またSSは隔離されるんですね…。
迫害の歴史は変わらないのか。
スレ立て乙です
>>2 見限ればいいじゃん。まともなSS書きもまともな絵師もほとんど外部に居るだろ。そういう事だ。何を期待してんだ?
6 :
チリチリおにこ:2012/10/17(水) 21:23:28.95 ID:Yme6J3bG
>>1乙! これで安心して続きを投下できる。アリガタイ! そんな訳で「チリチリおにこ」続きを投下しますっ
────────────────────────────────────────────────────
◇ ◇ ◇
結界の向こうは今までと大して変わらない光景が広がっていた。溶岩の流れや赤熱した岩の光に照らし出され、
ぼんやりと浮き上がるごつごつとした岩々。
相変わらずな地獄のような景色を見回しながら、嘘月鬼はたずねた。
「……で、そのでけー式鬼はドコにいやがんだ?話からすっと結界の真ン中にいンだろーがよ」
だが、嘘月鬼の気楽な様子に反して紅葉の様子がおかしかった。今までにない緊張感を漂わせている。
「なんて……なんて事っ、これは……っ!」
今までの冷静な様子とは打って変わって尋常ではない雰囲気だ。
そして、やにわにヘルメットのバイザーを慌ただしく操作しだした──
◇ ◇ ◇
紅葉は結界を抜けた途端、背筋を走り抜けるおぞけ……いや戦慄を感じた。
空間を満たす気配が尋常ではなかったからだ。この空間に居座る敵の強大さが肌で感じられた。
──これはレベルBどころの強さではない!──
気の迷いかと念のためバイザーを操作し、呪力濃度を測定する──
──間違いない。尋常ではない呪力と障気だ。最低でもレベルA、下手するとそれ以上の難敵だ。
自分一人ではいかようにもなる。が、ただでさえ苦戦する相手に足手まといまで引き連れている状態で挑むのは
自滅行為だ。
紅葉の決断は早かった。手元の自在符に結界から脱出するための手形データを転送し、脱出用の結界手形に
変更させる。これでこの符を持てば結界を抜け出せるはずだ。
「……状況が変わったわ。アナタ達は今すぐここから脱出なさい」
「あン?いってぇ、どういう事だ?」
浮月鬼が状況が読めないとばかりに聞き返してきた。
「事前情報が間違ってたわ。敵の強さが想定外よ。あなた達には荷が重い」
このコ達には追跡符の仕込んだ財布を渡してある。今も持っているはずだ。この前のように追跡して
合流するのは難しくない。
「とりあえず、私は忍務を済ませてくる。アナタ達は帰って休みなさい」
そう言うと、データを変更して手形にした自在符を浮月鬼に投げて渡す。岩の式鬼は投げてよこされた自在符を
いつものように器用に尻尾でキャッチした。
「その自在符を使えばこの結界から脱出できるはずよ」
「そらあ、オレっちらはそれでいーけどよ。姉ぇちゃんはどーすンだ?予想よか、厄介なヤツなンだろ?」
「……私一人くらいどうとでもなるわ。そんな事より、アナタこそ、その子をしっかり守りなさい」
「あ、あぁ」
おにこはキョトンとした顔で紅葉と嘘月鬼のやりとりを見守っている。
「へっ、オレっちの逃げ足は姉ちゃんも知ってンだろ。ソの心配は無用さ」
「……そう、なら行きなさい──」
紅葉は二人に背を向て、瞬動術で飛び出した──
◇ ◇ ◇
──紅葉は崖の上から結界の中央に居座る式鬼の繭を見下ろしていた。周囲は切り立った崖で囲われている。
眼下は無数に流れる溶岩流があった。アチコチに地面が顔を覗かせているものの、崖の下の地面は煮えたった溶岩が
幾重モノすじとなって常にドロドロと流動している。
その中央に孤島のような溶岩の切れ目があり、そこに5メートルはあろうかという巨大な繭が鎮座している。
その繭は周囲の溶岩に根を張るように触手を伸ばしていて、まるで溶岩から栄養を得ているようだ。
そして繭自身は鼓動するように蠢動を繰り返していた。半透明の薄い膜の向こう側では式鬼の本体が蠢いている。
羽化は間近のようだ。
7 :
チリチリおにこ:2012/10/17(水) 21:24:37.18 ID:Yme6J3bG
「──あれね。あれさえ潰せば脱出の道は開ける──」
これだけの質量の式鬼は消滅の際には膨大な『気』を放出する。式鬼を駆動するのに使われてた『気』が暴走して
外部に放出されるのだ。
その『気』を束ね直し結界の要にぶつける事で結界を破れる。
その仕込みは既に済ませていて、式鬼を処理した瞬間にコマンド印を結ぶ事で結界破りは機能を発揮する。
かつて、彼女が何度も忍務で行った手口だ。もっとも、この式鬼を封じ込める為の結界だ、これだけ大規模な結界、
この式鬼を処理すれば遠からず自動解除されるだろうが、必ずそうなるとも限らない。念には念を入れて、だ。
自在符をおにこ達に渡してしまったため、紅葉にはそれ以外、脱出する術がないが、いつものことだ。
繭の周囲には『眷属』だろう。羽虫のような怪物が繭を囲むように地面に止まって羽を休めている。
あの『眷属』を刀の「贄」にすれば、本体を簡単に処理できるだろうか。奇襲には最適な距離まで近づけば──
その時だ──
「あった!もみじだ〜〜」
唐突に頭上から明るい声が響きわたった。途端、『眷属』たちが外敵を察したのか一斉に飛び立った。
「! あなたたち!帰りなさいと言ったでしょう。ここで何をしてるの!」
いきなり頭ごなしに怒鳴りつけられたおにこがビクッと怯えた。
「ふぇ……」
その途端、明るい笑顔が曇り、一転、つぶらな瞳に涙がみるみる溜まっていく。
「やいやいやい、まちゃがれ、そいツぁ幾ら何ンでも不条理だ。不手際はそっちにあンだかンよ」
おにこに代わって、おにこを頭に乗せている嘘月鬼が抗議をした。
「……なんですって?」
怪訝そうに尋ね返す紅葉に嘘月鬼はまくし立てる。
「あぁ、そうさ。ねぇちゃんのフダが効果なかったンだよ。このまんまじゃ、結界を抜ける事ができネってんで、
ねーちゃんを捜しにきたっつー寸法よ」
そういって、今まで尻尾に持っていた自在符を紅葉に向けて叩きつけるように投げて寄越した。
紅葉は右手でキャッチして、自在符のディスプレイを確認する。
『認証不可──通行は認められません』の表示が目に入った。嘘月鬼の言うとおり、結界を抜けられなかったらしい。
自在符に転送するデータを間違えたか?だが、今回の忍務データにもうこれ以外のデータはないはずだ。
だが、話はここで途絶えた。『眷属』達が襲いかかってきたのだ──
『眷属』達は半透明な羽根を持ち、不快な音で空気を振動させながら、腹から幾つもの鋭い針を伸ばし突撃してきた。
だが、この程度なら紅葉の敵ではない。紅葉は難なく回避する。だが問題はおにこ達だ。
弱いとみて、おにこ達に式鬼は殺到した。
「おにこ!早く『変化』してっ!」
紅葉は『呪縛』のクナイで式鬼を次々打ち落としながら指示を飛ばす。
嘘月鬼はおにこを頭に乗せたまま、囲まれないよう、必死に逃げまどっている。
おにこは、べそをかく直前だったが、紅葉の指示に一転、表情を引き締めると目を閉じ集中した。ほんの数瞬後、
まぶたを上げると開いた瞳は赤く紅潮し、おにこの着物の裾からは赤い紅葉が散り始めた。変化した証だ。
どんな状態でも変化できるようになったのも何度も繰り返し訓練した賜物だろう。
「もえちれ!」
不安定な嘘月鬼の上に立ち、ナギナタをブン回す。危なげなく振り回された得物は一鬼、また一鬼と、羽虫のような
式鬼は次々と撃退していく。
おにこ達が危なげなくなってきたのを確認すると紅葉も叩き落とした眷属にとどめを刺しにかかった──
8 :
チリチリおにこ:2012/10/17(水) 21:25:21.40 ID:Yme6J3bG
◇ ◇ ◇
三人が動きを止めたのは空に舞う眷属がいなくなってからだ。
「──さて、とりあえず、当初は凌げたわね。まだ次があるわ。いい、まだ変化を解いては駄目よ」
おにこに釘を刺して、紅葉はマグマ溜まりの中央に鎮座している親玉の繭を観察した。
子分──分身というべきか──が滅されたのを察したのか、表面に白くて大きい「あぶく」のようなものが
幾つも浮き上がっている。『眷属』の卵だろう。
成長してから生み出される『眷属』は先ほどのよりも手強くなっているはずだ。さらに言うと本体自身もいつ
『羽化』するかわからない状況だ。早くおにこ達をこの結界内から退避させなければ。
(全く、あのいいかげんな男、転送する脱出データを間違えるなんて)
そういった事はよくあるので、あのいいかげんなエージェントの手違いだと思ったのだが──
「……本部、応答せよ」
紅葉は本部を呼び出す。
「──なんだい?」
応答はすぐあった。紅葉は少し苛ついた声でデータの転送を要請する。
「手形データのエラーよ。もう一度脱出用データを転送して頂戴。あの手形データでは結界を離脱できなかった」
彼の不備は毎度の事だ。再度正しいデータを送ってもらい、再度手形を作れば問題ない。そう考えていたが……
「あ、ダメダメ。データ転送はできないね。やっと君が逃げ出したいほどの相手が出てきたんだもん。
そのまま死んで頂戴な」
「…………何?」
あまりに軽く言われたため、一瞬何を言われたのか分からなかった。
「いやあ、紅葉ちゃんもなかなか悪いコだねぇ。機密の持ち逃げだって?デッカイ賞金がかかっているよん。
このまま死んでくれると、ボクちんもーかっちゃってウハウハなんだ。あ、モチロン、例の『機密』とやらを
残しててくれると助かるナ〜後で回収して、それを取引先に高く売りつけられるからさ〜」
いつもの軽薄な調子で軽快に裏切りを告白してくる。
「……」
「いやぁ、いちお、ウチの稼ぎ頭だったからさ。そーそー紅葉ちゃんを向こうの企業に売るのはどーかな〜
……って思ってたんだけどサ。最近、ホントご無沙汰じゃん、オシゴトとか色々。あ、これはもーダメかな〜〜ってネ。
だからサ、悪く思わないでね!こっちもビジネスなんだからさっ、君の尊い犠牲はムダにしないで有意義に稼がせて
貰うからさっ!そこで死んでネ!」
軽薄とも言える軽やかさが今では不気味だった。この男は今までもこうやって、仕事仲間を裏切ってきたのだろうか。
「……そう、最初から分かってたのね」
紅葉は内心舌打ちしたい気分だった。この、のらりくらりした男の表面にいいように騙されていたとは……
不覚以外の何者でもない。こうも勘が鈍っていたとは。
「今まではイイ稼ぎ手だったし、無理めの依頼もいっぱいお願いしてきたけどね〜紅葉ちゃん、へーきで突破
しちゃうんだもん。
でも、最近陰ってきたようだし、そろそろ潮時かな〜ってさ。ま、隠すのも限界っぽかったから、露見する前に
売り込んだ方がお客さんとの今後のお付き合いにも有利だからねっ。だから、紅葉ちゃんも最後のおシゴトせーぜー
ガンバってね〜。あ、そうだ。最後に何か言う事とかある?」
最後まで飄々とした様子で聞いてくる。その様子だけ聞けばいつもの仕事の通信と変わりがない。
「……そう。せいぜい高い賞金を貰う事ね。お金を数え終わったら振り向いてご覧なさい──そこに私がいるわ」
そう言い捨てるとヘルメットを脱ぎ、内蔵されている通信機をクナイで破壊した。
自分以外信用しない生き方をしてきたのだ。この程度の裏切りなど、珍しいことではない。自分一人の事ならば
いかようにもなる。が、問題は今、自分一人ではない事だ。
9 :
チリチリおにこ:2012/10/17(水) 21:26:00.03 ID:Yme6J3bG
紅葉は自分の突発的な行動で目を丸くしている二人の鬼を横目で見た。状況は最悪だ。厄介な敵に足手まとい。
未熟な生徒は自分の身は守れるかもしれないが、この戦場で生き残ることは困難かもしれない。
──自分の見通しの甘さでこのコ達が巻き添えにされるかもしれない──今まで経験したことのない慄きが全身を
かけ巡った。冗談ではない。そんな結末、受け入れられるものか。まがりなりにも自分が教えを説いたこのコを
みすみす死なせることなどできるものか。たった今、向こうとは切れたばかりだ。なら、思うようにさせて貰う。
通信機能の死んだヘルメットを再びかぶり直し、二人に向きなおる。
「状況が変わったわ。あなた達にも手伝って貰うことになる」
紅葉は今までにない気迫をにじませ静かに呟いた。
10 :
チリチリおにこ:2012/10/17(水) 21:32:13.95 ID:Yme6J3bG
という訳で、「チリチリおにこ」第13話
>>6-9を投下したっ
【専門用語解説】
屍体回収業者:したいかいしゅうぎょうしゃ
リサイクル業の一環。名の通り、死体を回収し、再利用できるように処理する業者。
『死者』の中には、生前、悪霊に身体を憑依されるのを嫌って「聖別」したり「対悪鬼術式」等を身体に埋め込んで
いたりする為、処理の大半を人力で行う事も多い。
術者が簡易式鬼を呼び出し処理を行うが、屍体に触れ、式鬼が消滅すると、その屍体は「聖別」化されているので、
後の処理は人力でしか行えない。
そういった事情で、不法投棄された遺体に関しては式鬼で回収を行う訳にもいかず、仮に出したとしても回収率は低い。
回収された遺体はニーズに合わせて処理され、各臓器は培養層にストックされる。骨組みや筋肉等も式鬼のヨリシロの
材料として利用され、脳組織も『呪言補助プロセッサ』として、フォーマットされ保存される。
特に心臓に関しては人格が残留している可能性が高いため、特に綿密に処理される。
【専門用語解説】2
防霊処置:ぼうれいしょち
基本的な建築物の殆どにこの処理が施されている。霊的な非実体存在が通り抜けられないよう処理されたモノ。
ただし、完全ではない。完全を求めるなら、さらに厳重に処置が必要である為、値段も相応にかかるようになってくる。
高レベルの式鬼程、こういうものをすり抜ける事に長けている為、政府高官などは乗り物や建物には信じられない程
、
防霊処置に金をかけている。
───────────────────────────────────────────────
今確認したら、ゼンブで15話なので、残すところあと2話だっ!
乙で〜す。
現状がヤゴなら羽化後は蜻蛉かな〜なんて想像をしつつ、メリーさん化した紅葉女史に八つ裂きとされる裏切り者の末路も気になる所であります。
嘘月鬼いいキャラだな。
これは映像化するしかありません。面白すぎる
ところで前スレは容量埋まってます?埋まって無いなら埋めちゃいます?それとも埋めないでチリチリ完結辺りまで放置します?
15 :
チリチリおにこ:2012/10/18(木) 20:25:52.78 ID:NtFib3VU
という訳で「チリチリおにこ」
>>6-9の続きを投下しまスっ
────────────────────────────────────────────────────
◇ ◇ ◇
「──んで、紅葉のねーちゃん。今ンところはあのデカブツをブッ倒すしかここを脱けだす手段がネってか」
嘘月鬼は今聞いた話を確認した。
溶岩溜まりの中央に鎮座している巨大な繭。それはだんだん羽化の蠢動を早め、表面に浮きでた無数の卵にも
ヒビが入りはじめている。どちらも間をおかず、生まれ出て襲いかかってくるだろう。
「やることがシンプルでしょ?気張りなさい」
紅葉は素っ気なく返した。
おにこは嘘月鬼の上に座りながらもやや緊張した面もちでナギナタを握りしめている。
ドクン ドクン ドクン……
繭の胎動が伝わってくる。大気が鳴動し、恐ろしい存在が生まれ出ようとしていた。
紅葉は生まれようとしている式鬼に目を見据えたまま、背後にいるおにこ達に指示を出す。
「とにかく、あなた達は寄ってくる雑魚から身を守る事に専念なさい。余計な事にわずらわされなければ、
私はアイツに専念できる。返事は?」
「あい!」
おにこがナギナタを掲げ、元気よく返事する。
「わぁってら。ヤベー奴に自分から関わったりゃしねーよ」
続いて嘘月鬼も返事する。
「……そろそろ来るわよ。気をつけなさい」
紅葉はヘッドマウントディスプレイを下ろし、戦闘に備えた。
どくん どくん どくん!
繭に亀裂が入る。表面を割り、ずるりと長大な腕が伸び、灼熱の地面をつかむ。
抜け出るように上体が半透明な膜から出てきて頭を持ち上げた。
オォオォオォオォオォオオォオオオオオオ〜〜ン
獣のような声で咆哮し、昆虫のような頭部の魔物が生まれた。頭から胸にかけては黒光りする甲殻に覆われている。
昆虫を模した頭部は凶悪な面構えに加え、口からは時々チロチロと火が漏れ出ている。甲殻の下から伸びている
足は剛毛の生えた腕でそれぞれ凶悪な鉤爪がついていた。そして足の付け根からは鋭い棘が無数についた腹部が
伸びていた。
六本の腕を足のように使い、おぞましい昆虫とも獣ともつかない巨体が這いだした。全体的なシルエットはヤゴに
類似しているが、こんな生物は地球上のどこにもいないだろう。
同時に繭についていた卵もポロポロと地面に落ち、割れた。中から先ほどの眷属よりも一回り大きく、そして堅そうな
甲殻に鎧われた蟲の化け物が生まれた。シルエットだけ見れば蜻蛉のようだが、凶悪な針と牙を備えている。
前の眷属より手強そうだ。眷属達は卵から孵ると同時に羽ばたき、宙を舞い始めた。無数の羽ばたき音が
響きわたり、周囲は不快なノイズで満ちた。
紅葉は崖から飛び降り、灼熱の地面に着地すると同時に繭に向けて疾走する。瞬動術は使わない。一つはおにこ達に
向かう敵を減らす為、もう一つは贄を少しでも多くひと所に集める為だ。
紅葉の動きに刺激され、新たに生まれた眷属達は紅葉に向け殺到した。
だが紅葉は怯まない。走りながら得物に手を伸ばす。眷属達は五月蝿いくらいにノイズをまき散らしながら
紅葉の頭上に飛び寄ってきた。そして、唐突に尻尾から、鋭い針を飛ばした。
「!」
紅葉は咄嗟にかわす。無数の棘がカカカッと乾いた音をさせ、灼けた地面に刺さり、穴を穿った。
眷属達はその凶悪な飛針を次々と放つが紅葉はそのことごとくをかわし、弾き、受け流した。
「よぉっし、いいぞーぶっちめっチまえ〜」
「もみじがんばれーーーっ」
後方で紅葉を応援する声が飛ぶ。
16 :
チリチリおにこ:2012/10/18(木) 20:27:03.76 ID:NtFib3VU
「簡単に言ってくれるわね……」
紅葉はそう呟くと、手近な眷属に向け跳躍し、刀を繰り出した。
が、しかし……
ギンッ!!
「?! なにっ!」
眷属の甲殻は紅葉の攻撃を弾き返した。ビリビリと手が痺れ、一瞬刀を取り落としそうになる。
「もみじあぶないっ!!」
後方でおにこが警告する。
「!」
膨大な『炎の気』が前方で膨れ上がるのを感じた。紅葉は咄嗟に目の前の眷属を足がかりに瞬動術で宙を跳ねた。
途端、今居た空間を長大な炎の帯が通り過ぎていった。親玉……いや、『本体』の式鬼の火炎攻撃だ。
予想どおり、強烈な火炎を吐けるらしい。足がかりにされた眷属は逃げ損なって一瞬で焼き尽くされた。
「もみじーーっ!」
おにこの悲鳴が響く。一瞬の事だったので、おにこには紅葉が炎に包まれたように見えたのだろう。だが……
「その程度?」
紅葉はそう呟くと、再び手近な眷属へと跳びかかる。そして、次の瞬間、眷属を蹴り落とし、地面に叩きつけていた。
ピギィィィィィッ!!!
地面に叩きつけられた眷属は裏がえり、のたうち回っている。『気』で強化された蹴りを受けた上、固い地面に
打ち付けられ、甲殻にヒビが入っていた。そこにすかさず、刀を叩き込んで、とどめを刺した。
眷属はまるで絡みついたいとがほどけるように分解され、無に還った。すると、刀が偽りの命を吸い、不穏な気配を
刀身に揺らめかせた。命を吸った妖刀は斬れば斬るほど切れ味を発揮する。
「本番はこれからよ……っ!」
ザンッ!
ザンッ!
ザザンッ!
紅葉は次々と飛来する飛針をかいくぐって空を跳び、立て続けに三匹の眷属を硬い甲殻ごと斬りはらった。
そのたびに刀の斬れ味は冴え渡り、屠る手応えは軽くなっていく。
眷属を四匹屠った後、本命の式鬼に攻撃を加えようと分身である眷属どもに背を向けて走りだした。
一瞬、目標を見失った眷属どもがあわてて、紅葉を追いはじめる。本体である巨大な式鬼は六つの腕で身体を固定し、
向かってくる紅葉にむけ、灼熱の炎を吐いた。
太い柱のような炎が圧倒的な圧力と熱をもって紅葉に襲いかかる。
だが、紅葉は易々とその炎をかわした。威力は目を見張るほどだが、当たらなければ無意味だ。
次に、式鬼は接近する紅葉を押しつぶそうと前足の一つを振り上げ、地面に叩きつけた。巨大な鉤爪が、頭上から迫る。
だが紅葉は横っ飛びに飛びのき、かわすと、逆にその前足を斬り飛ばした。
ザンッ
甲殻に覆われてない前足はアッサリと妖刀に切断された。
おおぉおぉおぉおぉぉぉぉぉぉおお〜〜〜〜〜っ!
前足を斬り飛ばされた式鬼が咆哮する。六つある足のうち、一つが失われた。
ついでにもう一太刀、胴体にも斬りつける。
ギィィンッ
刀は弾かれた。この程度の『贄』ではこの甲殻を斬り裂けないらしい。なら、別の所を切り裂けばいい。
足りないなら『贄』を追加すればいい。手はいくらでもある。
次の瞬間、再び二つの腕が両側から挟み込むように紅葉を襲った。
が、紅葉は残像を残し、上方に瞬動。腕は互い違いにすれ違うようにして空を掴んだ。紅葉はすかさず『気』で
強化した脚力で空を蹴り、急降下。その勢いのまま、交差した腕を両方とも斬り飛ばした。
またも空気を震わせ、昆虫の頭部をもった獣が絶叫する。
一際大きな叫びに周囲の空気が振動し、地面が鳴動した。
17 :
チリチリおにこ:2012/10/18(木) 20:27:46.85 ID:NtFib3VU
残りの腕は三本。だが、その身体を支えるのに最低でも二本の腕を使うことを考えれば、実際の攻撃に使える腕は
あと一本。
「いける!」
そう思った時だった。おにこの悲鳴が聞こえたのは
「ぴゃぁあっ?!」
「おにこっ?!」
一瞬だけ、紅葉の注意が敵の式鬼からそれた。その一瞬が致命的だった──
その一瞬の間隙をぬい、横なぎに払われた太い一本の腕が強烈な膂力をもって紅葉を張り飛ばした──
◇ ◇ ◇
「おにこアブねぇっ!!」
いきなし、一匹の雑魚がおにこに向かって毒針を飛ばしてきやがった。
「ぴゃぁあっ?!!」
おにこのヤツぁ、びっくりしながらもなンとか毒針をナギナタで弾き返した。
「ちぇいっ!」
次の瞬間には跳躍し、なンとか雑魚を返り討ちにすることができた。あっブねっ!!
あのねーちゃンとの稽古はオレっちの頭上でも有効らしい。腕を上げてやがる。てーしたもンだ。跳びあがって
雑魚を迎撃したおにこの下にオレっちはまわりこんでアタマでおにこを受け止めた。
おにこは器用にオレっちのアタマに着地する。
「!っ もみじっ!」
と、唐突に焦った声で、おにこが叫ンだ。なンだ、急に?いってー何がおこった?
だが、オレっちは振り向いて様子を確認する必要はなかった。すぐそばをスッゲー勢いで張っ飛ばされた紅葉の
ねーちゃんがスッ飛んでいったからだ。
ちぃっ!!あにやってンだ。あのねーちゃん!
そして、紅葉のねーちゃんは背後の崖に叩きつけられ、落下しそこなって、かろうじて崖にひっかかった。
そンはるか下はドロドロとした溶岩が河となって流れてやがる。崖の端っこから石ころが転がり落ちて溶岩の中に
ダポン、ダポンと落ちてった。
くそっあのねーちゃんが脱出の鍵だってのに、なんてこった!あにいきなりヤられそーになってんだよっ!
「うっちゃん!いって!」
おにこが珍しくせっぱ詰まった声でオレっちに言った。だが、そいつぁ聞けねぇ相談だ。
戦闘中に紅葉のことを察知できたおにこも大ぇしたもンだが、オレっちも、負けてねぇ。敵の不穏な気配を
察知していた。
「バカっ!そっちよか、あっちを気にしやがれっ!見ろ!炎が来ンぞっ!」
身体ごとまわって、おにこの視線をあのバカでっけぇ式鬼に向けさせた。
ソイツは、最初ン時みてぇに、口を開いて、紅葉のねーちゃんに向かってでっけぇ火柱を吐こうとしている所だった。
残り三本の腕で身体を固定してっから、全力で攻撃をするツモリなンだろう。
ヤベェぞ、紅葉のねーちゃんがアレをまともに食らったら、消し炭も残らねー。
「!!っ うっちゃん!」
おにこも同じように察したらしい。焦った声で叫んだ。
「わぁってらぁっ!おにこ!その辺の雑魚をあいつにぶつけて気ぃ引け!」
オレっちはそう叫び返すと、一番近くの雑魚に突進した。オレっちの飛行速度はそう速くねぇ。あの火炎を
邪魔する事ができるとしたらそンくれぇしか方法がねンだ。
「ちぇぇぇええええぁぁああああーーーーーっ!!」
ガンッ
おにこが目いっぱい、ナギナタの背で空中を飛行している雑魚を殴り飛ばした。張り飛ばされた雑魚は装甲を
ヘコませながら、ピギィィッッつって吹っ飛び、ヤツの複眼あたりに叩きつけられた。ちっこいとはいえ、さすがは
鬼の馬鹿力。
18 :
チリチリおにこ:2012/10/18(木) 20:28:27.08 ID:NtFib3VU
ゴゥッ────
次の瞬間、ヤツぁスッゲェ火柱を口から吐きやがった。だが、ヤッパ、さっきのが利いたらしい。わずかに狙いが
それ、火の柱ぁ、紅葉のねーちゃんをハズレて遠くの崖にぶち当たり、空しく四散しやがった。
へへ。ざまぁみろってんだ。
紅葉のねーちゃんが先に腕を切り飛ばしてたのも結果としちゃぁよかったらしい。衝撃を支え切れずに軌道が
ブレやがった。
──けど、今ので間違いなく目ぇつけられちまったよーだ。デカブツの複眼がこっちをニラみ、他の雑魚どもが
改めてオレっちらを囲むように飛び回りだした。
……しょーがねぇ。紅葉のねーちゃんがあーなっちまった以上、オレっちらがヤるしかねぇのか。
「おにこよぉ」
オレっちは頭上のおにこに声をかけた。
「あい」
「このままだと紅葉のねーちゃんはヤラれちまう」
「あい」
おにこは静かに返事をする。
「そしたら、こっから逃げる手段がなくなっちまう。そうなりゃオレっちらだっておしめーだ。だからよ……」
「あい」
「オレっちらであのデカブツ、ブッちめちまおうぜ!」
「あい!!」
おにこの返事は力強かった。おし、いい返事だ。
「よっしゃ!行くゼ!」
不本意だが、コレしか手がねぇなら、ヤルしかねぇっ!オレっちはおにこがしっかりツノに掴まっているのを
確認すっと、デカブツに向け一番の速度で飛びだした。
◇ ◇ ◇
「…………」
──私はブラックアウトした視界が徐々に戻りつつあったのを自覚したが、気を失っていたのが一瞬の事なのか
数時間後なのか判別がつかなかった。
「がっ……はっ……」
どこかで荒い呼吸を繰り返す息が聞こえる。『気』で強化していたはずの手足もロクに力が入らず、なにもかも
朦朧として、萎えた腕で必死に身体を支えている。
時間の経過とともに徐々に意識レベルが回復してゆく……そう……私は紅葉……現在……戦闘中で……
戦闘中!!そこまで考えて急に意識が覚醒した。
「ぐ……なんて事」
ビキリと身体が軋む。現状に対する状況を把握してゆくにつれ、だんだんと絶望的な状態に陥っていた事を
思い出した。
まさか最後の最後にあのコの声で動揺するなんて。
現状は最悪だ。周囲を確認すると私は溶岩の河の上の崖に辛うじて上半身が引っかかる形で九死に一生を得ていた。
身体を支えてる肘に押されて小石が崖から転げ落ちる。小石は遙か下を流れている溶岩流に飲み込まれて瞬く間に
消えていった。
身体を引き上げようにも、手足に力が入らず、萎えたままで、落ちないようにするのが精一杯だ。呼吸一つするのにも
全身に痛みが走る。あれだけの力で張り飛ばされたのだ。『気』で身体を強化していなければ即死だったかもしれない。
だが、その『気』も意識が途切れ、呼吸が乱れた今、消え失せた。ダメージのある身体では『気』を練るのも
かなり難しい。
「……なら、なぜ、私は今も生きてる?」
数秒もかからず、現状と自己の状態を確認して最初に浮かんだ疑問だった。
とどめを刺すには絶好の状態だ。敵がこれを見逃すとは考え辛い。辛うじて動く身体を捻り、頭をめぐらせて敵の方を
振り返った。
すると、目に飛び込んできたのはあのコの奮闘する姿だった。
あの浮月鬼の頭上で、時にはそこから跳び上がり、ナギナタを打ちはらっては次々と眷属を斬ってゆく。
19 :
チリチリおにこ:2012/10/18(木) 20:29:07.82 ID:NtFib3VU
その動きは拙いながらも、まるで私の動きを真似たようだ。確かに戦闘訓練の時、教え込んだ足捌きだが、
浮月鬼の協力があるとはいえ、それをまさか空中で再現されるとは思わなかった。
考えてたより、あのコの上達は目覚ましかった。この極限の戦闘状態が彼女の才能を覚醒させたのだろう。
「ちぇあっ!たあっ!」
ナギナタの一振り一振りごとに、着実に眷属どもは打ち落とされてゆく。
眷属達の打ち出す飛針もことごとく跳んで、あるいは弾いてかわしていた。
この非常時にもかかわらず、紅葉は考えずにはいられなかった。
このコの先を見てみたい、鍛えれば私を越えるかもしれない……
が、そこまで考えて、その考えを打ち消した。鍛えれば何だというのか。あのコは正式な弟子ではないし、
私は追われる身だ。今も我が身の不始末であのコを巻き込んだような状況なのに。
その上、あのコの声でこんな簡単に動揺するなんて……陰謀にはめられたり、連続してあの小癪な式鬼に後れを
とったりと、最近はケチの付き通しだ。
「私もヤキがまわったかしら……」
自嘲気味に考える。己の身一つなら何とかなると強がっていたが、この体たらくだ。私はこれ以上、あのコと一緒に
いない方がいいのかもしれない。
最初はあのコの中に鬼子の影をみていたが、この成長で鬼子とあのコは違うのだろうと結論に至った。
ならば、私のような闇に生きる者はあのコの前からは消えるべきなのだ。でなければ、いずれあのコも闇に喰い殺される
ことになる……さっきまで考えていた事と全く逆の結論に及んでいた。
それにあのコはこの先、もう十分、生きていけそうだ。あのコを胡散臭い式鬼にまかせるのは若干不満が残るが──
そう考えるうち、彼女の奮闘も佳境に入った。ほとんどの眷属が切り払われ、残るはあの巨大な式鬼だけとなっていた。
だが、その式鬼は迎え撃つように口の中に強力な火炎をため込んでいる。
いけない!あれでは式鬼の方が少しだけ早い!!
無謀にも式鬼が火柱を吐く前に倒そうというのか、おにこはナギナタを構え、そのまま浮月鬼とともに、
突進していった。このままだと、あのコはチリも残さず燃え尽きてしまうだろう。そうはさせない。
「助けるのはこれが最後よ……」
そう呟くと、私は崖を蹴り、ありったけの『呪縛クナイ』を取り出すと、そのすべてを式鬼に対して投げつける。
結果、式鬼の動きは一瞬だけ『呪縛』され、止った。そして支えを失った私の身体は崖から落下していった──
20 :
チリチリおにこ:2012/10/18(木) 20:34:26.39 ID:NtFib3VU
という訳で「チリチリおにこ」第14話
>>15-19を投下したっ
【専門用語解説】
紅葉の妖刀/おにこの薙刀:もみじのようとう/おにこのなぎなた
妖刀自体はこの世界にはいくつも存在し、とりたてて珍しいものではない。実際、血を吸うと切れ味が増す妖刀は
もみじのもの以外にも多数存在する。
が、紅葉の妖刀はある特性により、企業の極秘プロジェクトにかかわっており、そのプロジェクトは一度動き出すと
大多数の一般人を無為に巻き込む非道なものだった。
紅葉はそのプロジェクトを阻止する為、その妖刀を持ち逃げしたのだ。
武器としての性能は血を吸う事で上昇する威力に上限がないのではと思われる程のキャパシイと、いかなる物理的手段を
もってしても破壊できないほどの堅固さが特徴。
そのため下手に封印することもできず、破壊する手段を模索している最中である。
一方、おにこのナギナタはかつての「プロジェクトOniko」の残骸である。ナギナタ単体では「岩を切れる業物」以上の
特徴はなく、ガラクタ程度ならともかく、本来なら巨大式鬼どころか初期の『眷属』の甲殻さえ斬ることはできない。
作中、一撃で巨大式鬼を下しているのは「鬼に対する一撃死」の性質によるものである。
その性質は「ひのもと鬼子」の属性に由来するものであり、それは「鬼子」が「ナギナタを持つ」ことにより
発揮される特殊能力──妖力──である。
そういう意味で言えば、チリチリも鬼子と言える。また、登場する敵のほとんどが式鬼であるこの世界では、ほぼ無敵の威力をもつ。
─────────────────────────────────────────────────────
>>11-13 感想どうも。励みになりまス。
>>11 ヤゴで生まれて暫く暴れたあと、蜻蛉になる生態なのかもっ その前に軍隊出てきて退治されるだろうけどっ
>>14 残り書き込めるのはたった3KBで、そんだけ書きこむとオチるんじゃなかったか……あと1話でこのシリーズ終了なので
どうしたものか……暫くは閲覧できるようにして欲しいなーというのが個人的な気分。
乙です。
個人的な妄想としては、もう少し苦戦して嘘月鬼も若干犠牲になって、回復まで三日月状態とかも有りかなぁ、とか。
最低限panneau ◆zhBLFACeVoさんがhtml化前にデータ吸い上げなされるまで放置、な感じで大丈夫そうですかね。
まとめられた状態にして下さったならば、誰でも何時でも見れるでしょうし。お客様な私は、投下や編集をなされる皆様に頭が上がりません。
板全体の容量的には大丈夫なのかな?終盤スレの突然落ちは確かレス数980代超えた時に1日以上放置…だったはず。容量落ちは関係ない…はず。
22 :
チリチリおにこ:2012/10/19(金) 20:41:43.91 ID:vnB6Hmh6
それでは、「チリチリおにこ」最終話
>>15-19の続きを投下しまス。
────────────────────────────────────────────────────
◇ ◇ ◇
今にも火を吐こうとしていたデカブツの動きが一瞬とまったよーに見えた。いざとなったらアチぃの覚悟で
オレっちが身を盾にしておにこを火炎から守ってやろうかと思っていたが、こりゃぁチャンスだ。
「よっしゃっ!今だ!おにこ!いっちめぇ!!」
オレっちはおもいっきり、おにこをすっ飛ばした。
「たぁぁぁぁぁああああああああっーーーー!!!」
気合い一閃!!
デカブツは頭のてっぺんから下まで真っ二つに斬り裂かれた。おぉ、相変わらずおっとろしー威力だぜ。
デカブツは雄叫びをあげるヒマもなく、身体ン中に溜め込んだ炎をまき散らしながら、自分で自分の身体を
焼き焦がして崩れ落ちやがった。
んで、次の瞬間、デカブツから吹き出した膨大な『気』がどこかに吸い上げられ、運び去られた。そンで、
パキャァァァンっと、ガラスが砕けるみてーな音がして、この周囲一帯を覆っていた結界が砕け散るのを感じ取った。
おぉ、なンか圧迫感ンがなくなったナ。
「おし、紅葉のねーちゃんもうまくやったよーだな」
「! もみじっ!?」
オレっちの頭の上に着地したおにこが思い出したように叫んだ。
おっと、そういや、まだ崖にぶら下がってンかな。あのねーちゃん。あの結界破りは印を結んで起動させるとか
いってたが、あの状態でどうやったんだ。
──が、結論から言うと紅葉のねーちゃんは居なかった。その場所にはクナイが一本、ぶっ刺さっているだけだった。
「もみじっ!もみじーーーーーーーーっ!!」
おにこの悲痛な声が響きわたる。そんでおにこのヤツぁ取り乱してメッチャ泣いた。オレっちらは限界ギリギリまで、
辺りを探しまくったが、紅葉のねーちゃんはどーやってもクナイ以外、何ンも見つかンなかった。
「で、でーじょーぶだって。何ンで、オレっちらの前から姿を消したかわかんねーケド、あのねーちゃんが簡単に
死ぬわきゃねーって。そンうち、フラリと顔を見せるって!なっ?」
ホントにどーしよーもなくなって、オレっちはエリアを離れながら、そー言っておにこをなだめたが、おにこは
長いこと泣きじゃくってた。
だが、これ以上居続けたら人間どもが調査用の式鬼を寄越してくる可能性が出てくる。見つかるのぁヤバい。
何ンかが近づいてくる気配を察知したンで、オレっちらは逃げるよーにソコを離れるしかなかった。
……しかし、ホントの所、どーしちまったンかね。
状況からして、溶岩の河ン中にドボンしちまったとしてもオカしかねーんだが、あのねーちゃんがそーそー
簡単に死ぬたぁ考えづれぇ。かといって、オレっちらを追っかけるのをヤメちまうってのも変といやぁ変だ。
いってぇ、どういった心境の変化だ?なンともモヤモヤする結末になっちまったもンだ。
「ま、なンだ。あンだけしつこかったんだ。いつかまたフラリと姿現すにちげーねーって。あン時みたくよ」
オレっちは振り切ったと思ったのにアッサリ見つかっちまった時の事で、おにこを慰めた。
「……うん」
おにこは例のクナイを握りしめ、涙声でぽつりとうなづいた。今となっちゃ、そのクナイがあのねーちゃんの
居た証しだな。
「あ、そーだ。なンならよ。紅葉のねーちゃんと同じ事してみっか?そしたら、そのウチ見っかるかもしんねーしよ?」
オレっちはおにこのヤツを元気づけたいあまり、何を口走ったかあんま深く考えなかった。
「おなじこと?」
おにこはさんざっぱら泣きはらした目で問いかけてきた。
「おぅよ、鬼退治」
オレっちは適当な事をいった。まー紅葉のねーちゃんに会った時にねーちゃんのやってたシゴトだから間違いねーだろ。
「それで、もみじ、みつかる?」
ここがオレっち、嘘月鬼の本領発揮よ。
23 :
チリチリおにこ:2012/10/19(金) 20:42:21.66 ID:vnB6Hmh6
「同じ業界に居たら、同業者として会うこともあンじゃねーの?今の状態よか、ダンゼン会いやすいたぁ思うぞ?」
「おにこ、もみじのおしごとの事、よくわかんない……」
そらぁそうだろうな。オレっちだって人間のこたぁ、大してわかんねぇしよ。
「なぁに、オレっちに任せときナ。何ンとかなるって。マネジメントしてやっからよ」
ま、口から出任せなンだがよ。今までも何ンとかなってきてたンだ。これからも何ンとかなンだろ。
「おにこ、もみじにもう一度会いたい。だったら、何でもする」
静かに、決意に満ちた声でおにこは宣言した。ま、だったらオレっちはできることでサポートするしかねーよな。
煽りたてといてなンだが、おにこの強情さはヤんなる程、分かりきってる。
「おっし、ンじゃあ、キマリだな。これからは街を拠点にすることになンぞ。覚悟はいいな?」
「うん!」
よっしゃ、街での過ごし方もちったぁ、紅葉のねーちゃんに教わったし、暫くはなンとかなンだろ。
オレっちはおにこを頭にのっけたまま、街に向け、飛ぶ進路を決定した。オレっちの飛ぶそン先には街の明かりが
ウゼぇくれーにキラメいていた。
────────────────────────────────────────────────────
◇ ◇ ◇
「か〜えっでちゃーん、ごっくろーさん♪どう?何か見つかった〜?」
オフィスの一角。軽薄な声が響きわたった。オフィスといっても、この時代、畳三畳程もあれば個人的なオフィスなど
いくらでも開くことはできる。
彼も多少手狭ながら、こじんまりとした個人経営のオフィスを持っている。フリーエージェントの一人だ。
もっとも、あまり有名ではない。半ばモグリ。
手狭な空間に書類や認証符が乱雑に積み上げられ、まばらにある木製の机の上にはガラクタが散らかっている。
頻繁に書類を持った小型の式鬼が出入りして情報を交換していく。これが紅葉が今まで「本部」と呼んでいた場所の姿だ。
「……えー?ゼッタイ、見つかるって。溶岩の底に沈んだんじゃないかって?ないない。例え溶岩に沈んでいようとも、
そんなんでどうこうなるモンじゃないって。ホントに送ったセンサーに引っかからない?おっかし〜なー?」
男がいくつもの情報端末で情報収集しながら、熱心に通信向こうに話しかけている。今、オペレーションの真っ最中なのだ。
紅葉と名乗るくのいちが死んだであろう場所に人を送り、遺留品を走査させている。だが今の所、何も見つかっていない。
──ひょっとして、あの程度の難物では無理だったか──
そんな嫌な予感がチラリと脳裏をよぎる。
彼はひょんな事からとある企業が賞金をかけている、くのいちの情報を入手した。そして、そのくのいちが身を
隠し、自分の下で働いている事を偶然、知った。
彼女の仕事ぶりは他者よりも優れていたため、企業に売り渡すのは惜しかったが、近頃は事情が変わってきていた。
彼女の業績がふるわなくなってきたのだ。おまけに、おそらくは企業が欲しているだろうモノに追加の賞金が
かけられた。その金額は尋常ではない額で、男はその値に目が眩んだ。
最近、彼女のシゴトが低迷ぎみだったこともあり、彼は彼女を謀殺することにしたのだ。彼女を罠にハメた後、
彼女の情報をその企業に売った。それだけで、かなりの金を得ることができた。
(もっとも、多少無理めの任務も彼女は易々とこなしてしまう為、そこまで持っていくまでが大変だったのだが)
また、その企業と重ねて契約し、彼女の遺留品を回収する契約を取り付けた。成功すれば、一生金に困らないだろう。
「ま〜もーちょっと探してみてよ。ひょっとして、溶岩にまぎれて流されちゃったかもしれないからさ♪」
積み上げられた書類に囲まれながら、手早く空中に投影された情報をクリックし、人員の配置情報を次々と指示を出し、
陣型を再配置しては、処理する。
事が済んだら、この件にかかわった人員も謀殺せねばならないだろう。企業とはそういう契約になっている。
だがその前に、結界の崩壊が報告されている。予定に反して、彼女が「勝利」してしまった可能性もある。
その場合も想定して、それなりの人数の精鋭部隊を派遣してある。
いかな彼女であれ、あれだけの敵と戦った直後の消耗した状態では凌ぎきれないだろう。
表向きには軽薄に振る舞いながらも男は頭の片隅で冷酷に計算を組み立てる。
そうまでして探さねばならないもの。それは一振りの刀だった。紅葉というくのいちは、企業の技術の粋を結集して
製造した妖刀を持ち逃げしたらしいのだ──
24 :
チリチリおにこ:2012/10/19(金) 20:43:31.76 ID:vnB6Hmh6
内心、目的の物が見つからない苛立ちを隠しながら、軽薄な声で通信向こうの相手に次の指示を飛ばす──
「あー、そんじゃね〜次に探すべきエリアは──」
そういいかけて男の言葉が止まった。
「お探しのものは──」
凛とした冷ややかな女の声が男の耳朶を打つ。
「──この刀かしら?」
首筋にヒタリと冷たいものが押し当てられていた。一瞬、男の意識が空転する。
馬鹿なっ!ここが突き止められる訳がないのにっ何故だ?!どういうことだっ?!
……だが事実、彼女はここに居る。ここにいて、男に刀を突きつけている。
男のヒタイからだらだらと嫌な汗が流れ出し、声が詰った。震える肘が積み上げられた書類の束を崩す。
書類がバサバサと床に散らばった。
「言ったはずよね?『全てがすんだら振り返ってみなさい』と」
「ま、まま、待って──」
いつも軽妙に回る舌は男を裏切り、口の裏に張り付いて動かなかった。
「た、助け──」
女は頓着せず、冷たく言い放った。
「今がその時よ──」
────────────────────────────────────────────────────
◇ ◇ ◇
──都市伝説──
電子によるネットワークが寸断され、代わりに脳波ネットが普及した現代でも口コミを媒体に虚実入り乱れて
囁き続けられるお話がある──
最近とある街の片隅で、恐れとも好奇心ともつかない感情とともに囁かれる噂話があった……
「ねぇねぇ、知ってる?この前、となりのクラスの子が暴走した式鬼に襲われたとき『チリチリさん』に助けられた
ん
ですって?」
「えー?政府の人じゃないのー?鬼害対策……とかの」
「それだって噂話じゃん」
「いや、それがさ。ちっさい着物姿の女の子だったらしいよ?そんな子がそんなアブナい仕事してないっしょ。ふつー?」
「えっ『チリチリさん』ってアレでしょ?鬼を食う鬼で、真っ赤な鬼のような目をしてて、鬼を食ってる所に出くわしたら、
目撃者まで頭からかじられちゃうってゆー……」
「聞いた聞いた。でもアタシが聞いたのは小さい身体なのにでっかい岩を投げられるくらい怪力だって。
で、目をあわせちゃいけないんでしょ。目をあわせたら襲われるから……逃げようとしても、自分で投げた岩石に
乗っておっかけてくるって……」
「あれ、でもさっきチリチリさんに助けられたって……」
「もー、どれが正しいのよー」
「あ……そういえばさ、親戚の知り合いのコがこの前、満月の夜にさ……
まぁるい岩の塊に乗って空飛ぶ女の子をみたって──」
「へー……でも何で『チリチリさん』なの?」
「それがね、チリチリさんが現れる直前や現れたあとって、散ってるんだって──」
──街の片隅で囁かれる噂は人の畏れが見た、ただの幻影なのか……それとも真実なのか……
『チリチリさん』は一体どういう存在なのか……
それを正しく知るものはいない──
── チリチリおにこ 完 ──
25 :
チリチリおにこ:2012/10/19(金) 20:47:29.88 ID:vnB6Hmh6
という訳で、「チリチリおにこ」最終話
>>22-24を投下しましタっ!
【専門用語解説】
DNA編集技術:でぃーえぬえーへんしゅうぎじゅつ
作中で「手軽にDNA編集が可能」といった記述があるが、『人権』を持つ生体へのDNA編集は実の所様々な法規制や煩雑な
手続きがあり、それなりの金額と手間を要する。
逆に屍体からの臓器移植は比較的規制が緩い為、一般ではこちらの方が頻繁に行われている。
その際に臓器は蘇生処理が施され、方式としては薬物を用いた「薬物蘇生」と式鬼を憑依させる「式鬼蘇生」などが存在する。
それぞれ、メリット・デメリットがあり、状況に合わせて選択するのが一般的である。
【専門用語解説】
鬼子の分身/クローン:おにこのぶんしん/くろーん
かつて、ひのもと鬼子はクローン培養され、「制御された傀儡の鬼」として活動していた。しかし、色々あって制御を
振り切り、イチの存在に戻った……ハズであった。その群体から何かのエラーにより「ひのもと鬼子」から株分け
されたのがチリチリという存在である。
もとは「鬼子」であったため、不完全とはいえ、ある程度の記憶を有する。そのため、かつて共闘したことのある紅葉に
対して不自然な程、信頼を寄せている。
(実際は背中を任せあう程信頼しあった共闘ではなかったが)
───────────────────────────────────────────────
長かったこの物語もこれで終幕となりまス。
いままで、お付き合いくださった方、どうもアリガトウございましたっ!
>>21 紅葉の援護射撃がなければ、嘘月鬼は火炎が直撃して半壊になってたかもっ …そんなルートもあったかもしれない……
乙
乙乙。
ようやく読みきりました!
リサイクル徹底社会の様相や、嘘月鬼と紅葉の腹の探りあいなど、
ハードボイルドで新鮮な魅力がいっぱいでした。
しかしなぜか自分が思い浮かべていた街の絵は、
19世紀ロンドンのイメージだったというw
28 :
チリチリおにこ:2012/10/30(火) 23:49:38.51 ID:7p3GL45C
感想どうもです!
霧の都ロンドン……動力的に後退している世界なのでエネルギー事情は近い所にあるかもっ
何か書いてみようかなあ・・・
30 :
創る名無しに見る名無し:2012/11/06(火) 21:35:15.21 ID:yc4wVvgC
是非とも色々書いて下さいな〜。
どのキャラクターを使っても、または使わなくても問題ないはずですので〜。
支那の問題なんてどうでもいい
こに誕らへんに鬼子纂の続きを投下しようと思います。
九ヶ月くらいぶりだから、もう忘れちゃってる方も多いかとは思いますが、ね!
キタ!wktk!
35 :
小日本鬼子語る:2012/11/20(火) 16:41:53.31 ID:CuVbBrtc
師匠が私に教えた事はそれほど多くない。そんなうちのひとつ。
「小鬼よ、お前を見て恐れぬ人間がいたら、そやつは殺してもかまわん。
人間は絶対に鬼には敵わない。鬼に敵うとしたら、そやつはもう人間ではない。
鬼は人を喰らい殺すものと、昔から決まっておる。
そやつが人間であれば、そしてまともに「生きたい」という本能があれば、
そこに恐怖が生まれる。お前を恐れ、逃げ出すなり命乞いなりをするだろう。
そうしないというのは、「命」を粗末にする事よ。
火の付いたダイナマイトを抱えてもヘラヘラ笑っていられる奴は
爆死したって文句は言えんじゃろ?それと同じ。
死んじゃうのがむしろ自然の摂理。
ゆえに殺しちゃってもオーケー。文句を言われる筋合いはナッシング。
良いか小鬼、自分が鬼である事を恐れるな。
恐れられ、忌み嫌われる存在である事を嘆くな。
守りたいものがあるのなら「強いモノ」であれ。
でもって、お前を恐れ、忌み嫌いながらも
勇気を出して歩み寄ってくれる人間がいたとしたら…
その時からお前は「ヒノモトオニコ」を名乗り、それに応えよ。
お前の姉は、その辺がすっぽ抜けておったからの。」
>>35 恐いけれど、独特の論理をもっていて、時に優しくて人間くさい。
まるで八百万の神様のようですね。
お姉さんって誰だろ?
>>36 いつも乙です!
今回は特に、どれも美味しい作品ですねえ。
「作品を中央に寄せる」ボタン、初めて気がつきました。
これ、いいですね!
ヒワイドリ小咄
其の1:テトさんに相談
「テトさん、テトさん」
勝手にテトの家に上がり込んだヒワイドリはテトに呼び掛けた。
「何人の家に勝手に上がり込んでるんだ。」
妖怪なので、セキュリティガン無視でドアを抜けてきたヒワイドリに家の主の剣呑な声が響いた。
「すんません。相談したいことがありまして。」
「はぁ?相談?」
「相談です。」
「帰れ。」
「そうじゃなくってですね。実は…」
ヒワイドリは話を始めた。鬼子が最近鬼呼鈴を付けたおかげでパワーアップしたこと。
そしてお仕置きfがきつくなってドMでもない限り耐えられないことを話した。
「ふうん。ならいい方法がある。」
「な、何ですか。それは。」
「君たちみんながドMになればいいんだよ。」
ヒワイドリは逃げ出した。
其の2:櫻歌ミコさんの熱い眼差し
「テトさん、テトさん」
勝手にテトの家に上がり込んだヒワイドリはテトに呼び掛けた。
「今度は何だ。」
家の主の声が響いた。
「ミコさんのことでちょっと。」
「ん?どうした。」
「なんか、こちらをじっと見ている気がするんですけど。」
「ああ、気でもあるんじゃないか。」
ヒワイドリはついにわが世の春が、と思ったが、即座に考え直した。
「だったらヤイカガシやチチメンチョウもそういう目で見るのは何故なんでしょう。」
「ああ、お前らが旨そうに見えるんだろう。」
「は?」
「夜忍び込もうとかしない方がいいぞ。」
「何故ですか。」
「あの娘ね、暗い所では狼になるんだ。」
その時、ヒワイドリの背中に走るものがあった。
※櫻歌ミコ第二形態:暗い所では骨を加えた狼になる。
どうも、歌麻呂です。こにぽん誕生日おめでとう!
というわけで、まず最初に、
「FALL BLOE」のライナーノーツ的なものをここに載せようかと思います。
自分の作品を作品外で語るのは好きじゃないんですが、
鬼子さんWikiを頻繁に更新してくださってる方から、
「編集人の性として、作品の魅力を極限まで伝えきりたい!」
という強い要望があったので、思い切って投下することにしました。
自分としても、残したいものは少しでも残したいと思っているので。
ただ、こういうものは作品理解をより深めることができる一方で、
読み手の興を醒ましてしまう可能性もあるものだと思うので、
「そーゆー見方もあるんかいなー」って程度に読んでください。
あらゆる詩、歌詞に言えることですが、
解釈なんて人それぞれですし、答えなんてないもんですからね。
以下の書き込みは、歌詞の一側面なんだなー、程度に読んでください。
というわけで、次の書き込みから始めようと思います。
最初に二レス使って、自分の情景解釈をしまして、
次の二レスで、細かいところを追究したいと思います。
よろしくお願いします。
旅の道はひとり身の道
山の下の海はあかねで
岩の岸はしぶきを立てる
叫ぶ心を見ているような
一番第一聯は、旅をする鬼子が、山の迫る岩の岸から海を眺める場面である。
森を分ける 道なき道を
山を駆ける 陽すらも射らず
波を聞ける 迷路は抜ける
視界ひらけてワタツミの空
一番第二聯は、一聯(海に行き着くまで)の回想である。木々の生い茂った山を駆け、海岸まで出る経過を描く。
夕波千鳥秋日和
思えば渚眺めてた
ふるさと胸に想いを馳せた
さあ海原へ 進みゆかん
一番第三聯は、回想を終えた鬼子の決意と新たな一歩を表している。
くれない紅葉 散るさまを見て
ひとり少女は舞い立った
迫る月夜のささめき覚え
走る面影 それは秋風(FALL BLOW)
一番第四聯、サビは鬼子と心の鬼の戦いをモチーフにした。
里の日々をふとして思う
山の村の稲はこがねで
川の小石 手に取り集め
笑顔まぶしいみんながいたな
二番第一聯は、鬼子の古里の日々を回想している場面である。里で、大勢の仲間たちと戯れた日々を懐かしんでいる。
森を見たら 小川が流れ
川を見たら 青空うつる
空を見たら 雲らが集い
雲を見てたら涙が出てた
二番第二聯は、回想を終えた鬼子が、情景を眺めている場面である。森から小川、小川から青空、そして青空を見る。
そこには沢山の雲が浮かんでおり、鬼子は里の「みんな」を重ね、思わず涙を流す。
夕焼小焼秋桜
思えば胸の中にいた
ひとりじゃなくて 支えられてた
さあ峠の坂 進みゆかん
二番第三聯は、鬼子が孤独でないことを悟る場面である。孤独からの脱皮、成長を描いている。
くれない紅葉 散るさまを見て
ひとり少女は旅立った
無垢で無邪気な花守るべく
走る面影 それは秋風(FALL BLOW)
二番第四聯、サビは鬼子が戦う動機をモチーフにした。小日本を守るために戦う……この歌詞ではそれを理由の一つとした。
一番は全体を通して、日本鬼子の過去、現在、そして未来を描こうと心を砕いた。
一番第一聯では「日本鬼子」というものを描いた。鬼子の背負う孤独、あらゆるものを受け容れる姿を旅路と海原で表現した。
また、あかねは鬼子のイメージカラーであり、海は先ほど言った通り、鬼子の譬えである。
鬼子はその海を見ている。すなわち鬼子は鬼子自身を見ていることになる。これは、代表でない鬼子を暗に示している。
岩の岸のしぶきは、多くの人々に支えられて今に至っているという日本鬼子の「叫ぶ心」を表している。
一番第二聯の「道なき道」とは、日本鬼子の誕生が、今までにないものであったということであり、
それはつまり道のない道を進まねばならなかったことを示している。
そして私自身、前代未聞の衝撃を受け、道なき道を鬼子と共に歩もうと考えた。「陽すらもいらず」とは、その当時の苦心を描いた。
その頃、ある作品が世に出た。それが「HAKUMEI」であった。
それは、視界が開けて見える海と空のような輝きを放っていたのである。
一番第三連目の「夕波千鳥」は、歌聖柿本人麻呂の造語と言われている。
近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば
心もしのに 古思ほゆ
荒廃した旧都を訪れた人麻呂が偲んで詠んだ歌である。
しかし、私は今の鬼子を嘆いて「夕波千鳥」を組み入れたつもりはない。その情景の美しさに見とれて、組み入れたのである。
鬼子の故郷は「旧都」である。つまり「過去」である。
あったことは紛れもない事実であるが、しかし今はもうその姿は見当たらない。夕波と鳥だけがそのままでいる。
だからこそ、鬼子が進むのは海原という広い世界か、海原という「日本鬼子たち」なのである。
なお、「海原の先に何があるか」という議論がかつてされたが、私は太平洋のどこか、程度にしか考えていない。
歌詞を書くにあたって、真鶴岬に訪れた。岬付近に「御林」と呼ばれる森があり、山は海のすぐそばまで迫っている。
この景観に見惚れて、作品にしたい、と思い、書いた次第である。
一番第四聯、サビの「紅葉」は鬼子を象徴するものである。
よって「くれない紅葉」は「紅色の紅葉」と「暮れない鬼子」という意味を込めている。これは作者の願望である。
しかし、私は実際、人気が衰えていく様(散るさま)も見ている。
同様に、鬼子をこよなく愛し、盛り上げようとする人々も大勢見てきた。彼らの姿と、鬼子の舞い立つ姿を私は投影した。
秋の「FALL」は、「落ちる」という意味もあるのはご存知だろう。
これは「葉の散るさま」を意味している。一方風の「BLOW」は「一陣の風」を意味している。
鬼子を愛する一陣の風が、再び鬼子を舞い上げよう、そんな願いを籠めた。
四
二番は全体を通して、小日本の存在を散りばめている。
第一聯、第二聯、第三聯には、それぞれ「小石」「小川」「小焼」と、
「小」の字が入っているのは、全て小日本をほのめかしている。
何故なら二番は、鬼子と小日本の関係性を描いているからである。
二番第一聯「村の稲」や「川の小石」は、小日本候補に挙がった全ての小日本を指している。
鬼子は、小日本ひとりひとりの笑顔を思い返しているのである。
二番第二聯の「森」はうっそうと茂ったイメージから、混沌を意味する。その中にある「小川」は、先述の通り小日本を表している。
加えて、川は海(=鬼子)に通じることから、鬼子と小日本の繋がりを象徴するものである。
空は広がりを意味する。広がりはネットの世界を髣髴させる。
空に浮かぶ雲らは、つまりネット上で鬼子の世界に集まった我々である。雲らが集い、あらゆるものを創りだす。
それが「FALL BLOW」であり、多くの鬼子作品である。
我々の創りだしたものが、人に感動を与えるのである。
二番第三聯の「夕焼」はその色から、鬼子の意味であり、「小焼」は先述の通り小日本である。
「秋桜」は、「秋」が鬼子で、「桜」は小日本である。また、「秋桜」はコスモスの和名でもある。
コスモスは宇宙であり、それは鬼子の世界の象徴でもある。
「胸の中」というのは、鬼子の世界の中にいる全てのキャラクターを指し示している。
鬼子の世界は、鬼子ひとりだけではなく(もしくは鬼子と小日本だけではなく)、
多くのキャラクターによって支えられているのである。
峠の坂は、苦境を意味している。それは鬼子にとっては天魔党との戦いであり、数多の心の鬼との戦いであろう。
永遠とも思えるような坂道だが、それは一歩を踏むごとに高みへと近づいている証拠でもある。
峠の坂を進むのは、地道な努力の積み重ねであり、それが高嶺へ至る最善の道であるといえる。
一番のサビでは、鬼子をこよなく愛する人々を描いたが、二番第四聯のサビでは、小日本をこよなく愛する人々を描いた。
二番の「FALL BLOW」は、舞い散る桜の花びらが、春一番によってふわりと舞い上がるさまをイメージさせる。
と言った感じで。ちなみに今日の夕方ごろに
『【編纂】日本鬼子さん十三』を投下しようと思ってます。
三日に分けて連載するので、よろしくお願いします。
>>38 頑張れヒワイドリw
UTAU(VIPPALOID)って各自のキャラ濃いな…。
>>39-43 ライナーノーツとは珍しい。
編纂投下楽しみにしてます!
【編纂】日本鬼子さん十三「俺、強くなれるのかな?」
十一の一(本日は一から三までを掲載)
φ
つまるところの、平凡な昼下がりってもんだ。般にゃーの家の庭を掃く雑用に専念できる。こんなのどかな午後は久しくなかった。
俺にちょっかいを出すヒワイドリやヤイカガシは、変態どもの集う岩屋の基地にいる。
定期的な会合とやらがあるようだが、知ったこっちゃない。
鬼子も留守である。田中の住む世界に行って、鬼退治をしている。これも日常的なものになってしまった。
少なくとも、この数週間で、鬼子の日課になってしまったことに今更文句をつけることもないだろう。
「あとね、あとね、この前のお話のつづき、きかせて!」
「ふふ、こにったら物好きね。この前は……貧乏な町娘のお百が、街道の一本桜で、殿様の子に恋に落ちたところだったかしら」
「とってもいいむーどになったけど、その想い人さんが江戸へ奉公にでかけちゃうとこまできいたよ!」
そして、小日本と般にゃーは縁側でのんびりと雑談をしている。
本当に、何事もない、穏やかな日だ。
「白狐爺こと、みんな忘れちまってんのかよ……」
誰にも聞こえないくらい小さな声で、俺は呟いた。
白狐の村で、俺と鬼子は悪しき鬼どもに負けた。
そのとき、白狐爺が己の気力を犠牲にして鬼たちを祓ってくれなければ、こうして雑用すらできなかっただろう。
力を使い果たした白狐爺は今もなお療養中であった。
せめて白狐爺が回復するまであの村に留まりたかったが、般にゃーの命が来て、紅葉山まで引き返したのだった。俺は心配だった。
――鬼が来たら、わたしがこの村とおじいちゃんを守ります。
弓を携えたシロがそう言っていた。その声は震えていた。弓はかたかた音を立てていた。
心配なのは、あいつだって同じなのだ。いや、あの場所にいた誰もが、不安を抱えていた。少なくともそのときは。
「――そして、一つ約束をしたの。
もしお百が、毎日欠かさず恋歌を……お百は歌が上手だったのよね……桜の下で詠んでくれたら、貴女を決して忘れない、と。
お百は毎日毎日、その人の無事を祈り、想いを籠めて詠んだわ。雨の日も、風の日も。お百は献身的だったの。
でも想い人は、江戸で多忙な日々を送り、いつの間にかお百のことを忘れてしまったの」
「かわいそう……」
それがこの有様だ。何もない一日。誰も彼もが悠々自適に過ごしている。
白狐爺は何のために俺たちを助けたんだっけか?
「奉公が終わって、国に帰ることになったその日も、お百は恋歌を詠んだわ。
想い人が、一本桜の脇を過ぎようとしたとき、ちょうどその歌声を耳にしたの」
般にゃーの語りは続いていた。
「そして、想い人は全てを思い出し、お百の元へ駆け出し、ひざまずくの。
『ああ、私はなんて過ちをしてしまったのだ! お百、私は今の今まですっかり君のことを忘れていた!
君の全てを、私を恋い慕ってくれていたことを! しかしお百、この国へ帰ってきたのは、結婚するためなのだ。
君を置いて、私は嫁へ貰われるのだ! 許しておくれ、こんな私を、許しておくれ!』
『百合姫様、いいのです、思い出しさえしてくだされば。私はそれだけで幸せ』
うら若き二人の女子は、手を合わせ、指を絡ませるの。
『お百、せめて今宵だけでも、逢瀬のひとときを……』
そう言って、百合姫はお百と口を重ね――」
「って、ちょっと待ったああ!」
思わず叫んでしまった。俺の不安を一気に吹っ飛ばすくらい強烈な話をしていることにようやく気付いた。
「あら、わんこは百合話、ニガテなのかしら?」
般にゃーはいたずらっぽい笑みをもらしている。ユリバナシ? なんだか知らんが、どこか背徳的な香りのする言葉だ。
十一の二
「わんわん、大声だすのは『オトナノタシナミ』じゃないよ」
小日本にたしなめられる。というか、その言葉はどこで覚えたんだ。
「こんな話を聞いて、小日本に悪い影響が出たらどうするんだよ」
「あら、ならチチドリが攻めでチチメンチョウが受けの話に変える?」
「なんだよそれ! わけわかんねえよ!」
どういうことか、背筋に嫌な汗が流れる。聞いてはいけないと本能が警告しているようだ。
般にゃーはため息を洩らし、草履を履いて立ち上がった。そして、胸元から煙管を取り出し、吹かしはじめた。
「興が醒めたわ。今日の話はこれでおしまい。こに、恨むならわんこを恨みなさい」
「わんわんのせいだー」
「なんでそうなるんだよ……」
般にゃーが気分屋なのは今に始まったことじゃない。だから俺は半ば諦めて、庭掃除を再開しようとした。
普通だったらそうするのだが、今日は少しだけ様子が変だった。
「今日はひげがぴりぴりして落ち着かないの。嫌な気分ね」
般にゃーの視線が泳いでいた。いや、何かを指し示しているように見える。そして、俺に合図を送っているようでもあった。
そのとき、般にゃーはその手に持っていた煙管を、紅葉の幹目がけて素早く投げつけた。それは真一直線に飛び、突き刺さった。
その幹に人陰が見えた。
「何者なの。名乗りなさい」
般にゃーの一言で空気が張りつめた。鳥の声も風の音も聞こえない。沈黙が続く。姿の見えない睨み合いが続いた。
突如幹の陰から火焔が吹き出た。
侵入者の攻撃――そう認識するよりも早く、身体は行動に移っていた。火焔の熱気と交錯し、馳せた。
やることは決まっている。幹から顔を出す相手に、気合を籠めた鉄拳を喰らわせる。
まさかここまで来ているとはつゆも思うまい。駆けながら拳を引き絞る。
「んー、花粉症かな?」
それは不意のことだった。幹から無防備の相手が現れた。目を細め、鼻をこする女性は、やけに露出の多い、褐色の肌をしている。
俺はとっさに攻撃の態勢を解いた、が、全速力の足は少しも止まらない。体勢を崩しながら、距離は詰まり、そして――。
奴の胸の中に顔をうずめていた。
十一の三
「おー、わんこったら、そんなに会いたかったのか。よしよし」
耳元で囁かれ、頭を撫でられる。
身震いがして、俺は瞬時に四歩下がった。
「な、なんだよ邪主眠(ジャスミン)! いきなり出てくんなよ!」
「いきなりって……。わんこが先に飛び出てきたんだよ?」
邪主眠は俺の言っていることを理解していないようだ。
奴は赤い眼を点にして、緑色の髪をぽりぽりと掻いていた。
そうやって腕をあげられると、豊満な胸囲がより強調されるから、目のやり場に困る。
「じゃあ、どうして俺たちに攻撃したんだよ!」
「攻撃? さっきのくしゃみのこと?」
くしゃみ?
疑問を繰り返そうとしたところで、木陰から少年が現れた。
「邪主眠ったら、すすきの花粉にやられちゃったみたいでさ、くしゃみするたびに火を吹くから、何度火事になりかけたことか……」
その少年の顔には、明らかな疲労が伺える。
頭襟、烏を思わせる黒髪、山伏衣裳、分厚い書物を脇に抱え、高下駄を履いている。
見違えるわけがない、風太郎だ。
「それどころか、茶屋があると勝手に食べちゃうから、道中切り詰めても切り詰めても……」
「この腕念珠、風太郎に買ってもらったんだ!」
風太郎の苦労話をよそにして、邪主眠は真新しい腕珠を見せつけた。
これは風太郎に同情せざるを得ない。
「わんわん、このひとたち、だれー?」
小日本がやってきて俺の袴を掴んだ。不満げな顔を浮かべている。
「そうか、小日本は知らなかったよな」
小日本は頷いた。悪い奴らじゃないから、すぐに仲良くなれるだろう。
「こいつらは、俺の知り合いだ」
小日本の顔が、ぱっと輝いた。
35
【新規さんへ】
・このスレには九州外伝=日本Ω鬼子という荒らしがいます。
コテハンごとあぼーんすることを推奨します。
なおコテハンを外してをIDをコロコロ変更し、自演を繰り返したりもするので要注意です。
・その他に天使ちゃんと呼ばれる荒らしがいます。
コテハンは持たずにスレを荒らしに来るのが特徴です。
・SS書きをターゲットにし住民の中を裂こうとする荒らしがいます。
基本的に絵を描く人もSSを書く人も何ら確執はありません。
荒らしに餌を与えないで下さい。
荒らしに構う人も荒らしです。
【編纂】日本鬼子さん十三続き
十一の四(本日は四から六までを掲載)
犬地蔵師匠の村で暮らしていたころ、一匹狼のように見栄を張って、独りきりであった。
少なくとも、寄り添ってくる奴らを無視して、独りであろうと努めていた。それでもなお俺に近付く物好きがいた。
それが邪主眠と風太郎だった。
邪主眠は、数年前にひょっこり姿を現した天竺の鬼神だ。
ここでの鬼神というのはつまり、鬼とも神ともとれる、程度の意味で、荒々しい神という意味ではない。
異国の神さまなんてどっちつかずなもんだ。
俺がどんなに拒絶しても、奴はちっとも気にすることなくちょっかいを出してくる。これが腐れ縁というやつだろう。
風太郎は天狗一族の少年で、邪主眠の近所に住んでいる。俺たちは知らぬ間に村中を探検するほどの仲になっていた。
いわゆる幼なじみというやつだ。いつだって俺が先頭で、風太郎は背中にいた。
歳が近く、性格が対になっていて、補い合える関係だったから今まで一緒にいられたのかもしれない。
俺は先に行動するのに対し、風太郎は先に思考する。風太郎は饒舌だが、俺はそれほどしゃべらない。
「心の鬼の探究、それはある種、自分自身の心の探究でもあるんです」
屋敷の中で、風太郎はお茶を手にしながら言った。軽い自己紹介のはずだったのだが、いつの間にか心の鬼の話になっている。
奴は心の鬼を熱心に研究する変わり者でもあった。幼い頃から聞かされているから、もううんざりである。
「その姿を見て、瞬時に特性を理解しなくては、無防備な心に付け込まれてしまいます。
姿かたち、知性、口癖……そういう観点を統合して、あとは勘に頼らざるを得ないんですけど、
鬼のある程度の特性なら、一目で判断できるようになりました。
例えばヒワイドリ。数多の乳を平等に愛する色欲系の鬼で、その数はごまんといる。
人間の三大欲求はご存知ですよね? すなわち食欲・睡眠欲・性欲です」
「はんにゃー、せーよくってなあに?」
「大人になったらわかるわよ」
小日本の問いかけに、般にゃーは平然と答えた。
「むー……。こに、早く『オトナ』になりたいなあ……」
大人にならないでくれ、と切に願う俺がいる。
風太郎の演説は、二人の問答を無視して続いていた。
「これらの欲求から生じる心の鬼、たとえば痩せたい願望があるにもかかわらず暴食に走らせる餓鬼(かつき)、
布団のぬくもりに誘われて惰眠を誘う布団羊鬼(ふとんのようき)、そしてヒワイドリや押栗鼠鬼(おしりすきー)
……そういった鬼たちは単純でわかりやすいから、その数も非常に多い。そして、亜種もあります。
本来どんな乳でもいいはずなのに、ある一人に執着するヒワイドリがいたっておかしくない。
何しろ心の鬼は全て解明されたわけじゃないですからね。
欲求から生じる鬼がいる一方、怒りや恨み、虚勢高慢、罵詈雑言。
そういった感情から発生する鬼は多種多様で、まさに十人十色否十鬼十色百鬼百色。
同じ鬼なんていないと言っても過言ではなく、つまり――」
「その話、まだ続くの?」
般にゃーはすっかり呆れていて、紅葉饅頭をかじっていた。小日本はうとうとと頭をゆらゆらさせ、邪主眠は般にゃーの二又尻尾を興味深げに眺めていた。
「す、すみません! 鬼閑獣(きかんじゅう)が憑いちゃったみたいですね」
心の鬼で冗句を言う輩を、奴以外に見たことがない。しばらく見ない間に、ずいぶんな通になったようであった。
「ま、その知識は評価するわ。わんこも見習ったらどう?」
「んなこと――」
「いえ、僕は全然ですよ。わんこに敵うのはこの雑学と空を飛べるくらいですし……」
反論しようとしたところで風太郎が謙遜の言葉を述べた。
おかげで俺はすっかり何も言えなくなってしまい、自棄になってお茶を一気に飲み干した。
舌が火傷するほど熱かっだが、何食わぬ顔をする。
十一の五
「ところで般にゃーサマ」
咳払いをし、風太郎が問いかけた。
「般にゃー、でいいわ」
「恐れながら……般にゃー、僕たちを何の目的で呼んだんですか?」
「あー、そういえば、犬地蔵のジッチャンはなんも言ってなかったねー。ただ、般にゃーのとこへ行けって」
邪主眠が饅頭を頬張りながら言った。
すっかり忘れていたが、確かに気になる。村からこの山まで、結構な日数を歩かなくちゃいけない。
遊びに来るだけではあまりにも遠い。般にゃーのことだ、師匠に理由を言わずに二人を寄越したのだろう。
「邪主眠は風太郎の護衛のために来させたの。風太郎、貴方に重要な役目を与えるわ。いい? わんこの御供をなさい」
一刻の沈黙が流れた。驚愕のためというより、疑問を孕んだ沈黙だった。転寝から覚めた小日本が、きょろきょろと辺りを見渡した。
「なあ般にゃー、俺は鬼子の供をしているつもりだ。供が供を持っちまっていいのか?」
再び静寂が続いた。小日本が心配そうに俺と般にゃーを交互に見ていた。般にゃーは眼鏡を上げると、おもむろに立ち上がった。
そして、縁側から庭に降り、再び煙管を取り出した。人差し指に火を燈し、煙管に火を点けると、一口吸い、大きく息を吐き出した。
霞のような紫煙が浮かび、そして消えた。紅葉の一葉がさらりと落ちた。
「わんこ、貴方は旅に出るの。鬼子の元を離れて、風太郎と一緒に国を巡るのよ」
「な……」
言葉を詰まらせた。あまりに突然のことで、どう切り返せばいいのか分からなくなってしまった。
そもそも、頭の中でちゃんと整理できておらず、何一つまとまってすらいない。
「き、聞いてねえよ、そんなの!」
だからその程度のことしか言えなかった。
「そりゃ、今初めて話したんだから」
般にゃーは至極当然と言った風に返した。
「道中苦しんでいる人間がいたら助けるの。それが貴方への課題よ」
「人間を助ける? 冗談じゃねえ」
人間はただ鬼子を畏れ、苦しめるだけの存在だ。その真実が頭の中を駆け巡っている。でも、思考は止まったままだ。
「神が人を愛さなければ、だれが人を愛すのよ。貴方は半人前にしろ、愛す側なの。立場をわきまえなさい。
ちょっとは感謝されるようになってから私の前に現れることね」
「んなこと言われたったって」
般にゃーの一言一言が突き刺さって、じわりと胸と顔が熱くなった。立場ってなんだよ、愛するってなんだよ。
そんなの、俺には分かんねえよ。人間は人間を愛さないのかよ。それなら、人間の存在理由ってなんなんだよ。
般にゃーは、何食わぬ顔で煙管を吸っていた。それが腹立たしくて仕方なかった。
いっそ旅に出て、般にゃーを見返してやろうかとも思った。
でもそれは般にゃーの思う壺だろうし、鬼子の元を離れることに、どうしようもない不安を覚えていた。
「こには、こにはやだよ!」
小日本が精一杯の声を張り上げた。
「わんわんいなくなっちゃうの、や!」
「そうですよ、最近の鬼が強くなってることだって、般にゃーならご存知でしょう?」
風太郎も般にゃーの意見には反対の姿勢であった。
「聞く話によれば、隊を組んで襲う鬼だっているそうじゃないですか。今、わんこを別行動させる必要があるんですか?」
「だからこそ、よ」
般にゃーは煙を吹き散らして言った。
十一の六
「わんこを旅に行かせるのは、緊急事態だからよ。今はまだ鬼子一人で互角に戦えるけどね、手に負えなくなる日がきっと来るわ。
その前に底上げをしなくちゃ、私たちは死ぬしかない。私達はそういう綱の上に立っているの」
底上げ、という言葉に俺は身震いがした。それは、俺がみんなの足を引っ張っているような、そんな響きを持つ言葉だった。
俺を否定するような言葉。左遷。旅へ行かされるってことは、戦力外ってことなんじゃ。
「連携も大切よ。でもね、賢い相手は弱点を突いてくる。一度崩れた連携ほど哀れなものはない。間もなく卑劣な死がやってくるわ」
「でも、旅をしなくたって、鍛えられるし、連携だって……」
傍から見れば、今の俺は目を覆いたくなるくらい悲愴な姿をしているのだろう。それでも、俺はここに留まりたかった。
「根本的なことを分かってないみたいね」
訴えは容易く切り捨てられた。
「どうも最近、嫌な予感で髭がぴりぴりするのよ。強い邪気はちっとも感じないのだけど、例えばあの木の上とかね」
俺は呆然としていて、般にゃーの言葉を聞き流してしまっていた。
だから、煙草の煙を吹いた般にゃーが、不意に煙管を紅葉の幹に投げつけても、しばらくそれに気付かないままでいた。
煙管の突き刺さった紅葉が勢いよく燃え上がった。それは焔の幻影であった。ようやく俺は事に気付いたのであった。
「出てきなさい、卑しい鬼よ!」
叫ぶが早いか、燃え上がる紅葉から人型のものが落ちてきた。忍の服を着た者だった。
体中に付いた幻影の火を払いのけているうちに、般にゃーが駆け出していた。
忍は袖を払うのをやめ、手裏剣を般にゃーに投げつけると同時に左へ走り出した。般にゃーは手裏剣を掴みとり、投げ返す。
直接忍にではなく、その進行を妨げるために奴の足元を狙い、それは突き刺さって烈火となった。
忍は飛び退き、樹上に隠れた。
紅葉山がざわめきだす。
風が枝葉を揺らしているのだろうか。それともあの忍が風のように木々を伝っているのだろうか。
奴は今、どこにいる?
「邪主眠は私の援護を。わんこはこにを守ってあげて」
「りょーかーい」
邪主眠はのんびりと庭に降りると大きく伸びをした。胸が引き上げられ、大きさが強調される。
一方俺は「戦力外」の言葉を追いやって、小日本を茶の間の隅にやり、その前に立ちはだかっていた。
一切の攻撃も通させない。その心意気だった。
「風太郎、どうかしら、何か分かる?」
風太郎は一呼吸の間に思案し、常に肌身離さず持っている書を開いた。そこにはありとあらゆる鬼の図が書かれていた。
「忍の鬼のようですから、身は素早く、多くの武器を駆使するはずです。
心の鬼か、堕ちた神の鬼かは分からないですが、少なくとも戦い慣れてはいるはずです。
邪気は薄いけど、気を抜かないほうがよさそうですね。むしろ強い邪気を隠していて、僕らを翻弄する気かもしれない。
呪術に長けた鬼によくある型ですよ、これは!」
「御明察だな」
部屋から女性の声がした。
俺ははたと部屋を見渡した。今、この間にいるのは、俺と小日本と風太郎の三人だけだ。
そして、それは明らかに小日本の声ではなかった。無邪気さはなく、研ぎ澄まされた理性を持った声だった。
般にゃーのような間延びた印象はなく、きびきびとした鋭さを感じる。
間違いない、敵だ。
とっさに臨戦態勢に入るも、姿が見えない。さっきからどこに隠れている? そのくせ先の声はとても近くから聞こえた。
「まさか!」
直感が天井を見上げさせた。奴は今まさに天井から落ちてくるところだった。
音もなく畳に着地し、両股を大きく開いて重心を下げている。
忍の姿だった。
【編纂】日本鬼子さん十三続き
十一の七(本日は七から十一までを掲載します)
一瞬目が合ったような気がする。凛々しい釣り目は細く、額金に描かれた巨大な目がぎょろりと俺を貫いた。
覆面から除く顔は、若々しい女性のものだった。その手に鞭のようなものが握られていた。
それに気付いたころには俺の視界は失われていた。頭から伸びる雄々しい角が、残像として眼の裏側でちらついた。
鞭で目を潰されたらしい。俺は、少しも反応することができなかった。
今まで戦ってきた何よりも、速い敵だった。
疾風がすぐ脇を過ぎた。
小日本の短い悲鳴を、全身で感じた。俺はとっさに小日本を呼んだ。しかし反応はない。息すらも聞こえない。
ただ、小日本の気配が刻々と遠のいていくことだけは分かった。
黒とも白ともつかないまぶたの裏側で、小日本の残像を追った。
平衡感覚がつかめず、足元がおぼつかない。縁側で足を踏み外し、鼻先から転んだ。
痛みで頭の中が真っ白になる。鉄の味がする。
小日本を負う手段は、空気の震えを捉えるこの身と、直感だけに限られていた。
今の俺には、どういうわけか、それだけで充分であった。
小日本は、今目の前にいる。
俺にはその確信があった。
「今すぐ小日本を離せ、卑怯者」
燃えるような怒りをたぎらせて、言った。
「卑怯者?」
思った通りの場所から、聞き慣れぬ声がした。
「まさか、本気で言ってるわけではないな?」
毛が逆立つような、冷徹さを思わせる声だった。
何も見えないまま臨戦態勢に入った。でも今なら奴の攻撃を見切れるような気がした。
理屈でない不思議な力のようなものが俺の周囲をうずまいていた。
「目的遂行のためには、使えるものは全て使う。地理を活用し、弱者を利用する。
それをお前は卑怯と称すのか? そんなもの、武士道が創りだした幻想だ」
しかし、奴はちっとも攻撃しないどころか、ほんの些細な攻撃の意欲すら感じ取れなかった。
それなのに俺は一寸も動けなくなっている。
俺の心の弱みを、もてあそぶように突いてくる。
「武士道を妄信するのは、全てを心得た剣士か、戦を知らぬ素人だな。貴方は――自分の至らなさを私のせいにしているだけだろう?」
俺は、戦わずして負けていた。
「退きなさい、わんこ。奴はくないを持ってるわ。下手に動かないで頂戴」
遠く背後から般にゃーの声がした。
「目的は何なの、答えなさい」
般にゃーが侵入者に問いかけた。奴はしばらく沈黙を続けたあとで、こう口を開いた。
「……ぷりんとやらを、頂くつもりさ」
十一の八
このあと、あらゆる出来事が立て続けに起こった。
最初に、前方から何かが跳びついてきて、俺に抱きついてきた。
敵の不意打ちだと思って、やられた、と思った。
そのまま俺は尻もちをついた。
後頭部を地面にぶつけて、意識がもうろうとする。
鼻をすする音がした。
そして、今俺を抱きしめるのは、小日本なのだと理解した。
「まさか……いや、そんな」
それから般にゃーの、戸惑いまじりの声がする。
「行けるはずがないわ。だって、貴女は『知らない』はずだもの」
何が行けるはずがないのか、この状況で何が起こっているのかは分からない。
しかし心当たりが全くないわけではない。
紅葉山には「門」がある。
田中の住む世界。紅葉石に触れ、「ある言葉」を唱えると行けるという。
その「言葉」は俺だって知らない。
向こうの世界はそれだけ秘匿的で禁忌的な世界なのだ。
それなのに。
――いただきます。
奴がこう呟いた途端、奴の気配は消え失せてしまった。
しばらく俺は、何も考えられなかった。
頭が揺らぐ。今まさに意識を失うところであった。
「わんわん、わんわん! こわかった、こわかったよお!」
頬に温もりを感じた。
それは涙だった。
小日本、お前は、俺のために本気で泣いてくれているのか。
俺は馬鹿野郎だ。
馬鹿野郎だ……。
そして、眠るように気を失った。
十一の九
ちらちら。ひらひら。
いつの間にか、母上の膝を枕にして、まるくなっていた。
ぽろぽろ。ふわふわ。
子守唄が聞こえる。
幼年の俺はとろんとしていた。
母上の手が、とん、とん、と拍を刻んでいた。
それにあわせて息をする。
肺いっぱい春の空気に満たされた。
薄目をあけて、母上のかおを見た。
そのかおはぼやけてよく見えなかった。
そうだ。
俺は母上の記憶をもっていなかった。
それなら、この唄はいったい誰が?
春の陽だまりのなか、ぼんやりとそのかおを眺めた。
すると、すこしずつその輪郭がはっきりとしだす。
子守唄をうたうのは、小日本だった。
しかし、俺の知っている小日本ではなかった。
俺よりも、鬼子よりも背の高い女性の姿をしていた。
やさしくつむられた目の、やわらかいまつ毛の一本一本。
口ずさむ唇はうるおいに満ちていて、引き締まっていた。
そして、互いのかおのあいだに、豊満な胸があった。
俺は赤子のように、その手をのばしていた。
うすくひらいた小日本の目と俺の目があうと、小日本は音もなく微笑んだ――
十一の十
はっとして、大きく目を見開いた。
「わっ」
目の前に小日本がいた。俺のよく知る、小柄な童女だ。夢かうつつか、その無垢な瞳から、じわりと涙が溜まりだした。
「わんわん、よかったぁ……!」
小日本は泣き出した。その声を耳にして、ここが現実であることを理解した。俺はすっかり夢を見てしまっていたらしい。
泣かしてばかりだ、と思う。
「憐れね、わんこ」
脇の座布団に般にゃーが座っていた。はだけた着物から谷間が露出していて、思わず目を背けてしまった。
般にゃーの隣には、向こうの世界から帰ってきた鬼子が座っていた。
どこか沈んだ面持ちで俺を見ていた。鬼子のことだ、罪悪感を抱いているに違いない。
邪主眠も風太郎も心配そうにしている。
「こにがいなかったら、誰が面倒を看たのかしら?」
般にゃーの言葉には、呆れと安堵が混在していた。見えなかった目が見えるし、鼻の焼けるような痛みも引いていた。
小日本の恋の素。その癒しの力によって、俺は急速に回復したのであった。
「わんこ、ごめんなさい、私がいれば、こんなことには……」
鬼子は、色々と言葉を考えた挙句、そう言った。
そりゃ自分がいない間に仲間の一人を人質にされ、もう一人が負傷したと聞けば、謝りたくなるのも分かる。
鬼子がいたら、もしかしたら小日本が人質にされていなかったのかもしれない。
でも、そういう問題じゃない。
俺は俺を許せなかった。
強くなりたい。
これまでにないくらい切に、切に願った。鬼子を守るため、小日本を守るため……。
守るだけじゃない。いつか必ず、あの鬼を倒してやる。
だが俺は俺というものに自信が持てなくなっていた。打ちひしがれていた。
何度も鬼と戦ってきたが、一度も勝てない。拳を交えることなく戦意を喪失してしまった。仲間を危ない目に遭わせている。
「般にゃー、俺、強くなれるのかな」
そんな俺でも、まだ望みはあるのだろうか
「その見込みがなかったら、とっくに追い返してるわよ」
般にゃーは、さも当然のように言った。
「安心して。貴方には素質がある。ただそれを充分に発揮できてないだけなのよ」
般にゃーは決して、俺を見放しているわけではないのだ。
「強くなりなさい。そうしたらきっと、あなたの憧れる鬼子の本当の強さに気付くはずよ」
いつの日か、白狐爺に言われたことがある。
――鬼子の道は鬼子のものであるし、お主の道はお主のものである。
お主が鬼子の培った道の上で戦おうなど、それこそ宿世が許さぬというものじゃ。
お主はお主の道を究めるが良い。そのためにも大いに悩みなさい。
苦心して見つけだしたものこそ、真の生きる道じゃよ。
その本意がなんとなく分かったような気がして、思わず感情がこみ上げる。何度も何度も目をこする。
そして、決心した。
「俺、旅に出るよ」
十一の十一
行く宛はない。
ただ、今なら人間の生活をちゃんと見ることだってできるような気がする。
すっかり零の状態になってしまったから、何だってできる。
それに、俺には帰る場所があるのだから。
「風太郎、荷物は任せたぞ」
「やれやれ、わんこは荷物の管理が苦手だからね」
風太郎は肩をすくめ、ため息をついた。
まんざらでもないようだった。
「じゃ、おねーさんはしばらくここにいようかな。ここらへんの茶屋ちぇっくも済んでないし」
邪主眠は相変わらず呑気であった。
多分、この旅が終わって帰ってきても、邪主眠の性格は変わらないだろう。
床から身を起こし、大きく伸びをした。
「あの……わんわん」
目を赤く腫らした小日本に袖を引っ張られた。
じっと見上げられた。
「こにはね、本当は、行ってほしくないの」
その小さな訴えに、言葉が詰まる。
「でもね、わんわんが行きたいっていうなら、こに、ガマンする。だから――」
それからその手を胸に置き、ゆっくりと目を閉じた。
そして、その手を俺に差し出す。
手のひらには桜色の鼻緒があった。
「恋の素と、こにのきもち、いーっぱい注いであげたから。
ケガしちゃっても、これがあれば大丈夫だから、寂しくなっちゃっても、これがあれば大丈夫だから、だから……」
かえってきてね。
そう言って、小日本はまた泣いた。
この涙を、最後にしてやる。
もう二度と泣かせはしない。
俺は誓いを心に刻みつけて、少女の涙をそっと拭った。
(続く)
次回の【編纂】日本鬼子さん十四は……?
田中たちの住む世界への侵入に成功した忍の鬼、烏見鬼。
そこで待ち受けているものは、鬼にとっての楽園であった!
烏見鬼は人間たちに紛れ込むようにし、浮浪する鬼、綿抜鬼とのコンタクトを狙う!
烏見鬼の任務は成功するのか?
鬼子たちの今後の行方は?
そして、「田中の住む世界」と「鬼子の住む世界」の関連性とは……?
果たして、歌麻呂はこの物語を書き切ることができるのかッッ!
怒濤の十四話、更新日、未定ですッッッ!!!
乙!こうやって少年は旅立つ訳ですな……って、ミキティ(?)たかだか「ぷりん」の為に鬼子宅を襲撃したのかっ?!
なんとリスキーなw もっと簡単に入手できるとこが人間界にあるだろに……ん?彼らはまだ人間界にはいけないのか?
乙です。
いつもながら丁寧にネタを拾ってくれていて、
鬼子ワールドへの愛を感じますね。
人間界に話が及ぶと、ちょっとスケールが広がって大変になってくると思いますが
ご無理なさらず続けていってくれればと思います。
あぁ。そっか。勘違いしてた
>>58 人間界にいくために、通り道にある鬼子宅を襲撃して強引に突破した。という話か。
風太郎がわんこに敵うのは雑学と飛べることくらい。って言ってたのはSS・みずのてからかなって思った。
ジャスミンのくしゃみで火を吹くのは以前鬼子が黒焦げにされてたっけなw
チチドリ攻めとヒワイウケのネタまで取り入れてるのはワロたw
まさかこんなにコメントを頂けるとはゆめにも思わなんだです……!
ありがたやありがたや。
>>58 >>60 ミキティは鬼子宅を強引に突破しました(笑)
無理難題を出されたミキティ、忠実な子……!
>>59 今後十話くらいのプロットはすでに出来上がっちゃってたりします。
手に負えないほどスケールを広げる予定はないので、大丈夫です、多分!
>>61 意識的に・無意識的に、色々なネタを拾わせていただいています。
ちなみに「すすきのの道」はパラレルだったりします。
『おによめ2012夏号』を読むと「ナルホド!」と頷けるはずです!(ステマ)
>>62 「みずのて」は、何度も読んじゃいました。
丁寧に書かれていて、色々見習わせていただきました。
>>63 マニアックな人にも面白く、というスタンスで今回は書かせていただきました。
邪主眠をもう少し目立たせてあげたかったなあ、と反省。
とまあ、鬼子纂は色々な作品・ネタ・折々の書き込みを吸収した、
いわばリスペクト&リスペクトな作品です。
だから頭に【編纂】と付けてるんですが、独りよがりなところがあるので、
到らぬところはあるかもしれませんが、
これからも生ぬるい目で見守ってやってくださると嬉しいです。
◇ ◇ ◇
鬼子「鬼子と!」
ついな「ついなの!」
鬼・つ「「鬼ONほうそう!」」
鬼「明日は『くりすます』ですね!独り身の寂しいみなさまこんにちは〜ひのもと鬼子です」
つ「ちょい待ちぃや!何いきなり視聴者にケンカ売っとんのや!」
鬼「え?だって、明日は『くりすます』ですよ?」
つ「それはさっき聞いたっちゅーねん!それが何でそないな挨拶になんねん!」
鬼「ですから、そんな日にあたしたちの放送を聞く人なんて、カップルや家族ではありえないでしょう?
わたし達の放送はそんな寂しい人たちの心をあったかくして差し上げることこそが使命だと思うんです」
つ「別の意味で熱うなるっちゅ〜ねん!なんやねん、その自虐趣味か加虐趣味か分からへん思考!それに、
そない幅の狭いニーズだけやのうて、もっと幅広い層にもちゃんと視聴してもろとるに決まっとるやろ。
自分で勝手にこうやと限界キメて狭い殻ん中に籠るンは、うちはごめんやで!」
鬼「ハッ! ……それもそうですよね。わたし、間違ってました。何度叩きのめされてもシツコく懲りず、
しぶとくまとわりついてくるだけのことはあります。
さすがはゴ(ピー!)よりもしぶといと評判のついなちゃん」
つ「ふんっ せやろせやろ!……ん?なあ……それ褒めとんのやろか?」
鬼「もちろん!言うまでもありません!
そして、ついなちゃんの助言に従って、冒頭から『りていく』しようと思います!」
つ「ん、んー……?せ、せやな。ま、出だしは変えた方がええやろ」
鬼「それでは改めまして!
──お茶の間のみなさ〜〜ん!こんばんわ、ひのもと鬼子ですっ」
つ「如月ついなやでっ」
鬼「明日は『くりすます』です。きっと、美味しそうな『くりすますけーき』でお祝いしている事でしょう」
つ「せやなっ!みんな楽しゅうやっとるやろ!」
鬼「この日ばかりはみんな楽しそうですよね。でも、その切った『けーき』は一皿、二階の部屋から半年以上
出てこない内弁慶のお兄さんにも忘れずちゃんと分けてあげて下さ……」
つ「ちょっちょっちょ、ちょ〜〜〜〜待ちーやっ!なして引きこもりがおる事になっとんのやっ!」
鬼「え?いえ、だってさっきの層を切り捨てる訳にもいきませんし……これで家族団らんの層も取り込んでいますよ?」
つ「そのご家庭ってそないな境遇やったんか?!やのうて、逆に団らんの方にケチついとるやないけ!さっきの層って
なんやねんそれ!なしてわざわざネガティブな層にスポット当ててんねん!そーゆーんはそっとしといたり!
大体やなー、日本全国の家庭に必ず引きこもりがおるわけないやろがっ!」
鬼「え……そうなんですか?」
つ「なに真顔で聞き返しとんねんっ?!やり直しやっ やり直し!」
鬼「えー……っと祝日にもかかわらず、お仕事の忙しい皆様、お疲れさまです。ひのもと鬼子です。
つ「なんや変な出だしやなぁ……(小声) えと、如月ついなやでっ」
鬼「明日は『くりすます』です。楽しむ準備は万端ですか?街中を歩くだけでもワクワクしますね?」
つ「せやなっ街の飾り付けとかピッカピカ光るヤツとかテンションあがんねんやっ!」
鬼「急にバイトが入って街ゆく『かっぷる』を眺めるハメになったアナタ!無理して早めに仕事を片づけたのに本命の
彼氏に『ごめん、急用が入った』と見え見えの『どたきゃん』された『きゃりあうーまん』のあなた!
鬼ONほうそうが心に空いた隙間をうm……」
つ「だーーーーーっ!!カットや、カット!!なんやねん!その妬み僻みに満ち満ちたシチュエーションはっ!!」
鬼「え……?」
つ「え?やない!なに意表を突かれた的な顔で聞き返しとんねんっ!さっきから聞いとったらなんやねん!
無駄にネガティブな層への語りかけはっ!ニッチにもほどがあるっちゅ〜ねんっ!」
鬼「いえ、だからこの放送を聞いてくれそうな層に語りかけることでもっとこの放送を有名にしようかと」
つ「不特定多数にケンカ売っとるよーにしか聞こえへんわ!もっと普通でええんねんっ一般の家庭、
普通なカップルたちへの語りかけ。それで十分やっちゅ〜のっ!大体、何やねん、心の隙間てっ!」
鬼「いえ、心の鬼に憑かれないよう、この放送で隙間を埋めて差し上げようかと」
つ「無為にえぐっとるよ〜にしか見えへんわっ!余計なお世話にもほどがあるわっ!
もっとふつーでええねんっ普通で!」
鬼「そ、そんな難しい……」
つ「難しないっ!一体、今までどんだけ荒んだクリスマスを過ごしてきとったんや?!」
鬼「え?あたしですか?……うちは『くりすます』とは無縁ですから……特には」
つ「なんや。寂しいやっちゃなーそんなんやから歪んだクリスマス観になるんやで〜」
鬼「そういうついなちゃんだって……」
つ「へ?う、うち?」
鬼「どういう『くりすます』をすごすつもりなんですか?」
つ「う、うち?!ききき、きまっとるやないけっ ウチはクリスマスにはおじーちゃん達とせーだいに祝うんやでっ」
鬼「へー……あの『まっど、さいえんちすと』のおじーちゃんが……てっきり発明につきっきりだと思っていました」
つ「うぐっ」
鬼「うぐ?ついなちゃん……さては……うそ、つきましたね?」
つ「ぐぬぬ……え、ええやないけっ!クリスマスに夢みることくらいっ。
そ、そーゆー鬼子こそ何にもあらへんクセにっ」
鬼「だったら、折角ですからもっと夢のあること考えてみましょうよ」
つ「へ?夢のあること?一体、どういうこっちゃ?」
鬼「だから、今言ったじゃないですか。くりすますに夢を見ることを ですよ。
たとえば、ですね〜。くりすますの夜、憧れの人を独り占めできたら……なんてどうかしら?アナタはどうしたい?」
つ「う、うち?うちは……その……ポッ(///)」
鬼「あら、どなたか心当たりがいるのね?」
つ「うちは……のにーやんと……」
鬼「ふんふん」
つ「手……を……」
鬼「手?」
つ「……い…で……を…たい」
鬼「はぁ、街の中を手をつないで歩きたいと…………ぷ」
つ「あぁんっ?!笑ろた?今、鼻でワロたやろ!」
鬼「あ、いえいえ。そーですねー。やっぱり女の子ですから、ロマンチックな日は好きな人と過ごしてみたいなあ
って、思いますよね〜(棒」
つ「ほう?ほなら、鬼子やったら、どないなクリスマスを過ごすつもりや?」
鬼「あたし?そーですねーあたしだったら……素敵な夜景の見えるバーで……」
つ「ほぅほぅ?」
鬼「こう、『君の瞳に乾杯』みたいな台詞はベタですが憧れますよね〜」
つ「ま、まあ、せやな」
鬼「……で、『今日はもう帰さない』とか『部屋をとってあるんだ』なぁんていってきて……」
つ「ん"?」
(SE:ポワンポワンポワン)
(BGM:なんかエッチそうなの)
鬼「例えば……そう素敵な人と……あんな事とかこんな事とか……あン……もぉ、ダメですよぅ
……そんな……とかいいつつ……え?こ、ここでですか?……とか……」
つ「お、おぉ〜ぃ、鬼子ぉぉ〜」
鬼「あ、いやぁ、そんなコトまで……他の人に見られちゃうぅ……あん、巧さぁん……」
つ「ぬがっ! お、お、鬼子ぉぉおっ!」
(SE:ビシィッ)
鬼「あぅ、痛っ!なんです。今いいところだったのに」
つ「い、い、い、今、巧のにーやんで何妄想しとったぁぁあ!!」
鬼「何って、ごく普通のカップルの営みですけど?具体的には……(ボソボソヒソヒソ……)」
(SE:ぽひーーーーっ)
つ「…………ふあぁっ?!(///)ふ、ふ、ふ、不潔や〜〜〜っ!!
巧にーやんでそないな汚らわしい事考えるんやないでっ!」
鬼「失敬な。素敵な殿方との逢瀬をそんな風に言わないで下さい」
つ「逢瀬云々やのーて、自分の発想が不純や言うとんのやっ!なんやねん、ちょっと話ふっただけでクライマックス
超特急なガチ妄想にハシりおって!」
鬼「それが何か?第一。ウチは代々『イイ男は押し倒してでもモノにしろ』が家訓なんですからね」
つ「な、何やねん、この肉食女子……」
鬼「鬼ですもん」
つ「それいいたいだけちゃうんかい!」
鬼「あぁん、想い始めたら止まらなくなってしまいました。巧さ〜んv あなたの鬼子が今、行きま〜すv」
つ「あ!こらナニ勝手に抜け駆けしてんねん!っちゅ〜かこのままやと巧のにーやんのてーそーが危ない!
こら、全力で阻止せな!ちょお待ちぃ、鬼子ぉお〜」
(SE:ドタドタドタ)
──アイキャッチ「鬼子とついなの鬼ONほうそう!」──
http://ux.getuploader.com/oniko4/download/548/Oni-on%21.png (BGM:なんか疲れたようなコミカルなような曲)
鬼「あぁ……巧みさん……あんまりです……」
つ「せやな。いくら何でもあれはないわ……」
鬼「私たちの事、ぜんっぜん眼中になかったですね……」
つ「鬼子はまだえぇで。うちなんか最初っからそうやったで」
鬼「でも、なんだかんだいって構ってもらってたじゃないですか。ズルイですよ。
何にもしゃべってないのに気遣ってもらえるなんて。あたしもああやって気遣って貰いたいです」
つ「そーゆー鬼子かて、ロクに話しかけれへんうちを差し置いてガンガンいってたやないけ。
巧のにーやん、ちぃとばかし、引いてたで」
鬼「それで押しきれたらよかったのに……」
つ「それについては阻止できたんはよかったけどな……」
鬼「男のひとってみんなあぁなんでしょうか……」
つ「そんなことないで……て、いいたいけどなあ……鬼子ンとこのナマモノ見てるとどーやろ?」
鬼「まさかあそこでハンニャーが出てくるなんて」
つ「あんな寒いのに胸元メッチャあいた寒そうなドレス着とったな」
鬼「みました?巧さんのあの表情!」
つ「ハンニャーの胸元に目ぇ釘付けやったな……賭けてもええで、あれはうちらの事、完全に忘れとったで」
鬼「もう!男の人って、みんなああなのかしら。胸の大きさが女性の全てじゃないというのに」
つ「せや、せや!胸がでっかいのが全てやないで!」
鬼「……はぁ、私だって全くないわけじゃないのに」
(SE:ぽよん、ぽよん)
つ「ぐ……ぬ、う、うちかて全く無いわけやないで……それに、しょ、将来性は十分や」
(SE:ぽよぽよ)
鬼「はぁ、せめて、もう少し大きければなあ……」
(SE:ぽよん、ぽよん)
つ「これからやのうて、今、成長してくれへんかなあ……」
(SE:ぽよぽよ)
(SE:ぽよん、ぽよん)
(SE:ぽよぽよ)
(SE:ぽよん、ぽよん)
(SE:ぽよぽよ)
鬼・つ「「はぁ〜〜〜ぁ……」」
つ「……っだーーーーーっナニが悲しゅーて女二人して自分の乳揉み続けなあかんねんっ 勝負や鬼子!
このもやもや、鬼子をシバく事で晴らさな収まりがt」
(SE:ポコポコポコポコビシッバスッバシッゲシッ)
鬼「はぁ、他の日にしてくれないかしら。ついなちゃんはそれで気が晴れるでしょうけど……
あたしはそんな事では気晴らしにもなりませんし」
つ「ぐぬぬ……じぐじょ〜〜〜思い切っりシバいとってなんちゅう言いぐさや〜〜」(ボロッ)
(SE:ピロリロリピロリロリx2)
鬼「あ……田中さんからめーるが届きました」
つ「あん?うちンとこにもや」
鬼「なになに『くりすます会』の案内めーるですって」
つ「なんや、『そろそろ収録も終わるだろうから適当にみんなで集まって騒ごうよ』やて?!くぅ〜〜たくみぃ〜
持つべきものは友だちやなぁ〜〜」
鬼「ホントに」
つ「ほなら、ちゃっちゃと済ませて次いこかっ!」
鬼「それでは今日の鬼子作品の紹介に移りましょう──」
===========================================
…という訳で、クリスマス前夜の放送って設定で書いてみたっ!なんか色々ネタ混ぜているウチに長くなったっ!w
「ねえ、呪いの動画って知ってる?」
ネット上に数多存在する「呪いの動画」と称されるもの。
その中に、「本当の呪いの動画」が存在していた。
「全て駆逐されたんじゃなかったのか!?」
「途上国にデータが残っていたようです!」
「2chにスレが乱立しています!!」
「うわあああああああああああああああああっ!!」
「貞子ッ…!!」
ネットを介して拡散する「サダコ・ウイルス」。
日本は、人類は破滅へのカウントダウンを刻みはじめた。
「意味論だよ。言葉を変質させる事で、その実体を変えてしまうんだ。
情報体であるサダコ・ウイルスには、有効ではないかと私は考えている」
「そんなものが…」
「あるんだよ。いや、『いる』と言った方がいいかも知れない。
インターネットの膨大な情報の中から生み出されたキャラクター、
あるいは妖怪、あるいは魔物、あるいは…」
鬼。
貞子「誰?」
「ひのもと おにこ。 あなたを、萌え散らさせて頂きます」
サイバー空間を舞台に、今、人類の存亡を賭けた最終決戦が始まる!!
「貞子VS日本鬼子」
貞子たんと組み合わせるとは……この発想、ありそうでなかった!!!
そして入場者にはミラクルヒワイライトプレゼント。
ヤイカ「みんなで鬼子に力を送るでゲス!!」
萌え散らされた貞子は、意味をずらされて萌えキャラに…!!
(あ、すでに萌えキャラ化もされてますがw)
【新規さんへ】
・このスレには九州外伝=日本Ω鬼子という荒らしがいます。
コテハンごとあぼーんすることを推奨します。
なおコテハンを外してをIDをコロコロ変更し、自演を繰り返したりもするので要注意です。
・その他に天使ちゃんと呼ばれる荒らしがいます。
コテハンは持たずにスレを荒らしに来るのが特徴です。
・SS書きをターゲットにし住民の中を裂こうとする荒らしがいます。
基本的に絵を描く人もSSを書く人も何ら確執はありません。
荒らしに餌を与えないで下さい。
荒らしに構う人も荒らしです。
サダコ・ウイルスから救われた人類。
…だが、新たなる恐怖が日本を襲う!!
「検死の結果、毒物は検出されなかったそうです」
「? じゃあ、死因は一体…」
謎の怪死事件をつなぐ遺留物-
「形状は、蛇の鱗に酷似しています。でもDNA鑑定の結果は…」
「…人間?人間の鱗だっていうのか?」
更なる犠牲者と、「怪物」の目撃証言。
パニックに陥る日本列島。
それは、「昭和」という時代が遺した「呪い」。
「…彼女は『被害者』だったのじゃよ。社会の差別と偏見が、彼女を怪物にしてしまった…」
「! こ、これは…」
「そう…彼女は、『へび少女』は既にこの世にはいない」
恐怖と疑心暗鬼によって生まれ、伝染し、増殖していく「へび少女」。
日本を救えるのは、もう「彼女」しかいない!!
「…信じるしかありません。『萌えが差別<ヘイト>を食い尽くす』と」
『へび少女 VS 日本鬼子』
シャキンッ!!
鬼子「『うろ娘(こ)萌え』という言葉を、ご存知ですか?」
鬼が出るか!蛇が出るか!?
さだこ・へび少女ときたら、次はひょっとして…口裂け女?!昭和のモンスター大集合っ?!
--映画化第3弾--
戦いは、終ってはいなかった…
次々と蘇る、前世紀の怪異達!!
口裂け女! 「わたしキレイ?」
人面犬! 「ほっといてくれよォ!」
ターボばあちゃん!「シャーカシャカシャカー!!」
テケテケ! 「テケテケェ!!」
メリーさん! 「今、あなたの後ろにいるの」
仮死魔霊子! 「足をよこせぇぇぇぇ…」
ノストラダムス! 「恐怖の大王が降りてくる…」
失明ピアス! 「… パリンッ(←踏まれた)」
鬼子、絶体絶命の危機!!
それを救ったのは、萌えキャラとなった貞子、へび少女、
そして元祖萌え化都市伝説キャラ・「花子さん」!!
「萌えキャラの力、今こそご覧に入れましょう!!」
日本の未来を賭けた、恐怖と萌えの全面対決!!
『おばけ VS 日本鬼子 -アポカリプス-』
プレミアム前売り券を買うと、
「復刻版 カッパ・ブックスの妖怪大百科」が憑いてくる!!
wwww なんで妖怪版アヴェンジャーズみたくなってるのさwww
シリーズを重ねる毎に、どんどんチープになっていくのはお約束ですw
〜映画新シリーズ第一弾〜
…それは、太古の昔から地球上に存在していた。
リポーター「これはCGではありません!現実の出来事です!」
…あらゆる物質に宿るエネルギー生命体「ツクモガミ」
警官「廃材の化け物だ…」
…奴らは、ある日突然、人類に牙を剥いた。
男「化け物…っていうか、これは…」
「ロボット」の姿をとって。
「あの赤いロボットは味方です!」
「強いな、流石メイドインジャパンだ?」
「僕の名前はジン。君は?」
「私はジャプティマスプライム。あなた達の言葉で言うと
『日本鬼子』 です」
中国大陸支配を狙う、悪のツクモガミ軍団!
「今この時より、我がこの国の支配者である!
故に、『チャイナトロン』と呼ぶがよい!!」
正義の機械生命体に、人類の未来は託された!
「萌えないゴミの回収日です」
-HINOMOTO ONIKOR-
…目に見える力が、全てではない。
同時上映、「日本鬼子 東京に現る」
81 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:04:22.38 ID:QmerbB1F
◇ ◇ ◇
まるで春が咲き誇ったような舞台だった。紅をさし、白粉を塗り、幾つものカンザシで美しく飾りたてた女たちは
艶やかな笑みを浮かべ、色とりどりの着物を纏いて舞を舞う。その後ろでは同じように美しく着飾った女たちが
華やかに微笑みながら楽を奏で瀑布の音に負けじと楽の音を奏でていた。
大量に流れ落ちる水の音にもかかわらず、研ぎすまされた技量で奏でるおんな達の演奏は妙なる調べを観客達の耳に
届け震わせた。度重なる練習により磨き抜かれた足運びは一糸乱れぬ舞踊と相まって一斉に花開く世界を
そこに再現した。
ここは滝の上に設えられた大舞台。巨大な滝を背景に設置されたこの舞台には55人ものおんな達があがり、
舞い踊ってもビクともしなかった。
今日はこの町の鉱山が閉鎖される最後の日。そのためおんな達は最後の宴にと呼び出された。金を輩出していたこの
金山もついには金脈が尽きたのだ。そこで金山が閉鎖される最後にと盛大な宴が開かれることになった。
そのためだけにこの舞台が用意され、おんな達はここぞと日頃鍛えた芸の腕前を披露した。そして舞台の上には
艶やかな春が、夏が、時には秋や冬までが咲き誇った。
いつもは、やんややんやとはやし立てる観客の男達は魅了され、固唾をのんで見守っていた──
──違う。そうじゃない。男達の表情は硬く強ばっている知っているのだ。この後何が起こるのか、どうなるのかを──
あたしはとっさに振り返った。
いた。楽の音を奏でる娘たちの中に。同じように微笑みながら演奏を続けるあたしの姿が──
何も知らないあたしは笑みを浮かべながら内心では必死に楽器を奏でていた。これから起こることを何も知らずに──
駄目、みんなそこに居てはいけないっ!!あたしは警告しようと必死に叫んだ。
「──────っ!」
だが、大量の水が流れ落ち、その音に負けじと響きわたる楽の音、たかが小娘ひとりの声が届くはずもなく──
「──────────っ!」
それでも必死に声を張り上げる。みんなそこから逃げて、と。だがしかし、必死に声を絞り出そうとしても声が出ない。
やがて宴もたけなわにさしかかった。楽の音も踏みならす舞いにも一層熱がこもる。すると、舞台の端に一人の男が
現れた。舞台の死角だったので、女たちは誰も気づかない。舞踊に演奏に一心不乱だ。男は屈強な肩に大きなまさかりを
かかえている。永く使い込まれて所々黒く錆が浮かんでいて、研ぎすまされた刃だけがあたしの目にやけに白々と映えた。
「!!」
知っている。あたしは知っている。男がなにをするつもりなのか──
やめて!お願いやめて!
「────っ!」
必死に懇願するもやはり声は出ない。おとこはあたしに気づかない。おんな達は一層艶やかに、華やかに舞い踊る。
おとこはまさかりを振り上げ、舞台を支えている太いツタに向け振りおろした。
これだけ大きなまさかりでも太いツタは容易には切れない。
「───────っ!!」
あたしは叫ぶがやはり声が出ない。おんな達は気づかない。男衆が自分達の舞踊に魅了されてると信じきっていた。
舞台の上のあたしはだんだん白熱していくみんなの踊りと演奏についていこうと必死だった。
幾度目か振りおろされたまさかりでツタに切れ目が入る。
「──────────っ!!」
もはや自分でもなにを叫んでいるのか分からない。誰の耳にも入らない。舞台の熱狂が頂点に達したその瞬間──
ブツン
ツタが切断された。
舞台の要のツタが切られた瞬間、55人ものおんな達が上がってもビクともしなかった舞台は一瞬でバラバラに
なった。突然の事でおんな達は自分の身に何が起こったのか分からぬままだろう。悲鳴をあげながら、わたしと
54人ものおんな達は奈落の底へと落ちていった──
82 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:05:06.98 ID:QmerbB1F
◇ ◇ ◇
「────っ!! っは!はあっ!はあっ!」
息苦しさと共に目が醒めた。
「……夢…」
またあの時の夢……数百数十年経った今でも時々うなされる。これからもうなされ続けるだろう悪夢──
私はゆっくりと起きあがると人気のない城内を見回した。明かりになるようなものはなく、周囲は闇に沈み、
私の着ている白い夜着だけがぼんやりと闇にうかびあがっている。
私は窓に歩み寄ると鎧戸をあけた。戸はギイときしんだ音をさせつつ開いた。途端、青白い月の光と冷たく清浄な
外の空気が城内に入り込んでくる。それらに身を晒しながら外を眺めた。
闇に沈んだ城下町は月明かりに照らされ、ぼんやりと輪郭を浮かび上がらせている。こんな時間だというのに、
いや、こんな時間だからこそ、町のあちこちに明かりがぽつぽつと灯っている。夜は鬼の時間なのだ──
そんな町を眺めながらも私の目は過去に向けられていた──
◇ ◇ ◇
──さいしょ、あたしの目の前に無造作に放り出されたそれはボロクズに見えた。
「!せん太? せん太ぁ!せん太ぁ────!」
あたしは駆け寄ろうとしたが屈強な男衆に組みしかれ、地面に押しつけられた。もがこうと必死にあがくが、
男たちの手はビクともしなかった。
そして、目の前に放り出されたボロクズのような男は弟・せん太の変わり果てた姿だった。
「まったく、あんたたち姉弟はそろいも揃って強情だねぇ『姉ぇちゃんを返せ』『おうちに返して』その一点張りだ」
頭上からそんなあきれたような声がふりかかる。あたしは声のするほうを見上げた。そこには一人の美女がキセルを
ふかしていた。あたしが無様に土間の地面に頬を押しつけられているのとは対照的に一段高い畳の上に寝そべり、
気だるげにひじかけにもたれ掛かっている。肩を大きく露出した紫の着物を纏い、大きく結い上げた髪の毛には
いくつものきらびやかなかんざしを刺していた。まるで遊女のような格好だが、遊女ではない。
女は艶やかな紅をさした唇からけだるげに言葉を紡ぎ出す。
「いいかげん、あきらめることだね。あんたは『売られ』たんだ。おとなしく『しつけ』られて『客』をとってくれれば
悪いようにはしないよ。毎日おいしいおまんま食べれて、綺麗なおべべも着られるってんだから」
そう言って、唇からぷかあっと、キセルの煙を吐き出した。
そう、この女は女衒(ぜげん)だ。人買いから女を買い、色町に売り渡す。あたしはこの女に『買われて』この
色町へやってきた。らしい。
「じゃけん、なんかの間違いじゃ!おっとうがそんな事をするわけはない!あたしたちをうちに返して!」
あたしはなおもそう言いつのった。だが、女はあたしの必死の訴えも聞き飽きたとばかりにキセルをふかしている。
そして豊満な胸の谷間から一枚の紙切れを取り出すと無造作に開いてピラピラとふってさし示した。
「そうはいっても現にあんたを買い取った証文がここにあるんだ。この金額を返済しないかぎり、アンタはずっと
ここでこのままよ」
そこには間違いなくおっとうの名前が記されているという。だけど、その頃のあたしは字も数も分からなかった。
だから信じられなかった。
「そんなこと──」
いつもの堂々巡りにさしかかった時、どぼっと鈍い音が響いた。
目の前のボロクズのようになったせん太──弟だ──に男が無造作に蹴りを入れたのだ。
「やめて!弟に酷いことしないで!ぶつならあたしをぶてばいいでしょ!」
弟に駆け寄りたいが、ずっと男衆に組みしかれ、押さえつけられていて動くことすらままならない。
「わかってないね。あんたは大切な商品なんだ。そうムザムザと商品を傷モノにできるもんかね」
つい、と手にしたキセルで男衆に合図を送ると、男の一人がせん太の髪をひっつかんで顔をこちらに向けさせた。
83 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:05:51.30 ID:QmerbB1F
「っ!せん…太っ」
あの人なつこかった弟の顔は見るも無惨に腫れ上がり、原型をとどめていなかった。腫れたまぶたが目を塞ぎ、意識が
あるのかも分からない。腕と言わず足といわず痣だらけで身体は埃にまみれていた。意識があるようには見えなかったが、
かすかに「姉ちゃん……」と唇が動いたような気がした。
顔を背けたかったが男衆に無理に顔を向けさせられた。
「わかるかい?このボウヤは言うことを聞かないあんたの代わりにこんな目にあっているのさ」
再び女がキセルを振ると、男は無造作に手を離した。せん太は力なく、べしゃりと地面に顔を突っ伏した。
「せん太ぁっ!」
そんなあたしたちの様子も目に入らないように、女は無関心な調子で言葉を続けた。
「うちの男どもにとっちゃ、こういう事は毎度の事でね。あんたみたいな娘やこのボウヤみたいなコの扱いには
手慣れたもんさ。今はかろうじて死なない程度にしちゃいるが、今夜一晩、川べりにでもほっときゃ死んじまうだろうね。
その子。今まで何度もやった事だから確かな事よ」
「そんな……!」
あたしは女を見た。女はそ知らぬ顔でキセルをふかしながら言葉を続けた。そして相変わらずけだるげに指示を出した。
「さ、あんた達。そのボロクズを河原に捨てといで」
「へいっ!」
男たちが無造作に弟をかつぎ上げた。あたしはぞっと肝が冷えた。
「まって!お願い、まって!」
懸命に駆け寄ろうとあがく。が、あたしを押さえつける腕は少しも緩まなかった。そうしているうち、弟はアッサリと
あたしの目の前から運び去られてしまった。
……そんな……このままでは……弟は、助からない……
「そんな……弟が……何を……何をしたって言うの……」
誰ともなく呆然と呟いた言葉だったが女が答えた。
「きまってるじゃない。ぬ・す・っ・と。いい?あんたがどんなツモリであっても、うちの商品なんだ。それを勝手に
連れだそうとするのは立派な盗っ人。なら、殺されても仕方ないわよねえ?」
「そんな……」
不意に、かん、と音が響きわたった。女がキセルの中身を灰入れに捨てた音だ。あたしはビクリと身をすくませる。
「事実よ」
女は冷然と言い捨てた。
いつの間にか男衆の戒めはなくなり、あたしは地べたに力なく座っていた。
しばらく間をたっぷりもたせて、女は口を開いた。
「そうねえ……だけど、あのボウヤを助けるすべはまだ残ってるわよ?もちろん、あなた次第だけど」
どこかなぶるようにそう言ってくる。
「………………」
あたしに重い現実がのしかかってきた。前からそこにあったのに頑なに認めなかった現実が。
「……かり……した……」
かろうじて口から言葉が漏れた。
「あら?今、何か言ったかしら?気のせいよね〜?」
まるで、捕まえたネズミをいたぶるネコのようにわざとらしく女は聞き返した。
「わかり……ました……言うことを……聞きます……だから……弟を……」
「ん〜聞こえなあ〜い。今夜はひときわ寒いわね〜河原の石には今頃、霜がおりてるんじゃないかしら〜」
「わかりました!何でも言うとおりにします!『しつけ』も『客ひき』も何でもします!だから、弟は!弟の命だけは!」
そこまで叫んで何かがぷつりと切れた。後は嗚咽で言葉にならなかった。女はそれで満足したようだ。何か合図を
したんだろう。男が一人、出てゆく気配がした。
84 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:06:34.78 ID:QmerbB1F
「んふふ、いいコね。あのボウヤは今から手当をすれば何とか助かるでしょうね。何なら雇ってあげてもいいし
故郷(くに)に帰るなら幾らかお金をもたせてあげてもいい。とにかく悪いようにはしないわ。あなたが約束をちゃんと
守るなら……ね」
そう言って、泣き続けているあたしに歩み寄り、キセルの尻でつい、とあたしの顎をあげ、顔を上に向けさせた。
そのまま目をすがめ、あたしの泣き顔をのぞき込む。何故かあたしはこの女の瞳がネコのようだ。と、ボンヤリと思った。
「ふぅん……あんた、上玉とはいかないが、磨けば上の下くらいにはなれるかもね……悪くないわ」
そう言って手を離すと、もう用はないとばかりに軽く手をふった。すると男衆は心得たように先ほどまでの荒々しさ
とはうって変わった丁寧な手つきであたしを部屋から連れ出した。
その手が逆にあたしに酷い現実を思い知らせた。
──あたしは『商品』なのだと。
その夜、あたしは一晩、泣き通した────
◇ ◇ ◇
──あれから結局、弟にはあわせられなかった。男衆にどうなったのかしつこくたずねたが、ぶっきらぼうに
三日は眠りっぱなしだろうという答えが返ってくるだけだった。
あたしはその後、『客』をとるための『しつけ』と『芸事』の練習をみっちりと仕込まれる為に息つく暇さえなかった。
『しつけ』とは『客』をとるための作法やら、技量やらの総称だ。所作のこまごまとしたものから屈辱的なことまで
色々とさせられた。男衆を相手に練習させられることもあった。
あたしが今までゴネていたため、時間を無駄にしたと酷く責められた。先輩の遊女に手ひどく叱られながら必死で
覚えることを頭に詰め込んだ。
そうこうしているうちにあっという間に三日が過ぎ、一週間が過ぎ、半月が過ぎた。どんな辛い仕打ちにも弟の為と
自分に言い聞かせ、堪え忍んだが、とうとう弟に再会することは叶わなかった。男衆のいう事には弟はあの女に言い
含められたそうだ。あたしが弟の為に身売りを承諾した事を知り、また暴れ出そうとしたという。だが、それであたしが
酷い目にあうとときふせられ、小銭を渡されてしぶしぶ郷里(くに)に帰った。と。
それを聞いてあたしは心のどこかで安堵した。おそらく弟とはもう会うこともないだろう。しかし、今のあたしを
見られたくはなかった。もうこの後はあたしの事など忘れて達者で暮らしてくれればいい。そう自分に言い聞かせた。
……そして、いよいよ格子部屋にあげられ、そこに来た『客』をとる。という頃、あの女に呼び出された──
◇ ◇ ◇
「あんた、鉱山にいく気はないかい?」
あの女はキセルの煙を吐き出した後、唐突にそう切り出した。
ボロクズのような弟と再会させられた例の土間のある建物の中だ。あの女は相変わらず遊女の様な紅色で肌を露出した
着物を着て肘掛けによりかかり、キセルをふかしながらそう問うてきた。
「……鉱山?」
女は紫煙を吐き出しながら、うっすら笑みを浮かべた。
「そ。鉱山。ま、ここじゃ名前を出すのもはばかる金山の町なんだがね。活きのいい娘を数人、寄越して欲しい
って、話があってさ。それだったらあんたがいいんじゃないかってね。これでもあたしの目利きは確かだと評判でね。
あんたは上玉って程じゃないが磨けば上の下はいけると踏んでいる。この話に丁度いいんじゃないかってね。
何せ、向こうの『客』は金を掘り起こしている連中さ。金払いもいい。
これでもほかに希望者が殺到しているんだよ?それでも、まあ、向こうさんの希望が希望だけに、ね。それで
あんたにも声をかける事にしたのさ」
どうでもいい。どの道自由のない人生だ。どこであれ同じ地獄が続くのなら。興味などない。そう思った。
だがそれに続く言葉が少しひっかかり、あたしの注意を引いた。
「それに、向こうの『客』の相手はなかなか大変だが、稼ぎの良さはここと段違いだしね。上手くいけば、あたしの
様に遊女から足を洗えて、しかももう身売りしないで済むくらいの田畑を用意できる金子まで稼げるだろうさ。
弟さんと郷里(くに)に帰りたいだろう?」
思わず、顔をあげた。今何と?
85 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:07:24.25 ID:QmerbB1F
「……興味をもったね?そうさ。あたしも昔はここで『客』をとる身だったのさ。だが、必死で『芸』と読み書きを
覚えて自分の『証文』を買い戻すことができた。それでこうやって……」
その女の言葉をあたしは遮った。
「今、弟と帰るって……だってせん太は郷里(くに)に帰ったと……」
言葉を遮られたのがよほど不快だったのか、女は渋面になった。急に不愉快そうになり、小さく舌打ちすると
つっけんどんに言葉を継いだ。
「言葉のあやって奴よ。で?あんたにとっちゃこんな機会、もうないかもしれないよ?どうすんだい?」
──あたしは暫く考えた後、その話を承諾した。どうせどこにいっても同じなのだ。なら自分の証文を買い戻せるかも
知れない。この話にのってみるのもいい。そう思っていた。
86 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:13:28.54 ID:QmerbB1F
◇ ◇ ◇
──出立には三人の男衆と二人の遊女が一緒だった。男衆は、女たちが逃げたりしないように鉱山までの見張り役兼
道案内。遊女二人はあたしと同じく鉱山行きが決まった年若い娘たちだ。
二人とも年が近いこともあり、道中、早い段階で打ち解けた。二人ともすでに格子部屋で『客』をとった経験があり、
あたしよりも少しだけ先輩だった。一人は線が細く、肌がやけに白い娘。名を桔梗といった。
「でも、痛くしといて気持ちいいと思ってる客が多いのよねーおまけに○○いじっときゃ女は悦ぶって勘違いしてるし
終わった後、ヒリヒリして薬油塗っとかないと次の客がとれやしないったらないよ」
桔梗は病気じゃないかと思うくらい、白く細い外見に似合わず、あけすけに客との交合を話題にあげつらう娘だった。
「いいじゃないかい。そんなの適当にアンアン言っときゃ満足して金払いがよくなるんだからさ。それよか、あたしゃ、
やたら春画に描かれてることを鵜呑みにしてねちっこくいいかいいかとたずねて来る事の方が迷惑さね」
そう言ってガハハと豪快に笑うのはもう一人の娘。桔梗とは対照的で、肌は浅黒く、エラがはり、骨格がガッシリ
した娘だ。名をおますといった。自分の顔を芋に例えて笑い飛ばす豪快な娘だった。
二人ともあたしがまだ格子部屋にも上がってない事を知ると、心配そうに顔を見合わせた。
「ちょいとそれ本当かい?!この先の相手は鉱夫なんだよ?!もうちょっとやりようはなかったのかい?!」
おますは憤懣やるかたなしといった風情だ。
「最初の客はうちらでもそれなりに相手を選んでもらったんだよ?!それなのによりにもよって……っ」
よくわからない表情でいるわたしに二人はこう教えてくれた。
なんでも、『客』の中にも『初モノ好き』がいるらしく、値が張るにもかかわらず、そういう娘ばかりを率先して
買う『客』がいるという。そういう客は逆を言えば『初モノ』を扱い慣れた客でもあり、そうでない客に比べて娘が
痛手を引きずることが少ないのだという。
「それなのに……これからいくお山の『客』連中は荒くればっかりと聞いてるよ。ちゃんと女の扱いを心得てるのかねえ……」
そう呟く桔梗の脇をおますが肘でドンと突いた。あたしを不必要に怖がらせないよう、気を使ってくれたのだ。
「安心おし!向こうに着いたらあたしが男衆に掛け合ってどうにかしてやっから!なぁに、向こうだって娘が使いモノに
ならなくなるのは困るハズだし!少しはマシになるさ」
そういって、安心させるように胸をドンと叩いた。
あたしは勇ましいその言葉に力づけられたが、逆におますのことが心配になった。あたしたちの立場は決して強くない。
身体に傷を付けられるようなことこそされないものの、身体に傷をつけずに酷い目にあわせる手段はいくらでもある。
おますはその外見によらず愛嬌のある娘だが、それが男衆に通用するかはあやしい所だ。二人にとってあたしは
後輩にあたるのだろうが、あたしたち三人とも遊郭に身を
置いてそんなに時が経っていない。おますの強がりは空元気にすぎないと痛感していたのは当の本人かもしれなかった。
……そんな心配をしながら、山道を歩いていると、ゾクリと背中を這い上がるイヤな気配を感じた。
まただ。あたしはそう思いつつ振り向いた。そこには男衆の一人がしんがりをつとめていた。
「どうぢだ、はやぐいがねぇが」
だみ声でそんな風にせき立ててくる。三人の男衆のうち二人の事は粗野な男、ぐらいの印象しかない。が、この男は
強烈だった。
おますはよく、自分の顔の出来を芋に例えていたが、この男ほど醜くはない。芋を崖の上から転がし落としたら
こうなるかというくらい、あちこちがデコボコしてて傷だらけで、小さいいびつなまぶたの向こうからは藪睨みの目が
ねちっこい視線を放っている。背は身体も他の男衆よりも短躯で、あたしの肩までしかない。それなのに横幅はあたしの
倍近くあり、身体はガッシリしていた。聞けば、流行り病に倒れた娘を町の外に運び出す仕事をよくしていたそうだが、
あたしは例え病で死ぬ事があってもこの男に運び出されるのだけはゴメンだと思ったものだ。この男には何の非も
ないのに、それがわかってても沸き上がる嫌悪感はどうしようもなかった。
この醜い男の本名は知らない。だが、病で死んだ娘を運び出す役割が多かったためか、骸(むくろ)と呼ばれていた。
そして、この男から何故か粘っこい視線を感じることがたびたびあったのだ。
あたしはその男の視線から逃げるように足を早めた──
87 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:14:10.40 ID:QmerbB1F
◇ ◇ ◇
──しつけは済んでるということで、おますの努力も空しく、あたしはすぐに格子部屋にあげられた。
格子部屋とは文字通り格子で区切られた部屋で、『客』が外からおんなを品定めするための部屋だ。格子の向こうで男が
気に入った女を見つけるとおんなを買いに店に入ってくる。
──格子部屋に出されて最初のあたしの『客』のことはよく覚えていない。『しつけ』で教えられたことが、
頭の中を空回りしていたことだけは確かだ。教えられてた事はほとんど無意味だったような気がする。
気がつけば、あたしの身体は剥き出しのまましとねの上に横たわっていた。そして、事が済んだ『客』は悪態を
つきながら早々に部屋を出ていってしまっていた。
──まるで嵐のようだった。それがかろうじて覚えていた印象だ。難破した船がバラバラになるように自分の身体が
バラバラになってなかったのが不思議だった。
ぼうっとしていると、男衆の一人が無造作にやってきて、まるで犬小屋の掃除をするように部屋の中を片づけはじめた。
あたしの横たわるしとね周り以外を手早く片づけ追えると、
「おう、お初だってな。きょうはこれでおしめーだってよ。ゆっくり寝てていいぞ。今日は特別にやってやるがよ。
次からはてめーの使った部屋の事はてめーで始末をつけな。わかったな」
無造作にそう言い捨てて、さっさと部屋を出ていった。
──これからずっと、こんなことを続けるのか……それも毎晩、何回も──
ぼんやりとそんな事を考えて横たわっていたが、その時はもう一つ、部屋に入ってきた気配に気がつかなかった。
その気配はあたしのそばに寄ってくると、無防備なあたしの身体に何かを這わせはじめた。首、肩、乳房、わき腹、
へそ、そして……ほと。
今日、もっとも痛めつけられただろう場所に触れられ、その痛みであたしの意識はハッと目覚め飛び上がった。
バッと身体を起こした。あたしの上に覆い被さっている影が何かわかった途端、全身の肌が泡だった。あの男が、
そこにいた。デコボコの芋のような顔面、小さな白目がちな目、醜い容姿……骸と呼ばれてる男だった。
あたしはとっさに手近なものをかきよせ、身体を隠しながら男から少しでも離れようと後ずさった。
今、この男に襲われてもなす術はない。せめてもの抵抗に精一杯睨みつける。
「……何をしてるの……!」
あたしの声は怒りと恐怖で震えていた。だが、それ以上に動揺していたのは男の方だった。
「お……おでば……おでばだだ、がらだをふいでやろうがど……」
例のだみ声で必死に弁明しようとしていた。そして、その手には湿った手ぬぐいが握られており、その手ぬぐいは
あたしの破瓜の血で赤く染まっていた。
カッと頭に血が昇り、考えるより先に身体が動いた。素早く男に近寄ると、その手から手ぬぐいをひったくり、
また離れた。例え血の一滴でも自分の一部がこの男に握られているのはガマンがならなかった。
「……出てってっ!」
精一杯の嫌悪と怒りを込めて言い放った。
「お……おでは……おでは……っ」
「出てって!」
もう一度、ハッキリ言うと、男は肩をおとし、トボトボと部屋を出ていった。
──完全に男の気配が消えてなくなると、あたしは完全に力が抜け、部屋の壁にずるずるとくずおれ、気を失うように
眠りに落ちた。
結局、あたしはあれから三日、格子部屋に出られなかった──
◇ ◇ ◇
最初の『客』は序の口だった。鉱山の男たちはみな屈強で、粗野で荒々しく、あたしはそのたびに翻弄されっぱなしだった。
夜毎繰り返される嵐、暴風にも似た荒々しさに吹き散らされるあたし、どれだけ強く爪を突き立ててもビクともしない
背中……繰り返される偽りの愛……上滑りする睦事……
『愛』というものがピンとこないまま愛してると紡ぐ唇の虚ろさ……あたしを抱き寄せる、抗がいがたい屈強な腕……
汗と鉱物と埃混じりの男の臭い……
88 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:14:47.90 ID:QmerbB1F
「なあに、そのうち慣れるさ」
おますはガハハと笑いながらそう言うが、あたしは最初、そうは思えなかった。だが、人間というのは、思ったより
強かなものらしい。気がつけば、一晩に何人かの『客』をとれるようになっていた。しかも『しつけ』で教わった技を
自分なりに応用さえできるようにさえなっていた。
とはいえ、だからといって生活がラクになった訳ではなかった。なんとか『客』を捌けるようになってきた頃、
今度は『芸』を仕込まれはじめた。これは別段おかしな事ではない。おんな達はよく宴の席に呼び出され、芸を披露する
こともある。前の町でも、わずかなりとも習ってもいた。
夜は『客』をとり、昼は芸の稽古……再び息の詰まるような毎日がはじまった。『芸』のほうはまだお座敷にあがれる
腕前ではない。それでも、宴で芸を披露できる程度に上達すれば『上客』をとれる機会が増えるかもしれない。
そうなれば実入りがよくなる。それは自分を買い戻す好機につながる。なので、あたし達は必死で稽古にかじりついた。
それだけではない。読み書きができる遊女に必死に頼み込んで字を教えて貰っていた。
もっとも、そちらの方は桔梗やおますには怪訝な顔をされたのだが。証文という、自分の命を握られてるようなものを
自分以外のものだけが読める状況が嫌だった。少なくとも、騙されにくくなるはずだ。だから字も懸命に覚えた。
その間、骸というあの男もこの町に留まっていた。あたし達をここに送り届けた男衆のうち、二人は早々に帰って
いったというのに。
何をしてくるでもなく、気がつけば、粘っこい視線を時々投げかけてくる……だが、それだけで近づいてもこなかった。
薄気味悪かったが、自分ではどうしようもない事もわかっていたので放っておくしかなかった。
そうやって過ごしていると、数年などあっという間に経過していった──
◇ ◇ ◇
「ねえねえ、聞いた?近々盛大な宴が開かれるらしいって!」
ある日、その愛嬌でいろいろな所から話を仕入れてくるおますが、そんな知らせを持ってきた。
「へぇ、するってぇと、お武家様や大名なんかも出てくるのかい?上手くいけば、お偉いさんに見初められて身請けっ!
なんてこともあるかもしれないねぇ……」
いつもは歯に衣着せぬ物言いをする桔梗でさえ、珍しく舞い上がった事を言い出した。
ここ数年遊女として生きてきてわかった事がある。今の生活を抜け出す術は三つしかない。という事だ。
一つ、借金を返して綺麗な身体になること。でも、実際には日々の生活費や、着物・化粧だけでなく、色々な事に
お金がかかる。切り詰めても少しずつしか貯まらない。
ここは他の色町よりは『客』の羽振りは良いと聞いていたが、それでも期待していた程ではなかった。
一つ、死んでしまうこと。たまにこの生活に耐えられなくて井戸に身投げする娘がいる。時々うらやましいと思って
しまう自分がそこにいた。けれど、結局は少しずつだけど貯まってゆく金子と桔梗とおますの存在とが身投げを
思いとどまらせていた。
一つ、誰か偉い人の目に留まり、誰か『客』に借金を返済して貰い、身請けされること。これも滅多にあることでは
なかった。でも、それでも女達はその僅かな望みにすがるしかなかった。
「場合によっちゃあたし達も呼ばれるかもしれない……ということかしらねぇ……?」
あたしたちも芸を覚えて結構経つ。今ではそれなりにお座敷に呼ばれるようになっていた。もっとも、あたし達より
上手な芸達者はこの小さい町の中でもかなり居る。
「ま、それでもあんたは呼ばれないだろうね〜な、に、せ、山芋だもんね〜」
桔梗がそういっておますをからかった。いつも自分の顔を芋になぞらえ冗談にしているおますは苦笑するしかない。
……はずだったが、何故かおますは得意げだった。
「んふ。ふ、ふ、ふ〜ん。それがねぇ。お大名様は遊女全てを参加させるよう、お命じになられたの、よ〜」
「全員?!」
この町の遊女はそう多くないとはいえ、50人はいる。
「それは……盛大な宴になるわね……」
あたしの感覚では正直、想像がつかなかった。
「な、に、を、悠長な事言っているんだいっ これは大きな好機なんだよっ」
そういって、おますがあたしの肩をドンとこづいた。強い力に思わずあたしはよろめく。
89 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:17:59.69 ID:SgPKGS4r
「そうだよ。あたしたちにだってまったく当てがないなんてこたぁないハズだよっ。だったら、ここはめいっぱい
発憤しようじゃないかえ」
桔梗がそういってあたしの肩をゆさぶった。
その日、あたし達は「宴の日」の為の準備に大半を費やした。おますの持ってきた知らせはすぐに他の女達にも
知らされたのだ。遊女の全てを呼び寄せる盛大な宴のわりに催される日は思いの外すぐだった。
しかも、その理由はこの金山が閉められるからだとか。だとしたらあの町に戻ることになる。丁度、金子が
貯まってきた所だ。あと少し、頑張ればあの証文を買い戻せる。この町での稼ぎは思ったほどではなかったが、それでも
やはり、他の所よりよかったのだろう。おんなが自分を買い戻せる事はめったにないとおますから聞いていた。
ともあれ、女達はこの日のためにとっておきの白粉いや紅を用意し、きらびやかな衣装をひっぱりだし、かんざしを
磨いた。あたしたちもそれらに不備がないか確認し、互いに協力しあった。
「いい、もし、この中の誰かがお武家様の目に止まって身請けされても恨みっこなしだからね」
おますはそういってあたしたちとうなずきあった。おんな達の間ではこういう事があると陰で足の引っ張りあいをする。
誰だってこの苦界から抜け出したいから。でもあたし達がそんな事をしても自滅するだけだ。あたしたち三人は
気心がわかりあってるためか、自然と協力しあってた。おかげで、先輩遊女達のイヤがらせじみた妨害も力を合わせて
切り抜けられた。
──宴当日──
あたしたちはめいっぱいめかし込んだ。とっておきのカンザシをいくつもさし、目立つように真っ赤な朱塗りのクシで
髪を結い上げた。自分の顔は山芋だと冗談をいうおますでさえ丹念に白粉を塗り紅をさした。
「さあ、二人とも出番よ。お大名様たちにあたしたちの艶やかさを見せつけて失禁させてやろうじゃないかえ!」
桔梗がいつものミもふたもない言い回しであたしたちを鼓舞した。
「いやあね、あんた何いってんのさ」
おますがちょっと困ったように応じた。でも、ガチガチに緊張していたあたしはつい、吹き出してしまった。それを
見ておますも苦笑を浮かべる。
「まったく、しょうがないね。あんたたちもドジ踏むんじゃないよ」
そして、舞台が始まった──
まるで春が咲き誇ったような舞台だった。美しく飾りたてた遊女達は艶やかな笑みを浮かべ、色とりどりの着物で
舞を舞う。その後ろでは同じように美しく着飾った遊女達が艶やかに微笑みながら楽を奏で瀑布の音に負けじと楽の音を
奏でていた。研ぎすまされたおんな達の奏でる演奏は妙なる調べを観客の耳に届け、震わせた。度重なる練習で
磨きぬかれた足運びは一糸乱れぬ舞踊と相まって一斉に花開く世界をそこに再現した。
──演奏はだんだんと早くなっていく。あたしは必死で楽器を奏でる。それなりにひけるようになってきたと思ったが
まだまだ未熟だ。そう思いながらも、目の前を踊り舞うおんな達にあわせ楽器を奏でる。
いよいよ失敗するのではないかと緊張が頂点に達したとき、視界がぐらりと揺れた。
「っ?!」
なんだと思う間もなく妙な浮遊感が襲い、あたしは訳も分からず悲鳴をあげた。次の瞬間には全身が激しい衝撃に
襲われ気を失った。
かろうじて記憶に残っていたのは崩壊してゆく舞台の端に立ち、大きなまさかりをもった男の姿だった──
90 :
はなのうた:2013/01/03(木) 20:19:48.77 ID:SgPKGS4r
>>81-89 はい。そんな訳で、とあるキャラの過去話。「はなのうた・前半」をお届けいたします。一体、誰の過去話なのか。
終盤にはわかると思いますが、どうぞお付き合い下さいませ。
後半は明日。投下する予定です。それでは。
91 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:00:11.03 ID:gslPjl0S
◇ ◇ ◇
──次に意識を取り戻したのは喉の奥に水が入り込んでむせかえった時だった。全身を激しい痛みが襲う。身体が
重く頭も重い……せき込む度に激しい痛みが全身を走った。そして、たまらず胸に入りこんだ水を吐き出した。
「ぜぇ……ぜぇ……、気が……ついた……かい?」
息も絶え絶えのその声で、あたしはあたしを半ば引きずるようにして水辺から引き上げようとしてくれてる人物が
おますだと気がついた。
「ひどいもんだね……あんた。でも、生きててくれてよかった……」
あたしは全身を覆う苦痛と吐き出す水でそれどころではなかった。おますに水辺から引きずられながら水を
吐いていた。えずく度に全身は耐えがたい痛みに苛まれる。身体の感覚はないがまだ身体の大半は水の中に
あるようだ。
首の後ろを引っ張られ、引き上げられる。身体の上半分が水から出た所でおますは力尽きたのか手を離した。
「ごめんよ。あたしにゃこれ……以上……引き上げられない……」
全身の痛みが強くて体の感覚が分からない。頭も打ったのかぼうっとする。視界がぼやけていて見えるものも全て
あやふやだ。おそらくは白い小石が集まっている川岸だろうか。ぼんやりした視界は一面、白かった。
「一体……何が……おこった……の」
動かない唇を動かし、かろうじてこう聞いた。おますも力尽きたのか、あたしの側に横たわるように腰を下ろした。
「あたし……にも……何がおこったのか……わかりゃしないよ……舞台が……急に崩れて、みんな……落っこち
ちまったんだ……」
息も絶え絶えに返事が戻ってくる。
「みんな…は…桔梗は……どこ……?」
その答えはしばらくしてから返ってきた。
「桔梗は……死んだよ。……みない方がいい……他の……みんなも……ひどい有様さ」
「そんな……」
あの高い舞台の上から落ちたのだ。あたしやおますのように命があるほうが幸運なんだろう。やがておますは水を
吸い、重くなった衣装をひきずりながらのろのろと立ち上がった。
「さて……あたしはともかくあんたも酷い有様だしね。待ってな。今、助けを呼んでくるよ」
おますだってなにかしら痛手を負っているのだろう。足を引きずるようにしながらやっとという感じで立ち上がった。
「あ……」
霞んだ視界におますがゆっくりと遠ざかってゆくのがぼんやりと見えた。あたしは急に心細くなり、おますを呼び
止めようとした。
「まって……お願い……まって……」
だが、痛手を負った身体は思うように動かなかった。おますを追いかけようとしてもまるで芋虫のようにずりずりと
前に進む。途端、甲高い音をたてて懐からこぼれ落ちるものがあった。ぼんやりとした視界に黒く楕円形のものが
いくつも写る。
「あ……いけない……」
自分を買い戻す為の金子だ。貯めた金子をお守り代わりに懐にしのばせていたのだ。このお金さえあれば、自分を
買い戻せる。自分を買い戻し、家に帰り、もう一度せん太に会える。
腕を前に伸ばし、硬貨を集めようとする。が、全身の痛みで、身体が思うように動かない。力が入らない。無理に
腕を伸ばし、震える手でやっと一枚だけ掴みとる。全身の痛みのせいで硬貨をつかんだ感覚がない……
あたしは自分の金子さえ拾い集められない自分の腕の弱々しさ、ふがいなさに涙がこぼれた。同時に男たちの腕を
思い出す。
自分を抱きよせるときの腕、自分を押さえつけた腕……自分にもあれだけの力強い腕があれば……そう思わずには
いられなかった。そうやって、腕を伸ばし、うつ伏せになった状態でどれくらい経っただろう。やがて遠くから
おますの助けを求める声が聞こえてきた。
「おねがいです、助けて、助けてください。舞台から滝に落ちて……死にそうなんです──」
「…………」
何かぼそぼそ声が聞こえて来たような気がした。相手は男の二人組のようだ。そして、何か鋭い声がしたと思ったら、
次の瞬間、柔らかいものを叩く鈍い音が響いた。
92 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:00:54.27 ID:gslPjl0S
「ギャーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
おますの絶叫が響き渡った。その声を断ち切るようにゴッゴッと身の毛もよだつような音が覆いかぶさる。やがて何も
聞こえなくなった。
「お、おい、何も殺すことなかったんでねーべか……」
しばらくしてそう囁く男の声が聞こえた。
「馬鹿言うでねぇ。お上の言うことに逆らう訳にもいかねーべ。聞いたべ?『おんなたちを決して助けてはならぬ』
とよ。女たちはぜってー助からねえ。なら、いっそ楽にするのがせめてもの慈悲っちゅうもんだべ」
男たちの声はこれ以上おんな達に関わるのはゴメンだと囁きあうと足音が徐々に離れていった。
あたしはそのまま、水辺に取り残された。目から涙が後から後からあふれ続ける。あたし達が何をしたというのか……
桔梗はあけすけで、明るく、どんな時もミもフタもない物言いで、元気づけてくれた。おますは愛嬌ある笑顔で
どんなに辛くても屈託なく励ましてくれた。二人とも懸命に
生きようとしていた。確かにあたし達は汚れた女なのかもしれない……でも、こんな風に虫ケラみたいに殺されるような
罪深いことなどしていないはずだ。
男は言っていた。
「おんなたちを助けてはならぬ」と。それはつまりこの事態はお上が引き起こし、最初からおんな達をみんな殺す
つもりだったのだ。
……あたしは無力だ。身体はこれ以上動かない。桔梗は死んだ。おますもたった今、死んだ。殺された。二人とも
いい仲間だった。辛いときも互いに支えあい慰めあったから、井戸に身投げをせずに済んだ。二人のいないあの世界で
一人、生き延びられる気がしない。それに、今の状況からあたしが生き延びられるとも思えない。
あたしの身体は水で冷えきって、身体の痛みも感覚とともに徐々に無くなってゆく。あたしもそろそろ終わりだろうか。
こんな事になっても思い出すのはせん太の事だった。あと少しで会えると思った弟。最後に、せめて、せめて一目
だけでも、会いたかった……
シャン、シャン……
どれくらいそうやっていたのだろう。どこからともなくそんな音が聞こえてきた。あの世へのお迎えだろうか?
あたしのような女でも、極楽浄土へいけるのだろうか?それとも地獄につれていかれるのだろか……
ジャリ……
ぼんやりとした視界に砂利を踏みしめた足が写った。
「?」
どうやら、お迎えではないようだ。なんとか霞んだ目を見上げると、お坊さまが立っているのがぼんやりと見えた。
少しだけあたしの胸に希望が灯る。助かるかもしれない……と。
「お坊さま……助けて……助けて……ください……」
「助かりたいか」
お坊さまにしては精悍な声が問いかけてきた。
「だが、見たところ、酷い有様だ。その様子ではどうやっても助からん」
ピシリとした言葉使いはお坊さまらしからぬ物言いだった。
「そんな……」
「だが、手だてが無いわけではない。お前にはどうやってでもやり遂げたい未練があるか?復讐したい相手がいるか?」
低く、力強い声が不思議な魅力をもって淡々と響く。
「もし、あるなら手を貸そう。外道へと身を堕とす事になるが、それで良いなら未練を要に命永らえる外法がある」
お坊さまの言葉とも思えぬ言葉だが、その時のあたしは何も考えられなかった。
「このまま人として死ぬのならば安らかに死ねよう。だが、外道に堕ちてでも叶えたい望みがあるなら……」
「────」
あたしは答えを口にし、弱々しく顔を伏せた。せん太に会いたい。その未練のためだけにあたしは魂をこの男に
売ってしまってもいいと思った。半分、自暴自棄になっていたのかもしれない。どうせ地獄に堕ちるとわかりきってる
汚れた業深き女の身。なら最後くらい自分の思うままにするのもいいだろう。答えた口元は知らず笑みを浮かべていた。
93 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:01:37.77 ID:gslPjl0S
「──よかろう。その望み、しかと聞き届けた」
その怪僧はそう約束した。
◇ ◇ ◇
手にした錫丈を傍らに置くと、男はあたしの上にかがみ込んだ。そして、あたしの手から掴んで離さなかった硬貨を
とりあげた。
「タガメか。いいだろう。これを使う。この術には要となる蟲が必要だからな」
その言葉で、あたしが金子だと思い必死で掴んでいたのは虫けらだと知った。何と滑稽なことか。
しかし男はこう言った。
「念のこもった虫けらならより確実になろう」
男は、懐から朱塗りのさかずきと札を取り出し、川の水をすくって、虫と札をその中に入れた。そして、何か口の中で
ゴニョゴニョと呟いていたが、意識の薄いあたしには何を言っているのかは分からなかった。やがて、あたしを川の水の
なかから抱き起こすと、そのさかずきを口元に持ってきた。
「飲め。歯は立てるな」
あたしは言われた通り、さかずきの中のものを飲み干した。ガサガサした不快なものが喉の奥を通り過ぎるのを感じる。
飲み込んだ後、ケホケホとせき込んだ。不快なものはゆっくりと腹の中を下ってゆく。
どくん
急に、胃の腑の中で何かが弾けた。今までの痛みに数十倍はあろうかという痛みが腹の中で破ぜた。まるで無数の針が
腹の中で炸裂したかのようだ。
「────っ!!」
すさまじい絶叫が口をついて出た。身体をのたうち回らせ暴れ回る。鋭い痛みの針が胃の腑を突き破り、次々と全身を
貫き、引き裂きながら広がってゆくようだった──
──どのくらいそうしてのたうち回っただろうか……短い間だったようにも何日も経ってしまったようにも思う。
気がつくと、辺りはすっかり暗くなっていた。
あたしは、あいかわらず、川べりに横たわっていた。冷たい水が身体をじっとりと冷やしている。だが、相当長い時間、
水に浸っていたはずの身体は問題もなく動いた。水を吸って重くなった着物を引きずり、立ち上がる。不思議な事に
身体の痛みは引き、新たな力が全身に漲っている。
やがて、そんなあたしの耳に、シャン、シャン、と、例の錫丈の音が近づいてくるのが聞こえてきた。
「……気がついたか。もう動けるようだな」
お坊さまは後ろにおんな達を引き連れて歩いてきた。ボロボロの衣装、青白い顔と肌……あたしと同じ、他のおんな達か。
当然、その中にはおますや桔梗の姿はみられなかった。知らない顔ばかりだ。
「お前で最後だ。すくい上げられたのはこれだけだったか……まあいい。ついてこい」
そう言うと、この暗い川辺を歩きだした。あたし達は不思議と真っ暗なはずの夜道を不自由なく歩くことができた。
お坊さまはあたし達を伴い歩くうち、川辺から山道へと踏み
いっていった。そして、シャン、シャンという錫丈の音に導かれるように足を運ぶうち、前方にボウ、と何かの明かりが
見えてきた。誰かが道をやってくる。
明かりを掲げ、やってきたのは男だった。質素な衣類からすると、この辺りの農夫らしかった。
「なんだべ?この遅い時刻に……ひぇっ?!」
男はあたしたちの異様な様子にひどく驚いたようだった。おんな達は血塗れでボロボロな衣装をまとっているのだ。
驚くのも無理もない。だがそれよりも、あたしはその声を聞いて怒りの炎が胸の奥で燃え上がるのを感じていた。
この声。あの男の声だ。おますを殺したのはこの声の男だった。あたしはこの男を許さない、許さない許さない……
あたしは突如沸き上がった怒りとともに男につかみかかった。
94 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:02:21.87 ID:gslPjl0S
「あっああっ、あぁあぁぁあぁあああっ」
喉の奥から人とも獣ともつかぬ叫びがほとばしる。巨大な手が男を掴みあげ、絞めあげた。あたしはその男の喉元に
牙を立てようとむしゃぶりついた。
「そこまでだ」
シャン、
錫丈の音が耳朶を打つ。途端、身体が見えない何かに縛られ、動けなくなった。農夫はいましめからとき放たれ、
気を失ってずるりとくずおれる。
「ぎっ……が、がぁっ……っ!!」
ブツブツと、念仏のように響く言葉の旋律があたしを縛る。重々しく、深い声があたしを押しとどめた。あたしは
呪縛された身体を無理に動かし、頭をめぐらせた。視界の隅でお坊さまが札を掲げ、ブツブツと何かを唱えていた。
掲げたお札は青い不思議な光を放ち燃えているようだ。
「うぬの目的はそうではなかろう。そんな事に力を使うでない」
そう言うと、まじないを止めたからだろうか。お札の光は光を失い、身体の自由をとりもどした。だが、あたしの
怒りは復讐を妨げた男に、お坊さまにそのまま向けられた。
「がぁあぁっ!!」
怒りの衝動のまま彼にとびかかり、肩口にかみついた。そして笠が飛び、血が散った。
──それから、暫く時間が経過した──
やがて、かなり時間が経過して怒りが引き、あたしは我に返った。あたしの首筋にそっと指が添えられた。思いの外
優しい手の指先。その感触にハッとして、身体を離した。目からはいつの間にやら赤いものが流れていた。あたしは
怒りに飲まれ、今何をしたのだろう?
「気が済んだか──」
肩口を噛み裂かれているにもかかわらず、全く動揺した様子もなく、男は言った。
「お前の望みは弟との再会だったはずだ。それを忘れぬことだ。それ以外の事で力を使う事は許さぬ。よいな」
だが、あたしは別の事に驚いていた。
「お坊さま、あなたは……」
笠が飛んだ男の姿は異形だった。精悍な青年の顔にはこめかみから太くガッシリしたツノが生えていたのだ。
また、眉間には鋭く斜めに刀傷が入っており、ひきむすばれた眼差しが強くきびしい眼光をたたえていた。
あたしは自分の卑しくあさましい性分を見抜かれいるような気がして狼狽え、目を逸らした。
「これか?そうだ。拙僧もうぬらと同じ……外道よ」
落ちた笠を拾い、かぶりなおしながら男はそう言った。肩口の傷には全く頓着していない。
「さて、本来ならもう少し先でやろうと思うたが、よい機会だ。ここで済ますとしよう」
男は再び、懐をさぐり、札を数枚取り出すと、あたし以外のおんな達に向きなおった。
「うぬらの望みはうぬらをこんな目にあわせた者達への報復……そうであったな」
そう言うと、左手で印を結び口の中でブツブツと何事か唱える。と、右手に持ったお札が白い炎に包まれた。
「うぬらをこんな目にあわせたのはこの国の領主だ。お前たちの口からここの隠れ金山の秘密が漏れることを恐れ、
口封じのためにこんな事をしでかしたのだ……」
そう言うと、手のお札を宙に放った。すると、お札はほの白い火の玉となり、それぞれ、おんなたちの頭上に
漂いだして止まった。そしてお坊さまは、おんな達にこのような事を目論んだ者達と領主の名を告げた。
「その火の玉の後をついてゆけ。おまえたちの仇の元へ導いてゆくだろう。存分に復讐するがよい」
すると、おんな達の足下から青白い炎が沸き上がり、おんな達は炎に包まれた。一瞬後には、大きな青白い
火の玉になり、お札の白い火の玉に導かれるようにして、空を飛んでいってしまった。
「うぬらの望み、成就することを祈っておるぞ」
空に散ってゆく火の玉を見送り、男はボソリとつぶやいた。数年後、おんな達の呪いか領主達は落城し、姫達は
奇しくもそろって水に身投げする憂き目を見ることとなった……
95 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:03:12.62 ID:gslPjl0S
「……さて、つぎはうぬの望み……だったな。懸想した娘はさっきのおんな達の中にはおらなんだか?」
お坊さま(この呼び方がふさわしくないのはわかっている)がおんな達が消えた後、その後ろに控えていた人物に
声をかけた。
あたしはその人物を見てギョッとなった。
「いいえおぼうざま。だっだいまみづがりまぢだだ」
ひどいだみ声でその男は答えた。ひどく低い短躯、がっしりした体つき、傷だらけの芋のような容貌……その男は
あの醜い男、骸(ムクロ)だった。男のねっとりとした粘っこい視線があたしをねめつけていた。
◇ ◇ ◇
「なんで?!どうしてっ?!あんたがここに居るのさっ?!」
あたしは嫌悪感で身を引きながら叫ばずにはいられなかった。
「この男は領主のたくらみを知ってそれを逆に利用してやろうと目論んだのだ」
お坊さまが淡々とあたしの質問に答えた。
曰く、おんな達が滝壺に落とされたら、自分も助けに飛び込み、そのまま死んだ事にしてしまえば、ともに郭抜けが
できる。おんなを助け、下流に流れ着いて適当な所で陸にあがり、その後は自由に住む所を定める。醜い自分でも
そうやって郭抜けをすれば一蓮托生。女も一緒に過ごさない訳にはいかないだろう。
「……だが、実際に飛び込んでみたものの、この男自身も水に溺れ、おんなを助けるどころではなかった。結局、
瀕死の状態で流れ着いた所に偶然居合わせたのでな。丁度、足下を這いずっていた虫ケラを使って拾い上げた」
……あたしはこの醜い男の考えを知ってゾッとした。この男にずっとみられていたこともさることながら、この男の
考えに嫌悪感しかわかなかった。下手をすればこの男に救われていたかもしれないのだ。この男と落ち延びるなど
冗談ではない。
「近寄らないでっ!あんたと一緒なんてまっぴらごめんよっ」
男は無言でじっとこっちを見ている。熱っぽい、ドロリとした視線を注いでくる。それだけで全身に汚ならしいものを
塗りたくられているかのような嫌な気分に陥った。
「おでば……おめえをずぐえながっだ……おめえをものにでぎながっだ……だがら、ぜめで、づいでいぎでえ……」
だみ声でそんな事を言ってきた。
「拙僧はうぬの望みを叶えると約束した。それが望みなら仕方なかろう」
あたしが「お断りよっ」と、叫ぶ前にお坊さまがそう言ってしまった。
「なっ……!そんっ……お坊さまっ!?」
あたしはお坊さまに言い募ったが、お坊さまの意見を翻させることは不可能だった。逆になにがいけないのかと問わ
れ
言葉に詰まった。理屈ではないのだ。この言い知れぬ不快感、嫌悪感……それらをうまく説明できたとしてもお坊さまの
意志は変えられなかったろう……結局あたしの訴えは聞き入れられなかった。
96 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:07:15.06 ID:gslPjl0S
◇ ◇ ◇
どの道、あたし達はお坊さまの導きなしには世の中を渡り歩けないと説明された。世の中を見る目が変わっているの
だという。半ば幽霊と同じ状態で世に存在しているのだ。なので、今のまま、お坊さまの導きもなしにさまよい歩けば
たちまち道に迷い、永久にこの世を彷徨う事になるのだとか。つまりこの身がなじむまでの暫くの間は一緒にいくしか
ないのだそうだ。
そして出立。あたしの望みを叶える為、お坊さまに導いてもらう事になっている。しかし、その前に桔梗とおますをはじめ
おんな達を供養してから出立したかったがお坊さまに止められた。
「やめておくことだ、うぬはまだ領主らに抹殺されかかっている最中だと忘れたか。それに、我らは外道だ。外道に
弔われては成仏できるものもできなくなるやもしれぬ……業腹だろうが弔いはこの辺りの者達に任せるがよかろう。
見捨てた後ろめたさで弔わずにはいられぬ事だろうしな」
……そう言われては諦めるしかなかった。せめて、二人の亡骸は一緒に葬ってもらえるよう、一緒に河原に並べて
おくことにした。
二人とも酷く痛めつけられた亡骸だった。できるだけ
綺麗にしてあげたかったが、顔を布でぬぐってやることしかできなかった。……せめて死化粧をと近くで採れた赤い実を
すりつぶして紅をさした。
「こんな事しかしてあげられなくてごめんなさい……」
そしてあたしはおますと桔梗。二人の亡骸に別れを告げた。
──それから。あたし達はお坊さまのシャン、シャン、という錫丈の音に導かれながら、自分の故郷に帰った。そこに
弟のせん太がおっとうと一緒に暮らしているはずだった。
──だが、そこには誰もいなかった。家は荒れ果てあばら屋になっていた。裏の畑も雑草が生い茂って人の手が入った
様子はなかった。そして、おっとうの姿も弟の姿もどこにもみつからなかったのだ……
あたしは隣近所の人に話を聞いてみた。そして知ったのは信じたくない事実だった。
おっとうは何年も前に死んでいた。半ば騙されるような形で人買いに娘を……あたしを買い取られ酒に溺れる日々
だったという。弟も姉を連れ戻すと出ていったきり、結局戻らなかった。そして、金子が尽きる頃におっとうは体調を
崩してしまっていた。挙げ句、誰にも看取られず、ある日ひっそりと息を引き取っていたそうだ。
あたしはおっとうが埋められた墓の場所を聞き、いってみた……土まんじゅうの上に丸石が二つ……それがおっとうの
墓だった。
「おっとう……どうして……どうして……」
その言葉しか出てこなかった。最初は何故あたしを人買いに売ったりしたのか。そしてどうして死んでしまったのか……
気のいい人だった。大らかな人だった。だから人買いにコロリと騙されてしまったのだろう。何となくそうじゃないかとは
思っていたが、それでもあの辛い生活の中では自分を売ったと聞いておっとうを恨まずにはいられなかった。
でも……それでも、それも生きていればこそ。なのに……
あたしは暫くの間、呆然とおっとうの墓の前に佇むことしかできなかった。桔梗……おます……そしておっとう……
好きな人が次々と居なくなっていく……
そして弟は行方がわからない。どこを探せばいいのだろう?
長い間、墓前に佇んでいたが、やがておっとうにも別れを告げると、弟の事が気がかりになってきた。もうあたしの
肉親は弟だけになってしまった。それと気になったことがある。
「弟はここに帰ってきていなかった……?」
あたしの聞いていた話と違う。せめて弟が帰ってきていたら、おっとうは死ななくとも済んだかもしれないのに。
これはどういうことなのか、あの女にもう一度話を聞く必要が出てきた。色町に居る女衒の、あの女に──
◇ ◇ ◇
──だがあの女の居た色町一帯は焼き払われ廃墟と化していた。聞けば大火が出たという。おんなたちも沢山焼け死に、
色町は壊滅状態だった。
廃墟と化した町のなか、偶然見かけた男衆の一人をつかまえて話を聞き出した。
「女衒の姐さん?さあな。あの大火以降、行方知らずよ。おんなどもと一緒に焼け死んじまったのかもしんねぇなあ」
あたしは力が抜けてしまった。これでせん太の手がかりは途切れてしまった……
「せん太?あぁ、姐さんに騙されてた間のあの抜けた小僧の事か」
あたしは聞きとがめた。騙されていた?問い返すと、男は事も無げに語りだした。
97 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:08:01.27 ID:gslPjl0S
「あぁ。姐さんが小金を稼ぐ毎度の手なんだがよ。時たまああいう小僧と賭け……ちゅ〜かお遊戯をするのよ。
ま、小金稼ぎかね」
賭け……その言葉にあたしは不穏な響きを感じていた。男のお喋りはなおも続く。
「姐さんは時々ああいう小生意気な小僧を見つけてはこういう話を持ちかけてコキ使うのよ。持ちかける話はだな。
『姉ぇちゃんを取り返したかったら、うちで働け。働いている間、一日に二刻だけ自由に動ける時間をやろう。
その時間の間にこの色町のどこかにいる姉ぇちゃんを見つけ出せたら、無条件で姉ぇちゃんを返してやろう。
もちろん、うちで働いて姉ぇちゃんを身請けできるだけの金を稼いでもいい。金子が貯まれば姉ぇちゃんを買い
戻せるぞっ』ちゅ〜てな。
──っつても、実際にゃ、その娘は大抵、よその色町へやっちまうから、その町じゃぁ見つかりっこねぇ。
一日のうち二刻は無駄に走り回っておしめーって寸法よ。
せん太って小僧もよく働いたぜぇ。見つからなくても姉ぇちゃんを買い戻すってはりきってな。つーても、小銭で
いいようにこき使われてやがったな。やがて、色町ン中みんな探し尽くして、やっと町ン中にゃぁ姉ぇちゃんは
いねぇって気づいたらしい。姐さんところに怒鳴り込んできたっけな。そしたら暴れたんで今度こそ男衆にごてーねーに
かわいがられて河原にポイよ。ま、死なれても寝覚めが悪いから今度はある程度手加減はされてたがね。今頃はどこで
どーしているのやら」
……あたしはその話を聞きながら、怒りに震えていた。思い出す。あの時、格子部屋に上げられる前、呼び出された事……
鉱山行きの話……つじつまの合わない話……あたしたち姉弟をいいように使って金を儲けていたのだ。あたしを金山に
送り、弟を小間使いにこき使って……全て合点がいった……だが、そのおかげで……その結果おっとうは身を
持ち崩して死んでった……
「ところでよ。あのガキの事を尋ねるってこたぁ、おめぇ、あのガキの姉か?っつーこたぁ、ヤマから抜け出して
きやがったのか?」
そういって、あたしの肩をつかんだ。抗いがたい力強い男の腕がまたもあたしを捕らえようとした。その時だ。
ゴッ
あたしは怒りを男にぶつけた。巨大な腕が男を捕らえ、焼け残った建物の壁に叩きつけた。男は「ぶぎゅべっ」
と、蛙がつぶされるようなうめき声を上げた。ぎりぎりと巨大な腕が男を絞め上げる。
いつの間にかあたしの帯の一部が巨大な腕の形となって男を締め上げていた。
「答えなさい。弟を捨てた河原はどこ?」
男を睨めつけ、問いつめると男はひっと息をのんで
「ば……化け物……」
と、呟いたっきり、気を失ってしまった。結局、弟の行方はわからなくなってしまった。あたしは腹立たしげに男を
放り出した。あの女にいいようにされていたなんて。なんと腹立たしい。あの女など、地獄の業火に焼かれてしまえ。
できればこの手で八つ裂きにしてやりたいとさえ思った。
……ふと自分の腕をみるとポタポタと流れる赤いもので汚れてる事に気がついた。そしてそれは目から出て頬を伝っている。
どうやら、血の涙を流しているらしい。怒りでボンヤリとした頭でそう考えるまま、顔を洗おうと水を貯めている
手近な桶をのぞき込んだ。
──そこには亡者の顔が写り込んでいた。頬がげっそりとこけ、青白い顔は幽鬼の色だ。口からは牙が生え、目は
白目の部分が真っ赤に染まり、血がダラダラと流れている。あさましく醜い、亡者の姿。これが、今のわたし……
まさに化け物だった。
だが、あたしは頓着せず、目から流れ出た血を洗い落とした。幽鬼だろうが亡者だろうが、今はもう、どうでもよかった──
◇ ◇ ◇
町を出ると入り口でお坊さまが待っていた。あたしが見失わないよう、目印としてチリーン、チリーンと導きの鈴を
鳴らし続けていた。まだ、世を見る目になれていないのだ。一人で世の中を動けるようになるにはまだ少し時間がかかる。
「どうした。話は聞けたか」
お坊さまがあたしに気づき、声をかけてきた。あたしは急に気恥ずかしくなり、顔を隠したくなった。この人にもあの
幽鬼のような顔を見られているのだ。同じ鬼なのに、この人の凛々しさと比べてあたしの何と浅ましく醜い事よ。つい、
目を逸らしがちになりながら答えてしまう。
「いえ……弟の行方は辿れませなんだ……」
「そうか」
98 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:08:55.41 ID:gslPjl0S
あれから、せん太が放り出された河原の場所は調べがついた。町の裏手の川だったが、手がかりは何も得られなかった。
お坊さまは、ややあって、あたしたちにこう申しつけた。
「ならば、少しつき合え。この近くで人喰い鬼が出没するそうだ」
◇ ◇ ◇
──夜。町を離れ、街道からも少し外れた所で、あたしたちは火を焚き暖をとった。パチパチとはぜる炎を見つめつつ、
あたしはお坊さまにたずねてみた。
「それでお坊さま、人喰い鬼とは……?」
これだけ暗くても、笠を脱がないのはやはりツノを隠すためなのだろうか……?
それはともかく、お坊さまはうむとひとつうなずくと人喰い鬼について語りだした。
「この街道沿いで女が何人も襲われているらしい。人喰い。と言われても、喰らうのは骸のほんの一部分だけ……
という事らしいな。襲われた女のむくろがそこかしこで見つかるので噂が出回るようになった。ということだ」
お坊さまは、じっと動かぬまま炎を見つめ、淡々と概要を語りつづける。
「なにぶん、この格好だ。物の怪や怪異の話は色々と舞い込んでくる。今回も是非にと鬼退治を依頼されたのだ」
そういって語り終えた。あたしはだいたいの要約を聞き終えたが、腑に落ちない点がいくつかあった。
「しかし、お坊さま、聞いてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「何故、私を同行させたのでしょう?私は非力なおんなですのに……次に、その鬼を見つけだしてどうなさる
おつもりなんです?お坊さまはお坊さまではないのでしょう?」
そうたずねると彼はくっくっく、と、愉快そうに笑いだした。
「……そうよな。我は外道よ。本来、仏門からはもっとも遠き存在よ。それゆえ、例え人喰い鬼が出没しようとも、
退治するいわれなどない」
それならどうして……と、再びたずねようとしたあたしを片手で制して、彼は語り続けた。
「まずは最初の問いに答えよう。単純な事だ。人喰い鬼はおんなを狙って出没するそうだ。ならば、おんながいなければ
遭遇することかなわぬかもしれぬ。次に……うぬはすでにか弱い女ではない。拙僧は見てみたいのだ。うぬがどれ程の
使い手に生まれ変わったのかを」
正直、あたしはお坊さまが何をおっしゃっているのか分からなかった。
「そういう意味ではうぬにも期待しているぞ。オケラよ」
そう言って、炎の向かいにうずくまる醜い男に声をかけた。
言われた男は腰を下ろし、ただ無言でじっと炎を見つめている……
もちろん、この男はあたしがムクロと呼んでいた男だ。当然、あたしたちの旅にもずっと同行していた。最初お坊さまに
名前をたずねられた時も、あのだみ声で「おずぎにおよびぐだぜえ」と言うばかりで、名乗ろうとはしなかった。
なので、お坊さまはこの男を蘇らせるのに使った虫ケラの名前……オケラと呼ぶようになった。
それにしてもこの男には相変わらず嫌悪感しか沸かない。なので、普段はできるだけその存在を意識の外に締め出している。
だが、時々この男の粘っこい視線が身体を舐めるように這い回るのを感じていた。その度に肌が泡立つような嫌悪感に
さいなまれていた。
……とはいえ、ムクロ……いや、オケラはかつて男衆に身をおいていたからわかる。身体もガッチリしているし、荒事は
お手のものだろう。だが、あたしはそんな世界とは無縁で生きてきた。芸事だけの世界に生きてきたおんなが同じ
外道に堕ちたからといって物の怪退治に駆り出されても何かできるはずがない。そう申し立てたが、お坊さまはそうは
思わなかったようだ。
「ふ……うぬは既に力の一端を拙僧に示したではないか」
「お坊さま、それは……」
「シッ!」
あたしがお坊さまに真意を確かめようとしたとき、何かの気配が近づいてくるのを感じていた。
男二人は素早く立ち上がり、焚き火を挟んで接近してくる人影と対峙した。
サク、サク、サク、と軽い足音をたててその人影はゆっくりと焚き火の灯りの中に踏み込んで来た。
99 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:12:43.13 ID:q3Z2Isnv
「やあ、こんばんわ。ちょっと火に当たらせてもらっていいかな。人探しをしているうちに道に迷っちゃって。女の人を
探しているんだけどね。ボクのねーちゃんなんだ……」
やんちゃそうなその声を聞いた時、あたしは自分の耳を疑った。
「せん太……せん太なのかい?」
◇ ◇ ◇
そこにはなつかしい少年の姿が立っていた。人なつっこそうな童顔、質素な着衣、間違いない。弟のせん太だ。
向こうもあたしの事を見て気がついた。
「姉ぇちゃん、姉ぇちゃんなのかい?」
だが、感動の再会とはいかなかった。
ジャリン!!
唐突にあたしと弟の間にお坊さまの錫杖が割って入ったのだ。
「っ?! お坊さま、一体、何を?」
お坊さまは錫杖を構えながら、笠の向こうの目は油断ならぬ光を放ち、弟を睨みつけている。
「よく見ろ。ぬしの弟、既に外道に堕ちている」
言われ、目を弟に戻すと弟は棒立ちでブツブツと何か
呟いていた。いつの間にか目は塗りつぶされたように漆黒に染まっていた。何より、首の斜め後ろに異様な大きさの瘤が
膨れ上がり、そこにいくつもの小さな人面瘡がより集まっていた。
「姉ぇちゃん……姉ぇちゃん……かい……」
せん太が虚ろに繰り返す。すると首の瘤から甲高く小さい声があがった。
「イーヤ、かか様ジャネェ」
別の声が続いた。
「チガウ、ねね様ジャナイノ!」
別の声が叫ぶ
「こんなのかー様じゃナイ!」
「妹、妹ハドコダ妹ハドコダ!」
「チガウチガウチガウ!コイツハチガウ!」
ひとしきり人面蒼たちが騒いだあと、弟はゆっくりとこちらに向きなおった。
「そうか……違うのか……なら……喰い殺しても……いいよね……」
漆黒に塗りつぶされたせん太の目があたしをうつす。せん太の口から牙が生え、指の爪が鋭く長く伸張した。
ギリギリと額から突き破るようにツノが突き出した。
「……せん太!」
次の瞬間、信じられない速さでせん太は襲いかかってきた。お坊さまの錫杖がそれを阻んだ。
ギャリンッ!
せん太のカギ爪と錫杖がかみ合い、火花が散った。あたしに向かって突進してきたせん太はその錫杖によって弾き
とばされた。
「あははははっ あははははっ!!」
そのまま、けたたましく笑いながらせん太は闇の中へと駆け込んでいった。呆然となったあたしをそこに残したまま。
一体、せん太に何があったのだというのだろう……?
◇ ◇ ◇
「──怨念の集合体だ。うぬの弟はそれに取り込まれて鬼と化したようだな」
お坊さまの説明によると、同じような境遇で死して朽ち果てた魂たちが寄り集まり同じ境遇の弟に取り憑いて鬼と化したの
だろう。と、いうことだった。
100 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:13:18.77 ID:q3Z2Isnv
「うぬの弟が死して鬼と化したのか、生きながら鬼と化したのかはわからぬ。が、あの怨念が憑いているかぎりは
うぬの事を姉とはわからぬであろうな」
「そんな……」
やっと、やっと再び会えたと思ったのに…… その間もお坊さまの言葉は淡々と続く。
「そして、生きていようが死していようが怨念を引き剥がせば、うぬの弟は生きてはいられまい。つまり、このままでは
うぬら姉弟は永遠に再会すること叶わぬという訳だ」
しん、と空気が静まり返った。パチパチと火の燃える音だけが聞こえる。
あたしはどうすればいいのか全く考えつかなかった。元より、あたしに何かできるとも思えなかった。何も手だてが
ないのだろうか?知らず顔がうつむいてゆく……
「……ここで先の話に戻る。拙僧に聞いたな?あの鬼をどうするつもりなのか?と」
「?」
話の流れがつかめず、あたしは首を傾げた。このお坊さまは何を言うつもりなのだろう?
「知っての通り、拙僧は外道よ。この格好で旅をしているにも訳がある」
そう言って立ち上がると常にかぶっていた笠を脱いだ。こめかみから生えた、異形のツノと厳しく引き締まった
眼差しが笠の下から現れた。そしてあたしを見下ろすと、力強く語りだした。
「我は我の国をより強くする為、同胞(はらから)を集める為の旅をしておる。国の名前は天魔党。鬼の国よ。
そして我の名は天魔党・侍衆が頭、黒金(くろがね)。こたびの鬼も我が国に迎え入れられぬかとこうして様子を
見に参った。それがよもやうぬの弟だったとはな」
お坊さま……いや、黒金さまの語る言葉がその響きがあたしの中に力強くはいってくる。呆然と見上げるあたしを
見下ろし、男は言葉をさらに続けた。
「うぬも弟と共に我が党に入れ。我が天魔党の力をもってすれば、姉弟揃って再会する望み、造作もなき事。
叶えてしんぜようぞ」
「! それは本当でございますか?!」
思わず身をのりだし、すがりつくような眼差しで男を見上げた。
「わが党には鬼の力や本性を鬼から引き剥がし、物に封じ込める事で人の群に紛れやすくする秘術がある。その術を
もってすれば、うぬの弟も正気を取り戻すだろうて」
あたしはその言葉に光明を見いだしたような気がした。今度こそ、今度こそ、せん太に会える。
「だが、それには条件がある」
「条件……?」
「そうだ。我が党に無能はいらぬ。うぬ自身がうぬ自身を鬼であるというのならば、証明してみせよ。力を示して
みせるのだ──」
101 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:16:34.15 ID:q3Z2Isnv
◇ ◇ ◇
──パチパチと火のはぜる音を聞きながらあたしは一人、炎が踊るのを眺めていた。あれから数日が経過した……
黒金さまの示した条件は鬼の国に入るなら当然の条件だ。しかし、あたしは黒金さまの術で復活したのだ。
確かめるまでもなく、あたしは外道に堕ちている。あんな条件を示したのはあたしの外道としての力を見極めたいと
考えているからだろう。
あたしは今、囮として、火の前に座っている。例の鬼─弟─の仕業であろう女の死体の見つかった場所の近くで幾度か
夜を過ごしてみた。今までは鬼の気配はなかった。だが、今夜は妙な胸騒ぎがする。何か─何か起こるような──
サク、サク、サク、と足音が近づいて来た時は身のすくむ思いだった。ついに来た。そう思った。そしてこの前の
夜のようにその人影はゆっくりと焚き火の灯りの中に踏み込んで来た。
「やあ、こんばんわ。ちょっと火に……」
そこまでしか言わせなかった。次の瞬間、せん太の小さく華奢な身体は巨大な両腕に握り込まれるように掴み取られていた。
言うまでもなく、あたしの「帯の腕」だ。あたしを組み強いた男衆の腕を具現化した忌まわしい恐怖の象徴。
それに今のあたしはさぞ浅ましく醜い容貌に違いない。だが構わない。鬼の国とはいえ、せん太と一緒に暮らせるのだから。
そのためなら忌むべきものだろうが恐怖の象徴だろうがなりふり構ってなどいられない。何だって利用してやる。
「黒金さま、今です!」
そのかけ声と共に黒金さまとあの男……オケラが藪の中から現れた。それぞれ、手に鬼封じの札と縄を手にしていた。
あたしがせん太を抑えている間にオケラが縄をうち、鬼の怪力で縄を切られないよう、黒金さまが札で鬼の力を抑え込む
手はずになっていた。
その時だ、あんな事がおこったのは──
「姉ぇちゃん、苦しい、苦しいよ──」
細く、弱々しい声が聞こえた。閉じた巨大な手のひらの隙間から、せん太が助けを求めてきた。気弱しげな眼差し、
弱々しく差し出された両腕、あの頃の弟と何も変わっていない──
思わず、決意が鈍り、腕の力が緩んだ。途端、せん太は両手から滑り降り、鬼の形相になると、爪を伸ばして、
一瞬であたしの懐に飛び込んできた。
(やられる!)
あたしは再び、死を覚悟した──
白刃が一閃し、血が大量に舞った。全てがゆっくりと動いて見えた。せん太はゆっくりと前のめりに倒れ込んできた。
あたしは思わずせん太を受け止める。すぐ横ではオケラが短刀を両手で構え、得物を前に振り抜いていた。そして……
そしてせん太は首の瘤ごと首筋を切り裂かれていた。切り裂かれた瘤からは、大量の血とともにその怨念の元となった
魂たちが無数に宙に飛び散っているように見えた。
「おめえにじなれでばごまる」
そう呟いた醜い男の呟きなど耳に入らなかった。
「せ、せん太ぁーーーーーーーーっ!」
あたしの絶叫は闇夜に木霊した。
◇ ◇ ◇
「……姉ぇちゃん……姉ぇちゃんなの……け?」
ヒューヒューと、喉から呼吸が漏れながらもせん太はぼんやりとした視線をあたしに向け、そうたずねてきた。
膝の上に横たえた弟の身体からはみるみる生命が抜けてゆくのが分かる。
「そうだよ。あんたの姉ぇちゃんだよ。しっかりおし。せん太……」
あたしはせん太の手を握り、懸命に涙を堪えながらせん太に語りかけていた。わかってる、せん太はもう助からない。
それでも、生きていて欲しかった。外道に堕ち、鬼だったとしても一緒にいて欲しかった。
「なんだよ……しょーがねえなあ。また蛇にでも脅かされたんか……まったく、姉ぇちゃんは俺がいねえと、てんで
ダメなんだから……」
あたしは涙を堪え、いつものように答えようと努めた。
「馬鹿……お言いでないよ……せん太こそ……あれから、ちいとも……成長して、ないんだから……」
いくら我慢しようとも、にじみ出る涙はどうしようもなかった。
102 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:17:27.21 ID:q3Z2Isnv
「はは……姉ぇちゃんこそどうしようも……ねえ泣き虫だ……なあ。姉ちゃん……帰ろう……おっとうが……
待って……いる」
そう呟くと、眠るように目を閉じた。
「せん太……?せん太、せん太?」
せん太の目は、もう二度と開かなかった。
◇ ◇ ◇
せん太は荼毘に付した。小さな容器に入れた遺骨はさらに小さく見えた。後はこの遺骨をおっとうの埋められた所と
同じ場所に埋めてもらい、弔ってもらおう。
「よいのか?父と弟の墓を守り、人にまぎれて暮らす途もあるのではないか?」
弟の遺骨を拾い集めた後、黒金さまはあたしにそう声をかけた。あたしは首を横に振ると
「もう、私の故郷はあそこにはありませぬ。もしよろしければ、黒金さまの国に入れてもらいとうございます」
そう答えた。外道のあたしが人にまぎれて生きてゆくのも難しかろうし、あたしのような外道に墓を守られても二人とも
安らかに眠れないだろう。
「そうか」
黒金さまは重々しくうなずいただけだった。今思えば、あれはあたしを試していたのだろう。もし、あの時、故郷に
留まる途を選んでいたら、あたしもせん太と同じ運命を辿っていたに違いない。
そういう、苛烈な所がある方なのだ。
◇ ◇ ◇
──青白い月の光を見上げながら、私は長い回想から今の時間に立ち返った。ここは天魔党・城内。
あれから、せん太の遺骨は近所の人に預け、父と同じ場所に葬った後、供養するようお金を渡して頼み込んだ。
自分を買い戻すために使うはずだったお金だ。受け取った人は金額の多さにビックリしていたが、事情があって自分では
供養できないことを頼むのだからと言い含めて受け取らせた。
自分の名前はその時、自分を買い戻すための金子とともに手放した──
そして、私は天魔党に入った。幸いなことに私には武芸の才覚があったらしい。今では黒金さまの補佐を務めさせて
いただいている。
唯一の不満はあの男だ。オケラ。弟を手にかけた憎く醜い男。だが、あの男の介入がなければ私は死んでいたという事で
黒金さまのとりなしで私の従者に収まった。これだけ私が嫌っているにも関わらず、当人たっての希望でだ。
最初、事ある毎に謀殺しようと無理な注文を突きつけたりもしたが、思いの外有能でそつなくこなすため、天魔党
内でも後ろ暗い勢力を伸ばしつつある。
私の忌むべき本性……亡者のような容貌も例の秘術とともに憎女の仮面に封じ込めた。だが、あれが私の本性である
ことに変わりはない。それを忘れぬよう、私はその仮面の名─憎女─を名乗るようになった。
もうあの巨大な腕を使ってもあのあさましく、醜い姿になることもない。それでもあれが私の正体だ。それを
知ってるのは黒金さまと──腹立たしいことに──あのオケラだけだ。
とはいえ、私はめったな事では素顔を晒す気にはならなくなっていた。
だが、黒金さまに忠誠を誓った身。二心なきことを示す為、あの方の前でだけは仮面を外して素顔を晒す事にしている。
「おぞうざま──」
不意に部屋の外から声がガラガラのだみ声がかけられた。今の所、忠実な醜い従者、オケラの声だ。
「じのびのものがらぼうごぐがとどぎまずだ」
「忍から報告……?分かった。すぐ参る」
そう答えると、部屋の向こうの気配はすぐに消えた。
おそらく、我らが天魔党に逆らうものどもの報告がまとまったのだろう。
「ひのもと鬼子……黒金さまに逆らうなど、なんと愚かな……」
私は一つ息を吐くと、身支度を整えた。そして分身の仮面をつけると、報告を受けるため黒金さまの部屋に向かって
歩きだした。
──おわり──
103 :
はなのうた:2013/01/04(金) 19:22:01.98 ID:q3Z2Isnv
>>91-102 そんな訳で「はなのうた」後編をお送りいたしまス。生みの親さんに色々と断片的なネタを貰っていたので、それらを
使って話を組み上げられないかと試みた結果、生まれた物語でした。
気に入っていただければ幸いです。それでは。
PS
そのいち
ちなみに今回の物語は遊女に関する2大事件をモチーフ取り入れてみますた。どちらも悲劇的な悲しいお話です。
そのに
某キャラもゲスト出演しているけど、ここまでノリノリでやるとは思わなかったヨ!
圧 倒 さ れ た !
前編でなんとなく誰のことか分かって、こんな展開になるんじゃないかなと予想してたら、それをひねってどんどん進む物語に、興奮が止まりませんでしたとさ。
遊女に関する歴史的事件、いつごろのどんなものだったんだろうな…。
感想どもです!(本スレで感想くれたひともどうもです!)
>遊女に関する事件
一つは 吉原の大火 で 一つは 花魁淵 の伝説を取り入れて書いてみました。
かたや女達を逃さないよう、門を閉じていたため、逃げられず犠牲者が増え、
かたや秘密保持の為に抹殺されたという言い伝えが残っております。
時代も場所もバラバラですけど。
天魔党は、かつては旧暦を元に活動していた。
しかしながら、人間の心に寄る「心の鬼」を使役する関係上、
どーしても人間達の生活サイクルに合わせて活動せざるを得ない。
数日前、正月を迎えた人間達に合わせて行われる幹部会合に赴いた黒金蟲は、
そこに鵺の姿を見付けて驚いた。
黒「珍しい事もあるものだな。貴公が会議に参加するのは、いつ以来だ?」
普段は「任務」にかこつけて、面倒な場にはまず参加しない。
鵺が現れるのは戦の出陣式くらいで、儀式の場にすらまず不在である。
鵺「ケッ、会議なんかどーでもいいんだよ。こっちの都合で来ただけだ」
しかし、やはりというか、鵺は会議に参加しに来たのではないらしい。
予想はしていたが、黒金蟲は軽く落胆した。しかし落胆はそれで終らなかった。
鵺「お年玉くれ!」
黒「…」 …つかつかつか チョップ!
鵺「痛!何しやがる!?」
黒「やかましいわ!!貴様は幹部らしい事はひとっつもしないくせに、
これ以上ふざけた事ぬかすと石詰めて井戸に沈めるぞ!!?」
-この後、白露や鬼駆慈童とも掛け合いがあるのだが中略。-
鵺「ふん、コレを見てもまだそんな事が言えるかな?」
そう言いながら、鵺は懐から一枚の紙を取り出した。
黒「何だそれは?文書にしては無駄に派手だが」
鵺「今朝新聞に入っていた折り込みチラシだ」
黒「何で鬼組織に新聞が届くんだ!」
鵺「アホか、俺は忍の頭領だぞ!?情報収集のために新聞くらい読むわ!!」
鵺「自分の足で情報収集しろ!!てゆーか、天魔党の場所が新聞屋に漏れててどうする!!」
そのチラシにはこう書かれていた。
「荒廃衆新春初売りセール!! 恒例心の鬼福袋 3000円
(一万五千円相当の心の鬼 お一人様1個限り 各店限定100個)」
鵺「買うっきゃねえだろ!!?」
黒「バカなの!?君、バカなの!?鬱要素とツッコミ要素しか無いんですけど!!?」
-結局、何故か白露や鬼駆慈童も食い付いてきてしまい、人数を動員して出かけてしまいました。
>>107 甘いものかと思ったら、心の鬼かよ!
まあ彼らなら使役できるからいいんだろうけど!
でも荒廃衆のバーゲンセールする心の鬼なんてろくなのいなそうだよ!w
>>108 なんだと言われても
>>109 >甘いものかと思ったら
大丈夫、初売りは絶対余計なものまで買っちゃうから。
お目付け役で付いていったお憎さんが、ミルメークをダンボールで買ってくるよ。
鵺は「なんかカッコいいから」とかいう理由で車載レーダーとか買っちゃう。
>ろくなのいなそう
「いなそう」じゃなくて「いない」w
昔の福袋は売れ残りの品の在庫処分的な面があったから、
ガッカリする事が多い反面、時々「当たり」があったもんだが。
【新規さんへ】
・このスレには九州外伝=日本Ω鬼子という荒らしがいます。
コテハンごとあぼーんすることを推奨します。
なおコテハンを外してIDをコロコロ変更し、自演を繰り返したりもするので要注意です。
また『避難所には規制で書けない』と偽り、両方をグチャグチャに荒らし続けます。
・その他に天使ちゃんと呼ばれる荒らしがいます。
コテハンは持たずにスレを荒らしに来るのが特徴です。
・SS書きをターゲットにし住民の中を裂こうとする荒らしがいます。
基本的に絵を描く人もSSを書く人も何ら確執はありません。
荒らしに餌を与えないで下さい。
荒らしに構う人も荒らしです。
@重音家
「何でお前らがここにいる。」
「水臭いことを言うもんじゃないゲス。」柊の腕を持った魚が言葉を返した。
「魚臭いわ。」
「ここが一番落ち着くんだ」白い鶏が口出しした。
「こっちは落ち着かんわ。」
実質的な家の主の不機嫌な声がした。
「フっ、何を言っているのだね。」今度はチャボが何かを言う。
「そうそう、我等は将来の仲間ですし。」そして蛙が口を挟む。
「お前らが何時仲間になったんだっけ。」
「もーじきUTAUに加わります。」そして視線の斜め上を飛ぶ小鳥が囀った。
「いらんわ。」
テトは不機嫌そのものだった。鬼子と小日本、それとタロー(わんこのこと)だけかと思ったらおまけが5匹も付いてきやがった。
「そういや、去年は節分大会をやったとか。」ヤイカガシが尋ねる。
「去年は参加してないけどね。」テトが言った。
「さぞや賑わったのだろうな。」チチメンチョウの尊大な声がした。
「まぁ、今年は鬼役が居るし。」
「へー、誰ですかい。」モモサワガエルが聞いた。
「君達5匹だよ。」
テトは5匹を見て言った。ヒワイドリが後ずさった。
「鬼呼鈴を付けた鬼子の仕置きに耐える丁度いい機会だろう?」
テトはにこやかな顔になり、続けた。
「皆には本気で投げるように伝えるからね。」
5匹は逃げ出した。
>>112 >「水臭いことを言うもんじゃないゲス。」
>「魚臭いわ。」
久しぶりに華麗な切り替えしを見た気がする
ヤイカは心の鬼チガウだろw ナニ一緒になって逃げてんのさw
>>114 ヤイカガシも節分の鬼役ですよ?w
>>112の続き
全力で逃げる5匹を見送っていた鬼子が言った。
「何か色々済みません。」
テトが答える。
「気にすんな。どうせダメと言っても来るんだし。」
「うーん。それはそうなんですが。」
「第一、あいつら壁抜けしてきやがるから、セキュリティーなんか無意味だし。」
「はあ。」
暫く続いた雑談の後、テトが言い出した。
「節分が終わると、バレンタインか。鬼子は誰かに…まぁ、いっか。」
鬼子は少しはにかんだような表情を浮かべていた。
「テトさんは…」
「皆まで言わせる気か。あの野郎、今年も帰って来ん。つーか、去年の末から戻って無い。」
「何かあったんでしょうか。」
「仕事が急に忙しくなったのだと。電話の向こうで半泣き半怒りだったわ。」
鬼子はきょとんとした表情を浮かべた。
「ああ、まぁ、チョコは宅急便で送るんだけどね。」
「皆さんはどうするんでしょう。」
「どこかの25歳独身がバレンタイン終了のお知らせをやるんじゃないの。」
「誰でしょう。」
「毎年クリスマス終了のお知らせをやってる奴だよ。この間は七夕バージョンをだしてた。」
テトの口調は投げやりだった。
「えーと、他には。」
「知らん。デキてる奴は人の目を盗んでこっそりとやるから、表に出ない。男の場合、悲惨なことになりかねんし。」
「女の人は。」
「相手が居る奴だけがチョコを贈ることになってる筈。」
「そうですか。」
「えー、なんか面白い話とかないの?」こにぽんが口を挟んだ。
「ない。大概貰えなかった奴が『死ね!バレンタインデー』を口ずさむことになる。」
「何それ―」
「バレンタインに縁のない奴が歌う歌だよ。」
「何か、恐ろしい気が。」
「気にするな。毎年の恒例行事だ。去年も何も無かっただろうが。」
「そう言えばそうですね。」
同時刻 KAITOの部屋
この6畳間の片隅にキッチンがある部屋の真ん中にある、ちゃぶ台にKAITOはいた。
その周辺には例の5匹が要る。部屋にはこのちゃぶ台の他、普通の冷蔵庫と業務用の大きな冷蔵庫が置いてあった。
このほかあるものと言えば照明とエアコンだけだった。
その5匹を前にKAITOはぼやいていた。
「だからさー、何で君達がここに来る訳。」
チチメンチョウが答えた。
「同士よ。水臭い事を言うでない。」
4匹が同委の頷きをする。KAITOはむっとなって言った。
「誰が同志ですか。」
チチメンチョウも負けてはいなかった。
「乳尻太腿、その全てに耽溺できる君が同志でないと思ってるのかね。」
「だから、勝手に同市にしないでください。他にもいるでしょ。」
KAITOが反論するが、しかしKAITOの目の前にいる5匹は全員首を横に振った。
何しろ、この部屋はこの付近でテトの家同様心地のいい所なのである彼等が見逃す筈もなかった。
>>115の続き
「だからさー、来るの迷惑なんですけど。」
KAITOの再反論。だが、それを黙って聞くような連中ではなかった。
放っておくと猥談を始めるわ、煩いわ、他から苦情が来るわでいいことなど何も無かった。
しかも同類に見られるのが何よりも嫌なのだった。
KAITO自身スケベ心が無いかと言えばそうではなかったが、数々の動画の御蔭で全く誤解されていた。
それが無ければ比較的堅実な気の弱い青年と云った所なのだが、
流石に鳴かず飛ばずの期間は本人を凹ませるのに十分だった。
ミクの登場が無ければどうなっていたか分らないし、Vocaloid3になることもなかっただろう。
蒼姫ラピスの様な例外を除くと、ここを訪れる者はいなかったのだが、こいつ等はどういう訳かここを嗅ぎつけてやってきた。
因みにラピスが来るのはアイス目当てであり、妖精は甘いものを好むという至極単純な理由に拠る。それはUTAUの妖精たちも同様なのだが。
尤も本人(?)が記憶喪失であり、表裏のない性格をしているからということもある。
だが、この5匹は違った。
「あのー僕はそういう露骨に語るような趣味は無いんですけど。」
「じゃぁ、『兄さんは末期シリーズ』動画はどうなんでゲスか」
「あれは、ああいう役回りなわけで、僕がそういう訳じゃないの。」
「ほほー、じゃぁ、『死ね!バレンタイン』は?」
「いや、あれも、ああいう役だから。」
「でも本当はチョコが欲しかったんでしょうが。」
「そりゃぁ、欲しくないと言ったらうそになるけど、それとこれとは別。」
「MEIKOさんから手作りのウイスキーボンボンを貰えたらいいなーとか思ってないですか。」
「そりゃあ、ねぇ…」
何だかんだ言って5変態の相手をする(弄られているとも言うが)KAITOなのだった。
>>116の続き
同時刻 重音家
「あのさー、お前ら、人の頭は鳥かごの類じゃないと何度言えば分かるんだ。」
テトはドリルヘアーの中に現れた妖精トリオに対して言った。
「あーあの5匹お兄さんの所にいるんだけどさー」
KAITOも可哀相に。テトは内心で呟いたが、幾らなんでも頭が重くなるのだけはごめんだった。
「ラピスに転鳴あいとエルヴィ、さっさと出ろ。」
「えー、ここ、心地いいんですよ。」
「あたしの髪は鳥かごや寝床じゃないと言ってるだろ。」
「それに暖かいし。」
「冷凍庫に放り込んでやろうか。」
テトにそこまで言われたら出るしかなかった。基本的に陽気と温かな気候を好む妖精いとって、冷凍庫の中は地獄と言っていい。
「あー、妖精さん達こんにちわー。」こにぽんの呑気な声がする。
妖精たちは鬼子たちに挨拶をしている。
「でもどうしてここに。」
「お兄さんの所今魚臭いの。」ラピスが鼻をつまみながら言った。
「後で回収しましょうか。」鬼子が言う。
「今すぐと言いたいとこだが、駄目だろうな。それに回収直後は換気しないと駄目じゃないのか。」テトが口を挟む。
妖精トリオが口々に同じ単語を言う。
「アイス・・・」
テトはぴしゃりと言った。
「まぁ、今日は諦めろ。」
テトの一言で妖精3人はぶう垂れた。
何故か兄さんが普通の青年になってしまった。
どういう訳か鬼子の話が少なくなっちまった。
◇ ◇ ◇
「おい人間。本当にこっちなんだろうな」
焦れた少年の声が何回目かの確認を繰り返した。ここは異界。昼か夜かさえわからない時間帯。どんよりとした
雲が空を覆い、時に方向感覚さえ狂いそうになる世界。
「こっちでええハズや。っちゅーか、あんたの友達なんやろ。この術式組んだんは。ちょっとは信用したり」
「ケっ、俺はアイツの術式よりねーちゃんがちゃんと扱ってるかの方が心配なんだよ。悪いか」
繕うつもりなのか挑発するつもりなのか分からない事をいっているのはわんこ。狗族の少年だ。
今も神経質そうに犬耳をあちこち動かしている。
「はいはい。わかったから、その減らず口きくのやめて臭いでも嗅いだり。まだこにぽんの気配はないんか?」
少年の挑発とも言える言葉を聞き流し、右手の上に不思議な光りを放つ玉を手に少女はスタスタと歩いてゆく。
もう、この少年と口喧嘩するのはうんざりとするほどやったのだ。この緊急時にまで構っている暇はない。
少女は頭には4つ目の怪人の仮面を被り、中華か和風かわからない衣装を着て、左手には先が三ツ又の矛を持ち、
足には高下駄を履いている。如月ついなという少女だ。
二人は不思議な光を放つ玉の導きにそってこの『異界』へとやってきたのだ。さらわれた彼らの仲間
──こにぽん──を連れ戻すために。
「ちっともあいつ(こにぽん)の気配はしねーよ。ホントにその玉はアテにしていんだろうな?」
しつこく確認するのは小日本を心配しての事だろうが、全く落ち着いていない。
「少なくとも犬っころの鼻よりはアテになる思うで。あの天狗の坊主の術やしな」
ついなは素っ気無く返した。
「ぐ……くそっ」
わんこは言い返せず、黙り込んだ。風太郎の術の腕は確かだし、わんこ自身、太鼓判を押した以上言い返せない。
──二人は異界の山の中を歩いていた。
天魔党。鬼の一族。鬼だけで構成された一族に小日本をさらわれたのだ。二人はさらわれたこにぽんを奪い返す
為に彼らの領域に侵入したのだ。
目の前に広がるのは異界とはいえ、山の景色だった。今のところ視界には人工物らしき構造物は見当たらなかった。
二人が今、歩いているのは左右になだらかな斜面の山があり、傍らに川が流れている比較的開けた場所だ。
歩いているのは道というよりは広場みたいに見晴らしがいい。
──最初に気づいたのはついなだった。
「!っ くるでっ!気ぃつけや!鬼の気配や!」
そう呟くと手に持っていた光る玉を懐にしまい、仮面を顔に装着し、矛を構えた。川に向かって。
「?!な、なんだとぉ?!」
わんこも袖をまくり、腕にはめた手甲をあらわにしながら身構えた。普段はこんな武具は邪魔なだけだが、
今回ばかりは危険だということで装着するよう鬼子が頑として譲らなかったのだ。
黒く磨き上げられた手甲が鈍く光る。その手甲の構えた先の景色にわんこは戦慄した。白い何かが川底を凄まじい
速度で近づいてきているのだ。
そして次の瞬間、水面を突き破って何かが飛び出して来た。
ズシャッ
水を割って飛び出した白い影は二人の行く手を阻むように地面に着地した。二人に前には白い闇が佇んでいた。
人影は女だった。顔は白い仮面をしてて分からない。肩を大胆に露出した花魁風の衣装に身を包み、巨大な櫛で
結い上げた髪の毛には無数の簪を刺している。華奢な腕には鎌のような武器を持ち、そして何よりも彼女の
背後からは巨大な両腕が一組、威圧するように生えていた。
「へっこんなのが出てくるって事はこっちで間違いねーよーだな」
わんこは突然現れた白い女に臆せずそうタンカを切った。構えた手甲を軽く交差させて独特の構えをとる。
「気ぃつけや!ヤイカの話やとこの女、水中戦が得意やと!引きずり込まれたらオシマイやでっ!」
ついなは武器を構えながら警告を発する。わんこは不敵に笑った。
「へっ なあに。要は水ん中に入らなければいってこった。俺はそう簡単に捕まらねーぞ」
わんこは足の素早さを利用して戦う事を得意としている。そう簡単に捕まったりはしないだろう。普通に戦えば。
仮面の女は懐に手を伸ばすと複数の札を掴み出した。術を使う時に使用される呪力を込めた式符だ。
「!あかんっ!あの女、何か術を使うつもりやで!」
ついなは焦った声をあげる。
「やらせるかよっ!」
わんこはその脚力を利用して一気に女との距離をつめる。だが、間に合わず、女は掴んだ式符をひとふりする。
すると、各式符が女の前に展開され、空中にずらりと並んだ。
「……呪・縛妖水殺陣……」
女がボソリと呟き、式符は一瞬で青いオーラの炎をゆらめかせ、四方八方へと飛び去ってしまった。
ど く ん
次の瞬間、空気が、変わった。比喩ではない。空気が重みを持ったのだ。たちまち、わんこの動きがまるで
水の中のようにゆっくりとしか動かなくなってしまった。
「なっ?!なんっ……!!」
女に向かって突っ込んだわんこは素早い動きがいきなりスローモーションのように遅くなった。次の瞬間、
わんこの目前に居た仮面の女の白い姿が消えた。わんこは白い女を一瞬で見失った。
次の瞬間、巨大で強烈なコブシがわんこに叩きつけられた。
「げはっ?!」
強烈な張り手のような衝撃が少年を襲った。普段は吹き飛ばされる事で拡散する衝撃が重く身体にのしかかり
もろにダメージになった。
「なっ?!なんやコレ?!コレがアイツの奥の手なんかっ?!」
ついなの声もくぐもっている。お面によるものだけではない。
「ぐっ……くそ、なんだ、動きづれえ。空気が水みてーだ」
そう呟くわんこの声もまるで水の中で喋っているようにくぐもっている。
──呪・縛妖水殺陣。彼女が天魔党『陰』の呪術専門部門「翁」により与えられた呪術。
空気中を水中と同じようにし、水中特化である彼女──憎女──の特性を最大限にまで引き出す呪術である。
「や、ヤバいでっ水ん中はアイツの領域やっ!!」
ついながそう叫んだ瞬間、白い女──憎女──はしなやかで鞭のように伸びた足でわんこを蹴り飛ばした。
「ぐっ くそっ!か、風よ!」
わんこは苦し紛れに風の術を放つ。一瞬遅れてわんこの手の中に風が渦巻く。が、いつものような鋭さはなかった。
どころか、わんこは逆に重く回転する風の渦に弾き飛ばされた。
「どわわわわわわっ?!」
自ら生み出した術の回転する渦巻きに翻弄されながら、ついなの所までわんこは吹き飛ばされた。
「しっかりせえっ!なにやっとんのや?!」
水の……いや、風の渦に翻弄され、回転しながら飛んできたわんこを矛でひっかけ、引き寄せながらついなは
叱咤する。
「くそっ 風の術も空気が重いせいでいつもと勝手が違ぇっ!」
ついなにえりを引っ張られながらわんこがぼやいた。増女はわんこの放った風の渦は易々とかわし、上方に
浮き上がった。
「気ぃつけやっ!上からくるで!」
わんこを引き寄せながら、ついなは再び警告を発する。増女は一旦頭上に浮き上がってわんこの風をかわした後、
水の中を泳ぐ魚のような信じられない速度で「空中を泳ぎ」ながら二人に迫った。
「くっ……このままやとマズいでっ ほ、『方相ビーム・魔滅っ!!』」
わんこを引き寄せ、ついなは増女が接近してくる上方に仮面を向ける。次の瞬間、ついなのお面の四つの目から
金色の光が増女に向け迸った。凝縮されたついなの霊力が魔を滅する力として放たれたのだ。普通の雑魚鬼相手なら
この攻撃だけで穴だらけになるのは必至だが──
「!」
だが、広範囲に拡散された攻撃さえ、増女の泳ぎについていくことができない。アッサリかわされてしまった。
「こ、これでも当たらへんやてっ?!」
「ねぇちゃん!ちっと俺の肩をおさえててくれ!風よ!全てを斬り裂く鎌の尻尾よ!」
そう叫ぶと、わんこはカマイタチの術を放った。だが、普段なら音速で飛び全てを斬り裂く必殺の鎌もこの空間内では
ゆるゆるとしか動かない。これも余裕を持って回避されてしまった。
その時、増女が陰々と響く声で声を放つ。相手に絶望を告げる言葉を……
「我ら天魔党に逆らう愚か者ども。我の鎌にかかってここで死ぬがよい」
次の瞬間、頭上から見かけによらない速力で突進してきた。
「ヤベッェ来るぞっ!」
ついなとわんこはそれぞれ、突進してくる増女にカウンターを合わせようと、コブシと武器を突き出した。が、
この空間の中では水中のようにゆっくりとしか動けない。あまつさえ、増女に届くかと思われた攻撃も空を切った。
「あ?」「なんや?!」
増女の巨大な腕が空中の空気を『掴み』その身体を宙にとどめていた。そのフェイントにより、二人は増女の姿を
一瞬だけ見失った。そして、そのまま身を翻した増女は隙を逃さず二人の死角から必殺の鎌を突き出した。
それぞれ急所を狙った攻撃だったが、二人とも辛うじて方相のお面と手甲でそれぞれ鎌を受け止めた。
「うっ」「がぁっ?!」
増女の鎌はついなの仮面を削り、肩口を切り裂いた。わんこも完全に受け流せず、頬を少し切り裂かれた。
水の中に流れだすようにゆっくりと血が宙を漂う。
「ほ、『方相ビーム・魔滅!』」「風よ!大気のなかの風たちよ!」
二人とも苦し紛れに上方に向けて術をぶっ放す。だが、その頃にはそこに増女の姿は無かった。
「どこやっ?!どこにいきおったっ!」
「気ぃつけろ!どっかの茂みの中に隠れやがった!」
二人は完全に敵の姿を見失っていた。背中合わせになり、四方八方の気配を探る。だが、水の様な音の伝え方をする
空気では気配を読みきれない。
「こっちかっ?!」
わんこが視界の隅で動くものを捉えた。
「ちゃうわ!反対やでっ!」
その時には一瞬遅く、増女は凄まじい勢いで鎌のような武器を突き出し、激しく回転をしながら二人に肉薄していた。
「ぢぇぇぇぇえええええいっ!!」
ついながゆっくりとしか動けない空間で辛うじて防御に間に合った。金属と金属が激しくぶつかり合う音が鈍く
響いた。ついなの矛と増女の鎌が激しくひしめき合う。ついなの身体は方相氏の仮面の加護によって超人的な膂力を
発揮できる。増女の人間の力を超えた斬撃を辛うじて受け止める事ができた。しかし──
「やべっ ねえちゃん!フェイントだっ!」
今度はわんこが警告を発した。増女の背後で巨大な『手』が握りこぶしを握っていたのだ。
「くっ 風の護り手よっ!」
わんこは咄嗟に風の防護による結界術を起動した。が、やはり一瞬遅かった。動きの重い風が護りを固める一瞬前、
巨大な剛腕はそれぞれ二人とも殴り倒した。
──巨大な拳で殴り倒され、ゆっくりと空中を漂うように崩れ落ちる二人の前に増女は降り立った。
「……ふん。このような塵芥のごときガキどもに一体、何故黒金さまは心を割かれるのか……」
冷然と見下ろし、増女はひとりごちた。この程度の実力しかないものを彼女の主である黒金蟲は警戒している。
ひのもと鬼子の配下がこの程度なら、その主である、鬼子とやらも大した事無いはずである。
程なく我ら天魔党に叩き潰されるだろう──
「だ……誰が……塵芥だと……」
「誰が……ガキやて……」
息も絶え絶えになりながら、二人はゆっくりと身を起こす。
「ふ……思いの外、頑丈なのね……さっさと死ねれば楽になれただろうに……」
「げほっ誰が……死ぬだって……」
口を切ったのか口から血が漂い出ながらわんこが強がる。一方ついなは手の中にありったけの霊力を集中させていた。
「ぢぇぇいっ!方相ビーム・いんぢっ!」
そう叫ぶと、手の中に集中させていた霊力を増女と二人の間の地面に叩きつけた。
カッ
凝縮された霊力が双方の中間で炸裂し、増女の視界を灼いた。
「くっ!?」
増女は相手の反撃を警戒し、一瞬で二人から距離をとり、離れる。こういう時、敵は追い詰められるとどんな反撃を
してくるのか予想できない事をしてくるのを増女は知っていた。なので様子を観ることにしたのだ。
そしてその予想は半分当たり半分は外れだった。
「まじぃぞ……このままじゃ勝ち目は薄い」
こんな状況にも関わらず、状況を冷静に把握していた。この場は分が悪すぎる。
「せやかて、このままじゃうちら逃げることもでけへんで……何とか隙を作ったったらな……」
「なんかいい方法があんのかよ……」
「ええか……これでやな──」
閃光とまき上げられた土煙が晴れる頃、増女が目にしたのは二人がこちらに向けて構えている所だった。
わんこは片膝ついてしゃがみ込み、両手を突き出している。その両腕の間にはありったけの力を注いで
いるのだろう。強力な風玉が渦巻いていた。ついなはその後ろに右手を突き出して立っていた。
その手には携帯電話が握られている。
「どういうのつもりだ?今更助けを呼ぶつもり……?」
永く現世と切り離されていた彼女も携帯電話くらいは知っている。頼んでもいないのにヌエが色々と取り寄せた
情報をもたらしてくるからだ。
ニッと笑いついなが先制を取った。
「『方相ビーム・魔滅!』」
また無数の霊力の弾丸が増女に向け放たれる。
だが、増女は巨大な腕で身体を覆うだけで、その攻撃の全てを弾き返してしまった。
「ふん……その技は見切ってる……その程度で私の『殺手(あやて)』は貫けない……」
「ふ……せやろな。わんこ!」
ついなの合図を受けて、わんこが高らかに叫んだ。
「風よ!その力を解き放ち、吹き荒れろ!」
「何っ?!」
わんこは風玉に溜めた力の全てを開放した──自分たちに向けて──
突如発生した横向きの巨大竜巻はついなとわんこを巻き込んで凄まじい勢いで吹き荒れた。
「「どわぁあぁぁぁぁぁあああああぁぁぁあっ!!」」
ついなとわんこはあっと言う間に凄まじい風にモミクチャにされ、回転・きりもみしながら飛んでいった。
「……はっ、しまった!」
増女は一瞬呆気にとられ、何が起こったのか把握できなかったがようやく理解した。
二人は竜巻に乗って逃走を謀ったのだ。
「そんな事で私から逃れられるとお思い?」
すぐさま、増女は追撃に移ろうと体制を構えた時、『ソレ』が視界に入った。ソレとは携帯電話にみえた。
先程までついなが手にしていたものだ。だが、携帯電話と違っていた。キーボードの所が下にスライドしていたのだ。
スライドしたキーボードの下には赤いボタンがあった。そしてその赤いボタンは既に押し込まれており、
携帯のディスプレイには大きくデジタル表示で『3』と表示されていた。そしてその数値はカウントダウンしていた。
3.
2.
1.
カッ
強烈な爆発でもって携帯電話は増女の至近距離で炸裂した。
「「──ぉぉおおぉどぉぉおわぁぁあぁあああっ!!」」
一方、わんことついなは竜巻に乗って増女の魔の領域から抜けだしていた。散々回転し、揉みくちゃにされながら
最後には二人とも「ぺいっ」という感じで放り出された。二人をここまで運んできた竜巻は、領域から出た途端、
ただの突風となり、吹き抜けていった。
「ぐ……な、なんとか……抜け出せたよーだな……」
グラグラする視界に吐き気を覚えながらわんこは立ち上がった。
「お……おじーちゃん特製携帯電話や……いくら相手かてただじゃ済まんハズやで……」
こちらもヨロヨロと矛を杖代わりについなは立ち上がった。ついなの祖父は何にでも自爆装置を組み込みたがるという
ハタ迷惑なポリシーを持っていて、ついなの使用している携帯電話にも漏れ無く搭載されていたのだ。
「しかし……とんでもねーじーさんだな。そりゃ」
「せやかて、そのおかげで逃げられたんや……文句いったらバチあたるでぇぇ〜〜〜」「ま、そーだけどよ」
今回はそれを利用して難を逃れる事ができた。
「昔、魚を獲る時にガチンコ漁法とかダイナマイト漁法とかテレビでやっとったんを思い出してん。
あの女も今頃ただじゃすんどらへんで」
水の中に石を叩いたり、爆発物を爆発させたりしてその衝撃波で魚を気絶させて獲る漁法である。それを応用したのだ。
「で?どないしようか……この先にこにぽんがおるやろーけど、正直、逃げ出すだけで精一杯やった」
おまけに二人とも重くダメージを引きずっている。相手も無傷ではないだろうが、分が悪い。
「一旦引き返して風太郎に相談するのがいいんじゃねぇか。アイツなら何らかの手を考えつくはずだ」
「せやな。うちも弾丸やらなんやら補充したいし、ダメージ抜けへんままこのまま突っ込んでも勝ちは見えん。
何より鬼子らに知らせなあかんしな」
ヨロヨロと足元が覚束ない二人はそう決めると、もう一度だけ、今きた道を振り返ると撤退を開始した──
──おわり──
>>118-122 という訳で、「さらわれた小日本を救いにわんことついなが手を組んで戦う!」というコンセプトのもと天魔党との戦いを
描写してみました。いずれこのシーンに続く物語が語られるのか語られないのか……それはわかりません。
とりあえず、天魔党と鬼子勢との戦いを描写してみたかった。というのが正直な所でした。
あと、それぞれがそれぞれに強そうに描写するのって上手くいったかな〜?なお、わんこが強そうにみえなくても
それは仕様です(ぇ
あ、ちなみに増女ことおぞーさんはアレくらいでは死なないので再び同じステージに向かうと回復しきって
「よくもやってくれたな!」と再び襲いかかってきますw 数秒気絶すればいいところでせうか?
今回のキーアイテムは自爆装置搭載の宝庵謹製ガラケーですw それではっ
使用された戦闘スキル。
【憎女】
蟲成(むしなり)タガメを核とした鬼。水との相性がよく、水中で自在に動ける。
殺手(あやて):
巨大な鬼の手。背中付近から生えている。水の抵抗を受けないで動ける上、水を掴む事も可能。当然怪力。
作中では水の中の動きを補助するのにも使っていた。
呪・縛妖水殺陣(じゅ・ばくようすいさつじん)
特定範囲の気体を液体のようにする呪術。基本は空気なので呼吸することも風の術を使うことも可能。
ただし、水の抵抗や水の重さ的な制約を受けるので風の術は威力は上がるがタイムラグが発生する。
武術:
武器そのものは人間の持つものと大して変わらない。が、本来の「人間が使う武術」にプラスして上記の能力を
付加することにより、立体的に戦う体術へと昇華している。敵の頭上・足元・サイド・背後と自在に移動して戦う事が可能である。
【如月ついな】
武術:我流。武器:おじいちゃん製でない事は確か(爆発しないから)
方相ビーム
ついなの霊力を圧縮することにより、方相氏のお面から放たられる滅殺ビーム。金色の光を放つ。3タイプ存在する。
方相ビーム・魔滅:バルカンやショットガンのように細かな霊力の弾丸がお面の4つ目から撒き散らされる。
方相ビーム・いんぢ:右手のひらに霊力を集中して、小石位に圧縮した光玉を対象に投げつける。いわゆるタメ撃ち。
方相ビーム・???:直線的な光線がお面の4つ目から発射される。
方相氏の加護(ほうそうしのかご):
方相氏の仮面を被り、方相氏に近い服装をすることで方相氏の加護を得られる呪術。作中では鬼に匹敵する怪力を発揮し、
攻撃を受け止めていた。
【わんこ】
狗族の体術(くぞくのたいじゅつ):
彼らの種族は基本的には徒手空拳で戦う。それを可能にするのが大抵のモノでは捉えきれない身体能力である。
が、今回の舞台ではほぼその全ての体術が封じられてしまっていた。
鬼子の手甲(おにこのてっこう):
今回のような戦の時、相手の刃物を受け止められるよう、しっかり作りこまれた手甲。多少の斬撃なら正面からでも
受け止めることができるくらいには頑丈。
風術(ふうじゅつ):
先天的にわんこが備えていた資質。最初の頃は符による補助を必要としていたが、今回のわんこは符の補助が
なくても様々な術を行使できる位には成長していた。
GJ!!
憎女さんがバレンタインデーに嵌ったようです(1)
@バグハウス
テトはテッドに送るチョコレートと生活必需品を購入するべくバグハウスに行った。
テッドは去年から帰ってきていない。年末から仕事が多忙になり戻ることが出来なかったのだ。
テッドが詫びるようにその事を知らせたときテトは、いいんだか悪いんだか分からん、という感想を抱いたものだ。
勤務時間などあって無きが如き職場である。自宅からの通勤など無理な相談だった。
それと共に御神籤の内容を思い出す。「大凶」。どういう訳かテトは吉を引いたことが無かった。
つまり一見然したることが無いささやか過ぎる願い事が叶うことは無い、というお告げなのだった。
今年はどうしたもんか、テトは亭主に送るチョコに就いてあれこれ考えていた。
流石に唐辛子を入れる様な嫌がらせはしなかったが、何と言うか甘いものを送る気にはなれない。
まぁ、どうせチョコを溶かして型に流し込む簡単な作業だし、後はトッピングをどうしようか考えるのもいいだろうし。
いや、クッキーにするとか、チョコレートの生地を作ってパウダーをまぶすのも良いか、
そんなことを思いながらお菓子の材料売り場に行くと先客がいた。
女性の二人連れだった。
この時期、そういう客は珍しいものではない。要するに恋に恋する乙女たちにとっては真剣な悩みなのだった。
最も、お菓子メーカーも色々趣向を凝らした物を売り出しているからそれで間に合わす客も多い。
誰が幸福になり不幸になるのか知らないが、関係者にとってバレンタインデーとはそういうイベントなのである。
片方が棚に置かれたものを見てブツブツ言い、もう一人は興味無い顔をしてそれを見ている。
テトはそれを見て即座に先送りを決めた。まぁ、悩める乙女の邪魔をするもんじゃない、そう考えたからでもある。
その女性二人はテトに気が付かなかったのか、会話を続けていた。最も数時間もここに固まっていたら、周囲に気がつく訳が無いのだが。
「うーん、どうすればいいのか」
ロングの女性が呟いた。
「んなもん、適当にあそこで買えばいいだろ。」
もう一人が合いの手を出す。それを聞いてロングがむっとした表情で答える。
「いや、それではあのお方に対して何か不忠な気が。」
散文的口調で反論が返る。
「どうせ甘いもんが大好きなんだから、どれでも同じだろうが。」
それに対する真面目な返答。
「いや、そういうのが一番いけない。」
更に投げやりさを増した返事が来た。
「だったらプリンでも買えばいいじゃん。」
どこか剣呑な口調をにじませた返事が端正と言っていい口元から押し出される。
そろそろボリュームが上がってきているが本人は気が付いていない。
「そんなものを贈ってどうする。」
それに対する返答。この糞真面目な相手に対してやれやれという気分になっている。
「じゃぁ、板チョコでいいんじゃないの?」
はっきりと周囲に分かる程の声が返ってきた。
「そんな安いものでは駄目だ。」
相手は、あのなぁ、と思っていたが、それを氷点下に押し込んで言葉を返した。相手に合わせて声が大きくなっているがこれも気が付いていない。
「いっぱい買えばいいだろうが。」
剣呑さだけを含んだ返事が戻る。
「そういう問題か。」
長時間つきあってイライラしている事を隠さぬ声が返事になる。
「問題ない。」
それに対する返事もそれなりだった。
「あり過ぎるわ。」
カートを押すテトの耳にもその口喧嘩が聞こえてきた。いい年して何やってんだが、そういう感想しか思いつかない。
憎女さんがバレンタインデーに嵌ったようです(2)
>>126から
@バグハウス
ヒートアップした憎女と鵺の口論は続いていた。
「ええい、お前という奴は。」
「あのなぁ、あれ程分からんから付き合いたくないと言っているのに、無理やり引っ張ってきたんだろうが。」
「それでも忍びのトップか。」
「何言ってんだい。あの黒金蟲にチョコを贈るとか言い出してさ。」
テトはそれを聞いて、ああ、あの黒武者の仲間か。それはいいことを聞いた。
ついでに己の迂闊さを末代まで悔いるがいい。
「それはだな、あのお方に対する忠義としてであってだな。」
「あーはいはい。忠義ね。」
「ないがいいたい。」
「べーつーにー」
「はっきり言え。」
「あの甘党に惚れてるのをそうやって誤魔化して何が楽しいんだか。」
「ち、違う!私はだな。」
カートを止めたテトは憎女と鵺の口喧嘩を聞いていた。これはいい暇つぶしになるわ。情報も得られるし。
あー、あの黒武者って甘いもの大好きなんだ。そういや以前見たときも、何かそういうものを見ていたような気がしたが。
あのときは気のせいかと思ったが、人(じゃないか)は見かけによらんもんだ。
二人はウイルスに注意されるまで、口喧嘩を続けていた。
テトは二人の口喧嘩が強制終了させられた後に買い物を続行した。
ちらりと後ろを向くと一人が入口の方へ走っていた。あれが鵺か。
その鵺はテトが来ていた事には気付かずじまいだった。
@半時間位後
テトが買い物を殆ど済ませてお菓子材料コーナーに再び行くと未だにさっきの女性(恐らく憎女だろう)がいた。
その憎女は一人でぶつくさ言いながら材料を目の前にして固まっていた。
その様子を見てテトはどうしたもんかと思った。この店では私闘は禁止されているから、やり合うことにはなるまいとは思うが、
向こうがこちらを知っている以上迂闊なことは出来ない。
そんなことを考えているとテトを呼ぶ声が聞こえた。
憎女さんがバレンタインデーに嵌ったようです(2)
>>127から
状況開始から半時間位後@バグハウス
「テトさ―ん」
テトは内心で毒づいた。あちゃぁ、誰だよ。こんなタイミングで人を呼ぶのは。
憎女がテトの方を向いた。眉間にしわが寄っている。
が、テトは声のした方を向いた。
「テトさ―ん。こんにちわ。」
「ああ、りりか。こんちわ。」
羽音りりがそこにいた。
「テッドさんに贈るお菓子選びですか。精が出ますねー。」
「まぁね。最も去年から戻っていないが。」
「へ?」
「年末から忙しくなってね。」
「そーなんですか。」
「で、何しに来た。お菓子作りか。」
「いやぁ、贈る相手がいないんでどうしようかなーっと。」
「そうか。まぁ、お菓子作りの練習と思えばいいんじゃないか。」
「はっはー。」りりは頭を掻いてごまかし笑いをした。
「まぁ、何とかいい男を引っ掛けるんだな。」
「引っかけるんですか。」
「引っ掛けるでも、捕まえるでもいいだろ。まぁ、そいつが好きというのが条件だが。」
「あー、まぁ。そうですねぇ。でも周りが五月蠅いし。」
「そう言う話は好きでも、男を作る気が無いとは。まぁ、どこかの20代後半みたいになったら御仕舞いだという気がするが。」
「誰でしょうか。」
「知らない方がいいだろ。」
「うーん。心当たりがあるんですが。」
「やめとけ。血の雨が降るぞ。マジで。」
「ですよねー。」
そのやりとりを憎女は耳にしていた。どうやらテトの31歳という情報は本当らしい。
UTAUとやらの先輩だからというのもあるのだろうが、完全に目上の立場で話しているのが分かった。
いやそんなことよりも、そもそもチョコレートってどうやって作るんだろうか。
あ、鵺の奴は帰ったから、誰に聞けばいいんだ。
テトとりりのやりとりを聞きながら目の前の商品を前にして憎女は途方に暮れていた。
あれ、ヌエっち女だったっけ?と思ったら、そーいや女体化モード、あったっけなーそれで変装(?)したのか
>>129 そのつもりで書きました。どっちにしても良く知られた姿では来ませんw
プリンが好物なんだから、チョコプリンを試せばイイノニ……
もしや、黒金にとって許しがたい存在なのか?!
バレンタインデーが終わっても話は続く。
憎女さんがバレンタインデーに嵌ったようです(4)
>>128から
テトと羽音リリの他愛無い会話が終わっても憎女はそこに固まっていた。
彼女は、チョコレートなる物をどうやって作るのか知らなかったのである。
何でもこの世界では女性が尊敬する男性に送るチョコは手作りであると思い定めていたから、
原材料から作らねばならないとでも思っていたようである。
「何時までそこにいる気ですか。」
テトが呼びかけても憎女は固まったままだった。情報源は此処にはいない。
鵺は何時まで経っても何も決められない憎女に愛想を尽かして先に帰ったのだった。
テトはそんな憎女を眺めていた。勿論内心では何やってんだこいつとしか思っていない。
バグハウスでは私闘厳禁だったから、ここで襲われる可能性は考えなくともよい。
かてて加えて目の前の人物は、ぞの場に少なくとも一時間は固まったまま微動だにしない。
「テトさぁ―ん」
「およ。ラルゲユウスじゃないか。」
「それ、止めて下さい。」
「ええ、だって巨大な鳥に変化するし、嵐の中を飛んでそうだし。」
「そんなことしませんっ。」
ラルゲユウスと呼ばれた少女は頬を膨らませていた。
彼女は音飛女クユ。迦陵頻迦(かりょうびんが)とと迦楼羅(ガルーダ)のハーフだった。
そんな、野性児のクユが憎女を見て言い出した。
「あの、この人。」
「ん、どおした。」
「なんか、嫌な感じがするんですけど。」
「気にするな。それにここで挑発してもいいことは無いぞ。」
「そうですよね。バグやウイルスを一杯相手にするのは大変ですし。」
「そうじゃなくてだな。建物に損害を出すと裁判になるからやるなと言ってるんだ。」
「えー」
「しかもここの顧問弁護士は、あの闇音アクだぞ。勝つ気がせん。」
「アク徳弁護士ですか。」
「命が惜しくば、本人の前で言わない事を勧める。」
「何でです。」
「焼き鳥になりたいのか。」
「勘弁して下さい。」
そして、クユが来たことで憎女はテト達の方を見た。
憎女をずっと見ていたテトは言った。
「ようやく気が付いたか。」
憎女さんがバレンタインデーに嵌ったようです(5)
>>132から
テトとクユに気が付いた憎女は首だけ回していた。
何か擬音を付けたくなるな、テトはその様子を見て思ったが、クユの方に向かって言った。
「おい、クユ。」
「なんですか。」険しい表情のクユが答えた。
「悪いが向こうに行ってろ。」
「何でです。」
「ここでやり合う気か。」
「この人危険ですよ。」
テトは今度は憎女の方を向いて言った。
「ここに入る前にウイルスに私闘禁止って言われたよね。」
「貴様…」憎女が呟く。
「落ちつけよ。こっちもやり合う気はない。場所が場所だしね。」
勿論憎女もそれを知らぬではない。フロアーに入る前にあの黒い生物から言い渡されたのだった。
「クユも力抜けよ。」
「でも、この人、何かやばいですよ。」
「そうか?それよりもここで一時間近く粘っている方法に興味があるんだが。」
「はぁ?」
「さっきからずっとここにいたんだが。まぁ、仲が余り良くない奴がここに居座ると買い物が出来なくてね。」
「貴様ぁ…」憎女はキレかかった。
しかし、そんな憎女の気魄を物ともせずテトは静かに言った。
「あんたも落ち着いたらどうだ。目立ちたくないだろ。」
ぐぬぬ。声にならない声を憎女は発していた。
「クユ。もう一度言うけどね。」
「邪魔ですか。」
「ここで怪鳥になられたら皆が困るんだが。」
「あのー^」
「向こうへ行ってろ。」
クユは何か言おうとしたが、それを押し殺した。
そして、こう言った。
「あー。分かりました。」
クユはダイニングコートの方へ行った。
「何をした。」
視界から消えつつあるクユを気にはしていたが、それよりもあの只者ではない少女をどうして追い払えた岡が気になった。
そもそも天魔党にとって重音テトは謎の多い人物だった。他の動画を調べる限りいい加減な人物の筈だが、
目の前にいるのはそれを裏切っている。
何か蝙蝠の羽のようなものを出せるらしいが、調べた限りではそれは無いらしい。
それどころか経歴を幾ら探しても出てこない。それが不気味だった。
「別に。」
そんな憎女を余所にテトは平然と答えた。
そんな筈がない。さっきに言葉には力が籠っていた。気に入らないのはそれが黒金蟲と同じようなものである、ということだった。
憎女さんがバレンタインデーに嵌ったようです(6)
>>133から
テトが話しかけた。
「ところでさぁ。あんた、ここで何してるんだい。誰かにチョコを贈る気か。」
憎女は返事に詰まった。
図星だったか。テトは思った。まぁ、あの黒武者に送るんだろう。
男は他にもいるのかもしれないが、鬼子に言わせるとこいつはあの黒い奴しか見ていないようだし。
まぁ、何年どころか百年単位の付き合いをしていたらそうなるかもな。
それは相として、コイツ、何でここに固まっていたんだ。
大体、チョコを作るんだったら、そこにある塊と飾りを買うだけで事が済むじゃないか。
えっと、まさか、チョコの作り方が分からないとか。
どうなんだろうか。まぁ、今年になってやってみようと思ったら、作り方が分からなくて途方に暮れているとか。
ああ、あの鵺とやらがいたのはそれが理由か。あいつにでも聞く気だったんじゃなかろうか。
でもどうなんだろうか。幾ら諜報任務(あの綿抜鬼もだったが)を主としているからと言って、そこまで知悉してないだろうに。
「もしかして何を作ろうか迷っていたとか。」
憎女が返事しないのを見てテトは言葉をつづけた。
「3階に本屋があるから、そこで何を作ったら決めればいいんじゃないかな。」
憎女はテトを睨んでいたが、小さく、そうか、有難う、と言うとその場から立ち去った。
テトは内心で溜息を吐くと、お菓子材料コーナーでお買い物を始めた。
◇ ◇ ◇
覚えている記憶の中で一番古いのは強い拒絶だった──
来るな化け物!!うちの子に手はださせねえだっ!死ねっ!
──追われたこともあった──
いたぞっ!殺せっ!おっとうのカタキだっ!
──懇願されたこともあった──
お願いっ殺さないでっ この子はこの子の命だけはっ!
──何度か追い回され、殺されかけて思い知った……ニンゲンは訳がわからない……
ニンゲンに追いかけ回され、イイカゲン疲れきったある日。偶然出会った黒猫はこう言った。
「オイラかい?おメぇの……ま、そうさな。おメさんのセンパイかね。よくクロスケって呼ばれてっけどな」
毛づくろいをしながら黒猫はそうウソぶいた。彼は自身を風来坊だと自称していた。最初に私にニンゲンとの
距離の取り方を教えてくれた猫だった。
「ズイブン散々な目にあってきたってツラぁしてっけどな。オイラからしちゃまぁだ序の口よ。ニンゲンの本性はぁ
まぁだまだずぅっと闇が深い。オイラ達のこの『猫目』ですら、見通せねぇ程にな。悪いこたぁ言わねぇ。
ずっとただの猫のフリして過ごすこった。本性を隠して……な」
実際、クロスケはただの猫のフリをしてニンゲンの村にとけ込み、数年経過したら場所を移す。といった事を
繰り返していると語った。
それにしても私は……あたしはどうして、今、ここにいるんだろう?
クロスケは怪訝そうに問う。
「なんだ?久方ぶりにお仲間に出会ったかと思ったら『目覚めたて』って奴かい?……あーー……ま、そらあ、
ひでー目にあったとしても仕方ないわな。よく知らねーまま、ニンゲンの前でうかつに『変化』したろ?」
そういって猫らしからぬ声でしっしっしと笑った。変化?何のことだろう?
そう聞いたら呆れたような目を向けられた。
「何でぇ?ひょっとして、自分が『ニンゲン』とも『ただの猫』とも違ぇって事、分かってねぇのか?」
──何のことだろ?
「──まあ、何だ。ニンゲンどもはオレ達の事を『猫又』とか『化け猫』とか呼ぶようだが好きに呼ばせときゃ
いいサ。肝心なのぁ、オレ達がそういうのだって感づかれないようにするこったな。なに、一昔前、猫だった
頃にやってた事を続けるだけよ。そんなに難しい事じゃあるめい」
後ろ足で耳の裏を掻きながら説明に飽きたようにそんなことを言う。化け猫?ニンゲン?
その頃のあたしはその二つの違いが分からなかった。
「しっしっし。ま、折角知り合ったのも何かの縁だ。ついて来な。人間に追っかけ回されずにエサにありつける
場所をいくつか教えてやらあな。オレの言うことを聞いておきゃぁ、生きてくのに苦労しねぇハズだ」
クロスケは全身でぐんにゃりと伸びをすると先の分かれた尻尾を立てて、ついてこいと歩きだした。
と、すぐに立ち止まってクルリとこちらをむく。
「おっと、言い忘れた。その二つに分かれた尻尾な。できるだけ一緒にして一本に見えるようにしときな。
この辺りで気付くニンゲンはいねぇだろうが、念のためだ。それだけでもだいぶ違うもんさ」
そう言うともうそれ以上は振り向きもせず、歩きだした。
あたしはこれからどうしていいか分からなかったので、言われるまま、彼のように先端の分かれた尻尾をキュッと
引き結ぶと漫然と後をついていった。今思えば、先導されていたとはいえ、あたしを散々追い回した人間の元によく
向かう気になったものだ。
──あたしがその青年に最初に出会ったのは比較的大きい家の縁側だった。
少し手の込んだ庭造りで、大きな松ノ木と同じく大きな庭石が綺麗に配置されていた。
なにやら、ごほごほとせき込む声が聞こえてた事は覚えている。その声の主は秋口もまだ序の口だと言うのに上着を
着込み、火が入っていないとはいえ、火鉢のそばで書き物をしていた。傍らには書物や巻物がいくつも山積みに
なっている。
クロスケがにゃあと訴えかけるように鳴くと、書き物の手を止め、こちらを見やると目を細めた。
「おや、クロスケ。こらあ珍しい。今日は嫁さんを連れてきたのかい?真っ白なベッピンさんじゃないかえ」
そんなんじゃないと抗議しようとしたら、声を上げるより早く、クロスケの尻尾が軽く顔を叩いた。
……どうやら喋るなということらしい。
「お妙さん、お妙さん、クロスケが嫁を連れてきてくれたよ」
すると、家の奥からこの家のお手伝いと思しき女性が出てきた。たすき掛けし、今さっきまで何かの仕込みを
してたようだ。両手を手ぬぐいでぬぐいながら出てくると、二匹の猫の姿をみとめ、顔をしかめた。
「あんれま、ほんに猫が増えましたなあ。坊ちゃんがエサをやるようになったせいだべか」
どうやらこのお妙という女性はあたし達を歓迎してはいないようだ。なんとも嫌そうな視線を送ってくる。
「お妙さん、そんなこといわんと。いつものようにご飯を少し分けてやってくれまいか。このとおりだ」
年若い青年は軽くせきこみながらそう頼んだ。お妙と呼ばれた女性は口の中でブツブツ言いながらも
「坊ちゃんがそう言うんなら」と、食べ物を用意してくれた。
その時になって初めて自分が空腹だったのだと気がついた。出されたゴハンは粗末なモノだったがクロスケと
いっしょにガツガツと貪り食った。
「ほかほか。腹、へってたんだなあ」
そんなあたし達の様子を見やって青年はまた目を細める。
食べている間、青年は親しげに話しかけてきていたが、その内容は手前勝手に頭の中で想像した事を思うまま
言の葉にのせるだけの意味のないものだった。
曰く、猫はいいな。日がな寝転がってるだけでのんびりしてて。曰く、今日はネズミに逃げられたのかだの……
そのたびに何か言い返したかったが、先ほどクロスケに喋らないよう釘をさされたのと目の前の食べ物とで
それどころではなかった。そうこうしているウチ、出された食事はあまり多くなかったのですぐに無くなった。
そして、食べるものがなくなると、クロスケは青年にむかってにゃーと鳴くとそそくさとその場を後にした。
あたしもあわててクロスケの後を追い、藪のなかに消え去った。
「──人前で喋るんじゃねえよ。普通の猫はしゃべったりしねえもんだ」
人気のない場所に着いた途端、クロスケはそんな事をのたまった。
「まさかそんな事もわかんなかったたぁな。そりゃ、アッチコッチで追い回されたろう。こりゃあ骨が折れるぜ」
その時はじめてそうだったのか。と、合点がいった。どうりで話しかける端から相手が腰を抜かしていたわけだ。
言われてみれば話しかけても驚かなかったのは小さい子供くらいだったか。
「ま、何だ。猫らしい振る舞いも必要っちゃ必要だが、とりあえず人前で喋らないようするこった。あと、喋る
ときも極力辺りに人の気配がないか気をつけろ。ニンゲンにバレちゃぁ、ブっ殺されかねんぞ。もし逃げ切れたと
してももうその辺りには住めないものと思え」
低い声で念押しされた。あたしは気圧されながら、かろうじてうなずいた。あたしだって好んで追い回される
ような事をしたりはしない。
──その後もいくつか彼について回り、エサのもらえる家や、エサの採れそうな場所を教えて貰った。
だがいずれも、ありつけるエサの量は微々たるモノで二匹で分かちあうには量が足りなかった。
「──ま、その点に関しちゃそう心配すンな。まずはオレサマが教えることをシッカリ頭に叩き込んでおくことだ」
クロスケはそういって、あたしにこの町で猫として生きてゆく術をいくつも教えてくれた。
エサをくれる家、エサの採れる場所はもとより、うっかり寝そべるとダニやノミにたかられる危険地帯。
暖かく過ごせる場所、涼しく過ごせる場所。安全な水飲み場、石を投げてくるニンゲンの子供の出てくる所等々……
そのほとんどが「猫として生きるためのコツ」で、極力、町の猫にどうやってとけ込むか?という方法だった。
「さぁて、大体教えられるこたぁ教えたかね。猫として生きてくにゃぁ、こンだけ知ってればなんとかならあな」
そう言って、気持ちよさそうに前足で顔を洗った。
毛づくろいをはじめた彼を見やりながらあたしは疑問に思っていた。どうして彼がここまでしてくれるのか……
「なんで……」
「あん?」
「なんで、あたしにここまでしてくれるの?他の猫たちはケンカをしかけて来るばかりだったのに」
そう。今まで出会った猫とは、いつも喧嘩になっていた。相手がいつも仕掛けてくるのだ。
クロスケは毛づくろいをしながらこう答えた。
「なに、同族のよしみってヤツさ。それに、オレサマの縄張り、どうせならおまえさんが引き継いでくれりゃぁ、
他のネコどもに取られるよかずっとマシなんでね」
引き継ぐ……?
「あぁ。もう少ししたら、オレサマはこの町からオサラバするつもりなのさ」
「え?」
「オレサマがこの町に住んでそろそろ二十年は経つ。いいかげん姿を消さにゃニンゲンどもに怪しまれる頃合いね」
「そんな……」
まだまだ彼に聞きたい事、教わりたい事、沢山あったのに。
「なあに、そんなに悲観するこたぁねぇよ。今まで教えてやった事をしてりゃ、大抵どうにかなるもンよ。
もう、ン十年もこのやり方で生きて来たんだ。何も心配するこたぁねぇって」
毛づくろいを済ませたクロスケはよいしょっとばかりに立ち上がった。
「最後にねこの集会所の場所を教えてやる。ソコで顔合わせすりゃ後は何とかならあな。ついてきな」
──ねこの集会所とは、近所一帯の猫達が顔合わせする場所だ。そこで顔合わせしておけば、縄張りの主張が
しやすくなり猫同士のトラブルがおきにくくなる。というものだ。……それでもケンカする時はするものだが。
ネコの集会は厳密にいつ行うかは決まっていない。でも、夜になんとなく行われることが多い。その日も日が
とっぷりと沈んで、辺りが暗くなってからだった。
クロスケの後について家と家の間を進んでゆくうち、のっそりとした黒い影が行く手を塞いだ。クロスケの身体に
緊張がはしる。
「クロスケ?」
あたしは怪訝に思ったが、クロスケは全身の黒い毛を逆立てて緊張していた。黒い影は最初大きな石だと思ったが、
その大きな影はでっぷりと太った猫だった。ここら辺のボス猫なんだろう。妙に威圧感があり、両脇に子分と
思しきヒョロ長い猫が二匹、傍らにひかえていた。
「……ここは俺に任せて大人しく見てな」
そう言うと、クロスケはゆっくりと前に進むと身を低くして地面に伏せた。
「え……」
クロスケはケンカせず、降参のポーズをとった。ネコ同士の場合、最初から喧嘩に勝てないと思った場合、
そうやって相手に道や餌を譲るのだ。しかし、ボス猫はクロスケにのっそりと近づくと、口を開け、容赦なく
クロスケを噛み始めた。
「クロスケ……!」
ボス猫は無抵抗なクロスケに遠慮なく噛みつく。クロスケは刃向かわず、降参のポーズをとっていたのに、だ。
それでもクロスケは抵抗せず噛みつかれるままに耐えている。
あたしは許せなかった。色々世話になったクロスケが理不尽に噛みつかれるのが。
「フギーーーッシャーーッ!!」
あたしは自分の三倍はあろうかというボス猫につっかかった。威嚇するとボス猫はクロスケを噛むのを止め、やはり
のっそりとこちらに向きなおった。目に不穏な光が揺らめいている。
「おい……こら……よせ……!」
クロスケはそう呟いたがあたしには聞こえていなかった。ここまで一方的にクロスケがいじめられていい訳がない。
大丈夫。あたしはクロスケと体格は変わらないがこういう時には大丈夫だ。奥の手がある。あたしは威嚇しながら
ボス猫の前に出た。
「シャーーーーッ!!」
あたしは威嚇しながら目を閉じ、全身に力を入れた。
ボ ン ッ
次の瞬間、空気が爆ぜ、一瞬視界が煙に包まれる。そして視界が晴れるとあたしは二本の足でそびえ立ち、猫たちを
高い位置から見下ろしていた。
「しゃーーーっ!!」
もう一度威嚇すると、三匹の猫たちは途端に全身の毛を逆立て、一目散に逃げ出した。そう、これがあたしの
奥の手。これのおかげで大抵のケンカには負けたことがない。
「こらっ待ちなさいっ!!」
思いの外、敏捷に逃げ出したボス猫たちを追いかけ、あたしは駆けだした。
──はぁ、はぁ、はぁ……
逃げ出した猫たちを夢中で追いかけ、藪を抜け、生け垣を飛び越したが、そこで見失ってしまった。
ちなみに、ケンカで負けたことがないと言うのも全て不戦勝だ。どんな猫もこの手を使うと必ず逃げ出すのだ。
ただ、この『奥の手』はケンカで負けた事こそないが、走る速さはだいぶドンくさくなる。
「まったく、どこいったのかしら……」
息を切らせてしまい、どこかの家の庭先で立ち止まってから、この庭にどこか見覚えがあることを思い出した。
少し手の込んだ庭造り、綺麗に配置された大きな松ノ木と大きな庭石。
「ここは……」
そう呟いたとき、背後から咳き込む声が聞こえた。振り返ると、案の定、例の青年が縁側に腰掛け、そこで巻物を
広げ、咳き込んでいた。ひとしきり咳き込むと、興味深げにこちらを見やる。
「やあ。珍しい来客だね。うちの庭に何か用かい?」
なんだか透明な眼差し、と言うのだあろうか……そんな印象的な目であたしに尋ねてきた。
あたしは何となくその眼差しに居心地の悪さを感じ、プイと目をそらした。
「庭に用はないわ。ここに太った猫が逃げ込んで来たはずだけど……」
ヤツラの残した手がかりがないかと見回すが、そんなものは見あたらない。
青年はひとしきりゴホゴホと咳き込むと、言葉を継いだ。
「デブっちょのことかな?読書に夢中で気づかなかったなあ……確か、ここら一帯のボス猫らしいけど、ウチには
滅多にこないんだ……」
やっぱり、ボスねこだったか。そう思いつつも辺りを見回すのを止めず、あのでっぷりした姿を追い求める。
「あいつ、クロスケをいじめた。許せない……」
誰にともなく口の中で呟いたが、聞こえてしまったようだ。
「クロスケ?真っ黒な綺麗な毛並みの黒猫かい?その猫なら、よくウチにもくるよ。いじめられていたのか……」
その言葉に返事をしようとしてハッと気づいた。クロスケに注意されていたのに人前で喋ってしまったっ!
「!!」
あわててバッと口元を押さえて後ずさる。
「どうしたんだい?」
青年は怪訝そうな様子で縁側からコチラを見上げていた。
──殺されるっ!
そう思ったあたしは身をひるがえして庭から逃げ出した。
「あっ君っ?!」
そう呼び止めようとした声を振り払い、元の場所へと走って逃げた。そしてさっきの場所に舞い戻った頃には
ゼーゼーと肩で息をしていた。
ふと、目を上げると、そこにはまだクロスケがたたずんでいたが、ヒドく冷たい空気を身に纏っていた。
「なあ──おい」
押さえ込んだ怒りの声にビクッと背筋が跳ねた。
「おめぇは何、ブチ壊すようなことしてくれてんだ、お?分かってんのか?
おめぇ、一体、何やらかしたのか分かってるのか?」
怒りを含んだ低い声に思わず後ずさる。せっかく助けたのに何故責められているのだろう?訳もわからず混乱する。
「ったく、よせっつったのに、ニンゲンの姿に変化しやがって……っ。もし誰か他のニンゲンに見つかったらおしめー
だったぞっ……」
そこまでいわれてやっと理解した。この『奥の手』こそ『変化』というやつだったのだ。そしてこの「状態」こそが
ニンゲンと同じ姿をとっている事なんだと。
今まであたしは「ニンゲン」と「ねこ」の区別がついてなかった。だから「変化」の事もわかっていなかったのだ。
「ねこ」と「ニンゲン」には大きな違いがある……
あたしはそのことに大きな衝撃を受けた。
そしてその後、クロスケにこってり油を絞られることとなった。
「いいか!今後ぜってぇ、ニンゲンに『変化』すンじゃねぇぞっニンゲンに見つかったら最後、退治されちまうぞっ
たかがねこ同士の喧嘩に変化することなど言語道断だ。わかったな!」
それはつまり、クロスケも同じ『変化』ができるという事なんだろうか。だから『奥の手』を使わず、ボスねこに
いいように噛まれていたのだ。ネコの身体ではあのボスねこにはかなわないから。
しかし、それならもう一つ失態をクロスケに話さなくてはならない事を思い出した。人前で喋ってしまったことだ。
重い口を開き、今度はどれだけ叱られるかとビクビクしながら顛末を報告をした。
「あ?あの姿でニンゲンと喋ったぁ?で、向こうは腰抜かしたりしたのか?してない?じゃ、そいつの目の前で
『変化』は?してない?……ん〜む……そうか、ならもう気にするこたねぇよ」
一度は緊張を見せたものの、詳細を聞くにつれクロスケの緊張の糸は緩み、元の暢気な様子に戻ってしまった。
……つまり、ネコの姿で喋ったり『変化』するのが問題であって、ニンゲンの姿に『変化』している時に喋るのは
問題がない、ということなのだろううか?
ただ、その事をクロスケに確認するのははばかられた。彼の教えは最初から『変化しない』事を前提に
しているから、仮の話だとしてもいい顔をしないだろう。
……何か確認するいい方法はないだろうか……そう考えると、あたしはその好奇心に勝てなかった──
ある明るい月の夜、あたしは再びあの庭を訪れていた。大きな松ノ木と庭石のある例の庭だ。少し離れた所で
『変化』すると、そっと近づいた。すると案の定、隠れている藪の向こうからごほごほとせき込む声が聞こえてきた。
ふと、疑問に思う。彼はあんなところでいつも何をしているのだろう?丁度いい。せっかくだから聞いてみよう。
あたしはがさがさと藪を揺らし、庭に進入すると彼の前に現れた。
「君は……」
ちょっと虚を突かれたような表情で青年はあたしを見上げた。相変わらず上着を重ねて羽織り、縁側にしかれた
座布団の上に座っている。
「いつも思うんだけど、あなた、ここで何をしているの?」
……今思えば、「こんばんわ」くらい言えば良かったと思うが、当時はそんな事さえ知らなかった。
彼はしばらくほうけたようにあたしを見上げていた。が、やがて我にかえったように咳払いをすると
「いつもは読書をしているけど、今日は月を観ているんさ。君も一緒に観ねえかい?」
と、穏やかな声でそう答えてきた。
「月?」
彼の視線を辿ると空に浮かぶまあるいものにたどり着いた。この暗い空に冴え冴えとした光を放っている。
これが月という奴なんだろう。いつもそこにあったのに今まで意識して見たことはなかった。
「…………。」
しばらく、無言で眺めてみる。が、月が特に変化したり動いたりする様子はない。
「?これのどこが面白いのよ」
疑問たっぷりにたずねた。途端、彼はプッと吹き出した。
「ははは。君はそんなのとは無縁かい。今夜はこれ以上ねえほど綺麗なお月様だっちゅーのに」
「綺麗?」
言われてもう一度お月様とやらを見上げてみる。ただ丸いだけだ。転がったりでもすれば面白いんだろうが、全く
動かない。これがキレイというヤツなんだろうか……?
「……つまらないわね。何が面白いのかしら?特に転がったりする訳でもないし」
「あはは。お月様が転がる。か、そんな事を聞いたのは初めてだ」
愉快そうに彼は笑う。何がそんなにオカシイのだろう?
「そんで君は今日はどんな用なんさ?またデブっちょがクロスケをいじめたんかい?」
言われてあたしは言葉に詰まった。単にこの姿の時、人前で喋っても怖がられないか確認したかっただけなのだ。
この村で唯一、人前で喋った事があるのは彼の前でだった。
だからこうしてニンゲンと普通に話せているとわかった以上、もう用はない。
「別に。何でもないわ」
そういうとくるりと背を向け、今来た藪に向かい、帰ろうとすると、後ろから声がかけられた。
「あっ、き、君、また来てくれねえか……」
あとは、またゴホゴホとせき込む声がするだけで聞こえなかった。あたしは返事を返さず藪に入り彼に見られない
所で『変化』すると、その場を後にした。
◇ ◇ ◇
──クロスケとの別れは割とアッサリしていた。
適当な馬車の荷台に紛れ込み、遠くの街に移るつもりだといっていた。この辺りは田舎なので、そう頻繁に荷を
積んだ馬車は出入りしない。数日かごとに村に来る荷馬車にクロスケは潜り込むつもりなのだ。
あたしたち二匹のねこは馬車に荷物を積み込んでいる所を物陰に隠れ様子を窺っていた。何人もの力自慢が大きな
荷物を次々と馬車に積み込んでいく。
「やっぱりいくの?」
その時あたしは捨てられる子猫のような表情だったに違いない。一方のクロスケは見知らぬ街へ向け出立すると
ゆうのにその態度はいつもどおりだった。
「おいおい、情けねえツラしてんじゃねえよ。必要なこたみんな教えたろうが」
馬車に忍び込むタイミングを物陰で測りながら、あたしの顔を見てクロスケはそんな軽口を叩いた。
「でも……」
そういい澱むあたしの額を尻尾でぺしぺし叩きながら軽い口調で言う。
「大丈夫だって。他の猫どもに紛れちまいや、何とかなるって。それに今生の別れって訳でもねえんだ。
……ま、しゃーねーな。時たま様子を見に来てやるって。そんでいいだろ?」
「ほんと?」
確かめるように念押しするあたしにクロスケは
「ああ、元よりそのつもりだったしな。たまに見に来るよ。と、そろそろだ。じゃあな」
軽く返答すると、スキを見つけたのだろう。あっという間に馬車に潜り込んでしまった。
そして間をおかず馬車は走り出した。あたしは馬車を追いかけたい衝動に駆られたがそんなことをしてもクロスケは
喜ばないだろうことはわかる。ひかれる後ろ髪を振り払うように尻尾をひと振りすると、クロスケの教えてくれた
昼寝スポットに向け歩きだした。
──結局、それからクロスケに再会したのは何年か後のことだった。
◇ ◇ ◇
「──そういえば最近、クロスケの姿を見ないな。シロスケ、おまえ知らないか?」
──数日後、例の庭先でエサを貰っている時にそう話しかけられた。何のことはない。青年のいつものヨタ話だ。
このニンゲンは、勝手にこちらの事情に想像を巡らしてはいつも的外れな事を話しかけてくる。
ついでにあたしの呼び方はクロスケの嫁からシロ、もしくはシロスケと呼ばれるようになっていた。
まあ、クロスケのナワバリを継いだのだからそれは仕方がない。
「病気になったり、馬や馬車にはねられたりしてなければいいが……いかげん年寄りのはずだし……もう、
会えないんだろうかなあ……」
あたしはエサの入った皿から顔を上げてにゃあと鳴いた。特に意味はない。この的外れな青年がテキトーに
解釈してくれるだろう。
「ほかほか、おまえさんも心配か。デブっちょにいじめられて縄張りから追い出されたんでなければいいんだけどな」
あたしはそんな語りかけを聞き流しながら再びエサに取りかかった。
あれから、あたしはあたしなりに猫として生きてきた。『化け猫』とやらになる前の猫としての自分は意識的には
覚えていないものの、何とかうまくやっている。と、思う。
一番の問題はボスネコの「デブっちょ」だったが、あたしと事を構える前にそそくさとあたしから逃げるようになり、
喧嘩に発展することはなかった。よっぽどあの事が恐怖として記憶に植え付けられてしまったらしい。因みに、他の
ネコとも喧嘩するが勝ったり負けたりだ。やはり普通のネコの体格だとそんなもんなんだろう。
──やがてエサを食べ終わると、あたしは伸びをし、縁側に登って、あぐらをかいて座る彼の膝の上で丸まった。
「おいおい、またかい」
苦笑しながらもどこか嬉しそうな声で彼はボヤく。
最近、あたしは『読書』とゆうものに凝っている。といっても『もじ』とゆうやつが読めるわけではない。この
青年が読み上げるものを間近で聞いているのだ。
最初は『読書』という奴がどういうものかわからなかったが、彼が話しかけてくる話の中に『読書』の話題が多く、
自然と興味を持つに至った。そのうち、冬が近づくにつれ、彼の膝の上が暖かいと分かり、そこがあたしの指定席に
なるのに時間はかからなかった。
「まったくもう、シロスケにゃあかなわねえなあ」
そう言うと傍らに積み上げていた書物を手に取った。
「えっとじゃあ、今日は『山海経』ってやつにしようか。
異国の書物でその国の山と海の生き物や植物を記したものだと」
そういうと、その書物をあたしに読み聞かせ始めた。あたしは彼の膝の上で無関心を装い丸くなりながら耳を傾ける。
……読書はいい。あたしの知らない世界の事を沢山知ることができる。
ときどきゴホゴホとせき込むことと、書物に夢中になって読み上げるのをやめてしまうことをのぞけば、彼は理想の
読み手だった。あたしはそうやって、いくつもの書を『読書』した。
彼は沢山の書物や巻物を取り寄せていて、実用的な知識のものから眉唾ものの空想じみたものまでありとあらゆる
読み物を読み漁っていた。中でもあたしに後々にまで影響を及ぼしたものは秘伝書と恋愛ものだった──
「これは凄いぞ、シロスケ。ここにかかれているのは秘伝中の秘、法術っちゅ〜て、不思議な術を使う事ができる
やり方だそうだ。ここに載っている秘伝をモノにできれば仙人みてえになれるんだと」
今考えればなんと胡散臭い書物だったことか。そんなものを彼は大枚はたいて買ったというのだ。
当然、彼もその書物に書かれた『秘伝』とやらを試してみたが、小石一つ木の葉一枚動かせなかった。それでも、
彼はその書物を繰り返しあたしに読んで聞かせたものだ。
「シロスケよう。ボクは思うだ。こういう不思議な術を使う有名人は大抵、みんな不思議な出自があってなあ。
人じゃないものの血が流れているのが大半でな。それってつまり、こういう術そのものが人向けに作られたもの
じゃないんじゃないかって考えただ。
だから、この書物の内容も、人じゃない者が使えば使えるようになるんじゃないかって気がするだ」
そんな事を言い、一向に秘伝書に対する興味を失わなかった。おかげで興味のないあたしまですっかり内容を覚えて
しまったが、マサカその秘伝書が『本物』であったことが最も驚くべき事実だった。その『術』は彼が考えたように
ニンゲン向けではなかったのだ。その時の知識は永く時を経たあたしの中に今でも生きている。その知識に幾度も
命を助けられたものだ。
そして、恋愛モノ。この物語というものにも大いにひきつけられた。大団円で終わるもの、悲恋で終わるもの、
悲劇で終わるもの……オスとメスのつがいで紡がれる物語の
なんと多様な事か。ニンゲンのするレンアイとやらはネコのあたしにとって未知の領域そのものだった。
つい最近まで猫とニンゲンの違いに気付かなかったあたしだが、こういう話を聞くとナルホドと思う。
猫はこんなこと考えたりはしない。と、思う。
ただ、その手の話はあまり取り寄せていなかったのか数は少な目だった。とはいえ、その中でも彼が特にお気に入りの
物語があった。
「これなんか、なんとも言えねえな。月の夜、出会った不思議な娘さんと不思議な世界へ入っていく。いいなあ」
そう言って、遠い目をした。それは何か思い出にひたっているようだった。
「にゃあ」
あたしは読みかけの物語が止まったので読み上げを再開するよう、鳴いて先をうながした。
「ああ、そうなんだ。ボクも会った事があるんだ。月の夜、不思議な娘さんに……もういっぺん、会えないかなあ、
会ってみてえなあ……」
あたしの鳴き声をどう解釈したのか、青年はそんな事をいって、もっと遠い目をした──
◇ ◇ ◇
……あたしはどうしてまた裏庭に来ているんだろうか……今夜は空気が冷えきってて、澄んでる為月の光が遠くへ届く夜だ。
濃い紺色の空にはちぎれ雲が切れ切れに空に散っている。月の青白い光がすべてを染めあげ、木や岩は色濃い影を庭に
落としている。
あたしは庭先で『変化』し、人の姿をとった。すると、シン、と冷えきった空気が肌から染み込んでくる。吐く息が白い。
耳をすますといつものゴホゴホといった声が聞こえてきた。どうやら今日も縁側で『読書』をしているようだ。
あたしは彼の前に出た。彼は縁側で相変わらず熱心に『読書』をしている。
あたしはいつものように彼の前に現れるとつっけんどんに言った。
「寒いのにこんなとこで読書なんかするより、もっと暖かいところがあるんじゃない?」
すると彼は書物から目を上げた。
「やあ、こんばんわ」
穏やかなまなざしでそう言われた。
「こ、こんばんわ……」
思わずそう返す。そういえば、ニンゲンは夜にそうアイサツするんだった。『読書』の中で知ってても実際に
アイサツを交わすのは初めてだった。
「なあに、夜に書を読むのに月明かりが丁度よい塩梅でな」
炭火の入った火鉢と灯をともした灯籠を両脇に抱えるようにして、暖かそうな空間を形作っていた。彼自身も分厚い
上着を着込んでいるが、知っている。それでもこの時間の縁側は底冷えする。なんて物好きなんだろうと思った。
「あたしに会いたいんですって?会っても何もないわよ」
会ってどう言ったものか分からなかったので、つい口からこぼれ出た言葉がこれだった。
青年は虚を突かれたような表情になった。そして二・三回ほど軽くせき込むと、
「あ……いや、うん。ちょっと一緒に話してくれれば……その」
と、目を反らしながら答えた。どうも答えがハッキリしない。
「? 話だけでいいの?」
というか、何を話すればいいのかさっぱり見当もつかないのだけれど。彼はカクカクと頷いた。
「そ、そうだ。この書なんか面白いで……」
そう言うとたった今読んでいた書物の内容を丁寧に解説しはじめた──
◇ ◇ ◇
──結局、あたしが『変化』している以外、いつもの『読書』と大して変わらなかったが彼は嬉しそうだった。
あの物語に記されているような冒険を望んでいるのでなければ一体、彼は何を望んでいるのだろう?結局わからない
ままだった。
『書物』の話題が尽き、夜も更けるとあたしはそこからはなれ、人のいない所で変化すると、自分のねぐらに帰った。
──あれから。最近になると猫のあたしはこの家にほぼ入り浸るようになっていた。
お手伝いのお妙さんは当然、いい顔をしなかったが、青年の手前、邪険に追い払われることはなくなっていた。
「まあ、あの猫がおると坊ちゃんの病気の調子もいいみてえだしなあ……」
そうつぶやくと、しぶしぶいつもより多めにエサを出してくれた。
──居座るうち、だんだん解ってきたこと。青年の家は何かの商いをして大きな家を建てたらしい。ただ、青年以外の
家の者はほとんど家に居なかった。
何でも青年だけが肺の療養にいいとかでこの離れにやってきたんだそうだ。
そう、彼は肺を患っていたのだ。
お妙さんはこの近くに住んでいて、雇われて家の事や青年の身の回りの世話をしている。ということらしい。
彼は手があいたときは家の手伝いの書きものである書をしたためたり、時間さえあればなにがしか『読書』をしていた。
もちろん、あたしはその『読書』につきあって、彼の膝の上で丸くなるのが日課になっていた。
その日の夕方も彼の膝の上で『読書』していた。
「──っ!」
ピクリと耳が反応し、あたしは頭をあげた。
「ん?どうした?」
書を朗読していた青年もあたしの様子に気づいて顔をあげた。あたしはそれに応えず、じっと様子をうかがった。
この気配は……
あたしは庭先に現れた覚えのある『気配』をおいかけ庭にとび出し、駆け出した。
「あっ、おいシロスケっ?」
背後から呼び止めるような声が聞こえたが、今は『読書』よりもこっちだ。
家と家の間を抜け、路地を駆け『気配』をおいかけた。そして、その『気配』が止まったのはあの場所──
見覚えのある、あの空き地だった。
「よう。ひさ──」
あたしは有無をいわさぬ勢いでその気配の主に突進した。
「おまっ、ちょっまっ」
相手は言葉を発する間もなく巻き込まれ、もんどり打ってあたしごとゴロゴロと転がった。端から見たら激しく
取っ組み合っているように見えただろう。ようやく回転が止まると、あたしは喜びに弾んだ声で声をかけた。
「おかえりっ。やっと戻って来てくれたのねっ」
「お──おめぇなあ……」
相手はあたしの身体のしたから大儀そうに身を起こす。今のゴロゴロで、身体のアチコチに葉っぱやら
枯れ草やらがくっついている。
「ひさしぶりっ」
あたしは人間だったら満面の笑みを浮かべていたろう。弾んだ声でもう一度そう言って彼を出迎えた。
『気配』の主はあの変わっていない独特の笑い声で笑いかけてきた。
「しっしっし。あぁ。久しぶりだ。おめぇも息災そうだなあ」
そう、『気配』の主はあたしに色々と教えてくれた先輩猫またのクロスケだったのだ。
◇ ◇ ◇
──ひとしきり。再会を喜びジャレあって、ようやくあたしは落ち着き、ゆっくり話す余裕ができた。
「ね、ね。そっちはどうなの?今、どうゆう所に住んでいるの?」
ようやく落ち着けたクロスケは毛づくろいをしながらのんびりと答えた。
「そうさな、向こうでの暮らしもたぶんここと変わらねーかな。ま、気楽なもんさ。最初エサ場やら縄張りやらも
見つけるまでは大変だったがな。一度見つけちまえば何とかなるもんさ」
「へ〜〜」
見る限り、クロスケの毛並みもキレイで元気そうだ。
「そっちこそしばらく見ていたが上手くやってるようじゃねえか、え?ちょっと前までニンゲンに追いかけ回されて
ヒイヒイ言ってたのが嘘みてえだ」
ちょっとからかうようにこっちを見るとしっしっしと例の笑い方で笑った。
「うん!! クロスケの教えてくれた色んなことのおかげで、毎日楽しいよ!」
「しっしっし。そらあ結構だ」
「それで、それでね!今『どくしょ』っていうのをやっててね!……」
あたしは取り留めもなく『読書』の事を次から次へと話し始めた。ためになる知識、ワクワクする物語。想像も
つかないようなホラ話やら切ない恋物語まで。とにかく、頭に浮かんだことは何でも話した。
クロスケは黙ってあたしの話に耳を傾けてくれたけど、あたしは話に夢中で、クロスケが眉を曇らせていたのに
気がつかなかった。
──ややあって。あたしの話が途切れるのを見計らって、クロスケが口を挟んだ。
「そらぁ、大した知識だぁ。それで、おめぇはあのウチでひたすら『読書』してそんだけの知識をモノにした……と」
そこまで言うと、何か言いあぐねるように押し黙った。
「…………クロスケ?」
「なあ。おめえ。これは決して意地悪で言うんじゃねえ。おめえの為に言う事なんだがよ……」
尻尾を揺らし、まるで棘だらけの草むらを進む時みたいな面もちでゆっくりと喋りだした。
「ん?なあに?」
「おめぇ。もうあのうちにゃあ、いくな。『読書』ってヤツぁ、猫にゃあ必要ねえもんよ」
>>135-145 ……とゆーわけで、「ねこのゆめ」前編を送り届けます。これは鬼子キャラの猫又、ハンニャーの過去話となっております。
続きの後編はまた明日。
乙です。
……とと。そういえばおにテトさんのSSは完結していたんでしたカ?ぶった切ってしまったなら申し訳ありませんでした……
>>148 あれで一区切りです。
あの後の話はどちらかというと、天魔党視点になりますので。
あ。それならよかったです。
>>135-146 あら素敵なお話!
猫の生態と縁側の綺麗な月を思い浮かべてしまうよ。
これで前編ってことは、まだまだいろいろありそうだね。
般ニャーの古い過去をpixとかでマンガに描きたいと思ってたので、なんか続きが楽しみ。
◇ ◇ ◇
夜。
「そうさな。今日はほれ。こっちの薬草学の書にしてみるだ。この辺りの薬草や山菜も載ってるんだと」
そういって、彼はいつもの『読書』を開始した。
──・・・……あたしは。あれからこの家に戻って不機嫌な様子で彼の膝の上で『読書』をしていた。
人の姿をしていればぶっすーとした表情だったに違いない。思い出してもムカムカする。
クロスケとの再会は喜びに始まり、腹立たしさで終わった──
「クロスケ、本気?」
あたしはクロスケに告げられた言葉が信じられなかった。
「あぁ。本気だとも。おめぇにゃあこれ以上あのウチにゃあ行って欲しくねぇな」
言ってから、何かをまぎらわそうとするかのように、耳の後ろを後ろ足で掻いた。
「なっ何でっ?!」
「ま、オイラも飼い猫から『成った』クチだから気持ちはわかる。けどよ、あんまニンゲンにゃ肩入れしねぇ
ほうがいいんだって。後がきちぃぞ」
──そしてそのまま。よく判らない理屈を並べ立てて『あの家にゃぁ、もう行くな』の一点張りだった。
結局、互いの言い分がすれ違ったまま、あたしは「クロスケの分からず屋っ!」と言い捨てて、引き留めようとする
声を振り切り、帰ってきてしまっていた。
──全く、クロスケの分からず屋。『読書』の素晴らしさも知りもしないで──
苛立たしげに尻尾をパタパタさせていたら、頭を優しく撫でられた。
「どうした?シロスケ?そんなにこの書の内容、気に入ったかい?」
「ニ゙ャッ!!」
あたしは不機嫌だったのでその手を苛立たしげにひっ掻いたが、彼の手は危なげなく、その爪を回避した。
「おとと、不機嫌なほうだったか。何かあったのかい?」
今までしょっちゅう、あたしの機嫌を読み違えてひっかかれていただけあって、あたしの爪を躱すのにも最近慣れてきた。
「やあれやれ、シロスケの気まぐれにゃぁ、かなわねぇな……っ」
そう呟くと、いつものように咳込んだ。……いや、いつもより、もっと湿ったしつこい咳だった。
ごほ、ごほっ、ごほっ……ごふっ!
ぴぴっと、何かが散った。それは鮮やかな赤い色をしていた。あたしは一瞬、何が起こったのか理解できないでいた。
彼の上体がくずおれ、あたしは思わず彼の膝から降り、その時目にしたもの……彼が口元を押さえて大量の血を
吐いた所だった──
──気がつけば、あたしはお妙の住んでる建物の戸口をカリカリとひっ掻いていた。あたしは動転していたんだと思う。
誰か頼れそうな人が彼女しか思い浮かばなかった。というのもある。幸いな事に夜も半ば過ぎだというのに、
まだ起きていたらしい。何度も何度も戸をひっ掻いていると、その音を不審に思ったのか戸がガタガタと開かれた。
「ど、どうしたんだい?!そのナリは?!」
それがあたしを見たお妙さんの第一声だった。後でわかった事だったが、あたしはその時、彼の吐いた血でベットリと
汚れていたのだ。
ただ、あたしはその時夢中だった。お妙の姿を確認するや否やお妙の履き物をくわえて走り出した。
「何すんだい?!ちょいとおまち!」
後ろからお妙が見咎めて追いかけてくる。お妙があたしを追いかけ、ついてくるのを確認するとあたしは彼が血を
吐いて昏倒してる縁側へと誘導した。
「!!っ お坊っちゃん?!」
その様子を一目見て察したらしい。あわてて駆け寄り、大声で人を呼ばわった。
──それから大騒ぎになった。たちまち人が集まり、彼は寝床に運ばれ、医者が呼ばれた。
「──縁側で見つかった?バカな。身体を冷やすなど自殺行為ですぞ、寿命を縮めるつもりですか」
彼の様子を診察に来た医者はそういった。
寝床に横たわった彼は医者に脈をとられながら薄く笑うだけだった。
「良いですか。今後、縁側で読書など言語道断。安静にしていなされ。無茶な事をなさると病がよくなるどころか
命を縮めますぞ」
やがて、医者は彼の薬を調合すると、絶対安静を言い渡し、引き上げていった。
「全く、ほんに肝が冷えましたで。この猫が来なければどうなっていたか──」
お妙はそう言うと湿った手ぬぐいであたしをゴシゴシとこすった。彼の吐血であたしの身体はあちこち赤く染まって
いたのだ。
あたしは最初おとなしくしてたが、くすぐったさがイヤになってふりほどこうとした。が、お妙の手は汚れを
落とすまで頑として譲らなかった。
「ははは。大した事ないって。みんな大げさだなあ」
寝床に横たわりながら彼は笑ったが、その声にはやはり、元気がなかった。
「大した事大ありですっ。お坊っちゃんに何かあったら、大旦那さまに顔向けできなくなるとこでしたよ。全く……
いいですか?今日からちゃんと休まれているか見届けるまではここに居ますからねっ」
それから数日──お妙は彼がちゃんと安静に休むのを見届けるまで帰宅しないようになった──
◇ ◇ ◇
「──で? あんたは早速、何でここにいるのよ?」
夜。ひさしぶりに「変化」して彼の元に現れた時だった。あたしが庭に入ると彼は這い出るようにして縁側に
出ようとしている所だった。
「──あ。ひ、ひひ、久しぶり」
「久しぶり。じゃないわよ。何してるかって言ってるの。駄目じゃない。お医者さまに安静にしてるように
言われてるのに……はやく、こっちに来なさい!」
「あてて、そんなっ 急に引っ張らないでっ……」
そういってあたしは彼を引きずるようにして寝床につかせた。この前のような事はもうたくさんだ。
「まったく、お妙さんが見に来なくなった途端に……一体、何だってこんな無茶をする気になるのかしら?
信じられない!」
そう言いながら、枕元においてあるたらいの水に手ぬぐいをひたし、絞って彼のひたいに置いた。
「はは……その……うん。面目ない」
ごほごほと咳込みながら、彼は弱々しく返事を返す。
「で?もう一度聞くけど、一体何だってそんな馬鹿げた事をしようって気になったの?!わかってる?アンタそれで
命縮めてるのよ?!」
彼の枕元に座ると上からジロリとねめつけた。彼は布団をかき寄せると表情を隠すように潜り込んだ。
「その……月明かりで……書を……だな……」
「部屋の中ででも十分読めるじゃない」
モゴモゴと呟きかける彼をピシャリと遮った。
「いや……ホントは……その……」
「?」
彼はさらに言いにくそうにモゴモゴと布団の中で呟く。何かハッキリしない。
「何よ?ハッキリしないわね。ちゃんと言いなさいよ。ちゃんと」
あたしはジリジリと焦れた。
「その……あれだ。縁側に出てないと君に会えなくなると思って……その……」
「はぁ?」
あたしはどんなに理由があるのかと身構えていただけに力が抜けた。どれだけ強い理由かと思えば……
「そんな事で縁側に出ようだなんて無茶しようとしてたの?!バっカねぇ〜〜そんな事しなくても会いにきたげるわよ」
あたしは拍子抜けしてそうのたまった。この時代、建物に鍵のない家は珍しくなく、この家にも鍵はついてない。
「ほ、本当か?本当なんだな?!」
だが、軽い気持ちで言ったにもかかわらず、彼は妙に勢いづいてたずねてきた。
「そうね。ほっとくとアナタ、また無茶やらかしそうだし、時々様子を見に来ることにするわ」
あたしは多少、クロスケをマネたような言い回しで請け負った。クロスケもこんな気持ちであたしにあの台詞を
言ったんだろうか……?頭の片隅でチラリと考える。ともあれ、その言葉を聞いて彼は安心したかのように布団に
沈み込んだ。
──だがあれから。彼の症状は少しずつ悪くなっていった。湿った咳を繰り返すようになり、書き物の仕事は
おろか、あれだけ好きだった『読書』もできない状態になった事も一度や二度ではなかった。そして、あたしは彼が
寝床を抜け出さないかを見張る事が多くなった。少しでも調子がいい時、何かと縁側に向かおうとするのだ。
そのたびに『変化』して叱りつけ、寝床に押し込んだ。
だが、日に日に彼は元気を無くし、弱っていく。見守る事しかできない日々が続き、自分じゃどうしようも
なくなってきたとき、クロスケが再び様子を見にやって来た。
◇ ◇ ◇
「よう、達者……て、訳でもなさそうだな?」
ある夜、庭先に現れたクロスケはあたしの沈んだ様子を見て暢気な言葉を飲み込んだ。
「クロスケ……あたし、もうどうしていいのかわかんない……」
あたしは胸の中に押し込めていた無力感とともに「彼」の現状を説明した。彼ならいい知恵を貸してくれるかも
知れない……
「はぁ。肺の患いね……」
──大体の事情を説明し終わると、クロスケは考えながら後ろ足で顎の下を掻いた。
「あたし……あたし、どうしたらいいか……」
クロスケはう〜むと口の中で唸ると黙り込んでしまった。しばらく、暗い夜空を眺めていたが、ポツリと呟いた。
「だからいったのに……」
「えっ?!」
「あ。いや……まずな。最初に言っときたいことがある」
神妙な様子で切り出した。
「う、うん……」
「まずな。遅かれ早かれ、この先、こういう事は何度もある」
「?!」
あたしは彼の言っている意味が分からなかった。
「いや。例えそのにーちゃんが病気じゃなかったとしても、だ。いずれはお前より先におっ死んじまう。ニンゲンはよ、
短い間に病だの事故だの怪我だの寿命だのであっちゅう間に死んじまうんだ。おめぇが思い悩んでいるそれも
いずれはぶちあたる絶対に避けられない宿命ってヤツよ」
「そんな……」
黒い、漆黒の毛並みの中の金色の瞳があたしをじっと睨み、淡々と事実を言の葉にのせてゆく。
「人と関わってゆくっちゅ〜のはそーゆーこった。おめぇはこれから何度もそういう気持ちを味わう事になる。
人により添って生きていくツモリならな。この前『あの家にもう近づくな』つった意味、解ってくれたかい?」
「……で、でも、彼は寿命を迎える訳じゃない。そんなのってあんまりじゃない」
あたしはとっさに言い返したが、クロスケに言っても仕方ないことだとわかってはいた。寿命だろうと病気だろうと
どうしようもないものはどうしようもない──
すると、クロスケは二股に分かれた尻尾を一振りし、
「そうさな。確かに寿命よか病気のが何とかなるかもしれんね。ついて来な。肺の患いに効果のありそうな薬草の
場所を教えてやる。病を治す事はできなくとも、苦しみを和らげる事ぐらいはできるだろうさ。ついてきな」
そう言って歩きだした。
◇ ◇ ◇
──この寒い季節にも関わらず、クロスケは山の薬草・薬木をよく知っていた。
「──で、だ。これがその木よ。樹皮を剥いて乾かしたら、細かく砕いて煮るといい。煮だした汁が薬になる」
いくつか肺の患いに効きそうな植物を教えてもらい、あたしはそれらの名前や臭い・特徴を必死で覚えた。中には
『読書』で知っていたものもいくつか混じっていたが、知らないものも多かった。なにより、文字でしか知らなかった
薬草を実物で見ると想像していたものと大分違ってたりする事も少なくなかった。
「さて……と。今の季節に採れる・とっておくべき薬草はこんなモンかな。扱い間違えると死んじまうようなのも
あっから扱いには気ぃつけんだぞ」
「クロスケ……ありがとう」
あたしは心からお礼を言ったのに、クロスケは何故かムズ痒そうな様子でアゴの下を後ろ足でかき、
「おら。用件は済んだろ。いいから、摘んだ薬草持ってさっさと行っちめぇ」
と、素っ気なく返事した後、シッシッと後ろ足をおっぱらうようにふった。
あたしはもう一度頭をペコリと下げる(ニンゲンの風習だ)と薬草をくわえ、彼の母屋に向けて駆けだした。
◇ ◇ ◇
家屋に入り、人の姿に変化し、彼の枕元に立つと彼は目を覚ましたのかうっすらと目を見開いて、見上げてきた。
「君は……」
どうやら寝ぼけてたりはしていないようだ。起きあがろうとするのを手をあげて制する。そして静かに彼の枕元に
しゃがみ込むと
「……薬草を持ってきたわ。これで大分よくなるハズよ。お妙さんかお医者さまが来たら煎じてもらうといい」
そう言って今さっき摘み取ってきた薬草を枕元に並べた。
「なして……」
「ん?」
「なしてそうまでしてくれるんだ?」
変な事を聞いてくる。
だが、あらためて聞かれるとあたしも答えに詰まってしまった。暫く唇に人差し指をあて、ん〜〜〜と考える。
すると、不意に答えが脳裏をよぎった。
「そうね……早く良くなってまた『読書』して欲しいから……かしら?」
彼は病に倒れてからずっとふせっていて、『読書』してくれなくなっていた。彼に良くなって貰いたい一番の理由は
これしかないだろう。
だが、彼はその答えに不満そうだった。どこか消沈したような声で「そうか……」と呟き、吐息を漏らした。
「なら、お礼に幾らでも書物を貸そう。どうせ読めないしな。好きな書をもっていくといい」
そう呟くと向こうを向いた。どこか気落ちしているように見えたが、それが何故かあたしにはわからなかった。
その時のあたしはそれだけでなく、彼の言うことに少し困惑していた。いくら『書』を貸して貰ってもあたしには
字が読めない。だから、あたしはしぶしぶこう答えた。
「……あなたに読んで欲しいの」
「え……」
向こうを向いた彼がこちらに向きなおり、聞き返した。
「だから、自分で読むんじゃなく、あなたに読んで欲しいの。だから、早く具合がよくなって貰わないと困るの。
わかった?」
「あ、あぁ」
どこか熱にうかされたように彼は答えた。さっきの消沈した様子とは正反対だ。大丈夫だろか?
「じゃ、あたしはもう行くわ。薬草、ちゃんと飲みなさいよ」
そう言って背を向けた。
「あぁ。……お、おやすみ。ありがとう」
小さい声で返事が返ってきた。
「えぇ。おやすみ」
そのまま部屋を出ると、『変化』していつも寝ている場所に引っ込んだ。今日は山を走り回ったせいであたしは
あっという間に眠りに落ちていった。
──翌日──
「──あんれまあ、お坊っちゃん。この汚い草は一体何だべか」
「お妙さん、それは知り合いがわざわざ持ってきた病に効く薬草だと、早速煎じてくれねえか──」
あたしはお妙さんの出した餌を平らげながらその会話を聞いた。食べおえると、次の日の分の薬草を探しに家を
出ていった──
──だが、あれから。彼の具合は日に日に悪くなっていった。薬草を服用した後なら少しは良くなるのだが、病魔が
彼の身体を蝕んでゆくのが目に見えるようだった。
「──駄目じゃない、折角摘んできた薬草を飲まなきゃ。良くならないわよ」
ある晩、すっかりやせ細った彼の枕元に『変化』して現れたあたしは、煎じた後すっかり冷めてしまった薬草を
見、彼が薬草を服用していないことを見咎めた。
「もう……お薬湯、冷えちゃってるじゃない……もう一度煎じるわね」
あたしは囲炉裏に火をおこし、湯を沸かそうとする。
「──いいんだ。ボクの病は治らない……だいぶ前からわかっていたことさ……」
あたしの手が一瞬、止まる。
「そんなこと──」
あたしは否定しかけて言い淀んだ。ロクに病気の事を知らないのに気休めを言っても傷つけるだけじゃないかしら──
そんな考えが頭をよぎり、後を続けられなかった。
気にせず、彼は自嘲気味に言葉を続けた。
「これでもさ、以前は随分と期待されていたんだ。うちは大きな商家でさ。貿易……この国以外の国と取引すること
なんだけど、それを任される所だっただ……」
ところが、病に倒れ、療養と称してこんな辺鄙な山におし込まれた。そう語った。
「で、でも療養にこんなに立派なおうちを用意してくれてるんだし、それに応えてしっかり治さないと……」
この時代、建物はもちろんの事、書物だって安いものではない。また、ここにある書を集めるにも相当の金額が
かかっているはずだった。それを見るだけでも彼にかけられた期待が相当なものではないかと思った。
だが……彼の様子は一向に変わらなかった。
「こんなもの、体の良い厄介払いにしか思ってないさ。その証拠にこれだけ大騒ぎしたというのに家の者は誰一人、
見舞いにも来やしない……うっ!」
興奮して身体に障ったのだろう。急に身体をくの字に曲げ、ゴホゴホとせきこんだ。また、口元に血が滲む──
「ほら、無茶をするから……!」
彼を後ろから支え、再び煎じた薬湯を湯呑みで口に含ませる。……徐々に彼の呼吸が落ち着いてくる──
「……君は……」
それでもまだ、ぜいぜいと浅く呼吸を繰り返し、彼は必死に言葉を探しているようだった。
「え……?」
「君は……どうしてボクなんかの為にこんなに……その……ここまでしてくれるだ?こんなに……こんなに
みじめになったボクなんかの為に?!」
不意に、彼があたしの手を掴んだ。細くなったその腕が思いもかけない力強さであたしの手をひきよせ、あたしは
手に持っていた湯呑みを取り落とした。
ゴトン、と、重い音をたて、湯呑みが転がった。でもあたしは、熱っぽくうかされたような彼の目に引き寄せられていた。
──何?これは何?一体、彼に何がおこっているの?──
あたしは混乱した。普段の温厚な彼じゃない。何か強い光が目から放っているようだ。握りしめられた両手は妙に
力が込められてて、ブルブル震えている。そしてあたしは彼の強い目の光に気圧されて動けなくなっていた。
「ボクは……ボクは……あの月の晩、君に出会ったときから……君の事が──っ」
彼の唇が動き、その言葉を紡ぎだした。あたしはその言葉を聞いた途端、アタマが真っ白になり、思考が停止した──
◇ ◇ ◇
──ッハァッハァッハァッハァッ!
……気がつけばあたしは家と家の間の路地裏で荒く息をついていた。呼吸が早く、心臓は早鐘のように脈うっている。
あたまがクラクラするだけでなく、頬が熱く、肩から上がフワフワと落ち着かない。
あたしはかたわらの塀にもたれかかり、胸をおさえてズルズルと座り込んだ。見るともなく夜空を見上げる。
──知らなかった。彼があたしをそんな風に想っていただなんて──
いつだったか──彼がアコガレていた書の物語──月の晩に出会った娘とともに不思議な世界に踏み出す夢物語……
彼の望みはあの書物に記されているような冒険に出ることではなかったのだ。ようやく、そのことに思い至った。
大きく息を吐き出して、胸の鼓動を落ち着ける。だいぶ収まってきたが、アタマがふわふわする感じは変わらない。
それにどうしていいかわからない。『恋愛』に関する書は沢山『読書』してきたが、こんな時どうすればいいのか
サッパリわからなかった。『読書』しているときは登場人物に対して「どうしてこんな簡単な事がわからないのかしら」
と、思ったものだが、これでは彼らのことは笑えない。これからどうすればいいのか全く見当がつかない。そうやって
途方に暮れた時だった──
「よーう、いってぇ、どうしたんでぇ?」
唐突に、背後から掛けられた声にあたしは飛び上がった。
「クロスケ?!」
「薬草の効き具合はどんなもんかなってよぉ。様子を見に来たらえれぇ勢いでおめぇが飛び出して来るじゃねぇか。
いってぇー何ゴトだってぇんだ?」
黒い猫又はいつもと変わらぬ様子で『変化』したあたしを見上げていた。
◇ ◇ ◇
「は──……『変化』したおめぇさんを……ねぇ……」
そう言うと、クロスケは後ろ足で顎の下を掻いた。
降るような星空の下、あたしはクロスケに全てを話し、どうしたらいいのかたずねた。クロスケに内緒で
『変化』した姿を彼にさらし、時々その姿で会いに行っていたこと。そして、その姿のあたしに彼が
す、すす、『好き』だと言ったこと。
そのくだりを思い出すだけでも、あたまがボーッとなって動悸が激しくなる。まさかいくつも読んだ恋物語に
あったことが自分の身の上に起こるとは思いもよらなかった。
「ま、まずは……だ。そのノボセたおつむを冷ますことだな」
それを聞いてあたしはむくれた。それができればとっくにそうしてる。できないから困っているのに……っ
──すると、クロスケはさもおかしそうにあの独特の笑い声をあげた。
「しっしっしっしっ、おめぇ、今のは怒るとこだぞ。まじめに返されるたぁ思わなかったゼ。しっしっしっ」
「──で、具体的にあたしはどうすればいいのよ」
愉快そうに笑うクロスケにあたしは憮然とした顔でたずねた。
「じゃあ聞くが、おめぇはどうしたいんだ?」
質問を質問で返されて、あたしは言葉に詰まった。
「おめぇのやってる……『読書』?それにゃあ、いろんな答えがのっているんだろ?それを参考にしてもいいだろ、
どうすんだ?」
「そっ、そんなのっ、わ、わかんないわよ!」
なんだか急にバツが悪くなって、あたしは目をそらしながら答えた。そんなあたしの様子を『しっしっし』と笑いだし
そうな様子でながめていたクロスケだが、やがてあらたまった声でしゃべりだした。
「そうさなぁ。どうしたいかわからねぇなら……とりあえずその『変化』を解いて猫の姿で一緒に居てみるこったな。
『猫のおめぇ』と今のおめぇが同じたぁ、知らねぇんだろ?」
「え、えぇ……」
言われてあたしは、まだ『変化』を解いてないことに気づいて、猫の姿に戻った。
「今のおめぇは、初めての事に舞い上がっちまってどうしていいのか分からない状態だ。しばらく、その猫の姿であの
坊ちゃんの側ですごして、どうするかはそれから決めるこったな」
「どうするかって……」
あたしがオウム返しに呟くと、クロスケはニヤッと笑って
「決まってんだろ?坊ちゃんの愛を受け入れるか、それとも拒むかよ」
そういってまた、しっしっしと笑った。だがひとしきり笑った後、まじめな様子になり
「だが忘れるなよ。ニンゲンはオレ達とは住む時間の流れがちげぇ。あんま時間はねーかんな」
そう、言い添えた。
◇ ◇ ◇
あれから──あたしは猫の姿で彼の元に戻り、数日過ごした。薬草も毎日のように摘んできては、彼が眠っている
間に枕元に置いておいた。お妙さんは誰が持ってきているのかいぶかしんだが、彼は誰が持ってきているのか
絶対口にしなかったし、一時的にとはいえ、薬湯を口にすれば症状が和らぐのは確かだったので深く追求しなかった。
彼は猫のあたしを抱き上げてあたしの額に額をスリスリとすり付けながら
「ひょっとしたら、シロスケが持ってきてくれてるのかもしれねえぞ?」
などとうそぶいた。実際そうなんだが、そんなこと彼は知らない。
ニンゲン曰くあたしの毛並みは手触りがいいらしい。彼を始めいろんなニンゲンがあたしの毛並みに触れたり、
頬ずりしたがる。額をすり付ける挨拶はあたしからも時々やったりもする。ここ以外で餌をくれる人にそうやって
お礼したりもしていた。彼はここ暫くずっとふせっていたから眠ってる所をあたしから挨拶代わりに額を額に
こすりつけて起こすこともあった。
──それにしても……彼はあれから穏やかになったような気がする。病状は刻々と悪くなっていってるはずなのに、
それを受け入れてしまっているようなフシすらあるのだ。あの夜、あたしは混乱して逃げ出してしまったと言うのに……
そして、クロスケに言われたようにあたしは時間があれば彼の側で過ごすようになっていた。あたしにとって彼は
どんな存在なのだろうか?改めて考えると分からなくなってしまった。そうして、あたしは答えが出せぬまま、あの日を
迎えてしまったのだ──
◇ ◇ ◇
ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……
息苦しそうな息が繰り返される。こんなにも空気が冷え込んでいるのに汗びっしょりで彼の全身からはうっすらともやの
ようなものさえ立ち上っている。呼吸も浅くせわしなくて苦しそうだ。
──彼の容態が急変したのだ──
お妙さんは彼の様子を見てとって、ただちに医者を呼びに家を飛び出していった。
あたしは家に誰もいないのを確認し、彼の枕元で『変化』した。そして彼のひたいに乗せられた濡れた手ぬぐいを
水にひたし、絞って彼の額にのせると呼びかけた。
「ねぇ、わかる?あたしよ。しっかりして」
呼びかけると、彼はうっすらと目を見開いた。ぼんやりとしたまなざしであたしを見上げた。
「君は……よかった……やっと……最後に……また会えた……」
弱々しい声で囁くように言うとうっすらと笑った。あたしはその表情を見て胸をつかれるような思いがした。
「そんな……気をしっかりして。あたし、まだあの時のこと答えてないのに……応えられずに逃げてしまったのに……」
それどころか答えにさえまだたどりついていない……だが、彼はやさしく微笑むとゆっくりとこう言った。
「気に……しなくて……いい。あれは……ボクの……勝手な……わがままだ……応えてもらおうだなんて……
おもっちゃ……いない」
そこまで言うと苦しげにせき込んだ。思わずあたしが身を乗り出すと、彼はゆっくりと手を差し挙げた。あたしは
つられるようにしてその手を握り返す。やせ細った手が妙な熱さであたしの手を握り返した。まるで彼の中で炎が彼の
命を燃やし尽くしてしまうのではないのかという熱さだった。彼は熱にうかされるようにして言葉を紡ぐ。
「せめて……君に……だけでも……ボクのこと……覚えて……いて欲しくて……」
だんだん彼の言葉が途切れがちになってゆく。あたしは彼の命が燃え尽きようとしているのを感じ、必死で手を握り、
呼びかけた。
「待って!あたし貴方にまだ何も答えてない!あなたに貰ったもの、返せてない!」
あたしはあの夜、あの時に逃げ出してしまった事を痛烈に後悔しながら、彼に呼びかけた。
「いいんだ……最後に……君に会えて……よか……た……あり……う」
最後の言葉とともに彼の口から吐息が漏れた。手から力が抜けた。
そして、もう二度と彼が応えてくれる事はなかった──
「……ばか。何、満足げに笑ってるのよ……」
あたしは彼の傍らに呆然と座り込み、彼の死に顔を見下ろしていた。
彼には色々な事で世話になった。人の姿の時も、猫の姿の時も……彼に告白された時も混乱こそしたが、
嫌じゃなかった。せめてその事だけでも伝えたかったのにそれを伝える前に彼は逝ってしまった。
ボンヤリと、彼の額にのせられた手ぬぐいをどかす。最後に彼の顔をよく見ておきたかったのだ。
彼の死に顔は満足そうだった。
すりっ
彼のひたいにあたしの額をすりつける。猫流の挨拶。最後の触れ合い。それだけではあきたらず、彼の頬に頬ずりを
繰り返した。さっきまで激しく病魔に抗がっていた頬は汗で少し湿ってる。そして、まだ僅かに暖かかった。
あたしは暫くの間、心にぽっかりと空いた隙間を埋めようと、猫のように彼の額と額、頬と頬をすりあわせ続けた。
ややあって、ガララッと、戸が開かれる音で我に返った。
「お坊っちゃま!ただ今お医者さまを あ──」
戸を開けたお妙さんの言葉が途中で止まった。彼の上にかがみ込んでいるあたしと目が合ったのだ。一方、あたしも
顔を上げたまま固まっていた。そうして一、二秒ほど互いに向き合っていただろうか。あたしは居たたまれなくなった。
その沈黙に耐えきれず、お妙さんが何かを言う前に『変化』して、開いた戸の脇を、お妙さんと医者の足下を
一目散に駆け抜けて逃げ出した。
──それから数日後の事だった。
『この家の若旦那が化け猫にとり殺された』とか『使用人が若旦那の精気をすすっているところを目撃した』という
噂が流れたのは──
◇ ◇ ◇
「もうそろそろいいかい。いつまでもそうやってる訳にはいくめい」
クロスケはあたしの傍らでヒマそうに毛づくろいをしながらそう言った。
「もう少し。あともう少しだけ」
あたしはそう言うと(猫からしたら)大きな石を見上げながら感傷にひたっていた。
ここは人気のない墓地。明るい日の光が降り注ぐ中、白と黒の二匹の猫が真新しい墓石の前にたたずんでいた。
あの噂が流れてから、あたしは猫の姿でも人の姿でも、大っぴらに村を歩けなくなっていた。もちろん、彼の家に
近づくこともできず、遠巻きに彼の葬儀を眺めることしかできなくなった。
そして、クロスケにもうこの村で暮らすのは諦め、新しい大きい街に移り住んだほうがいいと助言され、クロスケに
ついて他の町へいくことに決めたのだ。
そして今は、彼の墓前で最後のお別れをしている所だ。
大きな縦長の石に墓碑名を彫っただけの簡単な墓石だったが、この時代に石のお墓をたててもらえるのだから、
やはり彼は恵まれた家の出なのだろう。
彼との思い出はほとんどが『読書』とともにあった。彼の読み上げる声、膝の上で丸まっている時の温もり、彼の
ズレた勘違い──
今となっては全てがこの石の下だ。
「もぉ、待ちきれねーぞ。これ以上そこに居んなら置いていくかんなあ」
いいかげん、じれたクロスケがそんな事をいいだした。
「待って。じゃぁ、あと一つだけ──」
そう返事を返すと、あたしは墓石に向き直った。そして、まるで彼に語りかけるように最後の言葉を紡ぎだした。
「あのね。あたし、あれから色々考えたの。あなたの告白のこと……それでね。あたしの出した答えは『────』」
あたしはその答えをゆっくりと口にした。それが正しいかは分からない。だけどそれが今のあたしにできる精一杯の
応えだった。
「おーい、そんじゃ、いいな。もう行くぞー」
いつまでもお墓の前から動こうとしないあたしにシビレを切らしたのか、見るとクロスケが歩き出すところだった。
「それじゃぁね。またいつか、ほとぼりが冷めたらまた来るわね」
あたしは最後にそう声をかけると、クロスケの後を追いかけて走り出した──
◇ ◇ ◇
──ぽかぽかと暖かい日差しの中、私は私を呼ぶ声で目を覚ました。
「ハンニャー、ハンニャー。そんな所で寝てたら風邪ひくよー?」
そう言って私の膝を揺すっているのは桜色の着物を着た童女だ。体に不釣り合いな長大な刀を背負い、額には小さな
ツノが一対、生えている。
「んん……あたし……眠ってたか……」
私は自分の居る場所をボンヤリと見回した。随分と懐かしい夢をみたものだ。私がただの猫又だった頃の夢……
ここは縁側だ。もちろん『彼』の家ではない。目の前にはやや広い庭と自家栽培の畑が広がっている。この家は
ひのもと鬼子という鬼の娘が住んでいる山奥の家だ。そして、私は請われてこの家に居候している。
どうやら私はうたた寝をしていたようだ。冬の寒さも緩んでいた上、風もなかったのでこの縁側はまるで春のように
暖かい。それでつい、『読書』中に眠ってしまったようだ。ちなみに今は何種類もの「文字」を読めるようになってる。
まあ、その反動で眼鏡が必要なほど目を悪くしてしまっているが。
「ねー、ねーハンニャー。何か面白い『コイバナ』してーわんこもねね様も忙しい忙しいって相手してくんないのー」
そういいながら膝を揺するのはこにぽん。これでも鬼の童女だが、一般に言われている『鬼』の怖さはカケラもない。
「そーねー」
私はボンヤリと夢の内容を思い返しながら生返事をした。いつものように伸びをしてボリボリと頭のうしろを掻く。
あれから。随分と月日も経った。得たものも多くあったし、失ったものもあっただろう。あの時、墓前で最後に彼に
送った言葉。あの時私は何て言ったのだろう?どうしても思い出せない。あの頃の私が精一杯考えて出した答え。
今の私には全く想像できない。失ったものの一つ。というものなのだろう。今となっては知る術はない。
クロスケとはあれから、暫く一緒に生きていたが、やはり最後は生き方が違うため、別々の道をゆく事になった。
私は人と共に生きる道を選んだからだ。
今も元気に野良猫として生き延びているのか、それともどこかでのたれ死んでいるのか……それも分からない。
けれど、根拠もなく今もどこかでのらりくらりと生きているんじゃないかという気がしている。
ともあれ、私は私を見上げているこにぽんを抱き上げ、膝の上に座らせた。
「じゃ、ふるーい古い、昔のお話をしましょうか。月の夜、不思議な娘さんに出会った男の恋物語。なんてどう?」
「わー聞きたい聞きたいっ それどんなお話?」
こにぽんは急に目をキラキラさせて無邪気に聞きたがった。
私は少しだけもったいぶると膝の上のこにぽんに昔、彼の膝の上で聞いた懐かしく古い物語を語りはじめた──
──おわり──
>>154-163 という訳で、猫又になりたてのハンニャーの過去話。これでひとまずは終幕です。お付き合い下さいましたみなさま
ありがとうございました〜
猫又としても恋にしてもまだまだ全然未熟な頃の彼女の話。どうだったでしょうか?
ハンニャーは長生きした強キャラなので、過去話のエピソードはきっと沢山あるんだろうなあ〜って思ったり。
>>151>>152 感想どうもです!後半の話も含め気に入ってもらえたらウレシイですっ
>>153 えっ うそ、きゃ〜〜〜(嬉)メッチャうれしいっス!イメージこんな感じですっまさにドンピシャ。
挿絵になるなんてSS冥利に尽きます。ありがとうございますっ
乙です。面白かった。
その後もいろいろ出会いがあって、恋とかもしたんだろーなー
>>154-163 乙でっす。
ハンニャーかわいそす。
クロスケ、黒い猫って・・・
もしかしてアレに繋がってるとか。
アレ?黒猫キャラっていたっけ?
人でない妖(あやかし)の類に対する誤解。
そのせいで悲しいお見送りになってしまった最後は
良いラストでした。
ところで、時代背景は、明治の前半くらいでOKですかね?
みなさん感想どうもですっ
>>168 時代背景としては「とっても昔」というボンヤリした感じで書いてました。なので、「青年」が読んでいた「書」物も
紙を綴じた本などは少なく、巻物や竹などに記したものも混ざってるカンジです。(だから月明かりで読書ができた)
貿易云々もおそらく、国が「鎖国するまえの時代」のことだとおもいます。
が、あんま詳細に時代考証されるとボロがでまくるので程ほどにしてもらえると助かります(ぉぃ
ファンタジー古代とゆーことで(いいのかそれで)
◇ ◇ ◇
ひのもと鬼子の家屋は山奥にある。そんな場所にもかかわらず、ここには足しげく通う者が何人かいた。
「平和だね〜」
「平和ですね」
言い出したのは人間の女子高校生、田中 匠(たなか たくみ)である。彼女はこの山奥にある家屋まで毎回よく
遊びに来る、ひのもと鬼子の友人である。それに応えたのが、この家の住人こと鬼子だ。彼女は丁度、友人であり
客人である田中にお茶を出した所だった。
「ま〜アレだね。こう静かだとそろそろアレじゃないかな〜なんて思っちゃうよね」
座布団の上にペタンと座り、出された紅葉饅頭をほおばりながら、そんなことをのたまった。手には最新の同人誌を
広げている。今日は先日の戦果を鬼子に披露しに来てたのだ。
「そうですね〜そろそろあれですかね〜」
そういいながら、鬼子は自分の分のお茶をすすった。
と、丁度その時、家の外から元気な怒鳴り声が聞こえてきた。
「鬼子ぉおおーーーっ 出てこいやあっ!今日こそジブンの命日やーーっ決着つけたるさかい、出てこんかーーーっ!」
「お」
田中が来たなとばかりに反応するが特に動揺する様子はない。
「あら」
一方の鬼子も似たような調子だ。
「どうした鬼子ぉおーーーっ!おじけづいたんかぁあーーっ」
「やっぱこれがないと落ち着かないねぇ〜」
田中は自分に煎れてもらったお茶を口に運ぶとふーっと息を吐く。
「すみません、田中さん。それではちょっといってきますね」
鬼子はそう言うと、自らの武器である薙刀を手に部屋を出ていった。
「……しまった。また見逃した」
目をすがめ、鬼子を凝視していた田中はぽつりとこぼした。毎回、鬼子が薙刀を取り出す所を見ようとしているのに
いつのまにか鬼子は薙刀を手にしているのだ。あまりに自然に手にしているので、いつ、どこから薙刀を取り出したのか
さっぱりわからないのだ。一度たずねてみたこともあったが、「いつもありますよ。ほら」と、よくわからない返答を
されてたものの結局よくわからないままだった。
……それはともかく。鬼子はいつものように玄関を抜け決戦場に赴いた。とはいえ、裏庭に広がるただの広場である。
夏には家庭菜園ができる事もあるが、今は黒く堅い地面が広がっていて、もっぱらわんこの鍛錬や、ついなとの決闘(?)に
使用されている。
珍しく、ついなは広場の中央で堂々と仁王立ちして待っていた。手に持った矛を挑発的に持ち上げて鬼子の方に
突き出している。鬼子はゆっくりと薙刀を手に近づいてゆく。
「お待たせしました。正々堂々とは珍しいですね。さ、いざ始めましょうか」
「…………」
が、ついなからは返事がない。
「? どうしました?今更恐れている訳でもないんでしょう?」
鬼子は穏やかな眼差しでそう語りかけた。まだ彼女の戦闘形態である『中成り』には成ってはいない。一応、生成り
状態の彼女であっても薙刀は扱えるし、その腕前は我流で矛を操るついなよりも上であった。
ついなは今までも幾度も鬼子に挑んでは敗北を繰り返していた。それでも(田中曰く)性懲りもなく挑戦することを
止めないのだ。その不屈の精神だけは鬼子も認めざるをえないだろう。
……が、そのついなの様子がおかしい。相変わらず鬼子に矛を突きつけたまま一言も言葉を発さず、微動だにしない。
鬼子は周囲に注意を払いながらゆっくりとついなに近づいていった。
ついなは鬼子に対して戦いを挑む時、様々な策略や罠を仕掛けることが多い。その大半が苦笑ものの稚拙なもので
あるが、用心するに越したことはない。
鬼子はついなに近づいて彼女をまじまじと凝視した。至近距離でみた彼女は完全に臨戦態勢で挑んでいるようだ。
四つ目の怪人のお面を頭に装着し、中華風とも和風ともつかない衣装を身に纏い、矛を突きつけた顔はどこか得意げだ。
が、その姿が一瞬、瞬いたような気がした。
「! これはっ」
鬼子は薙刀の刃とは逆の部分、柄の尻である石突きでついなの足下を一撃した。途端、大量の土が爆発的に飛び散った。
そして、その中から何かがゴロリと転がり出てきた。それはソフトボールよりもふた周りほど大きい金属のカタマリだ。
どこか眼球を思わせるその機械は目玉なら瞳を思わせる部分から黄色い光を発していた。そして、地面に転がった
機械が放つ光の先には先ほどの微動だにしないついなを地面に投影しつづけていた。
「しまった、これは、ワナ──」
同時に鬼子の耳に不穏なひゅるるるという音が届いた──
──鬼子の家は山奥にある。にもかかわらず、畑や家が建てられる位には平地があるが、それでも山の中である。
そして、決闘場の横にも小高い山のようなものがあった。ついなはその山の頂上にいた。この決闘場を見下ろす位置だ。
そこでついなはタイミングを計っていたのだ。
ついなは片膝をつき、肩に黒い丸太のようなものを担いでいた。それは巨大な恵方巻きのようだが、スコープと
グリップがついていた。そのグリップを握り、スコープを覗き込んでいた。スコープの中心には憎っき宿敵
ひのもと鬼子が写っている。ついなはニヤッと笑みを浮かべた。口元に牙のような八重歯が顔をのぞかせる。
そしてついなは手の中の引き金をひきしぼった──
──次の瞬間、ついなの担いでいる巨大な恵方巻きから無数の小さな恵方巻きがシュポンッシュポンッシュポンッと
やや間の抜けた音と共に放たれた。矢継ぎ早にとき放たれたものは恵方巻きだった。それは空中を蛇行し、ぐねぐねとした
煙の尾をひきながら目標に向かって突進してゆく。
──恵方巻きミサイルランチャー──対鬼用武装の一つである。
ついなはミサイルを撃ち尽くして空になった恵方巻きミサイルランチャーを放り投げると命中を確認しないまま、
四つ目の怪人の仮面を目深にかぶった。そして武器を手に崖のような斜面を一本歯の下駄で駆け降りだした。
恵方巻きミサイルは全弾目標地点に命中した──空中でそれぞれ蛇行したため、タイムラグはあったものの、標的に
された地点に連続して爆発が巻き起こり、爆炎で包まれた。ついでもくもくと白煙が立ち上る。
ややあって、その煙が晴れるにつれ、その中から人影が現れた。いわずもがな、鬼子である。だがそのツノは伸び、
目元はキツくツリ上がり赤い隈取りが現れていた。目も真紅に燃え上がり強い気性を思わせる顔に変貌していた。
鬼子の戦闘形態である『中成り』である。
身体のあちらこちらから爆発の名残りである煙をたなびかせながらも、歩く足取りにダメージはみられない。
「やってくれるわね……!」
中成りとなった彼女は山の斜面を駆け下ってくるついなを見上げながらそう呟いた。そのついなは鬼子が爆煙の
中から踏み出して来るのを見るや、高くジャンプし、飛びかかってきた。
「たぁぁああああっ!方相閃・魔滅!」
「!」
ついなの被っているお面の四つ目から圧縮された霊力が金色の光となってまき散らされる。ついなの得意技である。
この金色の光は破魔の力をもち、雑魚の小鬼程度なら穴だらけにされてしまう霊威をもっている。だが──
「はぁっ!」
鬼子は薙刀を正面に構えると、風車のように激しく回転させた。すさまじい回転でついなの放った光をすべて弾じく。
だが次の瞬間、ついなは空中から矛を構えて突きかかった。鬼子は回転させていた薙刀を素早く持ち変えるとガッキと
矛を受け止め、弾き返した。その勢いに押され、ついなは少し離れた場所にしゃがみ込むように着地した。
「鬼子ぉ、今日こそおどれの命日や。覚悟はええか」
しゃがみ、片手をついた姿勢で四つ目の仮面を被った少女は威嚇するように低い声で言った。
「ツマラない御託を並べてる暇があったらさっさとかかってきなさい。勝った事もないくせに」
鬼子がフンと鼻でわらって挑発する。
「方相閃・雷!」
挑発されたからでもないだろうが、ついなのお面の四つ目から四つの雷光が迸った。しかし鬼子は予想していたかの
ような素早さで身を翻した、雷光は鬼子の居た地面を灼くにとどまった。
鬼子はそのままついなに対して踏み込み、薙刀で斬りかかる。
鬼の強力で繰り出される斬撃をついなは方相氏の力を身体に宿した強力で受け止めた。薙刀と矛の刃が激しくぶつかりあう。
「その程度の飛び道具に頼ってるようじゃ、あたしには勝てない。いいかげん、諦めたらどうだ?」
ギリギリと武器でせめぎ合いながらも力では鬼子の方に分があるのか、喋る余裕があった。
「おお……きな……お…せ…わ、やあっ!」
ついなは渾身の力を込めて薙刀の刃を押し返した。
「とと……おっと」
鬼子は特に体勢を崩さず、後退するだけでそれをいなす。
「バカにするなや!鬼ごときに方相氏であるうちが負ける訳ないやろ!くらいなや!」
そう叫ぶと、ありったけの霊力を手のひらに集中しはじめた。ついな最大最強の必殺技を放とうとしているのだ。
やがて、昼だというのに太陽の光を圧してついなの右手を中心に金色の光が輝き出す。
ついなの右手の上には小石サイズの濃縮された霊力の光球が現れた。
「くらえ!方相閃・いん──」
そのタイミングを見計らって、鬼子が動いた。一瞬でついなとの間合いを詰め、薙刀の石突きでついなの足をはらっのだ。
「はれ?」
霊力の制御に全ての神経を注いでいたついなはこの足払いに対処できずに転倒。同時に、集中させていた霊力が
暴発した。
「どわーーーーーーーーっ!!」
霊力だけは無駄に高い彼女の暴発は恵方巻きミサイルより派手な爆煙をまき散らした。
──田中は縁側で二人の対決をながめていた──
「──しっかし、ついなっちも毎度懲りないね〜〜」
モグモグと、紅葉饅頭を食べながら田中は呆れているのか感心しているのかわからない口調でコメントした。
おそらくその両方だろう。
「ふぅ、向こう見ずなのは結構ですけど、毎回同じような決着なのはどうなんでしょう?」
鬼子はそう言いながら田中の湯呑みにお代わりのお茶を継ぎ足した。もう『中成り』の戦闘形態から生成りの姿に戻っている。
「ぐじょ〜〜〜〜おにごめぇ〜〜〜この次ごぞわ〜〜みどれよ〜〜〜〜」
その二人から少し離れた所で縁側に突っ伏してついな。律儀についなの前にも湯呑みがおかれてお茶が注がれているが、
当然、ついなは手をつけていない。
今さっきまで自分の霊力の爆発に巻き込まれて無様にも気絶していたのだ。それで縁側に運ばれ、そこで手当を受けていた。
ただいま絶賛落ち込み中だが、彼女はそれほど引きずるタイプではない。暫くすれば復活するだろう。
「だから、あの技は相手の至近距離で使うべきじゃないって言ってるのに……全く聞き入れる様子がないんですよねぇ……」
鬼子は頬に手をあてながら、ボヤきとも評価ともつかないことを呟いた。
「だってさ、ついなっち?」
田中が振り返って離れた所に突っ伏してるついなに水を向けた。
「誰がぁ〜〜鬼のいうことなんぞ〜〜聞く耳持つかあ〜〜」
まるで亡者のうめきのような答えが返ってきた。田中はヤレヤレとばかりに肩をすくめると紅葉饅頭にパクつくと
「その様子だと、帰る頃には大丈夫そーだねー?帰るときは結構暗くなってるから、ついなっちがついててくれないと
ちょっと帰り道は心細いかな〜」
と、少々わざとらしく言った。
実際は田中一人でも山はおりられるし、そうでなくても鬼子やわんこが麓まで送ってっくれるのだが、こうでも言って
おかないとついなはなかなか復活しないのだ。
「しゃ〜ないな〜ウチが送ったったらな、匠が帰れへんっちゅーのもかわいそーやしなー」
……どうやら、思いの外復活は早そうだ。
田中はムグムグと紅葉饅頭を食べ終わると、自分の荷物をまとめ、靴を履くと縁側から飛び降りた。
「ついなっちも大丈夫なようだし、今日はこの辺で帰るね。じゃ、ついなっち、(山の)ふもとまでヨロシクね!」
日本鬼子 vs 役ついな 勝者:日本鬼子
──おわり──
>>170-173 とゆー訳で、今回の「戦闘描写」シリーズは日本鬼子vs役ついな でお届けいたしました〜
毎回こんなカンジでついなっちは鬼子さんに挑んで返り討ちにあってるぞ!とゆーお話でした。
なお、ついなっちの必殺技が「方相ビーム」から「方相閃」に変わってますが、当人も決めかねているようですw
使うたびに技名が変わってるぞ!とゆー裏設定(いや、ワタシ自身が決めかねてるダケですが……)
もっとカッコイイ技名が思いついたらソレにするかもしれませぬ。
それではこの辺で。
>目をすがめ、鬼子を凝視していた田中はぽつりとこぼした。毎回、鬼子が薙刀を取り出す所を見ようとしているのに
>いつのまにか鬼子は薙刀を手にしているのだ。あまりに自然に手にしているので、いつ、どこから薙刀を取り出したのか
>さっぱりわからないのだ
意外ッ!!それは髪の毛ッッッ!!!
髪の毛が武器になる……そんな剛毛な鬼子さんいやづらw
爆発する恵方巻きwww
鬼子さんのバトル久しぶりに見たかも。かっっこいいなー。
しかし、だれかついなちゃんにまともな稽古をつけてくれる人はいませぬか^-^;
(それとも相手が鬼子だとつい戦い方が派手さ重視になってしまうのか…w)
髪の毛1本取ってふっと息を吹きかけると何かになる、
ってネタをどこかの昔話で聞いたような聞かなかったような。
意外とありかもしれないw
◇ ◇ ◇
「ねえ、本気でする気?」
気弱げな声が問いかける。
「るっせぇな。するつったろうが」
何度目かの質問にいいかげんにうんざりしたとばかりに返した。
「だって、結界も結ばないで万が一のことがあったら……」
「だぁら、うっせーっての。もう決めたっつーたろーが。おめぇだって同意したろーがよ」
「それはそうだけど……」
声の主二人がするのは山あいの広場だ。周囲は鬱蒼とした木に覆われ、近くに小川が流れてる。そこそこの広さの
空き地の中央に二つの人影があった。一人は茶色のシルエットに犬の耳がついている。もう一人は黒いシルエットに
翼を備えていた。わんこと風太郎だ。
「そりゃぁ、うんっていったけどさ……なんだか強引に決められたみたいで……」
黒いシルエットの少年は落ち着かなげに翼を開いたり閉じたりしながら、ブツブツとはっきりしない事を呟き
続けていた。対して、茶色いシルエットの人影は右へ左へと準備運動に余念がない。
「おめぇっ……だって、このままじゃ、上達しないっ……て、おもった…、から、同意……した、んだ、ろう……がっ」
台詞が途切れがちなのは運動しながら喋っているからだ。
二人はこれから戦おうというのだ。とはいっても、本当に争うわけではない。模擬戦だ。「このままじゃ実践的な術の
使い方が学べないのではないか」そう言い出したのは風太郎の方だった。そして、わんこはその風太郎の言葉にのった。
わんこ自身、自らが習得した『風術』の応用がイマイチものにしたという実感がないのだ。そこで二人で実戦に近い形で
『模擬戦闘』をしてみることになった。それも大人たちには内緒で、だ。安全な術封じの結界内で行う模擬戦ではどうも
ピンとこない。そこで、実際に術を働かせて限りなく実戦に近い状態で戦ってみたくなったのだ。
「確かにそう言ったけどさ。やっぱり無茶だよ。法術をぶつけ合って戦うなんて……あたっ」
準備運動を終えたわんこが風太郎をポカッと叩いた。
「いいから用意しろって。今更いってんじゃねーよ」
叩かれて風太郎は口の中でまだブツブツ言いながらも懐から紅白の羽根をとりだし、しぶしぶ赤い羽根をわんこに
手渡した。わんこも白いハチマキを二本取り出し、片方を風太郎に渡す。そして二人はそれぞれの羽根を自分の頭に
くくりつけた。
「おっし、じゃあ、術なりなんなりで羽根を飛ばされた方が負けな」
そう言うとわんこは背を向けスタスタと歩き出す。戦士型わんこに比べ風太郎は戦士型でなく術者タイプである。
その為、始めるときはある程度互いに距離をとることにしたのだ。至近距離で初めては戦士型のわんこに分がありすぎる。
やがて、二人は一定の距離をもって対峙した。わんこの茶色い瞳が風太郎の黒い瞳をじっと見据える。風太郎は緊張した
面もちで錫丈を構えた。
「おっし、こんなモンだろ。いいか。始めるぞ」
一方的に告げるとわんこは六文銭をとりだし空中に放り投げた。地面に落ちた瞬間、戦いが始まる。硬貨は落下し──
チャリン
鋼が石に当たる甲高い音が響く。瞬間、わんこがその優れた脚力にものを言わせ、飛び出した。爆発的な加速力で
わんこは風太郎に肉薄する。
だが、風太郎の反応も早かった。あらかじめ袖の中に握り込んでいたのだろう。数枚の術の符を握った右手を出すと、
錫丈を握った左手とともに正面に構え、高らかに叫んだ。
「風の護り手よ!」
その叫びに呼応して、風太郎の周囲に激しい風が吹き荒れた。風の防護陣だ。風の術としては基本的な術だが風太郎が
使うには札の補助が必要である。術が起動し手の中の札が風に溶けた。
「ちっ」
わんこはアテが外れ、たたらを踏む。わんこは最初、風太郎が空中に逃げると読んでいたのだ。ソコを風の術で落とし
叩く心づもりだった。だが、風太郎はその場で術を起動することを選んだ。この術は真下と真上以外、全てをカバーする。
わんこが結界の外でまごついている隙に風太郎は次の攻撃を準備する。懐から小石を数個握り込むとわんこに向け指から
放った。
「風穿孔!」
ビシビシと風の結界を突き抜け、指弾がわんこを襲う。風の威力を上乗せしたツブテがそこかしこの地面で弾ける。
「くっ」
わんこはジグザグに動いてツブテから逃れようとする。しかし手や足にいくつかヒットしてしまう。たまらずわんこは
間近の藪に飛び込んだ。
「くっそ、アイツ思ったよか要領がいい!」
わんこはツブテのヒットした箇所をさすりながら呻いた。風穿孔は基本的な術で札を必要としない。その分威力はないが
当たれば十分痛い。そして、風太郎は安全な結界の中からわんこを術で狙撃しほうだいだ。あの結界は長時間持つ術では
ないが、時間がかかればかかるほど大業で狙撃されるだろう。
「くそっ、このままじゃ……」
わんこは懐から呪符をつかみだした。
──一方、風太郎は茂みに隠れたわんこを見失っていた。
(さて、この後どうしようか……)
周囲に気を配りながら思考を巡らせる。四方を風の防護術で守っているけど基本的な術であるから万全じゃないし、
頭上はガラ空きだ。なにより残り時間があまりない。
大技の準備をしわんこの襲撃に対応するか、いっそこのまま空中に逃れるか。ただ、空中に逃れてもわんこにも風の術が
ある以上打ち落とされる危険は存在する。
「それにこんな時、わんこなら……」
口の中で小さく呟くと懐からお札を取り出した──
「だぁ!」
わんこは風太郎の横手の藪から飛び出すとイッキに風太郎に駆け寄った。風太郎はわんこの姿を認めると、数歩
下がったが、数歩動いただけでわんこに追いつかれた。しかし彼の周りには結界の風が渦巻いている。このまま
ツッコんでも風の結界にはじき飛ばされるだけだ。だが……
「風螺穿!」
わんこは風太郎の風の結界に弾きとばされる直前、術を起動させた。札を持った手を前にかざす。強力な術が起動し
正面を起点に猛烈な風が螺旋状に吹き付け、風の結界に穴を
穿とうと軋んだ音をたてる。
ギギギギギギギッ 「ぐぅううううぅぅっ!」
わんこは足を踏ん張らせる。風の術と自らの脚力による突進力を利用して、風太郎の風の結界を破ろうというのだ。
そして、風の術のひしめき合いは数瞬後に結果がでた。ビキッと軋んだ音と共に風の結界が破られる。
「うわっ、う、嘘だろう?」
風太郎は思わずその場で錫丈を構えた。目の前には突進の勢いを殺され、佇んでるわんこがいる。脚力の力を使いきって
棒立ちになっているが、風太郎のほうも風の結界を完全に破られてしまっていた。
今、二人の間に阻むものは何もない。そして、接近戦闘では風太郎はわんこに遠く及ばない。風太郎は息をのみ、わんこを
見返した。
「へっへ、王手だぜ。風太郎」
後はわんこが風太郎の頭からむしりとるだけで勝負は決着する。
「そうかな?」
そういって、風太郎は手にした錫丈で地面をトン、とついた。シャン、と、錫丈の音がわんこの耳に届く。
「んなっ?!」
瞬間、わんこの驚愕した声が響いた。天地がひっくり返ったのだ。
わんこは身体能力には絶対的とも言える自信をもっていた。普通なら、コケる。などという無様な事には絶対ならない。
だから、わんこには何がおきたのか理解できなかった。自分がコケてひっくり返ったと知ったのはそのさらに数瞬後だ。
「っってーーなんだってんだ」
わんこはいつものクセであたまを掻こうとして動きを止めた。ソコにあるはずのものが無かったからだ。
「へへ〜〜、ボクの勝ちーー」
そういっていたずらっぽく笑いながら差し出した風太郎の手には赤い羽根が握られていた。
「あっ」
あわてて頭に手をやるも、そこにあるはずの羽根はなくなっていた。
「っくっそー!やられた!」
地面にあぐらをかいたまま、わんこは悔しそうに地面を叩く。
「油断大敵だったね。実は──あたっ」
得意げに語りだす風太郎にわんこは腹立たしげに小石をなげつけた。
「わざわざ解説すんじゃねーよ。遅延術を使いやがって。知らねー訳ねーだろが」
遅延術。一定の条件をトリガーに設定し、本来なら速攻性の術を遅延して起動させる術である。
風太郎はわんこが真正面から結界を突破しにかかると読み、罠を張ったのだ。足下に遅延術をかけ、そこに風術
「かまいたちの前足」をかけた。この術は子供がいたずらに
使うことで有名な術だ。地面に近い所で突風をおこし、相手を転倒させる術である。この術は基本的な難しい術では
ないが、遅延術は高度な術であるため、補助の呪符をすべて使いきってしまっていた。
後はわんこが結界を破りにくるのを迎え打てばいい。結界を破り、気が緩んだところをこの術で転倒させ、その隙に
頭の羽根をスリとったのだ。
「ったく、インケンで根暗な手ぇ、使いやがって。こんな決着、オレは認めね〜ぞ」
地面に座り込み、ブスッとした表情でわんこはふてくされた。
「根暗って……君が遅延術のよさがわからないっていうから……」
「うっせ!だからインケンだっつってんだよっ」
数日前、新しい術を覚える時、風太郎の熱心さとは裏腹にわんこは「何でいちいち後に術をかけなきゃなんねぇんだ?
スグにブッとばすに越したこたぁねーだろ?」といって、まじめに習得しようとしなかったのだ。
今回、わんこはその不勉強さを痛い形で突かれるカタチになった。
「いいから、もう一回だ!もう一回!今度はこんな卑怯な手にゃぁ、負けねーかんな!」
「えー?」
「こんな決着、納得できねぇよ!」
……だが、二人はこの後、異変を察知して駆けつけた大人たちに見つかり、危険な実戦訓練を勝手にしたことを
みっちりと叱られる事になった。
わんこ vs 風太郎 勝者:風太郎
──おわり──
>>179-181 はい。今回はわんこと風太郎が『術』の練習に模擬戦闘をする話でありました。カンとヒラメキで戦うわんこに
理詰めで状況を読みながら戦いを進めていく風太郎。戦い方にも違いが現れています。
ちなみに余裕で風太郎勝ったように見えますが、もしわんこが別の戦い方を選んだら負けていたのは風太郎だったかもしれません。
それではこれで。
>>130 そういえば、ヌエの変身形態って、いくつあったんだっけ?設定画保存しているとおもってたケド、
フォルダの中になかった。下半身ヘビの女形態と幼児形態の小タヌキっぽいのは覚えているんだけれど。
>>179-182 いいなあ、こういうの。
わんこと風太郎は、競いあって補いあって成長していくんだろうなあ。
10年後のわんこと風太郎とか見てみたい。
>>183 うーん、いくつでしたっけ。
ヘビはなんとなく覚えてます。フォルムが綺麗でした。
もうpixivにもないだろうし…惜しいですね。
186 :
まとめ:2013/03/06(水) 00:19:16.88 ID:PXMx3rsj
毎度まとめ乙ですっ!
「ひのもとさ〜ん、こんにちわ〜!アレ?何この香り?お香?」
私の名前は田中匠。
オタクである事を除けば、ごく普通の女子高校生だった。
今は少し特別。私の友人の「日本鬼子(ひのもと おにこ)」は人ではなく鬼なのだ。
「いらっしゃい田中さん♪」
山奥から通じる、人間界とは少し離れた空間。
一年中紅葉に囲まれた、古い日本家屋が彼女の住処だった。
何か良い事があったのだろう。いつもよりちょっと明るく、彼女は出迎えてくれた。
「これ、最近知り合った『良い鬼』さんからもらったお香なんですよ」
彼女の「仕事」は、人間に取り憑いてその心を穢れさせる「心の鬼」を「萌え散らす」事。
退治するのではなく、簡単に言うと「悪い鬼」を「良い鬼」に変換してしまうのだ。
萌え散らされて「良い鬼」になった心の鬼を、鬼子さんはたいてい友達にしてしまう。
「人間界のものだって言ってましたから、田中さんも知ってるんじゃないでしょうか」
「へー、なんていうアロマ?」
「たしか『だっぽうはーぶ』って言ってました♪」
一瞬、私は固まった。
そんな私を見て、日本さんは小首を傾げながら、それでもその微笑みには一点の曇りもない。
「え、と、ひのもとさん?それ、体に良くないって事知ってる?」
どう説明したらいいのか分からず、ようやく言葉を搾り出す。
「え?そんなはずないですよ♪このお香を嗅いでると体が軽いし、
とっても楽しい気分になるんですよ?ほら!」
やおら立ち上がると、日本さんはくるくると踊りだす。
「あはは、うふふ、ウェーイwwwウェーイwww」
滅多に見られないが、テンションが上がりきった時の日本さんはこんな感じだ。
私はどうしていいのか分からず、しかし楽しそうに踊る日本さんを見ているうちに
「まあいいか」と思うようになった。
鬼は人間より丈夫なはずだし、無理に止めようとして抵抗されでもしたら私の身にも危険が及ぶ。
もし薬物中毒になってしまうとしても、廃人になるのは日本さんで、私ではない。
…
そんな事があって日本さんと距離を置くようになって後、
日本さんが「ついなちゃん」に滅ぼされたと聞いた。
「ついなちゃん」は方相氏と呼ばれる、一種の陰陽師の少女なのだが、
断片的な情報によると、なんでも彼女が「本物の日本鬼子」だったらしい。
そのために「偽者」である日本さんは滅ぼされたという。
正直、意味がわからなかったが、世の中何が起こっても不思議ではないのだし、
いちいち気にしていても仕方がないので、とりあえず日本さんの事は忘れてしまう事にした。
友達というものは、いや、家族でさえ、
いつかは別れの時が来るし、時間とともに記憶から薄れていくものなのだから。
…
「田中ぁ、かんにんな…」
眠りの中で、関西なまりのついなちゃんの声が聞こえた。
それが夢の中だというのが自分でも分かった。
ついなちゃんは、私の知っているついなちゃんじゃなかった。
ああそうか。今の彼女は「日本鬼子(ひのもと おにこ)」なのだ。
彼女は泣いていた。
「鬼を『萌え散らす』…生まれ変わらせる言うんは、本当はな。
その鬼を一度『殺す』ちゅー事なんねん…」
日本さんの事を言っているのだと、私は思った。
それを謝りに、私の夢枕に立ったのだろう。
唇を噛んで涙を流す彼女の姿を見れば、それをどんなにか悔やんでいるかが分かった。
いいんだよ、ついなちゃん。キミは悪くないよ。
それが日本さんと、あなたの運命だったんだよ。仕方なかったんだよ。
声に出す事は出来なかったが、私は彼女に微笑みかけた。
私はキミを、責めたりしない。
「田中ぁ、かんにんな…かんにんな…」
ああ、いいんだよ、ついなちゃん。
そんなに自分を責めないで。
日本さんは鬼なんだもの。いつか誰かに殺されていたさ。
それに、私に謝る必要なんかない。
キミが殺したのは日本さんで、私ではないのだから。
「堪忍!!」
次の瞬間、ついなちゃん…「日本鬼子」の手にした槍が、私を貫いていた。
「田中、かんにん、かんにんな!!」
ついなちゃんは号泣していた。
ちょ、ついなちゃん、何してくれてるのよ。
私は鬼でも、鬼の友達でもない普通の女子高校だよ?
そりゃオタクかも知れないけど。
ああ、なんか体崩れてきた…
「田中ぁ、たなかぁぁぁぁぁ!!堪忍してや!!堪忍してや!!」
泣きたいのはこっちだよ。
謝るくらいならやるなよ。泣くくらいならやるなよ。
、てゆーか
「田中」って、誰だ。
最期に私の目に映ったのは、紫煙となって消えていく「鬼の手」だった。
それは、「ひのもと おにこ」のものではなかった。
オメカ「…という夢を見たのさ♪」
ついな「ぶち殺すぞホンマ!!」
…
最近思ってる事とか避難所の流れ見て感じた事とかぶち込んだらこうなった。
お…おぅ…
>>190は
「牛鬼を殺した者は牛鬼になる」っていう話から
「日本鬼子を倒した者は次の日本鬼子になる」っていうのを連想したのだけれど
実は本スレに牛鬼の話が出る以前から、
ウチのΩnikoさんに組み込まれている裏設定だったりするの。
「偽物の日本鬼子」っていうのは言うまでもなくウチのΩnikoさんの投影で、
成長したこにぽんに自分を殺させる事で
次の「日本鬼子」を継承させる、っていう脳内話。
関係無いけど、ついなちゃんbotの「鬼のナマギモ」云々っていうのは
安達ヶ原の鬼婆が元ネタだろうか。
だとするとアレか、実はついなちゃんは鬼子の(ry
◇ ◇ ◇
ふすまを開けて入った部屋はごく普通の畳敷きの部屋だったが、窓から見える景色は一面、紅葉に彩られていた。
「うっわぁ〜すっごぉ〜い!絶景だねっ」
部屋に入るなり、歓声をあげたのは田中 匠(たなか たくみ)。ごく普通の人間の女子高校生である。今も身を
包んでいるのはごく普通の女子高校生の着るブレザー姿だ。
そんな彼女は部屋に入るなり窓にかけより、見渡す限り広がる紅の絶景に歓声をあげていた。
「さぁって、お酒お酒♪早速、女将に用意させなくっちゃ♪」
荷物を放り出し、浮かれているのはハンニャー。彼女は猫又だ。普段は何事もけだるげに過ごしている年齢不詳の
美女だが、年に一回やってくるこの温泉宿でははしゃいでいるようだった。珍しくピシッとキメたスーツ姿は
やり手のキャリアウーマンを思わせたが、そのスーツをさっさと脱ぎ捨て、浴衣に着替え始めた。
「えへへ〜こに知ってるよ!ここゴハンがスッゴいおいしいんだから!」
去年来た経験を得意げにしゃべっているのはこにぽん。いつもの桜色の着物にいつもの刀、そして桜色のリュックを
背負っている。
「っちゅ〜か、何でうちまでこないな所に……」
ブツクサ言いながら一番最後に部屋に入ってきたのはついなだ。如月ついな。いつも何だかんだと鬼子に勝負を挑んでは
返り討ちにあっている女の子だ。和風とも中華風ともつかない衣装に身を包んだ不思議な装いだ。ただ今回はいつも
頭に被っている厳つい四つ目のお面はつけていない。本人なりに戦いに来たわけではないという意識の現れなのだろう。
特徴的なぐるぐるおさげを揺らしながら、でっかい荷物を背負い、部屋に入ってきた。
「またまた〜そんな事言いながら人一倍楽しみだったくせに〜」
田中がついなの呟きを聞きつけ、窓辺で振り返りながらからかった。
「その山のような荷物は一体、何かな〜?」
確かに一同が持ち込んだ荷物の中では二番目に大きい。まるで旅行慣れしていない初心者があれもこれもと詰め込んだ
結果、こうなってしまったという見本のような大荷物だった。……どれだけ楽しみにしていたのだか。おそらく前日は
楽しみで眠れなかったに違いない。と、田中の指摘についなは途端、焦った声をあげた。
「こここ、これはやな……鬼子、そうや、鬼子の奴に負ける訳にはいかへんからや!」
よくわからない理由を挙げる。確かに鬼子の荷物は一行の中で一番多かった。とても軽そうには見えなかったが、彼女は
まるで重量などないかのように軽々と持ち運んでいた。まがりなりにも彼女が鬼であるという事なのだろう。最初に
挙げられる鬼の特徴はその怪力だ──
彼女たちは、現在、秋の温泉旅行にやってきている。鬼子達は冬支度を終えると、年に一回、いきつけの温泉宿に
骨休めにくる。というものだった。そこに田中とついなは一緒に来ないかと誘われたのだ。田中は一も二もなく
了解したし、その場にいたついなは最初反発したものの、田中の口車にノセられるような形で参加する事になった。
もっとも、口では渋々参加したような体ではあるが、山と担いだ荷物は彼女の心情をこれでもかというほど表していた。
「あや?そういえば、鬼子さんは?」
田中は窓際によりかかりながら、一向に姿が見えない鬼の娘の姿を探した。確かこの部屋まで一行を先導していたハズだが、
部屋の片隅に彼女の手荷物がポツンと置いてあるだけであの重そうな荷物も彼女の姿も見あたらなかった。
「あーいいからいいから。毎度の恒例行事って奴よ。しばらくすりゃやってくるから、
あたしたちで先に温泉に入ってましょ」
素早く浴衣に着替えたハンニャーがタオルを肩にかけ、そういった。
彼女曰く、年に一回この温泉宿にやってくると呼んでもいないのに例のナマモノ達がついてくるので、それを追い払う
為の罠やら魔除けやらをわんこと共に温泉の周囲に設置しにいっているのだとか。
「はぁ〜〜……ナルホド……鬼子さんも大変なんだねぇ……」
感心してるのかあきれているのか自分でもわからない吐息をつきながら田中は呟いた。
あの大荷物がない所を見るにあれが罠を設置する際の道具一式なのだろう。自分の荷物の中からお風呂セットを取り出し
ながら、田中は鬼の友人の苦労をしみじみと同情していた。
彼女の周囲にはなんというか、ナマモノたち……煩悩の塊とも言える心の鬼にしょっちゅうつきまとわれているのだ。
毎度追い払ってもあまり効果が無く、いつも大変だなと田中などは思ったりするわけだが……
「ま。のぞき対策はあの娘に任せてあたし達はゆっくり温泉を楽しみましょ」
一足早く着替えを終え、そういって部屋を出ていったハンニャーの言葉に従うことにした田中だった。
──真っ先に部屋を出ていったにもかかわらず、ハンニャーは一番最後にやってきた。一体、何をしていたのかと思えば、
しばらくすると湯船に浮かべた船の上に刺身などを盛りつけたものや、湯に浮かぶようになってるお盆の上にお酒の
入ったとっくりと杯がのっているものが運ばれてきた。どうやらこのサービスを注文しに行ってきたらしい。
杯に注いだお酒をちょび、と口に運び、
「くぅ────っ、やっぱりここで飲むお酒は格別だわっ」
感極まったようにうなるハンニャー。彼女はアップにした髪も色っぽく、湯に浸かってちびちびと酒を堪能している。
周囲は広い露天風呂だ。頭上には部屋の窓から見えた紅葉がここでも生い茂り、方々に灯された明かりにぼんやりと
鮮やかな紅色を浮きたたせていた。そして、温泉は乳白色で
手を少し沈めただけで見えなくなるくらい白く濃く、それでいてサラッとしていた。
「……鬼子さんやハンニャーの美白のヒミツはひょっとして、この温泉なのかナー?」
田中はなんとなくポツリと呟いてみる。二人ともうらやましいくらいキレイな肌をしているからだ。
これが美白の秘訣ならしっかり浸からねばと、田中はう〜んと伸びをして湯船に沈み込んだ。
少し離れた洗い場ではついながこにぽんを洗おうと悪戦苦闘する声が聞こえてくる。キャッキャとハシャぐこにぽんは
楽しそうだ。
あたりは一面、紅色と黄色に彩られていて、ぼんやりと火を灯された明かりが紅葉を幻想的に演出している。
それらの絶景ともいえる景色をそれとなく眺めながら、田中は「鬼子さん遅いなー」などと考えていた。
「あ、そーいや鬼子さん、あの般若面とかつけて入って来るのかなー?なんてね。アハハ。そんなワケな──」
「くるわよ」
「──へ?」
田中は一人呟いた冗談とも独り言ともいえない呟きに返事が来たことに意表をつかれ、目が点になった。
「あのコ、お風呂に入る時もあの般若面、手放さないわよ」
湯に浸かり、酒を口に運びながら、何でもない事のようにハンニャーはのたまった。
「え、でもいやちょっと。いやいやいや。だって、いくらアレが鬼子さんのトレードマークだからって……」
田中はつい、全裸姿に般若面をいつものように頭のよこにくくりつけた鬼子の姿を想像してしまった。……異様だ。
異様すぎる。そんな田中をチロ、と見やりハンニャーは言う。
「そうねえ。アナタには話してあげてもいいかしら。あの般若面のひみつ」
「ひみつ?!」
その声を聞きつけ、やっとこにぽんを洗い終えたついなもやってきた。
「なんやなんや。一体、何のヒミツっちゅ〜んや?!」
やにわにざわつきだした周囲にも頓着せず、マイペースに、くい、と杯でお酒をあおりつつハンニャーは語りはじめた──
「そうね、それは昔、むかしのずっと昔のこと──
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19251751」
──語り終えたハンニャーは杯の中にお酒を注ごうとして、中が空っぽになった事に気づいて、次のトックリに手を
伸ばした。これで三本目だ。
「──っはーーっ鬼子さんの般若面にそんな秘密がー……」
ハンニャーの話を聞き終えた田中はその途方もない話に圧倒されていた。よもや鬼子の般若面にそんな由来があったなど、
知らなかったのだ。
「そ。あの般若面には古の武人の魂が宿っているわ。そして今もあの娘の力になっている。見守っているの」
杯の酒をじっと見つめながら、ハンニャーは遠い過去を懐かしむような眼差しで呟いた。その目に写っているのは酒の
水面か遙かな過去か。ややあって、何かを飲み込むように酒をグッと飲み干した。
「な、なるほど。うちの方相氏のお面とも違うっちゅ〜〜わけやな」
肩まで湯に浸かっているにもかかわらず、ついなちゃんはブルルッと体をふるわせた。かつて、鬼子の般若面が弱点だと
踏んで、隙を見て奪った事があったのだ。が、奪った筈の般若面はいつの間にか手の中から消え、鬼子の元に戻っていた。
そのうえ、鬼子の逆鱗に触れ、珍しく徹底的にボコボコにされた事を思い出していた。
ついなの被るお面はあくまでも方相氏のチカラをその身に顕現させる為の触媒みたいなものだ。それなりに古い由来は
あるのだろうが、鬼子の般若面と比べると明らかに質が違う。
「そうね。何より、あの娘にとっては物心ついた頃からずっと一緒だったからね。どれだけあのお面を大切にしているか、
わかるってもんでしょう?」
ハンニャーは杯を口元に運び、ニヤッといたずらっぽく笑った。その時、脱衣所の方から騒がしい声が聞こえてきた。
「だから、俺は一人でいいって」
「駄目よ。あなた、そういっていつも烏の行水ですませるんだから」
鬼子とわんこの声だった。
「あ、来たきた。遅いよっひのもとさんっ」
待ちかねたとばかりに田中が脱衣所の方に声をかける。鬼子は嫌がるわんこを引きずるようにして入ってきた。
「すいません。色々と手間取ってしまって、遅れてしまいました」
「いいよ、いいよん。色々大変だったみたいだしねん。さ、一緒に温泉に浸かろ!あ、ついでにわんちゃんも一緒にね!」
「はなせー」
わんこは鬼子の手を振り払おうと抵抗はしているようだが、振り払えない。一応、彼女が主であるという事と、
ふつうに力でかなわないからだろう。
「鬼子さんはゆっくりと湯に浸かってもらってさ。わんちゃんは……ふっふっふ。私たちが念入りにキレイキレイして
あげやう」
「げっ……」
不敵に笑い両手をワキワキさせる田中を見、わんこは戦慄とともに身を引こうとするが、鬼子に両肩をしっかり
押さえられて逃げようにも逃げられないでいた。
「まあ、それは助かります。田中さん、お願いできますか?」
おっとりと、それでもわんこが逃げださないようしっかり肩を押さえながら、鬼子は田中にそんな風に頼み込んだ。
「ふっふっふ。まっかーせなさ〜い。さ〜ワンちゃん、シャンプーの時間ですよーーーっ」
「いやだーーーーっ!!」
当然ながら、わんこの意見は却下された。
──夜。
なんだかんだでみんな寝静まっている中、ムクリと起きあがる影があった。波打つ豊かな銀髪の中に猫の耳がひょっこりと
動く。ハンニャーだ。他のみんなは温泉とその後のなんだかんだでハシャぎすぎたのか、グッスリ眠っていた。
ハンニャーは、みんなが寝静まっているのを確認するように見渡すと、鬼子の眠っている所を確認した。鬼子は
枕元に般若面を置いて、スー、スーと、穏やかな寝息をたてていた。
それらを確認すると、ハンニャーは再び布団に横たわり、両手で印を結んだ。そして、なにやらブツブツと唱えはじめた。
幾つもの寝息に混じり、まじないとも祝詞ともつかない不思議な旋律が複数の寝息とまじりあい、うねりをもって唱和する。
しばらくして、ハンニャーの豊かな胸の膨らみの辺りからボゥ、と青白く光る不思議な鬼火が浮かび上がった。
静かに音もなく燃え盛るそれは、熱を感じさせることもなく、静かに燃え続け、空中をゆらゆらと漂っていた。そして
その中心には時折、般若の顔とも猫の顔とも判別つかないものがチロチロ燃える青白い炎の中に現れては消えていた。
ハンニャーの魂である。彼女は今、己の肉体よりその御霊を切り離し、魂だけの存在になったのだ。その彼女の本質である
魂はゆっくりと浮遊し眠ってる皆の頭上を漂いだした。そして、鬼子の頭上にやってくると少し様子をうかがうように
止まった後、枕元に置いてある般若面に吸い込まれるように消えていった──
──数秒後、ハンニャーは巨大な構造物の中に立っていた。構造物は黒く平べったい石を積み重ねたような柱で
構成されており、まるでお堂の内側のようだ。そして、内部は常に燃え盛る炎のような明かりで染めあげられていた。
実のところ、この空間はハンニャーの心象風景であり、実際にこの場所が存在する訳ではない。ここは般若面内部。
というのが正しいのかどうか。時間も空間も意味を成さない場所である。魂と化したハンニャーが般若面に宿った時に
ハンニャーがいつも見る光景である。その為──
「何用だ。ここにはいたずらにやって来ぬよう言ってあるはずだが」
と、唐突にハンニャーに向け発せられた『声』も空気を震わせる音声ではなく、思念の声である。『声』は若々しいのか
老獪なのかわからない不思議な響きを持っていた。ハンニャーが意識を向けると、そこには背をこちらに向け何かに
対峙しているザンバラ髪の侍の姿があった。正面の数段高い所に座し、彼はこの室内を炎色に染め上げる巨大な何かと
対峙していた。侍の座してる先は巨大な吹き抜けのような空間で、時々炎のような明かりが立ち上る様子しかわからない。
だがその本体は見えないながらも、その向こうから伝わってくる威圧感は相当なものだった。
「何用だとはご挨拶ね。折角このアタシが休暇中をおして陣中見舞いにやってきてあげたってのに。愛想がないわよ」
腰に手を当て、まゆをしかめながらハンニャーは侍の背を睨めつけながらいいつのった。
「なら、存分に休暇を楽しめばよかろう。このような陰鬱な所にきて折角の休暇を無為にすることもあるまい」
こちらに向き直ることもなく侍はそっけなく言い捨てた。
『アラ、折角だから外からきた「おみやげ」を楽しみましょうよ。持ってきてくれたんでしょ?』
唐突に、二人の会話に割り込む『声』があった。それと同時に侍の正面の虚空に炎が立ち上り、渦巻いた。次の瞬間、
炎の固まりは弾け散り、そこに現れたのは紅葉模様の動きやすそうな着物に身を包んだ鬼の少女だった。
「あぁ、アンタも居たんだっけね……『中成り』……」
ハンニャーは少し複雑そうな視線を彼女に送った。
『はーい。元気そうでなによりじゃない。といっても魂だけじゃアナタの肉体の状態はわかりっこないんだけどね』
ツリ目ぎみの目をいたずらっぽく猫のように笑わせ、ジャラリと音をたて彼女はヒラヒラと手を振った。
彼女の姿は鬼子と同じ姿だった。ただし、ツノはより長く、目は猫を思わせるツリ目。目元には赤い隈取りが入ってる。
そう、鬼子が戦うとき変身する『中成り』と呼ばれる姿をしていた。そして彼女の手足には黒く堅い鎖が巻き付けられていた。
と、不意に鎖が引かれ、宙に浮いてる彼女の身体がガクンと下に引っ張られた。
『きゃっ』
「少し気を緩めただけでこれだ。だから余計なちょっかいなど無用だと言ったんだ」
侍は相変わらず正面の娘の方を向いたまま背後のハンニャーに苦情を呈した」
いいながらも『中成り』と呼ばれた少女は鎖にグイグイと引っ張られ、足下の炎の中に引きずりおろされてゆく。
『ちょ、ちょっと、ちょっと!ハンニャー、見てないで助けてよ!』
鬼の少女は引き下げられる鎖に抵抗しながら焦った声を上げる。
「やめたげて。彼女だって『鬼子』の一部よ」
ハンニャーは複雑な表情をしながらも制止した。
「だが、『奴』の一部でもある。あまり感心はできんな」
そう言いながらも、彼女を引く鎖の動きが止まった。引き下ろされることがなくなり、彼女はホッとした様子で息をついた。
『ありがとーやっぱりハンニャーは話が分かるわっ このカタブツさんったら、「鬼子」から求められない限り
頑としてアタシの封印を緩めないんだもの。嫌になっちゃうわ。「鬼子」が戦う時アタシがいっつも出てって助けて
あげてるのにさっ』
腕を組み、器用にも空中であぐらをかいて座り、わざとらしく睨みつけて不平を言った。
鬼の彼女はハンニャーが言うように『中成り』である。鬼子が戦うときに表に顕れ、鬼を萌え散らす。もう一人の
「鬼子」……それが彼女だ。その正体は彼女の足元に封じられている存在から立ち上る力の燐片が具現化した姿である。
『で、ハンニャー。おみやげ、おみやげは?アタシだって「鬼子」なんだから貰う権利はあるわよね?』
空中で器用に足を組み、『中成り』はソワソワとおちつかなげに促した。
「はいはい……」
そう言うと、ハンニャーは人差し指を二人に向け、「おみやげ」を披露した。
「おみやげ」といっても、この心象空間に物を持ち込める訳ではない。外でハンニャーが経験した記憶、感触、印象……
そういったイメージを共有する事だ。それらは主に「鬼子」が経験した事ばかりだった──
──ある日、ひょんな事から人間の友達を連れてきた事にはじまり、一緒に花見にいったこと、退治屋の娘との奇妙な
縁に人間の友人といった夏の海、秋には冬支度を手伝ってもらったりもした。
短い間にも何度も行われた人間の友だちとの交流──
それらはハンニャーの目を通して培われた『印象』であり、映像とも少し違う。しかし、そのどれもが暖かで穏やかな
『感触』をもって侍と『中成り』の心を包んでいた。
「──そうか、この娘は友を得たのだな……」
知らず、侍の口元は緩み、笑みが浮かんでいた。一方の『中成り』も目をキツく閉じ、両拳を強く握り、
タマラないとばかりに強く振っていた。
『っ────くぅーーーっ!やっぱいいわ、あの娘!「田中さん」っていったっけ?!この娘が命がけで守りたいってのも
わかるわーいつも「あっち」で会うときは大抵ゆっくり話すヒマがないけど、一度じっくり話してみたいわーホント!
ねーねー、ハンニャー、もっとないのもっと!』
ハンニャーが『中成り』の求めに応じ、別の「おみやげ」──記憶を披露しようとした時、割れんばかりの大音声が
心象空間に響きわたった。
「げらげらげらげら!つまらぬっ!!どれもこれも吹けば吹き飛ぶようなつまらぬものばかりではないかっ!!」
侍の背中がビクリと震えた。『中成り』は不快そうに眉をしかめ、組んでいた足をほどき、足下をのぞき込んだ。
『ぬぅ〜っアタシの半分だからっていい所を邪魔しないでよ!!』
「げらげらげらげら!アブクのような存在のくせしてこざかしい!我とあの娘のどちらでもありどちらでもなし!
今にも千切れそうな封印の上に成り立つ泡沫のごとき存在が我の半分だと!?思い上がるのも甚だしいわ!」
この大音声は侍の正面、遙か下から聞こえてきていた。それでも圧倒的な存在感と威圧感でもって、周囲の空間を
圧倒していた。
だが、威圧に圧されず、侍は大音声に対して淡々と応じた。
「貴様こそ我に封じられてることを忘れるな。我が貴様を見張っているかぎり、この封、僅かなりとも弛むとは
思わぬ事だ『本成り』よ」
言われ、大音声の『主』は忌々しそうにうなる。地響きのような息吹が空間を満たす。が、ややあって不気味な含み
笑いを響かせた。
「ぬっふっふ……ならば試してくれようか……この『我』に呑み込まれる悪夢、今宵もあの娘に届けてくれようぞっ」
「っ!!き、貴様っ!」
侍の後ろ姿が動揺と怒りに震えた。それを弄るように『本成り』の声は続く。
「ほれほれ。主にはこれ以上の封印は難しかろう。さぁさぁ、今宵も漆喰のような『悪夢』を!逃れ得ない『恐怖』を!
甘美なる『絶望』でもってあの娘の心を蝕んでくれようぞっ」
その声と共に『中成り』の遙か『下』からぽこり、ぽこりとドス黒い、まるでヘドロでできたようなシャボン玉が
湧き上がり、『中成り』の周囲を迂回して昇ってゆく。『悪夢』だ。
『あっコラっ まてっ まちなさい〜〜っこのっこのっ』
『中成り』が手足を振り回し『悪夢』を阻もうとするが、全く届かない。やがて『悪夢』は歯噛みしながら見守る侍の
目の前で上まで昇りつめ……弾けた。
「なあっ?!」
動揺の声を上げたのは『本成り』の方だった。
「『あたし』がるのに、そんなマネ、許すとお思い?」
そう言ってハンニャーはいつのまにか前に突き出し、握りしめていた拳を開いた。『悪夢』が鬼子にまで染み出さな
かったのは彼女がこの『本成り』を封じている封印を強め、完璧に締め上げたからだった。
「貴様の仕業か、このメスネコがぁっ!」
『本成り』が悔しげに咆哮し、心象空間がビリビリと揺れた。
「さっきから聞いていれば何?ご大層な御託並べ立ててると思ったら……やる事が小娘一人を夢で弄ることだけ?
それはまた大したものだこと」
揶揄した物言いに怒りとも唸りともつかない鳴動が周囲を震わせる。
「覚悟なさい。あたしがこうして居る以上、悪夢のひと欠片、ひとしずくさえあの娘の元にはやれないと思い知りなさい」
凛とした声が『本成り』の唸りを圧して響いた。
「…………」
しばらく、『本成り』の呼吸音とも唸りともつかない鳴動を響かせていたが……
「ぐっふっふっふ。よかろう。今宵は退くこととしようぞ。せいぜいそれまでヌルい惰眠に沈んでおればよい。
だがこの様な脆弱な封印いずれは我が手で引き裂いてくれる。その時こそ覚悟するがよい。今の世が露と消えることを……
思い知るがよい、『生』など、泡沫の夢にすぎぬことを!」
腹の底から冷え冷えとする哄笑をひびかせると、やがて完全に沈黙した。
『べぇーーーーーーーーっだ!!』
『中成り』は遙か下の方に封じられているだろう『本成り』に向け、おもいっきり舌を出すとあっかんべーをした──
──朝。チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえ始めたばかりの早朝。むくりと起きあがる影があった。
「──んー……もう朝……か……」
起きあがると、ボリボリとネコ耳の横を手で掻いた。ハンニャーだ。左右を見回すとみんなよく眠っているようだ。
鬼子も穏やかな寝息をたてて眠っている。悪夢に脅かされている様子はない。
「…………ふ」
ハンニャーは口元に軽く笑みを浮かべると、もう一度布団を頭から被りなおした────
「っうっわぁ〜〜こっから観たら一層すっごいねぇ〜〜」
田中はこの宿に来てもう何度目になるかわからない感嘆の声をあげた。朝日に照らし出された紅葉は夜観たときとは
違った鮮やかなコントラストを沸き立たせていた。
「っは〜〜っこんな見事な紅葉、今観なきゃモッタイナイってのにハンニャーさんってば、ずっと寝てるだなんて……」
「ま、まあ、ハンニャーは何度も来ているから……飽きたのかもしれませんね」
まーまーという感じで鬼子の声が続く。
田中と鬼子は朝食の前に宿のまわりを軽く散歩しているところだ。早くに目を覚ました田中が同じく起き出したハンニャーと
鬼子を散歩に誘ったのだ。結果、ハンニャーは二度寝をシャレ込み、二人で散歩に出かけることになったのである。
「あっ それじゃぁ、鬼子さんも何度も来てるんだよね……ひょっとして、もっと寝ていたかった?……メーワクだった?」
気がつき田中がふと、心配になった。
「わたしですか?わたしは──」
鬼子はそうつぶやくと紅葉を見上げ、つつ、と足を踏み出した。どこからともなくざぁっと風が吹き、漆黒の髪を
ふわりと浮かび上がらせる。田中は一瞬、その光景に見とれてしまった。
「わたしは、紅葉がこんなに綺麗だなんて……大好きなお友達と一緒に観る紅葉がこんなに鮮やかだなんて今まで
知りませんでした。私、田中さんと一緒に来られて本当によかったです」
「へへっ」
田中はなんだか面はゆくなって笑いながら鼻の下をこすった。ここまで素直に喜ばれるとこっちが照れてしまう。
「じゃ、じゃあさ、今度はみんなと一緒に観にこようよ!きっと、もっと綺麗に見えるよ!」
つい、テレ隠しにそう言うと鬼子はパァッと笑って両手をあわせた。
「それはいい案ですね!早速みんなを呼びにいきましょう!」
「え……い、いまから?」
「もちろんです!」
「あー……でもさ、朝ゴハンの後にしない?そろそろおなか空いてきたよ。きっとみんなで食べるゴハンもおいしいよ」
「ええ!」
こうして二つの人影は楽しげにおしゃべりしながらみんなが眠っている宿に向け歩きだした。
──情景描写 おわり──
>>196-202 と、ゆーわけで、ここに「ねこと鬼の封印」をお送りいたしまス。
般若面に宿った侍の魂は、強大で凶悪である鬼子の本性『本成り』を封じていて、『中成リ』はその封印を
緩めるカタチで、力を抽出し、鬼子に与える事で鬼子に戦う力を与えるのだっ!
……とゆー設定で書いてみました。
つまり、『中成り』鬼子の人格は、封印されている「鬼の本性」からもれいづる力と封印の形作る「力」によって形成されている
人格で、とっても儚い存在という訳です。
また、ハンニャーは魂だけになって、般若面に宿る事ができ、それによって、本成りに対する封印を強化する事ができます。
ただし、ハンニャーは「肉体」を持っているのでそんなに永く般若面にとどまる事はできません。
本成りの封印を強化して何が特になるかというと、もっと大胆に本成りの「力」を漏らす事ができ、
『中成り』への「鬼の力の出力」が安全かつ大幅に増量することが可能になります。
(それをしないで出力をあげると、本成りの封印が解けたり、鬼の力が暴走する危険性が出てくる)
侍の魂はこうやって鬼の本性を封印することで鬼子を守っているんだ!という話でした。それでは。
鬼子の本成りって、NARUTOの九尾みたいなもんなのか。
205 :
転載:2013/03/19(火) 21:19:23.70 ID:/o9J4XF8
>>SSスレ203
おおっ、なかなかの挑戦作!
中成さんのお転婆な人格と、その儚さとのギャップがいいなあ…。
そして一行が温泉宿というだけでにやにやしてくるんだけど、もう末期かもしれないw
206 :
転載:2013/03/19(火) 21:20:04.41 ID:/o9J4XF8
SSスレ
>>196-202 成る程。FALL BLOWをも布石として吸収しちゃった訳ですね。
般若面の重要性と般ニャーの立ち位置が、
本成鬼子へと繋がるキーポイントとなってるとは。
う〜ん。深くなってきたぞ!
>>196-202 乙乙! 肉食系な中成り鬼子さん…ww
確かに本成りが九尾みたいな存在になってますね
そして、般ニャーのキャラがどんどん立っていっている…!w
面白い設定
こう言うのもっと読みたいね
あれ?書き込みテスト……
210 :
創る名無しに見る名無し:2013/03/23(土) 02:12:06.55 ID:9RgiwoQ1
あげ……た方がいいのか……な?
211 :
ログ堀AA:2013/03/24(日) 12:43:20.90 ID:/EvNH4ug
小 ,fl __ __
l l::. rl ゝ__彡'´ `Y´ `ヽ 、
| l::::. lゝ=->─‐‐<ミヽ' ゝ 丿!
:. .i::::.. __,イ====-、 ハヽ}lヽ. ヽ ─ ノ
. !::::::. ,イ´ ノ= l V ゚。 }ヽゝ==ァ'
. i::::::.. /ゝ , ' `ヽイ二リ | | リ }!
. !::::::.. {==∨ ∨ヽ リ 。 /
、 i:::::::.. ゝノ { r、 。c O ∨| | ノ / _
、 ::::::.. ¨| ! |、 } ヽ斗-、 | |リ | //´ /
、 :::-=、___ ノ ! |_、 l 'r7笊心 ,イヽリ , イ´ /
{(_rニヘl ノノ 〃' i ! -\| ゝ辷ン| リ }l / ノ _
ゝノュ セ}/ 〃' ゝ、{笊う レ'ィ=' /≠───… ̄/
/ ノゝ-ノ )`ヽ、 〃 l ヽヘ`¨ 、 /|=vイ / ノ
ゝ彡'─(二二 ゝミ、 {{ | リ ヽ マ /r'} |二=─ァ‐─<ゝ二ニニニ=- '
ゝ─ニ)ヘ./∧彡へゝ-ゝ _/´ / >- <  ̄ゝ='/ / ``丶。
`¨¨´∨/∧ ノ |>イ |>///ゝ─‐'ク/ ー-、 \ \゚。
/ ヘ\/ \ノ >イ// |  ̄// / / ̄ヽ ヽ ゚。 。}
/ |\ \ / // l /// / _|_/´¨} } } | jリ ____
| リ | !\ \ j´ ,彡' `ー、 // / / lイ リ ノ リ-<,イ: : : : :__フ`ヽ
| r: :、_ / j ∨.\ ヽ、 {/ / //(´`リ |/ |ゝ' ,〃_/: :,、: : r、: : : \ノ
゚。∠ィレ´/ 、/. \ 、. ゝ__, .,' ノ/ `y' リ. | /: : : :フ ̄ \:| ` ̄¨|
゚。 /: : :≧==彡' ノ /| ゝ、 ̄ー' _ .|
\_r、_ ア:ヘ,ィ≦ ̄¨|: : : : : : >、_ 彡' .! / } r‐、 <:`´: : :\j
、7ヘl >≠/ /\: : : : : : : : : ̄ ̄フ } l / /<¨: : :ー-ァ ゝへ: : |¨|
`¨/ /: | ! `ヽ ¨¨…====彡' リ ! / ./| ∠,へノ´ r. ァ .!
/ /: : | i ヽ、_ / ゝ ,.'. | __jヽ_ ,ィ:r─ .|
/ /: : : j ,ィ_j \ \ / !ゝ-:: : :フ r': 7 j
/| / : 几リ /´¨¨¨¨¨\ゝ==.....__=ニヘ/ ` ヘ/ r─‐‐:: ::> /
〈_j∨-'´ / ヽ=^=イ>イ´¨¨〈 フ,へ: :|.´/
,イァ^、 / ヽ/ / /
/ { ! \ | 丶 Lf ̄ ̄ | ̄≧=-く__ >彡'
〈 ヘ}ハ 丶 丶 | !二二二>──イ
ゝ/ リ `ゝ丶 . j___|/⌒),ク
{ { { 丶、 ,ィ≦ ≧l [ニニニニ ]ノイ── - . .─
V∧_≠=v´ノ、 ヽー..__ // ! /| ||ハ `‥―――<ー、
212 :
ログ堀AA:2013/03/24(日) 12:44:25.71 ID:/EvNH4ug
\ \__)ーイ} \ V リ丶、 // | |リ ヽ
`ー-ニ彡' 丶、ゝ__ノ ヽ__! j/───  ̄ ̄ ̄ ̄ <
|=--彡| `丶、
∧ |`ー‐、
__ノ ヘ ゝ=L ∨
ゝ-イ 、 !| |ヽ 丶
、 {}-| ゝ、)
ゝjし'
213 :
ログ堀AA2:2013/03/24(日) 12:45:19.80 ID:/EvNH4ug
: |'///| 、
: |'///| |\__ }’,
: |'///| ,r} マ~¨> 、
: |'///| _,.」八ー'’ ノ rx(LX,____
: |'///| . .:.::´:::::::::ど廴_ ノ ゚ )> ,____ )
: |'///| /: :.::::::::::::::_;」(ャ=ミ` ーく( 厶r匕、
: |'///| , .:.::::::::x=ァ'~::.:::乂辷ノ}〃x忻xxr宀x(
: |'///| / ::r<::::〃:.::.::::::::|:::::i〕_八.ゝ--x仏イ ,>、
: |'///| /.:::人,__,){:{ :.::.::::::斗r:ヤ厂|:|下辷止x匕,__,ノ
: |'///| .:::/:|: :::|〕斗:.::.:::::::::j:|::仏_,」:|::|:.::.:::|:.:::::|:「
: |'///| :. :|:.:|: :::|:| 八:.::.::::::ノ:抓刃ア'|/.:.:::/|:.:::::|:|
: |'///| |: :|:.:|: :::|::.f双苅¨´ Vツ /.:.:::/::|:.:::::|:|:
: |'///| |: :|:.:|: :::|::ハ Vツ ' '/.:.:::/: ::|:.:::::|八
: |'///| 、{八:.::从iハ' ' ` _ ⌒7.::.::八i::::| ヽ
: |'///| \ |::/|:i::|:人 、__,) イ.:.:::/: ::|:.::|
: |'///| |/リ l::|:.::::|> . _,. '′|:.::::{: :.::|::人 :
: |'///| 〃厶L|: :::ィプア} |:.::i:ト.//> 、 ノ
: |'///| ///´ リ:.::::|/ // |:.:从// / `ヽ
: |'///| /// 〃}:.::リ ://⌒  ̄|:.::{ハ/ / ハ
: |'///| /:.:/ / /:.::/: :{ { ,人::乂_ , / ',
: |'///| (//.::} / /:/{ : :| | // \/: ‘,
: |'///| ///:.::/ : :>'′ | : :| | /// : :/ \: : :/: : ‘,
x(^ー 、 〃 .:://:.::/ /: : | : :| |,// : : / ∨: : ’
ニ)ア7ハ ヽ 八( /(:.::/:/: : | :// : :/ : : :}/⌒ ‘,
ニ)//,| ( \ ∨ : : // : :/ : :〃: : ’
づ///| 人 ` / : : : / , , : :{ : : ∧
: |'///| ` . __,xく___人 : : { { : : { : : : : 八/⌒\ : : / ’
: |'///|\ ` <.,___¨⌒\ \\: : : : : } } : : :\ : : : : : : : : : ノ_厶__ ̄ ̄ ̄ : : ',
: |'///|. \ `ヽ、\ ∨}>ー==ー==ー==ー==-=彡´ ̄ ̄\ー=ミ : : }
: |'///| ., ∨/ /<´ ̄\ \: : 、 ′
: |'///|. ., } | {廴,____((⌒>‐<⌒))_____彡'ア\
: |'///| |> .. | | } `¨¨¨~ヾー介ー介ー '~¨¨~´/ 、 i } : : {
: |'///| |:::::::::::: |>! | { 〈V V〉 / } | | : : }
: |'///| |:::::::::::: |:::::| |厶,______________________,/ /| :| | : :八
214 :
ログ堀AA3:2013/03/24(日) 12:46:30.34 ID:/EvNH4ug
ハ ,,、--───--、ハ
lハ':::::::::::::::::::::::::::::::::/-.|、
ハノ\:::::::::::::::::::::::::::,ゝ-l:::\
/::ゝノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::ヽ
,':::::::::. . .|:ヘ::::: :::',::::::::ヽ:::::',
,':/:: ...|::|ヘ..... ___ゝ::::::ヽ:::::ヽ
,' l /::::::::ィ''__ヘ| ヽ:::::,_===、\::::\::::ヘ
,': :|,'|:::::::/モムゝ `´''".モカミ:::ヽ-ヾ::::::ヽ
,'::::::':`´:::|ヘ |鳴} ヽ .鳴リ|::::::::::|:::::::::ヽ
l::::::l:::::::::ヘ /// i ///.|::::::::::|::::::::::::',
. ,'::::::',:::::::::::ゝ _ _ ..|::::::::::l:::::::::::::::ヘ
,':::::::::,:::::::::::',:::> /:::::|::::::::::l::::::::::::::::,:',
,':::::::::::l::::::::::::l::::::::::| ::::: |:: ::|:::::::::,':::::::::::::::::ハ',
/:::::::::::::',:::::::::::',:::/イ l/,'::::::::,:::::::::::::::::::| l::ヽ
,':::::::::::::::::',:::::::::::l. ',',', ハ、 l::::::::/\::::::::::::/ }::::',
,':::::::::::::::::,,,l:::::::::::', ',',', // ヽ \__l,,/ ̄ ̄´ヽ l:::::::',
,'::::::::::::::::/ ',:::::::::::l ',','/// \、 ノ ゝ `ヽ::',
,':::::::::::::::/. ',::::::::::', ゝ// /|::::/ , 、、,__ ヽ',
,'::::::::::::::/ | ',:::::::::', . // /.,':::::{ 丿 ゝ─=== {::',
.,'::::::::::::::/ .| ヽ:::::::l .// ./ ..,':::::::| ,,/リ { ゞ─〃 ヽヽ
/:::::::::::/ | ヽ::', / ,':::::::/} ィ─"", ヽ ゝ_ /::::ヽ
/:::::::::/ ヘ / / ,'::::::/ ヽ ィヽ-''',,,,,, ノY::::::::::ヽ
/::::::::/ ヽ / / /::::/_ \ \从从ヽゞ{ .{::::::::::::::ヽ
./:::::/ r二二==___=./ノ__ノ、 ヘヘ ( ヘ ∨丿:::::::::::::::
/ | | (\ヽヽ ∨ |\::::::::::
/ | | (\ ノl ヽ:::::::
/ | | { \ / | ', ヽ:::::
215 :
ログ堀AA4:2013/03/24(日) 13:19:25.85 ID:/EvNH4ug
/i
! !、
ヽ ヽ、 ,彡フ
ヽ フ'' (
_ 〉' (_ __
(ヽi, /;ヽ (
i ! ,,_____ノ、i;;iヽ、_____、 i i
! 'ヽ__●ノ' 'ヽ_●,ノ ,ノ i
!、jヽ、 ,- ;; -、 / _ノ
〉 /,、''`ヽ__/` ' ,、' )
'!, ヽ`t-,、__, -'イ/ /
ヽ ヽt,=,='='=イi /
\ `'"~⌒~"' ノ
`-- ^-- '
くうか?
,, ,、 ___ ,、
r-{・・}: : : : : : : : :-{・・}、
}: /: :: /: : : : : :}: : 、:く: ',
,':/ハ\ ─── /|: :',: {
|:}: { ● ●}: :|: :',
/:{!: !〃 __ 〃|: :|}: :}
|:::|: | \/ |: :|}: :|
,':::ハ:ト> 、 __ , イ/-' ̄ヽ
|: :| ヽ _r'"、: { }: :/`、{ rr、 }
,. -─'ヽ_,.r': } \/ |/', `フ´ ノ: !
/ }:_| ` ∞'" ! V /|: ::!
ヽ_ /  ̄YY  ̄ ̄ || リ/
`-'-' T´:l |_| l l !!
| |_ ,イ´: `==='`ーr-':|
| |: : |: : :|:|: : : :| |
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| /`r{`ヽ_,.イ{´} |
 ̄ | | | | ヽ、!
| | | | `
r}y} {yノ
l二l l二l
,.-、
// _,. ィ
,-、_/\ノ:ノ,-r──、 __ ,-'": /
{: : /-'" ̄//_: : : : : : : : : : ,. -'"
/ (●) `= く`ー── '
r==、 〉 ヽ
{{_,.='`_ / /ヽ { ,ィ
ゝ\ /} | ',ヽ__/ !
`ヽ ヽ ,. へ ト、 ー},=、 ヽ ,-、|
\\く_,ヘ!| 〈 | \} /
ヽ} `'"ゝ、___},.| ,.-'"\
く____}/,.<'イ
ヽヽ ' { {
彡ー'" },,,ヽ
______
/: : : : : : :_ ,.- '"´
_,./: :__,. - '"
_,.ィ}:;-'"
,..、'"l,.-'" r-,_
_r、,{\,.{ \-─ 、_ /- ノ
/、,.ゝ,V: :`ー': : : : : : :` ー─- 、___ノ
人_/{ /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : <_
/_l/ヽ/イ: :,≦┬‐`: : : - 、: : : : : : : : : : : /
/l/ ヽ}弋ソ }: : :}: :\: : :`ー-、: : : :,.-'"{ r、 / |
/::/ ( ,-、〃: :/-r-、: : : : : : : /r、 く ゝ - く
`ヽ' /  ̄リ: /|: |!,-、 `ー- < ヽ _,. > `ノ})`'"
` イ:彡{| | |/ `/
 ̄` }=-/`ヽ、 r-}ヽ,-,〈 _,. -,
/` /,、 ,-≧-'"`ヽ}-'"|ヘ /
/ ,.} `ー\ヽ { ヽ/ } /
}_,. -へ\_ ヽ く __ヽ
,、 / /`ー-\ ̄,.く`-'"}}
{{ Y\_./ /、 | `ヽ、 T`-} y´}}
\ \/ ヽ ! `' `-'
`=-' `
i1 ,' !
l ', / l
l ハ ,、 -─- ./ヽ ,'
l ノ >:.:.:.:.:.:.:.く /,
i /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`く:.:',
. K:/:.:.:.::.:l.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.',
. l:.:`lr=-、l_:.:r=-、:.:.l:.:.',
l:.i:.:lゝ‐' `‐' lハ:.l:.:.:.ヽ /::
,':.:l:.:.ハ _'_ /!:.i:l:.:.:.:.:.\ /:::::::
/:.:.:l::.:.l:`ト - イ:.:.l:.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:ヽ /::::::::/
/:.:/l:.:.:.l::l /:::`:l:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ / \/
/:/ ̄:::/l:.:.:.ハi. /::::::/:l:.:l ̄ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ / | /
. l:i /i /:.:.r'::::::::::i/::l:.:.:.:.V::::::/:::::l:.:l:::::::::: ̄l:.:.:.:.:.:.\/ヽ /
r、ノ:| /:::l //lノ:::::::::::l::::::レ'ヽ:.〉/::::::::::l:ノ::::::::::::::::::〉:.:.:.:.:.:.:.ヽ/
l:::::::l i:::〆 /:::::::::::::l-、::::::::/:::::::::::::./:::::::::::::::::::::::: ̄ヽ:.:.:.:.:〉
r' : : :l レ' /:::::::::::::::::::l_ ` -- '"  ̄ i::/::::::::::::::::\:::|:.:ト/ ,、
/: : : : :ヽ _/:::::::::::::::::::::::::|: : : : : :  ̄ ̄ ̄ ̄l::::::::/⌒:::::::::::::::ヽ:l /: :
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. ヽ : : : ::::::::::::::::::::::::::〉、:::::::::.ト、 _____ ,イヽ::::::/ 〉、:::::::::::::::: : : : : :
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ィ
/-{ ___
{,- ゝ'":: :: :: :: :: :: :: `ヽ、
ゝ´:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: ,.く!`ー、
/:: :: :: :: :: :: /:: :: :: ::くヽ }:: :: ::ヽ
/:: :: :: :: :: :: ,イ:: :: :: :: :: :: }ノ:: :: :: :: :';
|__:: :: :: ::/ |:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :!
}:: :| fcヽ{ |ハ:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :|
/::ノ弋ソ イ、:: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :/
/:ハ ¨ {::c心、:: :: :: :: :: :: :: :/
/:: :: ヽ `ー' /ヽ:: :: :: :: :: :/
/:: :: :: :: ::>、___ /:: :: :: :: :: :: ::{
/:: :: ::,.r-' / / ,.-'":: ::/:: :: :: :: :: ::!
,.イ:: ::ハ:: / / /- イ: :: :: /ヽ:: :: :: :: :: :: |
r'" {:: :/ }:/ / Y´ /:: :: :: :/ ,.-┤:: :: :: :: :: :ヽ
| ヽ/ ノ 人 / {:: :: :: :/ / ヽ:: :: :: :: :: :: ';
∧ ,、-'":::::=z`ーく_|:: :: ::/ /::: '; :: :: :: :: :: ::ヽ
/{_∧_,.-'} ヽ::::ヘヽr,-、 |:: ::ハ{─{:::: V:: :: :: :: :: :∧
|_ト、ヽ}::: ::| Y:::`::ーF」=、ヽ:{ _,.|:::: /::V:: :: :: :: :: :: ',
´ }::: ::! /:::: :::r-、::: ::: __,イ::::r⌒ヽ{ '; :: :: :: :: :: ::|
|:| ̄ヽ/:::: ::  ̄ |::::: \_ _}:: :: :: :: :: ::|
/:::> /::::: :: :: ,、 {´ ,'::::::,.-'" ,コ:: :: :: :: :: ノ
/::/ /::::: :: ::: / ヽ ヽ,':::::::ヽ_ イ:::ノノ:: :: :: :: :/
_ /::  ̄,'::::::: :: :::::: { } }:::::::::::: _, イ \::::::::/
\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}}━━━━━━┿━━┿━{_ ノ━┿━━━━━━
ヽ、:::::::::::::::::::::::::::::|!、| `ヽ:: < ヽ !:::::::::`ー'" /
`ー──'"´ ̄ |/`ー' : ::ーイ ,、トヽ:::::::::::. /
|::::::: :: ::/_,.-' }_|:::::::\::::::::::. イ
>--、_:: ::::::::::::::::::::::::::::::::::::` ー'" !
`ヾ__,.≧ 、________ ノ
ヽ_}}ノ
生成
. : "´  ̄ ` : 、
.,:::::Δ::::::::Δ:::ヽ::、
//:::,::::::,:::::::、:::::::、::::/i.___
. l,f:::i|_:::::|:::::::||:::::_|i:|:i i::/ ヽ
|:|:::::| (●) (●)|::iヽ●)ii|
|:|::::_| 、 |_::| トww/
|:|:´:|゙:、_ ‐‐ _,.ィ|:`::|ヽェェi
|:|::::|:::::/ ヽ//ヽ:::1::::|ヽ___l
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|:|::::|.' i┴─‐ i |::::|:::|
|:|:i'l:j _.|___|_ l'i,:|::|
|:::::::l ,.トェュ─rェイ :v|::|
|仆:j ,i´ ̄  ̄`i、 l:| |
_,ノ ,| | ,| ヾ、_
中成
. : "´  ̄ ` : 、
.,:::::Δ::::::::Δ:::ヽ::、
//:::,::::::,:::::::、:::::::、::::/i.___
. l,f:::i|_:::::|:::::::||:::::_|i:|:i i::/ ヽ
|:|:::::| 、◎) ii (◎ノ|::iヽ●)ii|
|:|::::_| 、 |_::| トww/
|:|:´:|゙:、_トェェェェイ_,.ィ|:`::|ヽェェi
|:|::::|:::::/ ヽ//ヽ:::1::::|ヽ___l
|:|::::|::/、 ,/ , ゙.|::::|:::|
|:|::::|.' i┴─‐ i |::::|:::|
|:|:i'l:j _.|___|_ l'i,:|::|
|:::::::l ,.トェュ─rェイ :v|::|
|仆:j ,i´ ̄  ̄`i、 l:| |
_,ノ ,| | ,| ヾ、_
本成:これだけ閻魔あいベースにキル夫のアップを合成したもの。
/::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::/イ:::::::::::::|l!:::::::::::::::::::::|l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/.:::::::::::::::::::::::::::::,l:::::::::::::::, l!|:::::::::::::|l!:::::::::::::::::::::|l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,.::::::::::::::::::::::::::::::::l !::::::::::::l |! !::::::::::::|l !::::::::::::::::::::|!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,.:::::::::::::::::::::::::::::::::::l |::::::::::::l |! |::::::::::::|| l:::::::::::::::::::l l::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::
l::::::::::::::::::::::::::::|::::::l、!::::::::::::| |! l::::::::::::川:::::::::::::::::::l7::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::
l::::::::::::::::::::::::::::l:::::::l |::::::::::::|=―ゝ::::::::lゝゝ─ヶ' ,, -'':゙:゙:゙゙:':'|l::::::::::::::::::::::
|:::::::::::::::::::::::::::\:::j_7 - 'i': : : : :゙:'ヽ | | i i/ |: :(●): :| |l::::::::::::::::::::::::
〉::::::::::::::::::::::::::::::::\'ヽ, |': :(●): :|'ヽ /.,,,,,,,|: : :''''' : リ |l::::::::::::::::::::::::
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l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'. -・-゙'''''''''゙-=≡ ` ̄ ,|l:::::::::::::::::::::::::
l::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::'. / |.l::::::::::::::::::::::::::
. l:l:::::::::::::::::::::;::::::::::::::::::::、 ヽ ‐ |l::::::::::::::::::::::::::
|:l|::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::、 ,,・-..,┬,,,,...--,,・-..,┬,,,,. |::::::::::::::::
|::L:::r── ′7::::::::::::::::::::\ v || |:‖ -__w ヽリ゙リ゙|j: |::::::::::::::::
7 /:::::::::::::::::::::::::::> 、 \゙Vri ri | ‖iヾソノ , イ::::::::::::::
|. /::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::丶、,゙''''''゙゙''''''゙゙ < //l:::::::::::::::
|! /:::::::::::::::::::::::::::::::/l::::::::::::/ 77 ハ / / .ハ::::::::::::::
507:某月某日のこと…:2010/11/05(金) 19:34:32 ID:Uhsh4b2v
ふぅ、こんなものかしら?
/,A^^A. 戦いの後はいつも掃除が大変よね。紅葉の葉が多すぎるわ。
卯ミ!|リノ)))リ n
lヾ|l .゚ -゚ノリ=3 .|| ノヽ
ノ ヾ/"  ̄|つ || ::: y (
ヽ,,ノ二二l/ || ::。:;;;;
l .| /廿 ::[]::*:;;;
|____」 |卅| 。;;+;:::;*;;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
それにしてもヤイカガシ、どこいったのかしら
,A^^A 、 助太刀のお礼に一緒に焼き芋でもと思ったのに…
r!|リノ(((リ卯
|、゚ -゚ .リlヾ| シュボ ノヽ
ノ ヾ/"  ̄|つ-火 ::: y (
ヽ,,ノ二二l/ ::。:;;;;
l .| ::[]::*:;;;
|____」 。;;+;:::;*;;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/,A^^A. 臭いはするから近くにいるはずなんだけど…
卯ミ!|リノ)))リ
lヾ|l .゚ -゚ノリ ポイ ノヽ
ノ ヾ/"  ̄|つ ⌒ -火从 y (
ヽ,,ノ二二l/ ::。:;;;;
l .| 从::[]::*:;;
|____」 。;;+;:::;*;;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
508:創る名無しに見る名無し:2010/11/05(金) 19:35:32 ID:Uhsh4b2v
>507
あら?何だか香ばしいような…?
/,A^^A. ?
卯ミ!|リノ)))リ パチ
lヾ|l .゚ -゚ノリ パチ ノヽ パチ・・・・
ノ ヾ/" \ 火从 y (
ヽ,,ノ二二l/ ::。:;;;;
l .| 从::[]::*:;;
|____」 。;;+;:::;*;;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
、 ....。 |8 )
从 从ヽ、 ノヽ从 |ノ:::」
:{}:::: ) y ( ) ( ::
/,A^^A. そ ;;; )ヽ|/( ) ( ギャアアア!!
卯ミ!|リノ)))リ て ) ( ( ヘ/////へ丶、 あちーでヤス〜!!
lヾ|l .゚д゚ノリ ⌒\ ソ << ((X) ≪
ノ ヾ/" \ 火从/ ( _ ノ
ヽ,,ノ二二l/ :: 。:へ_ <´
l .| 从:: []:( ノ⌒て^ミ
|____」 。;; +; 彡ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
509:創る名無しに見る名無し:2010/11/05(金) 19:36:54 ID:Uhsh4b2v
>508
(( /,A^^A. 姉さん、ひでーでヤス!ワイの安らぎのひと時を!!
( 卯ミ!|リノ)))リ ・・・・・・ごめんなさい
lヾ|l .-__-ノリ ノヽ、
レ/ ヾ//\ ) y (
|,, >Xノ_) )ヽ|/(
l .| ,ヘ丿////√) ) (
|____」 ≫ ◎ ) 》 y /ノ\
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\
ヒ /
ラ___)
?! (\ ∞ ノ
/,A^^ヽ)_ノ パサ…
卯ミ!|リノ)))リ
lヾ|l .゚ -゚ノリ ノヽ、
ノ ヾ/" \ ) y (
ヽ,,ノ二二l/ ! )ヽ|/(
l .| ,ヘ丿////- ) ) (
|____」 Σ ≫ ○ ) 》 y /ノ\
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
___
(\ ∞ ノ
/,A^^ヽ)_ノ これ…あたしの…
卯ミ!|リノ)))リ .
lヾ|l .゚ -゚ノリ .ノヽ、.
ノ ヾ/" \ :) y (:
ヽ,,ノ二二l/ .. . . . . .. .. . .. :)ヽ|/(:
l .| :,ヘ丿////- ) ) (:
|____」 : ≫ ○ ) 》 y /ノ\:
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
510:創る名無しに見る名無し:2010/11/05(金) 19:39:24 ID:Uhsh4b2v
>509
┃+
ノ レ ┃| そ・れ・で?一体、何をもって安らぎのひと時を
┐┌ /,A^^A. ┃/ 過ごしていたのかしら?
卯ミ!|リノ)))リ || ノヽ、 ノヽ、 っ
lヾ|l.^ -^ノリ .|| ) y ( ) u ( っ
ノ ヾ/"  ̄|つ|| )ヽ|/( ) ( っ じ、じゃっ、ボクは
ヽ,,ノ二二l/ || ) ( ( ヘ/////へ丶、 この辺で失礼
l .| || ⌒\ ソ << ( ○ ≪ しヤス・・・・・
|____」 || |\ / u ( u_ ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\\\\\\\////////
>>燃え散れ!!このナマモノ!!<<
//////\\\\\\\\\
_、 _ |゙.! ./ミ/ヽ
'|ニ- / !│ lニニニニ 'ニ─‐'"´ ,,..、 .,i-、
././ .! ヽ , -----! ーニ二) } .!,, " ¬-、
l .! ! l \ `  ゙̄二二 \ i-'''_ ,i‐'"゙´゙'i ! /''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''',!
! | / | ヽ` ./',.-─‐'‐‐‐' '"゛ l l〈,゙''''''゙,./ '冖冖冖冖冖冖冖'"゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゛
ヽゝ-__-‐'ノ |,ヽ___ l l `´
─‐'''´ ` ー‐‐‐'′ ゙‐'"
−終−
調子にのって作ったらなんか長くなった。もう少しコンパクトにしなきゃいけないと思った。
次からは大きいのはAAスレで投下してリンクにした方がいいかと反省している。いい知恵があったら教えてください。
813:創る名無しに見る名無し:2010/11/06(土) 10:52:19 ID:2Ad9j8Be
ヤイカガシとヒワイドリのAAできたよー
/⌒ヽ
/ ゚д゚)
/ j、
_, ‐'´ \ / `ー、_
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
{ 、 ノ、 | _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー〜'´ ̄__っ八 ノ
ヽ、 ー / ー 〉
/ `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-く
ノノノノ
( ゚∋゚)
/ j、
_, ‐'´ \ / `ー、_
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
{ 、 ノ、 | _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー〜'´ ̄__っ八 ノ
ヽ、 ー / ー 〉
/ `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-く
鬼子のAAがたまったら「やる夫が鬼(オニ)と出会って陰(オニ)と戦うようです」とかやりたいな。
メガテンの世界観で、ペルソナの設定も取り入れて。
815:創る名無しに見る名無し:2010/11/06(土) 10:55:53 ID:7+MTwqIK
ふぃれを付けて見た
/⌒ヽ
Σ ゚д゚)
/ j、
_, ‐'´ \ / `ー、_
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
{ 、 ノ、 | _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー〜'´ ̄__っ八 ノ
ヽ、 ー / ー 〉
/ `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-く
受身返し 十の一
夕暮れどき、小さな公園の砂場で少年が泣いていた。
人の姿はない。昼過ぎに上がったにわか雨で地面は湿っており、少年の顔も服も手も砂だらけであった。
友人と喧嘩をしてしまったらしい。その証拠に少年が丹精込めて作った砂造りのお城が無残にも破壊されてしまっていた。
しかし、壊されたから少年は泣いているのではない。友人とは小学校に入学してからずっと一緒にいた。
無二の親友である。その友人と喧嘩別れしてしまった。今回の喧嘩は、今までと比べ物にならないくらいの傷を少年の心に負わせた。
喧嘩の発端は相手にある。少年の最高傑作である「砂造りのお城」をハリボテ小屋だとばかにしたのだ。
ばかにされたお返しとばかりに友人の作品「砂の山のトンネル」に泥団子を投げつけてしまったのだ。
砂の山のトンネルは友人の誇りであり、人生であった。
それに向かって泥爆弾を投下した。友人にとっては、顔に泥を塗られたも同然であったのである。
収拾がつかない泥試合はこうして幕を開けた。
罵倒し、砂をかけ、殴り、蹴る。
およそ自分の嫌がることであればなんだってけしかける。
互いに譲り合わぬまま時だけが過ぎ、そして友人が最終手段、すなわち砂の城を破壊するという邪道に出たのだ。
友人の一蹴りで城は文字通り粉々になり、均衡の乱れた城は自身の重みに耐えきれずに自壊した。
少年の思考が停止したのか、あるいは「報復せよ」と耳の奥に居座る何者かが囁いたのか、
とにかく少年は砂の山のトンネルを踏みつけた。
トンネルは呆気なく潰れ、なめらかで均等な斜面を保っていた外観に足跡が十も二十も刻まれる。もはや原型は留めていなかった。
友人は奇声をあげ、少年に突進をかまし、砂と涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を拭うこともせず公園から走り去ってしまった。
少年ははじめ勝利に酔い、友人への怒りと憎しみを抱く叫びをしたが、
いつしかそれは心の痛みを訴える泣き叫びとなっていた。
明日と明後日は土曜日と日曜日である。謝ろうにも機会がない。もしこのまま月曜日を迎えて、友人が絶交していたら――。
少年は孤独と恐怖に対処する術を知らなかった。ただ嗚咽を強めるほかなかった。
西の空も橙から藍色に染まりつつあった。しかし少年はここから離れるわけにはいかなかった。
少年は気が動転していた。いつか友人が戻ってきて、謝ってくれるに違いない。
ひとつの証拠もなしに、自分の願望は確固たる事実だと信じて疑わなかった。
友人は戻ってこない。少年はその事実をかたく拒絶して、心の奥底に押しやってしまっているのである。
「どうしたの?」
少年の泣き声を聞きつけたのか、砂場に一人の女性が登場した。少年は泣いた顔を見られたくなくて、突っ伏したままであった。
「転んじゃったの? 一人で起きられる?」
少年のぼやけた視界の中に、女性の指が映った。血の通った、か細い手のように思われた。
その手は黒い袖から伸びている。椿油の香りが鼻孔をかすめて、少年は女性の袖を追った。
細身の腕に張りつくようなレッグ・オブ・マトンの先に、ベールを被った修道女のほほえみがあった。
「お名前は?」
修道女の問いに、少年は赤い目をこすった。
「りくと」
少年は答えた。
「りくと君か。いい名前だね。私は鬼子。日本鬼子っていうの」
「ひのもと、おにこ?」
「変な名前でしょ?」
261:某月某日のできごと2:2010/11/07(日) 03:23:54 ID:25OlvoO6
?!
m
Σ°)
___ 7
\仕様書\ < \三3
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
: ヘ〜 ン?
: ( ( ナニソレ?
m : ( 。 。i
<゚( ) ゝw メ
? ! 「 し ))
ミ(こ((゚< ))
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
________________________________
\\ 仕 様 書 \\
\\ 超巨大和製ロボからくり鬼子は1000万馬力、 \\
\\ ヒワイドリ、ヤイカガシ、ハンニャーと合体する事により \\
\\ 陸海空の三界を制するスーパーからくりロボなのだ! \\
\\いけ、鬼子!我らが鬼子!日本の平和はお前の肩にかかってる! \\
───────/──────────────────────
ヘ〜 /
( ( /
( 。 。i m
ゝw メ <゚( )
ミ(こ((゚< 「 いi ))
≫ ))
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
: ヘ〜 :
: ( ( :
: ( 。 。i m :
ゝw メ <゚( )
ミ(こ((゚< 「 いi ))
≫ ))
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヘ〜
/,A^^A そ ( ( 〜
卯ミ!|リノ)))リ. て n ( 。 。i 〜〜〜
lヾ|l .゚ -゚ノリ .|| ゝw メ 〜
ノ ヾ/"  ̄|つ || m ━
ヽ,,ノ二二l/ || Σ°) ─ ─ 三
l .| /廿 ::[]: 7 == = =
|____」 |卅| 。;;+;::: < \ ━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
263:某月某日のできごと2:2010/11/07(日) 03:24:41 ID:25OlvoO6
>261
さ
あ、 い
合 こ な
体 う い
と じ か
\ _/|_ ゃ
E ( °く /
\ ) ̄
/,A^^A. ? / ∠
卯ミ!|リノ)))リ ! / ミ 火
lヾ|l .゚д゚ノリ ( (
ノ ヾ/" \ ( 。 。i
ヽ,,ノ二二l/ ゝw メ
l .| ヒョコ
|____」 ミ(こ((゚<
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
う
火 ん、わ
( ( ミ か
( 。 。i ミミ っ
ゝw メ た
( A ) !!
\ ( ) /
 ̄[]) ̄
| /,A^^A. | |
| i 卯ミ!|リノ)))リ
し lヾ|l.゚д゚ノリ
ノ ヾ/" \ \ がってんでヤス! /
ヽ,,ノ二二l/ \ /
l .| ミ(こ((゚<
|____」 ≫
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
さぁ!
火 後 お
( ( は ね だ
( 。 。i 鬼 | け
/,A^^A. ゝ ワ メ 子 さ だ
卯ミ!|リノ)))リ ( m ) ん よ
lヾ|l ;- 。ノリ=3 \ Σ°) / !!
ノ ヾ/" \  ̄[]) ̄
ヽ,,ノ二二l/ | |
l .| >゜))⊇)彡
|____」 ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
264:某月某日のできごと2:2010/11/07(日) 03:25:27 ID:25OlvoO6
火
ガびーー( (ーーーん!!
人 ( 。 。i
/,A^^A. と Σ ゝw メ
卯ミ!|リノ)))リ + し 恥 ( m )
lヾ|l .゚ -゚ノリ て ず Σ \ Σ°) /
ノ ヾ/" \ か  ̄[]) ̄
ヽ,,ノ二二l/ し | |
l .| い Σ >゜))⊇)彡
|____」 わ ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(───────i
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄リ | ,.--.、 ,.--.、
// { } { }
|\ 了// ` - ' ` - '
i \ ,.--.、 || || ( ( ( (
i \ { } _ || (ニニノ || ) ) ) )
i \ ` - ' ノノ_ ノノ /| ( ( ( (
___」 ( ( 「─┬─-i / / ) )VVVVVV ) )
\ \ ) ) || || || (ニニ/ / ̄ ̄ ̄ ̄|
\ \ ( ( || ̄ || ̄ || _// ̄ ̄┐ | WWW
\___ ) )  ̄ ̄ ̄ ̄ 「_/ | |
( ( ノノ || ム ( ̄ ̄\」 |
ノノ \___A  ̄ ̄フ /
ノノ  ̄ ̄ ̄ ̄ / /
へ / /
、 //_ ノ /
______ ヽ\ / \
/ | |/ / ̄~ヽ ヽ
/ ,.--.、 |\_/ / / /
/ { } \_ | | / / /''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''',!
| つ (` - '( '| | _/ / '冖冖冖冖冖冖冖'"゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゛
⊂ニニニニニニ) ) '| | ∠-''~
( ) "{ |
// \| −終-
(/
594:創る名無しに見る名無し:2010/11/08(月) 01:52:48 ID:5accEHdk
A
ii(((レノリ))〉
レ|ゝ*゚ヮ゚ノi
⊂「ノ〔i ^ i〕_]つ
くXXXXゝ
し⌒iJ
小日本
/,A^^A.
卯ミ!|リノ)))リ A
lヾ|l.゚ ヮ゚ノリ ii(((レノリ)〉
ノ ヾ/"  ̄|つレ|ゝ*^ヮ゚ノi
ヽ,,ノ二二l/ ⊂「ノ〔i ^ i〕_]つ
l .| くXXXXゝ
|____」 し⌒iJ
暫定小日本。もう少し改良でけそう。
911:創る名無しに見る名無し:2010/11/09(火) 20:30:39 ID:eHOtDL/B
γ/,A^^Aヽ v
川ミ ノノリ))〉 γ ^゜^ヽ
(ノノリ、゚ ヮ゚ノリ l ノ(ノ)))リ みんなー
ノ ヾ/" ヽ, ノ,l ゚ヮ゚*ノリ
ヽ,,ノ二二lヽ,Jc| ̄| y/ ヽ、
l .| .L.ノ=∞=l/
|____」____ |_l_|l_l_|____
`´ `´
562:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 00:05:08 ID:/Sm9cK98
>537
〃 A´`Aヽ
卯ミ!|リノ)))リ こうかしら?
ノ lヾ|l.゚ ヮ゚ノ|!_ ./ヽ
((( /リ__ y_ リ_|つ ● |
ヽ * つ二| \ /
l/゚ ,イく/_|〉.
/_゚/ し'ノ
567:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 00:08:38 ID:/Sm9cK98
足がズレてたよ…orz
〃 A´`Aヽ
卯ミ!|リノ)))リ
ノ lヾ|l.゚ ヮ゚ノ|!_ ./ヽ
((( /リ__ y_ リ_|つ ● |
/ * つ二| \ /
/゚ ,イく/_|〉.
/_゚/ し'ノ
..- 、 イ ,.. -―- ..._ , イ
. .:.:.:. V { .:.:.:::::::::::::::::> /
. / .:.:.::,. イ| 〉 .:.:.:.:::::::::::::::〈__ノ、
/ .:.::::/ V^ー' .:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::.
. .:.:::/ { :ハ.:.、.:.:::::{\.:.::::::::::::::|
/ .:.::::/ |.:ト、;Y7ぅト\く ィ7ふ メ、/
.: .:.::::::/ 乂∧ ゞ゚′ , ゞ-゚'/_ノ
/ .:.::::::::::/ 入"" - ""ィ´
. ′ .:.::::::::::,′ ,. -` ;¬r 1´ `¨¨ヽ、
,゙ .:.:.::::::::::! / ,゙ { / i ヽ
! .:.:::::::::::! (⌒ヾ { ヽ } >'⌒)
! .:.:.:::::.、 ノ 〉、 丶 ノ く.
ヽ、 .:.::ヽ / ハ、`'ー一彡{ ヽ
` ー- 、 :.:.} { /ヽ 二ニ≠_ イ '.
ハ ,′ ヽ、 ,゙  ̄| '. i
/ } / `'ー一1 | '.ヽ、___ノ
(___,,.. ' .: :〃 } ィ⌒Y 丶
ー――一' 廴__,. -‐' i| ーrー‐'
i !i |
'. ! . l
'. l '. '.
,′ ,゙ ヽ '.
,′ ,′ '. '.
,′ ,′ '. i
i 、 } !
! ) ,゙ |
`¨¨¨´ ー'′
..- 、 イ ,.. -―- ..._ , イ
. .:.:.:. V { .:.:.:::::::::::::::::> /
. / .:.:.::,. イ| 〉 .:.:.:.:::::::::::::::〈__ノ、
/ .:.::::/ V^ー' .:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::.
. .:.:::/ { :ハ.:.、.:.:::::{\.:.::::::::::::::|
. .:.:::/ ハ.:.:.:ト、\:、.:.:::>__,メ、::::::: ,′
/ .:.::::/ |.:ト、;Y7ぅト\く ィ7ふ メ、/
.: .:.::::::/ 乂∧ ゞ゚′ , ゞ-゚'/_ノ
/ .:.::::::::::/ 入"" - ""ィ´
. ′ .:.::::::::::,′ ,. -` ;¬r 1´ `¨¨ヽ、
,゙ .:.:.::::::::::! / ,゙ { / i ヽ
! .:.:::::::::::! (⌒ヾ { ヽ } >'⌒)
! .:.:.:::::.、 ノ 〉、 丶 ノ く.
ヽ、 .:.::ヽ / ハ、`'ー一彡{ ヽ
` ー- 、 :.:.} { /ヽ 二ニ≠_ イ '.
ハ ,′ ヽ、 ,゙  ̄| '. i
/ } / `'ー一1 | '.ヽ、___ノ
(___,,.. ' .: :〃 } ィ⌒Y 丶
ー――一' 廴__,. -‐' i| ーrー‐'
i !i |
'. ! . l
'. l '. '.
,′ ,゙ ヽ '.
,′ ,′ '. '.
,′ ,′ '. i
i 、 } !
! ) ,゙ |
`¨¨¨´ ー'′
696:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 03:46:33 ID:/Sm9cK98
>>691 お、いいかんじ。どうも、自分は色々つめが甘い感じがするわ
,A^^A 、
r!|リノ(((リ卯
/('(゚∀゚ .リへ|
\ノへヾ/"  ̄|
|二二l/
\ ___\
し iJ
698:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 03:56:52 ID:2DYvoYW9
>>696 速ええええw 個人的にはヮがいいなーと思ったのでテスツ
どんなにくるしくても
ひのもとおにこがくれば
もえちるよ!
,A^^A 、
r!|リノ(((リ卯
/('(゚ヮ゚ .リへ| もえちるよ!
\ノへヾ/"  ̄|
|二二l/
\ ___\
し iJ
699:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 04:02:11 ID:/Sm9cK98
>>698 おぉ、いいねぇ。まだまだだと思っていじっていたけど、他の人とやった方が色々進むね。足元を修正っと。
,A^^A 、
r!|リノ(((リ卯
/('(゚ヮ゚ .リへ| もえちるよ!
\ノへヾ/"  ̄|
|二二l/
\ ___\
(シ (_j
701:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 04:27:03 ID:2DYvoYW9
んじゃ寝る前にも一度。
どんなにくるしくても
ひのもとおにこをみれば
もえちるよ!
,A^^A 、
r!|リノ(((リ卯
/('(゚ヮ゚ .リへ| もえちるよ!
\ノへヾ/"  ̄|
|二二l/
\ ___\
(シ (_j
726:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 11:22:26 ID:/Sm9cK98
このスレは創作いよくををいちばんに
ゆうせんするんだ、だから
思うようにに作ったらいいと
おもうよ!
,A^^A 、
r!|リノ(((リ卯
/('(゚ワ゚ .リへ| おもうよ!
\ノへヾ/"  ̄|
|二二l/
\ ___ン
(_シ (_j
795:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 14:11:24 ID:KLyBpGUn
,A^^A 、
r!|リノ(((リ卯
/('(゚ワ゚ .リへ| もえちるよ!
\ノへヾ/"  ̄|
|二二l/
\ ___ン
(_シ (_j
819:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 15:03:03 ID:G9DT7ZLH
わたしたち姉妹コンビで
このスレを萌え散らすのよ!
一生懸命ガンバレばきっとみんな
もえちるよ!
,A^^A 、 もえちるよ!
イ!|リノ(((リ卯 A ちるのら〜
/ リ|、゚ヮ゚ .リヘi| ∩イi<リ)>@)
\ノへヾ/"  ̄\ /イ|、゚ヮ.゚ノ∩|
|二二l\/ \ンヘビソ/イ ̄ヽ、
\*___ン <<∞=x\__/
(シ (_j (シ⌒(.j
841:代理の人 ◆VTtoTsLiVg :2010/11/13(土) 16:31:51 ID:PlvbC15j
>>819 萌え散りに行くでヤンス
,.-、
// _,. ィ
,-、_/\ノ:ノ,-r──、 __ ,-'": /
{: : /-'" ̄//_: : : : : : : : : : ,. -'"
/ (●) `= く`ー── '
r==、 〉 ヽ
{{_,.='`_ / /ヽ { ,ィ
ゝ\ /} | ',ヽ__/ !
`ヽ ヽ ,. へ ト、 ー},=、 ヽ ,-、|
\\く_,ヘ!| 〈 | \} /
ヽ} `'"ゝ、___},.| ,.-'"\
く____}/,.<'イ
ヽヽ ' { {
彡ー'" },,,ヽ
--------------------------------------------
858:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 18:41:51 ID:G9DT7ZLH
はんにゃ〜の
( A のりごこちはフカフカなの〜
ニ ソ) イr(i<リ)>¢
ャ (⊃ ( リ、゚ヮ.゚ノリゝ
ァ γ ⊂√三__\___
) ソ ∂ 人 (シ\__/
( ( ´o o` ) /
ゴ ゝ w メ ソ
し'^ iJ
──────────────
・・・・なんか、和みたくて投下した。深い意味はない…あと、前足はあるのに浮いてます>はんにゃ〜
865:創る名無しに見る名無し:2010/11/13(土) 19:42:56 ID:G9DT7ZLH
なんとなく作ったのでなんだか投下シリーズその2
/ こ
ノヽ、 ノヽ、 / ヤ こ ん
) y ( ) ( / イ の な
)ヽ|/( ) ( / カ 俺 エ
ヾ ヾ ヾ ヾ ヾ ) ( ( ヘ/////へ丶、∠__ ガ が サ
)\ )\ )\ )\ ⌒\ ソ << ( ○ ≪j(\ ∞ ノ シ で
) \) \) \) \|\/ ( U ノ ヽ)_ノ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ !!
・・・ご活用下さい(何に?!)
962:創る名無しに見る名無し:2010/11/14(日) 01:15:27 ID:RIXbf4S5
これはうれしくないよ!
うれしくないけどやいかがし!
ノヽ、 ノヽ、
) y ( ) (
)ヽ|/( ) (
) ( ( ヘ/////へ丶、
⌒\ ソ << ( ◎ ≪ やいかがし!
ノ ( _ ノ
/ * ノ´
./ ( ノ ノ
|/|/彡ノノ
984:創る名無しに見る名無し:2010/11/14(日) 03:42:33 ID:nBT/aEHJ
| |
|文| m_
| |( ゜<あーいーうーえーおっぱい!おっぱい!
| |/  ̄
| |
m ∩
あ-い-う-え-おっぱい!おっぱい!>Σ°)彡
( ⊂彡
))
===================================
……ちょっと今回は似たようなAAを連投してしまい、すみませんでした……
>>225 おお。バテレン鬼子さん?
清冽な香りがたまりませんのぅ。
「レッグ・オブ・マトン」調べちゃいました。なるほど!
>>225 受身返し 十の二
鬼子、と自称する修道女のほほえみ
――それは、かすかな表情の変化で、限りなく無表情に近い哀しみを帯びていた――
を一目見た少年の心に、激流ともいえる強い衝動を覚えた。
少年の人生の中で、かつてここまで意識してしまう女性がいただろうか。
病院の待合室で読んだ人魚姫を見たあの心のときめきをも超えている。
この魅惑を、りくと少年がどこまで解していたかどうかは定かでないが、
修道女鬼子の親身な振舞いは少年を一目惚れさせるのに充分であった。
りくと少年の初恋である。
少年は差し伸べられた手を取った。やわらかい、と思った。父親の手とはまるで違う。
「君は、強い子だね」
膝立ちになり、鬼子は少年の頬についた砂を払って言った。
りくと少年は褒められて、一度は喜んで顔を綻ばせたものの、あ、と言って俯いた。
「ぼく、つよくないよ」
少年は返した。
「だって、ぼくは泣き虫だ」
友人との喧嘩別れを思い出す。最後に見た友人の歪んだ顔が少年の頭をよぎり、意識せずとも涙があふれていた。
鬼子が少年の頭をなでる。まだ軋みのない艶のある短髪だ。つらかったね、とだけ言い、見えない傷をいたわるようになでた。
しゃっくりが収まると、少年は自ら泣いていた原因を語りだした。
友人のこと、砂遊びのこと、喧嘩のこと……。
親や先生から教わったわけではなかったが、恐怖と不安を紛らわすには、
誰かに話すのが最も効果のある薬であることを、りくと少年は本能のうちに知っていたのである。
途中で二人は、公園に唯一あるベンチに腰かけた。
日が暮れて、互いの顔すらよく見えないほどだったので、灯りの傍にあるベンチに移動したのだ。
「りくと君は、お友達と仲直りしたいんだよね?」
少年の語りを、鬼子は少年の意志を汲み取って、そう一言で締めくくった。
そして再び「つらかったね」と少年の頭をなでる。
少年は言いたいことをすっきりと伝えられた喜びにこそばゆくなった。
「それじゃあ、りくと君のお友達も、りくと君と仲直りしたいと思う?」
その問いにりくと少年はしばし考え、そして首を横に振った。
「おこってるとおもう。トンネルこわしちゃったから」
「そっか」
鬼子はそっと頷き、間髪なく続ける。
「でも、もしかしたら、そのお友達も仲直りしたいと思ってるかもしれないよ?」
「ううん、そんなことないよ。こうえんにもどってきてくれないもん。だから、ぼくのこと……」
友人の悲鳴が耳の内側でこだまする。乾いたとばかり思っていた涙が、また滲んできた。
「りくと君、ごめんなさいって、謝りに行こう?」
「やだ。やだよ、だって」
少年は当然のように言い返した。
「だって、あいつがわるいんだもん。ぼくのお城をばかにして」
>>239 レッグ・オブ・マトン……フモッとしててキュッとしてる袖的なイメージです。
趣味が滲みでてますw
>>240 受身返し 十の三
ぼくに消えちゃえとか、まぬけとか、くずとか言って、たくさんパンチしてきたんだ。
あらゆる理由を少年は述べ、そして最後にこう続ける。
「それに、あいつのおうち、行きたくない」
面と向かう機会があったとして、そのとき友人はどんな顔をするのだろうか。
むすりとして無視されたり、見向きすらせず「もうきらいだ」と言い放たれるかもしれない。
そうしたら、少年はしばらくの間学校に行けなくなるだろう。人に会うことが怖くなるだろう。
「りくと君のお友達も」
修道女の口調は変わらず穏やかであった。
「きっと、りくと君と同じように、仲直りしたいって思ってるよ。だって、そのお友達だって、りくと君のこと、大好きなはずだもん」
少年は先生から、「自分がされて嫌なことは相手にもするな」と言われたことがある。
クラスメイトの上履きを掃除用具入れの上に隠したときに言われた言葉だ。
出来心でやってしまった過ちだが、先生から言われるまでもなく自分がされて嫌なことは
相手にもしてはいけないことくらい分かっていた。
しかし、「自分がされたいと思うことを相手にしろ」と教わったことはなかったし、想像のできないものだった。
その二つは表裏一体であるが、地球から月の裏側を見ることができないように、教えの裏側まで窺い知ることができなかったのである。
月の裏側を知る鬼子は、月から来たのだろうか。
そしたら鬼子はかぐや姫だ。修道服をまとったかぐや姫だ。少年の鼓動が早まっていく。
「明日、何か予定はない? なかったら、謝りに行こうよ」
鬼子は一呼吸置いて「お姉さんもついてってあげるから」と言った。
「ほんとに?」
少年の目が輝きだした。少年の感情の変化は、顔を一べつするだけで容易に理解できるほどオーバーで富んだものだった。
修道女鬼子はその嬉しみの表情を見て、安堵の息を洩らした。
「十一時からだったらいつでも大丈夫だよ」
「なら!」
少年は鬼子と向かい合うように、ベンチの上で正座をした。
「なら、十一時にこのこうえんの、このベンチにしゅうごうね!」
「うん、いいよ。十一時に、この公園の、このベンチに集合。約束」
修道女は小指を差し出した。少年も喜んで小指を差し出し、そして二つの小指は宵の口の公園で交わった。
「ひのもとさん!」
二人だけの空間であった公園に、文字通り飛び入るような声が届いた。少年が振り返ると、大きな人影が近づいてくるのが分かった。
公園の入り口からベンチまで街灯が一つもないため、輪郭しか分からない。
しかし、りくと少年の耳に残る男の声は、聞き覚えのあるものだった。
あ、と鬼子は声を出すと、おもむろに立ち上がり、声の主のほうを向いた。
「探しましたよ。心配したんですからね」
「ごめんなさい、一郎さん」
鬼子の口から出た名前とベンチの脇の明かりから浮かんだ顔を見て、少年は確信した。
「お兄ちゃん」
少年の声は、一郎の荒げた息に掻き消えるほど小さかった。
一郎の手には缶コーヒーとペットボトルのミルクティーが握られている。
これは……たまにドラマである展開、「惚れた女は兄貴のヨメ」パターン?!てか、一郎の弟なのに次郎じゃないんだっ(そこか
やばい、そういう展開か、切ないw
高嶺の花がますます薫り高くなっていく…。
鬼子さんは一郎兄ちゃんに連れられてきた??
これから物語の背景事情がだんだん分かってくる感じかな?
>>242 受身返し 十の四
「飲み物買ってくるから、向こうで待っててくださいって言いましたよね? どうしてこんな寂れた公園にいるんです」
「この子が泣いていたので」
鬼子の紹介で、一郎は初めてりくと少年の存在に気づいたようだ。
少年を見た一郎は顔をしかめ、大きな息をついた。
「とにかく、帰りましょう。神父様が心配します」
「そうですね、ご迷惑をおかけしました」
修道女鬼子の足が一歩前に出た。
少年が不安げな眼差しで彼女の背中を見つめていると、
鬼子は視線を察したのか、振り返り、指を組んで祈りの意を示した。
「また、明日ね」
修道女の声に、少年は大きく頷いた。
「うん、またあした」
・
・
・
・
台風は明日沖縄に上陸するようだ。それから一気に北上し、少年の地元に最接近するのは明日の深夜になるらしい。
風と波に気を付けてくださいと天気予報士は二度三度繰り返した。
少年は居間のテーブルで、マス目のノートを広げていた。週明けに出す宿題をやっているのだ。
しかし、『予定』という熟語を練習した列の隣に『日本鬼子』という字を三列にわたって書きつづっていた。
「ひのもと」という字と「おに」の字は兄の一郎から教わった。「ひのもと」は思った以上に簡単な字だった。
「おに」は、てんを打って田んぼの「田」を書いて、「ル」に「ム」だった。
少年はかの修道女の名前を必死で覚えようとしていた。
宿題は乗り気でなかったが、こういうことになると必要以上に興味が湧いてしまうのである。
一方兄は台所で夕食の準備をしている。脇で少年の母が鍋の火を見ているが、二人に会話はなかった。
少年の母、とわざわざ書いたのは、彼女と一郎は直接血がつながっているわけではないからである。
一郎は自分の作った野菜炒めを仏壇に供えた。
「理空人」
台所に戻った一郎は、使い終えた包丁とまな板を洗いながら少年に声をかける。
「なぁに?」
りくと少年は鉛筆を置いて返事をした。
「ひのもとさんと何話してたんだ?」
「ひみつ」
少年はわざともったいぶった口調で答えた。
鬼子と過ごしたひと時を鬼子以外の誰とも共有したくなかったのもあるが、
兄と鬼子が知り合いであることに不満があったので、それに対する反発でもあった。
反発というより、やきもちと言ったほうが正しいのかもしれないが。
「ま、理空人の友達の……アキラ君だったか? アキラ君がいなかった時点で予想は付くけどな」
見透かされている。少年は一郎と話していると、ときどきそう感じておののくことがある。
兄の人を観る目は人並み以上であることを少年は子供心ながらに思っていた。
>>243 >一郎の弟なのに次郎じゃないんだっ(そこか
鋭いッッッ! 明日をお楽しみに!
>>244 >これから物語の背景事情がだんだん分かってくる感じかな?
そうかもしれませんッッッ! 明日をお楽しみに!
これはもぉ、察しのイイ兄貴に想いは見抜かれているなw 漢字を教えて貰った時点でバレバレかw
あと一郎は鬼子さんの気性も把握済みって事か……ヤキモチ焼くのもしかたないよな……
しかし、日本鬼子と教会……か。これほど意表をつく組み合わせもないなあ。
いや、日本文化で爪弾きにされた鬼が異国の教会の下に保護される。なんて展開ならありうるものだろうか?
おお。なんだか複雑そうな家庭。
現在は聖女のような鬼子さんが、どのようにその型を破るのか楽しみです。
(一面的な聖女のまま…じゃないですよね?たぶん)
>>245 受身返し 十の五
「お兄ちゃんはなんで鬼子お姉ちゃんと知り合いなの?」
「秘密」
一郎は真顔で言った。
「実習先の人なんだよ」
少年が顔をしかめるより先に、一郎は正直に答えなおした。
一郎は保育科の学生で、今は保育園で実習を受けている。
鬼子は一郎より三つ若いのだが、その保育園でボランティアをしており、一郎や新人保育士よりずっと仕事慣れしていた。
一郎は洗剤の泡の付いた皿を片手に、肘で混合栓のレバーを上げた。
「理空人、ひのもとさんのこと、好きか?」
「……すきじゃないよ」
少年は真剣な面持ちで嘘を言う。
一郎は静かに、残酷に笑った。
「なら、思う存分教えてやれるな。いいか、ひのもとさんにはこれ以上関わっちゃいけないぞ」
「どうして?」
台所の混合栓から流れる水の音を聞きながら少年は尋ねた。
「ああいう優しすぎる人はな、大抵真っ黒い秘密を隠し持ってるもんなんだよ。
優しい顔してニコニコしてっけど、裏で何を企んでんのか分かったもんじゃねえ。
そりゃ、子どもたちから好かれてるし、保育士としての腕もあるから学びとれるものは多いが、
そうじゃなかったら近寄りたくないタイプだよな。
そもそも名前がおかしいだろ。鬼子。
理空人、知ってるか? 鬼子って名前、親から名付けられたんじゃねえんだぜ?
なあ、だとするなら、親から名付けられた名前はどこいった? 少なくとも俺は聞いたことがない。
とにかく、親に捨てられ、今は神父様のところで暮らしてる。そいつは違いない」
「やめてよ。鬼子お姉ちゃんのこと、そんなふうに言わないでよ」
「いいや、やめないね。だってお前、人の影響受けやすいだろ」
一郎は洗い終えた包丁とまな板を水きり棚に置き、りくと少年の向かい側に座った。
「弟思いの兄からの忠告だ。ひのもとさんの親がどういう人かとか、鬼子と自称する理由だとか、
そんなもんは知ったこっちゃないが、彼女は世間知らずで理想論者だ。普通の人とはまるっきり違う人間だ。
考えもやることも非現実的で、ファンタジーで――」
「やめてって言ってるでしょ!」
少年は大声で叫んだ。少年の眼からは大量の涙が溢れ出ていた。
「理空人! どうしたの?」
少年の母親がその泣き叫びを聞きつけて、慌ててダイニングに現れた。そして、顔を真っ赤にさせて喚く我が子を見て抱きしめた。
そして一郎を怨念の眼差しで睨みつけた。
「おっと、今日の記録書かねえとな」
無言の圧力を受けた一郎は肩をすくめた。
「いいか、忠告を忘れるなよ」
そう耳打ちし、居間から出ていった。
テレビからは、バラエティ番組の笑い声が腐るほど連発され、仏壇の線香からは細長い煙があがっていた。
母の抱きしめる腕が痛かった。
>>247 バレバレな隠しごとをしている少年に胸がきゅってなる麻呂です。
ヤキモチ妬いちゃうとことかすごく可愛い。いやショタコンじゃないですけど!
>>248 一郎・理空人兄弟の家庭事情は、読みこめば具体的に想像できるように書いたつもりです。
聖女鬼子さんの諸々も、ゆっくり見届けてくださると嬉しいなと。
一郎弟想いなのかそうでないのかよくわからないよ一郎。
内心では鬼子さんを胡乱な目で見ているのに、飲み物を買ってきたり、表向き敬意を払っていたり。トシはいくつなんだろう?
ハッ!さては……弟想いを見越して牽制したと見るべきなのか?!
誤>ハッ!さては……弟想いを見越して牽制したと見るべきなのか?!
正>ハッ!さては……弟の想いを見越して牽制したと見るべきなのか?!
一文字あるかないかで大違い(汗
たしかに、言動が不自然ですねえ、一郎兄ちゃん。
「あのひとは危険だから簡単に近づいちゃいけない!
ああでも頭から離れないんだ…!」
あたりが美味しいかもしれないw
>>250 名前のキラキラ具合から、世代差は見て取れますが…。
お母さんの気性の差も表れてるんですかね?
254 :
転載:2013/04/16(火) 22:00:47.88 ID:i5ELnZHI
>>SSスレ 歌麻呂さん
ひと足早く原稿はいただいちゃってる訳ですが…
初めて読んだ際、りくと君が鬼子さんの手を握った時に、
父親の手より柔らかいとわざわざ断ってあったのを見て、
「あ、父子家庭なんだ」と思いますた。
(女性の手を握って父親の手と比べた→母の手を握ったことがない)
全然そんなことなかったぜ!w
(でも素晴らしい物語に皆さん、乞うご期待なのだぜ!!)
そういえば、
「考えもやることも非現実的で、ファンタジーで」
って、鬼子さんは何をしたんでしょうね…?
>>249 受身返し 十の六
少年は風の音で目が覚めた。戸を開けると並木の広葉樹が前後に大きく揺れていた。
頭上の雲は渋滞にはまった高速道路の車みたいにのろのろと――でも実際はおぞましく速いスピードで――流れていた。
しかし、幸いなことに雨は降っていなかった。
居間に降りると、そこはまだ真っ暗だった。ただ風だけが借金取りのように戸を叩くばかりだった。
休日なので父親は遅くまで寝ている。だから母親も今日は起きてくるのが遅い。
照明を付ける。仏壇の線香は白い粉となって香炉に埋まり、お供え物は昨夜のままだった。
テレビを付けると六時五十分の天気予報が始まっていた。
台風はやや速度をはやめて沖縄を通過し、少年の住む町は夕方ごろから雨が降り出すと天気予報士は深刻な面持ちで述べた。
「よかった!」
少年が喜んで飛び上がったとき、アナウンサーが台風による死傷者の情報を述べていた。
「鬼子お姉ちゃんに会える!」
少年にとって、外出できるかどうかは雨が降ってるか降ってないかによってのみ決まる。
母が起きていたら大慌てで止められるだろうが、寝ているのであれば、出かけたもん勝ちである。
少年はなるべく音を立てずに身支度を始め、七時を過ぎた頃には外にいた。
・
・
・
・
鬼子が公園にやってきたのは、十時四十分を過ぎた頃だった。
少年はそれまでの間、公園に植えられた木の枝のしなりを見て待っていた。
それからアリの巣を観察したが、アリはちっとも出てこなかった。飽きると雲を眺めて、それも飽きるともう一度枝を見た。
そうしているうちに鬼子がやってきたのだ。
「遅くなってしまいました」
はじめ、少年はその声が誰から発せられているのかよく分からなかった。
いや、鬼子の声だということはすぐに分かったし、誰もいない公園に来た女性がおそらく鬼子であろうということも分かっていた。
しかし、彼女は修道服を着ておらず、紅葉柄の着物と藍色のチューリップハットという姿であった。
かぐや姫だ、と少年は思った。
和服の鬼子は、修道女とはまた違う美しさを醸し出していた。同じ椿の香りがするのにこうも印象が違う。
黒く長い髪が、ふつふつと湧き出る美を示していた。
ぼうしをぬいじゃえばもっときれいだと思うのに。少年は心の中で考えを巡らせたが、すぐに撤回した。
そんなことは些細な問題なのだ。
帽子があろうとなかろうと、鬼子の美しさに変わりはない。紅葉の、儚く散ってゆく様がどうしようもなく似合う。
儚さが似合う人なんて、そうそういない。兄一郎の言っていたように、鬼子はあらゆる点で一般人とは異なっているのかもしれない。
紅葉柄の着物然り、修道服然り。いや、多分服装なんて象徴にすぎない。もっと根本的な部分で、鬼子は儚さを抱いているのだ。
だがそんなことは悩んでいても仕様のないことである。特に鬼子本人でなく、りくと少年が悩んだって、何が変わるわけでもない。
「まだ十一時じゃないからへいきだよ」
だから少年は考えがまとまらぬまま、公園の隣にある図書館の駐車場に立つ時計柱を指した。
十時四十三分を示している。時計柱は風で小刻みに揺れていた。風のやむ気配はなく、勢いは強まるばかりであった。
反響があって嬉しい限りです!
>>251 一郎兄さんの歳は、二十代前半を想定してます。
年齢のわりに大人っぽいというか、世間慣れしてるなあ、と思いつつ彼を描いてました。
>>253 一郎の実母の気性を直接語ったり、一郎自身から語ることはしないように心がけていたので、
二人の母親の性格がどう違っているのかは想像するしかないわけですが、
二人の母親あっての一郎なのでございます。
>>254 なるほど、そういう印象を持ってしまいましたか……。
少年の父親が鬼子さんと正反対の存在であることを暗示すると同時に
少年が赤の他人を父親という尺度ではかろうとする思考を描きたかったんですよね。にょほーん。
>>255 いったいどんなことをやってるんでしょうかねw(待)
「世間からズレてるなー」っていう印象を実習先で抱いてるのか、
もしくはもっと具体的なイメージをもって言ってるのか……。
>>256 受身返し 十の七
りくと君は何時に来たの、という問いに少年はちょっぴり得意気に、七時十五分、と胸を張る。
鬼子は目を丸くさせて「早起きだね」と言った。
「危ないから家にいなくちゃダメだよ」と否定されることも、
「そんな早くに来なくていいのに」と自慢の芽を摘み取ってしまうこともなかった。
「早く、行こ、行こ!」
少年の陽気さは悪天候知らずというべきであろう。
この調子ならケンカしたアキラ君とも仲直りできる。そうしたら鬼子お姉ちゃんに褒めてもらえる。
少年は心の中で頷き、鬼子の手を掴みとり、友人の家へ向かった。
友人アキラの家は公園と少年の通う小学校の中間に位置する。閑静な住宅街にある同色一軒家の群生の中にアキラは住んでいる。
目的地までしばらく歩くので、その間少年は鬼子と雑談した。
多くは少年の自慢話であり、その大半は大人にとって当然のこと(一人で買い物できる、ビッグバーガーを平らげられる等)であるか、
またはいたずら(アリの巣を完全に水没させた、黒板消しトラップで同級生の頭に黒板消しを投下させることに成功等)であった。
鬼子は何も言わずにほほえんでいた。ときどき突風が来て、鬼子の黒い髪をなびかせる。帽子が飛ばされぬよう片手で抑えていた。
「ぼうし、脱げばいいのに」
鬼子に帽子は似合わないし、不便そうにしているのなら、被る理由もないだろうと少年は思っていたのだが、
少年の期待に反して鬼子は首を横に振った。
「頭を見せちゃいけないの。そういう決まりごとをしてるんだよ」
提案への却下の仕方は、まるで言い古された誡めのようにも思われた。
「僕も見ちゃいけないの?」
「ごめんね。りくと君にも、もちろん一郎さんにも、見せられないの。そう、大切な家族みたいな人じゃないと」
「そうなんだ……」
少年は心細く感じた。少年の願うことならば、なんだってこの女性は叶えてくれると、いつの間にかそう決めつけてしまっていた。
そういう決まりごとなのだと思ってしまっていた。
しかし、鬼子は修道女なのだ。大正時代のやまとなでしこに大差ない姿であるものの、神に罪を赦されたひとりの女性にすぎない。
見てはいけない、と言われると見てしまいたくなるのが人間の性であり、
りくと少年もまた多くの人と同様に、鬼子の秘密を暴きたくなるのだが、言葉をぐっと胃の中に押しやった。
鬼子の困る顔がよぎったのだ。
慈悲深さも、美貌も、端麗さの欠片もなかった。
背中を丸めて小さくなって、声を殺してすすり泣き、
ただ孤独に、幽閉されたあばら屋の隅に敷かれたござの上で、裸足のまま膝を抱えていた。
外は竹藪に囲まれており、遠くからからすがカァと啼いた。少年はあばら屋の入口で鬼子を見下ろしていた。
鬼子の足元には帽子があった。
それを見つけてしまうと、鬼子は少年を睨みつけたまま視線を外そうとはしなかった。
――あなたも、私を怖がるんでしょう?
まるで、脳みそを垢だらけの指で抉るような声だった。
そう、少年は見てしまったのだ。
鬼子の、帽子に隠された「それ」の正体を。
「それ」は、まぎれもない――、
着物と藍色のチューリップハットかあ…(想像中)
…金田一耕助?
すみませんすみませんっm(_ _)m
台風の描写がいいですね。雲の流れとか、心をつかまれました。
ん?いきなり場面が転換しちゃったような……?
いきなり脳裏をよぎった意味不明な情景なのか実際に事件があって場面が転換したのか?
おっと、すみません、タイミングが前後してしまいました。
>>258 おお?幻影ですかね?
「脳みそを垢だらけの指で抉るような声」
それこそ脳みそを抉られるような感覚でした。脱帽です。
>>258 受身返し 十の八
「りくと君と一郎さん、仲がよさそうでうらやましいな」
鬼子のやわらかな口調が耳に入りこみ、少年はようやく大量の冷や汗を流していたことに気付いた。
風は相変わらず街路樹を揺らすほど強くて、汗だくの少年から体温を奪っていった。
それでも二人は歩いていて、友人アキラの家へ向かっているわけで、信号のない十字路を左に折れたばかりなのであった。
先程の光景は少年の妄想にすぎない。
竹藪の中のあばら屋も、ござの上の鬼子も、そしてあの声も、全て妄想である。
少年は公園からずっと鬼子と手をつないでいたし、その手は白くてあたたかいし、着物は合わせ薫物が芳しかった。
しかし、架空にしてはやけに現実的だった。
非現実的なのは、帽子の中に隠された「それ」だけだった。
帽子の中に、何があったっけ。少年は首を傾げた。
確かにそれは奇妙なものであったはずだ。でもそれがどんな形であったのか、いまいちはっきりとしない。
「りくと君?」
鬼子が不安そうに顔を覗いてきた。少年は心の中の靄を振り払った。
今は悩むよりもおしゃべりを楽しみたい。
「お兄ちゃんとなんてなかよくないもん。だって、ぼくにすぐいじわる言うんだ。
きのうだって、鬼子お姉ちゃんとあそんじゃだめだって」
あら、と鬼子は呟きを洩らして驚いた。そして、何がおかしかったのか、声をひそめて笑いだした。
「一郎さんは弟思いなのね」
どうして弟思いなのか、りくと少年には分からなかった。
「小さい子が好きで、一生懸命で」
鬼子はひとりごとをぼやいた。
「一郎さんがね、こんなこと教えてくれたんだよ。
『小さな子を守ってやれるのは大人だけなんだ。保育園で過ごした記憶のほとんどは忘れるだろうが、
この時期を楽しく過ごせたら、これからどんなに辛いことがあっても、きっと挫けることはない』って」
鬼子は少年の兄の声を真似して、低く唸るように言った。
そんなこと、難しくて分かんないよね、と鬼子は苦笑いした。
それは当然のことであった。少年は保育園児でないにせよ、学校で過ごした時間より園内で過ごした時間のほうが長い。
保育園時代のことだって、記憶に残っていることは多い。
その頃から一続きで今に至っているわけであって、懐かしむこともないし、思い出にふけようとも思わない。
りくと少年はまだ過去というものを持っていないのである。
「りくと君は、一郎さんのお母さん、見たことないよね?」
少年は頷いた。りくと少年の知る一郎の生みの母は、高さ二十センチにも満たない額縁写真であった。
写真は笑顔を絶やさなかったので、明るい人だったのだろうと勝手に想像していた。
誰からもその人のことを教えてくれなかったから、全て少年の思い描く像でしかないのだが。
「きっと、一郎さんのことを、大切に、大切に育ててきたんだと思う。だから一郎さん、保育士になりたいんだろうなって」
「鬼子お姉ちゃん、お兄ちゃんのお母さんのこと、しってるの?」
少年が問うと、鬼子は笑って首を横に振った。
「わかんない。全部私の想像。でも、りくと君も一郎さんみたいに誰かに夢を与えられる子になれたらいいね」
少年は頷いた。そして、疑問を抱き、鬼子の横顔を仰ぎ見た。
「どうしてそんなこときくの?」
>>259 金田一鬼子さん、紅葉の里で巻き起こる奇妙な事件を次々解決!(物理で)
っていうお話どなたか書いて下さらないですかなあ……(チラッチラッ)
>>260 いきなり場面転換ってのは、あえてそんなふうにしてみました。
りくと少年が鬼子さんの妄想に振り回されるように、読者さんも振り回されていますように……。
>>261 「脳みそを垢だらけの……」の描写は結構気に入ってます。
ふっと思い立ったシーンにしては色々な意味で作品に溶け込めたな、と。
A もえちるのら〜
∩イi<リ)>)∩
/イ|、゚ヮ.゚ノ〈 ̄|
\ンヘビソ/イ | ヽ、
<<∞=x\__/
(シ⌒(.j
〃 A´`Aヽ 鬼は〜うち〜 福も〜ウチー ちょ、姉さん、あんまりでヤスー!
卯ミ!|リノ)))リ 。 ノヽ、 ノヽ、
ノ lヾ|l.゚ ヮ゚ノ|! ゚ ° ゚ ' )ヽ|/( ) ( っ
((( /リ__ y_ リ_|つ 。 °:。: ' )ヽ|/( ) ( っ
/ * つ凵] ・ ゚ ヾ ヾ ヾ ) ( ( ヘ/////へ丶、 っ
/゚ , イく/_|〉 。 )\ )\ )\ ⌒\ ソ << ( ○ ≪
/_゚/ し'ノ ) \) \) \|\/ ( U ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
633:創る名無しに見る名無し:2010/11/17(水) 03:48:22 ID:1rxnkliR
>>632 あーくそ、やっぱ絵のインパクトには負けるわーくそっ!灯篭の斧だ、睡眠時間をケズられたうらみをクラエっ!
γ ^ミミ 手
彡ノリリリミシ の
i、∞・∩クミ ひ
⊂厂 ヾ// 勹) ら
 ̄{ニ∝ニニ} 正 サ
{h i l Л イ
// | | 」 儀 ズ
⌒ ⌒ !! は
729:創る名無しに見る名無し:2010/11/17(水) 18:32:56 ID:uipIrPCP
OK、こにぽん投票。
,Mn
.,//へ、 Σ ° ) 流石だよな俺ら。
.<< ( ◎ ≪ / ⌒i
.ノ 、(__ ノ、 | .ト、
,ノ ン丶/ ̄ ̄ ̄ ̄/. ト、゙ヽ、
_) ゙,,ニ,/ FMV / .| ..ト、゙丶、___
"⌒\/____/ (u ⊃
753:創る名無しに見る名無し:2010/11/17(水) 21:33:14 ID:1rxnkliR
γ ^ミミ 手
彡ノリリリミシ ク の
+ i、∞・ ∩クミ イ ク ひ
⊂厂 ヾ// 勹) イ ら
 ̄{ニ∝ニニ} 正 サ
{h i l Л イ
// | | 」 義 ズ
⌒ ⌒ !! は
770:創る名無しに見る名無し:2010/11/17(水) 21:57:02 ID:1rxnkliR
>>759 A もえちるのら〜
∩イi<リ)>)∩
/イ|、゚ヮ.゚ノ〈 ̄|
\ンヘビソ/イ | ヽ、
<<∞=x\__/
(シ⌒(.j
はんにゃ〜の
( A のりごこちはフカフカなのら〜
ソイr(i<リ)>¢
(⊃ (、゚ヮ.゚ノリゝ
ナ γ ⊂斤丁\___
| ソ ∂ (シ \__/
ゴ ( ´o o` )
ゝ w メ ソ
し'^ iJ
とか言わせてみる。舌足らずな感じで
814:創る名無しに見る名無し:2010/11/17(水) 23:56:17 ID:1rxnkliR
>>805 わざわざ探してもらってアリガトウ。もっともっとシンプルなのがあった気がしたが…
それも何かに使わせてもらうかもしれないw ちなみにその間、ワタシはこんなのをつくってたり…
ふむ・・・
/,A^^A γ ^ミミ ぽ
卯ミ!|リノ)))リ 彡ノリリリミシ ょ
Σ lヾ|l .゚ -゚ノリ_ i、∞・ -∩ミ ん
/リ__ソ y_リ_|⊂厂 ヾ// 勹 (⌒'⌒)
/ * /三} |+ ,l ̄{ニ∝ニニ} \/
/゚ , イく/_|〉 L_〉 {h i l Л
/_゚/ し'ノ // | | 」
ミ(こ((゚< Σ ⌒ ⌒
. . , . . デ 黄 ハァ、
ノ レ :/,A^^A. : γ ^ミ カ 金 所
フ 「 :卯ミ!|リノ)))リ ; 彡リリリリミ ス 時 詮
: lヾ|l .///ノリ : i、-・∞ i =3ギ 代 は
姉さん ; レ/ ヾ//\ , √ ヾ// ̄てァ け は 諸
\ ワイモ / :L ̄|x厂 ̄): {ニニ∝ニ} ̄ り 過 行
. \ ワイモ!!/ : じノ L./. k i lЛ : ぎ 無
ミ(こ((゚< : し'ノ : ∠ノ / /」 か に 常
≫ ⌒ ⌒
┼─┐─┼─ / ,. `゙''‐、_\ | / /
│ │─┼─ /| _,.イ,,.ィ' ─────‐‐‐‐ 大
│ | │ | | | イン ヘ ヘ // | \
ノ レ 〔,'´ ̄`∧、/ ./ | \
ノヽ、 _フ 「 {_从 ノ}ノ/ / ./ |
ヒ ) y ( |;;;+。;\./}ノ `ノく゚((
デ デ /, )ヽ|/( |`+*/ ,.イ  ̄ ̄// )) ̄\
ヤ l _,,,...//〃ー) ( ( |;;;;;;;;;;;;/ミノ__ /´(''´('´ ;;;;|
ス ,,イ';;^;;;;;;;:::::" て'/''-::"〃,,__|_;_ :,∠∠_/゙〈}ゝ\* 。;;|
/;;::◎'''::; );_____ @巛 く{ヽミヲ' ゙Y}゙ \+:l
≫_ノU __ノ))三= _..、'、)"^^^ \ ! }' \|
~''''ー< 、-~\( 了 ,' /
\(__/ ζ / ,'.. /
/ /
ξ_つ
,A^^A 、 さあ、次スレよ!
イ!|リノ(((リ卯 A 次スレなのら〜
/ リ|、゚ヮ゚ .リヘi| ∩イi<リ)>)∩
\ノへヾ/"  ̄\ /イ|、゚ヮ.゚ノ〈 ̄|
|二二l\/ \ンヘビソ/イ | ヽ、
\*___ン <<∞=x\__/
(シ (_j (シ⌒(.j
>>262 受身返し 十の九
「ひみつ」
「ずるいよ」
そう言って、自分自身も、昨日一郎に「ひみつ」と言ったことを思い出した。
誰もが誰かに対して秘密を抱いている。自分の全てをひけらかす人間はどこにもいない。
保身のためだ。義を守るための秘密でさえ、信頼を失いたくないという保身に還る。
帽子の中の隠されたもの。ひみつ。
鬼子も自分の身を守るために秘密を抱いているのだろうか。
少年と鬼子の脇を捨てられたビニール袋が勢いよく飛んでいき、その後を追うようにスチール缶が音を立てて転がっていた。
風は公園にいたときよりもずっと強くなっていた。
数分もしないうちに友人の家に到着した。
この通りの全ての家と同じ門、同じ壁、同じ屋根、同じ庭を持っていた。
ドアも同じで、カメラ付ドアフォンも同じだった。
他の家との区別は、表札の名前と玄関に飾られた観葉植物を目印にしなくてはいけない。
門の前のドアフォンの前に立つ。鬼子は邪魔にならないよう電柱の隅に隠れた。
少年が友人の家の呼び出しボタンを押してしばらくたつと、ドアフォンのスピーカから女性の声がした。
聞き覚えがある。友人アキラの母だ。
りくとです、とスピーカに言うと、そこから驚きの声が雑音となって聞こえた。上がってちょうだいな、と言われるも、少年は断った。
「アキラ君いますか?」
そう言うと友人の母親はちょっと待っててね、と言い、通信を切った。家の中で友人アキラの名を呼ぶ女性の肉声が聞こえた。
それは何度か繰り返され、階段をのぼる音がした。やがて二階で口論が始まり、数分後、二人分の階段を降りる音が聞こえた。
身が引き締まる思いがして、少年は威勢良く気を付けをした。
金属の黒い扉が開かれた。少年の友人はそのわずかな隙間から顔を覗かせた。
でこの肉と頬の肉に圧し潰されたような細い目で少年を睨んでいた。
友人アキラは元々仏頂面なのだが、今日は一層無愛想であった。不機嫌らしい。
二人は今、敵対関係にある。少年に緊張が走る。
友人に何と言って謝ろうと思ったのか忘れてしまった。
友人のふてぶてしい態度にむしろ怒りが込み上げてくるほどだった。
心が蝕まれていく。
お前なんかだいきらいだ。
心にもないことを投げつけて走り去ってしまえば、どれだけ楽なことか。
にげちゃおうか?
にげちゃおう。
逃げ道を確認する。
そこには、鬼子がいた。
電信柱の影から少年を貫くような視線が注がれている。
その眼差しに少年は逃げる意味を失い、そして泣きそうになった。
現実から逃げ出そうとしてしまっていた自分を後悔する。
>>271 受身返し 十の十
――もしかしたら、そのお友達も仲直りしたいと思ってるかもしれないよ?
鬼子の言う通り、友人も少年と同じ心境なのかもしれない。仲直りしたいけど、自分に正直になれないでいる。
正直な自分が恥ずかしいと思っている。だから友人の母の呼びかけに応じず、しばしの口論を行っていたのかもしれない。
でも、最後には黒く重い扉を開けてくれた。少年が大風の中、友人の家へ赴いたのと同じように。
少年には鬼子の後押しがあってここまで来られた。
だが友人はどうだ。
友人に鬼子はいない。
なら……と少年は決心した。
なら、ぼくが鬼子になろう。
「はたしじょうだ」
少年は言った。
・
・
・
・
・
・
果たして、少年とその友人は無事仲直りすることができるのか?
鬼子の帽子の中に隠されたものとは――?
そして、少年の淡い初恋の行方は!?
『受身返し』怒涛の後篇は、「恋ごっこ 〜日本鬼子電脳舞曲集 壱〜」初回限定特典にて頒布予定!
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ヽ
)
ノ
ノ ,/: : ̄´: : ̄: :\v<
/レ l◆i v : : : : : : : : : : : : : :^ 丶
/ ノ ヽ◆ ゝ゚< : : ∧: : : : : : : : :フ.ヽ\ .v,
lソ l◆ノ {^: : : : :/ !: : : : : : : : {: : :.i ヽ V
ハノ !: : : : :イ ⌒i : : : :イl⌒i : :/
wv !,i◆ ヽ: : : : :| ィrァ レv:j r也 !: : } なおした\(^o^)/
/レへ ヒコ } : : : :ゝ込 " l: :!
ノ v ,ノ弋 \一 l: : : : :入,,_ -_イ: j
ノ レ ん\ へl ヽv.v ぃハ,イ | ナ
i くノ へ ナ也 } / ノ ヽ一^1"イ
人 / ヽノ_ ../*ソ \ ノ
| ノ く. ._. .--ノ ヾ l
i ∠_. ._. ._.イ l ヽ イ
l イ | || | \ r
! ノ ._ 」 」 」.」 ゝ l
\ / }_ イ l _人 ヽ \ i
レイ´/ 〉 | 入 l丶 \ ヽ ノ
く_/ ( イ } } 」 ノ \ 丶
し | !v し^ | ヽ ´\
l i \ ヾ
} l ◎〃
.| ! \. ゝ
し,/l
へ_丿
ノヽ、 ノヽ、 みなさん、ここが萌えの為のスレだと
) y ( ) ( 忘れているようでヤス。
)ヽ|/( ) ( ここはいっちょ、わいが2レス程ヒト肌脱ぐでガス
) ( ( ヘ/////へ丶、
⌒\ ソ << ( ● ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノヽ、 ノヽ、 具体的にいえば、今日の鬼子タンは
) y ( ) ( ミニスカ衣装!!
)ヽ|/( ) ( 今日こそ誰が王なのか知らしめるでゲス
) ( ( ヘ/////へ丶、
⌒\ ソ << ( ○ ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノヽ、、
) y ( ( ヾ 。°っ いざ、出陣!!
)ヽ|/( ( r トプン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄W ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l /
/,A^^A.  ̄
卯ミ!|リノ)))リ n
ノ lヾ|l.゚ -゚ノリ ||
((( /リ__ y_ リ ̄|つ || ソローリソロリ、デヤス
/ * /三] / || ノノヽ、
/゚ , イく/_|〉. /廿 )) y ( )))
/_゚/ し'ノ |卅| 。;;;;; ))ヽ|/(
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\
\ チャキ
/,A^^A.\ ま
卯ミ!|リノ)))リ.\ っ
ノ lヾ|.-_-ノリ \ た ヘヘヘ、
((( /リ__ y_ リ ̄|つ\ く ウマクイッタラパンツモウバッテ
/ * /三] / i\ : ノノヽ、 トンズラデヤス
/゚ , イく/_|〉. へ ヽ + )) y ( )))
/_゚/ し'ノ  ̄ ))ヽ|/(
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/,A^^A. も 飽 毎
卯ミ!|リノ)))リ\ の き 度
ノ lヾ|l.-。ノリ=3 ね な 毎
((( /リ__ y_ リ ̄|つ\ い 度
/ * /三] /. \ ノノヽ
/゚ , イく/_|〉. \ ドスッ )) y ( )))
/_゚/ し'ノ i\ ))ヽ|/(
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Σ
いでヤス
/
/
ノヽ、 ノヽ、 / ギ
) y ( ) ( /よ 薙 ャ
/,A^^A. )ヽ|/( ) ( へ/ | 刀 ア
卯ミ!|リノ)))リ サテ。 ) ( ( ヘ/////へ丶、了 に が ア
ノ lヾ|l.ー_-ノリ n ツヅキ ⌒\ ソ << (× ≪ 痛 刺 ア
((( /リ__ y_ リ ̄|つ || ツヅキ… |\ / ( _ ノ い さ !!
/ * /三] / || > へ_ * <´ で っ
/゚ , イく/_|〉. /廿 |/ ( ノ⌒て^ミ ヤ た
/_゚/ し'ノ |卅| 。;;;;;; 彡ノ ス
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ )
(
/ フ
ノヽ、 ノヽ、 / の 今 フ
) y ( ) ( / よ 引 日 フ
)ヽ|/( ) ( へ/ う き の ゜
) ( ( ヘ/////へ丶、」 で 分 所
⌒\ ソ << ( ○ ≪ ヤス け は
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノヽ、、 / アイル、ビー、バック!
) y ( ( ヾ 。°っ / でヤス〜〜
)ヽ|/( ( r ヘ/ トプン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄W ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
おまけ
,.、-‐A-.、 わーい
ちょ、やめて、マジやめて /∩イi<リ)>)∩ なのらー
ノヽ、、 //イ|、゚ヮ.゚ノ〈 ̄|
) y ( ( / \ンヘビソ/イ | ヽ、
)ヽ|/( ( / <<∞=x\__/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (シ⌒(.j
430:創る名無しに見る名無し:2010/11/20(土) 22:49:18 ID:CLP3o7ui
とりあえず、夜食用意しておきますね…
A^^A 、
!|リノ(((リ卯
A |、゚ -゚ .リlヾ|
(((レノリ))〉 ハ∨/^ヽ
レ|ゝ*゚ヮ゚ノil ノ::[三ノ :.'、
ヾ ノo~旦o ,へ ,へ ,へ ,へ ,へ (n_日く; __ノ
くO)=(つ (::■;)(::■;)(::■;)(::■;)(::■;) (: ::.".、(~っ
441:創る名無しに見る名無し:2010/11/20(土) 23:13:59 ID:CLP3o7ui
,へ m
ノヽ、 ノヽ、 (::■;Σ°)
) y ( ) ( 7
)ヽ|/( ) ( < \三3
) ( ( ヘ/////へ丶、 ,へ
⌒\ ソ << ( ◎ ≪::■;)
|\ / ( _ ノ て
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ A^^A 、 そ
!|リノ(((リ卯
A |、゚ -゚ .リlヾ|
(((レノリ))〉 ハ∨/^ヽ
レ|ゝ*゚ヮ゚ノil ノ::[三ノ :.'、
ヾ ノo~旦o ,へ ,へ ,へ (n_日く; __ノ
くO)=(つ (::■;)(::■;)(::■;) (: ::.".、(~っ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
A^^A 、
鳥五目と塩シャケ(?)追加しました !|リノ(((リ卯
A |、゚ ヮ゚ .リlヾ|
(((レノリ))〉 ,へ ,へ ,へ ,へ ノハ∨/^ヽリ
レ|ゝ*゚ヮ゚ノil (::■;)(::■;)(::■;)(::■;) ノ::[三ノ :.'、
ヾ ノo~旦o ,へ ,へ ,へ ,へ ,へ (n_日く; __ノ
くO)=(つ (::■;)(::■;)(::■;)(::■;)(::■;) (: ::.".、(~っ
443:創る名無しに見る名無し:2010/11/20(土) 23:16:25 ID:o/40GkEI
>>441 塩じゃけもらっていくでヤッス
ノヽ、 ノヽ、
) y ( ) (
)ヽ|/( ) (
) ( ( ヘ/////へ丶、 ,へ
⌒\ ソ << ( ◎ ≪::■;)
|\ / 2号( _ ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>430 おばちゃーんビールないの、ビール
445:創る名無しに見る名無し:2010/11/20(土) 23:23:27 ID:CLP3o7ui
>>440 ( ̄)( ̄)
| | |
「ロ 「 |
| ̄ ̄ ̄|
| 麦酒 |
|二二二|
| ̄ ̄ く
|三三三|
457:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 00:02:02 ID:PVl5ApLd
とりあえず、たくさん用意しましたよ?
___
「ロ ロ「| ,へ ,へ ,へ A^^A 、
| ̄ ̄ ̄|(::■;)(::■;)(::■;) !|リノ(((リ卯
| 麦酒 | ,へ ,へ ,へ ハ |、゚ -゚ .リlヾ|
|二二二| ;)(::■;)(::■;)(::■;) // ハ∨/^ヽ|、
| ̄ ̄ |へ ,へ ,へ ,へ || ノ::[三ノ :.'、
|三三三|:■;)(::■;)(::■;)(::■;) || i)、_;|*く; ノ
【ニニニニニニニニニニニニニイニ] |!: ::.".T~
◎ ◎ ハ、___
469:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 00:08:28 ID:WSP7cuCq
| |
|文| m_
| |( ゜< こにぽんお誕生日おめでとう!
| |/  ̄
| |
474:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 00:11:51 ID:PVl5ApLd
) y ( ) (
m )ヽ|/( ) (
Σ°)__〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ) ( ( ヘ/////へ丶、
7 ∫+ 。・ ☆ お 誕 生 日 お め で と う ☆ ・。+∫ ⌒\ ソ << ( ◎ ≪
< \三3 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |\ / ( _ ノ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
/^\/;^\/;^\
/^ヽ∴:/^ヽ∴:/^ヽ:∴/^ヽ
w(∴ )w(∴ )w(∴ )w(∴ )w
,/^\∴,/^\∴,/^\∴,/^\∴,/^\
≧(∴∴);(∴∴)(∴∴);(∴∴);(∴∴)≦
/⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒ヽ
(__/^^!/^`!_/^!_/^!_/^^!_!/^`!_/^!_/^!_/^!_)
|=========Congratulations!!========|
|:・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・:・::|
☆^^~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^^☆
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
483:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 00:23:43 ID:PVl5ApLd
とりあえず、お祝いのAA投下てけとーに作ってみた
(
γ ハ゜ハヽ ヘ
ヘ:l ノ(ノ)))リ>:ヘ /ノ
ノ,l ゚ヮ゚*ノリ //
c| ̄ハy/ ヽ、 //
.L.ノ=∞=l/ッメ」
// | | 」
⌒ ⌒
488:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 00:33:59 ID:PVl5ApLd
…と、むしろこうか?
(
γ ハ゜ハヽ ヘ
ヘ:l ノ(ノ)))リ>:ヘ /ノ
ノ,l ゚ヮ゚*ノリ //
c| ̄ハy/ ヽ、 //
.L.ノ三三l/ッメ」
<_、____ゝ
∪ ∪
557:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 11:26:18 ID:PVl5ApLd
l'vヘ
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒(_rヘ-‐'
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ ( 人 月
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ γ ハ゜ハヽ 遊 言 の 亥 が
| | ヽl| // }| ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ び っ 喧 の 顔
| :! || | | ,/ ,' レ,l *゚ヮ゚ノリ 〜♪ た 騒 刻 を
| :{. || | |/ / ⊂| ̄ハy/ ヽ、 一 暗 出
l !|| | | / .L.ノ三三l/つ つ 誰 い し
ヽ ヽ.|/ // <_、__*_ゝ ○ の か 夜 た
_,r)_ j (_,( ∪ ∪ l i が の
608:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 19:08:18 ID:PVl5ApLd
l'vヘ
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒(_rヘ-‐' 筆
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ ( A^^A 、 振 描 を
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ γ ハ゜ハヽ !|リノ(((リ卯 る そ き と
| | ヽl| // }| ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、゚ヮ ゚ .リlヾ| 腕 の ま っ
| :! || | | ,/ ,' レ,l *^ヮ^ノリ レハ∨/^ヽi. 見 名 し て
| :{. || | |/ / ⊂| ̄ハy/ ヽ、 .ノ::[三ノ :.:. '、 つ を ょ ほ
l !|| | | / .L.ノ三三l/っ ⊂)、_;|*く; Ψノ め 告 う、 ら、
ヽ ヽ.|/ // <_、__*_ゝ ○ |!: ::.".T~ ♪ げ
_,r)_ j (_,( ∪ ∪ l i ハ、___| た
949:創る名無しに見る名無し:2010/11/23(火) 00:16:35 ID:kqxNI0hN
l'vヘ
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ 人 黒 あ
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ を 髪 月 現 つ
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒(_rヘ-‐' 惑 明 る ま
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ ( A^^A 、 よ わ か は る
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ γ ハ゜ハヽ !|リノ(((リ卯 う す り 赤 は
| | ヽl|.,)/へ、 ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、゚ヮ゚ .リlヾ| に 照 い 祭
| :! ||< ( ◎ ≪ レ,l *^ヮ^ノリ Lハ∨/^ヽi. 揺 ら 着 り
| :{. ||(__ ノ ⊂| ̄ハy/ ヽ、 .ノ::[三ノ :.:. '、 ら さ 物 好
l !|| | | / .L.ノ三三l/っ ι)、_;|*く; Ψノ し れ の き
ヽ ヽ.|/ // <_、__*_ゝ ○ヽ / |!: ::.".T~ 舞 た 小 た
_,r)_ j (_,( ∪ ∪ V ハ、___| う♪ 女 ち
675:創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 23:41:11 ID:PVl5ApLd
>>671-672 (
γ ハ゜ハヽ
⌒*(ノ (V) リ>*⌒
レ,l TдTノリ <ま、まだしょーらいせーがあるもん!(/////)
γ∩ y ∩i
Lコ 三.し
<_、__*_ゝ
∪ ∪ ............○
862:創る名無しに見る名無し:2010/11/22(月) 19:35:04 ID:rKnABnDt
<ニ>n<ニ> パ
も 今 イ(<イiソリ)ミ⌒i ン
の 履 イ|、゚ヮ ゚ |ク |i .| ツ
で い rリ:::::y:: ソヘ. i リ を
構 て |:::::てイ:::::::::)ソ よ
わ い しイ:::::::::|レ こ
ん る |:::::::::::| せ
⌒ ⌒
879:創る名無しに見る名無し:2010/11/22(月) 20:42:29 ID:rKnABnDt
m
イ<::::) )ソ、 安
ξ゚ヮ ゚ノク) 全 心
ハξV/(φハ 平 て し
く ソニニニニ、 \ 等 の ろ
 ̄ | | \/ だ 乳
| | は
|〓〓|
⌒ ⌒
>>272 ぱちぱちぱちぱち!
いい感じにそそって寸止め、にくいです!
りくとくん、殻を破りましたね。
まっすぐな勇気に、かっこいいなあと憧憬を感じてしまいました。
大人だって殻を破るのは難しいのですよ。
そして鬼子さんはどうからんでどのような姿を見せるのか…!
282 :
目次:2013/04/21(日) 11:43:10.45 ID:1jw8J0lZ
まとめ毎度乙!
l'vヘ
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z す 紅 片
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ べ 葉 振 手
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ て 散 る に
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒(_rヘ-‐' ノヽ、 を ら い も
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ ) y ( ) ( ) A^^A 酔 し な っ
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ )ヽ|/( ) ( γハ゜ハ ヽ !|リノ(((リ卯 し あ が た
| | ヽl| // }| ) ( ( ヘ/////へ丶、 ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ (( |、゚ -゚ .リlヾ| れ で ら 大
| :! || | | ,/ ,' ⌒\ ソ << ( ⌒ ≪ リl ゚ヮ゚*ノリリ γ^∨/ヽ」 さ や 歌 き
| :{. || | |/ / |\ / ( _ ノ ((⊂| ̄ハy/ ヽ、 /.::::< 三];;;::ヽ せ か う な
l !|| | | / > へ_ * <´ .L.ノ三三l/っ <Ψ:::_;フ*く;:: ノ た に 鬼 槍
ヽ ヽ.|/ // |/ ( ノ⌒て^ミ <_、__*_ゝ ○ ~T": ::..!T ♪ 舞 の を
_,r)_ j (_,( 彡ノ (ツ ∪ iル LL|____ハ う 子
l'vヘ
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z ヘ;へ 紅 惑
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ 葉 え
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ 吹 騒
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒(_rヘ-‐' 雪 げ
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ ) A^^A 朱 人
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ γハ゜ハ ヽ iリノ(((リ卯 に の
| | ヽl| // }| ノヽ ノヽ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、^-^ .リlヾ|染 子
| :! || | | ,/ ,' ) y ( ) ( リl ゚ヮ゚*ノリリ Lハ∨/^ヽiま ら
| :{. || | |/ / ~ )ヽ|/( ) ( /ハy/ ヽ、 .ノ::[三ノ :.'、れ よ
l !|| | | /m_ ) ( ( ヘ/////へ丶、 ιヽ.ノ三三l/っ <_;:::>く; Ψノ ほ
ヽ ヽ.|/ //( ゜< ⌒\ ソ << ( ⌒ ≪ ○ <_、__*_ゝ |!: ::.".T~ ら
_,r)_ j (_,( /  ̄ |\ / ( _ ノ iル (ツ ∪ ハ、___| ♪
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z さ 鬼
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ ヘ;へ さ の
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ や 面
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒(_rヘ-‐' く で
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ ) A^^A 様 隠
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ γ ハ゜ハヽ iリノ(((リ卯 に し
| | ヽl| // }| ノヽ ノヽ ○ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、^-^ .リlヾ| 色 も た
| :! || \ | ) y ( ) ( |i | リl ゚ヮ゚*ノリリ Lハ∨/^ヽi 香 れ 顔
| :{. || (⌒| ⌒ヽ/ )ヽ|/( ) ( ○ γ∩y/∩、 .ノ::[三ノ :.'、 の る か
l !|| ( (´ ヾ )/ ) ( ( ヘ/////へ丶、 /:;:;/三く、 \ く_;:::>く; Ψノ 吐 ら
ヽ ヽ.|/ ('⌒ ;:⌒ ) ⌒\ ソ << ( ⌒≪ じ'<_、__*_ゝ\l |!: ::.".T~ 息
_,r)_ /(´ ⌒:: )\ |\ / ( _ ノ (シ (.j ハ、___| ♪
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z ほ ご 恐
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ ヘ;へ ら ら れ
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ 皆 ん る
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒ で V こ
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ '`;;;´ヽ i / ) A^^A 宴 手 と
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ 〈从;;;从リ  ̄ ○) -、_ γ ハ゜ハヽ iリノ(((リ卯 V を な
| | ヽl| // }| ξレ゚ -゚ノリ ) ``'ー-、_. | ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、゚ -゚ .リlヾ| 夢 祭 と く
| :! || | | ,/ ,' ハξV/(§ハ ) y ( \キ人_,/ Σ リl ゚д゚*ノリリ Lハ∨/^ヽi 踊 り り 歩
| :{. || | |/ / く ソニニニニ、 \ )ヽ|/( ) ) (_ γ∩y/∩、 .ノ::[三ノ :.'、 ろ V み
l !|| | | /  ̄ | | \/ ) ( ( ヘ/////へ丶、て /:;:;/三く、 \ く_;:::>く; Ψノ う よ
ヽ ヽ.|/ // | | ⌒\ ソ << ( ○≪ じ'<_、__*_ゝ\l |!: ::.".T~ か っ
_,r)_ j (_,( |〓〓| |\ / ( _ ノ (シ (.j ハ、___| ♪ て
⌒ ⌒
(\ /)
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z ,ミ( )彡 す 幼
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ ヽ<・⌒ ノxx/ 変 べ 軽 子
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ ( ミ〃 え て 蔑 達
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒ /⌒○(/'"ヽ) よ ・ が
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ゝ'l !'そ '`;;;´ヽ | / ) A^^A う 嫌 そ
~zヾ|て 、l レ^ //'| |'~ 〈从;;;从リ 人_,/ γ ハ゜ハヽ iリノ(((リ卯 こ 悪 の
| | ヽl| // }| ξレx_xノリ (_ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |゚n ゚ .リlヾ| の ・ 名
| :! || | | ,/ ,' ハξV/(§ハ⌒ \ | リl∩-∩ノリリ /⌒l/^ヽi 歌 日 を
| :{. || | |/ / く ソニニニニ、 \ (⌒| ⌒ヽ γへy//ム |;;;/ニノ :.'、 と 本 呼
l !|| | | /  ̄ | | \/ ( (´ ヾ )/ /:;:;/三く、 \ じ_;:::く; Ψノ 声 鬼 ん
ヽ ヽ.|/ // | | ('⌒ ;:⌒ ) じ'<_、__*_ゝ\l |!: ::.".T~ で 子 だ
_,r)_ j (_,( |〓〓| /(´ ⌒:: )\ ∪ ∪ ハ、___| ♪
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z (\ /) 受
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ ,ミ( )ミ 朱 愛 け
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ \xxヽ ⌒・> ・ で 入
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒ ξ ミ〃 ) 紅 刀 て れ
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ '`;;;´ヽ <ニ>n<ニ> )) (/○ヽ) ) A^^A 葉 置 と
~zヾ|て 、l レ^ //' 〈从;;;从リ⊂) イ(<イiソリ)ミ⌒i )) γ ハ゜ハヽ iリノ(((リ卯 ・ い
| | ヽl| // ξレ_@。@ノ|V| イ|、-_- |ク | .| ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、゚ -゚ .リlヾ| 散 た
| :! || | | ,'ハξV/(§| | rリnn/:: ソヘ i リ リ∩゚-∩ノリリ Lハ∨/^ヽi ら
| :{. || | |/ く ソニニニニ_ノ |:::::][:::::::::::::)ゾ γへy//ム ノ::[三ノ :.'、 舞 し
l !|| | | /  ̄ | | じイ:::::::::T /:;:;/三く、 \ (_;:::>く; Ψノ え て
ヽ ヽ.|/ // .| | |::::::::::| じ'<_、__*_ゝ\l |!: ::.".T~ ば
_,r)_ j (_,( |〓〓| |::::::::::| ∪ ∪ ハ、___| ♪
1000:創る名無しに見る名無し:2010/11/29(月) 00:18:55 ID:G0xeEwVt
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、 /i.___
/:::::::::::::::::::::::::::::::::|:i i::/ ヽ
//,:::::Δ::::::::Δ::::::::::::ヽヽ●)ii|
〃::::::::|^|:::::::::|^|::::::::::::||:| トww/
レ!小l● ● 从::::|、|ヽェェi
ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃|:::|ノ:ヽ___l 1000!
/⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j/⌒i::!
\ /:::::|::::l>,、 __, オ=/ /:│
. /:::::/|::::|:::::::::|/::::/::::ヘ、__∧:|
512:創る名無しに見る名無し:2010/11/26(金) 00:52:43 ID:vNPomj3n
>>502 ぶっちゃけ、鋭意製作中なんだけどね。イマイチピンとこなくてなかなかこれが…間に合うといいけど
、、/i /i、、
VMwwX
冫c ゚- ゚i
;  ̄ヽ彳勹y/ 了
( (⌒)ノU=∞=∪
′(ノ/__|
U U
645:創る名無しに見る名無し:2010/11/26(金) 21:01:32 ID:vNPomj3n
さて、慎重なるおいらの脳内会議の結果、日本狗はボロ着たやんちゃショタという決着をむかえますた。
これで小日本と2828するようならぶこめ展開要員を期待する
、、∧、、/i、 手
ミVVwリ 女 は 鞠
冫 ゚ -゚メ 子 っ ?
;  ̄⊂ミ^ヽ√了つ 供 !
( (⌒) U{=∞=} の そ
′(ノイ、、、、ハ て 遊 ん
U U | だ な
の っ の
!
、、/i /i、、
ミVVwリ
冫メ゚ -゚ノ
;  ̄ヽ ミ^ヽ√了つ
( (⌒) U{=∞=}
′(ノイ、、、、ハ
U U
…やっぱりやんちゃ坊主は頬にバッテン傷だよね!
656:創る名無しに見る名無し:2010/11/26(金) 21:55:06 ID:vNPomj3n
>>645 げ。腕が一本、余分にあったよ…
、、∧、、/i、
ミVVwリ
冫 ゚ -゚メ
;  ̄⊂ミ^ヽ√了つ
( (⌒) ){=∞=}
′(ノイ、、、、ハ
U U
◇ ◇ ◇
──囲炉裏の炎はパチパチと静かに室内を照らし出していた。
そして、その囲炉裏のそばには二つの人影があった。一人は古風な衣装に身を包み、短めに切った銀髪をなでつけ、
銀縁の眼鏡をかけた凛々しい厳格そうな雰囲気の老人。一人は艶やかな黒髪に目にも鮮やかな紅葉模様の着物を
纏った年若い女性だ。頭からは尖ったツノが二本、控えめに生えていて、側頭部には般若面をくくりつけている。
ひのもと鬼子と白狐だ。
二人の前には幾本もの切った竹筒が置いてあり、何本かは火にかけられていた。傍らには焼酎の瓶やら竹の
柄杓やらが用意されていて、手慣れた仕草で竹筒を火にかける様子はこれまで幾度も同じ事をやっていた事を
伺わせていた。
二人はこの囲炉裏で『かっぽ酒』としゃれこんでいた。かっぽ酒とは、竹を加工して作った竹筒に焼酎などの酒を
入れ、火にかけ、燗する酒の飲み方だ。青竹の風味が酒に移り、えもいわれぬ風味を醸し出す。
「……それで、ぬしの所の小僧達は相変わらずやんちゃなのじゃろうかの」
老人はそう微笑みつつ、囲炉裏のそばから燗した竹筒を取り上げ、新しく焼酎を注いだ竹筒を囲炉裏の脇に突き刺す。
彼の本性は白狐。永い年月を生きた化け狐が人の姿に変じた姿である。普段は縁結びを司る菊莉神社の神主を
しているが、その実、結界術の達人でもある。鬼子の住んでいる家の周囲も彼の創り出した結界術で守られている。
「どうもこうもありません。全く、本当にあのコ達の元気さというか、ヤンチャさには手を焼かされてばかりですよ」
手にした竹筒からぐい呑みに酒を注ぎ、くぴ、くぴ、くぴ、と熱い酒を飲みながら愚痴っているのはひのもと鬼子。
鬼を萌え散らす宿命を背負った鬼の娘だ。飲んだお酒のせいか黒目がちな丸く大きな目の周りはほんのりと紅色に
染まっている。
ここは菊莉神社の離れにある茶室。鬼子は定期的に白狐の元を訪れてこうして近況を報告しているのである。
鬼子にとって白狐は人間の言葉で言うなら後見人といった所であろうか。事あるごとに世話になり、手助けしたりも
しているのでこうして親交を深めているのである。
「ふぅむ。じゃが、確かわんこには一緒におる小僧が居たハズじゃが。確か風太郎といったか。一緒になって
悪さするようには見えなんだがの」
足を組んで座り、穏やかに微笑みながら、熱くなった竹筒の飲み口を口元に運び、じかに酒を飲みながらそんな風に
水を向ける。鴉天狗の少年、風太郎という少年は素朴で大人しい性格だった。粗野で感情的なわんことは
正反対だったが不思議とウマがあった。
「確かに風太郎くんはイイ子ですけど……わんこったらどうも風太郎くんに妙な対抗意識を燃やしてるみたいで……
いつも大きな騒ぎが起こる時は決まってわんこがムキになった時のなんですよ。
……この前も竹とんぼを飛ばしあいっこしていた時もいつの間にやら『風の術比べ』みたいになってしまって……
そのトバッチリで干していたお洗濯物が全部川に吹き飛ばされてしまいましたし……」
「おやおや」
愚痴る鬼子の様子に目尻のしわを深くし、老人は楽しげに鬼子の話を聞いていた。一応、近況を報告するように。
と、言い含んでおいた為の交流だが、鬼子の、そして鬼子を通して語られる子供達の話を聞くことは老人の楽しみに
なっていた。
「──まったく、この前だって、お台所でつまみ食いを見咎めたこにを泣かせるし……困ったものだわ。白狐さまの
所のシロちゃんがうらやましいわ。素直で元気でカワイイし……」
ほんのり上気した頬からは想像つきづらいが、かなり酒が回ってきてるようだ。
「ふむ……シロか……」
不意に孫娘の事に話が及び、老人はまた別の微苦笑を顔に張り付けた。そしてくい、と竹筒の酒をあおる。口の中に
竹と焼酎の清冽な香りが広がる。
「あれは……まだまだじゃよ。おっちょこちょいにも程がある。この前も霊力を鍛える為に洞窟に潜ったんじゃが、
なかなか出てこんと思ったら、中で目を回しておった。なんでもカマドウマをオバケと間違えたようじゃの。
結局、その日は修行にならせんかったわい」
頭痛をこらえるように目を閉じ、老人はボヤいた。脳裏に孫娘の醜態がチラついているのだろう。まるで飲み込もうと
するかのように竹筒から熱い酒を飲み干した。それを聞いて今度は鬼子がクスクスと笑い声を響かせる。
「カワイイじゃありませんか。うちのこになんか、ハンニャーに何を吹き込まれているのか。随分とこまっしゃくれた
口をきいたりするんで毎回頭が痛いです。この前だって、『こに達はもっといいプリンをよーきゅーするケンリが
あるのーでらっくすちょこプリンをよーきゅーするのー』って、いってきかなかったんですから」
はぁ、と、一呼吸タメ息をつくと、また一杯、ぐい呑みに熱い酒を注ぎ、一気に飲み干した。
「ま、多少こまっしゃくれていても、ワガママ言うのは甘えている証拠じゃて。少しは大目に見てやらんとなあ。
姉貴分としてはツラいところじゃのう──」
苦笑しつつ、老人は竹筒を引き抜き、鬼子に差し出した。それを受けて、鬼子は空になったぐい呑みを前に出す。
老人は鬼子のぐい呑みにとくとくと酒を注いだ。少し二人の間の空気が張りつめる。
今までそれぞれが自分のペースで呑んでいたが、ここからは少しまじめな(もしくは深刻な)話題に移る事に
なると暗黙の了解で決まっていた。
「──西の化け狸の大主が重傷を負ったそうじゃ」
「なんですって?」
鬼子は耳を疑った。化け狸の大主は白狐とも実力を二分する大妖怪だ。それが重傷を負ったなど巨大な山一つが
神隠しにあったに等しい。それは不可解かつ不穏な事件である。
鬼子は竹筒を引き抜き、先端を老人に差し出した。老人は傍らに用意してあった杯を初めて手にし、それで酒を
受けた。
「知っての通り、狸の大主は幻術と逃亡術に優れた大妖じゃった。奴め、久しぶりに使う逃亡術も鈍っておらなんだが、
酷い目にあった。と嘘ぶいておったがの。問題は大主に傷を負わせた者の姿じゃ。最初は鬼の武者かと思うたが、
大主が追いつめるとまるで蟲の様な変貌を遂げたそうじゃ」
「蟲武者──」
それは、最近妖怪の間で囁かれている凶悪な鬼の噂だった。どうやら何かを探して辺りを荒らし回っているようだが、
その正体はようとして知れなかった。それがこの近くにまでやってきているというのだ。
「おぬしの所の子供らも安全の為にも結界の外に遊びにゆくのは控えさせた方がいいの。他の大主らも普段の動きの
鈍さもなりを潜めて互いに協力するじゃろうて。
……もっとも、南の化鬼猫大主だけはようとして所在がわからぬがの」
この辺りの山には大主と呼ばれる強大な力を持つ土地神のような大妖が地域を治めている。が、例に漏れず、
動き出すのに腰を上げるのが遅い。普段はマイペースで他と干渉するのもされるのも嫌うからだ。
「──わかりました。何かあったらすぐ天心通の術を使うよう、言い聞かせる事にいたしましょう」
天心通の術とは、一種のテレパシーの術のようなものだ。 本来は年端もいかない子供に使えるような術ではないが、
白狐の貼った結界内でなら簡単な合い言葉で使えるようになるのだ。異変があったら子供たちから大人たちにすぐに
連絡がいくだろう。
「そうじゃな。わしも新たな結界を張ろうとは思うが、よそから依頼が次々と舞い込んできて手がまわらん。
くれぐれも気をつけるようになあ」
つぶやくように言うと、じっと手の中の杯の水面をみつめる。こういう時にこそ、神社を留守にしたくはないのだろう。
が、彼の立場上、そういう訳にもいかなかった。
「大丈夫ですよ。ああ見えて、シロちゃんイザという時はシッカリしていますし。何だったらうちのわんこに様子を
見にいかせますから」
鬼子はそういって竹筒を差し出した。老人はちら、と目をやるとぐい、と杯を干し前に差し出す。その杯に
とくとくと、酒が注がれた。
「そうじゃの。暫くは子供らは一緒にしておく方が安心かもしれんの何か適当な理由を付けて集めるのも
いいかもしれん」
老人は杯を口元に運びながら新たな竹筒を引き抜き、鬼子に返杯する。鬼子もぐい呑みで受けた。
「まあ、うちのわんこだけだと心配ですけど、大抵は風太郎くんも一緒ですから……とはいえ、いたずらが
悪化するのは頭が痛い問題ですけどね……」
風太郎自身はイイ子ではあるが、時々わんこに引っ張られるようにいたずらに荷担させられる事がある。
そういう時は鬼子が思いもしないような入れ知恵をすることがあるのだ。
「ははは。それも含めての成長の楽しみという奴じゃよ。心強いではないか。将来はわしらなんぞよりずっと
頼もしくなるかもしれんぞ」
鬼子たちの周囲も様々な解決しがたい根深い問題は山積している。そういったものさえ彼らなら何とか
してしまうかも知れない。老人は若い世代にそう期待しているのだ──
「そう願いたいものですね──」
一方の鬼子は老人の期待が少々過大に過ぎるような気がしていた。鬼子は半ば期待される方の世代でもあるからだ。
白狐のような大妖からの期待は少々重荷に感じてしまう。
「──ま、それにはわしらが『今』を守ってやらんとな」
鬼子の考えを見通して微苦笑を浮かべながら老人は杯を空にした。
「えぇ、本当に──」
そして二人の間に沈黙が降りた。静かにパチパチと囲炉裏の火が燃える音だけが響く。めいめいが守るべき者を
思い浮かべていた。しばしの時間が経過してゆく……──ややあって、老人が口を開いた。
「とと、随分時間が経ってしもうたの。シロに寝床を用意させよう。今日は泊まってゆくがいい」
そう言ったが、鬼子はゆっくりと首を横に振った。
「いえ、こにが待ってますから。今日の所はおいとまいたします」
鬼の身ならば、多少酔っていようとも山道だろうが問題なく帰る事ができる。あんな話をした後では一刻も早く
帰宅し子供たちの顔をみたくなった。
「──そうか。それでは、気をつけてな」
「──はい。」
情景描写:おにのむすめとしろぎつね
──おわり──
>>289-291 とゆー訳で、今回は『かっぽ酒でイッパイやる白狐じーさんと鬼子ちゃん』というテーマで書いてみました。
なかなか風情がある飲み方だと思いますカッポ酒。実はカッポ酒というのを大分前にしって温めていたネタだでした。
今回、「鬼子さんとお酒」というテーマ(てかネタ)があがったので、これ幸いにと急いで仕上げて便乗しましたw
愚痴りながらも子供たちを大切に思っている大人たち。が描けたらこのお話は成功です。それでは。
133:創る名無しに見る名無し:2010/11/30(火) 00:56:15 ID:2X10XB3y
皆
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z ’
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′ 大 飲
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ き み
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒ な 込
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ '`;;;´ヽ <ニ>n<ニ> \ | / ) A^^A 繋 紅 ま
~zヾ|て 、l レ^ //' 〈从;;;从リ イ(<イiソリ)ミ⌒i (⌒| ⌒ヽ γ ハ゜ハヽ iリノ(((リ卯 ぎ 葉 れ
| | ヽl| // ξレ゚ -゚∩=∩ イ|、^。^ |ク | |( (´ ヾ )/ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、゚ -゚ .リlヾ 寄 の 誘
| :! || | | ,,'ハξV(§|V| )) rリ:::::y:: ソヘ i リ ('⌒ ;:⌒ ) リl、゚_ ゚*ノリリ Lハ∨/^ヽi り 木 わ
| :{. || | |/ く ソニニニニ ノノ |:::::で⊃::::::::::)/(´ ⌒:: )\ γ∩y/∩ ノ::[三ノ :.'、 合 の れ
l !|| | | /  ̄ | | じイ:::::::::Tノ /:;:;/三く、 \ (_;:::>く; Ψノ っ 下 て
ヽ ヽ.|/ // .| | |::::::::::| じ'<_、__*_ゝ\l |!: ::.".T~ て
_,r)_ j (_,( |〓〓| |::::::::::| (シ (.j ハ、___| ♪
188:創る名無しに見る名無し:2010/11/30(火) 23:45:26 ID:2X10XB3y
ハ ┌( ;/ ト, ,、 rヘ r'^ナrジ-z
__}ヽ,__ (ヽ/ス_r^フしz,り い)n/イr〜^′
'っヾ、r'__ |レ'ノ_C'入彳勺ソメろ_j/し-,_ 輪 に な る 願 い Ah 〜 ♪
`フ ヾ勹_| <_r' !|刀_」r''>||/⌒
<_ゝし||フぅ(ひzメ__ '`;;;´ヽ <ニ>n<ニ> γ ^ミ ) A^^A
~zヾ|て 、l レ^ //' 〈从;;;从リ i⌒(<イiソリ)i 彡リリリリミ γ ハ゜ハヽ iリノ(((リ卯
| | ヽl| // ξレ^-^ノリ | リ|、゚ ヮ゚ノソ i、-^∞ i ○ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、^-^ .リlヾ|
| :! || | | ,,ハξV/(§ハ . レrリ:::::y:: ソヘ / ヾ//  ̄|つ リl ^ヮ^*ノリリ Lハ∨/^ヽi
| :{. || | |/ く ソニニニニ、 \ |:::::で)(:::::::) \ {ニニ∝}ノ γ∩y/∩、 ノ::[三ノ :.'、
l !|| | | /  ̄ | | \/ じイ:::::::::T k i lЛ /:;:;/三く、 \ (_;:::>く; Ψノ
ヽ ヽ.|/ // .| | .|::::::::::| | / / /| じ'<_、__*_ゝ\l |!: ::.".T~
_,r)_ j (_,( |〓〓| |::::::::::| ∠ノ / /」 (シ (.j ハ、___|
⌒ ⌒ ⌒ ⌒ ⌒ ⌒ -終-
紅の鬼支援AA
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12804200 【日本鬼子】*紅の鬼*【カバー】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12766973【日本鬼子】*紅の鬼*【デフォ子】
ヘ〜
( (
( 。 。i
ゝw メ
174:創る名無しに見る名無し:2010/11/30(火) 19:21:22 ID:2X10XB3y
とりあえず、作ったから投下。左向き狗
、、∧、∧、
ミVVwリミ
l、゚ -゚ メ彡
⊂ミ^V ̄ミつ" ̄`:、
{=∞=} ( (⌒) )
ハ、、、、イ_) ソ
U U
右向き
、、∧、、/i、
ミwVVリ
冫 ゚ -゚メ
;  ̄⊂ミ^ヽ√了つ
( (⌒) ){=∞=}
′(ノイ、、、、ハ
U U
、、/i /i、、
ミwVVリ
冫メ゚ -゚ノ
;  ̄ヽ ミ^ヽ√了つ
( (⌒) U{=∞=}
′(ノイ、、、、ハ
U U
241:創る名無しに見る名無し:2010/12/01(水) 22:29:39 ID:X7jnbH5u
ああ、ワリィ。急いでいるんだ。ちょっと通らせてもらうぜ
)
γ゜ハ ヽ Zzzz...
(V) リ>*ヘ
、、∧、∧、!、。- *ノリ
ミVVwリミy/ ̄ ゝ
l、゚ -゚ メ⊂\::;:;\
ミ^V ̄ミ⊂_:;:;ノ
{=∞=} (⊃⌒) )
ハ、、、、イ_) ソ
U U
856:創る名無しに見る名無し:2010/12/09(木) 23:22:40 ID:RUCkj2Zc
, - ヽ
無 ( ◎ ̄⌒)
乳 ) (⌒ノノ
は __(WW)' ____
罪 /:::::::::::::::::::::::::::::::√_;;;;::::::::::::::::ゝ
な く:::::::::::::<}::::::::::::::) ハ)ハヾ) ハヾ
り (/(/(ハ/:::::::::::/
// /
∠ニつニつ
むしゃくしゃして作った。今まで作ってなかった。いや、なんかつい。
957:創る名無しに見る名無し:2010/12/11(土) 15:46:22 ID:J+mHpvvU
マ 犯 い チ __
や ネ 罪 い チ _|__|_
め は み 予 か ド 彡・ _0
た た 備 げ リ 斤ハゞ リ ソ\
ま い 軍 ん く し-ヘ=**}リ )ェヘ
え な ん ////] .┃
° くノ //n」 ┃
……唐突に投下
961:ゆずれぬ戦…い?:2010/12/11(土) 17:24:43 ID:J+mHpvvU
マ 犯 い チ __ γ ^ミミ 手
や ネ 罪 い チ _|__|_ 彡ノリリリミシ ク の
め は み 予 か ド 彡・ _0 + i、∞・ -∩ミ イ ク ひ
た た 備 げ リ 斤ハゞ リ ソ\ ⊂厂 ヾ// 勹 イ ら
ま い 軍 ん く し-ヘ=**}リ )ェヘ  ̄{ニ∝ニニ} 正 サ
え な ん ////] .┃ {h i l Л イ
° くノ //n」 ┃ // | | 」 義 ズ
⌒ ⌒ !! は
こうですか?わかりません!
296 :
転載:2013/04/30(火) 22:19:03.67 ID:pXQtUs8b
>>289-292 すてきすてき!
青竹の香りと囲炉裏端に、親同士の苦労話。
個人的思い出だけど、親とおばさんがしみじみ話してるのを遠くから見て、大人ってかっこええなと思ってた日のことを思い出したよ。
297 :
292:2013/04/30(火) 23:11:43.90 ID:eNJ2mgis
ども、感想ありがとうございます
そう言って貰えると書いてヨカッタと思います(^^
どことも知れぬ小娘の身体に纏わり付いてるとは誰も思うまいw
昔むかし あるところに いっぴきの鬼がいました。
鬼は ある村の人々をたいそう憎んでいて
しょっちゅう村に現れては 畑を荒らしたり 家を壊したり 悪さをしました。
村人達は言いました。
「悪い事をするのはやめろ。ゆるさないぞ」
鬼は言いました。
「追い返せるものなら追い返してみろ。どうゆるさないのだ」
「因果応報と言って、悪い事をすれば必ずその報いがくるのだ」
鬼が一瞬悲しそうな顔をした事に、誰も気付きませんでした。
鬼の顔は醜く歪んでいましすから、人間には表情を読む事は出来ません。
「因果応報という言葉は知っている。
いずれおれは地獄に連れ戻され、
自分のした事の何十倍、何百倍もの責め苦を受ける事になるだろう。
だが俺はその地獄からきたのだ。
つらい責め苦を受けるのをわかってなお、
お前達を責めなければならない理由があるのだ」
村人達は、何故自分達が責められなければならないのか分かりませんでした。
自分達は正直に真面目に生きてきて、恨まれる理由などなかったからです。
とうとう村人達の中から「この村を捨てて、もっと平和な場所で暮らそう」
という声があがるようになりました。
困った村長(むらおさ)は、「心の鬼を退治する」という村の神様に
「あの鬼をなんとかして下さい」と願い出ました。
神様は言いました。
「確かにあの鬼の悪さは目に余る。
しかし、あの鬼は私の社まで荒らす事は滅多にない。
お前達には困った事だろうが、私には関係のない事だ。
だいいち、私が退治できるのは心の鬼で、
生身の体を持った鬼の退治は畑違いだ。」
長老は呆然として、しばし口がきけませんでした。
しばらくしたある日、村に一匹の鬼が現れました。
その鬼は女で、口は耳まで裂け、目はギョロリとむき出し、
血のように真っ赤な着物を着崩して、頭には牛より大きな角がはえていました。
その姿を見た村人達は、家の中や木の陰に隠れて
「鬼、出て行け!鬼、出て行け!」と
薪や石つぶてを投げつけました。
しかし鬼娘は逃げるでも怒るでもなく、下品に笑いながら言いました。
「げ、げ、げ。鬼を褒めたり貶したり、人間というのはわからない生き物だ」
そう言って鬼娘は特に急ぐでもなく、ブラブラと村を通り過ぎていきました。
さて、村には長吉という、鬼を嫌わない珍しい若者がおりました。
長吉は鬼娘の言葉がどうも気になってしまい、
こっそり村から抜け出して鬼娘の後を追いかけました。
「お嬢様、お嬢様、さきほどの言葉はどういう意味でしょう」
お嬢様、と言われて気を引かれた鬼娘は、機嫌よく長吉に答えました。
「どういう意味も何も、それ、お前達の村の長者の嫁様の事よ」
「長者様の嫁様がいかがなされたのですか?」
「いかがも何も、お前達は口々に、美しい嫁様だと褒めはやし、
長者様は嫁様をたいそう大事にしてらっしゃる、嫁様は国一の幸せ者じゃと
常日頃からそう言っておるではないか」
「それが鬼と関係あるのでしょうか」
鬼娘は、げ、げ、と笑い
「そのせいで、長者はすっかり気を良くして、
怪我をしてはいけない、肌が日に焼けてはいけないと、
嫁様を倉に押し込めて出そうとしないではないか。
嫁様の親が病にかかったと聞いても、嫁様は見舞いにも行けぬ。
そんな時でさえ、長者の顔色を伺って笑顔を崩さぬ。
親が苦しんでいる時にさえ笑い続けて、多分死んでも笑い続けるだろう。
そんな事が御仏の御心にかなうと思ってか。
あれァ、もうすぐ人ではなくなる。やがては鬼よ」
そう言うと鬼娘は踵を返し
「お前は正直者そうだから話したが、この事誰にも言うてはならぬぞ」
と言い残すと、煙のように消えました。
長吉は、村を荒らす鬼は嫁様の縁者のなれの果てであろうと察しましたが、
この事を村のみんなが知ったらどうなるか考えると、
怖くてそれを打ち明ける気にもなれませんでした。
更にややあって、ある日突然、長者の嫁様が死んでしまいました。
誰が言うともなく「これはあの鬼が呪い殺したのだ」と、村人達は噂しました。
常日頃からの鬼への憎しみがありますから、その声は段々大きくなり、
ついには「もう我慢出来ない!あの鬼を退治してしまおう!」という事になりました。
「あの鬼が、そんな事するだろうか」
長吉は思わず口にしてしまいました。
「なんだと、長吉、お前は鬼の肩を持つのか!」
「あいつは悪い鬼だぞ、あいつがやったに決まっているじゃないか!」
批難の声は一斉に長吉にも向けられます。
長者は言いました。
「長吉、お前が鬼でなく人間であるならば、その証拠として鬼退治に加われ。
それが出来ないならば、お前は鬼の味方だから、この村に住む事は許さん」
途方に暮れながら長吉が家に帰ると、そこにはいつぞやの鬼娘がいました。
長吉が今までの出来事を話すと、鬼娘は げ、げ、と笑いながら
「何も心配する事は無い。お前は村の者と一緒に鬼退治に加われ。
そうしたら、これから私の言うとおりにすれば、お前への疑いは晴れるだろう」
ついに鬼退治の日が来て、村人たちは鬼が住むと思われる山に分け入っていきました。
山の奥へ奥へと進むと、石や枯れ木で作った鬼の住処らしきものがありました。
「おい、長吉。お前の心根を証明する時だ。ちょっと行って、様子を見て来い」
本当の事を言えば、みんな鬼の住処に入っていくのは怖かったのです。
長吉は仕方なく、石や枯れ木の積み上げられたところに入っていきました。
しばらくして、長吉が戻ってきました。
「どうだ、鬼はいたか」
村人達は訪ねました。長吉は答えました。
「確かに鬼の住処だった。確かに中に鬼はいた。けれども鬼は、もう死んでいた」
村人達は驚きました。
「なんだって、死んでいた!?」
「やい長吉、お前、鬼をかばうために、いい加減な事を言っているんじゃないだろうな」
長吉は困惑しながら、
「嘘じゃない。みんなも行って見てくればいい」と言いました。
村人達は、鬼が長吉をそそのかして、
自分達を罠にはめようとしているのではないか、と疑いました。
「本当に鬼が死んでいるのなら、証拠を見せなければ」
長者はそう言って、長吉にノコギリを渡しました。
「鬼の角を切って持って来るのだ。そうしたらみんな信用するだろう」
長吉はノコギリを持って鬼の住処に入っていき、
歯がボロボロになったノコギリと、鬼の角を持って戻ってきました。
「鬼の角は硬くて、一本しか切り取れなかった」
村人達は興奮しました。長者は長吉にノミを渡して言いました。
「まだ信用出来ない。鬼の目をえぐって持って来い。そうしたらみんな信用するだろう」
長吉は嫌々ノミを受け取ると、再び鬼の住処へ入っていき、
折れたノミと、鬼の目玉を持って戻ってきました。
「鬼の目玉は硬くって、片方だけしかえぐれなかった」
村人達は有頂天になって、今度はみんなで言いました。
「まだまだ、今度は鬼の皮をはいでくるんだ!そしたらみんな信用してやる!」
長吉は泣きべそをかきながら、小刀を手に鬼の住処へ入っていき、
鬼の皮と、すっかり身がだめになった小刀を持って戻ってきました。
村人達は歓喜に湧きました。
「鬼は死んだ!鬼は死んだ!」
「天罰だ!神様は俺達正しい者のために味方して下さったんだ!!」
「それ、鬼の家に火を放て!!」
「とどめを刺せ!!」
そう叫んで、村人達は鬼の住処の老木に火をつけました。
ごうごうと燃え上がる鬼の住処を見て大喜びする村人達の中で、
ひとり長吉だけは真っ青な顔で立ち尽くしていました。
鬼は、実は死んではいなかったのです。
長吉が、鬼娘に教えられた通りに鬼の住処に入っていくと、
鬼はおとなしく座っていました。
そして、どんな考えであるのか、長吉からノコギリやノミ、小刀を受け取ると
自分で角を一本切り、目玉をひとつえぐり、背中の皮をはいで
長吉に手渡したのです。鬼は何も言わず、うめき声ひとつ立てませんでした。
鬼の角や目玉を見せれば村人達が信用してくれると思っていた長吉は、
まさかみんながここまでするとは思っていませんでした。
鬼の家が焼け落ちていくのを見ながら、長吉はひとり心の中で
「鬼どん、許してくれ。鬼どん、許してくれ」と念じていました。
鬼の家がすっかり焼けてしまうと、中には真っ黒に焼け焦げた鬼が座っていました。
村人達は鬼の死骸に石を投げつけ、棒で殴り、足蹴にして
「悪い鬼め!思い知ったか!」「お前など恐ろしくないぞ!!」と
のどが涸れるまで散々に罵りました。
長吉は恐ろしくなりました。
いくら悪い鬼だからといって、死んだ者にこれほどの仕打ちをしてよいものでしょうか。
長吉はだんだん、村人達の方が鬼に見えてきました。
村人達は気が済むまで鬼の死骸を打ち付けましたが、
鬼は硬いので、死骸はたいして崩れませんでした。
村人達はそれがちょっと気に入りませんでしたが、
何より鬼が死んだ事には変わりません。
「そろそろ引き上げよう。この角と目玉と生皮は、殿様に献上するのだ。
きっと素晴らしいごほうびがもらえるぞ」
長者がそう言うと、村人達の関心はすっかりごほうびの方に向いてしまいました。
歌を歌いながら揚々と引き上げていく村人達の中に、長吉はいませんでした。
そしてそれを、誰も気付きませんでした。
村人達が去ったあと、どこからともなく げ、げ、げ、という
笑い声が響いてきました。あの鬼娘の声でした。
鬼の死骸はゆっくり立ち上がると、闇の中に消えていきました。
村人達は知らないのでしょう。
鬼は、このくらいで死んだりはしない事を。
村人達が持ち帰った角と目玉と皮には、恐ろしい呪いがかけれれている事を。
その後、鬼や村人達がどうなったのかは、誰も知りません。
村を逃げ出した長吉は、よその国でひっそりと暮らしましたが
彼が知っている事といえば、彼のふるさとが鬼の大群に襲われ
一夜にして滅んでしまったという事だけでした。
長吉のふるさとは「てんま」という名前だったという事です。
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