1 :
藤林椋 :
2006/07/21(金) 21:14:17 ID:iAmObw4Z0
2 :
藤田浩之 :2006/07/21(金) 21:14:58 ID:iAmObw4Z0
3 :
藤田浩之 :2006/07/21(金) 21:16:53 ID:iAmObw4Z0
4 :
藤田浩之 :2006/07/21(金) 21:17:53 ID:iAmObw4Z0
5 :
名無しさんだよもん :2006/07/21(金) 21:19:05 ID:iAmObw4Z0
椋「鉄の掟です。破っちゃ駄目ですよ、絶対に」 ・選択肢は基本的に早い人優先です ・でも、それでもあんまりなことになれば『リコール』発動しますよ ・本人でも一度選んだ選択は覆せません ・投下の前には『リロード』をお忘れなく ・『sage』進行でお願いします 浩之「それと、もうちっと守って欲しいことがあるんだけどな」 ひとつ、喧嘩するなよ ひとつ、早さと技術を競ってくれよな ひとつ、選択肢はどれ選んだっていいってことを考えろよ ひとつ、言いたいことあるんならテメェで書けよな ひとつ、相手のこと考えながら書いてくれよ ひとつ、我侭する前に空気は読めよ? ひとつ、ま、楽しければそれでいいんだけどな ひとつ、気軽に書いてっていいぜ 椋「とにかく、皆で楽しく素晴らしい話を作りましょうよ。もちろん折原くんと藤田くんは抜きで」
6 :
名無しさんだよもん :2006/07/21(金) 21:20:19 ID:iAmObw4Z0
浩之「もう50作超えたんだってな。長いよな、このスレも……」 椋「……もう少しです、あと一年もすれば私は卒業。 折原くんや藤田くんと離れられます。ええもう少し、もう少しの我慢です……」 浩之「せ、先輩? そりゃないぜ……」 椋「誰が悪いんですか! エピローグには書かれてないですが、 あれから私は折原くんや長谷部さんや川澄さんやみずかちゃんに振り回されて……もううんざりです! ことあるごとに漫画研究会に勧誘してくるし、私の平和を返してください! どうしてここは女の敵ばかり育つんです!? 藤田くんや折原くんは勿論、岡崎くんだってそうだし、 吸血鬼やってる顎長い人もそうだし、羽少女に変身する人形遣いもそうだし、 酔った勢いで知り合いを手篭めにする電波使いもそうだし、 ふにゃちん野郎の新選組もそうだし、ナンパばかりして時折女の人にされるADさんもそうだし、 みずかちゃんとどっこいどっこいの女の子を家に入れてる骨董屋さんもそうだし……ああもう数え上げたらキリがないです!」 浩之「わ、分かってくれよ? 二股三股ハーレムは男の浪漫で……」 椋「分かりたくないです! ああでももう少し、もう少し我慢すれば卒業で折原くんたちと別れられる……」 浩之「……案外、サザエさんのように来年以降もずっと一緒だったりしてな」 椋「や、止めてくださいよ縁起でもない!!」
A まじかる☆アンティーク B こみっくパーティー C 誰彼 D MOON. E うたわれるもの F Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜 G 雫 H 鎖 I フルアニ J Kanon K ナイトライター(with 雀鬼's) L To Heart M White Album N ToHeart2 O ONE P Filsnown Q Tears to Tiara R AIR S テネレッツァ T Routes U CLANNAD V 痕 W 天使のいない12月
よし、まだ一発で書けるみたいだな>作品数
V
なんとなくオチが見えた気がしたが、敢えて選ばせてやるぜ! A 柏木耕一 B 柏木千鶴 C 柏木梓 D 柏木楓 E 柏木初音 F 柳川祐也 G 長瀬源三郎 H 阿部貴之 I 小出由美子 J 相田響子 K 日吉かおり
なるほど、柳川を選べばいいんですね? だがJ。 この名無しさんだよもんが最も好きな事のひとつは、 これがお約束だと思ってる選択を断ってやる事だ。
こんばんは、月刊レディジョイのルポライター相田響子よ。 今私はね―― A 今社会問題になってる「ひきこもり」のとある女の子を取材しようとしているの B 今話題のとある料理店を取材しようとしているの C 今注目を集めているとある音楽グループを取材しようとしているの
どれも微妙に過去作品をインスパイアしてるような…… ええい、ままよ!B!
「ここが噂の店ね」 調べた住所をたよりに、私は目的の店の前に立っていた。 編集部に寄せられた情報によると、今この料理店が口コミで話題を呼んでいるのだとか。 そんな訳で他誌に先んじて、私は取材にやって来たわけだけど。 「ふふっ、でもちょっと楽しみかな」 取材費で美味しい料理が食べられるのは、なかなか気分が良いわ。 雑誌記者としては少々不謹慎なのかも知れないけど。 「えーと、確か店の名前は―― 店内に入る前に、一応目的の店かどうか確認する。 私の取材先である料理店の名前は―― A 健康に良い薬草料理専門店「トゥスクル」 B 料理よりもメイドが目的? メイドレストラン「コウサカ」 C 中華飯店「鉄鍋の詩子」何故か不安がよぎる名前だわ……
Bにしたのにメイド姿の詩子さんが料理作ってるとかどうよ? そんなわけで選択はB。
「いらっしゃいませお客様、メイドレストラン「コウサカ」にようこそ!」 ――クラッ。 強烈な出迎えに、一瞬めまいを起こしてしまった。 もっとも今はランチタイムだからこれで済んでいるけど、 これがディナータイムになると「お帰りなさいませ御主人様」になるそうだから 女の身としては昼間の取材で助かったと思うわ…… そう、この店は最近流行のメイドが出迎える飲食店ってやつ。 何でもオーナーの家が旧家のお金持ちで、趣味同然……というより はっきり言って趣味だけで作ってしまったお店らしいわ。 採算性度外視だから妙に凝ってるというか、何と言うか…… 呆れて溜息が出ちゃうわよ。 まあ、この手の店って急増してるから今更感もある取材なんだけど、 なんでもこの店には今からでも話題にするだけ事がある、変わった点があるらしいのよ。 それは―― A この手の店にしては本格的な料理を出す B 希望者にはメイド服を試着させてくれる C 一風変わったメイドさんが働いている
Cで 一風変わった人なのか衣装なのかそれとも・・・
情報によると、この店のメイドさんは一風変わっているらしいの。 メイド喫茶とかこの手の店が急増する中、ここのレストランが特に評判を呼んでいるのは その一風変わったメイドが原因だとか。 (一体、どんなメイドが話題を呼んでいるのかしら) そう思いながら改めて店の中を見回す、すると―― A どのメイドさんのメイド服も大胆な超ミニで、男性客が(;´д`) ハァハァしていた B どのメイドさんも耳に機械のカバーがある、メイドロボのメイドさんでした C 女の子のメイドさんの中に……美少年が混ざっている婦女子向けのメイドさんがいたのです D むしろどのメイドさんも黒髪ロングでクラッシックなメイド服の、超王道メイドさんばかりの店なのです
B ゆけゆけゆめみたん
「いらっしゃいませ、御主人様はは3284人目のご来店客です」 「ご注文はスパゲッティナポリタンとコーヒーでよろしいでしょうか」 「はわわわっ、申し訳ありません」 クラッシックな英国の喫茶店を思わせる店内を忙しそうに走り回るメイドさん達。 その女の子達の誰にも、特徴のある耳カバーやインターフェイスリボンがついていた。 そう、この店の特徴はメイドさんが皆メイドロボであることである。 とりあえず私は案内された席に座った。 まずこの店の料理とサービスを体験した後、店長の話を聞くのが今日の段取りである。 「ご注文はお決まりでしょうか、御主人様」 メニューを眺めていると一人のメイドさんが注文を聞きに来た。 そのメイドさんは―― A HM-12にしてはやけに表情豊かで、ネームプレートに「マルチ」とありました B まだまだ優秀な現役として名高いHM-13で、ネームプレートに「セリオ」とありました C どうもHM-12の変形バージョンのような機体で、ネームプレートに「ばるち」とありました D 金髪ポニーテールでネームプレートに「ミルト」とありました E ブルーのインターフェイス兼リボンが特徴的で、ネームプレートに「ゆめみ」とありました
D
「……ご注文はお決まりでしょうか、御主人様」 私の席に注文を取りに来たメイドさんは綺麗な金髪をポニーテールにまとめた 美人のメイドロボ(もっともわざわざ不細工に作られたメイドロボなど見たことないが)で、 ネームプレートには「ミルト」と書かれていた。 「あ、えっと、ちょっとまってね」 「はい……かしこまりました、御主人様」 店内を観察していた私は何を食べるかを考えていなかった。 慌ててメニューを開き、数種のランチセットでどれが一番美味しそうかを見比べる。 「それじゃあ、このハンバーグセットを一つ。それとコーヒー」 「ハンバーグセットとコーヒーですね……少々お待ち下さい」 ミルトというメイドさんはメイドロボらしく、微笑みを絶やさずにそつなく対応した。 ただ、何故か彼女の雰囲気というのは物憂げな気がする。 大げさに言えば、彼女の瞳からはこの世の辛酸を舐め尽くしたような虚ろさすら感じた。 (メイドロボ相手に、おかしな話ね。でも全くあり得ない事でもないらしいし) 最近は従来の無表情なタイプばかりではなく、擬似的に感情を持ち表情豊かなメイドロボも出回っている。 何か酷い目に遭わされればああいう哀しい顔をするメイドロボも出てくるかも知れない。 ただ、改めて店の中を見回しても、他のメイドロボはそんな感じはしていなかった。 何か、特別な事情があるのかも知れないわね―― 「お待たせしました、ハンバーグセットとコーヒーになります」 そんなことを考えている内に、注文の品が先ほどのミルトに運ばれてきた。 「ごゆっくりお楽しみ下さい、御主人様」 ぺこりとお辞儀をして、料理を運んだミルトさんは他の席の片付けに行く。 私は運ばれたハンバーグセットを口にした。 「ふむ……なかなかの味だわ」 冷凍物を調理しただけかと思ったけど、ちゃんと生の生地を焼いたモノだった。 この手の店にしてはかなり美味しく、値段と比べても悪くない。 なるほど、話題となるわけね。
「すみません、ちょっといいですか」 「はい、お会計ですか、御主人様」 「いえ、違うの、私は実はこういう者で――」 食事が終わった私は、さっきのミルトさんを呼んで事情を話した。 「そう言うわけで、ちょっと店長さんに取材をさせてもらうはずなんだけど」 「かしこまりました、少々お待ち下さい」 「どうでしたか? メイドロボでできたメイドレストランは」 「そうですね、正直巷に溢れているこの手の店大差無いと思ってましたけど、 体験してみてかなり本格的で良心的なお店だと思いました」 「いや〜、相田さんのような美人の記者にそう言っていただけるとうれしい限りですよ」 この店のオーナー兼店長の向坂雄二は、顔はそれなりだが、正直、少々軽そうな人物だと思った。 だが、彼のメイドへのこだわりがこの店の繁盛を呼んでいるのだから侮れないわ。 A 「実は、今度の新メニューを大々的に取り上げて欲しいんですよ」 B 「実は、今度の新コスチュームについて大々的に取り上げて欲しいんですよ」 C 「そう言えば、あのミルトさんというのは――」何となく、先ほどのミルトというメイドロボについて聞いてみた
b
「実はですね、今度の新コスチュームについて大々的に取り上げて欲しいんですよ」 「新コスチューム?」 「ええ、ウチでは来店したお客様から『メイドロボに着てもらいたいメイド服』をアンケートをもらってるんですよ。 それで人気のあったメイド服に定期的に変わるわけで、ちょうど来週から変更になるんです」 なるほど、そんなシステムがあるのね。 なかなか経費がかかりそうだけど、店長もマニアなら客もマニア。 ちょうど需要と供給のバランスが取れてるって事かしら。 「それで、次の衣装はどんなメイド服なのですか?」 さっき店の中で見たメイド服は、ごく標準的なクラッシックと言っていい物だった。 あまり詳しくはないけど、メイド服にそんなにバリエーションがあるのかしら? 「はい、実は試作品が届いているんですよ。ミルト、入ってきてくれ」 「分かりました、店長」 そうドアの向こうから返事が聞こえると、私を案内してくれたミルトさんが入ってくる。 店長の言うとおり、先ほどと異なるメイド服をミルトさんは着ていた。 「こ、これは?!」 「ご覧下さい、これが新しいメイド服。それも―― A ケモノ耳を搭載した『ケモノ耳メイド服』、オプションでシッポもついてます」 B スクール水着にメイド用のニーソックスと長手袋という出で立ちの『スク水メイド服』です」 C 体操服にブルマ、それにニーソックスと長手袋の『ブルマメイド』です」
b
ミルトさんが着ているメイド服に、私は目を見張ってしまった。 フリルとリボンがたっぷりついた長手袋とニーソックス、それは問題ない。 頭のカチューシャも可愛らしく、金髪のポニーテールとよく似合っている。 問題は……ボディを覆っているのが、スクール水着なのだ。 濃紺で厚めの生地で、ご丁寧に胸には白い布の上に平仮名で「みると」と書かれている。 「どうです、スクール水着にニーソックス、長手袋をきめた『スク水メイド服』です。 今の暑い季節にはぴったりだと思いませんか?」 「は、はぁ……」 私は返答に窮してしまう。 確かに男性客へのウケはいいだろう、大いに盛り上がるに違いない。 ただ、私達の雑誌の読者は…基本的に女性だ。 正直、こんなメイド服のメイドロボを特集して興味を持つのか甚だ疑わしい。 「あの…恥ずかしいです」 スク水メイド服を着せられたミルトさんが身をよじらせる。 何となくその仕草に私は艶っぽさを感じた。 ……とにかく、取材だけはしてしまおう。 「それじゃあ、記事の方をよろしくお願いします」 「ご来店有り難う御座いました、御主人様」 店長とミルトさんに見送られながら、私はメイドレストランを後にした。 あれからスク水メイド服のミルトさんの写真を何枚か撮り、更に店長のメイドへの こだわりをたっぷり一時間拝聴して取材は終わった。 「ま、メイドへの執念は物凄いけど店自体は悪くないわね」 正直、この手の店の粗製濫造の一つなら徹底的にこき下ろそうかとも思ったが そんな事はしなくても良さそうだった。 伝わるかどうかは微妙だがあの店の料理の良さと店長のメイドへのこだわり、それに 新作コスチュームの魅力が読者に届くような記事を書こう。 私はそんなことを考えながら編集部へ帰るのだった。
記事はいろんな意味で反響を呼んだ。 私の予想通り女性読者の反応はイマイチだった。 だが、例の新コスチューム、スク水メイド服が掲載されているとの情報がすぐさま ネットに飛び交い、その手のマニアが書店に殺到。 おかげで月刊レディジョイは創刊以来の売り上げを残し、私は編集長に金一封をもらった。 嬉しいことは嬉しいけど、正直少し複雑な気分かしら。 その手のマニアの男性が女性誌を片手にレジに並ぶ光景を想像すると…ね。 A 数日後、私の元「メイドレストラン店長、向坂雄二死亡」という情報が飛び込んできた。 B 数日後、私の元に「メイドレストランから金髪ポニーテールのメイドロボが失踪」という情報が飛び込んできた。 C 数日後、私の元に「メイドレストランである客が死亡」という情報が飛び込んできた。
a
「ふぅ……まさかこんな事になるとはね」 あの記事がレディジョイに載ってから数日後、私は再び「メイドレストラン『コウサカ』」を訪ねていた。 取材は取材だが、今度は内容が前回とは大きく違う。 「メイドレストラン店長、向坂雄二死亡」 編集長は私に取材を命じた。 例の記事が反響を呼んでいたので、女性誌としては異例の特集を組みたいとのことらしい。 ゴシップは何度も取材をしたけど、流石に数日前に取材した人物の死亡を特集するのは気が引ける。 足取り重く、私はメイドレストランの扉を叩くのだった。 店は臨時休業で表のドアは閉められており、私は裏口に回る。 「すいません、月刊レディジョイの者ですが」 あらかじめアポは取ってある、すぐに返事がきた。 「はい、お待ちしていました」 鍵が開けられ、私は中に招かれる。 「初めまして、メイドレストラン『コウサカ』の副店長のイルファと申します」 「相田響子と言います、このたびは大変な事になってしまって――」 副店長のイルファさんに案内され、今は主のいない店長室で私は話を聞き始めた。 「それで確認させていただきますと、店長の向坂雄二さんは昨日―― A 店長室で飲んでいたコーヒーに毒物が盛られ、それによって殺されたそうですね」 B 夜遅く帰宅途中に何者かに襲われ、胸を刃物で刺されて殺されたそうですね」 C 母校の校舎の屋上から、飛び降り自殺をされたそうですね」
C
「昨日、母校の校舎の屋上から飛び降り自殺をされたそうですね」 「……はい」 そう、向坂雄二は昨日、自分が卒業した学校の屋上から飛び降りたらしい。 昨日は創立記念日でたまたま学生達はほとんどいなかったそうだ。 だけど……気になる点もある。 まず、どうして卒業した母校から自殺を考えたのだろうか。 創立記念日とはいえ、人がゼロと言うわけではないだろう、見つかる可能性はあったはずよね。 「向坂さんの遺書には何と?」 「ええ……ただ一言『疲れた』とだけプリンタされた手紙があったそうです」 これだ、怪しい遺書。 遺書は揃えられた靴に飛ばされないように置かれていらしい。 だが、その内容は一言のみで、誰でも作れる代物。 本当に……向坂さんが書いた物だろうか? 「失礼ですが、向坂さんはどうして自殺したのでしょうか?」 「……分かりません、店長が何かに悩んでたなんて全然気づけなくて……私、私……ううっ」 イルファさんは目頭を押さえる、メイドロボだから涙は流せないはずだけど。 「……向坂さんが誰かに恨まれていたという話は聞いたことがありませんか?」 「それは……店長が何者かに殺されたと言うことですか」 「いえ、その……」 「構いません、警察の方も自殺と…殺人の両方で捜査するとおっしゃっていました。 ですが、私には店長が誰かに恨まれていたなんて、私全く知らないんです」 正直、先日の取材時で向坂さんに自殺してしまうほど悩みを持っていたようには見えなかった。 勿論、あの時私に見せた姿が向坂雄二の全てだとは当然言い切れない。 何か、私やイルファさんの知らない一面を持っていたのかも―― A イルファさんから向坂雄二についてもっと詳しく聞いてみる B 他のメイドロボに話を聞いてみる(メイドロボから人物指定) C 自殺の現場である学校に行ってみる
ヽ(´ー`)ノゆめみたん B
「ごめんなさい、ちょっといいかしら」 「あ、相田さん。ゆめみに何か用でしょうか?」 「実は向坂店長の事でちょっと……」 イルファさんから一通り話を聞き終えた後、私は別のメイドロボにも話を聞こうと思った。 丁度、フロアで「ゆめみ」というメイドロボが掃除をしたので呼び止める。 落ち込んだ表情をしているのは、やはりロボットといえどショックを受けているのみたい。 記者の仕事とはいえ、少し胸が痛む。 臨時休業の店内で、私とゆめみちゃんは向かい合って席に座っていた。 サービスで出してくれたお冷やで喉を濡らしながら、早速切り出してみる。 「単刀直入に聞きたいんだけど。ゆめみちゃんから見て、向坂店長について何か気づいた事とか無かった?」 「気づいた事……ですか?」 「何でもいいの、何かおかしな事を呟いたとか、見慣れない人と会っていたとか」 「そうですね……そう言えば―― A 「最近、何故か店長さんは『金が足りない……』と一人言を言っていたんです」 B 「最近、店長さんは夜遅くに誰かに呼び出されていたみたいなんです」 C 「最近、店長さんがお店の○○さんと付き合っていたのを見たんです」(メイドロボから人物指定)
b
「これは…本当は店長さんからは黙っておくよう言われたのですけど」 何か思い出したのか、ためらいながらゆめみちゃんの口が開いた。 「何か知っているの?」 「最近なんですけど、夜遅くの閉店間際に電話がかかってきて店長さんが呼び出されていたみたいなんです」 「向坂店長が呼び出されていた?」 「この間偶然店長さんにお茶を入れに店長室に入った時に、深刻そうな顔で電話で話をしてました。 その後すぐに『少し出掛けてくる、この事は秘密にしておいてくれ』と言って店を出て行ったのです」 「それは…本当なの」 「はい、すぐ戻られたので特に気にはしなかったのですが、それから時々閉店間際によく店を抜け出していた みたいなのです。いつもすぐに戻っていたので他のメイドさん達は気づかなかったみたいですけど」 「その呼び出した相手って誰だかわかる? ゆめみちゃん」 ゆめみちゃんはフルフルと首を横に振った。 「いえ、それについては何も……」 「ううん、いいの。ありがとうゆめみちゃん」 向坂店長は最近誰かによく夜遅く呼び出されていたみたい。 それも店の女の子の目をさりげなく避けながら。 ……何か、彼の自殺と関係があるのかしら。 A 他のメイドロボにも話を聞いてみる(メイドロボから人物指定) B 向坂雄二の家族に話を聞いてみる C 自殺の現場である学校に行ってみる D 一度、店長室を調べさせてもらう
Dで警察が入った後なのに重要証拠が残ってる火サスクオリティー
「すいません、イルファさん」 「いえ、終わったら呼んでください」 イルファさんに許可をもらい、私は再び店長室に入った。 もしかしたら向坂雄二の死について、何か手がかりがあるかも知れないと思ったからだ。 警察が一通りは調べたはずだから、何か出てくる可能性は高いとは言えない。 ただ、自殺と他殺の両面からの調査ということで、本腰を入れたものではなかったそうだ。 それなら、何か見落とがあるかも知れない。 「あれ、これって…二重底?」 店長室の机を調べていると、右側一番上の引き出しの中が……二重底になっていた。 まるで、どこかの死神漫画のような展開だが、気にしないほうが良さそうね。 「……まさか、いきなり火事になったりしないわよね」 念のため引き出しを下から覗いたけど、ボールペンを差し込む穴は無かった。 恐る恐る引き出しの中の物を出し、二重底の板を取り外す。 「これは?」 そこから出てきたのは、「DEATH NOTE」と書かれた黒いノート……ではなく。 A 表に出来ないお金の動きを記した……いわゆる裏帳簿というものだ。 B ちょっと用途が分からないけど、何かの鍵だった。 C プラスチックのケースに入った、一枚のDVDディスクだった。
B
ちょっと用途が分からないけど、何かの鍵だった。 シンプルなデザインで、特に番号やラベルのようなものはなし。 まったくの新品という感じではないけど、ちょうど合鍵を頼んで 出来上がったばかりのように飾り気がなく、つまり掴み所もない。 「わざわざ隠すくらいだから、重要なものなんでしょうけど……」 私は手の平に鍵を乗せながら、これからどうするか思索を巡らす。 例えば、ルポライターをやっていると色んな人に出会うわけで 中には仕事柄鍵の扱いに手慣れていたり、調べものが得意な人もいる。 そんな知り合いに頼めば、これが何の鍵だか分かるかもしれない。 あるいは、この鍵の事をメイドロボに聞いてみるのもありね。 この鍵に合う錠が使われているものを極秘に受け取っていたり、 彼女たちに鍵の正体が記録されている……なんて事もあるわね。 ……いっそ黙って隠し持とうかしら? この鍵が大事なもので、向坂店長の深夜の謎の外出に関わっていたら 得体の知れない連中がこの鍵を狙って動いたりするかもしれない。 ちょっとマッチポンプっぽいけど……でも、魅力的な作戦には違いない。 もし単なる秘密日記の鍵とかだったら馬鹿っぽいのが難点だけどね。 A 知り合いを当たって調べてもらう B メイドロボに心当たりがないか聞いてみる C 黙って隠し持つ
B
test
私はメイドロボにこの鍵について心当たりが無いか聞く事にした。 さて、誰に聞こうかしら。 今までに知り合ったメイドロボはイルファさん、ゆめみちゃん、ミルトちゃん。 イルファさんは副店長なのだから、他のメイドロボより店の事について詳しいかも知れない。 ゆめみちゃんは普通の従業員だけど、向坂店長の謎の外出について知っていたぐらいだし、 もしかしたらこの鍵についても心当たりがあるかも知れない。 ミルトちゃんは…よく分からないけどあの虚ろな雰囲気が気になった。 他のメイドロボにはない暗く濁った瞳は、この事件をどう見ているのかしら。 それとも、ここはまた別のメイドロボに聞いてみたほうがいいのかも知れない。 より多くの人を取材するのは記者の基本だしね。 A イルファに聞いてみる B ゆめみに聞いてみる C ミルトに聞いてみる D 他のメイドロボに聞いてみる(メイドロボから人物指定)
まだ会ってないC
「ミルトちゃん、ちょっといいかしら」 「……はい、何でしょうか相田様」 厨房で食器の整理をしていたミルトちゃんが手を止める。 私は隠されていた鍵について彼女に話を聞くことにした。 なんて言えばいいか……ミルトちゃんからは虚ろな雰囲気を感じる。 あの暗く濁った瞳はもしかしたら事件について何かを見ているのかも知れない。 もっとも、単に思い過ごしなだけかも知れないけど。 「実は…コレについて聞きたいんだけど」 単刀直入、私はミルトちゃんに鍵を見せた。 「鍵なんだけど、ミルトちゃんコレに見覚えないかしら?」 まだ情報は少ない、聞き込みをするなら勿体ぶるより直球で聞いたほうが良いわ。 A 「こ、これは……相田さん、この鍵をどこで?!」 ミルトちゃんはこの鍵について何かを知ってるみたい。 B 「…っ! し、知りませんっ! 私、そんなモノ……」 知らないと言ってるけど、動揺していて何かを秘密にしたいみたい。 C 「……申しわけありません、特に心当たりはありません」 特に動揺もせずミルトちゃんはそう言った。
B
「…っ! し、知りませんっ! 私、そんなモノ……」 鍵を見せた瞬間、ミルトちゃんの顔色がサッと変わった。 あからさまに動揺して、私から視線をそらしだす。 「本当に知らないの?」 「あ、当たり前ですっ!」 語気が無駄に荒くなって落ち着きがない。 「さっき『そんなモノ』って言ったけど、それって何かを知ってるって事じゃない? 普通ただの見覚えがない鍵に『そんなモノ』なんて言葉は使わないと思うけど」 「ち、違います。単に言葉のアヤです!」 口では否定しているけど、ミルトちゃんは何かを知っている。 少なくともこの鍵について無関係とは考えにくい。 そう私は確信した。 ただ、彼女からこれ以上何か聞けるとも思えないけど―― 「……失礼します、仕事が残っていますので」 逃げるようにミルトちゃんは厨房を出て行く。 まだ何も解ってない以上、更にミルトちゃんを問い詰める事は私にはできなかった。 店長室に隠された鍵、それにミルトちゃんの態度。 ――謎は深まるばかりね。 A もう少しメイドロボから話を聞く(メイドロボを指定) B 向坂雄二の家に行ってみる C 自殺現場の学校へ行ってみる D 一度編集部に戻って情報を整理する
B
「失礼します、月刊レディジョイの相田響子と言います」 「向坂環です」 訪れたのは大きく立派な日本屋敷、その客間に通される。 赤い長髪をちょっと変わったツインテールにまとめた目の前の女性。 向坂環、向坂雄二の実姉。 女性ながら名門中の名門、向坂家の跡取り。 「この度は取材に応じて下さって…ありがとうございます」 「いいんですよ。変に断って有ること無いこと書かれるよりはずっとマシです。 ここ数日は何人も雄二の話を聞きたがる人が来て、その度に似たような話をしましたから」 気品と力強さを兼ね備えたようなその顔にも、少なからず疲れと寂しさが浮かんでいる。 「も、申しわけありません。ですが私は決して雄二さんを面白おかしく書くつもりは――」 「いえ、まぁ何でも聞いて下さい」 そう言われると取材しにくい、とは言えこれも仕事、やるしかないわ。 私は他の雑誌みたいに単なるゴシップとして扱うつもりは無いんだし。 それに言っちゃあ何だけど、向坂雄二の死で得をする人間の筆頭は……向坂環さんだ。 特に向坂雄二が死んだとなれば、その立場は盤石となるはず。 何だか以前、鶴来屋の新会長を取材に行った時を思い出す。 あの時も当時の会長が不審な死を遂げ、後に美人と評判の姪が若くして会長に納まった。 結局あの事件は不自然な点もあったけど、事故という形で決着したのよね―― いけない、思考がそれちゃってるわ。 とにかく折角お姉さんから話を聞けるチャンス、何か聞いてみないと。 A 最近の向坂雄二の様子について聞いてみる。 B 深夜の店からの外出について聞いてみる。 C 隠された鍵を見せてみる。
B
C
test
よし、ここは単刀直入に聞いてみることにしよう。 「雄二さんが、閉店間際に店を抜け出していたという噂をご存知ですか?」 「雄二がそんなことを…? いえ、全く分かりません。 店の営業時間が遅いため、近くに部屋を借りていたので、そこまでは分かりません。 それに弟の趣味で始めた店とは言え、経営の基礎を学ばせるため認めたのです。 当家では、経営中の店を放り出す真似をするような教育はしておりません。」 困った。最初から詰まってしまった。 しかも言葉には出していないものの、反感を買ってしまったようだ。 A 最近の向坂雄二の様子について聞いてみる。 B 隠された鍵を見せてみる。 C 向坂雄二の自宅について聞いてみる。 D メイドロボについて聞いてみる。 E 帰る。
A
「最近の、様子ですか… 先ほど言ったように、店の近くに部屋を借りていたので、 当家には定休日にしか帰っていなかったのですが、 そういえば最近、定休日でも人と会うからと帰って こないことが増えたように思います。」 なにかヒントになるかもしれない。 「その人をご紹介していただけますか?」 A 断られた B 幼馴染の柚原このみを紹介された C 同窓生の河野貴明を紹介された D 短大生のまーりゃん先輩を紹介された
B
柚原このみさんを紹介されて、私は向坂家を後にしました。 柚原家には環さんから紹介状をいただきました。 幼馴染というだけあって、家もすぐ近くのようです。 あ、柚原家に到着した私を早速出迎えに来た人がいたようです。 A 小さな女子高生 B 若作りの主婦 C よく分からない青年 D ゲンジマル
D
人なのか犬なのかどっちだ?
それが事件に関係してるんよきっと
どういうことでしょう。 私はごく普通の一般家庭を訪問したはずです。 でも、いま、門の前にいるのは、 眼帯をして、鎧を身に纏った老人。 脇に持っているのは刀でしょうか。 一部の隙も見当たりません。 と、つい身構えた私に老人が話しかけました。 「何用かな?」 ど、どうしよう。 A あなたが柚原このみさんですか? B まずは自分の名前を名乗る C こういうとき、取るべき手段はただ一つ。逃げるんだよう!
一応B
A
とうとう一番下に…
67 :
名無しさんだよもん :2006/12/03(日) 01:11:19 ID:HDYIpFe20
ぬ
る
ま
湯
「私、相田響子といいます。月間レディジョイっていう雑誌はご存じないですか?」 老人を油断なく見遣りながら、できるだけ平静に、丁寧に、にこやかに、響子は名刺を差し出した。 かっこうだけならどうということはない。コスプレ好きのかわいそうな老人として、適当にあしらってやればすむ話。 だがよく見れば、刀を持った左肩がわずかに下がっている。美術品として床の間に飾るならいざ知らず、 この現代日本で、竹光以外の刀を白昼堂々下げて歩くなど、御法度中の御法度のはずだ。 無言で名刺を受け取ると、眉をひそめた老人の隻眼が響子のてっぺんからつま先まで舐めるように上下する。 「私、そこで記者をやってます。これ」 紹介状を差し出す響子。老人は紹介状には一瞥もくれず、響子にくるりと背を向けて、 「・・・帰れ」 押し殺した声でそう言うと、門をくぐって柚原家に戻ろうとした。響子は老人に追いすがって 「あ、待ってください。あの、このみさんと少し話が・・・」 ・・・目の前で、何か白いものがひらりと舞った。背を向けたままの老人の左手で、刀が鞘に戻る音。 響子の右肩がふっ、と軽くなる。 - どさり。 足元に転がったカメラバッグを見て、一歩、二歩、あとずさる響子。 「・・・帰れ」 老人はもう一度そう言うと、門を後ろ手でかちゃりと閉めた。響子は・・・ A. 鍵の有効活用〜 ひょっとして夜這い用かもw B. 姉の有効活用〜 やっぱ武術には武術よねw C. ロボの有効活用〜 人型ミルトって最高ォw
反応が楽しみ B
「・・・門番?」 怪訝な表情で問い返す環。響子のいうそれが何なのか、環にはさっぱりわからなかった。 たしかに番をしているものはいる。だがそれは・・・ 「ええ。それで・・・」 「待って」 環は、眉間にしわを寄せて少し考えていたが、やがて響子を見遣ってにやりと笑い、 「そう。あなたもなのね」 「は?」 「いえ、こっちの話。で、門番、っていうのは毛の白い?」 「ええ、白、というよりは・・」 「目が覆われてる?」 「はい、たしかに片目の・・」 「鋭い歯をした・・」 「すごい切れ味で・・」 「で、紹介状は読めなかった、と」 「目もくれませんでした」 環は含み笑いで大きく頷くと、響子の肩に手を置いて、言った。 「ま、人間だれしも弱点、ってものはあるわ。気を落とさないで」 「はあ?」 「大丈夫。あれをあしらうにはコツ、ってものがあるの。これよ」 にやり、と不敵に笑って取り出す、魚肉ソーセージ。響子は・・・ A. 奇妙な自信が素敵。このまま姉でGO! B. 老いぼれにはハイテク。やっぱりロボでGO! C. 華麗に自力突破。やっぱり鍵でGO!
A
- こーん・・・! 庭の鹿威しが鳴る。しばしの静寂。 響子は座卓の中央におかれたものをじっと見た。直円筒状の「それ」は、橙色のフィルム状のものにくるまれて、 ボタン、だろうか、丸くなった両端に銀色のぽっちがついている。響子はこれに酷似したものを普段から良く知っていた。 だが、向坂のやること、どんな秘密兵器か知れたものではない。形が似ているからといって即断は禁物だった。 「あのぅ、これ、さわってもいいですか?」 「どうぞ」 ず、と余裕の表情で茶をすする環。響子はおそるおそる「それ」を手に取って裏返す。 - 消費期限:2006.12.27 じっと見て、怪訝な表情で環を見遣る響子。環はちっ、と舌打ちして、 「目ざといわねぇ。ほら、これなら文句ないでしょう?」 もうひとつの「それ」を取り出すと、ぽーん、と響子に放りなげた。「それ」は、のけぞる響子の頭越しに飛んで 畳の上をころころと転がっていく。 「何やってるの?」 抱えた頭から手を離し、畳からおそるおそる顔を上げる。とりあえず鋭敏な爆発物ではないようだ。 「ほら」 手渡された「それ」には 消費期限:2007.10.30 と記されている。響子は・・・ A. 「それ」をもうすこし自分で観察してみよう。 B, 「それ」の使い方を聞いてみよう。 C. 「それ」よりも「ロボ」を貸してもらおう。
B
響子は「それ」に書かれた文字の意味をずっと考えている。消費期限・・・。 すでに響子の頭の中からは、自分の良く知っているそれ、のことはすっかりぬぐい去られていた。 消費期限・・・。超高性能爆薬のスペック保証の期限、だろうか。あるいは、化学兵器、ということも・・・ 「あのぅ・・・ちょっと伺いたいんですが」 「なに?」 ず、とふたたび茶をすする環。響子は遠慮がちに、 「これを使って奴・・・門番をどうあしらうのか、教えていただけますか?」 「は?」 環は耳を疑った。よもや「それ」を知らぬものがいようとは・・・ 「あなた、箱入りにもほどがあるわよ。まったく・・・」 「・・・?」 「ま、いいわ。教えてあげる。この銀色のぽっちのところをこうくわえて・・」 環は「それ」の丸い先端を食いしばった歯に近づけて、 「こうするの」 手首を返して見せた。 響子の脳裏に、とある白黒の連続TV番組のシーンが蘇る。GIばかりに有利な、実に不愉快な番組だ。 「あとは、適当に放り投げてやれば、いちころよ」 にやり、と不敵に笑う環。「それ」はやはり、超高性能爆薬、なのだろうか? 響子は・・・ A. 「それ」の使い方をさらに聞いてみよう。 B. 「それ」をさらに観察してみよう。 C. 「それ」よりも「ロボ」について聞いてみよう。
B
「すみません。もう少し見せてください」 「どうぞ。いくらでも」 肩をすくめる環。響子はふたたび、座卓の中央に置かれた「それ」を手に取った。 「しっかし、いるもんねー。ホント、世の中って広いわ」 横を向いてなにやら悪口を言っているようだが聞こえないふりをする。 響子は「それ」の端を持って、ちょっと揺すってみた。「それ」はぷるぷるとしなって、 外殻は押さえると弾力があり、お世辞にも頑丈なものだとは思えなかった。感度はさほど 鋭敏では無いにせよ、慎重な取り扱いが必要なようだ。 響子は、「それ」の外側を覆うフィルム状のものに、ふと、ビニール袋で薬液を運んだと いう、例の地下鉄の事件を思い出した。信管が埋め込まれているらしい、丸い先端に鼻を 近づけてみたが、首をひねるばかり。二三日前から風邪気味で鼻が詰まっていて匂いが よくわからないのだ。もう一度鼻を近づけて、思い切り息を吸い込もうとして、 - すぱぁぁぁん! 後ろ頭をはたかれて、顔を上げる。 と、真っ赤になった環。張り扇を持つ手がぶるぶると震えている。
「返して!」 響子の手にした「それ」を乱暴にひったくると、 「な、何かわかったの?」 「何か、とは?」 「う、うるさいわねぇ。何か異常に気付いたか、っていってるの」 「異常? あぁ、匂いとk・・・」 「わーっっっ!!!」 あわてて響子の口を押さえる環。響子は環の手をふりほどいて、 「ここんとこ鼻が詰まっててよくわかりませんでしたけど、何か「それ」に問題でも?」 「え? あ、あぁそう。それならいいんだけど、あ、あは、あははは」 「・・・?」 「と、とにかく、これは没収ね。こっちにして」 投げてよこした「それ」には、消費期限:2007.12.30 と書いてある。 「あ、あぶなかったぁ・・・」 つぶやく声を、響子は聞き逃さなかった。超高性能爆薬と薬液のハイブリッド。 とても素人の手におえるものではなさそうだ。響子は・・・ A. 環に一緒に来てもらう B. 自分でなんとかする C. 「ロボ」はまだかっっ!
Aでいってみよう
いくのか
「お断りします」 きっぱりと、環は言った。湯飲みを持つ手は震え、顔は心なしか青ざめているようだ。 「ですが、このみさんは、雄二さんと生前ご親交のあった方として、あなたから 直接にご紹介いただいていますし、ぜひお話がうかがいたいのです」 「・・・」 「たしか、あなたご自身も幼なじみとして、このみさんとご親交があったとか。 あの門番も、あなたなら通してくれるかもしれない。私は相当警戒されましたけど」 「・・・ダメ」 「このみさんから雄二さんの事件にかかわる、なにか大切な話が聞けるかもしれません」 「・・・ダメ」 「一緒にお越し願えませんか」 「ダメと言ったらダメなの!」 - どん! 座卓を叩いて立ち上がる環。握りしめた両手がぶるぶると震えている。 「そもそも、事件の捜査は警察の領分よ。あなたがたが勝手にかきまわしていいものじゃないわ。 その上で、私は紹介状を書いてあげたし、「それ」での門番のあしらい方も教えてあげた。 これ以上あなたがたの興味本位の取材に協力する義理はないわね」 「ですが、「それ」は私にはとても・・」 「はぁ? 食いちぎって放るだけ。猿でもできるわよ」 「環さん・・」 「いい加減にして!」 環はすがる響子の手をふりほどくと、響子の目をじっと見て、静かに、 「あまりしつこいと、警察を呼びますよ」
最後通告だった。環はそばにあった鈴をいらいらと乱打した。 - チンチンチンチン! 「誰かーっ。お客様がお帰りよ。玄関までご案内して」 「はーい」 奥の方でかわいらしい声がして、とてとてと廊下を渡る足音が近づいてくる。環は口元だけで、にこりと笑い、 「じゃ、ごきげんよう。 あぁ、話をしに来るだけなら、これからも来てくれてかまわないから。 でも、あの門番の話は、金輪際お断り。じゃあね」 「環さん。待ってください!」 「しつっこいわねえ」 「環さまぁ〜。参りました〜。あっ・・・」 - どんっっ!! 敷居の所で揉み合っていた二人は、駆け寄ってきた小柄なメイドを巻き込んで、その場に折り重なって倒れ込んだ。 「はぅ〜っ。申し訳ございません〜っ」 平謝りの小柄なメイド。胸に「マルチ」と書かれたネームプレートをつけている。 「痛たたた・・・」 響子が腰をさすりながら体を起こすと、手の届くところに「それ」が3つ、転がっていた。 どうやら転んだ拍子に落としたようだ。響子は・・・ A. 消費期限:2006.12.27 と書かれた「それ」を拾う。 B. 消費期限:2007.10.30 と書かれた「それ」を拾う。 C. 消費期限:2007.12.30 と書かれた「それ」を拾う。
C
- 消費期限:2006.12.30 響子が手に取った「それ」にはそう書かれてあった。響子はちょっと迷って、もうひとつ の「それ」を拾って、書かれている文字を確かめようとした。と、 「だめーっ」 脇から出た手が、残りの「それ」をさっとひっつかんで持っていく。響子が顔を上げると、 こちらへ背を向けて廊下にとんび座りの環が、「それ」を見つめて、ほぅ、と息をついた。 「環さまぁ〜。申し訳ございません〜」 「いいのよ。今度から気をつけて。幸い二人とも怪我はないし」 振り返る環に頷き返して、響子は、横でべそをかいてうつむいているメイドににっこり笑いかけた。 栗色の髪と瞳。豊かな表情と自然なしぐさ。アンテナならぬ耳カバーは外している。 胸につけたネームプレートがなければ、来栖川のあの旧式の廉価版汎用機とはとても思えなかった。 どうやらAIを含めて念入りなチューニングがされているようだ。 環が、マルチの肩に手をやりながら、 「・・・気が付いた?」 「ええ、まぁ」 「雄二が凝り性でね。生前いろいろとサードパーティのチューナーをあたって カスタマイズしたみたい。ヨシ○ラ、だったかしら。モ○ワキ? ええと・・」 「・・・あは、あははは」 メイドレストランの取材はついこのあいだのことだ。 高価な上にも高価なはずのドイツ製の新鋭機に、どう見ても水着そのものの新コスチュームをつけさせて、 あいづちも打たせず一時間、とうとうとメイドロボ萌え道を語った雄二の姿を、響子は思い出していた。 常人には無駄とも思える細部へのこだわりこそ、ヲタの証。 ゼニ金の問題ではない。雄二なら、やるだろう。テッテ的に、テッテ的に。
「私は詳しいことはよくわからないんだけど、素直だし、一生懸命なところがかわいい から、屋敷に置いて、家事を手伝ってもらってるの」 「はぁ」 「んー、何か忘れてるわね・・・あぁ、そうだ」 環はぽん、と手を打って、 「この子。連れて行くといいわ」 「えっ・・」 「「門番」よ。困ってるんでしょう?」 「・・ええ!?」 響子はもう一度まじまじとマルチを見つめた。マルチはこちらを向いてにこにこ 笑っている。相手は屈強、手練れのもののふだ。この華奢なロボ娘のどこにそのような 力が秘められているのか、皆目見当がつかなかった。と、環がにやにや笑いながら、 「疑ってるわね。この子、「門番」に関してはエキスパートよ。「それ」は、 たまに不発のこともあるけど、この子は絶対。万に一つも外さないわ」 「絶対?」 「そう。それこそ、い・ち・こ・ろ(クス)」 「・・・いちころ・・・」 「・・・どうする?」 響子は・・・ A. このロボ娘を連れて行く B. 別のロボ娘をねだってみる C. 自力でなんとかする D. 環に一緒に来てもらう
89 :
88 :2007/01/09(火) 22:20:50 ID:g4pznXz30
あぁ、2006.12.30→2007.12.30で。内容は、かわりません。スミマセン・・・orz
A
「ありがとうございます」 「じゃ、決まりね」 環はマルチの肩に手をやって、 「ほら、マルチ。ご挨拶」 「よろしくお願いしますぅ。ええと……」 「相田響子です。よろしくね、マルチさん」 「はい。響子さま」 にっこり笑うマルチ。 響子は、かるい目眩を覚えた。『はい。……さま』 なんという甘美な響きだろう。 編集部に帰れば、下働きのバイト君を奴隷のように顎でこき使う響子だが、こやつらの 不満たらしい語尾の上がった返事との、この差はどうか。金や打算ではない、無垢の 信頼と奉仕の精神に裏打ちされたそれは、梢をわたる風にそよぐ葉擦れの音にも似て、 実に耳に涼やかで心地よいのであった。雄二が虜になったのも、むべなるかなである。 「そうね。雄二の件がすっかり片づくまで、この子はあなたに預けておくわ」 「えっ、それは……いいんですか?」 「ええ。さっきはああいったけど、警察だって、肉親だからといって捜査のことを なんでもかんでも教えてくれるわけじゃないし。あなたが色々インタビューして 廻って、事件についてわかったことを、わたしにも聞かせてくれるとうれしい」 「はい。できる限り努力します」 環の瞳をきりりと見据えて答える響子。
すっかり機嫌の直った環は、ふふふ、と笑い、 「マルチ。うちのことはいいから、しばらく相田さんのお手伝いをおねがい」 「はい。環さま。でも、それって……」 「そう。おでかけね」 「わぁ……」 口元で、両手を合わせてほころぶ顔は、ひなたに花の咲いたよう。 環が耳元に手をやって、 「ほら。支度支度」 「は、はい!じゃあ、響子さま。しばらくお待ちくださいね」 元気よくそう言って、マルチは廊下の奥へ、とてとてと駆けていく。響子が、 「あの、マルチさん、あまり外には出さないんですか?」 「ええ。何しろあの髪と瞳でしょう? 耳カバーを付けてても、変な趣味の女の子 としょっちゅう間違われるの。気をつけてあげて」 「はい」 「それと、大事なこと。あの子、ちゃんと充電しないと動けなくなるから。 出先でスリープモードになったら、たいへんよ。重さは人間の女の子とそんなに かわらないんだけど、ぐにゃぐにゃになっちゃうし。一日一度は充電して あげてね。ここと、「コウサカ」で、できるから」 「はい」 「それから……」
何くれとマルチのために言づてをする無防備な環の様子に、響子は、覚えず、クスクスと 笑い出す。 「……ふふっ、ふふふ」 「な、なによ?」 「ふふ、ごめんなさい。なんでもありません」 「なによぉ。言いなさいよ。なんで笑ったの?」 「ええ、あの、いいえ。ふふっ、あの、あんまり一生懸命なもんだからつい……」 「は?」 「マルチさんのこと」 「あっ」 しまった、と思ったがもう遅い。口を押さえてみるみる赤くなる環の様子に、響子は 堪えようとしても笑いが止まらない。 「くっ、ふふ、うふふ、っふふ……」 「もぅ」 ふくれっ面の環もやがてつられて笑い出す。ややあって、ようやく笑いが納まって、 「そうね。形見だから、ってこともないわけじゃない。でも、前はね。雄二があれに 熱中するのが大嫌いだったの。どうしても姉貴に、って置いてって、そうして、 じかに接するようになって、少しずつ、ね。つまり……」 「似たもの姉弟?(クス)」 「えぇ、えぇ。何とでも言って」 環は両手を拡げて降参すると、にっこり笑い、 「わたしの妹分、だいじにしてね」 「はい」 響子は強く頷いた。と、廊下をとてとてと渡る音。
「環さまぁ。響子さまぁ。できましたぁ」 マルチはニーソックスにキュロット、パーカー姿。白い耳カバーはカスタムらしく、 プロペラ機のブレードを小さくしたなりの細長く丸みのあるものを、寝かせ気味にして 付けている。環が、そばに寄って襟元をすこし直してやって、 「がんばってね」 「ふぇ……はぃぃ」 髪を優しくなでてやると、差し俯いて、はにかんで。 環はマルチを響子へぽん、と押しやって、 「じゃ、よろしくね」 「はい、お預かりします」 「気をつけてね。まがりなりにも遺書が出てるし、物騒な話にはならないとは思うけど。 まぁ、あせらずやって。といっても、あなたには締め切りがあったわね」 「ふふっ」 二人、微笑み合うと、響子はちょっと会釈して、 「マルチさん。いきましょう」 「は、はい。響子さま。あの、玄関までは、わたしが……」 マルチが響子の先に立って、廊下の奥へと歩き出す。
環は、廊下をあとさきになって連れだって歩く二人を、手を振って見送ると、 庭を見遣って大きく伸びをした。 庭にはつつじが満開で、空には霞、鹿威しが、こーん、と鳴って、植え込みの木々が 少し風になびいて、芝生の猫の、瞼も溶けそな春の午後。 玄関で、マルチは、三和土に響子の靴を置きながら、わくわくした風に、 「あの、響子さま。これからどちらへ?」 「そうね……」 正直なところ、響子も決めかねていた。このみの話を早く聞きたいのは山々だが、いくら エキスパートとはいえ、不慣れな助手にいきなりあの門番と対峙させるのは、いかにも 危険な気がしたのだ。もう少し聞き込みをしたり、あるいは、単に二人でぶらぶらする のもいいかもしれない。 「響子さまっ」 響子は…… A. このみの家に行く B. 学校に行く C. 警察に行く D. 公園に行く E. 商店街に行く F. 「コウサカ」に行く G. 環の家に行く
E よし、そのままデートだ
ここでうっかりデート編突入かよw 昔の選択スレってこんなノリだったよなぁwww
ωが立ったあたりから見てなかったんだがまとめも更新停止してるっぽいしwikiも全部纏める気もなさそうだし ω以降は地道に過去スレ見ていくしか無いのか
今のまとめサイト見てると、なんというか…… 支援板に(自称)本スレ立てて引き篭もっちゃった部分で 色々な物を無理に背負おうとして、結局何も解決する事が出来ないから 低迷ムードのまま耐え忍んで縮小再生産する道選んじゃってるからね。 楽には楽だろうから、もう過去ログまとめるなんてエネルギッシュな活動は期待出来ないだろう。 どんなに遅くなっても構わないから、ここはマイペースでもきちんと続いてて嬉しいよ。
もう支援板は色んな意味で末期的状態だよ…暗黒期とかそんな問題じゃなく
戦国時代に例えるなら葉鍵は上杉家といったところか 戦国初期に活躍して中期は目立った行動は無いけど実力者的な 上杉征伐みたいな事があるかは分からんけどな 書いてて思ったんだが訳の分からん例えだな 要するに全盛期は過ぎちゃったんだよな寂しい事に
まあ江戸時代になったら越後が無人の荒野になったわけでもなし、 無駄に騒がしすぎた側面もあるしピークを過ぎたなりの楽しみ方を覚えればいいわけですよ。 分からなくて支援するための板に引き篭もるよりはそのほうが健全さ。
設定が一切持ち越されいからこそ、どんなぶっとんだ選択でも後腐れなく好き勝手にできるのがある意味最大の売りだったのに 柳川の度を越えたクロスオーバーとか 過去作引っ張り出してクロスオーバーで最強決定戦やらSRCやら始めた時点でもうね
>>103 派生作品は派生作品、本編には干渉させないくらいの理知は期待出来る……
そう考えていた時期が私にもありました
オーケーわかる部分も反論したい部分もあるが とりあえず愚痴スレへ行け ゆっくりとはいえ進んでる今の話を邪魔したくないならな
はっきり言いますと支援板とはもう関わりたくありません><
IP抜かれるし…
「いらっしゃいませぇ」 向坂の家を出てから、響子たちが最初にくぐったのは、カバン店の入り口だった。 商店街をはいってすぐのところ、二間くらいのこじんまりした門構え、店先に持ち出した スタンドには、布製のチープなショルダーバッグやらデイパックやらが、色とりどりに、 鈴なりにつり下げられていて、体を通すのがやっとの有様。だが、一歩踏み入れば、磨き 抜かれたガラス製のショーケースが置かれ、革製の鞄や、ブリーフケースなどがきちんと 陳列されてある。しかも、来栖川本家のお膝元らしく、迎え入れてくれた売り子はロボ娘。 テキヤ同然の門構えといっても、この渋皮の親父、なかなかあなどれない。 「ふぅ」 どさり、とショーケースの上にバッグを置いて、響子は大きく息をついた。 響子のカメラバッグは、肩紐を掛けるリングのちょうど真下で、すっぱりと切り落と されていた。毛羽立ちすらない鋭利な切り口。門番にその気があれば、一息に首を飛ばす など造作もないことだろう。見るほどに背筋は凍るばかりである。 「響子さま、だからわたしに持たせてくださいって……」 「んん? いいの。こればっかりは、人任せにできないし」 「でも……」 うなだれてうちしおれた様子のマルチ。響子はそのつむりをなでながら、 「ありがとう。でも気遣い無用よ。これは私の役目。いい?」 「はい……」 ちょっと頬を染めて見上げるマルチに、微笑みかける響子。 だが、強がってはみても、応急修理もままならない場所を切られた上に、他に取っ手も ないバッグのこと、赤ん坊を抱くように、胸にかかえて運ぶより他はなく、ことさらに 疲れたというのが正直なところ。少し、都合の良い考えが頭をよぎって、苦笑いをする。
親父が、 「なにかお探しかな?」 「ええ。これ」 響子は、親父の方を向き直ると、肩紐の切れたバッグを差し出して、 「同じぐらいのサイズの。カメラを入れるから、中仕切りが多いのがいいわ」 「ふーむ」 親父は、響子のバッグの切り口を見て一瞬眉を顰めたが、あえて問おうとはせず、 棚からいくつかバッグを取り下ろすと、 「これとこれは、前のと同じショルダータイプじゃな。こっちの方が内張りが しっかりしとるで、カメラを入れるにはいいかもしれん。こっちはバックパックにも なる2ウェイじゃ。あんたの使い道からすると、うちの店ではこのくらいかのう」 「ありがと。中見ていい?」 「どうぞ。ゆっくり選びなされ」 無愛想にそう言って、店の奥で、伝票だか帳簿だかをめくり始める。 響子はバッグを改めながら考えた。今回の仕事、パパラッチが目的ではない。カメラを 使うにしても、インタビュー相手と対面してのポートレートだ。それならば、レンズ交換 の便よりも、門番の時のような、とっさのときに邪魔にならない、両手が自由になるもの が良さそうだった。決めた。 「おじさん。これ頂戴」 響子が2ウェイバッグを指さしながら店の奥に呼びかけると、親父は老眼鏡越しに響子を じろりと見遣り、引き出しを開けると、はさみを持って近づいて、 「すぐ使うのじゃろう?」
ぱちり、と値札を切り落とす。響子は、元のバッグの口を開けながら、 「うん。おいくら?」 「ふむ」 親父は値札を押し出すと、仏頂面で指を三本立てた。ニ割引でぽっきり三枚。悪くない。 が、おくびにも出さず、響子は目を閉じて渋い顔、ちょっと小首を横に振ると、右手を 開いて左の指を二本立て、ずい、と親父の目の前に突き出した。 「むぅ」 親父は眉間にしわを寄せると手のひらに指を三本。 と見て、響子はにやりと笑って手のひらに指を二本。 「むむむ……」 二人はそのまましばらく睨み合っていたが、やがて親父の方が、ふぅ、と息をつき、 老眼鏡をちょっと上げながら、 「よかろう」 「へへー。おじさん、好きよ」 「ふん」 響子がにこにこと差し出した札を仏頂面で受け取って、 「あんたのカメラに免じてな。儂は道具を大切にする奴が好きでの」 響子のカメラバッグの中に覗くのは、黒いボディの角が擦れて、真鍮の地金の見える、 古い、古い一眼レフ。 「あら、道具はないでしょ。大切なパートナーよ」
「そうじゃ。そうじゃったの」 親父ははじめて、ふっ、と笑うと、きょときょとと店内を見回しているマルチの頭を、 ぽん、と叩いてレジの方へと歩いていく。 響子はそれを見遣って微笑むと、元のバッグの中身を取り出して、ショーケースの上に 並べ出す。オートフォーカスですらない骨董品。単レンズをつけた同型のボディが2つ、 交換レンズが数本、ストロボ、露出計……。 マルチが、後ろから興味津々の様子でのぞき込んで、 「響子さま、これ……」 「んん? カメラ、はじめて?」 「はい、あの、えと、環さまのはもっと小さくて、後ろに画面がついてましたから」 「うん。最近のはみんなそうね」 響子はカメラを取り上げて、レンズのキャップを外すと 「これはね。フィルムに光を焼き付けて写真にするの。ケミストリーでね」 にっこり笑って、マルチにカメラを手渡して、 「見る?」 「は、はい!」 わくわくしながら両手を差し出すマルチ。 響子は、マルチの首に肩ひもを掛けてやると、背中にまわってぴったり体をつけた。 「わ、わ……」 真っ赤になってじたじたと暴れるのを、抱きすくめるように手を添える。 「暴れないで。しっかり持って、撮りたい方にレンズを向けて」
「は、はぃぃ」 カメラを持つ手を直してやって、ファインダーを目元にやって顔にしっかり押し当てて、 「なかに輪っかが見えるでしょ?」 「は、はい」 「ここを廻してピントを合わせるの」 「はい」 「ずっと廻してくと、輪っかのなかの切れたところがぴったり合う所があるわ。 こうして、すこしずつ動かして」 レンズの胴部に手をそえて、距離リングを左右に小刻みに廻してやる。 「合った?」 「は、はい」 響子はレリーズに手を添えて 「動かないように、脇を締めて、ゆっくり押し込んで」 「はい」 - ことん。 マルチの手にしたカメラの中で、小さなミラーの返る音。 「え、え??」 「はい、撮れた。あとは……」 レバーを起こして、 「こうやってフィルムを送っておくの」
「は、はい。あ、あの、響子さま。画は……」 マルチは背中の響子を怪訝な顔で振り返る。カメラの背にはエクタクロームの外箱が 突っ込んであるばかり。響子は、くすりと笑って、 「あら、残念。フィルムを現像しないと、画は出ないわ」 「むー」 マルチはちょっと不満そう。それでも、ファインダー越しの世界が気に入ったらしく、 にこにこ笑って、くるくると向きを変え、カメラを構えたまま顔を上げたり下げたり。 響子は楽しそうに、ふふふ、と笑い、 「フィルムはたくさんあるから。もっと撮っていいわよ」 「は、はいぃ、と、と……」 どこを写しているのやら、時折、かしゃり、かしゃりと響くシャッターの音を聞き ながら、新しいバッグに機材を詰めはじめた。 しばらくして、機材をあらかた詰め終わって、響子は、ふだんメモがわりにしている、 ちいさなデジタルカメラを取り上げると、くるくる廻るマルチの方にレンズを向けた。 カメラを顔から少し離して液晶画面でマルチをアップで追いながらチャンスを待つ。 やがて振り向いたマルチが、あっ、と声を上げ、 「それ……」 響子はレリーズに触れた。画が止まる。カメラを少し外して響子に笑いかけるマルチ。 「響子さま。それ、環さまのと、おんなじ!」 「ふふっ、ほら」 響子は、笑顔で駆け寄ってきたマルチに、液晶画面を差し出した。 「わぁ……」
「んー、70点、ぐらいかな?」 鼻の下をこすりながら、ちょっと得意げに微笑む響子に、マルチは勢い込んで、、 「響子さま。あの、この画、ください」 「ええ。いいわよ。印刷する? ROMにしようか?」 「いえ、ここで。カメラ、貸してください」 両手で捧げ持つようにデジタルカメラを受け取って、手首を返して袖口に指を入れると、 そこから細いケーブルを引き出して、カメラのポートに差し込んだ。 カメラを大事に胸に抱いて、目を閉じて、俯いて少し微笑む。 「あ……」 忘れていた。今の今まで、忘れていたのだ。いずれ名のあるマイスターだろうが、 誰だろう? AIチューナーの素晴らしい技倆に、響子はただただ首を振るばかり。 マルチが、茫然としている響子の手を引っぱって、 「響子さま。響子さまっ」 「……え、あ、ああ。なあに?」 「はい。これ、ありがとうございました」 差し出した一眼レフとデジタルカメラを受け取って、響子は、 「もう、いいの?」 「はい。この画、大事にしますね」 にこにこと見上げるマルチに、気になることを聞いてみた。 「ね、マルチさん。マルチさんは、自分の写真、持ってないの?」 「はい。あの、少しだけ。環さまは、そもそも写真をあまり好まれませんし、 雄二さまは、そのぅ……」
顔を赤らめるマルチに、響子は重ねて、 「雄二さんが?」 「あの、た、たくさん写してくださったのですが、わたしには決して見せては くださいませんでしたっ」 真っ赤になってうつむいてもじもじとするマルチ。雄二がどんな写真を撮りまくったの かは、あえて聞かないことにした。響子はちょっとため息をついて、 「お出かけとかは?」 「はい。環さまのお供で、よく」 「遊びに?」 「いいえ。鞄を持って、車に乗って、大きなビルに」 「どこの?」 「わかりません。エレベーターでずっと上がって、環さまの入って行かれた次の間で、 じっと座って待っていました」 向坂組本社ビルの、会長室、だろうか。響子は、続けて問いかけた。 「他には? お買い物とか」 「ときどき。環さまと。でも……」 マルチはちょっとうつむいて、寂しそうに 「いつもわたしのことで喧嘩になるんです。知らない人と。だから……」 「遠慮、してるのね?」 「はい……」 響子は深いため息をついた。 つまり、今回がほとんど初めてなのだ。お出かけするのも、環と離れて過ごすのも。 響子は、受け取ったデジカメを首にかけ、一眼レフをバッグに収めて肩紐をかけて ゆすり上げ、肘を抱いて口元に手をやって、天井を仰いですこし考えている。
と、マルチがにこにこしながら、 「響子さま。次はどちらへ?」 「そうね……」 「響子さまっ」 くいっ、くぃっと袖を引く。 そう。どこまで真実らしく書こうとも、もはや本人がいない以上、ゴシップと五十歩 百歩の憶測記事だ。よしんば掲載が一号くらい遅れても、どうということはない。 響子は大きく頷いて、にっこり笑って指を立て、 「ここよ」 「え……」 「この商店街。徹底的に調べるわ」 「わ、聞き込みですねっ」 はしゃぐマルチに、響子は目を閉じて、ちっちっちっ、と指を振り、 「夏の新作。ワンピースとか水着とか。アクセサリーなんかも要チェック。あとは……」 「……え」 「帽子や日傘も。日焼けは乙女の大敵よ」 「……」 「そうそう、サンダル。去年つるが切れて捨てたのよね。我慢して足ムレなんて最低」 「響子さま……」 「いろいろ廻って、あとの仕上げは甘味処ね。宇治金時、そろそろかな」 「き、響子さまっ。それって……」 目を輝かせて見上げるマルチに、響子は身を乗り出してにっこり笑い、 「そ。お買い物。今日はとことん付き合ってもらうわよ。いい?」 「わ……」
- どんっ! 「響子さまっ」 体をぶつけるようにして抱きついてきたマルチの髪を、響子はやさしくなでてやって、 「ふふっ。さ、行きましょ。ぼやぼやしてると日が暮れるわ」 「は、はい!」 マルチの手を引いて、出口の方へ行きかける。と、背後から、 「待ちなされ、姐さん。忘れ物じゃ」 呼び止める声に振り向くと、釣り銭を持ったぼろぼろの親父。髪はぼさぼさ、眼鏡は 曲がり、顔中あちこちひっかき傷ができている。 「まぁ。どうしたの、おじさん」 「……」 響子が釣り銭を受け取りながら、親父が肩越しに無言で指さす方を見遣ると、 レジの奥に、この店のロボ娘が、指をくわえてもの欲しそうにこちらを見ている。響子が ちょっと手を振ると、にこにこしながらぶんぶんと手を振り返す。親父が、じろり、と 振り返ると、娘はふくれてぷいっと横を向いた。親父は、ふぅっ、とため息をついて、 「ストライキじゃ。福利厚生が足らんといって暴れおって、もう手が付けられん。 さっきの値引きといい、今日は踏んだり蹴ったりじゃな」 「……あ、あははは」 何と答えていいやらわからず、あいまいな笑みで答える響子。親父は、ふっ、と笑うと、 「あれがどうしてもと言うてな。こいつはおまけじゃ」
手に持ったポシェットをマルチの首にかけてやる。 「あ、ありがとうございます……」 親父は見上げるマルチの頭を、ぽん、と叩くと、響子の古いバッグに手をやって、 「こいつは処分しておくわな」 「うん。おじさん、いろいろ、ありがと」 響子は、頷く親父に、笑顔で会釈をすると、マルチの手を引いて、 「さ、行きましょ」 「はい!」 「ありがとうございましたぁ」 ロボ娘の元気な声を背中に、二人、連れだってカバン店を後にした。
入り口のバッグの隘路をかき分けて外に出ると、昼下がりの商店街は、買い出しの 主婦達の人波が引いて、気怠い空気が流れている。放課後の学生達が繰り出して賑わう までには、まだ幾分かかろうというところ。 「響子さまっ」 わくわくと響子の袖を引っ張るマルチ。さて、どこから攻めようか。 響子は…… A. ブティックに行く B. スポーツ用品店に行く C. アクセサリーショップに行く D. 帽子屋に行く E. 靴屋に行く F. 甘味処に行く G. 「コウサカ」に行く H. 環の家に行く I. その他(商店街:選択時に場所を指定)
C
なんか凄くいい話を読ませてもらった。
122 :
名無しさんだよもん :2007/02/04(日) 23:47:58 ID:8VS+cA/2O
期待
ほっ
し
125 :
名無しさんだよもん :2007/03/26(月) 21:23:10 ID:3jY90zOG0
あげる
さげる
なげる
128 :
名無しさんだよもん :2007/06/08(金) 22:38:10 ID:I+ulB8Wj0
', ヽ、 ヾ ヽ、___ 入ノ:.:.>-ニヽ ,イ:.:::::::.:/ ̄ ̄ニヽ、 ト、_,ィ‐==-:.:.:.::\ iト、___/::∧:.:.:.:.:.:.:.:| 泣けるでぇ Lr−--t-'-tテ-、:.::| | i/ニヽ,j| / { ヽj ∧∧} リ〃 `-'__ヽ,:.∧∧イィィミ ≦ ヾー-‐'´:.:.∠ ≧ ≦ ≧:.:.:.:.:.:.:.:.:Z ≧ __ , ヘ、 _ < ≧ー―≦ 入 _ ≦、 ,イ ヽ、 // / ≦_ ____Z ンww>wwwwミww∠ ヽイ ヽ、 \ // , ' <ニ) /ヽ==il o i|/ ミ r=ヽ、 ヽ, ', // iイi _ ,/<二) {//:.:.:::|| l| ミニニヽ、|l i| i | | l |l //し/ / L_」:.:.:.ノ|l o l| ミ |:.:.:.ヾ、 l|−-|_!  ̄ |iリ:.:.:.:.:しし'⌒  ̄ ̄`ー-‐'l ミ |:.:.:.:.:.:}} リ i|:.:.:.:.ミ リゝwwwwwwwwwwwwヾ ノ:.:.:.:.:.:.:i| /
あれだな、SRCとかに走り出したのがいけなかったんだな。 もっと皆本編と外伝の区別ぐらいつくと思ってたけど、 ちょっと我慢出来ない人の我慢出来なさを甘く見ていたよ。
>>129 俺も自分の贔屓のキャラが不利になるからって我慢できずに選択無視する人がでるとは思わなかった。
リレーSSであんな露骨な贔屓するなっつうの……
このスレまだあったんだな… すごく懐かしいぞ
悪いのはフィガロで荒らした馬鹿だろ・・・常考
フィガロがよろしくないのは分かるが、陵辱と雪緒贔屓を選択無視してやらかした大馬鹿が沸いたのが痛かったんだよなぁ・・・
その後の吊るし上げ大会と支援板へ篭ったのがとどめだったな。 あれで書き手がみんないなくなってしまった。
雪緒なんかにゃこれっぽっちも愛着なかったがな。俺は。 天いなやってねえし。結局はスレの民度が低すぎたのが原因よ。 俺も含めてな。
新しくなった支援版が糞仕様なのも廃れた一因かと。 続く名雪の話もgdgdだったからな。
せっかくだからなんかやってみよう。どうせ過疎るのが落ちだろうけど。 主人公の出身作を選択してください。 A ナイトライター(with 雀鬼's) B Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜 C 誰彼 D MOON. E Routes F White Album G 雫 H CLANNAD I フルアニ J テネレッツァ K うたわれるもの L To Heart M 天使のいない12月 N Kanon O 鎖 P Filsnown Q まじかる☆アンティーク R AIR S ToHeart2 T Tears to Tiara U ONE V 痕 W こみっくパーティー
作品選択肢提示から10秒以内に選択されてたころが懐かしい・・・ もう15分以上経ってるじゃねーか・・・ こんな無駄なこと書いても余裕で選択出来ちゃうんだろうな・・・ じゃあそろそろ選ぶかな HのCLANNADでお願いします これで先に選択されてたりしたらむしろ嬉しいぐらいだなw
んじゃあ主役選択 A 岡崎朋也 B 古河渚 C 藤林杏 D 藤林椋 E 一ノ瀬ことみ F 伊吹風子 G 坂上智代 H 春原陽平 I 柊勝平 J 芳野祐介 K 古河秋生 L 古河早苗 M 幸村俊夫 N 伊吹公子 O 相良美佐枝 P 春原芽衣 Q 岡崎直幸 R 宮沢有紀寧 S 岡崎汐 T とも U 坂上鷹文 V 可南子 W 三島有子
L
だが選んだところで書き手がいない…
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最後の打ち切り選択肢を選んだ俺は フルボッコにされてる彼が不憫でたまらんかったぜ 叩くならフィガロか打ち切りを選んだ俺を叩けば良かったのにw
>>143 あんときフルボッコにされた俺だ。よし氏ね貴様。
俺はいまだにあのときの魔女狩り野郎はフィガロ厨の自演だと信じて疑わない。
つうか俺がその選択無視だとか言われるやつ投下した直後は特になんも反応せんかったくせに フィガロ起きたあとでグダグダいいやがるんだぜ。絶対アレ、フィガロやった奴の自演だよ。 文句言うなら俺が投下したときすぐに言えっつうの。あのとき俺と一緒に叩かれた彼は戦友だと思ってる。
>>142 倒すかどうかじゃなくて一発当たるかどうかの選択肢だっつうの。
今までもっときわどいの普通に流れてたのにな。グダグダいうぐらいなら自分で書いて流れ変えろつうの。
それができんからフィガロやらかすんだろうけどな。
雪緒に思い入れなんてないね。天いなやってねえもん。
ま、俺も含めて責任転嫁が大好きな香具師らの集まりのスレじゃ遅かれ早かれこうなるのは目に見えてたよな。 新作移行してもそっちを盛り上げることは考えずに延々と愚痴大会続ける馬鹿ばっかだもん。
色々と潮時だったんじゃね?30スレ以上も続いてりゃ大概のネタは出尽くしてるから 二番煎じやメタネタだらけになっちゃうし。
>>145 よう戦友、久しぶりだな
俺もここでそれなりに長いこと書き手やってきたけど
あんな理不尽な理由で吊されたのは初めてだ
>>147 だな。過去に何度もあれよりヤバイものが通ってたのによ
例えば俺が昔やらかした奴だったら空本部消滅や観鈴ちん種割れとかな
>>147 え…じゃあ貴方は
A みさき達が監禁されてる部屋に雪緒が様子を見に来た
B みさき達が監禁されてる部屋を浩平が見つけた
C みさき達が監禁されてる部屋をオタク横が見つけた
って選択肢でBが選ばれたにもかかわらず
浩平と一緒に雪緒も現れた
って話を書いて、更に
A 浩平は一撃雪緒に当てたが結局捕まった
B 浩平は為す術もなく捕まった
って選択肢を並べたことになるよね……
これはさすがに「陵辱厨の雪緒贔屓乙」ってならない?
>>150 ヒント
あーたの直後に書かれた実質選択無視の深山ポカリは通らなかった。
まぁそういうことだ。
深山ポカはすぐにリコールとか反応あっただろ。 選択無視と感じたならすぐにそういう反応起こすべきなんだよ。 それから続きが短文連投されたわけじゃないんだし。 一度通しの流れになったなら後は書くことで修正するしかねえんだよ。 結果的に選択無視ととられることはよくなかったのかもしれんが それでフィガロとかの諸々の責任まで押し付けられて戦犯にされるのは理不尽にも程がある。
>>150 よう。戦友。選ばれた選択を書き手が自由に解釈する権利を前はもうちょい融通きいたよな。
結局、自分が読みたくない展開が続きそうだから強制終了させて責任はそういう展開にした奴持ちってか。
どっちが厨だよ。フィガロとうーきのときの唐突和解やらかした奴は絶対ゆるさねえ。
自分が望まない展開を短文短時間の選択無視で覆して陵辱展開を無理強いしようとした人が言うと説得力がありますね。
その「書き手による選択の自由な解釈」を「みさき達を助ける」為に融通きかせて欲しかった・・・
融通利かせる前にフィガロされたんだよ。足腰たたん娘三人抱えて浩平が逃げおおせるのは無理あると思って あとでセミー達と一緒に救出ってな流れにな。
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ぶっちゃけ↑のAAをあと200回は貼り付けないといけないわけで。
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みなさん、お久しぶりです。 私は古河早苗、パン屋を経営しています。 そんな私ですが、最近になって変わったことが起きました。 それは…… A 店の前に人が行き倒れていたのです B ある手紙が私の元に届いたのです C 暫く渚の学校の学食にパンを出張販売することになりました 埋めようとしている人間が現れてから書き始める俺天邪鬼。やるだけやってみようか
おう。頑張れB
やればできるじゃない べっ、別に復活してほしいなんて思ってないからねっ!
「おう、早苗。お前宛に手紙が届いてるぞ」 「私にですか?」 いつものように私がパン屋の店番をしていたところ、 秋生さんが私に一通の手紙を手渡しました。 真っ白な封筒をペーパーナイフで切り、まずは手紙の内容を確認します。 そこに書かれていた内容を見て、最初私はそれを理解することが出来ませんでした。 「え……これって……」 「んあ? 早苗、名に固まってるんだ? 読めない字でも……」 秋生さんが私の手紙を後ろから覗き込んで、同時に固まりました。 ……ええと、これはなんなんでしょうね? まず手紙には「おめでとうございます」と見出しに書かれていたので、 何かの宣伝か招待のメールだということは分かります。 ですが続きが…… A あなたは私共の主催する「南の島リゾート3泊4日の旅ご招待」に選ばれました B あなたは当番組の「視聴者プレゼント」に選ばれました C あなたは魔王を倒す「勇者」に選ばれました D あなたは「全国変態選手権特別審査員」に選ばれました
D
「なあ、早苗。なんだこりゃ? 新手の不幸の手紙か何かか? 昔あったろ? 不幸って字を続けて書いたら棒と誤読されちまって、 それで不幸の手紙の代わりに棒の手紙が大流行したってことが。 こいつも多分それの亜種か何かで、何かの字が「変態」って誤読されたとか」 「ええと……多分違うと思いますよ」 秋生さんの疑問ももっともだと思いました。 ええと、私もこんな手紙初めて貰ったので少々困惑してます。 とりあえず続きを読み進めてみましょう。 おめでとうございます! あなたは「全国変態選手権特別審査員」に選ばれました! ご存知全国変態選手権も今回で36回を迎え、 今回からは一般の方々にも変態の素晴らしさを伝えるべく特別審査員にと…… 読み進めてみても内容がさっぱり分かりませんでした。 「早苗、これ捨てろ。ロクなもんじゃねえぞ多分」 「ちょっと待ってください。もうちょっとだけ読んでから……」 とにかく要領を得ないので選手権概要を先に読んでみることにしました。 変態選手権とは? それは『変態は犯罪者の集まりである』という誤解を払拭するため、 全国津々浦々から集った変態たちの誇るべき変態行為を競うための大会である。 そのためには……
「頭が痛くなるな」 「えっ? 何だか面白そうじゃないですか?」 「……おいおい、マジか? 何でこんなもんが……」 「それに審査員料として時給1万円を頂けるみたいですよ」 「何ぃっ!?」 私の一言に秋生さんが盛大に驚きました。 確かに冗談みたいですけど、本当にそう手紙には書いてます。 そのお金が何処から出ているのか物凄く気になりますけど。 「大会ってのは大体一日がかりだから、普通に考えて8万近くは貰えるな。 それが本当なら確かにオイシイ。街の売れてないパン屋にはオイシイ話だが……」 秋生さんが考え込みました。 これ、本当にどうしましょう? A やってみましょうか B 手紙をもっとよく読んでから考えても遅くはないと思います
A
「やってみましょうか」 「マジか!?」 私の一言に、秋生さんが驚いて声を上げました。 面白そうだからと言うのも理由の一つですが、 何より最近古河ベーカリーは財政難に陥ってるんです。 今月は何かとお金を使う場面が多かったものですから。 「まあ、正直に言やあこの臨時収入は有難いんだが、いいのか? 変態選手権だぞ? どんな変態がいるか分かったもんじゃねえぞ?」 「大丈夫ですよ、きっと」 「……すまねえな、早苗。お前には苦労ばかりかけて」 「秋生さん、それは言わないお約束ですよ」 お約束の冗談を掛け合いながら、 私は同封されていた出欠ハガキの出席部分に丸をつけました。 手紙によると大会は来月らしいです。 手紙を読んでいるうちに、変態選手権のあらましについても分かってきました。 意外にもこの大会は目的事態は非常に真面目な大会みたいですね。 第一回大会は一人の元学者が主催して行われた、とあります。 なんでも、その学者は元々駆け出しの考古学者だったそうですが、 昔の歴史をより具体的に想像するために、身近に思うために、 自らが発掘した仮面を四六時中肌身離さず顔に付け続けていたらしいです。 それからその学者の研究ははかどったらしいのですが、 世間の目は決して良いものではありませんでした。 結局その学者はそれが原因で学会を追われてしまったのです。
秋生さんはここまで読んで、 「ただの変態じゃねえか!」 とツッコミを入れましたが、変態選手権なんだから、そうツッコんだら負けじゃないでしょうか。 話を元に戻しますと、この学者はこの時決心したそうです。 世の中には自分と同じような存在が日陰に追われている。 実力や才能があっても変態である者は表舞台に立つことが出来ない。 なら、自分が全国の変態たちに救いを差し伸べよう、と。 全国の変態を集めて一つのコミュニティを形成し、 そして競わせることにより個々の成長を図り、 同時に変態が社会にとって文化的価値のあるものと、アピールするのが目的というわけらしいですね。 秋生さんはこのへんで頭が痛くなったそうで読むのをやめました。 ですが、私は面白いと思うんですけどね。 大会規則に拠れば犯罪行為は一切禁止らしいですし。 こうやってみると、結構マジメな大会だと思っちゃうのは私だけでしょうか? 数日後、私が店番をしていると、また私宛に手紙が届きました。 送り主は先の変態選手権大会運営本部からで、 特別審査員としての参加に対するお礼の言葉と、事前説明会のお知らせが入ってました。 予備知識の無い私に、大会がどのように進行するのか説明するのが目的だそうです。 意外に紳士的ですよね、大会名の割に。 でも、説明会ですか……会場はどこでしょうか? A この近郊。私のためにそうしてくれたのでしょうか? B 隆山。確か温泉街でしたよね C 夕凪。テレビ局がある街でしたから、もしかすると公共の電波に……?
A
説明会の当日、私は会場に向かいました。 相手側の配慮か、会場はすぐ近くに設けられていました。 その辺り非常に紳士的だと思います。 外から見るに、会場も取り立てて変な部分はありません。 ここに来る前は、例えば入り口に孔雀の羽のようなものが大仰に飾ってあるとか、 そういう外見派手派手な如何にも変態ってものを想像してたんですけど、 ごく普通の大きな公民館が会場で、変わった装飾とか、そういったものも一切ないみたいですし。 「油断するなよ、早苗。変態相手だ、何があるか分かりはしねえぞ」 付き添いで来てくれた秋生さんが、私に注意を促します。 そう構えないでも大丈夫だと思うんですけど。 私たちが会場に入ると、中では幾人かが既に待っていました。 会議室に椅子が用意され、テーブルの向こう側では仮面を被った人が座っています。 ああ、この人が手紙にあった主催者の…… 「古河早苗さんですね? 今回は我々のご誘いを受けていただいて感謝の極みです。 全国変態選手権運営本部大会実行委員長のハクオロです」 「ご丁寧にどうも、古河早苗です」 「付き添いの古河秋生だ」 「エルルゥ、お二人にお茶を」 「あ、どうもお構いなく」 ハクオロさんが隣に控えていた女性に指示しました。 ……とりあえず、変態といっても常識は持ち合わせているようで一安心です。 「突然ではありますが、 あなた方一般の方は変態と言うものをどういったようにお考えですか?」 「え、それは……」 「全裸でコート着てるような連中のことだろ?」 面と向かって言いにくいことを、秋生さんはさらりと言ってのけました。 ハクオロさんはその答えを予想していたようで、気にした風も無く続けます。
「確かに一部の性犯罪者の報道によって、変態=性犯罪者という考えが世間にかなり広く浸透してます。 ですが我々の目的がそのような行為にはないことを、まず分かっていただきたい。 変態と言うのはそもそも、行動が常軌を逸している者と我々は定義しています。 そうですね、変人や奇人などといった言葉に近い意味として、この言葉を使っているとでも言いましょうか。 全ての変態が性犯罪者になるというわけではありません。 一般の方の中にも犯罪を犯すものと犯さないものがいるのと同じように」 「は、はあ……」 ハクオロさんの変態談義が始まりました。 おそらく大したことは書いていないので、 1〜2レス飛ばして読んで頂いても結構だと思います。むしろ推奨です。 「『いつの時代でも新しい並を築くのは変態である ソ=ウロー(1874〜1923)』 これはある哲学者の遺した有名な言葉であり、我々の座右の銘ともいえる言葉です。 今現在社会に浸透している便利な発明品の数々、それが何故今日存在するのか。 それらはすべからく変態として世から冷たい風を浴び続けていた者が、 その類稀なる才能と、常軌を逸した発想によって作り上げたものです。 確かに人間という生き物は郡の和を乱す存在を異物として認識します。 変態と呼ばれる存在が郡の和を乱す存在であることは、残念ながら事実でしょう。 ですが、その変態たちにこそ、形骸化した形式に囚われない発想や、 普通や常識といったものの外に見出す発見などをしてのけるものです。 古くは聖書にあるノアの箱舟の一件などが一例でしょう。 また、画家の多くは没後に作品が評価されたりなどします。 それは彼らの発想や構想が常軌を逸していたからであり、 それらが受け入れられるまでに多大な時間を要するためであるからです。 歴史上有名な人物を思い起こしてみてください。 彼らの多くは変態として世間からつまはじきにあっていた者です。
これらの例のように、変態が世の中の作り上げていくといっても過言ではないのです。 我々はそんな変態が不当な弾圧を受けることのないよう、 一般の方に変態への理解を深めていただけるよう努力を重ねています。 変態の中には文化的素養のある者、娯楽的価値のある者、 また高い技術を擁する者も少なくはありません。 そんな宝石の原石のような存在である彼らを保護し、 次世代の世界を担う存在となって頂くべく昇華を促すことを第一目的としています。 幸い過去35回の大会開催によって、 我々の存在、我々の立場も少しずつながら世間に認知されるようになりつつあります。 第1回大会の時の参加者僅か3名からスタートし、 今では予選で参加者を厳選するまでに大会も全国化することに成功しました。 今回は次の段階として、一般人という立場であるあなたが審査員の立場に就くことにより、 一般と変態の間の相互理解を深め、 また変態選手権の中に新しい風を呼ぶことを目的としています。それで……」 真面目に聞いていると、なんだかハクオロさんの言うことも一理あるように聞こえます。 確かに変態と言うだけで社会から爪弾きにされるのは、あまりにも可哀想ですよね……。 「……というのが、我々の目的であり理念です。ご理解頂けたでしょうか?」 「えっと、その……」 A とても感動しました! B とりあえず理解は出来ます C ……あまり、そうは思わないんですけど
B
「ええと……とりあえず、理解はできます。 あなた達の言いたいことや、私たちに知ってもらいたいことというのは」 「……そうですか、それは何よりです」 ハクオロさんは口ではそう仰っていましたが、 どことなく寂しそうな物言いでした。 きっと私が心から共感しているわけではないというのを、見抜いているのでしょう。 「世間から我々の悪いイメージをなくすためには、まだ多大な時間を必要とするでしょう。 それほどまでに、今現在変態への風当たりは厳しいものがある。 我々の意見に心から賛成できなくてもいい。まずは理解から始めて欲しい。 それが我々の希望でした。古河さん、あなたはご理解のある方でとても嬉しく思います」 「人に理解されないことの辛さなら、私も身に染みて分かってます。 いつもパンを売る時に、何故か私のパンだけ一つも売れずに残ってしまって……。 やっぱり普通とは違ったパンにしちゃダメなんでしょうか……」 「人は新しい味に辛辣な感想を述べるものですよ。 例えば今は全国的に親しまれているコーラ飲料も、 日本に初めて入った頃は『口の中が爆発する』と、散々な評価を浴びたのです。 あなたのパンもまだ一般の方の理解を得られないだけでしょう。 常軌を逸したパンを焼くことは悪ではありません。 あなたが努力を止めぬ限りは、いずれそれに見合った成果はちゃんと帰ってくるでしょう」 ちょっとだけ、涙腺ゆるんじゃいました。 そうですよねっ、やっぱり私は間違ってないんですよね! さすがハクオロさんです、実行委員長です。目からウロコが落ちるようです!
「分かりました! 私はこれからも、私だけのオリジナルパンを作り続けます!!」 「それがいい。私も陰ながら応援は致しましょう」 「……って待てコラ! 早苗に要らん自信つけさせるなこの変態仮面!!」 「何を言うんですか、秋生さん! ハクオロさんはとっても良い方じゃないですか!!」 「私は自分が変態であることに誇りを持っているが、 その呼び名は版権的な問題が浮上する可能性があるので止めていただきたい」 「うぅっ……早苗がコイツに洗脳されつつある気がするぜ……」 秋生さんが何だか悶えちゃってますが、 割といつものことなので、きっと今回も気にしないで大丈夫でしょう。 「さて、本題に入りましょう。ではこの冊子のページをお開きください」 ハクオロさんはそう言って、私に一冊の本を手渡しました。 「これは今大会の資料です。 おそらく古河さんは変態選手権をよくご存知ではないでしょうから用意しました」 たぶん私だけじゃなく、 平凡に生きている人間の8割以上が、この大会の存在自体知らないと思いますけど。 とりあえず私はページを捲ってみました。 「何か質問があれば遠慮なく仰ってください」 ハクオロさんの言葉を聞きながら、私はざっと目を通してみました。 まず目に付いたのは…… A 大会の進行について B 審判規則について C 禁止行為について D 変態選手権歴代優勝者について
A
「ええと、ハクオロさん。この部分ですが……」 「何処ですか?」 私は3ページ目を指差しました。 そこに書かれているのは大会の進行について。 大会の開始は午前九時から、それはいいでしょう。妥当な時間だと思います。 それから実行委員長挨拶。これも普通ですね。 変態選手権のなのに大会の形式はごく普通に見えるから不思議です。 ですがその後が問題です。 次に書かれていた一文、それは…… 「あの……大会進行って具体的に何をするのでしょうか?」 「それは8ページをご覧になってください。 そこに大会がどのような形で行われているのか詳細があります」 私はそう言われましたので、8ページを開いてみました。 なるほど、確かに詳しく書かれています。それによると大会は…… A トーナメント形式で、どちらがより変態かを最後の一人なるまで競う大会。いわゆる対戦型のスポーツと同じ形式 B コンテスト形式で、より変態な行為を行ったものに高得点を与える大会。テレビ番組の○○大賞などによくある形式 のようです
B
どうやら、この大会はコンテスト形式のようですね。 各々が変態的な演技を私たち審査員にアピールし、 そしてその中でより変態的な行為を行ったとされるものが高得点を得る。 もちろんその点数が最も高いものが優勝となるわけです。 よくテレビ番組などで見る形式の大会ですね。 ○ちゃんの○○大賞とか。あれとは違って20点満点じゃなさそうですが。 ただ難しそうなのは審査基準ですね。 ただ単に変態である、というだけで高得点を与えてはいけないそうです。 変態行為の中にも美を追求したものや、娯楽として価値のある変態など、 様々な他の要因も考慮した上で点数をつけないといけないそうで。 何だか大変そうですが、一度やると言ってしまいましたし、 ハクオロさんは私に期待を寄せてくださっているようなので、 がんばらないといけませんね。 では、次に確認すべきことは何でしょうか? A 審判規則について B 変態選手権での禁止行為について C 大会参加者について D 歴代優勝者について E 選手参加の方法について F とりあえず、もう聞くことはなさそうですね
B
次に確認したのは禁止行為です。 この冊子によると、参加者の中で規則に違反したら直ちに失格となる、とあります。 この大会に審判はいないみたいですから、その判定を下すのは私たち審査員ということになりますね。 おそらく、他のベテランの審査員の方々に任せても大丈夫だとは思いますが、 私も審査員の一人として、禁止事項はちゃんと把握しておかないといけないと思います。 「禁止事項ですか。そんなに深く考えずとも大丈夫ですよ。 あなた方の常識で考えられる範囲の要項ですから」 「そうなのですか?」 「はい。犯罪に触れる行為は勿論のこと、危険物の持ち込み禁止。過度な暴力表現の禁止。それから……」 「エロスは程ほどにな、というか全面禁止です」 ハクオロさんとお茶を用意してくださったエルルゥさんがニッコリ微笑みます。 変態選手権の割に、そういった事項をしっかり決めているのは意外です。 「いえ、何もおかしいことなど無いですよ。 我々にとって変態行為とは、一種のスポーツのようなものですから、秩序があって当然。 例えば人を刺傷することに快楽を感じる変態がいたとして、 我々はその人物にそういった性癖があることについて否定はしません。 ただ、それを”変態”という言葉で決して正当化してはならない、子供でも分かる理屈です。 法に触れる変態行為は実行してはならない。それが変態としての最低限のルールです。 そのような変態は、己の変態行為を更に別の形へと昇華させたり、 法的、人道的に許されるような形で変態行為を表現したり、そういった努力をすべき。 それが我々の求める変態道なのですよ」 ええと、とにかくすごい考え方なのは分かりましたけど……正直頷いていいのか分からないです。 流石にこの次元まで来ると、多少引いてしまう部分が少なからずあります。 ええと……あとは今のうちに聞いておくべき箇所はないでしょうか? A 審判規則について B 大会参加者について C 歴代優勝者について D 選手参加の方法について E 前大会のあらましについて F エルルゥさんがどんな変態なのか気になります G というか、もう帰りたいです
A
審判規則についても、一通り聞いておかないといけませんよね。 私も審査員の一人として、しっかり参加者の方を審査しなければいけないのですし、 その時に間違った審査の仕方なんてしたら目も当てられません。 「審判規則については26ページをご覧ください」 ハクオロさんにそう言われて、私はページを開きました。 だいたいは想像していたとおりのことが書いてあります。 簡単に要約してまとめると、 『より変態なものほど高得点』でオーケーだと思います。 ただ、さっきも言ったとおり、 その変態行為には社会的価値がある、と感じたものについては加点対象となるようです。 逆にその行為が本人の自己満足だけで終わっていたり、 大勢の人間を不快にさせるような行動であったりすると減点対象らしいですね。 大勢の人間が不快と感じない変態行為なんて聞いたこともありませんけれど、 この部分は常人の私たちに到底理解できない基準があるんでしょう、きっと。 「このような評価基準を設けてはいますが、 コンテストという形式上、どうしても評価が個人の主観によるものになってしまいがちです。 なるべく客観的に、公平になるよう努めてください。無論身びいきなどはもっての他です。 第15回大会では自分の家族に不当に高得点を与えた審査員が、変態の資格を剥奪されています。 古河さんについてはそのような心配は無いと思いますが」 「当たり前だっての! 大体俺の家族に変態はいねぇよ!!」 秋生さんが声を荒げていますが、そんな事よりもとっても気になる言葉ですよね。 この場合『家族ぐるみで変態行為をしている家族がいる』ことと『変態に資格があるのか』ということ、 どちらを疑問に思ったらいいと思います? ちなみに私は両方だと思います。 聞くことはもうないでしょうか? A 大会参加者について聞きたい B 歴代の優勝者について知りたい C この大会にどうやって参加するのか知りたい D 去年の大会の様子が知りたい E 他の審査員の方々について聞きたい F もう聞くことは無いでしょう
Fそろそろ動こう
「ハクオロさん、どうもありがとうございました。 私がどこまで出来るかはわからないですけど、一生懸命審査したいと思ってます」 「いえ、礼を言わなければならないのはこちらの方です。 あなたにとっては別世界も同然のこの大会に、審査員として名乗りを上げて頂いたのですから」 私は最後に挨拶をして、今日はもうお暇することにしました。 大会の概要もようやく掴めてきたことですし、 後は私一人で、この資料をじっくり読んで当日に備えれば大丈夫だと思います。 「それでは失礼します。また当日にお会いいたしましょう」 「いえいえ。ハブ・ア・グッド・エッチ(良い変態を)」 「えっ?」 「第30回大会優勝者の友人が残したといわれる言葉です。 では、当日はよろしくお願いします」 何故かその優勝者と友人を私は知っている気がしてならないです。 特に友人の方はかなり身近にいるような気が……。 それから大会の当日まで、私は頂いた冊子を読んで過ごしました。 『変態の歴史』『絵でわかる変態の区分』『変態はどのように社会に貢献しているのか』 などなど、普通に読んでいて面白い部分もあったりしますから意外です。 途中、家に遊びにいらっしゃった朋也君達に怪訝な目で見られたりもしちゃいましたが、 秋生さんのフォローもあり、おおむね問題なく日々を過ごしていました。 流石に店番中に読むことだけは、秋生さんに土下座されて止められましたけど。 そして当日、時間前に到着した私ですが、会場は…… A 見物人など殆どいない、完全内輪の空気が流れていました B チラホラと見物人らしき人がいるだけで、まだまだ認知度が低いことが伺えます C 結構人が多いです。流石に30回以上もやってれば見に来る人も増えると言うことでしょうか D 恐ろしいぐらいの超満員です。こんな凄い大会の審査員をやれるか不安になってきました……
C
会場にはかなり沢山の人がいらっしゃってました。 私はてっきり、変態さんたちだけの内輪大会だとばかり思ってましたから、 これは意外すぎる不意打ちです。本当に意外すぎます。 「ったく、変態なんて見て楽しんでるヒマ人が こんなにも多いのかよ。こりゃあ世も末だぜ……」 秋生さん、その言葉って自分で自分の首を絞めてると思います。 結局何だかんだで秋生さんも見物についてきてしまいました。 私の心配をしてついて来て下さったそうで、心遣いは非常にあり難いです。 というか、ハクオロさんから資料と一緒に貰ったVIP席の券を使う機会が出来て、 非常に助かってます。誰も呼ばなかったらハクオロさんに悪いですし、 流石に変態選手権を見物に来てはどうですか? と知人には言うのは憚られましたし。 会場の中の審査員控え室では、ハクオロさんが既に待っていて下さいました。 「古河さん、本日はどうもご足労ありがとうございます」 「あ、いえ……」 「もう準備は完了し、後は定刻を待つだけとなってます」 そう言われると、私が選手として参加するわけじゃないのに緊張してきます。 ただ、よく辺りを見回してみますと、 審査員の方々もそうそうたるメンツが揃っている気がします。 まずは先日私に並ならぬ変態談義をしてくださった怪しい仮面の光るハクオロさん。 それから向こうで執拗にノートにラクガキを書いて悦に浸ってる男の子、 変わった形の眼鏡にスネ夫カットで高笑いしている男性などなど、 一言で言い表すならとても濃い方々が場を占めています。 ……絶対に、浮いてますよね私は。 一応他の審査員の方々に挨拶をした方が良いのでしょうか。私は新参者なわけですし……。 A ノートにラクガキを書いている男の子に声をかける B スネ夫カットの男性に声をかける C 全身黒ずくめに赤いマフラーを巻いた男性に声をかける D 鼻でスパナを回している男の人に声をかける E 触らぬ神にたたりなし
A
「今回審査員をやらせて頂くことになった古河早苗です。よろしくお願いしますね?」 私は一番近くにいた、ノートにラクガキをしている男の子に声をかけました。 その男の子は私の方に顔を向けると、ノートをパタンと閉じてから、 まるで退屈だと言わんばかりの口調で話し始めました。 「僕は長瀬祐介。……今日限りの付き合いだろうけど、よろしくお願いします」 「祐介君ですね? 祐介君はいったい何を書いてらっしゃるんです?」 「……世界破滅の光景」 いろいろと、マズい人に声を掛けてしまった気がしないでもないです。 「……それって楽しいんですか?」 「楽しくなければやりませんよ、こんなこと。 ……ああ心配しないで下さい。実行に移すつもりはありません。 あくまで妄想で楽しむからこそ価値があるんですよ、こういったものは。 宝箱は開ける直前が一番楽しいのと同じ理屈です」 いろいろと不穏な返事が返ってきました。 ここで気になるのは、実行しようと思えば実行できると言いたげな口ぶりでしょう。 既に変態の域を超えていると思います。流石審査員の地位は伊達じゃないんですね。 後でハクオロさんに聞いたことですが、 あの祐介君というのは審査員の中でも一、二を争う変わり者だそうで、 己の変態を極めた結果”電波”という超能力まで開眼しているのだとか。 その能力が使い方によっては社会に大きな利益を生むとして、 第7回変態選手権の優勝経験まであるそうです。 どこまでが本当なのか判断しかねますが、とても変わった人だというのだけは十分に理解しました。 いえ、最初から分かっていましたけどね。この場に普通の人などただの一人もいない、なんてことは。 もう他の人に声を掛けるのはやめておきましょう。怖いです、怖すぎます。
九時を回り、遂に変態選手権開催の時間となってしまいました。 私は審査員席に座り、他の審査員の方々と出番を待っています。 ちなみに、隣はさっきの祐介君です。 今この瞬間でもノートにラクガキをやめてないので、正直言ってとても怖いです。 逆隣が紳士的なハクオロさんであることが、幸いといったところでしょうか。 「早苗ぇーっ! 頑張れよぉぉっっっ!!」 そして、すぐ傍のVIP席では秋生さんが選手でもない私に大声援を送ってます。 他の観客の視線が少し痛いです。……ちょっとだけ、恥ずかしいですしね。 「由緒あるこの変態選手権もついに36回目を迎えました。 これも皆様の協力、変態を愛する心、そして弛まぬ努力の結果であると思います。 普段変態である皆様は決して明るい道を歩んではいないでしょう。 ですが忘れないで下さい。我々は間違ったことはしていない。 そして誇りを持ってください。 我々が極めんとする変態道にこそ、新しい世界を作るキッカケが眠っているのです。 ですが我々だけが特別と言うわけではない。 一般人の方々でも、誰もが変態となれる素質を持っている。 我々はそれに気づいた。ただそれだけの話。 一般の方に対し優越感も劣等感も持つ必要は無い。 我々の持つ変態魂が、この世を救うと信じて……ハブ・ア・グッド・エッチ(良い変態を)」 ハクオロさんの開会宣言と共に、大会は始まりました。 ですが……この演説、ハクオロさん達が自分の変態さに誇りを感じていることは分かるのですが、 これを共感しろと言うのは……普通の人にはちょっと酷な話ですよね。
「ではエントリーナンバー1番、机積みの達人・折原浩平!」 ハクオロさんのその一言で、 向こうのカーテンの奥から参加者の方が出てきました。 見た感じは普通の高校生といったところでしょうか。何年か前の朋也さんや渚を思い出しますね。 そして反対側からは大量の机が運ばれてきます。 ……こ、これを全部積むと言うんでしょうか? 参加者の方が早速作業に取り掛かってます。 「では彼が作業中の間、彼が用意してきた幻の机100脚タワーの映像をお流しいたしましょう」 ハクオロさんがそう言うと、スクリーンが降りてきて、そこに画像が映りました。 そこに映っていたのは、ある民家の庭に高々と積まれた机の山々。 しかもその机、ご丁寧に東京タワーと同じ形に積まれてます。 確かに、これは凄いです。真似は絶対にしたくないですけど。 「彼は学校で机積みをしているうちに、変態に目覚め、 今では机をより高く積むことに、史上の喜びを感じるようになったとのことです。 来年に自立するそうですが、その際に机だけで構築された机ホームに居住する予定とあります」 だからってそこまでしなくてもいいじゃないですか。もうこの映像だけで私には彼が十分変態に見えます。 「出来たぜ!」 映像がひと段落ついたころ、参加者の折原さんから声が上がりました。 ……見てみるとさらに私は常識を疑いました。 自画像ならぬ自机像を作ってます、この人。しかも似てます。 様々な種類の机を組み合わせて配色も考えてる辺り、只者じゃありません。 一体何が彼をここまで突き動かすのでしょうか? これが変態と言うものなんですか? ……っと、見とれてるだけじゃいけないんでした! 私は審査員なんですから点数をつけなくちゃいけません。 大体の評価平均は資料の最後にあった前大会の出場者と点数一覧で把握しているつもりですが、 ええと、この人の場合はどれぐらいが妥当でしょうか。百点満点中、ええと…… A 少し変態分が足りないと思います。50点 B 65点。微妙なところですね C 80点。これぐらいはあげるに値すると思います D 90点を与えてもいいくらいにある意味感動しました!
B
65点、というところでしょうか? この人の机積みは凄いです。凄いんですが……。 変態と言うにはちょっと違う気がするんです。 とはいえ、平均が50になるようにつけるのが目安みたいですから、 それでも割りと高めなんですがね。 いくら変態度が低いといっても、あれだけの技術は評価の対象になりますから。 「……ふぅん」 横から不意に声がしたかと思うと、祐介君がこちらを見ていました。 どうやら、私のつけた点数を見ていたようです。 「あの……私の審査、問題あったでしょうか?」 参加者の方々に聞こえないよう、小声でそっと祐介君に話します。 「僕に他人の審査をどうこう言って改定させる権利は無いですよ。 ただ、一個人の感想としては……」 A まあ、妥当な評価だなと思っただけかな B あなたは変態について何も分かってないって思っただけです C ……あなたには変態の素質がありそうです
A
「まあ、妥当な評価だなと思っただけかな」 「そうですか……なんとか祐介さんのお眼鏡には適ったのですね?」 「……あなたも少しは変態を見る目があるとだけは言っておきましょうか。 ですが厳しく見ればまだまだですけど。評価基準が多少甘いです。 加えて先ほどの選手の変態行為については、芸術点を加味していないのが気になります」 どうやら私は、的外れな評価を下しているわけじゃなさそうなので一安心です。 変態を見る目があるといわれて喜んでいいのかは、かなり疑問なんですが。 こまごまとしたチェックを祐介さんが入れる辺り、 変態選手権と言うのも中々奥の深い大会なんだと妙に感心してしまいます。 ……あれ? そういえば、私の採点基準を話したわけではないのに、 どうして祐介さんは私の採点に芸術点分の加味が足らないと指摘したのでしょう? もしかして、これが”電波”という超能力の賜物なのでしょうか。 それから数十人の変態さんを評価しました。 ただ、こう言っては何ですが……最初の人と違い、 変態であるというだけで、それ以上何の進歩も無い人がチラホラといますね。 ヒマだからズボンをぬいだりはいたりぬいだりはいたりするだけの人や、 大量の鉛筆で体をつついて悦に浸っているだけの人など、 私達を置いてきぼりにしている人が何人か目立ちます。 だいたいは最初の人のように変態ぶりを自分の特技に昇華させたりなどして、 50〜80点という中々高い点数を取っているのですが、 そういった人たちは精々30点がいいところです。 なるほど、そういった人たちが点数を下げるので平均が50になるわけですか……。
「……今回は底辺が悪い意味で目立ちますね」 「そうだな、マイ同志よ。我々が現役選手として大会に出てた頃はもっとこう……」 最初から数えて15人目を評価し終えた辺りで、 隣の祐介君が、私とは逆隣のスネ夫カットの人とそんな話をしていました。 ああ、やはり他の審査員の方々もそう思ってたんですか。 私も変態選手権の何たるかが分かってきたのでしょうか? 冷静に考えて、それは喜ばしいことなのか疑問ではありますけど。 それからは私が見る限りは、特に悪くない変態さんたちの変態行為が続きました。 驚くほどに独創的な変態行為を見せたり、 または他の誰もが真似できないような技術を併せ持っていたり、 確かに変態でなければ社会で大きな活躍が見込めそうな人たちばかりです。 そう、変態でなければ。 そして最初から数えて32番目に差し掛かったときでした。 私は次の人の変態行為を見て思わず声をあげそうに成ってしまいました。 いえ、だってあれには驚くしかないですよ。 その選手と言うのは…… A 頭のてっぺんから足の先まで完全に真っ白な庭師のレクトールさん B 元日本兵を自称する変態的修行マニアの坂神蝉丸さん C 格闘ゲームを恐ろしい方法でプレイする芳賀玲子さん D 前代未聞のジャムを作り上げた水瀬秋子さん E というか、朋也さんが出てるじゃないですか!?
C
「エントリーナンバー32番、ゲームの鉄人・芳賀玲子」 次にやってきたのは、見た感じは普通の女の子でした。 ですが……この人もやはり変態選手権に出るだけあって、 とてつもない変態技をもっているのでしょう。 反対側のカーテンから、今度はテレビに似たようなものが出てきます。 確かあれは……アーケードゲームと言いましたっけ? 秋生さんからチラッと聞いただけなので、よく分からないんですけど。 この女の子は、ハクオロさんからマイクを受け取ると高らかに宣言しました。 「腕に自信のある人、あたしと対戦しな〜い? ただし、初心者はお断り! 本当に強い人だけ大募集ね〜!!」 観客参加型ですか……面白そうだとは思いますけど、 私はゲームはあまりやらないんですよね。 それに、自分で誘うぐらいですから、よほど腕に自信があるのでしょう。 観客の人たちもそれが分かってるのか、中々手が上がらずにいると……。 「よし、俺がやるぜ!」 と、VIP席から秋生さんが立ち上がりました。 「いいのかな、おじさん? ゲーセンに通ったことあるの?」 「俺の趣味は野球やバスケやゾリオンだけじゃないぜ。 ゲームにしたって、そこらのゆとり世代には負けないぐらいやってるさ」 ……そういえば、思い出しました。 以前雨が降っているときに、 秋生さんが朋也さんと家でゲームをして遊んでいて、 あまりに一方的な展開に怒った朋也さんが、リアルファイトにまで発展させたことが……。 確かに秋生さんなら、こういう相手に申し分ないでしょう。 ただ……審査員の立場としては、 秋生さんが勝ちそうになっても空気を読んで欲しいですが。 いえ、秋生さんは接待プレイの出来ない人ですから、そんな期待は出来ないですけれど。
二人がゲーム機に向かい合って座ります。 あのゲームは最近CMもよく流れている、結構有名なゲームみたいです。 秋生さんもこれなら得意だといわんばかりにコントローラーを握り締めました。 対する玲子さんのほうは…… 「おいテメェ、何やってるんだ!?」 「あたしはこれでいいよ、早く始めよ?」 文句を言う秋生さんをまるで気にした風でも無く、 なんと腕の代わりに足でゲームのコントローラーを掴んだじゃないですか!? ここで玲子さんがズボンじゃなくスカートを履いてたら、下着が丸見えになっていたところです。 一応そういうことを配慮してズボンを履いてきてるのでしょうか。 「ゲーセンだと流石に店長が文句言うから家でしか出来ないけど、 ここなら思いっきり足でプレイ出来るから最高だよね?」 「それで俺に勝てるんならな」 見くびられた、と感じた秋生さんが不機嫌そうに言い返しました。 確かにコントローラーを足で動かすなんて、恐ろしいまでの変態プレイです。 ただ、驚くのはそれだけじゃなかったんです。彼女はその上…… A 秋生さんに勝ちました B しかもストレート二本勝ちで C 加えてノーダメージで D その上一戦に10秒かからずに E ダメ押しに手で別のゲームをプレイしながら
D
とんでもない負け方する展開も欲しかった
それからの展開はあまりに一方的でした。 キャラクターが宙に浮いたかと思えば、 そのまま流れるような連続攻撃が見事に決まり、 そして倒れて起き上がるタイミングを狙ってフェイントを掛け、 更にまたコンボをつなげていってます。そしていつの間にやら画面にはK.Oの文字。 「な、何ぃっっ!?」 これには秋生さんもびっくりです。 観客のために、スクリーンにもその映像を映していたわけですから、 秋生さんが手も足も出せずに負けていく姿は、沢山の観衆の目に焼きついたことでしょう。 「にゃはは、一本目取ったぁ〜☆」 「ま、まだ勝負はついてねぇぜ!」 秋生さんがそう言ってますが、もう誰の目にも勝敗は決したように見えてます。 恐らく二本目も玲子さんのほうがストレート勝ちするんでしょうね、きっと。 「いや、これは驚いた。まさか足であそこまでレバーを操れるとは」 ハクオロさんが素直な賞賛の声をあげてます。 ああ、やはり変態の人たちでもこれは凄いと感じるみたいですね。 ……と、また歓声が沸いて秋生さんが地面に突っ伏してます。 勝負が決まったようです。私がハクオロさんに気を取られている間に。 タイムを見れば一戦目8.7秒、二戦目9.6秒。 しかも、秋生さんが一発もダメージを入れることが出来てないんですよ? ちなみに秋生さんの名誉のために言いますけれど、秋生さんはゲームが弱いわけじゃないです。 近くのゲームセンターの連勝記録とやらを持ってるそうで。 その秋生さんをここまで完膚なきまでに負かせるなんて、一体どれぐらい練習したのでしょうか。 「……一つ聞かせろ。なんでわざわざ足でゲームやってるんだ?」 「あたしはね、ただゲームをプレイするのには退屈だったんだ。 それで三年ぐらい前に、やり込みプレイの一環として足でゲームをやり始めたんだけれど、 それがもう面白くて面白くて! 今ではTASをツールなしで出来るぐらいだよ☆」 「そこまでやれば、もうお前は変態を通り越した化物だ!! コ○ンじゃねえんだから手を使え!!」 ええと、それがどれほど凄いのか、分かりかねるのですが……。 なんでも彼女はその腕……いえ足を買われて、来年からゲームのテストプレイヤーになるのだとか。
大会は問題なく進み、昼休みの休憩時間となりました。 この大会、本当に凄い変態さんが現れるから油断できません。 なんというか……彼らには『何かを極めてる』的なオーラを感じます。 「どうですか、初めての変態選手権の感想は?」 私が食事を取っていると、ハクオロさんが私に声を掛けてくれました。 「うまく言葉には出来ないですけど、何かこう……凄い、ですね。 皆普通と違うというか、活き活きと物事を極めてる、というか……」 「それが変態の素晴らしさですよ。 極めるべき変態道を見つけたら躊躇はしない。妥協もしない。 彼らは自分の納得行くまで己を鍛え、変態行為に勤しむ。それが変態と言うものなのです。 古河さんも次回の大会に出場してみては如何ですか?」 「私には無理ですよ。そんな、人様に自慢できるような特技も無いですし」 「残念です。技術が無くとも、変態を愛する心と情熱があれば誰でも参加出来るのですが……」 「すみません」 というか、私に変態を愛する心なんて多分ないですよ? ですが、ハクオロさんの言葉からは、 ハクオロさんがこの大会に誇りを持っていることだけは分かりました。 やはり自分が作り上げたと言う自負と責任があるんでしょうね。 さて、休憩時間も終わり、大会が再開されたわけですが、 今度の変態さんは…… A 眠ったまま食事や運動を人並みにこなせる水瀬名雪さん B 変態的米マニアの遠野美凪さん C 本格的に変態の臭いがする月島拓也さん D 骨董品に行過ぎた感情を抱いている宮田健太郎さん E ……もう、特に説明の要るような凄い人は出てこなかったです
なぎーB
「エントリーナンバー37番、米の覇者・遠野美凪」 次に現れたのはこれまた一見普通の女の子でした。 ですが、もう36人も変態さんを見てるんです。 この人が普通じゃないことぐらいいい加減分かります。 例によって反対側のカーテンから、小道具のような扱いで大量のお米が運ばれてきます。 一体彼女はあの米で何をするのでしょうか? 米粒アート? ……いえ、それは職人さんがやっていることですし、 もっと予想の斜め上を行くような芸当をやってのけるのでしょう。 美凪ちゃんはチラリとお米を見ると、事も無げに…… 「……一番右、新潟産コシヒカリ。その一つ左、秋田産ササニシキ。 二つ左、宮崎産ササニシキ。三つ左、北海道産ヒエ。 左から三番目、青森産どまんなか。左から二番目、岩手産ひとめぼれ。 そして一番左、魚沼産コシヒカリ」 「むぅっ……正解だ!!」 一瞬の迷いも無く、産地と種別を完全に言い当ててしまいました。 このお米を用意したと思われる、祐介君の隣の人が驚きの声をあげてます。 こ、これは凄いです。食べもしないで全部言い当ててるなんて……。 「って、美○しんぼの京○さんの真似すんな!!」 「……真似じゃありません。あっちは食べて判断してました。 でも私は、見ただけでお米については全部分かっちゃいます。えっへん」 そろそろクレーム役が板についてきた秋生さんが、 周りの目を気にする風でも無く、美凪ちゃんに文句をつけてます。 ですが美凪ちゃんの方はさらりと流してますね。 「会場の方々の中には、私の判定が本当かどうか信じられない人もいるかと思います。 そういう人は、お弁当の残りなどから、ご飯粒を一粒でもいいので私に見せちゃってください。 そこから、さっきと同じことをやって見せます」 美凪ちゃんが毅然と言い放ちました。 ここまで来ると、変態と言うより一種の超能力にも思えます。
バックのスクリーンには大量のお米に囲まれて、 うっとりと恍惚の表情を浮かべている美凪ちゃんのVTRが流れてます。 ……確かに、これは変態です。 傍目にもそれが分かるほどに変態です。 美凪ちゃんの挑発を受け、 お弁当箱から余ったおにぎりなどを見せた人が何人かいらっしゃいましたが、 美凪さんはそれすら百発百中してました。品質の良し悪しまで。 しかもおにぎりに関しては海苔の産地まで当ててる徹底振りです。 一体彼女はどうしてここまでお米に執着しているのでしょうか。 謎です。謎で仕方が無いです。 ただ……彼女の凄さを見ていると創作意欲がわきますね。 お米を使ったライスパン、なんて面白そうです。 機会があれば是非作りましょう。 さて……これはどれぐらいの点数をあげるべきでしょうか? A まあ、漫画のキャラクターの技術の延長ですし……45点ぐらい? B この変態技術には驚きました。70点分の価値はあります C いえ、賞賛に値するぐらいです。80点を進呈しちゃいましょう D ここまでやられたら90をつけるしかないじゃないですか E 更に具体的な点数を0〜100の間で選択してください
E 75点
これはなかなかだと思います。素直に驚いてしまいましたから。 しかも美凪ちゃんはその変態振りから、地元米店の偽ブランド米チェック担当に抜擢されたとか。 政府関係者から声が掛かるのも、そう遠くないかもしれません。 これだけの変態なら、平均点以上をつけるべきでしょうね。 …そうそう、祐介さんに芸術点の事を指摘されていました。 お米に囲まれている美凪ちゃんのVTRは芸術点として評価してもよさそうです。 決めました。75点にしましょう。 私を含め全ての審査員の点数が出揃ったところで会場からどよめきが起こりました。 どうやら、全体の中でもかなりの高得点だったようです。 横を見ると、スネ夫カットの人が不気味に微笑んでいますし、その奥の人はスパナで鼻を回されています。 これが好印象なのか否か…聞かない方が身のためですね。 さて、続いての変態さんは誰でしょうか…? A もの凄い変態チックにアイスを飲み込んでいく伏見ゆかりさん B 豪雨の中でラジオ体操とブートキャンプをする里村茜さん C どんな生物相手でも友達になれるという佐藤雅史さん D ありえない誤字メールを次々に送信する栗原透子さん E あら、先ほど見かけたような気が…って、エルルゥさん!? F その後、特にこれといった変態さんは現れないままコンテストは終わりました
D
「エントリーナンバー41番、誤った携帯・栗原透子」 幾人かの審査をし、次にやってきたのは、 度の強そうな眼鏡をかけた、少し控えめそうな女の子でした。 そろそろ私にも法則が分かってきました。 『見た目普通の人ほど中身は変態である』これ、変態選手権の常識ですね。 彼女がどんな変態行為を見せてくれるのでしょうか。 そう期待していた私の前に、スクリーンから映像が映し出されました。 そこに映っていたのは、携帯電話でメールを打つことに勤しむ透子ちゃんの姿でした。 右下にこれは再現映像ですと書かれてるのが気になりますけど。 ただ、その内容が…… 『ちゃんとつかうえるよ』『コーヒー、ごさそうさま』『いいふいんき』 などなど、ちょっと誤字がヒドイです。 ですがまだまだ変態と言える領域には至ってないですよね。 と、私が思っていたその時でした。 不意にスクリーンに現れた単語『まそっぷ』 ……ええと、私は頭の中を総動員してこの単語の解析に勤めました。 ですがどんなに考えても、どの誤字であるか皆目見当がつきません。 これが何の誤字であるか分かる人は教えてください。気になって夜も眠れなくなりそうです。 しかもスクリーンの透子ちゃん、誤字に全く気がついていません。 それに、話はここだけで終わりではありませんでした。 次にまたメールを打とうとしている透子ちゃんでありましたが、 急に透子ちゃんが「ふえぇ……」と焦ったような言葉を漏らしました。 どうしたのかと思って、私がスクリーンを見てみると、
……文字化けしてます。たった今打っているメールが。 あの、人から受け取ったメールが文字化けすることは稀にありますけれど、 自分で送信するメールが、しかも打ってるそばから文字化けするなんて初めて見ました。 しかも文字化けした文字が偶然にも< `ш´> という文字になってしまっているのが不思議です。 逆にこれは狙ってやっているんじゃないかと思ってしまうほどです。 携帯でどうやってそんな操作ミスをしたのか疑問に思ってなりません。 どんな文字のコードであっても、そんな文字化けは起こらないと思うのですが……。 逆に考えれば、透子ちゃんはデバッガーとしての才能があるということでしょうか。 「……どう思う?」 「どう思うって……何がですか?」 私が点数を付けようとした矢先に、 隣に座っている祐介君が、私に話しかけてきました。 「彼女の変態行為ですよ。……有り得ない誤字、か」 なんだか祐介君の言っていることが意味深です。 ……もしかして、これは私を試しているということでしょうか。 この人にあげた得点で、私を審査員としてふさわしいかどうか確認を? 真偽はどうあれ、審査に手を抜くことは出来ないですよね……。 さて、この子の点数は何点ぐらいが妥当でしょうか。 A これは変態と呼べる代物じゃないです。20点ぐらいですね B 変態的なミスであることは認めますが、技術も華もないです。50点がいいところでしょう C 偶発的な事象を簡単に引き起こしてしまうところに惹かれました。70は固いですね。 D 超先生は偉大です。90を超えました E 裏をかいて、この子の変態行為には点数を付けられないでFAです F 私が点数を付けようとした矢先、ハクオロさんが「待て」と物言いをつけました。これは一体……?
F どうなるだろ?
「待て」 私が点数を付けようとした時、 ハクオロさんが急に声をあげて、透子ちゃんの動きを制しました。 「ふぇ……?」 透子ちゃんの方は、急にハクオロさんに声を掛けられたからか、 すくみ上がってしまい、満足に言葉も発することのできない状態になってます。 ですが、ハクオロさんは一体どうしたというのでしょうか。 「残念だが、今の変態行為について我々は評価を下すことは出来ない」 「え、えぇっ!?」 それは突然の発言でした。 会場には動揺が走り、ざわざわと落ち着かない雰囲気になってます。 「静粛に! ただ今の判定の理由を説明いたします。 彼女の変態行為『誤字のメールを送る』についてですが、 誤字のメールを作ってしまうということについては問題ありません。 ただし、彼女はそれを他人へ次々に送信している。 例え彼女が誤字のメールを送っているという自覚が無くとも、 解読困難なメールを多数の人間に送ったと言うことは事実。 これが変態行為でなければ、ただのメールの失敗として認められるだろうが、 誤字のメールを送信すると銘打っている変態行為となれば話は別だ。 ……それは迷惑行為であり、そのような変態行為を認めることは出来ない」 ハクオロさんの言葉に、他の審査員の方達が一斉に頷きました。 いろいろとツッコミどころが満載な気がしないでもないですが、 そこは敢えて気にしないことにしましょう。 「あたしは、ここでも駄目な子なの……?」 ハクオロさんの裁定に、 透子ちゃんが涙を浮かべてハクオロさんに問いかけます。 ハクオロさんは、そんな彼女に向かって微笑みを浮かべ、答えました。
「……いや、私は君の変態性を否定するつもりはない。 ただ、その表現が誤った方向に向いていた。それだけの話なのだよ。 君の変態性だって、磨けばまだまだ良い方向に光るはずだ。 断言しよう。君は決して駄目などではない。 表現の方法を変えればいいんだ。今度こそ誰にも迷惑を掛けないような変態行為へと昇華させれば良い。 更なる高みに到達した君を、我々は待っている」 ハクオロさんの言葉に、 会場から一つ、また一つと拍手が送られます。 ……ええと、ここは感動するところなのでしょうか。 あまりにも普通じゃないので、どう反応すればいいか悩んでしまいます。 当の透子ちゃんというと、ハクオロさんの言葉にいたく感動したようで、 涙を流しながらハクオロさんに抱きついていますし。 これは変態にしか理解できない世界、というものなのでしょうか。 「……丸く収まってよかった」 「どうかしたのですか、祐介君?」 「いや、前にも同じようなことがあってね。 その時の人は”爆発は芸術だ”と開き直って、会場に危険物を持ち込むものだから大変だったよ」 「は、はあ……」 彼曰く、そんな無茶が通ったのはシステムがしっかりしてない黎明期だけで、 今ではそんな危険な人が入り込む余地は全く無いから安心しても良いそうで。 変態選手権もいろいろと大変なんですね。 私はそう思いつつ、今書こうとした点数を慌てて消しました。 私が彼女に何点をあげたのか、それはご想像にお任せします。 今度の変態さんはどんな人でしょう? A お笑いに関しては地球上で最も優れていると自負する柏木楓さん B ホットケーキに並ならぬ執着を抱くスフィーさん C 見た目小さな子なのに一体何処にこんな力が? 自称妖精のラスティさん D 魔物との戦いで肉体を限界まで鍛えたらしい川澄舞さん E 髪型に関しては絶対の自信があるらしいインカラさん F ……後は、特筆すべき人はいなかったですね
E
「エントリーナンバー50番、巨大アフロ・インカラ」 ハクオロさんの説明で現れた人は、 これまた大きなアフロが特徴的な人でした。 キセルを片手に「にゃぷぷ」と笑いながら、 その人は悠然とステージの中央に歩いていきます。 「愚民どもめ、朕の編集したテープで、朕の変態さ加減に恐れ、敬うがいいにゃも」 インカラさんが右手を上げると、 スクリーンに映像が映し出されます。 ……と思ったら映ったのは文字だけでした。 期待していた半面、肩透かし間が否めないです。 スクリーンに映し出された文字は淡々と説明を始めました。 『己の髪については絶対の自信があるインカラ。 彼は、己の髪の為には、その私財全てを費やしても構わないと考える変態である。 全国各地から集めた毛生え薬の種類は総数300を越え、 自宅の地下で誰にも盗まれないよう、様々なトラップを駆使して保管している徹底振りである』 ふと思ったのですが、 そんなところに薬を保管していては、取り出すのに一苦労じゃないでしょうか。 いえ、そこまで大量の薬を用意した気概は買いますけれど。 文字にはまだ続きがありました。 『彼の偉大さはそこに留まらない。 市販の毛生え薬で満足出来なくなった彼は、 独学で研究に研究を重ね、ついにスキンヘッドも三日でアフロになる毛生え薬を発明したのである』
インカラさんが懐から薬を取り出し、高々と掲げてます。 そういうのは、ここで発表するよりも製薬会社に売り込んだ方がいいと思いますけど。 わざわざここで発表することを選ぶのが、変態の生きる道というものなんでしょうね。 ここでスクリーンにやっと映像が映りました。 そこに映っていたのは普通の男の人です。 少しおかしな納豆の束のようなものを頭に巻いてますが、一応普通です。 「これは朕の甥の三日前の姿にゃも。だが、この薬を使うことによってヌワンギは……」 バッとインカラさんが手を振ると、反対側のカーテンから人が現れました。 その人は今スクリーンに映っている人物と同じ人。 ただ、髪型がアフロでした。見事なまでにアフロでした。これでもかというぐらいアフロでした。 「この通り、完全なアフロになったにゃも!」 「どうだテメェら! これが叔父貴の薬の効き目だぜ!! おう叔父貴、この髪型ならエルルゥも俺に惚れ直すよな?」 「もちろんにゃも。アフロに勝る髪型などないにゃも! 今度は娘にも勧めるにゃも!!」 息子さんならともかく、娘さんはアフロを嫌がると思いますけど。 とりあえず、それについては関係ないですし考えないことにしましょう。 インカラさんはそれから科学的なデータ云々をスクリーンに映し始めました。 それを見る限り、どうやらその薬は本物らしいです。 いえ、よく分からないですけど、難しい説明も入ってますしきっと本物でしょう。 確かにアフロフェチが高じて、こんなすごい薬まで作ってしまうなんて、 彼もやはり変態です。見事なまでの変態です。 ……秋生さんの将来の保険に、一本頂いた方がいいかもしれませんね。 点数的には、この人は何点なんでしょう? A すごいですけど変態性は薄いです。50点ぐらい B アフロフェチもここまで来れば大したものです。70点ぐらい C その発明は画期的過ぎてノーベル賞ものじゃないですか!? 90点オーバーです D もっと具体的な点数を0〜100の間で選択してください
A
さて、このインカラさんの評価ですが…私は50点とさせていただきました。 ……いえ、エントリーナンバーが50番だからとかではないですからね? 確かに素晴らしいと思います、科学の進歩を垣間見たとさえ言っていいでしょう。 ですが……変態的というにはいささか真っ向な内容だと思います、アフロになる事以外は。 そんなわけで、技術点も加味して総合的に50点としました。 見た目は明らかに普通じゃないんですけどね……やはり『見た目普通の人ほど中身は変態である』は 真理なのかも知れませんね。 「あまりお気に召さなかったようですね」 祐介君が私に話しかけました。 「ええ、変態と言うには何か違う感じがしまして……それにしても、こんな所でわざわざ新薬を 発表するとは、何か変態的な何かにこだわる理由でもあるんでしょうか?」 「たぶん、ただ単に目立ちたいからじゃないでしょうか」 今の言葉にちょっと納得してしまいました……確かにある意味目立ちますよね、この大会。 今後はこのインカラさんの毛生え薬をめぐって、育毛剤業界から引っ張りダコになるんでしょうね。 でもアフロになってしまうのは、そのままだと実用化は難しそうですね、更なる改良に期待です。 さて次の方は…? A ガラクタの欠片を見ただけで元の製品の設計図が書けるという名もなき屑屋さん B 『必殺カレー』なるカレーらしき何かを極めたと自負する柚原春夏さん C バイオリンの音で任意の種類の虫だけを撃退するらしい一ノ瀬ことみさん D 常人にはとてもできないような数多の変態的武勇伝を持つと噂される、自称伝説の男・棗恭介さん E 特筆する人は現れず、本日の出場者は全て出揃いました。
E
その後も様々な出場者が登場し、私たちは本日出場した全員分の審査を 途中大きなトラブルもなくなんとか終える事ができました。 ……いや、出場した変態さんたちの行動や存在自体がトラブルものではないかという気もしましたが、 そんな方々の集まる中でありながら、不思議と滞りなく大会が進行しているのが実に不思議でした。 きっと、ハクオロさんをはじめ選手権関係者の適切な運営によるものなのでしょう、って、今は私もその一人でしたね。 選手の方々の発表が終わり、ハクオロさんは会場の中央に立ちました。 「さて、本日お集まり頂いた出場者は全て出揃いました。今回も己の技術を磨いた変態たちが数多く集まり、 世界中にはまだまだ隠れた変態がいることに私たちも感動しております……では、 A 審査員による最優秀賞等の審議がありますので、暫くお待ち下さい」そうでした、私も審議に参加しましょう B 第36回変態選手権、栄えある最優秀賞を発表いたします」優勝者の発表が始まります C これで変態選手権第一日目を終了いたします。第二日目も引き続きお越し下さい」…え?今日で終わりじゃないんですか??
A
「ではこれより審議に移りますので、結果発表まで休憩時間とさせていただきます」 ハクオロさんがペコッと一礼し、私たちに目配せします。 それを受けて、左端から順々に席を立ち、 ステージの奥に戻るハクオロさんに続いて歩きます。 私も祐介君の後ろに続いて、ステージから退場しました。 そして、会議室で審議が始まりました。 みんな真剣な表情をしているので、心なしか緊張してしまいます。 審査員の方達もだいたいが濃い面々なので、私だけ浮いている気がしてならないです。 「では……本日の優勝者についですが、まず何かご意見のある方は挙手をお願いします」 「あの、意見ではなく質問なのですが、 優勝者は今まで私達が採点した結果だけで判断をするものではないのですか?」 私はふと思った疑問を聞いてみることにしました。 同じ人が同じ基準で判定し、数字と言う絶対的な差がもう現れているのに、 これ以上何を審議するというのでしょう。 「点数だけで決まらないのが、変態選手権の面白いところなんですよ。 確かに一度点数として、個人個人の変態さを値として示しはしました。 ですが、ここでまた今度は我々審査員全員が話し合うことによって、 先ほどでは分からなかった、新たな発見を見出したり、 間違っていた審査基準を訂正したりすることにより、 より理想的な変態を選び出すことを可能とするのです」 「審査の場合によっては最高点が同点となることもありますから」 ハクオロさんとエルルゥさんが、初心者の私に丁寧に説明してくださいました。 なるほど……司法で言う三審制のように、より正しい結果を出すためのステップというわけですね。
「今大会では若干名審査に値しない者が出てはしまいましたが、概ね問題なく変態行為をこなしました。 総参加人数58名、最低点68点、最高点871点。平均点は562点です。 前回と比較すると参加者は3名増加、最低点は15点減少、最高点は7点増加、 平均点は3点減少しています。 以上の結果から考えて、今回は前回より上下の差が顕著に現れる結果となったと見ていいでしょう」 こういう数字を何も見ず、スラスラと言えちゃうハクオロさんはすごいです。 「最高点は37番か。確かに彼女は良い。 全盛期の我輩と戦ったとしても、恐らくは五分以上の勝率を見込めるだろう」 「24番も中々だと思いますよ。変態さが前回より磨きが掛かってます。 やはりリターナーは違いますね。僕の電波でもあれに対抗できるかどうか……」 スネ夫カットの人と祐介君が話し合ってます。その二人は私も覚えています。物凄い変態さんです。 いえ、この大会に変態さんじゃない人なんて一人もいませんでしたけど。 「1番の人も中々良い変態さんでしたよ」 「15番も面白い。俺はあいつを推そう」 審査員の方々は自分イチオシの人を次々に挙げていってます。 そして次には挙げられた人の批評が始まりました。 あの人は変態さが足りない。インパクトだけを重視していて工夫が足りない。 などなど、やはりプロは隅々まで見てるんですね。 私もいろいろ意見を言いましたけれど、正直まだまだといったところでしょう。 自分の実力不足を痛感させられます。 ありがたかったのは、そんな私の稚拙な意見にも、 審査員の方々は真剣に聞いて下さって、かつ間違っていても優しく反論して下さったことです。 皆さんは変態という名の紳士です。 そして四十分に渡る激論が繰り広げられ、最終的に今回の優勝者が決定しました。その人は…… A エントリーナンバー37、変態的お米マニアの遠野美凪ちゃん B エントリーナンバー32、足でゲームを達人レベルにこなす芳賀玲子さん C エントリーナンバー1、机で芸術を表現する折原浩平さん D エントリーナンバー50、画期的な育毛剤を発明したインカラさん E 今まで話や伏線どころか選択肢にも出てこなかったエントリーナンバー44の高槻さん
C
「皆さん長らくお待たせいたしました。 今回の優勝者は……エントリーナンバー1番、机で芸術を表現する折原浩平さんに決定しました!!」 「よっしゃああっっ!! 長森、七瀬、オレはやったぜぇっっっ!!」 ハクオロさんの言葉に、1番の人が飛び上がって喜んでいます。 今回の変態選手権の優勝者は、この人に決定しました。 私は微妙な点をつけたのですけれど、他の審査員の方々には高く評価されてたみたいです。 ハクオロさんがトロフィーのようなものを渡しながら、インタビューを始めます。 「君の机をただひたすらに積むという変態行為、 それは多数の審査員を震撼させた正しく変態の名にふさわしい行動でした。 一体何が君を机積みに駆り立てたのですか?」 「……絆、なんですよ。オレとこの世界を繋ぐ」 「それはどういう意味ですか?」 「昔、辛い現実から逃げるために別の世界の存在を願ったガキがいたんですよ。 その世界ってのは、長い時間を掛けて出来上がっていた。 だけど成長したそいつはその世界に行くことを拒んだ。 心の傷が癒えていた彼に、えいえんの世界なんて要らなかったんだ。 だけど、幼い頃にえいえんの盟約を交わした別世界の女の子はそれを許さなかった。 ……結局、そのガキは現世から消えてなくなってしまった」 そこで彼は一度言葉を切って天を仰ぎました。 ……なんでしょう、物凄くやな予感がします。 これ以上聞いてはいけない、そんな臭いを切実に感じます。 根拠はありませんが、直感です。女の勘、とでも言い換えましょうか。 そう、全てをぶち壊しにするような言葉が彼から出るような、そんな気がしてならないのです。 「そのガキは長い間、えいえんの世界に囚われることとなった。 だけど……思い出すのは日常の一コマ。 えいえんの世界よりも大切だと感じる、現実の絆。 机を積むことに至上の喜びを覚えたあの日が幾度と無くリフレインし、 学校の机の木やパイプの臭い、机の重み、机の質感……。 えいえんの世界にいても、頭の中は机で一杯だった。 もっと机を積みたい、机と一緒にいられる世界にいたい……と。その時奇跡は起きたんだ」
…………。 この人……今更ながらに思いますが変態です。 変態中の変態です。ど変態です。 今の言葉を聞いて、参加者の誰よりも彼が変態であったことを今更ながらに痛感します。 ……や、やってしまいましたね!? 女の子ではなく、机に絆を求めての盟約破棄を……!! 感動を全てぶち壊しにするその事実、普通の人間なら絶対に選びませんよ。 ええ、普通の人間なら机を自分の特別とするよりは、大人しくえいえんに留まることを選ぶでしょう。 こ、これが真の変態ですか……優勝者の貫禄ですか……。 常軌を逸してます。恐ろしくて鳥肌が立ってきます。 生き物ですらない机に負けた、えいえんの世界の女の子が哀れすぎます。 いえ、この世の誰もが彼にとって机以下でしかなかったのです。 改めてその事実を確認し、そこに私は鳥肌が立ったのです。 「なるほど、それで机にあそこまでの情熱を」 「ああ、もうオレは机無しじゃいられない。 机こそオレの全てなんだ。愛そのものなんだ……!!」 ああ、もうハクオロさんと彼の言葉が遠いです。 愛とまで言ってしまいました。机に愛ですよ、愛? 彼の目が言ってます。あれは本気の目だと。 私がパンに注ぐような愛ではなく、秋生さんに注ぐような愛をあの人は机に注いでます。 今こそ自信を持って言えます。 あなたは、紛れも無い『変態』です! きっと、審査員の方々はこれを見抜いていたんでしょうね……。
変態選手権、恐ろしい大会でした。 終わった今でも、正直夢を見ている気分です。 世界にはあのような人たちがいるんですね。 それが分かっただけでも、この大会に審査員として出た甲斐があったのでしょう。 「どうでしたか、我々の変態選手権は?」 後片付けをしている途中、ハクオロさんに声を掛けられました。 「なんていうか、凄い……ですね」 「ええ、それが変態というものなのです。 一つの物事を情熱的に極めたり、 普通の人間が絶対にやらないことや出来ないことをこなしたりする中で、 それへの愛が溢れている。……だから、変態は面白いのですよ」 「そういうものなのでしょうか……」 「古河さん、あなたは変態をどう思いましたか?」 「えっ……?」 「歯に衣を着せず仰ってください。 例え散々な中傷を受けても、私はあなたを否定はしません。 あなたの感想が、次回の変態選手権の課題となります。 一般人にどうやって我々の理解を得るか。それが目標なのですから。 あなたのような一般の方の意見は最大限尊重します。 そして、よければ……またこの大会に来ては頂けませんか?」 ハクオロさんは優しくそう仰いました。 この人の熱意は本物です。 では、私も思ったことをそのまま口にしないと失礼でしょう。 私の返事は…… A ……そうですね、機会があれば是非ともよろしくお願いします B もう絶対にこんな所には来たくないです
A
「……そうですね、機会があれば是非ともよろしくお願いします」 「分かっていただけましたか!」 私はがしっとハクオロさんの手を握りました。 恐ろしくもあったこの大会ですが、変態さんたちの変態行為に感動したのも事実です。 バイト代抜きに、また次回にこのような機会があれば是非参加したいと思います。 「変態はとても素晴らしい存在でしょう? だからこそ、私は彼らを尊敬してるのです」 「そうですね。私も少し憧れちゃいます」 「……って、ちょっと待てぇっっ!!」 私がハクオロさんと話をしている最中に、 どうやら話に割って入るタイミングを見計らっていたらしい秋生さんが乱入しました。 「秋生さん、どうしました?」 「早苗、頼むからこんな大会今回限りにしろ!! 変態なんかと付き合って百害遭って一利無しだ!! 第一この野郎は早苗を変態の卵呼ばわりしているんだぞ!?」 「……それがどうかしたのか? 変態の可能性があるという喜ばしい事実を伝えただけなのだが」 「ああこいつ分かってねぇ!!」 「駄目ですよ、秋生さん。人の悪口を言ってはいけません」 「早苗、お前は騙されている!!」 秋生さんが何やら切実に訴えてます。 ……ハクオロさんが私に、何を騙しているというのでしょう? 「古河さん、ここにまた一人変態の理解者が増えて嬉しく思います。 是非とも貴女も貴女にしかない技術を磨き、変態として目覚めてください。 そうなったら、今度は審査員ではなく参加者として歓迎いたしますよ」 「本当ですか? でも……私などの実力では……」 「心配は無用です。何も優勝だけが変態選手権の全てではない。 今回惜しくも優勝を逃した者達にも、惜しみない拍手は贈られていたでしょう? 自分が変態であることの証明と、限りない名声と、そして誇りのために参加するのです。 そして参加者には点数の優劣はついても、その恩恵は等しく公平に受けることが出来るのですよ」
「早苗、今なら戻れる戻って来い!!」 「……素晴らしいですね。なら私も、自分を磨いて参加してしまいましょうか」 「それがいいでしょう。採点は厳正に行いますが、我々はいつでも待っていますよ?」 「ああくそっ、もう手遅れだぁっ! うぅっ、早苗……例えお前が変態になっても俺はお前が大好きだぁーーっ!!」 秋生さんはなにやら叫びながら走っていってしまいました。 どうしたんでしょう? 秋生さんには伝わらなかったのでしょうか。 この大会の熱気と、変態さんたちのとても素敵な活動の数々が。 私は正直尊敬し……憧れもしたのに。秋生さんには全く伝わっていなくて、ちょっと残念です。 ……さて、これから忙しくなりそうですね。 私が変態さんになれるぐらい大好きなものと言えば、やっぱりあれしかないですよね? 今日から毎日徹夜しましょう。いつの日か、私のパンが世界の注目を集めるように……。 そして時は流れ………… 「さあ始まりました、第42回全国変態選手権、 なんと今回からはテレビ中継も入っております! ではエントリーナンバー1番、今世紀最高の変態的パン職人古河早苗さんどうぞ!!」 あれから随分経ちました。 私は自分の大好きなオリジナルパン製作に精を出し、 遂に変態選手権の予選を勝ち抜いて本選出場を果たしました。 「焼成を終えたパンを用意してきています。どうぞ召し上がってください」 「ほう、では一口……」 大量には用意できなかったので、 代表してハクオロさんが一口齧りました。 すると……
「……うっ!?」 「は、ハクオロさん!?」 私のパンを食べた途端、ハクオロさんがバタリと倒れました。 それに動揺する他の審査員の方々。 以前よりも倍増した観客の方々にも動揺が広がっていきます。 「古河さん、何を食べさせたんです!? 毒物などの危険物を食べさせるなどと言語道断! いくらあなたでもこんなことが許されるわけが……!」 「落ち着いてください祐介君。ただハクオロさんには天国に行ってもらっただけです。 時間が経てばハクオロさんは直ぐに目を覚ましますよ」 「て、天国!?」 まだ事態をよく掴めていない祐介君を尻目に、 私はハクオロさんの方に向き直りました。 ええと、もうそろそろですね。 私がそう思った丁度その時、タイミング良くハクオロさんが目を覚まします。 これには会場の皆もびっくりです。 私も最初このパンを食べた時には驚きましたからね。 起き上がるなり、ハクオロさんは一言つぶやきました。 「……亡くなった私の前妻ミコトに会ってきた。 天国にいけるパン、そんなパン今まで見たことも聞いたこともなかった。 これは文句なしに……変態が作る最高のパンだ!」 バン、とハクオロさんが勢いよくボタンを叩き、 ハクオロさんが最高点の100を提示します。 おおお……と会場からもどよめきが上がりました。 「ありがとうございます、ハクオロさん。ですが私の目標はまだ遠いのです」 「……と言いますと?」 「私の目標はパンで娘を救うことです。 パンの力で歴史を変え、亡くした娘を現世に呼び戻すことが最終目的です」 「なるほど……あなたが言うと、真実味があるのが不思議ですね」
こんな考え、普通の一般人だった頃には思いもつかなかったでしょう。 ですが私は今非常に充実しています。 目標が出来ましたし、何より変態の道は深く険しいので極めがいがあります。 それに……変態は不可能を可能にする。私が変態道を進むに当たって学んだことです。 今、変態は世間に少しずつですが認められつつあります。 ハクオロさんを始めとする立派な人たちが骨を折って、 大会を盛り立て、変態の間から優秀な人材を輩出してきたのが大きな要因です。 ですがまだまだ差別の目があることは確かです。 最近私のパン屋に、普通の人の客足が遠のいたようにも思えてきました。 ……代わりに、私のパンを美味しいと言って下さる変態さんが沢山いらっしゃるから、 以前よりも随分儲かってるので、生活には困っていないのですけれどね。 変態の知名度は随分上がりました。当面の目標は、変態差別の撤廃でしょう。 私はパンという方向から、それについて最大の支援をしたいと考えてます。 それが私が変態として出来る、立派な活動だと思いますから。 この街と変態に、幸あれ……。 HAPPY END?
乙! 最後はジャぱんネタかw
前ほどは頻繁に書けないがとりあえず次回作選択でも A ナイトライター(with 雀鬼's) B Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜 C 誰彼 D MOON. E Routes F White Album G 雫 H CLANNAD I フルアニ J テネレッツァ K うたわれるもの L To Heart M 天使のいない12月 N Kanon O 鎖 P Filsnown Q まじかる☆アンティーク R AIR S ToHeart2 T Tears to Tiara U ONE V 痕 W こみっくパーティー
たまには U
A 折原浩平 B 長森瑞佳 C 七瀬留美 D 椎名繭 E 里村茜 G 川名みさき H 上月澪 I 深山雪見 J 柚木詩子 K 住井護 L 南明義 M 氷上シュン N 城島司 O 清水なつき
二回目だけどC
みなさん初めまして、七瀬留美です。よろしくお願いしますね。 ……とまあ、堅苦しい挨拶は抜きにして、 今のあたしの近況を簡単に説明するわ。それは…… A 奇跡的に腰が完治して剣道をもう一度始めようとしている B 学校でとんでもない事件が起こってしまった C なんと自分には許婚がいるらしい D そろそろファンタジー系の話でもやってみる?
B
学校で、とんでもない事件が起こったのよ。 今思い出しても本当に信じられないわ。 それまで普通に授業を受けて、普通の学校生活を送っていただけなのに、 まったく厄介なことになったものだわ……。 えっ、何が起こったのかって? それは…… A 同じクラスの女生徒が突然授業中に発狂した B 突然校庭で爆発事故が起こった C 皆があたしの存在を忘れ始めた D 皆が乙女を目指しているはずのあたしのことを男と誤認するようになった
A
それは突然起こった。 授業中、先生が黒板に板書している時に、クラスメートの一人が急に立ち上がった。 あの人は……太田加奈子さん。 あたしとはそれほど仲のよくない人だけれど、とりあえず悪い噂は聞いたことが無い。 太田さんは急に立ち上がったかと思うと、 乙女が決して公衆の面前で言わないような言葉を連呼し、 あろうことか『私は太田。フリーの生徒副会長さ』と言わんばかりに自らの顔を爪で引き裂き始めた。 騒然とするクラス一同。もちろんあたしも例外じゃなかった。 一体彼女はどうしたの? タミ○ルを服用しちゃった? A 彼女を止める B 今彼女に近づくのは危ない C ……すると、急に他のクラスメートも彼女と同じようになっていった
B
今無謀に太田さんに近づいたら危ない。 あたしはごく普通の女の子よ? あんな尋常じゃない状態の相手をどうにか出来るわけがない。 何人かの勇気ある生徒が彼女を止めに入ろうとしている中、 あたしはそう考えて傍観することにした。 結局太田さんは、止めに入った生徒を何人か怪我させた後に、 まるで糸が切れたようにぷっつりと倒れこんでしまった。 そして、そのまま救急車が呼ばれ、彼女は運ばれていく。 ……些細な日常の一コマが、恐ろしい惨劇に移り変わった瞬間だった。 いったい太田さんはどうしたというのだろう? あたしは、彼女に…… A 恐怖を感じた B 気色悪さを感じた C 行動の疑問を感じた D その時、あたしは誰かの視線を感じるのに気づいた(人物指定)
B
「七瀬、大丈夫か? 随分体調が悪そうだが……」 「大丈夫、なんでもないから」 あたしの様子に気づいた折原が声を掛けてきたので、あたしは適当に誤魔化した。 ……正直、あたしは彼女に気色悪さを感じていた。 一体彼女に何があったのかは知らない。 知らないけれど、実際あんな姿を見せられては仕方が無い。 色の無い瞳で、自分で自分に傷をつける姿は、 恐怖よりもまずその気持ち悪さが印象に残ったのだ。 教室は翌日も彼女の話で持ちきりだった。 あたしも折原や瑞佳とお弁当にしながら、自然と昨日の彼女の話題が出る。 いや、あたしは嫌だったんだけれど、折原がね……。 「しかし、昨日の太田は凄かったな。アイツ、どうしたんだ?」 「さあ。勉強とかが行き詰ってたんじゃないかしら?」 あたしは嫌な話はさっさと切り上げたかったので、不機嫌な口調で答えた。 正直言って、あたしはこういう手の話は得意じゃないのだ。 瑞佳だってこの手の話は嫌いだろうから、直に他愛の無い話の一つとして流れるだろう。 そうあたしは思っていた。だけど、意外なことに瑞佳が気になることを話し始めた。 「……こないだ、根も葉もない噂だけど気になることを聞いたよ」 「へえ、どんなだ?」 「うん。この話が太田さんと関係があるのかは分からないけど、実は……」 A 夜中に学校に入る人影が目撃されてるんだって B 最近この近くで不審者が出没するらしいよ C ……他所のクラスでも似たようなことがあったんだって D その……お化けが出るらしいよ……この学校
A
「夜中に、学校に入る人影が目撃されてるんだって」 「なんでまた夜中にわざわざ。 忘れ物を取りに来たヤツをたまたま見たってだけじゃないのか?」 「そうも言えるかもしれないけど、でもやっぱり何だか気味が悪いよ」 瑞佳の言うことも尤もだと思った。 その話が太田さんの件と関係があるのかは知らない。でもやはりどこか気持ち悪い。 「まあ、とりあえずはあたし達には関係ないわね。 別に夜遅くまで学校に残ってることはないし、瑞佳だって部活もそこまでかからないでしょ?」 「確かにな」 「そうだね」 この話は結局ここで終わりとなった。 いくら不気味な話でも、平凡な日常を営んでいるあたし達には全く関係の無い話。 だからあたし達も平気で話すことが出来たし、他人事のように扱うことが出来た。 だけど……世の中、そう甘くなかったのよね。 放課後のことだった。あたしは…… A 太陽も沈んだ頃に忘れ物をしたことに気づいた B 校門を出ようとしたところ、怪しい影を見つけた C 虚ろな目をしてどこかへ歩いていく瑞佳の姿を目撃した
C
帰り支度をして、学校を出ようとしていた時だった。 あたしのすぐ前を人が通り過ぎる。 「あ、みず……」 それがあたしの見知った人だったので、声を掛けようとしたのだが、 その尋常じゃない様子に、あたしは一瞬ためらった。 その人は瑞佳だった。瑞佳のはずだった。 だけど、どこか目が虚ろで、どこかおかしかった。 瑞佳はまるであたしが見えていないかのように、 あたしに視線を向けることなく、廊下の向こうに歩いていった。 「ちょっと、瑞佳! どうしたの!?」 その時、あたしは自然と瑞佳を追っていた。 昨日の太田さんを見たからだろうか、 このまま放っておいたら、瑞佳がおかしくなってしまう。 そんな気がしてならなかったのだ。 あたしは瑞佳の後を追って角を曲がる。すると…… A 生徒会室に入る瑞佳の姿を確認した B 曲がってすぐの場所で待ち構えていたらしい瑞佳にぶつかった C 急に後ろから折原に肩を掴まれた D ……誰もいない!?
B
aかな
ちょうど角を曲がったその時だった。 思っても見なかった障害物があたしの前に立ちはだかり、 勢い余っていたあたしは思わず正面衝突してしまった。 流石に曲がり角でぶつかったのは今回が初めてじゃないから、受身は忘れなかったけど。 そこに立っていたのは瑞佳だった。 瑞佳は色の無い瞳のまま、あたしをじっと見つめたままでいる。 「瑞佳……?」 名前を呼んでも、返事は無い。 普段の瑞佳からは考えられないようなその態度に、背筋に寒いものが走る。 この瑞佳は危険だ。乙女の勘がそう告げていた。 瑞佳は一言も喋らず、ただ無言で拳を振り上げた。 まさか……嘘でしょ? 瑞佳が、そんなことをするなんて!? 一体瑞佳に、何があったのだろう。とにかく、このままじゃいけない!! A ここは逃げるしかない B 危険を承知で瑞佳を力ずくで止める C 無理を承知で瑞佳に呼びかける
B
あたしは瑞佳と距離をとりつつ向き直った。 逃げることも出来た。だけど、この瑞佳は止めなくちゃいけない。 理屈じゃなく、直感であたしはそう判断した。 この瑞佳の様子が尋常じゃないのは一目で分かる。 だからこそ友達として止めなくては、と思ったのだ。 きっと、説得なんて通じないのだろう。 それ以前に、あたしの言葉さえ届いていない可能性のほうが高い。 瑞佳が振り上げた拳であたしに殴りかかる。 動きが大振りだったから、あたしは昔取った何とやら、体を捌いてやり過ごした。 瑞佳の拳はあたしの代わりに、後ろの窓ガラスに激突する。 鈍い音がしたかと思ったら、ガラスは音を立てて簡単に割れてしまった。 ……やっぱり、この瑞佳は本気だ。 自分の拳がガラスの破片で傷ついているのにもかかわらず、 瑞佳はやはり空虚な目であたしを見下ろしていた。 もう、瑞佳には痛みすら伝わっていないのだろうか。 「瑞佳、やめて!!」 あたしは無我夢中で瑞佳を羽交い絞めにした。 そしてそのまま首根っこを掴み、上下にガクガク揺らしてみる。 だけど、瑞佳からは何も反応が返ってこなかった。 それどころか、瑞佳はあたしの胸倉を掴むと、ぐぃっと持ち上げたのだ。 有り得ない事態に、あたしは動転してしまう。 あたしだって日々のダイエットで重い方じゃないことは自信を持って言えるけど、 まさか瑞佳の細腕があたしの体を片腕で持ち上げられるなどとは、ほんの少しも思っていなかった。 あたしはそのまま力任せに投げられ、体を強く打ってしまった。 痛みよりも恐怖で足がガタガタ揺れる。 失神しないのが自分でも不思議なぐらいだった。 この瑞佳は、普通じゃない。同時に、あたしでは太刀打ち出来ない……! A せめて竹刀か木刀でもあれば……! B 瑞佳のためにやりたくはなかったけれど、大声で人を呼ぶ C ……あたしに残された術は逃げることしかなかった D その時不思議な感じの少女が現れ「電波、届いた?」とあたしに笑いかけた
A まんま雫一直線だとつまらんぞ
せめて、竹刀か木刀でもあればなんとかなった。 いくら腰を痛めているといっても、あたしは多少は剣道に自信がある。 今でも軽い素振りぐらいは欠かしていないし、 なるべく腰を痛めないような動き方だって少しは出来る。 この瑞佳相手に丸腰じゃ、何も出来ないだろう。精々逃げ回るのが関の山。 幸いにも瑞佳の動きはゆっくりで鈍かったから、間合いに関してはこちらの自由に出来た。 拳の間合いに入らないように注意を払いながら、 あたしは武器の代わりになるものがないか辺りを注意深く見回した。 しかし、ここはあくまで学校。 剣道部員が教室に竹刀でも置いといてくれれば良かったのだが、 生憎掃除用具入れの中にあるモップぐらいしかない。 何の役にも立ちそうにも無かったが、とりあえずないよりはマシと考えてあたしは構えた。 その時…… A 瑞佳が急に倒れた B 注意が反れた所為か、瑞佳の拳があたしの下腹部を強打した。 C 周りが騒がしくなってきた。人が来る……!? D 不意にあたしと瑞佳の間に乱入する影が(人物指定) そーならないように考え中。ただ過去作とネタが被らないようにするのが非常に難しい
D オボロ
その時だった。 音も無くあたしの後ろから黒い影が一本の線を描き、 今正にあたしに向かってこようとする瑞佳に激突した。 「……な、なに!?」 突然のことでまだ事態がよく分からない。 とりあえずその影が人であること、あたしを守ってくれたことは分かった。 姿は大きな布を羽織っているのでよく分からないけど、刀を二本構えているのは分かる。 ……って、刀!? 「今のうちに去れ!」 その人は未だに呆けていたあたしに、振り向きもせずそう言い放つ。 瑞佳の方は、標的をあたしではなくこの男の人に変えたようで、 あたしには目もくれずに、今度はこの男の人に拳を振り上げた。 対する男の人も、我流と思われる二刀流で迎え撃つ。……って! 「ちょっと待って、真剣は駄目!」 あたしの言葉も空しく、男の人は刀を瑞佳に振り下ろした。 二人の体が交差し、鈍い音がして、男の人が持っていた剣と瑞佳の体が吹き飛ばされる。 あたしは瑞佳の方を見やるが、斬れては……いない。 峰を返してくれたのだろうか、それとも偶然? 「……ふぅ」 終わったと判断したのか、男の人が一息ついた。 だが……甘かった。山葉堂のワッフルよりも甘かった。 その途端瑞佳の体がガバァッと起き上がる。マズイ、今この人は丸腰だ……! そう思ったあたしは、咄嗟に…… A すぐ傍に落ちていた刀の一本を拾って二人の間に割って入る B その刀を男の人に投げて渡す C 後ろから瑞佳を羽交い絞めにする D 動いたのだが……瑞佳は正気を取り戻していた
B
咄嗟にあたしは、刀を拾い男の人に投げて渡していた。 刀が近くに落ちていたのは偶然だったけれど、その偶然をあたしは活かしきった。 男の人はあたしから刀を受け取り、姿勢を落としたかと思うと、 今度は一気に瑞佳の後ろに駆け抜けていた。 そしてもう一本の刀も拾い、二本の刀をカシンと鞘に納める。 途端に、瑞佳の体はバタリと崩れ落ちた。 「瑞佳!?」 「心配は無用だ、斬ってはいない。半日もすれば目を覚ますだろう」 倒れた瑞佳に心配して駆け寄ったあたしに、男の人はそう言った。 その言葉で少し安心する。良かった、瑞佳の命に別状が無くて……。 「あ、あの……危ないところをどうもありがとうございます」 「それはこっちの台詞だ。最後、あんたが刀を寄越してくれなかったらどうなっていたことか……。 あんたは俺の命を救ってくれた。当然、俺はあんたには礼を尽くさねばならない」 男の人の言葉からは悪い雰囲気は感じない。ただ、姿格好が普通とはかなりかけ離れていた。 服なんてどこかの民族衣装みたいだし、刀を二本帯刀までしている。 それに、耳……。どうみても人間のそれじゃなかった。 「あの……あたし、七瀬留美といいます。あなたは……?」 「オボロだ。まずそっちの女をみてやれ。 正気を失っていたからとはいえ、少々本気で打ってしまったからな。 怪我をしていないとも限らん」 あたしはそう言われて、改めて瑞佳の体を見てみた。 腕をガラスで多少切っているだけで、他に目立った外傷は無い。 「目を覚ました時には正気を取り戻してはいると思うが、保障は出来ん」 「……これは、一体どういうことでしょうか?」 「ヤツの仕業だ」 「ヤツ?」 「そうだ。そいつの名は……」 A ”電波”の使い手、月島拓也 B 狂人……ニウェ C 魔王・アロウン D 破壊神ガディム
D
「破壊神……ガディム」 ガディム……聞いたことの無い名前だった。 だけど、神? あらゆる困難が科学で解決するこの平成の時代に、神? 珍妙不可思議で胡散臭い話だと思う……のが普通なんだろうけど、 あたしはオボロさんは嘘をついてないと思う。 嘘をつくなら、もっとまともな嘘をつくし、 それに……瑞佳の様子は、普通の理屈じゃ説明しきれない事態だったから。 「分かってはいると思うが、俺はこの世界の人間じゃない。 ヤツを追ってこの世界に来た余所者だ」 「その、ガディムというのは?」 「……俺たちの世界の闇の神が作り出した化物さ。 世界を滅ぼすことが目的で、どうやら今度はこの世界に目をつけたらしい」 恐ろしいことを聞いた気がする。 オボロさんが言うには、この世界の……危機? まるで別世界に迷い込んだような気分だった。 日常が音を立てて壊れていくのが分かる。そして、あたしがもう巻き込まれていることも。 この話を聞けたのは運がよかったのかもしれない。 あたし達の住むこの世界がなくなるかもしれない。それを知ることが出来たのだから。 「俺はそんなヤツの野望を阻止するために……」 A ヤツを倒すため、この世界まで来たんだ B この世界の「勇者」を探している C この世界と俺たちの世界を繋げるために、この世界に来た
a
「ヤツを倒すため、この世界まで来た」 オボロさんの声には、怒りが含まれているのが分かった。 世界の秩序を乱すガディムへの正義の怒りなのか、それとも別に事情があるのだろうか。 「倒すって……あなた一人で?」 「ああ」 「勝算はあるの?」 「……ああ」 嘘だ。 「確か、七瀬……といったな。 あんたも気をつけたほうがいい。今はまだ表立っていないが、 ガディムがこの世界に干渉している以上、何かしらの影響は現れてくるだろう」 「影響って……昨日の太田さんや、今日の瑞佳のような?」 「さあな。あんな状態の人間など初めて見たから、俺にも分からん。 ガディムは他人の体を乗っ取ると聞いていたが、そこの女はガディムに憑かれてはいない。 ただ……このままヤツを野放しにしていれば」 「もっと恐ろしい事態になるかもしれない……」 「そういうことだ。……そして、この建物。 ここには邪悪な気が満ちてやがる。反吐を吐くぐらいな」 オボロさんの言いたいことは明白だった。 この学校にガディム、もしくはガディムに乗っ取られた人物が……いる。 そしてそいつが瑞佳をあんな風にした。太田さんを狂わせた。 ……静かに、だけど着実にあたしの中で怒りが沸いてくる。 どうして他所から流れてきた化物なんかに、瑞佳がこんな目に遭わせられなければならない? 世界の危機ですって? やられっ放しは性に合わないのよ!
「協力するわ、オボロさん」 「なにっ!?」 「自分の世界のピンチなのよ? あなただけに任せて、自分だけのうのうと枕に高いびきをかいてるわけにはいかないわ!」 「止めておけ。命を無駄に捨てるだけだ。 相手はキママゥのような獣なんかと訳が違う。ヤツは俺が倒す……!!」 「そりゃ、あたしだって自分が化物を相手に出来るなんて思ってないわ。 戦うことについては、オボロさんに任せるつもりよ。 ただ……ガディム探しを手伝うくらいなら役立てるでしょ?」 「だが……!」 「学校にガディムがいるって言うなら、尚更退くわけにはいかないわ! それに武器を持ってるオボロさんじゃあ、昼間は不審者扱いされてもおかしくないもの。 学校を探すなら、まずは学校の生徒を味方につけないと……ね?」 あたしは早口にまくし立てた。 オボロさんだけに任せていたら、無責任もいいところだと思う。 いくらガディムがオボロさんの世界で生み出された化物だとしても、 本来自分達の世界は自分達で守るのが筋なんだろうから。 深く考えるのは性に合わない。 やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい。 何もしないでオボロさんに責任を押し付けるよりも、何かして責任を押し付けられた方がいい。 オボロさんの返事は…… A 「……仕方が無いか」 B 「悪いが断る」
A
「……仕方が無いか。確かにあんたの言うとおり、俺はこの世界のことは疎い。 組んだ方が良さそうなのは確かだ」 オボロさんは意外に冷静だった。 こういう人は、自分だけで突っ走ってしまうタイプだと思ってた。 冷静な判断が出来る人で、正直良かったと思う。 「これからよろしくね、オボロさん」 「応」 あたしとオボロさんはお互いにっと笑いながら、 それぞれ右手を差し出してがっしり握手した。 ガディム……絶対にあたし達の世界から追い出してみせる。 まあ、当面の問題は気絶した瑞佳をどうするかだけど……。 とにかくそれからが大変だった。 オボロさんとは一旦別れ、あたしは後片付けに奔走される。 とりあえず筋書きとしては『ふざけあっていたあたしと瑞佳だったが、 瑞佳が足を滑らせガラスに突っ込んでしまい、怪我をして気を失った』 ということにしておいた。 些か苦しい言い訳だけど、誰も現場を見たわけじゃないし、 何より本当の話をしたところで信じてもらえるとは到底思えないのでこれでいいだろう。 先生には叱られたけれど、そこはしょうがないと諦めるしかない。 日も暮れたころに瑞佳は目を覚ましたが、あたしを襲ったことについては何も覚えていなかった。 とりあえずあたしは先生にした言い訳を瑞佳にもしたら、 瑞佳は身に覚えが無いことなので随分悩みこんでいたようだった。……頭を抱えたのはこっちなんだけどね。 そういうわけでいろいろあって、後片付けが終わった時はもう夜だった。 さて……これからオボロさんと今後を話し合うための待ち合わせ場所に向かわないと。 本当に今日は散々だわ。この分も踏まえて、ガディム許すまじ。 あたしがオボロさんと待ち合わせていた公園に行くと…… A 街灯に寄りかかりながら渋く腕を組んでいるオボロさんが待っていた B こんなに待たせたことにキレ気味のオボロさんが怒り心頭で待っていた C 公園に居ついてるホームレスの人とすっかり仲良くなっているオボロさんがいた D 必死の形相でゴミ箱から食べ物を漁っているオボロさんがいた。なんとも情けない姿……
D オボロから見りゃ現代のゴミ箱は宝の山だろとけっこうマジで思う
すっかり遅くなってしまった。 もう日もとっぷり暮れているし、オボロさんはきっと怒っているだろう。 とにかく一言謝らないと……そう思いつつ、あたしは公園の中を見回した。 オボロさんの格好は目立つからすぐに見つかる。 ええと……あ、いたいた。 あたしはオボロさんに声を掛けようとしたところで……固まった。 オボロさんは必死の形相でゴミ箱を漁っていた。 「……これがこの世界の食べ物か。やっと見つけた……」 そんなこと言いながら、誰かが食べ遺したと思われる幕の内弁当の残りを手に持っている。 さっきまでのカッコ良さは台無しである。 仮にここでオボロさんがガディムの不意打ちで戦死したとしたら、 オボロさんは『ゴミ箱の残り物に気をとられて戦死』などという不名誉な称号がつくのだろう。 なんて恥ずかしい。そして情けない。 あたしが止めに入ろうとした時、近所に住む野良犬がオボロさんに近づいていった。 「ぴこぴこ!」 「ん、なんだ貴様? これは俺が見つけたものだ、他を当たれ他を!!」 そして今度は野良犬と本気の喧嘩を始めている。 情けなさが更に上がったような気がする。幾らなんでもあんまりな姿だ。 「ちょっと、オボロさん!!」 「どうだ参ったかこの毛玉が……って、ゲェッ七瀬!?」 オボロさんはあたしに気づくなり、慌てて弁当箱を後ろ手に隠した。 「今更隠しても遅いわよ! なんて情けない……!!」 「い、いやこれは仕方なくだ……! 何せこの世界ときたら石と鉄の建物ばかりで、食べ物の一つも見つかりやしない。 もうかれこれ三日も食べ物を口にしていないんだ。 悪人以外から食い物を巻き上げるのは俺の流儀に反するから、やむを得ずに……」 「そんな過程なんてどうだっていいわよ!」 A さっさと本題に入ってもらう B 流石に哀れすぎるので近くのラーメン屋でラーメンでも奢ってやる C ……ゆっくり話もしたいことだし、家でご飯でも用意してあげる
b
「ああもう、ちょっと来なさい!」 「い、いでっ!! ま、待て、まだ一口も……!!」 「そんな腐りかけの安全かどうかも分からないものなんて食べるんじゃないの!」 あたしはオボロさんの耳を引っ張りながら公園を出た。 ……まったく、しょうがないわねもう!! あたしの財布はそれほど余裕があるわけじゃないから、とりあえず……。 あたしはオボロさんを連れて、以前折原と一緒に来た事のあるラーメン屋に足を運んだ。 よくよく考えればこの人に食べ物を恵んであげる必要なんて無いのだけれど、 流石にここまで来ると、オボロさんが哀れすぎるような気がしてならない。 別の世界の人じゃあ日雇いのバイトだって難しそうだし……。 ……って、そうなるとオボロさんの食べ物は、あたしがなんとかしてあげなくちゃいけなくなるの? それはイヤだ。……やはり次からはオボロさんにはゴミ箱漁りで我慢してもらおう。 オボロさんは一杯三百円のラーメンでも涙を流しながら美味いとかぶりついていた。 しかも4杯もおかわりまでして。餃子もおかわりしたのは言うまでも無い。あーもう余計な出費! 「美味かった。また世話になったな」 「ラーメン代と餃子代の2000円は、世界を守るための先行投資と思っておくわ」 そう思わなくちゃやってられない。 これで世界は救えませんでした、なんて言ったらあたしは怒る。 「……で、オボロさん。ガディムを見つけるのに……あてはあるの?」 「…………」 あたしがそう言った途端、オボロさんの表情が変わった。 さっきまでの三枚目の雰囲気は何処に行ったのやら、 今日最初に会ったような、真面目で渋いオボロさんに戻る。 「学校の誰かにガディムがとり憑いているとしても、どうやって探し出すの? まさか傍目で分かるような特徴が出るわけでもないんでしょ?」 「それは……」 A ……ガディムは力のある者に憑く。そこから調べれば人数も限られるだろう B ガディムを探し出せる道具を俺は持っている C 気配だ。ヤツの気配なら俺が分かる
B
「ガディムを探し出せる道具を俺は持っている。 こいつがあれば奴とのおよその距離が判る代物だ」 おお、差し詰めドラゴ○レーダーと言った所だろうか。 そんな便利アイテムを持って探すような知的な感じじゃなくって、 当てずっぽうで探すようなタイプだと思ったんだけど。 何せ御飯がゴミ漁りだったし。 私の中で彼の評価が少し上がった気がする。 当初の可哀想なモノを見る目から、折原と同じくらいの評価にしても良いと思う。 「なんか俺が途轍もなくアホだと思われている気がするぜ… 流石の俺でも手掛かりなしで世界を漂流なんて無謀なマネはしないぜ」 自覚があるのなら改めた方が良いと思うわね。 「で、それってどんなものなの?」 彼の弁解を華麗にスルーしてそのアイテムとやらを尋ねてみる。 「ああ、それは奴の身に着けていた物の一部だ。 過去に奴が憑り付いていた人間の物でな。 奴との距離に比例して共鳴し出すんだ」 オボロさんがマントから取り出したそれは、確かに強く禍々しい存在感を示していた。 世界を滅ぼす闇の神ってのも満更じゃないかも。 それは──
A サイバーっぽい耳カバー B 角の付いた仮面 C 赤いマフラー D 青紫色のリボン E チェックのストール F 白衣 G 白い羽 H 鈴 I 黄色いバンダナ
前のヨリシロってことか?Iで
「これは……」 それは一見ごく普通のバンダナだった。 ただ、バンダナから妙な威圧感と言うか、存在感と言うか、 どこか不思議な印象を受ける。 「こいつはヤツの居場所を知らせてくれる。 本当に近づかなければ何も反応しないが難点だがな。 今のヤツがどんな姿をしているのかは知らんが、決して逃がしはしない……!」 オボロさんがグッと拳を握り、 まるで肉親の仇と言わんばかりの目でバンダナを睨む。 ……恐ろしいまでの執念。 いつもこの雰囲気でいればカッコ良かったのに。 でも、ガディムの居場所を探せるバンダナか……。 学校探索はあたしの仕事だから、あたしが持っているべきなのだろうか。 A オボロさんからバンダナを貸してくれるよう頼む B いや、これはオボロさんが持っていたほうがいい C その時バンダナから妙な音が聞こえ始めた。もしかしてガディムが近くに……!?
a 登校前に七瀬が受け取って放課後オボロに渡せばちょうどいい希ガス
292 :
名無しさんだよもん :2007/06/23(土) 22:43:30 ID:TNRQ67Ss0
a
293 :
名無しさんだよもん :2007/06/23(土) 22:44:16 ID:S1DmpCND0
294 :
名無しさんだよもん :2007/06/23(土) 22:51:31 ID:S1DmpCND0
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「オボロさん、これをあたしに貸してくれないかしら」 「これを…お前にか?」 このバンダナでガディムの居場所を探そうとしても、オボロさんでは色々難しい。 部外者どころか異世界の人間であるこの人が学校をうろつけば、不審者扱いされてつまみ出されるか警察に捕まるのがオチだ。 それなら、あたしがバンダナを借りてガディムがとりついた人間を捜したほうが見つけやすいはずよ。 「だが、これはガディムを見つけるための数少ない手がかりなんだが…ううむ」 オボロさんはしげしげとあたしとバンダナを見比べる。 …やっぱり昨日今日知り合った人間に大事な手がかりを貸すのは躊躇いがあるみたい。 「学校が始まる前に貸してくれれば良いわ、放課後には貴方に返すから」 あたしのお願いにオボロさんは―― A 「いいだろう、だが無理はするなよ」 B 「……いいや、悪いがこれを貸すことはできない」
Aで
agaったとたんこんなに速攻荒らしが来るとは
「いいだろう、だが絶対に無理はするなよ」 と、言ってオボロさんはあたしにバンダナを渡してくれた。 「いいか、七瀬。 相手は、まがりなりにも『神』を名乗る化物だ。 お前は、怪しいと思う場所に目星をつけてくれるだけでいい。 後で、俺が改めて調べてみる」 「分かったわ」 もちろん、あたしも自分一人の力で解決しようなんて考えてない。 昼間の瑞佳の様子からも、これからやろうとしている事が危険なのは理解してるつもりだ。 「それから、万が一ガディムが憑依した人間に襲撃されたら……」 「どうするの?」 「全速力であの建物の裏山まで逃げろ。 昼間、俺はあそこに潜伏している」 たしかにあの裏山なら、異世界の人が二・三人潜んでいても分からないだろう。 ……ただのホーム○スとなんら変わらないけど。 その後、あたし達は放課後に(異世界人に「放課後」の概念を説明するのにちょっと苦労したが) 学校の裏門で落ち合う約束して別れた。
翌日、あたしはいつもよりも1時間ばかり早く登校した。 まさか、先生に『破壊神を探すので授業を休みます』とは言えないでしょ。 ……いや、折原なら嬉々として言いそうだけど。 とりあえず、生徒もまばらな今のうちに少しでも見回っておきたい。 授業開始までに二・三ヶ所は回れるだろう。 ちなみに昨日の教訓を踏まえて、お古の竹刀を携帯することにした。 まぁ、あくまで気休めなんだけどね。 それと、左手には昨日のバンダナが巻き付けてある。 オボロさんは具体的には教えてくれなかったけど、 これを身につけてガディムに近づくと、なんか直感的に分かるらしい。 さてと、ますはどこに行こうかしら。 A 図書室 B 体育館 C 保健室 D 美術室 E 音楽室 F 理科室 G 職員室 H 生徒会室 I 部室棟 J 学食 K 屋上
k
あたしの足は屋上に向かっていた。 別段深い理由があったわけじゃない。 ただ、ここからなら学校を一望できるかな、なんていう些細な考えで来たに過ぎなかった。 ドアを開けると、朝の冷たい風が頬を撫で付ける。 朝早いせいか、人の気配は少ないものの、下からは運動部の朝練の声が聞こえてくる。 そういえば、折原がこの屋上ではよく夕焼けを眺めている先輩がいる、なんて言ってたような。 確かにここなら、放課後になれば綺麗な夕焼けを一望できるかもしれない。 それにしても……ガディム、か。 こうして見ると、学校の光景は普段と何の変哲も無い。 昨日のことがなければ、あたしだってオボロさんの言うことを信じられなかったろう。 いや、一晩経って冷静に考えてみると、少しばかり『ガディムなど本当にいないのではないか?』 などという考えすら一瞬浮かんでしまう。 だけどオボロさんの存在が、それを頑なに否定する。 この目で普通の人間じゃない人を見たんだ、認めるしかあるまい。 あたしは手すりにもたれかかり、辺りを見回した。 校庭、町並み、裏山、校舎……どこかに不審な点はないか隅々まで入念にチェックする。 すると…… A 登校してくる生徒の一人と目が合ってしまった(人物指定) B 折原達が裏山越えしてる姿が……オボロさんとぶつからなければいいけど C ……雨が降ってきた。そろそろ入ろう D ふと後ろから視線を感じたような気がした
A 屋上って事でトン子。
何か不審な点はないか、校庭を見回していたその時だった。 不意に上を見上げた生徒と目が合ってしまった。 大きな眼鏡が特徴的な女の子。確か名前は、栗原透子……だったと思う。 あたしと同じクラスで、どちらかと言うとクラスの端のほうにある自分の席で、 いつも放課後まで大人しくしているようなタイプだった気がする。 気がするというのは……あまりその答えに自信がないからだ。 あたしと彼女に今まで何の接点もなく、転校してきてから結局一回も話したことはなかった。 だけど、今まで彼女の行動を傍目で見ている限り、彼女は今回の件に何の関係もないとは思う。 まさかガディムも憑く相手は選ぶだろう。 ……ただ、疑問に思うのはガディムのことだ。 どうして学校に潜伏しているのだろう。学校なんて普通の学生ぐらいしか来ない。 あたしがガディムなら、もっと強い体を乗っ取ったりすると思うんだけれど。 時間も押してるので、あたしは教室に戻ってきた。 後は昼休みにでも活動を再開するとしよう。 クラスではもう大体の生徒が席についている。折原達はいつもの通りまだだけど。 そんな中……先に教室に来ていた栗原さんがあたしに一瞬視線を向けた。 まるで何かが気になるような、そんな視線。 そりゃあ朝っぱらから屋上にいれば、変に思われても仕方がないか。 まさかあれだけで、あたしが何をしようとしているかなんてバレっこないとは思うけれど、 一時間目の授業中、あたしは先生の授業を聞き流しながら、 今後のことをあたしなりに考えていた。 ガディム。何故こいつは、この学校に潜んでいるのだろう。 閉鎖的だから警察の介入が少ない? ううん、化物にそんな都合など関係あるわけがない。 ただの偶然? ……まさか。それなら一箇所に留まっている理由はない。 それなら、あと考えられるとすれば…… A 何か深い理由があって、ガディムはこの学校から動くことが出来ない B ここの生徒ないし教師には、ガディムが狙うほどの大物がいる C この学校には、あたしの知らない重大な秘密がある
A
おそらく、深い理由があって、ガディムはこの学校から動くことが出来ないんじゃないだろうか。 その理由は幾つか考えられるけど……まず一つ目はガディムが本調子じゃないこと。 世界を滅ぼすことが出来るのなら、とっくにあたし達の世界を滅ぼしているはずだ。 例えそれが手間取るようなことだとしても、こんなところで燻っていないで、何か行動は起こすはず。 それすらしていないというのは、つまりしたくても出来ない。 オボロさんか、はたまた他の誰かに深手を負わされ、この世界にはやむを得ず逃げ込んだ。 だから不用意に動くことも出来ないし、行動を起こすわけにも行かない。 つまりは、不完全な状態のガディムと決着をつけることが可能と言うわけだ。 もう一つの理由は、誰かがガディムをこの学校から出られないように仕向けているということ。 おそらくは魔法や結界のような、非科学的な方法を用いて。 ガディムの被害を拡大させないために、誰かがこの学校にガディムを縛り付けている。 それをやっているのは誰だろう。オボロさん……は考えにくいわね。 オボロさんにそんな器用な芸当出来そうに見えないし、 何よりオボロさんはここまでバンダナの力で導かれて来たのだ。とても罠なんて張っていられる時間はない。 そうなると、オボロさんの他にもガディムと敵対する者がいるということになる。 そうだとしたら、それは何よりの朗報だ。その人と協力すればグッと有利になるだろう。 ……それから、最後の理由。これが一番シャレになっていないのだけれど。 この学校は、ガディムにとって力を行使するのに都合のいい場所であるということ。 地脈的な問題か、風水的な問題か、はたまたそれ以外の理由なのかは分からない。 ただ、この学校がガディムにとって最も適した場所であるのなら、 ガディムはこの学校から出る理由などないだろう。 ……そんなの、ガディムのホームグラウンドで戦うようなものだ。 オボロさんの絶対的不利は否めなくなる。
パッと考えて、この三つがまず挙がる。 もちろんこれ以外がその理由である可能性も考えられる。 今のうちから決め付けて行動するのはマズい。足元をすくわれることだってある。 ガディムは人の体を乗っ取れると聞いた。 今この瞬間に顔を突き合わせている教師や、隣に座っているクラスメートがガディムでないという保証はない。 ……そう考えると、恐ろしくなってくる。 バンダナが反応していないのだから、それはないのだろうけれど、 それでも肝を冷やすような思いであることには変わりはない。 昨日の瑞佳の一件は記憶に新しい。 いつまた、折原や瑞佳が豹変してあたしを襲ってくるか分かったものじゃないのだ。 自分が殺されるかもしれないのに、正義のためにここを離れるわけには行かない。 まるで推理小説の探偵役みたいだと、あたしは自嘲した。 本当に知らぬが仏と言うのは、正にこのことなのだろう。 学校がまるで異世界のように感じる。猛獣の檻の中のようにも感じる。 早急になんとかしなくちゃいけない。 安心して授業を受けられるような生活を……取り戻さないと。 その為にガディムを探し出すわけだけれど…… A 折原や瑞佳に変わったことはないかそれとなく聞いてみる B いや、校舎を自分の足で探した方が手っ取り早い C ……栗原さんがあたしを見ている?
C
その時、ふと視線を感じた。 あたしが先生に気づかれないように(髭だから気づかれても大丈夫だけれど) そっと視線の感じた方向に目を向けると、 まるでこちらの様子が気になるかのように、 栗原さんがちらりちらりと、あたしに視線を送っていた。 ……一体なんだと言うのだろう。 まさか、今朝屋上にいたからといって、 ただそれだけのことをずっと気に掛ける人なんているわけがない。 何かが、怪しい。何かが……。 あたしは栗原さんのその不審な態度が気になって、その時間授業に集中できなかった。 「あ、あの……七瀬さん?」 来た。早速アプローチ。 休み時間になるなり、栗原さんが普段何も会話などしていないはずの、 あたしに話しかけてきた。普段なら普通に応対してたろうけど、流石に今は勘繰りたくなる。 あたし達女子はグループに属していない人たちとは徹底的に疎遠になる。 中には他のグループの子と話しかけるだけでいい顔をしない子もいる。あたしは気にしないけど。 そういった暗黙の了解があるから、誰も自分のグループの子以外とはあまり話したがらない。 ……まあ、栗原さんはどのグループにも属してないから関係ないといえば関係ないけど。 「なにかしら? 栗原さん」 あたしは他人行儀に努めた。 まさかとは思うけど、あたしの本意を悟られるわけには行かない。 「あのね、お、お話があるから、放課後に屋上で……」 「!?」 あたしが聞き返そうとしたところ、引っ込み思案の彼女にはそこまでが限界だったのか、 走って行ってしまった。話……か、あからさまに怪しい。 何か事件に関係あるのかもしれない。これが朗報か、はたまた罠なのか。どうする……? A あたしは罠には敢えて掛かってみるタイプだ B 彼女は何か危険な気がする。約束はシカトする C 念のため、オボロさんにも隠れて同席してもらおう
七瀬ならAかのう
あたしは罠には敢えて掛かってみるタイプだ。 栗原さんが敵なのか、味方なのか、それはまだ分からない。 分かっていることと言えば、バンダナが反応していないからガディムではないということだけ。 ただ……栗原さんがどう出るにしろ、これはチャンスだ。 味方なら協力にこぎつけることが出来るかもしれない。 敵だとしても、今度は瑞佳の時のような失態は犯さない。 少なくとも逃げるなり何なりの対処は出来る。 この膠着した状態を抜け出すには、彼女から話を聞いた方が早道だろう。 オボロさんにも同席してもらいたかったけれど、 流石に学校内を堂々と歩かせるのはどうかと思うし、 何より栗原さんの不信を買ってしまったら元も子もない。 あたしは放課後、約束の屋上に行くことにした。 もちろん家から持ってきた竹刀も一緒に。 木刀の方が良かったのかもしれないが、木刀だと当たり所が悪ければ人を殺してしまう。 あたしはオボロさんのように、人間離れした相手に手加減できるほど余裕はないのだ。 ちなみに、この竹刀については折原に散々からかわれた。……あいつ、あとで殴る。 屋上のドアを開けると、栗原さんはもうあたしのことを待っていた。 夕日が逆光で眩しい。位置的に不味いわ、不意打ちには十分注意しないと……。 「あ、な、七瀬さん。き、来てくれてどうもありがと……」 あたしが竹刀を持っていたことに怯えたのか、彼女の口調は少しどもっていた。 ごくり……と唾を飲み込み彼女にゆっくり近づく。 油断だけはしてはいけない。もしかしたら相手が一人とは限らないのだから。 「それで栗原さん。話というのは?」 「それは……」 A 「七瀬さんに、会って欲しい人がいるの」 B その瞬間、栗原さんの瞳から色が消えた。……この子も瑞佳と同じ!? C 「……あ、あ、あなたのことが、す、す、好き……です」 D 「あれ? 今日は賑やかだね」と、その時後ろから空気の読めない盲目少女が日課にやってきた
透子相手ならDだな
「あれ? 今日は賑やかだね」 と、その時後ろから空気の読めない盲目少女が日課にやってきた。 確か折原が言っていた川名って3年の子だと思う。 焦点の合わない瞳、髪型、そしてそびえ立つおっぱい。 うん、聞き及んだ特徴と合致する、間違いない。なんとも間が悪い。 これから重要な話があるのに空気嫁っての。 仕方ないので栗原さんに場所を換えようと相談しようとした時、 キン、と頭に直接聞こえるような耳鳴りがしだした。 ──いいか、頭に直接聞こえるような短い耳鳴りがしたら、 それは奴の影響下にある人間が近くにいる証拠だ。 奴自身が近くにいるなら、それが極、短い間隔で聞こえる。 ガディムは割りと離れた距離からでも聞こえるが、 影響下にある人間はかなり近づかないと聞こえないから注意しろ── バンダナの効果をオボロさんに聞いた時の会話が反芻される。 この場にいるのは三人。私は論外、栗原さんには反応が無かった。 ならばバンダナに反応したのは後ろの── (まずい、出口を塞がれてる) 川名さんはまだ正体を現してないけど、こちらが気付いたと知ればすぐに私に襲い掛かるだろう。 どうする? A 先手必勝。 有無を言わさず竹刀で奇襲 B 体当たりで距離をとる。 そして透子を連れて逃げる C こちらより先にみさきが反応してきた
B けど腰は大丈夫かな?
あたしは反射的にその体を川名さんにぶつけていた。 相手が行動を起こす前に、有無を言わさず。 もう理屈じゃなかった。このまま黙っていたらまずい。 そう考えた時に、体はもう動いていた。 川名さんは、まさかあたしがこんな行動に出るとは思っても見なかったのだろう。 体当たりの衝撃でしりもちをついていた。 「あ、あの、七瀬さん……?」 「来て!」 この事態についていけていない栗原さんの手をあたしは引っ張った。 おそらく一人で一目散に逃げていれば、余裕で川名さんから逃げ切れただろう。 だけど栗原さん一人を放って逃げることは出来なかった。 見捨てたら栗原さんがどんなことになるか目に見えている。 今の川名さんのようになるのか、それとも昨日の瑞佳のようになるのか。 それに栗原さんの話というのもまだ聞いていない。 栗原さんは戸惑いながらもあたしに続いてくれた。 屋上の入り口から階段に逃げ込み、踊り場で振り返った時に、ちらりと川名さんの様子が目に入る。 ……笑顔だった。 初対面であんなことをしたはずなのに、凍りつくような笑顔だった。 これ以上はあたしの手に負えない。ここからはオボロさんの仕事だ。 あたしに出来ることは、これをオボロさんに伝えること……。 まずはオボロさんと連絡をつけるのが先決だ。その為には川名さんをどうにかしなければいけない。 振り返ってみたわけじゃないけど、きっと追ってきてるだろう。 それに川名さん以外にも「ああなってしまった」人間がいないとは限らない。 どうする!? どうするあたし!? A 相手は盲目の女の子だ。足で追いつかれる道理はない、このまま裏門へ B 他に川名さんのような人間がいないとは限らない。まず手近の空き教室に隠れる C 相手の裏をかかなきゃ! 一か八か、窓から中庭の池に飛び降りてショートカット! D 逃がさないよ。と、川名さんの声が聞こえた。まずい……!!
Cかな
ここは一か八かしかない。 ただ単に逃げただけじゃ、おそらく捕まってしまうだろう。 あたしは頭の中を総動員して、川名さんの裏をかく方法を考える。 確か……中庭には池があったわね。 水深も結構あったし、魚もいないから割合水は綺麗な方だと言える。 ……やるしかないわね。もし失敗しても足の骨を折るぐらいで済むでしょ。 このまま川名さんにいいようにされるよりはよほどマシだ。 「栗原さん、聞いて。ここは今とてもヤバいことになってるの。 だからあたし達はどうにかして学校から脱出しなくちゃならない。分かるわね?」 「え、えと……」 栗原さんは、あたしの剣幕に圧されたのか、首を縦に振る。 上等。とりあえずあたしのことを信じてくれてるみたいで助かった。 今回の事件を何か知っているから、素直に受け入れられるのだろうか。それとも人を信じやすいだけなのか。 「よっし、ちょっと危ないかもしれないけどやるわよ?」 「や、やるって?」 栗原さんは不安げにあたしのことを見つめる。 あたしはにやっと笑ってから、栗原さんを抱きかかえた。 ……物凄く軽い。女のあたしでさえ片腕で持ち上がりそうだった。まあ今は好都合だけど。 それからあたしは中庭の窓に向き直り…… 「ふ、ふぇぇっ!?」 勢いをつけてジャンプした。 ……ピンチになると、人間勇気が出るものね。あたしには一切の躊躇いはなかったわ。 ぶわっと風があたしの全身を包む。スカートの中は……気にしたら負けね。 とにかく怪我をしないように、うまく池の中でも深い場所めがけて飛び降りたつもりだけど、 正直に言って後は運を天に任せるしかなかった。 あたしは盛大に池の中に飛び込んだ。中庭に大きな水しぶきが上がる。 一応、成功はしたみたい。だけどここでのんびりしているわけには行かない。 早く脱出しなければ、早く……! あたしは栗原さんを抱え、池から上がり…… A 昨日の瑞佳と同じような状態の生徒達が校庭や教室に群れを成していた B バンダナの共鳴が鳴り止まないことに気づいた C 既に異変を感じ取ったオボロさんが待っていてくれた
Aでナントカハザード状態に
「ふ、ふえぇぇぇ!?」 濡れ鼠のまま栗原さんの手を引いて中庭を出て、オボロさんの居る裏山へと向かおうとしたあたしの前に──いや、周りに現れたのは、昨日の瑞佳と同じ様な虚ろな瞳をした生徒の群れだった。 裏門へと通じる校庭に……ざっと2、30人。 ぐるりと背後の校舎を見れば、あちこちの教室の窓からも、合わせてまた2、30人。 これを全部川名さん──いや、ガディムが操っているのだろうか? そう考えると背筋がゾッとする。あたしの推測は一番悪いのが当たってしまったのかも知れない。 …でも、今は怯えている暇なんて無い。 逃げ隠れするのはどう見ても不可能だ。何としても、一秒でも早くここを突破して、裏山に辿り着かないといけない。 …そう考えて周りをよくよく見ると、校庭にも教室にも、明らかに虚ろな瞳の連中とは違って、状況の飲み込めていない、野次馬に近い状態の生徒も同じぐらいいた。 確に傍目には、ずぶ濡れで息を荒げるあたしは、充分に人目を惹くんだろう。 すぐ側にいる生徒の方が遥かに「おかしい」事にすら、気付いていないのかも知れない。 でも、これなら…… A 「助けて!!」と大声をあげる B やっぱり強攻突破を図る C 「本当はこんな事したくないんだけど…」 え? 栗原さん?
B
ここは強行突破を図るしかない。 このような状態の彼らには何を言っても無駄。それは昨日痛いほどに体験した。 ましてや、関係のない人間に助けを求めても、 厄介ごとだと避けられてしまうのは目に見えている。 結局は自分で自分を守るしかない。 あたしは隣の栗原さんを見やる。 栗原さんはと言うと、このような状態の生徒達を目の当たりにして、 ようやく事の重大さ、異常さを理解したようで、恐怖の色を顔全体に浮かべながら震えていた。 ……良かった、この子は正常だ。 「栗原さん」 「…………」 「駆け抜けるわよ。 いくら連中が危険と言っても、学校を抜けてしまえば何とかなるわ」 「う、うん……」 栗原さんも覚悟を決めたようだった。物分りが良くて助かる。 あたし達は離れ離れにならないように手をぎゅっと握る。 連中はあたし達の行く手を阻むように、群れの切れ目を作らない。 この状況だと、正門も裏門も固められてると見て間違いないわね。なら…… 「あなた、裏山越えを経験したことある?」 「ち、遅刻しそうになったときに何回かなら……」 「なら改めて説明することはないわ! いつものフェンスの切れ目から裏山に脱出するわよ!!」 あたしはそれだけ叫んでから、栗原さんの手を繋いだまま走りだした。 栗原さんも少しタイミングが遅れたものの、置いてかれないように懸命に続いてくれる。 些かスピードが遅いのが気になるが、幸か不幸か、相手の動きも鈍かった。 ただ、気になるのはこの手回しの良さだった。まるで最初からあたし達を狙っていたような、そんな感じだ。 あたしがガディムを探し回っていることは、まだ誰も知らないはずだ。 なら、連中の狙いは何……? A まさか、栗原さんを狙っている? B ……もしかしてこのバンダナ? C 単なる偶然?
Aで
まさか、栗原さんを狙っている? あたしの中に、そんな仮説がよぎった。 普通に考えて、ガディムが栗原さん個人を狙う理由などはない。 だけど、ここで一つ思い当たることがあった。 栗原さんは「あたしに話がある」と言ってあたしを屋上に呼び出したのだ。 もしもその話が、ガディム絡みのことだったとしたら……? そう考えれば、栗原さんだって十分狙われる理由がある。 それならば、尚のこと栗原さんを連中の好きにさせるわけには行かない。 あたし達は連中をかいくぐり、目的地を目指す。 遅刻寸前の時にいつも使ってきた、フェンスの切れ目。 そこからなら裏山に脱出できる。それにあそこは大人数じゃ通れない。益々あたし達に有利になる。 闇雲に中庭から脱出し、裏庭を通ってフェンスへ。 途中、幾人かの生徒の手があたし達に伸びようとしたが、あたしは強引にそれを振り払った。 捕まったら終わりだ。それだけは確かなことだった。 引っかかれたり、壁に肩をぶつけたりもしたが、それも気にはしてられない。 とにかく今は逃げることだけに必死だった。 「さぁ、栗原さん早く!!」 「う、うん!」 フェンスの切れ目から、まずは栗原さんを先に逃がす。 動きは鈍いが数が違う。じわじわと追い詰められていくのが分かる。 まるでホラー映画に出演しているような気分だ。 栗原さんは狭い穴を抜けるのに手間取りながらも、反対側に抜けた。 次はあたしの番。あたしが手早く抜けようと、体をかがめる。 その時だった。僅かな遅れが失敗を招いた。 ぐぃっと、体が引っ張られる感触。ぞくっとして振り返ると、 瞳の色を失ったクラスメートが、何の感情もなくあたしの服の裾を掴んでいた。 しまった……!! A ……今更周りの目なんか気にしてられないわよ! 強引に服を破ってでも脱出する B その時栗原さんがクラスメートの注意を逸らしてくれた。ナイス! C 片手に持っていた竹刀で相手を打つ D この事態に気づいたオボロさんが駆けつけてくれた。危ないところだった……
B
「えぃっっ!!」 その時だ。横からそんな掛け声をかけ、 栗原さんが土や小石をクラスメートの顔にぶつけた。 その瞬間、少しだがクラスメートの注意が栗原さんに逸れる。 少し大きめの石がモロに顔に当たり、土が目に入ったのにも関わらず、 彼は痛いと言う素振りも、不快だと言う素振りも見せなかった。 だが、視線が栗原さんに向くことだけは防ぎようがなかったらしい。 あたしはその好機を逃さず、強引に彼の手を振り払い、 フェンスを抜け、栗原さんと一目散に裏山の奥へ駆け出した。 振り返ってみると、彼らはフェンスの周りに群がっているだけで、 切れ目を越えて追ってこようと言う素振りはない。 ガディムはああいう状態の人間はそう遠くまで操れないのか、 それともやはり学校という限定した場所でしかガディムの力が発揮できないのか、 それは定かではなかったが、とにかくあたし達が助かったことは確かだった。 学校が見えなくなったところで、あたし達はへたへたと座り込む。 屋上からの行き着く間もない逃亡に、感情がすっかり麻痺していたが、 今になってやっと恐怖があたしにも舞い降りてきた。……つまりは、腰を抜かしたのよ。 思えば、よくあんな無茶なことが出来たものだわ。自分で自分を褒めたくなる。 そして…… 「七瀬か。首尾はどうだ、何か怪しい奴でも……」 まるでタイミングを計ったかのように、助かってから様子を見に来る間の悪い男が一人。 最悪のタイミングもさることながら、何も知らないようなその口ぶりが、なおこちらの神経を逆撫でさせる。 この瞬間、オボロさんは東日本で最大級の殺意を向けられた。だが本人はまだこのことを知らない……。
「……それで栗原さん。あたしに話があったのよね?」 オボロさんを軽くしばき倒したのは言うまでもないとして、 あたしは先ほど聞きそびれた話というのを栗原さんにふった。 栗原さんはオボロさんに一度視線を振ると、まるで言いにくそうに顔を伏せる。 「ああ、安心して。その男は害はないわよ。得もないことが今になって分かったけれどね」 「七瀬! 貴様それはどういう意味だ!?」 どうもこうもない、そのまんまの意味よ。 ……まったく、この距離で気づけないなんて。 ああうん、無茶を言ってるのはあたしも分かってるけどね。オボロさんに一応非はないってことも。 だけど、命からがら逃げ出したところで、さも「何かあったのか?」のような顔をされてみなさいよ。 嫌でもその相手を一発殴りたくなるから。絶対に。 オボロさんのことはさておき、あたしは栗原さんに改めて向き直った。 「話ってのは連中のことでしょう? あたし達も理由あってあの連中……ガディムと戦ってるわ」 あたしは栗原さんに話を促す。 後ろではオボロさんが刀を鞘から抜ける態勢に持っていっていた。 栗原さんが、敵の罠だった瞬間に斬る……ってことね。 オボロさんの目、それは栗原さんを見定める目だった。ゴミ箱を漁ってる姿からは想像できない。 栗原さんは意を決したようで、口を開く。 「……七瀬さんが、ガディムと戦ってることは知ってたよ」 その言葉にびくっとした。 栗原さんはただ無言で、あたしの右手に巻かれているバンダナを指差す。 なるほど、バンダナのことを知っていれば無理はない。 ただ、バンダナのことを知っているというのはつまり……。 栗原さんの次の言葉は…… A ……あたしも、別の世界の人と会ったの B あたしも、この世界の人間じゃないから
A
「……あたしも、別の世界の人と会ったの」 「何!?」 栗原さんの言葉に、オボロさんがいち早く反応した。 その言葉の意味が理解できないあたしじゃない。 つまりは、オボロさんと同じ……ガディムと戦うためにこの世界に来たって人? 「もしかして……オボロさんと同じ世界の人が?」 「さあな。ヤツはここに来る前にも幾つか別の世界を襲っている」 何にせよ、味方がオボロさんだけじゃないっていうのは朗報だ。 栗原さんはあたし達の顔色を伺いながら、遠慮がちに話を進める。 「その人は、ガディムを逃がさないように結界を張ったって言ってた。 だけど、術を掛けるには都合のいい場所が決まってるらしくて、それで学校が……」 「……なるほどね、学校を根城にするなんておかしいとは思っていたけど」 「ガディムを一つの場所に封じることが出来るとは、相当の術者だな」 疑問がひとつ瓦解する。 オボロさんの言葉から、ガディムがこれまで幾つかの世界を回ってきたことは明らかだ。 そして、その中ではガディムを追い詰めたところで取り逃がしたと言う場面もあったのだろう。 だからその人は、今度は先にガディムを一箇所に足止めすることから始めたわけだ。 「ガディムが、学校の中だと自由に動けるから、 誰がガディムに体を乗っ取られているのかが分からないって。 バンダナがあれば、ガディムの居場所を突き止められるって言って、それで……」 「それであたしのバンダナを見て、話をしようと思ったのね」 「うん。バンダナの特徴とか、教わっていたから……」 きっと栗原さんは、あたしと同じようにその人に協力しようとしたのね。 なんと無茶な。あたしだって、人のことは言えないけれど。 「……で、その術者は? 今何処にいる?」 「その人は、今はあたしの家にいるよ。名前は……」 A ウルトリィっていう、羽根の生えた女の人 B スフィー・エル・アトワ……えっと続き忘れちゃった C 裏葉さんっていう、着物を着た綺麗な人 D エリアさんっていう、あたし達と同じぐらい年の人
C
A
C これは裏葉様1択 他のキャラは魅力がない
「えっとね、裏葉さんっていう、着物を着た綺麗な人」 「裏葉……か」 その人の名前を聞いて、オボロさんが何か思い当たったような顔をした。 「知り合い?」 「以前、ヤツを追った先の世界にいた方術師だ。 ……そう、そのバンダナの持ち主の世界のな。俺も何度か顔を合わせたことはある」 自然と視線がこのバンダナに集まる。 ああ、なるほど。 だからその裏葉さんとやらはバンダナについて知っているわけか。 「あの女はあの世界においては最強と謳われた方術師だ。 その実力はオンカミヤムカイの賢大僧正にも匹敵する」 おるやんくる? ……そんな訳の分からない単語を持ち出されても困る。 オボロさん、頼むからあなたの常識がこの世界の常識と思わないで。 まあ、とっても凄い人だっていう意味は伝わるけど。 「つまり、その裏葉さんとオボロさんは目的を同じくする仲間だったって訳ね」 「そんなんじゃない。敵の敵は味方、それだけの話だ。 お互いに邪魔しあったところで、ヤツを討つのに何の利もなかったからな」 相変わらず言い方がそっけない。 まあ、最初に会った時に「一人でガディムを倒す」なんて言ってたから、 これもまあ仕方ないと思うけど。 「とにかく、栗原さん。その裏葉さんに会わせてくれない? お互いガディムは共通の敵みたいだし、協力した方がいいと思うから」 「う、うん。元々、そのつもりだったから」 「……七瀬!? 貴様、そんなことを勝手にっ……!」 「なによ? あたしの言うことが間違ってるとでも言うの? 組む組まないは別としても、せめて話し合いぐらいはしとくべきでしょ?」 「…………チッ!」 あたしに何も言い返せないからか、それとも最初から裏葉さんとは会うつもりだったからなのか、 オボロさんは舌打ちしただけであっさり引き下がる。 あたしは、その裏葉さんという人が賢明な人であることを切に願った。 オボロさんのような猪突猛進の非常識人は、一人で十分よ。これ以上は絶対に要らない。
「あの……こっち」 栗原さんの案内で、あたし達は栗原さんの家に向かう。 どうでもいいが、オボロさんを連れていると目立つことこの上ない。 小さい子供なんかオボロさんを指差してたし、その母親は目を合わせないようにって子供を叱ってた。 ……ああもう、恥ずかしいったらありゃしない。あんた服ぐらい調達してきなさいよ! 栗原さんの家はというと、マンションの一室だった。 こんな所に、別世界から来た方術師の人がいるなんて物凄く意外だ。 裏葉さん、か。一体どんな人なんだろう。 栗原さんが言うには、着物を着た綺麗な人らしい。 おそらくは真面目な人だと思う。術師っていうのは、そんなイメージがある。 ……粗相のないようにしなくちゃ。人は第一印象が大切だって言うし、乙女らしく乙女らしく。 少しドキドキしてくる。どんな人なんだろう……? 「今は、家にはお父さんもお母さんも旅行で留守にしてるから、のんびりしていってね?」 栗原さんがドアを開ける。 すると、果たして部屋の中には裏葉さんと思われる人物がいた。 その裏葉さんは…… A 部屋の床に魔方陣を書いて何か呪文を唱えてる。物凄く重々しい…… B 正座して読書に勤しんでいた。知的な方みたいね C 料理を作っていた。意外に家庭的? D 横になりながらお菓子を片手にテレビドラマを見ていた。せ、折角のイメージがっ……!!
B
部屋の中には、裏葉さんと思われる方が、 一人正座して読書に勤しんでいた。 ただ、栗原さんが言ったような着物は着ていなく、この世界の普段着を着ている。 おそらく栗原さんの服か、それとも栗原さんのお母さんの服を借りたのだろう。 あたしは裏葉さんを見て、正直ホッとした。 どうやら知的で真面目でこの世界の常識もちゃんと持ち合わせてる人みたいだし、 オボロさんのようなゴミ箱漁り男とは違って心底安心した。 「ただいま」 栗原さんがそう声を掛けると、 裏葉さんは読んでいた本をぱたりと閉じ、にこりと微笑んだ。 「お帰りなさい。あら、そちらの方たちは……」 「まさかまたあんたに会うことになるとはな」 「まぁっ、オボロ様ではございませぬか」 驚いたのかどうか分からない口調で、裏葉さんが答えた。 「オボロ様も、ガディムを追ってこの世界へ?」 「当たり前だ。ヤツはこの俺が倒すんだ、別の世界に逃げたと知ったら追うまでだ」 「あらあら、まあまあ……これは何と言う偶然。私も同じ目的でここに来ております」 「いちいち驚いたような素振りを見せるな! ……くそっ、この女はニガテだ」 オボロさんが舌打ちする。 ……ああ、だからさっきここに来るのを渋ったワケね。 「そんなことよりだ、あんたには頼みがある」 「頼み……と申しますと?」 「ああ。それはだ……」 A 「……ヤツを倒すまで、組まないか?」 B 「俺の邪魔だけはするな」 C 「七瀬達に危険が及ばないように、守ってやってはくれないか?」 D 「……飯を恵んでくれ」
d
「……飯を恵んでくれ」 「あらあらまあまあ……」 てっきり真面目な話を切り出すのかと思いきや、 神妙な表情でそんなことを言ってのけたオボロさんに、 あたしと栗原さんは盛大にずっこけた。 「オボロさん、話の腰を折らないでよ! もうちょっとぐらい分別を……」 「分別? ……それで腹が膨れるのか? 凍えずに済むのか!? 食い物の争奪で俺に敗れた犬を弔ってやれるのか!?」 逆に完全に開き直られた。 ああうん、あたしが悪かった。苦労してるのねオボロさん。 「まあまあ、よろしいではありませぬか。 丁度私もそろそろ夕餉の支度をしようとしたところでございます。 家人の透子様さえよろしければ、皆で食卓を囲むのも風情があってよろしいですよ」 「うん。あたしは、みんなでごはんが食べたいよ」 裏葉さんと栗原さんが、オボロさんのために優しい言葉をかける。 ……まったく、みんなしてマイペースなんだから。 もしかしてガディムに一番真剣に取り組んでるのってあたしだったりする? 結局あたしも夕飯をご一緒させてもらうことになった。 裏葉さんの料理は純和風で、その味は絶品だった。 無我夢中で料理にかぶりついているオボロさんを見ると、少し微笑ましくも思う。 「ところで……」 ある程度食が進んだところで、あたしは一度箸を置いた。 一度どうしても聞いておきたいことがあったからだ。それは…… A ガディムがどうしてこの世界にやってきたのか B 裏葉さんの世界のこと C オボロさんはどうしてガディムを倒そうとしているのか
C
「オボロさん、実は昨日から聞きたいことがあったのよ」 「ん? ふぁむだ(なんだ)?」 オボロさんは口に食べ物を詰め込むのをやめずに、 自分の皿に目を向けながら答えた。……まあ、いいか。そんな大したこと聞きたいわけじゃないし。 「オボロさんはどうしてガディムを追っているの? いつもはこんな調子なのに、ガディムの話になるとまるで別人のように……」 「…………」 その時、急にオボロさんの動きが止まった。 それまでニコニコと微笑んでいた裏葉さんも、 この時ばかりは表情を固くし、悲しい目をあたしとオボロさんへと交互に向ける。 「……食後の軽い運動をしてくる。直に戻るから心配はするな」 そしてオボロさんはそれだけ言うと、 自分の皿に料理が残っているのにも関わらず、部屋から出て行ってしまった。 「ちょ、ちょっとオボロさん、どうした―――」 「なりませぬ、七瀬様」 あたしが慌ててオボロさんを追おうとしたところ、裏葉さんがあたしを止める。 「貴女は知らぬことでしょうから、 仕方のないものかもしれませぬが、七瀬様はオボロ様の心の傷に触れてしまったのです」 「心の傷?」 「今一度よくお考え下さい。いくらガディムがオボロ様の世界から生まれし妖とはいえ、 あれほどに執着し、己が剣をガディムの体に突き立てることに固執するのは何故なのかを」 「…………」 「言葉は良くないものになりますが、この世界はオボロ様にとっては他人事で済ませられる世界。 自分の世界でなければ見て見ぬ振りもできましょう。なのに、自らの故郷を出てまでこの世界に、 ガディムを追ってきたというのは、オボロ様がガディムに怨恨を抱いているからに他なりませぬ」 「いったい、オボロさんはどうして?」 「私も、以前ガディムとの戦を通じてオボロ様と知り合ううちに、知ったことなのですが……」 A ……オボロ様には、もう帰るべき故郷がないのです B オボロ様には尊敬してやまない義兄がいらしたそうです C 妹君をガディムとの戦で亡くされたと聞きます D ……いえ、やっぱりやめておきましょう。私の口からお話できることではございませんね
C
「オボロ様には、妹君がいらしたと聞いております」 「妹さんが?」 「はい。私はお会いしたごとはございませぬが、 重い病を患ってはいても、笑顔を絶やさぬ気立ての良い方であったと。 ですが、その娘も……」 「……ガディムに?」 「私はそう聞いております。なんたる仕打ちでしょう……! 今日とも明日とも知れぬ命で、今まで悔いのないように生きていた方が、 まさかそのような終わり方をなさるとは……私ならば、死んでも死に切れませぬ」 感極まったのか、裏葉さんからほろりと涙が流れる。 ……知らなかったとはいえ、確かにあたしが無神経だった。 きっとオボロさんは、その子をとても可愛がっていたのだろう。 重い病気だったというのなら、尚更悔いのないようにさせてやりたかったに違いない。 それを、ガディムは…………。 「七瀬様、この事については慎重な決断をお願い致します。 今のオボロ様には心の傷を癒すために他人の温もりが必要ではあるのでしょうが、 誤った優しさは、時には悪意よりも害をなすこともございます」 「……ええ。分かってる、分かってるつもりよ」 分かっているつもりだけれど、あたしはオボロさんと少し会いづらくなったのは確かだった。 一言謝りたい。だけれど、かける言葉が見つからない。 あたしは…… A とにかく、オボロさんを追う B 少し時間をおきたい。オボロさんが帰ってくるまで待つ C ……なかったことにしよう。これ以上オボロさんを傷つけるのが怖い
B
あたしは、とにかくオボロさんには一言謝ろうと思った。 だが、この足はオボロさんのいる方角には向かわない。 今は何を言っても逆効果だろう。 あたしは自分の迂闊さを呪った。 オボロさんが異世界からの化物を退治に来た勇者か何かだと、勘違いしていたのかもしれない。 だけどそんなわけはなかった。 あたしにはあたしの理由があるのと同じように、オボロさんにはオボロさんの理由がある。 こんな異世界などに来るという時点で、訳ありであることは楽に想像できたはずだ。 ……なによ、今まで散々オボロさんのことを酷く言っていたけれど、 結局一番最低なのはあたしじゃないの。人の聞かれたくない部分を穿り返すなんて……。 「七瀬さん、いいの?」 「え?」 栗原さんに声を掛けられ、ハッとして顔を上げた。 栗原さんは困ったように、窓の外を指差す。 そこから聞こえてくるのは、素振りの音。オボロさんだ。 きっとオボロさんは、復讐という形で妹さんの死を乗り越えようとしてるんだろう。 ……悲しいほどに、痛々しかった。 「今は……時間をおくしかないと思うの」 「そう……」 あたしの言葉に、栗原さんは悲しそうに目を伏せた。 この沈黙が、あたしには拷問のようにも感じた。
それからオボロさんが戻ってきたのは、一時間ほどしてからだった。 全身が汗びっしょりになるまで、素振りを続けていたらしい。 「今戻ったぞ。……どうした、そんな泣き出しそうな顔して?」 帰ってきたオボロさんがあたしにかけた第一声が、それだった。 「オボロさん……あたし、なんていったら良いか……その……。悪いこと聞いちゃって……」 「……裏葉から聞いたのか」 「うん……」 オボロさんは、やれやれと言った風にため息をつく。 そこには先ほどとは違い、幾分か余裕のあるようにも見える。 「いいか、七瀬。一言だけ言っておく」 A 俺は別に気になどしていない B ……二度と、俺の前で同じ話をするな C 俺の方こそ悪かったな。余計な気を遣わせたみたいで D 酒が……欲しいな
D
B
「酒が……欲しいな。 あまり好きなクチじゃなかったんだが、嫌な事を思い出した日は、飲むだけ飲んで、とっとと寝るに限る」 メシの次は酒の要求?随分と図抜けてるわね。これだから男って奴は…… 「えっと、お酒とかよくわかんないから、じゃあビールでいいかな?」 「あのションベンみたいな麦酒か? あんなんで酔えるかよ。 清酒は無いのか?」 「それじゃ、下の売店で私が買ってきますね」 結局、裏葉さんが買ってきた日本酒をストレートであっと言う間に1升開けて、 オボロさんはその場のソファーに眠りこけてしまった。 居た堪れなくなった私たちは、今日は栗原さんの家でそのままお泊りと言う事になった。 まだ、今後の方針とか色々話したい事があるしね。 夢──夢を見ている。 ガデイムの名を聞く度に湧き上がる憎悪。 それが自らに押された烙印を自覚させる。 腕の中で事切れる我が妹。 血に濡れた両手。 そして、ユズハの胸に刃を突き立てる感触。 あの時の光景は、例え地獄(ディネボクシリ)に落ちようとも決して忘れる事は無いだろう。
何故、奴が病を患っていたユズハを依代と選んだかは判らない。 何の罪の無い、誰一人にも恨まれたことの無いユズハが何故あの様な目に遭ったのだろう。 神の悪戯と言うのならば、奴の次にそいつを滅ぼすと誓える。 だが、ユズハに憑依した奴は破壊の限りを尽くした。 地は裂け街は焼かれ、トゥスクルはかつての大乱を越える災厄に見舞われた。 そして、俺たちは戦った。 大神としての力を解放した兄者、始祖としての力を駆使したカミュ。 戦乱を潜り抜けてきた俺達の力量。 それら全てを合わせても奴の力はそれを上回っていた。 だが、奴とて無限の力を持ち合わせてはいなかった。 奴の油断なのか、俺たちの決死の覚悟故か。 兄者が奴に対して隙を作り上げ、千載一遇の機会がが生まれた。 長きに渡った死闘。 疲弊しく尽くした俺達にとって、訪れた最後の機会。 運命の悪戯か、その場で動けるのは俺一人だった。
走った。ボロボロになった体に鞭を打ち、朦朧とする思考の中。 戦人としての染み付いた本能が、何をすべきかを判断し、走った。 「────ユズ、ハ──」 駆け寄る。 駆け寄って────ユズハに駆け寄って、その無抵抗な体に押しかかった。 「ぁ────にい、さま────?」 ユズハの意識が戻ったのか、二度と聞けるとは思わなかったユズハの、兄を呼ぶ声が聞こえた。 躊躇いはあった。迷いはあった。兄としての俺が何度も止めろと叫んだ。 だが、ここでガディムを、ユズハにトドメを。 傷付き、抵抗出来ず、立ち上がることも出来ないユズハを、ここで殺さねば、俺たちが殺される。 だから、俺は迷いを振り切り、その刃を突き立てた。 ユズハを殺した。 兄としての俺ごと、思いでも、温もりも。 かつて全てを投げ打ってでも守ると誓った決意ごと── 消え行く命の中、ユズハは──── 「ごめんなさい、にい、さま────」 そう最期に残して逝った。
最早、俺に残されたのは奴への憎悪のみ。 復讐のみに生きた輩がどういった末路を辿るかは、判っている。 仕事柄、そう言う奴をごまんと見てきた。 その果てに何も無いとしりつつも、俺は奴を追い続けるだろう。 A 回想を続ける B 目が覚めて朝になった C 夜中に思わず目が覚めてしまった※偶然、起きてた誰かと会話
A
それから毎日は、文字通り地獄(ディネボクシリ)そのものだった。 如何なる時にもちらつくのはユズハの笑顔。 今はないユズハを思い出すたびに、それが心の枷となり俺を幾度となく苦しめた。 あの時ユズハをこの手に掛けた感触が、まるで手にべったり貼りついたようにも感じた。 どんなに自分で自分を苦しめようと、傷をつけようと、 妹殺しという名の闇から、俺は抜け出せなかった。 床についても、毎晩のようにあの日のことが夢に出て、俺はいつもうなされていた。 夢の中での俺は、いつもあの時の俺なのだ。 毎晩毎晩、何度でもユズハの胸に刃を突きたてた時のことを、嫌でも思い出させてくれる。 そして、夢の中でのユズハはいつもこう言うのだ。 ――――ごめんなさい。 皮肉にも、ユズハの死をきっかけに、俺は以前とは比べるほどが出来ぬほどに強くなった。 ガディムとの戦で疲弊した國を狙い、反乱分子や周辺諸國が活発な動きを見せれば、 必ず俺は先鋒として戦場に赴き、敵将を討ち滅ぼす。 今は兄者の為に俺は生きている。そう思っている間だけは辛いことを忘れられていた。 自然と俺は暇さえあれば剣を振るようになっていった。 嫌なことを思い出せば稽古に励んで涙の代わりに汗を流し、 そしてそれが終われば酒を呷って寝てしまうと言う習慣がついたのもこの頃だ。 毎日そうしてきたから、武も酒も自然に強くなっていった。 あのベナウィからも一度「純粋な剣の腕では遂に自分を超えた」と評されたこともある。 そうして得てきた武勲のおかげで、 俺は街に出れば「流石は皇の弟君だ」と褒め称えられる程にはなった。 だが……それが余計に苦しかった。 ガディムを滅した稀代の侍大将と呼ばれる度に、 貴様は妹殺しの大罪人だと、周りから蔑まされているような錯覚に陥る。 名が上がれば上がるほど、俺の苦しみも増す。 そしてそれから耳を塞ぐために、俺は更に剣を振る。……その繰り返しだった。
ガディムが生きていると聞いたとき、俺は最初どんな気持ちだったろうか。 憎き妹の仇がまだ世に存在すると怒り狂ったのだろうか。 それとも、妹の死は無駄であったのかと嘆き悲しんだのだろうか。 今となってはそれももう覚えてはいないが、その時に心に誓ったことだけははっきりと覚えている。 ……ヤツは俺が倒す。 急に自分の前に道が開けたような感覚だった。 ユズハを失ってから、初めて俺に生きる目標が生まれた。 気づけば俺は、今までない程の気迫で兄者に討伐隊の先鋒を志願していた。 だが……兄者はそれを良しとしなかった。 ガディムは俺に深手を負わされ、別の世界へと脱出していたのだ。 もう俺たちの世界に戻ってくるかも分からない。 戻ってきたとしても、それは十年や二十年……もしかしたら何百何千年と経ってからだろう。 そんな状況で俺をヤツの討伐に向かわせるのは得策ではない、とのことだった。 戦乱の真っ只中である今の世に、ガディム討伐のため國を空ける余裕などありはしない。 第一、別の世界まで軍のような大人数を送ることの出来る術者などいはしないのだ。 この國に帰ってくるかも分からない怨敵より、今ふりかかる戦乱の火から民を守る方を優先する。 その兄者の判断は正しい。俺が民ならば、まず自分達の身を考えてくれる兄者を讃えたことだろう。 ……しかし、兄者は二つ失敗を犯した。 まず一つ目は、今まで如何なる命でも従ってきた俺が、兄者の命に背く可能性を考慮しなかったこと。 そして二つ目は、ユズハの死を親友として悼み、ヤツの死を望んでいた術師がいたこと。 俺は独断でガディムを倒す決意を固め、カミュの術で別の世界へと飛んだ。國についてはベナウィ達もいるし問題はないだろう。 兄者の言うことは正しいと理解しているし、今でも俺は兄者を心から尊敬している。 だが、この命令だけは聞くわけには行かなかった。ユズハの死の上でのうのうと生きているヤツを許せなかった。 もうトゥスクルの土を踏むのは難しいだろうと分かってはいたが、それでも俺はヤツを追う道を選んだのだ。 A ……そして、裏葉たちの世界に辿り着いたのだ B 朝日が目に入る。……もう朝か
B 過去編は小出しがいいな
(――朝……か) 朝日が目に入ってきた。夢の中の光景が薄れ消えてゆく。 (? この毛布は……そうか、昨日は) 瞼を擦りながら体を起こすと、自分に毛布が掛けられていた。 周りを見回す。いつもの公園の長椅子ではない、見知らぬ部屋の長椅子(“そふぁ”と言うらしい)の上だった。 徐々に意識が明確になってきて、昨日の出来事を思い出す。 七瀬が助け出した少女、栗原透子の家に招かれて一晩を過ごしたのだ。 馴れているとはいえ、久しぶりに野宿から解放されてのは悪くなかった。 だが、しかし―― (……まさかここでも裏葉と会うとはな) 世界を隔ててさえ、世間というのは狭いものだ。 “そふぁ”から立ち上がり、改めて部屋を見回す。 部屋は俺一人だった、まぁ当たり前の話だ。 恐らく他の三人は一緒に別の部屋で寝ているのだろう。 何となく窓に近づいて、外の景色を眺めた。 雲の少ない空、今日も良い天気になるだろう。 柔らかな日の光を浴びながら、俺は伸びをして軽く体をほぐした。 A 「あら、おはようオボロさん」振り返ると七瀬も起きていた。 B 「あらあら、お早う御座いますオボロさん」振り返ると裏葉が起きていた。 C 少しばかり朝の鍛錬に出掛けてみる。
A
俺は”べらんだ”とかいう、縁側と似たような場所に出て、 手すりに体をもたれかけ、遠くを眺めてみた。 東からは日の出。世界が変わっても太陽はどの世界でも同じらしい。 この街は見れば見るほど建物だらけの街だ。世界中の人間がこの街に住んでるんじゃないだろうか。 それは言い過ぎにしても、この街がこの世界最大の街であることは確実だろう。 貴重な鉄をふんだんに使った建物が連なっているのが良い証拠だ。 さて、そろそろ稽古でもするか。そう思ったときに、何か音が聞こえた。 音がしたのはこの建物のすぐ真下。見下ろしてみればそこには……。 びゅっ、びゅっと、この場に竹刀を振る音が響く。 いつもよりも早い時間だったが、あたしは日課である素振りに出た。 ……あの場にいて、オボロさんと鉢合わせするのがなんとなく嫌だったのだ。 結局昨日は有耶無耶の内に終わってしまった。 オボロさんは酒で許してやるというような口ぶりではあったが、 あのことには二度と触れるな、と言っているようにも聞こえたのだ。 あたしに酌をさせたりもしたのだから、もう怒ってはいないとは思うのだけれど……。 「精が出るな。朝稽古か?」 上から声を掛けられ、びくっとして空を見上げる。 それから一瞬後、あたしはマンションのベランダから声を掛けられたことに気づいた。 振り返ってみれば、オボロさんがベランダにいた。 「あら、おはようオボロさん」 勤めて冷静に、何事もなかったように挨拶を返す。 良かった。オボロさんはもう昨日のことを気にはしていないみたいだった。 オボロさんはすっと体勢を整えたかと思うと、まるで昨日のあたしにようにベランダから飛び降りる。 ……えっ、危ない!? と、思う間もなく、オボロさんはふわっと地面に着地した。 あ、あのね……こっちを冷や冷やさせるような降り方しないでよ。
「そいつは何だ? タケミツとはまた違うようだが」 「竹刀よ。稽古で相手に致命傷を与えないようにって発明された模擬刀ってとこね」 「ほう……」 何なら持ってみる? とあたしが聞いたところ、オボロさんはああとだけ言ってあたしから竹刀を受け取った。 中結や弦を触ってみてはどこか納得したような声を出し、実際に振ってみては真剣との感触の違いに驚く。 「あたしね、昔剣道やってたのよ。やめた今でも、こうして素振りだけは欠かしていないけれどね」 「剣道? ……ああ、この世界での剣術のことか」 「正確にはちょっと違うんだけれど、まあそれでいいわ」 「何故やめた?」 「……腰を痛めたのよ。体当たりが多い、剣道の職業病みたいなものね。 それでもどうにかして剣道を続けることも出来たんだけれど、いい機会だからやめちゃった」 あたしはそこまで話して、昔を思い出した。 ……そういえば、あの頃のあたしは剣道一直線だったっけ。 「惜しいことをしたな。相当の腕だったのだろう?」 「どうしてそう思うの?」 「素振りが綺麗だった。相手の中心を捉え、妙な癖もついていない。 この竹刀が軽いことを差し引いても、振りが十分速い」 「ありがと。確かに自分でもいい線は行ってたとは思うわ。 だけどね、乙女らしい、料理や読書に勤しむ女の子らしい女の子に憧れてたのよ、あたし」 「別に剣を振る女が女ではないというわけじゃない。 俺の仲間にも女の将は何人もいた。そいつらに恋心を抱く部下の兵達も一人や二人ではなかったぞ」 「イメージの問題よ」 「い、いめー? ……よく分からんが、そんなものなのか」 「そんなものよ」
そういえば、こんなこと改めて人に話したことなんてあまりなかったわね。 特にこっちに転校してきてからは。 あたしはオボロさんから竹刀を返してもらうと、また素振りを続け始めた。 オボロさんはその様子をじっと黙って横から眺めている。 ……そんなことされていると、何だかやりにくい。 「オボロさんは稽古しないの?」 「まあ待て。もう少しお前の世界の稽古を見せろ」 「そう言われてもね、これはただの素振りよ。 稽古っていうのは相手がいないと稽古にならないのよ。 だから剣道では戦う前に『相手をしてくれてありがとうございます』って礼をするわけ。分かる?」 ……と言っても、オボロさんは剣道を知らないし分かるわけないか。 だけどオボロさんはどこか納得したようだった。 礼のくだりは違っても、稽古は相手がいないと出来ないと言うのはどの世界も共通だろうから。 それから、オボロさんは何か思いついたように…… A こっちで素振りをした方がいいだろう。とあたしに真剣を手渡した B ……俺と手合わせしてみるか? とあたしに言った C 向こうへ行ってしまった。きっと自分の稽古に行ったのだろう
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「なら、俺と手合わせしてみないか?」 「……はいぃ?」 「別におかしなことではないだろう? 稽古が一人じゃ出来んといったのはお前だ」 確かに今までの流れだと、あたしがオボロさんを誘っているようにも聞こえた。 だけど、あたしにそんなつもりは一切なかったのに。 「あのね、オボロさん。あたしにそんなつもりは……」 「素振りを続けているのなら嫌いじゃないんだろ? 俺は我流の二刀だが、一刀で戦えないわけじゃあない」 そんな事を言いながら、真剣を一本抜いてあたしに渡そうとする。 ……って、真剣でやろうとしてたんかい! 「このどアホッッ!! あたしに真剣が扱えるわけないでしょ!?」 以前一度だけ、道場の先生に真剣を持たせてもらったことがある。 流石に鉄で出来てるだけあって、真剣は重く持ち上げるのが一苦労だった。 先生が言うには、真剣に慣れて使いこなせるようになるまでにも稽古が必要なんだそうだ。 真剣に触ったこともない人間が、急に刀を持ったらその重みでふらつくのが関の山だ。 例え幾ら才能があろうとも、真剣を扱えるほどの力がなければまともに戦えもしないだろう。 ましてやあたしのような力の弱い女の子なら尚更だ。 「真剣を拒むなら、その竹刀とやらを使ってもいい。 俺も同じ条件で戦う。それで文句はないな?」 「そんなこと言われても困るわよ。 確かにあたしの家にはスペアの竹刀もあるけど、防具は一つしかないし……」 「防具? ……そんなもの俺には不要だ。速さが鈍る。 第一相手に致命の傷を与えない武器なら、防具など必要ないだろう?」 「あのね、確かに竹刀は殺傷能力は低いけど、打たれれば痛いし、その為にも防具は……」 「俺が要らんと言っている。もとより俺は今まで本気の試合でも鎧の類はつけたことがない」 別にそんなオボロさんのスタンスで言われても困るんだけど。 だってね、無防備の相手に向かうのは物凄くやりにくいのよ? 第一あたしとオボロさんじゃあ、勝負にならないと思う。 今までガディムを倒すことだけを考え精進してきたオボロさんと、 かたや剣道をやめて今では毎日の素振りぐらいしかしていないあたし。既に決着はついている。
「あたしじゃ稽古にならないわよ。 稽古って言うのは同じぐらいの実力の人がやりあって初めて稽古なんだから」 「何故お前じゃ話にならないと言い切れる? 俺はお前と剣を交えたことなど一度もないのだぞ」 あたしが何を言おうともオボロさんは食い下がってきた。 オボロさんはあたしの世界の剣道に興味津々なのだろう。 まるでオモチャに夢中になる子供か何かのようだった。……目を付けられちゃったか。 どうやって説得したものか……そうあたしが頭を抱えていると、 「あらあら、楽しそうですね」 「裏葉さん!」 良いタイミングで、裏葉さんが物音を聞きつけてやって来てくれた。 オボロさんよりも常識を持ち合わせている裏葉さんなら、きっとオボロさんを諌めてくれる。 「裏葉か。なに、俺が七瀬と手合わせを申し出ているんだがな」 「やるわけないでしょ! 竹刀だって当たれば痛いのよ? だから裏葉さんからも……」 「あらあらまあまあ……それでは私の方術で痛みを抑えての一本勝負で如何でしょうか?」 「そう、方術で痛みを抑えての一本勝負……ってえぇっ!?」 裏葉さんは現れるなりそんなことを言ってのけた。 後ろでオボロさんがしてやったり、の表情を浮かべている。 「流石裏葉だ。そう言うと思っていた」 「私も久しくオボロ様の剣を見ておりませぬし、七瀬様の技も見とうございます。 ああ、こうしているとオボロ様が柳也様と真剣勝負をしたのがまるで昨日のよう……」 何故か、何故かもうあたしとオボロさんが手合わせする方向に向かっている。 既に裏葉さんはオボロさん側に回ってしまっている。正に孤立無援。 「あ、あのね裏葉さん。そう言われたってあたしは……」 「よよよ……七瀬様は私共のささやかな期待にも応えてくれぬのですか?」 「うぅっ……!」 るるる〜と涙を流しながら、裏葉さんがあたしに迫る。 A ああもう、しょうがないわね! B 何と言われようとも絶対にやらない
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「ああもう、しょうがないわね! どうなっても知らないわよ!!」 「そうこなくちゃな」 二人に迫られ、あたしは仕方なく折れた。 この場合どうなっても知らないのはあたしの体の方だろう。 あたしは渋々ながらも家までオボロさんの分の竹刀を取りに行き、 続いて誰にも邪魔が入らないように裏山の広く平らな場所まで移動した。 マンションの前でやりあってて、付近の住民に通報されたんじゃたまらないから。 「先に一撃加えればそれで一本としよう。いいな?」 「……ああもう、勝手にして」 なんでこんなことになっちゃったんだろう。 少し離れた所で、裏葉さんがニコニコと、栗原さんが不安げにあたし達を見守っている。 まあ、稽古をするというのなら、中途半端な気持ちでは絶対にしないけど。 それがオボロさんへの礼儀だし、一度剣道を握った人間の最低限のルールだと思うから。 「それでは無制限一本勝負……始め!」 裏葉さんの声が響く。む、無制限なんだ……。 剣道の場合なら一試合五分なんだけれど、それはまあ……いいか。時間切れでの決着はないだろうし。
あたしは正眼に構え、オボロさんの出方を窺う。 こうやって竹刀を構えれば、昔の気持ちが沸々と蘇ってくるのが分かる。 わき目も振らずに、ただ強さだけを追い求めていたあの頃。 腰を痛めて挫折するまで、ひたすら相手よりも早く有効打突を得るのに躍起になった当時。 オボロさんの構えは、やはり我流というだけあり一風変わっていた。 流石にあたしの家には二刀用の竹刀などないので(というかあたしも二刀を相手にしたことなど一度もない) オボロさんも一刀で相手をしてもらっている。 その構えは正眼に近いが、幾分か下に構えていた。 下段のように剣線を下げるわけでもなく、あたしの左胸に切っ先を合わせた、そんな形。 ……確か、嘗てこういう構えを取った流派が江戸時代に存在したと思う。 相手を突いて、二撃目で首を斬ることに長けた、 防御中心の正眼とは完全に違う、攻撃のみを考えた構え。 流石に打突部位の決まっている今日の剣道で、この構えを取る人はいないけれど、 実戦のみを考えてきたオボロさんなら、こういう構えに至ってもおかしくはないか。 驚くのはこの構えを我流で導き出したということ。一つの流派が長年の研究の末に構えを、独力で……。 「……どうした、かかってこないのか?」 「オボロさん、剣道では私語は厳禁よ」 「生憎俺は剣道をやってるつもりはないんでな」 あたしの技が見たいのか、オボロさんがしきりにあたしを誘う。 だけど誘いに乗るわけには行かない。 オボロさんの動き、早さ、力……どれを取ってもあたしより上。 不用意に前に出れば、一瞬の隙を突かれ一本が決まるに違いない。 ならばあたしはオボロさんを誘い、自分の間合いに持ち込み、そこで勝負をするしかない。
じりじりとだが、あたしはオボロさんとの間合いを詰める。 剣道において相手に打たれる面はいくつかある。 不用意に前に出ようとしている時、下がろうとしている時。 技を起こそうとした瞬間、技を出し終えた直後。気を抜いた一瞬。 それらの隙を突かれてはならない。 特にオボロさんのように実戦に長けた人なら、 そういった理論を知らずとも、経験でそれを熟知していることだろう。 「……掛かってこないのなら、こっちから行くぞ」 オボロさんはそう言ったかと思うと、 踏み込み、あたしの竹刀を下から払う。 あたしもさせまいと堪えるが、力の差は歴然で抗いようがなかった。 だが……我流だからだろう、動きが大仰過ぎる。 それならば速さであたしが劣っていても、十分に付け入ることは出来る。 あたしは斜め上に払われた竹刀を、そのままオボロさんに振り下ろした。 「……チィッ!」 そのまま打ち込みに入ろうとしていたオボロさんだったが、 咄嗟の判断であたしの竹刀を受け、その瞬間横に薙ぐ。 あたしはというとオボロさんに受けられた反動を利用し、下がることによってそれを凌いだ。 だが、勿論そこで終わるつもりはない。 竹刀を横に振り切った後のオボロさんを再度打ちに行く。 だがオボロさんも、あれだけ隙だらけであった体勢から体を戻し、 竹刀であたしの打突を払うと、今度は盛大に跳んで大きく後ろに下がった。
あたしは剣道とは勝手が違いすぎるこの試合に戸惑いつつ、改めて竹刀を正眼に構えた。 オボロさんの動きは超人的だ。 スピード、パワー、勝負勘……どれを取ってもあたしより上だろう。 我流である故に、隙の多い攻撃ではあるが、それを身体能力で完全に補っていた。 恐らくはオボロさんの世界では、剣術もまだよく研究されていないのだろう。 相手も我流とさほど変わらぬ攻撃しかしてこないだろうから、 あたしのような相手はオボロさんにとっても初めてに違いない。 それにしても、常人なら完全に一本となるタイミングから、 身体能力でその剣を受けきってしまうなんて、オボロさんの強さには震えてくる。 もしもオボロさんが、あたしの世界のような技術を学んでいたのなら……最初の一撃で決まっていた。 あたしは正面からオボロさんと打ち合おうとはせず、 オボロさんの技の起こりを読んで、出鼻を挫き、攻撃をいなすことに集中する。 力が違うのだ、闇雲に打ち込んでも返り討ちとなってしまうだろう。 時折フェイントを織り交ぜてくるオボロさんの攻撃は、 決して楽に凌げるものとは言えなかった。 特にオボロさんのフェイントは実戦で鍛えただけあり絶妙で、 その超人的な身体能力と相まって、あたしの手数を完全に封じてくる。 おそらくフェイントに釣られて、不用意な技を出したときをオボロさんは見逃さないだろう。 あたしは一瞬たりとも気を抜くことは許されなかった。 しかし、それはオボロさんにしても同じである。 オボロさんから見れば、早さも力も完全に劣っているあたしが、 うまくオボロさん相手に立ち回っていられるのが不思議で仕方のないことだろう。 以前年齢80を超える9段の腕を持つ先生に稽古をつけてもらったことがある。 あたしは若さを利用し、速さと手数を重視した技をしかけた。 しかしその先生はと言うと、速さはあたしの半分以下、 動きもほんの僅かしか動かないで、ことごとくあたしの打ちをいなし、返し、応じたのだ。
あたしはその先生から技の起こりを読むことの大切さを学んだ。 人間は技を出す瞬間が最も隙が出来る。 力や速さが劣っていても、その瞬間を捉えることが出来れば勝つことが出来る。 事実あたしはその技で上り詰めた。 独自に研究に研究を重ね、稽古では相手の技の起こりを見抜くことを重点的に磨いた。 研究の為に見てきた剣道の試合も1000や2000などといった数じゃない。 動作の一つ一つが大きいオボロさんは出鼻を挫きやすかった。 相手の動きを見てからの応じだとオボロさん相手では間に合わない。 勝負はオボロさんが必殺の一撃をこちらに浴びせようと動いた瞬間。 オボロさんが出ようとする一瞬前、時間にして僅か0.1秒にも満たないその時間に、 あたしはオボロさんより先に出鼻を挫き、小手を狙う。 オボロさんは完全に読まれたことを不思議がりながらも、咄嗟に竹刀を下げることによって、 あたしの打突を鍔で受ける。 そのままオボロさんの反撃が来る……と直感したあたしは間合いを詰めて鍔競り合いへと持ち込んだ。 オボロさんが後ろに下がろうとする時に、引きながら面を放つ。 相手が早すぎるので、あたしの攻撃は空を切り牽制にしかならない。 勝負は何とか拮抗を保っている。傍目にはそう見えたろう。
だけど……あたしの劣勢は歴然だった。 段々とオボロさんの攻撃があたしの防御を上回ってきている。 オボロさんだって闇雲に攻撃をしかけているわけじゃない。 あたしがオボロさんの行動を読んで、オボロさんの攻撃を受けられように立ち回っていると分かれば、 手数を増やし、あたしの体力を奪う戦法に出た。 相手の技の起こりを読むというのは、わずかにも気を抜くことは出来ない。 こちらの竹刀に気を張って、相手を自分の間合いまで誘い込み、 そこで相手に打つ気を起こさせることによって、初めてこちらが有利に動くことが出来るのだ。 オボロさんのように、出鼻を完全に挫かれても対応できる相手は今まで経験はない。 二回や三回、オボロさんの攻撃をいなしたまではよかった。 それが六回も七回も続くと、あたしの集中力と体力も限界に近づいてくる。 あたしはうまく立ち回っているつもりで、知らず知らずのうちにオボロさんの術中に嵌っていた。 このままでは集中力の切れたあたしが、オボロさんの攻撃を受けきれずに一本取られるか。 それとも不用意に技を繰り出して、返り討ちにあうか。どちらにしても敗北は明白だった。 体力勝負に持ち込まれては、あたしには一分の勝ち目もない。 ……ならば、賭けるしかない。 わずかでも体力が残っている今のうちに、昔のあたしの得意技をオボロさんに決める。 ただ、あれは完全に捨て身。 オボロさん相手に、いえオボロさんが相手でなくても外したら負けが確定する。 そう考えると、自然とわくわくしてくる。 勝つか負けるか、昔味わった高揚感があたしに戻ってくる。 ……やってやる! あたしは心の中でそう呟いて賭けに出た。 あたしの得意技は? A 上段からの片手面打ち B 面を誘っての抜き胴 C 相手の竹刀をすりあげての面
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もう四の五の言ってる場合じゃない。 あたしは間合いの切れた今がチャンスと、構えを変える。 「……ん!?」 オボロさんが警戒し、剣線を上げた。 あたしは左足を前に出し、竹刀を振りかぶったままで止める。 右手はやや開き、相手を一撃で仕留めることに適したこの姿勢を保つ。 そう、この構えは……上段。 以前のあたしの、本来の構えだ。 剣道の試合で、中段の次に多いのがこの上段の構えだろう。 中段からは一転し、攻撃に全てを賭ける構え。 上段からの面打ちの速さは、中段の比ではない。 それに左腕の力が重要となってくる。 そのために左利きが多く、右利きで上段を使う人は少ないようにも思う。 あたしは生来右利きだ。 その為に最初は相当苦労した。まずは左腕一本で竹刀を振ることからはじめた。 そして上段を自分の構えとしてからも、苦難の連続だった。 上段は攻撃を繰り出す速さは他と比べるまでもない。 しかし防御に関しては腕も腹も胸も空け、完全に隙だらけとなる。 それに一番恐ろしいのは技が外れたときだ。 繰り出したのが面であれ、小手であれ、技が外れたときに勢い余った分隙が大きくなる。 特に小手を狙っていたところを読まれて抜かれでもしたら目も当てられない。 その為に、中段が疎かである者は上段をあげる資格などないという人もいる。 あたしの場合、上段はここぞと言う時にだけ使ってきた。 相手の虚を突くという目的もあったし、不用意に繰り出して負けるのを防ぐためでもあった。 「なるほど……それが貴様の本来の構えというわけか」 オボロさんが、やっと見せたかと言わんばかりににやりと笑う。 向こうの世界にも上段に似た構えはあるのだろう。 オボロさんも中段と同じようにはあたしに向かってはこない。 先ほどのような手数で攻めることをやめ、 しきりにフェイントを掛けてはあたしに攻撃を誘ってきた。
オボロさんの挑発に乗るわけには行かない。 外したらそれで最後、その瞬間にあたしの負けだ。 こちらも線をかけ、オボロさんが体勢を崩した瞬間を狙う。 おそらくは、上段を使っても速さではオボロさんには及ばないだろう。 だがこちらも、速さは先ほどとは比較にならないほど違う。 あたしが普段中段を使っているのも、その速さの違いで相手を惑わせるのが理由だ。 読みさえ外さなければ、オボロさんを完全に捉える事も不可能ではないだろう。 オボロさんも流石に警戒しているのか、先ほどよりも距離をとってこちらを誘う。 まだだ、まだその距離では不十分。 あたしは気合を発し、じりじりとオボロさんに近づいていく。 上段は相手に呑まれたら負け。 来るなら来いという気概で向かわなければ、決して一本は取れない。 上段に前進はあっても、後退はないのだ。 ……来る! あたしは全身全霊で、最後の切り札片手技を使う。 手首のスナップを利かせた、上段からの片手打ち。 あたし達上段使いにとって真骨頂とも、捨て身ともいえる必殺技。 それから僅かに遅れてオボロさんはあたしに向かって一直線に飛び掛ってきた。 相手の狙いはあたしの左小手。 あたしが振る前にそこを打って決着をつけようというのか。 確かに上段には防御が存在しない。打たれればそこで終わりだ。 だけど……それでも、それを覚悟にいれているのが上段なのよ!
本当に鍛えた片手技は、人間が鞭を見切ることが不可能であるのと同じように、 人間の反射速度を超えるスピードを得ることもある。 あたしの場合その域までは達さないが、オボロさんとのスピード差を埋めるには十分だった。 何より、あたしが遠間から片手のリーチを活かしてオボロさんの先手を取れたのは大きい。 如何に素早い小手打ちといえども、 機を外し、自分の間合いの外から打たれる上段の面には合わせることは出来ない。 オボロさんがあたしの打ちに誘われて間合いの外から向かってきた時、あたしは勝ちを確信した。 力や早さが劣っていても、読みと立ち回りで相手を征することができる。 あたしがかつて求めていた、剣道の理想の形を体現することができたのだ。 そう思っていた。 だけど、現実は甘くなかった。 稽古は嘘をつかない。素振りだけのあたしと毎日血の滲む努力を続けたオボロさん、 どちらに軍配が上がるかは最初から決まっていたようなものだったのだ。 間合いはあたしが征した。機も捉え、あたしが先手を打った。 オボロさんは完全に出鼻を挫かれた。そして、この一太刀は今のあたしが出せる最高の面だった。 それほどに条件は揃っていた。 だが、あたしの面は空を切るだけだったのだ。 最初あたしにはオボロさんの姿が消えたようにも見えた。 何が何だか分からなかった。 空を切ったところで……オボロさんが打ちに来る直前で体を捌き、あたしの面を抜いたと理解できた。 確かにオボロさんは小手に向かってきたはずだった。だけれど、次の瞬間その軌道上にはいなかった。 そして、あたしが「しまった!」と思う間もなかった。 びゅっと竹刀が風を切る音が聞こえ、 あたしの首めがけてオボロさんの竹刀が襲い、そして……その僅か数ミリ手前でその竹刀は動きを止めた。
「……俺の勝ちだな」 「そう、みたいね……」 あたしは動くことができなかった。 文句のつけようがないくらいの、見事な負け方だった。 「最後は俺もヒヤッとした。 あと僅かでも俺の切り替えが遅ければ、お前の勝ちだっただろう。 もしもお前が稽古を続けていれば、俺の勝ちもどうなっていたか……」 あたしはオボロさんの速さを見切った上で攻撃を仕掛けたつもりだったのだけれど。 それまでの打ち合いでオボロさんの速さを測り、 その上でオボロさんが技を出した直後なら、完全に決まると考えて面を出した。 なのにオボロさんの速さは完全に上を行っていた。 あたしのあの面が、それまでのどの打ちよりも速いのと同じように、オボロさんのあの動きも……。 ……そうか、そうだったんだ。 手加減、されていたんだ。 少し考えれば簡単な事実に、あたしは今更のように気づいた。 最後の最後で、オボロさんは本気であたしの相手をした。ただそれだけのことだったんだ。 あたしは完全にオボロさんに負けていた。 一度剣を手放した人間が格上の相手に勝てるほど、 剣道は甘くはないと言うことを、改めて思い知らされた。 あたしは…… A 「どうもありがとうございました」とオボロさんに笑顔で礼を言う B 「……また、相手をしてもらえる?」とオボロさんに聞いた C 悔しくて、声を上げて泣いた
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「どうも……ありがとうございましたっ!」 負けたのに。とても悔しいのに、どこか清々しい。 手は興奮でがくがくと震えている。切らした息も、心地よい疲れだと感じることができる。 ……これが、充実しているという気分だろうか。久しく味わってなかったようにも思う。 あたしは深々とオボロさんに頭を下げた。 オボロさんは今まで稽古相手に改まって礼を言われたことがなかったのだろう、 戸惑いつつも照れているようで明後日の方向を向いて頭をかく。 「オボロ様、お見事にございます。七瀬様も、素晴らしい立ち回りでございました」 「凄くかっこよかったよ、七瀬さん」 裏葉さんも栗原さんも、 オボロさんを讃えるのは元より、敗れたあたしにも惜しみない労いの言葉をかけてくれた。 「実戦の間が空いているはずなのにその動き。……惜しいな。 俺達の世界にいて、あと三年も鍛錬を積んでいれば、俺なら間違いなくお前を副将として使っていたぞ」 「どうも。だけどあれは一対一専門の技術だから、戦には向かないと思うわよ?」 「七瀬は俺の知らぬ技を使い、俺が出ようとする瞬間を見切っての攻撃に徹した。 あの機を狙われたのであれば、どんな達人でも受けるか避けるかしかなくなる。 正直ここまでやるとは思わなかった。この世界の剣は俺にはない利点があるようだ」 「オボロさんは我流だからしょうがないかもしれないけど、動きに無駄が多すぎなのよ」 それからあたしとオボロさんは、 お互いの良かった点や悪かった点などを話し合った。 オボロさんから見たあたしの動きというのも参考になるし、 あたしの言葉もオボロさんは真摯に受け取ってくれた。 いつの間にかオボロさんへのわだかまりも消え、いつもの明るいあたしになったと思う。 ……もしかしたら、あたしにとって、これが生まれてきた中で最高に良い稽古だったかもしれない。 朝稽古に朝食も終え、あたし達四人はガディムの件について改めて話し合った。まず最初に…… A 具体的にガディムを倒す方法について B 裏葉さんの結界について C あたしや栗原さんの役割について D ガディムに乗っ取られた川名さんについて
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具体的にガディムを倒す方法についてだ。 話を聞く限り、ガディムは倒される度に依代を換えていったらしいわ。 オボロさんや裏葉さんは何度かはその時点でのガディムを倒す事は出来たが、 その度に依代を換えられて逃げられてしまったそうだ。 つまり、真っ当な手段で奴を倒すのは不可能。 死んでも体を取り替えて蘇るような奴じゃ、核兵器を持ち出したって倒し切れない。 だから、奴の能力、特性を順に追って説明して行き、 その中で有効となる手段を模索しようと言う訳。 それでこの面子の中で、最もガディムに付いて詳しい裏葉さんがその説明役をする事になったの。 彼女は折り目正しくソファーに正座をし、冷静な顔で説明を始める。 私たちは息を飲んでその言葉に耳を傾ける。 「ガディムは本来、異世界への移動がほぼ不可能な上位の神霊です。 ですが、自身の魂を転送可能な情報へと変質させたのです。 これにより奴は異世界への転移を容易にし、世界を股に掛ける破壊神となったのです」 そりゃそうだよね。神様が簡単に世界を移動出来るのなら、 とっくの昔にどっかの世界で生まれた最強の神様が全ての世界を支配してるでしょうね。 「にしちゃ、随分とやられているみたいだけど…」 闇の神ってのは看板倒れって奴かしら? まぁ、倒せない巨悪ばっかりじゃハリウッド映画も、四角いゲーム会社のRPGも商売上がったりよね。
「肉体を持たない魂だけの存在となったガディムは実質、死を克服したも同然です。 ですが、魂だけの存在では物質界の存在に干渉する事は出来ません。 この世で活動する為には、何かに憑依する必要が出てしまったのです。 その憑依する存在の魂の器の大小によって、行使出来る能力が左右されるのです」 つまり、ガディムはコンピューターに例えるならもアプリケーション。 色んな仕事が出来るソフトだけど、その能力はマシンスペックに依存するって事なのだろう。 「ガディムが依代から引き出せる能力はあくまでも、その依代の能力の延長線上でしかありません。 もっとも、神話には人が神に成った伝承とてあります。 依代の素質次第じゃ手に負えないモノにな成るかもしれませんが」 裏葉さんは補足を加えた後に溜息を付き、オボロさんは顔を強張らせる。 彼らの苦い顔から察するに、それくらい強かった場合があったと言うことなのだろう。 とは言え、彼女が奴を学校に縛り付けれる以上は、現在のガディムは人間の領域で対処可能なのだろう。 倒せるかどうかは別として。 因みにここまでの説明。 私は何となく概念だけは理解できたみたい。とりあえずは話に付いていけるっぽい。 四角のRPGとか不死身のラノベっぽい感じだと思えばいいのだろう。 オボロさんにとっては既知の情報だからか、特に言う事はなさそうだ。 栗原さんは「へぇ」とか「はぁ」とか気の無い相槌を打つだけ。 アレは多分、分かって無いでしょうね。その内、頭から煙を吹きそうな勢い。
「魂そのものを攻撃する手段ってのは無いの? ほら、お坊さんとかが悪霊退散って具合に」 あらかた説明が終わったみたいなので、取り合えず意見を出してみる。 「あの手の術法はあくまでも既に死んでいる亡霊に対して、死を再認識させるものなのです。 様々な形がありますが、基本は現世に縛られる想念を消し去り、成仏させるものなのです。 肉体が無くても存在できる魂相手には通用しないでしょう」 「坊主が念仏を唱えただけで神霊級のバケモノが死ぬのならば苦労はしない。 現世神であるウィツアルネミテアだって自身の消滅を望みながらも叶わず、何千年も己の分身と殺しあったんだ」 うーん、やっぱり神様を滅ぼすには、そんなお手軽、簡単、五分でお持ち帰りな手段じゃ無理みたい。 「そうなると…やっぱり伝説の武器とかそんなのかしら。 神殺しの魔剣とか、光の聖剣とか」 「ある…らしい。 奴の元の肉体を滅ぼした神話級の聖剣だそうだ。 この世界にそれに匹敵する武具があるかは分からんが、探す価値はあるだろう」 けど、それはまさしく雲を掴むような話になるわね。 歴史のある旧家とか、宗教関係者が持ってそうだけど。 けど、そう言う手段は今まで試みられなかった筈が無いわ。 なら、今まで採られなかったような、私たちの世界でしか取れないような手段があるかも。 さて、どうしようか?いきなり手詰まりっぽいかも。 私たちが思案に暮れてる中、部屋には時計の針の音だけが響いていた。 「あ、あの」 すると、今まで喋らなかった栗原さんが突如、口を開いた。 それは── A ガディムの魂を直接攻撃する道具があるっぽい B ガディムの魂を直接攻撃出来る能力者がいるっぽい C 科学文明万歳。 科学の力で何とか出来る人がいるっぽい
380 :
名無しさんだよもん :2007/07/01(日) 05:45:43 ID:85fuMzd00
C
「か、科学的にガディムをやっつけられないかな……?」 「科学? 何だそれは?」 「この世界で発達している、方術や陰陽とはまた違った術のことでございます。 道具を使うことで、修行を一切積んでいない者でも術を行使できるようにしたものかと」 科学と言う言葉を聞きなれていない二人が、すぐにそんな質問を投げる。 どうでもいいけど裏葉さん、それは全然違うと思うわよ。 「だけど、科学の力かあ。もしかしたら名案かもしれないわね、今まで試したことないのだろうし」 「えへへ……」 化物退治の機械のようなものが存在すればの話だけどね。 そんな非科学もいいところのようなものなんて、あたしは聞いたことないけど。 「それで上手くいくのか?」 「オボロ様、科学は私共やガディムから見れば全く未知の力。十分期待できるものでございます」 「前回は俺もそう考え、お前達の世界の方術に賭けた。だが結果はどうなった?」 中々話がまとまらない。 特にオボロさんは何度もガディムを取り逃がしているだけあり、 自分にとって未知数な力を疑う傾向にあった。 「初めはオボロ様の世界で武による殲滅に失敗し、 次に私共の世界で術による殲滅に失敗しております。 なればこの世界の科学を用い、武・術・科学の三つの力を合わせて ガディムを討つのが上策ではございませんか」 「つまりは、総力を結集させるわけか……」 渋い顔をしていたオボロさんだが、結局は裏葉さんの案を呑んだ。 それ以外に上手くいきそうな案が出てくるわけでもなし。 かといって、神剣や神器といった都合のいい道具があるわけでもないし。 ただ、問題が一つある。 そういった対化物用化学兵器について、そんなものの存在すら危ういことだが……。 A ……一応、あたしには一つだけ心当たりがある B 栗原さんがおずおずと手を上げた。何か知ってるの? C 裏葉さんが雑誌の紹介を指差して微笑んでる。……そ、それに当たれって?
B
心当たりもないし、手詰まりかと思ったそのときだった。 栗原さんが遠慮がちに、おずおずと手を上げる。 「栗原さん、どうしたの?」 「……いちおう、心当たりはあるよ。 ただ、あくまで噂みたいなものだから、あんまり当てにならないんだけれど……」 「今はどんな情報だって良い。それで戦力を増やせればしめたものだ」 どうやら、栗原さんが何か知っているようだった。 流石に自分で案を出しただけはある。これは期待していいのだろうか。 「あのね……」 A 来栖川エレクトロニクスの主任さんが、おかしな研究をしてるんだって B 学校の生徒会長が、変なものを作る趣味があるって C 国立博物館に、妖怪とか曰くつきの宝物を封印している機械があるって
Aかのう
「来栖川エレクトロニクスの主任さんが、おかしな研究をしてるんだって」 「来栖川エレクトロニクス……」 その名前はあたしも聞いたことがある。 炊飯ジャーのような家電製品から、メイドロボのような最先端ロボット技術までなんでもござれ。 あの来栖川グループの機械開発部門だ。 「見込みはあるのか?」 「会社としてじゃなくて、個人として魔法とか、心霊現象とかの研究をしてるらしいよ。 だから、もしかすると何か役に立つかも……」 「行ってみるしかないわね」 あたしもオボロさんも頷く。 場所はあたしも知っている。来栖川と言えばかなり有名だし。 「……ただ、問題はガディムです。 現在は私の結界で、学校の中に閉じ込めてはいるのですが、 それがもし破られでもしてしまいましたら……」 「迂闊に街を離れられないってこと?」 裏葉さんは頷いた。 それに、ガディムの力が段々と回復しているのを感じているらしい。 だから今ガディムを野放しにするのは危険だそうだ。 「……手分けするしかないな」 「そのようね」 一方は街でガディムの見張り、もう一方は来栖川へ。 裏葉さんが街に残るのは決定として、残りのメンバーは……。 七瀬・透子・オボロ・裏葉を二つのメンバーに分けてください。 裏葉のいるチームが残留組になります。 ただし、オボロは来栖川までの道が分からないので、彼を一人にすることは出来ません。
来栖川:七瀬・透子 街:オボロ・裏葉 学校の外なら安全だろう、多分。
「じゃあ、来栖川に向かうのはあたしと栗原さん。 この世界に疎いオボロさんは裏葉さんと一緒に、学校に異変がないか見張るってことでどう?」 「良い判断かと思います。 学校から遠く離れれば離れるほど、ガディムの危険も少なくなりますので、 七瀬様と透子様だけで向かわれても、大丈夫だと思います」 「確かにそうした方がいいな。 裏葉だけじゃあ、異変が起きた時に心もとないからな」 皆、あたしの判断に首を縦に振った。 学校はサボることになるけど、今の学校は何があるか分からない。 だから、あたしや栗原さんは不用意に近づかない方がいいと思う。 「七瀬!」 「え?」 オボロさんは急にあたしを呼んだかと思うと、 二刀持っていた自分の刀を一本投げて、あたしに寄越した。 「使え。この先何があるか分からんからな、それで栗原を守れ」 「……あたしこんなの使えないわよ」 「問題ない。今朝ほどの動きが出来るなら十分使えるはずだ。 竹刀なんかより、よほど役に立つだろう。……斬る覚悟を決めた時は躊躇うなよ」 「でも……」 「俺のことは心配するな。二刀使いは一刀も二刀以上に鍛錬しているものだからな」 いえ、あたしの心配はあなたじゃなくて、 こんなの持ち歩いてて銃刀法違反で捕まらないかの心配なんだけど。 ……交番の近くは通らないようにしよう。絶対に。 A 七瀬チーム視点で話を進める B オボロチーム視点で話を進める
まずはA
来栖川エレクトロニクスは、あたし達の街から電車で4駅ほど離れた場所にある。 あたし達はまずそこに向かうために、駅へと向かった。 切符を買い、何事もなく電車に乗る。 こうやってみると、本当に街は何も変わったところなどない。 ただ…… 「あと三十分ほどかしら」 「たぶん……」 栗原さんとの会話に困った。 他の皆と居る時は良かったのだけれど、途端に二人だけになると、何も話すことがなくなる。 ただ、ずっと黙っているのも気まずいし、何か話したほうがいいわよね? 「あのさ、栗原さんって……」 「ふえ?」 A どうやって裏葉さんと知り合ったの? B 付き合ってる人いる? C ガディムについてどう思う?
B
「付き合ってる人いる?」 「ふ、ふぇぇっ!?」 あたしの興味本位の質問に、 栗原さんは一瞬で顔を茹蛸のようにボッと赤くした。 ……そこまで照れなくてもいいと思うんだけど。 「な、な、七瀬さん。ど、ど、どうして、そ、そんなこと、き、き、き、聞く……の?」 「幾らなんでもうろたえ過ぎよ。はい、深呼吸」 「え? すー、すー、はー、はー」 とりあえず深呼吸させて落ち着かせた。 この反応からして、少なくとも気になる人はいる……と。 「で、誰なの? 同じクラス、それとも他のクラス?」 「べ、べ、別に……」 「栗原さんは嘘つけないわね。彼氏は居なくても少なくとも好きな人はいるんでしょ?」 「ど、どうして分かるのぉ……?」 いや、こんなに分かりやすい反応されちゃあねえ。 あたしだって女の子、好きな人の話は聞きたいに決まってる。 それが惚気話じゃなく、片思いの恋話だったりしたら尚更。 「さあ、さっさと吐いて楽になりなさい。さあ誰なの?」 「…………誰にも言わない?」 「言わない」 「笑わない?」 「笑わない」 「…………ええとね、同じクラスの」 A 木田君。……あの不良が? B 住井君。ぶっ! C 折原君。アイツだけは止めなさい! D 長森さん。ちょ……それは……
原作どおりA
「木田君…」 ……あの不良が? まぁ、人には何かしら良い所があるだろうから、彼女は私たちが知らない良い所を発見したのだろう。 「で、とこまで行ったの? 告白したの?」 チャンスだ。一度落ちたのなら色々と聞き出すのは簡単。 私はドラマの取調室の刑事のノリで根掘り葉掘り聞き出そうとする。 「え? え? えっと…、その…付き合ってるって程じゃ…けど、他の人から見たら…そうなるのかな?」 スロットみたいにコロコロ顔を変えてる彼女だが、最終的には何だか嬉しそうな顔に落ち着いてる。 ああ、畜生。何だか負けた気分だわ。 どーせ、私は不毛な青春送ってますよ。 「ところで、栗原さん。 どうやって来栖川の研究所にアポイント付ける訳? 普通の見学ならいざ知らず、部外者の私たちにそんな重要な機密を教えてくれるとは思えないんだけど。 ここまで来て知らないとか言わないでよ?」 私は彼女にどうやってその研究とやらを教えてもらうか尋ねてみた。 どんな企業だって最終目的は、利潤の追求だ。 道楽で心霊現象や魔法を研究する筈が無い。 恐らくは○槻教授みたいに、なんでも「プラズマ、プラズマ」とこじつけるのではなく、 人々が神様や悪魔の仕業としてきた事象を実証する類のものなのだろう。 どこかで聞いた話だけど「誰にでも反証が可能ならば、どんなオカルトでも科学」、と言うことなのだろう。 「って言うか栗原さん、アンタなんでそんな機密情報を知ってるのよ?」 さっきから感じてた違和感に気付き、栗原さんに詰め寄る。 私だって人並み程度に新聞やニュースを見ている。 一流企業がそんな風変わりな研究をしているのならば、 ハイエナのようなマスコミが嗅ぎ付けて、面白おかしく晩のニュースで報道されるはず。 私と同じ一介の高校生のこの子が知ってるなんて普通はありえないじゃない。 まさか"ういにー"とか?自衛隊と言い、警察と言い、この国はどうなってんのよ?
「えっと、私たちの学校の後輩で、姫百合珊瑚って子から聞いたの。 人の魂の構造を解析したとか何とか詳しい事はよくわかんなかったけど 『これで幽霊も科学的に証明できるでー』、なんて言ってた」 「つまり、その子が…」 「うん、研究所で研究してるって」 …本人からの流出かいな。 まぁ、情報流出の大半は口が滑ったとか盗難や紛失とかのヒューマンエラーだって話だけどね。 「それにしちゃ私は全然、その子の話題とかは聞かないんだけど。 一つ下でそんな天才児がいたら話題になってもいいもんだろうけど」 転校生とは言え、もう学校に馴染んだ私が知らないなんてね。 「その…何と言うか色々と良くない噂があるらしくて──」 栗原さん曰く、来栖川のお抱えのエンジニアで、私たちの一つ下でありながら大金持ちだとか。 生粋のマッドサイエンティストで、モルモットになった奴がトンデモナイ目に会ったとか。 放課後、双子の妹に街で話しかけようとした男子が、お供のメイドロボに問答無用で叩きのめされたとか。 私たちと同級生の男子生徒と同棲してるとか。 前述のメイドロボと4人で夜な夜な肉欲の日々を送ってるとか。
「つまりは、日常生活で出来れば関わりたくない。 つーか、積極的に距離を置きたい人物って事ね」 流石に話題に出すのもはばかれるって事でしょうね。 まぁ、その子が爛れた青春を送っていようが、私は知ったこっちゃ無いけど。 そんな人間と彼女がどうやって知り合ったか気になるけど。 「それで、その…私、その子の携帯の番号を知ってるの。 メアドも」 なんてこった。この子が数々の重要情報を持つキーマンだったなんて。 もしかして主役の癖に私が一番役に立ってない? 「ま、まずは連絡を入れてみようよ」 私たちは研究所の街の東鳩駅前で一旦降りて、その子に連絡を入れることにした。 数コール後に電話に出たのは── A 珊瑚本人 B 妹の瑠璃 C メイドロボのイルファ D ハーレムの主、貴明
C
「栗原さん、とにかく一度連絡を入れてみよう」 「う、うん。分かった」 私は七瀬さんに言われたとおり、珊瑚ちゃんに連絡を取ることにした。 電話帳から珊瑚ちゃんの名前を見つけて発信ボタンを押す。 「はい、姫百合です」 「あ、あれ?」 数回のコール音の後に出てきた声は、珊瑚ちゃんのものではなかった。 確か…そう、珊瑚ちゃんと一緒にいるメイドロボさんの声だ。 「あのう、えっと、あなたは珊瑚ちゃんじゃなくて、そのぅ……」 すぐに名前が思い出せない、このメイドロボさんなんて呼ばれてたっけ。 「申し訳ありません。私はHMX-17イルファと申します」 そうだ、イルファさんだった。 でもおかしいなぁ、確かに珊瑚ちゃんの携帯電話に掛けたはずなのに。 どうしてメイドロボさんが出て、珊瑚ちゃん本人が出ないのだろう。 お家の電話に掛けたのならともかく。普通携帯電話を持ってる本人が出るものだよね? 「すいません、私は栗原透子って言うんですけど、珊瑚ちゃんの知り合いなんです。 珊瑚ちゃんとあってお話がしたいのですけど……珊瑚ちゃんはいますか?」 とりあえず私はイルファさんに聞いてみた。 A 「わかりました、今少し手が離せないので、すぐに掛け直すようお伝えします」 B 「実は…珊瑚様は先日から行方不明なのです」 C 「実は…珊瑚様はとある事情で入院しているのです」
B
『…………』 携帯からは何やら躊躇いがちな沈黙が流れる。 「あの、どうかしましたか?」 『残念ながら、只今お取次ぎすることは出来ません』 「えっ!?」 あたしは、思っても見ない返事に思わず声をあげてしまった。 いきなりの電話で、イルファさんはあたし達のことを怪しんでるのかな? 「あの……あたし達は、別に怪しい人とか、そういうのじゃなくて……」 『違います……そういう意味じゃないんです!』 弁明しようとしたら、逆にイルファさんから悲痛な叫び声をあげられる。 「ど、どういうことですか?」 『……実は、珊瑚様が先日から行方不明になってしまったのです』 その言葉にドキッとした。 携帯に耳を近づけていた七瀬さんも、その言葉の意味が分かったみたい。 顔色が一瞬で変わっていく。 『昨日のことです。 私はいつもの通り、自宅で珊瑚様の帰りを待っていました。 ですが……遅くなっても学校から帰ってくる気配がまったくなく、 それから何の音沙汰のないまま今日まで……。 瑠璃様はショックのあまり寝込んでしまいましたし、私もどうして良いか……。 今日中に戻られなければ、警察に連絡をしようと思っていたところです。 栗原様、珊瑚様の事……なんでもいいので、知っていたら教えていただけないでしょうか!?』 知っていたら、どころじゃない。 学校から帰ってこないなんて、理由は一つに決まっている。 ガディム……珊瑚ちゃんも、多分巻き込まれた。 あたし達のような見ず知らずの人間にここまで事情を話してくれるなんて、 イルファさんも相当切羽詰っているのが分かる。 A ガディムのことを話す B あまりガディムのことは他人に話さないほうが良い
A
「……心当たりがあります」 『えっ!? 本当ですか、珊瑚様は何処に!?」 「でも、ちょっと電話だと、話しにくくて……」 『…………分かりました。すぐに向かいましょう。 栗原様は何処におられますか?』 「駅前……」 『駅前ですね、了解しました。ではすぐに参りますので、10分ほどお待ちください』 即決だった。 それほどまでに、珊瑚ちゃんを心配してるのだろう。 なんだかそれがとても人間らしくも感じた。 それから程なくして、イルファさんがあたし達の前に現れた。 簡単な自己紹介をしてから、早速本題に入る。 あたし達の説明をイルファさんは最初黙って聞いていた。 「……というわけなの。信じてもらえるかしら」 「有り得ない……と、言い切ることが出来ません。 最近の珊瑚様の研究が、それらの方向に向いていましたし、 何より、話している途中にあなた達の心拍数には少しの乱れもありませんでした。 ここまで嘘を自然につける人などおりませんでしょう」 まるでイルファさんは値踏みするように、あたし達を見た。 あたし達を信じるかどうか、迷っているようにも見える。 「……どうする? 七瀬さん。珊瑚ちゃんが行方不明だなんて……」 「いるとすれば、間違いなく学校ね。 ……戻るわよ! まず珊瑚ちゃんの助け出さないことには話にならないわ!!」 「う、うん……!!」 ガディムに、体を乗っ取られてなければいいんだけれど。 「……待ってください!」 あたし達が踵を返し、駅の中に入ろうとしたところ、イルファさんが呼び止めた。 A 私も連れて行ってください! B ……珊瑚様の研究品で、役に立ちそうなものを持っていってください! C せめて一秒でも早く着けるように、ヘリでお送りいたします
C
珊瑚ちゃんが行方不明、このタイミングでそんなことになるなんて十中八九ガディムの仕業に違いない。 そりゃもちろんガディムと全然関係ない、単なる営利誘拐って線も無くはない。 栗原さんの話では相当な金持ち、歩く身代金みたいなものなのだから。 でもそれなら犯人から連絡があって然るべきだろう。早く学校に戻って調べてみなければ。 「……待ってください!」 そう考えた私と栗原さんが踵を返し、液の中へ入ろうとしたところでイルファさんが呼び止めた。 「少しだけお待ち下さい、電車よりも早く戻れる交通手段をご用意いたしますので」 そう言いながらイルファさんは携帯電話を出し、どこかに連絡を取りだした。 うーん、多分タクシーか何かだと思うけど、正直どうかしら。 今から車がくるのを待って、少々飛ばして戻っても電車で帰るのとそんなに変わらないと思うんだけど… 珊瑚ちゃんがいなくなって、冷静な判断が出来ないのかも知れない、メイドロボらしからぬ事だ。 とはいえイルファさんも何か力になりたくて手配してくれてるのだし、断るのも気の毒よね。 ここはご厚意に甘えよう。 結果から言えば私の予想は大きく外れた。 イルファさんは本当に電車など比べものにならない交通手段を用意してくれた。 イルファさんに言われて駅前近くの公園で待っていると、ソレはやって来た。空から。 大きなローター音とプロペラ音を立て、強烈な風を巻き起こしながら降りてきた。 「「ヘ、ヘリ?!」」 二人揃った驚きの声も掻き消される。 まさかただ早く帰してくれる為だけにこんなものを用意するとは、来栖川工業恐るべし。 「栗原様、七瀬様。どうか…どうか珊瑚様をよろしくお願いします。」 乗り込む間際、イルファさんが私達の手を握りながら懇願してくる。 メイドロボには涙を流す機能は付いてないけど、もし付いていたらきっとイルファさんは瞳一杯に涙を浮かべていたに違いない。 そんな表情で、心配のしすぎでCPUが壊れてしまうのではという顔をしている。 「任せて、きっと何とかしてみせるわ」 「が、頑張ります」 根拠なんか無かったけど、イルファさんに弱気は返事をしたくはなかった。 私達は風圧で翻りそうになるスカートを抑えながらヘリに乗り込み、学校のほうへ戻っていった。
A まずオボロさん達に報告しなければ、私達は栗原さんのマンションへ向かった。 B 戻る途中に、栗原さんの携帯電話が鳴り出した。 C ヘリの窓から外を眺めていると…? 何かがこっちに飛んで来てる?!
A
「お送りする場所は、学校でよろしいですね?」 ヘリコプターを運転しているイルファさんが、改めてあたし達に目的地を確認する。 メイドロボはヘリコプターの運転まで出来るのだから凄い。 後で聞いた話だと、用事に備えて乗り物の運転技術ぐらいならプリインストールされてるらしいけど。 「……いえ、一度栗原さんのマンションに向かってください」 「栗原様のご自宅……ですか?」 「はい。あたし達以外にも、協力してくれている人たちがいるので、その人達にも連絡を……」 「了解しました。……では、栗原様のマンションの近郊で着陸できそうな広い場所をお教えください」 この事は一度オボロさんと話し合ったほうがいいと思う。 珊瑚ちゃんがガディムに捕らわれているとしたら、救出にはオボロさんと裏葉さんの力が必要だ。 栗原さんのマンション近くの公園なら、ヘリを降ろすスペースがあるということで、 イルファさんにはそこへ向かってもらう。 途中、学校の上空を通りがかった。すると…… A ……おぞましい瘴気が渦巻いている B 今は授業中の時間なのに、校庭に有り得ないほど生徒が集まっている C 学校を中心に、辺りには人も車も通ってないことに気づいた D オボロさんが一人で学校の中に入ろうとしてる!?
B
「……七瀬さん、あれ!!」 外の景色を眺めていた栗原さんが、突然あたしの袖を引っ張った。 栗原さんの指差す先は、あたしたちの学校の校庭。 ただ……授業中なのに、有り得ないぐらいに人がたむろしている。 ちなみに、あたし達のサボりついては、緊急事態だし見なかったことにして欲しい。 遠目では何が起こっているのか、サッパリ分からないが、 とにかく学校がもう異常事態に巻き込まれていることだけは理解できた。 「七瀬様、栗原様、もう少し寄せましょうか? ただし、これ以上近づけばあちらからも、こちらが見ていることに気づかれてしまうでしょうが……」 学校の様子をよく見たいと思っていたところ、 イルファさんがそう気を利かせて聞いてくれた。 「……いえ、気づかれちゃ元も子もありませんから」 何より、イルファさんはあたし達とは無関係だ。 送ってもらう以上のことをしたら、事件に巻き込んでしまうことになる。 だけど、この事態……まさか、もう学校は完全にガディムの支配化に落ちたってこと? 有り得ない話じゃない。 ガディムが潜んでるって聞いた以上、遅かれ早かれこうなることは目に見えていたのだ。 「イルファさん、急いでください。仲間も心配ですから……」 「……了解いたしました」 それからすぐに、あたし達はマンション近くの公園でヘリを降ろしてもらう。 「それでは私は珊瑚様の捜索に向かいます。皆様も御武運を」 「どうもありがとうございました」 イルファさんにお礼を言うのも手短に、あたし達はすぐに栗原さんの部屋へと走った。 学校がああなった以上、オボロさんたちにも何かあった可能性がある。 報告もしたいし、何より二人の無事を確認したい。 あたし達は急いでマンションの階段を駆け上がり、部屋のドアを開けた。 そこには…… A 何事もなかったかのようにオボロさんと裏葉さんが居た。……どうやら無事みたい B 誰も居ない。まさか、二人とも学校へ!? C ここで時間を少し戻してオボロ視点へ
c
七瀬たちが行ってから暫く経った。 打ち合わせどおり、七瀬達がこの世界の科学に長けた者に会い、 その間俺達は学校に異変がないか、裏葉の結界に綻びが生じないか見張ることとなる。 そして七瀬たちが戻り次第、俺の剣と、裏葉の術、そしてこの世界の科学でヤツを討つ手はずだ。 七瀬たちがうまくそういった人材を連れてこられるかは分からんが、 とにかく今のところ、俺の仕事はないといって良い。 ヤツを閉じ込めている結界は裏葉が張っているのだ。万が一にもヤツを取り逃がすことはないだろう。 つまり、何かよほどのことがない限りは、俺達は二人が帰ってくるまで動けないわけだが…… A 裏葉と少し昔の話をしていた B 今朝の七瀬との稽古を振り返り、この世界の技術を自分の技に取り入れようと考えていた C その時、裏葉が急に苦しみだした D ……実は、七瀬達を待たずに、俺一人でヤツと決着をつけるつもりだ
A
「先ほどの切り結びはとても見事なものにございました。 七瀬様もさることながら、オボロ様も暫し見ないうちに随分と腕を上げたことで……」 「……フン」 手持ち無沙汰になった俺たちは、何もすることがなく部屋で待機を続けていた。 暇つぶしにもなるので、裏葉と多少言葉を交わしたりもしているのだが、 やはり裏葉は何処となく苦手だ。この間延びしたような調子は、俺とは肌が合わない。 「それにしても、この世界は私共の世界と随分と違います。 出っ張りを押し込むだけで明かりをつけたり、氷室もないのに氷を楽しめたり、 周りにあるものがみな幻術のように思え、戸惑ってしまいます」 「この世界の衣服を自然に着こなし、科学で湯を沸かしながら言うな」 「これでも、十分戸惑ってるつもりでございます。 私の学んできた常識や作法が、異世界ではこうまで通じないものだとは……」 「そんなのお互い様だ。俺はお前の世界に行った時にも目を疑ったものだ」 「オボロ様のような方でも、そうだったのですか?」 まるで意外そうに、裏葉がそんな事を聞き返した。 こいつ……俺をなんだと思ってるんだ? 「まあな。だからお前達には随分と迷惑を掛けた」 「……そういえば、そうでございましたね。 オボロ様が最初に私共の前に現れた時のことは、今でもよく覚えております」 俺だって忘れられない。 兄者の下から離れ、最初に辿り着いたのが裏葉の世界だ。 何もかもが初めての体験だったから、言葉に出来ぬほど苦労も沢山してきた。 そして……裏葉たちに会ったのだ。 俺と、裏葉達の最初の出会いは…… A 俺が裏葉の主を助けたのがきっかけだった B 行き倒れになった俺は裏葉に助けられたのだ C 裏葉たちがガディムと戦っている途中に、助太刀に入ったことが始まりだった
A、やっぱ主人は変わらないんだろうなぁ
きっかけは至極単純なものだ。 俺は右も左も分からない状況で、裏葉の世界をさ迷い歩いていた。 そんな折だ、俺は一人の女に会ったのだ。 歳は幼い。ユズハよりも若く……カミュか、アルルゥぐらいだろう。 俺は最初特に深くは考えずその場を去ろうとしたのだが、 女の悲鳴が聞こえたので慌てて振り向いた。見れば、女は賊に絡まれていたのだ。 人気のない場所を一人で出歩くから自業自得だと思わないでもなかったが、 流石に無視は出来なかったので俺はその女を助けた。 その助けた相手と言うのが、裏葉の主だったわけだ。 「私も最初は自分の目を疑いました。 勝手にお屋敷を抜け出した神奈様が、オボロ様におぶられて帰っていらして……」 「賊に襲われた時に足を捻ったと言っていたから、そうやって連れて来てやっただけだ」 「それでオボロ様は神奈様の貞操を狙う狼藉者だと誤解され、会うなりに柳也様に刀を向けられたのでしたね」 「言うな。そこのところは思い出したくもない」 今から思い出してみれば、随分前のことだ。ある種の懐かしさすら感じる。 裏葉の主は、言い方こそ尊大だが、礼儀は弁えているヤツで、 俺に助けられた礼をした後、神奈備命と名乗った。 それから暫く神奈の屋敷には厄介になった。 俺の屋敷内での立場は客人兼神奈の護衛弐という、なんとも微妙なものだったが。 ちなみに壱は柳也という男だ。あの世界で俺と互角にやりあったのはあいつだけだ。 俺はガディムを追って裏葉の世界に来たわけだから、すぐに出て行こうとしたのだが、 屋敷を出ようとする時に限って、神奈や裏葉が俺を無理矢理に引き留める。 そうやって、暫く居つくことになってしまったのだ。 居心地は悪くはなかった。騒ぎを起こす神奈は見てて飽きなかったし、 柳也とお互い技を磨きあい、裏葉がそれを見守るという毎日はかなり充実していた。 だがその平穏も、ガディムが裏葉の世界で活動を再開したことにより全ては消えた。 A ……ガディムが、今度は神奈に憑いたのだ B 俺は別世界からガディムを連れてきた疫病神だとされ、何処にもいられなくなったのだ C ガディム討伐の為に、神奈の力が利用されることになったのだ
B
俺はガディムを倒すために、裏葉の世界へとやってきた。 そして……ガディムは俺達の世界で生まれた。 だからだろう、俺が災いを持ち込む疫病神だと見なされたのは。 屋敷で俺を庇ってくれたのは、裏葉と神奈と柳也の三人だけだった。 厄介になるのも潮時だと感じたな。 元より、ヤツが行動を起こしたのなら、俺はヤツを倒しに向かわなければならない。 それが国を捨て、兄者を捨て、友を捨ててまでここに来た俺の使命だからだ。 神奈達は最後まで引き留めに掛かったが、俺の決意が固いと知ると何も言わなかった。 決して言葉にはしなかったが、俺が屋敷の人間から露骨に疎まれていたことを気にしていたのかもしれない。 蔑まれ、疎まれて屋敷を後にするのは、 俺のような外道には似合いの姿だと自嘲したものさ。 他人の声より、その時の俺はヤツを倒すことばかりに気が行っていた。 ヤツが現れたという情報を辛抱強く待ち続け、やっとヤツと戦える機会が出来たのだ。 前回と違って、今度は兄者や他の仲間達の援護は一切ない。 俺は多分、死ぬのだろうな……なんとなくそう感じた。 だが元より覚悟の上だ、もはやこの命はヤツを倒すことのためだけに存在する。 ヤツを刺し違えることが出来れば本望だ。どの道、命を背いた兄者には会わす顔がないのだから。 「……本当に、オボロ様には申し訳ないと今でも思っております。 人間の心は弱きもの。己の失敗や不幸を他人の咎としようとするものではありますが……」 「別に気にはしてないさ。ヤツの件は俺達の世界の人間に責任がある。 ヤツに止めを差せずに、裏葉の世界まで逃がしてしまったことを考えれば、あながち間違いじゃなかった」 意外だったのは、裏葉たちが俺を追って、ガディム討伐に協力してくれたことだ。 神奈は「自分達の世界ぐらい自分達で守れずしてどうする」と言ったが、 俺を心配してくれていたのが分かり、それが非常に有難く、嬉しくもあった。 気恥ずかしいので絶対に口に出しては言えないが、俺は神奈達には本当に感謝している。 そうやって、俺達四人でガディムとの決戦に挑んだのだ。
「結局は、取り逃がしてしまったのだがな」 「……あれは仕方がありませぬ。 まさか、ガディムが魂だけで異世界へと逃亡すると誰が考えましょう」 「いや、俺は一度そうやってガディムを取り逃がしていた。 原理は知らずとも、ヤツが異世界に逃げる可能性があったことは十分承知だったはずだ……!」 思い出しては、俺の中で怒りが湧き起こる。 一度ならず二度までも、俺はヤツを取り逃がした。 「それは私の咎でございます。 まさか魂のみで逃げるとは予想できず、油断を招きました。 ですから、今回はまずガディムを縛ることからはじめたのでございます」 裏葉の言葉も、俺はもう聞き流していた。 ヤツとの戦いを思い出すたびに、俺の体は怒りに震え、狂いそうにもなる。 妹の、ユズハの仇を討てと、心の中でもう一人の自分が激しく理性を揺さぶるのだ。 「……裏葉」 「なんでございましょう」 A この戦い……お前は勝てると思っているか? B 柳也は元気にしているのか? C もう、理性を抑えきれない。ヤツを倒しに行かせてくれ D ……外の様子がおかしくないか!?
A
「この戦い……お前は勝てると思っているか?」 「…………」 裏葉は答えなかった。 だが、どう思ってるかなんて今更聞くまでもない。馬鹿な質問をしたものだ。 ヤツは神の名を冠する存在だ。 俺の世界ではウィツアルネミテアの空蝉である兄者、 裏葉の世界では星の記憶を引き継ぐ神奈がいて、ようやく痛み分けに持ち込んだようなものだ。 ただの人である俺達が神に抗うことが出来るのか。 誰もが無謀と答えるだろう。神に近づこうとする者は羽根をもがれる運命にある。 神と同等か、それに近い存在でもない限り、ヤツと渡り合うのは難しいだろう。 だが……それでも俺はヤツを許さん。 無謀と言われようが、たとえこの体が血の一滴になろうが、刺し違えても俺はヤツを倒す。 目的が適うのなら、神にでも悪魔にでも契約を結ぼう。魂を売ろう。 ヤツは二度に渡る戦いで、その力はだいぶ弱まってはいるはずだ。 ならばこの世界で、ヤツが回復しきらないうちならば、俺達だけでも勝機はある。 「……やはり勝機があるのなら、この世界の科学の力でしょうか」 やっと裏葉が口を開いた。 俺達の力だけでは不足、その意味の言葉をはっきり言ったのだ。 「だが、七瀬も栗原も戦場を知らん。幾ら科学の力を使っても……」 「もしかしたら、七瀬様や栗原様が命を落とすことになるやも知れない。 ……あの二人を、これ以上巻き込むのは忍びないと?」 「お前はどう思う?」 「私は……」 A 「出来ることなら、二人にはガディムとは戦って欲しくありません」 B 「それは二人とも覚悟の上だと思います」 C 「……お待ちください。何者かが結界を破ろうとしています」 D 殺気を感じる……。ガディムの手の者か!
C
「……お待ちください。何者かが結界を破ろうとしています」 「何!?」 俺の質問に答える前に、裏葉がそんなことを言った。 自然と俺は刀を抜き、外敵に備える。 「ヤツか!? ガディムが動き出したのか!?」 「……相手まではわかりませぬ。 ガディムの眷属か、はたまたガディム本人か……。 何れにせよ、気楽に事を構えている場合ではありません」 「行くぞ!」 俺は裏葉の手を引き、学校へ走った。 このまま奴らに結界を破らせるわけには行かない。 今ガディムを自由にすることは、絶対に許してはならないのだ。 学校の庭には多くの人間が屯していた。 俺達は注意深く、学校の門に、相手に気取られないように近づいていく。 「……裏葉、連中が結界を破ろうとしているのか?」 「いえ……あれらはおそらく傀儡。 有象無象の雑兵に破られるような、安い結界は敷いた覚えはありませぬ」 確かに。 裏葉の方術は完璧な技だ。 操られているだけの民に、結界を破る真似事など出来るはずがない。 ならば、どこかに別の奴がいるはずだ。 ガディムか、それともヤツの分身のラルヴァか。 何にせよ、ここから先は油断できない。既にヤツは、臨戦態勢に入っているのだ。 「結界は大丈夫なのか?」 「相手の術者もかなりのものです。……おそらく、後一日は保たないかと」 ならば、その前に術者を殺るしかないわけか。 さあ、どうする……どうやって術者を見つけ出す。 A 裏葉に方術で探ってもらう B 俺が敵陣深く切り込めば、奴らも尻尾を見せるはずだ C その時、学校の屋上からこちらを見下ろしている女と目が合った
C
その時だ。 学校の屋上に、俺達を見下ろしている女が居た。 ……見られた。俺は舌打ちし、そいつの姿を確認する。 女の歳は七瀬と同程度かそれよりも一つか二つばかり上ぐらい。 腰までかかりそうな黒髪、体は細く、運動らしい運動はしていないと見える。 遠目ではそれぐらいしか分からなかったが、こちらの立場が不味くなったのは十分理解出来た。 昨日に七瀬に聞いていた女と特徴が合致する。 ユズハと同じ、目の不自由な女……川名みさきとかいう名だったな。 まだガディムがその女に憑いているとはっきり決まったわけじゃないが、 要注意であることに変わらない。どう転んでも、ガディムの手に堕ちているのは間違いないだろう。 何かの偶然なのだろうか、 髪といい、年の頃といい、不自由な目といい、 何処となく彼女はユズハを思わせる。ガディムはそのような人間に憑こうとするものなのだろうか。 「…………っ!」 俺と女は目が合った。 距離が遠かったので、何を喋っているかは分からなかったが、 その時、その女は、確かに……笑った。 ヤツらが俺達を挑発しているのが分かる。誘ってやがる、学校の中に。 「……オボロ様、まずは結界を破ろうとしている術者を狙うのが先でございます。 オボロ様のお気持ちは察して余りありますが、今は機ではありませぬ。 結界が破られる前に術者を倒し、後は七瀬様と栗原様が戻られるまで待つのです」 それが最良の策だろう。 俺達二人だけで、ヤツと戦うのは無謀もいいところだ。 A まずは裏葉と共に術者を始末する B だがそれでも、俺はヤツを相手に背を向けることは出来ない
B
あの女が笑った瞬間、俺の脳裏に蘇る。 たった一人の妹であり、今はもう二度と会えないユズハの姿が。 ユズハ、なによりも代え難い俺の宝物。 わなわなと体が武者震いを起こす。 刀の柄を握る手に力が込められてきた。 体中の血という血が、沸騰してくる。 何故だ。 ユズハはもう二度と、俺に笑顔を向けてはくれない。 なのに何故お前は生きて、そんな歪んだ笑みを見せつける! 「…………すまん、裏葉」 それ以上自分を抑えつけることが出来なかった。 俺は駆け出し、恐らくは正門よりは人が少ないであろう裏門のほうへ走り出す。 「オボロ様!」 裏葉が制止の声を掛けるが、止められなかった。 冷静に考えれば、俺の行動は間違ったものだろう。 だが、そうであっても、俺は奴を前に背を向けるような真似が出来なかった。 一刻も早く、奴を地獄へ送りたくて仕方がない。 七瀬や栗原の到着など待っていられない。 そもそも、あの二人が上手く協力者を連れてくるとは限らない。 連れてきたとしても、その協力者の扱う科学とやらの力が必ずしも通用するとも限らない。 そんな不確かなものを待っている間に、ガディムが本来の力を取り戻したらどうする。 現に今、傀儡を操り術者を使って結界を破ろうとしている。 それならば…それならば俺と裏葉が速攻で始末したほうがマシだ。 俺がガディムの首を刎ねれば、結界も術者もクソもない。 その後の奴の魂とやらは、裏葉の方術がどうにかしてくれるはず。 (今度こそ……今度こそ俺がユズハの……ユズハの敵を!) A 「オボロ様…申し訳ありません」後ろから裏葉が俺に方術を掛けてきた! B 裏門に回ると、予想通り人がいない。俺はそのまま校舎に突入した。 C その頃七瀬と栗原は?
A
「なりませぬ!」 「止めるな裏葉! ユズハはヤツのために死んでいった! 卑怯な手も使おう、地獄(ディネボクシリ)に落ちることもしよう! だが、逃げるということだけは……絶対に俺はしない!」 俺を追ってきた裏葉の手を振り払い、俺は裏門へと走る。 「オボロ様……」 すまないな、裏葉。 また生きて会えることがあれば、その時に俺を殴るなりしてくれ。 俺が心の中でそう呟き、次の一歩を踏み出したとき、 「……申し訳ありません」 そう確かに、裏葉は呟いた。 次の瞬間……俺の視界がぐにゃりと歪む。 「う、裏葉っ……貴様、何を!?」 「方術で眠気を誘わせていただきました。普段の貴方ならどうということもないでしょうが、 後ろを顧みることも怠っている今の貴方なら、効果もありましょう」 「な、ぜ、邪魔……を……」 「……今はガディムに攻撃をかける時ではございませぬ。 後ろの守りを怠っては、勝てる戦も勝てなくなることは、オボロ様もよくご存知の筈」 「だ、が……ヤツは……ユ、ズハ、を……」 「無策の玉砕は相手の士気を高めるだけとなりましょう。 今は眠り、頭をお冷やしになって下さい。せめて、楽しい夢を見られるようにしますから」 「う、ら……は………」 そこで、俺の意識は途切れた。 意識を手放したオボロを確認した後、裏葉はふぅっと一息ついた。 「オボロ様は弓矢と同じにございます。撃てばそれきり、戻ることを知らず。 ……この方には、出るべき機を見極めることの出来る、優秀な射手(主)が必要でございましょうに」 A 裏葉一人で結界を破ろうとしている術者を探しに行く B 時間のロスは痛いが、一人になるのは得策ではない。一度マンションに戻る C その時、小柄で関西弁の女の子に見られていることに気づいた D 七瀬と透子は今何をしてる?
D
「誰も居ない……か」 あたしは栗原さんとマンションまで戻ってきたのだが、 そこにはもう、オボロさんと裏葉さんの姿はなかった。 「まさか、二人とも学校に?」 「その可能性が高いわね。 学校がああいう状態になってるのに気づいたとしたら、 何か行動を起こしていてもおかしくはないわ」 この仮説、実は逆に考えることも出来る。 裏葉さんたちに何かあったからこそ、学校がああいう状態になった。 つまりは裏葉さんの結界が解けたとも。 だけど、それは意識して考えないようにした。 今は物事を悪い方にばかり考えていても仕方がない。 「じゃあ、早く学校へ行こ!」 栗原さんの言葉に、あたしは黙って頷いた。 オボロさんから渡された刀を、強く握る。……やるわよ、あたし。 ここから先は、今までの礼に始まり礼に終わる剣道の世界なんかとは全然違う。 一歩間違えば命さえ失う、騙し騙されの戦場なんだ。今栗原さんを守れるのは、あたしだけなんだ。 あたしは何度も自分にそう言い聞かせ、立ち上がった。 あたし達は道路を歩くのも慎重に、学校へ少しずつ近づいていく。 幸いにも、学校に近づくまで敵は現れなかった。 そこから考えると、裏葉さんの結界はどうやらまだ生きているらしい。 それを踏まえても、一応最悪のシナリオにはなってはいないようだ。 「……七瀬さん、あれ!!」 「えっ!?」 栗原さんが急に声を上げ、指を差した。 そこにあったのは…… A 道路際で眠っているオボロさんだった B 眠ったオボロさんを背負った裏葉さんだった C 両手を挙げて宇宙的挨拶をあたし達に交わす珊瑚ちゃんだった D 量産型イルファさんが無表情であたし達を睨んでいた……マズい
B
「裏葉さん!?」 「……お戻りになられましたか、七瀬様、栗原様」 そこにいたのは、眠ったオボロさんを背負った裏葉さんだった。 心なしか、裏葉さんの顔が深刻に見える。 何か良くないことがあったのは、一目瞭然だった。 「あのね、裏葉さん。科学の力のことなんだけど……」 「……場所を移しましょうか。オボロ様も今はお眠りになられていることですし」 「じゃあ、裏山の入り口にも公園があるから、そこで……」 とにかく、あたし達は学校の傍からそこまで移動することになった。 流石に敵地の前で作戦会議は出来ない。それに、オボロさんのことも気になった。 何か大変なことがあったのだろう。だから、敢えてあたしは聞かなかった。 「そうですか……その珊瑚様も、おそらくはガディムに捕らわれて……」 「結界を破ろうとしている術者ね……厄介なことになってきたわ」 あたし達はまず、お互いの情報を交換し合った。 流石に平日の真昼間の公園には、人の姿はない。この公園が住宅街から離れていることも一因だが。 とにかく、あたし達には火急にやらなければいけないことが二つ出来た。 結界を破ろうとしている術者を倒すことと、珊瑚ちゃんの救出。 裏葉さんの話だと、結界はこのままじゃ後一日も保たないというし、 珊瑚ちゃんの方にしても、珊瑚ちゃんの命の保障などないのだ、事は早くした方が良い。 「術者を倒すか、珊瑚ちゃんを助けるか……どちらにしても、敵地に行く以上戦力の分散は出来ないわね」 「仕方がありませぬ。四人しかいないのですから」 裏葉さんが残念そうに呟いた。 この世界でオボロさんや裏葉さんに仲間のあてがあるわけもなく、頼れるのは結局自分達だけなのだ。 「あたしは、珊瑚ちゃんを早く助けた方がいいと思うよ」 「……私はまずは術者を倒すことに専念すべきだと思います」 栗原さんと裏葉さんの意見が二つに割れ、自然とあたしに視線が集まる。 あたしは…… A 時間がなくなる前に、結界破りの術者をどうにかする方が良い B 人の命には換えられない。味方も必要だし、珊瑚ちゃんを先に助ける C その時、オボロさんが目を覚ました
c
「うぅっ……こ、ここは……」 「……オボロさん。目が覚めたのね」 あたしが答えようとしたとき、オボロさんが目を覚ました。 そして、何か探すように、あたりをキョロキョロと見回し始める。 「そ、そうだ、俺は裏葉に眠らされ……くそっ!」 オボロさんは舌打ちをしたかと思うと、ガバッと起き上がる。 「何処へ行こうというの、オボロさん?」 「知れたこと、ガディムの元へだ! 俺はヤツをこの手で打ち滅ぼすために、この世界に来たんだ! そしてヤツが俺達の前に居る。もう答えは一つしかないだろう!?」 粗方の事情は裏葉さんから聞いている。 やれやれ、目が覚めれば頭も十分冷えているかと思ったけど、これは相当な重症ね。 思い立ったらすぐ行動の香車タイプなのね、オボロさんは。 以前にオボロさんの上司だった人の苦労が目に見て取れるわ。 あたしだってオボロさんと同じで、深く考えるのはそこまで得意ってワケじゃない。 だけど今は状況が状況だ。そんなこと言っていられる場合じゃない。 あたしは道を塞ぐようにオボロさんの前に立つ。 「そこをどけ! ヤツは俺が倒す!! 今のヤツは不完全だ! 不確かな力や、妙な小細工に頼る必要などない筈だ!!」 オボロさんは完全に意地になってしまっている。 頭ではきっと、自分が無茶な考えを起こしてると分かってるだろうし、 あたしや裏葉さんの意見が正しいことも理解してるだろう。ただ、それを認めたくないだけなんだと思う。 こうなってしまった人を止めるのは難しい。だけど、止めないわけにはいかない。 無駄死にすると分かっているのに、オボロさんを行かせるわけにはいかないんだ。 何か、何かしなくちゃ。オボロさんに自分の間違いを分からせるキッカケがあれば…… A 地道な説得に入る B オボロさんを殴りつける C 「行きたければ、あたしを斬りなさいよ」と挑発する D その時栗原さんが、ポロポロと涙を零した
D
「やめてよ! 行っちゃヤダよ……!! そんなことして、オボロさんが死んじゃったら、あたしは……うぅっ!!」 その時だ、おろおろとオボロさんに目を向けていた栗原さんが、 まるで糸が切れたようにポロポロと涙を零した。 「く、栗原……何故泣く?」 女の子に泣かれた経験なんてないのだろう、オボロさんがそれに戸惑う。 「……このドアホッ! あんた、栗原さんの気持ちも分からないの!?」 「な、何が言いたいんだ!?」 「そりゃ、あんたは憎い仇に玉砕できりゃ、犬死したところで本望でしょうよ。 けど残されるあたし達はどうなるの? あんたを行かせて、それであんたが死んだら一生後悔するわ。 残された人間の辛さを一番よく知っているのは、他ならぬあんたじゃないの! 人を見殺しにしたなんていう、一生かかっても取れない十字架をあたし達に背負わせる気!?」 あたしは気づけば辛辣な言葉を次から次へとオボロさんにぶつけていた。 オボロさんは黙って震えている。怒りからか、それとも悲しみからか。 ……あたしの言っている事は、オボロさんの心の傷に塩をすりこむようなものだ。 「犬死は妹さんも望まないなんて鳥滸がましいことは言わないわ。 ただね、こっちは世界がかかってるのよ。勝手に突撃されて勝手に死なれるのは迷惑よ。 悔しいけれど、世界を救うためにはオボロさんの力が必要なんだから。 死ぬことも、無謀な玉砕に走ることもこのあたしが許さない」 「七瀬、お前……」 自分でも随分傲慢な言い方だとは思った。 だけど、オボロさんには柔らかく言うより、厳しく言った方が効果があるだろう。 「あなたの目的は死ぬことじゃなく、ガディムを倒すことでしょ? この世界には『急がば回れ』という諺があるわ。一見遠回りだけど、一番確実で近い道を選ぶのよ」 オボロさんは黙ったままだ。 だけど、もうどう答えるかなんて決まっている。 オボロさんだって裏葉さんの意見が正しいことを分かってたんだ。 ただ、盲目的に仇討ちに執着することで、妹さんへの贖罪としようとしていただけで。 ずっと顔に書いてあった。俺を止めてくれ……って。 本当に不器用な人。そんなことしても、きっと妹さんは喜ばないと思うのに。
「一つ約束してくれ」 「なに?」 「機が熟したら、ガディムの首は俺に取らせろ。 俺はそのためだけに全てを捨ててヤツを追ってきたんだ。こればかりは譲ることは出来ん」 「……いいわ。その時が来たら、あなたに任せる。 あなたはガディムを倒すことだけを考えて。あなたの背中は、あたしが守るわ」 あたしはオボロさんから受け取った剣を掲げて、微笑んだ。 こんな物騒な物を振り回す乙女なんていやしないだろう。いて戦乙女がいいところだ。 あたしは乙女と呼ばれるには程遠いかもしれない。 だけど、今はそれで良い。本当に……今だけは。 「七瀬様。それでどちらを優先させましょう?」 「えっと、それは……」 裏葉さんが急に話を戻したので、あたしは思わず口ごもる。 結局のところ、まだ決めてもないし考えてすらいない。 「オボロさんはどう思う?」 「あそこまで豪語したのだ、俺は七瀬の決定に全て委ねる」 オボロさんに話を振ってみてが、そうはぐらかされた。 体よく逃げやがって。あたしの中にふと殺意がわいたような気がした。 「お前に全て任せるんだ、姉者と呼んでやろうか?」 「お願いだからそれはやめて」 更にからかわれた。 オボロさんのニヤニヤとした顔が正直憎たらしい。 あたしは意図的にそれを無視し、考える。 術者を倒すことを優先か、それとも珊瑚ちゃんを助けることが先か。 A 時間制限のある方が先だ。術者を倒す B 人の命が懸かってる。珊瑚ちゃんを助ける
A
「今、結界を破壊されるわけには行かないわ。 相手の戦力を減らすことも考えて、術者を倒すことを第一に考えましょう」 「やはり、それが最上の策でございますね」 あたしの言葉に裏葉さんが同意する。 栗原さんは自分の意見が却下されたことで、どことなく悲しそうな顔をしていたが仕方がない。 珊瑚ちゃんがどんな状態に捕らわれているか分からない。 必要以上に救出に時間がかかって、結界をその間に破られてしまっては相手の思う壺だ。 「裏葉。術者の居場所は分かっているのか」 「……栗原様、学校の地図をお貸しください」 「えっ? うん、いいよ……」 栗原さんが生徒手帳を取り出し、学校の見取り図を見せる。 流石に普通の地図は今は手持ちになかった。 「術者の数は一人。ですが、相当の使い手にございます」 相手は一人だが、相当の実力者。 結界の破壊を一人に任せているというのは、相当人材に困っているか、自信があるか。 どちらにせよ油断だけは出来ない。心して、かからなければ。 「力の波動はこの位置より感じます。おそらくは、そこで呪を行っているのかと」 裏葉さんが特別教室を指差した。そこに、術者が……。 その特別教室は? A 図書室 B 化学室 C 生徒会室 D コンピュータ室
C
「ここって…生徒会室よね」 裏葉さんが指差した特別教室は、学生の自治を預かる生徒会室だった。 「生徒会室というのはどんな部屋なのだ?」 オボロさんが聞いてくる。 「どんなって言われても…、生徒会の人間が仕事をする部屋よ」 「生徒会?」 こっちの世界のような学校を知らないオボロさんにはよく分からない単語だろう。 時間も無いし、私は適当に学校の自治の仕組みやら何やらを教えた。 「つまり師匠達ではなく、弟子達の頭が政務をする部屋なのだな」 「まぁそういうことかしら」 オボロさんの世界の弟子と師匠と、あたし達の学校の教師と生徒ってのは少し違うと思うけど。 「何かこの部屋で気をつけるような事はあるか?」 「特に…無いとは思うわ」 化学室だったら危険な薬品があったり、家庭科室なら包丁やら刃物類があったりする。 だけど普通生徒会室にある物といったら、書類やら本やら事務用品やらそんなところだ。 戦闘となった場合に、特に注意しなければならない事はないだろう…多分。 「でもどうして術者って人はこの部屋を使ってるのかなぁ?」 「申し訳ありません、そこまでは分かりかねます」 栗原さんの質問に裏葉さんが困った顔をする。 「とにかく、この部屋に裏葉の結界を破ろうとする術者がいるのは間違いないのだろう。 早く突入して、ソイツを仕留めねば」 話は決まったとばかりに、オボロさんは立ち上がった。 「ま、待ってよ」 「何だ?」 「その術者ってのが私達の学校の生徒で、ただガディムに操られてるだけだったら…オボロさんはどうするの?」 そう、今まではっきりとは聞かなかったけど、オボロさんはガディムを『殺し』に来ている。 と言うことは、この術者やガディムが乗っ取っているらしい川名先輩に対して、オボロさんは―― A 「……斬る、当然だ」 B 「…………」オボロさんは答えを口にはしなかった。
a
「……斬る、当然だ。 無駄な犠牲は好まないが、俺の目的と命、そいつの命を天秤に掛ける事態であるならば、前者に傾く」 「え?、そ…そんな…」 オボロさんははっきりと言い放った。その言葉に迷いは見られない。 栗原さんは彼の冷徹な言葉に驚きを隠せないようだ。 彼は私たちよりずっと血生臭い世界を生きてきた人間だ。 戦場において心の天秤がぶれると言うことは無いのだろう。 根は善人であるが、悪業の行使に躊躇いは無い現実主義者──ちょっと短絡的だけど。 「それにだ、術法を行使するような奴が操られているだけとは思えない。 事実、俺が渡り歩いた世界には我欲が為にガディムを利用しようとする者もいた。 世を疎み奴に身も心も奉げ、自ら手駒になった者もいた。 残念ながらそのような者であるならば、俺は容赦しない」 そう、今までは操られてゾンビの様に私たちに迫る人間だけが相手だったが、今回は毛色が違う。 彼の推測が正しいとしたら、協力者かもっと自発的な手駒の存在が浮かび上がる。 神様だった昔ならいざ知らず、今のガディムは人の手でどうにかなる存在だ。 ならば、それを利用しようとする奴がいないはずが無い。 「依代の人格を基に顕在するガディムは知性を持ちえますが、目的は常に破壊。 奴を利用すると言うのは身の破滅を約束するも同然です」 オボロさんの言葉に裏葉さんが続く。 魔王や闇の力とかを利用する奴の末路はいつも同じって事ね。 「いいわ。 操られてる人をバッタバッタなぎ倒すのは勘弁だけど、そんな悪党ならやっちゃって構わないわ。 ここまで事態が深刻だと、誰も死なないでハッピーエンドなんて緩い少年漫画みたいな展開は期待しない」 私も覚悟を決める事にした。 私たちが親しい人を手に掛ける可能性と、親しい人が災厄の犠牲になる可能性。 どちらも起こりうるなら、まだマシな方を選ぼう。
「…覚悟は出来ているようだな、なら行くぞ。 例の操り人形共の邪魔を考えると時間が無い」 今かと待ち構えていたオボロさんは即、駆け出そうとする。 「ちょっと待って、私に考えがあるの。 栗原さん、イルファさんをここに呼び戻してくれない?」 「え?う、うん、分かった」 栗原さんがイルファさんに携帯で連絡を付ける。 イルファさんは学校の様子が気になってヘリで様子を窺ってから帰ろうとした為か、 まだこの辺りを飛んでいたので、すぐに戻ってきてくれた。 「七瀬様、一体…」 「イルファさん、悪いけどちょっと協力してくれる?」 私の計画はこうだ。まずは結界を破る術者を倒すのが優先であるが、 ガディムを倒すキーマンとなる珊瑚ちゃんも見捨てられない。 術者を倒してから一端撤退して彼女を探すのでは、手遅れになってしまう可能性がある。 防備を固められて学校に立て篭もられたら、手の出しようが無くなってしまう。 そこで、術者の撃破と彼女の救出を連続して行なう事にした。 その為にはイルファさんとヘリが必要と判断した。 巻き込むのは気が引けるが、如何せん事態が逼迫してるし、猫の手も借りたい。 計画としては、まず私と誰かが裏山から侵入する。 開けた校庭や中庭を通る以上は必ず敵の目を引くだろう。 そして、その隙に残りが空中から学校へ侵入し、術者を討つ。 そして、すぐさま珊瑚ちゃんの捜索に切り替えて救出し、ヘリで逃げる手筈だ。 「なるほど…空からの侵入か。 屋上から近いこの部屋ならば奇襲効果も高いだろう」 「後、悪いけど栗原さんにはここに残ってもらうわ」 「う、うん…しょうがないよね」 栗原さんは残念そうな顔をしていた。 彼女の数少ない友達である珊瑚ちゃんを助けたい気持ちは分かるが、 彼女は足手まといにしかならないだろう。 「それでは七瀬様、どう言う分担になさるのですか?」 メンバーを2-2に分けてください。ただし、裏山:七瀬、空中:イルファは固定。透子はお留守番で 裏山: 空中:
とりあえずオボロは空中で。
自動的に 裏山 七瀬 裏葉 空中 イルファ、オボロ になるわけか。
「それでは私めと七瀬様が裏山から陽動を掛けます」 「二人が騒ぎを起こしている間に、俺達が術者を仕留めるというわけか」 「そういう事よ」 分担は決まった。 裏山からは私と裏葉さん。 空中からはオボロさんとイルファさん。 ヘリに乗って空中から強襲なんて映画みたいなアクションは、ちょっと私には無理がある。 戦場馴れしていて身の軽い、オボロさんに任せるのが順当だろう。 今朝もマンションのベランダから平気な顔して飛び降りてきたし。 私は裏葉さんの援護を受けながら、敵の目を引きつける役割を選んだ。 もちろん油断は出来ないけど、動きの遅い操られている人達相手なら私でも何とか出来なくもないはず。 「…承知しました。ですが、その後には必ず珊瑚様をお助けに行かせてください」 イルファさんがいくらか渋い顔をさせながら、私達に念を押してきた。 そうよね、イルファさんからしてみれば、生みの親である珊瑚ちゃんの救出を何よりも優先したいはず。 それなのに私達に付き合わせて、彼女の救出を後回しにしてもらっているのだから。 「もちろんよ、その時はみんなで珊瑚ちゃんを助けましょう!」 「はい!」 私はイルファさんを元気づけ励ました。 そうよ、オボロさんのためにも、この世界のためにも、珊瑚ちゃんのためにも、なんとしても成功させなきゃ! 「そ、それじゃああたしは留守番してるけど……みんなちゃんと帰ってきてね。 絶対、絶対に怪我したり……死んじゃったりしたら嫌なんだからね」 「ええ、必ず帰ってくるわ」 「当然だ」 「無論でございます」 「きっと珊瑚様を連れて、栗原様の元に戻ります」 「よし、それじゃあ早速行きましょう!」 「おう!」「了解しました」「承知です」 私達は立ち上がり、栗原さんに見送られながらそれぞれ行動に移り出す。 イルファさんとオボロさんはヘリに乗り込み、私と裏葉さんは裏山のほうから学校へ。 公園を出る前に、チラリと振り返ると、栗原さんが半分涙目になりながら私達を見送っている。 (栗原さん……栗原さんの分まで、私頑張るわ!)
A 陽動を掛ける七瀬・裏葉視点へ B 強襲を掛けるオボロ・イルファ視点へ C お留守番の透子視点へ
主役のAから
「すぐそこね」 「すぐそこですね」 早足で、だけど余り足音を立てないように裏山のほうからの入り口に近づく。 「ホント、何だか不気味……」 裏葉さんじゃ無いけど、確かになんとなく嫌な感じの空気が学校には立ちこめている。 「七瀬様にもそう感じられるとは……急いだほうがいいかもしれません」 裏葉さんが少し足を速める、私もそれ似合わせる。 「……………………」 歩きながらオボロさんに渡された刀を握り、ゴクリと喉を鳴らす。 私は何をしようとしているのだろう。 未だに校庭には無数の操られた生徒がうろうろとしているのだ。 そしてそいつらを相手に、私と裏葉さんの二人だけで大立ち回りをしなければならない。 改めて想像してみると、額や頬に冷たい汗が浮かんできた。 胸に手を当ててみる。 嫌が応にも鼓動が高まっている、心臓がドクドクバクバクいって止まろうとしない。 「七瀬様、落ち着いてください」 見かねた裏葉さんがなだめてくれた。 「あ、ありがとう裏葉さん。大丈夫よ、全然平気」 ぎこちない笑顔で私は返事をする。 ――だけど、裏葉さんには悪いけど、こんな時に『緊張するな』と言うのは酷な話だ。 私も18年と幾らか生きてきたけど、人生こんな場面に遭遇するのは初めてだ。 『生きるか死ぬか』なんて言葉がある。 今までは受験とか、定期テストとか、そんな学生らしい場面で使ってきた言葉だ。 まさか本当に言葉通りの意味で使うようになるとは。
「……着いたわ」 「……着きましたね」 長いようで短い、短いようで長い時間だった。 裏山からの入り口に辿り着いてしまった、もう後戻りはできない。 「七瀬様、どのように突入しましょうか」 裏葉さんが聞いてきた。 幾ら敵を引きつける陽動と言っても、何も考えずに突入してもすぐにやられるのがオチだ。 何か方針のようなものを決めておくべきだろう。 「何も厳密に決める必要もありません、大体の感じで良いので」 そうねぇ、それなら―― A 校庭のど真ん中に突入して、裏葉さんと背中合わせで周りの敵を打ち払うような感じで B 常に逃げて動き回って、追ってくる敵を各個撃破するような感じで C 敵を引きつけて校庭の隅を背にして、迎え撃つような感じで
C
「行くわよ、裏葉さん!」 「はい!!」 あたし達は大声を上げながら、校内に突入する。 学校の中をウロウロしていた生徒達は、あたし達の姿を見るなり、 まるでホラーゲームの敵キャラのような動きで、あたし達に迫ってきた。 「邪魔よ!」 あたしは無我夢中で、オボロさんから借りた剣を振り回した。 裏葉さんの援護があるとはいえ、捕まったら危険だ。 幸いにも、正気を失っている生徒達の動きは大したことがなかったが、 数の暴力にはどうしようもなく、あたし達はじりじりと壁際に追い詰められていく。 ……だが、それでいい。それが狙いだ。 あたしと裏葉さんは、校庭の隅に壁を背にして、連中と向き合っていた。 隅にいれば前だけに注意を集中することが出来る。 そして、あたし達の後ろにはフェンスの切れ目。劣勢になれば撤退できる位置だ。 あくまであたし達は陽動。無茶する必要はない。 「七瀬様、お見事な策でございます」 「上手くここに誘導できたのは運が良かったからよ。だけど……」 周りには正気を失った生徒達がウジャウジャあたし達を取り囲んでいる。 あたしのブランクの開きすぎた剣と、裏葉さんの方術だけで、どれぐらい時間が稼げるだろうか。 あたしはコイツらを見て、なんとなく太田さんを思い出した。 気色悪さといい、雰囲気といい、何処か共通する部分がある気がする。 そういえば、太田さんは生徒会の副会長だった。 そして今回の強襲の目的地は生徒会室……。 もしかしたら、太田さんはあの時既に事件に巻き込まれていたのかもしれない。 「……裏葉さん、この後はどうするか考えてる?」 「あらあら、どういたしましょう?」 あたしの質問に、裏葉さんがわざと明るい声で惚けて見せた。分かってる癖に。 これからの作戦は…… A あたしが前面に出て、裏葉さんがサポートする形 B 裏葉さんの方術中心に攻め、あたしが裏葉さんを守る形 C 裏葉さんお得意の方術で、この場の生徒の動きを封じる作戦
B 一対多よりも主力を守って各個撃破だろう。 時間も稼げるし。
悔しいが、あたしの力なんて微々たるものだ。 自分の身すら守りきれるかどうかも怪しい。だから、あたしが前面に出て戦うのは無謀だろう。 そうであるからこそ、裏葉さんの方術を中心に戦うのは自然な流れであった。 「……けど、これで大丈夫かな?」 「十分にございます。七瀬様、御自分の力をお信じ下さいませ。 彼らは術の類で操られている傀儡。彼ら自身には卓越した能力はございませぬ。 この位置なら、一度に襲い掛かる人数も少なくなり、対処もしやすいかと」 「で、でもっ……!」 あたしは言葉を返しながら、瞳の色を失った生徒達が繰り出す拳を剣の腹でいなす。 いなされた拳は、勢いを保ったまま軌道を変え、あたしの代わりにフェンスを殴りつけた。 フェンスの殴られた部分が、大きくへこんでいる。 ……どう見ても、普通の力じゃない。当たったらアウトだ。 「コイツら、とんでもない力よ!?」 「人は体を壊さぬように、本来の力を抑える枷があると聞きます。術者はそれを外したのでしょう」 「それって、物凄くヤバいんじゃ……」 「ご安心を。この術者、ここまで広範囲多人数を支配下におけるとは、相当の実力があるのでしょうが、 ……このような術には幾つか弱点がございます」 「弱点?」 「まず第一に……」 再び生徒の一人があたしに拳を向けた。 大きく振りかぶった拳を、びゅんとあたしに投げつけるように振り下ろす。 あたしはそれを、体を捌いてかわし、相手の後頭部に剣の峰を打ち下ろした。 鈍い音がして、打たれた生徒が倒れる。……軽い脳震盪でも起こしたのだろう。 良心の呵責に苛まれないわけでもないけど、とにかく今はこっちもヤバいから我慢してもらおう。 「傀儡自身に考える力がないこと。 戦も試合も、相手の動きを読み、自分の間合いを考え動くことが重要にございます。 考えることが出来ないと言うことはつまり、それすらも満足に行うことが不可能ということ」 確かにそうだ。 コイツらはさっきから考えた攻撃を一切してこない。 あたし達を見たら追いかけ、そしてただ闇雲に殴りかかってくるだけ。読み易いことこの上ない。 いくら相手が化物じみた力があるといっても、当たらなければどうということはないのだ。
「そして第二に……」 裏葉さんがすっと右手を上げる。 その途端、前にいた生徒がバタバタと音を立てて倒れていく。 「このように、単純な行動しか出来ないこと。 いくら優秀な術者でも、数人ならともかく数十数百といった数を自在に操ることは不可能。 よって傀儡は予め与えられた命令を遂行するただの人形に過ぎず、 策にも簡単にかかり、不測の事態が起こっても自身の判断で対処することが出来ませぬ」 「裏葉さん、これは……?」 「方術で眠気を誘いました。 今の彼らは私の術に抗うことも知りませぬ故に、このような子供騙しも可能にございます」 とりあえず、裏葉さんは皆を殺してはいないようで安心する。剣では下手すると殺してしまうし。 その点から考えても、裏葉さんを中心に据える手は正解だと言える。 「そして、決定的な第三の理由」 「それは?」 「術者が戦況を確認する手段が限られること。 今のように陽動で傀儡の多くの注意が逸らされていても、 術者自身の目で確認せぬ限り気付く余地がありませぬ」 なるほど。そう考えれば、今の状況もそう悪いものじゃない。 この操られた生徒達相手なら、あたし達二人でも十分と言うわけか。 「流石は、ガディム相手に戦ってきただけあるわ……ねっ!」 あたしは襲い掛かる生徒をいなし、一撃を見舞いながら、 素直に裏葉さんの判断を尊敬した。オボロさんと違って、この人は冷静だ。 そういう人が後ろに控えていてくれると、とても安心できる。 「ただ懸念が一つ。もし私が相手側ならば、不測の事態に備え、 傀儡ではない手駒か、それとも自分自身かを共に配置しておくでしょう」 その言葉にドキッとする。裏葉さんの言葉を借りるなら、正に今がその不測の事態……。 それほどの相手がいるのかと、辺りを見回した。すると…… A 生徒達に指示を送っている……あれは確か生徒会長!? B ぞくっとする寒気と共に現れた川名さんと目が合った C 明らかに一人正気を失っていない人の姿が。あれは……珊瑚ちゃん!? D まるで悪魔と形容すべきかのような禍々しいモノが。あれが敵なの!?
B
その時だった。 まるで背中に氷でも入れられたような感覚が、全身を迸る。 長い黒髪、何も映していない瞳、そして……この状況で微笑を崩さないその表情。 そこに禍々しいと言う言葉が非常に良く似合うだろう、そんな少女があたし達を見下していた。 まるで自分が異世界に迷い込んだみたいだ。 世界全体が色を失ったかのような、そんな錯覚さえ感じた。 腕が震える。足が満足に動かない。目を川名さんから逸らすことができない。 あの少女……川名さんは、客観的に見て、そんな恐ろしい人間ではない。 なのに、体は危険信号を発し続ける。あれが破壊神の持つ風格なのだろうか。 オボロさんから借りたバンダナからは鈍い共鳴音が鳴り続け、彼女が危険であることをあたし達に知らせる。 裏葉さんも、相手が説明した川名さんであることを分かったようで、警戒を一層強めている。 このままではまずい。このままではいけない。 頭の中でそんな言葉が何度もリフレインするも、あたしは動くことが出来なかった。 「……久しぶりだね」 あたしへ向けた言葉ではなかった。昨日会ったばかりなのだから。 裏葉さんはぎゅっと唇を噛み、ただじっと川名さんを睨みつけている。 この人も、オボロさんと同じように、ガディムには浅からぬ因縁があるのだろう。 今まで敢えて聞くことはしなかったけれど、この態度でそれが分かる。 「まさか、あなた自ら出てくるとは思いませんでした……」 「私も結構切羽詰ってるんだよ。余裕ないからね」 「……ならば、今こそあなたを倒し、この世界を救うのみです!」 裏葉さんが言葉巧みに挑発を仕掛けるが、裏葉さん自身には今は事を構えるつもりはない。 証拠に、裏葉さんは先ほどから態度を変え、退くことを前提に動き始めている。 流石にガディム相手にはあたし達だけでは無謀というわけだ。 「ねえ、二人とも……私の元に来ないかな? そうしてもらえると、とても嬉しいよ」 まるで赤ん坊をあやす様な優しい口調だった。 だからこそ油断が出来ない。それが痛いほどに分かる。 あたしは、川名さんの言葉に…… A 恐怖を感じた B 気色悪さを感じた C 妙な安らぎを感じた
ここはcで
あたしは恐怖や怒りよりも前に、安らぎを感じた。 不思議な感覚だった。 絶対的に危険である存在なはずなのに、 その言葉を聞き、その表情を見ると……不思議と心が安らぐのだ。 だからこそ怖い。恐ろしい。 心の弱い人間なら、それだけで彼女の元に陥落しているのだろう。 「七瀬様!」 裏葉さんの言葉が合図で、 あたしは弾かれたように、川名さんとは逆の方向へ走り出した。 戦おうなんて微塵も考えなかった。 次元が違いすぎる。この言葉を今更ながらに理解する。 震える体を心で制し、平衡感覚が鈍ったような足で無理矢理大地を踏みしめ、 あたしは逃げることだけを考えた。絶対に、アイツだけには勝てない。 無造作に立っているだけなのに、何処にも隙がない。 何を考えているのかも、次にどう動くかも、何もかも読めない。 幸いにも、あたし達はフェンスの切れ目を後ろで守る形で向き合っていた。 だから直に学校から脱出が出来る。 裏葉さんの結界のおかげで、彼女は学校の外まで追ってくることが出来ないはずだ。 「……逃がさないよ」 川名さんが、そう呟いたような気がした。 次の瞬間―――― A フェンスの切れ目に、まるで見えない壁があるかのように顔をぶつけた B まるで石のように、体が動かなくなった C 裏山にも、既に虚ろな目をした生徒達が回りこんでいた
A
素早くフェンスを潜り抜けようとしたところ、 顔に強烈な痛みを感じ、あたしは思わずのけぞった。 「えっ!?」 痛みを堪えながら、あたしは最悪な想像をする。 その想像が当たってないことを願って、切れ目に手を伸ばした。 ……想像は、現実となる。願ってもいないのに。 まるで切れ目にはガラスか何かが挟まっているかのように、 見えない壁があたし達の邪魔をするように存在していたのだ。 「…………」 裏葉さんがコンコンと壁を叩き、黙って首を横に振る。 あたし達は……閉じ込められた!? 「もう少しのんびりしていったらどうかな。 私ももうちょっとだけ、あなた達とお話がしたいよ」 「たかだかあたし達二人に、ここまでやるの?」 「私は人間を見くびらないよ。 その技や力、心、そのどれだって凄いと思う。 だから私は……まずは世界の前に人間を狙うんだよ」 神と名乗るものだから、もっとあたし達を見下してるものだと思っていた。 だけど違った。ガディム……こいつはあたしが思っていた以上に細心で、強敵だ。 今の力関係だって、アイツの方がずっとずっと上だった。 だから付け入る隙があるとすれば、あいつの慢心を突くことぐらいだと思っていた。 だけど、はっきりと分かった。こいつに油断はない……。 オボロさんや裏葉さんが何度も取り逃がしているわけだ。
「……七瀬様。この技は私の結界と同じ類のものでしょう。 私達をこの学校に閉じ込めるのが目的と思われますから、おそらく体に害はないものと……」 裏葉さんの言葉は気休めにしかならなかった。 いくら結界に害がないとはいえ、どちらにせよあたし達のピンチに変わりはない。 「逃げた方が、いいわよね? あたし達二人で勝てる相手じゃない」 「同感にございます。オボロ様達の力は絶対必要でしょう」 あたしと裏葉さんは同時に頷き、同時に行動を起こす。 もう行動は決まっていた。逃げる一択しかない 「どいたどいたぁーーっ!!」 あたしはわざと大声を張り上げ、自身の発奮を促しつつ、 川名さんからは大きく外れた方向へ切り込んでいく。 裏葉さんが言っていたように、傀儡の生徒達は不測の事態に弱い。 なるほど、あたし達がこういう行動に出るとも予想できないみたいで、 不意を突かれればいくら人間離れした力があっても、勢いで突っ切ることはそう大変じゃない。 さて……逃げるといってもどこへ? A 生徒会室へ向かい、とにかくオボロさんと合流するのが先決だ B オボロさん達のために注意を引かないと。校庭を逃げ回る C 何もない場所ではあまりにも不利だ。校舎内に逃げ込んだ方が良い D ……オボロさん達は、うまくいってるのだろうか
Cで屋内追走戦!!
「はぁ、はぁ、はぁ……」 もう一生分走った気持ちになった。 あの状況で、うまく学校の中に逃げ込むことが出来たのが信じられない。 とりあえずあたし達は、手近の教室へと逃げ込み一息ついていた。 今は授業中の時間なのに、校舎内にも人の姿は殆どない。 ガディムに操られている生徒達があたし達を探し回っているのが精々だ。 やはり学校は既にガディムの手に落ちてしまっている。 あたしも一昨日オボロさんに会わずにいたら、あの生徒達の仲間入りをしていたのだろう。 もうほぼ全ての生徒がああなっているのは間違いない。ここが見つかるのも時間の問題だろう。 「嫌な感じね……まるでじわじわと追い詰められていくみたいだわ」 「落ち着きください、七瀬様。ガディムは闇の神より作り出されし破壊神と聞き及んでいます。 負の感情、即ち闇の力はガディムの好むもの。これではガディムの思う壺にございます」 「分かってる……分かってるわ」 口ではそう答えるも、内心穏やかじゃなかった。 ガディム……あれで本調子じゃないというのが信じられない。 今はこうして逃げ回っているが、何れ”あれ”と戦うことになるのかと思うとゾッとする。 「おそらくは校内はガディムの根城。 守りの者も、外の傀儡など問題にならぬ者で固められていることでしょう」 「…………」 あたしは唾をごくりと飲み込み、裏葉さんの説明を黙って聞いていた。 いくら数が違うとはいえ、二人がかりでどうにか防いでいた外の連中より、 更に上の相手がこの学校の中にウヨウヨしてるっていうの!?
「ガディム本人を除き、相対する敵で予想されるものは大きく分けて二つ。 まず第一にガディムに自らの意思で従うもの、つまりはガディムの眷族。 そしてもう一つ、ガディムの分身ともいえる存在……私共はラルヴァと呼んでいます」 「ラルヴァ?」 「はい。ただの分身故、力はガディムよりも数段劣ります。 ですがその性質は極悪、ラルヴァも他人に憑くことにより、その人間を乗っ取るのです」 言ってしまえば、量産型ガディムか。 ガディムの分身なら、あたしの付けているバンダナも反応はするのだろう。 「憑かれた人間を助ける方法は?」 「強い衝撃を与えれば、ラルヴァは体から離れましょう」 ラルヴァ”は”か……。 とりあえず、撃退する方法がないわけではなさそうなのでホッとする。 だが油断は禁物だ。どこに敵が潜んでいるか分かったものではないのだ。 それにこれからのあたし達の指針はどうする。 あたし達が囮として敵をおびき出す作戦はそこそこ成功していただろう。 だけど、ガディムたちはあたし達と同じように、学校内にあたし達を閉じ込める作戦に出た。 こうなっては最初の構想のように、事が済み次第逃げることが出来ない。 ガディムの結界だ、そう簡単に解ける代物でもないだろう。 それにオボロさん達の事もそろそろ気付かれてもおかしくない頃だ。 さあ、どうする。どうしたらいい……? A とりあえずオボロさんと合流するのが先決だ B オボロさん達の邪魔が入らないように、学校内の敵を遊撃して二人をサポートする C 退路の確保が先決だ。どうにかして結界を破る方法を考える D あたし達はあたし達で珊瑚ちゃんを見つけ出そう
A
「……とりあえずオボロさん達と合流しましょう」 「そうですね、それがいいと思います」 負の感情を持つのはよろしくないと言われても、私の顔色は良くなかった。 学校の中では逃げ場がないし、敵も数は少ないけど強力らしい。 正直さっきの傀儡連中のように、不意を突いてあしらえるとは考えにくい。 ……それなら少し早いかも知れないけど、オボロさん達と合流したほうが幾分マシだ。 私達も生徒会室へ向かってみよう。 「オボロさん達のほうは上手くやってるかしら」 何とはなしに呟く。 作戦では合流前までに、オボロさん達に術者のほうを倒してもらう手筈なのだ。 ガディム直々の登場で、予定が狂ってしまったけど。 「……何とも言えません、少なくともまだ術者による結界破りは続いてるようなので」 裏葉さんも渋い顔をしている。 一応さっき生徒会室の位置は確認してもらっているし、イルファさんもいる。 学校の中で迷子になったって事はないはず。 だとすれば――それって―― 「まさか…もうオボロさん達はやられちゃったなんて……ことはないわよね」 最悪の想像が頭をよぎる。 駆け付けたときにはもう遅く、オボロさん達はガディムの仲間達に倒されている。 絶望する私達に、更に連中が襲いかかってくる。 逃げ場もなく、数でも質でも圧倒的な相手に押しつぶされ、私達もすぐにオボロさん達の後を追って―― 「七瀬様! 悪いことばかり考えても事態は改善しません!」 「あっ……ごめんなさい、裏葉さん」 あんまりにも顔色が悪くなっていた私を、裏葉さんがしなめてくれた。 見れば刀を握っている手が、また冷たい嫌な汗でじんわりと湿っている。 そうよね、何を考えているのよ私。 戦う前から自分でやられちゃう姿を想像して、自分でその想像に負けてしまうなんて…… やっぱりガディムってヤツの悪い影響を受けているのかしら。
「…誰かいるでしょうか?」 「……いいえ、誰も見あたらないわ」 慎重に、出来るだけ音を立てないように教室のドアを開け、左右を見る。 とりあえず誰かがいる様子はない。 バンダナも今のところ無反応だ。 私と裏葉さんは廊下に出て、生徒会室へ向けて歩き出した。 A 少し歩いていると…バンダナが反応を示しだした?! B 少し歩いていると…傀儡とは違うっぽい人間がうろうろしているのが見えた C 少し歩いていると…裏葉さんが「時に七瀬様…近くに厠などはありますか?」と、裏葉さん…… D その頃、オボロ達は?
d
「……気取られてはいないな?」 「おそらくは大丈夫だと思います」 七瀬と裏葉が校庭で陽動に出始めたその頃、 所変わって屋上ではオボロとイルファが密かに学校に侵入に成功していた。 「この世界の科学とやらは中々便利だな。 まさか俺が空を飛ぶことができるなどとは微塵も思わなかった。 確かにオンカミヤリューの術などとは比べ物にならんかもしれんな」 「私から見れば、高度40メートルからパラシュートも付けずに飛び降りて、 生身なのに怪我どころか顔色一つ変えないあなたの方が怖いです」 ちなみにイルファはジェットエンジンを背中に積んで屋上に着地した。 そんなものを用意しているのは珊瑚の影響だろう。 「ここからは油断できんぞ。覚悟はいいか?」 「珊瑚様の為なら、私はこの体がネジの一本になっても悔いはありません」 「良い覚悟だ。お前、戦闘経験は?」 「護身のための格闘術がプリインストールされています」 「上等だ」 オボロが音を立てずに、屋上の入り口まで近づく。 僅かに扉を開け、まずは中に見張りの姿がないことを確認した。 先ほどはこの場所に川名みさき……ガディムに乗っ取られた少女の姿があったが、 今はその姿はない。移動したのか、それともどこかに隠れているのか。 どちらにせよ、今は彼女が目的ではない。 オボロが先に中に入り、安全を確認してからイルファを手招きする。 「ここから先は慎重に行動しろ。目的を果たすまでは気付かれたくはない」 「はい」 二人は辺りを確認しながら、慎重に階段を下りていく。 その時―――― A 廊下の向こうに生徒会室と書かれた部屋があった。……近い B 虚ろな目をしている生徒に指示を送っている男に気付いた C 丁度オボロの足元にバナナの皮が置いてあった D イルファぐらい高性能なロボットになるとくしゃみが出るのだ
B もう少しシリアスを続けさせてみる
「───は西棟の二階の巡回。それから───」 「「!!」」 最初の階段を気配と足音を殺しながら慎重に降りて行くと、 踊り場を過ぎた辺りで、何かを指示する様な男の声が聴こえた。 (…気取られるなよ) (……はい) イルファに唇の動きだけでそう告げ、更に慎重に、残りの階段を降りて行く。 正直、イルファの穏形の技は俺などよりも遥かに研ぎ澄まされていて、 隣にいる俺ですら、気配を感じ取る事ができない。 仮に目を閉じようものなら、こいつの存在を感じ取る事は全くできなくなるだろう。 これも科学の力なのか? もし、敵にもこんなヤツがいるとしたら、それは厄介な事この上無いだろう。 だが、味方だと正直、素晴らしく助かる。 事実、俺達は声の主に存在を気取られた様子も無く、階段の最後の一段まで辿り着いた。
「(1)は下の連中の援護とガディム様の護衛。(2)は生徒会室の守備に。それと──」 「…声の反響からして、この声の主はこちら側を向いてはいない様ですね」 「ああ」 階段の終端、白塗りの壁の端から僅かに顔を出し、通路の様子を覗き込む。 するとやはりそこには、傀儡達に淡々と指示を下している男の姿があった。 (術者は生徒会室とやらに居るはず……ならばアイツはラルヴァ憑きあたりか…) 「(3)は人質の見張りの連中に合流。(4)は…念の為屋上の見張りを」 (オボロ様!) (チッ…!) ※(1)、(2)、(3)、(4)に該当するキャラを、下のアルファベットから選択してください(一人多答可)。 また、最初に選択される方は、“声の主”の選択(AIR、うたわれ以外の男キャラ指定)もお願いします。 a:向坂環 b:十波由真 c:川澄舞 d:水瀬名雪 e:春原陽平 f:坂上智代 g:那須宗一 h:湯浅皐月
一番それっぽい能力は月島拓也かな。
んでもって、 1-a 2-b 3-e 4-c
オボロがその男に感じたのは、敵意よりも前に違和感だった。 見たところその男は普通の人間と変わらない。 むしろ戦乱の世を生きてきたオボロから見れば、か弱い部類に入るだろう。 だがオボロの第六感が、幾度となく警鐘を鳴らし続ける。 奇妙な感覚だった。相手は丸腰の上に、格闘術などの使い手にも見えない。 なのに一瞬たりとも油断が出来ない相手に映るのだ。 (……オボロ様、どうします? タイムロスになりますが、南校舎側から迂回しましょうか?) (…………) オボロの中に生まれるのは、躊躇い。 相手が見た目どおりの男なら、一瞬で後ろを取り当身を食らわすことも出来るだろう。 だが、その光景が想像できない。あの男は強さ以外の何かがある。 長年ガディムと戦ってきた、オボロの勘であった。そして、その勘は正しく働いたと言える……。 「……隠れてないで出てきたらどうだい? オボロ君」 「!」 それまで傀儡となった生徒に指示を送っていた男が、急に自分の名を呼んだことに狼狽する。 声こそあげなかったものの、オボロの顔に一瞬冷や汗が流れた。 「いくら気配を殺しても無駄だよ。気配や姿を消すことは出来ても、電波を消すことは出来ない。 僕から見れば、君が大声で騒いでいるようなものさ」 その男は電波と言う聞きなれない言葉を使い、オボロを挑発する。 オボロもイルファも動かなかった。 挑発に乗らなかったというより、その男の得体の知れない雰囲気に二の足が踏めなかったのだ。 「自己紹介させてもらうよ。僕は月島拓也、この学校の生徒会長さ。 君の事はよく知っている。一番の邪魔者だって……ね」 その男……月島は、ゆっくりとオボロ達に向かって歩み寄ってくる。 位置すらも完全に気付かれていた。 オボロたちの取った行動は…… A 気付かれた以上戦うしかない B 嫌な予感がする。逃げた方が良い
A
(ちぃっっ!) (オボロ様、不用意に出ては……!) この瞬間、オボロはまるで弾かれたように、月島の前に飛び出していた。 確かに月島は得たいが知れない。だが、このまま逃げることは出来ない。 自分達の存在を知られてしまっているのだ、このまま逃げては作戦が失敗する。 月島が力を出す前に、一瞬で仕留めればいいのだ。 そう考えての行動だった。だが……。 「……ぐっ!?」 「おやおや、そんなに急に出てこなくてもいいだろう? もう少し僕の話を聞いてからでも遅くはないんじゃないか?」 オボロの体は、月島に攻撃を当てる前に失速し、床に片膝をついていた。 自分の意に反して、まるで体が動かないのだ。 「貴様……何をした!?」 「この世界には非常に便利な能力があるということさ。 電波……僕はこの話をするのが大好きでね。まあ、いわゆる自慢話で恐縮なのだが……」 お決まりの前口上を述べながら、月島が説明を始める。 「君は知らないと思うが、人間の頭なんて所詮は電気信号の集まりなのさ。 だからそこへ割り込んで命令を送ってやれば、ホラこの通り僕の命令に従うしかなくなる。 君達の術とはまた違う、科学の超能力といったところかな。はははは……」 「……そうか、傀儡どもはこの能力で」 「そうさ! 僕のこの電波の力で僕の命令だけを聞くロボットにしてやったのさ! 僕の電波は最強なんだ、その気になれば街一つ操ることだって出来るさ!」
オボロは体の自由が利かなくとも、あくまで冷静を努めた。 こういう状況で熱くなったら拙い。長年の経験がそれを教えていた。 見たところこの男は話したがりのようだ。 ラルヴァが憑いているとはいえ、ラルヴァの人格自体は憑いている人間に依存する。 ならば月島の油断を誘うことも可能だろう。 オボロが月島の後ろに視線を送ると、その物陰にはイルファが控えていた。 お互いアイコンタクトだけで意思の疎通を図る。 月島はイルファの存在を察知してないようなのだ。 いくら月島でも、生物ではないイルファの電波を察知は出来なかったのだろう。 そこが逆にチャンスかもしれない。 イルファならば、月島の電波の影響を受けないかもしれない。 オボロは知る由もないが、イルファの体は実に高性能だ。 外部からのノイズで中の命令が狂わないように、それなりの措置は施されているだろうし、 そもそも機械なのだ。人間や生物とは根本的に違う構造なので、月島の電波が通じない可能性もある。 オボロは考える。 自力で月島の呪縛から逃れるか、それともイルファに賭けるか。 ここが一つの分岐点となりそうだった。 A 月島の注意を逸らすために、挑発を仕掛ける B 後はイルファに全てを任せる C 自分の精神力で電波に抗う
A
「……貴様、ラルヴァ憑きか」 「ははは、だからどうしたというのさ。 この体に別の存在が入っていようが僕は僕さ、違うかい?」 オボロは月島の注意を引くために、敢えて言葉を交わした。 今の自分の体はまるで石のように動かない。 この状況では、イルファに託すしかないのだ。 「よく言う。ラルヴァ如きに打ち負かされるような弱輩者が偉そうな口を叩くな」 「……なんだと? 生意気だよ、君は。偉そうなのはどっちなんだい。 君の事はよく知っている。妹をその手にかけた外道……ってね」 「…………ッ!」 「気分はどうだった? ガディム様を滅するために自分の愛する妹に刃を突き立てた気分は! それも所詮無駄死にに終わるのが、泣かせる喜劇じゃないか!」 「キサマァッ……!」 「おやおや、声が荒いね。幾らでも吼えるがいいさ。所詮今の君は檻に捕らわれた猛獣。 力でも、妹を愛する心でも僕に勝てるわけがない。 ああ瑠璃子、僕はお前を愛してるんだ。僕の言うとおりにするのが一番なのに、なのに何でお前は……」 まるで陶酔するかのように、月島がうわ言のような言葉を呟き続ける。 その時オボロはなんとなく直感した。 コイツは俺のもう一つの可能性の姿である、と。 妹を溺愛するあまり、その弱さに付込まれラルヴァに心を乗っ取られたのだろう。 まるでかつての……兄と慕う男に出会う前の自分を見ているようでもあった。 (……もしも、俺が兄者と出会わなかったら、こいつのような末路を辿ったのだろうか) 「お喋りはここまでだ。君には壊れてもらうよ。 君のその言動、行動……何もかもが僕にとって不愉快だ!」 月島が声をあげて、電波を溜め始めた。 来る……オボロがそう感じて身構える。その時だ―――― A 背後からイルファが月島に奇襲を浴びせた B 突然月島が狼狽し、電波が解けた C 突如月島が別の方角に注意を向けた。誰か来る……!
A
意識が途切れかける直前、月島の背後から滲み出る様にイルファが現れた。 骨がきしむ音も、心臓の鼓動も血流も無い彼女の隠形は人では成し得ないほど完璧であった。 奴は彼女の存在に全く気付いていない。完璧な奇襲であった。 そのまま無言で彼の背後に駆け寄り、後頭部を凄まじい握力で掴むと、そのまま顔を廊下の柱に叩きつけた。 鼻っ柱と歯が砕ける音が豪快に響き、何が起こったのか理解する間もなく彼は廊下に崩れ落ちた。 事実、彼の顔は愉悦に顔を歪めたまま、前衛芸術の様に崩れたデッサンで豪快に鮮血で塗りたくられていた。 彼女の存在に彼は全く気付かなかったわけで無い。 彼の電波を操る技を持ってすれば、イルファや電子機器の存在を個々に探す事は容易だっただろう。 しかし、身の回りに電子機器が増え、電波探知の邪魔になるノイズが増えた現代において、 波長が違う人と電子機器の探知を同時に行なうことは難しい。 同じレーダーであっても用途によって機種や走査する波長が異なる様に、 人の探知に専念していた彼にとって、背後から感じていた電波はまさしくノイズであった。 「…殺したのか?」 月島が気絶して金縛りは解けた。 オボロはまだ続く頭痛を無視して、イルファに駆け寄る。 「死んでないと思います。 殺すつもりはなかったので」 彼女はそっけない感じで殺意を否定する。 しかし、この惨状を見る限り”確実に”意識を奪うつもりでやったのは間違いない。 死んだら事故くらいには割り切っているのだろうが。 「まぁ、これだけ派手に叩きのめせばラルヴァは確実に剥がれているだろう」 マトモに相手をすればやっかいな相手であったが、早急に無力化できたのはありがたかった。 「一気に術者の元まで強襲したかったが、恐らく感づかれてるだろう。 時間が惜しい、行くぞ」 先んじて学校に侵入した七瀬たちに引き付けられ、現在の校舎内に人影はほとんど無い。 彼らは一路、生徒会室の術者の元へ急いだ。
「あの──珊瑚様は、大丈夫なのでしょうか?」 散在する傀儡を鎧袖一触で蹴散らし先へ進む中、イルファはオボロに不安げに話しかけた。 生気の無い傀儡たちや月島の様な危険な人物が存在する今の学校において、 身の安全を保証された者はいない。 この状況を目の当たりにして、彼女が主の安否を気にするのは無理もない。 「奴にとってそいつが不利益な存在だと気付いているなら、とっくに殺してる筈さ。 喋りたがりの月島が何も言及しなかった辺り、まだ捕まって無いか、そこらの傀儡と同じ扱いだろう」 最高水準の危険領域ではあるが、その中では一番マシ。 その程度の気休めだがイルファは少しだが不安を和らげた。 目的地の生徒会室まで後、僅か。その時── A 由真が襲い掛かってきた B みさきが襲い掛かってきた C 術を中断して術者が現れた※(術者を人物指定)
C 術者は後の人に譲る
みちる 出番×だったから、あえてを出してみようと思うんだ
目的の場所、生徒会室の扉がガラリと開いた。 「わっ、オボロが来たのだ!」 「キサマは……!?」 現れたのは、この場に似つかわしくないとも思える、小さな少女。 髪は二つに縛ってはいるが、かなりの長髪。 その少女の姿にイルファは拍子抜けし、オボロは逆に驚愕の表情を見せた。 「……オボロ様、お知り合いですか?」 「裏葉たちの世界で少しな……。なるほど、みちるなら裏葉の結界に干渉できてもおかしくはない」 オボロはみちるを睨みつけ、刀を構える。 そこには躊躇も戸惑いも一切ない。 そしてイルファは、拍子抜けする反面、戸惑ってもいた。 視覚情報は間違いなく、みちるを小さな女の子と認識している。 だが、目の前の少女は明らかにおかしい。 どこか地に足が着いていないような、そんな印象を受ける。 「イルファ、油断するな。ヤツは……人間じゃない」 「……そう、申されますと?」 「裏葉の世界の神、翼人の力で作り出された思念体のようなものだ。 思念体といっても、実体はあるし、術を行使することも可能だ。 コイツの場合おそらくは、ガディムが真似て作り出した紛い物だろうがな」 「大正解なのだ!」 まるで無邪気にみちるは答える。 所詮は偽物か……みちるの何処か浮いている挙動に、オボロはなんとなくそう思った。 ……だが、油断はしない。奇襲には失敗だが、作戦自体が失敗したわけではない。 三人は既に一触即発の状況に入っていた。最初に動いたのは――― A オボロだった B イルファだった C みちるだった D 傀儡となっている生徒達だった
まずはD
その時だった。 三人の間を割って入るかのように、別の生徒が雪崩れ込む。 「傀儡どもっ……!?」 「にゃはは、どうする? いくらオボロでもタゼイにブゼイだぞーっ!」 みちるの指摘は事実その通りだった。 いくら紛い物とはいえ、みちるは手加減できるような相手じゃない。 それに加えて、雑魚とはいえ力のリミッターが外れた生徒達が向かってくるのだ。 いかにオボロが達人級の技量を持っているとはいえ、状況が悪すぎる。 「……イルファ、援護しろ。俺に連中を近づけさせるな」 「分かりました」 オボロが前面のみちるに剣を構え、 背中合わせにイルファが後方の生徒達に拳を構える。 「勝てる見込みはあると思うか?」 「……分かりません。 ですが、私個人は多対一の戦闘は経験もなければ得意でもないということを予めお断りしておきます」 厳しい。 二人ではあまりにも厳しい。 オボロもイルファも、正直に言って生きた心地がしていなかった。 敵がイルファの数メートル前まで迫る。 イルファはジッと傀儡の生徒達を睨みつけ、迎撃の姿勢を取った。 だが、その時だった。 傀儡の生徒は、イルファたちを目前にして、びくんと震え……床に倒れる。 「にょわっ!?」 みちるが驚きの声をあげるが、傀儡の生徒達はまた一人、 また一人と……まるで電池の切れたオモチャのように動かなくなっていった。
一方その頃―――― 「……裏葉さん、あれ!」 「あれは……!!」 オボロたちと合流すべく、ひとまず生徒会室を目指していた七瀬と裏葉であったが、 廊下に人が倒れているのに気付いて、足を止めた。 それは先ほどオボロたちと戦っていた月島なのだが、二人には知る由もない。 「……酷い怪我ね」 「ご油断なさらぬように。傀儡を操る不穏な気は、この者から感じられます」 七瀬はその言葉に唾をのみつつ、慎重に月島の様子を観察した。 完全に気は失っている。 廊下の柱に顔を思い切り叩きつけられたのだろう、顔はヒドイことになっていた。 おそらく命に別状はないとは思うが、このまま放っておいて無事とも思えない。 「オボロさんかイルファさんか知らないけれど……やりすぎじゃないかしら」 「おそらく、加減をする余裕もなかったのでございましょう」 「この人って……ラルヴァに憑かれてたのかな」 「十中八九は。これほどの衝撃を与えれば、ラルヴァも離れましょうが。 ですがこの者も弱っています。傀儡を操る気も、弱まっていくのを感じます」 裏葉が淡々と説明する。 七瀬は心中穏やかではなかった。 ラルヴァにとり憑かれていたのなら、この人も被害者なのではないか。 悪いのはラルヴァであって、この人ではないのに、この人を見捨てていいのか……と。 A 今は先を急ぐべきだ B 月島をこのまま放ってはおけない C その時月島が意識を取り戻した
ぬぅ、悩む……スルーで;
A
「……七瀬様、先を急ぎましょう。ここで時間を取られるわけには参りませぬ」 「で、でも……」 七瀬が遠慮がちに月島を覗き見た。 顔の傷が少々痛々しい。このまま放っておくのは、人として間違っている気もする。 「……その者のことなら、心配は要りませぬ」 裏葉は右手ですっと月島の顔を撫でた。 それから七瀬に向き直り、先を促す。 裏葉が先を歩き出したので、七瀬も月島のことは置いておいて、慌てて後に続いた。 「何をしたの?」 「方術・生の癒しにございます。意識を取り戻す頃には、傷も癒えてましょう」 「便利ね……方術って」 「そうでもありませんよ。この力も……ガディムには何処まで通じるかどうか。 それに利便性ならば、科学のほうがよほど優れております」 「そうかしら……」 言われてみれば、使える人が限られる方術よりも、 より沢山の人が使える科学技術の機械の方が便利と言えば便利かもしれない。 その分、方術の方が強力にも見えるが。 とにかく、今はオボロたちと合流することが先決だろう。 ガディムに憑かれたみさきや、ラルヴァに憑かれた人間に出くわさなければいいのだが。 A 生徒会室の前で、みちると睨みあっているオボロ達を発見した B 川名さんが行く手を阻んできた C その時、特別教室から物音がしたのに気付いた
c
「……七瀬様」 「どうしたの、裏葉さん」 「その部屋より……物音が聞こえました」 「ここって……」 裏葉が立ち止まり、一つの教室を指差した。 そこにあったのは……コンピュータ室。言わずと知れた、珊瑚の部屋のような場所だ。 ここで物音がしたというのだ、何か作為めいたものを感じて仕方なかった。 「七瀬様、こんぴゅーた室というのは……?」 「パソコンが置いてある部屋よ」 「ぱそこん……?」 流石に裏葉ではパソコンを理解するのは酷というものだろう。 このとき七瀬は世界の違いというのを思い知らされた気がした。 「とにかく、ここで物音がしたのね?」 「はい。私の気のせいかもしれませぬが……」 「臭うわね。ここは珊瑚ちゃんがよく使ってる場所らしいし、 もしかしたら彼女と何か関係があるかもしれない。だけど……罠かもしれない」 A 入って調べてみる B どうも嫌な予感がする…… C その時、扉がガラリと開いた
A
私は中に入って調べてみる事にした。 オボロさんたちとの合流が優先だが、万が一ガディムの手の者だったとしたら背後を突かれる。 ガディムだったらバンダナが遠くからでも反応するが、眷属かラルヴァ憑きならば近づいて確認せざるをえない。 現在、バンダナの反応は無い。つまり、危険ではあるがババを引く可能性は皆無だ。 諸々のリスクを勘定して、私は部屋の探索をする事にした。 こう言う怪しい場合は軍隊の特殊部隊とかだったら問答無用で鉛弾や手榴弾をぶち込むらしい。 もっとも、人探しが目的でもある私にそんな真似は出来ないけど。 扉を開けようとしたが案の定、鍵が掛かってる。 だが、学校全体の電気は生きているので、電子ロックは生きているはずだ。 「ドアは…電子ロックが掛かってる。 学生証で開くはずだけど…」 私は財布から学生証を取り出し、扉の傍のカードリーダーに通す。 中から敵が出てこないか警戒し、裏葉さんが身構える。 微かな電子音と共に施錠が解除され、扉が開く。 「札一枚が鍵の代わりになるとは…これが科学ですか」 現代に割と順応してる裏葉さんもびっくりしているようだ。 これでパソコンに触らせたら引っくり返るんじゃないだろうか。 慎重に中に入ると、人はおらずパソコンの温度管理の為の単調な空調の音が響いているだけだった。 「人が隠れてそうな場所は…あの辺りかな?」 辺りを見回すと人が隠れれそうな場所がいくつかあった。 掃除道具入れ、教師用の大きな机、それと奥の準備室。 「さて、どこを探しましょうか?」 A 掃除道具入れ B 教師用の大きな机 C 準備室
C
「…奥を調べてみましょう」 「解りました」 あたしは奥の準備室に向かう事にした。 普通に考えればここが一番怪しいし、物音の原因が教卓や掃除用具入れに何かあるなら、 少なからずその周囲に、何らかの痕跡があると思ったからだ。 「…奥を調べてみましょう」 「解りました」 あたしは奥の準備室に向かう事にした。 普通に考えればここが一番怪しいし、物音の原因が教卓や掃除用具入れに何かあるなら、 少なからずその周囲に、何らかの痕跡があると思ったからだ。 とは言え、一応油断はできない。 準備室の扉に辿り着くまでは、常に周囲に気を配りながら移動する。 「…やはり、扉の向こうから、人の気配がします」 「そう…」 準備室の扉はこの部屋と違い、廊下と直結していない為、電子ロックはかかっていない、ただの引き戸だ。 扉の前まで着いたあたしは、右手に刀を構え、空いた左手で慎重に扉を開けた。 するとそこにいたのは── A:縛られて猿轡を噛まされた女生徒だった。 聞いていた特徴と一致する。彼女が姫百合珊瑚ちゃんだろう。 B:縛られて猿轡を噛まされた女生徒だった。 確か、折原の知り合いの…深山先輩? C:ぴくりとも動かず倒れている、傀儡らしき生徒達だった。 D:……こちらを見て不気味に微笑む生徒だった(AIR以外の生徒キャラ指定)。 ※選択肢は複数選択可。
うぉ、ミスったorz 脳内で頭の数行を削除してください…。
Aだけで
そこにいたのは、縛られて猿轡を噛まされた女生徒だった。 予め聞いていた特徴と瓜二つ、彼女が姫百合珊瑚ちゃんだろう。 ここで実は双子の妹とすりかわってたなんてオチはない……ハズだ。 見たところ、主だった外傷はない。どうやらひどい目には遭わされてないみたいだ。 まあガディムの目的を考えれば当然かもしれない。 世界を滅ぼす前に、女の子一人どうこうしたところで何の意味もないのだろうから。 見張りの生徒は近くに倒れたままだ、おそらくは傀儡の術が解けたからであろう。 オボロさん達が早めにあの人を倒してくれて、正直助かった。 いくら傀儡とはいえ、大勢の敵が校舎をウロウロしていたら、やりにくいことこの上ない。 「なんと酷い仕打ち……まだ年端も行かぬ少女にこのような……」 裏葉さんが嘆きながら、珊瑚ちゃんの縄を解く。 いや、年端も行かないといっても、あたしと一つしか違わないんだけど……まあいいか。 するするという衣擦れの音がし、まず珊瑚ちゃんの猿轡が解かれる。 「あなた、珊瑚ちゃんよね? 安心して、あたし達はあなたを助けに来たのよ」 あたしが言葉をかけても、まだ珊瑚ちゃんは呆然としていた。 まだよく事態を飲み込めていないようだ。だが、直に…… A 宇宙的挨拶をしながら大きく万歳をした B 突然あたしに抱きついてきた。なっ、何よ……!? C バンダナから嫌な共鳴音がした。……まさか!?
A
「……るー!」 「えっ?」 突然珊瑚ちゃんは謎の奇声を上げ、両手を大きく挙げて万歳の体勢をとった。 これには流石にあたしも裏葉さんも面食らってしまう。 一種の儀式なのだろうか。何だかよく分からないけど、表情から喜んでることは分かる。 「おおきになー。ウチ、ずっとこのままかもしれへん思うてたわー」 「い、いえ、それほどでも……」 不思議なテンションの子だと思った。 次には何事もなかったかのように、関西弁だけれど普通に対応してくるから、 こちらとしてもどう返事していいのか非常に悩む。 「ほな、帰ろっかー。昨日からこのままやから、 きっと瑠璃ちゃんもいっちゃんも貴明も心配してるで」 「ちょ、ちょっと待ってよ! 今外は危ないのよ!!」 「危ない? どうしてや?」 「それは、ちょっと説明すると長くなると言うか、なんというか……」 なんなんだろうこの子。恐ろしいぐらいにマイペース。 こっちの話は聞いてくれるんだけれど、なんというか、その……。 気付いたら、あっちのペースにどんどん引きずり込まれているというのだろうか。 とにかく、あたしがまず珊瑚ちゃんに言いたいことは…… A お互いの自己紹介 B 今の珊瑚ちゃんの状況について C イルファさんが探しにきてるということ D ぶっちゃけ「るー」って何?
まずはA
「ええと、まず自己紹介するわね。あたしは七瀬留美、それでこっちが……」 「裏葉にございます」 とりあえず、相手のペースに呑まれないよう、 まずはお互いの自己紹介から始めることにした。 このまま珊瑚ちゃんに合わせていたら、こっちが先に参ってしまう。 「ウチは姫百合珊瑚いうんよー」 珊瑚ちゃんは、この状況でものほほんとした態度を崩さない。 ……この子、間違いなく将来大物になると思うわ。 いえ、今の経歴考えればとっくに大物になってるんだろうけど。 「珊瑚ちゃんは、どうしてここで縛られてたの?」 「ウチもよくわからへんよ。昨日、ここでパソコンいじってたら、 急にぶわってなって、ゴンっていって、それから気がついたら縛られてて……」 まったくもって分からない説明だった。 辛うじて、昨日のうちに誰かに襲われたというのだけは分かる。 まあ、彼女を襲う相手なんてもう決まりきっているものだから、いちいち聞くまでもなかったことだが。 ただ疑問は、何で彼女を捕まえてたかである。 この様子から見て、珊瑚ちゃんにはラルヴァも憑くことが出来なかったと言うのは分かる。 闇の力を好むラルヴァだ、そういったものとは全く無縁そうな珊瑚ちゃんに憑けないのはなんとか納得できる。 だが……ならば何故わざわざ珊瑚ちゃんを捕まえた? 見張りだって面倒だろうから、殺したり傀儡にしたりと他にやりようがあったはずだ。 敢えてそれをしないとすれば…… A 相手も珊瑚ちゃんの力を必要としていた B ガディムには珊瑚ちゃんを殺すことの出来ない理由がある C 人質として、珊瑚ちゃんに関係のある人物を学校におびき出すのが目的? D 実はさっきの月島がロリコンで個人的趣味として珊瑚ちゃんを監禁したに過ぎなかった
B
ガディムには何か、珊瑚ちゃんを殺すことの出来ない理由があるんじゃないだろうか。 その理由が何かはあたしが知るわけはない。だけど、そう考えるのが自然な気がした。 いや、そう考えないと、珊瑚ちゃんがこうやって人質のように扱われていることの説明がつかない。 とにかく今の状況で、この件については結論を出せる状態ではないだろう。 「そんで、外はどないなっとるん? 危ないのはなんでや?」 「ああ、それは……」 あたし達の説明を珊瑚ちゃんは黙って聞いていてくれた。 理系の子みたいだから、そういった非科学的な事件について拒絶反応を起こすかとも思ったけど、 どうやら柔軟な頭の持ち主らしく、すんなりと状況を正しく理解してくれる。 「……というわけでございます。 つまり珊瑚様の世界は、ガディムと言う妖に侵略されているのです」 「ガディム……」 「理不尽なのは百も承知よ。 だけどあたし達に残された道は二つ。あいつと戦うか、この世界と心中するか」 自分でも言ってて無茶苦茶だとは思った。 今まで普通に生きてきた女の子が、突然そんなこと言われたって困るだろう。 だけど珊瑚ちゃんの科学力は必要なのだ。 打算的な物言いになってしまうけれど、助けたのはそれが理由の一つでもある。 「なんや、ゲームみたいでワクワクしてきたわー」 「げ、ゲーム?」 「せや。ガディム言うのは悪の魔王で、留美ちゃんらは魔王と戦う勇者みたいなもんやろ?」 い、言ってしまえばそうかもしれない。 天才のというのは、やはり考え方がどこかズレてるのだろうか。 まさか、本当に世界の危機なのに、ゲーム感覚で物事を捉えられるとは思いもしなかった。 「そういうわけで、あたし達に協力して欲しいんだけど……」 珊瑚ちゃんの様子は…… A 「ウチも協力するで」と、大乗り気のようだった B 「ウチの作った道具、ぎょうさん持ってってやー」どうやら、一緒についていくまではしないみたい C 「頼ってくれたのに悪いんやけど、今のウチじゃ力になれそうにないわ……」とショボンとしていた
A
「ウチも協力するで」 笑顔でそう答えた珊瑚ちゃんは大乗り気のようだった。 ありがたいが、危険なことには変わりない。 事実、珊瑚ちゃんはこの部屋に監禁されていたのだ。 「確かに助かるけど、現実はゲームとは違うのよ?」 「でも、留美ちゃんたちは戦うんやろ? 誰かがやらな、あかんねん。 乗りかかった舟や、ウチも知らん顔はできへんよ」 どうやら、のほほんとしてるいるようで決意は固いようだ。 今度は裏葉さんが珊瑚ちゃんに質問した。 「ところで、珊瑚様は科学と魔法に関する研究の お手伝いをされていたと、お聞きしましたが?」 これには、あたしも興味がある。 あたし達が珊瑚ちゃんを探してたのもこのためだし、 ガディムが珊瑚ちゃんに危害を加えられなかったのも、 もしかしたら、このためかもしれない。 「長瀬のおっちゃんが研究しとった『アレ』の事やな。 そういえば、アレの試作品を学校に持ってきとったな」 「それで、その『アレ』って一体何なの?」 A 伝説の聖剣「フィルスソード」のレプリカや B 霊体を固定できる「キルリアン振動機」や C ガストラ帝国の魔導兵器「まどうアーマー」や
C
「これや、これ!」 珊瑚ちゃんは得意げに、準備室の片隅にあった妙なモノを指差した。 一応二本足がついていて、乗り物のようには見える。 だけどどう使うのか全く分からない、正に妙なモノとしか形容のしようがない代物だった。 「これ、何……?」 「おっちゃんとゲームしてて思いついたまどうアーマーや。 魔導の力使うて、長時間活動できるようにしとる画期的な代物やで。 来栖川には魔法関係で協力してくれる人がおるさかい、実現できたわけや」 ま、まどうアーマー……。 そういえば昔そんなモノが出てくるゲームをやったことがあったような。 どうやら、マッドサイエンティストというのは、つくづく妙なものを開発するのが好きらしい。 「あのゲームはええでー。 今度は乗り物も作ったろ思てるんや、きっと便利や」 あのゲームの飛空艇って壊れてばかりでどちらかといえば不吉じゃない。 まあそれはそれとして置いといて、とにかくまどうアーマーの性能が気になる。 「これって使えるの?」 「使えへんかったら意味ないやん。もちろん、ちゃんと使えるで。 デジョネーターとかは使えへんけど、まどうレーザーは搭載しとる。 せやけど、試作段階やから大した動きは出来へんのが問題やなー。 操作性も悪いし、最高速も30キロがええとこやで。しかもこれ一台きりや」 悪くはないけど、微妙ね……。 使おうと思えば使えるのだろうけど、ガディム相手に通じるかは不安が残る。 これは武器というより、どちらかといえば乗り物として使ったほうがいいみたいだし。 それに開けた場所でないと、この機械は使い勝手が悪いであろう。 教室や廊下といった、狭い場所では不利になる可能性もある。 A ……まあ、ないよりはマシだろう B 搭載武器だけをひっぺがして持ってったほうが小回りが利くかな C 人を傷つけずに、直接ガディムを攻撃出来るような武器がないか聞いてみる
基本乗り物で武器は個々人が持つのがいいんじゃないかと思いつつb
とりあえずはAで
確かにまどうアーマーは使いようによっては便利かもしれない。 だけどよく考えて欲しい。 これからの戦いは室内戦が主なのだ、小回りの効く武器の方が便利である。 それに、このまどうアーマーは横幅がありすぎる。 廊下で敵と鉢合わせした時に、満足には動けないだろう。 大体このアーマーが階段を上り下りできるかも怪しい。 そう考えれば、流石にこのアーマーを使うのは憚られた。 「珊瑚ちゃん。まどうアーマーの武器だけひっぺがせないかしら?」 「えぇー? なんでや、なんでアーマーに乗ってかへんの?」 「目立ちすぎるのよ。これじゃいい的だわ」 あたしはなるべくソフトに言った。 変にヘソを曲げられても困るし、流石に本音は言えない。 珊瑚ちゃんは渋々といった感じで頷き、ドライバーでまどうアーマーの分解を始める。 その流れるようなテキパキとした作業に、思わず感心してしまう。 見た感じはこうでも、やはり機械系に強い天才少女なんだなあ、と。 「……これでええん?」 程なくして、珊瑚ちゃんが光線銃っぽいのを見せる。 エネルギーが入ってると思われる箱は人が背負えるように出来ているみたいだし、 これなら人が持ち運び出来そうなので、文句はない。 「ここでファイアビーム、ブリザービーム、サンダービームの切り替え。 こっちでまどうレーザーを撃つんや。ヒールフォースは研究中さかい、実装はまだしてへん」 拘ってるわね。技名までアレと同じにしなくてもいいのに。 異世界出身の裏葉さんなど、話についてけなくてポカンとしたままだ。 いや、こっちの世界出身のあたしだって、このノリはちょっとついてけない。 それで……これは誰が持つべきなのかしら? A あたしが持った方がいいかな B これは珊瑚ちゃんに任せるべきね C 原作では使い手の魔力に比例する武器だったし裏葉さんで
B 戦闘力からすると珊瑚が順当かな
これの機能の熟知具合から見て珊瑚ちゃんに任せるべきね。 私は銃の扱いなんてやった事ないし、裏葉さんは方術があるから不要でしょう。 そして何より全くの自衛手段を持たない戦力外を抱えて戦うのはきつい。 威力がゲーム準拠なら自衛の域を超えてるけど。 「ところでそれってどれくらいの威力があるの?」 流石に死体の山を築いたり、辺りの物を破壊するのは憚れる。 過剰な威力ならガディム本人か眷属とかヤバイのが来るまで後ろで控えてもらおう。 「んー、ジェネレーター直結なら壁に風穴開けるくらいはいけるんやけどなぁ。 バッテリーで人が撃てるくらいまで出力絞るとライフルくらいが関の山やな。 もちろん、手加減してブリザービームで凍らせたり、サンダービームで気絶して貰うのもアリやで。 最近は色々とうるさいでなぁ。 兵器にも”じんどーてきはいりょ”っちゅーもんがあった方が市場があるんや」 「はぁ、それは便利そうで」 頼みもしないのに光線銃の説明を続ける珊瑚ちゃん。 裏葉さんは最早、理解不能な言語に適当に相槌を打つだけだ。 工学系ヲタは他人が理解出来なかろうがスペック説明に走るって言うけどその通りみたいね。 しかも、この超兵器ぶり。米の国の人が目を付けたら攫われるわよ。 とは言えこの調子なら対ガディム用の兵器も期待できそうね。 「時間食っちゃったし、そろそろオボロさんたちと合流しないと」 準備が整った所で、私は先を急ぐように皆を促がす。 珊瑚ちゃんの救出やまどうアーマーの分解で大分、時間を食ってしまってる。 術者の能力次第ではどうなってるか分からないし、何よりガディム本体がやってきたら危険だ。 さっさと術者を倒しておさらばするのが妥当だろう。 私たちは生徒会室へと急いだ。 A バンダナに反応が。しかもこれは…ガディム? B その頃のオボロたちは? C その頃、お留守番の透子は?
C
「みんな……大丈夫かなぁ……」 はぁ。 今日何度目になるかも分からない、重い溜息をついてしまいます。 え、えっと。お久しぶりです。 栗原透子です。 七瀬さんや裏葉さん達を見送った後、あたしは家でお留守番をしている。 七瀬さん達はとても心配だったし、ついて行きたくもあったんだけど…… 私ではどうしても、みんなの足手まといになっちゃう。 何もしないのは嫌だけど、足を引っ張るのはもっと嫌。 だから大人しくお留守番。 だけど――だけど――。 「怪我とかしてなきゃいいんだけどなぁ……」 やっぱり心配で心配で仕方がないよ。 だって七瀬さん達が戦おうとしてる相手って、よく分からないけどとっても強くて怖いバケモノなんだよね。 オボロさんも裏葉さんもきっと強いと思うけど…… 「七瀬さん達だけで本当に大丈夫かなぁ」 私も、なにか自分に出来ることとかを探すべきなのかもしれないけど…… A やっぱり心配だし、学校の近くまで様子を見に行く B そうだ、みんなが帰ってきたときのために夕ご飯を作っておこう C 「ピンポーン」その時、玄関のチャイムが鳴った。誰だろう?
C
「ピンポーン」 色々と考え込んでいると、不意に玄関からチャイムの音がした。 こんな時に誰だろう? もしかして裏葉さん達がもう悪いバケモノを倒して帰ってきたとか! ……でも、それなら携帯電話とかで連絡が先にありそうだよね。 じゃああのチャイムは裏葉さん達とは考えにくい。 だったら……一体誰なんだろう。 全然自慢にはならないけど、私はお友達が少ない。 私の家に来てくれる友達なんて、幼馴染みのしーちゃんぐらいだ。 でもそのしーちゃんも、多分まだ学校に居るはず……・ 「ピンポーン、ピンポーン」 そんな事を考えている間にも、チャイムは鳴り続ける。 いつもなら特に何も考えずに返事をして玄関に出ちゃう。 で、でも。今はそういうのってとっても不用心な気がするよ―― 「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」 チャイムは未だに、規則的な感覚で鳴り続けている。 あうう、どうしよう、どうしたらいいの? A なんか危険そうだし、居留守を使う B そこまで心配になることもないかな、出てみよう C 用心にこしたことはない、インターホンで相手が誰か確かめる
C
どうしよう。いきなり玄関に出るのって怖いよ。 あ、そうだ。 ふと思い出した私は、リビングに置いてあるインターホン用の受話器を取った。 機械って苦手だからいつもは使わないけど、今日は別だよ。 それに苦手は苦手だけど、最近は携帯電話とか持ち出したからちょっとは馴れてるつもり。 「は、はい。栗原ですけど、どちら様でしょうか?」 私はそんなことを考えながら、少しどもりながらだけど声を掛けてみた。 一体誰なんだろう、こんな時に。 ちょっとの間をおいて、チャイムを鳴らしていた人が返事をしてきた。 その声は―― A 「透子様ですか。私です、裏葉です」あれ? 裏葉さんの声だ? B 「こんにちは、栗原さん」え……この声って川名さん……? C 「こんにちはー、宅配便でーす!」なんだ、宅配便の人だったよ。 D その他人物を指定してください
D フィール
フィールって誰?
THRに出てくるロボ …もしかして名前間違ってる?
もうちょっとみんな知ってる名前出せよ とは思った、人物指定でマイナーキャラ出してくるアホがこれまで何度停滞の原因になったことか
申し訳ないことをした、なんかLeafの過去作にも出てると聞いてたから
てっきりみんなの方が俺以上に知ってるもんだと…orz
こういう時に選択を募ってリコールすべきなのか…というわけで、もし不当なら無視で構いません。
A
>>523 の選択からやり直す
B
>>524 の人物指定からやり直す
C このまま続行
D もっといい方法がある(処理を指定)
C とりあえずやってみるよ。
「……こんにちは、HMX-11・フィールと申します。お話があって参りました」 インターホンから聞こえたのは、女性の声だった。 HMX……ってことはメイドロボ、かな? 「あ、あの、お話って一体どういう…」 「はい、この世界に大きな危害を与える存在……あなたたちが『ガディム』と呼ぶ存在についてです」 ……! この人、ガディムのこと知ってるの!? 「とても重要なお話なんです、状況が状況だけに警戒している気持ちも分かりますが、 せめて、インターホンごしでも構いませんのでお話だけでも聞いていただけませんでしょうか」 何だか押し売りのセールスレディみたいなことを言っているけど、もしこの人の言う事が本当なら…… 「お気遣いなら心配いりません。メイドロボは長時間の立ち話にも問題なく対応できますので」 いや……それはそうかも知れないけど、話を聞く側としてはとても悪い気がするし、 何よりも世界の危機とか得体の知れないバケモノの話を外で話してるのを、もし近所の人に聴かれたら 変に思われるんじゃ…かといって家に上げるのも怖いし、どうしたらいいんだろう…… A 立ち話もなんだからとりあえずドアを空けて家にあげる B やっぱり怖いのでそのまま扉の前で
A
「あの……どうぞ、上がってください」 恐る恐る入り口のドアを開ける……。 本当はすごく怖いけど、でもこのまま外でって訳にもいかないと思ったから。 ドアを開けた先には、私とそれほど年齢が違わなそうな、ごく普通の女性が立っている。 ただひとつ普通と違うのは、メイドロボ特有の耳カバーをつけているところだった。 といっても、この前のイルファさんとはまた一風変わった雰囲気だった。 何かに操られているとか、悪い人には見えなかったので、ちょっとだけ安心した。 私はフィールさんをリビングに迎え、そこで話の続きを聞く事にした。 「……改めて自己紹介を、私は来栖川エレクトロニクスのメイドロボ、HMX-11・フィールと申します。」 「あっ、えっと……栗原透子と言います。改めてよろしく…」 まずはお互い、改めて挨拶をする。 「他の方々は現在留守のようですね……本来なら裏葉様やオボロ様とも直接お伺いしたいと思っていたのですが……」 どうやら、オボロさん達の事も知っているようだった。
「それで、話というのは?」 「はい。まず、数年前に来栖川グループ内部で、ある予測結果が出たところまで話が遡ります……その予測と いうのが『近い将来、85%以上の確率で地球上に根源的破滅招来体が発生する』というものだったんです」 「根源的破滅…えっと、何ですかそれは?」 「平たく言うと『問答無用で世界を滅ぼそうとする存在』のことです。そしてその招来体こそが、 あなたたちが戦っているガディムという存在に、ほぼ間違いないありません。根源的破滅招来体が出現 した時、それに対抗しようとする方々の力になるというのが私の役目です。といっても、こうして情報を 伝えるくらいしかできませんが……」 信じられない、ガディムみたいな現実離れしたものが現れる事を前から予測していた人がいたなんて…… 「その予測を発表した研究員は、招来体の存在に何らかの方法で気づき、その性質や能力などについても ある程度把握することに成功し、この発表をするに至ったそうです。内容が内容だけに、話を聞いた方々の 声は半信半疑がほとんどで、その時点では有効な対処法も特になかったため、その場で具体的な対策を とるまでには至りませんでした。」 「それで……結局どうすることもできなかったんですか?」 「いいえ、その研究員は、対根源的破滅招来体プロジェクトを立ち上げたいと何度も上層部に掛け合いました。 しかし、本当に来るかどうか、防げるかどうかも曖昧な存在に対する投資は、当然反対も多いため本来なら まず承諾されることはありません。そこで、利潤の追求を兼ね、『家庭用製品の開発の名目で対招来体用 兵器を研究する』という内容にすることで、双方が納得してプロジェクトを発足することができました。 そしてその家庭用製品というのが、私たちメイドロボなんです。」
「そうなんですか……って、ちょ、ちょっと待ってください!? ガディムと戦うのとメイドロボと一体 どんな関係が?」 いきなり話がよくわからなくなってきた。もっと詳しく聞いてみないと。 「兵器といっても、ミサイルや爆弾などとは全く違うものです。物理的な攻撃で倒せないことは当時から 分かってましたから。従来とは異なるアプローチでの攻略手段が、メイドロボの運用を通して現在まで 研究されている最中なんです。その手段というのは……」 A 人間の心を模したD・I・Aのシステムにわざととり憑かせる封印作戦 B メイドロボ達が協力して固有結界を発生させ無力化させる『メイド・イン・ヘブン』 C メイドの気高きご奉仕魂を人々に思い出させ、他者に精神を乗っ取られない心の強さを奮い起こさせる防衛策
B
『メイド・イン・ヘブン』…… フィールさんの口から語られたその聞きなれない単語、私には意味が全然分からなかった。 「あの、『メイド・イン・ヘブン』って……?」 「メイドたちが力をあわせて発動させる事ができるといわれている固有結界です。古来より、メイドには 不可思議な魅力があるといわれ、何か呪詛的なものが作用しているのではないかと考える学者が各界から 注目しているそうです。今から約25年前、ある機関の研究員が発表した論文によると、ある条件下で 現実世界とは隔離された特殊な空間が一時的に発生し、その中では自然界のあらゆる法則が無効化される とのことです。その現象を固有結界と呼び、さらにその発動には、メイドの存在が大きく関係している そうです。固有結界の中でもメイドをキーとして発動するものは『メイド・イン・ヘブン』と 名づけられました」 そもそもどうしてメイドにそんな力が……という私の疑問をよそに、フィールさんはさらに話を続ける。 「先に話した来栖川の研究員はその論文に目をつけ、固有結界を人工的に発生させる方法で根源的破滅招来体 ……つまりガディムに対処しようと考えました。うまくいけば、結界内でガディムを無力化できるかも 知れない、ただ、現在仕事に従事しているメイドの方々を呼んで協力してもらうという方法は人事的な 観点で無理があります。そこで、彼は私たちメイドロボの開発プロジェクトを立ち上げ、すぐに召集できる メイドを社内で確保出来るようにすることを目指しました」 「メイドロボの開発にそんな裏話があったんですか……」 「ただ、そんな結界が本当に発生するのか分かりませんし、もし発生しても、それがガディムに有効な手段か どうかもまだわかりません。それに、この固有結界の発生に重要な要素は『主に尽くす奉仕の精神』と いわれているのですが、残念ながら現在出回っているメイドロボの量産型には自我の概念が乏しいため、 充分な精神を持つメイドロボがほとんど確保できない状況です。こんな状況なので、メイドロボを利用した 固有結界発生実験はまだ一度も成功しておらず、現在も様々なアプローチで、適性のあるメイドロボの 試験開発が行われています」 先行き不安な言葉に、私も何だか不安になってきた。
「あれ?でもイルファさんというメイドロボに会ったんですけど、あの人は普通の人間のメイドさんと 変わらないような……」 「イルファさんをご存知なのですか?彼女とその姉妹機は最新式の試作機で、DIAという独自のシステムを 搭載しているんです……恐らく彼女は、『メイド・イン・ヘブン』の実現において、もっとも重要な鍵の 一人となるでしょう」 イルファさんが!? そんな重要な人物だったなんて知らなかった。 「お願いします。あなた方もイルファさんに協力してもらうよう呼びかけてもらえませんでしょうか? 来栖川のメイドロボなら、快く了承してくれるはずです。彼女だけでなく、他のメイドロボ、もしくは 人間のメイドさんにも……ガディムが現れてしまった以上、今は少しでも多くのメイドが必要なんです。 来栖川エレクトロニクスとしても、まだ試験段階ですが一刻も早く固有結界の準備を始めています。 その時までに、出来るだけ万全な体制で望めるようにしたいんです」 「わ、わかりました、みんなにもすぐに伝えます」 A 「では、私は結界の準備がありますので」フィールさんはひとまず帰っていきました B 他の人の視点で(指定)
b で七瀬
結論:やっぱりまだ表に戻るのは無理だった
期待しつつ保守
保守
みんな久しぶり。七瀬よ、留美をやっているわ。 とりあえず現状を説明するわね。 どうしてって? なんとなく一ヶ月以上私達って動いていない気がするからよ。 私は裏葉さんと一緒に、コンピューター室に閉じこめられていた姫百合珊瑚ちゃんを助け出したわ。 その後、部屋の隅にあった珊瑚ちゃん特製の「まどうアーマー」の説明を受けた。 そのまま乗ってもよかったけど、学校の廊下や教室では小回りが効かなさそう。 だから、搭載武器だけひっペ返して珊瑚ちゃんに持たせたのよ。 まどうアーマーの分解に随分時間を食っちゃったわ。 オボロさん達が術者を上手く倒しているか気になるし、ガディム本体が襲ってきたら危険だ。 そんなわけで術者がいると思われる生徒会室へ向かったんだけど―― A 生徒会室の前でオボロさん達と赤紫色でツインテールの小さな女の子(みちる)が対峙していた B 生徒会室に向かう途中、金髪のヘタレっぽい男子生徒(春原陽平)が襲いかかってきた C 生徒会室に向かう途中、青髪ショートでメガネをかけた女子生徒(十波由真)が襲いかかってきた D 本当に大変アレな話なんだけど、色々とあって私達全員で『メイド・イン・ヘブン』で昇天するガディムを見送っていた
Dでいいや
「グ、グググウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!」 六体のメイドロボが描く魔法陣。その中心で川名先輩に取り憑いていたガディムが、彼女の肉体から引き剥がされる。 そしてそのまま断末魔の悲鳴と共に、最悪の破壊神は細かい光の粒子となって消滅しようとしていた。 「綺麗ね」 「神々しく御座います」 「ふ、ふえ〜。『メイド・イン・ヘブン』って凄いんですね」 「…………そうだな」 私と裏葉さんとオボロさん。それに心配になって学校に来てしまった栗原さん。 私達四人は学校の運動場で並んで体育座りをしながら見送っていた。 来栖川エレクトロニクスの研究成果『メイド・イン・ヘブン』で昇天しつつあるガディムを。 珊瑚ちゃんを救出した私達は、オボロさん達と合流するために生徒会室へ向かった。 だけど私達が着いた時、既にオボロさん達は結界破りの術者(なんか赤紫髪ツインテールの幼女だった)を倒していた。 なんか大量の学園生徒を操っていたラルヴァ憑き(どうも生徒会長らしい)をイルファさんがやっつけたのが効いたらしい。 とりあえずガディム側の圧倒的だった数の有利もなくなり、私達の反撃が開始された。 勿論、あのゾンビっぽい生徒の群れがいなくなっても、他の何人かのラルヴァ憑き達が襲い掛かってくる。 ラルヴァの魔力が上乗せされ、人間としてのリミッターを解除したラルヴァ憑き達は強かったわ。 でも、合流した私達を止められるほどでは無かった。 向かってくる相手を一人、また一人と皆で力を合わせて倒していく。 『やっちゃってくれるね。甘く見ていたつもりはないんだけど』 どうにかあらかた片付けたところで……川名先輩、つまりガディムが直々にお出ましになった。 数の上では逆転していた分、狭い校舎の中はかえってこちらが不利。 そう考えて私達はガディムを運動場に誘い出して、最終決戦に持ち込んだわ。
持ち込んだのはいいけど……ガディムは強い、強すぎだったわ。 RPGで例えたら「これイベントボスじゃね?」って思って戦闘放棄したくなるくらい。 だって“あそびにん”なわけ勿論ないんだから、ガチでイオ○ズンっぽい爆裂魔法とかバンバン使ってくるし。 「余の手刀こそ世界最強の剣だ」と言わんばかりに素手でオボロさんと斬り合いするんだもの。 もうむちゃくちゃ強かった、いやアレはむちゃくちゃどころじゃなくて、くちゃくちゃ強かったわ。 ハッキリ言って私なんて全然役に立てなかった、もう珊瑚ちゃんと一緒に逃げ回るので精一杯。 それでも裏葉さんが術法でガディムの攻撃をしのいで、オボロさんが僅かな合間を縫って切り込みをかけてくれた。 イルファさんも私を庇いながら、珊瑚ちゃんから渡された「まどうアーマー」のパーツで反撃を仕掛ける。 そんな戦闘がどれくらい続いたかしら。 実際は大した時間じゃなかったと思うけど、もう数時間ぐらい戦った気がする。 ガディムもそれなりに消耗していたけど、私達の消耗のほうが激しかった。 「まどうアーマー」のパーツのエネルギー残量も底を尽きかけて、オボロさんの体力も裏葉さんの精神力も限界に近かった。 「これはもう駄目かも知れない……」そんな風に思いかけたその時、援軍が来たのよ。 来栖川エレクトロニクスのトラックから降りてきたのは、五体のメイドロボだったわ。 緑髪でロリっぽいのと、茶色の髪でスタイルのがいいのと、ピンク髪でやたら巨乳なのと、黄色髪で甘えん坊っぽそうなやつ。 それになぜか太田加奈子さんと瓜二つで、まるで本人がコスプレしたようなメイドロボもいた。 とにかくその五体のメイドロボが、イルファさんと一緒に何かをするからもう少しだけ時間を稼いで欲しいと言ってきたの。 何が何だか分からなかったけど、他に手段もない私達はメイドロボ達に従ったわ。 もちろん目の前で何かをしようとするメイドロボ達を、ガディムがボサッと見守るはずもなかった。 メイドロボ達に襲い掛かろうとする破壊神を、オボロさんに裏葉さんが最後の力を振り絞って止めに掛かる。 私? い、一応頑張ったわよ。珊瑚ちゃんと一緒にイルファさんから渡された「まどうアーマー」パーツで援護を。
そうやっているうちに準備が整って発動したの。 固有結界『メイド・イン・ヘブン』とやらが―― なんかガディムを中心に六角形に並んだメイドロボがピカーとか白く光り出して、でっかい魔法陣を作ったわ。 アレね、ほらダ○の大冒険でいうところのミ○カトールに近いんじゃない? 破邪呪文ってやつ。 あっちの世界だと六芒星は邪悪っぽいけどこっちの世界じゃ違うようね。 「さんちゃ〜ん。さんちゃ〜〜ん。ウチ…ウチ…めっちゃ心配したんやで……」 「ごめんなぁ瑠璃ちゃん。でももう大丈夫や」 体育座りでならんだ私達の隣で、珊瑚ちゃんとその双子の妹の瑠璃ちゃんが再会を喜び合っていた。 うんうん、仲良きことは美しきことかな。 斬り殺されたり焼き殺されたりしなくてよかったわね、アンタ達。 「オボロさん…大丈夫?」 複雑な表情でガディムの昇天を見送るオボロさんに、私は思わず尋ねた。 「……問題ない。怪我は幾つもしたが、命に別状はない」 「そうじゃなくて…その、妹さんの敵だったんでしょ。自分の手で倒したかったんじゃ……」 「目的はガディムを始末することだ。これで……よかったんだ」 そうは言ってるけど膝を抱えている手にギュッと力が込められている。 やっぱり不本意だったんだろうな…… 「これからオボロさんはどうするの?」 ガディムの昇天を見送り、栗原さんの家に帰る途中で聞いてみた。 「どうせならこの世界の見物とかしてみない」 学校が再開されるには最低一週間はかかるらしい。 まぁ運動場は激しい戦闘で大穴がボコボコあいて、校舎もあちこち壊されている。 なにより結構な数の生徒が軽くない怪我をしてる。 後始末なりなんなりに時間が掛かるのは当然だろう。 その間私も栗原さんも暇だ、ちょっとした休みを楽しめる。 それなら元気のないオボロさんを元気づけたいと思ったんだけど――
「悪い、俺は準備が整い次第すぐにでも帰るつもりだ」 「そう……そっか、それはそうよね」 オボロさんは物見遊山でこっちの世界に来たんじゃない。 早く戻って妹さんのお墓に花を添えたり、敵討ちの報告とかをしたいんだと思う。 本人は異世界で骨を埋める覚悟もしてたけど、裏葉さんのおかげで元の世界に帰れるそうだ。 「裏葉、手間を掛ける」 「これも知り合ったよしみでございます」 「じゃあね。オボロさん、裏葉さん、栗原さん」 「ああ」 「失礼いたします」 「そ、それじゃあね。七瀬さん」 交差点で、栗原さんの家に戻るオボロさん、裏葉さん、栗原さんと別れた。 裏葉さんの法術の準備は二、三日中に整うらしい。 その時にまた改めてお別れをしよう。 オボロさんは嫌がるかも知れないけど、お別れパーティーを開くのも悪くない。 ……私もオボロさんも栗原さんも食べ役で、裏葉さん一人で料理を作らないといけないかも知れないけど。 あ、でもメイドロボのイルファさん達に手伝ってもらえばいいか。 「終わった……のかな」 一人になり、空を見上げながら呟いた。 夕暮れが雲や空を真っ赤に染め上げている。 今日一日で本当に色々あった。 朝から来栖川重工に行ってイルファさんに会って、へりで学校に送ってもらって。 そこから学校に突入して、今さっきまで世界の存亡賭けて戦っていたんだもの。 「お腹も空いちゃったし、早く帰ろう」 そう言えばお昼ご飯も食べていない気がする。 こんな腹ぺこ状態でよくガディム相手に戦えたと、我ながら感心してしまった。 改めて自分の体を見回すと、服も肌も汚れまくっている。 あんだけ激しいバトルしたんだし、汚れて当然か。
「何か拭くものは……あ、これって」 ポケットから出てきたのは、オボロさんから渡されたバンダナだった。 もう二度と光ったりはしないだろうし、光ってもらっては困る。 「オボロさんに返さなきゃね」 そう呟いてバンダナをポケットに入れ直した。 (でも……剣の稽古のお礼ってことで、貰っちゃってもいいかな) オボロさんとした早朝稽古。久しぶりに本気で剣を振るった。 ほんの僅かな出会いと付き合いだったけど、一つくらい何か形に残る思い出があっても悪くないと思う。 (明日か、お別れのときにでも聞いてみよう) 日も沈みかけて辺りが薄暗くなり、まばらに星も見えてきた。 とりあえず私達の世界は守られたようだ。 ぶっちゃけ色々とアレでソレな結果だけど、平和な日々というのはいいものだ。 これからもこの穏やかな日常を守りながら、私らしく生きていこう。 そう思った。 Fin
またまた物語が終わって5時間も主役選択がされてないとは… だが選択スレは滅びぬ、何度でも蘇るさ! という訳でまずは作品選択 A 誰彼 B White Album C ナイトライター(with 雀鬼's) D リトルバスターズ! E うたわれるもの F Planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜 G 鎖 H CLANNAD I フルアニ J Kanon K Routes L ONE M Filsnown N テネレッツァ O 雫 P 天使のいない12月 Q まじかる☆アンティーク R こみっくパーティー S ToHeart2 T 痕 U Tears to Tiara V To Heart W AIR X MOON.
リトバスはまだ早いのでは?ここはGだ
おお、思ったより選ばれるの早くてよかったです。 では主役選択 A 折原明乃 B 片桐恵 C 早間友則 D 岸田洋一 E 香月恭介 F 綾之部珠美 G 折原志乃 H 綾之部可憐 I 香月ちはや
D
は、早っ!でも悪役なら何とかなるかな…少し書いてみます
作品が選ばれたら主役選択出るまでリロードしまくるって 昔の癖が出ただけだよ つっても今俺しかいなさそうだけど、選択者
ククク…俺は岸田洋一。パ○ワくんに出てたア○シ○マじゃないぞ。 俺は葉鍵作品の中でも数少ない、 生粋の悪役の一人だ。だが、俺はどうも他の悪役と比べて 知名度も選択率も少ない。そこで、俺は… A ある一人の『女』を犯す事にした B 他の悪役に弟子入りする事にした C 敢えて善人の役をやってみようと思った D 全国鬼畜友の会に出席する事にした
まずは普通に悪役らしくA
そう、俺は悪役だ。強姦魔としての実力なら 他の悪役には負けない自信がある。 女を陵辱し、怯えさせ身も心も破滅させてこそ悪役冥利に尽きる。 だがしかし!!ただ普通の女を犯すだけではただの三下だ。 この俺の偉業をサプライズに彩り伝説として残すには、 一般人を犯すのでは駄目だ。そんな事は誰にでも容易くできる。 それにただでさえ陵辱は食傷気味の上にスレの空気を悪くする危険性がある。 だから、普通では駄目だ。弱い女を犯すだけでは駄目なんだよ!! 俺は自分を知っている。俺は悪役だ。だが、ただの人間だ。 某電波使い兄妹の兄の方みたいに相手を強制的に屈服させる能力がある訳でも無し、 某火戦試挑体のように超人的な肉体を持っている訳でもない。 某FARGO研究員のようにバックに強力な組織がある訳でもない。 何の後ろ盾も無く、拳銃一発、ナイフ一刺で死ぬようなただの人間だ。 一般人しか出ていなくてSFファンタジー要素も全く無い原作を今だけは恨む。 俺にあるのはせいぜい普通の一般人よりは鍛えられた体と、『策』だけだ。 だがこの『策』にかけては俺は負けない自信がある。他の誰にもな。 こんな俺が葉鍵キャラ最強スレなんかに書いたら一笑され煽られるような 化物キャラを屈服させられたら、それは悪役冥利に尽きるんじゃないか…? フフフフフ…それこそが名誉!それだけが生きがいだ!! 俺は予め調べておいた資料を手にし標的を選ぶ。 中途半端は駄目だ。ちょっと喧嘩が強いとか、腕に自信がある一般人ではいけない。 俺如きが平手で挑んだらまず勝てない連中を選出した。 知恵と策謀だけで俺は果たしてこいつを犯せるのか…!?
その女の名は、 A 月島瑠璃子。電波を使う一般人なら廃人確定の女だ。 B 柏木千鶴。 …怪物らしい。俺ですら悪寒が走る。 C スフィー。 噂によると魔法を使うらしいが…。 D 岩切花枝。 …何故かこの女を見ると腹が立ってくる。 E カミュ。 …燃やされた恨みを返して…何を言っているんだ俺は? F 天沢郁未。 不可視の力というやはり超常的な力を使うらしい。 G 川澄舞。 剣術を使うだけでなく魔物を召還する能力があるらしい。
E
ヒッ! 一つの写真に目が止まった。瞬間、俺は恐ろしいほどの戦慄を覚えた。 写真に写っているのは何故か羽の生えている、胸の大きい少女だ。 これだけでもう普通の人間ではない事が解るが、何故か俺は脅えてしまった。 何故脅えるんだ?俺はこの女とは何の面識も無いというのに! ………思い出した。そうだ。こいつは俺が何度も見る悪夢に出てきた女だ! その夢の中で俺は、ある小娘を騙し、犯した。だがその直後この女が現れ、 あろう事か変身し、俺は成す術も無く焼き殺されてしまうのだ。 夢とはいえ俺が焼かれ、消し炭にになっていく時の熱さ、苦しみ、 まるで本当にあった出来事のように感じた。 だがそれは所詮夢に過ぎない。だが、夢とはいえあれが正夢だとしたら…、 やはり俺が真っ向から挑んで犯せるような相手ではない。 だが、俺はやらなければならん。この程度の女も犯せないようでは 俺は葉鍵の悪役に名を残す資格はないッ!! それにこの夢が事実だったとしたらあの時の恨みを返す目的もある。 何時の恨みかは解らないがとにかく江戸の恨みを長崎で返すくらいの意義はあるだろう。 そうと決まれば早速、『策』を練らねば。策謀、演技、心理戦こそが俺の得意とする所だ! カミュを犯す為にまず何をする?どう挑む?犯すのは最終地点、まずは外堀から埋めていくとするか。 A まずは彼女の知り合いから情報を得る事にする B まずは武器、防具の調達だ。一般人としてできる限りの装備は揃えておきたい。 C 悪には悪の繋がりがある。同じ鬼畜・犯罪者仲間に連絡をする
C
ピポパポピポパ プルルルル…ガチャッ 「もしもし、聖ユリ○ンナ病院ですか?比○坂竜○さんは…」 俺は今掟破りにも板違いのミ○クのキャラクターに電話をかけている。 他の会社には鬼畜道を極めた大先輩達が沢山いる。 悪役として、陵辱を極める者として、鬼畜と罵られる者として 誰しもが憧れ目指すであろう外道の極みだ。 そういう鬼畜の大先輩から助言を頂ければ、 必ず俺の野望成就に役立つはずだ。 俺は何としてでもあのカミュという超人を犯す! その為なら板違いも鉄の掟も糞くらえだッッッッッ!! シュト○ハイムのような一発ネタとして見逃せッ!!!!! 「ええ?いない!?…そうですか、失礼しました」 比○坂竜○さんは外出中との事だった。最近復刻版やらパチスロやらで また出番が増えて大忙しらしい。次にア○スソ○トに電話をかけ、 ラ○スさんを呼び出す。ラ○スさんといえば鬼畜王と称えられるほどの男だ。 厳密には悪役ではないかもしれないが、それでも話す価値はある。 「はあ?戦国時代に出張中って…わかりました」 ラ○スさんも忙しいようだ。 シリーズ化して未だに作品が出ている先輩方が羨ましい。 俺もここまで名を轟かせる鬼畜になりたい…!!
『もしもし』 「あの〜そちらは伊○○作さんのお宅ですか?」 『ああ、そうだけど』 「そうですか。失礼ですが貴方は遺○さんですか?」 『ああ?俺は鬼○だよ!兄貴!!電話だ』 『もしもし』 「遺○さんですよね?」 『なーに人の電話勝手に取ってんだ臭○!!もしもし、俺が遺○だ』 「貴方が噂の…夜分遅く申し訳ありません!」 『ほ〜うお前がLeafに入った鬼畜の新人か』 三回目にしてようやくエ○フの鬼畜代表、○作三兄弟に連絡が取れた。 ○作さん達はゲームと違い実生活では優しく、後輩の面倒も良い。 まさに鬼畜の鏡だ。俺は○作さんに憧れて鬼畜になろうと決心したんだ。 『いいか、陵辱に必要なのは忍耐、そして狡猾さだ』 『違うって兄貴、愛だよ、愛。陵辱にも愛は必要だぜ』 『どんな人間にも必ず弱みがある。それを調べ、脅し、陵辱するんだ』 ○作兄弟は皆俺のような若輩者の新人に丁寧にアドバイスしてくれた。 『お前は俺達と同じで知略とずる賢さで立ち回るタイプだ。長所を伸ばしていけよ、ククク…』 「はい!ありがとうございます!!必ずや戦果を上げてみせます!!」
丁寧にお礼を言って電話を切る。やはり先輩方の助言は違う。 俺では思いもしない人の騙し方、犯し方、強者への対処法を教えてくれた。 俺はやるぞ!先輩方に恩を返す為にも俺は陵辱を成功させる! そして葉鍵悪役列伝に名を残すんだ!! A さらに他の悪役の助けを借りる(人物指定・今度は流石に葉鍵キャラでw) B 事前調査をしよう。カミュの身辺調査を行う C カミュの攻撃に対する対策を練る D その前に食事に行くとするか…
B
俺はカミュの身辺調査を行う為に街へ出た。 策で獲物を狩る俺の普段の姿は、実に真面目で誠実そうに見えるだろう。 実際近所では一人暮らしの勤勉な好青年で通っている。 この演技力も俺の数少ない武器の一つだ。 今の俺なら高速実験船くらいなら一人で騙し討ちして制圧できると自負している。 まずは事前に調べておいた奴が住んでいる場所に伺ってみるか。 確実に、一つづつ駒を進めていこう。失敗は…俺の死だろうからな。 あの女のいる場所は… A 御神夜龍神社。この神社で巫女をしているらしい。 B 秋葉原のコスプレ喫茶。なるほど、背中の羽根を誤魔化すには持ってこいだな C 新宿歌舞伎町。犯罪の匂いが漂う場所だ。 D 動物園…!?珍獣扱いされて売り飛ばされたのか?
Dw
『葉鍵動物園』 駅から徒歩10分の場所にある、この街の名物動物園。 若いカップルから家族連れまで、大勢の人が楽しむ憩いの施設。 そう、あの女のいる場所はなぜか動物園だった。 いやいや、あの女の住所が動物園なのにもちゃんと理由がある。 無論その理由も調べてある。 事前の調査に抜かりはない。 その理由とは…… A 本当に「人の言葉を喋る鳥人間」として飼育されている。マジかよ…… B 実は動物園の飼育係として住み込みで働いている。まぁ常識的な理由だな C ……実は住所不定で、たびたび動物園の餌をかっぱらってるのが目撃されてるので一応住所扱いになっているだけ
a
なんと本当に「人の言葉を喋る鳥人間」として飼育されているらしい。 何だと!?だが、考えてみればそれは最もな話だ。 俺は一人納得しながら葉鍵動物園へと向かった。 「2000円になります」 俺は入場料を払い、葉鍵動物園に入った。 カミュは見世物の珍獣扱いで捕らえられているらしいからだ。 しかし…2000円は高い!なんだこの入場料は!? サンシャイン水族館の入館料より高いじゃないか!! こんなにボッタくるほど、この動物園は価値がある動物を飼っているのか? そう愚痴りながら歩いていると、目の前に看板が立っていた。 『空を飛ぶハーピーをついに捕獲!』 『半鳥半人の美少女カミュ!ご見学の方はこちらへ』 『現代に生きる空想生物!あと20メートル先です』 「……やっぱりな」 俺はまた一人頷く。考えてみればこの現代の社会で羽根を生やし 飛行する人間等がいたら珍獣扱いされるのは無理もない事だ。 他の家族連れや観光客は皆カミュがいるという場所へ向かっている。 しかし妙な話だ。俺の夢で見た記憶が真実ならあの女は 魔法を使い変身も出来るはず。ただの人間に捕まえ檻にぶち込む芸当が可能だろうか? だが、今は考えても仕方が無い。俺もその場所に向かった。
「これは凄いな…」 付いた場所は動物園の動物を入れる場所にしては広く、 小屋や檻というよりは巨大な応接間のような場所だった。 動物にしてはコアラやパンダ…いやそれ以上の破格の扱いだ。 いや、動物なのか?動物ではないだろう。だとしたら俺は 陵辱どころか強姦ならぬ獣姦者になってしまう!!違うッ!! 違うんだ!そうだと思いたい。俺は人ごみを掻き分け、 最前列の場所まで移動する。やはり全面に強化ガラスが張ってあるな。 この厚さなら銃弾どころかミサイルの直撃にも耐えそうだが…ここまでする必要があるのか? 『では、鳥人カミュの法術ショー午後の部を行います』 ナレーションの声が場内に響き、建物の電気が落とされる。 同時に安っぽいミュージカル調の曲が流れ、ショーアップライトが ガラスホールの内部、中心部を照らす。舞台が競り上がり、 一人の美しい少女が姿を現す。そこにいたのは紛れも無くカミュだった。 俺が襲うべき女が今、目の前にいる。いるのだが… A カミュは疲れきっていた。全く動かない。目が澱んでいる。 B カミュは疲れを見せる事無く、普通に笑って芸を始めた C カミュは俺の方を向き、微笑んだ。…俺を知っているのか? D カミュは突然暴れだし、ガラスをぶち破り逃走した
a
目の前にいるカミュは憔悴しきっていた。 おそらく何度も休まず芸を強要させているのだろう。 目は澱み濁りきっている。そう、この目は…俺も何度も見てきた。 陵辱され、心を壊され、精神をすり潰された廃人の目だ。 「おい、どうしたんだ?ショーは始まらないのか?」 「早く芸を見せてよ!高いお金払っているのに」 他の客が騒ぎ始めている。見世物の主役が微動だにしないのだから当然だろうな。 だが、この『壊され』っぷりはどういう事だ? 俺も悪役だが一般人の代表だから解る。凡人が正面から太刀打ちできる相手じゃない。 曲りなりにも異形の者である彼女をどうやって捕まえ、芸を強要させるほどに『壊した』? 俺はそれが気になって仕方が無かった。 「きゃあああああ!!」 突然、彼女が叫び声を上げた。何だ?俺は周りを見る。 他の客は気づいていないが舞台装置が数ミリ空いていたのを俺は見逃さなかった。 なるほど、あれはテーザーガンか。死なない程度の電流を流して躾ている訳か。 「……これでは駄目だな」 このカミュという女は完全に弱りきっている。こんな女を犯しても意味はない。 一般人では敵わないような女を犯さなければ俺はいつまでも悪としても鬼畜としても3流以下だ。 目の前でうなだれている女は強さではもうそこらの三歳児のガキにも劣る。 今の彼女ならひ弱な中学生でも襲えるだろうよ!それでは駄目だッ!! 俺はこの場を離れる事にした。やらなければいけない事が出来たからだ。 A この動物園の園長を脅す。場合によっては殺人も陵辱もやむを得ないッ!! B この見世物小屋の牢屋を破壊する。カミュには今は逃げて頂くとしようか C 何者かの肩が立ち去る俺にぶつかった(人物指定) D この女にもう用は無い。他の強い女を捜す事にする
C 御堂
ドッ 立ち去る俺の肘に何者かの肩がぶつかった。 「ゲーック、すまねえな兄ちゃん…てめえは岸田か!」 「…御堂さんでしたか」 この小男は御堂。話の冒頭でも言ったが 軍の秘蔵の強化兵・火戦試挑体にして、俺の悪役としての先輩にあたる。 だが、俺はこの人を嫌いだった…。 「こんな場所で何をしているのですか、御堂さん」 俺は外面だけはどんな人間に対しても敬語で優しく接する。 この男の前では俺の本性も知れているから無駄ではあるのだが、 それでも形式的に先輩と後輩としての上下関係は守る。 「ケケケ…あそこでくたばりかけてる女がいるだろ?」 御堂は俺が出てきた場所を指差す。 上からの命令でな、あの女をよ… A 犯せ、と言われたんだよ B 殺せ、と言われたんだよ C 逃がせ、と言われたんだよ D さらえ、と言われたんだよ
C
「あの女をこの動物園から逃がせってよ」 あの女?カミュを?あの女を逃がすというのは俺にとっても悪い話ではなかった。 俺が襲い犯すべきなのはあんな痩せ犬のように疲れ果てているような廃人ではない。 万全の状態の超人。それを知恵と策謀だけで弱らせ、屈服させる。それこそが陵辱だ。 青い果実が熟するまで殺さずに待つ…そう言ったのは どこかの少年漫画雑誌の無期限休載中の漫画の悪役だったか。 「それで、どうやって逃がすつもりなのですか」 「ゲーック、どうしようかねえ?はっきり言えば簡単な任務なんだけどなぁケッケッケッ!」 そう言い御堂は下卑た声で笑い出す。……これだ。これだから俺は御堂が嫌いなのだ。 「このまま正面から乗り込んで掻っ攫ってもいいし、夜に奇襲をかけてもいい」 この男は『持って』いる。俺に無い物を。 「死にかけを守ってるのは強化ガラスだけだしなあ、楽勝だなゲッゲッゲッ」 この男は『持って』いる。俺が欲しい力を。 「鳥人を捕まえたぐらいだから少しは骨のある奴が出てくるかもしれねぇが、俺の敵じゃねえなあ!」 この男は『持って』いる。この自信を保つだけの強さを。 ……だから俺は嫌いなのだ。人間は生まれながらに国、肌の色、体格等に違いを持ち、 それによって贔屓され差別される。この御堂という男は生まれながらにして 強化兵、仙命樹、無敵の身体能力、射撃能力、回復能力と優遇されすぎるほどの設定を持つ。 俺と御堂ではもうこの時点で駄馬とサラブレッドほどの差が付いてしまっているのだ。 それに引き換え、俺は何もない。鎖のキャラは設定的には全員一般人だ!! 魔法も必殺技もなく、ビームを撃つみたいな超展開も何も無い! それどころか強力な組織の一員でもない!俺は何の後ろ盾も無い、ただの人間だ。
だから俺はさっき悪役の先輩方に連絡する時も月島や御堂に連絡はしなかった! そんな異常な力を持つ奴の力など借りず、あくまで『人間』の悪役として、 人間の『鬼畜』として、一花咲かせたかった。たとえそれで死ぬ事になってもだ!! それをこの男はいけしゃあしゃあと…!! 実際御堂ならこの後正面から切り込んで、軍人が百人現れたとしても 余裕で任務を遂行するだろう。俺が二百人いても敵うかどうか。 それぐらい一般人と強化兵の差は離れているのだ。 「…で、だ、お前もあの女に何か用があるんじゃねえのか?」 「…え、ええ」 「どんな用なんだ?」 「それは御堂さんには関係ないでしょう」 「そうかい。ゲッゲッゲ、あの女の事なんだがな」 「何ですか」 「俺は逃がせと命令されてはいるがその後の事は知らん」 「…どういう意味ですか?」 まただ。言いたい事はもう顔に出ているのに勿体ぶって話す。 強者の驕り甚だしいそのそぶりを弱者の俺は顔に出さず聞きに徹する。 「少し遊ぼうかと思ってなあ。ゲーック、お前に聞きたい」 「何でしょうか」 「お前、俺の任務を手伝え」 …やはりな。自分一人で容易く片付く仕事をわざわざ人に手伝わせる。 「後輩のお前にも良い所見せてやんなきゃなあ、ゲゲゲゲゲ!」 「何を手伝うのですか?御堂さんなら楽勝の任務でしょう」 「任務じゃねえよ。これはもはや遊びだ遊び。で、お前にやってもらいたいのはな…」 A 説得だな。たまには暴れずに解決するのも面白ぇ B 陽動だな。正面突破は俺がやるからてめえは裏方に回れ C 探索だな。あの女を縛り付けている原因があるはずだ D 身代わりだな。カミュが捕まってる施設は水の中にあるんでなあ、俺の代わりに行ってきてくれや
悩むが・・・・・・・・・・Dだな
「身代わりだな。カミュが捕まってる施設は水の中にあるんでなあ、俺の代わりに行ってきてくれや」 「それは…………手伝うと言うよりほとんど一人での仕事になると思いますが」 「そうでもねえさ、ここの警備は異常に厳重だからな。 お前が行ってるうちに俺がそっちのほうを片付けておいてやる」 …話としては悪くない。確かに並の人間ではここの警備は歯が立たないだろう。 だからこそ御堂がでて来たのだろうが、その御堂が唯一歯が立たないのが水だ。 そこさえどうにかしてくれれば後は俺が面倒見てやると言われてるようなものなのは癪だが、 それほど無敵の男の唯一の弱点に関して優越感に浸れるのは悪くない気分だ。 「いいだろう、引き受けた」 言われたとおりに動物園の裏手に向かうと、そこに“動物の宿舎”があった。 それはまるで堀に囲まれた砦のようで御堂が突入を渋るのも分かる。 物陰から伺うと、唯一かかっている橋の上では――『α』が『β』と『γ』していた。 α A.カミュ B.岩切花枝 C.上月澪 D.『その他人物名』 β A.インカラ B.石原麗子 C.○作 D.『その他人物名』 γ A.警備 B.酒盛り C.口喧嘩 D.アナルセックス (1レス1選択)
α A β B γ D
「お前にやってもらいたいのは一番肝心な突入さ」 「突入を? なぜ俺が?」 この男は好戦的な人間だ。 一番好き勝手ができる「突入」を俺に譲るなど、普通は考えられない。 それに遊びとはいえ上の命令とやらで動いているはず。 軍人にとって任務の放棄は最も忌避すべきのはずだが…… 「ああ実はな、ステージでショーをしているとき以外、カミュは特別な場所に捕らえられているんだが…… そこに入るためには水を避けられない場所があるそうだ。さすがの俺も水だけは大の苦手でな。お前に頼みたいんだよ」 なるほど、合点がいった。 火戦試挑体、御堂。 仙命樹の力を得た無敵の旧日本軍兵士。 だが唯一弱点がある、それは「水を極端に恐れる」ことだ。 「お前が断るのなら誰か別の手頃な人間を捜すだけさ、どうする?」 さて、どうするべきか。 カミュが捕まっている場所がどう特殊なのかはよく分からない。 それに上手く逃がせたとして、俺が襲うに値するほどにすぐ回復するかも不明だ。 何より、御堂の手伝いをするというのが気に入らない。 化け物女性キャラはカミュだけじゃない、他の女に目標を移したほうがいい気がする。 とはいえ、お膳立てが揃っているのも事実。 俺の選択は―― A なるたけ単独犯がいい、別の女にターゲットを移す B 御堂と協力をする
A
ギャース、書き負けた……orz
…orz
1レス1選択なら
>>582 は最初しか有効にならんのじゃ?
いや、そもそも○作とか混ざってる本文を有効にするべきか、から問題な気がするけど。
有効ならβがDで冬弥
γ D
あんまり本文をリコールするのは気が引けるけど一応選択で決めようか
A ○作とか選択肢に混ぜるのはマズいだろう。
>>581 には悪いけどリコールする
B ○作は選ばれなかったんだし、
>>581 は有効にして以降γの選択をしてもらう
あ、もうγも選ばれてたのね…orz
ここで突然携帯か……
いや、問うまい。選んだのが正義で、書ける限り続ければいいのが選択スレだしな。
でも流石に
>>587 書いてこれを選ぶわけにはいかんので俺は保留。
ここでグダグダにする訳にはいかんのでBにしておく
それで状況を整理すると、
>>581 で選ばれた選択肢は1レス1選択で
αA βD γDで
カミュと冬耶がアナルセックスしている、で問題ないんだよね?
確認するなら訂正するけど冬弥だよ、ホワルバの藤井冬弥のつもりで指定した。 他にいないよな? あとはそれでいいと思われ。
おまえらそんなにアナルセックス好きか
「ハア、ハア、ハア………」 「………………………………」 それは異様な光景だった。わざわざ橋の上、宿舎の入り口の前で これ見よがしに一人の男がカミュを犯していたからだ。 あの男は…誰だ?面を見た限りでは単なる学生風の優男だな。 次にずり下がったズボンの辺りを見る。下半身の筋肉も それほど引き締まってる訳じゃない。こいつはただの素人、一般人だな。 能力者なら分が悪い所だが、ただの堅気なら…俺でも楽に倒せる。 しかし、見た所尻の穴を犯しているようだが…なっちゃいないな。 陵辱とは相手を追い詰め絶望させ少しづつ壊していく所に美学がある。 既にあの女は壊れているじゃないか。あれだけ乱暴に犯されているのに何の反応もない。 抵抗も叫びもせず犯されるがままの女など肉便器にも劣る。それなら死体を犯す方がまだいい。 俺はこんな生物ですらない『物』を犯す為にここまでやってきたんじゃない! やはりここは助けてやるべきだな。 それにしてもこんな目立つ場所で蛮行に及ぶなんて、 どう考えても罠か誘っているようにしか見えないのも事実。 さて、ここで『策』を考えろ。足りない頭で考えろ、岸田洋一。 俺が他の連中より優位に立てるのはこの策と知恵だけなんだからな。 そろそろ御堂が警備の連中を片付けている頃か。 俺はこの後どう動くべきか? A このまま普通に奇襲をかけ、冬弥をぶちのめす B 得意の演技力を最大限に利用する。警備の振りをして話しかける C 考えていると、他の何者かが冬弥に襲いかかった(人物指定) D その時、銃声が聞こえた。御堂が暴れ始めたようだな
c オボロ
俺が考えていると、カミュを犯している男の背後に もう一人男が『いた』。現れたというより、いつの間にかそこに『いた』んだ。 いつの間に現れた!?それを考えた時には、その男は次の行動に移っていた。 「……おい」 「えっ?…がああっ!!」 犯している男が間抜けな声を上げた次の瞬間、そいつは股間を蹴り上げられていた。 勃起している剥き出しの男根を蹴られたんだ。その痛みは想像するだけで気絶しそうなほどだろう。 現れた男は悶絶しているそいつにはもう目もくれず、カミュの元に駆け寄った。 「カミュ、おいカミュ!!大丈夫か、しっかりしろ!!」 「………………………………」 だが、カミュはやはり反応しない。 「きさまあああぁぁぁぁぁ!!」 激情した男はさらに呻いている男を蹴り、殴りつける。 …何者だこいつは?目の前で殴られている方は全くの素人だが、 今現れたこの男は、違う。出来る奴だ。それは現れた時の素早さ、身のこなし、 露出している筋肉の張りを見ても解る。華奢だが締まった良い筋肉をしている。鍛えられているな。 よく見ると、耳が少し尖っている。何だこれは?奇形にしては整っているし… カミュを助けに来たという事は…同族、超人の類と認識した方がいいか? 耳が尖った男は刀を抜き、脅えている男の喉笛に突きつける。 「言え。誰の差し金だ?何故こんな事をする?どんな理由があって?」 「そ、それは…」 「いいか。今からは真実だけを答えろ。嘘を付いたら…即、首を落とす」 あの腰に携えている二本の刀が奴の武器か。やはりこの男はマジだな。 キレてはみたがすぐ相手を殺さない。聞き出せる事は聞き出す魂胆だ。 嘘を付いたら即殺すというのも、本当だろう。この状況で躊躇する訳が無い。
そしてこれだけ奴が暴れて叫んでも、誰も助けに来ずサイレン一つすら鳴らないという事は、 御堂が既に警備の連中を制圧したという事だ。 A オボロは冬弥から何かを聞き出すと、宿舎の中へと入っていった B オボロは冬弥を斬り殺し、カミュを抱き上げ去ろうとした C そこに一発の銃声!御堂がオボロに襲いかかった D このタイミングでカミュが意識を取り戻し、飛び去っていってしまった
C
ターン!!! 「なっ!」 「うげっ!」 優男を尋問していた男が、とっさに身を翻した。 瞬間、さっきまで男がいた場所に銃弾が撃ち込まれたようだ。 優男のほうは男が身を翻したときに、頭を打って気絶している。 「御堂か……相変わらず正確な狙撃だ」 様子を見ながら俺は呟いた。 どこにいるのかは分からないが、橋の周囲からあの男を狙っているのだろう。 ターン!!! 「くっ……卑怯だぞ! 出てこい! 姿を出せ!」 今度も男は銃声と同時に飛んだが、左足を銃弾が掠めたようだ。 「まったく……やってられないな」 様子を眺めながら俺は一人毒づいた。 橋の上で繰り広げられる死闘に、俺が入り込む余地はない。 一人の人外が人間離れした狙撃を行い、もう一人の人外がかろうじてかわし続ける。 一般人レベルの俺が手出しできる状況では無かった。 「とはいえ、じきに決着は着くか」 いくら超人的な体力とカンで銃弾をかわそうにも、限度があるだろう。 御堂は姿を現さない。現す必要はないし、そもそも水場の近くなので現れられない。 唯一橋の上の男ができるのは、弾切れまでかわし続けることだが……
A 何発かの後に、とうとう御堂の銃弾がオボロの胸を貫いた B ? 狙撃が止んだ? 御堂に何かあったのか? C 「オ……ボロ……」ここでカミュが意識を取り戻した
B
その後何発かの銃弾を耳の尖った男は避け、見切り、叩き落した。 だが突然御堂から銃撃がぴたりと止んだのだ。 「?…どういう事だ…?」 狙撃が来ない。弾丸を装填しているにしては時間がかかりすぎている。 何かあったのか?トラブルか、もしくはさらに他の奴が御堂に襲いかかったか… そうなると今カミュを浚えるのは俺しかいないという事になる。 「やはり連中が………おい、そこのお前!」 男は俺のいる方向を向き声をかけた。やはりバレていたか… 俺は姿を見せようとする。しかし、その前に声がかかる。 「いや、出てこなくていい。一言言わせてくれ」 まさか俺が御堂の仲間だと気付いていないのか? この状況で見ず知らずの俺をただの一般人だと思っているのか? 御堂の狙撃はまだ撃たれない。おかしい。明らかに妙な状況だ。 耳の尖った男は言った。 A カミュを連れて逃げろ!彼女は大事な『鎖』なんだ! B カミュを守ってやってくれ!俺は狙撃手を潰す! C お前も…彼女の力が目当てなのか? D お喋りはそこまでだ!御堂の銃撃が再度オボロを襲う!
A
「カミュを連れて逃げろ!彼女は大事な『鎖』なんだ!!」 『鎖』?鎖とはどういう意味だ?だがここでこの女を逃がすというのは 実に好都合だ。御堂からもカミュは逃がせと言われているしな。 だが、引っかかる。なら何故御堂が銃撃を中止した? カミュを逃がすという意味においては両者とも意見は同じ。戦う必要性がない。 だが目の前の男がカミュを助けようとしたら御堂は狙撃をしてきた。 その理由は?御堂の追撃は未だ放たれない。 「…解った」 考えても仕方が無い。俺はカミュの元に駆け寄る。 「俺の名はオボロ。…カミュを頼む」 奴の目を見る。俺の事を敵だと疑いもしていない、真剣な目だ。 俺の事を疑っていないのか、それとも… とにかく俺はカミュを抱いて、この場から逃げ去る事にした。 ……軽い。俺が捻じ伏せ、陵辱し蹂躙しようと思った怪物は 俺が思っている以上に華奢で軽かった。俺が屈服させたかったのはこんなか弱き者なのか? 違う!違うはずだ。でなければ俺が襲う価値等全く無いのだから。 俺がカミュを抱いて逃げ去ろうとしても、御堂の攻撃は来ない。 最悪俺を殺すかもしれないという選択肢も考えていたが、それも違うようだ。 一体どうしたのだろうか。オボロは黙って見送っている。 …色々な可能性を考え、推理する。未だ目覚めぬ『鎖』を抱きながら俺は走る。 走りながら俺はこう考えていた。 A 御堂はオボロの仲間に殺されたのではないか? B オボロは俺の事を知っていたのではないか? C 御堂もオボロもあの優男もグルで、俺にカミュをさらわせるのが最大の目的なのではないか?
C
御堂もオボロもあの優男もグルで、俺にカミュをさらわせるのが最大の目的なのではないか? ――明らかに突拍子もない仮定なのは分かっている。 お調子者キャラが片手をかざしながら「だったんだよ!」と叫べば、 場面にいる全員が「な、なんだってー!?」と切り返しそうな仮定だ。 だが……もしも、もしもだが。 この状況が最良の結果であるとするならば、そこに至るために彼らが描いた構図は 『全員がグルとなって、俺がカミュを直接さらわせる作戦』になる。 散々繰り返してきたが、俺は並の人間。名推理が出来るわけではない。 だから今の状況が何であるか、正直言ってさっぱりだ。 言い換えれば彼らに深謀があっても察する事など到底不可能、 『鎖』が何の事かなんて独力で調べられるはずもない。 しかも所詮一般人なら必要なときに取り戻すのは簡単だろう。 一旦預けておくには最高の相手だ、これくらいは自分でも分かる。 「…どうするかな」 ひとりごちて、抱えているカミュの様子をうかがうと―― A 「…………」相変わらずの放心状態だ、こういう時にはありがたい B 「……い、いやぁぁぁ!」くっ、こんなタイミングで暴れだした!? C 「おしりに……もっとぉ……」まずい、くぎゅボイスの甘ったるさにはさすがの俺も参りそうだ! D 「○○……○○に……」なんだ、そこに行けと言いたいのか?(地名を指定)
B
「い、いやあ!いやああああああ!!」 まずい!このタイミングで目を覚ましてしまったか! 「や、やめてえええぇぇぇ!!カミュに酷い事しないでぇぇ……」 やはりあの動物園で凌辱の類を受けたのは間違いなさそうだな。 とにかくこのまま騒ぎになるのはまずい。 俺はタクシーを拾い、彼女と共に乗った。 羽根を生やしたカミュはあまりにも奇発な格好だ。 帰り道の電車や歩きで人目に晒して目立つ訳にはいかない。 ましてやこうも騒いでいたらなおさらだ。 運転手に聞かれたら最新鋭のコスプレだと誤魔化しておこう。 車の中で俺は考える。 全員がグルとなって俺にカミュをさらわせるのが目的だとすれば、 確かにあの時御堂の狙撃が止んだ合点がいく。 でなければ御堂クラスの超人が御堂を襲ったとしか考えられないからだ。 御堂の「俺の任務はカミュを逃がす所まで」という言葉と オボロがカミュを救う時の態度。目。表情。 そのどちらにも嘘は無いと考えるならばこう結論付けるのが自然だ。 しかしだとしたらなぜ優男にカミュを犯させた? 無傷で助けるのが目的ならばそれは余計な事だろうに。 そもそも何故、俺なんだ?俺が強い女を捜し襲おうとしていたのは 俺が個人的に調査し俺一人で立てた計画だ。それが漏れる事もなければ 他の連中が手助けしてくれる理由もメリットも何も無い。 俺が一般人だという事を利用しているとしたら、 危険を被るのは俺なのではないか…?
そう考えている内に、俺は自分のマンションに着いてしまった。 …結局、この女を一番来させたくない自分の城に連れてきてしまったのだ。 女は車の中で騒いでいる内にまた寝てしまった。よほど疲労しきっているのか。 運賃を払い、部屋に入る。前述の通り俺はこの近所では とても真面目で誠実な好青年で通っている。そんな俺がこんな女を部屋に連れてくるとは。 住み家の近くでは犯罪を犯さないのは鉄則なんだがな…。 といっても、まだ俺はこの女を犯すつもりはないが。 自分の家で無力な女を犯す。そんなのは実に簡単、容易い事だ。 以前の俺なら何の躊躇いも無く犯し、壊し、殺し、快楽の限りを尽くしただろう。 だが、それをやってしまえば俺はただの三下だ。小物以下の下衆野郎だ。 盗人にも三分の理、悪人にも美学がある。俺は自分の美学の為にも、まだ強姦はしない。 「ん…」 『鎖』のお目覚めだ。まず俺に出来る事は… A 「気が付いたかい?」優しく声をかける事だ。 B 「砂糖はいくつかな?」暖かいコーヒーを入れてやる事だ。 C 「それを着るといい。」女物のパジャマだ。どうしてこんな物を持っているかは聞くな。 D 「結婚してください!!」俺の中で欲望は純愛に変化した!! E 「京都は日本の首都なんどすえっ!!」アラ○ヤマの物真似をする事だけだ。
Eに吹いたw
>>611 選択じゃないならそう断っておかないと次の書き手に真に受けられるぞww
ダメモトでC
「き、京都は日本の首都なんどすえっ!!」 「………へ?」 し、しまった!見事にはずしたあ!!パ○ワくんネタなんて そうそう年端も行かない小娘に判る訳がなかった! やはりストレートに鬼○郎の物真似で攻めるべきだったか? 「……プッ」 「ぬあ?」 「プッ…クスクス…キャハハハハハ!!」 カミュは笑い転げている。どうも俺の渾身の一発ギャグではなくて それをはずしてショックを受けていた俺の顔がおかしかったらしい。 寒いギャグをはずした後のリアクションで受けるなんて、俺はダン○ィ坂野か!! 「と、とにかく…これを着るんだ」 今彼女が着ている服は相当汚れ、擦り切れている。 あれだけの乱暴と非道な扱いを受ければ当然だろう。 俺は女物のパジャマを投げてやる。ちなみにイチゴ柄の滅茶苦茶キュートなパジャマだ。 しかもサイズが大きめなのでだぶだぶで袖から手が出きらないという萌え萌え仕様だ。 な、何故俺がこんなのを持っているかって!?そ、そりゃ俺は強姦魔だ!犯罪者だからな!! 色々あるんだよ、色々!!そ、それ以上は詮索するな、詮索するなあ!! 彼女は特に逆らわず、もそもそとパジャマを着だした。 羽根が引っかかって上手く着られないでいる。 (か、可愛い…) がああああああああああ!!!!!違う、違うぞ!! 俺はやましい事等何も考えていない!!襲わん犯さん!! 俺の犯罪美学はこんな事で挫けたりはしなあああいいいいい!!
「…どうしたの?」 「い、いや、何でもない。それより驚かしてしまい、すまなかったね」 「そういえば、ここはどこなの?」 「ここは僕の家さ。そういえば自己紹介がまだだったね。僕は岸田洋一」 俺は早速人当たりの良い善人モードに意識を集中し、演技を行う。 今はまだ聞きたい事もあるし、彼女の前ではこの性格のまま徹するのがいいだろう。 「カミュは確か知らないおじさんに捕まって、ずーーっと檻の中で芸をやらされて…」 「………」 「疲れても無理やり起こされて、夜になると変なお薬を飲まされて…その後はよく覚えてないの」 「もう大丈夫だ。僕は頼まれて君を助けたんだ。もう怖い目にあう事はないよ」 「うっ、ぐすっ、ふえぇぇ…!」 どうやら安心して一気に気が緩んだのだろう。 カミュは泣き出し俺にしなだれかかってきた。 普通の女なら目が覚めた瞬間に知らない部屋で知らない男と二人きりなんて状況なら まず叫ぶか脅えるか暴れだすか、何にせよろくなリアクションはとらないだろう。 ましてやお目覚め一発、ギャグかましたりパジャマを着ろとせがむ変人ならなおさらの事だ。 そういう辺りこの女は純粋なのだろう。…だから利用される。だから俺のような悪党共に襲われ浚われ犯される。 結局の所、純粋な性格なんて乙女の秘密の日記帳の中だけにあればいいんだ。現実には不必要な物だ。 ぷにっぷにっ♪ そ、それはそうとして、カミュが俺に抱きつき泣いている訳だが この胸の大きさ、弾力性はなんだ!?パジャマ越しでもしっかり伝わるやわらかさ! いいいいかん、俺は何もしない!今だけは禁欲を貫くと決めたのだ!! この状況を打破しなければ!! A 俺は冷静にカミュから離れて聞いた。「オボロという男を知っているかな?」 B 俺はクールにカミュを引き剥がし、こう言った。「そういう遊びは大人になってからだぜベイビー」 C その時インターホンが鳴った。まずい、隣に住んでいる(人物指定)さんだ! D こうなったらネコ耳もつけてみよう。勿論どこで手に入れたかは聞くな。
A
「オボロという男を知っているかな?」 俺は気を取り直し、質問を始めた。 「オボロ…オボロ兄さまの事?」 「うん。僕は彼に君を助けてくれと頼まれたんだ」 「そんな、兄さまが生きているはずない!」 生きているはずがない?どういう意味だ? 「だってオボロ兄さまはカミュを庇って…」 「まさか死んだ、っていうのかい?」 あの時俺にカミュを助けろと言った男は間違いなく自分でオボロだと名乗った。 あいつが幽霊や幻の類でない事は間違えようのない事実だ。 「オボロ兄さまはカミュと一緒に逃げていたの」 「仲間だったのかい?」 「うん。でも怖いおじさん達に襲われて、先にオボロ兄さまが…」 「捕まった、と?」 「捕まったんじゃない。カミュの目の前で撃たれたの」 撃たれた?それで死んだのならばあの時会ったオボロはゾンビだという事になる。 撃ち所がよくて助かったか、何らかの能力か回復でもしたのか? 「カミュはそのまま捕まってしまって、後は…思い出したくない」 なるほど、カミュとオボロは仲間同士だったが捕まり、 オボロはその場で始末され(結果生きていたが) カミュはあの動物園の連中に捕まった(もしくは売り飛ばされた) 生きていたオボロはカミュを助けるべく動物園に向かい、 御堂も任務としてカミュを逃がした。そして偶然居合わせた俺に 御堂がカミュを助ける手伝いをさせ、オボロも俺にカミュの保護を任せた。 現状で起きた事柄を整理するとこんな所か。
しかし、こう考えるとあまりにも出来すぎている。 さっきは御堂とオボロ全員グル説も考えたが、 カミュの話だとオボロは一度撃たれ死にかけている。 仲間同士だというオボロがカミュにそこまで大掛かりな嘘を付くだろうか? だからといって流石にカミュまでグルで嘘を付いているとも考えにくい。 そもそもカミュ達はどこからやってきたのか? 何故捕まらなければならないのか?『鎖』とは何か? 知りたい事はまだ沢山ある。次に何を聞くべきか。 A 君達は一体どこからやってきたんだい? B カミュちゃんを捕まえた怖いおじさん達は何者なんだ? C 『鎖』という言葉に何か心あたりはないかな?
A
「カミュちゃんやオボロさんはどこから来たんだい?」 人当たりの良さそうな笑みを浮かべながら、落ち着いた声でカミュに聞く。 俺は引き続きカミュに警戒されないよう、善人モードで質問した。 質問内容は――カミュ達の出身、出自、どこからやって来たのかだ。 羽を生やし魔法を使う少女に、獣耳で常人離れした身体能力を持つ男。 コスプレ少女兼手品師だとか、鍛えられた格闘家がコスプレしただとかではないだろう、今さら。 明らかに俺のような一般人とは『異なる』存在だ。 恐らくはそれ故に何者かに捕まったり、御堂達に逃されようとしている。 「カミュ達はね―― A 信じてもらえないかも知れないけど、こことは別の世界から来たの」 B ……ある研究所で人工的に生み出された実験生命体、それがカミュ達なんだ」 C ……ごめんなさい、どうしてかカミュもよく分からないの」
B
「……ある研究所で人工的に生み出された実験生命体、それがカミュ達なんだ」 やはりか。俺はさほど驚かなかった。御堂もそうだが、 実験や手術で超人化する人間を俺は知っている。 だが実験生命体…この言い方は手術強化の類ではなく、 まるで0から作られた存在のようだ。 「カミュはずっと、ずーっと狭いお部屋の中で暮らしていたの」 「毎日毎日、知らないおじさんに変な事をされて凄く嫌だった」 変な事…レイプ?いや、言葉通り考えるな。これは人体実験の類と考えるのが妥当だ。 「カミュちゃんが作られた理由というのは、自分では知ってるのかい?」 「解らない。カミュが自分を実験生命体だと知れたのは、オボロ兄さまが教えてくれたからなんだ」 あの男の名がここで出るか。オボロがこの女を救いたいという気持ちは本当なのか? 「カミュがもう死にたいと思いつめていたある日、オボロ兄さまがカミュを助けてくれたの」 「カミュは兄さまと一緒に研究所を出た。カミュはもう飛ぶ元気もなくて、兄さまがおぶってくれた」 俺としてはその研究所が何なのかも気になる所だが… 「走る兄さまに背負われながらカミュは振り返って、今までカミュがいた建物を見たの」 「どんな建物だった?」 「う〜んとね…」 A ミズシマ研究所と書いてあった B 軍隊の施設みたいだった C 長瀬エレクトロニクスと書いてあった D 篁バイオテクノロジーと書いてあった
A
「ミズシマ研究所。そう書いてあったよ」 ミズシマ…?確か前にテレビで…そうだ。 少し前のオカルト番組やSF番組に出演しては 狂人扱いを受け、ネタ芸人呼ばわりされていたあのミズシマ博士か? 彼は雑誌にテレビ全てのメディアでこう叫んでいた。 『今のままでは人類は絶滅する』 『人の殻を破らなければ21世紀を生き抜く事はできない』 『人間は、さらに進化しなければならない』 『遺伝子レベルからの改革、一般人からの変貌』 『倫理やモラルに縛られていては未来は無い』 マスコミも最初は彼の常軌を逸脱した言動に注目していたが、 メディアのネタの移り変わりは激しく数年もしない内に忘れ去られていった。 俺自身もこんな事を冗談で言ってるのでなければ気違いの戯言としか思えなかった。 まさか本当にこんな生命体を作り出しているとはな。 「で、逃げ続けた先であの動物園の連中に捕まった訳なんだね」 「うん…」 これで憶測とはいえ大体の見当が付いた。 ミズシマ研究所から実験体のカミュとオボロが逃走した。それだけの事だ。 だが、何故かカミュ達を捕らえる者と逃がす者達が存在する。 あの動物園の連中はどうだ?単純に異形の珍獣だと思い見世物にしたと考えるのが妥当だし 御堂がカミュを逃がす任務を受けたという事からも、動物園の連中は 研究所とは無関係の敵と考えるのが普通だ。
しかし、なら何故オボロは殺そうとした?カミュだけ必要でオボロは不必要と考えたか? 御堂もそうだ。途中で銃撃を止めたとはいえ明らかにオボロを殺そうとしていたのは明白。 御堂を雇っていたのがミズシマ研究所だと考えると、カミュだけ逃がしてオボロを殺す理由が解らない。 大体この逃がす、という選択も理解不能だ。ミズシマ側に立って考えれば脱走した実験体を捕獲する事が重要だろう。 御堂を使って動物園から逃がすより、最初から御堂にカミュを捕獲させるなり 動物園と交渉してカミュを引き渡して貰えばいいだろうが! 何故捕らえる、のではなく逃がす?オボロも俺を信用してカミュを預けた。 何故だ?何故こんな回りくどい事をしてまで犯罪者である俺にこの女を預ける? それに何の意味がある?誰の思惑が絡んでいる?考えろ。必ず理由があるはずだ…。 A 『鎖』という単語について何か心あたりがないか聞く B オボロという人物について詳しく聞く C その時、電話がかかってきた(人物指定)
Cオボロ
プルルルルル・・・ その時、電話が鳴った。 「カミュちゃん、ちょっと待っててね」 俺はにこりと笑って電話の方へ向かう。 「もしもし」 「…カミュは無事か?」 この声は…オボロか! 「あの…どうして僕の」 「そんな似合わない態度を取らなくていい。いつも通りに喋ってくれ」 この男は俺の本性をお見通しって訳か。 「解った、そうさせてもらう。何故俺の家の電話番号を知っている?」 「簡単な事だ。お前がカミュの事を調べていたように、俺もお前の事を知っている」 オボロが俺の事を知っている?カミュの事を俺が調査していた事も… 待て、そういえばミズシマ研究所で作られている実験生命体なんて極秘事項もいい所だ。 そんな情報を何故俺が調べ、知る事が出来た?何故動物園にカミュが囚われている事を 俺如きが容易に知れたんだ?…わざと情報を流させて、俺の元にカミュを匿わせるのが目的だったのか? 「…何もかもお見通しという事か?」 「そういう事だ」 「だったら一つどうしても聞きたい事がある」 「何だ?」
「どうして俺なんだ?」 「………」 「なんで俺を使った?何故お前は俺にカミュを預けた?何故俺でなければならないんだ?」 「………」 「俺はお世辞にも自分を真面目な男だとは思っていない。犯罪者でしかないんだ」 「………」 「今にも俺がカミュの事を襲い犯してしまうかもしれないんだぞ?そんな危険を考えなかったのか?」 「……………………」 「答えろッッッ!!俺をここまで振り回した理由を!!」 「………それを答えるのは、あんたの人生にも関わる。それでもいいか?」 「構わないさ」 俺は所詮悪人。襲い犯し殺し殺されるのが日常だ。 今更身の危険がどう変わろうと、知った事か。 「岸田洋一…。あんたは…」 だがその後に続いた一言は、本当に俺の人生を一変させた。 A あんたは能力者だ。偽の記憶を植えつけられている B あんたはミズシマが作ったクローンだ。本物の岸田洋一じゃない C あんたも俺達と同じ実験体だ。作られた存在なんだよ
CCCCCCCCCCCCCCCCC
「あんたも俺達と同じ実験体だ。作られた存在なんだよ」 ………………………………………………………………は? 何を言ってるんだ?こいつは?頭が沸いてるのか? 「あんたはミズシマが初期に作ったサンプルの一人なんだ」 ………………………電話の向こうで男が何か言っている。 俺はそれを呆けた面で聞いていた。他人から見たらさぞ低脳な顔に見えただろう。 オボロの話によると、俺は十年以上前に起きた 高速実験船バシリスク号大量虐殺事件の犯人の遺伝子から作られた実験体で サンプルの元になった犯人は船を乗っ取り乗組員と乗客のほとんどを虐殺、 女性は全員強姦したらしい。そんな犯人が死刑執行される前に 極秘に採取しておいた遺伝子からデータを抽出、培養して作られたのが俺だとか。 ………俺は馬鹿面をして固まっていた。 そんな話をいきなりされて、平常でいられると思うか? 俺は記憶している。何年何月にこの世に生まれ幼少時代過ごした場所も、 初めて殺した男の顔も、初めて犯した女の顔も、全部覚えている。 その記憶に嘘があるっていうのか、ええ!?
「いや、お前は誰も殺しちゃいない」 「…何だと?」 「お前は元のデータの死刑囚の記憶に酔っているだけだ。誰も殺していないし誰も犯していない」 「いい加減にしろ!罪を犯す事こそ悪人の美学だ!それを貴様は否定するってのか?」 「…あんた、自分で自分が丸くなっていると思っていないか?」 「どういう意味だ!?」 「あんたの元のデータの死刑囚はもっと好戦的だったし本性を現した時の口調ももっと汚かったらしい」 「そ、それは…」 「強い女しか犯さないと心に決めていたそうだが、その時点でもう可笑しいんだよ」 「………」 「だからこそ俺はカミュをあんたに預けられたんだ。襲う訳が無いと踏んでいたからな」 訳がわからない。俺は俺ではないのか?俺が俺でないとしたら 俺の記憶は一体…?嘘を付いているとしか思えないが… 「とにかく俺は今からそちらへ向かう。カミュを頼む」 一方的に俺を無残に混乱させた電話は一方的に切られた。 「はは…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 俺は笑った。突然自分の人生を根本から否定され、笑うしかなかった。 A ほどなくして、オボロが家にやって来た B 俺は俺の人生をもう一度思い出し振り返ってみた C カミュが俺に声をかけてきた
b
俺は元の部屋に戻りオボロが来るまでの間に PCを立ち上げ、ネットで検索をかけた。 同時に自分の過去の記憶を思い出す。 そういえば俺は今の今まで自分が過去に犯した犯罪の場所を 振り返った事がまるでなかった。中にはニュースやワイドショーで 取り上げられるほどの事件も起こしたはずなのに、だ。 平成○○年………俺が3人の女を監禁し、三日三晩犯したあげく 全員バラバラにして殺した。その場所は…この辺りだ。 モニターに地図が写される。そこには… …???なんだこれは?警察署が立っていた。 まさか。俺が女を監禁したのは小さいバラック小屋だ。 警察署など近くにある訳がない!!この警察署が立てられたのは…昭和△△年!? 俺が事件を起こす数十年も前からこの場所には警察署が!? そんな、そんなはずはない!だったらあの事件はどうだ? 平成□□年に俺が起こした雑居ビル立てこもり虐殺事件だ。 俺はあの事件で善良な人間の振りをして20人もの人間を虐殺した。 これはニュースにもなったしマスコミを騒がせる大事件になったはずだ。 ビルの名前に月日まではっきり覚えている。これで打ち込んで検索をかけてやる。 検索結果が出た。俺はそれを凝視した。………!? 「馬鹿なッ!!」 確かに事件はあった。ビルの名前も表示された。だがこれは…。 『雑居ビル連続爆破事件、犯人の金森弥太郎を逮捕』 何だこれは!?誰だこいつはッ!?俺はビルを『爆破』なんてしていない! こんな顔のこんな名前の犯人など面識も無い!!全く関わりの無い出来事だ!!
その後も俺は記憶を頼りに検索するが、俺の記憶の中で起きた事件は 実際には全くの他人のした犯罪か、事件を起こした場所に矛盾がある等して 全て否定されてしまったのだ…。 「じゃあ、俺は本当に何もしていないのか…?」 A オボロが家にやってきた B その時メールが届いた。差出人不明 C 家の外が騒がしい。何かあったのか?
A
ピンポーン 玄関のインターホンが鳴り響く。誰かなんて見なくても解る。 「…オボロか?」 「そうだ」 ドアを開け、奴を迎え入れる。 「カミュは無事か?」 「向こうにいる」 オボロは部屋の奥に入っていった。 「オボロ兄さま!」 「カミュ!気が付いたんだな!」 二人は抱き合って感動の再開としゃれこんでいる。 俺はそれを冷めた目で見つめていた。いや、腹が立っていた。 今すぐこの場で二人ともくびり殺して自殺してやりたくなるような 衝動的な怒りがこみ上げてきたが、俺は抑えた。感情は殺す。冷静になる。 そして心は冷静にしたまま俺は二人に近寄り…一気にオボロの胸倉を掴み上げた。 「答えろ。さっきの話、あれは真実なのか?」 カミュの前だがもう体裁を取り繕う必要も無い。 「ああ、事実だ」 オボロも胸倉を掴まれたまま顔色一つ変えず答える。 「岸田さん、どうしたの?」 「カミュ、少し黙っていてくれ」 オボロは俺の手を振り払い、さらに話し始めた。
「自分の記憶に矛盾がある事に気付いたか?」 「……ああ、悔しいがその通りだ」 俺の人生、犯罪歴、美学が全て打ち砕かれてしまった。 普通の精神を持つ人間なら自分が全く罪を犯していない事を 当然だと思いこそすれ、わざわざ喜んだりはしないだろう。 だが、俺は悪人だ。自分が悪である事に誇りを持ち 罪を犯す事に喜びを感じる。それを否定されるのは死んだのと同じ事だった。 「お前も自分の記憶が偽りの物だと気付いたのか?」 「そうだ。だから俺は脱走を決意した。カミュと一緒にな」 「…俺が作られた理由はなんだ?」 目の前の二人も俺も全てミズシマ博士が作った実験体だというのなら、 俺にだって作られた理由があるはずだ。 「それは岸田、お前だけじゃない。これから全てのサンプルに聞かれるであろう質問だな」 「どういう意味だ?」 「そして全てのサンプルに同じ答えを返さねばならない」 A ミズシマの作った遺伝子を人から人へ拡散するのが目的だ B もうすぐ『人間狩り』が始まる。それを止めるのが目的だ C 殺人者の遺伝子を集め、戦闘に特化した怪物を作るのが目的だ
A
「ミズシマの作った遺伝子を人から人へ拡散するのが目的だ」 「拡散、だと?」 「そうだ、ミズシマが作った遺伝子には二種類ある」 「一つはカミュやオボロ兄さまみたいな動物や鳥類と人間の遺伝子を掛け合わせるタイプ」 「もう一つは岸田のような外見上は普通の人間と同じタイプだ」 オボロの話によると、動物の遺伝子と掛け合わせるタイプは 獣の生命力や防疫力、肉体強化を図るのが目的だったが やはり耳や羽根や尻尾などの外見上に人ならざる箇所が残ってしまう。 俺の体に流れている遺伝子は、すぐには効果が訪れず 数年をかけて力を発揮するらしい。この遺伝子は 性交をすれば感染し、例えばこの遺伝子を持つ男性が女性とセックスすれば 精子を伝って女性にも遺伝子が混ざり、当然これで妊娠すれば生まれる子供にも遺伝子は含まれる。 俺はそんな遺伝子と凶悪死刑囚の遺伝子を掛け合わせて生まれた実験体らしい。 「この遺伝子を持つ男性が他人と交われば交わるほど遺伝子は散らばっていく」 「そして遺伝子を移された女や生まれた子供が大人になってセックスしても…」 「そういう事だ。何十年もかかるが確実にミズシマの作る遺伝子が世界中に広がっていく」 記憶自体は作られた物でも、性衝動や本能は遺伝子のデータ元の人間の特性を濃く受け継ぐ。 だから最初の遺伝子を広める人物のデータ元は、俺の元データのような強姦魔、 ホストやAV男優に風俗嬢と『不特定の他人と性交する回数が多い』人間から取ったらしい。 遺伝子を気付かせずにバラ巻く最初のサンプル。それが俺だったという事だ。 つまり、俺は『生きていた』のではない。『生かされて』いたにすぎないんだ…!! 「では、俺は常に監視されていたのか?」 「常に、じゃあない。だが監視している者がいるはずだ」
「俺の遺伝子は体にどんな効果を与えるんだ?」 「それが解らないんだ。だが、岸田のようなサンプルが活動してもう数年経つ」 「効果が目に見えて現れるのはそろそろだという事か」 「俺はそれを確認する為と、お前のようなサンプル全員に会い注意を促すのが目的なんだ」 オボロ達の遺伝子ですら外見を人間として取り繕う事はできない欠陥がある。 俺の遺伝子にも何か不都合がある可能性があるという事か。そしてそれは発症するまで解らない。 A そういえば、あの時言った『鎖』ってどういう意味だ? B そんな事を言っていると早速俺の体に異変が起こった! C そこに他のサンプルが現れた(人物指定) D 突然ガラスを割り敵が乱入してきた!何者だ?(人物指定)
A
「そういえば、あの時言った『鎖』ってどういう意味だ?」 カミュを連れて逃げろ、彼女は大事な『鎖』なんだ! オボロは俺にカミュを預ける際にこう叫んだ。 この鎖というのが俺は気になっていた。 「その事なんだが……岸田は鎖と聞いて何を連想する?」 「やはり縛る、繋げる、絡みつく、拘束するという辺りか」 「だろうな。俺もそんな感じだ。で、それは置いといてだ」 「何が言いたいんだ?」 「───『糖鎖』という言葉を知っているか?」 糖鎖?砂糖を逆さまにした言葉か?…解らん。 「待ってくれ、今調べる」 俺はまたPCの前に座り糖鎖を検索する。話術や演技の知恵はあっても こういう知識はないとは…自分が情けねえ! 糖鎖について検索し調べていく。糖鎖とは、 解析が完了したヒトゲノム遺伝子に続く次の生命の設計図として 研究が進められている人間を構成する大事な物質の一つのようだな。 ちなみにDNA、タンパク質、糖鎖。この3つが生命の三大設計図と言われている。 糖鎖はタンパク質や脂質等と結合し、色々な糖質や栄養素を体中に送り込み、 自然治癒力を上げ、60兆個から成す人体細胞全てを覆っている とにかく生命体になくてはならない重要な物らしい。 人間一人一人の血液型も免疫作用もこの糖鎖により決まっているという。
「難しい話だが、遺伝子と同じくらい人体に必要な物なのは解った」 「いや、俺も研究所を脱出する時に少し調べただけに過ぎない」 「それで、この糖鎖とお前の言った『鎖』に何の関係があるんだ?」 「……こっちに来い。カミュ、少し待っててくれ」 オボロは玄関の方へ向かい、俺を呼びつけた。カミュに話したくない事なのか? 「それで、何の話だ」 「──人は生まれる時も、生まれてからもずっと『鎖』に縛られている」 「どういう意味だ?」 「例えばDNA。これが鎖状の形をしているのは知っているだろう?」 「ああ、それぐらいは知っている」 「糖鎖もそうだ。細胞同士を繋げ、絡まっている『鎖』だ」 「だからなんだ?その話とお前の言う『鎖』に何の関係があるんだ!」 「ミズシマ博士はこの『鎖』を引きちぎり、人間を解き放つのが目的だった」 「それは知っている。以前テレビでそんな電波な事をしきりに叫んでいたからな」 「だが、その『鎖』を外したら俺達はもはや人ですらなくなってしまう」 「いい加減にしろ!勿体ぶらずに結論を言ってくれ!!」 俺が怒鳴ると、オボロは真剣な眼差しで言った。
「カミュを守って、いや助けてほしい」 「なんだと?」 「カミュは──」 A ミズシマ遺伝子を無効化する抗体を持っている。人を人のまま繋げられる『鎖』だ B 糖鎖の影響でタンパク質が変異し、もうすぐ変身してしまう。『鎖』が解かれてしまう C カミュが死ねばミズシマ遺伝子を持つ全ての人が暴走する。彼女自身が世界の安全を支えている一本の『鎖』なんだ
悩むがC
「もしカミュが死ねば……俺やお前、それにミズシマ遺伝子を持つ全ての人間が暴走してしまうんだ」 「ぼ、暴走だと?!」 「ああ。詳しくは知らないが、カミュの生命反応とミズシマ遺伝子を持った人間の『糖鎖』とは、密接な関係があるらしい」 「…………」 あまりの展開に言葉を失ってしまう。 ……『鎖』とはそんな意味だったのか。 「早い話、俺やお前の正常さとカミュの命は一蓮托生ってことか」 「それだけじゃない。他のミズシマ遺伝子の持ち主や、そいつ等と性交を持った人間やその子供もだ。 だからカミュを助けてほしい。彼女自身が世界の安全を支えている一本の『鎖』なんだ」 オボロの懇願。目は真剣そのものだ。 犯罪者の遺伝子と記憶を持つ俺に、真摯な態度を崩さない。 それだけカミュを守りたい、助けたいと考えているのだろう。 と、ここで俺は一つの疑問を思いついた。 ……いや、思いつかなかったほうが良かったのかも知れない。 だが思いついた以上、聞かねばならないものだった。 「一つ聞きたい。カミュが死ねばミズシマ遺伝子の持ち主が暴走するって言ったよな」 「ああ」 「少なくともお前達のような、動物や鳥類と掛け合わせたタイプはごく少数だろう」 「珍獣扱いされるぐらいだかな」 「それで、俺のような最初から『ミズシマ遺伝子の拡散』を目的としたタイプはどれくらいいるんだ?」 「……俺達よりいくらか多いのは確かのはずだ」 「仮に他の俺と同じタイプの人間が、既に何人かの女と性交をしてしまったとしても…… カミュの死で暴走してしまう人間って、世の中全体から見たらごく少数じゃないか?」
「…………」 「…………」 気まずい沈黙が俺達の間に流れた。 オボロの目が「何で気が付いたんだよ、このバカ!」と言っているように思える。 「だからって、岸田。世の中のために進んでカミュを死なせて自分も暴走するなんて認められるか?」 「No! 絶対にNoだ!」 俺はそんなお人好しでは無い。 「もちろん俺もだ。だがお前のように考える人間も当然いる。自分達が助かるために少数を切り捨てようとする連中が」 「そういう連中がカミュの命を狙っているのか?」 「ああ、そういう事だ」 「だとして! 俺達に対抗策はあるのか?! 俺達は圧倒的少数者で厄介者なんだぞ!」 声を荒げる俺に、オボロは渋い表情を浮かべた。 「……手段が無くはない」 「何だそれは? 勿体ぶらずに言え!」 A 「……計算上、カミュの子供から暴走を無効化できるワクチンが採取できるらしい」 B 「ミズシマ遺伝子を持つ人間の中に、暴走を無効化できるワクチンが採取できる突然変異種がいるらしい」 C 「……カミュを、仮死状態のまま永遠に『死なせない』ようにするんだ」
A
「……計算上、カミュの子供から暴走を無効化できるワクチンが採取できるらしい」 「子供だと?」 「そうだ。人体は上手くできていて、悪い因子を進化や遺伝情報から取り除くように出来ているのかもしれない」 確かにその子供からワクチンを取り出せばミズシマ遺伝子かに対する安全は保障されるだろう。 問題はまだあるんだが…、それより気になるのは、 「こんなガキに子供だと?」 悪いがカミュはどう見ても13、4歳ぐらいにしか見えんガキだ。 胸だけは発達しているが。子供が子供を生むってのか? いくら最近は高校や中学でガキを生んだり捨てたりしてる馬鹿女が増えてるとはいえ。 「お前がカミュを連れて研究所から逃げたのはいつだ?」 「半年ほど前だな」 この時点で無理がある。半年でどうやって子供を生む?早産にもほどがあるぞ。 大体、妊娠してるなら今カミュの体型は腹ボテになってなきゃまずいだろうが! 「待ってくれ。岸田、お前は普通の人間の常識で話をしているだろう?」 「…じゃあ、常識的に生まれた子供ではないという事か?」 「それに、カミュの子供という言葉も言葉通りに捉えているだろう?」 「それ以外何が考えられる?」 「まず、俺やカミュ達の肉体は遺伝子工学で培養され作られた」 「俺も作られた存在だというのならば、同じ原理で人工的に作られただろうな」 「鋭いな。俺達は普通の人間の数十倍の勢いで成長し生み出された」 「それを前提に踏まえたとして…、どういう事になるんだ?」 「詳しい説明はこれからするが…、驚かずに聞いてほしい」 「今更これ以上驚く事などあるか!」 A 「実は、既にカミュは子供を生んでいる」 B 「カミュのデータを親元として作られた実験体がいるらしい」 C 「カミュと交わりを持った男がさらに他の女と交わって、それで生まれる子供からもワクチンは採取できる」
Aかな
「実はな……カミュは既に子供を産んでいる」 「なっ!!!」 これ以上驚く事など無いと、さっきの言葉がもう覆ってしまった。 「カミュが……子供を……」 思考が混乱する。言葉が続かない。 「カミュは妊娠から出産まで、普通の人間のように10ヶ月も時間を必要としない。 受精から一週間足らずで、赤ん坊を産むことができる」 「そんな……まさか……」 「お前もだが、俺達が普通じゃない存在なのは十分理解しただろう」 「…………」 確かにオボロもカミュも普通の人間じゃない、オボロに言わせれば俺もそうらしいが。 通常の妊娠から出産までを基準に考えるなど、無意味なのかも知れない。 だが――それでも―― (カミュが……あのカミュが……何かの冗談だろ) モノマネのネタをハズした時に見せた、楽しそうに笑った顔。 パジャマを着せた時に見せた、安心しきった表情。 あの無邪気で純粋なカミュに、そんな過去があったなんて―― (ん、待てよ?) カミュの過去に少なからぬショックを受けていた時、脳裏にごく素朴な疑問が浮かんだ。 「ちょ、ちょっと待て。カミュは既に子供を産んでいると言ったな」 「ああ」 「おかしいじゃないか。だったら子供からワクチンを作って問題は解決するハズだ」 「…………」 「なのに何故カミュは追われている? 御堂は手を出してくる?」 そうだ、子供がいるならワクチンが作れる。 ワクチンをミズシマ遺伝子の持ち主に摂取させれば、それで全てカタがつくはず。 「……実は―― A カミュの子供が、行方不明なんだ」 B カミュの子供は……死んでいるんだ」 C ワクチンが採取できるのは(男・女)の子だが……カミュが産んだのは(女・男)の子なんだ」(組み合わせを指定)
う〜ん、どの選択でどう変化するかさっぱり想像がつかん Bでいいや
「カミュの子供は……死んでいるんだ」 「どういう事だ!?」 「その前に俺達が研究所を脱出した後の事を話さなくてはならない」 オボロはさらに語りだした。カミュを助けだしミズシマ研究所から逃げた後の事を。 「俺がカミュを助け出した時には、既に腹は少し膨れていた」 「その時点で誰が父親なのかも解らないのに種付けされてたって訳か」 「人工授精だろうとは思うが、とにかく人間の胎児なら3、4ヶ月といった辺りだろう」 「そこまで成長が早いとは…」 「研究所から離れ追っ手が来ないのを確かめた後、すぐに俺は医者を探した」 だが、ただでさえ羽根を生やしているような異形の者。 しかも僅か数日で成長し出産するなんて非科学的な状況を まともに受け入れてくれる病院がなかなかあるはずもなく… 「やっとカミュを受け入れてくれる病院を見つけた時は、カミュはもう限界だった」 陣痛がいつ始まってもおかしくないほどカミュは腹が膨れ上がっていたのだ。 「その病院の医者は俺達の姿を見ても何も騒がず、すぐに入院の準備に取り掛かった」 「まさにギリギリセーフだったのか」 「医者は明日にはもう出産するだろうと言い、俺を安心させてくれた。 俺は連日カミュの為に動き回った疲れもあり、そのまま病院のソファーで寝てしまったんだ」 そしてオボロは目を覚ました。が、ここで事件が起こる。 「俺が起きると明らかに様子がおかしかった。嫌な予感がした」 「何があったというんだ?」 「結論から言うと…、カミュが浚われていた」 「病院内の状況はどうなっていたんだ?」 A 病院の医者や看護婦も全て消えていた B 血と死体だらけだった。何者かに襲撃され、荒らされた跡がある。 C いや、病院そのものが『なかった』。俺はまったく知らない場所で寝ていたんだ
B
「病院の中はそれはもう凄まじい事になっていた…」 オボロの話を聞いて俺は絶句した。夜中に目を覚ますと 病院の廊下、病室、ナースルームを問わず血の海。 患者や看護婦は全員殺されていた。 「俺は血相を変え、カミュのいる病室に走った」 オボロはカミュの病室に向かう。だが、そこには誰もいなかった。 目の前にあるのは誰も寝ていないベッド、割られたままのガラス窓、そして… 「――血溜まりの中に捨てられていた、赤ん坊の死体だったんだ…」 「それがカミュの子供だったというのか?何故解る?」 「俺達の体を見れば解るだろう?体のどこかに必ず普通の人間とは違う特徴が出来る」 「ああ、そうだったな」 「その子も背中の肩甲骨の辺りに羽根が少し生えていた。それでカミュの子供だろうと解ったんだ」 その後オボロはカミュが生きていると信じ半年間も一人で捜索を続け、 ミズシマ遺伝子に関する知識、情報、一部の感染者の居場所等を頭に叩き込んだ。 そしてついに動物園にカミュが囚われている事を嗅ぎ付ける。 「後は知っての通りだ。…やっとカミュを助けられた」 「……しかし、無茶苦茶をやるもんだな」 「岸田、お前があの時いてくれたのは偶然だった。だが、俺は必然だと思っている」 「必然だと?」 「何も知らず生きていく俺達実験体が真実を知る為のな」 「ところで、オボロが病院で目が覚めた時には既に皆殺しだったと言ったな?」 「ああ、そうだ」 「じゃあ何故オボロ、お前は助かったんだ?お前も寝ている内に殺されたかもしれないんじゃないか?」 「敵の立場で考えろ。俺が目を覚ましたら、俺は当然反撃するしカミュの元へすっ飛んでいくだろう?」 「ああ、そして敵の立場で考えればカミュを殺さずに攫うという事はだ、」 「カミュが死ぬと不味いという事を既に知っているという事になるな」 「カミュの子供だけは殺していったというのも、ワクチンが子供から作られるのを知っていたからと予想できる」 「やはりカミュを攫った連中はミズシマの手の者か、カミュの必要性を解っている連中と考えるべきか…」
「しかしミズシマの関係者だったら、カミュを攫った後研究所にまた戻すはずだ」 「だから気になるんだ。病院でカミュを攫った連中は誰なのか。半年もの間何をしていたのか」 「あの動物園の連中はどうなんだ?本当に見せ物目的だけでカミュを捕まえたと思うか?」 「確かに、言われてみれば…それに、あれから半年も経っている」 「…何か考えがあるようだな」 「俺はカミュを助けるのに必死で動物園の内情までは考えていなかった。だが…」 「だが?」 「半年もあれば、何でもできる。これはあくまで予想に過ぎないが…」 オボロは語りだす。 「これはあくまで予想なんだが…」 A あの動物園に、カミュが産み落とした他の子供がいるのではないか? B あの動物園は、ミズシマ研究所と裏で繋がっているのではないか? C あの動物園で、カミュは既に新しく種付けされているのでは?
C
「あの動物園で、カミュは既にまた妊娠しているのでは?」 「おい、それは今度こそ本当に考えが早すぎるんじゃないか?」 カミュが妊娠すれば常人の数十倍のスピードで成長するのは聞いた。 しかし、そうだとしても今のカミュの腹部は全く膨れてなどいない。 「だから言っただろう、これはあくまで予想だと。だが――」 その時、部屋の奥からカミュが顔を覗かせた。 「うぷ、気持ち悪い…」 「カミュ!どうした!?まさか…岸田ッ!洗面所は?」 「こっちだ!」 オボロはカミュを抱えて洗面所に向かった。まさか… 流し台から吐く声と水を流す音が聞こえる。 「岸田、この辺に病院はあるか?」 「何?ではやはり…」 「ああ、一応見てもらった方がいいだろう」 とはいえ、まともな病院ではカミュのような外見の人が行って いきなり取り合ってくれるとは思えない。 それに表立った病院だとまた襲撃されるかもしれない。 だが、心配ない。何も問題はないのだ。 「オボロ、今度は俺に任せてくれ」 俺は病院に電話をかける。といっても普通の病院じゃあない。 前にも言ったろう?悪には悪の、裏には裏の繋がりがある。 小さいのではヤクザの指詰めの治療から 大きいのでは臓器ブローカーから買った内臓の移植手術まで、 そういう裏の仕事を生業としている闇医者はいるもんだ。俺はある病院に電話をかけた。 その病院は… A 霧島診療所。表向きはただの診療所だが裏では絶大な人気を誇る。 B 石原診療所。御堂がいつも世話になっている診療所らしいが… C 助産師エルルゥ。「何だと!?」その名前を聞いた途端オボロが反応した!
c
俺はとある産婦人科に電話をした。 この産婦人科は、所謂訳ありの仕事を裏でやっていて 堕ろせなくほど成長した胎児の堕胎等 犯罪が絡む仕事も請け負う、まさに裏の産婦人科だ。 この婦人科なら子供を産みに来た女がヤクザだろうが犯罪者だろうが 奇形の障害者だろうが、どんな奴でも対応してくれるだろう。 表立った病院ではないので敵に襲われにくいというメリットもある。 ここにエルルゥという凄腕の助産婦がいるらしい。 噂ではどんな難産でも何なくこなし、母体に苦痛を与えず 出産させられる、若くして産婆のスペシャリストと言われるほどだとか。 さらに薬学にも詳しく薬の調合の分野でも有名らしい。 ただ、こんな裏の世界にいながら子供を堕ろす仕事には立ち会わず、 あくまでも出産する仕事しか受けないらしい。 何故これほどの女が表の世界ではなく裏の世界に生きているのか? とにかく俺はその産婦人科に電話をかける事にした。 「もしもし、○○産婦人科ですか?そちらにエルルゥさんは…」 「何だとッ!?」 突然、オボロが叫んで俺の目の前に詰め寄ってくる。 「あ、はい。解りました…今電話に出すってよ」 「今、エルルゥと言ったな?本当にエルルゥという名前なんだな?」 「ああ、間違いないが」 「そいつは俺達と同じ半獣半人の実験体だ!研究所で名前を聞いた事がある」 「何だとッ!?」 「俺達以外にも研究所から逃げた実験体がいたとはな…」 思わずオボロと同じ事を言ってしまった。 いや、だとすれば何故これだけの腕前を持ちながら 裏の世界に生きているのか納得がいく。カミュやオボロと同じ外見だとしたら、 表の世界では目立ちすぎる。奇異の目で見られすぎるからだ。 しかしこれは好都合だ。オボロ達と同じ実験体なら俺達に快く協力してくれるだろう。
「もしもし」 「エルルゥさんですか?」 「はい、そうですが…」 ここで俺は裏の仕事の合言葉を言う。 「ルクスゥト」 「!!──────解りました。どのような仕事ですか?」 オボロが俺に換わってくれという身振りを見せる。俺は受話器を渡した。 「ミズシマ遺伝子の実験体の女性がいる。妊娠しているかどうか調べてほしい」 「ミズシマ!?どうしてその名前を知っているのですか?」 「俺はオボロ。お前と同じ実験体の一人だ。いや、逃げてきた仲間という方が正しいか」 「そこまで知っているなんて…」 「今すぐにお前の力が借りたい。同じ実験体として」 「………」 しばらく沈黙の時が続き、エルルゥは言った。 A 解りました。今すぐにこの病院に来てください B 解りました。私がそちらに伺います C 待ってください。今どうしても手が離せない用事があるんです
B
「解りました。私がそちらに伺います。それまで女性を安静に寝かせておいて下さい」 「解った、住所は――」 オボロは俺の家の住所をエルルゥに伝え、電話を切った。 「ほらカミュ。もうすぐお医者さんが来るから」 「うん……ありがとう岸田さん」 電話の後、俺達はカミュをベッドに寝かせた。 「……すぅ……すぅ」 疲れていたのだろう。少しするとカミュは穏やかな寝息を立てだす。 未だに信じられなかった。カミュの幼い寝顔を見ていると。 彼女が既に一度子供を出産し、しかもその子供は殺され、あまつさえ再び妊娠させられた可能性があるなんて。
エルルゥが来るまでの間、俺とオボロは現状を整理するために話し合い始めた。 「……ところで、半年前にカミュが出産した子供を殺し、カミュを浚った連中が現れたんだよな」 「ああ」 「そいつ等はカミュもお前も殺さなかった、だがワクチンの取れる子供は殺した」 「その通りだ」 「そこから考えると、連中は『ミズシマ遺伝子の暴走無力化』を嫌っていると考えられる」 「なるほど」 「だが、カミュ自身は殺さなかった。彼女を殺せばすぐにミズシマ遺伝子は暴走しだすはずなのに」 「確かに…不思議だ」 「ここからは俺の予想だが、カミュを浚った連中は、ミズシマ遺伝子がより広まるのを待っているのではないか? 十分に世の中にミズシマ遺伝子が広まったところで、カミュを始末して大勢の人間を暴走させる。 今カミュを殺してしまっても、少数の人間しか暴走しないからだ」 「ならカミュを死なせないように監禁しておくのじゃないか、カミュに新たな子供を妊娠させるなど話があべこべだ」 「俺はカミュを浚った連中と敵対関係にある別の連中が、カミュを浚い返したのだと考える。 そいつ等はワクチンを作り出すために、動物園の連中にカミュを引き渡した。 あるいは動物園の連中自身が、カミュを浚った連中と敵対関係にあるのかも知れない。 こう考えれば色々と辻褄が合うんじゃないか?」 「間違っていないようには聞えるが……」 俺の話を聞き、オボロは複雑そうなな顔を浮かべる。 正直なところ、俺だってそうだ。仮説に仮説を重ねて自論を語っているに過ぎない。 真相に迫りたければ、調べねばならない事が山ほどある。 A しばらくすると、エルルゥが俺の家に来た。 B ……しばらく待ってもエルルゥが来ない、何かあったのか? C その時、御堂から電話が掛かってきた
c
俺はオボロと現状について話し合いながら、エルルゥの到着を待った。 そろそろ到着するころか、そう思ったその時。 「電話? こんな時に一体誰だ?」 不意に電話のベルが鳴った。 俺はオボロとの会話を一旦切り上げ、受話器を取る。 『はい、もしもし』 『ゲーック。元気か岸田』 『み、御堂…さん』 独特の口癖、聞き覚えのある中年ボイス。 電話の主は御堂だった。 (御堂……コイツの立場もよく分からん) 御堂はカミュを「逃す」のが組織からの任務だと言っていた。 それが本当なら、もうコイツの仕事は終わっているはず。 なのに何故、今さら俺に電話を掛けてきたんだ。 予定と違って、俺が乱入してきたオボロと協力してカミュを逃したからか? ならば何故あの時、オボロをキッチリ仕留めようとしなかったんだ? どうしてオボロを狙撃し、そして中途半端に止めたのか? 単に敵と勘違いしただけだったのか? 他に理由があるのか? 俺は御堂の次の言葉を待った。 A 『仕事も終わったし酒でも飲まないか。良い気分だからおごってやるぞ』 B 『予定通りオボロと接触できたか?』よ、予定通りだと? C 『俺の組織がカミュを引き渡せと言ってるんだが、どうだ?』
Bだな 岸田さんらしさが失われてきてる
「予定通りオボロと接触できたか?」 予定、予定通りだと?何を言っているんだ? 「御堂さん、予定通りとはどういう意味ですか?」 「お前には黙っていたがな…俺の本当の任務は 『オボロ達と岸田洋一』を合流させる事だったんだよ」 何?では… 「俺がお前と動物園で会ったのは偶然じゃない。 あの日にお前が動物園にカミュを見に行く事も、 オボロがカミュを助けに向かう事も全て知ってたんだよ」 「!!」 「その上で俺はお前をカミュ救出に誘い、 わざと手加減してオボロを狙撃した。オボロとお前を接触させる為にな」 やはり御堂の行動は全て計算づくだったのか! 不自然な出会いや撤退だと思ってはいたが… 「まさかオボロがカミュをお前に預けるとは思わなかったぜ。 そこまで確認して、俺は去った訳だ」 「………………」 「オボロがカミュをお前に預けたままボサッとしてる訳ねえよなあ。 当然、オボロとまた会っているんだろう?それとももうそこにいるんじゃねえか?ケケケ」 「御堂さん、貴方はカミュやオボロ達にとって敵ですか?味方なのですか?」 俺は敢えて会話に答えず、御堂に聞いてみた。 「カミュやオボロ達…だけじゃねえなあ!『お前』も入ってるんだぜ、実験体の岸田さんよ」 な…に!?御堂は俺が実験体だという事も知っている?という事は、 「それらは全て御堂さんに任務を下した組織から聞いた事ですか?」 「ケケケッ!そうだ。任務を受ける前にお前らの事は一通り聞いてある」 「その組織は一体何者なんですか!?」 「ゲーック、そいつぁ守秘義務って奴だ、言う訳にゃあいかねえな!」
糞が!それが解ればこの先の行動の指針も決められそうだったのに! 「…だがこれだけは教えてやる。今俺はお前らにとって敵か味方かと、そう言ったな?」 「はい、言いました」 「答えは、どっちでもねえ。次の任務で味方になるかもしれんし敵に回るかもしれねえ」 「それはどういう意味で…!?」 「俺は仕事として、組織に金を貰い任務を果たしただけだ。 もう前の仕事は終わった。次の命令次第では…」 「協力もするし、殺す事もあるという事ですか」 「そうだ。俺は傭兵だからな…情やエゴで動いたりはしねえ」 御堂のような化物を敵に回したくはない。 だが御堂を操る組織が掴めない以上はどうしようもない…! 「ただ、今の所はお前らが殺されるなんて事はないと思うぜ」 「何故なんですか?」 「俺が命令を受けた組織は、お前達実験体同士を集め、合流させる方向で動いているらしい」 「集める?実験体を殺さず、捕まえもせずに?何の目的で?」 「それは解らねえし、俺にとっちゃどうでもいい事だ。とにかく俺が話せるのはここまでだな」 「そうですか…」 「ただ忘れるなよ。あくまで今の組織はお前を殺さないだけで、他にお前達を狙ってる連中がいるかもしれねえ」 それはいる可能性が大きいだろう。カミュを病院から攫った奴等も気になる。 「案外そういう連中に俺が雇われるかもしれないぜ?ゲッゲッゲ!!」 「御堂さん、笑えない冗談ですよ」 「ケケケ、まあいい。お前とオボロ達が行動を共にしているのを確認できたら 俺はそれでいいんだ。気が向いたらまた連絡してやる。またな」 一方的にかかってきた御堂からの電話が終わった。 だが御堂の謎の行動の理由が解った事と、御堂を雇っている組織が 少なくとも俺やカミュの命を脅かす存在ではない事が解っただけでも収穫というべきか。 A ほどなくしてエルルゥが家に到着した B 再度電話がかかってきた。御堂やエルルゥではない。誰だ? C 家の側で叫び声が聞こえた!この声はエルルゥか!?
A