【スレのお約束】
1 基本的にsage進行でお願いします。
2 作品投稿のage・sageは、作者の判断にお任せします。
3 作品には感想をお願いします。感想についての批判は作者・読者ともに控えましょう。
「感想・意見・批評」と「誹謗中傷」は異なります。
よけいな争いごとを持ち込まぬよう、表現にはくれぐれも気をつけましょう。
4 煽り・荒らしは放置、反応なしでお願いします。
【マナー。その他】
1 連続投稿数は5〜10レスを目安にしましょう。
2 作品投稿は間隔に気をつけてください。場合に応じて間隔をあけましょう。
投稿前と投稿後に宣言すると、スレの流れがスムーズになります。
3 自分の意見に返事を期待する作者は、トリップを付けたほうがいいでしょう。
4 個人攻撃、的外れな批難の類は流したほうが無難です。
5 496KBで警告メッセージが出力されます。
512KBでスレッドが終了なので、950からか450KBを過ぎた時点で新スレッドへの
移行を話し合いしましょう。
気がついたら沈んでいたので、立て直してみました。
7 :
本当にあった怖い名無し:2008/11/08(土) 18:59:56 ID:opZ+z+Ss0
乙です。
うぉぉぉぉぉぉおつだぁあぁぁあああぁあああああっ
,一-、
/ ̄ l | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
■■-っ < し わ し わ し わ 〜 ..
´∀`/ \__________
__/|Y/\.
Ё|__ | / |
| У.. |
落ちて随分経ってたみたいなので、書きかけだった作者さんが気づいてくれるか…
保守
慌てて車を発進させる。
堤防を下り住宅街に入った。
「西田! 大丈夫か!」 西田に呼びかけた。
「ぉ、ぉぅ…」 全然大丈夫じゃないなこりゃ。
とにかく休ませられるところを探さなきゃ…
「森さん、渡辺さんどこかいいところないかな? 西田を休ませられそうなところ」
「うる覚えだけど… この先に工場があったと思う…」
「よっしゃぁぁ!! とりあえずそこに向かおう! 西田を休ませてやらないと!」
慣れない車に戸惑いながらオレ達は工場に向かった。
しばらく進むと電子部品製造工場の看板があった。
門は開いたままだ。 守衛の姿もない。
速度を落とし、一度通り過ぎる。
「中に入らないの?」 森さんが問い掛けてきた。
「いきなり入って奴らや変な連中に鉢合わせはまずいでしょ。 ちょっと様子見してからね」
そう言って何度かUターンして駐車場内部の様子を伺う。
一般車両は入っていないようだ。
「大丈夫かな?」 オレはそろりと駐車場内に進入した。
表から見えない位置に車を駐めた。 下りずに周囲を警戒する。 大丈夫か…
「渡辺さん、援護頼みます」 オレはそう言ってライフルを用意し車外へ出た。
従業員用の入口に取り付く。
当然鍵は開いていない。
作業ポーチからハンマーとガムテープを取りだしガラスを破ろうとしたとき、
セキュリティのシールが目に入った。
「くっ! 南無三!」 手早くガムテープを貼りハンマーを振り下ろす。
がしゃ!
どうやらセキュリティは作動していないらしい。
腕を突っ込み、鍵を開けた。 無事侵入成功だ。
入ってすぐのところにタイムカードが並んでいた。
入って左手は倉庫と書かれた鉄製の扉があった。
右手は通路だ30m程先で突き当たっている。
少し先に事務所の入口があった。
その扉に取り付く。
外には西田の車が見えた。 まだ無事だ。
引き戸を少し開け、手鏡を差し込む。
事務机が並んでいる。 奥にはソファーが見えた。
パーティションで区切ってあり見えない部分がある。人の気配はない。
部屋へ侵入する。
心臓が高鳴る。
額には汗が滲んできた。
何も出てくるなよ。 オレは独り言を呟きながら奥のソファーが置いてあるところへ進む。
ライフルから拳銃に持ち換える。
死角になっていた部分に着いた。
幸い何もなかった。 オレは安堵し、再び部屋入口に目をやる。
ロッカーが置かれている向こう側に給湯室があるのが見えた。
入ってすぐに死角があったのか…
給湯室を覗く。 給茶器がある以外変わったところはなかった。
ここなら西田を休ませる事が出来るな。
事務所を出て車に目をやる。 渡辺さんがまだかまだかといった表情でこちらを見ていた。
オレはOKの合図を出した。
すぐさま車に駆け寄り、西田を抱きかかえ事務所のソファーに寝かせた。
「ここは頼む!」 少しの食料と水を下ろし車を隠す場所を探しに行った。
さすがに工場だけあってすぐに隠し場所は見つかった。 すぐ隣の建て屋の倉庫が開いていた。
資材置き場のようだった。
ブルーシートを被せ見えないようにした。
西田の容態が心配だ。
窓は鉄線入りだから破られる事はないだろう。
しかし、この事務所からでは表側の様子がわからない。
いまさら動けないしな…
数日持ってくれれば…
西田はあいかわらず具合悪そうだ…
食料はカ○リーメイトに乾パン。
あとは即席ラーメンだ。
オレはミネラルウォーターを沸かし女性二人に紅茶を入れた。
「ありがとう」 二人は美味しそうに飲んでくれた。
「しばらくは此所に滞在しなきゃ駄目そうだね。 少なくても2〜3日だな」
「そうだね。 西田くんが元気にならない事には無茶できないもんね」 渡辺さんは不安な表情で西田を見つめる。
「薬は?」
「一応風邪薬を飲ませたわ。 風邪だといいんだけど…」
ただの風邪である事を願うしかないか…
「川本くんは大丈夫なの?」 森さんがオレを見つめていた。
「ん? あぁ大丈夫だよ。
オレは西田にゆっくり休ませてもらってたからね。
早く気が付いてやればよかったよ」
「仕方ないわよ。 言ってくれなきゃ分からないもの」
そういってくれると助かるな。
しかし、これからどうするか。
少し此所の事も分かってないとな。
逃げる時に少しでも安全なルートを見極めておかないと。
一人での探索は心細い。
今までは必ず側にいてくれた…
でも、弱音ばかりも言ってられない!
皆でこの街を脱出するんだ!
西田とそう決めた。 そう決めたんだ!
オレがやらなきゃ誰がやる!
しかし、意外と広い工場だったんだな。
事務棟だけでも3F建てか…
出入り口が多くて把握し辛いな。 かた…
!!
何か音がした!?
咄嗟にしゃがむ。 何か居るのか!?
オレは動きを止め目と耳に集中した。
退路の確認……OKだ。
この奥から音がした気がする。
その角を曲がった先だ。
かた…かちゃ…
居る!
何かを置くような音だ。 間違いない!
まずいぞまずいぞ、どうするどうする?。
何人いる… こっちは一人だ。
明るく出て行くか、無用な接触は避けるか…
「直美、良文。 こっちだ。 この先に宿直室がある。 一旦そこに行こう」
男の声だ。 察するに3人か?
男二人に女一人。 マッチョだったらまずいな…
かちゃ。
ドアの開く音だ。 間違いなくこっちに向かっている。
………
ん? 動きが止まった? 気付かれた?
オレは呼吸を整えようと正面を見た。 オレの目線の先に男女と子供が立っていた。
真っ正面に。
え…あ…
オレは頭が真っ白になってしまった。 相手も同じだったようだ。 微動だにしない。
「は、初めまして。 川本と言います」 なぜかでた言葉が自己紹介だった。
「あ、上原と申します。 こっちは妻の直美、息子の良文です」
………
あはははははは!
なぜか笑いが込み上げてきた。
お互いに笑ってた。
「びっくりさせてすいません。 私達もさっき此所に逃げ込んだんですよ。 隠れるのに問題ないか確認してたところなんです」
「私達家族も同じです。 私は此所の従業員なんですよ。 向こう側は防火扉で塞いでおきました。
鉄製なので脳なしゾンビには破れないでしょう」
え? ゾンビって。
「いまゾンビって仰いました?」
「ええ。 どう見てもゾンビでしょ。 私はロメロ先生の大ファンでしてね。 こんな世界になったらどうしようかなんて妄想をよくしてましたよ。
それがほぼ同じ世界になっちゃったわけでしょ。 参りましたよ。 はははは」
…こんな人もいるんだ…
でも悪い人ではなさそうだな。
「車をこ隣の倉庫に隠したんですけど大丈夫ですかね?」
「あぁ4号倉庫ですね。 あそこなら大丈夫だと思います。 建屋内から入れますからね。 少し遠回りになるけど」
そりゃよかった。
「そういえば川の向こう側に奴ら集中していたのってなぜだかわかります?」
「ここらの住人も川の向こうに集まったんですよ。 私達も一旦は集まったけど複数の怪我人を見て逃げてきたのです。
何日も保たないと思ってたけど。 全滅してた?」
「全滅してました。 逃げる時に少しばかり連れて来ちゃったかもしれません。
火を放って足止めはしましたけどね」
また来ます!(=゚ω゚)ノジャ、マタ!!
一応、前載せたものも…。
描写をどれだけ削ってできるかな〜? なんて考えて作ったのでわけわからん文章ですが。
「ねぇ…、昨夜、どこに行ってた?」
「ふぇ?」
しゃこしゃこと歯を磨く音の中で、弟が唐突にそんなことを聞いてきた。
「どこって…」
言えるわけが無い。夏休みだからって――深夜まで友達と山の中でエアガンの打ち合いをしていたなんて。
「今日も行くの?」
「いや…別に考えてない――」
「そう…。じゃあ、今日はどこにも出かけないで」
「はぁ」
そう言うと、弟はあっさりと洗面所から出て行ってしまった。
何だか奇妙だ。弟らしからぬ言動もあるのだけど――何よりも、他人には無関心な弟が他人のことを聞いてくるなんて。しかも、今日は出かけないで欲しいときた。
「…またホラー映画でも見るつもりか?」
人一倍怖がりな癖に、ホラー映画が大好きという矛盾した趣味を持っている弟のことだ。どうせ、自分一人では怖いから今晩は一緒に見て欲しいのだろう。
「昼間に見ろよな」
そう呟くと、コップに入っていた水を口に流し込んだ。
「昨日、どこにいたの?」
またそれか。
「いや、ちょっと…ね」
苦笑いで切り抜けようとするものの、どこか疑わしげな目線のままだ。
弟は、息の吹きかかる距離まで迫ると、どこか乾いた声で言った。
「今晩だけは…どこにも行かないでね――絶対に」
その目を見た瞬間――どこからか、言い知れぬ恐怖が湧き上がった。
『なー、何かおかしくね?』
「そっちもか? こっちもなんだよ。何か弟が昨日どこに居たのかとか今晩は居ろとかさ」
友人が、電話越しにもはっきりとわかるほど不安そうに喋る。
『親父もお袋もさー、何か今晩は家から俺を出したくないみたいなんだよね。わざわざ玄関に荷物積んで出れなくしてるんだぜ? おまけに、窓にも荷物積んじゃってさ…』
「そっちも大変なんだな」
思わず苦笑する。
彼の部屋は一階にあるのだ。窓の外に荷物を置かれてしまうと、自分の部屋から出ることはできなくなってしまう。
『あ、そうそう! 今から、アレやりに行かね? ハウス・オブ・ザ・デッド4! 近くのゲーセンにも入ったんだよ!』
「おー、いいねー。今から? 準備するわ」
こいつも俺も、自他共に認めるガンシューティング好きだ。
そんな俺達にとって、それが入ったということがどれだけ嬉しいことか…。
「…って、どうやって出んの?」
『ふふー、こんなこともあろうかと色々準備してあるのだよー』
「それは心強い」
それを最後に、電話が切れた。まぁ…ロクなことをしない友人だ。どうせ、トンでもない方法で出てくるのだろう。
携帯電話を引っつかみ、放置してあったナップザックに財布を突っ込む。
それを抱えながら玄関まで出たとき、後から腕を掴まれた。
「っ!」
そこを中心として、視界がぐるりと半回転する。
俺の二の腕を掴んで立っていたのは、案の定弟だが――どこか奇妙だ。どこが、とは言えないが…全体的におかしい。こう、パズルの合わないピースを無理矢理押し込んでいるというか…とにかく、何かがズレている。
そんな奇妙な状態の――そういえば、この感覚は朝からうっすらとあった――弟が、口を開く。
「どこに…行くの…!」
紡がれる言葉の中に、はっきりと怒りを感じる。
その瞬間。どこか遠い所――感覚とは遠く離れた所、本能のような場所が、はっきりと拒絶を示した。
腕を掴まれているだけで、言葉を聴いているだけで、眼を合わせるだけで、恐怖が神経を這いめぐる気がする。
「答えて…!」
ぎりぎりと、腕を掴む力がどんどん強くなる。
その力が強くなるに従って、今すぐここから逃げ出したいという気持ちが大きくなってゆく。
すぅ、と弟が息を吸い込んだ。そして、
「言え!!」
その叫びを聞いてしまった瞬間、それはもう「弟」という形から崩れてしまった。
目の前に居るのは弟――なのに、弟ではない。弟というのが理解できるのに認識できない。
その様は、どこかゲシュタルト崩壊にも似ていた。
「こ、コンビニまで」
知らず知らず、口が適当な言い訳を放っていた。
「そう…」
掴まれていた二の腕が開放された。
すぅっ、と「弟」という認識が戻ってくる。まるで、何事も無かったかのように。
弟をそっと眺める。
弟は、元の奇妙な状態のまま――というわけではなく、そこから更にどこか壊れた様子でそこに居た。
弟は、にこっと笑った。
表情はあるのに、それが虚ろに感じる。表面だけの薄っぺらなもので、まるで能面のようだ。
「代わりに、行ってあげるよ」
弟の顔は、真っ赤に染まっていた。
「だから…今日はここから出ないで」
気がつけば、ひぐらしが鳴いていた。
「悪いけどね…」
家の中に居ると、未だぞわりとする。
「あんな場所に居られるかっての」
どこからか、弟に見られている気がする。
「そもそも何なんだ、ありゃ」
だから、弟の言葉を無視して出かけることにした。
しゃこしゃこと自転車を漕ぎながら、考え込む。
昨日会ったときは、別に何も感じなかった。だとしたら、何かあったのは昨日の夕方以降――俺が出かけた時間より後だが…
「…そういえば」
今朝、弟は手首に包帯を巻いていた気がする。袖口からチラっとしか見えなかったし、大して気にもしなかったのだけど…アレが原因なのだろうか?
包帯と言えば。
何故、すれ違うの殆どが包帯をつけているのだろう。
首、手、腕、足。巻いている場所は様々。一見巻いてないように見えても、よくよく見ると服に隠れているだけだったりして。巻いてない人との比率は2:8くらいだ。
しかも、巻いている人は巻いてない人――例えば俺とか――をじっと凝視している。それこそ、鬼気迫る視線で。
この状況は物凄く怖い。幽霊とかそんな恐怖じゃなくて、生物的な恐怖だ。
だから俺は、しゃこしゃこと自転車をひたすらに漕ぐことにした。
その間も、背中には痛いほどの視線が突き刺さるのを感じていた。
21 :
本当にあった怖い名無し:2008/11/17(月) 15:28:34 ID:eCVa8b0s0
救済age
22 :
本当にあった怖い名無し:2008/11/17(月) 16:08:43 ID:eCVa8b0s0
つかemptyさんの話はもっと進んでなかったっけ?
楽しみにしてるんで、続きお願いします・・・
保守
24 :
本当にあった怖い名無し:2008/11/20(木) 23:57:00 ID:LEt3ROaT0
保守age
25 :
本当にあった怖い名無し:2008/11/22(土) 03:24:29 ID:ZMhrgiVY0
ゾッとして
ンーと唸って
ビックリする
>>25 山田クン、25の座布団、全部持っていって!
ゾ
ッ
|
続きは・・・まだですか・・・・・・・・
スレの状態もまるでゾンビ
「やはー。何か遅かったね」
友人が顔中に笑みを浮かべながら走りよってくる。
「少し遠回りしててな…」
あの視線から避けるため、わざわざ人通りの少ない道を選んできたのだ。そりゃあ、大きく回り道をするわけだから…遅くもなる。
「ふぅん? まぁ、こっちこっち」
細かいことを気にしないヤツで助かった。と、その腰に見慣れたあるモノがあることに気がつく。
「お前な…せめてエアガンはしまえっての。何かあっても知らんぞ?」
「えー。これに収まってれば見えないでしょ?」
コツコツとホルスター――確かオークションで落札したやつ――を叩く。まぁ、ぱっと見ホルスターが大きすぎるせいもあってエアガンは見えないのだが――
「見つかったら、って話」
「あはは、まぁその時はその時で」
振り返り様に、にぱ、と笑うとそのまますたすた歩いていってしまった。
全く、こいつは昔から…
「って、こっちでもかよ」
呻かずにはいられない。
このゲーセンは大通りに面して建てられている。それはつまり、自身の姿を沢山の人に晒してしまうわけで――。
あちこちから――全方位から、こちらを見つめるたくさんの視線。老若男女関係なく、じっと、本当に穴が開きそうな位見つめてくる。
そして案の上、見つめてくる人はみんな包帯を巻いていた。ぐるぐると巻かれた白い布を纏った集団が、近寄りもせず立ち去りもせず、作業を中断してまでこちらを見つめてくる。…気味が悪い。
「来ないのー?」
「お、おーい! 待てって!」
「はは、遅―い」
笑い声を慌てて追いかける。
じっと見られていると、落ち着かない――というか、恐怖を感じる。徐々に恐怖に蝕まれていく気がする。
何なんだよ、一体。
「こっちこっち! 早くー!」
気がつけば、筐体に陣取ったあいつがこちらを大声で呼んでいた。行動が早い。
「はいはい、だから待てって!」
目の前に出てくる大量の死体。
「死体は動かない」――そんな概念を軽々と打ち破って軽い動作で近づいてくる、斧を持った男性のゾンビ。
その頭に狙いをつけて、
「――死に損ないが」
無慈悲に、容赦なくトリガーを引く。
バン、という軽々しい音と共に男の顔の表面が吹き飛び、中の肉が露になる。
その、あまりにも現実離れした光景を目の当たりにしても、驚くことはなく。ただただ遠慮なく容赦なく。頭を狙ってトリガーを引く。
そしてとうとう目の前のゾンビは力なく地に伏し――光の粒子と共に消え去った。ちなみにアンデッドを消し去る類の呪文は唱えていない。
そんな、ゲーム相手にも真剣になっている俺の横では。
「ごちゃごちゃと邪魔だなぁ…」
なんて呟きながら銃身左横、やや前に取り付けられた灰色のスイッチを押した友人がいた。
目の前の画面の中で腕が飛び出し、手榴弾を投げる。狙い違わず、大量のゾンビのド真ん中に転がり――爆発。
目の前の画面で大多数のゾンビが倒れ、光の粒子と共に消えてゆく。
そしてその爆発から逃れたゾンビを、
「はっはァ!」
と叫びながら俺は撃ち始めるのだった。
我ながら中々のコンビネーションだと思うよ。
「こんにゃろ〜!」
なんて叫びながら横でカシャカシャとトリガーを引く頻度を上げる友人。ふざけながらも、的確に敵を撃ってゆく。
そして俺はといえば、
「これもうゾンビ関係ないよね…」
なんて呟きながら必死に襲いくるロボットに対して連射していた。そう、相手はゾンビからロボットへと変わってしまったのだ。
ちなみにどちらも真剣になっている理由は、
「この武器は無いわ…」
相手がビームサーベル――或いはライトセーバーっぽい武器を持っているせいで死にまくっているからであった。
「ようお前ら…満足か? こんな世界で…。俺は…嫌だね…」
「これでな気は済んだ?」
「うん」
つまりこれが言いたかったわけだな。
あれから結局何回かコンテニューして、挙句の果てに諦めた俺達はゲーセンから外に出ていた。沢山の音が混ざってうるさいしね。
しかしまぁ…
「あれってさ…最後もうゾンビは」
「言うな。言っちゃダメだ。何か負けた気になる」
言っちゃったんだけど。つまり、俺は負けた気になっているということ。
「あーうー…。ま、まぁいいや。面白かったし。面白ければジャスティスって偉い人が言ってたし」
「誰だよそんな偉い人」
「……堕天使?」
「全力で謝れ」
何このやり取り。
思い返せばいつものことなんだけど…。こいつの人生はネタ発言のためにあるんじゃないかと時々不安になる。
背中を自動販売機に預けて、空を眺める。
視界を埋め尽くしているのは、夜というひたすらな闇。
友人はエアガンのトリガーガードに人差し指をひっかけて、ぷらぷらとゆらしながら答えた。よほど暇なんだろうなぁ。
そして、前触れも無く口を開く。
「あのさ…」
「うん?」
真剣な口調だ。茶化すわけにもいくまい。
「最近、色々変だよね」
通行人をじっと見ながら答える。
「変、て?」
「包帯をしてる人みんな…何かおかしくない?」
こいつの危機管理能力は、直感………第六感じみたものだ。理由もわからず、ただ漠然と危機を感じているに過ぎない。だからこそ、どう応じていいかわからないのだろう。
「まぁ…そうだよなぁ」
パカ、と何の気無しに携帯電話を開く。ブーンと低くバイブが鳴った。
このリズムはメールだな…。
「どう表現したらいいか…敵意、みたいな? でも違うんだよねぇ…。何かこう…」
メールは…78通。おいおい、異常だぞ。
何かあったのかと目を通して…
「…おい」
「うん?」
「これ」
「え? …………うわ」
<今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ>
<今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ>
そこに並ぶのは、同じ内容のメール。それがひたすら78通だ。
差出人は全て弟。
これはとても猟奇的。着信もあったようだ。やはり尋常ではない数の。
「もしかしてさ――包帯巻いてる?」
「ああ…」
空気が冷たくなってゆくのを感じる。
夏場なのに、鳥肌が立つ。冷や汗が噴出すという現象を実感してしまう。
俺の背中に、撫ぜられるような寒気が走った。こいつも一緒なのか、額に汗を浮かべている。
そんな俺達に何かを伝えるように、画面右上――時計が、19:00を指した。
細かいシーンを差し替えまくってみました。
あと、ふざけすぎていた部分を修正。
次の次から本番…かな?
>>37 お疲れ様です。
頼むから・・・つ、続きを・・・は・や・く
<続きは?><続きは?><続きは?><続きは?><続きは?>
<続きは?><続きは?><続きは?><続きは?><続きは?>
<続きは?><続きは?><続きは?><続きは?><続きは?>
<続きは?><続きは?><続きは?><続きは?><続きは?>
<続きは?><続きは?><続きは?><続きは?><続きは?>
>>37 続きはあんまりいじらないので、金曜か土曜には投稿できればいいな、と。
>>38 一瞬ビクっ、て…。
うわぁあああ、一個ずれてた…。
世界が爆発した。
そう思うってしまうほど大きな音があちこちから、一斉に湧き上がった。
反射的に掌を耳に押し付ける。
『な…』
声が漏れた…と思う。あまりに大きい音に掻き消されてしまって、よくわからない。
傍らを見ると、俺の携帯を握ったまま呆然と立ち尽くす友人が伺えた。無理は無い。
国道のド真ん中で、人がわらわらと蠢いている。その動きを的確に表現をするならば、無尽蔵に走り回る働き蟻。それがたくさん。
比喩ではなく目と鼻の先を誰かが勢い良く走りぬけ、更に数人が走り去っていったところで――ようやく、判断力が休暇から帰ってくる。
鼓膜がどうにかなりそうなほど大きな音――それは、体の何処かを抑えながらうずくまる人達が奏でる悲鳴だった。
それが共鳴し合って、トンでも無い音響兵器と化している。耳を押さえていてもそれなのだから、実際に聞いてしまえば鼓膜を引きずり出したくなるはずだ。
どさり、と目の前で人が倒れた。
助けを求めるかのように――ではなく実際に、その人は助けを求めてこちらに手を伸ばしている。目がやや血走り、突如訪れた状況をこれっぽっちも理解できていないという、今ここに居る大多数に共通する困惑が顔に張り付いていた。
その人を取り押さえているのは、体に包帯を巻いている人達。4人がかりで腕と足を抱え込み、顔の傍に立った1人が首筋に勢い良く噛み付く。
人でできた団子――きっと暑苦しいんだろうな、などと考えてしまう――その隙間から突き出ている手が、がくがくと震えて――止まった。
押さえ込んでいた5人が立ち上がる。
「逃げるよっ!」
ぐっ、と二の腕が引っ張られることに既視感を覚えながら振り向く。
そこには、状況を理解できていないながらも必死にそこから離れようとしている友人の姿。懸命にも俺を見捨てなかったらしい。
そんなことをぼけっと考えている間にも、二の腕を掴んだまま走り出されてしまった。
「ちょ、待っ!」
いきなりひっぱられて足がふらつく。
でもって肩越しに顔を向けると、鬼気迫る様子で俺達を追ってくる群れ。
こりゃあ全速力で逃げないと――、
「マズいな」
「それがわかったのならさっさと走る!」
ボヤいたら叱られた。こいつってこんなキャラだったっけ?
いや、それはいいとして…。
追ってくる人達はかなり速い。直線でなら、それこそあっさりと追いつかれてしまうだろう。
だが。
ジグザグに走ったり民家の庭先に飛び込んだりして動いている間に、その数はどんどん減ってゆく。どうやら小回りは効かないようだ。
いや、先回りされてるって可能性も…。
一度そんなことを思うと、どんどん悪い方向に考えてしまう。
これは罠なんじゃないか? 実は四方からどんどん狭められているんじゃないか?
次第にネガティブな発想が深まってゆき、
「こっちこっち」
ぐいっ、と再び二の腕を引っ張られる感触で我に返った。無意識に追いかけていたらしい。万歳、はぐれなくて良かった。
振り返っても、追いかけてくる人達は居なかった。どうやら諦めてくれたらしい。もしくは、探してるけど見失った、とか。後者ならここに来ないという保証なんてない。
「で、ここは?」
ぐるっと見渡しても、目に入るのは何でもない民家とその間に押し込められるように建てられているビルの群れ。学習塾の看板が下がっているところもあるが…その錆びようからして、もうやっていることはないだろう。
いや…まさか、
「このビルに隠れるのか?」
「それがいいと思う。…そんな顔しない」
自然と顔に出ていたのだろう。
俺は廃墟が大嫌いだ。虚しい空気とか、誰かが使っていた痕跡だけだとか、そういうのがダメ。
そして何より、今にも崩れそうな感じというのが…。
世の中には廃墟好きな人間が居るそうだが、そいつとは一生涯気の合うことは無いだろう。
それを知っているだろうから、いかにも“廃墟”な場所に連れてこられるなどということは考えもしていなかった…。
「あぅ…」
「ほら、早く。追いつかれるって」
俺はずるずると引きずられながら、ビルへと踏み込んでいた。
あ゛〜〜〜〜、どうしてこんなことになっているのか…。
「しばらくじっとしてよ?」
「…そだね」
壁の角に背を預け、体育座りをする。きっと今の顔を見れば、満場一致で『魂が抜けている』と言うに違いない。
俺は亀裂の走った壁とか、砂埃の積もった床を見ないようにと、膝に顔を押し付けた。
「さよなら常識的な世界、ようこそオカルト満載の世界。」
ひっそりと口の中だけで呟く。
神がいたとしたら、随分嫌がらせが好きなのだろう。或いは、死にそうなほどに暇なのか。
この言葉通りの世界になってしまうことを、俺は予想もしていなかった。
この次から本番開始。
主人公達の、戦うなんて頭に浮かばない逃走劇が始まります。
一応日本だし、そうそう簡単に武器とか手に入らないだろうなぁ…なんて。
あと、ゾンビモノって闘う主人公が多いので、逃げ惑うだけの主人公というのが居たらどんなんだろう? てな感じで書いていきます。
それでは、全く楽しみにしないでお待ちください。
>>43 (・∀・)イイヨー!イイヨー!
久しぶりに満足したw
楽しみにしてるぜwww
45 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/04(木) 10:32:45 ID:Uq8pYBSX0
ちょっと普通のゾンビじゃないよね。
続きwktkして待ってる。
ゾ
ン
48 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/07(日) 21:01:37 ID:nkQSAO5H0
ビ
を
50 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/09(火) 00:51:58 ID:OSCq2bEE0
姉さんお元気ですか?
僕は元気です。今年も春がやってきました。
そして実家の前の公園にも桜が満開になりました。
窓を開けると春風に乗って優しい、しかしどこか猥褻な
桜の匂いが部屋いっぱいになります。
あの頃は、花見客がうるさくて姉さんや母さんは
良く市役所に文句を言っていましたね。
入場客の制限をしろ、時間を決めろなど。
今はもううるさくありません。見下ろせば人はいるのに
聞こえるのは静かな春の震えだけです。そう花見客は
ゾンビだからです。彼らは自分たちの昔の記憶に
したがってやってきてるのでしょうか? あるいは
桜の匂いを、人の匂いと勘違いしてるのでしょうか?
僕は月に照らされた公園を見ていると何だか
悲しくなります。姉さんは今、どうしているのだろう?
あの日、駅で別れてからどこへ行ってしまったのだろう?
まさか死んでなんか居ないだろうか?
姉さん、生きていくのは辛いものですね。
僕は時々、もう死んでしまったほうが楽になるのではと
考えるんです。そしてゾンビになって幸せに暮らすんです。
51 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/09(火) 00:52:38 ID:OSCq2bEE0
あのゾンビ。見るからに幸せそうではありませんか!
僕もあの中に入って一緒に歌いそして
人生を謳歌したい。僕はそう思うんです。
きっと姉さんは僕が狂ってしまったと思うでしょう。
僕の顔を見たら馬鹿なこと言うなと殴るかもしれません。
いえいえ僕は正気です。あの美しいゾンビの群れ。
月が照らした風景はこの世のものとは思えないほどです。
きっと、朝が来るとこんな気分も消えてしまうのでしょう。
そして自分が思ったことについて恥ずかしくなるかもしれません。
でも僕は言いたい。これが僕の今の心にとって真実なのだと。
人間で居ることの苦痛よりどれほどゾンビがいいかと。
姉さん。人生について教えてください。これは僕にとって
あまりに大きな問です。僕は苦しい。辛い。
姉さん。会いたい。今、どこに居ますか?
僕はもう生きながらにゾンビになってしまった。
もう、楽しいことも希望も失ってしまったのです。
52 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/09(火) 00:53:57 ID:OSCq2bEE0
ああ…僕は最低だ。また姉さんに甘えている。
もう13歳だというのに。僕は駄目な男なのでしょう。
姉さん。桜を見たら僕を思ってください。
僕は生きていきます。きっと…生きるしかないんです。
姉さん、また会える日を楽しみにしています。
53 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/09(火) 11:49:30 ID:2JrrcoOO0
>>50-52 乙!
手紙だけで終わるっていいね。
おもしろかった。
良かったらまた書いてください。
>>50-52 おもしろかったよ。
もう姉さんはゾンビになってるんだろうな。
ho
ふぅ…随分と遅れました。
>>44-45 こんなのでも楽しんでくださってありがとうございます。何というか、活力になりますね。
何かに追われていた。
その何かは次第に増えて行き、いつしかとんでもない数になっていた。
その何かたちは俺の背中に腕を伸ばし、掴みかかろうとひたすらついてくる。
俺はそいつらから逃げるために、ずっとずっと、走り続けていた。
住宅街を、街道を、高原を、河原を、山を、地下道を。
どのくらい走ったのかはわからず、何日経過したのかもわからなかった。
もう、感覚というものがぼやけていた。
そして遂に、酷使に耐え切れなかった脚が砕けた。
振り返ってみると、そこには何かたちが集まってできた塊があった。
その塊は何かを次々と捕らえては喰い、どんどん膨れ上がっていく
膨れ上がった体はやがて弾け、内包されていた液体がぶちまけられた。
その液体は、意思を持って俺に迫ってきた。
その液体が俺の傍に寄ると、液体は腕の形に固まった。
液体が固まった腕が俺に触れると、全身が恐怖に竦んだ。
腕が触れてゆく度に神経は恐怖によって陵辱されてゆき、やがて頭の中は恐怖で埋め尽くされた。
そういった事に気がついたとき、俺は腕に体中を絡めとられていた。
腕は次々と蕩けて、ひとつの何かになった。
俺は何かにじわじわと溶かされていた。
せめて抵抗しようと、腕を振り回した。
その腕は、二の腕から先がぼろりと崩れた。
その瞬間、俺の目の前を液体が覆って、
目が覚めた。
心臓が未だに鼓動を打っている。
何か、とてつもなく嫌な夢を見ていた――と思う。夢の記憶は、目覚めと共に抜け落ちてしまっていた。
と、ここでとあることに気がついた。目をこらしてみても、暗闇が広がるばかり。
「あれ? おはよー」
暢気な声が目の前から届けられる。それで、平常を取り戻していた俺の脳は異常をはじき出す。
「…何でお前が俺の部屋に?」
がばっ、と腕から顔を上げる――何も見えないのは腕に顔を押し付けていたせいだった――と、俺の眼にはより一層の異常が飛び込んでしまった。
目の前には、声で予想した通りに友人が居た。ここまではいいとしよう。何で俺の部屋にコイツが居るのかは知らないが、そのことは別にかまわない。
「いやいや、ここビルなんだけど……もしかして寝ぼけてない?」
問題点は――コイツが裸であることだ。ちなみに、背中を向けて首だけをこちらに回している。
「寝ぼけているのはそっちじゃないかと問いたいわけだが」
「あはは、何言ってんの。落ち着いて昨日のこと思い出して」
子供をあやすような感じで言われてしまった。
とりあえず、目の前の光景を遮断することも兼ねて窓の外へ視線を移す。そしてゆっくりと昨日のことを思い出そうとして、
「………雪?」
目の前に広がるのは住宅街。見慣れた箇所は多いが、こんな高さから眺めたのは初めてだったりする。
そしてその光景に、大量の白が張り付いていた。アブラセミの鳴き声を背景にした、雪。
とてもとても、それはもう俺がガンシューティングをやめる位に異常な光景。
「え、いつの間にこの世の終わりがやって来たの?」
「いや、まだ残念ながらこの世の終わりじゃないみたい。というか昨日のこと思い出そうね?」
そういえばそうだった。
昨日のこと…昨日のこと…、………はっ、
「俺……生きてる…」
腰が抜けた。
「今更だよね、その反応。まぁいいけどさ。起きたらこんな感じになってた。寝てる間に何かあったのは明白。でもってこの時間なのに――」
その言葉に感化されて携帯電話を見る。電池が切れていた。あれからも弟からの着信はあったのだろうか?
「――誰も、それこそ人っ子一人居ない。これ何ていう超常現象?」
腕時計を見ると、時計は既に6時28分を示していた。夏休みでこの時間。普通なら、朝のラジオ体操に向かう子供が見えるはずの風景。
だけど、今の視界に映るのは――ひたすらの雪。
ぺたぺたと裸足の音を響かせて、友人が俺の横から風景を眺める。まだ肌着しか身に着けていない状態――仲がいいといっても、そのぞんざいさはどうなんだろうか。
ここでふと、俺の頭にある事柄がイメージされる。
「…確か、こういう感じの事件があったよな。バミューダ・トライアングル関連の」
「えーと、何とかセレスト号、だっけ? ん〜〜〜…『我が妻マリーが』とかいう感じで航海日誌が終わってるヤツ」
「そうそう。アレと似たような感じだよな…これ」
「この場合問題なのは、消えたのが自分達以外なのか自分達なのかってことだけどね」
「あ、何かサイレン思い出した」
「う〜〜、ここは異界? それとも皆が異界に消えた?」
俺は、すっかり朽ち果てた窓枠に半ば腰掛ける。
「どっちかはわからんが…どっちみち、この街から出てみないか? ここ以外も同じかわからないし」
「それ賛成。っても、武器はエアガンだけだけどね」
じゃら、とホルスターを揺らす友人。それはいいから服を着なさい。
「そういえば、お前何で裸だったの?」
「ああ、体拭いてた。流石に昨日は汗だくで走り回ったし、こんな状況で風邪ひくのも困りものでしょ」
ぺたぺたと部屋の中央へ戻る友人。肌着の裾が、しゃらりと衣擦れの音を立てた。…いや、気になっただけ。
「それはわかったから服をだな――ぶ」
顔面にタオルを投げられた。若干湿っている。
タオルを剥ぎ取ると、ミネラルウォーターのペットボトルを片手に掲げた――どことなく水戸黄門のポーズに見える感じに友人が居た。その顔は、相変らずにへら、と歪んでいる。
「ふふふ、伊達に災厄に備えているのわけではないのだよー。覚えておきたまへ」
そのポーズに免じて、何となく語尾を古文っぽくしてやった。
…というか、
「これ、どうしろと?」
「体拭いたら出発だよ。思い立ったが吉日、善へは急げ。どっちみち今のままじゃまともに行動できないしね」
お前がね?
…いや、待て。
「これで拭けと?」
「それ以外に斬新な受け取りかたがあったら教えて欲しいかな」
ごきゅごきゅと喉を鳴らして水分を補給する友人。お前の後に使いまわしか…。いや、ね? もうちょっとデリカシーとか、さ。
「ってお前の前で脱げと言ふのか!?」
何となく古文調。ちなみに古文の成績はドン底です。
「誰か見張ってなきゃだし、自分じゃわかんない場所に傷あるでしょうが」
「お、お前は?」
「君見たでしょ」
「…そーいえば」
そうでしたね…これは負けですね。この窮地は脱出できないものでせうか?
「あと、水分補給も」
そんな台詞と共にぽいっと投げられるボトル。何でもかんでも先なのですか。
ちなみに、ボトルの水は明らかに半分以上減っていた。
「はぁ…」
何かどうしようも無いので、渋々服に手をかけてみた。
1st day
晴れだった。
むしろ快晴と表現すべきだった。
「雪じゃない……包帯?」
「だね」
目の前をひらひらと舞うものは雪などではなく。ある程度幅があって長く、たまに赤や黄色の染みがある包帯だった。
風に舞っているせいか、それは白というより灰色に近い。
そんな考察は置いといて。
「何で包帯が?」
「……昨日の人達、包帯巻いてたけど。それかな?」
包帯を外したのか? 何で今更?
静かに考え込む俺と友人の目の前を、砂埃に塗れながら包帯が通り過ぎてゆく。
と、
「今音がした!」
ばっ、と友人が振り向いた。
それに一瞬気圧されながらも、倣ってみる。緩やかな風が包帯を巻き上げていく中で、それは確かに、
「何か引きずってる…?」
ずずずずっ、という音が。石材に石材を擦り合わせる音が一番近い。
ぶわっ、と一際強く吹いた風が大量の包帯を舞い上げる。
それは、ふわふわと白色が振ってくる中で、
整理してて何日経過したのかわからなくなったので「X day」と振ってみることにしました。
描写とかできるだけ削ってるからこんなことになるんですよね、わかります。
「異変」初日の初期パート、故に(?)ゾンビ関連は出てきません。
改めて見直すとこれ、本当にゾンビモノかどうか危ういですね…。
それと「時計は既に6時28分を示していた」は「時計は既に6:28を示していた」の方がいいかな…。
前回を19:00にしちゃってるので。
ではまた、今週末か来週頭あたりに…。
63 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/16(火) 21:58:13 ID:NBXMQEy7O
お〜!
続きが投下されてた!
包帯を巻いていたってことは
変化しながらも意識があるんだよな。
これは怖い…
続き楽しみです
つづきwktk
65 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/17(水) 11:25:21 ID:1TpnnxaJ0
これは先の展開が読めないな・・・
同じく続き楽しみです。
保守
hos
…思いついたのがあるんですが書いてみて良いですか?
>>68 許可はとらなくていいかと…。ここはゾンビ好きな人が投稿していくスレですし。
自分は今夜中に投稿したいなぁ…。
>>69 じゃあ書かせて頂きます。
一応コテも付けます
Chapter 1-1 -ある男たちの場合-
真夏の正午。しかし今年は異常気象とか言う物でいつもの夏とは少し涼しい。
だが、それでも夏は夏。暑い物は暑い。ま、クーラーが付いてるから関係ないけど。
そう心の中で呟いている男、田中(22)。この男は別段代わり映えもしない男だ。
頭も並ぐらいで、身体能力も人と同じぐらい。簡単にいえば、何処にでも居るような男。
「しかしこう毎日暑いと気分もだれるな。だからって外に出る気も無いが。」
1-2
「あー…暑い。早く家に着いてくれー…」
暑さに音を上げながら自転車を家に急がせている男、高橋(25)。
この男は、初めて会った人に「何かスポーツを?」と聞かれるほどの体格。
そのたびに「いや、やったこと無いですよ」と否定することが多い。
まあ、説明は後々に…
「この坂を上れば、家だぜ…あー暑…」
1-3(田中サイド)
(面白い番組無いなー)
そう心の中で毒づきながらチャンネルを適当にかえる。
-おいしいカレー…-海の穴場…-バイオハザードが…-
(何だ何もないな。切っとくか)
そう思って切ろうとした瞬間、
「バイオハザードは依然範囲を広げ…」
バイオハザード?ゲームの新作でも出るのか?バイオの映画でも撮るのか?
じゃあ”範囲を広げ”ってなんだよ。そこが説明が付かないだろ。
画面が切り替わり、何とも言葉にし難い光景が写った。
「只今、バイオハザードの端に当たると思われる場所に来ています。」
「そこのあたりからゾンビは見えますか?」
「微かにここからゾンビと思わしき物が近づいてきてます。」
まさか、本当にバイオハザードは起きているのか?!そんな…夢じゃないのか…
「それでは、中継を終わり―ってうわぁああっ!」
!!
ゾンビがアナウンサーに襲いかかった!
「うわぁっ!やめろ!あっちへ行け!」
周りに待機していたであろう自衛隊員のような人たちがゾンビをアナウンサーから引き剥がす。
「何とか怪我は負わされずに済みました…ですが、もう危険ですので撤退します!」
そうするのが当然だわな。
「全員引き揚げるぞ!…うわっ!またゾンビだっ!」
「ふ、防ぎきれない!」
今度は量が多いようだ…これじゃあもう…
「ぐああぁぁ…」
「や、やめ…」
まさに、今。
テレビで。
生で人が殺されている。
「…うぅっ」
俺はそれに耐えられず、トイレでしたたか吐いてしまった。
少し気分も良くなって戻ってみると、画面は「しばらくお待ちください」の画面になっていた。
続きは明日に。
74 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/24(水) 06:25:18 ID:DGffvaVE0
「次はえーと。えー、うん? そんひ君でいいのかな?」
「いえ違います。ゾンビです。損日太郎です」
教師の北見は出席簿から顔を上げその生徒の顔を見たとき凍りついた。
顔は泥のように青くそして表情が無い。口元から垂れる一筋の
糸は紛れも無く血に見えた。北見は意味も無く出席簿に目を落とし
再度、目を上げるとその真新しいブレザーを着込んだ生徒は
何か問題でも起きたのかと訝るように首をかしげた。
あと一週間もすればおしゃべりする生徒たちのいる教室も
今は窓をたたく春風の音だけが響いている。
「損日君。そうか。わかった。次は…西田君」
北見は職員室に帰ると席に座り溜息をついた。
窓からは満開の桜が見える。桜は北見が赴任してきた年の
卒業生が植えたもので――そう50年も昔の話だった。
75 :
本当にあった怖い名無し:2008/12/24(水) 06:27:28 ID:DGffvaVE0
北見は目を閉じ思い出す。人生を。平凡な人生を。
山があり谷があり台風があり晴天があった。
それも今はすべてが懐かしい。すべてが懐かった。
北見はスーツを脱ぐと裸になった。
去年赴任してきた隣の宮田先生が目を丸くする中
ふんどし一丁になると机に上がり高らかに宣言した。
「北見一等兵。お国のために特攻しまああああす」
北見はジャンプして驚きのあまり硬直している
宮田の柔らかい乳房に飛び込むと
えいっとその柔らかいセーターを剥ぎ取り乳首に
まろび出させた。北見は宮田が処女だと踏んでいた。
その考えはその乳首の色から間違いないと踏んだ。
「宮田先生。前から私は……あんたが大好きじゃっ他!」
「北見先生! 生徒が見てます!! やめてください」
宮田のおなかに馬乗りになって、息荒くふんどしを取ろうとする
北見の後ろで校長が真剣をふりかざし近づいて来るのを
宮田は安心半分残念半分の気持ちで見続けた。
>>71 おお、久しぶりの正統派ゾンビ発生だね。
続き楽しみです。
>>74 高橋源一郎乙w
じゃあ続き再開
Chapter 2-1(高橋サイド)
「あー、暑かった…おー涼しい…」
家に帰れば付けっぱなしだったクーラーが部屋を冷やしていた。
(しかし暑いな…嫌になるぜ)
2-2(田中サイド)
(これからどうするんだよ…幸いこっちにはまだ来てないようだが…)
心臓の鼓動が聞こえそうなくらい脈打っている。尋常じゃない。
そう体が、いや体、精神共々理解した。
(まあ、あそこは俺の住んでる町からすっげー離れてるからこっちに来るには最低1週間はかかるな。
車でも9,10時間かかるんだ。あいつ等は歩きの上速度も遅い。暫くは安心だな。)
そう考えると、自然にふぅと息を吐いてしまった。よっぽど安心したんだろうな、俺。
続きは今度に
79 :
74-75:2008/12/25(木) 01:11:37 ID:JnKLW7AO0
>>76 ところで何で高橋源一郎なの?
初めは真面目に書いてたんだよw
自分でもこんなふうになるとは、、、
「政府は予想される新型感染症に備え、国民の皆様にも各自2週間程度の食料品・日常消耗品の
備蓄をお願いしております。
最低で2週間、出来ましたら一ヶ月程度の備蓄を呼びかけており・・・・・。」
テレビの総理府広報がまた同じような呼びかけを流している。
かれこれ、3年くらいになるか?
毎度毎度インフルエンザのシーズンになるとこの広報が耳に入る。
一体、何時パンデミックとやらが起きるのか?まあ起きて欲しくはないことであるが。
何度か、外国ではクラスター(集団感染)程度は実際には起きているようだ。
しかし、各国政府、WTOの働きで押さえ込みは成功している。
しかし、何時パンデミック(爆発的流行)が起きるかは神のみぞ知る。
その時に、押さえ込みに成功するかどうか?これまた神のみぞ知るだろう。
新型感染症、実は世界の誰もその事態は予想できない、ましてや、平和ボケも久しいこの日本では
どれだけの人が政府の希望している備蓄を実行していることやら。
私にとっては、数年前からの政府広報は絶好の口実になっている。
元々が備蓄マニア、ありとあらゆる備蓄食品、軍用携行食にまで手を出し、ことごとく賞味期限切れを繰り返すことに
家人は呆れ気味、放置されている。
思えば、2000年問題の時からこの備蓄癖は加速され、無駄にした備蓄品の費用は100万単位になっている。
今回も、この数年になる政府広報がなければ、私の趣味を実行に移すことは家人の許可は出なかったはずだ。
いい口実をくれて政府には感謝だ。
今回の備蓄は家を新築したこともあり、かなり大掛かりになっている。
家も私の念願の趣味を大量に取り入れており、この家だけでも家人は仰天する仕上がりになっている。
途中で止められるのは解かっていた為、私と建築メーカーのみで話を進めているところも多々。
「後でトラブルになっても、私等を巻き込まないで下さいよ。」担当者、半分涙目で頼むのは毎度。
「大丈夫、家族間のことだ、迷惑は掛けない、安心してくれ。」このやり取りが何度あったことか(笑
私は成金野郎だ、人に比べれば幾らかは金持ちの部類に入る。
ある程度の資金も動かせるので、終の棲家としてこの家を建てた。
誰に文句は言わせるものか、という意気込みなので家人もあまり文句は出てこない。
それに、私の趣味は平時でも家人達には利益になることはあっても、害になることはないためもある。
今回建てた家は、念願であったセキュリティーと災害時の独立性を兼ね備えたい家だ。
一フロアが100坪の長方形三階の形を想像してくれ。
一階は全てガレージ私の愛用のキャンピンクカーを入れるために高くしている。、二階三階が生活空間だ。
家に周囲と駐車にはセ○ムと直通のエリアセキュリティーこれはテレビカメラで捉えた映像がセコムと自宅のモニターで
監視することが出来る、しかもカメラは特注で暗視モード機能も付加している。
室内の赤外線センサーは勿論、窓ガラス破砕センサーも完備している。
窓ガラスもセコ○推薦の硬質ガラスだ、バールで叩きつけてもおいそれと粉砕しない。
しかも、二階の窓は内側に電動シャッターを併設している。
災害独立性は、屋上にソーラーパネルを設置、同時に一階ガレージに燃料電池電気温熱システムを併設。
緊急時の軽油自家発電機も一緒に設置している、これでピーク時の80%の電力を100日は確保できることになる。
2-3(高橋サイド)
俺は、汗で濡れたTシャツを洗濯機に放り込んだ。手で絞れば汗が滴り落ちるかもしれないぐらい汗をかいている。
(腹減ったぜ、今日の昼飯は何にするかな。)
2-4(田中サイド)
(しかしいくらあいつ等が遅いからっていつかは来るんだ。備えておかないと…)
そう思って、俺はいろんな物を買いに行くほどにした。
手始めに、俺はスーパーに行って食料を買いに行くことにした。
「缶詰に…日持ちの良い食糧…水分…こんなもんか」
缶詰はサンマの缶詰だったりツナ缶だったり…
(こんだけありゃあ、ゾンビ騒動じゃなくても、災害でも大丈夫だな)
次に俺はホームセンターに行った。何でホームセンターかって?基本だろう。
ホームセンターって結構な物が売られてるんだぞ。バールとかの工具(これは武器にも使える)とか、
農具も売られてるんだぜ。食料も売ってあるとこだってある。某ホームセンターとか。
まあ、便利な場所ってことだよね。
そんなわけでざっと店内を見て回って、懐中電灯やらスペアの電池やらを手に取る。
…ホームセンターの隅に、いかにも売れ残りを集めましたと言わんばかりのコーナーがあった。
中には、プラパックの釘や、ドリルの先なんかが適当に置いてある。
いくら売れ残りだからって、あんまりな待遇じゃないか。
何だか可哀そうになってしまったので、1つかごに入れる。何かに役に立つだろう。きっと。
そして、少々危険だが鉈をかごに。
いくらゾンビが来るかもしれないからって、銃は売らないんだな。まあ、当たり前か。
素人が使っても使いこなせず死ぬのがオチだろう。むしろ使いこなせる奴が騒ぎに乗って普通の人を殺すかもしれないからな。
「8935円です」
結構高くついたぜ…まあ自分の命に比べりゃ安いものか。
そう思いながらも、俺は車に乗り込んだ。
Chapter 3-1(高橋サイド)
「外は暑そうだな…部屋の中は天国だが」
そう呟く高橋。部屋に響くのはテレビの声と洗濯機が動く音、そして自分の声しか無かった。
(あー、彼女欲しいな…彼女がいればこんなことも楽しくやれるのに…)
3-2(田中サイド)
(さて、これだけ買ったはいいが、どうするかな・・・)
机の上には、スーパーに行って買ってきた食料が山のようにあった。
(これだけ買うのも、もう普通の光景になってるんだな…普通ならレジの人になんか言われるぜ)
流石の非常時だ。店員さんもいちいち言うのももう面倒臭くなったんだろう。
(買いすぎたか…多かったら足手まといになるだけだし…くそ、失敗したぜ)
俺は、自分の無計画さに呆れて声も出ないほどだ…あー失敗だ…
「…。まあ、まだ時間はあるし、これで暫く飯の心配はない。」
何気なく時計を見る。5時か…けっこう経ってたんだな。気付かなかったぜ。
「飯にするか…」
買ってきた缶詰や、飯で腹を膨らませると、睡魔の猛攻撃が始まった。
(…今日は疲れた。このまま寝るか…明日は…用意…しなきゃ…)
そのまま睡魔に身を任せ、布団もひかずにテーブルに伏せて眠った…
その夜、不思議な夢を見た。
(あれ…俺は…ここは何処だ…家で寝たはずなのに…)
俺は、大通りのど真ん中に、大の字で寝ていた。何でこんなところに…
(人通りが全くないどころか人の気配すら無い。ここは何処なんだ?)
これが今まで味わった程のない恐怖、か。と俺は思った。
続きは今度
実際には、災害時に80%の電力を使うのは想定だけだ。
正味40〜30%確保できれば最低限の設備を動かしても余りある。
ソーラー発電の効率にもよるが、外部より燃料補給無しに1年持つ計算で、水素及び軽油の
エネルギーを確保してある。
次に、水だが、駐車場下に6000リットルの受水層を設置している。
成人5人が300日使用する量だ。
実際には、飲料にはミネラルウォーターを使っているので、この受水層は生活水になる。
さて、食料品・生活消費品だ、これは非常食類は備蓄しないことにした。
2000年問題で備蓄したのが、この非常食と軍用携行食だった。
一言で言えば不味い、これを食べ続けること自体鬱病の原因になるだろう。
一応、行っておくが、軍食はヨーロッパの軍隊のは大変美味しかった。
ただ、非売品である為大量に買い込めないということと、やはり日本人、お米の方が言い訳。
と言うことで、今回の備蓄は、乾麺、缶詰、レトルト、米はは玄米で保存、使用の際精米と言う方法を取る。
要するに、スーパーの食品棚を自宅に設置して、賞味期間になる前に消費、再度備蓄ということを繰り返す訳だ。
これなら、無駄にはならないし、美味しくいただけると言う事になる。
うぅ…練り直しても思ったような出来になりませんでした。
かなり稚拙な表現ばかりになってしまって。多分、今までで一番意味不明でつまらないだろうなぁ、と…。
ずずずずっ、と何かを引きずりながら。
それは、白を裂いて現れた。
普通の人。
そう、ぱっと見は普通の人。
普通にスーツを着ているし、背丈も顔つきも髪も普通。街中ですれ違っても印象が残らないに違いない。
幾ら頭や肩にふわふわと舞う包帯が積もっていくからといっても、この状況では別におかしくはない。現に、俺も似たようなことになっているし。
でも。
そこまで「正常」なパーツが揃っていてさえ、その右腕に無造作に握られているものはそれをいともあっさりと打ち砕く。
金属バット。それが、ずるずるとアスファルトを引きずられている。
そいつが歩むたびに、引きずられた金属バットはアスファルトと擦れ、その間に包帯を巻き込みながらずずずずっ、と低温を奏でる。
巻き込まれた包帯はぶちぶちと繊維を引きちぎられ続け、解放された頃には元が何だったのかもわからない位に汚れ、ぐちゃぐちゃになる。
異常。
この状況は、この一言で全て説明できる。
そして、そいつはこちらに気づいた。宙を舞う包帯のせいで、今まで気づかなかったのだろう。
「――――ア、」
そいつが口を開いた。両目が俺達にピントを合わせ、何者かを判別するかのように――或いは、俺達をじっくりと観察するように、視線を体中に這わせた。
それだけで。ただそれだけの動作で。
視線が舐めた肌に、鳥肌が立つ。寒気が走る。血管に液体窒素をぶちこまれたかのように凍りつく。
「―――、もう、みンナひなンシマしタよ」
唐突に口が動き出す。本当に、何の前触れもなく。
そして、そこからつむがれる言葉は、
「ワたしにつイてキてくダサイ。ヒなンじョまであンナいしマす」
人間の言葉なんかじゃ、ない。
そいつは、確かに人間の言葉をしゃべっている。そう聞こえるし、どんな内容を言っているのか、理解もできる。
でも――矛盾しているということはわかっているのだけれど――認識することが、できなかった。
形が、認識が壊れている。その感覚は、昨日の弟と同じもので――
「どうシマシた? どコカケがでモ?」
ずずずずっ、と音を伴って、腕を触られた。
ざわっ、と心が蠢いて、
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ
頭がこの言葉で埋め尽くされた。
逃げたい。一刻も早く逃げたい。でも、脚が恐怖で動かない。
ふと気がつくと、俺の顔のすぐそばに、そいつの顔が迫っていた。
虚ろな、何も宿っていない瞳が見える。能面のような顔が見える。そして、何より形の崩れてしまったその姿かたちが焼き付けられる。
それは明らかに、人間の形をしていなかった。目に見えるのは普通の人間だけれど、頭の中で結ばれる像は「人」という型から明らかに離れている。
そして、
「――あ、」
ぐいっ、と二の腕を掴まれ、思い切り引き寄せられた。
次に、前髪を何かが掠める。それに続いて、ぶおんっ、という音。
気がつけば。
俺は友人によって体を支えられていて。
視線をそいつに合わせると、金属バットを左脚から引き剥がすところだった。
「だ、大丈夫?」
友人の声が聞こえる。
だがそれに返事をする間も無く、
「っ!」
がいんっ、と。
大きく、金属バットが振られていた。
それは脚を狙っていた。咄嗟に避けたその一撃は、アスファルトとの衝突によって金属バット自体を歪ませている。
………あんな威力の一撃をくらってしまったら、骨折は確実だろうな。
「よし、逃げよう。すぐに逃げよう即刻逃げよう今すぐ逃げよう!」
じっくり観察していると、友人が俺を引きずって駆け出してしまった。
「わわわっ!」
咄嗟にそんな声が出る。後向きだ。体を斜めにしながら後向きで走るというのは、楽な作業ではない。だから襟元を掴んでいる手を振り払い、普通の体勢に戻る。…こんなことは別に表現しなくてもいいのだけれど。
んでもって頭だけで振り返れば、
ずずずずずずずずずずずずずず。
あの一撃を左脚に当ててしまったはずだというのに、そいつはとても元気に走っていた。
ぐいぐいと距離を詰められる。
「こっち!」
ぐいっ、と二の腕を支点に光景が変わった。あ、何か既視感。
「一旦隠れよ?」
そう言って、すぐそばに停められている車に乗り込む友人。その行動力は素晴らしい。
…というか鍵は?
そんなことを考えながら、車に飛び込む。慌ててドアを閉めてロックをかけると、直後にずずずずずずずずずずずっ、という音が聞こえてきた。車の窓にカーテンがかかっているのがとてもありがたい。
その音の主は俺達を見失ったらしく、しばらくうろうろとして、
「――――、ウ」
ドアの取っ手が引かれる音がした。ロックがかけられているため、当然ながらドアは開かない。それを何度か繰り返し、開かないのを確かめると。
がいんっ、とバットを窓に打ちつける。一度打ち付けて終わりかと思いきや、
がいんっがいんっがいんっがいんっがいんっがいんっがいんっがいんっがいんっ!
間を置いて、音で埋め尽くされた。ひたすら響く金属音。耳を塞がないと正気を保っていられないような状況だ。それでも、こいつに捕まるよりは遥かにマシな状況だと思う。
そして、
「――――、ン」
車の窓に蜘蛛の巣状の模様が走り、何も見えなくなった頃。
そいつは何かを呟いて、バットを引きずりながら去っていった。
まさに危機一髪、幸運に感謝。
「………あー…」
自分の声ですら、よく聞こえない。
「大丈夫か?」
「あはは、多分大丈夫」
友人は、若干引きつった笑みを浮かべていた。だが、それがぴたりと凍りつく。
その目は、俺を見ていなかった。
「……おい、」
「後っ!」
咄嗟に振り向く。その瞬間、窓ガラスが砕け散った。
次はきちんと納得のいく文章にしたいです…。意味不明すぎる。
そして、これはゾンビモノ…なんでしょうか。
だが、それがぴたりと凍りつく。
これなんかおかしいですね…「だが、」が要りませんね。
読点が多すぎる…。
93 :
79:2008/12/28(日) 04:47:24 ID:pehLcoey0
>>80 高橋源一郎、評判悪いから
気にしてしまった
昔、携帯での2chがメインだった頃にこのスレ楽しみだったなあ
皆さん頑張ってくだされ
ゾ
明けおめあげ〜
あけおめ
あれ?
>>96 新年そうそう面白いのが出ちゃいましたねOfTheDead
おけおめ〜
みなさん今年も面白い話をよろしくお願いします。
ID:u8TcxAva0の人さんは、文章が妙にうまいんだがプロの方かな?
emptyさんのは、相変わらず怖いなぁ・・・
どうなるのかまったく先が読めなくて楽しみだ。
101 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/06(火) 13:46:37 ID:KPym+B11O
北上 秋彦の「死霊列車」がおもしろい。
列車で、ゾンビ大量発生地獄絵図から脱出を図るとは日本らしい。
・28日後・・・
・バイオハザード
・ドーン・オブ・ザ・デッド(リメイク)
・カサンドラ・クロス
がミックスされたような傑作だな。
日本で狂犬病みたいな感じの
「ドーン・オブ・ザ・デッド」やら「28日後・・・」みたいな
高機動型ゾンビがいきなり大量発生。
北海道以外はまたたくまに壊滅する。
島根県にすむ鉄道マニアの少年。
彼はゾンビの襲撃で家族をすべて失い逃避中に、運転手さえすれば
動かせるディーゼル機関車に繋がれた、
ローカル線の列車(実在する名前がでてくる)に乗り込み逃げる。
途中、ある女性医学者を保護する帯びて本州に潜入するが
ヘリが事故で墜落し
帰投する手段を失った、陸自特殊部隊やら避難民を列車に乗せ、
鉄道を使い、島根から北海道に向かう。
>>93 気に障ったらごめん。
ちなみに俺が読んだ高橋源一郎は、初期の「天才」と評されていた頃の作品だよ。
>>101 マジか!!!
サンクスコ!絶対買う!
>>100 そんな、プロだなんて…
ただの素人ですよ
ゾ
ン
ビューティフル
エステティックは
108 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/12(月) 01:51:37 ID:1XytjnGNO
昨晩
109 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/12(月) 06:06:06 ID:2WkNA8Ki0
忘年会の帰りなんですが、ちょっと妙なことが
起きたんで聞いてもらえますか?
いいよ
実は私、ゾンビなんです
走るゾンビなんて!いらないわ!
113 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/13(火) 08:19:28 ID:Yfnf57iQ0
>101
面白かった!
続きはまだか・・・
週明けの楽しみだったのにorz
さて、自宅には政府推薦の2ヶ月分の3倍の6ヶ月分の食料、生活消耗品を蓄え、
N−95以上のマスクを20ダース、ゴーグル、防護服10ダース、それとタミフル
、リレンザを各200錠(懇意の内科医より一般扱いで売ってもらった)抗生剤
解熱、消炎剤、消毒等と新型感染症パンデミックに備えた備蓄が終わった頃に、
テレビがおかしなことを言い出した。
「スーパー、商店、後備蓄品を狙った暴徒が発生し、強奪される可能性が・・・。」
おいおい、次は武装化かよ(笑
趣味もあって、私の手元には色々と怪しげ、且つ法スレスレの品々がある。
スタンガン、催涙スプレー、特殊警棒、この辺は接近を前提にしているからバスだな。
では、スリリングショット、クロスボウ、スリリングショットは当らない、しかも当ったら大事。
クロスボウは当ると殺人、しかも音がしないから威嚇にならない。
これは日本で売っていてもいいものかしら?
狩猟用と紹介されているが、小動物には当らない、大動物は当っても致命傷にならない。
この対象は人間だよな・・・・
こうなると、装薬銃になるな・・・・良かった、狩猟やっていて(笑
私の、レミントンM780が役に立つかな。
新型感染症パンデミック時のB−6はほぼ戒厳令状態と見ていい、その中で
略奪者に警告射撃はその後も強い非難は受けないかな?
緊急避難法を鑑みれば、当てない限りは無罪で押し通せるだろう。
そうなると、弾薬の備蓄か?
佐世保の糞餓鬼のせいで個人の弾の管理、備蓄が凄く五月蝿くなった。
かくなる上は、どうするか?
>>117 続けていいかい?
ぼちぼち投下になりますが。
暫し、考えた後、私は二箇所に電話をかけた。
正確に言えば、電話を一本と、メールを一本。
電話の主は、私がここ6年見慣れた、かなり薄く擦り切れた電電公社の文字の書かれた黒電話のゴツイ受話器を老人斑の浮いた
これたまたゴツイ手で取ったはずだ。
あれだけ古い電話なのに取り合えずはプッシュ回線になっているの、何か不思議。
しわがれているが、シッカリとした声の主に用向きを告げる。
以前より打診していた件ということで話は進む。
「・・・では、明日詳しい条件を確認しましょう、次いでお願いしたいこともありますので宜しく。」
黒電話の主の電話が終わるのを待っていた様にメールの相手から電話が入る。
この、非常に稀な資格を持つ、非常に変わった志望を持つ軽やかな声の主に、私は開口一番、こう告げた。
「甲種・乙種火薬類取扱保安責任者免状を取る気ないか?それと明日時間を作れ、就職先を世話する。」
先に私の住居について紹介したと思うが、敷地の紹介していなかったはずだ。
建坪は100×3、300坪になる、この場合、二種住宅地では1000坪近く敷地が必要になるが、
幸い、私が家を建てたのは商業用地、300坪近くある。
ザックリ見て後200坪建てるだけの扁平率は残っている。
駐車場込みで200坪、コンビニが一軒建てれる位だ。
そう、元々コンビニを建ててそこの商品を備蓄に当てるつもりで居たのだが、経営した場合の経費と備蓄時の経費を
天秤にかければ、当然コンビに経営までする必要は無い訳だ。
取り合えず、コンビニ経営は保留、月極駐車にでもするつもりで空けてある。
そこに今、20坪ほどであるが、鉄骨の枠が組まれている。
「・・・・と言うことで、4ヵ月後に引越しは出来るはずです・・・秋前ですね。」
「店舗の引継ぎは事前の契約通り、来月には営業権の譲渡、新店舗開店より原則一年間は
小塚さんが店長、それと管理責任者としてお願いします。
予定では、一年以内に、溝口さんが必要な資格、免許ですね、修得しますので。
その後、公安委員会より、店舗責任者として認定それた後、引き継ぐと言う形で。」
クレーンが、鉄骨の骨組みを組み立てる前で、私と小塚老人、それと溝口良里嬢が新店舗建設を眺めながら立っている。
「問題は、このお嬢さんが来年の試験に受かるのか?と言うことだな。」黒電話の主、御年73歳の小塚銃砲店店主小塚正造が、
溝口良里をからかう様に声をかける。
しかし、この爺さん、デカイな、私は180センチ近くあるが、その私の鼻位に光る禿げ頭がある。
加齢の短縮を考えると、全盛時は178くらいあったな、当時は大男の部類に入るだろう。
「大丈夫です、来年は修得しますよ、もう、散弾銃免許も取りましたし、問題集を見ても苦戦はしないです、
時間があれば覚えきれますよ。」
からかわれたのを自覚した、溝口良里は自慢の自称Cカップ95の胸を大きく張る。
胸を張るのは、この娘の不自然な癖だ・・・・・・自慢したいのは解かるが、ヨリ、その癖直した方がいいよ。
君が自力で手に入れた自慢は解かるけどね。
「ほう、そりゃ、頼もしい。」
爺さん、鼻の下伸びてるぞ、本当に幾つになっても男って奴は・・・・
「立ち話も何ですから、家に行って続けましょう。」
私は、春の穏やかな日差しの中、少し鼻の下が伸びたデカ爺さんと巨乳をさらに強調する様に
胸を張る可哀想な娘を、鉄骨の枠組みを組み立てている裏手に見える、我が要塞ハウスに誘った。
「しかし、面白い構造の店だな、一階は鉄骨で組んで、二階三階は鉄筋コンクリート、RC工法って奴か?」
渋茶を啜りながら小塚老人は店舗の設計図を眺める。
「1階の鉄骨がオーバーじゃないか?この形なら戦車の突進も止めてしまう。」
「丁度、この家を表通りから、と言うよりも表通りに対して壁になっている、城で例えると出城の位置か、しかも
単体でも強固な要塞のようだ、あんた何と戦う気かね?」
独り言とも付かない小塚老人にの問いに対して私は曖昧な笑みで答える。
「この家も大分変わっている、この家外から見れば個人住宅には見えんな、1階のガレージから見れば小規模の運送屋の
社屋にしか見えない、ご丁寧に屋号まで掲げて、何だい?あのASビルってのは?」
「目立たない為ですよ、他意はないです。」
「ASはアンチ・セキュリティーの意味です。」
まぁ、確かに怪しさ満載だわな、わざわざ法人騙っている訳だし。
「以前から言っているように、この家は新型感染症、地震等の災害をいかに防ぐか、と言うこと建てた家です、
食料その他の備蓄も満載ですし、他人が知ればそういう時には押しかけられかねません、そういった意味でも
目立たないように、と言う事です。」
「確かに、ただ広いリビングも値打ち物が有りそうだしな、まぁ、人が寄り付かんのもいいだろう。」
小塚老人は40畳ほどあるリビングを見渡す、そしてまた図面に眼を落とした。
「一階は店舗と工作室か、二階は何だ」
「二階は、1階のセキュリティーの設備と倉庫にしようと思っています。」
「それにしては、広すぎないか?このスペースに弾薬詰め込んだらトンでもない量になるぞ。」
「そうですね、少し広いですか、余裕を持たせすぎましたか。」
「そこで相談なんだが、わしの今の店は再来月には更地になる、不動産屋に売ったのだがね、そうするとわしの住むところも
無くなる訳だ、わしとしてはここの仕事が終わったところで特老にでも入ろうと思っている、出来ればな、その間この二階をわしに貸してくれんか?」
「住むと言うことですか?」
「そうしたいのだがね。」
少し、私は考え込む。
「実は、この三階は溝口嬢が住む事になっいるのですが・・・階は違えど同居になるわけですし
本人にも確認してみければ・・・」
「なんじゃ、おっぱいの嬢ちゃんもが住むのか?じゃ、本人に聞かなけりゃならんな、どこに居る。」
「トイレでしょうね。」
しかし、おっぱいのお嬢ちゃんか、良かったなヨリ、お前の努力を認めてくれてるぞ、この爺さん。
>>118 乙です。
現実に対応できる住宅の準備からですか。
なんだか、すばらしく壮大な話になりそうですねぇ。
ひょっとしたら、ガチでゾンビが〜スレの方かなw
続き楽しみにしています。
スリリング?
スリングじゃね?
続き行きます
「…!」
あまりの恐怖に飛び起きる。体が寝汗でびっしょりだ。
(何だ…夢か…体が汗でべたべただ)
夢の中の不快感が抜けない…何だってんだよ…
「シャワーでも浴びるか…」
そう思い、俺は風呂場に向かった。
シャワーで一通り汗を流し、新しいシャツとズボンに着替える。
-ウー…-
(…今声がした?気のせいか?)
-アー…-
(気のせい…じゃない!)
俺はとっさに身構え、声の聞こえてくる方を探る―
「…近くも遠くも無いな…待てよ!?まだここら辺には着かないはずじゃ?!」
>>123 どうもです。
あまり壮大にはしたくないのですよね。
個人の力は限られていますから、その中でどうするか?と考えて取組んでいます。
一応、設定としては、この後パンデミックに移行しますが、同然新型感染症はゾンビウイルス感染症ですが、
タイプは、従来のゾンビと想定しています。
仮にゾンビウィルスがあったと仮定しても、ドーンタイプのゾンビはエネルギー消費、神経伝達スピード、思考速度どれを取っても
生体が停止、ウィルスによって活動しているとするにはどれも無理があり、採用できませんでした。
それに、ドーンタイプだと、最終的に人類は絶滅しかないですし(笑
と言う事で、在り来たりなバターンになりそうな次第ですね。
「先生の家のトイレ、広いね〜。」
機嫌良くヨリが帰って来た。
「私の部屋の半分くらいある、本棚もテレビもあるのはやり過ぎじゃない〜。」
「テレビじゃない、あれはPCのディスプレィじゃ。」
「あれ、キーボードどこにあるの?」
「下に入っているのよ。」
「そうか、でも何でトイレにPC?」
「マーケットは昼も夜も、トイレも風呂も考えてくれんからな。」
因果な商売と言えば商売だ、相場師という奴は。
「大変だね〜、でも、だから儲かったんでしょう?」
「まあな、だから足を洗って実業に切り替えるのよ。」
まぁ、趣味程度にしかなりそうも無いが銃砲店経営は。
「じゃあ、責任重大だね、私が来年資格取らないと。」
能天気な奴だが、現状信用できる人間で彼女以外にこの資格を取れる人材が見当たらない、仕方ないと言えば仕方ない。
ただ、タダ飯は食わさん。
「受かるまで、何度も受けてもらう、小塚さんには最大3年お願いしている、安心しろ、暇な時は射撃場で水着で客寄せしてもらうから、
お前のボディなら結構客も付くかも知れん、心配するな。」
これは、以前より、ヨリをこの店に引き込む時には既に考えていた案だった。
クレー射撃は富裕層が多い場所だ、しかも、ヨリは、い、ま、はスタイルがいい、当たると考えている。
「ひどーい、私を客寄せパンダにする気?油ぎった親父の、いいんですか?小塚さん、小塚さんの店、いかがわしい評判立つよ。」
本気で嫌がっていないヨリは、渋茶を啜っている小塚老人に助けを求める、この爺さんは助けないと私は見ている。
「
「いや〜、わしの店はもう無いし、来月にはこの旦那さんに営業権は渡るし、その後どうしても旦那さんのかってだしな〜。」
案の定、小塚老人はヨリを突き放す、そして、エヘラな笑いを顔に貼り付けて続けた。
「それに、嬢ちゃんの水着なら客付くよ、いい胸しているしな〜。」
「そうだ、お前は客寄せパンダじゃなく、客寄せオッパイだ。」
私も駄目押しを入れる、途端、ヨリもその気になった、元々見せびらかしたいよな、ヨリ。
お前の努力の結果だし。
「ええー、そうかな〜。」
胸を突き出してみせる。
老人、鼻の下伸びる、私、生暖かい視線。
さて、話を進めよう。
「どちらにしても、来年以降の話だ、ところでヨリ、話して有ったが新店舗が建ったら、三階に住んでもらうと言っていたよな?
小塚さんが二階に住みたい、と希望しているが、どうだ?」
「小塚さん、二階に住みたいの?」
自分の前のコーヒーに手を伸ばしながら、小塚老人を見る。
「済まんが頼みたい、嬢ちゃんが年寄りと言えど男と住むのが嫌なら仕方ないが。」
老人、ペコリと頭を下げる。
「先生、玄関別なんだよね?」
「階段は室内で共用だが、玄関は別に付ける、まだ変更は効くからな、プライバシィーは保障できるぞ。」
図面を見直しながら私は答える。
「ならいいよ、別に、まさか襲っては来ないでしょ〜。」
ケラケラ笑いながらヨリは快諾。
「後10年若ければ、それも有っただろうが、今はその心配は無用だ、しかし、承諾してくれて感謝するよ、お嬢ちゃん。」
小塚老人はまたペコリと禿掛かった、寧ろ禿頭と言っていい頭を下げる。
しかし、本当にもう駄目なんだろうか?私は一抹の疑問を持ちながら図面を見る。
「では、話は決ったようですから、業者に設計の変更を出しておきます、元々二階にも水周りの配管は入れておきましたので、トイレは設計に入っていますから
新たに、風呂と台所を追加します。」
もともと、スペースは余裕を持たしているので無理な追加にはならない。
「あまり、大きな物でなくて結構だが。」
老人、遠慮気味に言う。
「いえ、不自由はさせれません、私にとっても、ヨリにとっても先生になるのですし、遠慮は要りませんよ。」
これは、私の正直な気持ちだ、もともと、好意は持っていたし、6年間の付き合いで信用できる人物である事は確認済みだ。
少しでも、快適に暮らして欲しいと言う気持ちはあった。
「では、お願いする、・・・・来月の契約が終わったところで、少し旅行に出かけてくる、帰って来たら新居と言う訳だな、
楽しみに行って来るとしよう。」
これは初耳だった。
「どちらへ行かれるので?」
「古い友達の所を巡っておきたい、と思ってな、少し遠いところの、今生の別れと言う奴だな。」
これは後に本当になった、間違いなく今生の別れとなった。
そして、それは私にとってはありがたい旅行でもあったことだった。
「 期間はどれ位ですか?相談する事も出てきますので、連絡先を知らせていただけますか?」
「期間は、店の落成式までには帰ってくるよ、ただ、国外だからな、その都度連絡を入れておくよ。」
随分長い旅行だ、これは連絡先を知らせてもらわ無ければならない、しかし、国外?
「お願いします、そこまで長期ですと仕入れる品についても相談がありますから。」
「了解した、行った先ごと連絡する。」
「そんなに、長く行くところがあるの?」
長期の旅行と聞いて、ヨリが少し羨ましげに見る。
「わしにも何人かの友人がいるしね・・・・・・お嬢ちゃんにもお土産を買ってきてあげるから楽しみにしていなさい。」
孫を見るような慈愛の笑みを小塚老人はヨリに向ける、24才と73才だもんな、本当に孫と爺さんの差がある。
ヨリもまた、無邪気な笑顔で返す。
「うん、楽しみに待ってる。」
年寄りは友人を訪ねに出掛け、若者は受験勉強に勤しむ、そして私は虚業。
まだ、平穏な日々が過ぎていた。
131 :
新型感染症パンデミック ◆BlgH.rJvAg :2009/01/18(日) 13:15:24 ID:swVFWA2o0
保守
132 :
エリザベス:2009/01/18(日) 21:16:01 ID:r7btDOVz0
突然投下
学校から帰ると、私の部屋の机の上に見たことも無いノートが置いてありました。
まあ、丁度良かったわ。書こうと思っていた小説のプロットでも書こうと。
<ある日突然、街にゾンビが溢れ、数時間後、異次元から邪神クトゥルフとハスターが
現れ、両者の戦いで地球は木っ端微塵になってしまいました。 おしまい>
ガラ
私がプロットを書き終えた時です。押入れが開けて、雪ダルマのようなのような青い
ものが出てきました。
カワイイー!生き物かしら。
「やあ、エリスちゃん。僕、未来から来たネコ型ロボット。今日は良い子のエリスちゃんに
プレゼントを持って来たよ。机の上にあるノートは[予め日記]ていって、書いた事が本当に
起きるノートだよ」
ガーン
「どうしよう、そんなノートに、こんな事書いちゃった」
「早くページを破るんだ」
バーン
突然、ドアを開けて、ゾンビ化した母と姉が乱入してきて、驚いた拍子でノートが
2階の自室の窓から落ちてしまいました。
「ネコさん、ノートが落ちちゃった」
「ガアアアアアァ」
ちょっと!何で、ロボットのネコさんがゾンビになるわけ!
私は何とか、窓から飛び下りると、庭の物置に身を隠しました。
133 :
エリザベス:2009/01/19(月) 02:02:54 ID:BZ7fQEb0O
物置の外からは、ゾンビの雄叫び、逃げ回る人達の悲鳴、何が起きたか分からず只走り回る緊急車両のサイレン音が聞こえてきます。
どうしよう、大変な事になちゃった。。。こんな事なら、J事務所のAのO君とデートしたと書いておけばよかったわ。
私は物置の中の毛布を被って、物思いに耽ってるうちに眠ってしまったようです。
目が覚めた時はもう、外からは何も聞こえてきません。私は恐る恐る物置の戸を開けて、外にゾンビがいないのを確認して、夜の闇が迫る外に出ました。
早くノートを見つけなくちゃ。しかし、ノートは見つかりません。
「この辺に落ちた筈なのに、どうして見つからないのよ」
ガシャーン
私が叫ぶと同時に隣家の窓ガラスを破ってゾンビが、しかも5体登場。さらに、物音を聞き付けて付近のゾンビが集まって来ました。
終わった。。。全て終わった。
シュパーン
ゾンビの群れが私に襲い掛かろうとしたその時です。空を切る音と共に、ゾンビの首が立て続けに跳ね飛びました。
ゾンビたちが倒れた後には日本刀を持った忍者の格好をした男の人が立っていました。
「エリスちゃんは、拙者が守るでござるよ。ニンニン」
「ありがとう、忍者さん。今、靴を履いて来ますね」
私が靴を履いて戻ってくると、忍者さんが呆然とした顔で立っています。
「不覚、ゾンビに噛まれてしまったでござるよ。ニンニン。。。カユ。。ウマ」
キャァァァァ!忍者さんまでゾンビになっちゃった。私は慌てて、その場を逃げ出しました。
134 :
エリザベス:2009/01/19(月) 02:27:10 ID:BZ7fQEb0O
ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーン
こ、この音はクトゥルフ(ハスターかもしれないけど)の鳴き声。早くノートを探さなくちゃ。
「エリスちゃん。。。エリスちゃん。。。」
誰、私の事を呼ぶのは?
声のする方を見ると何かが光っています。恐る恐る近付いてみると、声の主は、頭に毛が3本生えた幽霊でした。
「エリスちゃん。。君の探しているノートは。。この先。。の。。大きなお店の屋根の上にあるの。。犬恐いの」
突然聞こえた犬の鳴き声を聞いた幽霊は消えてしまいました。まさか、犬までゾンビになってたりしないわよね。
この先の大きなお店というのは多分、西友ね。急がなくちゃ。
あーん、西友の前はゾンビだらけじゃないのよ。そうだ!さっきあったコンビニに、目覚まし時計があったわ。
これは期待wwwwwww
ほ
っ
し
139 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/22(木) 01:32:27 ID:aJ3pzh6l0
テンプレなんだけど15〜21のアドレスが無いのと
23とこのスレの間にひとつあったの抜けてない?
このスレ実質、25なのでは?
>>139 たぶんゾンビに食べられたんだな
あとsageが食べられてるからお前もうじきゾンビだな
えんがちょ
>>139-140 ほ
っ
し
ゃ
ん
を完成させようとしてたのに邪魔するなw
つか、非日常さんとemptyさんの続きマダー?
142 :
新型感染症パンデミック ◆BlgH.rJvAg :2009/01/22(木) 20:56:52 ID:hrZeUzHb0
「あなた、小塚さんから荷物が届いているわよ。」
階下から妻、綾佳の声がする。
これで、三回目か?またアメリカからの航空便かな。
「小塚さん、まだハワイに居るのね、結構長いわね、この前はグアムだった?」
消印を見ながら綾香は少し羨ましそうに言う。
「南の島に長期滞在、日焼けを考えなければ羨ましいわね。」
「行きたいの?」
航空便の重さを確かめながら私。
「そりゃ行きたいわよ、ハワイは飽きないし。」
「・・・三年くらいは行っていないし・・・」
指を折り数える綾香。
「お前も好きだね、ハワイ、通算20回位は行っているだろうに。」
荷物を持ち上げながら私。
「南の島にはロマンがあるの!」
力を込めて訴える綾佳。
「海がめにハワイアンモンクシール、イルカにクジラ・・・」
みんな動物だけやんけ、目を瞑って回想する妻にツッコモみを入れようと思ったが、荷物を担ぎなおし、
ガレージに向かう。
「来年、桜子の高校受験が終わったら、皆で行こう、ヨリも羨ましがっていたからな。」
「ホント?ヤッター。」と言う声を背中で聞きながら、私はガレージに入る。
ガレージの大型冷凍庫の傍に、航空便を置く、機械部品と書いているが随分軽いな。
先行して届いた荷物もどれも機械部品と書いているが軽い。
何を送って来ているのか?
私が、店に並べる品物をファクッスで送った後から、この小塚老人の荷送りは始まった。
何か意味があるのか?開けて見れば解かるのだろうが、小塚老人に釘を刺されている。
帰ってきた時に確かめるしかないな。
143 :
139:2009/01/23(金) 01:34:36 ID:w8HrAAZ/0
何だよ。俺変なこと言ったのか?
まあageちまったのは悪いけど
問題提案しただけでちゃかされんの?
>>101 読んでる。おもしろい!
もろ28日後の日本版だね。
ただ、自衛隊同士で戦うってのは必要ないように感じた。
あそこだけ安っぽくてつまらない。
>>143 いや・・・別にちゃかしたつもりはないんだよ
sageもどうだっていいし
消えたスレもわかんないし
ただ保守ついでに適当に書いただけなんだ
気分を害したら
ご・ごめ・・・・かゆ・・・うま・・・・
>>145 そんな理由でほっしゃんを阻止したのか。
許さん!
ゾンビになったら、真っ先にお前を囓りに行くのでそのつもりで。
>>142さん乙です
俺もハワイに行きたいですw
非日常さんとemptyさんの続きマダーチンチン
148 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/24(土) 16:54:08 ID:kwIfNN/EO
どんよりとしたねずみ色の雲が空に広がり、波は穏やかではあるが白く深い霧が海面を覆っていた
その濃霧の北海を一隻の小さな漁船がエンジン音を響かせ進んでいく
「しかしあんたも物好きな人だねえ
こんな時期にあの島へ行こうなんてさぁ」
操縦桿を握りながら髭面の漁師が口を開いた
「仕事ですよ あの島で昔起きた惨殺事件についての調査をしにいくんです」
船尾の縁に寄りかかりながら細身の中年の男がぶっきらぼうな態度で応答する
「へえ あんた新聞記者さんかい
取材とはいえご苦労なこった
まあ 俺も貰うもんは貰ってるからちゃんと送ってはいくけどね
ただ………」
「ただ…?」
先程までの態度とはやや打って変わり
関心を持ったのか漁師の言葉を聞き返した
「あの島の連中はみんな偏屈さ
昔からよそ者を島に上げたがらないんだ
あの40年前の そうあんたが調べたがってる事件以降
締め出したがる傾向が余計酷い…
日用品を運ぶ船だって今や3ヶ月に一度になっちまったからねぇ…」
「じゃあ、あまり私は歓迎されないわけか…」
記者がぽつりと呟いた独り言も漁師は聞き逃さなかった
「そう 多分苦労するだろうねぇ
あんた確かロンドンから来たんだっけ
まあ心配いらん
あの島じゃイングランド人もスコットランド人も同じよそ者さ
ほら 見えてきたぞスラウグザ島だ」
先程のイングランド人とスコットランド人の下りが受けたのかふふんと鼻で笑った後
漁師は島が見えた事を告げた
霧もやや薄くなったせいか島の姿はすぐ見つけられたが
その島影はまるで空間にできた裂け目のようだった
記者も漁師も不気味さから来る不安感は隠せなかった
「全く…島の連中が不気味だと島の形まで不気味になりおるのか
本当に胸くそ悪いわい…」
漁船はゆっくりと島に近づいていった
まるで裂け目の中に吸い寄せられるかのように
ずっと前に投下したか覚えてませんが
以前 途中まで書いたものをもう一度焼き直してみました
皆様のお眼鏡に叶えば幸いです
がくん、と何もかもがブレた。それを理解した時には、背中を思い切りぶつけていた。
ぐぐ、と上着を引っ張られているのを感じる。慌てて振り向く。そこにあるのは、亀裂が走りすぎているせいで白く染まったガラスから生える腕。それが引きちぎるように上着を引っ張っていた。
この力は尋常じゃない。現に、少しずつではあるが上着が破れている。
慌てて上着を脱ごうとするものの…引っ張られているおかげで、脱ぐことができない。
その間にもピシピシと音を立ててガラスは砕け、その破片が上着との隙間に落ちてくる。
そして、音に比例してズルズルと滑ってゆく体。このままだと、確実に引きずり出されてしまう。
「伏せて! ……できれば!」
何とも無茶な要求をしてくる、目の前の友。勿論、無理。
だから、
「うわったったったったった!」
びすびすと頬や首筋を掠めてゆくBB弾。…最初とその次のは確実に当たった。
んでもって、当然ながらエアガンなんぞを撃たれても効果は無し。そんなことなど関係無いとばかりに引きずられてゆく。
何とかして上着を脱ごうと躍起になっている中で、
「…あ」
ぽつっと場違いな声。何事かと目を向ければ。
「えーと…、できるだけ踏ん張ってね?」
両腕を掴まれた。
「んっ…っとぉ!」
ぐいっ、ととても強く、それはもう涙目になる位に強く引っ張られる両腕。上着が両肩に食い込んでとても痛い。
なんというか、叫ぶことすらできない位に痛い。両腕がもぎ取られそう。
「のあっ!?」
そして、始まりと同じく終わりは突如訪れた。大きな抵抗の後に一瞬の浮遊感を感じ――両腕を引っ張り続けていた友人の上に落ちる。遅れて激痛もついてきた。
「何が…?」
自分を見下ろしてみると、両腕に上着だったものが引っかかっている。どうやら…肩から下だけを残して、破りとられたらしい。
「普通に引っ張られてても破れてたし、じゃあこっちから引っ張ればもしかして…なんて思ったんだけど、成功だったみたい。あと、重いから離れてくれると嬉しい」
苦しげな声が下から響く。
機転――というか何というか、とにかくそんなものに助けられたようだ。慌てて体を退ける。ついでに、ふと感じた疑問をぶつけてみる。
「じゃあ何でエアガンを?」
「何となく!」
堂々と言われた。
気力をごっそりと抉り取られていると――
「――――――、あ、ぁア?」
耳を抉りたくなるような音が聞こえた。
ゆっくりと振り向く。
白く染まったガラス。そこに空いた大きな穴。そこには、ガラスが突き刺さり、血を幾筋も流している腕。
自身が傷つくことなど構いもせず、或いは痛みを感じないかのように、ガラスを少しずつ割りながら侵入してくる。
蠢いている腕には、辛うじてスーツだったとわかる程度の布切れが張り付いていた。
さっきの奴だ。
持っていた金属バットをどこかに隠したらしい。道理で、気づかなかったはずだ。
そして悠長に考え事をしている間に、腕は穴を広げ続けている。今はもう、頭が楽々と通り抜けられるくらいになっている。ピシピシいう音を立てて砕かれたガラスが、少しずつ堆積していた。
「で、どうするよ?」
びたんびたんと陸揚げされた魚のように暴れまわる腕から目を離さず、尋ねる。突飛なことばかり思いつく友人なら或いは、この状況を打破できると思ったからだ。
「…おい?」
しかし、返事は来なかった。
首を回してみるも、そこにその姿は無く。
「…へ?」
返事の代わりか、どるるるるるる、という音がすぐ近くから。
その音源に目をやると――がくん。
再び、何もかもがブレた。
お久しぶりです。
自分の書いたのでも、楽しみにしてくれている方が居るようで。とても嬉しいです。読んでくれてどうもありがとうございます。
続きを書こうとして、何か思っている感じとは違うなー? という出来ばっかになっていたのでしばらく間を置いてました。おかげで一応書きたい風には書けたのですが…文章がより一層稚拙で読みにくさ数倍に。
これからもまたぽつぽつ投下してゆくので、何卒宜しくお願いいたします。
>>145 過去ログから引っ張ってきているようなので、過去ログに収容されていない分が省かれているのではないかと…。
数字に関しても、前のが落ちて随分経っているようなのであやふやになっているんじゃないかな、と思っています。
>>148さん
覚えてる覚えてるw
できればコテをつけてください><
そしてできるだけ早く続きを!
>>150 続きキター!!!
>>152 さっさと続き書けや!このうすのろ!
・・・ウソです。楽しみに待ってますので、ゆっくり書いてくださいね^^
ガラスの割れた自動ドア、床に落ちたレジスターと散乱する硬貨、倒れた陳列棚。。
私も学校帰りに、よく立ち寄ったセブンイレブンは、ゾンビが発生した時の混乱の痕跡も生々しく廃墟と化していた。
中にゾンビはいないようね。
私はセブンイレブンで目覚まし時計4個と乾電池を入手すると西友の周辺に仕掛けた。
ピピピピッピッピピピ。。作戦は成功よ。
時間差を置いて鳴る目覚まし時計に誘導され、ゾンビは西友から離れて行き、私は難無く屋上に行けました。
『ホォホォホホホホオォ。遂に、ここまで辿りり着きましたか』
屋上に着いた私に投げ掛けられる言葉。声の主は、黒いスーツに同じ色のソフト帽を被った男で、その手には、あのノートが握られているではないですか。
『そのノートを渡して』
思わず声を張り上げる私。
『これは、我が主復活のために必要な物。渡すわけにはいきませんね』
この惨禍を楽しむような男の返答。
その時です。物陰からマスクを被った男とサルが飛び出してくるなりノートを叩き落し、男を羽交い締めにしました。
『エリスちゃん、早くページを破るんだ』
マスクの男の言葉に弾かれたようにノートへ走る私。しかし、相手も邪神の使者、1人と1匹を跳ね飛ばすと私に人差し指を向け叫びました。
『ドーーン』
あああ、意識が遠くなって。。。行かない?
目を開けると、ネコさんの妹の黄色いネコさんが、謎のマントを拡げて私を守っていました。『エリスちゃん、早くページを破って』
私はノートを拾い上げるとページを破りました。『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァ』邪神の使者の断末魔を聞きながら私は意識を失いました。
『エリス、起きなさい』
私は、どうやらコタツの中で寝てしまったようです。怒った顔のアリシア姉様が私に言いました。
『エリス、お父様が帰って来る前に早く玄関を掃除しなさい』
『はーい』
玄関に行くとミミズが死んでいました。
156 :
139:2009/01/27(火) 00:07:39 ID:FspGO2Ui0
>>145 ごめん、荒れてると嫌だったんで
見なかった、、、
だぶん消えてるよ、書いてる人は覚えてるよね?
>>155 なんだそりゃw
ふざけてんのか?
もっと書いてください
航空便が届いて、二日後南の楽園より小塚老人の浮かれた声の電話が入った。
「荷物は届いたかね?旦那さん。」
電話の向こうから南国の甘かな香りがした気がする。
「はい、届いていますよ、そちらはどうです?楽しんでいますか?」
「結構だ、後二便届く手筈になっている、最後の便は旦那さん宛だ、この荷物は解いていい、その中の品物もばらしてくれ。
それは、タンマリ餞別をくれた君へのわしからのプレゼントだよ。」
最後の旅行と言う事なので、100万ばかり渡している、しかし(届くはず?小塚老人が発想する訳ではないのか?)少し疑問を持つ。
「小塚さん、旦那さんは止めて下さい、若造ですよ、それとその中身は何です?」
この老人、私が嫌がるのを面白がって敢えて「旦那さん」と呼ぶ、おふざけと解っているから気にはしていないが。
「なんの、来月よりわしの雇用主だ、旦那と呼ばれても不思議はあるまいに」語尾が笑っている。
「中身は楽しんでくれ、喜んでもらえるとは思っておるがね、これはわしからの発送にはなっておらんから間違わないようにしてくれ、それと次のもわしの名前では
発送しておらん、わしの友達の名前になっている、これも間違わないでくれ。」
「友達ですか?」
何やら複雑のようだ。
「そう、わしの古い友人だ、君の店の商品リストを見てエラク受けておったぞ、オート、ボルトとも300ウィンで統一しとると。
この分なら、ショットシェルも3インチで統一しているのだろう?」語尾がニヤついているのが解る。
「はいはいもそうですよ、三インチで統一、12番ケージで、ご想像通りWOOが大半です、次いで言うなら300ウィンと460です。」
電話の向こうでゲラゲラ笑っている、どうも一人ではないらしい、もう一人後ろで大受けしている人物がいるようだ、それが古い友人か?
「リストの最後にマークVが有ったからそうだと思っていたぞ、しかし460なぞ買う客がいるのかね?」涙目で笑っているらしい声だ。
後ろの方で「こちら(アメリカ)の店のような品揃えだ、と言うこれまた笑う声が聞こえる、くそ。
「射るとは思いますよ、対象になるピックゲームは居ますから、物好きが居る筈です。」我ながら苦しい言い訳だ。
「そうか、そういうこともあるな・・・・・えっなんだって?・・・・友人からの質問なのだが、君は何と戦うつもりなのか?という事だが・」
以前、小塚老人にも問われた事だが、確かに歪な品揃えだわな、本当に私はどのような状況を想定しているのだろうか?我ながら苦笑いが出る。
「半分は趣味だと伝えてください。」
電話の向こうで「グレィト」と言う言葉が聞こえる。
「満足しているようだ、わしは来月には帰る、最後の荷は楽しんでくれ。」
「解りました、気をつけて返ってきてください、最後の荷は楽しみにしています。」
ハワイからの電話は、小塚老人と後ろの人物からの賑やかな別れの言葉で終わった。
最後の荷物か?何が送られてくるやら、少し楽しみでもある。
161 :
新型感染症パンデミック ◆XilBHZLrTw :2009/01/28(水) 04:01:06 ID:tl1CSZ2E0
保守
空に紅い稲妻が疾った日、世界各地で死体が生き返り人々を襲い始めた。所謂ゾンビ現象である。
ゾンビ現象を起こしたのは、目の前にいる悪い魔女だった。こんな魔女やつけてやる。
『生意気な小娘め、お前なんかカエルにしてやる。えいっ』
やったな、あんたなんかゴキブリにしてやる。えいっ。
『よくもやったな、お前なんかアメーバにしてやる。えいっ』
やったな、あんたなんか木星にしてやる。えいっ。
ズカーン
私が魔女を木星にしたせいで、木星の巨大な重力で地球は粉々になってしまいました。65億の人類をはじめ地球に棲んでいた
あらゆる生物の皆さんゴメンナサイ。でも、魔女が木星になったおかげで、私は元に戻ったわ。後はどうやって地球を元に戻すかね。
『困ってるようだね』
突然、私の目の前にネコが現れました。
ビックリした。あなたネコなのに何で、喋ったり消えたりできるの?
『僕は、ウルタールのネコだからね。それよりも地球を元に戻したかったら、あの時計台の針が12時を指す前に星の欠片を集めないと』
えっ!今は6時よね。6時間しかないじゃない。
『星の欠片は、あっちの方にある黄色いレンガの道を行けばあるよ』
黄色いレンガの道ね。
『あと、地球の欠片らと一緒にゾンビも宇宙に、ばら撒かれたから、何とかしないとね。僕が言えるのは、ここまで、じゃあ、僕は消えるよ』
あーん、ネコさんの意地悪。
日本国内では460は許可が下りません。375が最大です。
野暮な突っ込みスマソ
いいじゃない☆
フィクソンだもの
166 :
新型感染症パンデミック ◆XilBHZLrTw :2009/01/28(水) 13:50:11 ID:tl1CSZ2E0
>>164 そうです、まぁ読み物とご容赦ください。
本当は700ニトロも想定したのですが、流石に無理でしたから(笑
338ラプアも面白かったのですが、やはり、460ウェザビーの方がメジャーですからね(笑
>>163 お前
>>155だろ?
何ファビョってんの?w
相変わらずつまんねーな・・・そういうのやりたいならvipへ行け
168 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/28(水) 15:41:17 ID:b99zgoA00
このスレでも話題にあがってた「死霊列車」読んだ
正直昔ここにいた東京くだんや巡査物語の方が数倍面白かったなー
未だに彼らを追い出したことが悔やまれる
sage忘れすまそ
>>167 お前がウザイ。そろそろいい加減にしようぜ?
>>168 やっぱゾンビに対する愛の差だろうな。
くだん氏は言葉使い悪すぎ
あれじゃ荒れたのもムリは無いわ
保管庫読んできた
確かに巡査物語は面白かった
続きはもう読めないのか?
173 :
本当にあった怖い名無し:2009/01/29(木) 23:36:16 ID:hczZPPQH0
そうでもないよ、実は未だに読んでいる。
少しは書き足していますが、、、、
目が悪くなったのと、本業のロシア貿易が
忙しいのがネックです。
くだんは確かに態度は悪かったけど面白かったな。
hpの保管庫の方も、2章以降を是非とも更新して欲しいもんだ。
俺も読みたいわ。
>>173 誰だよw
・・・期待していいのか?
>>174 ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─!!
まわ・・・巡査さん?
177 :
174:2009/01/31(土) 15:43:04 ID:kqPsaJ660
>>176 俺が言ってるのはZOMBIE ONE of The DEADってやつ。
書いてる途中でくだん消えたしな。
>>175 >>176 1話から若干手直しが入っているけど
投下してみる??
保管庫分からの続きと、、校正中の1話からの分とが有るけど ^^;;
どちらにするかなぁ。
くだんさんは、、本当に続きが読みたい方でしたね・・。
>>163の続き
私は黄色いレンガの道を探すことにしました。
ヒタヒタヒタ・・・私の後を種から孵ったゾンビが、追ってくる足音が聞こえます。
私の前に王様の星が現れました。この星には王様しかいなく、王様はいつも家来になる物を
探していました。私を見た王様が手招きして言いました。
「おい、お前、こっちに来い。家来にしてやるぞ」
「それどころじゃありません。間も無く、この星にも、ゾンビの群れが押し寄せてきます」
「何!?そんなもの纏めて、ワシの家来にしてやる」
しかし、ゾンビが王様の言う事を聞くはずも無く、王様は噛まれてゾンビになってしまいました。
次にあったのは、金貸しの星でした。この星に住む金貸しは、いつも、お金の計算に大忙しです。
「大変です。間も無く、この星に、ゾンビの群れが押し寄せてきます」
私は叫びましたが、お金の計算に忙しい金貸しの耳には入りません。金貸しもゾンビになりました。
次にあったのは、ガス灯の星でした。この星は、昼と夜が目まぐるしく変わり、ガス灯火夫は点火に
消火に大忙しで、私の話を聞いている余裕はありません。
そこに、ゾンビが押し寄せてきて、ガス漏れが発生して大爆発。おかげで、ゾンビの数が大分減りました。
ガス灯火夫のオジさん、ナイス。しかし、この光景を見ていた星の王子様がショックで自殺してしまいました。
大変な事になっちゃたわ。早く星の欠片を見つけなければ。
遂黄色いレンガの道に辿り着きました。私の前をウサギが横切ります。
ははーん、これは、私に追いかけさせて、道から遠ざけようという作戦ね。その手には乗らないわよ。
すると、ウサギが引き返してきたと思うと、イケメンさんになったではありませんか。
「ダメですよエリス。ここは、ウサギを追いかけるところでしょう」
そう言うなり彼は、私を抱き抱えて走り始めました。
「ちょっと、こんなの聞いてないわよ。離しなさいよ、バカ」
私の抗議も無視して、彼は丘を川を跳び越し、物凄い速さで走っていきます。
やがて、目の前に、お菓子ならぬ生肉でできた家が現れると、ようやく
彼は止まりました。
181 :
新型感染症パンデミック ◆BlgH.rJvAg :2009/02/02(月) 17:47:29 ID:yjE71Uql0
昼間の新規開店の騒ぎ?が収まり、店内は静な時間が流れていた。
本来は、繁華街に繰り出すところなのだが、小塚老人がここで良いと言うので、そのまま店内での祝賀会と相成った。
まぁ、ここでやればどんなに飲んだくれても住居が上だし、私は隣だし帰りのタクシー捕まえる手間が省けるだけよいか。
そんな訳で、料理と酒は奮発。
近くの定評のあるすし屋から出前と、妻が焼いた米沢牛A−5のサーロインのローストビーフが目の前に鎮座している(これはケータリングすると
いい頃合を逃してしまうからと、妻のローストビーフは絶品と言う事がある)。
「先生、ドンピンって美味しいね、私初めて飲んだ〜。」
大振りのシャンパングラスにピンク色のシュワシュワするドンペリニヨン ロゼを嬉しそうに口に運ぶ。
そうだろう、お前のバイトしていたスナックじゃあ、白も無かっただろう。
「どうぞ、やって下さい。」私は、ドンピンのボトルを小塚老人のグラスに向ける。
「おっ、済まんな、わしも久しぶりだな、ロゼは。」
老人はグラスを持ち上げる。
「美味しいよ、これ。」初めてのドンピンにヨリ、ご機嫌。
「好きなだけ飲め、今日はお前も頑張った、やはり長旅でお疲れになったのですか?」
前半はグラスを飲み干すヨリに、後半は繁華街の打ち上げを断った老人に、私も気を使う。
「うん、おかわり。」ズイとグラスを持つ手を突き出してくる。
私は笑いながらロゼをグラスに満たしてやる。
「後は手酌でやれ。」と瓶ごとヨリに押し付ける。
「いや、疲れておる訳ではない、楽しかっただけだぞ、酒は自分の家で飲むと決めておるのでな、
外で飲んでも酔えないのだよ。」
「そうなんですか?何か理由でもあるんですか?酔えない理由は?」
「昔から外で飲んで痛い目にあっただけじゃよ。」少しニヤつきながら答える老人。
この意味ありげの笑いが得体が知れないところなんだよな、この爺。
プレゼントのこともあるし、かなりグレーな世界に居たことは確かだ。
182 :
巡査物語:2009/02/03(火) 23:06:05 ID:siWzxHyp0
保管この状態から勘案して、番外一から投下します。
「巡査物語:番外編+1」今度は戦争だ!
鹿児島に本部を置く第十管区(南九州)の海上保安庁巡視船"しが"は東シナ海をゆっくりとした
速度で北西方向に航行していた、昨日より本部の情報通信センターより鎮海湾で夥しい船が
集結していると言う情報により、慌しく出港準備を整え北九州管区の第七管区巡視船"こじま"との
合流を急いでいた。
"しが"は52年施行の領海法により、一気に拡大した排他的経済水域を巡視する為の急造計画で
建造された巡視船PL60年代型と呼ばれるもので、艦齢も古く速力も16ノットをやっと
出せる程度である。
数年前に発生した、領海侵犯による追跡事件とそれに続く海事事件である奄美大島事件によって
新造の高速高性能船が整備されたが、第十一管区(琉球海域)や第七管区に優先配備され
耐用年数ギリギリ程度では中々新型船には更新して貰えなかった。
本来は北九州管区で、この様な事態では佐世保の海上自衛隊と共同で第七管区独自で対応する筈なのだが
第七管区には長崎や福岡など、比較的大規模な都市が点在し又本州の山口県等も警備担当に入る為
本事件の影響をもろに受け、各巡視船はそれこそ20トンクラスの警備艇や果ては測量船まで出払い
長崎市で救助活動を行っていた”こじま”を急遽呼び戻すのがやっとであった。
”こじま”は”しが”と同じ60年代型だかPLH型でヘリ1機を搭載出来た上に3000トンの排水量と
18ノットとこの年代としては高性能大型船であった。
本来、この様な状況では先ず米軍の偵察衛星の情報リンクシステムが海上自衛隊経由で送られて
船種や隻数等は出発前に通知済みなのだが、米軍は本国撤退の通知以降は非協力的で今回に至っては
通信記録の傍受による独自調査と、現場に急行する巡視船の海上捜索レーダーだけが頼りと言う
情けない事態となり、以前より指摘されていた有事の際における脆弱部分が垣間見えた。
巡査さんktkr
続き楽しみに待ってます!!1
話が見えない。
>>182 米軍が非協力的になる意味が分かりません。
この事態が収束した後(すればですが)の事を考えると。
手間の掛かる分析情報はともかく、精度を落とした衛星写真
程度なら提供されるでしょう。
電波情報は公安と自衛隊でも収集できます。
186 :
新型感染症パンデミック ◆BlgH.rJvAg :2009/02/04(水) 19:27:20 ID:jCacr4K+0
>>185 まだ、疑問を作者に問うのは時期ではないのでは?
全てを読み終わった後で聞くのがいいと考えますよ。
我慢できないと言う事であれば、倉庫に行って「巡査物語」を読んだほうがいいのではないでしょうか。
面白かったですよ。
>>185 私も楽しみにしていました。
続編を期待しています。
>>185 状況進行中で米本土もgdgdになってるならそれどころじゃねえよ!って事かもしれんが。
続きに期待ですね。待ちましょう。
わがままを言うと、須藤編の続きが先に読みたい
>>186 あなたにそんな事を言われる筋合いは無いですね。
読んで合理的で無い部分を指摘しただけ。
巡査物語氏の作品は既に読んでます。
191 :
新型感染症パンデミック ◆BlgH.rJvAg :2009/02/04(水) 23:25:23 ID:jCacr4K+0
>>190 だったら、待つのが吉でしょう。
合理的ではない部分は後々語られることになる伏線かもしれませんよ。
全編終わってから聞いた方が宜しいのでは?
あくまで、読み物ですから、まず楽しんで読む方がいいのではないですか?
上げてしまった。
失礼。
193 :
巡査物語:2009/02/05(木) 00:37:21 ID:aNQShf9o0
「巡査物語:番外編+2」
無事に呉の”こじま”と合流を果たした”しが”は速度を上げて該当海域に急行する事になった
”しが”の船長である鈴木 紀夫(一等海上保安正)は、静かに光学双眼鏡を目に当てて
海上の異常物を捜索していた。
勿論該当船舶は未だ先であり、高性能の海上捜索レーダーがあるので光学式双眼鏡などは
ある程度接近して肉眼で確認する時だけ使えばよいという風潮があったが、彼は長年の経験から
肉眼に勝るものは無いと言う信念の持ち主であった。
その双眼鏡に、うっすらと煙のようなものが見えたのは40分後であった。
レーダー員に確認を求めるがレーダースクリーンでは未だ50キロ程先であると応えた。
改めて、調整機を操作して焦点を絞る・・・・・いる・・・・。
瞬間的に脳裏に閃いたものがあった・・・レーダーに映らない船・・それ・は・・。
双眼鏡から目を離すと、鈴木は恐怖を最小限に押え付けた声で指示を下した。
「大田見張りを後退しろ、機関室は出力を全開にしろ、操舵主面舵いっぱい」
見張りを後退した大田(一等海上保安士)が叫んだ、、「目標方向で白煙があがりました!」
同時にレーダー員がミサイル警報を出した。
そして、通信員が報告する
「”こじま”から連絡!35キロ地点にタンヤオ級駆逐艦」
ぐっとつんのめる様な感覚が足元を襲い、”しが”の船足が上がっていき、舵が利き始めた。
だが・・・・・・・・・。
呉市にある第七管区情報室では、五島列島方面と淡路島方面から送られてくるレーダー情報から
”こじま”と”しが”の二隻の光点が消え、その確認作業の結果、撃沈が確認された。
194 :
巡査物語:2009/02/05(木) 00:56:32 ID:aNQShf9o0
>>185 様
私は、職業柄やや反米的傾向の持ち主で
米国が自国の危機を天秤にかけてでも
日本のみを支持するとは、考えていません。
また、作成時期は2003年頃で、その当時手元にあった
資料並びに、影響を受けた小説等は更に古いものと、ご理解頂けると幸いです。
なにぶん、私の承知している世界観以上のものは書くことは
困難な訳でして、貴殿のよりよい作品に劣る点につきましては深くお詫び申し上げます。
以前、荒れに荒れたスレに嫌気がさしておりましたが
未だ期待される方がいらっしゃる点、感謝感激であります。
この方々のご期待に添えたいと稚拙な投下ではございますが、耐えがたきは
読み飛ばして頂きますと助かります。
巡査さん、自分でトリバレしてしまってるぞ…
>>194 巡査物語氏
>米国が自国の危機を天秤にかけてでも
>日本のみを支持するとは、考えていません。
支持は関係ないでしょう。
同盟国に対する最低限の義務すら放棄する。
それは、同盟国に対する明確な背信行為です。
国際社会での米国の信用は、地に墜ちます。
その様な、非合理的な行為を米国が行うのは考えにくい。
そういった思考の結果に出た意見です。
>なにぶん、私の承知している世界観以上のものは書くことは
>困難な訳でして、貴殿のよりよい作品に劣る点につきましては
これは、作品を書く者以外は感想を書くな。
と、受け取りましたが正しいでしょうか?
正しいならば、2ちゃんねるでなく。
>>1のライブドアで書くことをお勧め致します。
うーん、また荒れそうな気が…
一アマチュア物書きの自分としては、作品を載せる以上批判がくるのは覚悟しないといけないと思う
どうしてもそれが嫌なら批判がくる前に冒頭にでも書いておかなきゃね
荒らしはスルー推奨だけど、
>>185>>196は誹謗中傷とかじゃなくてまともな批判だと思うし
ただ、やっぱり十人十色の物の見方はあるものだから、そこはお互い理解する必要があるんじゃないかな
批判する側も作品を自分の思うようにしたい、と言うわけじゃないだろうから
批判を受けた作者さんは、「そういう見方もあるんだ」という感じで参考程度に受け止めておくだけでも良いし
あるいは批判した人が納得できるような理由を物語の中に組み込めれば、なお良いと思う
長々と書いちゃったけど、この意見も参考程度にしてもられば
とりあえず巡査さんの>>貴殿のよりよい作品〜の部分は露骨に皮肉に見えるから気をつけた方がいいかなーと
まあ自分も辛辣な意見だったり理不尽な意見だったりを色々受けたりしてるから、気持ちは分からなくはないんだけどね;
>>196 お前は2ch卒業をお勧めする
もう来るな 又は10年ROMってろ
現実とフィクションを混同するのは頂けないな
番外編じゃなくて本編が読みたい
まず第一に所轄署には弾がそれほど常備されてない
>>197 サンクス、、少し落ち着いた。
モチベーションの維持が辛そうだがもちっと頑張ってみる。
>>200 一応本編に絡む話で全体の構成に含むので、もう暫く我慢しておくれ。
「巡査物語:番外編+3」中国の事情
小刻みに揺れる貨物船の中で、王瑞鈴は自動小銃を握り締め赤錆びた甲板の縁にうずくまっていた。
付近には30人程の女性解放軍兵士が同じ様に一団となってうずくまっていた。
全員が上海管区防衛隊の後方勤務兵士達で、射撃経験を含み戦闘経験が少ない者達ばかりだった。
彼女らを含む第221歩兵大隊は、上海脱出後の再編成部隊であり今回の上陸戦闘では
第一波の先陣を任されていた。
上陸第一波と聞えは良いが、現実は本隊による上陸前の露払い的要素が強く敵防衛隊の生贄的な
扱いであった。
しかし、全滅部隊の再編成である彼女(彼)らが選ぶ道は所詮は地獄の上海阻止防衛隊となって
撤退部隊を死ぬまで支援するか、この上陸戦闘に志願するかのどちらかであり
言わばゾンビに喰われるか、身体を弾丸で撃ち抜かれるかの究極の選択肢であった。
1時間ほど前に日本軍の警備艇と戦闘が有ったと報告があって以来は比較的静かに推移して居る様であったが
それも精々数十分の間である事を十分に承知していた、あと30分ほどで目的地に接近するし
そこでは警備艇から報告を受けた日本軍がてぐすね引いて待っている筈であった。
瑞鈴はそっと付近の名も知れない戦友の顔を窺った、となりで放心している同じ部隊だった瑞霞を
除いて全てを悟ったように静かに寄りかかる者や、同じ様に放心状態の者、現実を受け入れ切れずに
青白い顔で震える者など様々であったが互いに会話をする事も無く静かに”その時”を待っていた。
「巡査物語:番外編+4」中国の事情
瑞鈴は、ふと胸ポケットから夫であった溥良の写真を取り出して眺めた。
結婚して未だ半年程度だったが、付き合い始めてからは3年くらいになっていた。
何でも知っていてとても優しかった溥良は上海郊外での防衛戦闘で戦死してしまった。
戦死?あんなものが戦死と言えるのだろうか?野戦砲兵の効力射で片っ端から吹き飛ばしても
重機関銃で薙ぎ払っても、血達磨に成り果てて内臓を引き摺りながらズルズルと接近する
数千万の化け物に取り囲まれ、絶望の絶叫を上げながら生きたそのまま噛付かれしゃぶり付かれ
喰われてしまう死が戦死だなんて・・戦友に射殺を哀願しながらの死なんて・・嫌!絶対に嫌!
私は生き残る、日本人を皆殺しにしてでも生き残る、、あんな、、あんな、死に方をする位ならば
何だってやるわ!そうよ、下品で文化程度も低い野蛮人のクセして上海の町で物の価値も知らずに
買い漁り、鱶鰭だの蟹だのを豚のように食べ漁って夜な夜な売春に耽って中国を貶し続けた日本人ですもの
南京だか何だか知らないけれど、自分達で記念館まで造って平謝りに涙を流す珍妙な民族ですもの
私が生き残る為に皆殺しにしたって良心の呵責なんて微塵も感じませんわ!!
現実は、生きるか死ぬかなのだから生きる方を選んで何が悪いって言うのよ。
つらつらと、そんな事を考えていた瑞鈴の耳に空気を切り裂く金属音が響いた。
多分日本海軍の対艦ミサイル”ハープーン”である、たしか”サセボ”に艦艇がいた筈だ。
10キロちょっと離れた地点を2次上陸隊の本隊に有る一隻の大型揚陸艦がまともに食らった。
黒煙と共に破片が中を舞うのが遠目でも見える、多分破片の内の幾つかは人間なのだろう・・。
周囲が騒がしくなってくる、特に先ほど真っ青で震えていた女性兵が耐え切れずに誰彼構わず
当り散らし始める。そんな中でも瑞鈴は比較的落ち着いていた。
このボロ船の貨物船が狙われる恐れは殆ど無い、この大小百隻を超える船舶の2割が沈んでも
残りが目的地に到着すれば作戦は成功なのだ、1万や2万の損害なぞ上層部は眼中にも無い。
いっその事ミサイルが当ってくれれば・・と願ってしまう、上陸戦闘で挽肉にされるよりマシだし
生還率も高いかもしれない。
つまらん
>>203 面白いな。
そういう世界観か。
本編も楽しみにしてます。
自分が気に食わないからってグダグダ言う奴大杉
だからスレが何度も落ちたり作者が消えるんだよ
「巡査物語:番外編+5」中国の事情
そんな瑞鈴の願いも空しく船は待機錨地に到着し上陸準備が始まった。
指揮官の怒号が飛び交い兵士達が次々と上陸用舟艇に乗り移っていき、満載した舟艇は
いったん母船を離れて集合地へ向かってゆく、瑞鈴達のグループも割り当てられた舟艇に移乗した
小一時間が経った頃、勢力を増した舟艇群は一斉に舵を切り陸地へ向かって全速力で走り始める
激しく揺れる艇内から瑞鈴が目的地を覗いて少し経った頃、目的地のそこかしこから連続して白煙が上がった
そのまま白煙が尾を引いて此方に向かってくる。
海岸地帯から少し奥に入った丘陵地帯の辺りからは、ゴロゴロと雷の様な音が連続して響いた。
それは、福岡に司令部を置く陸上自衛隊第4師団対舟艇対戦車隊(玖珠)による79式対舟艇対戦車誘導弾
通称重MATによる攻撃と第四特科連隊(久留米)の155粍野戦榴弾砲の砲撃であった。
身震いするほどの巨大な黒色の水柱が立ち、ミサイルの直撃を受けた舟艇が木っ端微塵に吹き飛ぶ
人がゴミ屑のように小さな肉片となって後続の舟艇に降り注ぎ、血の霧が付近の空気を染めてゆく。
瑞鈴の後ろにいた兵士の顔に、何か赤黒い物が張り付きそれが人体の頬の肉だと判った時
彼は悲鳴を上げて引き剥がし、膝を追ってゲェゲェと吐いた、、見れば股の辺りを濡らしている・・。
「だらしない・・化け物に八つ裂きにされるより、余程マシな死に方じゃないの」
思っては見たものの、自分自身も迫り来る恐怖に膝が震えているのが判る。
凡そ半数近くの舟艇を、木っ端微塵に砕かれながらも瑞鈴達は生き残り海岸線に到達した。
激しい衝撃が舟艇を襲う、舟艇が海底と接触したのだ、、軽装甲板の陰にいる操縦員が導板を下ろそうと
必死にハンドルを回し始める、ガラガラと音を立てて導板が下ろされて行き海岸に寄せる波に洗われる。
「巡査物語:番外編+6」中国の事情
視界が開け数メートル先の海岸線が見えかけたその時、先頭の兵士達が血の霧を上げて踊り始める
「しまった!」正面に機関銃座が有ったのだ!
先頭から次々と撃ち抜かれ引き剥がされて行く、これでは屠殺だ・・必死に船縁を越えて転げるように
海へ転げ落ちる、同じように後から戦友達が転げ落ちてきた。
必死に手を動かして起き上がろうとするが装具が邪魔をして上手く出来ない。
そんな中を容赦無く銃弾が駆け巡り、貫かれた戦友が力なく漂って行く。
漸く起き上がることに成功し海上に首を出す、思ったより海底は深く肩の上まで波が洗っていた。
必死に海水を掻き分けて陸地を目指して進んでゆき、這い上がりくぼ地を目指して走り身体を埋める
漸く少し落ち着いて背後を見ると、自分達を乗せていた舟艇が燃えていた。
付近を見渡すが同じ舟艇に乗っていた兵士は1人もいない、、40人の内生きて此処まで辿り着いたのは
自分だけだったのだ、瑞霞も舟の中か途中で死んだのだ・・。
それでも次々と上陸を果たした兵士達がかけ寄せて、少しでも安全を求めて穴を掘ったり遮蔽物に伏せたりした。
漸く海岸にのし上げて導板を開いた舟艇が、ミサイルの直撃を受けて後部から物凄い火柱を上げる。
中から絶叫を上げて炎の塊が次々と転げ出て、Uターンし海に飛び込むところを機銃弾が容赦なく襲い掛かかる。
(・・とても・・動けない・・)周りの兵士達も含めて激しい銃火で一歩も動けないでいると後方から
指揮官らしき者が、数人の色の違う軍服を着た兵士を連れて「前進!前進!」と叫び声を上げた。
「督戦隊だ!!」(あぁ、このままでは味方に撃ち殺されてしまう)、意を決して匍匐全身で敵に向かい始めると
付近の兵士達も付いてくる、後方ではピストルの音が連続して響く、、やけくそになった兵士が突撃を開始して
瑞鈴の脇を駆け抜けて行く、それで瑞鈴も立ち上がり敵の火点に向かっていった。
敵兵が崩れた建物や急造した陣地から盛んに射撃を行ってくるのに対して、片っ端から手榴弾を放り込み
自動小銃を乱射する、第一線に到達したのだ!!
「巡査物語:番外編+6」中国の事情
名も知れない下級将校が信号弾を打上げる、付近からも同じように信号弾が散発的に上がった。
予定ではこれで後続の本隊が上陸を開始する筈だ。
ところが沖合いの艦船が一斉にロケット弾を打上げ始めた・・・・・何故??・・・・。
艦隊を包み込むかのように一斉に膨大な数のロケット砲弾を打上げる噴煙で黒く染まってゆく。
周りの兵士達が信じがたい光景に恐慌状態となって散り散りになって行く、瑞鈴も崩壊した
コンクリートブロックの窪みに伏せた。
一斉に打上げられた数え切れないほどのロケット砲弾が、空いっぱいに広がってゆく・・
ゴマ粒のような砲弾一つ一つが"死"だ・・。
・・やがて、付近の海上を含む海岸地帯が爆炎に包み込まれた・・・・。
「ちょくちょく」とか書いておいて結構間が開いてしまいました。
どうも、お久しぶりです。
巡査物語さんが復活のようですね。楽しみにさせて頂きます。
しかし、比較すると自分のがどうも…。読み直してみてグダグダですし。
「あああああああああああああああ?」
振動のせいで、口からは単音が出るだけ。言葉にできない。ちなみに嬉しくはない。
がたがたと音が響き、視界が揺れる。おかげで姿勢は安定しないし、視線も定まらない。まるで地震だ。
「伏せてっ!」
――あ?
疑問を口にする間も無く。
より大きく視界が跳ね――がったん、ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり。
体が叩きつけられ、振動によって擦られる。姿勢を立て直すどころか、視線を定めることさえ難しい。
そんな中、ぼとりと何かが降ってきた。反射的にそれにしがみついてしまう。だが、そんなもので支えられるわけもなく、次の揺れでまた体を叩きつけられてしまった。
「……うあー」
口から悲鳴ともつかない何かが漏れる。まだ多少の振動こそすれ、どうやらあのドタバタは収まったらしい。
身を起こそうとして――、まだ体に力は入らず、無様に倒れてしまう。その頃になってやっと、友人の顔がひょこっと現れた。てか、とてもとても近いのですけども?
「大丈夫?」
「息がかかってる。どいてくれ」
「いやぁ…、生きてるかどうかわかんなかったから」
あはは、と笑う友人。今の言葉は聞かなかったことにしよう。
そう強く心に刻み込んでいると、友人が顔をひきつらせながら、
「…何握ってんの」
その言葉で、そういえば何か降ってきて、それ以来持ったままだったなー、などと思い出した。
右手に握り締めているそれを目の前に掲げれば――腕。具体的には肘から先くらい。
千切れた断面からぽとぽと滴る血のおかげで、腕に張り付いているボロボロのスーツ――と、思う――が赤黒くなっている。ついでに、自分の右手から肘までと、それに伴う服も。
「……うあー」
この腕が誰のものかは言うまでもない。さっきの――。
「…あれ?」
ふと違和感を感じる。この腕が「誰」のものかは――。
「誰」。
人間に対して使う言葉だ。
でも、自分の思い返すその姿は、人じゃない。見た時は人間の形をしていた…と思う。でも、今になって思い返すと人型として認識できない。
そういえば。喋りかけてはきたけど、何と言っているか、とかいうレベルじゃなくて、そもそもあれは言葉なのかすらわからなかった。
聞いたことのない言葉――例えば外国語。それならばまだ、身振り手振りを交えたりして何を言いたいかは理解できることもあるだろう。
だけど、そんな風にすら感じなかった。そもそも「何を伝えたいか」じゃなくて「これは言葉なのか」だ。
………ここまできて、自分でも何を考えたかったのかわからなくなってきた。これを言葉にしていたら、そもそも何を伝えたいのかすらわからないだろう。
思考がからまり続ける。そういえば、こんな感覚は――。
「もしもし?」
友人の声で現実に引き戻された。
「あー、えっと?」
「一応、説明だけはしといた方がいいかな、て」
「あぁ…是非。何があったの? 何か急に地震が来たみたいな…」
友人は腕を組みながら、
「あのままじゃあいつが入ってくると思ったから、車を動かして妨害してみただけ。幸い、キーは挿しっぱなしだったしね」
えへん、と胸を張る。
「…それとコレとの関連性は?」
腕を押し付けながら尋ねる。それをこっちに押し戻しながら、
「横に石塀があったから、それに擦り付けてみた。車も傷だらけだと思うよ。で、そのまま走ってたら電柱があって、それにぶつかってもげたみたい」
アンタ一体どれ位出してたんですか?
「ま、まぁとにかく…今ならきっと助かるから救急車を――」
携帯電話を取り出して、友人が固まった。
「――あれ? そもそもアレって…?」
何か既視感。
「えーと、そのことについては深く考えないで。とにかく…警察、警察に電話してみようか」
「うぇ? あ…うん、そうだね」
友人が、わざわざ地元の警察の電話番号を押してダイヤルし、それを耳に当てようとして――俺に気づいて、耳から少し離してくれた。
ささっと携帯電話のそばに耳を寄せる。
そして、きっと何か教えてくれるだろう相手の第一声は、
「はイ、コチら――」
>>211 いゃあ、実は密かなファンでしてお待ちしておりました。
「巡査物語:番外編+7」中国の事情
上海の街中を瑞鈴と溥良が歩いて行く、今日は瑞鈴の誕生日だ・・。
夕食の材料を求めて市場に向かう、沢山の食材・・お肉でしょ、お魚、それから・・。
夢中になって物色していると、そっと肩に溥良が手を置いた。
振り向くと小さな皮製のバッグと花束をもった溥良が、微笑んでいる。
あん、最近バック破いちゃったの知ってたのね?ふふっ、嬉しい有難う溥良!!大好き。
情景が変わる、、上海の郊外・・瑞鈴の持ち場であった上海阻止防衛隊、第65師団通信所
次々と飛び込んでくる悲痛な通信、絶望の叫び・救護要請・・そんな中で夫である
前線指揮通信小隊の小隊長である溥良の最後の声が飛び込んだ。
「・・瑞鈴・・生きろ!」、、 い・き・ろ 、、。
・・・そうだ、生きなければ行けない、溥良の為にも、お腹にいる溥良の子供の為にも・・。
急に意識を取り戻し覚醒する瑞鈴の耳に、散発的に響く銃撃音が聞えた。
ゆっくりとした動作で起き上がろうとするが、体が痺れて起き上がれない。
兎に角、何が起きているのか確認するんだ、確認して・・行動するんだ、生き残る為に・・。
体に圧し掛かる死体だか瓦礫だかを押し退けて、フラフラと瑞鈴は起き上がろうとした。
また、近くで銃撃音がした、、あの砲撃を受けてなお生き残った敵と味方が戦っているんだ、、。
銃を、銃を取らなければ・・敵と戦う為に・・生き残る為に・・・。
連続した強い衝撃と爆発による低気圧の影響をもろに受けた為に、かすみがちの頭を振り払い
視界を取り戻そうとした。
緑色の服を着た人が少し離れた所を歩いている、、、あれは解放軍兵士の制服だ・・友軍・・。
「・・タスケテ・・私は生きている・・敵は何処?」仲間の存在に元気が出た瑞鈴が瓦礫を
払いながら手を振る。
相手が此方の存在に気付いてゆっくりした動作で接近してくる。
瓦礫を漸く払い除けて瑞鈴が立ち上がろうとする時、相手の姿がハッキリと見えた。
「巡査物語:番外編+8」中国の事情
「ひっ ひぃぃ」思わず声が漏れる。
接近する相手は、顔の大半が滅茶苦茶に爛れ、眼球が辛うじて繋ぎ止めた神経繊維で繋がれ
頬の付近で揺れている。
両腕とも吹き飛ばされた袖口がべったりと体に張り付いている。
胸付近には大きな破片を受けたらしく、軍服は大きく裂けて中から白い物が見える・・
・・肋骨だ・・半身を血で染めてなお、ぎこちない足取りで歩いている。
到底生きているとは思えない。
「銃!銃!銃!」上海脱出以来始めて見た動屍人である。
未だ痺れる足を引き摺って後退りする・・・「いっ嫌・嫌・嫌」たっ助けて、誰でも良い助けて!
「ひぎぃぃ!!」直ぐ近くの物陰から自動小銃を乱射しながら誰かが絶叫を上げて転がり出てきた。
・・日本兵だ・・・、左半身を真っ赤に染めて、左手左足を失い肉塊と成り果てても
残った右腕(手は無い)だけで羽交い絞めにして噛み付いているのも・・日本兵だ・・。
自動小銃を滅茶苦茶に発砲しながらも、彼は喉笛を噛み付かれて血柱を上げながら
瑞鈴に救いの手を差し出す、、、その向こうでは下半身を失った元日本兵の化け物が
敵だが味方だか判らない肉塊を貪っていた・・・。
「・・じっ地獄だ・・・」異国の地で化け物、それも日本兵に喰われるのならば祖国の方が
どれ程マシだったであろう、せめて夫である溥良に食べられたかった・・瑞鈴は後悔の涙を流した。
振り向くと先程の化け物が、唇も失せた赤黒い穴となった口を蛇のように大きく開けて近づく
「ひゅぅぅ・・ひゅぅぅ・・」空気の漏れるような、すすり泣く様な声を漏らして近寄ってくる。
・・・瑞鈴は最後の瞬間を覚悟した・・・、責めて同胞に喰われたい・・・・。
「巡査物語:番外編+9」中国の事情
その時、単発音で連続した射撃音がした。
正面の直ぐ近くまで接近した動屍人(化け物)がゆっくりと崩れ落ちる。
射撃音がした方に振り返ると、新型の解放軍軍服を着た兵士達が1分隊ほどこちらに向かってくる。
(・・助かった・・)、、感謝しようと立ち上がり、手を振ろうと右手を持ち上げた・・。
チカチカと連続した光が見えた・・・軽い射撃音が聞えたような・・気がする・・
激しい衝撃が体中を襲った・・右肩、胸、そして・・頭・・・、それが最後の知覚だった。
後続の本隊は、敵味方の区別無くのたうち這いずる生存者やゾンビ、果ては死体までも
一つ残らず確実に頭部を破壊し、積み上げてガソリンと火炎放射器で焼き払ったのち
内陸部へと侵攻して行った・・・・新しく上陸補充した死人部隊と共に・・・・。
成田空港第一ターミナル3階のヘアサロン、メフィラスの従業員安田は
遅い昼休みをとろうと同僚のKに変わり休憩室に入ったとたん
パイプ椅子に倒れるように座り込んだ。疲労が鉛のように
神経に入り込み頭は酔っているかのように朦朧とした。
――午後は早引きさせてもらおう
安田はそう思う。指先は感覚が無くなりつつあり、さっきは理容はさみを
落とし客と店主から笑われたが店主の目は笑っていなかった。
当たり前だ。理容師が接客中にはさみを落とすなど専門学校でうるさく言われる
絶対にしてはいけない職業上の注意の一つだからだ。
安田は苦笑いしながら落としたはさみを消毒箱にしまい新しいはさみを
出すとき白々しく手を上下にし誤魔化すように首を傾げたが実際は
手の感覚が急激になくなって来ていた。朝、自分のアパートを出るときは
いつもと変わらなかった。駅に向かう自転車もここでコーヒーを飲んだときも
手は震えてなかったし、そんな兆候すらなかった。
――どう考えてもおかしい。
安田は自分がタバコに火をつけようとしてライターがうまく
つかめなくて、これは脳梗塞の前兆では無いかと思い寒気がした。
ドラマで見たことがある。ある日突然、脳の血管が爆発し
意識不明になって半身不随になる。そして意識が回復した後
医者に言われるのだ。
「皆さん、兆候があっても自分だけは違うと思うんです。
いや違うと思いたいんです。でもね、それでは手遅れなんです。手足の振るえ、耳鳴り
そんなものが病気の前に必ずあるんですよ」
安田は鏡の前に行って自分の姿を映し出し変わったところがないか
確認して見る。目がいつもより力がなく顔も青白い気がする。
――手遅れになってはまずい。自分の体は自分で守らなきゃいけない。
早引きさせてもらおう。医者に行って何も無いならそれでいいじゃないか。
安田はそう思ってソファに座り震える手で灰皿からタバコをつかむ。
善は急げだ。安田がそう思い、カーテンの隙間から
店を覗くと待っている客が三人いた。客の一人と目があった。
――やっぱり休み時間、終了まで待って本当に無理そうだったらにしようか?
安田はため息をついた。安い給料、つらい労働。
稼いでも稼いでも生活費に消えていく少ない給料のことを思うと
涙が出そうになった。こうして奴隷のように働き死んでいくのだ。
安田は怒りの炎が胸にかすかに燃えているのを感じる。
そして公務員を思う。
安田は公務員が本当に不当なほど給料をもらっているのか知らなかったが
自分の今の痛みや恐怖から解放されるため仮想の敵として
公務員を攻撃することは、すごく真っ当なことだと思った。
――書類を上から下、右から左に移動するだけで俺の給料の何倍ももらえるやつを
攻撃して何が悪い?
安田はそう思う。
――手あれ、はさみを動かし続けることでの筋肉痛で
箸も握れないことなどあいつらは知っているのか?
それでも心のどこかで八つ当たりするのは
情けないことだと思い、俺は公務員にあるかもしれない苦労など
本当は何一つ知らないんだと思いそれが安田を二重に苦しめた。
目がかすむ。
――このまま何も言わずに帰って仕事もやめようか?
安田はそう思う。情けなさと怒りが頂点に達しテーブルを思い切り叩きたくなるのを
歯を食いしばって堪えた。
五千円もするという飛騨牛のステーキがテーブルに置かれ
香りが顔に顔面パンチよろしく安田に一撃を食らわせたがもちろん
不快ではなく最高の気分だった。さっきまでの手の痺れは一時的に消え疲労も無かった。
気分が高揚し滝のような涎が口の中で湖をつくり仰々しく接客をする給仕がナイフを使って
ステーキを食べやすい大きさに分けているとき口からあふれ出る
涎を押さえるのに必死に押さえていた。
―――何で俺はステーキなんて食べたくなったんだろう?
安田は自分の食欲が不思議でならなかった。
休憩室から逃げ出すことを保留したあと、この選り取りのみどり空港のレストランの
中から、なぜ馬鹿高いステーキなど食べたくなったか?
分からない、安田は飢えたように肉が食いたかった。
――血が欲しい。生肉が食べたい。ああ…欲しい欲しい
安田は自分の食欲にびっくりしあきれていた。
つかの間、人間の手にかぶりつくというイメージが現れたが
無意識の中で消していた。
そしてこれも脳梗塞の前兆なのじゃないかと思い
また寒気がした。
――食べないほうがいいんじゃないか?
安田は食欲と覚醒した意識の間でしばし揺れていたが
一口また一口と食べるうちにその食欲を抑えきれずに
皿の残った肉汁を舐めよう皿を持ち上げようとしたがそれだけは止そうと思い
スプーンでかき集めている間も胃が血を求めていた。
――いや違う。胃じゃない。何かがおかしい。
安田は満たされない感覚を感じながらもスプーンに浮かんだ
肉汁を見て恥もかまわずむしゃぶりついた。
結局、仕事を逃げ出さず新しい客の首にエプロンを巻いているとき
安田は自分のことを誇らしくも情けなく思っていたが
これもまたしょうがないと思っていた。でも気分が良くなったのが
幸いだった。手の痺れも無くなっている。明日は休みだから
病院にいこう。そう思ったとたん意識が消えた。
――長い旅だった。
無精ひげを生やし社会学の研究のためアフリカのコンゴから
帰ったその足でエレベーターを上がり夜にパーティーを
用意してくれている研究室のみんなに会う前に
さっぱりしておこうと思ったFは空港の床屋の椅子に座ると安堵感と
ともに目を閉じた。
――本当に長い旅だった。
Fがゾンビウイルスに犯されゾンビになった床屋の従業員の
餌になる直前思ったのはそんなことだった。
やっぱり日本がいい、ラーメンを食べたい。
Fが髪を鷲づかみにされ頬を食いちぎられ死ぬ直前
なぜかコンゴで見た痩せた子供のことを思い出した。
その子供は笑っていてFに頭蓋骨を渡そうとしている。
――頭蓋骨は私の骨なのだ。
Fが経験したことの無い痛みの中で
思っている間に床屋の椅子が血に染まっていった。
エンド
保守
223 :
本当にあった怖い名無し:2009/02/09(月) 01:07:53 ID:6S9bUgXZ0
保守
emptyさんktkr!
今一番続きが気になる。だから早く書いてくれwww
巡査さんのは、話が壮大すぎて楽しいw
>>216 単発音で連続した射撃音、は単発銃の射撃音が数度空に響いたとかかんとか
『音〜音』って同じて響きを1文中で繰り返さない方が綺麗に聞こえると思う。
>>226 やぁ、ありがとう
よく、情景を細かく説明しようとするあまり
表現がくどくなる事があって、結構気になっていた。
この場合は、連射可能な小銃で中距離から
冷静で集中的な狙撃を受けた。
つまり、恐慌状態になった個人によるものではなく
組織的に行われたということを表現したかったのだから
単発で連続した射撃音が・・・・
が正解でしたね。
この先暫くは、過去の書き溜めた分なので
そのままですが、新規に書き足すときは
同じ音が重複しないように、もう少し注意してみます。
ありがとう。
「68」
「・・・もう一回言ってくれ・・・。」
この数日間の間に立て続いた悲劇の中で全てを達観したと思い。
もう、、これ以上は絶望する様な事は無いだろうと、須藤巡査長は思っていたが
予想外というものは幾らでも用意されているらしい。
発作的な笑いが胸を付く中でも耳には連絡事項が繰り返される。
「・・・本日午前中に大陸方面より武装集団が攻撃上陸を行った模様、九州地区の
第4師団と第8師団で現在激戦中、所轄の県警は住民の避難誘導を行いつつあると
思われるものの連絡不能、山口県警の下関警察署によると北九州地区は壊滅状態にあり。」
戦争が勃発したのだ!!よりにもよって、今!この時に!日本が攻撃を受けたのだ。
心の底に染み渡る黒い心・・・その中で静かに燃え上がる青白い炎・・・。
(全人類が協力しても立ち向かえるかどうか?この時に侵略を考える者がいたのだ・・)
肩を震わせて、、無線機を握り締めて、、、声を抑えて、、深く呼吸する・・。
(我々が、、親しかった死者を涙を流して撃ち倒し、倒され、、何の為に・・・。)
軽く数回に分けて息を吐き出し、身体と心を、、押さえ気持ちを押し殺した。
(いつか・・何時の日か、、必ず復讐する・・1人残らず、この祖国から叩き出す
しかし、、今は・・・。)
slaveさんだっけ?高校生がデパートに逃げて立てこもってる話。
続き書いて欲しいな〜。あれが今までで一番面白い。
そういうこと言うのはちょっと失礼では?
関係ないけど書き始めたら最後まで書くのが
作者としてのマナーだと思う
誰でも書いていいと思うけどきちんと
終わらせて欲しい
書きためてあるなら思わせぶりな小出しにせずにまとめて投下して欲しい
こんな環境じゃあ、そりゃ作者さんたちも逃げてくよなぁ…
要望を出すのはかまわないと思うけど、
勝手な事言い過ぎではないですか?
ここの作者さん達は義務でも業務でもなく善意で人を楽しませてくれているんです。
相手の立場や事情に配慮した物言いをして欲しいです。
・・・・・・・・・・・・。
まぁ、私にも生活がありますから纏めて投下後に
早く早くという事態より、定期的な投下を維持しつつ
続きを書いていきたい所なのですが・・・・。
ベトナム出張が入りましたで暫くあきます。
「64」
撤退準備が進展し、徐々に人気が少なくなって行く署内で、残った幹部と
自衛隊さんとで打ち合わせをした。
自衛隊さんは、本隊より連絡があり九州に対しては中部方面隊より増援部隊を
派遣する必一方で関東の東部方面隊からも戦闘車両を中心に
当座の戦力の抽出を行うとの事だった。
東北方面隊の第6師団が、北海道の部隊と交代して南下してくる予定なのだが
避難民による混乱の為に進展は遅かった・・。
また、戦闘予想地域からの避難民が随時北上する為に幹線鉄道の一時確保が
急務になった。
初期の予定では、戦力と避難場所の関係から関西方面と東北方面に国民を
一時的に分散非難させてから、海路で北海道方面に適時非難させる予定であったが
状況はそれを許さず、分散し各個孤立の事態ならば一人でも多くの避難民を
安全地域に移動させる為の最大限の努力をする事となった。
幸い関東地域の非難は計画通りに進展していたので、関西方面からは避難民を
列車輸送により受け入れ、市ヶ谷で検疫検査の後に適時千葉方面に送る事となった
>>234 自分のペースで投下していけばいいと思うよ。つか、そうすべき。
ただ俺たちが続きに飢えているゾンビだということを忘れずにw
凶暴化する前に、適度にエサを投下してくれwww
ほ
も
べ
ん
喰
い
た
い
>>1 小説ではないが、
うちの爺さんは太平洋戦争中でも、
肉とか卵食べてたらしいけど
爺さんの母さんが、ニワトリさばいてたらしい。
母さんがニワトリの首を切断しても、
ニワトリが走ったって…オカルト
アメリカでは首切断されたニワトリが、
そのまま立ち上がって歩き始め、
その後
18ヶ月間生きていたという実話も。
ちなみに、食べるつもりで頭落としたものの
あまりの生への執着に感銘を受けた飼い主が、
スポイドで餌やったそうだ。
>>244 首を落としても体は動くってのはよくあるね。
人間ですら、少しは動くらしいし。
小さい頃、トンボを網で採っていたら、頭が網に絡まって取れたことがある。
「うわ・・・」と思って捨てようとしたら、体だけ空に飛んでいってしまったのは
ちょっとしたトラウマになってる。
俺はドイツの話だと思ってたけど
81 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日: 2001/05/12(土) 03:39
どこで読んだのかあるいは人に聞いたのかは覚えてないんだけど
そして実話か伝説かもわからないんだけど
とある日本の一部隊が的に囲まれてあわや皆殺し、という時に
その部隊の隊長が
「部隊の皆を並ばせてからはじめに自分の首を斬ってくれ。
そうしたら自分は走ってみせるから、自分が走った距離までの
隊員は助けてくれ。」と言って首を斬られた、そして走った。
そして首のない隊長は部隊員全員が助かる位置まで走って倒れたという。
この話、すごく好きなんです。
元の話ご存知の方いたら詳しく教えてください。
http://piza.2ch.net/occult/kako/988/988130633.html
ただいまぁ、、ベトナムは暑かった・・。
>>234 「65」
関西方面から到着する難民が長旅で疲れきった表情で降車してゆく・・・。
「斉藤隆は知りませんか?どなたか斉藤好美を見かけませんでしたか?」
生き残りつつも家族と離れ離れになってしまった、女性の悲痛の叫び声が空しく
響き渡るが、誰もどうする事もできない。
この騒ぎが始まってから見慣れた光景だ。
そんな人々を哀れむ気持ちを抑えて残っている人を半ば強制的に下ろして
次の到着に備える。
感傷的になるには余りにも時間が少な過ぎた、関西方面から到着する列車は
ぎりぎりまで過密化されていた、一人でも多くの国民を比較的安全な江戸川の
向こう側へ送らなければならない。
そして、我々にはもっと大きく深刻な問題が存在していた・・・・。
「須藤さん、こっちです。」
ホームに倒れている30代半ばの男性とそれに取りすがる女性の姿・・。
まただ!ゾンビに噛まれ、感染した患者は基本的に乗車させない規則である
しかし、恋人に対する愛情や家族に対する見捨てがたい思いがいとも簡単に
絶対厳守の規則を破らせる・・・・。
愛する人と大勢の知らない他人、両者を天秤にかけると前者が勝る。
平時ならば微笑ましい話も、この事態では放置できない話である。
前後不覚に陥った患者を縛り上げて、別室に放り込み半狂乱になって抗議する
女性を強制的に退去させる。
本来ならばもっと丁寧に扱うべき事も際限なく繰り返される内容に全ての職員が
疲れ果て、誰も説得すべきだとは言わなかった。
ましてや、患者をもっと丁寧になどと思ったとしたら発言者の神経を疑うだろう
何故ならば患者はもう死んでいるのだから、、、死んで我々を襲う敵になるのだから・・。
>>247 おかえり〜!!
d、最終投稿のアンカーは助かるな〜 。
249 :
◆BlgH.rJvAg :2009/02/18(水) 17:23:27 ID:69O4UGhK0
一回上げておく
>>247 「66」
数え切れないほどのゾンビを轢いて血に染まった新しい列車が入線してくる。
しかし、この列車は通過の予定だ。
車内で患者が発生して救出不能の判定が下されていた。
ホームを速度を落として通過してゆく列車の運転乗務員と目が合った。
彼は静かに敬礼した、、この後自衛隊さんで設定した鉄道待避線に入線後に
爆破処理が予定されている、、それまで運転室が突破されない事を祈った。
通り過ぎてゆく客車は窓ガラスが真っ赤に染まり、無数の手形が見えた
内部で何かが動く気配があるが生気は感じられなかった。
3両目の車両で追い詰められた生存者が必死の抵抗を続け、10歳位の
女の子が助けを求めて窓ガラスを叩く。
彼らだけならば助ける事もできた・・・だが、この後次々と来る列車には
もっと多くの人々が助けを待っている。
別の駅を制圧して迎える戦力的余裕が無い以上、危険を犯して数人の
生存者を救うことは出来なかった。
ガラスに張り付いた、必死の顔を次々と見送る・・・
(彼らはもう・・死んで居たんだ、既にゾンビに噛まれていたんだ)
「67」
最後尾の車両で鉄道警察と車掌が敬礼するのを見て答礼をした。
彼らの10時間以上の努力は数人のかけがえの無い愛情によって
無残に打ち砕かれてしまった・・・・。
いったい人を愛するというのはどう言うことなのだろう?
千人にせまる人達全てを犠牲にして尚且つ自分たちも助からない。
分からない、、俺はそんな事が分かる前に純子を失ってしまった。
いや、果たしてこのまま何事も無く純子と付き合ったとしたら理解出来たのだろうか?
全ては仮定であり、闇の向こうである。
今はただ、現実の仕事があるだけだ、、一人でも多くの人々を少しでも
安全な地域に非難させる為に最後の努力を行う・・。
血に染まった列車はホームを離れると次第にその速度を上げていった。
今日も赤い夕日が人々を照らす、、そして急速に光を失い闇が全てを支配する
事件発生以来、毎日確実に訪れる恐怖の時間だ・・・希望の明日も無い・・。
やっぱり街は停電中なんですかね?
警察や自衛隊は発電所や変電所、水源地の守備に
人員裂かれてどうしようもなくなってるのかな?
ベトナムはもう暑いのか。
電車の中でゾンビが発生したら終わりだな。
飛び降りるわけにもいかんし。
「68」
「須藤さん・・・私は残りますよ・・・。」
交代で入った仮眠室の中で吉田巡査が、つぶやくように言葉少なげに語りかけた。
昼間会議で知らされた話だ、、、この輸送業務も、もうじき終わる。
避難民を運び切ったからではなく、鉄道の維持や動力の保守管理の問題だ・・。
各鉄道管区ではゾンビの活動のために、殆どの区間で保守管理が不可能で
一定以上の降雨による地形変化や、障害物除去などは非常に困難であり
これに対処する為に作業車両を連結編成して対処していたのだが、保線管理が
いよいよ怪しい状況に陥り、枕木が破損している区間や敷石が流されて陥没している
区間の報告が目立ってきていた、保守作業は最低限度で行われる為に場所によっては
大きく沈み込む大変危険な状況になり、最早いつ不通になってもおかしくない状況で
あった。
車両輸送が不可能になった段階で陸路輸送は放棄して海路の輸送に移行するのだが
陸上の連絡を完全に遮断する訳にも行かない状況となった為に、一定の保安要員を
署内に残すことになったのである。
>>254 「69」
暗い仮眠室に吉田巡査のタバコが蛍のように点滅する。
「千葉方面に撤退して、、、県警の指揮下に入っても・・・今更何になるんです?」
誰もが思った、、自分自身でも自問自答していた問題だ・・。
「しかし、、、残れば助からんぞ・・。」
主力が撤退する以上、保安要員が単独で署を守り切るのは難しい、大規模な襲撃があれば
あっさりと全滅する可能性の方が高かった、故に保安要員の編成は志願者のみとなっていた。
「分かっています、、しかし、、、ゾンビの対処方法が確立出来ない以上は
何処に逃げても同じではないですか?結局は追い詰められて皆死ぬのでは無いですか?
同じ死ぬのならば、、私は、、私は自分の知っている町で死にたい・・・。」
虚無が心を支配する、、誰もが口には出さずとも思い、誰もが必死に否定し
しかし、逃れようも無い現実・・・。
妙に気になるあごの無精ひげを弄りながら須藤巡査長は、返す言葉も無くタバコの
灰を落とした・・・ポケットにあと3本、支給の予定はもう無い・・闇は何処までも深かった。
>>254-255 乙です。
こういう残される保安要員って、昔の戦のしんがりと同じ気持ちだろうな。
タバコの支給がなくなると辛いな・・・
>>255 「70」
職員の予想通り、最後の日がやって来た。
全てが予定外であり、幾度繰り返され打ち砕かれた計画の中で恐らくは全職員が
望まないであろう事態だけが確実な歩調でやってきた。
本日以降は残地職員を除き、本庁は千葉方面へ撤退するのである。
未だに避難し切れない大勢の民間人を置き去りにし日本の半分を見捨てての撤退である。
連日連夜の激務の中で、希望の光を失いつつも戦い抜いた職員が新しい職場を求めて
次々と輸送車両に乗り込み撤退してゆく、、どの顔にも憔悴と苦悩の中で積載荷物に
寄りかかりながら去っていった・・・。
最終日に小学校攻防戦で一緒に指揮を取った安藤三尉と最後の挨拶をした。
彼は、指揮下の部隊を引き連れて中国地方に侵攻しつつある中国軍との攻防戦に参加する為に
西進するそうだ、、途中に点在する都市部のゾンビを排除しながら防衛地点に向かうのは
どれだけの苦難が待ち構えているだろう?
たどり着けるかも分からない道のりを越えて彼らは戦場に向かうのだ、、絶対死の覚悟で・・。
ゾンビの発生と中国の侵攻か・・・日本終わったなw
しかし大陸からの補給が続くと思うか?
大陸側でもゾンビ湧いてるんだよ、とっくに侵攻中国軍は補給切れで物資略奪する盗賊に堕ちてるさ。
お久しぶり、という言葉で始めざるをえませんね…。
な、何か前回の投稿が先月の最初な気がします。覚えていてくれた方がいらっしゃるかどうか不安です…。
そして一ヶ月経った割に全然進んでません。やっと一日経過です。相変らずのグダグダです。
あまりのことに、何も考えられなくなる。
それを今まさに体験していた。
一瞬の空白が出来た後、それはやっと耳に届く。
「――モしもし? ドウかしましタか?」
電話越しにさえ感じるおぞましさ。その音の連なりが届くだけで、耳の中に棒を突っ込んでかき回されているかのような痛みが襲ってきた。
ピッ、と通信を遮断する音が聞こえる。友人の顔は蒼白だった。自分も大差ないだろう。
「………大変だ」
友人が、携帯電話を見つめながら呟く。
しかしこの状況は、大変だ、などという一言では済まされない。
「警察まで…、アレに…」
アレ、が何かは言うまでもない。脳裏に思い描いただけで吐き気を催すその姿。
そして今、アレらを押しとどめ、根絶やしにしてくれるであろう存在が途絶えた。
何か教えてくれるだろう、というのは楽観的すぎた。そもそも、街がこんな状態になっているのに警察が居ないというのはおかしくはなかったか。
――警察がダメなら、自衛隊もダメかもしれない。
それ現実なら、希望などというものは無い。自力で、何匹居るとも知れないアレらから逃れなければならないのだ。
アレが居ない場所まで。アレが来ない場所まで。
そして、そんな場所があるのか。
「………どうしよう」
友人が、泣きそうな顔でこちらを見てくる。
泣きたいのは、俺も同じだった。
夏の夜は蒸し暑い。
狭苦しい場所なら尚更だ。
しかし今は、そんな環境でも満足しなくてはならなかった。
「暑…」
横では、友人がほぼ裸で寝転がっている。全身汗だくで、寝苦しいことは間違いない。
結局何も思いつかなかった俺達は、車の中で一晩を過ごすことにした。
見つかるかもしれないから、エンジンはかけられない。よって、エアコンは使えない。
ならばせめてと窓を開けてはみたものの、あまり開かず、その隙間から入ってくる微風も窓を覆っているカーテンに阻まれて届かない。
そのおかげで充満した湿気が逃げ場を無くし、車内に滞っていた。
「うあー、エアコンが、文明が懐かしい」
そう嘆いてはみるものの、現状では叶わない。
電気は通っているのかもしれないが、エアコンなんぞ使っていれば間違いなくアレが気づいて寄って来る。
それが一匹ならばまだしも、数匹に囲まれてしまえばもうお終いだ。
抵抗も虚しく、きっと――。
がば、と起き上がる。滞っていた空気が僅かに動き、一瞬だけ爽快だった。
捕まったら――何をされてしまうんだろう?
喰われるのか? 殺されるのか? それとも捕まるだけなのか?
相手は人間でないのだ、何をされてもおかしくはない。そして、何をされるのかを知るためだけに捕まってみるわけにもいかない。
――結局、無難に逃げ隠れ続けるしかないか。
そう結論付けると、再び体を横たえた。汗が車のシートに張り付いて気持ち悪い。
寝なくてはならない。どれだけ寝苦しくとも。
明日にだって、アレに遭遇するだろう。だから、逃げ回るための気力や体力を養わなくてはならない。
――明日になったら、世界が元通りになってないかな。
甘い幻想だということはわかっている。でも、今はそれに縋っていたかった。せめて、寝ている間だけは。
寝ている間だけは、今までのように平凡で、何事もない日常で在りたかった。
トロトロと、浅い眠りに引き込まれてゆくのを感じる。
異界の夜は、静かに更けていく。
何と、たった2レスで済んでしまいました。あわわ。
二日目はもっと早くできますように…。
>>260 久しぶり杉だろw
一番楽しみにしてるんだから
もっとキリキリ続きを書けw
>>262 次は今月半ばあたりに投稿したいかな、とか…
創作意欲が増すように俺が続き書いてやるよ。
>>261の続き
夜も白々と明けてきたころ、ただならぬ雰囲気に俺は目を覚ました。
汗でべっとりと張り付いた着衣がそのように感じさせているのか?
いや、確かにおかしい。。。
俺の後ろで寝ている友人・・・そこから16ビートの衣擦れの音が聞こえる。
「ま、まさか・・・」
想像だにしたくない妄想にとらわれながらも、確認せずにはいられない。
ゆっくりと体をひねり友人が寝ていると思われる場所をを垣間見る。
すると、ほぼ裸で寝転ろび惰眠を貪っていたはずなのに、
今は下半身生まれたままの姿で横向きに寝転んでいるではないか。
そして、しきりに手を動かしている。
「なんてこった。」
俺は心の中でつぶやいた。
俺の落胆にも似た心の声は届くわけも無い。
友人はビートの刻みをさらに早めながら、独りよがりの上昇曲線を上りつめていく。
「う、うあ・・・」
もうすぐ果てるのか?
これが終われば、知らん顔していつもと同じように俺は接すればいいだけ。
いつもと同じ朝を迎えるだけだ。
俺は大人の対応をするのだと心に誓った。
しかし、友人の口からでた言葉が俺の誓いを無残にも踏みにじった。
「み・・・みくぅうう!!」
そう叫ぶと友人は激しく腰を突き出した。
「みく・・・俺の妹の名前じゃないかよ・・・しかも13歳の・・・」
俺は軽い眩暈とともに、目の前が真っ暗になるような気がした。
あわわ。俺も2レスで済んでしまいましたw
270 :
本当にあった怖い名無し:2009/03/07(土) 02:50:32 ID:RTOj+9YN0
265の展開も悪くないw
ほ
っ
か
ほ
か
パ
テスト
>>257 やっとアク禁が解除された・・・・長かった・・・。
しかし、、明日は台湾出張だったりする、宮仕えは辛いね・・・。
「71」
1本のタバコを2人で割って吸った・・。
特に悲壮感も無く、淡々とした様子で安藤三尉は手帳程の小冊子をくれた。
「生存適者」と書かれた冊子には天体観測法や劣悪環境下での装備保存法や応用法など
サバイバル状況下での情報がぎっしり記載されていた。
「よいか、生き残ると言うのは基礎体力や技術なんかも関係するが何より大切なのは
生き残ろうとする意思だ、、生物として自然界で生きる全てに共通するルールだ」
全てが絶望の中で光を失わず、淡々と任務に最善を尽くす安藤三尉の目を見つめる・・。
「貴様は指揮官として、最後の部下が倒れるまでは絶対に死んではいかん
最後の瞬間が訪れても最善を尽くし指揮官としての義務を果たせ。」
短い煙草をくわえたまま敬礼した後、部下を促してジープで去っていった。
彼の部下も初期の頃と比べて随分少なくなっていた、出会ったころに火炎放射器を
使った戦闘法を説明してくれた安中陸士長も今はいない・・。
こうして各部職員が去って行き、志願者を中心として残置職員が30人ばかり残る事になった。
アク禁解除オメ
wktkしながら待っております
保守
ほっしゅほっしゅ
ほ
た
て
マ
マ
ほ
遅レスではありますが死霊列車読みました。なかなか良かったですが最期が蛇足かな?
しかしビッチはやはりビッチだったのは良かったw
多分研究者の女のことだろう
あいつはビッチではないような・・・マッドであはるが
あはるw
293 :
本当にあった怖い名無し:2009/03/21(土) 22:58:37 ID:V03ffol+0
age
ただいまぁ〜
「72」
「72」
中沢巡査部長を中心として15名の警察官と5名の救護班、自衛隊さんから6名の通信班と
4名の機械保守要員である。
須藤巡査長の部下は全員志願した。
当面の任務は、当該管轄区の監視と避難民の一時預かりである。
救出困難地区や立て篭もり、その他何らかの事情により相等多数の残置者が予想された。
彼らと西側より退避する一般市民の避難場所としての機能を要求されたのである。
須藤巡査長は、部下と新しい任務に付いての打ち合わせを行ってから中沢巡査部長に申告を
行うため署長室に向かった。
元の主を含め署員の大半が撤退して最高階級者が彼なのだから署内の何処を使おうが勝手なのだが
残置組が決定した後でどうやら彼は、沢山有る機能的な部屋の中では此処がお気に入りとなったようだ・・・。
そもそも須藤巡査長にとっては、中沢巡査部長が今回のような危険な任務に志願した事が
不思議でならなかった・・。
須藤巡査長から見た彼の性質は小役人と言うか・・もっと悪く言うと狡猾で今までも比較的安全な
勤務ばかりを選んでいた人であった・・。
(何か、有るのだろうか?それとも、、いゃ考え過ぎだろうか?どうも嫌いな人物には点が厳しいな・・。)
>>294 「73」
署長室・・およそ彼には似つかわしくないような気がする扉を軽くノックする。
「誰か!」との声に申告すると「入れ!」と返事が来た。
中に入ると、偉そうにふんぞり返った中沢巡査部長を筆頭に三枝巡査長や池澤巡査といった彼の部下が
並んでいた、、(偏見かも知れん・・・しかし好意を持ちかねる連中だ・・。)
「おう須藤か、ミーティングは終ったか?」
顔を硬直させながら、指示手続きが終った旨報告する。
「そうか、、まぁ、焦らずに気長にやれ、、暫くは連日連夜の疲れを回復するのが任務だ、心配しなくても
、、そうだな・・2〜3日は何事も起こらん、、多分な・・。」
「了解しました。」
敬礼して踵を返そうとする・・と・・。
無作法にも署長の机に腰掛けていた三枝巡査長が話し掛けて来た。
「あぁ、須藤巡査長、、どうせ貴様は何もわかっとらんだろうが、、現在の状況下で最良の選択をしたな・・」
「はぁ?」全く理解の外である・・・決死の任務が最良の選択?
ニヤニヤする三枝巡査長を制して中沢巡査部長が答える。
「なに、すぐに分かる、、いゃ遠からずかな?、とりあえず物資の確保が最優先だ監視は2の次で救助は最小限だ。」
「失礼します」
何だか凄く嫌な空気に堪らず逃げ出すように署長室を引き上げた・・。
(彼らは一体何を企んでいるんだ???)
>>16のつづき
オレは上原さんに此所までの経緯を話した。
西田が熱を出して寝込んでしまった事も。
「怪我をしたわけではないんですね?」
「ええ、奴らの感染ではないですね。 疲れが溜まったんだと思います。必死でしたから」
怪我じゃないのはオレがよく分かっている。
「それならいいんですよ。 疑ってすいません。 医務室が3Fにあるからそこに連れて行きましょうか?」
「一応は市販の風邪薬を飲ませてあるんですけどね」
「じゃ、大丈夫かな?」 仲間のいる事務所に着いた。
「オレだ。 入るよ」 「お帰りなさい。 どうでし… その人は?」 森さんの表情が一瞬強ばった。
「ああ、上原さん一家だ。 さっき出会ったんだよ」
と話し終わる前に息子さんが駆けて事務所に入っていった。
「うわ〜! パパ此所で仕事してたの!?」
「こ、こら、大きな声出しちゃ駄目だよ! す、すいません」 上原さんは慌てて良文くんの元に駆け寄った。
その姿を見て一同和んだ。
「この事務所はやつらの侵入に対して防御策が取れないから移動した方がいいと思います。
3号棟にクリーンルームがあるのでそこへ行きましょう。
出入り口が各一箇所だから立て籠もり易いと思います。 4号倉庫へも近いですから逃げやすいですよ」
彼の提案に全員が賛成し移動する事になった。
西田は担架で運ぶ。
電子部品の製造とあって工場は綺麗だ。
「あそこが入口です。 直美、これを」
直美さんに何かを手渡した。
カードのようだ。
直美さんはカードを扉横の機械にかざした。ぶしゅ!
空気が動く音がすると同時に扉が開く。
中にももう一枚ドアがあった。
中に入ると始めのドアを閉まり、勢いよく空気が吹き出した。
「うぐぁ!!」 思わず声を出してしまった。
「あ! すいません! クリーンルームなんで埃とか落とすのに風が出るんです」
「す、すいません経験無くて焦っちゃいました…」 (/ω\)ハズカシーィ
皆に爆笑されてしまった。
「クリーンルームなんて縁がないですよね。
さらにこの奥にきっちりとしたクリーンルームがあります。
そこは企業秘なんで入れませんけどね。 実は私も入れるのは此所までなんです。」
次のドアが開き中にはいるとそこは休憩所のようになっていた。
「ここは休憩所です。 ここで休みましょう。 トイレもそっちにありますから問題ないでしょう」
ソファーに西田を寝かせる。
「…すまん…」 まだ言ってやがるのか。
「いいって、気にすんな。
病気なんか誰だってなるんだから」 しかし、医者のいないこの世界。
気軽に病気にはなれんな。
「川本さん、ちょっといいですか?」 なんだ?
「なんです?」
「管理室の使い方教えておきますね。 監視カメラがあるんで外の状況わかります」
「おお!いいっすね!」 入室すると5台のモニターが並んでいた。
通路やさっきの入口が映し出されている。
定期的に映像が切り替わって要所を監視するようだ。
「このキースイッチで出入り口をロック、アンロック出来ます」 キーを捻る。
表示がロックに変わる。
「これでロックされました。 出入りする際は言ってください。 ま、その必要はないと思いますけど」
「監視装置があるのは便利ですね」 ここなら暫くは大丈夫か…
河川敷の奴らがこっちに溢れて来る前に離れないといけないが…
「どうです?」 森さんだ。
「ここなら2・3日は大丈夫そうですよ」 それを聞くと森さんはニコっと微笑み
「コーヒー入れてきましたよ♪」 カワ。゚+.(・∀・)゚+.゚ィィ!!
やっぱ森さん最高だよ。
「じゃ、ちょっと私は休んできます。 ごゆっくり」 そう言い上原さんは管理室を出て行った。
「あら、上原さんのも持ってきたんだけど… ま、いいか♪ はい、どうぞ♪」
ふ、二人きりになっちゃった…
「西田くん眠ったわ。 熱も少し下がったみたいね。 渡辺さんがへばり付いてるわ」
そっか。 早く良くなってくれよ。
「…川本くん…」
「ん? なんですか?」 なんだろう。
「あのね、あの…」
「うは! やっぱ森さんのコーヒー旨い!」
遮っちゃった… (;´∀`)
「ちゃんと聞いて!」
「は、はい!」 どうしたんだぁ!?
「あの… その… あの… えぇと…」 おぉぉぉ? なんだぁ? なんなんだぁ?
何か言いたいのだろう。
言葉を選んでいるようだ。
ま、まさか…
彼氏がこの近くに住んでて無事か見に行きたいとか…
いや、既に結婚してて旦那が気になるとか…
でも、そんな事言ってなかった… 聞いてないから言わなかったのか…
指輪もしてないし… でも指輪してない人もいるしな…
「た、助けてくれて有り難う…」 へ? そんな事?
「な、なんだ。 急に改まるから何事かと思いましたよ」
「いや! あの… そんなんじゃなくて… その…」 またモジモジしだしたぞ。
オレも言いたい事言ってないな… 今がその時なのかな…
「あの…」
「森さん!」
「は、はい!」 急に背筋をピンと伸ばした。
深呼吸して…
「森さん。 突然こんな事言われて迷惑だろうけど。
離れている間ずっと森さんの事思ってた。
森さんの笑顔を思い出すと力が出た。 頑張らなきゃって。
オレ… 森さんの事、大事にしようと思ってる。
西田みたいな強い男じゃないけど絶対守ろうと思ってる。
だからその… あの…」 言っちゃったぁ(;´∀`)
うわ! 俯いちゃった! あぁやべーかな… どうしようかな…
「オレと… オレとずっと一緒にいて欲しい。 駄目かな?」
おぅ!
す、ストレートすぎじゃんか!!
やってもぉたぁぁぁぁぁ…orz
また来ます!(=゚ω゚)ノジャ、マタ!!
やっと規制解除された。
>>300 なんという・・・w
もっと書いてくれww
ほ
303 :
本当にあった怖い名無し:2009/03/29(日) 13:14:50 ID:rcIo2npu0
あげ
死霊列車まだ途中ですが
面白いです!
横スレ、勘弁してくれ。東京くだんさん、ここ見てるんだろ?過去の経緯は知らないが、あんたの小説を全部読みたいんだ。くだんさん、完結してくれよ。頼む!ファンより。
自演乙
あと横スレじゃなくて横レスね
>>305 俺も読みてーよ
次書くことがあったら感想やらなんやら全部スルーして書いてくれれば荒れないだろうし、頼む
>>306 ガヤが釣れた。いちいち小さい事に刺さる前に目の前にある事の本質を探す事が大事だぞ。この意味をよく考えろ。
ああ、釣りだったのw
復帰する口実を作るための自演じゃなくて、ただの荒らしたいだけの煽り野郎か
テスト
質問
このスレ以外でも本でもいいんだけど、立て篭もり型ゾンビ小説とかないかなぁ?
死霊列車読んで面白かったけど、適度に立て篭もって欲しかったもんで。
よかったら教えて下さい。
>>295 「74」
ぽつぽつと来訪する避難者の他は、特別変化も無く(街のゾンビは相変わらずだが)数日が過ぎた・・・・。
来訪した避難民の収容と確認作業も随分慣れて来たし避難民の側も自力で来る者は、この世界の秩序と
言うべきか暗黙の了解のような物が出来つつあるようで、救助見込みの薄い者を庇うような事も無く
以前の様な混乱も殆ど見なくなってきた、、1ヶ月前まで当たり前の様に過ごした価値観が崩壊して事を
我々は、すっかり受け入れてしまった。
( しかし・・でも、、、もう、過去には戻れない事を、皆受け入れつつあるのだが、
何かふと・・・平穏な時代を思い起こすとき、締め付けられるような切なさを、、誰でも良いから
知って欲しい・・。)
そんな日々の中で嬉しい知らせが届いた、補給隊の到着である。
食料品の他に燃料や電池などの貴重品を積んだ輸送車の到着は、それだけで一大ニュースだ
それと共に1通の私信が届いた・・・差出人は?
親父だ!! 生きていたんだ、、激しく胸を打つ感動を胸に押し殺して上着のポケットに
そっとしまった。
出来る限り日没までには戻りたいという事で、慌しい補給を行った後に装甲車両の護衛を受けた
大型トラックは、一部避難民を搭載して次の目的地である渋谷方面に消えていった。
彼らの無事を一同で心から祈った。
「75」
久し振りの補給物資に一同沸き返りながら受領物資の整理をしていると”寸志”と書かれた
箱が3箱ほど有るのに気が付いた。
作業の手を休めて皆で集まってふたを開けてみると、なんと新鮮な肉と野菜に調味料それに
洗剤が入っていた、そして”元同僚より、残置希望の頑固者へ!”とメモ紙が入っていた。
撤退して県警に分散吸収された署の連中だ・・新しい職場でどんなにか苦労しただろう
忙しい中で補給が行われるのを聞き付けて集めてくれたんだ・・。
箱の中身よりも、彼らの無事と存在が、、何より嬉しかった、みんな頑張っているんだ!
そして、みんな俺達の事を心配してくれているんだ。
馬鹿野郎!こんな、こじゃれたメモ紙だけ入れやがって!、みんな如何しているのかなぁ?
元気にやっているんだろうか?
すす汚れた制服野郎のトラックから乗り出して振られた手が、、、手が・・・。
涙が出てきやがった、、畜生!俺達も頑張っているぞ!一生懸命やっているぞ!
夕食には、すっかりご無沙汰だった野菜と肉の料理を皆で協力して作った、、
中沢巡査部長がどこからか缶ビールを持ち出して来て、ここ久し振りに笑いが出る、、
感情なぞ とうの昔に忘れ果てていたと思い込んでいたが
人間は、どんな時でも忘れないものである、、明日が有るかどうかも判らない情勢であるが
今は、一時でも忘れたい、、今迄が余りにも辛過ぎたのだから・・・・。
314 :
本当にあった怖い名無し:2009/03/30(月) 18:44:16 ID:Pey1jHYBO
>>309 自演と判断する基準を教えてよ。純粋に結末を知りたいだけの人間すら叩くお前は、バタリアンだな?
お久しぶりです。解けたようなので投稿を…。
何とか3月中に投稿することができました。
そんなこんなでやっと2日目です。未だに武器が手に入らないどころか時間だってそんなに経過しません。
2nd day
肌に下着が張り付く感触が気持ち悪くて目が覚めた。
空気が熱い。湿気が篭りきって、ただ呼吸をするだけで喉が焼かれる気がした。
―――水。
汗を流し尽くし、乾ききった身体がそれを求めていた。
―――すぅ〜、はぁ〜。
爽やかな空気を胸いっぱいに吸い込む。
更に言えば、一晩中密室でいたため、風が無くてもとても気持ちよかった。
やっぱり、あんな密室で人が寝るべきではない。
そのことを、身をもって知らせてくれる。
「で、あいつはどこに行ったんだろ?」
きょろきょろと周囲を見渡す。自重の軸をずらすだけで足場が軽く揺れてしまうため、視界が上下していた。
まだ空は薄青く、太陽も低い。今の時間は分からないが、朝早くなのだろうと思う。
視線を下ろせば、汚れきって灰色になった包帯。それは濃淡様々に点在している。
大半は路肩に積もっていたり木に引っかかっていたり。中には屋根やアンテナに引っかかって、奇抜な模様を作っているものもある。
そして、
「やっぱり、戻ってないか」
何も動かない景色。
朝早く散歩している人も、出勤するために通るであろう車も、宙を舞う鳥さえも。
風が吹いていないこともあるだろうが、本当に何も動いていなかった。
それはまだ、この奇妙な状態が続いているということ。
「…風邪、引いちゃうかな」
べっとりと湿っていた下着は乾きつつある。つまり、それだけ体温を奪われたということで。
この状況で風邪を引くという状況は、非常にマズい。
早い所水浴びなりなんなりしてさっぱりした後、清潔な服に着替えたい。あと、食事。
―――もしかして、探しにでも行ったのかな。
そんなことを思いながら、登っていた車から飛び降りる。とん、と足の裏から伝わる衝撃。
「あれ、やっと起きたの?」
そんな瞬間に、目の前にある家から出てくる友人。ごしごしとタオルで頭を拭き、昨日とは違う服に着替えている。
「今までどこに?」
「この家でシャワーとか借りてた。あと、朝ごはん」
ぽん、と飛んでくる保存食とスポーツ飲料。
「カロリーメイト?」
上手くキャッチできずに滑り落ちたそれは、フルーツ味。
「缶詰なんかもあったよ。後で車に積む?」
ひょい、と提げていた鞄から黄桃の缶詰を取り出す友人。
―――四次元ポケット?
場違いながら、そんなことを考えてしまった。
鞄の容量限界まで詰め込まれた缶詰が、ドサドサと後部座席に落とされてゆく。
フルーツが中心だが、きちんと魚や野菜もあるようだ。
「行ってきたら? ざっと見たけど、何も居なかった。あと、服は洗面所に出しといた。大きさが合わなかったら、二階にある箪笥を漁るといいよ」
ごしごしと頭を拭きながら車へと入ってゆく友人。早速、朝ごはんを楽しんでいる。
―――何も、ね。
見ず知らずの家の玄関を開けながら考える。
何も、ということは。
人間は勿論、アレさえもいなかったということ。それだけで安心できる。…もしかして、一人で探索したんだろうか?
後で、一人で行動しないように注意しよう、と考え付いたところで、やっと風呂場らしき場所を見つけた。
「え、と…。おじゃましまーす」
今更な気もするが、一応。
入って右側に、開けられたままの扉。ぽたぽたとシャワーから水滴が滴っている。
左側に、洗濯機と籠。先に入ったであろう友人の下着がそこに置かれていた。…いや、捨てられていた、と表現すべきだろうか。
―――帰ってこないってことは、帰巣本能とかは無いのかな。
もぞもぞと下着を文字通りに脱ぎ捨てながら、そんなことを考える。
ここに住んでいた人は、アレになったのだろうか。だとしたら、一晩経っても帰ってきてないというのは、いちいち住処に帰らないということだろう。
もしかしたら、歩道とかそんな場所で寝てるのかもしれない。じゃなきゃ、集まって寝るとか。
―――もしかして、寝ないのかも。
シャワーの温度調節をしていた肌に、一瞬で鳥肌が立った。
自分達のことを考えると、是非眠りを必要とする存在であって欲しいと思う。
「…熱っ!」
余計なことを考えていたおかげで、温度調節に失敗した。
次からやっと、ゾンビものっぽくなります。…きっと、多分、恐らく。
規制解除キター!
>>313 続きいつも楽しみにしてますよー
まだ、夜も明けきれていないもない薄暗い川べりを二人の男達がゆっくりとした足取りで歩いていた。
一人は軍用ライフルを片手に緊張した面持ちで辺りを見回っている。
もう一人はというと……
ふぁぁぁあ……誰に憚る事無くはヒゲ面は大あくびをする。
「おい、真面目にしろよ!」
あくびをしたヒゲ面の横に並んで歩いていた男が堪らず注意する。
「だってよ、こんな明け方だぜ?空も雲行き怪しいし、こんな日は奴等だってきっとどっかで寝てるさ。」
そう言うとヒゲ面はもう一度大あくびをつく。
男も釣られてあくびをかみ殺す。
順回路を監視しつつ、二人は日常のやり取りを繰り広げる。
(たく、こいつ平和ボケしてきたな……)
「ま、俺もか?」
「何か言ったか?」
男のつぶやきにヒゲ面が答える。
フッと笑うと「何でもねーよ。」と言って手元の銃を抱えなおした。
その様子に訝しげな表情を浮かべてから横を流れるそこそこ急な流れの川に目を向ける。
「お……おい!」
数歩先を進んでいた男は振り向き、川を指差すヒゲ面をみると笑い。
「その手にゃ、もう乗らねーよ。」と言って、また歩き始める。
次の瞬間何者かに肩をがっと掴まれ、その勢いでもう一度振り返る形になった。
そこにはやや青褪めたヒゲ面が必死に川を指していた。
そのただならぬ様子に、そちらに目をやると川べりの茂みに人のようなものが打ち上げられていた。
ヒゲ面と男は顔を見合わせると銃を構え、油断無くそっと近づいていく。
「おい、お前確認してこいよ……」
男はヒゲ面にそう言って銃の先端を振っていけいけと急かす。
ヒゲ面にいたっては声も出ないのか首をあらん限りの勢いで横に振って拒否する。
どれぐらいその問答が続いたのか、結局は銃を持っているいう理由で男が確認することになった。
(頼むから、死んでてくれよ……間違っても死んでて生きてるなよ。)
支離滅裂な事を考えながらも、男は近づいていく。
まずは、近くにあった小石を軽くぶつけてみる。
(反応なしっと)
さらに近づき銃の先で体をつついて見る。
(これも反応なしか、死んでるよな?)
っと、その時、死体だと思っていた体がビクンと跳ねる。
「ひぃ!」
その様子に短い悲鳴をあげ、パニクった男は銃を頭に向けたまま、トリガーを絞る。
しかし、銃はうんともすんとも言わず、もちろん銃弾を発射することも無かった。
「馬鹿!安全装置はずせ」
ヒゲ面は男の様子にたまらず声を張り上げる。
そうか!と気づき急いでセーフティを外して、もう一度トリガーを絞った。と、その瞬間、「さち…え……た……や」
(このつ、生きた人間だ!)
しかし、引き絞ったトリガーを戻せるわけじゃなく、永遠とも思える一瞬が過ぎ去る。
タタタン
人を殺せるのか?と疑いたくなるような軽い音があたりに響き、硝煙の匂いが風に流された後には……先程と全く変わらない情景がそこにあった。
(俺、確かに撃った…よな?)
よく見ると気絶している男の頭を囲むように3発の弾痕が地面に残されていた。
それに気付いて、男の全身は力が抜けたように腰が砕けて、その場に尻餅をついた。
「お〜い!大丈夫か!?」その声に振り返る。
少し盛り上がった土手のようなところからヒゲ面が慌ててこっちに来るのが見えた。
その姿をみて、男は「この人はまだ生きてる!急いで姐さん呼んできてくれ!」
ヒゲ面は降りようとしたのを止めて、手を挙げ了承を示すときびすを返し走っていく。
(それにしても、運のいい奴だぜ。)
男は名も知らぬこの男に一杯おごらさせようっと思い、ふっと笑って空を仰いだ。
空はどんよりとした雲が立ち込めこの世界の未来を暗示しているようだった。
「ようこそ……地獄のそこへ……」
>>321 おもしろくなりそうだ。
これは期待せざるを得ない。
>>322さん
ありがとうございます。
できる限り最後までつづけられるようにがんばります。
>>323 俺も期待してる。
撃った弾が全部外れたところとかなかなか・・・w
>>322さん
ありがとうございます。
できる限り最後までつづけられるようにがんばります。
タン………タタン……タンタタン……
みすぼらしい掘っ立て小屋一室……簡素なベッドに横たわる男が起こされたのは愛しい妻の囁きでも、言葉を覚え始めた我が子の声でもなく。
おちこちで雨漏りを起こしているトタン屋根を叩く雨が奏でる単調な音だった。
(ここは……?)男が訝しげに辺りを見回し上体を起そうとする。
しかし、大の字に広がった腕はピクリとも動かず、男は初めて自分が何者かによって縛られていることを認識した。
腕を縛っているロープを何とかして解こうともがくがベッドを後ろ向きに書くようにロープが回されていて緩むどころか手首が無駄に傷つくだけのようだ。
ダンダダンダンダン……ザァーーーー……
男の絶望を象徴するように雨音はドンドン強まりついには土砂降りへと変わっていた。
激しい雨音は男の心をざわつかせ不安を増長していく。
(くそっ!どうなってるんだ!)
男は自分の不安な心を奮い立たせるように深く息を吸うと……
「誰かぁー!誰かいないかぁ!助けてくれぇ!うおおおぉぉぉぉい!!!!」とあらん限りの声で叫ぶ。
「うっさい!」
天の助け……とは思えないぶっきらぼうな返事は言葉のまんま、天井から聞こえてきた。
暫くして壁の向こうからベチャっと言う泥が跳ねる音がして、掘っ立て小屋にビッショリと濡れた短い黒髪を薄汚れたタオルで煩雑に拭きながら入ってきた。
男はその姿に言葉を忘れ、思わず見とれてしまった。おそらくはスレンダー美女に分類されるだろう長い手足、モデルのような長身に顔はよくは見えないが結構な美人だろう……だが、男が見とれていたのはそこではなく……
「全身泥だらけ……」「ほっといてくれる!」
男の素直な感想に間髪いれずつっこみを入れ、男から見えない場所にあった洗面器で手を洗い、拭き終わったタオルを男に投げつける。
そして、ベッドの横に置いてあった折りたたみ椅子を立てるとドカッと座り込んだ。
「ちょっと失礼……」
そういって男の目を左手の指であけると、胸ポケットから取り出したペンライトであけた目に当てる。
あまりの眩しさに目を閉じようとするも指の筋肉に瞼の筋肉が勝てるはずも無く。男は諦めの境地で泥だらけ美女の好きにさせることにする。
一通り医者のように脈を取ったり唾液を取ったりされた後、やっと、他人に弄くられる不快感から開放された。
「どうやら人間のようね……正確なところはまだ不明だけど…あ、あと血も採るからね」
美女はそういうとベッドから離れ、近くにあったテーブルの引き出しから大振りのサバイバルナイフを取り出し再度ベッドに近づいていく。
「ちょっ……何をす……」
美女は無言で男の上にナイフを振り上げ一気に振り下ろした!
「!…………!?」
ナイフは狙い道理男の体の脇の下に通してあったロープを貫き、断ち切った。
「誰かさんが暴れてくれたせいで手首のロープが締まっちゃって私じゃ解けそうも無いからロープを切る羽目になっちゃったわ。今じゃ、ロープも貴重品なのよ?」
そう言って美女は悪戯っぽくケラケラ笑う。
……くっはぁぁ……
男の強張った体の緊張が肺に溜まった空気と共に抜けていく。
「そ…それならそうと言ってくれ!俺はてっきり……」
「手首のロープはセルフサービスで切って頂戴。」
フフッと意地悪な笑顔を見せた後、無造作にナイフを男に放り投げる。
弧を描きベッドの手前に落ちようとする。ナイフを男は思わず手を出し、空中をゆっくりとだが回転しているナイフの柄を的確に掴みとる。
「あっぶないことするわね!でも、やるじゃない。」
感心したように腕組みして満面の笑みをむける。
「いや・・・俺は・・・」
手の中にすっぽりと納まっているナイフをジッと見つめる。
男は本当に無意識だった。今もう一度やれといわれてもできないだろう。
(たまたま?でも……)
「そういえば自己紹介もまだだったわね?私の名前は響子よ。榊、響子(さかき きょうこ)あなたは?」
そう言われて初めて男はナイフから視線を外し、顔を上げる。
「俺は……」そこまで言って男は固まった。
(オレハ……ダレダ?)
329 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/04(土) 22:02:04 ID:qRJGp9XM0
俺もかいていいかな?
>>329 お伺い立てずとも書きたいならデットラさんみたく黙って書けばいいだろう。
いや、書け!
うそ、お願い書いてください。
331 :
ポメラニャ:2009/04/05(日) 22:39:52 ID:is8DCAOK0
書きまふ!
K高校合気拳法部に所属する少年、黒崎 卓(くろさき すぐる)は眼前のサンドバックを一心不乱に攻めていた。
左半身で立ち、バックへワンツー、回し蹴り、手刀、ひじ打ち、と打撃を叩き込んでいき、合気道の当て身技をたまにはさんでいく。
この鍛錬を卓は休憩をはさんですでに2時間ほど続けており、玉の汗が滝のように彼の頭を流れていた。
ここは、カシマデパート3階のスポーツジムにあるトレーニングルーム。
今日彼は合気拳法の鍛錬とストレス発散のためにここへ来ていた。後ろには同じ合気拳法部に所属する進藤 誠(しんどう まこと)が筋トレをしている。
「なぁ、そろそろ帰ろうぜ。俺腹減ったよ」
進藤が言いながらタオルで顔をぬぐう。
「ああ、そうだな」
卓はもう少し蹴りの練習をやっておきたかったが、意識すると自分も腹が減っていたことに気づき、左右の手にはめられたグローブと手袋をはずして顔と背の汗を拭いた。
2人で更衣室に入り、汗だくのシャツとタオル、グローブをカバンに入れ、新しいシャツと部のジャージを着てから廊下へ出る。
スパーツジムは大きく、更衣室から出口と受付のあるところまでそこそこ距離がある。
長い廊下を、灰色の絨毯を踏みながら2人は歩くが、他に人はみかけない。
「今日ちょっとおかしくね?ここだけじゃなくて、デパートは従業員以外ほとんど人いなかったし。俺1階のドーナツ屋の姉ぇちゃんの顔見ないと調子でないんだけど」
進藤が、長く茶色い髪をかき上げながら、拳法部1のイケメンと言われている端整な顔をしかめた。しかし顔とは対照的に声も口調も軽い。いつものことだが。
「たしかに、その従業員すら普段の3分の一くらいだったしな」
「なんか外ででかいイベントとかあったっけ?」
「ないだろ、仮にあったとしたら家の姉貴がバカ騒ぎしてるよ」
卓がキャミソールにパンツ姿でバカにハイテンションな姉を想像する。
「いいよなぁ、美人の女兄弟がいるのは、うちなんか野郎ばっかだぜ。異性の兄弟が欲しかった!まじ羨ましい!」
「羨ましくねぇよ・・・家の姉貴顔は良くても中身あんなだぞ?」
「いいじゃん、裏表がなくて、むしろ俺はそういうタイプが・・・・」
ふいに進藤の言葉が途切れる。
「どした?」
332 :
ポメラニャ:2009/04/05(日) 22:41:48 ID:is8DCAOK0
>>331 卓が聞いても答えない。前を向く進藤の顔は凍りついていた。進藤の視線の先をたどると。
このスポーツジムの受付カウンターに行き着いた。
卓も思わず息を飲む。
そこには中年の男がいた。手には銃―――グロック19。
それだけならまだ、騒ぐほどの事じゃない。去年から銃刀法が撤廃され、これみよがしに銃を持ち歩く輩が増えている。
しかし、男は手のモノを、自分へとよろめきながら歩いてくる、顔面を大量の血でぬらした老婆へと向けていた。トリガーに指も
かかっている。
333 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/06(月) 02:43:58 ID:15xX95lB0
オイこそが 333へと〜
334 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/06(月) 05:59:03 ID:b3+/w1KCO
新しい作者さん達も増えてきたし、これで少しは活気が戻るか?
>>331-332 おもしろい!
これは期待!
ここから憲法でゾンビをバッタバッタと倒す東京ゾンビが始まるわけだなw
336 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/06(月) 22:34:53 ID:k2+JgDuT0
時代考証を無視して三国志×ゾンビとかはだめかなぁ?
官渡・オブ・ザ・ゾンビとか。
>>336 戦国ゾンビがあるんだからいいんじゃね?w
三国志もいいけど水滸伝の方がカオスで面白くなりそうかな?
339 :
ポメラニャ:2009/04/09(木) 21:14:29 ID:4Ucginsa0
テスト
340 :
ポメラニャ:2009/04/09(木) 21:17:17 ID:4Ucginsa0
>>335 うれしいよぉ・・・小説ほめられるの1年ぶりくらい。
文法おかしいとこあるけど、見逃してくれ
>>332 やばい、と卓が思った時進藤はすでに走り出していた。
休憩用のソファとテーブルへ大急ぎで向い、そこに置いてあった灰皿を右手で掴んでアンダースローで男へ投げる。
円形の灰皿は、回転しながら鈍い音とともに男の二の腕に命中し、銃口が右へとそれて放たれた弾丸は老婆に命中することなくジムの壁を削った。
驚いた顔の男が進藤の方を向く。
「おまえっ・・・」
しかし、何か言おうとした次の瞬間、男は血まみれの老婆に両肩を掴まれ、そのまま床に押し倒された。
「ぐっ、助けてくれ!」
男が叫ぶ。老婆は口から大量の唾液と血を垂れ流しながら口を男へと近づけていった。
噛みつこうと、している。
「おい、おっさんやばくねぇか?」
「でも助けたら全員撃たれるかもしれないぞ」
進藤とと卓が男と老婆の1メートル半手前まで移動し議論する。老婆の力はよほど強いのか、男の両手は老婆の首にかかっているというのに顔面の全身は止まらない。
「早く、婆さんどけてくれぇっ!」
男のあまりにも切羽詰った声で2人の迷いは消し飛んだ。
卓が老婆を羽交い絞めにし、男から引き離そうとする、が、
「っ、すごい力だ・・・!」
老婆の体はほとんど動かなかった。進藤も急いで卓を手伝う。
ようやく自分から少し離れた老婆へ、男は倒れた姿勢から力いっぱい蹴りを放った。
衝撃を受けて老婆と一緒に卓と進藤まで床に尻餅をつく。
「何すんだおっさん!」
「いいからその婆さんから離れろ!死ぬぞ!」
342 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/10(金) 22:44:04 ID:ioVn+4l00
三国志時代のゾンビだと、時代背景から普通と一味違うスリルがありそう。
・武器がそこらじゅうにあるが、ほぼ接近武器(弓はあるが精度悪し)
・車がないため、移動は徒歩又は馬(馬もゾンビに狙われる)
・人の移動が遅いため、現代よりゾンビの広がりが遅く、封じ込めやすい
・保存食がそんなにない
生存の難易度は現代より高そうだ。
343 :
ポメラニャ:2009/04/11(土) 22:30:46 ID:se5/wulf0
>>340 2人は、本能に男の警告も手伝ってすぐに老婆から飛び退いた。
一瞬遅れて老婆が振り向き2人に飛びつく、が、飛び退いていたおかげで老婆の手が前方の卓に届くことは無く、肝を冷やした2人は老婆からさらに距離をとった。
倒れていた老婆がゆらゆらと立ち上がる。
卓は冷静になって老婆を見た。
両目は白濁しており、生気が無く、首には大きくえぐられた様な傷跡があり、そこと口からあきらかに致死量の血を流している。
くわえて、あの異常なまでの力。
動きは遅くて老人のそれだが、どう考えても普通ではなかった。
とうとう老婆が完全に立ち上がり、目と口を大きく開いて卓へと手を伸ばそうとした、瞬間、ばちゃっ、という小気味いい音とともに老婆の顔面が爆ぜた。
原因は男の銃から放たれた9mmパラベラム。
しかし殺人の現場を目の当たりにしても2人の高校生が騒ぐことはなかった。
死体が卓の方へうつ伏せに倒れ、動かなくなる。
「・・・こいつは、一体何なんだ?」
進藤が男に聞いた。
男は、かがみこんで老婆の頭部の状態を確認してから顔を上げ答えた。
「ゾンビだ」
「ゾン、ビ・・・?」
困惑する2人をそのままに男はさらに続ける。
344 :
ポメラニャ:2009/04/12(日) 22:10:37 ID:SBF1HqiQ0
「お前ら、その様子じゃ外がどうなってるか知らないみたいだな。まさに地獄だぜ」
「あのさ、もうちょい筋道立てて説明してくれね?」
進藤が言う。
「ああ、だがここに留まってたら危ない。場所を移すぞ」
「危ない、って、こんな化け物がまだいんのかよ?」
進藤が険しい顔で男に迫った。
「進藤、やばい状況だってことはもう分かったんだ。とりあえずこの人の言うことを聞いとこう。この人が危ない奴だったとしても銃を向けられても良いように距離を詰めとけば大丈夫だ」
卓が進藤に小声で言う。
卓の頭は冷静だった。他人からよく、冷めた奴、と言われることがよくあるが、それは常に沈着でいられるという特技故だった。
「よしじゃあとりあえず移動しよう」
卓が言い、男を先頭に3人がジムを出る。
3階はジムのほかにスポーツ用品店と喫茶店があり、男はスポーツ用品店につくと、ここで待ってろと言い残し、店に入っていった。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
気がおけない2人の間に沈黙が続く。平然としていた卓の顔にも不安の色がにじみ始めた。
「さっき婆さん、ジムのスタッフだったよな?」
進藤がめったに見せることの無いくらい表情で卓に言う。
卓はそれを聞いて、姿はかなり変わっていたが、たしかにそうだった気がして、何故だが卓はとても悲しい気持ちになった。
「・・・家に帰って家族の顔が見たい。」
ふと、そんな声が漏れる。卓は少し恥ずかしく思っったが、進藤は真剣な表情で頷き、「俺もだよ」と言い卓の肩を軽く叩いた。
そうこうしているうちに男が店から出てきた。
「持っとけ」
言い、2人に何か投げる。
2人は見事にキャッチしてモノを見た。木製のバットだ。
「化け物に近寄られたらそれで容赦なく頭を殴れ。脳みそが潰れて、やっとあいつらは動かなくなる」
346 :
セイレーン:2009/04/13(月) 22:33:27 ID:oSJ1221D0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡 プロローグ
「必ずや、曹操様を勝たせてご覧に入れます!」
許攸は自身たっぷりにこう言った。
「数日のうちに、袁紹は降伏するか、尻尾を巻いて河北に逃げ帰るでしょう。場合によっては、死ぬかもしれませんな。」
曹操は、この降将の言うことを黙って聞いていた。
聞けば聞くほどうまい話だ。しかしこんなうまい話が本当に成功するのだろうか。
「必ず、成功するのか?」
曹操が問うと、許攸は胸を張って答えた。
「もちろんですとも!しかもこちらから手を出すことなく、袁紹軍は自ら崩れてゆくでしょう。
この私が作った、新兵器によってね!」
「ふむ・・・そこまで自信があるなら信じても良いが・・・。」
そこまで言われても、曹操の態度は煮えきらなかった。
この戦は曹操と袁紹の命運をかけた決戦である、確実に勝てるならそれにこしたことはない。
しかし曹操には時間がない、正確には食糧が無かった。仮に策が成功するとしても、時間がかかれば自軍は退かざるをえない。
「3日だ、3日以内に結果が出ぬ時はおまえの首を打つ!」
曹操がこう言い放っても、許攸は動じなかった。
踵を返して私室に向かいながら、曹操は自分に言い聞かせていた。
これは己の命運をかけた戦い、いかなるものにすがっても勝たねばならぬと。
よもや・・・この戦が自分を悪夢のような運命に引きずりこもうなどとは、考えもしないし考えたくもなかった。
しかし、悪夢の幕はすでに、上がっていたのだ・・・。
>>346 三国ゾンビ始まったwwww
三国志ヲタの俺としては嬉しい限り。
つか許攸か・・・確かに奴ならやりかねんw
ニューヨークの空港でパパラッチに殴りかかったウディ・ハレルソンが、突拍子もない釈明をした。
カメラを向けてきたパパラッチをゾンビと勘違いし、殴りかかってしまったという。
「僕は『ゾンビランド』という、常にゾンビに襲われる映画の撮影を終えたばかりで、ニューヨークの
空港に降り立ったときには、まだ役に入り込んだままだったんだ。パパラッチにびっくりして、
当然のことながらゾンビと見間違えてしまったわけなんだよ」とのコメントをメディアに出している。
TMZ.comに掲載されたビデオには、カメラマンがフライトについて質問したところ突然ウディが
カメラマンに近づき、食ってかかる姿が映っている。その場にいたほかのカメラマンのビデオには、
パパラッチの首筋をつかんで何度もなぐっている姿も録画されていた。騒ぎは港湾局に報告され、
調査が行われているとのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090415-00000011-flix-movi
パパラッチ=ゾンビか。
その言い訳は認めていいw
スクープに喰いつくんですねわかります
お久しぶり…ですよね、ね?
今までと比較したら早いかな、とか思ったり…。
短いですが、その代わりに続きはすぐに投稿できると思いますので。今週末とかに。
それと、勝手にHNを出しちゃった作者さんへ。すいませんでした。お詫び申し上げます。
「どーいうつもりだっっっ!!!」
ワゴンのドアを思い切り開ける。中では、運転席側のシートを倒して漫画本を読む友人の姿。
「うぇ? あー、冗談だよ冗談」
「替えの下着に女性用下着を置くことがか!?」
そう。シャワーから上がって替えの下着を見てみれば。
それは、まだ袋に入れてある女性用下着だったわけで。
「おかげで湯冷めしたかも!」
反対側から乗り込みながら文句を言う。ドアを閉める音がやけに大きく響いて、一瞬息を潜めた。
「いい運動になったじゃん」
けろっとした顔でのたまう友人。さっきから、一度たりとも目線を合わせようとしない。
ずっと漫画に固定されている。
――何をそんなに?
ふと、興味が湧いた。
傍らに置かれている漫画本を手に取る。題名は『学園黙示録 HIGH SCHOOL OF THE DEAD』。
「…これって」
ぱらぱらと中を見やる。何度か、このはた迷惑な友人に見せてもらったことがある漫画だった。確か―、
「どうやらあの家に住んでた誰かさんはオカルトマニア…というよりゾンビ関連のファンだっららしくてね、役に立ちそうだから持ってきた」
確かに、この状況においては色々と役に立つかもしれない。武器とか。
「じゃあ、こっちは?」
そして、周囲に乱雑に広げられたA4のコピー用紙の束を手に取る。それは、幾つかに分けてクリップで留めてあった。何気なく、紙に目を落とす。
巡査物語。デッドラ。empty。非日常。ポメラニャ。セイレーン。
表紙代わりの紙には、そんな様々な単語が書かれている。一番多いのは…『巡査物語』だろうか。
――何だ、コレ。
巡査物語、だけは名前からして判断がつく。その名の通り物語だ。
ぱら、と音がした。視界一杯に広がる明朝体。
――これって。
小説。
一言で表現すれば、それで終わる。
「掲示板か何かで投稿されたのを、印刷してまとめたヤツだと思うよ。表紙のは題名か、はたまたハンドルネームか」
友人はうつ伏せになって漫画を読み続けている。
「で、何のためにこんなの持ってきたわけ?」
サバイバルなりなんなりの知識を得るためだとしたら、これらは役に立つのかどうか。
そもそも、自分達は銃器どころか刃物さえ持っていない。それでアレらに立ち向かうのは死ぬことと同義だ。
「いやいや、ココに書かれていることさ…、何か似てない? いや、そもそもこの状況そもそもが、何処かゾンビ映画とかに似てない?」
「…まぁ、似てないことも」
今までの世界が一瞬で裏返る、そんな状況が。
「だから、色々と参考になるかな、ってさ。例えば――」
ぱら、と読んでいる漫画を開いて見せてくる。
そこには、ゾンビがどうやって主人公達を判別しているかを模索している様子が描かれていた。どうやら、この中だと音で判断するらしい。
「こうやって、布を投げつけたりとかさ。アレから逃げ続けるのなら、アレのことも知らなくちゃ。敵を知らずに篭城しても破られるのは定石だし」
――まぁ、こういったジャンルにおいては攻めた方が生存する確率は高いのだろうけど。
「といっても、何も考えずに攻め込むのは馬鹿だからね。まずはどうやって何を調べるかを――」
びたん。
嬉々とした――今までに無く生き生きとした友人の声を、異音が遮った。
同時にフロントガラスを見やる。そこにはもう、この状況においてはそれしか考えられず、なおかつできる事なら会いたくはない者が張り付いていた。
こうして見直すと、文章が随分変わってますね…。
習作だが、勝手に投下する。
寝落ちする迄、絨毯爆撃w
新人の為、批評の声は穏やかに…
『う… ん んん?』
目を開けると、眼前には薄暗い天井が、間近に迫って見える。
寝転がったまま、首をゆっくり『グギギギ…』と右側に動かすと、そこにはビールの空き缶が2つ…
段ボール敷き…
何処かの倉庫らしい、整然とした段ボールに梱包された製品が、パレットの上に高く積まれている…
その梱包された製品の上で、私はどうやら、寝込んでしまったらしい…
ビールは…
そう、このビールは、私の寝ている下にある製品… らしかった。
頭が重く、思考が追い付かない。酔いが醒めないのか…
何故、こんな所で寝入ってしまったのか…
分からない…
再び首を『グギギギ…』と戻す。
『ん? 何だ?!』
不思議と首の動きが重い。
首どころか、全身に鈍い重さを感じる様な気がする…
左手の肘から先を、上に曲げてみる。
『ギ… ギギ… バッギ!!』
どうやら… 折れた様だ…
痛みも無く、心も平静を保っている。酔っているのだろうか?
更に左手を強く握ってみる…
力が上手く伝達されない様で、指が曲がらない…
『脳や脊髄に、何らかの障害が有るのか…』
冷静に、心穏やかに考える。
不安も無く、いつもと変わらぬ情緒の流れに、ふと安堵の溜め息を…
と、見せ掛けて、渾身の力で左手を握る。
『ゴギ… ギ… バッ ギュ!!』
『ぬぉぉお?!』
指の鈍い動きを認めた後の、得も知れぬ渇いた音…
自分で自分に仕掛けた『対自分フェイント』…
私の左手にとっては、予想だにしなかったであろう渾身の私のフェイントに、私の左手は悲鳴を上げ、まんまと術中に嵌まり…
更に人体の限界を超えた力が、この左手を破壊してしまった様だ…
再び首を『グギギ ギ…』と動かし、左手を眺める…
なんと言う事だ…
左の薬指は、第二関節から折れ、白く健康的な骨を惜し気もなく露出している。
裂けた肉からは、光の加減からか、黒い、黒く紅い、そして粘着質な血をも、静かに、そして優雅に滴らしているではないか…
そして… 非常に不思議な事だが、私の上腕二頭筋が、少しだけ抉れているではないか!
痛みは全く無い。
意味もなく、唯々、自分自身に最大限の『惨事に賛辞と皮肉を込めて』こう呟いた。
『素晴らしい…』と。
身体は相も変わらず重い。
この倦怠感の呪縛から解き放たれる迄、今一度、思考を遡ってみる…
痛みは無くとも、これ以上の『自己破壊』は、今後の日常生活に支障を来す恐れが有るからだ。
どうやら、此処は倉庫らしい、という事は分かった。
問題は、一体何故『此処に居るのか?』と、『身体が重いのか?』だ。
目覚めてから、外が騒がしい事が、ずっと気になってはいたが…
何処かで低脳な奴らが、不快な唸り声を上げて居るのだろう…
私は確か… 近所のちょっとしたスーパーで… 買い物をと思い立ち…
… そこで、夕刻間もない時間で有るにも関わらず… 破廉恥な… そう、極めて破廉恥な行為を見た。
そうだ! キーワードは『破廉恥』だ!!
ちょっとした酒の肴を買おうと、そのスーパーに寄ると… 閑散とした店内の奥の方から、
『ゴシュ… ガゥシュ! ピチャッ… ピチャ…』という音が聞こえて来て… その音に混じって…
『ぅ うぅ… はっ… はぅ うぅ!!』
という、低く奇妙な唸り声を耳にした…
間違えた…
もしかして、この駄作を読んでくれている方へ
>>359は飛ばして下さい。
内容が少しだけ抜けています。
身体は相も変わらず重い。
この倦怠感の呪縛から解き放たれる迄、今一度、思考を遡ってみる…
痛みは無くとも、これ以上の『己破壊』は、今後の日常生活に支障を来す恐れが有るからだ。
どうやら、此処は倉庫らしい、という事は分かった。
問題は、一体何故『此処に居るのか?』と、『身体が重いのか?』だ。
目覚めてから、外が騒がしい事が、ずっと気になってはいたが…
何処かで低脳な奴らが、不快な唸り声を上げて居るのだろう…
『ぅうぅ… あぁ…』だの、
『ぬぁ あ… お、 ぉぅ…』だのと、全く以て、下品極まりない破廉恥な唸り声だ…
人間、私の様に、物静かで冷静であり、慎み深い行動を取らなくてはいけない。
紳士たるもの、人に不快感を与える事無く、上品に、そして誰よりも優雅で…… ん?!
『破廉恥な行為?!』
私の陰鬱とした思考の奥底から、何物かが蠢く気配がする…
逡巡する思考を紐解き、断片的に頭に浮かぶ、この難解な映像を、冷静に叙述を…
ゆっくりと反芻して組み立てて行く必要がある様だ…
私は確か… 近所のちょっとしたスーパーで… 買い物をと思い立ち…
… 夕刻間もない時間で有るにも関わらず… 破廉恥な… そう、極めて破廉恥な行為を見たのだ…
そうだ! キーワードは『破廉恥』だ!!
ちょっとした酒の肴を買おうと、そのスーパーに寄ると… 閑散とした店内の奥の方から、
『ゴシュ… ガゥシュ! ピチャッ… ピチャ…』
という音が聞こえて来て… その音に混じって…
『ぅ うぅ… はっ… はぅ うぅ!!』
という、低く奇妙な唸り声を耳にした…
訝しい声と物音に、店内の奥へと急いで行くと… 陳列棚の陰から… 足が… そうだ! 女性の足が見えたのだ!!
更に近付いて良く見ると、不潔感を露にした男が… 男がその女性に…
こんな時間にも関わらず、しかも…
しかも人目を憚らずに、女性に覆い被さっていたのだ…
私は… 物言わぬ、放心しているであろう女性を助けるために…
野蛮で不潔な男の頭を… 後ろから… そうだ…
後ろから蹴り飛ばしたのだ…
すると男は、バランスを崩し… 顔から… 顔から前のめりになって…
そして… そうして男は… 床を舐めたのであった…
『いいぞ… この調子だ…』
私は、今にも途切れそうな記憶の断片を、そして疲労からか薄れて行くこの意識を…
もはや針金程度に脆弱な精神力を以て、繋ぎ合わせる思考遊戯を、必死になって続けて行く…
横臥した女性に声を掛けようと顔を覗き込むと、その女性は…
余程壮絶なプレーだったであろうか…
あの男に唇を奪われたばかりか、唇を失い、歯と歯茎と… 下顎の骨を見せながら、虚ろな…
白濁した目をして、放心していた。
首筋から胸に掛け…
赤黒い鈍色の血と…
白とも黄色ともつかない、混濁した脂肪らしきモノを…
その失った、豊満に隆起していたであろう『乳房』から、冷たい床の上に軟体動物の蠕動の様に…
音も無く静かに、垂れ流していた…
鼻は… 咬み切られた様に…
鼻孔が、固まり始めた血によって、塞がれて…
いや、そうでは無い…
咬み千切られて残った… 僅かな軟骨と皮の切れ端が、鼻孔を完全に塞いでいた…
私はこの女性の、胸を始めとした、著しく『美』のバランスを欠いた…
歪で憐れな『肉塊』に放心していると…
あの男が… 起き上がって来て…
穴が空いている下腹部からは、黄色く濁った脂と…
コールタールの様な… 黒い血と…
細長い管を… 大腸を…
大量に、大量に、大量に腹から吐き出して… 冷たい床を… 赤く黒く染めていった…
… 男が私に近付こうと、低く唸りながら歩き出すと…
その大量に吐き出した、自分の血と脂に足を滑らせた…
起き上がる時に… 偶然指に絡んだのか…
大腸を手に持ちながら、私に差し出す様に…
『ぅがぁぁ… うぅ あぁ!!』
と言いながら、襲い掛かって来たのだ…
ダメだ…
眠 ぃ…
その先 は… その 先は… 確か ぁ…
私は… 私は 相手の ぅ… 動きがぁぁあ… か かんまんだ た ろ で…
したら 後ろから … べ つの お と こ… き てて
う で か ま … るた
な と か そぅ こ…
ふぉ く り すた の てぇえ…
つ め にぃ のぼ て こ こぉ きぃ … た
じょ ひん に… れせい な…
つ か れ た… す っ こひ、ね れ…
どれくらい寝たのだろうか?
身体の鈍い重さからも解放され、大分スッキリした気分だ。
外は更に騒がしくなり、私を依然として不快にさせる…
空腹感も相俟って、私は下に降りる事を決心した。
積み上げられた製品の上から下を覗き込むと…
お笑い草だ!!
何と言う茶番であろう。
皆、一様に赤黒く血に染まり、宛ても無く彷徨っている様だ…
余程の露出狂なのだろうか?…
中には肋骨や頭蓋骨を露出させる者や…
モゲ掛けた足首を、脱げ掛けた靴の様に『ズ… ズズ…ゥ…』と、引き摺る者まで居るではないか…
腹から垂れ流した内蔵に足を絡めて、もがいている馬鹿な輩までいる。
私は、この軽蔑して止まない『やつら』を、神々しく悠然と見下ろし…
『お りる かぁあ!! どお けぇぇえ!!』
と一喝した。
『やつら』は私の声に、無感情な表情を向けながらも、畏怖し後退りをし始めた…
『人間』である私を仰ぎ見ながら、私の指示に緩慢な動きながらも従順に応じている。
『そうだ、それで良い』
私はこの低脳な『やつら』を、少しばかり見直した…
感慨深く『やつら』が示したこの『リスペクト』に対し、私も『リスペクト』をした。
と、その時、私が降りる予定の場所へ、足を踏み入れる馬鹿者が現れたのだ。
私は物言わず、その低脳な馬鹿者を戒める為に、そいつの頭を目掛けて飛び降りた…
馬鹿者は激しく倒れ込み、
『あ ぐわぁ…』
と唸り、その衝撃から、首を胸の位置まで折り曲げ、起き上がると、何やら右往左往し始めた…
頸骨が砕けた様だ…
無惨に折れ曲がった部分からは、申し訳なさそうに白く濁った骨を見せている。
涙の代わりにドス黒い血を静かに垂らして…
無言の謝罪を繰り返していた…
私は肋骨を激しく打ち付けた様だ…
右側の肺の辺りが、見るも無惨に陥没している。
しかしながら、不思議な事に痛みも無く、幸いにして『無傷』の様だ。
日常生活に、何ら支障も無いだろう…
私は深く、安堵した。
『人間は、安堵の先に空腹を覚えるモノだ…』
この哲学めいた言葉は、今しがた私が発した言葉である。
こうした環境に身を置いてこそ、神の啓示掛かった『哲学』は生まれるのであろう…
哲学とは、元来そうした私生児であるのだ…
こうした哲学こそ、今正に『やつら』に説きたいのだが…
私と『やつら』とは、最早『種』が違うのだ。
どんな高尚な言葉も、低脳で下品な『やつら』には、きっと心に響かないであろう…
空腹感は募るばかりだった…
最早、一刻の猶予も成らないと思われた…
私は、精肉コーナーを『通り過ぎ』、扉を隔てたその奥にある『従業員事務所』を目指した…
案の定、目敏い『やつら』が群れを成していた…
厚手のガラスに覆われた、事務所の中の従業員を品定めしている様だ…
事務所の中からは、悲鳴や怒号、そして嗚咽の声が、間断無く漏れ聞こえている。
何と浅ましい事か…
これだから、この下品な輩とは、相容れないのだ。
千年撹拌しても混じり合わない『水と油』の様だと沁々と思った…
私は、そこに居る『食料』に一瞥をくれると、折り畳み式の椅子を片手に『アリーナ』へと突き進む…
従順にして低脳な『やつら』は、私を最前列へと静かにいざなう…
私は『本日の食材』を、然り気無く、上品に見定める…
決して失礼の無い様に、そして気配りを忘れずに…
初老の男×2
中年の男×3
中年の女×1
…
瞬時に、奇妙な敗北感が、この胸を突き刺す…
… 諦め掛けたその刹那、ドアの前に置かれたテーブルの陰に隠れる一人の若い女性を見付けた。
怯えているのだろうか…
可哀想に…
こんなにも不細工で、薄汚れた『やつら』に取り囲まれていては無理もなかろう…
… それとも、中に居る面子に不満があるのだろうか?
『やつら』と大差の無い、薄汚れた陰気な面子に思え、それが私の食欲を…
いや、私の正義感を掻き立てるのだ…
ガラスに隔たれた世界…
そのジメジメと陰鬱とした世界から、その絶望的な閉塞感から私が解放してやろう。
此処には宗教も言語も、更には『種』をも超越した『拓かれた世界』が待っているのだ…
東西を隔てた、ドイツのあの壁の様に、私が破壊してやろう…
私はガラスに顔を擦り付け、静かに中を覗き込む…
極度の閉塞感からだろうか…
中年の女が、醜く顔を強張らせ、涙とも洟ともつかないモノに顔を濡らし
『ううぅ… ぃ、いやぁ〜!!』
と、かぶりを振りながら叫んでいる…
初老の男は諦観からか、半ば放心し、涎を垂らしながら震え失禁している。
中年の男は… チアノーゼか?
顔を真っ赤にして、半狂乱になってドアを押さえている。
私の食料…
いや、若い女性は、両手で耳を押さえて静かに震えている様だ…
私は右手に持っている折り畳み式の椅子を、ゆっくりと…
しかし力強く、閉鎖的なそのガラスに向けて投げ付けた…
『ガシャン!!』
ガラスには無数のヒビが入ったものの、その無力な『最期の砦』は、気丈にも堅牢振りを見せている…
『がるぅ う… ま ぁだ… も い っっ… かぃい!! 』
私は叫ぶ…
事務所の中では、他人を盾にして、我先にと奥へ奥へとその身を屈めている…
醜悪な人間のうちに宿る、邪悪の権化共…
私は…
この空間を共有する、総ての者の耳朶に響く残響を…
事務所から聞こえる、絶望に満ちた断末魔の叫びを…
『やつら』が発する、私への絶大なる賛歌を…
その総てが織り成す『ハーモニー』を一身に受け、最期の『レクイエム』を奏でるモーションに入った…
目を見開き、恐怖に歪んだ表情の『食料』を、この網膜に焼き付ける様に…
ゆっくりと…
そして力強く…
私を拒む脆弱なガラスへと、渾身の力で椅子を投げ付ける…
『グァッシャ―――ン!!』
衝撃波と一瞬の静寂が、総てを包み込む…
私は『食料』を目指して歩き出す。
静かに…
そして確実に…
私は… 閉鎖的な空間から、一人の女性を救い出したのだ…
然るべき報酬を受ける権利は、当然の如く有るべきだ。
私は… かぶりを振って身を固める、救い出した『食料』の腕を掴み…
その柔らかく、健康的な首筋に遠慮無く噛み付いた…
『ばうぅ… ぅう ま… う゛ぅ まぁ!!』
コリコリと弾力のある脛動脈を喰い千切り、口内に広がる、鉄臭い温かな鮮血を飲み…
頸骨に達する迄、柔らかくヌメル歯触りの良い脂と、上品な活きた人間の生肉を…
咀嚼し…
咀嚼し…
咀嚼して… そして…
嚥下する。
口から滴る温かな鮮血を拭い、私は次の部位へと『喰』を進める…
軟体的な乳房に噛み付くと…
カスタードクリームとストロベリージャムを混ぜ合わせ様な鮮やかな色彩をした…
ドロドロとしたゼリー状の固形物を『ズズ… ズゥ―…』と頬張りながら嚥下する。
喉越しの優しい、濃厚な味わいだ…
首筋と比較して、酸味が若干弱い事も、私の食欲を更に刺激している。
更に下へと『喰』を進めると、腹部へと差し掛かる。
ヘソに両手の指を深く、そして更に奥深く挿入し、真一文字に引き裂く…
恥じらっていた『臓器』が、不意を突いて『ニュルニュル』と踊り出て来る。
色鮮やかなピンク色に彩られたその物体は… 小腸だ。
やや黒掛かってきた血を滴らせ、豊潤な脂を内包したこの物体は…
弾力があって中々『乙な味』だ。
更に探究の手を進めると、弾力性に富んだ物体を掴ませた。
引き千切り、
引き千切り、
引き千切ると…
掌に余る程の物体が出て来た…
『ちがぁ… うぅ…』
これは私の口に合わない…
弾力が私の歯の進行を妨げ、ヌメル脂のせいで、私の掌から零れ落ちた…
近くで唸りながら『お預け』を食らっていた『やつら』がそれを奪い合い、ガツガツと喰い始めた…
私は内心で『悪食め…』と毒付きながら、周りを見渡す。
『やつら』は、一心不乱に残飯整理に励んでいる…
散乱した肉塊と、血の滴りがあちらこちらに見て取れる。
私は…
『あぁ ぢぃ… あっ ち!!』
と指差し、新たなる『狩猟の旅』へと『やつら』を促す。
『やつら』は相変わらず、下品な唸り声を上げて私の後を追従する…
身体の倦怠感は、既に無い…
私は本能的に『弛緩』した身体を悟った。
そして… 私は… 足早に…
次なる『食料』の狩りに出る。
近くにある『ショッピングモール』へと、静かに歩みを始めた。
―――――――――――――
この時点では、死んでしまった事にこそ気付いていないが、後に悟る事となる…
同時に、死後硬直が解け、走る事が可能な『種』が居る事にも…
色々な意味で申し訳ない。
また静かにロムってます。
>>352 早い?遅いわ!
いいからさっさと続きを書け。
それまで飯も食わなくていい。
>>374 いや、すごく面白かった。
また書いてください。
376 :
セイレーン:2009/04/16(木) 20:43:27 ID:VsqZqeS90
ゾンビ・オブ・ザ・官渡 (1)
袁紹は苛立っていた。
曹操の軍は自軍よりはるかに少ないのに、ここ数ヶ月に及ぶ戦で、自軍は目ぼしい戦果を上げられないでいた。
そのうえ、ついさっき将の一人が行方不明になったと連絡を受けた。いなくなっただけではなく、貴重品もきれいさっぱり消え失せていた。
それが意味するところは、袁紹も分かっている。
(許攸め、役に立たぬだけでなく、わしを裏切るとは!)
思えば、許攸はいつも大言を吐くばかりで、役に立った例がなかった。
最近だって、新兵器を開発しているなどと言いながら、それがどういうものかと問えばはぐらかすばかりで、結局使うことなく逃げてしまった。
(期待させることだけだな、一人前なのは・・・。)
袁紹ははーっとため息をついて、目の前の書簡に手を伸ばした。
そこには、許攸の甥が税金を横領していた事実が発覚したと記されていた。
袁紹はすぐさま許攸を呼び出し・・・ものすごい剣幕で一方的に怒鳴りつけたのだ。
「許攸よ、おまえの甥が公の金を横領したぞ!
一族がこのような重罪を犯せば、おまえの身もどうなるか分かっておろうな!?」
ここまでは正しかった。
「ん・・・待てよ?この横領、もしやおまえが指示したものか!?
そうだ!そうに違いない!そうに決まった!!
今すぐここで首をはねてくれる!!」
冷静さを失うとあらぬところまで疑ってしまうのは、袁紹の悪いくせだ。
袁紹は驚いている許攸の前で、すらりと剣を抜いた。
377 :
セイレーン:2009/04/16(木) 20:59:54 ID:VsqZqeS90
ゾンビ・オブ・ザ・官渡 (2)
袁紹は大きく剣を振り上げ、許攸を斬ろうとした。
しかし、それは数人の部下に阻まれた。
「お待ちください、殿!まだ許攸殿のせいと決まった訳ではありませぬ!」
「戦の前に味方の血を流すことはありますまい。
まずは、その横領について詳しい事実を調べるのが先かと。」
口々に言われて、袁紹は迷った。
曹操軍の軍師も指摘していたことだが、袁紹は大事な時にあれこれ迷って決断できない性格である。
袁紹は素直に部下たちの言いなりになり、武器を納めた。
「うむ・・・確かにわしが短気であったようだ。
おまえの処分は、事実をよく調べてからにしよう。
それまでは、陣で大人しくしておれよ。」
そうして、袁紹は何もせず自分の幕舎に戻った。それがいけなかった。
袁紹が思ったとおり、許攸は欲が深く忠誠心の薄い男だった。
さらに肝っ玉も小さく、ちょっとしたことで人に八つ当たりをするような男だった。目の前で君主が剣を振り上げた瞬間に、許攸の心は袁紹から簡単に離れてしまった。
そしてその夜のうちに、敵陣に走ってしまったのだ。
(あの時、一思いに斬っておくべきであったな。)
袁紹はいつものとおり、一人目を伏せて反省した。
しかしすぐ次の瞬間にはこう思い直した。
(まあ、あのような男一人敵に走ったとて、我が軍の損失ではない。
あの男一人いなくとも、我が軍の勝利は揺るがぬ。)
袁紹はそうして、心の中の重いものを振り切った。
・・・しかし、袁紹の反省は正しかった。
あの時斬っておけば・・・心の底からそう思える事態が、すでに袁紹軍の中に広がりつつあった。
今までに無いペースで。
次は…きっと来週末。
びた、びたびたびたびた。
フロントガラスを掌がたたいてゆく。
そのうちに掌はゆっくりと助手席側――自分が居る側へと移動してきた。びたびたと掌の痕が残されてゆく。
なぜ、いちいち掌で判別するのかと思えば、ソレは両目を無くしていた。
黒めと思しき場所に、ペンが突き刺さっている。誰かが襲われたときに抵抗したに違いない。というかそれ以外に何かあると思えない。
(多分、じっとしてれば通り過ぎてくよ)
友人がそう囁く。ふと気づけば、妙な大勢で固まっていた。フロントガラスを叩く音がした時から、微塵も動いていなかったらしい。我ながら凄い。
――このまま通り過ぎますように。
心から、思いつくもの全てに祈る。そういえば日本には八百万の神が居るらしい。きっとこうやって願っとけばどれかには当たるだろう。
「―――――もしモし? 助ケてクダサい」
ぞわ、と鳥肌が立った。
――何で?
そう思わざるを得なかった。だって、物音なんて立てちゃいないのだ。呼吸さえも出来る限り少なくして、酸欠で苦しくなろうともゆっくりと音を立てないように呼吸して。
まさか、コレらは呼気を判別できるとでもいうのか?
「う――」
横から声。
「――わぁあああああああああああああああああああっ!」
がしゃがしゃと友人がキーを捻る。こういう時に限って、エンジンはかかってはくれない。
どっどっどっ、と心臓が鳴っている。
「―――――おねガイデす、かレヲたすけてくダさイ」
反対側から、後から声が聞こえた。
がしゃがしゃとキーを捻り続ける友人の向こう。そこには、ソレが突っ立っていた。二つの眼が、自分を見据えている。
――今すぐ、この車から飛び出せ。
どこからか、そんな思いがわきあがってくる。ここに居たくない。こんな狭い空間に居たくない。
次の瞬間には、ドアを開けて入ってくるかもしれないのだ。
狭い空間で、コレらと一緒。それを思い浮かべるだけで、頭が壊れそうになる。吐き気がする。ごぼ、と口の端から胃液が垂れた。
どるるるるるるるるる。
やっとのことで、エンジンがかかる。がしゃ、とサイドブレーキが下ろされる音。ギアが変わる音。
友人がアクセルを踏むその瞬間まで、自分はソレから目が離せなかった。本能的な恐怖が襲ってきて、視線を引き剥がせなかった。視線を外したが最後、襲われるかのような感覚をひたすら感じていたのだから。
ぎゃりぎゃりと音がした。それを感じると同時にワゴンが突き進む。道の真ん中に転がっていた自転車と荷物を弾き飛ばしてワゴンは住宅街を疾走し始めた。
「よく、あそこで車を出せたね」
友人からの返事は無い。横を見れば、顔を青くした友人が体を震わせていた。
ワゴンがゆるやかに失速し始める。もうアクセルは踏んでいなかった。
やがて、ワゴンは十字路のド真ん中に止まる。
「あいつ――」
友人の口か細い声が漏れる。
「――アレの目が、こっちを向いてた。最初は何も見てなかったのに、そっち側に行った時、アレはこっちを見た」
「………そんな」
ペンによって潰されているはずの目が、きっちり自分達を捕らえていたというのなら。
――最悪だ。
言葉にする気力すらも削がれる。
どうやって、どうやってこっちの位置を判別している? 微弱な物音? 熱?
「…アレは、どうやって…?」
そういえば、二体居たことを思い出す。丁度、挟まれる形に。
――片方が、もう片方に教えたとか?
でもどうやって? 超音波とか高周波とか、人間には感知できない方法でやり取りしたのか?
「………なんか、なんかおかしいよ」
「…おかしいことが多すぎてどのことかわかんない」
「今朝周囲を回ったけど、アレはどこにも居なかった。アレはどこから出てきたの?」
「どっか影にでも隠れてたんじゃないの? じゃなきゃ、移動してきたとか」
昨日だってそんな感じに遭遇したし。
「人間の歩く速さなんてたかが知れてるよ。走ってきたら音とかでわかるし」
確かにこれだけ静かな、何も動かず何も音が出ない朝ならば、走っただけでも音は響くだろう。
「あの家の二階から眺めてみたけど、見渡す限りいなかった」
「死角とか、見てない方とかは?」
正直、今やるべき会話じゃないと思う。今はアレらからより遠く、より安全な場所に行くことが大事で。
そんなことは、そういった場所を見つけてからするべきだと思う。
「でも、」
―――――――ア、ぁああ、アァ
友人の言葉を遮って、何かが聞こえた。いや、「何か」じゃない。音の正体はもう理解している。ただ、できるなら勘違いであればいいな、と思っているだけで。
友人と顔を見合わせる。その顔は青い、を通り越して白くなっていた。脂汗も出ている。自分だって似たような顔のはずだ。
―――――――ぁああああ、ァアアアアア、アアアア
声が、より大きく重なって響く。
「………複数居る」
どっちが言った言葉なのかはわからないし、今はそれどころではない。
自分はゆっくりと左側を見た。
そこに、ゆらゆらと歩み寄ってくる複数の影を見つける。
―――さい、あく。
さっきの「最悪」はどうやら最悪などではなく、序の口だったらしい。
「「こっちから来てる」」
言葉が重なった。
>>377 イイヨーイイヨー!
袁紹側には劉備もいるんだよな。
関羽の活躍も楽しみだw
>>378 やればできるじゃないか。
次の〆切は月曜日な。
作者のみなさん、面白い作品をありがとうございます。
いつも楽しみに読ませてもらってます。
383 :
セイレーン:2009/04/18(土) 13:07:55 ID:vmr6MnuY0
いや、許攸が裏切ったのは関羽が曹操のとこから去ったかなり後だよ。
劉備はかなり後の方で(官渡の次ぐらいで)登場予定。
つまり顔良と文醜ももういない、
袁紹様は自分の身を自分で守りながら非力な文官どもと逃げるしかないのさ!
384 :
セイレーン:2009/04/18(土) 13:24:55 ID:vmr6MnuY0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡 (3)
曹操は官渡城の城壁から、荒野に連なる袁紹の大陣営を見つめていた。
許攸が今朝早く降ってきてから、早くも一日が経とうとしている。
しかし、袁紹の陣からはいつも通り炊煙が上がっている。
夕焼けのオレンジ色の空に紫色の炊煙がたなびき、それはいつも通りののどかな風景だった。
「くそっ・・・何も変わらぬではないか!」
曹操は一人毒づいた。
その後ろから、弟の曹洪が歩いてきて横に並んだ。
しばらく一緒に袁紹の軍を眺めていると、唐突に曹洪が言った。
「あれっ煙の出る場所がいつもと違いますね。
許攸殿のおかげでしょうか?」
その言葉に、曹操は驚いて曹洪の方を向いた。
曹洪はくったくのない笑顔を浮かべたまま続けた。
「ほら、あの辺りだけ炊煙が上がっていません。
それに、旗が乱れています。」
曹操はくい入るように、曹洪が指差す方向を見つめた。
確かに、よく見るとその一角だけは炊煙が上がっておらず、時折旗が揺れたり倒れたりしている。
許攸がいなくなったせいで混乱が起こっているのかもしれないが、普通それだけで炊煙が上がらなくなることはない。炊煙は戦どうこう以前に、人の生命を維持するものなのだから。
「許攸め、命拾いしたな!」
曹操は晴れやかな顔でつぶやいた。
そして、隣で微笑む曹洪の観察眼に心底感謝した。
曹洪はケチで金に汚いなどとよく言われるが、その反面細かいことを観察させると驚く程の感度を発揮する。
とにかく、袁紹軍に何か起こったことは確かだ。
後はそれがうまくいくよう祈るだけだ。
曹操は期待に胸を弾ませて、足取り軽く私室に戻った。
袁紹軍に何が起こっているのか、それがどれほど危険なことか、曹操はまだ知らない。
385 :
セイレーン:2009/04/18(土) 19:57:40 ID:vmr6MnuY0
ゾンビ・オブ・ザ・官渡 (4)
袁紹はゆったりと、グラスに口をつけた。
かぐわしい酒が喉を滑り落ち、臓腑に染み渡る。
ふわっと心が軽くなり、嫌なことを忘れさせてくれる。
「うむ、やはりこれに限るな!」
袁紹はそれほど大酒飲みではないが、陣中でも夕食では酒を飲んでいた。
さすがに軍律に引っかかるので、昼間からはやらない。しかし、夜酒を飲んでほっとする時間は、袁紹には必要だった。
今日のようにひどく心が重い時は、特に。
(こんな日は、飲んで早く眠ってしまうのが一番だ。)
袁紹は空になったグラスに酒を注ごうと、酒壺を手にした。
しかしその時、幕の向こうに人影が映った。
「殿、お食事中失礼いたします。」
袁紹ははたと手を止め、酒壺を置いた。
「どうした?」
「申し上げ難きことですが、許攸の陣で暴動が起こったようでございます。大した人数ではありませぬゆえ、すぐ鎮圧できるかと思われますが・・・一応、お耳に入れさせていただきます。」
「そうか・・・ご苦労であった、下がってよい。」
幕の向こうの人影がなくなると、袁紹は本日何十回目かのため息をついた。
(許攸め、我が軍に損害を与えて曹操に恩を売ろうとうい腹か!)
しかし自分は早々と逃げてしまったというのに、どうやって反乱の指揮ができるのか・・・。
他にも裏切り者がいるかもしれない・・・疑心が袁紹の心を苛んだ。
袁紹は軽く頭を振り、気を取り直した。
386 :
セイレーン:2009/04/18(土) 20:36:09 ID:vmr6MnuY0
続き
(まあ、少数の暴動で揺らぐほど我が軍はもろくない。
暴動にしても、許攸に期待させられていた兵が裏切られて騒いでいるだけかもしれぬ。
横領は奴の得意だからな、兵の給料まで着服していたかもしれぬ。)
別の疑念に身を任せて、袁紹は不安を払った。
そしてもう一度酒を注ごうとしたが・・・止めておいた。
小さな暴動とはいえ油断はできない。いつ自分の身が危険にさらされるかもしれない。
今夜は深酒をしない方がいい・・・そんな予感がした。
袁紹はさっき飲んだ酒が覚めぬうちに、早々と眠りについた。
まとめサイト全然機能してないな…
388 :
ポメラニャ:2009/04/18(土) 22:33:25 ID:rAWWoXPy0
活気があっていいですな。俺は平日は勉強部活習い事で忙しいので休日投稿させてもらいます。
>>344 手の中の鈍器をきつく握り、男の言葉をかみしめながら高校生たちは自分がとんでもないことに巻き込まれていることを改めて思い知った。
「まじなんだな・・・」
「ああ、現実だ」
男が言いながら歩き出す。
「これから、どうすりゃいい?」
2人は小走りで男を追い、卓が聞いた。
「だからそれは今から説明する。あそこに入るぞ」
男が指差したのは小さな喫茶店。
用心しながら、中に入る。化け物の気配は無い。
「大丈夫そうだな」
男がわずかに緊張を解く。
3人は逃げやすいように出口に近い4人用の席に腰を下ろした。
「じゃ、説明してもらうぜ」
進藤が言ったが
「まぁまて、食い物の場所が分かれば持ってきてくれ、何か喰っといた方がいい」
男は背負っていたリュックをテーブルに置き、言った。
2人は反対しようとしたが、空腹がそれを封じ込めた。
「俺冷蔵庫の位置とか知ってるよ」
卓はここのホットケーキが好きだった。
「そうか。何でもいい、持ってきてくれ」
頷いて、卓はレジの近くにある、ケーキとジュースが収納されているケースから、ホットケーキとウーロン茶のビンをいくつか取り出してケーキは一つの皿に、ウーロン茶は脇にはさんでテーブルへ戻った。
3人の中間地点にそれらを置いて、イスに座る。
手掴みでケーキを口に入れ、茶で流し込んだ。
389 :
ポメラニャ:2009/04/18(土) 22:34:25 ID:rAWWoXPy0
「そろそろ説明しとくか。」
とりあえず腹が膨れた頃、男は話し始めた。
「3日前、隣町である男が、突然暴れだして、周囲に居た若者数人に暴行をはたらいた後、駆けつけた警官に襲い掛かった。警官は首の一部を食いちぎられ、男をその場で射殺してから数時間後に病院で死亡。
それだけなら、凶暴な狂人の犯した殺人、暴行事件だ。しかし、男の遺体には不可思議なところが多すぎた」
高校生たちは食いながら耳を男の話に傾ける。
「まず、男の年齢が92歳だったこと。そんな老人が、抵抗する若者数人を素手で殺しかけ、警官を実際に殺したんだ。次に、男の遺体があきらかに死後3日を越えていたことだ」
「まてよ、そんな事件があったらすぐにニュースになるはずだろ。俺たちは見てないぞ」
進藤が口を挟む。
「マスコミには公表してないからな。俺は実際にその現場にいた。パトカーの運転席で同僚の首にくらいつく化け物を見たんだ」
男の表情が暗くなる。
警官だったのか・・・
卓は内心で思い、話の続きを待った。
「・・・そして今日、この町で、朝同様の事件が起きた」
390 :
ポメラニャ:2009/04/19(日) 21:55:30 ID:DdOoUrIS0
>>389 2人が息を呑む。
「7人の老人が突如暴れだし、通行人に襲い掛かった。場所はイサカ商店街だ。
周りに居た何人かが止めに入ったが、結局負傷者が出ただけで、抑える事すらできず、駆けつけた警官が老人達を逮捕しようとしても失敗。
警察の増援が来る頃には、なんと老人に最初に襲われた通行人達までもが暴れだす始末。今日俺はオフだったんだが、家がこの近くでな、その現場にもいたよ。そこからは地獄絵図だ。
負傷した人間は次々に暴れだして、他人を傷つける。傷つけられた人間は暴れだすって、まさにゾンビ映画状態だ。俺はヤバイと感じて、家に戻ってから銃を引っ掴んでここへ逃げてきた、ってわけだ。
今頃あの周辺は救急車とパトカーでごったがえしてるぜ。野次馬もすごい。人が少ないのはそのせいだな」
男の話が本当ならえらいことだ。
「警察からの情報で俺が今わかることは、奴らに噛まれたり引っ掻かれたりすると奴らのようになること、この町の大半の老人が既にゾンビ状態にあること、それとゾンビは頭部を破壊するしないと死なないことだ」
>>383 あれ、そうだったっけ。
勘違いスマソ
何にしてもwktk
>>388 学生作家さんだね。
おもしろいよ。
お前らなんで、そんなに文章うまいんだよw
たしかにみんな、うまいよなぁ。
俺もいっちょ書いてみるか。
性懲りも無く、もう『一編』だけ投稿予定。
今度は『人間』が主人公です。
エンディングが『2通り』あるっていうのは駄目ですか?
それ以前に『私』は駄目ですかね…
>>吉良 ◆uyBOASgJA6
おかえり、くだん。
腸引きずり出し大好きな残酷描写は相変わらずだな。
まぁ、俺はそういう所が好きなんだがw
今度は最後まで頑張ってくれよ〜
>>392-393 もっと市販の小説を読むか、ググるかして小説投稿サイトでも見た方がいい
内容は置いておくとしても、文章で上手いと言えるレベルの作品はぶっちゃけここにはない
アマの中でも中の下が良いところ
>>396 是非とも君の書いた小説を読ませて欲しいものだね。
てか、そこまで貶しておいてなんでこのスレ来てるワケ?
(自分も含めて)アマの中でも中の下が良いところって事かい?
作品を賞賛するレスがあると、なぜ「〜よりは下」的なレスが出るのか分かりません。
その人が良いと思っているところがあるなら、それでいいと思います。
そもそも市販の小説云々というのは、比較対象が間違っているのではないでしょうか。
そして具体的に良くないと思うところを指摘せずに、ただ「〜よりは下」と言うばかりでは能がありません。
作品のレベルや価値を比較によって判断するのは、部分的には可能でも全体的になると難しいところもあるのですから。
まぁただ煽るだけ人は、これからも同じようなレスをするのでしょうけれど…。
と、思いながら作品の投下をwktkしております。
>>396 少なくとも君よりは読書量多いと思うよ。
でも、みんなうまいことは確か。
>>397 批評する人間が必ずしも上手い物を作れることにはならない
と誰でも知ってる当然の返事が欲しかったのかな?
「内容は置いておく」と言ってるのに作品を丸ごと否定したとしか解釈出来ないとは文盲か何か?
ゾンビネタ好きだし、内容自体には楽しませてもらってるけど、それだけではこのスレに来るのに何か問題でも?
マンセー意見以外は認めないってこと?w
>>399 ここの作品で文章が上手いと言っちゃうなんて、あまり小説を読まないタイプなんだなと思ってレスしたのに
俺より読書量が多くてその評価とか……いや、あえて可哀想とは言うまい
さて、
>>397-399の名無しの中で何人このスレの作者が混じってることやらw
>>400 というか編集なんですけど・・・
どんな雑誌作ってるんだ、と言われそうだがww
ま、そろそろスレ汚しやめませんか?
>>400 >批評する人間が必ずしも上手い物を作れることにはならない
雑魚の言い訳乙
というか尚更レスが来るような公の場で批判する資格は無いんだよ
どうして自分の方が文盲だと思えないのかなぁw
不快に感じるなら来なければ良い。これに尽きるじゃん。
なのにグダグダ言い訳して浅ましくも読んでるとかもうね・・・
>>401 荒らすのが目的じゃないから煽り返してしまったのは純粋に申し訳なかった
別に貶したかったわけじゃなく、単純に発展途上の人が多いと思ってるだけだから
作者さん方には精進していって欲しいと思う
>>400 素人の中でも『中の下』との評価を戴けるとは…
個人的には『揉み手して』大喜びをしますよw
有り難う。
私個人としては、最後の行には、ちょっと『ガッカリ』しましたがね…
>>401 私の好きな推理小説作家の方と、知り合いだったら羨ましい限りです。
好きな事をして『飯の種』となっている時点で、既に羨ましいですがねw
さて、投下します。
暇潰し程度にして下さい。
【20XX.09.10 発生前夜】
『吉良 吉樹(29)の陰影』
私は相も変わらず、怠惰の日々を流されている…
何百何十という孤独な夜を、独り翻弄され流される『漂流の旅』を意に介さず、生涯の友としている。
日々繰り返す夢の中では、今は亡き最愛の妻『ルカ』に、終わらない罪業の許しを乞うていた…
いつもの事だ…
私は自嘲気味に微笑む…
私には、悔やんでも悔やみ切れない過去がある…
妻は末期の癌であった。
昨年、転移の恐れがあったので、その癌腫瘍の摘出手術を受けた。
… 乳癌だった。
女性のシンボルである『乳房』にメスを入れる事さえ残酷な行為であったのに!!
結果として、左の乳房を失いはしたが、ルカが居る事が、生きていてくれる事が、私にとって何物にも変えられない真実であった。
術後からルカは、全くと言って良い程、笑わなくなった…
塞ぎ込み、私が帰宅すると、ソファの上で涙を流しながら寝ている姿を、何度も何度も目にした…
ルカは癌腫瘍と共に、左胸と『心』を抉り取られたのだ…
私は何もしてやれなかった…
私はルカのそんな姿に、胸が張り裂ける思いであった…
寝室も、暫くの間は別にした…
結婚して5年、私は仕事を言い訳に、ルカを大切にしていなかのではないか? と、自問自答を繰り返す日々が続いた。
何十ぶん、何百ぶんの『幸せ』なんて与えてあげられ無くても良い…
ただ、私と居る事の『幸せ』を、ルカと居る『幸せ』をお互い噛み締めて生きて行こうと、ルカに打ち明けた。
… ルカはその日を境に、私と向き合う事で、以前の様な『ルカらしさ』を取り戻し始めた。
良く笑い、直ぐに涙ぐむ、気丈で優しい、感情豊かな『あの頃のルカ』に、戻りつつあったのだ。
なのに… 『何故だ!!』
執刀医からは『転移の可能性は極めて低い』と言われていたのに…
1年と経たずしてこの病は、ルカの身体を、酸が浸食する様に、静かに、緩やかに蝕んで行ったのだ!!
肝臓や肺、子宮までをも蝕み、『私の総て』であるルカを、完膚無きまでに蹂躙し尽くしたのだ!!
27歳という若さで、病魔は1秒、また1秒と、ルカの生命を蝕んで行った…
… ルカには『再発した』とは、口が裂けても言えなかった。
日に日に痩せ細り、紙の様に白くなって行くルカに
『末期だ… 君はもう、永くは無い…』
などと、どうして告知出来ようか!!
医者は躊躇する事なく、私に『ホスピス』を勧めた。
現代の医療技術では最早お手上げだと、匙を投げた恰好だった…
平穏で、心休む日々を送る為に、在宅治療を取った。
ルカにも私にも、残された時間は限られていたからだ。
日に日に痩せ細るルカに、必要最低限の投薬を施して貰った…
癌の痛みのコントロールとして、第1段階にNSID(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、2段階目に弱オピオイド(コデインなど)、3段階目に強オピオイド(モルヒネ)を投与する。
これによりほぼ90%以上の痛みがとれると言われている。
ルカは既に『3段階目』に達していた…
… そんな生活に終焉を告げる時が来た。
穏やかな春の日に…
唐突に… 突然に… やって来たのだ。
ルカは憔悴しきり、最期の力を振り絞って、消え入りそうな声で私に語り掛けた…
『最 期… ふた… り きり… で…』
私は静かに頷き
『解っているよ…』
と、掠れる声で応えた。
ルカの透き通る頬を、一筋の涙が零れる…
『わ、 私… ホン トは 解って… た 有り難う… ね』
『今度こそ… 丈夫… 生まれて 来 る… か ら…』
『だ… から… ま、また… ぉ お 嫁さ ん… し て…』
私はルカの細く白い手を、力強く握り、消え入りそうなその声を、一言たりとも聴き逃さない様にルカを見詰めた…
ルカは…
苦痛に顔を歪ませ、それでも精一杯の笑みを浮かべていた…
私は… 哀しみという激情に駆られ、ルカに叫び続けた…
『何回生まれて変わっても、俺はルカを、必ず見付け出してやるからな!!』
『ルカと同じ時代に生まれたなら、きっと、きっと探し出せるから!!』
『今度こそ… 今度こそ、必ず幸せにしてあげるから…』
『だから… だから必ず同じ時代に生まれて来いよ!!』
激情に支配され、私の想いが言葉として、何処までルカに伝わったのかは解らない…
ルカは…
最期の涙を流しながら…
『ぁ… 愛し て ま す… 約束… ぁ り が と…』
… ルカは… ルカは今、時間という概念を超越した存在となったのだ…
そして… 私は『総て』を失ったのだ…
私はルカの手を握り、髪を撫で続けた。
涙が… この私の涙が渇れ果てるまで… 何度も、何度も… 冷たくなっていくルカの手を擦りながら、髪を撫で続けた…
涙は永遠に止まらない様に思えた。
砂で築き上げた城が、最初はゆっくりと、そして徐々に激しく瓦解して行く様に、私は自我の崩壊の音を聞いた…
いつしか世界は闇を纏い、ルカと私を冷たく包み込んでいた…
時折通り過ぎる車のヘッドライトに、ルカの安らかな横顔が照らし出される…
私はルカの左手の薬指から指環を抜き取り、自分の左手の小指に嵌めた。
そして私は、ルカの冷たくなった唇を右手の親指でなぞり…
現世での永い、永い、最期のキスをした…
終わらない未来を捧げる、約束のキスをしたのだ…
ルカの頬をなぞる。
『綺麗だよ。ルカ…』
闇に包まれたルカが今、優しく微笑んだ様に見えた…
私は仕事も辞め、世間との接触を拒み、ただ独り、この家で生き続けた…
私の父親は『政界の影のドン』と呼ばれる、薄汚い男だ…
母親は『妾』で、私はそんな下衆野郎の『私生児』だった…
金と食料は、親父の『遣いの者』が勝手に定期的に運んで来る…
私はルカを失い、何とも下らない『下衆な人間』に成り下がってしまった…
本当の孤独とは、極限の哀しみを知った後に訪れる『虚無の存在』となる事だ…
生きる事も死ぬ事も、誰からも求められず、強要もされない。
虚無の存在…
それが今の私…
『吉良 吉樹』なのだ。
【20XX.9.11 発生当日】
『ナオヤ(10)の回想』
- 22:30 破滅への序奏… -
僕のお父さんが帰って来たのは、もう、夜のニュースが始まる頃だった。
僕も妹のミキも、少し眠くなって来た頃だったと思う。
一番下の妹のアヤは、病気で寝ていたけど…
パパは
『みんなぁ… 大丈夫かぁ!!』
と、大声で言って、玄関の鍵とチェーンを『ガチャガチャ!』と急いで掛けたんだ…
ママは、パパの大声を聞くと、キッチンから、慌ててパパの所へ行ったみたいだった。
玄関の方から『ドサッ』って大きな音が聞こえて、僕と妹のミキは、ビックリしてしまった…
ママは普段から少しだけドジだけど、
『きゃ〜!!』
って悲鳴を上げた事なんてなかったから、僕もミキも『ビクッ!』としてしまった…
アヤは、まだ眠っている…
ママは、
『どうしたのぉ!?』とか、
『何があったのよぉ!?』とか
何度も叫びながら、お薬や包帯を持って、パパの所へ行った。
パパは痛そうで苦しそうだったけど、ママに、
『と… 戸締り は…?』
と聞いていた。
ママは、
『ちゃんとしてあるけど… 何で?』
と、難しい顔で答えたけど、パパは黙って、頷いただけだった。
パパが血だらけになっていて、頭とか手を包帯でママにグルグルと巻かれていた。
パパに包帯を巻くと、ママは、急いで携帯電話で医者と警察に電話をかけた。
ママは、
『混線してるみたい… 全く、こんな時に困ったなぁ!』
と、少し苛々した時みたいに独り言を言っていた。
僕もミキも、
『何でだろうね…』
って、ママに言ったけど、何だか分からないけど、ママも返事をしてくれなかったし、段々と不安な気持ちになって行った。
大きな音と大声で、アヤが起きたみたいで、アヤはフラフラしながら歩いて来た。
熱があるのに、凄く真っ白な顔をして、僕の隣に来たんだ…
アヤが
『らいじょ… ぶぅ?』と、元気のない声で言ったけど、僕以外には聞き取れなかったと思う…
だって、アヤもパパと同じで、怪我をして血だらけになったって…
そして熱が出たって、ママが言ってたから…
ママはアヤに気付くと、優しく笑って、
『早くネンネしようね。また明日、一緒にお医者さんに行こうね…』
と言って、アヤを抱っこした。
アヤは…
凄くグッタリしていて、汗も凄くて、息も凄く苦しそうだった…
パパは顔を痛みで歪ませながらフラフラと立ち上がり、僕達の頭を撫でてから、少しだけ笑ってくれた。
そして、
『あぁ… ア、アヤァ… どうしたんだ…』
と、苦しそうに言うと、ママが色々な事をパパに説明していた。
パパはさっきよりも、苦しそうな顔したけど、黙ったまま、包帯だらけのミイラみたいになって、ママとアヤと三人で寝る部屋に、ヨロヨロしながら歩いて行った…
ママはアヤを抱っこしたまま、心配そうにパパをずっと見ていたけど、僕とミキに向かって、
『アヤとパパは、もう大丈夫だから… 二人共、早く寝なさいね。』
と言った。
ミキは、僕を見て
『ナオォ、こわいよぉ…』
って言ったけど、僕は黙って、ミキの手を強く握って、僕達の二階の部屋に行って、寝る事にした。
- 23:00 静寂を破るモノ -
階段を登って、部屋に行ってベッドに潜り込むと、窓の外から、何だか変な声が聞こえる…
ミキも気付いたみたいで、僕のベッドに入って来て、
『ねぇ… ナァオォ… 外から変な声がするよぉ…』
と、泣きそうな顔で僕を見詰めて来た。
僕はゆっくりと、少しだけカーテンを開けると、真っ暗な外を覗いて見た。
いくつかの人影が、僕の家の前を
『がぁ! うぅ…』とか
『あ…ぁうぅ…』
と言いながら、ゆっくりとゆっくりと、行ったり来たりしてる…
僕は怖くなって来て、ミキを抱き締めながら、布団を頭から被って寝る事にした…
少し… 寝ちゃったみたいだけど、ミキが
『ねぇ…誰か来たみたいだょ…』
と言って、何度も僕を揺するから、目が覚めてきた。
犬が何度も吠える声や、何人もの気味の悪い呻き声や、足を引きずる音が『ズズ… ズ…ズゥ…』と外から聞こえている。
時々、僕の家の門を『ガシャン!! ガシャ! ガシャ…』と揺する音も聞こえる…
近所の人の悲鳴みたいな声も、聞こえた様な気もする。
何だか今日は、いつもと違う、何か悪い予感がして…
パパとアヤの事もそうだけど、怖い夢を見ている、そんな変な気分だった。
僕は子供で、何も出来ないから、妹のミキを怖がらせない様に、せめて『ギュッ』と抱き締める事しか出来なかった。
ミキが何か言おうとした時、ママ達の部屋から、ママの大きな悲鳴と
『痛い!! 痛ぃよ…』
と言う声がした。
『ドカドカドカ』と、ママが階段を上がる音がして、僕達の薄暗い部屋に、慌てて入って来た。
ママは
『アヤが… アヤに噛まれて… パパも起こしても、全然起きなくて…』
と、顔を引きつらせながら、僕達に話て来た。
ミキは、震えながら泣き出して、ママに抱き付いた…
少しすると『ペタ… トン、ペタ… ト…』と、アヤがはいはいで階段を上がって来る音がして来た。
アヤはまだ、4才だから、階段を上手に上がれない。
熱があるし、病気だから、いつもよりも凄くゆっくりになっているみたいだった…
僕が部屋のドアを開けようとしたら、ママが僕の肩を掴んで、難しい顔をしながら、首を横に振って
『ナオ…!』
と言って、僕とミキを『ギュッ』と抱き締めて来た。
ママの心臓の音が『ドクドクドクドク』と聞こえて来て、呼吸と同じで凄く早くて、抱き締められているのに、何だか本当に怖くなって来た。
廊下からは、アヤの
『はぁう… はっ…はっ…は…』
と言う変な声や、廊下を歩く『ペダン… ト、トン…』という音が、段々と部屋に近付いて来る…
ママは、僕達をベッドに座らせると、ドアにおでこを付けながら、
『アヤァ… アーちゃん?』
と、まだ、廊下を歩いているアヤに向かって、震えて声で話かけていた。
突然、『ビタン… ドッ!』と、アヤがドアを叩くみたいな音がして来た…
ママが泣き声で
『アーちゃん? アーちゃん…』
と呼ぶと、アヤは…
『がぁ! ぅがぅぅ… ぁああ!』
と、呻き声を上げながら、ドアを何度も叩いたり、『カリ… カリカリカリ…ガリ! ガリ、ガリ、ガー… リ…』と、引っ掻く様な音を立て始めた…
- 9.12 01:00 闇夜に蠢くモノ、その名は… -
ママは泣きながら、首を何度も横に振り、大きく息を吐き出して、
『アーちゃんは… ナオもミキも、ママが守るからね! だから… みんなでガンバろうね!』
と言うと、僕達にドアを押さえる様に言って来た。
ミキも僕も、泣きながらドアを押さえている。
アヤは吼えながら、ドアを何度も叩いたり、引っ掻いている…
その震動が、大好きなアヤとの思い出を壊すみたいで、僕達は震えながら、ずっと、ずっと泣きながら、ドアを押さえていた。
ママは、僕の机の引き出しを外して、必死に机をドアの前まで運んで来た。
そして、机の足とドアノブを、ミキの縄飛びでキツく縛った。
『これで大丈夫、大丈夫だから…』
と、ママは言いながら、電気を着けて、カーテン開けて、薄暗い窓の外を見た。
ママは黙って、窓の外を見ていたけど、時間が経つ程に震えて行った。
僕達は黙ってママを見てたけど、何となくその理由は分かっていた。
窓の外からは、呻き声がずっと聞こえていたし、誰かの悲鳴も聞こえていたから。
ママは口元を押さえて、怯えながら言葉を飲み込んでいたけど、
『何なの…? 何が起こってるの…』
と言って、ポケットから携帯を出して、また電話をかけていた。
僕は怯えながら、窓の外を見てみた。
最初は暗くて分からなかったけど、目が馴れて来たのと、部屋の電気の光で、ゆっくりと歩く人影の顔が見えて来た…
髪の毛が、何だか『ベタッ』と濡れていて、みんなびっこを引いている。
服も黒く濡れてるみたい。
少し離れた所では、倒れている人の側で、何人か人がしゃがんで『ビクッ… ビクッ』と頭を動かしている…
何だか変だと思って、ずっと見ていると…
『ナ… ナオ! 見ちゃダメ!!』
と、ママがいきなり僕の肩を引っ張って来た。
僕は、ママの方へ振り返ると… 窓の外から…
『ガシャ! ガシャガシャ… ガッシャン!!』
と、誰かが門を押したり引いたりし始めた…
門の前には、いつの間にか3人の人がいる。
『ぉ うぉお… ぁぁ あぁ…』
と言いながら、段々と僕の家の前に、人が集まって来る…
周りの家は、殆ど電気が消えている。
僕達を狙っているみたいに、ゆっくりと段々と人が集まって来る!!
【20XX.9.12 01:00】
- 01:00 ルカとの誓い -
ルカ…?!
ルカはいつもと違い、私に向かって、哀しそうに語り掛けて来た。
『ねぇ吉樹… そんな顔しないで…』
『吉樹は… 吉樹は何も悪くないんだよ…』
『ねぇ、約束… 覚えてる? そう、あの時の約束だよ。』
ルカは優しく微笑む。
そして私の手を握ると
『ねぇ、吉樹… 私は想うの。貴方と何度も生まれ変わって、何度も、何度でも結ばれる…』
『貴方が永遠を約束してくれたから、あの時、私は何も怖くなかったの…』
そしてルカは、拗ねた真似をして、悪戯気味に微笑み
『ねぇ… もう一度、私を惚れ直させてみてよ。 じゃないと…』
『じゃないと、生まれ変わっても、吉樹に気付いてあげないから!!』
私はルカを抱き締め、優しく頬を撫でる…
ルカの瞳を見詰め、一年半振りの、永い、永いキスをする…
私は、渇れ果てた筈の涙を流し、ルカの唇をなぞりながら
『そうだな… 解ったよ…』
『それも一緒に約束するよ。
ルカの為に、精一杯、力の限り生きて行くよ…』
掠れる声で、ルカに誓った。
私は再び、ルカの細い肩を抱き締める。
ルカは私の胸の中に寄り添い、何度も何度も頷いていた。
ルカの吐息が、その温もりが、私の身体の中に静かに溶け込み、永遠の瞬間(とき)を刻み込む。
ルカは微笑み
『吉樹とは… また、いつでも逢えるから…』
と、言い終えると、ゆっくりと背景に溶け込み、そして消えて行った…
私は目醒める…
私はベッドの横に立て掛けられた、二人の写真を見て微笑む。
写真の中のルカも、私に優しく微笑み返した…
私は微睡みの底を漂い、再び眠り着こうとした…
- 01:30 狂気を孕む、極限状態 -
外からは、家の門を『ガシャガシャ』鳴らす音や、呻き声が、段々と大きくなって来る。
部屋の前からは、アヤがドアを『カリ カッ… ガリ!』と引っ掻いている音や、
『はぅっ はっ… ぁ はっ…』
というアヤの『ケモノ』みたいな声も聞こえる…
部屋の中では、ミキがママに抱き締められながら
『うっ… ぅう (ゲホン) 怖いょおおぉ こわぁいいぃ!!』
と、泣きながら怯えている。
ママは、小さな声で
『ミキちゃん… 大丈夫だから… きっと、大丈夫だから… ね…』
と、ミキに優しく囁いている…
僕は、ママを困らせたくなかったから、自分の腕をを噛んで、泣き声を出さない様にしていた。
また少しだけ時間が過ぎると、
『ガタ… ガタガシャ ガシャン!!』
と、何かが叩き落とされた様な、凄く大きな音が下の部屋から聞こえて来た!!
僕達3人は、全員で顔を見合わせた。
… ゆっくりと、ゆっくりと、階段を登って来る足音が聞こえて来る…
『ギ ギィ… ズズ…ゥ ズズ… ズ…』
呻き声も…
『ぅう ぁぅう… 』
パパ… なの?!
僕は自分で背中から『ゾゾゾゾゾー』と、鳥肌がたって来て、身体を丸くして震えながら怯えていた。
パパは… 部屋の前に辿り着き、低い呻き声を上げながら
『ドォ――ン! カリカリガリ… ドォオ―――ン!! 』
と、ドアを叩きながら、引っ掻いている!!
アヤと一緒に!!
ミキはもう、我慢が限界を超えたみたいで
『助けてよぉお!! 早く、はやぁくぅぅう!!』
と、泣きながら大声で叫び出した。
顔中はクシャクシャで、涙と洟で顔中をビショビショにして、ママの腕の中で狂った様に怯え叫び、暴れていた…
僕もミキを見ていたら、我慢が出来なくなって…
ママとミキも…
涙で白く霞んで見えなくなった…
パパァ… アヤァ…
何で? 何でなの…?!
ママも僕もミキも、みんな狂った様に泣きながら悲鳴や叫び声を上げ続けた…
今日はここまでです。
次回は『異形のモノ』との戦闘があります。
設定にミスが有りました…
ルカが『乳癌』を患ったのは、『3年前』であり、『死後2年程経過』とします。
読んでくれている『危篤な方』、有り難う御座いますw
>>423 危篤な方、の意味を真剣に考えてしまった自分が馬鹿だった
まったく、なんでこうマンネリな話ばっかりなのかね。
どいつもこいつも、現代・一般市民の主人公・感染する知能の低い食人ゾンビ・爆発的拡大・ホームセンターに篭城・安全な場所でキャリアが発症・etc……
しかし、非常に不思議なんだが、なんでそれでどれも立派に面白いモノになるんだろうな?
>>423 乙!
次回も期待してるぜ。
>>425 ジェイソンが宇宙ステーションで復活しても面白くないだろ?
やはり湖のほとりのキャンプ場じゃないとw
>>424 これはこれは…
便宜上の表現でしたw
すみません。
>>426 お付き合い戴き、有り難う御座います。
では、少しだけ投下します。
- 01:30 虚無からの生還者 -
私の微睡みを遮る様に、外が何やら騒がしい…
私は静かに窓辺に立ち、数ヶ月振りにカーテンを引いた。
明滅する街頭に照らされ、闇夜に蠢く影を認識する。
… 疎らではあるが、ぎこちない歩みの人影を眺めていた。
どうやら私の睡眠を妨げるモノは、あの不審な人影らしい…
私は再びベッドへと滑り込み、頭から不審者の影を消し去る努力をした…
… それにしても騒がしい!
低く不快な唸り声は、本当に人間の発する声なのか?
私は嫌な胸騒ぎを覚える。
再度窓辺に立ち、窓の外の不審者を眺める。
夜目に馴れるに従って、私は自分の目を疑い始めた。
『まさか… アレは一体何なんだ?!』
有り得ない!!
全身を血に染めた様な、赤黒い異形な不審者達。
膝から先が在らぬ方向へと曲がり、引き摺る様に歩く不審者…
右側の額から頬に掛けて、白濁した『骨』を露出させている不審者…
眼窩が黒く抉られて、『干からび掛けた牡蠣』の様な眼球を、頬に垂らす不審者…
首筋を著しく損傷したのか、頭を胸元でブラブラさせながら歩く不審者…
いずれも身体の一部を『欠損』しており、健常者のそれとは、比較する迄も無い…
そんな不審者達が、呻き声を上げながら、私の眼下を蠢いている…
『有り得ない…』
どう贔屓目に見ても、『異形のモノ』は生きていられる筈が無いのだ…
私はただならぬ事態から、警察へと電話を掛けながら、テレビを点ける。
電話は混線している様だ…
電話は諦めて、テレビに目をやると、いつもと勝手が違って『お堅い番組』が流れている。
どのチャンネルを回しても出演者は皆『強張った表情』で、討論やニュースを展開している…
最も解り易い解説は『国営放送』で、時系列での文字放送であった…
・9.11 19:23 国は、関東、関西、九州地方で同時期に起きた『暴動』に対し、国民に避難勧告を発令する。
・20:05 米、英、露、仏など先進国でも、何者かに依る『テロ』の脅威と対峙していると報道。
・20:47 政府は全国に対し、警察力での事態の鎮静化を要請。
・21:32 厚労省は、この暴動に加担する大多数の者が
『生物学上、生命活動が困難な状態』
であり、催眠状態、ウイルス感染などに依る『精神疾患』の可能性を示唆。
・22:52 米、英両国からの情報に依ると、『死者のテロ活動』を一部認めるとの声明を報道。
・23:22 政府は特別国会に於いて、与野党全会一致で異例の『治安出動』を採択する。
・23:41 内閣総理大臣は首相官邸に於いて自衛隊に対し『治安出動』を発令、警察力との相互協力に依る『事態完全鎮圧』を要請。
・9.12.01:42 首相官邸に於いて、自衛隊及び警察の『完全撤収』を発令。
同時に先進国への『軍事介入』を要請すると声明を発表する。
併せて、国民に対し『避難指示』を発令する。
… 何なんだ… これは…?!
最早、政府も機能をしないという事か…
自衛隊も警察も、僅か4時間で撤収とは…
私はチャンネルを変え『民放』を視る。
ヘリコプターからの映像らしく、事態を『鳥瞰』している…
道路は民間の自動車で溢れ返り、自衛官や警察官は奔走していた。
『多勢に無勢』とは良く言った物で、撤収を開始した自衛官や警察官に群がる不審者は、何の躊躇も無く、文字通りその『歯牙』に掛けたのだ。
更にチャンネルを変えると、識者と見受けられる初老の男が
『… または、集団催眠に依る、カニバリズムの可能性も考えられます!』
… 病んでいる。 コイツは、噴飯モノの馬鹿だ!!
私は更にチャンネルを変えようした…
と、その瞬間
『ドォ――ン! ドォオ―――ン!! 』
『助けてよぉお!! 早く、はやぁくぅぅう!!』
隣の家からだ!!
ルカの愛したこの街が、何者かの手によって汚されて行く…
『お隣の家族… 何か良いよね。 仲良くて、明るくて…』
『私達も、あんな家族に成れたら良いなぁ…』
ルカが憧れた隣の家族が、正に今、危機に直面している…
ルカが… ルカが…
私は全身の毛が逆毛が立つのを感じた。
怒りとも哀しみともつかない感情が、私を奮い立たせる!!
私はルカの写真が入ったロケットを開け、無言で頷く。
左手の小指に嵌まったルカの指環にキスをする。
『ルカ… 私に力を貸してくれ!!』
私は急いで階下に降りると、金属バットとドライバーを手に取り、呻き声が渦巻く世界へと、玄関を開け放った…
固く閉ざされた私の家の門扉を、不審者が『ガシャガシャ』と揺らす。
私はその異形のモノの、左側頭部へと金属バットを振り下ろす。
『グワァシャッ!!』
異形のモノは
『ぐ がぁ ああ!!』
と唸り、左側へと崩れ落ちる。
『ズザ ザ… ドサ…』という、乾いた音を合図に、門扉を隔てて『やつら』が集まって来る。
相手が『人間』であったなら、躊躇もしただろう。
私は異形の『やつら』が、異形が故に、一切の躊躇が無かった…
フルスイングで『異形のモノ』の肩や頭を殴りつける。
『ガブォッ!』『ボォカッ!!』と、金属バットは肉を裂き、骨をへし折った。
(… 何故だ?! 何故倒れない?)
渾身の力で殴りつけた『異形のモノ』は
『ぅ がぁ…ぁう ぅ ぁあ!!』
と喚き、よろめきながらも再び立ち上がって来る…
(こいつら… 不死身なのか?!)
私は金属バットで殴り倒し続けた…
… 殴りに殴り倒し続け、漸く1体だけとなった…
私は肩で息をする…
堕落した生活のせいで、明らかにスタミナが落ちている…
門扉の辺りには、黒く淀んだ無数の血溜まりが出来ていた。
仄かに白い骨や、糸を引いた体液と血が混ざった肉片、寒天状の『脳ミソ』が点在し、吹き抜ける乾いた風に揺れている…
散乱した『異形のモノ』の残骸は湯気を立て、腐敗を思わせる『生臭さ』が辺りを立ち込める…
最後の1体が、フラ付きながら起き上がる…
約1分間の『束の間の休息』だった。
髪を赤黒く血で濡らし、半分程引き千切れた耳をぶら下げながら、白濁した目玉で私を見詰めて襲い掛かって来る…
私の疲れと動揺から生まれた、瞬時の『放心』を突き、異形のモノは私の肩に触れて来た。
私は猛り狂い
『ガァァアアアアアーーー!!』
と叫び、ベルトに差したドライバーを素早く抜き取り、『異形のモノ』の左目に突き刺す!!
血に濡れた髪の毛を掴み、深く差し込んだドライバーを『反時計回り』に回して、『脳』をかき混ぜる!!
10時、8時、6時、4時… そして1時の方向に『ググ…グ』と、奇妙な抵抗を感じる…
恐らく『神経』がドライバーの侵攻を邪魔している様だ…
私は更に力を込めて『異形のモノ』の『脳』を『スクリュー』する。
『お ぉ あぁ… 』
と呻き、力無く後ろ向き倒れ込んだ。
… 起き上がる気配は …無い!!
私は考える…
金属バットでは、致命的な一撃とはなり得ないのだ。
『脳』を破壊する威力…
肉をミンチにし、頭蓋骨を砕き、脆い寒天状の『脳』を粉砕する… そんな『武器』が必要だと思った。
私は家の『倉庫』へ向かい、大型バールを手に取った。
900ミリも有るこのバールは、長時間の使用には堪えるが、間違いなく『脳』の破壊を可能とするだろう。
私は再び集まって来た、門扉を揺する『異形のモノ』の頭部を目掛けて、大型バールを振り下ろす。
『ズボッ!!』『グシャッ!!』と、頭頂部から眉間まで大型バールはめり込み『脳』を粉砕する。
手に伝わる感触は『皮の固いスイカ割り』の様で、手首への反動が強い。
しかしながら、効果は絶大だった。
私は門扉を飛び越え、隣の家族の救出へと向かった。
僅か数メートルの距離に、3体程『異形のモノ』が蠢いている…
背中を見せている、間近の『異形のモノ』の腰を目掛けて、真一文字に大型バールを打ち付ける!!
『ボッギィィイッ!!』
背骨は鈍い音を立て、腰から後ろ向きに無様に折れ曲がる!!
『う がぁ… あぅう?!』
闇夜に映える、純白の背骨が、微かに『クネクネ』蠢いて見えた…
『ブッ… シィャーー…』と腹部は張り裂け、腹が生き物の様に、内蔵を容赦無く『吐瀉』する。
闇夜に滴る粘着質な黒い血は地面を叩き、『ボチャッ…』と落下する弾力性のある内蔵を、弾き返した…
『胃』であろうか…?
『異形のモノ』は、究極的な『イナバウアー』の姿勢で、私に疑問を投げ掛けながらゆっくりと倒れ込んだ…
芸術性の欠片すら感じさせない、酷い有り様だ…
私は静かに近付き、もがき足掻く『異形のモノ』の両腕をバールで砕き…
眼窩を覗かせる、その醜悪な顔面を、渾身の力で蹴り上げる…
『ポギィッ!!』
首の骨が複雑に折れた『異形のモノ』は、有らぬ方向に首を伸ばし、声も無く無様に、ただ静かに血ヘドを吐きながら口を『パクパク』とさせ続けていた…
今日はここ迄です。
長文の上、稚拙な文章力、また退屈なストーリーで申し訳ありません。
では、また明日。
おやすみなさい。
ノシ
>>436 イイヨーイイヨー!
擬音がステキですw
438 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/24(金) 12:47:37 ID:0kP8XcWhO
ボッキィw
>>425 もっと特殊なシチュエーションのゾンビネタもあるけど
ここでさらしたくないんだよ
もったいないじゃん?
440 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/26(日) 22:18:32 ID:bKt1y1joO
>>439 君のその短い文章からでも読む価値がない作品であることは、確かだからどうでもいいよ。
ファンタジーとか、SFのゾンビネタってアリでしょうか?
アリなら、GW中に名に一本書いてみたいのですが。
>>441 アリでしょう。
ファンタジーやSFという要素だけでは、作品の良し悪しは決まらないと思います。
443 :
本当にあった怖い名無し:2009/04/29(水) 12:09:03 ID:EkGyKLVz0
スレ落ちちゃったかと思って新しいの建てちゃった、、、
テンプレに10レスに収めろって書いてるけど
俺が投稿しようと思ってる奴どう考えても100レスは超える件…
∧∧
( ,,)
/ |
〜(__)
さて、時間が開き過ぎました。
少しだけ、投下します。
私は、他の2体を難なく仕留め、隣の『益子家』の門扉を飛び越える…
『ズズ… ズゥ サ… ズ…』と、益子家の前に、また新たな『異形のモノ』達が遠くから群れをなして来る…
私は玄関のドアを確かめるが…
固く閉ざされている…
雨戸も閉まっている…
私は雨戸を開け放ち、窓を割って侵入しようかと暫し迷ったが、後々の事を考え、侵入経路を変える事にした。
私は焦燥感を露に、天を仰いだ…
『… おぉ!!』
闇夜に漏れる、人工的な『生命』の灯り…
… 私は益子家を後にする事にした。
私の家の二階の窓と、益子家の二階の窓は、『ほぼ』同じ高さにある。
『脚立』を使い『橋』を架け渡すのだ…
互いの窓までの距離は、2メートル強…
『きっと、やれない事は無い…』
私は踵を返した。
- 02:20 伏兵、現る -
私は再び、益子家の門扉の前へと歩み寄りる。
門扉を隔てて、大型バールを振り下ろす。
『ガシュッ!! ボシュッ!!』
物の1分と掛からずに、2体の『異形のモノ』を倒す。
門扉を飛び越える時が、最も隙が出来る…
私は益子家の門扉から、細心の注意を払って往来を窺う…
(… 私の家の門扉まで、距離にして『北に約15メートル』か…
そこまでに1体…
今はまだ、戦闘の間合いには遠いが、何らかの『時間のロス』が生じた際には『プラス3体』との戦闘を余儀無くされるだろう。
また、複数の『異形のモノ』との戦闘は、容易には行くまい…)
私は自宅の二階から益子家へと侵入すべく、再度辺りを見渡した。
進行方向の『北』に4体…
反対方向の『南』に1体…
『ん…?! 何だ… アレは?!』
私は自分の目を疑う。
『酔ったサラリーマン… か?』
この非常時に『千鳥足』で『南から』こちらに向かってくる中年の男…
遠目から判断して色々な意味で『かなりクタビレて』はいるが、出血の痕跡は無い様だ。
不思議ではあるが、この非常時に『酒に酔い』しかも『徒歩』で帰宅… なのか?!
何よりも無傷とは恐れ入った…
気にはなるが、今は構っている場合では無い…
私は益子家の門扉を飛び越え、既に私の存在を嗅ぎ付けた1体の『異形のモノ』を仕留めに掛かろうと走り出した。
と、その時…
電柱の陰からもう1体、『異形のモノ』が揺らめき歩み寄る…
私の存在を認め、蒼白い無表情だった顔を『嬉々として』歪め、口を開き、だらしなく涎を垂らしながら両手を力無く伸ばし
『ぐ しゃ… ぁ ぉ う!!』
と呻きながら襲い掛かって来る…
私は一瞬の躊躇の後、電柱の陰から出て来た『異形のモノ』を視界に捉えながら、手前の『異形のモノ』の側頭部へと一撃を加える。
『ボシュッ!!』
私は続いて視認するもう1体…
『お ぉお あ!!』
予期せぬ事に、私の左肩を後方即ち『南から』掴み、引き倒そうとする…
『チッ… 酔っ払いがぁ!!』
私は苛立ちながら振り返り『酔っ払い』を殴り付けようかと瞬時に判断した。
『なっ…?!』
酔っ払いだと『思い込んで』いた分だけ、恐怖が全身を駆け巡る。
酔っ払いでは無く、正真正銘の『異形のモノ』だったのだ!!
私は左側に引き倒される瞬間に、大型バールを右手に持ち替え『遠心力』を利用して、『異形のモノ』の『左膝』へ、真横から一撃を加える…
『バァギィィ!!』
乾いた枝を折る様な音と共に、『異形のモノ』は横倒しに崩れ落ちる。
私は怒りを噛み殺し一瞥をくれると、ゆっくりと立ち上がり、北から歩み寄る3体の『異形のモノ』へと、急いで駆け寄る。
『ドスッ!! ボシュッ!! ボスッ!!』
舜殺にすると、私は再び辺りを見渡した…
依然として呻き声は聞こえるが、姿は確認出来ない。
『フーッ…』
私は安堵の溜め息を付くと、沸々と沸き上がる『怒り』を抑える事が出来なかった。
私は再び、あの『酔っ払い』へと歩み寄る。
『クソ野郎がぁぁあ!!』
血に濡れた大型バールを右肩に『トントン』と打ち付け
『さぁて、どうしてくれようか…』
私は奥歯を『ギリギリ』と噛み締めると、身体中を残虐な『邪悪の血』が流れ出すのを感じた。
- 2:30 目は口程にモノを謂う -
私の足元に『異形のモノ』が居る…
『彼』は今、起き上がろと足掻いている。
私はその無様に『禿げ散らかした』頭を、大型バールで軽く『小突く』。
『まったく… 君にはホントに驚かされたよ…』
私は大型バールを振り抜き『左肘』を粉砕する…
『がぁ あぅ…』
左脚と左腕を粉砕され、『彼』は地面に『這い付く張って』いる…
それでも尚、私に襲い掛かろうとしているのか『金歯を剥いて』吼えている…
『はぁぅ! はっ はぅ!!』
私は辺りを見渡した…
大丈夫だ。
禿げ散らかした頭を『グリグリ』と踏みつけながら、私は『右肩』を殴り付ける。
『ボォカッ!!』
『彼』は呻き声を上げ続ける。
『うぅ… う〜 ぅ…』
『肩甲骨』がスーツを破り、飛び出して来た。
『う―む… 血が黒ずんでいるな…』
私は顎を擦りながら小首を傾げ
『テレビでも演っていたが、やはり死んでいるのか?』
私は両方の肋骨を殴り付ける。
『ボシュッ!! ボォカッ!!』
食い込んだ大型バールには、黒く糸を引く血が付着している…
『意外と脆いな… どれどれ…』
私は『彼』の左の『こめかみ』を右の『爪先』で激しく蹴り上げる。
『ぐ うぁ…』
『彼』は左の首から『黄色がかった』紐の様なモノを出して、地面を転がり仰向けになる。
首は仄白い頸骨を露出させながら折れ、右耳と右肩が『ビタッ』と見事に着いている…
『ほぅ!! 凄い芸当じゃないか!!! その左の首から出したモノは、もしかして筋なのか?』
私は尋ねる…
しかし『彼』は
『お ぉ う…』だとか『うぅ…』としか返事をしない。
更に沸々と、怒りが込み上げて来た。
『私が聞いているのだ… 何とか答えろぉ! 答えるんだよぉぉお!!』
私は大型バールを所構わず打ち付ける!!
『彼』は口から生臭く赤黒い『涎』を吐き続ける。
『ぐ ぼぁ!! ぶふぉ…あ!!』
両腕は既に剪断され、骨と肉片が混じり合った『挽き肉』となっていた。
鎖骨は頬を突き抜け、頬に黒い穴を開けている…
奥歯をチラつかせながら、その『穴』からも赤黒い涎を垂らしている。
私は肩で息をしながら、子細に『彼』を観察する…
骨盤の辺りを小突くと…
『ブニョブニョ』していて、何とも気味が悪い。
引き千切れたベルトも痛々しい。
私は大型バールの『鉤』の部分で、黒くヌメル『ベルト』を引き抜きにかかる…
『ん?! 何だか… 長いな…』
ベルトを『ググッ… グ…』と引っ張ると、ズボンの中の『鼠径部』の辺りが、何やら怪しく『波打つ』…
更に引っ張ると、それは突然に抵抗を感じなくなり『スーッ…』と抜けたのだ…
赤黒くヌメル『革ベルト』…
『ん?! これは…』
生臭さと『糞』の臭いが、私の鼻腔を突く…
『腸なのか?! そう言われて観れば、何やら伸縮しているなぁ…』
喩えるなら『死んだ巨大な芋虫』の様だ。
『鉤』で吊り上げた『ベルト』はその裂け目から、ヌメル脂と赤黒い血に混じって『脱糞』している様だ…
私の身体にも『巨大な芋虫』が…
私は首を振る…
これだけのダメージで有るにも拘わらず、まるで『彼』は『他人事の様に』呻き声を上げ続けている…
『これは… やはり、死人の様だな。』
さて、そろそろ『トドメの一撃』と行こうか…
私は『彼』の顔を見る。
醜悪な面構えだ。
深く刻まれた『皺』には、その殆どに血を蓄え氾濫させていた…
『さてと…』
私は頭への一撃を…
『… ホントにどこまでも世話を焼かせる男だなぁ… 君は…』
『彼』の黒く貼り付いたワイシャツのボタンだが…
上から3番目に『掛け違い』がある…
胸ポケットに手を差し込むと、予想通り名刺があった。
『なになに… ○×商事 営業課長 林…』
『課長職にありながら… やれやれ… 会社の程度が知れるな…』
『ぅう… はっ は…』
再び吼える『彼』。
『彼』の気に障ったらしい…
プライドだけは高い様だ…
私は『彼』のベタ付く黒い血に顔を『シカメながら』ボタンをキチンとかけ直す…
『さてと、スッキリした事だし… 君の名前は… まぁ、今更どうでも良い事か…』
私は頭部へ、大型バールを体重を掛けて『突き刺す』。
そして『グリグリ』と『脳』を混ぜる…
バールを引き抜くと、『グミ』の様な『脳』が付着している…
大型バールから『ポトリ… ポトリ…』と地面へと脳片が落下し、私の足元で『プルンプルン』と小さく揺れている。
私は足元で踊る脳片を、無言で踏み潰す…
そして『プチュプチュ』と音をたて、アスファルトの地面に刷り込まれる脳片に唾を吐く。
『彼』は足元で目を見開き、口から赤黒い血ヘドを垂れ流している…
完全に『屍』と化した様だ。
禿げ散らかしたその髪の毛も、ワックスで固めた様に頭皮に貼り付いている。
『次に人間に生まれ変わったら、今度こそボタンの掛け違いをしない人間になれよ。』
私は呟きながら、餞別に右の顔を蹴り上げる。
白濁した眼球が『ドロリ』と飛び出し、私を悲しそうに、そして恨めしそうに見詰めている…
『そんな目で見るな…』
私は腐り掛けた『牡蠣』にも似た彼の眼球を踏み潰す…
弾力性に満ちた眼球は、私の体重を物ともせず、原型を留めている。
私は自嘲気味に『フッ…』と笑みを溢し、踵を返して自宅へと向かう。
返り血を浴び、黒くベタ付く身体に嫌悪感を覚えながら、私は帰路に付く。
『疲れているのか… それとも憑かれているのか…』
『その両方だな…』と私は得心しながら門扉を飛び越え、玄関の中へと消えて行った…
今日はここまでです。
もう少しで『吉良編』の第一部も終わりです。
退屈な話で申し訳ないですが、今暫くお付き合い戴けるなら幸いですw
では、また後ほど。
460 :
ポメラニャ:2009/05/04(月) 21:35:15 ID:ZWaUGdB/0
>>391 ども、嬉しい
>>396 掲示板だし、あまり文章を練って投稿してる人はいないと思うのですよ。
まぁ俺は時間かけて文章買いてもたいしたことありませんが。
>>390 ゲルティナンド・鬼島は人を殺したことがある。
ゲルティナンドの父、グリゴリーは、ロシアで5本の指に入ると言われたほどの格闘家で、ゲルティナンドはその父から武術を学んだ。
サンボ、柔道、ボクシング、柔術、剣道、色々教わったが、最も才能を発揮したのは柔道だった。
ゲルティナンドは今でも覚えている。初めて背負い投げを教ってから4日後、10歳の時、当時45キロだった自分が100キロを越える父を畳へと投げ落とした瞬間の高揚感、唐突に背の父からうける重圧が0になったかのような錯覚をうけたつかのまの爽快感を。
その日彼は背負いを極めることを決意し、それから毎日技の練習を怠ることはなかった。
そして4年後。ゲルティナンドが中学2年生のとき、彼の周りで、彼と実力で並ぶことのできる学生はいなくなっていた。
その頃から彼は、道場外の武道家、格闘家にルールなしの試合、いわゆる立会いを挑むようになった。
成人、身長差20cm以上、複数、武器持ち、相手が有利な状況で様々な敵と戦ったが、ゲルティナンドが負けることはなかった。
461 :
ポメラニャ:2009/05/04(月) 21:38:25 ID:ZWaUGdB/0
>>460 その日ゲルティナンドは、道場帰りの成人男性に立会いを申し込んだ。その男は地方では有名な拳法家であり、
前々からゲルティナンドがマークしていた武道家だった。
両者が構えをとってから半秒後、生まれて初めてゲルティナンドは鳩尾への突きを許し、路上へ倒れこんだ。
ゲルティナンドの頭に他流試合ではじめての敗北という文字が浮かび、アドレナリンと天才のプライドが彼の体を一瞬のうちに支配した。
男が野太く、
それでいて爽やかな声で笑いながら「もうちょい強くなったらまた相手してヤンよ」と言い残し踵を返した瞬間、
ゲルティナンドは無音で立ち上がり、男に組み付いた、
口から涎をたらし、目を剥きながら、さながらゾンビのように男を怪力でもって揺さぶり、不完全な姿勢で、男の袖を引くのも忘れ、背負いで男の体を頭からアスファルトに投てきした時、何かが潰れる音がして、男は死んでいた。
あれから3年後、今ゲルティナンドは、あの時と同じ感触を味わっている。
道を歩いていたらいきなり老人に組み付かれ、喉笛に食らいつかれそうになり、突き放そうと殴ったが全く効かず、急所を攻撃しても離れなかったので投げたのだ。
老人の頭はコンクリートとの接触によってひしゃげており、頭蓋骨は完全に割れていた。ひどい腐敗臭もする。
ゲルティナンドはその時理解した。この老人が人間ではないと、そして気づいた、老人と同じ臭いが自分の周りから彼を包み込むかのように接近していることを。
――――殺してもかまわないだろう。
深く考えず、恐怖も感じず、ゲルティナンドの頭はそう判断した。
そして視界の中にゆったりとした速度でボロボロの老人が入り込むと同時に全速力で近寄り、両足で何万回と繰り返してきた背負い投げのステップを踏む。
左手で袖を掴むが、引かず、全力で頭から地へ落とした。
またあの感覚。
老人たちは彼を殺そうと次々と歩み寄ってくるが、
ゲルティナンドはユカイだった。
た、頼む。続きを。
途中までじゃ、気になってしょうがない。
市販の小説と比べるのは酷ってもんだが
素人小説としてはいい出来だと思うよ
そりゃ、本気で小説家目指してる
文学青年には負けるけど
∧∧
(,,゚Д゚)
/ つつ
〜(__)
小説を書くにあたって、いろいろ考えてみた事。
・舞台
現代日本か?
ファンタジー(例えばRPG的に、アンデッドを武器と魔法で蹴散らす世界)とかSF(死体蘇生が普通に可能)とかはどうなのか?
・クリーチャー
死体限定か?
今、月刊チャンピオンで寄生虫にやられた人間との話があるし、活動的なマタンゴとかもある意味似ている。
極論をすれば、「BM−ネクタール−」だって人間を糧に増殖する敵とのバトルだ。
・主人公の視点
何も知らない一般人か?
軍人とか、ゾンビ研究をしていた科学者とかの、いろいろ知っている人間てのはどうか?
466 :
ポメラニャ:2009/05/09(土) 17:04:03 ID:GNXOg/TN0
>>465 >舞台
かまわないでしょう
>クリーチャー
何でもありでしょう
>主人公
軍人はけっこうよくあるけど科学者が主人公のは見たことないし、良いと思う。
>>465 私個人の意見ですが、「ゾンビが出てくる小説」として面白そうなものを自由に書いてもらいたいです。
書く前に設定にこだわるより、とりあえず小説を完成させてから設定だけ変えたものをいくつか作ってみてはどうでしょうか?
面倒だとは思いますが、それらを読み比べた時にしか見えてこないものもあると思います。
そして、それらを投下してもらえればスレ的にも「かゆ……うま……」であります。
ゾンビっぽかったらゾンビでカウントしてもいいと思う
28日後・28週後シリーズとかアイアムレジェンドはゾンビの話ではないけど
事実上、ゾンビ映画みたいなもんだろ?
469 :
ホット:2009/05/09(土) 21:06:02 ID:/VrM9os90
実は人々はゾンビじゃなく、昔自分の家族を奪われたショックで
精神に異常をきたした主人公ってなストーリー構成はどうでしょう。
もう一つ、人々が暗示をかけられ、火事場の馬鹿力が常にでている状況で
理性を完全に失い、暗示にかかっていない人間に出会うと殺されると洗脳されていて
日本を支配しようとする組織と戦うみたいなストーリー構成はどうでしょう。
後、廃墟になった町に興味本位で足を踏み入れ、実はその町は彼の産まれ故郷であって
町につくと色々な記憶がゆっくりと蘇ってくる。
しかし思い出に浸っていると林の近くから肌が白く眼球が真上にあがっており
ゆっくりと近寄ってくる不信な人物から逃げ、逃げている内にある家に隠れる
家の中を見渡すと記憶がうっすら蘇り、昔自分がここに住んでいた記憶が蘇る
不信な人間が次々と現れ逃げる主人公。そして絶体絶命の状況に追い込まれた中
最後の記憶が蘇る、ここは昔自分のせいで汚水がこの町に流れ込み
多くの人が死に至った、その自分の犯した罪から逃げるように、家族に自分のした
罪を告げ、この町から逃げ出したのだ。町の人々は息絶える中薄々知っていた
汚水を流したのはあの少年だと。15年の時が経ち、ようやく人々の復習が
一人の青年の死により完結するのだ。←じわじわ盛り上がるみたいな感じで書いてちょ
470 :
ホット:2009/05/09(土) 21:24:32 ID:/VrM9os90
ある日目を覚ますと家族はいなかった。
テレビをつけてもどこのチャンネルも映らない、不信に思った彼は服を着替え表に出る。
人っ子一人みつからない、近所に居た犬や猫も見当たらず完全に彼は孤立した状況の中に居た。
彼は家の中に入ると家族がいないか部屋中を探し回る。
家族の一人一人の部屋を空け調べるが、財布や携帯など置きっぱなしで
出かけた形跡はみられない。
不安になった彼は自分の携帯を開けかたっぱしから友人に電話をかける。
)ここから先は執筆者の腕によって面白くもつまらなくもなります
471 :
ホット:2009/05/09(土) 21:41:52 ID:/VrM9os90
記憶とは忘れる為に存在する。
嫌な記憶を忘れようとするせいで、いい思い出であった記憶すら失い
名前、出来事そのものを忘れてしまう。
--------------------------------
奪われた記憶、物心ついた頃から精神病院に通っていた少年。
彼には記憶が無く、自分がどんな人間かもわからない、彼は本を読むことで
色々な人格者を演じる事が出来た。
元々IQが高く、高い知能指数の人間の真似事などお手のもの、精神科は彼の自分達よりも
IQが高い彼を恐れた。彼にとって精神科の人間は子供のように見え
逆に彼自身が彼らに教えるという立場にたっていた。
精神科の人間たちは、彼が社会適応者と認識し彼を精神病院から出そうと考えていた。
しかし、彼は外の世界を知らない、外の世界を過去に知っていたかもしれないが
思い出せない。不安を感じた彼は自分は必要の無い人間だと自分を追い込む。
)ここから先は執筆者の腕によって面白くもつまらなくもなります
ゾンビ小説にする事も出来ますし、彼自身の物語として書くことも出来ます
472 :
ホット:2009/05/09(土) 23:08:13 ID:/VrM9os90
小説
人のテンプレで小説書く人は少ないんじゃないかな?
でも、テーマとか同じ題材で競って書くとかは
面白そうだけどな
キキーーーーーッ、ドンッ。
住宅街の比較的大きい道。車が人をはねた。俺を含む10人程いる通行人が一斉にそちらを見、運転手は慌てて車から転がり出る。
「ああああ、あの、だだだ大丈夫ですか……」
サラリーマンらしい運転手のパニクった声に、倒れていた人はにこやかな表情で立ちあがる。
黒衣のその壮年の男は、大した怪我はしていないのだろう、加害者と野次馬一同はそう思った。
首から下がったロザリオが、黒衣の男の職業を物語っていた。
が、何かおかしい。
男の脚の形が変だ。骨でも折れたかのように歪んでいる。表情もおかしい、さっきからにこにこと笑ったままだ。
額には何故か、金色の文字のようなものが書かれている。その口から静かに漏れるのは、ハレルヤ。
と、黒衣の男は腕を伸ばし、半ば呆然とした運転手の額に人差し指を当て、複雑な動きで撫でる。すると運転手の額にも、黒衣の男と同じ金色の文字が描かれる。
「あ? ああああああっ」
運転手は目を見開き、一瞬仰け反る。そして姿勢を戻した時には、既に表情は黒衣の男と同じ、恍惚とした笑みに満ちていた。
ID:/VrM9os90に対する今の所の感想
何これ?荒らし?
自分で書けば?
「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな……」
運転手はブツブツと呟きつつ、黒衣の男と一緒に踵を返して野次馬の方を向く。
二人はそれぞれ、きょとんとした野次馬の中から一人を選び、片手で捕まえるとその額に文字を書く。
額に金色の文字を持つ、恍惚の笑みを浮かべる奴が、4人に増えた。
こと、ここに至り、俺を含めた野次馬は、状況がヤバイ事に気づく。
逃出す間もなくさらに4人がとっつかまり、仲間入りした。
額に文字を書きこむ数秒、および「発症」する1・2秒、犠牲者によって作られるその時間で、俺は必死に距離をかせごうとした。
アレは何なんだ? 混乱した頭で考える。
変なのがいて、それに額に文字を書かれると仲間入りする。仲間入りをするのは、なんかヤバイ。とにかく逃げなければ。
走りながら振り向けば、3人がこちらを追いかけている。いや、4人だ。最初の黒衣の男は脚を引きずり、ふらついて遅れている。
明らかに脚を痛めているというのに、その表情は笑みのまま固まっている。
4対1、ただし相手は何故か走らずに歩いている。何度か道を曲がりつつ走りつづけると見えなくなる。どうやら撒いたようだ。
難を逃れてほっとしていたその時の俺は、奴らが俺を追ってこない理由、つまり別の獲物を見つけたという事に、まだ気づいていなかった。
何時もと変わらぬ朝、俺は何時も通りにフミさん――俺が子供の頃から世話になっている老メイドだ――に起こされる。別に目覚ましでも事足りるのだが、子供の頃から慣れ親しんだ方法が気に言ってるし、何よりこれまで機械にしてしまうと、非常に寂しい。
今日も何時もと変わらぬ、農場監督の1日が始まる。
着替えてからフミさんの用意した朝食を摂り、雑用――家の各所とフミさんの点検――を済ませるとスクーターで農場管制センターへと出勤する。
別に毎日出勤する必要性はない。各種センサーから送られてくるデータを見るだけなら自宅でもできるし、そもそも自宅を管制センターの一室に移すこともできる。
しかし、やっぱり生まれ育った家というのは離れ難いものがあるし、在宅ワークだけだと出不精になってしまう。そんな訳で、運動と気分転換も兼ねてわざわざ出勤をする事にしているのだ。
管制センターで機材を弄り、各種データ――水分・温度・土壌成分、及び作物の育成・出荷状況・農夫達――を確認する。異常なし。当たり前だ。ここは建物の中にある、水分・室温・土壌・日照量を管理された野菜工場だ。
それでも念の為、徒歩で農地を回ってみる。規則では異常がなければ数日に一遍で良い事になっているが、俺は散歩がてら歩きまわるのを日課にしている。
農地は巨大な温室だ。鉄骨とガラスでできた巨大な建物で、天井には日光を遮るシャッターや、雨水を水源とする散水装置、日照不足を補うダイオードなどがとりつけられている。
作物に最適なように気温・湿度は高めに設定されたその中を、俺はのんびりと歩く。
ここの種まきや収穫等は、大抵はコンピュータ制御の車輛によって行われるが、それでもやっぱり人の手が必要な場合がはある。そんなところは農夫達が手作業で行う。
畑を歩いている時折、そういった農夫に出くわすので挨拶をする。相手もカタコトで挨拶を返してくる。挨拶など、本来なら農夫には不要な機能なのだろうが、開発者達はそういった生前の機能は残しておく事を選んだ。
生前? そう、生前だ。農夫達は人間ではない。ゾンビだ。
ゾンビとは、中南米のブードゥー教の伝説にある、呪術によって蘇り、使役される死体の事だ。とはいっても、ここで働くのはそんなオカルトめいたものではない。より正確な表現をするならばサイボーグだ。
>>469-472 いきなりストーリー構成とやらを書き込んで誰かが書くと期待しているのですか?
誰も書きませんし、書いたとしてもあなたのストーリー構成とやらによって面白い作品はできません。
)ここから先は執筆者の腕によって面白くもつまらなくもなります
って何ですか?
結局、そのストーリー構成とやらを使う意味はないということでしょう。
はっきり頼むこともせずに他人に期待し、面白くなかったら執筆者のせいという逃げ道ですか。
最低ですね。
479 :
ホット:2009/05/10(日) 14:29:35 ID:vTZlDI3B0
お前のテンプレ自体
才能ないじゃん…
パクリだし
>後逃げとか書かれてますけど、何故無料で私の才能を披露しなければ
>ならないのですか?めんどくさいですよ。
釣り針大きいよ
482 :
ポメラニャ:2009/05/10(日) 15:41:40 ID:g0xTZvnO0
>ホット
478はちょっといいすぎだったかもしれないけど、
>正直素人が書く小説は見るに耐えない。
は言ったらダメでしょう?
ここは小説を書いて楽しむ場です。
483 :
冬の蛍:2009/05/10(日) 21:59:27 ID:uUObMeYc0
アレクラスト大陸のやや西に位置する、ヤスガルンヤン脈の麓にある村。
そこへ冒険者の一行が向かっていた。
その村は、領主のいる最寄りの町からは大人の脚でも半日かかり、有事の際の防衛は、村人に任されているという有り様だった。
484 :
478:2009/05/10(日) 23:58:26 ID:XmWOvn7P0
>>479 お願いする感じでもなく、適当に作った設定で誰かに小説を作ってもらおうという虫のよさがよくないと思ったのです。
あなたの言葉を借りるなら
「何故無料で(お願いすらされずに)他の人が才能を披露しなければならないのですか?めんどくさいですよ」
というところです。
そして書いてもらったと仮定して、執筆者の腕によってつまらなくもなるという部分。
こんな煽りは必要ですか?
もし万が一書いてくれる人がいたとして、その人に失礼では?
設定のせいでつまらなくなることはないと?
ゾンビ小説を作りやすい、またはゾンビ小説の設定としては穴のない設定だったならまだ分かります。
でもあなたが書き込んだのはそんな設定でしたか?
小説として読んだ時に読み手が違和感を覚えるような設定は、面白さにとってはマイナスだと思います。
そこを手直しするのも執筆者しだいというなら、あなたの書き込んだストーリー構成など無意味です。
そういったことを
>>469-472に対して思ったので、むしゃくしゃして書いた今は反省している。(書き方的な意味で)
485 :
478:2009/05/10(日) 23:59:07 ID:XmWOvn7P0
その他のスレの皆様へ
正直、
>>478は良くない書き方でした。
言葉足らずで言いたいことが抜けすぎている。
長文を避けたかっただけなのですが、無関係な方からすれば単なる煽り文ですね。
反省します。
でも内容そのものは間違っていたとは思いません。
とにかく、無関係だったスレの方々にはお詫びを申し上げます。
すいませんでした。
486 :
478:2009/05/11(月) 00:15:31 ID:xJYq+1vT0
>>483 せっかく作品を投下してもらってるのに、スレをゴタゴタさせてしまって申し訳ありませんでした。
wktkする出だしで良いと思います。
じゃあっしは消えますんで、遠慮なくやっておくんなせぇ。
いや、ぶっちゃけ
俺も「こいつキモイな」ってイラっときてたから
よく代弁してくれたと思うよ
-------------------以後、ゾンビ小説スレ---------------------------------------
488 :
465:2009/05/11(月) 01:35:29 ID:UD30W9Kf0
諸君、私は変化球が好きだ。諸君、私は変化球が好きだ。
てなわけで、毛色の違った作品を書いてみたかっただけ。
・「ホーリー・ハザード」
とくにオチは考えてない。
「動く死体」が「噛み付いて」増殖するのではなく、「死も苦しみもなくなり、エデンのリンゴの影響を脱却して知恵を無くした、黙示録後の神の国の住人」が「テトラグラマトン(神の名を現す4文字YHVH)を書いて」増殖する、というネタをやりたかっただけ。
多分、通常のゾンビものとは「進んで奴らの仲間になりたがる信者」が出る点が違うだけで、ありふれた展開になりそう。
・ワールド・オブ・ザ・デッド
元ネタは長谷川哲也の「ゾンビニエンスストア」&魔夜峰夫の「真夜中係」(どっちも同じ、コンビニの深夜店員の知人は、サイボーグ化した死体だったという話)
人類が遺伝子的な少子短命化によって滅ぶ寸前、サイボーグ化によるゾンビで社会を維持してる世界。
主人公は自分が「オメガマン」だと自覚して、退屈な日常を終らせる為の、半ば自殺的な行動に出る。
主人公は発禁になったゾンビ映画(ゾンビで社会を維持している以上当然だ)を見付け、それに魅せられていたので、農夫達に主人公を攻撃するようにプログラムを書き換えて、残り少ない人生(短命化の影響)をゾンビ映画の主人公の体験をしてすごす。
・冬の蛍
山脈の名前を間違えた。「ヤスガルンヤン」ではなく「ヤスガルン」山脈。
卓上ゲーム板&ライトノベル板住人なら知っているだろう「ソードワールドRPG」を舞台にした話。
この後、無人化した故郷の村に辿りついた冒険者パーティーが、村の老賢者の自殺した死体を見つける。
残された日記(ホラー小説の定番)には、冬が近いにも拘わらず蛍の目撃談と村人の失踪について書かれている。
真相は、黄色いオーラを放つ感染性アンデッドモンスター「バロウ・ワイト(塚人)」に感染した蝿によって、村人が次々とアンデッド化したというもの。
そのまで読み終わった冒険者達に、アンデッド化した家族や知人達が迫ってくる。口々に「仲間になりましょう」と言いながら。
元ネタはリプレイ「亡者の村に潜む闇」。
489 :
ホット:2009/05/11(月) 12:48:04 ID:DarmjCVO0
スルーしていただければいいのに、煽ったり怒ったり謝ったり
ここは小説関係のスレです、煽りや罵倒がしたいなら消えてください。
私はルールを守れない子供は嫌いなんです。
490 :
セイレーン:2009/05/11(月) 22:11:29 ID:z8cRjYyuP
ヤフー規制を乗り越え復帰!
モリタポを買いましたよ、小説は間が空くと訳が分からなくなるから。
私は金を出しても書きたいからここにいる。
愛する袁紹様のいろんなシーンを晒したい一心で、これからもがんばって書いていく。
ここは書きたい人が書くところです。
491 :
セイレーン:2009/05/11(月) 22:13:47 ID:z8cRjYyuP
(5)
「どうも分からぬな・・・。」
荀攸は浮かぬ顔で、揺れる炎を見つめていた。
「あなたにも、分からないことがあるのですか?」
李典はふしぎそうに首をかしげた。
荀攸は深刻な顔で話し始めた。
「許攸のことだ。あやつは今朝、新兵器で勝つと言っておったな。
しかし夕方曹洪殿が見たところによると、袁紹軍に起こっているのは小さな暴動のようじゃ。」
「暴動を起こすのは、策であって兵器ではありませんね。」
なるほど、というように李典はうなずいた。
「それじゃ・・・暴動とは人に不安を与えて起こるもの。
兵器は人の体や物を壊すことができるが、人の心に働くのは策略だ。」
「つまり、許攸殿は何か別のものを仕掛けていると?」
李典が問うと、荀攸は不安げに首を振った。
「それならいい、だがその可能性は低いと見ている。
一般的に兵器は速効性で策は少し時間がかかる、つまり兵器の効果が策のそれより先に出ることは考えにくい。
わしが今一番可能性として考えているのは、暴動を起こすような兵器があるのではないかということじゃ。」
荀攸の言葉に、李典は目を丸くした。
「そんな・・・冗談でしょう?
さっきおっしゃったじゃありませんか、兵器は物体、策は心、暴動は心から出ると。
それが兵器で起こっているなんて、人の心に効く兵器なんて・・・そんなのある訳・・・。」
「ないとは言い切れん。
キノコの一種やある植物は人の心に作用する成分を含んでいる。それらを応用すれば、あるいは・・・。
のう李典、わしらはとんでもなく恐ろしいものにすがろうとしておるのではないか?」
荀攸の言葉に、李典は困ってしまった。
思わず目をそらすと、外は青白い月明かりがこの官渡城を淡く照らしていた。
「・・・も、もう大分夜も更けてきましたし、そろそろ休みましょうよ。」
半ば強引に打ち切って、李典は逃げるようにその部屋を後にした。
考えすぎだと自分に言い聞かせて、李典は暗い廊下を足早に歩いていった。
492 :
セイレーン:2009/05/11(月) 22:15:59 ID:z8cRjYyuP
491に続きゾンビ・オブ・ザ・官渡(6)
「効いてますよ、兄上ー!」
朝のまぶしい光を浴びながら、曹洪はうれしそうに袁紹の陣を指差す。
「おお・・・これはすごいな。」
曹操もつい身を乗り出して、袁紹軍を見つめた。
理由はいたって簡単、昨日の夕方より炊煙の量が格段に少なくなっている。
もはや普通に炊煙が上がっている範囲の方が狭く、昨日は整然と並んでいたテントが所々ぐしゃぐしゃにつぶれている。一部では失火があったのか、炊煙とは違う派手な煙が上がり、人が右往左往しているのが分かる。
「いかがですか、曹操様?」
許攸がニヤニヤ笑いながら近づいてきた。
「おう、素晴らしい効果だ。これでは我らの攻撃を防げまい!
すぐに攻撃準備を!」
「袁紹の陣など、たたきつぶしてやりますわい!!」
曹操が調子に乗って下した命令に、夏候惇が勇ましく答える。
しかし、許攸は顔をしかめてそれを止めた。
「お待ちください、攻撃をかけずとも勝利は手に入ります。
それに私の兵器はあの辺り全体に作用していますので、うかつに入ると曹操様の兵も私の兵器にかかってしまいますぞ。」
それを聞いて、夏候惇はつまらなさそうに肩を落とした。
と、突然武将たちの後ろからこんな言葉が投げつけられる。
「許攸よ、その兵器とは一体何なのだ!?
答えよ、あいまいにごまかして我が軍の進軍を阻むことはならぬぞ!」
叫んだのは、荀攸だった。
しかし、許攸はそんな事まるで気にしないかのように、軽い調子で言った。
「まあまあ、こちらから出て行かなくとも、これから袁紹軍の将が次々降って参りますから。陣でどのようなことが起こったかは、彼らに聞けば宜しかろう。」
「うむ、そうだな。荀攸よ、気にしすぎだぞ。」
曹操に言われては、荀攸も引き下がらざるを得なかった。
曹操にとって、勝てれば今はそれで良かった・・・曹操は勝利の予感にすっかり酔ってしまっていた。
493 :
闇の声:2009/05/12(火) 00:37:17 ID:uFQdaXTi0
「しっかし、変な名前の島だよな。炒矢霧島(いりやむとう)なんて」
小笠原諸島の外れに向かうモーターボートの上で、神無月は呟く。
「元々はウィリアム島と言うそうだ」
ホジスンは流暢な日本語で返した。
「ほら、幕末にこの辺は無人島だったろ? そこにアメリカの捕鯨船の船員なんかが住み着いて、一部はそのまま日本国籍を取得した。
この島にはウィリアムという人が住み着いたんで、ウィリアム島というらしい」
「安易なネーミングだ」
と神無月が言えば、
「それを言ったら、東京駅の前だって、ヤン・ヨーステンが住んでたから八重洲だろ?」
とホジスンが返す。
程なくして、霧に覆われた孤島が見えた。あれが、今日のキャンプ予定地、炒矢霧島だ。
岸壁に、漁船らしき船が停泊しているのが見えた。どうやら先客がいるらしい。
「うわぁぁぁぁぁっ」
突然悲鳴が聞こえた。
霧を通しておぼろげにしか見えないが、船に近い高い崖から誰かが転落したらしい。
人影はそのまま、崖下の海面から突き出た岩に激突し、鈍い音を立てた。
神無月とホジスンは顔を見合わせ、ボートをそちらへ向けた。
評価ってどんな物でも嬉しいものでしょうか?
俺は、楽しい、面白いなんていう内容に全く触れない、それを創るのに使った時間や労力を鑑みない、
自分でも疑問を抱いてしまうような気楽なレスをしてしまいがちなんですが、実際、どうなんでしょうか?
むしろそういうのは作者さん方のやる気を削いでしまうかなぁ、なんて思って最近は黙ってるんですが。
>>494 称賛レスのほうが作者にとってはうれしいに決まってるが
ここを自己小説の練習場にしてる人はいると思う
そういう人には「煽り」じゃないアドバイスや評価するなら
いいんじゃないか?
>>491 セイレーンさんへ。
あそこで宣伝するのはどうかと思いましたが(まぁ寂れてるしいいか…)
三國志・袁家好きの私にとってはワクテカが止まりません。
どんな展開になるか楽しみにしてますよ。負け軍師GJ!
497 :
494:2009/05/13(水) 14:29:07 ID:7crxka+00
いえ、俺が言いたいのはその作品のプロットや背景にダメ出しするだけの力量が無いので
何が良いのか、悪いのかが言えずに、感覚でしか評価出来ないという事です。
そういう毒にも薬にもならない評価はどう感じるのかと思ったんですよ。
本来作者と読者にある共通の想い(より良い作品が欲しい)からは、
そういう感覚的なレスはちょっとずれてるかな、と思いまして。
498 :
セイレーン:2009/05/13(水) 20:20:03 ID:U6zPwjobP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(7)
袁紹が異常に気付いたのは、朝食を係でない者が運んできた時だった。
その前から、周りが異常に静かなのは気になっていた。
しかし、見慣れぬ兵に朝食を並べられて、袁紹はついに口を開いた。
「おい、そなたらは朝食当番ではあるまい。
なぜいつもの者が来ぬ?外で何かあったのか?」
兵たちは気まずそうに顔を見合わせた。
袁紹はさらに強く問う。
「何があったと聞いているのだ!そなたらの知る範囲でいい、わしの問に答えよ!」
兵士たちはびくっと肩をすくめ、ややあって一人が口を開いた。
「そ、その・・・昨日からの暴動が・・・。」
「まだ鎮圧できぬのか?」
「は、はい、その・・・なぜだか、広がってしまいまして・・・。」
「広がったぁ!?」
袁紹は口から心臓が飛び出しそうな声を出した。
昨日の報告では、暴動を起こしたのは許攸の兵で規模は小さく、すぐ鎮圧できるだろうと聞いていた。
それが他の陣にまで広がるとは・・・全く訳が分からない。
「な、なぜそのような事になった?」
「分かりません、詳しいことは何も・・・。
今は張郃様と高覧様が全力で鎮圧に当たっています。
それから、逢紀様と辛評様にも応援を要請しました。さらに昨日から・・・。」
我が軍の半分以上ではないか、と袁紹は唇を噛んだ。
それでも鎮圧できないとは一体どういうことなのか。袁紹はふがいない味方に怒りを覚えながら、幕舎の入り口に向かった。
「ええい、我が直属の精鋭たちも加えてやる。」
「あっそれは・・・!」
兵たちが止めるのも聞かず、袁紹は入り口のカーテンを勢いよく開け放った。
499 :
セイレーン:2009/05/13(水) 20:23:47 ID:U6zPwjobP
張「郃」と公孫「瓚」が一太郎では出なかった(汗)
三国志には変換がやばい漢字が多くてひやひやする。
収まった様なので…。
自分はただ書きたいからここに居る、というのが自分なりの主張ですかね。
ま、素人ですし拙いですけど。あくまで自己満足で投稿してるので。
「「マジで!?」」
また言葉が重なった。
友人越しに窓を見ると、少し離れた路地からどんどん出てくる影の群るが目に入った。
右と左は塞がれている。残っているのは正面と後。後には今逃げてきたのが居るわけで…。
正面、左右に家が立ち並ぶ道路には何も居ない。あと少し走れば、大通りに出られる…はず。
「よし正面!」
「了解!」
ぎゃりっ、という音と共にワゴンが飛び出す。
バックミラーを覗くと、走っているアレの群れ。かなり速い、というか距離が開かない。
「もっと速く!」
「無理!」
「法廷速度を守ってる場合か!?」
「前を見ろ!」
目線を前に戻す。両脇の家、玄関から、幾体ものアレが飛び出してきていた。
そして出てきた瞬間ワゴンに弾き飛ばされる。それが何回も続いて、時には轢いているものだからなかなか速度が出ない。
十分に加速しているのならいいかもしれないけど、この状況では速さが殺されてしまう。
「げ」
バックミラーに視線を移せば、もうすぐそこまで迫っている群れ。どこかのパニック映画を彷彿とさせる。
「よし、出た!」
左右に並んでいた家々が消えた。左右に遮るものが何もないそこは、国道――。
「うわ!?」
ぐるん、とゆさぶられた。車が一回転したことに文句を言おうとして、絶句した。目の前にバスが転がっているのだから。
タイヤ側をこちらに向けて転がっているそれにぶつかれば、ただではすまなかっただろう。
「って、進んで! 追いつかれ――あ」
窓の枠、その外から手が伸びる。反射的に鍵をかけた直後、がちゃがちゃとレバーを引く音が聞こえた。
後はチャイルドロックがかかっているのか、レバーを引かれれてはいるものの開く様子は無い。
「四面楚歌」
「まさしく」
友人も鍵をかけたようで、レバーを引かれてはいるものの開く様子は無い。
フロントガラスから望めるのは、次々と湧いてきては車に群がる者達。何とか入ろうとしているのか、ごんごんガラスを殴っているのもいる。
後でぱきぱきと小さな音が聞こえた。バックミラーを見れば、窓に開いた穴から数本の手が入り込んでいる。それらが暴れ狂っているおかげで、穴が拡張されているらしい。
勿論、腕にガラスが突き刺さって血まみれになっているが、気にもしていないようだった。つくづく化け物だと痛感する。
それに対し、こっちは何と脆弱なことか。
「…どうする?」
このままでは侵入されるのが確実。
「―――よし」
何かを決意したらしい。
「舌を噛み切って死のう」
「今死ねるか」
将来、まだ色々とやる予定なので死ぬことは控えたい。
「じゃあどうすんの? 自爆する? しちゃう? 一応それっぽいのは持ってきてるけど」
ひょい、と足元から百円ライターと爆竹を取り出された。ライターをそんな無造作に放置するのは危険だと思う。
「それじゃ精々焼けどかな」
「あらら、もうふざけてる時間も無いっぽいよ」
将来色々とやりたいことがあると言っても、この状況でそれは叶いそうに無い。現に殴られ続けているフロントガラスには、ゆっくりとではあるけれど、白い亀裂が広がっていた。
「…とりあえず、後に行こうか。ここ狭いし」
親指で後部座席を指差す。未だシートが倒されているので、スペースはなかなかのはず。
「…あれ?」
「どした?」
後部座席に行こうとした矢先、友人が硬直した。じー、っとリアガラスを見つめている。
こんな時に足が痺れた、なんて言わないよね? と思いながら見つめていると、くいくいと裾を引かれた。
どうやら見ろということらしいので、頭越しにリアガラスを見てみる。
この状況で、唯一の逃げ道があった。
続き早くよみたい!
それぞれ持ってる考えを主張するのも大事だけど、ここではただ単にゾンビ小説がよみたい!
物書きさんたち応援してます!
レスが進んでいるとすごい嬉しいです
勢いで書いたので変に感じる部分があっても許して
咬まれたのか咬まれていないのか、それが分からないから恐ろしい。
気付いたら咬まれていたとか、咬まれた痛みでそうと分かったという訳じゃあない。
背中にじくじくと感じる痛みは、あいつ等の咬み傷かそれ以外なのか。
知ることが恐ろしい。自分の体だが、傷口を見るのが怖い。
倒れたゴミ箱からこぼれた、肉や野菜のカスが腐った汁の臭いで充満した路地裏。
なんでそんなところに逃げ込んだのか? 自分でもよくわからない。
無我夢中で走り回って、あいつらが居ない所を探していたらいつの間にか入り込んでしまった。
辿り着いた時には息を荒くして喘いだ。人生の中で一番早く走れた自信があった。
自分はこれほど早く走れたのかと我ながら感心してしまったくらいだ。
だが、やはり場所が悪かった。
腰を落として一息ついていたのだが、一所に留まるのも危険だと思い立ち上がった時だ。
無理が祟ったのか、瞬間足元がぐらつき、横に積まれていた一斗缶の山に肩から突っ込んでしまった。
大通りから身を隠すのに丁度良かったので、この陰に隠れていたのだ。
当然缶の山は崩れ、アルミがぶつかりあう盛大な騒音を撒き散らす。
缶の中身が殆ど入っていなかったのも災いした。空の缶というものは存外に大音声を出すものだ。
静寂に満ちていた路地裏に、場違いな騒音が響く。
慌てて缶を支えたものの、一つや二つを掴んだところで無駄な足掻き、徒労。
幾十と積まれた空の缶は雪崩を起こしたかのように一斉に狭い路地に散らばった。
為す術無く、その様を戦慄と共に見つめた。
あいつらは音に敏感に反応するというのは、この数日の邂逅で嫌というほど思い知らされている。
――すぐにこの場を離れなければ。
そう分かっているのに、足が思うように動いてくれなかった。
思考に、意志に、体がついて行こうとしない。乖離している。
この場に留まれば死ぬ。分かっている。分かっているのに動けない。
全く予期していなかった出来事が、あの音が、呪いのように俺の足を地面に縫い付けている。
衝撃で缶から外れた円形の蓋が小銭のように転がり、固まって動かないつま先にぶつかって力なく倒れた。
それが合図だったのか。いや、偶然に過ぎない。
だが、必然であるかのようにあいつらは現れた。
三人も横に並べないような狭い路地。その入り口にのっそりと姿を見せる。
正面にも、背後にも。挟まれて逃げ場が無い。
覚悟は、決まっていない。死ぬ覚悟も、死の直前に食われる覚悟も。
――食われる――
そんな覚悟を持てる人間が果たしているだろうか? 神に身を捧げる聖人でもあるまいし。
死の間際だというのにそんな事を考える自分の現実感の無さに苦笑してしまう。
だがそれも、裏を返せばまだ心に余裕があるということだろうか? それともこれは現実逃避か。
どうでもいい。現実から逃げる事でこの状況を回避できるなら、いくらでも逃げてやろう。
あいつらはゆっくりと、嬲るように俺に迫ってくる。
逃げられないと分かっているからか。いや、そんな愉しみを抱く心など、既に存在していないだろう。
理解しているのに、あいつらの表情が逃げられず右往左往している俺を嘲っているように見えて怒りが湧いた。
ふつふつと、噴き上がる直前のマグマが力を貯めるように。
その手はなんだ? 眼前に掲げたその手は。
獲物を求める捕食者の腕。捕まえたら、二度と離さないという意思表示のつもりか。
それとも、救いを求める貧者の手? 地獄からの解放を求める亡者の手?
ふざけるな。俺に救いを求めるな。救われたいのは、地獄から解放されたいのはこの俺だ。生者である俺のほうだ。
お前らが救いを求める筈が無い。既に死者たるお前らが。濁った瞳で俺を見つめるのはやめろ。
救済を求めるのは、生者である者の特権だろうが。生きているからこそ、生きたいからこそ救いを求めるのだ。
死者は死者らしく土に還れ、クソッタレが!
縫い付けられた足が、くびきを解き放たれたかのように動く。一歩二歩と前へ踏み出す。
怒りは、時に行動への原動力となる。
既に前方はあいつらで埋まっている。雲霞のごとくとはいかないまでも、相当の数だ。
後方はそれ程でもなかったので、逃げるとしたらこちらから。
だが、こいつらを相手にしているうちに、前方から迫っている奴らが追いつくだろう。
背後から引き倒されて地獄を見るだろうことは間違いない。
ならばどうするか? そんなことは決まっている。
傍らに都合よく投げ打ってあった鉄製の水道管。それを手に取った。
長さも太さも丁度いい。重さは多少あるが、せいぜいバット二本分といったところか。
それに重さがあったほうが、あいつらの頭をぶち割るには適している。
どうせ死ぬなら、理不尽に死を迎えると言うのなら、あいつらに一矢報いてやろうじゃないか。
怒りの感情が赴くままに、水道管を握り締めて一歩を踏み出した。
その踏み出した一歩が、水溜りに踏み入れたような湿った音を上げた。
さっきまではこんなところに水溜りがあっただろうか?
思考の冷静な部分が、違和感を俺に告げた。こういう場合の違和感は、往々にして生存への道を開くものだ。
この時も然り。
路地に明滅する電球の弱々しい光に照らされた足元には、どす黒く、異臭を放つ液体が広がっていた。
これは、重油だ。
一斗缶には重油が入っていたらしい。倒れた拍子に、残っていた中身が零れ出たのだ。
生き残る目が出たかもしれない。
だが時間がなかった。あいつらはもうすぐ俺を路地の中心で挟みうちにするだろう。
急いで羽織っていたシャツを脱ぎ、地面にじわりと広がった重油をそれに染み込ませた。
ポケットをまさぐり、ライターを手に取る。重油で湿ったシャツに火を点けた。
炎が舐めるようにシャツを覆っていく。頃合をみて、地面に広がった重油の上にシャツを落とした。
重油の量は大したことはないだろうが、あいつらの足止めには十分だろう。
あいつらの衣服に引火すれば、うまいこと燃え広がって自滅するはずだ。
燃えているのはシャツばかりで、油にはまだ引火しない。だがまあ、煙を上げているのでそろそろのはずだ。
振り向いて、もう一方の奴らの群れに相対した。
後門の憂いは無くなった。あとは全力でこいつらを叩きのめしてうまく逃げ出すことだけを考えればいい。
水道管を握る手に力を込めた。怒りのせいか、腹の底から有り余るほどの力が湧き出してくるのを感じる。
不意に、背後から熱を感じた。俺の怒りに呼応したわけでもないだろうが、ようやく引火したようだ。
炎を背に、喉が裂けんばかりの大声を上げて俺は目の前のあいつらに襲い掛かった。
感染という恐怖からくる冷や汗か、それとも単に陽射しのせいで染み出したのか。
とにかく、不快な汗を乾かしてくれる爽快な風に感謝した。
もっとこの風を浴びたい。そう思い、俺はバイクをさらに加速させて全身に風を感じようとした。
こいつを見つけたのは僥倖だった。
路地からなんとか逃げ出してみたものの、周りは相変わらずあいつらがひしめいていた。
走っては立ち止まり、体力を回復しようと試みる。
ところが、どんなに安全な場所だと思っても、あいつらは必ず現れた。
数分休めればいいほうで、酷い時には数十秒後には再び逃げ出さなければならないといった場合もあった。
そんなことを何度も繰り返して心も身体も疲弊しきっていたので、いっそのことビルから飛び降りてしまおうかと考えたくらいだ。
このバイクを見つけなければ、間違いなくそうしていただろう。それほど、自分の置かれた状況に絶望していたのだ。
路地裏で感じた身を焦がすほどの怒りなど、とっくに霧散していた。
もうどうでもいいと諦観が心を覆い、歩道に堂々と腰を落とした。
水道管は、いつのまにか俺の手から消えていた。多分、走っているうちに邪魔になってどこかへ捨てたのだろう。
数本にまで減った煙草を口に咥え、火を点ける。
深く煙を吸って、勢いよく吐き出した。それだけで、何故か心が安らぐ。
一服二服と繰り返し、何故俺はこんなところにいるのかととりとめ無く自問していた。
逃げるのに必死だった時には歓迎もしないのにわらわらと寄ってきたあいつら。
死を覚悟した今に限って一匹も姿を現さないというのは皮肉なもんだ。
苦笑して首を振った時、視界の端に何かが映った。
煙草を口に咥えたままそちらを注視したら、こいつがあった。
俺が今跨っているバイクさ。
艶めかしい黒色に覆われた滑らかな車体。
待ちきれないと尻をふって誘う女のように、テールをこちらに向けていた。
早く私に跨って。あなたの手で私に熱を入れて。そう、言っているような気がした。
俺は熱に浮かされたような足取りでこいつに近づき、艶やかなボディラインを指先でなぞった。
そう、その指先で私を感じさせなさい。
間違いなく、こいつは俺を誘っている。
今思えば幻聴なんだろうが、その時ははっきりとその声が聞こえていたんだ。
傍らを見ると、元のこいつの所有者だろうか。ライダースーツに身を包んだ死体が転がっていた。
元彼、といったところか。
これだけの上玉をてなづけていたのだ、さぞいい男だったのだろう。
首から上がすっかり無くなっていたので、顔は確認できなかったが。
幸い鍵は刺さったままで、ガソリンも十分入っていた。
エンジンもすんなりかかり、喘ぎ声のような排気音を廃墟の町に響かせた。
「悪いね元彼さん。今から俺がこいつの新しい彼氏だ。大丈夫、幸せにしてやるさ」
首なしの元恋人に語りかけ、愛撫のように優しくバイクを加速させた。
行く当てなどなかったが、とにかくこの街を出たかった。
餓鬼の時分から生まれ育った、家族、友人、恋人と共に暮らした田舎の小さな、今では糞溜りになってしまったこの街を。
二十分とかからずに住宅街を抜けて、人気の無い荒地に延々と続くハイウェイに。
さすがにあいつらの姿は皆無だった。暮らす人間がいなければ当然か。
一息つこうと一旦バイクを止め、路肩にあった手頃な岩に腰をおろした。
煙草を吸いながら、語りかける。
「お前みたいないい女に会えた俺は幸せもんだな」
当然返事は無かったが、それでも俺は満足していた。
こいつのお陰であの街を抜け出せた、それだけで十分だった。
さてこれからどうしたものか。
煙草をくゆらせながらなんとはなしに考えていた時、腕に微かな痛みがあることに気付く。
見ると、そこかしこに小さな擦り傷、あるいは打撲といった怪我が無数にあった。
今の今までまったく気付かなかった。いつの間にこんなに傷を負ったのだろう。
一瞬で答えを得る。
当然、逃げ回っていた時だろう。それと、あいつらと大立ち回りを演じた時。
こういった怪我は、夢中になっている時は大抵時分で気付かない。
だが、何かの拍子に気付けば、あとは一気にその痛みを感じてしまう。
まあ腕の傷は大したことはないだろう。咬まれたような大きい傷は見当たらない。
咬まれたらそれこそ終わりで、こんなゆったりと落ち着いた気分にはなっていない。
そう思い、両腕を宙に上げて全身を伸ばした時だった。
背中に、腕の傷とは比較にならない痛みを感じたのは。
顔面が蒼白になるのが時分でも分かった。血が一気に引く音が聞こえてくるかのようだ。
そう、気付けば、その痛みは一気に意識の大半を占める。
まさかそんな――。
最悪の想像が思考を埋める。
いや違う。そんなはずはない。
何度も自分に言い聞かせたが、なんの慰めにもならない。
自分だけはやられないと考えるのは愚か者だ。運の要素はあれ、これは誰にも起こり得る事なのだから。
それでも俺は違うと、違ってくれと願わずにはいられなかった。
痛みが背中にあるというのも不安を煽る原因だった。どんな傷口なのか、自分で確かめる術が無いのだ。
鏡でもあれば可能だろうが、こんな荒野のど真ん中に都合よく鏡が落ちているわけがない。
そもそも鏡を手にしたとして、俺は本当に傷口を自分で確認するだろうか。
もし傷口をみてそうじゃないと分かれば、俺は多分大声で笑うだろう。
だがもし、そうだとしたら? その時俺はどうするだろうか。
一日も待たずにあいつ等の仲間入りをすると知ってしまったら?
人間としての意志が徐々に塗りつぶされていくのを安穏として待つと言うのか?
きっと耐えられない。耐えられるとは思えない。
いっそ死んでしまえば楽だろうが、上手く死ななければ、結局あいつらの仲間入りだ。
どうせ意識は無いのだろうが、それでも死後あのような生きた死体になって人間を食い漁るなど御免被りたい。
いや待て。咬まれたことを前提として考えすぎている。
もしかしたら咬まれていないかもしれないじゃないか。
背中の傷はあいつらから逃げる途中、どこかにぶつけて負っただけかもしれない。
思い当たる節はいくらでもあった。だがそれはあいつらと争った場合が殆どで、やはり咬まれている可能性も多々あった。
確認すれば話は早いのだ。どこか適当な民家か何かで鏡を調達すればいい。それではっきりする。
とにかくどんな傷口か確認することが大事なのだ。全てはそれから。
今のままではジレンマに押しつぶされてしまう。
そう決めて、とりあえずは手の感触だけでも傷を知っておこうと思い、上着を脱いだ。
背の部分にはじっとりと赤い液体が染みている。汗だと感じていたものが、自分の血液だったとは。
痛みを感じる部分――左の肩甲骨の辺り――に右手を回してみた。
悪寒が走る。
あいつらに咬まれた友人の傷を見たときの状態、歯形の傷。肉が裂けて皮膚がささくれ立っているような感じだった。
のこぎりで削られたとでもいうような。
友人はいつの間にか俺の前から姿を消していた。
最後に見せた、笑顔にそぐわない絶望の色を浮かべた瞳がとても印象に残っている。
指先の感触は、その時の友人の傷口と遜色ない気がした。
抉られたような肉の感触と、傷口の周りの破れた紙のような皮膚。
眼前に持ってきた指先には、自分の血液とちぎれた皮膚の端が付着していた。
続く
なんとなーく書きました。
今やってるのとは全く関係の無い内容です。
「私達も、彼らも、生きてるんです! 生きる権利があるんです!」
窓の外、下に広がっている大通りで誰かがわめいている。
それは恒例と言ってもいいもので、だから無視した。
テレビの電源を入れる。ヴン…と低い唸りと共に、画面が明るくなった。
「「ですが、国は彼らを危険だからという理由だけで殺戮しました!」」
「「彼らに触れると彼らのようになる、という根拠の無い理由を持ち出して、無辜の市民に人殺しを推奨し、挙句の果てには従わない者に対して罰を与えるようなことまで行いました!」」
なんてこった。
どこのチャンネルも、下でやってる演説を映している。ハウリングして耳が痛い。
どうせ、毎週末やっていることなのに。
仕方がないのでテレビを切った。天気予報を見たかったのだけど、どうやら諦めるしかないようだ。
「見てください、彼らだって生きているんです! 錯乱しているだけなんです! なのに、危険だと言って殺しまわった国を、政府を、許すわけにはいきません!」
ぱちぱちと拍手が鳴り響き、歓声まで巻き起こっていた。
しかしいつ聞いても、わけのわからないことを言っている。飽きないのだろうか? それともこんなことになるまでの経緯を見てなかったんだろうか?
まぁ、どうせ関係のないことなので無視しておくことにする。
ちょっと遅めの朝食を摂るため、エレベーターへ向かった。
「私の兄は、“患者”に噛まれたショックで、錯乱しました。その時、私は無理矢理兄から引き剥がされ、その上目の前で射殺されたのです」
なんてこった。
レストランのテレビでも、騒ぎが映ってやがる。
もう聞き流すことにして、とりあえずサンドイッチとオレンジジュースを注文した。
「こんな横暴をした人たちを、する人たちを、私は絶対に許しません!」
少女が壇上から降りた。
またぱちぱちと拍手が鳴り響く。ちらっと画面を見た限りでは、泣いている馬鹿も居るようだった。
朝食が運ばれてきた。
オレンジジュースをすする。既に三杯目だ。
「見てください、彼らが危険なように見えますか? 彼らは、私達と同じなんです。ただ、錯乱しているだけなんです!」
壇上に立っている中年の女の横に、誰かが立たされている。
「生きている人には、人権があります。私達は、それを尊重しなければなりません。私達は、彼らとは違うんです!」
心底どうてもいい言葉の数々。
横に居る人物は、口に革を噛まされ、手足には枷をつけられ、首輪とそれに繋がった鎖、という奇抜な格好で立っている。見ている間にも身じろぎし、手足や首を激しく動かすその様は、無理矢理させられているとしか思えない。
人権云々を語る前に、お前達が人権を無視してるんじゃないか。
そう思った途端に噴出してしまって、だからコップは空になってしまった。
「今こそ、我々は立ち上がらなければならないのです! こんな横暴を許す政府を打倒し、真の平和と平等をもたらすために!」
かつてない大喝采。おかげで耳が痛い。
部屋の窓際に置かれた椅子に座り、本を読む。
快晴なおかげで、窓からはほどよい温かみが流れ込んできていた。
ニュースを聞こうと思ってラジオをつけたのだが、どこを回してもこの演説しかやっていなかった。
もしかしてラジオ局もテレビ局も占領されたのかもしれない。
自称・人権保護団体に。
ぱら、とページをめくる。
「そして、錯乱してしまった彼らを正気に戻すために、惜しみない努力をしようではありませんか!」
またもや大喝采。音量を絞った。
しかし、窓からも流れ込んでくるおかげで、大した意味は無かった。
ぱら、とページをめくる。
そろそろトイレに行こう。
しおりを手探りしたが、どこにも無かった。
本から顔を上げて探し回ると、窓から流れ込んだ風のおかげで、部屋の隅にまで飛んでいってしまっていた。
トイレの中はなかなかに防音が効いている。
そのことに気づいたから、便座に座って本を読むことにした。
おかげで、随分と集中できる。
数年前、世界的によくわからない現象が流行した。その原因はわかっていない。
人がぱたぱたと死に、数時間してから蘇生する、というものだった。
人が生き返るのは喜ばしいことだ。
ただ、手放しで喜べない大きな難点があった。
蘇生した人は、他の人を襲う。正確に言えば貪り喰われる。
貪り喰われた人はどんなに軽傷でも数分後には死亡し、そして数時間後に蘇生した。
後はこの繰り返し。
面子を保とうとしたのか、政権を奪取しようとしたのか、とにかく対応が遅れに遅れ、気がついた時にはもうどうしようもなくなっていた。
右を見れば誰かが食われていて、左を見れば誰かが生き返る。
そしてそんなことをしている間に、自分が死ぬ。
そんな、地獄が体現したかのような状況。
そこで、国は警察だったか自衛隊だったかに通報するホットラインを作った。
襲われたら電話しろということだ。
だが、電話する時にはもう喰われているのが現状だったし、勘違いもたくさんあった。
おまけに、電話している時は無事でも、駆けつけてみるともう手遅れ、なんてのもあった。
だから、国は次の方針を打ち出した。
国民全員の武器の所持と使用の許可。ただし、相手が死者の場合に限る。
これでもう、誰も彼もが刃物鈍器銃器ありとあらゆる武器を持ち歩くようになった。死体損壊や死体遺棄なんて法律は、とりやめになったらしい。
ところが、また問題が起きた。ありとあらゆる犯罪だ。
殺されてしまうと、もうそれが生きていたのか死んでいたのか区別がつかない。
だから、色々な犯罪が流行った。統計によると一番多いのは強盗殺人ということらしい。次が強姦だとか。まぁ、どんな方法で統計を取ったのかよくわからないから、これは予測でしかないと思う。
で、犯罪が流行しすぎてもう誰も彼もが信用できなくなったので、というかむしろ死体の方が信用できるようになってしまったので、これはいかんと国がまた方針を打ち出した。
街の見回り、らしい。
自警団やら派出所やらなにやらを作って、定期的に見回る。怪しいと思ったら家宅捜索できる、なんて曖昧すぎる権限もあったとか。
多少は被害が減ったが、しばらくするとまた問題が出てきた。
一部の人が武力を手に入れてしまったことによる犯罪。おまけにその“一部の人”が全員グルなため、発覚しづらい。
内容は先程と大して変わらない。強盗殺人やらなにやら。
で、国は自暴自棄になったのか、ある方針を打ち出した。
囲いを作って、その中で暮らそうよ、というもの。
ある程度の大きさを区切って、一度徹底的に掃除する。それから仮設住宅を建てたりあちこち整備したりして、人を住ませた。
それ以外の場所は焼き払われた。この時、入りそびれた人がかなり居たとか何とか。
まぁ、焼け跡からは焼死体しか見つからないので、噂に過ぎないけど。
この方針が最後で、そして現在に続いている。
この間には家々の点検をして死体を匿っていないかチェックしたりと色々あったらしい。あまりにもこまごましすぎていて覚える気にもなれないけど。
でもって、この時の管理を上手くすり抜けた連中は、今でも死体を匿っている。
今、下で繰り広げられている中に、死体が引っ張り出されたのがその証拠。
ぱた、と本を閉じた。目が痛い。
「私の家族は、みんな、元気です。錯乱して、私が私ってわからないけど、ちゃんと生きています。死体じゃないんです。だから、殺さないで下さい」
女の子が一生懸命といった風にしゃべっている。テレビでも、下でも。
その女の子の後には、目の細かい檻に入れられた“家族”が居る。
何かをわめきながら檻に向かって体当たりを続けている。全身血まみれで片腕が無かったり顔の半分がえぐれていたり、普通の人間なら生きていないだろうその状況でも“生きている”って言う。
この思い込みだけは凄いと思う。
十人中九人はアレを“死んでいる”と判断する。
ところが、残りの一人は“生きている”と判断する。
その一人が集まってできたのが、自称・人権保護団体。いつの時代も、保護団体とつくものにまともなのは居ない。
ところで、夕飯は何にしよう。朝食が遅めの上にサンドイッチだったから、肉がいいかもしれない。
肉なら何にしようか。
「きゃああああああああああっ!?」
がしゃーん、と画面の中で檻が壊れた。中から、“家族”が飛び出してくる。
自称・人権保護団体のリーダーらしき人物が、落ち着きなさい、と叫んで飛び出した。
あっさり喰われた。ものの数秒で両腕が体から分離する。あの解体技術を何かで再現できないだろうか。
ひいいいいい、と悲鳴が聞こえた。ついでに血が舞った。その光景を見て決めた。今夜は鶏肉にしよう、脚がいい。
この瞬間、画面に『しばらくお待ち下さい』の文字がかかった。
仕方ないので、窓から眺める。声がよく聞こえないので窓を開ける。
壇の周囲から、人がさーっと引いて行く。残されるのは、警官のみ。銃を構えている。
「殺さないで、殺さないで!」
さっきまで壇上に居た女の子が、そう叫んでいた。
「彼らは生きているのよ! これは重大な…」
中年の女が次の台詞を言いきる前に、警官は発砲した。
女の子の後に迫っていた死体が、ものの見事に倒れる。頭を一撃。それで、生きてても死んでても沈黙する。
「お母さん、お母さん!」
女の子が正真正銘の死体にすがって泣いていた。物凄く滑稽で、思わず笑ってしまう。
アレはお母さんだったらしい。どうでもいいけど。
残った死体は、なかなかに速い動きで中年の女に迫った。警官が反応するよりも早く、女が把握するよりも早く、腕に噛み付いた。
「ああああああああああ痛い痛い痛い痛い痛い助けて助けて助けていやいやいやいやいやいや!」
悲鳴がこれ以上なく滑稽。この場面を撮影してなくて残念だ、間違いなく賞を貰えるだろう。観客全員の爆笑と共に。
女の肘から先が分離した。その直後、腕を咥えた死体の脳天が破裂した。
ばたん、と倒れる。ついでに血が広がる。
警官は、女にも銃を向けた。
「ち、ちがっ! こ、ころ、こっ、ころさっ…!」
また最後まで言えなかった。
傑作すぎて呼吸困難になった。
泣きじゃくる少女と笑い合っている数人の観客が前を通り過ぎてゆく。
少女は警官に連れられていた。
「いやいや、今回のは傑作だよ! 録画しといて良かった!」
「聞いた、あの悲鳴? もう笑いが止まんなかった!」
やっぱり、録画しておくべきだった。来週はきちんと準備しよう。
と、先週も同じことを思っていたのを思い出した。つくづく忘れてしまうらしい。
あちこちに残っている観客は、祭りの後のようなざわめきを演出していた。まだ残されている死体を撮影している人も居る。
これが別に止められない理由は簡単。あっちから死体を引っ張ってきてくれるからだ。しかも、三回に二回は失敗して死体を逃がしてしまう。
勝手に自滅してくれる上に、死体を処理できる。一石二鳥だ。
これに集まる観客の殆どは、演説の内容に興味があるわけではない。今の瞬間を見たいがために、朝から集まるのだ。つくづく暇人ばかりだ。まぁ、早くに来ないといい席はとれないから当然か。
路肩にある自動販売機に小銭を入れる。何となく、いつもは飲まない炭酸飲料を買った。
ごとん、と落ちてきた缶を掴み、死体を振り返る。
記念撮影はあらかた終わったらしく、誰もいなかった。そのうち、死体を処理しに警察が来るだろう。
「今夜の喜劇に」
死体に乾杯した。
>>503-512 続き楽しみにしてます。
ちょりーっす
投稿しようと思って書きすすめてたやつがやっと終わった
58370文字になったw
400字詰め原稿用紙なら291ページ分にもなるwww
まして空白・改行があるから実質400ページ超だなw
今回の分は特に特殊なネタがあるわけでもなく
映画のバイオハザード2を日本に置き換えたみたいな感じ
基本はバイオハザード2と同じような感じで進む。
ただ、今回試したのはゾンビもので小説書くとなると
群集劇のほうが全体像をとらえやすい。だから
あえて一人称視点で街を右往左往させることで街の全体像を描いた。
群集劇と条件を合わすために登場人物を多くした。
デッドライジングの登場人物と同じ79人
だから、ぶっちゃけ不自然な自己紹介が多い
ってことで、登場人物一覧を晒してから
文章投下するわ^^
一覧は登場順でネタバレにもなってるからそこんとこよろ
作中で「だれこいつ?」と思ったら見てね^^v
【登場人物一覧】
主人公…主人公
国松知事…?
木津孝允…行政法教授
長尾明…ラグビー部主将
朝霧進一…主人公の親友 クレー射撃部
島本洋介…サボリ屋
鷹取たつみ…医学部
夙川さくら…島本洋介の恋人
夙川英輔…さくらの父 開業医
夙川百恵…さくらの母 財閥令嬢
山科由香…夙川さくらの友達
吹田加奈子…教務 藤澤大学に6年勤務
大住賢治…杜美津医専 地域看護方法論の先生 ベテラン
溝口鉄平…杜美津医専警備員。60歳超
立花怜子…司法書士
生瀬忠雄…弁護士
郡山貞也…夏目交通社 車掌
藤阪健吾…72歳
高槻守…烏丸県警 特殊隊員
長池勉…鳥丸第6小学校6−2
南矢代(みなみやよ)…夏目アイランドシティ高等学校3年B組
武田尾介…夏目アイランドシティ高等学校古典教師
相野宗助…通報受信センター勤務
並河大輔…藤阪の介護士
八木洋子…並河の同僚
長谷智紀…陸上自衛隊
谷川貞治…徳光デパート職員
黒田庄…連続殺人犯
船戸栄子…夏目市立アイランドシティ図書館職員
大谷日丸…料理評論家
江住真紀…烏丸女子大学 英文学科在籍
星田英由…藤澤大学クレー射撃部部長
稲原純二…クレー射撃部部員
黒江来縁…籠城場所のオペレーター
守山幸助…ラグビー部 見回り部隊
石部太郎…ラグビー部 見回り部隊
志賀文義…ボクシング部 見回り部隊
堅田洋一…ボクシング部 見回り部隊
綾部たか子…出入り口監視
高津真理…出入り口監視
石原麻里子…出入り口監視
加茂三郎…主人公のゼミの先生
加古川清一郎…医学部教授
白浜浩一…医学部教授
南部(みなべ)祥太郎…医学部準教授
小泉大和…医学部助手
曽根竜夫…医学部助手
串本さなえ…医学部助手
椿春子…医学部助手
明石憲太…バスケ部主将
長柄光太郎…藤澤大学院生
奈良京子…主人公のゼミ同級生
草津邦介…院生
桜島栄子…首謀者
今宮怜子…桜島の友人
矢野聖丸…アイカ交通バス運転手
竹原佳奈美…おばさん三人衆
中畑加奈子…おばさん三人衆
岡山静子…おばさん三人衆
神辺英一…サラリーマン
倉敷三郎…教師
常山いずえ…教師
瀬戸健也…町工場勤務
伊部達郎…派遣社員
林野ますみ…主婦
バラーク小浜…黒人
藤井毅…ファイナンシャルプランナー
桜井義則…ブルー 烏丸県警 ショッピングセンター前派出所勤務巡査長
塩屋清十郎…イエロー ショッピングセンター 館長
米原由紀夫…レッド 神父
岸部五郎…オレンジ 民間駐車監視員
長居英和…グリーン サッカー選手
西宮いて子…ピンク 3年生
久宝寺優子…藤井の婚約者
船岡将…ゲームショップ店長
桂川弥子…上狛探偵事務所 助手
上狛月男…探偵
久米田寛…社会派コメンテイター
日根野草太…ショッピングセンター警備員
【本文】
烏丸県夏目市 軌跡
1988年 4月 国松氏、夏目市市長に就任
1988年 8月 国松市長、アイランドシティ構想を立ち上げる
1989年 2月 烏丸大震災発生、震度7 死者7500人以上の大惨事に
1993年 3月 アイランドシティ完成
1998年 6月 夏目市、政令指定都市に認定
2007年 4月 国松氏、烏丸県知事に就任
アイランドシティは陸の孤島だ。
もともと海だった場所を埋め立ててできた人工島。
それゆえ連絡橋が一つしかないという欠点を抱えていた。
俺がいま、満員電車に揺られてるのはそういう理由があるからだ。つまり、
この橋を経由しないと出入りができないので本土からの通勤、通学者は
必ずこの電車に乗らないといけないのだ。
しかも、俺の場合は烏丸女子大学と授業の始業時間がほぼ同じため、
毎日電車は藤澤大学の学生と烏丸女子大学の学生で埋め尽くされる。
2時間目からの授業のときなどはさらに、アイランドシティにお勤めの
サラリーマンも乗り合わせるから乗車率が半端なく大きくなる。
相手が女子学生ということもあり痴漢に間違われないように毎朝神経をすり減らさなくてはならない
もちろん『連絡橋』というだけあって、この電車の頭上では道路も引かれしっかり車も走っていたが、
車を持ってない俺にとっては何の関係もないことだった。
そもそも自動車通学は学校で禁止されている。アイランドシティは4つの区に分けられていて
北区が空港エリア、東区が住宅エリア、南区が商業エリア、西区が学校エリアになっている。
俺が向うのは西区にある、藤澤大学というごく平凡な大学だ。
隣接する建物には烏丸女子大学と杜美津医療専門学校がある。
大学組織としてはこの3つ、他に夏目アイランドシティ高等学校、烏丸第5中学校、烏丸第6小学校などがある。
これらの『学校』が西区エリアに点在するわけだ。先ほど話した「アイランドシティ大橋」は南区の商業エリアとつながっており、
西区の学校エリアに行くには電車が橋を渡った後も3駅ほど乗っていなければならない。夏目交通社のひく
この路線は12の駅があり、そのうち11個がアイランドシティ内に存在する。
環状線のようにぐるっと各区域を周っている。南区の商業エリアにある睦月駅で本土のJR夏目駅に
つながる線が引いてある。つまり、虫めがねのような形でアイランドシティと本土を結んでいるわけだだから、
環状線と言っても厳密には「1周」してないので、環状線とは呼べないのだが、利用者はそれを「環状線」とよんでいる。
やっと皐月駅に着いたころには、朝いちばんだというのにヘトヘトになってしまった。
東区住宅エリアがあるとおりこの島にもたくさんの人が住んでるが、それ以外にも
本土から島へ毎日通う人もいるのだ。夏目市いわく、朝も夜も人口総数が変わらないということが自慢らしい。
つまり、ドーナツ化現象を起こしてないということだ。種を明かせば夜になれば地元住人が帰って来るから
人数が変わらないだけなのだが…そもそも、夏目市はもともと都会と呼ばれるような都市ではない。
一昔前までは中核市になるのさえ困難な状態だった。それがこれだけ人口の盛り上がりを見せたのはやはり、
国松前市長の功績と言ったところだろうか。アイランドシティが完成したことで土地としての人気があがり、
夏目市は他の都市をグングン抜いて成長し、いまや大都市の仲間入りを果たしたわけだ。
もっとも、それがあの満員電車を生んでるかと思うと夏目市民ではない俺にとってはうんざりする材料でしかなかった。
藤澤大学自体夏目市の誘致でできたようなものだからあまり大きなことはいえないが…。俺は藤澤大学の学生だった。
「ちょりーっす」
誰かが声をかけてきた。クレー射撃部の朝霧進一だった。中学時代からの友達で、
俺の一番の親友だと思ってる。
「やれやれ、毎日満員電車じゃ疲れるぜ。社会に出るとあれが40年も続くのか…地獄だな」
朝霧は不満を垂れる。前方に、2人の人影を発見した。鷹取たつみと島本洋介だ。
2人は大学で知り合った友達だ。後ろからかるく肩を叩いて挨拶をする。
「うぃーっす」
「よぉ」
しばらく4人でくだらない世間話をしながら大学校舎に向かって歩いてると後ろ
から声をかけられた。
「ちょりーっす」
杜美津医専に通う夙川さくらだ。さくらは洋介の恋人でもあった。と、もう一人
知らない女がいた。
「あー、この子は山科由紀。同じクラスの友達なの」
「ふーん」
一通りあいさつを交わすと、島本と夙川は「それじゃあ」と別れの言葉を述べて
一緒に歩き去って行った。
「私も授業があるから」
というと、山科も同じ方向に歩き去って行った。島本は藤澤大学の学生なのに
1限目の講義をサボるつもりだろうか?まぁ、どうでもいいか。と考え直すと
俺は医学部の鷹取と別れ朝霧と一緒に大学の校舎に入った。朝霧も俺も法学部で1限目の授業は一緒だった。
というより、今日の授業に関しては全てのコマで一緒の授業を受講していた。
8時50分、授業が始まるまであと10分ある。
この大学の教室は大教室は主に前方に2つドアがあって、
檀上になってる教卓や黒板を挟んで左右についてる。小教室になると
左右どちらかの壁の前方と後方。なんにしろ2つのドアが確保されているのだ。
俺と朝霧は大教室の右のドアから入って前から3番目の座席を陣取った。
「やれやれ…今日も一日が始まるな」
「たしか、次は行政法の授業だったな」
「あー、木津先生の授業か…」
とりとめのない会話をしてるとチャイムが鳴り教授が教室の中に入ってきた。
木津孝允…50を超える初老の入ったこの男は行政法一筋で30年やってきた。
気弱でくたびれた風貌だが帝国大学の出身で行政法の世界ではそこそこ名が通ってるらしい。
「じゃあ、授業始めるよ。先週のレジュメ出して」
授業が始まって30分が経った頃、いきなりフラッシュが教室を包んだ。
驚いて前方の入口ドアを見るとサングラスをかけた赤い服の女がカメラを
片手に意味ありげな微笑を洩らしていた。最初は「授業の邪魔をするな」
と言わんばかりの顔をしていた教授も、女の姿を見ると苦虫をかみつぶしたような顔をして、
あたかも何もなかったかのように授業を続けた。
「おい、あのきれいなネーチャン。誰なんだろうな」
「さぁな、院生じゃないか?」
「おい、そこ静かにしなさい」
教授に怒られ、俺と朝霧はひそひそ話をやめにした。
再び入口を見るとそこにはもう女の姿はなかった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音がやっと行政法の授業が終了したことを俺たちに告げる
「ん、じゃあ今日はここまで。次回は衆議院の優越性について
行政法の観点から見て行くからちゃんとおさらいしておくように」
朝霧が気だるそうに肩を回しながら語りかけてきた。
「ふぅー、やっと1限目が終わったな。しかしさっきのネーチャン。
なんだったんだろうな」
「まだ気にしてるのかよ。それより次はパンキョーの社会科学が
あるんじゃね?急がないと席がなくなっちまうぞ?」
「それもそうだな」
俺と朝霧は一般教養科目である「社会科学」の授業を受けるため次の教室へと移動した。
藤沢大学の教室の間取りは前述したとおりだが、基本的に藤澤大学では大教室を使うことが多い。
教室のキャパシティの関係で授業によって使う教室は違うがどの教室も300人は優に使える広さのところばかりだ。
現実問題として4人掛けの机に見ず知らずの4人がかけるということはめったにないので、
学校側としては受講人数の2割増しくらいの教室を用意していることが多い。
藤澤大学は俺が所属する「法学部」のほかに「経済学部」「文学部」「国際言語学部」「医学部」「理学部」
「工学部」「栄養学部」「看護学部」などを持っている。少子化時代の近頃には珍しく大人数…いわゆる「マンモス大学」とよばれている。
それだけの人数がいることもあってか校舎はかなり広く多い。理学部と工学部は別にキャンパスを設けているからいいとして、
残りの学生はこのキャンパスで学問を学ぶため、建物によって学部が分けられている。おもに1号館を使うのが法学部・経済学部
2号館が文学部・国際言語学部3号館が食堂・図書館になっていて4号館が医学部5号館が残りの看護学部・栄養学部という具合になってる。
もちろん、同じ大学の学生なので他学部の校舎に侵入禁止ということには
なっていないが(一部、実験の都合上立ち入り禁止になっているところもある)
基本的な住み分けはされている。一般教養に関しては例えば、「社会科学」なら1号館
「国際言語」なら2号館といった具合に割り振られるわけだ。
食道・図書館になっている3号館を除いてどの建物も4階建てになっている。
1階は小教室、2・3階が大教室。4階が実験室や教授の待機室などに
なっている。だから、法学部である俺たちが社会科学を受けるには
階を移動するだけでいいのだが、「社会科学」の授業は単位が取りやすいと
評判で受講人数がかなり多かった。一番大きい教室を使っていても「立見席」が
出るほどだ。俺が慌てているのにはそういう背景もあった。
534 :
セイレーン:2009/05/16(土) 20:21:07 ID:iVefzFcmP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(7)
「な、何だこれは・・・!?」
袁紹は目の前の光景が信じられず、その場に立ち尽くした。
目の前に広がる、直属の精鋭たちがいるはずのキャンプは、見張りに立っている少数の兵以外は誰もいなくなっていたのだ。
「どうなっている、なぜ誰もおらぬ・・・。」
その言葉に気付いたのか、近くにいた隊長らしき者が駆け寄ってきてひざまずいた。
「申し訳ありませぬ、勝手ながらここの兵も多くは暴動の鎮圧に向かわせました。
昨日発生した暴動は他の多くの隊を繰り出しても、それを飲み込んで広がるばかりで・・・これ以上広がってはまずいと判断し、殿直属の兵も使わせていただきました。
非常時ゆえ、ご容赦願います。」
袁紹は放心したように黙ってそれを聞いていた。
「しかし心配ありませぬ、殿の周りにはまだ5百の兵を残しておりますので・・・。代わりに殿の護衛に当たるよう、今5千の兵を移動中です。」
それを聞いて、袁紹はいくらか安堵した。
考えてみれば、袁紹はこの官渡に70万の大軍でもって押し寄せてきたのだ。半分になってもまだ35万、曹操軍が敵う数ではない。
それでも、自分の周りが手薄になっていることには不安を覚えた。
「離れた陣にいる将たちも大至急呼び寄せろ。
食糧庫の淳于瓊以外は、この本陣の周りに集めて守りを固めさせよ。」
袁紹はそう指示を出すと、朝食をとるために再び幕舎の中に戻った。
自軍には70万の兵がある、10万の兵が暴動を起こしても30万の兵で鎮圧すればいい。そもそも曹操軍の兵は元々7万程度だったのが最初の戦闘でさらに減っている訳だから、20万もいれば十分守りきれる。
袁紹は少し急ぎ気味に朝食を食べ始めた。
・・・しかし、その判断は誤りだった。
その暴徒が増殖する性質のものであることも、兵を集中させて人口密度を上げれば上げるほど増殖がひどくなることも、そこにいる皆が知らなかった。
535 :
セイレーン:2009/05/16(土) 20:24:01 ID:iVefzFcmP
訂正、今のは(8)です。
536 :
セイレーン:2009/05/16(土) 20:25:17 ID:iVefzFcmP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(9)
朝食が片付いても、袁紹はしばらく幕舎の中でじっとしていた。
むやみに動いても仕方がないし、ここは一応5百の兵に守られている。
増援が来るまでは動かない方がいい。
しかし・・・増援が来るまでの時間がとても長く感じられる。実際に長い時間が経っているのかもしれない。
さっきちらりと外をのぞいた時、日はすでに高く昇っていた。
それにさっきから気になるのは・・・少し前から、時折かすかに人の声のようなものが聞こえる。よく耳を傾ければ、悲鳴のような・・・。
(まさか、な・・・。
ここは本陣だぞ?)
袁紹は思わず身震いした。
袁紹とて、戦に慣れていない訳ではない。
袁紹は他からはお坊ちゃん育ちなどと言われるが、武人として一通り武芸はできる方だし(少なくとも若い頃は)、戦で命の危険にさらされたこともある。
しかし今回は何かが違う。
暴動であれ反乱であれ、敵は勇ましい声をあげて突っ込んでくるものなのだ。それが今回は静けさの中で、悲鳴だけが響いてくる。これは不気味だ。
いつの間にか、鼻をつく嫌な臭いが漂っている。
少したってそれが濃くなると、袁紹はそれが死体の腐った臭いであることに気付いた。
戦場ではよくある臭いだが、自陣の奥深くでそれを感じることが袁紹の気に障った。
「おい、誰かおらぬのか!?」
袁紹はついにいたたまれなくなり、立ち上がって人を呼んだ。
すると、幕を体で押しのけるようにして、一人の兵士が中に入ってきた。
下を向いたまま、あいさつもせずに、である。
(無礼な!返事ぐらいしたらどうなのだ。)
そう思ったが、袁紹はとりあえず人が来たことに安堵した。
「おい、周りはどうなっているのだ?」
袁紹はその兵士に聞いた。
537 :
セイレーン:2009/05/16(土) 20:26:52 ID:iVefzFcmP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(10)
兵士は答えなかった。
無言で足を引きずりながら、真っ直ぐ袁紹に近づいてくる。
近づくにつれ、袁紹は様子がおかしいことに気付いた。
だらりと垂らした腕は片方が血にまみれ、えぐりとられたような傷がある。肌は血の気を失って青黒く、ところどころ破れて血が出ている。その血はほとんど、黒く固まっている。
「負傷したのか!?
無理に来ずともよい、下がれ。」
前半はとりあえずだが、後半は本気だった。
外見もさることながら、その兵士はひどく臭い。
幕舎に入って来たとたん、ムッとするほどの腐臭が立ち込めた。まるで、その兵士自身が腐っているかのように。
しかし袁紹の意図に反して、兵士は近寄ってくる。
突然、兵士が手を伸ばして袁紹の腕をつかんだ。
「何をする!?」
袁紹は大慌てで振りほどこうとしたが、兵士は強い力でしがみついてくる。
袁紹はとっさにつかまれた腕を強く引き寄せ、全体重をかけて兵士のバランスを崩した。
「ええい、悪く思うな!」
次の瞬間、前のめりに倒れ掛かる兵士の腹に袁紹の蹴りが入る。ふらついたところを蹴りつけられて、兵士はあっけなく倒れた。
「無礼な、それ以上近寄ると首をはねるぞ!」
袁紹は激昂して剣を抜き放った。
兵士はずるりと起き上がり、顔を上げて袁紹の方を見た。今まで兜に隠れて見えなかった顔が、光の下にさらされる。
その顔を見たとたん、袁紹は戦慄して剣を握り締めた。
>>513-519 ブラックですねwでも面白かったです。
次回作というか現状進行中の続きもお願いします。
俺たちは「3人分」の座席を確保した。しばらくすると、経済学部である島本がやってきた。
「やー」
「おいおい、結局1限目は休んだのか?」
「なーに、出席取らない授業だから大丈夫だって」
「やれやれ」
チャイムが鳴ると社会科学の講師が入ってきた。はげ散らかした黒縁めがねのオッサンだ。
名前は野崎俊夫。年齢は38そこそこ。
「ほら、お前ら静かにしろ。授業を始めるぞー」
授業が始まって数十分が経過して…
野崎が教卓の前で一生懸命講義を行っていたが、
朝霧はシャーペンをくるくる回して遊んでいて授業は聞いていないようだ。島本に至っては机に伏して寝ていた。
かくいう俺も意識は社会科学とは全然関係のないほうに飛んでいってた。そんなときだった。
体調の悪そうな男が右のドアから入ってきた。ドアは開けっ放しになっていたのでふらふらと中に迷い込んできた。
そんな感じだった。男は前に置いてる
プリント類が置かれた机にあたる。プリントがバサッと床にちらばった。
その音でみんなが一斉にそちらを向く。野崎も異変に気がついたようだ。
「ちょっと、キミ、ねぇ。体調が悪いならさっさと帰ったほうが…」
いきなり男は近くにいた女に噛みつき始めた。
「ぎゅうぅおぉあああああああああああ」
女が悲鳴のような声を上げる。首をかみちぎられた女はしばらく目を見開いて
口をパクパクさせていたが首の頸動脈から大量に出ている鮮血の勢いが落ち付いてくると
同時に床に倒れて動かなくなった。死んだ…ということだろうか?
「てめぇ、なにしてんだよ!」
近くにいた男子学生が男を取り押さえる。
野崎が茫然自失状態になっているので近くにいた別の学生が携帯電話を取り出して119にかけた。
「おい、だれか、教務と医務を呼んで来い!あと救急車だ!」
怒号が飛び交う。流石に写メを撮る輩はいなかったものの興味本位のギャラリーが女を中心に輪を作っていた。
「救急車はすぐに来るそうです…野崎先生?」
「ん…あぁ、よくやった。教務に連絡を…」
「もうしました」
学生と野崎が会話をしている。俺は混乱は収まったと思った。すると
「ぶごげよぁああああああああああああ」
今度は全く別のほうから悲鳴が上がった。みんな女に集中してて気づかなかったが
左右のドアからさっきの男と同じように青い顔をした奴らがフラフラと教室に入ってきていた。
人数は7,8人といったところか
「おい、お前ら。なにしてやがる!」
血の気の多そうな男子学生が青い顔をした人たちに殴りかからんばかりの
勢いで詰め寄った。男子学生はラグビー部主将の長尾明だった。
花園への切符をつかむのにいつもあと一歩のところで惜敗している
ラグビー部を率いているということだけあって、非常に体格はよかった。
「てめぇら。ただじゃすまさ…」
一瞬だった。青い顔集団は長尾に群がりあちこちを噛み切り始めた。
「や…やめ」
ブジャブシャ
肉片がちぎれる嫌な音が教室内に響く。
「こいつはやべぇ」
俺は朝霧に耳打ちすると、早くこの場から逃げるように促した。
みんな同じ考えに至ったようで女子学生の「キャー」という悲鳴を皮切りに教室内にいた人たちが
いっせいに出口へと詰め寄った。青い顔集団は右のドアからやってきたので必然的に
出口は左のドアだけということになるが、ただでさえ大人数の授業なのに一斉に出られるわけがなく、
案の定出口周辺は混雑を見せた。
「落ち着いて!落ち着いて!」
野崎が意味のない叫びを続ける。
「くそ、こんなんじゃ出るに出られないぞ」
青い顔集団は次々に人に襲い掛かり教室内を血で汚していく。カッターナイフなどで
反撃する者もいたが、なぜか青い顔集団には効果がなかった。人ごみで混雑してる
出口越しに声が聞こえた。
「教務です!どうかしたんですか!野崎先生!いったいどうしたんです!
学生が倒れたと聞いたんですか!」
出るのも困難だが、その波に逆らって教室内に入るのはもっと困難なようだ。
我先にと逃げようとする学生たちの波で教務の人はなかなか教室の中に入ってこれない。
「医務の先生も連れてきました!救急車が来るまで応急処置を!
ちょっと、あなたたち、なにやってるの。どきなさい!なんなの?」
最後のほうは押し寄せてくる学生への批判になっていた。
「ちょっと、とおしてちょ…ぶぎょぉああああああああああ」
人波の流れが収まった。俺はなに起こったのか最初はよくわからなかったが、
あることに気がついた。青い顔集団は外から入ってきたのだ。ということは…
むしろ外に仲間が多くてもおかしくはない…
「きゃー」
出口に詰めかけていた人たちの阿鼻叫喚の叫び声が教室内に響いた。逆流して教室内に入ってくる学生も
いたが大多数は前と後ろを的に挟まれて身動きが取れなくなっていた。
ふと左出口を見てみると人が少ない上に青い顔集団もいない。左出口に人が詰めかけていたせいで
右出口にいた青い顔が左のほうへ移動していたのだ。
「いまのうちだ!」
俺は右出口を指差した。朝霧も俺の意図に気付いたらしく島本の肩を叩いて顎で出口を指した。
机の上を飛び越えて右出口へと向かう。一人の青い顔のやつがこっちに気がついて
のろのろとやってきた。が、俺たちが出口を出るほうが早かった。
教室を出ると俺たちは教室から一目散に逃げ出した。
予想通り、教室の外も青い顔集団が湧いていた。ふと後ろを振り返ってみると
眼鏡のおばさんが血まみれでぐったり倒れこんでいた。吹田加奈子。
教務課として6年藤澤大学に仕えていた彼女の人生はとうに終わっているようだ。
とろとろ歩く青い顔集団を避けて俺たちは校舎の外に出た。
「くそが…あれはなんなんだ?」
島本がうんざりした調子でそうつぶやく。
「よくわからないが、ふらふらしてるし顔色も悪い。何かの病気に感染してるのは確かだな」
「それはどうかな?」
いきなり後ろから声が聞こえた。
「鷹取!無事だったか」
「あぁ、こっちの校舎もひどいもんさ。というよりおそらくこっちの校舎から被害が出たんだと思う」
「どういうこと?」
「解剖中の遺体がいきなり起きだして学生を襲い始めたらしい。もっとも俺は話を聞いただけだが…」
そういえば、鷹取がまとっている白衣にも埃などの汚れのほかに血があちこちに
付着していた。どうやら鷹取も修羅場を抜けてここへ来たらしい。
「まぁなんでもいい。それより警察だ。ことによっちゃ感染封鎖も必要だろうし…」
「だからそれがどうかと言ってる」
「なんなんだよ?説明してくれ」
「死体は起き上がらない。あれは病人じゃなくて死体が動いてるんだと思う」
「ゾンビか?お前、死体解剖しすぎて頭がおかしくなったのか」
島本が悪態をつく。朝霧がそれをなだめた
「イラつくのはわかるが落ち着け。あれがゾンビだろうと病人だろうと俺たちが判断することじゃない。それよりも早く110番通報しないと…あれ」
朝霧が何かを見つけたようだ。
「あの横転してる白いワゴン…」
朝霧が指さした方向を見てみると確かに横転した白っぽいワゴン車が遠くに見えた。
車が横転してるなんて尋常じゃない状態だと思ったが、
ゾンビ騒ぎに比べれば可愛らしいもんだと自分を納得させた。
「あの車が何なんだ?」
「あれ、救急車じゃないか?」
「なに!」
俺は目をほぞめて右手でサンバイザーをつくる。確かに、よく見ると赤色の回転灯
がついてるように見える。白いワゴンが横転してるだけなら事故で済むが緊急車両が
横転してるとなるとそうはいかない。俺たちはその「白い車」に走って近づいた。
はたして、そこにあったのは救急車だった。運転席に座っている隊員は血まみれで
すでに死んでいるようだ。首や腕が何者かに噛み切られているようだ。
何者か?あいつらに決まってる。しかし、救助隊員というのは一人で行動することはないと
思うのだが、もうひとりの救助隊員はどこにいったのだろうか?
最近、作品の投下が多くてwktkが止まりません。
作者さん達の邪魔にならないようにと思って書き込みを控えてますが、いろんな作品を読ませてもらえて楽しんでいます。
どうもありがとうございます。いつも感謝しています。
>>1 今、関西圏で激増する、新型インフルエンザ感染者に対して、タミフルやリレンザが
大量に投与されている。
・・・タミフル服用後の錯乱状態による飛びおり自殺とか、また起こるのかな?
新型インフルエンザ=ウィルスが、
精神錯乱化すら含有した、ウィルスに突然変異したりしないよな???
――――――――――――――――――――ー
【新型インフル】 橋下知事、「休校を大阪府全域に拡大」表明
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1242580287/512 512 名前:名無しさん@九周年[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 03:41:15 ID:8m5V4Ig8O
タミフル服用による飛びおりとか、また起こるのかな?
うちの旦那、前にタミフル服用後、妄想で暴れたけど、
本人止めるの無理だった。
ドアの前にバリケード作って、救急車来るまで必死だったよ。
ノミの夫婦で、ひ弱な旦那ですら制止出来ないかったから
運動部の高校生とか、母親一人じゃ難しいだろうな。
騒ぎ過ぎ程度で収まるといいね。
―――――――――――――――――――――――――ー
つまり、今後、新型インフルエンザウィルスが、
タミフル投与後の感染者に見られる錯乱化、凶暴化傾向をも
組み込んで突然変異を遂げ、「ゾンビ・ウィルス」が誕生して
ドーン・オブ・ザ・デッド(リメイク版)
ディ・オブ・ザ・デッド(リメイク版)
全力疾走型ゾンビ大発生が、現実になるんですね、わかります
>>545 作者としては相槌というか
途中レスくれたほうがモチベーション保てると思うよ
誰もいないスレに黙々と文章貼るの
カナシスwwwww
549 :
ポメラニャ:2009/05/18(月) 16:46:16 ID:kb2/FjXJ0
>>461 卓、進藤、男の3人は銃器店に向っていた。
目的は武器の入手と道中の一般人の保護。
今の所ゾンビの姿は見受けられなかったが、遠くからはけたたましいサイレンの音が聞こえる。
「しかし、何で現場からあんな離れてたのに、デパートに、ゾンビがいたんだ?」
卓がやや息を切らしながら言う。
「おそらく、ウィルスがもうけっこう広まっていたんだろう。まだ確かな証拠は無いが、老人ばかりが真っ先に感染しているところを見ると、ウィルスは高齢者に感染しやすい性質を持っているのか、抵抗力の弱い者はすぐ感染してしまうのか、どちらかだな。
どっちみちやばいことに変わりはない」
もうデパートから、けっこうな距離を走っているのだが男は呼吸も乱さずに答えた。卓がよく見ると男は身長こそ高くないものの、胴は鍛えぬかれた筋肉が内側からジャケットを押し返しており、首は太く、
耳は餃子のように潰れていた。これはかなり柔道をやってきた証拠だ。
加えて、拳は紫色を帯びており、ぼこぼこになっている。
(この人、かなり武道をやってるな・・・)
思いつつ、卓は視界に銃器店を捉えた。
銃刀法が改正されてから、町には銃器店が並ぶようになった。犯罪は増加し、散々話題になったが今はありがたい。
「俺が先に入る」
高校生たちが息を整えながら、ドアを開け店内に突入する男を見送る。
ややあって男の いいぞ、という声が聞こえ、進藤が入店し、卓が続く。
前々から興味はあったものの行く機会が無く、卓は銃器店に入るのは初めてだった。
ここはそこそこ大きめなのだろうか、学校の教室1つ分ほどのスペースがあり、右には銃のパーツやマガジンなどのオプション的なものが壁に吊られている。
正面には透明なケースに入れられたハンドガンが並び、それがカウンターの役割も果たしていた。カウンターの向こうの壁にはショットガンやライフルが並んでいる。
デザートイーグル50AEとかVP70なんか選択させるなよw
プロの警官が素人に何を持たせるかというのは結構重要だからな
551 :
ポメラニャ:2009/05/18(月) 22:17:35 ID:4UA71hl50
>>550 がんおたをなめないでください(にわかだけどw)
>all
格闘技の技名がちょいちょい出てくると思いますので、どんなのかイメージができない場合は言ってください。
>>549 卓と進藤が都会に出た田舎者よろしくきょろきょろしていると、男はグロック19用のマガジンを何本かと9mm弾薬の箱を取ってカウンターに広げ、マガジンに弾をこめ始めた。
「お前ら銃の知識はあるか?」
男が作業しつつ聞く。
「俺は好きだぜ、こーゆーの」
進藤がカウンターを飛び越え、壁にあったレミントンM870を抱え、言う。
「じゃあ好きなのとりあえず選んでもってこい」
「代金はどうすんの?」
「国から出るだろ」
聞いた途端、進藤はジャーキーを目の前にしたポメラニアンのように目を輝かせ、バットを放り出しカウンターの向こうからケースを開けて、いくつかの拳銃をカウンターに置いた。
「ガバ系使いてぇけど、俺45口径撃ったことねぇし、ベレッタかグロックかなぁ、お、ハイパワーあんじゃん、でもマグナムリボルバーとかも渋いし(ry」
はしゃぐ進藤をよそに卓は男の背後に移動して、弾こめを手伝い始めた。
「いいんすか?こんな状況とはいえ、窃盗っぽいですよ?」
「警官の俺がいいっつってんだからいいの。それよかお前も銃選べ」
「俺はあんま詳しくないんで、進藤に適当に見繕ってもらいますよ」
「そうか・・・そういえば自己紹介がまだだったな」
「そうすね、俺は黒崎 卓です。むこうのちゃらいのが進藤。17っす」
「高校生か。俺は・・・」
と、男が言いかけた瞬間、室内に扉の開く音が響いた。
つかの間の無音。続いて男と卓から見て進藤側、カウンター奥の扉から異臭とともに、白髪頭の男が出てきた。ソンビだ。
「くっ!」
552 :
ポメラニャ:2009/05/18(月) 22:19:23 ID:4UA71hl50
>>551 進藤は両手に持っていた銃をとっさに男へ向け、引き金を引いたが、数分前までケースに飾られていたそれに弾丸はこめられておらず、カチッと小気味いい音がなるとともにゾンビは進藤へ自分の手が届く範囲へ移動した。
男はすぐにグロックへマガジンをたたきこむが、進藤が邪魔で撃てない。ゾンビの両手が狼狽した進藤の右手を掴む。
「進藤!前蹴り!!」
卓が叫ぶと進藤は、条件反射で右の中段前蹴りを繰り出していた。
靴という武器で強化された進藤の中足がゾンビの腹部へ深々と突き刺さり、運動エネルギーが踏みとどまるということができないゾンビを真後ろへと倒す。
「どいてろ!」
男がカウンターを飛び越えて、銃を下方に向け、引き金を2度絞ると、ゾンビの頭が爆ぜ、室内を進藤の荒い呼吸音が占領した。
∧∧
( ,,)
/ |
〜(__)
>>545 投下する側から見ると、良かれ悪かれ反応があった方がやりがいがあるので…。
分かりにくいところとか指摘してもらえると助かりますし、単なる応援でもやる気に差が出ますから。
「とりあえず110番だ…」
俺は携帯電話を取り出し、110番にかけた。
―はいもしもし、110番です。どうされましたか?
「事故があったみたいで救急車が横転して中で人が死んでるんです。
あと青い顔の集団が人を襲ってるようなんですが…
―青い顔?顔にペイントしてるんですか?
「違います。体調が悪そうなってことです」
―体調が悪そうなのに人を襲ってるんですか?
「そうです。早く来てください。場所は…」
言い終わるまえに電話の向こうから深いため息が聞こえた。
―アイランドシティだろ?さっきから同じ通報ばかりだよ。
コスプレ集団が暴れてるだけじゃないのかね?
「でも…!」
―いたずら電話はやめなさい。君は知らないと思うが夏目市の通報受信センターはアイランドシティにあるんだよ。
だけど、建物の外は平穏そのものだよ。いい加減にしないといたずら電話は罪に問われるんだぞ?
「聞けよ。俺が言ってることは事実だ。みんなやられちまったんだよ!」
―はいはい、わかったわかった。じゃあ警察官を向かわせるから。
何もなかったら刑事罰を覚悟しておけよ。で、場所は?
「藤澤大学だ」
―じゃ、その場で警察官の到着を待ってな
電話は切れた。警察の態度とは思えない横柄なものだ。
通報受信センターの職員が警察官かどうかは知らないが…
俺は藤澤大学のキャンパスの前に設置されているアイランドシティ案内図へ歩き寄った。
「どうかしたのか?警察は来るって?」
朝霧が心配そうに問いかける。
「大丈夫。かなり懐疑的ではあったが一応派遣してくれるそうだよ。警察官をな…」
「何を探してるんだ?」
「通報受信センター」
「あぁ、あれなら…」
朝霧が地図上の一点を指差す。
「ここだよ」
東区の住宅エリアの中にひっそりとその建物はあった。
「どうも、この現象は町全体で起きてるらしい。だが、東区の通報受信センターは
まだ何も起こってないようだ。これからどうする?」
「どうするって警察の到着を待ったほうが…」
「これがもし本当に『バイオハザード』なら、時間がたつほど不利だ。
夏目市は政令指定都市に認定されてる。つまり人口は50万人以上だ。
まして、アイランドシティはそのシェアのかなりの人口を有している。」
「敵が増えるってわけか」
「俺たちがぼけーっと社会科学の授業を受けてる間に…な」
俺は朝霧のほうを見て行った。朝霧は釈然としない顔をしていた。
「警察官が来たにしてもこの状態を見れば何らかの手を打つだろうし、
俺たちがいても警察官に伝えられる情報はわずかだ。それよりも早く逃げたほうがいい」
「わかった…だけど…」
島本が申し訳なさそうな顔をしていった。
「杜美津医専によっていいか?」
なるほど…一同は納得した。
「わかったけど、俺たちも念のためについて行くぜ。杜美津医専は部外者の立ち入りはどうなんだ?」
「大丈夫。あたかも学生ですって顔をしてたら堂々と校舎内まで入っていけるさ」
杜美津医専の校舎からチャイムの音が聞こえた。ちょうど昼休みに入ったようだ。
警備員の人にかるく会釈をすると俺たちは堂々と杜美津医専の建物の中に入った。
「ほー、医専ってのはこんな感じになってるのか…」
医学部の鷹取はこんな状態にもかかわらず興味津津で回りをきょろきょろしていた。
鷹取は血まみれの白衣だと流石に怪しまれるので白衣はゴミ箱に捨てた。
「さくらはいつも決まった食堂に行く。そこに行こう」
俺たちは喋りながら昼休みでにぎわう人ごみを縫うように歩いた。
「しかし、あれはなんなんだろうな…感染とかゾンビじゃなくてテロリストかも?」
「死体のテロリスト?笑える」
そういった鷹取の眼は全然笑ってなかった。
「だけど、死体がよみがえるなんてことあるか?確かに俺たちはゆとり世代とか
呼ばれてるし一番家庭用ゲームに親しんでいる世代であるのは間違いないがゲーム
と現実の区別くらいつくぜ」
「ふーむ…」
俺は青い顔集団の正体のほかにもう一つ疑問に思っていることがあった。あいつらはなぜ、
藤澤大学のキャンパスから出現したのだろう?いや、近くの別の場所から湧いてきた可能性も否めないが、
隣接する杜美津医専が無事だったことを考えるとやはり藤澤大学から湧いてきたと考えるのが自然な気がする。
食堂は2階にあった。杜美津医専は校舎としては8階建てで面積は広かったが総合大学ではないので建物はこれ一つしかなかった。
「お、さくら〜」
食堂で夙川を見つけたようだ。
「あー。洋介?それにみんな〜何しに来たのぉ?」
相変わらずのんびりした調子で夙川は答えた。夙川は山科と一緒にシャケ定食を食べていた。
「実は大変なことが起こったんだ。一緒に来てほしい」
「えー、でも次の授業単位落とすとやばいしぃ。大住の授業サボるとヤバいんだよ」
「大住って?」
「地域看護方法論の先生だよ。大住賢治。ベテランらしくてチョー厳しいんだ」
「そうなんだ、でもこっちはもっと大変…」
ガシャーン
誰かが食事をまき散らしたようだ。俺は単純にそう思っていた。
違った
「奴らだ!」
「くそ、あんなにノロいのにここまで来たか!」
「いくぞ!」
島本が夙川の腕をとる
「え?なになに?どーいうこと?」
山科も心配そうについてくる
「大丈夫なの?ねぇ、なんなの?」
「君も一緒に来い」
俺は山科に同行を促した。山科は何も言わずに伏し目がちについてきた。
「パニックはごめんだ…」
本当なら食堂にいるみんなに逃げるように促さないといけないのだが…。医専というだけあって医療関係者がすぐに駆けつけてきた。
周りはざわついているがパニックというより好奇心で青い顔と倒れている人を中心
に円を描くように集まっていた。藤澤大学の時と同じだ。ということはこの後の流れも同じはずだ。
俺たちは階段の近くまで行き逃げ道を確保すると大声で叫んだ。
「パンデミックだ!」
「みんな逃げろ!うつるぞ!」
「伝染病だ!」
山科と夙川は何が起こったのか分からず目を白黒させている。
「なんだって?」
「キャー」
食堂から大勢の悲鳴が聞こえる。あと数秒後には
階段に続くこの通路はごった返して人ごみで動けなくなるだろう。
「青い顔のやつには近付くなー」
それだけ大声で最後に食堂に投げかけると急いで1階に下りて校舎の外に出た。
急いでその場を離れたかったが警備員に道をふさがれてしまった。
「あの〜、どうかしましたか?」
名札には溝口鉄平と書かれている。おそらく定年を迎えた後に警備員になったと
思われる年齢風貌だ。どう話したものか…
増えますように
562 :
545:2009/05/19(火) 00:21:11 ID:W3dgUW0v0
>>554 レスありがとうございます
ただの書き込みでも、そのあと長時間だれも書き込まないと「自分の書き込みに問題が?」とか思っちゃいます
苦労して作った小説の書き込みなら、反応があったほうが良いですよね
でも書き込みすぎはスレ汚しになりますし、持ち上げたレスをし過ぎると荒らしが来ますし……
まぁ反応が少なかったとしても、私は楽しんで読ませてもらってます。
>>513-519 は私好みでした。面白かったです。
あまり細かい感想を書いて他の読者さんの気に触ってもいけないので、簡単な感想で申し訳ないですが(汗
「すいません。私席をはずしていたもので…不審者が中に侵入したんですかね?
なにやら2階のほうで騒ぎになってるようですが…」
「あぁ…えーと、食中毒ですよ。あなたも早く逃げたほうがいい」
「食中毒で?」
完全に墓穴を掘った。溝口は怪しむような眼でこっちを見ている。
どうやら俺たちが2階で騒ぎを引き起こした張本人だと思ってるらしい。
当たらずとも遠からずだが…
「ちょっと、そこで待ってなさい。君たち、学籍番号は?」
夙川がフォローを入れる。
「この子たちは私の友達なんです。私の学籍番号は45283900です」
「じゃあ、君たちは部外者なんだな?」
どうやら溝口の頭の中では内部犯の夙川が外部の俺たちを引き入れて騒ぎを起こしたという
構築がなされているようだった。
と、そのとき。
「ぐぉあああああああああああああ」
溝口がいきなり悲鳴を上げた。溝口の体で死角になっていたが青い顔のやつが
すぐそこまで来ていたのだ。
「くそぉ、なにするんだ!」
左腕の骨が見えるほど深く噛みえぐられた溝口は腰につけた警棒を抜いて右手に
構え、青い顔のやつの顔面に何発も振り下ろした。半狂乱状態になっていた。
「け・警備員さん!おちついて」
我に帰った警備員は驚きの声を漏らした。
「大住先生!?な…なんで?」
溝口が顔面陥没にまで追いやった青い顔のやつの正体は大住賢治だった。
確かに服装はスーツを着ている
。別の組織の先生である俺や朝霧、島本と鷹取には「人が死んだ」くらいの
ショックしか受けなかったが直接指導を受けていた山科や夙川は大きく動揺を見せた。
「せせせせせ先生が、どどどどどうして!」
「ちがう。殺すつもりはなかったんだ。大住先生が私に噛みついてきて…」
溝口は必死に言い訳をする。後ずさりする溝口が大住の死体につまずいて倒れる。
その時、俺は真のショックを受けた。溝口の影になっていてわからなかったがすでに
2・30メートル先から「奴ら」がフラフラこちらへ近づいてくるのが見えたのだ。
「警備員さん。話は後だ!まずは逃げましょう!」
「いやだ。私は捕まらない!警察にきちんと話せば分かってくれるはずだ」
左腕に大きな負傷をしているというのに人間はここまで保身に走れるもんなんだなと感心した。
「そうじゃない!奴らがもうそこまで来てるんだ。早くしないとあんたも死ぬぞ」
「騙されないぞ。俺を殺人犯に仕立て上げるつもりだな。俺は人殺しなんかじゃない。
ここに残ってそれを証明して見せるぞぉおおおお」
もはや意地になっていた。なおも説得を続けようとする俺に鷹取がぽんと肩に手を置いた。
首を左右に振る。「もうだめだ」そういうサインらしい。説得をあきらめると
俺は「早く逃げろよ」と言い残してみんなとその場を離れた。しばらくして
後方から悲鳴のような声が聞こえたような気がしたがそれが溝口のものだったのかは今となってはわからない。
565 :
セイレーン:2009/05/19(火) 22:31:48 ID:DFM+fvg9P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(11)
それは、すでに生きた人間の顔ではなかった。
まず、目が違った。目が死んだ動物のように白く濁っている。それから、がばっと開いた口からはひどい臭いのする膿のような粘液が垂れている。
「くっ!」
その異形のものが立ち上がるのと、袁紹が剣を振り下ろすのは、ほぼ同時だった。
異形のものの肩から胸にかけて、両刃の剣がざくりと食い込む。
人間なら間違いなく即死の一撃だ。
しかし・・・その兵士はふらついただけで、倒れることはなかった。
袁紹が剣を引くと、腕の重みで斬られた肩が体から離れてずり落ち、ぶら下がる。傷口が広がり、骨とその奥に内臓が露出する。
「ひっ・・・!!?」
くぐもった悲鳴が、袁紹の喉につまる。
兵士は再び、もう片方の手を袁紹に向けて伸ばした。
「く、来るなあぁ!!」
袁紹は半狂乱になって剣を横に振りぬいた。
剣に重い手ごたえを感じても、必死でなぎ払った。
それに合わせて、文字通りその兵士の首が飛んだ。首は体から少し離れた所にごろりと転がり、体は急に力が抜けたようにその場に倒れた。
「はぁ・・・はぁ・・・あぁ・・・!」
袁紹は震える手で剣を構えたまま、その死体を見下ろしていた。
本当はこんなもの見ていたくはない、一刻も早く目をそらしたい。
しかし・・・万が一また動き出したりしたら・・・。
そう思ったとたん、足がガクガクと震え、視界が涙に滲んだ。
幸いなことに、それはもう動かなかった。
袁紹は剣を握ったまま膝を折り、その場に座り込んだ。そして、今目の前で何が起こったのか必死で考えようとした。
(兵が、わしに襲い掛かってきた・・・。
臭くて、けがをした兵が・・・斬っても、倒れぬ、血も出ぬ・・・何なのだこやつは!?まるで腐っているようだ・・・いや、まさか・・・。)
袁紹はおっかなびっくりその死体に近づき、剣の先で軽くつついてみた。
566 :
セイレーン:2009/05/19(火) 22:33:39 ID:DFM+fvg9P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(12)
刃はぶに、と妙に柔らかい感触を手に伝えてきた。
刃が当たったところの皮膚が、いとも簡単にずるりとはがれる。
その下から現れた肉は、間違いなく腐って変色していた。
(本当に腐っている!!)
それに気付いたとたん、袁紹は喉が裂けそうなくらい悲鳴をあげていた。
「うわあああぁーーーっ!!!」
腐った兵士が、自分に襲い掛かってきた。生き物は生きているうちは基本的に腐らない。局所的に腐ることはあるが、こんなに全身が腐ることはない。こんなに全身が腐るのは、死んだ後ぐらいだ。
つまりこいつは、さっき襲ってきた時からすでに死んでいた。
(死体が、死体が動いている!!)
袁紹は弾かれたように走り出した。
こんな恐ろしいものからは一刻も早く離れたくて、同じ所にいたくなくて、袁紹は幕舎から飛び出した。
暖かい日の光がさぁっと体に降りかかり、袁紹はいくらか落ち着きを取り戻した。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
肩を激しく上下させながら、必死で息を整える。
「だ、誰かおらぬ・・・。」
「うわああぁ助けてください!!!」
袁紹の言葉が終わらぬうちに、すぐ近くで悲鳴があがった。
これは聞き覚えのある声だ。
「審配!?」
審配とは、袁紹を守るために5千の兵を率いて来るはずだった男の名だ。
助けが来たのかもしれない。
袁紹は逃げ出したいのをこらえて、悲鳴のした方に走った。
逃げる道中に俺たちは山科と夙川に事の顛末を説明した。
「そんなことって…」
二人はショックを受けていたがそれを素直に受け入れた。まぁ、目の前で警備員が噛まれたのだ。しかも自分を指導する先生に。信じるほかないということだろう。
「で、これからどうするの?」
夙川が聞く
「そうだな…とりあえず、アイランドシティ大橋を抜けて町を出よう。この島は
危険だ」
「じゃあさ、ちょっと東区よってからでいいかな?」
「?」
「パパやママも連れ出したいし、持ち出したいものもあるし」
なるほど、夙川はアイランドシティの住人だった。
「わかった。山科さんは?」
「わたしは、自宅は島の外だからいいよ」
「オーケー、じゃあまずは東区を目指そう」
皐月駅は通常通り「営業」していた。
「よかった、まだ電車は動いてるようだ」
「家の最寄り駅は長月駅よ」
「4駅くらいか…数十分で行けそうだな」
電車に揺られ、みんな俯いたまま誰もしゃべらなかった。
電車はそこそこの乗車率で、俺と朝霧は立ち、鷹取と島本、山科と夙川は座席に座っている。すると突然、電車が急ブレーキで止まった。続いてアナウンスが流れる。
「車内急病人発生のために救護活動をしております。そのため一時電車を後退させて葉月駅に停車させていただきます。皆さんのご理解とご協力をお願いします」
チッ
俺は舌打ちをした。あとひと駅だというのになんということだ。こうしている間にもパンデミックは広がっているのかもしれない。
「落ち着けよ」
朝霧が俺を諭した。しかし、しばらくしても後退する気配が一向にない。さすがに同じ車両に乗ってる乗客たちもざわめき始めた。
「後退するとか言ってたけどまだかしらねぇ」
「糞が、こっちは商談控えてるんだぞ。後退するなら早くしろ」
あちこちから不満の声が漏れ始めた。
「俺も医者の卵だ。何かあったのかもしれん。一応見てくるよ」
そう言って鷹取が隣の車両に連結する扉を開こうとしたその時…勢いよく連結扉が開いて
スーツが破けて血まみれになっている男が倒れこんできた。
さらに後ろから同じように血で汚れた服装をしてる人々が次々になだれ込んでくる。
『なにがあったんだ?』
もはやそうは思わなかった。奴らだ。
電車が動かないところを見ると運転手は死んだか運転できない状態なのだ。
俺たちのような知識がない同じ車両の人々は血まみれの乗客に対して何があったのかと
諮問をはじめる。その内容を耳で拾っていくとつまりこういうことらしい。
1号車に乗ってたフード姿のじいさんがいきなり倒れたので乗客が運転手に通報。通常なら車掌が見に行くのだが、
1号車で起こった異変ということもあり運転手が電車を止めて状況を確認。
再度運転席に戻った運転手が後退のアナウンスをしてると、
なんとじいさんが復活。人々を襲い始めたというのだ。怖いのはここから。
襲われて死体になった人々まで他の人を襲い始めた。一瞬にして電車の中は地獄絵図と化したという。
運転手は当然死んだ。いや、もしかしたら生き返っているかも知れないが…
「そんなバカな話信じられないわよ」
キャリアウーマン風の女が笑い飛ばした。
「私は司法書士よ。ほら、そこのポスターにも乗ってるでしょ」
女は吊り広告を指差した。確かに立花怜子法律事務所という文字とその女の顔写真が載っている。
「そんな非現実的なことは信じられないわ」
「司法書士風情がいきがるなよ、俺は弁護士だ」
血まみれのリーマンは確かに天秤のバッジをつけていた。
「弁護士の生瀬忠雄だ。よーくおぼえとけ」
こんな状態で意味もない自己紹介をしだすこいつらに俺はうんざりした。やれやれ
車内で広がる現実か否かの論争に俺は加わらず、手動で電車のドアを開けるレバーを探した。
すぐ近くの座席の下についていた。
「わかったわよ!じゃあ、わたしが1号車に行ってみてくるわ。それでゾンビがいたら謝りましょう」
「ゾンビとは言ってない」
「じゃあ、死にながら歩くサーカス団の人がいたら謝罪しましょう」
「みなさん、静かにしてください!」
俺は声を張り上げた。周りがしんと静まり返る。
「どちらにしても、この場から脱出するのが先決です。今から手動でドアを開けます。
急いで隣駅まで逃げましょう」
「逃げるって。何にもないのに電車を降りるわけ?」
立花は食い下がってくる。この手の輩に俺たちが経験したことを言ってもなにも
始まらない。
「念のためです。もしかしたら危険な伝染病かもしれないし…」
「ゾンビは本当にいるんだよ!」
いきなり声を上げたのは夙川だった。
「私見てきたもん!わたし、杜美津医専って学校に通ってるんだけど、
そこの警備員のオッチャンもゾンビにやられちゃったし、この目でゾンビを見たもん!」
この女は話をややこしくする。俺は頭を抱えた。車内は再び騒然となる。
「ほら、言っただろ!奴らはこの車両にもすぐ来る!早く逃げないと」
「馬鹿ね!弁護士のくせに『往来危険罪』も知らないの?何もないのに
線路に降りたら逮捕されるわよ!」
「馬鹿が、臭い飯食うのと死ぬのだったら臭い飯のほうがましだ!」
バシュ
そんな音とともに電車内の電気が消えた。
「なによ…なんなの…駅員はどうなってるの?」
その時、遅ればせながらやっと車掌が登場した。
「みなさん。落ち着いてください。車掌の郡山貞也です。
ただいま1号車の運転手と連絡が取れない状態にあります。電気も復旧しません。
輸送指令には連絡を入れましたので救助はもうすぐきます。そのまま座席でお待ちください!」
そういうと、車掌は次の車両に移ろうとした。その時
ガシャン
窓が割れる音、「奴ら」が連結扉の窓を破って今にも入ってこようとしているのだ。
暗くて人影しか見えないがその動きはどう考えてもヤツら以外にあり得なかった。
「ちょ、お客様落ち着いて!すぐに助けはきますので!」
何も分かっていない車掌はそれを乗客だと思って必死でなだめる。
「うわぁああああああああ」
生瀬は発狂モードに入り電車のドアをドンドンと叩いた。
「ちょっと、落ち着きなさいよ。なにがあったの?車掌さん?」
そういって車掌に近づく立花の顔に生温かい液体がかかった。手でそれをなでて
凝視する。暗くてよくわからないが「黒」もしくはそれに準じた色の可能性が高いということはわかった。
立花がそれが車掌の頸動脈から噴き出した鮮血だと理解するまでにそう時間はかからなかった。
「ぷぎょああああああああああああああああ」
立花はひっくり返る。車掌は何か言いたそうに口をパクパクさせていたが
首にできた穴から空気が漏れて口からはヒューという音しか出なかった。
車掌は連結扉の窓越しに奴らに首を噛みちぎられたのだ。
車掌の肩を掴んでいた「奴ら」がそれを突き放すと車掌はどさっと倒れこんだ。
「うひょああああああああ」
生瀬は相変わらず発狂している。
「落ち着いてください生瀬さん!。ドアをあけましょう!」
俺が言い終わる前に島本がレバーを引いた。ガチャンという音がする。成功したようだ。
「よし!扉をあけるぞ」
レバーを作動させると思ったより扉はあっけなく開いた。
「ふひぃいいいいい」
狂乱状態の生瀬も扉を開き転がり込むように外に這い出る。当たり前のことだが、降車口と地面とはだいぶ高さがある。
いつもはホームがあるから高さを揃えられているだけだが今はホームがない。転がり落ちた生瀬はゴキっと変な音をたてて奇声を上げるのをやめた。
首から落ちて死んだようだ。俺たちは梯子を見つけて電車から降りた。
「よし、走ろう!」
俺たちは長月駅ホームに向かって思いっきり走った。
比較的後ろの車両にいたので長月駅に行くには先頭車両の横を通り抜けていかなくてはならない。
なるほど、電車の窓は血で汚れたり変な肉片が飛び散っていたり割れたりしていた。
すさまじい地獄があったことが容易に想像がつく。
少しだけ生瀬が可哀想に思えた。幸い先頭車両からゾンビが飛び出てくることはなく長月駅に無事到着した。
「ああ畜生、腹が減ったぜ」
小高い丘から街道を見張っていたホブゴブリン族の兵士が呟く。
「まったくだ。……タングルルート渓谷の頃が懐かしいぜ」
発達した背筋のせいでやや猫背気味な、相棒のバグベア族の暗殺者が、それに答える。
「あの頃はよかったぜ。今と違って大所帯で、どんなデカイ隊商でも襲い放題で」
と、ホブゴブが記憶を辿りつつ、夕暮れの空を横切るシベイの輪――この惑星を取巻く金色のリング――を仰ぎ見る。
「おうよ。おまけに、近くの村から貢物が山の様に届いて、毎日宴会だったなぁ」
当時のご馳走を思い出して、涎をたらしたバグベアも続ける。
「クソッ、それが今じゃこの有り様だ」
当時は近隣諸国で恐れられた、数百のゴブリン類からなる武装集団スプリンタースカル、それが今や僅か10名程の山賊団にすぎない。
有体に言えば、彼らはやり過ぎたのた。度重なる隊商への被害が無視できなくなったため、ついに冒険者による討伐隊が組まれた。そしてトップのヤークシュ・ザルカシュ兄弟は暗殺され、スプリンタースカルは壊滅した。
今、彼らが所属している集団は、散り散りになった残党の一部にすぎない。
「おい、獲物が来たみたいだぜ?」
バグベアが尖った耳をヒコヒコと振るわせる。
夜目の利くゴブリン類の目には、夕暮れの中、道を急ぐ車――魔法仕掛けで動く馬無しの幌馬車――が3台見える。
どの車にも、世界の運送業を牛耳るオリエン家の紋章はない。という事は、弱小の運送業者か商人で、満足な傭兵を雇えるだけの資金はないだろう。
ホブゴブ兵が鳴子の紐を引いて、待機中の仲間に合図する。やがて、タイミングを見計らって筋力自慢のバグベアが仕掛けを作動させ、丁度車の目前になるように樹を倒す。
車は急停車するも間に合わず、御者や外を伺っていた護衛が外に放り出される。
さあ、狩りの時間だ。
後はいつも通りの虐殺だ。バグベアの暗殺者が魔法で姿を消して護衛の背後に回り込み、首筋を切り裂く。
鳴子で呼び出された、邪神を崇めるホブゴブの僧が呪文を唱えると、殺人光線がようやく起き上がった御者の胸を穿つ。さらにはホブゴブの戦士達が、大剣を振るって護衛や行商人に襲いかかる。
肉を切り裂く鈍い音と、絶叫、瞬く間に隊商は全滅した。
「ひゃっはーーっ。大漁大漁」
戦利品を漁る為、車へ近づいたバグベアの暗殺者に、倒れていた護衛の一人が起き上がって立ちはだかる。
「ち、死んでなかったのかよ」
そう言いつつ、バグベアはさっきのように魔法で姿を消して背後に回り、頚動脈を切り裂く。
手応えあり。が、護衛は平然と踵を返しバグベアを向く。
何かおかしい。この護衛は表情が虚ろだ。戦場の傭兵のする表情ではない。そもそも最初の攻撃で致命傷を負ったはずではなかったのか。
と、護衛が筋力に長けたバグベアを上回る筋力で、素早く長剣を振り下ろす。兜を叩き割られバグベアは倒れた。
護衛の戦士は、続いて周囲のホブゴブ兵に襲いかかる。剣術も何もない、力任せの剣だ。鎧を砕き、胴をに深深と刺さる。
ホブゴブの僧が、起き上がろうとするバグベアに慌てて駆け寄る。素早く治癒の術を唱えたものの、バグベアのパックリ開いた頭の傷は、塞がるどころか焼き鏝でも押し当てたかのような音を立てて、周辺の肉が崩れて余計に広がる。
「な!!!!」
ホブゴブ僧が驚愕の叫びをあげる。治癒呪文で傷つくという事は、つまりは生者とは相反する存在、アンデッドに他ならない。
虚ろな表情のまま、バグベアは起きあがる。正面から見れば、彼の頭の傷は顔の半ばまで届く程深い。あきらかに死んでいる。
二三歩あとずさって距離を取る。と、その耳に悲鳴が聞こえる。見れば周囲では、殺した筈の御者や商人、護衛達が起きあがり、スプリンタースカル残党を襲っている。襲いかかっている中には、こちらの仲間であるはずのホブゴブやバグベアまでいる。
見る間に虚ろな顔の襲撃者は増える。信じられぬ程の怪力で、こちらの胴や頭を砕き、そして倒れた者はすぐに起きあがって、その仲間に加わる。
「そんな、バカな。こんなに早くアンデッド化が進行するなど……」
驚愕の表情のまま、ホブゴブ僧はバグベアの剣に心臓を穿たれて倒れた。
スプリンタースカル残党は、そのまま街道をうろつく亡者の群と化した。
「冥界(ドルラー)の接近?」
ハーフリングの魔術師、ニム・ガランダが聞き返した。
「そうだ。この世界(エベロン)を取巻く13の次元界、その一つであるドルラーだ」
モルグレーブ大学ゼンドリック支部の占術科研究員が答える。
「我が大学の占術科の総力を挙げた調査によると、今現在、ドルラーの次元軌道がずれてこの世界との霊的距離が縮まりつつある。
このままだとこのゼンドリック大陸の一角と接触し、そこにドルラーの顕現地帯が発生する恐れが非常に高い」
様々なエネルギーや概念の象徴である次元界とこの世界の距離が縮まれば、様々な影響が出てくる。
炎の世界フェルニアが接近すれば真冬でも気温が上昇し、接触しようものならその一帯が溶岩地帯と化す。
逆に氷の世界リシアが接近すれば気温が低下し、接触しようものならその一体が氷に閉ざされる。
自然や動植物の世界ラマニアと接近すれば動植物が増殖し、闇の世界マバールと接近すれば夜が長くなる。
そして、ドルラーと接触すれば死者が現世をうろつき回る事になる。
「原因は、あれか? ブラックアボット」
ニムが尋ねる。
「そうだ。君も知ってのとおり、黒の修道長事件(ブラックアボット・ケース)だ」
それは、スプリンタースカルが討伐されて平和になったタングルルート渓谷を抜けた先にある、ネクロポリスと呼ばれる巨大な墓場で最近起こった事件だ。
「なる程ね。神の座に加わろうとした奴が死んだんだ。その分、ドルラーのエネルギーが増大したってわけか……」
ニムが頷く。
「ああ、今までは各次元間の均衡が崩れて、修羅界(シャバラス)と狂気界(ゾリアット)の軌道がずれて世界(エベロン)に接近するだけですんだと思っていた。だが、それでは済まず、いよいよドルラー自体が接近を始めた」
研究員が溜息をつきつつ天を仰ぎ見る。
作者さん方、お疲れさまでございます
投下ありがとうございます
いろんな設定のゾンビ小説が読めて、かゆうまですw
三国志とかファンタジーとか、ゾンビの存在が陳腐化するんじゃないかと思ってましたが、そんなことはなかったぜ!
ただ、作品の投下だけが続くと、いきなり違う小説に変わってしまう感じがしますねw
以前、作者さんが投下すると一言書いててからにすれば……という書き込みがありました
でも、そこまで作者さんに頼るのは今考えるとダメですね
読んでる人が誰か一言書けばいいのかもしれません
絶対じゃないし、こんなこと書くのは自治厨で嫌だけれど
スレ立ての時は皆で乙って書くんだし、それぐらいあっても?(先着一名様の方向で)
しかし「乙」って第二って意味なんですねー
第一は「甲」らしいです
よく「甲乙つけがたい」っていうくらいだから、そんに差はないのでしょうけど
作者さん方に使うと失礼なのかもw(スレ立ての時はお疲れの略ですね、わかります)
あと、長文サーセン
世界観とかの説明も無しにいきなり始められてもなぁ・・・
読む側はポカーンだよ
とりあえず俺自身は読み飛ばしリストに入れた
私は、「設定などの説明を小説の冒頭に持ってくると、退屈な小説になってよくない」という基本を守ってるんだなと感じました。
まぁ途中であっても、世界観を出すための一般的でない名称が続くと、読みづらくもあったのは確かですが。
他の方の感想を否定する意図は全然ないのですが、私個人の感想としては以上です。
では、以後ROMりまする。ノシ
普通の小説なら説明なんぞ不要なんだろうが、こんだけ専門用語多かったり独自の世界観だとね〜。
ワナビ、厨二設定あたりの単語が容易く頭に浮かぶし。
580 :
奇を衒う者:2009/05/23(土) 01:15:22 ID:40VCsE1U0
書く側が努力せず、読み手に努力を求めるのはどういう事かリンクなぞ、張らずに簡潔にわかりやすく設定を理解させるものじゃないのかい?
小説の書き手たる資格はないよ。
ざっと流し読んでみたけど、いやーな雰囲気のスレだね
作者も読者も自分勝手だし。やれやれだ
>>580 そんな誰もが知ってるわけじゃない設定持ち出されてもね
ここまで投げっぱなしの酷いのは久しぶり
そもそも、ダンジョン&ドラゴンスレ辺りで投稿した方が良いんじゃない?
あと、此処の読者が自分勝手なのは今に始まった事じゃないし俺も自覚してるけど、
煽りコメとかよりも作者が叩かれる方が多いってあんまり無いよね。
つまりはそういう事。
読んでみたけど、そう大きな問題じゃない
文章も読みやすいし、世界観も文章中でしっかり表現できてる
それよりも、
「設定などの説明を小説の冒頭に持ってくると、退屈な小説になってよくない」という基本
ってなんだよwww
ワロタwwwwww
>>581 商業誌ならともかく、作者さんが好意で投稿してくださって
いるんですから、努力するのがいやなら読まなければいいのでは
ないですか?
奇を衒う者さんの作品、私は違和感なく楽しめましたけど。
嫌な流れだな
587 :
578:2009/05/23(土) 17:15:32 ID:2V93VM7s0
>>584 小説の書き方を紹介しているホームページに書いてありました
基本って書いたのは大袈裟だったかもしれませんねw
誤解しないでもらいたいのは、あなたの小説に対して書いたものではないということです
>>521-524は単行本とかにある、キャラ紹介や前巻までのあらすじの様なものですし
どんな小説でも、というか映像表現できないからこそ最初に場所の説明や状況の説明は必要だと思います
特にゾンビ小説の場合、最初に日常が書かれているからこそゾンビが出てきた後の展開が引き立つ、とも思います
なので、あなたの小説も楽しんで読ませてもらっています
ただ今回は、アクションシーンを先に持ってきて>575で世界観の説明をしたかったのだろうなぁと思ったので>578と書きました
決して「冒頭に説明がある小説が悪い」という意味ではありません
580さんはリンクを貼るという対応をしましたが、わざわざリンク先で調べるような人は最初から文句はつけないと思いますし
「設定資料を読ませて理解させよう」という姿勢に見えては、反発もあろうかと思います
全ての人に受け入れられる小説を作るのは無理ですし、私は面白そうだと思っていますのであまり気にせずに書き続けてもらえると嬉しいです
でも、冒頭に「いつ、どこで」くらいはあった方がいい感じがします
一箇所に説明が固まると、そこが重くなりますから
これ以上はスレ違いになるので、今度こそ消えまする
長文サーセンでしたっ!
588 :
本当にあった怖い名無し:2009/05/23(土) 17:29:45 ID:LmdPSGCPO
ゾンビのモデルは
自己愛性人格障害、境界線型人格障害などの
人格障害だと思っている
ゾンビ(人格障害者)に噛まれた取り巻きは
ゾンビとなり増殖していきタゲを追い掛ける。
ざっと見ですまないが、感想をば。
とりあえず、ストーリーは置いておいて
しがないプロの目から言わせてもらえば
どの作品も少し描写が足りないというか、セリフが多いキガス。
まあ、素人だしガンバレ。
本格的にいきたいなら、もう少し描写を入れていった方がいいし
セリフを少なくした方がいい。大体、描写7割、セリフ3割が理想だにゃ。
僕も投稿したいが、自分の小説書かなきゃならんから、また今度ww
じゃ、小説のネタ探すため他のスレ見てくるw
自称プロw
まあ言ってることは正しいね
ただここの人達は素人だの2chだのってのを言い訳にしてるから
本格的にいく気もないと思うし、向上心も低いと思うよ
そっかあ!ここで話投下している人達はみんな思考がゾンビなんだね!
言い訳させてもらうなら
できるだけコンパクトに収めるために具体的な描写は
なるべく省いたなぁ
あと、俺に関していうなら映画のバイオハザード2を下敷きに書いてるから
映画っぽくするために擬音語とかセリフをあえて大量に使った
でも、プロから意見がもらえるのはありがたいな
593 :
セイレーン:2009/05/23(土) 19:10:48 ID:pQA4LthRP
なるほど、描写ですね。
すぐには変わらないかもしれませぬが、精進いたします。
ただ、あまり嫌な流れになると作家としては士気が下がります。
批判の応酬は程ほどに。
急に盛り上がってきたが、何があったんだ?
インフルエンザで外出しないからか?
595 :
セイレーン:2009/05/23(土) 20:10:12 ID:pQA4LthRP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(13)
「や、やめろ来るなぁ!」
審配は十人ほどの兵に囲まれて、必死に叫んでいた。
自分はただ暴動の鎮圧に来ただけなのだ、こんな訳の分からないものと戦うはずではなかった。
目の前で、兵士たちが腐った男の体に槍を突き刺している。
しかし、何本の槍が体を貫こうとも、腐った男は前に進もうと体をうごめかし、血で真っ赤に染まった口を大きく開けている。
「うっ・・・うぐっげぉっ!」
胃がよじれる感覚に、審配は体を震わせて膝をついた。
嘔吐ならもう何度もしている。
朝食べたものは全部吐いた。胃液もほとんど吐き尽くした。もう何も出てこない。
それでも体は吐こうとするのだから、審配は苦しくて仕方がない。
(な、何で私がこんな目に・・・。)
口から垂れる不味い液を袖で拭いながら、審配は思った。
審配は生まれてこのかた、前線に出て自分で戦ったことがなかった。ずっと机の前に座って、書簡と筆を相手に生きてきた。剣も一応持ってはいるが、実際に使ったことは数えるほどしかない。
戦に出たとしても、審配の仕事は幕舎の中でのデスクワークだった。汚いものも臭いものもグロテスクな死体も、目をそらそうと思えばいくらでも見ずに進めた。
しかしこの状況はどうだ。
顔を上げると、体を串刺しにされた腐った男が兵士の一人に噛み付くのが見えた。
審配の下半身がじわじわと濡れ、足元に生温かい雫が垂れる。
「と、殿・・・申し訳ありません・・・。」
審配が最期の言葉を紡ごうとした時、どこからかよく通る声が聞こえた。
「首だ、首をはねよ!」
それは、聞きなれた声だった。
腐った男の首に後ろから刃がめりこみ、頭と胴を切り離す。
腐った男はばたりと倒れ、それっきり動かなくなった。
審配は体が震えて立てぬまま、自分を死の淵から救い出してくれた英雄を見つめた。もし仕えるなら、こんな人に仕えたいと心の底から思った。
「大丈夫か、審配?」
審配はすでに仕えていた。審配を救ってくれたのは、今審配が仕えている君主その人だった。
596 :
セイレーン:2009/05/23(土) 20:12:31 ID:pQA4LthRP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(14)
「けがはないか、審配?」
袁紹は、へたりこんでいる審配にそっと手を差し伸べた。
とたんに、審配の目からぶわっと涙があふれだす。
「と、殿おぉー!一生ついて行きますう!!」
審配は袁紹の手を取るやいなや、泣きながらほおをすり寄せた。
袁紹は、かなり複雑な気分になった。
そもそも自分は、審配を守るために来たのではない。5千の兵を率いる審配に守ってもらうために来たのである。
しかしその審配は涙で顔をぐしゃぐしゃにして、着物を小便で濡らして、袁紹にしがみついている。
兵は十人ほどしかいない。
「審配よ、5千の兵はどうしたのだ?」
袁紹は恐る恐る聞いてみた。
すると、審配はやっと泣き止んで、涙を拭いて答えた。
「・・・申し訳ありませぬ、5千の兵は・・・これらの化け物に襲われて四散しました・・・。」
「何ぃ!?」
「私は、殿をお守りするために5千の兵とともにこの陣に来ました。
しかし・・・森の中を通っていると、血にまみれた我が軍の兵が現れまして・・・突然私が率いてきた兵に噛み付き、食い殺し始めたのです。
もちろん私は防げと言いました。
しかし奴らは死なないんです、斬っても突いてもだめなのです!
そのうち、噛まれて死んだ者が起き上がって、同じように生きている者を噛み始めて・・・どうにもならず、逃れてきた次第でございます。」
袁紹は、目の前が真っ暗になった。
審配に会えば、5千の兵に守られて河北に帰れるはずだった。しかし、その望みはもろくも砕け散った。
つまり、自分を守ってくれるものはもうここにはいない。
袁紹は己の力で、己の命を守らなければならないのだ。
597 :
セイレーン:2009/05/23(土) 20:14:15 ID:pQA4LthRP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(15)
「とにかく、ここから離れて味方を探しましょう。」
審配の提言に、袁紹ははっと我に返った。
「我々がこうして生きているのですから、きっと他にも生きている将がおりましょう。
それらの兵を束ねて、急ぎ河北に帰還するのが上策かと。」
確かに、こうなってしまった以上、ここに留まる意味はない。
ならばすぐにでもこの地獄を抜け出して、安住の地へと逃げ帰り、体勢を立て直すべきだ。
審配の言うことはもっともだ。
「うむ、ならばすぐに生きた者を集めよう!
おい、少し時間をやるから、まだ生きている兵を連れて来い。」
袁紹は十人ほどの兵に素早く指令を下した・・・が、それは審配に止められた。
「お待ちください!
先ほども申しましたように、死者に噛まれて死んだ者は奴らと同じ死者になるのですぞ。ここで兵を分散させて、彼らが死者として戻ってきたらいかがなさいますか!?
それよりも、これ以上兵を失わぬよう、固まって行動すべきと思われます。
そのうえで、張郃や高覧を探し、彼らの武をもって突破いたしましょう。」
「う、うむ、分かった。
武将を探すとしよう。」
袁紹は一息ついて、十人ほどの兵に自分を守るように円陣を組ませた。
突然、兵の一人が悲鳴をあげた。
見れば、先ほど噛まれて死んだ兵が起き上がり、他の兵の足をつかんでいた。起き上がった兵の顔は蒼白で、目は白く濁っていた。
「首をはねよ!」
袁紹が言い終わらぬうちに、兵の一人が死者の首をはねた。
死者は生者を食らい、仲間に引き込む・・・袁紹はあまりのおぞましさに、吐き気がした。
隣にいる審配はすでに、顔を真っ赤にして空嘔吐を繰り返している。
まあ、前線に出たことがない文官である以上、仕方ないのかもしれない。
今はとにかく武将が必要だ、袁紹はそれを痛感した。
>ゾンビ・オブ・ザ・官渡
最近、続きが楽しみです。
三国志は良く知らないし、設定の山だし、おまけに、ネタにする奴はコーエーのゲームとかでこっちが知ってる事前提で話をするしで、正直苦手でした。
でも、最近のようやくゾンビものらしくなって以降は、ワクテカしながら拝見しております。
599 :
奇を衒う者:2009/05/24(日) 01:20:59 ID:RiP/R5mH0
ファンタジー世界は文句が出たので、無期延期して新作に移ります。
「文章から読みとり&作中で説明するまで待て」or「先に知りたければURL教えるから自分で調べてね」のどちらか好きな方を選べ、
では文句が出たので、今度は先に>577みたいな方々向けに、設定を説明する事にします。
タイトル「北斗屍群拳」
●世界設定
この作品は、20年以上前に週間少年ジャンプで連載されていた「北斗の拳」という漫画の世界を元にしております。
舞台は、西暦1990年代に全面核戦争が起きた後、さらに何年かたった荒廃した世界です。
大地は見渡す限りの砂漠と廃墟で、政府等の治安維持機関はなくなっていて、暴力の支配する状態です。
そのため、貴重な水や食糧を狙って頻繁に略奪がおこります。
銃器は残っておらず、暴力を構成するのは腕力と怪しげな中国拳法(素手で岩を切り裂いたり、体を鋼鉄の強度にできたりする)です。
また、車やバイクとそれを動かすガソリンは残っていて、何故かモヒカン頭にしたマッチョな略奪者達は、それに乗って襲撃をかけてきたりします。
600 :
奇を衒う者:2009/05/24(日) 01:25:13 ID:RiP/R5mH0
●用語集
【北斗神拳】
上記の怪しげな中国拳法の一つ。
針灸のツボを戦闘に利用するものだが、その威力は単に生理機能や運動機能をいじるのみならず、人体を爆破したり、精神を操ったりもできる。
【秘孔】
経絡秘孔とも。
上記の北斗神拳に伝わる、戦闘に利用できるツボ。
【アミバ】
自称天才の悪党。
あらゆる拳法を他人より早く習得できるが、どれも一流には遠く及ばない哀れな奴。
現在北斗神拳を学び、新秘孔開発のために非道な人体実験を繰り返す。
【デク】
上記のアミバによる、実験体もしくは実験用に捕らえた人々への呼称。
類義語「丸太」
※上記説明は、ストーリーに直接関係無い部分は端折ってありますので、よくご存知の方による突っ込みは無用に願います。
本編は明日以降。
長月駅ではオレンジの服を着た救助隊員が待ち構えていた。
「おい、君たち…今から救助に行こうと思ってたんだが…どうしたのかね?電車を降りてきたのか?」
救助隊員や駅員が驚くのも無理はない。電車が止まったからと言って乗客が
勝手に電車を降りて歩いていくことなどありえないからだ。
だが、俺たちの後ろからついてきた血まみれでボロボロの人たちを
見て何かがあったとすぐに察知したらしい。
「おい、なにがあったんだね?運転手とも車掌とも連絡が取れないんだが!事故でもあったのか?まさかテロか!」
救助隊員は俺の肩を揺さぶりまくし立てる。すべてを話してもいいが時間が惜しい。そう感じた俺は
「あの人に聞けばわかります」
と、必死で逃げてきた立花司法書士を指差した。
救助隊員は立花のもとに駆け寄る。ここからでは何を言っているのか
聞こえないが流石にあの女でも、ゾンビの存在を否定はしないだろう。
いつの間にか「青い顔集団」から「ゾンビ」という言葉を使う
自分に気がついたが修正する気にはなれなかった。駆けつけてきた駅員が
「さぁこちらへ、何か飲み物を…もうすぐ救急車が来るから」
といって人数分の毛布を渡してくれた。
その駅員には申し訳ないが俺たちは人目につかないようにこっそりその場を立ち去った。
駅が無事だったので東区は無事だと高をくくっていたのは間違いだった。確かに奴らはいないが、車が横転していたり、何かの書類が風で舞ってたり、
どう考えても平常な状態ではなかった。アイランドシティ住宅街。夙川の家はそこにある。モダン的な一軒家が立ち並ぶ通りで、
比較的裕福な層がここにはすんでいる。なるほど、夙川の父、夙川英輔は開業医。母の夙川百恵はどこかの財閥のお嬢様だと聞く。
少し離れた所にはマンションも何棟か建っていた。そちらも高層マンションでかなり
値が張るはずだ。そのアイランドシティ住宅街に人っ子ひとりいないのだ。
豪華な庭に設置された散水機があらぬ方向に水をかけている。夙川の家についた。夙川がポケットから鍵を取り出す。
「俺が開けようか?」
島本が言った。みんな同じことを考えてるらしい。最悪の事態を…
「いや…私が開けるわ」
そう言うと鍵を差し込みそっと回した。ガチャ。開錠する音。ドアノブをつかむ。ゆっくり回す。
まるで何十時間もたったかのような感覚に陥りながら一つ一つゆっくり動作をこなしていく。
ドアをゆっくりあけて夙川が中に入り込む
「ただいま〜、パパ?ママ?」
小声でリビングに呼びかけた。
「パパ…ぱぱぁ?」
俺たちも玄関から家に上がろうとしたとき、夙川がここからは
死角になって見えないリビングルームで何かを見つけたようだ。
「パパ!」
悲鳴に近い声をあげる。夙川がリビングに駆け込み俺たちの視界から消える。
「待て!さくら!」
島本が靴も脱がずに駆けていく。俺たちもそれに続いた。だが、とき既に遅し…
夙川さくらは夙川英輔だったものに首をひねりつぶされていた。
「てめぇええええええ」
島本が死角にあったゴルフクラブで夙川英輔に殴りかかる。
何発、いや何十発もクラブを叩きこんだ。俺たちはそれを見ていることしかできなかった。
クラブがボキッと折れてやっと島本は肩で息をつきながら殴るのをやめた。
ぐちゃぐちゃになった肉片はさすがにもう蘇りようがなかった。
「…行こう、街を出るんだ」
「俺の責任だ。止めておけばよかった…こんなことになるなんて」
島本は崩れ落ちた。
「立つんだ。立ってくれ。早く行かないともっと大変なことになるぞ」
「俺はここに残る」
「な・・・に?」
「おれはここでさくらと一緒にいるよ」
「馬鹿な真似は…」
朝霧が俺の肩をポンとたたいた。首を左右に振る。好きにさせてやれ。そういう意味だと解釈した。
「なぁに、心中するつもりじゃない。しばらくたったら俺も行くさ。
だけどもうしばらくさくらのそばに居させてくれないか?」
「…わかった。絶対に戻ってこいよ」
「あぁ、約束するよ」
約束を果たすつもりがないように俺には見えたがそれ以上の言及は避けた。
「じゃあ、俺たちは行くからな。いつでも携帯に電話してくれ」
「わかった」
俺たちは夙川邸を後にした。一つみんな口に出さなかったことがある。
あそこに夙川英輔がいるということは、母親の夙川百恵も当然いるはずだった。
ということは…?
俺はこれ以上考えないようにした。島本がそれも承知の上で残っていると
いうことを知っていたからだ。もしかしたら、夙川百恵はどこかで
買い物中に事件に巻き込まれ、いまもどこかで生きているかもしれない。
そう願いながら…
605 :
本当にあった怖い名無し:2009/05/24(日) 15:34:13 ID:leAn7CTYO
夙川は叫んだ
「ハイ!ギロッポンでベラチャンコ!!」
>>599 こういう人が作った世界観でしか作品をかけない奴を見てると反吐がでる!
消えていいよ!
コメント見てて解らんか?
みんな、お前の作品はいらねぇって思ってるよ!
607 :
セイレーン:2009/05/24(日) 20:46:58 ID:25N4uM8jP
まあ、私も既存のストーリーをアレンジして物語を作っているけどね。
ただ北斗は進行や犠牲者によっては敵を増やしやすいから、
そこは気をつけるべきだとは思う。地雷が多いっていうのかな。
三国志はその点ではラフでいい。すでにいろいろな三国志が作られているから。
私のは、一応横山三国志の性格で書いているから、無双設定だと違和感を感じることも多いと思う。
でも、そこは創作の幅ということでご容赦ください。
三国が「ゾンビ」「蜀(感染者流入)」「呉(国境封鎖)」の時点ですでにどの三国志にも添えませぬから。
>セイレーンさん
御安心召されい。
>606さんは、本気で「人(他人の意)が作った世界観でしか作品をかけない奴を見てると反吐がでる」なーんて考えてないから。
そもそも本来のゾンビってのはブードゥー教の呪術で使役される死者であって、人肉を食ったり、やたらと増殖したりなーんて事はしないのよ。
そういう食人・増殖をするのは、「オメガマン」とかの影響を受けてジョージ・A・ロメロ監督とかが作り出した設定だ(ゾンビ映画に詳しくなくてスマソ)。
つ・ま・り、このスレの小説に共通する「噛まれる事によって感染する食人ゾンビが、大増殖してさあ大変」なーんて設定自体が、「(他)人が作った世界観」なわけだ。
だから、本気で「反吐が出る」なーんて喚く奴が、このスレにいられるわけないっしょ?
では、606が何を意図してそんな妄言を吐いたのか? それは、また今度。
追伸
>ただ北斗は進行や犠牲者によっては敵を増やしやすいから
それも大丈夫だと思うけどね。
設定見ればピンと来るだろうけど、ようはアミバがゾンビ化の秘孔を発見して、とある村でその実験する、という話。
(主用登場人物はアミバのみで、非道な実験をする奴とあり、タイトルも北斗屍群拳だし)
ただ、606みたいな荒らしが出たんでこれも断念します。
一々反応して波風立てようとするから余計荒れるんでしょうよ
大体少し作品に文句つけられたくらいでファビョってちゃ創作なんて出来ないよ?
ていうか最近テンプレすら読んでない人多すぎじゃないの?
本当にこのスレの連中は色んな意味でレベルが低いな…
>30 ◆RPG8JNHiIIさん
エエェェェェェ(・□・)ェェェェェエエ
さくらたん死んじゃったぁぁぁ。orz
続き楽しみにしております。
奇を衒う者(以下、奇)「(411とか465にて)ファンタジーとか、変った設定でやっていい?」
大半のスレ住人「別に特に反対する理由はないな」
ゾンビ577「〃」(←自分が、自分の知らないオリジナル設定を受けつけられない性格なのを気づけない)
奇「よし。では、異世界ファンタジーでゾンビモノだ『ネクロハザード』」
奇「世界設定がたっぷりあるけど、それは文中で説明しよう」
ゾンビ577「今度始まった『ネクロハザード』とかいうのは異世界モノらしいけど、俺はオリジナル設定が多いのは苦手だから、向かないんだよな」
ゾンビ577「読めないんでスルーするしかないけど、俺が読めないなんてシャクだな」
ゾンビ577「よし、黙ってスルーせずに、わざわざ噛み付いてやる」
ゾンビ577「あ、でも、文中でその度ごとに説明があるのに、世界設定がわかんないなんていったら、俺がバカにみえちゃうだろうな」
ゾンビ577「そうだ、『異世界モノを説明もなしにいきなり始めるのは悪い』って事にしよう。これなら、俺がバカに見えなくて済むぞ」
ゾンビ577は奇に噛み付いた!
奇(感染中)「あ、なんかイチャモンが来たな。ったくうるっせーな。文中にその都度説明してんじゃんかよ」
奇「だいたいよー、ちょっと読めば『ホブゴブリン兵』でファンタジー、『シベイの輪』でなんかよくわからんが異世界ってわかるだろうに」
奇「あとは、何か単語や設定が出てくるたびに、そこで説明してやるってのに、待てねーのかよ」
奇「(580にて)ああ面倒臭ぇ。ほらよ。わざわざリンク貼ってやったから、文中の説明を待てねーんだったら、ここでも読みやがれヴォケ!」
ゾンビ581「文中でその都度説明をするという手法を使ってるけど、こっちに都合良くなるようにそれは完全に無視して噛みつこう」
ゾンビ581「設定は文中にその都度書くなんて絶対にダメだ。全部最初に簡潔に書くべきだ。でなきゃ、書き手の資格なし」
ゾンビ581は奇に噛み付いた!
奇(症状進行中中)「プロ作家の書いた公式小説ですら、設定・用語の説明のために、巻末にちょっとした辞典が付属してんのによ。無茶いってんじゃねーよ。でも黙ってよう」
ゾンビ583「文中に説明があろうがなかろうが、俺が知らない設定で書かれた話があるなんてシャクだ。でも、俺はその為に設定を学ぶなんて努力はしないもんね」
ゾンビ583「叩くのに都合がいいから、文中でその都度説明をするという手法は完全に無視して噛みつこう」
ゾンビ583「ちなみに、設定が説明不足でも、ゲームだのマンガだので自分で知っている三国志モノは除外ししよう」
ゾンビ583「投げっぱなしだ、投げっぱなしだ。こんな事する奴は別スレ行け」
ゾンビ583は奇に噛み付いた!
ゾンビ奇(ついに発症)「うるっせーな。いい加減にしやがれゴルァ。よし、報復だ。でもまだ同レベルのイチャモンはやめとこう」
ゾンビ奇「相手の本音は『自分は作中から設定を読み取る能力がないから、自分の知らない設定満載の作品を作るな』だ」
ゾンビ奇「相手の建前は『異世界モノなら、その設定を先に書け』だ」
ゾンビ奇「報復手段は嫌味にしよう。建前に忠実に従いつつ、本音に真向から逆らおう」
ゾンビ奇「(暫く考えて)よし、報復手段は『現代日本と大きく違う世界で、尚且つ良く知られている世界』についての説明だ」
ゾンビ奇「この『相手が熟知している設定を、異世界だからという理由で詳しく書く』ならば、嫌味として有効だろう」
ゾンビ奇「(599-600にて)『北斗屍群拳』」
ゾンビ577・581・583「(嫌味に気づく)くぁwせdrftgyふじこ(理性がふっとんだ意味不明な叫び)」
ゾンビ577・581・583「厨房的な理由から他人に気安く噛みつく、俺達の薄っぺらいプライドはズタズタだ」
ゾンビ577・581・583「ゆるせないぞ、奇! ぬっ殺してやる!」
ゾンビ577・581・583「あ、でも、叩くにしても、大義名分がないと、本音と建前の大きく違う俺達の軽いプライドが保てないな」
ゾンビ577・581・583「そうだ! 良い事を考えたぞ」
ゾンビ577・581・583「まず、『他人が作った世界観でしか作品をかけない奴』は悪いって事にしよう。なんたってパクリは悪いんだからな」
(↑このスレの作品の設定が、そもそも他人が作った「噛まれる事によって感染する食人ゾンビが、大増殖してさあ大変」という世界観だと気づけない程、知的能力が退化している)
ゾンビ577・581・583「あとは、俺達は理由はないけど偉いんだから命令しよう『消えていいよ!』」
ゾンビ577・581・583「それから、俺達自身が以前書いた叩きレスがを見て叫ぼう『コメント見てて解らんか?』」
(↑ゾンビ菌に脳を犯されて、既に擁護するスレを認識できない)
ゾンビ577・581・583「理由はないけど俺達は偉いんだから、きっと世界中から支持されているに違いない。だから、こう書こう『みんな、お前の作品はいらねぇって思ってるよ!』」
ゾンビ577・581・583「よし、これで俺達の正当性は証明できたぞ」
ゾンビ奇「(今までの顛末を書く)」(←今、ここ)
かくして、2ちゃんにおけるゾンビ感染は拡大の一途を辿った……
なあ、お前奇を衒う者本人だろ。これは気持ち悪いわ…
誰が書き込んだにせよ、「意味のない自己満足」と引き換えに「人として大切なもの」を失っている気がして同情してしまう
しかしゾンビとは「人として大切なもの」を失っている存在なのだとすれば、なるほど荒らしはゾンビっぽい
617 :
本当にあった怖い名無し:2009/05/25(月) 10:13:01 ID:vIN5E4O30
これもひとつの「作品」ジャマイカ?
618 :
本当にあった怖い名無し:2009/05/25(月) 11:00:57 ID:J5GMDfrAO
気持ち悪いから落としちゃえよこんなスレ
スレ主の自己満オナニーうぜえよ
ID:TDfDq+X90
感染進んでとうとう手遅れになっちゃったんだね・・・
>>619 携帯から、「だったら見るな」頂きましたッ!
みんな保守頑張ってるな
>>618 スレを立てたのは今騒いでる人じゃないですよー。
うーん、こちらは面白ければそれでいいと思ってるんですけど…。
他の作品の設定に乗っかるのがダメってなるんだったらそれこそ自分のもダメってなりますからね。
自分のは色々と要素を引っ張ってきて、既存のゾンビと組み合わせたので。
このスレは、ゾンビ好きな人がゾンビをネタにした小説をupするスレです。
↑さえ守れてればいいんじゃないでしょうか。
セイレーンさんやemptyさんの作品は面白いし、独りよがりな読み難さも無い
奇を衒う者さんのは個人的には合わないし、人格的にも何時ぞやのくだんの様な印象悪さが残った
単なる煽りも有るには有るが、反対意見を「文句」として処理してしまう辺りが、特に
上で反発してる方々はこんな所が気になったんでは無いだろうか
テンプレもできるだけ守ろうね
ゾンビ物であればどんな設定だろうと構わないし
ただ、ちょっと煽りや難癖つけられたくらいで即断念したり怒り狂うようなグラスハートじゃ
書き手と読み手が互いに不利益をこうむり不愉快になるだけだから、そういう人だけは投稿しない方が良い
>615
同意。
やっぱり奇を衒う者はキティだな。
奇を衒う者はもう死んでいいよ。
626 :
本当にあった怖い名無し:2009/05/26(火) 10:16:46 ID:tMVOKtKUO
お前ら、作家さんが誰もいなくなった時のことをもう忘れたのかよ。
あれはダメ、これはダメとやって作家さんを全員追い出してどうなったよ。
作家さんが増えたらすぐこれかw
気に入らない作家さんがいてもスルーすりゃいいだろが
さっきまでは通常営業していた長月駅も今はゾンビであふれかえっていた。
ゾンビは俊敏な動きをするわけではないので、遠目に駅がゾンビで覆われてるのを
確認すると徒歩で南区のアイランドシティ大橋に向かうことにした。
しばらく歩いていると、妙な集団に出会った。
「おや、あなたたちも?」
そう話しかけてきたのは藤阪健吾という老人だった。
俺たちはそのグループに合流してお互いに自己紹介をした。
「ワシは藤阪健吾。72歳じゃよ」
「俺は高槻守 烏丸県警の特殊隊員だよ。普段は身分を明かすことはないんだが、
こんなときだし、頼りにしてくれていい」
高槻は特殊部隊服を着ており、ライフルを持っていた。何とも頼もしい男だ。
「僕は烏丸第6小学校6年2組の長池勉」
「私は夏目アイランドシティ高等学校3年B組の南矢代 『みなみ やよ』よ」
「同じく夏目アイランドシティ高等学校古典教師の武田尾介だ」
そして最後に眼鏡でスーツ姿の男が自己紹介を始めた。
「僕は相野宗助だ。そこの通報受信センターで働いている」
この声には聞き覚えがあった。さっきの電話口やつだ。俺は何も知らぬふりをして
問いかけた。
「相野さん。他のお仲間はどうされたんです?」
「みんな死んだよ。いや生き返ったがね」
相野は自嘲気味にそう答えた。
「あっという間だったよ、ゾンビがセンターに入ってきてからは」
「市民からの通報で防ぐことはできなかったんですか?」
「通報?市民から通報なんてなかったよ。不意打ちのせいでやられたんだ」
こいつ、俺がした通報を隠そうとしてやがる。
「で、そっちは?どなた様かな?」
藤阪の声で我に返り俺がまとめて自己紹介をした。
「そうかい…」
高槻が言う
「あんたらもアイランドシティ大橋を目指してるんだろ。一緒に行こう。大勢のほうがいい」
その意見には賛成だった。高槻はライフルのようなものを抱えており、すこし安心感を覚えた。
南区には同じように考え避難してきた住人がたくさんいた。
商業施設エリアだった南区はあちこちの看板が破れたり折れたりして
窓ガラスの破片が散らばったりしていた。奴らこそいないが、
避難によってパニックがあったことは明白だった。
「やれやれ…アイランドシティ大橋あともうちょっとですな」
「藤阪さん大丈夫ですか?少し休んだほうが…」
藤阪は右手でそれを制して
「いえ、それには及びませんよ」
と言った。確かに現実問題として早くこの場から避難しないと、
奴らが来るのも時間の問題と言える。
橋を渡ってしまえば何らかの手段があるだろう。
「じゃあ、ちゃっちゃと橋を渡って向こうで休憩しましょう」
「あれ?藤阪さんじゃないですか?」
そう言って白衣にエプロンを着た眼鏡の男がやってきた。
「おぉ、並河君かね。この人は並河大輔と言ってわしの老人ホームで介護をやってくれてるんだ」
藤阪は俺たちに並河を紹介した。
「それで、並河君。きみはどうしたんだ?」
「僕も東区から逃げてきたんですが…ありゃ最悪ですよ。
ゾンビです。僕はひとり身でここにきてるから肉親がいないんですが…
僕と一緒に逃げていた八木さんが…」
「そうか…八木君も」
並河はこちらを見て言った。
「あぁ、八木さんは僕の同僚でね…八木洋子っていうんだけど…ね」
どうやら特別な仲だったようだ。
「とにかく、藤阪さん。ここは危ない。早く橋のほうに行きましょう。あなた方も」
「えぇ」
後ろのほうでウィンドウガラスをを割り薄型テレビを盗んでいる火事場泥棒が歓喜の声をあげていた。
「もうあと少しですよ」
並河がみんなを励ます。高槻は相変わらずまわりを警戒して銃をすぐ撃てるようにかかえていた。
その時、ショッピングモールに備えつけられていた大型テレビモニターがニュースを映し出した。
『アイランドシティ感染病の続報です。政府およびに烏丸県はアイランドシティから
外に出るのに制限を設けました。検疫テストに合格した人以外は島の外には出られません。
また、泳いで外に出るのも禁止とし、海上警察、海上保安庁、海上自衛隊が協力し
周囲の海を見張っているとのことです。先ほどもお伝えしたとおり、島から出るにはこの橋を通過しないといけません。
検疫を受けておられない方は至急、アイランドシティ大橋まで来るようお願いします。』
そういって、アイランドシティ大橋が上空から映し出された。まるで万博か休日の遊園地かのような
人ごみで橋がにぎわっている。その先頭には自衛隊の車両や警察車両が止まっていて
確かにそこから数人の人がぱらぱらと本土へ向かって通されているのが見えた。
だが、人数が多すぎてとてもさばき切れていないようだ。
「くそ…こんなのちまちま待ってたら俺たちはゾンビの晩御飯になっちまうぞ!」
鷹取が冷静につぶやく。
「今の映像を見る限り検疫所は橋の上に5か所。どういうテストかにもよるが
5秒で1人くらいを本土へ通している。ということは単純計算して…
1分で12人が5か所で60人1時間で3600人…
だめだ。全然間に合わない。アイランドシティの人口のほうがはるかに多い。
それどころか、橋周辺にいる人だけでゆうに3万人は超えている。かといって、
ゾンビどもがいくらとろいからと言って3時間も4時間も待ってくれるとは思えない。
「急ごう。割り込みしてでも検疫通らないと俺たちもゾンビになるぞ…」
作家の皆さん頑張って下さいね。
633 :
セイレーン:2009/05/26(火) 20:41:08 ID:nniem1MoP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(16)
袁紹は足早に本陣を後にした。
幸い本陣はほとんどもぬけの空になっていたせいで、死者の数も少なかった。
しかし、そこを出るとすぐに死者の大群に出くわした。
「ええい、回り道を探せ!」
こんな少数で死者の群に突っ込むほど、袁紹は愚かではなかった。
死者たちは生者と比べて、だいぶ動きがのろかった。そのため、離れたところを走り抜ければ襲われることはなかった。
しかし、自分たちもいつも走っていられる訳ではない。
「うっ・・・ぐっ・・・はぁはぁ、お、お待ちくださ・・・。」
「どうした、審配?」
振り返ると審配は両側から兵に支えられて肩で息をしていた。
額から汗が流れ落ち、完全に息があがってしまっている。
もうこれ以上走り続けるのは不可能だろう。
袁紹は審配のあまりのふがいなさに頭を抱えた。審配は文官とはいえ、五十路にかかろうとする自分よりはるかに若いはずだ。その若さでこの体力のなさはいかがなものだろうか。
袁紹は審配が少し涼しくなるように、冷ややかな目で彼を見下ろした。
「のう審配、辛いのは分かるぞ。
しかしな、おまえがそうだからこそ、我々は一刻も早く張郃や高覧と合流せねばならぬのだ。
だから、もう少し・・・。」
「それは不可能です、張郃と高覧はもういません。」
袁紹の言葉を遮って、衝撃的なセリフが響く。
袁紹と審配はぎくりとして振り向いた。しかし、そこにいたのは生きた人間だった。
「郭図、それに逢紀か・・・。」
「はい、殿もご無事でなによりです。」
郭図は軽く頭を下げた。
郭図と逢紀は確かに生きた人間だが、あいにく二人とも審配と同じ文官であり、袁紹を守るだけの武は持ち合わせていない。生きていてくれたのは嬉しいが、今は武将の方が必要だ。
しかし、今郭図が言ったのは・・・。
「張郃と高覧に何かあったのか?」
袁紹が問うと、郭図は残念そうに首を振った。
「彼らはもう、この陣にはいません・・・殿より自分が大事だったようです。
二人とも、曹操軍に降ってしまいました。」
634 :
セイレーン:2009/05/26(火) 20:42:47 ID:nniem1MoP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(17)
「曹操様、袁紹軍の将が降伏を申し出ております。
いかがいたしましょうか?」
「すぐ行く、待たせておけ!」
曹操はしてやったりと拳に力をこめた。
許攸は袁紹軍の将が降ってくると言っていたが、実を言うとそこまでうまい話を心の底から信じていた訳ではなかった。
しかし特にする事もないので、城壁の見張りの数を増やして袁紹軍の動向を監視させていた。
日が中天に来てそろそろ昼飯だと思った矢先、許攸の言葉は現実になった。
「降ってきたのは誰だ?兵はどのくらいだ?
あまり多いと食料がなくなるぞ。」
「ご心配には及びません。
将が二人と、兵は数十人です。おそらく手勢だけで来たのでしょう。」
監視の兵の報告を聞きながら、曹操は城門の櫓に向かった。
櫓に登ると、そこにはすでに自軍の将たちが集まっていた。下を見ると、立派ないでたちの将らしき人物が二人と、数十の兵がたむろしていた。
着衣は血と思しき汚れが目立ち、皆一様に何かに怯えるように青い顔で、しきりに元いた陣を振り返っている。
曹操が下をのぞきこむと、それに気付いた将の一人が声を張り上げた。
「開門!拙者は袁紹に仕えていた高覧と申す者。
貴公の軍門に降りたく、張郃とともに参った。
急ぎ、城に入れてくれ!」
最期の一言に、妙に力がこもっていた。
しかし曹操はすぐさま開門を命じた。
たとえ内からかく乱する策であったとしても、この人数なら十分監視できる。それに曹操は元々、降ってくる将は温かく迎えることにしている。
何より、袁紹の陣で何が起こったかを知りたくてうずうずしていた。曹操は急ぎ気味に櫓から降りて、二人の降将のもとに向かった。
635 :
セイレーン:2009/05/26(火) 20:44:23 ID:nniem1MoP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(18)
曹操が城門で出迎えると、二人の降将はひどく疲れた様子で馬から下りた。
彼らの足は、かすかに震えていた。
不意に、高覧が振り返って叫ぶ。
「お、おい、まだ閉じてなかったのか!!
早く城門を閉じてくれ!!」
ひどく興奮しているようだ。曹操はそんな高覧をなだめるように言った。
「分かった、城門はすぐ閉じさせよう。
そう心配することはない、追っ手が来てもこの城はそう易々と落とさせぬ。安心して休むがいい。」
それを聞くと、張郃と高覧に従っていた兵たちは皆、倒れるように座り込んでしまった。
曹操はそれを一瞥すると、早速聞きたかったことに入った。
「答えよ、おぬしらの陣で何が起こった?
袁紹の兵が多く、装備も豊かでそう簡単に崩せぬことは、おれも知っている。それがなぜ崩れたのかを知りたい。
正直に答えれば、それもおぬしらの手柄にしてやるぞ。」
曹操はわくわくしながら返答を待った。
しかし張郃と高覧は一度困ったように顔を見合わせ、それっきり黙りこんでしまった。
曹操は苛立った。
「どうした、答えられぬのか!?」
曹操が剣に手をかけると、高覧はびくりと肩をすくめて後ずさった。入れ替わるように、張郃が前に出て曹操にひざまずく。
「恐れながら、これから私が話すことは誠に信じ難いことと思います。
しかし、どうか耳を傾けてください。」
「うむ、分かった。話してみよ。」
曹操がうなずくと、張郃は一度大きく息を吸って話し始めた。
自分たちが味わってきたあの地獄、あの化け物たちのことを・・・。
636 :
セイレーン:2009/05/26(火) 20:57:52 ID:nniem1MoP
ただ、袁紹軍は横山三国志にほとんど出てこないんだよね。一部の曹操軍文官も。
出てこないやつはオリジナル人格です。
次は割りと早く投稿できる予定。
手ごたえと共に、ガチャ、と低い音がした。
後の、何かを入れる場所…ワゴンでも「トランク」で良いのだろうか?
そこのドアが開いた。
何かに引っ掛かっているらしく、人が辛うじて入れそうな程度の隙間しか開かなかったが、確かにその向こうには何も集っていなかった。
その隙間に友人が入ってゆく。するっ、と音がしそうなほどスムーズに。
「大丈夫、普通に出れる。…うん、何も居ない」
隙間に上半身を突っ込む。見た目よりも大きく開いていたようで、別に引っ掛かることもなく出ることができた。
「よ、っと」
体を起こしてみる。目の前に黒い車―――近すぎて判別しづらいが、これはタクシーだ。
バスが横転した時に下敷きになってしまって、車の前半分がぐしゃぐしゃ。後の窓から覗くと、下敷きになった運転席から左腕が飛び出している。…うえ。
「缶詰は仕方ないか」
友人が名残惜しそうに車を見つめている。
今更戻ったところで大した数が確保できるとは思えない。むしろ、アレに捕まる危険性が増すだけだ。
今、自分達はワゴンとバスとタクシーによって作られた三角形の隙間に居る。タクシーが上手くワゴンのドア留めてくれているおかげで、そう簡単には追ってくることはできない…と思う。
その内に、この車を乗り越えて反対側の車線に出れば逃げれるはずだ。
「じゃ、行くよ」
友人がよっこらせと車を上る。
それに続いて、中を見ないようにして車に上る。そこからの景色は、それは酷かった。
だだっ広い道路のあちこちに車がある。
ただ停めてあるんじゃなくて、電信柱にぶつかっていたり店に突っ込んでいたり衝突していたり潰れていたり。
大半の車のドアは開けっ放し。ということは、その人達は何とか逃げ出せたのだろう。
道路を見渡しても死体は見当たらない。こんな状況で、よく誰も轢かれなかったものだと感心する。
「何してんの?」
友人が二台先の車の屋根からこちらを見ている。置いていかれてはたまらないので、目の前、タクシーに衝突している車に飛び移った。
その時、後からガラスが砕け散る音が聞こえた。
慌てて屋根から下りる。友人も屋根から飛び降りて、道路を走っていた。
後を振り向いてみても、その禍々しい姿は見えない。でも、だからといって安心はできなかった。そもそも、アレはあそこに固まっているのが全部じゃない。
車でできた迷路を走る。
道路に沿って移動するのならば困難極まりないのだろうけど、横断するなら別に難しくは無い。精々十数メートルの距離だし。
道路に面した飲食店の入り口で友人が待っている。
後を確認しながら中に入る。追ってくる気配は無い。もしも追ってきていたら車の上から頭が見えるはず。
店に入った途端、カランカランとベルが鳴った。
ぎょっとして道路を覗いたが、何も寄ってこない。
店内をざっと見渡す。あちこちこぼれた料理が散乱している以外に問題は無かった。
「あー…、喉渇いた」
「それは同感。そろそろ暑くなってくる時間だし」
カウンターに突っ伏す。冷えた木が気持ちいい…。
「はい、飲み物。好きなの選んで」
「うあー、さんきゅ」
どさどさと冷えたジュースやお茶のペットボトルが置かれたので、とりあえず炭酸飲料を選択してみる。
そして、いつの間にかカウンターの内側へ回りこんだ友人がカウンター下を漁っているのに気がついた。
「…ん?」
「どした?」
「リモコンがあった」
ずい、と目の前に差し出されるテレビのリモコン。
きょろきょろと見渡すと、隅の天井にテレビがくくりつけられていた。それに向けて電源ボタンを押してみる。
―――ザーーーーーーーーーーーーーー…。
砂嵐。
適当なチャンネルを押してみる。
―――ザーーーーーーーーーーーーーー…。
別のチャンネルを回す。
―――ザーーーーーーーーーーーーーー…。
どこを回しても砂嵐。国営放送ならばと思ったものの、色のついた長方形が沢山映っていただけだった。
「テレビ局も…?」
「警察に続いて報道もダメみたいだね」
たった二晩で。ほんの、48時間程度で。
警察に続いてマスコミも占拠されてしまったらしい。
社会が壊れて、街には化け物ばかり。警察はとっくに全滅。
――どこのゲームだよ…。
それは思ったことなのか呟いたことなのか。
そんな、ゲームの中に迷い込んでしまったかのような世界で、自力で生きていくしかない。なんて性質の悪い現実。
夢じゃないというところがまた。
「………とりあえず、どうする?」
「うーん、こうなったらどこに行っても同じ気がするし…」
「一旦家に寄るとか」
「家に?」
弟のことを思い出した。
あの時の姿は何度思い出しても、「弟」として認識できない。
それ以前の、普通の時の姿は認識できるのに…。
――じゃあ、その状態が発展したらアレになるのか?
形容しがたい姿。思い出すだけで吐き気がする、その忌々しい外見。
声を聞いただけで恐怖に囚われてしまう、アレ。
しかし今一度比較してみると、似通ってはいても別のような気もする。
…いやまぁ、証明することはできないのだけど。
「…いや、お互い家族が何かおかしいんだろ? だったらしばらくは寄り付かない方がいいと思う。待ち伏せされると思うし」
家の玄関を開けた途端、アレになった家族が襲ってくるという光景をイメージ。
笑えない。
「…だったら、ここで篭城? 食べ物も飲み物もあるし」
「いや、篭城はしない方がいい。囲まれたらお終いだしね」
炭酸飲料を飲む。よく冷えてるおかげで、喉がちょっと痛くなった。
…ん? 冷えてる?
………電気がまだ通ってる?
がば、と立ち上がる。
ぽかんとしている友人を置いて、カウンターから厨房へと回る。
業務用冷蔵庫を開ける。中から冷気が溢れ出た。
「電気って、どのくらいで止まるのかな」
「さぁ」
友人が持ち出してきた漫画を読んだ時、発電所を守るために自衛隊が出る、というような描写があったのを思い出す。
「水道は…確か3日くらいは保たなかったっけ」
友人がボヤいている。
「まだ電気が通じてるってことは、きっと人間が居るはず」
「でも、誰も居なくてもしばらくは送電するんじゃないの?」
「む…」
それを言ったらキリがない。
「それに、警察みたいにアレが運営してたりしてね」
「むむ…」
否定できない。
きっと、警察署に居るのだって罠なんだろう。バレバレだけど。
「ってことは、アレって賢いのか?」
「…そりゃ、ある程度の知恵が無きゃできないんじゃない?」
頭が痛い。
怪力で足が速くてオマケにある程度の知恵。
…どうしろと。
誰か居ると確証の持てる場所に行けば、生存者と合流できるはずだ。
生存者を集めれば、或いはアレに対抗できるかもしれない。
「誰かが必ず居る場所…思いつかん」
「誰かが居る場所じゃなくて、アレが居ない場所を考えるとかは?」
そういう考え方があったか。でも、そんな場所は無い気が――、
………そういえば、どうしてここにはアレが居ないんだろ?
アレの居た場所を思い返す。道路と民家、警察署。共通点が無い。その上、この三つ以外に確認していない場所は山ほど。
「…とりあえず、思いつくまでここで休むか」
冷蔵庫の扉を閉める音が、やけに響いた。
ではまた…明日か明後日あたりに。
拝見しました。
知性を持ってるってのは厄介で怖いですよね。
しかも、生前との断絶がないってのも、さらに無気味で新鮮味があって面白いです。
続きを楽しみにしております。
わあぁーすごいドキドキします!
早く続き読みたい
644 :
セイレーン:2009/05/30(土) 22:45:36 ID:MKlRkaF+P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(19)
「死体が動くだと・・・?」
張郃の話が終わると、曹操はひどく不満そうな顔でため息をついた。
話を聞こうと集まってきた武将たちも、ほとんどあきれかえっている。
「のう、わしらをはめようと思うなら、もう少しましな理由を考えてこぬか。」
夏侯惇がうんざりしたようにぼやいた。
「死体が動いて生きた人間に噛み付き、噛まれて死んだ人間も同じように動く死体になる。
陣はそうして増えていった死体に埋め尽くされている。
・・・なんて、できの悪い怪談以外の何物でもないですな。
殿、こんな奴ら、すぐ首をはねてしまいましょう。」
「そうですね、夏侯惇殿の言うとおりです。
だいたい、死体が動く訳ないですし。」
曹洪もしごくまっとうな意見をこぼした。反論する者は誰もいない。
いや、降伏してきた高覧は慌てて言い返した。
「何言ってるんだ、おれたちは嘘なんかついてないぞ!!
嘘だと思うなら、この中の誰かがおれたちのいた陣に見に行ってみろ。おれたちの首をはねるなら、その後にしてもらいたい!」
「待てっ、そんなことをすれば、見に行った者は無事では済まぬぞ!」
横から張郃が止めに入った。
曹操と配下の将たちはすっかりあきれて、ある者は面白そうに笑いながら、この情けない仲間割れを見ていた。
こんな馬鹿な話しを信じさせようとして、信じてもらえないと取り乱して仲間割れするようでは、あまりにお粗末だ。
曹操自身の口からも、思わず失笑が漏れた。
この時、武将たちのくすくす笑いを押しのけて、ひときわ甲高い笑い声が響いた。
「ほっほっほ!
その分では、うまくいったようですな。」
その声の主は許攸だった。
その言葉に、曹操は驚いて許攸の方を振り返った。
「うまくいっただと、どういうことだ!?」
645 :
セイレーン:2009/05/30(土) 22:47:12 ID:MKlRkaF+P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(20)
曹操と武将たちの視線が一斉に許攸に集まる。
許攸は得意げに降将たちの前に出ると、宝物の自慢でもするような口ぶりで言った。
「今彼らが言ったこと、これこそまさに、私の作った新兵器の力です!
どうです、すごいでしょう、死体が動いて人を襲うんですよ!?
誰も死体が動くなんて思ってませんから、動いたら味方だと思って寄ってくるから、死体はやすやすと味方を食い殺すんですよ。」
「貴様かァ!!」
突然、ひざまずいていた張郃が許攸につかみかかろうとした。
「止めよ!」
曹操の命令を受けて、側にいた于禁と夏侯淵が張郃を取り押さえる。
曹操は一息つくと、できるだけ落ち着いて許攸に言った。
「で、その新兵器とはどういうものなのだ?話せ。」
許攸はにかーっと笑って、ふんぞり返って話し始めた。
「私の自慢の新兵器は、疫病を基に作り上げたものです。
ほら、病気の中には、頭がおかしくなったり体が腐って死んだりするものがあるでしょう?
私はそれらの病原体を集めて、ひたすらかけ合わせる研究を続けました。その結果、感染した者を体内から腐らせて殺し、死体を肉を食いたがる化け物に変える、素晴らしいウイルスが出来上がりました!」
あまりのおぞましい内容に、誰も声をあげる事はできなかった。
許攸はさらに続ける。
「これにかかった者は一人残らず、動く死体となって人を襲います。
そうですね、異国の言葉を借りて、ゾンビとでも申しましょうか。
ゾンビになった人間にはもう理性はありません。ただ本能に従い、周りにある生きた肉を食べるだけです。それが生前の味方でも、彼らにはそんな事分かりませんからね。
しかし襲われる側は・・・知人の死体が襲ってくるんですよ?冷静に対処できる人間など、いようはずがない!
そうして被害は幾重にも拡大する、そこの無様な将たちが見たようにね。
どうです、すごいでしょう!!?」
646 :
セイレーン:2009/05/30(土) 22:49:07 ID:MKlRkaF+P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(21)
曹操は必死に、頭の中の混乱を鎮めようとしていた。
許攸の言っていることは、とうていあり得ない馬鹿馬鹿しい話だ。
しかし許攸が降ってきた時から、許攸の言ったことは次々と現実になった。こちらが手を下さずにあの強大な袁紹軍が崩れたこと、そして袁紹軍の将が他にも降ってきたこと。
もし本当に起こっているとすれば、見事につじつまが合ってしまう。
「兄上・・・。」
曹洪が青ざめた顔で寄り添ってきた。
夏侯惇がわざと大きな声で発言する。
「あ、ある訳ないだろうそんな話・・・!
きっとこいつも、今降ってきた二人とグルだったんでしょう。三人まとめて、早く牢にぶちこんで・・・。」
「だったらてめえが見に行ってみろよ!!」
それを遮って高覧が叫ぶ。
それっきり、みんな黙ってしまった。
いや、武将たちの後ろから一人の文官がしずしずと進み出た。荀攸だ。
「殿、まずは袁紹の陣に斥候を放ちましょう。
事の真偽を確かめぬ事には対策は考えられませぬし、偽りであったとすれば袁紹軍が崩れた別の原因があるはず。
もし大掛かりな策であったとしても、先に動きを知れば裏をかくこともできましょう。」
「うむ、そうだな・・・。」
曹操はしばらく目を閉じて考え、力強くうなずいた。
「よし、急ぎ袁紹の陣に斥候を放て!
事の真偽が分かるまで、今降ってきた者たちは牢に入れておけ。
許攸も監視しておくのだ。」
そうして、官渡城から袁紹の陣に多くの斥候が走った。
張郃と高覧は牢に引かれていったが、彼らは驚くほど素直に従った。
宣言通りに〜。
一日を刻みまくってでお送りするのであまり早く進展しません。
それでもお付き合い下されば幸い。
ペットボトルを投げる。かたん、と音を立ててゴミ箱に収まった。我ながらナイス。
「そういえば携帯は?」
「あ…、忘れてた」
友人が慌てて携帯を取り出す。折りたたみ式のそれを開くと、それが低い音を立てて震えた。
どうやらメールらしい。ボタンを押す音が聞こえる。
ぽちぽち。
ぽちぽちぽち。
ぽちぽちぽちぽち。
ぽちぽちぽちぽちぽちぽちぽちぽちぽち…。
「何件あんだよ…」
「見ていいよ。そっちと変わんないから」
そっちと変わらない?
その言葉の意味を考えていると、目の前にずいっ、と携帯の画面が出された。
それを見やれば、
<助けて><助けて><助けて><助けて><助けて><助けて>
うわ。
そっちと変わらない、というのはそういう意味か。
自分の携帯を何となく取り出す。電源を入れようとしたところで、電池が切れているのを思い出した。これじゃあ誰にも連絡がとれない。いや、それはある意味幸せなのかもしれないけど。
ちなみに、その時の送信者は弟だった。じゃあこっちは?
「…あれ、バラバラ?」
「いや、よく見たら良い」
メールボックスを遡る。
送信者はバラバラだった。だけど、書かれている内容は全部同じ。
<助けて>
この一言のみ。ちょっとしたホラー映画を見ている気分。
送信者の名前が一巡した。また、さっきと同じ送信者のメールが――。
…あれ?
トリップしていた意識を引き戻して、画面を、正確には送信者の部分を注意深く見る。
メールの送信者が、同じ内容、同じ順番でひたすらループしている。
この二日間でだいぶ奇妙なコトを体験していると思ってるけど、これはその中で一際奇妙だった。
「こ、これ」
「その人たち皆、多分ね」
弟のように。
あのようになっている…。
このメールが別々の送信者で数通だけなら、騙されていたのかもしれない。
返信をしたりしていたら…と思うと、背筋がぞっとする。
「ん?」
メールを流す手を止める。一つだけ、他のと違うものがあった。
書かれている内容は同じ。でも、決定的に違う。
<たすけて>
………これは。
「ねぇ、これ」
友人に携帯の画面を突きつける。それを見た友人は、
「…どういうこと?」
眉をひそめる。
「たすけて、って書いてあるからには」
「そりゃ、助けて欲しいんだろうね」
でも、この送信者がアレや弟達じゃないとも限らない。
手法を変えているだけかもしれないし。
二人の間に沈黙が落ちる。
あまりに静か過ぎて、炭酸の泡が弾ける音まで聞こえていた。
「………………連絡、とってみる?」
その言葉に、ごく、と喉を鳴らしたのはどちらだろうか。
友人に携帯を返す。
ぽち、ぽち。
やけに緩慢な動作。
再び突きつけられる、その画面には。
その送り主のものと思しき、電話番号。
―――いちかばちか。
我ながら、分の悪い賭けだ。
―――押すよ。
――うん。
その会話が本当に為されたのかどうか、確証が持てない。
喉を鳴らしたのは、どちらだろうか。
――ぽち。
通話ボタンを、
――ぽち。
押した。
アイランドシティ大橋についたころ、すでに日は落ちかけていた。
拡声器で軍服姿の男が何か叫んでいる。
「みなさん。落ち着いてください。私は陸上自衛隊の長谷智紀といいます。
一人ひとり検疫を行ってますので、順番にお待ちください。我々が付いてますので!」
長谷は周りの自衛隊員よりかなり若く見えた。幹部候補生か、それとも…。
日は完全に落ちて陸上自衛隊と警察が照らすスポットライトと橋の電飾だけが頼りになった。
時計を見ると時刻は19時半になろうとしていた。銃を持った自衛隊には逆らえない。
順番抜かしを画策していた俺たちも仕方なく列に並んだ。
列に並ぶのにだいぶ出遅れたと思ったが、並んでから1時間もしないうちに俺の後ろにも長蛇の列ができた。
といっても、前のはけ具合は相変わらずなのでそれ自体は何の慰めにもなっていないのだが…。
「うごぉあああああああああああああああああああ」
遠くから悲鳴がした。人ごみが邪魔して何が起こったか見えないが、もはや見当がついていた。
「奴らだ…」
周りの人たちも同じ発想に至ったらしく、妙な悲鳴をあげて検疫所に突き進んでいった。
「うぁああああああ死にたくないぃいいいいいい」
バババババ
しかし、今度は橋の検疫所のほうから別の音がした。銃声だ。見ると前のほうから人が逃げかえってくる。
今度ははっきり見えた。自衛隊と警察が一般市民に向かって発砲を始めたのだった。
長谷が陸上自衛隊の迷彩の施されたバンの上に乗って
拡声器でなにか喚いた。
「みなさん。この橋は封鎖されました。
伝染病の原因が解明されるまで外に出ないようにお願いします。なお、泳いで脱出された場合、発見次第射殺します」
「ふざけんなよ。てめー、何の権限があって!」
バン
銃声の後、文句を垂れた市民は崩れ落ちた。
「みなさん、この橋は閉鎖します。早く離れてください。危険なので家から出ないように」
そう言い残すと長谷は、バンの上から降り俺の視界から姿を消した。
「くそ!前方はアウト、後方はゾンビが近づいてくる。早く橋を離れよう!話はそれからだ。
橋の上に留まってたら前後挟まれてゾンビにやられるぞ!」
悲鳴にも近い声を上げながら逃げ待とう人々を押しのけて自分も前へ進もうとする。
クソ、既に橋の上にも何体かゾンビが入ってきているようだった。
「きゃあああああ」
悲鳴のほうを見てみると、南が奴らに腕を掴まれている。助けようにも人ごみで動けない。
と、南を掴んでいたゾンビの首が変な方向に折れた。しかし、首が折れた程度では奴らは死なない。
何かの動物かのように歯をむき出して自分の首を負った奴を威嚇する。武田だ。
「南ぃ!早く逃げろ!」
「先生は!?」
「バカヤロウ。生徒を守るのは教師の役目だ、いいか、人という字はだな…」
ブシャ。言い終わる前にゾンビに首をかみちぎられたようだ。あっけない最期だっ
た。やっと南の近くまで来れた俺はゾンビが武田の死体に夢中になってる間に
呆然としている南の腕を掴んで橋の外へ行こうとする人ごみの流れに乗った。
その直後に背後から爆音がした。橋が戦闘機に爆撃されている。橋を封鎖していた警察や
自衛隊はいつの間にかいなくなっていた。
「はしれ!はしれ!」
悲鳴に近い怒鳴り声が飛び交う。
「うわぁ」
長池が転ぶ。助けようと手を伸ばすが慌てる人ごみに押されて長池の姿は見えなくなってしまった。
橋の出口付近を離れてやっと人ごみからは解放された。肩で息をついていると地響きと大きな音がした。
振り向くと橋が崩れ去る最中だった。
「アイランドシティ…大橋が…」
まだ橋の上にいる大勢の人を巻き込んでアイランドシティ大橋は崩れ落ちた。
戦闘機は満足げに夜空に消えていった。その場にへたり込みそうになる。
だが、まだ油断はできない。ゾンビの脅威が去ったわけではないからだ。
「おい、みんないる?はぐれた人は?」
朝霧が回りを見回していった。
「武田さんと長池くんを除くと…高槻さんと相野さんがいないな」
「そうか…まぁ、しようがない」
高槻をかなり頼りにしていたので落胆は隠せなかったが、
それよりもこれからのことを考えるほうが重要だった。
「とりあえず、まだ南区のほうはゾンビが少ない。
あの糞自衛官の話を信じるなら政府がワクチンなりなんなり開発してくれるまで
持ちこたえたら助かるってわけだ。つまり…」
「立てこもるんだな?」
「あぁ、そうだ。それに適したビルと言えば…」
徳光デパートは開業して今年で123年目を迎える老舗デパートだ。
もちろん、アイランドシティにある建物が123年あるわけもなく、本店の歴史、という意味である。
当時、娯楽施設の少なかったアイランドシティにまっさきに店舗を出店してきたのが徳光デパートだった。
9階建てで屋上はゲームセンターやミニ遊園地。まぁ、よくあるデパートの標準的な構図と同じだ。やはり、みんな考えることは
同じらしくすでに先客が何人もいた。
「おい、てめーら。ここは満員だ。別んとこいきやがれ」
「まぁまぁ、そう言わずに…これだけ広いんですし…」
「でも、食料が…」
先客たちは輪になって相談を始めた。そして…
「くそ、いてもいいぞ。邪魔すんじゃねーぞ」
俺は横柄な態度の男にいらだつ気力も残っていなかった。
「自己紹介をしておいたほうがいいかな。僕は谷川貞治。このデパートの中元売り場で働いている。」
そういえば、Yシャツのポケットに「徳光デパート 谷川貞治」という名札が付けられていた。
「で、さっきの彼が黒田庄。自分のことを何にも話してくれないんだよ」
黒田は手で早く次に回せと指示した。
「であっちにいるのが…」
「自己紹介くらい自分で出来ますわよ」
そういうと、上品な服を着たオバサンが続きを受け持った。
「私は船戸栄子 専業主婦ですの」
次は太った初老の男が自己紹介をする。
「俺は大谷日丸。料理の評論家をやってる」
最後は今どき風の女だ
「私は烏丸女子大学の英文学部やってるの。江住真紀。マキってよんで」
「あと2人いるんだが…デパートの見回りをしている。
いくら出入り口をふさいでも最初から中にいたらアウトだからね。あ、帰ってきたみたいだよ」
谷川が指さした方向には2人の男がいた。
「おぉ、お前ら無事だったのか!よかったな」
高槻だった。俺は再び安心感に包まれた。それだけ高槻に信頼を寄せていた。
「生きてたんですか…」
一緒にいた男は相野だった。
結局、デパートには全部で俺、朝霧、鷹取、山科、藤阪、高槻、南、相野、並河、谷川、黒田、船戸、大谷、江角の14人が立てこもることになった。
俺たちが来て以降はこのデパートに駆けつけてきた人はいない。死んだと思うよりは別の場所に避難したと思いたかった。
男も女も関係なく家具売り場から椅子やテーブルなどを運んできて入口を完全にふさいだ。
これでゾンビどもが中に入ってくることはないだろう。地下からの来訪者にはさすがに手が回らないので
地下1階と1階を結ぶエスカレーターや通路、階段を同じように封鎖した。
「電機は節約させてもらいますよ」
というと、谷川は必要ないエリアの電気をすべて消した。
「わがデパートでは電気供給がなくたって1日分くらいは持ちこたえられますが…あくまで長期戦を見越して…ね」
一同は9階に集合した。ゾンビから一番遠いという心理的な理由もあるが9階は
食堂街になっていたからだ。谷川は9階の電気だけはつけておいた。暗い所からゾンビが出現しても対応できるように…ということだろうか。
9階食堂街の中心の噴水エリアにみんな集まっている。
目の届かない所には自発的には行きたくないのだろう。噴水の水は止まっていて静かな池のようになっていた。
そういえば、このメンバーの中に高槻だけいない。高槻を一番頼りにしているだけあって少し不安になった。
「ボウズ。ちょっといいかな」
噴水のふちに座り一人でぼけーっとしている俺の横に藤阪が座った。
「今回の件…どう思う?」
「どうって…、ゾンビ騒ぎですか?自然にこんな疫病が発生するもんなんでしょうかね?
医学部の友達によると死体まで動き出したそうですし…」
「うむ…人為的な可能性も否めんな。ボウズは死ぬのは怖いかね?」
「そりゃ…」
「ワシはね。もう72年も生きた。ほとんど人生に悔いはない。
だが君たちは違う、まだまだ若い、いざとなったらわしを置いてでも生き抜くんだぞ」
「藤阪さん…」
沈黙…辺りはシーンとした。
「藤阪さん。僕はね、100歳までは生きようと思うんですよ、72歳なんてただ
の早死にですよ。」
俺はそう言うと、藤阪の横を離れた。俺の言ったことは本心だった。
今日日、早死にを求める人が増えてきたが長寿は人間の永遠の夢だ。
生きられるならいつまででも生きていたい。俺はそう思う人間だった。
だからこそ、こんなつまらないゾンビ騒ぎで命を落としたくはなかった。
姿を消していた高槻が戻ってきた。とりあえず一安心だ。
だが、高槻の口から出た言葉は安心でも何でもなかった。
「烏丸県警の警察内線に電話をしたんだ。
明日の午前10時に爆弾を落としてアイランドシティ語とふっとばすらしい」
政府の考えた『対策法』ってそんなことかよ。俺は心底あきれ返った。
「今が午後の9時48分。あと約12時間だ」
「なんだぁ?そりゃ。俺たちに死ねっつーことかよ?」
「だいたい、日本政府にそんな権限あるのかよ!」
高槻はうつむきながら言った。
「爆弾を落とすのは日本政府じゃない。アメリカ政府だ」
「は?」
「ここまで悪質なウイルスは他に類を見ない。人類が初めて経験する異常事態と
言えよう。そこでWHOや国連が話し合った結果、この島ごと抹消することが決定したんだ」
「そんなこと国民が許すのか?原爆を唯一落とされた国だぞ!?」
「国民には捏造ニュースでも流すつもりだろう」
「まるでバイオハザードそのままじゃないか…」
みんな頭を抱えてその場に腰をおろした。鷹取が自嘲気味に言った。
「サバイバルでも何でもない。死ぬの確定かよ」
「そうでもない。実は北区の空港エリアで有志のヘリ輸送を行っている。
もちろん政府には秘密だが、烏丸県や政府の理不尽な決定に不満を持つ烏丸県警の同僚や
自衛隊の仲間がこっそりヘリで住民の避難を進めているんだよ。ただし、一応検疫はあるけど…」
空港!
なぜ気がつかなかったのか。この島には橋一本しかないので完全に閉じ込められたと思ったがよく考えれば空路があったのだ。しかし
「空路なんか、レーダーに映るしだれか疑問に思わないのか?」
「思ってもかまわないさ、管制官だって俺たちと同じ気持ちなんだろうよ。いざとなりゃ航空自衛隊の仲間にレーダーを妨害してもらうさ」
そんなことできるのかわからないが、どうやらヘリ輸送は大丈夫そうだった。
なんか、一気に現実感が乏しくなりましたね
橋の封鎖なんて、コンテナ積んで、重機関銃据え付けとけば良いし
検疫済みの人や自衛官からゾンビの話がでて、核消毒の件がバレたら
政権が吹き飛ぶだけじゃ済みませんわな
つか、ハムや衛星回線は封鎖不可能だから必ず漏れるし
>>657 どうせ脱出したものの外の世界でもゾンビ大繁殖ってオチで終わるだろう
>>657 現実感ってww
ゾンビの存在自体、現実感はないだろ!
それとも
>>657の日常がゾンビで溢れてるのか?
つまり、脳味噌が腐った
>>657は黙って消えろってこったww
「軍のヘリ」用語
ゾンビものでオチをもたらす存在。
都合よく登場して主人公達を救出したり、ナパームで周囲一帯を焼き尽くす、あるいはその両方を行う存在。
類義語「デウセクスマキナ」
ググれ。
アマチュア無線の事だ。
>>659 現実感は説得力ってニュアンスで使ったんだけど
お前には、難しかったか?
説得力ってww
素人の娯楽作品にケチつける。おまえが言うなと!
おまえ金払って購読してるのか?
もしくは、何かの課題で強制的に読まされ、ケチをつけろと言われてるのか?
つまらんと思うなら読むなよww
もしくはこうした方が自分好みとか言う理由でケチを付けてるなら、お前がチラシの裏にでも書いてろ!カスww
いや、理由あるケチのつけ方なら
俺としてはありがたい
>>657 それね…俺も不思議なんだよ
この話は映画のバイオハザード2を下敷きにして書いてるから
映画のほうでも、隠蔽工作してたけど
先に解放した住人からゾンビ騒動が漏れたらどうするんだろうか?
>>658 まぁ見ていてくださいよ^^
文章自体はもうすべて書き終わってますから
面白い自演の仕方だなぁ
携帯で噛み付いた後にPCでフォローか
とりあえず、早く最後まで読みたい
小説の続きwktk
しかし投下が順調の時ほど来る荒らしがいるねぇ
奴らの目的は作者さんに難癖つけて、投下する気を削ぐことだと思う
これに対してどうするかは作者さん達しだいだけれど、そんな奴らには負けないでほしいっす
読者も大概だけど、作者も作者。沸点低い奴多すぎ。リア厨リア工ばかりって感じ
もうちょっと投稿ペースあげて欲しいよね〜。
私超忙しくて、その合間にわざわざ見に来てるのに
何も書かれてなかったら超ガッカリだし。
>>672 釣り針が見える……
ララァ、わたしにも見えるぞ
なんともまあ、気持ち悪いレスだなぁ。
作者はただただ稚拙な、ろくっすっぽ推敲もしてないような物を落として、
読者はそれを褒め称える事しか認めないってか。
どちらにしろ向上心が無さ過ぎだし、正義の味方気取りならそもそもお前が言うことじゃない。
無能な働き者になるくらいならROMってろ。
もう一人の自分
677 :
セイレーン:2009/06/03(水) 20:56:26 ID:CGgeMArfP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(22)
袁紹は愕然とした。
合流して自分を守ってくれるはずだった頼もしい武将たちが、すでに自分を見捨てていたなんて。
(肝心な時に役に立たぬ奴らめ!!)
「全く、一番大事な仕事をしてくれない方々です。」
郭図が袁紹の気持ちを代弁してくれた。
しかし、いくら降ってしまった武将を恨んでもこの状況がどうにかなる訳ではない。
袁紹の周りにいるのは非力な文官が三人と兵が三十人程度、郭図と逢紀が兵を多めに連れてきたのがせめてもの救いだ。
しかし、よく見ると彼らの中には、噛み傷と思しき傷のある兵が数人いる。
「お、おい・・・そやつらは、死体に噛まれたのではないか?」
袁紹が指摘すると、郭図はあっさりうなずいた。
「ええ、そうです。」
そのとたんに、審配が郭図を怒鳴りつけた。
「そうですじゃないだろう!!
噛まれたということはな、そいつらも死んだらあの動く死体になるんだぞ!?私たちを襲ってくるんだぞ!?
そんな事も気付かんのか、おまえ本当に軍師かあぁ!!」
郭図は指で耳栓をしながら、馬鹿にするように言い返した。
「知ってます、そんな事ぐらい。
いいですか、軍師というのは物事をよく観察して、情報に基づいて行動するものですよ。私は噛まれた者たちを観察しているんです。
命に別状のない噛み傷を負った者がどれくらいで死体になるのか、それを知るために。」
「だからって、そんな危険なものを・・・!」
「この者たちはまだ人の意識があります。私たちを噛みません。
それどころか、まだ死体と戦えるのですよ。ならばせめて人としての意識が明らかなうちは、一人でも護衛が多い方がいいのでは?」
「黙れええぇ!!」
678 :
セイレーン:2009/06/03(水) 20:57:34 ID:CGgeMArfP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(23)
出会って早速口論を始めてしまった文官たちに、袁紹は頭を抱えた。
袁紹に仕える文官たちは皆それなりに才能があるが、どうにも仲が良くないのが難点だ。
政策を論じる時も一人がこうだと言えば他が違うと言い、それぞれが一方的に主張をぶつけ合って大激論になってしまう。
自己主張が強すぎるのだろうか。
(それにしても、今はこんなことをしている場合じゃないだろう!
誰か止めぬのか!?)
袁紹は不安げな視線を周りに送ったが、誰も口を挟む者はいない。
兵士たちは自分たちの不安で手一杯だし、逢紀はといえば面白そうに笑いながら二人の論戦を観戦している。
そうしている間に、二人の論戦はうるさいほどヒートアップしている。
そしてついに、恐れていたことが起こった。
「うぁあ〜・・・。」
かすかな呻き声(審配がうるさくて聞こえづらい)とともに、死者の一団が姿を現した。
はっと気付いて周りを見れば、十人はいるようだ。しかも囲まれている。
「逃げるぞ!」
袁紹はすぐさま、死者が一人しかいない方向に走り出した。
死者が手を伸ばすより早く、踏み込んで剣を首筋に当てる。
そのまま、美しい半月の軌道を描いて振り抜く。
死者の首がぼとりと落ちた。
それに勇気付けられたように、動けなかった兵士たちも一斉に袁紹に続く。郭図と審配も我に返って、待ってくれと言いながら走ってくる。逢紀はといえば、ちゃっかりと兵士たちの真ん中にいる。
(くそっ武将がいればあの口論も一喝して止めてくれるものを!)
口論で息が上がっていたせいでいつもの二割増しくらい速度が落ちている文官どもを尻目に、袁紹はまた前方を塞ぐ死者を斬りつけた。
今度はうまく首が飛ばなかった。飛んだのは腕だ。
しかしそのせいで死者は袁紹の袖をつかめず、横から兵士の槍に頭を貫かれた。
「よし、このまま突っ切るぞ!」
どうにか、逃げ切れそうだ。
兵士たちは何よりも、袁紹が武将であったことに感謝した。
679 :
セイレーン:2009/06/03(水) 20:59:36 ID:CGgeMArfP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(24)
どこをどう走ったのか分からないが、とにかく死者の群は振り切ったようだ。
逃走がかなり長い時間に渡ったため、今度はさすがに袁紹の息もだいぶ荒くなっていた。
文官たちはといえば、途中からは三人とも兵士が背負うはめになってしまった。まず審配がダウンし、次に郭図がもうだめと言い、逢紀はいつの間にか兵におぶさっていた。
彼らの剣は良いものにも関わらずピカピカのままだったので、袁紹は死者の血で汚れた自分の剣を審配のと取り替えてやった。
「うむ、これならよく切れそうだ。わしが有効に使ってやる。」
「はい・・・申し訳ありません。」
審配がかすれた声でつぶやく。
後ろで逢紀がプッと笑ったので、袁紹は他の二人にも聞こえるように言ってやった。
「ああ、武器の心配はないぞ。
まだおろしたてのがあと二本あるからな!」
「・・・申し訳ありませ・・・。」「・・・お役に立てず・・・。」
蚊の鳴くような声で、郭図と逢紀が謝罪した。
袁紹が「武器の」というところを強調したので分かってもらえたと思うが、今は武器より命が心配だ。
一人になるのが嫌なので連れてきてはいるが、この文官たちは足手まといになるばかりで自分の命すら守れていない。まあ、敵を倒すのが仕事でない以上仕方がないのかもしれないが。
しかし、文官なら文官なりにこの事態を防ぐ手立てがあったのではないか。
「だいたい、おぬしら三人のうち、誰一人として許攸の兵器に何も言わなかったではないか。
勝てればそれでいいなどとほざきおって!
不明な点を調べるのもおぬしらの仕事だろうがぁ!!」
袁紹に怒鳴りつけられて、審配は思わず目をつぶった。
審配としては、自分は主の命令に忠実に従っていたのだから、そんな風に言われるのは理不尽だと思った。袁紹自身が調査せよと自分に命令を下したら、間違いなくしらみつぶしに調査していたはずだ。
だいたい、許攸の兵器を危険視する意見を無視し続けたのは、君主たる袁紹ではないか。
(で、誰がその意見を出していたんだっけ?)
>>679 >(で、誰がその意見を出していたんだっけ?)
いよいよ彼が出てくるのかなwktk
長期規制中につきレスできないけど
いつも楽しく読ませて貰ってますよ。>all
シベリアより愛を込めて
681 :
セイレーン:2009/06/05(金) 22:51:13 ID:wkyMknmtP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(25)
「我々は確かに見落としていました。
しかし、見落とさずに忠告してくれた方は覚えていますよ。
沮授殿と、田豊殿でしょう。」
審配が頭の中の検索を終える前に、郭図が発言してしまった。
しかも、記録をとるのも文官の仕事ですから、などと気取った一言までつけて。
「うむ・・・田豊と、沮授か・・・。」
袁紹が苦虫を噛み潰したような顔になった。
それもそのはず、田豊と沮授は袁紹の気に障る意見を言い続けたせいで、袁紹自身の命令により牢にぶちこまれてしまったのだから。
あの二人に食い下がられた時、袁紹がどんな憎たらしい顔をしていたか・・・審配たちもそれはよく覚えている。そもそも、田豊の時は彼らの目の前で田豊が引きずられて退場したのだ。
冀州城を出発する前のことである。
つまり、この陣に田豊はいない、いるのは沮授の方だ。
「とにかく、沮授を助けに行きましょう。
さすれば、我々では見えなかった道が開けるかもしれませぬ。」
「そ、そうだな・・・今はやむを得ぬ・・・。」
審配が強く言ってやると、袁紹はしぶしぶうなずいた。
袁紹も自分の過ちを認めるのはしぶっているが、命には替えられない。審配とて郭図の手柄に便乗する形になるのは不本意だが、今はそんなしがらみを気にしている場合ではない。そもそも審配と郭図は、元々それほど仲が悪い訳ではない。
しかし、逢紀は袁紹のその答えにあからさまに難色を示した。
「恐れながら、沮授がそれほど役に立つとは思えませぬが?
事が起こる前ならともかく、すでに起こってしまったのですからね。
それに、これ以上文官が増えて、守りきれるとお思いか?」
思えば、逢紀は田豊や沮授とすこぶる仲が悪かった。
文官同士で仲の良くない組み合わせは袁紹軍には両手に余るほどあったが、逢紀とその二人は中でもとびっきりと言えるほど険悪だった。
生死の瀬戸際でまだそちらを優先するのかと、審配はあきれかえった。
「言うな、わしが決めたのだ。沮授は助ける!
死にたくなければ、大人しくついて来い。」
逢紀のくだらない意見は、袁紹が一蹴した。審配と郭図はほっと胸をなで下ろした。
682 :
セイレーン:2009/06/05(金) 22:53:22 ID:wkyMknmtP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(26)
沮授の檻車への道を歩きながら、審配の胸にはある暗雲が渦を巻いていた。
先程逢紀が言ったセリフの一部が、どうにも嫌な予感を放っている。
(これ以上文官が増えて、守りきれるとお思いか?)
当初は沮授と一緒になりたくない言い訳だと思っていたが、よく考えるとこの言葉はかなり正しい気がする。
死者の不意討ちを食らって兵が半分になってしまった時、その予感はさらに増した。
袁紹の奮闘でどうにか逃げ切れたものの、兵が減ってしまったのは大きな痛手だ。文官三人を守らなければならないため、戦える者の負担はどんどん増してきている。
その負担はもう限界に近い、これ以上負担が増えたら、全員が共倒れになるか誰かを捨てて生き残るかの二つに一つだ。
その時捨てられるのは、審配、郭図、逢紀のうちの誰かである。
沮授が加わることになれば、確実に誰かが・・・。
「よろしいのですか、審配殿?」
逢紀が後ろから声をかけてきた。
「あなた方が余計なことを言ったせいで、あなた方の寿命がひどく縮んだようですが?
ねえ審配殿、あなたは走れば真っ先にダウンするし、おまけに周りも気にせず大声で舌戦を始めて、死者を呼び寄せるし。
ご自分の命が惜しくないようですな。」
いつもなら軽く跳ね返す逢紀の嫌味が、今日は鉄の鎖のように心臓を締め付ける。
いつもなら強気で言い返して屈服させてしまうのに、今日は喉がつまって声が出ない。
理由は決まっている、逢紀の言葉の一つ一つに、死神を感じるからだ。
(嫌だ、私は死にたくない!!)
審配は心の中で叫んだ。
自分は今日まで袁紹に忠実に尽くしてきた。今日も袁紹に兵をまとめておくよう進言して、おそらくは命を救った。
それなのに、その袁紹の口が自分を捨てろと命令を下すなんて、あまりにひどすぎる。
突然、袁紹が振り向いて審配と目を合わせた。
審配は魂が口から飛び出しそうなほどショックを受けた。
683 :
セイレーン:2009/06/05(金) 22:55:12 ID:wkyMknmtP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(27)
「審配、そなたの剣と逢紀の剣を交換しておけ。」
袁紹はそれだけ言うと、またすぐ前を向いてしまった。
審配は一瞬、何を言われたのか分からなかった。
しかし、とりあえず命令だからと剣を腰から外して持ち上げる。
すると・・・あの忌まわしい死者と同じ臭いがつんと鼻をついた。それを感じたとたん、審配は飛び上がるほどの喜びを感じた。
(捨てられるのは、貴様だぞ逢紀!!)
審配が腰から下げていたのは、袁紹が死者を斬って切れ味が鈍った剣である。袁紹は審配のおろしたての剣を、使わないならよこせと取り上げ、代わりに使えなくなった自分の剣を渡していた。
袁紹はどうにも戦いで使えない文官に、使える武器を保持する役目を無理やり与えていた。
剣を交換することで、審配はおろしたての使える剣を、逢紀は腐汁まみれの使えない剣を持つことになる。
捨てられるのは、使えない剣を入れたケースに決まっている。
思えば、審配と郭図は失敗こそあれ、袁紹を救おうとあれこれ考えてそれを行動に移してきた。
かたや逢紀は自分を守るために行動するばかりで、失敗もないが功は全くない。
行動力のない者は、サバイバルではお荷物にしかならない。
それでなくとも、自分たちは戦えないだけで十分迷惑だというのに。
(私たちは皆、「足手まとい」なんだよ!)
逢紀の考えでは、審配と郭図には罪があって逢紀にはないから、助かるのは逢紀なのだ。
しかしそれは重大なことを忘れている。審配が今思ったように、文官三人には皆「足手まとい」という特大の罪があるのだ。
その超重量の鉄球を引きずりながら、それでも審配と郭図には小さな翼がある。殿のための行動力という翼が。逢紀にはそれがない、だからいざという時は捨てられるのだ。
逢紀自身はそれに気付かぬようだった。
審配もそれに気付かれぬよう、ふしぎそうな顔を作って逢紀と剣を取り替える。
ふと気付くと、郭図が逢紀の方を見てかすかに冷笑している。
地獄に舞い降りた勝利の女神、もとい君主は審配と郭図に微笑んだのだ。
>>683 いいよーーー
おもしろくなってまいりました
wktk
685 :
セイレーン:2009/06/07(日) 15:43:37 ID:lVTies1ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(28)
官渡城の地下で、李典は降ってきた将兵らの監視をしていた。
ずっと立っていると疲れるし、座ったらそれはそれでお尻に冷気がしみこんでくる。そのため、李典はさっきから立ったり座ったりを繰り返していた。
降ってきた将兵らは、今のところ非常におとなしい。
少し前に昼飯の匂いをかいだ高覧が、お腹がぺこぺこだと言ったので、李典は曹操の許可をとってこの将兵らに粥を与えた。
その時の将兵たちの反応といったら、もう・・・ある者は椀を奪い取るようにして夢中になって貪り、ある者は涙を流して李典に何度も頭を下げ、それはなかなかに壮絶な光景だった。
ともかく、これで降ってきた者たちが本当に朝食を食べていないことが分かった。
それを荀攸に知らせると、荀攸は気の毒そうに首を振った。
「そうか・・・彼らもまた、許攸の兵器の被害者なのだな。
かわいそうに、彼らには何の罪もなかろうに。」
聞いていると長くなりそうだったので、李典は一礼して立ち去ろうとした。
すると、荀攸はとっさに李典を呼び止めた。
「待つのだ李典!」
李典は嫌な予感がした。
「高覧たちが降ってきた時、おまえはわしの命令を遂行できなんだな。
わしはおまえに、許攸がもし新兵器の事で口を割ったら、周りの武将たちを黙らせてわしの発言を促すように言っておいたはずだぞ。」
「は、はい・・・あの時は、私も混乱していて・・・。」
李典がしどろもどろと答えると、荀攸はひどく残念そうな顔をした。
「それでは前と変わらぬではないか!
おぬしは何のために武将に転向したのだ、おぬしにはその自覚が・・・。」
思ったとおり、これは長くなりそうだ。
李典は長い話を聞くのは別に嫌ではなかった。しかし、それが自分を責める説教なら話しは別だ。
それにこの説教は、結局自分が変われていないことをつきつけるものだから・・・。
結局、李典は一時間近く荀攸の説教を聞くはめになった。
686 :
セイレーン:2009/06/07(日) 15:44:56 ID:lVTies1ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(29)
そういう訳で、地下牢に戻るころには李典はすっかり疲れていた。
疲れた顔で立ったり座ったりを繰り返す李典を見かねたのか、張郃が牢の中から声をかけてきた。
「そうしていると、余計に疲れるぞ。
尻を下ろせる場所はあるのだから、座って休んだらいいだろう。」
そう言う張郃は、湿った地面にむしろをしいただけの床にごろりと寝転がっている。
以前、夏侯淵や徐晃がそういうことをしていたなと、李典はぼんやり思い出した。彼らはほぼどこででも寝られるようだ。
ごつごつした岩肌の上でも、腐りかけた木の上に寝そべっても、最悪死体がごろごろ転がっている真ん中でも平気で眠りにつく。
それが武将というものなのだろうか・・・李典はますますみじめになった。
「死体が歩いてなきゃ、それでいいさ。」
高覧が吐き捨てる。
「見ろよ、この頑丈な檻。
この中に入ってれば、あのゾンビどもには襲われずにすみそうだからな。こんな特等席を用意してもらえたなら、大歓迎だ。」
「その通りだ、ここなら安心して休める。」
張郃も嬉しそうにつぶやいた。
李典は、少し背中が寒くなった。
普通、牢に入れられてこんなに嬉しそうにしている者はいない。しかも、わざわざ降伏してきたのに牢に入れられたなら、もっと激怒して文句を垂れてもいいはずだ。
それを大喜びで受け入れるとは、どういうことか・・・。
城門を開けろと叫んだ時の彼らは、何かにひどく怯えていた。牢の中に入ることでそれから逃れられるなら、今のこの態度の説明がつく。
しかし、それを認めてしまうと、許攸や彼らが言っていたゾンビという怖いものが、本当に近くで大発生していることになってしまう。誰しも、そんな恐ろしいことが現実にあってほしい訳がない。
李典はその可能性を打ち消すように、必死で他の可能性を考えていた。
687 :
セイレーン:2009/06/07(日) 15:46:12 ID:lVTies1ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(30)
どのくらい時間がたったのだろうか、悩む李典のもとに牢番の一人が報告しに来た。
「奥の牢に入れた者たちの一人が、息絶えたようでございます。」
「何、本当か!
すぐ曹操様に報告するのだ。」
奥の牢に入れた者とは、降ってきた将兵たちのうち、負傷していた者である。
許攸は負傷者がいるのを見て、けがをした者と元気で無傷の者は別々の牢に入れろと言った。そしてもし負傷兵が牢の中で息絶えたら、すぐに報告しろとも言っていた。
それが意味するところはまだ分からないが、おそらく許攸の兵器に関係することだろう。
李典は槍を取って立ち上がり、奥の牢へと走った。
奥の牢では、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
中で一人が死んだとたん、他の負傷兵たちが出してくれと騒ぎ出したのである。もっともいくら騒いだとて、檻が壊れる訳ではないのでそう心配する事はないが、死亡を確認するための衛生兵を中に入れるのには手こずった。
李典がその牢の前に行くと、衛生兵が天窓の明かりの下で死亡した兵を診ているところだった。
「脈なし、呼吸なし、死亡確認しました。」
衛生兵は死亡した兵を手際よく観察し、結果を報告した。
特に何も起こらなかったことに、李典はほっと胸をなで下ろした。
しかし、異様なのは中にいる兵たちの反応である。負傷兵たちは一人残らず死体から離れ、壁や檻に張り付いている。中には座り込んで大声でわんわん泣いている者もいる。
一人は口から大量の血を流して、呻き声をあげて苦しんでいた。牢番の話しによると、武器を取り上げたので舌を噛んで自殺しようとしたという。
李典はそれを聞いて胸を痛めたが、出してやる訳にはいかない。
非情なようだが、こちらを策にはめる疑いのある者を出すことはできないのだ。
衛生兵が診察具を小さな包みにまとめている。
どうやら、何事もなく終わりそうだ。
李典はほっとして牢に背を向け、集まっていた牢番たちに持ち場に戻るよう指示した・・・その刹那、背後に恐ろしい悲鳴を聞いた。
李典が振り返ると、真紅の血煙が上がっていた。
688 :
セイレーン:2009/06/07(日) 15:47:20 ID:lVTies1ZP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(31)
李典は、自分の見ている光景が信じられなかった。
衛生兵の首筋から、噴水のように血が噴き出している。
衛生兵の悲鳴がとぎれ、体が地に伏す。
その向こうには死んだはずの負傷兵が、たった今死亡を確認された者が、顔を血で真っ赤に染めて起き上がっていた。
ごげげっと喉を鳴らして、死んだはずの兵は大きく口を開き・・・人目もはばからず衛生兵の体にかぶりついた。
獣のように肉を食いちぎり、ぐちゃぐちゃと咀嚼する。
その肉を飲み込むごくりという音が聞こえた瞬間、李典は悲鳴を上げていた。
「ひぃいやあぁー!!!」
武将とは思えない、甲高い悲鳴がこだまする。
「何だ!」
「どうした!?」
その悲鳴を聞きつけて、外にいた曹仁と于禁がかけつけてきた。
しかしその二人も、牢の中で繰り広げられる凄惨な光景に凍りついた。
死んだ兵は衛生兵の腹に顔を突っ込み、腸を貪っている。死んだ兵が顔を動かすたびに、衛生兵の腹からぎゅっぎゅっと内臓がはみ出す。
「ひ、人を・・・食っている・・・!!」
于禁がひきつった声でつぶやいた。
いくら歴戦の猛者でも、人が人を食う場面に出くわすことは滅多にない。
食糧が尽きた城などでは時々あることだが、それでもこんな残酷な食い方はしない。生きた人間にかぶりつき、公衆の前面で腸を引きずり出すような食べ方は。
「お、おい・・・何なんだあいつは!?」
曹仁が青くなって李典に聞いた。
李典は、分かっていることだけ答えた。
「分かりません・・・あの兵は、食われている衛生兵が死亡を確認したはずなんです!!」
続きwktk
としか書けない不甲斐ない私
よし、こうなったら!
「俺、このゾンビ小説が書けたら投下するんだ……」
沮授ktkr
つか田豊こねえええええええええええええええええ
続きを早く書くんだ!!!!!
>>689 戦国ゾンビでも何でもいいから書いてくれw
以上、シベリアから愛を込めて
691 :
セイレーン:2009/06/10(水) 22:18:27 ID:NyK8+qfnP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(32)
突然、まだ生きている負傷兵たちが牢の戸に殺到した。
「出してくれえぇ!」
「おれたちは、まだ生きてるぞ!!」
それを聞いて牢番の一人が鍵を開けようとしたが、鍵は曹仁に取り上げられた。
「だめだ、開ければあの食人鬼が出てくるぞ!」
李典は思わず異議を唱えかけたが、恐怖がそれを制した。
あんな恐ろしいものが外に出たら、自分たちの身が危険にさらされることになる。負傷兵たちを見殺しにするのは心苦しいが、被害を拡大させない方が大切だ。
もしこれが許攸の言っていたゾンビというものであるなら、特に・・・。
再び、断末魔の悲鳴が上がった。
死んだ兵が生きている負傷兵に噛み付いたのだ。
戸のある一角に固まって身動きがとれない負傷兵たちに、死んだ兵は手当たりしだい噛みついた。何度も真紅の血が噴き上がり、悲惨な声がこだまする。
李典たちには、どうすることもできなかった。どうしていいか分からなかった。
死んだ兵が檻のすぐ側までやって来て、李典の方に手を伸ばした。
「ひい!?」
後ずさる李典と入れ替わりに、曹仁が格子の隙間から槍を突き入れる。
「くらえ!!」
槍はぶっすりと死んだ兵の胸に刺さり、寸分の狂いなく心臓を貫いた。
曹仁の顔に笑みが浮かぶ。
しかしその数秒後、死んだ兵は無表情のまま、槍を外そうと体を揺らし始めた。
「な、なぜ死なない!?」
人間でも動物でも、心臓を貫かれれば死ぬのはごく当たり前のことだ。しかしこの食人鬼は死なないだけでなく、苦痛すらも感じていないように見える。
李典は自嘲気味に思った。
(死なない、だって?
あいつはもう一度死んだのに?もう、死んでいるのに・・・?)
つい数分前、李典の目の前であの兵の死亡は確認されたのだ。
若くて真面目な、おそらく死亡判定の誤りなどしないであろう衛生兵の手で。
その衛生兵は今、血の海の中に横たわっている。まだ若いのに悪いことをしてしまったと、李典は彼の死を悼んだ。
692 :
セイレーン:2009/06/10(水) 22:19:50 ID:NyK8+qfnP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(33)
冥福を祈るために手を合わせた李典の前で、衛生兵の体が動いた。
「え・・・?」
あっけにとられている李典を横目に、衛生兵はむくりと起き上がり・・・驚いたことに立ち上がった。
そして、李典の方を向いた。
生きていた、助けないと・・・李典は反射的にそう思ってしまった。
「動かないで、今助けに・・・。」
とたんに、李典の体は何者かに拘束されて自由を失った。
于禁が後ろからはがいじめにしたのだ。
「落ち着け、あいつの体をよく見ろ!
あんな傷を負って、生きていられる訳がないだろう!?」
于禁に言われて、李典は怖いながらも衛生兵の体を直視した。
衛生兵は先程死んだ兵に噛まれたせいで、血の気を失い青白い肌をしている。李典に向けられた目は、死んだ兵と同じように白く濁っている。そして先程腹を食いちぎられたせいで・・・内臓が傷口からはみ出している。
衛生兵が一歩踏み出すと、腹から内臓が押し出されてだらりと垂れ下がった。
しかし、衛生兵はそんな事まるで気にする様子はなく、フラフラと歩き出した。その先には、足を噛まれて動けない負傷兵が横たわって苦しんでいる。
衛生兵はその負傷兵の側にかがみ込み、口を大きく開いた。
「や、やめ・・・。」
李典の呼びかけも虚しく、衛生兵は負傷兵の腕に噛み付き、食いちぎった。
最初に死んだ兵が衛生兵にしたのと同じように。
絶望にうなだれる李典の後ろで、于禁が早口でまくしたてる。
「見ろ、あいつもあれの仲間になったんだ!
奴らはもう死んでる、もう助けられない!」
牢の中では、殺された兵が次々と起き上がり、まだ生きている兵を噛み始めた。
「何ということだ・・・。」
その時になってやっと到着した曹操と夏侯惇たちも、想像を絶する惨状に呆然と立ちすくむしかなかった。
693 :
セイレーン:2009/06/10(水) 22:21:14 ID:NyK8+qfnP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(34)
程なくして、牢の中にいた兵は皆死に、起き上がって歩き始めた。
牢の外にいる生きた人間を食おうとして、ひたすら檻に体をぶつけている。
「どうです、これがゾンビというものです。
お分かりになられましたか?」
許攸はその化け物たちを指差し、得意げに呼びかけた。
曹操は吐き気をこらえるのに精一杯で、無言でうなずく事しかできなかった。
代わりに、曹操の一族である曹仁が激怒して言い放つ。
「分かりましたか、じゃないだろう!?
こんな恐ろしいものを作っておいて、よくも平気な顔をしていられるな。
こいつらは死なないんだぞ!?槍で心臓を一突きにしても平気で動き続けるんだ。不死身の怪物を、どうやって処理しろって言うんだ!?」
曹仁につめ寄られて、許攸はうっとうしげに手を払うしぐさをした。
「将軍、ゾンビは不死身ではありませんよ。
頭を突くか、首の骨を折れば死にます。すぐ、お試しあれ。」
「ああ、試すとも!」
許攸に諭されたのは腹が立つが、まずはゾンビを処理する方が先だ。
曹仁を始め、夏侯惇、夏侯淵、于禁、許褚といった猛将たちが武器をとって牢の前に出る。ゾンビどもは肉を欲して檻に張り付いているので、長い武器を使えばいい的だ。
「それっ!」
格子の隙間から、ゾンビの頭を狙って何本もの槍が突き出される。それぞれの槍は狂いなく一体ずつ頭を貫き、ゾンビを動かぬ死体に戻した。
ゾンビの数が減ると、李典も槍をとって加わった。
あの若い衛生兵はせめてもの償いに、自分の手で安らかに眠らせたかった。
悲鳴もあげることなく、死に拒まれた者たちが一人一人本当の死に落ちていく。
全てのゾンビが倒れた時、曹操は張郃と高覧を牢から出すよう指示した。彼らの言っていたことは、不幸にして真実だったのだ。
今はどうにも気分が悪いが、少し休んだら彼らも交えて軍議を開かねばならない。
これは非常に大変な事態になりそうな、そんな気がした。
>>689 そうレスして貰えるだけで随分違うと思いますよ。
読んでくれてるって実感が持てますし。
こっちも今週末に投下できるかなー、と。
事態がちょっとだけ進展。
中国なら、せめてキョンシーといって欲しかった……
696 :
セイレーン:2009/06/11(木) 19:37:11 ID:sbB9iDlzP
いつも応援ありがとうございます!
>>695 お言葉ですが、キョンシーはゾンビとはだいぶ違う感じだと思ってあえてゾンビにしました。
日中は活動しないし、道師に退治してもらうとか宗教的イメージが強いし、
時間が経つと空を飛んだり旱魃を起こす怪物に進化したりして大変です。
生存の難易度的にも、very hard になるかと。
>>696 >生存の難易度的にも、very hard になるかと。
尿を嫌がるから、プライドを捨てられればそうでもないかもしれんとか言ってみる。
>>696 最近の楽しみの一つです
wktkしてます
数十万のゾンビ(屮゚Д゚)屮 カモーン
>696
>宗教的イメージが強いし、
ええっと、これが噂に聞く誘い受けという奴ですか?
「ゾンビ」ってのもブードゥー教の司祭によって作られる生きる屍なんだから、充分過ぎるほど宗教的イメージが強いでしょ。
食人をしないし、感染もしない、口に塩か銀貨を詰めれば止まるゾンビを、グールだの吸血鬼だのを取り入れて改変してるのに、キョンシーだけは元のままなんて、言われても、その、なんだ、今一説得力がな……
(あと、余計な突っ込みだけど、ゾンビは新大陸発見後の16世紀以降に、黒人奴隷+原住民+白人の宗教が混じってできたヴードゥー教の用語だし)
ただ、別にストーリーは面白いから楽しんで読んでます。
ナパームもないこの時代、ゾンビを作り出した側も別に制御出来てなさそうなのに、どう収集をつけるのか興味津々です。
下手すると、卑弥呼の時代に人類滅亡とか充分ありそうだよな。
700 :
689:2009/06/13(土) 01:50:34 ID:20av9ILM0
>>694 せっかくレスしてもらったのに、亀レスでスマソ
作品の投下を楽しみにしています
私もゾンビ小説を書きたいなーと構想は練っているのですが、登場人物を動かすのが難しいです
なので、小説を投下している作者さん方は凄いと思ってます
701 :
本当にあった怖い名無し:2009/06/13(土) 02:54:36 ID:gJKbvAnWO
sage
702 :
セイレーン:2009/06/13(土) 22:58:30 ID:FKOOLxbuP
キョンシーの件については、一般的にゾンビが動く死体として有名になっているのに対し、
キョンシーは一般的に霊幻道士とかのイメージが強いので分かりにくいかなと思っただけです。
荒らしそうになったなら申し訳ありませぬ。
おっしゃる通り三国時代には強力な武器がないので、人間以外のゾンビと戦うには武器創作が不可欠でしょう。
ボウガンをハンドガンの代わりにし、そこから
複数の威力の高い矢を飛ばす→ショットボウガン
矢に火薬爆薬を巻きつける→グレネードボウガン(?)
くらいなら許されるかと。
703 :
セイレーン:2009/06/13(土) 23:00:40 ID:FKOOLxbuP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(35)
「ここはどの辺りか分かるか?」
袁紹は、すぐ後ろをついて来る文官たちに聞いた。
素早く周りに視線を走らせて、郭図が答える。
「旗印からして、辛評殿の陣でしょう。
このまま行けば、沮授殿の檻車に着くはずです。」
袁紹は振り返らぬまま、かすかにうなずいた。
辛評にも暴動鎮圧の動員をかけたため、陣はもぬけの空になっており死者はほとんどいない。しかし生きた人間にも、さっぱり出会わない。
もしかしたら、この陣で生きている者はもう自分たちだけかもしれない・・・そんな暗い予感が袁紹の頭をよぎった。
袁紹は慌ててそれを修正した。
(馬鹿な、70万の将兵の中で生きているのがわしらだけだと?
そのような事、ある訳がない。)
無理にでもそう思わないと生きていけないほど、ひどい事態だった。
もし周りが全て死者に変わってしまったなら、自慢の大陣営がそっくり死者のものになってしまったなら、せめて人として自害した方がましだと思えてしまう。
袁紹はその死の誘惑に抗って、必死に歩き続けた。
ふと、目の前を何かが横切った。
それはびいんと音を立てて、すぐ側の木に突き刺さった。
それは、弩の矢だった。
「くそっ外したか!」
どこからか、声が聞こえる。人の声だ。
郭図が慌てて袁紹の前に出て、声のした方に呼びかける。
「待て、撃つな!私たちは死者ではない!
我らが君、袁紹様がここにおられる。姿を現し、迎えよ!」
声はかなりかすれていたが、相手には届いたようだ。テントの影から数人の兵がわらわらと現れ、慌てて頭を下げる。
生きた人間がいた・・・袁紹の心の中で、希望が勢いを盛り返した。
704 :
セイレーン:2009/06/13(土) 23:02:13 ID:FKOOLxbuP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(36)
袁紹たちに矢を射かけたのは、弩隊の兵士だった。
弩は威力は高いが矢をつがえるのに時間がかかり、しかも弓よりはるかに重いため乱戦に適さない。そのため弩隊は暴動の鎮圧に使われず、空になった陣を守っていた。
そのうち人を食う死者が現れて襲い掛かってきたため、弩隊は隊長の指揮のもと、近付く死者を全て射殺して身を守っていたのだ。
袁紹たちが射られたのも、死者と間違えられたからに他ならない。
弩隊の隊長は、袁紹に深々と頭を下げた。
「申し訳ありませぬ。
まだ他に生きている者がいるとは思わなかったもので・・・。」
「ああ、良い。わしとて同じだ。」
袁紹はいつもからは考えられないほどあっさりと、弩隊を許した。
もう他に生きている仲間がいるか分からない。しかもこんな強力な武器を持っている者を、敵に回すことはならない。
それにもしあの矢が当たっていたとしても、死者に生きたまま食われるよりは、弩で頭をぶち抜かれた方がはるかに楽に死ねるだろう。
貫通力の高い弩の矢は、距離が近ければ兜も貫通する。
そもそも、袁紹がそのようにデザインして改良させたのだ。
袁紹が治めている冀州には、元々北から来る騎馬民族を防ぐために、強力な弩隊が配置されていた。(冀州強弩の守りと言われる)
その対匈奴用の弩を、袁紹は宿敵であった公孫瓚と戦うために改良した。
公孫瓚は騎馬兵を多く用い、特に白馬で揃えた精鋭の「白馬陣」による突進を得意としていた。速さを売りにするうえに兵の数もそこそこ多いため、射撃間隔の長い従来の弩では押し切られる恐れがあった。
そのため、袁紹は弩を簡単かつ短時間で撃てるよう、改良に改良を重ねた。
その改良型の弩で、袁紹は公孫瓚を打ち破った。
力任せに突進してくる公孫瓚の騎兵隊を弩で掃射した時、袁紹はこれまでになく胸がすく思いだった。
その弩が、死者からも自軍の兵を救ってくれたのだ。
705 :
セイレーン:2009/06/13(土) 23:03:57 ID:FKOOLxbuP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(37)
袁紹はそこの弩兵の一部を、沮授を救出するために連れて行くことにした。
代わりに、歩き疲れて、死者につかまれて精神的にも参ってしまった審配を弩隊に預けることにした。
弩隊はなんと馬も十頭ほど保持していたので、退却は楽になりそうだ。
しかし沮授のことを聞くと、弩隊の隊長は顔を曇らせた。
「沮授殿ですか・・・恐れながら、それは止めた方が宜しいかと存じます。」
「うむ、死者に襲われることは覚悟のうえだ。
それとも、他に何か理由があるのか?」
「ええ、死者には変わりありませんが・・・。」
弩隊の隊長によると、辛評軍の本隊と死者が激突した前線が、まさに沮授の檻車がある辺りなのだという。
それから辛評軍の本隊は、数えるほどしか帰ってこなかった。
つまり、本隊の大部分は死者となって、檻車の周辺をうろついている可能性が高い。
「しかし・・・少しでも可能性があるなら、わしは行ってやらねばならぬ。」
沮授を無視して陣をこんなにしてしまったのは、他ならぬ自分なのだから・・・袁紹の目には、強い決意がみなぎっていた。
それを見ると、隊長はかすかに微笑んで袁紹に弩を差し出した。
「拙者に殿を止める権利はありませぬが・・・せめてこれをお持ちください。
ご武運をお祈りいたします。」
「うむ・・・もしわしが戻らなければ、審配だけでも冀州に返せ。
後は、頼んだぞ。」
袁紹は自らの腰にも矢筒を装着すると、郭図にも弩を持たせて操作を教えた。
しつこいほど改良を重ねたおかげで、その弩は文官でも簡単に矢をつがえられる。郭図に準備をさせて、袁紹が射ればいいのだ。袁紹も弓の腕は悪くない。
逢紀はここにいたいと少しごねたが、袁紹は逢紀に大量の矢を持たせて同行させた。
それから弩隊の兵を二十名ほど連れて、袁紹は地獄へと踏み出した。
袁招カコイイ!
袁紹をこんなに格好良いと思ったことは初めてだw
そういや袁紹が主役の創作物自体初じゃなかろうか。
早く続きを!
あと他の作家さんも待ってますよ!
・・・シベリアから愛を込めて
『電話に出ることができません。発信音の後にメッセージを――』
「…」
ぴーっ、という音が鳴る。
ドキドキした割にはあまりの結果。
そのまま切るのも癪なので、とりあえずメッセージを入れておくことにする。
「えっと、もしもし? こちら生存者です。少なくとも現時点では。
そちらは生きてますか? 無事なら折り返し電話下さい。それでは」
ぽち。
ツー、ツー。
切れたのを確認してから携帯電話をズボンのポケットに突っ込む。
成果は無かった。これでまた振り出しに戻ったわけだ。
「とりあえず今日はここに泊まるかなぁ…」
食料と水はあるし、寝苦しくなったら冷凍庫から氷を持ち出せば良い。
着替え――特に下着類が無いのが残念だけど、安全で快適な寝床が確保できただけで万々歳だ、しばらくはここで暮らせるかもしれない。
「毛布があった。奥に休憩室があったからそこで寝れるよ」
どさ、とカウンターに毛布を置く友人。ぱっと見、あまり使われたことのない感じがする。
カウンターチェアをくるくると回しながら、ここの食料が尽きた後のことを考える。
水に関しては出る内にできるだけ多く冷凍保存しておく、という方針で固まった。
現に、今も冷凍庫の中ではペットボトルに入れられた水が冷やされている。
食料は腐るのが早いものから食べていけば良い。缶詰などの保存食もあるにはあるが、期待できる量じゃなかった――二人だと尚更。
食料に関しては一週間もしないうちに尽きるはず。尽きそうになったら、凍らせた水と保存食を出来るだけ、なおかつ機動力を削がない程度に持ってここを離れる。
ここを離れたら、次に食料がありそうな場所を探す。それまではひたすら保存食をちまちま食べるしかない。
―――キツいなぁ。
生鮮食料品は簡単に生み出せるものじゃない。
それに、簡単に腐ったりして駄目になってしまう。
保存食だけだと、どうしても味でも栄養面でも偏りが出ると思うのだけど…。
と、そこで我ながら名案が思いついた。
スーパーマーケットだ。
大通りに沿って歩いていれば、割とすぐに見つかるに違いない。そうでなければ売り上げが見込めないだろうし。
ここの冷蔵庫がまだ動くことからして、電気はきちんと通っているはず。あの混乱の中でいちいち電源を切っていくとも思えない。
「よし、スーパーに行こう」
「何を唐突に」
ぽかんとした顔だった。
「あそこなら食料品が沢山ある。出入り口を補強すれば、しばらくは篭城できるはず」
「………それって囲まれて脱出できなくなる典型的なパターンだよね」
む。
アレが知能を持っていることは明らか。
だとしたら、兵糧攻めは勿論様々な方法で攻めてくるだろう。
そして武器は無いし大抵のスーパーには生憎と置いていない。
「………立てこもるのなら、スーパーもあってその他色々も入手できる場所じゃないと。そう、ショッピングモールとか!」
急に熱くなりやがった。
しかし、そんな都合のいい場所――。
「――あった」
「ん?」
「ほら、何本か道を挟んだところに」
「………あぁ!」
ぽん、と手を叩く。
あそこならば、侵入経路は限られているしスーパーはあるし家電量販店はあるしゲーセンはあるし100円ショップがある。
100円ショップや家電量販店でなら、良い感じの武器になりそうな何かが置いてあるはず。