしまい、審配は息を整えるのに精一杯で、逢紀は笑いながら他の二人を罵っている。
郭嘉はふらりと立ち上がり、郭図のそばに寄って肩を撫でてやった。
「郭図殿、あなたはよくがんばりました。
でもね、あなたはがんばる所を少し間違えたのですよ。
人がいくらがんばっても、理に適わない事は通せません。
だから・・・ね?今度は無理をしないで、袁紹殿が幸せになれる道を考えてください。これからは仲間ですから、応援しますよ。
同じ郭姓の縁です、私は同族が困っているのを見捨ててはおけませんから。」
それを聞いたとたん、郭図の体がぶるりと震えた。
顔を押さえた手の間から、堰を切ったように涙があふれた。
「う・・・うええ、えええああぁん!!!」
思いのたけを吐き出すように、郭図は大声で泣きじゃくった。
それを慈しむような目で見ながら、荀攸はつぶやいた。
「それで良い、今は泣きたいだけ泣きなさい。
脱出の時には、目の前でどんな悲しい事が起ころうと、泣いているひまなどなくなってしまうからな。
これからは、手を取り合ってゾンビに立ち向かわねばならん。
のう審配?」
「ぐぅ・・・う(ヒュ)。」
言葉は返事にもならなかったが、審配はうなずいた。
どうやら、結果に納得してもらえたようだ。
これで曹操軍と袁紹軍の文官同士の争いは去り、脱出に手を取り合える・・・はずだった。
359セイレーン:2009/09/16(水) 20:58:31 ID:T7uBaCX4P
ゾンビ官渡補足:帝について

いきなり分かりにくい話になって大変だったとは思いますが、帝の存在は大切な要素です。
帝(献帝)は官渡から近い都、許昌にいるので、近いうちにゾンビの移動範囲内に入ってしまいます。
曹操が生き残るにしろ死んで混乱が起きるにしろ、
帝の救出は後々大きなミッションとなってきます。

曹操軍と朝廷の確執、朝廷の頭の固い忠臣たち、世間知らずな帝の運命やいかに!
みたいな感じで。
360本当にあった怖い名無し:2009/09/18(金) 23:09:39 ID:2WuSwAMc0
あのー
なんだかわたしも投下したくなったんですが
あまり長くないのでよろしいでしょうか?

横はいりはいやなので、おうかがいです
361本当にあった怖い名無し:2009/09/19(土) 01:02:52 ID:+AXGi0Uj0
横入りもクソも、好きなときに投下すればいいんじゃない?
一応投下前にリロードかけて確かめさえすれば。
362たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:30:03 ID:+EXru3uJ0
んじゃまー
駄文でお目汚しでつが、羞恥プレイと思って投下しまつ

感想きぼーつーことで
お願いしまう
363たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:31:54 ID:+EXru3uJ0
「通勤電車にて」
(1)

いつもの満員電車。
地下鉄の車内でアナウンスが流れた。
「線路にぃ〜お客様がいらっしゃいますのでぇ〜安全確認ぉ〜おこなっておりますぅ〜確認でき次第発車したしまぁす」
急ブレーキでとなりのオッサンとほっぺをくっつけてしまい、今日の仕事のモチベーションが一気にゼロになった。
ちょっと間の抜けた車掌のアナウンスが流れてから、二十分くらい経っただろうか。
乗客の苛立ちはマックスだ。
「携帯通じねぇのかよ...」
「すいません!! 窓開けてくださぁい」
「マジちょーサイアクなんですけどー」
...あー、俺もイライラするよ。
でもさぁ、みんな同じなんだから、ちったぁガマンとかねーの?いい大人がパニクるんじゃねーつーの。
364たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:33:21 ID:+EXru3uJ0
(2)

「おい!! そこのやつ」
はぁ?
「ウォークマンしてるやつ!! お前だよ」
ぷっ、ウォークマンと来ましたか。iPodなんだけどね。音小さくしてたから聞こえてんだけど、おもしれーからシカトしてようかな...
「聞こえてんだろ!? ボタン押して車掌に聞けよ! どうなってんのか」
つり革につかまってる四十くらいのリーマンが、こっち睨んでる。
んだよ...めんどくせぇなぁ。いくら俺がドア横にいるからってさ。動くまで待てねーの?
関係ないけど、こういう時って、座ってる人って必ず目を反らしてるよね。
「ドア開けろって言えよ! ドア!」
まだ叫んでるよ... 俺、お前の部下じゃないんですけど。
ヤダネー、こういう時に取り乱すヒトって。まぁどこにも一人はいるんだけどね。
小心を隠すために必死なんだね。
365たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:34:47 ID:+EXru3uJ0
(3)


「あのぅ... すいません。この子に席譲ってもらえないでしょうか」
割りと近くで中年?の女性の声がした。
「この子さっきの駅で怪我しちゃって... 具合悪いみたいなんで、お願いします」

「あ、こっちどうぞ」
メガネのOLが席を立った。
オバハンが、すいませんすいませんと何度も言ってた。えらいね〜 見習え、リーマン。

「お嬢さんですか?」
「いえ... そういうわけじゃないんですけど... 前の駅でチカンみたいなヒトに噛まれたみたいで...」

ん...? チカンされた、じゃなくて?
噛まれたのか?

「すごい汗... でも身体は冷えてるのね」
「早く病院に連れいったほうがいいんでしょうけど... 気車が動かないから...」
オバハン歯切れ悪すぎ。つかキシャじゃねーから、地下鉄だから。
366たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:35:51 ID:+EXru3uJ0
(4)

突然、とんでもない叫び声が聞こえた。
甲高いブレーキ音かと思うくらい、そうとうヤバい声。
さっき席に座った女の子が、オバハンに覆いかぶさってる。オバハンが目を見開いて叫んでる。
ぐぇーみたいなカエルみたいな声になった。手足を猛烈に動かしてる。

「あ!! 血! 血出てる」
誰かが叫んだ。
途端に、倒れたオバハンの周りに環ができた。なんだよ... 詰めれるじゃんよ。
ドアんところで押し出されそうになりながら乗った俺は呆れたね。
そのうち、時間にしたら数秒かもしれないけど、オバハンは動かなくなった... 眼球が飛び出しそうになって、紫色の舌が半分千切れかかって口の外に出てた。...まさか、死んじゃったの!?

席を譲られた女の子が顔を上げた。
俺からは背中しか見えなかったけど、その子を取り巻いてる環が広がった。 つか、後ずさったのか。

その子は、いきなり俺を怒鳴ったリーマンに抱きついた。
キス⁇ と思った。リーマンが「んーんー」って言ってたから。
でも違った。
顔をは放したリーマンの唇が、丸ごと無くなって、血だらけの歯が見えた。
叫び声を上げる間もなく、鼻が千切られた。
367たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:36:54 ID:+EXru3uJ0
(5)

「ぎゃああああ!!」
リーマンの絶叫が車内に響く。
ここに来て車内が完全にパニックになった。
皆んなが一斉に叫び出した。理解できない恐怖が伝染していく。
皆、我先に逃げようとする。ある者はドアに。ある者は窓に。ある者はとにかく奥に奥にと。
その間も、リーマンの絶叫が続く。
完全に顔の皮膚が無くなってた。理科室にある人体標本の模型みたくなってた。あれは顔半分だけだけど。リーマンは全部だ。

乗るんじゃなかったよ...
俺は、舌打ちしながら呟いた。
368たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:37:57 ID:+EXru3uJ0
(6)

...それから、更に二十分後。

「お待たせいたしましたぁ〜安全確認が取れましたので〜発車いたしまぁす」

地下鉄がゆっくり動き出す。

「ご乗車の〜お客様には大変ご迷惑をおかけしたことを〜お詫びいたしまぁす」

車内は、先ほどとうって変わって静まり返っていた。

「本日ぅ〜傘の忘れ物が大変多くなっております〜」

乗客は、うめき声とも唸り声ともつかない声で応える。

「どなた様も〜お忘れ物のないようにご注意ください〜」

唸り声が大きくなり、ドア付近の乗客はガラスを叩き始める。

「本日は〜東京メト◯ぉ〜◯の内線を〜ご利用下しまして〜誠にありがとうございました〜次はO手町ぃ〜お出口は左側でぇす〜」
369たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 01:38:47 ID:+EXru3uJ0
(7)

駅ではダイヤ遅延で苛立つ乗客が待っていた。ホームに電車が滑り込んでくる。
ドアが開ききる前に、車内からおびただしい無数の腕が突き出された。そのままホームの乗客に突進していく。
あちこちで押し倒された者が悲鳴を上げている。

(だから言わんこっちゃない...)
駅員はウンザリした気持ちになった。
(毎朝、聞いてるでしょうが、んもぅ...)

「押し合わずご乗車くださいー! 降りるかたが優先になりますー!」
駅員が叫んだ。

おわり (?)
370本当にあった怖い名無し:2009/09/19(土) 02:38:41 ID:+AXGi0Uj0
>>363-369
なかなか面白い着眼点だね。
惨劇の様子は初めを触れただけで、あまり詳しくは書かれてない紋切り型だけど、そのぶん
想像の余地が広がるか。
身動き取れない状況だから、パニック必死だな。
371本当にあった怖い名無し:2009/09/19(土) 09:53:31 ID:kOQQw53d0
なんかプチ修羅場になってる電車内と、のんきな車掌や何時も通りの駅員の
意識のギャップがあってシュールだな。
個人的に短編としてよかったと思った。
372たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/19(土) 23:33:41 ID:+EXru3uJ0
読んでいただき&感想サンクスです

またネタ思いついたら投下しますわ
373本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 01:56:40 ID:9Rrr8P3pO
官渡おもしろくない
状況描写が下手だし作者のオナニー丸出しだし
374本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 03:18:33 ID:/FhXFzef0
こういうおもしろいのが読めるから見るのやめられないw

三国志?のパクリのは長すぎるわ‥
面白くもないしね
375本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 04:02:39 ID:uKpVYcCj0
>>372
読みやすくて、おもしろい作品でした。
視点の切りかえが少し いわかんあ たけど
でも、ぜんたい的に うまかっです。

いけんは それぞれ
おれは さんごくしのも うま
376本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 13:23:06 ID:186RP3XW0
感染者が出た! 撃て撃て、撃ち殺せ!
377本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 17:32:53 ID:4IhUM5dD0
個人的に面白く無いって意見も封殺か
どこの情報統制国家だよ
378本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 18:34:19 ID:0po5+jOSO
言い方が悪いのが問題なんだよ
空気読まずにスレの雰囲気悪くなるようなこと書き込むのが悪い
俺は苦手だな、ぐらいにしとけっていうかそんなん頭の中にしまっとけっていう
そういうことができてないねっていう意味と、このスレ独自のスパイスが加味された上での感染者扱いだ
情報統制もなにもないって
そんなん書く前に好きな職人さん誉めとけ


そんな俺は官途好き
379本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 18:56:48 ID:j4VdHrl70
いや、てか>>375が、かゆうま状態じゃん。
ゾンビが出たら撃ち殺すのが、ゾンビもののセオリーだろ。
380本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 19:40:55 ID:nz2zXZxT0
作品自体の面白さももちろん大事だけど、
それ以上に大事なのはやっぱ投稿ペースよね。
もうあらすじなんてとっくに忘れちゃってるのに、ある日突然続き書かれても
はっきり言って困るわ。正直人をこれだけ待たせといて何様?ってカンジ。
私待つの大っ嫌いだしね。
381セイレーン:2009/09/20(日) 20:34:20 ID:XM+oCuvlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(126)

「では、私は寝室に戻りますので。」
用が済むと、郭嘉は近くにいた使用人の肩を借りて自室に帰っていった。
荀攸も後の処理を楊修に任せて、曹操のもとへ報告に行こうとした。
しかし荀攸が部屋から出た直後、背後で逢紀の甲高い笑い声が響いた。
「ひょーっひょっひょっひょ!
不様だな二人とも!
もう貴様らに出世の道はないぞ!」
逢紀はまだ涙が止まらない郭図を指差して、人目もはばからずに笑い出した。その顔は軽蔑一色に染まっている。
(いかん!!)
荀攸は慌てて部屋に戻り、逢紀を止めようとして、ふと気付いた。
不気味なつぶやきが、だんだん大きくなっていく。
「・・・るさ・・・い・・・さない・・・ゆる・・・な・・・。」
荀攸は思わず足を止めた。
「許さない許さない許さない・・・。」
郭図がつぶやいているのだ。
「許さない許さないあなたの不忠を許さないあなたの存在が許せない。
その口がその舌がその脳が憎いおまえの全てが憎い。」
郭図の手が丸いすの足を握り締め、そのままぬうっと立ち上がる。右手には、それなりに重量のある木の丸いすがぶら下がっている。
さすがにまずいと思ったのか、逢紀も後ずさって近くにあったすずりを手に取る。
しかし郭図は恐れる様子もなく、じりじりと逢紀に近付いていく。
「お、お二人とも止めなさい!」
楊修が間に入ったが、これは無謀だ。
むしろ命が危険だ。
「楊修、そこをどくのじゃ!!」
荀攸が叫んだ直後、郭図がいすを振り上げた。
382セイレーン:2009/09/20(日) 20:35:31 ID:XM+oCuvlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(127)

一瞬、何が起こったか分からなかった。
郭図がいすを振り下ろし、逢紀がすずりを投げつける。
その瞬間、楊修は何者かに突き飛ばされて難を逃れた。
新たに間に入った何者かにいすとすずりがたたきつけられ、鈍い金属音が響く。
荀攸はいつの間にか横に突き飛ばされて、床に手をついていた。
「え、袁紹殿・・・!!」
二人の間に飛び込んだのは、袁紹だった。
いすとすずりは、袁紹がまとっていた金属の鎧にぶつかり、がらんと音を立てて落ちた。
「そんな、殿・・・うそでしょう・・・?」
郭図は誰よりも大切な君主を自らが傷つけてしまった事実に、我を失って呆然と立ち尽くしてしまった。
その次の瞬間、于禁が無抵抗な郭図の腕をつかんで取り押さえる。
「またおまえかよ、この野郎!!」
于禁の後ろから、曹操と夏侯惇、そして李典がかけつけてきた。
「楊修から聞いて来てみれば・・・ずいぶんと荒事になっておるな。」
楊修はようやく起き上がって、曹操に頭を下げた。
楊修は舌戦の途中で郭嘉を呼びに行った時、李典にも一応声をかけておいた。話を聞いて心配になった李典が、曹操と袁紹に声をかけて連れてきたのだ。
逢紀は曹操の姿を見ると、うやうやしく礼をして言った。
「曹操様、ご覧の通り郭図と審配はあなた様に従う気がありませぬ。
今この状況、連携を乱す者は命取りでございます。
早々にこの二人の首をお取りください!」
「むう・・・。」
曹操には、すぐ決める事はできなかった。
代わりに、逢紀に一つ命令した。
「それよりまず、袁紹に謝罪せよ。すずりをぶつけたであろう。」
それを聞くと、逢紀は思い出したように袁紹の方を向き、ニヤリと笑って言った。
「これは失礼、しかし反逆者をこらしめるために仕方なかったのです。
許されよ、袁紹殿?」
逢紀の袁紹に対する口調は、すでに同僚に対するそれに変わっていた。
383セイレーン:2009/09/20(日) 20:37:13 ID:XM+oCuvlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(128)

曹操はとりあえず、郭図と審配の処遇を考えることにした。
袁紹は助けてくれと泣きついてきそうなので、別室に移した。
「さて、どうすべきか・・・。」
曹操がつぶやくと、逢紀がつぶさに意見を述べた。
「だから、首をはねろと申しているのです!
あの二人は異常です!!
昨日でも今日でも、郭図がキレたおかげで下手をしたら人が死んでいたんですよ。
それに、あの二人の行動は全くもって分かりません。もしかしたら、ヤケクソになって城門や外につながる扉を開けてしまうかも!」
「そ、それはヤバいぞ!!」
夏侯惇が皿のように目を丸くした。
城門や外につながる扉を少しでも開いたら、外にひしめくゾンビがなだれこんできて、あっという間に全滅してしまうだろう。
そんな事につながりそうな要素は、排除した方がいいに違いない。
曹操は目の前で縛られている二人をにらみ、剣に手をかけた。
しかしその時、荀攸が進言した。
「お待ちください!
危険はそうですが、この二人を殺せば今度は袁紹殿が壊れてしまう事は目に見えております!
そして袁紹殿が壊れたり殺されたりすれば、降ってきた張郃と高覧が動揺してどうなるか分かりませぬ。
安易な決断は避けるべきかと。」
李典も曹操の前にひざまずき、祈るように言った。
「どうか、このお二人の命をお預けください。
郭図と審配は確かに過激ですが、この二人が袁紹殿のお心を支えている事をお忘れなきよう。
だから、どうか・・・!!」
結局、曹操は昨日と同じように郭図と李典を縄でつなぎ、審配は于禁に監視させた。
逢紀は少しごねたが、この男はどうも信用する気になれない。
一段落して腹が減ったと思った矢先、ジャーンジャーンと昼飯の銅鑼が鳴った。
384セイレーン:2009/09/20(日) 20:38:58 ID:XM+oCuvlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(129)

「おーい、飯だぞー!」
穴掘りで疲れてきた兵士たちが、広場に集まってくる。
今日の昼飯はなんと焼肉。
しかし穀物がほとんどないので、ご飯は将軍クラス以上でないと出ない。一般兵士が食べるのは、解体した牛馬の肉だ。
「あーあ、えらい事になっちまったなあ・・・。」
肉を焼きながら、一人の兵がぼやいた。
「いつもなら、肉をたらふく食えるなんて夢みたいな話だろ?
そしたら、肉を食える代わりにこの悪夢だ。」
他の兵士も、遠くを見るような目でつぶやいた。
「ご飯ってさ、毎日そればっかだと飽きるけど、なくなると恋しいよな。
古女房みたいにさ。
あーあ、都に帰ったら、かあちゃんに麦飯たっぷりたいてもらいてえなあ・・・がんばって穴掘るからさ、死ぬ前にもう一回かあちゃんに会いたいんだ。」
「おれも、なじみのあの娘に会いてえなあ。
少なくとも、こんなむさい所であんな臭い奴らに噛まれて死ぬのはごめんだ!」
それを聞くと、周りの兵士たちはどっと笑った。
「ハハハ、違いねえ!」
兵士たちは普段なら食べられない肉を、がつがつとほおばっていた。
少し離れた所では、将が泣きながら愛馬との別れを惜しんでいた。
どんなに慣れ親しんで愛着を覚える馬でも、脱出には連れて行けない。きっとあの見事な馬も、今晩か明日には焼肉になるのだろう。
作業は順調に進んでいる。
城内から袁紹の陣があった方向を除く三方に向けて、五本ずつのトンネルが少しずつ伸びている。万が一にも天井が抜けてゾンビが落ちてきてはいけないので、かなり深いトンネルだ。
あとどれだけ掘ればいいかは分からないが、言われた通りやるだけだ。
兵士たちは午後もまた穴を掘るべく、鋭気を養っていた。
385セイレーン:2009/09/20(日) 20:41:49 ID:XM+oCuvlP
投稿ペースに気をとられて質が落ちててスマン
今後の展開を決めるのに少々手間取ったもので。
386本当にあった怖い名無し:2009/09/20(日) 23:12:55 ID:4IhUM5dD0
>>378
いや、だからそれが情報統制なんじゃん
そもそもお前の書き込み自体も空気読まない雰囲気悪化させるレスだっての
そんなん頭の中にしまっとけっていう
387本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 00:02:27 ID:9Rrr8P3pO
セイレーンさん、あなたの書く同人小説つまらないからやめてもらえません?

ダラダラ長いだけで他の人の小説と比べるとおもしろくないです
388本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 01:11:17 ID:05hZ0jyR0
セイレーンさん

毎日投稿を楽しみにしています。
仕事が終わって、家に帰ってからセイレーンさんの
更新をチェックするのが、ここしばらくの楽しみです。
最近変な雑音が入っているようですが
どうか気にしないで下さいませ。


情報統制が何だとか、人の迷惑もわきまえない
お子様が喚き散らしていますが
ここは、好きな人が集まって楽しんでいる所です
公共の場でもなんでもない、嫌なら出て行け、それだけです。
自分が気に入らなければ、声を大きく大騒ぎしてジタバタする様は
見ていて心の底から蔑みの気持ちしか湧きませんが
毎回、大騒ぎすれば自分の思い通りになると思っている卑しき性根に
振り回されて、一体どれ程の作者がここを去ったことでしょうか?
自分は、何も書かないくせに人に楽しみの一つも提供出来ない
ゴミみたいな存在を、評論家ぶって人を非難することで、さも自分が人より高くに居るような
錯覚に酔いしれている様は、人として恥ずかしくないのかと、言いたくなる。。。
389本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 02:44:21 ID:pBIFHJ1+0
このスレは、ゾンビ好きな人がゾンビをネタにした小説をupするスレです。


この一文に尽きるわけだが、そのことわかってるのか?
390本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 06:19:42 ID:dbTJx59A0
ひとの かきこみに、もんくいう おなじ
あんちと かわらない
いつたい、この すれ どうなつて

おれ よんだ かんそういう け
どうするか きめるの さくしゃさん うま
391本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 07:59:59 ID:zLfsJEH00
>>386
喚き散らして、みっともない行為を注意されたら
情報規制だってよw
どんだけゆとりなんだよ
2chといえどもこれは頭がヒドイwww
392本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 10:49:06 ID:lCZ29pv+O
巡査物語さんとかは消えたの?

久々に投下してたから楽しみにしてたんだが
393本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 13:37:36 ID:fhOIrddoO
>>387

お前のは感想じゃなくこのスレを潰しかねない悪意あるカキコミだ
死ね
取り合えず死ね
394本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 17:13:01 ID:vDFl48IM0
セイレーンの糞つまらんオナニー小説をみんなに見てもらおう

あげとくねw
395本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 17:17:25 ID:vDFl48IM0

「おれも、なじみのあの娘に会いてえなあ。
少なくとも、こんなむさい所であんな臭い奴らに噛まれて死ぬのはごめんだ!」
それを聞くと、周りの兵士たちはどっと笑った。
「ハハハ、違いねえ!」
兵士たちは普段なら食べられない肉を、がつがつとほおばっていた。


しょぼw
なじみのあの娘って…w
それを聞くと、ってもっと別の表現ないの?


何これ中学生が書いてるの?www
396本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 18:02:53 ID:+H0PEwgj0
じゃ、自分で書いて見るといいと思うよ
397本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 19:11:28 ID:gZ+fiftM0
>>391
そのゆとりをスルーできないバカは誰?
同レベル以下になる前に黙っとけよw

正しい反応は俺やお前以外の人の様にスルー
398本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 20:39:22 ID:AxRq8BoDO

ここに立て籠もって何年になるのか。

元々人の出入りの多い場所だったここは、世界が荒れ果てた今も様々な生存者が流れてきていた。

わずかな物資をめぐって争う者
せっかく手にしても気に入らないと捨ててしまう者
それらの行動に触発され、しなくてもいい行動に出てしまう者

彼等の末路は様々だったが、誰一人として満足した者はいない様に見えた。

私はただ口を閉ざし気配を殺す事で、死者と生者から身を守り生き残ってきた。
だがそれは生きていると言えるのだろうか?

昔この場所で自らの人生を完結させた者達は皆、満足そうな言葉を残して逝った。

それが羨ましい。

この腐った世界の底で、彼等の遺志を継ぐ人がやってくるその日まで
私はこの場所で震えながら、朝を待とう。

臆病な私にはそれくらいしか出来はしないのだから。
399本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 21:03:16 ID:QdXrSu6v0
>>397
はあ?
単発基地害がなに喚いてるの?
感染したの?
400本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 21:17:06 ID:BykCXPbgO
どうでも良いがネガティブな感想は書くなっていう奴はムカつくな。
お前にそんなこと言う権利は無いだろと。
ここは便所の壁なんだぜ。
401たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/21(月) 22:36:33 ID:7pA51RCw0
えと、流れがなんだか微妙ですが
投下します
短いやつです

自分はネガティブな意見でも一向に構わないのですが、ただ一つだけ!

具体的に、何がどうつまらないのか言っていただけると、嬉しいです
まぁ、更に「こうすればいいのに、面白いのに」的な建設的な意見だと、更に嬉しかったりします
402たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/21(月) 22:37:55 ID:7pA51RCw0
(1)

「13番ホームに列車が到着します! 折り返し回送になりますので、ご乗車になれませんのでご注意ください」

だだっ広いホームに係員のアナウンスが流れる。
ドアが空くと中から無表情の乗客達がゾロゾロと降りてくる。

ここは俺の職場。
今日も憂鬱な一日が始まる。状況描写も心理描写もしたくない。
俺はもう、心底うんざりしているのだ。
403たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/21(月) 22:38:49 ID:7pA51RCw0
(2)

転属して何年経っただろうか。
ボスのやり方に嫌気が差して、ちょこっと文句言ったらここに転属さ。
左遷なんて言い方は生ぬるい。
堕される...てのが適当だろうか。
...まったく、こんな事ならダンマリ決めてたほうが良かったよ。

まぁ愚痴はこの位にしよう。
諸君らも俺の愚痴なんて聞きたくもないだろうから。出来れば俺と話したくない、会いたくないって連中が大多数だろう。
その気持ちはよく解る。

俺の座っているブースの前に列が出来る。
尋常じゃなく長い。何重にも折り返してもなお、最後尾は見えない。ほとんど霞んでいる。
...最近、やたらと多過ぎやしないか?と自問する。
面倒は全て「下の方」に押し付けるってわけですか。そんなんだから、皆さんの信頼失うんですよ?ボス。
404たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/21(月) 22:39:48 ID:7pA51RCw0
(3)

俺は手元の資料を見つつ、降りてきたばかりの乗客に行き先を告げる。昔はきちんと面接してたが、今じゃとてもそんなことなんか出来やしない。

「あ、主任。臨時便増発だそうです。おつっす」
はぁぁあん!?
マジでおまいらいい加減にせぇよ!!
ヒトのこと何だと思っとんじゃっ‼

あ〜、そうですか。マゾですか。苦痛で悦んで涙流して、7つの水瓶がいっぱいになると。
...んなわきゃあるかいっ‼

あ〜もう、わかりました。あたしゃ、ほとほと愛想がしきやした。
そっちがそのつもりなら、こっちにも考えがありんす。
あっしはここで、失礼しますよ。
お後はご勝手に〜んじゃね〜

「あ"〜! 主任が切れちゃったよぉ... 仕方ねぇなぁ、こいつらもとの所に送り返すか...」


その数日後、地上でゾンビと呼ばれる「生きる屍」が大量に発生した...

おわり(?)
405本当にあった怖い名無し:2009/09/21(月) 23:29:11 ID:gZ+fiftM0
>>399
はあ?
単発キチガイが何いってるの?
それとも携帯でコソコソと自演でもしてたのかな?w

好い加減自分も荒らしだって事に気付いたら?

406本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 00:03:38 ID:x8/a1GW70
>>402-404
オチにすべてをかけた作品だね。
ただ、オチを隠したいあまり、情報が少なすぎるので、一回読了してもわかりにくいかも知れない。
とはいえ、なるほど(ああ、そういうことか)と思いましたが。
ゾンビ物としては伝統的なテーマなので、なかなか面白かったです。はい。
407empty ◆M21AkfQGck :2009/09/22(火) 01:43:00 ID:upJMKNL40
23日に投稿予定です
一応両方書いてたのですが、内容が似たり寄ったりなので短いのは省いたほうがいいみたいですね
408本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 15:27:16 ID:1uhAxJlVO
セイレーンの作品が大元で荒れてるね

自分も楽しくみてたけどこんな流れになるならなんとかしたほうがいいと思うが
409本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 20:10:51 ID:/5jW5EA60
なんとかってw
具体的にはどうしたら?
暗に投稿を控えさせようとするような書き込みは間違っていると思う。
今回の場合、作品の方に問題が? 読んだ人に気に入られない作品が悪いと?
このレベルの作品に、具体案も出さずに「つまらん」とかいって投稿を控えさせようとするなら、このスレの意味など無い。
感想としての「つまらん」は人それぞれだし、どう受け止めるかは作者さんしだいなので書くなと言う気はないけれど。

もうね、いっその事「【秀作】面白いゾンビ小説専用スレ【急募】」とか作れば?
そうすれば読者も作者さんも自分のレベルに合わせたスレを選べば良いし、少なくとも面白いかどうかの問題でこのスレが荒れることはなくなるハズ……。
もしかしたらスレが競い合うことで、より面白い作品も出てくるかもしれない。
まぁ面白さを求め過ぎるあまり過疎って消えるだけな気もするけど、それはそれで考え方が間違っていたという前例になるかと。
ただし板的に重複スレになるかもという問題があるので、その時は文章を重視するって事で創作発表版に立てれば良いと思いますた。おわり。
410本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 20:26:02 ID:SqhTjHvN0
要約すると「つまらん作品は別スレに捨てろ」
411新人さん:2009/09/22(火) 20:30:36 ID:Hqy18FS3O
なんだか微妙な流れになってますね^^;
インフルエンザで一週間ほど入院していたのですが、この度退院してきたので、1週間以内には投下したいと思いますノ
待ってる人がいるかどうかわかりませんが、よろしくお願いします^^ノ
412本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 21:14:16 ID:1uhAxJlVO
具体的にどうすればって言われるとほかのひとら三國志のパロだから文句いってるような感じだしオリジナルストーリー書けばいいとおもう

面白い文章書けるんだし三國志にとらわれなくてもいいとおもう
413本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 21:22:33 ID:Mi/CJV5h0
でもまあ三国志も待っている人には中途半端は辛いだろうから、とりあえず完結させた方がいいだろ。
ノイズはスルーが基本だしな。
ファンのためだけに、描けばよろし。
414セイレーン:2009/09/22(火) 22:07:05 ID:vglCjnG50
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(130)

今この城は周りをすっかりゾンビに取り囲まれており、地上からの脱出は絶望的だ。
しかし、地上を歩かなくても脱出の手はある。
袁紹はこの戦いの最中、どうにかして官渡城に侵入しようとモグラ作戦を使ってきた。
つまり、地下にトンネルを掘ってきたのである。
地上にどんな障害物があっても、その下はどこも土だけである。袁紹はそれに目をつけ、地下を進むことで地上のあらゆる防備を無効化し、城に侵入しようとした。
実際、これはかつて袁紹が宿敵の公孫?を滅ぼすのに使った手だ。
公孫?は幾重にも城壁を巡らし、多数の櫓を立てた易京楼という難攻不落の要塞に立てこもった。しかし、櫓の兵からも見えず壁もない地下を掘り進む袁紹軍の前に、あえなく侵入されて自害するはめになった。
今回は幸い、袁紹が地下道を掘っている事が途中で分かった。
曹操は城の前面に溝を掘って水を流し込み、袁紹軍の掘ったトンネルを水没させて対処したのだ。

「・・・という訳で、トンネルを掘ってゾンビの少ないところに出るのが上策かと。
時は一刻を争います、武将の方々は早速兵たちに作業にかからせてください。」
再び集まった将たちの前で荀攸が策を発表すると、将たちはおおーっと歓声をあげた。
「分かった、すぐ掘らせよう!
おいみんな、行こうぜ。」
方法が分かったなら、後はやるだけだ。夏侯淵は嬉々として広間から出て行こうとした。
すると、荀攸は夏侯淵を引き止めて言った。
「兵たちも何も食わずに作業をするのは辛かろう。
穴を掘る兵たちには、軍馬や荷運び用の牛を解体して食わせてあげなさい。どうせ一緒に脱出はできぬ、ゾンビに食われるよりは我々が食べた方が牛馬も浮かばれよう。」
「おう、分かった!
そいつは士気も上がりそうだ。」
とりあえず脱出の方法は分かった、後はそれがうまくいくよう祈るだけだ。
荀攸はほっとして、武将たちの後姿を見ていた。
415セイレーン:2009/09/22(火) 22:08:19 ID:vglCjnG50
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(131)

人の姿がまばらになった広間の片隅で、袁紹軍の文官たちは何やらひそひそと相談していた。
「脱出の方法は分かりました。
さあ、勝負はここからですよ。」
郭図の言葉には、力がこもっていた。
審配もいつになく真剣な顔でうなずいた。
「分かってる・・・脱出後の殿のお立場を、どうするかだな。
殿はこの城に入るために降伏を宣言してしまったから、今は曹操の配下だ。命がかかってたから、これは仕方ない。
だが、今は両軍が負けそうな状況。
共闘を口実に、うまく話を持っていけば、殿を再び君主に戻せるかもしれん!」
袁紹を最も大切に思う郭図と審配にとって、袁紹がこのまま曹操の配下になってしまうのは耐え難い屈辱だった。
生きられる可能性が出てきたなら、袁紹の立場を元に戻したい・・・そう思った。
元より二人は、袁紹の命令意外聞きたくないくらい袁紹至上主義者なのだ。
曹操の命令を聞くなど、とんでもない事だ。
さらに、袁紹を河北の君主に戻す事にはもう一つ意味があった。
いまいちやる気のない逢紀に、郭図がささやいた。
「いいですか、曹操に従うという事は、都に連れて行かれるという事ですよ。
多数のゾンビがうごめく河南に、ずっといろという事ですよ。
でも殿を独立した君主に戻せば、私たちは殿について河北に帰れます!
昨日審配が言ったように、まだ河北にはゾンビが極めて少ないはず。そして李儒が対策に記したように、ゾンビを防ぐのに大河で隔てるは有効・・・。
つまり、殿を君主に戻して即行で河北に帰って手を打てば、最悪河南が滅んでしまっても袁家と我々は生き残れます。」
「そ、そうか、なるほど!!」
逢紀の目の色が変わった。
審配と郭図は顔を見合わせてうなずき、がっしりと手を取り合った。
「必ずや、殿を再び王座に!!」
416セイレーン:2009/09/22(火) 22:09:12 ID:vglCjnG50
ゾンビは人を襲う、人を襲うという事は敵に被害を与えることができる。
ゾンビに噛まれた者も感染してゾンビになる、つまり敵同士で殺し合いをさせ、自分は手を下さずに敵を皆殺しにできる。
これはすごい事だと思った。
大乱徒を作る事などない、このウイスルをばらまくだけで戦に勝てるのだ。
やってはいけない事にこの行為が挙げられているのには、気付いていた。
しかし許攸には、なぜやってはいけないのかが分からなかった。分かる冷静さを失っていた。こんなのろくて知能もないものが、手をつけられなくなる訳がない・・・最初からガイドライン通りにゾンビを管理していた許攸には、ゾンビの恐ろしさが分からなかった。
それに、先人の教えを破ってこそ革新的な技術が手に入るのではないか。
そうして許攸は、ウイルスを量産する方向に研究を切り替えた。資金が足りなかったので、甥が公金を横領している事を知ると、口止め料としてその一部を巻き上げた。
許攸には、自分が出世して富と栄誉をつかめる事なら何でも正しかった。
そしてそのためなら、何でも自分の都合のいいように考え、深く考える事はなかった。
それが最大の誤りだった。
417セイレーン:2009/09/22(火) 22:54:16 ID:XPi9Xk6lP
ちょっと待て!誰かが私の小説を勝手に過去のをコピペしてるぞ!!

感想はいいが、なりすましで人を貶めるのだけはやめろ!!
読者が混乱するでしょうが!
418本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 23:07:57 ID:/5jW5EA60
>>412
なるほど。それも一つの考えではありますね。
あとはセイレーンさんが決めることですから、もう今回の問題に対して私が書くこともありません。
完結まで読みたいと言うのは正直なところですし、このスレのためにも良いと思うのですが。
人の楽しみを邪魔したいだけの輩の思い通りになっていては、今後このスレを安心して利用することが作者さんも読者もできなくなると思いますから。

>>417
やっぱり偽者でしたか。
稚拙な嫌がらせですし分かっていた人も多いと思いますが、なによりセイレーンさんの心情をお察しします。
ただ、それこそが嫌がらせをしている者の目的でしょうから負けないで欲しいと思っています。
419本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 23:09:03 ID:Q1/z0bBwO
ならコテ位つければいいじゃん?
420たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/22(火) 23:10:22 ID:M8oFhWhR0
セイレーンさん

トリップつけたらいかがでしょうか?
421本当にあった怖い名無し:2009/09/22(火) 23:35:30 ID:WwiFS5sd0
まあなんでも真面目に高品質な作品を作ってくれてる作者さんと
それを楽しんでる人を見ると、荒らしたくなるガキと言うか
心が腐敗してる奴が必ず出てくる。
でもこれって神スレにはついて回る問題なんだよね。
つー事で作者さん達気にせずどんどん投稿してちょw
ちなみに俺はゾンビウイルスってのはガン細胞が進化した奴だと妄想してる。
寄生元の人体が死んでも養分さえあれば生き続けるとかまさにゾンビw
ああ後、作者さん達はできるだけトリップ付けて欲しいっす。
中には作者のネーミング使ってまで荒らすカスもいるからね。
422本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 09:01:17 ID:nsTKT3r+0
>>417
トリップ付けて下さい。偽者避けです。他の執筆者も皆コテハン+トリップ付けてるでしょ。
423セイレーン:2009/09/23(水) 09:52:26 ID:N+S7iG5NP
トリップ?
よく作家の名前で◆の後についてるようなやつでしょうか?
424たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/23(水) 10:31:12 ID:RYbxh9Bv0
「セイレーン#(任意の文字列)」

( )内はパスワードみたいなモノなんで、わかりやすいものは避けたほうがいいですね
*例: 0123 とか

これで名前の後ろに◆とIDみたいのができますので、ニセモノはすぐわかりますよ
425本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 15:11:02 ID:RMj8JJO1O
誰がなんと言おうと作品ってのは素晴らしいもんだ。

作者さんたちは雑音気にせずお願いします。
少なくともおれは皆さんのものが楽しみで仕方ないので。
官渡のお陰で三國志も興味出ましたしw

頑張れー
426本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 20:01:42 ID:6qGVfaY8O
官渡は心理描写が糞すぎてつまらん
427本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 20:10:27 ID:rBumbSTQ0
ここまで読んできたこのスレの感想。
作品はどれも面白い!
ただ、個人的には『(感想)ゾンビ小説スレ別館(雑談)』のスレを創ればよいかと
それで、この騒乱は収まるでしょう。
あくまでこのスレはゾンビ小説を書いて読んで楽しむスレなんですからそれ以外の雑音は50歩100歩のスレチなんですから。
以上です。
個人的にはセイレーンさんの作品が一番好きなのでがんばってください!
428本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 20:29:10 ID:rBumbSTQ0
ゾンビ小説別館雑談スレ立てさせていただきました。

http://www2.2ch.net/2ch.html
429セイレーン:2009/09/23(水) 20:31:07 ID:f1SgAKYz0
紫色に深く、静まりかえった夜。
幾星霜を経た満天の煌めきの射す下で、
その輝きすらも霞ませるほどの“美”が踊っていた。
それは一つの優美な肢体が映し出す人影だった。
躍動感に溢れた四肢は伸びやかに、流麗に舞い踊る。
踊る女の名は卞皇后、それを見つめるのは曹孟徳。
長期間の遠征から帰還した曹操はその日の夜卞皇后を呼び出し、舞を堪能する。
男の眼前で展開されている“美”に比べれば、星空の輝きすらも、夜を穿つ虫食いの穴にしか見えなかった。
それほどまでに、孟徳は卞氏の織り成す美しさに見愡れ、酔う。
そんな孟徳の熱い視線を、卞氏は物理的な感覚として感じていた。
彼女が舞うたびに、布地の中で揺れる、豊かな乳房。
筋肉と脂肪が完璧な調和のもとに融和した、蠱惑的な臀部。
それとは対照的な、折れそうなほどに細い腰。
薄らと桃色に染まる、陶器のように白く滑らかな肌。
夜露に濡れるように輝き、艶めかしく振り乱れる髪。
情熱的に潤んだ、深い泉のような瞳。
その全てに、孟徳の視線があますところなく注がれているのが分かる。
歌妓だった者として、そんな視線には慣れてるはずなのに、まるで初めて感じるもののような錯覚を卞氏は覚えていた。
意識するたびに、どうしようもなく心臓は激しい音楽を奏で続け、肌が上気していく。
それを振り千切るように、卞氏が激しく地を蹴り、天高く跳躍した。
空中で回転し、着地しようとした、その瞬間。
(――!?)
ぐらり、卞氏の身体が空中で体の均衡を失った。
踏み切りの間を誤ったのだ。普段の彼女ならば、考えられない失敗だ。
受け身もとれぬまま、彼女は自分の身を襲うであろう、衝突の衝撃を覚悟した。
だが、予想に反し、彼女の身体を受け止めたのは、暖かな感触であった。
「大丈夫か」
「…孟徳、様」
430セイレーン:2009/09/23(水) 20:32:03 ID:f1SgAKYz0
きょとん、と目をしばたく卞氏は、自分が地面に叩きつけられる寸前、すべりこんできた孟徳の身体に受け止められたことを知った。
卞氏の潤んだ瞳が、孟徳を見上げている。
やがて……
どちらからともなく、その距離が縮まり。
隙間なく、一つに結びあった。
孟徳と卞氏は、強く唇を押し付けあっていた。
卞氏の脳に、甘やかな感触が染み渡る。
たったそれだけで、背筋を走るものがあった。
孟徳の引き締まった胸板に、卞皇后の豊かな乳房が押しつぶされ、心臓の音が重なりあう。
痛いほどの動悸は、互いに反響しあい、天井知らずで高まっていく。
体温が溶け合い、ひとつになっていく。
狂おしい夜になりそうな……
そんな予感が、した。
孟徳の唇が、前髪をかきあげた後の彼女の額に触れる。
羽毛が触れるような柔らかい口づけは、霧雨のような優しさで繰り返される。
小刻みに震える長い睫毛。真直ぐに通った完璧な線を描く鼻梁。小さくて細い顎。可憐な耳。
卞氏の美貌を構成するあらゆる四肢を、ついばむように優しく愛撫する。
「は…あ…」
孟徳の小刻みな口付けに、卞氏の抵抗力が奪われていく。
あえかな吐息を漏らした刹那、温かく濡れた感触が歯列を割って侵入してくる。
 「んんっ!」
瞳が驚愕に見開かれ、すぐにきつく閉ざされた。くぐもった喘ぎは、声にならない。
突き入れられた孟徳の舌から逃れようとしても、すでに両手で頬を挟みこまれている為、それもかなわない。
為す術ない卞皇后の口腔内を、孟徳の熱く湿った舌が蹂躙する。
おののくように震える小さくて可愛らしい舌を捕まえ、からめとり、愛撫した。
舌先同士で接吻をかわし、裏側をしごきたて、味蕾を刺激する。
「んっ、ふぁっ、うぅんっ」
喉奥から、卞氏の意思とは関係なく呻きが漏れてしまう。
それでもなお、孟徳の攻撃は続く。
珠のような歯をなぞり、口腔粘膜を舐めさすり、喉の奥深くを突いた。
口の中を深く深く愛されるたびに、脊椎に甘い電流が走り、卞氏の背中がぴくんぴくんと震える。
431セイレーン:2009/09/23(水) 20:34:12 ID:f1SgAKYz0
たまらず頤を反らすと、可憐な唇を貪るように吸いながら、卞氏の動きを追い掛けるようにして、孟徳が覆い被さってきた。
そして深い口づけを交わし続けた後、名残惜しそうに離れる唇。
その間に、月光に輝く銀色の橋がかかっている。
 「はぁっ、はぁっ、はあっ……」
長い口付けが終わり、卞氏が激しく呼吸を繰り返す。
芯を抜かれたように力を失った卞氏の身体を、孟徳が包みこむように抱きしめた。
トロン、と薄く膜がかかった瞳が、熱っぽく潤み、すがるように孟徳を見つめる。
 (暖かい……)
卞氏は抱き締められるままに逆らわず、孟徳の胸にすがりつく。
しばらくの間、卞氏の背中を撫でていた孟徳が、ゆっくりと彼女を離した。
 「あ――…」
途端に不安の色を浮かべた卞氏の顔を両手が撫で、その指先はさらに首筋を伝いながら下へとすべり降りていく。
そこには、白桃のような瑞々しさをたたえた、麗しい双丘がぷるぷると震えている。
ほとんど裸同然の乳房は上気し、すでに隆起しつつある先端の突起は、それを覆う布きれの上からでも、その存在をはっきりと誇示していた。
そこへ孟徳の両手が、優しく添えられる。
たったそれだけで、仰向けに寝ていても少しも型くずれしない、華奢な身体には不釣り合いなほどに豊かな乳房が、ぷるんと音をたてるように弾む。
怯えるように震える美巨乳を、そっと撫で回した。
432セイレーン:2009/09/23(水) 20:36:09 ID:f1SgAKYz0
踊りによって汗ばんでいた卞氏の肌は、今や頭から水をかぶったように濡れそぼり、布はすでにその機能を果たしていない。
最早、不要のものとなった衣に、孟徳の指がかかる。
束縛が一瞬で剥ぎ取られると、解放された卞氏の美巨乳が、
ぶるるん、
と歓喜するように盛大にこぼれでた。
「――!!」
圧迫からの開放感と、裸の胸に感じる外気の冷たさに、卞氏がハッとなる。
露になった部位を反射的に両手で覆い隠そうとするが、それに倍する反応速度で動いた孟徳に両手首を捕らえられ、阻止されてしまった。
彼女の豊かで美しい乳房が、月明かりの満天下にさらされた。
豊乳がゆっくりと握りしめられると、掌におさまりきらない肉が孟徳の指の間からぷくりとはみだし、ぶるぶると弾んだ。
 「はぁあ……あうっ……ッく…」
火傷しそうなほどに熱い吐息が卞氏の口から漏れ、背筋が引き攣れたようにびくりと震えた。
それにしても、ツンと誇らしげに天上目指して盛り上がる膨らみの美しさはどうだろう。
しかも、膨らみの先端には、卞氏の清楚さとは裏腹な、大粒の乳首が色よく息づいている。
小さめの乳輪に比較すると、小指ほどもある乳首の大きさが一層はっきりする。
乳輪と乳首の付け根のくびれがはっきりしているのが、この上もなくいやらしい。
433セイレーン:2009/09/23(水) 20:42:19 ID:f1SgAKYz0
震える、熟れきった果実のような突起に、孟徳がごく軽い口付けをした。
 「ふっ………! んっ…くっ……」
それだけで卞氏は過敏な反応を示し、白い喉を反らす。
ちゅく、とサクランボのような乳頭が、温かな孟徳の口の中に吸い込まれた。
「…ダメ……ダメ…です……もう…と……さ……」
両の掌は、しっかりと乳房全体を丹念に揉みほぐしながら、もう片方の乳首を指先で摘み、いじりまわす。
卞氏の深い谷間に誘われ、孟徳は乳首を吸いたてたまま、鼻一杯に妻の香りを吸引する。
汗と性臭が入り交じった甘酸っぱい匂い。発情した牝の匂いだ。
頬に心地よい膨らみを感じながら、孟徳の乳首責めは激しさを増していく。
ちゅう……こりりっ……じゅるるっ……
わざと音をたてて激しく乳首全体を吸いながら、前歯で付け根のくびれを軽く噛み、しごきたてた。
同時に、もう片方の乳首を、摘んだ指先で強く捻った。
 「くやあああああああっっ!!」
絶叫するように鋭い悲鳴をほとばしらせ、卞氏の背中が一際大きく反り返り、硬直した。
434本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 20:43:51 ID:35Pv6ftf0
すまん!
>>428張り間違えた!
こっちが正解
【感想】ZOMBIE ゾンビ小説別館【雑談】
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1253705232/l50

以後、雑談感想等はこっちに書き込んでもらいたい。
このスレで書くと荒れる原因になるし、作者さんの邪魔になりかねないからな。
435セイレーン:2009/09/23(水) 20:44:39 ID:f1SgAKYz0
流麗な弧を描いたまま、彼女の身体は軽い痙攣を繰り返し、やがて全身の力が抜け切ったように孟徳の腕の中に倒れこんだ。
妻の劇的な反応に、孟徳は顔を覗き込む。
 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
しかし、そこにあったのはせわしく呼吸を繰り返す、酩酊状態になった艶っぽい貌だった。
どうやら、胸だけで軽く達してしまったらしい。
その証左に、むせ返るような女の匂いが、一層強く孟徳の鼻腔を刺激する。
ずっと乳房から離れなかった孟徳の手が、そろそろと下方へおりていく。
薄絹の下にあるこりこりとした肋骨の手触りを堪能しながら、折れそうなほどに細く優美な腰の線を伝い、すらりと長く伸びた脚の付け根に到達する。
股間を覆う、最後の着衣に、今孟徳の指がかけられる。
すっとめくると、布地と素肌の間で、粘ついた愛液が幾本も糸を引いていた。
孟徳は一気に足首まで布を引き下ろし、一思いに抜き去った。
遂に、夫婦を隔てるものは、本当に何ひとつ存在しなくなった。
互いに裸体となった二人は抱き合い、もつれあいながら柔らかな寝床へと沈んでいく。貪るように接吻を交わし、互いの肉体が重く密着する。
「……んっ」
孟徳が卞氏の太腿を持ち上げると、ほっそりとした長い足が抵抗もなく開かれた。
 「いくぞ……」
 「はい……」
濡れ光る剛棒を、卞氏の秘裂にそっとあてがった。
436本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 21:56:00 ID:toYLTip40
これは酷い・・・・
437セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/23(水) 21:58:21 ID:N+S7iG5NP
トリップテスト
438セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/23(水) 22:03:01 ID:N+S7iG5NP
おい偽者、いい加減にしろ!

そういえば過去ログで「巡査物語」さんと「はずかしいけれど」さんに
こういうエロい偽者が立ったことがあったけど、同一人物か?

「はずかしいけれど」さんに対しては「はずかしいにゃあ」としてエロい亜流ストーリーを形成していたが、
もしやまたそれをやる気か?

そして別スレができたなら、私はどこで書けばいい?
439本当にあった怖い名無し:2009/09/23(水) 22:13:16 ID:35Pv6ftf0
本物のセイレーンさん
作品はこちらでいいですよ。
邪魔な感想や雑談があっちに行けばいい話なんですから・・・・
雑談や感想でスレ消費が激しくて過去ログ行かないとストーリーがわからなくなってますから。
440empty ◆M21AkfQGck :2009/09/24(木) 00:27:57 ID:4GlgfadE0
方針決定の巻。
随分グダグダになってしまいました。
次でやっと3日目に突入です。


ラウンジは思ったより広かった。
絨毯が敷かれた部屋には机や椅子、マッサージ機などが備え付けられており、ガラスの向こうにプールが広がっている。
“靴を脱いで上がってください”の注意書きを堂々と無視して土足で入るのは背徳感があったが、すぐに消えた。
なんせ、部屋が包帯まみれなのだ。
道路で見たような、所々赤や黄色に変色した包帯があちこちに引っ掛かっている。
絨毯に違和感を感じて足を上げてみれば、そこだけ黒く染まっていたり。
部屋の隅に備え付けられていたであろう薄型テレビは見事に液晶が割れ、無残に床の上で転がっている。
「酷いですね、これ」
「まぁね」
気にした様子も無く、女の人は紙パックを床に放り捨ててガラスに近寄った。
何も言わず、それに続く。
そこから見えるものは、途中にあった売店から盗ったと思しき水着を着て、プールではしゃいでいる友人の姿だった。
よく見ると、ガラスの内側からも外側からも手の跡、それも血でつけられた跡がべっとりとこびりついている。
監視カメラからの映像ではわからなかったが、プールの中もあちこちに包帯があった。
大半がプールに漂い、それはそれは奇妙な光景を描き出していたりして。
………。
無言の時が流れた。正直、居心地が悪い。
「…で、作戦会議って?」
仕方ないのでこちらから切り出してみることにした。
女の人は胸のしたで腕を組み、
「そうね、まずは生存かしら。第一条件ね。
 次に、状況の解決。これは無理だから状況からの脱出、ってところかな」
441empty ◆M21AkfQGck :2009/09/24(木) 00:30:19 ID:4GlgfadE0
―――脱出…?
考えてもみなかった。
今体験している状況が全てだとばかり思っていた。
いや、そもそも。
「脱出ったって、どこにですか」
「どこでもいいからここ以外に住んでる人の連絡先知ってる?」
首を横に振る。
そもそもそんな知り合いが居たとしても携帯が使えないのだから意味が無い。
それにふんふんと頷いた女の人は、
「じゃあ、まずはそこ。これが地域的なものなのか全国的なものなのか、或いは世界的なものなのか。その判断がつかない以上は動きようがないわ。
 地域的なものならその範囲から出れば安全だし、外部の人間にここのことを言えばいい。あわよくば、その境界線に助けが居るかもしれない。
 残りの二つの場合は、絶望ね。逃げ隠れしなきゃ生きていけない。それでも諦めないのなら生きればいいし、絶望したなら死ねばいい。
 ここまではいい?」
そう言いながら手近なソファに座る。手で『座って』と言っているので、向かいにあるソファに腰を落ち着けた。
机越しに話を聞いていると、何とはなしに作戦会議の空気を感じられた。
「でも、この状況ではどの程度までこれが広がっているのか判断がつかない。
 だから、まずは動いてみるべきだと思うの。
 そう、例えば県外に出てみるとか」
「そんなに焦って行動しなくてもいいんじゃないですか?
 まずは、どこかの家にでも入ってこの地域以外の電話番号にかけてみるべきだと思いますけど」
「でも電話越しだとアレかどうか判断できないわよ。
 むしろ罠にかけられる可能性の方が高いと思わない?」
「それはないよ」
いつの間にかプールから上がった友人が、水着のままにラウンジへと入ってきていた。
体や髪をちゃんと拭いていないらしく、絨毯に染みを作りながら近づいてくる。
「そっちは忘れてるみたいだけど――」
顎で自分を示し、
「――実は、警察に電話をかけたことがあってね。
 プールで泳いでいる最中に思い出したんだけど、電話越しでもアレってはっきりとわかったよ。なんせ、あの音だもの」
442empty ◆M21AkfQGck :2009/09/24(木) 00:31:46 ID:4GlgfadE0
そういえば…そんなこともあった。
指摘されればはっきりと思い出せる。
あの、電話越しにさえ脳髄に響く嫌な音を。
「…とすると、録画したり録音したものを見ると、ノイズが消されるのかしらね」
開いていたソファに座り込んだ友人が答える。
「さぁ、わかんないし試す気にもなれないけど。
 でも、動くんなら対策にデジタルカメラでも持ってたら? 案外普通に映るかもよ。…まぁ、電話のことがあるし期待はできないけど」
「デジタルカメラなら、暗視機能があるのもあったよな…。持ってて損は無いと思いますけど?」
まぁ、問題はどこで手に入れるかということなのだが。
やはり、今朝思いついた多店舗が集合した所に行くしかないということか。
そこまで無理をして手に入れるほどのものでも無い気がするが。
「いやいや、それにしてもここも包帯だらけだね。
 エントランスとかロビー、更衣室には無かったっていうのに」
友人が爪先で包帯を弄びながら呟いた。
言われてみれば、エントランスに入ったときはこれといって変なものはなかったように思う。
道路はあんなに包帯まみれだったというのに。
行ったところで包帯が落ちてなかった所と言えば、途中で入った店と、
「廃ビルもそうだったじゃん」
「あーあー、そうだったね。何だろう、規則性でもあるのかな」
「…そもそも何で包帯が散らばってるの?」
斑模様の包帯が次々と一箇所に集められる。
大小様々だが、何らかの染みがあるところだけは共通していた。
集めたそれを腕や脚に巻き付けている様子を見て、ふと“弟”のことを思い出していた。
あいつも、手首に包帯を巻いていたはずだ。こんな暑い時期に薄手とはいえ長袖の服を着ていたので、何となく覚えている。
…それに、あんなことがあったこともあるし。
443empty ◆M21AkfQGck :2009/09/24(木) 00:33:04 ID:4GlgfadE0
―――でも、その前の日はしてなかったはず。
その前の日、と言っても朝に顔を合わせただけだが、その時は確か半袖を着ていて、どこにも包帯は巻いていなかった…ように思う。
自分が居なくなった昼から朝までの間に何かあったことは確実で。
「…あー、そういえばあの日は包帯だらけだったな」
「あの日?」
「ほら、一緒にゲーセンに行った日。えーと、こんなことになった初日?
 包帯を巻いてた人ばっかだった」
「そういや、そうだったね。
 あの人たち、なーんか感触がしたんだっけ」
平和だった最後の時間を思い出してか、友人が笑った。
「それ、じゃないの?」
内輪の話であったが故に今まで黙っていた女の人が、会話を遮る。
「「え?」」
友人と同時に、恐らくかなり間抜けな顔をして女の人の方へ向いた。
「私も、ここに来た時にやたら包帯を巻いてる人が多いなって思ったの。
 知り合いも包帯を巻いてたし、やたら引き止めようとするし、こっちを凝視してくるし…」
弟に力ずくで引き止められたことを、その瞬間を思い出した。
それだけで、何故か全身に鳥肌が立った。
一昨日のことなのに、やけに昔に感じる。
「…でね、いざこんな事態になって見れば、包帯をしてる人なんて居なくて、アレばかりが居る。残されたのは大量の包帯。
 …これだけ揃えば、疑うのは当然でしょ」
はぁ、と友人が生返事をした。
かくいう自分も、いまいちピンとこないが、頭のどこかでその推測を肯定する自分が居る。
…そもそも、きちんと見れないのがいけないのだ。アレをきちんと見ることができれば、傷跡とか包帯を巻いていた痕から仮説を証明できように。
「…ここまで話して、何にも決まらないですね」
「仕方ないでしょ」
女の人が溜め息をついた。
444empty ◆M21AkfQGck :2009/09/24(木) 00:36:27 ID:4GlgfadE0

友人もまた、ソファに身を預けてどこか上の空。
自分もまた溜め息をつき、
「…とりあえず、どっかに忍び込んでできるだけ遠くの電話番号にでもかけるってことで」
「…県外に行けばいいじゃん。移動中とか電話番号を探してる最中に見つかったらどうすんの?」
「………」
「賛成二、反対一ってことで」
どうやら方針は決定してしまったらしい。
ふと気がつけば、ガラス越しに夕陽に照らされていた。


こうして振り返るとこの話はこんなに文を連ねた意味があったのか凄く疑問ですね。
とりあえず、今後の行動方針(この話の終わり)を提示しただけ、という…。あと包帯が散らばってることに関して?
あー、もっと考えて書けば良かった。後の祭り。
次は今まで動かなかった分を取り戻すくらいに動く、かも…?

ではまた。
445セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/24(木) 20:38:58 ID:/d7X22fZP
emptyさん、スレが荒れてしまってすみませんでした。

>>421
「ゾンビはガン細胞の進化したやつ」いいネタありがとうございます。
ここで書き続けようとする限り読み手のニーズは無視できないので、
たまに三国志ではないものを投下しようと思います。
もっと短いやつを。

その分、ゾンビ三国志の投下は遅くなるでしょうが、その方が多くの読者が楽しめると判断しました。
もちろんゾンビ官渡は続けますよ!
446セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/24(木) 20:45:00 ID:/d7X22fZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(130)

曹操の前に、昼食の膳が運ばれてきた。
やはりご飯が少なくて、肉ものが多くなっている。
曹操は貴重な食物を口に運びながら、作業の報告に来た徐晃に質問した。
「民からは、どの程度食糧を徴収できそうだ?」
それを聞かれると、徐晃は苦々しい顔で答えた。
「穀物や家畜は城中のものを集めて三日分・・・それほど多くはありませぬ。」
「良い、三日ももてば十分だ。
脱出にそれ以上時をかける訳にはいかぬ。」
曹操は香り高いお茶を飲み干し、ほうっと息をついた。
脱出のためのトンネルは、脱出という目的のだけなら長く掘り、城から出口が遠ざかるほどいいだろう。
しかし、現実は違う。
すでにこの城以外の村や町にもゾンビは向かっているのだ。
いくら遅いとはいえ、ゾンビは不眠不休で歩き続ける。
それを考えると、いつまでもここで穴を掘っている訳にはいかない。どこかで折り合いをつけて早めに脱出し、都や要所の対応を考えねばならない。
やっと脱出して帰った都がゾンビの巣になっていたら、本末転倒だ。
「一部の民が、食糧の供出をしぶっておりました。」
徐晃の報告に、曹操は少し眉をひそめた。
「そやつらはどう処理した?」
「民を集めて今の状況を説明しました・・・が、信じられぬと我らを疑う者が多くいました。
それらの者は城壁に連れて行き、実物を見せてやりました。
それでも馬鹿な事を言うなとわめく老人がいましたもので・・・老人を縄で縛って城壁からゆっくり下げ、食われるところを他の者に見せてやりました。」
それを聞くと、曹操は残念そうに言った。
「よくやった・・・が、もっと良い方法がある。
これから逆らう者は首をはねよ。
その方が、兵に多く食糧を回せる。」
徐晃は無言で頭を下げて去っていった。
大業のためなら人の命など歯牙にもかけない冷徹な男、それが曹操なのだ。
447セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/24(木) 20:45:41 ID:/d7X22fZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(131)

「脱出の事について、話があります。」
昼飯が終わると、荀攸が相談にやって来た。
「脱出のために掘らせたトンネルは合計十五本、その一本一本は人が一人立って通れる程の広さしかありません。
地上に出た時点でゾンビに気付かれることを考えると、とても全員脱出はできませぬ。
誰を確実に逃がすのか、優先順位をお決めください。」
それを聞くと、曹操は一瞬あっけにとられた。
「優先順位だと・・・そうか。」
民や敵には容赦のない曹操も、味方を切り捨てるとなれば訳が違う。
しかし、切り捨てなければならない。
ゾンビがトンネルの出口に到達するまで、限界まで多く脱出しようとすれば、最後尾から感染が広がってしまう可能性が高い。
自分たちが都に感染を持ち込む事だけは、あってはならない。
最低限の人数で効率よく脱出し、すぐここを離れなければならない。
「まず武将が優先だ。
万が一出口付近にゾンビがいた場合に備え、先頭は徐晃と夏侯淵に任せる。
その後におれと許褚、荀攸も一緒に来い。今回の脱出はひたすら己の足で歩かねばならぬ、一隊に文官は一人が限界であろう。
後ろは于禁、李典、曹仁に任せる。各将、五人ずつの兵を持たせる。
おれの隊はそれだけで良い。」
曹操はつぶさに自分の班を編成した。
「ずいぶん将を集められますな。」
「当然だ、おれが帰らねば、誰が指揮をとる?
それに、一つの隊が脱出に失敗したなら、他の出口からの脱出も成功の可能性は低いであろう。これは一発勝負と考えて良い。
それと・・・帝の避難先が必要だ、袁紹は別働隊とする。」
448セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/24(木) 20:46:38 ID:/d7X22fZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(132)

曹操は少し辛そうに顔を歪めた。
「袁紹には張郃と高覧、そして文官は郭図を付ける。
おれは南へ出て都へ向かい、袁紹は西か東から出て河北に帰り、帝を受け入れられる体制を整えてもらう。」
その言葉で、荀攸は全てを理解した。
曹操はもう、河南からゾンビを撃退することは不可能と分かっている。
形式上戦に勝ったのは曹操だが、領土が無事なのは袁紹だ。
これから先、曹操の領土で人間が安全に生きていくことはできなくなるだろう。
曹操にできる事は、一刻も早く帝と優れた人材を大河の向こうに非難させる事だ。曹操にとってはひどく辛い事だが、これが現実だ。
幸いな事に、袁紹が治める冀州は豊かだ。新しい都として発展できる土地だ。
そしてその土地には、袁紹配下の優秀な人材がまだ多く残っている。
そのためには、袁紹には何としても生きて河北にたどり着いてもらわなければならない。
文官に郭図を選んだのも、そのためだ。
郭図は袁紹にしか従わないが、逆に言えば最も忠実に袁紹を守るだろう。
郭図が袁紹のために命を惜しまぬ事は、昨日の沮授の件で実証済みだ。殿のためなら喜んで囮になるだろうし、万が一感染しても、逢紀のようにごねたりせずにあっさり自殺するだろう。
それに、郭図は自力で弩を扱えるし、木の丸いすを振り回すくらいの力はある。
武将が少ない袁紹隊において、これらの要素は重要だ。
「審配殿と逢紀殿は・・・残して行かれるのですね。」
荀攸が言うと、曹操はうなずいた。
「うむ、審配は体力がなさすぎるし、逢紀は信用ならん。
我が軍にも楊修がいるのだ。審配は余裕があるなら兵だけの隊に混ぜても良いが、文官を全員脱出させる事はできぬ。
・・・郭嘉には、辛い思いをさせる。」
病で伏せっている郭嘉は、生存を目的とするなら連れてはいけない。
残酷なようだが、隊の中に重病人がいるとそれだけで移動速度がだいぶ違ってくる。
曹操の心中を思って、荀攸は目頭を押さえた。
曹操はそんな荀攸に、念を押すように言った。
「今の話、脱出のその時まで漏らすでないぞ。
審配と郭嘉はともかく、逢紀がどんな行動に出るか分からん!」
荀攸は黙ってうなずいた。
449セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/24(木) 21:04:15 ID:/d7X22fZP
>>感想・雑談11
名前が読めない→ごもっともです、すんません。
中国人はだいたい漢字2、3文字の名前で、前1、2文字が姓、後ろ1文字が名です。
例:袁(姓)紹(名)本初(字、あだ名のようなもの)
  夏侯(姓)淵(名)妙才(字)
まれに姓と字をくっつけて呼ぶことがあります。例:袁本初

名前の読み1 見方:姓名・字(姓・名・字)
字を使う予定のない人は字を省略、字が分からない人もいる。
袁紹・本初(エン・ショウ・ホンショ)
郭図・公則(カク・ト・コウソク)
審配・正南(シン・ハイ(パイと読む場合も)・セイナン)
張郃・雋乂(チョウ・コウ・シュンガイ)
許攸(キョ・ユウ)
逢紀(ホウ・キ)
沮授(ソ・ジュ)
高覧(コウ・ラン)
だいたい漢字を音読みしてつなげれば間違いないかと。
450セイレーン ◆Nbi4DgASvs :2009/09/24(木) 22:02:33 ID:AK4aCxzI0
それからしばらくの間、部屋には豪快な水しぶきの音が何度も響いていた。
服も脱がされず、何回も冷たい井戸水をかけられた為、
体温の下がった董白はガタガタと震えている。
「うっ…うう……」
何回目かの水がかけ終わり、汚れが取れたことを確認すると看守は何も言わず出て行った。
牢の鍵が閉められ、一人の時間が訪れる。
部屋には蝋燭も何も無い為、戸の覗き窓から入る光が部屋の唯一の灯りだ。
董白は差し込む光を頼りにフラフラとした足取りで壁に寄りかかると、
部屋に唯一あった筵を身体に巻きつけ、足を抱えて座る。
筵くらいで体の寒さは取れないが、無いよりはマシだった。
董白は俯き眠ろうとするが…眠れない。
目を閉じると、これから自分に起る事を想像してしまうからだ。
「ひっ…ヒック…うっ…ヒック…おじい…さまぁ…」
暗闇に包まれた石畳の部屋には、すすり泣く声だけが響いていた。

451セイレーン ◆Nbi4DgASvs :2009/09/24(木) 22:03:37 ID:AK4aCxzI0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(133)

―――同時刻。牢屋の上にある建物では巧みな琴の演奏が行われていた。
「くぁ〜〜ふにゃ…ふにゃ」
琴の演奏を聴きながら横になる女性が一人。
名は蔡文姫。あの歴史家として有名な蔡ヨウの娘である。
猫の様に気持ちよさそうにゴロゴロと寝転がっていたが、
琴の演奏が次の曲に入ると、むくっと起き上がった。
「ちょっと王異〜弦切れてるでしょ」
演奏していたのは女傑と名高い王異だった。
確かに、彼女の弾いていた琴は弦が一本切れてしまっている。
「よく気付いたわね。この弦の音を使わないように工夫したのに」
「あったりまえだよ〜その曲、その音が無いと別の曲にしか聞こえないもん。
  もぉ〜、何で直さないで弾いてるかなぁ〜」
蔡文姫は頬を膨らませる。
「よく寝てたから、演奏を止めて起こしちゃいけない…と思ったのよ。
  まぁ、無駄な気遣いだったみたいね」
「言い訳は結構です!いいから、ちゃんと直しておいてね!
  手を抜いたら音で分るんだから!」
敵わないわね、といった感じで王異が笑う。
「ふふっ」
「もう、何笑って…」
その時だった。蔡文姫の耳に聞きなれぬ声が聞こえる。
452セイレーン ◆Nbi4DgASvs :2009/09/24(木) 22:04:56 ID:AK4aCxzI0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(134)

『おじいさまぁ…』
「!?」
蔡文姫はハッとしてキョロキョロと辺りを見回す。
「ね、今…何か聞こえなかった?」
王異がきょとんとした顔をする。
「…?何も聞こえないけど」
「そっか、気のせいかな……?」
考え込んだ顔をしながら、蔡文姫は窓の外を眺めた。
陽は傾き、沈もうとしている。紅く染まる夕日を見ながらさっきの声を思い出す。
(『おじいさまぁ…』)
「消えそうな程儚い声。全てに絶望して世の愁いを嘆く。
 ………まるで昔の私の様ね」
蔡文姫は悲哀に満ちた表情をすると、王異にも聞こえぬ声でボソリと呟く。
その声はまるで別人のようで、さっきまでの明るさは無く…寂しさに満ちた声だった。
453セイレーン ◆Nbi4DgASvs :2009/09/24(木) 22:06:31 ID:AK4aCxzI0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(135)

「自分から動くとは。くく、そんなに気持ち良くなりたいのか」
自分の腹の上で頑張っている董白を小馬鹿にするように曹操は笑う。
「ぐっ、ちがっ……そんな事…ああっ、あっ、ああっ!!」
「ははっ、何が違う。言ってみろ!」
曹操はそう言い、下から突き上げ始めた。
その勢いは今までより激しく、小さな少女の身体は突かれる度に激しく揺れる。
「ぁぁっ、ひうっ…ううっ!!もっ…やぁぁぁ……」
耐え切れなくなったのか董白は泣き始めた。
大粒の涙を流し、この状況を否定するかのような声をあげる。
それに呼応するかのように膣内の肉棒はビクビクと脈動が大きくなっていく。
「もっと絶望させてやろう。…射精すぞ」
その一言を聞いて董白は焦り、声を荒げる。
「ひっ…!?嫌っ!!やだっ、やめて!!中は嫌っ!!やだぁぁぁ!!」
「…っ」
曹操は笑みを浮べ、董白の足を押さえると一番深いところで種を吐き出した。
勢いよく飛び出した白濁液は、血に塗れた膣内を洗い流すかのように、汚していく。
「うぁ…あ……気持ち…悪い…あ…あぁ…」
董白はうわ言のように呟きながら、
注ぎ込まれる度、身体を小刻みにビクビクと震わせている。
ひとしきり吐き終え、満足した曹操は肉棒を引き抜く。
小さい少女の膣内は白濁で満たされ、少し開いた陰唇からあふれていた。
「うっ…ううっ……ヒック…」
肩を震わせ、泣く董白。だが、曹操の攻めはこれで終わりではなかった。
「…随分と汚れてしまったな」
そう言うと、曹操は自身の下腹部を見る。
…確かに、彼の陰茎は血と白濁の混ざり合った液で濡れ、白とも赤とも言えぬモノを滴り落としていた。
曹操は力なく座り込み、俯いている董白の髪を掴むと
持ち上げ、生臭い異臭を放っている肉棒へと董白の顔を寄せる。
「お前の口で綺麗にしろ」
454セイレーン ◆Nbi4DgASvs :2009/09/24(木) 22:08:33 ID:AK4aCxzI0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(136)

しかし、董白は聞こえていないようで、まるで舐めようとしない。
さっきのショックが大きかったのか、気がどこかへ飛んでしまっているようだった。
曹操は軽く「チッ」っと舌打ちをすると半開きになった董白の口へ肉棒をねじ込んだ。
異臭となんとも言えぬ味を感じ、ハッと正気に戻る董白。
しかし、遅かった。一気に喉の近くまで入り込まれてしまう。
「ふぐっ、んっ!!んんーーーー!!」
喉の奥まで入られまいと、舌を丸め上げ侵入を拒む。
だが、舌の感触が曹操の肉棒を刺激してしまい勃起を促がしてしまっていた。
「はは、さっきより上手いじゃないか。自分から舐めるより
  こうして無理矢理されるのが好きなのか?」
曹操は董白の頭を前後に揺すり、口内の感触を楽しむ。
徐々に大きくなる肉棒を舌が抑えきれなくなり始める。
口の中に広がる血となんとも言えぬ苦い味に気を朦朧とさせられたのか。
董白はもうこれ以上は耐えられないとあっけなく諦め、丸めた舌を緩めた。
「(もう、早く終わって……)」
だが、この判断が誤りだった。
舌の抵抗が無くなった事に曹操は気付くと、喉の奥を狙い突っ込み始めたのだ。
あまりの苦しさに、董白は眉をひそめる。
そして、勢いよく喉仏まで肉棒が侵入した瞬間…
「ふっ…!?うぐっ…うっ、おえぇぇ!」
余りに喉を刺激された董白は遂に吐いてしまった。
床に胃液を撒き散らし、部屋の中が独特の匂いで包まれる。
その哀れな様に曹操は呆れ、溜息をつくと掴んでいた董白の髪を離した。
「やれやれ。これからというところで………興がそがれたな。
  今日はここまでにしてやろう。…おい!」
服を着ながら、外に向かって叫ぶ曹操。気付いた看守が戸を開け一礼する。
「水でも汲んできてかけてやれ。臭くてかなわん」
「はっ」
曹操はそう言うと倒れこむ董白を見もせず、牢屋を後にした。
455本当にあった怖い名無し:2009/09/25(金) 02:45:28 ID:wZXOdNr9O
偽物はとりあえず消えろ
つうか才能ねえよお前
わざわざ難しい言い回しを使おうとして雰囲気壊す典型的な俺スゲー厨の文章が痛すぎ
456本当にあった怖い名無し:2009/09/25(金) 13:18:37 ID:DItnbGudO
気持ちよく抜け…ませんでした('A`)
起ちもしなかったわorz
457empty ◆M21AkfQGck :2009/09/26(土) 01:01:03 ID:UhOggDU50
ニセモノ以前に、ニセモノにすらなりきれていないかと
トリつけてる以上ただ馬鹿を晒しているだけという気がします
458本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 01:02:32 ID:CQmHJjkD0
まあ偽者が出たりアンチが出現するのも人気作家の宿命かw

つーかageなきゃ落ちるぞ!w
459本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 07:25:16 ID:LL27oCJR0
ネタばれ

マイケルの母は生きていて悪い人だった
マイケルとリンカーンは実の兄弟ではなかった

プリズンブレイク
460本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 09:14:45 ID:iDwX94ufO
偽物は取り敢えず恋姫キャラで書けば?
読めるものになると思う。
461本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 11:00:09 ID:rj47svfRO
三国志作者が来るとスレが荒れるからもう投下して欲しくない

アンチのスルーすらできないからさらに荒れる
462本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 12:52:41 ID:LGzpgErV0
雑談したいならこっちでしてくれ。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1253705232/l50
書くほう読むほう両方に取って邪魔になるから
463新人さん:2009/09/26(土) 19:19:06 ID:2r6ziFpT0
ゾンビと横須賀(23)

「詳細はそこに書かれているが……簡単に言ってしまえば寄生虫じゃ。条虫、回虫、名前ぐらいは聞いたことあるじゃろ、のう」
「寄生虫……」
 ゾンビの原因がなんなのか、考えたことがないわけではない。だが、日々の忙しさにかまけてそんなことに考えを回す余裕はなくなっていっていた。
 ファイルケースを手に取る。
 表面に大きくシークレットの表記がされていた。頁をめくると、白い芋虫のような奇怪な生物の写真が目に留まる。補足で体長が1〜2mmとあるから、芋虫ではありえないだろうが。
「これが全ての元凶じゃ。とりあえず、形状が近いということでWORMと呼ばれておる」
 オードはそこで一拍おき、和也をちらりと見る。和也は理解が追いつかず、やや顔をしかめていた。
「イモムシと言えばわかるかね」
 ようやく和也が理解の色を示す。
 この老人、研究者という職業柄なのか、かなりめざとい。人に物を教えることに、ずいぶんと慣れているようだった。
 和也がやや恐縮すると、手のひらほどの立派な顎鬚をしごきながら、オードは声を出さずに笑った。
「まあ、詳しいことはさーっぱりわからん、というのが現状じゃがの。それでも、多少は分かっていることもある」
「具体的には?」
「うむ。小僧っ子は寄生虫とはなんじゃと思うかね?」
 質問に、質問が帰ってくる。
 ほんのわずかな時間で、まるっきり教師と生徒の図式が出来上がってしまっていた。
「寄生虫・・・虫が体の中に住み着く・・・かな」
「ほっ。随分と片寄った知識じゃの。残念なことに、体の外、表皮に住み着く寄生虫もおる。もちろん、体の中に住み着く種類がほとんどじゃがの。ほれ、それ以外に寄生虫を定義するものとはなにかの?」
 普通の生活をしていれば、寄生虫などに関わることはほとんどない。平和な時代に見たTVや本などの類で多少は知識として知っているが、それとて脚色の多いフィクションとしての知識だ。専門家に対して語れるほどの知識を和也は有していなかった。
 明らかに困り顔になっている和也に、ケビンが嘲笑を送ってくる。
「どうだね?」
464新人さん:2009/09/26(土) 19:20:33 ID:2r6ziFpT0
ゾンビと横須賀(24)

 知識にないのだから、考えてみたところで分かるわけがない。和也はこれ幸いとばかりに両手をあげ、降参のポーズをとった。
「ふぅむ。多少は目端が利きそうな小僧っ子じゃと思ったんだがの」
「そういわれましても。知らないことは答えようがないので・・・」
「なんじゃ、それは。小僧っ子は科学者がみんななんでもかんでも知っているとでも思っておるのか。知らないことを知識と推測と勘で解明していくのが科学者ってもんじゃ。お主はちと、偏向癖があるようじゃの」
 言われてみればその通りなので、反論のしようもない。
 和也は小さく肩をすくめ、オードのため息をやりすごした。
「寄生虫というのはの、基本的には宿主を殺さないものなんじゃ。宿主が死ねば自分も死ぬからの。中には例外として、宿主を殺してその死体から別の宿主へと移動する種類もおるが、ワームの場合はこれには当てはまらないじゃろう」
「どうして?」
「生きている宿主の体内に入ったワームは、血流に乗って全身をめぐりながら、2つの場所を目指す。一つが、脳。もう一つが心臓じゃ」
 オードの合図で、ケビンがファイルを数頁めくった。
 現れたのは、ゾンビを殺さずに解剖した写真だ。各種の臓器が摘出され、それぞれの状況とともに写真が添付されている。
 その中で、脳と心臓に関しては大きく赤丸がつけられ、さらに詳細なクローズアップ写真が数枚添付されていた。

【各部の状況:脳】
 添付写真A参照。海馬、および左脳を中心にワームが多数寄生。脳に進入する際の経路となったとおぼしき血管の穴には、ワーム数十匹と血小板が結合して白い蓋、“白塊”で塞がれている。
 添付写真B参照。海馬摘出時の写真。海馬には複数の亀裂。ワームの体内に保有されている溶解液により作成されていると推測される。亀裂内では白塊により塞がれている。
465新人さん:2009/09/26(土) 19:21:33 ID:2r6ziFpT0
ゾンビと横須賀(25)

 軽くみただけでも、嘔吐を催すような様相だ。
 脳と同じく、心臓も多数のワームによって侵食されているようだった。
「これは・・・」
 声にならない声が、喉の奥でぐるぐると音を立てている。吐き出す息が、やけに生臭かった。
 読んでいるはずのファイルの文字が、やけにぼんやりと遠くなっていた。
「落ち着きなさい。深呼吸をするといい。誰でもこんなものを見ればパニックになる。小僧っ子が特別というわけじゃないからの」
 言われるまま、ゆっくりと深呼吸すると、少し胸のつかえが取れたようだった。和也は天井を見上げてもう一度深呼吸すると、再びファイルケースに目を落とす。
 スプラッター映画でしか見たことのないような光景だが、それでも見るしかない。この糞ったれな現実から目をそらしても、何も得るものはない。少なくとも、自分のプライドを捨てる価値は見出せない。
「ワームは、なぜ脳とと心臓を目指すのですか?」
 困惑に多少声が震えてはいたが、さきほどの様子を考えれば十分にしっかりとした調子だ。
 オードは和也の様子に満足したのか、軽くうなずいて説明を始めた。
「恐らく、ワームは宿主の乗っ取りを行っているのじゃろう」
「乗っ取り?」
「言葉の通りじゃよ。ワームが人間を操縦している、と言ったほうが分かりやすいかの?」
 驚愕の事実だ。
 一瞬、和也の頭の中が真っ白になった。次いで、何かに殴られたようにぐわん、と頭が回る。
「・・・なに?」
 かろうじて言えたのはそれだけだ。
「海馬には人間の記憶がつまっている。ここを失えば、人間はただの肉の塊じゃ。植物人間じゃな。左脳は体の運動神経をつかさどる。ワームは微細な電気を発することができる。
 ここを制圧すれば、人間を操縦することも物理的には可能じゃ。もっとも、ワームにまともな知能がないから、本能のままに行動しておるがな」
466新人さん:2009/09/26(土) 19:22:52 ID:2r6ziFpT0
ゾンビと横須賀(26)

 オードは腕組みをし、顎ひげをしごいて、再びファイルの頁をめくった。そこには、赤黒く変色し、ワームが群がった心臓の写真が映し出されている。
「ワームに乗っ取られた心臓じゃ。ワームは脳と心臓に数が集中しておる。この心臓は、通常の心臓の約2倍の大きさに肥大しておるな。
 普通ならばそれだけ肥大化した心臓は逆に血液を送り出すポンプとしての能力が低下するものじゃが、それをワームが補助し、心臓の大きさに比例した能力値の向上をみているようじゃ」
 オードに差し出された写真には、通常の人間の心臓と、ワームに侵食された心臓がパットの上に並べて写されていた。
 確かに、ワームに侵食された心臓は普通の心臓の2〜3倍の大きさがありそうだ。
「じゃが、この高圧の血液循環が身体に良い影響を及ぼすわけじゃないでな。逆に体に負荷がかかる。
 じゃから、通常よりはるかに遅い速度ではあるが、少しづつ腐っていくし、普通の人間と比べて瞬発力に難がある。ただし、疲れを知らないからスタミナや力に関しては人間を上回る」
 和也はようやく再起動した脳に無理矢理情報を詰め込み、小さく息を吐いた。今は理解するよりも、とりあえずすべての情報を頭に叩き込むことが優先だろう。
 実際、過負荷とも思えるほどの情報過多の状態では、すべての情報を的確に理解して判断することは非常に難しい。
 それが可能な状況であるならば、とりあえずすべての情報を脳内の倉庫に放り込み、落ち着いた状態で一つずつ処理していくのが上策だ。
 多少は戸惑ったが、そうとわかればやることは一つ。できる限りの情報の収集だ。
 和也はオードを真っ向から見据え、聞いた。
「アルファゾンビと、オメガゾンビっていうのは?」
 和也の一瞬の変わり様に、オードがにやり、と笑った。
「出来の悪い生徒が普通の生徒になりよったな」
 軽口を叩いて、オードも真剣なまなざしで和也の視線を迎えた。
「アルファゾンビとは、普段小僧っ子が相手にしているゾンビどものことじゃ。知能もへったくれもない、ワームに脳を乗っ取られたことで、本能のままに餌を求め、ワームの増殖を手助けする哀れな生き物じゃ」
「オメガゾンビは?」
467新人さん:2009/09/26(土) 19:23:39 ID:2r6ziFpT0
ゾンビと横須賀(27)

 オードは胸ポケットから2枚の写真を取り出し、和也の下に滑らせた。
 1枚目写っているのは中央を透明の壁で仕切られた水槽の中に閉じ込められた、ネズミ。片方の集団が感染しているようで、壁の向こうのもう片方の集団に襲いかかろうとしている。
 奇怪なのは、襲っている集団の後ろにいるネズミである。黄色い目印が前足につけられているが、他のネズミに襲われるでもなく、襲う側に混ざるわけでもない。
 2枚目もネズミの集団だ。同じアングルで取られているが、劇的な変化を遂げていた。
 襲おうとしている側のネズミが壁際にうずくまり、その上にさらに違うネズミがうずくまり、さらにその上に、と水槽の仕切りを乗り越える高さまでネズミの段が続いている。
 そして、壁の向こう側には血の海に沈んだ複数のネズミと、前足に黄色い目印をつけたネズミがいた。
「わかるかね。これが、オメガゾンビじゃよ。どういう理屈かは分からないが、このネズミは脳にワームの進入を許していない。心臓も肥大化せず、通常のネズミと同じ状態じゃ。そして、アルファゾンビどもを従える」
「・・・ネズミとしての知能を持ったまま、ゾンビになる?」
「そうじゃ」
「人間にも、同じことが起こる?」
 オードと和也の視線が絡む。
 強い意志と、そんなことがあるわけがない、という否定を望む惰弱な意志のぶつかり合いだ。
 和也はあさっりと降伏し、視線をそらした。
 それ以上の言葉を聴きたくはなかったが、オードは力強くトドメの言葉を継げた。
「人間にも、オメガゾンビは生まれる。知能を持ったままゾンビになった、人間ではない人間じゃ」
 なぜだか、和也の頬を涙が伝った。
468新人さん:2009/09/26(土) 19:30:00 ID:2r6ziFpT0
ちょっと微妙な雰囲気なのでどうかと思ったんですが、投下したほうが他の作者さん方の援護になるような気もしますし。
ということで投下しました。
色々あって長くかかってしまいましたが、自分的に一番面白い部分が書けたと思ってます。
感想とかかなりうれしいので、みなさんよろしくお願いします^^
469本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 20:32:26 ID:3sH8RQU3O
新人さん待ってたよ〜〜!!!
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
470本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 22:58:32 ID:CQmHJjkD0
おお新人さん久しぶりです。アンタの小説も大好きですw
あまり細かい設定ミスとか気にしなくていいんでできればもっと早く投稿してもらえれば嬉しいですw

あとトリップを付けるようにお願いいたしますです。
あとオラ板の別スレで小説板の雑談専用スレもできたんでそっちも見に来てください。
471本当にあった怖い名無し:2009/09/26(土) 22:59:36 ID:CQmHJjkD0
オラ板じゃなくてオカ板でしたw
472おとりよせ ◆27IQKsN09A :2009/09/27(日) 04:09:16 ID:NagDhi0A0
戦場の一角、円を描くように立った多くの兵士の中心で一組の男女の騎士が剣を交わしていた。
男の騎士は帝国、女騎士は王国の紋章をそれぞれ鎧につけていた。

つい三年程前までは友好的な関係を結んでいた平原の王国と山岳の帝国は、二年前に急死した先王に変わって即位した先王の弟の統治になってから急速に関係が悪化、半年後には王国側からの宣戦布告が出された。
そして今―――

「せいっ!!」
男の騎士の鋭い一閃。
30分近く続く戦いの疲れから動きの鈍った女騎士はそれを捌けず、振りぬかれた剣は彼女の首を空へと放り上げた。まるで、男の想いをも一緒に投げ捨てるかのように。

二人の騎士は四年前に出会い、深く愛し合った。婚約も交わしており、戦争さえなければ幸せな家庭を築いている筈だった。
しかし神は非情にも二人を戦場で出会わせた。
それぞれに部隊を率いる身分であったが、無用の流血の回避、そして許されぬ恋の清算の為に一騎打ちを取り決めた。

配下の兵が女騎士の部隊を捕虜として捕らえる最中、男は涙を流して恋人の首を抱いていた。
その姿はDIOの首を抱えるジョナサンのようで―――
「ね。ねえ…鎧が痛いよぅ…」

「うおわっ!?」
突然腕の中から聞こえた声に、思わず首を取り落とす男。
「みぎゃっ!!」
顔面から大地へダイブして可愛い悲鳴をあげる生首。その声に周りにいた数名兵士達も反応する。
特に王国兵は死んだ筈の指揮官の声なので困惑した。
続いてガシャガシャという鎧の音。首のない女騎士の体が動きだす。
今度はほぼ全ての兵士が気付き、パニックが起こる。
騎士が咄嗟に彼女の首を拾いあげると
「バカ、痛いじゃない!!恋人の首を落とすなんて最低!!」
元気に文句を言ってくる。
結局、男はひたすら困惑するだけであった。


473おとりよせ ◆27IQKsN09A :2009/09/27(日) 04:11:14 ID:NagDhi0A0

兵士達を落ち着かせ、二人地面に座り話を聞く。
曰く、『愛の力で復活したのよ!!』との事。なんだそれってツッコむと『うるさいうるさいうるさい!!あんたの意見は許可しないィィィィィ!!』
作者がシャナとジョジョが好きな事が追加で分かった。
首は繋がってないものの、やはり彼女は素敵だ。部下が見ているがこの喜びを伝える為に口付けを――

冷やっこい。触れた唇が冷たい事に底知れぬ恐怖を感じる。まるでケツの穴にツララを略
それに気付きもせず、自分の頭を弄びながら「……暖かい」とか言いつつ赤面―――もしてない!!

「おい、ありのまま今起こった事を話すぜ…お前の体、冷たいし、血の気もない…」
最初の真面目なふいんき(何故かry)がギャグに流れている。
「ん…じゃあ、やっぱり私死んでるんだ。なら尚更良いや」
あっさりとした答え。
「だって、私は王様に『死ぬまで』忠誠を誓ったのよ?これでずっと貴方の所にいられるわ。
それとも、貴方の愛は私が死んでるってだけで壊れちゃう物なの?」
嬉しい事言ってくれるじゃないの。
「いや、そんな事はない。ただ――そうだな、問題になりそうなのはHする時に風邪引くんじゃって事が心配だな」
冗談めかして言う。まあ、さっきから地の文が冗談めいてるが。
「アハハ、それじゃ今すぐ風邪引く?」
「それは御免被るな、ハハ…」
明るい会話に、男の部下の一人が報告に来た。
「隊長、捕虜を収容する準備が整いましたが……この女…」
ボコ。失礼な部下を拳骨で窘める。
474おとりよせ ◆27IQKsN09A :2009/09/27(日) 04:11:54 ID:NagDhi0A0
「失礼、このレディはどうするんですか?」
まあ、確かに。生ける死者への対処なんて前例がない。
「私が娶る。異論は?」
「異論は部下一同何もないですが、案じる事は。敵国の者を娶って良いのですか?それにゾンビは」
ゴツッ。先よりも強く殴る。
「失礼、生ける死者は邪神の使いとされています。立場的にもマズいのでは?我々は祝福しますが…」
尤もな意見を言い、冷静に対策を考えてもらおうとする。
「フハハハ、私達の恋路には障害が多い…その方が燃える!!」
「そうよ、私達の愛は死をも超えたの!!」
バカップル臭い発言にこんな風(→orz)になる部下。
自分にBeC∞Lと言い聞かせる。
「冷静になってください、彼女を娶るのは結構ですが、それを叶える手段を考えないと正義気取りの厨クサい宗教人に処刑されますよ?」
「うーん…生きてるふりして捕虜になるのじゃ駄目かしら?」
「その首をどうにかできれば。それに女性の捕虜の扱いは酷いですから、愚かな兵士にズコバコされたり…ああ、それで体温にも気付かれて処刑ですね」
「私の領地の屋敷に連れていくのは?」
「彼女だけ行かせたら戦場から抜ける前に見つかってその場で敵として処刑。隊長が連れてくのも敵前逃亡で処刑」

最終的に小煩い部下の鎧(規格品)を剥ぎ取り、それを彼女に着せて騙す事にした。
細部(主に胸部)に違和感があるそうだが、大体のサイズが一緒で助かった。
こうして二人は戦争の終結まで過ごした。
475おとりよせ ◆27IQKsN09A :2009/09/27(日) 04:14:26 ID:NagDhi0A0
「指、挿れるね」
男の言葉に頷く……ようなアクション。首がないから頷けない。
ツプと沈み込む指を、膣壁がキツく締め付ける。
「ああ…冷たい…」
「あっ、あっ!!あなたぁ、熱いよぅ!!」
体に、片や冷気を、片や熱気を感じる。溢れる蜜がその量を増す。
更に行為はエスカレートする。
「ちょ、バカバカ、どこ見てんのよ!?」
女の脚を大きく開き、その股間、更に秘部までを指で開いて凝視。恥ずかしいにも程があるってものだ。
そんな事を意に介さずに
「綺麗だ―――うん、本当に綺麗。お前にも見せてやるよ」
言って、彼女の頭を彼女自身の股間へと運ぶ。
「や、やだぁ…もう…あなたのせいで、私、こんないやらしく…」
満更でもない様子。
十分に濡れている事を確認し、本番への移行を問う。
彼女は顔を真っ赤にして……いるような、恥ずかしげな顔で一言、良いよと呟いた。
476おとりよせ ◆27IQKsN09A :2009/09/27(日) 04:16:06 ID:NagDhi0A0
「じゃあ、挿入れるね」
「優しくしてよね」
男は自らの分身をあてがうと、一気に挿し貫いた。
彼女の体はそれをすんなり受け入れ、ズッ、ズッとピストン運動が繰り返される。
肉棒が奥に届く度、嬌声が上がる。
「うあっ、んあぁっ!!いい、いいのぉ!!中にいっぱい感じるのぉ!!」
昂ぶり続ける二人。それと共に腰の動きも加速していく。
そして――――
「来る、来るよぉ!!何か来ちゃう!!来る、くる、くりゅぅぅぅぅぅ!!」
「私も…もう、限…界……だ………」
びゅっ、びゅるるるるるるるるるるる!!
二人は同時に果てた。




「今、分かった事がある」
「何?」
二人は裸でベッドの上、他愛のないおしゃべりをしている。
「自分の体がカッカして、案外平気だ」
いつぞやの冗談への回答。
「ああ、そうなんだ……へーちょ」
返事をして―――くしゃみ。呼吸しないのに何故かくしゃみはする。
「あ、あれー、どしたのかなへくしょっ!!」
「おい、まさかこの展開は……」

そう、結局そのまさかで―――風邪に苦しむアンデットなどという世にも珍しいものを見る事になった。

477セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/27(日) 20:33:09 ID:3GSWjFEiP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(133)

昼飯の後、袁紹は一人部屋ですすり泣いていた。
郭図と審配の気持ちは痛いほど分かった。
しかし、自分は彼らが思っているほど降伏した事を後悔してはいないのだ。
それが、あんな大事になるなんて・・・。
曹操が足を引っ張る者にどれだけ容赦ないかは知っている、郭図と審配が許される確率はかなり低いのではなかろうか。
今にも誰かが、二人の首を持ってくるかも・・・。
いや、曹操自身が二人の首をはねよと自分に命令するかも・・・。
その感触を想像した時、袁紹は恐ろしくて手が震えた。
その時、突然曹操が入ってきた。
「ひいっ!?」
袁紹は体をびくりと震わせ、絶望すら感じさせる涙目で曹操の方を向いた。
曹操はそんな袁紹を安心させるように、横に並んで座り、できる限り優しい笑みを浮かべて肩を撫でてやった。
そうすると、袁紹は過呼吸気味だったのが元に戻り、少しだけ体の力が抜けた。
曹操はそれを確認して、袁紹が一番気にしていることを答えてやろうとした。
「郭図の・・・。」
「郭図を・・・。」
図らずも、二人の声が重なった。
言葉の重なり具合まであまりにぴったりだったので、曹操は思わずおかしくなって吹き出してしまった。
「くくく・・・いや、悪い。
おまえの気にしている事を教えてやろうとしたのだが・・・こんなに見事に重なるとは!」
まるで、昔みたいだ。
袁紹の表情が、ぱっとほころんだ。
曹操の様子からして、悪い話ではない事を悟ったのだろう。
二人は今一度、親友だった頃の二人に戻った。
478セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/27(日) 20:34:12 ID:3GSWjFEiP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(134)

「郭図を、許してくれるのか?」
まだ確証がないというように、袁紹が小首をかしげる。
曹操は思わずほおの筋肉が緩むのを抑えながら、諭すように言った。
「許してやる、が、条件がある。
おまえの元に戻れるとなると、郭図は必ずやおまえを再び最高位につけようとするだろう。おまえはそれをうまく律して、我が臣下として機能させる事。
それが条件だ。」
「分かっておる・・・それは確かに、わしが言わねば無理だろう。」
袁紹は気まずそうに下を向いた。
「分かっておる、いつもそうだ・・・郭図と審配は、わしの事が何より好きなのだ。
帝よりも、民よりも、自分よりも・・・自分の命よりも。」
自覚はあったようなので、曹操は少し安心した。
自覚がないと、おそらく袁紹はまた振り回されておかしな状況になってしまう。そうなれば、力を合わせて漢を維持する計画は水の泡だ。
曹操は一呼吸置いて、本題に移った。
「袁紹、おまえを河北に帰してやる。」
「何っ!?」
袁紹は驚愕して目をむいた。
「バカな、今は力を合わせて中原を・・・。」
「中原は、もう守れぬ。」
自分を納得させるように、曹操は言い切った。
「ゾンビとは、毒虫か害獣のようなものだ。しかも、相当増殖力が強い。
犬が十匹逃げたとしよう、それでも全て見つけるのは難しいのだ。70万のゾンビを被害が出ぬうちに全て殺すなど、不可能だ。
しかも退治する際に噛まれた者も漏れなくあちらの仲間入りだ。
積極的に戦おうとすればするほど人材を失い、敵は増えるばかり・・・。
だから、河北で中原のものを受け入れてくれるおまえが必要なのだ!!」
479セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/27(日) 20:35:39 ID:3GSWjFEiP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(135)

袁紹は絶句した。
しばらくの沈黙の後、袁紹はようやく口を開いた。
「都を・・・帝を河北に移すというのか!?」
曹操はうなずいた。
「おれとて、せっかく得た地を手放すは本意ではない。
しかし、そうしなければ確実におれたちは滅ぶ。おれが集めた才ある者や、未だ民の支持を集める帝を死なせてはならん。
だからおまえは河北に帰り、河北に残っている全力をもって河北をゾンビから守り、新たな漢の中心を作る準備をせよ!
そのために、おまえの言う事なら何でも、どんな手を使ってもやり遂げようとする郭図を使うのだ!この非常時に無茶な命令を遂行するには、あれくらいでないと勤まらん。
良いな、これが命令だ。」
曹操は袁紹の手を取り、強く強く握り締めた。
こんな事を頼める者は、この親友しかいない。
うわべだけで従っている者に頼めば、下手をすれば受け入れてもらえずに全滅する事になる、非常に危険な策だった。
しかし、袁紹になら頼める。
一時は敵となったとはいえ、一緒に過ごした時間とその時育んだ絆はまだ生きている。
袁紹の手が、曹操の手をぎゅっと握り返した。
「・・・分かった、従おう。
できるかどうかは分からぬが、できるだけの事はしよう。」
袁紹の瞳に、もう迷いはなかった。
親友は、今でも親友のままだった。
部下たちは多少我が強くて暴走しやすいが、今ならしっかりと手綱を握って号令を下せる。袁紹が自信と威厳に満ちた態度で号令を下せば、郭図と審配は手足となって動くだろう。
・・・だが、袁紹は気付かなかった。
曹操は会話中、審配の事について一言も触れていなかった。
それはせめて少しの間でもいつも通りの時を過ごさせてやりたい、曹操なりの優しさだった。
480セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/27(日) 20:44:45 ID:3GSWjFEiP
名前の読み方2 姓名・字(姓・名・字)
夏侯惇・元譲(カコウ・トン(まれにジュンとも読む)・ゲンジョウ)
夏侯淵・妙才(カコウ・エン・ミョウサイ)
徐晃・公明(ジョ・コウ・コウメイ)
荀攸(ジュン・ユウ)
楊修(ヨウ・シュウ)
郭嘉(カク・カ)
于禁・文則(ウ・キン・ブンソク)
李典・曼正(リ・テン・マンセイ)
曹洪・子廉(ソウ・コウ・シレン)
曹仁・子孝(ソウ・ジン・シコウ)

中国人は姓が同じ人を祖先が同じ同族であると考える傾向があります。
作中で郭嘉が郭図に同族を見捨てないといっているのは、この意味です。
481たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:22:18 ID:/YQqOYj50
自分にもアクションが書けるのか?
ある意味実験で申し訳無い。面白かったら教えておじいさん。続きをかきます。
やめて欲しかったら、言ってください。

それでは投下〜
482たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:23:35 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(1)

ーー死の街。
その道路の真ん中に、男がいた。
全身を黒い革製のレーシングスーツを着込み、黒いフルフェイスヘルメットを被っている。シールドも深いスモークがかかり、その表情は読み取れない。

男は、左脚を大きく踏み出し、右脚を引いている。頭を下げ、右手を羽ばたくように伸ばしている。
まるで、スタートダッシュを待っている短距離走者のようでもあり、あるいは獲物に跳びかかる野獣の待機姿勢のようでもあった。
右手には、前時代の遺物が握られている。

ーー槍。 長さは3mにも及ぶだろうか。
それが武器として広く使われていた時代のモノとは違いがある。
鋼鉄製の柄は、板バネで補強がされ、リベットはスパイクのように鋭く、禍々しい。

ーー何より目を引くのは、穂先である。
使い込んだ拳銃のような青味がかったクロームに、白く刃紋が浮き、刀身にはのたうつようなマーブル模様。
ダマスカスブレードと称されるものに似ていた。
483たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:24:56 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(2)

男の視線の先には、アスファルトに突き立てられた筒状の機械がある。点滅してるランプは作動してる証拠だろうか。
この機械ーー高周波発生装置からは、人間には聞き取れない周波数帯の音が流れている。
これは罠である。「ヒトならざるモノ」をおびき寄せるための...

微かなうめき声が、風に運ばれてきた。
犬属の遠吠えのように、重なり合い、増えてくる。
やがて地響きが、地面を伝わってくる。無数の足が、地面を蹴っている。心臓が破裂せんばかりの全力疾走である。

白濁した虹彩。血の気のない白い顔。むき出しの歯には、凝固した血液がこびりついている。
片側3車線の幹線道路いっぱいにゾンビが溢れている。およそその数三千。

ーー暴徒。感染者。生ける屍。
彼等が現れた時、様々な憶測と共に、様々な呼び方が産まれた。
やがて彼らの呼び方は、一つになった。
「ゾンビ」と。
484たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:26:21 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(3)

染めた金髪を振り乱しながら、女のゾンビが男に迫っていた。肩ひもが千切れたキャミソールが、ずり落ちている。
あらわになった上半身に、かつてあった乳房はなく、むき出しの肋骨が露出している。左手も肘関節の所で、何か大きな力で引き千切られたように無くなっている。

ゾンビが数メートルの所まで迫ったとき、何かが風を切る音があたりに響いた。
かつては、ギャルとよばれていたーーゾンビが、男の横を走り抜けた。
急に失速し、よたよたと数歩歩く。
ガクッと膝をつき、バタンと地面に突っ伏す。
ゾンビは下顎を残して、頭部を失っていた。
数メートル先にゾンビの頭部が落ちている。白く濁った目は、獲物を探すようにキョロキョロと彷徨っている。

男は先ほど姿勢が全く変わっていない。
ただ一つの違いは、槍の穂先から、紅玉のような血の滴りが離れ、一瞬だけ王冠を形作り地面に消えたことだけだ。
485たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:27:51 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(4)

ヘルメットのシールドが夕陽を反射した。
突然男は、ゾンビの群れに疾駆し始める。100mあまりを数秒で駆け抜ける。
ーー疾風。 その言葉しか当てはまらない。

槍が竜巻のように回転し、5、6体のゾンビが頸を飛ばされる。
脇に構えられた槍が、横に薙ぎ払われると、胴や脚を分断されたゾンビが、ビルの壁面に叩きつけられる。

男の疾駆は止まらない。
バレーダンサーのようなターン。全体重を乗せた鋼鉄製の槍が繰り出される。数体のゾンビが串刺しになる。男はゾンビの重量など無いかのように、槍を振るう。

背骨を折られてもなお、足掻いていたゾンビの頭蓋に、鋼鉄の石突が貫通する。
男の躯が宙を舞う。
槍を支点に跳んだ空中で、のけ反るように槍を振りかぶる。
飛び散った血液が、沈みつつある膨張した太陽の光でキラキラと輝く。

渾身の一撃が、地面と建物が目眩のように揺らす。
槍の半ばまでアスファルトに埋まっている。
立ち昇る砂埃のなか、十体以上のゾンビの身体が破壊されていた。
486たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:29:28 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(5)

ーー大脳のリミッターが外れ、驚異的な身体能力を持つゾンビ達を、冷たい狂気を帯びた鋼鉄が打ち砕いていく。
地べたを這うゾンビの数が、300を超えた辺りで槍の穂先が甲高い金属音を立ててはぜる。

微かな残響音を立てながら、回転する鋼鉄の刃。
落下してくるそれを、男は顔を向けるまでもなく二本の指で掴んだ。
銀色の針のような軌跡を残して、ゾンビの顔面に吸い込まれる。貫通した鋼鉄は、路肩の交通標識に深く突き刺さる。

500体で、槍は飴細工のように曲がった。
1000体で、二つに折れた。
487たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:30:37 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(6)

男の疾駆は全く衰える兆しがない。
二本の鋼鉄を刀のように振り続ける。ひと振りごとに、脳漿や内臓が飛び散り、宙を舞う。

ーーゾンビの残りが1000を少し下回った今も、男の闘争は続いていた。

ブーツに踏み込まれた、アスファルトにヒビが入る。
男の肘を叩き込まれたゾンビが、背中から臓器を噴出させる。
頭蓋を粉砕した蹴りで発生した突風が、ボロボロになったゾンビ達の衣服をたなびかせる。
拳骨を食らったゾンビ顔は、アルミ缶のようにひしゃげ、内容物を撒き散らす。
488たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:32:00 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(7)

ーー筋骨隆々のゾンビが、路上に打ち捨てられたセダンのボンネットから、猛禽類のような跳躍を見せた。
男の手の掌が、スローモーションのような緩やかさで、ゾンビの胸部にピタリと吸い付いた。
ーーバシュ! 水のはじける音が聞こえた。
同時に、ゾンビの躯にビシッと音を立ててツタのように血管が浮き出す。
次の瞬間、そのゾンビの目、鼻、口、耳から大量の血液が、間欠泉のように噴き出す。
人形のように崩れ落ちるゾンビ...
489たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:33:16 ID:/YQqOYj50
「ゾンビハンター」
(8)

ーー漆黒に浮いた鏡のような満月が、一番高く昇ったころ。男が、死の街の路上で立ち尽くしてた。
高周波発生機の作動ランプが、弱々しく点滅し、やがて消えた。バッテリーが切れたのであろう。
男は、アスファルトに深く埋め込まれた高周波発生機を、軽く引き抜く。
路上に散らばるもので、動いているものは無かった。
血と、肉片とーー鋼鉄だけだ。

湾岸の高速道路を漆黒のバイクが疾走している。
シボレーのV8エンジンを積んだモンスターマシン。
空気を揺るがすエキゾーストが、死の街に響き、やがて消えいく。
白金の月明かりが、闇をより濃く際立たせていた。
490たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/28(月) 17:42:33 ID:/YQqOYj50
おわり
491本当にあった怖い名無し:2009/09/28(月) 20:30:53 ID:OAxaU1up0
492セイレーン ◆tr.t4dJfuU :2009/09/28(月) 23:14:38 ID:LX81KsC/0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡


ちょっと登場人物の整理をしておきます。

曹操  政治家、詩人、兵法家。字は孟徳、幼名は阿瞞また吉利。沛(はい)国?(しょう)県(現在の河南省永城市)の人。
     建安5年(200年)に官渡の戦いで最大の敵である袁紹を破り、その死後、華北(中国北部)を統一した。ガチホモ。


袁紹   建安7年(202年)5月)は中国の後漢末期の武将・政治家。曹操との戦いで敗れた苦痛から病に倒れ、建安7年(202年)5月に死去した。両刀の気あり。
  

郭図  ある事情により男のふりをしているが、実は女。袁紹に淡い恋心を抱いている。


逢紀  聡明で計略に長じていた。何進に仕えていた頃から同僚であった袁紹とは親しく、後に許攸とともにその旗揚げを助けて参謀として仕えた。ゲイ。

493セイレーン ◆tr.t4dJfuU :2009/09/28(月) 23:33:31 ID:LX81KsC/0
  ヽ/l l ニ|ニ                    ,.、-''"..;:;:;:;:;:;:;:... `'ヽ、
  (   ( ̄   ̄)               /....:::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;.....ヽ、/ ̄ ̄ ̄ ̄\/
    ̄    ̄                  i_;;、:_;、;_;、;、;、、ィッ.;:;:;:;:;: /  興  男     君
.       ,、r‐''''''''''''''''ー. 、.           |      ,,,,,,  / ;:;:;:;:;:;: |   味   の      :
      ,r'         `' 、.        ,! '''''        \ ;;;;;;;;;_|   が   は      :
     /             ヽ       |ヒニニュ ャニ,ニニ、> 〉;; / _|   あ  だ
.    / ,             ヽ       `!゙l)_j   ' iリ__, `  }ii l f'ト〉   る  か
   ,,'  ;    ,、、,_  ニニ  ,、」、      |   l   ` " '''   }ii リノ |   の   に  |\__
   l.  :;;;i    ´ .._`ー   ‐''".....|.      .l! .{   、     ィ!ii;}' ノ|   か       |
   l:,;'"`'、,    . ,;ィェ、..   ,rェ;〈        {! ゙ー<⌒'     ,ミi;i;}ー'゙ |   ね       |
.   ';i l :::i;;,,  l "......::'''ン  .., .:::'''"゙,       }i、  -===-'  リiii;ツ   |   ?       |
    l;゙、',.::l;;;i lj     r   ヽ.   l,      _ノ}lli,  -r=‐  ,i;llilili|   > _____/`ヽ、
    l;;;;`‐;;;;;ヽ   . './'ー'''ー‐' ',  l;;;,,   // '}llli, ,;i|i;, ,,ii;ilililll'゙リ /  ̄ l l      ,、 ''⌒゙ヽ、
. ,、rイ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ  ,r";;二二二,ヽ, !;;;;:'..  /  |   ゙ト!llllllllllliillllllllヅ_、-゙    /,l l       /
'.:.:.l ll ;;;;;;;;;;;;;;;;;' ,rニン"  ̄二´ `ノ;;;;;`- |   |  | |、'lトllトllトツ "´    // l l       /
:.:.:.| l.l  '';;;;;;;;;;;;;;'         ,イ l'''   〉  |   | | ゙、 //∧    / /  l l     l
       袁紹                      曹操
     
494たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/30(水) 19:04:41 ID:2vM9SM6O0
「ゾンビハンター 2」
(1)

レーシングスーツのジッパーが引きおろされる。
圧迫から解放された乳房が揺れる。
肌が大理石のような滑らかで白い。
レーシングスーツを脱ぎ捨てた姿は、均整の取れた女性の裸体だ。
フルフェイスヘルメットが投げ捨てられ、豊かな黒髪が流れ落ちる。頭を左右に揺らすと、上質の絹糸のような直毛がサラサラと宙を遊ぶ。

やや小さく尖った顎、ふっくらと厚みのある唇は淡いピンク色に染まっている。細い鼻梁。とりわけ目は印象的だ。
大きくくっきりとした目。顔が小さいので、目の大きさが更に強調されている。
虹彩が赤い。
色素がないのだ。血液が透けて見えているのだろう。
全体として整った顔立ちなのだが、単に美人という言葉の範疇に収まらない。異性を魅きつける、劣情を煽るような魔力に似た、ある種の引力。
片手で少し持て余すほどの乳房。くびれた腰とアンバランスなくらい尻が大きく見えるのは、細すぎるウェストのせいであろうか。
495たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/30(水) 19:05:53 ID:2vM9SM6O0
(2)

ーーコンクリートの巨大な空間。
辺りには大小のパイプやダクト、ケーブル類が這っている。
直径10mほどの円柱のそばに、生活を匂わせる品が申し訳程度備えられている。そして、大量のガラクタ。

ヒビの入った汚れたバスタブ。シャワーヘッド。モダンなテーブルに折り畳みのパイプ椅子。足が一本取れたグランドピアノ。和風の桐ダンス。磁器の顔の半分を失ったフランス人形。
組み合わせに統一感はない。さしずめ粗大ゴミ置き場という感だ。
496たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/30(水) 19:06:53 ID:2vM9SM6O0
(3)

黒髪の女は、シャワーのコックをひねった。
冷たい水滴が、白い肌をなぞるようにつたい、流れていく。
長い指が肌をゆっくりと滑っていく。時折、黒髪をかきあげながら、緩慢な愛撫のように全身をくまなく動く指。
一瞬一瞬が、どんな芸術家も嘆息するほどの美しさを持っている。

しかし、女は彫刻ではない。
鋼鉄を振い、宙を舞い、素手で永遠の眠りをもたらす......
ーー 死の街に舞い降りた、黒い翼を持つ破壊の女神。
497たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/09/30(水) 19:08:17 ID:2vM9SM6O0
主人公女にしました
ちょくちょくうpしますね
ご意見ご感想ご要望随時受付
498セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/30(水) 22:08:00 ID:A6D9d9k+P
たんくさん
パワフルな女主人公ですな、これは楽しみであります。

偽者の人物紹介は、郭図以外は、性嗜好以外についてはほぼ合ってます。
元から三国志系の荒らしで、知識はあるのでしょう。
499セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/30(水) 22:09:27 ID:A6D9d9k+P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(136)

ひとしきり話しが済むと、袁紹は緊張の糸が切れたように曹操の肩に頭を乗せた。
そして、曹操の耳元でぼそりと言った。
「しかし・・・逢紀は連れて行きたくない。
あやつは、一瞬とはいえわしを裏切ったのだ。」
どす黒い憎しみが滲み出る声に、曹操は耳をそば立てた。
「わしが沮授の死体に殺されそうになった事は、もう知っておるな?
郭図はあの時命をかけてわしを助けた、しかし逢紀はどうしたと思う?
あやつはわしを助けようともせずに、連れてきた兵たちに自分を守れと言って、自分だけ逃げようとしたのだ!
その時はうやむやになったが、わしはもう断じてあやつを許せぬ。
あやつはどうしても信じられぬ!!」
袁紹がささいな事で人を疑ってしまう事は、曹操も知っている。
しかし今回ばかりは、袁紹が正しいと曹操は思った。
昨日初めて会った時から、逢紀の行動はいけ好かないものばかりだ。君主が目の前で倒れても助けない、君主が降伏するとすぐなれなれしく同僚呼ばわりする・・・あんなのが自分に仕えると思うと、反吐が出る。
曹操も、袁紹の耳元でささやいた。
「おれもあいつは好かん。
できれば、捨てていきたいところだ。」
「ほう、わしと同じ考えだな。」
袁紹は曹操の意見を聞いて、ニッと笑った。
「実は昨日、そのつもりで逢紀に、切れ味の鈍ったわしの剣を持たせたのだ。
初めは一番体力がない審配に持たせたが、途中で考えが変わったので逢紀と剣を交換させた。
沮授が生きていたら、その場で逢紀の首をはねようと思ったくらいだ。」
「ふん、それが良かろう。そうすれば沮授がおれの臣下になったものを・・・。
沮授は優秀な男だった、折あらばぜひ引き抜きたいと思っておったが・・・。」
それからしばらく、曹操と袁紹は積もる話に花を咲かせた。
部屋の外を、苛立った靴音が離れていくのには、不覚にも気付けなかった。
500セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/30(水) 22:10:16 ID:A6D9d9k+P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(137)

ジャーンジャーンと夕飯の銅鑼が鳴る。
官渡の荒野に、夜のとばりが下りる。
昨日は途中からだったが、今日は門は初めからドンドンとたたかれっ放しだ。
夕闇が濃くなるにつれて、兵士たちの間に不安が広がり始めた。
「お、おい・・・本当に大丈夫だろうな?」
「バーカ、今日一日ずっとこうだったじゃねえか!」
大多数の兵たちはまだ強がっているが、それでもだいぶ動揺しているのが分かる。徐晃は唇をぎゅっと噛んだ。
この手の不安は放置すると良くない。
伝染病のように広がって、兵たちから理性を奪い取ってしまう。
恐怖にかられた兵たちが暴動を起こして民に手を出したりすれば、最悪内側から門が破られる事になりかねない。
そうならないためには・・・。
「だってよお、あの扉の一枚向こうにはゾンビがあんなにいるんだぞ!!」
目の前で、もはや狂気に近い顔つきになった兵がわめいている。
徐晃は、愛用の大まさかりを強く握った。
「いくら門が丈夫だからって、もう死者の世界はすぐ・・・。」
ブンッと風が唸る音とともに言葉が絶え、わめいていた兵の首が落ちた。
徐晃は驚いている兵たちに向かって、声を張り上げた。
「おまえたちは生きて帰りたいのか!それとも死にたいのか!?
生きる方法はただ一つ、トンネルを完成させて外に出ることだ。恐怖にかられて作業を放り出したり騒ぎを起こしたりすれば、死神の思うつぼだぞ!
これから臆病風に吹かれた者はこの徐晃が斬る!!
良いな!?」
威風堂々たる武人の剣幕に、兵士たちは息をのんだ。
他の不安そうにしていた兵士も、肝を冷やしたようだ。
そうとも、この門が閉じてさえいれば何も起こるはずがない。自分たちは昨日と同じように、何事もなく朝を迎えるのだ。
今や城中の者の願いは、それ一つだった。
501セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/30(水) 22:11:14 ID:A6D9d9k+P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(138)

日が昇ったすぐの頃であろうか、曹操は乱暴に揺り起こされた。
「起きてください、殿!
一大事でございます!!」
曹操はまだ頭がぼんやりしていたが、むくりと体を起こした。
「ゾ、ゾンビが・・・城内に侵入いたしました!!」
「何だと!?」
今の一言で、曹操の頭は完全に覚めた。
曹操は寝巻きのまま飛び起きて、剣をとった。そして、そのまま部屋を出て城内を一望できるベランダに立った。
「おお、これは・・・!!」
官渡城の南門が開き、ゾンビが洪水のようになだれ込んで来ている。
駆けつけてきた曹洪が、息を切らして報告する。
「兄上、この建物にもすでにゾンビが侵入しました!
現在、徐晃殿と夏侯淵殿が指揮をとって一階、二階の通路に障害物を築き、北側への侵入を食い止めています。でも、ゾンビが建物を回りこんで北側に出るのも時間の問題でしょう。」
それを聞くと、曹操はすぐさま曹洪と周りの兵に命令した。
「止むを得ぬ、今すぐ脱出するぞ!
一階二階の障害物を維持しつつ、生きている将を北側玄関に全員集合させろ!
障害物は幾重にも作り、一段を頑なに守ろうとするな。無理だと思ったら一度退いて態勢を整えよ。それから、噛まれた者は首をはねるか頭を貫け!」
曹洪たちが走り去ると、曹操は大急ぎで鎧をまとった。
まさかこのタイミングでゾンビの侵入を許すとは・・・あまりに予想外だ。
本来ならなぜこんな事になったのか調べたいところだが、今はそんな場合ではない。曹操は混乱する城中を駆け抜けて、建物の北玄関に向かった。
「あっ殿、ご無事でしたか!」
途中で駆け寄ってきた李典を見て、曹操はぎくりとした。
李典の手首に縛りつけたはずの縄が、途中で切れている・・・李典とつないだはずの郭図の姿が、そこには無かった。
502セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/09/30(水) 22:26:42 ID:A6D9d9k+P
てゆーかホモ気はあってもソフトで一部スパイス的に拒否られん程度に入れようと思ってたのに、
偽者に先にやられるとやりにくいな。

読者が嫌なら、ホモ完全自主規制でも続けられん事はないが・・・
士気が下がる。
せっかく一般人のスレに降ってゾンビ書いてまで袁紹様への愛を守ってきたのに。

まあゾンビ好きなのは事実だが。
503セイレーン ◆quM58wnvXA :2009/09/30(水) 22:57:43 ID:4+n1gHPu0
李典の手首に縛りつけたはずの縄が、途中で切れている・・・李典とつないだはずの郭図の姿が、そこには無かった。
                ヽ_,....;ー-、 n'
 __         ,. -- 、_  Y、_,- Y〉-、 
/   ̄二ー-、_,..-'"    \`v'YL_ー ノ|  \_
    ((=ヽ`"ヽヽ \ i   \ヽ!ニ ノ |    `ー、 「李典、郭図はどうしたアッー?」
    \   ヽヽ  \    .\\  |  /  |
   / ̄、, _,- ! !    \    \\| 〈   |
  ///__ i'") )      \    \V |   {'"⌒\
_ トー"ーr"' '<"   ヽ   \    ヽ\|   | |   |
   ̄   |   |\_      \_  \ ー、  |_|    |
      ヽ   |    ̄\     \   \  \| |    |
       |   |      \   " \   \   ̄`ー─
       |   |        〉     \   \
       .|   |       /       \   \
       |   |     /    ⊂ニニ 、\  \
       |   /     /      ) し、 ) \  \
504セイレーン ◆VM3rCD.BMg :2009/09/30(水) 23:01:46 ID:4+n1gHPu0

           
                  / ̄ ̄\
                /     . \ フッ、郭図なんて居なかったな。
                |        ::::|  アバヨ! 
                |      :::::::|
              . . .{    :::::::::::::|
               .  i   .::::::::::::::::}        
.              .   ',.:'´:::::::::::::::::::::::::7    
              __ヽ___::::::::::::〈.   .    /7,
                /::`ヽ::::::::::::::::::::::: ̄`:::::::`:..、   ,// /
             l:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::`:.、 l ′ 7ァ
             |::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::!:::::::::::::::;イ l    /
             `、::::::::::::∨::::::::::::::::::/:::::::::::::/::l. }‐...x'
                `、:::::::::::`、::::::::::/:::::::::::::/:::::〉/ニニソ
                   `;:::::::::::::`,::::::::/::::::::::::/::::::::|/:::::::/
                   `;:::::::::::::`,:::/:::::::::/ l::::::::::::!:::::::/       〜終〜
                 〉::::::::::::::Y:::::::::/.  l:::::::::::l}::::/
505セイレーン ◆x.jbFMGUHk :2009/09/30(水) 23:04:37 ID:4+n1gHPu0
        /,..ァ@; ヽ、
     , -ー'" `'"レベ;
    / ,   i_  i'"''
   /  !    Y"  お前だけは逃がさねぇぞ李典クルルァ 
   {   {    |
   |   |    }
   |   |   く
   ! !, ヽ   ヽ               
   ハ. ! , ヽ   ヽ              ,,,_ 
   \ノ   \  ヽ          ,../  `ヽ   アッー!イグッ!殿ッ!!ンギモッヂイィ! 
   ,;'"     !\  ヽ、....._ ,... - ' " ̄  ̄ ̄"''' ー- , ,
   {  `ー'   `<ヽ、__ ミミ\        ノー 、_ ⌒
  (         ヽ  `ー!'ノ`'      /      ̄
   ヽ、 _ /      \  \   _ ノ
    {  ヽ       ヽ   ー' ̄
506セイレーン ◆I9/y22XDSU :2009/09/30(水) 23:10:28 ID:4+n1gHPu0
        /,..ァ@; ヽ、
     , -ー'" `'"レベ・;';*;*;';
    / ,   i';*,',・;';*;*;';* 人_人_人_人_人_人_人_人_人_人人_人
   /  !    Y"     <アッ〜!アアッ〜アッ〜〜アッ〜〜!                    ズダーーン!
   {   {    |        Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒                    ズダーーン!
;*;';*|   |    }・;';*;*;';*                     ,,,,,,,,:;:::::'''゛`゛'':;:..........                ズダーーン!
 *;';|   |   く ;';*,',・;';*;*;';*                     ,,,,,,,,:;:::::'''゛`゛'':;:....┌- ,_______、-=i=lL
   ! !, ヽ   ヽ*;*;';*                          `゛'''::::::;;;;;;;;;;::'''''{二二二二}|;;;;;;;;;;(ニニニ);;;;⊂\
   ハ. ! , ヽ   ヽ             *,',・;';*;*;';*          '''''''''''::::::;;;;;;;;;;::      ア、ニニ,_、‐-‐-r=ム V
   \ノ   \  ヽ          ,.. ;';*,'・;';;*;';*                          ((二))r 。 (( ̄  \,_____
   ,;'"     !\  ヽ、....._ ,... - ' " ̄  ̄ ̄"''' ー- , ,                         ~ ̄~{ ̄ ̄ 〕  ゙i
   {  `ー'   `<ヽ、__ ミミ\        ノー 、_ ⌒;*;*;';*                        { ̄ ̄ 〕  !
  (         ヽ  `ー!'ノ`'      /      ̄                            { ̄ ̄ 〕
   ヽ、 _ /      \  \   _ ノ                                      ̄゛ '--ー-,r'´ ̄ ̄''''''
507セイレーン ◆3jbfK6BXtU :2009/09/30(水) 23:13:56 ID:4+n1gHPu0
   /\___/\
 / ⌒   ⌒ ::: \     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | (●), 、(●)、 |    /  ー┼─   /     | ─┬o   -┼、\``   /  -┼ー .i   、 
 |  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |  <     レ'⌒l  /_    | ─┼    / |      <      ヽ、 |   ヽ
 |   ト‐=‐ァ'   .::::|    \     _,ノ /´ `ヽノ  | (二}ヽ  ./  J.      .\  ヽ_  ヽ/   '
 \  `ニニ´  .:::/     \__________
 /`ー‐--‐‐―´´\
    曹洪
508empty ◆M21AkfQGck :2009/10/01(木) 00:13:31 ID:K0Q05GbA0
いや別に気にしなくていいと思いますよ
何というか…馬鹿は放っておくのがいいかと

ってこの文はあちら側に投下すべきですね
509新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/01(木) 00:21:40 ID:7YdvEE0p0
ゾンビと横須賀(28)

【博康'sルート】
2009年9月1日。横須賀市内。
 朝早くに横須賀基地を出発した博康含む自警団のメンバー8名が現着したのは、太陽が頂点をやや通り過ぎてからだった。
「あそこだね」
 目的の建物を2区画先に眺めるビルの陰に身を寄せると、博康は矢継ぎ早に指示を飛ばし、2人1組で3チームを周辺探査に当てた。米軍とは違い、自警団に小型無線などという便利なものはない。
 10分に1度、1チームが合流地点に戻り、それにあわせて待機していたチームが探査に行く。残ったチームは休憩だ。
 1時間ほどで、十分な休憩と周辺の情報収集が終了した。
 いま、この場にいる8名は、横須賀基地の米軍司令部が傍受した、日本人からの『救難要請』を元に編成された救出部隊だ。
 米軍は日本人のために救出部隊を組むことなどはない。一応の取り決めで情報を自警団に下ろしてくれるだけ良し、というところだ。必然、救難要請に対応するのは自警団ということになる。
 もっとも、それはそんなに頻度の高いものではない。この救出部隊を編成するには、救難要請者がクリアするべき2つの重要な点があるのだ。
 @、生存していること。
 A、無線・あるいはそれに類する手段によって自らの生存を知らせること。
 至極当然のことなのだが、この世界の終焉さえ連想させる危機的な状況にあって、この2つの問題はクリアすることが非常に難しい。
 @の問題自体がかなり高いハードルだ。集団で連携を取り、生存と防衛に力を注いでいる集団なら多少はハードルが下がるだろうが、その集団が少なくなればなるほど、生存と防衛に関する労力が右肩上がりに増加していく。
 特に、食料だ。
 横須賀基地では最初の半年は備蓄食料で難を乗り切った。その間に動ける者が総出で畑を耕し、様々な農作物の生産を行っている。また、漁業経験者による海産物の確保も重要な食料源だ。
 海水を濾過、蒸発させることで調味料としての塩の生成、それを用いた長期保存の塩漬け食品の作成。
 それらのすべては初期に作成された自警団と、複数の農業・漁業経験者によるアドバイザーによって管理・運営されている。
510新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/01(木) 00:22:30 ID:7YdvEE0p0
ゾンビと横須賀(29)

 単純に考えても、これらを個人・少数のグループが手軽に行えるとは思えない。
 仮に@をクリアし、生存していることが可能であったとしても、さらにAの問題が発生する。
 無線による連絡を行うには、実はかなりの知識が必要となる。@とAを同時にクリアすることができる生存者など、ほとんどいないだろう。
 それでも、@をさほど気にすることのない事件発生から1ヶ月ほどは頻繁に救難要請を受けていた。食料が切れかかり、ダメ元で無線を使ったり、大量の薪を燃やしてみたり、様々な生存者の救出に当たっている。
 だが、最後の生存者を救出したのは、事件発生後3ヶ月目。
 今回の救難信号は、実に5年ぶりの生存者発見の報だ。驚きとともの、懐疑的な意見も多く出た。
 しかし、それでも行かなければならない。
 誰も見捨てない。
 それが、自警団の鉄の掟だ。
「しっかし、ドン・キホーテとはね」
 言う博康の声には、多分に笑いの成分が含まれている。
 自警団員達も釣られて小さく笑った。
 仕方ない、といえば仕方ないのかもしれない。
 災厄の中を5年間生き延びた生存者が、ドン・キホーテに立てこもっているというのだ。考えてみれば、大津漁港が目と鼻の先で、無駄な雑貨が何でも揃っていて、出入り口も限定されたあの空間であれば、長期間の生存も可能かもしれない。
 しかし、だからといって、ドン・キホーテという名前がもたらすインパクトが消えるわけではなかった。
 いけない。どうにも、コミカルだ。
「笑っちゃ悪いよ。あそこで5年も生き延びたんだ。褒めてあげようよ。きっと、必死だったんだから」
「分かっちゃいるんですけどね」
「ええ、どうにも」
 口々に苦笑をもらす自警団員達を見回して、博康もまた苦笑した。それから、よし、と膝を打つ。
511新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/01(木) 00:23:33 ID:7YdvEE0p0
ゾンビと横須賀(30)

「じゃあ、そろそろ行こう。ブリーフィングで聞いたとは思うけど、あそこにいるのは三井幹久さん、30歳男性が1人で立てこもっている。ま、つまり要救助者は1名ってこと。
 時間が時間だから、今日中の救出は無理だろう。今日のところはドン・キホーテにお泊り。明朝出発して昼には横須賀基地に帰還だね。OK?」
 自警団が手をあげたりうなずいたり、思い思いに返事をするのを確認して、博康も鷹揚にうなずいてさっさとドン・キホーテに向かった。
「よっしゃ、GOGOGOGOだ。無線を受けた奴の話だと、割と落ち着いてるっぽいけど、5年も1人だったんだ。トチ狂ってる可能性もあるよ。十分に気をつけてねぇ」
 虎の子の低性能爆薬の入ったリュックとジェラルミン盾を背負い、米軍から押し付けられた名前も分からない自動拳銃をぶんぶんと振り回しながら、博康はスキップでもしそうな雰囲気だ。
 正直、緊張感なんて皆無だ。
 他の自警団員も似たようなものだろう。
 5年も生存することが可能だった隠れ家。そこに一拍して、お客さんを連れて帰還するだけの任務だ。
 怪我をしたのか、病気にかかったのか、寂しくなったのか、理由は分からないが、わざわざ救難信号が送られてきたのだから、攻撃をしてくることもほとんど考えられない。
 なにも心配することなんてない。
 少なくとも、ここに和也がいれば怒声一発、警戒態勢に移行することができたろう。そして、それができていれば、被害は最小限で抑えることができたかもしれない。
 だが、ここに和也はいない。
 誰も止めることはできない。
 博康と自警団員達は、鼻歌でも歌いだしそうなほど陽気に、気楽に進んでいく。
 まさかそれが、死の行進(デス・パレード)になるとも知らず。
512新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/01(木) 00:29:57 ID:7YdvEE0p0
12時回ってしまいましたが、投下。
結構書いたんですが、パソコンのフリーズで後半が飛ぶっていう。。。大惨事。
修復できたものだけです^^;

あと、携帯で書き込んだらトリップのパスワードが書き込まれちゃったんで、トリップは変えました。
すいません。

>セイレーンさん
一般人のスレっていう言い回しはどうなんでしょう?
513本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 12:54:55 ID:c0yUQ/KJO
久々に投稿する方は、前回の投稿をレス表示してくれると読みやすいのだが。

まぁとにもかくにもwktkだ!!
514本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 17:58:08 ID:X1vxC4Hc0
タイトルで検索くらいかけようよ
読むだけでしょ?
515本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 18:17:46 ID:j7xFUH3RO
セイレーンさんの「せっかく一般人のスレに降ってゾンビ書いてまで」ってひどくない?

上から目線で、書いてやってんだよ臭がしてむかつく
516本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 18:27:40 ID:W/w87nbA0
>>515
いやそういう意味じゃないと思うよw
せっかく一般人のスレに降って=自分は本来やおい好きの腐だが、一般人のフリして書いてたのに
ゾンビ書いてまで=腐の本性を隠して、需要がありつつ自分も好きなゾンビ物書いてたのに、
             わざわざぶち壊すようなことしやかって

むしろ自分が普通の嗜好でないことに負い目を感じつつ、なじんでたのになあ、という悲しい嘆息だよ。
たぶんw
517本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 19:53:00 ID:afuwl6VA0
私も少し気になってはいたけれど、確かに「降って」と言う部分を考えると>>516さんの指摘通り、へりくだる感じ。
ただ「一般人」というのが誤解を招いたようですな。
サバゲをやっている人が「民間人」とか言うのは嫌われるらしいけど、それと似たようなものかと。
たぶんw
518たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 20:05:33 ID:1QGrBhcV0
「ゾンビハンター 2」

(4)

幾つもの液晶モニターに照らされた横顔。
もみあげと繋がった無精髭が目立つ、痩せた男の横顔だ。
歳は二十代の半ばくらいだろうか。
肩までのばしたクセの強い髪、濃い眉毛、いびつな鷲鼻。少しばかり品のない印象をうけるのは、やや大き過ぎる感のある唇のせいだろう。
丁寧に身繕い、目の下のクマをなくせば、男前の部類になるかもしれない。
519たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 20:06:39 ID:1QGrBhcV0
(5)

突然、男の背後から二本の腕が絡みつく。
「うぁっ!!」
背後の闇から、悪戯っ子のような笑みを浮かべた黒髪の女の顔が覗き込む。

「うわーだって... 可哀想に、ビックリした?」
「あのねぇ... 」
男は何か言いかけて、諦めとも呆れともつかない、複雑な表情でため息をつく。
「んで? 首尾はどうよ。 アザミ」
黒髪の女ーーアザミは、うっとりと目をすがめて薄く微笑む。
「このあたりは大体終了。 そろそろお引越しかもね。 準備ヨロシクね、ノブアキ」
アザミは、ノブアキの座る椅子をくるりと回転させて自分の方に向けると、首に腕を絡ませたまま膝の上にまたがった。
520たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 20:07:38 ID:1QGrBhcV0
(6)


「服を着ろよ。 身体べちょべちょだし。冷てぇし。風邪ひくぞ」
アザミは妖艶な微笑を浮かべながら、ノブアキに密着していく。
「あたしが風邪なんかひくわけないじゃない」
「ちげぇって。オレが!」
アザミはワザとらしく不満気な声でぐずる。
それと反して裸体をノブアキに押し付ける。 柔らかい双丘が、ノブアキの胸板に押し付けられてひじゃけている。耳元やうなじに舌を這わせはじめる。
521新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/01(木) 20:07:43 ID:Jqh3rrM30
なんだか火種を作ってしまったみたいで^^;
自分としては、誤解を招きそうな表現だから荒しが調子に乗るかもなと思っただけで
訂正か補足したほうがいいかもしれませんよっていう意味だったんですが;

ちなみに自分は、三国志スレで袁紹様への愛が受け入れられなくて、ゾンビスレに来たっていう意味合いで捉えてますがノ

>>513
これでいいですか?
>>128-134 >>163-166 >>196-200 >>267-270 >>303-305 >>463-467 >>509-511
522たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 20:08:59 ID:1QGrBhcV0
(7)

「そんな事より... ねっ? いいでしょ... お願い」
ノブアキの耳朶に歯をたてる。
「つか無理。 オレ身体もたない。 マジで死ねるから」
ノブアキは怯えるように呟く。
「あたしも無理... もうホントに我慢できない...」
アザミの色素の無い虹彩の奥に、狂気じみた光が宿る。
「...あぁ...もう、食べちゃうんだからぁ...」
アザミの顎が、人間では有り得ないほど開かれる。
上顎の歯列には、キリのように尖った犬歯がのぞいている。

ーーブツッ

皮膚を突き破る犬歯。
アザミの口腔に血液が溢れ、流れ込んでくる。
523たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 20:10:07 ID:1QGrBhcV0
(8)

皮膚を突き破る犬歯。
アザミの口腔に血液が溢れ、流れ込んでくる。

脳髄が麻痺するかのような濃厚な芳香。
舌を焼くほど熱く、嚥下すると躯に火蛇が駆け巡る。
まるで命そのものと一つに溶け合う奇跡的な瞬間。
アザミには、ノブアキの心臓の鼓動が自分自身のように感じられる。鼓膜を破らんばかりのバスドラム。
ノブアキの躯が感電したように仰け反る。アザミは股間に男の激しい射精を感じた。
男の躯が消えそうな命の灯火を感じて、子孫を残そうとしているのだ。

ーーもう少し飲んだら、死んでしまう...

アザミは自分の胸で痙攣するノブアキがたまらなく愛しく感じた。
弱々しく、儚いほど短命で、ちょっと力を入れれば壊れてしまうほど柔らかい。

ーーまるで赤子じゃない...

「愛」という言葉がある。
産み、育む愛があるなら、食らい尽くし、死の接吻を授ける愛も存在もするのではないか...
アザミ押し寄せる絶頂感に、自我を吹き飛ばされそうにながら、そう思った...
524たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 20:11:01 ID:1QGrBhcV0
(9)

ーーここはどこだろう...

ノブアキは目を覚ます。
液晶モニターの光で、徐々に闇に目が慣れてくる。
視線だけ動かす。
右手には点滴。そしておそらく首にはガーゼが当てられているだろう。

左手が痺れている。
アザミを腕枕しているせいだ。無理して起こす事もない。どうせしばらく動けないのだから。
ノブアキはぼんやりと考えている。
目眩でベッドごと海にたゆたっているように感じる。戻すほどではない程度の吐き気が断続的に襲ってくる。
ノブアキは気を失うように眠りに引き込まれていく。
525本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 20:11:45 ID:j7xFUH3RO
>>516
>>517
それならいいけど仮にも小説書いてるんなら言い回しくらい気を付けて欲しい


つーかセイレーンさんてそっち系の人だったのか(笑)
526たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 20:17:20 ID:1QGrBhcV0
>>498

コメさんくすです
セイレーンさんのも楽しみに読んでますよー


....うーん、ゾンビ出て来てないなぁw ウチのは
まぁ気長にお付き合いください
527新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/01(木) 20:20:16 ID:Jqh3rrM30
>>526
たんくさんすいません。
リロード忘れて書き込んだら大惨事。。。
楽しく読んでます。駄文の自分が言うのもなんですが、一緒に頑張ってきましょうノ
528たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/01(木) 21:23:22 ID:1QGrBhcV0
風呂あがり プハー

>>527

>リロード忘れて書き込んだら大惨事。。。

あ、お気になさらず〜

>楽しく読んでます。駄文の自分が言うのもなんですが、一緒に頑張ってきましょうノ

あざんす! がんばります!
529セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/01(木) 21:56:43 ID:OQSRUNIeP
>>516
>>517
その通りでありんす。

>>525
以後気をつけたいと思います。できるだけ無害でありたいと思います。

もう腐女子スレの壮絶な罵り合いはこりごりでござる・・・!!
ちょっとカップリングが違うだけですさまじいネットバトルになるし、少数派の生きられる所じゃなかったな。
ここの荒らしをロメロゾンビとすれば、あっちは全力疾走系か。
しかも食事じゃなくて感染が目的でひたすら噛み付くタイプ。

横山三国志のスレでも腐女子と分かったとたんに「荒らしも逃げ出す腐女子が来た!!」と言われるし。
ホモエロ議論を捨てるか袁紹様への愛が折れるかを選ぶなら、私はホモエロ議論を捨てる方を選んだ。
530本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 22:27:21 ID:A7JGtdyi0
>横山三国志のスレでも腐女子と分かったとたんに
いや、それははっきりいって、あなたが悪いよw 漫画の中でも横山三国志は、三國志への
入門書としての地位を長年勝ち取ってるからな。そこでいわゆる邪教の信者が乗り込めば、
身元ばれた途端に叩かれるわなw

その手のが書きたいなら、三国志の中でも邪道な恋姫無双か、一騎当千か、三国無双系で
やれば、あるいは許容されたかもしれないなw

つか、なんで(男の?)袁紹ファン? 吉川三国志がバイブルの身としては、あれに惹かれる
理由がよくわからないんだが…もしかして読んでないが、北方とかで格好良く描写されてた?
531本当にあった怖い名無し:2009/10/01(木) 23:04:27 ID:j7xFUH3RO
なんかそうとわかると正直きもいよね
友達が実はホモだったというのと同じ感覚なのか
小説の方はホモ成分ぬきにしてやって下さい
532本当にあった怖い名無し:2009/10/02(金) 22:40:40 ID:xrBhqHrEO
499〜507の一連の流れワラタ
話が一応つながってんのな
すげーシュール
533本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 04:05:09 ID:dArHq3p3O
過去スレと保管所読んで気になったんだけど、まこしろって人の小説は完結したの?

なんか、このテのスレでは珍しく、ほとんど批判されないで、絶賛されてたっぽいんだけど。
534本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 10:43:17 ID:sabNo1HeO
>>521
うあ、ありがとうございます
今度からは自分でも検索かけるようにします
535本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 15:38:21 ID:YX5/AtyPO
>>533
完結してるよ。

その他の完結してるのでおすすめは、おやじさん、マグロ天さんあたりかな。
536本当にあった怖い名無し:2009/10/03(土) 16:21:46 ID:dArHq3p3O
>>535

完結してるのかあ。

どこかで見られるトコないですかね?
過去スレ見られないんだよね(;ω;)
537セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/03(土) 20:58:04 ID:Xn05cnmpP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(139)

昨日、曹操は確かに李典と郭図を縄でつないだ。
それが郭図の姿だけなくなっているとは、どういう事だろうか・・・。
(まさか、郭図が門を・・・?)
そんな疑念が、真っ先に曹操の頭に浮かんだ。
曹操はいつでも剣を抜ける体勢で、李典に聞いた。
「郭図はどうした?」
李典は軽く頭を下げて答えた。
「途中まで一緒に逃げておりましたが、曹洪殿から生存者を北玄関に集めろと言われまして、手分けして生存者を集める事にいたしました。
郭図殿が、自軍の弩兵たちを呼びに行くというので・・・。
今は一人でも人手が必要と思い、私の判断で縄を切らせていただきました。」
曹操は少し安心した。
郭図は犯人ではなかったのだ。
それに、袁紹と共に降ってきた弩兵を連れてきてくれるのは心強い。
郭図一人という点が心配ではあるが、あの男は何が何でも逃げ切って戻って来るような気がした。
「分かった、では李典はここで待機せよ。
扉は閉めておくが、時々外をのぞいて様子を調べろ。
あまりゾンビが増えてくるようなら、出られなくなる前に脱出する!」
それを聞いて、李典はごくりと唾を飲んだ。
ゾンビが増えてきたら脱出する、ということは、それまでに集まれなかった者を置き去りにするという意味である。
やむを得ぬ判断ではあるが、これは残酷だ。
今ここにいるのは曹操と李典、それに曹操の親衛隊長である許褚のみ。
これからどれだけの人間がここにたどり着き、一緒に逃げられるだろうか・・・一人でも多くの仲間に生きていてほしい、李典はそう祈らずにはいられなかった。
538セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/03(土) 20:59:05 ID:Xn05cnmpP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(140)

城中は混乱の極みに達していた。
楊修はもうどこをどう逃げているかも分からず、走るのに疲れて息も切れてしまい、それでも恐怖に突き動かされて歩いていた。
目の前に、扉がある。
(どうしよう・・・。)
楊修はもう、それすら判断がつかなくなっていた。
開けたらゾンビがいるかもしれないが、仲間がいるかもしれない。声をかければ仲間が応えてくれるかもしれないが、ゾンビが集まって来るかもしれない。
(どうしよう、一体どうすれば・・・。)
扉を前に、楊修は一人頭を抱えてしまった。
しばらく考えて、楊修はふっと息をついた。
「そうだ、こういう時はまず深呼吸だ。
すー・・・ふっうびゃあああ!!!」
大きく吸い込んだ息は、断末魔の悲鳴に使われた。
楊修が扉だけ見て考えているしばらくの間に、ゾンビがすぐ後ろまで来ていたのだ。
扉の向こうで障害物を築いていた兵士たちは、ちょっとすまない気分になった。呼んでくれたら、入れてやったのに・・・。

北玄関には、次々と生存者が集まり始めた。
弩を携えた袁紹に手を引かれて、荀攸が姿を現した。
「おお、無事だったか荀攸!」
「はい、袁紹殿に助けていただきました。」
荀攸の目尻には、涙の跡があった。
数体のゾンビに出くわした荀攸は恐怖に足がすくんでへたり込んでしまい、ただゾンビが近付いてくるのを見ているしかなかった。
そこに袁紹が現れて、ゾンビの二体を弩の一撃で倒し、残りを斬り伏せてくれたという。
「なめるなよ、これでも冀州強弩の総大将だぞ!」
袁紹の言葉はちょっと分不相応だが、今は頼もしかった。
539セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/03(土) 21:01:01 ID:Xn05cnmpP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(141)

やがて于禁と夏侯惇が審配の手を引いて現れた。
「こいつ、今日は漏らしてないな。」
「当たり前です、もう一昨日で慣れましたからね!」
審配と于禁の下品な言い争いは、その場を少しだけ和ませてくれた。
しかし、次に来た者はその場を沈める姿だった。
数人の兵がためらいがちに近付いてきて、曹操の前に血まみれの包みを置き、はらりとほどいた。
中にあったのは、郭嘉の首だった。
「自分が行けば、足手まといになるであろうと・・・。
我々に首をはねてくれるよう頼み、目の前で自害なさいました!!」
兵士たちは泣きながら、もう一つ大きな包みを差し出した。
そこには許攸が持っていた李儒の研究文書と、郭嘉の遺言が入っていた。
受け取った曹操の手に、重さがずっしりとこたえた。
脱出に重病人の郭嘉を連れていけない事は、曹操も重々承知していた。しかしせめて、両方が納得できる別れの時間くらいは欲しかった。
だが、別れる前に顔を合わせるとどうしても未練が残る。
郭嘉はそれを考えて、あえて曹操の見ていない所で自害したのかもしれない。
そして死んだ後に体が勝手に曹操を襲ってしまわないように、わざわざ首だけになって来たのだろう。
曹操は少しの間別れを惜しみ、郭嘉の首をゾンビの手が届かない高所に安置した。
時が経てば、それはやがて白骨になり、崩れて一盛りの土になるだろう。
ただ一つ心残りは、体を同じようにしてやれなかった事だ。
その陰鬱な雰囲気を打ち破るように、手に手に弩を持った兵士たちが数十人、列をなして走ってきた。袁紹軍の弩隊だ。
「ああ、郭図殿が・・・!?」
言いかけて、李典は気付いた。
その中に、郭図の姿はなかった。
540セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/03(土) 21:03:48 ID:Xn05cnmpP
誤植訂正
名前の読み方2
李典・曼正→李典・曼成

字の漢字が違ってました。
541たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/03(土) 22:32:14 ID:31cYdKZ70
「ゾンビハンター 3」
(1)

ノブアキの体力が回復するまで数日間を要した。
アザミは昼間は死んだように眠りこけているが、夜ともなれば、バイクを駆って食糧や輸血用の血液を集めて廻った。
何時だったか、ノブアキがアザミに尋ねた事があった。

ーー輸血用血液をそのまま飲めばいいじゃないか、と。

また、動物の血じゃだめなのか、とも。

アザミの答えはシンプルだった。
ーー不味いから。

ーー俺は一生この女の弁当箱なんだな...
誰かに必要とされている... それは真実だ。
そしてオレもアザミを必要としている。

そう考えると、不思議に気持ちが落ち着いた。
アザミがいなければ、ノブアキはとっくにゾンビになり果てているはずだ。

ーーあの日。

ノブアキはゆっくり目を閉じる。

ーーーあの場所にいなかったら.....

ノブアキは「その日」のことを思い出す。
542たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/03(土) 22:33:27 ID:31cYdKZ70
(2)

ーーいつもの朝、退屈で気だるい気分。
都内の塗料メーカーの子会社に勤めて3年が経っていた。営業マンという仕事にも、いい意味でも、悪い意味でも慣れた。
頭が悪いほうではないノブアキは、就職してすぐにサラリーマンとして組織の中で生きていくことの本質を見抜いた。

ーー白い目で見られない程度に成績をあげれば、上司の嫌味も回避できるし、同僚にバカにされない。
逆に、変にやる気を見せると、面倒な仕事ばかり増えて潰される。
上司の言う事には忠実だが、時おり生意気にならない程度に意見する。バカでは無い事を見せつつ、同僚から仲間ハズレにされる事もない。

ーー要はバランスだ。
ノブアキはいつも心の中で繰り返していた。
世の中は全てバランスの上に成り立っている。
細い橋を渡っているようなものだ。どちらかにブレれば落下する。
自分には落ちた先から這いのぼるほどの器もないことをよく分かっていた。
543たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/03(土) 22:34:30 ID:31cYdKZ70
(3)

544たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/03(土) 22:35:02 ID:31cYdKZ70
あー、しまった

(3)

大学時代の友人で起業した者もいたが、ノブアキは心のなかで笑っていた。
自分だけでなく、社員やその家族の命運を背負うなんて... 若いうちからご苦労なことだ、と。
実際、青年実業家と言えば聞こえはいいが、銀行や大手企業と渡り合うことの出来る者など、そうそういない。
資金繰りで悲鳴を上げる毎日だ。

ただノブアキは同時に、自分の置かれた環境を憎悪もしていた。また、それに立ち向かう気概のない己を心底憎んでいた。

ーー壊れればいい。 何もかも...

そう思う事もしばしばあった。
果たして「それ」は、ノブアキが予想もしないくらい早く訪れた。
545たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/03(土) 22:36:13 ID:31cYdKZ70
(4)

ーー満員の地下鉄。
突然起こった惨劇。
前の駅で怪我をしたらしい女の子が、席を譲って貰ったOLに噛み付いた。
首に噛み付かれたOLは、噴水のように血液を舞いあげて死んだ... はずだった。
何事もなかったかのように起き上がると、次々に周りの乗客を襲い始めた。

パニックになった。
ただひたすらに叫ぶ者。状況を掴めず、呆然と立ち尽くす者。逃げ場の無い車内で、精一杯足掻く者。
ーーそして、死してまた立ち上がる者。

今思い返すと、ノブアキは割と冷静だったのかも知れない。あるいは、彼自身も知らない生に対する執着、生き延びようとする力が目覚めたのか。
咄嗟に懸垂の要領で吊り革を掴み、窓ガラスを蹴破って線路に飛び出した。
546たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/03(土) 22:38:52 ID:31cYdKZ70
4つほど投下〜
続きは明日〜
547本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 01:19:11 ID:YEW0p7Iw0
` 、` 、` 、` 、` 、` 、`/::::::::::::::人、::::::::::::::::::::::::::::::::::/
` 、` 、` 、` 、` 、` 、/:::::::::::/   ヽ、:::::::::::::::::::::ハァ ホ
` 、` 、` 、` 、` 、` .!::::::::/      `゛ ー- ::::::/. モ
.` 、/ ̄ ̄ ̄`ヽl::::/  ,.,.,.-   - 、,.,.,.,.,.,.,,_|   い
 ハァ    ホ  l::::| ''"二 _     , -――‐┤. な
      モ  .|::::f'"´    `l=={   。   |  い
      は  |::::l   ゚   l   ヽ     |.  :  ハァ
.    い い  |::::|ヽ____ノ   ヽ、__,.ゝ    ノ
.    な な.  |::::l//////人●_●_人//////`)ノ´|:::
.    い い  >:',    )   | |   ヾ、   ノ  |::::
           /!::lト,   ノーt―――‐ァ{    / ./|:::::
,."\__ハァ_/ |:::::::'..,     `ー一'"´         /:::::
, ", ", ", ", ", " "!::::::::::::>、   `ー一        ノ::::::::
, ", ", ", ", ", ", "ヽ:ハj:.:.:`ゝ、      _ノ - '´/ ,.レv -
, ", ", ", ", ", ", "/:.:.:.:.::.l:.|\` ̄ ̄´,. - '"´´/:.:.:.:.:.:
548本当にあった怖い名無し:2009/10/04(日) 01:22:40 ID:YEW0p7Iw0
┌―――――――─┐
|     ,. -─- 、    |
|   ,へ、_  ヽ   |
|   ! _|\|○ i   |
|   ヽ   \ノ    .|
|    ` 一 ´      |
|   【ホモ禁止】   |
└―――┬┬――─┘
        │| 
549たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 11:25:46 ID:Bia3jPTy0
おはよー御座います
ゾンビハンター 3の(5)でございまするー

(5)

ーーどうすれば... 駅に向かうか、戻るか。

自分が乗っていた列車は、何事も無かったかのように闇に消えていった。
このまま線路を進んでいけば、駅に出る。
車掌も運転手も、あの惨劇に気付いていないようだ。
最初に乗客を襲った女の子は、前の駅から乗ったはず...

トンネルの闇が、ノブアキを包む。
このまま、地下から永遠に出られないような気さえして来る。
ノブアキは、不安と恐怖がじわじわと忍び寄って来るのを感じた。
550たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 11:26:51 ID:Bia3jPTy0
(6)

ピリリリッッ

携帯電話の電子音が空間に木霊する。
「はい! もしもし」
「あ、サカモトさん? マキノですけど...」
事務の女性からだった。
電波が悪く、聞き取れない。
ーー今、遅延、連絡ーー 断片的にしか聞き取れない。
ノブアキはトンネルの闇のなかで聞く、知り合いの声が唯一の希望のように感じた。自然と声が高くなる。

「もしもし!? マキノっち、オレ今、地下鉄なんだ。 つか降りちゃった。 駅じゃ無いとこでさ。部長来てる? 会議の資料オレのPCの... 」

夢中で喋ってしまう。混乱している。
自分で何を喋っているのかもよく解らない。
気付くと電話は切れていた。
携帯電話のアンテナは、圏外と最弱を繰り返していた。

ーーとにかく、地上にでなければ...

ノブアキは、列車が去って行った方向に歩き出した。
551たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 11:28:21 ID:Bia3jPTy0
続きは夜でふー
ほんじゃまたー
552たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 17:32:48 ID:Bia3jPTy0
笑点始まりましたー

ゾンビハンター3の(7)で御座りますー

(7)

カツーン

前方から何かの音が聞こえてきた。

ーー奴らかも知れない

ノブアキは思ったが、身を隠せる場所もない。
仮にあったとしても、闇の中で狭いところに進むのは、例えようの無い恐怖を覚える。
ノブアキは、闇の中でただじっと息を殺して立ち尽くすしかなかった。
553たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 17:34:47 ID:Bia3jPTy0
(8)

カツーン... カツーン...

ヒトの足音のように感じる。
一旦そう思うと、ノブアキの脳裏に、目前の闇から向かって来る二本の足が鮮明にイメージされる。
イメージは徐々に全身を形作っていく。

ーー闇の中、空ろな目をした全身を血まみれの女性。 長い髪が顔を半分だけ隠している。 ザクロのように割れた頭...

ノブアキは、それが自分の想像の産物だということを理解しているつもりだった。ただ、どうしても頭から離れない。

叫びたい。
走って逃げ出したい。
泣き出したい。

そんな衝動に駆られる。
それが自殺行為に繋がるかも知れない、と冷静に考えたわけではない。
恐怖で何もできない、行動の選択すらできない。

息が上がる。首の後ろを撫でられているかのように感じる。肌が粟立つ。猛烈な尿意が襲って来る。
554たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 17:36:24 ID:Bia3jPTy0
(9)

ーーダメだ。 もう死ぬのか...

ピリリリッッ

またもや携帯電話の電子音が、地下の空間に響いた。
ノブアキの手の中で、携帯電話の液晶がバックライトを点滅させる。

ピリリリッッ

電子音は鳴り止まない。
通話ボタンを押すことすら出来ない。
足音は何かの気配を伴っている。
近付いてくる何かが、電話に出ないことで、やり過ごせるわけではない。電話に出たところで、助かるわけでもない。
ノブアキは、携帯電話を握り締めながら、無意識に歯を食いしばった。

携帯電話のバックライトのおかげで、近付いてくるのが人影だと判った。
濃い色のズボンと水色のようなシャツ、帽子を被っている。

ーー駅員さんだ!! 助かったぞ!!
555たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 17:47:45 ID:Bia3jPTy0
(10)

ノブアキの今までの妄想が全て吹き飛んだ。安堵のため息と共に、思わず笑みがこぼれた。

「あ、すいません! 駅員さんですよね?」

ノブアキが駆け寄るより先に、駅員が駆け寄って来る。
ダッシュ... と言っていい位の駆け足だ。
闇の中をあり得ない位の駆け足。
つまづいたり、転倒するのを恐れない足取り。

ノブアキは、異様な雰囲気を感じ後ずさった。
556たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/04(日) 17:49:51 ID:Bia3jPTy0
土日の分一気に投下しちゃいますた
またちょくちょくうpしますんでヨロシクお願いしますんで
557たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/05(月) 19:46:46 ID:VtVtJuVL0
一人相撲イヤッフゥー

ゾンビハンター3の(10)だおっ!!

(10)

(10)

オオオオォォォッッ

駅員から獣じみた声が発せられた。
ノブアキの口から悲鳴が漏れる。
だが、ただそれだけだった。棒立ちで悲鳴をあげるだけだ。
駅員の全身が見える。
片腕が骨が露出するほど、肉がこそぎ落とされている。
口角から血液と粘液状のヨダレが流れている。

駅員とノブアキが衝突した。
揉み合いながら、線路に叩きつけられる。
ノブアキは肩胛骨を打ち、苦痛の呻きを漏らした。
失神しそうになるのを何とか堪えて、駅員を押しのけようとする。
駅員はノブアキに噛みつこうとしている。
ノブアキは相手の喉に肘を入れて何とか凌ぐ。
相手の力が異様に強い。
掴まれている肩に指がめり込んでいる。握力だけで筋肉ごと引きちぎられそうだ。
558たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/05(月) 19:48:10 ID:VtVtJuVL0
(11)

その時、ノブアキの右手に何か硬いものが触れる。
駅員の胸ポケットに差しているボールペンだ。

ーー畜生!!

ノブアキは駅員の眼球にボールペンを突き立てる。
目尻に刺さったボールペンの圧力で眼球が押し出される。
だが、駅員はまったく怯まない。
ノブアキは何度も何度もボールペンを突き立てる。
深く刺さったボールペンを親指で更に
押し込む。


559たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/05(月) 19:48:27 ID:VtVtJuVL0
(12)

ビクンッ

駅員の体がのけぞる。
ゴツンッと音を立てて、駅員の体が仰向けに倒れた。

ノブアキの喉から、笛のような荒い呼吸音が漏れた。涙が溢れていた。
突然の吐き気。堪えることも出来ず嘔吐した。

逃げようと立ちあがろうとするが、足がもつれる。
膝がガクガクと笑っている。
逃げなければ、と思うが体が言うことをきかない。

駅員は仰向けのまま動かない。

ーー死んだのか?

ノブアキは、スーツの内ポケットから自分のボールペンを取り出し、握り締めた。
近付き、クツ先で軽く蹴る。動かない。

ーーよかった...
560たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/05(月) 19:49:27 ID:VtVtJuVL0
(13)

ノブアキはトンネルの壁に放尿しながら考えた。

ーーこのまま大手町駅に向かうのは得策ではない。
自分が乗っていた列車の連中が、駅員を襲ったはずだ。駅には大勢の「奴ら」がいるのは、間違い無い。

ーー考えろ... 集中して

そうだ、とノブアキは思い出した。
二つ前の駅は御茶ノ水だ。一旦、トンネルを出る。
聖橋の欄干の下あたりだ。
横には川があるが、道路まで上がれる階段があったはずだ。
東京医科歯科大の病院もある。肩の具合も診てもらえるし、タクシーも拾えるかも知れない。

ーー問題は...

一つまえの淡路町駅をどうやって通過するかだ。
危険はあるが、このままトンネル内に留まっても事態が好転するとは考えられなかった。
561たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/05(月) 19:59:57 ID:VtVtJuVL0
イヤッフゥー!!
投下した!!

562新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/05(月) 20:24:57 ID:Q4gvsB0+0
ゾンビと横須賀(31)

 かつん、という軽い音を立て、博康の投げた小石がドン・キホーテ2階の窓に跳ね返った。
 続けて、2つ、3つと小石を投げる。
 救難要請者との約束は、

 救助チームはドン・キホーテ北東側2階、右から3つ目の窓。ガラスに石を3回当てて合図する。

 これだけだ。
 ただし、相当に用心深いらしく、この合図がなければ誰も中にいれず、もしも侵入者があれば、ゾンビと見なして排除する、と言ったらしい。
 確かに、こんな場所で5年も一人で生きているのだ。それぐらいの用心深さを持っていて当然なのかもしれなかった。
「出てきませんね」
 数分が過ぎ、痺れをきらした自警団員の独白を聞き逃さず、博康は屋上を指差した。
「誰かいるよ」
 屋上の縁に、わずかに人の頭のようなものが見え隠れしていた。博康達のいる場所からは角度が悪く、言われなければ分からないぐらいにしか見えないのだが、博康はわずかな兆候すら見逃さなかった。
 博康に見つかった為、というわけではないのだろうが、すぐに屋上から影が飛び出してくる。
 人ではない。恐らくは上にいる人間が放り投げたのだろう、独特の鎖の擦れる音を響かせて鉄製の縄梯子が壁をのたうった。
 災害時の緊急避難用の縄梯子だ。
「上がって来い、ってことですかね」
「それしかないでしょ」
 少し不安げな自警団員を落ち着かせるため、博康は軽く肩をすくめて縄梯子を一番に登り始めた。
 確かに、考えればおかしいことばかりではあった。こんなところで5年もの間一人で生存していたにしては、博康達の姿を認めてもまったく声を上げることすらない。
 普通、まったく人と会わない状態が長く続いたのだから、久しぶりに会う人間には多少なりと心動かされるはずだ。
 しかも、それが自分を助けにわざわざやってきてくれた者であれば、声の一つぐらいかけるものだろう。
563新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/05(月) 20:25:37 ID:Q4gvsB0+0
ゾンビと横須賀(32)

 だが、その人影はいまだに声はおろか顔すら見せていない。
 まるで、与えられた作業をこなすかのごとく、淡々と博康達を招き入れる。
 少し、用心したほうがいいかもしれない。
 いままでは、ともすれば不安に駆られてしまう自警団員達を落ち着かせるために、あえておちゃらけた態度を取っていたが、縄梯子を登る今は自警団員達に顔色を伺われることもない。
 博康は下あごにぐっ、と力を込め、上をにらみ付けた。
 何が起きても即応できるように、腰のホルスターに込められた自動拳銃と、屋上の2つに意識を振り分ける。
 屋上まで、あと5段。
 博康は一度動きを止め、低性能爆薬の入ったリュックを背負い直すフリをしながら、さりげなくホルスターの留め具をはずし、安全装置解除した。
 一瞬、使い慣れた盾や特殊警棒のほうがいいかもしれないと思ったが、やはり銃の持つ一発の破壊力の安心感は大きい。
 大丈夫、射撃訓練はやった。近距離なら当たる。頭を狙って、一発ズドンで終わりだ。
 もし距離があるようなら銃を捨て、盾と特殊警棒に切り替え、他の自警団員が屋上に登る時間稼ぎをする。
「よし」
 一呼吸おいて、博康は再び腕に力を込めた。思い切りよく数段をあがり、縁に手をかけるや、跳ねるようにして屋上に転がり込む。
 同時に銃に右手をかけながら周囲を索敵。
 右、危険なし。
 左、危険なし。
 安全確認。
「んんっ」
 一つ咳払いして立ち上がる。
 警戒していた分、何もないとなると馬鹿みたいだ。
 屋上には人っ子一人いない。
 奥に階下につながる階段室があるだけで、後は青空の下、見事なまでに何もない。
 いや、屋上の端に白いテラステーブルと、プラスチックのウォーターウェイトに立てられたビーチパラソルが鎮座している。
 テーブルの上には湯気の立つコーヒーカップだ。
564新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/05(月) 20:26:35 ID:Q4gvsB0+0
ゾンビと横須賀(33)

 どうやら、要救助者は随分と優雅な生活をしているようだった。
 とにかく、他の自警団員達が登ってくるまでここの安全を確保することが重要だろう。
「早く登って……」
 おいで。
 後半の声は出なかった。
 変わりに、バネ仕掛けのおもちゃのように飛びすさる。
 後ろ足が地面に着いたと同時に体勢を立て直し、勢いのまま自動拳銃を引き抜いた。
「動くな」
 普段のおちゃらけた雰囲気などどこかに消え去っている。
 自警団の副隊長補佐という地位は、生半可で獲得できるものではないのだ。
 博康もまた、和也と比べて遜色ない力量の戦士であり、必要とあればいくらでも非情になれる男だ。
 当然、敵対の可能性があれば射殺することも辞さない。
 銃口は、屋上の縁に座り込んでいた男の額を正確に狙っていた。
 どうやら、博康は勢いよく屋上に飛び込んだため、屋上の縁に隠れていた男に気づけなかったようだ。
「お前は誰だ」
 低く抑えられた誰何の声。
「敵か」
 男を切りつける声が、鋭利に研ぎ澄まされた刃物を連想させる。
「味方か」
 力強く断固とした意思の込められた視線が男を射抜く。
565新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/05(月) 20:27:15 ID:Q4gvsB0+0
ゾンビと横須賀(34)

 男は、居心地悪そうに身じろぎした。
「助けて、もらいたくて……」
 博康の耳に届くほどの音量で、男の生唾を飲み込む音が聞こえてきた。
 数秒、時が流れる。
 男に動く気配はなく、博康は昂ぶった心を落ち着かせ、冷静に状況を見つめる時間が取れた。
 その上で、一つ言えること。
 男は怯えていた。
「博康さん、なにやってんですか?」
 登ってきた自警団員と目が合い、博康は小さく息を吐いた。
「なんでもないよ。たぶん、その人が要救助者だと思う。だよね?」
 いつもの調子に戻し、声をかけると、男は目尻に浮かんだ水滴にも気づかず、こくこくと首肯した。
 その拍子に飛び散った涙に目ざとく気づいて、自警団員が吹き出す。
「泣いてるじゃないですか。一般人イジめちゃダメですよ」
「いや、ちょっと警戒しすぎただけで、イジめてるわけじゃないんだよ?」
 しどろもどろになる博康だったが、少なくとも、安心したのか次から次に涙をこぼす男と、その男に銃を突きつけている自分、という状況下では、うまい言い訳などできるわけもなく。
 次々と屋上に登ってくる自警団員達に散々っぱらからかわれることとなった。
「ちくしょう。どうしてこうなった」
 呟きは、さらにからかわれる要素を与えるだけだった。
566本当にあった怖い名無し:2009/10/05(月) 23:30:30 ID:wEKruqdk0
たんくさん、ゾンビハンター面白いです。
前の作品とつながっていたんですね。
続きを楽しみにしています。
567本当にあった怖い名無し:2009/10/06(火) 14:38:27 ID:I32W3uJIi
新人さん たんくさん面白いですw
やっと楽しく読めるものきたー(T_T)
頑張ってください
568たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 19:52:26 ID:u/yxGRg60
>>567

嬉しくって妊娠しそうです
せいっぱいやりますね

そんでは投下!
569たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 19:53:56 ID:u/yxGRg60
それでわ「ゾンビハンター 3」(シーン3ってことです)
14っす

(14)

ーー出たとこ勝負だ。

ノブアキは意思を固めた。

ーー俺は車内から逃げれた。 「奴ら」の一人も片付けた。

何か確信があるわけではなかったが、ノブアキの頭の中には、一つの仮説あった。

ーーオレの考えが正しければ、生き残れるはずだ...

携帯電話を操作しながら、ノブアキは奥歯をぎりっと噛み締めた。

地下鉄の淡路町駅が見えて来ると、ノブアキは靴を脱ぎ捨て、裸足になった。
足音を立てるのを避けるためでもあったし、走る時に転倒するのを恐れたのだ。
ホームからの灯りが届かないぎりぎりの所で、じっと様子を伺う。

ーーいた!!

ノブアキが想定していた通り、ホームには大勢の乗客がいた。
トンネル内での元駅員との格闘がなければ、喜んで飛び出して行ったかも知れない。しかし、ノブアキは暗闇に身を潜めながら、人影の動きを監視した。
570たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 19:54:46 ID:u/yxGRg60
(15)

東京方面行きのホームには大勢の乗客がいる。
しかし、その動きには違和感があった。ウロウロと彷徨っている。 一方、池袋方面行きのホームには人影は見えない。

線路に落下するのを防ぐため、地下鉄にはホームドアが付いている。大人の胸くらいの高さだが、それのおかげで、線路にいるノブアキは見つけられ難いだろう。

ーー思った通りだな。ここまでは。

ノブアキは音を立てないように、トンネルに引き返すと、線路の上にそっと携帯電話を乗せた。
携帯電話には目覚ましアラームをセットしてある。5分後、最大音量で着信音と同じ音が鳴り響くはずだ。
ノブアキの立てた仮説とは、甲高い音と光が「奴ら」を引き寄せる、ということであった。
真っ暗なトンネルで、元駅員は携帯電話の着信と共に向かって来た。
明るいところでは視覚に頼るのかも知れないが、闇のなかででは違うのかもしれない。

ホームの全長は150mぐらいだろう、とノブアキは予想した。全力で走れば30秒以内には抜けられるはずだ。

ーーいける。いや、いくしかないんだ。
571たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 19:55:37 ID:u/yxGRg60
(16)

ピリリリッッ

闇のなかで耳障りな電子音が鳴り響く。
その途端、ホームにいた乗客が唸り声を上げて、一斉に振り返る。
ノブアキは一瞬自分が見つけられたのかと思って、身を硬くした。
「奴ら」が奇声を上げながらトンネルの方に押し寄せて来る。金属性のホームドアに阻まれて、一時動きを止める。
何体かが線路に飛び降りると、残りも次々に線路に飛び降りて来る。猛烈なダッシュでトンネルに突っ走っていく。

ノブアキは、池袋方面行きの線路の暗闇に這うようにして、身を潜めていた。

ーーまだだ。焦ったら駄目だ。

心の中で繰り返す。

最後の乗客が反対側のトンネルに消えて行く。線路からは「奴ら」の姿は見えない。
572たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 19:56:42 ID:u/yxGRg60
(18)

走りながら振り返る。ホームにいた「奴ら」が、トンネルから引き返してくる。

ーー間に合ってくれ!!

前方に光が見えてきた。
トンネルを抜けると、川があるはずだ。
老婦人の足は遅いのが、ノブアキにとって幸運だった。
視界が開けると同時に川にダイブする。
息継ぎもせずに、クロールで泳ぐ。クツを脱いていたのが効をそうした。
コンクリートの土手によじ登り、一瞬だけ振り返った。

追いかけてきた「奴ら」は次々に水面に飛び込んでいるが、浮かび上がってこない。
泳ぐには技術と経験が必要だ。「奴ら」はそういったものを全て無くしてしまったのだろう。
573たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 19:57:38 ID:u/yxGRg60
(19)

ノブアキは道路に出るための階段を登りながら、再度振り向いた。
JR御茶ノ水駅のホームにいる乗客が見えた。

折りたたんだ新聞を読んでいる者。
缶コーヒーを飲んでいる者。
携帯電話をいじっている者。

いつもと変わらない日常。
ほんの20分前のノブアキも、そこに見える一人だった。
不意にノブアキの目に涙が溢れた。嗚咽が漏れる。
もうあの場所に、あの生活に戻れないことをノブアキは予感した。

JR御茶ノ水駅の乗客の何人かが、次々に川に飛び込む「奴ら」を見ている。
駅員を呼びにいく者もいるようだ。
574たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 19:59:13 ID:u/yxGRg60
あっふん...
5話もなのぉー
どうしちゃったの...今日...

ほんじゃーまた!
575たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 20:25:26 ID:u/yxGRg60
ああああああ
(17)貼り忘れましたあああ

申し訳ないです
今日はオナニー我慢しますから許してください

(17)

ーーよし!! 今だ。

ノブアキは姿勢を低くしたまま、走り出した。
徐々にスピードを上げていく。

ーーよし!! いいぞ、いける!

池袋方面側のトンネルまで20mを切ったところで、ノブアキの目が視界の端に動くものを捉えた。

東京方面行きのホームの柵を、一人の老婦人が乗り越えようとして線路に落ちた。
動きが緩慢だった。
ノブアキの足が一瞬止まった。

「あ、あの...」
ノブアキが口を開く。
線路に突っ伏していた老婦人が顔を上げた。顔の右半分の皮膚がごっそり無くなっている。白濁した目と、視線が合ったような気がした。

ヒギヤァァァァ

老婦人の口から絶叫が流れた。バネのように立ちあがると、花柄のステッキを手首にぶら下げたまま、ノブアキに向かって走って来た。

ーーヤバい!!
ノブアキは、トンネルに向かって全力で走り出す。
576たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/06(火) 23:43:03 ID:u/yxGRg60
>>566
>たんくさん、ゾンビハンター面白いです。
>前の作品とつながっていたんですね。
>続きを楽しみにしています。

ありがたいですねー
つながりっていうか、つかいまわしですねー

エネルギーもらたんでまたうpしますねー

おやすみマーヤ
577たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/07(水) 20:57:54 ID:bWqhmm+/0
おこんばんわー
ゾンビハンター3 は今日の投下分で終わります

(20)

「おぉ...」
ーーおーい!! 助けてくれ!
と言うつもりでノブアキは手を上げた。
右腕の肩甲骨がピリッと痛んだ。

「奴ら」の動きが一瞬だけ止まる。
頭上の人の気配に気づいたのだろうか。
石垣に飛びつこうとしている。
何体が、壁面を登り始める。

「逃げろ!! 逃げろー!」
ノブアキは叫んだ。あと数メートルで「奴ら」が線路に到達してしまう。そうなったら、地下鉄の惨劇の二の舞だ。

「奴ら」の一体が線路によじ登る。
ホームの乗客の一人が、それを指差しながら片手を挙げて駅員を呼んでいる。

「ダメだ! 逃げてくれっ! 頼む... 」
語尾がつぶやくように小さくなった。

数人の駅員がホームに降りる。大丈夫ですよ、というように手を差し伸べる。
差し出した手が、弾かれたように引っ込められ、駅員は尻餅をついた。
手を押さえている。口がアルファベットのO字に開かれている。
線路に、二体目三体目がよじ登る。最初の一体がホームに飛びついた。

ノブアキは、悔しさと絶望感に耐えるように奥歯を噛み締める。
578たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/07(水) 20:58:56 ID:bWqhmm+/0
(21)

バシャ!

ノブアキの足元から、跳ねるような水音がした。

「奴ら」の一体が、水面から顔を出す。

ーー何てバカなんだ! オレは!

泳ぐことが出来なくても、川底を歩くことはできるじゃないか、そんなことに気付かないなんて...
ノブアキは階段を駆け上りながら思った。

ノブアキはフェンスを乗り越え、歩道に降り立った。

バスを待つ行列。
横断歩道を渡る人々。
信号待ちの車。

それらの日常の崩壊が、すぐそこに迫っていた。

全身ずぶ濡れで、目を血走らせたノブアキを見て、バス待ちの行列の人達が、怪訝な顔で振り返る。
だが、すぐに目を合わさないようにすぐに向き直った。

「誰か助けてください... お願いします... お願いです...」
ノブアキは、つぶやきながらフラフラと行列に近づく。
病院帰りらしき老人や、ベビーカーを押している母親の肩をつかみながらつぶやいた。
579たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/07(水) 20:59:56 ID:bWqhmm+/0
(22)

ーーどうして誰も助けてくれないんだ...
ノブアキの苛立ちは、急速に諦めに変化していった。
わからなくても仕方ないよな、という気持ちもある。ノブアキ自身も状況を把握しているわけではない。 いや、むしろただ生き残ることだけに、持てる全てをつぎ込んだ。 理解や考察は後まわしにして行動してきた。

ーーでも...
ノブアキは思う。

ーー大丈夫ですかとかだけでいいのに

もしこの場の誰かが、ノブアキの話しに耳を傾けていたら....
その後のノブアキの運命は変わったかも知れない。

「おいっ! お前いい加減にしろよ!」
ノブアキは肩を小突かれてよろめいた。
白髪混じりの長髪を束ねた、小肥りのヒゲの中年男は、ドスの効いた声で怒鳴った。「海人」と書かれたTシャツを着ている。
580たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/07(水) 21:00:53 ID:bWqhmm+/0
(23)

ガチャン!

背後のフェンスに「奴ら」が激突した。
すぐに乗り越えてくるかも知れない。

ーー逃げなきゃ...

ノブアキや信号待ちの車に向かって、車道に降りた。
車のドアウィンドウを叩きながら、助けてください、と繰り返す。車の人達の反応も、バス待ちの人達と似たようなものだった。
にこやかに話しているのを止め、真っ直ぐ前を見て無視している。顔が不機嫌そうに引きつっている。

「朝っぱらから酔っ払いやがって!」
背後から、先ほどノブアキを小突いた中年男が声を荒げた。

大学生らしい原付の男は、近づいてくるノブアキから逃れようと右車線に出ようとした。
その後ろから、バイク便のバイクがブレーキをきしらせながら追突した。

ガシャーン!

二台のバイクが倒れる。
信号が青に変わり、先頭の車は慌しく発車していく。事故の後方の車が、状況が分からず苛立ちを込めたクラクションを鳴らす。

パッパー! パァーーー!

けたたましいクラクションが、ノブアキを現実に引き戻した。
581たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/07(水) 21:02:20 ID:bWqhmm+/0
(24)

ーーヤバいぞ! そんなに鳴らしたら!

フェンスがガシャガシャと揺さぶられている。
既に数体の「奴ら」が取り付いている。上下の蝶番の上のほうが外れている。
フェンスのドアが斜めに傾いでいる。

「おいっ! 何やってんだよ、てめぇ! ちゃんと後ろ見てんのかよ!?」
バイク便の男が、原付の大学生に食ってかかる。
「違うんすよ! このヒトが...」
「荷物壊れてたら弁償してもらうからな! 分かってんのか、てめぇ!」
胸ぐらをつかまれた大学生は、逆につかみ返す。
「なんすか! 暴力止めてくださいよっ!」

つい先ほど、本当の暴力ーーいや、殺戮を目にしたノブアキは、二人のやり取り見て思った。

ーー何て下らないことで、言い合ってるんだ... そんな場合じゃないだろ...

闘争心は人間の本能だ...
不意にノブアキの脳裏に、そんな言葉が浮かんだ。

『戦争のたびに、新しい技術が産まれ、発展した。
人類の歴史は、戦争の歴史でもあるんだよ... 』
高校の時の世界史の教諭の言葉だった。
「奴ら」がヒトを襲うことが、皮肉にもその説を裏付けているような気がした。違いとしては、発展することがないだろう、ということだ。

ーーオレの本能は違うぞ! ...オレは生き残る

ノブアキは原付を引き起こして跨ると同時に、フェンスのドアが倒れた。
582たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/07(水) 21:04:05 ID:bWqhmm+/0
(25)

「奴ら」がバスを待つ行列に殺到する。
「奴ら」の叫び声と、人間の絶叫が重なった。

「おいっ! 何してる!? 逃げるぞ!」
ノブアキは、もみ合っている二人に向かって怒鳴った。
突然の出来事に呆然としている。ノブアキは原付ののブレーキを握り、セルボタンを押す。
プラグが被っているらしく、中々エンジンがかからない。
バイク便の男も慌てて、バイクを起こす。

「後ろに乗れ!」
ノブアキは大学生に怒鳴る。
「俺の原チャ!」
「後にしろ! いいから乗れ! 逃げるぞ!」
バイク便の男は発車できない。クラッチレバーが折れている。
そこに「奴ら」が取り付いた。バイクごと引き倒される。男が悲鳴をあげる。車体に挟まれてる。

キュルル... トトトト

原付のエンジンがかかる。
バイク便の男が絶叫する。オープンヘルメットのシールドが割られて、顔に噛み付かれている。
その様子を見た大学生が、つられて悲鳴をあげる。

「死にたくなければオレと来い!」
大学生は、ノブアキの言葉にガクガクとうなずくとシートに跨った。

「いくぞ!」
大人二人の体重を乗せた原付のスピードは遅かったが、「奴ら」を引き離すことは出来そうだ。

原付のミラーは、倒れたひょうしに割れていた。ノブアキは惨劇が見えないことが、むしろ幸運なような気がした。
583たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/07(水) 21:05:44 ID:bWqhmm+/0
以上
ノブアキの回想はここで終わります

次回はアザミとの話しに戻ります
584セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/07(水) 21:30:27 ID:2j1rl8OXP
たんくさんの話はスピード感があっていいですね!
追われているものの気持ちが伝わってきます。
ただ、あまり想像力を働かせると朝の地下鉄通勤がちょっと怖くなるかも。

新人さんもがんばってください、期待してますよ。
というかもう投下し始めてからだいぶ経ったので、何か名乗られてはいかがですか?
585セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/07(水) 21:31:36 ID:2j1rl8OXP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(142)

李典はすぐに弩隊に駆け寄り、隊長に尋ねた。
「郭図殿に、何かあったのですか?」
すると、隊長は悔しそうにうなずいた。
「ああ、あの方なら・・・我々が築いた障害物の所に残ってると思います。
実はあの方自身が、ここは自分ができるだけくい止めるから行けと言ったんですよ。それでも一緒に行こうとしたら、いきなり首に矢をつきつけられて・・・。
殿の邪魔にしかなれないなら、ここで少しでも時間を稼いで死ぬって・・・。
何だか、えらく思いつめてましたよ。」
「はー!!?」
そこにいたほぼ全員が、調子の外れた叫び声をあげた。
郭図は何があっても袁紹のもとに戻ると思っていたのに、こんな事になるとは。
誰も予想だにしなかった。
やはり、昨日の舌戦の後、袁紹をいすで殴ってしまったのが原因だろう。袁紹の役に立てず足を引っ張るばかりなら、自分はいらないと本人の中で結論を出してしまったらしい。
結論が出たら後は行動するだけ・・・それが郭図という男だ。
曹操の背中を、嫌な汗が流れた。
「いかん、助けねば!!」
突然、袁紹が走り出した。
「ああっ止めよ!」
夏侯惇と許褚が、両側から腕をつかんで引き止める。
しかし、それでも袁紹は必死で振りほどこうともがいた。
「嫌だ、放せ!
わしは郭図を助けるのだ、わしが行かねばならぬのだ!!」
さっきまで割りと落ち着いていたのに、一気に錯乱に近い状態になっている。
袁紹は郭図と審配に依存してしまっている・・・曹操はそれを痛感した。袁紹は昔から誰かに依存してしまい、依存した人以外の意見を聞かなくなる性質がある。
せめて武将に依存してくれていれば・・・そう考えて、曹操はやぶへびで頭が痛くなった。
袁紹が以前大切にしていて、おそらく依存していたであろう二人の武将・・・顔良と文醜を失ったのは、曹操との戦だ。
曹操があの二人を殺さなければ、袁紹がこうなる事はなかっただろう。
全く、何が災いにつながるか分かったものではない。
586セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/07(水) 21:32:55 ID:2j1rl8OXP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(143)

混乱して暴れる袁紹を前に、曹操は途方に暮れた。
袁紹を死なせる訳にはいかないから、ここは引き止めるべきだ。それに、自分もこれ以上人材を失う事はできないから、郭図には勝手に死んでもらう方がいい。
しかし、果たしてそうして脱出したとして、袁紹は曹操を受け入れてくれるだろうか。
依存している人間を奪った者への袁紹の恨みは、尋常でなく深い。
顔良と文醜の時は一時的に従えていた関羽に討ち取らせたため、恨みはそちらに向かったようだが、今また郭図を奪う事になれば・・・。
「お願いです、郭図を助けてください!!」
審配が、荀攸のそでをつかんで懇願している。
袁紹が深く依存している片割れの審配が・・・これはまずい。
曹操の顔から血の気が失せていった。
その時、李典が静かに曹操の横を通り、弩隊が来た方の通路に踏み出した。
「私が行きます!」
力のこもった声に、全員が驚いて李典の方を向いた。
「し、正気か、李典・・・!?」
夏侯惇が問うと、李典は落ち着いて答えた。
「郭図殿がこうなったのは、彼を解き放った私の責任です。
だから、私が責任もって彼を助けてきます。
それに、郭図殿の想いは昨日たっぷりと聞かせていただきました。あんなに君主を想う臣がこんな死に方なんて、悲しすぎます!!
もし脱出までに戻らなければ、見捨てていただいて構いませんので。」
李典はそう言って、かすかに笑って見せた。
曹操はそんな李典に、念を押すように言った。
「分かった、だが脱出の時が来たら、障害物を作って守っている徐晃と夏侯淵も撤退させるぞ。
それでも良いか?」
「はい!」
「だがおまえ一人では危険であろう、于禁をつけてやる。」
于禁が素早く前に出て、弩隊の隊長に障害物の位置を聞き、李典とともに走り出した。
曹操は二人の後姿を、祈るように見送っていた。
自軍の主な将はだいたい消息が分かったが、袁紹軍の将はまだ審配しか来ていない。張郃、高覧、逢紀がどうなっているのかは全く分からない。
ならば、分かっている者だけでも助けに向かうべきだ。曹操はそう思い直した。
587セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/07(水) 21:34:35 ID:2j1rl8OXP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(144)

並んで走りながら、于禁は李典に尋ねた。
「なあ、郭図は他の袁紹軍の将がどうなったか知ってると思うか?」
「いいえ、知らないと思います。」
李典は前を向いたまま、首を横に振った。
「私は昨日の昼からずっと郭図殿と二人でいましたが、夕方に張郃殿が様子を見に来た以外は、袁紹軍の誰とも話していません。
他の者が何をしているかは、知る由もないでしょう。」
それを聞くと、于禁はチッと舌打ちした。
李典にも分かる、今この状況を引き起こした犯人として一番怪しいのは、消息が分からない袁紹軍の三人だ。しかし消息が分からないということは、証拠がない事でもある。
郭図を連れ戻す事で何らかの手がかりを得られれば、と于禁は思ったのだろう。
あるいは、曹操もそう思ったかもしれない。
少し間が開いて、于禁は残念そうにつぶやいた。
「そうか・・・まあ、確かにな・・・。
あいつは袁紹と審配以外には協力しないし助けもしない、そんな気はしてたんだ。」
それを聞くと、李典は苦笑した。
「いいえ・・・あの人は、袁紹殿以外は助けませんよ。
審配殿の事は、ただ利用しているだけと言っていました。」
「何だってえ!?」
于禁はぎょっとした。
「お、おい、ちょっと待て・・・あの二人は仲が良いんじゃないのか?
おれは昨日審配を監視しながら話してたんだが、審配は郭図の事を無二の親友みたいに言っていたぞ!」
「郭図殿がそう思わせているからですよ。」
李典は冷めた声で答えた。
そうとも、郭図は袁紹以外の誰の事も気にかけてはいない。
李典は昨日の夜、その異常な想いをたっぷり聞かせてもらったのだから。
588たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/08(木) 01:08:46 ID:hQYGvm1T0
セイレーンさん

乙であります!
その創作意欲に頭が下がります

頑張って下さいねー
589セイレーン ◆wczT2UeYyg :2009/10/08(木) 06:34:31 ID:zcTgJRK10
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590本当にあった怖い名無し:2009/10/08(木) 18:00:39 ID:b9us9eE8i
たんくさん
舞台の駅よく使うのでどきどきしながらも
期待してますw
楽しみですw
591たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/09(金) 20:42:49 ID:DE6L2tVV0
こんばんは!
ゾンビハンター4 投下です

「ゾンビハンター 4」
(1)
アザミとノブアキは、廃屋になった整備工場にいた。 自動車用バッテリーがいくつも並べられ、工業用のカンテラが昼間のような明るさを創り出していた。
ノブアキは、仰向けになって古い映画に出てくるような古めかしいデザインのバイクの下に潜り込んでいた。

ーーロイヤルエンフィールド バレット500
1930年代に英国で設計された名車だ。
吸排気系を少しばかり弄って、寒冷地でも走りやすいようにチューニングを施してある。ノブアキがバイクの下から這い出てきた。
「よし!...とサイドカー付けたし、後は荷物だね」
アザミがバイクの周りをぶらぶらと歩き回る。明らかに不満そうな顔でつぶやく。頬が少し膨らんでいる。
「あたし... 前のやつのほうがよかったな...」
「はぁっ!?」
ノブアキは、機械油で黒くなった顔を拭う手を休めて、アザミに向き直った。
「あのねぇ.. 6000cc、V8、400馬力なんて、どんな燃費だよ。 二輪のコルベットだぜ? あいつは。
それに比べてこいつは、燃費もいいし、サイドカー用右シフトチェンジだし、メンテも楽。
満タンで400kmはいけるじゃん」
「 あたし最近の機械弱いから、ノブアキにおまかせするわ」
ーー最近の機械か... ノブアキは、頬を歪めて苦笑した。

二人が目指すのは、秋田県秋田市。
自衛隊の駐屯地。
それほど過密でない人口。
大型のショッピングセンター。
これらの条件を満たす地域では、生き残っている人間がいるケースが多いことを、ノブアキは経験上知っていた。

592たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/09(金) 20:44:34 ID:DE6L2tVV0
ーーまた何人か死ぬことになるな...

その死を、ノブアキに止める術はない。むしろノブアキ自身が、死神を乗せて走る青白い馬<ペイルホース>ーー死の運び手、なのだ。

ノブアキは自身を嫌悪している。
何も感じなくなりつつあることを。

ーー生き残ることが、それほど大切なのか? いっそゾンビの仲間に入ったほうがいいんじゃないか...

何度も繰り返した問いに、未だ答えは出ない。

ーーオレの征く道は... 生き残って何をするんだ...
593たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/09(金) 20:45:34 ID:DE6L2tVV0
(2)

ボボボボボッッ

短気筒エンジン特有の振動が、サドルシートからノブアキの脊椎を駆け上っていく。
リアサスペンションの無いリジットの車体は、路面の小さなギャップをも拾い、乗り手をガツンと突き上げる。
しかしノブアキは、この振動が好きだった。
先ほどまでの鬱屈とした気持ちを吹き飛ばしていく。純粋な闘争心に火をつける。

地面を蹴る一匹の獣。青銅色の毛皮をまとった野性。背に負うのは、黒き甲冑をまとった破壊の女神だ。
躊躇なく、容赦なく、冷酷で、美しい。

アザミが、サイドカーの座席から立ち上がった。
左脚を縁に掛け、右手を真っ直ぐ前方に差し向ける。時速150kmを超えるスピードの中で、まるで彫像のように微動だにしない。目に見えない軍勢に、突撃を命じるような姿勢だ。

ノブアキは、高周波発生装置のスイッチを入れた。
街路樹の梢にとまっていカラスが一斉に飛び立つ。
蒼みがかった黒い羽が舞うなか、ノブアキはゾンビの集団を見つけた。
594たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/09(金) 20:46:48 ID:DE6L2tVV0
(3)

ノブアキは、サイドカーの側面のフックから軍用ライフルを取り上げた。

右足の甲で、ギアをコツンとニュートラルに入れた。
肩付けで軍用ライフルのトリガーを握りこむように絞る。

バババババババッッ

衝撃が肩に食い込む。
わずか直径5mm程度の円錐が回転しながら、カラスの羽を貫き、彼方のゾンビの体に小さな穴を穿つ。
体内で暴れながら進んだ弾丸が、握り拳くらいの肉塊を引き千切りながらゾンビの体を抜ける。

ほんの数秒で二本の弾倉を撃ち尽くし、ノブアキは軍用ライフルを捨てた。
頭蓋を撃ち抜かれたゾンビが、数体崩れ落ちる。
ゾンビの群れが甲高い絶叫で応える。

ノブアキはギアをセカンドに入れ、ゾンビの群れの手前で急速に右にハンドルを切った。
慣性の法則で、アザミが宙に放り出される。

膝を抱えたアザミの躯が、空中で回転しながらゾンビの群れに飛んでいく。
跳躍の頂点で、アザミは羽ばたくように両手を広げた。

シャリーン

鈴の転がる音を立てて、鞘から抜かれた鋼刃が白く光った。
背中から交差するように引き抜かれた刀が、アザミの両手に握られている。
595たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/09(金) 20:56:16 ID:DE6L2tVV0
ふぅ
アクションシーンは行数食いますねぇ
サクサク進めたい気持ちもありますが、描写がくどいところは、映画のスローモーション(マトリックスみたいなの)を想像してくださいー

>>590
ありがとうございます!
誠意を込めてうpしますね
596セイレーン ◆lOzQ6cITxI :2009/10/11(日) 12:39:15 ID:U54unMY40
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 |:::::| ∴∴ _-- ̄`´ ̄--__ ∴∴ |::::::| ファンのみなさ〜ん、今日か明日ゾンビ・オブ・ザ・官渡投下しますね
 |:::::| ∴∴  -二二二二- ∴∴ |:::::::|        お楽しみに〜
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597たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/11(日) 20:22:43 ID:am/YWeFa0
こんばんわ!
今日飲みなので、二話だけですがうpしますねー
尻切れですが、御容赦をば...

(4)

鋼の翼が、闇の中で羽ばたいた。
獲物を捕らえた猛禽類が、上昇しようとするように。
アザミはゾンビの頭頂を蹴って、更に跳躍する。ゾンビの頭は半ば肩に埋め込まれた。
宙を飛んだアザミが、刀を振払い血糊を飛ばす。
それを待っていたかのように、ゾンビの顔にプツプツと血の点が現れた。点が線になった時、ズルリと顔の半分が斜めに滑り落ちる。

アザミが宙を舞うたびに、ゾンビはその数を減らしていった。
だが、アザミは妙な違和感を感じていた。

ーー何だろう? ...イヤな感じ
今までアザミが、闘いの最中に感じたことの無い感覚だった。
考えるより速く斬る、飛ぶ。それだけに、集中して来た。今日に限って、なぜ雑念が混じるのか。アザミ自身にも理解出来なかった。
また、そうした事を考えてしまうこと自体が、アザミの違和感を不安に変えていた。

ゾンビの頭を踏み付けが、若干浅かったような気がした。
頸骨を折られたゾンビの両腕がアザミの足首を掴んだ。工作機械のような、凄まじい力で。
アザミの刀が一閃する。
ゾンビの二の腕を切り飛ばして、アザミは左脚で飛んだ。
598たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/11(日) 20:23:33 ID:am/YWeFa0
(5)

ーー低いっ!
アザミの思考と同時に、空中のアザミの左足首が掴まれた。刀が、白い帯のような残像を残して振られた。
右の蹴り足は十分だった。
だが、ゾンビの二の腕が怨念のように絡みついていた。それをゾンビに掴まれる。二本、四本、八本と腕が伸びた。

空中の見えない壁に激突するように、アザミの飛行が止まった。
突き出された無数の腕。決して満たされることのない、絶望的な飢餓。屍人に残っているのは、本能ではない。
あらゆる感情がない、荒野の地平線。蠢き、のたうち、食い尽くす。ヒトには理解することすら不可能な、真の狂気がそこにあった。

アザミは、躊躇なく自分の右脛を切り落とす。
左脚で三度飛ぶ。飛ぶたびに、右脚から大量の血液がほとばしる。
ゾンビの群れを越え、着地する。バランスを崩したアザミは、転がりながらガードレールに激突する。衝撃で鉄板が歪んだ。

何十分の一秒が、アザミには止まったかのように感じた。
数え切れないほどの白濁した目が、星明かりで光っている。
599たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/11(日) 20:24:39 ID:am/YWeFa0
すいません
続きます
推考が追いつきません
んじゃまたー
600本当にあった怖い名無し:2009/10/11(日) 20:58:26 ID:ooX5WLZ60
ノブアキと逃げた大学生はどうなったんだ?
601たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/11(日) 21:04:55 ID:am/YWeFa0
>>600

あ、すません
それはまた後ほどのノブアキの回想で

取り合えず追加うp
この次はアザミの回想→ノブアキ奮闘→ノブアキ回想(アザミとの出会い、大学生のエピソードも)→すったもんだ→ラストシーン
という予定です

このスレで完結したいなぁ
無理かなぁーw
602たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/11(日) 21:05:54 ID:am/YWeFa0
(6)

ーーズガァァン!
閃光が辺りを包む。
アザミが、放棄された自衛隊基地から調達した手榴弾だ。二発目、三発目と立て続けに爆発する。
巻き上がった砂埃を切り裂くように、ノブアキが操るロイヤルエンフィールドが駆けてくる。

「アザミ!」
ノブアキが鋭く叫びながら手を差し出す。
「掴まれ!」
スピードを緩めるわけにはいかない。ノブアキの声が上ずった。
左手でアクセルを抑えつつ、右手を地面すれすれに伸ばす。チャンスは一度きりだ。
ーー神様!
ノブアキは、産まれて初めて祈った。

ガシッと、アザミとノブアキの腕が交差する。
「うおおおぉっ!」
ノブアキの口から、自然と気合が発せられた。力まかせにアザミの体を引き上げる。
「放すなよ!」
左手をアザミの腰にまわして、ノブアキは叫んだ。奥歯を割れそうなほど噛み締めていた。
ゾンビの群れの甲高い絶叫が、風に乗ってノブアキの耳に届いた。
「畜生っ!」
ノブアキは吐き捨てると、アクセルをひねった。

ーーあぁ... 寒い
アザミは朦朧とした意識で、ノブアキの叫びを聞いていた。何もかもがスローモーションで、音はくぐもって遠かった。

ーー雪がふりそう... そういえば、あの日も寒かったっけ

アザミは眠るように、意識を失った。
603セイレーン ◆lOzQ6cITxI :2009/10/13(火) 07:05:38 ID:i4DVMBIe0
            ___
         /::::::::::::::::::\へ
        冂::::::::::::::::::::::::::::::ヽΤ」
      Σ厂:::::Nノレレ-V::):ノ:::|
       |:::::::/ ( ●)(●)  i::::|/⌒_)
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    (⌒ ̄ ̄      丶   ヽ,,ノ::|  
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      |:::::: |     ̄   ̄ |::::::::::::|    
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         i      ̄\ ./    
         \_     |/
          _ノ \___)
         (    _/
          |_ノ''
きのうあるアクシデントがあってとても小説書ける精神状態じゃなかったです
ファンのかたごめんなさい。今日の夜か明日には投稿します
604たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/13(火) 19:30:08 ID:nc0iRFhQ0
こんばんは!!
アザミの回想、シーン5になります
ゾンビ出ないので退屈かな?
まぁ許してたもんせっ
そいだば投下〜

「ゾンビハンター5」
(1)

水野九郎衛門の娘、阿左美は、深川にある屋敷の日向で白猫と遊んでいた。

阿左美、この年十八になる。慶応四年、一月の末である。
もちろん、屋敷と言っても八畳が二間に六畳間の簡素なものだ。庭も狭い。
とは言え、この時世の貧乏旗本としては、暮らしぶりは良いほうかも知れない。十四石という父の禄が、高いのか低いのか、阿左美にはわからない。
しかし、吐く息が白くなるこの時期に、火鉢の炭が買えるのはありがたいことだ。もっともそれは、阿左美の許嫁である家からの見舞金のお陰でもある。
605たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/13(火) 19:33:11 ID:nc0iRFhQ0
(2)

桑名蕃士であった堀木家の次男右京が、京の鳥羽口で長州の軍勢に破れ戦死したとの報を受けたのは、ほんの十日前である。
それ以来、阿左美は黒い喪服を纏って暮らしている。一度もあったことが無い許嫁。夫となり、子供の父となるべく定められた人。
何の感情も無い、といえば嘘になる。まるで自分の運命が、ぷつりと切られたような気持ちになってくる。
人としての一つの幸せの形から、はじき出された寂しさ。逆に言えば、もう世間と関わらなくてもいいと言うような開放感。

ーーどんな方だったんだろう...?
阿左美は、白猫の柔らかい腹をくすぐりながら考えた。
ーー 歳は二つ上。論語漢詩をよくし、藩きっての佑筆。武芸...特に弓術の腕前が高く。縁談をまとめた伯父によれば「なかなか凛々しい」顔立ちらしい。

阿左美が許嫁について知っているのは、この程度であった。

ーー 京か...
阿左美の住む屋敷から、そう遠くない場所で大老が暗殺されてから、世間は血生臭いことばかりになっていた。
阿左美の遠い京での出来事など、海の向こうの話しのように感じていた。

しかし、幕府軍が三分に一の手勢の長州軍に破れたことは、多感な阿左美の心にいくばかりかの衝撃をもたらした。
ーー とは言え、幕府が無くなったとしても、人の世が終わるわけではない。

幕府の御家人である父には決して言えないことだった。
606たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/13(火) 19:34:07 ID:nc0iRFhQ0
(3)

ーー 京にいってみたいな...
阿左美の気持ちは日ごとに高まっていた。
許嫁のことを想った、というのもあっただろう。
しかし、気持ちの大部分は違った。
阿左美は、見たかったのだ。自分の運命が終わった場所を。幕府の世が終わった場所を。
硝煙と血と汗の匂いのけぶる戦場で、累々たる屍を見渡しながら、凛とした冷たい空気の中で立ち尽くす...
その荒涼とした景色の中で、たった一人。
想い、寂寥、そして静寂。静かに、眺めたかった。

ーー 弥勒の世... この世の終わり...
五十六億七千万年後に下生する弥勒菩薩は、そんな世界に現れるではないだろうか。

ーー ならば、自分もその場にいたい。
居てはいけない法はない。だが手だてもない。
ーー だからせめて...
京に上りたい。

阿左美は、ゆっくり顔を上げた。
柔らかい頬に赤味が差し、恍惚とした微笑みは、凄絶な迫力に満ちていた。
607たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/13(火) 19:40:07 ID:nc0iRFhQ0
かったるいですね。ええ、わかります。
まぁアザミの自己紹介だと思って読み飛ばして下さい

更に続きますが....明日にでも
608本当にあった怖い名無し:2009/10/13(火) 20:33:55 ID:up5xkLQV0
>>607
全然かったるくないですよ。
この調子で明日もお願いします。
609セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/13(火) 22:07:46 ID:kszZlb43P
ちょっと新型インフル・・・ではなく普通の風邪でダウンしてました。
ではゾンビ官渡の続きをどうぞ。
610セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/13(火) 22:09:21 ID:kszZlb43P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(145)

前日の夜、李典は郭図と枕を並べて眠った。
眠る前に、郭図がぽつりと漏らした。
「まさか、審配以外とこんな寝方をするとは思いませんでしたよ。」
その言葉を聞いた時は、李典も郭図と審配は仲が良いのだと思った。
だって、同じ床で枕を並べて眠るなんて、よほど心を許した相手か、今回のようにやむを得ない場合にしかないだろうから。
李典の口から、自然にこの言葉が出た。
「そうですか・・・やはり審配殿とはとても仲がよろしいのですね。」
すると、郭図は笑って答えた。
「いえ、そうでもありませんよ。
私は審配と仲良くなんかありません。」
「え?」
意外な返答に、李典は思わず食い下がった。
「で、でも、友達なんですよね?」
慌てる李典を見て、郭図はおかしそうに笑った。
「友達なんかじゃありません。
政治的には仲間かもしれませんけど、あの男の事は好きになれません。だいたい、袁紹様の後継者の事でも、あの男とは意見を異にしていますし。
ただ、私が殿のために献策してそれを聞いてもらうためには、あの男の賛成票とマシンガン説法が必要なんです。」
李典は耳を疑った。
昨日からずっと見ている限り、郭図と審配は信頼し合っているようにしか見えないのに。
それよりも、審配は郭図の事を信じてかなり力を貸しているのに・・・それをこんな風にしか思っていないなんて。
郭図には、人の情というものがないのか。
李典の胸に、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
「あなた、なんてひどい事を!!」
李典は思わず柔らかい布団に拳をたたきつけた。
611セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/13(火) 22:10:24 ID:kszZlb43P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(146)

しかし、それを見ても郭図は大して驚かなかった。
むしろ、あきれたようにふーっとため息をついた。
「な、何がおかしいんですか?」
李典が聞くと、郭図はうんざりしたようにぼやいた。
「ひどいってあなた・・・何も知らないあなたが何を言うのですか?
だいたい、私は審配にいい思いをさせてあげる代償に、審配の力を借りているのですよ。これは公正な取引なんです。」
「いい思い・・・?」
「ええ、お友達のふりをしてあげる事です。あの男は友達がいないんですよ。」
それを聞いたとたん、李典は不覚にも納得してしまった。
審配の性格が上記を逸している事は、李典にもよく分かる。
しかも審配は郭図と違って思っている事を隠せないため、大勢の前でもすぐそれが表に出る。おそらく、昨日曹仁と徐晃にやったような事を頻繁に起こすのだろう。
これでは友達がいないのもうなずける。
何も言えなくなった李典に、郭図は一人で話を続けた。
「あの男は感情が激しい上に、人との付き合い方もおかしいんです。
興味を持った人には、相手の都合などお構い無しに近付こうとやっきになるんですよ。
私も味方するような振りを見せたとたん、二人で飲みに行こうって熱烈に誘われました。誰でも逃げたくなるでしょう?
私はそれを受け入れたんです!それだけ犠牲を払ったんです!!
だから、私はあの男を殿のために利用していいんです!!」
「殿のために・・・ですか?」
李典は正直、審配の話から抜けられるキーワードを見つけてほっとした。
郭図と審配の仲については、これ以上聞くと頭がおかしくなりそうだ。
李典はこういうドロドロした世界が大嫌いだ・・・武将に転向したのも、一つはそれが理由だ。
李典は少し呼吸を整えると、できるだけ穏やかな口調で言った。
「あなたは、本当に袁紹殿が大好きなのですね。」
その瞬間、郭図の顔から笑みが消えた。
612セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/13(火) 22:11:21 ID:kszZlb43P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(147)

李典はぎくりとして身構えた。
今のは、逆鱗に触れたかもしれない。
郭図がキレるとどんな恐ろしい事になるか、もしかしたら手首をつないでいる縄で首を絞められるかも・・・李典は思わず縄のたるんだ部分をたぐり寄せた。
「ええ、大好きです・・・何よりも。」
郭図は意外にも、何もしてこなかった。
ただ身を縮めて、思いのたけを吐き出した。
「私は、殿のために生まれてきたのだと信じていました。
殿のあの気品ある物腰、整った容貌、大らかな笑顔・・・その全てが私を惹きつけて止まないんです。だから私は、一生あの方に尽くそうと決めました!
殿のためなら火の中水の中、針の山でも血の池でも・・・。
たとえそれで誰かを踏みにじって罰を受けても、それが殿のためなら私は・・・!!
実際、今までそうやって人を陥れても、後悔なんてありませんでした。ただ、殿のために事がうまく運ぶなら、審配との煩わしい付き合いも沮授への讒言も全て快感に昇華し・・・!!」
(ひいいいぃ!!!)
李典は心の中で絶叫した。
気持ち悪いなどというレベルではない、心の底から関わりたくないレベルだ。
これならまだ、さっきの審配の話の方がましだった。
ただ、郭図が狂おしい程に袁紹を慕っている事だけは、嫌でも伝わってきた。郭図にとっては、世界の全てが袁紹のために動かすべきものだったのだろう。
一しきり話し終えると、郭図はベッドに倒れこんで目を閉じた。
「聞いてくれて、ありがとうございます。
少し楽になりました。」
聞かされた李典は、精神的にすさまじく疲れた。
李典は意地悪く、郭図の耳元でささやいた。
「いいんですか、そんな大事な事をぺらぺらしゃべってしまって。」
「いいんです。私は負けたのです。
私の役目は終わりました、もう私にできる事はありませんから。」
郭図はすがすがしい程の笑みを浮かべ、眠りについた。
613セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/13(火) 22:12:34 ID:kszZlb43P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(148)

思えば、その時に気付くべきだった。
死に侵された城内を走りながら、李典は己を責めた。
(私は、何と愚かなのだ!!
あんなに近くにいて、あんなに話を聞いておいて、気付かなかったなんて!!)
審配の事は郭図にとって、絶対に秘すべき事項のはずだ。
それに自分の心を吐露する事は、普通は腹を割った相手にしかしない。
軍師があんなに大切な事をぺらぺらしゃべる時点で、おかしかったのだ。
眠る前の言葉も、今なら意味が分かる。
(私の役目は終わりました、もう私にできる事はありませんから。)
つまり郭図は、自分はもう生きる気がないと言っていたのだ。そのうえで李典に自分の事を話し、こういう人物がいたと伝えてくださいねと暗に頼んでいたのだ。
すがすがしい程の笑みは、命を絶つからこその安堵の笑みだった。
「私は・・・私がもっとちゃんと彼を見ていれば・・・。」
涙声になりかけている李典を、于禁が叱りつけた。
「過ぎた事は仕方ない!
今は前を見ろ、前!!」
李典が前をにらみつけると、一人の兵士が一人の死者に襲われていた。
兵士はすでに腕を食いちぎられ、死者と壁に挟まれてもがいている。泣き叫ぶ兵士の顔の肉を、死者が少しずつ削り取っていく。
于禁が隣で槍を構えた。
「噛まれてる方はおれがやる、ゾンビは頼んだぞ。」
「了解!」
李典は走りながら槍を構え、死者の頭に狙いを定めた。
ゾンビが足音に気付いて頭を向けた時には、すでに白銀の穂先が眼前に迫っていた。ゾンビが反応する間もなく、李典の槍が鼻の骨を折り、脳をぶすりと貫いた。
噛まれていた兵も、于禁の槍で一瞬にして楽になった。
于禁と李典は動きを止めずに槍を引き抜き、並んだまま走り抜けた。
「なあ李典、知略で助けられなくても、おまえには武力がある!
知略でだめなら武で突破、そうだろ?」
于禁の激励に、李典は前を向いたまま無言でうなずいた。
614セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/13(火) 22:13:47 ID:kszZlb43P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(149)

郭図はゆらゆらと近付いてくる死者を、一人見つめていた。
障害物の一部が崩れて、一人、また一人と死者が入ってくる。
両手を前に突き出して、郭図を死に引き込もうとやって来る。
郭図は矢をつがえた弩を持ち上げ、体を壁に押し付けて固定した。
「まあ、すぐに殺される気はありませんよ。」
独り言をつぶやいて、先頭の死者に狙いを定める。照準の向こうに、皮をはがれた真っ赤な顔と、そこにぽつんと二つ白い眼球が見える。
ふしぎと、恐ろしくはなかった。
「私と引き換えに最低一体、できれば五体は倒したいですねえ・・・。」
また一人でつぶやいて、引き金を引く。
びいんと音がして、一瞬遅れて死者の右目を矢が貫く。
「おや、私は眉間を狙ったんですけど・・・もっと近づけた方が良いですね。」
少し残念そうにほおをかく郭図の前で、先頭の死者がどうと倒れる。
郭図は小走りに少しだけ後ろに下がり、また弩に矢をつがえた。幸い死者の動きはのろいので、恐れて慌てなければ文官でもそのくらいの動作はできる。
郭図が弩を上げた時には、次の死者が三メートルの距離まで迫っていた。
「このくらいなら・・・どうでしょうか?」
またびいんと弦が鳴り、次の死者が鼻の頭に矢を受けて倒れる。
それでもまだ上下にずれるのかと、郭図は苦笑した。
弩は本来、十メートル以上先の的に正確に矢を当てるためのものである。それが三メートルでこうでは・・・自分がいかにひどい使い手であるか、よく分かる。
弓だったら、ほぼ頭には当たらないだろう。
「知も使えなければ武もなし・・・やっぱり、私は要りませんね。」
ようやく眉間に当てた三体目が倒れた。
距離は一メートルだ。
すぐ次が、そこまで来ていた。
「さようなら、殿・・・曹操殿とお幸せに。」
郭図は一粒涙をこぼし、弩を下げた。
615セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/13(火) 22:16:10 ID:kszZlb43P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(150)

後ろから抱きしめられたのには、あまり驚かなかった。
きっと後ろにも死者が来ていたのだ、今に腐汁まみれの歯が首を裂くに違いない。
だがその指が自分の肌に触れ、温かいと気付いたとたん、郭図は驚愕した。
「三度目の正直だ、この野郎!!」
怒鳴るような声とともに、郭図の体は後ろに引きずられた。
しかし、死者たちは未練がましく郭図に手を伸ばしてくる。
「させません!」
突如として、先頭の死者の体ががくりと崩れた。
頭に槍が刺さったのだと気付くには、少し時間がかかった。そしてさらに槍の持ち主に気付いたのは、李典が二体目への攻撃に移ってからだった。
「ええ?李典殿・・・なぜ?」
戸惑う郭図のほおを、ごつごつした手がバシンと打った。
「おまえの殿がな、おまえを助けろって言ったんだよ!
だから、つべこべ言わずについて来い!」
胸ぐらをつかまれて横を向かされると、于禁の顔がすぐそばにあった。
だが郭図には、于禁の口から出た言葉の方が衝撃だった。
「殿が、私を・・・うそでしょう。
私は、あんなに殿を・・・。」
思わず反論すると、またほおをたたかれた。
「そんなに信じられないなら、実際に袁紹に会って聞いてみろ。それでもしいらないって言われたら、後は好きにしたらいい。
今はとにかく、おれたちについて来い!!」
郭図には、逆らう事などできなかった。
いろいろな気持ちが頭の中でぐるぐる回って、何も言えないままに、両側から手を引かれて走った。
ただ、于禁と李典の手だけがいやに熱かった。
途中何度も死者と出くわし、そのたびに于禁と李典が見事な武で倒すのをぼんやり眺めながら、それでも郭図の足は袁紹のもとへ向かっていた。
616たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/14(水) 21:17:17 ID:3/uzsohA0
こんばんはー!
最近酔いの回りがすっかり早くなりました

さて今宵も投下でござる

(4)

ーー 亡き許嫁、堀木右京の落命せし京に参り、桑名藩御家中の陣中見舞い願いの義。御心に留め何卒御寛容なる裁可賜りたく御座候。ーー

この時代、女が旅をするなどよほどの事がない限り、許可されることはない。しかしながら、あっさりと手形が届いた。あっけない...というか、不安になるくらいだった。
事実上、京、大阪は薩長土の連合軍の支配下である。京にいくなど、雲をつかむような話であったはずだ。

「実際のところ... もうどうにでもなれ、ということではないかな」
江戸城で、勘定方にいる伯父がいった。
東海道を進む連合軍の噂を聞き、江戸は早くも抗戦派と恭順派に分かれ、いがみあっていた。
伯父は、理に聡いだけあって恭順派に加わっていたが、武辺者である阿左美の父は、徹底抗戦の意思を固めていた。

父が引っぱり出して来た、年代物の鎧兜や、刀槍、火縄銃をみて、阿左美は悲しくなった。伯父から連合軍の装備を聞いていたからだ。

「エゲレスの最新銃だよ。幕府軍のゲベール銃や火縄銃なんて話しにならんほどの性能だ」
幕府軍は負けるだろう、と思った。それも無惨に負けるだろうと...
617たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/14(水) 21:18:11 ID:3/uzsohA0
(5)

ひと月後、阿左美は伏見にいた。
幕府軍と連合軍が激しい戦いを繰り広げた場所だ。
暮れ六つごろだろうか。冬の空気は、体の芯を凍らせる。だが、阿左美はそれを好ましく想った。
共の中間に駄賃を渡して、阿左美は一人になった。

想像していたような荒涼とした雰囲気ではなかった。立ち木の幹からほじくり出した椎の実のような銃弾を、弄びながら考えた。

自分が見たいのは、こんなものじゃない、と。
徳川の時代が終わって、薩長土の時代が始まるだけだ。
父も母も、徳川の世を守ってきたのではない。しがみ付いて来たのだ。
阿左美の思いつきは、その滑稽ともいえるこだわりに少しばかり反抗し、冒険をしてみたかった... そんなところなのかも知れなかった。
618たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/14(水) 21:19:20 ID:3/uzsohA0
(6)

「夜更けにどうされたのですか」
不意に、阿左美の背後から声が掛かった。
はっと息を呑みながら、阿左美は振り返った。懐の守刀に、無意識に手が伸びる。

金モールの着いた紺色の装束に、膝までの長靴。麦藁のような髪の毛を撫で付けた、背の高い男。羽飾りの着いた帽子を脇に抱え、意匠の凝ったサーベルを下げている。

ーー 仏蘭西のかたかしら...?
江戸には幕府が、遥かフランス帝国から招いた軍事顧問として、何名かの外国人がいた。
もちろん、阿左美の記憶にあるはずもない。ただ何となく、そう思っただけである。
流暢な日本語と、外見がちぐはぐだ。阿左美は目をこらして、男を見た。
月の明かりを背にした男の顔は、暗い影を落としていたが、目だけが爛として輝いている。まるで、それ自体が光りを発しているように。

「ご心配なら無用で願います。咎めるつもりはありません。ただ...」
男は、言葉を切ったが和かに微笑んでいる。阿左美の表情を伺っている。
「ただ、あなたが何故ここに来たいと思ったのか... それが知りたいだけです」
619たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/14(水) 21:20:15 ID:3/uzsohA0
(7)

阿左美は思った。この男になら話してもいいのではないか、と。どの道、彼方に去る人間だ。年頃の娘の夢想を、この男が誰かに話したとしても、一笑されるだけだろう、と。
阿左美の独白を聞いた男は、始終穏やかだった。言葉が解らないのではないか、と勘ぐるぐらいに 。

「ミロク... というのは、面白いですね。 私の国にはいない神です」
阿左美はちょっとした優越感を感じながら、饒舌になった。
ーー ルソンからきた商人が連れた、浅黒い肌の男が言った...
天竺には破壊の神がいる。全てを破壊し、その後の再生をも司る神がいる、と。そうして世界は何度も再生しながら続いて来た、とその男は言った。
阿左美は顔を上気させながら語った。
ーー 輪廻の末の、その最後の世界を見たい、と。
620たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/14(水) 21:21:10 ID:3/uzsohA0
(8)

「本当に?」
男が一歩近付いた。
「もしあなたが望むなら... 私は、それを与えられます。 全てはあなた次第です」

阿左美は...
「世界の終わりを...?」
...と、つぶやいた。得体の知れない恐怖と同時に、淡い期待もあった。この男の故郷に、此処ではない何処かに連れて行ってもらえるかも知れない...

男にそっと抱き寄せられる。
「ミロクとは... 」
男の顎が、人にはあり得ないほど開いた。異常に長い犬歯が、白く光る。
「あなたの事かもしれない...」
ぶつっと皮膚の破れる音を聞きながら、阿左美は産まれて初めての絶頂を感じた。
急激に意識が朦朧としてくる。自分の血液を吸われていると認識出来た時には、反攻する力すら失っていた。

ーー この男は違う! 将校でもない... 人間でもない...
暴れて逃れようとしたが、男の力は強い。異常なほど、強い。
不意に男の腕の拘束が緩み、阿左美は地面に崩れ落ちた。
阿左美は浅く息をついた。呼吸が続かない。地面が大きく歪んで見える。
阿左美は死を予感した。男の言う世界の終わりとは、死後の世界のことなのだろうか。
621たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/14(水) 21:21:56 ID:3/uzsohA0
(9)

阿左美の唇に、男の手首が押し当てられた。切られた傷から大量の鮮血が流れ込んでくる。
「飲みなさい。 それであなたは永遠に生きる。 世界が終わるまで...」

ーー あ...
阿左美の視界にぼんやりとした光りが漂って来た。
ーー 雪だわ...
しめやかに降り積もる雪。消えようとしていく命。
ーー 綺麗...
そして、新たな命。
622たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/14(水) 21:23:48 ID:3/uzsohA0
ふーアザミの回想終了です
つかゾンビ出てコネー

次回はノブアキ奮闘編です
それではまたー
623本当にあった怖い名無し:2009/10/15(木) 15:46:25 ID:Uc6AGutN0
ゾンビってか吸血鬼モノっスね
624本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 17:33:29 ID:h9OWh3WEO
書き手の皆さん、このスレッド読むのいつも楽しみです、ありがとうございます。
625本当にあった怖い名無し:2009/10/16(金) 23:13:42 ID:UqkFLFdS0
読み手の中には
「ボ、ボクチンの知らない設定の作品が、ボクチンの常駐するスレに存在するなんて、許さないぞ〜〜」
という、真性厨房も存在するので、注意な。
ちなみにそういった真性厨房は、テキトーな糞理屈をひり出して反論モドキをするから注意な。
626本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 01:06:11 ID:wgOaJ2PW0
>>625
いつだったか住民から総叩きにあった糞ファンタジー小説作者乙です^^
アナタの理屈の方が余程無茶苦茶な反論モドキだったのは内緒ですね!
627セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/18(日) 20:16:00 ID:Ixzo3kkUP
ゾンビ官渡は200までには一区切り終わらせて、
それから少し趣変えに違う話をはさみたいと思います。

とりあえず、偽者が去って万歳!

田豊ファンの方はだいぶ遅くなってしまいますが、ごめんなさい。
完結させるという約束は果たす気でいますので。
628セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/18(日) 20:17:08 ID:Ixzo3kkUP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(151)

曹操たちは、北玄関で于禁たちの帰りを待っていた。
と、通路の奥から武将が二人、数人の兵とともに駆け寄ってきた。
「おお、張郃!」
「あれは、曹仁か!」
曹操と袁紹の声が重なった。
期待していた者ではないが、これでまた一人ずつ将の消息が分かった。曹操と袁紹はそろって、二人の猛将のもとに駆け寄った。
しかし、どうも様子がおかしい。
曹仁は連れてきた数人の兵ににらみをきかせているし、張郃はといえば大急ぎでしゃがみこんでずれかけの鎧を直し始めた。
連れてこられた兵たちは、皆気まずそうにおろおろしている。
曹仁はその兵たちを怒鳴りつけて並ばせると、曹操の前にひざまずいて報告した。
「遅れまして申し訳ありませぬ。
張郃の救出に少々手間取りましたゆえ。」
「救出?」
曹操はいぶかしそうに首をかしげた。
ゾンビに襲われていたにしては、張郃の着衣は汚れていない。
それに張郃はなかなかに強い武将だ、ゾンビ相手にそう簡単に窮地に陥るとは思えない。
「張郃は、縄でがんじがらめに縛られて、ベッドの下に転がされておりました!」
「何だと!?」
曹仁の報告に、曹操は驚愕した。
「拙者が張郃の部屋の近くを通りかかった時、この兵たちが助けてくれと泣きついてまいりました。しかし様子がおかしいので一発脅してみたら、張郃の事をしゃべりましたので。」
そう言って曹仁は連れてきた兵の首をつかみ、曹操の前に引き出した。
「おい、吐くなら一緒に連れて行ってやるぞ!!」
「ひいい、は、吐きますう!!
門を開いたのは、逢紀様と高覧様です!!」
「まことか!?」
全員の視線が、その兵士に集まった。
脱出計画を台無しにして今のこの危機を招いたのは、逢紀と高覧だったのだ。
629セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/18(日) 20:18:00 ID:Ixzo3kkUP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(152)

「なぜだ、なぜこうなった!?」
袁紹は大慌てで兵士の胸座をつかみ、体を揺すった。
裏切り者が二人とも自軍の将だったのだから、無理もない。
それをたしなめるように、張郃が袁紹にひざまずいて言った。
「その兵どもは、命令に従っていただけで罪は軽うございます。おそらく逆らえば私のように拘束されるか殺されるか・・・止むを得なかったのでございましょう。
詳しくは、私の口から説明いたします。」
張郃の言葉を聞くと、袁紹はどうにか落ち着こうと息を整え始めた。
さすがにこの状況で理性をなくしてわめき散らすほど、袁紹は愚かではない。
曹操もここは話を聞こうと思って、ふと気付いて外の見張りに声をかけた。
「ゾンビは見えるか!」
「建物の両側から、ちらほら来てます!」
曹操は思わず拳を握り締めた。
そろそろだとは思っていたが・・・曹操は周りにいる将兵に命令を下した。
「皆の者、脱出の準備だ!
夏侯惇と許褚は外に出て、建物の両側から来るゾンビを倒し、退路を確保せよ。曹洪と曹仁は夏侯淵と徐晃のもとへ走り、彼らを退かせよ。
夏侯淵と徐晃が合流した時点で、この建物を出て北門へ向かう!」
呼ばれた将たちが十人ほどの兵を率い、それぞれ持ち場に走った。
于禁と李典の事は気にかかるが、ゾンビが迫っている以上決断するしかない。
防ぎきれない事はとうに分かっているのだ。
ただ、夏侯淵と徐晃が到着するまでは、張郃の話を聞いてやろうと思った。曹操にとって、逢紀と高覧が門を開けてしまったことは予想外のできごとだった。
その原因を聞いておけば、これから起こる同じ事を予防できるかもしれない。
それに、味方の中に裏切り者がいる可能性も完全には否定できない。こうして味方の武将を遠ざけておけば、そういう事は話しやすいだろう。
張郃は鎧を直しながら、こうなった訳を話し始めた。
630セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/18(日) 20:19:05 ID:Ixzo3kkUP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(153)

事の発端は前日の夕刻、舌戦の後の事である。
逢紀は、張郃と高覧に逃げてくる間の事を話していた。
郭図と審配が別室にいるせいで、逢紀はその二人を徹底的にこき下ろしていた。
「全く、あの二人ときたら!
ゾンビに囲まれてもぎゃあぎゃあ騒ぐばかりで足を引っ張るしか頭にない。
殿を守ろうとなど、みじんも思っておらんな。あいつらが守りたいのは、結局のところ自分だけなのですよ。」
高覧は笑ってそれを聞いていた。
張郃は気分を害して、ずっとそっぽを向いている。
誰も異議を口に出さないせいで、逢紀はますます得意になって続ける。
「だいたいあの二人は、殿をゾンビに襲わせておいて、自分は戦いもしないのですよ。戦えないなら身を守るのに徹して、大人しくしてろって話です。
私は、ちゃんと静かにしてましたよ。」
それを聞くと、高覧はおもしろそうに言った。
「へえ、全然戦わなかったのか。
豚もおだてりゃ木に登るって言うが、そりゃ豚以下だな。
証拠はあるのか?」
その問に、逢紀は自信たっぷりに腰から下げた剣を外した。
「あるとも、この剣が証拠です。
道中、殿の命令で私と審配は剣を交換したのですよ。
それから私も使っていないんで、この剣はピカピカのはずです。
それにしても・・・使わないくせに悪趣味な剣ですね。」
逢紀はそう言って、手にした剣をしげしげと見つめた。
剣の柄は真鍮でよく磨かれており、鞘も全体的には地味ながら先端に手のこんだ細工の飾りがついている。
それに逢紀曰く、その剣は逢紀の剣より重いのだという。
あの体力がないくせに自己主張が激しい審配がこんな剣を持っていたとは・・・張郃と高覧にはかなり意外だった。
「さあ、よーく見られい!」
逢紀は勢いよく剣を抜き放った。
631セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/18(日) 20:20:01 ID:Ixzo3kkUP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(154)

「あ、あれ・・・?」
剣の刃は、ピカピカにはほど遠かった。
抜き放ったとたんにゾンビと同じ臭いが広がり、刃は腐った血と肉がまとわりついてひどく汚れていた。
明らかに、この剣でゾンビを斬った跡だ。
逢紀はそれが信じられず、目を丸くした。
「な、なぜだ・・・?
審配は確かに戦ってないはず・・・。」
張郃と高覧にも、それはひどく意外だった。
武将である彼らには分かる、この汚れ具合でいくと、使い手はかなり踏み込んで深く斬ったはずだ。それからおそらく、戦って斬りつけたのは一体ではない。
あの鉄板文官の審配にそんな事ができる訳がない。
もちろん逢紀にも。
どうにも信じられず剣を凝視するうちに、張郃はある大変な事に気付いた。
「逢紀・・・それは、殿の剣ではないか?」
「何だって!?」
逢紀はすっとんきょうな声をあげた。
「確かに、これは殿の剣だな。」
高覧も言う。
逢紀は混乱した。なぜ審配が君主の剣を持たされていたのか。
(わしが有効に使ってやる。)
思い出した、袁紹は自分の剣の切れ味が鈍ったため、審配のピカピカの剣を取り上げた。
代わりに、自分の剣を審配に持たせていたのだ。
「そ、そういう事だったのか!
つまり殿は、捨てられては困る自分の剣を、この私に託したかったと。」
逢紀は即座に都合よく解釈し、満面の笑みを浮かべた。
しかし、張郃と高覧は目をぱちくりして顔を見合わせた。
「何か文句でも?」
逢紀が言うと、張郃は恐る恐る口に出した。
「それは・・・逆なんじゃないか?」
632本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 21:07:25 ID:YZmv9m7U0
       .,,_  _,,=-、                     
       '、  ̄_  _.,! __       .r-,.  _   r −、 
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     .(.     ┌-'( ヽ~ ,.-┐ `┐ .r'  r.、''" r' ./ 
      ゛,フ .,.  |   `j .`" .,/ .r'" ヽ  | .l  '、ヽ、 
     ,,-.'  , 〈.|  |  i' .__i'"  .( .、i .{,_ノ ヽ  ヽ \
  、_ニ-一''~ ヽ   |  \_`i   丶,,,,、     }  ヽ_丿
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    /   \ ヽ,゙'゙_,/   .゙l、         `i、   \ _,,―ー'''/  .,r'"
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633たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/19(月) 22:02:25 ID:P0y6oU1A0
今晩は!
最近、やたらめったら忙しくて、やたらめったらマンですよ

ちょと投下速度落ちますが、よろしくおつき合い下さい
634たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/19(月) 22:02:36 ID:P0y6oU1A0
「ゾンビハンター 6」
(1)

ノブアキとアザミは、郊外の水質試験場の跡地にいた。
ゾンビの発生以前に遺棄されたものらしく、コンクリートの壁に切られた窓には、サッシすらはまっていない。
ノブアキは煙草に火をつけ、ゆっくりと紫煙を吐き出した。これからの行動を必死に考えていた。アザミの戦闘力を期待できない状況で、どうやって生き残るか... そればかり考えていた。

ーー 夜明けまでに、日光を遮断できる場所を探す。
その場所のゾンビを掃討する。
そこを拠点にして周辺のゾンビを殲滅する。
北に移動する。

これだけのことを、ノブアキ一人でこなさなければならない。
ーー 不可能だ。
と言うのが、ノブアキの結論だった。

「ん....」
アザミが薄く目を開けた。
「アザミ... 」
ノブアキは、何か言おうとして口をつぐんだ。何と声をかければいいのか分からない。
「...長い夢を見てたわ。あたしが...」
「血が止まらないんだ」
ノブアキは、アザミを遮って言った。なるべく感情を抑えたつもりだった。
635たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/19(月) 22:03:56 ID:P0y6oU1A0
(2)

アザミは開きかけた唇を閉じると、薄く力なく微笑んだ。
「......そうなの」
「圧迫包帯も止血剤も使った!でも止まらないんだ!俺はっ... 俺が...」
握り締められたノブアキの両拳が白くなっている。
「いいのよ、気にしないで。自分で切ったんだから」
アザミの声は、子供を諭すように優しい。
「どうすれば治る?」
「さぁ..? あたしもこれは初めてだから... ただ...」
「ただ?」
「あたしの本質は血なの。体はただの入れ物。ちょっとぐらいの傷なら治るのよ」
アザミの言葉は何気なかったが、ノブアキの直感が何かを知らせた。
636たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/19(月) 22:04:57 ID:P0y6oU1A0
(3)

「アザミ。今まで一番ひどかったケガは?」
「火傷かな?曇りの日なら大丈夫かと思って、昼間に外に出たの。皮がベロベロになったけど、いっぱい飲んだら一週間くらいで治ったかな」
「わかった、ありがとう。少し休め」

ノブアキはバイクに戻ると、装備を確認した。

上下二連式の猟銃、一艇。
警察官用5連発拳銃、二丁。
手榴弾、二個。
縁を研いだシャベル。
鉈。
弾薬は装弾してある分だけだ。

サイドカーをばらす。出来るだけ軽くしたかった。バイクのタンクからガソリンを抜いた。リザーブだけでも50kmくらいは走れるだろう。
食用油や牛乳などの瓶の中身を捨てる。ガソリンを半分入れ、砂や洗剤などを半分入れた。
大きさはまちまちだが、8本ほど出来た。

安心できる量でないことは、元より承知していた。持ちきれないほどの、銃器があっても無事に帰れる保障はない。

ーー 考えること、勇気をもつこと...それがオレの剣だ

ゾンビが地上に溢れだしてから、半年。ノブアキの中で何かが変わろうとしていた。
637本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 04:40:43 ID:ayQiJ7SU0
横須賀のひと最近書かないね
忙しいのかな
正直さびしいわ
638本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 08:20:21 ID:HLQaxQRi0
話し合いでスレがkskしたら、スレが終了して誘導すらできなくなるので新スレ立ててみますた。
次は早めに話し合いませう。

次スレ誘導
【小説】ZOMBIE ゾンビ その26【創作】
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1255993754/
639本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 09:45:16 ID:wsiP7FtqO
あー
640本当にあった怖い名無し
             ,...、 .,.. i'⌒Yヽ
          __/⌒′ ヽ′     !
        /              L
         |   た こ   あ    !
   , _z-='l   て い     l     !
 ィャ' ' ´    !   て つ   っ  `l
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ミ   , ィ rっノ>, !!         ィ′
クi,爪(ヽゝ(`ー´~ヽ、   _ ,人   ,ノ
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 ヾ'ァヽ    ´fjt`'  .} L「、l',   !
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