ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。
お約束
■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、
スレも華やぎます。
前スレ、関連サイト、お約束詳細などは>2-7のあたりにありますので
ご覧ください。特に初心者さんは熟読のこと!
◆作品UPについてのお約束詳細(よく読んだ上で参加のこと!)
・原作者及び出版元とは全く関係ありません。
・名前欄になるべくカップリングを書いてください(ネタばれになる場合を除く)。
・名前欄にタイトルと通しナンバーを書き、最初のレスに「>○○(全て半角文字)」
という形で前作へのリンクを貼っていただけると助かります。
・リレー小説で次の人に連載をバトンタッチしたい場合は、その旨を明記
して頂けると次の人が続けやすくなります。
・苦手な方もいるので、性的内容を含むものは「18禁」又は「R」と明記を。
・作品の大量UPは大歓迎です!
・作品UPが重なってしまうのを気にされる人は、UP直前に更新ボタンを
押して、他の作品がUP中でないか確かめるのがいいかと思います。
・作品UPが重なってしまった場合は、先の書き込みを優先でお願いします。
これでokですか?
1です。遅くなりましたがまゆこスレに
テンプレ作ってくださった方々さんくすです
>1
乙〜!
またまたまた〜りとできますように・・・
>1
乙です!
前スレの感想を
>有閑探偵社
ずっと待ってました!
ミステリー好きなので、謎が謎呼ぶ展開にワクワクしてます
鼻の下を伸ばした清四郎を見てみたい(w
>可憐さんにはかなわない
どこまで本気なのかよく分からない美童が、らしくってイイ!
美&野のコンビはとっても好きなので、カップルじゃなくても萌え〜です
前スレで出てた有閑キャッツアイの続き。
美×悠も悪くない気がする。
悠理に投げ飛ばされて、危険な恋に目覚める美童・・・w
魅録と野梨子の知恵比べというのも見てみたいなー
清野じゃなくて、魅野が知恵比べってのが
新鮮でいいかも。読んでみたい!
美×悠だと、悠理に惚れた美童がラブモードで
追っかけて、悠理が激しくウザがりそうで楽しいw
「ボクのハートは君に盗まれたんだよっ」
「気持ちわりぃこと言うなーー!!」
>1 スレ立て乙でした〜
>12
>「ボクのハートは君に盗まれたんだよっ」
>「気持ちわりぃこと言うなーー!!」
これにワロタ 絵ヅラが浮かんでくるよw
魅×野知恵比べもいいけど
魅録と悠理がバイクでおっかけっことか、そういうシチュも面白そうv
せっかくなんで(?)、清可の組み合わせも考えてみました。
清四郎につかまっちゃった可憐。色仕掛けするも効果なし。
「僕にその手は通用しませんよ」
「――ひょっとして…あんた、ホモなの?」
「なっなにを!…低俗な盗人は考えも低俗なようですね!」
「隠したってムダよ! ホモなんでしょ!?」
「違うッ!!!」
魅×野知恵比べも考えたけど浮かばなかった。無念。
>14
11でつ。
同じ知恵比べでも、清×野と魅×野ではカナーリ違うだろうなー
というところまでは妄想したんだけど、私もどう違うかまでは
思い浮かばなかったんだよね。
うーん、うーん、清×野より人情味ある感じ・・・?
(これじゃ、清四郎が人でなしみたいだ)
魅×野知恵比べ。気付いたら妄想菌が働いてなんだか浮かんでしまいますた。
清VS野の頭脳戦の末、野の勝利で三人はうまいこと逃げ出すんだけど、
理詰めではなく経験則で単独行動した魅録が後始末してた野梨子と対峙。
でもちょっとした心変わりで魅録は逃がしてあげることにする。
「何か企んでますわね?」
「別になんも…人の好意は素直に受けるもんだぜ?」
「信じられません!…警察の言うことなんか!!」
「おーおー嫌われてんなぁ。別にいいけどさ。じゃあな」
あっけらかんと立ち去る魅録を呆然と見送る野梨子。ふと我に返って
「…お礼を言うべきだったのかしら」
ここまで書いて、ふと野梨子は男嫌いかつ警察嫌いなんてどうかなーと
思った。嫌いというか、深ーい恨みがあって、それも盗みの働く理由とか。
でも、警察らしくない魅録と出会ってちょっと心引かれたりもして悩んじゃったり。
うおー妄想菌とまらん…
>1さんスレ建て乙です(・∀・)つ~~旦茶でもどーぞ!
>有閑キャッツアイ編
悠理にはタキシードを着て、野梨子や可憐をパーティにエスコートしてほしいな。
あと、本家キャッツアイのように三人娘の誰かが記憶喪失になったりしたら面白そう。
>3と>4の間に、このテンプレが抜けてるYO
◆その他のお約束詳細
・無用な議論を避けるため、萌えないカップリング話であっても、
それを批判するなどの妄想意欲に水を差す発言は控えましょう。
・作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加
しやすいように、なるべく名無しで(作家であることが分からない
ような書き方で)お願いします。
・このスレに対する要望は、できるだけこのスレに書くようにお願いします。
・あとは常識的マナーの範囲で、萌え話・小ネタ発表・雑談など
自由にお使いください。
・950を踏んだ人は新スレを立ててください(450KBを越えそうな場合は
950より前に)。
他スレに迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。
>18
1です。
思いきり抜けてましたね…ごめんなさい!(T_T)
補足ありがとうございました
有閑キャッツアイ
清四郎は最初は頭脳専門であまり強くなさそうに見えるって
どうだろう
野暮なスーツ、メガネ、手帳とか持ってて
悠理「あのメガネ弱っちそうだからあいつのいる扉から逃げるぞ」
んで実際清四郎を突破しようとして悠理がとび蹴りすると、
さっと交わされて足首つかまれてしまったり
清四郎「中々素敵な蹴りですね、お嬢さん」
悠理「げっ。(つ、強い…)」
足首持って吊るされる悠理。
清四郎「おーい、一匹つかまえましたよ!」
そこへチャイナドレス(^^)姿の可憐が現れ
色仕掛けで清四郎を落とすとか
>20
足首捕まえられても、悠理には反撃に出て欲しいなぁ〜。
悠理なら、上半身起こすぐらいの瞬発力ありそうだし(w
可憐お手製のケーキはお世辞ではなく美味しかった。
チョコレート色をしたケーキを割ると中から幾重にも重なった複雑な色の
層が現れる。赤や緑のその色は地のチョコレートと混じり合い、浮き立つ
ことなく、しっとりと控えめに存在を主張している。
ウイーンの有名菓子店のケーキを参考に作ったのだと言う。
口に入れると想像よりかなり甘い。
だが苦めに入れた珈琲がその甘味を中和しつつ引き立てていた。
苦い珈琲には甘い菓子が合う。
可憐が二杯目の珈琲を入れようとするのを制して立ち上がる。
「もう帰るの? ゆっくりしてけば」
「遅くなりますし、お母さんが帰る前に失礼しますよ。
娘が男と二人きりじゃ心配されますからね」
「ママは今日パーティーで遅くなるから安心していいわよ」
ぎくっとして清四郎は可憐を見る。
計算づくの可憐が意味ありげな笑みを浮かべている。
可憐は制服からフェミニンなワンピースに着替えていた。
やさしい服のラインは彼女の体につきすぎず離れずしている。
誘う瞳が清四郎を見ている。
又やられた。最初からその魂胆だったな。
「帰りますよ、もう用はすみましたし」
あせって清四郎はカバンを掴む。その手をむんずと可憐がつかまえる。
「まだ『用』はすんでないでしょ」
可憐は清四郎を抱きつくとソファに押し倒した。
「い、いやいや、可憐。ちょ、ちょっと待て」
清四郎の顔が発火したように赤くなった。
「そんなことしたら、それが目的で来たみたいじゃないですか」
「それが目的でしょ」
「ち、違いますよ。可憐はそんな男が好きですか?」
「好きになってほしいの?」
「あのですね」
清四郎はくるっと向きを変えて可憐の上になる。
「僕達はつきあっているわけじゃない」
「そうね。それで?」
「だから、こんなことはすべきではない」
可憐が清四郎の首に手を回し自分の顔に彼の顔を引き寄せようとする。
「こんなことってキスしたりとか?」
「そう、キスしたり…しません」
やっとのことで彼女の腕を振りほどいて立ち上がる。
「ちょっとお。女に恥かかさないでよね」
「僕が自制心の強い男でよかったですね。普通の男だったら我慢できない
と思いますよ」
コートに手を入れる。可憐がふくれ面でつぶやく。
「意気地なし」
「意気地なしで結構です。遊びなら他の男でやってください」
清四郎は居間のドアの向こうに消えた。
そのドアにクッションが飛んで来て当たる。
「馬鹿!」
玄関のドアが閉まる音がした。
可憐はしばらくふてくされていたが、もう一杯珈琲を入れようと立ち上がる。
くそ。あの堅物め。今どき、つきあってなくてもキス位するわよ。
肩透かしされたことがひどく腹ただしかった。
この可憐さんが自ら誘ってるのに、あの男はお堅いにも程がある。
もう来るな! 塩撒いてやる!
キッチンの塩を入れ物ごと持つと、可憐は勢い込んで居間のドアを開けた。
廊下に男が立っていた。
悲鳴を上げて持っていた物を落とす。真っ白な塩が辺り一面にぱあっと舞った。
「僕ですよ、可憐」
清四郎だった。気まずそうな顔をして廊下の壁に寄りかかっている。
「せ、清四郎。帰ったんじゃなかったの」
「忘れ物をして…戻ったんですが入りずらくてね」
しゃがんで床にぶち撒かれた塩を集め始める。
「塩ですか。どうするつもりだったんです?」
「…玄関に撒いてやろうと思ったのよ」
清四郎は目を丸くした。やがてぷっと吹出すとくっくっくと笑い始める。
可憐は苦虫を噛み潰した顔で赤くなっている。
どうも子供っぽい行動だったと思い直しているらしい。
「忘れ物って何よ。とってくるから」
だが、清四郎は答えず塩をせっせと集めている。
「何よ、言ってよ」
可憐が隣にしゃがんでせっつくと、彼は大きなため息をついた。
「うん、まあ大したもんじゃないんですが…これ」
さっと顔を近づけると可憐の唇にチョンと口づけた。
「女性に恥をかかすのはどうかと思いましてね」
今度は可憐が目を丸くする番だった。
清四郎はしゃがんだまま下を向いて塩集めに精を出している。
首が赤いところを見るとどうも照れているようだ。
可憐がクスクス笑い出した。怒ったような口ぶりで清四郎が言う。
「何がおかしいんですか」
「だって…さっきの、チョンって。あれがキスなんて…」
「すみませんね、慣れてなくて。今度までに勉強しておきます」
「いいのよ。」
しゃがんでいる清四郎をその場に座らせ顔を近づけた。
「キスってね、こうするのよ」
可憐の母、火華子は知人のパーティーに参加していたのだが、気分が悪くなって
しまい、パーティーを早々に抜けて家に帰ることにした。
タクシーで自宅のビルまで乗り付け、5階までエレベータで上る。
ハンドバッグの中で鍵が見つからなかった。
もう可憐は帰っているはずだ。チャイムを鳴らす。
家の玄関に近い場所でバタバタ音がした。
「可憐ちゃん、いるの? ママよ、開けて」
「は、は〜いっ」
しばらくしてようやくドアが開いた。
遅いことに文句を言おうと玄関に入って火華子は驚いた。
娘の後ろに長身の男が立っている。
「あら、清四郎くん。来てたの、いらっしゃい。」
「どうもお邪魔してます。といっても今帰るところだったんですが」
可憐の母に挨拶して脇を通り抜ける。
その彼の肩に火華子は白く光るものを見つけた。よく見ると彼の服一面についている。
「あら、何かついてるわよ。何かしら、これ…塩?」
その途端、清四郎は飛び上がり、挨拶もそこそこに逃げるように帰っていった。
娘を見ると知らん顔して体から塩を払っている。
「彼、葬式帰りでね。浄めようと思って塩撒き過ぎちゃった」
照れ隠しのようにエヘヘと笑った。
今回は以上です。ツヅキます。
可憐のケーキ、甘くておいしそう〜
可憐のキスもキットゴージャスなのねん・・・
ママが帰ってくるまでになにがあったのでしょう???
気になる気になる〜
しかし「火華子」にはびびったw
>28
服に塩ということは、服脱いでない。
だから二人はキス止まりと思われ。
もしくは未遂?
でも、可憐の服にも塩がついているみたいよ。意味深・・・
ドア空けるのにも時間がかかってるみたいだしね。
なんだか清四郎、脈ありって感じでわくわくしてきたわー。
でも美童も意外と本気っぽいし、魅録も未練たっぷりみたいだし
野梨子はあっさり引き下がるはずもないし
これからどうなるのかしら。ドキドキ。
昔は舌入れるキスなんてキモイ!と思っていたケド、
今はエロティックな感じで好き。
清四郎と可憐にはディーーーープなキスを
個人的にはしてほしいなあ。
『可憐さんにはかなわない』に、ぷち疑問。
可憐の母の名前って、「あき」じゃなかったの?
「ジュエリー・アキ」だったと思ったけど…。
違ったらスマソ。
>>33 「あきこ」の「あき」は火偏に華です。
私のPCでは「Y」が出せるんですが、うまく表示されない人もいるかも?
だから作者さんは苦肉の策で「火華子」と書いておられます。
確か可憐ママのY子って機種依存文字でマックでは見れないってカキコが昔あった。
「可憐さんにはかなわない」作者です。
>34,35
説明してくださってありがとうございます。
一言書いておくのを忘れてました。
御指摘の通りで「あき」が機種依存文字なので
火偏に華にしてあります
ところが…
>33
可憐の母って、「あき子」だと思い込んで
いたんですけど「あき」でしたっけ??
御指摘に全巻読み直してみたけど
焦っているせいか母の名前の場所が見つからず、
しかもこういう時に限って「虎の巻」がどこかに…
うう、すみません
>36
気になって、虎の巻で確認しました。
あき子でOKですよん。
なるほど。マックでは見えない、機種依存文字に
なっちまうのね<可憐ママの名前
>>36 お店の名前が「ジュエリー・アキ」だったと思ったんで、
可憐ママの名前は「あき」か「あきこ」のどっちかだろうと
思ってただけなんですよ。でも、二文字+子になってた
から、ちと疑問に思っただけで。気にしないで下さい。
#コミックスも何も、ぜーんぶ実家に置きっぱなしだから、
こんな時はチェックが出来なくてちと寂しい…。
前スレ520より
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1035894419/520 放課後、初めて乗る路線バスに揺られながら、
野梨子は膝の上のパンフレットを眺めていた。
落ち着かなく周りを見渡し、もう一度膝の上に目を落とす。
(可憐あたりについてきてもらったらよかったかしら・・・)
バスは学校を離れ、野梨子の知らない道をどんどん進み、
もう聖プレジデント学園の制服を着た生徒は野梨子一人になってしまった。
心細さはあるが不思議と引き返そうという気にはならない。
それよりもバスの規則正しい振動と車内の暖かさにさっきから
何度も眠気に襲われていた。
昨夜は結局一睡もできなかった。
眠って、今日という日を終わりにしたくなかったのだ。
枕元にそっと手を延ばすと、触れるヘルメットの固くひんやりとした感触。
目を閉じると体は宙に浮き、ドゥカティの振動がよみがえるようだった。
そして腕に残る魅録の体温の暖かさ。かたい背中の感触。
・・・魅録の隣に並びたい。彼に似合う女性に・・・。
誰かのために自分を変えたいと思うことに野梨子自身も驚いていた。
今までどんな時も自分らしくあることを大事にしてきた。
でも今は、自分の中に吹く新しい風を受け入れたいと思う。
この気持ちを認め、この思いを大事に育てたいと。
だから・・・
『次は・・・・・・前でございます』
女性アナウンスのテープの声にハッと目を覚ます。
パンフレットを鞄にしまい、マフラーを巻きなおすと、
一つ深呼吸をして降車口の方へ向った。
「あれ?あたいだけ2個も食っていいの?」
かわいらしい兎を型取った京菓子が悠理のお皿の上にだけ2つ乗っている。
「1つは野梨子の分だったんだけど、生菓子だから今日食べてしまわないと
いけないのよ。あんたなら食べれるでしょ?」
可憐が配る日本茶のやわらかい香りが生徒会室に広がった。
「野梨子帰ったのか?」
悠理は当然のように清四郎に目線をやるも、聞こえているのかいないのか、
清四郎は新聞から顔を上げようとしない。
「なあ、清四郎、野梨・・・」
「帰ったんじゃないんですか?今朝の野梨子はあくびばっかりして一言も
口をきいてないんで何で帰ったのかは知りませんが」
清四郎はそれだけ言うとまた新聞に目を落とした。
「ふ、ふーん」
清四郎の一言とともに流れ出した不穏な空気にたじろぎつつ、悠理はピンクの
兎を口へほおりこんだ。ふわっと広がる苺の風味に思わず顔がほころぶ。
「まあな昨日は野梨子にしちゃ・・・あ、なんだよ魅録!それあたいのぶんだぞ!」
「可憐、これからイチゴ味はオレに多くまわしてくれよな」
悠理の皿の残りの兎をつまんで魅録は可憐に目くばせをした。
「今日のはそれ、あたいの兎だ!」
噛み付かんばかりに悠理は魅録につかみかかった。
「おい、悠理ちょっと落ち着けよ!」
右に左に悠理をかわしながら、魅録は生徒会室のドアを開ける。
バタバタと出て行った二人を残った三人は呆然と見送った。
「み、魅録がイチゴ好きだったなんて知らなかったなー」
美童は優雅な手付きで京菓子をひと口、口へ運ぶ。
「それより魅録、ケガしないといいけど。あの子の食べ物横取りするなんて
勇気あるわぁ。ねぇ?」
可憐は清四郎を振り返ったが、開けっ放しのドアを眺めていた清四郎は
それには答えず、また新聞へと視線を戻しただけだった。
一階下まで階段をかけ降りたところで魅録は足を止めた。
「うわっっ!」
勢いの止まらない悠理は思いきり魅録の背中に激突する。
「なんだよ!・・・・・・ん?」
文句を言いかけた悠理の口にポイっと兎が放りこまれた。
モグモグとその苺味を確かめながらわけがわからないという顔で
悠理は魅録を見上げた。
「あれ・・・昨日の野梨子のこと。本人がみんなには黙っててくれってさ」
「あ、そうだったんだ。ごめん」
「お前に言ってなかったオレが悪いんだよ」
また階段を上りつつ、魅録はポケットから煙草をとりだしたが、
さすがに校内の他生徒の前で火はつけられず、上着の胸ポケットへ戻した。
後ろに続きながら悠理が思いだしたように笑う。
「魅録ってイチゴ味が好きだったのな。知らなかった」
「そんなわけねーだろ。甘いものはどっちかつーと苦手だよ。って言うか
そんなのお前が一番よく知ってるだろうが」
思わず魅録の背中を見上げる。
(そーいうこと、ホント無意識に言うよな)
その言葉を言われた方はどう受け取ったらいいのかわかってるんだろうか。
「じゃあ、これからもあたいが頂くからな」
「ハイハイ」
階段の踊り場の窓から差し込む夕日に魅録の淡いピンクの髪が反射している。
兎と同じ色た、と悠理は目を細めた。
<ツヅキマス>
間がものすごくあいてごめんなさい。
待っていて下さった方、ありがとうございます。
今後も細々と続けていく予定です。よろしくお願いします。
>恋のチカラ
ヤタ!リアルタイムで遭遇してしまいました!
続きが読めて幸せです。
悠理の気持ちも切ないですね・・・
野×魅だから望みはないのかなと思うと余計切ない・・・
「恋のチカラ」だ!
大好き!文章の流れが自然で好き!
悠理って魅録が好きなんだね。
魅録は女泣かせですねー
リアルタイムで見ちゃった。こんなことってあるんだねー。
「可憐さんにはかなわない」作者です。
>33
いえいえ、御指摘サンクスです。こちらもうろ覚えだったので
勉強になりました。
>37
確認ありがとうございました。
お手数かけてすみません!m(__)m
恋のチカラ待ってました!
野梨子が向ったのはひょっとして…。
清四郎のピリピリ具合も気になるな。
>恋のチカラ
文章が綺麗で好きだったので再開嬉しいですv
野梨子タンが向かう先はもしかしてバイクの・・・?
清四郎の複雑な心境も大袈裟でなく自然に書かれててイイ!でつ。
>42タンと同じく悠理の気持ちが切ない。このまま魅×悠になって
くれないかと淡く期待(w
<恋のチカラ>
清四郎は気づいてしまったんですかね。
「野梨子の気持ち」それとも「魅録の気持ち」に?
ちょっとないがしろにされそうな、清ちゃんカワイソー
続き楽しみにしてますね!
>恋のチカラ
悠理ってばそうだったのねー。
微妙に機嫌悪そうな、清四郎の今後も気になります!
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1035894419/699 窓の外から哀しげな咆哮が響く。野梨子は髪を梳いていた手を止めて
視線をそちらへ向けた。大正の頃、洋風に改築された館の敷地内には
未だにそれ以前の和風建築の名残を残すように土蔵が建っている。闇
にぼんやりと浮かぶその土蔵の中に、今は種々雑多な動物達―――
天竺鼠、犬、果ては外国産の大型の猿まで―――がひしめいている筈
だった。その内のどれかの声であろう。
「実験」に生きた動物を使い始めたのは先月からである。酷い、と父を
責めたかった。しかし父に逆らう事などできる訳も無く、せめてその世話
だけはせずに済むよう野梨子は懇願したのである。いずれ殺されること
がわかっている動物の世話などして情が移るのを畏れた為であった。
研究者という人種はそんな事に心を痛めたりはしないのだろうか。
魅録なら、その問いにどんな答えを返すのだろう。彼の考え方を、もっと
知ってみたいと野梨子は思った。
屋敷まで野梨子を見送ってくれた魅録は、別れ際にどこか離れ難い素
振りを見せた。それが野梨子の境遇に対する同情であったのか、それ
とももっと他の感情に起因するものだったのか、野梨子には分らなかった。
「わたくしの実の父は、今の父とは医大での同級生だったそうですわ」
帰り道の途中で立ち止まった野梨子は、魅録に自分の出自を明かした
のである。
長年勤める使用人さえ知らぬ事実を、どうして単なる助手の一人である
魅録に打ち明ける気になったのか。
「ほんとうの両親は、わたくしが五つの時に亡くなりましたの。遠縁を、
あちこち転々として…それを見かねて、今の父が引き取って下さったん
ですわ」
言葉少なにそう云うと野梨子は天を仰いだ。欠けた月は不思議に赤く、
夜道を煌々と照らしていた。
その横顔ををじっと見つめていた魅録はやがて視線を離しポケットから
煙草を取り出した。魅録が煙草に火を点し煙が闇を漂うと、野梨子は瞳
でそれを追った。
微かに残る実の父の記憶は曖昧で、その顔すら定かでは無い。しかし、
魅録の吸う煙草の匂いは父の広い背に負われた時の事を鮮明に思い
起こさせる。燐の匂いを懐かしく感じるのは、実の父が煙草を吸う人間で
あったからなのだと野梨子は漸く気が付いた。
長い沈黙の後、魅録が口を開いた。
「あんたの事、誤解してたよ」
野梨子は俯いた。やはり失望させてしまったのだろうか。敬愛する教授
の娘だと思っていたからこそ、自分に興味を抱いてくれていたのだろう。
返す言葉も無く野梨子は黙り込んだ。
しかし続く言葉は意外なものだった。
「何一つ不自由なく、裕福に育ったお嬢さんだと思ってた。
―――苦労、してたんだな。気付かなかった」
労るような響きを含んだ声に、顔を上げて魅録を見つめる。
「俺と似てるよ。俺も、小さい頃に両親を亡くして、あちこちたらい回し
にされて……だからかもな、どっか屈折してるよ、俺は。
あんたは―――俺が思ってたより、ずっと、強い女だったんだな」
強い、という表現に少し驚き、慌ててそれを否定した。
「強い、だなんて―――今の父は、ほんとうに良くして下さいますもの。
わたくし、今の父が実の父様だと、思っていますのよ」
「やっぱり、強いよ、あんた」
魅録はふっと優しい瞳をして云い、野梨子から顔を逸らした。
「教授とあんたが親子らしい会話をしてるとこ、見たこと無いぜ。
―――他人が口出しすることじゃないって思ってたけど……それでも、
ずっと気にはなってたんだ」
口に咥えていた煙草をポトリと落とし、足で踏みつけて消すと魅録は続
けた。
「こないだ、泣いてたろ」
はっと魅録を見る。
禁断の書物を手にしたことを悟られ、先日父から口酷く罵られたばかり
なのである。恐らく清四郎から教授の耳へと入ったのであろう。
禁忌を冒した為と分ってはいたものの、口を極めた罵詈雑言に教授の
部屋を出た途端思わず涙を零してしまったのであった。
「結局あの本も、読まずじまいだったんだな。―――あ、立ち聞きして
た訳じゃ…」
言い訳するかのように少し慌てて魅録はそう付け足した。そのつもりが
無くとも教授の大きな声は廊下に響き渡っていた事だろう。寂しげに微
笑んで野梨子は云った。
「…父には、父の考えがあってのことですわ」 それで会話を区切るように
再び家路を歩き始めた。魅録は、酷く難しい顔で考え込み乍らその後に
付き従った。
犬の遠吠えが再び長く闇に尾を引いた。野梨子はふと我に返り、鏡台
に映る自分の姿を見つめ直した。
彼のことがこうも気に掛かるのは何故なのか、鏡の中の自分に問うてみた
かった。
研究室の中は無人であった。三人共、実験室にでも居るのだろう。
お茶を載せた盆を手にした野梨子はそのまま部屋を出ようとした。と、
部屋の隅でカタリ、と小さな音がして立ち止まる。
丁度本棚に隠れた辺りから、その音は未だ小さく鳴り続ける。好奇心
にかられ、野梨子は盆を机へ置くとそちらへ足を向けた。
魅録の机の上に金属製の小さな籠が置かれている。音はその中から
するようだ。近づいた野梨子はキャッ、と小さな声を上げた。
中には鼠が居たのである。
しかし邸内でも時折見かけるそれとは違い、体毛は卑らしい灰色では
無く白い地に珈琲を塗したような茶色い斑がある。小さな手で柵を掴
みこちらを見上げている様子が愛らしく、思わずにっこりと微笑んだ野
梨子はそれが実験動物として飼われている天竺鼠であることに思い
至った。
魅録が部屋へと戻って来たのは丁度その時で、籠を覗き込む野梨子
に気付くとそっと声を掛けた。
「可愛いだろ、そいつ」
ええ、と頷き、しかしすぐに死んでしまうんでしょうけれど、と心の中で呟
いた。その心中を察したかのように魅録が続ける。
「そいつだけは、実験を免れたんだ。―――俺が研究してた抑制剤が
ようやく完成にこぎ付けたんでね。正直、名前なんか付けちまうと、とて
も清四郎みたいに冷静に動物実験なんて出来やしなくて―――ま、こ
んな事云ってるようじゃ、研究者としちゃ失格かもな」
自分の甘さに対してだろうか、苦笑して見せた。
生き物を実験に使うことに罪悪感は無いものか、その疑問に対する魅録
の答えが自分と同じであった事が野梨子には嬉しかった。
同じ問いを清四郎に対してした事がある。彼は逆に怪訝そうな顔で野
梨子にこう問い返した。
「ちっぽけな鼠の命と、人間の命と、野梨子はどちらが大切だと思いま
す?―――動物とは云え殺生は誉められたことでは無いが、彼らの犠
牲の上に何人もの命が救われる可能性があるとすれば、間違ったことだ
とは思えませんね」
恐らく、彼は間違ってはいないのだろうが―――それでもその答えに野
梨子は納得の行かない歯痒さを感じたものだった。
大切なものを救う為に、他の者を犠牲にするのは致し方無い。その考え
方はいかにも理知的な清四郎らしく、そこに情を差し挟む隙など無かった。
「人は、時として―――自分の手を汚してでも為さねばならない事があ
るのだと、ぼくは思う」
自らに云い聞かせでもするようにそう呟いた自分の婚約者を、野梨子は
初めて少しだけ畏ろしい、と思った。
白衣のポケットから魅録は小さなものを摘み出し、野梨子に手渡した。
植物の種である。
「餌だ。喜ぶぞ」 柵越しに物欲しそうにこちらを見続けている鼠を指して
そう云った。
普段煙草や燐寸の類が入っている同じポケットからそんなものが出てきた
のがおかしく、野梨子はくすりと笑ってから恐る恐る鼠に種を差し出した。
小さな手で器用にそれを掴み皮を剥く様子を眺め乍ら、野梨子は問うた。
「なんて名前を付けましたの、この子に」
その名を云いかけ、魅録は口を噤んだ。
「…いつか、教えてやるよ」 細めた目が悪戯好きの少年に見え、野梨子
は口を尖らせて云った。
「ま。意地悪ですのね」
顔を見合わせて、笑った。
(続きます)
>「病院坂」!
いよっ!待ってました!ぱちぱちぱち
情景が目に浮かんでくる文が大好きです
野梨子と魅録の研究室での語らい・・・
まるで映画の1シーンのようですね
しかし、魅録はかっこいいが
冷たい雰囲気の清四郎に萌えて
しまうワタクシ・・・
病院坂ずっと待ってました!
野梨子は天涯孤独の身の上だったんですね
教授が野梨子を引き取った理由が気になります
昔の恋の形見とか?
気になると言えば、魅録が何て名付けたのかも(w
病院坂の清四郎はまだまだ何か隠してると思う・・・
か弱い悠理も希少価値!(今回出てないけど)
>57
清四郎は体が弱い悠理のために特効薬を作っているのでは?
悠理が好きで助けたいので動物実験も厭わない…とか
>恋のチカラ
前の方を読み直して清四郎の不機嫌さにピン!
野梨子が魅録のバイクで帰ってきたとき、清四郎は自室の窓から
見てたんじゃないかなー、違ったらゴメン
うわーい、待ってた連載の新作が2つも!!
今日はこれだけで1日幸せな気分でいられそう♪
病院坂の、昭和初期っぽい文体とその文字が紡ぎだす雰囲気が
とっても好き!
ただのお嬢さんじゃない野梨子なら、あの強さも納得。
御大のキャラだと個人的に、どうしてなに不自由なく生きてる良家のお嬢様が
気が強いという設定とはいえあんなイジワルなことを
言ったりするのか・・・とずっとモニョってたので。
魅録も清四郎も、か弱い悠理も色っぽい可憐も魅力的だし。
うーん、我ながら興奮気味だな(w
うん、病院坂は本家有閑よりキャラが皆カコイイ!
(ストーリーもですが…。もし有料でも絶対読みます)
有閑の初期に近い感じかな?
これで美童だけ登場しなかったら気の毒だ(w
>病院坂
美童が登場してないことに今の今まで
気づかなかったw
か弱いお嬢様な悠理もいいよね。新鮮。
百合子さんが思い描いていたとおりの理想のお嬢様なのかな。
美童は可憐関係で登場するのかしら。楽しみどす。
天竺鼠!
作者様よくご存じでしたね。
たしかモルモットの旧名だと
法医学者の本に書いてあった記憶があります。
>64
>たしかモルモットの旧名だと
そうなのか。天竺鼠っていうのがいるんだと
思ってた。うーん、勉強になるなあ。
昭和調の文章だと、モルモットより天竺鼠だね〜。
(いま初めて知ったけど>天竺鼠)
作者さんすごいや。気使ってある。
意味までは知らなかったけど、漢語調で古めかしい言葉遣いだから、
作品の雰囲気にピッタリと思ってた<天竺鼠
現代以外を舞台にした作品だと、こういうところが大変なんだろうね。
いずれにしても、ひとつ賢くなったわ。
ありがd>作者さん&64さん
そうか、モルちゃんのほうだったのね。
わて、てっきりハムスターの方かと・・・w
>68
「モルちゃん」という字を見て、モルダビアの顔した実験動物を
思い浮かべてしまった・・・((((( ;゚Д゚))) ガクガクブルブル
>>26 恋をすると女は綺麗になる。野梨子と会う度にそんなフレーズが美童の頭をかすめる。
恋の相手が僕じゃないってのが気にくわないけど。
でもあんなに幸せそうに恋の話をされたんじゃ文句も言えやしないよね。
僕が文句言う筋合いもないんだけどさ。
清四郎に恋文を書いたが渡せなかったこと、清四郎に言い寄ってきた女の子が
いたが彼が断ってほっとしたこと、自分が危ない時に清四郎が助けに来てくれて
嬉しかったこと、清四郎が姉さんには頭が上がらないこと、
清四郎と二人で撮った写真が一番の宝物であること…
うれしそうに清四郎の事を語る野梨子は世界中の誰よりも愛らしい。
ねえ、知ってるかい?今の君の瞳ほど輝く星を僕は知らない。
君ほどバラ色の頬が似合う女の子はいやしない。
そんな素敵な君に思われてアイツは幸せな奴だよ。
野梨子の話にやさしく相槌を打ちながらそんなことを美童は思っていた。
ふと野梨子は話すのをやめた。恥じ入るように俯いて紅茶を一口飲んだ。
「…ごめんなさい。私ばかり喋り過ぎですわね。呆れましたでしょ」
その時風が吹いてきて美童の黄金色の髪をさあっとなびかせた。
オープンカフェだったので野梨子の髪も吹き流される。
卓上の中央を破いたレシートが飛びそうになるのをつかまえると、
美童は自分の椅子を野梨子の横に移動させた。
「ど、どうなさったんですの?」
突然美童が接近して野梨子はうろたえる。そんな彼女を美童が安心させた。
「風が強いだろ。僕が野梨子の盾になるから」
野梨子はほっとすると同時に彼を意識してしまったことを恥ずかしく思った。
美童がやさしさからしてくれたことですのに。嫌ですわ、私ったら。
少し反省している野梨子の横顔に恋の狩人はじっと見入っていた。
「えっ?」「あら」「まあ」
「うおっ、どうしたんだ、生徒会長!」
期末試験の成績が廊下に貼り出されるとギャラリーから一斉に驚きの声が上がった。
一位 桜木吾郎
二位 菊正宗清四郎
僅差ではあったが、試験でこの三年間トップの座を譲ったことがなかった清四郎が
二位に甘んじたニュースは聖プレジデント学園中を駆け巡った。
おかげでその日、清四郎はファンの子達のお見舞いを受けるのにてんやわんやである。
おまけに新聞部の記者までやってきて聞かれたくないことを聞いてくる。
「生徒会長、この度の期末テストの敗因は? 三年間守ったトップの座を明け渡して
悔しいですか? 今回一位の桜木くんに勝つ自信はありますか?」
野梨子も心配してわざわざ清四郎の教室までやってきた。
「大丈夫ですの、清四郎? どこか具合でも悪いんですの?」
「いや…大丈夫。最近ちょっと眠れなくてね」
そう、清四郎は先日の黄桜家でのことを思い出しては眠れない日々が続いていた。
「まあっ、不眠症ですの? 食欲はあるんですか?」
「それがあまり… なんだか胸がいっぱいで食べる気がしないんです」
いっそう心配そうな顔になった野梨子に気がつかず、清四郎はつぶやいた。
可憐が一体どういうつもりで自分に近づくのか、清四郎は判断がつかないでいる。
「最近痩せたと思ったらそういうことだったんですのね。他には?」
「他に…。そうですね、胸が苦しいかな。息がしにくくて…」
「清四郎…」
彼女に遊ばれてるのか、それとも本気なのか、どちらなのだろう。
「体が妙に熱いんですよね。頭がぼうっとして考えがまとまらないし、目の前に
チカチカと白いものが浮かんでます」
(病気みたいだな…病気?そう、まるで…)
「…病気ですね」
そう言うと清四郎はおかしくてたまらないと言ったふうにクックックと笑い出した。
唐突に清四郎が笑い出したので、野梨子は背筋がぞおっとした。
青ざめた彼女を前にしながら清四郎はどうにも笑いが止まらない様子だ。
野梨子はあわてて席を立つとどこかへ駆けていった。
5時限目、ただでさえ眠いこの時間。しかも数学。
今日ばかりは清四郎も他の生徒と同じように惚けた顔で受けていた。
と、廊下をばたばた数人が走る足音が聞こえてきたかと思うと、清四郎のクラスの戸が
いきなり開いた。清四郎の耳にうちでよく聞く声が届く。
「清四郎!!」
ぼうっとしたまま声のする方を見た清四郎はぎょっとした。
「か、和子姉さん!ど、どうしたんですか?」
清四郎の姉、和子だった。後ろに菊正宗病院のスタッフが二人、担架を抱えて控えて
いる。姉が合図するとスタッフが清四郎に駆け寄り、無理矢理担架に乗せた。
「ちょっ、姉さん!どういうことですか!降ろしてください!」
「黙って、静かにして。野梨子ちゃんがあんたの様子が変だって連絡くれたのよ。
胸が苦しくて意識がはっきりしないのね。心筋梗塞の前兆か、脳硬塞の前触れかも。
パパの病院でMRIとる用意してるから!」
「ち、違う、違う。誤解ですよ! 姉さん、やめてくれ〜〜っっ」
清四郎が悲鳴をあげつつも教室外へ運ばれてしまうと、クラスメイトはため息を漏らした。
「トップの座から落ちるなんてよっぽど具合がお悪かったんですのね」
「お気の毒に…」
何日か後。
書架から本を取り出して眺めていた可憐は、後ろに誰か立っているのに気がついた。
振り向いてドキンとする。
「魅録」
魅録は黙って後ろの書架にもたれ、可憐を見ている。
そこは図書室でも奥まった場所で、時折生徒の足音はするものの殆ど誰も来ない
そんな場所。人目を避けて逢い引きするには絶好の場所だった。
「懐かしいな。よくここで、二人でこっそり会ってたよな」
「忘れたわ、そんな大昔のこと」
「ここに来るってことは俺が懐かしくなったんだろ?」
「まさか。本を探しに来ただけよ」
そう言いながら手にしていた本を戻す。と、その手を魅録がつかまえた。
「『幾可学における数論的方法 』…か。面白そうな本だよな」
可憐は怒ったように横を向き、魅録の横をすり抜けて出口へ向かおうとする。
しかし魅録が手をついて可憐の行く手を遮った。
抗議する間もなく唇がふさがれる。
久しぶりに感じる魅録の唇は昔と変わらず熱かった。
可憐の身体を書架に押しつけて、何度も繰返し唇を求めてくる。
それは激しく熱く、かつてつきあっていた頃の魅録の情熱を思い出させた。
その情熱に応えたくなるのを我慢して可憐はキツく言った。
「やめて、魅録」
やっとのことで彼の体から逃れた。
「可憐。戻れないかな、俺達」
「もう、終わったことでしょ。それに」
強い言葉で拒否し、憎らしい男を軽く睨む。
「そんなに簡単に戻れるんだったら別れなかったらよかったじゃないの。
あの時私がどれだけ泣いたか知ってるでしょ?」
魅録は視線を落としうなだれた。
その様子を見ていた可憐は慰めるように声をかける。
「そんなこと言って、どうせまた私のところに泣きつきに来たんでしょ?
二年の子とは別れたのよね、それで? 何か言ったの、『あの子』には?」
「別に何も言ってないよ。今まで通りさ」
「何もって、また…。それでいいの、あんた達?」
肩をすくめてみせると魅録は書架の向こうに消えた。
後に残された可憐はふーっと息を吐くと、これもやれやれという風に肩をすくめ
出口へ向かって歩いていった。
辺りは人気が無くなり元の静けさが戻ってきた。
と、その奥の書架からひょっこり男が顔を出した。
「やれやれ、やっと出られましたね」
清四郎である。
彼は純粋にここの書架に用があって来ていたのだが、
可憐と魅録にはち合わせしそうになって隠れていたのだ。
別に覗くつもりはなかったが、並んだ本の隙間から二人のキス・シーンも、
そして、ほんの一瞬ではあるが可憐がうっとりと瞳を閉じたのも
しっかりと見てしまったのである。
「そういうことなら元の場所に戻せばいいことですよね」
誰に言うともなく言う。もちろん答える者はいない。
魅録は可憐と復縁したいらしい。
可憐も意地を張っているだけで、まだ魅録に未練があるんじゃないか。
それならば二人を元のさやに戻すのは簡単だろう。
清四郎がもう少し男女の機微に長けていたら、二人の会話から別の意味を
取り出すことができただろう。
かつて恋人同士だった二人が、その関係が途絶えた今も共有する色気。
それは時としてなまめかしく、見る者を悩ませるが所詮は枯れゆく運命の泉。
現在進行中の恋のように勢いよく流れ込むものもなく、ただ眈々と想い出という水を
たたえているだけである。
それを賢明な可憐と、たぶん魅録も充分理解している。
しかし、恋愛においてはボンクラ同然の清四郎にはわからなかったようだ。
今にも枯れそうな泉から懇々と水が湧いているように、
そしてその泉がキラキラと輝いているように彼の目には映っていた。
可憐と魅録が復縁したら自分も元の静かな生活が取り戻せる。
最近彼女とのキスを思い出しては眠れない夜が続く清四郎には
理想的な状態に思えた。
「じゃあ、取りあえず魅録に話をつけに行きますか」
そう口に出した清四郎は自分の声に元気がないのに気がついた。
その夜、清四郎は魅録の家に出かけた。あらかじめ電話はしなかった。
彼の家の呼び鈴を押しながら清四郎は何となくすっきりとしない気持ちに襲われる。
どうして僕はこんなに気が進まないんですかね。
母屋の方から出て来たお手伝いの人が、ぼっちゃまは離れのご自分のお部屋です、
と教えてくれた。広い庭を横切り踏み石の上を通って離れにつく。
どういう風に切り出そうか、と考えながら離れのドアをノックした。
「魅録、清四郎です。ちょっと話があるんだが」
清四郎は顔を出した魅録が動揺した様子なのに気づいた。
上半身ハダカの上にジャンバーを引っ掛けて、下はパンツ一丁だ。
「…お邪魔でしたか?」
部屋の中をのぞこうとする清四郎を大慌てで魅録は阻止する。
「ちょ、ちょっと今はまずい」「まずいって何がですか?」
中でう〜ん、という女の声がした。続いてあくびも聞こえる。
魅録がしまった、という顔になった。
その時、清四郎は部屋の中にいるのが可憐ではないかという気がして、
思わず身を乗り出して部屋の中をのぞく。魅録があわてて遮ったが遅かった。
ちょうど中央に敷いた布団から女が身を起こすところだった。
「起きたのか?魅録」
申し訳程度にふくらんだハダカの胸も隠さずにのびをしてから、ようやく
清四郎の視線に気がつく。
「げ!?★せ、せいしろう!?」
「ゆ、悠理…!?」
清四郎は自分の目で見たものが信じられなかった。
一番男女の関係に疎いと思っていた悠理がハダカで男の部屋にいる。
しかも魅録と一緒に。ということは…。まさか。
魅録を見ると腕を組んで苦笑いしている。
「ばれちまったな。ま、そういうことだよ」
悠理は布団の中から首だけ出して照れ隠しにエヘヘ…と笑っていた。
清四郎の前に湯気を出した茶わんが置かれた。
「で、こんな夜中に何の用だよ。学校じゃ話せないことか?」
煙草をくわえたままライターを探している。そんな魅録が恨めしかった。
関係をすっきりさせようと思って来たのに、返ってややこしい事に
なりそうですね。
「ちょっと図書室のことでね」
魅録の眉がぴくりと動く。
「可憐のことか。何だよ、まさか見てたんじゃないよな」
「そのまさかですよ。それより悠理がいるところでいいんですか?」
魅録はスウエットの上下を着たが、悠理ときたらハダカの上にTシャツを着て
下はパンツ一枚である。清四郎の存在など屁とも思ってない様子だった。
二人に背を向けてカップラーメンをすすっていた悠理が振り向く。
「あたいのことなら気にすんなよ。別に魅録の彼女とかじゃないから」
清四郎は魅録を見た。口元をへの字に曲げている。
「そうなんですか?」
「こいつがそう言うんならそうなんだろ」
不機嫌そうに煙を吐き出す。悠理は素知らぬ顔でラーメンを食べている。
二人の間に流れる微妙な雰囲気。かすかに険悪なムードが漂う。
ここで可憐のことを持ち出すのは賢明じゃないな。
清四郎は腰をあげた。
今回は以上です。ツヅキます。
あと、心筋梗塞うんぬんのとこはカナーリ怪しいです。
すみませぬ…
>可憐さんにはかなわない
いよいよ混線模様になってきましたね〜
読んでてほうっと溜息の出そうな美×野、
芳醇さにうっとり酔わされてしまう魅×可、
そして謎含みの魅×悠
いろんなカップリングが見れて、トクした気分です
それにしても、和子さん(・∀・)イイ!
大笑いしますた
>可憐さんにはかなわない
「恋愛においてはボンクラ同然の清四郎」に藁田。
>可憐さん
和子さんイイ!
「ボンクラ同然」な清四郎の姉ならば清四郎の状態を四角四面に受けとって
本当にやりそうだと思ったよ(w
それにしても魅×可コンビは情熱的ですな。
ねっとりしてる感じ?
>>69 激しくワラタ。人面鼠だよー。
有閑キャッツ逆バージョンを妄想しますた。
ルパン〜みたいな怪盗の男性三人。
女性三人・・・ミニスカポリス?
う〜む、弱っちすぎる(w
>可憐さんにはかなわない
い、意外な展開だわ。目が離せん。
それにしても和子姉さんに連行される清四郎が愛らしいw
>82
ルパン大好きなんで、その設定モエーです
そうすると、「紳士強盗」って感じかな
防御のために闘うことはあっても、基本的に暴力はご法度
盗むものは女性陣のハート(こっちが先に来るw)と宝石類ほか
そして困ってる人たちを助けてあげるのでつね
今以上にファンが増えて、追っかけ隊が生まれそうだ
ミニスカポリス(?)3人娘の手から守るのよ! とばかりに、
女性同士でバトルを繰り広げたりして(w
>盗むものは女性陣のハート(こっちが先に来るw)と宝石類ほか
あと開発されたばかりのPCのパーツとか、入手しにくい薬物とか・・・
美童って物欲無さそうだよね?何を盗みたがるのかなあ。
彼女にねだられて宝石・・・かな。
美童が情報収集担当、魅録が実働、清四郎が計画を練るって分担かしらん。
さっきポストを覗いたら『有閑倶楽部 虎の巻』のアンケートハガキの賞品のテレカが届いてた。
締め切りは去年の8月下旬だったからてっきりダメだと思っていたのに.゜.(ノД`).゜.。
同封されていた手紙には「いずれは、新しい企画や情報も加えた、『有閑倶楽部 龍の巻(仮題)』も刊行したい考えております」って書いてあったよ。
>有閑キャッツ・アイ男版
男三人である大富豪の家からダイヤモンド3つを盗もうとする。
それはかつて、非業の死を遂げた王女のネックレスから取られたもの。
3つのダイヤは大富豪の娘3人がそれぞれ1つずつ身につけている。
長女が可憐、次女が悠理、三女が野梨子
野梨子はダイヤを奪いに来た怪盗紳士に憧れ
悠理は怪盗紳士と互角に戦い
可憐は怪盗紳士と熱く恋をする・・・てえのは?
でも怪盗紳士達は実は屋敷に出入りする
家庭教師(清四郎)、自称貴族の男(美童)、
そして三姉妹の従兄弟(魅録)
>87
それイイ!!
屋敷は広い洋館で、庭に噴水とかあるといいな。
>86
龍の巻って・・・・・・龍の巻って・・・・・・龍の巻・・・
それとも私が知らないだけでそういう言葉があるの?ビミョウ。
「りゅうのまき」と読むのか「たつのまき」と読むのか。
どっちにしてもワラ。
たつのまき、かもね==>たつまき(竜巻)にかけてる、とか?
竜と虎って並び称されることもあるから、「りゅうのまき」に一票。
>87
>自称貴族の男(美童)
激しくワラタ。
ダイヤを身につけているって事はどうやって盗むのかしらん?
この流れだと、
野梨子はうっとりしているうちにいつの間にか外され、
悠理は戦いの途中ひきちぎられる。
可憐はベッドの中で……。
タイタニックみたくダイヤひとつだけを身につけている
可憐が目に浮かぶよー。
竜虎⇒リュウコ(音読)なので
虎(とら)の巻に対して
龍(たつ)の巻(もちろん竜巻にも掛けている)にイピョーウ。
虎の巻、すごく売れたみたいだもんね…
>可憐はベッドの中で……。
ちょっとドキドキしますた(w
龍の巻・・・出るとしたらどんな内容になるんだろうねぇ
虎の巻に載ってた以上の情報があるとはもう思えんが・・・
番外漫画でもついてない限り、買うのにちょっと躊躇しそう。
>タイタニックみたくダイヤひとつだけを身につけている
>可憐が目に浮かぶよー。
おおHくさくてよいな、よいな
龍の巻
ぜひ本編ではかけないカポ−話を御大の手で!!
幻のキス&ベッドシーンとかとか
>ぜひ本編ではかけないカポ−話を御大の手で!!
>幻のキス&ベッドシーンとかとか
非常に見たい。しかも、全カポーで。
それだけでも漏れはかまわない。
>それだけでも漏れはかまわない。
私もそれだけでいいよお・゚・(ノД`)・゚。
つかそれをこそ是非見たい(w
美童と可憐の華麗なHとか
魅録と野梨子の初々しいHとか
清四郎と悠理のチョト変態なHとか
いかん妄想菌繁殖中・・・・・・・・・・・
そうだ! それだけでも私もかまわない!
100ゲトー
ひゃ、ひゃくじゃなかった…無念
カポー描くなら、全組み合わせでお願いしたい。じゃなきゃスレが荒れる〜
今の絵柄でこれ以上有閑を描かないでほしいです・・・
妄想スレのために御大たのむ!たのむう…
>幻のベッドシーン
その際、けっして悠理は
「いいじょ!いいじょ!」
と言わないこと。これ重要。
>その際、けっして悠理は
>「いいじょ!いいじょ!」
激ワラ
そりゃ萎えるわな〜(w
>そりゃ萎えるわな〜(w
変態清四郎は逆に元気になったりとか(^^;
「ハアハア、いいんですね?悠理、ここがいいんですね?」
「いいじょ!いいじょ!」
やめてぇ〜笑いが止まらん(激ワラ
「この子供っぽさがたまりませんね、フム!」
清×悠の場合、攻めは清四郎って感じなので、
攻め悠理が見たい。
あ、他二人が相手でも、受けって感じかな
悠理が、始めっから、がんがんと可憐のごとく
アプローチをかけるっていうのは無理なのかなー。
酔っ払ってでもいいので。
>110
数は少ないけど、攻め悠理の作品もいくつかあったんじゃ?
「愛と青春の旅立ち編」と、あと短編があったような・・・
>幻のキス&ベッドシーンとか
それだけでもかまわない!!
が、清四郎や野梨子の顔をなんとかしてもらわにゃ萎え〜。
妄想でカバーするにも限度ってもんが・・・
私も今の絵でラブシーンは耐えられない・・・
顔塗りつぶしちゃうかもw
新作があの絵でもなんとも思わないんだけど、
有閑キャラをあの絵でかかれると、
「違ーーう!!」とイッテツしたくなる。
全員子供っぽくなってるよね・・・
あの絵で有閑ラブシーン描かれても
違う漫画だと思って読み飛ばしてしまいそうな罠
美童をめぐって女三人、三つ巴の女の戦いが見たいな。
男性陣タジタジの。
あのあひる口でキスされても・・・萎えますw
このスレで書かれたお話を漫画化して欲しいと思っていたけど
あの絵じゃ、せっかくのステキなお話が台無しですわ。
>このスレで書かれたお話を漫画化
ああ、これいいねえ。以前の絵でさ。
個人的には剣菱家の事情2とか是非見たい。
別に御大じゃなくてもいい…コミックスの10巻頃の御大の絵ソックリに書くことができる人に、ここの妄想作品を漫画化してほしぃ。
そういえば、嵐さんの所のビジュアル妄想企画って、応募ないのかな?(・ω・)
>コミックスの10巻頃の御大の絵ソックリに書くことができる人
ああ!!そんな人ホントにいないかなあ!!
妄想スレを挙げて熱烈歓迎いたしましてよ!
>嵐さんの所のビジュアル妄想企画
確か1回申し出があったよね。
どうなったんだろ?
>>116 三人がどういう形で美童に惚れるか思いつかないが、見てみたい。
三つ巴の女の戦いとはチョト違うが、美童の女性関係を整理するべく、
その時だけは団結して、暗躍する三人の姿を思い浮かべてしまった。
まずは、当然のごとく、携帯のメモリーは全消去。
「おっかしいなあ」首をひねる美童。
「どうしましたの、美童?」
「いやー。ま、いいか、どうせもう一台あるし」
(馬鹿……)
(近いうちに二台目も消されますね)
顔をあわせる魅録と清四郎。
―――数日後、踏み潰された美童の携帯が発見された。
「うわ、ひどいなあ」
可憐と野梨子の賞賛の眼差しが悠理にそそがれる。
「でも、良かったよ、魅録の言う事聞いてバックアップとっててさ」
次のの瞬間、氷のような視線が魅録に向けられた。
―――数日後、ハッカー魅録の活躍で美童のパソのメモリーは
消えたのであった。
3人が結託したら、美童の女性関係なんてあっという間に清算できそうだね。
知性派も色気派も武闘派も、なんでも対応できるもんね。
19巻に収録されなかった有閑のシークレットエピソードが、いずれ(いずれっていつ?)刊行予定の龍の巻に収録されるんじゃないのかな?
御大の新作って三年くらい連載するよね?
そしたら、次に有閑の新作読めるのって2005年頃か〜(トオイメ
>―――数日後、ハッカー魅録の活躍で美童のパソのメモリーは
>消えたのであった。
「女性陣を敵に回す勇気はない。」
いつも言ってるアレでつねw
>>121 次のの瞬間→次の瞬間
お恥ずかしい……スマソ
>123
>有閑のシークレットエピソードが、いずれ(いずれっていつ?)
>刊行予定の龍の巻に収録されるんじゃないのかな?
なるほど!
シークレット〜見逃したので早く読みたいんだけどなあ
龍の巻っていつになるんだろう・・・
前スレ>941の続きです
3人が顔を合わせてから実に4時間後、正午過ぎになって漸く残りの3人が姿を現した。
その姿を確認するや否や疑問をぶつけて来た魅録に、鬱陶しそうに髪を掻き揚げた可憐が応えた。
「ええ、そうよ。京香のグラスはバニーが手渡したのよ」
「僕も見てたよ。間違いない」
美童も同意する。その横で大口を開け、マルゲリータを頬張っていた悠理が訊ねた。
「それがどうかしたのか?」
「どうかしたのかって……変だとは思いませんか? 手渡されたのに、指紋が出なかったんですよ?」
「そんなん、手袋でもしてたんだろ? ほら、手術するときのゴム手袋とかさ」
悠理の言葉に脱力して野梨子が言った。
「そんな格好してたら、目立ちますわよ」
はあ、と悠理を除く全員が溜息を吐く。
「どう考えても、その消えた女が怪しいよな。野梨子、顔とか覚えてないのか?」
宙を見詰めながら野梨子が、慎重に言葉を選んでいる。
「そうですわね……歳は私たちより上で……京香さんと同じぐらいかしら。
とにかく化粧が濃い方で……髪は可憐のような感じの……背は、悠理ぐらいかしら」
「そんなんいたかなあ」
「悠理はつまみ食いに忙しかったですものね」
野梨子の台詞に、悠理が拗ねて唇を尖らせる。その子供染みた仕種に、魅録が眼を細めた。
今度は魅録が、清四郎に脇腹を小突かれる番だった。
そんな男2人の様子を眺めていた可憐が大きく一つ、馬鹿ねえというように溜息を吐いた。
自分の隣で、典雅に緑茶をすする友人と、絶えず口を動かしている友人に視線を移しながら、
可憐が心の中で呟いた。
(ま、お嬢ちゃん達の仕種に一喜一憂してる2人を観察してるのも、面白いけど。
いい加減、じれったくなってくるわ)
向いの席で図体ばかりでかい2人の男がそれぞれの想い人に、優しい視線を投げかけていた。
可憐にしてみれば、この視線に何故悠理も野梨子も気付かないのか、不思議なくらいだ。
「まあ、ここでこうしていても仕方がないですし……そろそろ捜査といきますか」
清四郎の言葉を合図に、残りの5人が腰を上げた。
「しっかし……」
「2人とも演技派ですわね」
先に焼香を済ませ仏閣の出口付近で弔問客を観察していた魅録と野梨子が、
呆れたように言った。
確かに、可憐も美童も白いハンカチで口元を覆い、鳴咽している様子は、
どうみても故人の友人の姿そのものに傍目には映るだろう。
「それより、どうだ? バニーの格好してた女は来てないのか?」
「……いませんわね。あんなに派手な顔だちの方なら、目立つはずですのに
……それよりも、京香さんと同年代の方の参列が少なくありません?」
焼香の列に並んでいるのは、恐らく父である五橋と仕事上交友関係があるのであろう
中高年の姿ばかりが目立つ。
「寂しいもんだよな。ま、社会人になりゃこんなもんなのかもしれねえな」
「なんだか可哀相ですわね。あんな眼にあって、挙げ句にこんな亡くなり方だなんて。
もし私でしたら死んでも死にきれませんわ」
小首を傾げながら、寂しそうに野梨子が言う。
しんみりとしてしまったその華奢な肩を、ぽんと魅録が叩く。
「野梨子は心配いらねえよ。いつだって絶対に清四郎が助けてくれるさ。
勿論、俺らもだけどな」
そんな魅録の言葉を受けて、野梨子はふっと息をついた。
「いつまでも清四郎に甘えていていいのかしら、って最近よく思いますの。
清四郎は私が傍にいるせいで、自分のしたいことも出来ずにいるんじゃないかしら」
唐突な野梨子の台詞。だが笑い飛ばしてしまうには、その言葉は余りに苦悩に満ちていて、
魅録は掛ける言葉を見つけられずにいた。
「もう、兄離れしなきゃ、いけませんわよね」
半ば自分に言い聞かせるように、野梨子が呟く。
「無理に離れようとしなくてもいいだろ? お前らは、一緒にいるのが自然なんだからさ」
清四郎の想いを分かりすぎるほどに分かっている魅録が、宥めるように野梨子に告げる。
しかし野梨子は小さくかぶりを振った。
なおも魅録が野梨子の決意を止めようとしたその時。
はらはらと一片の雪が舞い下りた。
悴んだ手を摩りながら、暖房の前で悠理がガタガタと震えている。
葬儀が執り行われた間、寒空の下、薄手のトレンチコートで張り込んでいたのだから、
無理もないのだが。
「ちょっとお、一人占めしないでよ! 寒いじゃない!」
可憐が抗議するが、悠理はその場を動こうとしない。
一方、平然とマフラーを取り去った清四郎がソファーに沈みながらほっと嘆息した。
「同情票を集めるのに、天まで味方したって感じですね」
「同感だな」
お清めの塩を片づけていた野梨子が、湯気の立ちのぼるココアを運んで来た。
悠理はダッシュで野梨子に近づくと、自分のカップを奪うように取り、
再び暖房の前に陣取った。
「確か今度の選挙、五橋は当落線上ギリギリって噂でしたわよね」
「ええ、例の企業との癒着事件が随分騒がれていましたからね……ありがとう」
カップを受け取りながら、清四郎が続ける。
「舞い散る雪の中、娘の遺影を抱きながら、涙ながらに
『私は敵の脅しに屈することなく国民の皆様の為に全力で戦い抜きます』ですか……」
恐らく明日のワイドショーでは悲壮な表情で叫ぶ五橋の顔が延々と放送されることだろう。
それを考えただけでも、清四郎はうんざりした気分に襲われた。
「なあ、ほんとはあのタヌキ親父が殺したんじゃないのか?」
悠理の台詞に、魅録も肯く。
「あの男なら、自分の保身の為にやりかねないよな」
「けどさ、五橋には毒を入れるチャンスはなかったよ。僕と可憐が傍にいたし」
「カプセルとかは?」
可憐の問い掛けに、清四郎は暫し考え込んでいたが、やがてかぶりを振った。
「いや……だとしたらグラスにわざわざ毒を入れる必然性がない
。やはり怪しいのは消えた女なんですがね」
ちらっと野梨子に視線を向ける。それに気付いた野梨子が、今度は頭を横に振った。
「弔問客の中には、いませんでしたわ」
「手がかりなし、ですか……これはやっぱり……」
今度は可憐と美童に視線を向ける。
「内偵が必要ですね」
気温差のせいで曇ってしまった出窓を、野梨子のしなやかな指がなぞる。
一度は鮮明に見えた外界の景色は、すぐに白く覆われてしまった。
指が辿った最終地点から、滴が次々に流れ落ちる。
それはちょうど窓に映った野梨子の眦の辺りからだった。
恰も自分が涙しているような絵に、野梨子は思わず眼を逸らした。
「遅いですわね、可憐も美童も」
清四郎を振り返りながら、野梨子が心配そうに言った。
清四郎が安心させるように、柔らかく微笑む。
「可憐はともかく、美童は大丈夫でしょう。それより、そこは寒いですよ。
こっちへ来て、座ったら如何ですか?」
素直に窓際を離れ、清四郎の横へと腰を降ろす。その向かいのソファーでは、
悠理が丸くなって眠っていた。見るとはなしにその様子を眺めていた野梨子が、
くすりと笑った。
「どうしたんです?」
「いいえ……なんだか、悠理が羨ましくて」
「羨ましい?どうしてです?」
清四郎の問い掛けに、野梨子は言葉を選びながら答える。
「なんて言うのかしら……悠理は10年後も、20年後も、
ひょっとしたらずっとこのままなんじゃないかって。ううん、違いますわね。
このままでいてほしいっていう、私の願望なのかもしれませんわ」
「変わりませんよ。悠理だけじゃなく、魅録も可憐も美童も、僕も、あなたも」
軽く応えた清四郎の台詞に、野梨子は無言のまま、首を横に振った。
「矛盾した言い方ですけど……変わらないものなんてありませんわよ」
「……野梨子?」
その言葉尻に不安を感じて、彼は野梨子の顔を覗き込んだ。
野梨子の視線が徐に清四郎に注がれる。黒目がちな双眸が、静かに彼を射抜いた。
清四郎の心臓が、どくん、と大きく鳴った。
「清四郎、私は一人でもう大丈夫ですわよ。だから、遠慮せずに好きなところへ行って下さいな」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ。僕はですね」
頭の中が真っ白になる、という経験を、清四郎はしたことがない。
いや、正確に言えば、なかった。たった今、この瞬間までは。
「どうしたって言うんです、突然そんなことを言い出すなんて?
誰かに何か、言われたんですか? だとしたら……」
「誰にも何も言われてませんわ。でも……可憐と美童のことがあってから、私なりに少し思うところがあったんですの」
『可憐と美童のこと』それは大学へと進学してから、2人の関係に変化があったことを意味しているのだと、
清四郎はすぐに感づいた。どういう経緯があったのか当人達以外は知らないが、
兎にも角にも2人は『男と女の関係』になったのだ。
「2人を傍で見ていて……なんて言ったらいいのかしら。
私たちのことを客観的に見るようになって……今まで当たり前に思っていたことが、
実はとっても不自然なんだと思ったんですわ。幼馴染というだけで、
いつまでも清四郎に甘えているのはおかしいんじゃないかって、
そう思うようになりましたの」
悠理は困っていた。戸惑っていた。
普段となんら変わらない、その場の心地よい空気に誘われるまま、
先刻から睡魔に身を任せていたのだが、その空気が張り詰めたものとなりつつあるのに
肌が気付いてしまったらしい。眠りから覚めてしまった。
目の前で交わされる清四郎と野梨子の会話が原因であることは言うまでもない。
悠理は、清四郎の言うように、ずっと6人で一緒にいられるのだと、
たった今、この瞬間まで信じていた。だがしかし……
『変わらないものなんて、ありませんわよ』
野梨子のその一言が、悠理の心に波を立てた。
悠理は想像してみた。5人のいない生活を。……いくら想像を膨らませても、
その情景は彼女の目の前には浮かんではこない。
だがしかし、それは近い将来の現実なのかもしれないのだ。
何故だか鼻の奥がつんとする。熱いものが眼の裏側に押し寄せてくる。
事務所の扉が開いたのは、溢れて来た涙が眦を零れ落ちそうな、そんな時だった。
「本格的に降って来たぞ……なんだよ、悠理は寝ちまったのか?」
いつもと変わらない、魅録の声。
少し引きずるような足音が悠理が丸まるソファーの脇で止まった。
ビニール袋がガサガサと音を立てている。
(……ん?)
漂って来た匂いに思わずくん、と鼻を鳴らして薄目を開けた。
そこには、肉まんを半分に割って、自分をニヤニヤしながら眺めている魅録の姿があった。
「やっぱりな。匂いで眼え覚ますだろうと思ったよ。ほら、お前の肉まん」
受け取りながら、悠理は考えていた。
いつかこの男も、変わってしまうのだろうか? と。
【続きます】
>有閑探偵社
おおっ。なんとなくアヤシー感じになってきましたね(^^)
最初の時は六人の関係が固定されているのかと
思いきや、これから野梨子が爆走かな?
>有閑探偵社
可憐と美童も×ありなんですね!
清×野は微妙?
>有閑探偵社
おお、やっと始まってくれました。待ってましたよ・・・・。
「ずっとそばに」はどうなったのかなあ。再開希望。
>135
ageてはだめでつ
心の中ではageでも、スレはsageるのでつ
ああ、でも漏れも「有閑探偵社」戻ってきてくれて嬉しい
他の作品もカムバーック!
>心の中ではageでも、スレはsageるのでつ
うんうん(^^)
わかるわー。心の中はアグエだよね!!
「秋」さん、そろそろどうですか?
「ずっとそばに」さん、いいところで終わってますよ?
野梨子メインが多いのでその他の登場人物主役も
待ってますよ>all
少し前からここで盛り上がっていた、「有閑キャッツアイ話」で
リレーをしてみたいと思い、1話目を書いてみました。
うまくまとめきれなくて少し長くなってしまってごめんなさい。2レス分アップしてみます。
どなたか続けて下さいませんか?
「ったく、ふざけやがって!」
短髪の男はその鮮やかな色の髪をかきむしりながら、そう吐き捨てた。
目の前には一枚の紙切れが置かれている。それを囲んで、
三人の刑事達は頭を抱えていた。
この頃巷を騒がせる窃盗団が、幾度目かの予告状を送りつけてきたのである。
毎回鮮やかな手口で目当ての品を奪い去る彼らの目撃情報は極端に少なく、
辛うじて信憑性の高い情報は、三人組であるらしいというものだけだった。
一度だけ現場に遺留品が残されていた事がある。コミカルな顔をした猫の
ブローチである。それを嗅ぎつけたマスコミは、面白がって彼らにこんな名前を付けた。
「キャッツアイ」と。往年の人気コミックにその名は由来する。
彼らが狙う品々は実に珍妙で、高価な宝飾類であったかと思えば次には
何ということも無いTシャツ(ただしサイン入り)、はたまた価値を知る者さえ少ない
典雅な茶道具を、と言った具合に予測を立てることさえ難しい。
面白半分に盗みを働き警察を小ばかにするような彼らの姿勢に、魅録は心底
苛立っているのである。
しかも毎回必ず警察に送られてくる予告状。これが三人の刑事達の悩みの種でもあった。
そこには毎回、暗号じみた一見意味を持たない文面が綴られている。
事が起こるまで、その意味するところがわからない。
予告状に体裁を借りた、警察への挑戦状である。
『昼と夜 異なる顔の
斑猫の 西日を指して
牙を剥くとき』
紙切れにはそう記され、その下に明日の日付があった。
「何だよこりゃ。散文か?詩か?猫って何だよ畜生」
魅録のぼやきの間を縫うように、派手な金色の髪の男が口を挟む。
「昼と夜で異なる顔、かぁ。女性なら理想的だよねぇ、昼間は天使の如く、夜は娼婦の如く、
なんて・・・」
二人の男からギラリと睨まれ美童は口を噤んだ。
「この字面からは、スペインを連想しますがね」 黙考していた清四郎がぽつりと呟いた。
「西斑牙、でスペインと読ませますから。偶然かもしれませんが」
「スペイン、ねえ。そういえば、先週スペイン大使館でパーティがあったんだけどさ、
大使の娘っていうのがとびきりの美女でさあ。すごい宝石着けてたな、大粒のアレキサンドライトの
ネックレス。代々家に伝わるものだ、って言ってたけど、それよか彼女の方がずっと魅力的だったなぁ」
うっとりと思い出すかのような美童を呆れて眺めつつ、清四郎はふと真剣な顔になる。
「・・・それですよ、美童」
「え?マリアちゃんが何だよ」
「そうじゃない、アレキサンドライトですよ。『昼と夜、異なる顔の』これはアレキサンドライトのことじゃ
ないですか?」
椅子から飛び上がらんばかりに魅録は勢い込んだ。
「スペイン大使館の娘が付けてるネックレスか。そいつだ!間違い無い、行くぞ、清四郎!」
言うが早いか部屋を駆け出して行った。行動派の同僚を追いかけるべく清四郎も席を立つ。
「男の尻を追い掛けるなんてなあ、ぼくの性に合わないよ」 そうぼやく美童に清四郎は声を掛けた。
「ここだけの話ですがね、『キャッツアイ』は女性三人組じゃないか、という目撃情報があるんですよ」
美童はぱっと顔を上げた。
「男にしては華奢で小柄だってね。さ、行きましょうか」
俄然張り切る美童を伴い、同僚の後を追った。
****どなたか続きを宜しくお願いします****
>141
とうとうきましたか!!すっごい読みたかったんで感激…
続き書きたいのは山々なんですが私には…到底ムリm(__)m
なんで作家さん方、お願いします!!
ところでカポーは清×悠、美×野、魅×可でつか。
わたしはだいの清×悠スキーなんで↑キボン。差し支えなければ
R指定でお願いでつ。
>>139 おお素晴らしい!!
続きがきになるよ。
でも私も続きはむりだな(w
理由は言わずもがな。
ごめんなさい(´・ω・`) ショボーン
>142
小ネタの時の流れからゆくと、清×悠、美×野、魅×可が
いいような気がする。
最終的には、作者さんたちにお任せだけど。
>139
キャッツアイ編読める日が来るとはー!
139さん感謝です!!
カポーはどうなんでしょうね。前に出ていた魅×野で
頭脳戦というのが目新しくて読んでみたいと個人的には
思ってますが。書き手さんにお任せします。
>キャッツアイカポ
いっそのことループとかw
美→悠→清→可→魅→野→美 (順番はテケトーです)
ドタバタしーのお色気ありーのがよいなぁ〜
往年のノリでを大人向けにしたような感じでw
リレーだからカップルは固定の方が書きやすいと思う。
小ネタの流れからいくと清×悠 美×野 魅×可じゃない??
>『昼と夜、異なる顔の』これはアレキサンドライト
アレキサンドライトって光によって色が変わる
宝石なのかな?
たしか太陽光と電気の光とで色が違う宝石だと>アレキサンドライト
違ったっけ
光の具合によって、緑に見える時と赤く見える時が
ある宝石でないか?>アレキサンドライト
ぐぐってみたら、
太陽光→緑
人工灯→赤
キャッツアイもアレキサンドライトも
クリソベリルという宝石の変種らしい
となってました
作者さんすごい
太陽光の下では赤、電気のしたでは緑だったような…
(うろ覚えでスマソ)
捕獲されたら各々で可憐直伝色仕掛けとかv
悠里の未熟な技にも危うく理性を失いかけて悩む清四郎(悶々)。みたいな
あ〜でも魅録×野梨子でもいけるかもv
>152
そーでした…適当言ってスマソ
>可憐直伝色仕掛けとかv
練習風景を想像してワラタヨ
>141の続き、短いですけど書いてみました。1レスだけです。
↓ここから
「今回の謎は、ちょっと簡単すぎましたかしら」
可憐の入れた薫り高いお茶を優雅な手つきで口元に運びながら、野梨子はすました顔でつぶやいた。
「いいんじゃないのぉ?警察のおにーさんたちだって、たまには現場で仕事しなきゃ腕がなまっちゃうわよ」
「あたいだって、たまにはサツのにーちゃんたちと追いかけっこしたいじょ」
可憐に続いて発せられた悠理の、なんとも「らしい」台詞につい笑みが漏れる。
確かに最近、楽な仕事が多かった。警察が予告状に仕掛けた謎を解けなかったせいなのだが、
本当は、それでは彼女たちがわざわざ危険を冒している意味がない。
「それにしても、あのアレキサンドライトがあんなところにあったなんてねェ」
「灯台下暗し、とはこのことですわね」
「いいじゃん、やっと見つかったんだし」
悠理の瞳に宿る光が、すうっと温度を下げる。仕事の直前に彼女が見せる、
どこか冷たい、しかし楽しそうな表情。
今回のターゲットとなる宝石は、彼女たちにとって大切な意味をもつものだ。
意地でも、警察に現場に張り込んでいてもらわなければならないのだ。
彼女たちが「こんなこと」をしている本当の目的を果すために。
↑ここまでです。
ちょっと本家キャッツを意識して書いてみましたが……。
続きをお願いします。
うおー!もう続きが!
一体どんな理由があってこんなことを?
あと警察に居てもらわないといけない理由とは。
想像できん・・・どなたか続きプリーズ!
>>可憐直伝色仕掛けとかv
>練習風景を想像してワラタヨ
私もワロタ(w
「悠理!何度言ったらわかるの?手はこう、もっと誘うように!!」
「そ、そんなの無理だじょ!」
>>156サンの続き。
ところかわってスペイン大使館。
警察手帳を携えた三人の訪問者は応接間に案内された。
「私のネックレスが狙われているなんて、こわいわ」
ほどなく現れた大使令嬢マリアの褐色の胸元には、大粒の宝石が
燦然と輝いていた。
(あれか?)
(うん、間違いないよ)
魅録の鋭い視線に、美童が強くうなずく。
それを見ていた清四郎がマリアに話しかけた。
「失礼ですが、そのネックレスを見せていただけませんか?」
「…ええ」
マリアは留め金を外すために、首の後ろに両腕をまわした。
伏せた長い睫毛と、肩に流れる豊かな黒髪が何とも色っぽい。
(ほら、僕が言った通りだろ)
(何が)
(ネックレスより彼女の方が魅力的だって)
(あのなぁ…)
背後でひそひそと交わされる会話を無視して、清四郎は令嬢から
ネックレスを受け取った。
「確かにアレキサンドライト……ですね」
「先日、母から譲り受けたばかりです。我が家に代々伝わる
もので、これほどきれいに色が変わるものは珍しいとか」
「ふむ」
窓から差し込む太陽の光を受け、宝石は青緑色に輝いている。
「夜の人工灯の下では赤く変わるから『昼と夜、異なる顔の』
ってわけか」
魅録が横から宝石をのぞきこむ。
「マリアさんがこれをお持ちなことを知っている人は?」
「お友達は皆知っています。このところのパーティではいつも
これを身につけていましたから。…あら」
マリアは首をかしげて、金髪の刑事を見つめた。
「あなたとは確か先週のパーティで」
「思い出してくれたの?仕事がらみとはいえ、君みたいな素敵な
女性と再会できるなんてラッキー…痛ッ! 何すんだよぉっ」
マリアの手を取ろうとした美童の足を、魅録が素早く踏みつけたのである。
「ご安心ください。この宝石は警察が必ずお守りしますよ」
騒ぐ美童をさりげなく背に隠しながら、清四郎は不安げな
美しい令嬢に微笑んでみせた。
以上です。続きよろしくお願いします。
>可憐直伝色仕掛け
師匠(可憐)自らのワザはすごそうだw
平常心でいられるのは意外と美童だったりして
(困るなぁ色仕掛けは僕の専売特許だよ?
でも女性に恥をかかせるわけにはいかないよね)
と美味しいところは頂くw
魅録は野梨子の色仕掛けにちょっとドキっとしたものの
野梨子が震えてるのに気付く、とか。結局色仕掛けに
(完全に)ひっかかるのが清四郎だけだったら面白いなあw
>魅録は野梨子の色仕掛けにちょっとドキっとしたものの
>野梨子が震えてるのに気付く
うわっこれツボだなぁ。
是非たのんます>作者さんたち
魅×野は病院坂で読めるから、やっぱり美童と野梨子の運チ同志の捕り物がみたいな。
>魅×野は病院坂で
「恋チカ」もそうだしね。
やっぱり以前のスレの流れで
清×悠 魅×可 美×野 が無難かな。
決めておいた方が作家さんたちも書きやすいと思うし
参加しやすいかな。
「有閑キャッツアイ」続きうPします。
一応、カポーは清×悠 魅×可 美×野 を想定してます。
>>159サンのつづき
『キャッツアイ』達が予告した当日、スペイン大使館では
恒例の春のパーティーが盛大に開かれていた。
「パーティーを中止すればもっと警備がやりやすいのにな」
「『猫』から予告が来たのが昨日の今日ですからね。仕方ないですよ」
清四郎、魅録、美童の三人は目立たぬようタキシードを着て、
パーティーの招待客にまぎれて警備を行うことになった。
ガーディナー建築事務所設計によるスペイン大使公邸は築百年程の
古い建物で、古典様式の内部は目を見張る程の素晴らしさである。
広間には料理もふんだんに用意され、ドレスアップした招待客は
目と舌でご馳走を味わいながらそれぞれ雑談にふけっていた。
今日の招待客はほとんどが日本人だ。
客層も年輩のいかにも上品そうな夫妻に混じり、どこかの令息・
令嬢といった風情の若者たちも笑いながらパーティーを楽しんで
いる。
白い上着の給仕達が銀のトレイの上に飲み物が入ったグラスを乗せて、
客の間を忙しく歩き回っている。日本通と評判の大使夫妻は気さくに
招待客に声をかけて気を配っている。
招待客をチェックしていた美童は清四郎の側に寄り、そっと耳打ちした。
「これと言って不審な動きをしている女はいなかったよ」
「それにしてはずいぶん手帳に女性の名前が書いてありますが?」
「ああ、これはプライベート用だから♪」
「…女だけじゃありませんよ、ちゃんと男もチェックしたんですか?
三人組は女の可能性もあると言っただけで男かもしれませんよ」
清四郎は美童に説教しながら、ふと、大使の娘マリアと楽しそうに話をして
いる一人の男に気がついた。
身長170センチ弱だろうか、小柄でほっそりとした男だ。
こちらに半ば背を向けているので顔はわからない。
片手にグラスを持ち、マリアの話に耳を傾けては時々うなずいている。
男はマリアの胸元を飾る宝石に興味を引かれたのか、彼女に断って宝石を
手に取って見ている。もちろんペンダントのチェーンはマリアの首にかかったままだ。
マリアが清四郎達に気がつき笑って軽く手を振ってよこした。相手の男も
つられて振り返る。思いがけない程きれいな男だった。
張りのある肌に切れ長の大きな瞳、まっすぐに通った鼻筋とひきしまった口元。
女と見間違うばかりのその容貌で彼は招待客の内、若い女性の視線を一心に
集めているようだ。
彼は清四郎の視線に気がつくと、ゆっくりとグラスを口にしながら
挑戦的な視線を送ってよこした。
その瞳が獲物を狙うネコのようにキラリと光った…
<続きどなたかお願いします>
ごめんなさいっ。
タイトルに「有閑キャッツアイ」編入れるの
忘れた!
わかるので大丈夫〜>167
男装悠理・・・かっくいい。ホワン(w
>166
すごーい!悠理は男装の麗人なのね・・・ナイスです。
マリアが悠理に惚れちゃったり、もありかも。
全然関係ないんですが、男装の麗人で思い出したけど
「狙われた学園〜女ともだち・男ともだち〜」で出てくる
ピーターの恋人、高千穂先生のことを途中までずっと男装の
麗人だと思ってた。ピーターの昔の恋人が男装して追いかけて
来てるのかなって。シャツを脱ぐシーンでえっっ男!?て
びっくりした経験あり。って私だけかな?
>170
うーん、普通に男だと思ってたw
でもその設定だと面白いよね。
男装の麗人を男だと思い込んだ可憐が落としにかかる。
>171
そして可憐は再び「末代までの大恥よ〜」と泣く(藁
マツゲがびしばしに濃かったもんね>タカチーホ
あの回は清四郎までいつもよりマツゲ増毛中だった
>あの回は清四郎までいつもよりマツゲ増毛中だった
すみません、激藁です。空腹にこたえます・・・
>有閑キャッツアイ
悠理の男装って肩パット入ってるのかな。
でも前に細い男性タレントがレディス着てるって言ってたし
別にパット入れなくても細い男には見えるのかな。
男と女って首が違うよね。
>175
そういうことが気になるんなら、リレー小説に参加してそこの部分を
フォローする描写を自分ですれば?
その方が重箱の隅突ついてるより生産的だと思う。
誰でも参加できるのがリレー小説の良さなんだし。
>176
ごめんなさい、書き方が悪かったですね。
別に悠理の男装に「いちゃもん」をつけているわけでは
けっしてありません。
ただリレーの続きを書く時に、例えば悠理が清四郎に
追われる時に服を脱いでいく時に肩パット飛ばしたりとか
面白いと思うし、そういった意味で皆の男装のイメージを
聞いてみたかったんです。
>177
そういう風に書いてくれると、意図が分かって嬉しいでつ。
175だけではチョト不気味だったので。
私の場合、ビジュアル悠理はやはり御大の絵のイメージなので、
「紳士は美少年がお好き」に見る通り、悠理は肩パット無しでも
充分男に見えるような気がします。
だから清四郎が悠理の性別に気づくとしたら、首筋をごく近くで
見たとき(プラスその色っぽさにクラーリならなお可w)かなーと。
>>166タンの続き
清四郎が厳しい顔でその小柄な美少年を睨んでいる時、同様に彼を見つめる
二つの瞳がある。黄色のカーテンに隠れる様にして穴が開く程、
マリアと美少年を見つめている。若い女、20歳前後と言ったところか。
魅録はその女を上から下までジロッと観察した。
(身長は165、6位。ヒールを履いているとしたらもう少し下。
髪の色は栗色。豊かな髪をアップにして錐のように尖った髪飾りで
まとめている・・・と)
流れるような黒の艶々としたロングドレスは背中と胸元を思う存分
開けて彼女の若い魅力を外に放出しているようだ。
さっきからカーテンの側から動かずカップルを見つめ続ける事、数十分。
さすがに疲れた様子でふうと嘆息する。
魅録は給仕からワイングラスを受け取ると、つかつかと彼女の側に歩み寄り
グラスを差し出した。驚いた女性が顔を上げると派手なピンク色の頭の男が
立っている。彼の風体に驚いたのか彼女はグラスを受け取りもせず黙っている。
彼女の顔を見た途端、魅録は心の中で手帳に書き加える。
(かなり美人。けっこう俺好み)
「手持ち無沙汰じゃ淋しいだろ。ワインでもあればちょっとはサマになる」
グラスを取るよう即し、彼女の視線の方へ顎をしゃくる。
「知り合い?」
「ええ・・・。彼、私をエスコートしてきたのに、次から次へと女の子に声
かけてるのよ。嫌ね、浮気者って」
「で、ここで黙って唇を噛んでるワケだ」
美女は答えずワインを一口飲んだ。官能的にふっくらとした唇に暗い赤のルージュ
がひかれている。魅録が思わずその唇に見とれていると彼女と目が合う。
「ね?何してる人?」
「何してる人に見える?」
彼女はレーサー、芸能人、デザイナー等さまざまな職業を挙げたが、一つとして
合っているものはない。答えを知りたがる女に魅録は言った。
「警察だよ」
「うそ!?警察・・・って刑事さん!?」
思わず大声が出た彼女の口元をぱっと魅録の手がふさいだ。
「しっ。ナイショだぜ。正体ばらしたらすだれ頭に怒られんだ」
美人はわくわくしてきたようだった。瞳を輝かせて話をする。
「ひょっとしてあれホントなの!?『キャッツアイ』がこの大使館を狙ってる
ってウワサ。警察は『キャッツアイ』に逃げられてばかりなんでしょ?」
厳重に箝口令を敷いたはずなのに、もう情報が漏れている。
魅録は内心舌打ちした。
「今日は心配いらないぜ。やつらが現れたら俺達がつかまえるだけ。
猫には猫らしく鈴のついた首輪でもつけてやるかな」
「すっごーい!あなたがいてくれたらココも安心ね・・・と、あいつったら」
彼女の視線の先で先ほどの美少年がマリアを伴ってどこかに行こうとしていた。
その手はしっかりマリアの肩に回されている。
「もうアタマに来たわ!」
呆気にとられる魅録を尻目に栗色の髪の美人はずんずん美少年に向かって
歩いていき、マリアの目の前で彼の頬を張り飛ばした。
「・・ってえ、少し手加減しろよな、かれ・・」
何か言いかけた彼の頬を美人がまたひっぱたく。あげくに彼につかみかかった。
あわててマリアが止めにかかる。その時、美人の攻撃から逃れようとした美少年
の手がマリアの首飾りに引っかかり、チェーンが引っ張られる。
次の瞬間、
(切れた!!)
魅録は驚いて胸元を押さえたマリアに向かって走った。アレキサンドライトは
怪しく光りながら彼女の胸元をすべり落ち、床の上を転がる。
招待客をかきわけて、宝石を拾おうとした魅録の顔にワインがかけられる。
思わず目を押さえた彼の耳に聞こえてきたのは、ワイングラスが割れる音と
「失礼」と言う美人の声だった。
3レスも使ってしまいました。つづきよろしくー
おおっ、可憐と悠理がカップルのふりをしてるとは目新しい展開!
首輪・魅録(←決定事項w)も登場して、面白くなってきますた。
野梨子はどこにいるんだろーワクワク
>首輪・魅録(←決定事項w)
こ、これが楽しみで・・・・待ち切れんハァハァ
魅禄にワインかけた美人が野梨子かなぁ、とか思ってみたり
ワクワク
リレー小説が!一日でこんなに!
うっうっう・・・うれし涙が・・・゚・(ノД`)・゚・
>首輪・魅録(←決定事項w)
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!!
鈴を着けられる可憐タンにハァハァ
清四郎はいつ悠理が女だと気付くのか楽しみ〜
どんなシチュエーションで気づくのかな。ワクワク
188 :
「有閑キャッツアイ」:03/03/12 01:27
皆様につられて、私もつづきをうpしてみます。
2スレ分使います。
>>181の続き
少年ような風貌をした、美しい少女・悠理と若い女・可憐は
まさに狙い通りとも言うべき笑みを浮かべた。
作戦までのいきさつはこうである。
◇◆◇◆
「シャンデリアに細工。お宝に発信器を付け、
仕掛け発動。暗くなったところをどさくさに紛れて頂く・・・。さすが野梨子ね。
でも警察のやつらも黙ってないんじゃない?」
可憐が訝しげな表情を浮かべる。
「あら、ご挨拶ですこと。可憐が失敗さえしなければすべてがうまくいくんですのよ」
野梨子が髪をすましげに掻き上げながら、皮肉げに言い返す。それに対して可憐も負けじと
にらみ返す。
「まぁまぁ、たまには手応えがなきゃつまらないじゃん。あたいに任せとけよ」
悠理がふたりをなだめると、余裕の表情を浮かべた。
「可憐が失敗したときのフォロー、任せましたわよ」
「はいはい。」
「ちょっとぉ〜あんた達!!」
◇◆◇◆
ワインが魅録の頭に掛けられる。
「失礼」
「な・・・」
ニッコリ笑ったのは黒髪のまるで日本人形のような美少女。
高貴な柄の着物を纏っている。野梨子だ。
彼女のあまりの美しさに魅録は一瞬眼を奪わる。
が、それがまさにミッションスタートの合図とはさすがの彼も予想し得なかった。
可憐が指輪の形をしたリモコンスイッチを押すと同時に
小さな爆発音が起きシャンデリアの仕掛けが発動する。
パーティ会場は一瞬のうちに暗闇に襲われた。
「これは・・・」
突然のことに、魅録は焦る。
キャッツアイの仕業であるということは分かっても
暗闇の状態で動き回るのは帰って危険だ。
無線で清四郎に連絡を取る。
「こちら魅録。すぐに予備電源に切り替えるよう指示を」
「分かってますよ」
清四郎も電源が切られるということを予想はしていたのだろうが
突然のことに声が上擦っているように聞こえた。
数分後。予備電源に切り替わる。
が、そのときにはスペイン大使館の窓は破られ
”アレキサンドライト”も消えていた。
「清四郎、外だ。行くぞ」
魅録は駆け付けてきた清四郎と共に外に飛び出した。
「あ、待ってよぉ〜」
突然のことにあたふたしていた美童も慌ててふたりを追った。
しかし、キャッツアイの姿はすでに何処かに消えていた。
「今回もしてやられましたな・・・」
「くっそぉ〜今度こそ鈴付きの首輪つけてやるからな!!」
「キャッツアイ・・・会ってみたかったな。残念」
三人の刑事はそれぞれの反応を見せながら、その場に立ちつくした。
すみません。最初の予告のところで下げ忘れてしまいました・・・。
首輪に拘る魅録に萌え〜
この後、彼は鈴付き首輪をいつも持ち歩くことになるのかな?w
おおっ。ミッション1終了!
鮮やかな手口だね、キャッツアイ。
美童は会えなかったのね、次はどんな出会いになるのかな
すごいスピードで連載が続いていく。すばらしい〜
>156で言及されていた
>彼女たちが「こんなこと」をしている本当の目的
というのが未消化だったので書いてみました。
強引につなげちゃってごめんなさい。2レス分使います。
>190
「すぐに会わせてあげますよ、美童」
清四郎はニヤリと笑った。スーツの胸ポケットから何やら小さな機械を取り出す。
「ネックレスに発信機を仕込んでおいたんでね。あとは奴らがアジトまで
案内してくれるのを待つばかり」
ふたりの刑事は抜け目無い同僚の顔を唖然として見つめた。
「…計算高い奴だな」
「さっ、行きますよ」
「うまく行きましたわね」
リムジンの後部座席で三人の美女たちは顔を見合わせ微笑んだ。
運転するのは悠理の忠実な執事、五代である。
「で、どうなんだよ可憐?」
ネックレスをためつすがめつしていた可憐に悠理は尋ねた。
やがて小さな部品のようなものを摘み上げ、可憐はにっと笑った。
「あったわよ、発信機。まったく、面白いくらいにこっちの読み通り動いてくれるわ、
刑事さんたち」
赤い髪の男を思い出しながら可憐は言った。
―――ちょっとタイプだったけど…平の刑事なんて、あたしの眼中には無いわ。
「じゃあ、次の作戦にかかりましょう」
日本人形がにっこりと笑った。
「間違いありませんね」
重厚な純和風邸宅の前で清四郎が言う。「この中です」
「でもなあ…ここって確か、議員の山崎浩一郎の家だぞ?
―――その発信機、故障してねぇか?」
「魅録の作った発信機ですよ」 清四郎の返答に魅録は頭を掻いた。
「…けどなあ」
「ま、入ってみればわかることです」
三人は警察手帳を携え玄関へと向かった。
「警察です。ちょっと家宅捜索させて頂きますよ」 玄関先で目を丸くする家政婦を
尻目に、発信機の示す方向へ三人の刑事はどかどかと進んで行く。
奥まった部屋の前で立ち止まった。「…いいか、開けるぞ」
一瞬ののち、ドアを勢い良く開いた三人は拳銃を構え、叫んだ。
「警察だ!そこを動くなっ」
部屋の奥には重そうな本棚があり、それがまるで扉のように開いている。隠し部屋らしい。
その真中で、でっぷりと太った初老の男性が、札束を手にしたまま固まっていた。
「…ったくよぉ。俺らは刑事で、マルサじゃねぇっつうの」
不機嫌そうに魅録は茶をすする。
大物政治家、山崎浩一郎逮捕のニュースは新聞の一面を飾った。
隠し部屋を発見された事で脱税の確たる証拠を掴まれたのである。
「『キャッツ』があそこに、発信機を放りこんだってことですよね」
清四郎は顎を掻く。「何故そんなことを」
発信機は隠し部屋のちょうど裏手にあたる中庭で発見された。外から放りこむことの
できる位置である。
「山崎を逮捕するよう仕向けたってことかよ」
「なんか恨みでもあったんじゃないの?」 気が無さそうに美童が言った。
「それよか、マリアちゃんあれからずっと伏せってるんだよ〜、心配だなあ」
美童の言葉を無視し、二人の刑事は首を傾げていた。
あっ書き忘れました
どなたか続き宜しくですm(__)m
ええっ!そう来たか。う〜む、面白いぞ。
私もリレーを一つ書いたがこの展開は読めませんでした(^^)
今、前スレをマターリ埋め立ててます。
埋め立てを短時間にやると鯖に負担がかかるため、
点呼がてら1人1レスずつということでやってるので、
気が向いた人は参加してね〜
>>194さんの設定をさらに広げてみました。
続きを2スレ分うpします。
>>196 =剣菱邸=
大財閥の豪邸では、祝杯があげられていた。
「ふふっ、これがアレキサンドライトか・・・綺麗ね」
可憐は鮮やかな手口で手に入れたそれを光に翳してみる。
光が先程とは違った色を写し出す。
「でも・・・これがわたくし達の本当のお父様が残したコレクションのひとつですのね」
「そうだな。コレクションをすべて集めさえすれば、本当の父ちゃんがあたいたちに遺した
死のメッセージに辿り着く・・・」
「そうね。それまではどんな妥協も許されない
あの議員のおじさんには悪いことしたけど」
「はい。可憐”お姉さま”」
野梨子がにっこり微笑みを浮かべる。
「ふふっ。手加減はなしだぜ。”姉ちゃん達”」
悠理は不敵な笑みを見せた。
お互いそんなことを言い合いながら、ワインのグラスを掲げる
三人は決意を新たに、次のターゲットの調査に取りかかる。
彼女達のそれぞれに父の遺した形見が光る・・・。
そう、これが三人の動く本当の理由だった。
三人を結びつけたのは、この形見だった。
裏側に彫りつけられたメッセージとイニシャルが
彼女達を再会させた。
それぞれの家に預けられ、その身を守られた彼女達が・・・。
可憐の胸には太陽の形のネックレス
野梨子の耳元には月の形のイヤリング
悠理の指には星の形のリング
いずれも三大宝石のひとつとして、どこかの王家に伝わってきたという
高価な代物ばかり。
三姉妹はその宝石を手にし、自分達が存在する意味を探し続ける。
父の遺した本当のメッセージを求めて・・・。
=桜田門=
「でもさぁ、マリアも綺麗だったけど、魅録にワインを掛けた日本人形みたいな
女の人も綺麗だったよなぁ」
美童は思い出したようにうっとりしている。
「ったく。何寝ぼけたこと言ってるんだよ。
キャッツを逃したせいで総監にこってり絞られたってのに」
「そういう、魅録の頭には栗色のソバージュの美人ががいるんじゃないの?
あの手の女性は魅録のタイプって感じだったし」
美童は笑みを浮かべながら皮肉っぽく言葉を返す
「あ・・あのなぁ・・・」
魅録は図星であることを必死でごまかそうとする。
「まぁまぁ。でも、アレキサンドライトがターゲットになったということで
王家の代物も狙われるという目星は付きましたけどね」
清四郎がふたりをなだめつつ、ノートパソコンの方に眼を移す。
「それにしても、綿密に練られた手口だよ。シャンデリアに細工の証拠は
殆ど残ってなかったぜ」
「本当に見事です。山崎の脱税はともかく予備回線に切り替わる時間まで計算に入れてますよ
どこからこんな情報得てるんでしょうかね」
「魅録みたいにキャッツもハッカーの才能があるのかな?」
美童がお茶を口に含みながら考え込む。
「とにかく、次の動きを待ちましょう」
「ああ。」
「ふふ。キャッツさん。今度こそ逢えるよね」
三人は新たな決意をそれぞれの胸に秘めた。
続きお願い致します。本家と少し設定被ってしまいましたが・・・
>>77 生徒会室に甘いキャラメル・ティーの薫りとパソコンのキーを叩く音が流れていた。
黄桜可憐は定例総会の議事録をワープロで入力しているところだ。
最後の「。」を打ち終わると、生徒からの陳情書に目を通していた生徒会長を呼ぶ。
菊正宗清四郎は彼女の手元を覗き込むと手早く画面をスクロールさせ、
瞬く間にいくつか間違いを見つけ、修正の指示を出す。
そして又自分の席へ戻り、再び陳情書に目を通す。
−−−−−−−−−−以前の彼ならばそんな行動をとっていただろう。
彼は液晶画面を見つめたまま前髪のすだれさえ凍ってしまったかのようだ。
そんな彼の姿を制服でも色っぽい書記が面白そうに眺めている。
「どう?やめとく?」
先程までのクールな外見とは打って変わって、耳まで赤くした初心者マークの男は
辺りをキョロキョロ見回してから言った。
「いえ…。でも、恥ずかしいですね、ここでと言うのは…」
「二人きりだもの、恥ずかしいことなんて何もないわよ」
と言いつつ、なぜか可憐の顔もほんのり赤い。
どうやら清四郎の緊張は伝播するらしい。
「えー、では、ですね。いっ、いきますよ」「どっ、どうぞ」
挑戦者は美しいチャンピオンの肩をがしっと掴んだ。
おかっぱの美少女・白鹿野梨子は愛すべき我が生徒会室の前で固まっていた。
目の前のドアの隙間、わずか5cmの幅の空間で繰り広げられている
これは、一体何なのだろう。これは、これは、これは………
体が怒りでカタカタと震え出した。
(い、いったい、な・ん・な・ん・で・す・のっ!! 清四郎!!)
悠理に懇願され代筆した読書感想文が、彼女の手の中でビリビリと破かれ
いくつもの白い雪となって舞い落ちた。
可憐の唇に自らの唇をくっつけながら清四郎は黙考する。
(よ、よし、いい感じだ。この状態をあとどの位保てばいいんだろう。
あの本には書いてなかったが。一分、二分か?三分は無理かもな。
いや、死ぬ気でやればその位いけるかも… )
前回は最後まで可憐にリードを取られていた清四郎は汚名を挽回するため
自宅で必死に練習を繰り返した。
が、いざ実践しようとすると思いがけない落とし穴が待っている。
王者・可憐は相手の異変に気がつくとパチッと目を開けた。
あわてて清四郎を自分から引き剥がすと、彼の顔は白くなり、ぐったりと可憐に
もたれてきた。
「やだっ。息止めてたのお?していいの!息、していいのよお、清四郎ったら!」
ぜいぜいと肩で息をしていた清四郎はぼんやりと可憐を見上げる。
「…していいんですか?よかった…。正直死ぬかと思いました」
「3分も息止めてたら死ぬわよ、そりゃ」
「なるほど…そうか、していいのか。…でも、どうやって?」
「鼻でするのっ」
「…鼻…か」
清四郎はがっくりと肩を落とした。まだまだチャンピオンへの道は遠い。
うなだれた男に悪いと思いながらも、可憐は笑いを噛み殺すのに苦労していた。
しかし、図体の大きい男がしょんぼりしているのは中々可愛らしくていいものだ。
そんな意地悪な事を考えていると清四郎ががばっと顔を上げた。
「こんなことじゃだめだ、可憐!」
「えっ、なっ、なあに?」
「特訓しよう。いや、してください!」
「と、特訓って、んっ、ん〜〜〜っっっっっ」
(い、嫌ですわっ、清四郎!そんなに何回も可憐と……。お願い、おやめになって!)
野梨子は壁とドアの隙間に張付いていた。嫌なら見なければいいのだが、悲しいかな、
清四郎への思慕よりも好奇心が勝って目が離せない。
ここから見る限り、彼は可憐の教えを忠実に守って実践しているようだった。
(ああっ。必死で鼻で息をして…。偉いですわ、清四郎。早速実践してますのね。
そうですわ、吸って吐いて、吸って吐いて…。そう、そうです、お上手ですわっ)
いつのまにか野梨子は清四郎の呼吸に合わせて息を吸ったり吐いたりしていた。
唇を奪われてもまだ笑いが込上げてくる可憐だったが、あくまでも大真面目な彼が
ちょっと可哀想になった。
清四郎の首に腕を回すと、今まで彼の好きにさせていた唇を攻めに転じる。
薄桃色の舌を出すとソフトクリームを舐めるようにして、彼の薄く品のある唇をなぞった。
たちまち清四郎の全ての動きは止まってしまう。
それをいいことに可憐は清四郎の唇を甘く噛み、吸い、舐めて味わう。
動きを停止していた男がのろのろと活動を再開した。
可憐の髪の中に両手を入れ、その中に顔を埋めてふっと息をつく。
それから彼女の瞼に、なめらかな両頬にキスをし、そして最後に再び
唇をふさいだ。
(あら…)
さっきより全然いい感じじゃない、と可憐は思う。
丁寧な口づけではあるが一方で好ましい性急さを感じる。
思いがけず彼の舌が入ってくる。二人の舌が絡みあった。
可憐の柔らかい舌が清四郎の理性を痺れさせる。
思わず清四郎が可憐を抱き寄せた。
一段と熱っぽいキスをすると彼の手が別の動きを始めそうになる。
その途端、可憐の鶴の一声が飛んだ。
「すとっぷ!ここまで。おしまい」
清四郎は顔を上げた。途中で止められたことへの抗議の色がその瞳に見てとれる。
「ずいぶん意地が悪いんですね、可憐は。ここでストップはないんじゃないですか」
「だ、だって、誰か来るかもよ、そろそろ。他の奴らに見られたくないでしょ」
「それは…そうですが」
不満そうな顔をしていたものの、のびをするとスッと元のクールな顔に戻った。
さすが二重人格とあだ名される所以である。
「可憐」
「ん?何よ」
「またよろしく頼みますよ」
ニヤッと笑う男の顔に可憐は少々ドキッとする。
(まさかウブな男のフリじゃないでしょうね。純情なのか狡猾なのか、ホント
わからないわ、こいつは)
(あぶない、あぶない。又、うっかり可憐に一本取られるところでした。いいところで
ストップがかかってよかった…)
ドアの向こうでは野梨子が顔に二本のスジをつけて立ち尽していた。
その足下には無数の白い紙吹雪が散らばっていた-----。
今回は以上です。ツヅキます。
>有閑キャッツアイ編
設定ができてきましたね〜
次なる闘いが楽しみです
>可憐さんにはかなわない
清四郎相手に愛のレッスンが始まるとは!
この先どこまで行っちゃうんでしょうw
飲み込みの良さそうな相手だから、可憐も張り切ってしまいそう
>可憐さん
野梨子の内心の声援にワロタ
ふたりが次のステップに進む前に野梨子の猛反撃がありそうだ。
ウブい清四郎も新鮮。
>有閑キャッツアイ編
悠理達は姉妹という驚愕の事実が!やっぱり可憐が一番上?
しかしこの美人三姉妹の両親はよっぽど美男美女だったんだろうなあ
うらやますい…
>可憐さんにはかなわない
清四郎に一言言いたい!
前回の黄桜邸で一体何を見ていたのかと小一時間…
やはり恋のボンクラゆえ?(^^;
>>
http://that.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1035894419/677続き 開発棟に到着したふたりは、豊作のIDカードを使ってガラスの自動ドアを潜り抜けた。
「重役でも、一応カードが必要なんだ――ここは、うちの会社の要だからね。さ、服が
汚れたらいけないから、それを着ておくといいよ」」
豊作はロッカールームへ魅録を連れていくと、白衣を手渡すと、自らも袖を通した。
どこか華やかであった社屋とは違い、この開発棟は観葉植物ひとつあるわけでなく、
リノウムの床と白い壁が続くばかりであった。すれ違う人間という人間が白衣を着用して
いる。病院の内部に似ているが、それに増しての殺風景である。
「今日の午前中の予定は、この研究棟全てを視察し、現場の声を聞くことなんだ」
はじめに案内されたのは、パソコンばかりがずらりと並ぶ広い部屋だった。年齢も性別も
統一性の無い白衣の人間が、パソコンの前に座り、なにやら黙々と操作している。
「ここで、研究者たちが出したデーターの処理と解析をしてる」
そう説明され、魅録もためしにモニタを覗いてみるが、意味の取れぬ数字や英数字、
放物線を描くグラフたちが並ぶばかりだ。正直にそう言うと、豊作もまた「僕もさっぱりさ」
と言って笑う。
彼自身が優れた研究者である必要はないのだ。彼の仕事は、研究者が優れた環境で
優れた結果を出せるように、経営者として援助すること。それを実践できているかどうか
を直接調べることが、今日の査察の目的であった。
確かに、研究者としても高みから経営者が命令してくるよりも、成果を直に見に来てく
れた方が奮起できるというものだ。
(おじさんとは正反対だよなぁ)
大らかに、どんと構えて社員に全てを任せる万作とは違うが、豊作もまた、よい経営者
には違いないだろう。この人に全てを託そうと部下に思わせる万作に対し、この人と一緒
にやっていこうという気になる豊作。どちらも剣菱の名を享けるに相応しい。
ふと、魅録はかの婚約騒動のときの清四郎を思い出した。
清四郎が剣菱の采配を揮ったときは、がちがちのシステマチックな経営であり、正しく
はあったが冷たく、反発を呼ぶばかりであった。自分にとっては清四郎は越えられぬ壁で
あり、常に目標であるが、見方を変えれば、清四郎もまた未熟な子供なのだ。
――尤も、もし清四郎が同じチャンスに恵まれたとしたら、同じ轍は踏まないだろう。
自分を遠く越え、1人の男となった親友。最早彼は、まだ少年の香りを残した以前の彼
ではない。
さてその部屋を去り、次に向かったのは上の階の部屋だった。
引き戸式の扉を開けた瞬間、突然喚き声がして、豊作は立ち止まった。
「それは無駄だよ! 僕たちに求められている課題ではない。そんなことに割いている
時間があるならば、今、手に掴みかけている研究を確かなものにしないと。」
「無駄なもんか。確かに遠回りになるかもしれないけれど、将来、絶対この研究所にとって
役に立つ。カテーテルは、今僕たちが研究しているリザーバーだけじゃあない。もし新素材
の研究に成功すれば、IVHはおろか、ガンツにだって、A−ラインにだって応用がきく」
「それが有用な研究なのは僕だって認めるよ。だがね、社から設定されている研究の
期限は、すぐそこまできてるんだ。そろそろ生物実験のデータも出さないといけないんだぞ」
入ってきた豊作と魅録の姿に気づかず、三十代前半の男がふたり、なにやら喧々囂々
議論している。なにを揉めているのだろうか。その周りで、他のスタッフたちがなんとか
二人を宥めようと苦労している。
「まあまあ加瀬さん、そうムキにならなくとも」
「室長、ね、ちょっとクールダウンしましょうよ」
髪を短く刈り、洒落た眼鏡をかけているのが加瀬、やや長めの髪と長身の青年が室長で
あるらしかった。
「なんか……取り込み中のところみたいですね」
「うーん。――おい君」
豊作は、ちょうど扉の近くにいた青年に声をかけた。
「ん? ――あっ、専務っ!?」
なんだ、この取り込み中に、と胡乱な眼差しで振り返った青年は、しかし豊作の顔を見た
瞬間、慌てて背筋を伸ばした。
「み、皆さん! 専務がいらっしゃったぞ!」
青年の声に、人々は慌てて振り返った。熱い議論を交わしていた男二人もはっとして口論
をやめた。
「ようこそ、いらっしゃいました。早かったですね?」
まず挨拶したのは、先ほど争っていたふたりの男の片割れだった。白衣に胸ポケットに
「室長・高田」と記されたネームをつけている。研究員たちは一様に頭を下げて挨拶をし
つつも、豊作が伴った青年に気をとられている様子だった。
「常務、そちらの方は?」
高田が代表して聞くと、「僕の妹の友達」という豊作の答えに、研究員はあんぐりとした。
「ってことは、高校生!?」
剣菱のお嬢様がまだ高校生なのは社員どころか世間が知るところである。
(――俺ってそんなに老けて見えるのかな)
それまで、社会人などに見られたことのなかった魅録は、密かに傷ついた。確かに、普段
のパンクな出で立ちでは、社会人に見える筈もないだろう。だが、髪を黒く染めて丁寧に撫で
つけ、また上質な背広に袖を通した今、彼を親の脛をかじる高校生に見える人間はいない。
しかも、背広の上に着ている白衣が、これまたよく似合っていたのだ。ときおり見せる悪戯な
表情は真面目サラリーマンにはほど遠いものであるが、洒脱な研究者という印象を相手に
抱かせるには充分だった。
「なにやら揉めているみたいだったけど……不味いことでもあったのかい」
ようやくこちらの存在に気づいてもらえた豊作は、苦笑を湛えながら聞いた。すると、研究員
の面々もまた苦笑を浮かべる。どうやら高田と加瀬の喧嘩は毎度のことらしい。
「いや、研究は順調ですよ。この分だと遅れも早々に取り戻せる筈です。ですが、研究の嬉しい
副産物の扱いでちょっと意見の食い違いが出来て」
「嬉しい副産物?」
「この間、加瀬さんが、カテーテルの新素材について新しい着想を得たらしく…これがなかなか
面白い発想で」
だがその発想を形にしようとすると、現在のプロジェクトとは若干趣旨の外れる研究になって
しまうのだという。それを、研究のリーダーである高田が指摘しているうちに、お互いに熱くなっ
たといくわけだ。
「で、ちなみに何がわかったんだい?」
思わず豊作が問うと、加瀬が我意を得たりとばかりに身を乗り出した。洒落たフレームの
眼鏡が反動でずれるが、気にした様子もない。
「人間の血管の屈曲率についてですよ」
そういって、加瀬はなにやら細長いストロー状のものを取り出した。これが、先ほどから
話題になっている、カテーテルだろう。その管の中に、更にワイヤー状の物が通っている。
「カテーテルの中にあるガイドワイヤー……これですけどね、これが血管の中で屈曲する率は
素材によって違うんですが……わが国の病院が好んで使う大手外国メーカーが出している
既存のデータは、全て欧米人の体から算出された結果なんです。だが、僕の研究では、日本
人の血管の柔軟性と弾力性、そして屈曲は、僅かに欧米人とは違う。それが、医原性心筋炎
などの原因の一端になってるのではないでしょうか」
その発見を、ぜひ新しい商品に生かしたい。
熱弁する加瀬に、豊作は難しい顔をした。
研究者としての加瀬の熱意は、むしろ好ましいものであった。だが、経営者としては問題は
山積みである。
「加瀬君。その研究の成果が出るのは、いつぐらいですか?」
彼がそう言った途端、加瀬は顔を強張らせ、高田は『ほら見ろ』といわんばかりの顔をした。
「――どれほど上手くいっても半年は必要です。予想では、一年ぐらいかかるかも……」
豊作は渋面を作った。
傍で見ていた魅録は、他人事ながらハラハラした。自分は何の関係もない人間である。
加瀬の研究がどれほどすごいのかも分らない。だが、先ほどの加瀬の表情を見ていると、
無条件で応援したくなるではないか。それは、自分の夢を語った豊作に対して抱いた感想
と似ている。元来、魅録は情に厚いのだ。
「――よし、ならば半年だ」
「「専務!!」」
歓喜の声や、非難の声が一斉に上がる。
「天下の剣菱が、研究のひとつ自由にさせてやれないなんて恥ずかしいじゃあないか。それも、
確実に将来わが社の利益になる研究だ。――それでも、僕が待ってやれるのは半年。きっか
り半年だ。早く新商品を発表しないと、他社に追いつかれてしまうからね」
「あ、ありがとうございます!!」
加瀬はうわずった声で礼を述べる。見ると、目尻に涙まで浮かびかけていた。余程、この
研究に力を注いでいるのだろう。
高田といえば、苦笑を浮かべ、「仕方ない、専務がそういうのならば、僕たち他のスタッフ
も協力するしかないな」と言った。豊作の人徳が伺えた。
ほんわかとした穏やかな空気が流れ始めたそのとき。
別の女性スタッフが突然、その場の雰囲気に似つかわしくない悲鳴に似た声をあげた。
「も、モニタが暴走して……ウイルスっ!?」
瞬間的に硬化した一同の中で、唯一動くことが出来たのが、先ほどから大人しく話を
聞いていただけの青年――魅録である。
彼はすぐに件のモニタに駆け寄り、3秒ほど眺めたのち、いきなりパソコンを置いている
机の下にもぐりこんだ。唖然と見守る人間の中で彼は――なんと、予告もなしに電源を
引き抜いたのだ。
ぶち、という厭な音を立てて、モニタの画面は真っ黒になった。
「な、な…なにをするんだね、君!」
うろたえたまま豊作が言うと、魅録は肩をすくめた。
「被害の増大を防ぐためです、豊作さん。電源が入ったままでは、あの形のウィルスは
無尽蔵に動き回って、Cドライブはおろか、Dドライブのデータまで食い尽くしますよ。
……それより、さっき入ったパソコンばっかりの部屋の方は大丈夫なんですか?」
指摘され、はっとした顔で豊作は部屋を出て行った。魅録も後に続いて先ほどの部屋に
入ったところ ――研究員一同、悲鳴を上げていた。
魅録は、先ほどと同じことをそこにいる30余名に指示すると、まがりかりにもパソコンに
ついてを専門とする職業についているせいだろう。高田たちよりは早く事態を把握し、
無駄口を叩く前に魅録の指示にしたがって、各人が自分のパソコンの電源を引き抜いた。
「またか……」
隣で、豊作が苦々しく呟くのを、魅録は聞き逃さなかった。
ようやく自体が一段落した頃。
システムのセキュリティを任せている会社がやってくるまでの間、魅録は豊作に頼んでスタッフ
を全員外に出してもらい、一台のパソコンの前にすわった。そして、神業的なタッチでキーボード
を走らせ、どこがシステムの穴だったのかを探す。
それを心配そうに背後から見る豊作に、魅録は聞いた。
「”また”と言いましたね」
「え?」
豊作の肩が揺れたのを、背後の気配で知る。
魅録は嘆息した。まだ若い豊作に負わされたものは、思っている以上に重いものらしい。
「これも、さっき言ってた『妨害』の一種なんでしょう」
得意がるでもなく、興味本位でもなく、静かに指摘して見せた魅録に、豊作は逡巡したすえに
――頷いた。
逡巡したのは、次に続く魅録の言葉を予想したからである。
「豊作さん。俺に任せてみてくれないかな」
妹と、その友達の高校生とは見えぬとんでもない能力は、豊作の知るところである。
だが、自分の会社のトラブルであるという彼の自尊心と、彼らを醜い争いに巻き込まれたくない
という良心が、豊作を躊躇わせた。――だが、次の魅録の言葉に、彼も心を決めた。
「頼みます、豊作さん――俺は、ちょっと頭にきてんだ」
清四郎に対する密かな挑戦など、そのときの魅録はもはや頭になかった。
男性ふたりが、めらめらと闘争心に火をつけていたその頃。
打って変わって、そのときの悠理というと。
「君、なんていう名前なの? 名札してないけど」
「いいなぁ、専務は。こんな可愛い子を秘書にして。」
「こんど、秘書課とコンパしたいんだけど、どうかな」
新し入った秘書はえらく美人だ、という言葉を聞きつけた男性社員に囲まれ、引き攣りそうに
なる笑顔をなんとか浮かべながら、我慢の尾が切れる一歩手前で、ぶるぶると震えながらも
耐えていた。
続きます、を入れ忘れました。すみません。
わ〜い!『秋』に遭遇だい!
おっかえりなさーーい!!
魅録の鮮やかなキータッチに萌え〜です。
あと悠理の秘書、かわゆい。次回ももっと秘書させてください!
>秋の〜
ビームの茄子サンor技師サンどすか?
タイムリーなネタに感心しきり。次回に期待。
>220
いんや、クスリやさん、という可能性もあるかもよ?
>秋の手触り
カテーテルとか私には普段接点のない医療機器の開発現場を
垣間見られてうれしいです。ウイルスが暴走しだしたら電源を
引っこ抜くというのはキー操作が不能になってやむを得ずの
処置なんでしょうね。なるほど…と思いますた
しかし現在入力中のデータが…涙を誘います(ToT)
「秋」待ってますた。
すごいなー。話のバックグラウンドがめちゃめちゃしっかりしてる。
皆さん旧スレ点呼はおすみですか?
まだでしたら、お散歩ついでに是非どうぞ…
>秋
豊作さん萌え〜 かっこよすぎる〜
>可憐さん
顔に二本スジの野梨子萌え〜 清四郎とのキスおいしそうだ〜
>可憐さん〜
清四郎と可憐のキスシーン、いい〜。
でもこの先も可憐がコーチするのかしら。
私は是非そうして欲しいけど、清四郎の男のプライドは・・・・・・
いや、可憐なら清四郎のプライドを傷つけずにうまく誘導してくれるはずね!
>226
いや、是非清四郎はお先にすませておいてほしい。
でないと男のプライドが・・・。
でも誰で?野梨子?そんな使い方はひどすぎ?
どうしに山崎渉が!このレスの次に山崎が来るに10000点。
>228
あ、しもた。つい。気にしないで。
>227
清四郎は可憐で「男」になってほしいな。
彼女のブラウスのボタンをはずす清四郎が見たい。
魅録と悠理のその後も気になるのよ〜>可憐さん
考えてみたら未経験なのは清四郎と野梨子だけなのね。
悠理に先を越されてるとわ・・・かわいそすぎる清四郎。
>217の続き
染色液の汚染を受けない栗色の髪は艶やかで、眸を縁取る長い睫の先まで、光沢
を放っている。
眸の色もまた、日本人にしては薄い。硝子玉のように透き通っているにも関わらず、
その琥珀の輝きは、人形のそれのように無表情なものではなく、むしろ、少年めいて
凛としている。
厚くもなく、薄くもない唇に重ねられた彩は淡い。まったく男を誘わない色だからこそ、
白雪を汚すように口吻けたくなるのだ。
クールビューティ、甘さのない極上の美人とはこういうものを言うんだろう。
「今夜、ぜひ僕とご飯を食べませんか」
剣菱精機 マーケティング部の若きチーフは、数々の女性をおとしてきた甘い囁き
で、秘書机に座る名も知れぬ美しい女性を誘った。
そう、この新しい秘書の名前を彼は知らない。さっき名前を聞いたところ、狼狽し、
口ごもるばかり答えてくれなかったのだ。慌てて秘書の中でも中堅である金井が
「この娘は田中というんですよ」と取ってつけたような説明をしたが、あの様子では
本名ではないだろう。
いったい、どういった素性の女性なのだろうか。
先ほどから、幾度も田中さん(仮)をフォローしていた煩い金井も、今は呼び出されて
この場に居ないため、この秘書室には、自分と田中さん(仮)のふたりきりである。
絶好のチャンスだ。しかし、こちらからいろいろ話し掛けているのに、相手からは全く
返事がなく、マーケティング部チーフ(八代儀一26歳・独身)は、ますます燃え上がった。
見ていると、どうやら小刻みに震えている――緊張しているのだろう。
八代の頬がだらしなく緩んだ。
自慢ではないが(いや、はっきりいって自慢以外の何者でもないが)、八代は学生
時代からよくモテた。顔は整っている方だといえたし、なにより話術に自信がある。
そのため、彼は彼女の様子を都合の良いように解釈した。
(こんなに震えちゃって……かわいいなぁ)
むくむくと嗜虐心が湧き上がってくる。八代は調子付き、秘書机の上に身を乗り出し
た。はっとして体をずらそうとする彼女の肩口を捉え、耳元で囁く。
「そんなに震えて……そそられるね。僕が怖い?」
ドカ。
次の瞬間、矢代儀一(26歳・独身)の身を激しい衝撃が襲った。
音に驚いてやってきた金井が見たものは、くっきりと拳の痕をつけ、幸せそうにニヤ
けている八代と、怒髪天を衝く勢いで怒り狂っている、真っ赤な顔をした田中さん(仮)
こと悠理の姿があった。
「な……お嬢様っ?」
うろたえる金井に、悠理は怒りのままにまくしたてた。
「もー、一体なんなんだよ、この会社のやつら! 訳わかんないこと言って、やたら体
摺り寄せてくるんだけど!」
もしや、自分が会長令嬢だってバレたのでは……と悠理は疑った。
前に、剣菱飲料に査察に行く父親についていったところ、次期会長職を狙う、野心に
溢れた若者たちにしつこく言い寄られた経験があるため、今日は身分を隠していた訳
だが。
「この八代だか田代だかしんないけど、気絶してるだけだから大丈夫だよ。喧嘩慣れ
してるあたいがやったんだから、間違いない」
「喧嘩なれしてるって……お嬢様って本当に、専務が言ってらした通りの方ですのね」
金井は苦笑した。
それから彼女は有能な秘書らしく、てきぱきと医務室に電話し八代を引き取らせた。
八代が傷害事件として悠理を訴えられる筈もないから、この件はこれで終わりである。
――あっさりとそう割り切ってしまえる彼女の案外強い心臓は、間違いなく秘書向き
だろう。
「でもお嬢様、あんまり派手に動くと、それこそ正体が知れますわよ」
「だってぇ」
口を尖らす悠理に、やっぱり口を開くと年相応の――いや、それよりも幼く見えるのね、
と金井は内心で笑った。黙っていればその美貌が際立ち、八代のような男を大量に
引き寄せてしまう程であるが、やはりこうやって生き生きとしている悠理の方が魅力的
である。――出会ったばかりだが、金井はこの天真爛漫なお嬢様を好ましく思っていた。
苦労症で、最近少しずつではあるが、窶れてゆく一方の専務も、これぐらいのびのび
されたらいいのに――豊作に思いを馳せ、ため息をつく。
「お嬢様。誘われたときに真面目に取り合うから、向こうが本気になるんですよ。恋人
がいるとかなんとか言って、かわしてしまったらよろしいのですわ」
「恋人なんていないやいっ」
「あら残念。いいひと、紹介しましょうか」
くすりと笑って軽口を叩いた金井に、悠理はむすりと言った。
「必要ない」
「あら、でも――申し訳ございません、要らぬおせっかいでしたわね?」
更なる言葉を重ねようとした金井だったが、必要ないと言った悠理の頬は淡く色づ
いて、それだけで全てを察した彼女は、言葉を引っ込めた。
「な、なんだよ」
狼狽する悠理は、本当に初心で可愛い――美人秘書として、さまざまな人間と恋の
浮名を流してきた金井だったので、同じ秘書仲間には見ることのできない悠理の反応
に、新鮮な気分となった。
ふふっと笑いを浮かべながら、からかってみる。
「だってお嬢様、どなたか好いた男性がいらっしゃるのでしょう?」
「なっ」
「顔に書いてますわ――もしや、あの魅録君とかいう男の子かしら」
「なんでそこに魅録が出てくんだよっ」
カマをかけてそう言ったものの、悠理の顔は心底吃驚していて、なんだハズレか、
と内心でがっかりする金井であった。魅録が相手なら、もっと揶揄えて楽しかった
だろうに。
「好きな人がいるんなら……意地を張っちゃダメですよ。自分に好意を持ってもらえる
のは、誰だって嬉しいものです。積極的に迫れば、案外こちらのこと気にしてくれる
ものですよ?」
反対に、口にしなければ最後まで気づいて貰えないことの方が多い。言葉や態度
にしなければ伝わらないことが、世の中にどれだけあるというのだろう。
おそらく、生来の性格のせいで、悠理の恋は難しいものに違いないと踏んで、金井
はそうアドバイスした。だが、この言葉に対して、悠理は――ふわりと、微笑んだ。
今にも泣きそうに、目尻を歪めながら。
「無理、だよ」
――この恋は、永久に実ることはない。
悠理はそれ以上何も口にしなかったが、恰も内心ではそう言っているかのように
金井には思われ、自分は何も知らないというのに、胸がしくりしくりと痛むのを感じた。
――天真爛漫な悠理にこのような顔をさせるなんて、相手はどんな男なのだろう。
悠理は、ついと窓枠に近づき、外の世界に視線を遣った。
秋と呼ぶにはまだ夏の匂いが残るものの、手を付いた窓のサッシはひんやりと冷え、
また、硝子の先の蒼穹はすでに高い。
秋は近い。泣きたくなるほどに。
眸を伏せがちにした悠理の姿は憂いを秘め、見ている金井まで胸苦しい思いに
駆られた。
この空を眺めながら、悠理は何に思いを馳せているのだろう。
見守る金井の目の前で、だが悠理はすぐに元の彼女に戻った。
照れ隠しのようにニカリと笑って、お腹を押さえる。
「金井さんが変なことを言うからお腹が減ったじょ!」
「もう、なんですかそれ。まだ11時にもなってませんよ」
緊張感から解き放たれてくすりと笑った途端、金井の携帯電話がなった。豊かな
旋律のクラシック。専務用の着メロである。
「はい、金井です。どうなさっ――ウイルス!?」
金井の顔が見る見るうちに強張る。
「ああ、あのプロジェクト関係のデータは無事だったのですね、良かった――はい、
すぐに手配しますわ」
システム・セキュリティー会社がどうとかと、悠理の分らぬ遣り取りののち、金井は
先ほど悠理を揶揄った彼女とは違い、深刻な声で告げた。
「専務。こうなった以上、あの件について、どうかお考えください。このままでは、この
プロジェクトはいつか潰れてしまいますわ」
なにやら不穏な言葉に、悠理は眉を顰めた。
ツヅク。
連続うpすいません
連続うpキタ――!!
悠理に、なんと好きな人が??
魅録じゃないとすると、清四郎とか美童なんだろうか?
それにしても、「夏」にしろ、このシリーズの恋愛は切ないのが多いねえ。
>秋
矢代儀一(26歳・独身)は美童の仮の姿かと思ったよ(^^)
ええっ、悠理の好きな人って魅録じゃないの!?
じゃあ・・・誰。は、早く続きを〜連続うP全然ノープロブレムですし!
>じゃあ・・・誰。
以外なセンで可憐とか言ってみるテスト(w
私も連続うp歓迎〜。
>240
あっ、なるほど・・・
そういえば「夏」の続きだったな、「秋」
ひょっとして、ということは・・・悠理の好きな人って、の?
>じゃあ・・・誰。
豊作さん。。。かな?
と思いました。
禁断のアイかよ!
何も知らないのに胸がしくりしくりと痛む金井さん、いい人だぁ〜。
「秋」は金井さん、加瀬さん、八代儀一26歳・独身wと脇も光ってるね。
ホワイトデーネタうpします。
5レス消費します。
昼休みの生徒会室。
今日も悠理の昼食は、ファンからの差し入れで豪華絢爛であった。
しかし、瞬く間にそれらは空となり、今彼女は、デザートに
と渡された、お抱えシェフが作ったというアイスケーキに手
を伸ばす所である。
「全く、毎日毎日すごいわねえ」
呆れたように可憐が横目で見ると、
「私、あの方達が気の毒でたまりませんわ。さっきの一年生
なんか今月に入って、もう十回は来てますのに、悠理ったら
顔も覚えていないんですもの」
野梨子がひんやりした目で悠理を見る。
「ひどいなあ。僕なんか、バレンタインは数え切れないほど
もらったけれど、みーんなちゃあんと覚えてるよ」
美童は得意満面といった顔であった。
そりゃ、お前はそうだろうと、可憐は心の中でつっこみを入
れたのだが、突然の野梨子の大声にそれは吹き飛ばされてしまった。
「そうですわ。バレンタインですわよ」
おかっぱ頭の親友はその大きな瞳を少女漫画の主人公の如く
輝かせている。
「悠理。今までのお礼をかねて、ホワイトデーに心をこめて
お返しをするべきですわ」
悠理がぽかんと口を開けた。
「何言ってんだよ、野梨子。なんであたいが」
「いいんじゃないの。いつもあんなにもらってるんだし」
「絶対、やだ!あたいが何で、好き好んで女相手にそんな事
しなくちゃなんないんだよぉ」
「あら、贈り物のお返しをする事くらい最低限のマナーですわよ」
「そんなの知るかあっ」
そう言うと、首をぶんぶん振る。
野梨子の目が、すうっと細まった。
「あら、そう、残念ですわね……。お返しがないとなると差
し上げる方達も張り合いがないものだと思いますわ。
でも、もしあると分かれば、来年は、今年以上に
大変な量のチョコがいただけますわね」
「それもそうよねぇ。今年は部屋半分がチョコの袋に占領さ
れたから、来年は全体が埋めつくされたりして」
悠理の頭にチョコの洪水で埋まる生徒会室が浮かんだ。
窒息しそうなほどの甘いチョコの香り。
いや、それこそチョコの山で生き埋めになるかもしれない。
……なんて幸せなバレンタインなんだろう。
思わず頬が緩んだ。
「そうだよな〜。やっぱり礼儀は守らないといけないよな。
よしっ、じゃあ今からホワイトデーのチョコ買いに行くぞ!」
「ホワイトデーはマシュマロとかクッキーじゃないの……」
「ちょっと、悠理ったら授業はどうなさいますの」
呆れ顔の二人を尻目に悠理は生徒会室をはずんだ足取りで出
て行く。その後を慌てて二人は追いかけた。
当日が来た。
三人は準備万端、戦闘態勢を整えると、放送室へと向かう。
キイイーン、高い金属音が鳴ると同時に、威勢のいい悠理の声が
全校に響き渡った。
「みんな、聞いてくれ!あたいは、剣菱悠理だ。
バレンタインにあたいにチョコくれた奴、急いで生徒会室に集合しる!」
「繰り返す……剣菱悠理だ……」
三回ほど大声で叫ぶとくるりと悠理は振り返り、にたっと笑った。
生徒会室に戻ると既に黒山の人だかりができている。
「はぁい、道あけてー」
「皆さん、順番に並んで下さいね」
可憐と野梨子が手際よくファンを整列させている。
悠理は生徒会室に入ると、用意していたお菓子が山積みの机に
腰を下ろした。
皆の燃えるような視線が悠理にそそがれる。
「えっと、みんな、この前のバレンタインは、たくさんのチョコをありがとう。
今日はそのお返しをしようと思うんだ。たいしたもんじゃないけど、
まあ受け取ってくれ」
そう言って、悠理はにっこりと微笑んだ。
(あ、あと来年もよろしく)
心の中でつけくわえる。
女生徒たちはキャーともギャーともつかない歓声をあげた。
一人の女生徒が興奮のあまり崩れ落ちそうになる。慌ててそ
れを支えた可憐は、早くしなさいよ、とでもいうべき視線を
悠理に送った。
「じゃあ、皆様お一人ずつ前にお進み下さいね」
頬を桜色に染めた女生徒の列が次々と進んでいく。皆、悠理
から手渡されるやいなやポーっとなったり、緊張のあまりが
たがたと震えだしてしまう者など、反応はさまざまであった。
そんな中で、
「あのぉ、悠理様」
おずおずと一人の女生徒が悠理の前に進み出た。
不思議そうに悠理が顔を上げると、おもむろにポケットから
何かをを取り出す。
「お願いします!ここにサインも書いて下さい!」
「へっ」
悠理は椅子からこけそうになった。
目の前に黒々としたサインペンをつきつけられる。
「そんな、サインなんて芸能人でもないんだからさぁ。
あたい、字、下手だし……」
「いいんですっ、そんなこと!ここに佐和子ちゃんへ、剣菱
悠理って普通に書くだけでいいんです!」
ぜいぜいと肩で息をしながら女生徒――佐和子は一気にまく
したてた。頬は恥ずかしげに染まっていたが、目は、この
機会を逃してなるものか、と気迫に溢れている。
「わ、わかった」
あまりの迫力に押された悠理は、仕方なく水色の包装紙にく
るまれた箱に、ぐにゃぐにゃした文字を書いた。
「きゃあ、ありがとうございます。家宝にしますー!」
百合子は、白魚のようなほっそりとした手で、力強く悠理の
手を振り回したかと思うと、スキップまじりに部屋を出て行った。
その光景に、後ろに並ぶお嬢様方に、稲妻の様な衝撃が走る。
一瞬のうちに部屋の空気が変わったのは気のせいだろうか。
悠理の背中から冷たい汗が大量に流れ落ちていった……。
――その日、悠理様ファン倶楽部の歴史に新たなページが刻まれた。
『今日は、倶楽部にとって記念すべき日となった。
悠理様から直にバレンタインのお返しを頂くと言う幸運に恵まれたのだ。
なんという美しいおこころざしなのだろう。
さらに、私達のぶしつけな願いにも快く応えてくださり、
以下数十名のプレゼントに直筆のサインを書いてくださった。
さすがにお疲れになったのか、お顔の色がどんどん土気色に
なってしまわれたのは心苦しいけれど、その苦しげな表情もまた、
私達の心をかき乱すのだ。
ああ、なんて罪作りなお方なのだろう。
悠理様。私達は、どこまでもあなたについていきますわ♪』
(終わり)
>悠理の恩返し
タイムリーで(・∀・)イイ!
やっぱりタダでは終わらない運命なのねw>悠理
サインのせいで手を痛めたなんて知れたら、
今度は湿布薬の山が押しかけて来そうだ
>>恩返し
ワロタw
悠理スキーとしては、こんなネタにほっぺたが緩みます(笑
最後の会報誌がいいですね、私もほしい。
>悠理の恩返し
なんか可愛かったです、悠理。
ああ、悠理ってこういうキャラなのね、とこの話のおかげで
再認識。可憐や野梨子の役回りもグッドです。
>>54 晩秋にしては暖かい日が続いた或る日、買物から戻った野梨子は庭に
珍しく声を上げて笑う清四郎を見た。傍らには膝掛で体を包んだ悠理が
座って居る。次いで、病人にしてはよく通る声が響いた。
「だって、あんな注射するなんて云ってなかったじゃないか」
前回の「検査」から然程日にちも経ってはいない。来訪を訝しんでいると
当の悠理がこちらに気付き手を振って見せた。
「おーい、野梨子!」
呼ばれるまま、悠理の元へと赴いた。
こうして間近で顔を合わせるのは一体何年振りだろう。記憶にあるその姿
より一際繊細さを増し美しい女性に成長した悠理を目にすると、胸がざわ
めいた。
全体的に色素が薄いのか、悠理の伽羅の色をした柔毛と揃いで誂えたか
のような両の瞳、透明感のある白い肌は、黙って座って居たならば無闇に
大きい西洋人形かと見紛う程に美しく冷たい。その瞳に昔は確かに在った、
きらきらと輝く生命の灯を野梨子は今も覚えている。
まだ発病して間も無い頃の悠理はお転婆で、じゃじゃ馬で、その体内には
ち切れんばかりの生命力を湛えていた。太陽に祝福された子供。「陽の気」
とでも呼べるものを全身から発散させていた。幼い頃から内気で大人しかっ
た野梨子はしばしば圧倒されたものだった。
だが、長く続いた病苦は内側からじわじわと彼女を蝕み、むさぼり、すっか
りそれを喰らい尽くしてしまったようである。
今、目の前にする悠理にかつては在った筈のその生命力を見つけることは
難しい。
その代償として病魔が置いていったものは、単調な毎日に飽いた物憂げ
な影と、深い哀しみに彩られた瞳の色であった。しかし、それは少しも彼女
の魅力を減じる事無く、むしろ儚げな外見は其故に異性を惹き付けずには
置かぬ魔性を奥底に秘めている。
婚約者が慈しむのも無理からぬ事かも知れないと、内心で野梨子は嘆息
した。
「聞いてくれよ。さっき、馬にでもするみたいなでっかい注射、打たれてさあ。
痛いの痛くないのって」
乱暴な言葉遣いは相変わらずである。だがそれすらも彼女の複雑な魅力
のひとつと成り得ていた。冷たい美貌と言葉遣いの奇妙な落差は猶の事
彼女を浮世離れした不思議な存在に見せ、同時に親しみ易い空気を作り
出している。
感情を屈託無く表に出す人懐こい悠理を憎む事など出来ず、さりとて婚約
者が彼女に向ける視線は耐え難く、自然彼女と触れ合う事を野梨子は避
けていたのである。
だが今は、悠理が発した言葉の内容が気に掛かった。
「注射、ですの?」
悠理は大きく頷き、云った。
「あたい、手術するんだ」
瞳がきらきらと、かつての悠理を思い出させるように輝いている。
「それが済んだら、普通の人と同じに運動できるんだって。
白鹿のおっちゃんと、清四郎があたいの病気、治してくれるんだ」
喜びからか、悠理の頬はいつもよりも紅い。昂ぶる思いを誰かに話さずに
は居られぬようである。
しかし、野梨子は逡巡した。悠理の病気は未だ治療法の見つからぬ難病
と聞く。今の医学では到底治療は無理だと父に再三聞かされてもいた。
一度の手術で完治する病などでは無いはずである。
末期の重病患者に対して見せかけの手術を施すといった話は耳にする。
残り少ない余命を安楽に過ごさせるための方便でもあろうか。野梨子はそう
悟り、咄嗟に口裏を合わせた。
「それなら、良くなったらあちこちにお出かけできますわね。
遊びに行きましょう、一緒に」
悠理はにっこりと満面に微笑んだ。
「まず、馬を買ってもらうんだ。いっぺん乗ってみたかったんだ、あたい。
それから海にも行くぞ。野梨子、付合えよな」
「もちろんですわ」
清四郎に瞳を走らせると悠理からは見えない角度でその顔は苦く歪められ
ていた。やはり野梨子の推察は正しかったらしい。
「さっきの注射、その手術の準備なんだって。
楽しみだなあ、早く良くなって遊ぶぞ」
神の見えざる手は時に―――思いもつかぬ非情さで愛すべき人々をその
御許へと奪い去るものだ。
無邪気に喜ぶ悠理の表情を見ている事に耐えられず、野梨子は挨拶をし
てその場を去った。
ふと、最近研究室で交わしたばかりの、魅録との会話を思い出した。
『俺が研究してた抑制剤がようやく完成にこぎ付けたんでね』
確か、魅録はそう云っていた。抑制剤なるものがどんな作用を齎すものか、
野梨子には見当も付かなかったが―――
檻の中の小さな鼠と悠理の姿がふっと重なった。
野梨子は軽く頭を振ると、その忌まわしい想像を打ち消した。
丁度、最後の客が店を出る処であった。
鮮やかな金髪が肩にぶつかりそうになり、体を斜めにしてそれを避ける。
「あ、失敬」 入れ違いに店へ入ろうとする魅録に気付いた長髪の外国人
は流暢な日本語で詫びると再び可憐に蒼く透き通る瞳を向けた。
「じゃあ、また来るからね。今夜はきみの夢を見るだろうな」
黄金色のつむじ風のように男が扉を出て行くと店の中が急に色褪せて見
える。
良くも悪くも、酷く存在感のある男である。呆れたようにそれを見送ってか
ら魅録は止まり木に腰を下ろした。
「熱心だな、あいつ。この処毎日だろう。そろそろいい返事してやったらど
うだ?」
扉の表に『準備中』の札を下げ乍ら可憐は不愉快そうな瞳を向ける。
「あんな女たらしの云う事、信じられる訳ないじゃない。どうせこれから別の
女口説きに行くのよ。……人のことより、あんた、一体どういうつもりなの?」
魅録は瞳でその意味を問うた。
「この前のお嬢さんよ。野梨子ちゃんて云ったかしら―――例の、教授の
娘でしょう?お高くとまって気に食わない、って云ってた筈だと思うけど」
可憐の差し出す杯に口を付けるでもなく覗きこみ魅録は黙りこんだ。
自分のために洋酒を注ぐと可憐は続けた。
「からかってみてるだけなのかしら?気に食わないから弄んで、慰み物に
してやろうとでも?…それとも、あわよくば教授の婿養子に…なんて目論
んでるのかしら?
だとしたら、止めときなさい。あの子は―――」
洋酒を口に含み、口元で笑いながら可憐は魅録を見下ろした。
「あんたを、本気にさせるわよ」
「…煩いな」 魅録も氷をカラリと鳴らして杯を傾けた。厳しい口調ではなく、
否定もしないその様子に、可憐は忠告が既に遅かった事を悟った。
「―――柄にもないわね、あんなお嬢さん相手に純愛ごっこなんて」
髪をかき上げ乍ら不機嫌そうな表情を隠しもせずに云う。
「あんたの領分は商売女じゃなかったの」
「俺から言い寄った事は無ぇよ。……まだ何も知らない餓鬼だった俺を
寄ってたかっておもちゃにしたような女たちに、本気で惚れられるか?」
「それをいい事にさんざ遊んで来たんでしょうに。やな男ね、あんたも。
―――ま、こんなとこで育てば無理もないか」
自分の事をも含めて可憐は自嘲気味に云った。色町に育ち奔放な女ばか
り見ていれば自然女性に対する価値観は定まる。
「―――とにかく、止めときなさい、叶わぬ恋なんてのは」
可憐はきっぱりとした瞳を魅録に向けた。
ふと顔を上げ、何か云いたげな素振りを見せ乍らも魅録は押し黙る。
「殊にあのお嬢さんは―――駄目よ、あんたにとっては。お互いに駄目に
なる相性よ」
「…何故分る?」
「男と女のことで分らない事は無いのよ、この可憐さんには」
客の忘れ物でもあろう、台の上に置き去られた煙草の箱から一本抜き取り
魅録に火を付けるよう目で促した。
燐寸の小さな炎が店内を一瞬明るく照らし、寂しげな可憐の横顔を銀朱の
色で縁取った。
花弁のかたちで寝台の上に広げられた鴇羽の色の浴衣はその中心に横た
わる野梨子の一糸纏わぬ姿を大輪の花の化身であるかに見せた。月光と、
枕元の洋燈が、それぞれの色味で仄白い裸身を染め上げる。のろのろと、
野梨子は半身を起こして解かれた浴衣の帯を探った。身体の芯が鈍く痛ん
だ。
愛の営みとはこういうものであったかと、虚ろな目で思う。
清四郎が野梨子の部屋を尋ねて来たのは夜も更け、丁度枕元の洋燈を消
そうとした時であった。物も云わぬまま寝台の上の野梨子を抱きすくめ、力
ずくで自らのものにしようとしたのである。
その一方的で乱暴な振る舞いに野梨子は全身で抗い、それが効かぬと分
ると知らず涙を零した。突然男の性を剥き出しにした清四郎に対する畏れ
か、自分の非力さを思い知った哀しみか、野梨子自身にも判別のつかぬ涙
であった。
それを目にした清四郎は我に返った面持ちで解こうとしていた浴衣の帯から
手を離し、酷く哀しい目をして野梨子に詫びた。
許して欲しい、と。嫉妬に目が眩み、衝動的な振る舞いに及んでしまったの
だと清四郎は云った。
「―――ぼくは、もどかしいんです、野梨子。貴女が魅録くんに惹かれていく
のを分っていながら、それを留める術を持たない自分が」
突然魅録の名を出され野梨子は狼狽した。彼に興味を抱いていたのは確か
だが、それは清四郎に対する思いとは全くの別物である。彼に惹かれている
などと、考えてみた事も無い。―――敢えて考えぬようにしていた事には気
付かぬまま、野梨子は目まぐるしく思いを巡らせた。
「自信が無かった。貴女が、離れて行ってしまいそうで―――怖かった。
ぼくは、確かなものが欲しかったんです。ぼくらを繋ぐ絆が」
打ち萎れる清四郎を見ている事が辛かった。常日頃弱みを見せぬ男が、自
分の為に心を痛めている。いつも自分に安らぎをくれる婚約者を、どんな時
にも傍に居てくれる将来の伴侶を、安心させてやりたかった。自分が魅録に
惹かれているなどという誤解を解きたかった。
再度己の行為を深く詫び、部屋を出ようとする清四郎を小さな声で呼びとめ
て、野梨子は自ら浴衣の帯を解いたのであった。
重ねた清四郎の肌は冷たかった。
次第にそれが熱を帯びてきた時にも、体の芯に氷塊を抱いているかの如き
冷たい手触りはいつまでも野梨子の内に消えることなく残った。
ゆっくりと浴衣を身に付け乍ら、婚約者が去り際に云った一言を野梨子は思
い出し、微かに身震いした。
「貴女は―――ぼくのものだ」
そう云った清四郎の瞳は優しいものではあったのだが―――
野梨子は何故か、自分が命を持たない、人に非ざるモノ―――意思を持つ
事を許されぬ存在へと変えられたように思え、酷く畏ろしい心持がした。
野梨子は夜を畏れるようになった。
あれから毎夜のように、清四郎は野梨子の部屋を訪れるようになったのである。
始めのうちこそ大切なものを扱うように野梨子を抱いていた清四郎は、しかし
次第にその遣り方に嗜虐的な匂いを帯びるようになった。
野梨子が抗うと、それを面白がるような色が瞳に浮かび力ずくで解いた帯でその
両手を縛り上げる。抵抗が逆効果なのを見て取った野梨子が諾々と従うと、
それに乗じて更に淫らな行為を強いる。声を出すまいと堪える野梨子の様子に
気付くと敢えて彼女の体に起こる変化を耳元で囁き続け、羞恥の余り反応を返
さずには居られぬよう仕向けるのである。
殊に清四郎は夜分仕事の合間に野梨子を抱く事を好んだ。唇を噛み締め物音
を立てぬよう堪える野梨子の耳元でこう囁くのだ。
「そう、声は立てないように…階下ではまだ魅録くんが仕事の真っ最中ですから
ね―――野梨子のそんな声が聞こえては、彼の仕事に差し障る」
その言にいちいち反応を返してしまう自分が口惜しく、更にきつく敷布を噛み締
める野梨子に向かい清四郎は嫉妬とも憐れみともつかぬ不思議な表情を向ける。
そうした行為の直後、清四郎は脱ぎ捨てた白衣を再び羽織り何食わぬ顔で階
下で仕事を続ける魅録の元へと戻るのだ。
夜間、頻繁に研究室を抜け出す清四郎を魅録はどういう目で見ているのだろうか。
まさか清四郎の云うように自分の声が聞かれたりはしていまいか、それは無くとも
いずれ振る舞いや空気から察しているのではないか。そう考えるうちに野梨子は
自然魅録を避けるようになった。理由はどうあれふたりをこれ以上近付けまいと
する清四郎の意図は達せられたのである。
(続きます)
>病院坂
お、起きててよかった。リアルタイム遭遇万歳!
あの…不覚にもこの妄想スレに来てから小説読んで
初めて泣きそうになりました。
一度目は悠理の運命に、二度目は野梨子の現実に
やられちゃいましたよ、漏れ
>病院坂
寝る前に読めてラッキーしますた
チラッと出てきた金髪は美童でしょうか
いきなり急展開でビクーリです
清四郎は野梨子のこと、本当に好きなのかなぁ
独占欲や嗜虐心だけのようにも見えちゃうし、
悲劇が待っていそうで、今後が気になりまつ
>>250 ここだけ、佐和子が百合子になってる……。
最初名前が浮かばなくて、とりあえず悠理ママンの名をを当ててたら
直すの忘れてました。
すみません。
>264
気がつかなんだ。ほんとだ!
>「病院坂」
重ねた相手の肌が冷たい<=って自分の相手に対する気持ちのなさ
の現れなんでしょうね…
魅×野(R間の会話)のコネタです。4レスです。
今夜一度目の交わりが大した余韻も残さぬままあっさりと終りを迎えた後、
仕方もなく魅録はちびりちびりとぬるいウイスキーで口を湿らせていた。
きっちりと肌衣を合わせた野梨子はこちらに背中を向け背筋を伸ばして
座っている。怒っているのだ。
なにを怒ってるんだ?
魅録はうまくもない酒をなめながら考えた。
俺、なんかしたか? そんな覚えはないけど…
えっと今日は…
まず飯食って…あれは一応フランス料理、だったよな?
味はイマイチだったけど、それなりに雰囲気も良くて野梨子だって
嬉しそうだったじゃないか。…やっぱ味が悪かったから怒ったのか?
「野梨子?」
「……なんですの?」
げー、冷てぇ返事…
「今日の飯、あんまり美味くなかった…か?」
「いいえ。あれはあれでそれなりに美味しかったですわ」
「……そっか」
『あれはあれでそれなり』か。どういうことだよ?
ま、とにかく味のせいじゃないらしいな。じゃなんだよ?
あっもしかしてアレか? その後のドライブで俺の運転が荒かったから怖かったとか?
「なぁ…」
「……なんですの?」
「今日、ちょっと飛ばし過ぎたかな? クラッチパッド変えたから試しに…」
「いいえ、ちっとも。ただ代々木のコーナリングは少し外へぶれましたわね。
シフトダウンがいつもよりコンマ3遅かったんじゃありません?」
こいつ…知識ばっかり先につきやがる。初めの頃は『飛ばさないでくださいな!
ゆっくりゆっくり歩くように走ってくださいな!』なんて言ってたくせに…
ま、とにかくドライブのせいではない、と。じゃなんだ?
あっアレか! 途中でダチと鉢合わせして…
「なぁ?」
「……なんですの?」
「あ…のさ、ほら二軒目のバーで会った…アイツ去年結婚してさ…久しぶ…」
「それはおめでとうございます」
「ありがとうございます」
なんで俺が礼言ってんだよ? 俺、動揺してる?
…いや、そんなことはない。断じてない。
「いや…あの…だから、つい話し込んじまって…」
「久し振りにたくさんお話ができて良かったじゃありませんの。
面白い方で私も楽しかったですわ」
えっ楽しかった?
俺が思わず話し込んじまったのが面白くなかったんじゃないのかよ?
んじゃあ一体なんで怒ってんだよ?
えーっと、俺はそれから…それから…あと何かしたか?
飲んだ後は真っ直ぐ俺の部屋に帰ってきて…
酒用意して…つまみ出して…CDかけて…
CD? BGMが気に入らなかったのか?いや、そんなことで怒るようなやつじゃないよな。
あ〜それから…それから…それからはアレしかしてないじゃないか。
えっ、アレが原因!?
お…俺、なんかへんなことしたか? いつもと同じようにしたつもりだったけど…
それがいけなかったのか?
―――もしかして、変化を求めてるとか!?
…ま…まさかな…まさかそんなこと…野梨子が……
……いや、もしかしたらそのまさかかも…
恥ずかしくて口には出せないから怒ってみせている、とか…
いやー、やっぱり違うよな。野梨子だもんな…
待てよ、野梨子だって女だ。慣れてくれば少しくらい冒険してみたくなったとしても
不思議じゃないよな…俺なりに野梨子を開花させるようにがんばってきたし…
がんばってる割りに野梨子の反応がいつもイマイチってことは俺も気にはなってたんだよ。
…ということは、やっぱり変化を求めて…?
…って俺、都合のいいように考えてないか? 変化を求めてるのは俺か!?
そ…そんなことはない! 俺は今のままで満足だ!
…だけど、もしも、もしも本当に野梨子が求めているとしたら…
答えてやらなきゃ男じゃねぇ!
「の…のりこ…」
「違います」
――――――― 残念。
じゃあ一体なんなんだ!? なんで怒ってんだ!?
さっきからあっち向いたままだし……あーわっかんねー!
「のりこっ!」
「なんですの?」
「なに怒ってんだよ!?」
「怒ってなんかいませんわ」
「怒ってるだろ! 言ってみろよ!」
「なんでもありませんわ!」
「言えって! 言わなきゃわかんねぇだろ!」
「ご自分でお考えになったら!?」
「やっぱり怒ってんだ」
「…」
「だから言ってみろって。俺が悪いんだったら謝るから…」
「……別に…魅録が悪いとかそういうことじゃありませんの」
「じゃ、なんだよ?」
「私が…たぶん私が我侭なだけなんですわ」
「ワガママ?………いいから、言ってみ」
「…」
「……こっち来いよ」
「…」
「ほら、言ってみ…」
「…あの…」
「ん?」
「…私のこと……どう思ってますの?」
「そんなこと……言わなくてもわかるだろ」
「言ってくれなきゃ…わかりませんわ」
「……そっか。そういうことか」
「…」
「悪かった」
魅録は野梨子を胸に抱き、コホンとひとつ咳払いをした後、
「好きだ」と呟いた。
「もう一度」
「好きだ」
「もう一度…」
その後、野梨子は満足げに魅録の腕に身を委ねた。
そしていつも通りの愛撫を受け、今度は高らかに謳った。終
>ネヤ問答
野梨子がかわいい〜。
途中までは、ああ、きっと魅録が早く終わりすぎて
満足していないのね、野梨子(藁
とか思ってたけど・・・。
そか、そういう事だったのね。
>ネヤ問答
>「の…のりこ…」
>「違います」
>――――――― 残念。
激しく藁。
こういう魅録楽しくてスキー
>「それはおめでとうございます」
>「ありがとうございます」
>なんで俺が礼言ってんだよ?
ここでも大笑いw
途中から「野梨子」が「のりこ」になるとこが
また味がありました。
>273-274
私も大笑いしますた。
>「いいえ、ちっとも。ただ代々木のコーナリングは少し外へぶれましたわね。
>シフトダウンがいつもよりコンマ3遅かったんじゃありません?」
>こいつ…知識ばっかり先につきやがる。
ここもスキ
>ネヤ問答
作者さん、乙です。
かわいいカプールだー。
魅×野は恋に不器用なところにハマル…。
>>272たんの
>途中までは、ああ、きっと魅録が早く終わりすぎて
満足していないのね、野梨子(藁
にも禿藁ですた。
キャッツアイ、番外編いきます。
情報収集担当者対決?です
>>202 非番の日、美童はデートに忙しかった。
「ねぇ、美童。この間素敵なペンダントを見つけたんだけど
わたしに似合うかどうか見てくれない?」
「ふーん、じゃあこれから買いに行こうか」
「あら、悪いわね。おねだりしたみたいで」
「いいよ、君がもっときれいにみえるためだもの」
美童はカードを持ってきたことを確認しながら彼女とともに歩き出した。
「このお店なの。素敵なものがいっぱいあるのよ」
店にはいると中では二人の女性が話し込んでいたが、
美童たちを見るとにこやかに微笑みかけてきた。
「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりご覧下さい」
「すみません、ちょっとこのペンダントを見せてください」
「はい、いまお出ししますので少しお待ちいただけますか」
彼女が店の人と話をしている間に美童はもう一人の女性に気をとられた。
(あの栗色のソバージュ、どこかで会ったと思うんだけど…
そうだ、この間のパーティーだ)
「先日、大使館のパーティーでお会いしましたね」
「あら、そうでした?」
「えぇ、あなたが話していた相手、僕の友人なんです。
あいつは魅録っていうんです。僕は美童と申します」
「じゃあ、あなたも刑事さんなの?」
「魅録のヤツ、そんなことまであなたに話したんですか?」
「キャッツアイを追っているとお聞きしましたわ。大変なのね」
「そうなんですよ。おかげで最近忙しくて、きょうは久しぶりの
非番なんです。一ヶ月ぶりのデートですよ」
「それで彼女に何かプレゼントってわけですか」
「まぁそんなとこです」
女性は店の人のほうに近づくと耳元でなにかささやいた。
「あら、可憐の知り合いの方でしたのね。でしたらこちらの品は
10%引きにさせていただきますわ」
「わぁ、うれしいわ。今すぐつけさせてもらってししかしら?」
「えぇどうぞ。いかがですか?」
「やっぱり素敵だわ。ねぇ美童、これ洋子に見せてくるから
支払いお願いね」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
美童が引き止めるのも聞かず、彼女は店から出て行ってしまった。
「あら〜、ずいぶん現金な彼女ね」
「可憐、お客様になんてことをいうの」
「ごめんなさい、ママ、もう少しおまけしてあげてね」
「はいはい、まったく可憐にはかなわないわ」
母娘の会話が聞こえているのかいないのか、心ここにあらずといった
感じでうちひしがれていた美童の目の前にコーヒーがさしだされた。
「一杯いかが? ちょっとブレイクしましょ」
「ありがとう」
コーヒーは少し苦味が強かったが、美童の気分にはピッタリだった。
キャッツアイを追っている刑事さんは二人だけなの?」
「いや、警視庁全体でだよ。僕たちのチームは魅録と僕のほかに
もう一人いるけどね」
「あなたとこの前の人とはずいぶん雰囲気が違うけど、もう一人は
どちらと似てるのかしら」
「清四郎は僕たち二人のどちらにも似てないよ。あいつが僕らの
チームの頭脳みたいなものさ」
「じゃあ、あなたたちが手足なの?」
「手足は魅録かな? 僕はどちらかといえば聞き込み専門なんだ」
「あなたみたいに魅力的な刑事さんなら女の子はみんなおしゃべり
になっちゃうわね」
「まぁね、でも君も魅力的だよ。魅録なんか君のこと忘れられない
みたいだしね」
「本当? 光栄だわ。今度は彼と一緒にいらしてね」
「伝えておくよ」
すっかり立ち直った美童はギャラリー・アキを後にした。
可憐は美童の姿が見えなくなったのを確認するとさっそく野梨子に
今聞き出した情報を伝えた。
「するとあの時いたのは美童と魅録と清四郎という人ですのね。
苗字とか特技なんかはわかりませんでしたの?」
「無理言わないでよ。あんまり一度にあれこれ聞いたら
不審がられるじゃない。今度また聞いてみるわ」
「そうですわね、こういうときは可憐が頼りですわ。お願いしますね」
「はいはい、お姉さんにまかせなさい」
その頃、美童は魅録に電話していた。
「この間のソバージュの彼女、見つけたよ。今度あわせてやるよ。
清四郎には内緒だよ」
「だから、オレは別に彼女のことなんとも思ってないって…」
「いいからいいから、遠慮するなよ。僕って仲間思いだからさ」
「お前、人の話くらいちゃんと聞けよ」
「あ、ごめん。キャッチホンはいったから切るね」
「ったく…」
情報収集担当どうしの対決?でした。
読んで下さった方、サンクス
どなたか本編お願いします。
>ネヤ問答
>答えてやらなきゃ男じゃねぇ!
万作入ってますね、魅録(^^)笑わせていただきますた
>有閑キャッツアイ
キャッツアイたちは刑事たちと裏の顔と表の顔で出会うこと
になりそうですね。新展開!
続き、2スレ分うpします。
>>281 聖・プジデント学園 職員室
授業終了後なのか、ひとりの女性体育教師が
タオルで汗を拭いながら職員室に入ってくる。
そんな中、とある男性教師が彼女を呼び止める。
年は二十代後半。少しインテリ気味ではあるが、
なかなかのハンサムである。その態度から、密かに彼女を
狙っているということが見て取れる。
「あっ、剣菱先生。先程、黄桜先生が探しておられましたよ。
携帯に電話してもお出にならないって」
「どうも」
”彼女”はそんな彼の態度に半ばウンザリしながら答える。
そして、その足で可憐のいる保健室に向かった。
彼女はその気さくで砕けた性格から、生徒には人気があった。
少年のような美貌は女生徒の憧れでもあった。
−あっ、剣菱先生よ。
−素敵ねえ。りりしくて、美しくいらっしゃって。
そんな羨望の眼差しを受けながら、保健室のドアを開ける。
「ちょっとぉ〜遅かったじゃない。”悠理先生”」
「5分の遅刻ですわよ」
保健室には白衣を纏った美人校医と日本人形のような国語教師が待っていた。
キャッツアイの正体である、美人三姉妹は表向き、
国内屈指の名門校・聖・プレジデント学園の教師でもあった。
なぜ、聖・プレジデント学園なのかと言えば、国内屈指のVIP校。
ターゲットにしている高価な宝石に関する情報が集めやすいという利点があるためだ。
「プロミネンスクラウン?」
悠理が大声を出しそうになり、思わず自分の口を封じる。
「そう。今度のターゲットですわよ」
野梨子の顔は、すでに”キャッツアイ”の頭脳中枢と化していた。
「アストリア王家に伝わってる代物なんだけど、それぞれの部分に七色の宝石が
鏤められてるの。トパーズ・アメジスト・エメラルド・・・
確か虹のふもとに宝物が眠っている。っていう古文書まであるのよね」
可憐はうっとりしながら話を続ける。
「私の調べでは、お父様のコレクションに間違いありません。
今度、東京国立美術館に展示されるらしいですわ」
可憐のいつもの態度に少々呆れつつ、説明を続ける。
「ふふっ。久々の仕事かぁ〜腕がなるじょ。で予告状は出したの?」
悠理の顔が怪盗としての笑みに変わる。
「それなら、朝方出しておきましたわ。あちらの方々は今、大騒ぎでしょう。
で、今回の作戦ですけど美術館の屋上から侵入すると見せかけて・・・」
「なるほど。悠理のラジコンを使おうってわけね」
可憐が感心したように頷く。
「あちらにも機会に長けた方がいらっしゃるようですので、
今回もそれを大いに利用させて頂きますわ」
日本人形は不気味な程の薄笑いを浮かべた。
作戦決行は−今夜九時−
三姉妹はそれぞれにある形見の宝石に父への想いを馳せた。
「聖・プレジデント学園」に訂正。スマソ
どなたか続きお願い致します。
うひゃー!うpの連続で嬉しすぎて鼻血が出そうー!
>病院坂
待ってマスタ!いやん、相変わらず素敵な文章にうっとり・・・
ホント、切ない・・・。それにしてもこの先の展開が読めないよー。
この話を最終回(?)まで読まないと死ねない・・・(w
>ネヤ問答
みんなに感想をほぼ言い尽くされてしまったが(w
ホント、こういうの大好き!笑った!
また思いついたら是非ぜひ続編を・・・!!
>有閑キャッツ
可憐ねえさんは本業は先生で、ギャラリーアキは
時々お母さんのお手伝いをしてるって感じなのかな?
こっちからも目が離せないー。オモロイよー。
>ネヤ問答
野梨子も可愛いけど、一生懸命考えてる魅録も可愛いです(ハァト
テンポのいい文章といい、ツボを押さえた笑いといい、
たっぷり堪能させてもらいますた。
それにしても、
>「の…のりこ…」
>「違います」
こうまで即答されてしまうとは、魅録は一体どんな口調で
言ったのやら。よっぽど上ずってたのかな・・・w
>有閑キャッツアイ
おおっ、第2ラウンドですね。
魅×可への道筋もできつつあるし、残りのカップルも
少しずつ接近していくのかな。ワクワクします。
>病院坂
可哀想な野梨子を読んでいて思わず
「魅録助けにこいっ!」とつぶやいてしまいますた
清四郎の考えてることがサッパリよめません…
>病院坂
魅録は気づいてるのか、何も知らないのか、
いずれは分かるんだろうけど、ハラハラしまつ。
(^^)
>284
旧スレで盛上がってた教師ネタも入っていてウマイ!
>病院坂
なんつーか、清四郎が哀れだなとオモタ。
いずれ自分の前から悠理がいなくなってしまうという
避けられない現実に(自覚があるのかないのか)
ものすごく恐怖心を抱いていて、それ上今まで自分に
従順だった野梨子まで自分から離れていってしまうなんて
とても耐えられないんだろう(プライド高いから余計に)
悠理にぶつけられない思いを野梨子にぶつけているようにも見えて…
ああ、切ないよ…。
でもだからこそすごくイイ!
>293
>悠理にぶつけられない思いを野梨子にぶつけているようにも見えて…
ああ、なるほど、そうかもしれませんね。
実は「病院坂」の中で一番好きなのは清四郎です。
一番人間味がある気がする・・・
>248
遅レスだけど「集合しる!」にワロタ。
悠理は2ちゃんねらだったのか。
>248
私も>295に便乗して、遅レス。
>来年は、今年以上に大変な量のチョコがいただけますわね
>悠理の頭にチョコの洪水で埋まる生徒会室が浮かんだ。
あんたら、これ以上留年する気ですか(藁
>あんたら、これ以上留年する気ですか(藁
激藁。
サザエさんと一緒で、何年たっても、聖プレジデントの生徒会室にいるんだね(笑
>>206 美童グランマニエが学校の廊下を颯爽と歩いていた。
携帯電話を耳に歩いている最中でさえ彼女達へのラブコールを怠らない。マメな男だ。
美童が通ると女生徒達はぽっと頬を赤く染めて「王子様」が通り過ぎるのを
羨望のマナコで見送った。
その眼差しにも熱い視線で応えながら生徒会室へつながる廊下の角を曲がろうとした時、
猛スピードで走ってきた女生徒に体当たりされ、美童は衝撃で派手にひっくりかえった。
彼の命の携帯電話が床に落ち、カシャシャシャンと音を立てて滑っていく。
「うわっ、ま、待って、ナターシャーあ!!」
「ご、ごめんなさい」
「ぎゃああ、切れてる! ごめんよ、ナターシャ。とと、じゃなくて、ごめん、君、大丈夫?
…あれ。野梨子じゃないか」
「美童… 」
「ど、どうしたの、その目。真っ赤じゃないか。寝不足? 飲み過ぎ?
あ、わかった。ゲームのやり過ぎだ!」
野梨子は何か言いかけたが、ふっと口をつぐむと立ち上って脱兎のごとく逃げ去った。
「野梨子がすごい勢いで走っていったけど何かあったの?」
「野梨子が? いや、ここへは来ませんでしたよ」
(なるほどね。そういうことか。脇が甘いなあ、清四郎も。可憐だって)
生徒会室に入った途端、美童は野梨子が泣いてたわけがあっさりわかった。
部屋の中には生徒会長と書記が二人っきり。
二人はあくまでさりげなく振舞ってはいるが、意識しすぎて返って不自然な動きをしている。
三人の間にイヤ〜な沈黙が流れていた。
美童は清四郎の側に立って耳もとで囁く。
「さっき、二人で何かしてただろ?」
ぎくっ。
としたものの、清四郎は動揺を表には出さず無表情で返す。
「してましたよ、二人で。議事録のまとめですがね。目を通しますか?」
素知らぬ顔でワープロを打っている可憐の耳がダンボになっている。
「いいんだけどさあ、一応学校なんだし余りきわどいことしないでよね。
僕、目のやり場に困っちゃうから」
「おやおや、ずいぶんなお言葉ですね。残念ですが邪推ですよ、美童。」
冷たく言い放つ清四郎の前に美童は一本の髪の毛をつまんで差し出した。
淡い茶色に光るそれは柔らかく波うっている。
「肩についてたよ。証拠隠滅は入念にね、清四郎。それから可憐、ワープロ
無理矢理打たなくていいよ。解読不可能な文字が並んでるよ」
黙り込む二人を後に美童は生徒会室を後にした。
ちぇ。一体二人で何してたんだよ。キス?ボディタッチ?
まさかあのテーブルの上で『H』してたんじゃないだろな〜っ。
何だよ、清四郎のむっつりスケベ。迷惑そうな顔してやることやってるんじゃないか。
可憐はずっと僕が狙ってたんだからな。そうそう渡すもんか。
賭けがなんだ。もうシャネルのバッグなんか惜しくないぞ。絶対惜しくないぞ!
可憐と清四郎のラブラブな関係が面白くない美童は心の中で悪態をついていた。
野梨子はきっと「現場」をのぞいたんだな。二人が何してたのか探りを入れて
みなくちゃ。
野梨子は本館と図書館をつなぐ小道で所在無げに歩いていた。
彼女をつかまえて校内の小高い丘の中腹に連れて行くと並んで腰を降ろす。
「どうしたの? さっき何も言わないで走っていくから心配したんだよ。」
野梨子は青ざめた顔で黙って草を悪戯している。
そんな彼女の様子を見て、美童はちょっと同情した。
元気がないな。かわいそうに。
自分の好きなヤツが女とニャンニャンしてるのを見たら無理もないか。
草の上に身を横たえて彼女が自分から話したくなるまで待つことにした。
美童の携帯が震え出したがそっと電源をオフにする。めったにしないことだが。
空の雲を数えながら心地よさに眠気を覚えた時、野梨子が美童と同じように
横になると大きく息をついた。
美童がそっと彼女に顔を向けると両手で顔を覆っている。
その手の下から涙がすーっと筋をひいて零れ落ちるところだった。
ナイーブな色男の胸がきゅんとする。
「だいじょうぶ?」
美童の言葉に野梨子はしゃくりあげそうになるのを堪えてコクンと頷く。
もう一つ大きく息をつくと口元まで両手をずらして呼吸を整えている。
「私…見てしまったんですの。清四郎が…可憐とキスしてるところを。
よせばいいのに私、目が離せなくて、ずっと見てしまったんですの… 」
恥じ入るように語尾が小さくなっていった。
「そうか…。ショックだったんだね」
野梨子は瞳を閉じた。黒く濃い睫毛の隙間から大粒の涙が再び筋を引いて流れた。
「…可憐がうらやましいですわ… 」
「うらやましい、の? 何で? 清四郎とキスしたから?」
ライバルをうらやましいという野梨子の言葉に美童はきょとんとして聞き返す。
羨まれていると思いこそすれ、他人を羨ましいと思ったことはほとんどない美童には
野梨子の言葉は不思議な響きを持って聞こえる。
それだけ美童は自分に自信を持っているのだろう。あるいは実力不相応な程の。
「だって…可憐は好きになった方にどんどん積極的にアピールできますでしょ…
自分に自信を持って… 私は勇気がなくて、いつも見ているだけで
何も言えなくて…自分の気持ちに気づいてもらえるのを、ただ待っているだけ…
可憐がうらやましいですわ。可憐のように…なりたい… 」
「可憐のように、かあ。」
意外だなあ。
野梨子は可憐のことを一歩引いて見ていると思っていたのに。
そりゃあ女性としては可憐はすごく魅力的だけど、自分がなりたいかって言ったら
どうかなあ?
可憐になったら大変だぞう。
彼女の恋心に火がついたら、それこそ誰にも止められやしない。
玉の輿玉の輿ってうるさいけど根はロマンチストの可憐は相手につくして
つくしてつくしまくり最後はお約束のように燃え尽きるんだよな。あるいは玉砕するか。
いい加減懲りてもいいはずなのに毎回毎回あっさりすまないのは、
きっと可憐が可憐だからなんだろう。
そりゃ僕も人のことは言えないけどさ。
野梨子は自分に可憐みたいなところがないから憧れてるだけじゃないのか。
美童は野梨子の「可憐になりたい」発言に驚いていた。
一体、野梨子が男性に全く興味がないと思ったのは間違いで
口に出せずにこっそりと心の中で葬ってきた想いも多いのだろうか。
だから可憐がうらやましいんだろうか。
それともやはり、可憐にまんまと捕まってさらわれて行こうとしている清四郎の存在が
野梨子にそんな言葉を吐かせるのだろうか。
美童のタンスの引き出しには女心をとろかす言葉がぎっしり詰まっている。
しかし今、傍らで涙を流す少女を慰める、たった一つの言葉が彼には見つからない。
野梨子はこんなにも美しい少女なのに、可憐でさえ嫉妬する程オトコにもてるのに
どうして彼女はこんなに悲しまなくちゃいけないんだ?
たった一人のむっつりスケベのために。
ままならぬもの、それが恋…か。
倶楽部の友だちの枠を超えて二人きりで親しく話す内に、いつのまにか美童は
野梨子を可愛いと思うようになっていた。
恋愛にありがちな駆け引きも知らず、ただただ一途に清四郎を想う彼女のひたむきな
純粋さが、大人の恋に疲れた美童には新鮮に映る。
あるいは彼女の精緻な人形を思わせる美しさとどこか神秘的な佇まいに、
そして話の合間に時折見せる無邪気さに魅了されてしまったのかもしれない。
彼は野梨子が涙をこぼしているのを見て段々自分も悲しくなってきた。
「野梨子… 」
返事はない。そっと隣を見ると諦めたように瞳を閉じている。
口元で両手の指を交差させ彼女の愛らしい唇を隠していた。
頬にまだ新しい涙の痕跡が残っている。
そんな彼女が愛おしくて美童はそっと野梨子の頭を撫でた。
野梨子は目を開け、男友だちが羽のようにそっと自分の頭を撫でていると知ると
手を胸の上に降ろし、再び目を閉じて嘆息した。
「ありがとう、美童 」
かすかに開かれた唇が白い雪原にぽつんと顔を出した野苺のようだ。
可愛い吐息が美童の邪心を誘う。
美童は野梨子の上に屈み込んでそっと唇を近づけた。
自分の髪の毛が彼女の上にサラサラと音を立ててかかった。
唇と唇が触れそうになった瞬間、
ばしっ。
激しい勢いで美童の頬はひっぱたかれた。
飛び起きて真っ赤な顔で逃げようとする野梨子を美童はあわててつかまえる。
「待って! ごめん、悪かったよ、変な事して。あやまるから逃げないで」
野梨子は美童を振りほどこうとしたが、やがて彼の力にかなわないと知ると抗うのをやめた。
両手首を美童に掴まれたまま、ぷいっと横を向いている。相当怒っているようだ。
「ほんとに、美童を信用した私が大馬鹿でしたわ。私にあんなことをしようとするなんて。
可憐のことを好きだっておっしゃってたのに。
美童はやっぱり、軽薄で、不誠実で、無責任な殿方でしたのね」
彼女の強い非難に美童のハートはぐっさり傷ついたが何も言い返せるはずもない。
「…ごめんよ、その野梨子が悲しいと僕まで悲しくなって…なぐさめたかったんだ。
うまく言えないけど…余計な事だったよね、ごめん」
野梨子は黙っている。
「あのさ、あきらめることないよ。応援するよ、清四郎とのこと。可憐に負けたくないんだろ?
僕にできることは何でもしてあげるよ。」
「何でも…? 」
「そう、作戦を考えよう。可憐から清四郎を取り返す作戦だよ。たとえば、君らしくなく
すごくセクシーなドレスで彼を誘ってみるとか、二人きりで一日を過ごすチャンスを
作るとか。」
「色仕掛けですの?自信ありませんわ」
「なくても駄目元でやろうよ。後悔するよりましだろ?もちろん君は今のままで魅力的だけど、
もっともっと、もっと素敵になって、可憐から清四郎を奪っちゃえよ」
美童の迫力に野梨子は目を真ん丸くしていたが、やがてその顔に微笑みが戻ってきた。
「美童がコーチしてくれますの?私も可憐のようになれますかしら」
「もちろんさ。まかしといて。君をとびっきりのセクシーレディにしてあげるよ」
大きくうなずきながら一方で美童はこんなことを考えていた。
待てよ。野梨子が清四郎とくっついたら、可憐は僕がいただけるな。
一石二鳥じゃん! なんだかヤル気がもりもり湧いてきたな〜♪
野梨子の純粋さに打たれつつもやっぱり美童は美童、不純な思惑のカタマリであった。
今回は以上です。ツヅキます。
>可憐さん〜
なんか、面白い展開になってきましたねっ
積極的な野梨子、見てみたいw
全然関係ないけど、「ニャンニャンしてる」との一文に、
作者さんは、私と同年代に違いないと確信してもうた(笑
>可憐さん〜
この作品、キャラがいい味出してるな〜
漏れがおんなじシーンを書こうとしたら、
どろどろの愁嘆場、昼ドラ一直線のどろどろ路線にしかならない。
>ニャンニャン
あはは(藁
てことは、漏れとも同年代だな
>可憐さんにはかなわない
美童のマイフェアレディですな
動機は不純だけど、女性にかけてはツワモノの美童が
野梨子をどう変身させるのか楽しみです
ミイラとりがミイラになったりしてw
>307
>どろどろの愁嘆場、昼ドラ一直線のどろどろ路線にしかならない
昼ドラな有閑も見たいと思うのは漏れだけ?
>309
「愛の荒らし」とか?(藁
>>309 個人的には野梨子で真珠夫人を(w
相手は魅録がいいな。
野梨子で真珠婦人なら、私も魅録キボン(w
そして清四郎にメチャクチャ鬼畜なことしてほしー!
蔵原かyp!(w
皆!忘れているのかわざとかは知らないが
昼ドラと言えば「砂の城」しかないだろう!(ワラ
>「砂の城」
これしかないでしょう!
ナタリー>美童、フランシス>悠理
>316
ワロタ。
クールなフランシスになりそうだ。
う〜ん、でもフランシスの八方美人なところは、
美童に通じるものがあるからな〜
こっちではどう?
ナタリー:可憐 フランシス:美童 ミルフィーヌ:野梨子
フェラン:悠理w ロベール:魅録 ミッシェル:清四郎
それか、1代目フランシスが美童、2代目フランシスが杏樹とか。
>ニャンニャン
何の違和感もなく読み過ごしたあてくしも・・・w
てか、ほとんど同世代なんじゃない?
コーラスからのファンでもないかぎり・・・
>>318 私も読みすごしてたけど・・・。
ちなみに29歳です。
下品な小ネタ逝きます。スンマソン
ちなみに魅×野…
「…なにジロジロ見てんだよ、んーなトコ」
「いえね、魅録の髪ってピンクでしょ?なのにここは違いますのね」
「おま…そりゃ染めてるからな」
「そうなんですの?…どちらが?」
「!◎×★※?〜%#@+☆◆○」←声にならない
ご、ごめ…(逃
>320
逃げなくても・・・。
結構こういうの好きでつ(w
>320
最近は金髪だよね…。
あと、私も逃げなくていーと思います(´∀`)
ピンクの髪って魅録のイメージじゃないんだよなー。
最近の金髪の方が好き。
野梨子って無邪気にそーゆーことしそうだ(w
魅録の髪は金髪orピンクで染めてるんだろうけど、眉毛はどうなんだろう?
たしか眉もピンクだった気がするけど、今手元にコミックスがない・・・
眉毛染めるのは、目にしみてすごく痛いと聞いたことがあるけど
痛みに耐えつつ染めているんだろうか?
そして頭がプリンにならないようにマメに根元チェックしてるんだろうか
眉毛染めるのはそんなには痛くないよ(これは漏れの主観だが)ただ、肌の弱い人は染めた後、しばらく眉辺りが真っ赤になってしまうが。
魅録はきっと眉毛も染めてそうだ。
それから、野梨子って縮毛矯正をかければ毛先の広がりが収まりそうだ。
ちょっとこんなの考えてみました。記憶だけに頼って書いてるので
もし間違いがあったらスマソ。
【有閑倶楽部を妄想で語ろう】(ゆうかんくらぶをもうそうでかたろう)
『有閑倶楽部その4・一条ゆかり』において少女漫画『有閑倶楽部』の妄想ネタ談義が過熱
し、本スレからの離脱を余儀無くされたスレッド。予想に反し、いや予想通り現在14本目
の長寿スレッドになった。本編はプラトニックだが妄想スレでは全員、脱童貞・処女させら
れている。なお少女漫画板から難民板に途中で移行。本スレ。
【菊正宗清四郎】(きくまさむねせいしろう)
本編では文武両道・温厚で冷静な彼だが、妄想スレでは嫉妬深い、優柔不断、薬物乱用、
鬼畜、変態等、散々な扱われ方をされ、おいしいところは魅録に持っていかれてる感もある
不憫なキャラクター。妄想小説では勢い余って悪人を半殺しにすることがよくある。あと魅
録や美童にも手が出やすい。清×野、清×悠は人気のあるカポーである。
【松竹梅魅録】(しょうちくばいみろく)
妄想スレではおおむね好意的な扱いをされているキャラクター。中学時代は番をはっていた
が、「有閑倶楽部 〜虎の巻〜」でチェリ−扱いなのは不覚。男くさいのに女に興味がない、
という設定が女心をくすぐるのか妄想スレでの人気は高い(想像)。妄想小説では最近、
魅×野カポーが人気である。
【美童グランマニエ】(びどうぐらんまにえ)
本編でだんだん情けないキャラにされている美童。この妄想スレではそんな美童の「いい奴」
ぶりにスポットを当てた作品が多い。が、清四郎・魅録の二枚看板の前ではどうしても影が
薄く、美×○のカポーは小説発表も少ない。六人の中では確実に経験者のはずが作家の意欲を
かき立てないのか彼のRは敬遠される傾向にある。
【催淫剤】(さいいんざい)
清四郎の常備薬。妄想スレでは非常に人気のあるドラッグ。
【R】(あーる)
18禁の性描写のこと。妄想スレ住人の肥やし。多すぎても目の毒だが無いとスレが
育たない。お子様が目を皿のようにして見る部分。
【作家】(さっか)
妄想と趣味が相まって本スレに妄想小説を発表している希有な人々のこと。主に連載中
または連載する気がある人のことをさす。過去作品発表してた場合、又現在連載中を知
られたくない場合は元・作家の肩書きが使われる。作家は妄想スレに無くてはならない
存在だが、スコールのように一定周期で叩かれることがある(叩かれる理由は様々・・・
文章の内容や上手下手、本スレ内での発言に関して)ため、性格的に打たれ強いか無頓
着であることが求められる。又、スレに作品うp時は非常に丁寧な仕事が要求される。
現在作家の発言は非常に制約されていて作品をうpしたら速やかに去らねばならない。
本スレが荒れる度にその生存が危惧されている。
【読者】(どくしゃ)
妄想スレの住人がカキコ時「私は作家ではない」という意味で「漏れは一読者ですが」
等のように使われることが多い。作家にはいなくては困る人種。妄想小説に賛辞を送っ
ている内はいいが、だんだん「カポーは○○で」、「××は嫌」のように要求が増えて
くるのは御愛嬌。マンセーレスが多いと御贔屓の作家が「マンセーレスウザイ」と叩か
れるので配慮が必要。読んでばかりでカキコしない住人のことを「ROM(ろむ)ラー」
という。
【ROMラー】(ろむらー)
いつどこでこの妄想スレを読んでいるかハッキリしない不特定多数の人々。今までカキ
コしてた人が遠回しに本スレの拒否をするを時に「ロムする宣言」が出る。
【ロムする】(ろむする)
本スレに作品の発表や発言をしないこと。カキコがないとスレがさびれるため、ロムす
る=緩慢に本スレの首を絞めているとも言える。本スレ住人の発言や流れを眺めては意
見するウオチとは別人種。
【ウオチ】(うおち)
本スレの動向を眺めて楽しむ人々。同士。秘密の花園を知る、ある意味特権階級。
【妄想小説】(もうそうしょうせつ)
有閑登場人物を作家の妄想のままに踊らせる小説のこと。登場人物の行為は恋愛・sex・
泥沼・鬼畜など本編とは大きくはずれるが、彼らの口にする言葉には厳密に読者のチェッ
クが入る。
【リレー小説】(りれーしょうせつ)
何人かの作家で続きを書き合う小説のこと。なかなか終わらない。エンドを迎えるのは
奇跡に近い。
【連載小説】(れんさいしょうせつ)
作家の妄想が壮大過ぎて短編では収まりきれず、連載の形をとった小説。百花繚乱の時代
もあったが今は数作品。長期に渡るので作品によってはファンも多くつくが、読者も作家
も飽きるのが欠点。
【短編小説】(たんぺんしょうせつ)
数レス、数うpで終わる小説。場面設定のみでストーリー展開は少ないので作家は比較的
楽。感想も好意的なものがつきやすい。しかしスレが進んでいくと忘れられてしまうのが
欠点。
【小ネタ】(こねた)
思い付き。一発勝負。他の読者の気に入ってもらえれば談義に発展する。ネタが命。
【金沢】(かなざわ)
鬼門。主役が金沢に向かったらまずその小説は終わらない。
【妄想意欲に水をさす】(もうそういよくにみずをさす)
妄想スレでは禁止事項。誰もが常にやりたくてウズウズしているコト。
具体的には自分の嫌いなカポーにいちゃもんをつける等。
【お約束】(おやくそく)
読んでいても間違いを犯してしまう。お約束を守るのは至難のわざ。
【さびれる】(かっこ)
作家や読者が本スレにカキコしない状態。荒らしが過ぎ去った後。膠着状態。
【平和】(へいわ)
長くは続かない。
【つづき】(つづき)
早く読みたいもの。
【連載休止】
告知されることはない。
=====
もっとピリッとひねりが効いたのを考えたかったんですが、こんなんなっちゃいま
した。
悠理や野梨子、可憐の女性登場人物とか妄想小説のタイトルごとの項目、
誰か考えて〜
>【催淫剤】(さいいんざい)
>清四郎の常備薬。
常備薬だったんだ!(激藁
>331 :有閑倶楽部辞典〜妄想スレ版〜
ぜひ続きを!私が思いつくのは・・・
【男山】(おとこやま)
魅録の飼い犬。コリー犬。糞尿に縁がある。金塊探知犬。
泳げない。
こんなのは?
【19巻】(じゅうきゅうかん)
妄想スレでその存在が噂される幻の巻。かつて見たものによれば、
清四郎の顔面が崩れる、可憐が粗相をするなど、凡そ有閑倶楽部には
ふさわしくないストーリーだったと言う・・・。一条ゆかりとは
別の作者の作?
>>331 グッジョブ
> 【R】(あーる)
> 18禁の性描写のこと。妄想スレ住人の肥やし。多すぎても目の毒だが無いとスレが
> 育たない。お子様が目を皿のようにして見る部分。
あえて言わせてもらえば、Rは15歳だったかと。
331です。
>335
Rって15歳未満禁止なの?映画でもR-18、R-15ってあるから
Rは大まかに言って18禁のことかと思ってました・・・
事典面白いね。ただチョト気になる事があるんだ
>【金沢】(かなざわ)
>鬼門。主役が金沢に向かったらまずその小説は終わらない。
↑完結した「愛と青春の旅立ち編」で悠理は裕也と金沢に行ったよ
>336
335です。
スマソ。私の勘違いだったみたいです。
気になってググッてみたら、Rはrestricted(制限された)の略でした。
ちなみに映画でよく用いられるレイティングは
・日本
PG-12(12歳未満は保護者同伴)、R-15(15禁)、R-18(18禁)
・アメリカ
PG-13(13歳未満は保護者の同意が必要)、R(17歳未満は保護者同伴)、
NC-17(17禁)、X(成人映画)
ということでした。
R指定という言葉には「年齢制限」という程度の意味しかないようです。
私のよく使ういくつかの二次創作検索エンジンでは、R指定と言えば15歳だったので、
そういうもんだと思い込んでおりました。
ゴメンネ。
>337
し、失礼しました・・・。
「愛と青春の旅立ち」完結でしたか・・・
「ホロ苦い青春編」が頭にあったのでって完結してないのそれだけか(汗
う〜ん、思った以上にいい加減だ(漏れ
>338
いえいえ、調べさせちゃったすいませんです!お勉強しました(^^
関係ないですが「二次創作検索エンジン」ってあるんですねえ・・
>339さん
337です。偉そうに指摘してゴメンなさいm(__)m
他の項目は超イイ(・∀・)です
特に【催淫剤】が笑わせてもらいました
魅録は自分で染めてるのかナ
それとも美容院かナ
シャンプーの時は顔に布かけられてるのかナ
> 有閑倶楽部辞典〜妄想スレ版〜
面白い!画面見つめてニヤニヤしちゃったよ(w
>【金沢】(かなざわ)
>鬼門。主役が金沢に向かったらまずその小説は終わらない。
私もリレー小説を最近嵐さんのとこで見たばっかりだったので、
これにバカウケしてしまった。(「愛と青春の旅立ち」の作者様ごめんなさい・・・)
>【連載休止】
にも ワラタ!
有閑倶楽部のフィギュアをゲトーした人いまつか?
黒髪おかっぱのジェニー人形を見て、思わず野梨子…!と思った漏れ。
逝ってきまつ。
スレ違いスマソ。
>341
遅レスですが…
美容院だとしたら、担当美容師になりたいもんだ
絶対女が付くよなあ。影で争奪戦が行われてそう(w
それにしても
髪染めまくりの魅録に、頭固めまくりの清四郎
2人の将来がチョト心配…
>2人の将来がチョト心配…
時宗さんも修平さんもまだフサフサしてるし
遺伝では大丈夫かも(藁
個人的にはヴィヨン・グランマニエさんの頭を見ると
美童が何げにアブナイ気が・・・
>2人の将来がチョト心配…
髪がヤヴァくなったら清四郎が育毛剤を発明するでしょう(w
>345
おうっ…これはマサに現在の目が離れた野梨子の姿ですな。クスン
過去作品の項目を作ってみました(嵐さんの妄想同好会で読めます)。
小説じゃなくてスマソ。でも新作が出るのを待つ間、旧作を読み直すのもいいですよね。
【清×野、魅×悠 お見合い編】
リレー小説。01/12/05〜02/01/13
野梨子の見合いの相手は何と魅録だった!突然のことに理性を失った清四郎は野梨子に
キスをしてしまい大喧嘩。魅録は魅録で断るつもりが千秋さんの関係で形だけ見合いを
することになってしまう。ぎくしゃくした野梨子と清四郎。一方、密かに魅録が好きな
悠理も複雑な心境。野梨子はうっかり魅録に泣きつき、それを見た悠理が誤解して飛び
出し、魅録がそれを追っていき、それを又清四郎が見て誤解・・・の恐怖の無限ループ。
清四朗、紀子、悠里などの誤字も読み流せる程、熱い妄想パワーを感じさせる一本。
じれじれ〜な展開にきっと誰もが「早くやってしまえ!」と当時思っていたはず。
ラストに野梨子・悠理のドレス姿あり。
【お見合い編 後日談1 その後の清×野 清四郎悶々編 】
妄想患者・作。02/01/16〜02/02/17
見合い話から一ヶ月後の清×野を書いたもの。
【その後の清×野編】R
妄想患者・作。02/05/16 〜02/06/02
ついに野梨子が清四郎と!
前編が寸止めで後編が本番まで。清四郎の部屋で三回も。奥さんヨダレが…。
【お見合い編 後日談2 四角関係編】
リレー小説。02/01/25 〜02/01/26
見合い後、着々と関係を深める清×野と対照的に進展のない魅×悠。魅録は悠理に
二人きりの伊豆ツーリング&一泊旅行を持ちかけ勝負に出る。一方有閑倶楽部は
温泉とスキーを目当てにスイスに飛び立った。数十時間後にどんな事件が待ち受けて
いるか知りもしないで…。数十時間後の事件が描かれないまま未完で終わっている
リレー小説。スイスを描ける作家がいなかったのか?
【魅×悠 伊豆ツーリング編 】
作者不詳。02/02/18 〜02/03/12
魅録と悠理で二人きりの伊豆ペンションお泊まり旅行。お部屋でこれから!という
時に清四郎から電話が入り中断。でも続行。二人は最後まで行ったらしいが、惜しい
ことにRなし。それはナイ!?
【剣菱家の事情2 】
清×悠(Rあり)、魅×可、美×野
リレー小説。02/01/13〜02/04/29
豊作にーちゃんが婚約者を連れてきた!おかげで又悠理に婿取り話が持ち上がる。
しかも相手は又もや清四郎。清四郎は万作の説得に悠理を守れるのは自分しかいない
と思いプロポーズ。しかし悠理は前回のこともあり素直になれない。そんな中、美童
の一存で二人は模擬デートをすることになり・・・?清×悠の口喧嘩も初Hも読める
お得な一本。魅×可は別立てでコソーリ進行。美×野も出遅れたものの追い上げる。
なお注釈の文の長さは本文の長さと全然関係ありません(^o^)
>【その後の清×野編】R
三回は二回の誤りでした。謹んでお詫び申し上げます。
>三回は二回の誤りでした。謹んでお詫び申し上げます。
笑)三回と二回はおーーーっきな差だよね!
辞典編者さん、乙です!
次はぜひリレー以外の小説もやってくり。
嵐さんのところで小説ごとに注釈つけてもらうのも面白いよね。
有閑倶楽部辞典〜妄想スレ版〜
又また小説じゃなくてごめんなさい。作り出したら止まらなくなってしまいました。
この過去作品の項目は、私が妄想小説を書いた後、昔の作品を読み返したら、
ストーリーやカポーが被ったことがあり、便利帳代わりに作ったものです。
(同じ人物が同じセリフを言ってて「ひいっ!」てこともありました…。)
説明書きは少しオチョクリモード入ってますので、作家さん怒らないでね…。
タイトルは作者さんがつけたものを元にし、無いものは嵐さんのサイトでつけている
タイトルにしました。また、今回から18禁=Rの他に、陵辱(それに近いものも)
シーンがあるものには★をつけました。これらの描写に抵抗がある方は参考にしてください。
【剣菱家の事情2・番外編 美×野 】
作者不詳。02/05/03
無事カポーになった美×野。野梨子が自分達のことを両親に話してないのを知って
美童はちょっと不機嫌。
【有閑新ステージ編】清×悠 Rあり★
作者不詳。02/05/06 〜2002/11/12
魅録にプロポーズされた日、可憐は父親の死について衝撃の事実を知る。
悠理はある事件をきっかけに前世の記憶を思い出し…。可憐の父の謎、さらに悠理と
清四郎の前世まで逆上るオドロキのストーリー。かなり複雑かつドロドロの展開。
可憐の祖父、父、その妹、謎のピアニスト、悠理にソックリの謎の男etc.など
オリキャラ多し。総レス数245の超大作。新ステ。
【目覚めの時 悠×魅 R15指定】
作者不詳。02/02/06
H話に拒否反応を示す悠理を魅録が押し倒した。あくまで色気のない悠理が可愛い。
寸止め。
【魅×悠 目覚めの時 別バージョン 】
作者不祥。02/02/11〜02/02/15
悠理が魅録の子を妊娠、結婚、出産。めでたし、めでたし。
だが万作がダイナマイトで松竹梅家を吹き飛ばすのもチョト見たかった。
【龍之介シリーズ やくざ抗争編 】
「遥かな時代の妄想を」サイト主催者作。02/03/11〜02/03/16
ヤクザの跡取りでシェフ見習いの龍之介が主人公。主人公はあくまでも龍之介でその話
に悠理ら有閑メンバーがゲスト出演という異色作。
【龍之介シリーズ 龍之介入院編】
龍之介作者作。02/04/01 〜02/05/22
入院中の龍之介が命を狙われた。犯人探しに死んだ龍之介のかーちゃんまで悠理にのり
うつって登場。龍之介は魅録風味な純情男。
【龍之介シリーズ 出会い編 】
龍之介作者作。02/05/05
魅録と龍之介との出会い。菊翁を待ちぼうけさせていいのか!?
【龍之介シリーズ SWEET編】
『SWEET DREAM』
龍之介作者作。02/06/07
龍之介は悠理とキス。
『SWEET KISS 』
模擬同棲の作者。02/06/07
龍之介と悠理のキスを補足。
『SWEET SMILE』
龍之介作者作。02/06/17
龍之介が雑誌に載って大人気。悠理は面白くない。
【龍之介シリーズ 幻の月編】
龍之介作者作。02/06/30〜02/07/25
龍之介は信頼していた人物が刺されたことで過去のトラウマが疼き出す。
後半は作者のサイトで。
【愛と青春の旅立ち編】悠×清×美×魅(+α)
作者不祥。02/03/16〜02/05/20
チチを追って旅立った魅録。悠理は傷つき清四郎と一夜を共にした?ことから二人に
結婚話が持ち上がる。まだ結婚したくない悠理が思い付いた秘策とは別の男と関係を
持つことだった…。どろどろ4角関係ラブロマンと作者が銘打っているが後味は割と
爽やかなのはハッピーエンドだからか。清四郎は悪役。金沢あり。
【黄桜可憐のラッキーディ】美×悠
愛と青春の旅立ち編作者。02/05/24〜02/05/27
愛と青春の旅立ちの番外編。可憐がラッキーだった日。
【秘密の花園編】美×悠 Rあり★
愛と青春の旅立ち編作者。02/06/02〜02/10/21
愛と青春の旅立ちの番外編。悠理の不審な行動に疑惑の目を向ける美童。折しも有閑
倶楽部に届いた手紙には悠理の情事の証拠が…。勇敢な美童が見れます。血液関係
苦手な読者にはキツイかも。ラストは割に爽やかだが。
【清×野 喪失編】清×野×魅
作者不詳。02/04/06〜02/05/10
野梨子が誘拐された。助け出した野梨子は記憶喪失に。辛い清四郎。そんな野梨子に
魅録が接近。野梨子が悪漢に誘拐されてあんなことされちゃったら…てな妄想が
作品に昇華(?)それにしても悪役の名前が「白鶴」は強烈すぎる。
【引火編】清×野×魅×美 Rあり★
清×野 喪失編作者。02/05/12〜02/07/13
喪失編の続編。無人島で宗教集団の争いに巻き込まれた有閑倶楽部。そこでは野梨子に
ソックリの少女・みずほが。学園に戻ると魅録が野梨子を奪う宣言。清四郎は、そして
ひそかに野梨子を慕う美童はどうする?喪失編をもう少しドロドロさせたいという作者の
思惑通り、かなりの泥沼模様。男達の争いに野梨子はかなりいいメイワクかも?
野梨子の社会復帰が心配される一本。
【南島夜話】清×可×魅
作者不詳。02/06/10〜02/06/22
南の島の人魚伝説を軸に清四郎と可憐の恋が行き来する。綺麗な可憐と暴走しない清四郎
が見られます。
【魅×野 芽生え編】
作者不詳。02/03/09〜02/06/14
野梨子と魅録は恋人同士として旅行したことからお互いに惹かれ始める。金沢あり。
二人の旅行を知った清四郎は不機嫌に。清四郎がゲーム機を持っているという新事実。
【〜婚約騒動のその後〜】清×悠
作者不詳。02/05/26〜02/06/12
両思いの清四郎と悠理。ほんわかした二人の語らいの短編集。六人のせめぎ合いに疲れた
読者に。
【サクラサク】やや清×悠
作者不詳。2002/08/15〜2002/09/10
自分の体が何ものかに乗っ取られたことに気づいた清四郎。悠理に頼んで剣菱家のお仕置き
部屋に閉じ込めてもらうが。オカルト。清四郎が清四郎な上に霊に漂依されたら勝てません…。
【恋をしに、と彼女は言った】清×可 Rあり
作者不詳。02/07/04〜
いつしか男女の関係になった清四郎と可憐。でもお互いの気持ちがわからなくて…。
トレンディードラマ(死語?)のようなオシャレな展開。
【遠野物語異聞】清×悠
作者不祥。02/07/11〜02/07/12
岩手の山中で一件の空家で雨宿りする清四郎と悠理。これをきっかけに二人は接近。
【サイミン】清×悠
遠野物語異聞作者。02/07/13〜02/07/14
清四郎が悠理に与えた暗示は「あなたは女らしくなる」というもの。効果抜群!
【ゴサイミン】清×悠
遠野物語異聞作者。02/07/16
清四郎が暗示を解かなかったせいで悠理は魅録の前で女っぽくなってしまう。
【千里眼 】魅×野(Rあり) 清×悠
遠野物語異聞作者。02/07/17〜02/07/22
野梨子が催眠効果で魅録に告白。野梨子に・・・な風に迫られたら魅録だって落ちますわ。
【エンジェル】清×悠×魅×野(魅×野にRあり)★
作者不詳。2002/08/20〜2002/09/26
豊作に恨みを抱くものが悠理を狙ってるらしい。心配した清四郎は悠理を軟禁状態に
置くが、悠理の不満が爆発し…。バランスのとれた展開が読みやすい。
【ルージュ・ノワール】清×悠
エンジェル作者作。 2002/08/25
清四郎がつけている香水の名前は?清×悠ほんわかムードの一本。
【椿三夜】
作者不詳。02/09/16 〜02/10/28
祭りの夜、惨劇は起こった。この世に蘇った化け物に襲われる有閑倶楽部。しかも化け物
は二体!オカルト。背筋がゾクゾクする一本。美文に酔うのも又良し。
【君から瞳が離せない】清×野×魅(Rあり) 美×可
作者不詳。2002/11/25〜2003/02/14
謎の転校生・光は魅録と昔何かあったらしい。清四郎は悠理達と光の身辺を探るが、そこ
には意外な事実が…。一方野梨子は光と行動を共にする清四郎に不安を覚え…。
総レス数184の超長編。ヤクザ出演多数。清四郎は色欲に負けがち。ヤンキー入った魅録の
口調は好みが分かれるところ。短髪美童が見られます。
【清×野 すれ違い篇】清×野
リレー小説。01/11/24 〜02/09/22(未完)
清四郎が知り合いの娘の家庭教師を引き受け、二人を誤解した野梨子は清四郎によそよそ
しくなる。清四郎も又、野梨子に会いに来た裕也に複雑な思いを抱き…。
物語は清四郎が家庭教師を断り、野梨子に「野梨子が他の男といたら気にする」と告白めい
たことを言い、朝野梨子に呼び出されたところで終わっている。
【剣菱悠理の秘密 】魅×悠
作者不詳。02/02/15〜02/05/18 (未完)
悠理が男性の経験があると爆弾発言。魅録は悠理につきあう内、悠理が二人の憧れの先輩
光樹に特別な感情を抱いていたことに気づく。だが光樹は事故で死んでしまい…。
二人が光樹が住んでいた会津に行こうとするところで物語は終わっている。
【ホロ苦い青春編 】魅×野
リレー小説。02/03/03 〜03/01/12 (未完)
いつのまにか魅録が好きになっている野梨子。しかし魅録は野梨子がまだ裕也を忘れられ
ないと勘違いし、彼女を金沢まで連れていく。だが道中魅録も自分の野梨子への想いに気づき
はじめる…。
物語は野梨子が裕也から「彼女がいる」と告白されるところで止まっている。
【ホロ苦い青春編 美童バージョン 】
作者不詳。02/03/15〜02/07/24 (未完)
美童が14、5歳の時の淡い思い出の話。アメリカのサマースクールに通っていた美童は
年上の日本人女子大生に恋をするが、彼女には不倫の恋人がいた…。
【お江戸は花盛り】
作者不詳。02/03/08
有閑舞台を江戸時代に移し、悠理が姫、魅録が家老の息子で悠理の許嫁、清四郎が医者の
息子という設定はアイデアもの。魅録は悠理のじゃじゃ馬ぶりに閉口しているが、
許嫁候補に清四郎もあがっていると聞き…。
作者の妄想はここまでとあり、未完にして完結。
【時代劇 ver2 】
作者不詳。お江戸〜とは別人物らしい。02/05/04〜02/07/18(未完)
設定を悠理を廻船問屋の一人娘に、魅録を奉行の息子、清四郎をご典医の息子に変えたもの。
ストーリーはお江戸〜を踏襲し、さらに先に進めている。登場人物の生き生きとした様子、
軽やかなセリフは一見の価値あり。悠理と間違えられて誘拐された野梨子が裕也に助けられ
たところで終わっている。
嵐さんのサイトには【香港NIGHT】があったのですが、本当に出だしだけで倶楽部の
面々も登場しないので見送りました。力尽きたので続きはいずれ又…。ばたっ。
>有閑辞典
乙です。ありがと〜。参考にします!
ドラマの「年下の男」少ししか見れなかったが好きでした。
風吹(?)ジュンを黄桜あき子さんで高橋克典を清四郎で〜キボンヌ。
「部屋取ってもいいですか?」
それか和子姉さんと魅録!(あまり年変わらないが…)
「部屋取ってもいいスか?」
>有閑辞典
おもしろかったでつ!特に
>【引火編】
>野梨子の社会復帰が心配される一本
大笑いしますた
>364
ということは稲森〜が可憐ですね。
年下君は誰になるんだろう?
魅×和って初めて見た気が・・・
ジロウさんな時宗ちゃんを思い浮かべてしまったYO!
辞典おもしろいですね!
女性メンバー紹介を考えてみました。
【剣菱悠理】(けんびしゆうり)
本編では食い気ばかりクローズアップされ色気など皆無であるが、妄想スレにおいては一番の経験者。
色恋沙汰が描かれていないが故に妄想意欲がかきたてられるのであろうか。本スレにおいては
切ない思いに涙し、女として扱われることに戸惑い、また性に目覚め身悶える彼女を随所で見ることができる。
また、恋愛に疎いために男性メンバーの恋心を無邪気にもてあそぶことも多い。
【白鹿野梨子】(はくしかのりこ)
日本画家の大家を父に持ち、茶道家元を母に持つ大和撫子。本編で見られる「芯の強さ」は
妄想スレでも健在である。しかしながらR場面ではしばし清四郎の手によって陵辱的な扱いを
されがちである。なお、彼女が本編で想いを寄せた相手「刈穂裕也」は本スレでも人気であり(想像)
野梨子を想う相手の心の中のライバルとして登場している。
【黄桜可憐】(きざくらかれん)
1巻のあの高校生離れした色香はどこへいってしまったか、いつのまにか原作者同様「おばさん化」
していると嘆かれている彼女。妄想スレでは初期のイメージを彷彿とさせる描写が多く、
数々の恋愛講座を開き他メンバーにアドバイスしている。また、本編では失恋ばかりだが、本スレでは可憐の恋の駆け引きの真骨頂がみられる。
女三人の中で一番R描写が少ないのは可憐のプライドが許さない?只今、作者募集中。
野梨子と清四郎っていつからお互い呼び捨てにするようになったのかな?
子供(幼稚舎)の時「ちゃん」付けで呼び合ってましたよね。ビミョーに
気になる・・・。兄妹みたいなものだから別に自然だったのかな。
>有閑倶楽部辞典
面白いっス!
>【黄桜可憐】
>あの高校生離れした色香はどこへいってしまったか
禿同デス(藁
>【愛と青春の旅立ち編】悠×清×美×魅(+α)
>爽やかなのはハッピーエンドだからか。清四郎は悪役。金沢あり。
金沢! 金沢マークも作りますか?Kとか(藁
>【黄桜可憐】(きざくらかれん)
是非この一文を追加して!
本スレでは一度も(たぶん)誘拐経験がないのが屈辱。
「ちょ、ちょっとあんたどこに目がついてんのよ!」(藁)
野梨子の項目も追加文きぼーん。前スレ参考にしました。
×清なら幼馴染、×魅なら不良とお嬢様、×美ならプレイボーイと男嫌い
というわかりやすい萌えどころがあるため、主演作品は多い。
「野梨子スキー」を名乗る固定ファンも目立つ。
…って長くなりすぎかな?野梨子スキーでスマソ(w
>>304 清四郎は校庭の鉄棒にぶら下がっている悠理を見かけ、声をかけた。
「悠理!魅録を探してるんですが見ませんでしたか?」
「魅録ならあそこだよ。でも今はお邪魔だぜ」
悠理が指差す方を見ると校庭の片隅で魅録が二年の女子と向かい合って
立っているのが見えた。女の子は頭が見えない程深くうつむいてる。
魅録は頭の後ろを掻きながら困ったような顔をしている。
「魅録は…あれは、告白されてるんじゃないんですか」
「そうだろ」
「そうだろって、悠理はいいんですか?」
悠理はスカートを鉄棒に被せ、ぐるっと回って逆さになった。
ネコ柄のパンツが丸見えになって清四郎は呆れ果てる。
(男性経験があるなら、もう少し女らしくなってもいいと思いますが。
相変わらずの野生児ですね。悠理らしいといえばそうなんでしょうけど)
逆さまの悠理が清四郎をじろっと見る。
「お前、いま何か変なこと考えてただろ、このむっつりスケベ」
「悠理…。むっつりスケベはやめてください。人聞きの悪い」
「じゃあ、ただのスケベだな。それより見てみろよ、魅録の奴。あいつ
絶対OKするぜ」
「いや…、そうでもなさそうですよ」
見ると魅録が必死で女子生徒を説得してるようだった。それに対し女の子は
泣きながら頭を下げて頼み込んでいるようである。魅録は困り果てていた。
その様子を見ていた悠理は鉄棒の上に跨がると大声で魅録達に呼びかけた。
「ひゅー、ひゅー、魅録ちゃーーん!やるねえ!この女泣かせ!」
魅録は驚いて悠理達を見た。泣いていた女子生徒もポカンとした顔をしている。
「ゆ、悠理。邪魔しちゃ悪いですよ」
清四郎が止めるのも構わず悠理は叫び続ける。
「よっ、彼女お可愛いねえ。魅録、いいじゃん、つきあっちゃえばあ!?
どうせ最近淋しいんだしさあ?」
「うるさいな! 向こう行ってろ、悠理!」
真っ赤になって怒鳴る魅録の前で、先程彼に告白した女生徒・大岡山マリ絵は
涙の跡が残った顔でくすっと笑った。
「いつも楽しい方ですわね、悠理様は。私、あの方が羨ましいですわ。いつも
魅録様と御一緒にいらっしゃって。その…、魅録様は悠理様とおつき合いな
さってますの?」
「…いや…。ただのダチだよ」
「魅録様… 」
「さっきの話だけどさ、ごめん。俺、あんまり女とつきあうの上手くないし、
つきあっても、たぶん良くしてあげられないと思う。まだ男と遊ぶ方が
楽しいんだ、オレ」
「…わかりました」
大岡山はがっかりした様子で帰って行った。魅録は照れて手を振りながら
悠理と清四郎に近づいてきた。
「まいった、まいった。どうも苦手だな、あーいうムードは」
「なんだ、やめたのかよ。つきあっちゃえば良かったのに」
「その気もないのにつきあうのはやめたんだ。疲れるしさ。それより悠理、
今晩どうする?うち来るか?」
「どうすっかなあ。考えとくわ」
悠理は鉄棒で一回転して飛び下りるとタッタッタと駆けて行ってしまった。
魅録は清四郎が自分を見ているのに気がつく。
「何だよ。何か言いたそうな顔だな」
「いえ…。ただすごい会話だな、と思いましてね。悠理は魅録が女の子とつきあう
のは平気なんですか?悠理は魅録の一体何なんです?」
「なんなんだろうな…。それは俺も疑問なんだけど、まあ、あえて言えば…
いわゆる、セフレって奴?」
「セ……!?」
思わず清四郎が親友の顔を見つめ返すと、魅録は自分の言葉に照れながら言った。
「冗談だよ。でも近いもんがあるかもな、俺と悠理の関係って。一緒に遊ぶのと
同じ感覚でセックスしてる感じだしな」
「悠理のこと、好きではないんですか?」
「…好きじゃなきゃHしないよ、俺は。でも悠理は、あいつの気持ちはわかんねえ。
ちゃんとつきあうつもりであいつに言ったけど、笑って誤魔化されたし。
悠理にとっちゃ俺はたまにHもするただのダチなのかもな」
そこまで淋しそうな表情で話した魅録は清四郎の表情に気がつきニッと笑った。
「おっ。同情はいらないぜ。それとも清四郎ちゃんには刺激が強い話だったか?」
「ばっ、馬鹿にしないでくださいよ、僕にだってそれくらいわかります」
多少気分を害しながら清四郎は強がりを言ってみせた。
今回は以上です。ツヅキます。
>ニャンニャン
どきっ・・・。
>317 うーん。こっちかなあ。
ナタリー:野梨子 フランシス:悠理 ミルフィーヌ:可憐
フェラン:魅録 ロベール:清四郎 ミッシェル:美童
>374
魅録のフェラン、いいかも……(想像中)。
そして、美童がミッシェルか……。
エレーヌは誰がいいのかな。
エレ―ヌ
和子さんは・・・違うな(w
可憐でどうだろ。
んで、ミルフィは真澄ちゃん。
>>368 金沢マーク面白い〜・
初心者さんが「K=18禁!?」って期待して読んだら金沢w
なんとなく頭に浮かんできた魅×可の一風景。
テールライトと宝石箱のように輝く夜の光が美しい。
魅録は窓の外をぼんやりと見つめた。
そして煙草に火をつける。炎に照らされた自分の顔が窓に浮かび上がった。
街の灯りに溶け込んだ顔はどこか暗い。
その後ろに映るベッドには、可憐が眠っている。
彼女の長い髪はふわりと優しくひろがり、そこから先程までの情事を
思い起こすことは到底できない。
魅録はまた窓の外に目をやった。
眼下の夜景は美しく、とても美しく輝いていて、
今の自分の感情とはあまりにもかけ離れているように感じた。
(いつも喧嘩ばかりだよな…)
ため息とともに煙を吐き出す。煙は夜景に溶けてゆく。
それを目で追いながら自嘲的に笑った。
(つまらない嫉妬・・・?)
窓に映る自分に問いかけた。
続く?
>可憐さんにはかなわない
悠理と魅録の関係にちょっとドキドキしつつ、でも仲が良い二人が
うらやましい気もします。
悠理は魅録に体は許しても心は許してないってこと?
>378
大人のムードの二人ですね〜 魅×可は倦怠期の恋人同士なのかな?
>「砂の城」
話に参加したいがナタリーとフランシスしかわかんないよー。
フランシスのパパとママが死んでしまう話と、
最終話しか読んでないのだ<どういう読み方だ!
あと誰かのセリフで
「脱がせるのがお上手ね、プレイボーイさん」
は覚えてるなあ。
>380
ミッシェルがエレーヌに言う言葉です。
うーん。エレーヌって野梨子があうかも。
根本的に有閑の主要キャラでナタリー的思考回路っていないような・・・
いや〜ん、sageてえ〜ん♪
>381
エレーヌがミッシェルに言ったのではないかい?
エレーヌ→野梨子は禿同。
>エレーヌ→野梨子は禿同。
髪型?
「有閑キャッツアイ」編の続き、3レス分うpします。
>>285 魅録は大きなマグカップを傾けながら、キャッツアイからの予告状に見入っていた。
「・・・プロミネンスクラウンか。デカいものばっかり狙ってくれるぜ」
デスクに向った清四郎はちょうど受話器を置いたところだ。
「手配完了。今度は逃がしませんよ」
魅録は壁の時計を見た。
「五時か。で、警備体制は?」
「午後七時半から美術館の半径5キロを通行止め。不審車両はすべて撤去。そして
館の玄関から特別展示室までは5m置きに捜査員をひとりずつ配置。もちろん館周辺
にも人数を用意してあります。ターゲットと上部窓枠には赤外線センサー。これに
触れば本庁、各所に緊急信号が入るように依頼しました。
―――まずそこまで辿り着くことはないと思いますがね」
唇の端にふっと不敵な笑みを浮かべた清四郎は魅録に相槌を求めた。
「完璧だな。じゃ俺からもひとつ・・・」
「なんですか?」
「予告は午後九時。その十分前から館周辺に妨害電波を発生させるよう手配しといた。
奴らは行動部隊と逃走部隊に分かれて連絡を取り合うはずだからそれを妨害してやるのさ」
「やりますね、魅録。今度こそキャッツも年貢の納め時ですか。でも・・・」
清四郎は眉を寄せながら魅録を見上げた。
「緊急信号は大丈夫なんですか?その妨害電波・・・」
「それなら心配ない。緊急信号は地下ケーブルを使うはずだからな。
こっちのコンタクトには障害はないってわけさ」
清四郎は満足したように机の上に広げてあった『キャッツアイ・ファイル』を閉じた。
その頃もう一人のキャッツアイ専属捜査員・美童は例の店の扉を開けていた。
風のような優雅な動作で滑り込むとカウンターの前にあの時の黒髪の美女を見つけた。
「あれ?キミは・・・」
黒い瞳に一瞬するどい光が浮かんだが、すぐに花のような笑顔に隠された。
「はい?」
「以前パーティでお見掛けしたんですが・・・キミもここのお得意様なのかな?」
カウンターの後ろに立っていた可憐はそれまで見入っていた紙切れを
横に束ねてあった顧客リストに挟み込み、さりげない仕草で棚に片付けた。
「そうなんですよ。以前から贔屓にしていただいてるんです」
野梨子は美童に向き直り、ゆっくりと頭を下げて見せる。
「こんなところでまた会えるなんて奇遇だなあ」
「今日はなにか?刑事さん」
すっかり目的を忘れ野梨子に再会できたことに有頂天になっている美童に
可憐は椅子をすすめながら訊ねた。
「あっそうだ。ほら前に来た時に話しただろ。ぼくの同僚がキミのこと
気に入ってるって。だからもしキミが良かったら今度一緒に食事でもどう
かなと思って誘いにきたんだよ」
美童は得意の美しい笑みを野梨子に向けながら続けた。
「・・・四人で、なんてどうかな?」
野梨子はチラっと可憐に目で合図を送ってから答えた。
「ええ、いいですわよ。ちょうど今夜は予定がありませんし」
『今夜』と聞いて美童は慌てた。
「あ、今日はダメなんだ。ちょっと緊急の用事があってね」
「今日は他の方とデートかしら?」
くすっと笑って可憐は美童の次の言葉を待った。
「仕事だよ。デートだったらよかったのに・・・」
野梨子は美童にもはっきりとわかるように目を曇らせてみせた。
「それは残念ですわ。でもお仕事なら仕方ありませんわね。ところでなにか事件でも?」
二人の巧みな誘いで、美童は疑念を抱くこともなく話し始めた。
「またキャッツアイから予告状が届いたんだ。それが今夜。土曜の夜だって言うのに
やんなっちゃうよ。でもあとの二人のおかげで警備網はバッチリだから・・・」
「ど、どんな警備?」
思わず身を乗り出した可憐を野梨子は笑顔で制した。
「そんなことお聞きしたら悪いですわ」
そして一呼吸おいて絶妙な間を作ったあと、意味ありげな視線を美童に向けた。
「でも一般人の私たちに話したところで関係ありませんかしら?」
「う、うん。そうだね。でもぼくもあんまり詳しく聞いてないんだ。ただ・・・」
「ただ?」
「魅録が科捜の人たちとライトバンを用意してたな。ルーフにアンテナのついた・・」
それで充分とみた可憐はわざと大きな動作で壁の時計を振りかえった。
つられて美童も時計に目をやる。
「あっもうこんな時間か。そろそろ行かなくちゃ。食事のことは電話するよ」
ショーケースの上に置いてあった店のビジネスカードを指ではさみ、美女ふたりに
ウィンクを送ると入ってきた時と同じように美童はカランと扉を鳴らして出て行った。
「可憐、悠理に」
「わかってるわ」
可憐は携帯の通話ボタンを押した。
皇居周辺を三周したところで悠理は可憐からの電話を受けた。
「―――ああ、あれだな。了解」
向こうに白いライトバンが見えている。ドアが開き、目付きの鋭い男が降りてきた。
男は腕時計を指しながら、制服姿の男たちに何か指示をしているように見える。
悠理はツーリングの途中で地図を確かめている風を装い、胸元から出した紙と
周囲の景色を照らし合わせた。
(美術館、皇居、首都高、それからあそこがジャンクション・・・)
また紙を胸元にしまい込むとエンジンを吹かしながら悠理は片足を軸にして
バイクの向きを180度かえた。
その姿が魅録の目を惹いた。
黒い皮のスーツに包まれたしなやかな体がまるで自分の手足のように大型バイクを
操っている。獣の唸りにも似たエンジン音を響かせながらバイクは魅録の横を走りぬけた。
「女だてらにドゥカティかよ」
輝くような薄茶の髪がフルフェイスからほんの少しだけのぞいていた。
遠ざかるバイクを見つめながら、魅録は妙な胸騒ぎを覚えた。
(どなたか続きお願いしまつ)
>有閑キャッツアイ
眠れなくて覗いてみたら
作品のうpが!!!!
夜行性でヨカタと思う瞬間!
大型バイクを乗りこなす悠理、
クールでカコ(゚∀゚)イイ!!
美童のだめっぷりが(・∀・)ィィ!
警備の詳細を教えてもらってないなんてカワイソーw
うわあ、嬉しい!続きが!
ホント、美童のダメっぷりがサイコー。
一般人にだって警備のことは話しちゃダメだって。もう、美人に弱いんだから(w
ところで亀レスですみませんが「年上の女」話にワロタ!
次郎さんな時宗ちゃんが禿げあがるほどツボですた。可愛くて憎めん。
>有閑キャッツ
うーん悠理カコイイ・・・(ホワン
魅録との知恵比べになりそうでつね。
続きどなたかがんがってくらさい(熱望
>辞典
亀レスでつが面白かったでつ。
過去作探すときの目安になりますね。
誰かこれをもとにFLASH作ってくれないかなぁ
職人さん求む!
>有閑キャッツ
他の人もカキコしてますが悠理輝いてますねー。
キャッツは悠理の見せ場の連続にナリソウ?
「ホロ苦い青春編」の美童編は妄想同好会で読んで
面白かったんですが、続き書いてくださいよ〜作者さん
>可憐さんにはかなわない
魅×悠あやしーい雰囲気でつね。
でも清×可をもっと読みたいでつ。よろしく・・・
病院坂も待ってます!
>有閑キャッツ
清四郎と悠理の肉体派対決も待つ!
「南海の秘宝」で魅録とチチはあれは唇にチウなの?
私はずっとチチのほっぺにチウと思ってたんだが。
唇じゃないとこが純情で可愛いって。
>398
私はずっと唇にチウだと思ってたよ。
で、もう一回見返してはみたが……
微妙な構図ではっきり分からん(w
唇チゥに一票!
その後船の上で魅録が口火津にこぶしを当てていたように記憶しているのだが
キスの感触をずっとそこにとどめておきたいんだなーなんて
厨房ながらに思ってた。
そうか〜唇なのか・・・
何か急にドキドキしてきたわっ。
個人的にはチチの手ではなく肩をつかんで
チウしてほしかったなー。
(だってしにくそうなんだもん)
漏れなんか舌入れたかどうかばかり気にしていたよ。www
おおっ目次屋さんサンクス
グッジョブ!(・∀・)
>398
えーっ、私ずっとほっぺにチュウだと思ってたよー!
そうかー、そうだよねえ、うーん、そうか・・・(ニヤニヤ
>目次屋さん
ありがとー。
「恋チカ」と「病院坂」止まってるねえ。続きキボン
>401
>個人的にはチチの手ではなく肩をつかんで
チウしてほしかったなー。
(だってしにくそうなんだもん)
確かにしにくそう、と私も思ったよ(w
でも、そこがまた初々しいというか、
そういう事に手慣れてない感じがイイ!
しかし、これ、脳内妄想で他の相手に変える事も出来る
なんともおいしい場面ですなあ・・・
>408
>しかし、これ、脳内妄想で他の相手に変える事も出来る
なんともおいしい場面ですなあ・・・
いいですねえ。んじゃ、あたしはとりあえず悠理にチェンジしよう。
暴れる悠理の手をぐっとつかんで押さえてチゥ。
>409
そんじゃあ私は野梨子で脳内妄想。
つきあってしばらく経つのに、手をつなぐだけでドキドキしているふたり。
お互いに次を望んではいるのだが、お互いに嫌われたらどうしようと
一歩踏み出せずにいる。
しかし、ある日魅録がエイヤッと勇気を出してチゥ。
驚いて目がまん丸になる野梨子。
でも瞳が決して嫌がってはいないことに気が付いた魅録は、
再び勇気を出して(でも肩に触れる勇気はまだ無かった!)手をつかんで
今度はちょっと長めのチュウ。
魅録・・・次は私に頼む・・・(w
南国の秘宝といえば、
お見舞いに悠理・美童・可憐・魅録がくっついていって、
あの私有島で清四郎と野梨子が一晩2人っきりで過ごしたんですよね…。
清×野でR18な妄想広げてもいいですか?
>410
うわっ、なんて初々しい二人!かわいい〜。
いい萌えをありがとう。
チチと魅録のキスシーンは口にだと思ってたので
ほっぺにキスの解釈もいいなぁ、と思った。
むしろ私的にはそっちの方が萌えかもハァハァ
>411
やりたきゃ勝手にやれ。いちいち訊くな。
誘い受けが一番ウザイと気付よ411
食いつきがなかったので時間をあけてもう一度、ですか。
ハァ〜ご苦労さまでごわす。
???
413は私とは別の人だよ
それともアレか?ご本人様でs(略
って私も煽りに乗ってる間に萌えネタでもださんかぃって話かw
寝ながら考えてきます おやすみ
少し前に出て来た有閑ルパン。
五右ェ門が清四郎で、次元が魅録で、……ルパンは美童?とか、
わけわからないキャスティングが浮かんで、うううとなってしまった。
なんて、バカ>自分。
誘いウケとおんなじくらい416がウザイ(w
あのな。
誘い受け体質の奴が一番傷付くのは、誘い受けを叩く事じゃないよ。
自分の意見が何の話題にも上らずにスルーされる事。
誘い受けが気に食わなかったら、オバカチャンは無視しろ。
>417
そのキャスティング私も考えた(w
でも、ルパンが思い浮かばないんだよね。
女好きじゃなかったら、魅録が一番あってる気がするんだけど。
「不二子ちゃ〜ん」なんて言ってる魅録なんて想像できない(w
>417
私は次元と五右ェ門が逆かもって思ったよー
五右ェ門、なにげに女に惚れてるじゃない?
あの赤くなり具合が魅禄っぽいなあってw
女に興味なさそうな次元が清四郎かなあ
やっぱり「不二子ちゃ〜ん」ってするのは美堂になっちゃうねw
こういう話のやりとりが出来る雰囲気がいいよね
>有閑ルパン
私はルパン→清四郎(中心的存在、計画とか立てる役割)
次元→魅録(銃の扱いが得意だし無口で硬派っぽい)
美童→五右ェ門(意外と登場の仕方がハデだし・・・)
なんて考えてた(w
不二子ちゃんはやっぱり可憐かなぁ。
ゼニガタのとっつぁんはヤパーリ時宗ちゃんなのか・・・
>422
ためしにルパンのデコにすだれを描いてみる…ごめん。
マトリックスのモーフィアスがモルダビアさんに見えてしかたなかったでつ
>マトリックスのモーフィアスがモルダビアさんに
おお、ローレンス焼き魚。
男だっつうに(w
雑誌の表紙を飾るキアヌ@マトリックスの額に心の中ですだれを
書いてみたあてくし・・・(w
悠理にはバイオ・ハザードのミラ嬢を!
>428
悠理のミラ嬢カコイイ!
しかも、ミラ嬢自身は、何気に魔性の女系だったような・・・
このスレの悠理に通ずるものがありまつ。
シカーシ、実際の悠理はゾンビの相手は駄目そうな気が(w
幽霊の親戚みたいなもんなので
でも悠理、苦手な蛇を、一匹捕まえたら自棄になったように
大群で押し寄せてきたら、ゾンビ相手でも開き直るような・・・
>>426 私はモルダビアが藤山直美に見えてしかたがない
>>233-237 魅録と豊作が専務室に戻ったのは、11時30分を過ぎた頃だった。
開発棟のパソコンのセキュリティーの穴を魅録が発見するのとほぼ同時に、セキュリ
ティー会社から派遣された人間がやってきたので、穴の修復作業はとりあえず彼に任
せ、ふたりはその場を後にしたのだった。
専務室で彼らを待っていた金井と悠理に、もう一度ことの経過を説明した豊作は
どこか疲れた様子だった。
「兄ちゃん、無理すんなよあんまり……」
実は兄の説明の半分も理解できなかった悠理ではあるが、それでも同じ両親から
血肉を分けた兄が酷く滅入っていることぐらい分る。元来、兄は父のように鷹揚でも
なければ、母のように気の強い性質でもない。最近はこれでも肝の据わってきた方なのだ。
「とはいっても、重役としては見逃せる話じゃあないだろ――で、豊作さん。ぶっちゃけて
聞くけど、心当たりはないんですか?」
魅録の言葉に、豊作と金井はやや躊躇うような表情をした。豊作のそれは、部下たち
を疑うことについての罪悪感によるもの。金井の場合は、高校生にしかすぎない魅録たちを
頼りにしてもよいのか、という疑問によるものだった。だが、豊作から彼ら――有閑倶楽部の
活躍は聞いている。今回のプロジェクトに対する一連の妨害工作に対して、なんども警察
に通報しているにも関わらず、何の進展もないことを考えると、ここは彼らに任せてみるのも
いいのかもしれない。
「……うちの勢力図を話していた方がいいね」
本当は、そのようなものがある事実を認めたくないとでもいうふうに、自嘲気味に豊作
はそう切り出した。
「今、うちの社は大きく分けると、ふたつの勢力が争っている。――大きく分けると、社長と僕だ」
――社長!
自らの会社の社長と豊作が争っているという事実に、さしもの魅録も息を呑んだ。
剣菱精機の社長である戸村和正は、剣菱グループの専務でもある。ややこしい話であるが、
剣菱グループの重役たちはそれぞれ別会社の社長を任されており、グループ専務である戸村の
場合は剣菱精機の社長だったというわけだ。この戸村、もし剣菱グループが世襲制を廃止した
場合、本社の次期社長と目されている人物なのであった。(現在、会長と社長は万作が兼任中)
現在、日本の大企業で剣菱のように世襲制を採る会社は希少である。なぜなら、多くの企業
が株式会社であり、社長の選任は、株式総会に拠るからである。だが、剣菱は株式会社であり
ながら、剣菱を左右する力は実質万作ひとりが握っていることになっている。押しも押されぬ勢いに
乗った企業でありながら、昔ながらの終身雇用、年功序列、そして典型的なワンマン会社。
ここに、剣菱の強さと弱さがある。
最近、剣菱のトップの間では、常にひとつの疑念が取りざたされる。――果たして、後継者たる
剣菱豊作が、剣菱万作と同じだけの指導力を発揮できるのかというものである。
改革が必要なのではないか――そう考える者たちが、新たなトップとして擁立しようとするのが、
戸村和正だったのだ。
「本当は派閥なんか作りたくなかったんだけど……」
憂鬱に、豊作はそう口にした。
剣菱もまた、大企業にありがちな影の部分を持っていたというわけだ。
「戸村って奴、あたい何回か会ったことあるぞ」
それまで黙っていた悠理が、突然会話に入ってきたので、一同は注目した。隙のないスーツを
纏ったまま、応接用に設置してあるソファの肘掛に行儀悪く頬杖するその姿は、なんとも言いが
たい違和感がある。そんな魅録の感想はともかくとして、悠理は記憶を辿るようにしてゆっくり口
にする。
「なんか、他のとうちゃんの部下とは違って、神経質そうなおっちゃんだったなぁ」
剣菱の上層部は、どちらかといえば、のんびりとした性格の人間が多い。会長に任せておけば
大丈夫という、全面的な信頼や、演歌調な忠信がそうさせるのだろう。
「でも、そんなに悪そうな奴には思えなかったぞ。あたいにベルギー産のお土産くれたことあるし」
お前は、食い物さえ与えられたら、みんな良い人なんだろ。
呆れた魅録が突っ込みを入れようとしたが、一足早く秘書の金井が口を開いた。
「……戸村社長自身は、何もしてないのかもしれませんわ」
悠理の言葉を後押しするような金井の台詞に、とりあえず魅録は耳を向ける。
「社長は、確かに専務を目のかたきにしているかもしれませんが、陰謀を働くタイプの人間には
私には見えません。グループの未来のために、世襲制を廃止した方がよいと本心から考えて
いるようですわ――わたくしから言わせると、過剰な自信ですけれど。――ただ、社長派に付
く下の人間たちには、明らかにきな臭い人間が揃ってますの」
金井はそう言って、派閥の主な構成を説明した。
開発部は、もちろん豊作派。他に経理部長と、朝に魅録が会った常務の高砂大地も豊作
側である。反対に、社長側の主はマーケティング部全体、広報部部長、経理部次長など。
「実際、彼らが妨害工作しているのかどうか、証拠はない」
憂鬱な表情のまま、豊作はため息をつく。そんな彼を眇め見た金井は表情を改めると、
とうとう以前からの懸案を口にした。
「専務。この際だから、決断していただきますよ。先に法に外れたことをしているのは、むこう
ですわ。今からでも遅いくらいです。――疑わしい人間全てに、探偵をつけるべきです」
「金井君、それは……」
それは、金井と豊作の間で何度もやり取りされていたことであった。早急に原因を突き止め
なければならないのは確かだったが、できるだけそのような手段は取りたくない豊作が、何度も
金井を説得し、話は振り出しに戻っていたのだった。だが思わぬ方向から、金井に援軍が入った。
「悪いことは言わない。金井さんの言う通りにした方がいいぜ、豊作さん」
「み、魅録君……!」
「豊作さん。こういうのは、遠慮した方が負けるんだよ――それに」
にやりと魅録は笑い、持ってきた皮の鞄に手を伸ばした。見守る一同の中で、魅録が取り
出したのは、厚さ0.5mmもない小指の先ほどの面積の鉄版だった。
「強力な武器も‘ちょうど‘持ってることだしさ」
隣で、悠理が表情で『嘘をつけ、嘘を』と言っているのが分かったが、無視する。まさか、「豊作
さん、あなたに使うつもりだったから、持ってました」とは言えまい。いくら俺でも。
「武器――? なんだねそれは」
「GPS付き盗聴器です」
つづきます。
この話でもっともらしく語られていることの9割は出鱈目なので、
皆様、間に受けませんように(勉強不足なもので)
>秋
おおっ待ち望んだ秋が・・・ウレスィ(・∀・)ニンマリ
会社内での豊作の危うい立場、すごく読み応えあります。
恋バナの多いこのスレの中で毛色が変わってて面白い!
魅録が今後どういう活躍っぷりを見せるのか、楽しみに待ってます。
それにしても悠理の想い人が気になるYO・・・
こんなところでいきなり次回予告!!
↓
ttp://ikinari.pinky.ne.jp/ 付き合ってると言う噂をながされた清四郎と悠理。
それを消すためには、偽の恋人が必要だ!
恋人の代役として立ったのは、雅央。
さてどうなる!?
…清四郎…雅央を代わりにしても全然意味ないじゃん(藁
>437
ワラタヨ。意味ないどころか、変な疑惑まで生まれそう(w
おもしろいので、次回予告やってみますた。
モルダビアに占い師が言った。
「美童とつきあい続ければ、不幸が訪れる。悠理とつきあうのが吉」
モルダビアは、どちらを選ぶのか!?
次回「モルダビアの、恋の行き先」
「俺、お前のことが…」
どんなつきあい方をしているのか、考えただけでも恐ろしいっす
>次回予告
来週は「魅録でも分かるらくらく講座」は、東京大学名誉教授の万作さんをお迎えして「恐ろしい急性清四郎症候群・その予防と対策」をお送りします。
万作さんへの質問も受け付けております。
こんなん出ちゃった・・・
>次回予告
『悠理だって、うまい〜んだも〜ん。飲〜んだら、こう言っちゃうよ〜。「魅録〜ッ!」』
秘密結社から新発売。『今度は期間限定発売、時宗味が登場。』
こんなん出ました〜。
悠理を飲んだらこう言っちゃう名前に萌え……。
変な想像しちゃった。
>次回予告
昼は平凡なOL、夜はSMの女王、ふたつの顔を持つ可憐。
そんな可憐の元に、常連客の清四郎がひとりの青年を連れてくる。
豊作と言う名前以外全ての記憶を喪った青年は、可憐を姉のように慕う。
しかし、豊作には意外な過去があった……。
ミッドナイト・ドラマ『女王可憐の華麗な真夜中』第二夜「縄の記憶」
可憐「あなたは縛られているの、過去と言う縄にね……」
…(;´Д`)ハァハァ
sage忘れ、スマソ
>441
これ誰か書いて欲しいなぁ(w
可×豊…豊作兄ちゃんと結婚すれば日本一の玉の輿じゃないか!
>441
>常連客の清四郎、に妙にウケてしまったよ(藁
>443
いいですねえ。たまには可憐にホントに玉の輿に乗ってもらいたい。
ところで、あんなに結婚願望強いのに何故見合いしない?
と本気で不思議に思うのだが
>次回予告
悠理が拾った財布。それは清四郎のものだった。
その中に魅録の写真が入っているのを見つけ、新たな恋のライバルの出現に炎を燃やす悠理!
次回「魅録の写真はただの魔除け?!」お楽しみに。
清四郎…やはり
>次号予告
あのサイト面白いよね〜。たまに遊んでます。
今日はこんなのでました。↓
微乳とロリ顔を武器にセーラー服とブルマー姿で戦う正義の味方、ロリロリ★悠理!!
今日も元気に正義を守るロリロリ★悠理の前に、突如立ちはだかる敵!
その名は、世界制服を目論むマッドサイエンティスト、セクシー可憐!!
セクシー可憐の差し向けたバニーガール姿の巨乳刺客サディスティック野梨子を、ロリロリ★悠理は倒すことが出来るのか!?
次回『ブルセラエンジェル・ロリロリ★悠理』、『微乳対巨乳!!カメコ大集合!!』
ロリロリ★悠理がラブリービームでおしおきよっ!!
・・・ちょっと絵で見てみたいかも(ニガワラ
おお!!みんなやってるやん!ノッてくれてありがとでつ
>446
>微乳とロリ顔を武器にセーラー服とブルマー姿で戦う正義の味方、ロリロリ★悠理!!
ブルマ悠理、カナーリ萌え…おしおきされてぇ(;´Д`)ハァハァ
しかし野梨子…『巨乳』なのか!?藁 サドってのはみょーに納得してしまうものもあるが…
>>447 以前も次回予告で盛り上がったけど、あんまりやると、チョトひいてしまう。
ほどほどに。
漏れはすでにひいてるよ・・・
楽しんでるんだからいいじゃん。
あっちいってろよ。
>441
確かに、悠理の兄ちゃんだけに真顔はキリっとしてて美青年だし
剣菱を継がなくても金に困るような生活なんてしないだろうし
世界屈指の玉の輿だよな、豊作兄ちゃん。
しかしお姑さんがあの方ではさすがに可憐もヒきますか(w
>しかしお姑さんがあの方ではさすがに可憐もヒきますか(w
いやいや、可憐さんのことだからきっと上手に取り入ってくれるはず。
立てるとこは立て、出るべきときには出る、なんて駆け引きも上手そうだし。
うまくお姑さんを操縦してくれるかも。
可憐×豊作、アリだと思うぞ(w
豊作兄ちゃんと結婚=玉の輿、なのは確かだが、
>>451の言うように、お姑さんの問題がある(w
さらに、悠理と義理の姉妹になりたいと思うか
どうかという問題もあるのでは。
個人的な印象としては、悠理は親類よりも友人で
あった方がイイ。
むしろ、玉の輿の先輩として尊敬してるかも(笑)
百合子さんは、可憐がフリルとレースの似合う女の子を産めば
OKだと思う〜
今までロムっていましたが、作者様の作品の続きが待ち切れん!
状態になり、玉砕覚悟で自ら妄想短編に挑戦してみました。
短編というよりも小ネタの延長っぽい話で、
カップリングは1組+αでしょうか。
ちょとネタバレの感があるためカップリングは明記しません。
初ウプなのでお見苦しい(読み苦しい)点はお許しください。
2回に分けてウプします。
生徒会室の中央にあるテーブルに3人は横並びに座っていた。
中央にはやや切れ長の鋭い瞳に精悍な眉を持つ華奢な美少年。
いや制服にスカートを身につけているところを見ると少女が正解のようだ。
見るからに柔らかそうな薄茶色のくせっ毛は、さほど長さがないとはいえ
何の手入れもせずに伸ばし放題なのが一目で分かる。
一方、その右隣の明るい亜麻色のロングソバージュの美少女は、先の少女
とは対照的に頭の上からつま先まで入念に計算しつくされた美を纏っていた。
チャームポイントの泣きぼくろ、そしておそらく彼女の生まれ持つ女性特有
の科が、年令よりもずっと大人びた印象を彼女に与える。
そして左隣には、およそこの場−制服を着て部室にいるという状況−に
似つかわしいくない金髪碧眼の上品な顔だちの美声年がいた。
優に腰まではある美しい金髪は彼の美貌と長身を一層引き立てている。
美男美女に挟まれる形で座るくせっ毛の少女は半ば退屈そうに、しかし他に
することもない様子で両隣のふたりの会話に適当に相づちを打っていた。
「うーん、どうかなぁ。僕はまだだと思うけど」
「そぉおう?でもさぁ、もう3ヶ月よ。3ヶ月!」
「まーな。ナニかないほうがおかしいよなぁ、フツー」
「ナニかって。あんた、ちゃんと分かってもの言ってるんでしょーね」
「もっ、もちろん。それくらいあたいにだってわかってらい」
「・・・」(ホントにコイツ分かってんのかしら)
聖プレジデント学園での穏やかな昼下がり。
廊下や校庭から生徒たちの声が聞こえるのは今が授業中ではないからだろう。
しかし一般の教室からやや隔離された場所にある生徒会室に、それらの声が
届くことは稀だった。
そして今、窓を閉め切っている生徒会室では、外部の物音は微かに反響して
聞こえる程度に過ぎず、逆にこの部屋の物音も外に漏れる可能性は低かった。
それにも拘わらず、彼らは肩を寄せあい声を潜めて話していた。
「本人たちはソレを隠してるつもりでも周りは皆知ってるってことあるよね。
あのふたりってさぁ、そんな感じじゃない?」
「まぁね、そっち方面の不器用さは折り紙付きよね。
それに少なくとも私らに隠し通すことはどだい無理ね」
「だよね。僕の目から見ても、今のところふたりはまだって感じだもん」
大きな声で話せない内容であることは確かなようだ。
しばらくふたりの会話を黙って聞いていたくせっ毛の少女は、椅子の背もたれに
預けた自分の体で前後に椅子を揺らしながら不服そうに尋ねた。
「でもさー。なんでうちらにソレを隠す必要があるんだよ?」
「・・・あんた、正直に言いなさいよ。ソレの意味が分かってるの?」
「ばっ、ばかにすんなよなっ。
けっ、ケンゼンなコーコーセーならダレでもやってることだろっ!」
「・・・」(ホントにホント、コイツ分かってんのかしら)
「嫌だなぁ、育ちが知れるよぉ。レディならもっと他に言い方があるだろう」
育ちが知れると言われた少女は「どうせうちはさもしい成り上がりですぅ」と
口を尖らせて見せたたものの、その言葉を気にする様子は微塵もない。
テーブルの茶菓子にひょいっと手を伸ばすと、それを全部鷲掴みにしようとした。
間髪入れず、その手をピシャッ!と叩いたのは、均一に美しく整えられた爪を
持つ女の手だった。
その女の細く綺麗に手入れされた眉がきゅっと釣り上がった瞬間、赤くなった
手を一心にさする少女に向かって、怒りの言葉が機関銃のように降って注いだ。
「あんたねぇ、限度ってもんを知らないの?
これはあいつらの分だってさっきから何度も言ってるでしょーが。
毎日まいにちっ、何度同じことを言わせれば気が済むのよっ!」
何か言い訳を口の中で呟きながらも一旦押し黙り、しかし尚も恨めしそうな
眼差しでしぶとく茶菓子を見つめる少女。
すると金髪の青年が「ほら、僕の分をあげからさ」と哀れな子犬の前に
茶菓子をそっと差し出す。もちろん極上の甘い微笑みをたたえて。
その微笑みに少女は気をとめることなく「いつもサンキュ!」と言うが早いが
お目当ての菓子を口一杯に頬張っていた。
「あんたがいつも甘やかすから」と言わんばかりの痛い視線をよそに、
嬉しそうに食欲を満たす少女の様子を青年は満足気に見守っている。
少女は口の回りに飛び散った菓子屑を、到底上品とは言えない仕種で
綺麗に舐めとると、ソバージュヘアーの少女の機嫌を取り繕うためか、
それとも単に自分の欲求が満たされた充足感からか、途切れた会話を思い出す
かのように呟いた。と言ってもそれは思いの外、大きな声だった。
「やっぱさぁ、あいつらもやってんのかなー」
<つづく>
>不器用な果実たち
うわっカップリング気になるぅ〜
魅×清? とか期待しちゃだめなのかしらん
>不器用〜
うーん、清×野←魅?
どっちにしても続き、早めによろ〜!でつ。
ところで清×魅とかこのスレではOKなのでつか?
や、漏れは読みたいヨ。
やるなら止めない。
私は好きじゃないけど、やるかやらないかは自由だし、
それもカップリング妄想には違いないから。
>461
同性愛妄想(創作に限らず、話題にすることも含め)は、
やりたいならやったらいいと思うよ。
ただ、嫌いな人は確実にいるから、たたかれることへの覚悟はいると思う。
夏の匂いとかも、要は同性愛だからね
反応はおおむね好意的だったけど、気持ち悪いなどの意見もあったし。
(連載を英断した作者さんはえらいと思うよ)
私自身は、ホモ小説を好んで読む。
でも、このスレで「ホモは可か否か」の論争が巻き上がる事態は……チョト。
なので、
賛成派はスレの空気を読む
反対派は黙ってスルーする
……てな、ことをあらかじめキボン。
同性愛と異性愛で、可能ならば板を分けると良いんだろうけどね。
で、カップリングは関係ない(恋愛の絡まない)話は、また別の
板で、なんて出来ると尚良し。が、2chでそこまでは出来ないか…。
#個人的には、同性愛(男女問わず)は興味ないジャンルなので、
スルーです。
>463
賛成。
漏れは読みたい派なので空気よみまつ!(・∀・)
コーラスで連載中のプライドの神野タソが清四郎似ですね…
あの顔でドラマチック・ラブ&バトルやるんでしょうか?
みだれ髪のセクスとかもやるんでしょうか??
清四郎スキーとしてはかなり楽しみなんですが。
>466
私も、清四郎似だと思った。
でも、清四郎よりもサバけてる人かな?
清四郎って、やっぱり青いとこもあるのが清四郎だし(笑)
プライドは、最近の温帯の作品にしちゃ、楽しみにしてる方かな。
今の温帯には有閑のような話を書くよりも、こういう話の方が合ってるね。
「不器用な果実たち」を書いてます。
話の流れは一緒なんですが、会話に肉付けし過ぎて
当初の予定よりも少し長めになってしまいました。
今日ともう1日に分けて残りをウプする予定です。
あとカップリング話というほどではないので
ラブラブな展開や山場はなきに等しいのです。
すみませぬー。
>>457-459 「だーれがナニをやってるって?」
聞き慣れた、しかしこの場に決してあってはならない背後からの男の声に
3人はほぼ同時に振り返った。
「あっ、あんた、どっからわいてでたのよ?」
いの一番に女の口から出た言葉。それは率直な疑問だった。
短く切り揃えた淡いピンク色の銀髪を右手で掻くような動作をしながら
頬の少し痩けた男が不機嫌な顔でそこに立っていた。
「ひでーな、ひとをゴキブリみたいに言ってくれるぜ」
そう言いながら首を軽く左右に傾けて短く欠伸をすると、誰に言い訳するでも
なく言葉を続けた。
「4限が自習だったからフケってそこで寝てたんだよ」
寝違えでもしたのだろうか、男は左手で首筋を摩り、3人の背後を指差した。
物置きと化しているその旧資料室の戸が今は僅かに開いていた。
「で、皆さんお集まりってことは・・・なに?もう昼休み?」
3人の真向かいにある椅子をひとつ窓際に引き寄せると、左肩にかけていた
制服の上着を椅子の背もたれにかけ、男はそこに座った。
胸まではだけたワイシャツのボタンを面倒臭そうにひとづつはめ、同じように
袖口のボタンもはめ終えると、一仕事終えたかのようにゆっくりと一息ついた。
始終その様子を黙って見つめていた3人の口からも軽い息が漏れた。
「何だよ、さっきの話続けろよ。なんか面白そうな話してたよな」
男はひとりひとりの顔に順番に射るような視線を落としていった。
その視線と沈黙に耐えられず、真っ先に口を開いたのはやはり彼女だった。
「やっ、やーねぇ。そんな目で睨まれる程のたいそうな話じゃないわよ。
それにあんなつまらない話はもう終わりっ。そう終わったのよ、ねっ?」
女が引きつった笑顔で金髪に同意を求める。その目は笑っていない。
「うっ、うん。暇つぶしにしていた本当にたわいない話だったよ、ねっ?」
金髪が上ずった声で隣の少女に同意を求める。しかし返事はない。
このふたりに聞いても埒が明かないことを男は端から知っていたのか。
ふいにいつもの気さくな笑顔を見せると、先程から仏頂面のまま押し黙る
くせっ毛の少女の頭を優しく撫でながら、彼女の頭上に軽く自分の手をおいた。
いつものように少女の柔らかい髪を自分の手のひらの中で確かめながら
くしゃっと軽く丸め、優し気な眼差しで彼女の瞳を覗き込んだ。
ふたりの視線が合い、その視線に応えるように少女は頷くと重い口を開いた。
「あたいはさ。言いたいことがあるならそいつに隠さずに言うのが一番だと思う」
半ば宣言でもするような口調で、両隣のふたりに遠慮勝ちに目をやる。
「うちらが話ていたのは、本当にそんなにたいした話じゃないんだ。
でも今その話を正直におまえに言わなきゃ、後でたいしたことじゃ
済まなくなるような気があたいにはするんだよ」
自分自身に言い聞かせるようにゆっくりと言葉を選んでいるのが分かる。
これから少女が何を話そうとしているのか、両隣のふたりにはまったく見当も
及ばぬことだった。そして目の前の男にも。
「初めはさ、ナニとソレの話だったんだ。おまえも分かるだろ?」
「ナニ?ソレ?・・・ナニソレ?」と男は思ったが、顔では平静を装い
とりあえずは「おっ、おう。もちろんな」と応えてみせた。
その応えを待っていたかのように少女は話の口火を切った。
「初めはさ、おまえらふたりみたいに3ヶ月もつき合っているのに
ナニがないのはおかしいって話だったんだ。
で、ナニをしたってことは皆に内緒だから、ごまかすためにソレって
名前に変えたりするんだけど、それでも皆にすぐバレちゃうんだって。
特におまえらみたいなブキヨーなやつらの場合はさ」
「・・・」(ナニをソレに変えるって?コイツやっぱり分かってないわ)
少女に向かって話の先を促す男の目は心なしか血走って見えた。
「まっ、待てよ!まだ怒るなよな、これからが肝心なんだから」
微かな殺気を瞬時に気取った少女は慌てて話の先を続ける。
「うちらは別におまえらのことをバカにしてるんじゃない。
なんていうか多分さ、ちょと寂しくて・・・ちょっと嫉妬してるんだ」
男の目で燃えていた小さな炎は今にも消えそうなくらいに激しく揺らいだ。
「おまえらがつき合ってるって知った時は、すっごく驚いたけど
それと同じくらい自分のことみたいにすっごく嬉しかったよ。
でも心のどっかでは置いてきぼりをくらったみたいな寂しさもあってさ」
少女は男から視線を外すと、ふと遠くを見るような目をした。
「今までいつも皆一緒なのが当たり前だったけど、こうやって段々と
変わっていくんだなーって。あたいその時になって初めて気づいたんだ」
いつしか男の顔には仲間を思いやるいつもの優しい表情が満ちていた。
「分かったよ。おまえの気持ちはもう充分に分かったから、それ以上は・・・」
と諭すように、またなだめるように語りかけた男の言葉は打ち消された。
一旦溢れ出した少女の胸の内は止まるところを知らず、加速していく。
「だからナニとソレのこともさ、うちらに隠れておまえらがコソコソやってる
んじゃないかって思うと、仲間はずれにされたみたいに悲しかったんだよ。
うちら仲間なのにさ、友だちなのにさ、おまえらがナニしたってことも
打ち明けてくれないのかよっ!って。なっ?」
先刻から目の前で繰り広げられている思いもよらぬ展開に、美男美女は
ただただあっけに取られて口も挟めずに傍観していた。
そしてここに至って何やら話の論点が微妙にズレ始めていることに気づいてもいた。
しかし今や完全に少女の気迫に呑まれた状態の彼らには「はい、その通りです」
の意を表して、頭をぶんぶんっと大きく縦に振るしかなかった。
<つづく>
「…えっ? それはどういうことですの、清四郎」
野梨子は清四郎の突然の申し出に美しい眉を一瞬ひそめた。
清四郎は背中に冷や汗が流れるのを感じながら、先刻野梨子に告げた事を
もう一度繰返した。
「昨日の、アレなんですがね、ちょっと事情があって…
返してほしいんです」
野梨子は眉間にキッと皺をよせた。
________
突然こんな書き出しでリレーを始めてみました。
どんな筋になってもかまわないので、
次の人が書きやすいように、
又、多くの人が参加しやすいように
・一回のうpは短かめで
・また登場人物はわかりやすいようにオリキャラはナシ
(本誌に出てくるキャラのみ)
でお願いします。
勝手に決めてしまいましたが
このお遊びリレーにつきあってくれる人、
<ツヅキお願いします>
「今更、気が変わったなんておっしゃるつもりですの?」
幼馴染の強い視線に一瞬怯みそうになりながら、清四郎は説得を試みる。
「気が変わったんじゃない、事情が変わったんです。頼みますよ、野梨子。
時間が無い」
「そうやって煙に巻こうとしても駄目ですわ。事情とやらを、聞かせてくださいな」
清四郎は溜息をついて口を開いた。
――――――――――――
箸やすめに面白そうなんでのってみました。
なんでしょうね、「アレ」って。わはは。
続きおねがいします。
>473
「実は・・・」
「いいえ、やっぱり聞きたくありませんわ、清四郎。どういう事情であれ
いただいたものはいただいたもの、でしょう? それも私のお誕生日に
何か好きなものはありませんかって清四郎の方からおっしゃって
くださったんじゃありませんか!それを今さら・・・ひどいですわ」
野梨子の漆黒の瞳から涙が零れ落ちた。
__________
わ〜い、私もやろっと。
続きどなたかお願いです。
>いきなりリレー
「アレ」の正体を誰も書かないまま
ラストまでいったらそれはそれで面白いとオモタ(w
>474
美少女・野梨子の涙に清四郎は大慌て。
「ちょっ、の、野梨子。何を言ってるんですか!ソレのことではありません
よ。僕が言っているのはアッチの方・・・」
「アレだのソレだのアッチだのいやらしい!もう、知りませんわ!」
野梨子はそう言い捨てると泣きながら走り去った。
急いで追いかけようとした清四郎の腕を誰かがつかまえる。
「清四郎!」
___________
アレは何?ソレは?そして誰が清四郎の腕をつかまえたのは?
待て次号!
続きお願いします(藁
>476
「か、可憐……」
「なんか事情はわかんないけど、聞いちゃったわよ〜」
清四郎の背後に立っていたのは、ニヤニヤ笑いを浮かべた可憐だった。
「一体どうしたのよ、あんたたち。この可憐さんが相談にのってあげましょうか?」
一見ありがたい可憐の申し出だったが、清四郎は迷った。
アレやソレのことを、可憐に相談してしまって大丈夫なのだろうか?
清四郎の頭の中で、いろんな事態がシミュレーションされていく。
ついに心を決めた彼は、大きくため息をついてから口を開いた。
「……実は……」
___________
勝手に可憐にしちゃいましたが。さて、清四郎どうする?
続きお願いします〜。
喋りかけた清四郎は友人の声に遮られた。
「よお、清四郎! 野梨子にアレの事聞いてくれた?」
「ゆ、悠理! いや…、実はそれがまだ…」
怪訝な顔の可憐に悠理は説明した。
「清四郎が昨日うまそうな本、野梨子に渡しててさ、あたいにも貸して
って頼んだんだ。なんだ、まだなのか。じゃ、直接野梨子に…」
「い!? いややややや、いやいや、それはマズイ」
清四郎の尋常ならざる慌てぶりを見て可憐は何かあるとピン!ときた。
ニヤッっと笑うと、
「わかったわ、あたしが借りてきてあげる!」
そういうと清四郎が止めるのも聞かず走りだした。
____________
悠理も出してみました。
続きよろ。
「ちょっと、野梨子!」
黒いおかっぱ頭を見つけて、早速可憐は呼び止めた。
「話があるの。あんたが清四郎からもらったアレの
ことなんだけど…」
「アレ…ですの?」
色白の野梨子の頬が赤く染まっていく。
「どうして可憐がアレのことを知っていますの?
清四郎と二人だけの秘密だと思っていましたのに!」
____________
アレって何?と思いつつ。続きお願いしまーす。
「二人だけの秘密ねえ……」
にやにやと口元に笑みを浮かべる可憐に、野梨子は悲しげな視線を向けた。
「それで、清四郎はなんて言ってましたの?」
「えっ(知らないわよぉ、そんなこと)」
「とぼけないで下さいな!ひどいですわ。私だけ馬鹿みたい…」
涙が溢れそうになったが、野梨子は顔を上げた。
「清四郎に伝えておいて下さいな。
アレはもうなくなってしまったから返せないって」
―――――――――――――
アレって一体?もう何が何だか(藁
続きお願いします
>>261 父から叱責されて以来、書庫へ野梨子が足を踏み入れることは絶えて久し
かった。
だが今日、父の留守を見計らい、意を決して野梨子は重い扉を開いた。
十字型の桟を渡した窓から傾きかけた初冬の陽光が差し込み、宙に舞う埃
を白く光らせている。
目当ての本はその光も届かぬ奥まった場所にひっそりと置かれていた。
本を胸に抱き足早に部屋を出ようとした時、廊下を近づいてくる足音に野梨
子は身を固くした。
軋んだ音を立てて開いた扉の向こうに、夕陽を浴びて魅録が立っていた。
後ろ手に扉を閉め、腕組みをして野梨子を見つめる。
射るような鋭い視線に耐えられず、野梨子はその横をすり抜け部屋を出よう
とした。その肩を、魅録は素早く掴んだ。
「待てよ。どうして逃げる?」
顔を見合わせぬよう、野梨子は俯いた。
「安心しろよ。清四郎はずっと実験室に篭もってる。見つかりやしねぇよ。
あんたの足音が聞こえたから、きっとここに居るんだろうと思って来たんだ。
―――こうでもしないと、あんたと話も出来そうに無いからな」
怒っているのか、その声は普段よりも少しだけ低く、野梨子の身を竦ませた。
「最近、俺を避けてるだろう」
きっとあの鋭い目でこちらを睨んでいるのだろう、そう思うと顔を上げる事が
出来ない。
「…何か、あったのか」
「何もありませんわ。…わたくし、急いでますの」
視線を振り切り部屋を出ようとして、一瞬魅録と目が合った。
そこに浮かぶ、酷く寂しげな少年めいた表情に、野梨子は思わず歩みを止
めた。
何でだよ、とその顔は問いかけていた。怒っているのでは無かった。彼はただ、
拗ねているのだ。子供のように。
突然、野梨子の裡に、激しい感情の渦が巻き起こった。
慎重に覆い隠し、見ぬ振りをしてきた筈の彼への愛しさが、もはや押し留め
て置く事など出来ぬ程に大きな流れとなり胸の中を満たして行く。
野梨子はそれを、諦めと悦びの入り混じった奇妙な心持で、ただ受け止める
しか無かった。
改めて、魅録を見つめる。そして悟った。
目の前にいる、大きな形(なり)をした少年を―――厳しい外見を持ちながら、
その裡に脆く、傷つきやすい無垢な魂を秘めた男を、自分はどうしようも無く
愛しているのだ。
こんな顔の彼を放ってこの場を立ち去る事など、どうして出来るだろう。
「避けていた訳じゃ、ありませんわ」 小さく息を吐いて向き直り、野梨子は
嘘を口にする。
「最近…ちょっと気分がすぐれなかっただけですわ」
持病があると、打ち明けた事があっただろうか。厄介な頭痛は実際、折りに
触れて野梨子を苦しめた。そこまで話してはいなかったが、時折意識が遠
のく事さえある。
まるっきりの嘘では無いと、野梨子は自分を誤魔化した。
しかしそれでも猶、魅録は疑うような表情を崩しはしない。と、野梨子が抱く
本に目を留めた。
『臓器移植の可能性』
表紙に記された文字の下には白鹿教授の名があった。清四郎に見咎めら
れ、しかしどうにもならない好奇心に突き動かされた野梨子は、教授の留守
に乗じて隠れ読もうとしていたのだった。
「…あの本か」
「これは、どういう意味ですの」
話が逸れた事に内心胸を撫で下ろし乍ら、表紙の単語を指差し野梨子は
問うた。
「文字通りの意味だよ。いかれた内臓を、まともなのと取り替えようって事」
まだ少し拗ねているのか魅録はぶっきらぼうにそう答えた。
だがその口調よりも、言葉の内容は野梨子に衝撃を与えた。
「そんな…事が、出来るんですの?」
人の体から抜き取った、ぬらりと血に光る臓器を生々しく脳裏に浮かべ、お
ぞましさに野梨子は口を押さえた。
「少なくとも、夢物語じゃあ無いな。数十年前から、世界各地で同種の研究
は行われてる。
豚や羊の腎臓をヒトに移植した医者も居るよ。尤も、それは失敗に終わって
るけどな」
ポケットの中の煙草を探り最後の一本を咥えながら魅録は続けた。
「数年前、南米で死体から取り出した腎臓を患者に移植する手術が行われ
たそうだ。手術自体は成功だったが、そいつも―――」
空になった紙箱を掌でくしゃりと潰した。「二日と持ちやしなかった」
野梨子はぞくりと肌を粟立てた。
「当たり前だ。免疫、なんて概念が当時にはまだ無かったんだからな。
例え健康な臓器を移植したって、体はそうは思っちゃくれない。異物としか
認識できずに、逆に攻撃しちまうんだな。
そこで、拒絶反応を抑える為に―――」
野梨子には合点がいった。魅録が完成したと云う薬剤、単に抑制剤と呼んで
いたそれは―――
「免疫抑制剤…だったんですのね、研究していたのは」
「そう。察しがいいな、お嬢さん」 にやりと笑った。久し振りに目にする筈の
その皮肉めいた笑みも、野梨子の気持ちを和らげはしなかった。
「わたくしには…何だか、畏ろしい研究に思えますわ。うまく云えませんけれ
ど、それは…人が超えてはいけない一線を超えているようで……」
禍禍しい。その言葉を野梨子は呑み込んだ。
「そうなのかもな。俺も、最初に知った時にはそう思ったよ。神なんて信じちゃ
いないが、もし居るとすればこれは俺たちなんかじゃなくそっちの領分に違
い無い、ってね」
長く煙を吐いてから続けた。
「けど、例えば―――俺が死んだ後、その体の一部が誰かの役に立つかも
知れない、そう考えると、まんざら無駄な研究でも無いと思わないか」
成る程、そういう考え方もあるのだと野梨子は一瞬納得しかけた。しかし、
そう思った処で、死者の肉体を切り刻み生者に埋め込む行為への忌まわし
さが拭い去れる訳でも無かった。
考え込む野梨子を穏やかな瞳で見つめていた魅録が、そっと口を開いた。
「あんたと、こんな話をするなんて考えてもみなかったな」
言われてみれば、と野梨子は思った。最初、この無骨な男を自分は畏れて
いたのでは無かったか。
「初めてあんたを見たとき、これは良く出来たお人形さんだと思ったよ。
世俗に疎くて、汚い部分なんて見たことも無い、苦労知らずのお嬢さん
―――自分の意思さえ無いんじゃないかと思ってた」
その見解は強ち間違ってはいない。好奇心を抑え切れずに、家の中の禁忌
に触れる事をも辞さぬようになったのは、魅録と関わるようになってからなので
ある。
それまでの自分は人形と形容されても無理も無い、意思を持たぬ存在であっ
たと野梨子は思う。
黙ったまま、夕陽に透ける魅録の髪を見つめた。
「けど、そうじゃないってじきに分った。ここで最初に会った時にね。
こいつは、よっぽど気の強い女だぞ、って思ったよ」
思い出したのか、魅録はにやりと笑った。
「あの時のあんたの、ばつの悪い顔ったら無かったぜ」
「…からかってますの?」 頬を染め、野梨子はむきになって云った。
「ほらな、その顔」
野梨子は上目遣いに魅録を睨んだ。やがて堪え切れぬ様に、二人は同時に
吹き出した。
「あなたやっぱり、意地悪ですわ」
楽しげにくすくすと笑う野梨子を穏やかな瞳で見つめ乍ら、傍らの卓子に置か
れた灰皿に煙草を押しつけて消した。
「やっと、笑ってくれた」
書庫の中を、一筋の煙が緩やかに渦巻いた。
「久し振りに見たよ、あんたの笑った顔」
傍目にも分る程暗い表情をしていたのだと、野梨子は初めて悟った。
「何があったのか知らないが―――その、俺は―――畜生」
乱暴に頭を掻き乍ら魅録は下を向く。形にならぬ想いを言葉にする事のもど
かしさに苛立ち、それでも不器用に言葉を選んで続けた。
「あんたの、力になりたい」
柄にも無い言葉を吐いた事に照れ、しかし真っ直ぐに顔を上げて、野梨子を
見つめた。
「俺は、あんたが好きだ」
身動き一つせず、彼の仕草のひとつひとつ、紡がれる言葉のひとつひとつを
じっと噛み締めていた野梨子は、やがて小さく息を吐き、目を閉じた。
自分も同じ気持ちでいるのだと告げてしまえば、少しは楽になれるのだろうか。
しかし、そうするには何もかもが遅かった。
野梨子が自分の気持ちに気付くのも、彼の気持ちを受け入れるにも、すでに
清四郎に抱かれてしまった今となっては全てが遅すぎた。
否、例え清四郎と肌を重ねる前にこの言葉を聞いた処で、どうにもなりはしな
かったに違い無い。自分には親に定められた婚約者が居る。魅録は父の部下
である。この恋の成就は、そのまま二人が家を、職を、全てを失う事を意味する。
野梨子の沈黙を当惑と取ったのか、魅録は静かに口を開いた。
「―――済まなかった。こんな事、婚約者の居るあんたに云ったって、困らせる
だけだよな。
ただ、あんたの力になりたいって、そう云おうと思ってただけなのに―――」
想いを口にせずには居られなかったのだ。
俯き、黙り込んでしまった野梨子を見つめていた魅録が、ふと何かに気付きで
もしたか、ついと手を伸ばしその首筋にかかる髪を指で払った。着物の襟から
覗く陶滑らかな肌、そのうなじから背中に続く曲線にくっきりと一筋、傷跡が在っ
た。黒子ひとつ無い白い肌の上でそれは毒々しいばかりに紅く、酷く淫らに見
えた。
はっと魅録の手を払いのけ、その場所を押さえる野梨子の手首には、薄くはなっ
ていたが黒ずんだ内出血の痕が見て取れた。丁度、男の手によって強く握られ
た痕のようである。
見るみる朱に染まる泣き出しそうな野梨子の顔に、それが何であるかを魅録は
悟った。
見られたくは無かった。背徳的とさえ云える清四郎との情事を魅録に悟られる
事、それを畏れ、其故魅録を避けていたと云うのに。
羞恥に顔を染め、魅録の隣をすり抜けて野梨子は逃げるように書庫を後にした。
扉が音を立てて閉まり、部屋を静寂が満たした。
冬の夕陽はとうに落ち、夕闇が緩やかに辺りを包み始めた。
身動きひとつ出来ぬまま、魅録はその暗闇に身を委ねた。
(続きます)
>病院坂
待ってました!
いつも情景が浮かんでくるような文章にもう溜息。
だんだん佳境に近づいてきている予感がするんだけど
これからどうなるのかすごく気になるぅ。
>>480 「アレはなくなったそうよ」
可憐が野梨子からの伝言を伝えると、清四郎は驚いたように瞳を見開いた。
「な、なくなった!? そんな事ありえるはずがありませんよ! だってアレは……」
「アレは……?」
清四郎はしまったという表情をし、コボンと咳払いをした。
「いいえ。何でもありませんよ。しかし、困りましたね。
アレがないと魅録に合わせる顔がない」
「魅録に?」
「おーい。清四郎〜!」
魅録がやって来た。
____________
魅録も出してみますた。続きよろしくなのです。
病院坂キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
あまりの嬉しさに(このスレでは)初カキコっす。
続き楽しみにしてます。がんがってください。
私も待ち焦がれていました、病院坂!
話に引きずり込まれ、今回も思わず鳥肌立てている自分が。
こういう情緒溢れる文体に憧れております。
-----------------------------------
で、その後に自分の駄作が続くのはヒジョーにお目汚しなのですが、
「不器用な果実たち」一応ラストまで上げてしまいます。
他の大作が続々上がると益々気後れするのは明らかなので。
一応と言うのは、当初に考えていたラストの手前で終わる方が
話としてすっきりするように思えたため、
元のラスト部分を番外扱いとして分けました。
すみません、まだこのままじゃ終われないのです(w
連日同様のウプで申し訳ありませんが、番外は近日中に上げます。
>>469-471 熱弁を振るう少女の瞳は、本人も知らぬ間に薄らと涙で濡れていた。
その濁りのない真剣な瞳と真直ぐな言葉に対する応えだけを
自分の中で男はしきりに探し続けていた。焦りが募っていく。
そして追い詰められた状況で手に掴んだ応えとは、
まるで核心だけが先走ってうっかりポロリと落ちたようなものだった。
「安心しろよ、ナニはまだだからさ」
言い終えるか終えない間に「まずった!」と思うが、もう遅い。
今し方自らが発しった言葉に、心中で自問自答を繰り返す男がひとり。
(どう転んだら『安心しろよ』になるわけよー。俺ってナニ様?)
テーブルの上で組んだ両手に視線を落としたまま、指を忙しなく組み替える。
男の顔が見る見る内に赤く染まっていく様子は誰の目にも明らかだった。
この部屋の窓が閉め切られているせいではもちろんあるまい。
(しかもだぜ、『まだ』なんて余計なことまで口走るとはどうかしてるぜ)
そこまで頭を巡らすと、気がついたようにハッと顔を上げる。
(もしかして・・・こいつらに計られた!?)
確かに右手のソバージュヘアーの口元には満足気な笑みが見え隠れする。
しかし左手の金髪の顔は不安気な色が見え、
中央の少女に至っては物思いに耽った様子でブツブツと独り言を繰り返している。
それでもなお疑わし気な目つきで男が3人を見据えていると、
再び少女の視線とぶつかった。
「そっか、まだだったんだな。ごめん、なんだかひとり先走っちゃってさ」
バツが悪そうにする少女の顔にはどことなく安堵の色も見えた。
(いや、俺こそ先走った応えをしちまって悪りぃな)
誰に謝る必要もないのに、男は心の中でつい応えてしまう。
すでに耳まで赤くしている男の顔を少女はつと見つめ返し、
男の手に自分の小さな手を重ねる。男の許しを乞うように。
男は照れた笑みを返し、重ねられた小さな手の上に更に自分の手を重ねた直後、
またもや予期せぬ言葉が男の耳に飛び込んだ。
「じゃあさ、おまえがナニした時は隠さずに真っ先にうちらに言えよな。
あたいもその時はおまえらに一番に話す」
刹那、あまりにも潔く言い切られたその解読不能な提案に
男はつい一瞬前のことも思い出せず、今この瞬間のことさえも考えられなくなった。
ただ彼女の吸い込まれるほどに澄んだ瞳が真剣そのものであり、
どんな否定の言葉も男には許されないことだけを認識した。
「おっ、おう。・・・たっ、多分な」
何とか応えた最後の一言は消え入るような声となった。
その応えをしっかりと受け止めたとでも言いたげに少女の瞳が強く輝き、
胸のつかえがおりたかのような爽やかな笑みを満面に湛えた。
見慣れたその笑顔を目にした途端、男もふっと肩の力が抜けるのを感じた。
そして今の素直な心情が自然な形で声となるのを自分の耳で聞いていた。
「俺はさ、日々変わるのが人ってもんだと思うけどよ。だからって急に
変われるような器用なやつなんて然う然ういるわけないとも思ってる」
男は一旦言葉を切り、仲間の顔をゆっくりと見回すように眺めていたが、
突如ふと思い出したように声を立てて笑い出した。
「そもそもよ、俺を不器用呼ばわりしたのはおまえらの方だろ。
その俺が置いてきぼりをくらうことはあっても、
誰かを置いてきぼりにするってのはありえない話なんじゃねーの?」
(・・・だからさ。だから、安心しろよ)
胸に呑み込んだ最後の短い一言は、目の前の仲間にはっきりと諭すようであり
また自分自身に深く言い聞かせるようでもあった。
「あぁん、まだ心臓バクバクいってるわー。
いつマジ切れされるんじゃないかと内心ビクビクだったわよ」
緊張感から解放され、女の廊下を歩く足取りは心なしか軽やかに見える。
「一時は寿命の縮まる思いだったけど、なんだかんだと結構面白いもん
見せてもらったわよねー」と言うと女はクスリと思い出し笑いをした。
「まぁね。でも同じ男性としては、ナニの報告をわざわざ周りにするなんて
何だか同情しちゃう面もあるよなぁ」
自慢の金髪をなびかせながら一歩後ろを歩いていた青年は、
そう言って顔を曇らせ、前を歩く小さな背中を気遣うように見つめた。
「しかもあんたのナニ報告まで聞かされることになろうとはねぇ」
面白そうに女は笑うと隣のくせっ毛頭を軽くくしゃっと掴んだ。
どうやら彼女の頭は常に皆から同じような扱いを受けているようだ。
少女は驚いたようにビクッと顔を上げた。
物思いに耽っていたところを急に現実に引き戻されたかのように。
「なによ、あんた。今になってさっきの台詞を後悔してるとか?」
「ちげーよ。そんなわけないだろ」
ぶっきらぼうにそれだけ告げると、目も合わせずに再び視線を床に落とす。
しかし女の言葉通りだった。今になってひどく後悔していた。
「あんなこと言わなきゃよかった・・・」
消え入るような声で悔やんでみても、頭に浮かぶ情景を消すことができない。
あいつが恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、あたいのとこに報告に来る。
あたいは笑顔で心から祝福する・・・なんてこと本当にできるのかよ?
それが、それほど遠くない未来に起こりうることを少女は知っている。
そして、そこには心からの笑顔でない自分がいることも彼女は知っている。
部屋を出た後から少女の様子が変わったことに青年は気づいていた。
彼女の心が友情と恋愛感情の間で揺れていることも彼は気づいていた。
彼女がそれを自覚したのが、あの部屋を出た直後であったことも。
(そうじゃない、もっと言いたいことは他にあるはずだろう)
あの部屋で青年は始終そう問いかけていた。
自分の本心を伝えようと必死でもがく小さな少女に向かって。
「あのさぁ、今日の日替わりランチは何風だろうね」
努めて明るい口調で前をいくふたりに声をかける。
「えっ?あぁ、先週のレバノン風ステーキは意外やヒットだったわね」
まだ自分たちが昼食を取っていないことに女は気づいた。
「栄養士が代わってから創作メニューが急に増えたよね。
今日は一体何風で来るのかなぁ、ねぇ?」
優しく微笑みながらくせっ毛の少女に並ぶと、応えを待つように瞳を覗き込む。
「・・・ん?ホークス風かなんかじゃねーの」
自分を見つめる視線に気づき一応返事を返したものの、
今は考えるのも応えるのも面倒くさいと少女の目は漏らしていた。
「なにそれ、福岡風ってこと?・・・あーっ!分かったー。
フォルクスね!ホントあんたの脳みそってわっかりやすいわよね。
大方ステーキと聞いて安易に思いついただけじゃなーい。
ばっかねぇ、それってメニューのナニ風とは違うのっ。」
彼女の口に叶うものはいない。怒濤のベシャリ攻撃に追い打ちをかけるように
高らかな笑い声を上げると、最後に一発少女の肩を思いっきり叩く。
「そっ、そうなのか?」女の過剰な反応に身も心も後退りしつつ、
すがるような瞳で青年に無言の助けを乞う。
「ふふふ。もし今日のメニューがフォルクス風だったら
いっくらでも好きなものを僕がおごってあげるよ」と彼は澄まして応えた。
その言葉を聞くやいなや少女の瞳に小さな光がポッと宿る。
「マジでか?騙しっこなしだからな、男の約束だぞっ!」
青年の胸元に掴みかかるかような勢いで、その鼻先に少女は熱い息を吐いた。
突然のことに青年は頬をやや赤らめながら、かろうじて微笑み頷く。
「ばーか、そんなのあり得ないわよ」と女は呆れ顔を少女に向けたが、
暖かな光に包まれた廊下をくせっ毛頭はすでに駆け出していた。
その背中を嬉しそうに眺めながらも、青年の口からは惨めな溜め息が漏れる。
(あーあ。食べ物でしか慰める術がないとは我ながら情けないよなぁ)
ひとり学食に突き進むかに見えた少女は、ふと足取りを緩めて振り返った。
その場でしばし足踏みをしてふたりを待ちながら、口を尖らせてぼやく。
「なにしてんだよー。もたもたしてると昼休みが終わっちゃうじゃんかー」
追いついた青年の腕を両手で引っ張るように掴むと、
初めから勝負がついているかのように、すでに勝ち誇った顔で仰ぎ見る。
「いつもサンキュ!」今日初めて白い歯を覗かせて少女は笑った。
<終わり>
>491
一応お約束として・・・
「作家の感想は名無しで」というルールがあります。
名無しであってもどの作品の作者かわかるのであれば同じです。
次回は気をつけてくださいね。
>「病院坂」
いつもながら読みごたえありますよ〜。二人のいる風景が目に
浮かぶよう。よいな、よいな。
>「不機嫌な果実」
てっきり悠理が大誤解をしているのかと思いきや
そうではなかったんですね??ふうむ。番外編も読みたいな、
>489
「探してたんだぜ、清四郎。昨日俺が帰った後、生徒会室で
何か拾わなかったか?」
「(ぎく。でも素知らぬ風で)いや、何も見ませんでしたが
そういえば部屋の隅に何か写真みたいな紙きれが落ちてた
ような・・・」
魅録は清四郎の「写真」という言葉にぴくりとするが、
「わかった。探してみるわ」とあわてて去った。
額の汗をぬぐう清四郎を可憐がじっと見ている。
____________
イメージとしては清四郎が野梨子に渡した「二つのもの」の
どちらかに、「魅録が落としたもの」をウッカリ挟んでいた
って感じにしてみました。
つづきドナタカお願い!
えへ。500。
>496
追いついた性年って美童だよね?読解力なくてスマソ・・・
>病院坂
はあ・・・たっぷり堪能。
魅録と野梨子はどうなってしまうんでしょう・・・
次が楽しみじゃー
キャッツアイの続きも気になる・・・
待ってまつ
>>372 さっきから可憐は清四郎の視線に落ち着かない気分だった。
ここは可憐の家。清四郎が可憐の探していたCDを手に入れたので誘って
自宅に連れてきたのだった。自分の部屋ではなくリビングでソファに二人
並んで腰かけながらCDを聞いていた。
家に来ないかと誘うと清四郎は一瞬動揺した目で可憐を見て、それから
「そうですね、そうしたいな」と呟いた。
そして家に来てからはソファに座ったまま可憐が話しかけても
「ええ」「そうですね」など生返事しか返って来ない。
いきおい沈黙と妙な雰囲気が二人だけのリビングに立ち込めていた。
清四郎は眉間に皺を寄せ口に手を当てたまま険しい顔をしていた。
可憐は横目でそんな彼の様子をビクビクと伺いながら頭の中でいろいろな想像を
めぐらしていた。中でも気になるのは校庭で魅録と清四郎が二人で喋っていた
ことだった。
まさか、魅録ってば清四郎に昔つき合ってたことバラしたんじゃないでしょうね。
ううん…、あいつに限ってそんなことはしないはず。
じゃあ何で清四郎、「怒って」るの? あたし何かしたかしら…
そうこうするうちにCDのラストの曲が終わった。あわてて可憐が立ち上がる。
場を盛り上げるように明るい声で清四郎に話しかけた。
「あ、ありがと〜。結構よかったわね、このCD。もう一回聞く、どうする?」
「………………ええ」
どしぇ〜。こわい清四郎っっ。何なのよ、その地獄の底から聞こえてきたような声は。
どうしたの、一体何があったの?もうっ。このイヤな空気何とかしてよぉ〜っっ
CDデッキの再生ボタンをもう一度押しながら心の中で必死に神頼みしている可憐は
いつの間にか清四郎がすぐ後ろに立っていることに気がついていなかった。
「可憐」
「(きゃーっ、きゃーっ、きゃーっ!!!!)」
ふいに間近で呼び掛けられた彼女は2、3m位飛び上がりそうな位驚いた。
「なっ、なぁに…」
引きつった笑顔の可憐を清四郎は険しい顔を崩さずマジマジと見ていた。
いやぁっ、もう。何なのよぉ一体…怖くて泣きそう
本当に泣きたい気持ちで立っていると清四郎が口を開いた。
「きれいですよ、可憐は」「………はっ、えっ…???」
「その…可憐が…欲しいですね…」「…っ…ぁっ…」
気がつくと可憐はリビングの床の毛足の長い白い敷物の上に押し倒されていた。
可憐の顔にかかった長い髪を手で除けて清四郎は唇にキスをしようとしたが
彼女はふいと顔を背けた。
「嫌ですか?」
困惑したような顔をして可憐は横を向いている。何か言いたそうだ。
清四郎は彼女の言いたいことがわかってるとばかりに微笑んだ。
「ここじゃ…、いくらなんでも嫌ですよね。可憐の部屋に連れてきますよ」
そう言うと彼女を抱え上げてベッドルームまで運んでいく。
「やっ…、ちがっ…、清四郎!ちょっと!いやぁっ」
驚いた可憐は彼の腕の中で暴れてみたものの逃れる事適わず、あっさりベッドの
上に降ろされた。
お気に入りの上品な花模様が浮かぶ羽布団の上で黄桜可憐は呆然としていた。
清四郎はそんな彼女の唇を奪いながらベッドの上で抱きしめた。
と同時に彼女の背中のファスナーを下ろそうと躍起になっている。
可憐はハッとして清四郎の腕をあわてて振りほどこうとする。
「うっ、嘘よね、清四郎。ジョーダン…」
「冗談じゃありませんよ、可憐。可憐を抱きたい」
その言葉を聞くと可憐は必死でもがき、清四郎の腕から脱出しようとし始めた。
清四郎はそんな可憐の行動を「いやよいやよも好きのうち」だと思ったのか
優しく、だがしっかりと捕獲している。ディープキスを繰返して可憐の抵抗を
無にしようとしたがやっとのことでキスを逃れた彼女はこんなことを言う。
「すとっぷ、清四郎」
「今日はすとっぷはなしですよ、可憐」
「ん…もう、ちょっとストップ、ストップってばあ…」
可憐は清四郎の力に適わないことは知っているはずなのに両手を彼の胸について
つっぱり、あまつさえ足まで使おうとしていた。
彼女の抵抗がこんなに激しいとは清四郎の予想外だ。
清四郎はやめようかどうしようか思案をめぐらしながら思いついて彼女の左の
耳を噛んだ。その途端可憐の体に電流が走り思わず知らず色っぽい声が発せられた。
「あっ…あ〜ん」
ビイーーーーン。可憐の抵抗に少し畏縮していた清四郎は彼女の甘い喘ぎ声で
元気を取り戻した。勢いに乗って可憐の首筋や耳たぶに唇をはわせる。
どうやらそこは正解だったようだ。
「あっ、いやぁん。んもぅ…だめって言ってるのにぃ。やめてぇ」
一体。
一体、世界中の男のうち一体何人が女のこのお願いを真に受けて行為を中断すると
いうのだろう。いや、そんな男はいやしない!(反語表現)
ワンピースのファスナーを半分下げ、彼女の肩をむきだしにする。
鎖骨に唇を這わし、首筋を舌で舐めあげると彼女が甘い声を漏らした。
「あっ…は…ん」
いける!いけますよ、これは!よし、このままムードを保ちつつ次にブラジャーです。
まずホックを探しつつ…。ん?これは?
可憐の身につけている下着は胸を覆っているだけではなかった。
「か、可憐。これ何ですか?」
夢うつつの可憐はぼうっとしながら呟く。
「えっ、ああ、これはボディースーツ…」
ぼ、ボディースーツ!? 初めて聞く単語だ。
どうやって脱がしたらいいんですか…
清四郎は一瞬苦悶した後、気を取り直して下から攻め上ることに決めた。
ワンピースのスカート部分に手を入れ可憐のむっちりとした太ももをそっと
なぜると可憐が熱いため息をついた。しばらく撫で回して感触を楽しんだ後に
ゆっくりと北上してパンティとストッキングを別々あるいは一気に引き降ろし…
「かっ…可憐〜、これは普通のストッキングじゃありませんね…」
「あ…これはガータストッキング。ボディースーツにガータベルトがくっついてるの」
ガータストッキング?ガータベルト?どうやってはずしたらいいんですか…
「…どうしたの?清四郎?」
「ちょ、ちょっと用事を思い出したので帰ります」
可憐×清四郎 −−−−清四郎惨敗を喫す。
屋上の重い扉を押し開けると、強い風が流れ込んできた。
可憐の長くウェーブのかかった髪はたちまちひどく遊ばれてもみくちゃになる。
しかし髪を片手で軽く抑えながら可憐は自分を呼び出した人物に向かって
真直ぐに歩いていった。
おかっぱ頭を強風に乱しもせず、屋上の壁の上に設けられた金網につかまり
遥か遠くを眺めている。
可憐は彼女−白鹿野梨子の隣に並ぶと話しかけた。
「来たわよ、お呼び出しに従って。…話ってなぁに?」
野梨子は可憐に目を向けずにじっと空を見て黙っていた。
その瞳には今までになく意志的な光が宿り、赤い唇は痛いほど横に引き結ばれ
何か彼女の中に堅牢な誓いがあるのを感じさせる。
まるでその体から電流が発散されてるかのように彼女には近づきがたかった。
(こ、怖い…野梨子。あたし、まさか刺されるんじゃないわよね!?)
可憐はポケットを探ると新しい煙草、セーラムライトを取り出した。
そわそわした様子で封を開け、一本取り出し火をつける。
ライターのふたが開く音を聞いて野梨子が言う。
「学校ですわよ、可憐。それに禁煙してたんじゃありませんでしたの?」
「今日だけよ、今だけ。あんたコワイ顔してるんだもの、緊張するのよ」
その言葉に思わず野梨子は隣を見た。
この自分より遥かに大人びてみえる女性の言ったことに嘘はないようで
可憐の顔は確かに緊張してみえた。
風に乱れる髪を気にしながら落ち着きない様子で煙草を吸っている。
野梨子は思わず吹出した。ムッとして可憐が言う。
「ちょ、ちょっとぉ、何笑ってるのよ。こっちの気も知らないで」
「だって可憐が私に緊張なんておかしくって…」
白い両手で口を押さえクスクス笑う野梨子の楽しそうな顔を見て、
可憐もやっと肩の力が抜けた。と同時にお腹の底からおかしさが込上げてきて
口から笑い声が漏れ出す。そのまま二人はしばらくぶりに声を合わせて笑った。
屋上に彼女達の楽しそうな笑い声が響き渡った。
やっと笑いが収まると改めて可憐は野梨子に問いかけた。
「で、何よ、話って。わざわざ呼び出すんだから大事な話なんでしょ?
清四郎のこと?」
野梨子の顔から笑みが消えた。まじめな顔をして可憐に言う。
「可憐。可憐は清四郎のこと、どう考えていらっしゃいますの?」
可憐は二本目の煙草に火をつける。野梨子に背を向けて煙を吐き出し
少し考えていたがやがて振り返るとニッと笑った。
「…好きよ。好き。大好きなの。あいつを他の誰にも渡したくない」
そう言うと再び煙草をくわえて艶然と笑う。
その百万ドルの笑顔に多少圧倒されつつも野梨子は可憐が「清四郎が好き」
と言い切ったことに胸がスッとした。
その気持ちよさに酔いながら野梨子も告白した。
「可憐、私もですの。私も−清四郎が好きですわ、ずっと前から。
他のどなたにも、可憐にも渡したくありませんの」
「うん、わかった。じゃ、あたし達ライバルね。がんばろう、お互い」
可憐が差し出した手を野梨子がぎゅっと握り返した。
「わかってるわね、正々堂々と…」
「ええ、わかってますわ。正々堂々と…」
二人同時に言う。
「は、しない」
「は、いたしませんわ」
また声をあげて二人笑った。
「負けないわよ。どんな汚い手を使っても清四郎は私のものにしてみせるから。
この可憐さんにかかったら王様だってチョロイもんよ。恨みっこなしね」
美しい鼻をツンとすまして可憐が言ったかと思うと、すかさず野梨子が品よく
横目を流してみせる。
「お生憎様。だてに幼い頃から彼と歩んできたわけじゃありませんのよ。
一日の長はこちらにあるのはお忘れなく。私も負けませんわ、可憐」
美しいライバル達は健闘を誓いあって別れた。
もっとも。気の毒な事に当事者である清四郎は萱の外に置かれていたのだが。
今回は以上です。ツヅキます。
寝る前に来て正解♪
>可憐さんにはかなわない
悪戦苦闘してる清四郎に萌えますた
家に帰って、ボディスーツやガーターの研究をするんでしょうか?
ネットで検索しまくってたりして(w
可憐と野梨子もいい感じですね
「正々堂々と…」 の後のセリフにワロタ
>可憐さん
おお、なんか久し振りな気が・・・
清四郎、今回は玉砕か(w
しかしとりあえず可憐をモノにする気はまんまんでつね
いつか成功(性交?)するんだろか
野梨子の暗躍に期待(w
>可憐さん
タイトル通り、可憐さん(の下着)に振り回される清四郎に萌え(w
こーゆー清四郎、割と好きだったりする。
10日位前に出てた「南海の秘宝」の清×野の二人きりの夜という言葉が
頭から離れず、その設定で、勝手にSSを作りました。
しかし、Rは微塵もありません。5レス使います。
夕闇が下り、夜がやってきた。テーブルに灯りが灯される。夕食の後、使用人達も
それぞれの家へと戻っていった。
「帰ってきませんわね」
野梨子が窓の外を見やると、
「久しぶりの再会ですし、向こうで足止めされてるんじゃないですか」
と、清四郎は答えた。
野梨子は、手持ち無沙汰に棚の上に置かれたけばけばしい色彩の置物を手にとって
は眺めている。
「退屈そうですね」
「ええ、本も読み終わってしまいましたし。でも、さすがにこの時間から眠る気に
はなれませんもの」
「少し散歩にでも行きますか。夜の海もなかなかいいと思いますよ」
「ええ」
清四郎の誘いに野梨子は頷いた。
外は灯りが必要ないほど、星の光が強かった。空と海は、同じ深い藍色に染まり、
昼間とは違った顔を見せている。
「夜の海って少し怖いですわね」
「野梨子は昼だって怖いでしょう。ここに来てから一回くらい入りましたか?」
清四郎は笑った。
「あら、ひどい事言いますのね」
野梨子は少し唇を尖らせている。拗ねた様な顔が逆に愛らしく映り、清四郎の中に
ちょっとした悪戯心が浮かんだ。
「野梨子」
彼女の背中に腕を回すと、ふわりと体を持ち上げる。
「きゃっ、何なさいますの。清四郎」
野梨子は暴れたが、清四郎はびくともせずに、ずんずんと歩いた。
「嫌ですわ。ちょっと、降ろして下さいな」
進む方向が海である事に気付き、野梨子は慌てたが、そんな事に躊躇するような彼
ではない。ざばざばと海の中へ入る。
水が腰の辺りまでに来た所で、ようやく彼女の体を解放した。
「いやっ」
野梨子の細い腕が清四郎にからみついた。
「降ろして下さいって言ってたのは野梨子ですよ」
「そんな、海の中で降ろしてなんて私一言も言ってませんわ」
「ほらほら、まだ足が着くはずですよ。そんなにしがみつかなくても大丈夫です」
野梨子は清四郎の肩に手をかけたまま恐る恐る足を伸ばした。
足先に固い砂の感触を確かめるとほっとした様子で、すとんと降り立つ。
「もう、ひどいですわ……」
野梨子が清四郎の胸を突いた。
踵を返すと岸に戻ろうとする。清四郎はとっさに彼女の腕を掴んだ。
「野梨子、今入ったばかりですよ」
「清四郎が力ずくで入れたんじゃありませんの!」
野梨子は半ば本気で怒っていたようだが、このまま戻られてもおもしろくない。
無理やり、今度は子供でも抱くように肩越しに抱え上げる。野梨子の手が清四郎の
背中を叩いた。
「離して、離してくださいな!」
けれど、岸はだんだん遠ざかっていく。野梨子は恐怖のあまり目を瞑った。
意地悪な幼なじみの声が聞こえる。
「しっかり支えてますから、大丈夫ですよ。目を開けてください」
しかし、野梨子は動く事が出来なかった。
「野梨子」
声が優しげなささやきへと変わった。野梨子はそろそろと瞼を持ち上げる。
「ほら、上を見てください」
野梨子の目に無数の星が飛び込んで来た。
一瞬、その中に吸い込まれるような感覚に捕らわれる。思わず息をのんだ。
「きれい……」
そのつぶやきに、清四郎は野梨子を降ろした。
「きゃっ」
がくんと野梨子の頭が下がり海の中に沈み込みそうになる。慌てて清四郎にしがみ
ついた。もちろん、足は届かない。
「野梨子、力を抜いて。波に身を任せて下さい」
清四郎は野梨子の頭を胸のうちに寄せると、沈まぬようにしっかりと支えた。
野梨子はふわふわと揺れる。寄せては返す波を感じながら、空を見上げた。
星々は光の洪水を撒き散らしたようなのに、その一つ一つが、はっきりとした存在
感を放っている。それは硬質の、夜空を切り込むような美しさだった。暖かみがあ
るわけではなく、己自身の輝きのままに放つ光。それを見つめるうちに、野梨子の
胸に不思議な感覚がわきあがってきた。
この海は、先ほど仲間が向かったマイタイ王国はもちろん、彼女の住む日本にまで
も続いている。だというのに、今は自分達がこの世界から切り離されてしまったよ
うな……そんな感じを覚えた。
この状況に現実味がないせいなのかもしれない。けれど、心細さはまるで感じなかっ
た。水の中で、清四郎の体の暖かさだけはまぎれも無い事実で、それがあれば何も
怖くないように感じられたのだ。
ちらりと、目を向ける。清四郎も頭を傾け、星空に見入っていた。この瞬間を二人
で共有している――その事が、ただ嬉しかった。もう一度、空を見上げる。星空は
相変わらず冷たい美しさを放ってはいたけれど、野梨子はふつふつと幸福感が体に
満ちるのを感じた。
清四郎の背中に手を置きながら、野梨子は海から上がった。
彼のTシャツから滴がぽたぽたと落ちている。ぼんやりとそれを見た時、まとわり
つくスカートの感触に足を止めた。
(あ……)
白のワンピースはぴったりと体に張り付き、胸や腰のラインがあらわになってしまっ
ている。
「野梨子?」
幼なじみが不審そうに振り向いた。野梨子は慌てて背を向ける。
「清四郎、来ないで」
「来ないでって……」
背中越しに清四郎の視線を痛いほど感じる。野梨子は恥ずかしさで体から火が出そ
うだった。
「服が水に濡れて……お願いですから先に帰って下さいな」
沈黙が続いた。だが、
「危ないですから、一緒に行きましょう。……見たりしませんから」
その言葉に前を向くと、幼なじみは後ろむきのまま手を伸ばしていた。ためらいが
ちに野梨子はその手を取る。
二人は、黙ってコテージへ続く道を歩いていった。その顔は夜目にも赤いのが見て
取れたが、うつむいて歩いているためか互いの様子には気づかない。
星空は先ほどよりも少し優しい光で、二人を照らしていた。
(終わり)
>星降る夜に
や〜ん、素敵なお話じゃないですかあ。
こういうプラトニックな関係も清×野には似合いますね。
いいですぅ、すっごくイイ!
>星降る夜に
おお、ほんわかしていて良いなあ
体のラインがあらわな野梨子に萌え(w
>星降る夜に
若いもんはええのぉ・・・(と、つい年寄り口調になってしまった)
まさに、幼なじみの友達以上恋人未満という感じが萌えです。
しかし、私が清四郎の立場なら絶対コソーリ(でもしっかり)見てしまいそう。
>星降る夜に
まさに萌え・・・。
舞台になっているのも美しい場所&時間で素敵ですなあ。
しみじみ堪能させてもらいました。
>星降る夜に
漏れも萌え〜
なんかプラトニックっていうよりすごいエチーに感じたぞ
>521
清四郎絶対見てるって!
「不器用な果実たち」の番外を上げます。
ナニソレ騒動直後のひとこまで、
魅←悠に対比させようと清を出してみました。
ややダークな清なので、お好みに合わせてスルーしてください。
*前回のルール違反すみません!以後、心して気をつけます。
>500
そうです、美童です。
当初のラストにあたる番外に魅のその後を書いた勢いのまま、
補足説明もなしに廊下の場面を「終わり」と区切ってしまいました。
廊下に魅がいないことを一言書くべきでしたね(反省
悠のナニ解釈について少し補足を。
悠の中で、ナニはキスの次ステップくらいの認識しかありません。
で、その後には当然結婚が来るものだと思い込んでいます。
ここら辺が、ナニがソレ(結婚)に変わるという勘違いの元です。
悠のナニ報告とは結婚報告に近いものだとお考えください。
>>492-496 男はひとり生徒会室に残っていた。
窓辺に佇むその姿は、校庭で何事かはしゃいでいる様子の女生徒たちを
何とはなしに眺めているだけに見えた。
先刻とは打って変わり部屋は静寂に包まれ、時を刻む秒針の音だけが響く。
「ったく、あいつにはかなわねーよな」
背後に人の気配を感じ取ると、男はそれを確かめるように声を上げた。
窓の外から視線を外すことなく、振り返る素振りさえもない。
人影は応えるような微笑みで男の背に頷き、制服についた埃を軽く落とす。
そして窓際の椅子を自分の方へと引き寄せ、日の射さない場所に置いた。
「誰がたとえたか、無鉄砲とはよく言ったものですね」
その椅子に腰を落ち着けると、思わず出た独り言のように言う。
「あれほどまでに真直ぐな気持ちを他人にぶつけることができる。
それは羨ましくもあり、また恐くもありますね」
僅かに乱れた額の黒髪を掻き上げ、その手を膝の上で軽く組む。
窓辺の男は「おまえがか?」と言う目で一瞥し、喉元で笑いを噛み締めた。
「でもよ、それをぶつけられた身にもなれよな。恐えーだけだって。
沈着冷静なおまえでさえあいつを止められなかったくせに、よく言うぜ」
皮肉な視線を投げてみるが、いつもと変わらぬ涼しい顔がそこにある。
「しかもあいつの真直ぐはタチ悪りぃぜ。時々手元が調子狂うときてる」
今度は涼し気な顔が、笑いを堪えるために表情を歪ませる番だった。
「いやはや、まさか報告を義務づけるとは・・・ね。
どういった了見でその結論に達したのか僕には知る由もありませんが。
もっとも、報告の意味を本人が理解しているとも思えませんがね」
最後の一言をつけ加えるように告げた男の口調は、
半ば感心するようでいて半ば呆れるようでもあった。
(まっ、いくらあいつでもキスで子供ができるとは思っちゃいねーよな)
先刻の出来事を思い返しながら一瞬緩んだ口元は、
自分の姿だけを映していた実直な瞳を思い出すと、すぐに堅く結ばれた。
「あいつにも肝心なのは報告云々じゃないってことくらい分かってるさ。
とにかく。今日はよしとしようや。腹割って正直に話せたってことで」
その場を取りなすように結んだ台詞は、
誰に向けるでもなく自分自身に向けられたものだった。
会話が途切れると、秒針の音が途端に存在を主張し始める。
間を計るようにしばらくその音を聞いていた男がゆっくりと口を開いた。
「正直に・・・ですか。どんな人間にも理性がありますからね。
自分のすべてを他人にさらすなど到底無理な話でしょう」
一変してその声には人を突き放すような冷たい響きがあった。
それは、何かを相手に悟らせようという意図を含んでのことだった。
しかし『相手』はそういった口調に慣れ過ぎていた。
少しも動じる風はなく、うんざりした表情をわざとして見せる。
「おいおい、やめてくれよ。マジ顔で正論つきつけんのはよ。
理屈じゃねーんだ、分かるだろ?あいつと俺とはツーカーの仲なんだよ」
きっぱりとそう言い切り、椅子に座る男を見下ろした。
やがて、逆に見下ろされているのは自分の方だと悟ったのか、
苦々し気な笑みを浮かべると窓の外に顔を戻した。
陽光に包まれた背に向かい、声にならない声は更に問いかける。
(知っていますか。無鉄砲でも時には崖っ縁で踏み止まることを)
誰にも聞こえるはずのない囁き。それに応えた男がいた。
「昔っからの男同士の付き合い・・・。そう、それだけだった」
ためらいがちに沈黙を破った声を、黒髪の男は無表情のままで聞く。
迷う心から絞り出すように発せられた言葉、その一言一言が
男の耳には無味乾燥なものにしか聞こえなかった。
(身勝手な言い訳の先に自分の手元に残るのは所詮エゴでしかない。
これも正論だとあなたには言えますか・・・ね)
窓枠に頭をつけて俯いている男の顔が、窓硝子に薄らと映る。
よく見知った友人のそんな暗い表情を目にしても、
不思議と何の同情も慈悲も起こらない。
今の男はある感情を押し止めることをとうに放棄していた。
その感情を表す単語はたった一息で発することができるだろうが、
言葉として言い表わすにはいくら時間をかけても不可能に思える。
かつては自分の中に沸き上がったその感情を、人並みに嫌悪し、
恥じ入り、かつ排除しようと努力したこともあった。
それでも何かの拍子に、それは突如一瞬にして男を支配してしまう。
(では、考えたことがありますか。
沈着冷静でも時には崖っ縁から飛び下りたい衝動にかられることを)
日の光に透けて金色に輝く髪を、深い闇に捕らわれた瞳が仰いだ。
午後の予鈴が鳴り、潮が引くように校庭のまばらな人影が消えていく。
窓辺の男は一息漏らした後、「あいつは?」と目で問いながら
視線の先を追うように顎でしゃくった。
その戸の向こうは、問うた男が朝の数刻を過ごした場所であり、
また問われた男も半時前までは身を置いていた場所であった。
「寝不足に加えて疲れ気味の様子でしたから、
おそらく先刻の話は聞いていなかったと思いますが。
・・・昨夜は随分と夜更かしをしたそうですし」
そう言葉を切ると、皮肉気な笑みを口端に残しながら、
責めるような鋭い視線で問うた男を見返した。
かつては男自身も忌み嫌っていた感情が再び解放されていく。
今ではそれに身を委ねることに、自虐的な心地よさを男は感じていた。
その黒い瞳の奥底にある淀みに、光を背に受けて立つ男が気づくことはない。
無言の責めに対する照れ隠しに、窓辺の男は何気なく額に手をやるだけだった。
その仕種は微かに赤い目元を隠すようにも見えた。
「今頃はきっと・・・未だ夢の中ですよ」
物憂気に言葉を結びながら、自ずと黒い瞳は旧資料室へと向けられる。
半ば開け放たれた戸口から柔らかな日射しが生徒会室へと射込んでいた。
一時、光に満ちた暖かな場所を男は眩しそうに見つめながら
その光の中に現れるであろう人影を思い描いてみる。
(羨ましくもあり、また恐くもある・・・誰に・・・)
微かに振った漆黒の頭は、心に漏れ出た言葉を否定してのことだろうか。
一度、何かを見い出すようにその場所を見つめ、やがて静かに目を伏せた。
<終わり>
以上です。
形だけの既カップルで終わってしまった・・・。ごめんよ、魅×野。
ナガナガと駄文におつき合い下さり、ありがとうございました。
>不器用な果実たち〜日溜り〜
番外編おつかれさまでした!
魅録は「まだ」じゃなかったんですね。
精神的に魅←清なのかしら。
えっもしかして3…と思ったワタシは逝ってきます〜
某所でいろいろ話題になってまつが、漏れから見てたぶん作家さんは
その場所を知らないと思ったので(お約束も知らなかったくらいだから)
余計なことですが書かせてもらいます。
ちょっと人物が分かりにくかったです。
できたら、次回作品発表する時には固有名詞を使ってください。
自分が分かっている事と、他人が分かっている事には、
差があるのだと思ってください。
>531
まあまあ。落ち着かれて(w
>不器用な果実
決して悪くはないんですよー。
なので、もう少しわかりやすい文章にしてもらえると、とても素敵と思います。
「彼」とか「青年」というのが、誰を指しているのかチトわかりにくかったんですー。
WORDかなんかで一回打って、客観的に見直すとかするといいかも。
またトライしてくださいナ。
>>530 私もそう思ったよ>3○
だから逝くならご一緒にw
ところで清四郎と魅録がからむ3○って
二人ともすごいライバル意識むきだしで激しいものになりそう。
野梨子もそりゃ疲れて寝てるわなー
前に3…の美×野×清があって面白かったが
でも実際は清四郎って絶対3はしなさそう
他人に見られると彼は絶対萎え〜のハズ
魅録や可憐もパスしそう
意外に野梨子や悠理がいけそう
美童はもちろん○
清四郎はプライドの高さゆえに、他の男と露骨に比較されるような
シチュエーションは避けそうだね。
魅録や可憐はエチそのものには保守的な感じがする。
エチは好きだけど、経験や知識がいちおうあるだけに
ノーマルなものだけしか受け入れなさそう。
その点、野梨子や悠理は経験がない白紙状態だけに
教育しだいではどんなものもいけそうな感じだな。
教育は、じゃあ、美童にお願いするということでwww
>535
うはは、ものすごい3Pでつね(w
>535
美童にしっかり「教育」されて
野梨子を攻める側にまわる悠理・・・・
スマソ逝って来る。
>不器用な果実たち
美童の悠理への接し方がイイ!ツボでした。
私は特に読みにくいとは思いませんでした。
逆に、あそこまでぼかしてるのにわかりやすくて丁寧な文章だと感じました。
情景やキャラの表情が浮かんでくるし、各キャラの仕種やら
リアクションの一つ一つが楽しくてしょうがなかったです。
清四郎の想い人が野梨子なのか悠理なのか魅録なのかで
話の内容が全然違うものになるね。面白い!
ひと粒で何度でもおいしい。
>不器用な果実〜日溜り〜
清四郎・野梨子・魅録のイイ雰囲気に激しく萌えました。
番外などではなく、この三人の関係をメインに、
もっと掘り下げて、詳しく書いていただきたいでつ。
>>533 >ところで清四郎と魅録がからむ3○って
>二人ともすごいライバル意識むきだしで激しいものになりそう。
>野梨子もそりゃ疲れて寝てるわなー
うわ〜w激しく読みたいでつw
書いて下さる神の降臨キボンヌ。
>531
「不器用な果実たち」を書いた者です。
有閑関係の他の板は見ていないため、
ここでご指摘いただくのは大変ありがたいです。
代名詞についての私なりの言い分です。
初めは小ネタ延長の短編の予定だったこともあり、
私の趣味で意図的に代名詞にしました。
しかし話を進めていく内にダラダラと長くなり、
私自身としても代名詞を使い続けるのは正直辛いところでした。
ただ初めから代名詞を使って話を進めていたため
途中から固有名詞を使うと別の話になるように思え、
最後まで代名詞で通すことを決めた次第です。
とは言え、個人的な趣味により読者の皆様に読みづらさを
感じさせてしまったことは、深く反省しております。
力不足の素人ゆえと今回はご容赦くださいませ。
もし次回があれば、読みやすい文章を心がけたいと思います。
最後になりましたが、駄文に感想を寄せて下さった皆様
ありがとうございます!それを励みに精進いたしますー。
>540
乙!過去スレなども読んでみてがんがって!
短編です。4スレ使用。
うららかな春の午後
生徒会室の中では男性陣があくびをかみころしながら
雑談にふけっていた。
「じゃあ、きょうはあいつら忙しいんだ」
「創作ダンスの発表が近いといってましたからね。
しばらく放課後はダンスの練習だそうですよ」
「創作ダンスって衣装も揃いで作るんだったよね。
あの3人に共通して似合う衣装なんてあるのかな?」
「ダンスだって一体どんなのになるんだろうな。まともな
ダンスを踊れそうなのは可憐だけじゃないか?」
「そうですね、野梨子は日舞は得意ですけど、ダンスという
イメージではないですね」
「悠理がダンスする姿だって考えようとしただけで
頭が拒絶反応をおこしそうだよ」
「でもブレイクダンスとかなら似合うかもしれないぜ」
「野梨子と可憐も一緒にブレイクダンスするんですか?」
3人のブレイクダンスを想像し、男たちは死にそうなほど笑った。
「勘弁してくださいよ、魅録。野梨子は後転すらまともに
できないんですよ。一体どうやってブレイクダンスなんか
踊るんですか」
「可憐だってあちこちつかえて回転出来なさそうだよね」
「つかえるって…。美童、お前何想像してるんだよ」
「いや、この前こんなの拾っちゃったものだからつい…」
そういって美童が胸ポケットから写真を取り出したもの。
それは悠理たち3人のヌード写真であった。
「お前、こんなのどこで撮ったんだよ」
「だから拾ったっていってるだろ。それにこれは本物じゃなくて
コラージュだよ。可憐はともかく悠理や野梨子の胸がこんなに
大きいわけないじゃないか」
「確かに…、大きいですね…」
清四郎は3人の写真をまじまじと眺めた。
「どうせコラージュするんならもっとらしい写真を使わなきゃ。
まぁ、可憐の写真はまあまあだけどね。サイズ的にはほぼ
同じくらいかな。
「サイズ的にはって…、お前可憐のヌード見たことあるのか?」
「水着姿くらい何回も見てるじゃない。可憐がDで悠理と野梨子は
Aってとこだね」
「EとかFとかじゃないのか?」
「ああいう巨乳はかえって全体のバランスが悪いんだよ。
均整がとれてる感じなのはDくらいが一番いいんじゃないかな。
まぁ、人の好みはそれぞれだけどね」
「野梨子と悠理は同じくらいの大きさなんですか?」
「サイズ的にはね。でも触った感じは大分違うだろうね」
「どう違うんですか?」
「触った感じって…。お前触ったことあるのか?」
「2人ともちょっと落ち着いてよ。あの2人の胸を直接触った
ことはないけどさ。肩や腕の感じから推測できるんだよ。
悠理は全体的に筋肉質だから多分胸もひきしまった感じだろうし、
野梨子は逆にふわっとした感じだと思うよ。大きさとしては
2人とも片手に収まるくらいかな」
美童の言葉を聞くと清四郎と魅録は黙り込み、それぞれ空想の
世界へと入っていった。
「あ〜疲れた。もう腹がペコペコだよ」
「もう悠理ったら、さっきからそれしかいわないんだから」
「でも私も疲れましたわ。紅茶かコーヒー、どちらにします?」
突然にぎやかな声とともに女性陣3人が入ってきた。
「あれ、魅録。どうしたんだよ、赤い顔して」
「清四郎もですわ。2人ともカゼでもひいたんですの?」
問い掛けられて我に返りあわてふためく魅録と清四郎。
「い…いや、その、ちょっと…」
「な…何ともないですよ」
「ちょっと何よ、この写真!」
可憐の声にびくっとした2人は美童をさがすが、彼の姿は
いつの間にか消えていた。
「あんたたち、こんな写真なんで持ってるのよ」
「何怒ってるんだよ、可憐」
「どんな写真ですの?」
悠理と野梨子が可憐の持っている写真をのぞきこんだ次の瞬間、
魅録には悠理の蹴りが、清四郎には野梨子の平手打ちが
決まっていた。
翌日、聖プレジデント学園は頬に青アザを作った生徒会長と
体中から湿布の匂いをさせている副会長の噂でもちきりだった。
「ねぇ、清四郎と魅録、ケンカしたんだって?
一体何が原因なのさ」
(誰のせいだと思ってるんですか)といいたいのをこらえながら
「別に大した理由はないですよ」
と冷静さを装って答える清四郎。
その横から魅録が美童に問い掛けた。
「お前、きのうどこへいったんだよ。急にいなくなって」
「えっ?ちゃんとデートの時間だからもう帰るねっていったじゃない。
2人とも写真に夢中で返事もしなかったくせに」
「そ…そうだったっけ…」
「そうだよ、そんなに気に入ったんならその写真あげるよって
いったらうれしそうにうなずいてたくせに。
あれ、ひょっとして写真の取り合いでケンカになったの?」
「まさか、違いますよ」
「そうだよ、へんなこというなよな」
「じゃあ、なんでケンカなんかしたのさ」
「天気が良かったからですよ、ねぇ魅録」
「そうだよ、急にちょっと一暴れしたくなっただけさ」
2人の必死の弁解を聞くと、美童は意味ありげに微笑んだ。
「ふぅん、まあそういうことにしておいてあげるよ」
「どういう意味だよ」
「清四郎の頬の指の跡、魅録の手にしちゃ細すぎるって
ことさ。じゃあね」
そう言い残すと美童は女生徒達の集団の方へと去っていった。
「さすがというか、すべてはお見通しというわけですか。
あれは一種の才能ですね」
「あぁ、まったくかなわねぇや」
2人の頭上では桜が音もなく散っていた。 終わり
>春の午後
なんかいいなぁ、高校生っぽくて。
原作でも、事件が起こる前の学校での一コマみたいのが
凄く好きなんでこういうの嬉しい。
清四郎の顔に付いた手形に萌え〜
私もブレイクダンスをする3人を想像して、
男性陣と一緒に死ぬほど笑いました(w
>春の午後
ももしろかったです!私もブレークダンス笑った!
可愛いなあ。好きだなあ、こういうの。もっと書いてくだちい。
ごめん549の「ももしろかった」は「おもしろかった」です。
>550
新しい言葉かと思って気にも とめてなかったよ(w
ついにコラージュ登場かあ。確かにひ弱なお坊ちゃまが多そうな学校だから
そういうのセコセコやってそうだな(w
ところでブレイクダンスってさあ今の若い子って
知ってるのかな?
いや私は知ってるが(30代)
5.6年前にもう一度流行ったと思うよ
>>508 放課後の美術室。いつもならサラサラという美術部員達のデッサンの音が
響くその部屋が今日は静まり返っていた。男女合わせて10人足らずの
美術部員達が椅子に座ったまま息を飲んで、目の前の官能的なポーズを取
るモデルを見つめている。その中には特別部員の美童と清四郎の姿もあった。
清四郎は驚きのあまり声が出ないようだった。
そんな彼の様子に美童はほくそ笑むと小声で語りかける。
「どう?初めてにしては中々いいでしょ、野梨子のモデル。僕が頼んだんだよ」
「え…、ええ、そうですね…、しかし、あの格好は……」
野梨子を凝視したまま答える清四郎の声は少々上ずっていた。
美童はフフンと鼻で笑うと立ち上がり、絵のモデルを務める野梨子に近づいた。
白装束に身を包み一つに結った黒髪をいくぶん乱し加減にしている野梨子は
荒縄できつく縛られて潤んだ瞳を『観客』に向けていた。
黒板には「刑場へ引っ張っていかれる八百屋お七」とのタイトルが
白いチョークで書かれている。
「大丈夫?辛くない?」
「ええ…、何とか平気ですわ」
気づかう美童の声に野梨子はしかし答えとは裏腹に少々切なそうだった。
両腕を縄で体に括りつけられた上に、立ったまま多少右に傾いた姿勢をとっている。
日本舞踊で鍛えた彼女はまだ微動すらせずに体勢を保っているが
長時間その姿勢でいるのは無理がありそうだった。
野梨子は部員達の視線を一心に浴びているのを感じていた。
その中には愛する清四郎の視線もある。
彼が自分を見ていてくれるならこの恥ずかしい姿も辛い姿勢も苦にはならない。
(清四郎…。見てくださいな!もっと私をご覧になって!)
固唾を飲んで自分を見つめている清四郎の視線を野梨子は快感に感じていた。
その時、美童が野梨子を縛る縄をぐっと引き締めた。
「ああっ!」
体を絞られる痛みに野梨子は美しい顔をしかめる。
教室のあちこちでゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
思わず清四郎も身を前に乗り出した。デッサンに使うコンテを握りしめた
手のひらがじっとりと汗ばんでいる。
彼女の額を汗が一筋伝った。苦悶の表情を見せる野梨子を美童は許さずに
髪をつかんで後ろにぐっと引っ張りあげた。彼女の顎が上がり白いノドが
痛々しく光る。一同からおおぅとも、ああともつかない嘆息が漏れる。
「い、痛いですわ、美童。おやめになって…」
声を途切らせて哀願する野梨子の耳もとに美童は囁いた。
「素敵だよ、野梨子。その調子。まだまだ、あいつを焦らせてやらなくちゃ」
薄く笑う美童を恨めしそうに野梨子は見上げた。
(いくら何でもやりすぎですわ、美童ったら。きっとサドの気がおありになるのね)
男子学生が何人か落ち着かなくなってきた。
清四郎は目を白黒させながらも野梨子から視線を反らすことができない。
野梨子の姿に踊らされる男共を美童は意地悪く眺めつつ、
次の瞬間、野梨子の着物の衿を両手でグッとつかんで開いた。
部員達と清四郎の目の前に野梨子の白い肌が曝される。
「ひっっ」
野梨子の唇から思わず驚愕の声が漏れると、ガタン、ガタガタ!!という音と
共に鼻血を出した何人かの部員達があわただしく退席した。
「いや、やめて、こんな……。恥ずかしいですわ美童……」
白く華奢な肩を衆人の目に晒しながら恥ずかしさに顔をそむけて涙ぐむ野梨子は
例え様もなく淫美で艶かしい。美童は満足した。
(どうだ、清四郎。きれいだろう。これでもう君の心は野梨子の虜さ。今晩から
可憐じゃなくて野梨子の夢を見て眠れなくなるといい。もっとも刺激が強すぎて
失神してたりして)
野梨子の姿を満足して眺めていた美童は清四郎の様子を見てやろうと彼に視線を向けた。
その刹那、ヒュッという音ともに何かが飛んできて美童の額に命中する。
びしっという鈍い音と共に美童は目を向いて仰向けに倒れた。
彼の横にデッサンに使う黒色をしたコンテが粉々になって落下する。
「び、美童!」
野梨子は縛られたまま慌てて叫んだ。
目を開けたまま気絶した美童の額の真ん中に黒々とした丸い印がついている。
清四郎は野梨子の乱れた衿を手早く直すと、縛られたままの彼女を両腕で抱き上げた。
教室の戸をくぐりながら倒れている美童に冷たく言い捨てる。
「やりすぎですよ、美童!」
白装束を纏い、荒縄で緊縛された美少女が生徒会長の腕に抱かれ廊下を運ばれていた。
すれ違った生徒達がその光景に口をぽかんと開けたまま彼らを見送っている。
「野梨子も野梨子です。なぜモデルなんか引き受けるんですか、それも
あんな淫らな…。あれじゃあ、まるで美童のおもちゃじゃないですか」
思い出したのか顔を赤らめた清四郎は保健室に運びながら野梨子に説教していた。
その時前方から可憐がやってきて二人に気づくとぎょっとして足を止めた。
「ど、どうしたの、野梨子…。縛られちゃって…」
突然の可憐の出現にあわてた清四郎は野梨子を下に降ろすとあたふたと彼女の縄を
ほどき出した。
「実はですね、野梨子が美術部のデッサンのモデルを…」
清四郎の口調はなぜか、後ろめたいことでもあるかのようにしどろもどろだった。
言い訳しながら赤い顔で必死で縄をたぐってはほどいている。
「清四郎、そんなにひっぱったら痛いですわ……」
「す、すみません…。おかしいな、どう縛ってあるんだ、これは…」
そんな清四郎の様子を可憐は黙ったまま見ていた。それから腕を組み、
戒めを解かれた野梨子をじろじろと観察する。その目が狐のように細くなった。
野梨子は縄の跡を痛そうにさすっていたが、可憐の視線に気がつくと挑戦的に
微笑んでみせた。そして、突然
「あ。私、なんだか気分が。せいしろ……」
呆気に取られた可憐の前で、野梨子はがくっと清四郎の腕の中に倒れ込んだ。
「の、野梨子!」
あわてた清四郎はぐったりしている彼女を再び抱き上げ「ほら、言わんこっちゃない」
とせかせかと保健室に運んでいこうとする。
目を三角にしていた可憐はそんな彼を「清四郎、ちょっと」と呼び止めた。
野梨子を抱き上げたまま振り返った清四郎に可憐は優しく微笑んだ。
ポケットの中のハンカチを探ると彼に差し出す。
「出てるわよ。これで拭いたらどうかしら?そのステキな、は・な・ぢ。」
「は…、」
ばしっ。
清四郎の顔にハンカチを叩きつけると可憐はバタバタという足音と共に
鼻息も荒くその場を立ち去った。
顔にハンカチが貼り付いたままの清四郎の腕の中で薄目を開けた野梨子が言った。
「清四郎…、大丈夫ですの?」
その時、清四郎の顔からレースの白いハンカチがハラリと落ちた。
それには赤い染みがポツンとついていた。
(か、可憐っっ〜! 誤解だっっ!)
その時、美術室では気絶していた美童が美術部員達に助け起こされていた。
「大丈夫ですか」の声に曖昧にうなずいた美童の鼻から床にぽたりと赤いものが。
「あ。鼻血。」
今回は以上です。ツヅキます。
>可憐さん
やった、続きだ〜!
私は可憐贔屓だけど、エロい野梨子いいねぇ。
楽しく読めました。
> 可憐さん
だ、大胆だなぁ、野梨子ってば。
きっと美術部男子達は間違いなく、今夜から野梨子の姿を思い出して悶々とするだろう。
>可憐さん
挑戦的な野梨子もイイでつねwゾクゾクしまつw
このあと保健室で、縄を解きながら着物一緒にも解いたりして・・・
>可憐さん
淫美って言葉が何でこんなに似合うんだろう。
清四郎も美童もはなぢを出すほどの艶かしい姿、
激しくビジュアルで見たい!
職人さん居ませんかー…(コソーリ)
>>41 より
バスを降り、50メートルほど歩いたところでもう目的地へ着いてしまった。
『キタガワドライビングスクール』
休校日なわけでも、重い扉があるわけでもなかったが、入口を前に足が進まない。
緊張をほぐそうにもお茶を飲める店もなかった。
(ここまで来ておいて・・・)
どうしても中に入れない野梨子はスクールを囲むフェンス沿いを歩き出した。
事務所や待ち合い室になっているのであろう建物を挟んで、
左側に自動車の教習スペースが、右側に自動二輪車の教習スペースがとってある。
フェンスの向こうをゆっくりとした速度で一台のバイクが通りすぎた。
所狭しと建てられた信号機、カーブに踏切り、ジグザグにわざと置かれたパイロン。
「まるで箱庭ですわね」
先ほど目の前を通り過ぎたバイクがS字カーブの途中で停まっている。
小柄な体からして女性なのだろうか、止まったエンジンをかけ直そうと
何度も必死に足を踏んでいる。
そんな姿が自分と重なって、怖じ気付いていた背中が押された気がした。
(私も頑張らなくては)
『野梨子が優秀なのは認めますが、完成された世界の中だけで生き続けるのは
老人と同じです。成長がない』 ふいにいつかの清四郎の言葉が頭をよぎる。
「もっと『外』を見なければ」 野梨子は小さな声でつぶやいた。
−外ってなんですの?−上から見下ろすような言葉に、あの時ムキになって問い返した。
『知らない分野に興味を持つということです。異性のことも含めてね』
やっとスクール入口の自動扉の前に立つ。
何でも知り尽くした世界から一歩踏み出す緊張に支配されながらも、
それを上回る『外』への興味が体を動かしていた。
「すみません、バイクのコースへ入学したいんですが・・・」
受付の女性が笑顔で振り向いた。
「野梨子はまだ帰ってないんですよ。どうぞ悠理ちゃん。あがってちょうだいな」
「野梨子いないんだったらいいんです。ちょっと寄っただけなんで」
「遠慮しないで。お茶をいれるから野梨子の部屋で待ってて」
「・・・お邪魔します」
野梨子の母の包み込むような笑顔に、つられるかのように靴を脱いだ。
昨夜自分が送るからと言いながら、魅録がいたとはいえ、男ばっかりの中に
酔った野梨子を置いて帰ったことが悠理なりに気になっていた。
「どこ行ってんのかなー」
部屋の真ん中に据えられたティーテーブルの脇のクッションに座り、
主のいない部屋を見渡す。すっきりと整えられた部屋。
鏡台に飾られた百合。ハンガーにかかるアイボリーのニットワンピース。
「・・・ほんと女の部屋の見本みたいなトコだよな」
何度も訪れ、見知った部屋のはずなのに、一人でいる今はまるで落ち着かない。
「遅いよなー。昨日の晩あんなになって疲れてるだろうに」
しんとした空気に耐えられず、ベッド脇の窓へ歩み寄った。
ベッドに片膝をついてカーテンを払い、窓をずらすと冷たい外気が頬にふれる。
「さむっ」のけぞってベッドについた右手に、思いがけず固いものが触れた。
反射的にベッドスプレッドをめくった。
「これ・・・」
現れた黒いメタリックのそれは、女性のお手本のような部屋でひどく異彩を放っていた。
「なんで野梨子がノーランのメットなんか・・・」
シールドの右上についた小さな傷を指でなぞる。
よく知っている、かつて自分もよくかぶったヘルメットに違いなかった。
「・・・野梨子にあげたんだ・・・」
心臓を掴まれた気がした。
「・・・これかぶれる女はあたいと千秋さんだけだ、なんてよく言うよな」
クラブや街の中で後ろに乗せてくれと魅録にせがむ女達はたくさんいた。
『バイクを知らない女を乗せる気はないんだよ』
いつもぶっきらぼうに魅録はそう答える。
「野梨子は仲間だもんな・・・」そっとスプレッドをかけなおす。
「枕元に置くなんて野梨子らしいじゃん」
窓とカーテンを閉めてベッドをおりると、スプレッドのしわを丁寧に払った。
「あら、悠理ちゃん帰っちゃうの?」
お盆を持った野梨子の母と玄関脇ですれ違う。花のような紅茶の甘い香りがした。
「ごめんおばさん。あたい用事思い出しちゃって」
「そう。こちらこそごめんなさいね。野梨子ったらどこ行ってるのやら」
親子でよく似たきれいな眉根を寄せて申し訳なさそうに野梨子の母が微笑んだ。
「野梨子にはまた電話します」
玄関を出ると外はもうすっかり暗い。
茶色い木戸の門戸の前まで来ると、外側で聞き慣れたエンジン音がした。
引き戸にかけた手に一瞬緊張が走った。しばらくしてそっと門戸が開く。
「わっ!!!」 「うわっ!!」
「魅録ちゃんいらっしゃーい。野梨子ならまだ帰ってないって」
「ゆ、悠理!」
期待通りの反応に満足気に笑う悠理を、魅録はのけぞったまま睨み付けた。
「やっぱ魅録も来たんだ」
「ああ。お前も心配になったんだろ?野梨子どこ行ってんだ?」
「わかんない。あたいからまた電話してみるよ」
野梨子の部屋のあたりをちらりと見上げ、魅録はまた門戸をくぐった。
純和風の古い邸宅の前で、街灯に照らされたドゥカティは黒メタリックの虎のように見えた。
「悠理乗ってくだろ?・・・っと今メットがないんだ。お前これかぶれよ」
ポンと自分のヘルメットを悠理に投げる。
受け取ったヘルメットを悠理はぼんやりと見つめた。
「あのメット・・・さ、・・・」消え入りそうな声は唸るエンジン音に溶けるように重なった。
「・・・あ、あたい清四郎にも用あったんだ。寄ってくからやっぱ魅録先帰って」
不思議そうな顔をした魅録の頭に両手でヘルメットをかぶせる。
「明日の数学当たりそうだからちょっと清四郎に聞きたいんだ。時間かかるから」
「なんか気持ちわりーな。明日雪とか降らすなよ」
「言ってろよな。じゃーな」
後ろ手にひらひらと魅録に手を振ると悠理は走り出した。
黒メタリックの虎の唸り声が背中をどんどん遠ざかる。
(野梨子にあげたって何で言わないんだよ・・・)
菊正宗家の前を通りすぎ、エンジン音が聞こえなくなるまで走り続けた。
マフラーもコートも鞄に詰めたままなのに、体は寒さを感じなかった。
<ツヅキマス>
>恋チカ
うおー待ってましたっ。
やっぱそうだったのかー野梨子の行き先。
悠理のなんだかモニョモニョしてる気持ちがなんとも切ないです。
で、清四郎とこれからどんな会話を交わすのかがもう気になって。
次回はぜひ早めのアップをお願いしたいです〜。
>恋チカ
お帰りなさい〜!
今回は悠理がメインでしたね。
野梨子と魅録の間に茶々を入れてしまうんだろか?
清四郎も・・・?
>恋チカ
あー、なんかいいなあ。青春だなあー。
頑張る野梨子が可愛い!
悠理も切ないなあー。あー、どうなるんだー。
「有閑キャッツアイ」いきます
とりあえずミッション2終わらせてみました
伏線は全部使ったつもりだけど、見落としが
あったらスマソ
あれ?
PCがフリーズでもしちゃったかな?
がんがってね。
か、騙りじゃないよね…
>570
うん、私も待つこと10数分なのだ。
テレホタイムになって接続しにくいのかな?
>>388 午後7時半、通行止めが始まると所轄の警察署には
苦情が殺到した。
「家に帰れないじゃないか!」
「子供を迎えにいくのよ。駄目だというなら
かわりに迎えに行ってよ」
「警察の怠慢のツケを住民に押し付けるな!」
たまりかねた所轄署長からの懇願により、通行止めは解除
となり、検問のみとなった。
その検問も度重なる苦情により、やがて形式的なものに
なってしまった。
「あんな検問であたいたちをつかまえるつもりかよ」
「所詮は現場の苦労を知らないキャリアの机上の空論よね」
「でも彼らがあまり有能すぎては仕事がやりにくく
なりますもの。この程度のほうが楽ですわ」
3人は検問を横目に見ながら最後の打ち合わせをすませ、
それぞれの役割を果たすために街の中へと消えた。
9時15分前
上空を飛ぶ不審な物体が発見された。
国立美術館に向かって飛ぶその物体はラジコンヘリで
あることが確認された。
「ちょうど9時10分前だ。妨害電波発信」
魅録の合図で妨害電波が発信されると、ちょうど美術館の
上にさしかかっていたヘリは屋上に墜落した。
「とりあえずここまでは順調ですね」
清四郎が安堵のため息をついたそのとき、緊急信号が
伝わり、けたたましい警報音が鳴り響いた。
とっさに周囲を見回したが、プロミネンスクラウンは
陳列台の中で変わらぬ輝きを放っていた。
「やつら、性懲りもなく上からくるつもりだな
美童、お前も来い。今日こそつかまえてやる」
美童が魅録と一緒に走り出していった。
清四郎も阿戸を追おうとしたが、ふとイヤな予感が
して振り向くと、制服姿の警官がプロミネンスクラウンの
陳列台に近づいていくところだった。
「警官になりすまして盗み出そうというんですか。
まだまだですね」
清四郎はニセ警官の背後から近づき、首に向かって
手刀を振り下ろした。
しかしその手は軽くかわされ、かわりに横腹めがけて
すさまじい勢いの蹴りが繰り出された。
「なかなかやりますね、ではこれはどうです」
清四郎は久しぶりに全力でやりあえる相手に出会えた
うれしさに我を忘れて戦いに没頭していた。
一方、屋根の上に出た魅録と美童はネコに囲まれていた。
「うわ〜っ、なんなんだ、このネコの群れは。
頼むから顔はひっかかないでくれよ」
「今そんなこといってる場合かよ! ったくもう。
俺たちが探してるのはキャットじゃなくてキャッツ・アイ
なんだよ。ほら、どけってば」
「ネコに日本語は通じないと思うけどな」
「なんかいったか?」
「べ…、別に」
そんなことをいっている間にもネコはどんどん集まってきて
ラジコンヘリの残骸に身を摺り寄せている。
よく見るとヘリの周囲には何かの液体が飛び散っていて、
ネコたちはその周囲で恍惚とした表情を浮かべていた。
「畜生、マタタビだ」
「えっ? 何のこと?」
「キャッツの奴、さっきのラジコンヘリにマタタビの液を
積んでたのさ。それを屋根の上にぶちまけると匂いに
つらけてネコが集まってくる。そのネコのどれかが
警報装置に触ったんだ」
「ということは…」
「こっちは囮だ。くそっ、まんまとひっかかっちまった」
その頃、展示室では清四郎とニセ警官がまだ戦っていた。
「これほど強い相手は久しぶりですよ」
清四郎はさかんに声をかけるが、相手はなにも答えない。
しかし、相手の息遣いも確実に荒くなってきている。
(あともう少しですね)
何度目かの蹴りをかわした清四郎が次の攻撃に移ろうと
したとき、魅録と美童の声が響いてきた。
「清四郎、屋上は囮だ。キャッツはそっちだぞ」
「わかってますよ」
ほんの一瞬、清四郎の注意がそれた隙を見計らって
ニセ警官が逃げ出した。
「あっ、こら、待て」
急いで追いかけるが、なかなか追いつけない。
迷路のような通路を行き来するうち、とうとう
見失ってしまった。
「どうした、逃げられたのか?」
「えぇまぁ、でもプロミネンスクラウンは無事ですよ」
「どこが無事なんだよ。どこにもないじゃないか!」
美童の叫び声に陳列台を見ると、そこにあったはずの
プロミネンスクラウンは忽然と姿を消していた。
「そ…そんなバカな、一体いつのまに…」
呆然と座り込む清四郎。
魅録はすぐに各検問所に連絡しようとしたが、
妨害電波を解除するのをしばらく忘れていたため
実際に各検問所に連絡が届いたのは30分後だった。
「かんぱ〜い」
剣菱邸の一部屋では時ならぬ祝宴の最中だった。
「お疲れ様でした」
「ホント、疲れたよ。あいつ、無茶苦茶強いんだもん」
「悠理にそういわせるなんてすごいわね。
一体どんな男だか会って見たいわ」
「そのうち嫌でもまた会えますわ」
「もう会いたくないよ。とにかく疲れて腹減った」
「はいはい、ちゃんと悠理の分は別にしてあるわよ。
思う存分食べなさい」
「わ〜い、さすがねーちゃん」
「ほらほら、こぼさずに食べないとお行儀悪いですわよ」
3人の笑い声が夜空に吸い込まれていった。
終わり
電話回線が混線してたみたいで、接続がいきなり
切れてなかなかつながりませんでした。
どうもスマソ
訂正
574 阿戸を→後を
575 つらけて→つられて
です
勝手にミッション終わらせちゃってごめんね
>有閑キャッツ
あの続きはどうなるんだろうと思っていたので
面白かったです。ヘリがマタタビ乗せていたのはニコ(^^)
でした。清四郎はまだ悠理が女だと気づいてないみたいですね。
ミッション3も楽しみにしてます。
>579
キニスンナ。
ずっと止まってたリレーを復活させたんだ。
あなたは勇者でつ。
これからじっくり読ませてもらうよ。ありがd。
>577
ちくしょう。
魅録は口の中で悪態をついて、重低音の唸りを上げるバイクのアクセルを握った。
まだ、耳を劈くあの馬鹿上司の怒鳴り声がまだ頭を占拠しているような気がする。
全く以って腹立たしい。
あれから、幾人ものお偉方に叱責され、博物館には土下座せんばかりに謝り倒し、
プロミネンスクラウンに掛けられた保険会社の悲壮な顔をした社員に、涙ながらに
罵倒され、――いい加減に辟易としていた。
だが最も許せないのは、またしても失敗してしまった己だった。
結局、魅録が自宅に帰ることが許されたのは早朝5時だった。
暁闇の中、無人の道路を飛ばしながら、魅録は尽きることのない溜め息をつく。
(……東京湾にでも行くかな)
進路を変え、東京湾を目指す。
嫌なことがあったとき、魅録は仲間と騒いで憂さを晴らすか、東京湾などへバイクを
ひとり走らせる。今日は、後者の気分だった。
昼からまた事後処理のために出勤しなければならなかったが、今は睡眠をとるよりも
気持ちを切り替えることの方が大切だった。
バイクが桟橋に近づいたころ、信号が赤になり、魅録は車体を停めた。
と、そのときだった。
交差する前の道をドゥカティが横切った。
思わず反応する魅録の目に映ったのは、昨日と同じ、黒い皮のスーツのライダー。
一瞬ではあったが、その美しい走りに、興奮する自分を魅録は覚えた。
どうやらあのバイクの主も、東京湾を目指しているらしい。どれ、一度話してみようか。
港に到着すると、案の定、先客がいた。
フルフェイスのメットを被ったままのライダーは、若木のようにしなやかに引き締まった
筋肉に覆われてはいたが、そのゆるやかなラインは後姿からでも女性であることは明らか
だった。
近づいても魅録の存在に気づいていない様子である。
彼女は黒皮のスーツの襟を緩め、メットを外した。
ふさぁ。
肩までの薄茶の癖っ毛が広がり、彼女は毛づくろいをする猫――否、むしろ豹の
ように、二三度首を振った。
そして、汗でべっとり額に張り付く前髪を掻き揚げると、ついと視線を海に遣った。
つられるようにして魅録も海を見る。
ちょうど、世界は朝焼けを迎えていた。
太陽の光がきらきらと海に反射し、寝不足の瞳に染みる。
彼女がどのような顔をしており、また、どのような表情で夜明けの海を見つめて
いるのか魅録はきになったが、無数の光の刃の中、逆光で彼女の目元は翳り、
表情はおろか、顔つきさえもよく分からない。
と、彼女は魅録が見守る中、呟きを漏らした。
「……ちゃん」
(………?)
よく聞き取れず、魅録はさらに耳を済ませる。
今度はきちんと聞き取れた。
「とうちゃん。あたいら、ちゃんと今日も見つけたよ。でも、わかんない。
なあ、あたいらに何が言いたかったんだ?」
それは、事情を知らぬ魅録の心さえ掻き乱すような、哀切に満ちた声だった。
気がつけば彼女の背中は、震えていた。
泣き顔を見たわけではない。嗚咽の声を聞いたわけでもない。それでも、魅録には、
彼女が声を押し殺して泣いているのが分かった。
なんて、痛々しい悲しみの表現なのだろうか。
魅録は、自分でも意外なほどにうろたえた。
初めて見たときの、誇り高い肉食獣のような印象から一転し、そこにいる女性は、
どこにでもいるような傷つきやすい女性だった。
自分は今、この名も知れぬ女性の素の部分を見てしまっているのだろう。そして
それはおそらく、よほど近しい人間しか知ることのない表情なのだ。
この女性から、泣く機会を奪ってはいけない。
息をすることすら躊躇いながら、女性の後姿を見つめ、そしてそっとその場を離れる。
海と女性に踵を返した魅録の背中を、太陽が舐めてゆく。
足音を立てないようにしながらバイクにようやく到着したころには、すっかり夜は明けていた。
もう、音は届かないだろう。
そう判断して名残惜しく女性を一度振り返り、魅録はバイクに跨った。一度くらいは
顔を見たかった。そう思いながら、エンジンを噴かす。
ブォォォン
バイクが立ち去る音がしてから心の中でゆっくり十秒を数え、悠理は振り返った。
当然、そこには誰もいない。
どこの誰かは知らないが、この場所を黙って譲ってくれた粋な誰かが乗っていたバイクは、
音からしてナナハンクラスなのは間違いない。
安堵と感謝の溜め息をついて、悠理はふたたび海を見た。
涙はすでに乾いていた。
今回も作戦は成功したが、父がコレクションに込めただろう謎は、またしても解明できな
かった。
それでも、あきらめてはならなかった。
父の遺志を知ることでしか、この呪縛からは解き放たれることはない。
悠理は唇をきゅっと結ぶと、自身もまた海から背を向けた。
奇しくも、背後の海は光の加減で、プロミネンス・クラウンのように七色に輝いている。
「ありゃ、かなり落ち込んでるわねぇ」
馬鹿騒ぎのあと、一同すっかり酔いつぶれ、目覚めてみれば悠理の姿がなかった。
可憐は溜め息をついて、起き上がる。
そのひょうしに、豊かな巻き毛が波打ち、しどけなくスリップ姿の背中に流れ落ちた。
ふと目に入ったのは、無造作に机の上におかれたプロミネンス・クラウン。
彼女たちは、自分たちの目的――ひいては、自分たちの正体を警察に悟らせない
ために、父のコレクションとは関係のないさまざまなものも盗んできた。
しかし前回のアレキサンドライトに続き、今回のプロミネンス・クラウンは間違いなく
父のコレクションであり、謎の解明にかなりの期待を寄せていただけに、精神的ダメージは
多大である。
「さて、お父さまは何が言いたいのかしら、ね」
手に取り、太陽に透かす。
ちりばめられた七色の宝石は美しく輝くのみで、その遺志までは伝えない。
「プロミネンス・クラウン……和訳では、紅炎の冠」
宝石の知識では負けない。思い出す努力をするまでもなく、すらすらと知識が口に
ついて出る。プロミネンス(紅炎)とは、皆既日食の際に現れる光の奔流のことを指す
のだという。
「……え、ちょっと待って」
何かが、頭に引っかかった。
でも、何が?
(――皆既日食だわ)
この言葉が、何かひっかっかる。
可憐は、自分の知識を総動員して思惟にふけった。
何かが、分かりそうな予感がしていた。
皆既日食が、キィワードなのだ。
そもそも、皆既日食というものがどのようなものか、可憐は実際に目にしたことはない。
テレビでの映像を見たことがあるくらいである。興味はあったが、外国にまで出向いて
見に行くほどの関心ではなかったのだ。
……そういえば。
次の皆既日食は、今年の6月5日。日本でも見ることが出来るという。
「!?」
なんとなく思い浮かべたことの重要性に気づいて、可憐は飛び上がりそうになった。
6月5日。これが指すものは。
「アレクキサンドライトだわ!」
アレキサンドライトとは、1831年の6月5日、ロシア皇帝アレキサンダー二世の
21歳の誕生日に発見されたことからつけられた名前だという。
可憐はこの発見に、せわしなく胸元のスリップをつかみ――そして、己の胸元を
飾る太陽を象ったネックレスに触れた。
太陽が翳る日。
「――この一致は、偶然なの、それとも」
怖かった。
父は、何を伝えようとしているの――?
可憐は気を落ち着かせるため、窓の外を見た。そこには、燦燦と輝く、朝の太陽
があった――。
****************************************
これまでの宝石の名前や由来をいろいろ調べてみてみると
このコジツケ設定が思い浮かんだので、ついつい大量に書いてしまいました。
各宝石の発案者さんたち、勝手に設定つくっちゃってすいません(ペコリ)
続きよろしくです。
>有閑キャッツ
す、すごい。圧倒されますた。
魅録は悠理に惹かれていきそうですね。
叱られる魅録に萌え!!
「可憐、これやるよ」
そういって魅録が渡したものはCHANELの紙袋だった。
「千秋さんに『コレいらないから誰かにあげて』って言われてさ」
「へぇ、ありがと。私がもらっていいの?」
「え、あ、あぁ。ぴったりだと思うぜ。……つかめよな」
早々に立ち去る魅録の後ろ姿に「?」と思いながら包みを開けてみると
この春新作の香水『CHANCE』ーチャンスーだった。
突然すみません。
嗅いだらとまりませんでした。
香りはフローラルでスパイシー。ちょっと大人っぽいです。
「揺らぐ香り」だそうです。
>有閑キャッツ
す、すごい。
今まで出てきた二つの宝石と、可憐の形見のネックレス、
すべて絡ませてこんな設定ができるなんて。
あたしもマネして宝石を調べてみたんだけど、
アレキサンドライトは実在する宝石で、プロミネンス・クラウンは創作の宝石なんだね。
>589
>今まで出てきた二つの宝石と、可憐の形見のネックレス、
恥ずかしながら可憐の首にかかってるのが盗んだアレキサンドライト
だと思ってた。3人とも形見を身につけてるんだったね。
創作の宝石ってことは作者さんの創作ってことですか?
ググってみると、プロミネンス・クラウンはセイントテールっていう漫画で
使われてるみいたいです。
でも、実際には存在しないよう。
この有閑キャッツでは「七色の宝石が埋め込まれた王冠」として登場。
「プロミネンス」でググってみると、確かに皆既日食のときの「紅炎」を意味する
言葉らしい。
アレキサンド・ライトに関しては、実際に存在する一個の宝石で
>ロシア皇帝アレキサンダー二世の21歳の誕生日に発見されたことからつけられた名前
これは事実のよう。
>可憐の首にかかってるのが盗んだアレキサンドライトだと思ってた。
可憐の胸には太陽の形のネックレス
野梨子の耳元には月の形のイヤリング
悠理の指には星の形のリング
これが、三人を結びつけた――って書いてるから、キャッツアイを結成する前から
三人はそれぞれの宝石を形見として持ってたんではないかと。
>588
あ、なんかすごくいい感じで好きですー
魅録は可憐の『CHANCE』はどこにあると思ってるのかな。
「つかめよ」ってチョト意味深。
(^^)
キャッツアイの続きを2レス分うpさせてもらいます。
清四郎と悠理の出会いを書いてみました。
キャッツアイのカップリングは清×悠、魅×可、美×野を想定しています。
>>586の続きです
今日の清四郎は髪の毛を整髪料でセットせずに、洗いざらしのまま髪を櫛で丁寧に梳かしつけてから、東京インペリアルホテルに向かった。
彼にとって仕事がある日は髪型をきっちりとセットし、休みの日は洗いざらしのまま前髪を下ろしている。
髪型を変える事で公私のボーダーラインを引いているのだ。
しかし、
「やっぱセットした方がよかったでしょうかね?」
今日は、ホテルで時宗セッティングのお見合いがある。
この髪型では、少しラフすぎるかもしれない。
しかし、待ち合わせの時間まであと5分しかない。
「このままで行きましょう」
彼はホテルへ向かう足を速めた。
「悠理でしたらね〜、今、日本庭園の中を散策しているところですわ」
お見合い相手の母である剣菱百合子が微笑みながら言った。
「そうですか・・・」
百合子にしてみれば軽く淡い微笑を浮かべたつもりなのだろうが、その微笑には凄みがありすぎて、普段、凶悪犯を冷静な態度で相手にしている清四郎さえも背中に冷や汗が走るような圧倒感を感じた。
この人には財閥の当主夫人と言うよりも、極道の妻という言葉が良く似合う。
「・・・娘もやっぱりあのような感じなのでしょうかね?」
時宗に迎えにいってやれと言われた清四郎は東京インペリアルホテルの日本庭園に向かいながら、頭の中でまだ見ぬお見合い相手の姿を思い描いていた。
「確か、悠理さんは桜色の着物を着ていると百合子さんは言っていましたっけ。あっ・・・」
桜色の着物を着た清四郎の見合い相手は、満開の桜の花が咲き誇っている樹の下に立っていた。
清四郎が頭の中で想像していたゴッド姐ちゃんという言葉が似合う女性ではなかった。
色が白くて、華奢で、儚いという言葉が良く似合う。
「剣菱悠理さんですか?」
その時、強い風が吹いて沢山の桜の花が宙に舞い踊り、ふわりと2人を取り囲んだ。
「はい、あたいが剣菱悠理です」
自分の事を“あたい”と呼ぶ愛らしい喋り方に、愛らしい笑み。
悠理の可愛らしい声と愛らしい表情は、一瞬で清四郎を惹きつけてしまった。
この時、まだ2人は自分たちが敵対関係にあることを知らなかった。
****************************************
どなたか続きよろしくです。
おお〜。清四郎と悠理が見合いとは!
悠理はでも清四郎のこと知ってるんだよね。
この二人のラブな関係をどんどん書いてください>作家さん達
トテモイイ!!
どうかどうかこの美しいシーンの続きを読ませてください…。
セットしてない清四郎って変装なみのギャップがあるからなァ…、
悠理は知ってるんだろうか??
スマソ、敵対関係と知らずに惹かれ会うと解釈し、BASARAを連想してしまった。
でも、清四郎さんは前回のミッションで悠理タソを肉体的に痛めつけてるんだよねぇ。
それで惚れちゃうたぁ、とんでもねぇ男だ。
おー有閑キャッツがすすんでる。嬉しい。
1個気になったんだけど、前回のミッションで戦ったのって
暗闇でだっけ?電気ついてたら顔バレちゃうよね。
特殊メイクみたいな仮面してたなら有りかな?
>595続き書きます
「満開ですね」
桜色の大振袖に留まった花びらに気付き、そっと取り去ると、
季節と同じ春色に塗られたグロスから笑みが零れた。
「ありがと」
柔らかなそれにつられ、思わず目を細める。
キャッツの所為で徹夜続きだったが、先程吹いた風がさらって行ってくれた
のだろうのか。疲れが抜けていく気がする。
「菊正宗清四郎です。よろしく。剣菱…いや、悠理さんとお呼びした方がいいかな」
「いいよ、悠理で」
「では、僕のことも名前で」
「うん。じゃあ、清四郎、な」
「はい」
二人は、近くにあるベンチに腰をおろした。
ほんのり色味を感じる淡いチーク。
細く端正な横顔。
木漏れ日に揺らめく後れ毛。
全てが清四郎の心を捉えて離さなかった。
そして――無垢で真っ直ぐな性格も。
会話を続けるうち、清四郎は悠理に関する様々なことを知った。
体育教師をしていて、自宅では猫を飼っている。
姉がいて、行動を共にすることが多い。
彼女は身振り手振りを加えながら、自分のことをとても楽しそうに語った。
「素敵な指輪ですね」
陽の中で珍しい輝きを放つ指輪を捉えた清四郎は、華奢な指元に引き寄せられた。
その時、美しい顔にさっと影が出来た。
ほんの僅かだったが、洞察力に長ける清四郎が見逃すはずは無かった。
(気に障ることを聞いてしまったかな)
自信家の清四郎にしては、珍しく悔やんだ。
彼女に、こんな淋しい顔は似合わない。
いつも笑っていて欲しい。
詫びを言おうと口を開いた瞬間、悠理は再び優しい表情を向けた。
「大切なやつなんだ、これ」
空に翳すと、指輪は見たこともない色と輝きを発した。
瞬く一番星のようにも見える。
「これから食事でも行きませんか?」
「ホントか!腹減ってたんだぁ〜」
中華にしようか、それともイタリアンにしようか。
無言になった悠理を見ると、人差し指を唇に当て熱心に考え込んでいる。
「くくっ…」
余りにも生真面目な顔に、清四郎は小さく苦笑した。
「あっ、今笑ったな!九江の中華は世界一旨いんだぞ!」
今日知ったもう一つのこと。
どうやら彼女は大食漢らしい。しかもかなりの。
「では、中華にしましょうか」
促すと悠理は「うん!」と元気に返答した。
満面の笑みが指輪よりも眩しく感じて、清四郎はまたも目を細めた。
太陽が二人を暖かく包む。
そんな、風光る日の出来事だった。
続きお願いします。
>有閑キャッツアイ
いいなぁ〜かっわいいなぁ、悠理。
やっぱ清四郎みたいな難しいタイプの男が惹かれるのって
無垢な女なのか知らん?ておもた。
>600
漏れもわがんね。
けど、敵と知らずにときめきく姿に禿げ萌えだぁ。
>>432-434 「GPS付き盗聴器? こんなに小さいものが?」
しげしげと見詰める秘書と、唖然としている専務に、魅録は満足する。自分の造った
物に対して、こういう反応をされることは魅録の楽しみのひとつでもある。更に、それらを
使って何か大きなモノ――悪の組織だったり、警察だったり、ライバルだったり――に
喧嘩を吹っかけ、勝利することは、彼にとって手放しがたい快楽であった。
荒唐無稽な活劇映画のような日常に、こんなに惹きつけられている。
「これは、携帯電話に取り付けるものです。動力も、携帯からもらうんで、これだけ小さく
て大丈夫。これが受け取った情報は、全て俺のパソコンに入るようになってる。――盗聴
した内容や、メールデータも全て」
「……悪い奴」
またまた悠理はジト目を魅録に向けつつ、ぼそりと呟く。つまり魅録は、かなり犯罪的
な方法で豊作の「相談に乗る」つもりだったらしい。だが、またまた魅録はそれを無視する。
「し、しかし魅録君……いや、倫理的なことはともかくとして、それをどうやって取り付ける
んだい? 自分の携帯をやすやすと人に預ける人間なんていないだろう」
「――もちろん」
魅録はにやりと魅録は茶目っ気たっぷりに笑った。
「夜中に潜入するんです」
「〜〜〜〜〜!!」「そうこなくっちゃ!」
がばっと立ち上がって、口をぱくぱくさせる豊作。ぱちんと指を鳴らして喜び勇む悠理。
兄妹の反応は見事に割れた。心情が見た目にわかりやすい点は、よく似た兄妹とい
えるだろうか。
秘書の金井というと、平然と次の魅録の次の言葉を待っている。
澄ました顔をしてこの秘書、実はかなりの強心臓だな。
魅録は少しだけ呆れた。この辣腕秘書から自分たち有閑倶楽部のメンバーと同じ
匂いがするのは気のせいだろうか。
二日後の月曜日。
剣菱家が所有する高級車のひとつ、アストンマーチン・ラゴンダに乗り込んで登校する
魅録と悠理の姿があった。普段の車と違うのは、車庫にあったラゴンダに目を輝かせた
魅録のリクエストによる。
なぜ魅録と悠理が仲良く登校したかというと、答えは簡単。魅録が剣菱家に二晩泊まって
いたからである。というのも、剣菱精機の内情を探りにいった土曜日の晩と昨日の日曜日の
二日間、魅録は剣菱家にあるスーパーコンピューターを相手に、いろいろと調べ物をしていた
のだ。
驚いたことに、そのペタbiteストレージのスーパーコンピューターは、金曜日の晩にショット
バーで清四郎や美童相手に憧れを語った商品と全く同じものである。それが発売の一ヶ月
前から剣菱家の書斎――ちなみに、百合子のロココ趣味は書斎にまでも傍若無人に侵出
しており、書斎だか乙女の部屋だか判別つけがたい様相を呈していた――に鎮座ましまして
いたらしい。うらやましいというか、腹立たしいというか、馬鹿馬鹿しいというか、ともかく溜め息
しか出ない。
とりあえず、手に入れられるだけの情報は手に入れた。
作戦の決行は今夜。
剣菱精機の主要メンバーの自宅に押し入り、携帯にGPS付き盗聴器を設置する。
「ふぁあ、それにしても、ねみー」
徹夜作業が祟ったのだろう。大欠伸をしながら、大きく伸びをして、魅録は運転手がドアを
開ける車から降りた。他の高級車とは違い、ラゴンダは持ち主が運転してこその車である。
お仕着せの運転手がハンドルを握る図は、あまり良い絵とはいえない。尤も、リクエストしたの
は他でない魅録自身なので、文句を言う筋合いはないのだが。
埒もないことを考えながら、続いて降りてくる筈の悠理を待っていた魅録だったが、当の彼女
がいつまでたっても降りてくる様子がない――まさか。
車内を覗いてみると、悠理は瞳を瞑ったまま、微動だにしない。つまりは眠っているのだ。
薄情にも、昨晩俺が徹夜しているときに平和そうに眠っていたくせに、なんて奴だ。
「おい、起きろってば」
二の腕を掴んで、ぐいと自分の方に引き寄せた、そのとき。
突然、自分たちに浴びせかけられた黄色い声に、魅録は目をぱちくりさせた。
なんだ? と思って周囲を見回すと、いつの間にやら登校中の生徒たちに注目されている
自分たちの姿があった。
「噂は本当でしたのね。ショックですわ」
「ああん、わたくし松竹梅さまのファンでしたのにっ」
そう嘆きながらさめざめ涙する女生徒がいるかと思いきや、
「やっぱり、妖しいって睨んでたのよ。流石にお似合いだわ」
「倶楽部の方々が学園のどなたかとお付き合いなさるんなら、やっぱり同じ倶楽部の方で
ないと皆さん納得できませんものね。ま、プレイボーイの美童には当てはまらない話ですけれど」
そんなことを言ってるのは美童の彼女のひとりだろうか。
極めつけは、こちらを憎憎しげに見つめてくる、やたらと煌びやかな集団だった。昔の少女
漫画の悪役お嬢様そのものの形相で、絹のレースのハンカチを噛み締めている。そして
ヒステリックにこう叫んだ。
「悠理さまには男なんて似合いませんわっ」
(なんだそりゃ)
男の魅録には理解しがたいものがある。
「せめて、白鹿さまとか、黄桜さまなら涙を飲んで諦めることが出来ましたのに」
「ああ、なんて美しい構図……」
誰かの提案(?)に、神妙に頷きながら、うっとりする一同。
「それを言うなら、松竹梅さまは、菊正宗さまと…」
(……あんまり、理解したくないかも)
最後の台詞については聞かなかったことにしておいた。
と、そのとき流石の大音声に、眠っていた悠理もまた目を覚ました。異様な雰囲気を
察知して、開口一番に呟く。
「な、なんだぁ?」
「どーやら、お前と俺が一夜を共に過ごした仲だと誤解されてるらしい」
事実だけを挙げればあながち誤解ともいえないが、少なくともそういう色っぽい間柄ではない。
「うげ」
自体を把握した悠理は、どこから出しているのか首を傾げるような声を出した。強いて言
えば、蛙が潰されたときのような。――いや、流石にお前、それは俺に失礼ではないか?
「ありえねー」
「そりゃこっちの台詞だ。ほら、とっとと降りろよ」
まだぐずぐずしている悠理を力任せに引きずりおろした。
ふたりで校門をくぐり、学園の名物である校舎までの広大な広場を歩く。中央の噴水といい、
等間隔に配置された彫像といい、嫌味のない上品さでありながら、豪奢さを誇るこの広場を
歩くと、ちょっとした散歩の気分に浸れる。
暑くもなく、寒くもない良い天気だった。こういう日を、秋晴れというのだろう。
気がつけば、周囲の生徒たちの標準服は、半袖から中間服へ以降しつつある。今日から
十月までの二週間は、夏服と中間服のどちらを着用してもいいことになっている。十月になれ
ば、どれだけ暑かろうと、半袖は禁止され、中間服か冬服のどちらかのみになるのだが、そんな
心配をする必要はないだろう。いつのまにやら先週までの残暑は秋風に吹き飛ばされ、すでに
秋本来の涼しさが心地よく肌に馴染んでいた。
「秋だなぁ」
呟いた魅録の言葉に、悠理は満面の笑みを浮かべた。
「秋といやぁ、そろそろサンマが旨い時期だなっ」
簡単な公式ひとつ覚えられない悠理だが、旬の食材の知識は料理人顔負けである。
「川魚も旨いぜ――どうだ、今度釣りに行かないか。マサシたちに誘われてんだ」
きっと大喜びするだろうと思って誘ってみると、案の定、悠理の瞳にはお星様がきらきらと
浮かんでいた。彼女にするにはあまりにアホすぎるが、友人としてはその素直さは可愛らしい
と言えるだろう。
「行く行く行くっ 愛してる、魅録ちゃんっ」
いつものノリで悠理が魅録に飛びつくと、たちまち周囲からあがる歓声。
「――なあ、どういうことだ?」
そのままの体勢でゲンナリと悠理が聞いてくるが、そんなことはこっちが知りたい。
「さあ、なんか調子狂うな――おい、もう離れろよ」
これ以上騒がれるのも本意ではない。双方萎えた気分のまま、とりあえず離れた。
(いったい、どうしたってんだ)
一緒の車で登校したことだけが原因にしては、騒ぎすぎじゃねーか?
自分のバイクの後ろに悠理が乗って登校ならともかく、悠理の家の車での登校なのだから、
疚しいことがある訳がないのだ。だいたい、自分たちが男の付き合いをしていることは周知の
事実である筈で――。
「大変そうですね」
困惑するふたりの背後から声が掛かった。――清四郎である。
まだ夏服である悠理や魅録とは違い、彼はすでにパリっとした長袖のシャツに身を包んでいる。
「余計なお世話だ――おはようさん」
「うー、あれどうにかなんないかな、清四郎」
気味が悪そうに周囲の視線を気にする悠理に、清四郎は気楽に受けあう。
「時間が解決するでしょう。長くても3日、早かったら1日で収まりますよ。君たちのことですから」
75日も待たなくても大丈夫だと太鼓判を押す。
「そうなることを願うぜ。にしても、なんでこんなに騒がれてるのかが分からん」
「そりゃ、もともと悠理が恋患いしているって噂があったからでしょう」
「「? はぁ?」」
よく意味の分からない清四郎の言葉に、ふたりしてクエスチョンマークを浮かばせる。そんな
二人の反応こそ意外とでもいうふうな表情で、清四郎は説明した。
「知らなかったんですか? 夏休みがあけて以来、悠理が最近元気がないって専らの噂でしたよ。
まあ、僕にはとてもそうには見えませんでしたが。それと今回のことが結び付けられたんでしょう」
噂が口の端にのぼるようになっても、相変わらず悠理は元気だった。強いて言えば、ほんの
少しだけいつものパワーがないような気もしていたが、夏休み明けでどことなくダレていたのは
悠理だけではないので、倶楽部のメンバーは気にしてなかったのだ。
「元気ないって、お前なんか悩みあったっけ?」
首を傾げて悠理に聞いた次の瞬間、遅まきながらそれが失言だったと気がつく。
悩みもなにも、先週まで豊作の窶れ具合をさんざん悠理は心配していて、その相談に乗った
ばかりじゃあねえか。俺ってやつは。
寝不足で、頭が動いてないのかもしれない。
それにしても、なんでこんな単純明快な人間が悩んでいることを、当の本人に打ち明け
られるまで、気づかなかったんだ、俺?
「なんだと、失礼な奴だなぁ。あたいにだって悩みくらいあんだぞ!」
ぷうと頬を膨らました悠理に、魅録はさりげなく目配しをする。倶楽部のメンバーに、今回
のことを秘密にすることが、悠理に協力する条件だ。くだらない意地だが、撤回する気はない。
まさか忘れていないだろうな、という魅録の視線に悠理も気づいているのだろう。
「ほう。一体、なんだっていうんです」
面白半分な清四郎の追及に、胸を張って答えた。
「今年のマツタケは不作らしいんだ」
「聞いた僕が馬鹿でした」
清四郎はあっさりと引き下がると、「じゃ、僕は今日週番ですので」と言って、清四郎は
ふたりを置き去りにして、足を速めた。
「おー、お疲れ」
にっこり笑ってそれを見送った魅録は、その笑顔を貼り付けたまま、こっそり呟く。
「えらく嘘が旨いじゃねーか」
悠理の場合、内容がアホらしければアホらしい程信用される。
「あたいだって、いっつもあいつに見抜かれっぱなしじゃないんだじょ」
悠理は舌を出した。
まあ、清四郎の嫌味攻撃に一番被害にあっているのは悠理だ。あれだけ苛められて
いたら、相応の対抗策も思いつくってものだろう。
「ま、お前にとっちゃ清四郎はお釈迦さまだかんな」
「は? あの冷血男の何処が?」
馬鹿言うなよ、とせせら笑った悠理の額をデコピンし、お前がだろ、と切り替えす。
「アホ。つまりお前が孫悟空だってこと」
まだよく分かってない様子の悠理に、魅録は肩をすくめた。
「まあいいや。ともかく今日はお前と一緒に居たら、なにかと煩そうだから、俺も先行くな」
一方的に宣言して、魅録は清四郎を追いかけるようにして足を速めた。
「くそ、痛いじゃねーか」
ひりひりするおでこに手を当てて悠理は毒づくが、追いかけることはしない。
どんどん遠くなってゆく魅録と清四郎の背中を見ながら、自分もゆっくりと歩き出す。その
途端に、方々から上品な挨拶の言葉が雨のように降りかかってくる。悠理がひとりきりに
なって、声が掛けやすくなったのだろう。
「おはようございます、悠理さま」
「今日も良い天気ですわね。ご機嫌いかが?」
お嬢様とは言いがたい素行の悠理ではあったが、流石に天下の剣菱財閥の令嬢として
生まれ、幼い頃からこの学び舎に通っていれば、慣れもする。もともと人好きする彼女は、
顔も覚えていないお嬢様たちからの挨拶に、それでも愛想よく返す。
「おはよー」
ひらひらと手を振ると、きゃっと初々しい小さな悲鳴があがる。
「悠理さま、今日は大乃で特別に作らせたお弁当がありますの。あとで教室に持って伺い
ますわね」
「わたくしは李芳ですの」
「あら、料亭といえば吉兆でしょう? 悠理さまも好んで召し上がっていらっしゃるとお聞き
したもの」
今日も順調に、旨い飯が食べられるらしい。そう思うと自然に頬も緩むというものだ。
「うん、楽しみにしてる」
笑った悠理に周囲の女生徒たちは顔を赤く染めて、一様に「ではまた」とかなんとか言い
つつ、慌てたようにそそくさと立ち去った。
聞こえていないと思っているのか、悠理から離れてから、『やっぱり緊張するわー』などきゃあ
きゃあ言い合っている女生徒たちを、なんとなく悠理は観察した。
『悠理さま、ぜんぜん普通だったじゃない、誰よ恋煩いなんて言ったのは』
『あら、でも今日、悠理さまは松竹梅さまと一緒に登校していらっしゃったわ』
『嘘っ』
罪のない少女たちの噂話に、悠理はしかし思わず立ち尽くしていた。
刹那、周囲から音や色彩が失せたような錯覚に囚われていた。
その間隔をなんと言えばいいのだろうか。
すべての華やぎから取り残されたような、味気ない空虚さ。
立ち止まった悠理の頬を、涼やかな秋の風が嬲る。季節の変わり目らしく、その風は思い
の他強く、ばさばさと音を立てて悠理のスカートをはためかせた。
見上げた蒼穹は高く、晴れ渡っている。
踏みしめる石畳にざらつきを残す砂は冷たく乾いていて、なにより悠理に秋を感じさせた。
(もう、終わったんだ)
春が終わり、やがて訪れた夏さえも、もはや匂いを残さない。
もう秋なのだ。時間は留まることなく、季節は順当にめぐる。
終わってしまった。なにより、始まってさえいなかった。
瞬間、抑えていた筈の感情が高ぶりかけたが、それでも足を止めたのはたった数秒だけで
あり、悠理はすぐに、何もなかったように歩き出す。
なんの感情も表層に浮き上がらせないように、波を立たせないように、細心の注意を払いな
がら淡々と考える。
心はどこまでも静かで――そして冷え切っているのを感じた。
(けっこう、見てるもんなんだな)
客観的にこちらを見ているあの少女たちの方が、身近な友人よりも、時として聡い。
「恋患い……か」
あんまりにも自分には似合わない言葉に、馬鹿馬鹿しくすらなって笑えばいいのか泣けば
いいのか、よく分からない。
知らぬうちに、握りこまれた拳にはくっきりと爪の痕がついていた。
痛みを感じて手のひらを開き、白くなっている痕を見つめながら、けっして溜め息にならぬ
ように細長く息を吐く。
――恋を患うことさえ、あたいには。
道化になることが出来たなら良かったのに。
ツヅク
目が冴えて眠れなかったので来てみたら。
ラッキィ!
リアルで読ませていただいちゃいました!
大好きです。昔を思い出してしまう。
作者様ありがとうございます。続き楽しみです。
>有閑キャッツ
なんか、みんな萌え萌えな展開だね。
このリレー小説、このスレ初期を思わせる住人のノリの良さに、
なんだかうれしくなってくるよ。
……でも個人的に、美×野よりも魅×野的展開を希望していて、
続きを書くチャンスを狙っていたり(笑)
>秋の手触り
私も大好きだーっ
作品もそうなんだけど、ここの悠理が好きだーっ
原作どおりの悠理なんだけど、どっか知的で。
>(もう、終わったんだ)
>春が終わり、やがて訪れた夏さえも、もはや匂いを残さない。
ってことはナンだ。
「夏の匂い」で野梨子が悠理にラブってたとき、
悠理はすでに別の人が好きだったのか?
気になるよ。
取りあえず、「夏の匂い」を読み返そう。
ところで、有閑キャッツアイ。
悠理の母親に<財閥の当主夫人>という形容をつけているってことは、
当主は悠理の父親ってことになるよね?
ってことは、剣菱財閥の子供ではあるけど、血はつながってないっていうこと?
いろいろコレクションを集めていた亡き父親の遺志を知るために、
姉妹がキャッツアイになったっていう設定だったと思うし。
∧_∧
( ^^ )< ぬるぽ(^^)
山崎がしゃべった!(w
>秋の手触り
いやいやいや〜。あらららら〜。
面白い!
悠理の取り巻き達も、悠理の「ありえねー」も
悠理と魅録の男な関係も
そして悠理の心情描写もグー!でした。
続きワクワク×2しながらお待ちしています。
***突然ですが短編の競作をしてみませんか***
○お題「酒」
○お題(今回は「酒」)に関係した内容で
好きな内容の短編をうpしてください。
○ただし6レス以内でお願いします。
○タイトルの頭に「競作・〜(作品のタイトル)」
のように入れてください。
○期間はこの一週間以内で。
現在に生きる人も過去の人も
これから生まれる人も
〜ふるってご参加ください〜
同じお題でも作家さんによっていろんな話が出て
きそうですよね。
やっぱり「酒」なので道徳に反した行いを期待して
しまいますわ!
競作に参加させていただきます。
4レスお借りします。
煌めく夜景が見渡せるカクテルバーにて、一人の金髪男が飲んだくれていた。
「ちくしょう〜〜〜! あの女ぁ〜〜〜! このぼくを振るなんてぇ〜〜〜!」
プレイボーイのこのぼくが、本気の恋に打ちのめされて、早や三月。
ようやく今日、美しく燃え上がるこの想いを、愛しいあの娘に告白したのに……。
その返事は、真空飛び膝蹴りであった。
現在、美童のお腹には、直径10センチの痣がある。
美童はズクズクと痛む脇腹を押さえながら、カウンター奥に向かって声を張り上げた。そこでは、細身のバーテンダーが、背中を向けてシェイカーを振っていた。
「マティーニ、3人分! ……ええい、まどろっこしい! もう、どんぶりで持ってきて!」
「お客さん、飲みすぎですよ」
呆れ声と共に、華奢なバーテンダーが振り返った。
「放っておいてよ! ……げ! 悠理!!」
明るい色の猫っ毛、意志の強そうな切れ長の瞳、華奢でいながら決して不健康に見えない肢体――シェイカーを手に美童を見詰めるその人は、剣菱悠理そのものであった。
美童の頬が桜色に染まった。
「いいいい、今さら謝っても遅いからな! 繊細なぼくのハートは、木っ端微塵の粉末状態さっ! 特効薬は甘い口付けだけなんだよぉ。悠理ィ〜〜キスしておくれよぉ〜〜」
前半こそ威勢が良かったが、美童の口調は徐々にメロメロになっていった。
バーテンダーはその理由を察し、苦笑いを浮かべた。
「ぼく、東山雅央ですよ。確か美童さんでしたよね?」
「悠理さんがあなたの告白に落ちるかを可憐さんと賭けて、それが悠理さんにバレて膝蹴りを食らった、と。同情の余地ありませんね」
雅央はサラリと言ってのけた。
「景気付けのつもりだったんだよぉ。何かきっかけでもないと、今さら悠理に告白なんてできなかったんだよぉ」
美童はカウンターに突っ伏し、さめざめと泣き出した。
そして、そのまま眠り込んでしまった。どうも、深酒が過ぎたようである。
「すみません。ぼく、あなたの連絡先しか知らなくて」
「いーよ。あたいも近の店で飲んでたからさ。ちょうど良かったよ」
頭上で交わされる会話が耳に届き、美童がうっすらと瞼を開けた。瓜二つの二人組が、青い瞳にほよんと映った。
「あ〜雅央くんが分裂したぁ〜〜。1号と2号だぁ〜〜!」
美童は二人を指差し、楽しそうに膝を叩いた。
「このボケ、どれだけ飲んだんだ?」
雅央1号が言うと、雅央2号が「さあ」と、肩をすくめた。
目は覚ましたものの、美童は泥酔状態であった。カウンターに頬杖をつき、何がおかしいのか、常にクスクスと笑い続けていた。
きっと、頭の中身がおかしいのだろう。雅央1号……いや、悠理はそう結論付け、美童の隣りに腰を下ろした。
雅央からの電話で、どうもあの告白はマジだったらしいと聞かされたが、釈然としない事が他にもあった。
「なあ、お前、あたいの……剣菱悠理のどこがよかったんだよ」
美童のクスクス笑いが止まった。頭の芯まで、アルコール漬けになってはいなかったようだ。
美童は、ほう、と甘い吐息を漏らした。
「悠理ってさぁ……単細胞で、馬鹿で、ガサツで、乱暴で、牛並に食う事しか能がなくて……」
悠理はゆらりと拳を振り上げた。彼女のこめかみに青筋が浮かんでいた。
雅央がカウンターから身を乗り出し、悠理を必死に押さえつけた。そして、彼女の耳元で囁いた。
「悠理さん、最後まで聞いてあげなよ」
バン! と凄まじい音が響いた。悠理が美童を殴り飛ばしたのではなく、美童が両手をカウンターに叩きつけたのだ。
「でも、どうしても好きなんだよ! ぼくにとっては、たった一人の女なんだよお!」
美童はそう叫ぶと、カウンターに金の髪を投げ出し、夢の世界へ舞い戻ってしまった。
悠理はちょっと呆然としていたが、しばらくして、振り上げた拳を静かに下ろした。
「どうぞ」
雅央が悠理にグラスを差し出した。
それは、薄いオレンジ色のカクテルであった。添えられたライムが、爽やかな香りを振り撒いていた。
「キレイだな。何て名前?」
「ピュア・ラブ」
一瞬、悠理の呼吸が止まった。口惜しい事に、自然と頬が熱を帯びた。
お前、狙っただろう……そう言いたげに、悠理は雅央を睨み付けた。悠理そっくりのバーテンダーは、涼しい面持ちで氷塊を砕き、ランプ・オブ・アイスを創作中だ。悠理は真っ赤になっているのに。
「なあ、貸し切りにできるか?」
必要以上にぶっきらぼうに、悠理が言った。
次に美童が目を覚ますまで、何時間だって傍にいてやろう。
その時、またあたいを雅央と見間違えたら、今度こそぶん殴ってやろう。容赦なく、ぶちのめしてやろう。
でも、もしも……あたいだと気付いたら、気付いたならば……。
美童の望む返事を……してやっても、いいかもしれない。
ボコボコかラブラブか……。
運命を握る王子の目覚めは、きっともう間もなくである。
<オワリ>
>ピュア
おお!早くもお一人目が!しっかし早いですねえ、書くのが。
美童は心底悠理に参ってますね。
骨太な悠理もステキですわ!
それにしても雅央くんバーテンが板についてる。
>604
東村寺拳法にあるかわからんが、格闘家なら次は寝技に持ち込むと思われ(w
そしたらバレルよ。
捕まえるならいい勝負じゃダメだもんな。
個人的に悠理は脱出法知っているのではと…。
ちなみに肩の付け根を蹴るです。そこ蹴られると一瞬体に力が入らなくなる。
効果は相手の筋肉の厚さとかにもよるらしい。
>春の午後
おもしろかったっす。
私は悠理はバレリーナ体型だと思うます。
昔、バレリーナがあの体(筋肉、柔軟性、バランス感覚、ジャンプ力、スピード等)
で格闘できると最強って聞いた。
プリスカがモルダビアの妹ってなるほどと思たもん。プリスカ戦えたら悠理と同等の格闘センスかもとか…
少女マンガのキャラなのにスマソ。
そしてこんなこと知ってる漏れ、逝ってきマス…
>ピュア
わー早い!ビクーリしますた。そして美×悠のカプも漏れ的には
チョト意外でウレスィ。
雅央タンが出てくるとは思ってなかったです。グッジョブ!
>ピュア
カクテル「ピュア・ラブ」の演出はナイスだけど、悠理に通じたのが
不思議…と思ってしまった。悠理は恋愛音痴だってイメージが
どうしても拭い去れないのと、万年赤点なのによくまあ英語を訳せた
ものだ…ってのがね^^;。
原作のキャライメージで読むから違和感なんだろうな。上手く自分の
中で切り替えが出来てないや。
競作うp二番手いきます。6レス使います(使い切りました!)
直径20センチ高さ30cm程の口の広いガラスの入れ物に、赤い
プラスチックのねじ式の蓋と紫の飾り布をつけたそれは、持ち運ぶには
えらく重い難儀な代物だった。中にはビンの口近くまで入った透明な酒と、
その酒にエキスを吐き出し続ける物体が入っている。
命ある時は見るものを震え上がらせ怖がらせたヤツは、今はただ空しく
酒の中でとぐろを巻きながら虚ろな目で一体誰が蓋を開けるのだろうかと
長考しているようだった。
地下鉄の階段を昇り切ったところで、そのエラく重量のあるものを
地面に降ろし清四郎は汗をぬぐった。重い。航空便で送るべきだったかもしれない。
菊正宗清四郎は多忙な父に代わり、従兄弟の結婚式に出席するために、
沖縄は久米島まで行ってきた帰りだった。酒好きな清四郎の父は沖縄名物のその酒を
是非にと息子に頼み込み彼が持って帰るのを心待ちにしているはずだった。
ほとんどの荷物は送ってしまったのだが父の喜ぶ顔見たさに、清四郎は重たい思いを
してここまで運んできたのだった。
しかし。
暑い。陽気は春とは思えない程の暑さで旅行疲れの若者に照りつけていた。
一瞬、清四郎は自分が再び沖縄に降り立ったかのような錯角に陥る。
明日は魅録と約束があるため、たった一泊で東京−沖縄本島−久米島を往復する
強行スケジュールにしたのが間違いだった。空港で食べたものが悪かったのか
何だか気分まで悪い。地下鉄で自宅最寄りの駅まで行く予定だったのを変更して、
地下鉄から地上に出る。タクシーに乗って帰ろう。
ぎらつく太陽に足元がふらついた。
清四郎が手を挙げようと車道に向かって足を踏み出すと、程なくタクシーが彼の前に
滑り込んできた。タクシーの後部座席から大柄な白人の女性が清四郎の前に降り立った。
その顔を見て清四郎はぎくりとする。
久しぶりに見るその顔は、あまり会いたくない女性(特に今は)……。
モルダビア・パブロアだった。
春色のスーツを着たモルダビアは言った。「久しぶりだね、清四郎。
元気にしてたかい。私はこれから剣菱家に向かう途中だが乗ってくか?」
断ろうとした清四郎の意向はあっさり無視された。世界広しと言えども
清四郎を車に引きずりこむ腕力を持った女はモルダビア位だろう。
タクシーの中に乗り込んだ清四郎の鼻に異様な臭いが飛び込んできた。
「す、すごい臭いですね。なんの臭いですか、これ」
「ああ。手みやげに『くさや』と『チーズ』と『納豆』を買ったんだ。
日本人は臭いものが好きなんだろう?」
「その情報どこで聞いたんですか。全然間違ってますよ……」
胸がむかむかする。気分が悪いのに加えてこの臭いとタクシーの揺れが
重なり、清四郎の体調は急降下していた。そんな彼に気づかずモルダビアは
話し続けた。
「あんたとの決着忘れてないよ。今度は日本に長くいられるから是非
お手合わせ願いたいね、菊正宗。……どうしたんだい、なんだか気分が
悪いみたいだが」
清四郎は青い顔で車の窓にもたれて必死で吐き気をこらえていた。
「申し訳ないが気分が悪い……。車を止めて下さ…い」
タクシーが公園の脇に停車するや否や清四郎は公衆便所めがけて走って
いった。モルダビアは後を追いかけていったが彼が様子を見るとタクシーを待たせ、
剣菱家に電話を入れた。
「ちょっと所用ができたので遅くなると剣菱万作に伝えてくれ」
電話が終わった時、清四郎はベンチに腰かけていた。ハンカチで口を抑え
死にそうな顔をしている。モルダビアが話しかけるのを手で遮り、立ち上がって
歩き出したが、込上げる吐き気に堪らず木の根元にもどしてしまった。
「大丈夫か?」
モルダビアは彼を抱えてベンチに座らせ水飲み場でハンカチを冷たく濡らしてきた。
「自己管理がなってないね」
清四郎はムッとしたが気分が悪いので力のない目を向けることしかできなかった。
モルが清四郎の口元を拭いてやろうとすると「汚れますよ。自分でやりますから……」
と遠慮している。
「遠慮することないだろ。いいから」とモルは無理矢理、清四郎の頭に手を回して
汚れがついた口をゴシゴシ拭いた。体力を消耗している清四郎は諦めたのか、
それ以上抗うこともなく彼女の肩に頭をもたせ、じっと目を閉じている。
モルダビアは濡れたハンカチを折り返すと清四郎の額や頬も拭いていたが、
ふっとその手の動きを止めた。
自分の腕の中のぐったりとした清四郎の顔を見てモルは何か考えていた。
不穏な気配を察して清四郎が目を開けたのと、モルダビアが彼の唇を奪うのとが
ほぼ同時だった。
逃げようとする清四郎の頭はモルの両手でしっかり挟み込まれている。
モルは暴力的と言っても良い程、清四郎の唇をむさぼり、吸いつくそうとしていた。
気が遠くなりかけた頃、やっとのことで解放され、清四郎は彼女から体をふりほどいて
弱々しく立ちあがった。恨めしそうにモルを見ると彼女はニンマリと笑って唇を手の甲で
ぬぐっていた。「不意打ちですね」「看病代だ」
全くこっちは病人だってのに油断も隙もない。清四郎がふらふらしながら歩き出す
とモルダビアが話しかけた。
「どこへ行く、清四郎」「どこって帰ります」
「気にするな、ちゃんと後で家には送ってやるから」
後で、って。
振向こうとした清四郎の首にストンとモルの手刀が入り、清四郎はその場に崩れ落ちた。
モルは清四郎を抱えタクシーに乗り込むと赤坂のホテルへ行くよう指示を出した。
目が覚めるとそこはホテルの一室だった。ベッドの上で身を起こした清四郎は部屋の
中の小テーブルの上に自分の沖縄みやげが乗っているのを見つけた。それ−−−ハブを
生きながらに泡盛につけこんだハブ酒は滋養強壮に効果があるとされる。シャワーの
音を聞きながら清四郎はそんなことをぼんやり思い返していた。ハッとしたのは
そのハブ酒の蓋に被せてあった紫の飾りの布が取られているのに気がついたからだった。
側にグラスが一つ。そしてハブ酒の水面が心持ち下がっているような気がした。
やばい。
シャワーの音は続いていた。体を起こしあたふたと自分の荷物を探す。靴を履き
ハブ酒の瓶を抱え、部屋のドアノブの手をかけた時、清四郎はシャワーの音が消えた
のに気づき振り向いた。そして、見た。シャワーを浴びてさっぱりとしたモルダビアが
豊満な裸体にバスタオルを巻き、洗い晒しの黒髪をなびかせて仁王立ちしているのを。
すごいものを見てしまった……。
清四郎は激しい後悔の念にかられていた。モルダビアは耳まで裂けるような笑顔を
見せベッドの脇まで歩いてくると、躊躇なく巻いたバスタオルを取った。
呆気にとられている清四郎の前にたくましい女戦士の白い体が現れる。彼女の体は
全身筋肉のようだった。ボディビルダーにしたいような上腕筋に背筋。迫力の大きさ
のバスト。豊かなヒップはきりりと締まって両脇にくぼみを作っている。左の胸の
上と背中の右脇腹のあたりに大きな傷の跡が白く残っていた。
モルダビアは鋭い視線を清四郎に送ると、手早く黒いショーツとブラジャーをつけた。
そして清四郎の腕をガシッとつかみ部屋の中央まで引き戻した。
「気分はどうだい。いくらかましになったろう」
そういえば先程までの吐き気が嘘のように消えている。
「本当ですね。薬でも飲ませてくれたんですか?」「そうさ。旧ソ連時代からの秘薬をね」
どうやって自分に飲ませたのか気になったが、聞くのも怖い気がした。
微妙な表情が顔に出たのかモルダビアはニヤニヤ笑った。
「気にすることはない。口移しで飲ませたわけじゃないさ。塗り薬なんでね。
塗っただけだよ、全身にね」
「そうか、よかった……ってよくない!」
気絶している間に身ぐるみ剥がされ、自分の体のすみずみまでモルダビアに
見られたのか!?清四郎は膝から力が抜けそうだった。
モルダビアが怪しげな茶色い瓶を取り出してきた。
「お薬の時間だよ、清四郎。服を脱ぎな」「な……!何言ってるんですか!」
清四郎は焦った顔でじりじりと後じさった。モルダビアは冷たい顔で繰返す。
「服を脱げ、清四郎。それともあたしに脱がせてほしいのかい」
「冗談はやめてください、モルダビア。もう体調は良くなりましたよ」
「今だけだ。この薬はリバウンドが強い。2時間ごとに少しずつ量を減らして
塗り続けないと……死ぬ」「そんな薬、なんで塗ったんですかっ!」
追い詰められた清四郎は壁沿いにモルダビアの動きを見ながら出口を目指す。
「嘘だ、信じませんよ。あなたの前でハダカになるなんて真っ平御免ですね」
「聞きわけのない子だねぇ」
モルダビアがつかみかかってきたかと思うと清四郎の腕からハブ酒の瓶を奪い
取った。中の酒を勢いよくグラスに注ぐ。勢い余ってグラスの周囲に酒が溢れ
出した。そのグラスを清四郎に差し出した。
「痛み止めだよ、飲みな」彼が黙っていると自分で酒のグラスをあおり、清四郎の
胸元を掴んで引き寄せ、無理矢理彼の口腔に自分の口から強い酒を送り込んだ。
「うっ……、ごほっ」
酒が喉に流れ込むと程なくして頭を叩かれたような強烈な酔いが回ってきた。
モルは清四郎のシャツの前を掴むと思いきり両サイドに引き裂いた。
ブチブチッと音がしてシャツのボタンが飛ぶ。中に着ていた白い下着も
モルが少し引っ張っただけで派手な音を立てて引き裂かれた。たちまち彼は
上半身裸にされてしまった。「や……やめてくれ」
やむなく振り出した拳はあっさりと彼女の手中におさまり、逆に後ろ手に捻られ
鈍い痛みが走った。「うっ、くっ……」背中に回された両手はたちまち手首を
ガムテープで固定された。もがいてみたがビクともしない。
上半身を剥かれた清四郎は自由を奪われてベッドに転がされた。
モルが茶色の小瓶を片手に迫っていた。酒の中の蛇がじっとこちらを見ていた。
清四郎は苦笑いした。「情けないかっこうですね。なぜこんなことを?」
「この薬は塗る時が辛い。暴れられると困るのでね」そう言いながら小瓶の蓋を
回して開ける。中から指ですくった白いクリームは一見普通の化粧品のようだった。
「行くぞ」「ちょっと待ってください。薬を塗るのはいいとして、なぜあなたは
下着なんですか」「私もちょっとは楽しませてほしいからね。清四郎が泣叫ぶのを
見たら興奮する」「いい趣味ですね」
拘束された状態でベッドに横になりながら、清四郎はモルダビアが白いクリームを
長い指先ですくいとるのを見ていた。彼女の指先で「秘薬」は白く光っている。
やがて背中にヒヤッとした感触があり、すぐに指が円を描き出す。内側から外側へ
手のひらと指を使い丁寧すぎる程丁寧に伸ばしていく。清四郎の体の感触を楽しんで
いるかのようだった。上へ下へ。首筋から肩、腕。背中から胸へ。
「息が荒いぞ、大丈夫か、清四郎」「……何を言ってるん…ですか。息が…荒い…
なんてことはぜん…ぜん、うっ」モルダビアの言った通り、秘薬を塗ったところは
どんどん熱を増していき、清四郎はその熱さにのたうちまわった。
全身に汗が吹き出した。はっはっと短く息を吐き目をつぶって耐えていた清四郎
はモルがズボンのベルトに手をかけたのを感じ、体を捻って抵抗した。
「やめろ!やめてください!」
モルダビアは清四郎の耳もとに口を近づけ囁く。「全身に塗らなきゃいけないんだ。
耐えるんだよ、坊や」しかし彼のパンツを脱がすモルダビアは実に嬉しそうであった。
テーブルの上でアルコール漬けの蛇が事の成りゆきを見守っていた。
時計の長針が一回りした頃、ベッドの上で全裸の女が起き上がった。
「もう行かなければ。剣菱家が待っている。清四郎、いっしょに行くか?」
「………………いえ。一人で考えたいことがあるので後から帰ります」
「よかったよ、清四郎。久しぶりに楽しかった。ありがとう、坊や」
「薬、置いてってくださいよ。二時間ごとに塗らないと死ぬんでしょう」
モルダビアは清四郎に茶色の小瓶を投げてよこした。裏を返すとSHISEIDOU
と書いてある。モルダビアはハブ酒を飲みながら知らぬ顔をしている。蛇が笑っていた。
これで『終わり』です。
文字つめすぎですね。読みにくくてスマソ
すげーーーーーーー!!
面白すぎだぁ(のた打ち回り中)
清四郎・・・モルにやられたのかっ。
世界広しといえど清四郎をレイプできるのはモルくらいだな(爆笑中
あー堪能しました。
>638
あ、一応合意の上ということでヨロシクです(^^)
>蛇の酒
めっちゃ面白い! やられたぁ。
モルさんにかかっちゃぁ、もはやスポーツ(つうか格闘技?)でしょうな。
とくと笑わせてもらいました。
>蛇
面白かった!
わーい、競作が2つもUPされてて嬉しい。
>ピュア
美×悠という意外性と、雅央登場がツボでした。
バーテンダー雅央、(・∀・)イイ!
可憐との賭けにかこつけて悠理を口説く美童
というのもありそうで、納得の筋運びです。
王子の寝覚めが良いことを、コソーリ応援(w
>蛇の酒
これまた意外なカップリング!
清四郎がやられキャラというのに笑いました。
合意の上でということは、モルさんは余程テクニ
シャンなんだろうな。どこで修行したんだろう?(w
競作、3人目のUPします。
6レス使います。
と・・・その前に。
内容はRではありません(かすってもいない)が、オゲフィンな言葉が含まれます。
オゲフィン発言が苦手な方はスルーよろしくお願いします。
放課後の生徒会室。
事件は、いつもの他愛無い会話の中から始まった。
「あー。なんか最近、スカッとしないなぁ」
不満そうに悠理がぼやくと、魅録が提案する。
「週末、どっか酒のうまいところにでも行くか?」
いつものやりとりだったが、今日はそれに野梨子が加わった。
「それでしたら私、行ってみたいお店がありますの」
「酒を出すところで、野梨子が行ってみたい店というのは珍しいですね。
どこですか?」
清四郎も興味をひかれた様子で会話に参加する。
「白花楼という名前で、有名なお店のようなんですけれど、調べてみても
詳しくはわかりませんの。誰かご存知じゃありません?」
その途端、
「白花楼ぅ〜っっ!?」
美童が素っ頓狂な声を上げた。
同時に、魅録が飲みかけのコーヒーを詰まらせ、ゲホゲホとむせている。
「何よ? それ、そんなに有名な店なの?」
それまで我関せずを決め込んで、ファッション雑誌を眺めていた可憐も、
有名な店なら知らないと損、とばかりに身を乗り出した。
「あ、あのさ、野梨子。その店……どこで知ったの?」
おずおずと、美童が尋ねた。
「携帯に間違いメールが届きましたの。間違えた人には申し訳ありませんけれど
……読みますわね」
<先日紹介してもらった白花楼、行ってみました。
想像以上に良い店ですね。特にワカメ酒。前々から飲んでみたいと
思っていましたが、本当に飲ましてもらえるとは。
リクエストしてみるものですね。良い店を教えてくれてありがとう。>
今度は清四郎がコーヒーをこぼし、可憐は手にしていた雑誌を床に落とした。
美童と魅録はすっかり凍りついていた。
野梨子は不審そうに眉をひそめながらも、言葉を続けた。
「私、ワカメ酒というお酒はこれまで知りませんでしたの。
一度、飲んでみたいですわ」
「なんだよ、みんな? 変だぞ?
あたいもその酒、知らないなぁ。うまいなら飲んでみたい!」
悠理だけが無邪気に、野梨子に同意した。
しかしふたりとも、やはり友人達の不自然な反応が気になるようで、
不思議そうに顔を見合わせた。
見かねたのか、可憐がようやく口を開く。
「ちょっと……。あんた達……。
美童! あんたこういう話、得意でしょっ? 説明してあげなさいよ」
「えぇえっ! なんで僕が!?
そうだ、清四郎。薀蓄たれたり、説明したりするの好きだろ?
清四郎から説明しなよ」
美童も、自分が説明するのは御免だとばかりに、必死で他人に話をふった。
「僕が、ですか?
……わかりました。野梨子には僕から説明しておきます。
悠理には、友達思いの魅録が教えてあげてください」
清四郎は自分にとって、まだしも教えやすいと思われる野梨子への説明を選んだ。
「結局、俺もかよ。
しゃーねーな……。帰りにおまえん家に寄るから、そん時にな」
そう言って魅録は、悠理の頭をくしゃっと撫でた。
******
帰宅途中、清四郎の家に寄った野梨子は、玄関で靴を揃えながら質問をした。
「清四郎。今日のみんなの態度は、何でしたの?」
「部屋に入ってから、ちゃんと説明しますよ」
そう言ったきり、清四郎は黙って自室へ上がって行く。
お邪魔します、と奥へ声をかけて、野梨子も清四郎について行く。
「母さん! ちょっと込み入った話があるから、お茶は持って来ないでください。
ひと段落したら、自分で取りに降りますから」
清四郎は、思い出したように大声で母親に伝え、自室のドアを閉めた。
ふたりきりになっても、清四郎はなかなか話を始めない。
野梨子は、清四郎から話し出すのをじっと待っていたが、沈黙に耐えかねて
もう一度自分から聞いてみた。
「清四郎。教えてくださいな」
野梨子をじっと見つめ、意を決したように清四郎はゆっくりと言葉を紡いだ。
「野梨子。これから話すことは、野梨子にとってはショックかもしれませんが、
大声を出したり、泣いたりしないでください。
……それから、こんな話を聞いても、男を軽蔑したり、更には僕とも
距離を置こうとしたりしないように」
仰々しい前置きをつけて、清四郎は説明を始めた。
******
悠理の部屋で座り込んだ魅録は、くつろぐ悠理を見ながら話しかけた。
「お前さぁ。本当に今日の話、知りたいか?」
「……ん。知りたいと言えば知りたいんだけど、魅録が知らない方がいいって
思うなら、知らなくてもいい」
深い信頼がそうさせるのか、悠理はあっさり答えた。
「そっか……。俺は、お前は知らなくていいと思うけどさ。
でも今日みたいに、無防備な会話されると、危なっかしくて仕方ないからな。
一応教えとく。
けど、話の途中で叫んだり、俺を蹴ったりするなよな?」
少し考え、それでもやはり真実を告げるために、魅録は口を開いた。
******
その日、可憐は美童の家に寄り、今日のことを思い出した。
「あいつら、うまく説明できたかしらね」
思い出しても可笑しいのか、可憐はくすくす笑いながら、問い掛けた。
「さぁ……? でも僕は、頼まれたって説明役はゴメンだよ。
野梨子には絶対軽蔑されるし、悠理には殴られるか蹴られるかしそうだもん」
自ら淹れた紅茶を可憐のカップに注いで、美童はわざとらしく身震いしてみせた。
「でも、野梨子には清四郎から、悠理には魅録から、ってベストな組み合わせよね。
清四郎なら野梨子の軽蔑をかわせるかもしれないし、悠理も魅録相手に
殴ったり蹴ったりはしないんじゃない?」
メンバーの性格を考えながら発言する可憐に、美童が笑いながら茶々を入れる。
「あくまでも、多分、だけどね」
可憐はくすっと笑い、悪戯っぽい眼差しで美童を見つめる。
「ねぇ。私も知らなければ、美童が説明してくれた?」
意味ありげな視線を返しながら、美童が微笑む。
「お望みなら、実地でね」
「バカね」
さざめくようなふたりの甘い笑い声が部屋を満たした。
「ねぇ」
ふと、我に返ったように可憐が固い声を発した。
「白花楼って、何の店なの?」
突然の問いに、美童はうろたえながらも、言葉を選ぶ。
「何って……。えぇっと……。
女性がその……サービスしてくれる店だよ」
更に声を固くして、可憐は追求した。
「それってつまり風俗ね? 美童ってやけに詳しそうだったじゃない?」
「風俗って言うと安っぽいなぁ。どちらかと言うと高級娼館……あわわ」
口を滑らせた美童に、可憐は容赦なく、まだ熱い紅茶を浴びせた。
「最っ低っ! プレイボーイなのは知ってるけど、そういうところへは
行かないと思ってた。ああいう遊びは男の格を下げるわよっ!」
言いたいことだけ言って、可憐は鞄を取り部屋を出て行こうとする。
「ぼ……僕は行ったことないって! ほんとだよ、可憐。
有名な店だから知ってるだけで……。信じてってば」
美童は言い訳をしながら追いかけたが、追いつくことはできなかった。
******
翌日。
生徒会室には、男性3人だけが居た。
「痛々しいですね、魅録。その頬……悠理ですか?」
「ああ。あいつ、思いっきり殴りやがった」
清四郎の問いに、魅録がは苦笑いしながら答えた。
「そう言う清四郎は無傷みたいだけど、今朝、野梨子の目ぇ、腫れてたぜ?
あれ、泣き明かしたんじゃねぇのか?」
「僕も無傷とは言えませんよ。外傷はありませんけど、ダメージは大きいですね」
今度は魅録が問いかけ、清四郎が苦くつぶやいた。
「ところで、美童はそれ、どうしたんだ?」
「首に包帯を巻いて……キスマーク隠しですか?」
ふたりの問いに、美童もしぶしぶ口を開く。
「火傷だよ。可憐に紅茶をかけられたんだ」
またふたりが問い掛ける。
「どうしてです?」「何でまた……」
「白花楼を知ってることを、うまく言い訳できなかったんだ」
美童の答えに、魅録がフッと吹き出す。
「何で笑うんだよぉ!」
抗議する美童に、魅録は笑いながら答えた。
「俺も、それなんだよ。言葉の説明では何ともなかったのに、白花楼の話になると
急に怒り出してさ。俺はうまく言い訳できたと思ったんだけど、
あいつにはそんなの通用しねぇ。野生の勘で殴られた」
美童は魅録の答えに、気の毒ぅ、とつぶやき、清四郎の方を見た。
「清四郎は、どうだったの? 野梨子が泣き明かしたってことは、
失敗だったんだろうけど……。清四郎は白花楼を知ってるそぶりは
見せなかったんだし、やっぱり野梨子には、言葉の意味がショック過ぎたのかな」
「いえ。言葉の意味は理解してもらえましたし、そこまでは良かったんですよ。
けれどその後、野梨子が僕に、飲みたいと思ったことがあるか尋ねて……。
即答できなかったんです」
清四郎の答えに、美童は気持ちはわかるとばかりに頷いた。
「どうせ、野梨子の姿でも浮かんで、即答できなかったんだろ」
と小声でつぶやいた魅録の言葉に、清四郎はうっ、と言葉を詰まらせたが、
すぐに逆襲した。
「でも僕は、白花楼に行ったりはしませんでしたよ。魅録こそ……」
「もうやめようよ。掘り返しても、つらいだけだよ」
不毛な争いが始まる前にと、美童が慌てて口をはさんだ。
そして、3人が3人とも、はぁーっと長い溜め息をついた。
<Fin>
リアルタイムで遭遇してラッキー
>珍かなる酒
(男性陣には気の毒ながらw)大笑いさせてもらいました。
6人の個性が良く出てて、すごく面白かったです。
可憐姐の「ああいう遊びは男の格を下げるわよっ!」 にハゲ同。
魅録も行ったんだな・・・困ったヤシめ(w
>珍かなる酒
笑ったー。特に野梨子に説明する時の清四郎の前置きが
爆笑でした。いや〜一つのお題に対し皆さんいろいろ
考えることが違うものですね。競作は面白すぎ!
>珍かなる酒
野梨子がメールを読んだ時、私もコーヒー吹き出しそうになりますた。
非常に危なかったが笑かしてもらった。作家さん、グッジョブです。お疲れ!
それにしても清四郎がどう野梨子に説明したのかが気になる。
「女性を寝かせて・・・。いや、その前にまず服をですね・・・」
二日間でこんなにたくさん短編が読めるなんて!
競作ブラボー。
他の作家さんもうp待ってます。
>653
「女性の・・・に酒を注いだ様子がまるで海にただよう
・・・の様に見える事からこう名づけられた訳ですが
こう見えて以外と歴史は古く・・・」
なんて淡々と説明してたらイヤン
↑
×以外と
○意外と だね。すまん。
四番手、競作短編うpします。5レスです。
全篇に渡ってヘッポコRなので、お嫌いな方は申し訳ないですが
スルーお願いします。
先へ行く程淡くなるよう、念入りに施されたシャンパンゴールドのネイル。
その指先を、そっと体に這わせる。
男にしては滑らかな肌の上には、幾つもの傷跡がある。古いけれど、決して軽くは
なかっただろう、身体のあちこちに散る武道家の勲章。
こんな所に傷があるのを、一体何人の女が知っているだろう。―――1人、それとも
2人?それ以上ということはないだろう、彼の性格からすれば。
腰にある傷のひとつをそっと撫で上げると、微かに眉を顰め、彼は小さく息を吐く。
口に含んだラム酒の香りが消えぬ間に、そっと唇で彼を包む。
度数の高い酒精は恐らく、鍛え抜かれた彼の身体の中で最も敏感なところを強烈に
刺激したに違いない。耐え切れなかったのか、ピクリと腰を浮かせ、小さく声を漏らした。
「くっ…、熱…い……」
けれど止めて欲しいとは言わない。あたしの頭にあてがった手が、忙しげにそこを
這い回る。欲望の高まりを示すかのように。
緩く、強く。柔らかく包みこみ激しく締め付ける。
その都度彼の身体はビクンと跳ねて、快楽の深さをあたしに知らせる。
そうして、高みが見える直前に、容赦無く唇を離してやった。
そう、この顔。あたしが見たかったのは、この表情。
薄く開いた瞳、情欲に潤む獣の目。高みに一人取り残され、続きをねだる、もの欲しそうな顔。
ねえ、気付いてる?
見ているだけで、あたしまで蕩けてしまいそうな。そんな淫らな顔してる事に、あんたは
気付いているのかしら。
身体をずらし、上に跨る。少しずつ、彼をあたしの中へ導き入れる。
緩やかに動くあたしの身体に視線を感じる。そう、もっと見て。あたしの身体を、
あんたの目に焼き付けておいて。
窓の外からは春の、いつまでも止まず降り続く、暖かな雨音が聞こえる。
部屋の中の空気までが湿り気を帯びている。ねっとりとした空気はそれ自体、とても
エロティックな何かを孕んでいて、身体の奥が熱くなる。
ベッドサイドに置かれたままのショットグラスに指を入れる。ラムに浸したそれを、彼の唇に
そっと近付けた。ネイルと同じ金色の滴が滴る。
舌が伸ばされ、金色の指先は温かい唇の中に包み込まれた。あたしを見上げながら、
さっきあたしがしたのと同じように、指先を舌で絡めとる。
その感触が、ラムの香気が、あたしを酔わせた。
堪え切れず、彼があたしの中で動き始めた。
「駄目よ…じっとしてなさい。あたしがいいと言うまで、動いちゃ駄目」
洗いざらしの髪が、汗で額に貼り付いている。ほう、と熱い息をひとつ吐き、潤み切った瞳で
彼は囁く。
「可憐…、もう……」
教師を論敵に一歩も引かない天才的な頭脳を持つ男、銃を持った男を易々と足元に
ひれ伏させる武道家。
それが今、あたしの下で、なすがままに翻弄されている。自分でも制御できない
熱い情欲に。
いつもは他人を高みから見下ろす、冷たい瞳が。
今はひたすらに熱っぽく、飽く事無く、こちらを見上げている。
皮肉を吐いてばかりの、薄い唇が。
ラム酒に濡れて、淫らに開き、切ない吐息を漏らしている。
それだけで、あたしは―――
自分に課した筈の呪縛を、忘れてしまいそうになる。
どこまでも、高く。どこまでも、深く。
彼を、官能の果てへ―――連れ去ってしまいたい。
きっかけは、ありふれた偶然だった。
食事に行った帰り道、たまたま、みんなとはぐれて2人きりになった。
その時あたしがしていた恋は、なんだか物足りなくて―――人恋しかった。
初めて2人でお酒を飲んで、それで。
お酒の勢い。よくある話だと思う。
けれど―――その次は、あたしから誘った。そうしなければいけない、理由があった。
最初にあたしを抱いた時、彼は致命的なミスを犯してしまったから。
何時の間にか、清四郎は体の動きを早めている。強く、深く、あたしの全てを、味わい
尽くそうとするかのように。
抑え切れずに、声を漏らす。引きずられ、同時に高みを見たくなる。
あたしはすい、と体を引いた。清四郎が、低く呻く。そしてまた、あの表情。
堪らない。
唇を重ねると、待ちかねていたように、彼は舌を絡めてきた。
今、この瞬間は、あたしの事を見ていても。
時が来れば、彼は容赦無くこんな関係を絶つだろう。そんな事くらい、判っている。
幼馴染と正式に婚約したのだという事を、彼は誰にも知られていないと思っているけど。
あたし達に、そんな隠し事が出来る筈が無い。どこか様子の変わった野梨子の口を
割らせる事など、あたしにかかれば造作無い。
だから。
最初の夜は、本当に―――お酒の上での過ちでしか無かった。清四郎も、そしてあたしも。
あの夜。清四郎が、あんな事さえ言わなければ、一回きりの関係で済んだはず。
こうして2人で逢うようになって、どのくらい過ぎたろう。ひと月、それともふた月?
身も蓋も無い言い方をすれば、清四郎にとっては恐らく―――性欲解消の時間。それだけ。
あの身持ちの固い少女が、結婚前に体を許す筈もない。
けれど、あたしにとっては、甘美な復讐の時間。
最初にあたしを抱いた時―――ふたりして、高みに昇り詰めた瞬間。
清四郎は小さな声で、言ったのだ。
のりこ、と。
あんたが抱いているのは、あたし。
愛してはいなくても、今この瞬間、あんたの体を受けとめているのは、この、あたしなの。
―――許せない。
だからあたしは、また清四郎を誘った。傷ついたあたしのプライドを、償ってもらう為に。
彼に復讐するために。
彼の部屋にピアスを落とす?体のどこかに、紅い刻印を刻む?
そんな安っぽい方法、あたしは使わない。
いずれ高校を卒業し、時が来れば、あんたは愛しい女を手に入れる。
ずっと、ずっと昔から―――あの子だけを見てきたんでしょう。祝福してあげる。
あんたが口にするんだろう、陳腐な別れ話にも、笑ってイエスと言ってあげる
でもね。
初めて彼女を抱いた時。ずっとずっと、多分、夢にまで出てきただろう、愛しい女を抱いた時。
―――あんたは失望するはずよ。その、余りの味気なさに。
こんなものだったのか、自分がずっと、長いこと、待ちわびていた行為とは―――
そう思うはず。
その時になってようやく、あんたは知るの。
あたしと過ごした時間の濃密さを。あたしの身体を抱く悦びを。
あたし無しでは、いられなくなった自分を。
ラムの香りを嗅ぐ度に、あたしの事を思い出す。
だから今は―――
あたしは、あんたを慈しむ。丁寧に、慎重に、乱暴に、大切に。
最高の快楽を、あんたに刻んでおくために。
ベッドが軋み、サイドテーブルが揺れた。
グラスが倒れて、むせ返る程に強く、辺りにラムの香りが満ちた。
あたし達が、高くて遠い所へと運ばれてゆくのと、同時だった。
【FIN】
スイマセン・・・4レス目の最後の1行、これでした。
>あんたが口にするんだろう、陳腐な別れ話にも、笑ってイエスと言ってあげるわ。
最後の言葉が抜けておりました。申し訳ありません。ハズカシー
逝ってきまつ・・・
>RONRICO151
うぉぉぉ、こういうの読みたかったよ〜。
可憐素敵だわ〜。
>『RONRICO151』5
こわーっ!怖っ!可憐、怖っ!
恐ろしい復讐もあったもんだ。
「へっぽこR(この言葉には笑いましたが)」なんて
とんでもない。エロでピンクでグーざんす。
>あんたが口にするんだろう、陳腐な別れ話にも、笑ってイエスと言ってあげるわ。
最後の「わ。」が抜けてたんですね。
個人的な趣味ですが私は「わ。」がないほうが好きです。
『〜祝福してあげる。笑ってイエスと言ってあげる。』
の方が音が同じでいいかなと。
ところでタイトルはどんな意味ですか?
わああ、こんなに短期間にいくつも作品が読めるなんてステキすぎる
書き手の皆さんありがとう
>RONRICO151
可憐がすごくイイ!惚れそう(w
>ところでタイトルはどんな意味ですか?
>RONRICO151
アルコール度数75.5度のラムです。普通そのまま飲む事はないです(w
香りも味も濃厚です。
>RONRICO151
なんだか可憐が切ないよぉ。
その切なさが、更にエロさを醸し出しててグーなわけだけど。
>アルコール度数75.5度
そりゃ熱そうだ・・・しかもあんな敏感なとこに
ただれたりして(^^ あっ、それも復讐か!?
競作いってみます
どうしてもRにはもっていけませんでした
6レス使います
四月半ばのある金曜の夜、有閑倶楽部のメンバーは剣菱邸にいた。
庭の八重桜が満開だというので花見を楽しんでいたが、
急に振り出した雨のため、急いで邸内へ入ってきたところだった。
「もう少しでびしょぬれになるところだったな」
「庭での花見でよかったよ。公園とかだったら大変だったね」
「さ、飲みなおし、飲みなおし」
明日は学校が休みという開放感もあり、大広間で宴会が始まった。
ほどよい酔いがまわってきたころ、悠理が少し間延びした声で
話し出した。
「あのさぁ、この前メイドたちが話してたんだけどさ。
キスの前に噛んでたガムが相手にとられたってキャアキャア
騒いでたんだ。そんなことってあるのか?」
「それはありますでしょ」
すました顔で野梨子が答えたので、他の四人は驚いた。
「野梨子、あんたそんなこと知ってたの?」
「それくらいのこと、誰でもわかりますわ。キスのときに
口移ししただけじゃありませんか」
「な〜んだ、あいつらそんなことで騒いでたのか。変なの」
自信たっぷりな野梨子と、すっかり納得してしまった悠理を見て
残る四人は誤りを訂正すべきかどうか悩んで黙り込んでしまった。
野梨子はそんな雰囲気にかまわず明るい声で話しつづける。
「でも私もかねがね不思議に思っていたことがありますの」
「あら、野梨子でもわからないことがあるの?」
話題が変わったことにホッとしながら可憐が尋ねる。
「えぇ、キスマークのことですの」
「キスマーク!」
そのような単語が野梨子の口から発せられたのが信じられずに
叫ぶ美童。
「女性が男性にキスマークをつけるというのはわかるんですの。
口紅の跡がつきますもの。でも、どうして男性が女性に
キスマークをつけられるのかがわかりませんの。だって手の甲
とかにキスをするだけではあとなんかつきませんでしょ」
「あんた自分で実験してみたの?」
「えぇ、それで余計にわからなくなりましたの。
可憐はどうしてだかわかりますの?」
「そ…そりゃわかるけど、でもどうやって説明すればいいのよ」
「悠理も野梨子も実際のキスを知らないからそんなことを
不思議に思うんだよ」
「どういうことだよ、美童」
「つまりさ、キスにはいろんな種類があるのさ」
「そうなのか? 魅録」
「そこでなんでオレに聞くんだよ。まぁ美童のいってることは
本当だよ。お前が聞いたのはディープキスのことさ」
「清四郎も知ってましたの?」
「一応知識としてはね。野梨子が聞いたのは強く吸われた後に
残る軽いアザのことですよ」
「キスって吸うものなんですの。知りませんでしたわ」
「なぁ、そのディープキスってのは何なんだよ」
「キスのときに舌と舌をからめるんだよ。
こんなことオレに説明させるなよ」
「あ〜っ、魅録ったら赤くなってる。案外ウブなのね」
「からかっちゃかわいそうだよ。それより魅録と清四郎、
悠理と野梨子に実際にキスしてあげたら?
言葉で説明するよりよくわかると思うけど」
「実際にって…美童、そんな簡単に言わないで下さいよ。
知識があるからってできるとは…」
とっさに口走ってしまった言葉を慌てて途中で止めた清四郎
だったが、時すでに遅く、皆の顔には笑みが広がっていた。
「確かに知識だけあっても経験がなくっちゃねぇ」
「さすがの清四郎でも苦手なことってあるんだ」
「そりゃ美童や可憐のように経験豊富ってわけにはいかない
だろうさ。あんまりいじめてやるなよ」
「あら、魅録、やけに余裕ねぇ。あんたが経験豊富だとは
知らなかったわ。硬派だと思ってたのに案外軟派だったのね」
「別に豊富じゃないよ。一応ありってとこかな。
まぁ深く追求するなよ」
「じゃあ魅録は悠理、僕が野梨子と組むからさ。可憐は清四郎に
教えてやってよ」
「ちょっと待てよ。キスを教えてくれなんていってないよ」
「そうですわ、もうちゃんとわかりましたから大丈夫です」
思わぬ成り行きにたじろぐ2人。
「あんたたち、いい年してキスも知らないなんて恥かしい
と思わないの。やさしく教えてもらいなさいよ」
「からむなよ、可憐。悪い酒だなぁ。こいつらにとっちゃ
ファースト・キスなんだから無理強いするなよ」
魅録にたしなめられ、ムッとしながらも引き下がる可憐。
「そうだね、女の子にとってはやっぱりファースト・キスは
大事だもんね」
美童のとりなしに胸をなでおろして安堵する悠理と野梨子。
「でも男はちゃんとキスくらいできなきゃね、清四郎」
「えっ? 僕ですか。い、いや、遠慮しますよ。可憐に
悪いですし」
「あら、あたしは別にかまわないわよ、清四郎」
にっこり微笑む可憐。
可憐にせまられ、冷や汗を浮かべて後ずさりするうちに足を
すべらせて転んでしまった清四郎。
「アッ!」
「おい、大丈夫か?」
遠ざかる意識の中でみんなの声が聞こえる。
清四郎が気が付いたときはベッドの中だった。
(転んで頭を打ってそれから…)
ぼんやりとしながら無意識に唇に触れている自分に気が付き
不意にうろたえてしまった。
(なんだか柔らかい感触が残っている気がするんですが…)
「あれっ、清四郎、気がついたの? ふざけてごめんよ」
「あぁ、美童。僕はどうしたんですか?」
「転んだときに頭をぶつけて気を失ってたんだよ。
魅録とぼくでここまで運んできたんだ」
「いままで美童がそばにいてくれたんですか?」
「ううん、みんなで順番にさ。何人かでいるとつい
しゃべっちゃってうるさくしちゃうからね」
「そうですか」
(するとこの唇の感触は一体誰のなんでしょうね)
清四郎が考え込んでいるうちにみんなが部屋に入ってきた。
「大変だったな」
「もう大丈夫ですの?」
「からかってごめんね」
「腹、減ってないか?」
心配げに見守る仲間の中に自分にキスした相手がいるのか
と思うと、なんだか不思議な気分だった。
「もう大丈夫ですよ、心配かけてすみませんね」
にこやかに返事をする清四郎を見て、悠理がおずおずと
話し掛けた。
「あのさ、清四郎、あたいおまえにあやまらなくちゃ
いけないことがあるんだけど」
(えっ、もしかして悠理が…。そんな、まさか…)
「さっき、タマとフクがおまえの顔、なめまわしてたんだ。
あいつらどうも最近酒の味を覚えちゃったみたいでさ…」
「えっ、じゃあ僕にキスしたのはタマとフクなんですか!」
(しまった!)
「そうか、清四郎のファースト・キスはネコに奪われたのか」
「ちょっと、魅録、そんなしみじみいっちゃかわいそうよ」
「可憐こそ笑いすぎですわ」
「そういう野梨子だってしっかり笑ってるよ」
清四郎の仏頂面の前でみんなは思い切り笑い転げていた。
おわります。
>How to …
リアルタイム遭遇、ラッキー!
清四郎の間抜けっぷりに笑わせてもらいました。
やっぱり知識だけじゃなくって、経験も必要ですよね(w
>How to …
乙です!競作は清四郎祭りですね(藁
ウブなあてくしはガムのことが結局わからなかった・・・
悠理並だあ、ウツ
競作、挑戦してみました。
大人な豊作さんをガンバってみましたが、ちょっと暗いかも。
ある日の一コマという感じです。萌えどころがなくてゴメンなさい。
苦手な人はスルーでお願いします。
夜11時、遅めの夕食を摂りながら豊作はくつろいでいた。一週間ぶりの我が家での食事である。
(もう少し早く帰れたら、良かったな)
たった一人の食事にはもう慣れっこになっていたが、久々の帰宅である。
家族の中で全く目立つ豊作ではなかったが、家族で食卓を囲むのは彼の楽しみの一つであった。
なんともいえない父のセンスの我が家を見て、リラックスするようになったのは、社会に出て働きはじめてからである。
多忙な仕事の都合でなかなか帰れない日が続くと、パワー溢れる家族との食卓が恋しくなる。
(父さんはもう寝てるな。じゃぁ、明日の朝までに報告書を作成して、来週からのプロジェクトの概要を…)
やれやれ、今日はまだ当分休めそうにない。今夜これからやらなきゃいけない仕事量を思って少しブルーになる。
メイドにウィスキーを一本持って来させて遅い食卓を後にした。
『ザ・シングルトン』はここ数年、豊作の愛飲品である。
廊下を自分の書斎へ歩いて行くと妹の部屋から大きな笑い声が聞こえた。
(またあの連中が来てるな)
妹の悠理とその友達の5人が集まって騒いでるに違いない。相変わらず色気も無くツルんでいるらしい。
挨拶していこうかと思ったが、彼等の盛り上がりのところに巻き込まれたら仕事どころじゃなくなるだろう。
豊作も剣菱家の人間に相応しくかなり酒には強かったが、未成年のくせにザルな妹にはかなわない。
部屋の前を通り過ぎようとした時、突然勢いよくドアが開いた。
「うわぁ!!」
危うく持っていた酒瓶を落としそうになって一歩退く。
勢いよくドアを開けたのは妹であった。
「あれ、兄ちゃん、今日帰ってたの」
「え、うん。さっきね。悠理もあんまり遅くまで騒いでないで寝るんですよ」
この妹に何を言ってもムダだとわかっていても一応そう言うのが、豊作の常である。
彼女が高校生になってからは、剣菱家のメイドは完全3交代制の勤務になったのだ。つまり、日勤、準夜勤、夜勤である。
それでもメイドの負担などを考えるのが、彼の優しいところだった。
「へへっ、今日はみんなで酒盛りしてたんだけどさぁ」
と笑う妹の反応をみてやっぱり無駄な忠告であるのがわかる。
その時、部屋のからの明かりが遮られ戸口に長身の男が現れた。
「こんばんは、豊作さん。お邪魔してます」
「こんばんは」
妹の友人の清四郎君と魅録君だった。高校生らしからぬ雰囲気を持っている、妹の友人たちはやはりザルらしい。
「こんばんは」
挨拶を返しながら、3人がコートを着ているのに気付く。
(やれやれ、夜遊びはこれからか…)
「これから出かけるの?」
「うん、これから場所変えて第2ラウンド。可憐と美童と野梨子が寝ちゃったから」
なるほど。
「豊作さん、その瓶は…」
清四郎君が持っていたボトルに反応した。この子は本当に目敏い。高校生なのに、もうかなわないような気がする。
以前、剣菱家の事情で彼と関わったこともあって、彼には一目置いていた。
「あぁ、これね。ぼくはシングルモルトが好きなんです」
「オスロスクですか…」
未成年でこんなにウィスキーに詳しいのもどうかと思いつつ、話が通じる相手がいて少し嬉しくなる。
「まぁ、そのうち無くなるでしょうね、このボトルは」
経営がUD社に変わって、だんだん『シングルトン』のボトルは手に入らなくなっていた。
『シングルトン』は『オスロスク』に変わったのである。特長を残してはいるが、やはり2つは違う酒であった。
「おぉ〜い! 清四郎おいてくぞー」
廊下の向こうから妹が声をあげた。
「今、行きます!…じゃ、豊作さん」
「妹をよろしく頼みます」
ふぅっと溜め息をついて出かける3人を見送った。
書斎で一人グラスを傾けながら、今日までの報告書の作成に取りかかる。
だが、舌に長く余韻を残すまろやかな味に、今夜は気を取られがちだ。
豊作はしばしこの琥珀色の液体が持つ運命に心を飛ばした。
一経営者として解る部分と個人として残念で割り切れない部分。
それは螺旋のように豊作の頭の中を回る。
(今夜はあまり捗らないな)
グラス持って立ち上がると、ひと休みしにベランダへ出て夜風にあたった。
終わりです。
終わりって入れるの忘れてしまいました。
すみません。
>シングルトン
豊作さん大人な感じでいいですね。
一緒にため息をつきたくなります!
ちょっと一味違う味わいがありました。
やや赤みがかった月が煌々と夜道を照らしている。
夜の帳が世界を包み、人々が就寝しはじめる頃、清四郎は昔ながらの友人の
家を訪ねていた。
舗装の出鱈目な急勾配の道を登りきったところに、彼らの家はある。
四月も半ばだというのに、暑い夜だった。一心不乱に坂をあがったせいか、会社
帰りのシャツがべったりと肌に吸い付いている。清四郎は眉を顰めると、可能な限り
身なりを整える。
和造りの、しかしどこか瀟洒な門前に佇むと、清四郎は一息呑んだ。――この
家を訪れるたのは一度や二度ではない。いつもこの家の住人は暖かく自分を迎え
てくれた。なのに、どうしてこれほどまでに体が強張るのだろう。
清四郎は一度瞳を閉じて心を落ち着けると、意を決してインターホンを鳴らした。
『どちらさまでしょうか』
応対に出たのは鈴を転がすような美しい声の、幼馴染だった。
『僕です』
『今、出ます。門をくぐってお待ちになって』
予め訪問の意を告げていたため、野梨子の方も心得ている。
彼女の指示通りに門をくぐり、玄関の軒先前で清四郎は足を止めた。しかし、
玄関の引き戸を引いたのは、野梨子ではなかった。
「遅い。何時だと思ってんだ」
いつまでも大人気ない髪型をしたもう一人の友人の姿に、清四郎は目を細めた。
「すみません」
「ま、入れ」
促され、足を踏み入れた。
初めてこの家を訪れたときは、畳の匂いも新しく、どこもかしこも硬い印象があったが、
今はしっとりとふたりの空気に馴染んでいる。
前を歩く魅録も、入居したときは和造りのこの家が死ぬほど似合わなかったが、今は
妻を真似て、家に居るときは和服で過ごしているらしい。ぴっと伸びた背中に、背縫い
の縦が美しく流れ、なかなか堂に入っている。パンクな髪型とのミスマッチさえ、その魅力
を損なうどころか、不思議と似合っていた。
「いらっしゃい、清四郎。遅かったですわね。何かありましたの?」
出迎えた幼馴染に、清四郎は曖昧に微笑む。
十代の頃のような瑞々しさを保ちながらも、髪を上げた野梨子の項は男の肌を知る
匂いやかな女のそれであり、一刹那、清四郎の瞳を奪った。
いわゆる古風な日本の女の代名詞のように言われ続けていた野梨子であったが、
夫唱婦随どころか、男女間のことに潔癖すぎる彼女が結婚する姿など、以前の清四
郎には想像さえ出来ないことだった。
だが、野梨子は魅録によって男を知り、結婚した。そしていつか臓躁的なまでに
無菌を守り通してきたその胸に、今度は魅録の子供を抱くのだろう。
円やかな仕草で夫に身を寄せる野梨子の姿に、遠い日の苦い思いを蘇らせて、
清四郎は苦笑した。この思いは、生涯忘れることはないだろう。かつて有閑倶楽部を
名乗った自分の親友たちが全て年老い、その美貌や名声を失ったとしても。
娘を嫁にやった父親の気持ちが少しだけ、分かる。
清四郎にとって野梨子とは妹であり、姉であった。また、母親であり、娘だった。そして
同時に、そのどれもでもない――血のつながらぬ他人であるという点で、野梨子は
清四郎の永遠の少女となったのである。
「で、俺に話があんだろ? ――こいよ」
ふたりにではなく、魅録に話があるのだと、電話で予め前置きしておいたことを覚えて
いた魅録は、清四郎を自室に誘った。頷き、彼の後を追いながら、清四郎はちょっと
だけ愉快に思って、口の端を歪めた。
これから、この男も同じ気分を味わうに違いない。
机を挟んで魅録と向かい合う。
清四郎はきちんと座布団に正座していたが、魅録は勿論片膝を立てて、あぐらをかい
ている。和服だと裾が捲れて、洋装よりも更に行儀の悪いことになるが、それでも品を損ね
ず、洒脱な印象のみを相手に与える魅録の器量を、清四郎はうらやましく思う。
「改まってなんだよ」
「――ご両親の外には、君に一番に報告しようと思いまして」
流石に、身を強張らせる。
端からお祝いムードであった剣菱家とは訳が違う。祝福されないとは塵ほどさえ思わな
いが、半端な思いでいると魅録は怒り狂うだろう。
「なにを」
「悠理と――結婚することになりました」
「っ ………」
清四郎の告白に、魅録は短く息を呑んだあと、しばし長考するかのように押し黙った。
それは、おそらく数秒のことなのだろう。だが、清四郎には永遠にも似て、耐え難い時間に
感ぜられた。
「――ちょっと、待ってろ」
暫くして魅録が吐き出した言葉は、清四郎が想像していたようなものではなかった。困惑
する清四郎の目の前で魅録は立ち上がり、そして部屋を出て行った。
(……一体、なんなんでしょうね)
祝福の言葉だとか、激励の言葉とか。あるいは叱咤や、詰問や。そういった言葉が速やか
に返ってくることを予想していただけに、清四郎としては肩透かしを食らった気分であった。
だが、衝撃を受けたのは間違いないだろう。なにしろ、魅録にとっての悠理は、己にとって
の野梨子と同じような存在なのだから。
それにしても、魅録はなかなか戻ってこない。どうしたことだろうか。
自分の気が急いているいるのか、本当に彼が遅いのか、待っているうちに時間を持て余し
はじめた清四郎は、外の景色でも見ようかと障子を開き、濡れ縁に腰掛けた。
空には、先ほど見た月が照っていた。星すら霞むほどに、世界を遍く照らしている。
檜の濡れ縁の手触りを楽しみながら、春宵の空気を感じた。春独特の、夜露の湿気、
甘い土の匂い――。
暫くして、衣擦れの音が近づいてきた。
「なんだ、お前、そこにいたのか」
現れた魅録が手にしていたのは一升瓶と二組のお猪口だった。
「酒……ですか」
「売りモンじゃねえが、超特撰大吟醸だぜ。いつか大切なときに呑もうと取っておいたんだ」
軽薄を装いながらも隠しきれぬ静かさで魅録は言うと、清四郎の隣に腰を落ち着ける。
「戻りますか?」
「いいや、ここでいい――取れよ」
促され、清四郎はお猪口を手に取った。その瞬間、まるで神主の前に立つ新郎のような気
分となり、それまで抑圧していた感情が迸りそうになる。
ああ、だが今ここで自分が取り乱すわけにはいかない――。
魅録がゆっくりと杯に酒を注ぐのを、どこか神聖な心持ちで受け止める。次に、魅録は自分
のお猪口を満たした。
「呑めよ」
先ほどから、促されてばかりいる。だが、今の清四郎には従う他に術はなく、先ほどから感情
を見せない魅録の心情を慮りながら、静かに唇をつけた。
喉を通る、上品で透明な味。さわやかでありながら深みのあるその舌触りに清四郎は心地
よく酔いしれる。
清四郎がその酒を一口だけで十分に理解し、楽しみ、そして満たされてお猪口を置いたの
を見届けた魅録は、ゆっくりと言葉を綴った。
「俺に、誓え」
「……はい」
何をですか、と問い返す愚を犯さずに、清四郎は頷く。
「あいつに、貧乏をさせるな」
「ええ」
「あいつを、危険な目に合わせるな」
「分かってます」
「あいつを置いて、死ぬな。必ず、お前の方が看取れ」
「……流石に、それは」
そんな無茶なことを言われても困る。
だが、反論した途端に魅録の鋭い眼差しに合い、清四郎は観念する。
「分かりました。善処します」
それに納得したのかどうかはしらないが、魅録は一度言葉を切った。そして、ぐいと呑みっぷり
よく、己のお猪口の中を空にする。
かたん、と濡れ縁にお猪口を置く音に、清四郎は酷く緊張した。そんな清四郎を眇めみた
魅録は露悪的に口元を歪める。
そうして、言い放った。乱れた袷を気にすることもなく。
「あいつを、泣かせるな」
清四郎は、魅録の瞳を見た。
どこまでも真摯な瞳だった。もし自分が愚かなことでも口走ったならば、眼差しひとつで彼は
己の命を奪ってしまうだろうと、清四郎に信じさせてしまうほどには。
出し抜けに、清四郎は問うてみた。
「―――君は、野梨子を泣かせましたか」
「いいや」
返ってきたのは、こちらの質問を予め知っていたかのような即答。
それでいい。
「僕も同じです」
清四郎は、微笑んだ。
魅録は、いかにも疲れた企業人といった風情の清四郎のスーツ姿を見て、いつでもパリっと
制服を着ていたあの頃とは違うのだと郷愁の念に駆られる。
自分だって、悠理をタンデムに乗せて夜の喧騒の中駆け回った頃のようには若くない。青く、
そして愚かだった自分たちは、今の形になるまでに傷つけあい、裏切りあった。ときに愚かに、
救いがたいほどに。
だが、この清四郎の言葉は信じられる。
「――ならば、この酒は神酒だ」
再びお猪口に注ぎ、魅録は目の高さまで掲げる。酒で出来た水面に月を浮かばせる。
清四郎はそんな魅録から、静かに目を逸らした。そうせねばならないことを、彼は知っていた
のだ。
自らもまた酒を口につけ、再び夜空を見上げる。そうして清四郎は、隣に座る親友の肩の
揺れが止まるのを待った。
end
>水面に映る月
なんて情緒溢れる話なんだ。「!」や「っ」を多用しないのに
清四郎や魅録の心の動きが苦しい程にわかりますね。
日本酒の薫りが漂ってきそう〜
それにしても競作6つ目ですね!すごい、すごい!
>水面に映る月
読んでいるこっちまで、苦しくなっちゃたよ。
情景が目に浮かぶようでした。
しかし、こんなにたくさん読めるとは。
まさに、競作ブラボー!
>水面に映る月
男ふたりに、なんとも言えない色気があって。
春の夜と日本酒から連想される雰囲気が、効果的で。
感動・・・
珠玉の短編が一度にたくさん読めて、すげー嬉しい!
こんなに作家さんがいたんだ(笑
本当に短期間にいい作品がたくさん読めるなら、
またいつかやってほしい。
ところで競作うpはまだあるのかな。ワクワク
>水面に映る月
美しい…
ここに至るまでの話も読みたくなってしまいました。
和服の魅禄とサラリーマン清四郎、イイ!良すぎる!
笑いあり、Rあり、叙情あり
どれもこれもすばらしいですね。
競作万歳です。
>水面に映る月
読んでるだけでこっちまで酔っちゃったよぅ。
素敵…。
競作うpします。3レス程使わせていただきます
可憐は知っている。
清四郎が悠理のことを好きで好きでたまらないのに、指1本触れられずにいることを。
悠理も清四郎の事が好きってことをね。
だから、可憐は清四郎にほんの少しきっかけを与えてあげることにした。
剣菱家で大掛かりなパーティが開催された日、悠理に無理矢理、胸元を強調するタイプのドレスを着せ、椅子に座らせた後、可憐は清四郎に化粧下地のボトルを握らせた。
「ハイ、清四郎。アンタは悠理のメイクを担当してね。色はあたしが指示するから。下地は指で悠理の顔に塗ってあげて」
「僕が担当ですか?可憐がやればいいのに・・・」
「あたい、化粧なんかイヤだ〜っ」
清四郎の口調は、戸惑いの色が含まれていた。
けれど、彼のその口調は、叶わないと思いつつも自分が望んできた事、つまり悠理の肌に遠慮なく手を触れる事が、突然に叶えられたという事に対しての戸惑いだということを可憐は知っていた。
悠理も口では嫌がっているが、本音は全く違うものだという事を可憐は察知していた。
可憐はマニキュアの蓋をあけ、悠理の小指の爪の真ん中に筆を走らせた。
「あたしは悠理のネイルをやるから、手がはなせないの。手先の器用なあんただったら、塗る作業はどうってことないでしょう?」
悠理の小指の爪が綺麗に色づいた時、化粧下地のボトルが開けられる音が可憐の耳に届いた。
「悠理の肌って柔らかくてすべすべしていて、綺麗ですね」
「そうかな・・・」
(完全に2人の世界に入っているじゃない。)
可憐は悠理の爪を綺麗に彩りながら、にんまりと笑った。
可憐がそんな笑みを顔に浮かべたのも気付かないほどに、清四郎と悠理はお互いの顔を見詰め合っている。
それにしても、清四郎は手先の器用な男だ。
何をやらせても様になる。
可憐の指示を受けなくても、自分でメイクボックスの中から悠理の肌に似合う色身のアイテムを選び出し、優しい手つきで悠理の肌に乗せていく。
清四郎が細い指で悠理の顔を触れるたびに、悠理は気持ちよさそうな表情を浮かべる。
「なんか・・・こうやって触られるのって結構気持ちいいな」
「僕も悠理の肌に触れて、気持ちいいと思いますよ」
清四郎の手によって、悠理は一層綺麗になっていく。
悠理の肌は、さらに透明感をまし輝いている。悠理の睫毛は綺麗なカールを描き、目を伏せた時には綺麗な影がさす。
悠理の頬にはチークを入れる前から、赤みがさしている。
その赤みを消えないで留めておけるように、清四郎はクリアレッドのリキッドチークを悠理の頬に重ねた。
「ちょっと失礼」
悠理のネイルを塗り終わった可憐は一旦部屋を出た。
再び、部屋に戻ってきた可憐は2つのカクテルを手にしていた。
「まぁっ、悠理、あんたったら本当に綺麗になったわね。清四郎さすが手先が器用なだけあるわね、お疲れ様、まっこれでも飲んでから、会場に来なさいよ。あたしは先に行っているわ」
サイドテーブルにカクテルを置いて、清四郎に何やら耳打ちしてから、可憐は部屋を出て行った。
清四郎はやや赤くなりながら、クリアレッドの液体が入ったグラスを悠理に手渡した。
「清四郎、お前、顔赤いぞ、どうしてだ?」
「悠理、少しグロスの色が濃いですね」
それだけ言うと、思いきって悠理の唇にキスをした。
「・・・!」
悠理のグロスが程よく落ちた頃、清四郎は唇を離した。
「可憐に言われたんですよ・・・。キスして落とすのが一番いい方法だってね」
「・・・清四郎」
悠理の頬はチークよりも濃い赤に染まった。
パーティ会場となっている剣菱家の中庭で可憐は清四郎たちに持っていったのと同じカクテル――キスインザダークを飲みながら、2人がいる部屋の明かりが消えたのを見て、満足げな笑みを浮かべた。
「まさに“キスインザダーク”ね。ううん、“セックスインザダーク”よ・・・だってあのカクテルの中にこっそり催淫剤混ぜておいたもの」
【FIN】
>KISS IN THE DARK
男性が女性に化粧をするのって、なんかエチーですね。
最後のオチににんまりしますた。
競作うpします。5レス使います。
日本酒を酌み交わす二人の男の顔は既に赤かった。
「大丈夫ですか?菊正宗さん。
病院の院長ともあろう方がアルコール中毒で倒れたら笑い話にもなりませんよ」
「この位大丈夫ですよ。そうそう白鹿さんもこれを飲んでおくといい」
そう言うと、奥の戸棚からごそごそと白い紙包みを出した。
「何ですか?これは」
「清四郎が調合した薬ですよ。肝臓の働きを強めて、二日酔いになりにくい」
「ほぉ、大したもんですな」
感心する清州に修平は首を振る。
「大したもんも何もありませんよ。夜中までごそごそと一体何の実験をしてるのか。
息子なんてつまらないもんですな。お宅がうらやましいですよ」
「おや、和子ちゃんがいるじゃないですか」
「和子もね、しっかりしているのはいいんですがね。
しすぎていて、どうも今ひとつ可愛げが足りないというか。
その点、野梨子ちゃんは可愛くてたまらないでしょう」
ほうと、ため息をついて、修平は杯に口をつける。
「いやいや、ああ見えても私には冷たいところがありましてな」
「おや、そうなんですか」
清州はうつむき加減に話しはじめる。
「まあ、あまり人に話した事はないですが、私は油絵の方も好きで、趣味で描くんですよ」
「確かに、初耳ですな」
「他人様にお見せできるようなものでもないんでね。
だけど、野梨子の絵は嫁ぐ時に渡そうと思って、毎年一枚づつ書いていたんです」
「野梨子ちゃんの絵をですか」
「小さい頃は、喜んでモデルになってくれていたんですが、恥ずかしいのか、
だんだん大きくなってくるにしたがって嫌がりましてね。最近では、もう全然。
相手にもされませんよ」
清州はがっくりと肩を落とした。
「まあまあまあ」
肩をたたき、清州の杯に酒を注ぎ足そうとするが、もう残りがない。
「おーい、もう一本、燗をつけてくれ」
大声で叫んだ。
和室から聞こえる声に母と娘は呆れたように顔を見合わせた。
「何だか知らないけど、盛り上がってるわねえ」
「無事に難しいオペが終わったって言ってたから、羽を伸ばしてるんでしょ」
立ち上がると、徳利に酒をつぐ。
「そういえば、清四郎は?」
「生徒会の用事で遅くなるって言ってたわね」
その時、玄関の扉が開く音がした。
「ただいま」
「あっ、帰ってきたわ」
和子が玄関先に行くと、隣の少女も一緒だった。
「あら、野梨子ちゃん。いらっしゃい」
「こんばんわ、お邪魔します。あの…もしかしてうちの父、来てますの?」
玄関にきっちりそろえられた草履に視線を走らせ野梨子が言った。
「さっきから、向こうで男同士で飲んでるわ」
「まあ、父さまったら。ご迷惑おかけしてるんじゃありません?」
「いーの、いーの。どっちかと言えば、うちの父の方が相手して欲しいんだから」
「うるさそうですから、さっさと二階へ行きましょう」
清四郎に促され、野梨子は階段を上っていった。
部屋に入ると、野梨子は鞄を置き座り込んだ。清四郎は上着を脱ぎ、ハンガーにかけている。
「清四郎、忘れないうちに薬を下さいな」
野梨子の声に清四郎は顔をしかめた。
「別に急いで治さなくてもいいじゃありませんか。
今日だって、コンシーラーで皆、気付かなかったでしょう」
「髪でなるべく見えない様にしていたからですわ。
いつ見つかるか気が気じゃありませんでしたのよ。
昨日なんか、父さまに絵を描くから部屋に来てくれって言われて。
私、血の気が引きましたわ」
「おじさんがですか」
「ですから、嫌なんですの。それに、見えるところにはつけない約束ですわ」
「はいはい、分かりましたよ。薬って言ったって、少し治りが早くなるだけですけどね」
仕方なく清四郎は引き出しを開ける。
ヘパリンと書かれた手書きのラベルを確かめると、彼女に渡した。
「今度から気をつけてくださいね。まさか首筋につけるなんて」
野梨子は手渡された軟膏をさっそくすりこんでいる。
清四郎は、その様子を見つめながら、こほんとひとつ咳ばらいをした。
「野梨子、僕としては、もうそろそろ皆にも話してもいいと思うんですが」
だが、その提案に野梨子は首を振った。
「嫌ですわ。だって、清四郎は恥ずかしくありませんの?」
上目遣いに彼を見上げる。
「何か言われるのも、最初のうちだけですしね。それに、ばれるのだって時間の問題ですよ」
「じゃあ、出来るだけ長く、ばれないようにして下さいな」
きっぱりと返す少女に清四郎はため息をついた。
彼女の頑固さは長い付き合いで知り尽くしている。
思わず首筋に跡をつけたこちらの精神状態など、知るべくもないだろう。
その夜、清州はほろ酔い加減で、隣宅から戻ってきた。
かなり飲んだが、あの薬のおかげであろうか。吐き気などは感じない。
玄関の引き戸を引くと、家の中はすでに静まり返っていた。
鼻歌まじりに家に上がる。ふわふわとして、かなりいい気分だった。
(そうだ)
まるで泥棒のように足音を忍ばせて自室へ行くと、スケッチブックと鉛筆を取り出す。
音を立てないように注意しながら娘の部屋に入り込んだ。
野梨子はぐっすりと眠っていた。枕元の灯りがぼんやりとその寝顔を照らしている。
その横に正座した。
(すっかり、大きくなって)
だが、成長した今でも、寝顔は幼い頃のままの愛らしさを残している。
清州は昔に思いをはせ、微笑んだ。
(さてと)
本来の目的を果たすべく、鉛筆を構える。さらさらとスケッチブックに黒い線を走らせていく。
昔はよく着物姿の野梨子を描いていた。
盛装した娘を描くのも楽しかったが、親としてはこういう一コマも残しておきたい。
普通、それは写真だったり、ビデオだったりするのだろうが、清州の場合それは絵画であった。
自分の心に映る、その時だけしか見る事の出来ない娘の美しさを切り取りたい。
そう思うのは、芸術家としても、親としても当たり前ではなかろうか。
娘に無断で部屋に侵入し、勝手に寝顔を描いている清州としては、
酔った頭とはいえ多少の後ろめたさがかすめる。
心の中で言い訳をしながら、デッサンを続けた。
(この色あいは、水彩で表現した方が綺麗だろうな。明日にでも描き上げよう)
スケッチブックを閉じたが、清州はまだ、娘の寝顔を見つめていた。
最近は、忙しさのせいか家にいる事が少ない。
その分を埋め合わせるように、今のうちに心に娘の姿を刻んでおきたかったのだ。
ふと、首筋に浮かぶうっすらとした赤みに清州は気付いた。虫にでも刺されたのだろうか。
真っ白な肌だけにそれは痛々しかった。だが、虫刺されにしてはやや大きい。
不思議に思って、目を凝らした瞬間、顔がこわばった。
それは虫刺されではもちろんなく……、むしろ、これは。
思わず、後ずさる。その場からも、現実からも逃げ出したかった。
しかし、慌てたせいかその拍子にスタンドが倒れ、派手な音が静けさの中、響き渡る。
さすがに、目を覚ましたのであろう。野梨子がかすかな声を発し、身を起こした。
目の前の父に気付くとぼんやりと口を開く。
「父さま……?どうしたんですの」
清州はショックのあまり頭がくらくらしていた。
目に映った物が信じられない、いや信じたくないのだ。
「父さまったら!」
その声に、はっとする。やっとの思いで娘の肩に手を置いた。
「野梨子、お前……(涙)」
声が、震えた。
―――数日後、菊正宗家では、やや既視感を覚える光景が繰り広げられていた。
酒を酌み交わす二人の男。
けれど、片方はまるで元気がなく、もう片方はやけに嬉しそうである。
その光景に、呆れる母と娘の姿は前と変わらなかったが。
そして、二階では頬を桜色に染めながら怒っている少女を、青年がなだめていた。
【終わり】
>祝い酒にはまだ早い
清洲さん登場ー!
娘思いの素敵な父親だよねぇ・・・シミジミ
さぞかしショックだったことだろう。
>KISS IN THE DARK
化粧中の2人のラブラブっぷりには、可憐もあてられていそう。
清四郎が催淫剤を自分で使わないとは珍しい(ヲイ
>祝い酒にはまだ早い
ナイスミドル2人の酒盛り(・∀・)イイ!
清洲さんが描いてきた野梨子の絵は、さぞ美しかったでしょうね。
清四郎のこと、殴りたかっただろうな・・・
>KISS IN THE DARK
>それにしても、清四郎は手先の器用な男だ。
>何をやらせても様になる。
この辺が萌えどころでした。
熱々の二人はきっと催淫剤なくてもOKだったのでわ?
>祝い酒にはまだ早い
清洲さんメインは初めてじゃないですか?
年頃の娘の部屋に侵入して〜いけない親父だ。(^^)
>祝い酒
わははは!年頃の娘を持った父の悲哀が伝わってくるようだ。
部屋にコソーリ忍び込んじゃいたくなる気持ち、分かるなあ。
それが野梨子ならなおの事。
この後どうやって収まりをつけたのかが知りたい。(w
清州さんが描きためた野梨子画集『成長の記録』
禿しく見たい・・・
勢いにのって競作に参加です。
6レス使います。
わかりにくいと思うので予め書きますが、美童が主役です。
長いわりに暗くて我ながら萌えないのですが…
このバーの前に立つのはちょうど1年ぶりだ。
古びた木の重い扉を開けると、ランプの灯がぽつぽつと灯る暗い店内に低く静かにジャズの音が流れる。
今年も変わっていない。あの頃からちっとも変わらない。
「やあ、マスター」
「いらっしゃい」
カウンターの向こうの初老の男性が、ワイングラスをクロスで丁寧に拭きながら
白髪まじりのひげを少し上げて僕を迎えた。
「相変わらずだね。この店」
僕の言葉にマスターのひげがまた動いた。笑っているのか、口元がひげに隠れてわからない。
黒いスーツの上着を脱いで、スツールに腰を落ち着けると深く息を吐き出した。
酒棚のガラスに映った自分の顔があまりにも疲れていて苦笑いが出る。
長い金色の髪を一つに束ねていた紐をほどきながら、自分が今日初めて笑ったことに気づいた。
「どうぞ」
マスターが僕の前に二つのカクテルグラスを並べ、シェーカーから淡いゴールドの液体を注ぐ。
−マリエ−
それはある女性の名前がついた、ここでしか飲めないカクテル。
なぜなら僕とマスターしかそのレシピを知らないからだ。
さわやかな香りにつられて口にすると、意外なほどほろ苦い。
そしてかすかに舌に甘みが残る。
マリエ。
君は、僕が知っているたくさんの女性の誰とも違っていた。
声をかけるより前から、君をこの店でよく見かけてた。
ぽつんと一人カウンターで、ある時は熱心に文庫本を読みふけり、
ある時はマスターと小声で談笑し、ある時は難しい顔をして仕事らしき書類を書き上げていた。
僕といえば、仕事帰りのデートの後は必ず一人でこの店に寄り、
さっきまで一緒だった女の子の事をマスターに話してた。
−−−どんなに足のきれいな子だったか、とか、
初めてのデートなのに結婚を迫られてまいった、とか。
僕の話が聞こえているのかいないのか、君は僕なんてまるで存在しないかのように
いつも静かにロックグラスを傾けていた。
初めて声をかけたのは、こともあろうにこの僕がデートをすっぽかされた夜。
その日は仕事のミスも重なって気が沈んでいた僕は、
相変わらず一人で本を読んでいる君に、気まぐれでカクテルを送った。
淡いピンクの、とろけるように甘いカクテルを。
君は渡されたグラスを不審気に見つめ、僕にちらりと視線を向けた。
「君に合うと思って」僕はとびきりの笑顔を返した。
すると君は一口飲んで、グラスを僕の方へすいっと戻したんだ。
「いつもの自慢話のわりには女を見る目がないのね。このお酒が私に合うなんて心外だわ」
そう言って、急に店を出て行った。
わけがわからずにマスターを見ると、彼にしては大袈裟な仕種で
「色男失格だな」と肩をすくめていた。
それからほぼ毎日、僕はこの店に通い、君が来ると知る限りのカクテルを送り続けた。
君はそのどれも、一口だけ口をつけて僕につき返してきた。
たいていの女の子は、『僕にカクテルを送られた』事だけで大喜びするっていうのに。
カクテルの中身なんて彼女達にとって問題じゃない。キレイな色と、甘い香りがついていればいい。
後の味付けは、この僕がすればいいんだから。
そんなやりとりが一ケ月ほど続いて、僕はもうお手上げだった。
手の内も出しつくし、今日で最後、完敗を認めようと、マスターにオーダーを告げた。
サウザ・シルヴァー。つまり君のいつものロックグラスの中身だ。
置かれたグラスを見るなり、君は吹き出した。
初めて見た君の笑顔。
「ありがとう。初めてね。あなたが私のことを考えて出してくれたお酒って」
君はまだおかしそうに、目の端をぬぐいながら言った。
「どういうことさ。今までだって君にぴったりのカクテルを選んでたつもりだけど」
「今まではただ女性の好きそうなカクテルを選んでただけ。自分を演出する小道具としての」
言葉が出なかった。言われる通りだったから。
「私がどんな人間か知らなくっても、ちゃんと目に映ってるなら、
あんなキラキラしたカクテルが合うなんて言わないはずよ。
私はどう見たって、あなたのデートのお相手みたいにゴージャスでもなんでもないもの」
そう言って君はサウザのグラスをカランと回した。
「でも、今日はいきなりおかわりを送ってくるんだもん。
万策尽きたってバレバレでもうおかしくって。意外に素直な人なのね」
痛いところをいくつも突かれ、プレーボーイの面子も何もあったもんじゃなかったんだけど。
不思議に、君の言葉はするすると流れるように素直に僕に届いた。
強い眼差しに、意志的な口元。薄い化粧。
パンツスーツに、アクセサリーは小さなブルーの石のついたピアス。
僕は今まで君のどこを見てたんだろう。そう思った。
そんな飾らない君に、計算つくされたメイクに、ブランドづくめの服を着た
女の子たちに選ぶのと同じようなカクテルを送っていたなんて。
「もう一度、チャンスをくれないかな」
そう言った僕の目を、君は探るように見つめていた。
「もし、この次君にぴったりのカクテルを出せたら、デートしてほしいんだ」
その晩、僕とマスターは棚にずらりと並んだリキュール、スピリッツの全てを試して
一晩中カクテルを作りつづけた。
マスターは静かにシェーカーを振り続けるだけで、何のアドバイスもくれなかった。
いいかげん酔いつぶれそうになりながら文句を言っても「色男の意地を見せてくれよ」と
ニヤリとひげを上げるだけで、僕の注文通りに酒を合わせ続けた。
明け方、酒場街を回る早朝のゴミ収集車の音を聞きながら、
酔いと眠気に朦朧とする頭でボソボソとマスターにレシピを告げた。
出来上がったカクテルは薄い金色で、三つ前に作ったものとよく似ていた。
いや、五つ前だったかもしれない。
でも口にしたとたん眠気なんかふっ飛んだんだ。
君の嬉しそうな顔が見えた気がした。
そうして僕らは、何度もデートを重ねた。
君が、フードライターをやっていること、フランス語がしゃべれること、
猫を飼っていることを知った。
君はスウェーデンの話や、僕の大使館での仕事の話を聞きたがった。
フードライターのくせに君の作る手料理はお世辞にもおいしいとは言えなくて。
その代わり、路地裏なんかにある変わったお店をいくつも僕に教えてくれた。
そしてバーに寄ると、二人で薄い金色のほろ苦いカクテルを飲んだ。
僕らのためだけの特別なカクテル。
君の名前をとって『マリエ』と名付けた。
君とつきあって、僕は一人の女性を深く知る喜びや、素晴らしさに気づいたんだ。
やがて僕の携帯からは自然に過去の女の子達のナンバーが消え、
『プレーボーイ』もすっかり過去の異名になっていた。
君の誕生日を前にして、雑誌の特集記事のため、君はスペインの田舎町へ旅立った。
「誕生日にはサプライズを用意してるからね。楽しみにしてて」
空港に見送りに行った僕は、はやる気持を抑えつつそれだけ言って持っていた荷物を渡した。
「嬉しい。あっちから素敵な絵葉書を送るわ」
相変わらず化粧っけのないシンプルな笑顔を残して、君はゲートへ消えていった。
僕はその帰りにスウェーデン行きのエアチケットを2枚と、
さんざん探してカクテルと同じ色のトパーズのリングを買ったんだ。
その三日後、マドリード発、カディス行きの深夜バスが横転事故を起こしたニュースを
僕は大使館で帰り支度をしながら見ていた。
関係ないニュースに違いないと自分に言い聞かせながら、体の震えは止まらなかった。
君の泊まっているホテルへ電話をかけようと受話器を取った時、
テレビの画面に君の写真と名前が映ったんだ。
君は二度と僕のところへ戻ってこなかった。
あのチケットとリングは今も引き出しの奥深くに眠っている。
「乾杯」
マスターにも聞こえないほどの小さな声で呟き、
僕はグラスをもう片方のグラスへカチンと軽く合わせた。
ほろ苦い。
このカクテルみたく、ほろ苦い思い出になってしまった君。
一年に一度、君を偲んでこのカクテルを飲むようになってもう五年。
今日は、君の命日。
「明日から五日間スペインに行くんだ」
唐突な僕の話に、マスターは黙ってうなずいた。
「彼女にきちんとお別れを言おうと思って」
誰かに話すことで、自分に言い聞かせるように、強く言った。
言い切ってしまうと、急に力が抜けた気がして僕は軽く目をつぶった。
ジャズの音が際立つように耳に流れ込む。
「帰ってきたら、マスターにお願いがあるんだ」
「なんでしょう?」
グラスを拭き終えたクロスを、マスターは丁寧にたたむ。
「新しいカクテルを作るのを手伝って欲しいんだ。もちろん、どこにもないレシピで」
ひげが、ニヤリと持ち上がった。
「カクテルの名は?」
「まだ内緒。今度は情熱的で、大らかで………大輪の花みたいな。そんなカクテルを作りたいんだ」
そう。僕のプレーボーイ廃業に一番驚き、君を失ってからもずっと僕の事を
さりげなく支え続けてくれた古くからの友人に、最近やっと気づいた気持を伝えるため。
僕はグラスの残りを一気に空けた。
この味を、香りを、きっといつまでも忘れない。
誰もいない隣のスツールに、話し掛けるようにグラスを掲げた。
「君に会えてほんとによかった」
カウンターの上で、もう片方のグラスの表面が応えるようにさわっと揺らいだ気がした。
END
>レクイエム
美童かっこエエ…。渋くて大人です。
競作ブラボー!
>レクイエム
美童もいいが、マスターもイイ(w
最後の古くからの友人って言うのは、可憐?
>レクイエム
ヤパーリ美童はイイ奴ですな。
切ないけれどイイ恋をして、これからまたイイ恋が始まる・・・
願わくば今度はハピーエンドになりますように・・・
>レクイエム
ほゥ。(ため息)
こんな美童もイイ。ここの作家さん達の書く美童はほんと素敵です。
それにしてもお酒だけでこんなにいろんな話が読めるなんてスゴーイ。
嬉しすぎです。
競作に挑戦してみます。
6レス使います。
皆で一緒に騒げるのも今夜が最後。
だから今夜は男だけで飲み明かそうと決めた。
防衛大へ行く魅録、スウェーデンへ帰る美童、そして医学部へ進学する僕。
進む道は別れてしまったけど、いつまでも友達だ。
「今夜はとことん飲み明かそうぜ」
そうだな、魅録。
始めて出会った中3のときからお前はちっとも変わっていない。
情に厚く、メカに強く、やたらと交友関係が広くて…
「今度こうして3人で飲めるのはいつになるかな」
誰かの結婚式のときかな、美童。
なにかあると騒いでばかりのことが多いけど、
女性の心理や扱い方はとてもお前にはかなわない。
いつか好きな人ができたらきっと国際電話で相談するよ。
あぁ、寂しいけれどこれも大人になっていく過程の一つ、
いつまでも仲間とつるんでバカなことはやっていられない。
でもこの4年間、本当に楽しかった。
ありがとう、これからも元気でな。
「皆の前途を祝して乾杯」
まだ夜は長い。飲んで騒いで、そして別れていこう。
きょうでお別れ、か。
なんか毎日が楽しくて、こんな日がくるなんて考えてもみなかった。
「防衛大って女の子もいるんだろ。可愛い子がいたら紹介してくれよ」
相変わらずだな、美童。
お前スウェーデンに帰るんだろ。日本の女の子紹介してどうするんだよ。
でもこいつのことだ、せっせと電話やメールでこまめに連絡
とるんだろうな。とてもマネできないや。
「今夜はつぶれるまで飲みますか」
お前がつぶれたところを見てみたいもんだよ、清四郎。
完璧主義者で冷たく見えるけど、仲間思いだってことはちゃんとわかってる。
時にはお前の傲慢さにむかついたこともあったけど、
やっぱり得がたい友人だよ。
「誰が一番先につぶれるか飲み比べてみるか?」
一度やってみたかったんだよな、もちろん負ける気はないさ。
おいおい、だからって普通ウォッカを出してくるか?
これ、二日酔いがきついんだよな。
でも、まぁ、いいか。それもまたいい思い出になるさ。
いつかこんな日が来るのはわかってた。
父さんの任期もいつかは終わるし、それに僕はグランマニエ家の長男。
どこの国にいても大学はスウェーデンに戻らなければいけない。
「花子おばあちゃんによろしく伝えてください」
わかったよ、清四郎。
お前にはずいぶん世話になったよな。僕はなんの役にも立てなかった
気がするけど、友達でいてくれてありがとう。
「またいつでも会えるさ」
本当にそうだといいね、魅録。
いろいろ怖い思いをしたこともあったけど、今になってみると
どれも結局たいしたことなかったのかな。
「2人ともちょっとピッチが早すぎるよ」
やれやれ、2人とも底なしのはずなのに今日はずいぶん酔ってるね。
いいよ、つぶれて寝ちゃったら布団くらいかけてあげる。
そして明日になったら、みんなともこの国ともお別れだ。
最後の日だから本当は6人で過ごしたかった。
でも男たちだけで飲み明かすといわれたら何もいえなくなってしまった。
だったらこちらは女だけで騒ぎましょう。
悠理は体育大で寮生活、可憐は家政科、そしてわたしは京都へ、
みんなバラバラになってしまう。
「さぁ、飲むぞ。野梨子もきょうくらいは飲めよ」
そうですわね、悠理。今日はわたしも飲みたい気分ですわ。
あなたの第一印象は最悪でしたわ。まさかこんなに仲良くなるなんて
あのころは思っても見なかった。
「ほらほら、考え込んでないで、グッといきましょ」
わかりましたわ、可憐。
あなたの印象もあまりよくはありませんでしたね。
でもそれは私の見方が偏ってたから。
ミセス・エールに指摘されて初めて気づいた私の欠点。
「すみません、お代わりください」
あら、わたしなんだか酔ったのかしら。
言葉が勝手にでてくるわ。可笑しくて笑いがとまらない。
別れの日ってやっぱり来ちゃうんだな。
この日がくるのが怖かった。仲間と別れたくない、寂しいのは嫌だ。
でも野梨子にも可憐にもそれぞれの夢がある。
もちろんあたいにも。
「なんて顔してるのよ。ほらほら、パァッといきましょ」
はいはい、可憐にゃかなわないや。
考えてみたらあたいが一番ガキっぽいのかな?
まぁ、いいや、とにかくガンガン飲もう。
「はい、悠理。お代わりいかが?」
悪いな、野梨子。
お前との出会い、忘れられないよ。
あたいと互角にやりあった女なんかお前くらいだぜ。
お嬢様のくせしてなかなかやるもんだと思ったよ。
「さぁ、どんどん飲もうぜ」
今夜は思い切り飲んでやる。飲んで飲んで飲みまくるぞ。
みんないなくなっちゃうのよね。
結局地元に残るのはあたしと清四郎だけか。
とはいっても清四郎は医学部だからほとんど家には
いないも同然だものね。あたしひとり取り残された気分。
「なぁ、GWには帰ってくるからさ、また遊ぼうぜ」
ありがとう、悠理。気を使ってくれて。
うちはママ一人だからあたしが家を出るわけにはいかない。
誰にも言わなかったけどみんなちゃんとわかってくれてる。
「大学で素敵な彼が見つかるといいですわね」
ちょっと、野梨子。あんたの口からそんな言葉を聞くとはね。
ずいぶん変わったものよね。品行方正なお嬢様がさ。
もっともあんたをこんな風にしちゃったのはあたしたちの
せいかもしれないけど。
「野梨子も悠理もつぶれるのはまだ早いわよ。
夜はまだまだこれからだからね」
そう、あたしたちはまだこれからもずっと友達よね。
>旅立ち前夜
うわっ、素敵…!
ほんとにこんな形で別れてそうですよね。
6人それぞれの思いが胸に沁みます。
切ないだけじゃない、これからも続く友情を感じて最高です。
>旅立ち前夜
面白かったです。読んでて6人が可愛く微笑ましかった。
野梨子の部分で吹出してしまったのは私だけかい?
競作がどんどんうpされていて、喜ばしい限りです。
このスレッドは732までの時点で、容量が既に432KBあります。
496KBで容量警告が出ると考えられます(チョット古い情報ですが)ので、
【750 を踏んだ人】新スレ立てお願いします。
また、750さんが立てられない場合、その前後の人で
立てられそうな人がいらしたら、お願いします。
スレッドを立てる場合は、新スレがダブらないように、宣言してからお願いします。
>733
教えてくれてありがd
>735補足
こっちのスレの残り容量は競作などの作品UPに
使ってもらうのがいいかな、と思ったんでつ。
あと2〜3作はUPできるだろうし、せっかくいい
ムードでUPが続いてるのに、テンプレの話で
ぶったぎったら悪いかな、と。
>735
乙です!新スレ立って2ヶ月。あっという間でしたね。
このスレ楽しかった・・・
松竹梅千秋さんは、珍しく松竹梅邸の居間で一人飲んでいた。
脇にはレミーマルタン1724・1974、コニャックの芸術品と称される代物である。
今朝パリから帰ったばかりの体を無造作に投げ出していた。
「つまんないわぁ」と煙草を 1本取り出すと、気怠げに火をつける。
その時玄関の方から男山の鳴き声が聞こえて、魅録が帰ったことを知らせた。
それに続いて、賑やかな話し声がする。有閑倶楽部の連中と一緒らしい。
「あの子、ホント女っ気ないのよねぇ。なんで18にもなってまだ童貞なのかしら。せっかく男前に生んであげたんだから、女の一人やふたりいてもいいのに…。」
少々納得のいかない事実だが、今のところマダらしいことを本人の態度から推察していた。
襖が開いて魅録が現れた。
「やっほー魅録。女できた?」
「うっ…千秋さん、おかえり」
久々会うなりコレかよ…と思いながら、サイドボードからカミュを取り出す。
それを見てすかさず母は、ツツと寄ると別の1本を渡す。魅録の持っているモノと交換された。
「チェリーの魅録ちゃんにはこれでしょ」
渡されたのはチェリーブランデー。ニヤニヤ笑いを浮かべる千秋。
いつもならここで魅録は顔を赤くして何か言うところだ。が…。
「千秋さん、これは俺の口に合わないんでね」
と言って千秋の手にあったカミュを取った。唇の端だけでニヤっと笑う。
それに答えて千秋もニヤリと素敵な笑みを返す。
「ふぅ〜ん、そう。大人になったわね」
しばし視線が絡む。そういう時の母と息子の顔はよく似ていた。
「じゃ、みんな待ってっから」と居間を出ていく息子を千秋は引き止めた。
黙ってレミーマルタンのボトルを渡すと耳元で囁いた。
「お・祝・い。飲みかけだけど」
今度は顔を赤らめた息子を満足そうに眺めた。
それから数分後、台所に上機嫌な千秋が現れた。
「文、お茶とお菓子じゃなくて、おつまみにしてちょうだい。あ、それから、ソレ私が運ぶから」
後ろ手には魅録特製の小型盗聴器が握られていた。
<おわり>
競作です。
少々毒々しいので、苦手な方はスルーしてください。
ワインで染めたロープ。ハーブで染めたロープ。ウコンで染めたロープ。
彼女の首にそっと絡めて、香りの中で殺してやろう。
砒素味のスープ。青酸カリ色のスープ。まち針入りのスープ。
彼女の咽にするりと潜らせ、鮮血の薔薇を咲かせてやろう。
ガソリン入りのクリーム。灯油入りのクリーム。サラダ油入りのクリーム。
彼女の膚にたっぷり摺り込み、仕上げに火を点けてやろう。
全ては幻。
あの女は、今も、笑う。
いつからかは分からない。
あたいは強い酒を飲むと、悪魔の幻影を見るようになった。
それは黒髪の美しい女で――黒ダイヤのようにぎらつく瞳であたいを見据え、こう囁くのだ。
――あの女を絞め殺せ、あの女に毒を盛れ、あの女を焼き殺せ、と。
そして、それを実践する。
あの女の苦悶の表情、吐き出された鮮血、白い膚が焦げる色――。
それらが眼裏に映るたびに、ゾクリと子宮に甘い戦慄が走った。セックスのエクスタシーなど目じゃない。
あたいはラムのソーダ割りの入ったグラスを手に、バルコニーに出た。
アルコールと――そしてあの女の死に様を思い描き、身体が汗ばむほどに火照っていた。外の空気に身を晒し、それを冷まそうと思ったのだ。
あたいは何かに呼ばれたような気がして、空を見上げた。
月が赤い。焼け爛れた女の膚と、よく似ている。
あたいは下着の奥に指を差し入れた。熱い。壊れた蛇口のように、止め処なく蜜が溢れてくる。
「あぁ……」
あたいが思わず身を捩ると、カラン、とグラス中の氷が崩れた。
久し振りに会う短髪の親友――魅録は、悠理の自室でたっぷり5分ほど沈黙を続けた後、ゆっくりと、噛み締めるように口を開いた。
「保証人が……2人必要なんだ。一つ目の欄は、清四郎に書いてもらった。残りの一つ、お前が書いてくれないか」
魅録は、悠理に一枚の書類を差し出した。
悠理はその書類にさっと視線を走らせた。そして、赤点のテストを前にしたかのように、端正な唇をへの字に歪ませた。
借金の借用書ではない。それならば、どんなにマシだろう。
その書類は、婚姻届であった。花婿花嫁となる者の名は、既に記入済みである。『夫となる人』は、松竹梅魅録。『妻となる人』は……白鹿野梨子。
「高校ン時の話とは言え、てめえが振った女に、婚姻届の保証人なんて頼むかなァ」
悠理は恨めしそうに呟くと、魅録の横でひっそりと佇む野梨子に、ちらりと視線を送った。
野梨子は、もうすぐ二十代半ばに届こうとしているのに、少女のような水色のリボンが良く似合っていた。
肩の上で切り揃えられた髪型は、昔も今も変わりがない。野梨子と出会って、20年以上の月日が経った。自分を初めて喧嘩で負かした女が、自分が初めて愛した男の元に嫁に行く。
複雑な気分だった。
「なあ、魅録。あたいが断ったら、どうする気だよ」「結婚は諦める」
「ばかたれぇ! 野梨子の腹には、魅録の赤ん坊がいるんだろ!」
「オレは、お前に――親友に祝福されて結婚したい。それが叶わないなら、結婚は諦める」
竹を一刀両断するように、きっぱりと潔いその返答は、魅録の決意の程を物語っていた。
悠理は深く息をついた。柔らかな猫っ毛を、もてあまし気味に、両手でグシャグシャとかき回した。
「貸せ!」悠理は、魅録から婚姻届を奪い取った。
それを大理石のテーブルに叩き付けると、流れるようにペンを走らせ、押印した。悠理にしてはごく丁寧に書類を畳み、魅録のジャケットの胸ポケットにねじり込んだ。
「野梨子、幸せになれよ!」
悠理は、旧い女友達に抱き付いた。野梨子の髪を飾っていた水色のリボンが、悠理の頬を囁くように撫ぜた。
「暫らく、あたいの部屋には絶対に近付くなよ! 魅録たちと一晩中飲み明かすんだい!」
悠理がお屋敷中の女中に触れ回っていた同じ頃。
剣菱ご令嬢の自室で、「これから、役所に婚姻届を提出しに行くつもりだったのに……」と、魅録が頭を抱えていた。
大理石のテーブルには、色とりどりの酒瓶が並べられていた。ラム、ジン、ウォッカ、テキーラ……ラベルを見ているだけで、魅録は酔っ払ってしまいそうだった。
一応、ウーロン茶なども揃っていたのだが、野梨子は迷いなくウォッカの一種であるスピリタスの瓶を選び取った。そして、手馴れた手付きで、3人分のソーダ割りを作った。
「――野梨子は止めとけよ。ソレ、元はアルコール度数95%越えてるんだぞ。お腹の子がびっくりしちゃうぞ」
と、悠理が心配そうに嗜めると、
「もう安定期に入っているから、少しくらいなら大丈夫だろ。野梨子のヤツ、こう見えても結構酒豪なんだぜ」
と、魅録が苦笑いを浮かべた。
「あと4ヶ月でパパとママかぁ。――ったく、手が早いねえ、魅録ちゃん! 結婚するまで待てなかったのかよ!」
「余りからかうなよ。お前こそ、腹ボテでウェディングドレス着る羽目にならないよう、重々気をつけろよ」
「ぐっ……!」
「とうとう式の日取り決まったんだってな。清四郎のヤツ、嬉しそうだったぜ。婚姻届の保証人を頼みに行ったのに、こっちがあてられちまったよ」
「あいつ、何年も何年もしつこくってさぁ。仕方ないから、オチてやった」
「ま、そう言う事にしておいてやるよ」
「うっさいな! ほら、乾杯! 魅録、野梨子、いっぱいいっぱい幸せになれよ……」
チィ……ン、と遠く輝くような音色が響いた。
口内にウォッカの香りが広がった。グラリ、と焦点が霞んだ。
あたいの視界の片隅に、黒髪の悪魔が現れた。
殺せ―――。
殺せ―――。
愛しい男の花嫁になる、あの女を焼き殺せ――――。
黒髪の悪魔が、あたいに囁いた。大きな黒い瞳で、あたいを射るように見据えた。
そして……。
悪魔は、肩に届くか届かないかの黒髪を陽炎のように揺らめかせ、あの女を真っ直ぐに指差した。
あたいはあの女を見た。あの女もあたいを見ていた。あたいと目が合うと、にっこりと笑い、自分のグラスを差し出した。どうもお替りが欲しいらしい。手酌に慣れていない、お嬢さんらしい仕草だ。なんて厚かましい女だろう。
あたいはスピリタスの瓶を手に取ると、あの女のグラスではなく、あの女の胸元に中身を注いでやった。
「え……?」
あの女は、ウォッカまみれになって、唖然としている。
あたいは空になった酒瓶を投げ捨てた。そして、同じく呆然としている魅録に駆け寄り、彼のジーンズのポケットを弄った。
あたいは知っていた。そこに彼愛用のライターがある事を。魅録の事は、性感帯の場所まで知り尽くしていた。
あたいは、自分の髪に結わえていたリボンをするりと解き、ライターの火を点けた。
それを酒臭い女に投げつけてやると、あの女の華奢な肢体が火炎を噴いた。
あたいはもう一本のスピリタスの栓を開け、更に、あの女に振りかけてやった。もはや精製アルコールであると言っていい、アルコール度数96%のウォッカを、あの女にぶち撒けてやった。
炎は勢いを増した。
噎せ返るような酒の匂い。
細く柔らかい女の髪が、チリチリと縮れる匂い。
マシュマロよりも滑らかな女の膚が、香ばしく焼ける匂い。
「燃……えろ……」
あの女は身をくねらせ、避けようもない火の侵略から逃れようとしていた。
うねうねと蠢く炎の固まりは、幼い夏の日に庭で遊んだ花火――へび玉を思わせた。
愉快だ。
あの女は人間じゃない。最後にはケシズミしか残らない、ちんけなへび玉だ。
「燃えろ! 燃えろ! 燃えろ―――ッ! ア――ッハッハッハ―――ッ!」
「止、めろ……ッ」
魅録が喘ぐように呟いた。
その声が耳に届いているのかいないのか、甲高い笑い声は止まらない。笑う女は狂ったように酒瓶を振り回し、火ダルマとなった女友達目掛けて、更なる火種を注いでいる。
「止めろ、止めてくれ! ――野梨子ッ!」
魅録は血を吐くように叫ぶと、笑い転げる野梨子を突き飛ばした。
細身の野梨子の体は、木の葉のように舞い上がり、壁に打ちつけられた。
魅録は一瞬だけ、身重の野梨子に労わるような視線を送った。しかし、ぎゅっと目を閉じると、引き千切るようにジャケットを脱いだ。
そして、炎を上げてのた打ち回る女友達――悠理に、ジャケットを振り下ろし始めた。
ただし、ショックのためか、魅録の動作は明らかにもたついていた。炎を抑えるどころか、ジャケットに悠理の火が燃え移り、火の玉を更に大きくしていた。
悠理が断腸の想いで記入した婚姻届すら、彼女を焼き尽くす緋色の舌になった。
炎が完全に消える気配は、遠い。
あの女が燃えている。
悠理の体が燃えている。命が燃えている。ぱちぱちと音を立てて燃えている。
黒髪の悪魔が笑っている。あたいと一体になり、喜びの歌を奏でるように笑っている。
悪魔の名は、白鹿野梨子。
あたいの、本体。
菊正宗病院。精神科病棟。
この病院の長男長女が、個室で眠る白鹿野梨子を見詰めていた。沈痛な、面持ちで。
「――精神分裂症よ」「野梨子がですか!?」
「あの事件の時、野梨子ちゃんは、自分を悠理ちゃんだと思い込んでいたみたいね。ここに運び込まれる前、救急隊に言ったそうよ。『紛い物のあたいを燃やしたんだよ。清四郎の子を産むのは、このあたいだけなんだ』ってね。
野梨子ちゃん、バラバラだわ。恐らく、罪には問えないわね」「……」
「野梨子ちゃんの部屋の棚から、洋酒の空瓶がゴロゴロ出てきたそうよ。完全なアルコール依存症だわ。それが原因かもしれないわね」
「いいえ。きっと僕のせいだ……。僕が、野梨子を追い詰めた……」「――清四郎。野梨子ちゃんの、お腹の子の父親って……」
「分からない。僕か……魅録か」「清四郎!」
「たった一夜の事だったんだ。僕を忘れて、魅録のプロポーズを受けるためには、どうしても必要な儀式なんだ、と野梨子に泣き付かれて……」
「あたしに言い訳しても無駄よ。聞きたくないわね。言い訳なら、あたしじゃなく、あんたの婚約者になさい」
「悠理は本当に助かるんでしょうか……。あんな、管と包帯だらけの姿で……!」
「パパの言葉を信じなさい。命は取り留めたって言ってたでしょ! ただし、火傷の痕は、一生残るかもしれないわね。皮膚移植にも、限界があるから……」
「生きてさえ、いてくれれば……」
密やかな姉弟の会話に、こっそり聞き耳を立てながら……。
――しくじった、と”野梨子”は思った。
酒はとうに抜けていた。剣菱悠理の人格は、スピリタスの香りと共に消えていた。ただし、”悠理”だった頃の記憶は、そのままにして。
瞳は閉じたまま、野梨子は薄く笑った。悠理を殺し損ねたが――でも、よしとしよう。
清四郎は、もはや悠理と結婚しようとは思うまい。
不祥事の原因となったあなたを、世間は許さない。悠理の両親は、もっと許さない。悠理はどうかしら。いいえ、どうでもいいことですわね。
だって――狂った幼なじみを置き去りにして、あなたは悠理の手を取れないでしょう?
清四郎は私のもの。永遠に私もの。私だけのもの。 <終>
>燃えた花嫁
途中まで、まんまとだまされてしまいますた(w
確かに、野梨子コワー(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
でしたが、意外性に富んでいて、おもしろかったです。
>魅録の場合
そうかぁ、魅録もついに・・・
しっかし千秋さん、子どもをサカナに楽しんでるよなー。
魅録と千秋さんのやりとりが、すごくラシクて、笑っちゃいました。
>燃えた花嫁
すげー・・・
コワー ケド (゚д゚)ウマー ダシ (・∀・)イイ!
悠理も気の毒だけど、野梨子も切なくて憎めないよ。
いや、一番気の毒なのは魅録か・・・
たった6レスなのに本格的にサスペンスになっていて、堪能しました。
みんなすげえなあ・・・
競作ブラボー。
いいねえ、いいねえ。
清魅悠野はどうしてこうドロドロが似合うんでしょうねえ・・・うふふふふ
750!なので新スレ立てます。しばしお待ちを…
・ピュア
・蛇の酒
・珍かなる酒
・RONRICO151
・How to…
・シングルトン
・水面に映る月
・KISS IN THE DARK
・祝い酒にはまだ早い
・レクイエム
・旅立ち前夜
・魅録の場合
・燃えた花嫁
こうしてみるとスゴイネ(゜□゜)
さっき14にマチガッチャッタよスマソ
・ピュア
・蛇の酒
・珍かなる酒
・RONRICO151
・How to…
・シングルトン
・水面に映る月
・KISS IN THE DARK
・祝い酒にはまだ早い
・レクイエム
・旅立ち前夜
・魅録の場合
・燃えた花嫁
こうしてみるとスゴイネ(゜□゜)
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
あげます
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
有閑倶楽部で妄想を語ろう
↓う
「丑三つ時の女」
↓な
「成金爆発娘」
↓め
めざせ玉の輿!!
↓し
松竹梅魅録
↓く
くずれないすだれ髪
↓み
ミセス・エールのお手製ケーキ(食べたい)
↓き
菊正宗病院長の息子(清四郎)
↓こ
古典、地理 赤点2つ(by野梨子)
↓つ
妻の名は千秋ちゃん
↓や
やくざが怖くて有閑倶楽部がやってられるか(うろ覚えでつ。スマン
↓か
かわいいな、君は(ホモモモ〜
↓は
「白鹿野梨子に捧げる愛」
↓い
いけないご本が!
↓が
がんばって、悠理!
↓り
りぼんマスコットコミックス
↓す
「スポーツマンでいこう」
↓う
「丑三つ時の女」
↓な
ないないない!! そんな趣味はない!!
↓い
「池のコイ誘拐事件」
↓け
「ん」がついてるよ!
「ンコしてきてもいい?」
↓い
>782
そう来たか!(激藁
一条ゆかり
↓り
龍宮菓子店のバースデイケーキ持って来てね
↓ね
「狙われた学園ー男ともだち・女ともだちー」
↓ち
「痴女撃退するユーリ、毎日、女難の被害」
↓い
威嚇するすだれ頭の幼馴染
↓み
魅録ちゃん愛してる
↓る
る、瑠璃子のこの操を美童さまは欲しがっているんだべ!
↓べ
あの〜、この調子で埋め立てられるかなあ?
本スレが追いついちゃいそうでちと心配だがや・・・
>790
ここで点呼でもする?その方が早く埋まるよね。
>792
あ〜、そのほうがいいかなあ。
そろそろまた、夏がやってくるから、荒れなければいいなあと思って。
点呼も、ひとり5回くらいづつ返事しないとうまらなそうだしw
>thatサーバは 800超えたら 700スレッドに圧縮実施中
というから当分圧縮も無さそうだし、>792の方法が一番確実かも。
あと2〜3日待って特に反対意見が無かったら、依頼してこようかな。
>793
前に荒れたのは夏だったね。ああいうのは二度とご免だ。(つДT)
それにしても、もう1年経つのか・・・(トオイメ
夏厨対策にダミーとして残しておくとか・・・w
年末からこのスレ参加なので、過去ログでしか去年の「夏」を
体験していない。
荒れる「夏」以前の盛上がっていたこのスレを実体験したかったYO!
漏れもでつ。毎日そう思いまつ。
>796-797
盛り上がってた時だけ体験するならいいけど、
荒れも漏れなく付いてきまつ(泣笑
今年はマターリしたいでつね。
┏━━━ / |━━━━━┓
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┃┃ / ヽ ┃┃
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┗┳┳ ヽ__ ¶_ ノ ━━┳┳┛
┃┃ (/) ┃┃
┃┃ (/) ┃┃
凸┃┃ (/) ┃┃凸
Ш.┃┃ (/) ┃┃Ш
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∧_∧ (/) ∧_∧ ∧ ∧
( ・∀・) (/)(´∀` ) (゚Д゚ ) 今年の夏はマターリスレでありますように
(つ つミ (/)(⊃⊂ ) ⊂ ⊃
|_|_|_I (/)_|_|_|__ | |〜
///// ノ,,,,,,ヽ ////|∪∪
.//////////// .|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .|
| 奉 納 |
どんなに荒れててもさ、結局落ち着いて、住人もちゃんと残ってるってことは、
有閑倶楽部ってやっぱり愛されてるんだなぁて思う。
↓べ
別に僕は男色家というわけではありませんよ、誤解でしないでください
↓い
いたいでしょ 悠理も可憐も美童ももっといたかったのよ
↓よ
__∧_∧_
|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
|\⌒⌒⌒\
\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
~ ̄ ̄ ̄ ̄
虚しい努力と思いつつ、埋め立てにきてみました。
805さんに協力でし。
んじゃ、あてくしもw
>806-807
ありがとw
埋め立てついでに考えてみました
あまり上手く出来なかったけどお遊びついでにドゾー
有閑倶楽部で妄想を語ろうスレ住人度チェック
1〜20の質問により多くYESと答えた人ほど住人度高いということでw
なお、結果についての責任は負いかねます。
1 妄想スレが一条ゆかりスレから独立したのがいつか知っている。
2 有閑倶楽部はもちろん全巻持っている。
3 有閑倶楽部(原作)は妄想が入って普通に読めない。
4 妄想スレを「お気に入り」にいれている。
5 一日一回は訪問してしまう。
6 妄想が止められず、カキコしたことがある。
7 妄想が止められず、小ネタをカキコしたことがある。
8 妄想が止められず、リレー小説に参加したことがある。
9 妄想が止められず、短編をうpしたことがある。
10 妄想が止められず、連載を持ったことがある。
11 嵐さんのとこに行かなくとも長編作品のタイトルが3つは言える。
12 問い11に加えて、短編作品のタイトルが3つは言える。
13 現在連載中の作品のタイトルがすべて言える。
14 現在連載中の作品のカポーがすべて言える。
15 未だにあきらめられない連載小説がある。
16 帰って来てほしい作家がいる。
17 もしかしたら原作より妄想スレのほうが好きかもしれない。
18 もしかしたら原作より妄想スレのほうが多く読んでるかもしれない。
19 去年の夏を乗り越えた。
20 実は1からの住人だ。
やってみた。YES12個って微妙?
16個あったよ。住人度高いな(w
私も16でした。なんかもらえる?(藁
>>809さん(*^ー゚)b グッジョブ!!
8・9・10以外はYESだな。18は微妙だが。
いい年して我ながらアイタタ…
私も16だw
こんな埋め立てもおもしろいね。
809さん、ありがとう。
私は8コだった。
まだまだだ…
嵐さんの所に、読み直しに逝ってきます
漏れ十九だった
14個でした(w
恋チカよみたーい。って、スレ違い?
(^^)
本当に埋まらないね。
埋め立てついでに聞いてみる。
もしキリ番ゲットしたら、誰になにをリクしたい?
漏れは時代劇編の続きをリクしたいな。
まあ無理だろうけども。
本当に。本スレに追いつかれそう(w
作家さんてまだ本スレ見てるかなぁ・・・。
リクできるなら恋カノさんの新作読みたい。
「清四郎、ほんとに埋め立てする気あんの?」
「そのつもりですが、可憐は反対ですか?」
「反対ってほどじゃ・・・、でも・・・」
「こんなにたくさん、不可能ですわ」
「いいじゃん、面白いよ」
「だめでもともと、やるだけやってみます」
「不可能なことでも可能にしてきたよな、俺達」
「魅録ちゃん、愛してる〜」
「悠理!計画を考えたのは僕ですよ」
「清四郎ちゃん、愛してる〜」
「お前な〜」
「だから嫌だったのよ、悠理をよぶのは」
「こんな奴と今までダチやってたのかと思うと
情けなくなるよな」
「な、なんだよ、その言い方」
「にしても中々埋まんないもんだな、オイ」
「そりゃあね、すぐには埋まりませんよ」
「・・・お前、ずいぶん涼しい顔してんのな」
「日頃の訓練の賜物です」
「きゃーっ、私の肌に吹き出物が!」
「腹減った〜」
「嬢ちゃん、ワタシまた腕ふるたよ。たんと食べるのよろし!」
「わあい、九江だあ」
「あぼ〜ん」
「な、何すんだよ、清四郎!」
「喰うと胃に血が集まって眠くなる」
「鬼!」
「清四郎!私今日頭痛がしますの。病院に行ってきますわ」
「野梨子が自主的にさぼりですか」
「も、もうだめ〜」
んでは、行き松。
10万ヒット企画面白そうだーーーーっっ。
それではワシも。
ん、、と、誰も同意してくれないかもだけど、
タトゥの髪短い方、私の悠理のイメージにぴったりだあああ!
漏れは「スウィートノーヴェンバー」のシャリーズセロンが悠理ってイメージある。
共演のキアヌは清四郎ってイメージだ
>843-844
おもしろかったでつ!
祭りに行ったら、魅録の髪型をした金髪の兄ちゃんが太鼓を叩いていた。
そして、その向かい側で女の人が胸にさらし巻いて兄ちゃんと同じ太鼓を一緒に叩いてた。
魅悠スキーな漏れは思わず脳内変換してポワーンと見とれてますた。
うわ、それいいー
魅録+和太鼓萌え〜
うめに来ました
どのぐらいリクでるのかな
ひとりでいくつもリクしたいぐらいだよ(藁
今から嵐さんのサイトへ行って、誰になにをリクするか決めてきます
うめ
うめうめ
うめうめうめ
うめ〜
やばい。リクしたい話があとからあとから湧いてくる。
ひじょーに、やばい。
>855
漏れも。誰にどの妄想をリクしようかヒジョーに悩む
結構リク出てきたね。
中には私とケコーンのもあるのだが…まだ妄想リク悩むよう(´Д`;)
ああ、早くしないとカウンターが……!!
もう10個近くリクきてまつよ!
ぜーんぶ叶えられたらイイノニw
清四郎、悠理、魅録でネオ、トリニティ、モーフィアスのマトリックス見たい。。
モーフィアスが着てるスーツ&ネクタイ&日本刀(ORマシンガン)の魅録、萌え〜!
リアルで清四郎そっくりの髪型の人を見てしまった・・・
セブンイレブンの制服・・・しかも色黒・・・顔はイヤーヤメテクレだった・・・
欝だ・・・
いるんだそんな人(藁
うpしる
リクエストです。
男山vsタマ&フクで
キャッツ&ドッグスを!
果たして世界はどちらの肉球に!?
……ハイ、ただの冗談です(藁
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
う〜、ゴットスレの続きが見つからない……
dat落ちしたのだろーか?誰かヒントをください。
>866
dat落ちはしてないよ。
なんでだろう?
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ