4 非通知さん sage New! 2005/10/12(水) 23:10:43 ID:PXTxWYVr0
【スレのお約束】
1 基本的にsage進行でお願いします。
2 作品投稿のage・sageは、作者の判断にお任せします。
3 作品には感想をお願いします。感想についての批判は作者・読者ともに控えましょう。
「感想・意見・批評」と「誹謗中傷」は異なります。
よけいな争いごとを持ち込まぬよう、表現にはくれぐれも気をつけましょう。
4 煽り・荒らしは放置、反応なしでお願いします。
【マナー。その他】
1 連続投稿数は5〜10レスを目安にしましょう。
2 作品投稿は間隔に気をつけてください。場合に応じて間隔をあけましょう。
投稿前と投稿後に宣言すると、スレの流れがスムーズになります。
3 自分の意見に返事を期待する作者は、トリップを付けたほうがいいでしょう。
4 個人攻撃、的外れな批難の類は流したほうが無難です。
5 496KBで警告メッセージが出力されます。
512KBでスレッドが終了なので、950からか450KBを過ぎた時点で新スレッドへの
移行を話し合いしましょう。
新スレ立てておきました
すいません・・・
乙〜
えと、投稿してもよいのでしょうか?
7 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/06(木) 23:17:57 ID:JLce5tULO BE:1212448267-2BP(0)
許可する
投下したまへ
8 :
ノベルスレ残党116 :2007/12/07(金) 22:18:18 ID:3TkP2MzH0
empty ◆M21AkfQGck様
新スレ立て乙です。
では続きです。
彼女はその後、看護士さんに連れられ、検査を受けに病室を出て行った。
開け放たれたドアの向こうから、病院着の血痕を誰何する会話が聞こえ、遠ざかって行く。
僕は自分の連絡先を書いたメモを、ベット脇の棚に残し、病院を後にした。
―――また明日、来よう。
今日中に運良く検査が終わるなら良し、そうならなくても明日ならば、会うことはできる
はずだ。
話したいこと、聞きたいことは、まだまだ沢山ある。
それまでに、自分の考えを、改めて整理しておく必要がある―――
僕はその内一つ、最も重要な問題を、自分の目で確かめるために、あの場所へ向かった。
交差点は、静かだった。
先日の事故の時間より、少し遅い。
車の通りは疎らで、時おり通り過ぎる車のエンジン音が、やけに大きく辺りに響き渡った。
事故の調査も工事も、とっくに終わってしまっているのだから当然のことだが、事故の
関係者らしい人間は、全く見当たらない。それとも見えていないだけで、今もこの交差点の
地下深くでは、本格的なガス管工事が行われているのだろうか?
数人の通行人に混じって青信号を渡る。
あの日、彼女が渡ろうとした方の横断歩道だ。
走ってくる車の姿は無いが、異常に緊張した。
横断歩道の中程に差し掛かる。
―――僕の幻覚の中で、彼女がトラックにはねられた場所。
足を止め、じっと道路を眺める。
ここから交差点の中央まで、黒々とトラックのブレーキ痕が続いていた―――
そんな痕跡は、どこにも無かった。
事故の時は、向こう側の信号からでも、はっきりと見えていたのに。
もしかして、現場検証後にでも消されたのかもしれない。
にわかには納得できず、その場にしゃがみこむ。通行人の中の何人かが、何事かと訝しげに
こちらを見ているが、構わずアスファルトに顔を近づける。
隙間につまったタイヤ片がないかと思ったのだが・・・これも見当たらない。
まるで、新たに敷き直されたかのように、アスファルトはギラギラとした油っぽい光を
反射していた。暑さで額からぽたりと垂れた汗が、隙間に吸い込まれていく。
そうだ。
このアスファルト道路は、新しすぎやしないか?
記憶を辿ってみる。道路の新しい古いなど、普段から注意を払ってはいない。新しくなって
いると言えば、そう見える気がするし、前のままだと言われれば、そうも思える。
向こう側、事故当日、自分が渡った方の信号も、同じように調べてみることにする。
場所は―――彼女が崩れ落ちていた場所。
思い出すと胸が締め付けられたように苦しくなり、眩暈がした。
だからといって、諦めるわけにはいかない。
僕は念入りにその場を調べた。が、どこにも血痕らしいものは、見つけられなかった。
かんかんと照りつける、夏の午後の日差しに炙られ、熱気を揺らめかせて、鈍く光る
アスファルト。
それだけだった。
やはり・・・ここであったのはガス事故なんだ。
常識的に考えれば、当然そうなのだ。
だからこそ彼女は死なず、事故の痕跡も無い。
―――しかし。
いくら頭では分かっていても、僕の脳は、幻覚と言われた僕の見た交通事故の光景こそが、
現実にあったことだと主張し続けている。薄まるかに思えたその考えは、日を追うごとに、
逆に、強くなっていく気がした。
それを全面的に肯定することは怖かった。
それをすれば、僕はこう呼ばれる。
―――狂人、と。
そして僕はこう申し開きをするだろう。
「僕は狂ってなどいない!全て本当に見たことなんだ!」
厄介なことに、狂人と呼ばれる人々の多くは、そう主張するのだ。
―――僕は、狂ってしまっているのか。
横断歩道にかがみ込み、地面に鼻をこすりつけるようにして、何かを調べている時点で、
周りからは相当奇異の目で見られている。正常な羞恥心の持ち主であれば、とても真似できる
ことではない。
しかし僕は、もうそんなハードルは、いとも簡単に越えてしまっている。
僕は、狂ってしまったのに気付かないでいるだけなのか?
激しいクラクションの音が耳に突き刺さり、僕の思考を中断した。
咄嗟に顔を上げると、信号はとっくに赤に変わっていた。
横断歩道を渡った向こうの歩道に立つ、見知らぬ女性が、口元に手を当て、零れ落ちそうな
程に目を見開いて、こちらを凝視している。
首をめぐらせると、大型のトラックが、こちらに近づいてくるのが見えた。
地面に膝を着いた姿勢のまま、僕はどんどん大きくなるトラックの、銀色に鈍く光るバンパー
を見つめていた。
全てがゆっくりと、スローモーションに見え、痺れたようにじんじんする頭の中で、彼女も
こんな光景を見たのだろうかと、ぼんやりと考えた。
ブレーキ音。すべる車体。ゴムの焼ける臭い。あの時と同じ。
唐突に、もの凄い力で、体が後方へと引かれた。
―――尻餅をついた格好の僕の目の前に、停車したトラックの横腹が見えていた。
つい先程まで僕がかがみ込んでいた場所に、トラックは止まっていた。
トラックの開いた窓から、運転手が怒りの形相で何かを怒鳴っているが、あまりの出来事に
ショックを受け、言葉が理解できない。
僕はどうやら誰かに抱きつかれ、歩道側へと、共に倒れ込むように引き戻されたらしい。
そうしてもらわなければ、僕は今頃―――
僕ともつれるようにに道路に座り込んでいる人物を振り返る。
「・・・菊池・・・さん」
「菊池さん、じゃありませんよ!賢一さん!」
もの凄い形相の菊池さんに、言葉が詰まる。
菊池さんは腰砕けの僕を背負って立ち上がると、早足で歩道に戻った。
文句を言い足りないのか、トラックの運転手は未だに怒鳴り散らしている。それに菊池さんが
ぺこぺこと頭を下げると、ようやくトラックは走り去って行った。
歩道に戻った僕達、いや、僕が轢かれそうになったところを間一髪救った菊池さんに、
歩道で様子を見ていた数人の野次馬の間から、まばらな拍手が上がった。
菊池さんは困ったような表情で、やっぱり何度も頭を下げた。
本当に頭を下げないといけないのは、自分だと言うことは分かっていた。だけど全身から力が
抜けてしまい、言うことを聞かず、僕は馬鹿みたいに宙を見つめながら、菊池さんの背中に
負ぶさっていることしか出来なかった。
>13さん
補足乙です。
では、続きです。
「どうしてあんな所で、ボーっとしてたんですか?」
菊池さんは呆れた笑顔で、ベンチに腰掛けた僕に、缶コーヒーを差し出した。
礼を言って受け取ると、プルリングを引き、乾ききった喉に一気に流し込んだ。暑さと緊張で
へばりついた喉が、その潤いでべりべりと剥がれていくような心地がした。
「本当に・・・ありがとうございました。もし菊池さんが助けてくれなかったら・・・僕は・・・」
鼻先を過ぎるトラックの車体と、頬を叩く突風を思い出すだけで、また冷や汗が噴出してくる。
あのままだったなら、僕は”あの彼女”と同じ姿になっていただろう。
「もう、それは良いんですよ。過ぎたことなんですから・・・それよりも私が気になっているのは、
どうしてそんな事になったのか。その訳です」
菊池さんは僕の隣に腰掛け、自分のコーヒーを開けると、ぐいと一口飲み、自分の足元の辺りを
見つめた。
「昨日の今日知り合ったばかりの私には、やはり話しづらいでしょうか」
「いえ、そんなことは・・・」
命の恩人である菊池さんには、ちゃんと話をしておいた方がいいだろう。
「あの・・・僕、確かめたかったんです」
「確かめる?何をです?」
僕は一瞬躊躇した。もしかしたら、菊池さんに頭がおかしいと思われるかもしれない。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、菊池さんは僕の顔を覗き込んで、大丈夫だと言うように、
笑顔で一つ頷いた。
「事故、をです」
菊池さんは無言で僕の話の続きを待っていた。
「菊池さんはきっと、僕がおかしな人間だと思うでしょうけど・・・」
笑顔のままゆっくりと大きく首を横に振る菊池さん。少し気持ちが軽くなった。
「僕は、僕の見た事故。菊池さんが、地下ガスを吸い込んだことで見た幻覚だと言っていた、
あの交通事故のことです。あれが、本当にあったことのように思えて仕方ないんです」
あんなにもはっきりとした幻覚なんて―――
「だから事故のあった交差点に、その証拠が残っていないだろうかと。ブレーキ痕や、その・・・
血痕が・・・残ってやしないかと思って・・・」
「そうですか・・・それで・・・」
菊池さんは、少し悲しそうに言った。
「それで、事故の証拠は見つかりましたか?」
僕は無言で首を振った。
「分かってはいるんです。あの事故が現実なら、彼女、若宮さんは生きているはずが無い。
なのに頭のどこかが・・・どうしてもあの事故が幻覚であると認めたがらない。苦しいんです・・・
僕は・・・どうすればいいのでしょう・・・」
「おつらい・・・でしょうね」
ぽつりと言った後、菊池さんは続けた。
「こうは、考えることはできないでしょうか?『交差点で起きたのが、どんな事故でもかまわない』
と。賢一さんは今無事に、こうして話をしている。賢一さんのお知り合いの若宮さんもまた、無事
だった。賢一さんを悩ませている交通事故の記憶ですが、それが幻覚であろうとなかろうと、賢一さん
にとっての現状は、全く変わりがないわけですから」
僕は頷いた。
「僕も、それは考えました。結局、そういうことに落ち着くしかないんだと、僕もそう思います。
だからこそ、それをはっきりさせる意味でも、あの交差点に行ったんです」
それで―――いいんだ。
「もうちょっと、変な話をしてもいいでしょうか?」
人に話すことでつく踏ん切りもあるだろう。菊池さんには、どんなことも話せてしまいそうな、
安心感がある。
「もちろん、かまいませんよ」
予想通り、菊池さんは頷いてくれた。
「突然でなんですけど・・・僕、若宮さんに対して、特別な感情を持っていました」
菊池さんの顔が「やっぱりね」といった感じの笑顔に変わる。少し気恥ずかしい。
「若宮さんが事故にあって死んでしまったと思って、落ち込みました。だからそれが幻覚で、
若宮さんが生きていたことは、本当に良かったと思った」
けれど―――
「気が急いて、早く若宮さんに―――会いたくて。僕は、昨日からどきどきしていました。なのに
今日、病院で実際に若宮さんに会った時、何も感じなかったんです。まるで顔を知らない他人を見る
ように、僕の胸には何の感情も湧き上がってこなかったんです」
菊池さんは「え?」と驚いた表情で固まった。無理もない、僕自身なぜなのか分からないのだから。
「僕は戸惑いました。どうして若宮さんと会うのをあんなに楽しみにしていたのに、こんなに自分の
心は無感動なのだろうと・・・」
病室で彼女の姿を見たときの、あの虚無感。
「でも、話しているうち―――なにがきっかけになったのかは、はっきりとは言えないんですけど
―――また新しい感情が、僕の中に生まれたのがわかりました。今まで感じたどんなものとも違う、
強い反面、どうしようもない不安定さを合わせもったその感情は、全部が若宮さんに向かっていて」
うれしかった。
「僕はその瞬間、恋をしたのだと、はっきりと自覚しました」
顔が熱い。僕は何を口走っているんだろう。
「それで、気になっていたんです。僕の中に新たに芽生えた感情が”恋”だったとして、なら以前に
若宮さんに対して抱いていたものは、一体何だったのだろうと・・・」
「なるほど」
「菊池さんは、分かりますか?」
「はぁ・・・私はそういった経験に乏しいので、その乏しい経験で語るのはおこがましいとは思うの
ですが・・・」
菊池さんも照れているのか、頬の辺りを人差し指で掻きながら続ける。
「やっぱりそれも”恋”だったんじゃないですか?」
「そう―――なんでしょうか?」
全然、別の物のように思えたのだけれど。
「確証はないですよ」
菊池さんは「ははは」と小さく笑った。
「ただね、賢一さん。私はこう思うんです。私たちは日々出会う色々なことに、色々な感情を
抱きながら暮らしています。まるで異なった形のトンネルを、次々に潜っていくみたいにね」
そこで一旦言葉を区切って、菊池さんは遠くを透かし見るように空を見上げた。
「同じ事柄に対する感情は、不変ではありません。昨日嫌いだったものを、今日好きになることも
あるでしょう。もちろん、その逆もあります。酷い時には、対峙する度に、感じることが変わることも
あるかもしれません。その都度、色んなことを、やっぱり考えるでしょう。もし、その全てに名前を
つけようと思ったら、私たちは、一体どこで感情を区切ればいいんでしょう?」
「そうですね、例えば賢一さんが、昨日嫌いだった女の子を、今日好きになったとしましょう。
実際そんなことは少ないでしょうが、ここはドラマチックな事件が起こったりして、そうなったと仮定
してみてください。その感情を、正確に呼ぼうとするなら、どう呼びましょうか?『昨日は嫌いだった
子を、今日好きになって、明日はまた嫌いになるかもしれない好き』とでも呼びましょうか?」
菊池さんは僕のことを真っ直ぐに覗きこんだ。瞳は優しげだったけれど、なんだか酷く寂しそうに
見えた。
「賢一さんは今、若宮さんに恋をしていらっしゃる。若宮さんの話をしている賢一さんの姿は、
とても幸せそうに見えます。不幸せであるならともかく、恋をしていると自覚もなさっている今、
手放し、見えなくなった感情に名前をつけることは、あまり意味がないように思えます」
破顔一笑。けれど寂しげな印象は消えることはなかった。
「私なら・・・もっと別のことを考えますよ。例えば―――その人を好きになれた幸せを、存分に
噛締めたりとか―――若宮さん、明日、明後日には退院でしょう?どこかに誘って遊びに行く計画とか、
たててみたらどうです?」
以上です。
「これが杭の射出装置だ。群れのゾンビに囲まれた場合には一番利用価値のある武器」
今日は車両の設備の講習を受けている。
「銃も有効だが、杭の方が貫通力も被害面積も大きい。車両装備で一番先に覚えてもらう武装だ」
機械の構造、故障時に一番多い原因と修理方法を教わる。
一通りの事柄を覚えた後、遂に都市を離れる日が来た。
10台の装甲連結トレーラーからなる車団だ。
自分が乗り込むのは1号車で誘いを掛けてきた武田さんと友人の龍二が乗り込む。
2号車には泉、伊藤、橘が乗り込む。
車両に乗り込み一番最初に気付いたのは・・・・運転手が見知った顔だと言うことだ。
「よう、元気にしてたか?」
「おじさん、久しぶりですね」
「おおよ。今までずっと運転訓練でな。たまに外に出たりもしたぞ。席に着いてシートベルト着用してくんな。
先頭車両が来たら出発だ」
先頭車両?
これ、一号車だから先頭車両じゃないのか?
疑問に思っている俺が席に着きながらシートベルトを締める。
俺の仕事は戦闘時以外は運転手のサポートだから助手席だ。
その為、先頭車両が来るのが良く見えた。
って・・・・ど、ドリル!?
トレーラーヘッドだけの車両だが、運転席後部部分に巨大なエンジンが積まれ、先頭部にまるで昭和の特撮物に出てきそうな
地底戦車を髣髴とさせるドリルが取り付けられていた。
いよいよですねwktk
できましたので投稿しますねー。
コンクリートに何かを打ち付けられる音。跳ね返る扉の音
ほぼ同時に響き渡った
「・・・あ?」
彼女がじっとその先を見つめる
青年も、呆れたように見つめていた
視線の先には、床に打ち捨てられた肉塊
肉塊はコンクリートの床の上でじたばたと暴れ、手足を意味も無く振り回している
青年が扉の廊下側を見やる。そこには、新たに浅い凹みと血でできた抽象画が描かれていた
「・・・・・・・。どうやら、扉を開けるタイミングとこのゾンビのぶつかるタイミングが丁度良かったみたいだね」
雰囲気に合わずゆったりとした口調
彼女が横の扉――自分の部屋の扉を見る
そこには浅い凹凸と、血でできた跡。全身で突進していたらしい
そして、今その部屋の前にゾンビが居ないということは
「さっきの鎖の音に反応したのかな。まぁ、ミッションコンプリートということで。急ごうか」
すたすたとエレベーターへと歩く青年。その後を追いつつ、
「幸運だな・・・」
未だ廊下でもがき、新たに魚拓――いや、人拓といったほうが正しい――を描き続けているゾンビを見やった
その出来事は“幸運”という言葉で片付けるには余りに大きすぎた
階段を使うか、エレベーターを使うかで非常に迷った
階段の方が安全だろうと思い階段への扉を目指したのだが、ガラスの向こうにゾンビがたむろしているのを見て、エレベーターに変えることにした
エレベーターでの移動は、思いのほか安全だった
ゾンビが途中でエレベーターのボタンを押してくるかと思ったのだが、どうやら杞憂だったようだ
マンションに住まうはずの他の住民は、とうに逃げたか、もしくは“奴ら”の仲間になったか
どちらでも良かった
自分たちには関係の無いことだ
減ってゆく数字を見ながら、ぼんやりと考えていた
チン、と小気味良い音と共に扉が開く
薄暗い地下駐車場の一角が、煌々と照らし出された
中には――誰もいない
だが、扉は閉まることなく開いている
やがて、片方の壁から、手がにゅっ、と飛び出す
その手が、ひょいと何かを投げた
遠くで金属音が響く
音の反響鳴り、消える
死角となっていた壁から1組の男女が、そっと足音を消し忍び込んだ
青年の鞄をごそごそと漁り、何かを取り出す
その手に握られているのは――デジカメ
カチ、と微かな音がした
デジカメの画面を操作し、暗視モードに切り替える
視線を画面に固定したまま、デジカメで駐車場を見渡す
「よし、今は居ないな」
カチ、と微かな音がした
デジカメを青年に渡し、腕から提げていた懐中電灯を灯す
懐中電灯が橙を灯した
橙の光が左右に動き、車を探して当てる
その中を覗き込み――車から離れた
橙の光が左右に動く
光の中に再び車が浮かび上がった
「――あった!」
車の後部座席を覗く
何も居ない
ドアのレバーを引く
重い音と共に、ドアはあっさりと開いた
後部座席に荷物を放り込む
そのまま――彼女は、さも当然のように運転席に乗り込む
「おいおい!」
青年が助手席に乗り込み、叫んだ
「運転できるのかよ!?」
やや青ざめ、叫ぶ
はぁ、と彼女は溜め息を漏らした
「見よう見まね」
「え? いやだって、免許とか――」
「今は関係ないさっ!」
キーを捻った
エンジンが始動し、ライトが点る
白い光が駐車場の闇を灼いた
サイドブレーキが落とされた
ギアをがちゃがちゃといじり、何とか目的の場所へ到達させる
アクセルを踏み抜いた
青年の悲鳴を引きずったまま、車は地下から飛び出した
地上に出て早々、ライトは消した
制限速度など真正面から無視し、道を駆ける
青年は青ざめ、助手席で何かぶつぶつと呟きながら丸まっていた
どちらも、きっちりとシートベルトを締めている
どん、と衝撃が襲った
「っと、んなもんかなー」
かなり気楽に――とても楽しそうな様子で、彼女は運転している
何回目だろうか
ゾンビを轢き、乗り越え、血や肉片で滑るのは
騒々しい音に呼び寄せられ、ゾンビは向かってくるものの、全て正面からへし折られ、砕かれていた
おかげで車の正面は赤い凹凸ができている。窓ガラスにも亀裂が走り、血で汚れていた
ゾンビは民家にも集まっていた
民家で持ちこたえれるのは、残りどれ程だろうか
そう長くは持たないだろう
ゾンビが集まっている民家を通る度に、“人間の”声が聞こえた
「助けて!お願い!」「頼む、乗せていってくれ!」「見捨てないで!」
全てを無視し、ただ走る
何度も悲鳴じみた懇願を聞いた
それらは全て――見捨てていくしかない
今、彼らには自分達以外の誰かを助けられるだけの技術も余裕も無いのだから
青年が彼女の顔を見やる
唇から血が滲むほど噛み締めていた
やはり、助けられないのは悔しいのだろう
今、仮に車で突っ込んでいった所で、そう殺せはしない
そのまま家に突っ込み、車は大破するだろう
そうなれば、どちらも終わりだ
たまに荷物を抱えて道路に飛び出してくる人も居たが、全てギリギリで避けていた
「――助けないの?」
「――助けてどうなる。それが善人とは限らない。荷物が増えるのは御免だ――」
その言葉は、青年ではなく、自身に言い聞かせた言葉だったのだろうか
車は殺戮を続けつつ走り続けた
ガソリンは未だ余裕があった
窓ガラスは血でべっとりと汚れ、視界良好とは言えない。ワイパーが動いているものの、それほど効果は無かった
今飛び出されたら、人間でも轢き殺してしまうだろう
「ほら、到着だ」
重苦しい空気を消し去るかのように、彼女は陽気な口調で言った
「そうだな、乱暴な運転から開放されて、安心したよ」
青年も皮肉じみた口調で応じる
今は――これから生き残る上では――先程のことで、いつまでもくよくよしてはいられない
あのようなことはこれからももっとあるだろうし、あれ以上に悲惨なこともあるだろうからだ
車が駐車場へ滑り込む
盛大なブレーキ音が滑った
車は、ショッピングセンター入り口にドアを押し付ける形で停車した
「この停め方なら、車がそのままバリケードになる。悪いが、俺の方から降りてくれ」
後部座席から荷物を取り、降りた
空を見る
曇天
だが、午後になれば晴れるだろう
複数の――それも、“走って”いる――足音がした
同時に入り口のガラスを注視する。車にすぐに乗り込めるように、ドアは閉めていない
暗がりの奥から、影が姿を現した
wktk
続きです。
その言葉を聞いて、僕の胸は大きく跳ねた。
僕と彼女が一緒に遊びに行く。
つまりはデート。
両想いの男女が、二人で遊びにいったりすること。
ついさっきまで話したことも無かった女の子とデート。
今しても仕方ないのに、緊張してきた。漠然と、そんなこともあるかもしれないとは思ったけれど。
第3者に改めて言われると、そのことが急に現実味を増して、目の前に迫ってくるようだ。
胃の辺りが熱い。鼓動が早まる。空気が少し、薄くなった気がした。
きっと彼女となら、街を歩くだけで、すごく楽しい。
「あ・・・」
彼女の言葉を思い出し、夢想は中断された。高揚していた気分が急激になえ萎んでいく。
Z症―――
「どうかしましたか?」
「菊池さん、あの、Z症ってしってますか?」
「ええ?」
「Z症・・・何かの病気かもしれないんですけど、知りませんか?」
眉をひそめ、何かを考えている顔。間違いない、菊池さんは知っている。
「知ってるんですね?もしかして、重い・・・病気ですか?」
しばらく菊池さんは黙っていたけれど―――
「私も良くは知りません。同僚の女子所員が噂をしているのを、聞きかじったぐらいで・・・あとで
ちょっと自分で調べてみたりもしましたが・・・賢一さんは、どこでその名前を聞いたんですか?
どうしてそんなことを聞きたがるんです?」
―――そう切り出した。
彼女の泣き顔が脳裏を掠める。
「言え・・・ません。すみません」
「そうですか。何か事情がありそうですね」
「はい、それも言えないんですけど・・・どうしても知りたいんです」
菊池さんは、それでも笑ってくれた。
「いいえ、そんなに改まらなくても、僕の知っていることはお教えしますよ。私が迷ったのは、
仮にも市の公務員である私が、そんな事実無根の流言を話してしまっていいものかどうか、という
ことについてですから」
「事実無根って・・・どういうことですか?」
菊池さんは眼鏡を外すと、拭き始めた。
「はい、整理してます。少し待ってくださいね」
しばらく菊池さんは伏目がちに眼鏡を拭いていた。
野良猫がいるばかりで、周りに人影のない公園のベンチで、僕はじっと菊池さんが話し出すのを
待った。
やがておもむろに眼鏡をかけ直すと、菊池さんは語り始めた。
「お待たせしました、まとまりました、お話しします」
僕は菊池さんの口元を見つめ、話を聞き漏らさないように集中した。
「まず最初にはっきりと申し上げておきますと、Z症というものは実在しません。そういう病気
があると、まことしやかに噂されてはいますが、少なくとも私は、そう確信しています。その理由は
私の話を聞いてくだされば、自ずとお分かりになるでしょう」
菊池さんは自身ありげにきっぱりと言い切った。
「さらに前置きしておきますと、これは先程も申し上げた通り、私が聞いた女子所員の噂話による
ところの内容がほとんどで、まるで確証のない話だということです。そしてそれだけをお伝えしても
整合性にかけると判断しました。ですからこれから話す内容は、その隙間を埋めるために、私の推測
を含みます。けれどもそれは補足程度のもので、大筋を歪めてしまうものではありませんからご安心を」
「けれども私は、賢一さんが誰から、どんな内容の話を聞いたのかしりませんから、賢一さんが
話を聞いたというその方自身のZ症に対する認識と、差異が生まれる可能性があることは、あらかじめ
ご了承下さいね」
「ではまずZ症と呼ばれる病気の発見者ですが、くだんの女子所員の言葉をそのまま使わせて
いただくと『ハーバード大学のなんちゃら言う博士』ということです。この時点でもうあやしい
ですね。つまり『不明』ということです」
「なんでもその博士は、人類始まって以来の天才医学者で、人間の”生”に関してただならぬ執着
を持っていたとのことで。それで様々な実験を重ねた結果、不老不死の薬を作り上げてしまったのだ
そうです」
その時僕は、小声で菊池さんが、ばかばかしい、と吐き捨てるのを聞いた気がした。ほとんど泣き声
みたいなそれは、何故だか僕の耳にこびりついた。
「しかしそれは、正確には不老不死の薬などではありませんでした。なぜならその薬によって
もたらされる効果は『生を永らえらせるもの』などではなく、『死んだ人間を蘇えらせるもの』
だったからです」
日は西に傾きつつあるものの、まだまだ高い。それなのに僕は、背筋にひどい悪寒を感じて、
身を震わせた。
―――蘇える死者。
本当に、出来の悪い冗談のような言葉の響き。
「博士はあくまで『生の延長』にこだわりましたが、研究はそこで行き詰まりました。私に言わせれば、
死んだ人間を生き返らせられるだけでも凄いことだと思いますけど、なにしろ博士は”天才”ですから、
それだけでは満足できなかったのでしょうね。ですがさすがに人類最高の頭脳を持つとされる天才医学者
にも『死』というものの壁はあまりに高く、博士は自分自身で掲げた到達点の高さに、日に日に追い詰め
られていきました」
「研究は、一向に進む気配を見せません。博士は一旦着目を変えて、不完全な不老不死の薬―――
仮に『死者蘇生薬』とでも名付けましょうか。―――を見直すことにしました。博士の目指す不老不死
の薬の、言わば前段階にあたるこの『死者蘇生薬』にも問題は大有りでした。それはこの薬が有効である
人間が、極々少数であるということと、被験者に投薬した薬が有効かどうかを確かめる術が、実際に
被験者を”殺して”その後”蘇える”かどうかをみるしかないということでした」
「死者蘇生薬が有効な人間の身体的条件などは、全くわかりませんでした。というのも、その薬が
有効に働いた例は、沼で水死した後蘇生したとされる、博士の愛娘だけだったからです。仮に博士の
娘さんが本当に蘇生したのだとしても、それって本当に薬の効果なの?って疑ってしまう凡人の私とは
違い、天才博士はそれがまごう事無き薬の効果だと確信していたのです」
「あまり嫌味な言い方をするのもどうかと思いますので、こんな話し方はこの辺にしておきましょう。
博士はもうその時すでに、おかしくなってしまっていたのでしょうね。死者蘇生薬が有効な人間の条件さえ
突き止めれば、不老不死の薬は完成するのだと思い込むようになっていました。そして一度に大量の
実験結果を得る妙案を思いついたのです。それは、都合よくもガス状に加工可能だった死者蘇生薬を、
市街地に無差別散布し、その後致死性の高い毒ガスを同様に散布、その結果、薬の効果で蘇えってくる
人間の体を研究し、薬の有効な人間の条件を導き出す、というものでした。ついにここまできたか、という
感じですね」
「しかしその”大実験”の実行するにあたって、目前に迫るいくつかの障害がありました。致死性毒物
を調合するために大量に拝借した薬物のため、大学からマークされ、何度か非合法に行った”実験”
についても警察機関にばれかかっていて、とても速やかに”大実験”を行える状況ではありませんでした」
「じりじりと社会的にも追い詰められていた博士の元に、ある日一通の手紙が届きます。ここから、
私たちに関係の深い話になってくるのですが。その手紙の内容はこういうものです。「貴殿が研究中である
テエマに賛同の意を表し、共同研究を申し入れたし」送り主は「深青学園大学院、医学研究室」そうです、
この水無瀬市の西にそびえる水無瀬三山の内一つ『今須山』の山中にある、あの巨大学園からの研究客員
要請だったのです」
以上です。
乙です
おーなんかぐんぐん来ましたね
続きが気になって眠れなくなりそうですwww
[俺の中の菊地さん]
初回登場時………ミスターオクレ
物語中盤………佐野史郎
そして現在………北村一輝
菊地さんに惚れますたw
オwwwwwwwwクwwwwwwwレwwwwwwww
Mrオクレはなかろうw
相変わらず、菊池さんが輝な。
やべえ、wkwkしてきた!
続き、楽しみにしてます。
「ほとんど日本という国に対する知識の無かった博士でしたが、尻に火がついた状態の博士は、渡りに船
とばかりに、この要請に飛びつきました。博士は大量の毒物、死者蘇生薬と研究資料、そして唯一の実験
成功例である自分の娘とともに、遠く海を渡り、この水無瀬市にやってきました。それは噂によると、
1910〜20年頃。日本が大体、大正と呼ばれていた時代の話です」
「あの、話の途中ですみませんが、質問があります」
「はい、なんでしょう」
「深青学園って、そんなに昔からあったんですか?僕は近くで見たことはないのですが、相当新しい校舎
で、設備も申し分ないっていう話ですし、最近できた学校なのかと思っていたのですが」
「ああ、なるほど、確かにそう見えるかもしれませんね。でもあの校舎は何度も建て替えられた後の
ものですから、新しくて当然ですよ。あの学園は潤沢な資金をもっていますから、建て替えも頻繁に行って
います。近い将来、山の中腹にある第二校舎も、新しくなるっていう話ですよ」
「へぇ・・・」
「深青学園の歴史は、実はとても長いんです。深青学園の母体となった『深青塾』は1766年、十代
将軍家治の頃に設立されました。以後明治維新後に『深青学士院』と名を改めます。そして明治天皇の崩御
により時代が大正に移り変わり『深青大学』という名前に更に改名。これが今の深青学園の前身にあたります。
その後1913年、当時友好国であったアメリカにある『ミスカトニック大学』という学校と
姉妹校提携を結びました。日清、日露の両戦争の後、これからの時代に向けて国際的な社会感覚を磨こう
という意図だったようです。その後起こる大戦によって一時途切れましたが、今もあの学園に留学生が多いのは、
そのせいもあるんですね。あと日本女子大からの女学生受け入れによる女学部設立とか色々話はあるのですが、
今は省きましょう。とにかく私達の知る深青学園という名前に変わったのは、二次大戦後のことです。
今のような中高大院という教育体制になるのは、それからまたずっと後の話ですしね」
「ありがとうございます。お話、続けてください」
「ええ、分かりました―――今ちょうど話にも出ましたが、ですから「深青学園」から要請があるということ
もあり得ない話なのですけどね。一応当時の深青に博士が来たと思ってください。」
「深青学園の客員研究者としてやってきた博士は、表向きこそ正常を装っていましたが、心の内に秘めた
不老不死の秘薬への異常な熱情は、無くなってなどいませんでした。いいえ、無くなるどころではありません。
極東の聞いたこともない島国にある、一地方大学に過ぎないはずの深青学園大学院には、当時最先端の実験設備や、
良好な研究環境が、申し分ない程に整えられていました。それに煽られるように博士は、益々『大規模死者蘇生
実験』の実現に向けて、着々と、周りにはそれと悟られないように慎重に、その準備を進めていったのです。」
「ついに全ての準備は整い、いよいよ実験の日がやってきました。博士は大学院施設のあった今須山の
頂から、死者蘇生薬を散布しました。大学院での研究により、大気中でも活性しつづける『細菌』として
精製培養に成功していた死者蘇生薬は、山からの吹き降ろしの風に乗って、瞬く間に市街に広がり、そこに生活
する人々に『感染』しました。―――そうです、これは実験ではありません。おわかりのようにこれはテロ、
『バイオテロ』に他なりません―――コの字型に高い山々に囲まれ、外界から切り離された、水無瀬市の地理も、
この実験には好都合でした。そして空気から、人々の接触から、死者蘇生薬改め『死者蘇生細菌』は、この
水無瀬市に蔓延することとなったのです」
「赤々と夕日の燃える、黄昏時のことだったそうです。ちょうど今ぐらいの時間でしょうか。博士はその時
山の頂から市街を見下ろして、何を思ったのでしょう?」
いつの間に、そんな時間になったのか―――僕は無言で西の空を見上げた。
血のように赤い夕日の逆光で、今須山は黒々とした威容を見せていた。その中に浮かび上がるように建つ白亜
の建物群。深青学園の校舎群は、まるで墓標のように不吉なものに見えた。
「さあ、いよいよ仕上げの時間です。実験は、後は市民を大量虐殺するための純粋な毒薬―――もちろん
これも、死者蘇生細菌同様に、空気中に十分馴染むように改良、いや、改悪と呼ぶべきでしょうね・・・手を
加えられていました―――を、撒くだけという事になったのです」
ふっと、鼻から漏れるような微かな笑い。
「しかし―――結局この実験は失敗しました」
「毒薬は、散布されることは無かったようです。博士が急に罪の意識に目覚め、実験を中断したのでしょうか?
違います。実験予定日の翌日、博士は何か『肉食性の大型の獣』に襲われたらしい無残な姿で発見されました。
念願だった大実験の、最後の仕上げにとりかかったはずの博士の身に、何が起きたのかは、誰にも分かりません。
ただ一つ奇妙な事に、博士が死んだ同日、博士の娘が何処かへと失踪しており、それが何か暗示めいて結末を
さしているようにも思えるのでした―――」
菊池さんは、大きく一つ息を吐いた。
以上です。
なんかもうチンタラ読んでるのが面倒臭くなってきたww
一気にまとめて本にして出すなり文芸誌に投稿するなりしろや。
金払って読む価値あると思うからさww
なんて煽ってるうちにだんだんwktkしてきた。
ここの作者さんたちの作品が「文芸ゾンビ」なんかで一冊になったら、、、
同人扱いでも結構売れるかもね。
文芸ゾンビいいねw
>>48 自分は何も想像しないくせに
他人の創作物の利用法を考えるとは
流石クズだな
クマー
ほ
ドリル・・・ねぇ・・・・・・。
もしかして、地下でも進む気か・・・・・・・?
んなわけないか・・・・・。
現に、普通に走っているし・・・・。
ドリル車の先導で車列は隔離ゲートを通過する。
久々の外の世界はやはり荒廃している。
ゲートから廃墟までの数百メートルは隔離壁建造時に資材とする為に破壊されているために建物の微かな土台しかない。
意外なほど、ゾンビはいない。
気になって同じ車両に登場しているベテランのメンバーに聞いたところではゾンビも学習するのか隔離壁上部の通路から
戦闘員に撃たれている内に殆ど近付いてこなくなったと言う。
窓から外を眺めていたらヨロヨロと歩いている大木 洋一がいた。
当然ながら、既にゾンビだ。
タァンッ!
発砲音が車内に響いた。
同時に、大木ゾンビが倒れた。
驚いて音のした方を見る。
数人のメンバーが集まり、嬉しがったり悔しがったりしていた。
ああ・・・・賭けをしていたのか。
特に責める気も無く、放っておく。
3日後。
キュイイィィィィン・・・・・。
ドリル車のドリルを動かすメインエンジンがゆっくりと回転を始める。
甲高い音から轟音へと移行し、ドリルが高速回転を始める。
ここから先はまだ行った事の無い場所とかで路上に渋滞に嵌ったまま放置された錆びた車が大量に放置されていた。
ガンガンガンッ!!
ドリルに触れた車体がバラバラになり、周りの建物にぶつかり轟音を立てる。
先導するドリル車が道を切り開き、後続車両がそれに続く。
当然ながらある程度車間距離を開け、時たま停車し武装したメンバーがタイヤをパンクさせそうな障害を取り除く。
最近、急激に仕事が忙しくなり投下頻度が低下している中二病作家です。
頻度が低下しても読み続けていただけたら幸いです。
>>48 俺もこことは別にまとめてどこかにうpするの少し賛成。
でもこういう風に少しずつ読むのにいらいら思うのって
作者に文章力があるから気になってしまうわけでさ。
つまんないのだったら無視出来ちゃうし。
日曜日とかに連続投稿するっていうのが一番だけど
長い時間かけて投稿しないと2ちゃんから警告出るし難しいんだよね。
作者さんの頭の中では完結してるんだろうか?
57 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/15(土) 09:34:34 ID:m0lkNHkx0
支援age
>56
自分は、少なくとも「とある夏の新田賢一の話」としては
完結しています。
では、続きです。
「これがZ症の発見者、というより、Z症と呼ばれる病気の原因である“細菌”を造りだした
『狂った医学博士』の物語です。ここまでお話を聞いていただいて、言うまでもないことでしょうが、
この話は全くのデタラメです」
「実は・・・少々恥ずかしい話なんですがね・・・私自身この話を聞いた後に、ちょっと興味を惹かれ
ましてね。調べてみたことがあるんです」
苦虫を噛み潰したような、とはこういう表情を言うのだろうか。なぜだろう。このZ症の話を始めて
からの菊池さんの様子は、どこか妙な感じだ。
「深青学園大学及び大学院に、過去、ハーバード大学からの客員研究者が来た事実はありません。
資料は1900年頃までしか遡ってはいませんが、それ以前は現実的ではないでしょう。少なくとも
公式には、記録は残っていません」
目元に色濃く翳る疲労。
「では、話を続けましょう。博士は亡くなり、大規模実験計画は頓挫しましたが、博士は実験の第一
段階である細菌の散布には成功していました。その細菌は繁殖力が強く、水無瀬に暮らす人々に拡大感染
していきました。人から人にはもちろん、空気から、動植物から、様々な経路で、自らが知らぬ間に、
ほとんどの市民は、死者蘇生細菌の保持者とされてしまったのです」
「しかし、そのことは大した騒ぎにはなりませんでした。それはそうです。感染したとしても“発病”
するかどうかは、死ななければ分かりませんし、その確率も、極々低いものでしかないわけですから。
細菌は、その保持者が死ぬまでは何の活動も行わないそうです。ただひたすらに、自己保存に努めるだけ
です。それでは、保持者が生きている間は何も変わっていないのと同じですし、そもそも当事者自身が、
そんなご大層な細菌に感染しているなどとは、夢にも思わないでしょう」
「それでも・・・確率はゼロではありません。死後、発病したと思われる人物もいたという話です。では、
発病後のZ症発症者の症状はどんなものなのか?それはこうです『発症者はZ症の発症以降、老化せず、
再び“死ぬ”こともない。ただし頭部―――脳を、完全に損傷することがなければ』」
「それ以外は、生前となんら変わるところはないと言います。Z症発症者は、もし傷を負ったならば
たちどころに再生し、Z症以外のどんな病気にも感染しないそうです。そこから先は“永遠”の始まり
です・・・それだけなら、発病を忌避するどころか―――喜んで受け入れる、むしろ積極的に望む者さえ
いる事でしょう」
「ですが全てがそう、うまくいくわけではありません。この病には、無視できないマイナスの特徴が
あります。それは、食事の傾向、嗜好が極端に変化することです」
「まず、食欲が旺盛になります。発症者の生存に食事は必須ではないそうなので、食事という行為は
全く無駄なものとも言えますが、きっと精神的なものなのでしょう、とにかく“食べる”ということに
拘るようになります。それから野菜を食べないようになり、動物性蛋白質、つまり『肉』に食が偏る
ようになる。しかもその『肉』というのが問題で、それが豚や牛といった食用動物のものではなく
―――『人肉』なんです」
耳を疑った。
狂気の天才博士。死者蘇生細菌。そして発症者の“人肉嗜好”
“死”から蘇えった少女。
―――彼女は言った。
「Z症かもしれない」と。
彼女は、泣いていた。
ふと、沈みかけていた夕日に照らし出された公園の影が、濃くなった気がした。
「死者蘇生細菌感染症は、いつの頃からか『Z症』と呼ばれるようになりました。おそらくはその特徴
―――その頻度、欲求の強さは分かりませんが―――人の肉を食べたくなる。ということと、脳を完全に
損傷してしまわない限りは活動を停止しないということから、あの有名なホラー映画―――死者が蘇えり、
生きている人間達を襲い、喰らう―――その映画の中に出てくる、蘇えった死者の生態に似ているとして、
映画の題名の頭文字を取って、そう呼んだのではないかと、私は思います」
「誰が聞いてもデマだと思うこのZ症が、最近になって噂になりつつあるようです。それをまとめると
こうです。吹き出さないで聞いてくださいね。『博士の散布した細菌は、人々に感染し続けることで今も
尚存在しており、今になってなんらかの理由で細菌が活性化し、死後の発症者が増えている』」
「つまり私も、賢一さんも、水無瀬市に暮らす人間は、皆その細菌に感染していて、死んだら不本意
ながらも生き返って人の肉が食べたくなる可能性があり、理由は分からないが、その確率が高まってきて
いると、こういう訳です」
耳鳴りがする。何か、大事なことが分かりかけているような。
「これは完全に性質の悪い妄想ですよ。そんな昔から細菌が繁殖しているなら、水無瀬市どころか、
世界中にその細菌は広がっているはずです。そんな話を信じる方がどうかしてる・・・」
「これで、僕が知るZ症に関する事柄は、全てです。お役にたてたでしょうか?」
菊池さんは、しばらく眼を閉じて黙っていた。
何を想っているのだろう。
先程までの口振り。興味が無い、馬鹿馬鹿しいと言いながらも、情報の裏まで取る矛盾した熱心さ。
「賢一さん」
「なん・・・でしょう?」
黄昏を過ぎ、夏の宵が、僕らを包み始める。
「私も少し、変な話をしても良いでしょうか?」
「ええ・・・もちろん、かまいませんよ」
ゆっくりと開かれる菊池さんの両目に、想いの残滓が、微かに残っていた気がした。
「ぶしつけに、こんなことを言うのも何なんですが・・・私は、騙され易い人間なんです。こんな仕事をして、
この年まで生きているとね、それはもう色んな人に会うんですよ。良い人。悪い人。色んな人達がいます。
その人達は、時に相手を思って、時に自己の保身のために、また色々な『嘘』をつくことがあるんです。」
―――伏せられた視線はおぼろげで、なのに生々しく、露出した傷跡をすら思わせて。
「その『嘘』に、私は大概騙されます。性分なんでしょうね、何回同じ目にあっても治らない。本当、
自分でも頭の悪い人間だと思います。だからと言って嘘をつかれることに慣れるわけではない。その都度、
感謝したり、腹を立てたり、色々です。それで考えたんです。いつも自分を騙す人間は、心に留め置いて、
いつも注意しておけば、騙される頻度も減るかなぁって」
菊池さんは笑った。
「私の周りにいる人間で、私を一番騙すのは誰だろう?って考えて・・・それで、別のことに気がつきました」
ああ―――
「一番、私を騙そうとしているのは―――実は・・・自分自身なんじゃないかって・・・」
きっとこの人には―――
「いやぁ・・・本当に変なことを言いました。忘れてください。日も・・・落ちてきてしまいました。今日は
もう帰りましょうか。私も、一旦役所にもどらないと」
―――蘇えらせたい人が、いるのだ。
以上です。
64 :
56:2007/12/15(土) 21:55:19 ID:vQYj0kjE0
勢いとは怖い。
〜〜〜〜1 前
――――二階の自室で篭城 ?
そんなモン日常だ。 だが流石に嫌になった――――
遂に五感が完全に破壊されたか、と俺は実感した。
このニート、引きこもり生活を始めて数年。 視覚の衰えは仕方が無い。 だがこの緊迫した状況は聴覚と嗅覚さえも狂わせやがった。
この薄暗い、数畳の狭い部屋には一つの固いドアがある。 絶対に開けてはならない。 絶対に突破されてはいけない、難攻不落のドアだ。
実際、このドアは両親を一度もこの部屋に踏み入れさせた事は無い。 今まで、この強化ドアに何度感謝した事か。
――――――そしてこれからも何度このドアに感謝する事だろうか ?
ひたすら、ドアからは鈍い音が聞こえる。
ドアを叩くのは両親かもしれないし、友人かもしれないし、赤の他人かもしれない。
いや、両親『だったもの』かもしれないし、友人『だったもの』かもしれないし、赤の他人『だったもの』かもしれない。
単刀直入に言うと奴等は『ゾンビ』だ。
何の比喩でも無い。 本当に生ける屍なのだ。 某ゲームで何回倒したかも判らない雑魚がドアを隔てて、そこにいる。
〜〜〜後
…………ドンドンドンドン !!!!
奴等は疲れを知らないらしい。 ひたすら身体をドアにぶつけているようだ。
今のところ直接の被害は無い。 だが、間接的にはこちらは大打撃を被っている。
『臭い』だ。 血とか肉とか『死臭』といった臭いかは嗅いだ事が無いから判らないが、凄まじい……鼻を衝く異臭が部屋に漂ってくる。
鼻が異臭のせいで腐ったか、と疑った。 異臭が漂ってから数時間でその異臭に慣れてしまったからだ。 だがその代わり、他の臭いを感じる事が出来なくなった。
例えばトイレに行けない為、糞をビニール袋にする。 その糞に鼻を近づける。 糞臭を感じる事は出来ない。
聴覚もおかしくなってきた。 外部からの音は前述のドアに奴等が体当たりする音だけで、後は何も聞こえない。
これに対する対策として、俺は適当な音楽をヘッドホンで聴いた。 だが何事にも飽き、がくる。 一日、二日で全ての曲を聴き、ネット経由からの音楽も大体聴き終えてしまった。
ライフラインはまだ活きていた。
といっても水道は自室には無い為、飲料水は上空からの恵みに頼るしかない。 有り難い事に季節は梅雨どきである。 だが夏になれば、干からびる事は必至だった。
ライフラインが活きている事で一番助かっているのは、ネットで情報をやり取り出来る事だ。
2ちゃんねるではゾンビ対策についてのスレッドが幾つか立てられている。 流れ的に『頭部に金属バットのフルスイングを喰らわせれば、楽勝』とのことだった。
だがそれは一対一の状況下の対策である。 金属バットを振り回せない様な狭い所や、ゾンビが複数だった場合は、喰われて終わる。
中には物干し竿の先に鈍器を括り付け、簡易な槍を作る猛者も居た。
自衛隊板では『自衛隊出動マダー』なるスレが乱立している。 自衛隊の動きは不明瞭である。 多分、出動する前にやられたに決まってる。
2ちゃんねる内では、少しでも多くの人間と合流しようと、『OXで生き残っている香具師ちょっとこい』なるスレも立っている。 当然合流したいのだが、この部屋から出れそうに無い。
「孤立無援、四面楚歌とは俺の為に作られたのか……」
諦めがこもったぼやきが、出た。
〜〜〜2
眼が覚める。 この非日常でも変わらない天井がある。
また辛い一日が始まるのか、と考えると気が重い。 目の前にぶら下がっている照明の紐を掴む。
――――まだ電気が活きていますように。
引くと、パッと室内が明るくなった。 まだ電気は活きている。 少なくとも、今の俺にとって電気は希望の光だ。
眼が覚めるとともにまたもやドンドン、という音が耳を衝いた。 諦めが悪い。
「さっさと諦めて、どっか行けよ。」
俺はドアの挟んで向こう側の連中に呟いた。
――――ところで、外はどうなっているのだろうか ?
昨日感じた疑問が復活していた。 俺は窓から手を出して雨水を手に入れる。 だが窓の外の光景を絶対見ない。 道という道にゾンビがうろついているのを、見たくは無い。 多分、道は地獄絵図だろう。
実は外部の情報はあまり、無い。 2ちゃんねるでも物議をかもし出している。
『ゾンビまったくいねー』という書き込みがあれば、『窓の外うじゃうじゃ居る』という書き込みまである。
最初は前者は地方で後者は都会かな、と考えた。 だがそうでもないらしい。 中には東京なのに全くゾンビを見かけない、という奴まで居る。
「――――……釣り、か ?」
まさかそんな筈は無いだろうに。 こんな緊急事態なのだ。 情報は正確である筈だ。
『ところで
>>444 どうする ?』
見ると、昨夜のレスに反応が有った。 昨夜、俺は愚痴をこぼしたのだ。 ニートで有るがゆえ、この部屋を動けそうも無い事を。
『今もドアが五月蝿い。 ドアが破れる訳無いんだが、怖い。 武器も無い。』
俺は素早くキーボードを叩いた。
せめて俺が野球少年ならば自室に金属バットの一つや二つ置くだろう。 それで一発逆転を狙うのだが。
ところで、と俺はある事に気付いた。
――――書き込みの量が少しずつ減ってる ?
俺は寝る前に書き込みをした。 六時間寝た。 六時間でレスが100ほどしかついていない。 現在対ゾンビスレッドは一つ、『生ける屍総合対策スレッド』なるものである。 全盛期(?)には半日でスレッド一つがまるまる消費され、内容を頭に入れるのが大変だった。
「つまり――――――…………」
書き込みする香具師が、減ってるって事、か ?
新作wktk!!
「・・・・・ん?」
周囲が薄暗くなって来ているのに気付いた。
現在の時刻は午後2時半。
夕暮れまでにはまだ多少なりとも時間がある。
防弾ガラスの窓から空を見ると、いつの間にか黒い雲に覆われている。
雨雲?
でも、1時間くらい前まで快晴だったのに・・・・・?
しかし、事実は事実だ。
10分もしないうちに大粒の雨が土砂降りのように降り注いだ。
この時期に台風が直撃かと思うほどの荒れ模様だ。
無線での他の車両の運転手とのやり取りが多くなってきている。
やれやれといった表情でおじさんはハンドルを握り返す。
「みんな、聞いてくれ」
おじさんの声に全員が集中する。
「もうじき暗くなる上にこの土砂降りだ。他の車両との相談の結果、地図ではこの先にあるはずの
ショッピングセンターの駐車場でこの雨をやり過ごすことになった」
誰も異を唱えるはずも無く、本来のコースから外れショッピングセンターの駐車場に向かう。
車で逃げた人が多かったのか、駐車場内には障害となる遺棄車両が無かった。
ドリル車のメインエンジンは既に停止しているが雨が触れた途端すぐに水蒸気と化しもくもくと立ち上る。
そのドリル車だが、この一号車にギリギリまで横付けしてきたかと思うと大急ぎでこの車両に乗り移ってきた。
ドリル車の搭乗員は・・・・2名で耐熱服を着込んでいた。
微かに消防署の名前が見えたのはまぁ気にしないとしておこう。
土砂降りの雨粒が車体を叩く。
燃料節約でエンジンは止めてあり、俺も含め全員が防寒服を着込んだ上で携帯カイロを2つ3つ使っている。
食事は冷凍物メインだが美味しい。
それぞれ、トランプやらの読み込まれてボロボロになっている雑誌を読んだりして娯楽に興じている。
流石に、元の世界のように携帯ゲーム機で遊ぶ人は居ない。
それ以前に、既にこの世界ではテレビですら貴重品になっており、隔離都市の市民は街頭テレビで情報を仕入れている。
さて・・・・市長に貰った本でも読むか・・・・・。
別の世界から来たと言っても、普通の人間は信じない。
また、信じたからと言ってどうなるわけでもない。
市長は俺達の話で俺達が別の平行世界から来たという話を信じてくれた。
だが、当然ながらそれでどうなるわけでもない。
映画とかじゃ、移動した先の世界でその手の研究をしている科学者とかと知り合ってその人物の手助けを得て
元の世界に戻ったりする。
が、この世界に来て今までその手の研究者の話など噂すら聞かない。
外は荒れ模様が激しくなり、落雷まで発生している。
車体が時折ビリビリと振動する。
寝ずの番の見張りが2名、他の2名と交代でカードゲームとかをしながら警備に当たる。
しかし・・・・この落雷は凄いな。
寝台車両で簡易ベッドに潜り込みながらそう考えながら眠りについた。
翌日も相変わらずの土砂降りと落雷だった。
どうやら台風ではないようだ。
こっちの世界でも異常気象が多発しているのか?
そう考えながら、車内での宿泊はもう一晩続いた。
その翌日はまるで嘘のように空が晴れ渡った。
すがすがしい気分にもなるが歓迎できない客も時々やってくる。
狙撃手がその客にお帰り願う。
再びドリル車の先導で移動を始める。
ドリル車が障害を排除し、燃料を搭載した車両が給油したりしながら着実に進んでゆく。
今のペースだと、目的地まではあと1〜2週間は掛かりそうだ・・・・・・・・。
『祐二、そっちはどう?身体壊したりしてない?』
3日に1度だけ無線での都市に残してきた家族やら友人やらと通信が出来る。
どうやら、あちこちのビルの屋上にヘリで中継アンテナが設置されているようだ。
そもそも、使っている地図も航空写真付きだし・・・・。
そんな通信でキャサリンとの会話を楽しむ。
一人に許可された時間は5分と短いが楽しい。
「ああ、大丈夫。でもさ、冷凍食品とか保存食ばかりで・・・・早くキャサリンの手料理が食べたいよ」
『うん、私も祐二に料理作ってあげたい。ね、戻ってきたら何を食べたい?』
「ん〜・・・・ラーメン」
『ら、ラーメン・・・・・・』
「冗談、何時も作ってくれる料理さ。でも、ラーメンも食べたいかも」
『分かったわ。ラーメン、何とかしてみるわ』
無線機の向こうでキャサリンが笑いを堪えているのが分かった。
そして楽しい時間はあっという間に時間切れとなり、キャサリンとの会話を終える。
他の作家さんも増えてきてwktkしております。
みなさん(作家さん&読者さん)も、身体には気をつけてください。
今年の風邪は性質が悪いです。
身体の弱い私が言うんですから間違いありません(ヲイ
中二病作家さんも風邪でしたか・・・
自分も風邪です。結構きついですね。
みなさまお体ご自愛ください。
では、続きです。
3
家まで送る、という菊池さんの申し出を、考え事をしたいからと言って断り、僕は
電灯に煌々と照らし出された夜道を、一人とぼとぼと帰路についた。
僕の家は市街地の住宅街にあり、きちんと区画整理されているので、村のように
足元に気をつける必要はない。村では未だに、道路わきに設置された街灯の数が少なく、
その上舗装されていない、土が剥き出しの道が多いらしいので、ただ夜道を歩くのにも灯り
が必要になるそうだ。
便利なはずの街灯。けれど今は、目を刺すような強いその明かりが、なんだか妙に
鬱陶しく感じられた。
自分がZ症かもしれないと言った彼女。
彼女はZ症のことを、どのくらい知っているのだろう?
Z症が死によってしか発病しない病気だと言われていることを、知っていて言っている
のだろうか?
だとしたら自覚があるのだろう―――自分が一度『死んだ』のだという自覚が。
ガス事故で意識を失ったことを、それと勘違いしているのか。
それとももっと強烈な―――目の奥に明滅するありえない事故の記憶―――死の、記憶
があるのか。
はたまた別の自覚が―――あるのか。
考えなければならないことは、沢山あった。
けれど、そのどれもが、今この場で考えるだけでは、どうしようもないことばかりの
ようにも思える。
事故。彼女。Z症。
どうしようもないと分かっていても、考えずにはいられなかった。
とりとめの無い思考を、頭の中でこねくり回している内に、家の玄関に着いていた。
ポケットから鍵を取り出し、ドアを開けると、肉の焼ける芳ばしい匂いが漂ってくる。
今日も、昨日の夕飯の残りの焼き肉らしい。
途端に空腹を感じた。家に着くまでは、食欲などまるで感じなかったというのに。
節操のない自分の胃袋に苦笑する。
「ただいま」
キッチンに向かって声をかけると、母の声が返ってきた。
「お帰りなさい。ご飯すぐだから、コウちゃんにも挨拶なさい」
はい、と返事を返し、仏間へと入る。
大笑する小さな遺影の前に正座して、手を合わせ、目を閉じた。
もし、彼が生きていたなら、僕は彼に相談をしていただろうか?
現実としか思えない幻覚。
彼女との関係。
そして―――Z症。
そんなことを相談することが、出来ていただろうか?
キッチンに入ると、母がすでに食事の準備を終え、食卓に着いていた。
「お父さん、今日は遅くなるからって、さっき連絡あったわ。なんでも学校の方で、
なにか問題があったみたいなの。だから先に食べちゃっていてくれって」
父は、深青学園高校で教鞭を振るう教師なので、こういったことはよくある。
僕は、中学を卒業したら、深青学園高校に進む予定になっているが・・・あまり乗り気が
しないでいた。
深青学園は僕にとってあくまで“父の職場”であり、自分の通う学校というイメージ
ではないのだ。自分の身内が学校にいるというのは、きっと双方にとってあまり気持ちの
良いものではないだろう。
しかし、この水無瀬市内には、高校は深青学園と、公立の、成績が低めな普通科高校の
二校しかなかった。
深青学園は偏差値が高く、僕の成績では合格はぎりぎりのラインだった。けれど市外
の高校に通うには、僕の成績に合わせた学校となると、その通学時間は2時間近くにもなる。
僕は一人暮らしということも考えたのだが、母が頑として反対したので、深青に進む
のが、最も合理的な方法だった。おかげで僕はこの夏休み、昼は図書館で自習し、分からない
ところは父に質問するという勉強漬けの毎日を送っていたのだ。
しかしここ数日は、全くその勉強はできていなかった。
勉強のことを考えている余裕は、まだ僕の心には無かった。両親はなにも言ってはこないが、
内心はらはらしているのかも知れない。
食事の最中も、僕の意識は上の空だった。
空腹は感じているから、とりあえず食事は口に運ぶものの、あまり味がわからない。
「ねぇ賢一、病院の方はどうだったの?若宮さん・・・だっけ、元気だった?」
どうって・・・言われても。
―――うまく、説明できそうにない。
「元気そうだったよ。菊池さんの言っていた通り、どうして入院が必要なのか分からない
くらいだった」
「そう・・・良かったわね」
母の笑みには、なんだか別の意味も込められているような気がした。
「ところで若宮さんは、中学卒業したら進学するの?もしかして、深青学園に進むのかしら?」
「一応、受験はしてみるって言ってたけど・・・突然どうしたの?そんなこと聞いて」
「なら賢一もちゃんと合格しなくちゃね。彼女だけ合格したりでもしたら、格好つかない
でしょう?」
なるほど、そういうことか・・・
「・・・がんばるよ。そうはならないように、ね」
母はじっと僕の顔を覗き込みながら、満足そうに頷いた。
「そうだ、退院したら、若宮さんに一度、家にでも遊びに来てもらったら?」
「そんな・・・いいよ」
冷静を装って返答したものの、僕は激しく動揺していた。彼女が、自分の家に来るなんて・・・
それこそ考えたこともなかった。
「あら、照れてるの?」
突然になんてことを言い出すのか。
「いや、別に、そんなに親しくは・・・」
どうなんだろう。けど・・・家に呼ぶっていうのは、ちょっと抵抗があるような・・・
「そうなの?」
答えられずに黙り込んでしまう。
母の目が意地悪そうに細められる。何かを言いたそうな、薄い笑い。嫌な感じ。
「まあいいわ、でも、いつか紹介してよね」
「うん」
良かった・・・これ以上詮索されるのは堪らない。
「そんなに嫌がらないでよ。その彼女にちょっと親近感が沸いたから、会ってみたい
かなって、少し思っただけなんだから」
拗ねたように食事を口に運ぶ母。
「―――親近感・・・って?」
「うん、母さんもね、事故で入院した事があって、それでその時、入院中にすごく寂しい思い
したから、元気付けてあげられたらな・・・って思ったのよ」
初耳だった。いや、本当に小さな頃、一度そんな話を聞いたような気がする。
以上です。
>>80 オチを想像しながらハァハァしておりますw
ノベルさんの、読者の想像力を掻き立てるこの文章力は、とても素晴らしい!
今は風邪を引いてらっしゃるそうですね、どうか無理はなさらぬ様に執筆を続けて行って下さいね
82 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/18(火) 00:28:02 ID:jfu6mwVpO BE:1818672179-2BP(0)
おすすめにちゃんねるがゾンビだらけってのも凄いな
>81
感想&お気遣いありがとうございます。81さんも、重々体調には
お気をつけて。
では、続きです。
「その若宮さんのあった事故とは違うけど・・・結構大きな事故だったのよ。母さんの歩いてた
歩道に車がつっこんできてね・・・本当に怖かった・・・次に気がついた時には病院のベッドの上で・・・
お医者さんもね、おっしゃってたわ『助かったのが不思議なくらいだ』って・・・やだ、思い出し
ちゃった」
「何を?」
「その時のお医者さんの顔。母さんが助かって、病院で目を覚ました後、お医者さんに事故の
話を聞いたりしたのだけど・・・その間中、母さんのこと、まるでお化けでも見るような顔で見てる
のよ、その先生。・・・全く失礼しちゃうわよね」
『助かったのが不思議なくらい』の事故。
僕は、はたと食事に伸ばしかけた箸を止めた。
助かったのが不思議なくらいな、彼女。
またも幻覚に沈み込みかける意識。
―――Z症。
不思議だった。子供の頃から。
―――年を取らない母が。
「いつまでもお若くていいわねぇ」
母と買い物に出かけた時声をかけてきた、ご近所の井戸端会議常連メンバーは、おそらく母と
同年代のはずだ。なのに、見た目はまるで違っていた。
その目の奥に揺らいでいたのは羨望と、それの何倍も強い―――嫉妬。
母があまり近所付き合いをしない理由が、その時なんとなくわかった。
母がいつまでも若いことは良いことだ。
母を見て僕が抱く感慨はその程度のものだったが、こと本人においては、知られざる苦労が
あったのだろう。
今こうして改めて見る母の姿は、とても若々しい。
―――若すぎる、と言っても良いかも知れない。
「どうしたの、賢一?母さん、なにか変なこと言ったかしら」
「ううん・・・なんでも。ただ事故の話、聞いたこと無いような気がしたから。その事故って
・・・いつ頃のこと?」
「事故に遭ったのはね、お父さんと会う少し前の話よ。母さんが24の時。話してなかったかしら?
まぁ話してあまり気持ちの良いことでもないから・・・」
24才・・・なるほど、そのぐらいにも・・・見える。
『博士の散布した細菌は、人々に感染し続けることで今も尚存在しており―――』
『発症者はZ症の発症以降、老化せず―――』
菊池さんの声がよみがえる。
なにを―――
「あら、お肉もう無くなっちゃったのね。ちょっと切ってくるわね」
『食事の傾向、嗜好が極端に変化することです―――』
僕の家では、食卓にサラダが並ぶことは、ほとんどない。
なにを―――考えている。
チカリと脳裏に光が瞬いた。
「つっ!ああ・・・やっちゃった。いたたた・・・」
小さな悲鳴。オープンキッチンの向こうで、母が左手を抱くように前かがみになって
いた。
手首を、白いシャツを赤く染めて、肘から血が滴り落ちる。
僕はのろのろと席を立ち上がると、覚束ない足取りで、母の側に近寄った。
「母さん・・・大丈夫?」
まな板の上には、分厚い肉の塊と、やけに刃渡りの長い、血のついた包丁。
ステンレスのシンクの底に血が流れ、排水口に流れ込んでいく。
「ええ、久しぶりにやっちゃったわ」
顔をしかめながらも呑気に笑っている母に反して、血はかなりの勢いで流れ出している
らしくシャツの袖口から肘までは、血で真っ赤に染まっていた。
「そんなに心配そうな顔しなくても平気よ。ほら、もう止まったから」
バカな―――流れ切らぬ血は、シンクに斑模様を描いている。
これだけの出血が、こんなに早く止まるものか。
「ちょっと傷見せて」
「だから平気だって。こんなの唾つけとけば治っちゃうわよ」
「いいから―――」
しつこく詰め寄る僕に、母は根負けしたように、左手をゆっくりと差し出した。
僕は蛇口を捻って勢いよく水を出すと、母の手についた粘り気のある血液を、傷口に触れ
ないよう、丁寧に洗い流す。
母は、何も言わずじっとしていた。
血の混じった水が、渦を巻いて排水口に吸い込まれていく。
すっかり血を洗い流した後、僕は恐る恐る母の手を覗き込んだ。
―――傷は、無かった。
どこにも見当たらない。
「ね、もう止まってるでしょ?」
それどころか、傷跡さえわからない。
「じゃあ、お肉運んじゃうから、テーブルにもどってて。母さん服汚れちゃったから、
着替えてくるわね」
なんなんだ・・・これは。
僕もカッターなんかで指を切った経験はある。
血が流れ出すでもなく、珠の様に浮き上がってくるような程度の傷であっても、こんなにも
速く塞がったりはしない。
ましてや血が滴る程の傷など―――
いや、僕はそれを見たことが無かったか。それもごく近い時間に。
今日、病室で、リンゴを剥き損なって負った、彼女の傷はどうなっていた?
「テーブルに置いておくから、食べててね」
母はそう言い残して自室へと向かった。
僕は、なんの気なしに冷蔵庫を開けた。
飲み物。乳製品。調味料。そして―――
―――肉、肉、肉、肉、肉。
冷凍庫を開けると、冷凍された肉。
野菜室を開けば、そこにはほんの少しの主役と、鮮やかな赤い肉。
冷蔵庫の中は、いつもと変わらなかった。
なのにこの―――恐怖感。
今、僕は、大変なことを考えている。
Z症。
―――本当にあるのではないか。
力なく冷蔵庫の扉を閉め、テーブルへと戻る。
一人、音の無い食卓に着き、母が切り分けてくれた、肉の切れ端を眺めた。
以上です。
GKBL、GKBL、、、WKTK、WKTK
予想外の展開にwktk、gkbr。
この恐怖心、賢一とシンクロしてるかも。
ご…ゴクリ…
しかし、若いオカンいいな〜うちの嫁も、いっそのことZ症に…
>>65-67 俺はレスを一瞥すると、溜息を付いた。
ゾンビ映画を数十本見てきた俺は知っている。
大抵、終盤、一番の敵になるのは同族の人間だって事を。
『表でゾンビぶっ殺しまくってる連中を見つけたんだが、どう見ても人間も殺して、物資を奪ってます。 ありがt(ry』
自分以外の生存者を殺し、物資を奪う略奪者だって、幾ら居てもおかしくない。
そして、その略奪者が俺の家に侵入する恐れだってあるのだ。
実はというと、数時間前、遠くから聞きなれている銃声が聞こえた。
最初は一発。 次に連発で銃声が起こった。 銃声自体はこの付近に演習場があるので、聞きなれている。
やった、やっと自衛隊が動き出したか、と小躍りしたのだが、スレッドの書き込みを見てから考えを改めた。
――――銃器を手に入れた略奪者、か ?
そりゃ当然、空き家から物資を奪うのは悪い事では無い。 当然の心得だ。
だが生存者を殺して……、となると。
万が一、略奪者達が二階に上がってきて、ゾンビ殺して俺の部屋に脚を踏み入れたらどうする ?
「……仲間にして貰うっていうのは無理だな。 何も能力を持っていない元ニートじゃ、なぁ。」
となると、応戦する、か ?
単調直入に言えば、無理だ。 対人武器なら、ある。 ナイフだ。
だが銃器を持っている略奪者相手にナイフでは分が悪すぎやしないか ?
俺は不安を消す様に、わざと咳をした。
――――何とか、なる。
俺をこのニート生活に叩き落した楽観的な考えがすぐに蔓延った。
確かに俺には一本のナイフで闘う他無い。 とにかく、略奪者が家に足を踏み入れない事を祈ろう。
俺の手は自然と、テレビのリモコンに伸びていた。
自然に電源を入れてから、若干後悔した。
『……しても、傷害や死体損壊罪には問われません。 皆さん、落ち着いて家で待機……』
十数日前から変わらない声がテレビから流れていた。
NOKではもう既に機能しておらず、同じ番組をひたすら再放送している。
「何が家で待機だ…… !!」
俺はイライラをテレビにぶつけようとした。
が次の瞬間、音声を聞いた為か、ドアの向こう側のゾンビ達が一斉に吼えた。
「うるせぇな !!」
短く叫ぶと、民放を試そうとした。 だが、止めた。
確か、既に民放は砂嵐しか映らない筈である。
つまり、テレビは全く意味が無い粗大ゴミと化した訳だ。
俺は舌打ちすると、リモコンを画面に投げた。 バリン、とテレビ画面が割れる。
それに比べて、発電所はどれだけ偉いんだ。
多分正門前でゾンビと格闘し、俺等の為に電力を供給してくれているんだろう。
今なら働いて、全額発電所に寄付って良いぐらいだ。
それに比べて何だ、NOKは。 カネを無理矢理出させてこのザマか。
最後まで篭城に賭けてる人間だって居るんだよ、そいつの為にもっと放送しろよ。
それともなんだ、俺達が篭城したのが馬鹿か ? そりゃそうだよな、雨頼りの篭城組、負け組みだよ。
――――後一ヶ月したら雨、降らなくなりますが何か ?
頭の中に悲観的な考えがよぎった。
「……待て、落ち着け、イライラしてるからだ。 落ち着け。」
オカシイと思うだろうが、俺は自分の中の悲観的な考えを宥めた。
――――もう諦めたほうが良いんじゃね ?
俺はまた舌打ちした。 だが悲観的な考えはどんどんわき続ける。
キーボードの脇にあるナイフを手に取った。
死ぬとするなら、あんな奴の仲間入りするのは嫌だ。
どっちにしろ、生きている連中に少しばかりでも迷惑になるだろう……あれ ?
「今まで親に迷惑掛けてきたのに、今更何言ってんだ ?」
俺はおかしくなって、ナイフを首に向けた。 ズブリとやって……
…………ババババババ !!!!!!!!!
銃声が俺の右手からナイフを離させた。
ん〜たけさん、いいねえwktk
>レス下さった皆様
感想ありがとうございます。
今回でお話は、とりあえずの終点です。
あと91さん、お嫁さんは大切に。
では、続きです。
何故か震えている手で、無造作に一切れ摘み上げると、生のまま口の中に放り込む。
噛む度にじゅっと溢れ出す肉汁と、錆びくさい鉄の味。
甘く、柔らかな食感を心ゆくまで楽しんだ後で、ゴクリと飲み下す。
―――ああ、なるほど。
そう思い至った瞬間、僕は椅子が倒れるほど勢い良く立ち上がり、廊下に飛び出した。
そのままの勢いでトイレのドアを開けて、便器に顔を突っ込むようにして吐く。
ほとんど未消化の肉が、びちゃり、ごろりと逆流してくる。
―――わかった。わかってしまった。
僕は彼女に恋をしている。
肉が喉に引っかかり、うまく吐けない。息が詰まる。
それ以前、彼女を知ってから、今日、病室で彼女に恋をするまで抱き続けていた
熱情は―――
肉の塊が便器に落ちるたび、溜まった吐寫物が跳ね、顔を打った。酷い匂い。それが更なる
吐き気を誘発させる。
あの熱情は―――『食欲』だった。
彼女を初めて見たときに感じた空腹。
彼女が生きていると分かった時に感じた飢え。
会いたいと思ったその寸前、脳裏を過ぎった言葉。
―――たい。会いたい。
―――食べたい。
胃が痛い。裏返ってしまいそうだ。
気付かない振りをしていた。
それを認めたら、僕はここに居られなくなる。
人肉食嗜好―――異常心理だ。
彼女を一目見たあの日から、僕の心の底には、自分にさえそうとはわからないよう偽装された、
ある一つの欲望が住み着いた。
彼女を、食べたい。
柔らかそうな頬に。ほっそりとした首筋に。豊かに膨らんだ胸に。
優しく唇を当てるのではなく、滑り落ちるギロチンのように迷い無く、この歯を突き立てる
ことができたなら。
溢れる血をすすり、皮を、肉を食い破り、温かく生臭い体内に頭を突っ込んで、苦味の強い
臓腑を貪り、咀嚼し、喉を通る、少しばかり温度の違う新鮮な肉塊を胃に落とせば、煮え滾る
溶岩のように熱く感じるのに違いないのだ。
きっとそれは、至福と呼んで差し支えの無い恍惚―――
彼女を食べたいという狂った欲望を恋と偽って、僕は彼女を見つめ続けていたというのか。
―――あまりに、酷すぎるじゃないか。
嗚咽。自分で聞いたこともない声が出ていた。胃が捻じ切れそうなほど、収縮を繰り返している。
彼女のことが、食べたくて、食べたくて、仕方なかった。
一体どんな目で、僕は彼女を見つめていたのか。
彼女が向けてくれていた想いも知らずに、僕は全く違う思惑を描いて―――
無くして良かったと心底思う。
そんな欲望が自分の中から、初めから無かったことのように消え去ってくれて、本当に良かった。
―――しかし、なぜ?
なぜ僕が彼女に覚えていた、飽くなき食欲が―――突然に失われたのか。
「大丈夫、賢一!?どうしちゃったの!?」
うずくまる背中におかれた手が熱い。
気付くと母が、これ以上ないというくらいに心配そうな顔で声をかけながら、背中を擦って
くれていた。
「救急車呼ぼうか?どこか痛む?」
「母さ・・・ごめん・・・へい・・・き・・・」
母さん―――聞きたいことがあるんだ。
あの日のこと。
僕が、熱を出して幼稚園から帰るのが遅れた、あの日のこと。
コウちゃんの、最後の日のこと。
母が僕をおいてコウちゃんを迎えにいってから、僕は熱に浮かされた頭で、しばらく子供部屋で
ぼんやりとしていたが、そのうち一人家に居続けることに耐えられなくなって、母の後を追って
公園へと向かった。
公園に向かう途中の、夕暮れの街の光景は、赤くて、心細くて。
進む足は自然と小走りになった。
足がアスファルトを踏みしめる度、頭がぐらぐらと揺れたが、そんなことに構ってはいられなかった。
とにかく、母に、コウちゃんに会いたい。
僕が進む道に人影は無い。
寂しい。一人では、いたくない。
今は猫ばかりが集まるあの公園で、僕はコウちゃんと母を見つけた。
足を止める。上がった息で、肩が荒く上下していた。
周りには、他に誰も居なかった。薄暗くなった砂場に、コウちゃんが作ったのだろう、立派な砂の
お城が建っていた。
母は公園の隅にある砂場の脇にうずくまって、虚ろな目をしてもう動かなくなっているコウちゃん
の体に、頬擦りをしていた。コウちゃんのお腹の辺りは、夕焼けよりも真っ赤に染まっていて、その体
の下には、同じ色の水溜りができていた。
母は、その中で、地に両膝をつき、ほとんど唸り声のような慟哭を上げながら、コウちゃんの体に
顔を埋めていた。胸に掻き抱くように、大事に、大事に、誰にも取られることのないように。
母が頬擦りをする度に、静まり返った公園に、ぴちゃり、くちゃりと、コウちゃんのお腹にできた
大きな穴から、水音がしていた。
母はずっとその場を動かずに、同じ姿勢のまま、何度もコウちゃんに頬擦りをしていた。
僕は見てはいけないものを見てしまったような気がして、何も言わず家に駆け戻って、布団に包まって
震えていた。
その後に、母とコウちゃんを発見、通報した人の話では、母は全身をコウちゃんの血に塗れさせて、
なにかに食い散らかされ、残り少なくなったコウちゃんの遺体を、両手に抱きしめていたのだと言う。
怖かった。だから確かめたかった。
最後のお別れのときに、コウちゃんを見て確かめたかった。
僕があの時見た、母が優しく抱きしめていたコウちゃんと、どこも変わりがないということを。
「か・・・あさ・・・」
聞きたいことが、あるんだ―――
「コ・・・ウ・・・コウちゃ・・・は・・・」
違うよね?
「何に・・・食べられた・・・の?」
僕は、年を取らぬ母に聞いた。
母は、何も言わなかった。
僕はうめき声を上げながら吐き続けた。
自分以外の誰かの嗚咽が、時折漏れ聞こえた気がした。
4
夜は、明けていなかった。短いはずの夏の夜。朝日は未だ、見えない。
午前4時、朝というには、まだ早すぎる時間。
この季節でなければ、夜中とさえ言える。
僕は、あの交差点に立っていた。
目の前を、巨大な貨物トラックが、まるでここが高速道路でもあるかのように、猛スピードで
横切っていく。
この時間の大通りは、そんな車ばかりだ。
熱気を孕んだ夏の夜では、到底冷め切らぬ空気は、ぬめる靄となり、通りかかる車にことごとく
覆いかぶさり、そして切り裂く豪風に千切られ、舞い上がり、地に落ちることを、飽くことなく
繰り返していた。
部屋に戻っても、眠ることなどできなかった。
雑巾のように搾られた胃は、激しい痛みに反応することにさえ疲れたように、ぐったりとした
ままだった。
ベッドに横たわっても、次々と頭に浮かんでくる事柄に翻弄されるばかりで、休まることなど
少しもなかった。
中でもいくつかのことが、僕の思考を、強く縛り付けた。
―――なぜ彼女に食欲を感じなくなったのか?
―――まだ、生きている内にZ症を発症することはあるのか?
Z症の発症条件は―――遺伝するのか?
もう、その疑問に関する答えは、ある程度自分の中で固まりつつあったのだけど。
それにはっきりとした答えを得るには、『検証』が必要だった。
そのために、僕はここに来たのだ。
僕はもう―――狂ってしまっているのだろう。
それが何時からのことなのか、そのきっかけが何だったのか、僕には分からない。
あの交通事故を目撃した時からか、彼女を初めて見た時からか、コウちゃんの最後の姿を見たとき
からか・・・それとも、この世に生れ落ちたその瞬間からだったのかもしれない。
もし僕の予想が当たっているのなら、この検証の後、長い長い、病気との闘いが待っている。
年を取らず、自然と死ぬこともできず、永遠に動き続け、人肉を欲する、Z症患者として。
発症すれば、今の僕が暮らす世界とは、まるで違う世界の住人となることだろう。
寂しくは無い。
僕はこの、世にも稀な病気の発症者を、2人も知っている。
だが、恐怖はある。
発症後のことももちろんそうだが、その前の段階―――“死”を、超えることができるのかどうかと
いうことだ。
ありえない妄想に囚われた、狂人の死に様を晒すか―――
人肉に妄執する生ける死者となるか―――
―――狂っているのだろう。
彼女の“最期の笑顔”を思い出す。頭が埋め尽くされる。
狂っているのだとしたら、何をおいてもまず、僕は―――彼女への恋に狂っていたいのだ。
信号は赤。
道路の向こうから、明らかに法規速度を無視した鉄塊が迫ってきている。
その向こう、夜は白み始めていた。
―――迷いは消えない。
もし、ここから一歩足を踏み出したなら。
この僕に―――『死者の夜明け』は、訪れるのだろうか?
終
あとがき
皆様、最後までお付き合いいただいて、本当にありがとうございました。
以上で『新田賢一の6日間』の物語は終了です。
最後に少しだけ、お話をさせてください。
このお話は、確か前々スレだったでしょうか?そこに書き込まれていた、一つの短い物語に
着想を得たものです。
曰く『人間に恋するゾンビ少女』のお話です。
コメディ調に書き込まれたそれを読んで、自分はこう思いました。
「ああ・・・このゾンビ子さんの恋、成就させてやりたいなぁ・・・」
よし、ならば一つ自分が書いてやれ、と。
しかしゾンビの女の子の恋物語だけでは、どうにも話がまとまりません。
そこで別のテーマを用意することにしました。
それは、大なり小なり、みなさん誰もが経験したであろう、もしくはすることになる
『失ってはならないものの喪失』です。
そうしてこの『Z症』は生まれました。
あの書き込みをした方、見てらっしゃいますか?
あなたのお話は、自分にこんなお話を書かせましたよ?
物語の中では語られなかった新田君のその後は、みなさんのご想像にお任せします。
ただ自分は、ごく個人的に思うことですが、彼は結局、“死ぬ”ことはできなかったのでは
ないでしょうか?
もし―――またどこかで、新田君や若宮さん、それに意外に人気だった菊池さんの姿を見かけたなら、
どうかその時も、こうして暖かく見守ってやってください。
最後に改めて、拙いお話にお付き合いいただいたこと、感謝いたします。
それではまた、いつかどこかの水無瀬の空の下で、お会いしましょう。
それまで、さようなら、です。
ふぅーっ…
お疲れ様でした。タイトな空間&時間のストーリーでしたが、非常に奥行きの感じる場にどっぷり引き込まれたような感じです。
嫁はこれからも大事にします。Z症になったら、それこそ手が付けられない暴君に…
>>103 俺も話に引き込まれました
もう一回読み直してみるよ
>>103 最後の最後に、救世主菊地を期待していた俺は不完全燃焼w
それはさて置き、素晴らしい作品をどうもありがとうございました
ノベルさんの次回作、心待ちにしております
107 :
A・I:2007/12/19(水) 23:07:31 ID:Zr9NVdac0
お久しぶりです。やっと時間ができたので投下します。
自分もノベルさんの次回作を楽しみにしてます。では投下をば。
<・・・次のニュースです。10日前からアフリカ各地で発生している疫病ですが、
エチオピアで4000人、スーダンで200人、ケニアで850人、
南アフリカ共和国で2000人の感染者が確認されました。
死者はこの4カ国だけで700人を超えていると言われます。
感染の拡大の速さから空気感染によるものと推測され、
一部の地域では、恐怖から市民による暴動が発生したとの報告もあります。
アフリカ各国から帰国した旅行者にも感染者がいたらしく、
この病気は世界中に広まっているようです。
すでにイタリア、ドイツ、フランス、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、
アメリカ、カナダ、ブラジル、チリ、アルゼンチン、タイ、フィリピン、中国、韓国で、
同様の症状を示す患者が確認されており、日本でも約40人に感染の可能性があり、
受け入れ先のA病院で検査が行われています。A病院を隔離するという動きがあり、
現地では波紋が広がっています。
では病院前より・・・>
108 :
A・I:2007/12/19(水) 23:10:14 ID:Zr9NVdac0
空に広がる雲は幾分か黒さを増していた。一雨降るかもしれない。
「サーズ以来だな。世界中が病気で騒ぐのは。」
祐司がのんびりとコーヒーをすする。謎の疫病など完全に他人事だと言わんばかり。
カップの湯気と共に呑気さがオーラように漂っている。
「まあ、あの時よりヤバイみたいだな。患者の数もすげー勢いで増えてるらしいぞ?
・・・読んでみろよ。」
ソーダを飲み干して手元の雑誌を顎で示す。表紙を飾る文章は先週のものと変わらない。
「‘アフリカで奇病大発生。その正体は?世界は、日本は大丈夫か?’
くっだらねえ。すぐに収まるだろ、こんなもん。」
中身を読もうともしない。吞気でいい加減にみえるが、案外こいつは真面目でお堅い。
スキャンダルや不祥事で騒ぎ立てる週刊誌など読んだことがないのかもしれない。
「斉藤、お前の叔父さんだっけ。今、南アフリカ共和国にいるんだろ。」
「今のところは平気だって言ってた。向こうの行政の言うこと聞いてれば大丈夫だろ」
「そうか、それならいい。」
雲の中からゴロゴロと低い音が鳴り、窓に1つ2つと水滴がかかった。
「降ってきたな。今日から梅雨入りだとさ・・・ってあああああああ!!」
「どうした斉藤?」
「洗濯物が・・・オワタ。」
「ドンマイ。そういや傘持ってないよな。」
瞬く間に俺達がいる喫茶店は滝のような、いや、海をひっくり返したような雨に包まれた。
「すいません、コーヒーとソーダのお替り。あとフライドポテト2つ。」
「はーい。少々お待ちを。」
・・・まあ、こういう風に時間潰すのもいいよな。
109 :
A・I:2007/12/19(水) 23:14:36 ID:Zr9NVdac0
<・・・現場からの報告は以上です。続いて天気予報です。
今日から日本各地が梅雨入りし、大雨が降っているところもあります。
明日は全国的に曇り。九州、四国は昼から降水確率が80%。近畿地方は・・・>
「当分の間は止まないなぁ。」
外の世界は空から降り注ぐ水の線で灰色に染まっている。
「のんびりしようぜ。そうそう、さっきお前が言った、‘下らない’の由来なんだが・・・
知ってるか?江戸時代の初めに出来た言葉なんだぜ。
当時の上方(京都・大阪)から江戸に来た品物は質が良くて‘下りもの’と呼んだんだ。
逆に江戸のは質が悪くてな、下ることが出来ない、という事で
‘下らない’という言葉が出来たんだ。」
「そんな由来があったのか。あ、忘れるところだった。例のもの。」
祐司がポケットからメモリースティックを取り出す。
「・・・なんだっけ?」
「お前・・・頼んだ本人が忘れてどうするよ・・・。
ゲームから音楽だけを抽出するプログラム。」
「おお!サンキュウ!さすがはPCオタク!」
おお、これでサントラが無いとかで泣かずにすむ。
「お礼替わりに聞きたいことがあるんだ。」
「おう、何でも聞け。江戸の武士の出張手当でも、なぜ1番内側なのにK殻なのかでも。」
「お前の下の名前だ。えーと‘瑛’って書くのか。・・・なんて読むんだ?」
110 :
A・I:2007/12/19(水) 23:19:21 ID:Zr9NVdac0
「おい・・・それはダチになった時に聞いとくもんだ!3ヵ月前に聞くべきものだぞ!?」
「すまんなぁ。それで?なんて読むんだ?」
ったく今まで何回、名前が読めないと言われたことやら・・・。
「・・・アキラ、だ。まったくお前という奴は」
「おお、サンクス」
「ふふ・・・相変わらずねぇ、お二人さん」
「「あ・・・真弓先輩!」」
俺と祐司の声がダブった。
「混−ぜーて。(店員に)チョコパフェ1つ下さい。」
俺達が返事をする前に先輩(ちなみに金髪でロリ顔でかなりの美人)はテーブルに着いた。
「大学で初の試験、どうだったぁ?」
「んーまあまあです。」
「俺も。」
「じゃあ練習に集中できるねぇ。当分は試験はないしぃ。」
「「・・・あ」」
またもや声がダブった。祐司も思い出したようだ。
「あと3週間よぉ?ちょっとした会場借りたんだからぁ、
貴方達にも演奏して欲しいしねぇ。」
しまった・・・勉強はしてたけどバイオリンの練習を全くしてない・・・!
「言ったでしょ。私達のサークルは誰でも歓迎するけど入ったからには、
しっかり腕を上げて貰うって。私は2人に期待してるのぉ。」
あう・・・なぜか先輩の顔に少しSっぽい笑みが・・・
「さー3週間、ミッチリしごくわよー」
「「ひいええぇぇぇぇぇ〜〜〜」」
今日はここまでです・・・
wktkwktk
ゾンビ犬のある日
「ワンワン(なぁ、普通の犬よ)」
「ワンワン(なんだゾンビ犬よ)」
「ワンワン(お前最近携帯のCMに出てるよな)」
「ワンワン。ワンワン(ソフトバンクのか。正直やってらんねぇよ)」
「ワンワン(でも俺からするとうらやましいぜ)」
「ワンワン(代わってやろうか?)」
「ワンワンワンワン(ゾンビになった犬をCMに出してくれるような会社じゃねぇだろうが)」
「ワンワン(なんとかなるだろ)」
「ワンワン(なるかアホ)」
「あれ? どうしたの? 人肉だよ? 食べないの?」
「ワンワン(俺達はどうしてゾンビなんだろうな、主)」
ゾンビのある日
「あ、あの人だよー!」
「ワンワン(楽しそうだな主)」
「またあのゾンビか・・・いい加減見慣れてきたな・・・・・」
「はぅ〜・・・お近づきになりたいなー」
「ワンワン(楽しそうだな主)」
「・・・あいつマジで何をやりたいんだろう。あ、そうか。確かコミュニケーションは取れるんだったな」サッ
『何をやってるんだ?』
「え、えっとぉ〜」サッ
『犬の散歩』
「・・・・・何をやってるんだ、マジで」
パンパンパンッ!
乾いた発砲音が廃墟に響く。
拳銃で武装した外部作業員が近付いてきたゾンビを射殺した。
最初の二発で動きを止め、最後の一発で脳を破壊する。
この光景に慣れ始めている自分が少し怖くなってきた。
外部作業員は直接生命の危険に晒される為、車内作業員より給料が倍も違う。
「ぎゃあああああっ!!!」
唐突に、断末魔の絶叫が廃墟に響き渡った。
な、なんだ!?
何が起こったんだ!?
車内が一瞬パニックになる。
「シャーーーーッ!!」
少し甲高い声のような音が外部から聞こえた。
ベテランメンバーの顔が一瞬、青ざめる。
そして覗き窓や外部カメラ機器を操作する。
外部からは拳銃に加え軽機関銃の発砲音も聞こえ始めた。
た、大群なのか!?
パッ!
モニターに映ったゾンビは5体だった。
その内、3体は既に行動停止状態になっている。
だけど、まだ活動している2体は・・・・・・。
「な、何なんだよあいつの動きは!?」
思わず叫んでいた。
速い。
速すぎる。
ノロノロした今までのゾンビと違う。
「ハイパーゾンビだ!!」
車内が騒然となる。
「外部作業員を引き上げさせろ!内部から戦闘する!!」
その言葉に、反射的に持ち場に付く。
杭の発射装置。
外部覗き窓の先にはまだ生きている作業員を貪り食うハイパーゾンビが一体。
「シャーーーーッ!!」
俺に気付き、こっちを見ながら血と涎の混じった死人の口が大きく開いた。
ガチッ!
トリガーを引く。
ガシュッ!
杭が射出され、ハイパーゾンビの頭部が砕ける。
「あ、当たった・・・・当たった!!」
思わず嬉しくなる。
「ざまあみろ!!!」
思わず叫んでいた。
ノベルさん、お疲れ様でした。
A・I さんの続きがwktkです。
117 :
A・I:2007/12/21(金) 22:50:44 ID:bKo9ldvX0
「くそっ。お得意さんの重役は1人残らず病院行きか。忌々しい。」
「そう言わないで下さいよ、山田さん。私達が無事なだけでも、ありがたいことですよ。」
南アフリカ共和国の首都プレトリア。瑛の叔父の斉藤将人は上司をなだめていた。
「本当なら今頃は商談を終えて、近くのパブで祝杯を揚げていたはずだったんだぞ?
外出禁止令だかなんだか知らんがホテルに押し込められて・・・」
「ニュース見たでしょう。命あってのものですよ。」
将人は冷蔵庫からビールを取り出して山田に渡した。ついでに鞄から酒のつまみも出す。
「今回が駄目でも会社が潰れるわけでもないし、次がありますよ。」
不貞腐れた様子の山田も、ビールを飲み始めると次第に機嫌が直ってきた。
<既にプレトリアの病院は患者で溢れ、これ以上の受け入れは不可能です。
また、医師の間にも感染が広がり、病院の隔離が決定されました。
周辺道路は軍に閉鎖され、バリケードが構築されていますが、
住民と軍の衝突が起きています。
「なんで医師を他から派遣しないんだ!!さっさと・・・」
「息子を見捨てるの!?貴方達に私の気持ちがわかる!?」
「妻がいるんだ!通してくれ!あんな地獄に妻を置いていけるか!!」
・・・・・・・・・・・・・>
118 :
A・I:2007/12/21(金) 22:53:57 ID:bKo9ldvX0
「思い切りはいいですね、政府も。日本だとああはいきませんよ。」
「これくらいやって見せないと。国民に無力だと思われたら国家権力はお終いだよ。
・・・多少冷酷であってもね。」
2人はビールを飲みながらテレビを見ている。ふと将人はカーテンを開けて外を見た。
灰色の空から零れるように雨が降り注いでいる。街は鬱とした眠りに就いているかの様だ。
「こうして世界中を飛び回るまでは知りませんでしたよ。
途上国や援助を受けている国もやろうと思えばなんでもやってのけるとは」
「どんな国にもあるんだよ。金も、食い物も、酒も、音楽も、武器も、笑いも、下心もね。
ただ知らない奴が多いだけだ。」
山田も窓から街を見下ろす。笑顔と笑い声が溢れているはずの大通りには、しかし、
人影は全くと言っていい程無い。氷の様な眼の兵士が数人、街の各所で立っているだけだ。
だが彼らは厳しい顔つきとは裏腹に、寂しげな雰囲気を漂わせていた。
「辛いだろうな。家族や友人がこの瞬間に倒れていくかもしれず、
自分たちだって病に侵されるかもしれない。・・・ん?」
119 :
A・I:2007/12/21(金) 22:58:47 ID:bKo9ldvX0
山田が急に街の彼方に目をやる。
「どうしました?」
「何か音が・・・いや、声か?遠くから・・・」
「別に何も聞こえませんが・・・疲れてるんですよ。早めに休んだほうがいいですよ」
「ふむ・・・そうかな。それじゃ、また明日・・・おっと、報告書のほかに
日記も書くんだぞ。」
「言われなくとも。入社してからずっとですが、なんで日記をつけるんでしょうね?」
「私の先輩曰く、世界を回る商売人の嗜みだとさ。おやすみ」
「おやすみなさい」
自室へ戻ろうと廊下を歩いていた山田は再び窓の外を見る。
・・・・・ぉ・・・・・ぉ・・・・ォ・・・
「・・・気のせい、だよな。」
不安を振り払うように自分に言い聞かせて部屋に入る。
幻聴ではなかった。その音は・・・いや、その声は確かに現実のものだった。
おおおぉぉぉぉぉぉ・・・・オオオオオォォォォ・・・
‘それ’は果てしなく遠くから、そして恐ろしく近くから聞こえてくるようだった。
120 :
A・I:2007/12/21(金) 23:28:43 ID:bKo9ldvX0
ご声援ありがとうございます。
これから書いていくので、少々ペースが遅くなるかも知れませんが、
よろしくお願いします。
設定などを少し。
斉藤瑛(さいとうあきら)・・・大学1年。5歳の時に両親は事故で死亡。
叔父一家に引きとられて育つ。現在は下宿中。社会経済科。名言・格言・雑学が好き。
篠原祐司(しのはらゆうじ)・・・瑛と同学年。自宅生活。情報科。
二次試験で瑛と知り合う。パソコンの腕はかなりのもの。プログラミング好き。
真弓紫(まゆみゆかり)・・・2人の先輩。美人。音楽科所属。
サークルの副部長を務める。プロの音楽家を目指している。
サークル・・・名称はストリングス。もとは弦楽器を中心に扱う社会人サークル。
大学生の部門があり、3人はそこに所属。指導は数人の現役引退レスナーによるもの。
大体こんなところです。ゾンビの登場はもう少しあとですが。
今日はここまでです・・・
乙です。楽しく読ませていただきました。
続きをお待ちしております!
無防備にも全開になっていた自動ドアの向こうから響いてきたのは、
「良かった、君達も逃げてきたのか」
男の声
現れたのは、女1、男2の3人組
資材や工具を持っている
「早く入ってくれ。奴らが集まる前に」
最初に話しかけてきた男――赤く染まった上着に、どす黒く染まったジーンズ。ここに来るまでに何があったのか容易に想像できる
「丁度良い、自動車を基礎にするか」
最初の男の後ろに居た、ベンチらしきものを抱えている男――サラリーマン風。背広は無く、シャツにはうっすらと血。鉄パイプらしきものを紐でゆわえて背負っている
コケた
慌てていたのだろうか、自動車を乗り越えて入るさい、足を滑らせて落ちた。立ち上がったら、またコケた
靴の裏には、べったりと肉片――轢いた時に車にこびりついたものだろう――が張り付いていた
衝撃
「あたた・・・」
女の子、とは言うものの、体重はそれなりだ
蛙が潰されたような声が漏れ出た
女性――OL風。淡いピンクに彩られていたスーツは見る影も無く、血だらけ。両手に工具箱を持っている――が進み出た
「・・・怪我とか、無い?」
「あぁ、大丈夫。俺達は無傷。あ、いや、コイツはたった今できたかも」
敬意もへったくれも無い
女性はその口調に驚いたのか、目を丸くしていた
「一応聞くけど、女の子、よね?」
「俺? そうだけど」
目がより丸くなった
「おい、倒れてる暇があったら手伝ってくれ」
サラリーマン風の男がやっと口を開いた
最初の男は周囲の材料を寄せ集め、巨大なバリケード――それこそ出入り口が完全に見えなくなるほどの大きさ――を作っている
その手つきにはどこか慣れたものがあった
青年の首筋を摘み、無理矢理立たせる
ゲホゲホと咳き込み、まず出てくるのは文句
「・・・僕は猫?」
「気にするな」
あまりな一言で斬り捨てられた
青年が周囲を見渡す。
やたら広い――メインストリートだろうか
青年が彼女を見やる。既に設置されていたベンチを引きずっている
バリケードは、例え車で突っ込まれても持ち応えそうなほど頑強に作られている
「そこまで大きくする必要あるの?」
「あぁ、奴らが大挙して押し寄せても持ちこたえるようにな。それに、こういう事態に陥ったとき一番怖いのは人間だろ」
最初の男が答えた。
バリケードは、出入り口にそれこそ適当にモノを押し込んだだけのように見える
「あれ? 上の隙間は何です?」
バリケード上部。そこには、伏せれば人がかろうじてが通れるであろう程度の隙間が作られていた
「これは外から逃げ込んできた人が入れるように、だよ。それと、万が一出なくちゃならないとき用の非常口と思ってくれ」
「他に出入り口は?」
彼女が着々とガラクタの山を築きながら質問した
「残り2つ。1つは俺達が入ってきたときに壊した。ここは・・・、君達が壊したのか?」
「いや、最初から開いてた。あんたらじゃなかったのか」
「ああ、俺達はガラスを割って入ったが」
「じゃあ、他に誰か居るかもな。この建物にゾンビは居るのか?」
「まだ確認してない。1階の、俺達が通ってきたところには居なかったぞ」
彼女が振り返る
廊下は薄暗くてよく見えなかった
既に周囲の資材は使い尽くしたのか、青年は店のシャッターを壊して中の棚を引きずっている
「どれ位持ちこたえれるかね」
「さぁ、わからんな。しばらくは持ち堪えられるだろう」
工具箱を担ぎながら男が言った
けたたましい音
ガラスが割れる音が一面に響き渡った
男と彼女が走る
やや遅れて、青年とサラリーマン風の男、OL風の女が走った
薄暗いメインストリートを右へ折れ曲がる
シャッターの降りた店を何軒も過ぎ、見えるのは別の出入り口。自動ドアに突っ込んだトラックの姿。トラックの前面には赤く丸い跡が幾つも捺されている
トラックのドアが乱暴に開いた
中から雪崩落ちる数人の男女
呆然と見つめる一同の前で発した第一声は、
「良かった、ここは無事だったか」
トラックのドアからただ1人悠々と降りてきた男
積み重なった人々は悪態をつきながらもがいている
「いやいや、読みが当たって助かったよ。未だ空きはあるよね? ――ああ、出入り口を壊して申し訳ない。なんせ、そうしないと入れなかったからね」
ぺらぺらとしゃべりながら一同の前へ歩み寄る
真っ先に口を利いたのは、
「・・・で、その転がっている人達は?」
サラリーマン風の男
トラックから降りてきた男が振り返る。未だ立ち上がれない面々
「――いや、君達も君達で何やってんの」
「お前が押すからだろうが!」
大声
一番下のいた中年男性のものだった
トラックから出てきたのは中学生らしき女が2人、中学生らしき男が1人、運転手らしい中年男性、小学生の女の子。そして、目の前に立つ男。総勢6人
「トラックだけでバリケードができちゃった感じだな・・・・・・」
彼女が呆れて呟いた
「ま、まぁ11人居れば結構な人手じゃないか。それに賑やかな方が良いし」
横で青年が言った
最後の出入り口にバリケードを築いた
その頃には人数は更に4人増えていた
皆、バリケードを乗り越えて入ってきた
「ん〜、こう、無闇矢鱈と人が入ってきても困るな。一番怖いのは人間だし。もうそろそろ塞ぐ?」
トラックから降りてきた男の案は採用され、僅かに設けられていたバリケード上部の出入り口が塞がれた
「幾つかグループ別れて中を探索しよう。奴らが居たら困る」
彼女の案だった
3つのグループに分かれ、探索が開始された
3階
2つの光が廊下を舐める。響くのは、2人分の話し声
「ブレーカーとか無いかな。暗いままだと困るし」
「見てた限りだとゾンビは音と動きに反応するぞ? 光をつけるとよりおびき寄せかねない。それに、人が居ると分かるしな」
「いやいや、人が寄り付かないようにゾンビで壁を作るってのは。まさに生きた壁。生きてるのかはしらないけどね」
「馬鹿。俺達が脱出する時に困るだろうが」
後についている中学生らしき女と男はずっと黙っている
持っている武器は槌。彼女が渡したものだ
右からカラカラと何かを転がす音。全員の足が止まる
青年が手を右へ向けた
光が廊下を動き、光の中にそれを浮かび上がらせる
虚ろな眼。だらりと垂れ下がった両腕。左腕に、半円状の跡――噛まれた跡
ふらふらと歩きながら光源へと向かってくる
「・・・よし、準備は良いか?」
彼女がぐっ、と槌を握り締める
青年が懐中電灯を足元に起き、両手で鉄パイプを構える
後を振り向く――誰も居ない。走る音。更に先の廊下に、うっすらと人影が見えた
「逃げやがったよ、オイ」
彼女が呟いた
気を取り直し、懐中電灯をゾンビへと向ける
足取は割としっかりしている。標的を見定めたその動きは、早歩き程度だ
同時に駆けた
青年がゾンビの胸元を突いた
ゾンビが倒れこむ
彼女が槌を振り上げる
鈍い音。何度も響く
響きが、止んだ
荒い息。手にした武器はややどす黒く染まっている
頭部が変形するまで殴られたゾンビは、既に動かなくなっていた
「・・・ふぅ」
青年が息を吐いた
「まずは1匹目。それと、奴ら探さなきゃ――」
悲鳴
顔を見合わせる。ほぼ同時に駆け出した
以上です
127 :
A・I:2007/12/23(日) 22:52:21 ID:QhSIc7/50
「先生!新井さんの容体が急に・・・!」
「っ!」
疲れで浅く眠っていた医師は看護師の言葉で飛び起き、隔離病棟の病室へ駆けだす。
「やはり例の・・・陽性か!」
(私達も感染している可能性は高い・・・覚悟を決めないと駄目かもな・・・)
病室に入ると、患者は全身をビクビクと痙攣させていた。
「ひいっ・・・はひ・・・ひくっひっく・・・」
眼は真っ赤に充血し、脂汗が全身から噴き出てている。
息も自力で出来ておらず、額は焼けるように熱い。
「集中治療室に運ぶ!呼吸器と解熱剤、あと鎮静剤を用意してくれ!早く!!」
「は、はい!」
看護師が慌てて走っていく。一刻を争う状況だ。
「新井さん!しっかりして下さい!」
「ひくっ・・ひ、う・・・う・・うぶ・・・」
新井の喉が一際大きく痙攣する。
「うげあ!!」
次の瞬間、大量の血が噴水の様に口から吐き出された。
血は天井にまで達し、医師の顔と白衣を赤黒く染め上げる。
「があ・・・あ・・・・・は・・・あ・・・」
「あ・・新井さん!!!!」
128 :
A・I:2007/12/23(日) 22:55:52 ID:QhSIc7/50
やっぱり雨は止みそうにない。まあ明日は土曜日だから急いで帰ることもないか。
「・・・貴方達、筋は良いのよねぇ。でもぉ最近サボり過ぎよぉ?」
先輩のありがたい(?)説教は15分ばかり続いている。
俺や祐司の楽器を弾く時のクセ・長所・短所を見抜き、完璧なアドバイスをくれる。
しかし頬っぺたにクリームやチョコがくっ付いているので、
童顔がさらに幼く見えて、いまいち説得力がない・・・。
「あの〜先輩。」
先に口を開いたのは祐司だ。
「言い辛いんですが・・・女子供のデザート食べ散らかしながらだと、
そのですね、ありがたみが・・・」
「女で子供ですよーだ。」
あ・・・開き直った・・・。それにしても可愛いいなあ。
「ん〜、どうしたのぉ?斉藤君?鼻の下が伸びてますよぉ?」
「いえいえ!全く!気のせいです!」
見とれてたなんて口が裂けても言えない!
「ま、いっかぁ。ところでさぁ、斉藤君」
「なんですか?」
急に先輩が真顔になった。
「最近のニュース・・・あの病気のね・・・見てて気になってたんだけどぉ。
人類はアフリカから始まったとかいう話・・・どんなんだっけ?」
129 :
A・I:2007/12/23(日) 22:58:59 ID:QhSIc7/50
「ミトコンドリア・イヴ、ですね。何で急に?」
「今話題の病気がアフリカから始まった、とか言われてるからぁ・・・なんとなく。」
先輩らしいといえば先輩らしいな。
「それでぇ?詳しく教えてぇ」
「俺も興味がある。」
ややこしい話だったような・・・。俺は記憶を確かめながら、ゆっくりと喋る。
「ミトコンドリアは生物の細胞内にある、エネルギー生成機関です。
もとから在ったわけじゃなく、大昔にミトコンドリアが細胞に侵入・寄生したという説も。」
「なんか、そういうゲームなかったか?」
「・・・話の腰を折らないでくれ・・・えーと、
それでミトコンドリアのDNAは母親からしか、受け継がれません。
それを解析して遺伝子の系統樹をつくると、2つの枝に分かれる。
最後は2つともアフリカの民族、それも1人の女性に収束する。それが」
「イヴ、ね。するとぉ人間はみーんなその人の血を受け継いでるのぉ?」
「いや、あくまでミトコンドリア遺伝子のルーツです。人類皆兄弟というわけじゃありません。」
「思い出した!確か、そのミトなんとかが人類に反逆するとかいうやつだ。」
「そんなことは起こらねえよ・・・でもミトコンドリア内部から人間の遺伝子の一部が
見つかった、という報告もあるようで、小さな侵略者かもしれないのは事実ですが。」
それにしても、ウイルスだのマイクロマシンだの細菌だの、
見えないものは不気味な恐ろしさがあるな・・・。
「すごーい!物知りだと、ちょっとカッコイイねぇ。
勉強になったお礼にそのコーヒーとソーダ、奢ってあげる♡」
カッコイイ発言+奢ってもらう=めっちゃラッキー!
130 :
A・I:2007/12/23(日) 23:05:48 ID:QhSIc7/50
以上です。
emptyさん、中二病さん、takeさんの話の続きがwktkです。
131 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/24(月) 00:26:40 ID:IyX00ltA0
ゾンビたちのクリスマス
「今日はクリスマスだよー」
「ワンワン(楽しそうだな主)」
「うぼぁ〜(よし、ゾンビ七面鳥でも焼いてく喰うべ)」
「うぼぁ〜(せやな)」
「うぼぁ〜(ケンタッキーからチキンぱくってきた)」
「うぼぁ〜。うぼぁ〜(よくやった。やっぱりチキンは大切だよな)」
「うぼぁ〜(でも、ワインも飲みたいでやんすよ)」
「あ、なら私がワイン取ってくるねー」
「うぼぁ〜。うぼぁ〜(これこれ。ワインセラーの鍵を忘れてるッス)」
「あ、忘れてた。テヘヘッ」
「うんしょ・・・うんしょ、と・・・。ふぅ、重いなぁ、ワイン。うんしょ・・・持ってきたよ〜」
「うぼぁ〜(お疲れさん)」
「ワンワン(お疲れだな主)」
「うぼぁ〜(よし、じゃあ乾杯だ)」
「うぼぁ〜(かんぱ〜い)」
「うぼぁ〜(次は年末年始に酒のむべ)」
「うぼぁ〜(ラジャー)」
「・・・ゾンビがクリパしてやがる・・・」
ゾンビのクリスマス
「サンタさん、サンタさん。あの人と少しでも仲良くなれるようにして下さい・・・」
「ワンワン(願い事を書いてるのか主)」
「・・・よし、出来た! サンタさんがこの手紙を見てくれる事を祈って・・・と。寝よう、ポチ」
「ワンワン(寝るのか主)」
「おやすみなさい・・・」
「ワンワン(おやすみだな主)」
「・・・クリスマスツリーに電飾まで飾ってる。ゾンビってのはもっと無知な連中かと思ったんだが・・・ん? 手紙?」
サンタさんへ
最近、いつも出会う人間の人が居ます。
私は彼が大好きです。だけど私はゾンビです。
だから、少しでも仲良くなれたらな、っていつも思います。
サンタさん。あの人と少しでも仲良くなれるようにして下さい
お願いします。
「言葉が少しおかしいのはゾンビだからか・・・。それよりも、見てはいけないものを見てしまった」
「すぅー・・・すぅー・・・」
「・・・くそっ。この町から出ようにも出られなくなっちまった」
ある男のクリスマス
「ふふふっ・・・ついに完成したぞ」
――――――――――。
「ウイルス研究によって、ようやくここまで辿り着いた・・・」
――――――――――。
「まさか外に流出して動く屍が増えようとは思わなかったが・・・」
――――――――――。
「あの程度の犠牲はどうでも良い。なぜならこいつが完成したからな! はっはっはっ!!」
――――――――――。
「さぁ、目覚めてくれ・・・”ELIZA”」
――――――――・・・・・。
「人類へ、死のクリスマスをプレゼントしよう!」
――――イエス、マスター。
パソコンふっかーつ!あーんど書き込みテスト。
トリップ正常かなぁ?
どもども、中二病作家です。
PCが突然不調に陥り、再インストールの羽目になりました。
いやぁ、OSの再インストールってOSだけじゃなくてそのほかのソフトもインストールし直さないと駄目だからつらいですよね・・・・・・。
唯一の救いは、まだ続き書いていない段階でのトラブルだったって事です。
では、今から思い付き執筆再開します。
この戦闘で三名が死亡した。
ゾンビを倒した時の高揚感も去り、今はあの素早い動きのゾンビの事を考えていた。
たしか・・・・誰かハイパーゾンビって言ってたよな・・・・・・。
思い切って、この車両のリーダーにハイパーゾンビの事を聞いてみた。
そして分かったことは・・・・・・・・
ゾンビには二種類有り、一般的な動きののろいゾンビの他にハイパーゾンビと呼ばれる筋肉のリミッターの
外れたゾンビがいる事。
ハイパーゾンビは確率的に発生する確率が低く、二千分の一らしい。
また肉体がフルパワーで行動している為に通増のゾンビより肉体の劣化が早い。
その為か、ここ数年はハイパーゾンビの目撃情報など一つもなかったらしい。
だが、目の前・・・・と言うか車外には現にさっきまでハイパーゾンビだった肉の塊が転がっている。
「おかしい」
車に戻ってきた別のメンバーが手を消毒しながら発言した。
「ハイパーゾンビが5体同時に現れるなんて・・・・現在の日本の予測人口からして確率的にあり得ない。
無線でも確認したが、ここ最近ゾンビで陥落した閉鎖都市の情報もない。それと、一体がこんな物を持っていた」
メンバーが差し出したものを見て愕然とする。
「ちょ、ちょっと貸して!!」
思わず叫んでいた。
呆気にとられたそのメンバーが俺に”その物体”を手渡してきた。
「・・・・・・携帯電話・・・・・・・」
折りたたみ式の携帯電話だ。
しかも・・・・・・
「・・・・・ワンセグ対応・・・・・・?」
一か八か、電源を入れてみる。
しばらくし・・・・・液晶画面が表示された。
県外表示だが、直感で操作する。
メールボタンを押し、メーラーを起動。
最新メール着信日は・・・・五日前!?
思わず、脳内で計算していた。
ハイパーゾンビの発生する確率は二千分の一。
5体現れたって事は・・・・・最低でも確率的には1万人が必要・・・・・・。
でも、陥落した都市はないらしいし最寄の都市へはここからだと3週間はかかる。
・・・・・しかも、この携帯は俺達がこの世界に飛ばされる少し前に発表されていた新型だ。
・・・・・・・・・まさか・・・・・・都市規模でこの世界に飛ばされた人達がいる・・・・・?
・・・・・ははは・・・・まさか・・・・な。
その考えが、翌日証明された。
まったく唐突に、遺棄車両の列が消えた。
そして、ゾンビも大量に現れた。
・・・・・・新鮮なゾンビが何百匹も。
ゾンビ達との戦闘は数時間続き、辺りは死臭立ち込める惨劇の舞台と化していた。
「・・・・・マジかよ・・・・・・」
近くにある店舗に入って最初の一言がそれだった。
元の世界ではまだ発売前のゲームソフトが棚に陳列されている。
コンビニで新聞を全部頂戴し、車の中で読み漁る。
”○○トンネルの異常現象、未だ解明できず”
”生存は絶望的か?”
”憔悴しきった家族達。彼らは今何処に?”
”○○トンネル、異常劣化か?作業員が暴露した荒れ果てたトンネル内の姿。錆びた車も見つかっていた!”
行方不明者リストの一覧には・・・・・俺達の名前があった・・・・・・。
wktk wktk
漂流教室を超えてるよ
wktk wktk
140 :
A・I:2007/12/25(火) 13:37:53 ID:zWFyla/i0
一人寂しく、クリスマス終わりましたよ・・・
というわけで投下します。プレゼント(?)ということで。
結局、土・日と丸2日間、練習ばかりしていた。
ゲームで潰れるよりは有意義だったろか。しかし・・・休日ではなかったな、あれは・・・
「第一法則により、第二法則が成り立つ慣性系が得られる。ここで・・・」
ああ、ブルーマンデーだ。休み明けの日は嫌いなんだ〜。
「お前ら、講義聞かないなら出ていくか、せめて寝てろ。グダグダ喋るな」
真後ろの集団が一喝され、静かになる。俺も急に背筋が張った。
「・・・大学に来たからには力をつけろ。その為にいるんだろ?
今日の新聞の社説でも≪日本社会は既に成熟している。今はゆとりと癒しが必要≫とか
書かれてたが・・・」
「んなもんウソだ!日本をはじめとする先進国は爛れて腐り落ちる所に来ている。
今はそれが始まり掛けている所だ。個人の能力がますます重要視されるようになる。
少なくともお前らは真ん中か、中の上にいるんだから、努力しろ」
経済成長から今日までを見てきた教授の言葉には、妙な重みがあった。
爛れて腐り落ちる、か。これから・・・どんな世界になるのかな?
141 :
A・I:2007/12/25(火) 13:46:10 ID:zWFyla/i0
「一体、何なんだ・・・これは・・・」
アメリカ、某都市郊外の地下隔離施設。防護服を着込んだ医師たちは、
ガラス越しに患者を見つめ茫然としていた。無理もない。これは、
彼らが初めて目にする病気だった。それも常識では計れない症状の・・・。
「皮膚・諸器官の壊死、口から汗腺まで、体の穴という穴からの出血、高熱・・・
呼吸困難、断続的な痙攣、こんな状態なのに、代謝の異常活性化、
そして・・・知能の減退」
隣にいる別の医師は同僚の独り言まで洩れなく報告書に記している。
「採取した血液のサンプルは?なにか見つかったかね?」
「‘それらしきモノ’は確認できました。ただ、全く正体不明です。」
「国内の感染状況は?特徴はなかったか?」
「‘らしきモノ’は非常な嫌気性を持っています。
気温25℃で90〜100%の湿度がないと即座に死滅。
しかし、液体の水分・・・特に血液と同成分中では・・・凄まじい生命力を示します。
汗、唾液、血の一滴でも危険です。彼と接触した人間も感染の可能性が・・・。
おそらく今は発症していないだけで、かなりの人々は既に・・・」
「そうか・・・危険度4だ。州知事に連絡を。この街の隔離を要請し・・・」
ピー・・・ 心電図が直線を描く。
「心拍停止・・・死にました。」
「蘇生措置は?」
「止めておけ。もう助からない。苦しみを長引かせるだけだ。」
「・・・エィメン」
142 :
A・I:2007/12/25(火) 13:51:54 ID:zWFyla/i0
「遺体は研究室に。細心の注意を払え。」
「はい。」
2人の医師が病室・・・実験室というべきか・・・に入る。
「辛かっただろうな・・・」
「僕らは無力だった。だが彼の死を無駄にはしない。必ず‘これ’に打ち勝つ。」
機械を止めて、まだ若い男が呟く。
壁も床も真っ白なせいで、ベッドシーツを染める赤褐色が余計に映えている。
「彼はどうなる?」
「遺体は隅々まで解剖。その後完全な滅菌処理を施す。
だが、葬式は行えない。毎週祈りを捧げていた教会すらも・・・
彼を受け入れることは許されない。可哀そうだが・・・。」
ピクッ・・・
143 :
A・I:2007/12/25(火) 13:53:27 ID:zWFyla/i0
「え・・・」
「どうした?」
怪訝そうに問う。
「今、指が動いたような?」
「そんなはずあるか、もう死んでる。」
「でも確かに」
ガタガタガタガタ!
「ひぃっ!?」
死体が、死んだはずの男の体が釣られた魚の様に痙攣し、ベッドをゆらした。
2人は部屋の壁に張り付き、恐怖で顔を引きつらせる。
だが数秒で死体の動きは止まり、静寂が再び部屋を支配した。
「・・・行こう。」
「あ・・・あ・・・」
「行くぞ!」
恐怖を振り払うかのように、叫んだ。
144 :
A・I:2007/12/25(火) 13:59:17 ID:zWFyla/i0
木曜日。あと1日で今週は終わったも同然だ。・・・おっとあれは
「結城せんぱ〜い(笑)」
「・・・げっ」
「「ラッキーです!!」」
結城先輩が苦笑いを浮かべて、俺と祐司に200円ずつくれた。
「「ありがとうございます!」」
いつからかは知らないが、俺達のサークルでは2年生は1年生に200円の昼飯代をだす、
というしきたりがある(金に余裕があり、ねだられた場合のみ)。
「席はとっておいたぜー。早く来いよ」
学科の友人達がいる。
「おう」
145 :
A・I:2007/12/25(火) 14:01:26 ID:zWFyla/i0
「美味い」
「カレーばっかだな、おい」
「放っといてくれ。こいつが好きなんだ」
基本的に俺の昼食はカレーのみ。でも安くて美味いんだから文句はない。
「不味いカレーはそもそも作れないだろ?普通は」
「まあな、そんなの見たこともない」
友達と雑談しながら飯を食う。ささやかな喜びだが何にも代えがたい。
「あのA病院、やっぱり隔離だとよ。発症した人がいたらしい」
「マジか!?俺達、いや日本やばいんじゃねえ?」
「大丈夫だって。それよりも、あの病院の周辺で起きてるコトの方が恐いぞ」
146 :
A・I:2007/12/25(火) 14:06:02 ID:zWFyla/i0
次回は年末ギリギリか年明けになりそうです。
ちょっと早いけど、みなさん、よいお年を。
147 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/27(木) 06:50:33 ID:s6CbDhzrO
作家さん達、大変に乙!
今年も皆さんの作品で楽しませていただきました、どうもありがとうございました。
話は変わりますが、「28日後」の続編、「28週後」がやっと来月日本公開ですね。
厳密にはゾンビではないけれど、ずっと待っていた映画なので嬉しいです。
>>147 おお、ついに来月公開ですか。
こっちの方でも公開するかなぁ?
ちなみに、昨日アイアムレジェンドを見てきました。
ゴーストタウンと化し、遺棄車両で埋め尽くされた道路とアスファルトを突き破って生えている草とかがもう、
最高の表現でした。
欲を言えばあの知能がほとんど無くなり凶暴化した人類の群れをもう少し見せて欲しかったなぁ。
149 :
A・I:2007/12/27(木) 23:54:57 ID:tpzkMot00
年末ギリギリとかいいながら、案外早く書けたので投下します。
梅雨の空は、相変わらず鬱陶しい雨を垂れ流している。
「周辺で起きてるコトって・・・事件かなにか?」
情報通の笠原がしゃべりだす。
「なんでも・・・夜中に目撃される変な動物。人が襲われてるらしい。
目撃者いわく、≪ひどい悪臭がしたと思ったら、野良犬みたいなのに噛みつかれた。
体格の割にはスゴい力で、なかなか振り払えなかった。≫とか・・・
≪腕を噛まれて肉が少しえぐれた。必死で逃げたが追い回された。
何度も叩いたら逃げて行った。≫とかね」
なんだそりゃ。どこかのホラー映画じゃないか。
それよりもトッピングのから揚げが、いつもよりかなり小さくて泣けるぜ。
「夜だけなの?その変な生き物が出るのは?」
「いやー、昼間も稀に出るらしい。その時は何匹かの群れで来るんだとさ。
逆に夜は1匹だけの場合が多いそうだ。昼間に襲われた奴が言うには・・・」
笠原がお茶を一気飲みして、なぜか小声で続きを話す。
こいつ自身、何かに脅えているかの様に。
「≪特売の冷凍の肉を大量に買って帰る途中に襲われた。‘そいつら’はまるで、
映画で見た‘皮膚が腐った犬’みたいだった。余りに怖くて荷物を放り出して逃げた。
そいつらは荷物を漁って肉ばかり食ってた。逃げなかったら自分も食われてたと思う。≫
だとよ・・・。」
150 :
A・I:2007/12/28(金) 00:00:08 ID:H4upd7Or0
「うっく・・・。」
余りに予想外の展開にカレーを吹き出しそうになった。
でも食い物を粗末にするわけには・・・
「ゴックン・・・ごほごほ!」
「大丈夫か?」
祐司が俺の顔を覗き込む。
「平気だ・・・それよりもその話、完全にバイオハザードじゃないか!
フカシだろ?」
全くタチの悪い冗談だ。そんなことあるわけない。
「マジだ。作り話で気を引こうなんてつもりはねえよ。」
「事実は小説よりも奇なり、って言うしな。」
「おいおい、祐司・・・真に受けてるのか?お前らしくもない。」
謎の病気の騒ぎを、下らねえ、で片づけた男とは思えない。
「怖いってのはそれだけか?まだ他にも有りそうだな?ん?」
笠原は灰色の空を一瞬仰いで、また続ける。
「通り魔も多発してる。そして行方不明者が町全体で約10人。
これは夜限定だ。加害者は複数いるらしく、そのくせ捕まってない。
逃げ延びた被害者の体には、切りつけられた様な引っ掻き傷、そして・・・
‘噛まれた痕’」
151 :
A・I:2007/12/28(金) 00:03:25 ID:H4upd7Or0
「マ・ジ・か?後になってから、ウソでした、は無しだぞ」
「実家の弟が実際に被害に遭ってるし、直接聞いた話だ。ウソを言う奴じゃないんだ。」
笠原の顔には本物の不安と、微かな脅えが見て取れた。
ウソは・・・言ってない。
「そうか。疑って悪かった。・・・俺達、今日はもう授業ないな。
帰りに買い物でもしていくか?」
「お、いいねえ。それでどこの店・・・」
ドォン!!
「うお」
轟音が響き青白い光が空を彩ると、先週の喫茶店の時の様に海をひっくり返した様な
大雨になった。
「すっげー土砂降り。外出られるか?」
「傘はあるだろ・・・っておいい!!」
「どうした瑛?」
畜生!どこのどいつが・・・。
「俺らの傘・・・1つもねえぞ。全部パクられた!」
「止むまで籠城か。ほら、トランプ。大貧民しようぜ。」
「まずはルールの統一な。地域でやりかたが違いすぎる。」
「つーか、僕のとこは大富豪と呼んでるんだが・・・」
8切りがどうの、イレブンバックがどうたら・・・
笠原の顔からも先ほどの暗さは消え、皆との遊びに興じている。
無論、俺も例外ではない。傘のことも忘れそうだ。
「階段は3枚以上じゃないとダメだ」
「マーク縛りはあり、数字縛りはなしで。」
「バラバラ階段革命は?」
「んなもんねーよ!」
俺は・・・いや、俺達は、こんな日々が死ぬまで続くと思っていた。
152 :
A・I:2007/12/28(金) 00:09:23 ID:H4upd7Or0
以上です。また忙しくなりそうなので、次回は本当に遅くなるかも・・・
皆さん、風邪には気をつけて。ではまた!
男のある日
「くっ・・・なんだ、あいつは」
「グォオオォォオオッ!!」
「倒しても倒しても、強くなって蘇りやがる・・・!」
「グオォオオオォオオォオオォッ!!」
「これもウイルスの影響なのか?」
「アァアアアアアァァアッッ!!」
「ぐうっ・・・! しまった!」
「ウォオオオアオオォオオオオッッ!!」
パーンッ!
「銃声・・・!?」
「その人には手を出させないんだから!」
「ワンワン。ワンワン(いや、待て。手を出す相手が相当やばすぎるぞ主)」
「オオォオ・・・・・」
「またあのゾンビか! 何してやがるんだ・・・ハンドガンで通じる相手じゃねぇんだぞ・・・!!」
「な、なんで無傷なの・・・」
「ワンワン。ワンワン(言わんこっちゃない。逃げるぞ主)」
「ワワ、ポチそんなに引っ張らなくても走るよー! あわわわわぁ・・・」
「ウオオォオオオォオッッ!!」
「あっちを追いかけていったか・・・。治療して早く助けにいかねぇと、アイツが死んじまう」
154 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/29(土) 05:17:41 ID:0cGQ978EO BE:1299051959-2BP(0)
誰の台詞なんだかわからん上、何が登場人物なのかすらわからん
マンションの薄暗い一室でビールを片手にXbox360をプレイしている男がいた
「…ちっ…死んじまった…
…クソゲーが…」
小汚いTシャツにパンツ一丁というだらしない格好
顔には無精髭が伸びずりかえり
その風貌はお世辞にも清潔であるとは言い難い
男の名はチャールズ・ ブラック 28才 無職
チャールズはそう呟くとコンティニューにカーソルを合わせゲームを続けた
テレビには一人の男が刀で延々とゾンビを切り刻む映像が移し出されている
今度は上手くいくと思ったその時 テレビの画面が突然黒く染まった
Xbox360の方に視線をやると細い白い指が電源のスイッチを押している
「あんた ゲーム以外にやる事ないの?
何で私があんたの食い扶持まで稼がなきゃなんないのよ」
細い白い指の持ち主はチャールズより二歳上の恋人 ローラ
ローラは呆れつつ怠惰な生活を続けるチチャールズを責めた
だが、チャールズはローラの言葉などに動じもしない
「あーあ 途中だったのに
電源ボタンを直接押すと本体に負荷がかかるんだぜ」
「もう…今日は職安にいく約束でしょう
で 行ったの?行かなかったの?」
薄暗い
窓からの明かりは、奥まで明るくはしない
悲鳴が反響している
未だ放たれ続けている悲鳴は、動いている
「たく、どこだよ・・・」
槌を壁に叩きつける
「わからん。悲鳴が続いているってことは生きてるってことなんだろうがな」
エスカレーターを駆け登る
目の前に映画館、左にゲームセンター、右側におもちゃ屋・・・
右に。おもちゃ屋の横から通路へ
左右に広がる様々な店。全てシャッターが下ろされている
振り返った。暗い。暗すぎて殆ど見えない
気がつけば、自分だけになっている。いつもそうだ
今居るのは、一直線の通路
背後を見る。吹き抜け。飛び降りれないことも無いだろう
だが
だが、危険すぎる
飛び降りれば、今追ってくる奴からは逃げられる。でも、下にはもっと居るかもしれない
そういえば、一緒に居た人達――彼らは大丈夫だったのだろうか
自分達だけ逃げてしまって、大丈夫だったのだろうか
かつん
その音で、一気に現実に引き戻される
やや闇に慣れた目をこらす。
かつ、かつ、かつ、かつ
エスカレーターから――なのだろうか
影が浮かび上がった
ふらふらと揺れる頭部、ゆらゆらと揺れる体
硬直していた。全く動けなかった
心臓がバクバクと大きな音を立てていた。余りにも大きなその音で気づかれるのではないかと思った
影が、ゆらりと動いた
映画やゲームのように、馬鹿らしく両手を突き出したりしていない。だらりと垂らしている
その影が、こちら側を向いた
心臓がより一層、大きな音をたてた
その影は、かなりの速さで――実際には早歩き程度なのだろうが――こちら側の廊下に入ってきた。追ってきた
喉の奥から、かすれた、悲鳴にもならない声が漏れでる
背筋を、何かが這い上がる感触がする。鳥肌が出るのがわかる
立ち尽くしたままだった
その影の、ようやく顔の輪郭がわかる距離になって始めて、悲鳴をあげた
気がつけば、どこかを走っていた
叫びながら走り続けていた。涙が流れていた
転ぶ。起き上がる。目が何かを捕らえた。トイレ。理解するよりも早く、駆け込んでいた
一番奥の個室の戸を押し開ける。大きな音がした。その音に一瞬ビクッとする
慌てて入り、鍵を閉めた
背を個室の壁に押し付ける
足元を見る。靴が片方しか無かった。転んだときだろう
胸に手を当て、落ち着こうとする。無駄だった
違和感――スカーフが無い
かつん
ひっ、と声がした。飛び上がった。自分の声だった
外の音に神経を集中させる
音は、しない
個室をそっと開けようとして――開かなかった
頭が真っ白になる。鍵。鍵を開けてなかった
カチャ。この音が、とても大きく感じられる
戸を引いた。手が震えている
そっと、足音を消して移動する。モップを引っ張り出す
取っ手に引っ掛ける。いや、これは引き戸だ
モップがずり落ちた。カラン、と音が響き渡る
悲鳴をあげていた。トイレを出て、走っていた
かなり闇に慣れた目に、影が浮かび上がる。急停止――できずに、無様に転がった
立ち上がる。影がこちらに迫ってきていた
影に背を向けて走り出し――かつかつかつかつ
反対方向から、2つの影。“走って”いる
頭がまた、真っ白になった。逃げられるわけが無い。後ろにいる奴の速さならまだしも、走られて逃げ切れるわけがない。しかも、挟まれた。
片方の影がぐんぐんと距離を縮める。視界が滲んだ。涙が溢れ出ていた
シャッターに背がぶつかる。そのままずるずると座り込んだ
影が迫ってきた。もう駄目だ。目をぎゅっと瞑った。走馬灯は無かった
ひゅ、と目の前を何かが通り過ぎた。続いて鈍い音。何かが床に転がる
待て、何かがおかしい。薄く目を開けた。影が目の前に立ちはだかった
髪が風に煽られ、涙で頬に張り付くのがわかった。涙で、影よく見えない
「大丈夫?」
声。人間の、声
女の人の、声
「怪我してない?」
鈍い音が続いている
「ふあ、あ」
大丈夫――そう返事をしたかったが、喉から漏れ出た音は声にならなかった
ずずっ、と鼻をすすり上げる。より一層、涙が零れ落ちた
「よしよし、怖かったね」
頭を撫でられた。されていることは酷く幼稚で、それでも、とても安心できた
安心感が全身を襲う
ここになってようやく、声が追いついた
やっと、声を上げて泣くことができた
「立てる?」
立ちたかったが、腰が抜けて立つことができなかった
嗚咽が止まる。どこからか、生温かい感触が伝わった
鼻につくアンモニア臭
自分の足を、見下ろす
硬直。先程とは全く違う理由で、動けなくなった
目の前の――最初、一緒だった女の人が眉を寄せた
視線を追う。無言
時間が長く感じた。とても、中学生とは思えない失態を犯していた
鈍い音が止まった
視線を、戻す
男の人がこちらに駆け寄ろうとして――
「来るなっ!」
女の人の大声に、ぴたりと足を止めた
「え? 噛まれてた?」
男の人の声に、緊張が混ざる
「いいから、あっちまで行ってろ!」
吹き抜けを指差している
男の人が去った
「あー、あれだ。とりあえず、ここで待ってろ。ちょっと強盗してくる」
そう言うと、転がっていたままの鉄パイプを拾い上げ、店のシャッターを壊し始めた
今回はこれまでです
早くて31日に、年末年始特別企画(?)として自分の描く世界の、本編とは少し離れたサイドストーリーを書こうと思います
wktk!
期待
そういえばまとめサイトを作るって言ってた子はどうしたのだろうか
164 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/30(日) 22:00:41 ID:r0Ur6zy8O BE:692828238-2BP(0)
俺、まとめサイト作るんだ=死亡フラグ
166 :
本当にあった怖い名無し:2007/12/30(日) 23:27:13 ID:saGwQzpVO
>>164 是非頑張って
骨は俺が拾ってあげるよw
作っては見たのですが、どうしても仕掛け、というかゾンビ化の原因を明かしてしまいそう・・・
うやむやにする方向でいきたいと思います
なぜ自分の世界で同時大量発生したのか、何故軍や自衛隊までもが苦戦するのかの原因を描けたらいいなとか思います
舞台としては発生の数日前です
キャラ作ったものの出番無い彼女の父親が主人公です
明けましてかゆうま
明けましておめ……スマン!こんな事言ってる場合じゃねーな!
お前等も早く逃げろよ!
170 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/01(火) 01:19:35 ID:rdrIqQTGO BE:461885928-2BP(0)
神社で発生したら大惨事だな
明けおめかゆうま
明けましておめでとう
今年も一年、良いゾンビでありますように…
173 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/01(火) 10:37:54 ID:AY+y+WhMO
びっくりゾンビ♪
174 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/01(火) 13:02:11 ID:QgSl8tnHO
何年か前に
門松でゾンビに応戦!!
という強者がいたな
175 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/01(火) 14:20:39 ID:afh/brCf0
ゾンビを科学的に言うとすれば、超進化した癌細胞だろう
ゾンビ=バイオが多いな
莫大な借金作って命のローンくむ奴はいないのか!!
ゾンビもので創作考えたことあるが、いつのまにかガンアクションものに化けてたw
ゾンビ「うぼぁ〜」
男「門松アターックッ!!」
ザシュザシュザシュ
ゾンビ「地味に痛い! 痛い、痛い、痛いって!!」
男「門松〜Ah〜門松〜愛しの〜門松〜Uh〜嗚呼〜門松〜♪」
ゾンビ「何その歌。痛い、痛いって・・・ひゃぁっ!?」
その後、ゾンビがあきらめて逃げ出すまで一時間、不気味な歌と地味に痛いという声が続いた。
ゾンビから年賀状
「今年もよろ死苦!」
「今年の十二月、祖父がゆりかもめの車内で死亡しました。
よって今年は喪中となりました。そんなわけで年賀状はいりません。
今度とも変わらぬお付き合いお願いします。 幼馴染ゾンビ」
男「誰も送らねぇよ、バーカ」
幼ゾ「うがぁー!」
男「ターン」
幼ゾ「がはっ・・・ブルータスお前もか・・・!!」
男「何がだよ」
181 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/04(金) 02:34:00 ID:09xhcEouO BE:606224737-2BP(0)
幼女ゾンビたんをいじめるな
182 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/04(金) 03:01:09 ID:YYBxXw0RO
後楽園にあるゾンビパラダイスってしってるます?めちゃくちゃ楽しいですよね
183 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/05(土) 08:07:36 ID:cxr5EiH3O
毎度お馴染みの中二病作家でございます。
新年早々インフルエンザと診断されました。
発症から時間が過ぎていたのでタミフルは効果が無いと言われました。
しかし、タミフル服用して無いのに異常行動してました。
もしかして異常行動とタミフルの関連性って薄いのではと思う正月でした。
異常行動とタミフルって関係ないでしょねー。
だって、私全然、タミフルってインフルの薬って知らなくて
風邪引いたかなーって思うと家に残ってた薬飲んでたもん。
タミフルが無い時代、インフルエンザになる子供は高熱で異常行動か
高熱による脳障害・高熱による死亡って本当によくあったんですよー。。
インフルエンザとタミフルの因果関係は政府の研究班が証明出来ないと言ってたような。
186 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/05(土) 18:17:09 ID:Actc2n7aO BE:346414043-2BP(0)
異常行動とタミフルの因果関係が証明できない
ってのは聞いたことがあるが、体内で増殖するインフルエンザウィルスの拡散を阻止する薬が
インフルエンザと因果関係がないなんてのは初耳だな
187 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/05(土) 18:34:21 ID:Actc2n7aO BE:230942742-2BP(0)
何も服用してなくても異常行動をとる現代日本じゃなんでも関連付けられるからな
世界消費量の半分だか3/4が日本での消費だろ
病んでる日本人が熱で判断力が低下して、普段ではやらないような変なことしちゃいました
って考える方が説得力あるわ
タミフルと異常行動の因果関係っていうと
ゾンビウィルスに感染してないのにゾンビになってしまった男の物語
なんて作れそうだな
インフルエンザに感染した香具師が
中×産バチ物 タニフル飲んでゾンビになるってーのは
なさそうで在りそうな話だね
去年の今頃あったな。
タミフル飲んでゾンビ化ってな話し。
完結しなかったはずだが。
話しまだ〜?
192 :
A・I:2008/01/06(日) 22:38:17 ID:Wba1/4/t0
まったくもって申し訳ないのですが、
次を書けるのは3月ごろになりそうです・・・
その時はまた、よろしくお願いします。
やっとのことでできました
お待たせしました
――糞っタレ
口に加えた煙草を噛み潰した
独房のような部屋を照らしているのは、天井で輝く蛍光灯のみ
壁に背を預け、細かな金網で仕切られた左側を見る
水で濡らした手で壁を叩けば出るだろう音と共に、淡い桃色と白の入り混じったものが蠢いている
これが全ての元凶だ
右側を見る
監視カメラの、やや緑がかった映像
そこには、閉じたシャッターに捨身で体当たりを続けるものが映っている
寸前だった。一瞬遅れていれば、入ってきていたはずだ
廊下とこの部屋とを仕切る厚いシャッターの向こうから、微かに聞こえる水のような音
監視カメラを見る。シャッターには、裸の女が体当たりを続けていた。通常なら、興奮も起こるのかもしれないが――事情を全て知る今となっては、何の感慨も沸かない
シャワーでも浴びている最中に襲われたのだろうが、自分には関係ない
羽織っている白衣のポケットをごそごそと探った
噛み潰した煙草を金網に押し付ける。肉が焼ける音。びちゃ、と水分をたっぷり含んだものが落ちる音
新しい煙草を咥え、ジッポーのライターで着火。手馴れた動作
思い切り息を吸い込み――ふーっ、と有害物質の塊である煙を部屋中に、金網の向こうに撒き散らす
緩慢な自殺? 知るか糞っタレ、という気分により禁煙を中止
部屋の隅を見る。1匹の犬の死骸。眼窩の上から首の付け根まで、頭部が破裂。中からは、黒く変色した物体が盛り上がっている。これが頭蓋骨を圧迫し、破壊。結局適応したのは人間を含む、少しの生物のみ
その中、人間だけが、最悪の適応を見せる
それが今この建物内で広がっている様。知らない人間に見せれば、映画か何かとしか思わない現状
恐らく。いや、確実にこの建物は閉鎖されているだろう。いや、まあ警備員とかが無事なら
そうでなければ、数日以内に最悪の災害――人災が発生。まさに「バイオハザード」のような事態に
口の端が持ち上がる――にやり。そんな状況下でも、あのじゃじゃ馬娘ならば生き残れるだろうが
何せ、今こうして生きていられるのも娘に半ば無理矢理見せられた数々のゾンビ映画、ホラー映画のおかげ。スプラッタ映画もだったか
犬の死体に歩み寄る。靴の先で、鼻面を軽く押す。ねちゃ、という感触――まるでとろけたチーズのよう
足を持ち上げる。犬の鼻面に、くっきりと靴の跡。踏まれた部分だけ、変形している。
靴の裏まで糸を引く何か――皮、筋肉、血管、神経、骨が液体のように混ざり合ったもの
記憶が蘇る。これが発症し、死亡した場合。身体を軟化させ、脱出。水辺へ。ただし、淡水のみ
これが流れ着いたのは、少し前
あからさまに怪しいカプセル。あっさりと開く――透明な容器の中で液体に浸る、球状の何か。テニスボール大
解体。ほぼ透明な薄皮のみで覆われた体。中は豆腐のように柔らかい。淡い桃色と白が入り交ざったよう。
豆腐に切れ目を入れた瞬間、中からどろりと出てくる赤い液体
顕微鏡で拡大。同じように丸いものを確認。数分以内に動き回り、活発に活動するものの、数十秒とせず死亡
匍匐全身で移動し続ける
まったく、人生はロクなもんじゃない――にやけながら
排気ダクトの地図は覚えていないが、おおまかな構造は頭に入れているつもりだった
三叉路。右を見る――懐中電灯で照らす。恐らくエレベーター
左を見る――照らす。微かに重低音が響いてくる
ん〜、と低く呟く。エレベーターは少し下
苦労して身体の向きを変えた。腕が痛む
エレベーターには侵入できそうにない。元々侵入する気は無かったが
エレベーターそばにあったダクトを覗く。這いくつばった
ガタン、と蓋が開いた
そっ、と下を照らす。顔を出す。何も居ない。閉ざされた扉
飛び降りる。かなり暗い。今は何時だろうか?
部屋の隅――求めていたもの。マンホール
苦労して――運動不足にはキツい――蓋を開く
中を照らす――汚水のみ
覗き込んだ途端、ジッポーライターが落下。カタン、と音が響く
何も聞こえない。ふーっ、と安堵の溜め息
降りる。ジッポーライターを回収。ポケットへ――今は亡き妻からのプレゼント
ぱっ、と光源が消えた。突如訪れる暗闇。目が見えなくなる
手探りで白衣のポケットを探る――新たな懐中電灯を点灯。白い炎が辺りを照らす
それでもなお、照らしきれない闇
新たなる世界へ、最初の歩み
結論:慣れないことはするもんじゃない
wktkwktk
ほ
ほ
ほ
最後のうpから既に一週間、
作家諸氏は全滅したようだ
201 :
A・I:2008/01/13(日) 12:06:15 ID:OOJ0tOYx0
>>200 死んでません・・・
車校の公安試験に、期末試験、追試1つ、レポート多数。
バイト先の人手不足、ぶっ倒れた友人2人の世話。
ホント、今月は地獄だぜ。フハハーーーーー。な状態なだけです。
>>200 おいおい、一週間程度の音信不通はゾンビ世界じゃ日常茶飯事じゃないか
>>200 インフルエンザは本当に地獄だぜ。フハハーー。
な状況です。
>>200に不覚にもワロタww
作者様方、焦らずに頑張ってください。カチカチしながらお待ちしております。
>>200 あはは、すいません・・・
熱出ちゃいました
みんや騙されるな!
今、書いている作者達は、もう既に……ゾン……
つまりみんな大忙しだろうと病死寸前だろうとスレチェックはしっかりやってるんだなww
がんばれー
笑い声は「フゥハハハーハァー!」だろ…
あ、頑張ってね
ほ
本当に笑い声というのは「ひひひひひひひひひひひひふみy(ry
212 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/16(水) 21:12:54 ID:RDRTYCPzO
ゾンビに噛まれてしまいました。
うんこをしにトイレに行った途端お尻からブリブリブリブリっとゾンビが出てきました。
死にたい。
何をやっても駄目だ。裏目、裏目、狙っているなら完璧なほど事態が悪化していく。
会社経営も駄目。会社に連帯保証つけた投資資産は債務超過。
せめてもと自分個人の資産を運用したらサブプライムで壊滅状態。
お金がまわらなくなると家庭内もギクシャク。嫁からは見放された。相手にされない。
子供はもうすぐ中学、これからの学費どうしよう、、、家のローンもまだあるし、、、
ほんと、死にたい。でも今死んでも従業員は路頭に迷うし家族に何も残せない、、、
そんな思いがあるから自殺しないで済んでるわけだが生きてる希望もない。
せめて10年、そうこの10年間をやり直せたら今抱えこんでいる問題をすべてきれいに片付けて
気分よくこの世を去れるのに、、、どうせ何もなくても漫然とくだらない時間を送るだけだしw
それなら今ここで死んでも後悔しない。
神様、お願いです、僕に10年やり直すチャンスをください。今この場で命をさしあげます。
お願いです、、、、、、、、、、あれ?明るくなった、、、、、、、、、すごい耳鳴り、、、、
胸がきつい、、、息苦しい、、、、目の前に紫の光が広がっくぁwセdrftgyふじこlp;@:
目が覚めた。
起き上がる。
時計を見る。
かすんでよく見えない、、、だめだ、まだボーっとしている、また寝ようかな。
嫁が寄ってきた。俺のことが眼中にあるのか、珍しいな。小さな子供が走り回ってる。
TVで「プライバシーのため音声を変えています」みたいなモゴモゴした低い声、よく聞こえない。
「なに、その顔、、、まるで死人みたいよ、、、」っていってるのかな。
ところで誰だよ、その子供、、、
頭がまわらない、、、意識が途絶えそう、、、、だm da
あたり一面、血の海。
手に何か持ってる。骨?内臓?
ちょwwwwおまww
なんかだんだんわかってきた、、、、うんわかってるよ、やばいね、、、俺さっきから息してないwwww
つまり問題の一部は解決したようだな。
なんか前向きな気分になってきた。
さあこれから出勤だ。
あと10年、がんばって生きよう。
パリポリパリポリ。
店先から失敬してきた煎餅を齧り、湯気の立つお茶を啜る。
今現在、最低限のメンバーを車両に残しその車両はバリケードを形成し残りのメンバーはこの建物の中でくつろいでいる。
暗号通信でこの都市の出現を市長に知らせた結果、他の閉鎖都市や自衛隊政府管轄の離島に知られる前に応援を送り、
この都市の資源を占有するとの連絡が来た。
早い話が、他のメンバー到着までこの都市に居座って所有権を主張しろとの命令だった。
火事場泥棒みたいなやり方だが、資源に限りがあるこの世界では早い者勝ちが世の摂理でもある。
うーん・・・・この世界に馴染んで来てるな・・・・・俺・・・・。
そう思いながら時計に目をやる。
おっと、そろそろ見回りの交代の時間だ・・・・。
拳銃の弾丸を確認し、ゾンビに不意討ちされた際の命綱の防刃チョッキを着込み、その上から更に防寒着を着る。
う〜、寒い・・・・・。
相も変わらず、外の風は寒い。
ん?
・・・・今、光が見えた気が・・・?
気のせいか?
いや・・・・あの建物から明かりが見える。
頼り無いのは蝋燭等の明かりだからだろうか?
そんなことを思っているうちに無線機で招集がかけられた。
家電量販店の元事務所に警備要員を除いた全員が集まっていた。
伊豆閉鎖都市資源回収班リーダーがホワイトボードに簡単な地図を書き込んだ。
218 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/17(木) 23:34:19 ID:KNnPG2RmO
うんこ垂れ流し状態です。
こうなったら垂れ流しのうんこをゾンビに投げつけてやろう。
219 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/19(土) 01:07:53 ID:niWUoI3V0
「よし、いいぞ!尻の辺りが生暖かくなってきやがった!」
新型インフルエンザ対策をしている内に、数年ぶりにゾンビものが書きたくなってきた。
いや、本気で怖いんだよ。
今日もドラッグストアで安売りしている内から必要品を買ってきたが、
周囲の客全てが倒れて血を吹き出している様子を想像したら背筋が凍った。
想像したことであれだけ恐怖を感じたのは久しぶりだった。
死ぬだけじゃない。
身内も知り合いも死に絶えた世界で、文明の維持もできない中生きて行かなくちゃいけなくなる可能性もある。
ぞっとしたね。
ifじゃない。
whenなんだ。
もういつ起きるか。その状態なのに。
国も国民もほとんどが対策してないんだぜ。
>>220 変なもん書く必要はない。その一文だけで十分怖さが伝わってくる。
鳥インフルエンザか…
俺も対ウイルス用の防面と予備のカートリッジを買ったよ。
準備は後悔する前にしろが信条だからな?
223 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/21(月) 00:49:14 ID:2wPMQw1EO BE:288678252-2BP(0)
>>220 緑の救急車呼んで
「今日もドラッグストアで安売りしている内から必要品を買ってきたが、
周囲の客全てが倒れて血を吹き出している様子を想像したら背筋が凍った。」
って言って入院させてもらえ
お願いですから、健常者に紛れ込まないでください
むしろパンデミックによるインフラの停止とか治安悪化とかが怖いなー。
ライフラインはそうそう止まらないらしいが、何があるかわからないからね。
荒廃していく社会、病気に倒れていく知人・家族とかを想像すると確かにゾンビ物に通じるね。
>>224 大石英司の昔の小説でそんなのあったな、アメリカが壊滅するやつ
226 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/21(月) 21:48:44 ID:2wPMQw1EO BE:433017353-2BP(0)
>>224 インフラ壊滅してんなら家族はともかく知人程度じゃ病に倒れていくとこ見る前に音信不通になってるわ
インフラすら維持できなくなった社会で知人の安否なんか気遣う余裕なんてねーよ
自分と家族守るので精一杯、それに専念したとしても守り切れるとは限らない
そんな中で家族放置して「そういや、同期の田中元気してるかな」なんて会いに行くか?
227 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/21(月) 23:53:02 ID:ouHvES0w0
>>224 やっぱり一番怖いのは人なんじゃないんですか?
ご近所で仲の良かった人や友達が包丁を片手に「食い物よこせ」
とか言って迫ってきたら怖いよ
>>228 ご近所で仲の良かった人や友達の死体が迫ってくるよりもっと怖いだろうね
>>229 どっちも怖いなあ・・・
言葉の通じないゾンビのほうがタチ悪い気がするが。
「はっ、はっ、はっ・・・・・」
息を切らせながら数人で一気に通りを駆け抜ける。
手にした拳銃と仲間だけが頼りだ。
大人数での目標の制圧・占拠が今の目的であり、外部作業員以外・・・・つまり俺も狩り出された。
移動先では既に先行していた元外部作業員達がゾンビと交戦していた。
パンパンパンッ!
拳銃の発砲音が静寂とたまに聞こえるゾンビの呻き声を掻き消す。
この都市に入ってからは最近ゾンビになったこの都市の住人達のゾンビが大多数で
周辺にいたこの世界のゾンビは少数だ。
しかし・・・・・この繁華街の規模からしてここはある程度大きな地方都市のはず・・・・・。
この都市で読んだ新聞記事の一文が頭から離れない。
”○○トンネル、異常劣化か?作業員が暴露した荒れ果てたトンネル内の姿。錆びた車も見つかっていた!”の文。
つまり・・・・・あのトンネルはこの世界と元の世界を相転移した・・・・・。
・・・・・まさか・・・・元の俺達の世界にこの都市の代わりにこっちの世界の・・・・
ゾンビが徘徊する廃墟都市が転移した・・・・・・・?
あの平和ボケした左寄りな自称市民団体が幅を利かせる狂った日本じゃあ・・・・・下手したら今頃・・・・・。
ゾンビも怖いけどボンビーも怖いよね!
ほ
セ・メンドーサ
235 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/25(金) 22:18:12 ID:Ns0CNnBs0
気になって調べたけどアメリカ合衆国って半分以上が土葬なんだね。
感染症の危険性より宗教的な儀式を重んじてるのかなあ・・・
日本も地域によっては土葬でもいいんだね。
びっくりしたよ。
うちの近所最近まで土葬だったよ。
そうか、それで猟銃の所持率高かったのかw
浄土真宗は江戸時代以前から火葬がデフォ。
238 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/26(土) 18:55:09 ID:eYjoM0ENO BE:577356454-2BP(0)
火葬→壷サイズ→コンパクト
土葬→人間サイズ→土地足りねー
随分と留守にしていましたが、ようやく再開できそうです
明日か明後日あたりに投稿します
いや、スランプて怖い・・・
「うおっと!?」
そんなことを考えていたら、路地からのゾンビの接近を許していた。
パンッ!
ゾンビの頭部を狙って引き金を引く。
腕から全身に衝撃が走り、火薬の匂いが鼻を突く。
ベチャッ・・・・。
ゾンビがアスファルトの地面に倒れる。
ふう・・・・・やばかった・・・・・。
つーか、やばいのは俺の銃の腕だった。
ゾンビを射殺したのは先行部隊で、俺の銃から射出された弾丸は建物の壁に弾痕を残していた。
・・・・・・・一人にならないようにしておこう・・・・・。
数回の交戦の後、明かりの見えた建物の前に来た。
入り口はバリケードで強固に守られている。
そう思っていると、窓から梯子が下ろされてきた。
梯子を下ろしているのは若い男と頭の寂しい眼鏡の中年男性だった。
ゾンビが再びここに接近して来ないうちに全員が建物の中に入り込んだ。
生存者の総数は全部で11名。
その全員が俺を救世主を見るような目で見ている。
他のメンバーは他の部屋で生存者の移動プランを練っている。
その手の会議には足手纏いの俺は生存者のお守りを押し付けられた。
「あ、あんた達、自衛隊なのか?」
梯子を下ろしていた中年男性が俺に問いかけてきた。
「いや、残念ながら俺は自衛隊員じゃあない」
「自衛隊は助けに来てくれるのか!?」
もう一人の梯子を下ろした男が聞いてきた。
「・・・ん・・・?あんた・・・・どこかで見たような・・・・・」
へ?
俺を知ってる?
残念ながら俺はお前を知らないぞ?
「あ・・・ああーー!!○○トンネルで行方不明になった佐伯とか言う・・・・!!」
「ほ、本当だ!な、なぁあんた!あんた達と一緒に行方不明になった俺の女房知らないか!?
ほ、ほら、この写真を見てくれ!!」
「・・・・・・・・あ・・・・」
「し、知ってるのか!?どこにいるんだ!?教えてくれ!!」
「ええと・・・・・彼女は・・・・・・」
俺はありのままを話した。
写真の女性の派手な服装ですぐに思い出したのだ。
最初にゾンビと接触した時の犠牲者の女性を。
「・・・・・死んだ・・・・女房が・・・・・佐代子が・・・・・」
「な、なぁ!なんで自衛隊は俺達を助けに来てくれないんだ!?税金払ってるんだぞ!!」
「・・・・・・・・・自衛隊は・・・・・来ない。多分、永遠に・・・・・・」
「な、何でよ!国民の財産と生命を守るのが自衛隊の・・・・!!」
ガチャッ。
会議室のドアが開いた。
「佐伯、ベースキャンプに連絡して伊豆閉鎖都市に通信を送ってくれ。ヘリ、戦車、装甲トレーラー、どれを使ってでも
大急ぎでこの都市に到着させるんだ」
「な、何かあったんすか?」
「八丈島の自衛隊が動いた。俺達の暗号通信を解読されたらしい。自衛隊の奴等、これだけの資源の宝庫を見逃さねぇらしい。
畜生・・・・・ゾンビ発生からたった一年で本土の生存者を見捨てて逃げた自衛隊の連中なんかに、
好きにやらせてたまるか・・・!!」
「で、でも、自衛隊って・・・・・武装は!?」
「市長のコネを使って、沖縄のアメリカ政府支部に応援を頼んでほしい。それと・・・・・」
「それと・・・・・?」
「また、そう・・・・お前の言葉を借りれば次元移動・・・・か?あれがまた起こった」
「どこで!?」
「佐渡島だ。佐渡島が相転移してきた。新潟の閉鎖都市の情報じゃあ、朝鮮半島のソ連軍の軍艦に動きが見られるとのことだ」
なんだか大事になってきた・・・・。
俺は大急ぎで通信をした。
それから1年が過ぎた。
俺たちはまだ、伊豆閉鎖都市に住んでいる。
市長も相変わらず、大木市長だ。
変わった事といえば・・・・伊豆閉鎖都市の人口が倍になって失業率やらが市長の頭を悩ませていることだろう。
あの都市の資源を出来るだけ運び出し、生存者達と無事に閉鎖都市にたどり着いた。
あの都市は八丈島の自衛隊と北海道の自衛隊との戦場になった。
俺達が都市に帰り着いて1週間もしないうちにこの都市を局地的な暴風雨と雷雨が襲った。
この伊豆閉鎖都市は・・・・・・俺達の元の世界の伊豆半島と入れ替わった。
俺達の世界は・・・・・予想通りゾンビが蔓延していた。
さて・・・・・元の世界に戻れたはいいが・・・・・。
職場に出かけるためにバイクに跨る。
エンジニアがジャンクを組み立てて作ってくれたバイクだ。
職場はもちろん・・・・・資源回収部隊。
さて・・・・稼がないとな。
俺とキャサリンの子供の為にも。
職場までの間には、元の都市の住民と都市が迎え入れた避難民が交じり合いスラムを作っていた。
だが、活気のあるスラムだ。
屋台でたこ焼きやら焼きそばが売られ、屋台のラーメンのいい香りがする。
食料はこの元の世界の倉庫やらから発見しているし大規模農場も新鮮な肥料で活気を取り戻した。
ゲーム機やらの娯楽がなくなった事で子供達は声を上げて走り回り、遊んでいる。
トランプやら囲碁をやっているお年寄りもいる。
なんか・・・・・いいな。
END。
ええと・・・・とりあえず終わりです。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
しかし、我ながら稚拙な文だなぁ・・・・・。
次回作にご期待ください。
>>244 お疲れさまです。
結局主人公達は戻れてよかったのかな?
次回作期待してます。
手に持ったオーディオプレイヤーが大音量の音楽を流す。
曲名なんか知らない。
派手で騒音みたいな大きな音を巻き散らかす音楽だ。
耳栓してなきゃこっちの耳が使い物にならなくなる。
無人?の大通りを歩く。
音につられゾンビが大量に集まってきた。
さーて・・・・そろそろだな。
ガガガガガガガガガガガガガガッ!!
地面のアスファルトが銃弾で砕け、そのままゾンビ達の肉体が撃ち貫かれていく。
ヒュルルルルルル・・・・。
迫撃砲の砲弾が炸裂し、ゾンビを掃討する。
さーてと・・・・。
拳銃の安全装置を解除する。
ガガガガガガガガッ!
「うおおっ!?」
銃弾の射線軸がこっちに迫ってきて大慌てで逃げる。
無線機の通信ボタンを押す。
「たっ、立川!殺す気か!?」
『わ、悪い悪い・・・・』
「大体なぁ。こんな生臭くてスプラッターな場所にいたくているわけじゃないんだよ・・・・・ホント・・・・・」
そう。
今のこの場所はスプラッター映画顔負けの凄惨さだ。
でも、大佐。
ケルベロス部隊って名称、何とかなりません?
なんか凄く恥ずかしいんですけど・・・・・。
軍に入隊し半年が過ぎた。
最初の3ヶ月間の間に基礎訓練を詰め込み、今は前線に立っている。
前線と言っても、ゾンビに襲われない体質の自分はゾンビの侵攻をドアを溶接したりと不可能な状態になった
ビルの屋上からガトリングガンやグレネードランチャー、迫撃砲やらで重武装した友軍の元まで可能な限りのゾンビを
誘導するのが現在のケルベロス部隊の遊撃第二分隊の一員の今の自分の仕事だ。
『立川少尉、まだまだ食べたりませんよ』
工藤士長がまだ食い足りないと不満を述べる。
『・・・・・そうか・・・・?軍曹、まだ行けるか?』
「了解、2時間後辺りに戻ってきます。それまで、食い残しを平らげておいてください」
ターーンッ!
乾いた銃声が響く。
眼前で蠢いていたゾンビが完全に動きを止める。
『任せておいてくださいよ軍曹。帰ってくるまでに、残さずいただいておきますから』
最近部隊編成で入隊した佐野上等兵が狙撃銃でゾンビを始末し、頼もしい事を言う。
「少尉、距離があるので装甲車か高機動車の使用許可を」
『任せておけ。輸送要請を出す。追って指示するまで、徒歩か現地調達の移動手段を使用しろ』
「了解。移動を開始します」
ぞくへんきたーーーーーwktk
続編早っ!今度は戦争かwktk
ゾンビに襲われない血筋の男がまた来ましたね!
中二病作家さんの代表作、楽しみです。
やっと規制解除された。
乙乙面白いぜ!
256 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/30(水) 00:59:02 ID:q8nWtrou0
続編感激!涙出そうw
「う〜〜」
「唸るなよ」
「いやさ、そう思うんなら代わってくれないかな」
「それでもいいけど――こっち来る?」
ふるふる
「だって」
「結構歩きにくいんだぞこの体勢」
そう言う彼女の腰には、しっかりと2本の腕が回されている
「まぁ、いいじゃん。妹ができたと思えば?」
青年からは、その後姿しか見えない
肩まで伸びるポニーテール
繊細で、抱きしめれば折れてしまうのではないかと思ってしまうような体
その身を包む衣装は地味な制服ではなく、近くにあった洋服店から強奪した、淡い水色のワンピース。靴は履いておらず、裸足のまま。それが時々、ぺたぺたと音を響かせる
ワンピースのおかげか、少女からはより一層華奢な印象を受けてしまう
「じゃ、邪魔ですか?」
透明な声が響く
その瞳は――先程の恐怖からだろう――潤んでいた
「いや、大丈夫。んなことないよ」
彼女が、少女の頭をわしゃわしゃと撫でる
「えらく懐かれてるね」
青年が、からかうような口調で言った
懐中電灯が、辺りをくまなく照らす
光が、一瞬だけ台車に山と積まれた段ボールの上を舐めた
その光に反応したのだろう――台車の影から、影がむくりと起き上がる
影は、先を行く光を追う――
ぴたり、と
曲がり角の少し手前で、彼女と青年がほぼ同時に歩みを止めた
少女だけは、状況を理解できずに不安の入り混じる視線で彼女を見上げる
『今、何か――』
同時に言葉を紡ぎかけ、やめた
顔を見合わせる
自然と早歩きで、角を曲がった
ふい、と
光が視界から消えうせる
それでもその影は、進み続ける
光に何かを求めるように――曲がる
光は、動くのを止めていた
ふらふらと頼りない足取りで歩み寄る
目に入るのは、ただ光だけ
そして光へと歩み寄り――
音が虚しく響き渡る
音は続き、その中に湿った音を混じらせる
その音が止んだ時――伏したまま、動くのをやめていた
「たく、驚かせやがって」
頭を思い切り蹴り飛ばす。鈍い音と共に、首は異常な方向へ曲がっていた
おぼろげな光に照らされるその肢体は、少しばかりの返り血で染まっている
「この調子だと、他の階も大変なことになってるだろうな」
ベンチに腰掛けている青年が、懐中電灯の光を周囲へと巡らせる。その横には、目隠しをされた少女の姿
その身体は、ぶるぶると小刻みに震えている。震えは、納まりそうに無かった
その両手は、関節が白く染まる程強く、ぎゅっと握り締められている
「大丈夫だよ。もう動かない」
彼女が、少女の頭を優しく撫でた
「他2名はどこに逃げ込んでいるのやら。もしかして、もう喰われちまったかな」
「それだと、悲鳴くらいは聞こえると思うけど。まぁ、そんなもの出せたらの話」
光が、降ろされたシャッターを次々と舐め上げてゆく
雑貨屋、喫茶店、飲食店、ゲームセンター――
内に在るべき者達を無くしたそれらは、酷く虚しい
人の栄華を体現していたそれらが再び賑わう事は――恐らく、永久に――無い
一体、何人――いや、何十人、何百人の人々がこうなってしまったのだろうか
そして、今生きて、必死に生き延びようとしている人間は、どの位居るのだろうか
恐らく、大半の人は頑丈な店に集うに違いない。初期は生存者というだけで――貴重な“戦力”として――無条件に受け入れられるだろうが、少しすると逆が始まる
許容量を超えた人間を身に迎えた建物の中では、派閥に分かれた諍いや、“使えない”人間を放逐することを開始する
その最初の犠牲者は、子供だろう。我侭で、居ても何の得にも力にも成らず、ただ食い扶持を減らしてゆくだけの子供
中には、その子供を囮にして脱出する人々も居るはずだ
それでも未だ、望みを――幾ら待っても来ないであろう、助けを――抱いて、立て篭もる人々は居る
そして、外からも内からも閉鎖することを始める
だが、“生存している”というだけで受け入れた人々の中には、発症する者も居るはずだ
そして、そのたった1つの種が、その人々を滅ぼす毒へと成り果てる
訪れるのは、恐慌と、混乱
誰かはそれを沈めようと尽力し、誰かはその毒を滅そうと躍起になり、誰かは毒へと成り果てた知り合いを助けようとし、
誰かは毒が滅ぼされるのを――ほんの僅かな情から――止めようとし、誰かはその細胞から脱出しようと壁を打ち壊し、誰かはただ悲鳴をあげて駆け回り、誰かは傍観しているだけ
誰かが打ち壊した壁の外には、もっと多くの毒が、今まさにその人々を侵そうと待っているはずだ
そして、誰かが作った、その、ほんの小さな点にその毒の圧力は集中し、押し破る
外からも内からも、毒が流れ、迫る
そうして、1つの細胞が死滅する
もしかしたら、誰かは生き延びるかもしれない
その細胞から逃れた人々は、毒が蔓延する血流を巡り、存在するはずの無い、自分を受け入れてくれる細胞を求め、陸という名の体内を放浪する
その人が安全になるには、新たな細胞を作り出すしかない
しかし、細胞1つを作り出すのには、人手が必要だ
人手は、同じように死滅した細胞からしか得られない。生きている細胞が分裂することは、殆ど無いし、分裂しても、どちらかは毒に侵され、死滅するだろう
新たな細胞1つを作るには、複数の細胞が犠牲にならなければならない
そうして、どんどん細胞が減ってゆく
最後の最後には、もしかしたら、どんな毒にも侵されない、強固な細胞を築き上げるかもしれない
しかし、もう細胞が増えることは無い
事実上、その生物は死んでいることだろう。強固な細胞が1つや2つあっても、その細胞が増えなければその生物は生きられない。そして、そのような危険を冒すような者は、もはや誰も居なくなっている――
「何時化た顔してやがる。さっさと行くぞ」
すっかり考え込んでしまったらしい
ぶんぶんと頭を振る。さっきの考え方で行けば、この“細胞”を死滅させるわけにはいかない
行くよ――と少女に告げようと振り向いても、そこには誰も居なかった
彼女の腰を見やる
そこには、目隠しを外した少女の腕が、しっかりと巻きついていた
「ああ」
腰を上げた
「こっちには居なかったが?」
全身を血で染め上げた男――最初の男が応えた
ぐるり、と首を巡らせる
「こっちにも居なかったな」
サラリーマン風の男も首を振る
「でも、ここに居れば安全じゃないのか?」
中年男性が茶を飲む。ごく、ごくとやたら大きく響いた
丁度、1階の十字路の真ん中にあったロビーで、それぞれが顔をあわせている
定時になったため、報告をしに来たというわけだ
「いやいや。ここには定時になったから集まってるってだけで、この中に居る“奴ら”を全滅させたか確認したわけじゃないだろ? だとしたら、未だ危険は高いと思うよ」
トラックから悠々と降りてきた、飄々とした男――日に焼けて色褪せたジーンズと、白いTシャツに、同じく白い上着を羽織った、何と言うか、白ずくめの男が反論
それぞれの出入り口へと通じる大きな通路には簡素なバリケード――店にあった棚を立てただけ――が立ち並び、北側通路――自分達が入ってきた入り口――の前には、小学生の女の子とOL風の女が居る。女の子はクレヨンであちこちに絵を描き回っていたが、誰も注意はしなかった
「幸い、と言うべきかな。立体駐車場の入り口には、全てシャッターが降ろしてあった。奴らじゃ破れないし、車でもそう破れない」
青年がフルーツジュースをちびちびと飲む
ちなみに、ベンチに山と積まれている飲み物は全て、ロビーにあった自動販売機を壊して手に入れたものだ
「どーこに行ったもんだかなぁ・・・」
彼女が呟く
「それはそうと、何体殺した?」
最初の男
最初の男――1階及び地下――「5」
白ずくめ――2階――「5」
彼女――3階――「3」
「・・・・・・結構入ってたんだな」
ぽつり、と青年が呟いた
総勢13体。しかも、これでも全部じゃないかもしれない
最初の男が、ぐるりと一同を見渡した
「次は、各階に音の鳴る罠でも張ってみるか? それと、次ははぐれないように」
少女が、彼女の影でびくっ、と肩を震わせた
久々の投稿です
何故だろう、長編書いてると短編書きたくなって、短編書くと長編書きたくなるのは・・・
戦地用ノートパソコンを起動させ、自分のGPS信号で位置を検出し最新の衛星写真が液晶に表示される。
拡大を続け、地表の人影が見えるレベルまで拡大をする。
「んーと・・・・このゾンビの大群は・・・・・あ、この少し離れているところの人影は俺か・・・・」
時間表示は20分前だ。
「一番近いゾンビの群れは・・・・・この方向か」
方位磁石と地図で位置を確認し、放棄された自転車で移動を開始する。
キコキコとペダルを漕ぎ、時折GPSで位置を確認しながら進む。
「ん・・・ここは戻る時の為に・・・・」
20分ほど自転車で移動した所で目の前には街から逃げようとした車が接触事故を起こしたまま放置されている。
アスファルトの表面には片方の車から流れ出し揮発した合成ガソリンの跡が残っている。
カチッ・・・・。
手榴弾のグリップを捻る。
ピ・・・・ピ・・・ピ・・ピピ・・・ピピピ・・・・・・。
電子音の間隔が次第に短くなる。
ポイッ!
手榴弾はうまく割れた窓から車の中に入る。
大急ぎで建造物の陰に隠れ耳を塞ぐ。
ズズンッ!!
爆発の衝撃が地面から伝わる。
影からそうっと覗くともう一台の燃料タンクの合成ガソリンに引火したのか吹き飛び引っくり返った車が
黒煙をもうもうと立ち上らせながら燃えていた。
『軍曹、爆発を確認したがどうした?』
「障害物の排除に手榴弾を一つ使用しただけです、少尉」
例えプライベートでは友人でも、作戦行動中は上官と部下の関係であるし他の隊員への示しもある。
『そうか、安心した。それと、高機動車を一台調達できた。輸送ヘリが軍曹のGPSシグナルを辿って
後・・・・15分程で到着する』
「了解」
こないだ見た夢。
もう世界はゾンビワールドになっている、ってのが夢のデフォ、設定になってた。
当たり前のようにそんなもんだと思ってた。
列車を降りるとそこは荷受場っていうのか貨物ヤードっていうのか、、、
とにかく天井はないけど壁で囲まれた殺風景な広い空間。
誰に聞いたんだか最初から知ってたのか、前日までその場所にはゾンビから逃げて
大勢の人が隠れていたらしい。
でももう誰もいない。ゾンビが乱入したんだか別の場所に移ったんだか知らない。
はっきりいえてるのはあたり一面、足の踏み場もないほどのウンコの海。
下痢便やら健常なのやら、とにかくウンコだらけ。人間が食い散らかされた痕はない。
で、思ったわけよ。
これは逃げてきた人たちが排泄の場もなく垂れ流したのかな。
それともゾンビのかな。
ゾンビになると生前溜めてきた分は全部排出しちゃうんだろうな、、、
でもズボンとかパンツとか履いてるから下には落ちてこないよな、、、
どのゾンビもパンツの中はウンコまみれなのかな、、、
食事中の人ゴメン、単なる事実として俺が見た夢を書いただけだ。訴えたいことなど何もない。
まあ、メシ喰いながらゾンビスレひろげるような輩に謝る必要もないかww
それよりゾンビの心配する以前にこんな夢見るようじゃ俺自身が終わってるのかなぁ、、、
よりによってゾンビ夢のメインがウンコとは
悲しいね。
うん、マジ悲しかったよ。
俺、靴ヲタっぽいんだけど夢の中でもいい靴はいてたのに一歩踏み出したらネチャ、、、
壁をよじ登ろうとしたら手にグニャってくるしorz
それはそれで空虚な光景だったよ。
人もゾンビも人の残骸も出てこないのに漂ってくる凄惨なイメージ。俺の想像力すごすぎww
おまいらのイメージ的にはランドの最後のほう、追い詰められた人が食い尽くされて砲撃されるとこ。
あるいはB級傑作ザ・グリードに出てくるミミズのウンコたれ場(これをどっかから思い出したんだろうな)
もうちょい美しくいくとタイタニックで海に投げ出された人が力尽きてあたり一面に漂ってる光景。
こんな切なくなる光景だったよ。
自分に文章力があれば是非表現してみたい空虚感だよ。(ウンコはやめとくけど)
真面目な話、多くの作者さんたちがいろいろなタイプの話をいろいろな視点から書いてるけど
まだまだ見落とされている、開拓されてない視点があるんだろうなwktk
269 :
本当にあった怖い名無し:2008/01/31(木) 01:58:21 ID:JOKxlbkg0
たしかにそういう生活感溢れるのも面白いかもね
さぁ
>>268 君の出番が来たみたいだぞw
>emptyさん
あなたの文章の空気が大好きです
これからもwktkしてますんで頑張って下さい><
ゾンビ軍団VSドラクエの魔法が使える俺と仲間
っていう夢なら見たことある。MP切れて、ヤバめなとこで目覚めた。
>>270 ロンダルキアへの洞窟にそんな所があったなw
二三歩進むと
くさったしたいがあらわれた!
(`皿´)ウゼー
272 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/03(日) 03:20:49 ID:P5Q/nYnnO BE:1154712858-2BP(0)
黄金の爪の帰り道
静かな無人?の街に遠くからヘリが近付くにつれ爆音が響き渡る。
信号弾を打ち上げ、輸送ヘリを誘導する。
車両輸送の機能だけに特化され、高機動車が機体中央部に吊り下げられている。
ヘリが降下するにつれ爆音は激しくなり、強風で前へ進むのも一苦労だ。
ホバリングしたヘリから車を吊ったベルトがゆっくりと下がり、やがてタイヤが地面に着く。
ヘリからワイヤーが切り離され、コクピット内の兵士が敬礼しているのが見えたので返礼する。
一通りの車体チェックを終え、キーを回しエンジンに火を入れる。
ガチャガチャガチャガチャ!!
ギギィーーー!!
ザーーーーーッ!
そんな音が入り混じった騒音。
高機動車の車体後部からワイヤーでさっき吹き飛ばした車のドアやら街中のベンチやらその他諸々を
繋ぎ、引き摺り回す。
一ヶ所での連続した騒音に、獲物が引き寄せられてきた。
「来た来た・・・・」
有視界内にいるゾンビの数は次第に増してゆく。
私が初めて人が人を喰うという事実を目にしたのは25年前 大英博物館の図書館での事だった
当時 ロンドン大学の学生であった私は懇意にして頂いていたパークス教授と共に
同博物館図書館の普段は非公開とされている書庫に入る機会に恵まれた
私の恩師であるパークス教授は文化人類学の権威であったと同時に博物館の館長とも親しい関係にあった為
非公開の図書を比較的容易に目にする事が出来たのだろう
書庫の中は一定の温度と湿度に保たれてはいるが無機質な蛍光灯の明かりにどこか冷たい印象を覚えた
教授は棚の隅から一冊の埃まみれの分厚い本を取り出し
近くのテーブルに置いた
「ヴィルクラフト君 見たまえ」
教授はどこか興奮しながらも 一旦 間を置き 言葉を続けた
hosyu
276 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/07(木) 09:08:04 ID:0elPgT4tO BE:1010373375-2BP(0)
続けてないじゃん
277 :
A・I:2008/02/08(金) 13:19:27 ID:WAokQlZs0
超お久しぶりです。投下させて頂きます。
「いいセンスだ」
かなり満足げな声で褒められた・・・のは俺か?祐司か?
「中野先生ぃ、どっちのコト褒めてるんですかぁ?」
先輩が4人分のコーヒーを淹れながら訊ねた。
「斉藤君と篠原君、両方さ・・・6歳頃から始めていれば、今頃かなりのものに
なっていたと思うんだが・・・実に惜しい!君達!
以前にオーケストラに興味を持ったことは無かったかね!?」
今日初めて会うけど、この人・・・確か現役引退したレスナーだよな?
まるで最盛期のような気迫があるんだが・・・。
「いや、大学入るまで全く興味は・・・」
突然、中野先生は俺達の肩を掴むと勢い良くまくしたて始める。
「おおう!なんということだ!いや、今からでも遅くはない!経済学も情報学も捨てて、
私の弟子になりたまえ!なぁに親御さんは僕が説得しよう!さあさあ、あだぁ!?」
スパァァァン!!
どこに置いてあったかは知らないが、先輩がハリセンで先生の頭を叩いた。
あの・・・叩く瞬間の目つきがSっぽいです・・・。
「痛いじゃないか、真弓君・・・」
「二人にはぁ、ちゃんと目標があるんですよぉ?音楽の才能が有ってもぉ、
だからといってぇ無理矢理人生を変えちゃダメですよー。
2時間も続けたんだからぁ、休憩しましょうよぉ」
笑いながらコーヒーをテーブルに置く先輩。
先輩が淹れてくれたコーヒー・・・感涙ものだ。
「まあ、やりたいことと向いてることは、必ずしも一致しないものだがね。
でも僕は諦めないぞ。最後に素晴らしい弟子を世に送り出したいのさ!」
「・・・たぶん貴方は30年経っても最後は迎えてませんよ、先生・・・」
俺はため息交じりに呟いた。
278 :
A・I:2008/02/08(金) 13:22:17 ID:WAokQlZs0
「土曜日の朝ってぇ、よくわからないけど素敵よねぇ」
「ええ、わかりますよ。休日だし、次は日曜日だし・・・」
「そんなんじゃあないわよぉ。ハッキリわからないけど素敵なのぉ」
祐司が相槌を打ったが、先輩の考えとはずれてたようだ。
それにしても、いい加減に晴れてくれないと洗濯物が乾かなくて困る・・・。
「一番いいのはぁ、夜明け前まで小雨が降っててぇ、お陽様が昇る頃に
スッキリ晴れることねぇ。空気も澄んで気持ちいいわぁ」
少し薄めのコーヒーを飲みつつ先輩は理想の土曜日を語っている。
その通りになれば確かにいい一日になるだろう。
「・・・今日の天気は好かんね、僕は。まるで嵐じゃないか」
外を見てみれば風は窓を揺らし、雨は音をたてて地面を叩いている。
光りはしないが、黒雲の中から腹に響く雷鳴が聞こえてくる。
台風でも来たのかという具合だ。
「‘マクベス’1幕3場に曰く‘どんな嵐の日もいずれ終わる’いや‘時は過ぎる’
だったかな?いいじゃないですか。それに、こんな日の方が
屋内で過ごすのに向いてると思いますよ」
ガラガラガラ!
けたたましくドアが開けられる。
立っているのは・・・笠原だ。
「いやあ斉藤、お前がここにいるって聞いてさ、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
279 :
A・I:2008/02/08(金) 13:26:58 ID:WAokQlZs0
「ノックぐらいしろよ。それで?」
「えーとだ、俺の部屋の掃除、皿洗い、服の洗濯。月曜に俺がいなかったら代返もよろ」
「は?なんでだよ。」
笠原は頭を掻きながら続ける。
「弟がさ・・・入院しちまってさ。見舞に来いって親がうるさいんだ。
それで俺の部屋の事を・・・頼むよ。前払いで礼はするから、ほら」
俺の手の平に千円札が置かれた。まあ、そういうことなら・・・
「わかった、気を付けてな」
「サンキュウ!」
慌ただしく部屋を飛び出す背中に向けて、祐司が声を掛ける。
「しかし、なんで入院なんか?」
「熱を出して倒れたらしい。通り魔に襲われてから体調が悪いとか言ってたらしいが・・・」
それだけ言うと笠原は脱兎の如く去って行った。
280 :
A・I:2008/02/08(金) 13:53:11 ID:WAokQlZs0
<何度めだろう。もう書く内容すら暗記してしまった程だ。だが書かないと駄目だ。
こうでもしないと気が狂いそうだ。逃げながらページを切り取り、街のあちこちに置いてきた。
血で汚れて読めなくなっているかもしれない。誰も見つけてくれないかもしれない。
読んでも信じられないかもしれない。それでも書かねばならない。
恐らくこれが最後になるだろう>
「・・・また書いてるのか・・・」
仄暗い照明の中、山田の憔悴しきった声が虚ろに響く。市場の倉庫の中だ。
「正気を、保つため、ですよ・・・」
将人は噛みしめる様に、言い聞かせる様に返答した。再びペンを走らせる。
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・
バシャン、バシャン、バシャン、バシャン、バシャン・・・
ドアを、シャッターを叩く音は止まない。ノブが、蝶番がゆっくりと歪んでいく。
シャッターが軋む。・・・あいつらだ。
<あの日の夜中だ。火災警報の音で叩き起こされた。廊下をボーイ達が駆け回っていた。
部屋から部屋へと、私の所にも。「逃げろ」と一言叫んで行ってしまった。
ただならぬ剣幕に驚き、荷物を鷲掴みにして非常階段を駆け降りた>
「畜生、畜生、畜生!!」
山田が酒のビンをたたき割る。その音に応じるかのように彼らを包む呻き声。
ドアガラスの裂け目から、赤黒く血走った眼が彼らを覗いていた。
281 :
A・I:2008/02/08(金) 13:56:12 ID:WAokQlZs0
以上です
人物を取り巻く光景がスッと頭に浮かぶ様な文を書きたいけど
なかなか上手くいきません・・・
282 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/10(日) 10:12:07 ID:qhM4bJ8CO BE:1558861496-2BP(0)
時系列の観点からアフリカのおっさん連中のパートをメインでよろ
おっさんパートが成る程って感じになる種明かし的な内容なら今のままでいいが
283 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/10(日) 13:44:42 ID:p2lHBEPR0
>>282 あんたは漫画家に「次はこの場面を書け」とか手紙でも送ったりするのか?
作者の方が読み手よりえらいとは思わんが、少なくともあんたは作者達に対して
文句や要望を出す立場じゃない。不満があるなら自分で満足する話を想像するなり
書くなりしろ。作者の好きに書かせればいいんだよ
間隔が空きすぎてるから、正直誰だったけ?っていう
登場人物が多いんだよね。前のレス番位書いて欲しい。
285 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/11(月) 02:49:01 ID:HbwURLOCO BE:519621629-2BP(0)
287 :
A・I:2008/02/11(月) 23:09:49 ID:qZ/Kd/VC0
読みづらくしてしまったようで申し訳ありません。
時系列に関しては、日本→その他の場所の場合はほぼ同時、
または数時間〜1日のずれがあります。
日本で人物達がいる場所が変わった時は1〜3日経過した、という状況です。
wktk
お久しぶりです。
長編(?)を掲載している最中ですが、たまに短編を投下しても良いですかね?
もちのろん
どうぞどうぞ
293 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/13(水) 04:33:17 ID:AIM7UvwSO BE:346414234-2BP(0)
>>287 タイムラグが一日程度じゃリンク出来ないから、中年パートがかゆうま日記にしかならねーじゃねーか
折角の親戚設定は意志の継承フラグじゃなかったのか
プロローグと本編の同時進行なわけ?
>>293 答えを先に聞いてどうすんだよw
全部読んで不満点書くべきじゃないかと
偉そうな態度で聞くのもどうかと思うが
>>293 お前さん、小説読んでいる時にいちいち本に語りかけているのかい?
>>293 どうして読み手がこんなに偉そうな態度なんだ
まったく、忙しいなか素人の作文読んで感想書いてやってんだからもっと殊勝な態度でいろよ。
人様に読んでもらう、って意識が希薄だね。
298 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/13(水) 16:46:57 ID:k8wDajG50
>>297 「読んで感想書いてやってんだからもっと殊勝な態度でいろよ。 人様に読んでもらう、って意識が希薄だね。 」
あんた何様?面白くないと思うなら読まなければいい。
「殊勝な態度でいろよ」って、作者達が鼻もちならない言葉でも発したのか?
読み手としての礼節をわきまえるべきだね。
ヒステリックな人がいるね。
作者さんが一読者の振りしてあれこれ指示してきてるんだろが。
300 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/13(水) 17:55:54 ID:k8wDajG50
読んでもらう意識を相手に求めるなら、読ませてもらう意識ってのを持つべきじゃないの?
たかが2ちゃんの投稿読むのになんでそんなに卑屈にならなきゃいけないのかわからない
302 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/13(水) 19:21:30 ID:k8wDajG50
上から目線ってのもどうかと思うけどね
これで書き込みやめる
おれもやめる
まあ落ち着けって。
んで[スレのお約束]読んでゆっくりとゾンビ達が襲ってくるの待とうよ?。
少し荒れてしまっているようですね…
自分の口直しに作ってしまった短編ですが、一度推敲してから投下します
明後日までには投下したいと思います
306 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/14(木) 00:00:21 ID:V+9BGotz0
このスレも偉そうな奴のせいで雰囲気変わったな。
それはおいといて、作者さん、頑張ってください。
志村ー!!目欄目欄!!
シムラー!メランコリー!メランコリー!
世界がくるくると回っている
頭は全体がガンガン痛み、動かすのもつらい
背中はびっしょりと濡れ、身体の芯まで凍えている
凍死しなかったのは幸いだろうか
起き上がろうとする――ものの、くるくると回転し続ける世界と、激しく痛む頭に翻弄され、上手く起き上がることができない
立っているのか座っているのか。はたまた立ち上がりかけているのか寝転がっているのか――
全くわからない
――飲みすぎた
どれ位飲んだのだろうか。回り続ける視界の中では、一緒に居るはずの仲間の姿を認めることはできない――いや、見捨てられたのだろうか?
だとしても不思議に思わない
それが、仲間内でのルールだからだ
無理に助けようとしてて共に捕まるよりは、そいつだけが捕まった方がいい
鉄則として、仲間のことは喋らないようになっている
それこそが、今まで誰もヘマをしなかった理由だ
俺達は、自分以外を根本から信用していない
上辺だけは信頼している素振りを見せているものの、いざとなればすっぱりと切り捨てる
勿論自分が助かるために
何があっても、誰も助けてはくれない――
すると、俺は幸運にも捕まらなかったのだろうか? いや、捕まって、どこかに放り込まれているのだろうか?
回り続ける世界は、色が混ざり合って、とても判別できない
そもそも、なぜ俺は倒れていた?
そうだ、昨夜も飲んだ後、手近な路地にカモを探しに行った
狙うのは、こっちの半数以下の女
昨日、酔っていたのだろう――路地をふらふらと頼りなく歩く女を囲んだことだけは覚えている
まずは抵抗できなくなるまで殴る
それから、身包み剥いで犯す
犯した後はその辺に放り出しておけばいい。顔は隠しているのだから
その、殴り倒したところ。やけにあっさりと倒れた女の髪を掴んで――
そうだ、俺は突き飛ばされた
畜生、最初に殴った奴が最初にできるんじゃなかったのかよ
奴ら、ルールを無視しやがって
そうだ、今度あったら半殺しにしてやる。鉄パイプあたりでいいだろう
手探りで顔を覆っていたマスクを剥ぎ取る
それだけで、新鮮な、冷たい空気がどっと流れ込んだ気がした
世界の回転が、大分遅くなっている
頭痛は酷いが、家に帰って薬を飲めばいいだろう
医者ごときに金を払う奴は馬鹿だ
ゆっくりと立ち上がる
それだけで頭痛は激しさを増す。その所為もあってか、ふらふらと――まるで昨日の女のように――よろめく
ぬるぬるとしたものが顔を伝ってゆく
――畜生、血が出てやがる
一歩
真っ直ぐに歩けない
何かにつまづき、派手に転んだ
足元を見る
酔っ払いが倒れてやがる
力が入らない
たまに、民家に馬鹿が押し寄せている
民家の中からはたまに悲鳴が聞こえた。どうせ、不正やら何やらで押し寄せているんだろう。どうして騙される方が悪いとわからないのか、俺には理解できないが
俺の住むアパートが見え始めた
――マジかよ
群集が集まっている
この、ぐらつく視界と力の入らない身体で塀を越える気にはなれない
仕方なく、群集に紛れ込む
必死に、階段の方に押し寄せているようだ
流され、時には無理矢理身体を割りいれ、階段へと進む
階段の口には、がらくたが積んであった
崩れないように、階段を一杯に使って積んである
だからこんなに集まっているのか
仕方無しに、がらくたを登る
痛い
痛い痛い
足を見ると、誰かが誰カが、足をアシを噛んデやがる
片足で頭を蹴りつける
何回目かで、やっと離れた
傷口に、歯が突き刺さっている
――調子乗んな。こロすぞ
舌が動かない。舌が動かない
二階の廊下には、誰も居なかった
ポケットを漁り――財布も鍵も無いことに気がつく
仕方なく、ドアを押し破る
携帯電話は、上着のポケットに入っていた
未だに、視界はぐらぐらと揺れている
頭痛も酷い
ばたり、と敷きっぱなしの布団に倒れた
いつの間にか、色は赤くなくなっていた
すぐに、眠気がやってきた
数時間後
ゾンビが群れるアパートから
男の悲鳴が響き渡った
乱文失礼しました・・・
どうもこういうキャラは書き難いです
ガラガラガラ・・・・・!
オートマだからアクセルを踏まなくてもゆっくりと走行する。
そして程よい距離を保ちながらゾンビの群れが追いかけてくる。
適度に加速、減速を織り交ぜゾンビを掃討地域に誘導する。
そしてゾンビが攻撃ポイントに辿り着くと同時に一気に加速する。
バックミラーに映る迫撃砲やロケットランチャー爆発とガトリングガンの一斉掃射で爆発を逃れた
ゾンビが粉々に砕けてゆくシュールな光景だった。
ジュゥゥウウゥゥ・・・!!
ゾンビ掃討後には合成ガソリンを死体の山に掛け、火炎放射器でゾンビの残骸を焼却する。
マスクをして無ければガソリンの燃える臭いと肉の焼ける臭いで多分吐いていただろう。
水分を含んでいる比較的生に近い肉と臓物の山はなかなか焼き尽くせず、結局全てを炭化させたのは日が沈んでからだった。
「ふう・・・・やっと終わった・・・・。さて、飯にしますか。少尉、残骸の始末、終わりました」
『そうか、分かった。飯の準備は出来ている、キャンプに合流せよ』
「了解、合流します」
合流ポイントの目印は青いペンキで×印が書かれた普通の路上だった。
唯一違うのは、その上空から一本のワイヤーが垂れ下がっていることだった。
ワイヤーの掛け金に自分の腰に巻いたワイヤーを繋ぐ。
「少尉、合流ポイントに到達し準備できました」
『よし、これより回収する』
その言葉の少し後、自分の体がワイヤーに引っ張られ宙に浮いてゆく。
ゆっくりと、だが確実に上空に向かって引っ張られて行く。
時間にして10分程度だが、相も変わらず高所恐怖症の俺にとっては生き地獄タイムだった。
えーと、スンマセン、いまゲームにはまってて創作速度がかなり低下しています・・・・・orz
中二さんがはまるゲームってどんなジャンルですか?気になるw
差し支えなければお教え下さいな
DMC4かCOD4と見た!
ゲームにはまるその気持ちがとても理解できますよ・・・
まさに今こちらもはまっていますwww
バトルステーションだな
>>315 今はまってるのは洋ゲーのスターシップトゥルーパーでつ。
歩兵級のアラクニド・バグズや重量級のタンカー(だっけ?)が邪魔で、地下施設のコア?の臨界爆発のタイムリミットまでに脱出できず・・・・・・。
なんつーコアなw
中2さんまさかのSSTwwwwww
やっぱ市民権を得なきゃね!!!!!
機動歩兵萌え
あのゲームは核ランチャーとモリタライフルがあれば他に怖いものはPCのフリーズ以外なくなる。
予想はしてたがやはりこのスレ住人はFPS好きが多そうだぬw
デッドライジングがやりたいなぁ……、でも金が無いから買えない…orz
一人暮らし辞めて実家帰ろうかな…
デッドライジング、一回かまれたらハイそれまでよっつ感じのモードあればいいのにね
つーか早く続き書けやボケ
326 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/20(水) 01:18:13 ID:RsgWZ+k+O
ブックオフでも行ってこい貧乏人
327 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/20(水) 16:46:57 ID:3aVrpovv0
>324
それだと開始数秒で死ぬから無理。漏れは小型チェンソーを振り回して
「1人残らずミンチにしてやる!」といった感じでやり込んだが、あま
り長時間続けると殺伐とした心境になってくるから、今はもうやってない。
やっほほやほやほ
ヌーブラヤッホー
なんか荒れ気味だな。
一年位前の安定感はどこへいったんだろ...
電車がいないな
律義に感想レスつける奴が居ないと作者がつまんなくなってくんじゃね?
んで失速→尻切れ→ウボァー
>>331 自分は単なる自己満足とか自己顕示欲で書いてるので、感想の有無はさほど気にしませんね
まぁ、ついてると嬉しいことは確かですがw
日曜あたりにでも投稿できそうです
ノベルスレ残党116は構想中なのかな期待してる
>>333 とりあえず、菊地さんが主役のスピンオフと言う事で…
何でもいいからとっとと書けや
ありきたりな原因だが地球がゾンビだらけになった。
俺は気づかず街に出てあやうく食われそうになった。
運良く助けてくれる人がいて助かった。
その人たちと手を組んでゾンビを倒しながら脱出した。
おわり。
337 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/23(土) 23:55:43 ID:oFJU8lM6O
どこに
ある日、俺はふとゾンビになっていた。
「・・・おぉ、俺、ゾンビだ。すげぇ」
鏡越しに映る俺は見た目こそ人間だが、それでも二の腕の食われた痕と、白く濁った左目が明らかな異変として在った。
「やべぇ、どうしよう。まぁ、ゾンビが発生しているってニュースは聞いてたけど、まさか俺がゾンビになるとはなぁ・・・」
そういや、昨日の夜に親に噛まれたんだっけか。んー、どうしたもんかねぇ・・・。
あー、腹減ったー。ゾンビって人しか食えないのかな・・・んー、野菜食べてみるか。
野菜炒めでいいよな。えっと、確かここに塩コショウがある筈だ。
・・・と、出来た。いただきまーす。
んー・・・うん、普通に美味いな。んー・・・しばらくは冷蔵庫の中の物食べて過ごそうか。
あ、タロウ。あちゃー、お前もゾンビ犬になっちゃったか。
ん? 餌か。ちょっと待ってろよ。確かここにシーザーが・・・あったあった。ほい。
んー、美味いか? そうかそうか。 あー、暇だな。よし、散歩でもするか、タロウ。
あ、人間だ。俺を明らかに避けてるな。俺もこの間まではあの立場だったんだよなー・・・。
「町゙中゙歩いだらあぶないぞー。俺みだいなゾンビに食゙われぢまうぞー」
「え、あ、す、すいません」
んー。何だかなぁ・・・。ゾンビになった以外は変わらない日常な気がするのは俺だけか?
あ、野菜ジュース買おうか。タロウは・・・ここに結んでおけば大丈夫だよな。
えっと、野菜ジュースはぁ・・・あったあった。ついでにお米とカレーも買っておくか。
ゾンビが発生してもちゃんとスーパーに買い物きたり、働いてる人は偉いなー。レジ並ぼう、と。
「ひっ・・・さ、三千円です」
「三゙千円がぁ・・・じゃあ、五千゙円がらでおねがいじまず」
「は、はい・・・に、二千円のおつりとなります」
「んー」
あ、タロウ。ちゃんと待ってたか? 人を襲ってないよな? よしよし、偉いぞ。
さて、じゃあ帰ろうか。そういや、俺の親ゾンビはどこを歩いているんだか・・・んー・・・。
っていうか、俺って異質なゾンビだったりする? まぁ、良いか。あー、早く家に帰ってカレー食べたい。
>>338 お前さあ、、、、
頼むからシリーズ化してくれ。乙&wktk
>333
期待していただいていて光栄です。
現在、次ぎのお話を書いている最中です。
自分は、ある程度書き溜めてから、加筆修正を行って投稿するタイプなので、
時間がかかり申し訳ありません。それでも、表現の不備や、誤字などがあるので、
お恥ずかしい限りですが・・・・・・。
>334
菊池さんが出るかどうかは未定です。
スレッドは、時折覗かせていただいております。作者、読者の皆様、ご健康に
気をつけて、よりよいゾンビライフをお送り下さい。
それでは、また。
ガチャッ。
ハーネスをビル屋上の柵に引っ掛け、屋上に設営されたベースキャンプの風呂用テントの中に真っ先に入ると
陽動や戦闘で体についたゾンビの体液や臭いを厳重に洗い流す。
当然、他の隊員の感染のリスクを最低限にするために他の隊員とは風呂は別だ。
「あー、いい湯だー・・・・・」
テントのメッシュ上の窓からは地平線に沈んでゆく夕日が見えた。
「雨かな?」
空を覆ってゆく雨雲を見つめながらそんなことを呟く。
カチッ。
しばらく温かい湯に浸っていたいので天井に吊り下げたライトのスイッチを入れる。
風呂を終え、屋上の食堂テントに入り全員で食事。
ザァァァァッ・・・・・・・。
案の定、雨が降ってきた。
「あー、みんな。食いながらでいいから聞いてくれ。気象衛星の観測だと、約3日は雨らしい。
隊員の健康状態と疲労度も考えて、本部は3日間の休暇指示を出してきた」
立川の言葉に全員が頷く。
と言っても、帰還の言葉がないって事は基本は作戦行動続行ということで、3日間はこの屋上での生活って事だ。
なお、ゾンビの侵入を完全に防ぐ為にエレベーターは全て落とし、階段も全て爆破。
最後にこれでもかと言わんばかりに屋上とビルの内部を繋ぐドアには鋼鉄の板を被せ、
溶接したりアンカーを打ち込んだりと厳重すぎる対処だった。
今にも沈んでしまうのないかと思う程荒波に揉まれながら小型の連絡船が北海の海を進んで行く
古ぼけた船内に乗客は
ロンドンの出版社に勤務するジョージ・ウイラーただ1人
ジョージは無言で消えそうな電灯を眺めていた
窓の外を見た所で波のしぶき、窓枠に浮いた錆と付着した塩が見れるだけだ
彼は昔から船が好きでは無かった
乗り物に酔う体質では無いのだが 周りを水に囲まれるという事に
なぜか抵抗があった
そのような体質の彼が何故船に乗っているのか
2日前 スコットランド沖に浮かぶ孤島 スラウグザ島で起きた
惨殺事件の取材に向かわされたのだ
彼が勤務する会社は一流とは程遠い二流の出版社
発行される雑誌も読者を惹きつける為にはショッキングな記事を乗せる他ない
その点で孤島の惨殺事件というのは浮気な読者の気を引くのにうってつけの材料だ
「たかが殺しじゃないか…馬鹿らしい…」
ジョージは自嘲気味にそう呟くと そっと瞼を閉じた
さっきまで眺めていた切れそうだった電球もその命を静かに終えた
「…さん!お客さん!」
野太い男の声がまどろみの中を漂うジョージの耳に響く
急に声を掛けられ 伸ばしたゴム紐を手から離したかのように、はっと意識が覚醒した
ジョージはその声の方向に顔を向けると そこには船長が腕を組み立っている
「着きましたぜ、スラウグザ島に到着しやしたよ」
えんじ色のハンチング帽をかぶった船長は野太い声の通り大柄な男であった
「あっ…はい」
ジョージは寝ぼけた声で返事を返すと
荷物を纏め 席を立った
客が他に居ないせいなのかかさばるトランクや大きめの鞄は船長が船着き場まで運んでくれた
顔に似合わず悪い人間ではなさそうだ
船長は港の船着き場まで荷物を運んでくれるとジョージにどこか申し訳なさそうに話し掛ける
「あのお客さん 申し訳ねぇですけど
ラジオによると夜から天気が荒れて明後日ぐれぇまで
船は出せそうにねぇんです
大時化の時にこのボロ船じゃ心許ねぇでさあ」
「分かりました 大丈夫ですよ
どうせ3日位は取材をしなければなりませんから」
ジョージは愛想笑いを浮かべて答える
その答えを聞くと船長は詫びを言いながらすまなさそうに船に戻っていった
本当に心根の優しい男らしい
ジョージは船長が船に戻ったのを見届けると
荷物を持ち 港の待合室に入っていった
鼠色に染まった空と荒れた北海の海がジョージの心をどこか不安にした
346 :
本当にあった怖い名無し:2008/02/27(水) 20:54:24 ID:tN2+d2vmO
トリップ統一しろよw
リレー小説なのか?
思わぬ反響にビックリした。
んー。じゃあ、暇なときにちょくちょくと。一応トリつけておく。
港の待合室は電灯も付いておらず薄暗い
待合室の中にはオレンジと青色のプラスチックベンチが規則正しく並んではいるが
うっすらと埃で覆われていた
数年間はしばらく掃除がされていないと断言できるほど室内全体が薄汚れていたのだ
その理由は待合室の片隅にある何年もカーテンが開けられた跡のない受付がそれを物語っていた
港から島に入るにはこの待合室から入る他ない
その為 ここの施錠はされていないのだ
島民の殆どは漁船を所有しており この港は利用しないが
不定期にくる連絡船の為 ほぼ鍵は開けっ放しなっているいる
事実上 待合室というより通り抜け通路の方が正しい呼び名かもしれない
それよりもジョージは今日の宿を探さねばならなかった
勿論 宿自体の予約はしているのだが
生憎、宿の連絡先を記した紙を会社のデスクに置き忘れるというミスを犯してしまった
幸い、待合室の目の前に小さな商店がある
島にそう幾つもない宿屋だ そこで電話番号を聞くか 場所を教えてもらえばいい
ジョージの心配事はそれよりも重い荷物を持ち歩かねばならぬ事だった
新しいお話のプロットがやっと終わりに辿りついたので、投稿させて
いただきます。
少し長い話になりそうですが、どうかお付き合いください。
それでは、始まりです。
決断者
四方に黒いフレームのついた視界。
青々と葉のついた木々に囲まれた、山道の風景。
その山道にせり出すように、奇妙に歪んだ形をした大木が、正面に映し出されていた。その脇に、
何か説明の書かれた木の札が立っている。
「はーい、みんな止まってー。カメラの方ばかり気にしなーい。ここに集まって、ちょっと
先生の話を聞いてね」
大木をバックに、ジャージの上下を着て、リュックサックを背負った、20代後半と思しき女性が
フレームの中に現れる。
長い髪を後ろで一つにまとめたその女性の顔立ちは、中々整っているが、全く化粧気の無いのに
加えその服装も相まって、とても野暮ったい雰囲気だ。
カメラは、その女性が、列を成していた20人程の子供たちに囲まれていく様子を映し出す。
子供たちの格好も、女性のものと同じく、動きやすい軽装だ。その子供たちは小学校低学年のようで、
顔立ちは一様に幼い。
「せんせーい、もう疲れたー。見学する神社ってまだなのー?」
どうやら画面の中の人々は、女教師と、その生徒達らしい。
その生徒達の中の一人、短く頭を刈り込んだ活発そうな男の子が、不満の声を上げながら、
小さく跳ねている。言葉とは裏腹に、まだまだ余力が残っていそうだ。
「小野田君、車にもどれば『須田神社(すだじんじゃ)』はもう少しだから、安心してね。
その前にみんなに聞いて欲しいことがあります。この木を見てくださーい。大きな木でしょう?」
「変な木ー」
また一人、肥満気味の男の子が、女教師の言葉に反応した。男の子のTシャツは汗に塗れていて、
額から頬を伝い、絶えず雫が流れ落ちていて、顔は真っ赤に紅潮していた。息苦しそうに上下する
肩から、相当疲労している様子がうかがえる。疲れからくる苛立ちに、とにかく何かにつっかかりたい
といった感じだ。
「そうね、西君。じゃあ君に質問です。君は、この木のどこが変だと思うのかな?」
女教師は慣れた様子でそれを受け流すと、男の子に聞いた。
「えー、だって、ひん曲がってるじゃん。家のじいちゃんのボンサイみたい」
「あら、西君のおじいちゃんは、素敵なご趣味をお持ちなのね。はーいみんな、今、西君が言って
くれたように、この木はこんなに大きくて幹もしっかりとしているのに、周りの木々と違って、
横にぐにゃーっとまがっちゃってるわね。よく松の木にはこんな立ち方をするものもあるけれど、
葉っぱを見てもらうと分かるように、これは松の木ではありません。これは、本当はブナの木でなんです。
周りの木も実は同じブナなんですよ? おかしいと思わない? この木だけこんなに曲がっちゃうなんて」
「先生、どうしてなんですか?」
利発そうな、瞳の大きな可愛らしい女の子が手を上げて発言すると、今まで興味なさそうに
そっぽを向いていた数人の男の子が、さっと視線をそちらに移した。
「はい犬飼さん、良い質問ね。実はこの木にはね、特別なお話があるの」
そう言って女教師は、生徒達の顔をぐるりと見渡した。
「この木は、こっちの立て札にもあるように『二天木(にてんもく)』って呼ばれてる、とーっても
昔からここに生えてる木なのよ」
「ニテンモク? 変わった名前ですね」
女の子がくすくすと笑うと、注目していた男の子達の顔も、うっすらと笑顔になったが、それは話の
内容に同意してのものではなさそうだ。
カメラは、そんなやり取りを写した後、太い根の部分から煽るように、そびえ立つ巨木の全容を映す。
幹周りが5mはありそうな太い幹は、真っ直ぐに天に向かうかに思えるのに、地面から1m数十cmの辺りで、
大きくその方向を横に曲げている。
「『二天木』という名前には、ちゃんと理由があるのよ。あのね、この山――来る前の社会の時間にも
教えました『星降岳(ほしふりだけ)』です――には、まだ日本が江戸時代の頃、大きな大きな、お化け
みたいな猪がいたそうです。その猪の名前が『二天』って言うの」
「オッコトヌシさまー?」
小野田と呼ばれていた坊主頭の男の子が、目を輝かせながら女教師を見上げる。
「そうね、もしかしたらそのぐらい大きかったのかも知れないわね。それでね、なぜその猪が『二天』って
言われていたのか、なのだけど・・・・・・みんな『宮本武蔵』は知ってるかな?」
「ガンリュウジマー」
「そうよ、小野田君。良く知ってるわね」
「正月に婆ちゃんちのテレビで見たんだ」
男の子は褒められたのが照れくさいのか、坊主頭を自分でぐりぐりと撫でまわした。
「宮本武蔵は『二刀流』――両手に刀を持って戦うことね――で有名なお侍さんで、小野田君が言った
とおり『巌流島』で『佐々木小次郎』というお侍さんと決闘をした、という話が有名な人ね。その宮本武蔵の号
・・・・・・そうね・・・・・・別の名前が『二天』なの。
先生がさっき言ったお化け猪ね、その牙が、片方だけすっごく長かったんだって。それがまるで、
大きいのと小さいの、二本の刀を持っているように見えたから、その猪は『二天』って呼ばれていたのだそうよ。
宮本武蔵もすごく強かったって有名だけど、その猪の『二天』も、やっぱりすごく強かったんだって。
では、この『二天木』がどうしてこんな風になってしまったのか、なのだけれど・・・・・・それはね、
猪の『二天』がその牙で大きな傷をこの木につけたからだと言われているの。だからその傷のところから
折れ曲がってしまって、今のような形になってしまったんですって。こんなに大きな木を傾けてしまう
くらいに『二天』の力は強いものだったのね。『二天』が傷をつけて曲げてしまったから、この木は『二天木』
と呼ばれているのよ。
じゃあ次ぎ、なんで『二天』は、この木にそんなに大きな傷をつけたのか? それはね――」
女教師が更に話を続けようと口を開きかけた時、しゃんという、いくつかの小さな金属のぶつかり合う、
透き通った音が響いた。
はっとして振り向く女教師と子供たちにつられるように、カメラもまた、その音を追う。
手ぶれが治まると画面の中央に、杓杖を持ち編笠を深くかぶった、すらりと背の高い黒衣の僧が映し出された。
「お気づきかと思いましたが、驚かせてしまったようだ。真に申し訳ないことをした。目しいております故、
何卒ご容赦いただきたい」
力強く通りは良いが、威圧感のない声だ。
「拙僧、この御山の御須田様に用向きか御座いましてな。重ね重ね申し訳ないが、どうか道を空けては
くださらぬか」
笠で容貌はわからないが、声はまだ随分と年若い。
「・・・・・・あ。こちらこそすみませんでした。みんな、ちょっと脇に寄ってくださーい」
驚きから立ち直った女教師が、未だ目を丸くしている子供たちに指示を出す間も、カメラは僧の姿を捉え
続けている。
「珠光(じゅこう)様でいらっしゃいますね? 初めまして、私、須田の者で御座います。差し出がましいか
とも思いましたが、お迎えに上がりました」
カメラの背後から、今度は鈴の転がるような、慎ましやかな声がした。
カメラが振り向くと、そこには画仙の手による日本画から抜け出してきたのか、と思われるほど美しい、
巫女姿の女性が、折り目正しい姿勢で佇んでいる。
「・・・・・・きれい・・・・・・」
犬飼という女の子が思わずもらした声が、その場に居合わせた人々の心の声を、代弁しているようだった。
子供たちは突然の僧の登場とは別種の驚きに、ざわつくことも忘れて、丸くしていた目を更に大きく
見開いていた。
カメラのマイクが拾うのは、ただ風の音と、蝉の声、そして遠くに聞こえる鳥のいななきだけとなった。
巫女は、道の脇に立つ女教師と子供たち、そしてカメラに軽く会釈をすると、僧の傍らに静々と歩み寄り、
空いているほうの腕の肘にそっと手をかけると、僧に向かって「参りましょう」と声をかけた。
僧は無言でゆっくりと頷くと、盲目とは思えぬ力強い足取りで歩み始めた。僧が歩を進めるたび、しゃん、
しゃん、と、杓杖の先に付いた小さな金属の輪が音を立てる。
その歩みに迷いは無かった。むしろ目が見えている巫女の方が、それに付き従っているようにも見える。
カメラは、山の上方へと登っていく、まるで長年そうしてでもいるといった風情の二人の姿を追い続けた。
「・・・・・・あら、先生、どうされたんですか?」
ふいにかけられた声にカメラが反応して、画面が大きく横に振れた。
先程から子供たちに話を聞かせていた女教師が、カメラに近づいてくる。頬が紅潮しているのは、
子供たちと同じだった。予想外に美しいものを見たときの反応に、年齢の差はないらしい。
その顔に、微かに疑問の色が浮かぶ。
「・・・・・・先生?」
不思議そうにカメラを覗き込む女教師のアップ。
「先生――泣いてる・・・・・・の?」
水無瀬市立 姫宮(ひめのみや)小学校 野外学習授業撮影フィルムより
以上です。
重い荷物を持ちジョージは店の扉を開けた
店の中は決して清潔とは言えない
種類こそそれなりにあるものの品物は埃をかぶり乱雑に棚に陳列されていた
この店は日用雑貨以外にも椅子とテーブルが並べられ
簡単な休憩ができるようになっている
ジョージは荷物を傍らに置きそこに腰を掛け
店に入った時もジョージに反応せず ただテレビを見ていた女主人を呼んだ
ジョージの呼びかけに女主人は面倒くさそうに立ち上がるとカウンター越しに注文を聞いた
「あの ビールと何かつまむものを…」
「あいよ」
感情が一切感じられない声だった
数分もしない内にテーブルにジョッキのビールとつまみの揚げ物のような物が運ばれてくる
ジョージはまずビールに口を付け喉を潤そうとした だが
生ぬるくどことなくぬめったジョッキに注がれたビールなど美味いはずもない
つまみの揚げ物にも一応口を付けるも得体の知れぬ食感にこれ以上食は進まなかった
ひと呼吸おき店を見回した後 改めて女主人の顔をそれとなく盗み見た
大きく見開かれた目 厚い唇 そして脂ぎった髪
その顔はどこか両生類を思い浮かべる
しばらくしてジョージは注文した物を殆ど残し 席を立った
会計をすます前に 女主人に
宿の場所を尋ねた
ここからそう遠くない林の中にあるらしく
十分歩いていける所のようだ
会計をすます途中奥にある半開きの冷蔵庫にふと目をやる
汚れた半透明の容器の中に見慣れた物
何かの手首だった
こみ上げる吐き気 人間の手首なわけが無いと自分に言い聞かせるも
だがさっき食べた揚げ物は一体何の肉なのか
釣りを受け取るやいなやジョージはすぐに店を後にした
口から湧いてくる胃液を抑え
重い足取りで薄暗い道を一歩一歩進んでゆく
後ろから聞こえる波の音もジョージの不安を駆り立てていった
「くっ・・・・このっ・・・・・」
2日目。
雨がテントの屋根を叩く音の中、携帯ゲーム機と格闘する。
通信対戦で相手は立川だ。
「うおっ・・・そう来たか・・・・!」
通信対戦を楽しんでいると・・・・・。
『ザ・・・・ザザ・・・HQよりケルベロス部隊遊撃第二分隊隊長立川少尉、応答せよ。送れ』
無線通信が入った。
立川がポーズキーを押し、同時にこっちの画面も停止する。
立川は無線機の送信スイッチを押し、しゃべり始める。
「HQへ、こちらケルベロス部隊遊撃第二分隊隊長の立川少尉です。送れ」
『立川少尉、立川大佐より作戦指令があります。周波数を・・・・』
HQの指示した周波数に立川は無線機を操作する。
「大佐、お待たせしました」
『少尉、休暇明けと共に基地に帰投せよ。次の命令がある。次の命令は・・・・』
「はぁ!?そんなの海軍にやらせとけよ親父!!・・・・し、失礼しました。ですが大佐、我々は陸軍です」
どうやら、立川が軍隊の階級を一瞬忘れるほどの命令だったらしい。
ま、近場で聞いていた俺も一瞬呆気に取られた。
『確かに、管轄は海軍だ。だが、中国大陸にもゾンビが侵攻しパニックに陥った中国大陸からの密航者が増え、
更に海岸線の敵性国家は海軍を送り始めた。同様に台湾も防衛に徹する羽目になっている。同盟国として、
台湾及び中国大陸海岸線エリアの友好国家への支援にも人員や艦船を割かねばならなくなったらしい。
で、海軍の幕僚長が泣きついてきたのが陸軍だ。送れ』
「了解しました。休暇明けと共に撤収し、帰投します。送れ」
休暇明けと共に迎えのヘリに乗り込み、基地へ帰還する。
現在、ゾンビの新規発生はペースダウンし各都市や基地は防衛に徹している。
で、次の俺たちの任務だが・・・・・・。
今、俺達は大海原の上にいる。
中型の船舶の船団を守る護送船団の様な格好で政府が徴用した民間の船に乗り込んでいた。
この船団に危害を加える船は敵と判断して交戦せよと言うのが新しい命令だ。
だが、この命令はかなり重要だ。
なんせ、日本人及び日本居住の外国人(反日主義者を除く)の食糧供給に関係するからだ。
『テロリストがお出でになったぞ』
立川の声が無線越しに聞こえた。
無線で相手の船に警告を発しているのか、しばらく通信が無かった。
『総員よく聞け。相手からの応答はない。第二警戒距離を越えるまで攻撃は禁止する』
その言葉の直後だった。
シュルルルルルッ・・・・!!
複数の煙幕弾が船団に向かって撃たれた。
『ったく、環境テロリストの海犬めが・・・・・・』
立川がぼやく。
『ここで捕鯨を中断すれば、国民が飢えてしまう。当然、我々の食事の質も下がる。
・・・・・我々の食卓を守るのだ!攻撃開始!!』
海軍さんのように威嚇射撃やら艦砲射撃やらで追い払うなんて面倒な真似はしない。
なにしろ、俺達は日本国でも派手な陸軍だ。
敵は全力で排除せよと教わっている。
ホーミングモードのロケットランチャーやスナイパーライフルでの徹底した集中攻撃がテロリストである海犬の
船団を一隻ずつ、確実に沈めて行く。
当然ながら相手側も反撃してくる。
捕鯨船団の船は頑丈だが、こっちはスピード重視で装甲が薄い民間船だ。
早めにケリをつける必要がある。
>◆XjFVYxldbM さん
エトランゼの来訪譚。雰囲気があって素敵です。
>中二病作家さん
お久しぶりです。スケールの大きなお話、続きが楽しみです。
こうやってレスできるのはちょっと幸せですね。
>>355 より、続きです。
1
白い指を見ていた。
夏月の清輝に浮かび上がる、か細く美しい曲線を描く――
――白い指を見ていた。
同様に、雪白の横顔。
頬の柔らかな稜線を境に、月光と、夜陰がせめぎ合っている。
まるでどちらが、彼女の整麗な横顔を独占するのに相応しいか、争い合ってでもいるかのようだ。
それを、心ともしない横顔。
ただ機能的に、短く切り揃えられた黒髪。暗闇に溶け込むかと思えるほどの深黒。なのに、
夜の水面のように艶やかに光る。伸ばせばさぞかし見栄えがするだろうに。
そしてその双眸。
切れ長の鋭い輪郭の中心で、全ての色彩を吸い込んでしまいそうな黒瞳が、しっかりと前方を見据えている。
真っ直ぐに伸びた視線は、そのまま彼女の性分を表していて――
――何度、この横顔を見つめただろうか。
昼夜を問わず、オレは彼女を見続けてきた。
顔だけではない。その一挙一動を、呼吸の強弱、瞬きの間隔から筋肉の強張り、果ては血流の速さまで。
オレは彼女を見続け、そして、知ってきた。
全ては“その瞬間”のために。
「来るぞ」
小振りで少し薄いが、瑞々しい丹唇が、夜目には分からないほどに動く。
虫の羽音よりも微かに、空気が震える。
だが、オレにはそれで十分。
「ああ」
彼女に吐く息よりも小さな声で返す。彼女にも、それで十分。
「もう次はないぞ、樹(いつき)」
しくじったつもりはなかった。
「わかってる、紗枝(さえ)」
出会い頭のことだったが、オレは確実にヤツの右目を撃ち抜いていたのだ。
眼窩から侵入した弾丸は、ヤツの脳を完全に吹っ飛ばしたはずだった。
「眉心」
「オレに譲れ」
「第一に、私の位置からの方が狙いやすい」
細いが、断固とした主張。
「第二、それにお前は、一度仕留め損なっている」
痛いところつくなぁ・・・・・・。
「第三、お前は昨日まで熱を出していた病人だ」
「ちぇっ、わかったよ。左目」
「承知」
――白い指が、用心金にかかる。
するりと銃身が上げられ、瞳孔が焦点を合わせるために、きゅっと小さく締まった。
呼吸は今までより更に小さく、短く、ほとんど止めているようなものに切り替わる。
オレも、気配を殺す呼吸に入る。
地響きが、地面を伝い、俺たちが潜む巨木の枝の上まで届くのを感じる。
それは、徐々に大きくなっているようだ。
遠くに銃声。二、三、と続く。距離はおそらく一町(約110m)ほどか。
「早いな・・・・・・」
発砲の間隔のことだろう。
「怖いんだよ」
オレには、分かる。
あれは“ただの猪”ではなかった。
先刻、獲物を探すために個々に散開したとき、オレは獣道を横切ろうとしている奴に出くわした。
その時のことを思うとぞっとする。
何かに狂ったような燃える目――それは、飢餓に苛まれた獣の目だった。
一丈(約3m)はあろうかという巨体には、無数の銃創が見てとれた。鋭く刀のように突き出された、
二尺(約60cm)ばかりの大牙は、右側の牙だけが、さらにもう一尺ばかり長い。歩く度に周囲の
木立は揺れ、葉がざわめく。
見た瞬間に分かった。
――『二天(にてん)』だ!
話には聞いていたが、実際目にするのは初めてだった。
二天――その特異な牙の有り様から、伝説の剣豪の号を、通り名として持つ凶獣。
この星降岳(ほしふりだけ)で猟を糧として生きる者にとって、忌まれるべき名。
数多くの狩人が奴の牙にかかり、命を落とした。
なぜ、こんなところに!?
確かヤツの縄張りは、もっと山の奥、沢の湧きだす辺りだったはずなのに・・・・・・。
血塗られた多くの悲劇と共に、畏怖をもって語られる山の強者。
――二天。
そいつと、目が合った。
瞬間、やばい、と感じた。その時奴が、確かに笑ったように感じたのだ。
――嫌な笑いだった。背中に冷や汗が噴出し、体中に鳥肌が立った。
横目に、じろり、と睨まれただけで、オレは何にも考えられなくなった。
仲間への連絡用の、野鳥の声に似せた『呼び笛』を吹くことも忘れ、魅入られたようにその場に立ち尽くす。
距離は三丈。
二天はオレを認め、荒い鼻息を吐き出し、ぶるる、と体を小刻みにふるわせた。足元の木の葉が舞い上がる。
剣呑な光を帯びる、獲物を狙う血眼。
狩人であるオレと、獲物であるはずの二天の立場は、完全に入れ替わっていた。
伝え聞く話とは比べ物にならない圧倒的な迫力。その凄みにオレは、過去に打ち倒された猟師達と同じく、
全身を絡めとられていた。
指の先すら、ぴくりとも動かない。
以上です。
――『本当に危険だと思った時、頼りになるのは日頃の鍛錬だけだ。何も考えずとも
こなせるようになった動作だけが、お前の命を救う』
恐怖に立ち竦むオレの頭に、ふいに狩りの師である「修吾(しゅうご)」さんの声が蘇った。
――バネに弾かれたように、反射的に体が動く。
背負った猟銃を固定した皮紐を、右肩をずらし、落とす。銃底が地に触れるより早く、
左手で銃身をつかむと、腰の刀を抜くような動作で銃を持ち上げる。開いた右手の平で
撫でるように銃把を探り当て、銃底が右肩脇に収まると同時に、銃身を右肩を起点に
引き下ろし、銃口を前方に向ける。
真っ直ぐに、化生がごとき猪に向けて。
右人差し指は用心金――引き金にはあてない。
なるほど――。
オレは、自分でも驚くほどに素早く、射撃体勢を取っていた。
――こういう、ことなのか。
二天は一瞬戸惑ったように見えた。無抵抗で餌になるだけのはずのオレが、何やら不穏な素振りを
見せたかと思うと、いきなり銃口を向けたのだ。頭に、ちらりとでも「危険だ」という思いでも
過ぎったのだろうか。
二天の目が、今度は怒りの色に濁る。まるで危険を感じたこと自体に、自尊心を傷つけられた
とでもいうように。
その恥辱を雪ぐためか、巨大な牙で、生意気な人間を串刺しにしてやろうと、二天は正面を向こうとする。
目蓋がピクピクと痙攣し、真っ赤に充血した目が、零れ落ちそうなほどに見開かれた。
常態であればとても平静を保てなかっただろう、敵意剥き出しの凶眼。
しかし、銃を構え終えたオレから、恐怖はすでに去っていた。
射殺すように見開かれた、獰猛そのものといった二天の目を見据えて、オレは思った。
――いいぞ、的が広がった。
銃口から伸びる殺意の射線は、指で穴を空けた障子から闇夜に漏れ出す光のように、銃口と、
ヤツの右目を結んだ。
正面から眉間に撃ち込むのが最良。それは分かっていたが、真っ向から対峙すれば、
突進を許すことになる。
外さない自信はあった。が、万が一撃ち損じれば、オレは二天の牙の餌食になるだろう。
『自らの有利な条件を捨てるな』
――その通り。
『獲物は一撃で仕留めろ』
――態勢は十分。
煙のようにぼやけていた予想弾道が、はっきりと意識できた。決して直線ではない。それは微妙に
上下左右に歪んでいる。
『弾は飛ぶのではない。波打つ空の海原を転がるものと心得ろ』
――今、その海は凪いでいる。
ゆっくりと引き金に指を移し、体の内側に絞り込むように引く。
――外さない。
撃鉄が火打石を弾き、一瞬の沈黙の後、薬室に仕込まれた火薬が炸裂する。生物を殺傷することのみを
考えて作られたものの織り成す、必殺の連鎖。
反動で右肩が押し込まれる。弾道が鈍らないように、肩にかかる衝撃を、胸、腹、ひいては
足の筋肉を使って吸収し、地面へと逃がす。
息吹いた弾丸が、雷光を伴って銃口から射出され、刹那――二天の右目に到達する。
山中に、二天の絶叫が木霊した。
オレの弾は完璧に二天の右目を捉え、生卵のように弾けさせた後、頭部の奥深くに食い込んだ。
これ以上ない手ごたえ。二天は、そのまま絶息するしかなかった――
――そのはず、だった。
先の絶叫に倍する、腹の中の内臓までもが痺れるような咆哮。
オレは獲物の目の前だというのに、あっけにとられて、その場に立ち尽くした。二天は動きを
止めるどころか、その場で滅茶苦茶に暴れ始めたのだ。
――なんという生命力。そして肉体の頑強さ。
牙の触れた木々は、斧を打ち込まれたように深く抉れ、巨体がぶつかれば、みしりと嫌な音を
立てて傾いだ。地面は嵐の後のようにぐちゃぐちゃに崩れ、辺りに土や、根ごと蹴り出された草が飛び散る。
『手負いの獣程、危険なものはない』
――ましてやそれが、二天ならば。
痛みでたがの外れた本能の暴走。それには加減がない。その痛みが治まるか、生命が尽き果てる
までそれは続く。
目の当たりにした二天の狂乱の、余りの凄まじさに、挫けそうになる心を叱咤するがごとく、
オレはきつく唇を噛んだ。
ぶつりと皮の破ける感触がして、口の中に血の味が広がる。
――信じられない。位置、角度ともに完璧な射撃だったのに・・・・・・。
二射目を放つべく、腰の胴乱(ポーチのようなもの)から皮製の早合(弾と火薬を一つに筒につめたもの)
を取り出し、注ぎ込むと、さく杖を使って衝きこむ。
確実に仕留めたという予想が外れたことに、オレは動揺していた。
一瞬反応が遅れ、気がついた時には、二天の牙が眼前に迫っていたのだ。
咄嗟に半身になり飛び退ったが、ほんの少し遅い。
剛風と共に着物の帯紐の上辺りを舐めるように牙が通り過ぎ、脇腹に衝撃が走る。そのまま草むらに
倒れこみ、上体を起こして見れば、獣皮の上着の脇腹の辺りは、下の着物諸共ばっくりと裂け、
赤く染まっていた。
二天は地響きを立て、枝葉をそこら中に撒き散らしながら、そのままの勢いで走り去っていく。
流石の二天も、すぐさま二撃目を加えてくる余裕はなかったらしい。
慌てて傷を確認すると、そう深くはなかった。ほっと安堵の溜息が洩れる。右目への一撃が、
オレとの距離感を狂わせたのだろう。
あの二天と対峙して、この程度の傷で済んだのなら、僥倖と言えた。
しかし――。
「大丈夫か!?」
騒ぎを聞きつけ、木々の間を縫うようにしながら、草むらを掻き分けて現れたのは、紗枝だった。
だが、オレは心配そうな紗枝の声も無視して、二天の走り去った後をじっと見詰めていた。
『手負いの獣程、危険なものはない』
――そうだ。
『危険で・・・・・・それに何よりも――哀れだ』
――必ず、仕留める。
以上です。
てゆーかゾンビ・・・
ようやく復活…
投稿しようと思ったら壊れてましたよ、はは
しかし…、皆さん凄いですね
自分なんて足元にも及ばないです
…うん、自分のはダラダラやってるだけですしね
まあ、以前書いたものを雛形にしているので、それを覚えている方ならばどういう風に終わるのか、は予測できると思います…
ガラガラとけたたましい音が鳴る
糸で吊るされたベルが、急激な振動を受けて音を大きく響かせる
「はぁ・・・」
ぺとり、と糸をガムテープで壁に貼り付ける手を休め、溜め息をこぼした
全ての分岐路に、このような仕掛けが施されている
糸で縛られたベルやら鈴やらが、足を引っ掛けた際に鳴り響く。たったそれだけ
注意深く見れば回避することの容易い罠でも、奴らには十分通用する
段差以外では足を上げるということをしないため、糸に足をひっかけて転ぶのだ。その上、
鳴り響く音がその位置を知らせてくれる。まだ潜んでいるかもしれないこの状況下では、この上なく便利な仕掛けだった
周囲をぐるりと見渡す
採光窓より差し込むおぼろげな日差しが、通路をぼんやりと浮かび上がらせていた
「・・・もう良いんじゃないか?」
返事は無い
振り返る
髪が風を孕み、ふわりとひるがえった
先ず視線が引き寄せられるのは、夏物の、淡い水色のワンピース。ベンチに横になり、日差しに眉を顰めつつも眠っている様
生地の薄いワンピースが重力に引かれ、その体の線を浮き彫りにしている。裸足が手すりを乗り越えてはみ出しており、そのせいか、スカート部が殆どめくれあがってしまっている
未だ下着売り場を発見していないため、かなり危険
次に視線が向くのは、1つ横のベンチで眠りこけている青年
少女とは違い、背もたれに身を預けて眠っている――どことなく、天在する神を崇める信徒のよう
いつもと変わらない、灰色のスラックスに、すっかり色の褪せたシャツという出で立ち
この服が洗濯してあることだけを切に願う――
再び溜め息。ベンチに寄り、少女の服を整える。そして、離れ――全力投球
ガムテープが鈍い音を立てて青年の頭に命中
がくん、と青年の頭が傾く。直後に放たれる文句
「――だからさ、もっとマシな起こし方してよ」
欠伸を噛み殺している
「だったら寝るな。俺にばっかり仕事押し付けんじゃねーよ」
「いや、僕に任された分は終わったからね?」
「終わったなら手伝え」
――カラン
「そんな無茶な。そもそも――」
「や、待て」
彼女の視線が、日の当たっていない廊下へと向けられていた
青年の視線がそれに追いすがる
今しがた、仕掛けを終えたばかりの通路に
はっきりと分かる、歪な影が在った
荒い息遣い
左腕の服が水分を含み、その重みを増している
ふー、と誰かが息を吐く
「噛み千切られたとしか思えないね」
白ずくめの男が左の二の腕を眺める
皮膚が歯型状に裂け、本来その内にあるはずの肉をごっそりと失っている腕。そこからは、鮮血に彩られた骨肉が覗いている
その傷口からは、未だ止まらずに血が滴っていた
「致命傷じゃないの?」
OL風の女がくるくると包帯を巻き始める
巻かれた包帯は、白を塗りつぶすように赤に彩られてゆく
「――何があった?」
最初の男が、じっと中学生らしき女――いや、実際は高校生らしいのだが――を見つめる
女は、どす黒く染まった制服に身を包んだまま、ひたすら震えていた
「何があった」
ひっ、と微かに声が漏れる
ふぅ、と男が溜息をつく
「よくあるパターンだと」
彼女の声が、やたら響く
「噛まれたら、感染する、ってことになるな」
「監禁してみようか」
白ずくめの男が賛同する
「――そんな空想じみたこと、あるわけないだろう」
サラリーマン風の男が、彼女を睨みつける
「いや、噛まれたことで実際何があるかわからないしね」
白ずくめの男が上を見る
吹き抜けは最上階まで達しており、天井部にはガラスがはめ込まれていた
「そもそも、奴らは本当に噛むのか?」
「だとしたらあの歯型は何さ。どうやったらあんな傷が出来るわけ?」
「何らかの事故、ということも考えられるだろう。あれほどの怪我――誰かが看ているべきだ」
「ははっ、それでゾンビが増えたら二の舞だよ。そもそも単なる事故なら――」
白ずくめの男が、視線を女に合わせる
「――何で、その娘は何も喋らない?」
女は床に目線を下ろし、誰ともあわせないようにしている
その右手は、ずっと左手首を握り締めていた
「そもそも、噛まれると本当に奴らになるのか? 奴らはただ喰っているだけだろう?」
「喰っているだけ? 単体だとあっけなく殺られる奴らが、どうやってここまで増えたと思ってる?
そもそも――どうして貴方は、ここに逃げ込んできた?」
「それは、奴らが――」
「襲ってくるから? それだけなら、近寄ってくるのを地道に殺して―正確な表現かはわからないけど――死んでるし――いけばいい
貴方がここに逃げ込んできたのは、喰い殺された人が立ち上がって別の人を襲っているのをみたからじゃないのか?」
「――いや、」
「そもそも、どうして奴らは“喰う”ことをする? 猟奇殺人とでも言うか? 喰うなら喰うで、どうして全部喰わない? いや、なぜ奴らはここまで増えている?」
「それは――」
「僕が見たのは、喰われた人が起き上がって他人を喰い、それが連鎖していく光景だ。喰われて無い人が奴らになったり、
喰われた人が平常だったのは見てない。だから、喰われる――いや、噛まれると奴らになると思っている。だからこそ、奴らが来ない、この場所に来たんだ」
場を沈黙が支配する
「――論点、ズレてね?」
彼女がぽつりと呟いた
ぐっ、とお茶を飲み干す
「俺はその男に賛成だ。看護したいなら、あんたがすればいい」
「なっ――、こんな大怪我だぞ、見捨てるのか!?」
「俺も同じ光景を見てるんでね。原因はそうとしか思えない。俺はみすみす命を危険に晒したくない」
まだ死にたくないもんでね――最後にそう呟き、空き缶を投げ捨てる
耳障りな音が響く
サラリーマン風の男は、賛同者を求めるように周囲をぐるりと見渡す
その視線が、OL風の女でぴたりと止まった
「わ――私は――」
「反対、するのか」
「――私は――」
「賛成、してくれるよな?」
「――はい」
OL風の女が首肯した
「おいおい、脅すのは駄目なんじゃないか?」
青年が割り込んだ
男の目が、青年を見据えた
「おっと、僕は反対させてもらうよ。同じ光景を見てる――って、二番煎じだけどね」
「――俺も、反対だ」
最初の男がサラリーマン風の男を見ながら言った
「くそっ、どいつもこいつも――勝手にしろ!」
「隔離、させてもらうよ」
「お前らと同じ所に居るのは、こっちから願い下げだ!」
サラリーマン風の男が喚く
「俺は見捨るものか! お前らとは違うんだ!」
誰も返事をしなかった
男の罵詈雑言だけが、その場に響き渡った
――エゴ、ねぇ
誰かの呟きが、微かに響き渡った
乱文失礼しました…
>372
ありがとうございます。より良いお話になるように、がんばります。
>373
すみません・・・・・・また言われてしまいました。
ゾンビ小説スレだということ、忘れたわけではありません。
ただ、主役登場まで、しばし時間がかかりそうです・・・・・・。
>emptyさん
なにやら落ち込んでいらっしゃるご様子。>1にあるルール以外に
守るべきものはないのですから、のんびりお書きになれば良いと
思いますよ。続き、楽しみにしております。
>>370 より、続きです。
オレたちは、この水無瀬郷にある里山――『星降岳(ほしふりだけ)』という――に住む猟師だ。
総人口150人程の大きな『黒は璃村(くろはりむら)』という集落を御山の中腹に構え、山での猟と、
鉱石の採掘、そして銃器の製造を主な糧として生きている。
猟師の数は、今は大体30人くらいだ。
猟による獲物は、村の収入源として大きな割合を占めているので、従事する人間の比率は高い。
銃器の製造、修理、調整をする人間はもとより、鉱石掘りの連中も、オレたちの使う『火打ち石式猟銃
(フリントロックライフル)』に必要不可欠な『しょう石(火打石)』や鉛、鉄等を提供してくれる。
日の本の国では良質のしょう石が取れることは稀らしい。それもお殿様がここに銃器製造工房を建てること
を許して下さった理由の一つでもあるのだそうだ。
そんなものなので、ほぼ全ての村民が、なんらかの形で猟に関わっているとも言える。
そして、最前線で直接獲物と対峙する、重要で危険な役割を担うのが、オレたち“猟師”だ。
オレたちの村では、猟師は『猟隊』と呼ばれる5、6人程の集団で行動し、互いにその季節、時間に合った
鳥の声に似せた音の出る『呼び笛』で連絡を取り合いながら、狩りをする。
大きな獲物を狙う際には、猟隊内の各人の役割も、予め決められている。
先行して獲物を見つけ出し、仲間の配置を待って一射目を行う『開弾者(スターター)』
一射で仕留められなかった獲物を狙う『導弾者(ブリンガー)』また彼らは二射目で、獲物の逃走経路を
限定する事を念頭においた射撃をする。
――そして最後に、追い詰められた獲物を仕留める『決弾者(フィニッシャー)』
猟隊において最も射撃技術に秀でた者が、この役割を担う。
ハナタレのガキの頃から、村で一緒に過ごした幼馴染で組んでいるこの猟隊では、オレと――紗枝が、
その役目だった。
決弾者は外さない。外してはならない。
決弾者が放つ銃弾は、必ず獲物を地に倒れ伏せさせる。
『だからこそ――決弾者と呼ばれるのだ』
そう教わって育った。
なのにオレは――。
夜鷹の声に、オレの意識は引き戻された。
――呼び笛。
首尾良くこの獣道に追い込んだという合図だ。あいつら、きっちりと仕事を果たしてくれたらしい。
オレたちは、道の脇に立っていた大木の、太い枝の上に陣取っていた。
いくら太いといっても枝の上では、態勢は安定し辛い。射撃の精度は当然落ちるだろう。
が――相手は手負いの二天。
じくりと脇腹の傷が痛む。奴の牙の恐ろしさは、身をもって思い知った。
だから――安全を優先して、地に伏せるのはやめた。臆病な選択かもしれないが、命あってのものだねだ。
地響きは、先程から更に強くなってきている。
二天の姿が見えるのも――
――「来た」
歯の隙間から洩れる吐息のような、紗枝の声。
緩やかな下り坂になっているこの獣道を、土砂崩れと見紛う程の勢いで、二天が駆け下りてくるのが、
木々の合間から見えた。
距離は二十丈。
ぴたりと紗枝が、奴に照準をとったのを感じる。
指が引き金にかかるが――まだ撃たない。
紗枝は向かってくる獲物は、ギリギリまで引き付ける性分だ。
それにこれは本人も気付いていないかも知れないが、紗枝は引き金を引くときに、ほんの少し眉根を
寄せる癖がある。
その癖はまだ見られていない。もしかしたら、一瞬の後に倒れる獲物の姿が、脳裏に浮かんで
いるのかもしれない。
その時の表情は、苦悩そのものだ。
ただ眉根をわずかに寄せるだけ。少しも大袈裟なものではない。
けれどオレは、その顔を横目に見る度に、いたたまれない気持ちになる。
きっと紗枝は――狩りが大嫌いなのに違いない。
紗枝が口にしたわけでも、態度に表したわけでもないけれど、オレはそう思う。
それが本当かどうかを知ることは、きっと一生ないのだろうけれど。
――オレは照星の向こうに、二天の左目を捉えていた。
こちらの位置を覚らせないよう、明かりはない。が、辺りを煌々と照らす満月の光で、狙いをとるには
十分だった。
日のあるうちに片を付けたかったが、二天を狩るのはそう容易なものではなく、ついに現月となってしまった。
月明かりに恵まれたのは、不幸中の幸いだ。
星月の下、奴は体中から血を噴出させている。その動きこそ鈍ってはいないものの、潰えていく命の翳り
――死の気配が、全身から漂っていた。
既に二天はその身に致命傷を負っているのかもしれない。
放っておいても、おそらく長くはあるまい。
――だからこそ、今。
仕留めなくてはならない。
以上です。
何とか終止ほのぼのといけないものか。そんなノリで眠れなくて暇だから適当に。
>>338の続き
ゾンビになってから早くも一週間。媒介変数表示は未だに理解できないが、とりあえずゾンビに関して色々と解ったことがある。
彼ら―――というか俺ら、か―――にも仲間意識というレヴェルではないが近いものがあるってこと。だから共食いをしないのだ。
あとは生前の習性は色濃く残るってこと。何となく俺がお辞儀すると大半は何の反応も無かったが一人(一体、か?)だけ律儀に深く返してきた。
そのゾンビはその後、俺の幼馴染に襲いかかろうとしてたから2Lのポカリスウェットで殴って退治したんだけどな。まぁ、仕方ないこったな。
んー・・・しかし、つくづく思うんだけど、やっぱり俺って異質なゾンビじゃね? だって今日の朝飯、サラダとトーストだぜ?
「変だと思うよなぁ、タロウ? しかしお前はゾンビになってもお手が出来るんだなー。関心関心。お手、おかわり。よしよし、いい子だ」
おや、ペットフード食べてないな。もうシーザーは飽きたか? じゃあ、今度はサイエンスダイエットにするか。
それにしても暇だな。そうだ。ビリーズブートキャンプやろうか。そうしよう。
DVDセット完了。さぁ、汗かくぞー! っと、風呂沸かしておくか。
「ワン、トゥー、スリー、フォー、ワンモアセッ!」
んー、久しぶりにやると楽しいな。ん? タロウもやりたいのか? って、そんなわけないか。
あ、これ終わったらタロウも一緒に風呂入ろうな? お前、最近洗ってないから少し汚いぞ。
お、嬉しいか。尻尾振りすぎるぐらい? なら良かった。しかし、お前は可愛いなー。
よし、じゃあ、入ろうか。
「ふぅー・・・」
やっべぇ。マジで風呂って良いわ。炭酸ガスのバブで疲れも取れる半身浴だー。
・・・風呂で安らぐゾンビ。何と言うシュールな構図だ。この構図を想像する人間なんて絶対居ないな。
居るとしたらよっぽどの馬鹿か、よっぽどの天才だ。馬鹿と天才は紙一重らしいし。
あ、そうだ。生きとめて潜ったら何秒持つかやってみよー。・・・その前に俺呼吸してねぇよ、今。
あー、きっと何秒間でも潜れるんだろうな。
さて、もう半身浴は十分楽しんだ。あとは体洗ってシャンプーしたら出ようか。
こらこら、じっとしてろって。そうだそうだ。よし、お湯かけるぞ。ザブーン。
「ぷはー。良い湯だった。お風呂っていいねー、タロウ」
さてさて、その後も俺が尻尾振りまくっているタロウ(犬種:ゾンビ犬)と戯れていると
「あ、あの・・・」
と、後ろから声がした。んー、話しかけてくる人なんて珍しい事だなぁ。詠嘆のけりを使えるぐらい詠嘆だなぁ。んー。
生前親しかった近所の人とはゾンビになった今でも会話はするけどな。最初は誰も近付いて来なかったけど街中に買い物行くのが良かったのかも。
「誰でずが? っで・・・あぁ、お前でずが」
そこに居たのは俺が助けた幼馴染が立っていた。幼馴染と言っても俺より一つ下の奴なんだけどね。その名前を桐生薊と言う。
「この前は助けてくれてありがとうございます、ってお礼したくて・・・。あっ、押しかけるように来てしまってごめんなさい。迷惑、ですよね?」
「何ども思っでないがら大丈夫だ。落ぢ着゙げ」
この桐生薊。厚縁メガネをかけ、どんなに親しくても必ず敬語を使い、何よりも加害妄想に襲われるのが特徴だ。
俺が幼稚園年長、薊が幼稚園年中の頃から交友関係が始まったけど、その時から凄まじかったと記憶している。
「でも良かったです・・・立花さんが、やさしいゾンビで」
「俺どじでば、ゾンビになっだ時点で良ぐないんだげどな」
俺は出来れば人間でありたかったよ、うん。あぁ、ついでに立花っていうのは俺の苗字である。
「あっ・・・そうですよね。ごめんなさい・・・私、何も考えずに傷つけてしまって・・・」
「あー。大丈夫だがら気゙にずるな」
と、俺はそこである事に気付いた。ゾンビの呻き声が多数遠くの方で聞こえる。リオのカーニバルをある意味で超える行列が近付いている印だ。
「マズいな・・・。薊、家にあがれ。このまま屋外を出歩いでいるどギゲンだ」
「ふぇ!? そ、そんないきなり・・・わ、私、こ、こここ心の準備が・・・」
「いやいや、ぢょっど待で。何で心の準備がいるんだよ」
続く・・・らしいよ
まあ俺もゾンビになった時のためにゾンビの動き方とか行動パターンを研究したりしてるが
実際、
>>338さんの描写の通りなのかもな。
映画じゃ十把一絡げに同じような動きしてるゾンビたちだが彼ら一人一人の頭の中では
それまでの人生が延々と走馬灯のように駆け回り続けているんだと思う。
じゃあ自分はどうなのか、というと朝起きて毎日同じ行動、顔洗ったり髭剃ったり
コーヒー飲んで時計見て慌てて家でて、、、出勤しても前の日と変わらない仕事、、、
家に帰ってもメシ喰って酒飲んで風呂入って2ちゃん覗いて寝る、の繰り返し。
ゾンビになってあちこち徘徊してたほうが楽しいかもな。
つまりは
>>338さん頑張ってね、wktkしてるよ、それからもう少し気の利いたハンドル作れよと。
>>380 ゾンビ小説スレだと言う事を忘れて、ノベルさんの作品に没頭していた俺がいます
>>380 ノベルスレ氏の話の面白いところは、ここからどうゾンビが
絡んでくるかという予測ができないとこなんだよなぁ
ところで、水瀬という地名からして、今回の話って、前回の話の
少し昔の時代設定ですか?
>>386 イイヨイイヨー、ゾンビが出てくるのに乗りのいい話って好きです
GJ!
>>381 水を差して申し訳ないが、説明文の箇所にかなりの間違いがあるので
ちょっと、説明しておくよ。
>>『火打ち石式猟銃 (フリントロックライフル)』
ライフルとは、銃そのものを指すのではなくて
銃の種類の中でも、銃身に腔線(ライフリング)が施された銃を指します。
銃は、用途を別として性能区分に、滑空銃とライフル銃に分かれますが
ライフリングが施されるのは、米国の南北戦争期でパーカッショット銃(雷管式)
のヤーゲル銃辺りからです、ミニエー銃辺りから銃弾の改良なども行なわれて
命中率が向上し盛んに狙撃や狩猟などに使われる事になりました。
マスケット銃に代表される火打ち石式(フリントロック)は、過渡期のゲベール銃でも
丸っこい弾を使う滑空銃が中心で、まずライフル銃は存在しないと思います。
>>『しょう石(火打石)』
硝石(しょう石)とは、硝酸カリウム (KNO3) を主成分とする天然に産する硝酸塩のことで
火薬の触媒にあたります、即ち炭(黒色火薬)等を燃料とするならば、これを急速酸化
させる為の酸素に相当します。
よって、一般に火薬の原料として使われます。
また、鉱石と言えなくもないのですが日本では天然は存在しません。
硝酸塩を簡単に説明すると、動物の糞尿が石化した物で肥料等にも使われています。
ですから、江戸時代などでは人尿などから合成していました。
火打石は、燧石(フリント)を使います。
発火用具としての火打石は、オイルライターなどはマグネシュウム合金などの
その物が発火する用具もありますが、一般的には炭素濃度が高く固い物を使います。
中世期の日本では石英とか石炭が一般的でしょうか?
ただし、一般的にはフリントロック銃では、その名の通り燧石(フリント)を使います。
何が言いたいかと言いますと、しょう石と(火打石)は、別物だという事です。
長々と失礼致しました。
失礼な奴だなww
じゃくて
おかげで少し利口になれた。好きなゾンビものを読みながら豆知識も身につくとは何て有益なんだ。
>>391の人、乙
作者さんも多少の間違い、勘違いなんて親切な人が補足してくれるんだから、恥ずかしがることなく
つまらんこと気にしないでどんどん書いていってください。
>389
ありがとうございます。そう言っていただけると気持ちが軽くなります。
>390
その通りです。今回は1800年頃、江戸時代を舞台にしています。
はやく胸を張って「このお話はゾンビものだ」と言えるところまで進めたいです。
>391
ご指摘ありがとうございます。しっかりと読んでいただけているようで、光栄です。
自分は銃のことはからっきしなので、こういったご指摘は本当にありがたいです。
燧石→“すいせき”と読むのですね。自分はてっきり“しょうせき”と読むのだと思って
おりました。単純な誤記です。失礼いたしました。
次ぎに『火打石式猟銃』についてですが。自分はここ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%83 を参考に猟銃を設定したのですが。この部分にある歴史の中で、
1543年 - 鉄砲伝来。日本の種子島に火縄銃が伝えられる。その後半世紀程で日本は当時世界最大の
銃保有国となる。
1650年代 - 火縄式(マッチロック式)から火打ち式(フリントロック式)に移り変わる。
1775年 - アメリカ独立戦争でライフル(施条式銃)が普及する。
1822年 - アメリカ人のジョシュア・ショウがパーカッションロックを開発する。
と、あります。ライフリングが用いられるようになってから、パーカッションロックが発明されるまで、
実に47年間の開きがあります。その間に製造されたライフルの中には当然火打ち式のものもあっただろう、
と考えます。
自分の今回の世界設定は1700年代終わり頃の設定で、パーカッションロックが発明される前だったので、
『施条式』の猟銃の着火方式に『火打ち式』を採用してみました。
では、なぜそんなあまり一般的でない方式にしたのか?というと、
このページ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB%E7%B8%84%E9%8A%83 のこの部分、
“但し例外として、各大名諸藩で極秘裏に様々な銃器が研究されていたことも事実であり、
そのバリエーションは多岐にわたる。幕末新式銃渡来直前に海外事情も考慮してパーカッション式の
銃器すら模造、試作されたものの他には、実用の可能性を想定していたものかどうかは何とも評しよう
がないものが多い。火皿を3つ付けたものや、銃身がリボルバーのように回転する物など三連発の火縄銃や
水平二連式短銃など、様々なものが試製されていた。”
というところです。
独自の銃器製造工房を持つ村という特色を出すために、こういった猟銃、すなわち『火打石式(施条式)猟銃』
というものがあっても面白いだろうと考えたのです。
以上が今回の話に、この『猟銃』が登場する理由です。
この理由について当然浮かんでくるだろう一つの疑問にも少しお答えしておきますと、当時の日本は
“鎖国”しております。普通なら海外の最新の銃器製造技術など知る術もないことですが、自分のお話
の舞台である水無瀬村は、とある理由から海外との交渉が盛んであるという設定です。村の歴史について
長々と話してもなんでしょうから、記述は控えますが、そういった情報が入手可能であった、ということを
ご理解いただけると幸いです。
今後とも何かお気づきの点があれば、お教え下さい。
前おきばかり長くなり、申し訳ありません。
それでは
>>383 より、続きです。
紗枝の眉がひそめられた。完璧に一定を保っていた呼吸が、一瞬強まる。
動揺・・・・・・したのか。ただ、二天の気恐ろしい異相を見れば、それも仕方ないと思えた。
紗枝の人差し指の付け根の筋肉が、微細な盛り上がりを見せ、引き金が引かれた。
――ずれる。
弾丸は、同時に着弾させなければならない。これは、二人で一つの獲物を、それも精密に“点”
で狙う場合の鉄則だ。
どちらかが先に当てれば、どちらかの弾丸の着弾地点は、微妙にずれる。
そうなれば――相手を打ち倒せない場合が出てくる。
だから、同調させる必要がある。
紗枝の射撃に関する唯一の弱点は、そこだった。
一人で狩れる獲物ならいいだろう。紗枝の腕前は、オレ達の村で最も射撃のうまい修吾さんに次ぐものだ。
仕留め損なう心配はない。
だが、一発の弾丸ではどうしようもない時もある。
今のような相手が、それだ。
紗枝は、組んだ相手に合わせて、自分の射撃を変えることができない。
だから、オレが合わせる。
紗枝が引き金を引ききる前に、オレは引き金を引いた。
すい石が鉄片に擦り合わされ、火花が薬室の中に飛び込む。その爪の先にも満たない高熱は、母胎となった
猟銃の中で、火薬を養分に不気味に膨張する。生まれいずるのは、鉛でできた殺意そのもの。
――轟音。
面長な猪は、眉間よりも目が奥にある。オレが先に引き金を引かねばならない。だが、それでは不十分。
紗枝は力んでいた。その分間隔も、位置も当然ずれる。普段ならば問題の無い程度。しかし、今は――
――だから、オレが合わせる。
二発の弾丸が、宙の海原を転がっていく。
オレはわざと最適な頃合より遅らせて射撃した。眉間と左目に向けて放たれた弾丸は、着弾する直前ほとんど
一直線になる。
オレが遅らせることによって、二つの弾丸の距離は、更に縮まる。限りなく。互いの弾丸の回転が生む風圧に
よって、弾道にほんのわずかに干渉し合う程に。
紗枝が力んだために歪んでしまった間隔と弾道を、いささかの狂いもなく同様の力で、オレの弾丸の風圧によって、
正しく獲物に着弾するように――
――押し戻す。そしてオレの弾丸もまた押され、正しい位置へと戻る。
その作業は極微。あって無きがごとき世界の加減。限りなく近づいても、決して重なり合うことのない、
薄皮一枚を隔てた距離感。
いつからだったろう? こんな風に猟銃を撃てるようになったのは。
不可能にも思えるその感覚は、けれどオレには簡単に把握することができた。オレは、その間合いを良く知っていたから。
――それは、オレと“彼女”の距離、そのものだったから。
一つに触れ合ったかに見えた直後。オレたちの弾丸は道を違えて。
それぞれの標的に着弾した。
同時に、寸分の狂いも無く。残酷なほどに完璧に。
――今度こそ。
二天はオレたちの弾丸を受け、びくりと体を大きく震わせた。
吼え声は無い。上げる間さえ与えずに、オレたちは二天を絶命させていた。
――なのに。
二天の突進は止まらなかった。
なんという妄執か。
闇の中でもみなぎるばかりに周囲に発散されていた、二天の荒々しいまでの生命力は、今はもう影もない。
その姿は、死そのものが具現化した、幽鬼のようだった。
抑えていた汗が一気に噴出す。
――いったい、奴はなんなのだ。
どうやったら、奴を仕留めることができるのか・・・・・・。
益々勢いを増した出血を全身からしぶかせ、真っ直ぐにこちらに向かって、絶息したことにすら気付かずに疾駆する、
二天の姿から感じ取る事ができるのは、ただ一つ。
――怒りだ。
死せる二天が望むは、自らを一敗地にまみえる恥辱を負わせた、矮小な人間の命だけか。
オレたちを、殺す気だ――せめてもの、死出の道連れに。
背筋を駆け上がる恐怖に慄然とする。
足元の枝が、衝撃とともに揺らぐ。
突進してきた二天は、猟銃が発する火花に反応したのか、正確にオレたちの居場所を探り当て、その鋭く分厚い牙で、
体ごとの一撃を、オレたちの潜む大木に加えてきた。
以上です。
>392
お気遣いいたみいります。これからもじゃんじゃん間違ってしまうと
思いますが、直せるところは修正し、より楽しんでいただけるような
お話にしたいと思っております。
>>338近所の人との触れ合いも欲しいです
ノベルスレ残党さんは期待通りです
ジョージはどうなったのだろうか
401 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/09(日) 21:14:46 ID:7XtVl/XsO
ジョージは丸太持った巨人に弟子入りしますた
402 :
中二病作家@携帯ver:2008/03/10(月) 04:26:46 ID:WUC1557iO
何か、今度は2ちゃん全体?のアク禁状態です。
(T_T)
やはり来たか。 知っているんだ… この人はオレ達が殺ったのを知っているんだ…
「あ… あの…」 オレは震える声で答えようとした。
「はははは! すまない。 君達が知っているはずがないな。 はははは!」
長居は突然大声で笑い出しオレが喋るのを遮った。
オレ達を助けてくれるのか? 仲間を殺したのに?
オレ達は顔を見合わせた。
「すまんすまん。 自分で何を言っているのか分からなくなってしまったのだ。
それとさっき君達に頂いた情報の代金だ。 受け取ってくれ」
そう言って一緒に居た男に合図をした。 鞄から取りだしたのはホルダ二つと箱二つ。
「私のSPが使っているモノだ。 肩にぶら下げるホルダと弾丸だ。
弾も沢山持たせてやりたいんだが、我々のストックも心許ないのでね。 これで勘弁してくれ。
では、私はこれで失礼するよ。 出るときはそこの男に言ってくれ。 解錠するから」
長居は部屋を出て行こうとドアに手を掛けたところで立ち止まった。
暫く立ち止まっていたが、ふいに振り返りオレ達の後ろ側に回り込んできた。
ま…、まさか後ろからズドン… そんな思いを巡らせていると
長居は小声で話しかけてきた。
「高橋に気を付けろ」
これだけを言って部屋を出て行った。
オレ達は頂いたモノをリュックにしまいすぐに行動を開始した。
エレベーターは使わずに非常階段を使い下に下りた。
下りる最中にホルダを装着。 臨戦態勢に。
三階から下へは行けないように目張りが施されていた。 別の階段を使わなければいけないようだ。
此所には監視カメラが設置してある。
それに我々の姿が映ったのだろう。 解錠音が非常階段に響き渡る。
「行くぞ」 西田は小声でオレに告げた。
オレはこくりと頷く。
ドアの外の音を確認。 奴らの歩行音は聞こえない。
オレ達は静かにドアを開け、3階に侵入した…
久しぶりの書き込みです。
やっとアク禁が解けた模様。
「ところで、森さん。 川本くんとどうなの?」 渡辺さんがいきなり切り出してきた。
アタヽ(д`ヽ彡ノ´д)ノフタ 「え!? いや… その… あの… どうと言われても…」
「なに焦ってるのよ。 さぁてはその焦りようは…♪」
「な! なに言ってるんですか! もう! 渡辺さんの意地悪!」
な… なんで急にそんな事聞くのかしら…
「あははは♪ ごめんごめん。 ちょっとからかっただけよ。 それにしても西田くん達遅いわね。 なにか遭ったのかしら?」
店にいた二人は疲れたのか眠っている。
「可哀想にね…」 渡辺さんは彼女たちを見て呟いた。
「助ける人がいれば襲う人もいる… 人間が一番恐ろしい存在かもしれないね…」
嫌な世の中になってしまった… でも、川本くんは優しかった…
なんか一緒にいるとあったかいし…
その時、外で物音がした。
「し! 静かに! 彼女たちを起こして! だれか来た!」
渡辺は階段を中程まで下り、様子を伺った。
私は慌てて二人を起こす。 「起きて、お願い。 起きて。 誰か来たわ。 逃げる準備を!」
二人は飛び起き逃げる準備を始めた。
自動車の排気音がする。 川本くん? いや違う。 彼らの車の排気音ではない。
がちゃ。 鍵を開ける音がする。
初老の男が入ってきた。 男は辺りを見回す。
「ん? おかしいな。 誰か入ったのか? しかし鍵は掛かっていたしな… ま、ええか
おい、婆さん! 水運ぶから手伝ってくれ」
「はいはい」 後に続いて初老の女性が入ってきた。
どうやら店主のようだ。 渡辺は静かに二階に上がる。
「店主が帰ってきたみたい。 どうしよ?」 どうしようと言われても…
「…私が話しをしてみます。 なにかあったら援護してください」 渡辺さんが後ろにいてくれたら安心かな。
「あなた、何ケース運ぶの?」
「そうだな。 5ケース程でいいだろう。 沢山持って行って喧嘩でもされたらかなわん」
「はいはい」
初老の夫妻は飲料水のケースを運び出していた。
「あのぉ… すいません…」 私は出来るだけ驚かさないように声を掛けた。
「うがぁ!!! な!なんじゃ〜!!」 男性は慌てて立て掛けてあったホーキを手に取る。
「く!くるな!! くるな〜!!」 ホーキをぶんぶん振り回して後ずさっている。
「あ… すいません… 驚かせてしまって…」
「んあ。 お前さん… 生きてるのか?」
「一応生きてます…」
「はぁぁ… びっくりさせおって…」 男性は、へなへなと座り込んでしまった。 相当驚いたようだ。
「す、すいません。 驚かせるつもりはなかったのですが…」
「な、なんで此所におる? どこから入った?」 男性は当然の質問をしてきた。
「あそこのドアが開いてたので… 上にあと3人います。 皆怪我はありません。 渡辺さ〜ん」
すると奥のストックルームから慌てて女性が走ってきた。
「あ! あなたどうしたの! そ、その女性は!?」 女性は戻って来るなり同じくホーキを手に持った。
「大丈夫だよ。 この娘さんはまだ人のようだ」 女性もまた腰が抜けたように座り込んでしまった。
「はぁ… よかった」 そこへ渡辺達が下りてきた。
「勝手に入ってしまってすいません」 渡辺も申し訳なさそうに頭を下げる。
「はぁぁ… 皆、怪我はないんじゃな?」
「はい」 私は即答した。
「…そうか。 ならいいんだよ…」 男性は額の汗を拭った。
「すいません、すぐに出て行きます」 私はそう言うと皆と一緒に勝手口に向かった。
「あ、いや。 構わんよ。 此所におってもらっても」 私達は驚いて振り返った。
「此所が安全だとは言えないが、外よりは安全だろう。 若い娘さんを危険な所に放り出すなんて出来んよ。 なぁ」
男性は奥さんであろう女性に同意を求めた。 女性はこくりと頷いた。
「あ、そうだ。 もし君らが良ければワシらがいる集会所に来んか? ここの商店街の連中が集まっているんだ。
店を捨てられなくて逃げなんだ連中だ。 年寄りが多いが君らぐらいの若い子もおる。 どうだね?」
願ってもない事だけど、でも… 川本くんは此所に帰ってくる… 約束が…
「あ… あの…」
「この二人を連れて行ってあげてください。 私達は待ってる人がいるんです」
渡辺さんは私の言葉を遮るように言った。 恐らくは渡辺さんも同じ気持ちなのだろう。
渡辺さんは私の方を見て頷いた。 私もそれに答えて頷く。
「そうか。 では二人は集会所に案内するよ。 え…と…」 男性は紙を取りだし何かを書き始めた。
「もし気が変わったりしたらこの印の所においで。 ここからすぐだから」 そう言って集会所までの略地図をくれた。
「有り難う御座います。 おじさんも気を付けて帰ってくださいね」
「ああ、有り難う。 お嬢さん達も気を付けてな。 ここより中に入るとあいつらが沢山いるからね。
もし此所で襲われたら奥の倉庫に隠れるといい。 食料を保管してあるところだから何日かは保つだろう。
携帯コンロとカセットは台所の上の棚にあるから先に持って行っておくといいよ」
荷物を載せ終えると、4人は軽トラックに乗って走り去っていった。
川本くん達は、いまどこで何をしているのだろう…
逆に襲われたのかな… そんな思いを巡らせているとそれを察したのか渡辺さんが
「大丈夫だよ。 西田くんも川本くんも度胸もあるし機転も利くじゃん。 もうすぐ帰ってくるって」
そう言いながらも不安そうな渡辺さんがそこに居た。
きっと飛び出して探しに行きたいんだろうな。
私にはそんな度胸もない… ただ帰ってくるのを待つだけ…
今日はここまでで。
また明日にでも書ければと思ってます。
(=゚ω゚)ノジャ、マタ!!
最後いつ読んだかも覚えてないけど結構思い出すもんだなwktk
非日常さん、これからもよろしく
仲間と連携をとり、テロリストの船団に十字砲火を浴びせる。
「おらおらおら!とっとと沈みな!」
早く本来の任務のゾンビ退治に戻りたい。
その一心で戦闘に励む。
ボンッ!
一隻の味方船が爆発・炎上している。
「くそっ!」
怒りに任せて更に攻撃を強める。
ふぅ・・・・・・。
戦闘も終わり、爆発した船の仲間も直前に海に飛び込み無事救助された事に安堵し海犬の生存者が船の残骸にしがみついて
悲鳴を上げているのを尻目に支給された鯨肉の缶詰に中身を頬張る。
『ちっ・・・まだ生きてやがる・・・・・』
仲間の一人がテロリストを見ながら言う。
「放っとけ、どうせそろそろ・・・・・・・来たな」
海面に突き出た海の殺し屋の背びれ。
『あー・・・・フカヒレって食ってみてぇな』
他の仲間が呟く。
『んな高級食材、俺達の口にゃあ一生入らんよ』
『いや、分かってはいるんですがね・・・・少尉・・・』
そんな仲間の雑談を聞きながら、皆が早くこの任務が終わることを望んでいた。
>407さん
遅くなってすいません。 気が付いたら規制かかってました。
>406の続きです。
「さぁ、レベル3に到着だ。 どう動く?」 西田は周囲を気にしながらもジョークを忘れない。
「長居のじっちゃん、高橋に気を付けろって言ってたな。 あれどう思う?」 とりあえず西田に確認してみた。
「あん? どう思うもねぇだろ。 やられんだよオレ達。 だからこうやって警戒しながら外に出ようとしてるんでしょ」
(;´∀`) さらっと言うのね…
「やっぱそうだよね。 二人殺ってるんだもんね。 落とし前付けにくる、か…」 (´・ω・`)ガッカリ…
「しっ!!」 西田は奥の通路を指さした。 スーツの男が二人、既に銃を抜いている。
「ぉぃぉぃ… 臨戦態勢じゃんか…」 出来る事ならやり過ごしたい。 静かに後退する。
「ああ、オレ達殺されるのか…」 もう一回森さんに会いたいな…
「馬鹿たれ。 森さんと会うんだろ?」 西田くん… よくお分かりで。
「さっきの角にリネン室あったろ。 あそこに行ってみよう。 シューターがあるかもしれん」
すばやく静かに行動。 スーツの二人には気づかれず済んだ。
中に入ると洗濯機と乾燥機が二台設置してあった。 奥にも部屋があるようだ。
奥へ進むとベッドシーツが山積みになっている。
どうやらこのビルは宿泊施設も備えているようだ。
案の定、シーツを放り込むシュートがあった。
「お! あるじゃんか」 中を懐中電灯で照らしてみても底は分からない。
「足がかりもなしに行けるか!?」 オレは正直怖い。 恐らくは地階まで続いているだろう。
そんなに長時間踏ん張れる自信がない。
「それも…そうだな… でもここしか…」 西田は何かを言いかけたところで壁に駆け寄った。
「お、おいどうしたんだよ」 オレもつられて駆け寄る。 そこには荷物用の小さなエレベーターがあった。
それも簡素な造りでドアも簡単に開いた。 内部には構造体が有り伝っていけば下りられそうだ。
ラッキーな事にエレベーターは上の階に止まっているようだ。
「行けるぞ!」 オレ達はすぐに下り始めた。
このエレベーターは各階に止まるようだ。 各階に扉が備え付けてあった。
「楽勝だな。 まるでダイハードみてぇだww」 オレは鼻歌交じりで下りて行く。
一階の扉に到着。 扉を開けようとしたとき、部屋に何者かが入ってくる音がした。
背中を冷たい汗が流れる。 オレ達は息を飲んだ。
「あ〜ぁ やってらんねぇよな。 なんで俺達があんな若造二人を殺らにゃならんのだ?」
「しゃぁねぇだろ。 高橋さんの指示なんだから。 言う事聞いとかないと俺達が殺られるぞ」
「まぁな。 しっかし威張りくさりやがって胸糞わるいぜ。 あぁコーヒーうま!」
「俺にも入れてくれよ」
「おおスマンスマン。 そこの通路見張ってりゃ勝手に出てくるよ。 そこしか出入り口ねぇからな がははははは!」
オレ達は顔を見合わせた。 此所が出口に一番近い!
しばらくすると部屋の二人は出て行ったようだ。 すばやく部屋に侵入する。
電気は点いたままだ。 電力は全館に供給されているようだ。
殺りたくはないが殺らなければいけないかもしれない…
ドアに耳を当てる。 話し声が聞こえる。 割と近くに居るようだ。
少しドアを開けて確認する。 通路は明かりが消されていた。
オレは慌てて部屋の明かりを消す。 向こうの角にさっきの二人が立っていた。
気付かれていないようだ。 向こうには日が差している。 二人の行動が手に取るように分かる。
西田は素早くライフルを用意する。 殺る気だ。 一撃必殺でないと仲間を呼ばれる。 殺るか殺られるか…
西田は床に伏せ狙いを定める。 オレは西田を跨ぐ形で狙った。
距離にして6m。 引き金に指をかける…
と、その時やつらに動きがあった。 トランシーバから荒々しい声が聞こえてきた。
よく聞こえなかったが何者かが侵入してきた? あいつらがまた入ってきたのか?
しかし、弱点は知っているはずだ。 なのになぜ応援を呼ぶ必要がある?
なぜ?
「おい!川本! なにぼーっとしてるんだ! 行くぞ!」
「ん?あ?え? 行くって」
「応援呼ぶって事は手に負えないぐらい大量に侵入したって事だろ。 今しかない!」
そっか。 言われてみればそうだな。 よし! とっとと出よう。
スーツのやつらはどこかへ行ってしまった。 目の前には外に通じる扉がある。
ここは裏手のようだ。 自転車置き場がある。
「あれで逃げるぞ。 音もでなくて丁度いい」 扉には鍵は掛かっておらず、すんなり外に出る事ができた。
10台ほど自転車は置いてあったが全てに鍵が掛かっていた。
「ちくしょう! 使えないじゃないか!」 西田は駐輪場のポール蹴り飛ばした。
「西田! とりあえずこれとこのMTB持っていこう!」 MTBはチェーンで施錠されている。
それを抱え敷地を出た。 駅裏の商店街が近くにある。 そこまで頑張ればなんとかなるはず。
幸いにも暴徒に遭遇する事なく商店街までこれた。 しかし、ここの商店街はこれまで見てきた以上に荒れ果てていた…
車両止めがあるからか車の進入はないが、店のガラスは割れ商品は散らばっていた。
そこかしこに“人間だった”塊が転がっている。
至る所に血溜まりができ、どこを見ても肉塊がある… 飛び散る内蔵、無造作に転がった脚…
ここに住んでいた人はどうなったのだろう…
そんな事を思っていると向こうの方で何かを叩く音がする。
用心しながら近づくと閉まったままの自動ドアを叩く女学生の姿が…
着衣はほとんどが引き裂かれ、乳房が露出している。
片方は噛み千切られたのか半分ほどになっていた。
腹は引き裂かれ内部の大部分を失っていた。
腕や足の筋も持って行かれたのだろう力なくドアを叩いている。
なぜ彼女はこんな目に遭わなければいけなかったのか…
こんな惨たらしい仕打ちを受けてもなおも活動している。
やるせない気持ちでいっぱいになった。
「楽にさせてやろう…」 西田は少しだけ開いている自動ドアに銃口を差し込んだ。
「すまん…」 ぱしゅ… 至近距離からの一撃で本当に彼女の人生は終わりを告げた。
崩れ落ちる彼女が一瞬微笑んだように見えた。
成仏出来ますように… 祈らずにはいられなかった…
商店街の一角にある金物屋でチェーンを切った。
二人は無言のまま作業をする。 ライフルにも手動ポンプでチャージをした。
幸いにも此所には暴徒の姿はない。 周囲を見渡せる場所で休憩をした。
ひとときの安息。 周囲に転がった肉塊を眺めながらカロリーメイトを頬張る。
今日は長い一日だ… オレは明日も生きていけるだろうか…
森さんを守っていけるのだろうか… そんな思いを巡らせていると
「川本、俺達力合わせて生き抜こうぜ。 お互い守らなきゃならんもん出来たしな!」
こいつ… 時々俺の心読んでるのかと思う時がある…
「あぁ、オレも弱音吐かずに頑張るよ。 森さんの為にもな」
「お! 本音がでたね!」 西田が嬉しそうに笑った。
「オレも渡辺さんの為に頑張るよ。 今はまだそんな関係じゃないけど…
でも、そうなれるように頑張る! だから生き抜かなきゃならん!」
西田は熱い男だな。 でもオレも森さんとはまだそんな仲じゃないからな。
そうなれるように頑張ろう。(´Д`)ハァ…
もうすぐ日が暮れる… 今日の移動は無理だな…
「今日はここで休もう。 交代で見張りしよう」 そう言って西田はオレを奥に押し込んだ。
「おいおい西田。 お前寝てないだろ」
「そんな事ないぞ。 十分寝てる。 お前の方が寝てないんじゃないのか?」
よく言うよこいつ… 知ってるんだぜ… 「お前… 皆が寝てる間に見回ったりしてただろ」
「…見てたのか?」 西田の動きが止まった。
「ああ、見てたよ。 お前ってほんといいやつだよな」
「照れるだろうが!」 西田は、ぼりぼりと頭を掻きながら座り込んだ。
「マジ少し休めって。 オレじゃ心配か?」
「そんな事はない… 無理矢理連れて来たのオレだからな…」
な… まだそんな事考えてたのか。
「馬鹿だな! こっちのほうこそ助けてもらったようなもんだろ。 お前が誘ってくれなきゃとっくにゾンビになってるよ」
「…そか。 そう言ってくれると助かる…」 「だから寝ろって。 心配すんなよ」
「すまん… ちょっと甘えるよ」 「おう。 甘えとけ」
そう言うと西田はその場で座り込み眠りについてしまった。 余程疲れていたんだろうな。
さぁ、見張りだ。 大事な役目だ、見落とさないようにしなきゃ。
今日はここまでで。 (=゚ω゚)ノジャ、マタ!!
413 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/12(水) 10:05:25 ID:T3rTJi26O
少尉なら普通(平時で人が余ってる時ですら)分隊長じゃなくて小隊長だろ
ノベルスレはまだかよ・・・待ってます
ニク、ヤカナイ、ナマ、ウマー
416 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/13(木) 20:41:17 ID:ot6bEzLZO
最近のゾンビ映画にうんざりしたら、つい此処を覗きにきてしまいます。作家さん、これからも楽しませてください。どの作品も素晴らしいので、ノベライズ化して欲しいです。
保守
俺、今思ったんだけどさ、
ゾンビって文明の利器ほとんど使わないじゃない
本人も呼吸してないし
つまり二酸化炭素排出量ゼロなわけよ
これがほんとの地球を救うニュータイプだよな
お前らも覚醒しろよな
419 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/14(金) 06:33:30 ID:lL+NXAx4O
植物大繁栄するまではCO2だらけの惑星だったわけだけど?
>>419 「SAGE」って知ってるか?
なあ、その自慢げに披露した薄っぺらい知識の中に「SAGE」って言葉は入ってないのか?
腐ってるからホラ・・・・
422 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/15(土) 01:20:57 ID:cFXZMbTOO
魔界搭士か
423 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/15(土) 21:34:37 ID:cFXZMbTOO
ゆとりの薄っぺらい考察を高等教育を受けた人間にとっての常識をもって1レスで論破
薄っぺらい知識ってのはソースはwikiな書き手のことか?
424 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/16(日) 22:29:58 ID:ePVlSbwO0
飛び入り失礼。気分転換に一つ書いてみた物
短編・僕のゾンビ人生(ラクーンシティ編)
ウイルスが街に蔓延してから早三日。僕もとうとうお仲間になりました。
まだ果ててから一日しか経っていない新米ゾンビだけど、先輩たちはみんなフランクに接してくれます。
でも最近は食糧(生きた生物)も少なくなってきて、共食いでなんとか命を繋いでいるみたいです。
半日前には、気になっていた全裸でナイスバディな女先輩に「食・べ・さ・せ・て?(はぁと)」なんて言われて食いつかれてしまいました。
彼女は内臓が好きらしく、心臓と腸と胃、それに肺を一つ食べられてしまいましたが、幸せそうな顔を見ていたら僕も嬉しかったです。
そうそう、ついさっき、ウイルスが蔓延する前に感染していた古参の方が、はれてリッカーへと進化できたそうです。
周りの先輩たちも順調にクリムゾンヘッドに進化していっていますし、これならSTARSが来る前に僕もリッカーになれちゃうかも? なんて。てへ。
しかし不思議なものです。
感染する前は怖くて仕方なかったのに、いざ感染してみるとみんなイキイキしていて、街中がとてもアットホームな雰囲気に包まれているよう。
まだ逃げ回っている人たちも早く仲間になればいいのに、と心からそう思います。だからみんなも積極的に生存者を歓迎しにいっているのでしょう。
新米の僕は一日先輩のゾンビと今日も生存者探しです。古参の猛者たちはいつSTARSが来てもいいようにと固定配置についています。
今日もくだらない話題で盛り上がりながら僕と先輩たちは五人もお仲間に入れることができ、今は帰路についています。
425 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/16(日) 22:31:21 ID:ePVlSbwO0
「いやぁ〜、こんなことならもっと早く食われとくんでしたよ、あっはっはっは」
顔の右半分がない五十代くらいのリーマン風の新入りさんが、そう言って快活に笑います。お調子者そうな彼の言動に僕たちも釣られて笑い合います。
「ウィ〜ッス、おやっさん。ただいま戻りましたー」
先輩の一人が根城の扉を開けてそう言うと、突然ドスの利いた真剣な口調で中にいたおやっさんが言いました。
「シッ! おう、ご苦労だったな、お前ら。んなことより、先陣からの情報じゃ、もうじきここにSTARSが来るらしい。気合い入れて準備しとけ!」
『ウス!』
配置につく僕らの横で、作った人間からはネメシスと呼ばれているらしい巨体に黒ずくめのおやっさんは新入りさんたちに詳しい事情を話し始めます。
「あぁ〜、なんか緊張しますね〜」
「ハハッ、心配すんな。ゾンビなんて頭撃たれなきゃ死なねぇしよ。みんなで一斉にかかるから、いくらSTARSでもいっかんの終わりよ」
先輩が僕の緊張をほぐすために朗らかに笑う中、僕は緊張しながらも一人興奮していました。
STARSの首を取ればゾンビ界では一躍有名ゾンビです。おやっさんみたいにウイルスの実験体に選ばれるかもしれませんし、ドキドキが止まりません!
──と、そんな最中、突然根城の扉が勢いよく蹴り開かれました。
最高潮の興奮が弾けた僕は、奇声を上げながら入ってきたSTARSであろう短髪で青服の女に噛みかか
「ヴァぼっ!!」
その瞬間、僕の頭は口の中に突っ込まれた銃口から発せられた凶悪な散弾により粉みじんに吹 き 飛 ん で い
終わり
なかなかいいんでねえかい、乙&次作よろ
固定配置の先輩抜かれんの早過ぎwwww
「・・・・・やれやれ・・・・」
立川大佐が自室で頭を掻きながら報告書を読む。
アメリカでのゾンビ発生多発に加え、海外流出したゾンビ兵器の誤使用やらで世界中でのゾンビ発生率の急上昇。
その他諸々を鑑みた日本国大統領の最終決断。
「・・・・鎖国命令・・・・か」
在外邦人の引き上げと国内に居住してる外国人の帰化と帰国が澄み次第、日本は海外との交流を絶つ。
都市を要塞化させ、外部のゾンビに対する掃討と腐敗菌を使用した生物兵器の使用が決定された。
「・・・・・やれやれ・・・・・」
息子の秘蔵復刻DVDとかのアニメの主人公キャラのような台詞をいつの間にか口に出していた。
強制終了・・・・します。
楽しみにしていた方々、すんません。
ちょいとスランプ気味です。
誰か後を継げ、、、てなわけにもいかんか。
残念、リハビリも兼ねて全く別な設定の話どうよ?
>>424-425>>
乙!物語が非常にテンポがよくて分かりやすく、面白かった。また気が向いたらおながいします。
>>428 お疲れ様です。
首を長くして待っています!
ノベルスレさん続きはまだかな
>>424-
>>425 MGSの公式にあるスタッフ作成のお笑いMGS動画みたいな光景が浮かびましたwww
次回作も期待しています
お久しぶりです
やっと入ることが出来ました…
自分の文章を読み返していて、すげぇぇぇぇくどい内容にうんざりしていたので、修行(?)に出ています
断筆するとしても、せめて今中途半端になってるのは終わらせたいんで
何とかして、自分のくどさやら何やらを抜けないかと…
次載せる時には文体が違う風になっていると……いいなぁ
そんなこと、ここで練習したらいいのに
436 :
本当にあった怖い名無し:2008/03/24(月) 03:46:47 ID:UnaPO4/60
ああ
>>434 やっと入れたってことは専ブラ使ってないのか?
それよりも、どういう修行をしてるのかは知らないが、断筆すれば良いってもんじゃないと思うぞ。スランプ時ならまだ解るが
色んな本を読み漁りたいから、という理由だとしても断筆は意味がないしな
文体を変えたい、技術を向上させたいと思うのならむしろ積極的に書かないと駄目。がむしゃらに書けば良いってもんでもないけれど
例えば理想とする作家の文体を真似て書いてみたり、自分なりにアレンジしてみたり
描写がくどいからスッキリさせたいって場合は、一度話を書いてみて、そこから熟考し(後は他の小説を参考にしたり)
必要ないと思う部分を削ぎ落としたり、表現を簡潔なものに変えたり、と文を改良していけば良い
要は断筆するよか努力して書き続けることが大事ってことかな。まあ余裕を取り戻すまで断筆するというのも選択肢の一つではあると思う
後はほとんどの人がそうだと思うけど、他人に見てもらう、感想をもらう、っていうのも大切
公開しないでひっそり書いているよりは下手なものは見せられない、もっと巧いものを見せたい、と向上心に繋がるし、感想は貴重な糧になる
長々と書いてしまったけど、同じ物書き(俺の場合は応募挫折中のしがないアマ物書きだが)として参考程度になれば嬉しい
ちなみに作品を読んだ感想としては、描写はくどくないと思う。むしろ、表現が断片的すぎて器械的というか淡泊な感じがしてしまう
自身でくどいと感じてしまうのは、描写を一動作一動作で区切りすぎているためテンポが悪くなってるからじゃないか、と自信はないが推察する
>>437様
すごい長文なご意見にもかかわらず、なんて素晴らしい読みやすさ
純粋にアナタの作品を読んで見たいです。
本業に差し支えがなければ是非お願いしたい
うん、分かりやすかったね
>>473 専ブラは使っていません
何というか、投稿以前のモノになってしまうので…
追伸です…
>>473さん
ご教授有難うございます
淡白な文章…なんですよね…
>>441 ご教示、だね。
ご教授という言葉は確かにあるが、意味が違う。
物書きは気をつけないと。
443 :
437:2008/03/29(土) 07:03:27 ID:6UJoq90i0
>>440>>441 投稿以前のモノ、というのが少々意味が解らないけど、知ってて使わないなら問題はないな
それと、少し辛い意見を言われたからと言ってあまり落ち込む必要はないと思うぞ
相当才能がない奴でもない限りは、書き続けていれば自ずと文章はある程度上達するから。小学生でも、見れるだけの文章を書けるようになるし
褒めて伸ばすというのもとても大事だが、短所を指摘されるというのもまた大切だしな
俺も何か書きたいなーとは思ってるんだけども、ネタがなぁ
ストーリーが行き当たりばったりで、設定をバイオからパクっててもいいなら短いの何か書こうかな
まあ期待はしてほしくないけど(汗)。いつもレスが長文になる性格上、描写がしつこいし。書く場合はコテトリつけた方がいいのかな
>>432 ありゃりゃ、違ってましたか…
どうもありがとうございます
>>443 ありがとうございます。大丈夫ですよ
短所指摘してもらわない方が自分としては嫌ですしね
自分の短所は分かり難いですから、見つけてもらった方が分かり易いですし
落ち込んでいたのは…何というか、自分に絶望していたというか、そんな感じです
辛い意見には慣れている…というか…我ながら悲しいかもです。慣れてるってのは
書くのなら、やはりコテハンがあった方がいいと思いますよ…
自分は書くときは本当におおまかなのしか考えていません…だからこんなことになるのですww
自分は是非、437さんのを読んでみたいですね〜
何となく、かろうじて見れるようにはなったかな? というのは書けました
凄く短いものですが
>>443様
パクリと言えばほとんどがそうかとw
言い方を変えて「王道」に乗るとお考え下さい。新作に期待しております
446 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/01(火) 17:26:52 ID:icOqIKQSO BE:519620292-2BP(0)
>>443 ブラウザ毎に1行の文字制限が違うから意図してない改行が入るって意味じゃね?
>>445 いや、ゾンビの設定だけじゃなくて色々パクってるから王道ではなさそうだ(汗
とりあえずコテトリはこれでOKかな
たぶん規模も小さくて起伏に欠ける話になると思うけど、まあ暇つぶし程度になれば上出来と思ってくれ
今回は一応プロローグの1レスのみ投下
タイトルは
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
プロローグ──『双子の片割』
助かる確率が限りなく低い病気だと聞いた。幼い頃の自分は、それで一晩中泣きはらした記憶がある。
なんでこんな不幸が自分たちだけに振りかかるんだろう、と。
表面上は笑顔でいるけれど、数年経った今でも、そのやり場のない思いは胸の中で静かな怒りとして確かにくすぶっている。
どうすることもできない自分にも周りにも腹が立つ。
……苦しいはずなのに、いつも笑みを絶やさず自分の運命を受け入れているかのようなあの子にも……時々苛立ってしまう。
しかし、仲が悪いということは決してなく、むしろ自分もあの子もお互いをとても大切にしていた。
けどそれも、人生の大半を病院で過ごすあの子とはお見舞いのときくらいしか会わず、あまり嫌な姿を見ないから……なのかな。
だとしたら、すごい皮肉だ。
普通の姉妹として育っていれば、一般的な兄妹姉妹のようにここまで仲がよくなかったかもしれない。
普通の姉妹として育っていないからこそ、仲がいいのだとしたら。
でも、あの子の命はもう残り少なくて……。あの子が死ぬくらいなら仲なんて悪くてもよかった。どうして神様? どうしてなの……?
……問うたって答えなんか出るわけない、か。
「…………」
床について眠りにつくまでの静寂な時間、あの子のことを思い出すと、時々こうしてどうにも悲観的になることがある。
はぁっ……だめだな、私。
明日はお休みだ。特別用事もないし、ずっとあの子のそばにいてあげられる。寝坊しないよう、余計なことは考えず早く寝てしまおう。
──その夜、何か体に違和感を感じる瞬間があったものの、普段より深い眠りに落ち始めたためか、結局目を覚ますことはなかった。
では次は第一話(4レスのつもり)。
第一話──『地獄への解放』
頬がひんやりとつめたい……それになんだか寒い……。
まどろみの中から目覚めた瞬間、一番初めにわたしが感じたのはそんな違和感だった。
あれぇ、おかしいなぁ。
なんでこんなに肌寒いんだろう。もう桜が咲き始めるような時期だし、屋内で、それもベッドの上で布団をかぶってるはずのに。
小刻みに震える冷えた体とは対照的に、脳裏に浮かぶのはまったくもって悠長な考え。
そんな状態でしばらく寒さの理由もわからず震えたままでいると──ふいにもう一つの違和感に気がついた。
あれ……なんかほっぺたの下……かたいよ?
本来ならそこにあるべきは枕である。枕と言えばふかふかでまろやかにやわらかい。いつもわたしの頭をやさしく包んでくれる。
仮に寝返りなどで枕の有効範囲から外れてしまっても、受け止めてくれるのはシーツの敷かれたマット。これも一応やわらかい。
なのに今頬の下にある物体はといえば、硬質的な上にわたしの体温を奪い取り続けていた。
「!」
そこで初めて事の重大さに思い至ったわたしは慌てて体を起こす。
「…………あれ?」
けれど、あまりに予想外な展開に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
てっきりベッドからおっこちて床で寝てたのかと思ったけど、それは違った。だって……ベッドなんてどこにもなかったのだから。
そこは──
「なに、ここ……?」
書斎…って言うのかな。びっしりと本が詰まった本棚が壁側に並んだ部屋だった。もちろん、わたしには一切見覚えのない──。
我が身になにが起こったのかまったく理解できず、わたしはしばし呆然としながら定まらない視線を部屋のあちこちに向けていた。
そして、たぶん数分くらい経ったのち、ハッと脳裏にテレビドラマごようたしの展開が閃き浮かんだ。
「もしかして……拉致…監禁……!?」
確率は十分にあった。
だって、ふつうの日本人と違ってわたしはハーフなのだ。こんなきゃわいい子なら誘拐されても全然おかしくないはず。
今ごろパパが身代金の交渉で脅されてるとしたら──そう思ったとたん、わたしはいてもたってもいられなくなりドアに駆け寄った。
それは映画とかに出てくる金庫についてるようなもので、閉めたら空気さえも通さないんじゃと思うくらいとても頑丈そうに見えた。
けどそんなの関係ない。開かなくたってなんだって抵抗でもしなきゃ感情が収まらなかった。わたしは力いっぱいドアを叩きながら、
「出してよっ! ねぇっ、こっ──」
ぎぃぃぃぃ
「から…出し………へ?」
力まかせに二、三回ほど叩いたときだった。目の前の金属の壁は重たい音を響かせながらゆっくりと外側へと移動していった。
──ドアは……開いていた。
「…………」
意味わかんない……。
心の言葉を代弁するように、もう一度叩きつけようとしてた拳がやり場もなく宙で固まってる。今の顔きっと鏡で見たら間抜けだ。
誘拐犯がカギをし忘れた……とか?
でもよく考えれば監禁にしてはどこも拘束されてなかったし、見張りだっていなかった。おまけとばかりにドアすら開いてるとくれば。
「……なんなの、この状況……」
ますます現状がわからなくなるわたしだった。
両手でも重いドアをなんとか開き、そぉーっと外の様子をうかがう。
左は壁。右に通路があってその途中に上に続く階段があるのが見えた。とりあえず人はいないようだ。
ホッとため息をついて部屋から出ると、右通路の先にもう一つドアがあるのに気づく。開いたドアに隠れて見えなかったみたい。
「その先も壁……か」
どうやらここは部屋が左右に二つあるだけの階みたいだ。それにどこにも窓がないし、おそらく地下だと思う。
なんで自分がこんなところにいるのかまだ全然わからないけど、どんな理由であれ自由な以上早く戻らないといけない。
今日はアリスとも約束があるんだ。
アリスとわたしは双子の姉妹。平日は学校が終わってからしか会えないけど、休みの日は一日中一緒にいられる。
でもわたしがいなくなったと聞いたらきっとアリスに無用な心配をかけちゃう。アリスは繊細だから負担をかける前に戻らなきゃ。
「こっから上に……だよね」
フタでも閉まってるのか、上に続く階段の先は暗くて見えない。わたしはふと自分が出てきたのとは別のドアを振りかえる。
どんな部屋なのかはわからないけど、あっちの金庫ドアのように堅牢には見えず、いたってふつうのドアに見えた。
視線を戻す。
勇気を振り絞り、わたしはそっと階段へと足をかけた。暗さで踏み外さないよう一歩一歩ゆっくりと確実に上っていく。
周囲はほとんど真っ暗闇。くわえて知らない場所、だれに連れてこられたかもわからない状況が恐怖と緊張に拍車をかける。
体の内側では心臓がバクバクと鳴り、外では耳が痛くなりそうな静寂の中で、ぺたぺたと裸足の足音だけが不気味に響いていた。
──刹那、とつぜんごつっと頭に硬いものがぶち当たる。
「っ!? わああぁぁあっ!」
心臓が口から飛び出そうなほどに跳び上がったわたしは反射的に手を振り回す。そのとき、甲が頭上の物体にごつんと当たった。
「……? ……あ」
それは何者かの襲撃ではなく、単に行き止まりにぶつかっただけだった。つまり、ゴールだ。
本当の行き止まりだったらどうしようと思いながらも、わたしは両手にぐっと力を込め、天井を押した。手ごたえがあり、光が射した。
ゆっくりと天井を持ち上げ、ぎりぎり外が見える位置で止める。
そぉーっと視線を泳がせ一巡してみた結果、視界に映る限りでは人らしきもの(この高さだと足くらいだけど)は確認できなかった。
はぁ…と安堵と拍子抜けが混じったため息をつき、完全にとびらを開けて外へと這い出るわたし。
そして立ち上がって周囲を見回した瞬間──思わず目を見開いた。
地下室だから、病院あるいはどこかの施設かなにかだと完全に思いこんでたのに、出た先は……──。
洋風の家なのに、日本人であるママのたっての願いで一つだけ作ってもらった小さな和室。
亡くなったママが落ち着くからと言ってよく瞑想していた。他にも、絵本を読んでくれたり、添い寝して子守歌を歌ってくれたり。
「ここ……うち……だったんだ」
もうわけがわからない。意外すぎる展開にくわえ、不意打ちでママのことを思い出してしまい涙があふれてきてしまった。
鼻をすすりながら慌てて袖で両目をこする。
振り向いて足元を見れば、畳の一つがあの地下室へと続く扉になっているようだった。この部屋に……こんな仕掛けがあったのか。
「ねぇー! だれかいないのーっ?」
廊下に出て大きめの声で叫んでみる。
しかし、しばらく待っても返事や物音はなかった。パパは今日の予定どうだって言ってたっけ……。んん、だめだ、思いだせない。
とりあえず病院に行ってみよう。パパの行く場所の見当がつかない以上、他に当てはない。
玄関に向かったわたしは、ふとそこで立ち止まる。
そういえばわたし、今裸足なんだった。どうしよう。ここから病院まではそれなりに遠いし、だったら靴を履いたほうがいいけど……。
「……ええい、いいやこれでっ」
悩んだ末、けっきょく置いてあったサンダルをつっかけ、ドアを開けた。──だがそのとたん、いきなり強烈な激臭が鼻こうを襲った。
「うぶっ! ごほっ、げへっ! んふ……ふぁ、ふぁにほへ……?」
激しくむせた後、鼻をつまみ顔をしかめたわたしは涙目で呟く。外気に漂っていたのは、吐き気をもよおすほど酷い……腐臭だった。
第一話終了。
後半2節が1レスに収まり切らなくてけっこう描写を省いてしまった。まあしつこいから削った方がいいのかもしれないが
展開が遅くてスマン(汗)
それと一つ聞きたいのだけど、1レス分ずつでもいいから1〜2日に一回くらい更新するのがいいのか
日数は空くが、今回のようにある程度まとめて(俺の場合一話ずつ)更新した方がいいのか、どっちがいいのだろう?
うん、問題があるとしたらハンドルのネーミングセンスくらいなもんだね、wktk
1レス分じゃさすがに少なすぎるが2,3レス分を頻繁に上げてくれたら嬉しいな。
これからに期待です。
ふー…。
微妙なのが出来ました。
ん〜、未だ抜けきらない…かな?
伸ばした腕を引き戻すだけの、ほんの短い間
その間に、肩を掴まれる
そして、目の前で口が大きく開かれる。闇に満たされた、洞穴のごとき口腔の手前には、所々抜け落ち、歪みきった歯並びが伺えた
吐息が――腐臭が、顔に吹きかかる
それは、獲物に噛み付く猛獣のごとく身を反らし、より一層、口腔を広げる
無理に開いたせいだろう――朽ちきった頬の肉に、大きな断裂が走った
そして、その身を勢い良く振り下ろす
歯が、目の前の肉に迫る
獲物を覆う、薄っぺらい、防御にもならない衣服を裂き、内側の肉に齧り付く
齧り付いた肉の間から、濁流のように液体――血が迸った
顎を濡らし、滴り落ちるそのぬるりとした感覚は、常人ならば嫌悪を覚えることだろう
だが――常“人”ではない故に――気にも留めず、その身を再び、力を込めて反り返した
周囲に、花弁の如く散る鮮血を伴い、肉が引き千切られる。一瞬遅れ、気の狂いそうな痛みが、体中に走り回る
肉を嚥下する
喉に空いた穴から、一瞬だけ、赤いものが見えた気がした
再び、口腔を開く
その歯は――真っ赤に染まっていた
吐息が――鉄の臭いが、顔に吹きかかる
その身が、断頭台のギロチンのように、振り落とされた
先程とは全く比較にならない量の血が、噴水のように散った
必死に動かしていた指を止める
眼に写る文字は、「GAME OVER」
照明が落とされ、真っ暗になった部屋で、その画面だけが煌々と輝いている
手が汗ばむほど、力を込めて握り締めていたものを投げ出す
乾いた音を立て、部屋と同じ漆黒に彩られたコントローラーは、どこかへ転がった
視線を落とし、触るのをためらうほどの熱を持っていたゲーム機――二十四時間以上働いていたのだ――の電源を切った
画面は、部屋よりも暗いはずなのに――淡い光を伴う闇を映し出す
その画面を映し出していたテレビの電源も、切った
そのままごろりと転がる
投げ出された両足を守るかのように、レトルト食品や缶詰、サプリメントの空ケースが、山のように積まれていた
その空ケースの山の下敷きになってはいるものの、しっかりと内容が見えるよう、本が置かれている
開かれた頁には、「ナイフクリアの極意」と書かれていた
その下には、びっしりと文字と図が羅列してある
所々付箋が貼られたり、マーカーがつけられている。そこだけを見れば、どこかの参考書のようでもあった
窓には分厚い布がひかれた上、光が漏れないよう、ガムテープできっちりと隙間の無いように、壁に貼り付けられている
入り口たるドアの前には、机や本棚、ベッド等、ひたすら重いものが山と積まれている
その、外界との社交性、接触点等を完全に絶った部屋の主が、むくりと起き上がった
「――よくよく考えれば、ゲームと同じとは限らないじゃん」
暗闇の中で、ぽつりと呟く
のそのそと立ち上がり、カーテンを封じ込めていたガムテープの端に手をかける
剥がす独特の音がしないように、慎重に、ゆっくりとテープが剥がされる
一瞬、ペリ、と音がした
その瞬間――何かに脅えたように手を止め、部屋の入り口を見る
たっぷり一分、呼吸や瞬きをする暇さえも惜しんで、外の音に耳を傍立てる
何の音もしないのを確認してから、再び、テープを剥がし始める
やがて空いた、細い鉛筆一本が通るのが精一杯の隙間。それに、必死に片目を押し当てる
その隙間から見える世界には――先程のゲームと、全く同じ世界が広がっていた
聞こえるのは、風が唸る声と、亡者が唸る声だけ
街燈はとっくに消え、あちこちに、どす黒く固まったものがこびり付いている
月は、空一杯に垂れ込める雲に遮られ――満足な光源さえ確保できない
亡者達の夜は、未だ明けそうに無かった
乱文失礼しました
エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円さんの、凄いです…
自分は一人称系苦手なので、より一層に
ちまちま投稿するより、ある程度溜めてからの方がいいかと思いますよ
emptyさん
書き方がぐんと小説家っぽくなりましたね。正直まだ読みづらいですが、これからどんどん腕を上げていかれる事でしょう
これからの活躍に期待しております
………偉そうな言い方してゴメンなさいね
>>460 ありがとうございます
かろうじて、見れるようにはなったかな、というレベル…。
やはりまだまだ読みづらいですよね
自分の感覚として、全然偉そうじゃないですよ…?
>>455 なぬ、このネーミングセンスがわからぬとな!?
……うそ、良いのが思い浮かばなかったので好きな食べ物の好きなネタにした
>>459 長いから省略してくれていいぞw 個人的にはマグロ天希望
それと一人称は書きやすいし、キャラの個性を出しやすいから慣れれば一人称の方がいいと思えるようになるはず
まあ欠点としては、使いこなせていないと俺や某人気エロゲやラノベみたいに描写がとにかくしつこくなることかな
俺も三人称は書けるけど、調子がよくないとまったく筆が進まないときがあるし、この話は一人称視点が重要だったりする
以下短編の感想
状況としては、ゾンビが溢れた世界で家に籠城してゲームをしていた、で良いのかな
もう少しそういった状況の説明が欲しかったところだけど、発想としては面白いと思った
特に、ただゲームをしてたわけじゃなくてナイフクリアしようとしていたというところに感心せずにはいられんかった
描写に関しては、読点がちょっと多い気がする
余分なところにまで読点があるから、読むときにテンポが悪くなってしまっている部分が多々あって非常に惜しかった
そこを気をつければもっと読みやすくなったと思う
後、文末が「る」系で終わる行が多い。文庫等の縦読みの場合は「た」や「る」で続けて終わらせてあっても誤魔化しが利くが
掲示板等の横読みの場合は誤魔化しが利きにくく、モロに作者の技量が出る。もう少し「た」と「る」の使い分けを意識してみると良い
最後に基本的な部分として、まあ応募とかするわけじゃないし必ずしも守る必要はないんだけど
地の文の頭は一文字分空けると少しはセリフの行が分かりやすくなるかな
後、文を締めるときは句点。2chだからだと思うけどこれはすごく気になった。小説書くときくらいは2chでも句点をつけた方が良いと思う
とりあえずこれくらいかな。長文失礼
それでは第二話投下(4レスのつもり)
第二話──『遭遇そして再会』
その辺で犬猫が死んでる──なんてレベルの臭いじゃなかった。
鼻をおさえて口で息をしないと耐えられないほど、今大きく深呼吸しようものなら七割くらいの確率で吐ける自信が湧く悪臭だった。
「ん…ふ……うぇ」
臭いが臭いだからか、息をしていると口の中まで気持ち悪くなってくる。とうとうこらえきれず、わたしは思いきりドアを閉めた。
多少の臭気は残ったものの、外よりは月とすっぽん並みである。その場にへたり込んだわたしは一度大きく息を吐き出し深呼吸する。
「はぁ……」
……いったいなにがあったっていうんだろう。
悪質な業者が近所に生ごみの山でも築いていったんだろうか。なんにしろ、近くで大量のなにかが腐ってることだけは間違いない。
近所の人たちもみんな家の中にこもってるのかな。
だれでもいい、なにも知らなくてもいいから、だれかと会って話をしたかった。こんな異常な中で一人でいるのはすごく怖い……。
「あ……」
そこまで考えてわたしははたと気づく。そう。外がこんな状態なのに、うちの中にはだれもいないのだ。あぁ……それって、つまり──
「うそ…でしょ……?」
こんな酷い臭いの中で外出した…ってこと……? なんのために……? いったいどうして……?
呆然としながらも自問だけが頭の中で繰り返される。
「!」
が、ふとした刹那わたしはその可能性に気づいてしまった。そして気づいたその瞬間、迷うことなく弾けるように玄関を飛び出していた。
再度鼻をつく凶悪な腐敗臭に足の動きがにぶる。
口呼吸に切り替えても構造的に鼻から微量に空気を吸ってしまうため、わたしは間抜けな顔になるのを覚悟で鼻をギュッとおさえた。
もどかしさを感じながらも早足で目的地へと歩を進める。
この辺りは都会というには田舎くさく、田舎というには少々無理があるかもという感じの中途半端な町だった。
まあ、コンビニはほとんど二十四時間営業だし、近くにはパチンコ屋やゲームセンター漫画喫茶等、娯楽施設もそれなりにある。
不便さを感じることが少ないわりに、都会よりは全然空気もきれいなところだった。だからこそパパもこの町を選んでくれたんだと思う。
でも、今は……
「はぁ、はぁ……」
家を出てから数分くらい経ったとき、わたしはその異変に気づき始めていた。
臭いの元はなんなんだろうと視線をそこら中に向けていても、一向にその原因らしきものは見つからなかった。
そもそも、何度か鼻で息をしてみたけど、家から離れても臭いの強さがまったく変わらないのだ。まるで、町全体から臭っているように。
極めつけは、人だった。
こんな臭いの中を外出したくないのはわたしだってそうだから、みんな家にこもっているとも考えられなくはない。
けれど、二車線の道路にでても車の一台も通らないのはいくらなんでも異常だった。
そんでもって、やけに路駐が多いなと思い始めたとき──ちょうど大通りの交差点に差しかかったわたしの目に……"それ"が映った。
「う、そ……」
これを見たらだれでも、大惨事だ、と胸を張って言えるだろう。
曲がり切れなかったのか、タンクローリーだと思われる大型車が、数台の車を巻き添えに交差点の真ん中で横転、大炎上していた。
もうおかしい。完全におかしい。
だって、こんな大きな事故が起こったならパトカーや救急車や消防車の一台くらい、千歩譲って野次馬の一人くらいいてもいいはずだ。
なのに……なのに……
そのとき。
燃盛る炎の中で動くものがあった。それは明らかに自分の意思で動いてた。最初は生存者かと思った。でもそれは……燃え焦げていた。
それが生きて助けを求めてる人だと思わなかったのはなぜなんだろう。
助けなきゃという気持ちは不思議と全然湧かず、逆に逃げなきゃという本能的な危機感が頭の中を一気に支配した。
盛大なキャンプファイヤーの中、操り人形みたいな不自然な動きで立ち上がった人の形をしたそれは、今も体中が燃え続けていた。
一歩、そしてまた一歩。非常に緩慢ながらも、しかし確実に歩みを進めている。──心なしか、わたしのほうに向かって。
「う……あ……」
心なしかじゃない! なに寝ぼけてるんだわたしッ!
その足取りはどう考えても一直線にこっちへと向かっていた。
他にだれもいないのだから、わたしにすがろうというのは人間の行動として理解できる。あれが人間なら。うん。生きた人間なら……。
「……ッ!」
わたしはきびすを返し、こけそうな勢いでその場から逃げだした。
あんな消し炭間近のファイヤーマンなんてどう考えても生きてるわけないッ! なにこれなにこれなにこれ……どうなってんのッ?!
「あッ──う゛っ!!」
混乱と恐怖によりふらふらの頭ん中ぐちゃぐちゃだったわたしは案の定、派手にすっ転ぶ。
思いきり体を強打しながらもすぐに立ち上がろうとするが、その瞬間、足がありえないくらいガクガクなのに気づいた。
立て、ない……。
一瞬にして絶望感が心の中を満たし、さーっと意識が冷め、冷や汗が体中から吹き出す。
くわえて転んだ際に両の手のひらと膝がしらを打ってしまったようで、追い打ち的にじわじわくる痛みと相まって、もう泣きそうだった。
それでも迫りくる人ならざる化け物から逃れようと、うまく動かない体で這いずりながら必死に近くの倉庫のような建物にたどり着く。
ガタガタ震える手でなんとかノブを回すと、ドアはすんなりと開いてくれた。
急いで開き、倒れこむように中に入ると、侵入されないようにと内鍵を閉める。これでやっと安心できる……──そう思った、次の瞬間。
どんっ、とドアを手で叩きつける音が響き、わたしは悲鳴をあげそうになった。
「ひっ……あ…ぁ……」
ドアの向こうにさっきのがいる……!? なんでこんなに速いの!? だってだって、さっきはあんなに離れてたのにッ……!
恐怖に体が硬直している間にもドアはどんどんと叩かれる。一部がガラス張りになっているドアの向こうには黒い影が見えていた。
どうしよう、どうしようどうしよう……! つかまったらどうなるの!? こわいよ、やだ、だれかたすけて、だれかだれかだれかぁ……!!
頭を抱えうずくまる中、ふとドアの向こうの影は叩くのをやめ、今度はノブを回し始めた。
その音にハッと我に返る。
いまだテンパりながらもどこかに身を潜めようと周囲を見回し、奥にダンボールが少しだけ積んであるのに気づく。
だが急いでそこに隠れようとした刹那、背後からガラスをぶち破る甲高い音が響いた。
出かけた悲鳴を必死の思いで押し殺し、這いずり隠れたわたしは祈るように手を合わせ、目をつぶってできるかぎり身を縮めた。
ドアのほうでは、破ったガラス窓から手を入れたのか内鍵が解除され、凄い勢いで開く音が聞こえてきた。
何者かが中に入った気配がしたあと、ドアは閉められ鍵がかけられる。
あ…あぁ……これで、もう逃げられない……。ここが見つかったら、わ、わたし……。
もういっそのことめちゃくちゃに泣き叫んでしまいたかった。でも生存本能が働いてるのか、わたしはただ怯えることしかできなかった。
コツコツと足音が聞こえる。そのローファーでも履いているかのような足音は迷うことなく一直線にわたしのほうへ近づいてきた。
もう、だめだ……。
「うぅ……っく……ぐす……」
怖くて振り返れもせず、ただ身を抱いて震えることしかできない。足音がすぐ横で止まる。
そうしてたっぷりと数秒の間のあと──何者かが勢いよく体の上に覆いかぶさってきた。恐怖が弾けたわたしは暴れながら泣き叫ぶ。
けど次の瞬間──
「…………え……?」
──わたしはギュッと強く抱きしめられ、頭を撫でられていた。その何者かを見た瞬間、思わず目を見開く。
絶対に離さないとでも言うかのように強くわたしを抱きしめ、自らも涙を流しつつ頭を優しく撫でてくれていたのは……──アリスだった。
第二話終了
特に描写に引っかかるところがないと一日で書けるものらしい
とりあえず、一話4レスくらいを2,3日間隔で上げていけるかな、たぶん、恐らく
10話くらいで終わるかなーなんて考えてるが、果たして何話で終わるんだろうか
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第三話投下(3レスのつもり)
第三話──『姉妹の絆』
「あ、ありす…アリスぅ……ひぐっ、ううぅ……こわかった……こわかったよぉっ……!!」
さっきの化け物じゃなかった安心感。一人じゃなくなった安心感。そして……愛する肉親に再会できた安心感。
色んな安心感が一度に押し寄せ、今までの恐怖と緊張の反動でわたしは大声をあげて泣いた。
慰めてくれるようにアリスも痛いくらいぎゅうっとわたしを抱きしめる。しかしすぐに体を離し、真剣な顔つきで手を動かした。
(さっきの…ぞんびが…まだ…外にいるから…裏口から…出るよ…?)
病気のせいなのかはわからないけど、アリスは先天的に言語障害を患っていた。
失語症と言えばいいんだろうか。目も見えるし耳も聞こえるのに、声だけがどうしても出せないのだ。
だから幼い頃から言葉を表現するときは紙に文字を書くか手話だった。手話はわたしも一緒に練習したから問題なく理解できる。
それにしても……アリスの手話を見たわたしは『ゾンビ』という単語が気になっていた。
ゾンビって言えば、お墓から生き返った腐りかけの死体がうあぁ〜って襲ってくるイメージしかないけど……ああ、なるほど。
さっきはあんな状況だったから全然結びつかなかったけど、燃えて死んだ人が生き返った、というのなら確かにゾンビと言えた。
でもそれをすぐにゾンビだって分析できるアリスはすごい。同じ双子なのにアリスのほうが全然冷静で大人な気がした。
と、そんなことを考えていたとき、ぽんぽんと肩を叩かれる。ぼぉーっとしてたからだろうか、アリスが心配そうに顔を覗き込んでいた。
(シェリー? 大丈夫……?)
「あ、う、うん。だいじょうぶだよ。さっきのが来る前に早く逃げよ」
アリスは頷き、わたしの手を引く。パニックだったせいか今の今までそこにあると気づかなかったダンボール脇の裏口ドアを開けた。
先頭を行こうとするアリスに続いて腐臭のすごい外に出──ようとした刹那、アリスは急に足を止め、わたしはその背中にぶつかる。
「いてっ。ど、どうし……──」
背中ごしに外を見たわたしの言葉はそこで途切れた。生理的嫌悪感で背筋に寒気が走る。外にいたのは……巨大な蚊の大群だった。
異様に細長い手足。そのくせ体はぷっくり大きく、そこから何ミリの薄さもないであろう羽が生えている。顔にはストロー状の口……。
そう、それは典型的な蚊の姿そのものだった。きっとだれが見てもわかる。けど、わたしの脳はその認証一致を半ば拒否していた。
だってだって、目の前のそいつらはわたしの知る蚊なんかとは比にならないくらい大きくて……! サッカーボール並のでかさだった。
「……な、なにこ──んぐ」
震えた声で言いかけたわたしの口をアリスがすばやくふさぐ。
その瞬間。
巨大化して飛べなくなったのか、羽をブンブン言わせながらも地べたをウロウロしていた化け物蚊たちが──一斉にこっちを向いた。
「ひっ──」
気づかれた……!? わたしがそう思ったのと、蚊がこっちに向かって飛びかかり、アリスが全力でドアを閉めたのはほぼ同時だった。
一匹の蚊がドアに挟まったが、その体はあっけなくまっぷたつに引きちぎれ、室内に少量の血しぶきと共に転がる。
そんな状況でもアリスはほとんど動じず、ぐっと力いっぱいドアを引いて鍵をかけることに成功した。蚊がドアに体当たりする音が響く。
「な、なにあれ……!? ねぇ、なんなの!? どうなってるの?! あれもゾンビなの!?」
パニックが再発したわたしは悲鳴のような叫び声をあげる。そんなの、アリスにだってわかるわけないのに……。
ちぎれて死んだ蚊の残骸をつま先でそっと見えない位置まで移動させていたアリスは振り向き、困ったような顔で首を振る。
床にはコップ一杯くらいの量の血だまりだけが残された。それはまるで人間の血をたくさん吸った蚊を潰したときの手のひらのようで。
背筋に薄ら寒いものを感じさせるのと同時に、いやな妄想が頭の中をよぎらずにはいられなかった。
(とにかく、ここからはもう出られないから、またあっちから──)
どんっ!
手話の途中でアリスの手が止まる。その顔は蒼白に染まり、視線はわたしの背後に向いていた。
うん、なにも言えなくてもわかるよ。手話を遮ったのはドアを叩く音だった。それに背中も少しあったかくて、パチパチって音も聞こえる。
振り向くわたし。ガラスが砕けたドアの向こうには、いまだ燃盛る死体がいた。
アリスのときとは違い、壊す気満々手加減なしの打音が室内に響いてくる。
裏口には化け蚊の大群。そして正面には燃えるゾンビ。他に脱出口のようなものは一切見当たらない。それはつまり……──
「死にたくないよ……」
──ジ・エンドだった。
きっと、あの蚊たちの胃袋には人間の血がいっぱい詰まってる。ゾンビだって無害なら映画とかゲームの敵になったりしない。
このままだとどっちかのドアが壊されて……わたしたちは殺される。
自分が死ぬのはもちろんいやだけど、アリスが目の前で惨たらしく殺されるのはもっと耐えられなかった。
泣いてばっかで情けないし恥ずかしい。
けどどうしてもあふれ出るものが止まらない。次々に流れ続ける涙を必死に拭っていると、ふいにアリスはわたしを強く抱きしめた。
「う、っく……あ、アリ、ス…っ…?」
手話もしないで、ただただわたしの体を抱きしめる。
耳をつんざくような破壊音が轟いた。ついに正面ドアがぶち破られたのだ。
ビクッと身を震わせるわたしの手を引き、アリスはさっきわたしが隠れたダンボールの陰に走った。
二人でお互いの身を抱き合う。そのとき──わたしは気づいた。アリスの体が……信じられないくらい震えていることに。
アリスだってわたしと同じくらい怖い思いをしてたんだ。なのにわたしは自分のことばっかりで……まったく気づいていなかった。
こんなの……姉妹失格じゃないか……。
地の底から響くような唸り声と緩慢すぎる足音が近づいてくる。ふと、アリスはわたしのほうを見ずに手話でこう言った。
(ずっと……一緒だからね。シェリー)
さっきまでのわたしなら、きっと諦めの言葉だと取ったに違いない。
でも今はアリスの意思がわかる。怖くてもわたしのために諦めない。だからこれは、生きてずっと一緒にいようと、そう言ってるんだ。
よく見ればアリスは片手でわたしを抱き、もう片手にはスコップを持っていた。わたしはその手に自分の手を重ねる。
一瞬驚いた表情でわたしを見るアリス。わたしはなにも言わず、力強くうなずいた。
ゾンビの足音が迫る。一人なら重いスコップも二人なら軽く振り回せた。──刹那、鈍い音と共に炭化したゾンビの頭は容易に砕けた。
第三話終了
3節目がなかなか収まりきらなくて大分描写を省いてしまった。テンポがちょっと悪くなってるかも試練
ちなみにようやく姉妹二人の名前が出てきたわけだけど、どちらも映画バイオの主役、バイオ2のGの娘とは直接関係はない
ちょっとした類似性は持たせてあるけど
残り244話っすね。楽しみです。
475 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/08(火) 04:30:01 ID:yYgPRlGvO
>>473 マグロ天様
描写を省かれてなおこの読みやすさ。…見事な物ですね
第三者の視線を第一に考え、解り易く内容を伝えんとする意思を強く感じる文章です
今後の展開に期待しております
>>マグロ天さん
凄いですね〜…
描写が省かれてるのに読みやすい…
それと、感想どうもです
読点が多いのは、投稿した後で気づきましたw
背景の説明が少ないのですね〜
それと、文末と…句点
元々この話は、一番最後のフレーズを書きたいがために作ってみた話です
どうしてもこの一文で締めてみたくなって
補完として
背景的には、ゾンビが溢れて数日程度
なのでまだ、電気は通っている…はず
ナイフクリアに固執したのは、
日本じゃ銃は手に入らない→だったら包丁?→怖いから、ゲームで練習してから…
という発想の元
描写部はGC版のバイオハザードをアレンジしてみました
この描写を作るがために、何回殺されたことやらwww
一応次も考えてはいるのですが…何故か、独白のような形での物語となってしまいそうです
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第四話投下(5レスのつもり)
第四話──『Unexpected death』
ばすん、という中途半端に乾いた音を発してゾンビの頭は砕けながら吹き飛んでいった。
そのとたん、火を纏っていた首から下の体は操り糸が切れたみたいにその場に崩れ落ちる。それ以後、もう二度と動くことはなかった。
「や、やったのっ……?」
目の前の現実は確かにわたしたちの勝ちを示してるのに脅威が去ったという実感はまったく湧かなかった。それはアリスも同じらしい。
呆けたままのわたしたちの手からスコップがこぼれ落ち、甲高い金属音を響かせる。その音にハッと我に返ったアリスは、
(みたい……だね)
疲れた笑いを見せながら言った。
どっと気が抜けたわたしは思わず壁に寄りかかる。が、すぐにそんな場合じゃないと頭を振った。
町全体の異常な腐臭といい、あの巨大な蚊といい、わたしたちに危害をくわえようとする存在がこれだけだとはどうしても思えない。
そう考えればここに長く留まるのは明らかに危険だ。いや、そもそも最低でもこの町から外に出ないと生き延びられる気がしなかった。
「アリス……きっとこの町はもうだめだよ……。だから、一緒に遠くに逃げよ……?」
きっと賛成してくれる。──ほぼ確信しながらそう言ったわたしに、しかしアリスはふるふると首を振り、真剣な表情で言った。
(まだやらなきゃいけないことがあるの。病院に行かなきゃ)
「え……なんで!? あ、びょ、病気のことだったらたぶんだいじょうぶだよ! 他の町ですぐ病院に行けばなんとかなるって!」
(ううん、そういうことじゃなくて……)
「じゃあどういうことなの……!? だってわたしたち女だし、まだ子供なんだよ?! また化け物に襲われたら今度こそ殺されちゃうよ……!!」
わたしの猛反論に申し訳なさそうな顔を作るアリス。きっと正論だってわかってるに違いない。
それでも病院にこだわるのはなぜなのか。言おうかどうか迷っている様子だったアリスは、ふと決心したようにわたしの目を見て言った。
(だって病院に……パパがいるから)
その一言を聞いた瞬間、わたしの胸はどくんと大きく脈打った。パパ……そうだ、パパだ。
アリスに会えてすごく安心したせいでパパの安否すらも無意識のうちにだいじょうぶだと思いこんでしまっていた。
やさしくて、わたしたちをすごく愛してくれてて……。
ずっと諦めずに死の病を治す方法を日夜研究してくれてる……そんなパパを見殺しにするなんて、わたしにだってできるはずない。
「本当に、病院にパパがいるんだね……?」
(うん。間違いないよ)
「よし、じゃあ病院に行こ! 家族三人で……生きてこの町を出ようね!」
(うん!)
本当はすごく怖い。アリスだってきっと気持ちは同じ。だけど、わたしたちにはパパを置いて逃げるなんて選択肢はありえない。
アリスがわたしのために逃げないで戦おうとしてくれるのをさっき知った。ならわたしもアリスやパパのために逃げないで戦う……!
空元気でもぶるぶる怖がっているよりは気持ちをごまかせる。ちょっとの勇気と空元気で自分を鼓舞し、わたしたちは倉庫の外に出た。
相変わらず臭いがすごい。けどもう半分慣れてしまってふつうに口呼吸をしているだけで平気になってしまっているのがなんか悲しい。
「どうやって病院まで行こう……? こんなんじゃバスとかも動いてないだろうし」
歩き走りで行けないことはないけど、それじゃ時間がかかりすぎる上にもしまたゾンビとかに出くわしたら逃げきれるとも限らなかった。
理想なのは自転車だけど、あまり激しい運動をするのは病気の関係で医者に止められている。アリスもそれは重々わかっているだろう。
「やっぱり歩きで行くしか……」
と言いかけたそのとき、ふいにアリスがわたしの手を取り走り出した。
「ど、どうしたの……あ……!」
引っ張られながらふと目に映ったタンクローリーの炎上現場。そこには、こっちに向かって歩いてきてる火炎ゾンビの集団があった。
羽音がして別のほうを向けば、裏口にいた蚊たちがこっちに気づき飛び跳ねてきてるではないか。
わたしたちは早くも二度目のピンチにみまわれていた。そんな中、アリスは一直線に元来た道を戻っていた。つまり──うちに向かって。
「ど、どうするの……!?」
ゾンビも蚊も移動速度は遅いらしく、体にあまり負担がかからないようにジョギング程度の走りでもなんとか引き離すことができた。
けど、だからといって安全になったわけじゃない。
アリスもそれはわかってるようで、一旦止まって手話で疑問に答える──ということはせず、足を動かすことを優先させていた。
やがてうちが見えてくる。それと同時に駐車スペースに停まっていたものに気づき、わたしはやっとアリスの意図を理解したのだった。
で、でも……
(それ道路に出してて)
アリスはそう言って家の中に入っていく。たぶん鍵を取りに行ったんだろう。
わたしは初めて触るそれ──スクーター型の原付バイクのスタンドをおっかなびっくり倒すと、おそるおそる道路へと移動させた。
う〜……アリスってば本当にこれで二人乗りしてく気なの……? 非常事態とはいえ、わたしたちまだ十四歳で免許だってないのに。
いけないことをするみたいにドキドキする。いや、実際いけないことなんだけど……。
──と、そんな悠長なことを考えていたとき、地の底を這うような不気味な唸り声の重奏が聞こえてきた。
振り向いたわたしの目に道を曲がるゾンビの群れが映る。
獲物を見失ったせいなのかは知らないけど、無理やり動かしているのか今にも崩れそうな体のくせにさっきよりも早歩きになっていた。
「あ、アリス……! ゾンビ来たよ早くッ……!」
叫んだ直後、玄関のドアが勢いよく開いた。
目を向けたわたしは思わずぽかんと口を開けてしまう。家から出てきたアリスは両腕で食品パックのようなものをいっぱい抱えていた。
「な、なにそれ……?」
わたしの問いに、もちろん両手がふさがっているアリスは答えることができない。
ぽろぽろとこぼしながらこっちにやってきたかと思えばそれらを全部地面に置き、バイクの鍵を上着のポケットから取り出した。
(それ全部開けて中身まいて)
「えぇ……?」
見ると中身は全部お肉だった。魚肉、牛肉、豚肉、ソーセージ、ハム、ベーコン等々……どうやらこれを足止めに使うらしい。
効果があるかどうかはほとほと疑問だったけど、やらないよりはマシか。
キーを回してエンジンをかけるアリスの横で、わたしはそれらのパックを乱暴に破いては壊し、中身を地面の上にぶちまけていった。
そうして全てまき終えると、ハンドルをにぎるアリスの後ろに座ってその体に強くつかまる。
アリスも緊張しているのか、最初はブレーキをかけながら軽く吹かしてアクセルの感覚を確かめているようだった。
二、三度それを繰り返したあと、アリスはようやくブレーキを離し、ゆるやかにアクセルをひねった。
ゆっくりとタイヤが回り始め、車体が動き出す。
ちゃんと運転できるか不安だったものの、あまりスピードを出さなければ自転車と同じような感覚で走行していけるようだった。
振り向くと、ゾンビたちがばらまいた生モノ地帯に今まさに差しかかり、食いついている姿がちらりと見えた。
なんとか陽動は成功したみたいだ。
ゾンビたちが追ってこないのを確認したわたしは、ふと視線を我が家に向けた。
どんどん遠ざかっていく。……なんだか、もう二度と戻ってこれないような気がした。そう思ったとたん、胸が張り裂けそうになる。
ママ……きっと、きっと戻ってくるからね。パパとアリスとわたしと……みんなそろってまた一緒に暮らそうね。絶対に……約束するよ。
一筋の涙をぬぐい、わたしは前を向いた。
町中は悲惨な状況だった。腐臭はどこまで行っても漂い続け、行けども行けども生存者の姿は見つからない。
けれど逆にゾンビの姿も本当にまれにしかなく、なぜかはわからないけど明らかに住んでた人々の人数と比例していないようだった。
「みんなどこ行っちゃったんだろ……」
道路上では放置された車や事故現場が多く見受けられ、歩道では自転車なども乗り捨てられていたりする。
町にゾンビがあふれて住民たちが逃げ出そうとしたのは確かなようなんだけど……。
いや、そもそも敵がいないこと自体この幸運に感謝しないといけないか。
さっきの蚊のように虫とか動物もおかしくなってる可能性が高い。だとすればゾンビよりも何倍もタチが悪いのだろうから。
そんなこんなで色々と考えているうちに、わたしたちはとてもすんなりと病院についたのだった。
「うわぁ……」
見慣れたはずの病院は廃院と化してしまっていた。いつでも逃げられるように鍵は差したままにしてバイクを下りるわたしたち。
「本当にパパ、こんな人気のないところにいるの……?」
問うても、アリスは力強く頷くだけだった。
わたしは改めて病院を見上げる。パパももうゾンビになってるんじゃ──そんな想像がふと脳裏をよぎり、慌てて首を振った。
病院関係者の通用口から入ることにしたわたしたちは二人で左右に隠れ、そぉーっと開けたドアから中を覗く。
……特に不審な物音も唸り声とかも聞こえてはこなかった。
中に入ったわたしたちは足音を立てないようゆっくりゆっくり歩を進めていく。ふつうに電気が通って明るい院内は逆に不気味だった。
そのまましばらく進んで廊下の角を曲がったとき、机とか椅子とか色んなものでバリケードが作られている空間を発見した。
その真ん中にはドアが一つある。それは明らかに人間がいる証拠だと言えた。
パパかもしれない。そんな期待がわたしたちの胸を躍らせる。
中にいるのがだれであれ、ゾンビじゃないなら襲われることもないだろう。警戒を解いたわたしたちは一安心しながらドアを開けた。
──刹那、風の唸り声とともに、ぐちゃ、といういやな音が辺りに響き渡った。目の前のアリスが倒れる。喉に……なにか刺さっていた。
484 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/10(木) 00:20:15 ID:ClX8dFKlO
>アリスの手話を見たわたしは『ゾンビ』という単語が気になっていた。
手話でゾンビって単語をピンポイントで伝達出来るわけないだろ
造りが粗い
第四話終了
タイトルは日本語で書いたものを翻訳サイトで訳しただけなので適切かどうかはわからん(汗
3,4節は本当は一つにまとめるつもりだったが、開き直って分けてみた
>>476-477 こんな文章でも読みやすいと言ってもらえると嬉しいな
俺は書くとき常にアニメーションのような場面を頭で描いて、それを文に起こしていたりする
まあ、詩的センスがゼロだから現実的な文しか書けないんだけど…orz
短編の補完についてだが
背景を知るだけでぐっと物語に深みが増したと思う
それと、あれを読んだときに頭の中にGC版バイオの場面が浮かんだから描写は大成功というわけだな
次はどんな物語になるのか楽しみだ
>>484 手話は直接的に表現でなくても、一文字ずつ指文字で文字を表すことができる
だから最初にアリスの手話を見たシェリーは『ゾンビ』を『ぞんび』と読んでいるのだ。ご指摘ありがとう
>>エビ天さん
乙ですー。
タイトルは予期せぬ、とか突然の死、という意図なら間違いないです。
手話で五十音を表せることを知らない人もいるんだね・・・。
一般的でないこと(この場合手話の五十音)を、説明的にならないように、文章に織り込むのは難しいですが
是非チャレンジしてみてくださいね。続き楽しみにしております。
488 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/11(金) 10:19:59 ID:5vMxHXehO
>>486 手話(名詞、動詞、形容詞を1動作で表現)と指文字(あいうえお…、ABC…)は違います
親戚みたいなものだから同じニダ!と強引に通したいのならハンドサインと表記した上で(ぞ・ん・び)と表現してごまかすとよいでしょう
いずれにしても表現力不足ですね
読み易さに主眼を置いてるが、推敲はしていないと取らざるを得ません
まあ読み易い文なのが救いですね
>>487 わかります、手話と指文字の違いすら知らないやつが存在するとは…ですね
>412の続き
「うあ! すまん! 寝過ぎた!!」 西田は飛び起きた。
「もっと寝ててもいいぜ」 オレは西田にもう少し休むように言った。
「いやいや、そうもいかんよ。 交代の時間とっくに過ぎてるじゃんか」 律儀な奴だよまったく。
「なにか変わった事は?」
「別にないな。 ふらふらと二匹ほどあるいて向こうに行ったけど気付かれなかったよ。 それよりどうだい? 調子は」
「ああ。 おかげで随分と楽になった。 さんきゅ」 西田は目一杯伸びをした。
腕時計を見るとAM4:35となっていた。
もうすぐ夜が明ける。 今日も一日生き抜けるよう頑張ろう。 今日こそは彼女の元に戻れるますように。
「神様への祈りは済んだか? じゃとっとと寝ろ」 (;´д`)トホホ… 完全に読まれてるのね…
「なぁ西田。 お前の姉ちゃんどうなったんだろうな」
「さぁな。 姉ちゃんしたたかだから、どっかで生きてるだろ。 そんな事より寝ろ」
「へいへい。 じゃちょっとばっかし寝るか。 おやすみぃ〜」 オレは少し奥に入り寝ころんだ。
「おい川本。 移動するぞ」 ぉぃぉぃ いま寝たところだろうが…
「なんだよ」 「しっ!」 物陰に隠れた西田は下の路地を指差した。
そっと路地に目を下ろす。 黒い物体が三つ動いていた。 目をこらしてみるとそれはあいつらだ。
スーツを着ているあいつらだ… その筋の人は執拗だな。 しかし妙だな… 動きが変だ。
思った通り、なれの果てとなった“その筋”の人だった。
(´Д`)ハァ…「びびらせんなよ… 放っておいてもいいんじゃね?」
「いや、動きをよく見ろ。 あいつら俺達がここに登った軌跡をたどってる。
正確にな。 移動するぞ」 Σ(`Д´ )マヂデスカ!?
結局眠れずか… 駅裏商店街がこっちにあったから酒屋は向こうか…
屋根伝いに隣の商店に移る。 自転車のところまでなんとか気付かれずに行けた。
“その筋”の3人はみるみる遠のいていく。 この調子で酒屋までGOだ!
途中、自販機で飲み物を買った。 電気はまだ供給されている。
いつまで保つのかな…
空が白み始めてきた。 もうすぐ酒屋だ。
暴徒の事など忘れてしまいそうなほど清々しい朝だ。
排気ガスで淀んでいた空気も今は田舎の空気みたいにきれいだ。
「なぁ西田! 空気旨いな!」
「おう! 山の中とまではいかないけど街中とは思えないな!」
オレ達は軽快に漕いでいく。
もうすぐ酒屋。
彼女達の元へ…
「そこを右だ」 西田が先行していたオレに指示を出す。
オレ達は彼女たちと別れた酒屋に向かっていた。
商店街を出てからは暴徒には出会っていない。
至って平和なサイクリングだ。
「なぁ西田。 これからどうする?」
「あん? そだな。 酒屋に行く前に無線機取りに行かないか? チャリのが絶対早いぜ」
「んふふふふ、西田くんがそう言うと思って君が寝ている間に電気屋から失敬してきたよ」
「まじかよ! 置いてあったのか!?」
「おぅいぇ〜す♪ でも、情報なんて全然流れてないぜ 正直がっかりだったよ」
「…そか…」
「でも定期的に確認してればなにか受信できるかもしれん」
「そこの角を曲がれば大通りにでる。 しばらく進めば酒屋だ」
なんとか辿り着けそうだな。 怒ってないかな? 喜んでくれるかな?
そんな事を思いながら最後の直線に入った。
視野に酒屋が入る。 そこには見慣れぬ軽トラックが停車していた。
よく見ると酒屋のネームが入ってる。 ん!! 住人が帰って来たのか!
まずい! 中に隠れているのがばれたら…
「西田!」 「おう!」 オレ達は全速力で自転車を走らせる。
ぶ、無事で居てくれ! 心の中で叫びながらペダルに力を込める!
少し手前で自転車を飛び降り、ハンドガンを胸元から取り出す。
セーフティを外し軽トラックに隠れる。 身軽になる為リュックは下ろした。 店の中で人影が動いている。
遅かったか!? 西田に目をやると顔色が変わっているのが分かった。
同じ事を考えてるな… くるっとこちらを向いた。 こくりと頷く。
オレも頷き、突入の体勢に。 二人同時に突入開始。
軽トラックから飛び出し入口左右から接近した。 と同時に笑い声と共に誰かが出てきた。
初老の男!? 笑い声!? 理解出来ぬまま男の足をかけ押し倒す。
「動くな!」 オレは男のこめかみにハンドガンを突き付けた。
その隙に西田は突入。 …するはずだったが女性の悲鳴が。
「きゃー!!!」 ん? 聞き慣れた悲鳴。 森さん?
「え? なに?」 西田の声だ。 なんだ?
「なにやってのよ! その人は助けてくれたのよ!!」 この声… 渡辺さん?
どん! 「ぐぇ!」 え? 西田?
振り返ろうとした瞬間、尻に蹴りを入れられた。
「ぬぉ!」 前方にもんどりうって倒れ込んでしまった。 「つつつ…」
「ちょ! ちょっとやめてよ! 大丈夫?」 この声は…
「事情も分からないんだから仕方ないでしょ!」 ぐいっと抱きしめられた。
「…ご、ごめん森ちゃん… でも…」 抱きしめられていて前が見えないが
危機的な状況ではなさそうだ。
「二人とも無事なのか? おっちゃんも大丈夫?」 店内から西田が出てきて老人が起きるのを手伝った。
「あぁ、びっくりしたよ。 まさか本物じゃないよな?」 老人はほこりを払いながら苦笑いをした。
(;´∀`) 本物とは言えない状況だな…
「すんません。 オレ達の早とちりだったみたいで」
「あ、いや構わんよ。 大事な人を助ける為だったらああなるのも分かる」
「無事も何も快適に過ごさせてもらったわ。 お爺さん大丈夫?」 渡辺さんが濡れたタオルを老人に差し出した。
「あ、あぁ。 大丈夫、有り難う。 こちら二人があなた方が待っておった方かな?」
「はい♪」 森さんが笑顔で答えた。 満面の笑みとはまさしくこの事だな。
「どこに行っていたのかね? こんな若い娘さんを放っておいてまで行くところがあったのか?」
ぐっ! 痛いところを突かれたな… ん? あれ? あの二人は?
「あの… もう二人居ませんでした?」
「お、おう。 あの二人は商店街の連中と一緒に集会所におる。 無事だよ」
(´Д`)ハァ… よかった。
「名前を言ってなかったな。 ワシは坂田。 この店の店主だ」
看板を見上げると坂田酒店と大きく書かれていた。 「どうだね? 君達も一緒に集会所に来ないか?」
「有り難いお誘いなんですが、私の実家も気になるのでそちらに向かおうと思ってます」 西田は申し訳なさそうに返答した。
坂田は残念そうに頷いた。 「そうか… 君達のような若者が来てくれると心強いんだが…
目的があるなら仕方ないな。 ここに有るモノは何を使っても構わんよ。 まぁ、ゆっくりしていってくれ」
そう言いながら奥のストックルームに入っていった。
「二人とも本当に無事なんだね?」 西田は渡辺さんに確認をした。
「本当に無事よ。 店主が帰ってきた時は焦ったけど、とてもいい人達で助かったわ」 渡辺は笑顔で答えた。
「それよりも遅かったじゃない。 すぐ帰ってくるって言ってたのに!」 微妙に怒ってるな…(;´∀`)
「ちょ、ちょっと手違いがあってね。 追われる身になった」 オレはそこらに置いてあったコーヒーを飲みながら言った。
「追われるってどういう事よ!」 渡辺は顔色を変えた。
「…その筋の人殺っちゃった…」 工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工
「しかも二人」 工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工
「それって… 悠長にしてる場合じゃない…よね?」 森が恐る恐る聞いてきた。
「ん… そだね。 早めに消えたほうがいいだろうね」 さらっと西田は言った。
と、ここまでで第二章は終了です。
ではまた! (=゚ω゚)ノジャ、マタ!!
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第五話投下(6レスのつもり)
第五話──『G=x
ドアを開けたのはアリスだった。だから、当然先に中に入るのもアリス。
…………そう。なにか予期しない攻撃を受けるの、も……もちろん、あ、アリ、ス…な………わ、わけ……で…………
「────」
え……なにこれ。あ、え……え……? い、いいい、いったいどうなって……な、なんでこんな……え、ちょっと……あああああ……!!
わたしはどこにも目の焦点が合わせられなかった。歯がガチガチとうるさく鳴り、体は信じられないくらい震えている。
目の前には倒れたアリス。その喉には……──鉄の棒みたいなのがざっくりと食いこんでいた。
アリス自身もなにが起こったかわからない表情で、苦しそうに血ヘドを吐き出しながらその体はわたしの比じゃないほど痙攣していた。
「げぽっ…ごぼぉっげぇっ……!」
何度目かのアリスの吐血の声──否、音でわたしはふと我に返る。
刹那、ずっと拒否し続けていた現実を……脳が理解してしまった。とたん、断末魔のような狂大な悲鳴がわたしの口から上がった。
「あ、ああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁあっぁ!!!!!!!」
それは病院の隅々にまで聞こえるんじゃないかというほどの爆音だった。もはや声じゃない。
「やだやだやだやだやだなんでこんな、死なないでお願い、死んじゃやだよ死なないで死なないでアリス、アリス、アリスぅうううぅぅ……!!」
もう頭の中がぐちゃぐちゃでなにもわからない。
ただただひざまずいてアリスの体にしがみつき体を思いきり揺らす。もう目が見えない。なんだこれ。なんでこんな視界が歪んでるの。
でもそんなのどうだっていい、アリスに死んでほしくない。だってずっと一緒だって約束した。ママに三人で帰るって約束した。
なのになんでなんでなんでこんなことになってるの。わけわかんないだれかうそって言って夢だって言ってアリスに酷いことしないで。
──ふと。すっ、とわたしの頬に指先が触れる。アリスだった。人差し指の先がちょんと頬に触れ……そしてその手は力なく崩れ落ちた。
アリスは死んだ。もう……動かなかった。もう……笑わなかった。その瞳に光はなく、うつろにわたしを見つめている。
口から血をいっぱい吐いてそのきれいな顔をよごし、服にまで垂れて白いブラウスが台なしだった。
喉にはまだ鉄の棒。痛そう。かわいそう。もともと声なんて出なかったのに追い打ちをかけるように喉を潰して殺されるなんて……。
わたしは食いこんだ鉄の棒をアリスの喉から引き抜く。パイプ状のそれは先が鋭く研がれていた。
からん、と持つ力もなく鉄の棒は床に転がる。ベッドかどこか安静な場所にアリスの亡骸を移動させるため抱こうとした、そのとき──
「ひ、人……だったのか……。お、おれ……なんてこと……」
刹那、わたしはホラー映画にでも出てきそうな勢いでぐりんと声のしたほうに首を回した。
オトコだった。わたしたちより少しウエくらいノ。申し訳ナさそウにアリスとわタシをミテいた。コイツ……? コイツが……アリスヲ……?
「……ぅあああああああぁぁぁ!!」
「なっ……!?」
わたしは転がっていた鉄の棒を拾い上げてその男に体当たりしていった。
紙一重のところで避ける男。わたしは何度も何度も鉄の棒をそいつ目がけて振り回し、突き出し、追いかけていく。
「よくも、よくもアリスをぉッ……!!」
自分でも驚くほどドスの利いた声が漏れる。
今度こそそのどてっ腹にぶっ刺そうと思いきり力を込めた一撃を繰り出した瞬間、しかし男はわたしの手首をつかんで静止させた。
ぎりぎりぷるぷるとお互いの最大限の力を込め合い、その結果拮抗して動かない。
「待って、待ってくれ……! 今はおれたちで殺し合ってる場合じゃないんだ! お願いだから話を聞いてくれよ……!」
「うるさいッ! アリスを殺しといてなにが殺し合ってる場合じゃないだッ! 大人しく死ねぇッ!!」
力は拮抗していても優勢、劣勢という差はプレッシャーの度合いが段違いに違う。
少し力を緩めれば殺されるかもしれない恐怖、それが男を襲ってるはずだ。無駄に力を入れすぎ、その結果すぐに手が痺れてくる。
もう少しで殺せる! わたしは勝利の確信に醜く顔を歪めて笑う。が、そのとき──低い低い獣のような叫び声が病院内に響き渡った。
「くっそッ! 来やがった!」
男は一段と焦りを見せながら吐き捨てるように言う。その様子を納得させるくらい響いてきた咆哮はあまりにもおぞましいものだった。
本能的な畏縮か、思わず手に力を込めるのを忘れてしまう。男はその隙に気づき、すぐさまわたしの手から鉄の棒を奪い取った。
「あ、返せ! 返してよッ!」
必死に取り返そうとジャンプする。が、身長差がありすぎて男が万歳をしたらもうわたしでは届きようがなかった。
「……うぅ……死ね、死んじゃえぇっ! お前なんて死ねばいいんだぁッ! く、う、ああぁぁぁぁ……!」
くやしい…くやしい。アリスを殺された上にこんな小馬鹿にされて……涙が止まらなかった。
武器を失くしたわたしが男に勝てる要素はあるわけもなく、やり場のない怒りと憎しみを拳に込めて男の腹を殴ることしかできない。
「ぐぇっ! ま、待てってば! こんなことしてる場合じゃないだよほんとに! おれだけじゃなくてお前だって殺されんだぞっ!?」
「…………アリスが死んだのに……わたしが生きてる意味なんか……」
男の言葉に急に気持が冷めたわたしは力なくその場にへたり込み、涙と鼻水とよだれを恥ずかしげもなく垂れ流す。
ずっとわたしを守ってくれてた。同じ双子なのに、自分だって怖くないわけないのに、それでもわたしの手を引っ張って先に立って。
なのにわたしは……なんにもしてあげられなかった。ほんとうにただのひとつも。最後の最期まで……迷惑かけて、身代わりに……。
「ごめんな……」
わたしはその声にバッと顔を上げる。見れば、男がアリスの亡骸を抱きかかえているところだった。
「なに……なにしてんのさあんたぁッ!! 殺したくせにアリスに触るなぁッ!!」
「このままだとアイツがここに来て、この娘の体がどうなるか分かんねぇ。死んだ後も傷つけられるなんて本人だって嫌だろ……?」
「う、うううううぅぅぅぅ……!」
そんなのいやに決まってる。わたしだってそんなの耐えられなかった。でも……言い返すことができないのがくやしくて仕方なかった。
改めて見回してみると、この部屋は宿直室のようだった。
奥には畳が敷かれていてテーブルやらソファーやらでバリケードが作られている。
入ってすぐ右にはキッチンもあり、その奥にはトイレ。さらにそこから左にもスペースが見えた。たぶんベッドがあるんだろう。
アリスを抱いた男はベッドがあると思われるほうに入っていった。わたしはくやしさに歯ぎしりしながらも男の後を追う。
案の定そこにあったのは二段ベッド。反対側にはロッカーが並んでいた。男は一度ベッドを一瞥すると、迷わずロッカーに向かった。
「ちょっとッ! アリスをそんなとこに押し込める気……!?」
「ベッドの下は結構スペースが空いてるからしゃがんで見られたら終わりだ。それに汚いし。ロッカーなら多分全部開けたりはしないだろ」
「……っ」
男は十個くらい並んでる中の右から三番目のロッカーを開け、そこにアリスを体育座りさせるような形で隠した。
アリス……本当に死んじゃったんだね……。
瞼を閉じたアリスは寝てるようにしか見えず、でもなにをしても反応しなかった。その死を再認識させられたようでまた涙があふれてくる。
「さ、おれたちも逃げるぞ!」
「……勝手に逃げれば」
もうどうだっていい。アリスのそばに少しでもいてあげたかった。
どうせ生きてこの町から出られやしない。なら最期くらいアリスと一緒に……。今からここに来るという何者かに殺されるのもまた一興だ。
男はそんなわたしを細目で見つめ、そして手をつかんだ。
「……ッ! 離してよッ!」
「俺は説教なんてしないよ。おまえたちのこと解ったつもりにもならない。好きにすればいいし、死にたきゃ死ねばいい。だけどさ」
振り払った手を男は再度つかんだ。今度は強くほどけないように。わたしは男を睨めつける。
「おれは自分の罪滅ぼしをさせてもらう。おまえのきょうだいを殺しちまった……だから罪を償う。おまえだけは絶対に死なせねぇ」
「……っ、勝手なことばっかり……そんなの全部あんたの自己満足じゃんッ! わたしに押し付けるなッ!!」
「そうだな……ただの自己満だ。でも、おれはその子が……お前に死んでほしくないだろうと思ったから。だからおまえを……死なせない」
男の言葉にはなにも感じなかった。映画にでも影響されてそうな虫酸が走って反吐が出そうになる偽善的な戯言。
でも、その中の一言にわたしはハッとアリスの意思を思い出した。
わたしに生きてほしいから……だからアリスは必死になって戦ってくれた。先に立って引っ張っていってくれた。そして犠牲になった。
わたしがアリスに死んでほしくなかったように、アリスもわたしに死んでほしくなかったんだ。
ましてや、もう動くこともできない自分の前で愛する人が無惨に殺される姿を見せつけられるのは……どんなに苦痛なことだろう。
自分もさっきその拷問にも等しい体験をしたじゃないか。なのに……わたしは自棄になってアリスの想いを踏みにじろうとしてしまった。
わたし……生きるよアリス。生きてパパを見つけ出して、ちゃんとアリスのお葬式……やってあげるからね。
心を決めたわたしは、いつまでも手をつかんでいた男の頬にビンタをお見舞いした。
「つ!」
「いつまで握ってんのさ馬鹿野郎。ちゃちなセリフ決めて映画の主人公にでもなったつもり? 死なせないんでしょ? さっさと逃げるよ」
「お、おまえ……」
呆けて男の力が弱まった隙に手を振りほどき、きびすを返した──その瞬間。わたしと男は弾けるように入口へ目を向けた。
さっきの獣のような叫び声がすぐ間近で聞こえてきたのだ。直後にバリケードが破られるような衝撃音も響いてくる。
遅かったか。今から入口に向かっても鉢合わせになるだけに違いない。
もう逃げ場はないか、一か八か自分もロッカーの中に隠れるかと部屋の中を見回したわたしは壁に二つ並べられた棚に目が止まった。
その間からは微量に光が射しこんでいる。
「手伝って! これどかすよ!」
「えっ? 待てよ! 外は──」
「殺されたいの!? いいから早く!」
男は悪態を吐きながらも棚をどかす作業に加わった。
けっこう重く床がいやな音を立てるが、なんとか力を合わせて片方の棚をどかし切り、隠れていた窓の片側があらわになった。
「おい、どうする気だよ!?」
「黙ってそこにいてッ!」
もう時間がない。わたしは今度こそ一か八かの作戦に出た。ガラスが砕け散る音が響き渡り、数秒後、化け物が部屋の中に入ってきた。
からんからん、と鉄パイプらしきものを引きずる音が部屋の中に響く。
化け物は裸足らしく、だがその足は尋常じゃなく太い。肌の色も変色しており、もはや人間とはかけ離れていた。
ふいに化け物が立ち止まる。……周囲でも見回しているのだろうか。
しばらくしてまた歩みを再開したそいつは、窓のほうへと向かう。──直後、叫び声の後にものすごい破壊音が轟いた。
気づかれた……!?
あまりの恐怖に目をつぶって耳をふさぐわたし。ややあってゆっくり目を開ける。どうやら邪魔な棚をどかしただけのようだった。
残ったガラスも叩き割り、化け物は外へと身を乗り出す。少しの間その体勢でいたあと、完全に窓をまたいで外へと消えていった。
「……行った、のか……?」
数分くらい経ってから、わたしの後ろにいた男が口を開く。
わたしはその問いに答えずベッドの下からそっと室内の様子をうかがい、充分に時間を置いて、ようやく這い出るのだった。
作戦は成功らしい。棚の中にあったビンで窓を割ってわざと音を立て、外に脱出したように見せかけたのだ。
しかし……ベッドの下は掃除されてなかったらしく、ほこりまみれでそれがモロ服や顔や髪にへばりついていた。
あとに出てきた男も同じようで、わたしたちはしばらく体中のほこりを落とす作業に没頭した。
「さっきのアレ……いったいなんなの?」
なんとか外見上は汚れを落としたわたしは男に訊く。
男が話しかけてきてもずっと無視していたため、『まったく女って奴は……』みたいに肩をすくめた男はそれでも口を開いた。
「ずっと病院を徘徊してる化け物だ。そこらに溢れてたゾンビっぽいのとはまた違う奴らしい」
「……ずっとって、あんたいつからここにいるわけ?」
「入院してたからな。こんな事態になる前からずっといる。籠城してからってんならゾンビが発生した三日前からずっとだ」
「え……? 三日……前……? あんた、なに言ってんの……?」
「はぁ? なに言ってんのって、だってみんながゾンビになり始めたのが三日くらい前だろ? だから……」
「うそ……」
だって、わたしが寝たときはまだこんな事態になってなかった。うちの地下で目を覚まして……わたし三日もずっと眠ってたの……?
第五話終了
今回はシェリーがキレて相当性格悪くなってるなぁ…
それに一人称だから、めちゃくちゃ心を乱しているシェリー視点なのでいつにも増して読み辛いと思われる
本当は後1節書こう思ったけど、疲れた上に明日嫌なイベントがあるのでここで切ることにした
>>487 タイトルは日本語ですんなりと読ませたくなかったから英文にしてみたが、意図通りのようで何よりだ
今作での手話の表現に関しては『面倒くさいし、どうせ誰も突っ込まないだろう』なんてタカをくくってまったく説明しなかったのだけど
やはり指摘されるものなんだな(汗
楽しみにしてくれてありがとう。あんまり面白い展開にはならないかもしれないが、頑張るよ
>>488 描写に関して言い訳は色々あるが、表現力不足という指摘に返す言葉もないのは事実だな
お察しの通り俺はこの物語に関しては推敲はまったくしていないし
気分転換のようなものだから思いつくまま気軽に書いていたりする。だからどうしても粗は出てくるだろう
指摘してくれるのは大変ありがたいから歓迎するが、その辺は理解しておいてもらえると助かる
それと俺は読みやすさに主眼を置いて書いたことは一度もない
むしろ自分なりの文章構成の美を追求しまくって描写を省いたりつけ足したりしているから、本来は読み辛いと言われてもおかしくないはず
それでも読みやすいと言ってくれるのだから本当に読みやすいんだな。自信がつくよ。ありがとう
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第六話投下(5レスのつもり)
第六話──『ターニング・ポイント』
「アリス……行ってくるね」
窓をまた棚でふさいだあと、アリスの亡骸をベッドに横たえたわたしはその首に下がっていたロケットを自分の首につけ、そう呟いた。
半分乾いてきてるものの大量の血にまみれたそれ。わたしはその血をあえて拭き取ることはしなかった。
アリスと……一緒にいられる気がしたから。守ってくれなんて贅沢は言わない。でも、少しだけでもいい……わたしに勇気を貸してね。
「さ、行くよ」
「……あぁ」
お手製だという大型のボウガンを携えた男をしたがえ、わたしたちは廊下へと歩み出した。
院内は相も変わらず静かだった。自分と男の足音しか聞こえない。立ち止まれば静寂に耳が痛くなるくらいの不気味な静けさ。
消灯したあとの丑三つ時はこんな感じだと思うけど、自家発電のおかげか電気が隅々まで通っているため違和感がありまくりだった。
「なあ、本当におまえの親父がここにいんのか?」
沈黙に耐えられなくなったのか、乏しい根拠でリスクを冒すことに反発したのか男はそんなことを言ってきた。わたしは短く言う。
「いる」
「……でも、確実にいるって証拠はないんだろ……? もしかしたらもう──」
わたしはすばやく振り返り、言いかけた男を睨みつけた。
「──……どっか別の場所に逃げたかもしんないし。この病院結構広いんだぞ? 化け物だってさっきのだけとは限らねぇ。なら、」
「ならなにさ? 遠まわしに言ってないでハッキリ言いなさいよ」
煮え切らない態度にイライラして詰め寄ると、男は驚くほど真剣な……別の表現をすれば冷めた表情をした。
「酷な言い方かもしれないけど、生きてるか分からない親父を探すより化け物が少ないうちに遠くに逃げた方が賢明だ、って言ってんだ」
……確かに男の言ってることは正論だった。私情を挟まず、客観的かつ冷静に今の状況を見れば誰でもそう判断するに違いない。
わたしだって立場が逆ならきっとそう言ったと思う。でも……今のわたしに私情を挟むなって言うほうが無理な話でしょう……?
「逃げたきゃ勝手に逃げていいよ……。わたしは一人でもパパ探すから。あんたの自己満足なんかには期待してないしね」
一々怒るのにも疲れたわたしは淡白にそう言い捨てると男を置いて歩き去ろうと身をひるがえす。
すると男は言った。
「ごめん。冷静じゃなかったみたいだから言ってみただけだ。おれはおまえを守るナイトだからな。どこまでもついてくよ、お姫様」
「……きも」
オタクかなにかなんだろうか。ブサイクでもイケメンでもないから判断しづらいけど、確実に漫画などに影響を受けてるようだった。
背筋が薄ら寒くなったわたしは男と距離を置くように早足に歩き出す。
「あ、待てよ! ……和ませようとしただけなのに」
そんなんで和むか、このもやし大根が。
……で、けっきょく男とは決別することなく、わたしたちは院内を歩き回った。
この病院は規模としてはけっこう大きいほうらしく、本館や病棟などを合わせると六つも建物が連なっている。
ちなみに今わたしたちがいるのは本館。
パパは生物学者という職業らしいから、いるなら設備の整ってるこの建物の可能性が高いと思うんだけど……自信はなかった。
「ねえ、あんたずっとあの部屋にいたの? だれでもいいからどこかで人影らしきもの見たりしてないの?」
「んー……武器があるうちはちょくちょく事務所に監視カメラの映像見に行ってたりしたんだけどな……ここ半日くらいは見てないや」
男曰く自分は自称武器マニアで、入院の暇つぶしにモデルガンなどをよく改造したりしていたんだそうだ。
ゾンビがあふれてからもそれらのおかげでなんとか命からがら助かって篭城してたらしい。
しかし弾も底をつき、あとは即席で矢の代わりを作れる自作ボウガンしか使えるものが残らず、そしてやってきたわたしたちに……。
「……あれ? いや、でもいたぞそういや。一人おかしな外人」
「ほんと!? どんな感じだった!?」
パパはアメリカ人だ。髪とか目の色はそっちの遺伝が出てるため、男もわたしの容姿を見て親が外国人だと判断したに違いない。
「あー、まず全身黒ずくめだろ、それとオールバックの金髪に…後グラサンもかけてたな。おれの方見てなんかべらべら英語しゃべ……」
そこまで言いかけて男は言葉を切った。わたしの態度を見たからだろう。
髪の色は一致してるけど、パパがオールバックにしてるとこやサングラスかけてるとこ、黒ずくめにしてる姿なんて見たことがなかった。
「……違ったか」
「たぶん……」
これで手がかりはなくなった。ずっとこの建物で篭城してたこいつが見てないとなると、ここにはいないのかもしれない。
落ち込んで立ち止まってしまうよりも、しらみ潰しにでも探したほうがいいのはわかってる。でも……どうしても落胆を隠せなかった。
壁に寄りかかって虚空を見つめ、ため息を吐く。男はそんなわたしを持て余すかのように頭を掻き、窓へ歩んで何気なく外を見た。
その瞬間、驚いたようにガラスにへばりつく。全裸の女ゾンビでもいたのかとまるで根拠のない予想で呆れかけた刹那、男は言った。
「見ろ、さっきの化け物だ!」
「えっ?」
わたしも慌てて窓ガラスに顔をへばりつかせる。
別棟へ向かおうとしているのか、外をさっきの化け物が悠々と歩いていた。──その手に人間かゾンビの死骸(?)を二、三体抱えて。
「どうする気なんだアレ……」
「巣……っていうか、根城かなにかあるんじゃない? そこに持ってく途中なのかも」
「死体愛好家ってか……? もしかするとここら近辺にいたゾンビとか人間もあいつが……。……──どうするよ?」
言って男はわたしを見る。こいつがなにを言いたいのかはすぐにわかった。手がかりもパパが生きてる保障もない。だからわたしは──
「追いかけよ」
危険なのは重々承知してる。けど、どうしても確認せずにはいられなかった。
もちろんパパは生きてると信じてる。いや、正確に言えば信じたい。だから化け物のコレクションの中にいないことを確かめたくて。
窓伝いに廊下を渡り、化け物がどの病棟へ入ろうとしているのかを追い続けるわたしたち。
ややあって、化け物は入り口が大破した建物へと入っていった。本館と第一病棟の渡り廊下からその様子を見た男とわたしは各々呟く。
「第四か」
「あそこは……」
なぜ第四病棟なのか……思わず考え込もうとしてしまったわたしはすでに階段を降りようとしていた男の声にハッと我に返った。
「行くぞ!」
「あ、う、うん……! てかわたしを守るんでしょあんた! 置いてくなー……!」
素人のくせに軍人の真似事でもするかのように男は角を曲がるとき周りに一度ボウガンで狙いをつけて先頭を進んでいく。
わたしは男に渡された先が鋭く研いである腰までくらいの細長くて軽い鉄パイプを片手にそのあとを追っていた。
「それにしても、ほんとにゾンビも人もいないじゃない、この病院」
「うーん……おれが篭城し始めた頃は外なんてめちゃくちゃいたんだけどな……全部さっきのがどうにかしたとも思えんし……」
「いっぱいいるのもいやだけど、こんなだといざ出てこられたらパニクっちゃいそう……」
「まあ、人かゾンビかなんて仙人かなんかでもないと一瞬じゃ判断できないだろうからな。身を守るには先……」
そこまで言いかけて男は口をつぐんだ。わたしには最初その意味がわからず、次に発せられた言葉でようやく理解する。
「ごめん……別に自分のやったことを正当化しようとするつもりはなかったんだ……誤解しないでくれ」
「……良いか悪いかなんて、そんなの関係ないけどね」
「…………」
アリスを殺されたときは逆上して絶対悪のように責めてしまったけど、自分の身を守ろうとする当たり前の行動だったんだよね……。
でもそれで男のことを『仕方なかった』と許す気には絶対になれなかった。理屈と感情は相容れない、か。なんだかすごく歯がゆいな。
そうこうしているうちに気まずい空気のまま、わたしたちは第四病棟の入り口付近まで来たのだった。
近くの植木に身を隠して様子をうかがう。
入り口は無理やり壊され左右にドアがひしゃげていた。中からは外以上に強烈な腐臭が漂ってくる。
本館とは打って変わり、ゾンビとかを引きずった跡なのか血痕や体液、小さな肉塊みたいなのが床を汚していた。
まるで異空間にでも続いてるような気になってくる。
この町も尋常じゃないけど、この先はもっとヤバイなにかがあるかもしれないと本能が警鐘を鳴らしているかのようだった。
「さ、どうするお姫様?」
「……よくこんなときに茶化せるよね」
「いや、まだ名前聞いてなかったなと思ってさ」
ふざけてるとしか思えないが、男の口調も顔も真剣そのもので体も若干震えてる気がした。
怖いからなのか、お互い死ぬかもしれないからなのか。でもこいつの恐怖心はわたしも理解できた。だから言ってやる。
「お前でいいよ。あんたに名乗る名前なんてないから。さ、行くよ」
「え…お、おいっ! こーいうときって普通名乗るだろっ? お姫様じゃない、私の名前は何々よ、とか……うわっ、置いてくなよ!」
建物を迂回しようとさっさと歩いていくわたしに男は声のトーンを低めにしながらもわめいていた。
自己紹介になんて微塵も興味はない。それより今はどうやって気づかれず中に入るかだ。
やっぱり安全なのはどこかへ出ていくまで待つ……かな。
足音を立てないようにそぉーっと歩いていたわたしは、一つ目の窓に差しかかる。
いきなり当たりという可能性もあるから少しの音も立てないよう息も殺して室内の様子をうかがった。
……どうやら外れらしい。思わず壁に寄りかかりながら尻餅をつこ──と、刹那いきなり口を塞がれ、悲鳴を上げそうになる。
「静かにッ。奴が出てくみたいだ」
……これで大した用事でもなけりゃ小指の一本は噛み千切ってるとこだ。
わたしたちは壁に隠れて遠くに歩いていく化け物を見送ると、そそくさと入り口から中へと入っていった。
前述したように床には目的地への道しるべが施されており、わたしたちは迷うことなく化け物の根城にたどり着くことができた。
そして──先に言っておくとわたしも男も吐いた。そこは想像を絶する地獄絵図だった。その中でわたしは真実を知ることになる──。
第六話終了
先日の嫌なイベント(飲み会)ではあまり飲まなくて済んで助かった
でもちょっと投稿が遅れたのは否めない
アリスが死んでからピリピリした雰囲気になってしまったので若干和ませてみた
こういう出会いからその後、恋愛に発展する話ってけっこう多い……のだろうか。なんだかシェリーがツンデレになりそうで怖い
例によって5節目は描写を省きすぎた。なかなか900字&30行以内に収めるのは難しい…
早く続きよみたいですっ
おもしろい
アリス・・・・・
うっ
512 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 13:46:14 ID:baD5sGlz0
ゾンビっていっても、心霊現象や魔術で動くファンタジータイプのものと
ウイルスや毒ガスなんていう、SFチックなものの2種類が存在すると思う
ファンタジーなら何が起こっても文句は言わない。理屈や原理も問題じゃない。
でもSFなら話は別だ。
死体が消えた。
ゾンビ物ではおいしい描写だが、いったん心臓が停止して時間がたったら体中の細胞が壊れてしまう。
ゾンビとしての細胞に作り代わるとしても、それは細胞の新陳代謝が行われていなければならない。
生きた人間がゾンビに変わることはあっても、死んだ人間がゾンビとして復活することはありえないのではないか。
フィクションだから楽しんだ者勝ち。
514 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 14:47:25 ID:YL0H6L2Q0
バタリアンというホラー映画では
細胞が壊れたどころか
腐った死体や、五体不満足な死体(の部分)がゾンビ化してる
毒ガスタイプでね
それでも80年代を代表するゾンビものの傑作
ファンタジータイプ、SFチックの前に
ゾンビものっちゅうのはエンタテインメントなんだから
面白ければそれでいいでしょ
きみの面白さのつぼが正確な理屈や原理にあるからといって
ゾンビものとはこうだ、と枠にはめたりするのは
はっきり言って、お門違いだと思うよ
>>512 サイエンス・フィクション(Science Fiction、略語SF)は、科学的な空想にもとづいたフィクションの総称。
以上です
516 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 15:40:11 ID:baD5sGlz0
妄想気味の人間にとっては科学的な違和感なんて問題じゃないのかもしれないね。
ゾンビ自体が科学的違和感大ありの存在じゃん
っていうか
まずきみの言う科学的実証に合ったゾンビ小説を書いてみたら
月1ぐらいのペースでもいいからさ
それで、評価を得たら、それもまたよし
518 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 16:54:17 ID:baD5sGlz0
書かないなら文句いうな。か。
一読者にも意見を言う権利はあると思うが、ちがうかな?
建設的な批判を受け入れるつもりがないなら創作活動などしなければいい。
科学的な原因を採用するならあまり簡単に荒を見せないでほしいと言ってる。
それができないなら中途半端なことはしないで悪魔や魔術のせいにしたほうがよっぽど違和感がない。
ん、予想できた反論だが
「書かないなら文句いうな」とは言ってないよ
書いてみたら、ってこと
自分からしたら科学的実証に答えることが
建設的な批判だとはとうてい思えない
でも、科学的実証に徹底的に答えた作品が
面白い可能性だってある(自分が知らないだけで)
だから書いてみたらってこと
こっちとしたら新しい見方ができれば儲けものだしね
文章下手でも構わないよ
520 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 17:25:47 ID:baD5sGlz0
私が書かないからといって反論の資格なし
と、言ってるわけではないみたいですね。
では、新しいストーリーは書かずにこのまま話をつづけます。
>自分からしたら科学的実証に答えることが
>建設的な批判だとはとうてい思えない
この部分がよくわかりませんが、もう少しわかりやすく言い直してもらえませんか?
科学的、生物学的といってもあくまでフィクションなので、論文がかけるほど細かい設定は求めません。
しかし常識的に考えて死んである程度時間がたった細胞が再び活動を始めるなんて事はありえない。
小説(特にゾンビなど現実には絶対ないような話w)は、読みやすく楽しければそれでいいけどなあ
522 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 17:29:35 ID:baD5sGlz0
バタリアンとかはいいんです。昔の作品ですし、グロテスクな画像と演出で驚かす作品として割り切って見れますから。
半分に割れた犬が歩くなんて、どうやってバランスとってるんだ!とか
塩酸より硫酸がよく効くといっても、かけたとたんに溶けてなくなるわけじゃないだろ!とか
そんなリアリテイを求められる作品でも時代でもなかった。
中途半端に遺伝子組み換えだのウイルスだのの設定を持ってくるなら他のところにも徹底してもらわないと気になるでしょう?
ギャグマンガで爆発があっても人が死なないとか、現実的に考えておかしなところがあっても許せるけど
シリアスな作品でそういう矛盾があったらその矛盾一つのために全体が腐って見えてくるものです。
とりあえずsageようぜ。
風邪引いた…続きはちょっと遅くなるかもしれない
>>520 細胞が死ぬ、というところに着目してみれば良いんじゃないかと思う
細胞が死ぬというのは核が死ぬ、ということで良いなのかな
ならウイルスが死んだ細胞の核に刺激を与えて蘇生させた、とか、そもそも死んだ核の代わりの役割を果たしてその結果死んだ細胞が動き出す、とか
適当に書いたから見当違いだったり粗が多いかな(汗
エビ天さん…風邪ひいたんですね
続き(もんのすごくw)楽しみにしていますが、まずは風邪を治してくださいね
お大事に
>>520 たとえば、自分なんかが求めているのは
ホラー要素やスピード感、ドラマみたいなもの
科学的実証にこだわって文章が滞ったり
ホラー要素やドラマがそっちのけになったら
つまらんものになってしまう
>死んである程度時間がたった細胞が再び活動を始める
ことがないからといって、ドラマの部分を切ってしまうより
物語として面白いことが重要なわけ
突拍子もなく地球防衛軍なんかが出てきても
爽快感があればそれでいい
つまり、建設的かどうかは人それぞれってこと
自分の意見が絶対的に建設的だ、ということなら
一番説得力があるのは、論より証拠を見せることだと思うよ
527 :
519:2008/04/15(火) 17:42:59 ID:YL0H6L2Q0
ああ、ごめん↑は
519です
528 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 17:49:03 ID:baD5sGlz0
>>524 細胞が死ぬ=核が死ぬというのはどうなのかわかりませんが。
荒があったとしても、読者を納得させられるそれらしい理由を考えようとする姿勢は尊敬します。
529 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 17:52:35 ID:baD5sGlz0
>>526 建設的反論という言葉の意味を履き違えているのでは?
>自分の意見が絶対的に建設的だ、ということなら
建設的反論というのは、ただいちゃもんをつけるのではなく、悪い点を指摘してよりよいものにしていこうという意見のことですよ。
あなたの言い方だと 建設的=正しいこと というふうにとれますが。
>>525 続きを楽しみにしてくれて、その上体の心配までしてくれてありがとう
期待するほど面白いものは書けないと思うけど、頑張るよ
>>528 俺はいつも詰めが甘いから読者を納得させられる設定は考えられないかもしれないが、姿勢だけでも評価してくれて感謝する
531 :
519:2008/04/15(火) 18:02:03 ID:YL0H6L2Q0
>>529 うーん
だから、自分にとっては、そこが悪い点ではないのよ
でもエビ天さんが納得してるなら、それでいいけどね
532 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/15(火) 18:08:56 ID:baD5sGlz0
まあ、ウイルスで死体が生き返ることに違和感を持ってる人が少ないのは意外でしたけど
ようするに大半の人はそんなことに疑問を持たないって事なんでしょうね。
わたしなどは、人為的に作られたモンスターが巨大化するたびに質量保存の法則について作者に小一時間語りたくなりますがね。
急激に細胞分裂するとか適当な解説がついてた場合はなおさらのことです。
>>532 俺もモンスターパニックとかで、発生原因があまりにも適当だったら萎えるよ。
ただ、『ゾンビがウィルスで云々』てのは王道の一つだし、
誰もが科学とかに詳しい訳じゃないんだから、トンデモな原因じゃない限り、
細かく突っ込む必要は無いと思うのよ。
『ゾンビ化の原因』が作品の中の重要な要素なら、話は別だけども。
小説だから、長々と説明があってもテンポ崩したりするしね。
説明とかを抑えて、読者側に想像の余地を残すのも大事な事だしさ。
後、『ゾンビ化の原因』について話したいなら、別のスレが良いと思うよ。
>>522 ゾンビウィルスには違和感を感じて、トライオキシンに違和感を感じないのは何故?
化学薬品とウィルスって違いはあるが、生命活動を一度停止した後に(すでに死亡していた者も)蘇り、人間を襲うって点は一緒だよ?
生命が死んでいる、生きている、という定義は未だ科学的にはできていない。
人間の生死は心停止や脳停止で判定されるけど
心臓停止後にまた脈動が再開した、つまり生き返った例なんていくらでもあるわけで。
細胞レベルになると、生死の境なんかはもはやお手上げ状態なわけで・・・。
そういうことが科学的に解明されてからじゃないと、説明は無理だと思います。
他の人も言ってるようにここではなくて生物板とかでも行った方がいいでしょうね。
落としどころとしては映画の28日後のようにウィルスによって凶暴化する、とか
ウィルスに感染していると本当は死んでないけど仮死状態になりやすくなって・・・みたいな設定でいかが。
つーか本来実在したゾンビが「仮死状態による脳内酸素欠乏症」みたいなもんだし
ファンタジーだろうがSFだろうが面白けりゃいいんじゃねぇの?
人間の書いた物語(←のようなもの、の集合体)は『みんなウソなんだから』と某ゾンビ漫画の原作者と同一人物と噂される作家も言ってる事だしw
538 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/16(水) 01:18:03 ID:Nj+pPZ8R0
>>533 まあ、多少のありえなさは目をつぶるべきかもしれませんね。
ただ、勘違いしないでほしいのは
私は、あら捜しをして揚げ足を取りたいんじゃなくて
あらが目立つと話し全体が陳腐に思えてくるところが問題だと思ってるんです。
>>534 論点がずれているようです。
違和感を感じないのはなぜか?
>>522の最後の2行です。
>>535 28日後
その映画知りませんけど仮死状態というのはいいですね。
凶暴化というのもまったく違和感はありません。いい設定だと思います。
ただ、それだと長時間放置された死体が動き出すという描写はやりづらいですね。
細胞レベルで生死の境がどこにあるかというのは無視したとしても
長時間無酸素状態にあった細胞に再び栄養と酸素を与えても活動しないことは確かです。
細胞というのは一つ一つが多様な機構と機能を持っています。
高校LVの生物にはおさまりきらないほど多様な機構を持った精密機械です。
たんぱく質が1種類変性しただけで、イオンチャネルの類が一つ機能しないだけで
肉体はまともに動かなくなります。
カエルの足に電極をつなげば動くようですが、それもいつまでも続くことではないでしょう。
>>536 ゾンビパウダーですか?中学生の頃友人がゾンビパウダーと称してケシゴムのカスを撒き散らしていたのを思い出しました。
あれは毒物によって人間らしさを奪うという解釈になりますね。
またそれは別のお話かと思いますが。
ウイルスで凶暴化というのとちかいような気がします。やはりこの場合も死体安置所から死体が消えるような描写は難しいかと。
>>537 きになりませんかw
久々?です
「面白い」という基準が違う…みたいなことなのでしょうか?
自分は楽しめればそれでいい、と思っています
まぁ、流石に無茶苦茶な設定は萎えますがね…
何というか
現実に起こりえないことを創る際には、どうしても「無茶な部分」が出てきてしまうのではないでしょうか
>>535 まさに今書いている設定ですww
ん〜、少し、違うかもですが
まぁ、今回のは裏設定的にはある種の、未知のウイルス…ということなので
どうしてもウイルスに無理をさせていますね〜
リアルタイムでemptyさんが。まいどありがとうございます。
「無茶な部分」を許容できるかどうかは、結局読み手各人の問題ですから
あまり気にせず、楽しみながら、書いてもらいたいと思います・・・。
でも、確かに、ウィルスが設定的に無理ならウィルスにこだわらなくてもいいかもしれませんね。
魔術的なものもいいですし、SF的に自己増殖型ナノマシンでもいいかもしれません。
ということでこんなんどうでしょう・・・
惑星テラフォーミング用に細々と開発・改良が続けられていたナノマシン。
ある科学者の手によって飛躍的な進化を遂げる。
しかし、科学者はある恐ろしいプログラムをナノマシンに植えつけていた。
・・・人間の脳に侵入し、増殖を繰り返しながら脳神経系を支配する。
自ら集団で連結し、電気信号を伝えるための新しい神経となることも可能であり
それがまだ「使える」のであれば、死人でさえ、動かすことが可能だった・・。
増殖のために、人間を操ってに次々に他の人間に襲い掛かる。
ナノマシンゾンビは爆発的に増え、そして相互に連結され、巨大なコンピュータを形成。
「知性」をも獲得したナノマシンとそのゾンビたち。人類の未来は?
こんな感じで、人間がコンピュータにハッキングしかけよう奮闘したりする話。サイバー的でいいかも。
1分で考えた話だからもちろん書きませんが・・・。
いっそのこと全て幻想でした、ってオチはどうよ。
気付いてみると周りは死体だらけ。
さっきまで居たはずの廃墟なんてものはなく、そこは元の町。
今まで何があったかを悟り、目を見開いて現実を見る。
遠くから聞こえるサイレン。それは自分を捕らえに来るサイレン。
「違うんだ・・・さっきまで、さっきまで本当に俺は・・・・・!!」
その中で一人絶望して、叫び、やがて自らを・・・。
後味の悪さが美味いんだ、鬱エンドってさ。
○国産の遺伝子操作された食品を食べ続けていると人体の遺伝子が変異して
>>538 気になる、気にならない、の基準は個人で違うからねぇ
疑問に思ったり、あらを消したりするのも大事ではあるが、
何かと疑問を抱いたり、あらをとことん無くす必要はないと思うよ。
こういう創作に関しては特に、ね。
繰り返しになるけど、『発生原因』が作品の重要な要素でないのなら、詳しい説明が必要とは言えない。
ゾンビ物に関しては、原因よりも現状のが大事だからね。
話の進め方次第では、原因を説明することすら出来ないことだってあるし、
説明するにしても、何ページ(レス)にも渡って長々と設定を説明するのは、正直よろしくない。
皆、『疑問に思わない』んじゃなく、『疑問に思う必要が無いことを解ってる』んだ。
多分ね。
あと、『あら』てのは、小説の『あら』?
それともゾンビって物自体に関する『あら』?
ある町の物語。
そこには名前に似合わず本当に凄くやさしい邪夢おじさんが開くパン工場がありました。
そこにはアンパンマンというこれまた本当にやさしいヒーローがおりました。
ある日、いつも通りに顔を作ってもらっているアンパンマン。
ですが、ちょっとした手違いでいつもとは違うアンコが入ったパンになってしまいました。
いつもと変わらないので誰も気付きませんでした。
その日、カバオくんに顔を上げた事が全ての始まりだったのです。
それを食べたカバオくんはアンパンマンと分かれてしばらくして異常を起こしました。
「痛い・・・痒い・・・助けて・・・助けて・・・あfがあぁ・・・・・・」
そのまま死んでしまいました。あらまぁ。
しばらくすると起き上がりました。生き返ったのでしょうか。しかし、様子が変です。
ふと、カバオくんの友達と出会いました。そして、出会うが否や。
バキッ。ヌチョッ。グキッ。グシャッ。
力の強いカバオくんはその友達を押し倒し、抵抗するその体を生きたまま食べて、殺したのです。
カバオくんの友達もしばらくすると、脳髄等を丸出しの状態で起き上がり、動き始めました。
そう。彼らはゾンビになってしまったのです。
邪夢おじさんはそれをニュースで見てハッとしました。
「しまった・・・間違って秋子さんにもらったジャム入れちまったみてぇだな・・・・・」
かくして、ダンディズム・邪夢おじさん、美少女パン職人・バタ子と聖パン戦士たちの戦いは始まったのです。
次回。第二話「赤ちゃんまん、散る」。
やらねぇよ。
>>543の言ってることに120%同意だな
『発生原因』の説明なんて面白い作品の要でもなんでもない
ゾンビ映画の元祖「ナイトオブザリビングデッド」や
金字塔の「ゾンビ」なんかは、『発生原因』の説明すらないしな
たとえばこれが「アイアムレジェンド」や「28週後」のような話しなら
『発生原因』そのものが重要になるだろうが…
(多分、『発生原因』がとくに話題になりはじめたのは
「バイオハザード」以降)
というか、作者の皆様には
『発生原因』とか科学的厳密さに無理してこだわる必要はないです
バシバシ書いていってください、と言いたい
楽しみにしてますよ
>>545 お前さあ、、、やらねぇよって何?何様のつもりなの?
冗談半分かもしれないけど名作をそこまでいじくっちゃってさ。
全国数世代にわたるアンパンマンファンをなんだと思ってるの?
頼むから続き書いてください。お願いします。かなりwktkカチカチ
保守
549 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/18(金) 13:49:27 ID:DYc0F4MxO
547>>ツンデレ乙
550 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/18(金) 13:50:07 ID:DYc0F4MxO
ようやく体調が良くなってきた
今回は胃腸風邪?だったみたいだ。えらく腹痛に苦しんだ
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第七話前半投下(5レスのつもり)
第七話──『魔の巣』
奥に進むにつれてどんどん臭いが酷くなっていく。壁や床の血痕なども徐々に増え、生存本能の警鐘が足の動きを鈍らせていた。
それでもわたしはもう戻れない。一階一番奥の病室。道しるべを辿った結果、そこが化け物の根城のようだった。
「…………」
……怖い。なにもしていないのに激しい動悸が襲い、息が荒くなる。冷や汗が全身の体温を下げ、体は知らず小刻みに震えていた。
思わず回れ右して引き返したい衝動に駆られるが、アリスのロケットを握ってなんとかその気持ちを振り払う。
そして数十秒の逡巡ののち、吐き気を抑えるように一度唾を飲み下したわたしは……思い切ってドアの開いた室内を覗き込んだ。
どんな光景が待ってるのか──想像はついてるつもりだった。だけど、どうやらそれは平和ぼけした人間の甘い妄想だったみたいだ。
覚悟して臨んだはずのわたしと男はまさに想像を絶する惨状に絶句するしかなかった。数秒もしないうちに胃液がこみ上げてくる。
一瞬にして我慢の許容量を超えた男とわたしは、各々の存在など意識する余裕もなくその場で何度も激しく嘔吐した。
食事も取らずに三日三晩眠っていたわたしは胃液しか出ず、出すものもないのに吐き気が収まらないのは死にそうなほど苦しかった。
「っ……ぇ……う……は、ぁ゛……う゛っ……はぁ……だ、大丈…夫……か……?」
とうげを越したらしい男が口の周りについた汚れを拭いながら言う。拭いたのにまたすぐよだれが垂れてきていた。
平常時なら憎まれ口の一つでも叩くところだが、今のわたしにそんな余裕は微塵もなく、ただ必死に首を横に振ることしかできなかった。
まだ吐き気が収まらない。もう胃液すらも出ないのに。涙をあふれさせながら早くこの地獄の苦しみが終わることを祈り続ける。
そのとき、見るに耐えなくなったのか男が背中をさすってきた。わたしはその手を思いきり弾くと、気力を振り絞って部屋の中を指差した。
「……っ、と、りあえず……外人、ぽいの……探、して、みるよ……」
このときのわたしは男がパパの容姿を知らないことすら考えられなかった。
むしろ自分でもなんで室内を指差したのかさえわからない。とにかく惨めな姿を見られたくない、同情されたくなかったのかもしれない。
男が室内を探索し始めた頃、ようやくわたしも吐き気が収まってくる。反面、中からは男の嘔吐の声が何度か聞こえてきていた。
徐々に冷静さを取り戻すにつれて、申し訳なさと男が室内を探索することへの無意味さに気づき始めたわたしは自らも中へ入っていく。
地獄絵図──その言葉がぴったりの光景だった。
恐らくゾンビの死骸も人間の死体も入り混じってると思う。腐食、崩壊が進んだヒトガタもあれば比較的きれいなままのものもあった。
しかし、ただのゾンビや人間の死体の詰め合わせなら想像していた通りであそこまで吐くことはなかっただろう。
室内に無造作に積み重なったそれらの体は──ほとんどが原型を留めていなかった。
爆発したように破裂したもの、真っ二つに千切れたもの、食い破られたような穴が腹部に空いてるもの……一つもまともな体はない。
そして極めつけは大きな目玉が背中についた小動物くらいの大きさの異形生物の大量の死骸。
充血しまくって人間なら飛び出してるレベルにまでせり出したその目玉は、死んでいるとわかってても強烈なグロテスクさを放っていた。
「か、ぁっ──」
また吐き気を催し、しゃがんだわたしは少量の胃液を吐き出す。
こんなとこにずっといたら体も神経もおかしくなっちゃう。それに……死骸の数はざっと見積もっても百体以上はあった。
損壊が激しい上にそれだけの数の中から悠長にパパがいるかどうかなんて探してる時間も精神力もわたしには当然あるはずなかった。
諦めてしらみ潰しにでも院内全てを探すしかないのか……──そう思いながら何気なく視線を動かしたとき、ふと違和感を覚える。
よく見てみれば、ほとんどの死骸が私服や白衣、パジャマ等を着てるのに対し、二、三体だけマスクをして黒ずくめ姿のものがあった。
近づいて目を凝らすと、防弾チョッキっぽいものを着込んでるのがわかる。その一体の懐から黒い表紙の本がはみ出してるのが見えた。
上半身と下半身の千切れた黒ずくめの死体。わたしはできるだけ直視しないようにしてその懐からはみ出ていた本を取り出した。
そこらの死体が持ってたなら興味を抱く前に素通りしてしまってたと思う。
だけど、この死体たちだけはなにか日常的な姿とはかけ離れてて、その中になにが書かれてるのか思わず興味が沸いてしまった。
──まさかそれがパパに繋がることになろうなんて夢にすら思わず。
「は…ぁ……それ……手がかり……見つけた…のか……?」
肉体、精神へのダブルパンチのせいでふらふらになった男が近づいてくる。
そんな状態になりながらもちゃんと探してくれてたのか、服もズボンも一部が赤黒く染まってしまっていた。
わたしはそのとき初めて男の罪償の気持ちが真摯なものであると悟る。ただのポーズじゃこの状況下でここまでできやしない。
しゃべると吐きそうだったわたしは首を振り、一旦外に出ようとあごで促して、男とともにおぼつかない足取りで地獄から脱出した。
とりあえず反対側の病室に避難しようとして、そこにも死体があることに気づく。
さっき抱えていたやつだろうか。今の部屋が限界を超えてきたから今度はこっちに置いてくつもりなのかもしれない。
でも、こっちの死体は向こうのように酷い有様ではなく、特に目立った欠損も見られなかった。損壊度で分けてるのかな。
化け物の嗜好なんて知ったこっちゃないわたしたちは仕方なく廊下の壁に持たれて深いため息を吐く。
しばらく無言のままお互いに体の調子を整えることに集中し、数分経って落ち着いてきた頃に男は再度本のことをたずねてきた。
「手がかりじゃないなら、なんなんだそれ……?」
「ごめん……パパと全然関係ないかもしんないけど……ちょっと気になっちゃって」
「……。結構しっかりしてて高そうだな。中はなんて書いてあるんだ?」
「えっと……」
血でべちゃべちゃに濡れた黒い表紙には『DIARY』と金文字で表記されていた。
開いてみる。表紙が分厚いため中の被害は思ったよりも少なかった。
肝心の内容はと言えば、一ページ目には真ん中に大きく一行のみ。英語──それも筆記体で綴られたその一文はこう書かれていた。
我が愛しの娘の為に
「わっ! お、おい! どうしたんだよ!?」
わたしは日記帳を男のほうに放り出し、慌てて地獄の中に駆け戻る。
目の前には上下に引き裂かれた黒ずくめのマスク男の死体。
逸る心を落ち着けるために深呼吸をし──ようとして臭いのすごさを思い出し、吐き気を抑えてしゃがみ込む。
しかし歯を食いしばりそれに耐えたわたしは恐る恐るマスクを外した。そして目の前に現れたその恐怖と苦痛に歪んだ顔は……──
「…………ちがう」
──まったく見ず知らずの中年親父のものだった。
外国人には違いないけどパパとは似ても似つかない顔だ。じゃあ……あの日記はこの人が自分の娘に対して書いたものだったのか。
落胆と安心が入り混じった複雑な心境で部屋を出ようとすると、入り口の前に立っていた男が、これまた複雑な表情をしながら言った。
「違った、みたいだな」
「うん……」
「……でも、試しに読んでみるか? 読みたいけどおれ、英語さっぱりだからさ」
恥ずかしそうに頭を掻く男。本当はそんな気分じゃなかったけど、男にいじわるをしようという気持ちはもうない。
そもそも体力、精神力ともに回復するまでまだ時間がかかりそうだった。あのパパさんには申し訳ないけど少しだけ読ませてもらおう。
『DIARY我が愛しの娘の為に=x
P2
XX/05/12
とうとうトムが連絡を絶ってしまった。今更こんな事を書いても意味は無いが、もっと早い段階で止めておくべきだったのだ。
娘の為に盲目的になっていたとは言え、大切な親友を失ってしまった事は悔やんでも悔やみ切れない。
だが、トムも自らの命の危険を承知で機密性の高いデータを奪取してくれたに違いない。彼の犠牲を無駄にしない為にも、
私は必ず成功させてみせる。
恐らくウェスカーも今回の件で本格的にスパイ活動の洗い出しを行うに違いない。狡猾な奴の事だ、時間は掛かっても
必ずやトムの素性を裏の裏まで暴く筈。そうなればトムと私との関係性を割り出されるのも時間の問題となってしまう。
タイムリミットは短い。早急に実験を進めなければ。
G-ウイルス
バーキンから盗む事に成功したこのウイルスを私は今まで独自に研究してきたが、その特性には驚かされるばかりだ。
死者をも蘇らせると謳われるのも頷ける。だが、まだこのウイルスには欠点が多すぎる。天才と言われたバーキンが
その事に気付いていない筈は無かった。Tyrant-ウイルス≠フ名の由来はその名の通り暴君からであるが
G-ウイルスについてはウェスカーの組織の機密にも詳細は無かった。推測として七つの大罪をアルファベットに置き換え
その結果のG(Aから数えて七番目)であるという説や、Godの頭文字を由来としている説もあるが、私はそのどちらも正解
だとは思わない。これは推測でもない研究者の直感でしかないが、バーキンはGrow-ウイルス≠ニ名付けたのではない
かと考えている。つまり成長するウイルス、あるいは成長過程のウイルス、と。
ウイルスの特性についてはまた後述する事にしよう。私はバーキンの死を安堵すると共に研究者として非常に惜しい人物
を亡くしてしまったと痛感した。これは恐らく奴にしか完成させられないだろう。完成すればT-ウイルス≠ネど比にならない
ほどの究極生物兵器を生み出す事になっただろうに。恐らくバーキンを殺したのはウェスカーの組織。奴もまたバーキン
と肩を並べる程の天才だが、研究者としては三流だったようだ。
第七話、前半終了
今回は場景描写が多めかな?でも過激なグロ描写はしてないつもりなのでそこまで臨場感はないはず
中途半端なところで区切ってすまん。以降は1,2回くらい日記が続くと思う
やっぱバイオと言えばファイルだろ!な感じ
先の議論があったからやったわけではなく、予定していたことだから誤解なきよう
長々と説明するのは〜と言われたのでやりにくかったが、肝になってくるので予定通りやることにした
それから日記は全て英文で書かれている設定になっているが
載せる文章自体はオリジナルであり、シェリーが口語で訳しているわけではない
要するに書いた人が日本語で書くとこうなるよ、的な感じ
トムさんという安直な名前については、サブキャラはやっぱトムだろ!な意味不明な思考回路の賜物
ちなみにウイルス等の設定は既存のものにオリジナルを混ぜてあるので、その辺も考慮しておいて頂きたい
なんだか自分の口調がどんどん固くなっていく気がする…どうしよう
>>エビ天さん
いつも楽しみに読んでます。
続きも期待してます。
頑張ってくださいね。
560 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/22(火) 23:50:50 ID:emJBpB/r0
先週から風邪が引かないため、ちと離れます…
帰ってくる頃には新しいの持ってきますので…ガク
561 :
empty ◆M21AkfQGck :2008/04/22(火) 23:52:16 ID:emJBpB/r0
っと、おかしいと思ったら…
↑は自分です
書きかけのは、ある生物を見て思いついたネタ…
それでは、風邪が引いたら…
562 :
本当にあった怖い名無し:2008/04/24(木) 09:16:45 ID:VVj/43vFO
どうかお大事にね。
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
日記&第七話後半投下(9レスのつもり)
P3
XX/05/16
今日は娘の見舞いに行ってきた。最近は発作も少なく、体の調子も安定している様子で何よりだ。
だが、あの子は二十歳まで生きられないと医者も断じている。私もその意見には同意さぜるを得ないのが現実なだけに
油断は出来ない。曲がり角はとうに過ぎているのだ。
G-ウイルスの特性と欠点について
以前にも書いたが、G-ウイルスには死者をも蘇らせる効果があるとされている。これはラットを使用した実験によって
私自身も確認済みだ。これはウイルスが死した細胞核内に侵入し、その全ての機能の代替となって活性化させる事により
生じる現象のようである。しかし壊死が酷い細胞はいくらG-ウイルスの力を以ってしても再活性させるのは無理であり、
死後数日が過ぎて腐敗が進んだ死骸を蘇らせるのは物理的に不可能である。後述する特性によって仮に蘇る事が叶った
としても、まともに動く事すら出来ずにそのまま再度死に絶える事だろう。
さて、ラットによる実験結果とバーキンが自らG生物となって得られたデータによると、G-ウイルスを核内に取り込んだ細胞
は極度の過剰分裂を行うようになる。白血病や癌のようでもあるが、その分裂速度は比較にならない程異常である。
それは恐らく新陳代謝を早めるというG-ウイルスの元となった抗体の特性なのだろうが、一部の遺伝子としか相性が合わず
大抵の生物は数十時間の内に体中の栄養を絞り尽くされ異様に膨張した後ドロドロに溶けてしまう。
その証拠に、このウイルスの元となった抗体を体内に宿していたというリサ・トレヴァーはどのような方法でも絶対に死ぬ
事は無かったが、反面バーキンはその体を10倍程度に膨張、液状化させている。これがG-ウイルスの致命的な欠点だ。
だが、例外もある。トムの報告によると、ウェスカーはバーキンに渡された謎のウイルスによって超人的な力を手に入れた
そうだ。これも恐らくG-ウイルスの一種だろう。どのような抽出、あるいは改良を行ったかは不明だが、体に順応させる事
さえ出来ればG-ウイルスは必ずや娘を救ってくれるに違いない。
P10
XX/08/06
解った。ようやく解った。ウェスカーがどのようにして人間を捨て、超人的な力を手に入れたのか。
G-ウイルスを改良する過程で、私は一度G-ウイルスの特性を根底から覆す実験を行ってみた。つまり、その致命的な欠点
ともなっている爆発的な代謝能力を一般細胞レベル、さらにそれ以下に抑えたのだ。するとどうだろう。一般細胞レベルでは
あまり効果は見込めずバーキンの末路をスローにしただけにしかならなかったが、代謝を極端に抑えた場合では、なんと
ウイルスが時間を掛けて細胞と融合を起こし、見事体に馴染み順応するという結果となったのだ。そしてウイルスが細胞核
を支配し、新たに分裂した細胞の核さえもウイルス基盤となって人間の細胞質を遥かに凌駕する体質さえも生み出した。
私は狂喜した。後はこれを元にして調整していけば娘を救える。そう思ったのだ。しかし、現実はそう甘くはなかった。
翌日のラットの実験。結果は全てのラットが融解して死亡するという結果に終わった。その後、何度も何度も実験を繰り返した
が、ラットが変異する確率はわずか1,2パーセント程しか見込めなかった。何が悪かったのかと試行錯誤した末、ラットを
意図的に瀕死状態にする事で変異する確率を10パーセント前後に伸ばす事が出来たが、それ以上の確率上昇は何をしても
不可能だった。
私はバーキンの意図を今更になって悟った。ウェスカーとバーキン、奴らは互いを激しくライバル視していた。利害が一致し
協力する事はあったらしいものの、あのバーキンがウェスカーに対し、素直に塩を送るような事をする筈が無かったのだ。
つまり、バーキンはウェスカーにロシアンルーレットをさせたのだ。運が良ければ蘇り超人的な力を得られるだろう、と嘲笑って。
ウェスカーがバーキンの意図に気付いていたのかいなかったのかは分からない。だが結果的に奴は超人となって生きている。
狡猾なウェスカーがバーキンのウイルスを無条件で信用する筈は無かったと思うが、当時は奴も追い詰められていたという事
なのだろうか。
これでは娘に与える事は出来ない。行き詰ってしまった。
P15
XX/09/27
私が追い詰められているのを察してか、今日は娘がピクニックに行こうと言い出した。心配させないよう普段通り振舞っていた
つもりなのだが、女の勘の鋭さには敵わない。正直あまり気乗りはしなかったが、愛する娘が私の為に提案してくれた事だ。
たまにくらいのんびり休日を過ごしても罰は当たらないだろう。息抜きになって新たな発想も浮かぶかもしれないし、行く事にした。
本当ならあの子も連れて行きたかったのだが、流石に主治医がOKしてはくれ無かった。
普段通りに生活する分には何の支障もないが、時々酷い発作があるのが許可の下りなかった原因だ。心臓病と違って即効性の
薬も無い為にいかなる時に発作が起きても良いよう常に入院していなければならない。
生涯の大半を病院で過ごし、死んでいく。私が諦めればあの子の人生は本当にそうなってしまう。絶対に救ってみせる。
そう思った時、私は薄々気付いていたのかもしれない。ピクニックで私を楽しませようと張り切る娘の顔を見ていたら、その考えが
脳裏に浮かんで離れなかった。私は 私は父親失格だ。
G生物
G-ウイルスを直接体内に注射した結果、適合しなかった人間の末路である。確認されているのは一体のみ。G-ウイルスの開発者
であるウィリアム・バーキンだ。皮肉はこの際置いておこう。G生物、並びにG生物により分離した個体の大きな特徴は巨大な眼球
が体の一部分に形成される点だ。この生態の意味はまだ判明していない。そしてG生物化した人体は以前にも書いた圧倒的な
細胞分裂のせいで体が巨体化し、著しい生命機能の低下に瀕した時、より強固な肉体へと進化を遂げる。
また、T-ウイルスに感染した人間(つまりゾンビであるが)の行動が生命維持の為の食欲一辺倒なのに対し、G生物の行動理念は
繁殖のみに尽きる。その方法は一般的な動物とは違い胚≠フ植え付けによる物である。一番酷似している生態を挙げるのならば
他生物の体内に卵を産み付ける物だが、G生物の場合は植え付けた対象がG生物に変化するか死亡するかのどちらかに分かれる。
G生物に変化できる基準は遺伝情報の近似性による。つまり血を分けた家族ならばほぼ変化する事が出来、他人ならばほぼ死亡
するという結果になるだろう。胚を植え付けられた人間が助かるには早期段階で専用ワクチンを打つしかない。
一般細胞レベルにまで代謝能力を落とした結果では数日をかけて途中までは適合しそうだったが、結局細胞と融合する事はなく、
ゆるやかにG生物への道を辿る事となった。体中の全ての細胞核が入れ替わり、悪性の物を排除して健康体へと回復させて
くれるが、時間が経つにつれてG生物へと変化してくのであれば本末転倒になってしまう。そう、G生物になる前に変化を止められれば。
P18
XX/12/26
娘の笑顔を見る度に私の心は痛む。先日のクリスマス・イヴ、クリスマスと連日娘達と過ごしたが、早く実験を行いたい衝動に
駆られ気が気ではなく、純粋に楽しめなかったのは父親として失格としか言えない。我ながら情けないものだ。
最近、身辺を何者かに探られているような気配がある。トムと連絡が途絶えてから既に半年近く経っている。嗅ぎ回られていても
不思議では無い。もう時間は残されていない。そもそも、これ以上の著しいウイルスの改良はもはや私の技術では無理なのかも
しれない。このまま娘達が何も知らないまま私が殺されるような事があれば、あの子を救う事も出来ず、娘に悲しみを背負わせた
まま独りにしてしまう事になる。それだけは絶対に避けなければならない。
こうなれば、今出来うる限りの成果でどうにかなるようにしなければ。
思いついてはいるのだ。禁断の方法を。
あれからあまり成果は実っていない。
改良出来た事と言えば、R-ウイルス(先のバーキンがウェスカーに渡した物の便宜上呼称)の活動レベルを極限まで落とし、
注入する事で生命の危機的状況に瀕する際にしかウイルスの活性化を行わないようにする事くらいだ。だがそれではどのみち
意味がまったく無い。やはりあの方法しかないのだろうか。残された時間の中で娘を救う方法は。だが、それでは逆にあの子の
方を危険に晒す事になってしまう。それでも、私は........私 は
ラットによる実験では一応の成功はしたのだ。満足のいく成功率も記録している。問題はない筈。後は..............私の覚悟だけか。
P23
あり得ない。ウェスカーは一体何を考えてるんだ。ここは日本だぞ。いくら政府が腰抜けで無能だとは言えそんな事をすれば.....
くそ、悩む時間も迷う時間もない。間に合うかどうかすら分からない。
娘達よ、どうか生き延びてくれ。
それが私の唯一の願いだ。
これをお前達が読む事は無いと思うが、最後にどうしても書いておきたい事がある。
愛しているよ、アリス、シェリー。サヤが亡くなってからお前達に愛情の全てを注いできた。お父さんの事は忘れて生き延びなさい。
二人だけで辛い時もあるかもしれないが、幸せな人生を歩んでいって欲しい。
P24
(一ページ丸ごと破り取られている。以下ページは全て空白である)
いつ化け物が戻ってくるかわからないため近くの病室に避難してざっと日記を読んだわたしは、最後のページを見て目を見開いていた。
日記を見ている間、実名は出てこないけど薄々は気づいてたんだ。二人の娘やクリスマスのこととか。
でも、最後のページを見てはっきりした。アリス、わたし、そしてママの名前。間違いない……この日記を書いたのはパパなんだ……!
「これ……お前らの名前、だよな……? 姉ちゃん…でいいのかな、の名前もアリスだろ? じゃあお前の名前はシェ──」
男が名を呼ぼうとするよりも早く、わたしは日記を抱いて病室を出ていく。
「お、おい!」
さっきは日記を持っていた一人しかマスクを外さなかったけど、他の二人の顔はまだ見てない。
お父さんのことは忘れろってどういう意味……? なんで死ぬみたいに書いてるの? わたしたちこんなに必死に探してるのにッ……!
中の惨状に顔を歪めつつもわたしは再度地獄の中に入る。
相変わらず激しい吐き気が襲ってくるが、歯を噛み締めながらそれに耐え抜き、他の二人のマスクを外していった。だけど、
「……ッ!」
思わず剥ぎ取った最後のマスクを床に叩きつける。
他の二人もまったく知らない外人ばかりだった。この怪しい格好に外国人……好意的に見てもパパの友達じゃないのは確かだろう。
きっとウェスカーとかいう人か、その仲間に違いない。日記にも身辺を探られてるって書かれてた。
でも…じゃあパパは……? この人たちが日記を持ってたのならパパと一度は接触してるはず。それなのにどこにもいないなんて……。
「やっぱここにはいないみたいだな」
その声に振り返ると男が入り口のところで立っていた。
「まだ全部は探してないけど、きっとお前の親父さんは生きてるんだよ。さっきの化け物がいつ帰ってくるか分かんないし、他を当たろう?」
「……うん」
安堵と落胆と疲労と……色々混じったため息を吐いて男のほうへと振り返る。刹那、わたしは目を見開いた。
「……ッ!?」
わたしは絶句し、自分の目を疑う。
男の背後、さっき入り損ねた反対側の病室。そこにあった死体たちの体が──飛び跳ねるようにものすごい痙攣を始めたからだ。
わたしの凍りついた顔を見た男はすぐに異常を悟り、後ろを振り返る。
そしてその光景を目にした瞬間、呆然とするわたしの手を引いた。直後、死体たちの体が弾け、中から異形生物が飛び出した。
すでに走り出していたため少ししか見えなかったけど、死体を食い破って出てきた化け物たちには背中に目玉があったように思う。
あの散壊した死体の山と目玉生物の大量の死骸はこういう意味だったのか……。そういえば日記にもこんな感じのことが書かれてた。
振り返れば、血にまみれた目玉たちがあとを追ってくる。
わたしたちは追いつかれないよう必死に走りながら前を向き──その瞬間同時に足を止めた。……──入り口にはあの化け物がいた。
日記に書いてあったとおり、ボディビルダーなんて比にならないほど大きくなった上半身、その右腕に巨大な目玉がついている。
充血したその目がギョロギョロと動き、そしてわたしたちを捉えた。
抱えていた二、三体分の死体をその場に落とし、非常にゆっくりとした足取りで鉄パイプを引きずりながらこっちに向かって歩いてくる。
後ろを見れば目玉の小物、正面にはその親玉。
「あ……ぁ……」
絶体絶命とはまさにこのことだった。最初にゾンビに襲われたときのような死の恐怖が再び体を駆け巡り、全身が震えて動けない。
背後からはもうすぐそこまで目玉たちが迫っていた。
頭の中は真っ白で歯をガチガチ鳴らして怯えることしかできず、全ての力が抜けてへたり込もうとした刹那──男が強く手を引っ張った。
「諦めんなッ! 気合い入れろよッ!」
ふにゃふにゃで重い足手まといにしかならないわたしを懸命に引っ張り、男はまっすぐ正面に向かってひた走る。
化け物と鉢合わせになる前に、その間にある階段へと向かっているようだった。
わたしたちが突っ込んでくるのを見、化け物は鉄パイプを振り上げながらおぞましい叫び声を上げて早歩きになりながら近づいてくる。
けど先に行動していたこっちのほうが一足早かったようで、化け物の攻撃範囲に入る前にわたしたちは最短角度で階段を駆け上がった。
中間まで上ったとき、男が背中に背負っていたボウガンを取り出し、化け物に狙いをつける。
「当たれぇッ!」
刹那、アリスの喉を貫いたのと同じ型の先の尖った細い鉄パイプがひゅんっ、という唸りを上げて発射され、化け物の目玉に命中した。
獣のような甲高い悲鳴が響き渡り、化け物がひざをつく。
その隙に一気に階段を駆け上ったわたしたちは左右を見回し、別病棟の方向へと続く廊下を走り抜けていった。
「あ……」
しかし、ややあってわたしは足を止める。男が怪訝そうに振り向くけど、わたしは気にせずに立ち止まった先……一つの病室を見つめた。
何年も経ち、もはや慣れ親しんだその場所。ネームプレートには見まごうことなく今までどおりのよく見知った名前が書かれている。
そう。そこは……──わたしの病室だった。
日記&第七話後半終了
思ったよりも日記は長くならなかった
けっこう時間が空いてしまったが、久しぶりにSFCの風来のシレンをやったら止められなくて(汗
>>559 応援ありがとう。凄い励みになる
>>560-561 そっちも風邪かw季節の変わり目で引きやすいのかもな
俺も先日引いたばかりなだけに辛さはわかるよ。お大事にな
おし、直りました〜。
休んでる間に書きたい話ができたので、それ仕上げて先に投稿しようかと思います。
凄く短い話です
GWにまとめて…
治りました、の間違いですね…あわわ
>>575 2chだし、普通のレスにそこまで敏感にならなくてもいいと思うぞw
作品中では誤字脱字を極力無くすのは大切だが
さーて、寝て起きたら八話投稿するかな
待ってます。
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第八話投下(5レスのつもり)
第八話──『覚醒』
熱い……。
それは最初、夏の寝苦しさに苛まれているような感覚だった。思わず布団を跳ねのけ、寝返りを打つ。
けれどもそんなことで熱が冷めるわけもなく、何度も何度も体勢を変える。その内、徐々に体温に変化があるのに気づき始めた。
少しずつ少しずつ、しかし確実に熱っぽさを帯びていく。そして遂にそれは真夏の直射日光を浴びているかのような熱度にまで達する。
あまりの熱さに耐えられなくなって飛び起きようとした刹那──それは起こった。
「っ!?」
どくん、と一度大きく心臓が脈打ったかと思った瞬間、体が灼熱の業火に包まれた。
──いや実際には火なんてついていない。だが火だるまにでもなっていないとあり得ないくらいの熱量が全身を余すことなく舐め回す。
「ッ! っ、っっッッッッ!! ッッッッッッッ!!」
叫びたいのにこんなときですら声は出ず、ただ口を大きく開けることしかできなかった。
熱さを少しでも紛らわそうと無様にのた打ち回り、爪が剥がれそうになるほど強く周囲にあるありとあらゆる物を引っ掻き回す。
それでも体温は下がるどころか逆に異常なほど上がっていくのが分かった。
これならまだ死んだ方がマシだ。体内の細胞が全て燃え、溶け落ちそうな感覚だというのに一向に絶命する気配がない。
むしろ意識は恐ろしいほどクリアで気絶さえ許してくれなかった。もしかしたらこれは煉獄での拷問なのかもしれないとすら思える。
そして──死んでしまいそうな痛みと苦しみに嫌でも耐えさせられ、涙と鼻水と涎と汗を撒き散らしながら永遠とも思える時間が過ぎた。
「…………ぅ…っ……ぇ……ぁ……。……ぐすっ…………か…ぁっ…………」
どれだけ時間が経ったんだろう。もう熱は完全に引いていた。
まさに喉元過ぎればなんとやらで、あれほどの苦しみが本当にあったのかどうか今では判断がつかない。
それでも体中のあらゆる穴から絞りつくされた体液にぐちゃぐちゃになった布団とマットレスがそれを本当にあったことだと証明していた。
私は……生きていた。
気持ち悪い。着ていた服は大量の汗……と、大きな声では言いにくい液体でびしょびしょに濡れてしまっていた。
けれど頭がぼーっとして動くことがとても億劫で。しばらく本当に何も考えられずに、ただただ頭上の二段ベッドの底を見つめていた。
そうして時間が経つにつれ、頭が段々と思考を取り戻してくる。
……ここはどこなんだろう。
……なんで私はこんなところにいるんだろう。
疑問が次々に脳裏に浮かび、ゆっくりとその自問に自答していく。
確か私は……パパを探しているんだっけ。そうだ。パパが死ぬつもりな気がしてシェリーと一緒に病院に探しに来たんだ。それで……
「!」
全てを思い出した私は飛び起き、喉を触った。
……ない。そこから出たと思われる血で服は赤黒く染まっているというのに肝心の風穴(傷口)が綺麗さっぱりと消えてしまっていた。
あれ……? ロケットも、ロケットもない……!? ど、どうしようッ……!? あれには大切な……──
私は慌てて周りを見回す。シェリーがこのベッドに運んでくれたんだろうか。
胸の辺りを見てみると、ロケットに付着したものがついたと思われる丸い形の血の跡が肌についていた。
血が出た後も一応首には下がっていたようだ。ということは、私の形見としてシェリーが持っていったってことも考えられる。
それなら一安心なんだけど……でも、そうなるとやっぱり私は死んだはずなんだよね……。なんで今こうして生きてるんだろう……。
その理由を考えようとして、私はハッと思い出す。ポケットから濡れてしまった一枚の紙切れを取り出した。
開けてみる。結構濡れてしまっているが、なんとかギリギリ文字は読めないこともなかった。既に一度読んでいるから補完は出来るし。
それはパパから私に宛てたメモだった。
『最愛なるアリスへ
突然こんな事になって混乱させてしまうと思う。だが、どうか落ち着いて読んで欲しい。
私はずっとシェリーを救う為にとあるウイルスの研究を重ねてきた。だが、それを嗅ぎ付けた昔の同僚がそのウイルスを渡せと言って
きたのだ。勿論、私は拒否した。すると奴はこの町に実験も兼ねて新型のウイルスをばら撒くと言ってきたのだ。渡せばシェリーを
救えなくなってしまう。交渉の余地は無い。だから私は奴が事を起こすよりも早くシェリーを救う為に行動する事にした。
信じられないかもしれない、私を恨む事になるかもしれないが、どうか冷静に聞いて欲しい。お前の体にあるウイルスを注入した。
だが動揺する必要は無い。そのウイルスはお前が瀕死にならない限り何の活動もしない。今まで通り普通に生きている分には
今後の人生にまったく支障は無いのだ。話を戻すが、ウイルスをお前の体内に注入する事により免疫細胞が抗体を作り出す。
今お前がいる部屋には血液をセットするだけでワクチンを生成する機械が置いてある。完全に抗体が作り出されるまでは2日程
掛かるから、部屋の壁に掛けてある時計が48時間を過ぎた辺りで、その機械に腕を入れて欲しい。血を抜く作業から全てを行って
くれる筈だ。シェリーには別のウイルスを注入してある。そのウイルスはお前のとは違い、初めの内は病気等を全て治してくれるが
時間が経つにつれて人間の体を化け物へと変貌させる物だ。ワクチンを打って取り返しがつくのはウイルスを注入してから4日前後。
お前の体内で抗体が作られるのに2日、ワクチンを生成するのに1日程度。ギリギリ間に合う筈だ。成功すればシェリーの病気は
完治するだろう。
もしお前が瀕死になり、ウイルスが活動してしまった場合だが。
実験では生存確率は10%前後しか無かった。だから、恐らくお前は死んでしまうだろう。もしも10%の確率で生きていられたとしても
お前は人間では無くなってしまう。知能、体型等に変化はないが、筋力や骨格等は人間とは比にならない程強靭な物へと変化する。
すまない。いくらシェリーを救う為とはいえ、お前を犠牲にするような形になってしまって。私をいくら恨んでも構わない。だが、シェリー
にだけは今まで通り優しくてしてやって欲しい。たった二人の姉妹なのだから。
シェリーは隣の部屋で寝ている。三日後まで起きる事は無いと思うが、もし起きてしまっても時間開閉式のドアによって外には
出られない筈だ。お前も外には絶対に出ないでくれ。恐らく外では人々をゾンビ化させるウイルスが散布されていると思う。
そのウイルスの感染力は非常に強く、空気感染、飛沫感染等で確実に感染してしまうだろう。ただ空気中でのウイルスの生存期間
は短い為、2,3日で空気感染の心配は無くなるが、ゾンビと化した生物の体液が体内に侵入すれば感染してしまうのに変わりはない。
お前のいる部屋の奥には近くの地下鉄ホームに続く脱出口がある。出口の先は一般人が入れない特殊なルートになっているから、
それを辿って出来るだけ遠くの町に逃げなさい。その後はお母さんのご両親の家を訪ねて保護して貰うんだ。着くまでに掛かるお金は
この紙と一緒に添えてある物で足るようにするんだよ。50万はあるから不足する事は無い筈だ。
良いね? 色々と苦労を掛けてしまうが、お姉ちゃんとしてシェリーを守ってやって欲しい。
お父さんはまだ病院でやらなければならない事があるから、すぐには会えないと思う。だがきっと生きて二人を迎えに行くから、
それまでシェリーと二人で頑張るんだよ。良いかい、例えどんな事があっても挫けないで、二人で幸せに暮らして欲しい。
愛しているよ、アリス。シェリーにも同じくらい愛していると伝えておいておくれ。それでは幸運を祈る』
メモを読み終えた私は暫らく自分の右手をぼーっと見つめ続けていた。
私、人間じゃなくなっちゃった……のか。
10%の確率で生き残れたのは幸か不幸か、どっちなんだろう。──……いや、不幸なんかじゃない。不幸だなんて思いたくない。
私はまだ生きている。
幽霊になりシェリーの行く末をただ見ていることしか出来ないよりも、あの子をこの手で抱きしめられる方が幸せに決まっている。
私は今までずっと、あの子が自分の運命を受け入れているのだと思っていた。
でも『死にたくない』という言葉を聞いたとき、それが間違いだったと悟ったんだ。
死ぬ運命が決まっているからといって、素直に死を受け入れることが出来る人間なんて、この世の中にどれだけいるというのか。
あの子は今までずっと私たちに心配をかけさせないように笑顔を貫いていたんだ。苦しくても、怖くても、それを表に出さないように。
私はそのとき決心した。この子を絶対に死なせないと。
世界中でたった一人の大切な妹なんだから。お姉ちゃんが守ってあげなくて一体誰があの子のことを守るというの。
パパに言われるまでもない。私はシェリーを守る。
超人的な力も手に入れたみたいだし、ゾンビなんかもう怖くない。…………はず。
ベッドから降りた私はおもむろにロッカーへと歩み寄る。拳を強く握り、一拍の間の後、それを思いきり扉へと繰り出した。
金属のひしゃげる音が大きく響き、上の蝶つがいが壊れる。外れかけた扉は殴りつけた箇所を深くくぼませながら内側に倒れ込んだ。
「いっ……!」
さすがに痛覚は感じるのか、ちくっとした痛みが骨に走る。でも金属をへこませるくらい思いきりやったのに痛みは少ししかなかった。
あ、れ……? ちょっと待って。今私、声……出てなかった?
「あ゛ー……わ゛…だ…ぃ……」
出る……かすれて発音もまともに出来ないけど、声が……出てるっ……!
これもウイルスの力なのだろうか。慣らせば普通に出せるようになるのかな。嬉しい……感動で胸がいっぱいで思わず涙が溢れてきた。
でも、今は喜びで足を止めてる場合じゃない。シェリーとパパを探して一緒にこの町を出ないと。……まずは服をどうにかしなきゃ。
待っててね、二人とも。
第八話終了
アリス復活。いくらかばっちい表現が出てきて申し訳ない
これは10話で終わりそうもないな。15話くらいになるだろうか
それにしても世間はGWだというのに、休みどころが逆に仕事が増えるとは一体どういうことなのか
ちゃんとした休みがほしいー。遊びに行きたいよぉー
以下はおまけ
パパに言われるまでもない。私はシェリーを守る。
超人的な力も手に入れたみたいだし、ゾンビなんかもう怖くない。…………はず。
ベッドから降りた私はおもむろにロッカーへと歩み寄る。拳を強く握り、一拍の間の後、それを思いきり扉へと繰り出した。
「…………」
びりびりびりびり……じ〜ん。
「……っ、っ……いったぁーい!!」
ロッカーの扉はひしゃげるどころか微動だにすることもなかった。外野から「カーット!」という監督の声が響いてくる。
「ちょっとぉ、話が違うじゃないですかぁ……! イタタタタ……」
「ご、ごめんごめん、きっと小道具のミスだね、ごめんねアリスちゃん」
涙目で手をふーふーするアリスにスタッフが焦りながら平謝りする。
その様子を見ていたシェリー役と男役の二人がこらえきれずに笑いながら近寄ってきた。
「ぷっ、ちょっともう、アリスったらベタすぎっ……!」
「いや〜、こりゃあNG大賞で使えるだろうなぁっ! あははっ!」
「うぅ〜……二人ともいじわる……」
だが痛みが引いてきてモニターでその場面を見たアリスも自分で吹き出し、現場はアットホームな雰囲気で笑いに包まれるのだった。
wktk
面白いんだな
保守
588 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/02(金) 03:48:09 ID:9ewxHvs90
保守ってsageたら意味ないんじゃないのか?
あるよ
ゾ
リハビリ作品投下開始。
B級のノリで行けたらなぁと思います。
20XX年、人類は突如として発生した根本的治療が不可能な空気感染型ウィルス性の病魔に冒されてしまった。
致死性は低いが感染力が強く、実に全人類の98%がその病に感染してしまった。
残り2%の人々が感染しない理由などは解明できなかった。
感染力は高いが致死性はそれほど高くもないのだが厄介な事に同じ人間が再び発症する度にその病に対する抵抗力を奪って行き、
最終的には死。
外出時には耐ウィルス用にマスクの着用が義務付けられていた。
金持ちは家全体を気密性の高いシェルターのように作り、金持ちの子供用の学校は正に要塞級。
更に金持ち連中は政治家に賄賂やらで働き掛け居住区を所得差で隔離。
コンクリートの隔壁に金属のゲートを建設し日本は極一部の金持ちが住まう要塞エリアとそれ以外の庶民が住むスラムへと
区分けをしてしまった。
市民団体が軍靴の音が〜とか言い出さないのが不思議な程だ。
おまけに政治家連中はそれに慣れてしまい、遂には金持ち以外から選挙権を剥奪し圧政を敷いた。
これは日本だけではなく、ほぼ全ての国で自然に行われた。
やがて世界中を脅かしていた病に対する特効薬が開発された。
金持ち連中は国産の高級薬を飲み、庶民には国策で某国製の怪しげな治療薬が渡された。
中高年者はその薬を飲むのに覚悟がいただろう。
なんせ、過去に毒餃子テロとかをやらかした国が生産した薬なのだから。
あの国も凄い。
オリンピック後に崩壊して数百もの小国家に分裂したのに未だに日本を恫喝し続けるその空気の読めなさが凄い。
まぁ、そんなこんなで人類は死の病の恐怖から一時だけ免れた。
3年後。
あのウィルスの脅威が再び世界中を覆い尽くしていた。
ウィルスは貧乏人に与えられていた某国製の薬剤に混入していた化学物質により突然変異。
人類を食欲のみで動く死体・・・・ゾンビに変えてしまったのだった。
発症には個人差があり、まだ発症していない人々の中に自然と要塞エリア内の高級国産治療薬を飲めば治癒し助かるという
うわさが発生、爆発的に広まり恐怖との相乗効果で暴徒と化した庶民達は自分達を虐げてきた金持ちや日本政府が存在する
要塞エリアへと津波のように押しかけていった。
悲鳴と怒号、そして発症しゾンビと化した庶民が要塞エリアを脅かしていた。
東京要塞エリア。
日本政府と企業家達が住まう要塞都市。
押しかけた人々に浴びせられる銃弾の雨。
だが、それすらも庶民の動きは止められない。
圧死した人や射殺された人々の死体が積み重なり、遂に庶民とゾンビが要塞エリア内部に流れ込んで行った。
内側からゲートが開放され、殺到する人々。
政府は機能を停止し内戦状態の様相を呈していた。
取りあえず、続きます。
リハビリでゾンビ映画をメインにアイアムレジェンドとか見まくってました。
クローバーフィールドは見事に酔い、しばらく立てませんでした。
おまけでライアーソフトのアダルトゲームのLOVE&DEADのヒロインの園美にはまってしまいました。
ゾンビのヒロインってのは新鮮だぁ。
乙です!読みやすく面白いです。続きにwktk
595 :
empty ◆M21AkfQGck :2008/05/04(日) 00:42:43 ID:yBrrkavK0
明日か明後日に複数投下するかもしれません
書いた話を見返していて、これは反対の視点から見たのもアリなんじゃないかな? とか思い、書き始めた結果、ずるずると…
う〜ん、両方で1つの話としてまとめた方がいいかな…?
いつもどーり期待せずに待ってて下さいな〜
>>マグロ天さん
お疲れ様です
続き期待してますよ〜
夢中になってしまいました
GWにお仕事お疲れ様です
こちらも宿題が山のように…
GWなんて無いも同然です…
>>中二病作家さん
お久しぶりです
楽しみにしてますよ〜
クローバーフィールド、酔いますよね…
自分もある種のリハビリ中です
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第九話投下(6レスのつもり)
第九話──『すれ違い』
「おい! 早く逃げなきゃ追いつかれるぞッ!」
半ば放心しているかのような状態で自分の病室を見つめるわたしに男が叫ぶ。
そんなこと、言われなくてもわかってた。
でも……命の危険にさらされている状況なのに、この部屋を前にしたら恐怖と危機感が嘘のように引いてしまって。
自分でもなぜかわからないまま、不思議に引き込まれるようにドアに手をかけていた。
これはあとから思い出したことだけど──
そのときのわたしは、夢の中でハチャメチャな理屈にも納得してしまうのによく似た感覚で、ある一つの確信を抱いていたのだった。
「隠れてば、見つからないかも……」
「なっ」
吸い込まれるように部屋の中に入っていくわたしに男は二言三言反論していたものの、迷ってる時間もないと判断したらしい。
自らも素早く病室の中に滑り込むと、できるだけ音を立てないよう慎重に、かつ迅速にドアを閉めた。
「静かにしてろよっ……」
囁き声でそう言った男はボウガンを構えながらドアに耳を当てる。
わたしはそんな必死な男の言葉すら流し聞くのみで、立ち尽くしながらベッドの辺りへ視線を据え、その実虚空を見つめていた。
幾年も過ごしてきた小さな個室。
部屋の奥にはベッドがあり、テレビ台を挟んで窓がある。窓際には花瓶が二つ置いてあって片方にはスズランの造花が活けてあった。
テレビ台の上にはもちろんテレビ(よく知らないけど高くて良いやつらしい)、その下にはいくつかのゲーム機とDVDレコーダー。
変わらない。なにも変わってない。地獄と化した町の中で、ここだけは笑ってしまうくらいいつもの風景だった。
でも、もう自室のように感じていたのに、たった三日──体感的には半日程度だけど──空けていただけでとても懐かしく感じてしまう。
わたしは入り口付近から一歩、また一歩とゆるやかに歩を進め、ベッドの前に立つ。そして何気なく顔を右向けた瞬間──目を見開いた。
今まで死角になっていた場所で壁に寄りかかるように座り込む一人の男の人。それは見まごうことなく……パパだった。
「パ…パ……?」
間違いない。今度こそ間違いない。幻じゃないよね……? 夢じゃないよね……? ──わたし、やっとパパを見つけたんだ……!
パパは肩に血を滲ませながらも眠っているのか微動だにしなかった。まさか、死んじゃったりしてないよね……!?
「パ──んむ」
思わず叫んで駆け寄ろうとした刹那、突然背後から口を塞がれたわたしは、同時に胸の辺りにも腕を回され動けなくされる。
あまりにも意外な不意打ちにパニックを起こしながら顔と視線を必死に動かし背後を見ると、わたしを押さえつけていたのは男だった。
なんでパパを見つけたとたんこんなことっ……?
強烈な理不尽さと行動の意味不明さに、わたしの胸に怒りと恐怖が湧き上がる。
パパの安否を確認できないもどかしさ。そして、もしかしたら男が本当はパパを狙っていた組織の手先だったんじゃないかという疑心。
その疑心を感じた瞬間、それを確信するような疑問が脳裏をよぎる。
最初からおかしかったんだ。だって、この町や病院にいる人間たちがゾンビになったなら、なんでこいつ一人だけゾンビ化してないのさ。
アリスを殺したのも予定どおりで、わたしを守るとか言ってついてきたのもパパを始末するため……?
その答えに行き着いたとき、わたしは涙を流して激しく抵抗していた。しかし体格、力の差があって自由になることは叶わなかった。
どうにか逃れようと必死に考えた末、テレビアニメの見よう見まねで男の指を噛む。けど男は歯軋りするだけで力を解くことはなかった。
こうなったら強引にでも金的を……そう思った直後、男がくぐもった声で囁いた。
「気持ちは分かる、けど……頼む。外に化け物がいるから我慢してくれ……」
その言葉にわたしはハッと我に返る。
そうだ。隠れようって強引に病室に入ったのはわたしじゃないか。見つかったら逃げ場がないから静かにするのは当たり前なのに……。
「(ごめんなさい……)」
塞がれててなにを言ってるかわからなかったが、男には届いたようだ。抵抗を止めたとたん男はすぐに両手を離して自由にしてくれた。
ドアの外では化け物の叫び声が段々と遠ざかっていくのが聞こえてきていた。
けっこう強く噛みついたためか、男は顔をしかめながら左手中指を押さえていた。
完全に自分の勘違いで百パー非があるわたしは、気まずすぎてどうしていいかわからないまま目も合わせられず視線を泳がせていた。
と、とにかく謝らなきゃ……。
「ご、ごめん、なさい……」
「……あ、ああ、気にしてないよ。それだけ親父さんのこと心配してたんだろうし」
笑顔を作ってはいるけど、若干引きつった感じに歪んでいて痛みは隠しきれてなかった。それだけでも罪悪感が心に重くのしかかる。
今ならわかる。アリスを殺してしまったときの男は、きっと今のわたしなんて比じゃないくらいプレッシャーに苛まれてたに違いない。
人を殺してしまっただけでも絶望的な心境なのに、その上家族にネチネチと罪の重さを囁かれ続け……わたしなら絶対に参ってしまう。
それなのに男は臆することなく正面から罪と向き合った。
強いな……アリスも、この男も。なんかわたしばっかり弱くて本当に情けない……。
「ほら、早く親父さん起こしてやんなよ。あの銃痕なら酷くて肩が外れる程度だから、大丈夫だ。化け物がいない間にさっさと逃げよう」
「う、うん……」
いざ改めて臨むと緊張する。
わたしはしゃがんで目線を合わせると、囁くように呼びかけながらゆっくりとパパの体をゆすった。
ちゃんと起きてくれるか心配だったけど、二、三度ゆらした時点で反応があり、続けて少し強くゆさぶると、パパは呻きながら顔を上げた。
「〈……う。私、はまだ生きて……──〉」
言いながら目の前のわたしを見た瞬間、パパはおばけでも見たかのような表情で固まってしまった。
次いで口から漏れたのは独り言のようなか細い、けれど確かにわたしの名前だった。
「〈シェ、リー……?〉」
「〈うん……うんっ……! 会いたかったよパパっ……!〉」
我慢できず、わたしは思いっきりパパに抱きつく。しばらく呆然としていたのち、パパもギュッと力強くわたしを抱きしめてくれるのだった。
「〈それにしても……シェリー、何故ここに……?〉」
しばらく無言で抱きしめ合ったあと、先にパパがわたしの体を離して訊いた。
それを説明するにはどうしてもアリスが絡むため、その死のつらさとパパにどう切り出そうかという逡巡にわたしは自然と俯いてしまう。
「〈パパが病院にいるって……アリスに聞いたの〉」
「〈そうだったのか……。それでアリスは……? それにそこに居る彼は……?〉」
当たり前の率直な問いに、わたしはついに黙り込むしかなかった。
後ろにいる男が英語を聞き分けられ、なおかつ喋ることができるならきっと答えていたことだろう。でも男は英語がわからない。
少しくらいは聞き取れるのか、それともパパが自分のほうを向いたので戸惑ってるのか、そわそわしてる気配だけはするものの……。
アリスの死は──自分の口から伝えなければならないようだ。
「〈この人は……色々あってわたしを守ってくれてるの。アリスは…………アリスは、事故で死……──〉」
「本当にすみませんでしたッ……!」
「!?」
突然乱入した男の大きな声にわたしはビクッと飛び上がって振り向く。
男は……土下座していた。頭を床にぴったりとつけて。
唐突すぎる意味不明な行動にわたしもパパも一瞬呆然とする。だけどわたしは意外とすぐに男の心理を察することができた。
きっとわたしが『アリスはこの男に殺された』とでも言ったと思ったんだろう。わたしの今までの反発を見ればそう考えるのも頷けた。
パパも土下座という行為はさすがに知っているため、なんで男が自分に謝らなければならないのか疑問符を浮かべていた。
「〈ドゲザ……? 何故彼は私にそんな事をするんだい……?〉」
こうなってしまったら隠すこともできない。せっかく男のことを認めてあえて切り離して話そうと思っていたのに。正直者だとも言えるけど。
「〈この人が……アリスを殺したの〉」
「〈な……な、に……?〉」
パパは最初なにを言われてるのかわからないようだった。
当然だ。身内の、それも溺愛してた娘が死んだなんて一瞬で呑み込めるような話じゃない。だからその間にわたしはフォローを入れる。
「〈で、でも、殺したとは言ってもこんな状況じゃ事故みたいなものだったんだよ……! 不可抗力で……だから怒らないであげて……〉」
本当は男を散々罵倒しまくったわたしにこんなこと言える権利はないんだけど、ね……。
パパは悔しそうに顔を歪め、床を拳で殴りつけると、目を瞑って涙を流した。
振り返れば未だ男は土下座している。
きっとパパかわたしが『もういい』って言うまでしてるつもりなんだろう。でもこの場合じゃあ……わたしが言うのはだめな気がした。
「〈ドゲザを……止めてくれ〉」
わたしはパパを見る。意外にもすぐに男を許したことに驚きを隠せなかった。
「もう、土下座しなくてもいいって……」
「でも…………申し訳、なくて」
男の声は泣くのを我慢しているかのようにかすれていた。
本当に心の底から罪の意識のある人なら確かに遺族が許しても自分で許せないこともあるだろう。でも、今はそれじゃあ話が進まない。
「わたしたちがもういいって言ってるんだからやめればいいの。顔思いっきり蹴っ飛ばすよ?」
「……分かった。ありがとうござ……──ソーリー。センキュー」
英語がだめなくせにそれでも伝えようとする男のバカ正直さに、内心でキザったらしさと同時に微笑ましさを感じてしまう。
そんな中、顔を上げた男を目を細めて見据えていたパパは、ややあって言葉を選ぶようにゆっくりと口を開いた。
「〈君は……何故ゾンビ化していないんだ……?〉」
その疑問は丁度さっきわたしも考えたところだった。
わたしは一人地下にいたから助かったんだと思うけど、男は町中そして病院の人々がゾンビに変貌していく真っ只中にいたはずなのに。
──自分なりに思考を巡らせていると、パパが優しい声音で言った。
「〈シェリー。彼に日本語で訳してあげてくれないかな〉」
「〈あ、ごめんなさい〉ねえ、パパがなんであんただけゾンビ化してないの? だって」
問うと、男は答えに窮するように「えーっと……」とか「そんなこと言われても……」などと頭を掻きながら視線をウロウロ泳がせる。
「……ごめん。自分でもよく分かんないんだ。でも、ゾンビになってないのは俺だけじゃなかったよ。俺も含めて何十人かは、確か……」
わたしは男の話をそのままパパに伝えた。
パパはヒゲが伸びてきているアゴに指を当てて少しの間考え込んだあと、結論を出したようだった。
「〈彼の病気の原因か、あるいは服用している薬にウイルスを無効化する要素が含まれていたのかもしれない。いや、もしかすると……〉」
「〈パパ……?〉」
突然険しい目つきになって虚空を睨んでいたパパは、ふっと元の表情に戻る。
「〈ともかく、今はここから脱出するのが先決だな。体の方はもう大丈夫かい? 注射してから一時間以上経っているなら走ったりしても平気な筈だから、これからは……──〉」
「〈パパ……? なに、言ってるの……? 注射ってなに……?〉」
言ってる意味がまったくわからず呆然として訊くと、パパは固まって目を見開き、次の瞬間今までで一番怖い顔でわたしの体をつかんだ。
「〈注射はッ、アリスに注射を打って貰っただろうッ……!? ──そんな、まさかッ……どうしてなんだアリスッ……!〉」
「〈ねえ注射ってなに……!? な、なんでそんなアリスを責めるような言いかたするのっ……!? アリスとは外でゾンビに襲われてるときに会って……あ、アリスはわたしを体を張って守ってくれたんだよ!? それで死んじゃって……それなのにっ……〉」
「〈まさか、アリスはワクチンを精製している最中にシェリーが外に出たのを知って…………何て事だ。これでシェリーの病気は、もう……〉」
第九話終了
ウダウダ。無駄なところに描写を割いてる上に全然動きも進展も無しな回
こんな話に6日もかけてしまった。他にやることがあると2.3日で仕上げるのは中々難しい
やっぱり一度に登場人物が三人以上出ると会話が多くなってしまうなぁ
>>595 労いの言葉サンクス
新作については自分のやりたいようにやってみるのがいいな
色々試行錯誤したり、指摘や感想をもらったりして良し悪しの感覚を掴んでいけばいいし
宿題も合わせて頑張れっ!
>エビ天さん(どこを短縮すりゃいいんだw)
乙!男が何者なのか?それこそ男視点から物語を再構成しても面白いかもね。
>中二さん
プロログ乙、wktk
>emptyさん
とにかくwktk
久々の!!嬉しいわぁ
こんな素人の落書きなんて面白くねーよ
自称評論家ばっかだし
こんな駄文は猿でも書けるよ
607 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/05(月) 12:23:00 ID:KVen0e2L0
喜んで読んでるやつもいるんだよ。
文句は実際書いてみてから言いな。
608 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/05(月) 12:44:43 ID:rPTvq7HoO
オモロだよー
テンプレにも書いてあるけど、荒らしはスルーしようぜ
稲妻のような銃火器が炎を吹く音が絶え間なく続き、人々がバタバタと銃弾に倒れてゆく。
だがそれは単にゾンビの数を増やす結果となるだけだった。
しかも脳の損傷が少ないなりたてのゾンビは生前の記憶と行動意欲がまだ残っているのか警察官や自衛隊員に向け一直線に
進み結果的に後続の人々の盾となっていた。
更に政府機能の停止は各地の要塞エリアの自衛隊の指揮系統の混乱にも繋がった。
ゾンビは食料品店の生肉や死んだ人間や傷ついた人間を貪り食い、庶民は高所得・特権階級の人間を屋外に引き摺り出す。
泣きながら命乞いをする彼等を庶民は老人・子供を問わず嬲り殺しにしたり知能が停止し完全な化け物と化したゾンビを隔離した
折の中に放り込む。
それは正に地獄の光景だった。
今回は短編なのでこれにておしまいです。
「はっはっはっはっ!」
大きく息をしながらも走る速度は緩めない。
後方から聞こえる死者達の呻き声。
目の前に荒れ果てたコンビニがある。
迷わず中に入り、棚を見る。
スナック菓子が数袋にカップラーメンがいくつか残っている。
大急ぎでバッグに詰め込み、再び逃げ出す。
今の食糧確保でゾンビ達と俺との距離が縮まってしまった。
痛む足に鞭打ち、再び逃走する。
「やった!!」
目の前のビル。
俺の目線の位置辺りまで下がっているシャッター。
ガラララララッ!
ビルに飛び込み、大急ぎでシャッターを一番下まで下げる。
息を整え、それでも警戒を怠らない。
ビルの中にゾンビがいないことを確認し、内側から鍵の掛けられる部屋の中でやっとの事で床に座る。
「疲れた・・・・・」
全身から力を抜く。
何で・・・・何で俺がこんな目に・・・・・・・。
もう、こんな生活が一週間以上続いている。
今でもハッキリと覚えている。
会社帰りのバスの中、うっかり居眠りをしてしまった事。
目が覚めたら既に朝になっており、しかも俺はバスの中。
携帯を使おうと思っても圏外。
思い切ってバスから出て人を探した。
でも、見つかったのは人間の形をした化け物。
ジャー・・・・。
水は出る。
食べ物は・・・・棚の中にカップ麺が少々。
相手が正気じゃないことに気付き、怖くなり逃走。
再び人を探したが見つかったのは動く死体ばっかり。
ゾンビなんてそんな馬鹿な・・・・悪い夢に決まっている・・・・・・。
そう自分に言い聞かせ夢から覚めるのを待ったが肉体の疲労と空腹がこれは現実だと証明していた。
ゾンビから逃げ回り、生存者を探し回ったが無意味だった。
何しろ自分の食糧確保と安全の確保だけで手一杯なのだから。
部屋の中を見回す。
古いラジオが一台ある。
停電でテレビは無理だがラジオならあるいは・・・・・。
そもそも、この一週間で初めてラジオなんて代物を発見した。
スイッチを入れてみると電池式なのか微かな雑音が聞こえる。
電池の節約の為にボリュームを低くしたままチューニングのダイヤルを回す。
だが、音声らしき音は一つも拾えない。
あきらめてスイッチを切り、腹ごしらえをして床にごろ寝する。
久し振りにきたら進んでる!
作家さんたち期待してます!面白いっ
wktk
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第九・五話投下(4レスのつもり)
第九・五話──『Grow-Virus』
パパがなんのことを言ってるのか、わたしにはまったくわからなかった。
冷静に考えれば言葉の端々から少しは推測できたのだろうけど、パパの動揺ぶりとアリスへの叱責にテンパってそれどこじゃなかった。
「わたしがいけないの……? 勝手に動いてアリスに注射を打たせなかったから……? ならアリス悪くないじゃん……悪くないよ……」
英語で喋るのすら忘れ、ぽろぽろと涙をこぼす。
いくらパパであっても、あれだけ必死にわたしを守ってくれて……そして死んでしまったアリスを責めるのは許せなかった。
パパはわたしの涙を見てようやく我に返ったらしく、しゃがんで目線を合わせると、両手をそっとわたしの顔に添えて優しく目元を拭う。
「〈すまない、どうかしていたね……。アリスはお前を守ってくれていたのに。大丈夫。少し驚いただけでアリスを責めたりしていないよ〉」
「〈ぐす……ほんと……?〉」
「〈ああ。アリスは私の自慢の娘だ。今でも掛け替えのない程愛している。だから……悪い事もしていないのに責めたりなんかしないさ〉」
過去形じゃないのが嬉しかった。
パパはアリスが亡くなってもなお、自慢の娘として生きているかのように愛してくれてるんだと。アリスが聞いたらどれだけ喜ぶだろう。
さっきまでとは違う涙が溢れてきたわたしは思わずパパに抱きつくと、ギュッとその体を抱きしめた。
パパもわたしを抱きしめ返しながら大きな手で優しく頭を撫でてくれる。そんな状態が一、二分くらい続いたとき、男がふと口を開いた。
「そろそろ……良いですか?」
わたしは安堵により瞑っていた目を開ける。それとほぼ同時にパパが頷くのがわたしの体に密着した首の動きでわかった。
お互いに言葉での意思疎通はできないはずなのに、アイコンタクトなのか男同士で通ずるものがあるのか、意見は一致したようだった。
「〈病院を脱出したら私の家に向かう。シェリー、彼にそう伝えてくれ〉」
「〈え? 伝えるのはいいけど……なんでうちに戻らなきゃいけないの……? 早く逃げないと、またゾンビとかに襲われちゃったら──〉」
「〈…………お前を、救う為だ〉」
「〈え……?〉」
それ以上は言葉にならなかった。さっきのパパの動揺や注射とかのフレーズからわたしの病気に関することなんだろうけど……。
わたし、もしかしてもう……長くない、の……?
よほどわたしの表情が絶望に塗られていたんだろう。パパは力強くわたしの肩に手を置き、優しくも自信に溢れた頼もしい口調で言った。
「〈安心なさい。私はお前を絶対に死なせない。家にお前の病気を治すワクチンがあるんだ。だからそれを取りに行こうと思う。良いね?〉」
「〈うん。わたし……パパを信じてるから〉」
「〈良い子だ〉」
パパは褒めるときにいつもしてくれる笑顔でまたわたしの頭を撫でてくれた。
「〈さあ、時間も無い。行こう〉」
白衣をひるがえしてドアに向かうパパを見、男がわたしに一歩近寄る。
「おい、どうすんだこれから? 普通に病院と町から出るってことで良いのか?」
「パパは、まずわたしのうちに向かうって。わたしの病気……本当は助かる確率全然ないんだけど、それを治すワクチンがあるんだって」
「えっ……あ……そう、か」
男はわたしの病気のことを初めて知って戸惑っているようだった。
今までふつうに動いたり話したりしてきた人間が不治の病だと告げられれば信じられないのと同時に驚くのも当然か。
でも今日は本当に体の調子がいい。いつもはストレスが溜まったり激しい運動をしたりすると発作が起きるのに……一度もないなんて。
「その、体の方は……大丈夫なのか……?」
「うん。平気平気。今日は調子いいみたいだから。アリスが守ってくれてるのかなー……なんて。あはは。ほら、パパも待ってるし、行くよ」
「あ、ああ」
背中を押し、わたしも歩き出す。とそのとき、一瞬平衡感覚がおかしくなったようによろけて男の背中に顔から寄りかかってしまった。
あんま動かず泣いたりして疲れたから立ちくらみでもしたのかな。「?」と疑問符を浮かべる男をごまかし、わたしたちは病室の外に出た。
病室の外ではいち早く出ていたパパが先の細長い拳銃を持って待っていた。きっと外に化け物がいないか確かめていたんだろう。
安全に、かつ一刻も脱出するため院内の作りを思い出そうとするわたしに対し、拳銃を見た男は興奮したような口調で早口に喋り出す。
「あ、それってルガーじゃないっすかっ? へぇ〜四インチに木製グリップ……あっ、グリップ削ってありますねっ。ってことはやっぱこだわってるんすねー。四インチだと若干安定性に欠けますけど、持ち運びに気を使ってると見ましたっ。
利便性をまったく無視したときのこだわりなんか聞いてみたいなぁ。おれは現代っ子なんでこういう渋いのよりもシグとかグロックなんかを気に入ってますけど、やっぱ旧ミリタリーモデルも実績とか歴史が感じられて趣があって良いっすよね」
「…………」
「…………」
なんかわけわからんことをパパに向かって散々言い倒した男は、ワクワクした瞳でわたしを見る。あによ、その目は。
「早く訳してくれよっ。お前が通訳してくれないと親父さんと喋れないじゃんかっ!」
「…………」
わたしは一つため息を吐くと男に背を向け、
「〈パパは車でここまで来たんだよね? キーはまだ持ってる?〉」
「〈ああ。車は正面玄関近くの駐車場に停めてあるから、まずはそこまで戻らないといけないな〉」
「〈……できれば化け物に見つからないようにそっと裏から出たいんだけど……歩きだと遅くて危険だし、やっぱり車を取りに行くしか、〉」
「──って、おれを無視すんなぁー!」
情けない声を上げる男を振り返り、わたしはわざと口元を歪ませながら超じと目を向けた。
「今拳銃マニアの戯言なんて聞いてる場合だと思う? てか、たとえ危機的状況じゃなくてもあんなマニアックな話、訳せないっつーの!」
「何を言うっ! 素人のおまえでも分かるように全然専門用語なんて使ってねえじゃねーか! 甘えてんじゃねーぞ!」
「なッ……なんで関係ない話遮ったくらいでそんなこと言われなきゃッ……っ、もうあんたなんて知んないっ! 一人でずっと喋ってろッ!」
そっぽを向いたわたしはパパの手を引いて別棟の方向へと歩き出す。
刹那、アニメのドジっ子みたいになにもないところで足がつまずき、パパの手を引いたまま思いきり転んで床に体を打ちつけてしまった。
「〈……っと、大丈夫かいシェリー?〉」
こくりと頷いて返事をする。
シチュエーション的にはパパがわたしを押し倒したみたいな形になっていた。わたしの体勢がうつぶせでさえなければ。
う……なにもないとこで転ぶなんて……すっごい恥ずかしい……。
わたしが顔を真っ赤にする中、男は「ほら、慌てるからだ」なんて小憎たらしいことを言ってくれる。
怒りと恥ずかしさでヒステリーになりかけたわたしは、急いで立とうとし──……直後、突然全身を尋常じゃない激痛と痒みが襲った。
「ッ……!? く、ぐッ……ぅッ……あ、ぁッ──!!」
それはあたかも、いきなり鋭いもので全身の細胞を串刺しにされたような痛みだった。同時に気が狂ってしまいそうな痒さが体を舐める。
あまりの苦しさに悲鳴も断末魔も出せず、数秒後わたしの意識は途切れた。
9.5話終了
今回は短め
書いていたら九話内に収めなければいけない感じの話になってしまったものの
でも九話は終了と書いた後の祭り状態だったために苦肉の策できゅうてんごわに
今回もまったく進展なし。けれど次回からは怒涛の展開が待ち受けて! ……怒涛は言いすぎかも
ちなみに自分は銃器のスペシャリストではないし、エアガンガスガンを数点持ってるだけで
知識もかじった程度で豊富とはとても言えないので、指摘がある場合は優しくお願いします><
閑話休題
つい先日、次回作の構想みたいなものが頭に浮かんだりしたのだけど、連続で載っけてもいいのかな
まあ構想が浮かんだとは言っても、骨組みはワラサイズで吹いたら吹き飛びそうな感じだが
期待してくれる人がいるのならちゃんと考えてみようと思うかもしれない
ただし、今作とは文章の書き方も雰囲気も設定もまったく異なる作品になると思うけれど。科学的じゃなくて魔術的な?
…徹夜明けでテンションおかしいかもしれない。ご容赦を
>>621 期待どころか、待ち望んでる状態ですよw
余裕があれば是非お願いしたい
エビ天さん、いつも楽しませていただいています
お風邪は完ぺき治られましたか?
次作も是非是非、体力と時間があればお願いします
何気にココを見るのが日課な私には嬉しい限りです
〜とある室内犬のはなし〜
どんどん、とうるさいので起きたら、ご主人様はドアに向かって体当たりしていました。
「あなたぁ!どうしてこんなことするの!」
ご主人様の伴侶様は何かを叫んでいましたが、にんげんの言葉は分かりませんでした。
ケンカでもしているのでしょうか?やめて、と吠えてみましたが無駄でした。
ご主人様は黙ってドアに体当たりを続けていました。
次第に外も暗くなって、もうゴハンをくれるはずの時間なのに、ご主人様は相変わらずドアに体当たりをしていました。
おなかがすきました。お散歩にも行きたいです。何度か吠えてみたけど、ご主人様はこちらを見てくれません。
ボクは寂しくなりました。お外にいきたいなぁ。
どんどん、という音がうるさいけど、眠いので寝ました。
外が明るくなりました。伴侶様が部屋から出て歩き回っていました。
よかった、仲直りしたようです。
ごはん貰えるかなと思いましたが、ただ歩くだけで何もくれませんでした。お水もなくなりました。
おなかがすきました…。喉が渇きました。
ご主人様と伴侶様は何日経ってもずっと歩きっぱなしです。二人からは変な臭いがします。
ボクはもうおなかがすきすぎて立つこともできません…。
いつごはんをくれるんだろう?
「う・・・・ん・・・・」
目が覚め、真っ暗な中時計を見る。
夜中の二時。
窓から夜の街を見るが明かりは一つも見えない。
空を見れば雲に覆われていて月も星も見えない。
そう言えば、この奇妙な状態に陥ってから空はどんよりとした雲に覆われている。
処方箋薬局から持ってきた睡眠薬を飲み無理矢理に眠る。
次に目が覚めた時は昼に近かった。
無駄だと思いながらラジオをつけ選局する。
「・・・・・せ・・・・ん・・・・」
ノイズの中に人間の声が混じっているのを見逃さない。
慎重にダイヤルを回す。
「我々自衛隊は決して生存者の皆様を見捨てません!」
その久々に聞く人間の声に安心感と希望を感じる。
「現在、世界中で同時多発した死者のゾンビ化現象に各国が非常事態宣言を宣言し、海外からの救援は期待できない状況です。
現在、我々自衛隊は生存者の皆様を保護し、安全を確認した離島へと避難を進めています。
生存者がまだ残っておりましたら、指定日時に指定場所まで移動をお願いします。内陸の方へはヘリによる救助も行っています」
録音ボタンを押し、中に入っているテープに放送を録音する。
コンビニで確保しておいたこの周辺の地図を広げ、移動とそれまでの食料の予定を組む。
助かる・・・助かるんだ・・・!
< シベリア物語Три >
イルクーツクから車で約1時間、バイカル湖畔の村リストヤンスカヤ
100年の昔、ここから勇壮な軍歌に送られて日本軍と戦うためコザックは東に向かった。
厳寒の氷を踏みしめ、橇に弾薬を乗せて愛馬と共に東へ進んだ。
西から来る赤軍と最後まで組織的抵抗を続けたのもザバイカルコザックだ
聖なる湖バイカルと共に生まれ湖と共に生き、そして死ぬ。
バイカルコザックにとっては、ここは決して流刑地ではなく、ここが祖国である。
Встань за Веру, Русская земля!
(ロシアの地を守り抜け!)
教会の鐘が鳴り響き、人々が歌う。
胸に十字を切り、深く頭を下げる、、蝋燭を灯し、司祭が香炉をふり
イコンを持つ者と旗を持つ者の順序が決められてゆく。
黒パンと赤ワシンが与えられる。集められた銃器と弾薬が、秩序正しく渡される。
家族が集まり、抱き合い涙を流して別れを惜しむ。
若者が古く木製の教会に頂くロシア正教独特の十字架を真っ直ぐに見上げる。
後ろはバイカル湖だけだ、、その向こうも正面のイルクーツク市にも生者はいない
村との境界線に設置された二重の鉄条網線とバリケードには、数万の動く死者が
うめき声をあげて今にも破らんとしている。
イルクーツクから逃げて来たという女性が、耳を塞ぎ長く悲しげな悲鳴を上げる。
その眼には既に正気の一遍もなかった。
628 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/13(火) 18:38:39 ID:iVBm4CKy0
ユーリア・ザイチェンコバは、23歳の気丈な娘だったが、イルクーツク市で
見た全てのものは、歴史の教科書で見たどんな悲惨な歴史より最低最悪だった。
テレビで避難を呼びかけていた、ラジオから状況がとてもヤバイ事は知っていた。
でも何処へ逃げればいいの?
家族も兄弟も親戚も、ずっと昔からここで暮らしてきたの! モスクワもウラジボストークも
ロシアだわ、、だけど地図の上に書いてある町の名前は、いつか行ってみたいと思うけど
そこは、住むべきところではないの! 本当に、本当に行くところがないのよ。
親友のタチアナは、夫が兵士で防衛作戦から帰るまで帰らないと言う
でも避難すべきだった、、腕を噛まれて、、泣きながら、それでも夫を待つって
アパートの部屋に入って鍵を閉めたわ。
でも、内臓を溢しながら掴み掛ってくる恋人を前にして何ができるの?
突き飛ばしても、起き上がってきて掴みかかられたら、何ができるの?
その彼は、突然頭が爆発して血と肉が、、私の顔に降りかかって・・・・
次の瞬間に「大丈夫か?」っって、、もう何がどうしたというのよ・・・
お願い、、誰か私を撃って・・私を楽にして・・もう聞きたくないのよ、見たくはないのよ。
涙でクシャクシャにした、顔に哀願を込めて娘が叫ぶ、、、、
その肩を、司祭が優しく叩く、、手にもつ金属の十字架に若き兵士が膝まずく
壮年の指揮官を先頭に、若きコザックが銃を持ち進んでゆく
万に一つも助からないのを覚悟の上で、絶対に死者の群れを突破するのだ
死者に本当の眠りを! 我々の家族に安住の地を! 神よ−家族を守りたまえ!
終わり
よ…し、直ってる…
あはは、「載せる」とか書いておきながら修理に出していました…
いやま、突如として異常が起きたので
バックアップとっといて良かった…
その間に、書いてたものを下地にして新しいの書いてみたんで、今夜…か明日、載せれるかな? と思います
630 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/13(火) 18:45:48 ID:iVBm4CKy0
元ネタ
www.youtube.com/watch?v=H9-zC4O-Xpo
これを聞いていたら、何だかフト書きたくなった。
631 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/13(火) 23:12:43 ID:N0uE+LOE0
はじめまして。
異色のゾンビマンガを描きました。
この掲示板に少しだけ載せたいのですが、
どうやって載せたらよろしいでしょうか?
(マンガはbmp形式です。)
このページに乗せるのが、おそらく世界初です。
昔からゾンビ等が好きで、良くゾンビの絵なんかを描いています。
なかなか上達しませんが、吸血鬼とゾンビの絵に関しては、
誰にも負けたくないという精神で描いています。
なぜ、吸血鬼とゾンビが好きなのかというと、その対称にある
人間の生きようとする姿がとても美しいからです。
ゾンビ映画やゾンビマンガは人間賛歌の物語なのです!!
最近ここの作品まとめてるサイトを見つけて読んでいた。
PIPさん…あんたの作品が読みたいよ。
ゾンビのように立ち上がってくれ。
期待してくれている方々には申し訳なくも、スランプ…みたいなものに陥ってしまった模様
恐らく視点が変わったためだと思われる。ちょっと描写や表現等に悪戦苦闘中
まあ、そんな深刻なものでなくて、一部分に引っかかってるだけなんだけどもね(汗
気分転換に今作の初期設定のイメージを冒頭とラストだけ書いてみようかとも思っていたり
何にしても、本編はもうちょっとだけ掛かりそう。しばしお待ちを
>>622-623 OK。じゃあ真剣に考えてみようと思う
しかしキャラの名前が絶望的に浮かんでこなくて困った
いつもなら少し悩めばイメージにピッタリな名前が浮かぶのに
それと
>>623体調の心配もありがとう。風邪はもう大丈夫。さすがに連続で引くことはないと思いたいw
>>631 スレタイにもテンプレにも漫画には触れていないから
自分にはここに漫画を載せていいのかどうかはわからないけど
一応載せる方法としてはロダにzipで上げるか、そのまま一枚ずつ上げるかかな
適当に探したロダを張っとく
画像を一枚ずつ載せるなら→
http://up.mugitya.com/ zipで上げるなら→
http://www.axfc.net/uploader/ まあ個人的にはzipよりも画像で上げる方が(見る側が)楽でいいと思う。専ブラならポップアップですぐ見れるし
↑で言っていた初期設定のイメージストーリー
タイトルがおかしかったら申し訳ない(7レスのつもり)
dead girl's sunny smile
荒くか細い呼吸が全身を撫ぜる風に流されていく。
涙を流す暇もない。悲哀なんて感情を感じてる余裕は微塵だってありはしなかった。
ごちゃごちゃに混乱した思考。
なぜ逃げなければならないのか──そんな疑問すら時々堂々巡りのごとく脳裏に浮かんでくる始末。
「はぁッ、はぁッ、はぁッ……!」
私はただひたすらに走っていた。
喉が苦しい。胸が焼けつく。足がもつれる。
おまけとばかりに無理やり呑み込んだ唾液が気管に入り、激しくむせ込んで吐きそうになる。
だが、垂れたよだれを乱雑に手の甲で拭った私は歯を食いしばって前を向く。
こんな心身共にボロボロの状態になってなお、全身に鞭打って緩んだ足を強引に動かし、当てもない逃走をし続けた。
──いったいどこまで逃げ続ければいいの……?
無限に体力が続くはずもなく、幾度目かの自問の末に私は初めて逃げることやめ、後ろを振り返る。
何もいない。腐敗臭を漂わせながら襲い掛かってくる家族も友人たちの姿もそこにはなかった。
でも、安堵なんてものは訪れなかった。
周囲には何もいない。何もない。虫も小動物も植物も──普段は気にしないそんなものまでが全て死に絶えている気がして。
すごく、寂しくて、心細くて……怖かった。
もう走る気力は起きなかった。それどころかどこかに腰を下ろそうと歩き始めたとたん、どっと疲れが押し寄せる。
膝は爆笑、全身に止まることのない震えが続く。喘息にでもなったかのような息苦しさが喉と肺を襲い、もう泣きそうだった。
見つからないように近くにあった倉庫のような建物に入り、隅っこのほうに座って膝を抱く。床も壁も無慈悲に冷たい……。
嗚咽が混じった荒い呼吸を繰り返し、何も考えないようにしながら目を瞑って過ごす。
どれだけ時間が経っただろう。疲労のせいかウトウトし始めていた私の耳に、ふと小さな音が聞こえてきた。
意識はすぐに醒め、バッと顔を上げて耳を澄ます。それはドアの辺りから聞こえてきていた。まるで中に入ろうとしているかのように。
あまりの恐怖に息が詰まりそうになる。
後ろは壁だというのに思わず後ずさろうとして手を地面につく。そのとき、左手に何か硬いものが当たった。
視線を向けると、そこにあったのは小型のスコップだった。それを見た瞬間、私は思いきりその柄を握り締めてドアへと向かっていた。
自分でもなにを思ったのか分からない。無意識のうちに闘争、防衛本能が働いたとしか思えなかった。
ドアには鍵は掛かっていない。内鍵くらいはついていたかもしれないが、そんなものを掛けている余裕は私にはなかったから。
ノブが回され、ドアが開く。入ってきたのは私より少し年下程度の女の子だった。
────目が合う。
スコップを振りかぶった私。そしてそれを呆然と見つめる少女。
一瞬がとても長く感じられた。
しかしそんなものは当然私の気のせいでしかなく、次の瞬間には振り下ろされたスコップは少女の左腕に直撃し、削ぎ落としていた。
悲鳴は上がらなかった。そして血しぶきすら出ることはなく。
少女は衝撃で地面に叩きつけられ、私はその光景をただ頭が真っ白で見つめていることしかできなかった。
少女は無言のまま泣くことも驚くこともなく右腕で体を起こし、先のない左肩、ちぎれた左腕を順に見たあと、私に視線を向けた。
あどけなくきょとんとしているその顔は、こんな事態でなければとても可愛らしいと思っただろう。
だが、こんな状況で作る表情では間違いなくなかった。
少女の肩からはほとんど血が出ていない。それに肌の色も少し変色していて。……──首には食いちぎられたような痕が残っていた。
この子も……ゾンビなのか。
でも、その割りには全然襲ってくる気配がない。私の家族とか友人のように理性を失っているようにも見えない。
いや、もしかすると油断させているだけなのかもしれない。ゾンビにそんな知能があるのかわからないけど、そうとしか思えなかった。
スコップを振り上げる。
そのとき──少女はなにを思ったか、ニコッと笑った。無邪気な、本当に可愛い笑顔だった。
「……っ」
こんな顔する娘に……攻撃なんてできるわけないじゃないか。私はスコップを落っことし、少女を抱きしめた。
「ごめんね……痛かったよね……」
その体は死体のように冷たかった。少女は言葉を話せないのか、なにも言わなかったけど、残された右腕で私の頭を撫でるのだった。
↑冒頭
↓ラスト
少女がなにをしようとしているのか──それ≠見た瞬間、私は理解した。
きっと、院内に仕掛けられていた爆弾の一つ。
いつの間にそんなものを持ってきていたのか。片腕で重そうに持つそれは少女の容姿にはとても不似合いで。
いつものその笑顔も、こんな状況にはとても不釣合いだった。
「どうしました!? 早く乗って下さい!」
ヘリコプターは既に離陸準備に入っているらしく、中の隊員の人が叫ぶ。既に乗り込んでいた婦長さんも同じように呼びかけていた。
「早くしないと化け物に追いつかれるわよッ!? ……っ、その子を連れて帰りたいならそれを捨てさせて強引に乗り込みなさいッ!」
婦長さんは一瞬だけ言うのを躊躇ったようだった。
……この子はゾンビだ。例え連れて帰ったとしても人間社会に戻ることなんてできない。最悪の場合、殺されてしまうかもしれない。
わかってる。そんなことわかってるよ……。
それでも婦長さんは、私にこの子を連れて帰る選択肢を与えてくれた。なんでもいいから早くしたかったのかのかもしれないけれど。
私にはそれが決断のきっかけとなったのは確かだった。
「それ貸しなさい! あなたも一緒にかえ──」
ぱちんっ
そんな音と共に頬に痛みが走った。完全に予想外の展開に思考停止した私は呆然と頬を押さえて立ち尽くす。
次の瞬間、私の体は思いきり突き飛ばされ、婦長さんに受け止められていた。私の頬を叩き、突き飛ばしたのは……少女だった。
少女は口を唇を動かす。
ご め ん ね あ り が と う
「OKです! 出して下さいッ!」
婦長さんの声が響き、ヘリコプターのドアが閉められる。飛び立ってから数秒後、私はやっと我に返り、叫びながら窓の外を見た。
少女はしばらくこっちを見上げていたあと、顔を戻す。そこにはぐちゃぐちゃに肥大化した獣型の化け物の姿があった。
あんなに近くに来ていたなんて気づかなかった。そこに少女がいなければ狙われていたのはこのヘリコプターだったかもしれない。
少女は爆弾を抱き、ゆっくりと化け物のほうに歩いていく。
そして次の瞬間──少女に飛び掛った化け物は、その幼く華奢な体をバラバラに引き裂いた。
同時に巨大な轟音と共に病院は大爆発を起こし、その爆風が私たちの乗ったヘリを大きく揺らす。
全員が機内のどこかにしっかり掴まり、衝撃が去るのをじっと待つ。
数秒後、墜落してしまうんじゃないかと思うほどの揺れは収まり、ヘリコプターはなんとか安定性を取り戻して飛行を続行した。
「…………」
悪夢は終わった。あとはどこかに保護されて、私のこの事件への関与は終わりだ。
助かった。死なずに済んだ。
喜ぶべき場面のはずなのに、でも全然嬉しくなんてなかった。家族も友人もみんなみんな死んだ。あの子も……いなくなっちゃった。
涙が止まらない。悲しくて悲しくて心が潰れてしまいそうだった。
なんで生き残ったのにこんな想いをしなきゃいけないの……? こんな気持ちになるならみんなと一緒に死んだほうがよかった。
映画じゃ生き残った人々は清々しい顔をしてエンドロールになるはずなのに、詐欺だよこんなの……全然ハッピーエンドなんかじゃない。
泣き腫らす私に、隊員は毛布と的外れな慰めの言葉を掛けてくれる。そんなのでは癒されることのない私に、ふと婦長さんが言った。
「……私も独り身になっちゃったな。婚約相手もゾンビになっちゃったし。あのさ……もし身寄りがいないなら、私と一緒に暮らさない? いつになるか分からないけど……私達の命の恩人のお墓も、作ってあげなくちゃだしね」
「お、墓……」
「そうそう。私達に生きて欲しいから──助けてくれたんだよ、あの子。さぁー、これから色々忙しくなるだろうなぁ」
生きて欲しいから、助けてくれた。
あんな惨劇を見たあとだっていうのに、婦長さんはとても明るかった。きっと私のために空元気を出してくれているに違いない。
悲しいからって後ろばかり見てちゃ、きっとそこから進むなんてできない。だから悲しくても前を向いて。太陽を見上げて歩いて行こう。そうすればきっといつかは笑顔になれるから。
婦長さんはそう言って笑った。だから私も泣きながら笑い、頷くのだった。
終わり
最初に思いついたのが、少女に腕を切り落とされる失語症のゾンビ少女という設定だった
何故そこからまったく違うストーリーになったのかは自分でもわからず
…やばい、睡眠時間削り過ぎた。仕事に支障が出るのでもう寝ます。おやしうみなさい
643 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/14(水) 19:33:40 ID:10oqc/H80
テスト
iiyo-
テストテスト…
載せる載せるとか宣言しておきながら、文章削っていくうちに一日過ぎてました(見苦しい言い訳)
少しは読みやすければ…。
10分位で書き上げたので、ほつれとかもっと工夫すべき部分とか多いと思います。
「――――――――――――――――――――!」
何かを叫んでいる。
だが、何も聞こえない。
その叫びは、ただの一音と化して響く。
「―――――――――――――――――――――――!」
まだ、何かを叫んでいる。
目の前にいる、黒い誰かが――“誰か”はわかっているのに、思い出せない“誰か”が――必死に叫んでいる――ように思う。
耳には、ノイズ――砂利を踏みしめるような音が、大音量で響き渡っている。それが邪魔をして、音を聞き分けることが出来ない。
眼には、やはりノイズ――テレビの砂嵐のようなノイズが張り巡らされ、視界に入るもの全てを『黒か白』としか認識できなくなってしまっている。それが邪魔をして、誰が居るのか、判別することができない。
全身が、どっしりとした重しのような倦怠感に囚われ、指一本動かすことができない。
体温が下がってゆくのがわかる。その中で、左腕の傷だけが熱を帯びていることも。
唯一感じ取れるものは、皮膚の下を何百もの百足が這い回るような、おぞましい、気色の悪い感覚。
「―――――――――――――――――――――――――――――」
誰かがまだ、叫んでいる。
だが、それも、次第に聞こえなくなってゆく。
頭に響くのは、大音量のノイズだけ。
全身が、高熱に浮かされたかのよう。
上下左右という感覚が狂い、今自分が立っているのか、座っているのか、はたまた寝転んでいるのかわからない。
今はただ、この感覚を消して欲しい。
この気持ち悪い感覚が治まるなら、死すら受け入れよう。
――だが、この先に待つのは、死すら許されないこと。ただただ獲物を求めて、徘徊するだけの、空虚な存在。
きっと、意識は残るのだろう。このような、ただただ気色の悪いだけの感覚に囚われて。
ああ、殺して欲しい。
この感覚を消すために。
目の前にいる“誰か”に、懇願したい。
思考が、どんどん鈍くなる。
――意識が、身体と分離されてゆく感覚。万の言葉を尽くしても表現のできない感覚。
すっかり冷え切った体の中で、左腕の傷跡だけが、猛烈な熱を帯びている。
こうなってしまった原因の、傷。そこに潜伏し、ある日突然、襲ってきた――猛毒。
――これが、地獄というものだろうか。この、感覚が。
皮膚の下を這い回る百足の数が、増えてゆく。
荒々しく皮膚を食い破り、そのどす黒く染まった甲殻が空気に曝される――そんなイメージが、なけなしの想像力で作られたものだった。
ああ、神様。
――生涯最初にして最後の、純粋な願い。
願わくば、この“誰か”が、自分を殺してくれますよう――。
多分、一番短い話…
我ながら意味不明
乱文失礼しました…
これは本来は中篇の最後の章にあったものでした
ですがまぁ、何となく思いついてここだけ抜粋していじった結果…
中篇のままだと、この後にも数行だけ続きます
結末としては「幸福」
…自分のって、本当、登場人物名も何も無いなぁ
補完として
一応、ゾンビ化する寸前、まさに進行中の様子…なのです
どこが噛まれたか、については一応書いてあります
題名としては「alter」
自分としては珍しく、きちんと題名つけてます
明日もテストなのにこんなことやってていいのか自分?
それではまた、願わくば
どうも、ちょっとなんとなく書いてみたので…
乱文ですが、ご容赦ください。
Mr.ZOMBIE
私が目を覚ましたとき、そこは真っ暗でした。
息もできず、必死にもがきました。
もがいてもがいて、ようやく自由になりました。
その時気づいたのです。
私は土に埋まっていたのだと。
はて?なぜこのような場所に埋まってしまったのでしょう…?
自分が出てきたところを見ると、墓がありました。
まだ、体半分埋まった状態で私はすべて理解したのです。
思わず、手のひらに拳を打ち付けるほどに。
そう。私は死にました。
では、なぜ今このように動けるのでしょう?
私が首をかしげていると、急に体が宙に浮く感覚に陥りました。
びっくりしてあたりを見ると、私の両脇を持つとても…こういう言い方は差別的になるかもしれませんが…
見事なまでに腐りきった方々がいらっしゃいました。
「うわぁぁぁあ!!!」
思わず叫んでしまいましたよ。
そりゃそうですよ。生まれて初めて見る、ゾンビさんですからね。
「ちょちょちょちょ、そんなにこわがらないでよ〜」
目の前のゾンビさんが仰いました。
もう私は何がなんだか…
「新人さんですね?わかりますよ〜そりゃ驚かれるのも無理はないですね」
そのゾンビさんは笑いながら話し掛けてくれていますが、如何せん腐ってらっしゃる。
もう、目を背けたくなるほどに。
「あ、申し遅れました。僕は、ここの墓地を統括しています、ウィリアムと申します」
そのゾンビさんは、ぎこちない動きながらも、胸に手を当て一礼しました。
ウィリアムさんは、とても丁寧に現在の私の状況を説明してくださいました。
おかげで、私もゾンビということが認識できました。
なんとも驚愕な事実ですね。
ただ、自分の体を見てみると、どうやらまだ腐りきってはいないようでした。
ウィリアムさん曰く、死後間もないからだそうで…
「あ、ところであなたのお名前は?」
「あ、申し遅れました。私はジャック・ジャクソンといいます。」
なんともおかしな光景ですよね。
腐った死人と、死人が自己紹介しあってるんですよ。
ブラックユーモアもここまでくれば爆笑してしまいますよ。
その後、ウィリアムさんにいろいろ教えていただきました。
ゾンビの心得や、ゾンビの生活…
まぁそのことはまたあとで書きましょう。
ところで、私にはとても会いたい人がいました。
それは、生きているときには私の妻だった女性。
そして、私の最も愛する娘に…
そのことをウィリアムさんに伝えると、彼は複雑そうな表情を浮かべました。
「ん〜…なんていうかなぁ…やめたほうがいいんじゃないかな?」
「なぜです?…そ…そりゃ、突然死んだ人間が目の前に現れたら驚きますけど…私の家族はそんなやわなもんじゃないです!」
私は、確信していた。
きっと私の家族は、こんな姿でも迎えてくれるに違いないと…
「いやね、ほら…僕らって、朝日浴びると灰になっちゃうんですよ…残念なことに、ですからなるべくならあまり遠くへは…」
「大丈夫です。私のこの姿なら、イエローキャブにだって乗れますよ!だから夜明け前には帰ってこれるはずです!」
そういって私は、立ち上がりました。
そして
「とにかく一目顔だけでも見てきたいので…」
そう言って、彼のもとから走り出したのです。
心の中には、とにかく家族に会いたい。その思いでいっぱいでした。
後ろを振り返ったとき、ウィリアムさんは腐った顔ながらもとても悲しそうな顔をしていました。
今思えば、このときに彼の忠告を聞いておくべきだったのかもしれません…
私は、通りへ出ると、タイミングよく通りかかったTAXIを拾いました。
「○○の16番ブロックへ!急いでくれ!」
私は、乗るや否や運転手の顔も見ずに、目的地を伝えました。
急いでいるということを察したのか、運転手も何も言わずに走り出してくれました。
しばらく、すると車内に何かわからないですけどとてもいい匂いがしていることに気が付いたんです。
私はイエローキャブの運転手の割には洒落っ気づいた人なんだろうな…と思っていました。
それからまたしばらくして、TAXIは私の家の前まで来ました。
「ここでいい、それと少しここで待っててください。」
運転手にそう告げ私は玄関へ走っていきました。
たぶん小躍りでもしそうな勢いだったに違いありません。
玄関の前までくると窓から中の様子がうかがえました。
人影が見えました。
妻です。
私はうれしくなり、思わずチャイムを鳴らしてしまいました。
見るだけ、そう思っていたのに、体は感情にしたがってしまいました。
ドアが開くと、そこには愛しの我妻が立っていました。
彼女は、とても驚いた顔になりそのまま固まっていました。
目にはいっぱいの涙を溜め、今にも泣き出してしまいそうです。
だから私は彼女のことを抱きしめようと思ったんです。
あぁ、愛しの我妻。
私は彼女に抱きつきました。
その瞬間です。
彼女はとんでもない悲鳴をあげました。
でも私はお構いなしに離しませんでした。
私の腕の中で彼女はもがいています。
私は、嬉しさのあまりか意識が朦朧としていました。
キスをしよう。
そう思ったときに口の中に違和感を感じました。
何かかじっているようでした。
私は彼女をいったん離すと、その理由がわかりました。
彼女の首筋からは真っ赤な鮮血があふれていたのです。
なんということでしょう。
私は彼女に噛み付いてしまいました。
なんということをしてしまったのか・・・
私は彼女に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、涙が止まらないような感じがしましたが…
実際は涙は出ていませんでした。死んでますからね。
彼女に謝りたく、今度こそ思いの丈をこめたキスをしようと思いました。
怯える彼女の肩をがっちりとつかみ、キスをしました・・・がキスはできませんでした。
私は、彼女の口を噛んでいました。
リンゴでもかじるかのように…
そこからはあまり記憶がありません…
気が付けば、彼女は見るも無残な姿になっていました…
なんということか…私はなんて事をしてしまったのか…
しかし、その後も体は止まりませんでした。
私は彼女を食べつづけてしまったのです。
私が夢中になって彼女を食べていると、後ろから叫び声が聞こえました。
驚いて振り返ると、そこには…娘がいました。
これはいけない。これ以上はだめだ。
私は自分に言い聞かせるとともに、自分のしでかしたことを必死に隠しました。
「ちがうんだ!これは…」
そう言って娘に近寄りました。
娘は、恐怖のあまりかその場で固まっていました。
「聞いてくれ、お父さんは…」
そういいながら娘の肩を掴み
「おとうすわぁぁ〜んはぁぁぁあああああああ」
そのまま娘に噛み付いていました。
娘は奇声を上げ、声にならない声を必死に出していました。
痛みのせいか娘は激しく暴れました。
しかし、私の力は尋常じゃないようで、全くビクともしませんでした。
手に、骨の砕ける感触が伝わってきました。
そして、また気が付けば、そこには娘の顔はなく、
食い散らかされた脳みそが露出した亡骸がありました。
私は、自分に対する怒りや憎しみが収まりませんでした。
そして、居たたまれなくなり、急いでTAXIへ戻りました。
血まみれの格好で…
そして、今に至ります。
ウィリアムさんと、います。
目の前には先ほどまでTAXIを運転していた肩がこれまた無残な姿で横たわっています。
「ね?だから止めたんですよ…われわれの主食は、生きた人間なんですよ…」
それから私たちは、夜明けの前にお墓へと戻っていきました。
また明日の夜人を食べるために…
以上、古いタイプのゾンビ視点からのものでした。
書いてて途中からグダグダになってきてしまってます…
その場の思いつきで書いたものなので乱文、誤字脱字はご容赦いただければうれしいです
>>656 いや、こういう視点好きだよ。
実際ゾンビに意識があるとしたらこの程度なのかもね。
乙でした。今後も投下よろ!!
俺も書いてみたいな…
書いていいですか?
wktkしてるなら書きましょう。
「…何か面白いこと無いかなー。毎日が無変化だな」
と部屋で呟いてる男(25歳独身)。
この男は別段特殊な仕事をしているわけでもなく、普通の仕事をし、普通の家に住み、普通に生活している。
しかし、今日、この男の人生が180度変わる『事件』に巻き込まれることになる…
「…ですからこれには理由がありまして…」
何気なく付けているテレビには、汗を拭きながら記者会見している男が映っている。
「あー、一人で食う飯は悲しいねっと。いきなりの休みでもやること無いっての。」
男が呟きながらカップラーメンに湯を注いでいる。
と、テレビの画面が切り替わり…
「緊急ニュースです!たった今、町に怪物が現れました!怪物は通行人を襲っています!…あっ!キャーっ!」
その画面に血飛沫と脳漿が…
「うわあっ!やめろ!」
「何…!?…」
男は手に持っていたカップ麺を落としてしまった。
テレビ画面は「しばらくお待ちください」の画面に変わっていた。
「何だ?他のチャンネルはどうなってんだ?」
他のチャンネルに変えて見ても同じことをやっている。
「…ですからこの現象は…」
何かの専門家みたいな人が喋っている。
どうも理解できない。俺はテレビを切った。
万年布団を踏み越え、窓を開けてベランダに出る。
…どうやら映画とかじゃなさそうだ。本当に変な奴らがうろついている。
人?いや…もっと腐って…
まさか…『ゾンビ』とか言うやつか?
「ひ、ひぃぃっ…」
思わず腰が抜けてしまった。情けない(自分だけど)。
「そ、そうだ!ニュース速報に…」
俺は専ブラを立ち上げた。
そして、「ゾンビ」で検索してみた…
【ゾンビ】の検索
ニュース[ニュース速報](未取得)日本全土に詳細不明の
【1件見つかりました】(検索時間:3秒)
ほかの板でも検索してみた…
…オカルト板でも見つかった。
【ゾンビ】の検索
文化 [オカルト] (未取得)リアルにゾンビ発生 その20ウボァー
【1件見つかりました】(検索時間:3秒)
「どれどれ…」
1 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 21:51:04 ID:WsOq5rnnO
ほんとに発生してます。嘘だと思うなら外見ろ。
2 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/05/18(日) 21:51:04 ID:fAo5ZnmpO
皆どこにいるんだ?俺は家に籠城中。
「俺も書くか…あれっ?」
突然画面が消えた…部屋の電気も消えた。
「まさか…停電?そんな…」
仕方なく、携帯を手に取った。
ぎこちなく手に取る…
「充電してください」の表示が…
「くそっ!こんな時に…。ちゃんと充電すればよかった…」
俺は携帯を投げ捨てた。
「外に…出るか…うん、そうしよう。」
適当なものをカバンに詰める…
包帯、消毒液、カップラーメン、水や缶詰、それと…
「包丁を持っていくか。」
包丁を握り、部屋のドアを開けた
続きはまた書きます。
凄く面白いです
自分なんかよりよっぽど居るに相応しいと思いますよ〜
何というか
文章が軽快…というか
続き頑張ってください
664 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/19(月) 09:32:06 ID:ZJF/gyIfO
wwwなんかいいww
しかも2chひらくとか身近すぎてウケタ
リアルに発生したら私も絶対2chひらくはずww
続き書きます&酉つけます。
家に鍵を掛け、とりあえず階段を降りる。ゾンビに会わなきゃいいけど…。
そんなことを心で思いながら降りていく。
…何か音がする…何かを舐めるような嫌な音が…
そーっと下を除く…。
「――!!」
いた。
その『化け物』が。
人を襲っている。
襲われている人が必死に抵抗している。
しかし俺は何も出来ない。
足が動かない。
でも助けないと。
でも。
でも。
…そんなことをしている間にその人―人だったものは無残にも首を食いちぎられた。
怪物が俺に気付いた。
如何する?如何する?
そんなことを考えてるうちに近くまで来た。
「…う、うわぁぁぁぁぁっ!」
俺は走り出した。
走って走って、家の前まで来た。
…開かない。
鍵だ。鍵をかけたんだ!
鍵は・・・右ポケット!
鍵を取り出し鍵を開ける。
…が焦って上手く行かない!
早く!早くしないと!
…ガチャッ。
開いたっ!
素早く家に飛び込み鍵をかける。
「はぁ…はぁ…危なかった」
444 名前:本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 20:24:22 ID:xh0V0/LG0
…誰か、生きてるのか?
生きてるならレスしてくれ。
このスレを見ているかどうか分からないけど。
445 名前:ジェノサイダー◆fWuo/23tDo [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 20:24:22 ID:fHwep5/s0
まだしぶとく生きてるよー。
そっちはどうだ?
446 名前:本当にあった怖い名無し [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 20:24:22 ID:xh0V0/LG0
俺は追われて部屋に逃げ込んだところだ。そっちはどうだ?
447 名前:ジェノサイダー◆fWuo/23tDo [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 20:24:22 ID:fHwep5/s0
俺はとりあえずネットカフェに居座ってる。
448 名前:ひろゆき@どうやら管理人 [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 20:24:22 ID:r5gdgrVx0
非常事態です。。。
鯖自身がどうやら止まったみたいです。。。
大体の板が表示できなくなりました。。。
「げっ!鯖落ち?続きがあるみたいだな。」
449 名前:ひろゆき@どうやら管理人 [sage] 投稿日:2008/05/19(月) 20:24:22 ID:r5gdgrVx0
表示できない板はこれです。。。
地震、be、ニュース、世界情勢系統はすべて全滅です。。。
案内はラウンジとガイドライン以外表示できないです。。。
運営、馴れ合い、AA、社会、会社・職業、裏社会は全滅です。。。
文化は、オカルト以外全滅です。。。
・
・
・
結構落ちたもんだな…まぁ、この非常事態だ。仕方ないだろう。
「どうしよう…本当に…」
続きます
>>668 読んで、新着確認したら接続できませんになって焦ったじゃねーかこのやろー
やっぱそういう事態になってもオカ板じゃ暢気に作品書いてる奴やwktkカチカチしてる奴いるんだろうな。
続きです
「テレビは…何もやってないだろうけど。」
そうして、テレビを点け適当にチャンネルを変える。
どの局も同じことをやっている。
…どうやら日本だけじゃないようだ…
「くそっ!どうなってんだ!」
「とりあえず倒せ!」
ここはアメリカ・ニューヨーク。
ここでもゾンビが大量発生していた。
アメリカでは、まさに地獄絵図を現実にしたような光景が広がっていた。
「助けてくれーっ!」
「逃げるな!撃てーっ!」
中国では、軍隊が出動しなければ太刀打ちできないほど大量発生していた。
「駄目だこれじゃ…早く何とかしないと…」
「しかし、ここに居たままじゃ駄目だ。移動しよう。」
バックをもっと大きいものに交換して、また物を詰める…
バック(Lサイズ。旅行でもしようと思って買ったが暇が無く行けなかった。
まさかこんな時に役立つとは…)には、さっきのバックに入れていたものと、
携帯ラジオなんかや新しい食糧を入れる。
「これでいいか。さて、行くか…」
そしてまた、ドアを開けた。
とりあえず、街をうろうろしているゾンビに見つからずに進む…
いつも買い物なんかしてる街が、何故か違う町に見える。
「ここから近いのは…うーん…中学校か?」
確かに、今いる道を少し行けば中学校に着く。
いくら中学校とは言え、何か使えるものがあるかも。
ま、行ってみるに越したことは無い。
とりあえず、さっきと同じように周りに注意しながら、中学校に進む。
続きます
>660さん
乙です。そういう軽いタッチのものもいいですね。
軽いノリといえば何年か前のゴミ文さんの女子高生物語、あれがこのスレ最強だったな。
なんかOVA作る人も出てきたしww
……やっと…やっと本編第十話が完成……な三貫盛り参上
遅くなって大変申し訳ない
いやー、二週間マイナス二日をかけてようやく書き上げることができたよ(汗
けど、このスレももう480KBだし
みっちり9レス分もあるもんから、やはり次スレを立てるまで投稿しない方がいいかな?
ずーっと待ってたので次スレまでなんて待てないっっ
投下します…
「やっと着いた…くそ…隠れながらじゃなければ早く着くのに…」
目の前にあるのは『Y県私立●●中学校』の文字。
やっと中学校の正門に着いた。
まったく、骨が折れる。(まあ自分の命に比べれば良いものだが)
よし、入るか。
…どこから入るかな?
―Y県上空 自衛隊ヘリの中
「この街にまだ生存者は居るのか?」
俺は半信半疑で仲間に聞く。
「分からない…だが捜索するべきだろう。もし生存者がいたなら…助けなければならない。
それが自衛隊の使命だからだ。」
俺はその言葉が終わるか終わらないかのところでまた聞いた。
「…なあ、何でこんなことが起こったんだろうな?」
「…分からない。」
そしてヘリの中を重油のような沈黙が包んだ…
その沈黙の中で、俺は銃を握り締めた。
バラバラバラ…
俺が正門に苦戦中(門が閉まっているのだ)の時に、音は聞こえた。
ヘリコプター?それとも…
そう思い、空を見上げる。
「!! ヘリだ!」
確かに上空にはヘリコプターが飛んでいる。
大声を上げようとしたが、少し躊躇った。
(ここで大声を上げれば、助かるかも知れない。だが、気づかれなかったら、
自分でゾンビを呼び寄せることになる…どうしよう…)
そんなことを考えてるうちに、ヘリは遠ざかっていく…
(やっぱり呼ぼう!)「おーい!助けてくれーっ!おーい!」
出せるほどの大声を出し、ヘリを呼ぶ。
「―!―!」
(気づいてくれた!助かった!)
「おーい!おーい!助けてくれーっ!」
俺はまた大きな声を出し、ヘリを呼んだ。
「い…そっ…行く…て…く…」
声が聞き取れるようになってきた!
助かったんだ!これで助かる!
俺は心から安心した…
(もう生存者は居ないのか…だが俺は諦めない…絶対…)
俺は、心の中で呟いた。
その時、
「お…!助け…く…お…!」
声だ!生存者が居たんだ!
「おーい!待ってろ!今行く!」
俺は大声で声の主に呼びかけた。
「おー…!おー…!助けて…!」
また声が響く。
「今そっちへ行く!待っててくれ!」
「方向転換頼む!急ぐぞ!」
「あとはヘリが来るのを待つだけだ…」
俺はそこに座りこもうとした…
…が、それは不能になった。
ゾンビがこっちに来る…!!
俺は無我夢中になり、中学校の門を乗り越え、
そして、校舎に飛び込んだ。
「…ん?あっ!」
声の主が走り出した!
その50Mほど後ろにはゾンビが!
「撃てっ!」
ゾンビによく狙いをつけ、狙撃する。
…だが当たらない。
射程距離外か!糞っ!
「追うぞ!降下する!準備しろっ!」
その言葉を聞くが早いか俺はロープを付け、降下していた。
続きます
人対ヘリの中の人の声を使ったコミュニケーションって難しいと思う、、、乙
ご要望にお応えして、それと意見も集まらないので、とりあえず半分だけ載せてみようと思う
それでまだ大丈夫そうだったら後半も同時に載せる予定
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第十話前半投下(5レスのつもり)
第十話──『タイムリミット』
おれの言葉に反応したらしく、親父さんも巻き込んで派手にぶっ倒れた少女は脊髄反射的な俊敏さで顔を振り向かせた。
その表情は怒りと羞恥による悔しみに満ち溢れていて、すぐさま両手を床について立ち上がろうとする。
だが、異変はそのとき起きた。
ビクッ──と。少女の体が一度だけ不自然に大きく震えたのをおれは見逃さなかった。
何事だと思う間もなくその口から苦悶の声が漏れ聞こえ、かと思った次の瞬間、バランスを崩した少女は再度床に倒れ込んだ。
「〈シェリーッ!?〉」
「お、おい!?」
親父さんが慌てて抱き起こしている間に、おれも駆け寄り膝をつく。
少女は……思わず耳を塞ぎたくなるほど悲痛な呻き声を上げながら胸の辺りを強く握り締めていた。
呼吸も喘息患者のようにか細く、相当苦しそうに見える。風邪じゃないだろうが、おれは反射的に少女の額に手を当てた。
「……熱っ! なんだこれッ……!?」
少しの間なら我慢できるものの、ずっと触っていると熱くて手を離してしまうくらいの熱があった。まるで買いたての缶コーヒーだ。
これが本当に人間の体温なのかよッ……! ……まさか、さっき言ってた持病の発作でも起きたのか……!?
──もしかして、体を強く打ったからそのショックで……?
だとしたら……悪いのはおれじゃないか。
助かる確率が全然ない病気だと聞かされた。それはイコールの記号を使うまでもなく、死ぬことを意味してる。
急にそんなこと聞かされて、どう接していいか分からなくなっちまったから……馬鹿なことでも言って空気を仕切り直そうと思って。
『はぁ? 今そんな話してる場合じゃないでしょ! ったく銃オタクが』
なんて。そんな一言で良かったんだ。売り言葉に買い言葉で、また自然に話せるようになるのなら。
それなのに怒らせるようなこと言っちまって……。慌てて言い繕った言葉も皮肉に聞こえるような内容で。少女が怒るのも当然だ。
また、おれのせいで人が死ぬのか……?
家族も看護婦さんも、みんなみんなゾンビになった。原因は別でも始末をつけたのはおれだ。実質殺したようなもんだろう……。
それに、元々おれがこんな病院に入らなきゃ家族だけは助かったかもしれないのに。
少女の姉さんなんて……文字通りおれがこの手で殺したんだ。人を殺したんだと分かったときは、凄く怖くて……やるせなかった。
だからせめてもの償いとして、この少女だけは絶対に死なせないって誓ったんじゃないか。
年下のはずなのにタメ口だし、わがままだし、自分勝手だし、嫌味な性格だし、こんな状況じゃなきゃ関わり合いになりたくもないけど。
人一倍家族想いで一途で……。
殺してしまった姉さんのためにも、親父さんを見つけ出して生きてこの町を脱出するまで守るって誓っておいて……。
……なんだよこれ……。
守るって言った本人が殺そうとしてしちまってるなんて、笑い話にもなりゃしない。少女の姉さんにどうやって謝りゃ良いんだよ……!?
くそッ、クソッ……! 死なせない、絶対に死なせてたまるもんか……!!
「この病気治すワクチンってのが家にあるんですよね……!? なら早く、早く行きましょう!!」
言葉は通じないのは分かってる。それでもおれは親父さんに言わずにはいられなかった。
だが焦りが見えつつも冷静に少女の首に手を当てていた親父さんは、きっとおれへの返事じゃないんだろう、ぶつぶつと呟き始めた。
「────!? ────────!」
「……ミ、ミュー……ハープン……? ウィ…アウト……ヒュメン……エクス……?」
一体何を言ってるのか全然分からなかった。
加えて話しかけたのに無視された怒り、そして少女の苦しそうな様子への焦りが募り──テンパったおれはついに叫び声を上げた。
「頼むから日本語で喋ってくださいよッ!! 分かんないんすよッ!! どうすりゃ良いのかどうなってんのか、もう、もう……クッソォッッ……!!」
無茶苦茶言っているのは自分でも充分分かっていた。しかし完全に混乱したおれは奇声を上げながら床を殴りつけることしかできない。
そのときだった。ど下手くそな日本語が聞こえてきたのは。
「ゴメン、ナサイ……」
言ったのは間違いなく親父さんだった。
呆気に取られたおれは、大泣きしているときにお気に入りのオモチャを渡された赤ん坊のようにすっと大人しくなる。
親父さんは悩むように、言葉を選ぶようにゆっくりと喋り始めた。
「I, I.....can.....not speak.....ニ、ニホン、ゴ……ゴメン、ナサイ……」
おれに理解してもらえるよう努力しているのか、英語の部分もゆっくりと言っていた。
しかし結局、日本語とごめんなさいの部分以外はどうしても言葉が分からなかったらしい。でも言いたいことは一応分かったと思う。
「あ、えーっと……アイ…アイム、ソーリー…トゥ……お、おれも(取り乱して)ごめんなさい」
英語にまったく自信がないため、最後に自分を指さし、ごめんなさいという言葉と共に頭を下げる。伝わってくれると良いんだが……。
恐る恐る顔を上げると、いきなり親父さんはおれを抱きしめた。
ビックリして「う、うぇっうぇっ!?」とか言ってるおれの背中を親父さんは二、三度軽く叩く。つまり……理解してくれたってことで良いのか。
体を離した親父さんは、おれの口に人差し指をつけるような動作をしてから次に自分の胸に手を当てた。
「Coolly.....ah.....cool, cool. Ok?」
あーえーっと……多分ジェスチャーが自分の話を聞いてくれって意味だろうから、クール……取り乱さずに聞いてくれってことかな?
「あーオウケイオウケイ。イエス」
「Good! then, listen to me」
そう言って親父さんはまず少女に指を向けると、次に自分の腕時計を指し、
「Sherry...ah.....sherry .die. Thirty minutes. Ok?」
十二時から六時までの間を指でなぞった。……でも、この状態で六時間も持つわけがない。
ダイが確か死ぬとかって意味だし、スリーティと言ってたからきっと少女の体力が持つのが三十分で限界とかそういう意味なんだろう。
思った以上に状況は悪いらしかった。
まさかタイムリミットがそんなに短いなんて……本当に一刻を争う事態じゃないか。こんなとこでちまちま伝言ゲームしてる場合じゃない。
「イエス。えっと、状況……シェリーイズダイ、オーケイ、だから、スピーディ、スピーディにゴー!」
三十分で少女が死ぬって状況は理解したから早く行こうって言いたかったんだけど……伝わってることを願おう。
親父さんは若干悩むような間を要したが、一応理解できたらしく「Yeah」と頷いた。
「じゃあ、おれ、おれがこの子、背負って、行きます」
言いつつおれは自分、次いで少女を指差し、おんぶをする仕草をしてから廊下の先へ指先を向けるジェスチャーをする。
親父さんはなんとか理解できた様子で頷いたが、おれが少女の軽い体を背中に担いで歩き出そうとすると、急に「Wait」と呼び止めた。
「My...my car.....is in the parking lot. Ah.....do...do you understand.....the parking lot?」
「え? あ……う」
マイカーってとこまではジェスチャーで分かったけど、後半はまったく分からなかった。
パーキング……確かパーキングって言ってたよな。えっと、高速とかでパーキングエリアって言うし、休憩所……みたいなとこのことか?
車が休憩所にあるって言いたいんだろうか。でもそれだけにしちゃ他にも色々言ってたし、自信がない。
「ソーリー。あー……ノー…ノー、イングリッシュ」
「.....?」
おれの英語がまずかったのか、親父さんもついに理解できない様子で困った顔を作った。
さっきまでは奇跡的になんとか分かり合えていたが、ついに越えられない言葉の壁にぶち当たり二人とも黙り込んでしまう。
静かで気まずい空気が流れる中、少女の今にも死んでしまいそうなほど衰弱した小さな呼吸音だけがおれたちの耳朶に触れていた。
──そのときである。
遠くで何かのファン……らしき物が回っているような低い音がどこからともなく聞こえ始めた。音は徐々に近づきその大きさを増していく。
おれと親父さんは窓から外の様子を伺う。ほぼ同時に拡声機に乗った声が聞こえてきた。
『こちらは航空自衛隊です! 我々は現在、日本政府の要請でこの町に残された生存者を救助しています! 中庭付近に着陸致しますので、この呼び掛けが聞こえた生存者の皆様は迅速に中庭に集合して下さい! 尚、待機時間は五分とさせて頂きます!』
「自衛隊……!?」
窓の外ではヘリが飛んでいた。それもプロペラが前後に二つあるでかい奴だ。
拡声機で響いた声は「繰り返します」と言ってもう一度同じ内容を言い終えると、中庭の方へと移動していった。
なんて僥倖だ。生存者がおれたちの他にいるのかは分からないが、ヘリなら車よりも断然早く移動できる。
化け物に見つからずに中庭に行きさえすれば、三十分で少女の家に行ってワクチンを打つには、きっと十分に間に合うはずだ。
──いや待て。
そうだ、この病院には化け物がいるんだッ……! あんな目立ちながら中庭に着陸したら格好の餌食じゃないか……!
くそ、でも自衛隊なら銃器は積んであるはず。化け物に襲われる前に警戒を促せば、もしかすると化け物も撃退できるかもしれない。
「Boy, what's that?」
親父さんが窓の外を指差して言う。
そうか、日本語だから分からなかったらしい。でも、おれにはあれを英語で訳すなんて無理だし……なんとか簡単に要約しないと。
おれはしばらく頭を悩ませた後、自信なくも説明を試みる。
「あー、ディフェンス……ミリタリー。ミリタリーディフェンス、オーケー?」
「.....Military defense...?」
「うー……伝わんないか。えー……あー…………あっ! イッツジャパニーズミリタリー! オーケイっ?」
「Japanese.....oh! understood! but.....」
やっと意味が通じたらしい矢先、親父さんは眉根を寄せて考え込むように顎を指でつまんだ。
そして少しの間じっと黙って黙考していたかと思うと、ふと顔を上げる。歩き出し、カモンという感じに手招きしながら言った。
「I lead. Please pursue」
「ア、アイ…リード? プリーズ…パ、パ……?」
え、えっと……リードってリードする、とかのリードのこと? 自分がリードするから……プリーズ……くれ? ついてきて……くれ……?
間違っていたらどうしよう──本当は何か重要な行動をおれに求めてるんだったら? そう思うと怖くて足が動かせなかった。
耳元では背負った少女の儚い息遣いが切迫感をより一層掻き立てる。
しかし焦れば焦るほど冷静な思考とは程遠く、心が乱れてプレッシャーが重くのしかかるだけだった。
いっそのこと、背中の少女を投げ捨て逃げ出してしまえばどんなに楽だろう。でも……理性が頑なにそれを許さない。
ここで逃げれば命は助かるかもしれないが、後で死ぬほど後悔することになる。あいつを亡くしたとき嫌というほど体験したことだった。
「I'm sorry boy」
ぽん、と肩に手を置かれる。驚いて俯いていた顔を上げると、親父さんが申し訳なさげな表情をしていた。
親父さんは「I」と言いながら自分を指差すと、次いで廊下の先を指差し、さらに「Boy」とおれを指差すと、同じく廊下の先を指差した。
「Ah.....I head. You my back. Ok?」
自分の頭を触ったりのジェスチャーを多分に交えながら親父さんは言った。
今度こそおれも理解できたと思う。やっぱりさっきの解釈で合っていたみたいだ。自分が先頭を行くからついてきてほしい、と。
「オーケイ!」
「Good! go!」
ヘリが中庭に向かってから一、二分ほど経ち、ようやくおれたちは動き出した。
第四病棟二階。ここからなら中庭へ行くのに走って二、三分くらいのはずだ。ギリギリだが間に合わないことはない。
一階は化け物の巣窟で降りられないため他病棟へ移って迂回しながら、おれたちは廊下を走っていく。
窓の外に中庭が見える。多少強引にだがヘリはなんとか着陸しており、隊員らしき人が二、三人と生存者らしき人が五、六人見えた。
生存者ってあんなにいたのか……! きっとおれみたいに感染しなかった人が親父さんみたいに病室に隠れてたんだろうな。
そうこうしている間におれたちも第五病棟一階に着く。しかし出入り口から外に出るはずが、親父さんは何故か近くの病室に入った。
「えっ──ちょっ、なんで」
言いかけたおれの口を塞ぎ、親父さんは唇の前に人差し指を立てる。そして隠れながら窓の側まで行くと、そーっと外の様子を伺った。
とりあえず少女を近くのベッドに寝かせ、おれも親父さんと一緒に窓の外を覗いてみる。
ヘリの前には私服の生存者が三人、看護婦と医者の生存者が一人ずつの計五人。隊員は銃を持ったのが二人と、残りの一人は……
「! あいつ……!?」
おれはそこにいる一人を知っていた。
病院がゾンビで騒ぎになって丁度半日くらい過ぎた頃に出くわした、オールバックの金髪でグラサンを掛けた黒ずくめの外人だった。
「Wesker...」
親父さんが呟く。どうやらこの人も知り合いらしい。
いや、待てよ。ウェスカー、ウェスカー……どこかで聞いたことあるような……──そうだ! あの親父さんの日記に書いてあった奴か!
確かなんかの組織のリーダー? みたいなことが書いてあったんだっけ? それで親父さんが狙われてるらしいと。
あれ……? ちょっと待った。組織のリーダーなんだよなあいつ。んであのヘリは自衛隊て言って来たんだよな。そこに奴がいる……。
親父さんを狙ってる組織って自衛隊のことだったのかッ……!?
国民を守るべき立場のはずの自衛隊……ってか、おれたちが一縷の望みをかけていた自衛隊が……敵!?
なんなんだよそれ!? 一体なんの冗談だよ!? いつから日本の自衛隊は外人がリーダーやって、個人の暗殺なんて請け負ってんだよ!?
『──ッ!!』
「!?」
混乱して叫び出したい衝動を必死にこらえていると、ふいに外から悲鳴と叫び声が響いてきた。
慌てて窓の外を見たおれの目に信じられない光景が飛び込んでくる。
「なッ、あ──」
言葉が出なかった。ただでさえ頭がパンクしそうなところに追い討ちをかけられたおれは開いた口が塞がらずに絶句するしかなかった。
銃を持っていた隊員たちが生存者を撃ち殺していた。
オイオイ、冗談はこのイカれた状況だけにしてくれよッ!? ありゃ自衛隊だろ!? なんで救出に来た民間人撃ち殺してんだよッ……!?
恐怖か怒りかはたまた別の感情か、体が震えて止まらない。見開いた目はずっと外に釘づけになっていた。
私服の一人が地面に倒れていて、今まさに二人目が蜂の巣にされていく。
それを見た他の三人は無様な絶叫を上げながら蜘蛛の子を散らすようバラバラに逃げ始めるが、プロの業は的確迅速だった。
両脇の二人は数発で一人ずつ獲物を仕留め、最後に真ん中にいたウェスカーとかいう奴が大口径で残りの一人の頭を撃ち砕いた。
あの距離から片手で大口径撃って一発……!? マジで人間じゃないぞあいつ……!!
その上、親父さんとは関係ない民間人まで殺しちまうなんて……おれたちがあいつらに見つかったら確実にアウトじゃねえか……!
「お、親父さん……あ、え、と……ユ、ユー、こ、ここから逃げ……え、エスケープ、そう、エスケープ、ゴー……し、しましょう、早く……」
声が震えまくってるのが情けないが、そんなこと今はどうでもいい。おれたちはまだ見つかってないんだ。
このままもう生存者はいないと見せかければ、きっとあいつらだって他のとこに行くはず。
病室の入り口を指差しながら言ったおれに、親父さんも小声で「Yeah」と同意した。おれはすぐさま少女を背負うために動き出し、
──耳をつんざくような破壊音が部屋中に轟き、窓ガラスが粉々に砕け散った。
「!!」
「!?」
おれはとっさに少女の上にかぶさり(というか倒れ込んだだけだが)、衝撃が過ぎ去ると、呆然としながら緩慢な動作で後ろを向いた。
窓ガラスが左右とも粉みじんになっていて枠しか残っていなかった。首を戻して反対を向く。窓を破壊した原因が壁にめり込んでいた。
拳銃の弾。銃撃音は一回しか聞こえなかった。アサルトライフルじゃ一発で窓をこんなにするのは無理だ。ということは……
「────。────」
拳銃の特定なんて無駄なことに頭を使っていたとき、外から拡声機に乗った英語が聞こえてきた。……おれたちは見つかっていたのだ。
「────。────」
外からは相変わらず流暢でまったくなんて言ってるか分からない英語が聞こえてくる。
あのグラサンはここにいるのが親父さんだと気づいてるのか……? それともただ民間人が隠れていたと思っているのか。
前者ならおれが出ていけば親父さんと少女は助かるかもしれない。だが、親父さんの苦渋の表情を見る限り後者のような気がした。
『10, 9, 8──』
カウントダウンらしきものが始まる。
悩んでいるのか絶望しているのか、親父さんは少しの間かなり悔しそうな顔をしていたが、一度目を瞑り、そして顔を上げた。
もうその表情に迷いはひとかけらもなかった。
「Boy, limit is one hour」
「え?」
親父さんは腕時計を指で一周なぞった。
その動作とリミットって言葉からすると……タイムリミットは一時間ってことか……?
なんのタイムリミットだ? 少女の? でもさっきは三十分って……──と、呆然とするおれを抱き寄せ、親父さんは背中を叩く。
「I trust sherry to you. ...Survive」
何を言ってるのか分からなかった。ただ、少女の名とサバイブという単語だけが頭に残る。
そしてカウントダウンはゼロになった。
外からまた英語が聞こえてくる。親父さんは両手を上げて窓の前に立ち、何かを喋ると、窓枠を乗り越えて外に出ていった。
おれは……何もできないのが悔しくて、ただ歯軋りをしながら拳を握り締めることしかできなかった。
けど、今はそんなことをしてる暇はないんだ。親父さんが囮になってくれている間に逃げて少女を助けないと。
外では理不尽なことでも言われたのか親父さんが大声を出していた。おれは少女を背負おうと体に触れ──外で叫び声が聞こえた。
距離からして親父さんじゃない。おれは思わず窓のふちから片目を覗かせて外を見た。外ではあの化け物がグラサンたちに迫っていた。
第十話終了
なんとか間に合いそうだったので一気に全部投下
ギリギリなってしまって申し訳ない
男視点になったことで英語を日本語に訳すことができなくなったため
親父のセリフはほぼ英文になっているが、ちゃんと書けている自信がまったくなかったり
一応、男に伝わりやすいように簡単な表現を心がけている、という設定にはなっているし
ネット辞書や翻訳サイトと睨めっこしてなんとか書いてみたものの……確実に色々間違っているはず
意味が分からず英文の真意が知りたい場合は気軽に質問どうぞ
それと次スレもそろそろ立てる時期だろうか