【懐かしい】昔話はオカルト満載・第2話【語れ】

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1銅鑼衛門
【懐かしい】アニメ日本昔話はオカルト満載【語れ】
http://curry.2ch.net/test/read.cgi/occult/1021887113/l50
のパート2にあたります。今回よりアニメ番組に限定せずより幅広く
昔話を取り上げて行きたいと思います。昔話のタイトル、出典先を
明記していただくことによりデータベースとしての機能も働きますので
よろしくお願いします。
2あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/25 18:28
また2かね?

-------------  終  了 ------------------





4        :02/10/25 19:28
>1
乙カレー。
5あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/25 23:56
前スレをやっと見終わったぞー!!
なので私も、アニメ日本昔話で何故かよく覚えているものを書いときます。
(ガイシュツだったらスマソ)
「ずるりんばったん」とか(うろ覚え)、そんなけったいな名前の話なんだけど。

昔、旅人がある家に一夜の宿を求めた。
そこにはじいさんが一人居り、快く泊めてくれた。
じいさんは旅人を、いつも自分が寝ている部屋に寝かし、自分は土間(?)で寝た。
その夜。旅人は怪しげな声で目が覚める。

―じいさん、おるかい?
それに対して、隣の部屋に寝ているじいさんは
「おりますおります」
と答える。また、

―じいさん、おるかい?
「おりますおります」

旅人が隣の部屋をのぞくと、じいさんは眠りながらその声に答えているようだった。

―じいさん、おるかい?
「おりますおります」

そんなやり取りが繰り返されていたが、ふとじいさんは寝返りをうつと、
その怪しげな声に答えるのをやめてしまった。
(長くなりそうなので続く。)


     ヽレ
    / |    
    / ||||  
   F _」`|  
   ヽ_■ノ ←?
  /\フ
7:02/10/26 00:02
―じいさん、おるかい?
「・・・。」
―じいさん、おるかい?
「・・・。」
その声は次第に大きくなっていく。そしてなにやらおかしな音も聞こえてくる。
―じい〜さん、おるかい?(ずるりん、ばったん)
―じい〜さん、おるかい?!(ずるりん、ばったん)

旅人がその声におびえていると、床下(?)から棺おけから半分身体を
出した婆さんが現れる。ずるりんというのは、棺おけを引きずる音。
ばったんというのは棺おけの蓋が動く音だった(・・・確か)。

―じい〜さん、おるかい?!(市原さんの切羽詰ったような声で)
(続く)
8あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/26 00:04
おばーさんだったのです!
9:02/10/26 00:07
婆さんは、旅人をじいさんと思い込み、旅人を追いかけてくる。
旅人は驚き、家の外へと逃げ出すが、婆さんは外まで追ってくる。
(じいさんは眠りこけている)

ずるりんばったん、ずるりんばったん。

旅人は慌てて近くにあった木に登る。
婆さんは旅人を捕まえようとするがどうにも届かない。
その内夜が明ける。(どうやって婆さんをやり過ごしたのが失念)

朝、旅人はじいさんに昨夜あったことを話す。
するとじいさんは、婆さんが死んだ後家の床下に埋めていたことを打ち明ける。
(理由は確か「離れたくなかった」とかそういうやつだったような・・・)
10:02/10/26 00:12
以上、この話何故かよく覚えています。
一応タイトル「ずるりんばったん」なんて書いたけど、
もしかしたら少し違うかも。だけど棺おけが鳴る擬音語だったことは確か。
絵は素朴で少し可愛い絵だったけど、婆さんの顔、青白くて怖かった・・・
11あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/26 00:18
247 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2002/06/09(日) 19:47
まんが日本昔話in2ちゃんねる過去ログ
http://cocoa.2ch.net/tv/kako/980/980006851.html
http://piza.2ch.net/occult/kako/986/986086351.html
このスレが続く様ならテンプレートとして>1に追加して下され。
12あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/26 00:19
あたってもうた・・・
13あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/27 02:50
このスレ超すきおもろいね。
新スレ乙>1
14あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/28 17:15
サルベージ?
15あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/28 21:16
この話知ってる人教えて!!

確か男が片足立ちで山に登って・・・。
でかい女に会って・・・。
何かのはずみでうっかり両足で立ってしまって・・・。
そのでかい女に追いかけられる話。

よく覚えてないけど、かなり怖い話だった気がする。
16あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/10/29 23:34
>>15
巨人の☆
「三枚のおふだ」ってタイトルにもなってる三枚のお札が
劇中でちっとも役に立ってないよな。
最終的には「とんち和尚の妖怪退治」になっちゃうし(w
18あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/01 18:21
盛り上がらないなぁ
19あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/01 19:10
>15
あるところに兄と妹の仲のよい兄弟がおりました。
この兄弟のいた村では年に一度山姫様のお祭りをしており、
その日は山に入ってはいけないと言い伝えられていました。
ところが兄は山姫様を見てやろうと山に入ることにしました。

注意する点は山姫様は一本足なので必ず会う人も
一本足でなければならないということです。
そこで兄は草で片方の足を縛って?一本足になって山に行きました。
20あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/01 19:11
すると兄の前に美しい山姫様が現れました。
「よく来ましたね・・」
山姫様はとても優しく兄は夢のような時を過ごしました。
ところがそこへ兄を心配した妹が探しに来ました。
掟を知らない妹は兄を見つけて二本足で走ってきます。
「あんちゃーん!」

兄は二本足で走ってくる妹を見て我を忘れました。
「かよー戻れー!」
自分も妹の方へ二本足で走り出してしまったのです。
21あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/01 19:11
それを見た山姫様は急に鬼の形相。
「二本足?おーのーれー二本足めー!!」
まず兄が捕まりました。
「かよー逃げろー!」「あんちゃーん!」
妹も捕まりそうになったものの、途中でこけて足を痛めてけんけんで逃げ始めました。

山姫様はそれを見て「何じゃ、お前も一本足か、一本足なら許してやろー」と追いかけるのをやめました。
妹だけが無事に帰ってこれたのです。
数日後兄も山から帰ってきました。しかし兄はすっかり気が触れていたと言うことです。
22あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/01 19:29
やらしい話だな
2315:02/11/02 00:01
>>19>>20>>21
レスありがとうございます。
この話のタイトルは「山姫」ですか??

確か怖い話の雰囲気ではなかったのに、急に怖い展開に変わったので
妙に印象に残ってました。
24ダヌル・ウェブスター:02/11/02 00:05
新藤兼人の「鬼婆」にはエッチなシーンがあるから、好きだ。

でも、いい映画だよ。(笑)
2519:02/11/02 18:00
タイトルは覚えてないです。。
がきの頃に我が家では昔話をテープに取る習慣があったので、
せりふは覚えてるんですけど。
絵はぜんぜん覚えてないから、15さんがうらやましいです。
26あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/03 04:26
テープにとるの?
他の雑音とかも入ってそうだから、久々に聞くとなつかしいかもね。
いろんな意味で。
27あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/03 04:43
うん、ホント。
聞いた瞬間「昔話」を楽しんで見てた事の自分に戻りそうだね。
恐い昔話の時のBGMはほんっとに恐かったしなぁ・・・。
28あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/03 04:44
■■■  私はメーテル・・・
ノノノ・_・) 武道板から来た女。

「武道家はどのようにクリスマスを迎えるべきか'02」
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/budou/1035264179/l50
では、祭りが催されてるわ。

もてない武道家達の慰め合いに、
「みんな彼女いないの? 俺今度、彼女と泊まりで温泉」
と口を滑らせて以来、大人気の47。このまま1000まで行けば、
武道板の歴史に残るかも。

ついでに、皆さんも>47を可愛がってあげてね♥

参考:CF FRASH
http://2style.net/maido/R3_temp.swf?inputStr=%82S%82V%82%CD%82Q%82%BF%82%E1%82%F1%82%CB%82%E9%82%CC%90V%82%BD%82%C8%93%60%90%E0%82%C9%82%C8%82%EA%82%E9%82%CC%82%A9%81H
2915:02/11/03 17:06
>>25
テレビ番組をテープにとるのは私も昔やってました。
音声だけでも大体のストーリーは判るんですけど、何かもどかしい所も
あるんですよね。
よけいに映像が見たくなります。
寺村輝夫の「おばけのはなし」に収録されていた
「かぼちゃへび」は消防当時トラウマになるぐらい怖かった。
むかむむかし、ある村の橋の下に不気味な女が住み着いた。
全身がいつもびしょびしょに濡れていて頭が普通の人間の倍ほど
あるという容貌。村人が橋の下に近付くと橋の下にある岩陰から
その大きな顔をだしケタケタと笑うのだった・・・。

 あまりの気味悪さに村は侍をやとい、その女を退治してもらうことにした。
侍が橋の下に近付くと、女は例によって大きな顔を出し笑い出す・・・。
侍は、すかさず刀を抜き脳天から女の頭を叩き割った。

村人達は大喜びで侍に感謝し、祝の宴会をを始めるが宴会の最中、
その侍、急に苦しみ、死んでしまった・・・。
しかも、村人達の驚きも覚めやらぬその翌日、
何事も無かったかのように橋の下に女がいたのだ・・・。
32かぼちゃへび(2/3):02/11/04 02:20
村人達は怖がりながらも今度は弓の名人を雇う。
弓の名人も女を一撃でしとめ、橋を渡り、村へ帰ろうとした。
ところが、何度橋を渡っても橋の向こうの村にたどり着けないのだ。
橋を渡り終えると必ず村の反対側に出てしまう。
・・・弓の名人はとうとう一晩中村に帰れなかった・・・。
そして、その翌日またも頭を打ち抜かれたはずの女が
姿を現したのだ・・・。

 
 あまりの恐ろしさに村人達は山寺の和尚にこのことを相談した。
和尚は話を聞くと言った「女の頭を狙ってはいかん。胸をねらえ」と。

 今度は石投げの名人が橋の下にいった。女が姿を現すと石投げの名人、
すかさず石を投げた。石は女の胸にあたり、すると・・・・


   「ざんねん むねん うらめしや」

女はたちまち大きな蛇に姿を変え、川を下って逃げていった・・・。
その夜は大嵐となり、村人は生きた心地もなく布団にくるまって
嵐が去るのを待った。
33かぼちゃへび(3/3):02/11/04 02:25
翌朝、村人が橋の下に行ってみると女はいなくなっていた。
そこにあったのは女の着物と・・・大きなカボチャが2つ転がっていた。
そのカボチャの一つは真っ二つに割れ、もう一つには矢が刺さっていた・・・。
 
 不思議に思った村人が、和尚にこのことを話すと和尚はこんな事を話し始めた。
「むかし、飢えに苦しんだ女がカボチャを盗み、見つかって驚きのあまり
蛇に身を変えて逃げたという・・・おそらくその女の怨念が化け物となり
橋の下に住み着いていたのだろう。頭が異様に大きかったのはその時盗んだ
カボチャを頭にして化けていたからだろうと思ったのじゃ・・・」

それ以後、橋の下に化け物が出ることは無くなったという。



・・・この「おばけのはなし」シリーズは
3,4巻ぐらいあったのだがその中でも1,2を争うぐらい
怖い話。次に怖かったのは「ねこのおちゃ」。
ヒサクニヒコ氏の漫画っぽい挿し絵が妙にミスマッチで
いい雰囲気を出してました。
34ななし:02/11/04 19:09
>31
しってる!!
ねこのおちゃの別バージョンねこかぼちゃってのもあるよね
>>30

それ私も子供のころ読んで、すごく怖かった。
「くうくうくう 腹の虫…」ってセリフなかった?
前スレが無事DATから落ちました。
37あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/07 09:24
>35
そのセリフだけ記憶にある・・・。
38あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/07 14:39
?@ 民話の中のオカルト ?@
ttp://curry.2ch.net/test/read.cgi/occult/1035000046/
39あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/10 11:11
ネタ切れ?
40あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/13 18:35
>1さん
dat落するよ
41銅鑼衛門:02/11/13 19:12
>>40
ども。
42あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/14 06:16
なーんか忘れられないフレーズ。

化物が出るという屋敷だか山だかに、何かを探しに行く男を
滝や瓢箪が止めようと忠告する。
”行くなトプカプ・・・ 戻れトプカプ・・・”

昔話って、こういう妙〜に頭に残る言い回し、いっぱい出て来るよね。
43あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/14 11:13
>42
宮殿の名前みたいやな
44あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/14 17:27
こわすぎるage
45あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/14 17:56
>44
>42が怖かったのか?
46むいむい:02/11/14 18:00
                        》
       / ̄ ̄")            《 
     /-----/    イクナ!!トプカプ!!  (  ) 
    ( ´⊆ヽ` )      モドレ!!トプカプ!!)   (ヽ 《
    /"\7/ ̄\           ∩(・∀・)  》
  ⊂_ノ|二二二|ヽ )        (・_・)ノ  (・_・)
     /__人__ノ       (・∀・) ∩   人  )ヽ
    (__(___)          ノ(・_・)(・∀・)(ノ
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
47あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/15 00:52
>1さん、一向にスレが伸びないのは、Part1と違ってテーマが漠然としすぎて、みんな
いまいちイマジネーションがわかないのではないだろうか。
ここらでちょっと目先を変えて、どっかよその国の怖くてたまらない昔話をいくつか
紹介してみたら呼び水になるんじゃないだろうか。
(聊斎志異あたり結構背筋がぞくぞくしそうな話がありそうな気がするんだが。)
4842:02/11/15 05:12
>>46
ありがとう。なーんか和んだよ。
こんなんに引き止められたら、わしなら戻るなー(笑)

>>43
トプカプってのは、確か水に浮き沈みする瓢箪の擬音だったのだ。
浮き沈みしながら忠告する瓢箪にちょっと萌え(?)

>>47
同意見。たしかに今はちょいと漠然としてて、何書けばいいのか思い憑かない。
(と言いつつ書いてるが・・・)
ロシア辺りの恐い民話も、狡猾な悪魔とか人のどうしようもない狂気、
弱さなんかが描れてて、なかなかエグいのが多いよね。
・・・ところで聊斎志異って、なんて読むの?(馬鹿でゴメン)
49あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/15 05:27
>>48
「りょうさいしい」
りょうさいしい、は手塚治虫がマンガ化してるべ。
51あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/15 18:14
聊斎志異はチャイニーズ・ゴーストストーリーの元ネタでもある
52あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/16 00:15
>47
大筋において同意!
でも日本と近隣アジアのみにしません?
いきなり西洋ギリシャ神話とか出てくると
スレタイとイメージがチョト違う思うがどう?>ALL
53あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/16 00:17
胴衣。グリムがでてくると話がずれそう
54銅鑼衛門:02/11/16 01:36
>>47
それでいいと思います。臨機応変に行きましょう。

古典文学なんかも扱ってもいいかも、これも昔話だろうし。
日本にある昔話の名作と言えば「雨月物語」あたりが有名ですね。
5547=Zanoni:02/11/17 00:04
皆さん賛成していただいたようで、ありがとうございます。

>52さんのいうように、ある程度しばりがある方が面白そうですね。
今回のPart2スレは、昔話の東洋バージョン(もしくは極東バージョン)というテーマにして
はどうでしょう。中国とその周辺文化という民俗学的面白みもでてきそうです。

仙道をやってた関係で、昔、駒田信二の中国怪奇ものを読み漁ったことがあり、彼の国の
日本の幽霊とも一味違った不気味さに興味があります。
昔読んでた本は、どっかに行ってしまって紹介できないのですが、面白い話をしいれたら、
随時カキコしていきたいと思います。
56あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 01:59
雨月物語ストーリー
ttp://www.stagecafe.net/todoroki/season/ugetsu/ugetsu.htm

て、要約されてて読んでも全然怖くないな。
銅鑼衛門さん、怖い語りを期待してます。
TVアニメ版の昔話じゃなくて、絵本マンガで読んで怖かったトラウマ昔話をひとつ
しかしだいぶうろ覚えなので細部における記憶違いはご容赦ください
脳内変換も大分されていると思いますが大体において次のようなお話でした
実に色々な昔話の要素がごた混ぜになっていて興味深いと思います。

@お人よしで気立てのいい若者が自分の村をでて旅をしている途中、
蜘蛛の巣にかかりバタバタもがく蚊(蜻蛉?)を見て不憫に思い救ってやる。
また山中で、足に棘が刺さり痛そうにもがいていた大熊に出くわすが
怖がることもなくそれを抜いて治療してやるなどの優しさをみせる。
Aその若者がとある村に着くと長者の屋敷の前に高札が立っていた。
そこには「この屋敷の倉にある米俵の数を当てた者を娘の婿とする」とある。
これだけ大きな屋敷の倉に眠る米の量をあてる・・。
見当もつかないそのお題に誰もが首を捻り、若者も「分かるわけがないだよ」と諦め顔だ。
しかし彼の耳元で「・・俵ですよ」と囁く声がした。
前に若者が命を救ってやった蚊が恩義を感じて、長者の屋敷の倉に入って
正確な米俵の数を数えてきてくれたのである。
蚊に礼を言うと、喜び勇んだ若者は長者の屋敷に入って米俵の数をその通り正確に答える。
そして若者は約束通り長者の娘と結ばれて豊かな身上をそっくり受け継いだのであった。
B長者の婿としてなに不自由ない暮らしをして数年。
そんなある日、後にして久しい自分の生まれ故郷の村に帰ることを若者は思いたった。
馬の背に山ほどの土産を積んで数年前に通った道を辿りやっと村に帰りついたのだが・・。
様子がどうもおかしい。人馬の気配が全くしないし、
どこの家も田畑も荒れるがままに任されている。
「一体村に何があっただ?」
胸に湧き上がる不安に囚われて自分の家まで行くと
戸をドンドンと叩く。「おっかあ!タエ(妹の名、うろ覚え)!!」 
すると、ガラガラと内から扉が開いた。「あっ・・!」
C「兄さんっ!」中からよろけるようにして出てきたのは妹のタエであった。
美しく成長した妹との再会を喜んだ後、いったい村に何があったのかを尋いてみた。
彼女の語るところによれば数年前、悪性の疫病に村が襲われ多くの人が死に、
その折に母も逝ってしまった。村人はこの村を捨てて出ていったが
自分だけは兄の帰りを待つために一人この村に残ったという。
多くの苦労を妹にさせてしまったことを若者は詫び、
今日は山ほどの土産を持って帰ってきているのだと告げる。
それならば早速二人で再会の祝いをしようと、妹は支度をするために川に水汲みに出て行く。
家を出て行く際に、妹は若者にでんでん太鼓を渡して、
「私が戻ってくるまでこれを振っていて」と頼む。
そして荒れ果てたこの家にでんでん太鼓を手にした若者一人が残された。
とにかく言われた通りに若者は太鼓を振って音を出している。
乾いた音が部屋にそして村に響き渡っていく。
トントントン・・
D「もしもし・・」 若者を呼ぶ声がする。
ふとみると昔自分が可愛がっていた猫が年老いた姿で囲炉裏の端にちょこんと座っていた。
懐かしさの余り猫を引き寄せようとするが、
すぐに猫は若者を制し真剣な声でこう告げた。
「早くここから逃げて下さい」
驚く若者。でんでん太鼓を振る手の動きがパタッととまった。
年老いた猫はさらにこう続ける。
「あれはあなたの妹ではない。恐ろしい人食い鬼です。
どこからともなくやってきたあの鬼が村人もあなたの家族も残らず喰い殺してしまった。
まもなくあいつが戻ってきて、油断させた後生きながらにあなたを喰らうでしょう。
しかし今はまだあなたが正体に気付いていないと思っている。
さあ、あとは私に任せて今のうちに早く!」
62あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:39
どきどき
63ヤマギシズム涼子:02/11/17 02:42
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル 
64あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:42
盛り上がってまいりました。
65あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:43
キャー、この緊張に耐えられない。
66あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:43
引っ張るなぁ
67あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:44
グッ リッ コッ
68ヤマギシズム涼子:02/11/17 02:44
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル ハヤク、ハヤク〜
69あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:45
この引き伸ばし、ライターが反応を楽しんでいるとしか思えん
70あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:46
みんなリアルタイムで楽しんでるんだなぁ
71ヤマギシズム涼子:02/11/17 02:46
60→61で19分・・・もうちょい?
7261:02/11/17 02:48
眠たくなったので、続きはまた明日
Eタエが水を汲み終えて家に戻ってきた。トントントン・・。
相変わらずでんでん太鼓の音は家の中から聞こえて来る。
口元にニヤリと笑みを浮かべてガラリと家の戸を開けた途端、
彼女が目にしたのはでんでん太鼓の上で飛び跳ねているネズミの姿(猫が命令した)であった。
ハッと何事かを察知して家の中を見廻すタエ。若者の姿はどこにもない。
彼が荷を積んで引いてきた馬もその姿を消している。みるみるタエの顔が歪んで崩れていく。
「おのれ、気付きおったクヮァァァ!!」
もうタエの顔は人間のそれではない。正体を露わにした恐ろしい人食い鬼婆の形相がそこにあった。
「逃がしてなるものかぁ!!」
74あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:51
ギャー
75ヤマギシズム涼子:02/11/17 02:53
Fタエは愛馬「宇宙船地球号」にまたがり若者を追った!
76あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 02:55
座布団全部取れ
77ヤマギシズム涼子:02/11/17 02:55
失礼・・・
F必死に馬の背にしがみついて山道を逃げる若者。
その背後からさっきまではタエの姿をしていた鬼婆の声が追いかけてきた。
「待て〜〜。待て〜〜〜!!」
その声は次第に近づき距離を縮めてくる。ついに若者が乗っていた馬に追いつくと、
耳元まで裂けたその大きな口で馬の後ろ脚に喰らいついた。
グワッとその馬の脚をひと千切りにした鬼婆は肉をわしわしと喰らい出す。
しかし3本足になりながらもなお若者を乗せたまま懸命に駆け続ける馬。
口に念仏を唱えながら若者も必死になって馬を励ます。
だが一本の脚を喰い終わった鬼婆はあっさりこのびっこの馬に追いつき、
再びそのもう一本の後ろ脚に喰らいついた。
力尽き断末魔のいななきを挙げて崩れ落ち、憐れにも馬は生きながらにして鬼婆に喰われていく。
その間にもひた走りに駆ける若者。
そして馬を喰い尽くした鬼婆はまた若者めがけて疾風のような速さで追いかけるのであった。
79ヤマギシズム涼子:02/11/17 02:59
Gちょうどそこにタクシーが(MK)!
 「毎度、ご乗車ありがとうございます」
 丁寧なあいさつを・・・
80あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 03:00
打たれ強いなぁ
81ヤマギシズム涼子:02/11/17 03:00
ごめんね。
82あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 03:01
ぃゃいいんですけどね
G息が続かなくなった若者は走ることを止め最後の力を振り絞って、
天に向かってまっすぐに伸びる杉の大木によじ登りだす。
幹にすがりその半ばまで登ったところで鬼婆が追いつき、木に取り付いている若者の姿を発見した。
残忍な笑みを口元に浮かべ鬼婆もすぐさま木を登りだした。
遂に獲物を追い詰めたという喜びでケタケタと笑い声をあげながら若者に迫っていく。
鬼婆の血塗れの口とその鋭い爪がもうそこまで来ている。
(もう駄目だ・・)
恐怖で気も狂わんばかりになって若者は泣き叫んだ。
「おっかあ、おらを助けて!!!」
そして遂に鬼婆の手が若者の足を捕らえようとした。その瞬間。
84あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 03:03
面白ければもっといいかな
85ヤマギシズム涼子:02/11/17 03:06
H鬼婆は、家族新聞の編集の締め切りが今日までだった事をおもいだし・・・
 「えらいこっちゃ! おとうちゃんに怒られるわ!」
86あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 03:15
>83さんも息が切れてきたかな
87あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 03:16
ヤマギシ続きキボン
H「うがぁぁああ!!???」
なんと苦悶の悲鳴が上がったのは鬼婆の口からであった。
何か黒い大きな固まりが鬼婆を木から引きずり下ろし
それを地に叩きつけ引きずりまわしているではないか。
ドタッ、バタッっという地鳴りのような振動が木の上の若者にも伝わってきた。
木の根元で二つの体がくんずほぐれつで一つの玉となり折り合い転げている。
「ガルルウゥウゥッ!」「ぐわぁああぁああ!!」
そしてついには
「ぎゃぁあああああ〜〜」
という鬼婆の空を切り裂く絶叫がこだまとなってそのあたり一帯に響き渡った。
そしてその残響もついに収まり、山の中に再び静寂が訪れる・・・


木にしがみついたまま震えていた若者はおそるおそる目を開けて下の様子を窺った。
するとどうやらその黒い物体もどうやら木の上にいる若者を見上げている。
「あっ!!」
その黒い生き物を見て、いまそこで何が起きていたのかを若者は全て悟った。
「お前はあの時の・・」
若者が昔、棘を抜き傷の手当てをしてやったあの大熊の姿がそこにあった。
大熊は若者を頭上にいる若者を見上げ、まるで礼をするかのように頭を下げるとそのままどこへともなく姿を消した。
木の下には大熊の怪力によって見るも無残に引き裂かれ絶命した鬼婆の死体が転がっていた。
若者は木を降りて自分の村に戻り死ぬまで幸せに暮らした。
だが自分が育ったあの村には生涯足を踏み入れることはなかったという。


おしまい
89あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 03:19
ご苦労。よきにはからえ。
90あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 03:20
パチパチパチ

ハッピーエンドだけど面白かった。
自分の村に戻りってのは、長者の娘と結ばれた村のこと?
>>90
まぁ話の流れをちゃんと読んでればそうとしか解釈できませんね。
馬が可哀相・・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
93あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 12:34
今度から、熊が困ってたらまさかのときのために恩を売っておくことにする
94あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 12:58
160 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2002/11/16(土) 19:24
映画ではキョンシーは人間の血気を吸い取り、噛み付かれた者はキョンシーとなる
また月の光を好んで浴びる、棺で寝てるのは死体だからであるが、
またそういう所で寝て地脈の気を吸い取っている描写もあった気がする。
映画でしか見たこと無いけど、こういう伝承あるのですか?
中国語文献はよく目を通してるはずだ。

161 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2002/11/16(土) 19:32
>>160
中国の皇帝とかが、故郷から離れたところで死去して故郷まで棺を運んだ話から
死体を運んだ→死体を動かした→死体が自力で故郷まで帰った
と、話が変化してキョンシーの話が出来たと聞いた。
95あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 12:58
163 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2002/11/16(土) 19:47
だけどヴァンパイアがいるとしたらキョンシーも本当にいるってことになる
つまりその説はどこかの学者が都合良く解釈した偽説にすぎない。
そして本当ならやはり少なからずそういう民間の伝承が色々あり、
そこから映画ができたはずだ。

166 名前:プッチ神父 投稿日:2002/11/16(土) 22:40
>>160
キョンシー、チャンシー、クゥワンシーと呼ばれる中国の吸血鬼は、完全な作り話です。
戒めの為に生み出された妖怪です。色々ありますが、特に自殺を戒める主旨もあったそうです。
つまり穢れた死体には、悪霊が取り付き易いとか。
鋭い爪に牙、緑或いは白い体毛。時に空を飛び、雷が弱点だとか。
復活出現を防ぐには、墓の周りに米、鉄片、赤い豆類を蒔くといいそうです。
吸血鬼が登場する、中国怪奇譚の傑作は「聊斎志異」が面白いようです。
「陶宗儀」「沈徳符」などもあるようですが、翻訳は…??
>>161
志怪の書「捜神記」にも、屍鬼の民話があるようです。
96あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/17 13:49
動物の恩返し+鬼婆モノの複合技かあ
生きたまま人を食う鬼婆イヤすぎ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
でも熊と鬼婆がガチンコでやりあう設定はなんか新鮮
熊タソマンセ−
>熊と鬼婆がガチンコでやりあう

フジの「怪談百物語」はそういう話をこそやるべきだと思うw
98あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/18 04:01
人食い鬼婆って、人間なんだろうか妖怪なんだろうか。
熊に負けるからにはやっぱ人間かな。
99あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/18 13:41
“日本昔話”で、衝撃を受けた話
ttp://piza.2ch.net/occult/kako/986/986086351.html
100あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/18 22:50
@〜H最高です。
もっとお願いします。涼子タンも・・・。
101あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/18 23:01
ただ機種依存文字(この場合@など)を使うのは、止めた方がいいでしょう
102ジェン:02/11/18 23:02
キョンシーの事は香港人、中国人から聞いたことがあって、やはり架空の存在ではあるけれどモデルとなったのが、その当時流行っていた疫病の患者達であること。脚を曲げる事が出来ずああいう恰好で動き廻り、顔面蒼白で、息苦しさの為歯を剥き出しにしていた。
103あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/18 23:22
鬼婆もっとキボンヌ(チンチン
やっぱ昔話の最強ヒールだよなあ
実社会での鬼婆は勘弁ねがうけどさw
104あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/18 23:29
鬼婆と山姥って同じ?
@AB
CDE
FGH
106あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/19 09:30
JKLMNOPQRS
107あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/19 13:41
ガチンコ番付け

凶悪鬼(♂)=ヒグマ>>ツキノワグマ>>鬼婆(♀)>>山姥(♀)>>∞>>登場人物>>2ちゃんねらー
スマソ 107修正

桃太郎=金太郎>>凶悪鬼(♂)=ヒグマ>>ツキノワグマ>>鬼婆(♀)>>山姥(♀)
>>∞>>登場人物>>2ちゃんねらー
109あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/19 14:09
鬼婆って山姥より強いの?

鬼婆は人間
山姥は妖怪

かと思ってた。
110あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/19 14:16
鬼婆こわい
山姥ってたまにすごく優しい役で登場してくるよね
山姥に拉致された人間が山姥の息子の面倒とか見てあげたら
そのお礼にすごく立派な反物を貰って村に帰してもらったって話があったような
>>111
やまんばのにしき(ちょうふく山の山姥)だっけ
113あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/19 21:49
114あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/19 23:32
>>113 ちょっと調べてきますた

大人もぞっとする
原典『日本昔ばなし』
著者:由良弥生 本体価格533円(税別)

“狂死”するかぐや姫、愛欲に溺れる八百比丘尼
──残酷と狂気、欲望の入り口は「むかしむかし……」から始まる。
懐かしさより恐ろしさ! 
「めでたしめでたし」の裏にある残虐性とおぞましい人間の本性とは?


う〜ん。かなりのトラウマ製造本っぽい(ワクワク
115あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/20 01:15
>113 >114
いいネタ本になりそうですね
116あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/22 13:19
良スレだがレスが少ないな。
良スレはユクーリ、マターリ育つ
118あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/23 02:33
age
119あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/23 02:44
>117
とは言え、いい加減起爆剤が欲しいな
子供の頃、なんかの本で読んだ釜かぶりだか鍋かぶり姫。
生まれた時から頭に鍋をかぶってる女の子の話で
表情が見えないのが不気味だなあと子供心に思った。今考えると全然怖くないんだけど。

最近になって検索にかけたら、「鉢かつぎ」という名前だったらしい。
オカルト話じゃなくてスマソ
ttp://www.city.neyagawa.osaka.jp/rireki/hachi/hachi-story01.htm
121あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/26 20:32
dat直前だったよ危ない危ない
122山野野衾 ◆W7NDQJtGoM :02/11/26 21:15
>120
鉢かづき(頭に乗せる)では?かついだら(文字通り)話にならない。御伽
草子の中に出て来るものですね。
123あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/26 21:17
まんが日本昔話は、マニアックな話の方が面白かった。
全話DVDになるなら買うんだが・・・
ん〜静かだ・・・
みんな年末進行で忙しいんだね
ちゅうわけで保守!
125あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/11/29 03:07
何も下げなくても
126あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/02 09:14
age
再放送しないかのう。
>>88
鬼婆が蜘蛛の化身だったら大人も楽しめて完璧だったのにな。
129あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/05 09:26
>128
意味が良く分からん
age
131あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/12 09:17
さるべーじ
132あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/13 21:39
133コピペ:02/12/14 09:52
476 名前:好爺 投稿日:2002/12/11(水) 22:51
元禄年間の頃、増上寺での話。あるとき檀家が「湯灌と剃髪をして頂きたい」といって
死人を連れてきた。
あいにく住職が不在で、弟子の僧が行なう事になった。
僧は人々を奥へ案内すると落ち着いた様子で剃刀をとり、死人の髪を剃り始めた。
ところが、どうしたわけか手元が狂って、死人の頭の肉をわずかに削ぎとってしまった。

周囲には檀家の人々が頭をうなだれて、じっとしている。
慌てた僧は、とっさに死人から削ぎ取った肉片を自分の口に押し込み隠してしまった。
誰にも気づかれなかかったがはじめは死人の肉を気味悪く思っていたのに、不意に
例えようのない美味に感じられ体が震えた。
僧は周りに人がいるのも忘れ、肉片を噛みしめると、喉を鳴らして飲み込んだ。
これまでに味わった事のない美味さで僧はすっかり人肉のとりこになってしまった。
134133:02/12/14 09:53
その後、何とか忘れようと思った物のどうにも我慢が出来ずに、ひそかに墓地に出かけ、
埋めたばかりの土を掘り返すと、死骸の肉を切り取り貪り食った。
その欲望が満足すれば冷静さが戻ってくる。僧は己の所業が情けなくなって後悔する
もののそれは、長くは続かず、また何日かすると自然に脚が墓地へ向っていく。

こうしてたびたび墓地が荒らされると、住職が狐か犬の仕業ではないかと不審に思い、
墓地の隅に身をひそめて様子をうかがっていた。
僧はその事に気づかずに新しい墓の土を掘り起こすと、脇目もふらずに死骸の肉を食い
始めた。

住職はその凄惨な光景に仰天して声も出ずにどのようにして寺へ戻ったのか、わからな
いほどだった。
135133:02/12/14 09:54
翌朝、住職は弟子の僧を呼び、昨夜見たことを率直に訪ねてみた。
僧は震えるばかりで答える事が出来ない。

だが、やがて「申し訳ございませぬ」というなり平伏して詫びた。
さらに死人の肉を食ういきさつを語り、
「このうえは人間としてのつきあいもできません。何処かの山に篭って修行いたします。」
といって寺をでていった。

その後、その僧の行方はまったくわからないという。
136稲生物怪録:02/12/14 11:45
こういうページ見つけました。
137136:02/12/14 11:46
肝心のURL書くの忘れた
ttp://www2.cc22.ne.jp/~ami/ami/inou.htm
138コピペ:02/12/14 12:40
282 名前:好爺 投稿日:2002/10/26(土) 01:05
江戸時代上州高崎に横田保庵という医者がいた。

るんと云う妻と仲むつまじく暮らしていたが保庵の医者としての評判が高まるにつれ、
「江戸へ来て欲しい。」との誘いがかかり「江戸で修行してくる。」と単身江戸へ出かけた。
当初は真面目に修行していたもののまもなくある女性と世帯を持ち、医者を開業した。

妻のるんが心配して江戸へ使いを出したが、その使いは保庵からの離縁状を持って
帰ってきた。
るんはそれが信じられずに保庵に直接会って確かめようと江戸へ出かけたが、保庵は
るんの話に耳を貸さずに「高崎へ帰れ。」というばかりだった。
139コピペ:02/12/14 12:41
るんは失意のまま一人で高崎に帰った。

その後江戸の妻が保庵の子を産んだものの一年もしないうちに病死し、しかも二人目、
三人目とも子供が生まれてすぐに死んだ。
さすがに保庵もるんの怨念ではと恐れた。
やがてるんは嫉妬のあまり病を患い亡くなった。
140コピペ:02/12/14 12:42
その知らせを聞いた保庵はさすがに気がとがめたのか、るんを哀れにおもったのか
墓参りに帰郷した。

るんの墓で花を供えて頭をたれた瞬間、るんの死霊が摂りついたものなのか、保庵は
顔を恐ろしげにゆがめ、わけのわからない事を口走りはじめた。
さらに自分で自分を殴りつけ、地面を転がった。そばにいたものが保庵を取り押さえ引き
ずるようにるんが住んでいた家に連れて行った。
だが、保庵はさらに異常になり、うつろな笑い声をたてながら、自ら柱や壁に体をぶつけた。

そして数日後、熱病を患ったようになって息絶えた。
141コピペ:02/12/14 14:34
20 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2002/12/14(土) 12:43
『捜神記』にはね、百合の精が出てくるさ。

やっぱり女性で主人公と婚約する。いつも夜明けにいなくなる女を追いかけて、
男がとある野原で女を見失う。すると目の前に大きな百合の花がある。
「こりゃいい、明日は女に百合根を食わせてやろう」
と思って根を掘って帰る。

翌日、大きな百合根をほぐしていると中に自分が婚約の記念に女にあげた翡翠の指輪が、
カラン、と出てくる。女は二度と現れなかった。
142あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 15:07
面白いページみつけました

物語要素事典
ttp://www.aichi-gakuin.ac.jp/~kamiyama/
143あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 15:36
好爺!降臨キボーン!
144あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 15:40
確かにこのスレが生き長らえるかどうかは、好爺さんが来てくれるかどうかに
かかっていそうだな。
145143:02/12/14 16:23
そうなんだよね・・・人を当てにしてはいかんと思いつつ
こないだ本屋に逝ってネタ本探そうと思ったがめぼしいやつがなかった

なにかお勧めの本あります?
146あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 16:30
やっぱみんなこのスレのこと心配してたんだな。

>136, >137あたりネタ元にならないかな?
147コピペ:02/12/14 16:36
292 名前:文鳥ちゃん 投稿日:2002/10/29(火) 00:53

高野山の近くの白髪畑(しらがのはた)という高い山の麓では、若い女がよく行方不明に
なっていた。怪しいものが出るとの噂があった。

ある夕月夜、近隣にすむ若き男女が駆け落ちをし、道を急いでいたところ、後ろから何者
かが追いかけてくる。
それが追い越す瞬間、いきなり女を抱きかかえ、疾風のごとく走り去った。
148コピペ:02/12/14 16:37
大事なものを奪い去られた男は、女を求めて山路深くわけいった。

ついに谷川に至ったところ、向こう岸に女を発見した。喜んだ男は
「おーい」
と声をかけた。橋は向こう岸に引き上げられてる。
「その橋を早くかけろ!」

しかし女は頭上の松ノ木を指して泣き出した。
男が見ると、松ノ木には怪物が登っており、下の女を睨んでいたのだ。
149コピペ:02/12/14 16:39
男が来たのをみすかして怪物はするすると木をおりると、目前で女の体から臓物を引き
ずり出すと、喰いつくしてしまった。
あまりのすざましい光景に男がへたりこむと怪物は息絶えた女のなきがらを松の枝に逆
さづりにした。

気を失った男は二人を追った村人達に発見され、そこで一部始終を告げた。
それからというもの、その山には誰も足を踏み入れなかった。

(「遊京漫録/清水浜臣」文政三年)
150あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 17:03
今日は結構伸びたな
151あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 17:04
>145

>114はだめだった?
152あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 18:08
ここもなかなかおもしろそうだが、トラウマにはなりそうにないな

【楽天市場】青山ブックセンター
ttp://www.rakuten.co.jp/aoyamabc/479679/479934/
153コピペ:02/12/14 19:39
464 名前:好爺 投稿日:2002/12/05(木) 10:34

鳥取県の日野郡に黒坂の竜王滝という滝がある。
村はずれの滝山神社にある滝で天狗や妖怪が出るとの噂が絶えず、そのため幽霊滝とも
呼ばれていた。

村人達はめったに近づかなかったが、ある日竜王滝で肝試しをしようという話になった。
しかも、本当にいったかどうかをはっきりさせるために滝山神社の賽銭箱を持ってこようで
はないかとの話までまとまった。
154コピペ:02/12/14 19:40
ところがいざとなるとみんな怖がって誰一人行こうとしなかった。

そこへ負けん気が強いお勝と云うおんなが名乗り出た。
お勝は自分の子供を背負うとみぞれ混じりの天気のなか竜王滝へと向った。
いざ歩き出すと、夜道は真っ暗でみぞれも冷たく、さすがのお勝も不安になってきた。

こんな事をして何になるのかと自問自答しながら進んでいくと水音が聞こえてきた。
どうやら竜王滝の近くまで来たようだ。
ここまできたら、さっさと済ませてしまおうとお勝は最後の勇気を振り絞って、無我夢中で
賽銭箱を抱え、一目散にかけ戻った。
気のせいか背後で野太い笑い声が響いていたような気もしたが一刻も早くその場を離れた
くて無我夢中で村へと引き返した。
155好爺:02/12/14 20:44
>>154
コピペするなら落ちまで入れてくれ気になってしょうがない

戻ったお勝は賽銭箱を投げ出し、得意げに頷いてみせた。ところが村人達はまるで
凍りついたように震えて声も出せない。ようやくひとりが声をあげた。
「お前、その背中の子はどうした」お勝が慌てて背中の子を見てみると、
首から上が食い千切られていたと言う。
156あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 21:05
わー本物降臨! パチパチ

157あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 21:07

( ・∀・) 実はコピぺ氏の呼び寄せる罠だったというのは考え過ぎだろうか?
子供が可哀そう・・・
159コピペ:02/12/14 21:12
>157
少し引っ張るつもりが、別スレに行ってるうちにマジで忘れてしまっていました。
結果的に怪我の功名か。
160好爺:02/12/14 21:37
九州の天草地方に残る昔話
左甚五郎が築城のさなか期限内の完成が難しくなったため、多くの藁人形を作って
命を吹き込み、工事を手伝わせた。こうして城は期限内に完成し、用済みとなった
藁人形を川へ捨てようとした。藁人形達は「これから何を食えばいいのだ」と
抗議したところ、甚五郎は「人の尻でも食え」と言った。
そこで藁人形達はみな河童に化身し、肛門から手を入れて人の肝を取るようになった。
161あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 22:03
好爺さん、今後ともよろしくお願いします。
162あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/14 22:12
>158
ここまで酷いと、可哀想という感情さえ沸き起こらんな

(;´Д`)…ハァハァ…好爺
164関連スレ:02/12/15 09:47
165万華鏡異聞:02/12/15 13:44
166あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/15 19:57
トラウマになった絵本
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/ehon/1026757087/
167あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/15 19:57
トラウマになった絵本
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/ehon/1026757087/
A Boneの二重カキコバグ、最近酷いな
169あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/16 16:08
170あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/16 20:30
171あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 03:36
960 名前:さく・え/ななし 投稿日:2002/12/09(月) 14:27 ID:i8YxBt+5

「かちかち山」ってもとはうさぎが何にも悪いことしていない相手の動物を一方的に
いじめて最後殺してしまうって話だったんだってさ。
有史以前からの部族や異文化間の対立、とかを比喩的に描いた話だったらしい。

時代が文化的に進化するに従ってそれじゃ、あまりにも非道徳的だってことで相手
の動物が元々悪いことしたその報いだって話に作り替えられていったらしい。
172好爺:02/12/17 09:41
>>171
私が聞いた話ではカチカチ山の原型は兎が出る前への恐怖話だと聞いた事がある。
多分、2つの別々の話が一緒になったのかも、私が母親に聞いた部分の話

村に悪戯をする狸がいた。お爺さんは、狸を罠にかけ捕まえた。
お爺さんは、おばあさんに狸汁にするように頼み、野良仕事に出かけた。
おばあさんは、狸汁の準備をしていたが、狸が悲しそうな声で懇願した。
「おばあさん、いままで私は大変悪い事をしました。これからは心を入れ替え
山へ戻ります。どうぞ、命だけはお助けください。」
おばあさんは急に可愛そうになりもう村にには戻ってくるなよと言い、縄をほどいてやった。
173好爺:02/12/17 09:52
…続き
縄をほどかれた狸は突然おばあさんに飛び掛り、殺してしまった。
そして、おばあさんの皮を剥ぐとそれを被りおばあさんに化けて、おばあさんの
肉をおばあさんが狸汁にと準備していた鍋にいれた。
お爺さんが野良仕事から帰ってくると囲炉裏の上の鍋からは美味そうな匂いがしていた。
おばあさんに化けた狸はこう言った。「大変美味しい狸汁が出来ましたよ。
さあ、たべてくだされ」お爺さんはそれを食べ、「おお、これは美味い。
こんなに美味い狸汁は初めてだ。」そしてあっという間にふたりで狸汁を食べ尽くした。
すると、狸は急におばあさんの皮をいきなり脱ぐとこう言った。
「美味いはずたよな。この肉はてめえのばばあの肉だもんな」
そういって、狸はおばあさんの皮を残したまま山へ逃げ帰っていったと言う。

此処までの話だと聞いてとっても怖かった。
174あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 10:01
また救世主が降臨してくれた
俺が子供の頃読んだかちかち山は残酷版のほうだったな。
子供心にひどい話だとおもた。
これって人食いの風習のなごりって話もあったね。地方には案外根強く残ってたのかもしれん。
176あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 10:40
高橋克彦も、確かグロくてホラーなカチカチ山書いてたな
177あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 11:57


       好爺 ワッショイ!!
     \\     好爺 ワッショイ!! //
 +   + \\     好爺 ワッショイ!!/+
                             +
.   +     ∧_∧・ ∧_∧・   ∧_∧  +
      ( ´∀`∩(´∀`∩)( ´∀`)
 +  (( (つ   ノ(つ  丿(つ  つ ))  +
       ヽ  ( ノ ( ヽノ  ) ) )
       (_)し' し(_) (_)_)
178あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 13:52
好爺さん、まだ話は終わってないんだよね
179あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 16:31
続きキボンヌ
180あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 16:33
また明日、かな?
181あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 20:45
ん?
私が知っているかちかち山って、こっちなんだけれど?
普通に幼稚園の時にこの話を聞いていたけれど。
ってことは、今は内容が違うの??
182好爺:02/12/17 21:27
確かこの話もアニメであったとおもいました。
鳥取に湖山長者という長者がいた。長者は広い屋敷に山のような金銀財宝を蓄え、
所有する田地は見渡す限り広びろと何処までも続いていた。そのため、田植えは
近郷近在の多くの人々に手伝ってもわらなければならなかった。
ある年、ちょうど時期も良いので長者は田植えをする事にした。朝から大勢の
人々が手伝いにきた。長者は高殿の欄干にもたれながら、得意げに田植えの様子を
見ていた。人々は田植え歌を歌いながら苗を植えていく。田は何処までもつづき、
はるか先の方は見えない。だが、大勢の人々が手伝ってくれたため仕事はどんどん
はかどり、水を張った田は青緑色に変わっていった。
しかし、太陽が西の山に沈みはじめた。まだ、数反残っている。
長者は「なんとしても今日中に田植えを終えてしまいたい」と思うもののこのままでは
田植えが終わらぬうちに日が沈んでしまう。いらだった長者は、沈みゆく太陽を招き返そうと
黄金の扇を開くなり懸命に太陽をあおぎたてた。すると不思議な事に山の端にかかっていた
夕陽がわずかながら上空へ戻ったのである。人々は喚声をあげ、一気に田植えをやり遂げてしまった。
太陽はそれを待っていたかのように、再び沈み始めた。
ところが、一夜明けてみると昨日苗を植えたばかりの広い田は、一面水に覆われ沼になっていた。
長者はこのときから没落したという。
183あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/17 21:32
そうですね。
Part1でも話を紹介してくれた人がいました。
184好爺:02/12/18 08:07
ある修験者が諸国行脚の途中、摂津国を歩いていると野原のなかで日が暮れ、月の
明かりを頼りに歩いていると、やっと荒れ果てた寺が見つかった。誰もいないので
修験者は本堂に入り、そこで一晩泊まることにした。
本堂には、大日如来の木造が安置されている。修験者はそれに向って呪を唱えていると
近くの森の奥から不気味な風が吹きつけ、まもなく妖しげな声が聞こえてきた。
それも一人や二人ではなく、数十人の集団である。
修験者は恐れおののきながらも、破れ戸の隙間から覗いてみた。修験者の目に映ったのは、
荒れ寺に近づいてくる百人ほどの異形の群れだった。「人を食いたい」
ぞっとするような声がはっきり聞こえた。修験者は「百鬼夜行だ」と思うと
恐怖のあまり、体が動かなくなった。そのうちに異形の群れが本堂のなかに、ぞろぞろと
入ってくる。それとともに、あたり一面に嫌な臭気が広がった。そばで見ていると、
目が一つの者や角が生えているものなどさまざまだった。
185好爺:02/12/18 08:17
修験者は、大日如来にすがるしか道は無いと思い、一心に呪を唱え続けた。
祈りが通じたのか、異形の者達は修験者にまるで気づかないかのように、
それぞれ勝手に本堂の床に座っていく。本道は狭いものだから、座るのに
押し合いへしあいしている。だが、一人だけがあふれて座ることが出来ない。
その異形の者はあたりを見渡すと、不意に座っている連中をかき分けながら
修験者の処へやってきた。
修験者は「食われてしまうのか」と思い悲鳴をあげそうになった。
しかし、間一髪のところで、その異形の者は「こんなところに見慣れぬ不動尊
がある。悪いが、今夜は外へ出ていただこう」といい、修験者の体を抱き上げると
本堂の外へ運んでいったのである。こうして異形のものは全員すわることが
できた、修験者も命拾いできたのであった。
186あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:02
民話の範囲ははっきりしないが、昔話、民間説話、民譚(みんたん)とよぶものとだいたい一致する。
創作説話、創作民話とことなり、個人の空想や作為にもとづかない説話をいう。
187あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:03
民話には次のようなものもふくまれる。
実話や経験談として話され、ときに無責任な話し替えで作為的な誇張をともなう世間話や
、本来は事実の報告である伝説、また夜どおしすごす際にかたられるおとぎばなし、子供
を相手とした童話、庶民の日常生活体験を事実としてのべた笑い話、語り手の信じていな
い話を聞き手をだますためにする大口(おおぐち)ないし法螺(ほら)話、教訓的にしめくくる寓
話、言葉を話すなど人間的属性をもった動物を主人公とする動物譚。
ほかに、民謡、語り物、ことわざ、なぞなぞなどもふくむ。

また、しばしば民話の起源にかかわるものとして神話を民話にふくめることもある。
188あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:05
民話は口頭による伝承ということに重点がおかれるが、民俗学の研究対象としては、中世の説話
をあつめた「御伽草子」や、絵と文をもってつたえた江戸時代の赤本類など、文献によって伝承さ
れたものもふくめている。

その内容や形式にくわえて、非文献と文献とによる伝達様式ともに概念が一致するとされる
語として、英語のfolk tale、ドイツ語のVolksmarchen、フランス語のconte populaireがある。

民間説話、民譚はいずれもこれら諸語の訳語で、民話も英語からの訳語であるといわれている。
189あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:10
これら諸語からの訳語に対し、日本には古くから慣用語として使用されているものとして「昔話」
の語がある。

たとえば、江戸時代後期の戯作者山東京伝の「骨董集」(1814)には、南北朝期の文献とされる
「異制庭訓往来(いせいていきんおうらい)」に「祖父祖母の物語とあるは、むかしむかしぢぢと
ばばとありけり、という発語をとりて、名目したるものなるべければ、童の昔ばなしは、いとふるき
ことなり」とあると紹介し、さらにこの「童の昔ばなし」を聞き手の立場から「どうわ」とよませている。
190あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:15
日本民俗学では、この「昔話」を学術用語として採用してきた。
しかし昔話の概念規定はかならずしも明確とはいえない。
民話との対比でいえば、それは神話、伝説とはっきり区別されている。
191あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:16
ん、新たなる勇者登場のヨカーン
192あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:19
単なるエンカルタからのコピペなんですけどね。
(ちなみにグリムスレの方も私です。)
193あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:23
昔話という語が民俗学の学術用語として固定化するのは、柳田国男が1930年に児童用に編纂した
「日本の昔話」や、そののちに雑誌「旅と伝説」などに発表し、33年に「桃太郎の誕生」としてまとめ
られた一連の論文からとされる。

それ以前には柳田自身、口碑、伝説のたぐいを「民譚」の語に一括して自著「山島民譚集」(1914)
の表題にあてたりしていた。
194あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:28
日本民俗学で「昔話」の語を使用する理由は、それが古くからの慣用語であること、創作童話と
区別できることのほかに、「民間説話」や「民話」では採集調査の際に古老に通じなかったという
体験による。
以来、学術用語としては、民話より概念の範囲がせまい昔話が主流をなし、おもに日本本土に
おける昔話の内容と形式についての整理、規定がなされてきた。
195あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:30
しかし、近年、沖縄やアイヌの文化圏の口頭伝承には、神話、伝説、昔話や世間話が
一体となった話があり、これらは日本本土の昔話には該当しないことがわかってきた
ことや、日本の昔話研究が国内研究から国際的視野にたつ研究へと拡大しつつある
ことなどから、「民話」の語をもちいるのがふさわしい状況になっている。

以下、本文でもちいる民話の語は、昔話とその周辺をふくむものとしてもちいる。
196あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:32
なんかコピペしてる本人が言うのもなんだが、今更ながら勉強になるな。
197あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:33
8 名前: なまえ_____かえす日__ 投稿日: 2002/12/05(木) 07:51

初めて自分のお小遣いで買った本が「日本の幽霊話」と「日本の残酷話」という
子供向け怪談集だった。
そんなもの・・・と言わずに笑って買わせてくれた親に感謝。
198あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 11:48
16 名前: なまえ_____かえす日__ 投稿日: 2002/12/06(金) 08:51

別スレでも書いたのですが わたしの最初におこづかいで買った本が
「日本の幽霊話」「日本の残酷話」でした
出版社も編者も記憶には残っていないのですが・・・
子供向けのクラシックな怪談集でございました
牡丹灯篭四谷怪談番町皿屋敷菊花の契り その他 古典はその本で学びました

その他にも思い出してみると図書館でアヤシイ本読んでいたなぁ・・・
しっぽのある女の子の話とか
身体から綿の吹き出す病気の話とか・・・
あれはいったいなんていう本だったのだろう・・・
199昔話:02/12/18 12:02
昔話がその他の民話とことなる重要な特徴は、語り方に地域性を超越した一定の様式が
あることと、表現様式も歴史性を超越した不変の様式であるという点である。

このため、複雑な物語でも何世紀にもわたって生きつづけることができ、また途中で大きな
変化もうけずに口伝えに世代から世代へ、さらには言語のことなる地域から地域へ伝えら
れていくことができる。
それゆえに、昔話の研究は、起源・発生地と伝播の経路が大きな課題となってきた。
200あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 12:03
昔話の語り方は、「伊勢物語」の「むかし、おとこありけり」や「今昔物語集」の「今は昔」の
ように、「昔々」という発語ではじまり、中間に「げな」「そうな」「とさ」の語をそえた語句を頻
繁に挿入し、結語として話の完了や話の主人公の難題解決、事業の完成の意味をもつ
「一期(いちご)栄えた」「これもそれっきり」などの言葉でむすぶ。

まず、この形式的な語り方が、ほかの民話と昔話とを区別する重要な指標とされる。
201あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 12:03
そのほかの特徴として、話の背後に、時間や地域にかかわりのない普遍的な人間の欲求
達成という目標がある。
多くは主人公の逆境にはじまり、反対者との闘争をへてそれを克服し、大きな試練や、不可
能ないし困難な課題をしばしば援助者の力をかりて解決し、ふさわしい結婚相手や富を獲得
して生活をまっとうする、という主題をもつ。
202あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 12:04
そして主人公と反対者とは、宗教的、道徳的、社会的な局面での善神に対する悪神、正直
に対する不正直のように二元的に対立している場合が多い。

このことから昔話は本来、構造的には二元的形式をもつと考えられている。
また、話の主人公や主要登場人物には固有名詞がないのも特徴のひとつにかぞえられる。
203あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 12:13
昔話には、誕生の仕方に由来する桃太郎や瓜子姫型、動物から人間への変身をとげる
田螺(たにし)息子型、身体の特徴からの一寸法師型、性格からのものぐさ太郎型、職業
名からの芋掘り長者型など、いくつかの形式がある。
そして彼らはほとんどの場合、異常誕生児でもある。

昔話の主人公に固有の名前がない理由については定説がない。
204あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 12:31
一時はdat落ちかと思ったが、二人の救世主のお陰で、大分充実してきたな
205あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 12:35
スレ立て当初から、常にdat落ちの危機にさらされ続けてたからな
一時は完全に諦めてた
206岡山の民話:02/12/18 13:13
207桐生の民話:02/12/18 13:14
208あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 13:19
Jananese Famous Spa Misasa
ttp://www.gaucho.com/misasa/j_index.html
209妖怪通信:02/12/18 13:28
210あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 14:01
まだこんなに知らないサイトがあったとは
211あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 14:05
同一人物か定かでないがこのURLタソも勇者だとオモウ
地味ながらもグッジョブ!
212あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 14:18
今日は活気があるな
213あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 14:39
全ては勇者たちのお陰
214あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/18 15:12
誉められちった
215伝説:02/12/18 17:43
昔話の特徴をいう場合によく比較の対象とされるのは伝説である。
伝説は事物に依存して存在し、昔話はそれ自体として独立に存在するということを
最初に指摘したのはグリム兄弟である。
216伝説:02/12/18 17:44
柳田国男もまた伝説と昔話・民話を次のように区別した。

(1)伝説にはその話を信じる者があるが昔話にはない。
(2)伝説はかならず一つの村里に定着しているが、昔話はいつの場合でも「昔々あるところに」である。
(3)昔話には型があり、文句があって、それをかえることはまちがいであるが、伝説にはきまった様式
 がなく、語り手の都合で長くも短くもなりうる。
217伝説:02/12/18 17:45
昔話は本質的にはフィクションであり、伝説は真実の報告である。
伝説は語り手によって信憑性を高めるために、叙述の形式として場所、人物、時代などの
事物とむすびつけられる。
語り手の話し方によっては昔話にもなるため、浦島太郎のように、伝説としてかたられる
地方もあれば、昔話としてかたられる地方もある話もある。
218伝説:02/12/18 17:46
伝説が依存する事物は伝説の伝承地に存在するので、伝説は移動することが少ない。
ただ同じ伝説が各地にある例は多く、昔話と比較して速度はおそいが移動・伝播すると
考えられている。

なかでも平家伝説は国民的、国家的にひろがった伝説のひとつであり、その伝説の
存在から地域的な共通性がみられる甲賀三郎伝説なども、比較的広範囲な伝説で
ある。
同種の伝説が広範に分布する理由については、漂泊の宗教者や遊芸の徒がその運搬
役をになったと考えられている。
219伝説:02/12/18 17:47
いずれにしても伝説はそれを信じる支持者がいなければ消滅する。
822年ころ成立した「日本霊異記」や1120年以後に成立した「今昔物語集」などの
仏教説話は、仏教の布教を目的として聞き手の支持をえるために、具体的な地名、
時代、人物を引き合いにだす伝説的叙述法を応用している。
伝説は、仏教のような世界観や思想を、聞き手の理性にうったえて受容してもらう
ための手段としても利用される。
220神話:02/12/18 20:48
柳田国男の説にしたがえば、昔話や伝説、語り物(歌物語)は神話の後裔である。

彼は、
「最初神話という信じられる説話があって、それが半分ずつ双方へながれくだり、おもしろさおかしさを
主として昔話のほうに、真実または確信を伝説のほうへわかちつたえようとしたのかとも考えられる」
といっている。
柳田は、昔話、伝説、語り物の分化した道をたどれば、神話のもとの姿や日本の固有信仰の実情を
うかがい知ることができると考えていた。
221神話:02/12/18 20:48
神話は、異世界に存在する神によって創造、統制された世界とその住民について説明し、
それを語り手・聞き手ともに真実とみなした物語である。
この神は、よく動物に姿をかえて人間に知恵や道具をあたえるかと思えば、社会秩序を
みだす逆説的創造者トリックスター的性格をもったりするのが特徴である。
神話がほかの民話とことなるのは、語り手、かたる場所、聞き手に条件があり、それを
無視してかたってはならない点にある。
222好爺:02/12/19 01:08
三人の修行者が四国の僻地を巡っていた時のことである。彼等は道に迷い人里まで
なんとか出ようと彷徨っていた。疲労が重くのしかかってきたころ、不意に視界が
開けた。そこは平地で、垣をめぐらせたところもある。人が住んでいるに違いない
と思い、三人はほっとし、うれしくなった。そこで人里までの道を聞いた。
家の中からは僧の姿をした60歳余りの男が現われた。しかし、顔は酷く恐ろしかった。
三人の修行者達は不気味に思ったが、いまさら逃げ出すこともできない。誘われるまま
縁にあがり、座った。「さぞやお疲れでしょう。今支度しますから、食事をしてください」
恐ろしげな顔のわりにはやさしい事をいい、まもなく食膳を運んできた。
三人は食事をすませ、一休みをしていると、主が不意に恐ろしげな声を出し、人を呼んだ。
現われたのは、怪しげな法師である。「例のものを持ってきて、いつものようにするのだ」
主が命じると、法師はどこからか馬の手綱と鞭を持ってきて、修行者の一人を縁から庭へ
引きずり落した。
223好爺:02/12/19 01:28
…続き
あとの二人は「何事が起こるのか」と不安に駆けられていると、法師は突如、庭に
引きずり落した修行者の背中を、鞭で叩き始めたのである。しかも50回続けた。
「助けてくれ!」叩かれるたびに悲鳴をあげたが、残る二人に助ける手立ては無い。
おろおろしているうちに、法師は修行者の衣を剥ぎ取り、肌を剥き出しにすると
さらに50回叩いたのである。100回も鞭で叩かれては、辛抱する事も出来ない。
地面に顔をつけ、倒れてしまった。「引き起こすのだ」冷酷な主の言葉に応じ
法師は地面に伏している修行者を、やおら引き起こす。なんとしたことか。
修行者はたちまち馬と化し、胴ぶるいして立ち上がったのだ。法師はその馬に手綱を
つけ、引き立てていく。それを見ていた二人の修行者は恐ろしさで生きた心地がしない。
しかし、悲観に暮れるまもなく、もう一人も縁から引きずり落され、同じ様に鞭で
叩かれ馬になった。
224好爺:02/12/19 01:46
…続き
残った一人の修行者は半ば諦めながらも「なんとか助かりたい」と心の中で念じ続けた。
主は何を考えているのか、鞭で叩く事を中止し、修行者には「あの田に水があるかどうか
みてくるのだ」という。修行者が田へいってみると、水があった。その事を報告したが
主はうなずくだけだった。まもなく夜になり皆が寝て静かになった。修行者は何も持たずに
家を出ると、足の向いたほうに一目散に走り続けた。途中で一軒の家がありその前に一人の
女が立っていた。修行者は無視して通りすぎようとしたが、女が声をかけてきた。
修行者はやむなく事の次第を話すと女は「お気の毒に。こちらにお入りなさい。
実をいうと、私はその主の長女なのです。なんとか助けたいと思いますが、私にはできません。
もう少し下のほうへ行くと、私の妹が住んでます。手紙を書きますので、それを
持っておいでなさい」といい手紙を書き、渡してくれた。さらにこう言ったのである。
「お話を聞くと、主は二人の修行者を馬へ変えた後、貴方を土の中に埋め、殺そうと
したに違いありません。田に水があるか、見にいかせたのも掘って埋めるためですよ」
225好爺:02/12/19 02:08
…続き
修行者は女に礼をいい、急いで妹の家へ向った。暫く行くと山中に一軒家が見えたので
戸を叩き、出てきた女に手紙を見せた。「姉が言ってきた事なので何とか助けてあげたい
と思います。でも、ここにはとても恐ろしい事があるのですよ。少しの間、此処に
隠れていてください」女はそういい、修行者を奥の一間につれていった。
「ちょうど、その時刻がきました。決して物音をたてないでくださいね」
女が念を押す。まもなく何やら恐ろしげな気配がすると、酷く異様なにおいがただよってくる。
修行者は背筋が冷たくなり思わず身震いした。何か正体のわからぬ者が入ってきて、
女と話し始めたが、まもなく一緒に寝た気配が伝わってくる。じっと聞き耳を立てて
いると、交わりをすませ、帰っていった。
「この女は鬼の女房にちがいない。鬼がいつもやってきて同衾していくのだ」
修行者はそう思ったが、それにしても気味の悪い事はなはだしい。
女が修行者の隠れている所へやってくると、人里への道を教えてくれた。修行者はひたすら
その道を急いだ。やがて夜が明ける頃、ようやく人里にたどりつく事が出来たという。
226日本の昔話(リンク集):02/12/19 10:48
227姥皮をかぶったラサメイト (チベット):02/12/19 12:46
昔、一人の美しい娘がいました。
その美しさに引かれ、魔物三兄弟が求婚してきました。
娘の父親は言いました。

「嫁に欲しかったら、娘の名前を当ててからだ」
228あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 12:48
帰り道、魔物たちは、カラスに出会いました。
「どうだい、娘の名を聞きだしてくれたら、ごちそうしてやるぞ」
カラスはすぐに飛び立ち、娘の家の屋根に羽を休めました。

すると家の中から、
「ラサメイト、ウマに餌をやってちょうだい」
という声。

カラスは、「しめた」とばかり、ラサメイトの名を口のなかで繰り
返しながら帰っていきました。
229あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 12:49
ところが小川のほとりまでくると、川の中においしそうな魚が
いるではありませんか。

「あ、サカナだ!」
カラスは思わずこう叫ぶと、
「サカナ、サカナ」
と口ずさみながらとんで帰って、
「娘の名は『サカナ』です」
と魔物に伝えました。
230あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 12:50
「娘の名は『サカナ』だ。嫁にもらおう」

魔物たちは娘の父親にいいました。
父親は、首を横にふりました。
231あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 12:51
魔物たちは小鳥に出会いました。

今度は小鳥に頼みました。
小鳥は、娘の家の屋根にとまって、
「ラサメイトや」
と呼ぶ声を聞きました。

小鳥は、その名を覚えて飛び立ちましたが、途中で木にとまった
はずみに、足に刺がささりました。
232あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 12:52
そのとたん、名前の半分をわすれて
「ツー(刺)メイト、ツーメイト」
とつぶやいて帰り、
「娘の名は、ツーメイトです」
と魔物に報告しました。

もちろん、魔物三兄弟は今度も断られてしまいました。
233あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 12:53
帰り道、カササギに出会いました。

同じようにカササギに頼むと、賢いカササギは、「ラサメイト」という
名をしっかり心にとめて、帰ってきて伝えました。
「娘の名前はラサメイトだ」

魔物三兄弟は、とうとう娘の名をいいあてたのです。
234あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 12:57
父親は娘を嫁がせるほかはありません。
娘は、父親から贈られた馬に乗って、魔物たちの家へ行きました。

魔物たちの家には、空かずの間がありました。
魔物は出かけるとき、いつも言いました。
「奥の空かずの間を覗いてはならんぞ」
235あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 13:11
そう言われると一層覗いてみたくてたまりません。
ところが扉の鍵を探している間に、いつも魔物は帰ってきてしまうのです。

ある日のこと。魔物たちが出かけるや、娘はすばやく鍵の束を取りだすと、
金の鍵で金の扉を開けてみました。
中は馬のしかばねが山のように積んでありました。
236あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 13:12
次に銀の鍵で銀の扉を開けてみると、羊のしかばねが山と積んでありました。
鉄の鍵で鉄の扉を開けてみると、なんと、やせ細った老婆のなきがらが
いくつも転がっているではありませんか。

その中に、やせて骨ばかりになってはいるものの、まだ息のある老婆がいたのです。
237あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 13:21
「魔物は人の血をを吸うんだよ。私たちはみな魔物の妻だった。年をとると、
ここに閉じこめられてしまうのだ。さあ、早く、私の皮を着て、お逃げ!」
238あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 13:27
老婆の皮を着ると、娘はみるみる老婆の姿に変わりました。
大急ぎで魔物の家から逃げ出し、どんどん逃げて行くうちに、ばったりと
魔物に出くわしてしまいました。

すると魔物はけげんな顔をして、
「どこに行くんだ、婆さん」
と言ったので、娘はほっとして、
「ものごいに行きますんで、はい」
とうまく言い逃れたものの、歩き出したとたん、チャリンと、身につけていた
鍵が音を立てました。

「なんの音だ」
239あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 13:48
ドキドキ( ・∀・)
240あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 13:59
すかさず魔物が問い詰めました。

「おやまあ、わたしゃ、こんなに痩てるものだから、骨と骨とが当って
鳴ってしまったんですよ」
魔物は、娘を離しました。

家に帰ってみると、娘の姿はなく、開かずの扉は開っぱなし。
「さては!」
と追いかけてきました。

娘が振り返ると、魔物たちが後ろに迫っているではありませんか。
娘はそこにいたウサギに頼みました。
「隠して。追われているの。」
241あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 14:00
ウサギは、羊の皮でできたふいごのなかに、娘を隠してやりました。

追いついた魔物が、
「娘をみなかったか」
と、ウサギに聞きました。
「その人なら、たったいま川に身を投げたよ」

その川はとても深く、助かる見込みはありません。
魔物たちはあきらめて帰っていきました。 
242あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 14:02
娘は、歩き疲れて、とある一軒の家にたどりつきました。
その家の主は、きたない老婆を一目見るなり、追い払ってしまいました。

しばらくいくと小さなあばらやがありました。
白いひげの老人がにこやかに迎えて言いました。
「息子の嫁になってくださらんかのう」
243あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 14:02
娘は驚きました。
どうしてうば皮が見抜かれたのでしょう。

それは、天の神でした。
娘はうば皮を脱いで、神の息子としあわせに暮らしました。
244娘のテーと竹 (朝鮮半島):02/12/19 15:57
テーという娘がいた。
テーには継母がいたが、その継母にいつも苛められていた。

ある時、父親が狩りで長留守の間に、継母はテーに毒まんじゅうを
食べさせて殺し、こっそり裏の畑に埋めた。
テーを埋めたところには一本のすらりとした茎が生えた。

その茎を欲しいという男がいたので、継母はくれてやった。
男はその茎で笛を作り、吹いてみた。
245あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 15:58
お父さん、お母さん♪
あなた方の娘テーは、継母に殺されました♪
この茎は私の骨です♪
246あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 15:58
男は、近所中を走り回ってこれを吹き鳴らした。
そのうちついに父親の耳にこれが入った。
父親は怒って継母を殺した。
247あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 15:59
その後、茎は増えつづた。
その茎は、娘の名を取って竹(テー)と呼ばれるようになった。
>>243
面白かったよー、でも今度やるときは下げでやってほしい........
249ネギを植えた人:02/12/19 17:08
人間が、まだネギを食べなかった頃の話です。

その頃、人間はよく同じ人間を食べていました。
お互いに相手が牛に見えるからです。
ある男が、やはり間違えて自分の兄弟を食べてしまいました。
「ああ嫌だ嫌だ。何て浅ましいことだろう。こんな所に暮らすのはつくづく嫌だ。」

間違えて自分の兄弟を食べてしまったその人は、家を後にして旅に出ました。
251あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 17:51
>248
ここはさげ進行とかそんなしばりはないよ?
252あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 18:02
昔話アジア編をカキコしてる勇者タソ気にせずゴーゴー!
>251
複数に分けた文章を投稿する時は
ageながらやると割り込まれる可能性があるから、
ageるのは最後だけにしたほうがいいよってことじゃない?
ってsageでも割り込まれる時は割り込まれるか。(w
255248:02/12/19 18:42
>>253
うん、そのつもりで言った。
256249,250:02/12/19 18:45
ちょっと旅に出てました。

>248, >251->255
じゃあ、長い話のときはsage進行で最後に挙げるということで。

それにしても>249の出だしが好きだな。
>その頃、人間はよく同じ人間を食べていました。
>お互いに相手が牛に見えるからです。
257251-252:02/12/19 19:07
>253-255
理由は分かった

でもあげさげはカキコする人の裁量でやるもんじゃない?
(たたいてる訳ではないよ)

ま、これまでどうりマターリといきませう!
「広い世界にはきっとどこか、人間が人間に見える国があるに違いない。
何年がかかってもいい。その国を探そう。」
長い間あてのない旅が続きました。その間、山の奥にも、海辺へも行きま
したが、とこへ行ってみてもやっぱり人間同士、食べ合いをしていました。
何度も落ち込みながらも、それでもあきらめずに旅を続けました。

秋や冬を何度も送り迎えました。若かったその人もいつのまにか年を取り
白髪がだいぶ増えた時、ある見知らぬ国へ辿り着きました。
それが長い間その人が探していた国でした。
男は、その国の老人に出会った時、自分の旅の目的を話しました。

「まあまあ、それはえらい苦労をなさった。なにね、もとは、こちらでも
やっぱり人間が牛に見えたものですよ。それで、始終、間違いが起こったが、
ネギを食べるようになってから、もうその間違いもなくなりましたんじゃ。」

「ネギですって!」
「こっちへ来て見なされ。あれがネギというものです。」

相手の老人は、親切に男を案内して、ネギ畑のネギを見せ、作り方、食べ方を
教えてくれました。
男は、ネギの種を分けてもらい、やっと自分の国に帰ることになりました。

人間が人間に見えるようになる───そう思うと、一刻も早くネギを自分の国に
持ち帰りたくて、遠い道のりも、男には苦になりませんでした。
自分の国に着くと、男は真っ先に柔らかい土にネギの種を蒔きました。
そして、それから久しぶりに懐かしい知人友人を尋ねることにしました。
しかし久しぶりの友達には彼が牛に見えました。

「おやおや、なんてまあ、よく鳴く牛だろう。」
「違う、違う。よく見なさい。私はあなたの友達です。」
「本当だ。何でもいいから早くつかまえてしまえ。」
263ネギを植えた人 (朝鮮半島):02/12/19 19:41
人々は口々に言い、男は捕まり、とうとう食べられてしまいました。

その後、しばらくして、人々は畑のすみにこれまで目にしたこともない
青い青い草が生えていることに気づきました。
それがネギだということも、自分達が食べてしまった男が植えたという
ことも知らずに、人々は試しにそれを食べてみました。
すると、やっと人間が人間に見えるようになりました。

それからはみんながネギを食べるようになり、もう昔のように牛と人間を
間違えることはなくなりました。
しかし誰もネギを植えた人を知りません。
264あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 20:01
ちなみにネタ元は、子供のころ読んだ「岩波少年少女文庫」です。
名作が多いので、次なる勇者を目指す方は漁ってみてくさだい。

ここらで、そろそろ湿っぽい話も欲しいんですが。
265あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 20:09
266あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 21:11
>264
だれか雨月物語やってくれないかな
267あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 21:41
>171->181
かちかち山 

江戸時代に五大昔話のひとつに数えられ、ひろくよまれている動物昔話。

爺(じじ)が山の畑ではたらいていると、タヌキが邪魔をするので、捕えて家にかえり、タヌキ汁に
しろと婆(ばば)にいってつるしておく。
しかしタヌキは米つきを手つだうとだまして婆に縄をとかせ、婆を殺して婆汁にし、爺に食わせて
逃げかえる。
ウサギがあだ討ちをしてやるといい、タヌキをしば刈りにつれだして背中の薪に火をつけて焼けど
させる。さらに薬に唐辛子をいれてやけどにつけていたがらせ、最後には舟遊びをして、ウサギ
は木舟にのり、タヌキを泥舟にのせたので、泥舟はしずんで、タヌキは死ぬ。
268あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 21:42
「かちかち山」の題は、タヌキの背中の薪に火をつけるとき火打石をうつ音をタヌキが何か
とたずね、ウサギがかちかち山のかちかち鳥の声だとこたえたことによる。

類話は各地にあり、もとは前半の「タヌキの婆汁」の話と後半の「ウサギとタヌキ」の話は
別の話だったとみられる。各地につたわる2種類の話が重なって成立したものであろう。

文献としては江戸時代の赤本「兎(うさぎ)の大手柄」が古い。
部分的に類似する話は日本だけでなく、北欧、北米先住民、東南アジアなどにも存在する。

Microsoft(R) Encarta(R) Reference Library 2002. (C) 1993-2001 Microsoft Corporation.
269あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/19 23:29
銅鑼衛門さん、最近来ないな
270Zanoni:02/12/20 00:04
駒田信二の「中国怪奇物語」シリーズ、ここに
ttp://www.paburi.com/paburi/publisher/kd/mokuroku/kako.shtml
ありました。

立ち読みも出来ます。
271好爺:02/12/20 02:28
かちかち山の続きを実はあの平賀源内が書いている。内容は余りにもくだらないけど
参考までに・・・ぜんぜんオカルトではないけど。

兎に父を殺された子狸は怒って兎を追いかけた。川の側まで追い詰めた時に刀で兎の
首を刎ねると頭は鵜に体は鷺に変わった。2羽の鳥は、魚を取ってくるので赦して欲しい
と懇願した。最初に鷺を放すと子狸をからかうように空を舞って何処かへ飛んでいって
しまった。詐欺にあった子狸は怒りにふるえ鵜には首に紐をつけ魚を取るように命じた。
それいらい鵜は紐をつけられ魚をとるようになった。

平賀源内も馬鹿な話を結構書いているみたいで。
272249:02/12/20 11:57
>270
「中国怪奇物語」シリーズ、イイ!!
独特の湿っぽさがたまらない。

でも「妖怪編」は立ち読みできたんだけど、肝心の「幽霊編」、全然読まないうちに
間違って閉じてしまったんで、また開こうとしたら、スクランブルがかかって読めない。(鬱
273黄表紙とは〜江戸時代の大人の漫画〜 :02/12/20 17:12
274あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/20 17:18
>273
個人的にこの手の物大好きでつ
この頃のかなを解読する本とか買おうと思ってました。
が、ビミョーニスレ違いかも?
恐い本とかもありそうだけどね
275あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/20 18:01
>273
このサイトいいよね

>274
ここは割と縛りが弱いスレだから、あんまりスレ違いかとか気にしないでいいんじゃない?
時々学術的な解説があると、勉強になっていい。
Part1はあくまでアニメの話で、黄表紙が何かとか、そういうのが全然なかったからね。
276274:02/12/20 18:43
>時々学術的な解説があると、勉強になっていい
禿堂どす。縛りはユルークかつマターリがいいやね。

ただ『恐い』の一点だけがチョト気になるんだわ
他のみんなはどうおもいます?

あ 昔話だったらなんでもOK(範囲はアジア近辺)
い たまには恐くない話しもよし
う 『恐い』昔話でしばっとこう(ピシッ!)

ついでに・・・
ヤフオクでゲットした勇者のツール到着!
今ここに新たなる勇者が誕生しる!(w
277あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/20 18:59
「怖い」ことよりスレタイ通り、「オカルト」をキーワードにした方がいいかもしれませんね。

まあ「本当のグリム童話」スレがオカルト昔話西洋編、こちらがオカルト昔話東洋編って
ことで調度住み分けができると思います。
278あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/20 21:18
昨日一日でスレがかなり伸びたんで、今日は300突破するか
と思ったが、無理か
279あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/20 22:02
>274
>この頃のかなを解読

崩し字ってこと?
280弁天丸:02/12/20 22:50

昔、佐賀関の早吸姫神社の神主に一人娘がおった。
娘の背中には生れつき三枚の鱗があったそうな。
ある夜、一人の行脚僧がたずねてきて一夜の宿を求めた。

ところが翌朝、僧の姿は無く娘が神主夫婦に言うことには
『わたしには因縁があってあなたがたの娘に生まれてきたのですが、
じつは沈堕の滝に住むはずの蛇でございます。今日からわたしはその滝で
暮らさねばなりませんので、わたしを滝まで運んでください。』とのこと。

神主夫婦の驚きと悲しみはたいそうなものであったが、なにごとも
因縁だとあきらめて、娘を美しく飾り、駕篭にのせ、沈堕の滝まで
連れていったのである。
281弁天丸:02/12/20 22:58

娘は滝のそばで両親に別れをつげると、滝壷に身をおどらせていった。
神主夫婦は、なおも立ち去りがたく、滝壷の底を見つめていた。
すると、娘が再び髪振り乱して姿をあらわしこう言うのであった。
『わたしがこの滝壷に潜ってみるとすでに主が住み着いていたのです。
わたしはこの主を殺さなくてはこの滝の主になることができません。
どうか父上の脇差をわたくしに貸してください。』

娘は神主から脇差をうけとると、それを口にくわえ、もんどりうって
滝壷の底へもぐっていった。

やがて滝壷の底の方でおおきな音がすると、滝壷はみるみるうちに真っ赤に
染まり、その中から大蛇が血に染まった脇差をくわえて姿を見せたのである。
『ようやく、わたしがこの滝の主になることができました。どうか安心して
お帰りください。』

大蛇は、そう言い残すと、また滝壷の底へともぐっていった。滝はそのとき
いつものとおりのたたずまいに戻って、美しい緑色の水面と白い瀑布を見せた
という。
282弁天丸:02/12/21 13:37

昔姥岳のふもとに美しい一人の娘が住んでいた。

ところが毎晩、毎晩、その娘のところに通ってくる男がおった。
そして娘は月日をかさねるうち、身ごもってしまった。
毋者があやしんで娘に問うた。『そなたのもとに通う男はいったいだれじゃのう』
『来るのは見えれど帰るときは姿が見えません』『それならば、男が朝帰るとき
しるしをつけておくがよい』

娘は母者のことばに従って男の水色の狩衣のおくみのあたりに針を刺し麻糸の
緒環をつけた。その糸をたどってあとをつけていくと、姥岳の山の中の大きな岩屋
に娘は入っていった。
283弁天丸:02/12/21 13:55

すると岩屋の奥で大きな声でうなっているのが聞こえてきた。娘は男がうなって
いるのだと思い、『わたしはあなたのお姿を拝見するために、ここまでやってきた
のですが、どうかなさったのですか』とたずねると、岩屋の奥から男の答えがかえって
きた。『われは今ひとの姿ではない、おまえがわが姿を見たならば息も絶えん思い
をするであろう。おまえの胎内におる子は男の子である。生まれでて成長すれば
九州、対馬、壱岐には肩をならべる者もいない程の武将になるであろう』

娘は男の声を耳にするとますます逢いたくなり、かさねて姿を見せてほしいと、たの
みこんだ。

すると突然岩屋の中がはげしく振動して長さ十四、五丈もあろうかと思われる大蛇が
奥からはいだしてきた。娘は息も絶えんばかりにおどろいた。娘のあとからついてき
た従者どもも、ころげるようにして岩屋から逃げさっていってしまった。

娘が男の刈依のおくみに刺したと思った針が大蛇ののど笛に突き刺さっていたので
ある。

やがて娘はようようの思いでわが家に帰りつくと、きゅうに産気ずき男の子を生み落
としたのである。

その男の子はのちに出世し緒方三郎惟栄となって九州中にその名をしられるほどの
侍になったということである。
284弁天丸:02/12/21 14:41

  ∧_∧      ふ〜読むのとカキコじゃおお違い
_(;´Д`)__  ま、まあのんびり逝くか・・
 ノ  /⊃ 
⊂_C_ノ___  
285好爺:02/12/21 23:24
大和国十市郡に裕福な家があり、そこのひとり娘はたいそう美人と評判だった。
しかし、多くの男達が求婚してきたのに、いずれも「気が進まない」といって断り、
未だに独り身を通していた。ところが、あるとき、ひとりの男が結婚を申し込み
さまざまな品を届けてきた。娘はどの品も気に入ったし、男の振る舞いも悪くはない。
「あのお方なら申し分あるまい」両親もそういって、熱心に結婚を勧めた。
娘も心を許し、男を迎え入れる事にした。男ははじめての夜、娘の家に泊まった。
娘夫婦が閨にへ入るのを見届けて、両親も床についた。
暫く時が過ぎ両親がうとうとしていたころ、娘の閨から突如として「痛い」という
叫び声が聞こえてくる。それが三度もつづいたのに、両親は
「はじめての交わりゆえ、娘が痛がっているのだろう」と思い、そのまま眠ってしまった。
翌朝、食事の支度が出来たというのに、娘たちは起きてこない。両親もようやく不審に
思い、娘の閨へ呼びにいった。だが、声をかけても返事がない。やむなく閨に入り、
なかをのぞいてみた。
なんとしたことか、そこにあるのは、娘の頭と指一本だけしか残っていなかった。
286あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/22 00:57
>284
ニューフェース、期待してるんでがんばってくれ
287弁天丸:02/12/22 14:02

( ・∀・) 声援ありがと!マタ−リとがんばりまつ
288弁天丸:02/12/22 16:35

みちのくの
安達の原の黒塚に
鬼こもれりと
聞くはまことか    .................『大和物語』


鬼婆はもと京の公家邸に仕えて唖の姫君の養育にあたっていた
岩手とういう乳母であった。妊婦の肝が唖の妙薬だと聞いて阿武隈川
の湖畔に住んで妊婦のあらわれるのを待ったのである。

ある日妊婦が泊まった。岩手はその妊婦を殺して肝をとるのだが、
妊婦が息絶えるとき「親をたずねていたが、とうとう会えなかった」
という。そこで女の守り袋を見ると妊婦は岩手の娘だったのであった。

岩手は驚きと悲しみのあまり鬼と化し、以来宿を求める旅人をあやめては
血を吸い生き肝を食らう鬼婆となったという。
289好爺:02/12/23 00:54
天保の頃、小松島に大和屋という染物屋があった。大きな店ではないが、主人の茂右衛門は
人を使って真面目に商売を営んでいた。ある日、蔵の下に狸が住み着いているのを使用人
が見つけ、煙でいぶしたり、湯を流し込んだり、追い出そうとしていた。それを聞きつけた
茂右衛門がやってきて、慌てて止めにはいった。「生き物にそのような事をしてはなりません。
狸というのは賢い動物で、大切にしてあげればいいことがあるはずなのだ」
それ以来、狸をいじめる事をしなくなったばかりか、主人の命令で毎日餌を与えるようになった。
すると不思議な事に商売が繁盛しはじめたのである。狸に餌をやって可愛がることに不平を
もっていた使用人達も「狸の御利益だ」と思い違いを認めた。そのうちに使用人の万吉の様子が
おかしくなった。近頃の様子は尋常ではない。ある夜の頃、主人の茂右衛門の部屋を訪ねて、
こんな事を話し始めた。「私は狸の金長です。先日は追い出されそうなところを救っていただいた
ばかりか、毎日御馳走まで下さって、まことにありがとうございます」茂右衛門は万吉が狸に
取り憑かれたと知って驚いたが、丁寧な話しぶりに心をひかれて続きを聞いてみると
もとは町外れの鎮守の森に住んでいたという。ところが水害ですめなくなり、しかたなく
店の蔵の下に潜り込んだという次第で、もうしばらく厄介になりたい。勿論そのお礼に
店を繁盛させるというので茂右衛門はよろこんで承諾した。
290好爺:02/12/23 01:22
…続き
おかげで店は大繁盛で茂右衛門は屋敷の中に『金長大明神』を祀るほどだった。
やがて、狸の御利益の噂が広まり、人々がはるばるやってくるほどだった。
そんなある晩ののこと、万吉が茂右衛門の部屋を訪ねてきた。狸には身分があって
金長はまだ位を持っていなかった。このままでは一生、他の狸に馬鹿にされることに
なる。だから、狸の総大将である六右衛門のところへ修行に行きたい、という。
留守中のことは仲間の狸に言い渡しておくというので、茂右衛門は快く送り出した。
291好爺:02/12/23 01:23
…続き
一年ばかりが過ぎて、万吉が主人の部屋へやってきた。とうとう金長が帰ってきたの
だった。ところが金長には元気が無い。六右衛門に忠実に仕えたおかげで、
正一位の位を授かり、手下も何人も与えられたという。ところが六右衛門に
気に入られたのが、かえって仇ととなり、ここに残れと命じられたのだった。
金長には、茂右衛門との約束があるので、その事を話すと、六右衛門はたいそう怒った。
怒りにかられた六右衛門は金長を襲い、手下達をことごとく殺してしまった。
金長はようやく難を逃れて、茂右衛門の店まで戻ってきたのだった。
実は金長は最後の別れを告げるために来たのであった。そして、討ち死にする覚悟である
ことを告げ、去っていった。茂右衛門には止める間もなかった。
それ以来金長の消息はわからない。狸土同士の合戦は鮮烈をきわめて、両者相討ち
となったのだろう、というのがもっぱらの噂だった。
オカルトというよりも、番長漫画やヤクザ映画なノリですね
全盛期の深作に撮ってもらいたいなあ
293好爺:02/12/24 00:58
ある公家が女とともに、一条大路に面した桟敷屋に泊まったときのことである。
真夜中になると、突如として風が吹き荒れ、激しい雨も降ってきた。
奇怪な事に、嵐の中を「諸行無常」と声をあげながら大路を歩く者達がいる。
公家は不審に思い、蔀戸をすこし押し開けてみた。公家は驚き声を失った。
なんと、蔀の真正面に馬面の大男が不気味な笑い顔で立っていたのである。
桟敷屋は眺望を良くする為、床を高くかまえた家だが、その蔀戸の真正面に男の顔が
見えたというのは、並外れた大男だったということだ。馬面をした大男と思ったが、
よく見ると馬そのものの顔をした鬼である。公家は恐ろしさのあまり、急いで蔀戸を
閉めると、奥に逃げ込んだ。ところが馬頭の鬼は外から蔀戸をおしあげ、
「よく見てくれ」と太く、威圧的な声で言った。公家は恐怖で体がふるえたが、
それでも太刀を抜き、女をかばった。やがて馬頭の鬼はすっと体を引き、雨が降る
闇の中へ消えていった。「あれは百鬼夜行に違いない」と公家はそう思い、それから
二度とその桟敷屋には泊まらなかった。それにしてもわからないのは、馬頭の鬼が
ただ脅しただけでなんの害も与えずに帰っていったことだ。
しかし、公家は生涯、その事を思い出し、怯え続けたという。
294あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/24 10:10
好爺さん、いつもありがとうございます。
ただ、字が固まりすぎてちょっと読みにくいので行をあけていただくとありがたいんですが。
295貧乏神 (香川県中多度郡):02/12/25 00:15
あるところに、若い夫婦者がすんでいました。
嫁がしょうたれ(不精者)で、お茶を飲んだら茶がらを、ご飯をたべたら食べ残しを、くど(竈)の
前へすてていました。

そこで、しまいには貧乏神がつけこんで、その家に入りこんできました。そのために、しだいに
貧乏になって、しまいにはどうにもこうにもしようがないようになって来ました。正月が近づいて
も餅も搗けむ、はてどうしたものだろうかと思っているうちに、とうとう年の晩が来ました。
296貧乏神 (香川県中多度郡):02/12/25 00:30
親爺は、薪もないので座板でももやそうと、座板をはがいてくどへくべてあたっていた。

ほいだら、奥の方でなんだか音を立てるものがありました。
こそこそしているので何かと思っていると、ぼろを着たしゃぐま(きたない)の老人がでてきた。
親爺が燃えている座板でなぐろうとすると。
「俺にも火にあたらせ」
といって、火にあたった。
ほいでどういうかと思っていると、
「俺がこの家へ来てからもう八年になるが、いまでは何もなくなってしまいました。お前の家内
はくどの前へお茶かすや、ご飯のかすを投げるから、俺は大すきだ。それで俺はこの家に来て
いるのだ。お前がもし、分限者になりたけりゃ家内に暇を出せ」
といった。

そこで、男も家内に暇を出す気になって、暇を出してしまいました。
297貧乏神 (香川県中多度郡):02/12/25 00:41
ほいで貧乏神はいいました。
「町へ行って酒を一升買って来い。」
男が徳利がないといえば、
「唐津屋へ行って買って来い」
と教えました。

男はいわれた通りに、唐津屋へ行って徳利を買い、こんどは酒屋へ行って酒を
一升入れてもらって来ました。
この金はみんなしゃぐま老人が出してくれました。
298貧乏神 (香川県中多度郡) :02/12/25 01:10
酒をもって帰って二人で飲んでいました。
そして老人がいうことには、
「今晩は年の晩じゃけに、下へ下へというて殿さまがお通りになる。殿さまが
駕籠に乗って向こうから来るけん、そのとき駕籠のなかをめがけてなぐりこめ。」

男は
「そんな恐ろしいことは出来るもんじゃない」
というと、貧乏神は
「それよりほかには、お前の家が金持ちになる法はない。どうしてもなぐりこめ」
といいました。
299貧乏神 (香川県中多度郡) :02/12/25 01:26
男は、貧乏神のいうことに逆らうわけにもいかぬと思って、おうこ(天秤棒)
をもって待ちかまえていました。すると、やはり貧乏神のいうとおり、たく
さんの提灯をつけてお駕籠がやって来ました。

おうこで駕籠の中をなぐろうとしたが、あやまって先きぶれをなぐりました。
するとぼこっとすぐに死んでしまいました。
ばててきたので残りはまた明日にします
301貧乏神 (香川県中多度郡) :02/12/25 12:38
そして駕籠はまっすぐに通りすぎてしまいました。
死んだ先きぶれの者を見ると銅貨であった。

男があきれて見ていると、貧乏神がやってきました。
「どうして殿さまをなぐらなかったか」
とたずねました。
それから、
「年があけたらもういちど駕籠が来るけに、それをなぐればよい」
と教えました。
302貧乏神 (香川県中多度郡) :02/12/25 12:43
年があけて元旦の晩がやって来ました。
門へ出てまっていると、提灯に火がついて殿さまの行列がやって来ました。
男はおうこで殿さまの駕籠をめがけて打ったところが、大きな音がして何かくずれました。
駕籠のなかからは、一分や小判がざくざく出て来ました。
その一分や小判を拾い集めて、男はまた昔のように分限者になったそうです。
元ネタは、岩波文庫
ttp://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=01788202
です。

やっぱり本からの抜き書きはきついわ
304あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 13:36
民俗学・神話学ベースのおすすめ作品ってある?
ttp://academy.2ch.net/test/read.cgi/min/986444023/
◆◆ ねこ(猫)についての神話 ◆◆
ttp://academy.2ch.net/test/read.cgi/min/997631757/
305物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 13:42
昔、ある金持ちの家に一人の男の子がありました。
物語を聞くのが大好きで、物語を聞くたびに、
「物語をためておくんだ。」
と言って、腰にぶら下げている袋の口を開けて、その中へ物語を押し込んでいました。
そして物語が逃げ出さないように、しっかりと袋の口を結んでおきました。
306物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 13:45
お嫁さんを迎える支度で、家の中は大騒ぎをしているとき竈で召し使いは
火をたいていました。

するとどこからともなく囁き声が漏れてきました。
じっと耳をすますとそれは壁に掛けてある袋から聞こえてくるのでした。
307物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 13:53
「おいみんな、明日はあの子供の結婚式だね。俺たちをこんなにぎゅうぎゅう押し込んで、
俺たちを苦しめたんだから、かたきをとってやろうよ。」
と一人が言うと、
「うん、俺もそう思っていたのさ。明日はあいつが馬に乗って行くだろう。だから、俺は途中
できれいなイチゴになって、真っ赤に実って道端で待っていてやろう。そしたらあいつは
きっと食べたくなって、食べたくなって----。もし食べたら、あいつを殺しちまうのさ。」
と一人が言いました。
308物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 14:17
「それでも死ななかったら今度は俺が道端のきれいな井戸水になってちっちゃなふくべを浮かべて
おいてやろう。するとあいつはのどが渇いて水を飲むだろう。もし飲んだらあいつを苦しめてやるんだ。」
と次の一人が言いました。

すると3番目が
「じゃあお前がしくじったら今度は俺が真っ赤に焼けた金串になった籾俵の中に隠れていよう。そして
馬から下りたときに、足を焼き焦がしてやるんだ。」
と言いました。

するとまた別の声が言うことには、
「もしそれでもだめだったら、最後に俺は細長い糸蛇になって、花婿、花嫁の床の下に隠れていよう。
そして噛みついてやるんだ。」
ちと一休み
みんなよくやるなぁ
310物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 14:57
竈のそばでそれを聞いた召し使いはびっくりしました。
これは大変一大事、明日はどんなことがあっても若旦那の馬の手綱は
自分が取ろうと心に決めました。
311物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 15:00
あくる朝早く、結婚の行列の支度ができて花嫁さんを迎えに行く事になりました。
召し使いは飛んで出て、花婿の馬子にしてくれと言い出しました。
「お前は、うちにいるがいい、他に用事もあることだから。」
と、あるじが止めましたけれども、
「何が何でも今日だけは馬子になるんだ。」
と言って聞きません。

とうとうあるじも根負けして、花婿の手綱を召し使いに取らせることになりました。
312物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 15:04
しばらく行くと、行列は野道にさしかかりました。
道端に、真っ赤な野イチゴがたくさん実っていました。

「ちょっと馬を止めて、あのイチゴを取っておくれ。」
花婿が馬の上から声をかけました。
召し使いはここぞとばかり馬を急がせながら、
「まあ、まあ、我慢してください。イチゴなんかはどこにだってありますから。」
そう言って、馬にピシリと鞭をあてました。
313物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 15:15
またしばらく行くと、今度は道端に涼しそうに湧いているきれいな井戸がありました。
そこには小さな水汲みのふくべまでついていました。

「あの井戸水を一杯汲んできて飲ましておくれ。さっきから喉が渇いてたまらないんだ。」
と、花婿は召し使いに言いました。
今度も召し使いは馬を急がせながら、
「あの木陰に入れば、いっぺんに喉の渇きなんか止まりますよ。」
と言って、前よりも一層強く馬にピシリと鞭をあてました。
314物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 15:19
花婿は馬の上でブツブツ不平を鳴らしましたが、召し使いは構わずズンズン走って、
花嫁の家へ着くきました。

花嫁の家には大勢の人達が待っておりました。
315物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 15:26
召し使いは馬を庭に入れて籾俵のすぐそばに行きました。
花婿がいざ足を下ろそうとしたとき、召し使いはドッと花婿を押し倒してすぐに
敷きござの上へ落としました。

花婿は恥ずかしさのあまり、真っ赤になりましたがその場で召し使いを叱るわけ
にもいかず、そのまま花嫁と結婚式を挙げました。
結婚式のお祝いも済んで、みんなは帰って行きました。
316物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 15:37
やがて、夜もふけていきました。
召し使いは剣を持って、花婿、花嫁が入っている部屋の縁側の下に隠れていました。
花婿、花嫁が明かりを消して、寝床に着こうというときです。
召し使いは部屋の戸を開いて、いきなり部屋に飛び込んで行きました。
317物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 15:59
驚いたのは、花婿、花嫁です。
「誰だっ」
と、二人は寝床から跳ね起きました。
「若旦那様、わけはあとで話します。ちょっとそこをどいて下さい。」
318物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 16:08
召し使いはそう言いざま部屋に敷いてある寝床を跳ね除けました。
床の下には、何百という糸蛇が一つに絡み合っていました。

召し使いはものも言わずに、手にした剣を振り回して糸蛇に切りつけました。
切られた糸蛇は、赤い口を開けて、黒い二又の舌を動かしながら四方八方に逃げ回りました。
召し使いは狂ったように糸蛇をみんな切り殺しました。
319物語のふくろ (朝鮮):02/12/25 16:18
そして、大きく息をつきながら、
「若旦那様、実はこういうわけなのです。」
そう言って、袋の中から聞こえてきた物語を残らず話しました。

だから、物語を聞いてしまっておいたりなぞしないものです。
聞いた話は、次から次へと人に聞かせなければなりません。
 ( ・∀・) パチパチパチ おもろかったよ
 しかし今さらながら良スレだよね・・・皆で話を持ち寄ってさ
 私もあとでうpします!
321あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 16:31
良かった、良かった
ちゃんと読んでてくれたひといたんですね。

実際に書き出してみるとかなり長くなってしまったんで、これでつまらなかったらどうしようかと思ってました。
322あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 16:34
323あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 17:03
日本の昔話には、なぜ老夫婦の二人暮らしが多いの?
ttp://academy.2ch.net/test/read.cgi/min/982295392/
324おじいさんに不孝をした子供 (アイヌ):02/12/25 19:06
私を育ててくれているのは、本当うに年をとった一人のおじいさんです。
おじいさんはいつも歌をうたっていました。

私が少し大きくなってその歌をよく聞くと、それは歌をうたっているのではなく、泣いているのでした。
わけを聞くとおじいさんは、
「昔あった村は病気がはやってみんな死んでしまった、生き残ったのはわしと孫のお前だけだ、死
んでしまった人々のことを思うといくら泣いても泣ききれない」
と言いました。
おじいさんはあまりにも年をとっているので、熊や鹿を採ることができません。
兎や狐のような小さい獲物をとって、おいしい肉の方をいつも私に食べさせ、
自分は固い肉をしゃぶります。
山からとってきた薪も、私が座る方によく燃える木を自分の方にはあまり燃え
ない木を、という具合です。

そのようにして私は大切に育てられ、今は自分の着物の裾を引っ張って、おちん
ちんを隠すぐらいの年ごろになりました。
おじいさんに代わって自分で狩りをできるようになりました。
泣いてばかりで暮らしていたおじいさんは、そのためかだんだん目が衰え、しまい
には全く見ることができなくなりました。
あれほど私を可愛がり、自分は食べなくても私には食べさせてくれたおじいさんで
したが、私はおじいさんと暮らすのが嫌になりました。

目が見えなくなったのをいいことに、肉でも魚でもおいしい方は私が食べ、おじい
さんには骨や筋しかあげませんでした。
薪も、私が座っている方にはよく燃える木をくべ、おじいさんの方には生木をくべま
した。おじいさんは煙にむせながら、いつも寒い思嫌ひもじい思いをしてじっと我慢
をしていました。
おじいさんが早く死ねば、私は一人でどこかに行って楽ができると思い、
段々意地悪も露骨になって、三度の食事も二度、一度に減っていきました。

おじいさんは一言の愚痴も言わず、段々痩せ細って、終いには手も足も
骨と皮だけのようになり、今では自分で寝返りも打てません。
328おじいさんに不孝をした子供 (アイヌ):02/12/25 19:26
これぐらい弱ったらまもなく死ぬだろうから、おじいさんを捨てて私はどこかに
行こうと思ったのでした。
家の中にあった宝物入れの箱を背負い、生きているおじいさんを置き去りにして、
川の上流に向かって歩きはじめました。

家からずいぶん歩いたころ、川のふちに一本の柳の木があって、川の上に泳ぐ
ようなかっこうで立っていました。
見ると、木にはクッチのつるがからみ、たくさんのクッチの実がなっているのです。

私は突然どうしてもその実を食べたくなり、木に登ってクッチの実を一粒、二粒、
口に入れた途端、急に体の力が抜けて、動くことが出来なくなりました。
自分で自分の体をよく見ると、クッチのつるの網にからまってるというよりも、
つるが体をブスリ、ブスリと貫いて通っているのです。

私は大きな声で「おじいさーん、助けてえー」と泣き叫びました。
すると、上流から一そうの丸木舟に乗った二人の若者がやってきました。
若者たちは木の下に丸木船をつけて、岸辺に上がりました。
助けてもらえる、と思って喜んでいた私を、若者たちは手に持った竿で、めった
めったに殴りつけました。

「おじいさんに不孝をした罰で、このようにされてるのも知らず、助けてくれと
はよくも言えたものだ。これからは死ぬにも死ねずに、いつまでもここにさらさ
れているがよい。おまえのしたことを火の神さまが見ていて罰を与えたのだ。肉
親に不孝をしたものがどうなるか思い知れ。」

と言いながら、二人は散々私を殴りつけると、さっさと丸木船に乗って川を下って
行ってしまいました。
331おじいさんに不孝をした子供 (アイヌ):02/12/25 20:06
それからというものは、川を通る舟人は必ず私を殴ってから通っていき、死ぬにも
死ねず、夏は雨や風に打たれ、冬はみぞれや雪にさらされて凍えるばかりです。
クッチの実を食べにくる鳥たちにふんをかけられながら、体の肉は溶けてしまい、
骨ばかりになってしまいました。
それでも頭だけは生きていて、何年も何年も苦しんでいるのです。

「だから今いる子供達よ、おじいさんやおばあさんに不孝をしてはいけません」
と、一人の子供が言いながら死んでしまいました。
332あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 22:32
333あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 23:02
49 名前:43 投稿日:2002/08/08(木) 23:33

「一寸法師」「桃太郎」は口承の昔話というより、中世あたり
から書承で伝わったものであり、昔話バージョンはむしろ新しい
という指摘がなされています。ちなみに東北地方の伝承では
「瓜娘姫」の話なども残酷な要素が強い。
なお「コロポックル」の話もいわゆる「アイヌの昔話」とは少し
趣が異なります。むしろ「当時(つまり近代に)日本語で採録者に
語られていた伝承」として別に位置付けたほうがよさそうです。
江戸時代以降に書承を介して和人からアイヌ人に逆流した話である
可能性があります。
334絵本板から:02/12/25 23:11
桃を切る時桃太郎ごと切れなかったのかな?
http://book.2ch.net/test/read.cgi/ehon/1027841300/
暗い&夜の&闇が印象的な&黒い絵本
http://book.2ch.net/test/read.cgi/ehon/1030185699/
【国産】日本の昔話絵本【民話】
http://book.2ch.net/test/read.cgi/ehon/1026858915/
絵本板殺伐化計画
http://book.2ch.net/test/read.cgi/ehon/1028941365/
トラウマになった絵本2冊目
http://book.2ch.net/test/read.cgi/ehon/1040788127/
335あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 23:18
昔話のオカルトでふと思ったのだが、
金太郎は鉞を何に使っていたのだろうか?

13日の金曜日の仏滅の日に、山の動物達を惨殺していたのだろうか?

336あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/25 23:24
鉈みたいな使い方では?
337あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/26 00:14
鉈で動物達を惨殺。
338あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/26 00:15
惨殺という言葉は、対象が人間のときしか使わんやろ
339あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/26 00:18
じゃあ屠殺
>339
もう来なくていいよ
341あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/26 00:31
149 名前:名無虫さん 投稿日:2002/11/25(月) 19:44 ID:9moplJ4S
応仁の乱の頃、ある僧が伊勢の漁村に行った。そこに小さな庵があったので休んでいると、
庵の主がでてきて茶をすすめてくれる。茶を持ってきたのは異形の小僧である。
主はこの小僧の出生の秘密を語ってくれたそうである。
--------------------------------------------------------------------------------
この漁村にいた若い男が大きなエイを釣り上げて、家にもって帰ったそうな。
ところが仰向けに置いたエイの生殖器が、まるで人間の女のようだったので、思わずこれを犯したそうな。
あまりの快楽にダップリダプダプと大量に中出しして情が移ったのか、漁師はエイを海に返してやったのじゃ。

すっかり忘れて10ヶ月も経ったある晩、漁師の夢に顔だけで抜けるほどの物凄い美女が現れ、
「あなたとの子供を磯に置いておきます」と伝えたのじゃ。
はたして翌朝磯に出てみると、岩の陰に赤ん坊がいる。それがこの小僧なのじゃ。
342鬼封丸 その一:02/12/26 01:01
ある所に利丸という鍛冶屋の息子がいた。父親は農耕具を主に作っていたが、
利丸は侍の刀を作ってみたくてたまらなかった。
ある日、寺の古い鐘を新しく鋳造しなおすことになった。利丸はこっそり、打ち砕かれた
鐘の一部を手にいれ、自宅の作業場で侍の刀を作った。
彼は刀を見た瞬間、魔物に取りつかれた様になり、まず母親を斬った。
次に父親を斬った。そして血だらけのまま、泣きながら村人を次々と斬った。
刀は刃こぼれ一つしない。村人は彼を恐れ、食べ物と立派な服と金を与え、
それでこの村を出て行くよう、彼に頼んだ。刀はあざ笑うように利丸に言った。
「どうだ、お前は侍になることが夢だったのだろう。これがお前の望みなのだ!」
利丸は、もはや刀の言いなりであった。村から村へと彷徨い、人を殺し、生きていくために
必要なものを奪って暮らした。
343鬼封丸 そのニ:02/12/26 01:10
そしてある日、彼はぼろぼろに朽ち果てた庵を見つけた。
食べ物欲しさに、彼は庵へ土足で踏み込んだ。中には粗末な生活用品と木彫りの仏像、
それからその仏像に祈りを捧げる老僧の姿があった。
老僧は利丸に語りかけた。「だいぶ苦労しているようだな。お前の後ろに魔物が見えるぞ」
利丸は叫んだ「俺はこの刀から自由になりたいんだ!!爺さん、あんた魔物が見えるなら
なんとかしてくれ!!」すると老僧は答えた「鬼を斬りなされ。そうするしか
お前の助かる道はない」
利丸はぎりぎりと歯噛みをして、庵を後にした。鬼・・・一体どうすれば見つけられるというのか?
その時、珍しく刀が「そいつを殺せ」と言わなかったことに気づいた。
彼は再び庵へと入った。だが、もはやそこに人の気配はなく、ただ木彫りの仏像が
じっと利丸を見つめているだけだった。
344鬼封丸 その三:02/12/26 01:21
もうどの位鬼を探し続けたのだろうか?
利丸は疲れ果て、心身ともに限界であった。ついに道端に倒れると、彼は動けなくなった。
「鬼さん、こちら・・・」の声に、利丸は顔を上げた。刀を掴むと、彼はどこかの
屋敷の庭であろう土地に勝手に入り込んだ。確かこの辺から声がしたはずだ。
庭は荒れ果てていた。木やヤブが邪魔で、声の主がどこにいるのか分からない。
突然、目の前に、毛むくじゃらの醜い顔が現れた。額の角、耳までさけた口、
こいつが鬼か!? 利丸は錯乱していた。刀を振り下ろすと、鬼の顔がまっぷたつに
割れた。顔のカケラが地面に落ちてカラカラと音を立てている。
その時、やっと彼は正気に返った。「鬼さんこちら」なんて子供の遊びではないか!
鬼の面をつけた人間を、俺は間違って斬ってしまった・・・。
345鬼封丸 その四:02/12/26 01:36
ふいに、近くのヤブから少女が飛び出してきた。さっきの声はこの子のものだろう。
少女は割れた鬼の面と、額から血を流している青年。そして刀を握った利丸を見て
金切り声を上げた「あなたは貴近さまに何をしたのですか!?」
利丸は改めて、貴族の屋敷に勝手に入り込み、大変なことをしてしまったのだと
気づいた。そして、空腹と精神的な疲れで、今度こそ完全に気を失ってしまった。
目を覚ますと、さっきの少女がそばにいた。食べ物をもらいながら、彼は今までの
旅のことや、先刻の無礼を詫びた。少女は名前を、くれはと言った。
くれはと貴近は彼を許し、体力が回復するまで、屋敷にとどまればいいと言ってくれた。
346鬼封丸 その五:02/12/26 01:50
その夜、喉の渇きに起きた利丸は、夜中だというのに明かりのついた部屋がある
のを見つけた。覗いてみると、寝具の上で貴近とくれはが重なり合っているではないか。
だが驚いたのは、貴近のその右腕だ。ひじから下が大きく腫れ上がり、左腕にはない
剛毛がはえ、爪も醜く伸びている。とても人間の腕とは思えない。化け物の腕を
無理にツギハギしたかのようだ。唖然としていると、ふいに戸が開いて、貴近が
手招きをしているのがみえた。「お前もこの子を好きにするがいい」
彼はそういうと、着物を着て出て行った。寝具の上でくれはが、黒いまなざしを
じっと自分に向けている。たまらなくなった彼は、くれはに覆いかぶさった。
さて、そんな事もあってくれはに惚れてしまった利丸は、だんだんと貴近が疎ましく
なってきた。嫉妬したのだ。そしてこんな風に考えるようになってきた。
「あんな気味悪い腕、人間じゃない。あいつは人のフリをした化け物だ。殺してしまおう」
347鬼封丸 その六:02/12/26 02:01
くれははそれを聞くと利丸を止めたが、彼はそれを振り切って、貴近を斬り殺して
しまった。泣きじゃくるくれはに、利丸は怒りを覚えた。くれはは泣きながら
彼に貴近と自分の身の上を語った。
自分は貴族の娘で、貴近と結婚したが、彼は冷たく、他の妾ばかりかわいがって
いた。寂しかったので、毎日屋敷の庭にある沼に行き、そこに棲むという神に
祈りをささげていた。ある日神は願いを聞き入れ、自分に夫を殺し、死体を沼に
沈めるよう囁いた。そうすれば願いは叶うと・・・。
くれはは貴近を殺した。そこまでは上手くいったが、死体が重くて運べない。
仕方なく彼女はナタでバラバラにして運んだのだが、どういうわけか、右腕だけを
失くしてしまい、沼に沈め忘れた。次の日、右腕だけ変形した貴近が、ぐっしょり
濡れて帰ってきた。その日から人が変わったように、くれはに優しくなったという。
348鬼封丸 その七:02/12/26 02:16
利丸はそれを聞いて全身総毛だった。刀が「血を流せ、血を流せ」と囁いている。
「自分の夫を殺し沼に沈めるとは・・・人間のやることじゃない。お前こそが化け物だ!」
利丸はついに、愛するくれはもその手にかけてしまった・・・。
だが、刀はまだ彼を解放しない。へし折ろうとしても折れず。まだ人を斬れと囁く。
利丸はついに発狂して悲鳴をあげた「なぜだ!!!」
よろめくように、くれはの言った沼にやってくると、彼は水に映る自分の姿を、はっきりと
見た。それはもはや人の姿ではなく、目は飛び出し、口がさけ、毛むくじゃらで
額から角が突き出していた。
彼はううっとうめいた。鬼は俺だったのだ。なぜ気づかなかったのだろう。
刀を自分の胸に突き刺すと、利丸は沼に入っていった。その表情にもはや苦しみは無い。
そして、利丸も刀も、二度と浮かんではこなかったという・・・。
349あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/26 02:19
御疲れ
今まで起きてた甲斐があった。
調度今練ると子
350あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/26 02:19
長文あげ。
351好爺:02/12/26 10:05
夏の頃、ある屋敷で、武術にすぐれた二人の若侍は宿直をしていた。さらに屋敷の主人
の寝室の近くに、もう一人がひかえている。しかし、この男は身分が高かったのの
武術となるとからきし駄目で、太刀も小刀もそばに置いておかなかった。
夜がふけた頃、宿直をしていた二人の若侍がふと外を見た。すると、東の別棟の建物
の棟のうえに、ふいに一枚の板が速やかに出てきた。
「あれはなんだ」二人は驚きの声をあげた。一人がいぶかしそうに
「このような夜更けに、あのようなところから板が出てくるなど、あるはずがない。
もしや、誰かが放火するつもりで、屋根の上に登ろうとしているのだろうか」
という。もうひとりは首を傾げながら答えた。
「それは違う。それならば板を下から立てて登ってくるはずだ。あれは上から板が
出ている。なんとしたことか」見れば見るほど不可解である。その間にも板は
ぐんぐんと伸びてきた。七、八尺にもなったろうか。
やがて怪奇な事に、その板はまるで生きているかのように、ひらひらと飛び跳ねる
ようにして、二人の若侍がいるほうへ向ってくる。不気味な事このうえない。
「これは鬼の仕業かもしれぬ」ふたりの若侍は太刀を抜き、方膝をついてかまえた。
352好爺:02/12/26 10:06
…続き
「これ以上近づいたら、切り捨てるぞ」という気迫があった。
怪しげな板はそれに恐れをなしたのか、二人の若侍に近づくのをやめると、屋根の格子
のほんの少し開いている隙間から入り込み、姿を消してしまった。
そこには、例の身分の高い男が一人で横たわっている。まもなく、なにがあったのか
呻き声が洩れてきた。しかし、すぐ静かになり、なんの物音もしない。
何か異変ががあったのだろうか。二人の若侍は慌てて他の人々を起し、怪しげな板の
話をしたが、誰もが疑わしそうな顔をしている。そこで灯火をつけ、身分の高い男の
ところへいってみた。
なんと、その男はぺちゃんこに押しつぶされ息絶えていた。凄惨な光景に、皆は愕然
となった。ふと我に返り、灯火を照らしてあたりを見まわしたが、怪しげな板は
何処にも見当たらない。「やはり、あの板は鬼だったのか」
「まさか鬼が板に化けるとは思わなかった」
人々は口々にいい、恐れおののいたという。
ある冬の晩、岩津の若い衆で与三公という男が、五明(ごみょう)の在所へ博打をうちに出
かけた。
ところがどうしたものかその晩はしあわせが悪く、もって行った金はみなとられてしまった。
すごすごと帰って来て、五辻というところにさしかかったのが、かれこれ丑三つ時であった。
ふと前の方を見ると、紫ちりめんのお高祖頭巾をかぶった美しい女が一人通っていた。
この夜ふけにこんなさびしいところを、女がたった一人で通るとはどうしても考えられ
なかった。

「話にきいていた狸の化けものにちがいない、捕らえてこらしてやろう」
と思って、もともと力じまんの男のうえに、負け博打でむかっぱらも立っていたので、
後から追いかけて行ってえり首をつかんで引きたおした。
「なにをなはるんだっそ、あんたは」
「なにをなはるもくそもあるか、このど狸め」
「ご免なして、ご免なして、ほんまにわたしは狸だすけんど、こん夜はあんたをばかすとて
出たんではありません」
「ほんなら、誰をだますとて出たんなら」
「この向うの多七つぁのおしんぞ(若い女房)をいろべ(なぶっ)て、夫婦喧嘩をさしに行っきょる
だす。それは面白い喧嘩がでけるんだすけに、あんたもごらんなはりまへんか。」
与三公は、多七夫婦のりんき(しっと)喧嘩はずいぶん面白いということを聞いていたの
で、一ぺん見てみようという気になって、狸の女をゆるしてやってあとからついて行った。
まもなく多七の家の前に来た。
狸の女は与三公に
「あんたは向うへまわって窓障子からおのぞきなはれ。もし障子にのぞくすきまがなかったら、
指につばをつけて穴をおあけなはれ。わたしは戸口から入って行きますけに」
といった。
358馬の尻覗き (徳島県阿波郡):02/12/26 22:53
与三公は横がわの窓のところへ行ったが、障子はあいにく張りたてでのぞく穴がなかった。

そこで教えられた通り、指につばをつけて障子の紙に穴をあけて部屋のなかをのぞくと、
うすぐらい行燈のしたで、夫婦は枕をならべて寝ていた。
すると、表の方で軽く戸をたたいた。
「多七つぁん、多七つぁん、あのちょっと話があるすけに出てきて拝領」
と、何ともいえない色気のある声でいった。

多七はようやく目をさまして表へ出ようとした。
女房も目をさまして多七を引きとめた。
戸口ではやさしい女の声がする。

思ったとおり夫婦喧嘩がはじまった。
とうとうとっ組みあいになった。
いよいよ面白くなったので、与三公は障子の穴を大きくしようと、指をねぶっては
穴をえぐり、指をなめては穴をえぐりしていると、ふいに丸太の端で胸のあたりを
うんとなぐられるような感じがして、あとにばったりと倒れた。
361馬の尻覗き (徳島県阿波郡):02/12/26 23:21
気がついてみると、自分の目の前には大きな馬の尻があった。

そこは多七の家ではなく、ある百姓家の馬小屋の軒下で、いままで障子の穴だと
思ってしきりに指でえぐってはのぞいていたのは馬の尻穴であった。
丸太でどやされたと思ったのはその馬にけられたのであったということだ。
362好爺:02/12/27 02:55
夏の暑い盛りにある高貴な方へ瓜を届けるため二人の小役人が荷車に山盛りの瓜を
乗せて路地を歩いていた。その日はたいそう暑かった為、木陰で休憩を取り、
役得とばかりに荷車の中から瓜を食べ、渇きを癒していた。
そこへ一人の老人が「私も大変喉が渇いているので、その瓜を一つ分けてくれないか」
と懇願してきた。二人の小役人は、「この瓜は高貴なお方に届ける物でお前のような
下賎な物には食べさせるわけにはいかぬ」と笑いながら断った。
さらにその老人にむかって瓜の種を吹きかけながら、「そんなに食べたければこの種でも
食べるがよい」とさらに嘲笑した。
老人は「ならば、種だけでももらおう」と道端に散らばった種を集めるとやおら
持っていた杖で道の片隅を耕し始めた。そして拾い集めた種をそこへ埋め始めた。
さらに近くの川から水をすくってまわりに振りまいた。
さらになにやら怪しい呪文を唱えるとさっき埋めたばかりの場所から芽が生え始めた。
その芽はするすると成長して見る間に大きな蔓となり、花を咲かせ、実をつけた。
瓜の実は見る間に大きくなり食べごろのものが沢山実った。
363好爺:02/12/27 02:56
…続き
老人はそれを一つもぎ取ると美味そうに食べ始めた。あまりの不思議さに道行く人は
立ち止まりその一部始終を見つめて、人だかりが出来てしまった。
老人は、「私だけではこんなに食べれないので皆さんもお召し上がりください」と
申し出た。最初は、怪しげで誰も手を出さなかったが一人の少年がおもわず手をだし
食べ始めた。その美味そうな姿を見た人々はつられて一人、また一人と手をだし、
皆が食べ始めた。二人の小役人もそれを見て、老人に「我々も食べても良いか」と
訪ねた。老人は「もともとお二人の種から育てた物です。どうぞお食べください」
といった。二人はその瓜を食べると自分等が食べていた物に比べ非常に甘く、
みずみずしいことに感激した。「こんな美味い瓜ははじめてだ。その術をぜひ教えて
ください。」と老人に訪ねようとしたが、その時には、すでに老人の姿はなかった。
不思議な事もあるものだと二人の小役人は自分等の荷車を運ぼうと見るとそこには
山ほど積まれていた瓜は一つも無く、食べかすのみが荷車に積まれていた。
364Zanoni:02/12/27 11:24
生首交換

陵陽(安徽省の県名)の朱爾旦(しゅじたん)、字(あざな)を小明(しょうめい)という。
豪放な男だが頭は鈍い。
まじめに学問をしていたが、いまだに試験に合格できない。

ある日、同学の仲間と一杯やってきた。
仲間のひとりが、彼をからかった。
「君は豪傑で有名だが、どうだ、真夜中に十王殿*1に行き、そこの左廊下にある判官*2
の像を背負って来ることができるかね?できたら、みんなで奢ってやるぜ」

*1 冥土の十王を祀る。十王の中には閻魔王もいる。
*2 冥土の官名
365翔 ◆Ua.iPm2zOo :02/12/27 11:26
モーーー!!ヤメテェエ!!!
366生首交換:02/12/27 11:29
そもそも、陵陽には十王殿あり、木彫りながら生けるがごとき神鬼が飾ってあった。
わけても東の廊下に立つ判官像は、緑面に赤鬚の、すごい凶相であった。
夜になると、両側の廊下にて拷問の声がきこえることもあるという。
十王殿に行けば、人みな身の毛がよだつ。
だから、こんな難問を朱にふっかけたのである。
367生首交換:02/12/27 11:55
朱は笑って立ちあがり、すぐ出て行った。
いくばくもたたぬうちに、門外で呼ばわる声がする。
「おおい、鬚の先生をお連れしたぞ!」

みな立ちあがった。
と、朱が判官像を背負い入って来て、ドンと机の上に置いた。
酒盃をその像に三度捧げる。
368生首交換:02/12/27 12:23
じっと見ていた連中、身のちぢむ思いで落ち着かない。
また背負って行ってくれと、朱に頼んだ。

彼は、酒を地に注ぎ、判官像に祈った。
「わたくしは、軽率粗野な男ではありますが、判官さま、まあ変におぼし召されるな。
拙宅は、ここからそんなに遠くはありません。気が向いたら、いつなり一杯やりに
お出で下さい。なにとぞ、ご遠慮なさいますな。」
そして、背負って出て行った。
369生首交換:02/12/27 12:29
その翌日、一同は約束通り朱を招き宴を張った。
夕方になり、ほろ酔い気分で帰ってきたが、まだ飲み足りない。
灯かりをつけ、ひとりでちびちびやっていた。

いきなり、簾をかかげて入ってきた者がいる。
見れば、くだんの判官である。
朱は立ちあがった。

「ああ、おれはまもなく死ぬんだな。昨夜あんな無礼をはたらいたんで、殺しにいらしたんでしょうな」
370生首交換:02/12/27 12:34
すると判官、濃い鬚をしごき、微笑しながら、
「いやいや。昨夜ていねいに招待してもらったんで、今夜たまたま暇なのを
幸い、約束を果たしに伺った次第」

朱はたいそうよろこび、判官の袖をひっぱって席をすすめた。
そして、自分で酒器を洗ったり、火を熾(おこ)したりした。
371生首交換:02/12/27 12:38
「今夜は暖かいから、冷酒でいいよ」
と判官が言う。
朱は、そのまま酒瓶を卓上に置き、奥にとんで行って家人に酒の肴を用意させた。

ところが妻は、そう聞いてぶったまげ、そちらに行くなと言う。朱は無視して、立ったまま待っている。
酒肴がととのうと、自分で持って出て行った。
372生首交換:02/12/27 13:11
杯のやりとりをしてから、はじめて姓名をたずねた。
「姓は陸(りく)だ。名や字(あざな)なんかない」
とのこと。
話が典故のことに及ぶと、打てば響くような反応ぶりである。
「科挙よ試用の文章はいかがですか」
とたずねると、
「文のうまいへたぐらい、見分けられるよ。冥土だって文章を読むんだ。陽界とだいたい同じことさ」
373生首交換:02/12/27 13:16
陸の飲みっぷりは豪快だった。
大杯で、たてつづけに十杯は飲んだだろう。
朱は、一日酒びたりだったせいか、ついにへべれけに酔いつぶれ、机につっ伏して眠ってしまった。
やがて目が覚めると、灯りは尽きんとしてうす暗く、冥土の客もすでにいなかった。

それ以来、陸は三日にあげずやって来た。
ふたりますます親しくなり、時には泊まって行くこともあった。
朱が作文の草稿を見せると、陸は朱筆でどんどん消した。どれもへたくそだと言うのである。
374生首交換:02/12/27 13:27
ある晩、朱が酔って先に寝た。陸は、まだ手酌で飲んでいた。

朱は突然、酔いの夢のなかで腹がチクチク痛むのを感じた。
はっと目が覚める。
見ると、陸が寝台(ねだい)の前にきちんと座している。
朱の腹を裂き、胃や腸をひっぱり出して一本ずつそろえているではないか。

これにはたまげて、
「これまで、なんの仇(かたき)や怨みもなかったはずだ。それなのに、殺すつもりか。なぜだ?」
375生首交換:02/12/27 13:33
陸は笑って、
「心配するなって。君のために、聡明な心を入れ替えてやってるだけなんだから」
とて、悠々と腸を腹中に収めた。
次いで、腹の傷口をくっつけ、纏足用の布を朱の腰にぐるぐる巻きつけた。

すべてが終わり、寝台の上を見た。
血の跡すらない。
腹のあたりがいくぶん痺れているような感じがするだけである。
376生首交換:02/12/27 13:37
陸がなにやら肉塊を机の上に置いたので、何かとたずねた。
「これは、君の心臓さ。君の作文がへたくそなものだから、ははーん、心臓の毛穴がふさがっているなと
察したわけだ。冥土にある何万もの心臓から、うまいぐあいに、ひとつ上等のをえらび取っておいたのだ。
そいつを、君のと取り替えた、という次第さ。これはとっておいて、不足分の穴埋めにしよう」
と答え、立ちあがった。

そのまま扉を閉め、出て行った。
377生首交換:02/12/27 13:49
夜が明けた。
布をほどいて見てみると、傷口はふさがり、赤い線が残っているだけだった。
以来、朱の文章はめきめき上達した。
読書していても、目を通したものは忘れない。
数日後、また作文を陸に見せた、陸は言った。
378生首交換:02/12/27 13:56
「よしよし。だが君は、それほど幸運児ではない。あんまり出世は望めんな。せいぜい郷試どまりだ」
「いつの郷試だい?」
「今年だ。きっと首席で合格するだろう」

それからまもなくの科試では一番だった。
そして秋の郷試では、果たして首席を占めた。
同学の仲間たちは、平素から朱をからかっていた。
それが今度の答案を見るや、顔を見あわせ下を巻いた。
あれこれたずねて、やっとその怪異を知るや、競って朱に紹介を頼み、陸との交際を目留めるのだった。
379Zanoni:02/12/27 14:06
陸が承知したので、豪勢な宴席を設けた。

待つうちに初更*となり、陸がやってきた。
赤い鬚がピクピク動き、目は雷のように光っている。
それだけでもう色を失い、歯の根も合わぬほどふるえてしまった。
やがて、ひとりまたひとりと逃げて行く。

*夜の8時頃
380生首交換:02/12/27 14:14
残った朱は、陸をともない家に帰って飲んだ。

ほろ酔い気分になったころ、朱は言った。
「腸を洗い、心臓を取り替えてもらっただけでもありがたいんだが、実はもうひとつだけ頼みがあるんだ。きいてもらえるかなあ」
「なんなりと」
と陸が言うので、朱は言った。
「おれの女房のことなんだが、つまり正妻なんだがね、あちらのほうは、まあ悪くはないにしても、器量がそんなによくないんだよ。
そこでなんとか、あんたの腕を煩わしたいと思ってね」
381生首交換:02/12/27 14:19
陸は笑った。
「いいとも。考えておくから、あんまり焦らないでくれよ」

数日たった。
陸が夜中に来て門をたたいた。
あわてて立って迎え入れる。
灯りで照らしてみると、懐中になにやら入れている様子。

何だとたずねると、陸は言った。
「このあいだ頼まれたことだがね、あれからずっと苦労して捜しまわっていたんだ。そしたら、
うまいぐあいに美人の首が見つかった。それで、約束を果たさんと、つつしんで参上した次第」
382生首交換:02/12/27 14:51
朱が、そのふところをあけて見た。
頸(くび)の切口からは、まだ血が滴っている。

陸は、鶏や犬をさわがしてはならんから、急いで奥へ行こうと、せっついた。
夜中のこととて、婦人の寝室への門や戸には鍵がかかっている。
どうしたものかと考えていると、陸が来て手で扉を推した。
扉はひとりでに開いた。
そのまま寝室へと案内した。
383生首交換:02/12/27 15:15
朱の夫人は、横向きのまま眠っていた。
持参の首を朱に持たせると、陸は鞋(くつ)のなかから匕首(あいくち)に似た刃物をとり出した。
そいつを、夫人の項(うなじ)にあてた。
力をこめて切ると、豆腐でも切るように、いともかんたんに切り離した。
384生首交換:02/12/27 15:18
首は、枕もとにころりと落ちた。

急いで朱の懐中から、美人の首を取り出す。
そいつを項に合わせ、ぴったり合ったかどうか、ていねいに確かめる。
それから、ぐいと押さえつける。

最後に、枕を肩の下にしっかりあてがった。
切り落としたほうの首は、どこか静かなところに安置しておくようにと朱に命じ、陸は立ち去った。
385生首交換:02/12/27 15:21
朱の夫人は、目を覚ました。
頸のあたりが、なんだが痺れているようだ。
頬にはうろこが生えているような異物感がある。
さわってみると、血のかけらだった。

たまげて、女中を呼び湯を汲んでくるようにいいつけた。
女中は、夫人の顔が血まみれなのに腰を抜かした。
386生首交換:02/12/27 15:27
顔を洗う。盥の水がまっ赤になった。

顔を挙げると、すでにして別人の顔。
女中は、またも腰を抜かした。
387生首交換:02/12/27 15:35
夫人は、鏡を手にして自分をうつした。
そのおどろきと不思議さ、なにがなんだか、まるっきりわからない。

そこへ朱が入って来て、ことの次第を教えてやった。
そこで、つらつらながめてみる。
鬢(びん)までつづく長い眉、頬にぽっちり愛らしいえくぼ、まこと画中の美人である。

襟をひらいて頸をしらべたところ、赤い線がぐるり一周していた。
その線の上下、肌の色は歴然とちがっているのだった。
なにやらここの住人はみな勇者になったヨカーンがする(w
389生首交換:02/12/27 15:40
さて、これより先、呉侍御(ごじぎょ)* の邸に美しい令嬢がいた。
嫁がぬ前に、相手の許婚者に死なれること二度、そこで十九になるのに、まだかたづいていなかった。

*侍御は中央監察機関の高官
390生首交換:02/12/27 15:55
その令嬢、正月十五日の元宵節に十王殿に遊びに行ったことがある。
参詣人でごったがえしていた。

そのなかに無頼の賊あり、令嬢の姿をかいま見、よからぬ気を起こした。
やがて令嬢の住まいをつきとめ、夜陰に乗じて梯子でしのびこんだ。
391生首交換:02/12/27 15:57
令嬢の寝室の戸に穴をあけ、女中を殺して寝台の下にぶちこんだ。
そして、令嬢に迫って手ごめにしようとしたのである。

令嬢は必死になって抵抗し、大声で叫んだ。
賊は怒り、令嬢をも殺した。
392生首交換:02/12/27 16:01
その叫びをかすかに聞きつけた呉の夫人は、女中に見に行かせた。
すると、なきがらがころがっているので肝をつぶした。
邸内みな起きて大さわぎになった。

広間に令嬢のなきがらを安置する。
切られた首は、項(うなじ)のすぐ横に置いた。
一家あげて号泣し、その夜はもうたいへんな修羅場であった。
393生首交換:02/12/27 16:09
あくる朝、死者を覆う衾(きん)をあけてみた。
からだはあるが、首がない。
侍女たち残らず笞打たれた。
しっかり番をしていなかったので、犬の腹に葬られたのだというのである。

呉侍御は、役所に訴え出た。
役所では、きびしい期限つきで犯人を捜した。
しかし、三月たっても、犯人はつかまらなかった。
394生首交換:02/12/27 16:13
するうちに、呉公の耳に奇妙な話が伝わった。
朱家で起きた首のすげかえ事件のことである。

呉公は、もしやと思い、婆やを朱家にやって首を捜させた。
婆やは、朱の夫人をひと目見るなりぶったまげ、とんで帰って呉公に知らせた。
395Zanoni:02/12/27 16:20
外出するので、一時中断します。
  気になるね。続きのことだよ  
       ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄        \
      V   ~-v('A`)>     ギシギシ
     [ □]   ヘヘ ノ       アンアン/
397生首交換:02/12/28 01:11
令嬢のなきがらは、もとのまま在る。
いったいどういうことなのか、不思議でたまらない。
もしかすると、朱が妖術を使って、わが娘を殺したのではないか--というわけで、呉公は出かけて行った。

朱を問いつめる。
朱は答えた。
「家内が眠っているあいだに、首がすげかわっていたのです。なぜそうなったか、わたしにも
わけがわからんのですよ。わたしがお嬢さんを殺したなんて、とんだぬれぎぬですよ」
398生首交換:02/12/28 01:17
呉公は、しかし信じなかった。
朱を訴えたのである。

役所は、朱家のすべてを捕らえて訊問した。
ことごとく朱の申し立てと一致する。
これでは、知事とても裁決できない。
朱は帰宅し、なんとかしてくれと陸に相談した。
399生首交換:02/12/28 01:19
陸は、
「おやすいご用。あの令嬢に、自分の口から言ってもらおうじゃないか」
と言った。
400生首交換:02/12/28 01:25
その夜、呉公は令嬢の夢を見た。
令嬢は、父にこう告げたのである。
「わたくしは、蘇渓* の楊大年(ようだいねん)という男に殺されたのです。朱さんとは関係がありませんわ。
朱さんは、奥さんが美人でないのを気に病んでおりました。そこで陸判官が、わたくしの首を取って、奥さん
の首とすげかえてやったのです。わたくしのからだは死んでしまいましたが、首はまだ生きているのですよ。
ですから、朱さんとは仇にならないで下さいまし」

*湖南省の地名
401生首交換:02/12/28 01:46
目が覚めるや、呉公はそのことを夫人に言った。
夫人も、同じ夢を見ていた。

そこで、役所に告げた。
捜索してみると、なるほど楊大年なる男がいた。
ひっ捕らえて拷問にかけたところ、やっと自白し罪に服した。
402Zanoni:02/12/28 01:52
ご声援ありがとうございます。
今日はこの辺までにさせてもらいます。
このスレにはちょっと長めの話かとは思ってましたが、無計画に
書き込みだすとなかなか終わらないもんですね。
( ・∀・) パチパチ おつかれさま 今後も期待してまつ!
404生首交換:02/12/28 10:32
呉公は朱家を訪ねた。
夫人に会わせてもらうためである。

かくて、朱は呉公の女婿となった。
朱の夫人の首は、呉公の令嬢のからだとともに葬られた。
405生首交換:02/12/28 10:36
朱はといえば、そののち三度も会試* を受けている。
しかし、いずれも試験場規則に触れて失敗した。
そこで、出世はあきらめた。

*郷試の上の全国試験
406生首交換:02/12/28 10:42
三十年たった。
ある日の夕景、陸判官が来て言うには、
「君の寿命は、あといくばくもないな」

どれぐらいだとたずねると、五日きりだと言う。
なんとか助けてくれよとの朱の頼みに、こう答えた。
「なにしろ、こればかりは天命だからね。人間にはどうしようもないんだ。生死を達観した人から
見れば、生も死も、同じものだよ。生が楽しい、死が悲しいなんて、そんな区別なんぞあるものか」

朱は、なるほどもっともだと思った。
そこで、経帷子や棺をあつらえ、準備万端ととのったところで、きちんと正装し、死んだ。
407生首交換:02/12/28 10:47
死の翌日、夫人が柩にとりすがって泣いていると、朱が突然あらわれた。
ふらふらと外からやって来たのだ。

夫人がこわがると、
「おれは、たしかに幽鬼だ。しかし、生きていたときと、なんの違いもないのだよ。
後家になったお前や、孤児になった子供のことを考えると、うしろ髪を引かれる思いでな」
408生首交換:02/12/28 10:58
夫人は、激しく泣いた。
涙が胸まで流れる。

朱がやさしく抱いて慰めてやると、
「昔から、死者が生き返る話はありますわね。あなたにはこうして霊魂がおありなんです
もの、どうして、もう一度、生き返ってくださらないの?」
と言った。

「天命に逆らってはいかんのだ」
と答えると、冥府でどんな仕事をしているのかとたずねる。
「陸判官の推薦でな、裁判事務の監察をしておるよ。官爵も授けられたし、辛いことはない」
409生首交換:02/12/28 11:45
夫人がもっと語りかけようとすると、朱は、
「陸判官がいっしょに来ておるんだ。酒の支度をしてくれんか」
と言って、急ぎ出て行った。

言われるままに、酒肴をととのえる。
すると、部屋のなかから雑笑の声がきこえた。
豪放な高笑いなど、生前そのままである。
深夜に及んでそっとのぞいてみると、すでに姿は消えていた。
410生首交換:02/12/28 12:08
それからというもの、四、五日に一度はやって来た。
時には泊ってむつまじく語らうこともあった。
家内のことどもを、ついでに取りしきったりもした。
age
412生首交換:02/12/28 14:07
息子の瑋(い)は、まだやっと五歳だった。
来れば、きまって抱きあげた。
七、八歳になると、灯りの下で読み書きを教えた。
賢い子だったので、九歳で立派な文章が書けるようになった。
十五歳で、県学に入学した。
そして、自分が父なし子であるとは、つゆ知らなかったのである。
413生首交換:02/12/28 14:14
そのころから、来る回数が次第に少なくなった。
なん日目か、あるいは、なん月目かにやっと一度、というようになった。

そんなある晩、夫人に言った。
「今宵かぎりで、お前とも永遠の別れだ」
どこへ行くのかとの問いに、
「玉帝のご命令にて太華卿* となり、まもなく遠くに赴任することになった。
仕事が忙しいうえ、遠くへへだたっているので、来れんのだ」

*官府の官名
414生首交換:02/12/28 14:19
母子ともども、すがりついて泣いた。

すると、
「そんなに泣くな。伜だってもう一人前になったし、財産だって食うには困らんだろう。
百年たっても別れぬ夫婦はおらんだろうに?」
と言い、息子に向かっては、
「立派に成人するんだぞ。父の財産を減らさぬようにな。十年たったら、また会おう」
と言いざま、門から出て行った。

それきり、来ることはなかった。
415生首交換:02/12/28 14:27
その後、瑋は二十五で進士に及第した。
宮中祭祀を司る官を拝し、勅命を奉じて西岳の華山を祭りに赴いた。

道すがら華陰を通ったとき、ある行列にぶつかった。
車馬を従え、華蓋(かがい)をさしかけている。

それが、こちらの行列に突っこんで来た。
不審に思って車中の人をよく見ると、ほかならぬ父であった。
416生首交換:02/12/28 14:45
瑋は車からおり、泣く泣く道傍にひれ伏した。
父は輿(かご)をとめ、言葉をかけた。
「役人としての評判、なかなかよろしいな。これで、わしも瞑目できるというものじゃ」

瑋は、ひれ伏したまま立ちあがらなかった。
父は輿を促し、そのままあっというまに立ち去った。
417生首交換:02/12/28 14:50
しかし、数歩* ほど行ったところでふり返った。
佩刀をほどき、侍者に持たせて瑋に授けると、はるかより声をかけた。
「その刀を佩びておると、出世するだろう」

*一歩は五尺
418生首交換:02/12/28 14:56
瑋は追いすがろうとした。
しかし車馬も従者も、たちまち風のようにゆらめき、あっというまにかき消えた。

痛恨の念に耐えず立ちつくすことしばし、ややあって刀を抜き、つらつらながめた。
精巧を極めたつくりである。
字が一行、刻されていた。

胆ハ大ナラント欲セドモ、心ハ小ナラント欲ス。
智ハ円(まどか)ナラント欲セドモ、行ハ方ナラント欲ス。
419生首交換:02/12/28 15:13
その後の瑋は、官は司馬* にまで至った。
子も五人もうけた。
沈・潜・沕(ぶつ)・渾(こん)・深(しん)という。

ある夜、父が夢にあらわれて言った。
「あの佩刀は、渾に授けるがよかろう」

その通りにした。
渾はやがて総憲* にまで出世した。
施政の評判も高かった。

*都察院長官
420Zanoni:02/12/28 15:17
やっと終わりました。

ネタ元は、中野美代子 訳の 「聊斎志異」
ttp://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=05811287
です。

書き始めてから、このスレにはちょっと長過ぎることに気づきました。
以後気を付けます。

( ・∀・) おつかれさま よかったですよ
たまには長篇も読みごたえがあっていいと思います
422ダヌル・ウェブスター:02/12/28 15:45
次は「大菩薩峠」あたりをお願いします。
>422
お前がやれ
ダヌルはどこ行っても嫌われもんだな
425ダヌル・ウェブスター:02/12/28 15:48
>423
いんや、オレがやるなら「失われた時を求めて」をやる。

でも、今週は法事とかがあってちょっとできないな。
>425
もう来るな
427ダヌル・ウェブスター:02/12/28 15:50
もうちょっと。先っぽだけでも。
包茎(・A・)イクナイ
429あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/28 16:01
犬をからかってあそぶのも飽きたな
430ダヌル・ウェブスター:02/12/28 16:03
>429
そんなことじゃ、犬とは仲良しになれないなぁ。
透明アボーン機能は便利だな
432弁天丸:02/12/28 19:29

マリアのお小夜と与次郎

長崎がキリシタンに支配されていた天正の頃お小夜という美しいキリシタンの
娘がおった。聖母マリアに容貌が似ていたので”マリアのお小夜”の愛称で慕われ
信者のあこがれの的であった。

しかしお小夜の心からは南蛮寺の門前で花を売る白痴をよそおった与次郎の面影
がはなれなくなっていた。二人はいつしか人目を忍んで恋におちていった。その頃
キリシタンの信者にとって異教徒との恋は御法度であった。
433弁天丸:02/12/28 19:39
バテレンたちは与次郎をなだめたり、おどかしたりして ”お前に十字架をかけて
やろう”と入信をすすめた。しかし与次郎は受け付けなかった。彼は白痴を装い
キリシタンに背を向けていた。

星がきらきらと輝くあるうつくしい晩、お小夜と与次郎は浜辺に引き上げた小舟の
影で逢瀬を楽しんでいた。ざーざーと浜辺にうちよせる波音と肌に心地よい潮風の
ほかは二人をさまたげるものとてなかった。しかし二人の背後の闇にはバテレンの
目が光り、やがて二人の身に破滅が待っていた。

それでも与次郎はキリシタンに転宗する気持ちはなかった。かといってお小夜との
きずなを断ち切る勇気もなかった。
434弁天丸:02/12/28 19:50
キリシタンの掟を破る者には追放の刑が待っていた。お小夜と与次郎の愛は引き裂かれた
与次郎はかぶと島への島流しになる身となった。そのとき与次郎は ”おいが島に流さ
れたら宵ごとに火をふろうたい。 かぶと島に火がともる限りおいは生きているばい。”
とお小夜に言った。お小夜はただただ泣くばかりであった。

与次郎はキリシタンに転宗しない異教徒として拷問を受けた。そして愛するお小夜
と別れ荒れ果てた住む人さえいないかぶと島へ流されてしまった。

与次郎はかぶと島の岩かどに腰をおろしてわが運命をふり返った。そして懐中から
火打石を取り出し、枯れ枝に火をともし岩かどから突き出た一本の松の木に登り
港に向けて火をうち振った。
435弁天丸:02/12/28 20:02
与次郎が島流しにされてからお小夜は来る日も来る日も泣き暮れていた。お小夜には
聖母マリアさまの愛は通じなかったとさえ思った。ちょうどその時お小夜は暗い海の
向こうにかすかな火の光を見い出した。お小夜はそのかすかな光に、いいようのない
与次郎へのなつかしさと消えることのない愛そしてわびしさを味わった。それから毎晩
かぶと島からかすかな光の合図がくり返された。その光は幾十日も続いた。

しかしある夜夜霧に濡れるまで沖を眺めていたお小夜の眼に与次郎のうち振るかすかな
光は映らなかった。お小夜は何かに招かれるように海の中へと足を踏み入れていった。

その翌朝遠釣りに行った漁夫がかぶと島の一本松の下で互いにしっかりと手をつないだまま
折り重なったお小夜と与次郎の死体を見つけたのであった。
良い話だなぁ(´ー` )
437あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/28 23:02
>432
天正の頃、長崎がキリシタンに支配されていたとは。
勉強になりました。
438好爺:02/12/28 23:55
寛政七年(1795)江戸の牛込山伏町(現在の新宿)のある寺の住職が猫を飼っていた。
住職はその猫を可愛がっていたが、あるとき、その猫が庭先で餌をついばんでいる鳩を
狙う素振りを見せた。住職は、殺生が嫌いだったので、鳩が猫に食われぬよう、声を
かけて鳩を追い払ったところ、どうしたわけか、猫が人の言葉で「残念だ」とつぶやいた。
住職はびっくりしたが、逃げようとした猫を押さえつけ、小刀を手にしながら問い詰めた。
「おまえは畜生だ。それなのに人の言葉を話すとは奇怪千万。おまえは化け猫なのか。
正直に訳を話しなさい。もし、話さないというなら、私は殺生戒を破って、この場で
お前を殺すぞ」つね日頃、可愛がってきた猫だけに、住職は化け猫と知って憤った。
猫にその気持ちが通じたのか、観念したように話はじめた。
「人の言葉を話す猫は、私だけではありませんよ。十年余りも生きている猫のほとんどは、
人の言葉を話すようになるのです。さらに十四、五年も生きれば、神通力を得ますが、
それほど長生きの猫は稀にしかいません」しかし、住職はそれでも納得できない。
439好爺:02/12/28 23:55
…続き
「おまえは子猫の時に私がもらい、育ててきた子飼いの猫ではないか。まだ十年も
生きてはいまい。それなのに人の言葉を話すというのは、おかしいではないか」
さらに厳しく問い詰めた。すると猫は又意外な事を話し出した。
「その通りです。確かに、それほどの年月はたっていません。でも、私は母が狐と
交わって生まれました。そのような猫は、生まれながらに人の言葉を理解して、
話す事が出来るのです」奇怪な話だが、眼の前に人の言葉を話す猫がいるのだから
信じない訳にはいかない。それを聞いた住職は猫を不憫に思い、
「よく話してくれた。幸い、お前が人の言葉を話す事を知っているのは、私一人だ。
いままで手塩にかけて育ててきたのだから、これからも飼い続けてやろう」
といって猫を放した。猫は住職に深々と三拝し、どこかに走り去った。
それ以来、その猫は二度と住職の元には戻ってこなかったという。
440あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/29 11:55
最近、背筋が寒くなる系の話がないな。
前スレは夜読むと、後悔したりしたもんだが。
ふむふむ恐い系の話を御所望だすか
442あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/29 12:29
銅鑼衛門さん、グリムスレもいいが、こちらで
雨月物語でも語ってくだされ
443あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/29 13:37
今昔物語集の傑作話を教えて下さい
ttp://academy.2ch.net/test/read.cgi/kobun/984038938/
444弁天丸:02/12/29 14:21
姫糞

昔、西叡山に三人姉妹の化けもんのお姫さんが住んじょったんやと。そのころのことよ。
小田原の近所に木太ちゅう木こりがおってのう ”ぬしなしの節供働き”ちゅうたとえ
とおり日頃は怠けてばかりおるくせに、祭りや盆正月ちゅうとこん木太んやつ山や畑へ
いっち働いとったんやと

ある年の盆の十六日のことじゃ。木太んやつが西叡山にのぼっち薪をとっちおったんじゃと。
盆の十六日はガキでものがれるちゅう日じゃわい。山にはだれ一人働いちょるもんは
おらんとじゃ。木太んやつが昼めしを食うち一服して山んお堂にあがっち昼寝をしと
ったんやと。
445弁天丸:02/12/29 14:28

そしてうっつらうっつらしとるうちに、なんとのう、咽や胸が苦しゅうなっちきたもんで
眼をさましたところが、あの三人の化けもん姫が蜘蛛に化けておっち、その吐く糸に
ぐるぐるまかれちおったんじゃわい。木太んやつは、ばたぐろうた(もがいた)けんど
とうとう徳野口の古井戸ん底に連れこんでいかれてしもうたんじゃ。

むげねえこと(かわいそう)に木太んやつはその三人の姫に食われてしもうたんじゃと。
446弁天丸:02/12/29 14:36

この三人の化けもん姫は、毎年盆正月の十六日の夜がふけてくると、三人そろって
円福寺におまいりにいくんじゃと。そんうえかならず姫糞ちゅうとこの川原にさしかかると
その三人の化けもん姫は並んじしゃがみ、おおけな糞をひりだすんが習慣やったんと。

これもいつぞやの盆十六日のおそい晩のことじゃった。矢部ん里の仁介ちゅうのが
柴崎ん里からの帰りに姫糞のあたりを通りかかると川原から生ぐさいにおいが流れて
きたそうな。あやしんで寺下の岩穴に隠れて様子を見ていると、なんと三人の化けもん姫
やったんじゃわ。
447弁天丸:02/12/29 14:45

”人間くさいぞ”ち、上の姫が言う。中の姫が
”いま喰おうかい?”ち、言うと、末の姫が
”今日は円福寺へのお参りやけん帰りにしなさい”ち、たしなめちょたげな

仁介はたまげてしもうて、急いで家へ帰ってくると女房に事の由を話すか話さんうちに
ぽっくり死んでしもうたんやと。仁介はもう化けもん姫に影をのまれておったんやのう。

次ん日、姫糞の川原には、山のような糞が三つとぐろをまいち並んでおったんやと。
それからというもの、盆正月の十六日になると、姫糞のあたりにゃだれも近寄らんごと
になってしもうたということじゃわい。
448あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/29 16:26
これは大分弁ですか?
449弁天丸:02/12/29 18:23
>448
えぇ!そうですね聞くからに(当方九州人)(w
円福寺が現存するかちょっと探してみましたらありましたね。
円福寺 豊後高田市38玉津坂の上495

姫糞と呼ばれたのはどこかまでは特定できませんでしたが、
おそらく現地の御住職やお年寄りなどに聞いたら分るかもしれませんね。

こうやってその話のあった場所が比較的さがしやすいのも日本昔話の好きな所です
450448:02/12/29 21:19
>449
やっぱりそうですか。
私も大分に住んでいたことがあったもんで。
451ふるさとの伝説:02/12/30 22:33
452あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/12/30 22:53
昔話ではないですが、おもしろいサイトをみつけました。
ttp://homepage1.nifty.com/manekinekoclub/kenkyu/index_kenkyu.html
453あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/01 09:43
タイの昔話。(うろ覚え)
ぐうたらのバカ息子がお母さんにお使いを頼まれたが
買い物にいくのがめんどくさい。
めんどくさいなーと呟くと悪魔があらわれた。
「おまいの手と引換えに買い物へ行っちゃろう」
めんどくさがりのバカ息子は自分の手を悪魔に差し出し
代わりにお使いに行ってもらった。
しばらくして、バカ息子は腹が減った。
しかしバカ息子には手が無いので料理をつくるのも食べるのも面倒。
肉まんじゅうでもないかねーと呟くと悪魔があらわれた。
「おまいの足と引換えに肉まんじゅうをくれちゃろう」
めんどくさがりのバカ息子は自分の足を悪魔に差し出し
代わりに肉まんじゅうをもらった。

・・・覚えているのはこのヘンまでです。



454あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/02 12:27
ポッケウルフさん好きです
455神話と昔話:03/01/03 00:53
たまには学術的なサイトを
ttp://homepage1.nifty.com/miuras-tiger/
人間に命をくれるのも、位をさずけるのも、にら(竜宮)の神さまだということであります。

むかし、兄弟がありました。
弟は狩が上手で、兄は漁が上手でありました。
弟は狩にいけば獲物はもてるだけもって帰り、兄は漁にいけば魚はもてるだけもって
帰って来ました。
457浦島 (鹿児島県大島郡):03/01/03 11:15
ある日、二人は
「どうだ道具をとりかえて、誰がたくさん獲物をもって帰るか、賭をしようではないか」
と相談しました。

そして、兄は弟の鉄砲をもって山に行き、弟は兄の釣竿をもって海に行きました。
兄は山で鉄砲をうちました。
弾は鳩にはあたらずに、木にあたりました。
弟は「あかみのつる」という大きな魚をつり上げましたが、手にとろうとするところできれ、
釣針をのんだまま逃げてしまいました。
458合コン・仲間募集・写メ−ル:03/01/03 11:17
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兄は
「わしは鳥をうつことはできなかったけれども、弾はひろって帰って来たんだ。
お前は針をきられたんだから、お前の負けだ」
といって、弟にたくさんの金をよこせといいました。

弟は兄がいうだけの金がないので、何とでもして釣針をさがして来ようと思って、
夜昼三日のあいだ海をあるきまわりました。
ところが三日目に、白髪の爺さんに出あいました。
「子供、子供。お前は夜昼三日も海に来て物をさがしているようだが、どうしたわけだ」
と、たずねました。

弟はことのしだいを語って、
「どうかお助けください」
とたのむと、老人は
「じゃ、わしの背中に乗るがよい」
といいました。

弟が老人の背中にのったかと思うと、二人はいつのまにかにらの世界へ来ていました。
にらでは、どこもどんどんかしこもどんどん、遊びの場所ばかりに案内されました。
ご馳走になりながら、三日たってしまいました。
その三日が人間界では三百年になっていました。

弟は郷里(くに)のことを思い出して、これから帰りますといいました。
爺さんは、それではといって、年とらぬ息をこめた小箱をくれました。
「この箱はけっしてあけるなよ、あけると難儀をするよ」
といって、小さな箱をわたしました。
弟は箱をもらって、また爺さんに負われて郷里に帰って来ました。
462浦島 (鹿児島県大島郡) :03/01/03 17:29
郷里に帰って見ると、まえとはすっかりようすが変わってました。
自分の家には知らぬ人ばかり住んでおりました。
庭の木は大木になっていました。

村はずれで田の草取りをしている七十ばかりの老人がおりました。
話を聞いて見ると、五代前に海へ行ったまま行方しれずになった人が
あったという話は、聞いたことがあるということでありました。
463浦島 (鹿児島県大島郡) :03/01/03 18:24
どうすることも出来ないので、弟は煙草を吸いながら、あけては
ならぬといわれた小箱を、きせるの先であけて見ました。

ところが、中からししっと音がして煙が出て、弟はその煙にのって
天にのぼってしまいました。


-終わり-
464あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/03 19:33
>453
初の東南アジアの昔話ですね。
これからもお願いします。
465あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/04 02:01
ここなかなかいいですよ

神話考
ttp://www2u.biglobe.ne.jp/~gln/77/7704/770401.htm
466あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/04 05:08
44 名前:山野野衾 投稿日:2001/12/17(月) 18:24
ビルマの民話
ある時弟が兄に借りた釣り針で釣りをしていると大魚がそれを飲み込んでしまった。
弟は別の品を用意しようとしたが兄は許さず結局川をさらって捕えた魚の腹を
さいて取り戻した。
しかしその後も争いは止まずとうとう2人は別々に暮す事になった。(始祖伝説)

類話はインドネシアにも伝わっており、南方から琉球経由で本土に伝わった可能性は
高いでしょう。(異類婚姻は珍しくない)
ただ異界の舞台に特定の場所をあてるのはどうでしょうか。物理的に実在する場所で
ある必要はないと思います。
467姿を盗まれた話 (朝鮮):03/01/04 14:06
あるところに、若い書生さんがありました。
勉強して偉い人になるには、本をたくさん読まなければなりません。
そういうとき、昔の人は大抵山のお寺へこもりました。

書生さんも家を出て、三年の間、山のお寺で勉強することになりました。
一年、二年と月日が経ち、いつの間にか丸三年が過ぎました。
書生さんは、勉強が終わって懐かしい我が家へ帰ってきました。

さて帰ってみると、驚きました。
自分とそっくり生き写しの若い男が一人家の中にいるのです。
その男は家の中ですっかり自分になりすまして、大いばりに振る舞っていました。
書生さんは、あっけに取られてしまいました。
それよりも困ったのは、うち中の人がみんなあべこべに自分を偽物扱いすることです。
せっかく帰ってきたのに、家へ上がることもできません。
「冗談じゃない。私はたった今、お寺から帰ったところです。あいつはきっと、
何かの化け物ですよ。」
ふた親や、兄弟の前で書生さんがそう言うと、家の中の偽物も黙ってはいません。
「黙れ!お前こそどこの古狸だ。化けの皮が剥がれないうちにとっとと帰れ。」
と大変な剣幕です。

その声までがそっくり同じで、家中の人にも見分けがつきません。
471姿を盗まれた話 (朝鮮):03/01/04 14:38
着ている物からほくろや傷のあとまで残らず調べましたが、どっちにもちゃんと
した証拠があります。
生まれた月日や、小さいときの出来事を一つ一つ言わせてみたけれどどっちの
返事も少しも違いません。

おしまいに、それなら家中にある道具や品物の数を一つ残らず当てさせるという
ことになりました。
ところが書生さんは三年も家を離れていたので、急に返事ができません。
それなのに、偽物の方はその場でスラスラと当ててのけました。
家中の人はそれで見分けがついたと、とうとう本物の書生さんを追い出して
しまいました。

書生さんは、仕方なく当てのない旅に出ました。
そして、毎日毎日寂しい思いで日を送りました。
あるところで書生さんは、一人のお坊さんに会いました。

お坊さんは書生さんの顔をしげしげと見て、気の毒そうに言いました。
「あんたは誰かに自分の姿を盗まれている。あんたとそっくり同じ形をしたものが
もう一人いるはずじゃ。」
474さげ:03/01/04 15:11
それでそれで?
読んでいてもらえたんですね。
今から出かけるところなんですけど、おまけでもうちょっと
書き込んでからにします。
書生さんはそれを聞いて、このお坊さんこそ自分を助けてくれる人に
違いないと思いました。
そこで包み隠さずに、家を追い出された話をみんな打ち明けました。
お坊さんはうなずきながら、書生さんに言いました。
「あんたは寺で勉強しているとき、爪を切ってどこかへ捨てましたかな。」

「はい、調度寺の前に川が流れておりました。その川で水を浴びてはいつも河原の
石に腰掛けて爪を切りました。そして切った爪はそのまま河原に捨てたのです。」
478さげ:03/01/04 15:34
読んでますよー。お出かけ前にもうちょっと(遅れない程度で)
479姿を盗まれた話 (朝鮮):03/01/04 15:38
「そうじゃろう。その爪を食べたものがあんたの姿を盗んだのじゃ。あんたは
もう一度帰りなされ。帰るときに猫を一匹袖の下に隠していくのじゃ。そして
家へ入ったら、その猫を偽物の前へ放してやるがよい。そうすれば、何もかも
分かるはずじゃ。」
じゃ出かけてきます。
481さげ:03/01/04 15:39
つづけてください。 ((と書きこむ前に送信してしまいました。鬱、、。
482さげ:03/01/04 15:40
カキコサンクスでした!お気をつけて。続き楽しみに待ってます。
http://members.tripod.co.jp/horror_world/
恐い話がありましたら、
投稿お願いします。
できたてです
484姿を盗まれた話 (朝鮮):03/01/04 18:31
書生さんは、言われたとおり猫を一匹懐へ忍ばせて、また我が家へ
返って行きました。
そして猫を偽物の前に放してやりましたところ、偽の男は真っ青になって
逃げようとしました。
485姿を盗まれた話 (朝鮮):03/01/04 18:35
猫が追いかけて、その男のえり首に食いつきました。
もの凄いつかみ合いが始まりました。

そのうちに、とうとう喉笛を食い切られて、偽物は座敷の真ん中に倒れました。
見ればそれは大きな野鼠でした。
486姿を盗まれた話 (朝鮮):03/01/04 18:37
鼠が書生さんの爪を食べて、書生さんの姿を盗んだのだと分かりました。
爪には人間の精気が宿っているので、それを食べた野鼠は、楽々とその
人の姿に化けられたのです。

-終わり-
487さげ:03/01/04 18:44
爪からクローンじゃなくて ほ。。
読みやすくて良かったです。朝鮮の怖い話またあったらヨロです
488486:03/01/04 20:36
>487
ご声援ありがとうございます。

>爪からクローンじゃなくて ほ。。
そういう解釈もあるんですね。
でもまあこの話自体、そういうことなのかもしれません。

子供の頃にこの話を読んで以来、外で爪を切ってそのまま捨てたり
することのないよう注意するようになりました。
朝鮮半島の呪術的な考え方を知ることができて、なかなか興味深い
話ではないかと思います。
489合図の旗 (朝鮮):03/01/04 22:05
目の見えないお爺さんがおりました。

目は見えないけれど、お爺さんには不思議な力がありました。
目の見える人に分からないことが、何でもお爺さんには分かるのです。
人の体に宿って病気をさせたり、死なせたりする悪い鬼をちゃんと見つける
ことができました。
490合図の旗 (朝鮮):03/01/04 22:08
その上、お爺さんはその悪い鬼を封じる技も心得ていました。
今までにも、鬼に苦しめられている人を何十人も助けたので、評判は
知れ渡っていました。
491合図の旗 (朝鮮):03/01/04 22:15
あるときお爺さんが道を歩いておりますと、お爺さんのすぐ側を一人の小僧
さんが通りかかりました。
その小僧さんは、おいしそうな色をした、たくさんのお菓子を荷なっていました。
492合図の旗 (朝鮮):03/01/04 22:19
見ると、そのお菓子の中に、一匹の小鬼がちょこなんと座っているのです。
誰の目にも見えませんが、お爺さんにはそれがちゃんと見えました。

「さてはあの鬼め、またどこかの家へ悪さをしに行くのだな。」
お爺さんはそう気がついて、その小僧さんのあとを黙ってついていきました。
493合図の旗 (朝鮮):03/01/04 22:38
しばらくして小僧さんは、とある一軒の家へ入りました。
それは婚礼のある家でした。

家の中には大勢の人が集まって、めでたい喜びに賑わっていました。
小僧さんは注文のお菓子を届けると、お礼を言って帰って行きました。
494合図の旗 (朝鮮):03/01/04 22:52
お爺さんは、外の方で様子をうかがっておりました。
すると間もなくです。
家の中は急に騒がしくなりました。

今まで奥の部屋に座っていた花嫁さんがお菓子を一口食べたかと思うと、
にわかにその場に倒れて、それっきり息が絶えてしまったのです。
495合図の旗 (朝鮮):03/01/04 23:04
お菓子の上に乗っていた悪い鬼は、真っ先に花嫁さんに取り憑いたのでした。
肝心のお嫁さんが亡くなったのですから、家中は丸でひっくり返るような騒ぎです。

お爺さんは家の中へ入って行くなり、
「心配なさることはない。嫁御はわしが助けてあげる。」
と、みんなを静めながら言いました。
496合図の旗 (朝鮮):03/01/04 23:07
お爺さんの評判を知らない者はありません。
大勢の客の中には、お爺さんに助けられた人もいました。
「それお爺さんが見えた。」
と、みんなはもう花嫁さんが生き返ったように喜びました。
497合図の旗 (朝鮮):03/01/04 23:12
早速お爺さんは、お嫁さんの部屋に入って、鬼を封じることになりました。
その前に、家の人に向かってお爺さんはこう言いました。
「わしが入った後は、入り口と言わず、窓と言わず、少しの隙間もないように
外からふさいでくだされ。針の穴が一つあってもいけませんのじゃ。」
498合図の旗 (朝鮮):03/01/04 23:29
お爺さんが部屋へ入ると、言われたとおり部屋の周りをすっかりふさぎました。
それが済むと、中からはお爺さんが呪文を唱える声が、静かに聞こえ始めました。
499合図の旗 (朝鮮):03/01/04 23:32
いくらもしないうちに、部屋の中からドタン、バタンと大きな音が聞こえてきました。
呪文の力に苦しくなった鬼が、死にものぐるいで跳ね起きようとする--、それを
お爺さんが一心になってねじ伏せる--、その激しい争いが、丸で組み討ちでも
始まったように外の人には聞こえるのです。

その実、お爺さんは花嫁さんの亡骸に手を当てて、低い静かな声で呪文を唱えて
いるだけでした。
500合図の旗 (朝鮮):03/01/04 23:57
その家に一人、若い召使いがいました。
部屋の中があんまり騒がしいので、若い召使いはこっそり部屋の外へ近寄って
来ました。
そしてほんの針先で突いたほどの小さい穴を一つ空け、そこから部屋の中を覗こう
としました。

そのときです。
アッという間に鬼は跳ね起きて、その小さい隙間から外へ逃げ出してしまいました。
501合図の旗 (朝鮮):03/01/05 00:17
鬼が離れたので、花嫁さんは息を吹き返しました。

けれどもお爺さんは、青い顔をして溜め息をつきました。
「大変なことになった。もう少しで封じられたのに--。
あの悪い鬼はきっと今に仕返しをするだろう。もう、わしの命も長くはない。」

そんなことを言いながら、家の人が生き返った花嫁さんを取り巻いてわいわい
騒いでいる間に、お爺さんはろくに礼も受けないで帰って行きました。
502合図の旗 (朝鮮):03/01/05 12:22
お爺さんの評判は、いよいよ高くなりました。

ところが王様は、その評判を聞くと首を傾げて心配しました。
「目も見えないのに、鬼が見えるわけがない。きっとそれは怪しい術を使って
人の目を騙しているのだろう。」

王様はそう考えて、お爺さんを引き立ててくるように言いつけました。
503合図の旗 (朝鮮):03/01/05 12:56
お爺さんが連れられてくると、王様は一匹の鼠をその前に置いて、
「これが何か当ててみよ。」
と、お爺さんに言いました。
504合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:00
「はい、鼠が三匹でございます。」
お爺さんはためらいもせず、そう答えました。
「なるほど鼠には違いないが、三匹とはどういう訳じゃ。」

「はい、確かに三匹でございます。それに相違はございませぬ。」
505あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/05 13:01
で?
506合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:07
「黙れ!ここにあるのはただの一匹じゃ。それとも目の見えぬその方が目明き
の見たよりも確かじゃと申すか。」
王様は大層腹を立てました。

そして、
「今日まで大勢の人をたぶらかした罪は憎んでも余りがある。この者をすぐに
獄門にかけよ。」
と、厳しく言い渡しました。
507合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:11
お爺さんは役人の手に渡されて、その日のうちに刑場に連れて行かれました。
罪人のお仕置きをするところは、都のずっと外れにありました。
508合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:14
王様は、お爺さんを役人に渡した後で考えました。
「鼠ということをすぐに言い当てたのだから、鬼が見えるというのもまるっきり嘘では
ないようだ。それにしても一匹の鼠を三匹と言ったのはどういう訳だろう?」
509合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:16
すると腹の中には、子鼠が二匹入っておりました。
「これはしまった。すぐにお仕置きを取り止めるように合図をせよ。」
510合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:18
王様の言葉に家来はやぐらに登って、合図の旗を振りました。
旗が右へ傾けば助ける合図、左になびけば切れ、という合図です。

役人はその合図を見届けた上で、お仕置きをする習わしでした。
511合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:21
助ける合図をするつもりで、王様の家来は右へ旗を振ろうとしました。
けれどもその時、にわかに吹いてきた風が、旗を左の方へ倒してしまいました。
いくら一所懸命になっても、その旗を右へ戻すことができません。

それでお爺さんは、とうとう首を打たれてしまいました。
512合図の旗 (朝鮮):03/01/05 13:23
そのとき、旗のすぐ側で、カラカラと笑う声がしました。

それはいつか、お爺さんが取り逃がした悪い鬼でありました。
513ある独身男の死 (グリーンランド):03/01/05 17:27
昔、一人の若者がいた。

一度も猟に出なかったために、彼のカヤックはすっかり緑の草に覆われてしまった。
家族がいいかげんで猟に出てみたら、といくら勧めても知らん顔で、いつも家にいた。
ある日、フィヨルドの奥地に住む男のところにたいそう美しい娘がいる、という噂が
伝わってきた。
若者は、その娘を自分の妻にしたい、と考えた。

ある朝みんながまだ眠っているうちに若者は起き上がって、顔や体をきちんと
洗い、自分のカヤックに生えていた草をすっかり抜いた。
それからカヤックに乗り込んで、漕ぎだした。
しばらく漕いでいくと、旅の目的地である居住地が見えてきた。

岸の人々は若者のカヤックを見ると、
『岸につけろ!岸につけろ!』
と呼び掛けた。

若者がカヤックをつけると、人々は歓声をあげて迎え、うわさの娘とその父親に
ついて喜んで教え、若者を娘の家につれていってくれた。
516ある独身男の死 (グリーンランド):03/01/05 17:30
娘の父親は若者を親切にもてなした。

娘は少し離れたところに座っていたが、若者は娘が本当にとても美しいことを
確かめることが出来た。
若者は自分の家の場所や家族の話を聞かせ、たっぷりともてなしを受けた。

そのうちに夜になり、父親は横になって眠った。
しかしまえもって若者に、娘のところに行っても構わないと言っておいた。
若者はそのとおりにした。
しかし、まだ娘に近づかないうちに気を失った。
娘のあまりの美しさに、意識をうばわれたのだ。

だがそれも長くは続かなかった。
男はやがて我に返って娘に近付いた。
しかしその美しさに目がくらんで、ふたたび目を閉じたとたんに又も失神した。
まもなく意識をとりもどした若者は、寝台のそばに立った。
美しい娘は、男にほほえみをなげた。
若者はその衝撃に耐えられなかった。
なんとか寝台のふちにしがみつこうとしたが、無駄だった。
手から力がぬけて、若者は床に倒れた。
息をふきかえした若者は、これでもうあらゆる試練を克服したつもりだった。
しかし、寝台に這い上がろうとした調度その時、娘が自分を受け入れる用意を整え、
身仕舞いをするのを見てしまった。

これは刺激が強すぎた
。若者は失神し、しばらくは寝台の上に横たわったままだったが、美しい娘はその間、
若者を待ち続けた。
520ある独身男の死 (グリーンランド):03/01/05 17:36
しかし、この失神も終わった。
男はようやく寝台に上って、娘の隣に寝ることができた。

今度こそ望みを遂られる、と思った。
だが、それは思い違いだった。
美しい娘が側にいるのに圧倒されて、また目の前が真っ暗になったのだ。
ふと気がつくと、美しい娘が隣で、自分を待っているではないか。

男は娘の体をなで始めた。
そのうちに、すさまじい情熱が高まってきて、娘のわきの下、乳房の間、ひかがみの
中に消えてしまいそうな気がした。
そして突然うめき声をあげたかと思うと、美しい娘の体の中に姿を消した。

『大声で呻いたのは誰だい?』
と、眠っていた家人の何人かがつぶやいた。
しかし、それからまた、静まりかえった。
522ある独身男の死 (グリーンランド):03/01/05 17:38
翌朝、若者の姿が消えたのをみんなは不思議がり、もう帰ったのだろうと思った。

しかし何人かが、若者のカヤックが水ぎわに置いてあるのを見つけ、彼の行方を探した。
しかし、見つからなかった。
美しい娘がおしっこをした家の裏手から、一山の骨が発見されただけだった。


それはあまりにも情熱的に、美しい娘を愛したばかりに、娘の体のなかに消えた若者の骨だった。
523姉妹スレもよろしく:03/01/05 23:56
【ロシアの神話・民俗を語る】
ttp://academy.2ch.net/test/read.cgi/min/1039693185/
本当のグリム童話
ttp://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1039588260/
524さげ:03/01/06 11:20
旗の合図もある独身男の死も始めて読みました。怖くはないけど面白いですね。
このスレ人気ある訳がわかります。サンクスでした!
525あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/06 13:20
子供だったら怖がるかも知れないが、流石に大人だと、怖いとまでは思わんか
526さげ:03/01/06 14:46
にしても、、このグリーンランドの話は興味深いですね。
昔話や逸話は過去の何らかの出来事を遠まわしに残すという当時の人々の
メッセージだったりします。このグリーンランドの話もその類に思われます。

すごい省きますが部族の長の娘が男食いで、殺人癖もあったのかもしれません。
おしっこをした裏山、、に若者達の死骸をうめていたのでしょう。
また、ひかがみ、、という件は今ではわかりませんが恐らくその殺人娘の一族の
名前か何かを暗喩するものだったと思われます。が、いまとなっては寓話ですね。
527Zanoni:03/01/06 19:03
分身の術

左慈(さじ)は盧江(ろこう)の人である。
若いときから神通力があった。

あるとき曹公(そうこう)の家の宴会に招かれていったが、曹公が、
「今日は山海の珍味を取りそろえた。ないのは松江(しょうこう)の鱸(すずき)の
膾(なます)だけだ」
というと、左慈は、
「松江の鱸くらいなら、わけなく手に入ります。」
と言った。
528分身の術 (中国):03/01/06 19:07
曹公が聞きとがめて、
「それなら、すぐ取り寄せてみよ。」
と言うと、左慈は大きな銅盤に水を満たし、竹竿に糸と鉤(はり)を付けて、
盤の中へ垂らした。

そして間もなく、一匹の鱸を釣り上げた。
529分身の術:03/01/06 19:35
曹公も列席の者も、みな驚いて己の眼を疑ったが、それは紛れもなく
三尺余りの大きさの、ピチピチとした鱸であった。

「一匹ではみんなに行き渡らぬ。もう一匹あるとよいのだが・・・・・・」
と曹公が言うと、左慈はまた糸を垂れ、前と同じ大きさの鱸を釣り上げた。
530分身の術:03/01/06 19:40
曹公は自分で膾を作りながら、
「これに蜀の生薑(しょうが)があると、よいのだがな」
と言った。
すると左慈は、
「それもすぐ手に入ります。」
という。

曹公は左慈がこの土地の生薑でごまかすのではないかと思って、
「鱸を盤の中から釣り上げたように、そのあたりの地面から掘り出すのか?」
と言った。
531分身の術:03/01/06 19:46
左慈は笑って、
「いいえ。蜀へ行って買ってまいります。」
と言う。

「そんなことができるわけがない。蜀へ往復するには、急いでも一年はかかるのに。」
「それは、普通の者ならということでございましょう。」
「ふむ。それで、お前が買いに行くと言うのか?」
「いいえ。使いの者をやります。」

「それなら使いの者にことづてを頼む。私の部下が今、蜀へ錦を買いに行ってるから、
その部下に会って、もう二反買い足すように言いつけてくれとな。」
「承知致しました。」
532分身の術:03/01/06 19:52
左慈は、その旨を言い含めて使いの者を出した。

その者は出て行ったかと思うと、すぐに帰ってきて生薑を差し出し、
「蜀で錦を売る店を探しましたところ、閣下の部下の方にお会いすることが
できました。お言葉通りにもう二反買い足すようにと伝えておきました。」
と、言った。
533分身の術:03/01/06 20:24
それから一年余りたったとき、錦を買いに行った曹公の部下が蜀から帰って
きたが、果たして、始めに言いつけたよりも二反多く買ってきた。

わけを訊ねると、
「一年余り前の何月何日、錦を売る店で出会った人が、閣下のお言い付けだと
言って、二反多く買うようにと言いましたので。」
と、そのときの様子を話した。
534分身の術:03/01/06 20:33
曹公は、左慈の神通力を恐れだした。

その後、曹公が百人余りの部下を連れて郊外へ遊山に出かけたとき、
左慈は、一壺の酒と一切れの肉を持ってついて行き、自分で酒を注いでまわり
肉を勧めて、百人の部下たちみんなを堪能させた。
535分身の術:03/01/06 20:43
曹公はそれを見て怪しみ、部下を町の酒屋へやって調べさせたところ、
どこの酒屋でもみな昨夜のうち、店にあった酒と肉がすっかりなくなって
いたという。
536分身の術:03/01/06 20:49
曹公は、益々左慈を恐れるようになり、折を見て左慈を殺してしまおうと考えた。
だが、なかなかその機会がない。

あるとき左慈を家に招き、いきなり逮捕しようとしたところ、左慈はパッと壁の中に
逃げ込んで、そのまま姿を消してしまった。

そこで一千の懸賞金をかけて左慈を捜させた。
537分身の術:03/01/06 21:08
その後、ある人が町の人混みの中で左慈を見つけ、捕らえようとしたところ、
町中の人が、みな左慈と同じ姿になってしまって、どれが本物か見分けが
つかなくなってしまった。
538分身の術:03/01/06 21:18
その後また、湯城山のあたりで、左慈を見かけたという知らせがあったので、
曹公が部下に追いかけさせたところ、左慈は羊の群の中へ逃げ込んでしまった。

そこで曹公は、部下に、羊の群に向かってこう言わせた。
「曹公は、あなたを殺そうと思っておられるのではない。あなたの術を試そうとされただけだ。
あなたの術がいかに優れたものであるかはもうよく分かったから、どうか姿を現されたい。」
539分身の術:03/01/06 21:35
すると羊の群の中から、一頭の年取った牡羊が、前足を折り曲げて人間の
ように立ち上がりながら、
「何をあくせくなさる。」
と言った。

曹公の部下たちは、それを見ると、
「あの羊だ!」
と、我がちにその羊をめがけて駆け寄ろうとしたところ、数百頭の羊が、みなその羊と
同じ羊になり、同じ格好をして、
「何をあくせくなさる。」
と、言った。
540分身の術:03/01/06 21:44
曹公の部下たちは、どの羊を捕らえたらいいのか分からなくなって、むなしく引き
返したという。

『老子』に、こういう言葉がある。
「吾(われ)に大いなる患(うれい)ある所以(ゆえん)のものは、吾に身あるが為なり。
吾に身なきに及べば、吾に何の患かあらん。」

老子のような人たちは、自分の肉体をなくすることができたのであろう。
左慈も、それに近かったのではなかろうか。
541Zanoni:03/01/06 22:19
ネタ元は、駒田信二 著 「中国神仙奇談」
ttp://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=18467921
です。

個々の話の出典が何かは本に明記してないので、少し長くなりますが
「あとがき」を引用します。
(著者のスタンスが分かる上に、今後、他の話も紹介したいと思うので。)
542Zanoni:03/01/06 22:25
ここに集めた59篇の中国神仙奇談は、一篇(杜子春)を除いては、皆翻訳ではなく、
原話を私の文体で語り直したものである。

真妄の別のない原話の世界へ、真妄の別を追求する科学に慣れた現代の読者を
案内するためには、そうした方がよいと考えたからであって、語りなおしたとはいえ、
原話の筋を歪めたり変えたりはしていない。
543Zanoni:03/01/06 22:30
「杜子春」だけを忠実に翻訳したのは、芥川龍之介の「杜子春」と比べて欲しいと思った
からである。
比べてみれば、両者の思考の根本的な違いが明らかになるはずである。

その他この59篇の説話の中には、我が国に伝わって日本化している説話がかなりある。
読者がどこかで読んだことがあると思われる説話は大抵そうだが、それと原話の違いを
比べてみれば、中国的発想、あるいは思考の特質がうかがえるはずである。
544Zanoni:03/01/06 22:33
日本化した説話の多くは、芥川が杜子春を救い上げることによって話を結んでいるのと
軌を一にするけれども、中国の原話では多くの場合、突き放してしまって結末をつけない
ことによって、永遠性、無限性が象徴される。
そしてそこからまた、奇想天外な話も生まれるのである。
545Zanoni:03/01/06 22:36
原話は六朝から唐、五代、宋、明、清に至る歴代の、いわゆる「志怪」あるいはそれに
類する説話の中から選んだが、最も多く取ったのは、六朝、唐、宋のものである。
546Zanoni:03/01/06 23:35
開かずの間

平陽の知事に、朱鑠(しゅれき)という人がいた。

はなはだ残忍な性格で、罪人を苦しめるために特に重い首かせを作ったり、太い棒を
使ったりした。
殊に女を苦しめることを喜び、妓女などがひかれてくると、一糸もまとわぬ丸裸にして、
容赦なく打ちすえては、その苦しみ、のたうつさまを見て楽しんだ。

罪の軽重には関わりなく、容貌の美しい者ほど刑罰を重くして、黒髪を剃ってくりくり坊主
にしたり、はなはだしきに至っては、小刀で鼻の穴をえぐったりした。
547開かずの間 (中国):03/01/06 23:39
このような残忍なことをしながら、彼は、自分は美人を見ても心を動かすことのない
鉄石心を持つ者だと人に誇っていた。

特に女に対して残酷なことをするのは、美人の美を失わしめてしまえば、美貌に迷う
者はなくなり、従って世の道楽者もなくなるからだ、などと言った。
548開かずの間:03/01/07 00:03
やがて朱鑠は、平陽の任期が満ちて山東へ転任することになり、家族を連れて任地に
赴く途中、荏平(じんへい)というところの宿に旅装を解いた。

その時のことである。
宿に扉を釘付けにした一棟があるのを見て、主人にその訳を尋ねると、以前そこには
しばしば妖しいことが起こったので、長い間開けずにいるとのことであった。
549開かずの間:03/01/07 01:09
朱鑠はそれを聞くと、あざ笑って言った。
「それは面白い。何事が起こるか、俺が泊まってみよう。」
「およしになった方がよろしゅうございましょう。もしものことがあったら、取り返しが
つきません。」

主人がそう言って止めると、朱鑠は怒って、
「ぐずぐず言わずに開けろ。妖怪など俺は怖くない。俺の威名を聞けばおそらく妖怪も
逃げてしまうであろうが、もし出てくれば、なお面白い。たちどころに俺が退治してやる。」
550開かずの間:03/01/07 01:38
「いいえ。およしになってくださいませ。」
主人が同じことを言って引き止めると、朱鑠はいよいよ怒って、
「きさま、この俺を侮る気か!」
と怒鳴った。
551開かずの間:03/01/07 01:41
「いいえ、左様なことはございません。ただ、お止めしているだけでございます。」
「なぜ止める。止めることがおれを侮っていることだ。」
「いいえ。知事様の平陽県での威名は、私どももよく承知しております。恐れこそすれ、
どうして侮ったりなど致しましょう。」

そういう主人の顔は、かすかに笑いを浮かべているように見えた。
朱鑠はそれを見咎めて、いきなり主人をぶった。
主人の顔は、打たれながらもなお笑いを浮かべているように見えた。
552開かずの間:03/01/07 02:23
朱鑠の家族の者もしきりに止めさせようとしたが、朱鑠はどうしても聞かず、とうとう
主人にその家の扉を開けさせ、妻子たちは別の部屋へ泊まらせて、自分一人剣を
握り、燭(しょく)を携えて中へ入った。
・・・そっ、それからどうなったの?!
554開かずの間:03/01/07 15:10
宵のうちは、何事もなかった。
妖怪も恐れをなしたとみえる、と朱鑠は横になった。
しかし、気を配って眠らずに待っていると、夜もようやくふけた頃、扉を叩く音が聞こえた。
555開かずの間:03/01/07 15:14
白い鬚を垂れ、赤い冠をかぶった老人だった。
朱鑠が剣を握り直して身構えると、老人はうやうやしく一礼をして言った。

「私は決して妖しい者ではありません。この地方の土地の神です。あなたのように剛勇の方
がこの地をお通りになったことは、妖怪どもの殲滅される時期が来たものと、喜びにたえず、
それゆえご挨拶に参った次第です。」
556開かずの間:03/01/07 15:33
朱鑠は半信半疑で、剣を構えたままじっと老人を見つめていた。
あるいは、これが妖怪かもしれぬ。
もし妖しい振る舞いにおよんだら、たちどころに切り伏せてしまおうと、心を配っていた。
557開かずの間:03/01/07 15:44
すると老人は言った。
「あなたのような方が、神と妖怪とをお見分けにならないはずはないと思います。つきまし
ては、土地の神としてお願いしたいことがありますが、聞いてくださいますでしょうか?」
「言って見られよ。」
と朱鑠は言った。
558開かずの間:03/01/07 16:26
「おそらく、やがて妖怪どもが続々と現れると思います。彼らは一目見れば、すぐそれ
と分かりますゆえ、姿が見えたら直ちにその剣で片っ端から斬り殺してください。猶予
なさいませんように。私も及ばずながら、陰でご助力させていただきます。」
「よろしい、承知しました。」
と朱鑠は大きく頷いた。

「あなたのご勇武のほどは、よく承知しておりますが、何といっても相手は妖怪のこと、
おぬかりのないように願います。」
「ご念には及びません。」

「それでは、お願い申します。」
老人は、一礼して帰っていった。
559開かずの間:03/01/07 17:24
朱鑠は剣を握って待ちかまえていたが、いくら待っても妖怪は現れなかった。
やがて、ようやく夜の白みかけてきた頃である。

なにやらひそひそと囁く声が聞こえ、扉を押し開けて、青い顔の者、白い顔の者、大きな者、
小さな者らが次々に忍び込んできた。
朱鑠は無言で躍りかかってゆき、あの老人の言った通りに、片っ端から彼らを切り倒した。
560開かずの間:03/01/07 17:32
さして手強い相手もなく、皆を斬り伏せてしまうと、なおも扉の方に向かって身構えて
いたが、もはや後に続くものはなかった。

「残らず妖怪どもを退治したぞ!」
朱鑠は、溢れるような満足感をおぼえ、宿中に響くような大声でそう叫び続けた。
561開かずの間:03/01/07 17:36
すでに夜は明けそめていた。
主人を始め、宿の者らがその声を聞いて駆けつけて来た。

部屋の中には果たして、幾つもの死体が血を流して横たわっていた。
それを見た人々は、一斉に皆、
「あっ!」
と、驚きの声をあげた。
562開かずの間:03/01/07 18:53
得意気に突っ立ってる朱鑠の前で、人々はあまりの恐ろしさに、しばらくは言葉も出なかった。
「おお」、「おお」
と言うばかりである。
563開かずの間:03/01/07 18:59
「うん。さして手強い相手でもなかったぞ!」
と言って、朱鑠は誇らしげに昨夜からの顛末を話した。

そのとき初めて、主人が口を開いた。
「いや、あなたは大変なことをなさいました。」

その顔はやはり、かすかに笑っているように見えた。
564開かずの間:03/01/07 19:11
「知事様、よくご覧なさいませ。」
そこに倒れている死体は、朱鑠の妻や妾、息子や娘達、それに下男や下女達だったのである。

主人に言われて初めてそれを知った朱鑠は、どっと床に倒れ、肺腑をえぐるような声をあげて
嘆いた。
そして主人を指差し、
「きさま、俺をたぶらかしやがって!」
と叫んだかと思うと、そのまま息絶えてしまった。

朱鑠の家族達は、夜の白みかけた頃主人の安否を気づかって、みんなでのぞきにきたのだった。
565開かずの間:03/01/07 19:14
宿の主人が、術者だったのかどうかは分からない。

朱鑠の数々の残忍な行為の報いが、本人は元より家族にまで及んだものであろうとして、
宿の主人は格別の咎めを受けることもなかったという。


終わり
566間かずの開:03/01/07 19:21
すごい!
567間かずの怪:03/01/07 19:22
紛らわしい
568羊の群:03/01/08 01:52
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。何をあくせくなさる。
569あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/08 02:08
>526
確かに幻想的で、いろんな想像が駆り立てられる話ですね
570あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/08 16:48
気づいたら、レス数いつの間にか伝説スレに迫る勢いだな。
dat寸前ばかりで、唐揚げばかりだった一ヶ月前が懐かしい。
571Zanoni:03/01/08 19:10
成弼金

隋の末頃、一人の道士が太白山にこもって丹砂を錬って仙薬を作り上げ、道術を会得して数十年間も
山の中に住んでいた。

成弼(せいひつ)という者が側に仕えて雑用をしていたが、道士は十年余りも生活を共にしながら、一向に
成弼に道術を教えようとはしなかった。
572成弼金 (中国):03/01/08 19:13
やがて成弼は、家に不幸があったので、道士に別れを告げ帰ろうとした。

すると道士は、
「そなたは十年余りも私に仕えてくれたので、お礼にこの仙薬を十粒進ぜよう。一粒を赤銅十斤に合わせれば、
上質の黄金になる。これだけあれば、葬儀の費用と、後の暮らしには事欠くまい。」
と言って、仙薬十粒を渡した。
573成弼金 (中国):03/01/08 19:17
成弼は家に帰ってから、道士に言われたとおりの方法で黄金を作った。
それは上質の金で、葬儀の費用に十分間に合ったばかりか、生涯暮らしていけるだけの額になった。

ところが葬儀を済ませると、成弼は良からぬ心を起こした。
574成弼金 (中国):03/01/08 19:26
太白山に登って道士に会い、
「もっと仙薬を下さい。」
と頼んだ。

すると道士は、
「わしは仙薬を惜しむのではない。仙薬は、お前の身を滅ぼす元になるからやらんのだ。」
と言って、承知しない。
575成弼金 (中国):03/01/08 19:29
成弼は、隠し持ってきた刀を突きつけて脅したが、道士は泰然としたままで承知しない。

成弼は怒って、道士の両手を切り落としたが、やはり道士は泰然としたままで承知しない。
さらに両足を切ったが、同じであった。
576成弼金 (中国):03/01/08 19:42
成弼は益々怒って、ついに首を斬り落とし、そして着物を剥いで調べてみたところ、肘の後ろに赤い
袋が結びつけてあって、そこに仙薬が入れてあった。

成弼が、仙薬を懐にしまって山を下りていくと、不意に自分を呼ぶ道士の声が聞こえた。
驚いて振り返ると、道士は、
「お前があんなことまでやるとは思わなかった。お前には、仙薬を使うだけの徳はないのだ。必ず神罰を
受けて、わしにしたのと同じ目にあわされるぞ。」
と言って、姿を消した。
577成弼金 (中国):03/01/08 19:48
成弼は、たくさんの仙薬を手に入れたので、黄金をたくさん作って豊かに暮らすようになった。

すると、不正を働いていると密告した者があって役人に逮捕されたが、成弼は錬金術を会得しているからで
あって、不正によって得た金ではないと言い張った。
578成弼金 (中国):03/01/08 20:04
それが天子の耳に入った。

成弼は都へ召し出され、勅命によって黄金を作らされた。
天子はその黄金を見て喜び、成弼に官爵を授けて黄金を作る係りに任命した。

成弼は数万斤の黄金を作ったが、やがて仙薬がなくなってしまった。
そこで術が尽きてしまったので、家に帰りたいと願い出た。
579成弼金 (中国):03/01/08 20:12
すると天子は、錬金の処方を申し立てるように命じた。

成弼が、実はかくかくの次第で知らないと報告した。
すると、天子は成弼が隠しているものと思い、刀で脅した。

しかし成弼が知らないと言うと、天子は怒って武官にその両手を斬らせた。
それでも言わない。すると、両脚を斬らせた。
しかし、それでも言わない。
天子は益々怒って、ついに成弼の首を斬らせた。

道士が言ったとおりになったのである。
580成弼金 (中国):03/01/08 20:15
このとき成弼が作った黄金は、成弼金あるいは大唐金と言われ、類のない上質の金として今日この金を
持っている者は、宝物として珍重している。


終わり

( ・∀・) Zanoni氏おつです!

チョト前までは死にかけてたスレが皆の力で見事に蘇りますた!
すごい嬉しいでつ!『伝説または逸話』のカウントも越えますた!
これからも実りあるスレであることを期待しつつアゲ!
582あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/08 21:55
ところで銅鑼衛門さんはどうしたのかな?
583あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/08 21:56
↑自作自演うざい
584582:03/01/08 22:00
>583
すぐ自作自演を疑う、疑心暗鬼のお前もうざい
585582:03/01/08 22:01
訂正

>583
すぐ自作自演を疑う、疑心暗鬼のお前「が」うざい
>583
誤爆?
587あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/09 07:41
確かに最近>1、こないな
588Zanoni:03/01/09 07:43
>583
>581は、私じゃないですが
589あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/09 19:34
司馬遼太郎の妖しい雰囲気がある短編(伊賀者、伊賀の四鬼、外法仏など)が好きなんですが、
これらの短編の元ネタご存じの方いません?
(って、やっぱりこういうのは好爺さんかな、山野さんは、ここ覗いてます?)

オリジナルに近い話を聞けたら嬉しいのですが。
590あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/10 00:49
反応ないな
伝説スレ向きなのかな?
591あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/10 02:35
今日はお話ないのかな?
592好爺:03/01/10 09:28
>>589 司馬遼太郎自体あまり好きではないのでその元ネタといわれても・・・
変わりに・・・

橘奈良麿の召使いが諾楽山(ならやま)で鷹狩りをした。見るとその山に沢山の狐の子がいた。
召使いは狐の子をつかまえて、木で串刺しにして、穴の入口に立てておいた。
その召使いには幼児がいた。母狐は召使いを恨み、身を変えてその幼児の祖母に化け、
児をだいて自分の穴の入口にきて、自分の子を刺した様に、召使いの幼児を串刺しにして立てた。
593あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/10 18:52
何らかの実話に基づいているということはないのだろうか?
594あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/10 19:47
>592
これで終わりですか?
595コンスタンディニとガレンティナ:03/01/10 23:47
コンスタンディニとガレンティナ(アルバニア)

昔、一人の母親がおりました。息子が九人おりましてね、十番目の子は娘でした。
しかし情けを知らない死神に八人の息子を取られましてね。娘はうちからずっと
離れたところに嫁ぐことになりました。

コンスタンディニが、末の息子ですけどね、母親にいったんです。
「母さん、ガレンティナのことをお嫁にやろうか?」
「ねえ、お前」母親が言ったんです。
  「不祝儀があったら、だれがあの子を連れてくるんだね?
  祝儀があったら、 だれがあの子を連れてくるんだね?」
息子が返事したんです。
  「母さん、おれが行ってやるよ、
  おれが行って連れてくるよ」
それからこの兄がガレンティナに言ったんです。
「さ、お嫁に行くんだ、この縁談はお前にはいい話じゃないか」

596コンスタンディニとガレンティナ:03/01/10 23:48
そのあとしばらくして、情けを知らない死神がやってきて、コンスタンディニ
まで取ったんです。最後の息子でした。九番目の息子でした。
母親が大きい声で言い出しました。
  「コンスタンディニ、ねえ、私の息子や!
  こうなったらだれがガレンティナを連れてくるんだね?」
お墓の中でコンスタンディニが母親の声をききまして、お棺をあけてたちあがって、
ガレンティナを迎えに行くんです。

ガレンティナはというと、ご近所の披露宴にでてましてね、輪舞をはじめてました。
コンスタンディニは真っ先に妹の息子達にあったんです、遊んでいるときでした。
  「教えておくれ、お前達の母さん、ガレンティナの居場所を」
「母さんは輪舞をはじめてるよ」
「みんなで迎えに行ってつれてきてくれ、コンスタンディニがきたと伝えてくれ」
子供達は母親を呼んだんです。
  「お願いだから来てよ、母さん!コンスタンディニ叔父さんがきたんだよ!」
597コンスタンディニとガレンティナ:03/01/10 23:51
コンスタンディニがうちに帰ってみると、コンスタンディニがいましてね。二人が
抱き合ってから、涙ながらにガレンティナが言ったんです。
「コンスタンディニ、小さい兄さん、どうしたの?」
「おふくろが会いたがっているんだ、一緒にきてくれ!」

二人で馬にまたがって出かけました。
  「コンスタンディニ、小さい兄さん!
  肩がいつもと違うわね?
  骨しかないじゃないの!」

  「道が遠くてくたびれてるんだ、
  それに埃だらけだし」

また妹が言ったんです。

  「コンスタンディニ、小さい兄さん!
  お顔がいつもと違うわね!」

  「ああ、妹、埃のせいだよ、
  ああ、妹、埃のせいだよ。
  おふくろが向こうのあのところで待っているよ。」

598コンスタンディニとガレンティナ:03/01/10 23:52
妹はいつでも「小さい兄さん、これはどうしたの」って言いましたが、兄さん
の返事はいつでも決まってました、「埃のせいだよ、埃のせいだよ」って。
そうこうするうち教会のところまで来ました。兄さんが妹に行ったんです。
 「ガレンティナ、妹よ、一足先におふくろのところに行ってくれ。おれは
キリスト様にごあいさつしたら、遅ればせでもかけつけるから」
兄さんは中に入って消えました。お墓に戻ったんです。

妹はははのうちに行きまして、戸口で言ったんです。
  「母さん、母さん、
  どうかあけて、ガレンティナです。
  ガレンティナです、娘です!」

  「向こうに行っとくれ、情け知らずの死神め!
  私の息子を九人も取ったのに
  今度は私を連れに来たんだね」
「母さん、私はガレンティナです、娘です、この戸をあけてよ!」

599コンスタンディニとガレンティナ:03/01/10 23:54
母親が戸をあけましたらね・・・
   一方が口づけしました、
   もう一人が口づけしました、
   一方の心臓が割れました、    
   もう一人の心臓が割れました。


                   (おしまい)
( ・∀・) ジーン この話激しく気に入りますた! イイ!
( ・∀・) ついでに600ゲト!
602589:03/01/11 02:36
>592
久しぶりの好爺さん登場ですね。

司馬遼太郎はあまり好きではないですか。
好き嫌いがはっきり別れる作家ですね。

お話ありがとうございました。
ときどき差し支えない範囲で、ネタ元を教えていただけると嬉しいです。
603あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 04:03
>595->599
いつもとひと味違ったテイストで、面白かったです。

で、初の非東洋系昔話が出てきてしまったわけですが、
この際世界中の昔話なんでもありにするか、それとも
ある程度制限はあった方がいいか、皆さんどう思います?
604あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 04:16
ていうか、よくわからんのだけど。
605あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 04:18
>604
何が?
606あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 04:20
筋がわからんのです。上の話の。
607605:03/01/11 04:24
確かに。

何となく漂う不条理な雰囲気は楽しめたが、どうも読みづらい。
上の方の長い話と違って、何度も同じところを読み直してしまった。
それでも、エンディングは分かったような分からぬような。
608595:03/01/11 04:47
>>603
アルバニアはトルコ人、モンゴル人に支配された歴史をもつので
東洋のカテゴリに(無理やり)入れてもいいかな?と思ったんですけど、
スレを読み返したら「日本および『近隣』アジア」が条件みたいですね。
気づかなくてごめんなさい。

>>607
実を言うと私もわけがわからず何度か読み返しました。
語り部が語ったことそのままを載せている本なので、語り部のクセ
や間違い?なんかがでてきてわかりづらいんです。味はあるけど。

この話はアルバニア人の間に広がっているバラードを元にしたもの
らしいのですが、ようは一家全滅、死神の定めた運命からは逃れられない
という話だと。最後、母親と再会できるとみせかけて「それかい!」という
あっけないオチが好きです。
609607:03/01/11 05:08
>608
>アルバニアはトルコ人、モンゴル人に支配された歴史をもつので
>東洋のカテゴリに(無理やり)入れてもいいかな?と思ったんですけど、

いやそれならそれでいいと思います。
要はなんでもありにするか、ある程度は縛りがあった方がいいかということなので。
(イヌイットの昔話もあることだし。)

とりあえずグリムやペローのような、いかにもヨーロッパくさい話は止めとく、ぐらいにしとく、
ていうことでいいんじゃないでしょうか。
(そういうのはグリムスレでやるということで。)

>実を言うと私もわけがわからず何度か読み返しました。
>語り部が語ったことそのままを載せている本なので、語り部のクセ
>や間違い?なんかがでてきてわかりづらいんです。味はあるけど。

こういう独特の味がある話の場合、ストーリーの明快さは犠牲にしても構わないと思います。

> この話はアルバニア人の間に広がっているバラードを元にしたものらしい

エンディングのとこなんか、詩のようだと思いましたが、やはりそうなんですね。
610あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 05:17

( ・∀・) 朝もはよからカキコが!

で、例によってスレ内ルールなんですが私個人としては
>609氏の
> とりあえずグリムやペローのような、いかにもヨーロッパくさい話は止めとく、ぐらいにしとく、
>ていうことでいいんじゃないでしょうか。
>(そういうのはグリムスレでやるということで。)

でいいと思います。でもあくまでしばりはユルークかつマターリでいきましょう
595氏の説明で私の判定は圏内でつ!

カキコされた話ではなくしばりが語られるのは本末転倒だと思いますし、
どこぞのスレの様に荒れた雰囲気にはなって欲しくないですから。
612あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 14:43
>589
果心居士の元ネタについてなら、ここに話が出てきてます。
http://academy.2ch.net/test/read.cgi/whis/1032023796/35-51
613あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 16:12
このスレ(・∀・)イイ!
特にこれが印象に残った。

     ∠Y"´゙フ
     ;' ゝ‘,,ェ)
    ; '( ゚Д゚)   <何をあくせくなさる
    ゙;(ノ   ';)
    ヾ,;'   ';
     ''∪''∪
614あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 16:17
>613
このせりふ確かにイイ
羊の群が一斉に立ち上がる不気味さが伝わってくるAAきぼん
615あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/11 16:20
不気味というか、シュールだな
616Zanoni:03/01/11 16:31
今になって気づきましたが、「分身の術」、「開かずの間」、「成弼金」は、>270の「中国怪奇物語」
シリーズの「神仙篇」で立ち読みできますね。
結構時間かけて打ったので、力が抜けました。

スレッド形式にあわせて文章も多少変更したり、用字法も色々変えたので、まあ全くの無駄では
なかったですが。

>613->615
私のこの言葉は気に入りました。
最後の羊が一斉に立ち上がるシーンが好きで、トップバッターに選んだようなもんです。
617589:03/01/11 18:14
>612
情報thxです
618ニッチンカラ:03/01/11 18:37
ニッチンカラ(アイヌ)

立派な男の人がいて、その人にはひとり娘がおりました。

私には娘がいてひとり娘なものですから、とても可愛がっておりました。
娘のために小さな木の人形をつくって、刀をさしたのですが、それで娘を遊ばせ
ていました。娘が大きくなってからは鹿でも熊でもたくさんとって何不自由なく暮
らし、畑を耕す時期になれば畑を耕し、穀物でも山菜でもたくさんありました。
親戚たちも助け合いながらくらしていたのです。

娘も大きくなり、「どこからか立派な人が来たら結婚させよう」と私は思いもし、
いいもしていたところ、よその村から一人の若者がやってきて婿になりたいと
いいました。娘と一緒に一晩か二晩すごしたのですが、どうしたことか朝には
その若者の首が転がっているのです。
619ニッチンカラ:03/01/11 18:41
「ああ、どうしてこんなことになったんだ!」
私は娘と一緒に嘆き、怒りました。娘の寝床にいてみると、首の切り落とされた
若者の死体がありました。村中、大騒ぎで村人も集まりましたが誰が首を切った
のかわかりません。
「かわいそうに、一晩すごしただけで首をきられるなんて!」と村人達も泣いて
私たちも泣きました。娘は若者のことを思い、泣いて泣いて泣き暮らしていました。

毎年毎年そんなことが続いていましたが、何年かのち、どこからか、また、ひとり
若者がやってきたのです。おびえた私の娘はこういいました。
「みんな恐ろしがっているのに、またくるなんて。」

そしたらまた一晩立ったら、次の日になるとまた、若者の首が切られていました。
村人たちも驚いて集まり「どんな化け物がこんなひどいことをするのだろうか」と
騒いでいました。私は泣いて泣いて、その若者を丁重に埋葬しました。娘も、
「ひどすぎるわ、突然殺されてしまうなんて」といって泣いては、毎日毎晩、泣き
くらしていました。若者があらわれても殺されてばかりいるものですから、私の娘は
「何か化け物のしわざなの、私の夫たちは殺されてしまったわ」と泣いていました。
620ニッチンカラ:03/01/11 18:44
(ここで話し手が娘の父から若者へ)

私は入り江の向こうに住む若者。父も母もいて、こういう話を聞いていたので、
「いつか訪ねてみよう」と思っていました。その村の人のところへ立派な人たちが
やってきては、泊まるとすぐに首を切られてしまうということばかりを私は聞いていました。
娘の父も、殺されてしまった若者たちのことを考えてばかりいて、泣き暮らし、村人
たちはその娘のところへ婿へ行くなと話しているというのです。
「山へ借りに行くふりをしていってみよう。」と思いました。よその村の、こういう話を
聞いて、私はずっとかわいそうに思っていたのです。

何年かたって、またその娘の話を聞きました。また、婿になった若者が首を切られた
ということでした。私は憤慨して、ある日、山へ狩りに行くふりをして、父や母に
「二、三日、山に泊まります.」といい、食料を持ってでかけました。


621ニッチンカラ:03/01/11 18:47
入り江の向こうの村へ行って、日が暮れかかった頃、村の真ん中にあるその家に
着きました。表で咳払いをする若くて美しい娘がでてきました。みると、涙のあとが
白くなっているようです。娘が中にまた入り、こう言っています。
「表にどこからいらした方なのか、立派な方がいるわ。家にあがってもらってもいいの
かしら。どうしましょう」
「しかたがない、私たちの話はよその方たちもきいているでしょう。それでも来たくて
来たのだから、あがって休んでもらいなさい。」と声がし、座をととのえる音がして、
その娘が外に出てきました。娘は私を招きいれたそうでした。

私は表で狩りの身支度をとき、その娘が家が家に入ったので私はゆっくりと戸を
あけてあがりました。いろりの左座にござが敷いているのでそこに座ると、むかい側
には中年くらいであろう男の人が座り、そのそばに奥さんらしき人が座っていました。
その人たちは泣いてばかりいたようで涙のあとが白くなっていました。

622ニッチンカラ:03/01/11 18:48
その主人は私を見てこう言いました。
「よその村の方々も聞いていることでしょうが、私たちは困っています。毎年立派な若者
たちが私たちのところへ来るのですが、泊まった次の朝にはどういうわけか泊まった
若者の首が転がっているので恐ろしくてたまりません、またどこから来た方か知りませんが、
あなたは、どうして来たのですか」
そこで私は言いました。
「狩りに行って道に迷い、この村に来たのです。一晩でも泊めてください、日が暮れて
歩くのも恐ろしい」
「ゆっくり泊まれたらいいのですが、どうなることでしょう、泊まりたくて来たというのでしたら
泊まってください」
とその家の主人がいって私たちが挨拶しているあいだ、その娘は泣いていました。

娘は夕食のしたくをし、私たちは食事をしたり語り合ったりして真夜中になりました。
上座の窓の下のところに寝床をつくってもらい、私は娘と一緒に横になりました。
娘が眠ったのをみはからってから私はそっと起き、巻いたござを娘のとなりに置いて
着物をかけ、娘と一緒に寝ているように見せかけました。
623ニッチンカラ:03/01/11 18:49
それから上座の寝床のすみに隠れていたのですが、真夜中になると家のすみから
何か声がします。
耳をすまして聞いてますと
「ニッチンカラニッチン、ニッチンカラニッチン」
といいながら何かくるのがわかりました。そして娘のとなりに置いた巻きござがバッサリ
切られた音がしたのです。私はびっくりしてその声の主を見ました。なんだか小さいもの
で、人間のようでした。そいつは娘が男と寝ていると思って巻きござをきったのでした。
そしてまた
「ニッチンカラニッチン」といって家のすみへ行く音が聞こえました。
624ニッチンカラ:03/01/11 18:50
私は身動きせずに夜が明けるのを待ちました。見るとあのござは首が切られたように
切れていました。娘は私が生きているのを見てほっとしたようでしたが、ござが切られている
のを見て泣きだしました。私が大きな火をたくと家の主人も奥さんも起きだしたのでこう
いいました。
「ご主人、私の話をよく聞いてください。娘さんの寝床のはしの方から、何かがニッチン
カラニッチンといって出てきて、娘さんのとなりに置いたござを切ったのです。私は隠れて
いたので助かりましたが、何か不思議なものはありませんか」

家の主人はわからないといっていましたが、私がその娘の寝床を調べ、家の中を調べ、
床下に敷いた干草を持ち上げてみると、なんと手作りの木の人形、刀をさした若者が
いました。娘が大きくなるまでそれで遊んでいて、そのままほおっておかれたのです。
よそから若者がくると、この人形が怒って殺していたのでした。

625ニッチンカラ:03/01/11 18:51
家の主人にその人形を見せると、鼻と口を押さえてびっくりしていいました。
「なんてことだ。娘が小さいときにおもちゃにと思って私がつくったものだ。それが
魂をもつものになっていたとは。だから若者たちは首を切られたんだな。」

それで、私は火の神さまやほかの神々に、これこれこういうわけだということを話して、
その化け物になった人形が地獄へ落ちるように細かくきざんで燃やしてしまいました。
そのあとで家の中を掃き浄め、娘の着ているものをぬがせ、新しい着物を着せて体を
叩いてお祓いをしました。それから、おもちゃに人間の形をしたものをつくらないように
教えました。家の人たちは喜び、私に感謝しました。
「父と母が私のことを心配しているだろうから帰って、また来ます。」といって私は
家に帰りました。
626ニッチンカラ:03/01/11 18:52
私の父と母にこういうことがあったと話して聞かせていて、二、三日たったころ、あの娘
が大きな荷物をしょい親戚の人たちに送られてやってきました。娘は私のおかげで
助かったのですから嫁にしてくれというのです。私はその娘と結婚しました。
それから娘と一緒に暮らし、娘の父と母のところや私の父と母のところにも行き来し、
子供もたくさんでき、子供たちには昔こんなことがあったから絶対に人形をつくって
遊ぶなと教えてくらしていて、私は年をとって死にました。

                                            
(おしまい)


おもしろい!ありがとう!!
628あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/12 02:30
前スレのHTML化はまだかな?
早く読みたいのに。
629山崎渉:03/01/12 02:30
(^^)
630あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/12 03:21
 ( ̄ ̄ ̄)
 (二二二)   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ( ・∀・) < どんな願いでもかなえるからな!
 (    )   \_______
  (  (~
   ~)  )
   ( (~~
   V
  ( ̄ ̄)
   ) (
  /====ヽ
 (===)
  ヽ__/
631あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/12 06:56
632あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/13 14:44
>616
意味は十分すぎるほどありますよ。
立ち読みサイトは、一度閉じるとスクランブルがかかってよめなくなるし、
読むのに時間制限があります。
本一冊の中から、特に面白い話を短い時間に選び出して読むのは
なかなか難しいので、このスレを見た人誰もが特に面白い話を何度でも
読むことが出来るようになったのは、ありがたいことです。

他にもネタ本探しをしている人がいれば、「妖怪編」、「幽霊編」のなかから
2つ、3つ、うpしていただけると、大変ありがたいです。
633あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/14 02:19
>632
同意。
10分で77もの話を読み切るのは不可能。
(時間制限があると、やたら焦りまくるし。)

「妖怪編」、「幽霊編」をうpする勇者の出現を求む。
634あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/15 06:43
今週に入って、お話がなくなってしまったな。
俺もネタ探しするか。
635Zanoni:03/01/15 22:16
>632, >633
フォローありがとうございます。
この本から抜き書きするのはこれぐらいにしておきます。

これから立ち読みする人のためにおすすめなのは、「胡媚児」、「奇門の法」、「杜子春」、「一本の筆」などです。
ほっしゅ!
637あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/17 03:38
>636
何か、サルベージばかりやっていた、一ヶ月前の悪夢を思い出してきたな。
638隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/17 23:07
先祖のお祭りだけは、人一倍賑やかにしないと気の済まないという男がありました。
お祭りの日になると、山海のご馳走を、ぎっしりと並べきれないほど位牌の前に並べ立てるのが
この男の道楽です。

このことを知って、トクカビ(小鬼)達は、このお供えのご馳走を食べ荒らしてやろうと相談しました。
639隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/17 23:12
トクカビたちは、不思議な頭巾をかぶっていました。
この頭巾をかぶっていると、人の目には少しも姿が見えないのです。

そこでトクカビたちは、てんでにこの見えない頭巾をかぶっては、男のお祭りの日にやってきて、
お供えのご馳走を食べ荒らすようになりました。
640隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/17 23:31
そんなこととは知らない男は、祖先がお供えを喜んで食べているのだとばかり思っていました。

ところがいくらお供えを増やしても、見る見るみんななくなってしまうのです。
いくら何でも、そんなにたくさん食べられるものではありません。
これにはきっとわけがあるに違いないと、やっと気がつきました。
641隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/17 23:33
ある、お祭りの晩のことです。
いつものように、たくさんのお供えものを並べてから男は手に棍棒を持って屏風の
後ろに隠れていました。
642隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 00:21
すると、夜が更けてからお供え物が瞬く間になくなり始めました。
そして、どこからともなく飲んだり食べたりする音が聞こえました。
男は屏風の陰から急に飛び出し、棍棒を振り回しながら、そこら中を駆け回りました。
643あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/18 00:52
フィクションの絵空事に用は無え 
>643
645隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 01:23
驚いたのはトクカビたちです。
慌てふためいて、われ先に逃げ出しましたが、そのうちの一人が逃げ遅れ、男の振り回す
棍棒に、見えない頭巾を叩き落とされてしまいました。

真っ赤な頭巾が急に落ちてきたので、男はびっくりしました。
646隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 01:32
男は、その頭巾を拾ってかぶりました。
そして、
「泥棒だ!泥棒だ!」
と叫びました。

その声に隣の部屋からおかみさんがやってきましたが、夫の姿が見えません。
男は妻の慌てた様子がおかしいので、声を立てて笑いながら、
「トクカビたちが、こんな帽子を落としていったよ。」
と言いました。
647隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 01:33
おかみさんの目には、夫がどこにいるのか分かりません。
夫は妻の側へ近寄ると、かぶってた頭巾を脱ぎました。
すると妻の目の前に、夫が立っているのです。

驚いたおかみさんは、今度はその頭巾を自分の頭に乗せてみました。
すると、おかみさんの姿が見えなくなりました。
 牛鬼は、島根県の海岸に住む妖怪だ。
 海岸といっても、人があまり行かない、断崖のようなところだ。

 明治の初めころの、まだ寒い四月の夜のことだった。
 島根県温泉津湾の大浜村の漁師たちが、高さ三十メートルの断崖のある海岸に、船を浮かべ、鯖釣りをしていた。
 そこは昔からあまり人が行くところではなかったが、魚がたくさんとれるというので釣っていた。

 真夜中になった頃だった。急に漁師たちはみな同じように妙な不安を感じて、急いで漁をやめようとしたときだった。
「行こうか。」
 突然、海岸の方から、こう声をかけたものがある。

 
これはきっとキツネが魚ほしさに、人間の声をまねたのだ、と思った漁師が
「おう、きたけりゃこいや。」
とからかい半分に答えた。

 すると、この返事に応じるように、何かが海中に躍り込んだ。
 見ると夜光虫のように光る波を蹴立てて、船に泳ぎ着こうとするものがある。
 船にともした火の薄明かりでのぞいてみたらなんと『牛鬼』だった。

 みんな、色を失って、千メートルばかり、必死で漕いでやっと渚にあがった。
 だが、牛鬼は妙なうなり声をあげて荒れ狂い、漁師の家まで追っかけてきた。

 さいわい、ふところに出雲大社の護符があったので急いで投げつけた。
 牛鬼はものすごいうなり声をあげたかと思うと、逃げ去ったという
650あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/18 10:50
最狂妖怪、牛鬼・キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
|゚Д゚)ニッチンカラニッチン、ニッチンカラニッチン
652隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 16:07
良い物が手に入ったと、それからというものは、毎日この見えない隠れ頭巾をかぶって男は
泥棒に出かけました。
手当たり次第に、方々の家から好きなだけ色んな品物を盗み出してきました。

一年ばかり経った、ある日のことです。
男はいつもの通り、真っ昼間からある商人の家へ忍び込みました。
商人は部屋の中で金や銀を数えていましたが、目の前で金や銀が次々に消えていきました。
653隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 16:15
不思議に思った商人は、あたりを見回すと一本の赤い糸がヒラヒラと動いているのが
目につきました。
男が頭巾を使いすぎて、糸がほころびたためでした。

その糸をそっとひっぱると、頭巾が落ちるのと一緒に男の姿が現れてきました。
男は商人に捕まり散々打ちのめされ、せっかくの隠れ頭巾まで取り上げられてしまい
ました。
654隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 16:23
商人、は男から取り上げた頭巾の破れ目を繕いました。
そして男がしたように、今度は自分がその頭巾をかぶって、毎日盗みに出かけて行くようになりました。
655隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 16:24
ある日のことです。
金持ちの百姓家に商人は忍び込みました。
調度麦刈りの最中でしたから、あちこちで麦を打つ唐竿の音がしていました。

商人は隠れ頭巾をかぶって隅を歩いていくうちに、運悪く唐竿の先が商人の頭にぶつかり、
そのはずみで隠れ頭巾が落ちてしまいました。
656隠れ頭巾 (朝鮮):03/01/18 16:28
姿が丸見えになってびっくりした商人は、あわてて逃げだそうとして、自分から何度も頭を
唐竿に打ちつけて、とうとうその場に倒れてしまいました。

隠れ頭巾もあっちに踏まれ、こっちに踏まれしているうちに、ボロ綿のようにびりびりに裂け
ちぎれて、いつかどこかへ消えてなくなってしまいました。
657山崎渉:03/01/19 04:53
(^^)
658あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/20 22:21
サルベージ
659弁天丸:03/01/22 00:12

血の出る木 (紀伊長島町三浦)

三重十景の高塚より、外海に突き出ている半島部は瀬島といわれている。
 その一部に黒色の岩が絶壁となって、海に入っている所に 「かしきおち」という、
海の色も黒々と妖気のただよっている箇所があった。

 昔かしき※が海にあやまっておちて死んだ所だそうだが、その絶壁の上にはこれもまた
気持ちの悪いほど、杖の沢山出ている檜の大木が沢山の雑木の中に大昔から繁って誰も
切ろうとしない。村の者はそれを「血の出る木」といって恐れていた。

 そこら辺りで磯釣りにきた人が、ぞうりが破れて困ったなあというと、ぞうりがどこからともなく
流れてくるし、腹がへったなあと言うと弁当も流れてくる。水がのみたいというと水の入っ
た竹の筒が流れてくる。

 しかし、ぞうりや弁当や水筒の世話になった者は必ず命にかかわるような、けがをしたり、
あやまって水に溺れ死ぬような事があるので、誰も、どんな事があってもそこでは、ものを
言わなくなったそうだ。だが忘れて言うとそのような事が必ずあるので、寺の和尚は、 
「これはいかん、妖怪変化のしわざにちがいない。」
と、いって経文を、その絶壁の上の広場に埋め、その上に檜を植えて供養をしたそうだ。

 それからは、前のような不思議な事もおこらず、その檜も繁茂して現在に至っている。
しかし、きずをつけると赤い血が出るとの事で、誰も後難をおそれて傷を付ける人も
なく今に茂っている次第である。

※:かしきとは、近世の廻船で炊事をした年少の者。船乗りになる第一段階であった。
660弁天丸:03/01/23 02:15

塩買い大黒

 その昔、薩摩の国中で塩がどうにも足らんようになった年があった。
川内のあたりは特にひどうて、泰平寺というお寺でも、毎日の煮たきにことかくふうじゃ。
和尚さんも小僧どんも、朝から晩まで塩さがしに走り回っておったちゅわい。

 そんなある日、本堂を掃除しとった小僧どんは、しゅみだんの上に、どっかりと坐っとる
大黒さんを見ながら、うらめしげにつぶやいたち。

「大黒さんはよかね。塩不足で皆が困っとるちゆうに、そげんのんびりしとられて。
だいたいおまんさあは、福をもってくるのが仕事じゃろうが。それが、ないごっな。なんもせんで、
ちょこんと坐っちょるばっかりじゃなかか。」

じゃが相手は木彫りの大黒さんじゃ。返事をするわけがなか。
661弁天丸:03/01/23 02:19

 小僧どんは、しゅみだんを足で蹴りつけて出て行ったちゅわい。ところが次の日、
大変なことが起こった。突然、大黒さんの姿が消えてしもたんじゃ。皆がどんなに
探し回ってもどこにもおらん。泥棒にとられたんじゃろちゅうて、皆がとうとうあきらめてしもうた。

 ところが、それから間もなくのことじゃ。川内の港に、塩をいっぱい積んだ船
がやってきた。皆大喜びで向かえたが、どうも不思議でならん。

 船頭に聞いてみると、

「そうなあ、四、五日前に、川内に塩を届けてくれちゆうて、どっさりお金を置いていきやった人がおった。
変わった格好の客でな。大きな袋かついで、頭巾かぶっちょいやったど。」

と、首かしげに答えたと。
662弁天丸:03/01/23 02:24

 それを聞いた小僧どんは、たまげてしもうた。

「大黒さんそっくりじゃ。まさかうちの大黒さんが・・・」

あわてて寺にもどった小僧どんは、またまた、たまげてしもうた。なんと、
とられたはずの大黒さんが、段の上にちゃんと坐ってござる。それだけではなか、
大黒さんの足が砂で汚れており、おまけにその砂が、本堂の縁側からずっと続いとるんじゃ。

 やっとわけが分かった小僧どんは、

「大黒さん、この前はまことすまんことしもした。ありがとごわした。」

と手をあわせて謝ったち。でも大黒さんは何も知らんふうで、相変わらず黙って、
どっかりと坐ってござらっしゃったちゅわい。

663あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/23 17:52
ほのぼのしてて(・∀・)イイ!
こういう話好きだなぁ
まんが日本昔話のホノボノ系に取りあげられてもいい話だね
665弁天丸:03/01/24 04:09

立沢たろふ

むかし、栗駒の留岡から岩の目坂を上りきって立沢の上流に出たあたりに一匹のムジナ
が住んでおったそうじゃ。このムジナは人間を化かすことがとても上手だったそうな。
けんど村の人間には悪さをしなかったので立沢たろふ、立沢たろふとみんなに可愛がられていたそうじゃ。

たろふは年寄りでもあり、エモノあさりも余りしないカバネ病み(なまけもの)じゃった。
いつも白い光る珠を持っていて、尻尾のさきは白毛であったと言われておった。
夏の晩、たろふは白珠を地上に置いてだまってじっとして居った。すると無数の虫がよって
来るのでたろふはその虫を喰って生きておったそうじゃ。
666弁天丸:03/01/24 04:11

あるとき永洞の中川の永七だんなが村会の落成(会合終了のお祝い)で幾分お酒をいただい
て帰り、岩の目坂にさしかかった頃はあたりがうす暗くなってしもうた。
立沢に来たころはすっかり暗くなっておったが、だんなは酒もまわっているし楽しく歩いてたので

「たろふやナンでもええから化けて見せろ」

と言いました。そうすると浪の音が聞えてきました。浪の音がだんだん高くなって来ました。
そして一面パッと明るくなって来ました。
667弁天丸:03/01/24 04:17

そのうちにはるか沖合に船がこぎ出され官女が船べりに立っており、一端に扇の的が建てられました。
するとこちらから馬にまたがった武士がナギサに泳ぎ出ました。
しばらくメイ目してから弓に矢をつがえて引き放しますと、船の扇に命中して空中高く舞上りました。
静かさをやぶって拍手、太鼓、鐘、シャミ線の鳴物がいっせいに鳴り渡りました。
やがて鳴物が止むと今までの明りがパッとなくなり元の暗さに帰りました。

あとにはただ沢山のほたるの光が夜の闇にただようのみじゃった。
永七だんなは大変おもしろく上気嫌に帰宅したそうじゃ。

668弁天丸:03/01/24 04:21

それからというもの立沢を通るときは誰れでもみな

「たろふサーお土産けっからな、人ばだますなよ。」

と言って、油揚一枚も置いて行くと決して淋しいことや怖ろしいことがなく、山路を安心して
たのしく帰ってゆくことが出来たそうじゃ。
669あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/24 18:34
たろふ カワイー! (・∀・)
670弁天丸:03/01/26 21:10

桜島と飯牟礼山

 むかしむかし大むかしのこと、伊集院の飯牟礼山には大鬼が住んでおったそうな。
その大鬼は、たいへんな力もちじゃった。

  ある日のこといたずらっ気をおこした大鬼が村人たちにむかってこう言ったそうな。

「おいが桜島と飯牟礼山とどっちがおび(重い)かかついでみすっで。」

と、いねぼで(にない棒)でかついでみた。ところが何べんやっても、桜島のほうが
重かったので調子がとれず、かつぐことができんじゃった。大鬼は、腹をたててしまい、
671弁天丸:03/01/26 21:17

「こんわろ(こいつ)は、まこておびもんじゃ。」

と言って、いきなりいねぼで桜島の頭を力まかせにたたきおった。

 そのために、桜島の頂上は、今のようなでこぼこな形になってしまったそうじゃ。
そして山をかついだとき、大鬼が両足をふんばってしもうたため、足が土の中に
2メートルも3メートルもめりこんでしもうた。

  大鬼の左の足あとは、飯牟礼の古城という所の畑にも残っておるし、右足のあとは、
恋ノ原という所の畑にも残っておるそうな。 その足の大きいことといったら、長さが
100メートル以上もあり、幅が30メートルもあった。足あとの形、向きからみて、
大鬼はきっと桜島の方をむいてかついだようじゃった。

 それからというもの桜島は大変怒りっぽくなり、それ以来岩や灰を降らせて村人たちを
困らせるようになったということじゃった。

いつも心に響く作品をありがとうございます
弁天丸たんハァハァ
673弁天丸:03/01/27 21:23

(´Д⊂ ううっハァハァ してもろた アリガトウ 励みになりまつでつ!
674弁天丸:03/01/27 21:24

つりがね島

むかしむかしんこと、寒厳禅師ていうりっぱな坊さんがおらして、川尻ん津に
お寺ば開かすにあたって、宋(今の中国)から一対の釣鐘(つりがね)ば授かって来らした。
そらたいぎゃ立派な釣鐘で、博多ン津から川尻ン津に運ぶ船に乗っとらした人は、
みんな感心して見よらしたて。

航海は順調に進んどった。博多ン津を船出してかる、時化(しけ)にもあわんと、
玄海灘の荒波もこのときばかるは静かにしとる。禅師は、これも仏様のおかげで、
心から感謝しとんなはったてたい。

そん船が大矢野島の横をすすみよるとき、一匹の黄色かチョウがそよ風にのって
ヒラヒラ飛んできて、禅師が座っとらす前においてあった釣鐘にとまったて。
675弁天丸:03/01/27 21:29

今も昔も、灘ば渡るチョウは、海がおだやかで航海が無事なしるしてされとる。
ぜったい途中とまったりせんで灘ばわたるチョウは、海がおだやかで航海が無事な
しるしてされとる。ぜったい途中とまったりせんで灘ば渡るていわれとった。
だけん、チョウがとまるとはなんさま珍しくて、

「何か起こっとじゃなかろか」

とみんな不安な気持ちになったてたい。ばってん、チョウはすぐにどっかに飛んでいったらしか。


三角ン瀬戸にさしかかったとき、瀬戸風て呼ばるっ強か風んふきまくっとった。
ちいーっとしか吹いとらん風でん、せまか瀬戸口じゃそるがまとまって通るけん、
たいぎゃ強か風が起こる。

しかもちょうど、さげ汐どきだったけん、有明の海の水が不知火の海の方さん、
渦ばまいて流れ込みよる。その波立つ瀬戸の中さん、そん瀬戸風に押さるっごつ
船は突っ込んでいったたいな。船はなんさま揺れるっ。
676弁天丸:03/01/27 21:32

「帆ばおろせー」
「網ばひけー」

て、船子たちゃ走りまわるばってん、揺れはいっちょんおさまろうとせん。
そん中にあって、禅師は釣鐘ん傍で静かに目を閉じてお経ばとなえはじめらした。

そしたら、こんとき、ふとーか渦がいきなり出来てから、そん渦さん引き込まれていきよる。
ギシーッ、ミシミシー、と太か音ばたてて船がぐるり、一回転したけん、

「もう、こりゃしまいばい」

ておもうたとき、釣鐘んひとつがゴロゴローころがってからざぶーんて海ん中に落ちた。
そん煽りばくうてから船が傾いたとき、もう一つん鐘も傾いてかる、海さん落ちそうになっとる。

「ああっ」て人びとが思わず叫ばす.。そんとき、禅師は目ばカッと開かして、
持っとらした扇ばたいぎゃな振らして釣鐘ばバシーッて受けとめらした。
したら、なんと釣鐘はピシャリと動かんごつなった。しかも、不思議なこつに
それだけじゃのーして、船ん揺れも渦も一瞬のうちにおさまってしもたて。
677弁天丸:03/01/27 21:36

それからは、今は静かに有明の海を行きよる船の上で

「こりゃ有り難かお坊さまたい」
「有り難か法力の扇たい」
「おかげさまで、命の助かりましたー」

て、みーんなで禅師ば囲んで拝むやらお礼をいうやらたいな。

いま川尻ん大慈善寺にある釣鐘にはそんときの扇ん型がはっきりついとって、
そん鐘ばついたら「三角へ行こう」「三角へ行こう」て鳴るらしか。

三角の瀬戸に沈んだ鐘ば恋しがってからそぎゃん鳴るとだろうてみんなはいいよらす。
そんで三角の方はていうたら、釣鐘ン沈んだあたりに、釣鐘の型ソックリん島が現われた。
そん島のできたもんだけん、三角の瀬戸には、風もあばれんごつなった。
あげ汐、さげ汐のときの流れもおだやかになったもんだけん、
そーにゃよか船ん津のできるごとなったてたい。

島ん名前は中神島ていうたが、土地ん人たちゃ「沈んだ釣鐘が島になったに違いなか」ていうて、
いまでも釣鐘島て呼んどるらしかと。
母から熊本三角旅行の話を聞いた直後だったのでビクーリしますた
おおきにー。

せっかくだから漏れも
弁天丸たんハァハァハァハァ…
679弁天丸:03/01/29 01:23
(´Д⊂ またハァハァハァハァしてもらた 感激でつ!
680弁天丸:03/01/29 01:27

笛吹き

 むかしむかし、塩浜のはずれに男の子と母親の二人家族が住んでいてのう、
その家の生活は大変貧しいものじゃったそうな。

 男の子がある日、母親にむかって、
「もう、私も15才になりました。お母さんばかり働かして御飯を
食べているのは親不幸だから、町で笛を吹いて食べ物をもらい、
お母さんに美味しいものをたくさん御馳走します。」と言った。

母親は驚いて、
「お前に、笛など吹けるものか。」
と言って、笑った。
子供は笑われても、なおいっそう笛の練習を繰り返した。
681弁天丸:03/01/29 01:29

 そして夜になると、町に行って笛を吹き、袋を持って物もらいを始めた。
町の人は、あまりに笛の音が懐かしいので、子供を非常に可愛がり、
たくさんの美味しいものをくれた。そして、その子は親に孝行をつくした。

 その町には、お金持ちの家があった。その家には、女中が3人もいて、
毎晩その子の笛の音に合わせて歌っていた。その家にはまた、一人娘がいた。

娘は大変大事にされ、その家の七コチャ(奥の間)で勉強していたが、
毎晩遠くの方で笛の音が聞こえ、それに合わせて歌も聞こえるものだから、
そこへ行きたくてたまらなかった。
682弁天丸:03/01/29 01:31

しかし、自分が行くと親達から叱られると思い、また勉強を続けていたが、
心はいつも笛の音にひかれていた。そうしていつしか熱をだし病気になった。
「うちはこんな金持ちの家に生まれても、あの女中達より楽しく遊ぶこともできんわ。」
と隣の人達に話して淋しがっていたそうな。

 その娘は、毎日その笛を吹く人を見たいと、そして一緒に歌いたいと思いながら、
とうとう幾日かの後に死んでしまった。
683弁天丸:03/01/29 01:35

 その娘が死んだあと、その笛を吹く男が、その家の前を通って隣のおばさんから
その事を聞かされ深く嘆き悲しんだ。その男の家に行く途中に娘の墓があったので、
三日の後、たくさんの食べ物をもらい、袋を笛にさして、担いで帰りながら、
その娘の墓に向かって、

「そんなに笛の音が聞きたいといって死んだちなら、死んでからでん聞かせましょう。」
と言って墓の階段に座って笛を吹きはじめた。

 男が一生懸命笛を吹いていると、その側に美しい女が座ってとてもよい声で
笛に合わせて歌っていた。そうして男が笛を吹くのをやめると、その女の姿は、
もうどこへいったのか消えていた。
684弁天丸:03/01/29 01:37

 男は、ここまでしたってくれる人ならば姿を見てみたいとその娘の墓を掘り返し、
その娘の棺桶をのぞいて見ると、それはそれは美しい今まで見たこともない美しか娘だった。

 それでその男は涙を流しながらその娘を見ていると、その娘の口に涙が入り、
今まで死んでいた娘が動きだし話までするようになった。そこで娘を棺桶から引き出し、
男は自分の力で死んだ娘が生き返ったと言って喜んだ。

 男が、家に母が待っているから帰ろうとすると、その娘は、
「自分一人では怖くて家まで帰る事ができないので、送ってください。」と言う。
685弁天丸:03/01/29 01:40

男はどうしてもこの貰ってきた物を持って帰って、母親を喜ばさなければ
ならないからと、一生懸命意地を通そうとしたが、とうしてもその娘は聞かず
とうとう娘のいうがままに娘の家にいった。

娘の家についたのは夜中だったが、家の人は遅くまでその娘の生きていた
時の話をして起きていた。 その男が、家の玄関に行き、家の人を呼び、
「ここの娘が生き返って帰ってきた。」というと、
そこの人達は嘘だと言ったがその娘を玄関に入れるとそこの夫婦は泣いて喜んだ。
686弁天丸:03/01/29 01:46

 娘は親に、
「私はこの人に助けられたのですが、この人の家ではただ一人のお母さんが待っているから。」
と言って、その男がもらった物と、さらに多くの御馳走をそえて女中にもたしてやり、
また娘の強い頼みで二人は夫婦になった。
男の母親も娘の家に引き取り、みんな幸福に暮らすようになったそうじゃ。

それからは墓にいって水をかけるのは、涙のかわりで、そうすっと
また生き返る事はないかと思ってするのだという。
687 ◆.PRELOLIn. :03/01/29 22:30
おおぅ、弁天丸さんオンステージですな
明日福岡から東京に引っ越すのですが
このスレ見て九州思いだしてがんがりまつ

インフルエンザに気をつけてこれからもがんがってくんしゃい。
ありがとうございます。
688あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/29 23:43
弁天丸さんイイ!(・∀・)
いつも和みをありがとう。
優しい語り口が何ともいえませんな…ハァハァ
689みやこ:03/01/30 00:00
ほんと!ちらっと、寄ってみて、最後まで読んじゃいました!
いい話ですね^^
690あなたのうしろの名無しさんが・・・:03/01/30 03:36
そうですね
691弁天丸:03/01/30 22:38
おっ さぼってる間にレスが・・・

>687タソ 今頃は荷ほどきに追われている頃でしょうか
こっちでの生活ガンガってください!

>688タソ ハァハァ ありがとうございまつ!

>689タソ またきてね!

>690タソ そうなんですよ

さて Zanoniタソならびに他の勇者タソ
 そろそろいかがでしょうか? お待ちしておりますでつ(w
692弁天丸:03/01/30 22:43

かっぱ膏薬

あのな、むかし菊池川のいか渕にゃ、かっぱの棲んどったげな。
このかっぱは、ときどきいか渕かる陸にあがり、近くの村田や出田の村ン者に
悪さばして迷惑かけよったげな。

その頃、村田に、爺さんと婆さんが二人仲よう暮らしよらしたてったい。
ある晩、婆さんが便所に行くと、かすれ音ンして、何か妙なもンがのぞいとるごたる
気配がしたけん、婆さんな怖(え)ずうなって、家の中に逃げこましたてたい。

昔の便所はな、雪隠(せっちん)どころていうて、母屋かる離れた、かんもんぐら(納屋)
や馬小屋の片隅に肥つぼば埋めたかんたんなもんじゃったけん、晩には電気もなか
暗かところが多かったばい。
693Zanoni:03/01/30 22:44
ごぶさたしてます。
先日急遽仕事が決まり、暇だった無職期間が急に終わりを迎えてしまったので、
平日は軽くROMる時間しかない状態です。
ネタ本は用意してあるので、できれば土日にでも書き込むつもりです。
お楽しみに。
694弁天丸:03/01/30 22:47

それで、婆さんな妙なもンののぞいたけんたまがって(驚いて)爺さんに話したら、
「そりゃいか渕のかっぱに違いなかばい。今までどりしこばかり(どれだけ)村ン者
に悪さばしたかわからんけん、今度来たら捕まえてやる」て、爺さんははるかかした(怒った)
てったい。

その日から七日目の晩、爺さんが便所に行くと、また妙な音のして手の伸びてきたけん、
爺さんな、「この間、婆さんばおどきゃあた(おどした)かっぱに違いなかばい」ちゅうて、
もっておった小刀で、伸びてきた手ばつかんで、すぱっと手首ば切り落としたげな。

かっぱは、不意に手ばつかまれてきられたけん、たまがって川へ逃げこうだてったい。
かっぱはいか渕に逃げこうだばってん、手首のなかと泳ぎも出来ンことたいなー。
かっぱはまた爺さんの家にひき返してきて、
695弁天丸:03/01/30 22:52

「爺さん、悪さばしてすみまっせんでした。いままで面白半分に人間ばだまきゃあたり
(だましたり)、おどしたりしたばってん、今から決してしまっせんけん、
どうか許して手首ば返してくだはりまっせ。こぎゃん悪さは二度としまっせん」

かっぱは、爺さんと婆さんに頭ば下げてあやまったてったい。
爺さんも婆さんもかっぱの頭ばさげてあやまるけん、
二度とあぎゃん悪さば人にせんならと言うて、手首ばかっぱに返してやったげな。
696弁天丸:03/01/30 22:57

かっぱはよろこんで、

「かっぱには、こぎゃん切られた手首でん、ちゃんとつながる立派な膏薬のありますけん、
手首ばかえしてもろうたお礼に、そんつくり方ばおしえますたい」

ちゅうて、膏薬ば爺さんに差出し、爺さんと婆さんに膏薬のつくり方ば教えたげな。

そるが家伝薬のかっぱ膏薬になって村田に伝わっとるちゅうこったい。
697弁天丸:03/01/30 23:02

Zanoniタソ 御就職おめでとうございます!

。・゚・(ノД`)・゚・。ネタなし地獄をさける為がんがったかいがありますた
 これからのカキコに期待してます。






















 他の勇者タソもなー(w
698あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/31 11:55
そろそろ怖い系の話が欲しいな
699あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/31 22:08
699 昔
700あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/01/31 22:08
700 話  
701Zanoni:03/01/31 22:13
息子思いの老人 (四川省灌雲地方)

昔、一人の老人がありました。
歯も年のせいでおおかた抜けてしまい、彼の妻もとっくになくなって、身のまわりの世話をしてくれるものと
言えば、たった一人の丈夫でピチピチした男の子ばかりとなってしました。
老人はことのほか息子を愛し、息子も大変父親を愛していました。

老人は常々、こんな風に思いふけるのでした。
--わしが死んだときには、こんな立派な息子が見送ってくれるのじゃ。これほど満足なことはないわい。--
ところが不幸なことに、父親の老人はまだピンピンしているのに息子の方が急病で死んで
しまいました。
独りぼっちになった老人は生きているのが嫌になり、息子の後を追って死んでしまおうと
思いました。

老人は息子の棺が下ろされるとき、先に墓穴に横たわって一緒に生き埋めにしてもらおう
としましたが、近所の人たちになだめられ死を思いとどまりました。
703息子思いの老人 (四川省灌雲地方):03/01/31 22:58
しかし老人は諦めきれず、我が子は死んだのではなくて、ただよそへ旅行に行ってる
のだと信じるようになりました。
ですから旅の商人に会うと、決まって我が子はどうしているかしつこく聞きました。

そしてある日、老人にしつこく聞かれた旅の商人が陰陽県で老人の息子を見たことを
話しました。
老人はこれを聞いて大喜びで家財道具を売り払って旅の支度をし、息子を訪ねて陰陽県
に向かいました。
陰陽県というのは、人と亡者とが一緒に住んでいるところです。
昼は人の世界ですが、夜になると亡者の世界になります。
亡者の性質は非常に凶悪で、人間は日が落ちると門や戸を閉ざし、亡者を自由に行き来させます。
さて老人は、山や峰を越え、数日後ようやく陰陽県の城門に到着して宿に泊まりました。

宿の主人に旅の事情を聞かれた老人は、死んだ息子を訪ねて来たことを話しました。
それを聞いた主人は、
「おお、あなたの息子さんは亡くなられたのですか。しかし訪ねてみたところでなんと
なりましょう。人は死んでしまうと、親しい人とその他の人とのみさかいもなくなるん
ですから。」
と忠告しました。

しかし老人は、
「いいえ、息子はとても親切にしてくれました。あれにわしが分からないなんてことは
ありえません。」
と言って、主人が言うことを信じようとしません。
706息子思いの老人 (四川省灌雲地方):03/01/31 23:47
夜になりました。
老人は町を探しまわりましたが、息子は見つかりません。

最後に小川に行ってみると、我が子が川岸に座っているのが見えました。
老人は嬉しさのあまりワッと泣き出し、息子に走り寄って息子の手を握ろうとしました。
707あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/01 00:03
( ・∀・) ドキドキ
しかし息子は、
「てめえは一体だれだ?うるさいったりゃありゃしねぇ!」
と言って、毒々しげに食ってかかりました。

「ああ!お前はわしが分らんのかい。わしはな、お前の親父だよ。」
老人は、真心を込めて言いました。
そろそろ、また赤飯の話でもしようよ。鬼刃でもいいよ。
「おめぇが俺の親父だって?」
息子は疑わしげに言いました。
「そうじゃ、わしはお前の親父じゃ。」

老人は我が子に昔のことをいろいろとはなして聞かせましたが、
息子はどうしても信じようとしません。

「で、おめぇは何しに来たんだ!」
言葉はかなり怒気を帯びています。
そこで老人は、とても悲しそうにこれまでの心情をうったえ、我が子に思い出してもらおうと
しゃべり続けました。

「もうやめてくれ!俺は全くおめぇの言うことが何が何やら分からねぇ!・・・・・・ただおめぇが
今どこにいるかだけ言ってもらやぁたくさんだ。」
老人はそこで、宿の名と部屋の番号を教えました。
「では三更*のころ宿に会いに行く。」
こう言ったかと思うと、息子は行ってしまいました。

*夜の12時から2時まで
713Zanoni:03/02/01 00:33
疲れたので、続きはまた明日
き、きになる…
でもおつかれ!
続き待ってまつ!
715Zanoni:03/02/01 14:51
朝から続きを書くつもりでしたが、昼過ぎまで寝てました。
では再開します。
716息子思いの老人 (四川省灌雲地方):03/02/01 14:54
老人は、息子に会えたので大喜びでした。
そして、息子が自分のことを分かってくれなかったのは、自分の話し方がまずかったせいだと
思いました。

--息子が自分のことを思い出してくれたときは、二人はきっと抱き合って大泣きに泣くであろう。
なんと愉快なことか!
もし息子が故郷へ帰りたがらなかったら、わしもここにとどまりたいものじゃ。
ここへ骨をうずめてもいい・・・
717息子思いの老人 (四川省灌雲地方):03/02/01 15:09
老人は、嬉しいような、それほど嬉しくもないような気持ちで宿に帰っていきました。
宿に戻ると、主人が息子は見つかったかどうか聞いてきたので、老人は起こったことを詳しく話しました。

すると宿の主人は言いました。
「そうでしたか。私の申したことは間違ってなかったですね。人は死んでしまうと、親しい人も分からなく
なるものです。息子さんは、今夜の三更に会いに来ると言ったんですね。でも会うのはやめておかれた
方がいいと思います。決して好意を持って会いに来るわけではないですから。」
しかしこの可哀想な老人は、息子は自分を愛していると信じ込んでいましたので、どうしても主人の言う
ことを聞こうとはしません。

それで、宿の主人は老人に隣の部屋に移ることを提案しました。
一度隣の部屋から息子の様子をうかがい、害を加えるつもりがないことを確認してから出ていくのです。
老人は主人の提案を受け入れました。
宿の主人は、一つの大きな冬瓜を持ってきて寝床の上に置き、掛け布団を掛けました。
すると、まるで誰かが眠っているように見えました。

一方老人は、隣の部屋に移り、息子の様子が伺えるように壁に穴を開けました。
720息子思いの老人 (四川省灌雲地方):03/02/01 15:59
三更になったころ、部屋から足音が聞こえました。
老人が壁の穴を覗いてみると、彼の息子が入ってきたのが見えました。

ところがそのさまは凶悪そのものです!
頭を赤い布で大きな頭巾のようにまとい、体には短い衣類をつけ、右の腕は剥き出しで、手に
一本の大きな人切り刀を持っているではありませんか!

そして両手で大刀の柄をしっかり握り、恐ろしい形相で寝床の上の冬瓜に向かって切り下ろし
ました・・・ザクリ・・・ザクリ・・・ザクリ・・・

滅茶苦茶に幾刀か加えると、やっと気が済んだように出ていってしまいました。
721息子思いの老人 (四川省灌雲地方):03/02/01 16:24
これを見ていた老人は、思いもよらぬ情景を見せられ気を失ってしまいました。

次の日の朝、老人と宿の主人が部屋に行ってみると、あの冬瓜は滅茶苦茶に切り刻まれていました。
宿の主人は老人に、家に帰って二度と息子の顔を見ようとしないように忠告しました。
今度は老人も、おとなしく主人の言うこと聞きました。

その後この気の毒な老人は、相変わらず息子を「心」で思いましました。
しかし、息子を目で見ようとは思わなくなりました。
722Zanoni:03/02/01 16:30
ネタ本は岩波少年文庫の「錦の中の仙女」です。
ttp://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=04893017

50年近く前の訳で、しかも子供向けの本だということもあって、どうも読みにくい
文章だったので、かなり手を入れました。
723あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/01 16:32
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

http://www5b.biglobe.ne.jp/~ryo-kyo/osu.html

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
724Zanoni:03/02/01 20:38
幽霊を売った男 (中国)

南陽(河南省)の宋定伯が若いころ、夜道を歩いていると、幽霊に出会った。
「お前は誰だ?」
と尋ねると、
「俺は幽霊さ」
と答える。

幽霊も、
「ところでお前は誰だ?」
と尋ねるので、定伯はひとつ担いでやろうと、
「俺も幽霊だよ」
と、嘘をついた。
725幽霊を売った男 (中国):03/02/01 20:45
「どこへ行くのだ?」
「宛(えん)の町まで行くところだ」
「俺も宛の町まで行くところだ」

そこで連れだって一里ほど歩いたが、
幽霊が、
「歩いて行っては遅すぎる。ひとつ代わりばんこにおぶっていったらどうだろう。」
と言うので、定伯も、
「大いに結構」
と答えた。
726幽霊を売った男 (中国):03/02/01 20:49
そこで幽霊がまず定伯を背負い、一里ほど歩いたが、
「あんたは重すぎるよ。幽霊ではないんじゃないかい?」
と言う。

定伯は、
「俺は幽霊になりたてなんで重いんだよ。」
と答えた。

今度は定伯が幽霊を背負ったのだが、ほとんど体重がなかった。
このようなことを何度か繰り返すうちに、定伯が
「俺は新米なんで、幽霊がなにを嫌いかしらないんだが?」
と尋ねると、幽霊は、
「人間のつばだけが嫌いなのだ」
と答えた。
こうして一緒に歩くうち、道は川に行き当たった。
定伯は幽霊を先に渡らせ、耳をすませて聞いたが、全く音を立てない。
次に定伯が渡ると、ざわざわと水音がたった。

そこで幽霊はまた、
「なんだって音を立てるのだ?」
「死んだばかりなんで、川を渡るのに慣れていないだけさ。変に思うなよ」
729幽霊を売った男 (中国):03/02/01 21:04
やがてもうすぐ宛の町に着くというとき、定伯は幽霊を肩に担ぎあげて、きゅっと押さえつけた。
幽霊は大声をあげてきいきいと騒ぎ、下ろしてくれと頼んだが、耳を貸さない。

さっさと宛の町に入って地面に下ろすと、幽霊は一匹の羊に化けた。
そこでそれを売り飛ばしてしまったが、あとでまた化けると困るので、つばをつけておき、千五百貫
の金を儲けて立ち去った。
730Zanoni:03/02/01 21:10
この話のネタ元は、「捜神記」です。
ttp://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=00699859
731あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/01 21:33
Zanoniタソ おつです
息子思いの老人がコワせつなくておもしろかったよ
またよろしく!
732こんなスレたってました:03/02/01 21:59
ネイティヴアメリカンの神話
http://academy.2ch.net/test/read.cgi/min/1043849926/
733あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/01 22:27
734あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/02 01:22
オカ板って、ほんとHTML化されるのが遅いんだな。
前スレまだヨメナ嫌
735あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/02 09:50
( ・∀・) おはよう 
 このスレはダイジェスト版をつくってまつ
 こう御期待・・・うp先がわかんないけど
736Zanoni:03/02/02 12:22
風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方)

あるとき、たいそう優れた一人の看地先生(風水を看る先生)がいました。
長年、多くの人のために風水を看てきましたが、今度は自分のためにとびきり良い風水を探し当てようと、
先祖のお骨を抱えて旅に出かけました。

看地先生はたくさんの土地を旅してまわりましたが、満足がいく良い風水はなかなか見つかりませんでした。
737風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 12:46
ある日のこと、看地先生はある田舎にやって来ました。

土塀をめぐらせた大きな屋敷があったので、まわりを詳しく調べていると、屋敷の中に大変良い風水が
あるのを発見しました。
先生はそこでこう思いました。

--ああ、とうとうすばらしい風水を見つけたわい。しかし人の屋敷の中じゃどうしたものだろう?
なに、構うことはない。門を叩いて入っていって、一晩の宿を請い、夜のうちになんとかうまい手だてを
考えれば良かろう。
738風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 13:07
こう心を決めると、看地先生は門を叩きました。

間もなく門番が出てきたので、旅の者だが一晩泊めてもらえないかと尋ねると、門番は
「ちょっとお待ちください、主人に一言伝えてまいりますから。」
こう言うと、奥へ入っていきました。

間もなく召使いが出てきて言いました。
「どうぞお入りください。」
主人は50歳ぐらいの人の良さそうな人で、客が入ってきたのを見るとニコニコして喜んで迎え、
召使いに夕食の用意を言いつけました。
よもやま話をしながらご飯を食べてしまうと、主人は召使いに、お客を休ませるための寝床を
西の離れにとるようにいいつけました。

元々この家には東西の離れがあって、西の離れは親類や友達を泊めるのに使い、東の離れは
物置に使っていました。
看地先生は、自分が西の離れに休まされると聞くと立ち上がって言いました。
「あのう、一つお願いがあります。今夜はどうか東の離れに離れに休ませていただきたい。
掛けるものは、ほんの一枚ありましたら結構でございますから。」
741風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 13:20
主人は言いました。
「東の離れは物置にしてますから、お客様に休んでいただくにはよろしくはございませんが。」
「なんのなんの、東の離れでぜひ休ませていただきたいものです。」

主人は、
--どうも変だ。どういう考えがあるんだろう。・・・・・・と、怪しみましたが、口には出さず、ただこう
召使いに言いつけました。
「この方が東の離れで休みたいとおっしゃるから、お前たちは煉瓦などを片付け、きれいに掃き
清めて寝床の準備をするように。」
742風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 14:35
二人はしばらく世間話をしていました。
やがて夜の10時の太鼓の音がすると、主人は休むようにと言い、自分も奥の部屋へと引き取りました。

さて看地先生は、東の離れに来ると、服を着たまま寝床の上に横になりました。
というのも、人が寝静まるのを待って、仕事に取りかかるつもりだったからです。
743風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 14:43
ところが主人も抜け目のない人で、客がどうしても東の離れに寝ようとしたのには、なにかわけが
あるに違いないと思いました。

そこでお客が部屋に入ったのを見届けると、こっそり庭へ出ていって、東の離れの外から壁の
煉瓦を一枚抜き取りました。
そしてそこからお客を見張ることにしました。
744風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 15:21
初めのうちは、部屋の中はしいんとして、客は死んだように寝ていました。
が、やがて12時を過ぎると、むっくりと起きあがり、聞き耳を立てるように頭を傾げました。

そして家中物音一つせず、家人が皆寝静まったのが分かると、にっこりとして仕事に取りかかり始めました。
745風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 16:04
まず最初に、客は袋の中から、先祖のお骨が入った小さい黄色い布でくるんだ包みを取り出し、
次に羅盤を取り出しました。
それから一丁の小刀を取り出し、地面を掘って深い穴を開けました。
そして包みをその穴の中に押し込むと、また土を被せ地面をならしました。

作業が終わると手の泥を紙で拭き、着物を脱いで床について眠ってしまいました。
746風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 19:06
部屋の外から覗いていた主人は、客がやっていたことがさっぱり理解できませんでしたが、
しばらく考えているうちに、はっとさとるところがありました。

--おおそうだ!
この人は、きっと風水を看る看地先生に違いない。
羅盤を持っていることからも分かる。
・・・・・・竜穴を見つけたので宿を借りることを口実に、自分の先祖のお骨をここに埋めたのだ。
この人が西の離れに泊まろうとしなかったのは、こういうことだったのか・・・・・・
747風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 19:28
主人は、これまで「吉地」がなかったので、先祖のお骨を葬ってなかったことを思い出しました。
そして、自分の家の中に吉穴があることが分かったのだから、自分の先祖のお骨もそこへ葬ろうと考えました。

それで何も見なかったふりをし、部屋に戻って床につきました。
748風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 19:38
客が帰るとすぐ、主人は看地先生が掘った深い穴の上っかわの土をかき分け、自分の先祖のお骨を
看地先生のものの上に置きました。
そしてそれを土でうまく被せ、平らにならしました。


749あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/02 20:33
( ・∀・) 続きマダカナー?
750風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 21:21
看地先生は、その後もあちこちの土地の風水を見てまわりました。
そしてある高い山のふもとに、また「吉穴(きちけつ)」を発見しました。
この穴(けつ)は、もし先祖のお骨をそこに葬るなら、その子孫は代々天師(道教の最高位で世襲制)に
なることができるという素晴らしい穴でした。

一方、以前屋敷の中で見つけた吉穴は、子孫を名高い武将にする穴でした。
天師と武将では、天師の方がいいに決まってます。
751ダヌル・ウェブスター:03/02/02 21:23
>素晴らしい穴でした。

ボクもしってるよ、すばらしい穴。
わくわく( ・∀・)
753風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 21:26
そこで看地先生は、先祖のお骨をこの山のふもとへ移しなおそうと思い、再び田舎の
屋敷に戻っていきました。

屋敷の主人は、看地先生がまた来たのを見て、たいそう喜びました。
そして、こう尋ねました。
「今夜も前の同じように東の離れでお休みでしょうね。」
「さよう、さよう、はい・・・・・・」
>751
お前こないだ性病だと言われたばっかりじゃないか
(  )         (  )        (  )         
ノ( * )ヽ ブブブッ ノ( * )ヽブブブッ ノ( * )ヽ    
 ノωヽ        ノωヽ       ノωヽ
     \\     |    //
     \ \●    ●  ●//   
      ● \ ベシベシベシ/●
(  )   ベシベシ●( `Д) ●ベシベシ  (  )
ノ( * )ヽ −− ●ノ>>ダヌル●−− ノ( * )ヽ
 ノωヽ −− ●  / ( ●−−   ノωヽブブブッ

  
756風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 21:34
さて真夜中となり、あたりがしいんと静まりかえると、看地先生はまたこっそり起き出しました。
そして以前埋めた場所を掘り起こし、お骨を取り出しました。

--看地先生は、以前自分が埋めた先祖のお骨だとばかり思っていたのですが、実は主人の家のお骨
だったのです。
757ダヌル・ウェブスター:03/02/02 21:36
>755
オメー、遅いよ。

何やってんだよ。
翌朝、看地先生は主人に別れを告げると、お骨の包みを携えてあの山のふもとへ引き返し、
方角をよく正してお骨を葬りました。
そしてすっかり満足して我が家へ戻っていきました。
(  )         (  )        (  )            
ノ( * )ヽ ブブブッ ノ( * )ヽブブブッ ノ( * )ヽ    
 ノωヽ        ノωヽ       ノωヽ
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(  )   ベシベシ●( `Д) ●ベシベシ  (  )
ノ( * )ヽ −− ●ノ>>ダヌル●−− ノ( * )ヽ
 ノωヽ −− ●  / ( ●−−   ノωヽブブブッ
   
2年が経ちました。
看地先生と、あの田舎の屋敷の主人とは、吉地にお骨を葬ったしるしが現れ、二人とも孫が
生まれました。

看地先生は、こう考えてホクホクしていました。
--今度生まれるうちの孫は、色白で眉は秀で、目は涼しく学者らしい人相で、ゆくゆくは天師
になるじゃろう・・・・・・
やがて月が満ちると、果たして男の子が生まれました。
ところがその顔かたちは、看地先生が考えていたのとは大違いでした。
まるで、鬼をもひしぎそうないかめしい面構えです。

看地先生はびっくりして、思わず唸りました。
「おお、不思議なことじゃ!こんな顔かたちになるはずはないんだが。・・・・・・これは武将に
なる面構えじゃ。決して天師になる人相ではない。一体どうしたことかさっぱり分からんわい・・・」
看地先生はいろいろと考えてみましたが、どうしても分かりません。
そしてこう思いました。
--あの最初にお骨を葬った屋敷に行ってみるほかあるまい。もしかしたらお骨がすり替えられた
のかもしれん。

看地先生はそこで、あの屋敷へ急いで行ってみました。
あの主人と看地先生は気があって、今ではたいそう仲良しになっていました。
今度も主人は心から歓迎してくれました。
それでそれで!
764風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/02 22:35
二人が酒を酌み交わしながらよもやま話をしていると、主人はふと思い出したように
言いました。
「先生、今年私のとこに孫が生まれましたが、とってもかわいいやつですぞ。」
「それは何日のことでした?」
看地先生は主人に孫が生まれたと聞いて、びっくりして尋ねました。
主人が答えた孫の誕生日は、看地先生の孫が生まれた日とほとんど同じ日でした。

これには何かわけがあると思った看地先生は、続けて言いました。
「お孫さんを一目見せていただけないでしょうか?」
765風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/03 00:07
すぐに赤ん坊が召使いに抱かれてやってきました。
見てみると、なんと眉は秀で目は涼しく、のちにはあっぱれ天師にもなるような人相では
ありませんか。

看地先生はびっくりして、
--これはいよいよ最初に葬った先祖のお骨が、主人の先祖のお骨と入れ替わったに違いない。
・・・こうなったからには、主人に尋ねてみるしかない・・・
「ご主人、あなたはお孫さんが将来どんなに偉くなるかご存じですか?」
「存じませんな。田舎の百姓の孫ですから、おおかた田を作るようになりましょう。」
明日は早起きなので、今日はこのぐらいにさせてもらいます。
thx
Googleも旧正月だけじゃなく、節分のときは鬼の絵かなんか用意してくれりゃ面白いのに
768あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/03 22:26
↑すいません。
誤爆です
769あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/03 22:56
>527
こんなのあった

左慈のモデル?
ttp://www2.nightmare.to/~nobmatsu/san4/01.html
770あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/03 23:01
>768
いやいや話題的にはマサニこのスレです(w
771767:03/02/03 23:04
>770
言われてみれば確かにそうだ
772風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/03 23:15
「どうして、どうして。お孫さんはゆくゆくは天師になられますぞ!」
「どうしてそんなことが分かりますか?」

看地先生は先祖のお骨を葬るために宿を借りたこと、その後さらなる吉地がみつかったので、一度葬った
お骨を取り出して、移し替えたことを正直に語った。

「さて、今年私のも孫が生まれましたが、どうしたことかその孫の人相と葬った場所の風水とが合わないの
です。これはきっと何かの間違いで、両家のお骨が入れ替わったのではないでしょうか?」
773風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/03 23:25
「ほ、ほう、さようでございましたか。それで私ども一家が幸せになったわけでございますな。
あなたはご存じありますまいが、あの夜あなたが東の離れで穴を掘られたとき、私はつい、怖いもの
見たさで壁の穴から様子をうかがって、あなたがなさることをいちいち目にとめていたのです。
後に考えまして、これはきっと吉穴(きちけつ)に違いないと思いました。幸い私の先祖のお骨もまだ
葬ってなかったので、あなたが出立されたあと、あなたのまねをして同じ穴にお骨を葬ることにしました。
二度目にあなたがいらして取り出していかれたのは、たぶん私が埋めた方の包みだったのでしょう。
そんなわけで大間違いとなりまして、たいそうお気の毒に思っております。」
774風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/03 23:26
「どういたしまして、私は決して後悔してはおりません。孫の人相は鬼をもひしぐようですから、
ゆくゆくはきっと名のある武将となりましょう。私はそれで満足して、お天道様のお恵みを感謝
しております。」

二人はこのように話し合って、共に機嫌良くハッハッハッハッと笑い出しました。
775風水を看る先生 (中国江蘇省松江地方):03/02/03 23:30
その後この二軒の家は、代々親しくつきあうようになりました。
が、一体その孫たちはどうなったのでしょうか?

やはり看地先生の見立ては当たっていました。
屋敷の主人の孫は張天師(五斗米道の始祖・張陵)となり、看地先生の孫は郭子儀(唐の名臣)と
なったそうです。
ほのぼの終わって良かった良かった。
ありがとう。
777Zanoni:03/02/03 23:43
これも岩波少年文庫の「錦の中の仙女」からですが、原作は「三人の将軍(林蘭編)」の中の「張天師と
郭子儀」という話だそうです。

なお、張天師(張陵)は道教の一派である五斗米道という教団を作った人、郭子儀(かくしぎ)は安史の乱を
平らげ、吐蕃・回の軍を破ったりしたことで名高い将軍です。

訳者も解説で指摘していますが、張天師は後漢末期の人(34〜156)、郭子儀は唐代の人(697〜781)と、
話の中とは違って、生まれた日はかなり離れているようです。
このスレのファンはここも読むといいだろう。。決して損はしないと思うよ

http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1032338511/l50
なにかと思たら好爺タソの本拠地スレではないかね。 みんな知ってると思う(w
領地没収!
781好爺:03/02/05 23:51
土佐の国(高知県)から阿波の国(徳島県)へ行くには、野根山峠という険しい峠を越えなければ
ならなかった。山深い峠で、道は決して平坦ではない。上り下りが続く厳しい道のりだ。
木々が生い茂って、昼間でも薄暗い。そのうえ、このあたりに住みついた狼の群れがしょっちゅう
暴れるので、旅人にとっては恐ろしい峠だった。あるとき、急便をおおせつかった飛脚が、
この峠を越えようとしていた。この峠を通らないわけにはいかないのだ。日暮が近づき、飛脚は、
急いでいたが、途中で、苦しそうにうずくまっている女を発見して立ち止まった。
女は産気づいていた。もし、このまま放っておけば、たちまち狼達の餌食になってしまうだろう。
急ぎの仕事の途中ではあったが、しかたなく、飛脚は一晩、この女に付き添う事に決めたのだった。
夜がふけて、さっそく狼達が集まってきた。その数は一匹や二匹ではない。けれども腕に覚えが
ある飛脚は、少々の事ではひるまない。飛び掛ってくる狼に次々と刀を振るってしりぞけたのだった。
狼達も、このままではどうにもならないと察知して、なにやら相談を始めたようだった。
飛脚が耳をそばだてていると、人の言葉で「これじゃかなわんから、佐喜の浜の鍛冶屋のおばばを呼ぼう」
と言っているのが聞こえた。狼達は揃ってその場を引き上げていった。
782好爺:03/02/05 23:51
…続き
しばらくすると、白い狼を先頭にして群れが戻ってきた。どうやら首領を連れてきたらしい。
白い狼は、さすがに手ごわかった。いくら斬りつけても死なない。それもそのはずで、頭に鉄鍋を
かぶっていたのだ。それでも飛脚は果敢に戦い、何度も何度も斬りつけたので、鉄鍋が壊れ、
とうとう白狼の額に深い傷が刻まれた。さすがの白狼も、これ以上戦うのは無理と、群れを引き連れて
逃げていったのである。飛脚のおかげで、産気づいた女は狼に食われる事も無く、翌朝には無事に
赤ん坊を産んだのだった。女の無事を見届けると、飛脚は先を急いだ。だが、阿波の国へ向う途中
佐喜の浜へ寄ってみた。夕べの狼達の話を思い出したのだ。鍛冶屋は一軒だけだったので迷わずに
訊ねてみると、たしかにばあさんがいるというではないか。飛脚は座敷に上がり込み、寝込んでいる
ばあさん目がけて、いきなり斬りつけた。これには家の者達も驚いた。だが、飛脚が事情を説明する
間もなく、ふとんに寝ていたばあさんは、瞬く間に白い狼に姿を変えていたのである。
狼の首領は、鍛冶屋のばあさんを襲って殺し、すっかり成り代わって暮らしていたのだった。
こうしてさんざん悪さをしていた狼は退治された。
783779:03/02/06 01:01
あ、好爺だ! 降臨感謝です また来てね!
鍛冶屋の婆でしたっけ。
この話大好きでした。

好爺さんはきっと原作から引っ張ってきてると思うのですが、
出典はどこなんですか?
良かったら教えてください。
785あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/06 14:05
掃除してたら、昔買った日本むかしの本が出てきた。
捨てたと思ったので、かなりびくっりしたよ。
本当は捨てたのに戻ってきたとか……(超定番)>785
787785:03/02/06 19:57
>>786
いや、あるのを忘れてた(笑。
オカルトな話なのはあまり無かったけど。
怖い話は耳なしほういち、おいけてぼり、雪女、船幽霊ぐらいなか。
ただ、絵が今見ても怖いからトラウマになっているようだ。
788あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/06 20:14
>787
そっかぁ・・・じゃあぼちぼちコテハン考えとかなきゃね (・∀・)ニヤニヤ
789785:03/02/06 21:22
久しぶりに見たらかなり懐かしいね。
ただ、子供の頃にみてたからぼろぼろだし、落書きがしてあったり
なくなってるページが多いこと。

>>787
まぁ、気が向いたらってことで(w
790Zanoni:03/02/07 21:41
幽霊は実在した (中国)

呉興(浙江省)の施続は尋陽(湖北省)の司令官をしていたが、なかなか弁舌の立つ人であった。
その家に寄食している男があって、これまた言うことが筋道立っており、いつも幽霊は実在しないと
いう議論をとなえていた。

あるとき突然、黒い着物に白い袷(あわせ)を重ねて着た見知らぬ客が訪ねてきた。
その居候が話し相手になっているうちに、話が鬼神のことになって、一日中議論したあげく、
客は言い負かされたと思うと、こんなことを言い出した。
「あなたは弁舌はさわやかだが、どうも道理に欠けておられますな。拙者こそ幽霊でござるぞ。
どうして幽霊がいないなどと申されるのか?」
791幽霊は実在した (中国):03/02/07 21:44
居候が、
「幽霊がなんの用でここへ来たのだ?」
と尋ねると、
「実はあなたを引き取りに遣わされたのだ。期限は明朝の食事どきまでということになっている。」
と言うので、居候は必死になって命乞いをした。
792幽霊は実在した (中国):03/02/07 21:51
すると幽霊は、
「誰かあなたに似ている人がいるか?」
と尋ねる。

居候は、
「施続閣下の幕下の都督(州の軍事を総掌する官)が拙者と似ております。」
と答え、一緒に連れて行った。
そして都督と向き合って座ったかと思うと、幽霊は一尺以上もある鉄の鑿(のみ)を取り出して、
それを都督の頭にすえ、槌を振り上げて打ち下ろした。

すると都督は、
「少し頭痛がするようだ。」
と言っていたが、だんだん痛みが激しくなり、やがて死んでしまった。
793あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/07 21:52
これもネタ元は、捜神記です。
794あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/08 19:50
あげ
795Zanoni:03/02/08 21:11
犬神 (中国)

于七(うしち)の乱(1648-62年に山東省で起こった反乱)の時には、罪もない住人たちが、清軍のためにまるで
麻を刈るように殺された。

そのときのことだが、李化龍(りかりょう)という者が、夜の闇にまぎれて避難先の山から村の様子を見に帰って
行進してきた清の軍隊にぶつかった。
問答無用で斬られてはたまらんと、あわてて逃げようとしたが隠れる場所もない。
やむなく死人の群れの中に倒れ込んで、死人を装って棒のように伸びていた。
796犬神 (中国):03/02/08 21:15
兵隊は通り過ぎたが、なおしばらく我慢しているうちに、首や腕を切り落とされた死体がぞろぞろと
立ち上がった。

中の一人、斬られた首が皮一枚で肩にぶら下がったのが、
「犬神様が来たらどうしよう。」
とつぶやくと、死体たちが口々に言った。
「どうしよう、どうしよう。」

間もなく死体たちはばたばたと一斉に倒れ、物音一つしなくなった。
797犬神 (中国):03/02/08 21:18
李がぞっとして、がたがた震えながら立ち上がりかけたとき、何者かが近づいてきた。
頭は犬、体は人間という怪物が、死人の頭に噛みついて、片端から脳味噌を啜っているのである。

李は肝をつぶし、頭を死体の下に突っ込んだ。
すると怪物が来て、李の肩を持ち上げ頭に噛みつこうとした。
798犬神 (中国):03/02/08 21:21
李が死体にしがみついて頑張ると、怪物がまわりの死体をどけたので、頭がむき出しになってしまった。
死にものぐるいで腰の下を探ると、茶碗ほどの石があった。
それをしっかり握りしめ、怪物が身をかがめて食いつこうとしたとき、やにわにぱっと立ち上がり、
「これでも食らえ」
と叫んで叩きつけたところ、怪物の口に当たった。
799犬神 (中国):03/02/08 21:24
怪物はフクロウのような絶叫を残し、口を押さえて逃げ去った。
吐き出した血が道に残っていたので、近づいて見てみると、血だまりの中に歯が二本残っていた。
真ん中で折れ曲がり、端が尖って長さは四寸あまりもあった。

持ち帰って皆に見せたが、怪物の正体を知っている者は一人もいなかった。
800Zanoni:03/02/08 21:28
この話の原題は野狗(やこう)、ネタ本は岩波少年文庫の「聊斎志異」です。
801こぴぺ:03/02/08 21:52
>771
566 名前:388 投稿日:2003/02/08(土) 21:05 ID:???

脱線するが、季節の変わり目で豆まきをするのも、良い気をいれ、悪い気を入れない考えが、風習になったと感じる。
風水初心者だと「2/4 15:05を境になぜ方位盤が不連続に切り替わるのか」と思う時期があるけども、東洋では、
春・夏・秋・冬は独立した時間で、それぞれの間に土用をはさんで、不連続に切り替わると考える(厳密には土という
舞台の上で四季が演ずるから、幕間に舞台だけになる時期がある=土用)。
季節のない土用は不安定な時期になる、だから土用殺といって忌み嫌う人もいる。
方位の境界線を用いるな、というのも、その空間には方位作用が存在しないからだとおもう。
802あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/08 22:18
>795
中国にはコワーな化け物の話がいっぱいありそうですね。おもしろかったです。
803あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/08 23:46
>802
最近このスレ用にネタ本いろいろ探しているうちに、中国の怪奇話にはまってしまいました。
ほかにも紹介したい話がたくさんあるので、ご期待下さい。
804Zanoni:03/02/09 01:05
画皮 (中国)

太原(たいげん)の王某(なにがし)は、ある朝、道でひとりの女を見かけた。
風呂敷包みを抱え、おぼつかない足取りで歩いて行くので、急いで追いついてみると、十六、七の美しい女である。
こんな美人はみたことがないと、声がかけてみた。

「こんな朝早くにお供も連れずにお歩きとは、何か事情があるのですか?」
「通りがかりで手を貸してくださる気もないのに、そんなことを聞いてどうなさるというのです。」
「お困りのことがあったら、おっしゃってください。私にできることでしたら、お力添えしますよ。」
805画皮 (中国):03/02/09 01:11
「ありがとうございます。実は、わたくしは欲に目がくらんだ両親のためにさるご大家に
売られたのですが、奥様がやきもち焼きで、朝に晩に怒鳴られたり打たれたり、どうにも
辛抱できなくなって、逃げ出してきたのです。」

「で、頼って行く先はあるのですか?」
「やみくもに逃げ出してきたまでで、先のあてなどありませんわ。」
「私の家はこの近くです。寄って行きませんか?」
「はい、それでは遠慮なくお邪魔させていただきます。」
806画皮 (中国):03/02/09 01:17
王は女の包みを持ってやり、先に立って一緒に帰った。

女は部屋に人の気配がないのを見て、聞いた。
「お一人なんですの?」
「いいえ、妻がおります。ここは私の書斎なのです。」
「ここは本当にいいところですわ。もしわたくしを哀れと思し召してお助け下さるのでしたら、わたくしが
ここにご厄介になっていることは、誰にも内緒にして下さいませ。」
807画皮 (中国):03/02/09 01:24
王は承知してやった。
そのまま書斎の別室にかくまってやったので、数日しても誰にも気づかれなかった。

妻にこれを打ち明けたところ、妻はどこかのご大家から逃げてきた者に違いないから、
面倒なことにならないうちにさっさと送り帰した方がいいと言った。
しかし、王は聞き入れなかった。
808画皮 (中国):03/02/09 01:29
ある日、王は市場で一人の道士に出会った。
その道士は王を見るなり、驚いて言った。
「そなた近頃、何かと出会いましたな。」
「いいえ」
「そんなはずはない。そなたの身体のまわりには妖気がただよっておる。」
「本当に誰にも会ってはいません。」
「可哀想に。世間には、死が目の前まで来ているのに気がつかない者がおる。」
809Zanoni:03/02/09 01:30
続きはまた明日
810あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 02:01
怖い系の話も、結構充実してきたな
811あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 02:23
小学校からの愛読書
松谷みよこの昔ばなしシリーズ
残酷物語
短篇びっしりだが 大人になった今でもこわくて途中でよむのやめたりしてしまう。
812あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 02:25
残酷物語

ちなみに挿し絵はおーるヒロシマのピカの人
813あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 09:50
>>811タン チョト期待してまつよ 気が向いたら...
814あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 10:00
>811
多いに期待してます。
怖げな話を選りすぐって持ってきてください。
815画皮 (中国):03/02/09 10:22
「もしかして、あの女のことか?」
ふっと思ったが、いやいやそんな馬鹿なことが、と打ち消した。
「あんな美しい女が化け物のはずがないじゃないか。あの道士め、言いがかりをつけ憑き物を落として
やろうなどと言って、金を騙しとろうとしたのに違いない。」
816画皮 (中国):03/02/09 10:31
しばらくして家に戻ったが、門には内側からかんぬきがかかっていて入ることができない。
不審に思いながら、土塀の崩れたところを乗り越えて入った。

だが書斎の扉も開かないので、そっと窓に近づいて中を覗くと、いましも青い顔にノコギリのような
牙をむいた一匹の鬼が、寝台の上に人の皮を広げ絵筆をとって色を塗っているところだった。
塗り終わると皮を取り上げ、さっと一振りして体に羽織ったかと思うと、恐ろしい鬼はたちまち美しい
女に変わった。
817あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 10:35
銅鑼衛門 死ね
818画皮 (中国):03/02/09 10:46
王はびっくり仰天、はいつくばってその場を逃げ出し急いで道士のあとを追ったが、どこかへ
行ってしまっていた。
あちこち訪ね歩いた末、ようやくある野原にいるのを見つけ、その前にひざまずいて助けを乞うた。

「ではひとまず追い払って進ぜよう。向こうも長い間苦労して、やっと身代わりを見つけたのじゃ。
命まで取ってしまうのもかわいそうじゃからな。」
道士はそう言うと、払子を王に授け、寝室の入り口に懸けておくようにと言い、また用があったら
青帝廟(せいていびょう)に来るようにと言った。
819画皮 (中国):03/02/09 11:05
王は家に帰っても恐ろしくて書斎に足を踏み入れることができず、寝室で寝ることにして払子を
戸口に懸けておいた。

その夜ひたひたという足音が聞こえてきた。
自分で覗いて見る勇気もなく妻に頼んで様子をうかがってもらった。
すると女は戸口までやってきて払子に気がつき、その場に足を止めてしばらくばりばりと歯を噛み
ならしていた。
820画皮 (中国):03/02/09 11:09
やがて立ち去ったが、しばらくしてまたやってくると、
「道士め、わしを脅かすつもりだろうが、そうはいくものか。いったん口に入れたものをおめおめ吐き出すと
思ってか!」
と言うと、払子を取って粉々にし、寝室の戸を打ち壊して入って来るなり王が寝ている寝台に上がって王の
腹をべりべりと引き裂き、心臓をつかみだして立ち去った。
821画皮 (中国):03/02/09 12:09
妻が悲鳴をあげたので、女中がやって来て明かりで照らして見てみると、王は既に息絶えて、腹の
穴から溢れた血であたりは一面血の海、妻は驚きのあまり涙を流すばかりで声も出せなかった。
822画皮 (中国):03/02/09 12:42
あくる朝、王の弟の二郎が道士を訪ねて行くと、道士はことの次第を聞いて、
「あの亡者め、けしからんやつじゃ。わしはあいつを不憫に思ったので、見逃してやろうとしたのに。」
と言うと、二郎と一緒に王の屋敷にやってきた。

女の姿は既になかったが、道士はあたりを丹念に見渡していておもむろに言った。
「まだ遠くには行っていない。南側はどなたのお屋敷かな?」
「私の家です。」
と二郎が答えると、
「亡者め、今あなたのお宅におりますぞ。」
823画皮 (中国):03/02/09 13:26
「滅相もない。そんな者はおりません。」
「誰か見知らぬ者が来たはずじゃ。」
「私は今朝は早くから青帝廟へ出かけたので、よく分かりません。帰って聞いてみましょう。」
二郎は出ていって、すぐまた帰ってきた。

「いかにもおりました。今朝、一人の老婆が女中に雇ってくれといって訪ねてきて、家内が承知してやったので
今でもいるそうです。」
「そうじゃ。それが亡者だ。」

道士は二郎とともに隣の家に行くと、庭の真ん中に木剣をついて仁王立ちになり、大声で言った。
「化け物め、わしの払子を返せ!」
824画皮 (中国):03/02/09 13:57
老婆は家の中にいたが、真っ青になって慌てふためき戸を開けて逃げ出そうとした。
道士が追いすがって木剣で一撃すると、老婆はばたりと倒れた。

その瞬間、人の皮がぱっとはがれて悪鬼の姿に変わり、地面を転げ回りながら豚のような声で吠え立てた。
道士が木剣でその首を斬り落とすと、煙がもくもく立ちのぼり、地上に渦巻いて山のような形になった。
825画皮 (中国):03/02/09 14:05
道士がひょうたんを取り出して栓を抜き、その煙の中におくと、ひょうたんはひゅうひゅうと音を
立てて煙を吸い込んだ。
あっという間に吸い込んでしまうと、道士はひょうたんに栓をして袋に入れた。
826画皮 (中国):03/02/09 14:18
皆で人の皮を見てみると、眉も目も手足も全てそろっていた。
道士がそれを巻くと、掛け軸を巻くような音がした。
それも袋に納めて立ち去ろうとしたとき、王の妻が門に待ちかまえていてひざまづき、泣き泣き王を
生き返らせるにはどうしたらよいか聞いた。

しかし、道士が自分にはできないと断ったので、その場にひれ伏したまま一層激しく泣き出した。
827画皮 (中国):03/02/09 14:38
道士はしばらく考えてから言った。
「わしは修行が足りないので、死んだ者を生き返らすことはできんが、あるいはあの方ならできるかもしれぬ。
行って頼んでみたらよかろう。」
「それは、どなた様でしょうか?」
「市場に頭のおかしな乞食がおるじゃろう。よく泥まみれになって道ばたで寝ているが、行ってその人によくよく
頼んでみるがよかろう。ひどいことを言われるかもしれないが、決して腹を立てないよう。」
828画皮 (中国):03/02/09 15:05
その乞食なら二郎もかねがね知っていたので、王の妻は道士に別れを告げてから、二郎と一緒に
市場に出かけた。

見れば、乞食は大通りで訳の分からない歌をうたっていた。
鼻水を垂らし、汚くて近寄ることもできなかったが、王の妻は膝ではってその前に行った。
829あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 18:26
わくわくどきどき
払子って?悪霊退散のお札みたいなものかな?
キョンシーの額に貼られてるようなもの?
ああっこの話小さい頃読んだ!>828で記憶が。続きお願いします!
832あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 18:56
833830:03/02/09 18:57
>>832 ありがとう。
はらったまきよったま、みたいなものなんだね。
834あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 19:04
>833
こっちの方が分かりやすい
ttp://www5a.biglobe.ne.jp/~pedantry/pedantry/attribute.htm
835Zanoni:03/02/09 20:15
仮眠のつもりが、熟睡してしまいました。
話を再開します。

>830
分からない言葉や、読めない文字があったら、どんどん指摘してください。
836あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 20:18
鬢ってどこの毛だったっけ。
837画皮 (中国):03/02/09 20:26
乞食はげらげらと笑った。
「ようよう別嬪さん、俺に惚れたか。」
王の妻が訳を話すと、またげらげらと笑いだして、
「亭主の代わりなんかいくらでもいるじゃないか。わざわざ生き返らせてどうしようというんだ。」
という。

それでも繰り返して頼むと、
「わからんやつじゃ。いったん死んだ人間を生き返らせてくれだなんて。おれは閻魔様じゃないんだぞ。」
と言いながら、杖を振り上げて王の妻をぴしりと打ち据(す)えた。

王の妻は痛みをこらえてそれを受けたが、このときには黒山の人だかりになっていた。
乞食は両の掌いっぱいにかーっと痰を吐き出すと、王の妻の口の前に突きつけた。
「これを食え。」
838画皮 (中国):03/02/09 20:46
とても食べられるものではない。
王の妻は顔を真っ赤にしたが、道士に言われたことを思いだし、目をつむって飲み込んだ。

と、それは喉に入り綿の塊のようにごろごろと下って行って、胸と腹の境のあたりで止まった。
839画皮 (中国):03/02/09 20:48
「わっはっは、別嬪さんが俺を好きになりおったぞ。」
乞食はげらげら笑いながら、後をも見ずに歩み去ったので、後をつけて行くと一つの廟の中に入って行った。

なおも頼んでみようと追って行ったが、どこに消えたかいくら探しても影も形もなかった。
840画皮 (中国):03/02/09 20:56
王の妻は恥を忍んで家に戻ったものの、夫に死に別れた悲しさと、乞食に痰を食わせられた悔しさに、
声も絶えるばかりに泣き叫び、いっそ死んでしまおうとまで思ったほどだった。
841画皮 (中国):03/02/09 21:00
王の遺体の血の跡をぬぐって棺に入れることになったが、小間使いたちは立ちすくんで近づくこともできない。

王の妻は夫の遺体を抱きかかえ、外にはみ出した腸を引き裂かれた腹の穴に押し込み、片付けながら泣き
続けたが、あまり泣いたため声が枯れ、胸がむかむかして吐きそうになった。
842あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 21:47
続きを、お願い。
843画皮 (中国):03/02/09 21:47
と、胸の奥から固いものが一気に突き上げるかとみるまに、顔をそむける間もなく、王の腹の
穴の中に、ぽとりと落ちた。

何だろうと見てみると人の心臓で、腹の中でぴくぴくと動き、もうもうと湯気を立てている。
844画皮 (中国):03/02/09 21:53
これは不思議と、急いで腹の皮を引っぱって穴をふさいだ。
少しでも力を抜くと湯気が合わせ目からもうもうと噴き出してくるので、慌てて絹を裂きしっかりと
巻き付けた。
身体を撫でていると次第に温かくなってきたので、布団をかぶせておいた。

夜中にその布団をはいでみると、かすかに息をしていたが、夜が明けるとともにぱっと目を開いた。
「うつらうつらして夢の中にいたみたいだ。ただ腹がちくちくする。」
というので、引き裂かれたところを見てみると、銅貨ほどのかさぶたができていた。
が、それも数日できれいに治ってしまった。
845Zanoni:03/02/09 21:56
この話も、聊斎志異からです。
ttp://shopping.yahoo.co.jp/shop?d=jb&id=30690581
846あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 21:57
>>845
大作でしたな。
お疲れ様。
847Zanoni:03/02/09 22:13
>846
これでも短い話を選んでるつもりなんですが、書き出すと長いもんですね。
今回は訳文が良かったので、ほとんどそのまま転載したからでもありますが。
848あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 22:16
Zanoniタン おつです 記憶の隅っこにあった物語の完全版を知るとみょーに満足しますです(w
849Zanoni:03/02/09 22:40
>848
その感覚、よく分かります。
子供の頃読んで、また読んでみたいけど手がかりが何もない、
という話に偶然再開できると、嬉しくなりますよね。
850Zanoni:03/02/09 22:59
この本には、「聶小倩」というチャイニーズ・ゴースト・ストーリーの原作も収録されていますが、
長さが「画皮」の倍もあるので諦めました。

あらすじはここにありましたが。
ttp://members.tripod.co.jp/suzakumon/postscript_mbag.html
851あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 23:03
>>850
ほんとにご苦労様です。
852あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/09 23:42
勉強になるスレですね
853弁天丸:03/02/11 21:08

寄姫の滝 
 
 むかし、木山の町に木山弾正という殿様がいました。
その殿様の家来に宮園兵部という若者がいました。
兵部は背が高く、顔かたちもよく、そのうえ剣術にもすぐれた立派なさむらいでした。

その兵部が、ある年のこと、病気になって寝ついてしまいました。ひどい病気で、
さすがの兵部もすっかり痩せ細って歩く元気もなくなりました。
これではお城のつとめもできませんので、しばらく休んで養生することにしました。
そのうちに、からだの調子もいくらかよくなってきました。

「だいぶ元気が出たごたる。こん分ならもうしばらくしたらお城にのぼるこつもできそうばい。
ばってん、そん前にすこし体ばならしておかんといかんばい。」

「河原の滝は、たいそう体によかて聞くけん、一度行ってみよう。」
854弁天丸:03/02/11 21:14

 兵部は朝早く起きて、弁当をさげ、河原の滝へのぼっていきました。
着いてみると、うわさの通りすばらしい滝です。きれいな水しぶきをあげて落ちています。
周りには大木がおいしげって、いかにもすずしそうです。
今までふき出していた汗がすうっとひいてしまいました。

「こらすずしか。木山では暑してたまらんとに、ここはまったくの別天地たい。」
「こらあ、よかところに来たばい。」

 兵部は滝にうたれたり、弁当を食べたりして、長いこと座っていました。
「さて、ぼちぼち帰ろうか。長いこつ遊んだばい。」

 ひとりごとを言って立ち上がり、腰に刀をさしながらひょいと滝のほうをみると、
なにやら白いものが立っています。

「なんだろか。こぎゃん滝のあたりに人間のおるはずはなかし。」
855弁天丸:03/02/11 21:18

 目をこらして見ましたがわかりません。兵部は変だなとは思いましたが、
いつまでも見ているわけにはいきません。あきらめて帰ろうとしました。

そしてもう一度目をあげた兵部は、ギョッとして立ち止まりました。
さっきの白いものが滝の水の上をすべるようにおりているのです。
兵部の背すじに冷たいものが走りました。しかし、そこはさむらいです。
刀のつかに手をかけて、その白いものをじっとにらみつけました。
よくみると、白いと思ったものは、若い女の姿でした。

「いくらなんでん、人間が水の上ば歩くはずがなか。こらあきっと化けもんにちがいなか。」
「見とけよ。化けもんなる切り捨てちくるっばい。」
856弁天丸:03/02/11 21:22

 若い女は、そんな兵部のことなどおかまいなしに、どんどん近づいてきます。

「ほんとうにご無礼しました。さぞびっくりしなはりましたろう。」

 近づいたむすめの姿を見ると、兵部はまたおどろきました。
むすめの顔は、まぶしいように美しくかがやいて見えました。
兵部は、あまりの美しさに、しばらく見とれてしまいました。
 すこし落ち着くと、背中をしゃんと伸ばしてたずねました。

「あなたは、いったいどなたですか?」
857弁天丸:03/02/11 21:26

 するとむすめは、かなしそうな小さい声で、自分は寄姫という名であることや、
両親とは早く別れて、この世には、だれひとり親しい人がいないので、ひとり滝
の上のほら穴に住みついて、毎日機(はた)を織って暮らしていることなどを話しました。
聞いていた兵部は人一倍気のやさしいさむらいですから、むすめがかわいそうになってきました。

「どうか、わたしを、あなたの家で使ってください。どんな仕事でもしますから。」

 寄姫はうつむいて兵部にたのみました。
兵部は美しいむすめのたのみを聞くと、このむすめが、滝の水の上をすべるように
おりてきたふしぎな人だということも忘れて、こんな人が手伝ってくれるなら、
こんなに楽しいことはないだろうと思いました。
858弁天丸:03/02/11 21:32

「そなたが来てくれたら、せっしゃも助かる。そなたのよかときに来てもらおう。」
 兵部はむすめに家の場所をくわしく教えて帰りました。 
 
 次の日から、登城した兵部はさっそく殿様や上役や友だちへあいさつにまわりました。
それに、いままで積もっていた仕事が山のようにあって目がまわるようにいそがしい日が続きました。

 そんな日のある夕方でした。
 兵部が昼間の疲れた体を横たえていると、木戸口に女の声がしました。
出てみると夕あかりの中に河原の滝で会ったあのむすめが立っていました。

「やあ、よう来たなぁ。つかれたろう。さあ、上がりなさい。」

 それから、兵部と寄姫の生活が始まりました。

「寄姫、行ってくるぞ。」
「はようお帰りください。」
859弁天丸:03/02/11 21:40

 夫婦ではありませんが、兵部にとっては、楽しく、しあわせな日々が続きました。

 ある日の夕方、兵部は仲間といっしょに、木山川の土手を歩いていました。
今日はみょうに口数が少なく、みんなむっつりとしていました。そのうちに
仲間のひとりが思いきったように口をひらきました。

「おい、兵部。だまっとろうと思うとったが、どうも気になるけん言うておく。」
「ほら、四、五日前に、俺が仕事で残っていた日があったろう。
「そん晩、夜中のニ時頃ここば通りかかったら、河原のほうから太か(大きい)火の玉が飛んできたが。」
「うす気味の悪うなって、せんだんの木のかげにかくれて見よったら、そん火の玉ん中に
”みずや”(食器などを入れる戸棚)を背負うたむすめが入っとる。
「まこちみとれるごつ美しい女だったが。そん火の玉が、おぬしの家の戸口から、
すうっと入っていくのを見たとよ。」
「おぬしに心当たりはなかか?」

「そぎゃん(そんな)ばかな。」
860弁天丸:03/02/11 21:45

 兵部は、友だちがからかっているのだろうと思って、笑いながら歩いていきました。
すると、もうひとりの友だちも真剣な顔をしていました。その友だちも昨晩やはり火の玉を見た。
そして、その火の玉の中には、美しいむすめが機(はた)を織る機械をしっかりとだいて入ってい
た。そしてそれが、兵部の家の中に消えたというのです。

 兵部の顔が急にこわばってきました。そう言われると、兵部にも思い当たるふしがありました。
四、五日前に、寄姫が”みずや”を滝の上のほら穴から持ってきたいと言ったので、
それを許してやったことがあるのです。昨日も寄姫は、昼間はひとりでたいくつだ
からと言うので、夕方から機織り機をとりに、滝の上のほら穴に帰っていったのです。

「もしや・・・」
861弁天丸:03/02/11 21:54

 兵部のまぶたには、滝を見に行った日のことがまざまざとよみがえってきました。
滝の水の上をすべるように歩いてきた寄姫のことを思い出すと背中がぞっとしてきました。
それに、話をしてくれた友だちは、ふたりとも、いいかげんなことを口にするような男で
はありませんでした。

「さては、あんむすめは化けもんだったつか。」


 兵部は急に走り出しました。かわいそうな身の上に同情して、寄姫を家に住まわせたことや、
たのしい生活に満足してきた自分がなさけなくなりました。

そして自分をだましていた寄姫に、言いようのない怒りがこみあげてきたのです。
862弁天丸:03/02/11 22:02

 兵部は、勢い込んで家の中にかけこみました。何も知らない寄姫は、おどろいて出迎えました。

「よくも、俺ばだましたな!」

 兵部は、刀を抜くと、いきなり寄姫に斬りつけました。

「兵部さま〜」

 悲しそうな声がしたと思ったら、ふしぎなことに、もうそこには寄姫の姿はありませんでした。

「やはり化けもんだったか。」

 兵部は力がぬけて座りこんでしまいました。そして一晩中明かりもつけずにじっと座っていました。

 にこにこしながら水仕事をしていた寄姫のしぐさは、化け物なんかではない気品がありました。
兵部が帰るとむかえに出る寄姫のうれしそうな表情は化け物どころか、ほんとうにしあわせそうな顔でした。
863弁天丸:03/02/11 22:10

 でも、寄姫が消えてしまったことは、なによりも化け物の証拠です。

 夜が明けたので、兵部は力なく雨戸をくりはじめました。するとどうでしょう。
血がぼたぼたと木戸のほうへ続いているのです。兵部は刀を手に庭にとびおりて、
その血のあとをたどりました。その血のあとは、どこまでも、どこまでも続いているのです。

はっと気付くと、兵部は、朝ぎりの立ちこめた河原の滝の上のほら穴の入り口に立っていました。

 じっと目をこらしてほら穴を見ると、なにか白いものが横たわっているのです。
近寄ってよく見ると、それは寄姫でした。その顔は、ほんのりとほほえんでいるようにも見えました。
兵部は寄姫をだきおこしました。でも寄姫は冷たくなっていました。
864弁天丸:03/02/11 22:20

 兵部には寄姫を斬ったことがくやまれてなりませんでした。
なぜ斬ったのか、このかわいい姫を・・・

兵部には、寄姫が化け物かどうかを考える余裕もありませんでした。
それはどうでもよいことでした。心から寄姫をかわいそうに思いました。
兵部は寄姫をまじまじと見つめて、自分が泣いていることに気付きました。

 兵部は泣きながら、ほら穴の横に寄姫をほうむりました。


 それから兵部を見たものはだれもいませんでした。そのほら穴の入り口に、
もとどり(髪の毛を頭上に集め、たばねたところ)からばっさり切った兵部の髪の毛が、
刀といっしょに置いてあったそうです。 


 月のきれいな夜は、滝の水音の合間に、「兵部様。兵部様。」と寄姫の悲しそうな声が
聞こえると、村人たちはうわさをしました。

人々はこの滝のことをいつの頃からか「寄姫の滝」と呼ぶようになったということです。
865あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/11 23:47
こんなスレ立ってます

遠野物語・怪談は古典に限る
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1044931663/
866好爺:03/02/14 02:06
都(京都)、八幡町と言う所に新兵衛と言う者が居た。ある夜、雨が降っていて、風も吹いていたので
小提灯を手に持って、夜半頃、三条坊万里の小路を西に行くと六つか七つばかりの小坊主が、
門の扉によりそって、雨だれにそぼぬれて、すごすごと歩いていた。提灯を寄せて見ると、その様は
乞食のような卑しい者には見えなかった。様子は上品で、指先は綺麗で、衣装も見苦しくなく
きっと、身分のある家の子供であろうと「おまえさんは、何処の子供ですか」と聞いたが答えなかった。
又、困ったような顔にも見えなかった。いろいろ効いたが、「家まで送ってあげようか。
それとも、今夜は私の家に泊めてあげようか」とまで言ったが、それでも、何も言わずに
万里の小路を南に進んでいった。
867好爺:03/02/14 02:07
さては、親の元に行くのだろと思ったが、雨は絶え間なく降っていて、傘も来てはいなかった。
哀れに思い、傘をさしかけて、後をついてゆく事にした。四、五町ばかり言った頃に、この小坊主が
振り返ったのを見ると、顔の大きなこと普通の人の五倍ほどもあった。目が三つあり、鼻も耳も
無かったが、新兵衛を見て、「にっ」と笑った。それを見ると身の毛もよだち、膝が震えて、
目の前が真っ暗になって、地面に倒れてしまった。暫くして、自然と目覚めて、あたりを見ると
雨具、その他はすべてあって、体は泥土にまみれ、びしょぬれになっていた。
万里の小路を南に行っていたはずが、夜が明けて周りを見ると三条の西、西院という人を葬る場所に
忽然といた。「思えば、遠くまでたぶらかされていた」と近くを走っていた駕籠にのって家に帰ったが、
その夜から、体調を崩して四十日ほど起きれなかった。しかし、その後は別段なにも無く回復した。
c'est tres bien.
869弁天丸:03/02/15 14:15

都敦盛の話

 ある所に、娘一人、親一人の二人住まいの家があった。その娘はとても美しい人で、
外にはいっさい出なかった。

 ある日の晩、外へ涼みに出ていたところ、突然日の光りのようなものが、体全体を照らし
出したので、その娘は怖さのあまり家の中に閉じ篭もり、ますます外へ出なくなった。

 ところが、その娘は、いつの間にか子供を孕んでいた。世間からはいろいろ噂されたが、
無事男の子を生んだ。都敦盛と名付けて四、五ケ月程は、子供と一緒に暮らしていたが、
子供を生んでからは、ますます聞き苦しい噂話をたてられ、ついに自分の親に子供を預け、
自分は旅にでた。
870弁天丸:03/02/15 14:19

 親には旅に行くといって家を出たが、その実は死ぬ決心をしたのであった。
家で留守をしている親は、自分の子の帰りが遅いのを、いつか、いつかと待っていた。

そして、ある人から娘は死んだということを聞き、哀しみ悩んだがしかたのないことと諦め、
この孫を育てる為に生きようと自分の胸にかたく決めた。

 男の親がいない上に、女の親までいなくなりアンマ(婆さん)が、育てた。
都敦盛は、走りくま(かけっこ)をさせても早く、船遊び、勉強、どれをとっても
村一番になってアンマを喜ばせた。
871弁天丸:03/02/15 14:23

 ある日、いつも都敦盛に負けて、面白くない友達が、

「お父さん競争をしよう。」と言いだした。

お父さんは生まれた時からいないということをアンマから聞いていたので、
その時は負けて黙っていると、また友達が、

「今度は、母さん競争をしよう。」

と言いだした。都敦盛は家に逃げ帰り、アンマの膝で泣いた。
872弁天丸:03/02/15 14:28

 そのあとで何を思ったか、アンマに弁当を準備させ、都敦盛は村をでて、
山の中に、山の中にとただ一人で歩いていった。

そのうち夜になり、どうしようと迷っていると、向こうの方に明かりが見えた。
都敦盛は、急いでその家の戸を叩いた。


「旅のものですが、宿を貸してください。」と都敦盛がいうと、中から声がして

「泊めることはできない。」と断られてしまった。
873弁天丸:03/02/15 14:33

都敦盛はまた、

「ムンチキ小屋(仕事小屋)でも縁の下でもかまいません。」といってお願いしたら、

「そんなにまで言うのなら、縁の下でも借りなさい。」と二度目の返事があった。


そして、家の中をのぞき見してみると、美しい女の人が鏡台にむかって髪を
すきながら、何か口ずさんでいる。都敦盛が耳をすまし、聞いたところが、

「月にたとえても、星にたとえても、都敦盛のことや忘れぃららん。」

と何回も繰り返していた。
874弁天丸:03/02/15 14:38

 都敦盛は、自分の名前を言われて驚き、

「月にたとえても、星にたとえても、ワンナウマシャルオヤヌコトヤ忘れぃららん。
(私を生んでくださった母のことは忘れられません。」

と言った。

「なんと、お前が我が子の都敦盛か。」と母親は抱き上げて家の中に入れ、
いろいろと世話をしてくれた。

 都敦盛は、生まれて初めて母親の手枕をして、安心してその夜をすごした。

875弁天丸:03/02/15 14:45


 あくる朝、目が覚めてみると、恐ろしいことに谷間の上の断崖の上に、
母親の骨の手枕をして寝ていた。

都敦盛は昨日の母の手枕を思い、泣き、母を呼んだ。帰るのはこだまばかりであった。

都敦盛は、母がかわいそうで、くずれかかった母親の骨を拾い集めると、
アンマ(婆さん)の所に帰り、手厚く葬ってやった。

876あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 16:29
弁天丸の長いし方言だし読みにくい(  ゚,_ゝ゚)
なら
>>876
いい感じの昔話紹介してよ
878あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 16:42
>876
「もうちょっとここを改善してくれ」
とか具体的な言い方しないと、すぐ>877みたいなつっこみが入ってしまうよ。

特に最近は投稿者3人しかいないんだから。
かぁ、ほんttっと876は糞だな。
文句言う暇があったらてめーがなんか書けや、ごみが。
せっかく話を書いてくれる人にむかって言うに事欠いて
読みにくいだ?ぼけが。
てめーみてーなのを厨房っていうんだよ、カス。
さっさと首吊って氏ね。
>>879
まぁ、少し落ち着け。
何もそこまで言うほどのことじゃないぞ。
881弁天丸:03/02/15 21:55

>876 えっと...とりあえず (´・ω・`)ショボーン

これまで奄美、九州5県、三重、宮城などの昔話を書いてきましたが、
その地方独特の言葉が生み出す雰囲気などは自分は気にいってるので
これからも入れていきたいと思ってます。
なるべく難解なやつには翻訳も入れますがよく分らんというやつはいつでも質問して下さい。

たしかに長い物語で受けが悪いときもありますが(汗
まぁ次回に期待してやろうと、ナマ暖かーく見守ってやって下さい

>878
こんな感じの物語キボーンとか要望どんどん待ってまつ

とりあえずこのスレも残り後僅かなのでひき続きマターリで逝きましょう
882なな:03/02/16 00:54
弁天丸さんのお話、私は大好きです。
分かりづらいと思ったことはないし。
文句言う人の理解力の方に問題があると思います。
弁天丸さん、これからもがんばって☆
楽しみにしてます。
>880
>879は、単なる釣りなので相手にしないように。
884好爺:03/02/16 23:28
信濃の国末木観音の山の峰に若者達が集まって「誰か、今夜観音堂にいって、明日まで居る事の出来る奴がいるか」
というと、無鉄砲な男が「そんな簡単な事、俺がやってやる」と言って出て行った。
その観音堂は、人家より二十四町行った所で、深い山の中で昼間も人があまり行き来しない場所で
狼や狐、狸の声以外では聞こえる声も無かった。その男、堂の中に入って夜の明けるのを待った。
夜半過ぎに朧月に見ると座頭が一人琵琶を背負って杖をつきながらやってきた。
そのまま堂の中に入ってきたので、こんな夜中に来るとは、と不思議に思って
「こんな所に来るとは、何者だ」と尋ねた。「さては、人がいらっしゃるのか。そなたこそ誰なんですか?
私はこの山に住んでいる座頭で、いつもこの観音堂に来て夜に詣でに来ていた。観音さまに唄っていたのです。
毎晩来ていたのですが、人がいたのは初めてです。不審に思っています」と咎めた。
そこで、今までの詳細を話して「ああ、良い連れが出来ました。どうぞここへお座りください」と話し、
琵琶で平家物語を一句お願いした。すると「良いですよ」と琵琶を調べて一句語った。
885好爺:03/02/16 23:28
「いつも、平家物語を聞いているがこんなに面白いのは、始めてです。節も音声、息つきすべて良かった。
目が覚めるようです。もう一句ぜひ」と頼んだ。すると、もう一句語った。いよいよ感に極まった。
平家物語が終った後にをんじゃく(軽石などを暖めて懐に入れて体を温める道具)を取り出して指を温めた。
それを見て「それはなんと言うものですか」と尋ねると「これは温石(をんじゃく)と言うものですよ」
「ちょっと、見せてもらえませんか」と言って手にとると、左右の手に取り付いてどうしても離れなくなった。
手が板敷きについて動けなくなった時、この座頭が高さ一丈ほどもあろうか言うほどの大きさになって、
頭は炎のように逆立ち、おびただしく口が大きく裂け、角が生えて、恐ろしい形相に変わっていた。
「お前は何でこんな所にいるんだ」と首や顔をなでて、色々なぶり脅した後、何処ともなく消えていた。
男はようやく温石を離して、呆然としたところに数多くの松明が見えてきた。見ると、友達だった。
「もうすぐ、夜が明ける頃なので迎えに来たが、なにか変わった事はなかったか」と言うと
「その事だが・・・」と先ほどの事を話すと、みんなが手を叩きながらどっと笑ってしまった。
するとみんなの顔が先ほどの化け物の姿に変わった。その時に男は気を失った。
夜が明けて、人が来るたびにまた化け物かと思って暫く心が落ち着く事は無かったという。
886あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/17 00:12
好爺さん乙です。

ただもう少し、スレ形式にあわせて改行を多くしたり、行をあけたりして書き込んでもらえないでしょうか。
字がこれだけ詰まってると、どうも読みづらいので。
887Zanoni:03/02/17 23:38
石人の頭の中の天書 (中国)

江蘇省は運台山の麓に、周爺さんと呼ばれる一人の老人が住んでいました。
周爺さんは毎日、二つの餅を腰につけ、海辺に漁に出かけるのが習慣でした。

網を打つときは、いつも着物と餅を草むらに隠していましたが、ある時、餅が二日続けて盗まれていました。
888石人の頭の中の天書 (中国):03/02/17 23:39
三日目に、周爺さんが餅を食べようと草むらへ行ってみると、一匹の狐が爺さんの着物の
上で気持ちよさそうに寝ているではありませんか。

爺さんは腰の帯で狐の後ろ足を縛り、
「やいっ!」
と、怒鳴りました。

「お前がわしの餅を盗み食いしていたんだな!承知しないぞ!」
889石人の頭の中の天書 (中国):03/02/17 23:45
狐ははっと目を覚ましましたが、後ろ足が縛られているので逃げられません。
周爺さんは大きな石を持ち上げ、狐の頭の上に落とそうとすると、狐は慌ててこう言いました。
「どうか・・・お助けください。」
「お前は、わしの餅を盗み食いしおって、ただですまそうとするつもりか?」
890あぼーん:あぼーん
あぼーん
すると、狐は答えました。
「では、あなたがお金持ちになれる方法をお教えしましょう。・・・・・・
お宅の南にある、黄家のお嬢さんが不思議な病気にかかっていますが、これは、海の主の、
黒魚の精に取り憑かれているからです。
黒魚は明日、浅瀬にやって来ますから、前もって三段の網を張っておくと、きっとあなたの
網にかかります。捕まえたらそいつの脳味噌を取り出して酒に混ぜ、黄家のお嬢さんに差し
上げると、病気はすぐに治ります。
・・・・・・なんでも娘の父親は、病を治してくれる者があれば、娘をその者の嫁にやり、
その上財産を半分分けてやろう、----と言ってるそうです。」

周爺さんはこれを聞くとひげをしごいて喜び、狐の足のひもをほどいてやって言いました。
「さあ、行くがよい。」
892石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 00:40
周爺さんは、早速、隣家から二張りの網と一丁の斧を借りてきました。

翌日、自分の網と隣家の網を海岸の浅瀬に張り巡らし、斧を持って大きな石の陰に隠れていました。
間もなく、浅瀬にガバガバと音を立てながら、大きな黒魚が第一の網を通り抜けました。
次の第二の網も水をはね飛ばしながら通り抜け、そして第三の網にかかったとき、網に巻き込まれて
身動きできなくなり、尾だけをポチャンポチャンとはねていました。
893石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 00:51
周爺さんは、
「今だ!」
とばかりに石の陰から踊り出し、斧を振りかぶって、魚の頭を真っ二つに叩き割ろうとしました。
と、黒魚はわめき声をたてて言いました。
「まあ、待ってくれ!あの山の麓にある石人の頭の中に、たくさんの天書があるから、それを手に
入れた方が、俺を殺すよりもっといいじゃないか。」

----天書というのは、神仙だけが知っている天の秘密を書いた本で、数百年に一人しか出ない
ような人物に授かることがあると信じられていた書物です。
894石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 01:07
周爺さんは黒魚の言葉を聞くと、
「お前は黄家のお嬢さんに取り憑いておきながら、助けてもらおうとは虫がよすぎるぞ!」
と言ったかと思うと、力まかせに斧を打ち下ろしたので、魚の頭は真っ二つに裂けました。
そこで周爺さんは魚の脳味噌を取り出し、木の葉で包むと、網をかついで家に戻りました。
そして酒を少し買ってきて黒魚の脳味噌とよく混ぜ合わせ黄家に持っていきました。
895石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 02:43
さて不思議なことに、黄家のお嬢さんが、黒魚の脳味噌と酒を混ぜたものを飲み下すと、
病気はけろりと治ってしまいました。

でも周爺さんは黄家の主人にこう言いました。
「わしはたいそう年をとっておるで、お宅のお嬢さんの婿にはなれませんわい。それから
財産の半分とかもしばらくお預けじゃ。」
896石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 02:56
黄家の主人は、それではお礼のしようがないからと、ご馳走しようとしました。
が、周爺さんは、
「まだ大切な仕事が残っている。こうしてはおられんわい。」
と、頭をふりふりかけだして行ってしまいました。

行き先はもちろん山の麓にある、石人(石を彫って作った像)のところです。
897あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/18 03:08
面白いから待ってます。
898石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 03:12
石人こそいい迷惑です。
周爺さんの斧で、頭を打ち割られてしまいました。
と、果たしてその中からぱらっと三冊の天書がこぼれ出しました。

周爺さんはそれを自分のものとはせず、さっそく新県の桃花澗(とうかかん)というところにとんで
行って、その谷川のほとりに住んでいる桃花女(とうかじょ)という女仙人にあげてしまいました。
899石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 03:16
その後また、石人の頭の中から三冊の天書が出てきました。
周爺さんは、今度のものは大切にして家に持ち帰りました。

さて、天書には何が書いてあったかというと、
---- 最初の三冊には人間になぜ生死があるのか、その理由が書いてあり、あとの三冊には人の生死を
前もって知る方法が書かれていました。
900石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 03:24
周爺さんは元々学者だったので、天書を毎日読むうち、完全に体得しました。
すると、面白いほど人の生き死にや運命が分かるようになりました。

例えば町を歩いているとき、向こうから威張りかえった人が来て、その人が三日以内に死ぬと
分かると、可笑しいやら気の毒やらでたまりません。
901石人の頭の中の天書 (中国):03/02/18 03:25
そこで、周爺さんは漁師をやめ、町に出て人助けのために人の生き死にや運勢を
見てやる商売を始めました。

周爺さんの占いは外れることがなく、たいそうな評判となりました。




--終わり--
902Zanoni:03/02/18 03:26
この話も、「錦の中の仙女」からです。
903あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/18 03:46
ついに大台達成
次スレどうしようか?
904あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/19 23:37
良スレあげ
905あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/20 23:14
ここも勢いがなくなってきたな
もう一人ぐらいコテハンのネタ提供者がいれば持ち直しそうだが
906Zanoni:03/02/22 14:25
西南へ一筋に (河北省望都県)


ある、一人っ子の若者がいました。
あるとき彼は西南の方に、冬もなければ夏もなく、食べたいものはなんでもある、
とても良いところがあるという話を聞きました。
(そのころ、西南はまだ未知未開の土地でした。)
907あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/22 14:26
ここは下手糞な自作自演ですね
>>907
それを上回る、へたくそな釣りですね。
909あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/22 18:47
910あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/22 18:50
>865のスレをネタに、面白い話をしてくれる新たな勇者は現れないものか
911あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/22 19:47
( ・∀・) Zanoniタソ 煽りに負けるな!
912西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 19:49
若者は何とかしてその土地へ行ってみたいと思いましたが、両親が許してくれません。
でも若者が、行かせてもらえないなら死んだ方がましだと言って聞かないので、両親も仕方なく
許しました。

馬に乗って進むうち、日が暮れてきたのである村で宿をとりました。
若者は宿の主人に旅の目的を聞かれ、こう答えました。
「西南の方には冬もなければ夏もなく、食べたいものはなんでもある所があるそうですね。
これから、そこへ行くところです。」
「ご忠告いたしますが、行かない方がよかありませんか?とっても遠いですから。」
「遠いのがなんですか!」
913好爺:03/02/22 19:52
山奥で山の上から鹿がおりてくるのを庵の中で待っていた男がいた。
夕方から行って待っていると、その女房が片手に行灯を持って、杖を突きながらやってきた。
「今夜はことさら寒く、嵐になりそうなので、早く帰りましょう」と言った。
男は、なんで女房は此処まで来たのだろう。これは化け物ではないのか。
「お前は一体なにものなのだ。私をたぶらかそうとしているだろ。矢を一度受けてみろ」
と言うと、女房はこういい返した。
「貴方は、なにか憑いているいてそういうのですか、早く一緒に帰りましょう」
男は、妻が夜遅くに此処まで来た事などなかったと思って、大雁股を持って、急所をさけて
射通した。すると、彼女が持っていた行灯と一緒に彼女自身も消えてしまった。
男は「このような不思議なことか起きた夜には、ろくな事が起きないはずだ。家にかえろう」
と思って家に帰ってみると、家の門の所に血が多く流れていた。
これは、あやまってしまったかと肝を潰して、急いで寝室にいくと、女房は
「どうして、今夜は早く帰ってきたのですか」といって、不思議そうにしていた。
不思議に思って、血の後をつけていくと、飼っていた年をとった猫であった。
それからは猫は飼わなくなったという。
>911
いやそういうわけでなく、歯医者に行くのを忘れてて慌てて家を飛び出したんで、
話が途切れてしまっただけです。
ついでに図書館に行って、ネタ本いろいろ仕入れてきました。
915西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 20:06
明くる日泊まった宿でも、また同じ忠告を受け、最後に泊まった宿でも、また同じことを聞かれました。
「どちらに行かれるんですか?」

若者は言いました。
「西南にある、『冬もなければ夏もなく、食べたいものはなんでもある所』に行くんですよ。」
「お若い方はとかく物事をたやすくお考えじゃが・・・」
と宿の主人はいいました、
「ああ、あそこはとても遠くて、行くのは本当に大変ですよ!」
916西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 20:13
「どう大変なんですか?」
「ここから西南までの四百里は、人家というものがありません。
それに野宿でもしようものなら、たちまち化け物に食い殺されてしまいますよ!」

しかし、若者は考えました。
----もうこんなに遠くまでやってきたんだ。途中で帰ったのでは何にもならない・・・。

若者は、一日で四百里を駆け抜けることにしました。
917あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/22 20:15
>>908
自演を素直に認めるバカも珍しい。
918西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 20:25
明くる日の早朝、若者は馬に飛び乗り、西南に向けてまっしぐらに駆けていきました。
数十里を過ぎたころから、村らしいものは全く見えなくなり、大砂漠が広がるだけとなりました。

若者は、日暮れまでに駆け抜けられないのではないか・・・、と心配でしたが、
太陽が沈むころに、ひとつの村にたどり着きました。

村の大門の前には、一人の老人が座っており、若者に気づくと尋ねました。
「お前さんは、どこへ行きなさるだね?」
「『冬もなければ夏もなく、食べたいものはなんでもある所』に行くんですよ。」
919西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 20:52
「もう日が暮れたでな・・・」
老人は言いました、
「お前さんも、先には行けまい。ともあれ、わしんとこへ泊まりなされ。
この村には宿屋なんかないからのう。」
920西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 21:06
若者は、喜んでその申し出を受け入れました。

屋敷内に導かれて馬をつなぐと、老人は若者を部屋に招き入れ、酒や食べ物を食べさせました。
若者には初めての料理ばかりでしたが、とてもおいしいと思いました。

夜になると、非常に美しい小部屋に案内されて休みました。
敷物といい、掛け布団といい、なんとも言えない柔らかさでしたが、若者には何で織られたものか、
見当もつきませんでした。
921西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 21:14
明くる日の朝、馬に乗って老人に別れを告げようとすると、空から雨が、ザーと降ってきました。

すると老人は、
「雨ではとても出かけられますまい。もう二、三日、お泊まりなされ。」
と言ってくれました。
若者は、仕方なく泊まることにしました。

二日目も出発しようとすると、いきなり雨が降り出しました。
三日目も同じことが起こり、四日目もまた・・・
922西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 22:38
屋敷に滞在するうち、老人と若者はお互いの故郷のことなどを話し、次第に親しくなるにつれ
家族のことも話すようになりました。
老人は家族の話をしながら、こう切り出しました。
「わしの家に娘が一人います。もしお嫌でなければ、連れ添ってはもらえないですかな?」

若者はこれを聞くと、恥ずかしさから頭をたれました。
そしてとうとう顔を赤らめながら礼を言いました。
これで結婚は成立したわけです。

老人は言いました。
「明日は日が良いから、明日結婚するがよろしい。」
923西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/22 23:14
若者は何も言いませんでしたが、心の中には様々の思いがかけめぐっていました。
----一体、娘の器量はどうなんだろう?性格は?・・・まるで分からないのです。

明くる日の朝になると、数人の召使いが若者に式の着付けをさせ、花嫁の兄のお相伴で
朝御飯を食べました。
いつの間にか雨は止み、太陽が顔を出していろいろの花が開いています。
どこからか風にのっていい匂いが漂い、一帯が香ってきました。
924西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 01:09
昼になると、花嫁が手を引かれて現れ、一緒に式場で拝礼を行いました。
式の途中ちらっと花嫁を眺めると、顔かたちが比べるものがないほど美しいのを感じました。
二人は話しも合い、明くる日もまたその次の日も、いつも離れずにいました。

二人はずっとこのようにして暮らしました。
どれほど月日が経ったのか分かりませんが、ただ木の葉が徐々に青くなり、また黄色くなるのを見ました。
でも、何度それを繰り返したのか思い出せません。
925西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 01:15
それはいいとして、一日中何か食べたいと思うと、いつも目の前に食べ物がありました。
ただ心でちょっと思っただけで、すぐに誰かが運んでくれるのです。
若者は日が経つにつれ、少しうっとうしくなってきました。
彼の妻も時には隣家に遊びに行くようになりました。

ある日、屋敷をこっそり抜け出て外を散歩しているうち、若者は急に両親のことを思い出し、
故郷に帰りたくなりました。
926西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 01:19
屋敷に帰って妻にこのことを話すと、妻は反対しました。
「だめですわ。考えてもごらんなさい。こんなに遠くてどうして帰っていけますか。
どうしても帰りたいというのなら、お一人でいらっしゃい。あなたと一緒に行くことはできないわ。」
それを聞いて、若者はワッと泣き出しました。

彼女も困ってしまいました。
----いっそ一緒に行こうか。でも、父や兄に知れたらだめになるに決まってる。
「本当のことを言うと、ここは仙人が住むところなの。そして私たちは、俗人の世界に行くことは
禁じられているんです。もし行くなんて言ったら、父や兄に殺されてしまいますわ。
あなたはどうしても国に帰ろうとおっしゃるし、私もあなたと別れるのは耐えられません。
でも、一緒に行けるかも知れない方法が、一つだけあります。明日の朝、父に打ち明けてみてください。
そして、父がもし帰ることを許したら、私のところに来てください。」
翌朝、老人に家に帰りたいと打ち明けると、老人は若者が一人で帰ることを条件に承知しました。

若者が妻のところに行くと、彼女は一本の唐傘を渡しながらこう言いました。
「この傘を持ってらっしゃい。でも途中では、たとえ雨が降っても決してお開きにならないでね。
お宅へついたら傘を開いてください。そうすれば、私たちはまた合うことができますから。」
若者は屋敷を出るとひたすら歩き続けましたが、二日目に急に大雨が降ってきました。
辺りを見回しても、木一本ありません。
若者は、開けない傘なんてなんの意味があるんだ、と思いましたが、妻の言いつけを思い出し、
とうとう開かずにいました。

しばらく進むと、前から傘をさした男が歩いてきました。
その男は、若者が傘を肩に担いだまま、さそうともしないのを見て呟きました。
「このまぬけ小僧めは、傘があるのに肩に担いで開こうとはせず、びしょぬれになっておるわい!」
930西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 01:52
それもそうだと思った若者は、思わず傘を開いてしまいました。

と、その瞬間、彼の妻が傘の中から転がり出てきました。
同時に雨も止んでいました。
妻の顔は雪のように白く、全く血の気がありません。
妻を見た若者は、自分がしたことを悔いました。
決して傘を開くのではなかったと・・・。
931西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 02:12
急いで妻を助け起こすと、彼女は言いました。
「だめになってしまったわ!・・・どうして私の言ったことを聞かないのです。
あの男の言うことなら聞けたのに。・・・あの男は私の兄が化けたものだったのですよ!
あなたは兄の計略にのせられたのです。私の心臓には一本の釘が打ち込まれてしまいました。
明日の今ごろには死んでいますわ。・・・」
932西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 08:55
若者はここまで聞くと、ワッと大声で泣き出し、何も言えずただ両足をじたばたさせるばかりでした。

「でも諦めることはないわ。」
妻は続けて言いました。
「早く向こうの村まで行って、甕(かめ)と五百斤の乾いた薪を買ってきてください。
買ってきたら私を甕の中に入れ、火にかけてください。私が中でどんなに叫ぼうと、わめこうと、
決して開けて中をのぞいてはいけません。薪の火がすっかり燃えてしまえば、私の心臓に打たれた
釘は消えてしまいます。----そして二人は、また一緒になれるのです。」
933西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 09:12
若者は早速、妻に言われたとおり甕と薪を買ってきて、妻が甕に入ると薪に火をつけました。
しばらくすると、妻がありとあらゆる悲痛な声で泣いたりわめいたりするのが聞こえました。
その声を聞き続けるのは耐えきれない気がしましたが、妻の言ったことを思いだし、薪を燃やし続けました。

やがて村人が妻の声を聞きつけて集まりだし、周りを取り囲みました。
村人の一人が、彼に尋ねました。
「あなた一体何をしているのですか?」
「治療ですよ。」
若者は答えました。
934西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 09:19
「治療?・・・こんな治療がどこにありますか!」
周りを囲む人々からも、怒気が感じられました。
「皆さんお構いくださるな。これがいちばんいい方法なんですから。」
若者はきっぱり言いました。

若者が注意を聞かないので、村人は口々に彼を罵りました。
それを聞くうち、若者も弱気になってきました。
このとき一人の男が近寄ってきて、若者にビンタをくれて罵りました。
「この鬼畜生め!」
935メージロウ井上:03/02/23 09:26
>>934
う〜ん・・・人の世とは厳しいものよの〜・・・
936西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 09:47
この一撃で、若者の気持ちはぐらっと揺らいでしまいました。
----もう充分燃えたんじゃないだろうか?

若者は火を消して、甕を開きました。
開いた瞬間、妻は外に転げだしました。
彼女はどっと涙を流して言いました。
「駄目、駄目になったわ。一切がお終いだわ。私たち二人は、この世ではもう二度と一緒にはなれません。
二人が愛しあったことを忘れないでくださるのなら、私のためにお社(やしろ)を建ててください。
私、せめて神になりますわ。」
937西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 10:05
若者は泣きながら言いました。
「お社を建てるぐらいなんですか。」

「いいわ。」
妻は言葉をついで言いました。
「私を、この村の北にあるお宮の後ろに埋めてください。そしてその側にお社を建てるのです。
お社ができて一年経ったら、私の墓に一本の黄色い花が咲きます。そしたら墓の側で私を三度
呼んでください。私、あなたに会いに出て参りますわ。」

妻は言い終わると、すぐに死んでしまいました。
938西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 12:30
若者は妻に言われた通りお宮の後ろに妻を埋葬し、側にお社を建てました。
そして毎月一度は必ずお墓に行ってみましたが、いつになっても花らしいものは見あたりません。
時にはたまりかねて妻に呼びかけてみましたが、答えはなく、むなしいだけでした。

こうして若者は一年ほど墓に通い続けました。
ある日のこと、いつものように墓に行ってみると、なんと一本の黄色い花が咲いているではありませんか!
939西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 12:45
若者は急いで三度妻の名前を叫びました。
と、三度目の呼び声がまだ終わらぬうちに、妻は彼の目の前に立っていました。

それを見た若者は、飛ぶように側に寄り、妻を固く抱きしめました。
二人は一言も声を発することなくただ抱きしめあい、接吻し、涙は泉のように四つの目から溢れ出し、
やがて一つになりました。

二人はただこうして、いつまでも抱き合っていました。
が、時間は容赦なく過ぎていき、間もなく、たそがれが訪れました。
940西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 19:58
不意に妻が口を開きました。
「早くお家へお帰りなさい。年を取ったお母さんはあなたのために目を泣きつぶしていらっしゃいますよ!」
「よし行こう!二人で一緒に行こうよ。」
若者は妻の手を取りながら言いました。

妻は青ざめた顔をして黙っていましたが、やがて泣きながら言いました。
「運命はちゃんと決められています。二人は二度と一緒にはなれないのです。」
941西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/23 23:24
「そんなことがあるか!どうして一緒になれないんだ!」
「私はここで、花の神になったのです。よそに行くことはできません。」
「それなら僕もここで花の神になるよ。」

「そんなこといけませんわ。」
妻は真面目に心から言いました。
「人が会ったり別れたりすることは、元から決まっていることです。
あなたはお父さんやお母さんをお忘れになったのですか?
あなたは私のために、一年も出発を遅らせたのです。船の用意も、もうできています。」

そう言うと、
若者を堂内の魚甕の前まで連れて行き、一枚の葉を甕の中に浮かべて言いました。
「さあ、どうぞお乗り下さい。」
942西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/24 00:21
若者は、しばらく葉っぱを見つめたままでしたが、やがて途方に暮れて言いました。
「これはどうやって乗るのだろう。」
「試しに乗ってごらんなさい。」
と妻は言います。

若者は、思い切って片足を葉っぱに乗せました。
と、おお!!葉っぱは船になり、大きくなっていきます。
船が大きくなると水も沸き立ってきて、そのうち見渡す限りの大海原となりました。
943西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/24 21:21
若者は、岸の上に立っている妻に目をやりました。
妻は目に涙をいっぱいにため、つとめてにこやかに笑っていいました。
「早く行ってらっしゃいね!」

しかし若者は、妻の着物をつかんで離そうとはしませんでした。
そのとき、妻が船に息をフッ吹きかけました。
すると大風が巻き起こり、船は風に乗って矢のように進み、妻の姿はたちまち
見えなくなってしまいました。
944西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/24 22:59
若者は一人さめざめと船の中で泣いていました。
やがて船が岸に着いたような気がしましたが、若者は気にもとめず、ただ泣きつづけるばかりでした。

ちょうどそのとき、若者の両親も家の中で彼の名を呼びながら嘆いていました。
そして、門の外で誰かが泣きわめいている声が聞こえたような気がしました。
門を開くと、一人の男が門の敷居の上に座ってむせび泣いているのが見えました。

父親は驚いて尋ねました。
「あなたはどういう方じゃ?なぜここに座って泣き続けていらっしゃるのじゃ?」
945西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/25 00:14
若者は飛び上がるほど驚きました。
船の中にいるとばかり思っていたのに、家の門口に座っていようとは!
まるで夢を見ているようです。
門にも見覚えがある気がします。

彼は父親に尋ねました。
「ここはなんというところですか?」
父親が教えてやると、若者は初めてそこが自分の家だと覚りました。
そして目の前の老人の顔をしげしげと眺め、やっと分かりました。
----それがお父さんであることを。
946西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/25 00:26
「僕はあなたの子です!今ここへ帰ってきたのです!」
父親はあっけにとられていましたが、よくよく見てみると果たして我が子ではありませんか!
そして老いの涙をはらはらとこぼして言いました。
「早くいかねぇかい、早くおっかあに会いに行かねぇかい!」

そして若者を部屋の中にいる母親のところに引っぱって行きました。
「わしらの子供は帰ってきたのだ!出て行ってから十八年になるが、今ここに帰ってきたのだ!」
947西南へ一筋に (河北省望都県):03/02/25 00:26
母親は泣きながら言いました。
「お前はおっかさんを捨てて出ていきなすったが、おっかさんがどんなにお前を思っていたかを
知ってなすったかえ!お前が出て行ってから私の両眼はすっかり泣きつぶれてしもうたわいな!」

それからというもの、若者は毎朝起きると決まって母親の目を撫でさすりました。
と、間もなく彼女の目は元通り見えるようになりました。


  -- 終わり --
948好爺:03/02/25 10:44
『塩竈火焔の中より狐をばけるを身し事』―奇異雑談集より―

津の国兵庫の西に塩屋(神戸市垂水区塩屋町)という郷あり。庄内に塩屋が多かった。
冬の事であるが、男が一人で塩屋にて塩を焼いていた。塩竈の長さ五,六尺にして、両方に口があった。
両方に口があって、男は一方の口から火を焚いていた。臥しながら塩木を次々と火にくべていた。
夜が深くなって、若い女の声にて、塩屋の門の所にきて「火にあたらせてください」と言った。
見ると子供を抱いていた。男は「そちらの口へ行って火にあたってみなさい」と言った。
「ありがとうございます」と言って、火にあたった。
竈の下、火焔の中から見れば、狐が一匹の雁を持って、膝の上で撫でさすっていた。
不思議に思って、起きて竈の上から見ると、女が子供を膝に抱いていた。
又、竈の下から見ると狐がさっきのように見えた。さらに竈の上から見ると女であった。
「さては、狐が化けて来たな」と思って、竈の下の燠(おき)を柄振(えぶり:
竈の火をかき回す道具)をもって、静かに押しやり押しやりして「よくあたりなさい」といって
燠が積もった時、柄振の柄を長くもって、燠を一度にどんと突くと、驚きの声をあげて立った。
949好爺:03/02/25 10:44
男は「こら!」と言うと逃げていった。追って出て行くと、狐の声がして遥かに去って行った。
戻ってみると、雁を残していった。男は雁を拾って喜んで、むしろの下に置いた。
ようやく夜が明ければ、雁を持って我が家に帰って、さっきの事を話せば、家中でみんなが笑った。
亭主はこの雁を市に出して売ろうとして、腰袋に入れて、腰につけて行った。須磨の市まで行こうと
思ったが、道四、五丁行くと先に人も見えなくなった。暫くすると小男が一人、道端に立っていて
「どこへお出かけですか」と聞いた。「市へ雁を売りに行くのです」と答えたえると、
小男は「私は雁を買いに行くのです。丁度良いのでここで買わせてください」と言った。
「何処で売っても同じ事なので、売りましょう」と、袋から雁を出すと、
「ちょうど良い雁ですね。お代として五百文にて買いましょう」と行ったので、そのまま売った。
小男が五百文を懐から取り出して渡すのを受け取って、袋に入れて腰につけて帰った。
家に帰って「この辺で五百文で売って来た」と言うと妻は「良かった事ですね」と言った。
腰袋をとって、妻に渡すとそれを受け取って「様子が変ですよ」と言って、袋を振り出すと
馬の骨五本、銭の長さ分の大きさに切られたものが入っていて、銭は無かった。
亭主は驚いて「あの狐、また小男に化けて雁を取り返したな。くやしい」と腹が立って仕方が無かった。
950猫いらず:03/02/26 23:27
李客という人がいた。
これは通称であって、本名を誰も知らなかった。
いつも蓑(みの)を着て笠をかぶり、腰に袋を下げて街中で猫いらずを売っていた。
木彫りの鼠を看板代わりにしており、猫いらずを買う人があれば、必ず、
「これは鼠を殺すだけでなく、人の万病を治すこともできますぞ。飯に混ぜて食べさせれば、病などいちころじゃ」
と言っていた。
しかし、猫いらずをあえて口にしようとする人はほとんどいなかった。
951猫いらず:03/02/26 23:29
猫いらずを買った客の中に張賛という本屋の主人がいた。
父親は七十をとうに越え、ながらく中風を患って寝たきりであった。

ある日、鼠に大事な売り物の書籍を数巻かじられた。
腹を立てた張賛は李客から買った猫いらずを、鼠の通りそうなところにまいておいた。
その夜、張賛はおそくまで起きていて、猫いらずの効能を確かめることにした。
ほの暗い灯火の下、大きな鼠が数匹、巣穴から這い出てきた。
通り道に猫いらずがまいてあるのを見ると、えさと思い込んで群がって食べ始めた。
「ざまあ見ろ」
張賛がそう言い捨てて眠ろうとしたその時、驚くべきことが起きた。
鼠達の背中に羽が生えたかと思うと、そのまま外へ飛んで行ってしまったのである。
952猫いらず:03/02/26 23:30
思いがけない出来事に張賛は仰天した。
翌日、張賛は李客にこのことを話した。
すると、李客は、
「それはきっと鼠じゃなかったんでしょう。でたらめを言いなさんな」
と取り合わなかった。

張賛がさらに猫いらずを買い求めようとすると、
「もう品切れでしてな」
と言って、店じまいをしてしまった。

張賛が仕方なく父に鼠の残した猫いらずを服用させてみたところ、手足がしゃんとした。
今まで寝たきりだった父は履(くつ)をつっかけて元通り歩けるようになったのである。

その後、李客の姿を見かけた者はいないという。
953あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/27 00:01
954トンガの昔話:03/02/27 00:27
955あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/01 01:44
次スレは?
956好爺:03/03/01 02:15
『座頭、変化の物と頭はり合うの事』―曾呂利物語より―

奥州の戸地の里に高隆寺と云う山寺があった。この寺へ座頭が常に出入していたが、いつの事から
行方知れずになるようになった。その後、二、三人の座頭が立ち寄ったが同じ様になってしまった。
四、五日ほど経って行方知れずになることから、その後は座頭がくる事はなくなった。
ある日、“りうばい”と云う座頭がこの事を聞きつけ、近くの人に逢って、
「私をその寺に案内してください」と言った。
「いやいや、この寺にはしかじかの事があってからは、座頭が行かない所なのでやめなさい」と言ったが
さらに頼んできたので、彼の思うようにしてあげた、
このりうばい云う人は背丈が高く、筋肉が太く、力は四、五人分はあった。兜の形をした石の鉢を持ち、
大斧を柄を短くして、琵琶箱に入れて、件の人に案内してもらって、高隆寺へ行って、住職にその話を
云うと、住職はたいそう喜んで、すぐに対面して
「この寺は昔からいかなるいわれか知らないが、座頭が来ては帰ることは無いと言い伝えられている。
それは、昔の事で、今はそのような事はありません。りうばい殿は安心していてください。
愚僧がいるからには何の問題もないであろう。久しく平家物語を聞いていない。一句お願いします」
と言った。「心得ました」といって平家を三句ほど唄うと、夜も更けて、案内してくれた人は帰っていった。
957好爺:03/03/01 02:16
…続き
りうばいは「話でも致しましょう」と言って、夜になっても物語などをしながら、寝はじめた。
住職は、あたりを囲ってしまって、「今夜は一緒に過ごすことになって、なにかして楽しみましょう。
お互いに頭を叩き合って遊びませんか」と言った。
「それは、面白そうですね。ではどちらから叩きますか」と暫く思案したが、住職は
「まず、愚僧を殴りなさい」と言った。「いや、それは恐れ多いので私から殴ってください」
すると「では、私から」と住職が拳を握っている間に彼は、石の鉢を兜のように持った。
「えいや」と言って殴ったが、兜越しではあったが、地に打ち倒されてしまった。
暫くは、目が定まらなかったが、ようやく気を取り直して
「されは、物凄い拳ですな。恐れながらも私も一度当ててみましょう」と言った。
「ならば、起きて待っていましょう」と言って起きてまっていた。座頭はつくづくと思った。
いやいや、この者はどう考ええも人間ではないであろう」たとえ何者であっても
このような化け物を生かしておいたらよくは無い。と思って、彼の大斧をそろりと持ち出し
「えいや」と叫んで、力いっぱい打ち据えて、ただ打ちに打って打ち殺した。
さて、夜が明けるまで待ち明かして、内より戸を叩いてみんなを呼べば、この寺の沙弥達が出てきて
これを見ると、小牛ほどの大きさの大猫であった。口は大きく裂けて、尾は数多く分かれて
恐るべき姿であった。以前の坊主をも食べて、猫が住職に化けていたのに違いなかった。
958銅鑼衛門:03/03/01 02:23
959ラッキーアイテム:03/03/01 17:18
960好爺:03/03/01 17:48
『見越し入道を見る事』―宿直草より―

これは、ある侍の語った話である。
私の若い頃、犬をつれて狩りに出たが、その夜は獲物に出遭う事がなかった。
一里ほど道を越えているのでもう帰ろうかと思って、山の頂に休んでいると、吹く風も乱れが
激しく、天の川も横たわって、昴星をかすく露もなかった。落ち葉にて道はふさがれ、蜘蛛も
その糸を乱していた。この山、西から東に峰が続いていたが、北に向って立つと前の渓谷よりも
なんと大きな物が立ち上がっていた。その形はぼんやりとして見分けがつかなかったが、
立ち上がってしまうとそれが、化け物である事が分かった。しばらくして身構えて座っていると
向うの山の頂よりもその背は高かった。星の光に透かして見ると大きな坊主であった。
さては、古狸などが化けた、見越し入道という者であろうと思った。
961好爺:03/03/01 17:48
…続き
はばかりながら、射止めてみようと、弓を取り直して素引きして、猪の目を透かし彫りを
施した雁股のの矢を取って、彼の坊主の面を目も離さずに睨んでいると、ひたすらに高くなり
後には見上げるようになって、結った髪の襟に着くまでになった。
もはや、充分だと思って弓を引き絞って狙ってみたが、あまりに大きくて矢の狙いを定める事が
出来ずに、思案している間に、ふっと消えて、その形はなくなった。この時に今まで見えていた
星の影も無くなり、俄かに真っ暗くなり、前後も分からなくなった。何の害もなかったが、
まるっきり道も見えず、目指すものも何も無かった。行くべき方法がわからずに、悔しく思ったが
どうしようもなかった。連れていた犬を呼ぶと、犬の首に鉢巻を結わえ、自分の帯の端に
これをつけて、行っているのか、帰っているのかその方向もわからなかったが、犬にまかせて帰ると
ひとつの家が見えた。その時、安心したら暗さも止んでもとの星月夜となった。
見つけた家は自分の家であった。その後は友と一緒出て行くことにして一人ではでなくなった。
962閲微草堂筆記:03/03/01 19:43
胡宮山という年老いた医者がいた。
いかなる人物なのか、その経歴は詳らかではなかった。
一説によると本姓は金といい、呉三桂配下の間諜であったが、三桂が敗れた後に名を
変えて市井に隠れた者だとも言われていた。

しかし、真相は誰も知らなかった。
963閲微草堂筆記:03/03/01 19:45
胡宮山はすでに八十歳余りになっていたが、その身ごなしは猿のように敏捷で、武術の腕前は絶妙であった。
その技量を証明するような事件があった。

胡宮山の乗った舟が夜、盗賊の襲撃を受けた。
この時、胡宮山は完全に丸腰で手許には煙管が一本あるだけであった。

彼は慌てず、驚かず、煙管を風のような素早さで振るった。
煙管は七、八人もいた賊の鼻の穴を直撃し、またたく間になぎ倒した。
964閲微草堂筆記:03/03/01 19:46
胡宮山はこれほどの強者でありながら、幽鬼を異常なほど恐がった。
その恐がりようは、夜、一人で眠ることができないほどであった。
965閲微草堂筆記:03/03/01 19:47
本人の言によると、少年の頃、夜道で僵尸(キョンシー)と出くわした。
渾身の力をこめて僵尸を殴りつけたのだが、まるで木石を殴るようでびくともしない。
そうこうする内に僵尸に捕まえられそうになったが、幸い、相手の隙をついて樹上に逃げることができた。
胡宮山をとり逃がした僵尸は悔しがって、歯がみしながら樹の周りをグルグル回っていた。
やがて夜が明け、僵尸は樹にしがみついたまま動かなくなった。
966閲微草堂筆記:03/03/01 19:47
人が行き交い始めてから、樹からようやく降りることができた。
僵尸は全身白い毛に覆われ、目は赤く爛々と光っていた。
何より恐ろしいのは鉤(かぎ)のように曲がった指と、唇の間からは刀のように伸びた鋭い牙であった。
豪胆な胡宮山でさえも恐ろしさのあまり卒倒しそうになったそうである。
967閲微草堂筆記:03/03/01 19:48
またある時、山間の旅籠に泊まった。
真夜中、布団の中でモゾモゾと何か動く気配がする。
鼠か蛇でも入り込んだのかもしれないと思っていると、突然その動きが波打つように大きくなり、枕元に何かが飛び出してきた。

それは素っ裸の女であった。
968閲微草堂筆記:03/03/01 19:49
女は両手で胡宮山の体をきつく抱きしめた。
その力強いことまるで縄で締め上げられるようである。
女は締め付けるだけでなく、こちらの唇に己が唇を押し付けて息を吹き込んできた。
生臭さが鼻をつき、胡宮山は気が遠くなった。
969閲微草堂筆記:03/03/01 19:49
翌朝、胡宮山は意識を失った状態で発見された。
手当てのおかげで息を吹き返すことができた。

このようなことがあって以来、胡宮山はすっかり肝がつぶれてしまい、日没後は風の音や月の影にも脅えるようになった。
970あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/02 01:37
あげ
971
972好爺:03/03/03 20:18
『丹波の国さいき村に、生きながら鬼になりし人の事』―諸国百物語より―

丹波の国さいき村という所に貧しい者がいた。親孝行で、ある時に薪を取りに山に行った。
その時に喉をが乾いて、谷に下りて水を飲もうと、水中を見ると、大きな牛の横たわったような
物があった。不思議に思って、よくよく見ると、年々、山から流れ落ちて固まった漆であった。
これは、ひとえに天の与えたものだと思って、この漆を取りに通って、すぐに京へ持っていき
売り出した。暫くすると、大金持ちになった。
この隣に大悪性な男がいて、この話を伝え聞いて、どうしても彼の者がこの場所に来なくなり
自分一人で取ってしまおうとくわだてて、大きな馬面(竜に似た仮面)をかぶり、しやぐま
(赤く染めた熊の毛で武士の兜の装備)を着て、鬼の姿となって、水の底に入って、彼の者を
待っていた。いつものように、彼の者が漆を取りに来て見ると、水の底に鬼がいた。
恐ろしくなって逃げてしまった。この悪性者は「やりおおせたぞ」と喜んで、水の中から
出ようとしたが、動く事が出来なくなってしまった。そのなりのまま死んでしまったという。
973あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/03 23:18
>972
このパターンって、結構おおいですよね。
絵とか語りによって、かなり怖かったりするんだけど、
マンガ日本昔話で見てみたい。
974あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/03 23:56
とゆうかこれはマンガ日本昔話でありますた。
975あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/03 23:59
やっぱり
976あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/04 00:05
ロング ロング アゴウ

アント二オ猪木がいました。
977あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/04 00:06
たしか記憶では鬼のところが龍だったような・・・
それにつけても全話収録のDVDがほすぃー(泣
978あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/04 00:33
確かに欲しい。
キッズチャンネルでやってくれないものか
979好爺:03/03/04 08:08
『ばけ物に骨を抜かれし人の事』―諸国百物語より―

京都の七条河原の墓所に化け物がでるとの言伝えを聞いた若者達が賭けをして、その中の一人が
その墓所に夜半時分に出かけ、杭を打って、そこに紙を貼って来る事になった。
そこに出向くと、年の頃は八十歳ばかりの老人が、その男目がけて追いかけてくる。
その姿は、白髪だらけの髪をして、その背丈は、八尺(2.4m)ではあるが、
顔は夕顔のように白くやつれ、手のひらに眼があって、前歯が二つ牙のように剥き出していた。
男は肝を冷やし、この辺りの近くの寺に逃げ込むと、御僧に助けてくだされと頼むと
僧は、長持を開け、ここに隠しておいた。すると、その化け物が追いかけてきて、あたりを見渡すと
帰ろうとしたが、その長持のそばに行くと、犬の骨をかじり食べる物音がし、呻き声も聞こえた。
僧もあまりの恐ろしさに、しゃがんで怯えていたが、やがて化け物は帰っていった。
ならばと、長持から出してやろうと蓋を開けて見ると、先ほどの男は骨を抜かれ、皮だけになっていた。
980あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/04 23:01
>977
全話収録のDVDってないんだっけ?
981あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/04 23:33
とりあえず前スレだけでも読みたいな
982好爺:03/03/05 10:43
『水の精が人の顔をなでる話』―今昔物語より―

冷泉院のお住まいにになったところは、二条からは北、西の洞院からは西、大炊の御門からは南
油の小路からは二町ほど東に当たっていた。院がお亡くなりになった後には、その冷泉院の小路
は一般に開放されたので、北の町は人家に鳴り、南の町には池などが少しばかり残っていて、
池のほとりにも人が住んでいた。
夏のある日のこと、そこに住む人が涼しい西側の縁側出寝ていた。すると、背の高さ三尺ほどの
小さな老人がどこからともなく現われ、寝ている人の顔を撫でた。ぎょっとなったけれども、
恐ろしいので知らぬ顔で寝たふりをしていると、老人はそろそろとその場から遠ざかった。
星明りに後姿を見ていると、池のほとりまで行ってかき消すように消え失せた。
その池は、池さらいもをしたこともないので、浮草や菖蒲などがびっしりと繁り、見るからに
気味が悪い。そこでこれはてっきり池に住む魔物でもあろうかと、恐ろしく思った。
その後も毎晩のように現われては、顔を撫でるので、聞いた人は誰しも顫えあがった。
そこに腕自慢の男がいて
「人の顔を撫でるその怪しい奴は、俺がきっと捕まえてやる」と広言してただ一人、縄を持って
その縁側に、縄を持ってその縁側に横になった。
983好爺:03/03/05 10:43
…続き
宵のうちはいっこうに現われないので、夜中過ぎてから出るのだろう、と思ううち、待ち
くたびれて少しうとうとした。と不意に何やら冷たいものが顔に触った。たと眠っていても
心に覚悟を決めて待っていたゆえ、びっくりするのと同時に跳ね起きて掴まえた。
縄でぐるぐる巻きににすると、欄干にくくりつけた。
そこで人を呼んだから、物見高いのが大勢集まって灯を点してみると、背の高さ三尺ばかりの
小さな老人が、浅葱の上下を着て、死んだようになって縛られている。目ばかりしょぼしょぼ
させている。人が何を聞いても返事をしない、しばらくしてから気がついたように少し笑い
左右をみまわし、わびしげな細い声で、
「盥に水を入れてくれませんか」と言った。
そこで、大きな盥に水を入れ、その前に置いてやると、老人は頸を延ばして、盥に写った影を見ながら
「自分は水の精である」と言うや、ざんぶりと水の音がした。と思う間に、その姿が見えなくなった。
盥の水が増えて、縁からこぼれた。縛った縄は結び目があるままでその水の上に浮いている。
老人は水になって溶けてしまったのである。見ている人は皆びっくり、その盥の水をこぼさないように
担いで行って、池の中に流した。そののちは老人が現われて人の顔を撫でることもなくなった。
これは確かに、水の精が人に化けたものだと人々が噂し合った、という話である。
984好爺:03/03/05 10:51
まんが日本昔話の全資料集は↓にあります。全放送作品が載ってます。
http://home.catv.ne.jp/dd/miyoshi/mks-4.html
985あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/05 23:31
>>984
thxです。
アイヌの話です。

パナンペがいた。ペナンペもいた。
ある日、海辺に出たパナンペは皮袋をみつけた。
「こりゃいい。」さっそくとろうとすると手にくっついてしまう。もう一方の手で
とろうとするとその手にもくっつく。右足でとろうとすれば右足に、
左足で取ろうとすれば左足にくっついてどうしようもない。
パナンペがもがいていると、鬼が現れた。
「ほう、こんなりっぱな人間がとれたぞ。」鬼はパナンペを袋からはずし、縛り上げて
鬼の家に運び込んだ。
「晩には汁にして食うからな。よっく見張っているんだぞ。」
鬼は子供たちにそういうとまた食い物探しに山へ駆けて行ってしまった。

いろりの上につるされたパナンペは鬼の子たちに話し掛ける。
「おまえたち、弓矢が欲しいだろう。縄をほどいてくれたら作ってやれるんだがなあ。
それを聞いた鬼の子たちは喜んでパナンペの縄を解いた。
「弓矢を作る前に、親父の宝物を見せてくれ。」
鬼の子たちは鬼の宝物、皮の船、刀、黒と白の糸玉をもってきた。
「よし、背にあった弓矢を作ってやる。みんなならべ。」
一列に並んだ鬼の子たち。パナンペは宝の刀でさあっとなで斬りにした。
鬼の子たちの首が転がった。
パナンペは鬼の子を切り刻んで鍋一杯に汁を作り、自分はいろりのおき火に化けて
様子をうかがっていた。やがて鬼が帰ってきた。
「やあ、腹がへったわい。」見ると鍋に汁がある。これはいいと食うわ食うわ、
とうとう鍋を空にして底までなめた。
ところがそのひとなめでみるみる険しい顔になり、
「や、俺の味がする、俺の味がする。どういうこった。」
みると子供は1人もおらず、宝物も空っぽだ。
「うーむ、パナンペめ、やりおったな。」鬼はそういうとおき火の数をかぞえだした。
見つかる!もうすぐかぞえ終わるというところでパナンぺは灰に化けた。
ところが鬼は灰の数をかぞえだした。パナンペはあわてて壁の茅の1本に化けた。
こんどは鬼は壁の茅をかぞえだしたからパナンペは正体をあらわして大川まで逃げだした。
宝の皮の船で逃げるパナンペを鬼は泳いで追っかけてくる。パナンペは宝の糸玉を取り出して
黒いのを鬼のほうへ、白いのを前のほうへ投げた。
すると、鬼の目の前には真っ黒な雲がもくもくと湧いてきたではないか。
一方、パナンペの目の前はひろびろと明るかったので船はパナンペの家にすぐに着いた。
鬼は真っ暗な中を西も東もわからず、泳ぎつづけてくたばってしまった。

さて、パナンペは宝の船で漁に出て宝の刀で魚や鯨をしとめ、毎日たらふく食っていた。
その様子を見てうらやましくなった隣のペナンペはわけを聞きに来た。
パナンペが詳しく教えてやると、
ペナンペは「そんなことなら教えてもらわなくともできるやあい。」と
悪態をついて家の入り口をうんことしっこで汚して逃げていった。

ペナンペは海辺へ行くと皮袋を見つけた。手をとられ、足を取られてもがいていると
鬼がやってきてペナンペを連れて行った。
パナンペの言ったとおり、やったとおり。おき火に化け、灰に化け、茅に化けて
逃げ出した。皮の船に乗ったが、黒の糸玉を前に、白の糸玉を後ろに投げてしまったので
ペナンペは真っ暗で何も見えず、鬼は明るくてよく見えたからあっというまにペナンペは
食われてしまったとさ。
世界中のペナンペたちよ、パナンペにはさからうな。ペナンペはそういったとさ。

990ペナンペ:03/03/06 01:24
書いてみましたが、ちょっと場違い?な雰囲気みたいですね。
まあ、スレ埋めということでご容赦ください。
991好爺:03/03/06 02:50
『狐をおどしてやがて仇をなす事』―曾呂利物語より―

ある山伏が大峰より駆け出て、ある野を通り抜ける時に、狐が昼寝をしているのを見つけた。
そこで、そばに立ち寄って耳のそばで法螺貝をしたたかに吹いた。狐は肝を潰して、行方が
分からないかのように逃げ去った。
その後山伏は、なおも道を急いだが、まだ羊の刻(午後2時頃)ばかりだと思っていたのに
空はかき曇り、日が暮れてしまた。不思議に思って道を急いだが、野原の真ん中で泊まるべき
宿もなかった。ある墓地についたので火葬場の天井に上がって眠った。
その時に何処ともなくかすかに光が見えた。次第に近づいてきて、よく見るとその墓地への
葬式の行列だった。おおよそ、二三百人も有るかと思うほどの行列で、その様は美しく、
引導などが過ぎてやがて死骸に火をかけ、各々帰っていった。
992好爺:03/03/06 02:50
…続き
山伏は、折りしもこのような時に来た者だと思っている頃に漸く焼けてきた時に
死人が火の中から身震いして飛び出してきて、あたりを見わたすと山伏を見つけて
「誰か分かりませんがそこにいらっしゃる方。死後の道を一人で行くのはおぼつかない
ので私と一緒に行きましょう」と山伏に飛びかかった。山伏はそのまま気を失った。
やや、暫くして漸く気を取り直すとまだ昼の七ツ時分(午後4時頃)にて、しかも
墓地すらなかった。さては、法螺貝に驚いた狐の仕返しと思った。
993好爺:03/03/06 10:53
『万吉太夫、化け物の師匠になる事』―諸国百物語より―

京上立売に万吉太夫と云う申楽がいたが、能が下手であったため、身代は衰えて、大阪に下った。
枚方の出茶屋で茶をのんで休んでいるうちに日もそろそろ暮れてきたので、
「此処に一晩泊めては下さいませんか」というと、茶屋が言うには
「別に構いませんが、此処には夜な夜な化け物が来て、人を取ってしまうというので私たちも
此処には泊まりません」と語った。
万吉はそれを聞いて「それでも、構いませんよ」と言って、その夜はそこに泊まった。
案の定、夜半頃、川向いより人の渡ってくる音がした。見れば、背丈が七尺ゆたかな坊主であった。
994好爺:03/03/06 10:54
…続き
万吉はこれを見てやがて声をかけ
「いやいや、お前の化け方は良くはないな。まだ未熟者だな」というと、坊主は聞いてきて
「その方はいかなる方なれば、左様に云われるか」と言った。
万吉はそれを聞いて「私は京の化け物であるが、此処に化け物が住んでいると聞いて、逢って見て
上手か下手か試してみて、上手であったら師匠になってもらおう。下手ならば弟子にしてしまおう
と思って此処に泊まっていた」と言った。坊主は
「さらば、その方の化け方の手際を見せてくれ」と言った。万吉は
「心得た」と言って、つづらより能の装束を取り出して、鬼になって見せれば、坊主は驚いて
「さてさて上手だな。女に化けられよ」と望んだ。
「心得た」といって、又、女になった。坊主が云うには
「驚くほど上手かな。今から後は、師匠と頼み申す。我は川向いの榎の木の下に住むきのこです。
数年この所に住んで人を悩ませていました」と語った。
995好爺:03/03/06 10:55
…続き
万吉はそれを聞いて「その方は何が禁物だ」といった。
「私は三年物の味噌の煎じ汁が禁物です」といった。
「あなたの方は」と聞いてきたので、万吉は
「私は大きな鯛の浜焼きが禁物で、これを食べるとそのまま命が終ってしまう」とお互いに語って
いるうちに、夜はほのぼのと明けてきた。坊主も暇乞いして帰った。
万吉太夫は枚方、高槻あたりの人に語り聞かせると、みんな申し合わせて、太夫の言うように
三年者の糠味噌を煎じて、彼のきのこにかけると、たちまちじみじみとなって、消えていった。
その後は化け物は出て来なくなったという。
996好爺:03/03/06 11:18
『京東洞院、かたわ車の事』

京東洞院通りに、むかし方輪車という化け物があった。夜な夜な下より上へ(南から北へ)
のぼると言われた。日暮れになるとみな人は恐れて往来する事はなかった。
ある人の女房はこれを見たいと思って、ある夜格子の内より伺っていると、
案のごとく、夜半過ぎのころ、下より方輪車の音がしたのを見ると、牛もなく人もいないのに
車の輪ひとつが回ってくるのを見ると、人の股の引き裂かれた物を提げていた。
彼の女房、驚いて恐れおののけば、彼の車、人のように物を云った。
「いかにそこにいる女房よ。我を見るよりは、内に入ってお前の子供を見よ」と言った。
女房は恐ろしく思って、内にかけ入れば、三つになる子供が型から股まで引き裂かれて
片股は、何処へ行ったものか見えなくなっていた。
女房は嘆き悲しんだがもとにはもどらなかった。
彼の車にかかっていた股は、その子の物であったという。
女の身にてあまりに物を見ようとした為のことであった。
997好爺:03/03/06 11:52
『熊野にて百姓、我が女房を変化にとられし事』―諸国百物語より―

熊野の片隅に住む百姓、年貢を払うことが出来ずに、妻子を引き連れて行き先も決めずに
土地を捨てて逃げ出した。暫くして道に行き暮れ、とある堂の中に一夜を明かしていると
何処からともなく女が一人きた。
「あなた方は、この所に何処からこられましたか」と言った。
百姓も道連れが出来たと思い、嬉しく感じて
「私はこのあたりの者ですが、このような様子にて立ち退く事にしました」というと、
かの女
「しからば此処に住んで、木の葉などを木の葉などを拾って焚き火などしてもらえますか」
と言うと、百姓は嬉しくなって木の葉を拾いに入った。その後に百姓の女房をかの女が
引きさらっていった。百姓が立ち返ってみると、女房は見えなかった。
998好爺:03/03/06 11:54
…続き
山の上に女房の泣き叫ぶ声が聞こえたので、さては、変化の物がさっきの女に化けて
我が女房を掴んで行ったと思って、声をたよりにかなたこなたと尋ねたが、山深くて
尋ねあてることができなかった。とかくする間に、その夜もほのぼのと明けてきた。
いよいよ、ここかと尋ねてみると、二丈ばかりの高い杉の木の枝に女房を二つに
引き裂いてかけ置いていた。百姓はこれをみて嘆き悲しんだ。そこへ男が一人来た。
「その方は何を嘆いているのだ」と問いかけたため、くだんの様子を物語ると
「さては、不憫な事であるな。そのほうが差している大小を、我にくれれば、死骸を
木から下ろしてやろう」と言った。
999好爺:03/03/06 11:55
…続き
百章は喜んで刀ばかりをわたして
「脇差はわたせません」と言った。
「さらば、下ろしてはやれぬ」といって、木の上へつるつると登り、百姓の女房を引き裂き
食らいつつ、からからと打ち笑い
「脇差をくれたならば、ここまではしなかったものを」と言って虚空に消えて見えなくなった。
百章はあまりの不思議さに、あたりの人に尋ねると
「この堂は女人結界のてらであるので、このような事もなるのだろう」と言った。
百姓が差していた脇差は、三条小鍛治が打った銘の入った名刀であったという。
1000あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/06 11:55
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