葉鍵ファンタジーVI +感想スレッド

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1名無しの語り部
レフキー、という都市がある。
人々の夢を奪いつつ、また同時に与え続ける都市。
夢を抱いた若者なら、必ず一度は訪れる都市。
この街を、昔から住んでる人々はこう表現する。
「全てが有り、そして全てが無い街」(ALL AND NOTHING)
皆に伝えたい物語・伝説も数え切れないほどあるのだが、
今回は、『これから』物語を作る(であろう)人々の話を語るとしよう………。

過去ログや関連リンク、お約束は>>2-3 あたり。
2名無しさんだよもん:02/09/12 22:09 ID:/FG+t/Ks
1000
3名無しの語り部:02/09/12 22:09 ID:Em0JDyFL
【過去ログ】
葉鍵ファンタジー
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1009/10093/1009367766.html

葉鍵ファンタジーU
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1010/10103/1010300239.html

葉鍵ファンタジーV
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1012/10128/1012897623.html

葉鍵ファンタジーIV
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1017/10177/1017757170.html

葉鍵ファンタジー感想&討論スレ
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1011/10111/1011115518.html

葉鍵ファンタジー感想&討論スレU
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1018/10188/1018840183.html

葉鍵ファンタジーV+ 感想スレッド
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1028/10286/1028662667.html

過去ログ編集サイト(いつもありがとうございます)
http://isweb45.infoseek.co.jp/play/lefkey/

【関連リンク】
葉鍵リレー小説総合スレッド 第3章
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1028225552/l50
4名無しの語り部:02/09/12 22:10 ID:Em0JDyFL
【書き手さんのお約束】

○書き手さん、絵師さん、新規参加募集中!
○ただ、新規参加の方は過去ログには目を通すように願います。
○SSを投稿する際には、どこのパートからのリレーなのかリンクを張っておくと
 読み手さんにもわかりやすくなります。
○後書き、後レスなど、文章中以外での補足説明は避けましょう。
 SS書きはSSで物事を表現することが肝要です。
○作品の最後に書く補足説明は、作品内の纏め程度に考えてください。
 補足説明とは、作品内で書いていない設定を述べる場所ではありません。
○新キャラを登場させる際は、強さのインフレも念頭に置きましょう。
5名無しの語り部:02/09/12 22:11 ID:Em0JDyFL
【読み手さんのお約束】

○感想は常時募集中です。今回は本スレ感想スレ統合の方向で。
○書き手叩きは控えましょう。
○指摘や意見は、詳しいほど書き手さんのためになります。
 逆に、ただケチを付けるだけでは、書き手さんのためにも、
 また他の読み手さんのためにもなりません。
○読んでる内に、新たに書き手さんになりたくなった方は、
 【書き手さんのお約束】を参考にして下さい。
○絵師さんも随時募集しております。

〇感想は書き手の教科書であり、燃料です。
 活発な感想頂けると嬉しい限り。
6名無しさんだよもん:02/09/12 22:17 ID:AwYKw5NO
取り合えず新スレおめ〜
このスレの運命が、そのまま葉鍵ファンタジーの命運を決めそうだな……
7チェイス:02/09/12 23:14 ID:AwYKw5NO

 自分の家に帰ってきたのはいいが、何故か完全武装の黒騎士も一緒だった。
 思わず硬直する浩之の腕を引っ張って、七瀬は駆け出す。
「逃げるわよっ、藤田!」
 開口一番、七瀬はダッシュで窓を蹴破った。
「うわっ、ひでぇ……」
 粉々に砕け散った窓を見て、思わず憂鬱にうめきながら、浩之もその後を追う。
 窓枠で手を切らないように気を付けながら、浩之は家の裏の路地に飛び下りた。
「追えっ、逃がすな!!」
 二人が逃げ出そうとしているのを見て、黒騎士達は慌てて窓に駆け寄る。
 だが、身軽な二人とは違い、重装備で全身鎧の彼らは簡単に窓を抜けられない。
 最初の一人の奴の肩当が枠に引っ掛かり、出るに出られずもがいている隙に、浩之と七瀬は急いでその場を後にした。

 じぐざぐに裏道を駆け抜け、いくつもの通りを横切っていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……おい、そろそろ巻いたんじゃないか?」
「……そうね」
 荒く呼吸する浩之とは対照的に、七瀬は僅かに息を切らせただけだ。
「藤田、あんた運動不足なんじゃないの?」
「……あのなー、万年怠惰男と冒険者を一緒にしないでくれよ」
 浩之も運動神経には自身がある方だったが、さすがに体力ばかりは、簡単につくものではない。
 もっとも、怪力と体力に関して言えば、七瀬に敵う人間はそうはいないのだが。
「取り合えず、人の多い通りに出ようぜ」
「木を隠すには森の中ってわけね」
 浩之の息が整うのを待ってから、ふたりは早足で中央通に向かう。
 しかし、鋭い風切音が響いた瞬間、浩之は七瀬に体当りをかましていた。
8チェイス:02/09/12 23:15 ID:AwYKw5NO

「……っ!!」
 一瞬前までふたりが立っていた場所に、ナイフが深々と突き刺さる。
 倒れたままに慌てて頭上を見れば、そこには黒尽くめの男が一人。
「今度は刺客かよっ!?」
「……まって、殺気が感じられないわ。今の一撃も、足を狙ったみたいだし……」
 そう言ってから、七瀬と浩之ははっと自分達の状況を思い出した。
 どう見ても、道端で浩之が七瀬を押し倒そうとしているようにしか見えない。
「あ、わりぃ」
「………」
 飛び退く浩之に、七瀬も慌てて起き上がって、腰の剣を構え……「げっ」と喉の奥でうめいた。
 美しい彫刻の彫られた刀身には、細かな傷とヒビが、無数に走っている。
 志保から借りた飛翔の剣は、度重なる連戦に加え、七瀬の怪力によってすでに寿命が来ていた。
 こんな状態では、いつ折れても不思議ではない。
 さらに悪い事に、背後から黒騎士達が現れ、七瀬と浩之を取り囲む。
「大人しくしろ!」
「安心しろ、殺しはしない。抵抗する気ならば、腕の一本ぐらいは切り落とすが」
 完全に本気の口調の黒騎士達に、七瀬は唇を噛んだ。
 背中合わせで構えてはいるものの、七瀬はヒビの入った剣、浩之に到っては丸腰である。
「……こりゃ、大人しく捕まった方がいいみてーだな」
「確かに、ちょっとこれは多勢に無勢ね」
 浩之が溜息混じりに腕を下ろし、七瀬もそれに倣う。
「よし、お前達、こいつらを連れていけ」
 リーダー格らしき男の指示で、七瀬と浩之は後ろ手に縛られた。
9チェイス:02/09/12 23:38 ID:AwYKw5NO

 黒騎士たちの動きは、完全に訓練された者のそれであった。
 しばらくして、軽快な馬の足音と共に、浩之たちの前に馬車が走りこんでくる。 
 砂埃を巻き上げ、到着した馬車の姿に、浩之と七瀬は目を丸くした。
「……って、この馬車!?」
「随分と派手な馬車ね……」
 七瀬の言う通り、要所要所に金や銀の彫り物がされており、かなり位の高い人間が乗るような馬車であった。
 間違っても、罪人や捕らえた人間を運ぶような馬車ではない。
 だが浩之の目を引いたのは、豪華な飾りや馬車の創りではなかった。
「七瀬、この馬車に付いてるエンブレムは……」
 浩之が何か言いかけた寸前、黒騎士が後ろから浩之を突き飛ばす。
 浩之は体勢を整える間も無く、馬車の中に倒れこんだ。
「おうっ……」
「きゃっ、ちょっと押さないでよ!」
 慌てて浩之が身体を起こした瞬間、その真上に七瀬が倒れこんでくる。
「ぐわっ!」
「ちょっ、ちょっとどいてよ!」
「七瀬が上に乗ってるんだろ!」
 真正面から抱き合うような形になった七瀬は、真っ赤になりながら立ち上がろうともがいた。
 だが、後ろ手に縛られている上、豪華な割に狭い馬車の中では、体の自由が利かない。
「お二人さん、仲良くじっとしてろよ」
 からかうような黒騎士の声がかけられ、ばたん、と馬車の扉が閉まった。
「くっ、せめて縄を解いて行きなさいよっ!!」
 七瀬が顔を上げ、外に怒鳴るのと同時に、馬車が勢いよく走り出す。
 急に動き出した馬車に体勢が崩れ、七瀬の柔らかい身体が浩之にぐっと押しつけられた。
 七瀬は何とか体勢を立て直そうとするが、焦れば焦るほど、ふたりの身体はいやらしく絡まりあう。
10チェイス:02/09/12 23:39 ID:AwYKw5NO

「……ダメだこりゃ。停まるまで待った方がいい」
「な、なに言ってんのよ!」
 七瀬の胸に顔を埋めたまま、投げやりに言う浩之に、七瀬は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「そうは言うけどな、七瀬。下手に逃げようとするから余計密着しちまうんだよ」
「あ、あたしが言ってるのはそう言う意味じゃないっ! 逃げるなら今のうちでしょ!!」
「いや、多分この馬車の持ち主が俺の予想通りなら、大丈夫だろ」
 平然という浩之に、七瀬は目をぱちくりさせた。
「何、どう言うこと?」
「さっき、馬車についてたエンブレム……あれ、倉田家のだ」
 七瀬はぎくりと浩之を見た。
「倉田家って……あの?」
「多分、佐祐理が行方不明になったから、一番怪しい俺を捕まえたんだろうな。わはは」
「笑うなああぁぁっ!! それじゃ、あんた誘拐犯だと思われてるんじゃないの!?」
「あ……ばれたか」
「ばれたか、じゃないわよっ!! あたしは無関係じゃない!」
 顔を真っ赤にして怒る七瀬に、浩之は静かに声をかけた。
「……七瀬」
「な、何よっ」
 間近でじっと見詰められ、七瀬はどきりと口を閉じる。
「あんまり動かないでくれ……ちょっと、下がヤバイ」
 浩之の言葉に、七瀬ははっと顔を強張らせた。
11チェイス:02/09/12 23:40 ID:AwYKw5NO

 絡み合っている足と足、その太ももに当たっている、硬いモノの正体は……
「あ、あ、あ、あんたはこんな時にっ!」
「そうは言うけどな、これはいわゆる生理現象って奴で……」
「冗談じゃないわよっ!」
「いや、冗談を冗談で終わらせておく為にも、本気で動かないで欲しいんだが」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
 耳まで真っ赤にして、歯軋りする七瀬の顔を見て、ちょっと収まった、と浩之は他人事のように思った。
「な、何もこんな時に、あんたは何考えてんのよ!?」
「しょうがねーだろ、可愛い子と身体が密着しちまったら、寝た子が起きるのは生理現象だ」
「ぐぬぬ………ん?」
 ぎりぎりと浩之を睨んでいた七瀬は、ふと不穏な単語に気付いた。
「って今藤田、可愛い子って……」
 七瀬が問いただそうとした瞬間、馬車が勢い良く止まる。
「ひゃっ!」
「っと……着いたみたいだな」
 浩之の言葉通り、ぱっと馬車のドアが開き、外の光が差し込んでくる。
「下りろ、藤田浩之。旦那様がお待ちだ」
「……この体勢で、どうやって起きろと?」
 七瀬の下から、面倒くさそうに言う浩之に、黒騎士は苦笑した。
「嫌なら俺が代わりたいぐらい……冗談だ」
 殺気の篭った七瀬の視線にさらされ、黒騎士は目をそらしながら、七瀬と浩之を馬車から引っ張り出す。
 馬車から降りた浩之の目に、豪華なお屋敷が飛び込んできた。
 間違いなく、佐祐理の家……倉田家の豪邸であった。
12名無しさんだよもん:02/09/12 23:44 ID:AwYKw5NO
【浩之&七瀬 倉田家に拉致される】

ハカファンYの最初の投稿、こんなんですいません(汗
前スレ「真夜中の訪問者」に繋がるエピソードです。
13名無しさんだよもん:02/09/12 23:57 ID:PiIvPet2
初投稿あげ
14名無しさんだよもん:02/09/13 00:12 ID:N/ddQm9H
さっそくの投稿乙〜
ひろゆきちゃん&乙女組ですな。生け捕りになりましたか……さすがに倉田家、帝国ほど無茶はしないようでw
しかし、
>可愛い子と身体が密着しちまったら、寝た子が起きるのは生理現象だ
あかりがいない間に浮気に発展しそうなヨカーンw
15名無しさんだよもん:02/09/13 00:19 ID:zufi/GMv
やった、復活
16名無しさんだよもん:02/09/13 23:54 ID:BfTEtU84
早速保守だぜ〜w
>>14
そういえばあかりって今だ出番なし?
17名無しさんだよもん:02/09/14 00:09 ID:LHVT1ZQh
なんか総合スレの方に粘着アンチがいるみたいだから念入りに保全しとくよ。
>>16
たしか魔女っ娘になってた。
18百合と兵隊:02/09/14 00:12 ID:AMV/sJfK

「………………つまんない」

 ……ぶー、と奇怪な擬音が聞こえてきそうなほど不貞腐れた表情で、彼女は詰所を出てからもう数えるのも面倒になるほど口にした不平を、飽きもせずに呟いた。

「つまんない、ってそんなに力いっぱい言われても……」
 流石に耐えられなくなったのだろう、傍らを歩く共和国の紋章が入ったレザーメイルを着用する男が、困惑したように呟いた。
「そんなにつまんないんですか?」
 対する彼女の反応に、一分の迷いも躊躇いもない。
 力強く頷いて、その首肯よりさらに力をこめて断言した。
「そりゃそうよ。綺麗で凛々しくてカッコイイ女の人ならともかく、むさ苦しい男と連れだって歩いたって全っ然楽しくないし」
「わ、無茶苦茶言ってるし」
「恥じらいもないし……」
 予測の範疇とはいっても余りに余りの返答に、脱力した兵士達は一斉ブーイング。
「てーか、市街の巡察だって任務なんですからそう言うことほいほい口にしないでくださいよ、隊長。
 ましてや民の前ですよ……?」
 そう、トンデモ発言を身内の前でだけやらかすならともかく、ここは天下の往来、民の前なのである。



 レフキー、ややスラムに近い街区。主に工職人たちが住まう街だ。
 通りの両脇に雑然と立ち並ぶのは、鍛冶屋金細工師陶工などなど諸々の職人達の住居兼店舗。
 行き交う人々は、多くが彼らの造る日用品を求める市民、はたまた懇意にしている親方のもとへ商品を仕入れに来た商人たちだ。
19名無しさんだよもん:02/09/14 00:13 ID:LHVT1ZQh
連続スマソ。
あかりは↓参照。
http://isweb45.infoseek.co.jp/play/lefkey/214.html
20百合と兵隊:02/09/14 00:13 ID:AMV/sJfK
 家屋店舗はどれもごちゃごちゃと形も不揃い、大きさはばらばら。都市の自然な発展に伴って生まれた非計画的な街区だからしかたがない。
 そう、非計画的な街区。王権の関知しない集落。かつて、生まれたばかりの頃はスラムと呼ばれた存在だ。
 曲りくねった路地、雑然とした町並み、どこまでも果てしなく続くかのような平屋の群れ。
 例え多少の治安を回復し、徴税請負人と衛兵が姿を見せるようになったとしても、まだまだここは彼らの領域なのだ。

 ……そう、彼ら。
 闇の王国、盗賊ギルドの支配圏である。



「任務だって民の前だって、楽しくないものは楽しくないの」
 ……言ってみれば敵地なのだが、もう無茶苦茶ダメ人間な発言を公然と繰り返す日吉かおりに、緊張感の欠片もみえなかったりもする。。
 まあスラムならともかく、このあたりにもなれば衛兵を敵視する盗賊連中も、よほどのことがなければ無茶はしないのでそれほど警戒の必要はないのだが。
 今も、衛兵の存在を認めた人相の悪い連中が、路地裏へとそそくさと消えていくところだ。
 これがもうちょっと奥地まで入りこんだりすると、数十人の市民もどきに襲撃されて手足の二、三本も折られて叩き出される、なんてことも珍しくはない。
 逆に、富裕層の住まう旧市街で不審なスラム出身者が発見されたりすると、衛兵の振りまわす槍の石突きでさんざ突付かれて青痣だらけ、なんてことになる。

 そんな争いが日常茶飯事と言うことは、つまるところそれだけ互いに互いの陣営に手を出していると言うことだ。
 光と闇、それぞれ自分の領地をしっかり守りつつ、しきりに相手側の隙を窺う。
 要するに、これは陣取り合戦のようなものなのだ。


「あー、なんで現場の任務なんか入れちゃったのかなぁ」
 そんな事が頭の片隅にでも入っているのか、多分入ってないのだろうが、かおりの不平は続いている。
 いや、決してまるっきり馬鹿な女性ではないのでそこらへんのこともきちんと入っているのだろうけど、愛しの先輩のことを思う時すっぽりそれが抜け落ちてしまう傾向があるのが珠に傷だった。

 具体的には一日の80%くらい抜け落ちてる。
 ほとんど一日中である。
 ……どうにもこうにも、前途多難であった。
21名無しさんだよもん:02/09/14 00:14 ID:QpyXoEQu
これは葉鍵キャラを使ったファンタジーリレー小説です。
22百合と兵隊:02/09/14 00:14 ID:AMV/sJfK
「たまに仕事もしなきゃなんて思った私が馬鹿だった。
 ああっ、こんな仕事さっさと終らせて、梓先輩と甘く蕩けそうな一時を過ごしたい……」
 何時ものこととは言え、疲れたように肩を落す部下達に身も蓋もないことを言ってのけ、かおりは一人あっちの世界に飛んで行く。
 どうやら、日吉かおりにとって、甘く蕩けそうな一時というのは全力疾走で日没から日の出まで、全市街を舞台に愛しの梓先輩と追走劇を繰り広げることであるらしい。

 少なくとも、部下である彼らはかおりと梓のそれ以上に『深い』関係を見たことがない。
 道徳と性に厳格な宗教家が聞いたりしたら、ジグダンスを踊りながら即刻火あぶりの刑を宣告しそうな危ない妄想を口走るかおり、なら毎日のように見ているものの。
 あと、それを聞きとめてしまってガクガクブルブルと震えあがる衛兵隊長の姿とか。

 衛兵の総指揮者たる凛々しい上官の日ごろの苦労―――昼は女王陛下の手綱を取り、夜は貞操の危機から逃げまわる―――を慮ると、ただただ同情のため息が出るばかり……

「―――ま、はたで見てる分には面白いんだけどね」

 と見せ掛けて、本心では所詮愉快痛快他人事、であったりもする。げに卑しきは人の性。

 士気は零度、民の視線は氷点下、暑く滾るは日吉かおりの濃い心、もとい恋心のみ。
 どこぞの帝国の捕虜が「平和で良いなぁ」と呟いたのも無理はない光景だったりもする。
 この場合、平和なのはかおりと愉快な仲魔達の頭の中身だけで、そう考えると彼女の同僚である松本なんかと同じなのだが気付かない。
 異国異文化と言うフィルターは、なかなか強力なようである。


23百合と兵隊:02/09/14 00:14 ID:AMV/sJfK
 ――そんな果てしのない不真面目さへの鉄槌だったのかもしれない。
 かなり近くにソレがやって来るまで、彼らはさっぱり背後での怒声、慌しく駆ける足音、それらを圧する馬蹄と車輪の響きに気がつかなかった。
 ようやく、最後尾の衛兵が騒ぎを異変として知覚するまでに、たっぷり三十秒の時間が掛かっている。
 そして何事かと肩越しの視線を送った彼の目前に、すでにそれは迫っていた。
「こっ、こんな狭い路地を馬車で走るなぁっ!」
 絶叫して、手にした槍を放り投げて横っ飛びに逃れる。
 それでようやく他の連中も事態に気付いた。となると、これが先ほどまで騒いでいた連中かと思うほど反応が早い。
 後ろを確認する暇も惜しい、それぞれがてんでに安全と思われる方向へと逃れ、疾走する黒い馬車の車体に掠りながらも辛うじて難を逃れる。
「止まれ、貴様っ! 何者だッ!!」
 誰何の叫びも忘れない。
 狭い路地のこと、家屋にへばりつくような無様な格好からではとても絵にならなかったが。
「追うぞっ、この曲りくねった路地では速度は出せんし、選べる通路だって限られる。
 数手に別れて追えば、すぐに捕捉できる!」
「大通りへの合流点を抑える班と他の路地を抑える班を! 分団長」
 かおりの指示を与えられるまでもない。それぞれの衛兵が為すべき事を判断し、準備を整えつつかおりの決断を待つ。
 
「待って―――今のは、倉田家の紋章?」
 ……その一言で、激した空気が急速に温度を覚ましていくのがわかった。
 倉田家。レフキーでも一、二を争う名家。
 世界的にも有名な、レフキー評議会の有力議員。
「……あー、相手が悪いな」
 一人の兵が、避難していた人が戻り始めた路地にへたりと腰をついた。
「ん。追いつけたとして喧嘩できる相手じゃないよ」
 やめだやめだ、と別の兵が苦笑を浮かべ、地に取り落とした槍を取ろうと腰をかがめた。
 槍の柄に指が掛かったと頃でふと素朴な疑問を覚えて延ばした手が途中で止まり、馬車の消えた方角に目を向ける。
24百合と兵隊:02/09/14 00:15 ID:AMV/sJfK
 ……しかしなんだって、倉田家の馬車やら私兵やらがこんなところをうろついてるんだ?

「……倉田家のご息女って、かなりの美人って噂なのよねぇ」
「……ぶんだんちょ?」
 いやもう下手な考え起こさないで下さい俺らみんなリアルに首が飛びますから。
 抱いていた疑問も脳裏から完全に吹っ飛び、衛兵達の慄きの視線がなにやら陶然とした目付きのかおりに釘付けになる。
 この上官、梓隊長一筋だと思ってたら実は誰でもいいんかい。

「あのぉ……」
 上の空の分団長、恐怖に震える兵士たち。硬直した空間の中。
 幸いにして、その空間の外にある人間と接触していたために影響を受けずにすんだ兵がいた。
 いや、幸いにしてと言うのはあたらないかもしれない。
 異様な空間に恐る恐る戻ってきた彼もやはり、別の、そして同根の問題を抱えて顔を強張らせていたのだから。
「……なんだ、どうかしたのか」
 一人が、思いっきり投げやりな声で訊ねた。
「いえ、市民からの通報でして……参ったな」
「だから、どうしたんだ」
 どうにも、同僚の態度ははっきりしない。違和感、不審を感じて別の兵が強く問うた。
25百合と兵隊:02/09/14 00:17 ID:AMV/sJfK
「その……だから」
 はっきりしない同僚は、なおもしどろもどろに言葉を濁す。
 さすがに聞き手側の眉が険悪に歪んだのを見て、彼はようやく腹を決めたようだった。
 乾ききった笑みを浮べ、視線を斜め三十度ほどずらして皆に不幸な報せを告げる。
「ええと、今の馬車が人を二人、攫ってったって言ってるんですが……どうしましょう?」


 ――錆び付いた鉄細工のように、頚骨を軋ませながら振り向いた兵達の目には、きらーんなんて擬音入りでかおりの双眸がかがやいたように見えた――



 ……運命の女神様は、とことんかおりの部下達に試練を与えるおつもりらしい……


<糸冬>

【日吉かおり 浩之・七瀬を捕らえた倉田家の馬車を発見】


 ども、Uスレの1でふ。
 即リレーって訳でもないけど、>>7-12と同時進行の出来事ってことで。

 ……しかし、前途多難だな……いろいろと(笑
26名無しさんだよもん:02/09/14 00:28 ID:LHVT1ZQh
お疲れ。
この調子でリレーが続くといいですね。
それと割り込みスマソ。
27名無しさんだよもん:02/09/14 02:55 ID:HbbONXmR
久しぶりに、かおりんの登場ですね(w
こういった兵士の日常の一こまみたいな話は、物語に厚みが出来ていいです。
さて、実は浮気性だったかおりんは、佐祐理にどう絡んでくるんでしょうか?
28名無しさんだよもん:02/09/14 23:31 ID:zEA5q1pu
留守にしている間に新スレ、と同時にリレー総合が大変なことに(汗)。
とりあえずスレ立て乙〜。

> チェイス
倉田家絡みの続きですね。黒騎士たち、こちらを捕まえましたか。
なんだかラブで米的な展開ですが、こういうのもいいですね。
流石浩之といいますか、奴にかかれば七瀬も立派な乙女(w

> 百合と兵隊
こちらは微妙に視点を変えてのリンクですね。確かにこういう方向性は
リレーの醍醐味、決まると爽快です。また、兵士視点が効果的というのは
>27に同意。しかしかおりん……さゆりんぴんち?
29名無しさんだよもん:02/09/15 01:37 ID:c365/PHh
レフキーの兵士ってかわいそうだな。ろくな上官いない。
30名無しさんだよもん:02/09/15 12:40 ID:Q9r9eA/h
松本って今、何処にいるんだっけ?
31名無しさんだよもん:02/09/15 16:11 ID:Mui6DLRH
>30
レフキー城に連行中かと。
32名無しさんだよもん:02/09/15 20:17 ID:zOyHpupf
進行ってか連行だけどな。たしか、はるかも一緒
33名無しさんだよもん:02/09/15 22:59 ID:W8LaM3Id
同じレフキー城でも、はるかは松本とは別方面
(恐らく自分の職場)に連れて行かれたのではないかと。
美凪達と別れた時点で別々に連れて行かれたような描写なので。
34名無しさんだよもん:02/09/16 02:29 ID:nqAcx04N
葉鍵ファンタジーワールドガイド?
間違いとか暇な人で補完してください、あと地図とかw

【レフキー共和国】
-首都レフキー-
レフキー城(女王詠美の居城)
王立図書館(膨大な蔵書量を誇り30階以上の地下書庫がある)
盗賊ギルド(ギルド長「闇の王」浩平の元レフキーの裏を統べる)
魔術アカデミー(様々な魔術の研究を行っている象牙の塔)
武器屋件宿屋「青の錫杖」(女主人水瀬秋子の店)
宿屋「鶴来屋」(千鶴と初音の姉妹が経営する宿)
酒場「コスプレ酒場 一喝」(芳賀玲子店長のコスプレ酒場)
教会(新任司祭城戸芳晴の癒しが評判高い)
魔法ショップ「カノン」(霧島佳乃の経営する怪しげな店)
古本屋「御座瑠難棚」(縦王子鶴彦横蔵院蔕麿共同経営の魔窟)
地下下水道(アカデミーの廃棄兵器である鼠の跋扈する魔宮)

-港町フィルムーン-
宮内貿易公司(禁制品の銃も扱ったりする)
自警団本部(海賊騒動のせいで上を下への大騒ぎ)

-高槻の治める村-(浩平の故郷。因縁の地)
孤児院(院長小坂由起子)

-秘宝塔の村-(帝国との国境近くにある村)
秘宝塔(滅んだ秘宝の一族の墓所。既に秘宝はない)

「魔法都市ホワール」(共和国内自治都市)
魔法学校(レフキーのアカデミーと双璧を成す魔術師達の学び舎)
35名無しさんだよもん:02/09/16 02:30 ID:nqAcx04N
【レザミア帝国】
-帝都-(ダリエリ13世の治める都)

-橋本辺境伯領-
ニノディー城(橋本辺境伯の居城。ガディムの前線基地?)

-ポルトアビス-(軍港?)
帝国水軍府


【その他】
「子鬼の森」(国境にある中立地帯。小鬼が支配し罪人の逃げ込むグリーンウット)
「浮島」(レフキーの南海上に出現した謎の島)


その他各地勢力
長瀬一族:様々な異能を持つ一族。『長瀬ネットワーク』とも呼ばれるこの情報網を持つ
倉田家:レフキー評議会の重鎮。お抱えの騎士軍団を持つ
クルス商会:世界をまたにかける豪商。様々な魔法の品々を開発している
相沢一家:海賊。フィルムーン近辺を荒らしていたが半壊滅状態
伝説の旅一座:久瀬率いる旅一座。前座長長瀬源一郎
FARGO教団:私兵「テンプルナイト」を擁する怪しげな宗教団体
少年:謎の少年。FARGO教団と何か関わりがある
氷上シュン:謎の少女「みずか」と共に何かを画策するえいえんよりの使者
高倉忍軍:帝国宰相ニヴェ配下の忍者軍団
象牙の塔:人の世の均衡を守る「ロウロード」と混乱を齎す「カオスロード」がいる
36倉田家の家庭の事情(1):02/09/16 02:58 ID:xdxYOVsz

 レフキーで1,2を争う名家だけあって、倉田家のお屋敷はかなり豪華な代物だった。
 浩之は、何度かこの屋敷に(こっそりと)来た事があったが、七瀬の方は初めてである。
「うわぁ、随分と大きな屋敷ねぇ……」
 豪華なだけではなく、所どころに置かれている彫刻などは、品を感じさせる物だ。
 王家との係わり合いも深く、黒騎士団などの私兵を持っている事からも、その巨大さが解ろうというものである。
「なぁおっさん、俺達の処遇はどうなるんだ?」
「………おっさん………」
 おっさん呼ばわりされた黒騎士の男は、絶句すると、頭を抱えてしまった。
 ぶつぶつと暗い声で、地面に呟いている彼に代わって、横の黒騎士が説明する。

「……手荒な真似をして悪かったが、お前らにだって心当たりはあるんだろ? 
 安心しろ、別にお前らを地下牢に繋いで、拷問したりはしない……はずだ」
「……“はず”なの?」
「……ま、佐祐理さんの親父さんだし、大丈夫だろ……」
 後ろ手の縄を切られ、自由になったふたりは、立ち直った黒騎士に案内されて、屋敷に入った。
 やはり屋敷の中も、立派な調度が立ち並び、高そうな絨毯が敷き詰められている。

 やがて、一際大きな樫の木の扉の前にやって来ると、黒騎士は扉を叩いた。
「倉田様、藤田浩之と七瀬留美嬢をお連れしました」
「そうか、入ってもらえ」
 中から初老の男の声がかかり、ゆっくりと扉が開かれる。
「……何で俺だけ呼び捨てなんだ……」
 浩之がぶつくさ言ったが、誰も反応しなかった。
37倉田家の家庭の事情(2):02/09/16 03:00 ID:xdxYOVsz

 応接間らしいその部屋は、大きな窓が備えつけられ、外の光がふんだんに入るようになっていた。
 例え平和だとしても……いやむしろ、平和だからこそ、宮廷内の算術策謀は日常茶飯事となっている。
 戦争のような手柄を立てる機会がない以上、自分の地位を上げるには、どうすればいいのか。

 答えは「自分より高い地位にある者を、引き摺り下ろす」であった。

 些細なミスを告発し、細かな領地争いをし、競争相手と泥沼の陰謀合戦をする。
 それらの最終手段こそ、当人の暗殺だ。
 浩之は、ここに使われている窓すべてが、魔法加工によるクリスタルの羽目板だと気付いていた。
 窓一枚に使われているクリスタルだけで、家一軒が建つ。
 しかし、矢も槍も寄せつけず、魔法すら遮断するこの窓は、言わば倉田家の財力の象徴でもあるのだ。

 中央に備えつけられた長テーブルの向こうには、初老の男性が座っていた。
 彼こそ、倉田家当主にして、佐祐理の実の父である。
「ようこそ、倉田家へ。手荒な真似をしてすまなかった」
 本当にすまなさそうな彼の声に、浩之はおや、と思った。
 一人娘の佐祐理を誘拐した、犯人に対する態度ではない。
「………娘の我侭に付き合わせてしまい、藤田君にもすまない事をしたと思っている」
『は?』
 一瞬聞き違いかとも思ったが、濃い疲労の現れた彼の顔は、大真面目であった。
「佐祐理は、何の不自由もなく育てたつもりだった……欲しいものは全て買い与えていた。
 豊かな食べ物、美しい服、全てを満たしていたつもりだった」
「………」
 淡々と言いながら、彼は深い皺の寄った眉間に、己の両手を押し当てる。
38倉田家の家庭の事情(3):02/09/16 03:02 ID:xdxYOVsz

 こんな男だったろうか、と浩之は愕然と思った。
 以前見た時は、自信に溢れ、この世の全ての敵を捻じ伏せるような、傲慢な男にしか見えなかったのに。
「佐祐理がな……あれが、初めて私に逆らったのだ。
 自分の生き方は自分で決めると……ふふふ、この私に、生まれて初めて口答えをしたのだ」
 彼は溜息混じりに首を振ると、苛立たしげに机を指で叩いた。

「だがな、君らもわかるだろう?
 あれは、佐祐理は生きる術も冒険の危険も、ましてや世間の汚濁すら知らない、言わば温室の花なのだよ。
 冒険者か………七瀬さん、女の身で傭兵でもある君なら、冒険者がどのような代物なのか、よくわかっているだろう?」
 話を振られた七瀬は、僅かに嫌そうに眉を寄せて、肩を竦める。
「確かに、温室育ちの花は、温室の外じゃ生きていけないでしょうね」
「おい、七瀬!」
 思わず声を上げる浩之に、七瀬は片手を上げて黙らせた。
「けど、そうやって子供の生き方を支配して、自分の思い通りにさせようってのは、気に入らないわ」
「……お前達は、あの事件を知らんからそう言えるのだ」
 当主は苦々しく呻くと、深い皺の寄った眉間を指で揉みほぐす。
 その仕草は、実年齢よりも10年近くも老いたようにすら見られた。

「あれは、今でも悔やんでおる……自分が一也を死に追いやったのだと……そう思っているのだ。
 倉田家の当主はな、代々、成人すると見聞の為、諸国を放浪する定めがある。
 一也もいずれは倉田家当主として、その旅に出なければならかなったのだ。
 だが………あの事件の後、佐祐理は変わってしまった」
 浩之と七瀬は、気まずい思いで顔を見合わせる。
 だが、彼はそんなふたりの様子に気付いた風も無く、重苦しく言葉を続けた。
39倉田家の家庭の事情(4):02/09/16 03:03 ID:xdxYOVsz

「一也の死は事故だ。……それは間違いない。
 だが……そうだ、防げたのも確かなのだよ……この私が、もっとしっかりしていればな。
 佐祐理がこの屋敷を出ると言った時、私は正直、恐怖したよ。
 一也に続いて、佐祐理まで失ってしまう……冒険者がどれほど辛く、また死に近いか、私はよく知っている。
 佐祐理が君……藤田くんの所に赴き、今もまだ無事でいる事自体、奇跡に近い」
 浩之はぼんやりとこの男の顔を見詰めていた。
 レフキー屈指の名家であり、王家にすら顔の利く彼も、娘の前ではただの親でしかないのだ。
「佐祐理は夢を見ているのだ。
 世間知らずの佐祐理が、外の世界で生きていけるはずがない。
 ………だが、あれは一也の代わりに外に出て、一也の代わりに冒険者とならねばならないと、思い込んでいる。
 剣も魔法も使えないあれが、どうやってそれで生きていくというのだ!」

 激昂した彼は、どん、とテーブルに拳を叩きつけた。
「藤田浩之君、もう佐祐理のわがままに付合う必要は無いぞ。
 佐祐理が今どこにいるのか、教えてもらおうか。
 盗賊ギルドに聞いても、どうも要領の得ない返答しか来ないのでね。
 どうやら誰かが、情報をコントロールしているようなのだ。
 そして七瀬留美さん。あなたには佐祐理を助けていただいた報酬を差し上げたい。
 君は傭兵だ……並の傭兵10人分の金を出そう。これで文句はあるまい」
 断言口調の彼に、七瀬と浩之は反射的に怒鳴っていた。
「ふざけんなっ!」
「ふざけないでよっ!」
 期せずして、七瀬と浩之の声が重なった。
 思わず立ち上がったふたりは、きっと当主を睨みつける。
40倉田家の家庭の事情(5):02/09/16 03:05 ID:xdxYOVsz
「……俺は一度だって、佐祐理さんの言い分をわがままだなんて思った事はないぜ。
 佐祐理さんはようやく自分の足で、外の世界に一歩踏み出したんだ。
 羽ばたこうとする子供を籠の中に入れる権利は、親にだってないんだよ!」
「藤田に同感ね。
 あの子はむしろ、ああやって辛い事や苦しい事を、自分一人の中に閉じ込めるタイプだわ。
 そんな子が、例えどんな理由であろうとも、自分で選んだ道よ。
 だったら、最後まで見守ってあげるのが、親ってもんじゃないの!?」
「………協力はしてもらえないか」
 当主は深刻な溜息をつくと、ゆっくりと首を振った。
「残念だ……私は佐祐理の為を思っているのだがね……伯斗!」
 彼の声に応えて、さっきからずっと傍にいた黒騎士が、すっとふたりの背後を取った。
「……っ!」
「彼らを部屋に案内しろ。翌日になれば、考えも変わるかもしれない」

 相手は完全武装の黒騎士だ。
 抵抗するだけ無駄だと悟り、浩之も七瀬も、大人しく彼に引っ立てられる。
「……おっさん、やっぱり地下牢へご案内、か?」
「だ、か、ら! おっさんって言うな! ……この屋敷に、地下倉庫はあっても、地下牢なんてもんはない」
 じゃあその地下倉庫行きか、と警戒した浩之だったが、案内された扉の前に立ち、拍子抜けした。
 外から鍵が掛けられる以外、極普通の……いや、むしろ超一流のホテル並の部屋だった。
 豪華なテーブルに絨毯等の家具、新鮮な果物にワインまで、どう見ても囚人の部屋ではない。
「ってわけだ。居心地の良さは保証するぜ。あ、ちなみに窓は開かないからな」
 黒騎士は七瀬と浩之を部屋の中に入れると、がちゃりと鍵を掛けた。
41名無しさんだよもん:02/09/16 03:07 ID:xdxYOVsz
直リレーしてみたり。
おかしな所があったら、指摘してください。

【浩之&七瀬 倉田パパと会談。交渉決裂後、部屋に軟禁される】
42名無しさんだよもん:02/09/16 04:35 ID:2VwaDfop
伯斗龍二キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!

まさか彼の姿を拝めようとは…
43Uスレの1:02/09/16 17:31 ID:JTCV8444
http://isweb45.infoseek.co.jp/play/lefkey/
過去ログ後進完了しますた。
あとは設定とかのページもおいおい……とりあえず、衛管の試験終ってからだな……

>>倉田家の家庭の事情
伯斗龍二キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
……ルミラ、イビルと来て次の雀鬼メンバーが彼ですか(w
44名無しさんだよもん:02/09/16 19:06 ID:ZAFM8OpL
リーフファイト97にも出てないから、知ってる人かなり少ないだろうな……。
かくいう私も、名前しか知りません。あとは、麻雀うちで魔界の貴族だっけ?
45名無しさんだよもん:02/09/16 19:54 ID:N7XGaY7J
魔族の血を引いてる、探偵……だったっけか?
銃が好きで、ハードボイルドを気取ってて……むう、覚えてない。

まあ、放置されないことを祈ってます(笑)。
46名無しさんだよもん:02/09/17 00:49 ID:ofI5eYa0
>34-35
>43
乙〜。まとめてくれる人がいるのは読む方としても有り難いです。

> 倉田家の家庭の事情
やっぱりこれは言わねばなるまい。
伯斗龍二キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
……やっぱり彼の登場は板内でも珍しいしね。

さて、倉田パパ登場、七瀬達軟禁でまた風雲急ですな。
これに絡んでくるのは、佐祐理・舞組は確定かな?
秘宝塔の他のメンバー、セリオ、けんたろあたりはどうなるでしょ?
そういや関係者と言えばあかり達も進行止まってましたな。
47名無しさんだよもん:02/09/17 12:38 ID:rAX+skQZ
念には念をメンテage
48名無しさんだよもん:02/09/17 16:12 ID:ABcQhW7v
健太郎とせりオが今何処にいるかちゃんと説明できる人います?
49名無しさんだよもん:02/09/17 23:11 ID:YsuGGubK
エイエソ(記憶の彼方)へ。
50名無しさんだよもん:02/09/17 23:32 ID:IMo72M0p
>48
はっきりしているのは、志保邸に岩切達が訪れ、志保・岩切達と
七瀬・浩之がそれぞれ志保邸を出発したときには二人とも志保邸に
いたことと、志保邸が襲撃を受けた時点では二人ともいなかったこと。

時間軸的には、
志保・七瀬・浩之出発→浩之治療→浩之宅襲撃→七瀬・浩之監禁
→→志保邸襲撃(この時点で真夜中)
という感じかな?いずれにせよこの間の志保邸の様子は描かれて
いないので、二人の消息は不明。
51名無しさんだよもん:02/09/17 23:57 ID:ZYj8K7cY
裏路地で二人でハァハァしてまつ。
52雲丹:02/09/18 02:05 ID:XwIMEtyu
メンテしておくか。
53名無しさんだよもん:02/09/18 23:17 ID:7QrUbO7y
佐祐理達と浩之達の襲われた時刻は、読み返すと確かに後者の方が先。
なんとなく同時刻くらいと錯覚起こしてた。
ここにタイムラグがあるならセリオ達のフォローも可能?
54名無しさんだよもん:02/09/19 20:50 ID:JC++wt1C
今週中には一本上げたいと思いつつメンテ。
55名無しさんだよもん:02/09/20 01:11 ID:6HlqoO4t
伯斗龍二…そう言えば学園スレでもちらっと出てましたな。
56Uスレの1:02/09/20 22:24 ID:4cfXjxc8
 うに、保守。
 誰か時間を……
57名無しさんだよもん:02/09/21 01:11 ID:W8QBPMRM
えーと、現在は、本スレで進行中の倉田家関連以外では、
鼠と海賊がクライマックス寸前ですよね。
他には、辺境柏関連、浮島出現、国崎達と祐介達、瑞希&佳乃、
郁未達、捕われの吉井、彰達あたりが比較的進んでますかね?
58日吉かおりは恋をする(1):02/09/21 02:06 ID:de18u9QB

「ぶんだんちょー」
「……」
「ぶんだんちょーってば」
「……」
「分団長分団長分団長分団長分団長分団長分団長」
「うっさいわー!」

 額に青筋を浮かべながら、分団長こと日吉かおりは、部下の頭を思い切り蹴飛ばした。
 不運にも兜をしていなかった彼は、涙目でしゃがみ込む。
「あんたね、これが隠密行動だって、わかってて言ってるの!?」
「隠密!?」
 部下達は思わず全員で顔を見合わせ、同時にハモった。
『倉田家の屋敷の塀にしがみつくのが!?』
「そうよ」

 部下の言う通り、かおりは倉田家の塀にしがみついていた。
 さすがにレフキーだけあって、塀を覗き込んでも、中から矢が飛んできたりはしないのは幸いである。
 まぁ、警備をしている黒騎士の一人が、険悪な目で彼らを睨んでいたりするが。
 突き刺すような彼の視線に、部下達は必死で愛想笑いを浮かべる。
 黒騎士の方も、相手が一応正規の治安維持隊なだけに、追い払う事も出来ずにいた。

「ぶ、分団長……もう帰りましょうよ……」
「お尻を触るなあっ!」
59日吉かおりは恋をする(2):02/09/21 02:10 ID:de18u9QB

 再び蹴られた部下Aが、諦めたように帰ってきた。
 ほかの面々は、とっくに他人の振りを決め込んでいる。
「だから止めとけって言ったのに」
「けどよぉ、俺絶対このままじゃ済まないと思うんだよなぁ」
 少し離れた木陰でたむろしながら、部下達はひそひそと話し合う。

 倉田家はレフキーで1,2を争う名家なだけに、その警備もほぼ完璧だった。
 噂では、窓一枚一枚に、防弾、防魔法、防射撃のクリスタルの板を使っているとか。
 庭にも常に数人の黒騎士が警備にあたり、犬まで放されている。
 そんなわけで、ちょっと怪しげな分団長が家を覗いていても、そうそう追い帰される事がない。
 何が来ても絶対防げるという自信の表れだったが、部下達にとっては、不幸な要因でしかなかった。

「あっ!!」
「え?」
 いきなり声を上げたかおりに、部下達全員がぎくりと身体を震わせる。
 すわ何事か、と慌ててかおりの横に、鈴なりに塀にしがみ付いた。
「ちょっと、ほら、あそこの窓の所……あの青い髪の人!」
「……むちゃくちゃ遠いんですけど……よく見えますね」
 嘘のように大きな庭のせいで、塀から覗くだけでは、なかなか中が見えない。
 弓矢や銃弾が届くような距離でない事も、かおり達が放置されている原因かもしれなかった。 
 それはともかく、かおりはじっと窓の前にたたずむ人影を見て、うっとりと呟いた。
「……す・て・き……」
「………は」
 全員の背筋に、悪寒が走る。
 その窓の所には、かおり好みの気の強そうな美少女が佇んでいたのだった。
60日吉かおりは恋をする(3):02/09/21 02:11 ID:de18u9QB
「見て、つややかな青い髪……意思の強そうな瞳……それにツインテール」
 目をきらきらさせながら、そんな事を言うかおりに、珍しく部下たちも同調する。
「あー、俺マジであんな髪型してる人間、初めて見ましたよ」
「でも確かに可愛いよなー」
「うんうん。俺ファンになりそ」
 かおりを止めるどころか、窓に七瀬の姿を認めた瞬間、部下達までもが塀に鈴なりになっていた。
 遠いとはいえ、普段から本などに縁の無い一般庶民である。
 視力だけは、全員無意味によかった。

「それに、梓先輩ほどじゃないけど……大きな胸……ああ、あの胸に顔を埋めてみたい……」
「分団長だって、胸ぐらいあるじゃないですか」
「自分の胸にどうやって顔を埋めるのよ!?」
 などとアホな事を言いつつ、かおり達は飽きもせず、窓に佇む彼女を見詰める。
「分団長、俺あの人思い出しましたよ! 確か流れの傭兵で、“乙女希望”の七瀬って人ですよ」
「乙女希望!? すてき……」
 例え漢希望であったとしても、かおりにとっては素敵に思えるに違いなかった。

「決めたわ」
「な、何がですか?」
 何となく嫌な予感がしつつも、つい聞いてしまう部下A。
 かおりは目を輝かせながら、力いっぱい拳を振り上げた。
「きっとあの七瀬さんが、誘拐された人なのよ!」
「え、そりゃ確かに特徴は一致しますが……けど分団長、きっと傭兵だから招かれただけですよ」
 何とかかおりを思い止まらせようとする、部下Aの涙ぐましい努力も虚しく、かおりは燃えた。
「例え相手が屈指の名家であろうとも、誘拐を見過ごす訳にはいかないわ!」
61日吉かおりは恋をする(4):02/09/21 02:14 ID:de18u9QB
 背中と瞳の中に、めらめらと燃える炎を飼いながら、かおりは嬉々として言い放つ。
「分団長の女好きって、下手な男よりタチ悪ぃからなぁ……」
「あ、男」
「ぬな!?」
 ぽつりと呟いた部下Bの声に、かおりは目を血走らせながら窓を見た。
 確かに、彼女の後ろに、一人の男が立っている。
 仲睦まじそうに話ながら、男が七瀬の肩に手を置いた。
「うわっ、軟派っぽ!」
「マジかよ……俺の七瀬タンが、あんな野郎に……」
 何時の間にか、自分のものにまでしている奴までいた。
「……赦せない」
「はっ!?」
 かおりの纏っている炎が、よりいっそう燃え上がる。
 鬼もかくや、な形相を見て、部下達全員が震えあがった。
「あの男は、きっと純真無垢な七瀬さんを騙して、あの家に連れ込んだに違いないわ!
 そうして、七瀬さんを騙し弄び、女の快楽を全身に刻み込ませ、あまつさえ●●●に×××が……」
 かおりの妄想についていけず、純真な部下の一人が、鼻血を吹き出して塀から落ちていった。
 しかし、かおりの妄想は留まる所を知らず、男達は次々と鼻血を出しながら脱落していく。
「……ああっ、だめ、そんな所……そう言って激しく羞恥に顔を歪める七瀬さんに、
 あの男は悪魔のような笑みを浮かべ、●●●に△△△を無理やり……!! 外道め、赦せないっ!」
 官能小説じみてきた妄想を呟きながら、かおりはその外道男……藤田浩之を睨みつける。
「あんた達、いくわよっ! 七瀬さんを、あの男から救い出すの!!」
「…………」
 一声叫んで振り返ったかおりは、その惨状に沈黙した。
 彼女の部下達は、鼻血を垂らしながら、全員前かがみで倒れていた。
62名無しさんだよもん:02/09/21 02:16 ID:de18u9QB

【日吉かおり 七瀬を浩之の魔の手から救い出すべく決意を固める】
【下っ端―ズ 前かがみ】


題については突っ込まないで下さい(ぉ
かおりんを書くと、どうしてもコメディになってしまうようです。
63名無しさんだよもん:02/09/21 05:31 ID:I0rzGHy/
むやみにノリがいいなぁ、日吉一味。
こういうへっぽこ軍団モノって好きですわ。
無茶な団長とそれに振り回される名も無き団員達。
例えるなら電撃PSの盗賊団とか…って何故にそんなマイナー所を。

とにかくかおりはこのノリでGO!っすよ。
64名無しさんだよもん:02/09/22 01:23 ID:lHKXdzLp
お、新作でつね。

> 日吉かおりは恋をする
いや、何と言いますか、部下達がいい味出してますねぇ。
この団長にしてこの部下ありといいますか。
しかし七瀬……南ー無ー。浩之も災難ですな。
七瀬の二つ名が「乙女希望」というのも笑いました。歴戦の猛者なのに(w
65Gauntlet and Leggings:02/09/22 01:49 ID:UZJr+6X5
「健太郎さん、健太郎さん」
「ん……」
 健太郎が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。
 ずきん、と頭が痛む。寝起きの頭を働かせ、状況を確認する。
 秘宝塔から帰ってきて、志保の家で……浩之に高価いワインを飲まされて――。
「あー、俺寝てたのか……ここ、志保の家か?」
「違います」
 最も高いであろう可能性を、あっさりと否定される。
 ふと周囲を見れば、そこは記憶にあった志保の家とは違う造りの一室。
 部屋の中には、健太郎とセリオの二人だけ。
「あれ……それじゃここ、どこだ? 七瀬は? 浩之たちは?」
「七瀬さんと浩之さんは傷の治療に、佐祐理さんと舞さんはまだ志保さんの家です」
「それじゃ……ここは、どこなんだ?」
 淡々と語るセリオに、質問を重ねる健太郎。
 その質問に対する答えもまた、淡々と――あまりにも淡々としていた。
「志保さんの家の近くの宿の一室です。お話があったので運ばせていただきました」
 何事もないかのように語るセリオだが、全身鎧に身を包んだ大の男一人を抱え上げ、
離れた場所まで運ぶというのは、尋常な話ではない。
 唖然とする健太郎をよそに、セリオはまっすぐ健太郎を見て口を開く。
「健太郎さん……その鎧に関してお尋ねしたいことがあります」
「あ、ああ、なんだか知らないけど、俺に答えられることなら」
 こくこく、と頷く健太郎。
「その鎧……恐らくは『次郎衛門』ゆかりの作ではありませんか?」
 沈黙。
 先程までの空気とは、明らかに異なる空気の中、健太郎が頷いた。
「隠すようなものじゃないから言うけど、確かにその通り。初代次郎衛門の鎧さ」
66Gauntlet and Leggings:02/09/22 01:50 ID:UZJr+6X5
 次郎衛門。
 鬼退治で高名な伝説の武芸者にして鍛冶屋。いや刀匠と言うべきか。
 その業は柏木家が伝えているが、次郎衛門自身が身につけていた、あるいは彼が自ら鍛えた
武具は、長い時を経、彼方此方で用いられることによって散逸している。
 最も数が造られた刀ですら破格の値がつく次郎衛門ゆかりの装備。
 ましてや鎧となれば、希少性を考えると値などつけられるものではない。
「でも、どうして解ったんだ? 次郎衛門の作品なんて、ほとんど刀しか知られてないのに」
「篭手、そして脚絆を、見たことがあります」
 健太郎の顔色が、さっと変わる。
 次郎衛門の篭手。
 武芸者次郎衛門の強さは、その剣技だけではなく、体術にもあったと言われる。
 その拳と蹴りの威力は瑠璃鋼を砕き、老亀鋼を切り裂いたという伝説があった。
 恐らくは……持ち前の膂力に、それらの装備があれば、不可能ではないのだろう。
「……篭手と……脚絆……」
「拳撃と蹴撃に最適の造り。間違いないと思われます」
 セリオの説明も、健太郎の考えを裏付けている。
 だがそれを知ったところで、健太郎の疑問は解けない。セリオは何が言いたいのか……。
「それで、俺に聞きたいことは……それだけじゃ、ないんだろう?」
「はい。……健太郎さんがその鎧の価値、由来、伝説などを理解なされていること。
そこを見込んで、聞きたいことがあります……」
 セリオの真剣な表情。
 ほとんど表情のかわらないセリオが、健太郎には何故か必死であるように見えた。
「次郎衛門の作を鑑定できる目を持った人物……教えていただけませんか?」
「え……そりゃ何人か心当たりはあるけど……どうして、そんなことを?」
「先程私が見たと申しました二つの装備が、持ち去られ、売り払われました」
 な……と言葉を失う健太郎。
 次郎衛門の装備の価値を知っている者からすれば、当然の反応だ。
「盗んだ者は、恐らく健太郎さんのような確かな目を持った人物に伝があるはずです。
以前、長瀬源之助氏を尋ねたときに、健太郎さんの名前は伺っていました」
67Gauntlet and Leggings:02/09/22 01:52 ID:UZJr+6X5
 つまり、源之助のツテ……長瀬ネットワークに引っかからない人物。
 健太郎は考え込む。
 それほどの眼力を持ちながら、盗品を捌く危うさを持った店。
 長瀬の店は、セリオが訪ねたという。
 自由市の兄ちゃんは、そこまでのものは扱えないだろう。
 骨董市のおっちゃんは、盗品を扱うような人ではない。
 柿の木の爺さんは……こちらも、盗品の類は扱わないだろう。
 親父は……可能性は酷く高かったが、行方がわからないので案内のしようがない。
 あとは――。
「……ひとり、心当たりがある」
 健太郎の言葉に、セリオの目が見開かれる。
「通称、魔界のアイテム屋……『ないものはない』をモットーにした店。あそこだったら、
知る人ぞ知る……というか、知らないと店にすら入れないから」
「案内してください」
 即答するセリオ。
 その真面目な様子に、健太郎は頷くしかなかった。
(あーあ、七瀬に鍛えてもらう約束なんだけどなあ。何も言わずに出てきたから怒るよなあ)
 そんなことを考えてしまう健太郎であった。

【健太郎&セリオ、目的地をショップ屋に】
【志保宅の襲撃や七瀬たちの誘拐については何も知らない】
68名無しさんだよもん:02/09/22 12:28 ID:ZQSHWWE/
ショップ屋キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
いや、舞台が舞台だし、出てもおかしくはないけど。
69名無しさんだよもん:02/09/22 20:30 ID:JyBQecyv
> Gauntlet and Leggings
なるほど。二人の不在をセリオ-健太郎独自の事情に絡めて
解決しましたか。次郎衛門の鎧、ですか。確かに健太郎の
鎧は余程のものという伏線はあったから、面白いかも。
セリオ側の事情としても納得。
70名無しさんだよもん:02/09/23 00:22 ID:Wla1BD01
mennte
71名無しさんだよもん:02/09/23 05:17 ID:qas+yc16
>68
いや、むしろフリマ兄ちゃんとかの方がレア度高い気も…・・
72名無しさんだよもん:02/09/23 05:39 ID:OEjFWRzf
なぁ、ところでセリオは誰か捜してたんじゃなかったけ?
そろそろ秘法塔の連中のお供から脱してもいい頃合いなんじゃないのかな。
あー、別に今の流れに不満があるわけじゃないぜ。ただ初期の目的も忘れずにねってこった。
73名無しさんだよもん:02/09/23 10:18 ID:pxn8t9Vm
>72
あー、確かにそんなんあったかも。
来栖川関連は現状を整理してみた方がいいかもね。
74名無しさんだよもん:02/09/23 20:40 ID:SI9ItgPk
>73
とりあえず綾香は祐介、セバスは国崎と行動を共にしつつ両者合流、
芹香はスフィー達と行動を共にしていて、セリオは秘宝塔→健太郎、
マルチは月島達に護送されているところ、という感じが現況かな?
このあたり伏線多いし、本気で整理しようと思うと結構大変かも。
あ、そういえば鼠あたりでも来栖川の名が出てた気が……
75名無しさんだよもん:02/09/23 21:36 ID:K4diuQLm
400より下は危険なので一旦保守age
76名無しさんだよもん:02/09/23 23:21 ID:DGT2EICL
>74 最終行
その場合クルス商会ね。
77名無しさんだよもん:02/09/24 01:31 ID:F22JAdyM
セリオ+けんたろはしばらく二人で行動、かな?
78名無しさんだよもん:02/09/24 07:44 ID:9aeJUOa6
念の為。
79名無しさんだよもん:02/09/24 15:49 ID:TdHdAiPd
今、どの話がリレーされたら嬉しいですか?
と、さりげなく(ないけど)需要を聞いてみるテスト。
80名無しさんだよもん:02/09/24 18:31 ID:P7hn+/vd
北川の続きと、セバスと、………凸。
81名無しさんだよもん:02/09/24 19:03 ID:ZK38yxVS
凸はいらね
82名無しさんだよもん:02/09/24 19:28 ID:nh7qlBXZ
かなり放置されてるみさき楓組は何をしておるのじゃろう。
たしかなつみ&ぴろと合流してからソレっきり。
まぁ物語を引っ張れるテンションと言うものが無い連中だけに扱い辛そうだよね。

83名無しさんだよもん:02/09/25 00:37 ID:bLjGs8UY
アカデミーの半人前魔法少女組も少し気になってたり。
何気に重要になりうるキャラが集まってる気がするし。
ただ、ここのリーダー格のスフィーは不在の(和樹と
行動を共にしている)リアンと現状認識にズレがある
気がするので、ここを解決する手を見つけない限り
ちと手を出しにくそうでもありますが。
84名無しさんだよもん:02/09/25 01:14 ID:hqDQ750X
聖先生、栞絡みの話は良かったなぁ……。
85名無しさんだよもん:02/09/25 02:01 ID:hpD++Mlf
>>83
スフィーや芹香の伏線無視して学園生にしちゃっていたのが問題になってなかったっけ?
86雲丹:02/09/25 17:09 ID:dfpQEh9M
動かしやすさが、如実にリレーの継続に影響してるな。
87名無しさんだよもん:02/09/25 23:05 ID:+JvmdQ0n
 試験と前期の決算が重いです。
 書いてはいるけど筆が進まない……保守(涙
88名無しさんだよもん:02/09/25 23:57 ID:uE9TnODn
需要無さ気だけど、これから細々とやっていくつもりー。
89名無しさんだよもん:02/09/26 02:26 ID:leozdHLU
>85
そう。ただ、NGを回避できているわけだし、辻褄は
合わせられるという判断が一応あったということかと。
90名無しさんだよもん:02/09/26 23:15 ID:5eGVqDOB
>87 88
保守しつつお待ちしています。
91名無しさんだよもん:02/09/26 23:26 ID:tuDISTI0
>87
応援してます。
92名無しさんだよもん:02/09/27 01:31 ID:lLNpnc+7
やっぱ平日はきついものがあるなー
93名無しさんだよもん:02/09/27 04:08 ID:1iS4zl60
ネタが無いなら過去から現在までの作品で、適当に印象に残っている話でも挙げてみるか?
あんまり難しく考えないで感性や直感でもいいので……色々な面で活性化に繋がってくれれば……

http://isweb45.infoseek.co.jp/play/lefkey/
(↑編集サイト)
ちなみに俺は初期の方では「人生の曲がりかど」 楓萌え萌えですた。
ちょっと前のでは「求めるは、力」 親父燃え燃えですた。

……しかし、気軽に書いたらこんな感じになってしまった。どうすればいいんだ……
94名無しさんだよもん:02/09/27 08:25 ID:cHFwvqo3
「剣舞」あたりの七瀬 vs. 吉井の一騎討ちは激燃えでした。
95名無しさんだよもん:02/09/27 16:31 ID:zEdImtHC
アダルトOKな掲示板が無料で使い放題!使いやすいし、とにかく簡単!
http://www.1oku.com/index2.html
96名無しさんだよもん:02/09/28 00:48 ID:L37yC9/B
最近だと「軍師の条件」の大志が良かったかな。
まあ、最近続いてるシリーズはどれも結構イイ、と思う。
97名無しさんだよもん:02/09/29 00:34 ID:2gj2tm9t
晴子対柳川、批判もあったけど結構好きだな。
こっちの柳川、選択肢あたりと対照的だけど、
これはこれでなかなかカコイイ。
98円卓の間:02/09/29 02:02 ID:9OY4NH1v

 ここはレフキーの城の中でも、中枢に位置する者だけが、入る事を許された部屋である。
 円卓はゆうに10人以上座れるような造りになっているが、実際にその席が全て埋まった事があるのは、過去一度だけであった。

 今、その上座に腰を下ろして、退屈そうにあくびを噛み殺していたのは、レフキー女王大庭詠美だ。
「……女王陛下、長瀬源之助殿が来られました」
「うん」
 隣に立っていた梓に言われ、詠美は面倒くさそうに椅子に座りなおした。
 魔術師としての実力は、レフキーでも随一、詠美が女王に即位する際にも、尽力した人物。
 かつて鬼とまで呼ばれた魔術師、それが長瀬源之助である。
 源之助はゆっくりと扉の中に入って来ると、詠美の姿を認め、頬を緩ませた。
「まったく、老体をいきなり呼びつけるとは、敬老精神がなってませんぞ、女王陛下」
「今は非常事態なの!」
 詠美は、源之助が苦手だった。
 老獪な雰囲気とか、くえない性格とか色々理由はあったが、結局の所、詠美が頭の上がらない、数少ない人物の一人だからである。
 いつ説教されるかとビクビクしながら、それでも詠美は強気に出た。
「い、引退する時だって、非常時の召集にはすぐ応えるって言ったじゃない!」
「勿論ですよ、陛下。レフキー沖に伝説の浮島が現れたとなれば、私の知識が必要になるでしょうからな」
 自慢するでもなく、淡々とした口調で言って、源之助は詠美を挟んだ反対側に腰を下ろした。

 取り合えず説教を免れ、詠美はこっそりと安堵の息を吐く。
 そこに、再びノックの音が響いた。
「……レフキー王立騎士団、特務部隊隊長、坂上蝉丸、参りました」
「入れ」
 梓の凛とした声に導かれ、蝉丸は静かに部屋の中に足を踏み入れた。
99円卓の間:02/09/29 02:05 ID:9OY4NH1v

 女王の詠美、近衛長の梓、そして源之助と、レフキーのトップがこの部屋に勢ぞろいした事になる。
 勿論、宮廷魔術師長や、情報局長、それに騎士団長等も、この部屋にはいる資格をもっていたが、今はいなかった。
 とはいえ、この場で実際に席についているのは詠美と源之助だけだったが。

「んじゃ、始めるけど……梓、説明して」
「はい」
 詠美に促され、梓は円卓の中央に地図を広げた。
「……目撃証言によると、浮島はここ……レフキー沖の二つの島を挟んで、丁度、正三角形の頂点に出たようです」
 梓は、取り出した石をある一点に置く。
 その地点を見て、蝉丸は訝しげに顔を上げた。
「近衛長、この辺りは波がきつく、あまり漁師も入らない位置だと思うのですが……」
「ええ、そこなのよ、問題は」
 蝉丸の質問に、梓は羽根ペンで島の近くに直線を引き、小さな船の模型を置いた。
 こういった小道具は、詠美の理解を助ける上で非常に役立つものである。
「この島を見た漁師の話では、はじめはこの辺りで漁をしていたらしいの」
 言いながら、梓は二つの島のレフキー側に、船を移動させる。
「ところがこの日、海には霧が出ていて、二つの島を覆っていたらしいのよ。
 普通、霧が出てるときは遠出をしないものなのだけど、この日は何故か大漁で、帰る気がしなかったそうよ。
 そのせいで潮に流されたらしいんだけど、不思議な事に波は妙に静かで、流された事に気付かなかったらしいわ」

 船の模型は、二つの島の間を通って、“浮島”にまで辿り着く。
「浮島を見つけてしまい、命からがら島まで帰ってきて、初めて自分がどこまで流されたか知ったそうよ」
100円卓の間:02/09/29 02:06 ID:9OY4NH1v
「それで、結局この島はなんなわけ?」
 詠美の問いに、梓と蝉丸も、源之助に期待の視線を送った。
 源之助はひょいを眉を上げて、梓の置いた島を手に取る。
「まだ本格的に調べてはないのですがね、恐らくそれは“1000年の迷宮”ではないかと」
「1000年の迷宮!?」
 思わず声を上げた梓と蝉丸に、源之助は重々しく頷く。
「さすがにそれだけ昔となると、ほとんど神話に近い資料しかないのですがね。
 何でも、1000年前にこの周辺……当時はまだ共和国も無かったのですが……に、突然島が現れたそうです。
 当時はまだ正確な測量技術が無かったので、確かな事は言えないのですが、やはり同じ位置に」

 源之助は真剣な表情で、詩を暗誦する。
「……そは、偉大なる宝なり。
 神々より与えられし、至高の輝きなり。
 されど、それを手にせし人の子、その力に惑わされ、血と血で争い、奪い合えり。
 長き戦乱の中で、最後にそれを得しは、一人の戦士。
 戦士はその力を恐れ、神に祈りを奉げん。
 神は戦士に応え、海原の彼方より、古の島をもたらせり。
 秘宝封じられし島、人がそれを持つに相応しい時を経るまで、永遠の眠りにつかん」
 そこまで諳んじて、源之助はにっこりと笑った。
「これだけならば、よくありそうな伝説なのですがね。
 伝承によれば、見た事もない生物と木々が生い茂り、その大きさはレフキーとほぼ同じだとか」
「む、なんと……」
 途方もない話に、蝉丸は呆然と目をしばたいた。

【蝉丸、源之助、梓、詠美……対浮島作戦会議】
101名無しさんだよもん:02/09/30 00:46 ID:2GBvMEJT
メソテ
102名無しさんだよもん:02/09/30 09:19 ID:Yr6xb9e7
職場からメンテ。
感想は返ってから……
103名無しさんだよもん:02/10/01 00:12 ID:0yQ4jK+U
新作新作、感想〜と。あ、>102とは別です。

> 円卓の間
浮島篇、久々進行ですか。源之助、いよいよ表に出て来ましたね。
帝国の策謀に対する共和国の軍師格、どう動くのか?
梓はこういう場面、絵になりますねぇ。流石近衛長。
そしてまたも出番のありそうな蝉丸。実は結構美味しいポジション?
104102:02/10/01 01:07 ID:n6dkDVvG
レフキーのトップ勢ぞろい。
一人いない気がしないでもない罠w
うっかり牧兵衛、やっぱ寝過ごしてまつか?w
105名無しさんだよもん:02/10/02 02:38 ID:qLgSw++6
>104
あ、そう言えばそんなお方も。
106名無しさんだよもん:02/10/02 23:21 ID:rQ7OnjBY
応援メソテ
107名無しさんだよもん:02/10/03 02:18 ID:CX8IWW7N
そろそろ危険水域?
108名無しさんだよもん:02/10/03 07:42 ID:U1KDIeQN
出勤前メンテ
109名無しさんだよもん:02/10/03 22:39 ID:MR5lJ8TN
推敲中メソテ
投稿は明日以降……
110名無しさんだよもん:02/10/04 01:51 ID:SheEg/ek
どこも停滞気味メンテ。
111名無しさんだよもん:02/10/05 02:31 ID:eF0sO/t7
ほっしゅ。
112名無しさんだよもん:02/10/05 20:05 ID:VAEAfvQW
 衛管の試験と決算も受け持分はひと段落ついたんで、これからまた書きはじめまつ。
 そのためにもこの場を保守w

 ……第二種衛管の試験は落ちたっぽいけどな……
113名無しさんだよもん:02/10/06 02:41 ID:9y2g5wtX
絶対運命黙示録
114名無しさんだよもん:02/10/06 09:13 ID:Ik9U0MZY
ほっす
115名無しさんだよもん:02/10/06 22:19 ID:5Bebh12F
保守
116帝国の暗躍 1/4:02/10/07 00:24 ID:r7G/+R05
「どこに行けばいいの?」
「えっ?」
 舞にそう尋ねられたところで佐祐理は我に返った。
 志保の家からここまで来る少しの間、佐祐理はこのお姫様だっこに酔っていたのだ。
「あ……も、もういいよ。一旦降ろして」
 少し顔を赤らめながら地面に降り立つ佐祐理、見ると舞の息づかいは少し荒くなってしまっていた。
 悪い事しちゃったなと思い、ごめんねと一言謝る佐祐理を余所に、舞を後を振り返った。
「……もう追ってこないみたい」
「そうみたいだね」
 少し妙だなと思いつつも、ほっとする。
「これからどうするの?」
「う〜ん……とりあえず浩之さんの所へ行きましょうか」
 こっちだよ、と佐祐理は浩之の家へ舞を案内した。

「そんな……」
 浩之の家はもぬけの空だった。
 それどころかひっくりかえったテーブル、所々残された刃物の痕、割れたガラス等々
 明らかにここが何者かによって襲撃された事を示す痕跡がありありと残されていた。
「浩之、いない」
「………」
「七瀬もいない」
「………」
「佐祐理?」
 舞が訝しげに佐祐理の顔を覗き込んだが、佐祐理はすでに放心状態になってしまっていた。
117帝国の暗躍 2/4:02/10/07 00:26 ID:r7G/+R05
「なんで……どうして……?どうして浩之さん達が襲われなきゃならないの?」
「佐祐理……」
「わからない……わかんないよ!」
 秘宝塔での出来事の中でも、どこか冷静だった佐祐理であったが、今回の襲撃劇ではパニックに
 陥ってしまったようだ。
「佐祐理、しっかりして!」
「もう、嫌だよ……なんかもう、怖いよ……」
「聞いて。ここもまだ安全じゃないかもしれない。外に行こう」
「……うん」
 よろけながら立ち上がった佐祐理を舞が支えるようにして、二人がそこから出ようとしたその時、
 不意に背後から声が掛かった。
「貴女達のお仲間なら無事ですよ」
 驚いた二人が振り向いた先に、一人の女が佇んでいた。
「あなた……誰?」
 そこにはさっきまでは誰も居なかったはずだ、身構えながら舞は尋ねた。
「私は貴女達の敵じゃないのよ。さっき貴女達の仲間だと思う人達が襲われていた所を保護したのよ」
「じゃあ……浩之さん達は無事なんですか!?」
 目を輝かせて、女に詰め寄る佐祐理。
「え、ええ。そのひろゆき……さん?元気にしているわ。貴女達を探してくれって言われていたのよ」
「よかったぁ」
 一気に気が抜けた佐祐理はその場にへたり込んでしまった。
「ここじゃあなんだから、ひろゆきさんの所へ案内してあげるわ。その道すがら話でも、ね?」
「わかりましたー」
 浩之達が無事、その事だけで頭がいっぱいになってしまった佐祐理はなんの疑問も持たず
 女について行った。
「………」
 家を出て行く二人の背中を眺めて、言い知れぬ違和感を感じ取った舞であったが、その女から
 邪悪な気配やなんかしらの魔力めいたものは感じられなかったので、黙ったついて行く事にした。
 それが罠とも気づかずに。
118帝国の暗躍 3/4:02/10/07 00:27 ID:r7G/+R05
「浩之さん達はどこにいらっしゃるんですかー?」
「ええ……もう少し先の所よ。それより倉田さん」
「はい?」
「貴女達がどうして襲われたか、知りたくない?」
「知ってるんですか!?」
「ええ」
 佐祐理は今までにやけていた頬を引き締めた。
「今、共和国と帝国の関係がとても緊張しているの」
「ふぇ?」
「貴女のお父様のお仕事はご存知?」
「確か、王政議会の上院議員を……」
「そう、それでそのお父様が共和国と帝国の間を執り成すのに微妙な位置にいるのはご存知?」
「そう聞いています」
「偉いわよね。これから起こる戦争を未然に防ぐために、一生懸命、講和を結ぼうとしているのよ」
「はい、これでも父の事。尊敬してるんです」
「そう。でもね。それを快く思わない人達もいるのよ」
「はぁ……」
「貴女のお父様……穏健派が戦争を防ぐのを良しとしない連中が」
「そんな!」
「それで貴女のお父様を脅迫するために、貴女を利用しようとしているのね」
「そうだったんですか……」
「連中は手段を選ばないわ」
119帝国の暗躍 4/4:02/10/07 00:29 ID:r7G/+R05
 そこまで聞いてやっと、佐祐理は疑問を抱いた。
「えっと……どうして?」
「私がそんな事を知っているかって?ふふふっ」
 女はそこで含み笑いをした。
「貴女のその髪飾りの刺繍、綺麗ね。倉田家の紋章ってやつかしら?」
「え?」
 女が佐祐理に何かを放ってよこす。
「私も持っているのよ。紋章」
「この紋章って……!」
 佐祐理が手に取った紋章は、紛れも無く帝国の紋章であった。
「私はね、戦争したいのよ」

【倉田佐祐理・川澄舞:帝国の者に遭遇】

保守代わりにリレー投稿ッス。
120もう一人の情報屋:02/10/07 01:30 ID:dq4Sk8cT

 そこは、志保の家から10分と離れていない場所にあった。
 志保の家と同じこざっぱりとした作りだったが、一回り小さい。
「もう帰ってきてると思うけどね……」
 岩切とあゆにそう言って、志保は軽くドアをノックする。
「ここに、お前の言っていた人探し専門の情報屋がいるのか?」
「そ。信頼度はかなりのもんよ」

 家の主から何の反応もない事に気付いて、志保は再び強めにノックした。
 どんどんどん
「響子ーいるんでしょー!」
「ふあー………」
 寝ぼけたような声が、ドアの向こうから聞こえてくる。
 しばらく中でどたどたしてから、がちゃり、と戸が開いた。
 志保と似たようなボブカットに、寝癖が浮いている。
 彼女はしばらく焦点の合わない眼をぐるりと向けてから、ようやく志保に気付いたようだった。
「誰……って、志保じゃない! うわ、久しぶり」
「久しぶりねー、響子。元気してた?」
「元気元気。上がって上がって、今何かいれるから」
「そう? サンキュー。それよりどう、景気は?」
「まぁまぁね。この前もさ、例の怪盗を追っかけててさぁ」
「結婚する気ないのー? 響子美人なのに」
「またまたぁ、そういう志保だって、例の浩之くんとはどうしたのよ〜」
「ちょっと、ヒロとは何でも無いんだってば」
「嘘。この響子お姐さんの目は誤魔化せないわよ、ふふふ」
121もう一人の情報屋:02/10/07 01:31 ID:dq4Sk8cT

 まさに、立て板に水。
 延々とぺらぺらぺらぺら話し込むふたりに、岩切はひたすら呆然としていた。
 よく似た二人だ。
 同じベリーショートのボブカットに、活発そうな目つき。
 そして、ひたすらお喋り好きなところ。
「だから、あたしはヒロに言ってやったのよ〜、それは鍋のフタでしょーが。って」
「あははははは!!」
 何がおかしいのか、岩切にはさっぱり意味不明の理由で大笑いしてから、彼女はようやく二人に気付いた。
「そういや、こっちのふたりは?」
「あー忘れてた」
 
 本気で忘れてたらしい志保に、岩切は額に青筋を浮かべる。
 だが、こんな所で癇癪を爆発させても仕方がない。
「岩切、あゆ、こっちは相田響子って言って、あたしの同業者。響子、こっちは岩切花枝と月宮あゆ」
「あたしは相田響子。よろしく」
「………あ、ああ。それより人探しが……」
「そう言えばそうだったわ」
 長岡志保に相田響子、まさに恐怖の組み合わせだった。
 同じ女ながら、岩切にとってはまさに別の種族に近い存在である。
(……何でこいつらは、こんなにべらべらお喋りができるのだ……?)

「立ち話もなんだから、あがってよ。ちょっと散らかってるけどさ」
 響子は愛想よく、岩切とあゆを手招きした。
122もう一人の情報屋:02/10/07 01:33 ID:dq4Sk8cT

 響子に勧められるまま、3人は部屋の中に入って、それぞれ椅子に腰掛ける。
「んじゃ、お茶入れるから……」
「いや、不用だ。ある人物の行方がわかれば、すぐにでも退散する」
「そう言えば、そんな事言ってたわね」
 一瞬立ちあがりかけた響子は、改めて椅子に座りなおした。
 散らかってる、と言ってた部屋は、本当に散らかっていた。
 あちこちに本が散乱し、羊皮紙やその他色々なものが転がっている。

「実は、篠塚弥生という女を捜している。 ロード高槻の護衛をしている女で、傭兵ギルドの出身らしい」
「500」
「………何?」
 一瞬何を言われたのかわからず、岩切は目をしばたいた。
 響子はにやりと笑うと、人差し指と親指でわっかを作る。
「お金よ、お金。情報料」
「……少し高いぞ。300」
 仏頂面で言う岩切に、響子は心外そうな顔をした。
「ちょっと、このネタ拾うの結構苦労したのよぉ。480」
「冗談を言うな。それだけあれば剣の一本も買える。320」
「465!」「335!」

 突如値引き合戦をしだしたふたりに、あゆはぽかんと口をあける。
「あゆ、長くなりそうだから、ちょっとお昼ご飯食べにいこ」
「え、でも……」
 志保に誘われ、あゆは困惑の表情を、二人に向けた。
「460!!」「340!!」
「ほら、当分終わんないって、これは」
 さらに小刻みに切る岩切と響子に、あゆは躊躇いがちに頷いた。
123名無しさんだよもん:02/10/07 01:36 ID:dq4Sk8cT
【相田響子 人探し専門の情報屋】
【岩切と響子は値引き合戦。 志保とあゆは昼食に】

停滞組を進めてみました。


>>116-119
佐祐理と舞は、緊迫した場面に突入しましたね。
しかし、帝国の者って誰なんでしょうか。
124名無しさんだよもん:02/10/07 07:44 ID:5a5dGZHs
わ、新作二つも来てる。
帰ったら読もうっと。
125名無しさんだよもん:02/10/07 20:30 ID:r7G/+R05
>>120-122
岩切姐さん愛されてるなぁw
情報関係も冒険のネタ師や人探しなど脇が固まってきた感じ。
と、感想を感想で返してみるテスト。

>>123
>帝国の者って誰
次におまかせ(逃
126名無しさんだよもん:02/10/07 22:31 ID:gHrjR8Kb
おっ、進んでる
127名無しさんだよもん:02/10/07 22:35 ID:PnyoE5tP
時間軸は昼間なのか?
128名無しさんだよもん:02/10/07 23:08 ID:6zY0DiFO
がんがってくれ。
期待し取りマフ
129名無しさんだよもん:02/10/08 00:42 ID:2Hgcqsqg
今更なんだが……舞って強いのか?
130名無しさんだよもん:02/10/08 13:06 ID:By84Zdwg
力の「使い方」さえ解れば強いのでわ? と、言ってみる。
131名無しさんだよもん:02/10/08 23:25 ID:nuy/v1gs
強くも弱くもできるのがリレーと言ってみる
132名無しさんだよもん:02/10/09 00:38 ID:Q3k5HFgr
うむ、耕一より強いかも知れないし住井辺りよか弱くなるやも知れぬ。
そこら辺書き手のさじ加減次第ですからねぇ。
133名無しさんだよもん:02/10/09 01:01 ID:0EjYtM0a
お、復活してたのか。

頑張って欲しいところです。
134名無しさんだよもん:02/10/10 07:08 ID:kyVTL1Nc
早朝メンテ。
135彼女の行方とたいやきと:02/10/11 00:08 ID:+2LWvzsS

 響子の家を出た志保とあゆは、昼食の為に大通りへと足を運んでいた。
「ねぇ長岡さん、この辺りで美味しいものって何?」
「そうねぇ、志保ちゃん情報網によれば、あそこの屋台がいい感じらしいわよ」
 そんな会話をかわしながら、適当にぶらついて昼食を物色する。
 昼時を少し回っているが、あたりには人がごった返していた。
 人の間を縫って歩きながら、志保は適当に屋台に顔を覗かせる。
 その時、あゆが何かを見つけ、ぱっと顔を輝かせた。
「あ、たいやき! たいやきにしようよ!」
「ハァ?」
 突如そんな事を言い出したあゆに、志保は露骨に嫌そうな顔を向ける。
「たいやきってアンタ、昼にそんな甘ったるいもの、どうするつもりなのよ……」
「どうするって、勿論食べるんだよっ」
 ダッシュでたいやきの屋台に突進したあゆは、いきなり反転して駆け戻ってきた。
「な、何!?」
「うぐぅ、あの人、この前ボクが盗んだ人だったんだよっ」
「え゛?」
 言うなり、あゆは瞬く間に姿を消す。
「ちょっ、ちょっとま……」
 慌ててあゆの後を追おうとした志保の肩が、がしっ、と誰かに掴まれた。
「はう!?」
 ぎぎぎぃっ、と首を曲げ、背後を見た志保は、予想通りの光景に硬直する。
「……姉ちゃん、あのクソガキと知り合いかい………? じゃあ、ちょぉぉっと立て替えてくれんかなぁあああぁぁぁ?」
「………………………はい」
 鬼瓦のようなたいやき屋のヲヤヂの満面の笑顔に、志保はあえなく屈した。
136彼女の行方とたいやきと:02/10/11 00:10 ID:+2LWvzsS

「………うぐぅ?」
「うるさい黙れ」
 一言で遮られ、あゆは口をつぐむ。
 とぼとぼと道を歩いていた志保は、やおら頭を抱えて天を仰いだ。
「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!
 なんだってのよもう!!
 報酬の宝石は呪われてるし、ルミラは塔の中だし、塔の中は危険がいっぱいでタダ働きばっかりだし。
 苦労ばっかりして命賭けてしかもタダ!! つうかむしろ損してるし!!
 ヒロは勝手に人の高級ワイン飲むしいいいぃぃっ!!
 あげくに、全然知らない盗賊の、盗みのタテカエまでさせられるし!!
 ひょっとして呪われてんのあたし!? ねえ!!」
「うぐ………ご、ごめんなさい」
 血走った目で顔を覗き込まれ、あゆは本気でビビった。
 それから、必死で愛想笑いなど浮かべながら、あ、そうだ、と呟く。
「長岡さん、お、お昼ご飯は?」
「あんたの盗んだタイヤキ立て替えたら、お金は全部ふっとんだわよ!! 弁償しなさいよ弁償!!」
「……お、お金があったら、盗んだりしないよ」
「ガッデエエエエエェェェーーーーーーーーーム!」
 街中で絶叫する志保を、何人かが哀れんだような視線を向けて立ち去っていく。
「そ、そうだ、きっとお腹が空いてるから怒りっぽくなるんだよ。はい、たいやきあげるよ」
「ってアンタ!! いったいいつ買ったのよ!?」
「え、えっと……さっきのおじさんから買ったんだよ。出世払で」
「そりゃドロボウだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 志保の絶叫は止まらない。
137彼女の行方とたいやきと:02/10/11 00:12 ID:+2LWvzsS

 ぐったりと疲れきった顔で、志保は響子の家のドアを潜った。
「あ、志保お帰り。お昼は?」
「…………ちょっとそこのタイヤキ女」
「そ、それってボクの事!?」
 涙目でうめくあゆを、志保はちょいちょい、と手招きする。
 そして、素早くたいやきの入った袋を奪い取ると、ひとつ取って響子に投げた。
「うぐっ!? ボクのたいやきが!?」
「………たいやき?」
 額に汗を浮かべて、響子はたいやきを凝視した。
 机の上でほかほかと湯気を立てるソレは……………よほど好きな人間でない限り、昼飯にしたいとは思わないだろう。
「で、そっちの交渉はまとまったの?」
「うん、418で」
「……また随分と細かく……」
 志保は呆れながら、椅子を引いて響子の隣に腰掛ける。
 そして、忌々しげにあゆから強奪した、たいやきの頭に齧りついた。
「……で、その篠塚弥生はどこにいるんだ?」
 じゃらり、と金の入った袋を見せながら、岩切は鋭く尋ねる。
 響子はにやっと笑うと、さっと窓に近寄って、カーテンを開け放った。
 薄暗い室内に光がさし込み、同時に威風堂々たるレフキーの城が、はるか遠くから目に飛び込んでくる。
「篠塚弥生は、今ある貴族の屋敷にやっかいになってるわ。……その名は、牧村家」
「牧村!? まさか……」
 驚きを隠せない岩切に、響子は大仰に頷く。
「そう。執政官筆頭、“レフキーの智の盾”牧村南の屋敷の事よ」
138名無しさんだよもん:02/10/11 00:12 ID:+2LWvzsS
【志保 あゆのたいやきを立て替え、すっからかんに】
【篠塚弥生 牧村南の屋敷に?】

メンテ代わりに書き込み。
139名無しさんだよもん:02/10/11 00:56 ID:0FNSxgq/
おお、進んでる。とりあえず感想、前回分から。

> 帝国の暗躍
とりあえず一言。帝国の者って誰なんだー!
さゆりん&まいまい、大ピンチですね。
塔育ちの舞、とりあえず真価を見せるチャンス?

> もう一人の情報屋
なるほど。確かに情報屋という役所には相応しい人選ですな。
しかし、志保と互角とは響子も恐ろしい(w岩切とは確かに
対照的ですな。値切り合戦の好勝負っぷりはワラタけど。
140名無しさんだよもん:02/10/11 08:30 ID:y4iZC+fT
> 彼女の行方とたいやきと
とりあえず一言。何やってんねんあゆー!志保も災難でしたな。
そう言えば高槻卿、盗賊ギルドと因縁あったんでしたね。
執政官と弥生、すなわちレフキー上層部と傭兵ギルドに関係がある
ということは何か裏で動いている?
141名無しさんだよもん:02/10/11 19:47 ID:vWoHs7O6
駄スレageメンテに励んでる厨がいますな。圧縮近いのかな?

なにはともあれ、メンテしとこう。
142名無しさんだよもん:02/10/12 00:17 ID:SrH8GeTF
確かにそろそろヤバそうですな。
143名無しさんだよもん:02/10/12 10:10 ID:JglhgIbq
まあ、こんなところにありましたメンテ。
144名無しさんだよもん:02/10/12 23:35 ID:r5aKF01a
ザ・最下層。
145 ◆zkraGArAss :02/10/12 23:39 ID:rCFVRUXR
test
146名無しさんだよもん:02/10/14 01:35 ID:IHLEAOe+
まったり待て。
147名無しさんだよもん:02/10/14 22:34 ID:d7JvgXNs
待て! 待つんだ、ジョー東!!
148とらわれのあんぽんたん:02/10/14 23:01 ID:KrH2nC2b

 レフキーの宮殿に、このところ二人の帝国人が滞在していた。
 その二人のどちらもが、いわゆる『捕虜』に属する人間で、さらには所属する機関を同じくする要員だった。
 捕縛されるまで、従事していた作戦もまた同じ。
 そんな訳だから、ということでもないが、二人がそれぞれ入れられた部屋は、その間取りから調度品にいたるまでが同じもの。
 大庭詠美女王自らが設計した新王宮内に、幾十と連なる無数の客室のそれぞれ一室なのだ。


 そこまで何もかもが同じの客人二人、ただしその性格はかなり異なる。
 一方の客人、今は詠美女王の玩具、吉井ユカリは真面目で(岡田よりは)素直で気が(他の連中よりは)回って、どこか人に流され易い。
 いささか軍の指揮官として頼りがないけれど、良くも悪くも常識人である。

 だが、宮城内、同じ階層の対角線上に位置する部屋に囚われた彼女はそうではない。

 ……一言で言えば、彼女はオカシナ人物だった。

「ムズムズーム♪イェァ ズムズムズムズーム♪」

 がたん、ごとん、投げ出すように乱暴に積み上げる。
 ご機嫌よさげに鼻歌歌い、書棚の書物からとても頑丈には見えない薄っぺらな気の箱まで、拓かれて入るが閉ざされてもある部屋の備品を手当たり次第に積み上げる。
 ドアの向こうの衛兵の視線などなんのその、土台の安定性なんかすっかりさっぱりあうとおぶ眼中、ただただ彼女の望みの高さまで、モノが高く積みあがればそれでいい。
 積み上げて、一時その上に乗ることができたならそれでいい。
 刹那的な目的は、『天井に手が届く高さ』が確保された時点で果たされるのだ。

 ……果たされるのだが、飽くまでそれは刹那的な目的だ。本来の目的を達成するまでの手段の獲得だ。
 さて、乗っかったまではいい。
 問題は、そこから。その上でじっとしているならともかく、いろいろ作業をしなくてはならないのだけれど。
 事前準備の手抜き工事の結果は、えてしてそういうところで出てくるものでありまして。
149とらわれのあんぽんたん:02/10/14 23:02 ID:KrH2nC2b
「ズムズムズーム…( ゚Д゚)ハッ! ををっ、ををををを!?」
 ……案の定だった。
 ぐらり、ぐらぐら。バランスを崩す、鼻歌口ずさむ松本の足場が大きく揺れる。
 なんか脱出の準備してるっぽいけど、あれじゃ失敗しないはずがないなー、ほっとこかー。などと思って外の衛兵はすっかり放置、ちょっぴり期待。
 何を期待かというと、もちろん派手にすっ転んであられもない姿になって、この退屈な捕虜監視の任務に一幕の娯楽を与えてくれることだったりする。

 そして、松本という女はその種の期待に弱く、応えずにはいられない人物なのである。
 なにせお馬鹿だから……

「うぇぴゃふっ」
 落ちた。
 妙な悲鳴と共に、頭からまっさかさまに。

 がつん、でもごちん、でもない。
 くわ〜〜ん、とステキな音が響く。それはそう、喩えるなら金盥の落下音。
 いったい何が詰まってるのか、というよりむしろ何もつまってないのかアンタ。
「うぅ、落ちた……頭がお馬鹿になっちゃうって感じぃ」
 いや、それ以上悪くなりようがないし。
 ぺたんと絨毯敷きの床に尻餅をつき、涙目で頭をさする松本に、内心突っ込み入れたくてしかたがない衛兵ども。
 どうしてなかなか観察しがいのある捕虜(?)である。
 監視の必要ないっぽいが、見ている分に飽きがこないのがとてもイイ。
150とらわれのあんぽんたん:02/10/14 23:03 ID:KrH2nC2b
「むぅ、人をいきなりとじこめて、吉井にも会わせてくれなくて、高い所から突き落とすなんて最悪って感じぃ。
 共和国って酷い人だ、宰相さまが言ってたとおりだったんだ」
 不満の内容、全部自分のせいに近いのだがそれを見事に責任転嫁。
 軍務、日常生活問わず判断をすべて人に丸投げしてるからこうなるのである。
「うー……もー少し、手が届いたら天井のはめ板外せそうなのになー」
 そのまま身体が沈み込むように柔らかく、肌触りの良いカーペットに背中を委ね、松本はくてんと手の届かぬ天井を見上げた。
「なんか積み上げられるものないかなー」
 看視者の前で、脱出の意思と手段とを口にしてどうするのか。
 つーか、そんな部屋にぶち込む以上、想定される脱出の手段なんて与えてません、当然ながら。
 それをさっぱり理解していないのか、松本の様子は何時もと同じく茫洋としたまま。焦燥感、緊迫感の欠片もない。
 きょときょとと室内を見渡して首を捻り、わざとらしく腕組して軽く目を瞑る。

 岡田命名、松本流秘儀、『考えてる振り』。
 考えてる『振り』というだけあって、この状態の時は頭の中は空っぽです。しかも何時もより1.25倍空洞。
 しかも一目でなにも考えてない、格好だけだと判ります。吉井はこれを松本七不思議の一つと呼ぶ。

 ちなみに長時間(30秒以上)この秘儀を続けると、特殊効果で睡眠状態になります。
 誰がって、主に自分が。

151とらわれのあんぽんたん:02/10/14 23:04 ID:KrH2nC2b
「……ねー、なんか足場ないかな?」
「あるかっ!」
「てぇか、あっても渡すかっ!」
 30秒直前でようやく松本の脳細胞が導き出した解決法は、扉の向こう側からそれはもう凄い勢いで拒絶された。
 当然至極のその反応に、ぶぅと頬を膨らませて見たりするあたり松本は意外だったし、不満だったのだろう。
「ちぇ、けちぃ」
 うー、と唸るような声を発して呟いた。
「けちぃ、ってそう言う問題か!?」
 もちろんそういう問題ではありません。一般常識に照らし合わせれば。
 ただ、これまたもちろん、囚われの少女のここに至るまでの経緯を顧みれば一般常識との乖離は明らかである訳で。
 このあんぽんたさは見てる分には楽しいが、当方に向けられると相当疲れるらしい。
 看守たちは一つ賢くなると同時に、常時彼女と付き合わされたであろう離れた部屋のもう一人の虜囚に心底同情を覚えた。

 そしてついでに、違和感をも覚える。
 まだ交代の時間には早い。尋問は、(理解し難いことではあったが)吉井がそうであるように特に捕虜に対して行なわれていない。
 もともと大規模な来客用の区域でこの時期他に用いられている部屋はなく、加えて言えば捕虜獲得後は一帯が立ち入り禁止になっているので、ここかもう一つの収容部屋への来客以外に人の通りはないはずなのだ。

 ……そうであるならば、この足音はいったい誰のものだろう?

 侵入者、という可能性は彼らの脳裏には浮かばなかった。
 王城の奥深く、捕虜がこの区画に存在することを知るものなど一部指導層と彼ら衛兵以外に他にない。
 ここにやって来るのが考えられるのは、一つには自分たちの勤務状況をチェックするためやって来た上官。
 そうでなければ……
「お食事持ってきましたぁ」
「ん? ああ、ご苦労さん……」
 上官であった場合に備え、ぴんと背筋を延ばして首をそちらに向けた衛兵の目に、予想通りの装束に身を包んだ女の姿が飛び込んでくる。 
 触覚じみた髪の束が二本ぴんと頭から延びた、あまり見なれない――しかし何故か見覚えはある――一人の侍女がお膳を手に佇んでいた。

 その笑みが、どこか緊張気味に強張っているようにみえるのは、果たして気のせいだったろうか――
152とらわれのあんぽんたん:02/10/14 23:06 ID:KrH2nC2b

【松本 囚われの身】
【侍女 触覚付き】

 いじょー、Uスレの1でした。
 誤字誤解等々ございましたら、厳しく御指摘くださいまし。

 ケサーン終ってないけど、資格はなんとか取れたですよ……
153名無しさんだよもん:02/10/14 23:54 ID:IHLEAOe+
>>152
資格ご苦労様〜

深刻な吉井と、松本は完全に対照的ですね。
全く何も考えてない(w 上に、脱出する気満々ですし。
ズムズムズームにはワラタ。
154名無しさんだよもん:02/10/15 03:50 ID:r7xtE/bQ
新作来てますね〜
松本は状況をわかってるのかわかってないのか・・・(w


自分は文は苦手なので、絵でも描いて応援しまつ。

とりあえず、レフキー地下にて〜
ttp://isweb40.infoseek.co.jp/play/ilhenny/cgi-bin/source/cho260.jpg

適当スマソ
155名無しさんだよもん:02/10/15 12:49 ID:SDP1fbO9
あうぅ〜新作来てる〜。
帰って読むまで落ちてませんように。
156名無しさんだよもん:02/10/15 18:52 ID:SDP1fbO9
もう一回。
157名無しさんだよもん:02/10/15 21:01 ID:nDOR04bV
>>154
何かすでに松本じゃない気がするけど、萌え〜!
158名無しさんだよもん:02/10/15 21:04 ID:k9N3mSMa
>>154は名雪だと思うのでつ。
萌へ〜。
159悪巧み3人組+1:02/10/15 21:59 ID:Ba3/8DKB

 そこは、レフキー高級住宅街の一角。
 王城に勤務する貴族や、騎士達の屋敷が立ち並ぶ場所である。
 庶民には永久に縁の無さそうな、広大な庭の真中に、これまた豪華な屋敷が鎮座していた。
「……なぁ、本当に奴はここにいるのか?」
「本当よ。これは昨日仕入れたばっかりの、ホットニュースなのよ」
 ずんずんと先に進む響子に、岩切とあゆは居心地悪そうに周囲を見まわす。
 何せ、ふたりとも盗賊ギルドに属する人間である。
 貴族といった存在には、嫌悪感を抱きこそすれ、めったに近寄ったりしないのだ。

「しかし、随分と巨大な屋敷だな……」
「何でも贅沢な貴族になると、窓にクリスタルの羽目板を使ってたりするらしいわよ」
 志保が解説している間に、4人はようやく牧村南の屋敷の前に辿り着いていた。
 取り合えず門番に見付からないように、ぐるりと遠巻きにして、作戦会議を始める。
「…………で、どうやって奴とコンタクトを取るんだ?」
「は? そんな事知らないわ。私は情報屋であって、何でも屋じゃないもの」
 あっさりとそんな事を言う響子に、岩切は沈黙する。
「それでは何の意味もないではないか……」
「それを考えるのは、あなた達の仕事じゃない」
 岩切は難しい顔をしながら、じっと屋敷に視線を注いだ。
 レフキー執政官筆頭と銘打ちながら、その屋敷は意外に地味な作りだった。
 他の貴族のように、成金丸だしの変な彫像が並んでいる訳でもないし、見張り役の犬が放されているわけでもない。
 しかし、地味ではあったが、品のいい花壇や植込みが列をなし、主の趣味を窺わせた。
160悪巧み3人組+1:02/10/15 22:00 ID:Ba3/8DKB

「ぱっと見た目、簡単に忍び込めそうだけど……」
「馬鹿な、あれをよく見ろ」
 そっと岩切が指差す方向には、一見のんびりと庭掃除をするメイドの姿があった。
 だがよくよく見れば、その身のこなしは並の人間のそれではない。
「恐らくかなりの訓練を積んだ人間だ。あの手の伏兵が、この屋敷にはごまんと居るみたいだぞ」
「はあ〜、さすが牧村家ね」
 感心した口調で、響子はふむふむと頷く。
 その時、岩切は志保が遠眼鏡で屋敷を伺っている事に気付いた。
「……どうだ、奴はいたか」
「あたしはその篠塚って人はよく知らないんだけど、牧村女史なら、テラスでお茶してるわよ」
 言いながら、志保は岩切に遠眼鏡を手渡す。
 早速それを覗いて見ると、志保の言う通り、牧村南が優雅にカップを傾けている所だった。

「……あっ、いたぞ。奴だ」
「ホント?」
 小声で叫んで、岩切は目を凝らす。
 お茶を飲んでいる牧村女史の元に、動きやすそうな普段着を着た弥生がやって来た。
 ふたりが気軽そうに話しているのをじっと見ながら、岩切は顔をしかめる。
「篠塚弥生の実力、そして状況から考えるに、奴を“招待”するのは難しそうだな」
「誘拐の線は無理って事?」
 岩切は遠眼鏡を下ろし、難しい顔を作ったまま、腕を組んだ。
 元々、岩切は即決即断の女なので、長々考えるのは苦手だ。
「……奴が出歩いている隙に……いや、むしろ食事に毒を入れて……腕の一本や二本ぐらい……」
 物騒な事をぶつぶつ言う岩切に、一同は思わず引く。
161悪巧み3人組+1:02/10/15 22:02 ID:Ba3/8DKB

「ちょ、ちょっと、レフキーで牧村家といざこざ起こしたら、末代まで祟られるわよ」
「………むぅ」
 政治影響No1の彼女なら、盗賊ギルドの幹部と言えど、捕縛して引きずり出すのはわけないだろう。
 汗を浮かべる志保に、岩切は眉をひそめて問いかける。
「ではどうしろと言うのだ。奴は並の使い手ではないのだぞ」
「だから、彼女が自分からギルドに来るように仕向ければいいのよ」
 志保の逆転の発想に、岩切はなるほど、とぽんと手を打った。
「それで、具体的にはどうするつもりなのだ?」
「彼女、高槻卿の護衛なんでしょ? 手紙か何かを彼女に送って、どこかに誘き寄せればいいのよ。
 篠塚さんが自分から出ていって、外で事件に巻き込まれたのなら、牧村女史も簡単に手は出ないでしょ」
「おおー」
 思わず感心の声を出す3人に、志保は自慢げに胸を逸らした。
「流石、悪い事考えさせたら、右に出る奴はいないわね」
「大したもんだ。情報屋をやめて、盗賊になったらどうだ」
「長岡さん、ボクより悪人?」
「ふっふっふ………って、あんたら誰一人誉めてないじゃないの!!」
 ようやく気付いてキレる志保を無視し、岩切と響子は顔を見合わせる。
「問題はどうやって手紙を渡すかだが、やはり変装して忍び込むのが妥当だろう」
「やっぱ顔が割れてなくて、護衛が油断しそうな人間がいいわね」
 そこまで呟いてから、自然と一同の視線が一人の人間に注がれた。
「……………え、ボク?」
 たらり、と冷や汗を垂らすあゆに、志保と岩切はにたりと悪魔の笑みを浮かべる。
「「覚悟を決めろっ!!」」
「うぐぅぅぅぅ――――――――――――っ!!!」
 レフキー高級住宅街に、謎の悲鳴が木霊した。
162名無しさんだよもん:02/10/15 22:04 ID:Ba3/8DKB
【志保、岩切、響子、あゆ 牧村家に到着】
【あゆ 変装して牧村家に侵入させられる】


題と内容が乖離してるかも……
163名無しさんだよもん:02/10/15 22:17 ID:r7xtE/bQ
>>159-161
新作またキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
やっぱりそのメンツだとワリを食らうのはあゆなのですね・・・(w


>>157-158
>>154は名雪でつ・・・
小麦粉運搬中。
説明無しスマソ


ついでにもう一枚
93話 「花」 より

剣聖剣舞
http://isweb41.infoseek.co.jp/animal/pri0112/cgi-bin/img-box/img20021015220241.jpg
164名無しさんだよもん:02/10/16 00:47 ID:P1f7rKpO
そして新作アゲ
165名無しさんだよもん:02/10/16 03:04 ID:jFB/NELY
>154 >163
おお、久々に絵が来てる!かっこいい!
166名無しさんだよもん:02/10/17 00:42 ID:rSTd5qwo
圧縮来たばっかりだけど、用心でメンテ。
167名無しさんだよもん:02/10/17 23:39 ID:dZhHFAVv
> とらわれのあんぽんたん
とりあえずタイトル見ただけで爆笑。誰のことか一目で判るのが凄い。
しかし松本……ヤパーリアホですな。鼻歌がいいなぁ。
そして出現の触覚侍女。あの子かな?

> 悪巧み3人組+1
+1な約一名……ごしゅーしょー様です。ここのあゆはこういう役柄が似合うこと。
謎の悲鳴に思わずニヤリ。対する岩切の発想の物騒ぶりも笑えます。
志保はやはり情報屋の枠を超えた存在という感じですね。
168名無しさんだよもん:02/10/19 01:01 ID:ikcf+S1M
ほしゅしてみる。
169名無しさんだよもん:02/10/19 23:44 ID:O32nuaxY
>レフキー地下にて〜
武闘家名雪、なかなか雰囲気出てますね。
ちょっと余裕ありげなとことか。

>剣聖剣舞
おお、剣聖雪ちゃん!カコイイ。
そういえばそんな方、いましたね。
170名無しさんだよもん:02/10/20 01:13 ID:2NwdHfAQ
そうこうするうちもうXX間近に……早いよ。
171名無しさんだよもん:02/10/20 06:04 ID:dYlA6YNN
吉井と松本ってまだ会わせてもらってはいないわけね。
まあ当たり前と言えば当たり前だけど。
172名無しさんだよもん:02/10/20 11:28 ID:YgsqKi/M
しかし、この松本の様子を見ると、
岡田の状況が非常に皮肉に思える。
173名無しさんだよもん:02/10/20 15:36 ID:YgsqKi/M
そろそろ迫ってきたかな?
174英雄のつくりかた:02/10/20 18:15 ID:I5BOJfKr
「戦争をしたい……?」
 女が投げ掛けたその言葉が、いったいどんな意味を持つのかを一瞬測りかねて。
 倉田佐祐理はその聡明さに見合わない、ただ鸚鵡返しに反芻しただけの言葉を呟いた。

 気が付けば、周囲に人影はない。
 そこは人気の無い裏通り。
 ようやくそこで、これが決して冗談や何かの間違いなどではありえないことを理解した。
 浩之たちの失踪を確認してからの当惑と混乱と一抹の期待が急速に醒めて行き、変わって意識の中心に巨大な危機感が膨れ上がる。

 もはや疑いようもない。自分たちは、嵌められたのだ。
 何のためか、その理由は相手が自ら明かしてくれた。それが真実とは限らない。
 だが一点、佐祐理を狙うという以上は疑いようもない事実がそこにあった。

 この相手は、帝国の間者を自称するこの敵は、佐祐理の父を抑えるために彼女の身柄を奪おうとしている。

(ここで……お父様の手を煩わせるわけには……!)
 父に迷惑をかけたなら。
 それでは、『父の愛情』と言う名の抜け出したはずの呪縛へとまた陥るだけの話だ。
 階級や血筋に関係なく、自分が自分であるために道を選んだ、それを自己否定することになる。
 結局自分は、父の言ったように非力な小娘で終ってしまうだけ。
 弟の心も助けられず、一方通行の愛に護られる以外に能のない、愚かで孤独な人形で終ってしまうだけ。


 ―――それだけは、絶対に、認められない。

175英雄のつくりかた:02/10/20 18:16 ID:I5BOJfKr
 無意識に、腰に提げた細身のサーベルへと手が動いていた。
 それは恐ろしく無謀な行為だ。
 敵は一人。他に姿は見えないし、そもそも小娘一人連れ去るのにそう多くを必要とはしないだろう。
 そもそもここは共和国の首都、たとえスラム近くの場末の街区ではあっても、帝国の間諜が集団で活動できるような地域ではないはずだ。
 数の上ではニ対一。
 だが、この場合人数の差は戦力の差にまったく関係しない。
 相手は帝国の間者、それも帝都に送りこまれるほどの者だ。相当な手練だろう。まともに相対して敵する術もない。
 敵はこちらを生け捕るつもりなのだから、戦いを挑んだ所で命は奪われはしないだろう。
 だが、向かっていったところで逃走の機会は失われる。全てが終る。

 ……すんでのところ、彼女が剣を抜き放たずに済んだのは、必ず護ろう、けして離れるまいと左の手で強く握り締めていた舞の掌が、それ以上の力で握り返してきたからだった。
 その手を握る力の強さに驚いて、振り向いた佐祐理の視線の先にほとんど物理的な鋭さを宿らせた眼差しを投げる舞の姿がある。
「佐祐理、彼女は……?」
「ふぇ……ちょっ、舞!?」
 問いながら、舞は佐祐理の手を握り締めた側の腕を引いた。
 その細身のどこからそれだけの力が生まれるのか、佐祐理は抗うこともできずに舞の側へと引き寄せられる。
 よろめき、つまずき、抱きとめられ、バランスを取り戻した時には彼女と帝国の間者の間にはすでに舞の背中があった。
 佐祐理自身の背中には、古びた家屋の壁がある。庇うつもりが、庇われる態勢になったということらしい。
「舞、危ないから……!」
「佐祐理。彼女は誰?」
 その手に握られた細剣―――わずかの間に、佐祐理の帯剣は鞘を残して抜き取られていた―――を目にして走り出ようとした佐祐理に、再び舞が端的な問いを投げ掛けた。
 剣を無造作に間者に向けて構えた舞のその姿があまりに凛々しくて、佐祐理は数秒言葉と動きとを固まらせる。

 つい先日、幼い姿のままに、遠くの日の母の面影を求めて無人の塔のヌシの役割を果たしていた彼女。
 その呪縛から解き放たれ、しかし心まではその姿をほとんど変えず、ひたすら純粋な存在として外の世に出た佐祐理の最愛のともだち。
176英雄のつくりかた:02/10/20 18:17 ID:I5BOJfKr
 その純粋さを、純粋さゆえの傷つき易さを、自分が守ってあげなくてはと思っていた。
 支え、癒し、共にこれからを生きていこうと想っていた。
 だがこうして現実の危難に遭遇した時、逆に自分を護るために友人は剣を取っている。

 冒険者を志す自分がまだ備えぬ力強さ、それを確かに舞は備えていた。
 自分が舞に持つそれと同じ、友人へ深いの想い。それを確かに舞の背中に感じ取ることができた。

『意思は力に拠ってはじめて裏打ちされるんだ』
 ぼんやりと、ある種の憧憬にも似た心地で舞の背中を凝視する佐祐理の脳裏に、かつての父の言葉が蘇った。
 なるほど、これがそういうことかと佐祐理は父の言葉を肯った。
 物理的な苦境に晒されたこの瞬間、佐祐理には舞と自身を護る力が存在しない。
 舞は、もしかすると何とかすることができるかもしれないだけの力を持っている。
 今の佐祐理と舞、二人の間に違いがあるとすれば―――思いを形にするための力量の差なのだ。

 それはある種のショック療法。溢れ返った一時の感情と衝動的な行動がわずかにも断ち切られたなら、すぐ持ち前の冷静さが彼女に戻る。
 
「あははーっ……佐祐理はやっぱり、まだまだですね……」
「?」
 いささか力無い、自戒、さもなくば自嘲めいた佐祐理の笑声に、舞は気遣わしげに彼女の顔を覗き込む。
 大丈夫だよ、舞。その言葉を伴わず、ただ何時もと同じく優しく、ただ多少力強く見えるよう微笑んで、佐祐理は見つめる舞へと頷いた。
 それから、彼女の問いへの回答をしばし考える。

 帝国の者だから悪い人。
 そんな短絡した思考法は、少なくとも倉田佐祐理という良い意味で育ちのよろしい令嬢には無縁のものだった。
 同時に、敵を敵として見なせないような愚鈍でもありえない。
177英雄のつくりかた:02/10/20 18:18 ID:I5BOJfKr
「あの人は……レザミア帝国の軍人。
 この間の兵隊さんたちの仲間だよ、舞」

 つまり、敵。あるいは限り無くそれに近い存在だ。はっきりと断定はせず、佐祐理は事実だけをそう告げた。
 舞は特に驚かない。世情に疎く、浮世離れした感のある舞でも、それまでの二人の会話からそれくらいのことは察している。
 ただ、確証が欲しかった。親友の言葉からそのことを再確認し、厳しさを増した眼光で舞は敵を見据えた。

「そして彼女が望んでいるものは、戦争……」
「正確に言うなら……ちょっと違うかもしれないわね」
 佐祐理を護るように剣を向けるその少女の存在は、彼女の耳には届いて否かったらしい。
 その瞳に興味の色を浮かべて二人の行動を窺がっていた女が、細い顎に指を添え、先ほどの自身の言葉を打ち消すかのように口を挟む。
「私は、戦乱の中から現れる英雄が見たいの。時代を創り、世界を彩る数多の英雄の輝きを。
 そして彼らが綴る生きた物語を、地上に築く明日への道筋を、ね」
「……英雄?」
 怪訝さを滲ませる舞の呟きに、女は笑みを浮べて頷いた。
「英雄という人種は、乱世にしか生まれない。
 当然ね、人は万人と闘争を繰り広げて高みに登るものなんだから」
 わずかに、視線がどこか遠くを見るように動いた。何か、誰かを懐かしむようにも見える眼差しは、二人の頭上を越えてレフキーの中心の方角へと向けられている。


 ―――川澄舞は、その瞬間を絶好の好機と判断した。

178英雄のつくりかた:02/10/20 18:18 ID:I5BOJfKr
 人間離れした瞬発力。
 ただ一度、なんの予備動作もなく脚力だけで土を蹴る。一瞬の内に、間合いが詰まる。
 唐突に迫る殺気を感じ取り、ようやく視線を戻した女の顔が、幾ばくかの驚きとそれに倍する怒りを刻んだ。
(……遅い)
 刻んだその時には、七、八メートルはあっただろう間合いは既にない。
 型もなにもなく、ただ振り上げただけの細身の刃をただ振り下ろせば事足りる。
 そして舞は、躊躇なくそれを実行に移そうとした。

 新手だった。
 気配を感じさせなかったほど、手練だったわけではないだろう。
 ただ、舞と佐祐理が公然と姿を晒す間者に気を奪われ過ぎただけの話だ。
 
 突然横合いから飛び出してきた舞の胴ほどもある太い棒―――それが、無造作に積まれた建材の陰に潜むオーガが放った腕の一振りだと気がつく余裕もない。
 気が付くよりも早く、意識を一瞬で粉砕するだけの衝撃が、舞の全身を駆け巡る。
 欠片の容赦も見せない強烈なカウンターの一撃は、舞の身体を楽々と天高く跳ね上げていた。
「……舞っ!」
 宙を舞い、地に落ちて、二度、三度と手毬のように弾んで、ようやく舞の身体は自らの意に染まぬ無秩序な運動を止める。
 悲鳴を上げて駆け拠る佐祐理の視界に、舞の口許から流れ落ちる一筋の赤い液体が飛び込んだ。
 地に膝を着き、舞を抱き寄せて必死に名前を呼びつつ身を揺らす佐祐理の耳に、独白じみた間者の声が届く。
 舞への想いで溢れ返った佐祐理の意識は、それを情報として処理していなかったし、女もまたなんらかの反応を期待してはいなかったのだが。

「南は種を撒くことからはじめた。でも、それでは時間が掛かり過ぎるわ。
 そして投じた時間と労力とに応じて、作物が実るかどうかもわからない。
 ……だから私は、森を焼いて畑にすることに決めたの。共和国と戦争がしたいのよ―――」

179英雄のつくりかた:02/10/20 18:21 ID:I5BOJfKr

【女 帝国の間者。早く戦争になーれ】
【倉田佐祐理 現状足手まとい】
【川澄舞 名誉の負傷?】
【オーガ ライナー性場外ホームラン】

 圧縮前に投稿したかったのだけど。
 間に合わなかった……ログ整理もしないとなぁ。
 ども。Uスレの1です。誤字誤り等ありましたら、容赦なくご指摘くださいです。

 間者はあの人のつもりなんだけど、あの人ってこんな性格だっけかな……失敗した気がする(;´Д`)
 今度はあっちの勉強しよう……
180名無しさんだよもん:02/10/21 00:02 ID:manvfnEp
んでもって、ログ更新の完了も報告しますた。
181名無しさんだよもん:02/10/21 00:17 ID:9dKLMdC3
うーん、間者が誰かわからない。
舞は絶体絶命ですね。

誰かが助けに来るのか、それとも自力でなんとかできるのでしょうか……
182黒騎士の憂鬱:02/10/22 00:59 ID:5aJyi4Tp

 伯斗龍二は、憂鬱な顔で台所に向かっていた。
 幸い、無骨な黒騎士の兜のおかげで、その仏頂面は誰にも見られずに済んでいたが。
「……あー、ついてねぇなぁ……」
 仮面の奥でぼそりと呟き、龍二は先ほどまでの倉田パパの言葉を思い出していた。


「……伯斗、お前は七瀬嬢と藤田君の見張りをしてくれ。どちらも油断のならない人間だから、充分に気をつけてな」
「わかりました」
 頷き、退出しようとした伯斗を、当主が呼びとめる。
「伯斗……少し待て」
 珍しく、その言葉には憂鬱な響きが混じっていた。
 こんな声を出すときは、大抵決まって、娘の佐祐理に関する事だろう。
「できるならば、私は佐祐理を取り戻したい……だが、もし」
 渋面で躊躇しながら、当主は言葉を搾り出した。
「もし、もし佐祐理があくまで外の世界で生きると言うのなら……お前が、佐祐理を見守ってやってくれないか」
「……!?」
 衝撃的な彼の台詞に、伯斗は一瞬言葉を失った。
「無理を承知で頼みたいのだ。
 佐祐理は普段は大人しいのだが、一度決めた事はまず覆そうとしない……驚くほど頑固な面ももっている。
 ……そう、最近では、あれの母親に性格まで似てきおった」
「……お母様?」
「もう何年も前に、死んでいるがな……」
 寂しげな微笑を浮かべ、当主は天井を仰ぐ。
183黒騎士の憂鬱:02/10/22 00:59 ID:5aJyi4Tp



「そう、お前にだけは話しておこうと思っている。伯斗、お前は秘宝塔というものを知っているか?」
「……え、ええ、一応名前だけは」
 レフキーと帝国の国境近くの小さな村にあり、中には伝説の“秘宝”が隠されている……はずだ。
「聞いた所によると、佐祐理はその村に赴き、秘宝塔から一人の娘を連れてきたらしい」
 話のよく見えない伯斗は、困惑した顔で、はぁ、と生返事を返す。
 そんな伯斗をちらりと見て、当主は小さく唇の端をつりあげた。
「伯斗、私の妻……佐祐理の母は、どこの出身だか知っているかね?」
「は、いえ……確か貴族の娘では無かった筈ですよね。当主殿が、どこかの村娘を見初めて………まさか」
 ごくり、と唾を呑み込んだ伯斗に、当主は肯定の笑みを浮かべた。

「そうだ。佐祐理の母もまた、秘宝塔のある村の出身なのだよ」
「……佐祐理様は、その事を……」
「知らない。……そう、知らずに、佐祐理は私と同じ道を辿り、同じ村で、一人の娘と出会ったのだろう。
 ………これを因果と言わずして、何を因果と言うのだろうか」
 自嘲気味に呟く当主に、伯斗も沈黙した。

 佐祐理の母は秘宝塔の村の生まれで、当時旅を続けていた当主と出会い、恋に落ちたのだと言う。
 だが、彼女の一族は塔を守る役目を負わされ、あの村から離れる事は赦されなかった。
「……私は若かった。あれを愛するあまり、無理やりに村からさらったのだよ」
「………」
 罪の告白と言うには、あまりにも彼の表情は切なかった。
 その後、いく度かの時間を経て、彼女は佐祐理と一也を産み……そして、命を落とした。
 当主は祈るように手を組み、伯斗に囁いた。
「伯斗龍二………頼む。佐祐理を……守ってやってくれ」
184黒騎士の憂鬱:02/10/22 01:00 ID:5aJyi4Tp

「……んな事言われたらなぁ……」
 伯斗は廊下の真中で、大きく溜息をついた。
 倉田家の黒騎士団は、2種類の人間から成り立っている。
 ひとつは、先代、先先代から黒騎士をやっている、由緒正しい貴族の家柄。
 そしてもうひとつは、その実力を見込まれ、スカウトされてきた雇われ騎士だ。
 無論、伯斗は後者の分類にはいる。
 群れるのが嫌いな伯斗が、倉田家の黒騎士団に入った理由は、一言で言えば借金だった。
 いわゆるカイジ体質と言うのか、龍二はギャンブルに目が無かった。
 本業の探偵の傍ら、暇さえあればギャンブルにのめり込んでいたのだ。

 特に好きなのが、麻雀と言われる東洋から伝わったゲームである。
 レフキーでも麻雀打ちとして名が知られ、指折りの強さを誇る伯斗が何故、借金まみれになってしまったのか。
 それは、一人の女のせいだった。
 大金を賭けた一世一代の大勝負で、伯斗はその女に………負けた。
 そのせいで、こうして思い黒騎士の鎧を着て、倉田家に雇われているのである。
 王城の近衛団に入るより厳しいと言われる、倉田家の黒騎士団だったが、伯斗は剣技・教養・背景その他全てで高い成績を記録し、目出度く入団していた。
 ところが、せっかく入った黒騎士団の仕事と言えば、来る日も来る日も退屈な見張りばかり。
 ようやく刺激的な仕事を言われたと思ったら……誘拐の片棒だったり、かと思えば、家出した娘をよろしく頼まれたり、もはやワケワカラン。

「……くそ、やってられねーぜ……」
 台所に近付くにつれ、食欲を刺激するいい匂いが漂ってきた。
 伯斗の腹が、ぐうぅ、と音を立てる。
「相変わらずコックのじいさん、いい仕事してるよな」
185黒騎士の憂鬱:02/10/22 01:01 ID:5aJyi4Tp

 倉田家に来てから、取り合えず一番よかった事といえば、食事がこの上なく旨い事だった。
 流石倉田家だけあって、使用人や見張りの私設団にも、平等にいいものを食べさせていた。
 当主が食べる物に比べると若干落ちるのは否めないが、日々ビールとパンとウィンナーで過ごしていた伯斗にとっては、まさに神の味である。
「じーさん、飯の具合はどうだ?」
「ああ、その声は伯斗か。つまみぐいは許さんぞ」
 ひょい、と厨房に顔を覗かせた伯斗に、忙しく働いているコックの内で、一番歳を取っている男が顔をむけた。
 かなり萎びた爺さんだったが、背中はしゃきっと伸び、威勢と料理の腕は誰にも負けないと豪語する。
 爺さんはコックの帽子を直しながら、つい、と伯斗に目をやった。
「まったく、てめぇらカブトムシは、場所を取っていかん。せめて屋敷の中じゃ、その邪魔な兜ぐらい取ったらどうだ」
「はぁ……けど、一応規則なもんで」
 カブトムシとは、爺さんが黒騎士を皮肉ってよく使う言葉である。

 そう言ってから、伯斗はようやくここに着た目的を思い出した。
「そうそう、今客が二人来てるんだけど、食事の方は……」
「ああ、その話なら今朝聞いてる。すぐ用意してやるからまっとれ」
 時刻は夕方である。
 夕食にはまだ早かったが、簡単なものを出してあげろ、とは倉田パパの命令であった。
 彼らとはまた夜に会談したいが、予定が入っていて少し遅れるので、その繋ぎに、という事だった。
 コックの爺さんは、ものの数分で、まかない料理のようなものをこしらえた。
 美味そうなミネストローネに、貝の形をしたパスタが放り込まれている。
 伯斗は礼を言って、爺さんからお盆に乗ったミネストローネを受け取った。
「っと、奴らの部屋はどこだったっけかな……」
 とにかくやたら大きな倉田家の屋敷である。
 たったひとつの部屋を探すだけでも一苦労だ。
186黒騎士の憂鬱:02/10/22 01:01 ID:5aJyi4Tp

 その時、中庭を通った伯斗の耳に、何やらおかしな喧騒が届いた。
「なんだ…?」
 ミネストローネを溢さない様に気を付けながら、伯斗は表門の方に歩いていく。
 見れば、黒騎士達が集まり、何やらわいわいと騒いでいた。
「おいおい、なんの騒ぎだよ」
「その声は伯斗か。いや、なんか王立治安騎士団が、いちゃもんつけに来たらしい」
「はぁ!?」
 一種、治外法権な貴族の屋敷に、たかだか治安維持の寄せ集めが来るなど、大事件……と言うより、大珍事である。
 はっきり言って、彼らには貴族の家を調べるどころか、庭に入る権限すらない。
「わ、われわれはー、貴族の不当なる誘拐行為にー、断固として、反対するー!」
「………ナニが目的だ?」
「知らん」
 何やら謎の旗など振って、警備団らしき人影が、屋敷の前で騒いでいた。
 とはいえ、貴族に逆らっているという自覚はあるのか、みんな涙目でへっぴり腰である。
「倉田家に喧嘩売るなんて、よっぽど度胸がいいな。ちょっと顔でも見てくるか」
「物好きだなぁ」
 呆れる同僚を置いて、伯斗は騒いでいる面子にざっと目を通した。
 だが、どれもこれも平凡そうな顔付きで、こんな大それた事をしでかしそうな人間はいない。
 むしろ、誰かに命令され、嫌々やらされている感じであった。 
「……ふーむ、ひょっとして……」
 ふと首を傾げ、伯斗は呟いた。

「これって、陽動か?」
187黒騎士の憂鬱:02/10/22 01:02 ID:5aJyi4Tp

【伯斗龍二  倉田パパから、直々に佐祐理の護衛を頼まれる】
【佐祐理ママ 秘宝塔の村の出身。すでに他界】
【下っ端―ズ 囮作戦で半べそ】
【日吉かおり ?】

かおりんは……いずこに。
188名無しさんだよもん:02/10/22 18:02 ID:0V8ZsWdG
下っ端―ズが哀れで)イイっすw

しかし伯斗なんか良い具合にキャラが立ってきてますな。
こう飄々としているが実力派。
柳川とかとはまた違った大人の男って感じで正直タイプ。
佐祐理やかおりに振り回されそうな展開が期待できて楽しみですな。
189名無しさんだよもん:02/10/22 19:34 ID:kF3uEiKD
やっぱ、ルミラとかに負けたのかな?
190名無しさんだよもん:02/10/22 23:54 ID:Pb7BebzT
またリレーになってきて嬉しい。
191名無しさんだよもん:02/10/24 01:55 ID:keAbrSUr
192名無しさんだよもん:02/10/24 02:41 ID:euQwwOfn
あうあう〜。新作来てて嬉しいけど、
今学会前で読んでる暇ない〜。
帰ってきたら感想書きます〜。
193名無しさんだよもん:02/10/24 05:45 ID:2Kx54dQA
メンテしとくべ
194名無しさんだよもん:02/10/24 13:54 ID:bkCICWui
sage
195名無しさんだよもん:02/10/24 18:01 ID:/Ubq4dOo
相変わらずタイトじゃのう、葉鍵板。
196名無しさんだよもん:02/10/25 08:38 ID:Ave6Byx4
む。
197Uスレの1:02/10/26 00:32 ID:tnolNK8x
投稿もせず保守(ぇ
198名無しさんだよもん:02/10/26 13:47 ID:H02Nx9cK
それでいい。
199名無しさんだよもん:02/10/27 02:41 ID:2ROg4R5b
誰彼がいい。
200名無しさんだよもん:02/10/27 17:19 ID:v2q6cZZx
200。そして保守。
201名無しさんだよもん:02/10/27 17:32 ID:f6k8o6Kw
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1035555283/l50
とりあえず復活したような気がするリレー小説総合スレ。
202名無しさんだよもん:02/10/28 00:13 ID:ff6CWsSN
ペースは週一か……ふむん。
他の所にも手を出してなければ、もう少し書けそうなんだけど……
203名無しさんだよもん:02/10/28 00:47 ID:ZjEyqGNq
> 英雄のつくりかた
うう。自分も間者の正体がわかりません。候補は何人か思い付くけど……。
珍しくモンスターが前面に出てますね。今までは人間同士の戦いが目立っていた
だけにちょっと新鮮かも。ただ、間者の実力も見てみたいかな。
しかし、南の名前が出ましたか。実は共和国の執政官筆頭にも裏が?

> 黒騎士の憂鬱
伯斗がこんなに目立っているとは!葉鍵板的にも画期的と言えましょう。
出来る男がギャンブルで身を持ち崩すパターンですな。リターンマッチとかあるかな?
もう一つ、ここで出てきた「東洋」という概念は世界観的には何気に重要?
しかし、佐祐理と舞にこういう因縁があったとは。
204名無しさんだよもん:02/10/28 19:09 ID:HV6XW9YX
>202
圧縮ペースは週二回近い罠。
205名無しさんだよもん:02/10/28 22:54 ID:BuQzfoac
>204
確かにどうすればいいんだ的状況ではありますな。
206名無しさんだよもん:02/10/29 01:40 ID:07mGTX61
かおりん、どうするんだろ。
207藤田浩之の最期:02/10/29 01:53 ID:j7GusIgf

「……ふぅ」
 気だるい溜息をひとつつき、七瀬はアンニュイな笑みを浮かべながら、窓の外を眺めていた。
 クリスタルの羽目板の外に見える、よく手入れされた庭が、よりブルジョワな気分を掻き立てる。
「なあ七瀬、何やってるんだ? 腹でも減ったのか?」
「何でよっ!? そうじゃなくて、暮れなずむ夕陽の中、物憂げに窓の外を眺めて溜息をつく……乙女にしか成し得ない技でしょう?」
「まぁ、ドレスでも着てたらそうかもしれんが……」
 部屋の中央に積まれていたリンゴを齧り、浩之は肩を竦めた。

 佐祐理の父に拉致され、屋敷の一角に閉じ込められてから、はや1時間あまりが過ぎていた。
 部屋は豪華なものの、外に出られないのでは、暇を持て余すのも仕方なかった。
 高そうなソファに腰掛け、浩之はむしゃむしゃとリンゴを食べる。
「七瀬も何か食べたらどうだ? 結局昼飯は食べ損ねたからな」
「……あのね、置かれてある果物を食べ尽くすなんて、乙女のする事じゃないでしょうが」
 そう言った瞬間、ぐううぅぅ、と七瀬のお腹が鳴った。
「くっ……あたしとした事が……」
「無理に我慢する事なんてないだろ。傭兵たるもの、食べられる時に食べとくべきなんじゃないか?」
 浩之に諭され、七瀬は口をへの地に曲げる。
 しかし、浩之の言う事はもっともなので、七瀬は反論の代わりに、溜息混じりに呟いた。
「ま、でも乙女になるってのも大変よね……イロイロと」
 ぽんと投げ渡されたオレンジを、七瀬は手の中で転がす。
「佐祐理のパパを見てさ、つくづくそう思ったわ。……佐祐理って、やっぱ理想の乙女って感じがするのよ」
「……うーん、いい所のお嬢様ってのは、間違いないけどな」
 浩之の返事は、少しだけ歯切れが悪かった。
208藤田浩之の最期:02/10/29 01:54 ID:j7GusIgf

 確かに深窓の礼嬢に見えるが、その実意外に芯が強くて、行動派である事を浩之は知っている。
 第一、よくある“お嬢様”ならば、家出した挙げ句に冒険者になろうとは思わないだろう。
 そんな佐祐理の性格に、何度となく振り回された経験のある浩之は、素直に七瀬に同意できなかった。
 浩之が考えている事がわかったのか、七瀬は微笑する。
「そうね、単なるお人形さんみたいなお嬢様じゃないものね。でも、そんな所も含めて、あたしの理想だと思うんだ」
 七瀬はツインテールの先にくるりと指を絡め、その毛先をじっと見詰めた。
 手入れには細心の注意を払ってはいるが、冒険の間は、髪を気にしている余裕なんてないのが普通だ。
 佐祐理と比べて、髪に艶も無いし、埃だらけだし、枝毛も多い。
 そんな自分を省みて、七瀬は大きく溜息を漏らした。

 真の乙女……武器や格好だけ乙女らしくても、それは乙女とは言えない。
 だからと言って、窮屈な檻の中に閉じ込められるようなお嬢様など、願い下げだ。
 姿形や仕草だけではない、心構えこそが、乙女に必要なものなのかもしれない。
「真の乙女と言うものは……」
 七瀬が独り言のように、“乙女論”を展開しようとしたその時、浩之が急に立ち上がった。
「なぁ七瀬」
「何?」
 乙女論を邪魔され、ちょっと額に青筋を浮かべながら、七瀬は振り返る。
 浩之もにこやかに笑いながら、七瀬の肩に手を置いた。
「………?」
「………ハエだ」
 ひょいと浩之が手を退けると、七瀬の肩から、ハエがひょろひょろと落ちた。
「こんなお屋敷にも、ハエはいるんだな」
209藤田浩之の最期:02/10/29 01:54 ID:j7GusIgf

 何となく感心しながら頷いた浩之は、次の瞬間、思いきり足を踏まれ、顔を引き攣らせる。
「人の肩の上で、ハエを潰さないでよ!!」
 七瀬は一見にこやかな顔をしながら、ぐりぐりと浩之のつま先を踏みにじった。
 七瀬の怪力で踏まれ、浩之の顔面に脂汗が滲む。
 もっとも、外のかおりからは、二人がにこやかにいちゃついているようにしか見えないのだが。

「そんな事より藤田、佐祐理のパパの言った事、どう思ってるの」
「………わからねぇ……としか言いようがない」
 踏まれたつま先を庇いながら、浩之はよろよろとソファに腰を下ろした。
「正直な所、あのおっさんの言ってる事は正しい。佐祐理さんが生きていくには、外の世界は厳しすぎる」 
「温室の中の花は、温室の外では生きられない……かぁ」

 やりきれないように呟くと、七瀬は部屋の中を見回す。
 豪華な家具も、美しい調度品も、じっとしている間に、始めて見た時の輝きは色褪せていた。
 例え乙女と言っても、こんな空間の中に、一生閉じ込められて過ごさなければならないのなら………
「ホント……乙女って大変よね」
「男の俺には、全然わからないけどな」
 どれだけ美しい籠の中にいても、小鳥は外の世界に憧れるものなのだろう。
 何故なら、自由というのは、それを持たない者にとって、最も美しく光り輝くものなのだから。

「佐祐理があんたに惹かれたのも、あんたが自由気ままに生きてる人間だからでしょうね」
「自由ってのは、あればあるほど有り難味が薄れるもんだけどな」
 しかし、ずっと屋敷の中に閉じ込められていた佐祐理にとっては、浩之の生き方は、とても魅力的に映ったのだろう。
 始めて佐祐理に出会った日の事を思い出し、浩之の唇の端に笑みが浮かんだ。
210藤田浩之の最期:02/10/29 01:55 ID:j7GusIgf

「佐祐理さん、このままじゃ駄目だよな」
「……乙女の目標として、あたしも協力してあげたいけどね」
「結局、なるようにしかならないだろ」
「……そうね」
 浩之はやる気無さそうに呟くと、ぼんやりと天井のシャンデリアを見上げる。
「それも、ここから無事脱出できてからの話だ」
「何か、そっちの方が大変な気がしてきたわ」
 七瀬は溜息を漏らすと、再び窓の外に視線をやった。
 今度はアンニュイな午後の演出ではなく、庭に詰めている黒騎士達を見るためである。
「……取り合えず、目に付く所で5人。気配から、後2、3人は裏に立ってそうね」
「強行突破は無理か……」
 浩之は舌打ち混じりに立ち上がると、意味も無くぐるぐると部屋の中を回った。
 その時、七瀬がはっと浩之の動きを制する。
「ちょっと静かにして……今、何か聞こえなかった?」
「ん?」
 じっとふたりで耳を澄ませ、七瀬のいう音を聞き取ろうとする。
「……何も聞こえないぞ」
「ううん、誰かいる……気配は消してないみたいだけど……」
「ひょっとして、刺客か」
 緊張の面持ちの浩之には答えず、七瀬は足音を立てないように、そろそろと部屋の中を移動した。
「…………そこっ!」
 瞬間、七瀬は弾かれたように手にしていたオレンジを投げつける。
 オレンジは真っ直ぐ天井に向かって跳ぶと、ぱこん、と軽い音を立てて羽目板を打ち抜いた。
 同時に羽目板が落下し、ぽっかりと開いた空洞から人が落下する。
211藤田浩之の最期:02/10/29 01:56 ID:j7GusIgf

「ふぎゃあっ!?」
「なっ!」
 音を立てて天井から転げ落ちた人物を見て、七瀬と浩之は目を丸くした。
 落ちてきたのは、七瀬と同い年くらいの少女だったのだ。
「っつつ……あっ、七瀬お姉様!!」
「はい!?」
 彼女は叫ぶなり、いきなり七瀬に抱きついた。
「はああぁぁぁあぁぁっ、この胸の感触………やっぱりす・て・き」
「あああんっ! ……って、なんじゃこいつはー!?」
 いきなり物凄い勢いで胸に顔を埋められ、思わず感じかけてしまった七瀬は、はっと正気に返って叫ぶ。
 少女は潤んだ熱い目で七瀬を見上げながら、うっとりと口を開く。
「始めましてお姉様、私は日吉かおりって言います。お姉様を地獄のスケコマシから解放しに来ました」
「……地獄のスケコマシ?」
 思わずぽつりと呟いた浩之に、かおりはギンっ、と鋭い視線を投げつける。
 その視線に怯みながらも、浩之はかおりの腕を取った。
「どこから入ったのか知らないが、こんな所にいると、一緒に閉じ込められるぞ……ほら、こっちに……」
「男は死ね」

 ぐじゅっ!!

「ふ、藤田っ!?」
 蹴り上げられた股間を押さえ、浩之は真っ青な顔で顔面から床に倒れ込んだ。
 かおりは小気味よさげに笑うと、どさくさに紛れて七瀬の胸を揉みながら、その目を覗き込む。
「七瀬お姉様、脱出経路を確保してます。さぁ、私と一緒に、愛の逃避行に出かけましょう!!」
212名無しさんだよもん:02/10/29 01:58 ID:j7GusIgf

【日吉かおり 愛の逃避行】
【藤田浩之  さようなら】


なんつータイトルだ……
ていうか、ますますかおりんが変なキャラに……
213名無しさんだよもん:02/10/29 02:14 ID:TErdSlm0
おお、ファンタジー初の人死にか……と思ってドキドキしながら読んだら……

   さ  よ  う  な  ら  (白黒反転)


しっかし、今思えば佐祐理と浩之って絶妙のカップリングだよなぁ。
214名無しさんだよもん:02/10/29 07:47 ID:zxReopJb
おお、出勤前に見たら新作が。……あぅ。帰ったら読も。
215名無しさんだよもん:02/10/29 18:17 ID:fAsdijiv
>さようなら
ワラタ。
216名無しさんだよもん:02/10/29 23:11 ID:ievWxc4T
リレー総合、もう落ちてる……普通にカキコあったのに。
明日はまた我が身か……メンテ。
217狩られる者の葛藤:02/10/30 01:30 ID:LOkQlikv
 ふらりとした動きで大志は身を起こす。
 いや、それはもう既に大志の意思で動く体ではなかった。
 不自然に盛り上がった胸。その胸から、口から流れ出る血。
 そしてその血の色のように赤く輝く目。

「アルジャーノンっ……!!」
「やられたわ……全て読まれていたとはね……」
 体を起こしながら友里は苦々しげに呟く。

『ソノ通リダ。ニンゲんヨ』
 くぐもった、それでいて底から響くような声が大志の口から漏れる。

 こちらの作戦は全てアルジャーノンの計算の範疇だった。
 待ち伏せされていた時点で作戦が相手に知れている事は予想したが、その危機は突破した。
 鼠達を部屋に閉じ込め、作戦は全て上手くいったかに見えた。

 だが、銀色のアルジャーノンには読まれていた。そしてはじめから待っていたのだ。
 困難な状況を乗り切った時や勝利を確信した時の心理的な隙が出来る瞬間。
 その狩りの機会を。

 高度な知能を持つ事。いやこちらの予想以上に高度な知能を持つことはわかっていた。
 だが、そこまでわかっていてなお裏をかかれた。
 
 進化する高度な知能。状況に即座に対応できる柔軟性。そして獣の野生。
 その全てを兼ね備えたハンター。
 このようなモノが兵器として解き放たれたら、一つの都市の崩壊などにそう時間は要らないだろう。
 よくよくとんでもない研究をしていたものだ、と友里は思う。
218狩られる者の葛藤:02/10/30 01:31 ID:LOkQlikv

「お前っ……、大志の体で何をするつもりだ!?」
 大志、いや、アルジャーノンに対し北川が叫ぶ。
『魔術師ハ我等ノ餌ダ』
「何だと!?テメっ……もが!!」
「落ち着いて、北川くん。大志く……じゃなくて鼠さんは動くな、って言ってたでしょ?」
 アルジャーノンの返答に飛び掛ろうとさえする勢いの北川を名雪が制止する。

「なるほどね……だから私を狙ってきたわけ……」
 アルジャーノンは最初友里を狙っていた。
 おそらく、アカデミーの魔術師、加えて風の元素に愛された魔術師でもある彼女の魔力を狙っていたのだろう。
 だが、現実ではその友里を大志が突き飛ばして身代わりになった。

『ソウイウ事ニナルか。ダガ狙イトハ少々違ウモノノ、コノ魔術師モワルくナイ。』
 そういって、軽く手を握るそぶりをみせる。
 実際、アルジャーノンの言う通り大志の魔術の実力はアカデミーの上位クラスにも匹敵すると友里は思っていた。
 アカデミーや国等の組織に属さない魔術師は珍しい。
 研究するにしても修行するにしても、設備から資本まで全てが個人とは桁が遥に違うからだ。
 天性の素質も独学では開花しにくいとさえ言われる。
 なので、野で独学で学んだ魔術師には大した実力者が滅多にいない。

「それで?餌が目的ならさっさと食べてしまえばいいんじゃない?良い魔術師なんでしょ?」
「なっ……!?名倉さん、アンタ本気でそんな事思ってんのか!?」
 半分以上逆上している北川は友里の方を睨みつける。
 だが友里は発言黙ってなさいとでも言わんばかりの視線で北川を制する。
219狩られる者の葛藤:02/10/30 01:32 ID:LOkQlikv

『冷静ダナ……アカデみーノ魔術師ヨ……』
「そう見えるかしら?」
 その言葉は皮肉でも強がりでもなく事実だった。
 目に見えて冷静ではない北川も、どうだかよくわからない名雪も、一見冷静な友里でさえも。
 実際に平常な思考状態でいる者はいなかった。
 ただ、友里はその魔術師としての思考が現状を判じようと働いている。

『私……イヤ……我等ハ飢エテいル……』
「飢えているなら尚更食事にすればいいんじゃないかしら?」
『私ハ衝動ニ対抗スル術ヲ知ッテイル。ダガ、一度食事ヲハジメレバソノ衝動ニハ耐エラレヌカモシレヌ……
我等ハ飢エテイル……一匹如キデハ足りヌ……』
「なるほど。ここにいるもう一人の魔術師である私もご所望ってわけね。」
 友里のその言葉に対し大志を操るアルジャーノンは、いや、というように首を振った。

『魔術師デナクトも魔力ヲ内在シテいル。ソノ大キさトソレヲ実際ニ扱エル天性ノ才能ガアルカノ違イダ。
 私ニ言ワセルナラ、魔術師ノ方ガズット美味イトイウ差ダ。』

「全員逃がす気はない、ってこと……」
「け、結構グルメさんなんだね……」
「……名雪さん……それ、ツッコミ所が違う……」
 対する答えは三者三様だが、少なくとも多少は落ち着きを取り戻しているようだ。
 ただ、北川だけは激昂の様子を隠せない。
 それでもツッコミが出てしまうのは彼の人間性なのだろうか。

 でも――――、そういって友里が言葉を発する。
「あなたいくつか考慮してないわね。貴方がいくら私達を脅しても私達が彼を無視して逃げるか殺すかすれば意味ないわ。
だって逃げるなら私達の方が足は速いし、倒すにしてもあなたの位置は既にわかっているもの。」
220狩られる者の葛藤:02/10/30 01:32 ID:LOkQlikv

 なっ―――――――――!!
 その言葉を聞いた瞬間、北川は猛烈な怒りが駆け抜けるのを感じた。
 今、この女魔術師は何を言った?見捨ててて逃げる?殺す?誰を?大志を?誰が?自分達が?
 そして思った次の瞬間には友里に掴みかかっていた。

「あんた今何を言った!?大志を見捨て逃げるだと!?本気でそんな事思ってるのか!!?」
「もちろんそれがこの場合最善の選択でしょう?戦って勝てる見込みが確実にあるわけでもないし。」
 友里は北川の激昂など意に介さないように答えを返す。
 だが、それが余計に怒りを誘う。
「ふざけるなよ!!仲間を見捨てて逃げるとか殺すとかなんてよく言えるな!!」
 今の北川の激昂は以前大志が友里を疑うような発言をした時の比ではなかった。
 命の危機にさらされている仲間を見捨ててしまうその発想に激しく憤る。

「なら彼の命が一秒でも長くなるように要求に従って餌になるとでも?」
「そうじゃない!!なんでもっと解決策とかを考えようともせずに見捨てるなんて発想が出来るんだ!!」
「なら彼と戦える?それに鼠達は気を失ってるだけでまだ生きているのよ?
その状態で時間をかけて作戦考えて全員助かろうなんて発想が出来るなんて、貴方の頭はよほどおめでたいようね。
断っておくけれど、現状の最善の結果と最善の選択は全くの別物よ。わかってる?」

 現在、生体兵器と化した鼠達は管理人室の中で気を失っている。
 だが、銀色の鼠が健在な以上、目覚めた時にどういう行動に出るかなど考えるまでもない。

 友里は言葉を続ける。
「そもそも仲間?私は成り行き上あなた達と行動してるだけよ。利害の一致の関係はあっても仲間になった覚えなんてないわ。
 私の目的はアルジャーノンの始末であって、アルジャーノンの餌になる事ではないの。」
221狩られる者の葛藤:02/10/30 01:33 ID:LOkQlikv

 プチ。
 そんな音が聞こえたような気がした。
 次の瞬間には北川は拳を振り上げていた。
 普段今のような事を言われても、おそらくそんな行動には出なかっただろう。
 だが今は普通ではなかった。仲間の命の危機、更には自分の命すらも危機にある。
 その異常な状態で、北川は冷静さの欠片も失っていた。

 だから、普段なら決してしない、女性に手をあげるという行為に出ようとしていた。
 そして、手助けはしても積極的に介入してこなかった友里が妙に絡んでいる事にも気付いてなかった。

 北川は拳を振り下ろそうとした。友里は身動き一つしない。
 だが、振り下ろそうとしたその手は、振り上げた状態のままピクリとも動かなかった。
 何時の間にか、名雪がその手を掴んでいたからだ。

「北川くん、落ち着いて……!」
「離してくれ、名雪さん!!コイツは!コイツは……!!!」

 俺達の信頼を裏切ったんだ!
 そう叫ぼうとしたが声にはならなかった。
 昂ぶった感情が声を出させなかった。

『仲間割レハ終ワッたカ?』

 突然のその声に3人は大志――アルジャーノン――の方を振り向く。
 そして次の瞬間に驚愕した。
 大志の体のまわり上下左右に菱形を描くように光球、いや雷球が浮かんでいたのだ。
222狩られる者の葛藤:02/10/30 01:34 ID:LOkQlikv

 北川はその光景には覚えがあった。
 それは大志がこの下水道で使った魔術の一つで同じような光景を見たからだ。

『行ケ……』
 大志の口からその言葉が発せられると4つの雷球は3人を目掛けて飛来する。

「風よ!護って!」
 友里は、ちっ、と舌打ちすると北川と名雪の前に飛び出し叫ぶ。
 その叫びが終わらないうちに、友里を中心に3人を囲むように風が吹き荒れた。
「うぐっ……!」
 北川は突然巻き起こる突風に息が詰まる。

 バチバチバチッ!!!
 凄まじい放電音を放ちながら、飛来する雷球は魔力を帯びた風によって掻き消され、また軌道を後方に逸らされる。
 そして、魔術と魔術がぶつかり合う轟音が去ると再び下水道の静寂が訪れる。

 アルジャーノンは口を開いた。

『敵ヲ、獲物ヲ逃スツモリナドナイ。手足ヲ焼キ切ッテデモナ。』

 そう言ってニヤリと笑みを浮かべる。
 その笑みはやけに人間じみていて、そして不快なものだった。
223名無しさんだよもん:02/10/30 01:38 ID:LOkQlikv

【アルジャーノン(大志) 狩る気満々。大志の魔術を使う。】
【北川潤   友里に反感】
【名倉友里 何か考え中?】
【水瀬名雪 一番状況が見えてたり?】

何か方向性を違えたかな・・・?
224名無しさんだよもん:02/10/31 12:30 ID:xRXUpagP
北川チームキタ――――
225名無しさんだよもん:02/11/01 06:42 ID:ZXUSmB2C
キタ―――― ……でもなかなか読んでる暇がない罠。
出張から戻るまでスレがなくなっていませんように。
226名無しさんだよもん:02/11/02 00:42 ID:LzLEvi0i
うーん、アルジャーノンもろ悪役って感じですな…

北川の直情径行もさらにエスカレート、現状はピンチと、事態は八方塞の予感。
たよりの綱は友里と名雪だけかな?
227名無しさんだよもん:02/11/02 23:38 ID:Ai6LEhCp
危なげなので保守
228雲丹:02/11/03 02:02 ID:NMEQfXlP
うん。
229名無しさんだよもん:02/11/03 07:37 ID:B8pGVCl/
シリアスからコミカルまで結構幅広くていい感じですな。
230名無しさんだよもん:02/11/03 13:37 ID:KgaQamod
北川組は相変わらず緊迫してるなぁ。
231名無しさんだよもん:02/11/03 17:26 ID:dUlJri+2
一方で相変わらずコミカルなかおりん。
232名無しさんだよもん:02/11/04 01:49 ID:sSJY9oNp
香里ん。
233名無しさんだよもん:02/11/04 23:40 ID:qZaVA0P6
保守
234騒がしい鼠たち:02/11/05 00:23 ID:cBsP0Glo


 天井の裏、中二階。
 狭く暗く閉ざされた空間。
 

 そんなところを好んでうろつくのは、鼠や猫などの小動物、蜘蛛のごとき昆虫ども。
 その閉ざされた空間の主人であり、その限られた空間を彼らのを唯一の世界とする生き物たち。

 或いは、ネズミと呼ばれる輩の中でも少しばかり大きな体躯を有するもの。
 衣服をまとい、道具を使い、外より境を侵して内へと入り、人語を解する彼らは四足にあらず、二つ足。

 人はそれを賊と呼ぶ。



「……お姉様ぁ」
 怒ったような、甘えたような、微妙なバランスを保った声がした。
 高さ四十センチほどの窮屈極まる空間、くるりと顔をこちらに向けた先を行く少女、これが衛兵隊の制服を着込むんでいるのだからのだから始末が悪い。
 衛兵隊。正式名称は王立治安騎士団。おまわりさんである。
 ……おまわりさんが、賊を演じる。別にこれが抜き打ち防犯訓練である、などということはなく。
 治安部隊の幹部が真実賊であるというのは、衛兵長が耳にすれば柏木耕一が八つ当たりの被害を受けること受け合いの大椿事だろう。

235騒がしい鼠たち:02/11/05 00:26 ID:cBsP0Glo
 というか、それだけでは済まない。済むわけがない。
 治外法権のある特権階級の邸宅に官憲が特段の証拠もなしに踏み込んで、『招かれていた客人』を連れ出したなどと知れたら。
 いかに領民の支持を得たちゃん様政権と言えども吹っ飛んでしまいかねない。
 ちゃん様の善政下であまり役に立ってないとはいえども議会は議会、おいそれとその独立を冒して良い存在ではないのだ。

 そして倉田議員を筆頭とする共和国議会のお歴々は、その種の不当な介入を断固として許さない程度には気概と中世的良識に満ちた人々であった。

 ちなみに、偉大な女王大庭詠美陛下……はともかく、彼女の側近、またかおりたちの直属上官でもある柏木衛兵隊長や執政官牧村南卿も、議員と同じ理解を共有していたりする。
 ついでにこの賊にあたる人物の部下たちも、そうした一般常識の側に与する人々であったので、この場合の問題は、
「そんな不気味なの、おいていきません?」
 などとぶーたれている日吉かおり分団長個人に集約されることになる。
「ぶ、不気味って……」
 汚い物でも見るかの様な(実際彼女には『汚いモノ』なのかもしれないが)眼差しに、七瀬は額に大粒の汗を浮かべ、こめかみを走る鈍い痛みにやや身を傾いだ。

 いや、確かに自分も理想の乙女を身で表しているようなひとに、憧憬に焦がれるということはある。
 彼女の『お姉様』なんて呼び方も、それに通じることがあるのかもしれないと思われないこともなくはない……と思いたい。
「……って言っても、やっぱりそうじゃないわよね……」
「あ、やっぱり七瀬お姉様もそう思いますぅ? じゃ、やっぱりそれはここに置いていって……」
 上手い自分の納得させかたがさっぱりすっぱり思い浮かばずに、ぼそりと零れた七瀬の言葉をなにやらかおりは都合よく聞き違えたらしい。
 なにやらとんでもなく人非人なことを口走っている。
「誰もそんなこといってないっ!」
236騒がしい鼠たち:02/11/05 00:27 ID:cBsP0Glo
「でも、不気味じゃありません?」
 さすがに多少声量を抑えたとは言え、やっぱり思わず口をついて出た七瀬の叫びもどこふく風。
 狭い屋根裏で器用にくるりと身を翻しこちらを振り向いたかおりは、くすりと小悪魔めいた笑いをみせて、ちょいちょいと七瀬の傍らを指差した。
「……?」
 示されるがままに視線を向けて、ひくりと七瀬の頬が強張る。

 かおりいうところの『不気味なの』、七瀬に襟首引きずられてうーうーうめいている浩之の顔色は、ヴァンパイアか何かと間違えられそうなほど真っ青のまま。
 というか、青を通り越して紙のように白い。
 目も何処かしら虚ろ、藪にらみというか焦点が合ってないというか死んだ魚の様だと言うか。
「ほら、やっぱり不気味ですよぉ?」
「た、確かに……」 
「って、不気味って誰のせいでこうなってんだ、誰の!?」
 意図せず頷いた七瀬の同意を耳元に受けて、悲鳴のような抗議と共に飛び起きる男が一人。
 顔色その他がさして変わらないのに、態度だけ元気になるあたり不気味さアップであったりする。
「あんたのせい」
「あのなぁ、なんで俺のせいになるんだよ!」
 当然のように決め付けるかおりに、当然ながら怒る浩之。
「あー、見苦しい。男なんだから非はきちんと認めたら?」
「非って、いったい何時何処でどーゆー非を冒したってんだ!?」
「男は来るなっ!」
「あ、こらこっちの質問に答えろ!」
 どういう動きをすれば、ほとんど匍匐前進に近い姿勢で、こんな速度が出るのだろう。
 浩之が詰めよると、詰め寄られた分だけかおりが進む。
237騒がしい鼠たち:02/11/05 00:27 ID:cBsP0Glo
 かおりが進んだ分だけ浩之が追いすがり、それを引離すためにさらにかおりが歩を早める。
 ぎゃぁぎゃぁと小声で叫び交わす二人、天井裏に棲み慣れたかのように早い早い。
 あっという間に彼方の暗闇へと這い去っていく二人の後姿に、小さく一つため息が漏れた。

「……乙女の業じゃないわよね、やっぱり」
 高姿勢匍匐前進する男女を後方から見た、七瀬留美心からの感想だった。

 
 

「……うおっ!? こら、いきなり立ち止まるなっ!」
 一方こちら、先行組。
 さながらテケテケのごとく腕の力で疾走すること1分強、ようやく先を行くかおりに手が届こうという時だった。
 不意に停止したかおりに反応し切れず、したたか顔を打ち付けて、再三の抗議の声が浩之から上がった。

 すぐさま減らず口がかおりから戻る―――はずなのだが、さて、反応がおかしい。
 声もなく、顔も向けず、前進を再開するわけでもない。
 それに何か、どうも震えているようじゃないか?
「って、おい、日吉? どうしたん―――」
 だ、と言い終えるより早く、強烈な衝撃と共に浩之の顎が跳ねあがった。ガキッ、と骨を打つような音がしたのだから相当なものである。
 脳味噌を直接攪拌するような打撃に、浩之の意識がほんのわずかも保たばこそ。
 ばたん、と床に崩れ落ちる浩之が最後に見たモノは、硬い厚皮のブーツの踵がこちらの視界全域に向かって急速接近してくる姿だったり。
238騒がしい鼠たち:02/11/05 00:28 ID:cBsP0Glo

「人のおしりをいきなり触るなぁっ!」
 いきなり止まったのはあなたです、日吉かおり嬢。
 などと突っ込むべき者もここにはおらず。
 止めの足刀を浩之の顔面に食らわしたかおりはもう一回『それ』を強く蹴飛ばして、自分の視界から外へと追い遣った。
 そして深く大きく呼吸を一つ。
 ようやくそれで満足したのか、「うん」とよくわからない呟きを漏らすと、かおりは視線を前へと戻した。
 そこはすでに突き当たり、裏庭へと面した屋敷の壁。
 外と中を隔つのは、見るからに頑丈な嵌め格子。
「うふふ……前にどっかから倉田家に盗人が入ったって事件があったのよね」
 しかし彼女も然る者で、伊達にプロのストーカーをやってはいない。
 何となくわかるのだ。誰かが何処かに忍びこむ、そのために切り開いたルートと言うのは、こう、同族の性と言うか。

 ……誰だ、こんなの衛兵にしたのは。

「その時はどこから入ったのかわからないってことだったけど……ほら」
 にやりと笑みを浮かべ、かおりが格子を掴んだ腕に力をこめる。
 すぐに『ぱこん』、そんな音がして、嵌め格子が周囲の壁もろとも綺麗な長方形に取れてしまった。
「どこの誰か知らないけど、泥棒さんありがとう♪」
 もういい加減、所属が治安機関なのか盗賊ギルドなのかわからなくなるようなことをのたまうと、かおりは朗らかな笑顔を背後へと向けた。

 そこには予想通りの顔。
 ようやく追いついて来た七瀬が、身に被ったほこりを叩いている。
 その手に握られたのは浩之の襟首。まぁこれも予想通りで、多少顔を不愉快に強張らせる以上のものではない。
 ともかくも、声を掛ける段にはなんとか笑みは崩れない。
 爽やかな微笑、とは言いがたい下心ありげな笑みはあまり七瀬の乙女心を動かすものではなかったが。
「七瀬お姉様、こっちです! ここから外へ出られます。さぁ、早くめくるめく愛の世界へ!」

239騒がしい鼠たち:02/11/05 00:28 ID:cBsP0Glo
【日吉かおり 逆拉致まっしぐら】
【藤田浩之 踏んだり蹴ったり】 


 七瀬・浩之組み脱出寸前というか、別の人にかどわかされる寸前というか。
 ども、Uスレの1です。
 最近またしても時間がない……もう少しペースが上げられれば良いのですが。

 問題などありましたら、御指摘お願いいたします。
240名無しさんだよもん:02/11/05 23:30 ID:iM6k1lNE
>騒がしい鼠達
いやぁ・・・かおりは相変わらずですな(w
愛(?)の為なら手段は選ばんというか・・・
男は眼中にないようだし。(w

(タイトル見た瞬間、北川チームかと思ったのはここだけの話)
241名無しさんだよもん:02/11/07 01:24 ID:roIK5fno
うんうん、やはりこの組はやたらとノリがいいな。
242名無しさんだよもん:02/11/08 00:53 ID:to18Weoc
北川チームと掛けたタイトルにワラタ。
243名無しさんだよもん:02/11/08 02:29 ID:teFE8EbY
もうすぐ圧縮…
244名無しさんだよもん:02/11/08 08:10 ID:2XG+1HvE
> 藤田浩之の最期

乙女道を説く七瀬にワラタ。更に満を持してのかおりん乱入。
どうなる七瀬!ファンタジーではすっかり乙女と縁遠いぞ!
時に御愁傷様でした > 浩之。「地獄のスケコマシ」には大笑い。
245名無しさんだよもん:02/11/08 22:33 ID:Px0fO5Qs
> 狩られる者の葛藤

アルジャーノンはいよいよ手のつけられない厄介な敵の様相を呈して
きましたね。こういう状況では比較的一般人に近い北川視点が基本と
いうのが効果的です。しかし、未だ底を見せていない女性陣の動きが
ここに至ってポイントになって来た感じですね。どうなりますか。
246名無しさんだよもん:02/11/09 01:59 ID:nWpExtjD
う〜む。またも例の時期ですか。
いつもながら慌しい。
247名無しさんだよもん:02/11/09 07:16 ID:G5ch1O1g
一応来たみたいだけど念の為。
つか学園が落ちるとは……
248名無しさんだよもん:02/11/09 10:39 ID:345YyRpw
再建しました。

葉鍵リレー小説総合スレッド 第5巻
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1036804700/l50
249Uスレの1:02/11/09 17:42 ID:e3vJQ6l/
 投稿が来るまで保守。
 というか、告知にて。

 鯖統合があったらしく、過去ログサイトのアド変わりますた。
http://lefkey.hp.infoseek.co.jp/が新アドなので、よろしくお願いいたします。
250名無しさんだよもん:02/11/10 01:34 ID:DQSCDOss
日曜日〜
251名無しさんだよもん:02/11/11 21:49 ID:mfjNkT7s
ここまでの停滞っぷりはさすがに未曾有の展開だな。
書き手みんな、なぜかしぇんむ〜に消されでもしたんだろうか。

冗談はさておき、現在執筆中って書き手いるの?
いないなら流石に、もう保守もやめるけどさ……
252名無しさんだよもん:02/11/11 23:56 ID:bNDQdTby
>>251
うぃっす。書き手その1です。
いや、先週からえあGやってて、うっかり睡眠時間削りまくってしまってましたよ、あはは。
そろそろ現実世界に帰ってきましたので、今週中にはなんとか。
253名無しさんだよもん:02/11/12 00:26 ID:msMPUQ8t
停滞と言ってもまだ一週間ですし、マターリ待ちましょ。

まあ、物書きってエネルギーいりますよねぇ。
最近SS書きを始めて実感してます。
ここに書ける日が来るといいなぁと思いつつ保守と修行の日々。
254名無しさんだよもん:02/11/12 23:32 ID:N8zOuRua
待つのも楽しいもので
255名無しさんだよもん:02/11/13 20:30 ID:51Kez8M2
問題はやっぱり圧縮周期か……
256名無しさんだよもん:02/11/13 22:33 ID:jffgN5C+
500突破でage
257名無しさんだよもん:02/11/13 23:24 ID:nA+TBxfU
圧縮怖ひ
258名無しさんだよもん:02/11/14 05:14 ID:aOZrDY+/
確かに前回の落下はトラウマ気味だからなぁ。
259名無しさんだよもん:02/11/14 08:22 ID:g+jJERKx
最近だと海賊篇がクライマックス直前で止まっているのかな?
アルジャーノン篇は一段落が近そうな感じですけど。
260名無しさんだよもん:02/11/14 18:00 ID:ssHv8iAu
っーか、なぁ……

書き手その1に続くヤシはいないのかYO!!

とりあえず告知age
261名無しさんだよもん:02/11/14 18:58 ID:Z4fQSSsC
書きかけてはみたけど、かなり長くなりそうな感じがしたので話からまとめ直します……
262名無しさんだよもん:02/11/14 22:11 ID:UyBJoVOg
葉鍵ファンタジーで元ネタとは別にお気に入りキャラっている?
自分としては大志とか結構好きだけど。
263名無しさんだよもん:02/11/14 22:25 ID:oTqqXBYR
取り敢えず……書き手その2かな。
一応自分の話がリレーされたらまた書き始めるつもりです。それまでは待機中という事で(ぉ
という感じで最近は全然書いてないですね……
それとは別に編集サイトにて、興味本位で数えてみたら25話も書いてたYO!
ファンタジーにおいては多いのか少ないのかよく判らないけどw
264名無しさんだよもん:02/11/14 23:15 ID:TBYx0oKf
書き手その3と言ってみる
ネタはあるんだがまとまってくれません(w


どないしよー
265名無しさんだよもん:02/11/15 05:54 ID:n8r5osX3
その4〜。
ちなみに今までに新規追加したキャラは3名でしたよ。
266名無しさんだよもん:02/11/15 10:42 ID:bzhodUAR
その5なんだけど……仕事クビになってからは、とても書ける余裕が(爆)
267Uスレの1:02/11/15 12:07 ID:Y3P8YW00
その6。
漫然と仕事中ですが、何か?(ぉ
268名無しさんだよもん:02/11/15 22:12 ID:p3nji/NE
こんなにいるわけねーと思いつつ、書き手その7w
リレーしたいけどできない話が一つ…
269名無しさんだよもん:02/11/15 22:48 ID:dYMgjcr6
では質問。ここ2ヶ月で1話でも書いた人、手をあげて下さい(w
270虎士奮迅:02/11/15 23:37 ID:nJqUMQ7L

 2度、3度と、剣と剣が打ち合わされ、周囲に火花が飛び散る。
 柳川と晴子の戦いは、一見して五分と五分に見えた。
 だが、あくまで余力を残して戦う柳川とは対照的に、一刀ごとに晴子の表情からは余裕が消えていく。

 滑るような足取りで、晴子は青竜刀で突きを繰り出す。
 柳川は手にした剣で背負うようにして受け、続く二本目の青竜刀の振り下ろしをサイドステップでかわした。
 すぐさま反撃に転じた柳川の真正面からの剣を、晴子は引き戻した二本の青竜刀で受ける。
「両手でその重量の刀を振り回すとは、大した膂力だな」
「ふん、あんたもその若さで、随分な使い手みたいやなぁ」
 交差した青竜刀の向こう側で、晴子はにやりと笑う。
「……ふっ!」
 そのまま押し斬る形で剣を繰り出す柳川に、晴子は逆らわずに大きく背後に跳んだ。
 上体が浮いた柳川へ、晴子は両手の青竜刀を左右に構え、回転しながら突っ込んでいく。
「むっ!!」
 プロペラのように、間断無く刃が柳川に迫り、刀から飛び散った飛沫が、頬を濡らす。
 次から次へと襲い来る刃を素早く受け流し、柳川は晴子の手首に向けて剣を打ち下ろした。
 晴子は小手への鋭い突きを青竜刀の根元で受けたものの、勢いを止められ、舌打ちして再び間合いをあける。
「……やるなぁ、あんた」
 晴子は両手の青竜刀を下げ、額の汗を拭った。
 柳川も笑みを浮かべながら、さらに一歩を踏み出そうとして……たたらを踏んだ。
「……っ!?」
 一瞬の動揺の隙を突いて、一気に詰め寄った晴子が両方の青竜刀を叩き降ろす。
 大振りな一撃を何とか避けたものの、柳川は間合いを取って顔をしかめた。
「なんだ…これは?」
「やれやれ、やーっと効いてきたみたいやな」
271虎士奮迅:02/11/15 23:37 ID:nJqUMQ7L

 安堵の混じった声で、晴子が青竜刀を振り回した。
 刀の先端から透明な雫が滴り落ちるのを見て、柳川は目を細める。
「……そうか、その刀……ただの刀ではないな」
「あんた、酒は好きか?」
 唐突な質問に、柳川は目をしばたいた。
「……嫌いではないな。仕事の後になど、よく飲む」
「そうかいな。なら、うちと気が合うかもしれへんなぁ」
 なおもくるくると刀を回しながら、晴子はにっと笑った。

「青竜刀『酔虎』『雫龍』……酒呑みの名前がはいっとるのは、ダテやないで。
 …………この青竜刀はな、実は酒を飲むねん」
「刀が……酒を飲む?」
 驚く柳川に、晴子は青竜刀を回すのを止め、再び構えを取った。
 今更ながら、柳川はその刀身には、透明な雫が幾筋も浮いているのに気付く。
「酒樽に漬けといてやると、樽ひとつくらい軽く飲み干すんや。
 そんで、こうやって振り回してやると、表面から酒を滲ませる。どうや、面白いやろ」
 晴子の言葉に、ようやく柳川は自分のふらつきの原因に思い当たった。
「……なるほど、酒か」
「そうや、酒や」

 刀身から滲み出る酒が、蒸気となって剣舞に乗じる二人の間を包み込んでいたのだ。
 無論、飲むよりもずっと少ない量ではあるが……激しい運動は、酔いを早く回らせる。
「うちとの勝負はな、ただの剣技だけやない。酒の飲み比べでもあるんや」
 会心の笑みを浮かべながら、晴子は青竜刀を両手に、柳川に突っ込んでいく。
「うちとの飲み比べに勝った男は、後にも先にも一人もおらへんで!!」
272虎士奮迅:02/11/15 23:38 ID:nJqUMQ7L

 一本は腹を、そしてもう一本は目を狙った突きを、柳川は巧みに捌く。
 その動きに、動揺はほとんど見られない。
「噂に聞く村雨という刀は、常にその表面を結露させ、血と脂を自ら落とすと言うが……」
 浅く切られた柳川の頬から、一滴の鮮血が流れ落ちる。
 その玉を指で拭ってぺろりと舐めると、柳川は小さく笑みを浮かべた。
「俺も酒は嫌いじゃない……その勝負、受けて立つ」
「上等や!!」
 柳川と晴子、双方が全く同時に地を蹴って交差する、まさにその時だった。
「「!!」」
 どおぉぉん、と腹に響く大砲の音が、空気を揺るがせる。
 次の瞬間、柳川は晴子を突き飛ばすと、自身も反動を利用して大きく跳び下がった。
 間を置かず、二人がすぐ前までいた場所が爆発する。

「なんやっ!?」
 もうもうとわき上がる土煙の中、晴子はごろごろと地面を転がった。
 顔を上げれば、遥か沖合いに、巨大な軍船が見える。
「………あの船は………レフキー海軍!!」
 晴子は舌打ちすると、口の中に入った砂利を唾とともに吐き捨てた。
「ちっ、間が悪いというか、なんと言うか……」
 しばし顔をしかめてから、すぐさまパンッ、と自分の頬を叩いて、気持ちを切り替える。
「っしゃ、ここは幸い、さっさと帰るとするかい!」
 弾かれたように立ち上がり……晴子は顔を歪めた。
「っつ……しもた」
 爆発した時に受けたのだろう、晴子のふとももから、鮮血が滲み出ていた。
273虎士奮迅:02/11/15 23:40 ID:nJqUMQ7L
「……参ったわ」
 軍船から放たれた大砲が、沖にあるミラクルカノン号の周囲に、水柱を作る。
 絶好の脱出の機会ではあったが、この足ではそうそう走る事はできない。
「まぁ、海軍なんぞに沈められるほど、ミラカノは安い船やないから安心やが……」
「そうか、とうとう海軍まで出てきたか……」
 砂埃の中、いきなり背後から声をかけられ、晴子はぎくりと歩を止める。
 自分がこれほど容易く背後を取られた事に驚愕しつつ、晴子はそろりと振りかえった。
 柳川は気にするでもなく、鋭い目を軍船に向けている。
 瞬間、軍船から煙があがり、続いて大砲が放たれた腹に響く音が轟く。
「こっちに……っ!?」
 その標的が岸にいる自分たちだと気付いて、晴子は慌てて逃げようとするが、足の傷の痛みに、思わず膝をついた。
 一方の柳川は剣をだらりと下げたまま、砲弾の前に自分の身を晒す。
「おいあんた、そんな所にいたら……!」
「はあああああああぁぁぁぁっ!!!」
 鋭い金属音が響いたと思った瞬間、向かってきた砲弾は真っ二つにされて、柳川のいる場所の遥か後方に落ちた。
「な……!!」
「邪魔が入ったな」
 柳川は無造作に剣を収めると、くるりと晴子に背を向ける。
「待ちいな……ここまで追い詰めて、逃がすつもりかい」
「こんな形で、お前と決着をつけたくないだけだ。それに、まだ軍船から逃れられるとは限ってない」
 突き放すような柳川の言葉に、思わず晴子はにやりと笑った。
「気に入ったで。あんた、名前は」
「……柳川裕也」
「うちは神尾晴子や……柳川裕也、ええ事教えたる」
 晴子は茶目っ気たっぷりに、柳川に向けて片目をつぶって見せる。
「あんたが逃がした魚は………人魚やで」
274名無しさんだよもん:02/11/15 23:43 ID:nJqUMQ7L
【柳川 晴子との勝負はおあずけ】
【晴子 逃がした魚は人魚やで】
【レフキー海軍はミラクルカノン号の制圧】


晴子と柳川の決着、こんな形になってしまいました。
てか、ここでヌワンギ出したかったんですが、出ても後々使わなさそうなのでカット。
275265:02/11/16 00:38 ID:lTer40Xq
>>269
はーい!(w
276その5:02/11/16 12:09 ID:vJApCVLH
「その5は黙って手を下ろした」

………Xからは一回も書いてない。
277名無しさんだよもん:02/11/16 23:40 ID:ynu2ypZu
点呼もいいけど、スルーはあんまりなので


>虎士奮迅

久々の新作、某海賊漫画を思い出しました。
熱い展開ですが晴子さん、ネタばらし過ぎですw
酔ってるのか?
278名無しさんだよもん:02/11/17 22:01 ID:4kh+n0RK
柳川カコイイ!晴子もよろしおすなぁ。
そう言えば昔「海賊王になるんだよもん」なスレがあった気が。
279名無しさんだよもん:02/11/17 22:05 ID:nwEtXUZi
>278
「おねぴーす」なんてスレもあったよ。
麦わら海賊団がONEのキャラで固められてたっけ。
280名無しさんだよもん:02/11/18 01:33 ID:FY0XXaxu
しかし、せっかく潜ってまで逃げてきたのに速攻で海軍に見つかるとは、運がないな(w
はてさてミラクルカノン号は応戦するのかできるのか。
281278:02/11/18 03:41 ID:IbrMycAS
>279
まさにそのスレのことっす。
1の煽り文句が「海賊王になるんだよもん」。
あれも割といい感じで展開してたんですが……
282名無しさんだよもん:02/11/18 13:48 ID:QC/7/XFW
そうか!海賊組って元々そのイメージがあったのね。
気付いてなかった……
283名無しさんだよもん:02/11/18 16:13 ID:b5B4nhAz
別にそのイメージって訳じゃないと思うけど……

っていうか、ここ二ヶ月の作品は全部265氏によるものだったのか(w
凄い事実だ。
284名無しさんだよもん:02/11/18 20:24 ID:QC/7/XFW
うにゅう。まあ、マターリ続いているので良いのではないかと。
285名無しさんだよもん:02/11/18 22:08 ID:7v0ICjFg
>>283
いや、それは……
一応俺も書いてるし……
286膏肓は熱く萌えているか:02/11/19 03:47 ID:WoioNw9x
 流れる下水の静寂は、轟々という不快な響きを伴って、対峙する彼等を包み込む。
 生物兵器アルジャーノンに操られた大志を前に、北川、名雪、友里の三人は身構えている。
 仲間の命を盾に取られ、犠牲なしにこの場を切り抜けることが不可能ともいえるこの状況で。

 友里は、味方にだけ聞こえる程度の小声で呟いた。
「チャンスね……」
 まだ言うか! と怒鳴りそうになった北川を手で制し、気づかれぬように続きを口にする。
「いい? さっきまで彼は魔法の使いすぎで、傍から見てわかるほどに消耗してたわ。
そんな彼の身体を使って、今の雷球がそうそう何発も撃てると思う?」

 じり、と間を詰めてくる大志……アルジャーノンに合わせる形で、後ずさる三人。

 その間も友里の解説は続く。
「今のアルジャーノンは、彼の目で見て、彼の耳で聞いて、彼の身体を動かしてる。
鼠にくっついてる首輪の魔力も、枯れかけの彼からはそうそう補給も出来ないでしょう」
 そこで一旦言葉を止める友里。続きを頭の中だけで再生する。
(アルジャーノンが心臓を食い破って、血液で魔力を補給しようとしない限り……ね)

 ばち、と再び大志の頭上に雷球が浮かび上がる。
 今度は四つではなく、大き目の雷球が一つ。
 それを見て、軽く頷く北川。
「なるほど……確かに、限界は近そうだ」
「そう。そうなれば、次にアルジャーノンが狙うのは私よ。チャンスがあるとしたらその瞬間。
一発必中よ。……出来なければ、次は私が操られることになるでしょうね」
287膏肓は熱く萌えているか:02/11/19 03:48 ID:WoioNw9x
 踏み出してくる大志、後ずさる三人。パシャ、と足元で水音。弾けるように飛ぶ雷球。
「! 二人とも、跳んで!」
 友里の声。
 名雪と北川が、慌てて水溜りから飛び上がる。刹那、雷球が水溜りに炸裂した。
「あああああアアアアっ!!」

 悲鳴。
 警告を発した分、逃げ遅れた友里が感電し、がくりと膝をつく。
 それを見て、慌てて彼女に駆け寄り、友里を守るように大志の前に立ちはだかる名雪。

「……!?」
 北川は動けなかった。
 否、動かなかった。
 名雪の身体が、アルジャーノンの視界から膝を付いた友里の姿を覆い隠した瞬間に、

 ――狙いなさい。

 そう言わんばかりの様子で、自らの左胸を指差したのを見たからだ。
「ったく、大志といい、あんたといい、俺が信用しないのに、俺を信用しすぎだぜ……」
 口の中でそう呟き、片手でハンドガンを握る。
 不快な汗を掌に感じながら、北川は『その瞬間』を逃さぬよう、意識を収束させ始めた。

「ドケ」
「退かない!」
「退カナケレバ、コノ男ガドウナッテモ知ラナイゾ?」
「ううっ……」
 退けば、身動きが取れない友里が。
 退かなければ、身体を操られた大志が。
 この理不尽な二択に、名雪がどうしようもなく逡巡していると、助け舟は背後から来た。
288膏肓は熱く萌えているか:02/11/19 03:50 ID:WoioNw9x
「名雪さん、横に避けて」
「え、でも……」
「いいから。そのまま動かないでいてくれると嬉しいかな」
 他ならぬ友里のその言葉にうろたえつつ、言われた通りに横に避ける名雪。
 それでも大志……アルジャーノンの動きから目を放さずにはいるが。

 友里は、水辺に膝を付いたまま、ゆっくりと近づくアルジャーノンを見据えた。
「……観念シタノカ?」
「さあね……思わぬ反撃を受けたくなければ、もう一度雷球でも撃ってみれば?」
 見え見えの挑発。

「クク……ソウ言ッテ、コチラノ魔力切レヲ狙ッテイルノダロウ? ソノ手ハ食ワナイ」
「へえ、それじゃあどうするの? その男の心臓を食い破って、血で魔力を回復する?」
 見え見えのカマかけ。

「ソレコソ貴様の思ウ壺ダロウ。コノ男ガ死ネバ、後ロノ男ガ躊躇スル理由ガ無クナル」
「そうね。だったら……」
 見え見えの強がり。

「私と一緒に死んでみる?」
289膏肓は熱く萌えているか:02/11/19 03:52 ID:WoioNw9x
 北川は、その会話の一部始終を聞いていた。
 友里の目論見が外れたところで、大志を助けるのを諦めたわけではない。
 ただ、一つのことを考えていただけだ。
(お前達が俺を信頼するっていうんだ……俺も、一度くらいは信頼してやるよ!)

(馬鹿ナ!)
 アルジャーノンは混乱していた。
 大志の魔力が枯渇しかけていることには気づいていた。
 大志を殺さずにいることが、他の三名の間に仲違いを生み出したことも気づいていた。
 だからこそ、この『詰み』の状況を生み出せたのだ。

(何故ダ! 何故、コノ女ハコノ距離デコレダケノ魔力ヲ放トウトスル!?)
 それが、幾らも経たない内に。

(何故ダ! ……何故、後ロノ男ハ……横ノ女ハ動カナイ!?)
 追い詰められているのは、アルジャーノン。

「それじゃ、ネズミさん」
 放たれようとする魔力は、明らかに明確な殺意の篭った威力のもので。
「……さよなら」
(駄目ダ! コノママ撃タセルト……全テガ、刻ミ潰サレル!!)
 アルジャーノンは、潜んでいた大志の胸から勢い良く飛び出した。

 同時に、様々な出来事が交錯する。
290膏肓は熱く萌えているか:02/11/19 03:54 ID:WoioNw9x
 北川のハンドガンから火薬の閃光が迸る。
 友里の魔法が発動して、爆発的な旋風が巻き起こる。
 アルジャーノンが、風の衝撃で僅かに圧し戻される。

(しまった!)
 北川が呻く。
(よし!)
 友里がにやりと笑う。
(……マサカ!)
 アルジャーノンが己の早計に気づく。

 銃弾が、風に煽られたアルジャーノンの脳天を逸れ、首輪に弾かれる。
 そして。
 友里の放った風が、大志のかけている眼鏡のフレームに吸い込まれた。
(外れたっ!?)
(ちいっ!)
(今だよっ!)
(イマダ!)
 四者四様。
 友里の笑顔が歪む。
 北川が狙いをつける。
 名雪が走る。
 アルジャーノンが友里の胸元を狙う。

 そして、もう一人。

「誰か、お忘れではないかね?」
291膏肓は熱く萌えているか:02/11/19 03:55 ID:WoioNw9x
 アルジャーノンの背後から伸びた手が、その身体を掴み、中空に固定する。
 前歯が友里の胸元を掠めるが、肌にはぎりぎり届かない。
「同志名雪!」
「うんっ!」
 アルジャーノンを捕らえた手を、走りこんでくる名雪に向けてかざす大志。
 突き抜けるような、衝撃が走った。

 ばちゃん。
 下水の水溜りの中に、鼠の形をした生き物が落下する。
「……やったのか?」
 北川の誰何の声。
 それに、名雪がにっこりと笑って応える。
「大丈夫、手加減したよ」
「って、駄目だろ手加減したらっ!」
 慌てて銃口を鼠に向ける北川。
 その腕を、友里が抑える。

「心配無用だ、同志北川」
 大志の声。その手に光る白金のリング。
「それじゃ……」
 北川の表情が緩む。
 名雪に蹴り飛ばされた鼠……ただの黒色のドブネズミは、何処へともなく逃げ去って。

「うむ、吾輩たちの……勝利だ」
 冒険者達の、永い永い一つの冒険が今、終わりを告げた。

【アルジャーノン ただの鼠に戻る】
【九品仏大志 アルジャーノンの首輪をゲット。眼鏡に自爆風魔法。重傷】
【名倉友里 ほぼ魔力切れ状態】
【水瀬名雪/北川潤 ほっと一息】
292名無しさんだよもん:02/11/19 04:15 ID:WoioNw9x
というわけで、アルジャーノン編を一段落。
あとは宴の始末を残すのみでしょうか。頑張れ北川(w

>>281
OP替え歌とか珍獣の島の御堂とか、ネタ出しした日々、懐かしいなあ。
ちなみに葉鍵ファイアーエムブレム、葉鍵パワプロなどにもネタ出してましたり。
小ネタ万歳。

>>283
一作だけですー。これ入れて二作。
ネタにマジレス平謝り(w
293名無しさんだよもん:02/11/19 04:24 ID:HE+Jlp27
大志って心臓の上にバカでかい程の鼠サイズの穴が貫通する寸前まで空いてるんだよね?
どう考えても致命傷だと思ってたけど結構大丈夫そうなのが不思議だ(w
まぁ、これで長かった物語も終焉へと向かいましたね。しかし、色んな後始末が大変そうです。
294名無しさんだよもん:02/11/19 05:16 ID:WoioNw9x
最初は「明日の朝日も拝めずに」とかいう台詞に過剰反応して、
ジェロニモのよーに自分で胸に手を突っ込んで掴みだす予定でした(w<大志

それのほーが流石に無茶だろーということで。
次の人、消毒してあげてね(w<大志の傷
295名無しさんだよもん:02/11/19 09:56 ID:nR3Dokbu
一番大変な後始末は、宿屋に戻って秋子さんに会う事だよなぁ(笑)。
このぼろぼろの状況で、秋子さんが怒ってることを思い出せるか、北川っ!?
296名無しさんだよもん:02/11/20 00:41 ID:NmKrezwn
これで、海賊編、アルジャーノン編に一応ピリオドが打たれたわけだね。
あ、海賊編はまだか。

さて、七瀬チームはどうなることやら。
297名無しさんだよもん:02/11/21 00:01 ID:irYuiEqo
メンチ
298名無しさんだよもん:02/11/21 08:09 ID:ZOiCN9pB
おおっ!ついにアルジャーノン篇クライマックス!カコイイ!
299名無しさんだよもん:02/11/21 17:57 ID:si5oD6VJ
>296
最近一段落したバトルが晴子 vs. 柳川とアルジャーノン vs. 北川一行
ということですか。確かにどちらも結構長かったから割と感慨ありますね。特に後者。
300名無しさんだよもん:02/11/21 18:34 ID:uubXWfna
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301名無しさんだよもん:02/11/21 21:09 ID:si5oD6VJ
>291
永い冒険と言いつつ時間経過は短かったり。
でも、確かにこういうホラー的状況は当人達長く感じるだろうなぁ。
302山崎渉 ◆yGAhoNiShI :02/11/22 04:08 ID:a/LZwtFm
(^^)
303山崎渉 ◆yGAhoNiShI :02/11/22 04:25 ID:5fIptQec
(^^)
304山崎渉 ◆yGAhoNiShI :02/11/22 04:33 ID:+vo60bHT
(^^)
305名無しさんだよもん:02/11/22 19:22 ID:79nCU0AG
糞スレたちまくりなので、メンテしておく
306名無しさんだよもん:02/11/22 23:06 ID:ey5zxPZ/
参ったな
307転舵前進!:02/11/23 00:11 ID:Kjf7aUPd
 レフキー最大の港町、フィルムーンは凄まじい轟音に満ちていた。
 レフキー沖に突如として現れた船から大砲による砲撃が行われているからだ。
 その凄まじいまでの轟音は街の喧騒を飲み込んで湾内に轟く。

「晴子さん、こっちです。」
 自警団の掛け声も掻き消してしまう轟音の中、裏路地から人を呼ぶ声が聞こえた。

「おう、冬弥か。」
「はい。」
「祐一は、ウチらの船長さんは先に戻ったんか?」
「えぇ。海軍が出てくるような状況ですからね。」
「ま、それがえぇわ。あの船長は船におってこその船長やさかいな。」

 それ以外は世話が焼けてかなわんわ、と呟く晴子の様子がおかしい事に冬弥は気付いた。

「晴子さん……その傷……」
「あぁ、これな。さっきのニィちゃんにやられたわ。もっとも、足の方は小煩い大砲にやられたモンやけど。」
「晴子さんでも敵いませんか……」
 冬弥は坂下と二人懸かりで挑んで柳川に手も足も出なかった。
 冬弥とてそれなりの戦士ではあるが、それでも柳川との間にはそれだけの力の差があった。
「あほぅ。ウチは勝ってはおらんけど負けてもおらんで。」
「強いですね……晴子さんは……」
「何わかりきった事ゆーとるんかい。」
「はは……」
308転舵前進!:02/11/23 00:12 ID:Kjf7aUPd
 冬弥には、再度剣を持って柳川の前に立てる自身がない。
 いや、立つだけなら出来るだろう。
 だが勝負は出来ない。冬弥の気持ちはその力の差に恐怖し、逃げてしまっている。

 逃げた。
 かつての彼のように。

「そんな事よりアンタがまだここにおるって事は、祐一からなんか伝言でもあるんか?」
「……あぁ、そうでした。その事ですが――――――」



 ズドォオォン!!!!

 海上にけたたましい音が響き渡ると、しばらくしてミラクルカノン号の近くに人の数倍はあろうかという水柱があがる。

「うおっ、海軍連中も派手にかましてくれるなぁ。」
 水柱が作り出す波に揺れるミラクルカノン号の船首に、この船の船長・相沢祐一はいた。
 船は既に風を受けて波を切っている。

 柳川に追い詰められた祐一の元に晴子が駆けつけた後、祐一は冬弥を伝言に残して一足先に船に戻っていた。
 海賊の直感とでも言うべきものが、海の異変を教えてきたからだ。

「全く、ただの海賊相手に派手にやってくれる。」
「好恵さん。」
 坂下は祐一が戻ってくる直前まで潜水によって悲惨な有様になっていた船内の清掃・指揮に明け暮れていた。
309転舵前進!:02/11/23 00:13 ID:Kjf7aUPd
「真琴と観鈴ちゃん、どうしました?」
「下で寝かせてある。もっともシーツ類が全滅だらから木のベッドに直だがな。」
「十分ですよ。これから上は危険ですからね。」
「しかし、軍船ばかりのあの船様。まるで、これから戦争でもしようかというモノだな。」

 湾内に展開した軍船は、主に高い船尾楼と三本のマストが特徴のガレオン船だ。
 ただ、その中に一隻だけ異彩を放つ船が混じっていた。

「ガレアス船……また珍しい船だな。」
 ガレアス船はガレオン船とガレー船の中間程度にある船である。
 複数本のマストと、側舷にはオールを持ちその両方から推進力を得ることが出来る。
 純帆船ほど風の状態に左右はされないが、船体が大きいため基本的に動きが鈍重であまりメジャーではない。
 
 ただ、それ以上に驚く事は、そのガレアス船の巨体であった。
 ミラクルカノン号のゆうに数倍はある。
 周囲の大型ガレオン船をも軽く上回る巨体だ。

 そして、その船首には他の船と違い、先程からフィルムーン湾内に轟音を轟かす大砲が数門配置されていた。
 大砲は銃同様、実戦兵器としては製造技術や使用技術が確立しておらず、滅多に見かけない。
 一般で見かけると言えば、花火紛いのパレードの祝砲止まりである。
 
「海軍が艦隊旗艦用に新兵器を搭載した新造船を建造しているという噂を聞いたが……アイツの事か……?
しかし、何故そんなものが突然フィルムーンにやってくる?」

 その超大型船のメインマストには、共和国旗と旗艦を示す旗が風を受けはためいていた。
 展開する各艦のマストにも共和国旗がはためいている。
310転舵前進!:02/11/23 00:16 ID:Kjf7aUPd
「祐一……突破出来るのか?あそこを……」

 ずらりと展開された軍船に新兵器。 
 幸い、ミラクルカノン号は風上を保持しているが、展開する水軍には、帆船の牽引用にか小型のガレー船も混じっている。
 波の荒い外洋はともかく、波の穏やかなところでは小回りが効き厄介な船であった。

「さ、さぁ……?」
「さぁ?ってそのために先に戻ってきたんじゃないのか!?」
「いやぁ……そのつもりだったんですけど、アレを見ると……ねぇ……」

 大砲から発射される砲弾は、直撃すればミラクルカノン号のマスト程度なら簡単に破壊してしまいそうな威力だ。
 祐一は、自分がその砲弾の直撃を喰らった姿を思い浮かべる。
(一発喰らったら、馬車に轢かれたカエルだな……)

「なんだ?フィルムーンへ向かう前の威勢は何処へ行った?」
「それは言わないで下さいよ。好恵さん……」

 今日、相沢一家は祐一の勢いそのままにフィルムーンを襲撃し、待ち構えていた自警団相手に勢いそのままの大打撃を喰らった。
 その件についは、祐一は仲間を危機に陥れた事もあり大いに反省している。
 トップが突っ走るだけでは組織は持たない。祐一には、少なくともそうでない度量はあった。
 もっとも、それで懲りるとは限らないがこの船のキャプテンなのではあるが。

「でもまぁ、ここは海の上ですからね。生粋の海賊の操船テクを軍人連中に見せてやりますよ。」
「それくらいはお願いしたいね。キャプテン。」
「また言う……けど、その為にもあの武器は厄介ですね。」
311転舵前進!:02/11/23 00:18 ID:Kjf7aUPd
「犬飼さんはどう思います?」
 祐一は振り返って舵を握る男に意見を求める。
「……艦載している砲はカノン砲だろう。砲弾にもよるが、射程は2k前後といった所だ。」
 犬飼の言ってる事がわかるわけではないが、祐一はふむと頷く。
「射角調整や弾数などを考慮に入れなければ、各砲は一分毎程度の間隔で砲弾の発射が可能だ。
 ただ、陸上ならともかくここは海上。しかも、元々命中精度の高い兵器ではない。数をそろえるか、余程の至近でなければな。」
「つまり、この距離でこの程度の散発的な攻撃ならあまり気にすることはない、と?」
「まぐれ当たりならあり得る。」
「まぐれでは沈められたくありませんね……」
「いつも通りで問題あるまい。」
「いつも通り……ですか。」

 軽い溜息をつきながら祐一は船首に片足をのせた。
 陸から湾内へと吹き込む風が祐一の髪を揺らす。
 風はミラクルカノン号の斜め後ろ、ほぼ横から吹いていた。
 帆船は風に向かって走る事は出来ない。
 展開する海軍の軍船は帆船が主体のため、ガレー船や旗艦のガレアス船を除き漂っているだけだ。

(この風向き―――連中もこの船がこれ以上、風上に切り上がれるとは思わないだろう。)
 ガレオンのような横帆船は追い風の時の速力はあるが、向かい風にはかなり弱い。
 しかも、風に逆らって走れば当然速度は落ちるし、船も安定しない。

「取り舵10!船首をフィルムーンの港へ向ける!
そのまま、港を背にとり砲撃を牽制しつつ晴子さん・冬弥さんとの合流地点へ向かう!」

 祐一が声高らかに号を発すると、おう、と言う威勢のいい掛け声と共に船が明らかに限界を超えた角度へその船首を向ける。

(港を背にとれば連中も迂闊に攻撃してこれないだろう―――んでもって、このミラクルカノン号がただの船じゃないって事を教えてやるぜ!)
312名無しさんだよもん:02/11/23 00:25 ID:Kjf7aUPd
【冬弥&晴子 祐一の指示した合流地点へ】
【ミラクルカノン号一同 いつも通り】
【湾内の船団 旗艦で砲撃】

以上、>>270-274からのリレーで、転舵前進!でした。

大砲の扱いは銃の扱いもあるので、控えめにしてみました。
しかし、船舶薀蓄で終わってますね……これは……
313名無しさんだよもん:02/11/24 15:32 ID:r8me2qOV
おお、いよいよ海戦ですか。わくわく。
314名無しさんだよもん:02/11/24 16:58 ID:6Eg0Pay4
一難去ってまた一難、って所ですね。

ところで、晴子達は廃港に集合していたから、フィルムーンにいるのはおかしいんですが……
315名無しさんだよもん:02/11/24 20:00 ID:XzUp6SHh
う。詳しいこと忘れてますわ。読み返さんと。
316307-312:02/11/24 22:27 ID:7kkUcKK1
むむ、233話の「酔虎」の表現で若干勘違いしてしまったようで……
よく考えたら、徒歩半日の距離を晴子が一瞬で移動してんのは変ですね。
”街道”とも書いてあるし……

>>307の6行目を、
その砲音轟く街道脇の茂みから人を呼ぶ声が聞こえた。

>>311の最後から5,6行目の祐一の台詞を
「取り舵10!船首をフィルムーンの港へ向ける!
晴子さん・冬弥さんとの合流後、そのまま、港を背にとり砲撃を牽制しつつ退路を拓く!」

で、大体整合とれませんかね?

にしても、ドタバタしながら書いてたらついにやっちまった……
鬱だ……吊ってきまつ……
317名無しさんだよもん:02/11/24 22:53 ID:6Eg0Pay4
>>316
(゚д゚)/ガンバ
318雅也 ◆yGAhoNiShI :02/11/25 00:40 ID:E1Z7s7GU
俺はスコールよりかっこいい中3なんだけど、
うちの学校にすげーユウナに似てる女子がいるんだ。
うらやましいだろ?
319名無しさんだよもん:02/11/25 01:17 ID:c4m/qvvU
圧縮猶予30未満……
>>318みたいなのに救われた訳か……


>転舵前進!
海賊編は舞台を海に移しての展開ですか。
はたして無事に脱出出来るか?突如現れた軍船の目的は?

レフキーの騒動も段々と一本になってきた?
320名無しさんだよもん:02/11/25 12:33 ID:WE4cxA6l
>>319
救われたんじゃなくて、>>318のせいでそんな猶予時間なわけだが……

っていうか、今回の圧縮はかなり怖かった……
321孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/11/25 13:47 ID:azd6EZ5y
ドラゴンボールZ
フジ(関東)で毎週月曜16:30〜放送中!!

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322孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/11/25 14:02 ID:kbQBNfYQ
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323孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/11/25 14:18 ID:GJ9qR8Tb
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324孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/11/25 14:34 ID:E1Z7s7GU
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325名無しさんだよもん:02/11/25 21:28 ID:MOeXJVTU
……どうしろと。
なにはともあれ保守しておくか。
326雲丹:02/11/25 22:37 ID:90sr5/bB
まだまだ、1時間置きにメンテしとかないと、怖くて安心できない。
327名無しさんだよもん:02/11/26 21:48 ID:w6MM/kVF
で、今日もメンテをするわけだが。
328名無しさんだよもん:02/11/27 11:43 ID:GWK4svfx
午前もメンテなのだが。
329名無しさんだよもん:02/11/27 23:40 ID:rJXywGHT
遅感想〜

> 騒がしい鼠たち
かおりんと部下達、強烈にキャラ立ちしてますね〜。いいなぁ。
浩之は……不幸は不幸だけと同情する気が起きないのは何故?
七瀬もいい味だしてるなぁ。

> 虎士奮迅
一応の決着としてはこんなもんですかね。柳川の圧倒的な力量と、
それを何とか凌ぎ切った晴子の技、結構名勝負だったのではないでしょうか。
そしていよいよ最後の決戦は海上!海賊なんだしそう来なくちゃね。
330名無しさんだよもん:02/11/28 04:47 ID:a3XhCnyh
もう眠くて限界の時にメンテしてみるわけだが。
331名無しさんだよもん:02/11/28 12:26 ID:diaDCndI
真昼のメンテ
332雅也 ◆yGAhoNiShI :02/11/28 16:17 ID:gnaMeJ+6
俺はスコールよりかっこいい中3なんだけど、
うちの学校にすげーユウナに似てる女子がいるんだ。
うらやましいだろ?>>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>
>>1 >>1 >>1
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1037430276/l50
333雅也 ◆yGAhoNiShI :02/11/28 16:31 ID:+f6FCspv
俺はスコールよりかっこいい中3なんだけど、
うちの学校にすげーユウナに似てる女子がいるんだ。
うらやましいだろ?>>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>1 >>
>>1 >>1 >>1
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1037430276/l50
334名無しさんだよもん:02/11/28 18:18 ID:8mSx4IRt
……サイクル早すぎ。
335名無しさんだよもん:02/11/28 21:36 ID:R23+zp7q
メンテ保守。
336名無しさんだよもん:02/11/28 22:33 ID:Z9yLGCDf
再び遅感想〜

> 膏肓は熱く萌えているか

遂に決着! vs. アルジャーノン。いやぁ、きれいに決まりましたね。
それぞれのキャラにちゃんとスポットライトが当っていて、
ちゃんと今までの描写が生きているのがお見事。欲を言うならば
名雪がやや薄い気がするくらいですかね。さて、残すは vs. 秋子さん(w
こっちの方も大変そう…… 北川ちん御愁傷様。
337Uスレの1:02/11/28 23:04 ID:guPFDglU
 ゆっくりじっくり執筆中保守。
 ……はいいんだけど、だんだん時制がわかんなくなりますた。
 今首都レフキーの話は昼なのか夜なのか、どっちなんだらうw
338名無しさんだよもん:02/11/28 23:44 ID:FIAeweyx
がんがれ。
339名無しさんだよもん:02/11/29 00:47 ID:t9DwhX/U
時間軸ですか……確かに錯綜してますね。
340名無しさんだよもん:02/11/29 02:49 ID:ma324XOF
まあ、時間の進行は話によって違うから……
341名無しさんだよもん:02/11/30 21:41 ID:dbUgVvyZ
ほす
342だいだっそう?:02/12/01 01:02 ID:oLSxylQe

「ん? ああ、ご苦労さん……」

 上官であった場合に備え、ぴんと背筋を延ばして首をそちらに向けた衛兵の目に、予想通りの装束に身を包んだ女の姿が飛び込んでくる。 
 触覚じみた髪の束が二本ぴんと頭から延びた、あまり見なれない――しかし何故か見覚えはある――一人の侍女がお膳を手に佇んでいた。

 どうやら食事は厨房から出てきてまださほど時間を経ていないらしい。
 ほのかに湯気を立てるまだ温かいじゃがいもや雑穀の粥と二切れの黒パン。その横に、パンと同じ数の腸詰めがザウアークラフトと一緒に並んでいる。
 それは、レフキーの一般市民が日常口にするとさして変わらないものだ。
 少しばかり吉井に供されるそれより安っぽい理由は、正式な将校待遇の戦争捕虜と、不法入市者扱いの虜囚という身分の差の表れなのかも知れない。
 太陽はすでにその日の頂きを登り切って下り坂にさしかかり、食事時にはやや遅め。
 そのトレーを手にした見覚えのある侍女は、どこか強張った笑みを浮かべていた。
「え、っと、食事を、持ってきた……んですけど……」
 ぴこぴこと、侍女の跳ね上がった前髪が落ち着かぬ内心を示すかのようにせわしなく動く。
 衛兵に尋ねる声も後半掠れるように消えてゆくのは、目前の相手が言葉を聞くでもなく、睨むような目で見据えてくるからだ。

 彼女は特段、際立って美人という訳ではないし、彼女自身そのような自惚れを抱くようなタイプでもない。
 むしろ彼女は小心な方で、このようにねめつけられると気恥ずかしいよりも恐怖心で、正面に顔を向けてはいられない。
 何もないのならまだしも、後ろめたい事があるのならなおさらのことだ―――彼女は正直な人物で、到底自分を偽る術など知らないのだから。

 正直な人物の率直な感情表現は、すぐに疑り深い人物に当然の疑念を生じさせた。
 ほとんど確証に近い何かを感じ、衛兵の片割れはともすれば伏せがちになる侍女の顔をのぞき込むように身を屈めた。
 のぞき込まれることを恥じらったか、さらに侍女が顔を背ける。
 その侍女の視線に先回りし、衛兵が驚きでさらにかちんこちんに固まった侍女の顎をつかみ、力を篭めて引き寄せる。
343だいだっそう?:02/12/01 01:05 ID:oLSxylQe
 ホブゴブリンのようなごつい男と小柄な少女の取り合わせ。
 男の方が衛兵隊の制服を着用していなければ、どう見ても暴漢と被害者の構図である。
 そのあまりにもはまった配役に一時妄想を走らせて、彼の同僚は生来不真面目な顔つきを一層にやけさせて肩をすくめた。
 もっともそのままにはしておけないので(彼は侍女に全く面識がなかった)、こほんとわざとらしく咳払いして、からかうような声を同僚に掛ける。
「おいおい、お嬢ちゃんを困らせてやんなよ?
 ほれ見ろ、お前みたいなエロガッパがじろじろ顔をねめつけるように見回すからお嬢ちゃんすっかり怯えてるじゃないか」
「莫迦野郎、そんなんじゃねぇっ!」
 多少、外面というものも気にはしてたらしい。
 間髪入れないタイミング、胴間声が長い通路に響き渡る。
 盗賊ギルドの極道顔負けのドスの利いた声なのだが、どこかやはり迫力がない。
 もちろんそんな調子ではとうてい同僚に気後れした風もなく、にやけた笑みは顔に貼り付けたまま。
 腹立たしいことおびただしい。

 どうにも、こいつは気にくわない。人を馬鹿にするような態度ばかり取りやがって。

 ぎりっと怒気もあらわにねめつけても、彼の態度は冷やかしのポーズを崩さない。
 結局ふてぶてしい相方の態度にぶつくさと怨嗟を呟くのが関の山、それ以上こいつに構っているほど彼には余裕がなかった。
 何か、彼には糺すべき重大な問題が侍女の身辺に存在するような思えたからだ。
 最後に舌打ちを残して憤然と顔を背け、振り向いた先に彼女のぎこちない、ほとんど消え去りそうな笑顔。
 一つ咳払いをして崩れたペースを取り直し、疑念と八つ当たり気味の怒りを視線に乗せて、いかなる兆候も見過ごすまいと侍女の双眸へと戻す。
「お前……見ない顔だな?」
「あっ、あの、あは、は……あ、あのその、私まだ入り立てで……あっ」
 尋ねると言うより脅すような問いかけに、侍女は震える言葉をひどくどもらせる。
 その顔は相変わらず床にうつむけたまま、視線をあくまでこちらに向けない彼女に業を煮やし、触覚を掴んで強引に顔を引き起こす。
「あっ……」
344だいだっそう?:02/12/01 01:06 ID:oLSxylQe
 弾みでトレーが彼女の手からこぼれ落ち、がしゃんと音を立てて食器と中身が床にぶちまけられた。
 傍らで相方がしかめっ面を浮かべたが、衛兵にそれを気にする様子はない。
「……貴様、何度か牧村執政官閣下のお側で見かけたことがあるぞ」
「!!」
 穂先のような鋭さを帯びて、衛兵の低い声が侍女の心胆を貫いた。なおも背けていた顔が弾かれたように跳ね上がり、無意識に右足が半歩後ろへと下がる。
 鼻先を掠めた鈍色の物体に気が付くのがワンテンポ遅れたのは、緊張のあまり視野があんまりにも狭まっていたせいだろう。
 少しでも隙あらば身を翻して逃げ出そうとした矢先、ようやくそれに焦点があって凍り付いたように動きを止めた。
「おっと、動くな。串刺しになりたくなかったらな」
「ひっ……」
 バネ仕掛けのように跳ね上がった鼻っつらに突き付けられたのは、冷たい光を放つ穂先。
 警告に従って、心臓の動きまでをも止めてしまったかのような侍女―――雛山理緒、そして先ほどの揶揄もどこへやら、事の成り行きについてゆけずあたふたと両者を見交わしている同僚のの様子に、衛兵の顔が嗤う形に歪む。
「うろ覚えだったが、カマをかけて当たりだったようだな。いったいなにを企んで、この王城に入り込んだ?」
 勝ち誇っただみ声が通路に響く。
 至近でその聞き苦しい音の連なりを浴びせられた理緒に、なんの反応も見られない。
 ただ凝然と視線は鼻先の鉄の塊に釘付けになって、身体の震えすら止まっていた。
 息をすることすら忘れてしまったのか、あるいは心の蔵さえ恐怖のあまり止まっているのか。そんな疑問すら湧くほどだ。

 数呼吸、間が空いた。
 それでもまったくの無反応、それがいささかつまらなくて、衛兵は鼻を鳴らす。
「……言えないか、それともコレが怖くて声も出ないか? ま、どちらでもいいが」
 どうせすぐにも吐かざるを得なくなる。だから、ここでどんな反応を見せようとどうでも良い。
345だいだっそう?:02/12/01 01:14 ID:oLSxylQe
 暢気過ぎるほどに平和な共和国といえども、犯罪者に対する調査と処罰はきっちり存在する。
 帝国のそれほどに陰惨でなくとも、あまり性根の座っていない罪人に洗いざらい白状させる程度の『厳しい詮議』は執り行われるのだ。
 怯えの気配を見せる侍女を眺めて妄想を浮かべる内に満足感が蘇り、衛兵は先ほどまでの怒りも和らいだように背後の同僚へと向き直る。
「すまん、俺はこいつをちょっと監獄にぶち込んでくらぁ。
 行きしな詰め所に寄っていくから、こっちへの応援頼んでおく。こいつが帝国の第五列だとしたら、他にもスパイが紛れ込んでるかもしれん」
「いや、待て。ちょっとそれは筋が悪いぞ。仮にも牧村家の関係者だろう。
 執政官閣下へ、一言断りいれといたほうがよくないか?」
 今度は一転して同僚の兵が、渋い顔で言った。
「……それもそうだな。まずは詰め所に収容して、牧村家に身分照会をしなきゃならんか」
 なにしろお偉いさんの使用人である。
 万が一、何かの間違いだったりしたら、自分たちの首がリアルに飛んでいってしまう。
 仲間の至極もっともな懸念に同意を示し、衛兵は覗き窓から室内の様子を眺めて首を傾げた。
「確かにこいつが帝国の第五列だとして、このバカを救出しなきゃならんだけの―――」
 理由がない。
 そう言おうとしたはずだった。
 だが、その言葉が続かない。
 あまりの事に声すら出ずに、声を発する意志が酸欠の金魚のような奇怪な口の動きとしてのみ外に向けて表れる。
 両眼はまるで出目金のように見開かれて、しかし背後を振り向く動作ばかりはメダカのように素早かった。
「……お、おい。どうしたんだ??」
346だいだっそう?:02/12/01 01:16 ID:oLSxylQe
 その狂態に違和感よりも威圧感を感じ、仲間は思わず二、三歩後じさった。
 恐る恐るの問いかけにもすぐには答えられず、衛兵はさらに無意味な口の開閉を二度、三度と繰り返す。
 唐突に唖になってしまったかのようなその兵が、ようやく伝えたい事実を言葉として混乱の沼から引きずり出せたのは、いったん深く大きな呼吸を試みた後のことだった。
「ぉっ、おおおっおおっっ、おぃぃぃっ!? 畜生、中に誰もいねぇぞ!!」
「なにぃ?」
 慌てて扉に貼り付いた同僚は、同じ光景を目にして言葉を失った。

 部屋の床は先ほどのまま。松本が足場に使おうとしてぶちまけて、散々に散らばったままの本だのなんだのの調度品の山。
 目を転じれば天井、天板の一枚が外れ、黒々とした天井裏がその向こうに姿を見せている。

 そして、室内には誰もいない。

 先ほど松本が床に散らばったありとあらゆるモノを積み上げ、不安定どころではない足場を築いていたことを思い出す。
 何の冗談か、どれほど頭がお馬鹿なのかと嘲ったものだが、まさか。いや、ひょっとして。
「くそったれ、こいつは囮だったか!?」
 忌々しげに、しかし隠しようもない焦りを見せて、衛兵は思わず天を仰いだ―――


【触覚侍女 理緒ですた】
【松本 雲隠れ】
【衛兵さん 大変です】

 ども、Uスレの1でつ。
 保守代わりに久々の投稿。自己リレーで(ぇ
 誤字脱字、不自然なところなどございましたらご指摘くださいマシ〜
347名無しさんだよもん:02/12/01 23:17 ID:jSQNBIGC
Uスレ氏乙
348孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/12/02 14:23 ID:f89OzW+e
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349孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/12/02 14:46 ID:f89OzW+e
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350孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/12/02 15:11 ID:f89OzW+e
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351名無しさんだよもん:02/12/02 22:00 ID:yWUFhCmj
冬厨の季節には、まだ早いと思うんだがメンテ
352名無しさんだよもん:02/12/03 00:29 ID:khNCz3gX
>だいだっそう?
理緒が緊張していたのは、何でだったんでしょう?
影が薄いもんだから、以前どこで出てきたのか全然覚えてない(ぉ
結局松本は巧く逃げ出せたみたいですが、本人はどこに行くつもりなんでしょうね。
353名無しさんだよもん:02/12/03 21:32 ID:f7zhj4Yr
ああ、触覚は理緒だったのか〜。なるほど。
354名無しさんだよもん:02/12/05 01:25 ID:D/dnMZZ1
メンテ
355雅也 ◆Njc4/uXbuU :02/12/05 03:28 ID:IQPDVeGP
俺はスコールよりかっこいい中3なんだけど、
うちの学校にすげーユウナに似てる女子がいるんだ。
うらやましいだろ?
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1037430276/l50
356名無しさんだよもん:02/12/05 06:57 ID:o2lnEcY1
奇跡的だな……

あるいは、喜劇的というべきなのかも知れないが。
357名無しさんだよもん:02/12/05 20:43 ID:D/dnMZZ1
落ちたら建て直し辛いからなぁ……
358名無しさんだよもん:02/12/05 21:15 ID:o2lnEcY1
>>357
神認定。
敬体から常時監視はしてたけど、全然状況においつかんよ。

しかし連夜の大粛正、何とか乗り切ったな……
これでファンタジーは三日戦える……
359名無しさんだよもん:02/12/05 21:25 ID:RUCVlXln
もう多少一人リレーになってもガシガシ書いていい?
需要無いけど区切りぐらい付けたいんだけど……
360名無しさんだよもん:02/12/05 22:47 ID:zzNKFBBt
ガシガシ書いて下さい〜。
需要ないことないです〜。
361雲丹:02/12/05 23:03 ID:D/dnMZZ1
がしがし書いたら、回りも触発されて書き出すと思われ。
過去のリレーは大体そうだった。
362名無しさんだよもん:02/12/06 23:53 ID:MAsiLs65
ほす
363名無しさんだよもん:02/12/07 16:46 ID:WhMxfMGZ
>>360-361
賛成アリガd。
ガシガシ書くと言っておきながら、いざ始めると時間が掛かる罠。
ゴメンちゃい。
364名無しさんだよもん:02/12/07 23:23 ID:QQ62ho8D
365名無しさんだよもん:02/12/09 00:58 ID:/TgECPj1
メンテですの
366名無しさんだよもん:02/12/09 03:15 ID:3bQJaWq7
1人リレーに反対意見はあるが、
複数のシナリオを別々のライターが担当してると思えば気にならない。
リレーからはちと外れるが、まあ書いてくれる人がいればそれはそれでいいし。

というわけで楽しみにしてます。
367孫悟空 ◆yGAhoNiShI :02/12/09 16:16 ID:y+sZWrIm
ドラゴンボールZ
フジ(関東)で毎週月曜16:30〜放送中!!

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と〜けたこおりのな〜かに〜♪恐竜がい〜たら〜たまのりし〜こ〜みたいね〜♪
368名無しさんだよもん:02/12/09 21:38 ID:yvXZFT2K
いい加減、悟空貼りつけてるアフォを消してくれメンテ。
369名無しさんだよもん:02/12/09 22:24 ID:Up9sfnDw
遅感想〜

> 転舵前進!

陸上での剣の戦いから一転しての海戦。やっぱりこういうクラシックな海戦は
良いですなぁ。ディテールの描写が緊迫感を与えてます。
ラストで号令を発する祐一はなかなか格好いい。さすが海賊船長。
しかしレフキー海軍、動向が気になりますねぇ。
370Uスレの1:02/12/10 23:50 ID:Z7NNOsI2
ゆったりと書き進めつつ、メンテ。


……って、まだ前のラスト(←?)は漏れの投稿ですかΣ(´Д`)
371脱走中!:02/12/11 00:50 ID:aj+CxwqA

「七瀬お姉様、こっちです! ここから外へ出られます。さぁ、早くめくるめく愛の世界へ!」
 満面の笑顔のまま、かおりは鉄格子を外した穴から、外に飛びおりた。
 七瀬は溜息混じりにそれを見送ってから、自分の後ろを振り返る。
「……藤田、大丈夫?」
「………あのクソアマ……志保より性格悪ぃぞ……」
 蹴られた顎と顔を押さえながら、くぐもった声でうめく浩之。
 だが、一応意識ははっきりしているようなので、七瀬はさっさと外に出る事にした。
「はぁ、ここから出たら、お風呂にでも入ってゆっくりしたい……」
「風呂なら、倉田家の超高級風呂があるぞ」
 愚痴混じりの独り言に返事を返され、七瀬はぎょっと目を見開いた。
 通風孔から顔をだしたすぐ目の前に、見知った顔……というか、兜があったのだ。
「……よぉ」
 外は、すでに夕暮れが迫る黄昏時であった。
 紅い夕日に照らされながら、無骨な黒騎士が、ひょいと片手をあげる。
 その足元には、崩れ落ちるようにして倒れているかおりの姿があった。
「あなたは……」
「悪いが、そう簡単に逃がす訳にはいかないんでね……食べるか?」
 ひょい、と何故か料理ののったお盆を、軽く掲げて見せる。

 どうやら、相手の方が一枚上手のようだった。
 七瀬は唇を噛みながら、目の前の黒騎士を睨む。
 相手はかおりを悲鳴ひとつあげる間もなく、気絶させるほどの腕前だ。
 その上完全武装の鎧姿、こちらは剣どころかナイフひとつない。
 つまり、彼一人しかいないとしても、とても抵抗する意味などなかった。
「いつまでもそんな所にいないで、降りてきたらどうだ?」
「……そうするしかないみたいね」
372脱走中!:02/12/11 00:51 ID:aj+CxwqA

 七瀬は大きく息を吐くと、通風孔から身を乗り出し、地面に飛び下りた。
 改めて自分が通ってきた所を見上げてみると、1階の真上に位置する通風孔を通っていたらしかった。
「……どうした、七瀬?」
「藤田、残念ながら読まれてたみたい。黒騎士に掴まっちゃったわ」
「………」
 ひょこっ、とその通風孔から、浩之が顔だけ出す。
 その顔が埃塗れなのを見て、自分もそうなんだろうなぁ、と七瀬は暗澹たる気持ちになった。
「おっさんか…」
「………あのな、俺はまだ28だ」
「充分おっさんだな」
「そうね」
 上と下でうんうんと頷きあう七瀬と浩之に、黒騎士……伯斗龍二はがっくりと肩を落とす。
 取り合えず浩之が降りてくるのを待って、龍二は気絶しているかおりを抱かかえた。
「しかし、お前らに警備団の知り合いがいるなんて、聞いてないぞ」
「……いや、俺達も初対面なんだがな」
 ぐったりとしているかおりを見て、ちょっといい気味だ、などと心の中で思いつつ、浩之は肩を竦める。
「まぁなんでもいい。取り合えず部屋に戻ってもらって、七瀬嬢のご要望通り、湯浴みでもしてから夕食を頼んで……」
 言いかけ、龍二がふたりに背を向けた瞬間だった。

 きゅぴーーんっ、と効果音が聞こえてきそうな勢いで、かおりの目が剣呑な光を放つ。
「……っ!?」
 浩之と龍二、男ふたりが、まったく同時に背筋に悪寒を感じた。
「男は氏ねええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
373脱走中!:02/12/11 00:52 ID:aj+CxwqA

 恐らく、七瀬や浩之が襲いかかったとしても、龍二は一瞬でねじ伏せていただろう。
 だが、まったくの気絶しているとばかり思い、ノーマークだったかおりが突如凄まじい殺気を放ち、龍二の動きが固まる。
 そしてそれが、龍二の致命傷となった。
 龍二の肩から滑り落ちるように、そのくびきを逃れたかおりは、彼が反応するより早く、その場にしゃがみ込んだ。
「極楽蛙鳴掌!!」

 どぐっ

「……………!!!!!」
 七瀬が目を剥き、浩之は思わず身を竦ませる。
 伸び上がるようにして放たれたかおりの掌底は、龍二の股間にクリーンヒットしていた。
 鎧の股間部分には、一応前掛けがついており、正面からの打撃や蹴りなどを防ぐようになっている。
 だが、小柄すぎるかおりにここまで密着され、ほぼ真下から突き上げる攻撃など、防げる筈がないのだった。
 鎧を着込んだ龍二の身体が、ズズン、と音をたてて地面に倒れ伏す。
 かおりは息を鋭く吐くと、唖然としている七瀬に向けて、笑いかけた。
「七瀬お姉様、悪は滅ぼしました! さっさと逃げま……きゃあっ!?」
「ぐぐぐ……にいいぃぃがああぁぁぁすうぅぅかああぁぁぁ!!」
 地獄の底から響いてきそうな声をあげ、龍二がしっかりとかおりの足首を掴んでいた。
「この……しつこいっ!」
 がぅんっ、と兜を本気で蹴り上げられ、さすがの龍二も手の力が緩む。
 そこを無理やり引き抜き、かおりはぱっと走り出した。
「お姉様!」
「……しょうがないわねっ、いくわよ藤田!」
「……ナンマンダブナンマンダブ……成仏してくれ、おっさん……」
374脱走中!:02/12/11 00:54 ID:aj+CxwqA

 ばたばたと逃げていく七瀬とかおりの後を追って、浩之も走り出す。
 だがその瞬間、違和感を感じて思わず振り返った。
「………?」
「藤田っ、早く!」
「あ、ああ」
 慌てて踵を返し、浩之も駆け出す。
 そのとたん、脳裏に感じていた違和感は、忘れ去っていた。


 3人の気配が完全に遠のいてから、龍二はよろよろを身を起こした。
「っつつ……くそ、ひでぇことしやがる……」
 蹴られた兜を脱ぎ、コブのできた側頭部を押さえ、龍二は大きく溜息をつく。
「あぶねぇなぁ……もう少しで、タマ無しにされる所だったぜ……まぁこれぐらいやれば、あいつらも油断してくれるだろ」
 股間を押さえ、龍二は冷や汗を拭った。
 そして、傍らに置かれた料理の乗ったお盆を手に取る。
 そう、浩之が感じた違和感の正体が、これだった。
 あれだけばったりと倒れたにも関わらず、お盆の料理がまったく零れていなかったのだ。
 それはすなわち、龍二が料理を守れるほど余裕があった事を意味していた。
 龍二はあぐらを掻きながら、すっかり冷めてしまった料理を口に運ぶ。
「さて。懐柔が出来なければ、泳がせてお嬢様の居所を探る……と」
 腹ごしらえを済ませた龍二は、素早く立ち上がり、鎧1式を脱ぎはなった。
 重鎧は普通、誰かの手助けが無いと着る事も脱ぐ事もできないのだが、黒騎士の鎧は、『脱ぐだけ』は一人でできるように改良されている。
 重たい鎧を外し、黒いチュニック姿となった龍二は、3人が逃げた方向を睨んで、口元を歪めた。
「ここからは、元探偵の腕の見せ所だな」
375脱走中!:02/12/11 00:55 ID:aj+CxwqA
【七瀬 浩之 かおり 脱走に成功】
【伯斗龍二 3人を泳がせ、佐祐理の居場所を探る作戦に】
376名無しさんだよもん:02/12/11 23:23 ID:bgW+hk7h
おお、葉鍵で最も影の薄い主人公と言われた伯斗龍二が
これほど格好よく描かれる日が来ようとは!
377名無しさんだよもん:02/12/12 21:50 ID:/zrIT5xb
二次創作の、醍醐味ですな。
378名無しさんだよもん:02/12/12 22:49 ID:o85DJCph
379名無しさんだよもん:02/12/12 22:56 ID:tx0Asp9w
伯斗、なんというか大人の余裕みたいなのが感じられていいですな。
380名無しさんだよもん:02/12/13 19:57 ID:stF9t5B4
時間軸かぁ……それ以前に、季節はどうよ?
まあ、冬ってことは無さそうなんだけど………。
381名無しさんだよもん:02/12/14 13:31 ID:WWQiOPc0
個人的に思い浮かべている現在の時間だと、

佐祐理と舞は、寝てたことだし夜(深夜?)
フィルムーンの一向は、夕方という表現があった気がするので、夕方〜夜
北川一向は、下水に入ったのは昼だと思われるので夕方〜夜
みさき、楓、なつみ、ぴろは、夜露とか表現があったので(みさきは宿探してたわけだし)夜
(これに絡んでくる青の錫杖や鶴来亭、クルスのキャラバン、闇の王周辺も現在の時間は同じ?)
他は昼、かなぁ・・・?

同じ日とは限らないし、過去ログ読みなおしたわけじゃないから間違いだらけかもしれないけど。

>>380
どっかに季節をにおわせる話があったような・・・
う〜ん、読み返してみないとわからんが
382名無しさんだよもん:02/12/14 16:20 ID:StQQQ3pc
楓といえば岩切を捜してるんだよな……。
弥生さんが鶴来亭にいるって事を伝えるために。
んでも翌日には弥生さんは南邸いる訳だけど……分かってて書いてるよね。
383クロコダイン ◆yGAhoNiShI :02/12/14 16:41 ID:Xrh+endx
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384クロコダイン ◆yGAhoNiShI :02/12/14 16:55 ID:ehFGu2sZ
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385クロコダイン ◆yGAhoNiShI :02/12/14 17:09 ID:UVLoNJaN
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||!'    /ヽ、     o゙>┴<"o   /\   |'" ̄|  大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
\  /  |ミミヽ──‐'"ノ≡- ゙'──''彡| |、 |   | 東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
   ̄|    |ミミミ/" ̄ 、,,/|l ̄"'''ヽ彡|| |、/   /  名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
 ヽ、l|    |ミミミ|  |、────フヽ |彡l| |/  /_福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
  \/|l    |ミミミ| \_/ ̄ ̄フ_/  |彡|l/    ̄/ 札幌 テレビ北海道 (日)9:30〜10:00
  \ ノ   l|ミミミ|  \二二、_/  |彡|      フ
    ̄\  l|ミミミ|    ̄ ̄ ̄  |メ/       \ 絶対見てくれよな!!!
    | \ ヽ\ミヽ    ̄ ̄"'  |/        /
    /  \ヽ、ヾ''''ヽ、_____//       /_
  /  ヽ ゙ヽ─、──────'/|         ̄/
. /       ゙\ \     / / \__
   ───'''" ̄ ̄ ゙゙̄ヽ、__,,/,-'''" ̄   ゙''─
389名無しさんだよもん:02/12/15 22:55 ID:uPdflF16
めんて。
390名無しさんだよもん:02/12/16 00:53 ID:Qk/nSYw3
遅感想〜。

> だいだっそう?

松本脱走で意外な波紋が広がりそうな予感。牧村家の使用人と
帝国三銃士のつながりとは一体何か?独断ではないでしょうから、
裏に何かが?う〜ん。謎が謎を呼びます。ときに理緒、こういう
状況で身の安全は大丈夫なのでしょうか?ちと心配。
391名無しさんだよもん:02/12/17 02:55 ID:3+H1SjWO
季節と時間か〜。
過去ログ読み返さないとサパーリ。
時間できたら読み返してみよっと。
392名無しさんだよもん:02/12/17 20:45 ID:L7Z/A+Gr
メンテ。
393名無しさんだよもん:02/12/18 23:24 ID:kPsp3nkr
まったり。
394名無しさんだよもん:02/12/18 23:24 ID:T8XJKErT
遅感想〜

> 脱走中!

かおりん、相変わらず飛ばしてるな〜。男泣かせの攻撃も健在(怖
しかし、何と言ってもこのお話は、男、伯斗龍二、葉鍵板始まって
以来?の大活躍!ですね。大人の余裕綽々、飄々とした中にも
確かな実力を秘める、こういうタイプ、好きだなぁ。
395名無しさんだよもん:02/12/19 03:25 ID:l6/LyQBx
ダメージが軽すぎな(無かった事になってるような)奴が多すぎの気が……。
いや勿論ギャグの部分は除けてだけど。
396名無しさんだよもん:02/12/20 00:47 ID:r9Jwj7Vf
そこらへんの確認のためにも一回時間経過図作ってみた方がいいかもね。
え?言い出しっぺの法則?……すみません。時間出来れば。
397名無しさんだよもん:02/12/20 22:25 ID:HFUV7nPx
タイムテーブル作成中。現在60話まで。
……死にそう(w
398名無しさんだよもん:02/12/21 02:44 ID:oRCrri3k
>397
おおっ!想像するだに気が遠くなりそうな作業。
がんがって下さい。
399名無しさんだよもん:02/12/23 00:02 ID:vJE9Bz/B
がんがれ
400Uスレの1:02/12/23 00:43 ID:jjPqySo3
年末年始にまとめて書ける&ログ編集できるかな、と思ってたら、

 年 末 休 み 返 上 & 出 張 決 定 し ま す た


 どうすればいいんだ……(涙
401アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 06:05 ID:0qzQPh4U
ドラゴンボールZ フジ(関東)で毎週月曜16:30〜放送中!!
           | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l
           ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ
                 ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´
と〜けたこおりのな〜かに〜♪恐竜がい〜たら〜たまのりし〜こ〜みたいね〜
402アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 06:08 ID:HUpnX5n4
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と〜けたこおりのな〜かに〜♪恐竜がい〜たら〜たまのりし〜こ〜みたいね〜
403アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 07:44 ID:0qzQPh4U
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404アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 08:26 ID:0qzQPh4U
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405アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 09:39 ID:0qzQPh4U
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406アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 10:32 ID:HUpnX5n4
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407アシベ ◆yGAhoNiShI :02/12/23 14:12 ID:tim4r+gd
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と〜けたこおりのな〜かに〜♪恐竜がい〜たら〜たまのりし〜こ〜みたいね〜
408名無しさんだよもん:02/12/23 22:38 ID:vJE9Bz/B
うにゃ。
409名無しさんだよもん:02/12/24 11:37 ID:ENlT/VSN
雪よ降るなメンテw
410名無しさんだよもん:02/12/24 19:56 ID:x+KN82nS
冷えるのぅ…
411名無しさんだよもん:02/12/24 20:03 ID:x+KN82nS
 
412名無しさんだよもん:02/12/25 23:11 ID:Qq3lSYix
雨が降ってやがる…
413名無しさんだよもん:02/12/26 21:14 ID:JafVyrsA
さすがにみなさんお仕事とか冬の祭典の準備とかでお忙しかな?
414Uスレの1:02/12/27 00:48 ID:tsiZJ0F/
年末年始の休み返上で、出張ですが何か?(涙
415変質:02/12/28 11:19 ID:Z8x8gLLO
「すみいーもうすこしでほわーるだからね」
 しのさいかが、剣を杖にして今にも倒れそうな住井に声をかける。
「へへっ…それは…ありがたい」
 住井は傷の痛みに顔をしかめつつ返事をする。いや、痛いというより妙に傷口が熱い。そして、体全体の温度が上がっているようだった。
―――こりゃ…何か変な毒が入ったかな―――
 そう考えながら、一歩一歩ホワールに向かっていく。
 そして、美坂栞は激しく後悔していた。
――あの時、きちんとビー玉を出せていれば住井さんはこんな怪我をしなかったかもしれない。いや、それより最初からさいかちゃんを説得していれば気兼ねなく住井さんは戦えた…――
 ぐるぐると後悔の渦が栞の頭を渦巻いていた。住井はその様子を見て住井は少し歩調を落として栞の横に並んだ。
「気にすんなよ、栞ちゃん」
 そういった住井のほうに顔を向ける。
「手加減できなかったのは俺が未熟だったからだし怪我をしたのも俺が弱っちいから、栞ちゃんが気にすることじゃない」
「でも、私があの時…」
 次の台詞を言いかけたとき住井が軽く栞の頭を叩いた。
「あぅっ」
「気にするなって言っただろ。むしろ俺的には、二人に怪我が無くて万々歳だ。ちゃんと依頼どおり二人を護ることができたし」
「でも…」
「いいんだよ。俺は今君たち二人を護るためにここにいるんだ。仕事をしたに過ぎないってやつだ」
…言ってから住井は気がついた。くせぇぇぇぇぇぇぇぇ! 俺はなんてクサイ台詞を吐いてるんだ!? って言うかキャラ変わってる!?
「…」
「…」
 なんともいえない沈黙が続く。そのとき、さいかが叫んだ。
「みてみて! ほわーるのいちぐちだよ!」
 そう叫んで指差した先にはホワールの町並みが見える
「…行きますか」
「はい」
 そう言って気まずい沈黙のまま二人は歩き出した。
416変質:02/12/28 11:53 ID:rELX+RKL
「うわー…すごいー」
 自分が住んでいた田舎町とは比べ物にならないほどにぎやかな町並みにさいかは目を丸くした。
「ここに、先生がいるんですね」
 ため息とともに栞が呟いた。
「住井さん、ここまでありがと…!」
 栞は振り返った時初めて、住井が自分たちの後ろで倒れているのに気がついた。
「住井さん!」
「すみいー!」
 さいかと栞が駆け寄る。住井は自分の肩を抱いて苦しそうに呻いている。
「誰か! 誰かこの近くの病院を教えてください! 誰か!」
 住井は、栞が叫んでいるのと、さいかの泣き声を気を失う瞬間に気がしていた。


「やれやれ、まさか私が生きている間にこの症例がある意味幸運か?」
 そうカルテを眺めながら白衣を着た男性が呟いた。目の前のベットには上半身裸の住井が眠っている。
「住井護、男性。職業、冒険者。怪我の内容は野生の狼による噛み傷および爪による切り傷。当院に運び込まれたとき傷はわずかながら塞がりかけていた…とな」
 ふむ、と軽くうなる。
「普通は、これ、の原因を持った狼にかまれた程度じゃ、これ、にはならないんだがな…。特殊な薬物でも摂取していたのかはたまた体質なのか」
 傷を見ると、今度はほんの少し速いペースで傷が塞がりかけている。
「…考えてみれば外はもうすぐ夜か。回復のペースも早くなるのも当然だ…今日は満月じゃなかったな。それが救いか…」
 窓ひとつ無い診療室で男性は呟いた。この部屋には自分しかいない。
「少年よ、残念ながら、これ、の治療法は今のところ見つかってない…。それこそ『秘宝』でも無ければな」
 住井の顔を見て低く笑う。そして、カルテにこう書き込んだ。

病名:ライカントロピィ(獣化症・狼狂)
417名無しさんだよもん:02/12/28 11:56 ID:rELX+RKL
【住井護・しのさいか・美坂栞 ホワール到着】
【住井護 ライカントロピィに】
【医者 不明。次の書き手にお任せします】

 濡れた花、の続きです…やっちまいまったかも(汗)
418名無しさんだよもん:02/12/28 11:59 ID:rELX+RKL
しまった脱字(汗)
×瞬間に気がしていた。
○瞬間に聞いた気がしていた。
419名無しさんだよもん:02/12/28 16:49 ID:lIOuEmig
>「やれやれ、まさか私が生きている間にこの症例がある意味幸運か?」

この台詞は修正しなくていいの?w
420415-416:02/12/28 17:40 ID:xgSJ+6pj
>>419
指摘スマソ
×「やれやれ、まさか私が生きている間にこの症例がある意味幸運か?」
○「やれやれ、まさか私が生きている間にこの症例が見られるとはある意味幸運か?」
421時間稼ぎ:02/12/29 23:53 ID:kMomYIN2

「……ここが?」
「そう、あたしもよく立ち寄るけど、冒険者や賞金稼ぎがよく利用する宿よ」
 まだ太陽が地面に大きな影を残している頃、七瀬と浩之は、一軒の酒場の前に来ていた。

 倉田家の屋敷から脱出したのはいいが、何しろ場所が場所である。
 豪邸が立ち並ぶ貴族街では、浩之や七瀬の格好は目立つ事この上ない。
 ついでに言えば、例のかおりがぶちのめした黒騎士が、仲間に連絡して彼らを探しに来る危険もあった。
 そこで浩之が提案したのが、近くの酒場で時間を潰し、彼らの目を掻い潜ってから志保の家に戻る、というものだった。
 ちなみにかおりだが、彼女が部下達を呼びに行っている間に、逃げてきていた。
 七瀬にしろ浩之にしろ、これ以上彼女と関わり合いになりたくない、という点で一致していたのだ。

「えっと……鶴…?」
 浩之が看板の文字を読み上げるより速く、七瀬がさっさと宿の中に入ってしまった。
 それを見て、浩之も慌てて七瀬の後を追う。
 だが、ぎいぃぃ、とドアを押し上け、中に入った浩之が見たものは、世にも奇妙な光景だった。
 中途半端な時間帯のせいか、店内は驚くほど人が少ない。
 ざっと見て全部で5人……一人を除いてみんな女性だ。
 そう言えば、フィルムーンで海賊狩りの為の大規模な傭兵の募集があった、と志保が言っていたのを思い出す。
 傭兵が少ないのは、その関係かもしれない。
 
「二階に人を待たせてるんだろ? ほらほら、冷めないうちに。絶品だからそのお客さんも気に入ると思うよ。え? あ
あ、こっちは大丈夫だよ。俺が上手く抑えとくからさ、あはは、任しといてよ千鶴さんっ」

 取り合えず一番変なのは、ただ一人の男だった。
 長身でスレンダー……ただし胸も……な美人に抱き寄られていたが、彼の顔には汗がびっしり浮かんでいる。
 何となく男の直感で、浩之は彼が置かれている状況を察知していた。
 まぁ、普通なら美人に寄られて喜ぶ所なのだろうが、彼女の鬼のような目を見れば、彼が陥っている状況がわかろうというものである。
422時間稼ぎ:02/12/29 23:54 ID:kMomYIN2

「……あ、いらっしゃいませ!」
 そしてもう一人……例の美人と似た顔付きの、どうやら妹らしい少女が、ぱっと顔をあげる。
 触覚だ、と浩之は口の中だけで呟いた。
 後、もみあげ。
「久しぶり、初音ちゃん……千鶴さんと耕一さんも」
「あら、七瀬さん」
 千鶴と呼ばれた人は、七瀬の顔を見とめた瞬間、もうにこやかな表情になっていた。
 千鶴から解放された耕一は、あからさまにほっとした顔で彼女の傍から離れる。
 しかし、上着の裾がしっかりと千鶴に掴まれていて、耕一はがっくりと肩を落とした。
「お泊りですか?」
「ううん、ちょっとお酒を飲みに来ただけ」
 七瀬は軽く挨拶しながら、唯一の客が座っている隣のテーブルにつく。
 浩之はさり気無さを装いながら、その二人の客を観察した。
 一人は眼鏡を掛けた神官戦士、もう一人は傭兵らしい。
 神官戦士の女性は、ちらりと七瀬と浩之に目をやってから、興味無さそうにグラスを傾けた。
 傭兵の方はあからさまに眉を寄せると、溜息混じりに正面の女性を睨みつける。
(おい七瀬……席変えた方がいいんじゃないか?)
(嫌よ。あたしはここの宿来たら、絶対この席に座る事にしてるんだもの)
 変な拘りを見せる七瀬に、浩之は思わず溜息をついた。
「……まーいいか。取り合えずここで時間を潰してから、志保の家に向かおうぜ」
「そうね。……あ、初音ちゃん、ワインとモアステーキ」
「オレはエールとウィンナーの炒め物と……」
 昼ご飯を抜いてしまった二人は、次々とメニューを挙げる。
「ま、別に何も事件なんか起きないだろ」
 そう呟く浩之の予想は、見事に外れる事となる。
423名無しさんだよもん:02/12/29 23:54 ID:kMomYIN2

【七瀬&浩之 鶴来亭に時間稼ぎ】
424名無しさんだよもん:02/12/30 02:32 ID:c5RhLAnW
2ちゃんでSSを出すヤツは、何を求めているのだろう
425名無しさんだよもん:02/12/30 22:09 ID:YG7uS1b3
おおう!いつの間にか新作が。
……只今帰省準備中につき帰ってから読ませていただきます。
426名無しさんだよもん:03/01/01 02:49 ID:C0YHDzQv
取り敢えず保守なんですが。
427名無しさんだよもん:03/01/01 15:44 ID:lD+zIO88
新年おめ〜。早速ちょっとずつでも感想。

> 変質

住井組キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!と思いきや、獣憑感染で(´・ω・`)ショボーン
まあ、住井自身は物語的においしいポジションとは言えましょう。
しかし、正体不明の医者、聖でも麗子でもないとすると誰なんだろ?
栞のビー玉も気になりますな。
428名無しさんだよもん:03/01/02 17:35 ID:JVWZjK8J
> 時間稼ぎ

浩之七瀬は鶴来屋の話とリンクしましたか。しかし、これまた緊迫した場面に
飛び込んだものですな。智子を問い詰める雪ちゃん、耕一を問い詰める千鶴さん。
こりゃまた間が悪い。確かにこれで事件が起こるなと言う方が間違いですな。
かおりんや伯斗の逆襲も期待できそうだし。
429名無しさんだよもん:03/01/03 23:56 ID:UYOrAXEk
ほっしゅ
430名無しさんだよもん:03/01/04 16:21 ID:Yn7fZwy0
>時間稼ぎ

非常に言いにくいのですが……。
これでは時間軸に矛盾がでませんかね?
この時間の鶴来亭の二階には弥生さんがいて、同じく秘法塔から帰ってきた志保も南邸にて弥生さんを確認してるはず。
更に言えば、『過去と現在』で高槻が拉致されたのを志保が知っていて、そのまま秘法塔に出発。一晩過ごして、帰ってくる(二日目)
それで高槻はそのまま監禁という訳だけど、その高槻の入った木箱をみさき等が目撃して、その後に鶴来亭に到着(一日目)
という訳で秘法塔組とみさき等は一日のズレがあると思うのですが……。
つうか誰も何も突っ込まないので俺の勘違いかも知れないから、ちょっと他の人も検討してみてくれ……。
431名無しさんだよもん:03/01/05 00:54 ID:vPEaEkyp
なんと!

今ちょうど志保達の話書いてたからなぁ……確認してみる。
432名無しさんだよもん:03/01/05 01:56 ID:vPEaEkyp
調べてきました〜
まずは、高槻のタイムテーブルから。

タイムテーブルA
高槻

第7話 「Eye and Arm」……時間:昼
七瀬・健太郎・高槻

ロードの楽しみ……時間:?
(高槻気絶させられ、拉致)

人生の曲がり角……時間:?
(塩漬けのまま高槻は浩平の所に)

何でも屋……時間:?
(みさき・智子・浩平・耕一・岩切・楓 この時点で二人は塩漬けにされた高槻と遭遇)

逃がした者と捕らえた者……時間:?
(高槻IN牢屋 岩切)

この時点で、『過去と現在』は『ロードの楽しみ』以降の話となります。
433名無しさんだよもん:03/01/05 01:58 ID:vPEaEkyp
タイムテーブルA2
岩切

逃がした者と捕らえた者……時間:?
(高槻IN牢屋 岩切)

不安と不幸……時間:?
(岩切・みさき・智子・あゆ)

青の錫杖……時間:朝〜昼
(鼠の死骸・みさき・智子・岩切・あゆ)時間:?

くつろげない我が家……時間:昼前
(岩切・あゆ、志保・七瀬組と合流)時間:昼前


タイムテーブルA3
みさき
青の錫杖……時間:朝〜昼
(鼠の死骸・みさき・智子・岩切・あゆ)

鶴来亭……時間:夕方
(耕一・千鶴・みさき・智子)

そんな猫……時間:夜
(みさき・楓・なつみ・ぴろ)
434名無しさんだよもん:03/01/05 02:17 ID:vPEaEkyp
えっと、見た感じではみさき先輩と『塔』グループの接点は無いので、
『ロードの楽しみ』―『何でも屋』の間の時間経過が、初日昼以前―二日目朝前なら問題ないかと。
さすがに混乱してきましたが。
というか、浩平関係の話は全て屋内なので、時間が全然わからないです(汗

高槻掴まる(昼前)→志保浩平に謁見(昼)→志保塔に出発→翌日
→みさき浩平に謁見&高槻発見(二日目)→みさき宿探し&岩切弥生探し
→塔グループ帰還(二日目昼)→岩切・志保、弥生が南邸にいる事を知る(昼)
(二日目昼→七瀬拉致される→七瀬脱出→鶴来亭へ)
→みさき鶴来亭に来る(二日目夕方)

これで辻褄が合うかなぁ……?
435名無しさんだよもん:03/01/05 03:11 ID:OU4kLEjX
それなら辻褄合うかも……。
でもちょっと問題なのが、秘法塔から帰還するまでの時間と、
高槻が気絶させられてから浩平の所に連れて行かれるのに時間が経ち過ぎるているという点だけど……。
まぁ無理にNGにする理由もないので気にならなければおけーでは。
436名無しさんだよもん:03/01/05 16:04 ID:vPEaEkyp
上の方は凄い爆撃されてるけど、ここは下にいたから無傷だねぇ(w
437名無しさんだよもん:03/01/05 20:56 ID:3+b4k0vS
最下層記念カキコ。
そして保守。
438名無しさんだよもん:03/01/05 22:30 ID:uItDz/0f
常駐スレが最下層になったの初めてだよ記念カキコ
439名無しさんだよもん:03/01/06 03:10 ID:ZVnb+I0G
いつか常駐してみようと過去作品通し読み中ですが、
No215あたりから、作品一つ一つを順に結んでいる>>Nextのリンク先が壊れているのは既出ですか?
正しいファイル名はhtmlなのに、リンクがhtmになってます。
440名無しさんだよもん:03/01/06 10:38 ID:WyYcV/l+






441名無しさんだよもん:03/01/06 22:29 ID:owLidhQ7
>>439
あらほんと。
Lが抜けてるんだな。
442名無しさんだよもん:03/01/08 03:17 ID:bTlJJavS
思えばこのスレも開始一年ちょいか〜。数えでは三歳?
何にせよマターリ続いていって欲しいスレですね。
443名無しさんだよもん:03/01/10 16:18 ID:mhk7IwFV
嫌な予感が。今夜辺り絶対何か来るって。保守するべきだって。
444名無しさんだよもん:03/01/10 17:05 ID:+Si+dVce
オーケー。
微力ながら保守に協力するぜ。
445名無しさんだよもん:03/01/10 20:31 ID:hjXJAQ8n
ごめん、杞憂で済みそう。
……もうスクリプトなんか来ない。連スレ立てなんか来ない。
怖くない、怖くない。
446名無しさんだよもん:03/01/10 21:08 ID:+Si+dVce
  _、_
( , ノ` ) 
  \,;  シュボッ <……OK。
    (),
    |E|


  _、_
( ,_ノ` )y━・~~~  <……というかあんまり気にするな。
447名無しさんだよもん:03/01/11 21:17 ID:Ktikl216
書いたのに投稿し忘れたら、だらだらそのままに……うぐぅ
448名無しさんだよもん:03/01/12 01:25 ID:GLLmSeDN
まずは投稿してみろ。話はそれからだ。
449合縁奇縁:03/01/13 00:36 ID:5/DBQuoI

 その屋敷の内装は質実剛健を地でいくような、落ちついた雰囲気だった。
 よくある華美な装飾の代わりに、丁寧で繊細な彫刻が、僅かな花を沿えている。
 レフキー筆頭貴族にして、内政を司る大貴族、牧村家の屋敷であった。
 そんな屋敷の廊下を、小柄な一人のメイドが、よたよたと歩いていく。
 しかし、その目はおどおどと周囲を見まわし、どう見ても洗練された動作とは言いがたい。
『……ほら、もうちょっと背筋伸ばして』
「……うぐぅ」
 首元から小さな声が聞こえ、そのメイドは慌てて背を伸ばした。
 ちなみに、その手には紅茶が乗ったポットとカップが置かれている。
 どこから見ても、普通のメイドさんだったが、果たしてその実態は、無理やり志保と岩切に変装させられたあゆであった。
 こっそり岩切が気絶させたメイドの服を拝借し、こうしてあゆが成り代わっていたのだ。

 ちなみに作戦とは、弥生が話し込んでいる間に部屋に忍び込み、置手紙をするというシンプルなものである。

「……長岡さん、篠塚さんの部屋ってどこ?」
『うーん、ちょっとわかんない……響子、知ってる?』
『2階の突き当たりの部屋が、牧村家の客間よ。大事な客は皆そこに泊まるらしいわ』
『だって。西の階段を上がって南に抜けて。なるべく怪しまれないようにね』
「う、うん」
 あゆは小さく頷いてから、はたと顔を引き攣らせた。
「な、長岡さん……西ってどっち?」
『……あんた……本当に盗賊?』
 呆れたような志保の声に、あゆはべそをかきながら、首元の水晶球に目を落とす。
『あんたが今いる廊下が、北から南に抜けてて、もうちょい歩いたら右に階段があるから…くれぐれも窓から離れない事』
「わかったよ……」
 あゆは小声で水晶球に話しかけると、恐る恐る歩き始めた。
450合縁奇縁:03/01/13 00:37 ID:5/DBQuoI

 一方のこちらは、牧村家の植垣の近くでたむろしている、志保と岩切、そして響子のトリオである。
「……うーむ、不安だ」
「確かにね……」
 つい今しがたまで、微かに振動してあゆの声を届けていた水晶球を睨み、岩切は溜息をついた。
 そこに、ひょいと物珍しげに響子が顔を突っ込む。
「けど志保、そのマイクって声を伝える事もできるのね」
「ま、ね。もっともこういう使い方すると、寿命が短くなるからあんまりやりたくないんだけど」
 志保は苦笑しながら、手の中でマイクの柄の部分をくるくると回した。

 音の水晶、というものがある。
 非常に振動に敏感で、微かな空気の震えに反応し、それを増幅するという宝石である。
 志保のマイクに使われているのが、この音の水晶を研磨して作った水晶球であった。
 この水晶球は、音声を増幅するだけではなく、呪歌の能力も格段に引き上げるという代物である。

 とはいえ、この水晶は非常に脆く、繰り返し音を浴びせる事で小さなヒビが入り、やがて透明な水晶が真っ白に染まってしまう。
 そうなれば、もはや音を増幅する事はできず、水晶としての価値も無くなる……使い捨ての部品なのだ。
 今あゆに持たせているのは、志保が普段使っているマイクの、スペアの水晶だった。

「……まぁ、こうして音の水晶がふたつあれば、お互いに共鳴しあって遠くまで音を運べるんだけどね」
「さすがに壁までは音が届かないのね」
「そうなのよ。まぁ、窓に嵌め込まれてる水晶ぐらいなら、問題無いんだけど」
「おいっ!」
 のんびりと話し込んでいる志保と響子に、遠眼鏡で見ていた岩切が緊迫した声をかける。
451合縁奇縁:03/01/13 00:38 ID:5/DBQuoI

「篠塚弥生が部屋に戻るぞ!!」
「や、やばっ……あゆっ、弥生が来てるからちょっと待機してて……あゆ!?」
 慌てて水晶に声をかける志保を嘲笑うかのように、手もとの水晶はぴくりともしない。
「あゆ!?」
「………無駄だ、長岡」
 遠眼鏡を下ろし、岩切は絶望的な笑いを浮かべた。
「今しがた、月宮は……奴の部屋に入った」


「……ここが、篠塚さんの部屋なのかな?」
 幸いにも部屋に鍵は掛かっておらず、あゆはすんなり客室に入っていた。
 この部屋も外と同じく、落ちついた雰囲気ながら、ふんだんに金をかけた作りになっている。
「大丈夫……だよね?」
 いささか不安な面持ちで、あゆは首元の水晶球に目を落とした。
 部屋の中に入ってしまえば、志保達と連絡は取れなくなる。
「いいや、さっさとお仕事しよっと」
 あゆは素早く気持ちを切り替えると、手近なテーブルに紅茶の入ったポットを置いた。
 だがその時ふと、一枚の手紙が目にはいる。
「……これ……何て読むのかな?」
 手紙に興味を惹かれたあゆだったが、残念ながら字が読めない。
 何度か四苦八苦しながら、文面を眺めていると、その1行に“柏木”という名が見えた。
「柏木……? 柏木って確か、楓さんのお家だよね……どうしてそんな名前があるんだろ……」
「商談ですよ」
「!!」
 いきなり後ろから声を掛けられ、文字通りあゆは跳びあがった。
452合縁奇縁:03/01/13 00:38 ID:5/DBQuoI

 音ひとつさせずに部屋に入った篠塚弥生は、ゆっくりとした動作であゆに歩み寄ってくる。
 一方のあゆは、顔面にびっしりと汗をかき、がたがた震えさえしていた。
「う、うぐぅ……」
 あからさまに怪しいあゆの態度にも、弥生は眉ひとつ動かさずに、ソファに腰掛ける。
「これから私は、鶴来屋の柏木千鶴さんと会って、商談をまとめなければならないのです。
 本当は高槻卿の仕事だったのですが……彼は今、行方不明なので、私が代理人なのです」
 弥生はそっけなくそう言うと、あゆが持ってきた紅茶に目をやった。
「入れて下さいませんか、紅茶」
「うぐ、は、はいっ!」
 あゆは真っ青な表情で、わたわたと紅茶をカップに注ぐ。
 震える手で差し出された紅茶を受け取り、弥生はなんの躊躇いも無くそれを口に運んだ。
「……あ、あ、あの、それじゃあボクはこの辺で……」
「お待ちなさい」
 慌てて退室しようとしたあゆを呼びとめ、篠塚弥生はくすりと笑った。
 あゆの仕草が、水の中に突き落とされたハムスターさながらの慌てっぷりだったからだ。
「安心しなさい、別に取って食べやしませんよ」
「う、うん……」
 あゆは弥生に示されるままに、恐る恐る彼女の前のソファに座る。
 だが、弥生は何かするでも無しに、興味深げにあゆの顔を見詰めるだけだ。
「………あ、あの………」
「あなた、名前は?」
 いきなりするりと訊かれ、思わずあゆは本名をしゃべっていた。
「つ、月宮あゆ」
「そう、いい名前ね」
453合縁奇縁:03/01/13 00:39 ID:5/DBQuoI

 冷たい雰囲気を纏わせている彼女だったが、こうして笑みを見せると、驚くほど柔らかい感じになる事にあゆは気付いた。
「あなたもどう、紅茶?」
「え、あ、はい、貰います」
 緊張し通しで喉がからからだったあゆは、勧められるままに、こくこくと頷く。
 弥生自らの手で紅茶を入れ、手渡されたカップを貰い、あゆはそれを飲み干した。
「ふふ、もう一杯どう?」
「あ……」
 再び注がれた紅茶を飲みながら、どうやらバレてないな、とあゆは内心ほっとする。
 その瞬間を見越して、弥生はずばりと口を開いた。
「それで、盗賊ギルドは私に何を求めているのかしら?」
「うぐっ!?」
 ずばりのタイミングに、紅茶がまともに気管に入り、あゆはもがき苦しむ。
「うぐっ、げほっ、ごほっ!」
「あ、あらあら、大丈夫?」
 さすがにここまであからさまに動揺するとは思ってなかったのか、弥生も面食らいながら、あゆがこぼした紅茶を拭いてやった。
 一通り零れた紅茶を拭い、あゆが落ちついたのを見て取ると、弥生は再びあゆの顔を凝視する。
「あなたがここのメイドでないのは、見てすぐわかったわ。私は一度記憶した人の顔は忘れないから。
 けれど、まったくの素人でもない……盗賊としての身のこなしが現れてる。
 最初、私に薬を盛るために来たのかとも思ったけれど、そんな様子でもない……」
 そう呟きながら、弥生は真っ青でガタガタ震えるあゆを面白そうに眺めた。
「さっきも言ったけれど、取って食べやしないから安心なさい。私もギルドと連絡を取りたいと思っていたから」
「………うぐぅ」
 とうとう観念したあゆは、震える手で、ポケットから岩切が書いた手紙を差し出した。
 弥生はそれを受け取ると、目を細めながら文を追いかける。
454合縁奇縁:03/01/13 00:41 ID:5/DBQuoI

 まず古風な文体に微笑を浮かべてから、すぐさま弥生は真顔になった。
「……本日の夜、“虎の髭”亭で貴君を待つ……貴君の雇い主の事で話がしたい……?」
 羊皮紙から顔を上げ、弥生は手紙をくるくると巻き込む。
「そう、でも悪いけれど、今日はさっきも言った通り、これから鶴来亭の主人と商談があるの。
 私は高槻卿の秘書の代わりでもあるから、捨てておく事はできないし。
 ……そうね、その後でなら、あなた達との話し合いもできるかもしれないわ……どう?」
 弥生は僅かに首を傾げ、あゆの顔を覗き込む。
 甘い吐息が首筋にかかり、あゆはビクリと震えた。
「は……はい」
「いい子ね」
 魅惑的な瞳に覗き込まれ、あゆは脂汗を流しながら、己の不幸を嘆いていた。

「………あ、出てきた」
「何?」
 遠眼鏡を覗き込んでいた志保は、部屋から出てきたあゆを見て、声をかける。
「しかも篠塚弥生と一緒」
「………」
 よたよたと部屋から出てくるあゆを見ながら、岩切は取り合えず安堵の溜息をついた。
「まぁこれで、何とか奴と連絡も取れただろう」
「何か、全部彼女にばれちゃった感じだけどね……」
 鋭い一瞥を投げかける弥生と目が合い、志保はゲンナリと呟く。
「何にしろ……後は高槻の交渉をするだけだな」
 肩の荷が降りた、といった顔で、岩切は呟いた。
「だがそれは私の仕事ではない……後は折原浩平が何とかするだろう」
455447:03/01/13 00:45 ID:5/DBQuoI
【あゆ 弥生と連絡を取る】

えっと時系列で言えば、みさき先輩が鶴来亭に行く前、
七瀬達がちょうど誘拐された当たりでしょうか。
こんがらがってるので、気付いた点がありましたらお願いします。
456名無しさんだよもん:03/01/13 01:23 ID:KiknSmln
お、新作来ましたな。

> 合縁奇縁

何はともあれあゆの動揺っぷりにワラタ。つか、お前は本当に盗賊なのかと小一時間……。
こんなのをスキル必要そうな牧村邸への侵入に使う方も使う方と言えよう(w
ま、それでも任務を一応果たしている分ましとは言えますかね。
ところで、「マイク」がこの世界でどんな位置付けなのかというのはちょっと気になりました。
音の水晶を含めて比較的普及している魔法装置ということでいいでしょうか?
457名無しさんだよもん:03/01/13 01:49 ID:pUQ5H+rS
気になるといえばどうして弥生は南邸に居たのかも気になるw
458名無しさんだよもん:03/01/13 15:39 ID:GV107juM
忍び足などの音を立てない行動にしても、弥生さんの方があゆの十七倍はレベル高そうだ。
459Uスレの1:03/01/13 15:54 ID:EZOSXVCr
オーケー、過去ログ更新完了。

         ∧_∧
         ( ´_ゝ`)
        /   \
          /     / ̄ ̄ ̄ ̄/    
        (. .つ /  FMV  /     兄者、二ヶ月ぶりってのはどうよ。   
      .|\ \/____/\        ∧_∧
     /\.\.          \ _    (´<_`  )
   /   \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| \ /ノ  (⌒つ
   \    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ \    | |
     \   /.              \  >―. し
       .ソ___________ノ

>>439
 指摘どもです。
 215-223まで修正完了しますた。

 さて、今度の東京長期出張までには一本くらい上げねば……
460名無しさんだよもん:03/01/13 20:38 ID:ZHp3hmAE
>459
まとめ乙〜。

>458
な、何故17倍?
461名無しさんだよもん:03/01/13 20:58 ID:7LFwUHq+
最初は七倍だった。だがあゆはあの能力から考えるに、どう考えてもレベル1か2。
弥生さんは、裏設定で忍者とかいう設定があってもおかしくない人だ、と考え、十を付け足した。
深い意味はないw
462名無しさんだよもん:03/01/13 23:25 ID:ZHp3hmAE
>461
う、う〜む。わかったようなわからないような。
ま、あゆがレベル低そうというのは確かだけど。
もっとも、彼女の場合、問題は技術云々より
精神的なものにあるような気もしないでもない。
463山崎渉:03/01/14 09:53 ID:uzUhoTci
(^^)
464名無しさんだよもん:03/01/15 02:51 ID:rjCwLyoa
圧縮基準変わってたのか!油断してた。
荒らしに救われるとは……
465名無しさんだよもん:03/01/15 22:50 ID:OrqiafmM
微妙
466名無しさんだよもん:03/01/17 21:03 ID:7OgBZHWy
保守っと。
ところで、この世界、仮にTRPG化するなら、どんなシステムが合ってそうですかね?
いや、単にスレ一覧見たらガープス葉鍵スレが目に入ったので連想しただけなんですが。
467名無しさんだよもん:03/01/17 21:14 ID:h9yzOEFR
TRPGシステムは大して知らないが、ガープスぐらいじゃないか?
適応できそうなのは。
SWは能力値が厳しいから、再現度がかなり下がりそうだし。
468名無しさんだよもん:03/01/17 23:43 ID:BKvlT4PJ
特殊能力が雑多すぎる上に、世界観が独自だから……。
一定の世界観のあるたいていのファンタジーTRPGだと再現は無理そう。
例えば、あまり描かれてないだけとも言えるけど、この世界宗教観薄いし。

でも、ガープスそのままだと魔法の派手さが無い罠。
ほとんどの魔法は超能力とか妖力で再現せざるを得なくなる。

あ、もしかしたら世界観自由設定ファンタジー「パワープレイ」とかで行けるかも。
469名無しさんだよもん:03/01/17 23:54 ID:39IEewcL
古典ファンタジーがどうのこうの言ってたのが嘘みたいな話題だな>ガープス
470名無しさんだよもん:03/01/18 00:00 ID:cz5E/Pr5
しかしAD&Dや指輪物語あたりじゃいかんともしがたく。
古典ファンタジーの世界観をガープスで表現するってのは間違いではないと思うが。

471名無しさんだよもん:03/01/18 00:05 ID:wVKsGqfV
そもそも古典ファンタジーっぽさ自体そんなに感じない気がする。
無理に合わせるよりはこのぐらいの方がちょうど良いと思うけど。

にしても、ガープススレ、ファンタジーverのキャラとかいないのね。
作ってみると話を作る時にキャラが把握しやすくて良いかも知れない……が、
逆にキャラの方向性を縛ったりしそうな諸刃の剣。
止めておいた方が吉。
472名無しさんだよもん:03/01/18 00:32 ID:eIohfX3E
振り向いた先の本棚で、真っ先に目に付いたのが、GUNDAM SENTINEL RPG だった。
続いて出てきたのがスペオペヒーローズにクトゥルフにシャドウラン……。
どうすればいいんだ。
えー……メガトラベラーで、行ってみようか(やけ)

いや、ファンタジーもあるけどね。阿修羅ファンタジーとか、アドヴァンスドファンタズムアドベンチャーとか、ストームブリンガーとか。
あ、TORGだ。なつかしー。ルーンクエスト90'S……あったなぁ。
T&Tなんか面白いかも……。大雑把だけど。

473名無しさんだよもん:03/01/18 22:52 ID:L2MLrf8a
>468
まあ、そのごった煮感がここの魅力の一つでもあるしね。
474レフキーの夜:03/01/19 03:42 ID:EoI9Io40

 ネコが言った。
「これはどうしたもんかな……」
 場所はレフキーという国。その王都レフキー。その都市にある一つの酒場。その店先での発言である。
 まるで数ヶ月でも過ぎたかのような空白が、自らの発言の所為だと悟った時の心境だと思われる。
「そ、それじゃあ、この酒場に用事があるからもう、行くね」
 見えない目で見えない誰かを捜す様に辺りを見回す盲目の剣士。
 その仕草には、悪戯が見つかってしまい必死に隠れている子供のような憔悴が交じっていた。
 この彼女の言葉に応えたのはそのネコではなく、そのネコに傍に立つ麦藁帽子を被った少女だった。
「はい。それでは失礼します」
 何故か、緊張感を含んだ即答だった。
 そうして軽く会釈を交わしあっさりとあっけなく、喋る変なネコと麦藁帽子を被った少女は夜の街に消えていく。

 その様子を――いっぴきの黒猫の、光る瞳が凝視する。

「う〜ん……火薬のにおい。あれはもしかして、銃なのかな。だとすると、彼女は……冒険者だったのかな?」
 もっとも他のにおいが強いからよくわからないんだけどね、と酒場に入る前に黒猫に笑いかける。判断材料はにおいだけではないのかも知れない。だが、黒猫は未だにその消え去ったネコと少女の方に顔を向けていた。
 少し不審に思い、急いでいた足を止めて、その黒猫の名を呼んでみる。
「……楓ちゃん?」
「喋る……喋る猫でしたね、みさきさん」
 小さな声で、うわ言のようにそんな確定している事実を確認する。信じられない――というよりは、あってはならないと言いたげな口調だった。
 一方、みさきは困った感じで小首を傾げる。なにしろ喋る猫なら頭の上に乗っているのだ。
「うん。でも、そんなに珍しくはないと思うよ?」
 まぁ、確かに。みさきの知っている限りには身近にまだ数人いる。
「……彼女は銃を持っていたのですか?」
 楓は問いには答えずに――思考を切り替えるように――言った。尤も最初の問いに応えただけかもしれない。
 うん、多分だけどね、とみさきも気にした風をみせない。
475レフキーの夜:03/01/19 03:44 ID:EoI9Io40

「冒険者だったら楓ちゃんが話しかけると思ってたんだけど……ずっと黙っていたから、違うんだと思ってたよ」
 無論、魔法で耳元周辺の空気を操り、みさきにだけに意思を伝える事はできたのだけれど――
「――用心に、越した事は無いですから」
 答えになっていないような、なっているような返事を聞いて、みさきは苦笑する。
「うん。ここだったら他にも雇えそうな人がみつかるしね。きっと」
「……はい。それにもし、ここが駄目でしたら……」
 それを聞いて、みさきは止まっていた足を動かす。
 少し、あの猫に固執している気がするが、それを問い質すことも特にしなかった。

 場所はレフキーという国。その王都レフキー。その都市にある一つの酒場。その名を青の錫杖という。
 しかし、今日という日は何時もと少し――いや、かなり雰囲気が違うのである。


               ◇


 ピロが言った。
「これはどうしたもんかな……」
 場所は帰路の途中、柳也さんの家に向かって歩いている時だった。
 ちなみにピロがどう思っているかなんて事は、私にはこれっぽっちも判りはしない。
「どうしたの、ピロ?」
 先程の出会いについての話しも一段落ついた後に、不意にピロが呟いたのだった。
「……ん、いやちょっとな……もしかしてなんだけど。でも、だとしたらなんでこんな所に……」
「話がみえないんだけど」
「……う〜ん、それじゃ、なつみはどっちが印象に残った?」
 ピロの言葉は大抵が意味不明で、その意図が不明確な時が多い。今回もその類だった。おそらく先程の出会いの事だろうとは思うけど『どっち』などと言われても、一人しかいない。
「――みさきさんしか、印象に残らなかったよ」
 一瞬殺しにきたのかと思った程だ。それは結局、自意識過剰で終わったからよかったのだけれど……
476レフキーの夜:03/01/19 03:47 ID:EoI9Io40

「そっか。やっぱりそうだよな」
 と、私の答えを聞いてピロは納得したように頷き、またしても悩み始める。時折、チョッケイシカだとかコウゾクとか断片的な単語が漏れてくるだけだった。普段使っていない脳細胞をフル稼働させているのだろうか……
 それでもピロは歩きながら、一通り悩み抜いた末に結論に達したのか、きっぱりと言った。
「まぁ、いっか。どちらにせよ俺には関係無いしな。“餡子より、皮が安し”ってやつかな」
「……タイヤキ? ……“案ずるより、産むが易し”?」
「そ。そんな感じ」
 そう言ってピロは黙った。
 散々悩んだ挙句の結論も、なんだか投げやりっぽい。

 それから黙々と歩き続けると柳也さんの家が見えてきた。……帰ってきている様子は、ない。
「ピロ、それじゃ今日はここで寝ようか」
「うん。でもなんだか無用心だなぁ……」
 誰に言っているのだろうか……などと思いながら柳也さんの家にお邪魔した。
 家の中は暗い。月明かりが上手く進入できない構造にでもなっているのだろうか……
 私は自分の置いたままの荷物を確認したアト、そのままよろよろと歩き、倒れるようにベッドにつっ伏した。張り詰めた神経がほぐれていく。
「やれやれ……なんて体たらくなんだよ、なつみ」
「これでも疲れてるんだよ……」
 レフキーまでずっと歩いてきた疲れが溜まっていたのだろうか。こうやっているとすぐに眠れそうだった。
「はぁ、情けないナァ……まぁ、いいか。それじゃ俺はちょっと行ってくるぜ?」
 私はその声に顔を上げる。しかし、目を凝らしても見えるのは暗闇だけだ。部屋の輪郭さえはっきりとせず、まるで幻か何かのように感じた。
 目も暗闇に慣れていないこの状況では、ピロの位置を掴むのは難しい。
「……ピロ、情報を集めに行くの?」
 ピロは――どうやっているのかは私には判らないのだけれど――夜の街に時々出掛けていき、巧みに情報を集めてくる事が多い。本人曰く『俺は、夜行性だからな』だそうだ。
「勿論だよ。なつみに目的があるように、俺にも目的があるんだから」
 その暗闇から声がする。何処で喋っているのかも判らない。
「情報は集まりそう?」
「帝国じゃ全然情報がなかったけれど、ここ……レフキーでなら、きっとみつかる。みつけてみせるさ」
477レフキーの夜:03/01/19 03:48 ID:EoI9Io40

 みつける。そう、ピロは捜しているのだ――二人の人間を。
 詳しい因縁は私も知らないのだが、その内の一人はピロに今の名前を与えた女の子。もう一人は――倒すべき男、らしい。
「避けては通れないのかな……」
 無意識に言葉が出てしまう。幾らピロが前人未到の変なネコだとしても、人に勝てる訳が……
「言っただろ、なつみ。命の宿りし時から定められた運命――宿命ってヤツさ」
 聞いている方が恥ずかしくなってくるよな台詞を残して、ピロの出て行く足音が響いた。

 他人の家に、一人になった。

 私はマントと帽子を外し、ベッドに潜り込む。銃は枕元におき、ナイフを握ったまま寝る。抜き身ではない。
 ナイフを握ると私の悲愴な想いが染み出してくるよう気がしてくる。――そう、ピロに目的があるように、私にも目的がある。
 だけど、はっきりいってピロの実力は判らない。というより、改めて考えてみるとピロの事はほどんど何も知らない。
 でも、ピロは……以前こんなことを言った事があった。

『なつみ……欠陥品は、捨てられる運命なのかな』

 ピロは自分の存在が気に入らないのではないか? と思う時が偶にある。自虐的なのだ。
 それでも何でもないように日々を過ごしながら、私とピロは生きてきている。

 闇は、人の内面を浮き彫りにする、と聞いた事がある――感傷的な気分もその所為なのか。その上私の思考はもはや眠気によって支離滅裂になっていきている。
 しかし、私は落ちていくような眠りのなかで、この部屋の暗闇の中にどういう訳か、何か白いモノが視界の端に映っていた気がしていた。
 どうして今頃になって気になるのだろうかと、薄れていくぼんやりとした意識で自分に問い詰めてみる。
 起きて確認する気力なんてとうに無い。

――輪郭すら明確ではない暗闇の中において、幻のように明瞭な白い、何か。そう、それは白い――

「――羽、しろい、はね……」
 呟きは、暗い静寂の中に霧散した。
478名無しさんだよもん:03/01/19 04:00 ID:EoI9Io40
【川名みさき・柏木楓/青の錫杖へ】
【牧部なつみ/柳也の家で就寝】
【ピロ/夜の街へ】

話としては「ココロを刃に」の続きです。
色々悩んだけど、結局みさき組とは今回はすれ違うだけにしておきました。いきなり意気投合するのも変かと思いまして……
誤字脱字矛盾ありましたら指摘願います。
479名無しさんだよもん:03/01/19 23:25 ID:mB6RSmti
新作乙〜。
なつみとみさきはさらりと流しただけで終わりましたね。
時間的には、帰って来た北川チームと遭遇してもおかしくない……かな?
猫楓が鼠ぢゃむを食べさせられないことを祈ります(w
480名無しさんだよもん:03/01/19 23:50 ID:1iatBXaQ
おお!なつみピロ組登場!久々ですな。
キャラ的にはこの一人&一頭結構好きなんで。
……しかし、ストーリーラインをすっかり忘れてますので
前作チェックしてからまた来ます。
481名無しさんだよもん:03/01/21 01:03 ID:TTp/Xev3
過去ログサイトで復習させていただいてます。で、気が付いた点。
94話「東方の冷害」で、42話へのストーリージャンプがNext側になってます。
それと、106話「忘レナイ」から125話「ひざしのかおり」へのストーリー
ジャンプが抜けてますね(逆はあります)。以上御報告まで。
482名無しさんだよもん:03/01/21 01:59 ID:6NIP0+lW
じゃぁ俺もついでに。
ttp://lefkey.hp.infoseek.co.jp/log6.html
こっから「空回り」に飛ぶと「空々回り 」に飛んでしまうのでリンク修正願います。
483Uスレの1:03/01/22 00:22 ID:OBgCYZSC
 了解です〜

 ……二月頭に出張終えたら復旧しまつ/つД`)

 ご指摘多謝であります!>>481-482
484名無しさんだよもん:03/01/22 01:52 ID:YhYmDnMx
もう1つ。

>>482のページの289話、時間稼ぎの登場人物がおかしいでつ。
485名無しさんだよもん:03/01/23 21:17 ID:cv8KPejE
>483
よろしぅ〜。つかお疲れ様です。
年度末近いし、社会人はこの時期多忙ですよね。
486名無しさんだよもん:03/01/23 21:18 ID:nKg8PPId
じゃあ、トーキョーNOVA……すまん。

亀レスで、二重にスマン。
487人間の証明:03/01/23 21:30 ID:Yj5r5+Jw
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 佳乃の放った火球の火の子が男の服に引火して体中に燃え広がる。さきほど酒を体中に浴びてしまったために異常なほど火の回りが早い」
「どうだー! かのりんのスーパーファイアーボールの威力は!?」
 胸を反らしいかにも、えっへん、という擬音が聞こえてきそうだった。御堂と矢島はそれぞれの獲物を持ったままぽかんとその様子を見ていた。瑞希はまだ動けなかったが、繭にその様子を見せないために眉を抱いて胸に顔を押し付ける。
「しっかしなんとまぁ…なぁ」
「えぇ」
 矢島と御堂はなんともいえない、といった感じでたたずんでいた。男はいまだ転げまわっている。体中の火はいまだ激しく燃え盛っている。その様子を見ていた佳乃がふと呟いた。
「…でも、もう助けてあげようよ。死んじゃうよ?」
「…はっ?」
 御堂は自分で火をつけておいて何を今更、と思っていたが佳乃は言葉を続けた。
「たしかにね、この人は人殺しだけど…だからと言って…」
 佳乃は、何か言いたそうに口ごもる。一人、男の様子を見ていた矢島がそのとき叫んだ。
「兄貴!」
 矢島が叫ぶ。御堂はすばやく身構えて男のほうに向き直る。
488人間の証明:03/01/23 21:39 ID:Yj5r5+Jw
「貴様らぁぁぁぁぁぁ!」
 男は立ち上がると着ていた服を引きちぎり、火の付いた服を床に投げ捨てた。そして、ぶすぶすと嫌な匂いを出しながら燃えている髪の毛を無理やり引きちぎった。
「…殺す、殺す殺す殺す殺す」
 体中火傷まみれでもはや先ほどまでの面影はかけらほども見えない姿で御堂たちを睨みつける。手には、転げまわっている間でも手を離さなかった斧が握られている。
「きゃあああああ変態! 変態君一号だよ! 変態君一号に任命する!」
 佳乃は悲鳴混じりに叫んだ。確かに、衣類は全て引きちぎっていて男は全裸であり、当然陰部などはむき出しだが。
「…つっこむ所はそこじゃねーだろ」
 矢島が呆れながらそういった。
「…バケモノめ」
 御堂は周りのことなど目に入ってない、という感じで呟いた。
「もはやテメェは人間じゃねぇな」
 そう呟いて、御堂は男に踊りかかった。
489人間の証明:03/01/23 22:06 ID:Yj5r5+Jw
「矢島! 合わせろ!」
 そう叫んでから、御堂はレイピアを男の眉間めがけて鋭く突き出す。男はサイドステップを取りぎりぎりの所で回避する。
「っせい!」
 矢島がその瞬間に男めがけて椅子を投げつけた。男は少々面食らいながらも斧で椅子を叩き落す。
「ッシ!」
 呼吸とともに鋭い突きを繰り出す。椅子に気を取られておりわずかに反応が遅れ、軽く脇腹を掠める。
(チッ、レイピアなんぞ城の訓練でやったきりだったからな。銃とは言わないがせめて普通の剣が欲しいぜ)
 御堂は、以前城にやってきた旅の武器屋から手に入れた銃がどうも御堂とウマがあった。才能があったのかどうかわからないが、ある程度訓練したからかなりの命中精度を誇るようになった。まるで、的に向かって勝手に体が照準を合わせるように。
(あの銃、粗悪品だったかしらねーが壊れちまいやがって。クソ高いから今のオレには買えねーし売ってるところも見つからねーしクソ!)
 心の中で愚痴る。
「このバケモノ野郎が!」
 御堂は、手を軽く下げた。
 タン
 右に軽くステップを取る。男の視線がそちらに向く。
 タン
 左に軽くステップを取る。男の視線がそちらに向き斧を振り上げる。その動きに惑わされ、視線がもはや御堂にしか向いていなかった。そのとき、男の目の前に何かが迫ってきた。それに気づいたときはもう遅かった。
 ガツッ!
「ぐっ!」
 男の額に矢島の投げた皿が当たり床に落ちる。がしゃんと言う音を立てて皿は粉々に割れる。傷はたいしたことが無い。ただ、致死的な隙だった。
(よくやった矢島!)
 心の中で矢島に賞賛を送った。御堂はその隙を見逃すわけが無かった。男の喉めがけてすばやく剣を突き出す。
490人間の証明:03/01/23 22:07 ID:Yj5r5+Jw
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」
 そう叫びながら、恐ろしいほどの反射速度で体を横にずらす。だが、その剣の切っ先は男の右肩を貫通していた。
(取った!)
 心の中でそう思った。だが、男は信じられない行動に出る。そのまま左手で貫通した剣のの切っ先をねじり思いっきり体をひねった」
「ぐっ!?」
 思いもかけない行動に思わずレイピアを手放してしまう。しまった、と心の中で舌打ちをした。
「キキキキキキ…殺す」
 男は奇妙な叫びを上げて方からレイピアを引き抜き、後ろに投げ捨てた。
「さぁ、パーティの始まりだ」
 男は醜く笑った。
491人間の証明:03/01/23 22:11 ID:Yj5r5+Jw
【御堂・矢島 共に丸腰。御堂は右肩負傷中】
【男 右肩の傷はかなり深い】
【レイピアは男の後ろに転がっています】

無駄な連続投稿スマソ。流れ的には>316-322の続きです。
492名無しさんだよもん:03/01/23 23:28 ID:33viaPpQ
おお、これまた久々の瑞希佳乃組ですな。
しかし、佳乃、やっぱり感性が常人とずれてるなぁ(w

とりあえず誤字等チェック。
>487 l.7 眉→繭
>489 御堂は、以前城にやってきた〜 → 御堂が重複
493名無しさんだよもん:03/01/24 00:21 ID:kULCYLpB
追い打ちチェック。
>487 L2 火の子→火の粉
>487 L2と490 L4で文末が"」"に。
494487-491:03/01/24 00:39 ID:+SLD+Yz8
とりあえず意味が変わってしまっているのを…

>489
×御堂は、以前城にやってきた旅の武器屋から手に入れた銃がどうも御堂とウマがあった
○以前、城にやってきた旅の武器屋から手に入れた銃がどうも御堂とウマがあった。

×ある程度訓練したからかなりの命中精度を誇るようになった
○ある程度訓練したらかなりの命中精度を誇るようになった


見直すと誤字が多い…逝って来る
495487-491:03/01/24 00:41 ID:+SLD+Yz8
もうひとつ忘れてた…連続スマソ

>490
×そのまま左手で貫通した剣のの切っ先をねじり思いっきり体をひねった
○そのまま左手で貫通した剣の切っ先を握り、思いっきり体をひねった
496名無しさんだよもん:03/01/24 21:39 ID:4H4xZvZY
>494
どんまい。次も期待してます。
しかし、瑞希-繭の組み合わせ、ハマってるなぁ。
497名無しさんだよもん:03/01/25 23:15 ID:bAthesMH
干す
498名無しさんだよもん:03/01/25 23:58 ID:j/3wdGMt
御堂と拳銃の組み合わせがちょっとだけ出たね。
いずれ使うようになるのかな?
499ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 09:40 ID:Qr6CcaIf
      l、、_     _,/'}
      |ヽ''~ ̄ ̄ ̄~`ヾ
     /_,,,..   ..,,,_.`v_'`、   
    /:  ━     ━  | ニ_}  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |::    ∈∋    ヽ  | < まったく糞の役にも立たない人たちですね(怒)
  //::    -=,=.ヮ.     |ヽ、|  \________
  /'../::    /∠.._     |、.ノ  この素晴らしき番組を見て
 /':::|:::      ̄ ̄      |./  少しは社会に貢献しなさい(怒)
 !-'L|::.             v' ===放送日程===
.   ヾ:::..           / 東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
.    , ゞ、、;;;,,_,,,..._;;;;;__,,..ノ、 名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
    'ー┐,,..、_ ノ  l_,,,...、 _,,一`大阪 テレビ大阪 (日)9:30〜10:00
      ~  ~     ~   福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
実況:http://cha2.net/cgi-bin/test/read.cgi/choanitoku/1042918215/l50
500ノーマット゛ ◆yGAhoNiShI :03/01/26 09:41 ID:+2wEG//Q
      l、、_     _,/'}
      |ヽ''~ ̄ ̄ ̄~`ヾ
     /_,,,..   ..,,,_.`v_'`、   
    /:  ━     ━  | ニ_}  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |::    ∈∋    ヽ  | < まったく糞の役にも立たない人たちですね(怒)
  //::    -=,=.ヮ.     |ヽ、|  \________
  /'../::    /∠.._     |、.ノ  この素晴らしき番組を見て
 /':::|:::      ̄ ̄      |./  少しは社会に貢献しなさい(怒)
 !-'L|::.             v' ===放送日程===
.   ヾ:::..           / 東京 テレビ東京 (日)9:30〜10:00
.    , ゞ、、;;;,,_,,,..._;;;;;__,,..ノ、 名古屋 テレビ愛知 (日)9:30〜10:00
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      ~  ~     ~   福岡 TVQ九州放送 (日)9:30〜10:00
実況:http://cha2.net/cgi-bin/test/read.cgi/choanitoku/1042918215/l50
501雲丹:03/01/27 19:43 ID:80xFEw8o
うわ、500取られた。
502名無しさんだよもん:03/01/28 00:57 ID:G57Fq0ip
……コテがもう少しましな書き込みできないの?
503雲丹:03/01/29 00:12 ID:JnONyQPe
499 名前: さわたしまこと 投稿日: 03/01/06 00:07 ID:gi7Eh7pS

正直、雲丹と名無しの区別がつきません。


|∀・)オレハソウイウコテナンダヨー
504名無しさんだよもん:03/01/29 14:17 ID:/an/wzUl



<超淫乱>な人妻、とにかく貪欲で肛門にニンジンをブチ込みながらオナニーでイク!
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505名無しさんだよもん:03/01/29 14:30 ID:xhwpiJI7
506Uスレの1:03/01/29 18:49 ID:diUaDKzf
保守。

……早く神戸に帰りたい。
507名無しさんだよもん:03/01/30 01:53 ID:rQPIGAQt
遅感想〜。

> レフキーの夜

過去ログを読み返すと思ったより深刻な事情を抱えるなつみ、そして意外と深い背景の
ありそうなピロ。でも漂う雰囲気がウェットでないのがこのペアのいいところですね。
そしてそんな彼ら二人とすれ違うみさきと楓。彼らの物語は今後絡んで行くのでしょうか?
ともあれいろいろな予兆が交錯していて、各所に繋がりそうな雰囲気のお話ですね。
508名無しさんだよもん:03/01/31 00:26 ID:vFPto2kV
そう言えば>507のお話の登場人物、全員違うゲームのキャラですな。
509名無しさんだよもん:03/01/31 09:44 ID:ZYqDvMhk
>>507
ピロが居る以上、海賊組や来栖川も関わってきそうだしね。
510名無しさんだよもん:03/02/01 23:32 ID:tZL5A58d
>509
やっぱりその辺りと関係あるんでしょうかね。
喋る動物は結構各所で伏線になってますよね。
511あぼーん:あぼーん
あぼーん
512あぼーん:あぼーん
あぼーん
513あぼーん:あぼーん
あぼーん
514あぼーん:あぼーん
あぼーん
515あぼーん:あぼーん
あぼーん
516あぼーん:あぼーん
あぼーん
517あぼーん:あぼーん
あぼーん
518名無しさんだよもん:03/02/02 22:14 ID:v+PTYBLq
ここも爆撃されてるわけだが。
519名無しさんだよもん:03/02/04 02:24 ID:937Nvoqb
うにゅう。激しく非ファンタジー的な爆撃……
520名無しさんだよもん:03/02/05 00:48 ID:+hBgyH0A
遅感想〜。

> 人間の証明

不気味な敵との緊迫した戦闘!……約一名変な反応してますが。
御堂の回想は伏線ですかね?御堂と銃はいずれは見たい組み合わせではあります。
瑞希は繭を庇うのに精一杯で今の所戦闘に直接絡んではいませんが、
力持ちという設定もあることですし、はてさてどうなりますか。
521雲丹:03/02/05 21:39 ID:l2ejWar8
時に上げてみたりする。
522名無しさんだよもん:03/02/05 23:29 ID:lZ+st8KA
>>519
夢も希望も無いなw
523名無しさんだよもん:03/02/05 23:53 ID:mCoeEgiK
>>520
和樹や大志に力持ちって言われるんだから、やっぱななせと同等以上の人外パワー??
524名無しさんだよもん:03/02/07 00:17 ID:RUOjV/z5
>523
夢がお嫁さんなあたり、七瀬より乙女ちっく度は上なんでしょうな。
525名無しさんだよもん:03/02/07 21:50 ID:NjfiwEJk
>>524
やっぱ、攻撃方法が岩石投げとか……。
526名無しさんだよもん:03/02/07 22:19 ID:f/bRKe85
イメージ的には天道あかね。
527名無しさんだよもん:03/02/08 15:02 ID:Hkle4g6x
別れた三人の中で一番出番少ないのが和樹な罠。
528名無しさんだよもん:03/02/08 23:11 ID:oAW7EoJo
>525
想像してワラタ。
529Uスレの1:03/02/09 01:47 ID:4qCXQZnn
コミック版準拠だとどいつもこいつも人外になってしまう罠w
530名無しさんだよもん:03/02/09 01:49 ID:d+SQC2OY
>527
大志は目立ってたからなぁ。
531名無しさんだよもん:03/02/09 23:10 ID:kk7pE5Nk
まあ、ここでは原作の強さはあんまり関係ないですし。
532名無しさんだよもん:03/02/10 23:35 ID:oAkS3a0O
>527
和樹は微妙な組にいるから……。
533名無しさんだよもん:03/02/12 23:18 ID:xzyUJLJE
最後のSSから一ヶ月近いな。
ほしゅ。
534名無しさんだよもん:03/02/13 02:03 ID:XsSRxIzQ
>>533
まだ3週間ってところだよ。

…まだ?
535名無しさんだよもん:03/02/15 00:38 ID:b6neAHIp
Datは無しの方向で。保守。
536名無しさんだよもん:03/02/15 14:23 ID:mOlaQ1PC

537名無しさんだよもん:03/02/15 14:24 ID:KTfCubuC
538:03/02/17 22:13 ID:RtQMcdNh
 オキロ
 何を言っているんだ? 俺は傷が痛いんだからもう少し休みたいんだ。
 オキロ
 五月蝿いなぁ。あんだけの数の狼と戦ったんだ、少しは休ませろ
 オキロ
 だから五月蝿いっての! …あーそういえば、さいかちゃんと栞ちゃんはどうしてるかなぁ?
 オキロ……オマ……ニ……クラ…
 あ? 何言ってるんだ? わかんねーよ。
 オキロ…。オマエノ…ケモノ……クラエ…
 は? 俺の獣? そりゃ、俺だって男だから狼になったりするぞ。夜限定だけどな。
 オマエノチヲ…ヨビサマセ。チヲ…ニクヲ…
 …さっきからぐちゃぐちゃとうるせぇなぁ! 姿を見せろ!
 オキロ。チヲヨビサマセ
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 そこに立っているのは、自分。体の中心から左が、狼になっているというシュールな自分の姿。
 そして、彼は目覚める。
539:03/02/17 22:29 ID:RtQMcdNh
「わぁぁぁぁぁぁ!」
 目覚めは最悪だった。自分が寝て居たのは病院と思わしきベットの上。飛び起きた瞬間、体中についた傷の痛みに顔をしかめる。いや、そう思い込んだだけだった。
「…痛く、ない?」
 自分の体中についた傷。それが痛みを発することはなかった。ためしに、腕に巻かれた包帯を解いてみる。
「…ハハハ。マジかよ」
 腕の傷は殆ど癒えていた。わずかに小さな後が残っているのみだ。確か、ここは狼の爪でかなり深くえぐられたはずだった。
「俺は、そんなに長いこと眠って居たのか?」
 そういって彼、住井護は自分の手を見つめた。その時、病室に誰かが入ってきた。
「あっ! 住井さん! 目が醒めたんですか?」
「すみいー。だいじょうぶー?」
 顔を出したのは美坂栞としのさいかであった。思わず顔がほころんだが、気を取り直して気になって居たことをたずねた。
「俺は、どれぐらい眠って居た?」
 突然の質問に驚きつつも栞は答える。
「えっと、丸一晩。大体10時間ぐらいじゃないですか?」
「10時間…」
 彼は自分で自分を問い詰める。人間というものはあそこまで深い傷を10時間で癒すことができるのか? 答えはNO。
 自分は、元々治りが異常に早かった。これもNO。そんな体質なら、今まで苦労はしていない。
「…俺は、どうなってるんだ?」
 住井は自分の手を見つめた。さいかと栞はそんな住井を不思議に見ていた。そんな時、扉が開いた。
「おっと、お目覚めかね。調子はどうだい?」
 そこには、白衣を着た中年の男性がたって居た。
「…あんたは、医者か?」
「そ。名前は石橋。君の主治医だよ」
 そういって白衣のポケットに手を突っ込んで住井のそばに近づく。
「大分、自分の体のことで面食らってるんじゃないか?」
「…俺の体のこと、わかるのか?」
「一応な。これでも医者の端くれだ…おっと、お嬢さん二人は出て行ってくれないか。患者のプライベートな部分になるから」
 栞とさいかは呆然としながらも言われるままに出て行った。
540:03/02/17 22:57 ID:RtQMcdNh
 二人が出て行った後、住井は口を開いた。
「…一体どうなってるんだ俺の体は? あんだけでかい傷がほとんど治っちまってる。俺はそんな異常体質じゃないんだが」
「異常体質だよ、君は。正確には異常体質になった、と言うか」
 石橋は、歯に衣を着せず、ありのままで言った。住井はぽかんを口を開いている。
「さて、これから先の話を聞きたくないのだったら、聞かないで結構。色々とショッキングな内容だからね」
 住井は、ため息をついた後苦笑して、
「…そんなこと言われたら聞きたくなるだろうが。ほんとに医者かよあんた?」
「医者だよ。ほんの少し、腕の悪い、ただの医者さ。さて、何から話すかね…」
「回りくどいのは苦手なんだ…率直に頼む」
 石橋は、ふむと頷いた後、腕を組みながら言った。
「わかった、率直に言おう。君は、獣化症、ライカントロピィだ」
「…は? ライカントロピィって言うと御伽噺に出てくる狼人間とか鷹人間とか獣に変身出来るって言うアレか? …冗談きついよ」
 石橋の言葉を一笑する。だが、石橋は何も言わない。住井は徐々に不安になってきた。
 確かに自分は狼にかまれた。しかしそれぐらいで? だが、自分の身に起こっている異常な回復力を考えると、真実味が出てくる。そして、先ほどの夢。
「そう。確かに、狼に噛まれたぐらいでは獣化症になりはしない。獣化症が流行したのは過去の話だ。恐らく、歴史の中で獣化症の因子に対抗するモノが体内で生まれたんだろう」
 ぽつぽつと石橋は語る。住井の考えを悟っているように
「…君は、最近何か変わったものを口にしたとか、妙な薬を飲んだとかは?」
 ふと思い出す。出発したときから妙に体の調子がよかった。そして、出発前の夜に女に薦められた酒を思い出す。
(…何か、盛られたのか? 俺は)
541:03/02/17 22:59 ID:RtQMcdNh
「心当たりがあるようだな。ちなみに、その心当たりを探し出して、君がそうなった原因をみつけてもその体質は治らないよ」
「…何故?」
「もはや君の体は設計図が「書き換わって」しまっている。今更原因を見つけたところで手遅れさ。言い方は悪いが君は、「人間じゃない」のだから」
 矢次に来る言葉に住井は頭を抱えた。ライカントロピィ関係の昔話なんて腐るほどある。内容はほとんど同じだ。悪い狼男が悪さをして猟師や勇者に打ち倒される。その狼男と自分を重ね合わせるとぞっとした」
「そうだね。治すとしたら「秘宝」ぐらいじゃないか? どんな病でも治す「秘宝」。その辺に転がっていそうな話だろ?」
「…秘宝」
 住井は、頭を抱えた。もはや、自分に受け止めきれる事実の範疇を超えている。
「残念ながら、私が医者として君にできることはこれまでだ…。後は幸運を祈るしかない」
 そう言って、石橋は出て行った。後は、頭を抱える住井が残された。

【住井 真実を突きつけられてショック】
【医者(石橋) 真実を告げる】
【美坂栞、しのさいか 何も知らない】

長文スマソ
542名無しさんだよもん:03/02/17 23:10 ID:Gs4zvLh0
かなり面白いので期待&保守
543名無しさんだよもん:03/02/17 23:58 ID:Qzr+CGlW
お、久々新作は住井組でしたか。
なるほど。そういう所から秘宝と絡めてくるわけね。
さて、彼らはどこを目指すことになりますか。
544名無しさんだよもん:03/02/18 01:12 ID:mFQJ7Uf1
ポストとしては、エルクゥ寄りの位置にいるみたいだね。
ファンタジーの柏木家はエルクゥの血に苛まれる事はないみたいだけど、
果たして住井はどうなるのやら。
545「血」作者:03/02/18 07:33 ID:GyHXbXls
むぐっ、住井パーティのネタならちらほらと思いつくのにほかのパーティのネタは殆ど思いつかない…。
やっぱり、同じパーティの話ばかり書くのは問題でせうか?
546名無しさんだよもん:03/02/18 10:14 ID:ACLpZthC
リレーされる様子がなかったら自己リレーしてでも進めた方がいいのでは……
と俺は思ってるけど。でも振り返ってみると俺もかなり自己リレーばっかりだ。いいんだろうか……
547名無しさんだよもん:03/02/18 22:59 ID:gwcLi6Mu
>>545
書き手が少ないので、贅沢言ってられない。
皆で自己リレーすれば怖くない(ぉ
548名無しさんだよもん:03/02/18 23:57 ID:KN8LAWwo
住井人狼化…
どこぞのSSの北川を思い出して背筋が寒くなったぜw
549名無しさんだよもん:03/02/19 22:38 ID:O5bPMT85
まあ、今はどんな形であれ作品が欲しい時期だから……
550名無しさんだよもん:03/02/19 23:50 ID:3qHE01+r
そういえば以前タイムテーブルまとめてた人がいたがどうなったのかな。
551名無しさんだよもん:03/02/20 23:39 ID:4bY7k/fb
> 血
そう言えばここの組も晴香の薬とか青いビー玉とか、
いろいろ伏線有りましたね。ともあれまずは病状告知。
住井も不幸やな〜。しかし一方がこういう状況の時に彰は
何をやってるやら。ま、本人の預かり知らぬことではあるけど。
552名無しさんだよもん:03/02/21 13:53 ID:fvBl7LWW
近日中に圧縮きそうな予感……
553名無しさんだよもん:03/02/21 23:12 ID:weQsc18L
 どれぐらい、頭を抱えて居たのだろうか? 気が付くと、横に栞が心配そうに自分の顔を覗き込んで居た。
「あの…住井さん。お怪我は?」
 正直、誰とも話したくなかった。だが、彼は持ち前の明るさで無理やり笑顔を作って答えた。
「あぁ、不思議とよくてね。実は俺って超人なのかも?」
 少々、引きつって居たかもしれないが笑みを浮かべる。まだ自分自身、状況を上手く把握できていない。
「そうですか…よかったです。いきなり倒れちゃってビックリしました」
 そう言って栞は笑った。その笑顔を見ると、なんとなくモヤモヤしていた自分の心が少しだけだが、楽になった気がした。
「さいかちゃんは?」
「住井さんが気が付いたと知って、待合室のソファで寝ちゃいました。さいかちゃんも殆ど寝てないで住井さんを心配していたんですよ」
 そっか、と短く言って少し考えた。
「栞ちゃん。取り合えず俺の仕事、君たちをホワールに送り届ける任務は終了したけど…これからどうするんだい?」
「えっと…取り合えず街中の病院を探し回ります。聖先生か彰さんの手がかりがつかめるかもしれませんから。それで見つからなかったら…魔法学校を当たってみます」
 そういってにっこりと、微笑んだ。しかし、その笑顔は住井の言葉に凍りついた。
「じゃあ、俺はもう用済みだ。ここでお別れだ」
「住井…さん?」
 住井は顔を伏せる。今は、一人になりたかった。そして、自分の正体を知られたくなかった。自分に恐ろしい爪がある、それでもし二人を傷つけてしまったら…。
「俺は冒険者。依頼主は君たち。…仕事は終わったから俺たちの間には何の関係も無い」
 わざと、突き放すように冷たく言う。
「そんな、住井さん…いきなりお別れって」
 栞にとっては、納得ができなかった。確かに、短い付き合いだった。確かに雇用者と労働者と言う関係だったかもしれない。それでも、住井は命をかけて二人を護った。それなのに、お別れはこんなにあっさりと、冷たいものなのだろうか?
554名無しさんだよもん:03/02/21 23:13 ID:weQsc18L
「もう、これ以上君たちに縛られる理由はないよ。契約は切れているんだ」
 栞の顔を見ない。顔を見ると、無様に泣きながら胸にすがり付き、自分の置かれた状況をぶちまけて、彼女に当たってしまいそうだった。
「住井さん…あの、やっぱり怒ってるんですか? あの、私があの時…」
 ビー玉を、と言おうとした栞の台詞は住井の叫び声にかき消された。
「五月蝿い!」
「!」
 栞は思わずびくっと体をすくませる」
「さっきからゴチャゴチャと! 仕事が終わったんだからさっさと解放してくれ! 迷惑なんだよ!」
 言いながら、自分は最低だと心の中で自分を野次る。栞の顔は見えないが、どんな様子なのかは想像できた。
「…そうですよね。ごめんなさい。私、最後まで住井さんに迷惑かけてばっかりでした」
 声が震えている。恐らく泣いているのであろう。それでも、住井は彼女の顔を見れない。
「本当にごめんなさい。さようなら……ありがとうございました。護ってくれて、嬉しかったです」
 その台詞が聞こえたと同時に、扉が閉じられた音が聞こえた。

「さて、スッキリしたな。取り合えず、彼女たちが街中の病院を当たっている間に魔術学校にでも行って、治療法や秘宝の手がかりを探さないとな」
 無理矢理、心にも無いことを言った。
「やれやれ、やっぱり俺は一人で居たほうがいいのかもしれないな。自由が冒険者の最大の特徴なのにな」
 二人は、自分を頼ってくれた。
「全く、厄介な仕事だったぜ」
 彼女は、自分に何度も謝った
「こんな体になっちまうしな」
 彼女は、最後にありがとうございますと言った。
「だいたい、なんで俺が他人の恋路の手伝いをしなくちゃいけないんだ?」
 彼女は、護ってくれて嬉しかったと言った。あれだけ酷いことを言ったのに。
「…あれ?」
 目に伝う、涙。それは、彼がまだ人間であると言う証明。
「チクショウ、何で、泣けてくるんだよ」
 そして、彼は一人声を殺して泣いた。
555名無しさんだよもん:03/02/21 23:17 ID:weQsc18L
【住井護 栞たちを拒絶。取り合えず、魔術学校に手がかりを探しに】
【美坂栞 住井と別れる。取り合えず、街中の病院をあたる予定】

…ぐわっ。目に伝う、じゃなくて、頬に伝う涙…だ。吊ってくる。
…そしてやっぱり住井編を書いてしまった。やっぱり吊ってくる。
ちなみにタイトルは、「拒絶の痛み」です
556名無しさんだよもん:03/02/22 01:13 ID:YMwugPN/
お、住井編。進み出しましたね。
なかなか今後に期待できそうな雰囲気。

>555 乙〜。ついでにファイズおめ。つかイキロ。
557名無しさんだよもん:03/02/22 23:25 ID:GlPBI0ht
住井……何気にいい男だ(w
558名無しさんだよもん:03/02/23 23:01 ID:kJdUxGPN
>557
うむ。いい場面ですな。
559夜訪―訳― (琴音):03/02/25 00:25 ID:ydHgF/8q
「ふぃー、やっと着いたわね」
私達がレフキーに到着したのは、すでに辺りがすっかり暗くなってしまった後だった。
「もう足がパンパンよ」
「晴香さんは宗団からここまでずっと歩きっ放しでしたもんね」
「そういう琴音だってもうフラフラじゃない」
「私は晴香さんと違って剣士じゃないからあまり体力無いんですよ。ふぅ……」
巳間晴香と私こと姫川琴音はFARGOというとある宗教団体に所属しているテンプルナイトと呼ばれる者である。
FARGOは表向きは単なる宗教団体だけど、その実、裏では異能力者と呼ばれる人とは異なる力の持ち主を保護する活動も行っている。
私達二人は今回、異能力Aランク分類者、川澄舞という少女の保護の任務を受けたのだが、保護対象が発見された場所から
すでにレフキー共和国に連れて行かれたという情報が入ったため、それを追ってレフキーに行く事にしたのだった。
秘宝塔からここまで休み無しで歩き続けて、いい加減疲れも溜まっていた所で晴香さんが一つ提案をした。
「もう暗いし、今日は宿屋で一泊して、川澄舞の捜索はそれからにしましょうか」
「賛成です」
そういうわけで私達はまず旅の疲れを癒す宿を探す事にした。
「でも一晩眠ったら気合入れて探すわよ」
「はい、わかってます」
「見つけたらなんとしても説得して、場合によっては力ずくで引っ張っていくわよ」
「え……強引ですね?」
「こうなったら意地よ!私の一日が無駄に終わったなんて事になるの、我慢ならないわ」
と、なぜか一人憤慨している晴香さんに、私は長い間の疑問を問い掛けてみる事にした。
「晴香さん」
「んー?」
「宗団……いえ、郁未さん達はどうして私達みたいな人達を保護して、力の使い方まで教えてくれるんですか?」
「あれ?琴音をFARGOに連れて行く時に言ってなかったっけ?」
「異能力者を狙う者から守ったり、力の暴走を防ぐため、でしたよね?」
「なんだ、知ってるんじゃない」
「いえ、そういう事じゃなくて。なんで宗団がそういう事をしているのかって事です」
「そっか……琴音にはまだ話してないんだ」
晴香さんはそう意味有り気に呟いて、続けた。
560夜訪―過去― (琴音):03/02/25 00:26 ID:ydHgF/8q
「郁未が宗主になる前のFARGOが、どんなだったか知ってる?」
その時突然苦々しくなった晴香さんの口振りから、前のFARGOがあまり良くないものだという事がなんとなく感じられた。
「以前のFARGOはね、今のFARGOとは全然別物だったのよ」
「別物……ですか?」
「そ。異能力者を誘拐、拉致はもちろん、あらゆる手段を使ってかき集めて無理矢理覚醒させたりして、
 それこそ世界征服なんかを本気でしようとしてた組織だったのよ」
「まさか」
「いえ、それ以上の事を企んでた。そんな所に私達は集められた……」
そこで晴香さんはふっと遠くを見る様な眼差しをした。
「私達を待っていたFARGOの歓迎は……口に出せないほど酷いものだったわ」
「………………」
「それでも私達はそこで生きるのに精一杯だった。逃げる事もできなかったわ。そんな時にあの娘、郁未が来たのよ」
「郁未さんが?」
「そう。自分の母親を探しに来たらしいわ。結局、最後まで見つからなかったけどね」
「お母さんを……」
「ま、私も最初は兄に会いに来たんだけどね。それから郁未がしばらくしてから立ち上がったのよ。このままじゃいけないって」
「クーデター……ですか?」
「ま、似たようなものね。それに私達も賛同して、皆でFARGOと戦った」
……知らなかった、今の宗団が郁未さん達のクーデターによってできたものだったなんて。
「幸か不幸か、その時FARGOは権力争いの真っ最中でね。私達はその隙を上手く突いてFARGOを倒す事ができたの」
「勝てたんですか?」
「ええ、結果として私達の大勝利だったんだけど、その代償も大きかったわ……
 たくさんの仲間が死んだ……私達の同胞が敵同士になって、互いに殺し合わなければいけない事もあったわ」
異能力者同士で殺し合う、私にはとても想像もできない事だった。
「だから最後に皆で誓い合ったのよ。もう二度とこんな悲劇は繰り返させないってね」
「……私、知りませんでした」
「なんだか湿っぽくしちゃったわね。ごめん、自分で言っててちょっと恥ずかしかった」
そう言って晴香さんは暗い雰囲気を明るく笑い飛ばした。
それで、私はなんだか救われた様な気分になった。
561夜訪―今― (晴香):03/02/25 00:27 ID:ydHgF/8q
FARGO宗団の壮絶な(郁未達が聞いたら大げさだと笑うだろうか)過去を聞いて、すっかり落ち込んでしまった
琴音を元気付けるために私は笑ってみせた。
「もう済んだ事なんだから、琴音がそんなに悩んだってしょうがないでしょ」
「……そうですね」
気を取り直して軽く微笑む琴音を見て、ほっと胸を撫で下ろした。
しかし、私はその胸の中で、固い決意を新たにした。
帝国や共和国が秘宝集めに乗り出した今、いつそれらが異能力者の力に目を付けるかわからない状態だ。
そうなってしまったら、第二第三のFARGOが軍隊規模で創られてもおかしくはない。
それだけはなんとしても避けたい。
そして最近耳にした、最高に不吉な噂。最低最悪の男、元FARGOの高槻が生きているという情報。
FARGO内乱時代に私達と数々の死闘を繰り広げたあの忌まわしき男が生きているという、それもロードという肩書きのオマケ付きで。
あの男だったらFARGOを再建する事も有り得る。新たに異能力者を集めて私達に挑んでくるかもしれない。
あの悲劇を繰り返さないためにも、高槻より先にできる限り異能力者を確保しなければならない。
そして、もし途中であの男を見つけたら、郁未達の手を煩わせる事も無い、私のこの手で……
「晴香さん?宿屋に着きましたよ」
そこまで考えていた所で、琴音の言葉が私の思考を中断させた。
「えっ?あ、ああ、やっと着いたのね」
すっかり街を包み込んだ夜の闇にお別れをするために、私達は宿の戸を開いた。

【巴間晴香&姫川琴音:川澄舞捜索のためレフキーに入り、ひとまず宿屋へ】
562名無しさんだよもん:03/02/25 00:30 ID:ydHgF/8q
>>559-561
タイトル横の( )内は文章の主観になってるキャラでつ。
途中で代わってるからわかりにくいかと思って。
563名無しさんだよもん:03/02/25 00:53 ID:ny2A3hHF
新作乙〜ってうおぉっ琴音に晴香!?
めっちゃ久々やん!
FARGOの事なんてすっかり忘れてたよ〜。
各レフキー組にいろいろ絡んできそうで今後に期待ですなぁ。
564名無しさんだよもん:03/02/26 06:03 ID:w+3bYYdW
本当になつかすぃ。
前の話がいつだったかも思い出せないw
565名無しさんだよもん:03/02/27 01:50 ID:k4WXg39i
おおっ!久々!……過去ログ読み返さねば。
しかしやるな郁未ん。意外な所とも繋がってるし。
566名無しさんだよもん:03/02/27 03:44 ID:UMkdIpEp
過去ログ調べてみたところ、前回出たのが去年の6月26日。
8ヶ月ぶりの登場でしたw
567新たな闇(1):03/02/28 00:43 ID:FWTb9X42
「今日も手がかりなしか……」
 沈み行く太陽を見つめながら、千堂和樹は思わずため息をついた。
 ここ数日、彼は人を見つけるためにただひたすら歩き回っていた。
あちこちの店で聞き込みを続け、それらしい人がいれば声をかけた。
 もっとも原始的だが確実と思っていた捜査方法。しかし苦労を重ねれば重ねるほどそれと反比例するかのごとく、
情報の数は日に日に少なくなっていった。
「和樹さん」
 横合いから声を掛けられる。そこにいるのは青い髪の少女、リアン。
彼女もまた彼と同じく人探しのために街中を歩き回っていた。
「やあ、どうだった?」
「どうでした?」
 声が重なる。二人はお互いの顔を見合わせた後、同じタイミングでため息をつく。
「やっぱダメか」
「見かけたことはあるっていう人はいっぱいいるんですけどね」
「ああ、だけど見かけただけで肝心の居場所とかに通じる情報がまったく無いんだよな」
「いったいどこにいったんだろ、姉さん……」
 そう言ってリアンは手に持っていた紙を見る、そこには一人の少女が描かれていた。
 彼女の名はスフィー、彼らが探している人物であり、リアンの実の姉であった。
568新たな闇(2):03/02/28 00:44 ID:FWTb9X42
 結局この日の捜査はここまでで打ち切り、宿に帰ることとなった。
「あの、ありがとうございます」
 その途中、不意にリアンが話しかけた。
「なんだいいきなり」
「本当ならレフキーまでの護衛だったのに姉さん探しまで手伝ってもらって」
「別に礼を言われるほどのことじゃないよ」
「でも……」
「そういやさ」
「はい?」
 突如和樹が話題を変えた。リアンは困惑しつつも、話の続きを待った。
「彼女が最後に目撃されたのは一週間前なんだよ」
「それがどうかしたんですか?」
「これは俺の推測だけど、彼女はもうこの街にはいないのかも」
「え? でもそれならとっくに帰ってきているはずです」
「もしかしたら何かの理由で滞在が長引いたのかもしれない。
 で、心配になったリアンが彼女を追いかけるのとすれ違いになった。そういう可能性もあるんじゃない?」
 ふと和樹がリアンを見ると彼女は硬直していた。どうやら思い当たる節があるらしい。
「え、えーと、あの、その……」
「とりあえずさ、明日リアンの家に連絡してみよう」
「そ、そうですね……」
 その言葉を最後に二人の間は沈黙した。
 リアンはうつむいており、僅かに見える頬は真っ赤になっている。そこに和樹が声を掛けた。
「見つかるといいね、お姉さん」
 不意に掛けられた言葉、その言葉にリアンは嬉しそうに頷いた。
569新たな闇(3):03/02/28 00:45 ID:FWTb9X42
「すまない、ちょっと忘れ物をしたようだ」
 宿まで後少しというとき、和樹はリアンにそう告げた。彼はリアンに先に宿に帰るよう指示すると、踵を返し走り出した。
 リアンはその遠ざかる背中に、なにか例えようの無い不安を感じた。

 5分ほど走り、和樹は街外れの広場に辿り着く。日は落ち、既に人影は無くなった広場。その中央で、和樹は背後を見据える。
「かくれんぼにも飽きたし、そろそろ姿を見せたらどうだ?」
「気づいていたのか」
「そんだけ胡散臭い気配ばら撒いてれば嫌でも気づくさ」
 視線の先の闇の中から男が現れる。一見すると普通の戦士だが、その身に纏う気は明らかに常人とは異なっていた。
「同族の、負の気配を感じたので追ってみたのだが……貴様、人間だな」
「なに言ってんだ? 当たり前じゃねーか」
 だが男は答えには耳を傾けず、腰の剣を抜く。
「この肉体もそろそろ限界だ、貴様が我の肉体に相応しいか否かを確認するとしよう」
「よくわかんねーが、敵なのは間違いないようだな」
 それに応じて和樹も刀を抜く。それが戦闘開始の合図だった。
 男は一気に間合いを詰める。それと共に和樹も正面に駆け出す。2つの影が一瞬重なる。次の瞬間、男の右腕が宙を舞った。
 飛ばされる腕を見て和樹は刀を下げた、しかし男は出血を止めようともせず残った左腕で剣を拾い上げた。
「おいおい、冗談だろ」
 冗談ではなかった。男は剣を構えると再び突進し、斬りかかってきた。和樹はそれを刀で受け止める。
 金属同士がぶつかる甲高い音が響く。数度の激突の後、和樹が男の腹を凪いだ。
 大きく開いた腹から臓物を撒き散らした男は地に突っ伏し、まったく動かなくなった。
 そこまで確認して和樹は刀を収めた。だが、それで終わりではなかった。男は細かく痙攣していた。
 それは次第に大きくなる。それと同時に男の体中から黒い霧のようなものが立ち上る。

 そんな光景が数分ほど続いた後、それは姿をあらわした。
570新たな闇(4):03/02/28 00:46 ID:FWTb9X42
 それは異様な代物だった。月明かりに照らされてなお周囲の闇に解けこむような黒き体。
 巨大な二本の角と一対の黒い翼を生やしたそれは、まさに悪魔と呼ぶべき存在だった。
 目の前で繰り広げられた異常な光景。そしてそれが終わった瞬間、和樹に一瞬の隙が出来た。
 悪魔はその一瞬で間合いを詰め、爪を振り下ろす。和樹はかろうじて受け止めたものの、すざましい衝撃が体を襲った。
 次の瞬間、横からの攻撃が和樹を襲う。和樹は避けることが出来ず、吹き飛ばされる。
 地面を数度転がり、木に激突したところで止まった。激突の衝撃で肺から息が搾り出される。
 和樹は態勢を立て直すため立ちあがるが、既に目の前に悪魔がいた。
 次々と繰り出される攻撃。避けるのは無理だった。
 なんとか受け止めるがその衝撃は体中に響き渡り、体力はみるみるうちに削られていく。そして限界が訪れる。
 腹への一撃。
 もはや受けきる力も残っていなかった和樹は、その攻撃をまともに食らった。
 指先に生えた鋭い爪は鎧で止まったとはいえ、衝撃は内臓を圧迫する。
 前のめりになる体を刀で支えたが、動くことすら出来なかった。
 これで終わりか。そう思った瞬間、攻撃が止んだ。
571新たな闇(5):03/02/28 00:48 ID:FWTb9X42
 止めを刺すには絶好の機会だったはずだ。それなのに攻撃が止んだ理由を和樹は考えようとしたが痛みでそれどころではなかった。
 まあ考えるまでもなく、答えは目の前に存在していた。
 目の前の悪魔は自らの体を黒い霧に変えていた。それが和樹を包み込んだ瞬間、和樹は全てを理解すると共に、激しい苦痛に襲われた。
(コイツ、俺を乗っ取る気か!)
 それは精神の痛みだった。例えるなら心を黒い炎で焼かれる。そんな痛みだった。
 炎が翻るその度に和樹は絶叫した。後少しで精神が焼き尽くされる。そう思った時、衝撃と共に痛みが消えた。
 和樹が目を開けると、悪魔は薄い光の膜のようなものに捕らわれていた。さらにその奥には一人の少女がいた。リアンだった。
「和樹さん、逃げてください!」
 リアンの声が聞こえる。だが消耗した和樹は立ちあがるのがやっとだった。
 駆け寄ってきたリアンに肩を借り、その場を去ろうとしたとき、光の膜が弾け飛んだ。
 束縛から開放された悪魔は再び霧に姿を変えた。もはや逃れることは出来ない。
 再び黒い霧が和樹を包み込もうとしたとき、リアンは和樹を突き飛ばしていた。
572新たな闇(6):03/02/28 00:49 ID:FWTb9X42
「リアン…?」
 黒い霧はリアンを包み込み、彼女の体内に侵入する。
「かず…きさ…ん、逃げ…て……」
 そして全ての霧がリアンに侵入すると、彼女は崩れ落ちた。だがすぐに立ちあがる。
 しかしそこにいたのは今までのリアンではなかった。
「大丈夫…か…リアン…」
 立ちあがった和樹が声を掛ける。だがリアンは一瞥すると、和樹に向かい右手を掲げ、なにやら呟く。
 次の瞬間、右手からすざましい風が発生した。和樹はかろうじて体を支えると、リアンに呼びかける。
「リアン、どうしたんだ。リアン!」
「この力、素晴らしい。これは思わぬ収穫だな」
「なんだと……」
「この体は私が支配した。この娘の魔力は相当なものだ。ガディムの復活によい捧げものが出来た。
 それにこの記憶、スフィー、芹香…まだまだいるな。これならガディムの復活も遠くはない」
 リアンがまた何か呟く。すると和樹は見えない力に吹き飛ばされた。
 リアンは和樹に背を向けると、市外とは逆方向に歩き出した。
「まて、リアン!」
 和樹が叫ぶ。だがリアンは歩みを止めず、そのまま闇の中へ消えていった。



 僅かな時が流れた後――和樹の叫びが響く。

 そして和樹も、リアンとは別の闇の中へ消えていった。

【リアン、ラルヴァに乗っ取られる】
【和樹、失踪】
573名無しさんだよもん:03/02/28 02:25 ID:C37vkzZs
おおっ。こっちも久しぶりですな。
なるほど。こう来ましたか。
574名無しさんだよもん:03/02/28 05:05 ID:iSwiHARy
失踪したのか(笑
575名無しさんだよもん:03/02/28 05:48 ID:f8beryry
おぉ、停滞していた連中が次々と進み出しましたな。
しかし、結局スフィーの件はリアンの思い違いになったのだろうか…

アホだなリアンw
576名無しさんだよもん:03/02/28 18:42 ID:3aTZBSDs
名前:坂上蝉丸
職業:王立騎士団特務部隊隊長
技能:剣術
備考:

名前:長瀬源之助
職業:王立図書館館長
技能:自然術など
備考:元・王立騎士団特務部隊。彩の師匠。詠美とは何か因縁がある様子。別名:鬼魔術師。

名前:長谷部彩
職業:王立騎士団特務部隊隊員
技能:自然術
備考:

名前:保科智子
職業:神官(白魔術&戦士)
装備:板金鎧 丸盾 戦槌
技能:戦槌を操る
備考:みさきと一緒に行動。猪名川とは知り合い?

名前:川名みさき
職業:剣士
装備:中近東っぽい服 双刀
技能:双刀術、気配出た辺りの状況を察知、早食い、大食い
備考:たまに目が見えるようになるらしい。

名前:上月澪
職業:ルーンユーザー
装備:スケッチブック、魔術師風のローブ
技能:ルーンマジック
備考:言葉がしゃべれない代わりに、ルーンマジックと言う黒魔術の一種を使う。現在、ラルヴァ憑き。
577名無しさんだよもん:03/02/28 18:43 ID:3aTZBSDs
名前:里村茜
職業:白魔術師
装備:杖 フードつきの白ローブ
技能:白魔術
備考:高レベルの白魔術師。アカデミーにおいて何らかの役職に就いている。澪のスケッチブック所持

名前:南明義
職業:剣士
装備:長剣 板金鎧 円形盾
技能:剣術
備考:そこそこの場数を踏んでいます。

名前:国崎往人
職業:言霊使い 旅芸人
装備:腰に長剣、他は軽装
技能:剣術、高速言語(言霊による魔術)、人形を動かす
備考:現在みすずの呪いを解くための秘宝を追っている。

名前:御影すばる
職業:合気使い
装備;無し
技能:大影流合気術
備考:酒に弱い。

名前:宮田健太郎
職業:戦士
装備:ディバインアーマー・無明(初代次郎衛門の作) 自分も熱い炎の剣
技能:剣術、目利き
備考:本人はかなり弱いが鎧は強い。目利きに関してはかなりのもの
578名無しさんだよもん:03/02/28 18:43 ID:3aTZBSDs
名前:七瀬留美
職業:戦士
装備:飛翔の剣(度重なる戦闘で壊れる寸前) 軽鎧装備
技能:剣術、斧術
備考:かなりの腕力を所持

名前:北川潤
職業:銃使い
装備:散弾 ライフル ハンドガン
技能:集中力、370m先からの狙撃、皿洗い
備考:

名前:水瀬秋子
職業:武具屋兼宿屋の主人
技能:武器の生産及びカスタマイズ、調理
備考:

名前:千堂一樹
職業:剣士
装備:魔剣阿修羅(刀)
技能:剣術
備考:魔剣阿修羅の、修羅場モードにより驚異的な力を出すが、反動で倒れる。

名前:七瀬彰
職業:町医者/ホワール魔法学園生徒
技能:白魔術、医療技術
備考:腕はウィザード級
579名無しさんだよもん:03/02/28 18:44 ID:3aTZBSDs
名前:しのさいか
職業:町医者助手?
技能:医療技術、白魔術
備考:腕は、さほどでもないと思われ。白魔術を勉強中

名前:住井護
職業:剣士
装備:白銀の剣
技能:剣術 超回復力
備考:そこそこの場数を踏んでいます。ライカントロピィ

名前:月宮あゆ
職業:盗賊
技能:
備考:

名前:折原浩平
職業:盗賊ギルドの長
技能:
備考:通称"闇の王"。瑞佳とは結婚している。

名前:折原みさお
職業:
技能:永遠の構築、精神体を飛ばす
備考:精神体は端末であり不死身

名前:長森瑞佳
職業:
技能:
備考:死んでるか植物状態か精神異常。浩平とは結婚している模様。
580名無しさんだよもん:03/02/28 18:44 ID:3aTZBSDs
名前:大庭詠美
職業:具現化絵師 女王
技能:「ある条件下で描いた絵を、完全に具現化させる能力」、芸術(絵画?)、いろんな物に対する先見の明
備考:王宮には魔封じの部屋がありそこでなら絵が描ける。

名前:柏木梓
職業:摂政兼衛兵隊長
技能:詠美を宥める、政務
備考

名前:日吉かおり
職業:衛兵隊/梓直属の部下/治安維持隊分団長
装備:レザーメール
技能:
備考:

名前:藤田浩之
職業:町民
技能:「何でもそこそここなす」、忍術(マスタークラス)、機転
備考:ピンチを知恵で切り抜けるタイプ。

名前:倉田佐由理
職業:議員の娘
装備:羽根飾りの剣
技能:
備考:特技はないがいくつかのアイテムを所持
581名無しさんだよもん:03/02/28 18:45 ID:3aTZBSDs
名前:ルミラ・ディ・デュラル
職業:魔界貴族
技能:魅惑、アンチマジック、宝石獣の作成、霧化 ゴーレム召還
備考:魔族の保護や条約に違反する魔族の殲滅

名前:長岡志保
職業:放浪の歌姫/情報屋
技能:呪歌 情報収集・管理能力 情報操作 剣術 魔術 体術 長瀬ネットワークへのアクセス
備考:剣術、魔術、体術ともに中途半端

名前:森川由綺
職業:白の歌姫
技能:呪歌
備考:

名前:高瀬瑞希
職業:
技能:怪力
備考:夢はお嫁さん

名前:九品仏大志
職業:魔術師
装備:魔術を込めて任意に発動出来るメガネ
技能:黒魔術、テレポート
備考:呪文は大志オリジナル?

名前:美坂栞
職業:街娘
技能:図鑑で得た知識
備考:晴香お手製の対野犬用丸薬所持 色々な図鑑を所持
582名無しさんだよもん:03/02/28 18:47 ID:KrOQinYN
名前:霧島聖
職業:白魔術師
技能:白魔術、メス投げ、医療技術

名前:柏木初音
職業:調理人
技能:声真似(千鶴の)、変身(白リス)
備考:偽善者一歩手前

名前:柏木耕一
職業:鍛冶屋
技能:鍛冶、戦闘技能
備考:秘宝塔と関係のある"魔族の剣"を所持。元戦士。何に変身するか不明

名前:久瀬
職業:旅芸人一座団長
技能:
備考:長瀬ネットーワークを必要としている

名前:広瀬真希
職業:旅芸人一座副団長
技能:

名前:椎名繭
職業:旅芸人一座のマスコット的存在
備考:みゅー(フェレット)を飼っている。
583名無しさんだよもん:03/02/28 18:47 ID:KrOQinYN
名前:天野美汐
職業:旅芸人一座のマネージャー
技能:白魔術
備考:

名前:矢島
職業:旅芸人一座のパシリ
技能:ふられること
備考:

名前:御堂
職業:旅芸人一座パシリ兼用心棒
技能:銃(但し所持はしていない) 剣術
備考:元王立騎士団。真希に多額の借金あり

名前:セリオ
職業:クルス商会の者
技能:
備考:クルス商会の製品を常に持ち歩き、ドラえもんの様に出しては売りつけます。

名前:水瀬名雪
職業:体術家
技能:体術 100m、7秒フラット 助走無しで10メートルジャンプキック
備考:常人を遙かに凌駕する身体能力を保有。助走無しで10メートルジャンプとか

名前:月島拓也
職業:傭兵
装備:鞭
技能:鞭術
備考:何か能力を隠している模様
584名無しさんだよもん:03/02/28 18:48 ID:KrOQinYN
名前:柳川
職業:傭兵
装備:吸血の魔剣
技能:剣術、生命の輝きを見る
備考:筋肉で血止めができる特異体質。他人の血を吸い傷を癒す魔剣を所持

名前:河島はるか
職業:王立騎士団特務部隊員
技能:
備考:

名前:天沢郁未
職業:FARGO宗主
技能:不可視の力、剣術
備考:大剣を所持

名前:巳間晴香
職業:テンプルナイト"パラディン"
技能:薬学(化学?)の知識、白魔術、剣術
備考:周期的に、殺戮衝動が訪れる。段々その間隔が短くなっている模様。三ツ目の化け物?

名前:姫川琴音
職業:テンプルナイト"シスター"
技能:白魔術、超能力
備考:超能力は万物を簡単に破壊出来るらしい。

名前:鹿沼葉子
職業:宗団患部
技能:暗殺術、毒や、精神に対する魔術、肉体的・性的苦痛に対してかなりの耐性
備考:郁未に対して歪んだ愛情を抱く
585名無しさんだよもん:03/02/28 18:48 ID:KrOQinYN
名前:深山雪見
職業:ソードマスター
装備:双剣 真っ黒なローブ
技能:剣術
備考:「剣聖ゆきちゃん」の異名を持つ。みさきを追っている。

名前:篠塚弥生
職業:傭兵
装備:軽鎧 槍
技能:槍術
備考:高槻のおもり 由綺とは知り合い

名前:高槻
職業:ロード
装備:護身用の拳銃(ただし今は取り上げられている)
技能:
備考:元FARGOの幹部。

名前:緒方英二
職業:盗賊ギルドの長(近隣都市の)
技能:
備考:通称、闇の声。浩平の盗賊としての養育者

名前:柏木楓
職業:盗賊ギルド幹部(浩平の秘書?)
技能:変身(黒猫)、黒魔術
備考:シェイプシフター
586名無しさんだよもん:03/02/28 18:49 ID:KrOQinYN
名前:岩切花枝
職業:浩平直属の部下/盗賊ギルド員”闇の牙”/元王立騎士団特務部隊員/暗殺者
装備:短剣
技能:
備考:耕一には戦場で救って貰った恩があるらしい。誰かと因縁あり。

名前:岡田
職業:レザミア帝国特務機関三銃士が一人
技能:剣術、銃、魔導剣、指揮
装備:レイピア 銃
備考:現在暴走気味

名前:吉井
職業:レザミア帝国特務機関三銃士が一人
装備:レイピア 銃
技能:剣術、銃、戦略
備考:

名前:松本
職業:レザミア帝国特務機関三銃士が一人
技能:
備考:

名前:小坂由起子
職業:シスター
技能:
備考:
587名無しさんだよもん:03/02/28 18:50 ID:KrOQinYN
名前:長瀬源一郎
職業:
技能:長瀬ネットワークの管理
備考:元・旅芸人一座の団長。長瀬ネットワークは世界中の長瀬のネットワークを束ねたものらしい

名前:砧夕霧
職業:魔術師
装備:呪いのメガネ 睡眠を不要とする指輪
技能:魔術
備考:魔術の腕前はウィザード級。但し種類は不明。現在メガネの呪いにより言葉が話せないため使用不可

名前:牧村南
職業:レフキー執政官
装備:レイピア
技能:高い行政能力
備考:

名前:雛山理緒
職業:侍従
技能:
備考:帝国スパイ?

名前:遠野美凪
職業:
技能:他人に自由に夢を見せる
備考:まだ力が弱いため、不思議な羽により力を制御 父親を捜している。
588名無しさんだよもん:03/02/28 18:50 ID:KrOQinYN
名前:みちる
職業:
技能:武術 シャボン玉作成
備考:武術とシャボン玉作成を修行中

名前:長瀬祐介
職業:
技能:電波、スキャニング(物質の情報を読みとる)、簡易医療技術(整体など)
備考:

名前:セバスチャン(長瀬源四郎)
職業:剣士
装備:ライトアーマー レイピア。
技能:剣術
備考:芹香と綾香を捜している。国崎の名前に聞き覚えがある模様。

名前:長瀬源五郎
職業:学者
技能:算術、魔法倫理学、歴史学、古代研究学、新技術研究
備考:

名前:橘敬介
職業:陰陽師
装備:和風の甲冑、刀(鞘は朱色で塗られている)
技能:陰陽術、刀術、式神使役
備考:才能はないが、知識だけならマスタークラス。知識を託す者
589名無しさんだよもん:03/02/28 18:51 ID:KrOQinYN
名前:氷上シュン
職業:
技能:永遠の操作。記憶の消去
備考:緋愴の槍を所持

名前:柚木詩子
職業:フィルムーン自警団
装備:警棒
技能:警棒による戦闘術 体術
備考:

名前:阿部貴之
職業:フィルムーン自警団隊長
技能:人員指揮
備考:

名前:ジョージ
職業:宮内貿易公司社長
技能:
備考:

名前:シンディ
職業:宮内貿易公司秘書
技能:
備考:

名前:宮内あやめ
職業:宮内貿易公司副社長
技能:
備考:
590名無しさんだよもん:03/02/28 18:51 ID:KrOQinYN
名前:相沢祐一
職業:海賊・相沢一家キャプテン
装備:シミター
技能:剣術
備考:戦闘能力は低い。

名前:藤井冬也
職業:キャプテン補佐
装備:シミター
技能:剣術
備考:

名前:神尾晴子
職業:相沢一家服キャプテン
装備:青竜刀『酔虎』『雫龍』 鉄扇
技能:鉄扇、東洋系体術、刀術
備考:

名前:神尾観鈴
職業:相沢一家一員
技能:魔力無効化
備考:観鈴の能力は呪いの副産物だと思われ。

名前:沢渡真琴
職業:相沢一家一員
技能:魔力の暴走
備考:祐一にその力がむく事はない。普段は鈴で封印。
591名無しさんだよもん:03/02/28 18:52 ID:KrOQinYN
名前:坂口好恵
職業:一家の戦闘部隊長
技能:体術
備考:綾香とは知り合い。

名前:犬飼俊伐
職業:ミラクルカノン号操縦役
技能:生命の魔石の研究による知識、算術、魔法倫理学、歴史学、古代研究学、新技術研究
備考:知能を持つ動物の研究をしていた。

名前:観月マナ
職業:忍者
技能:忍術
備考:麗子暗殺任務を負うが失敗。忍者としての能力を含めた記憶を失う。

名前:石原麗子
職業:女医
技能:忍術、医術
備考:元忍者。現在レフキーで医者を営む

名前:高倉宗純
職業:忍軍頭目
技能:
備考:
592名無しさんだよもん:03/02/28 18:53 ID:qzUFe6gH
名前:きよみ
職業:一般人
装備:先端に即効性睡眠薬付き針
技能:
備考:

名前:小坂由起子
職業:孤児院のシスター
技能:
備考:

名前:川澄舞
職業:
技能:魔物を生み出す、血のうさぎを生み出す、気配察知
備考:魔族の血が混じった少女。現在佐由理と同行。

名前:巳間良祐
職業:
技能:
備考:高槻の領地にて白竜を飼育?

名前:リアン
職業:魔術師アカデミー生徒
技能:魔術
備考:半人前。過去にレザミア帝国と因縁。現在ラルヴァ憑き。

名前:牧部なつみ
職業:賞金稼ぎ
装備:ナイフ 拳銃
技能:射撃 物質の具現化(炎の出るナイフなど)
備考:拳銃を所持。住んでた町が化け狐に襲われたらしい。理奈とは旧知の仲
593名無しさんだよもん:03/02/28 18:53 ID:qzUFe6gH
名前:ピロ
職業:
技能:人語がしゃべれる
備考:犬飼によって創られた? 名前を付けてくれた少女と倒すべき男を捜している。

名前:柳也
職業:
装備:刀
技能:
備考:神奈とは許嫁らしい。

名前:裏葉
職業:
技能:穏形
備考:柳也や神奈とは幼馴染み

名前:神奈
職業:
技能:
備考:観鈴や翼人の呪いとの関係は不明

名前:美坂香里
職業:戦士
装備:デスサイズ(カラクリ式でコンパクトにまとまる)
技能:鎌術
備考:
594名無しさんだよもん:03/02/28 18:54 ID:qzUFe6gH
名前:新城沙織
職業:王立特務部隊員
装備:長槍
技能:二重身、幅広い知識(薬学を含む)
備考:往人達には王立特務部隊員であると言う事は内緒にしている。

名前:佐藤雅司
職業:アーチャー/ホワール魔法学園生徒(黒魔術コース)
装備:白いローブ 弓
技能:弓術
備考:

名前:月島瑠璃子
職業:
装備:外套
技能:電波
備考:

名前:少年
職業:
技能:
備考:黒きよみと共に行動

名前:橋本
職業:城郭都市ニノディー伯
技能:
備考:志保に言い寄った過去あり。現在ラルヴァ付き香奈子により紂王状態
595名無しさんだよもん:03/02/28 18:54 ID:qzUFe6gH
名前:清水なつき
職業:カオスロード
技能:直視の魔眼?
備考:現在レフキーに

名前:髭
職業:ロウロード
技能:
備考:聖銃を所持

名前:澤倉美咲
職業:ホワール魔法学園生徒(黒魔術コース)
技能:黒魔術
備考:

名前:名倉友里
職業:魔術師アカデミー保安部主任
技能:風系魔術を詠唱無しで使用
備考:風使い。

名前:ダリエリ13世/ぽてと
職業:レザミア帝国皇帝
技能:変身(犬?)
備考:柏木一族との関係は不明。

名前:まいか
職業:レザミア帝国皇女
技能:
備考:大帝ダリエリ12世の実娘。
596名無しさんだよもん:03/02/28 18:55 ID:qzUFe6gH
名前:コリン
職業:盗賊
技能:盗賊としてのスキル全般
備考:ギルドに属さない盗賊。羽が生えている。翼人との関係は不明

名前:霧島佳之
職業:魔法ショップの店長
技能:黒魔術
備考:ちなみに、魔法ショップは開店休業状態。何でもかなう魔法を探し求める。

名前:城戸芳晴
職業:司祭
技能:神聖魔術、医療技術
備考:コリンとは幼馴染み。

名前:イビル
職業:ホワール魔法学園の客員
技能:呪符による炎術、メス投げ、変身(青い猫)
備考:

名前:桜井あさひ
職業:魔術アカデミー生徒
技能:黒(召還?)魔術、ほうきで飛行
備考:

名前:神岸あかり
職業:魔術アカデミー生徒
技能:魔術、ほうきで飛行
備考:
597名無しさんだよもん:03/02/28 18:55 ID:qzUFe6gH
名前:スフィー=リム=アトワリア=クリエール
職業:魔術アカデミー生徒
技能:魔術、ほうきで飛行
備考:あかりや、あさひよりは能力値が高いらしい

名前:来栖川芹香
職業:魔術アカデミー生徒
技能:魔術、ほうきで飛行
備考:成績は優秀だが素行が悪い(街の人をさらって人体実験を強行した過去あり)。家出中

名前:神岸ひかり
職業:魔術アカデミー職員
技能:
備考:茜の上司

名前:藍原瑞穂
職業:帝都関係者
技能:
備考:

名前:太田香奈子
職業:帝都から来た軍事顧問
技能:
備考:ラルヴァ憑き

名前:立川雄蔵 
職業:皇帝の側近
技能:
備考:
598名無しさんだよもん:03/02/28 18:56 ID:qzUFe6gH
名前:シケリペチム公ニウェ
職業:レザミア帝国宰相
技能:
備考:戦争狂

名前:縦 『修復』担当
職業:魔法使い 御座瑠南棚 古本屋 店主
技能:
備考:

名前:横 『保存』担当
職業:魔法使い 御座瑠南棚 古本屋 店主
技能:
備考:

名前:伯斗龍二
職業:倉田家護衛
装備:黒のプレートアーマー
技能:探偵技能
備考:

名前:石橋
職業:医者(ホワール)
技能:
備考:
599名無しさんだよもん:03/02/28 18:57 ID:qzUFe6gH
SS書くの苦手なのでとりあえず人物一覧。
誤字、や抜けている人がいたら補完お願いします。
600名無しさんだよもん:03/02/28 20:28 ID:d4fi7k25
>>591で坂下が坂口になってます<誤字
601出発:03/02/28 21:14 ID:cTb0YkKs
「ふぅ、遅いなぁ…」
 七瀬彰は、魔術学園の校門前に居た。あの後、以外にもあっさりと学園長の許可を得た。自分が入学して間もないのにだ。少々驚いたが、そうと決まってからは話は早かった。数日をかけて旅の準備をし、そして今は待ち合わせの最中だ。
「イビルや美咲さんは女性だからわかるよ。だけど、何で雅史まで遅いんだが」
 足元には、様々なものが入ったリュック。医療道具一式は大分かさばったが、自分の役割はこれだということで結局持ってきた。
「しかし、遅い…ん?」
 その時、まだ完全に日が昇りきってないホワールの町を、一人の見知った影が近づいてきた。
「あれは…」
 記憶の糸を必死でたどった。そう彼は…
「オッス、彰先生」
「住井君…か?」
 そう、彼は自分が治療した剣士、住井護だった。
「どうしたんだい? こんな所に? 仕事かい?」
「まぁ、そんな所。仕事は終わったけどね」
 にやっと笑って住井は言った。彰は、ふと疑問に思う。
(…おかしい。前にあったより雰囲気が違う?)
「彰先生、魔術学園に入学してたんですか? そりゃ驚きだ」
「いや、成り行きでね。と言っても、これから課題でレフキーまで行くんだけど」
「へぇ、忙しい人っすね」
 やはり、なんとなく彼は変わったような気がする。
「でも、それならいけないな。彰先生」
 少し、顔を伏せた後彼は言った。
「栞ちゃんとさいかちゃんが来てる。出発前に会ってあげてくれないか?」
602出発:03/02/28 21:44 ID:cTb0YkKs
「えっ?」
 彰は絶句した。心の中で、追ってこないよな? と思って居たが、まさか本当に…。
「まさか住井君、君の仕事って…?」
「そうです、彼女二人の護衛です。全く、大変でしたよ」
 いろんな意味で、と一言付け加えて苦笑した。
「それは…すまなかったね。いろいろ迷惑かけただろう?」
「いや、別に構いませんよ。あぁ、ちなみに彼女たちは町中の医者を当たって貴方の消息を探していますし、いずれここも探しに来ますよ」
 住井は、笑いながら言う。彰は、栞たちが自分を探している、と言うより彼の雰囲気の違いに驚いている。
「住井君…君、何かあったのかい?」
 そう言うと、住井はいきなり真顔に変わった。
「……わかりますか?」
「これでも、医者の端くれだよ? いろんな人を見てきたからね」
 空にツバメが飛んでいる。今日は、いい天気だった。
「狼に噛まれましてね。まぁ、それで済めばよかったんですね」
 淡々と語る住井。彰は何も言わない。
「ちなみに噛まれたのは昨日です。かなりの大怪我。それなのに俺はピンピンしている。何故?」
「…まさか、住井君。いや、でもそんなありえない……あんな過去の病気」
「いや、そのまさかですよ。人生、何が起こるかわからないですね」
 そういって、住井は再び苦笑する。彰は、苦しそうに言葉を吐き出す。
「なんと言ったらいいか……本当にすまない。まさか、君がライカントロピィに…」
「いいですよ。別にさいかちゃんや栞ちゃんが悪くないですよ。全て、俺の未熟さが招いた事故です」
「…それで君は」
 そう尋ねると、息をついて住井は空を見上げる。
「取り合えず、この魔術学園で治療法を探します。まぁ、秘宝関連の胡散臭い治療法だと思いますがね」
 そう言って、再び苦笑して、歩き出す。
「それじゃ、栞ちゃんとさいかちゃんをよろしくお願いしますね」
 住井は歩き出す。
603出発:03/02/28 21:49 ID:cTb0YkKs
「住井君…」
「なんすか?」
 もう学園の敷地に入っている住井は振り返らずに返事をした。
「………」
 しかし、何も言えない。彰は、自分の無力さを痛感する。
「……何も無いなら行きますね」
 住井は、そう行って、立ち止まることなく学園の中に入っていった。彰は、その間ずっと住井の後姿を見つめて居た。

【七瀬彰 レフキー出発決定。待ち合わせ中に住井と出会う。栞たちと会うかはまだ未定】
【イビル、美咲、雅史 待ち合わせに遅刻】
【美坂栞、しのさいか ただいま待ちの医者を当たっている(?)】
【住井護 学園で治療法の手がかりを探す】

 うーん、取り合えず伏線張り…かな?
604名無しさんだよもん:03/02/28 22:03 ID:Q7wO8P7/
やっぱり、色々あって栞達は彰に会えず、レフキーまで住井が再度護衛にしたりする展開?
605名無しさんだよもん:03/02/28 22:18 ID:H6Gkw3ij
まとめ乙。
各人の目的、現在地なども分かればなお良かったが。
あと取りあえず浩之の忍術(マスタークラス)は外そうぜ。
606名無しさんだよもん:03/02/28 22:59 ID:pRML2SfQ
>>605
あの忍者マスターって設定消えたの?
607598:03/02/28 23:03 ID:Q7wO8P7/
まあ、みんなで忘れてれば良いんじゃない?
事実一度きりで二度と使われてない設定だし。
608名無しさんだよもん:03/02/28 23:09 ID:K6bKED7a
キャラまとめ&新作乙かれ〜。
レス数だけ見て最初ノーマッドの爆撃かと思たw
609名無しさんだよもん:03/02/28 23:14 ID:385k96N1
当時も非難号々だったけな。
確かあの設定にはもう触れない事って感じで治まったんじゃなかったけか。
一応話自体はスルーされたが設定は限りなくNGなのだろう。
610名無しさんだよもん:03/03/01 00:42 ID:8PKcDTNE
久々に伸びてると思ったら普通に盛り上がってたのかぁ。
やっぱりリレー小説スレは新作が来てなんぼやね。
……保守に協力して来て良かった。(つдT)
611名無しさんだよもん:03/03/01 01:26 ID:fYpIj2eq
まとめ乙。
せっかくだから書いてみようかなあ。
やってみたいという気持ちだけはあって、経験は薄いけど。
(その状態のまま数ヶ月が経過していたり)
612断ち切れぬ絆:03/03/01 05:22 ID:4mRIDoSm

 空は何処までも蒼い。
 何時までも広く、果ても無く飽きる事も無く続いている。

――上空からの眺めはそれを酷く実感させる。

「……なんかペース落ちてるんじゃないの?」
 スフィーがピンクの髪の間からそのジト目で後方を睨む。
「えっ!? だっ、だって……その……」
 一方、睨まれてしまったあさひは言い淀む。
「う〜ん……仕方ないんじゃないかな。今まで休憩もなしでずっと飛びっぱなしだったし……」
 困った感じの笑みでフォローを入れるあかり。
「………………」
「えっ? そろそろ休憩でもしますか? って、う〜ん……まぁ芹香が言うならそうしよっか」
 一同の表情に喜色が浮かぶ。
「それじゃランチタイムに突入しますかーッ!」

 そうして四人の空飛ぶ魔術師達は人気のない場所にゆっくりと下降していく――。

               …

 既に、日は暮れていたのだがスフィー率いるアカデミー出身のメンパーは未だに上空を舞っていた。それでもレフキーは視認できる位置にある。
「うわ〜〜結局レフキーに到着するの大分遅れちゃったじゃないの……」
 あれから結局、ペースは乱れに乱れ時間は掛かり体力を使い果たしてしまったスフィーが呟く。
 長時間の連続飛行は魔力よりも体力を著しく削る。集中力は欠け、疲労も増す。それでも半端じゃない実力を保持するスフィー=リム=アトワリア=クリエール一人ならば予定通りにレフキーに着いていただろう。
 しかし哀しいかな。計画は彼女の思い描いた通りにはいかなった。何故なら、ほぼ半日以上の連続飛行などの経験さえもない、魔術師のタマゴたる桜井あさひと神岸あかりには、この工程は少々辛過ぎた。
 それでも面倒見の良い――というか放っておけない性格なのか――スフィーは一人で先行していたかと思えば、遅れているあかりを引っ張り、弱音を吐くあさひを叱咤激励したりしていながら、自身のペースは全くと言っていい程省みていなかった。
 第一にアカデミーの窓をぶち破って幕を終えた、彼女の長旅の疲労さえ蓄積している上に睡眠すら満足に取っていないのだから、その疲労困憊具合は想像を絶しているハズだ。
613断ち切れぬ絆:03/03/01 05:26 ID:4mRIDoSm

 そこまで無理を重ねるには勿論理由があり、この秘宝探索特別課題という一同の表向きの理由でレフキーにまで集団飛行しているのも、その理由に拠るものだ。
 そう、スフィーは妹――リアンが心配だったのだ。ちょっと抜けているリアンの事だから今頃悪漢や変な奴に目を付けられていやしないかと心配で堪らない。
 だが、今回は無茶が過ぎた。妹が心配で心配で周りも己も見えていなかった。
 スフィーは自覚していなかったが、かなり限界だった。正直やばかった。極めてキツイ。もうだめぽ。控え目に言って、死ぬ。
 先行していたスフィーが、突然ふらふらとしていたかと思うと段々と失速し、少しづつ徐々に下降速度を上げながら結構なスピードで落下していく。
 その様子を見て残りの三人は慌てて後ろから応援を送るが、スフィーは飛行制御が上手くできないようだった。一応の目的地が見えてきたので集中力が切れたのかもしれない。
 端から見ても何でもないように見える芹香も内心焦っていた。魔力になら自信のある彼女も長時間に及ぶ連続飛行の為に体力が尽きかけている。今までもマイペース飛行を保っていたからこそ、なんとか持ちこたえていられると言っても過言ではない、かも知れない。
 とにかく三人が何とかしようと試行錯誤している間に、スフィーはもう手の付けられないようなスピードでレフキーの街並みに落下していく。
「………………」
「えっ? 通常の三倍の速度で下降しています、って言ったの?」
「えー!? それってかなり危ないんじゃ……」

 三人が見守る中でスフィーは――ピンクい彗星と化してレフキーの何処かに落下していく――。

               ◇

「なんか嫌な予感がする……」
 宿の一室にて『案内してください』とセリオの即答に気圧されて休む暇もなく宿を一歩出た瞬間の第一声がこの一言である。
 ちなみにセリオはチェックアウトの手続きか何かでまだ宿から出ていない。
 気付けばもうすっかり日は暮れていた。高価なワインなんか飲むもんじゃないな――と思いながら一足先に夜風にあたろうとして宿から出るまでは良かったのだが……不思議な感覚が彼に危険を告げていた。言葉にするならW白羽の矢が立った”という感じか。
614断ち切れぬ絆:03/03/01 05:28 ID:4mRIDoSm

 思えば武器を失くし、かなり変な連中に絡まれたりとあんまり嬉しくない出来事ばかりが浮かんでくる――走馬灯のように。
 次の瞬間、健太郎は焦った素振りで辺りを見回す。だが周囲に人影はなかった。この通りは人通りが少ないのだろうか……と安堵する。右にも左にも前にも後ろにも誰もいないのだ。これなら安心だぜ! と、気を抜いた瞬間にWそれ”は空から降ってきた――。

               ◇

 なんとか人気の少なそうな通りを見つけ、スフィーは其処に突入する覚悟を決めた。
 ここで下手に持ち直してこの最悪の状況を長引かせるよりは、人がいないような場所に降りた方が賢明だった。
 下降速度を抑えながら、地面に直撃する直前にホバリングの要領で最大出力の風圧を地面に叩き込んで落下による衝撃をやわらげる、というかなりの度胸を必要とするテクニックを頭の中でトレースする。
 普段のスフィーなら絶対に有り得ないこの事態。ホウキを握る手にも自然と力が入る。正に一生の不覚である。
 そんな事を想い苦笑を浮かべた彼女の顔が、そのままの形で固まった。
 いきなり通りの建物から青年が出てきたのだ。そして何を思ったかいきなり辺りをキョロキョロ見回したかと思うと、安堵の溜息を吐くではないか。
 志保が見ていたなら『健太郎ー! 上! 上!」とか叫びそうな状況だったが、勿論そんな余裕はスフィーにはない。そんな事を叫んでも集中力が乱れるだけだし、何より――もう間に合わなかった。
 全力で身を捻りつつ直進コースを避ける為、回避行動を取るがホウキの後ろの部分がその青年の頭に直撃する――と思われる直前にスフィーは全力で風圧を叩き込む。それにより青年は前屈みになるが、それでもホウキが後頭部を掠めてしまう。

 でもまぁ、ただそれだけで、青年は死ぬほど吹っ飛んだ。しかも危険な事に頭から地面に突っ込んでしまった。

 一方スフィーの方もかなり危険な状況であった。身を捻りながら風圧を叩き込んだ所為で乱回転するホウキから投げ出されてしまう。
 もはや自分が上下左右、どの方向に飛んでいったかは判らないままスフィーは吹き飛んでいく――。

               ◇

 セリオが諸事を終え、出口に向かうとピンク色の何かが水平に飛んできた。
615断ち切れぬ絆:03/03/01 05:30 ID:4mRIDoSm

 もの凄いスピードだったが、セリオはそれが人であると認識した瞬間に身構えた。
 大きさは成人女性のそれだったがセリオは上手く衝撃を殺しつつ弾かれないように受け止めようとする。
 結果、セリオは一メートル程勢いにより後退したところでそのピンク色の成人女性――スフィーを受け止めきった。後ろで宿の主人が唖然としていた。
 セリオはスフィーを床に下ろしたアトに、言った。
「どうしたのですか?」
「……………」
 まだ状況が上手く把握できていないのか、スフィーはぼんやりとした視線を彷徨わせる。
「どうしたのですか?」
 二度目のその声に今度はハッとした表情を向ける。
「し」
「し?」
「しぬかとおもった」
「……そうですか」
 変わらぬ表情でセリオは応える。スフィーはそんな事に気付く間も無く、またも重大なことを思い出す。
「うあ! さっきの人大丈夫かなッ!?」
 錯乱気味に叫んで出口から飛び出し、青年がうつ伏せに倒れている――持ってきていた荷物も散乱していた――場所に駆けよる。
 だが……青年は死んだように動かない。意識もなさそうだ。
 そんな青年を見て慌てふためくスフィーとは対照的にセリオは倒れている青年――健太郎に近寄り抱き起こして首筋に手を当てる。

「……止まっています」

 何が? とは聞けなかった。
「そ、そんな……ッ!? だって軽く接触しただけなのに……」
 力なく呟くスフィー。余程打ち所が悪かったのか、健太郎はイイ感じに白目を剥き出しにしたままだった――のだがセリオが異変を察知する。
「……これは? 脈が……微弱ながらもあるようです」
 だが、淡々と言い放つセリオもスフィーも十分に承知していた。彼の生命が尽きるのはもはや時間の問題で、意識不明の上に瀕死の重体であることには変わりがないという現実を。
「生きている……」
 そう、生きている。しかしスフィーの専門は黒魔法である。白魔法は当然の如く無理な訳だし、蘇生なんて神業は夢のまた夢だ。まぁ、ひっとしたら別次元の世界でなら扱えたかも知れないが。
 しかもこれだけの重体を回復させるだけの白魔法の使い手となると限られてくる。
 しかしだからといって諦める訳にはいかない。この結末を招いたのは自らの所為なのだから。
616断ち切れぬ絆:03/03/01 05:34 ID:4mRIDoSm

 自分の力で無理ならば――と散乱している荷物に視線を走らせる。

 彼女の故郷。今となっては遥かに遠くなってしまった彼女が生まれ育った地。
 戦争の危機が迫る前にと長瀬源之助の紹介でリアンと共にアカデミーに在籍する事になり、その時に譲り受けた僅かな別れの品々。
 そして、不意に目に留まる、一対の銀色の腕輪。――これもその時の至高の逸品の一つだ。
「これなら!」
 そう言いつつ腕輪の片方を力の入っていない健太郎の腕に通す。
「どうするのですか?」
 セリオが事を起こす寸前に、不可解な行動に走ったスフィーに訊ねる。
「いいから――大丈夫。必ず助けてみせるから!」
 そして自らの腕にも腕輪を通す。
 準備は揃った。アトは――膨大な魔力消費に己の身体がどれだけ保つか、だ。
 流石に飛んでいる状況よりは幾分楽だが、それでも疲労が回復した訳ではない。はっきりいって、立っているのもキツイのだろう。だが休む訳にはいかない。
 その雰囲気に気圧されたのかセリオは口出ししなかった。
 そして彼女は静かに、しかし厳かな口調で契約の詠唱を口から紡ぐ。

 この腕輪は使用者から対象者へと契約して初めて効果を発揮する。契約といっても別にお互いの同意が必要、という訳ではない。
 要するに使用者――この場合のスフィー――のW魔力そのもの”を一対の腕輪を通して対象者――この場合の健太郎――に生命力として転換して送りつけるという代物だ。
 だが第一に効率が悪い。故に莫大な魔力が必要であり、しかもこの腕輪では完全に治癒できず、常に魔力供給を続けなければ死んでしまうのだ。最低でも何十日かは使用者と対象者は近くにいなければならない。
 何故なら離れてしまうと魔力の供給効率が極端に落ち、最悪死んでしまうからだ。目安としては使用者から半径五十メートルぐらいなのだが、この腕輪は使用者の魔力を蓄える性質があるので、ある程度制限距離を越えても暫くの間なら生存可能である。

 そして契約を結んだ瞬間――強烈な脱力感がスフィーを襲った。いや、脱力感などという生易しい表現では足りない。全てが奪い尽くされるような、全身が凍り付くような感覚が細胞レベルでスフィーの身体を蝕む。
617断ち切れぬ絆:03/03/01 05:36 ID:4mRIDoSm

 やはりあれ程の瀕死の重体を回復させるにはスフィーの魔力を持ってしても無理だったのか。だが、それでもスフィーは全身を燃やし尽くす勢いで魔力を絞り尽し――そして、彼女の意識は唐突に闇に落ちていった――。

               ◇

 先行していたスフィーが凄い勢いで落下していくものだから三人の魔術師達はスフィーを見失ってしまった。
 どの辺りに落ちたのかは見当は付くがスフィー本人を捜すのに手間が掛かった。それに三人とも疲労が限界にきている。これでは第二、第三の彗星が生まれてしまう。
 それでも数分後にやっと、特徴的なピンクが目に付き、三人は一様にその場に降り立った。
 だが、様子がおかしかった。やる時にはやるスフィーだったから深い事態を予想していなかった三人に衝撃が走る。
 散乱している荷物。倒れている青年。知らない女性に、倒れているスフィー。何より――スフィーが一回りどころか三回りぐらい縮んでいた。一同は流石に驚きを隠せない。
「スフィー……先輩?」
 あさひが、確かめるように呟く。スフィーから返事はなかったが応える声があった。
「気を失っているようです。良ければ込み入った話はそこの宿で行いたいのですが」
 そしてスフィーが突っ込んできた宿を指差す。セリオは立て続けに驚きの連続に出会っているだろうに動じない。クルス商会のセリオは動じない。
 勿論三人に異論はなかった。こんな通りで立ち話をする趣味もなかった。体力も尽きかけていたので宿を探す手間を省けるというものだ。。
 そうして三人は散乱した荷物と小さくなったスフィーとホウキを担ぎ宿に入っていく。一方存在感の薄い健太郎はセリオが担ぐ。今に至っては心拍も安定しており、顔色も良くなっている。しかしその代償にスフィーは……

 先程チェックアウトを済ませたにも関わらず数分も経たない内に戻ってきた――しかも人数が増えている――セリオに対して、宿屋の主人はクールに言い放つ。
「部屋なら万全の状態だぜ?」
618断ち切れぬ絆:03/03/01 05:38 ID:4mRIDoSm

 誰もそれには応えずに差し出された宿帳に、全員分を記入する。そのアトに部屋に案内された。一応二部屋分取ってもらったが全員が同じ部屋に入り、まず10歳くらいの幼女になってしまったスフィーをベッドに寝かせる。
 だが服がだぶだぶだった。しかし、着替えは勿論無い。どうすればいいんだ。
 迷った末に、仕方ないので余った部分を捲り上げる。その間にセリオが健太郎の鎧を外し終え、もう一つのベッドに寝かせた。
 それからセリオと三人のアカデミーの生徒は、お互いに支障の出ない程度に情報交換を行う。だが、三人とも疲れているのかどうにも話が噛み合わない。
 結局、スフィーの身体の変化には生命の危険がなさそうなのと、原因は本人から聞くしか判らないという事で今日の所は解散、という事になった。明日にでも詳しい事情を本人から聞くのだそうだ。
 セリオも縮んだ原因と健太郎の回復との因果関係には興味があった。それに健太郎がこの状態では動くに動けないが……勝手に出て行ったからには志保や七瀬達に心配を掛けているかもしれないとも思った。

 ふぅ――とセリオはらしくない溜息を吐き、窓を見上げる。窓越しの月はまだ、落ちそうにない――。

               ◇

【スフィー/魔力大量消費の所為で身体が縮む/就寝中】
【芹香・あさひ・あかり/お疲れのご様子】
【セリオ/どう行動するべきか思案中?】
【健太郎/死にそうになるがなんかとか回復/就寝中】
619名無しさんだよもん:03/03/01 05:49 ID:4mRIDoSm
お話としては「夜空に舞う少女達」と「Gauntlet and Leggings」(>>65-67)の続きですかね。

長くなってしまった……うぐぅ。
設定に無理がないようにしているつもりですが、ヤパイ部分があればどうぞ遠慮なく。
620名無しさんだよもん:03/03/01 22:07 ID:RgN7Gczy
健太郎とスフィーってすでに出会ってるのでは?
いや、名前は出てなかったかな? 
621名無しさんだよもん:03/03/01 22:55 ID:BHNmKX/O
そう言えば、健太郎が旅に出るきっかけは「ピンク色の髪の大食い少女」だったな。
まぁ、スフィーとは明記されてなかったけど。
622名無しさんだよもん:03/03/01 23:21 ID:RgN7Gczy
1 この時点では焦りと疲労のあまりスフィーが相手が健太郎だと気付いてないだけ
2 健太郎が旅に出るきっかけになった人はただの似た人
3 健太郎が旅に出るきっかけになった人は髪を染めたみさき先輩(爆)
4 その他

どれにする?
623名無しさんだよもん:03/03/02 00:11 ID:f4cTc4Jx
あっ、個人的には1ね。
624名無しさんだよもん:03/03/02 00:56 ID:H8cv4Fop
おお、また難しいところを。
リアン組に続いてここが動き出すと、
また一つの新たな流れになりそうで期待大。

>622
3に惹かれる気もしないではないものの(w
普通に1でいいんではないですかね。
まあ、基本的には続編の作者に任せればいいと思うけど。
625名無しさんだよもん:03/03/03 02:20 ID:zyripw8j
なるほど。スフィー達はセリオ組と合流か。
626名無しさんだよもん:03/03/03 12:21 ID:WuBzqna2
芹香とセリオの面識はどうなんですかね?
627名無しさんだよもん:03/03/03 12:56 ID:AiAX+OZk
あってもなくてもおかしくは無いな
628Uスレの1:03/03/03 21:48 ID:0v8Lb632
 ログ、停滞しててごめんなさい。
 今週末には更新します〜
629名無しさんだよもん:03/03/04 13:32 ID:e+t3h5C6
無理なきように頑張ってください……

630名無しさんだよもん:03/03/04 18:16 ID:lIc4a33p
このままのペースで走ってくれれば非常に嬉しいのだがな…。
631名無しさんだよもん:03/03/05 21:04 ID:3bUMv0if
3週間考えたプロットが、見落としていた過去の話と矛盾することに気付いた……。
鬱だ死のう。
632名無しさんだよもん:03/03/05 21:09 ID:3N1T7id2
イ`
633名無しさんだよもん:03/03/05 22:34 ID:X9AaWvk7
ルーツで筆が止まる……のか?
634名無しさんだよもん:03/03/06 23:12 ID:uhRp5Ug9
>628
お待ちしてます〜。

>631
がんがって。
635Uスレの1:03/03/09 22:16 ID:tpxJzEYn
ログ編集完了しますた。
訂正漏れなど編集ミスありましたらご指摘くださいまし〜
636名無しさんだよもん:03/03/09 22:55 ID:z/m87MSu
出張中に落ちてなくて良かった。

>635
乙〜。
637名無しさんだよもん:03/03/11 00:48 ID:zvlTPaK4
上の方に出てるキャラ紹介を見てるだけでも結構楽しいことに気付く。
638名無しさんだよもん:03/03/11 20:40 ID:4jx2CeqU
それは同人ゲーム屋が絵もほとんど描かれていない、プログラムも
全然組まれていないという状況で
自分の頭の中だけで組み立てられたプロット・設定を想像して
悦に入っているのとあまり変わらぬ状態では……
639名無しさんだよもん:03/03/11 21:06 ID:VgzN1BQA
TRPGでキャラ作ってるときの方が楽しいという症状と……
640名無しさんだよもん:03/03/11 23:22 ID:Y47kIrYG
というか、まんまその状態で作るだけ作って放置されたキャラ多数。
641Uスレの1:03/03/12 00:15 ID:4SGZdWwq
やっぱり書かないとね……(汗
がんがろう。
642名無しさんだよもん:03/03/12 00:28 ID:jvacCrQC
643名無しさんだよもん:03/03/12 22:52 ID:gPeuhsoj
まあ、お話をあれこれ組み立てている段階が
一番楽しいというのはままあること。
そういう意味ではまだ序盤ということなのかなぁ。
644名無しさんだよもん:03/03/14 22:36 ID:XQTPLwcD
葉鍵板が潰れたら終了。
645名無しさんだよもん:03/03/16 23:59 ID:821PfJTz
>644
ま、そりゃそうだ。
646名無しさんだよもん:03/03/18 02:55 ID:DKFudiEe
うう、縁起でもない。ガクガクブルブル(((((((;゚д゚)))))))
647名無しさんだよもん:03/03/18 23:29 ID:26FBRxWm
リアン組とスフィー組が動いたんで、流れが出来そうな具合。
そう言えば秘宝塔に次ぐ秘宝争奪戦候補、浮島関連は停滞中ですな。
648名無しさんだよもん:03/03/19 01:52 ID:IMswFQyR
帝国辺境領とかも、今後の流れに対する影響という点では大きくなりそうな気も。

というか、ネタは幾つかあるんだけど……。
どうも収束させるピースが欠けてるので書くに書けない。
リレーだから気にしないで最初の方を投下するのもありなんだろうけど、
自分一人で書いたとしても収束させられないようなのを投げるのは何か気が引ける……。
……単にリレー参加経験がないだけかも。

モノ書くのも久しぶりなので、書き始めたらすぐできるというわけでもないです。
うだうだとどうでも良いレススマソ。
649名無しさんだよもん:03/03/19 04:25 ID:bIDdzGXN
停滞といえば北川組も止まってるし
秘法塔組も帰還してから一日も経ってないのかな。長い一日で全然進まない印象。
それに帝国といえば茜一向がニノディー近くに潜入してから停滞中ですな。
650名無しさんだよもん:03/03/19 22:47 ID:IfDTyGda
>648
今現在そんなに大きな流れがあるわけでもないし、
取り敢えず投下してみられては?

>649
確かに長い一日。
651名無しさんだよもん:03/03/20 22:18 ID:6W80vc3t
茜一行は結構核心に近いところにいるような気もしますな。
652名無しさんだよもん:03/03/21 00:09 ID:XDJLpVem
653冒険の終わりと始まり:03/03/21 08:58 ID:1jlS2IcE
今から数千年前に遡ろう。そう、今は失われた文明が最盛期を向えた頃。
今と変わらぬ命の営みがあった頃。そして、神々をも巻き込んだ闘いがあった頃に。

発端は、暗き深淵で生まれた一つの命。
それは周囲のあらゆるものを飲みこみ、大きく、大きく膨れていった。
巨大に成長したそれは、無限に沸く食欲に突き動かされ動き出した。
それを野放しにしておけば、遠からず世界は失われてしまうだろう。
神々はそれを阻止する為、人、動物、精霊、この世界に生きる全ての命と協定を結び迎え撃った。

闘いは熾烈を極めた。世界の半分が失われ、闇の神までもが飲みこまれた。
全ては無と帰す定めであろうか。命は疲弊し、諦めが蔓延した。
そこで、神々は一人の英雄を選び出した。燃えるような赤毛の美青年であったという。
そして彼に大いなる力を秘めた宝剣を与えた。
それこそが、光の神と闇の神が己の命を削って創り出した至宝、フィルスソードである。
その刃閃く時、闇は塵となり、光は砂と化し、魔は消え失せた。
英雄はその剣の力でもってそれを討ち、世界に暖かな昼と安穏な夜をもたらした。
彼は祝福を授けられ、神々の座へと登ったという。

もう、成否を確かめる術も失われた、遠い過去の出来事である。

あれから店に戻った俺達は、待ち構えていた秋子さんにたっぷりと責め苦を与えられた。
そりゃあもう、言葉に洗わせられない程の。端的に感想を述べるとと死んだほうがマシ。
今回の仕事で得た賞金の大半は小麦の代金で消え、銃弾を補充したら金が尽き、
仕事もなく、進退極まった俺は皿洗いの日々に逆戻りとなった。
件の首輪は名倉さんが回収していった。厳重に保管する事を約束して。
654冒険の終わりと始まり:03/03/21 08:59 ID:1jlS2IcE
ようよう客も捌け、今日の労働はお終い。暇が出来た俺は
ここで一番安い酒をツケで呑みつつ大志の話しを聴いているのである。

「というわけだよ、同士」
「何が」
ころん、とタンブラーの氷がゆれた。
くい、と中の酒をあおると、大きく溜息を吐く。
「そんな5歳の子供でも知ってる御伽噺を聞かせて、何がしたいの?
 おひねりなんか出ないぞ、ただでさえ今月苦しいんだから」
「まったく、つれないなぁ同士北川よ。……我輩が何の意味も無い口を聞くと思うか?」
急に真面目な顔になる。どうせまた厄介事だ、適当に聞き流すに限る。
「これは我輩独自のルートで入手した情報だ。実はな……」
相変わらずもったいぶりやがる。
「いいからさっさと言えよ」
「……うむ、実はな、この話しに出てくる至宝、フィルスソードの在り処を掴んだのだよ!」
……前々からおかしな奴だとは思ってたが、ここまでとは。
「お前ホント馬鹿か? 至宝? ある訳ないだろ。
 仮にあったとしても冗談じゃない。この間の鼠、忘れたのか?
 俺はあんなのは二度と御免だ。秘宝の類には関わらないと決めたんだよ」
「マイ同士よ、お前はいつからそんな腰抜けになったのだ? 嘆かわしい!
 冒険者たるもの、己が野望の為には多少のリスクは厭わないものではないのか!?」
「あーそう。どうぞ、御自由にどうぞ。俺はやらない。秘法は無くても野望は果たせる」
「無駄だ、マイ兄弟。見ろ、二人分のフィルムーンまでの乗船チケット!
 ああ問題無い既に秋子女史とは話しをつけてある!」
「ちょっと待て、行かないって言ってるだろが。ってフィルムーンまで行くのかよ!」
655冒険の終わりと始まり:03/03/21 08:59 ID:1jlS2IcE
がしっと襟を掴まれ、ずるずると引きずられる。名雪がにこやかに手を振ってる。
「放せ! お前と二人旅なんて絶対に嫌だ!」
「ふはははは! 待っていろ秘宝よ、我が野望の礎にしてくれる!」
「聞けよ! 嫌だ、嫌だぁー!!」

【北川・大志、二人っきりでフィルムーンへ】
656名無しさんだよもん:03/03/21 09:06 ID:1jlS2IcE
>>286-291の続きって事で。
北川組を進めてみたけど、強引過ぎたか。
657名無しさんだよもん:03/03/21 11:10 ID:Kr1SsT0M
あれから数日後みたいだからみさき組とは出会わなかったのか。
つうかその数日後に他のキャラが追いつくのに時間掛かりそう……。
それは別にいいんだけど、マナが目覚めたのにリアクション無しの大志。ちょっとその辺フォローしてほしかった。
658名無しさんだよもん:03/03/21 12:05 ID:znfzfe4R
>>657
ごめん、すっかり忘れてた。
書いてみて駄目だったら星になる。
659選ぶ権利:03/03/21 15:38 ID:NcRzBqIG
少し時間を遡る。
やっと鼠の始末を終えた彼女――観月マナは、
ウエイトレスとして正に獅子奮迅の働きを見せていた。その表現の通り、
この仕事も彼女が想像していたのとはかけ離れた物であったのは言うまでも無い。

「嬢ちゃん、生姜焼き二人前だ!」
「おい! さっさと皿下げてくれ!」
「はいはいはい!」
落ちついた外観とは打って変わって、店内はこの有様である。
冒険者と言えば聞こえは良いが、所詮はゴロツキ。
怒声と笑い声に満ちた店内は、活気があるというよりもむしろやかましい。
「お皿お下げします! はいこちら生姜焼き、お待たせ致しました!」
「遅ぇぞ!」
「申し訳ありません! はい、中生ジョッキですね、少々お待ち下さい!」

からん、とドアにつけられたベルが鳴る。来客だ。
また忙しくなる、と彼女は心の内で舌を打つ。勿論、接客用の笑顔は崩さずに。
そうしながら、この仕事はなかなか自分向きらしい、などと考える。
「ただいま……」
入ってきたのは満身創痍の冒険者三人。
ただいま、と言ったことから宿泊客でもあると思われる。
その中の一人、ローブを着た、魔術師風の男と目が合った。次の瞬間、
「目覚めたのか、マイシスタァァ!!」
「え?」
違った。変質者だったらしい。いきなり飛びついてきやがった。
「き、きゃぁぁあああ!!」
思わず手にしていたトレイを後ろ頭に思い切り振り下ろした。
がこん、と鈍い音がした。変質者はがくりと頭を垂れ、動かなくなった。
元々疲弊していた様子だったし、止めを刺した形になる。
660選ぶ権利:03/03/21 15:39 ID:NcRzBqIG
「はあ、はあ、はあ……」
「あら、おかえりなさい」
「あ、秋子さ……」
言いかけて、止める。激しい殺気。全ての技能を失っているマナにも伝わる程の。
周囲の空気が凍りつく。ワルキューレの騎行が聞こえてきた気がした。
「マナちゃん、何か?」
ふっと話しを振られ、少々戸惑いつつも答える。途端に怒気が失せた。
「い、いえ……。あ、この人たちは?」
「ああ、まだ顔は合わせてなかったわね。そちらの方がこの宿に泊まっている北川さん。
 それからそっちは私の娘の名雪。それから……」
何かを探しているのか、周囲を見渡す。そして、彼女の足元に目を向けて、
「あ、いたいた。そこに寝ているのが九品仏さん。あなたを介抱してくれた方よ」
ときた。それはつまり、もしかしなくても、あれか。着替えをさせてくれたのも、
身体を拭いてくれていたのも、この、変質者だったと言う事なのだろうか。
「ふふふ、なかなかやるではないか。それでこそ我が妾に相応しい」
もう目を覚ましやがった。しかも、とんでもない事を口走りながら。
どうやら本格的に止めを刺しておく必要があるらしい。
ゆっくりとトレイを振り上げ、ひゅん、と打ち下ろす。
スコーン、という小気味良い音を響かせ、大志はまた、眠りについた。

【観月マナ、大志の印象最悪】
【彼女の身の回りの世話をしていたのは大志?】
661名無しさんだよもん:03/03/21 15:53 ID:NcRzBqIG
書けたけど、うん、まあ、どうだろ、これは。
編集サイトさんので言う所の167番、「温度差」の続きってことで容認してくれると嬉しい。
あと書き忘れ。【鼠、片付く】
662名無しさんだよもん:03/03/21 23:16 ID:Cf41V2SA
おつ〜

妾扱いですかw
拾得物は落とし主にきちんと返しやがれ大志w
663名無しさんだよもん:03/03/22 21:52 ID:yeK87r9R
おお、進んでる。
しかし、フィルスソードとはこれまた。
そう言えばフィルス関連は設定には顔を出すものの、
キャラはあんまり出てないですね。
664希望と隣り合わせの絶望:03/03/23 00:44 ID:Wj76GLV+
神の座へと着いた英雄が初めにやった事は、後に再び現れるであろう脅威に備え、
宝剣を三つの秘宝に分け、別々に封印する事だった。
その内一つ、宝刀闇の剣は、極寒の地の果てにあるという永久凍土へ。
その内一つ、霊薬神の血は、海に眠る数年に一度姿をあらわすという洞穴にそれぞれ安置された。
残りの一つ、宝刀光の剣は、英雄と共に多くの戦場を巡ったが、
彼の死後その側近の手によって何処かへ封印され、その場所を知る者はもう居ない。

「そして、我々が今向っているフィルムーンの沖に! それも今年!
 神の血が眠ると伝わる洞窟が現れるらしいのだよ!」
「へえ」
「それでだ、その封印を守っているというのがだな……」
665希望と隣り合わせの絶望:03/03/23 00:45 ID:Wj76GLV+
北川は、デッキから海を見ていた。
なし崩し的に引きずり込まれ、死地へ向う船に揺られている自分の運命を呪いながら。
「死ぬよ。仮に至宝があったとしても辿り着く前に死ぬよ」
大志から聞いた情報を整理した結果、その説がもっとも有力に思える。
場所とか由来とかはどうでもいいんで聞き流した。
大切なのは、そこに何が待っているか、ということ。
「シードラゴンなんか倒せる訳がねー」
どうせ死ぬんだし今ここで飛びこんでも死期が前倒しになるだけで大してかわんないかな、
なんて考えた所で、ふいに青の錫杖を出るとき皆にかけられた言葉を思い出す。
曰く、ハネムーンは死出の旅、なんて素敵。
曰く、来世でも幸せにね。
曰く、ねえねえ、やっぱり北川君ってば受け?
曰く、次の即売会では北川君総受け本で決まりー。

何としてでも生きて帰ろうと決めた。あの腐女子どもを止めなけりゃならない。
それに、シードラゴンの牙とか鱗とかは高く売れるらしいッスよ?
そりゃもう、一生遊んで暮せるくらい。一気に野望達成?
輝く未来を思い描く。命あってのなんとらやって言葉が浮かんだけど無視した。
666希望と隣り合わせの絶望:03/03/23 00:46 ID:Wj76GLV+
見渡す限り深い闇。夜行船は真っ黒に染まった水面の上を滑って行く。
もう5時間も船に揺られている。夜明けも近い。地面が恋しい。
ふい、と後ろを振り向く。
ポンポンと煙突から煙が吐き出されている。
「何で火力炉なんだよ」
いや、解る。解るよ。自分達は決して裕福じゃない。むしろビンボ人だ。
旅費は節約しなきゃな。うん。納得した所で寝室の扉を開ける。
「何でタコ部屋なんだよ」
いや、解る。解るよ。節約節約。でもさ、
「何でこんなに密度が高いんだよ!」
既に床が見えない。みっしりと人で埋められている。
生存競争は厳しい、とてもここでは眠れそうにはない。
「徹夜?」
徹夜。

【海龍退治するらしい】
【北川、徹夜】
667名無しさんだよもん:03/03/23 00:49 ID:Wj76GLV+
流石にいきなりフィルスソードはやば過ぎるかって事で、
原典に従い三つに分けてみたんだけれど、どうだろうか。
今のところ何もかも不確定情報なんで、その辺はほら、柔軟に。
668名無しさんだよもん:03/03/23 21:13 ID:65nGftre
おつかれ〜
そう言えば「魔族の剣」なんてのもあるから、フィルスソードとうまく絡ませれば、耕一や舞とも繋がるね。
669潜む復讐鬼と暢気な旅人:03/03/25 19:04 ID:6ojLqQ1x
くないを握り締め、暗がりの中息を殺して潜む少女――観月マナ。
「殺してやる。あのセクハラ野郎、今度こそ絶対殺してやる」
もちろん、気配はだだ漏れ。これではかくれんぼにもならない。
それは彼女の力不足ゆえか、はたまたあまりに濃い殺意の所為か。
それでも当人はいたって真面目に殺る気満々。
「思い切り苦しませて、命乞いを聞きながら殺す。あの変態に血の報いを……」
などと少々物騒なことを呟きながら、標的が戸を開けるのを今か今かと待ち構えている。
だがしかし、記憶を無くす以前ならまだしも今の彼女はただの一般人である。
大志とて変態なりに場数を踏んでいるのだ、そう易々と殺られはしない。
これまでも幾度と無く挑み、同じ数だけ撃退され、それでも復讐を諦めないのは何ゆえか。やっぱ愛?
まあ今回ばっかりは痛い目を見なくとも済むだろう。その変質者は今、海の上に居るのだから。
670潜む復讐鬼と暢気な旅人:03/03/25 19:04 ID:6ojLqQ1x
「リビドー……迸り……翼となれ……」
深夜、デッキに立ちぶつぶつと呪文を唱える怪しい影が一つ。
いつもならばあの大声量で朗々と唱えてのける所だが、彼とてTPOは弁えている。
「おーい、大志。なにやってんだー?」
北川だ。人懐っこい笑顔を浮かべ、とてとてと歩いてくる。
「何、まいはにーにメッセージをな。黙って出てきてしまったから心配しているかもしれん」
ぱっと光の翼が生まれ、彼の手から離れて飛び去って行く。
相変わらず魔法の腕だけは良い。しかし、
「まいはにぃ、ね……」
この間の事を思いだし、ちょっと苦笑い。
「ふ、あまり冷やかすな。照れるではないか」
「別に冷やかしてないぞ」
「まあそうひがむな。……さて、もう夜も晩い。眠るとしようか」
「ひがんでもない……。ってもうそれはいい。
 残念だが、タコ部屋はもう人が入れる状態じゃないぞ」
「ふん、我輩が一山幾らの凡愚どもと寝所を同じくするとでも思ったか?
 安心しろ、我々は個室だ。ただし……」
うっそ、やった。すごいぞ大志。天下人。お大尽。
これで徹夜か夜風に吹かれつつ甲板で眠るかなんていう地獄の二択からも開放された。
なんて喜ぶのはもう少し先を聞いてからでも遅くなかった。
671潜む復讐鬼と暢気な旅人:03/03/25 19:05 ID:6ojLqQ1x
もちろん北川だってデッキで眠るだとか、徹夜だとかは勘弁願いたい。けれど、
「ただし、ベッドは一つだ。同士北川、選びたまえ。ここで眠るか、それとも……」
こいつと同衾、なんてのも極力回避したいわけで。
眼鏡越しの瞳が妖しく輝いた。ように見えた。尻の穴がきゅっと締まった。

【マナ、暗殺計画空振り】
【大志、マナへメッセージを送る】
【北川、どうする?】
672名無しさんだよもん:03/03/25 19:11 ID:6ojLqQ1x
まあ、ね。取り敢えず保守代わりに。
時間はあんまり進んでないし、ある意味もないエピソード。
その広い懐でもって、ほら、ね。
673名無しさんだよもん:03/03/25 22:06 ID:kW06j3On
乙〜。
大志が妖しくていいなぁ(w
マナのへっぽこぶりも良いですな。
674遭遇:03/03/26 00:32 ID:/mdEBULa
歩き疲れた足を休ませるために私達は宿の戸をくぐった。
するとすぐ正面にカウンターがあり、宿の主人と思われる中年の男がカウンターの向こうに座っていた。
男は椅子にふんぞり返り、豪快にいびきをかいて眠っていた。
「ぐぅー……ぐぅー……」
「おーい、おじさん。二人、入るわよ」
「ぐぅー……ぐぅー……」
「おじさーん?」
「ぐぅー……」
……だめだこりゃ。
お手上げ、と琴音の方を振り返ると、琴音もしょうがないですねという風に肩をすぼめて見せた。
仕方がないのでカウンターの上に置いてあった、人呼び用のベルを取り上げて、男の耳元に持ってくる。
そして、
「起きろー!」
男の耳元でベルをチリンチリンと鳴り響かせながら怒鳴ってみる。
「ぐぉー……がぉー……」
いびきがさっきよりも大きくなった。
頭に来たので男の胸倉を掴んで、一発頬を叩いてみる。
パンッ!
小気味良い音が響いた。
「ぐ……ぐぅー……」
パンパンッ!
「ぐぐ……ぐぅー……」
スパパパパパパパ!
「ちょ、ちょっと晴香さん!」
もの凄い勢いで男の頬を往復ビンタしだした私の手を琴音が慌てて止めに入った。
「死んじゃいます!」
「まさか、そんなに力入れてないわよ」
「でも!」
「それに……いい根性してるみたいよ、このおじさん」
まるで赤い風船のように膨らんだ頬になった男は、それでもまだ豪快ないびきをかき続けていた。
675遭遇:03/03/26 00:33 ID:/mdEBULa
「おかしいわね」
「晴香さんが?」
「……ぶつわよ」
琴音が男の顔に回復魔法をかけながら、とても失礼な事を言ったので、睨みつけてやった。
それにしてもおかしい、どう考えてもおかしい。
普通の人間がここまでされて、それでもまだ眠っていられるなんて常識では考えられない。
これはむしろ……
「ちょっと琴音、このおじさんに魔力感知かけてみて」
「?」
琴音が訝しげな表情を浮かべながら、回復魔法を中断して、掌に意識を集中させた。
するとかなり強い光が琴音の掌から放出された。
「これは……!かなり強力な眠りの魔法がかけられていますね」
「やっぱり、ね」

「上の部屋も全て調べてみましたが、全部同じように強い反応がでました」
「そう……ここら辺一帯の人が皆眠らされているのかもしれないわね」
「でもどうして?」
どうしてこのように人を眠らせるのはどういう場合か。
人に知られずになんらかの行動を起こしたい場合が最も当てはまるだろう。
単なるいたずらか、誘拐か、暗殺か――誘拐?
「まさか……」
私は懐から川澄舞を探すのに使うために持って来ていた魔法の宝石を取り出した。
見ると宝石は淡い光を発していて、しかも弱弱しく点滅している。
「晴香さん、これって……」
「ええ、あの娘が危ない。行くわよっ!」
「行くってどこに!?」
「それはこいつが教えてくれるわ!」
そう言って私は秘宝を手に持ったまま走りだした。
676遭遇:03/03/26 00:33 ID:/mdEBULa
やられた。
川澄舞の情報を掴んでいたのは私達だけではない。
そんな事は当然のはずなのに頭が回らなかった。
つまりこれは先手を打たれたという事。
彼女は既に襲撃を受けているのだ。
そして彼女の同族が残した秘宝の今にも消えそうな光が、私の予感を悪い方へと導いていた。
急がないと。
だが、彼女の居所を示す手がかりは二つしかない。
一つは私が手にしている秘宝の光。
この反応が強くなる方へ進んでいけば、いずれ彼女に辿り着く事ができるだろう。
それからもう一つの手がかりである、ここら辺の人々が眠らされていたという事実が、彼女が襲撃を受けている場所がこの近くだという事を示していた。
レフキーは広大な街だ。この街全てを眠りにつかすなんて芸当は人間には不可能だろう。いくら広範囲魔法でも、せいぜい街の一角が限界だ。
とはいえ、手探りで探す事には変わりがない。
間に合うだろうか?

焦り、何度も道を間違え引き返しながらも、まるで見えない力に引き寄せられるように、私達はそこへ辿り着いた。
曲がり角の一つに差し掛かるや否や、私は身をを隠すようにして急停止した。
そのままの勢いで背中へ琴音が激突してくる。
「いたた……急に止まらないでください」
「しっ」
おでこを押さえながら抗議する琴音を静まらせ、向こう角を覗くよう指示する。
――そこには傷つき、蹲っている少女とそれを支える少女。
そしてその前に立ちはだかる巨大なモンスターの姿があった。


【巴間晴香&姫川琴音:オーガの襲撃現場を発見】


わかり辛い所を補足:実際は佐祐理が誘拐されそうになっているのだが、晴香達は佐祐理を知らないので勘違いしている。
677名無しさんだよもん:03/03/26 00:34 ID:/mdEBULa
投稿時期がかぶっちゃったけど、長い一日を終わらせるため、かなり強引に進めてみる。
678名無しさんだよもん:03/03/26 01:37 ID:mWKt20rS
>>677
あの一日を終わらせるにはみさき楓組も何とかしなきゃなー。
679名無しさんだよもん:03/03/26 01:47 ID:EUYH5VVd
一番はあの鶴来亭の連中じゃないかな。
680名無しさんだよもん:03/03/26 01:58 ID:EUYH5VVd
っていうか秘法塔とレフキーって方道歩いて何時間だっけ?
浩之は野宿してたみたいだし、どんなにはやくても半日はかかると思うけど。
その辺どうなのかな、と。
681名無しさんだよもん:03/03/26 10:46 ID:mQhlg5Xv
おおっ、新作二本。
最近は元気ですなぁ。
682名無しさんだよもん:03/03/26 11:26 ID:6+V9BuBZ
これまで自分で書いたものと過去の話しを照らし合わせてみると、
ごろごろ不整合が出てきて死にたくなった。ごめん。

>>677
いやっほう、新作来たー!
まだ彼女らは助けに入ってないから、佐祐理のピンチは続く訳ですか。
暢気に寝こけてる連中が居る脇で死にかけてる奴らもいる。これぞ複数ラインの醍醐味っすね。
ところで、眠りの呪文を使ったのは誰だろう。やっぱりあの間者かしら。
帝國よりで危険思想で高位の術者。……誰だろう。
683名無しさんだよもん:03/03/26 22:55 ID:CFXm1et5
確かに同じ出来事を別のラインから見られるのはリレーの醍醐味やね。
684名無しさんだよもん:03/03/26 23:52 ID:Pmn+fOQv
呪歌に似てるけど、こっちの方が遥かに便利で強力っぽいね……<周囲全体に及ぶ眠りの魔法
685名無しさんだよもん:03/03/27 03:37 ID:SBbaaCwr
作品うpが多くなってきたな
良き哉良き哉
686名無しさんだよもん:03/03/27 17:27 ID:EKerM6xz
わーい、新作だ〜

ところで、名雪は北川達を追いかけたりしないかな〜?
687名無しさんだよもん:03/03/27 23:23 ID:Lssi4txq
>684
相当高位の術者なんだろうね。
あるいは何かの秘宝の力という展開もあるかも。
688天使の見た夢と目覚め:03/03/28 23:21 ID:da8eG+4E
油断すると閉じそうになるまぶたを抑え、津波の様に襲い来る睡魔を跳ね除け、
復讐鬼マナはターゲットを待ちつづけた。そう、ちょうど今、この瞬間までは。
「……すー」
ああ、遂に力尽きた。彼女はそのまま、深く、深く眠りの中に沈んでゆく。
暇つぶしに読んでいたのだろうか、膝の上に開かれていた本を枕にして。


ちちち……。柔らかな鳥の囀りと、眩しい朝日。
それから、何処かからか漂うコーヒーの香り。理想的な朝の風景だ。
「ん、ううん……」
彼女も、こうなっては起きてこない訳にはいかない。
昨晩は床で眠ってしまったので、身体中が痛む。疲れも取れていない。
「……兎が、空を飛んで……。羊……キング?」
おまけに夢見も悪い。
けれど、いつまでもぼんやりしてはいられない。
えいやっと立ち上がり、朝の綺麗な空気を胸一杯に吸い込み伸びをする。
部屋を見渡す。仇敵、九品仏大志の姿は無い。もう起きたのだろうか?
ベッドを見る。シーツが乱れた様子は無い。どうやら昨日は帰ってこなかったらしい。
つまり、私の苦労はまるっきり無駄だったって事になる。
……次に顔見せた時は、覚悟しときなさいよ。
689天使の見た夢と目覚め:03/03/28 23:22 ID:da8eG+4E
自分の為にと用意してくれた部屋へ戻り、着替えながら考える。
普段からヘンなローブを着て出歩いてるあいつ。あいつが何をしているか、私は知らない。
秋子さんは冒険者で魔術師だって言ってたけど、あんなのが魔術師だなんて信じられない。
精々……って、なんで私はあんな変態の事なんか考えてるのよ!
あんな奴がどうなろうと知ったことじゃないし、何をしてようとも構わない。
帰ってこなかったのだって、ただ野垂れ死にしてるだけに決まってる。そう、それよ!

「あれ、こんなもの、昨日はなかったよね?」
テーブルに置かれた一通の手紙。
宛名を見ると、確かに私宛になってる。誰からだろう、急いで封を切る。
もしかしたら、無くした記憶の手がかりがあるかもしれない!

手紙の内容は、私を落胆させるには十分過ぎるものだった。
「誰がはにーよ、誰が!」

【マナ、大志からのメッセージを受け取る 疲れが抜けきっていない】
690名無しさんだよもん:03/03/28 23:28 ID:da8eG+4E
うん、まあ、あれだ。また時間が進んじゃった訳だけれども。
これは、他のパーティを置きっぱなしにして進んでるんじゃなくって、
北川組及びマナが他のパーティに追いついたって事にすれば。
ああ、駄目だ。上手くまとまらない。
まあ、何だね、誰か意訳してください。ごめん。
691名無しさんだよもん:03/03/30 22:16 ID:8AslGgSe
前の話と一つにまとめてもよかったんだろうけど、まぁ保守代わりに小出しにするのも一つの手だよね、乙。
692名無しさんだよもん:03/03/31 00:00 ID:oQVPeRQN
新作乙〜。
ますますマナが泥沼の方向に(w
各パーティーの時間の進行状況は無理に
合わせなくてもいいかと。多少意識しておけば。
693奇跡と紙一重の不条理:03/03/31 00:20 ID:JJQ5t9nS
耳をつんざく砲撃音。直後、船体のすぐ真隣に水柱が上がる。
「おおっと。へへ、めくらめっぽうどれだけ撃とうが、この船にゃかすりだってしないぜ」
――なんたって、ミラクルがついてるんだからな――

だが、どうしたってギリギリなのだ。一発でも当ったらそれでお終いなのだ。
口では大きな事を言っても、表情はすっかり強張っている。冷や汗だって流れる。
いや、まだ終わった訳じゃないじゃないか。頬を叩き、へたりそうになる己に活を入れる。
この船にはまだまだ隠し玉があるんだ。そりゃあもう、色々と。
「さーって、とっておきを見せてやろうかね……。アレを使う! 準備はいいかぁ!?」
ごぅん。返事の代わりに、耳障りな駆動音で応える。……おお、一発でかかるなんて珍しい。
魔力炉内で精製されたマナ・エナジーが燃焼、爆発を起こし、
その圧力でもってエンジンを駆動させ、無数の歯車がその運動をスクリューに伝える。
そう、これぞミラカノ百の秘密の一つ、超高出魔導エンジンである!

魔力炉は汎用性が高く、現在では火力炉に次いで広く用いられている。
しかし、それだけで船舶を動かせるだけの推進力を得られるものとなると難しい。
とにかく、重量があり過ぎるのだ。その上製造コストもとんでもない。
最近は、帆船にサポート用のごく小型の物を積んでいるものもあるらしいが、それが精々。
速度と燃費以外ならどう考えても火力炉の方が優秀だ。精度が低い物は暴走も多い。
しかしこの、よく解らない技術で犬飼さんが作り上げた魔導エンジンならば、
これまでのものよりもずっと小型サイズで、数十倍の推進力を得る事が可能なのだ!
金もアホほどかかってるぞ! もしかしたら船そのものよりも高価いかも!
……ただし、連続駆動実験の結果は余り芳しくなく、まあ、あれだ。長く動かすと爆発する。
その為一時的なブースターとしてしか使えないが、これだけの性能がありゃそれでも御の字よ。
694奇跡と紙一重の不条理:03/03/31 00:21 ID:JJQ5t9nS
海軍どもは、目の前で起こったミラクルにただただ目を丸くしている。
有り得ない。これだけの風に逆らって、これだけの速度が出せる船なんて、有り得ない。
その上なんだ、港を盾に取られては攻撃も出来ないじゃないか。
などと連中がまごついている内に、ミラクルカノン号は更に加速。
包囲を抜けみるみる遠ざかる船影は、ガレー船が全速力で追っかけても離れて行くばかり。
補助用の火力エンジンとクルーを限界まで酷使しても全然足りない。あ、船火事発生。


轟音、轟音、また轟音。ただし着弾地点はてんで的外れ。
執拗な砲撃をものともせず、追い風受けてミラクルカノンは海を行く。
「はっはー! 無駄無駄、届きゃしないよー!」
安全圏まで逃げきった安心感からか、本来の調子を取り戻したキャプテン祐一。
顔一杯に笑顔を浮かべ、鼻歌だって歌っちゃいそうな雰囲気だ。
確かに今は順風満帆、船は順調に進んでいる。が、船もクルーも傷だらけ。
さしもの彼らもしばらくの休息が必要だろう。エンジンの御機嫌も取らなきゃならない。

【相沢一家、逃走成功】
695名無しさんだよもん:03/03/31 00:29 ID:JJQ5t9nS
前々から書きたかった海賊団を進めてみた。まあ、なんだね。酷い。
我ながら汚ねえやり方だとは思う。よく解らないとか奇跡とか、凄く便利。ごめん。

なんて自己批判で予防線張ってみる。ホントにごめん。このとおり。
696名無しさんだよもん:03/04/01 00:25 ID:6NUE1bRR
まあ、肩透かしの感もないことはないけど、
長くなるのを避けて取り敢えずの解決を図るのは
それはそれで一つの方針だとは思う。
しばらく滞ってたしね。
697名無しさんだよもん:03/04/01 22:21 ID:vxg5D0iy
698名無しさんだよもん:03/04/02 00:17 ID:R0G56x9c
そういえばまだ告知されてなかった。不必要かも知らんが、一応。
リレー小説総合、最新スレッド
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1049041815/l50
699名無しさんだよもん:03/04/02 20:43 ID:z/Ydzv13
関西弁があやふやで鶴来亭は断念、後はまかせた…がくっ。
700Uスレの1@またぞろ出張中:03/04/02 23:47 ID:/oBSyKJf
>>680
レフキー=秘宝塔間は山一つ越えて、日にちにして一日の旅程だったはずです。
となると謎なのは、帝国(ニノディー)=レフキー間の距離ですなw
騎馬の強行軍で秘宝塔まで一昼夜なのか、夜間の強行軍で一日なのか……微妙。
701名無しさんだよもん:03/04/03 00:16 ID:sc6O15tG
となると晴香達が夜に出発してその日の夜にレフキーに歩いて着くのは無理っぽいけど……
その辺どうする?
702名無しさんだよもん:03/04/03 00:57 ID:rma+ivgq
>夜に出発してその日の夜にレフキーに歩いて着く
ぐぁああっ、すっげぇご近所物語だなぁオイ(w

て、テレポートしてきたとか…
あぁあ、言っててなんだが個人的に好きな展開じゃないなぁー。
ほいほいこれをやられると便利すぎる。
703Uスレの1@またぞろ出張中:03/04/03 01:22 ID:nNtYeq2p
セリオが山賊移送するときテレポートに近い術使ってたんで、いまさらという感もw
アカデミーが設置した特定の”点”のみに向けて転移する、個人呪法とか……
704名無しさんだよもん:03/04/03 01:38 ID:rma+ivgq
いやいやそういう前例があるからこその「ほいほいこれをやられると」なのよ。

しかしまぁ
>アカデミーが設置した特定の”点”のみに向けて転移する、個人呪法とか……
これが妥当だろうか。

儀式魔法とかにしてお手軽感は極力無くした方が良いかも…
って神経質すぎか(w
705名無しさんだよもん:03/04/03 01:49 ID:sc6O15tG
というかまず、通しかNGか決めた方が建設的な気がするが……基本的にNGはなしの方向でいきたいけど……
でも作品中に歩いてきたという表現が多々あるからどっちにしても改変は必要そうだけど。
それにテレポートっていっても二人とも白魔法専門だけど大丈夫なの?
706名無しさんだよもん:03/04/03 07:32 ID:C9kSos/Q
それより>>700の方が気になる。
武装した騎士団が隣国挟んで一日って…高速で空飛とんでるのか?
707名無しさんだよもん:03/04/03 10:28 ID:BSjPYzQI
>松本を捜しに行った岡田隊が、一昼夜を過ぎてまだ戻らない。
77から引用だけど……
俺の記憶が確かなら一昼夜ってのは約24時間だから、
描写されてないだけで本当はもの凄く時間掛かってるんじゃないのか。
少なくとも待ってるだけで一日費やしているのは事実だと思われ。
……ああなんかやばい雰囲気だなw
708名無しさんだよもん:03/04/03 10:57 ID:MNQRXnSb
>>705
ピオリムで素早さを上げて、ホイミで体力を回復させながら42.195km走ったw
>>706
途中で全員ペガサスナイトにクラスチェンジしたw >>707
帰りはさらに速くなってる。
ドラゴンナイトか?w
709名無しさんだよもん:03/04/03 11:06 ID:wKiV7PmO
実はこの世界では一日が100時間あるとか(w
710名無しさんだよもん:03/04/03 13:25 ID:BSjPYzQI
結局どうする? 決定権がないからどう意見しようが流されそうな気がするが……w
当時の作者さんがいれば意見欲しいけど……無理っぽいし。
まぁ『気にしないでおく』でもいいけど(ぉぃ 
こういう細かいところを野放しにしておくと後々苦労しそうだから、どちらにせよここできっちり決めたいんだけどね。
711名無しさんだよもん:03/04/03 14:32 ID:A8+LUoFM
時間的なまとめをあまりやってなかったのが痛いかな……。
今まとめ直そうとするとかなり前まで遡ってみないといけない予感。

ところで、ついでだけど、うたわれキャラって出さないことになってたりするんだっけ?
どうなってたかすっかり忘れてるんだけど、先日(今更だけど)遊び始めたので気になった。
712名無しさんだよもん:03/04/03 15:55 ID:MxXVqUct
>>711
実はニヴェのとっつぁんが帝国の宰相だかで出演済み。
ってまだニヴェはわかんないかな。

だが彼等の登場については結構物議をかもしたものだ。
もともと半ファンタジー、剣と魔法が本職な人たちなだけに絡ませ方が難しいのだ。
例えばカルラとかが剣聖みさき辺りと剣で互角、なんてシチュは倦厭されるだろう。
また魔法の使い手が結構凄い事出来たりするのよね。
ここらの理由から今のところ自粛の傾向にあるようだ。

まぁそれでも使っちゃいけないって事じゃなかったはずなので意欲ある物はチャレ
ンジするのも良いだろう。

ところで同様の理由からかフィルスノーン連中も今だ出ていない。
今のところフィルスノーンは神話の物語として語られるに留まっている。
713名無しさんだよもん:03/04/04 00:42 ID:7hmVXbbk
フィルス勢では前の戦争の時の黒幕として
ドーバンあたりが出てなかったかな?
まあ、原作がファンタジーな面々は、そのまま使うか、
伝説にするか、いっそLv1状態ということにするか、
いずれにせよ書き手の裁量でいいのではないかと思われ。
714名無しさんだよもん:03/04/04 19:49 ID:EBwILKWL
伝説扱いが一番妥当かと思うんだよな。
キャラクタ知らない奴も多そうだし。
715名無しさんだよもん:03/04/04 23:51 ID:jTcFI2SL
伯斗とか面白かったんで、マイナーキャラでも出すこと自体は
問題ないと思う。ただ、知名度の低いと思われるキャラは
出すなら原作での設定、性格、一人称、口調くらいは解説を
付けといた方がいいかもね。

ところで、>653の赤毛の勇者ってジーク?男装ティリア?
716名無しさんだよもん:03/04/05 01:13 ID:uZ3Y4SQT
ルミラご一行書ける人は、フィルスも知ってるんでないですかね?
いないこ繋がりで……

まぁ、とりあえず現行の死んでるキャラを生かす努力を優先すべきかもですが。
香里とか、凸と絡んだがために死にっぱなしってのもかわいそうですしw
717名無しさんだよもん:03/04/05 01:56 ID:i0uexm8w
>>715
あれ書いた奴っす。ジークにしてティリアを出しても、
ティリアって事にしてフィルスキャラを過去の人物にしても、
某メルビンみたいに現代に蘇った英雄って立場でティリアを出し、
間違った伝説って事にしてそれネタにからかっても面白いと思う。
要はほら、あれだ。他の書き手の方々にまるままぶん投げるって事で。
毎度適当な事ばっかやってごめんなさい、ほんとに。
718名無しさんだよもん:03/04/05 02:58 ID:7puX2RrP
んで晴香組どうすんの?
このまま見て見ぬふりして通すの?
辻褄合わす気も無いならないでいいから、結論をだしてくれ<書いた人(いるならだけど)
719名無しさんだよもん:03/04/05 20:41 ID:gKzSfY8l
>>718
そのうち修正版うぷするのでよろしく。
720715:03/04/05 22:05 ID:luvtqlsg
>717
いや、曖昧な書き方だったので、実はそうではないかと思ってました。
そう言えば原作のジークも詳しく語られてませんでしたな。
721Uスレの1@出張明け引継ぎ中:03/04/06 00:20 ID:iiTB7aOp
そろそろ、また設定まとめやったほうがいいでしゅな。
明日がんがります。
722名無しさんだよもん:03/04/06 01:15 ID:zKoEeSF6
話を書こうと思っていたらこんな物を書いてしまったので投下してみます。
色々集めてきた感じでしかないかも知れないですが。

【魔法】:魔法とは、古の失われた偉大な力である。
     魔法は、魔と法を合わせる事により発動する無限の力。
     術者が望むものはなんでも叶える事ができたという星の記憶を司ると言われた
     翼人にも匹敵する力であった。
     かつてはこの力によって今より遥かに高度な文明が存在していた。
     しかし、その巨大な力は争いを生み出す素にもなり、翼人の怒りに触れ、
     その文明は大陸と共に海に沈んでしまったのである。 (→216)


■自然術
術者:長谷部彩(ビギナーランク) 王立騎士団特務部隊員
術者の総称:特別な言及無し。
使用例a:燭台の炎からフェニックスを生成(→14)。
使用例b:森の木からトレントを生成、その後暴走(→172)。
希少度:「変わった魔術ね」との詠美の台詞がある(→14)が、帝国の一兵卒が暴走したときの結果について知っていたりもする(→172)。
・形などをイメージすることによって水や石や火などの自然物を変質させる術。
 例:火のイメージ+鳥のイメージ→フェニックス
・周囲に自然物がないと使えない。
・動物などの形に変質させた場合、術者が死んでも破壊されるまでは自律行動する。
 備考:ゴーレムは自然術の産物という説がある
・持続時間は魔力に応じる。彩では1時間程度。
・術者の力が足りない状態で無理に使用すると暴走し、生成した存在に取り込まれることがある(→181)。
私見:
召喚するか変質させて作り出すかの微妙な違いはあるにせよ、「精霊魔法」というイメージに近いかも。
制限、リスク、応用のしやすさなどではかなり面白い使い方ができそう。
723名無しさんだよもん:03/04/06 01:16 ID:zKoEeSF6
■ルーンマジック
術者:上月澪(駆け出し)
術者の総称:ルーンユーザー
使用例:炎の印を結んで火球を作り、命中した物を燃やす。
希少度:特に言及はない。
・呪文を唱えることなく、体の動きで印(ルーン)を結ぶことで発動させる。
・声を出せない状況でも使える。
・黒魔術の一派?
私見:
声を出せない澪のための魔法、と言えるかも。
効果のほどについては、唯一の術者である澪がラルヴァに取り憑かれている現状では特に出てくるシーンがない……。
724名無しさんだよもん:03/04/06 01:16 ID:zKoEeSF6
■黒魔術
術者:砧夕霧(ウィザード級※ウィザードは高レベルの称号らしい)
   九品仏大志(かなりの実力)
   澤倉美咲(生徒) ホワール魔術学園生徒
   スフィー(見習い) アカデミー魔術師見習い
   来栖川芹香(見習い?) アカデミー魔術師見習い
   神岸あかり(見習い) アカデミー魔術師見習い
   桜井あさひ(見習い) アカデミー魔術師見習い
   リアン(見習い) アカデミー魔術師見習い
  (霧島佳乃※明確な記述はないが、(→244)での魔法が黒魔術系に似ている 魔法屋)
術者の総称:黒魔術師(士)/黒魔導師(士)
使用例a:明かりとして光球を生成(→156)
使用例b:炎の壁を作り出す(→166)
使用例c:ホウキに乗って空を飛ぶ(→214)
希少度:言及はないが、数から見ても最もメジャーな系統の一つと思われる。
・アカデミーおよび学園には黒魔術コースがある。
・召喚術も黒魔術に含まれる(アカデミーに召喚術系がある)
私見:
「派手な攻撃魔法」として最も華のある魔法系統、としての一般的な位置づけは河原内っぽい。
ただし、実際に派手な魔法を使っているのは大志程度だったりする。
また、大志の場合は他にない特殊な詠唱を行っている等、様々な流派があると考えられる。
725名無しさんだよもん:03/04/06 01:17 ID:zKoEeSF6
■白魔術
術者:里村茜(一流) 魔術アカデミーの高い地位
   七瀬彰(ウィザード級※) 町医者
   天野美汐(特に言及無し。一般レベル?) 久瀬一座のマネージャー
   霧島聖(かなりの高位?) 彰の師
   姫川琴音(かなりの高位?) テンプルナイト
術者の総称:白魔術師(士)/白魔導師(士)
使用例a:傷の治療(→171など)
使用例b:魔法消去(ルミラの炎を妨害)(→190)
使用例c:魔族の探知能力を防御(→264)
希少度:言及はないが、数から見ても最もメジャーな系統の一つと思われる。
・治癒術は非常に高度な部類に入る。
・アカデミーおよび学園には白魔術コースがある。
私見:
治癒術は難しいとされているものの、それ以外の使用例は少ない。
治療のための術としての側面が強いようなので、他に上手い使い方を出して来られるかどうかが課題かも。


■陰陽術
術者:橘敬介
術者の総称:特別な言及はない。
使用例a:厄災を払うお守り【鎮宅霊符】を作る(→87)。
使用例b:易占によりこれから移動する方角が吉か凶か占う(→87)。
使用例c:式神<騰蛇>を召喚し、戦闘に使用(→95)。
・異国の文化体系に属する術系統(詳しくは→71など)。
・必ず反作用を伴う。式神の召喚は特に反作用が大きいとされる。
・式神の召喚では鬼神の意識を取り込んで従わせるため、失敗すると逆支配される。
726名無しさんだよもん:03/04/06 01:17 ID:zKoEeSF6
他の系統については追々ということで。
あと、ミスや追補があればよろしくお願いします。
727名無しさんだよもん:03/04/06 22:09 ID:xnAo/BAs
まとめ乙。こうしてみると魔法も結構いろいろですね。
ただ、やっぱり主流は黒魔術と白魔術という所ですか。
728名無しさんだよもん:03/04/07 15:08 ID:L9QyKWO7


こんなに可愛い子が?!
マジでアナルまでまる見えの過激グラビア(うんち、おしっこあり)
http://www.prettyhips.net/yukari/
729名無しさんだよもん:03/04/08 22:48 ID:+jBS8VQn
白黒魔術はアカデミーがあるから、それで多くなってる面はある。
730名無しさんだよもん:03/04/09 02:18 ID:vxqpYc+m
名倉友里ってもう出番ないのかな。
しかし、あの鼠って現実で例えると
信用されている研究機関で実験中のヤバイ物(細菌兵器等)がテチガイで、街中に散布されて人死にがでるのと同レベルなんだよね。
めっちゃ怖いよな……。
731Uスレの1:03/04/09 22:21 ID:yu/wNGyh
まとめ遅れてまつ。
ごめんなさひ……ログ更新と同時に、今週末には。
732名無しさんだよもん:03/04/09 23:52 ID:q4JDXBeq
>>730
なんかX−ファイルで出てきそうなネタだな、とふと思った(w
733名無しさんだよもん:03/04/11 01:04 ID:1D+EhJIZ
>732
確かにアメリカのサスペンス映画あたりにあってもおかしくない
感じのモチーフですな。そうだとすると友里の出番はまだまだ
考えられるはず。

>731
ゆっくりお待ちしてます。
734名無しさんだよもん:03/04/12 19:27 ID:37IoZzbk
>730
アカデミー内部の闘争が描かれるなら出てくると思われ。
735名無しさんだよもん:03/04/13 12:13 ID:XTY04JbK
首輪を回収していったから、また困った事が起きそうな予感。
普通ならあの場で壊した方が世の為だったろうけど、
研究中のサンプルを持ち帰ってるんだから結局、どうしようが元の鞘に納まるだけだと思うし。
736Uスレの1:03/04/13 18:06 ID:LizLLrJA
編集サイト、ログ更新しますた。

あと、まとめこんな感じでおいておきますですよー
http://isweb45.infoseek.co.jp/play/lefkey/text.txt

共和国、衛兵と書いてるとなんか特別共和国防衛隊とか書きたくなる罠w
737名無しさんだよもん:03/04/13 23:56 ID:KBSPKX4x
>736
ログ更新&まとめ乙。なかなかの労作ですね。参考になります。


ところで、サダムちゃん様?……ああっ!ごめんなさいごめんなさいx100
738名無しさんだよもん:03/04/14 00:28 ID:a3tzQvcc
>>736
わっ、まとめ凄いよ。
乙でしたー。
739名無しさんだよもん:03/04/14 01:38 ID:lJs5xeiM
>736
乙です。これで書きやすくなる……といいなあ。
740名無しさんだよもん:03/04/14 16:17 ID:freAUXWc
>>736
まとめ乙です。忘れかけてたことが結構あって助かりましたよー。

んで、ホワールにある魔法学園はアカデミーに属していると書かれているようですが、
これは本決定でしたっけ? たしか前にも話題になった記憶があるのですがその時はうやむやになっていたような。
個人的にはホワールにある魔法学園は独立していてほしいのですが、実際どうなんでしょうか?
やはりアカデミーの下部組織という事に誰も突っ込まない所をみると、皆納得しているのかな。
741名無しさんだよもん:03/04/15 01:23 ID:s8+aRDER
一応用心メンテ。

>740
うう。すっかり忘れてました。過去ログ読まないと。
742山崎渉:03/04/17 15:55 ID:ocEBuI9Z
(^^)
216.73.176.146 , ip-216-73-176-146.hqglobal.net , ?
743名無しさんだよもん:03/04/20 04:23 ID:QWIzzD/3
>720
ジークってサムスと組んで勇者と呼ばれた人だよね。
神聖大戦よりは大分下った時代の人で、確か魔人たんと
戦って人類と和解させた人だったかな?
744名無しさんだよもん:03/04/21 00:01 ID:DHFYYgKc
>743
ん?ああ、原作の話ね。
745名無しさんだよもん:03/04/23 01:07 ID:JKQhPUYM
そう言えばフィルスでもジークとサムスの防具は出てきてましたな。
秘宝まで行かないけど伝説的な武器防具とかはありかも。
746名無しさんだよもん:03/04/24 22:59 ID:mZogUoL1
黄金週間には新作が数本上がることを期待しつつ、保守。
黄金虫は着ませんように……
747名無しさんだよもん:03/04/25 22:51 ID:YuwHNG5s
748名無しさんだよもん:03/04/26 00:11 ID:m9AOnkAU
 あるリレー小説ファンの朝。

「今週はとんでもない事件ばかり起こった週だったな…」
 そういって家の中を歩いていた彼は、家具にぶつかりインテリアの壷をおとしてしまう。
 するとその中から煙が溢れ出て、そこに一つの人影が現れた。
「わたしはこの壷に宿っておりました妖精でございます。
 出してくれましたお礼にあなたの望みを一つかなえてしんぜましょう。」
 そこで彼は、今日のテレビで見た事件を思い出しこう答えた。
「今、紛争状態にある中東に平和をもたらしてください」
 ランプの精は戸惑いつつこう答えた。
「あの… あそこの地域は宗教やらなにやら複雑な問題が山積しておりまして…
 ほら、聖戦とかいって戦争や殺人を否定してないでしょ?
 そういった背景があるので、その願い事はちょっと… 」
 といって、他の願い事をするよう促した。
 そこでリレー小説ファンの男は考え直し、次の願い事を述べた。
「葉鍵ファンタジーに新作を投稿してください」
 壷の精はニュースを放送しているテレビを見つつ考えこんだ。そしてこう答えた。
「中東の平和の可能性を探ってみましょう」
749名無しさんだよもん:03/04/27 02:50 ID:BBDOPsUR
>748
ワラタ。その直後頭を抱えてしまったが。
750狂人の正義:03/04/27 04:56 ID:NekTOhl5
ひゅうと振り下ろされた斧が、その進路にある全てをなぎ払う。
テーブルは二つに裂け、跳ね上げられたグラスが甲高い音を立てて砕ける。
カウンターは一撃の元に粉砕され、床には巨きなクレパスが口を開いた。
「キカカカカカ、クキキキキキ」
ぶぅん、と風切り音を纏う凶刃でもって、目に映るものを片っ端から打ち壊して行く。
理性なんかとっくの昔に犬に食わせたとでも言うような瞳をして。

「ちぃっ、正に気違いに刃物だな……」
向こうに転がるレイピアを諦め、不気味に笑う男――いやあ、これはもう人ではなさそうだが――に向き直る。
先程肩に開けてやったでっかいピアスホールからは、今もだくだくと血が流れ続けている。
「人間相手なら、あとは放っておいても倒れてくれるんだがなぁ」
生憎、奴は出血を少しも気にかけず、にこにこ上機嫌で破壊を続けている。
ごうっと脳天目掛けて叩きつけられる斧を難無く回避。身代わりに床板がばりばりと裂ける。
こんな大振りの攻撃なんて避けるのは容易いが、あちらさんはまるでへたばる様子も無し、
いつまでも続く様じゃあ、少々アレだ。こっちは標準の人間、疲れだってするし傷つけば動きも鈍る。
「なあ矢島、……おっと、こいつを止めるにゃあ……よっ、どうすりゃいいと思う?」
「そうっすねぇ……ほっ、首でも……はっ、ちょん切って……おっと、やったらどうっすか?」
ぶち抜かれた肩で軽々斧を振り回す相手を見るに、確かにそれでも足りないくらいだ。
男は変わらず不愉快なにやにや笑いを浮かべたまま、楽しげに鉄柱を振り回している。
出血は致死量に達するかといったところだが、脳内麻薬のおかげか全然平気らしい。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すゥ〜」
不吉な歌詞にでたらめな節をつけて、へらへらと、心から破壊を愉しんでいる。
変なものぶらぶらさせながら鼻歌混じりに殺されては堪った物じゃない。
しかし首を刎ねるなんてのは流石に不可能だ。さて、どうしたものか。
「1滴残らず血を流し尽くしたら、止まりますかね?」
肩で息をする矢島が、ぼんやりと呟いた。

【御堂、丸腰 肩負傷】
【矢島、同じく丸腰 息切れしてきた】
751名無しさんだよもん:03/04/27 04:58 ID:NekTOhl5
壷の妖精頑張ったよ。編集さんところで言う、292人間の証明 の続きで。
752名無しさんだよもん:03/04/27 19:15 ID:Nxoy33fN
 深さに限りなく広さに果てしない、10万という溢れんばかりの人の海。
 レフキーという名のその混沌の海の中、深みに落とした指輪を探し当てるような奇跡―――

 誇張はある。
 だが、この大都市で一度足取りを見失った相手を短時間で捜し当てるなど、奇跡に等しいことに違いはない。
 ましてや一度よそ者が踏み込めば、そのまま景色の中に溶けて消えてしまうことも珍しくもないスラムの中のことであればなおのこと。

 もっとも、ようやくのこと見つけたその想い人も、うかとすればすぐにも掌中から失われてしまう危うさを見せていたが。

 片や遠めにも鮮やかな朱を抑えて薄汚れた路上にうずくまり、片やそれを庇うように覆いかぶさる一組の少女。
 庇う側の少女が決然と、しかし揺れる瞳に怯えを隠せぬ様子で睨みすえるのは巨大な鬼。
 その鬼の背中に、冷たく挑発的な笑みを湛えた一人の女。

 視界に入る人、人ならざるモノの姿は四つ。
 そのうち救うべきは一つ。
 見知らぬは三つ。
 討つべきは―――二つ。
 とりあえず、二つ。
 ”視界内の”敵としては、二つ。

 川澄舞を保護するためには、彼らを排除しなければならないが―――さて。
「どうする?」
「……そうですね」
 なにを?
 晴香は告げないし、琴音もわざわざ問い返したりはしない。
753闇の影に潜むもの:03/04/27 19:15 ID:Nxoy33fN
 二人にとって、何をなすべきかはあまりにも明らか。
 軽く目配せを交わし、互いの役割分担を確認する。

 よし、大丈夫。
 互いの意思疎通に問題はない。
 これから起こすべき行動、二人ともにそれをはっきり心得ている。
 抜き放った剣を右手に、淡く弱く輝く秘宝を左手に握り締め、晴香は琴音に頷きかけた。

「それじゃ、まずは―――」
「火の粉を振り払いましょう!」

 高らかに、二人が叫んだのと、二つの白光が薄暗い路地に踊ったのと、どちらが早かったことだろう。
 一瞬の煌きが過ぎた後、路地を朱が彩った。
 突如虚空から噴出した真紅の液体が壁に、土に、鮮烈な薔薇を咲かせ、続いて重たい麻袋のような何かが倒れこむ音が響く。
 返り血、そして第二陣の吶喊を避けるべく、軽やかに背後へ―――つまりは、舞たちの方角へ―――跳んだ二人がきっと眉を寄せた。
 手ごたえはあった。鮮血が宙に沸き、何かが斃れる音もした。

 晴香は確かに誰か、背後から襲いかかろうとした何かを殺した―――その何かの姿を、二人は未だに見ていないのだ。
「……ダークエルフ!」
 やがて、地表に滲み出すように現れた死体に、晴香が毒を飲んだかのような呻きをもらす。
 そのほとんど人と変わらない死体が持つ褐色の肌と銀の髪、何より特徴的なとがった耳。
 隠身術を使う術者など、魔術アカデミーにもそう数はいない。だから、予測は付いていた。

 その術を良く使うことで知られる、ラルヴァと同じ色の肌を持つ彼の種族。
 薙いだ刃の感触が、狙いたがわず見えない敵ののど笛を切り裂いたことを伝えたその時、すでにその確信は抱いていたのだが。
 できれば外れていたほしかった確信なのだが……
754闇の影に潜むもの:03/04/27 19:16 ID:Nxoy33fN
「やっぱり、帝国軍。共和国の首都で、公然と活動するなんて……」
 呆れたように、琴音が呟いた。
 容易く隠身術を破られたことで、欺瞞は無意味と悟ったのか。
 琴音の視線の先に、公然と姿をさらした二人のダークエルフ。
 そしておそらくその二人を指揮官とするのだろう、人間、オーク、ゴブリン、ドワーフ、相容れないはずの雑多な種族で構成された、十人ほどのならず者。
 いや、ならず者などではない。立ち振る舞いを見れば彼らが十分な訓練を受けた兵であることがすぐに知れる。
 公然と抜き身を引っさげ、魔術を警戒してか、一つところに固まらず、しかし相互に支援できるような距離を保って展開している。

 人間の町に潜むには、あまりに目立ちすぎるその一団。
 だが、この路地裏にはあまりにも自然に溶け込んでいる。
 無理もない。佐祐理たちは知らなかったが、ここは帝国移民、特に亜人の多く住まうスラム街。
 共和国の中の異国、レフキーの中の異郷、スラムの中の魔窟。

 いかなる異相の者でも自然に風景に組み込むこの街区で、晴香や琴音、そして今の川澄舞たちのような『まともな』装束の者こそむしろ異様な存在だ。
 街区の空気が称える昼も夜も変わらぬ闇、その中に多くの帝国の第五列が潜む―――そんな噂は前からあったし、おそらく事実だろうと誰もが悟ってはいた。
 無論、共和国の王宮や軍部とて例外ではない。
 知っていても、まったくの異界と化したこの街区に手が出せなかった……ただそれだけのことだ。

(計算外ね……)
 ぼやきつつ、晴香は壁際に無造作に積み上げてあった木箱を力任せに蹴り崩した。
 がらがらと物音を立てて地に落ちた木箱から内容物が毀れだし、地に広がった汚物がたちまち強い異臭を放ちだす。
755闇の影に潜むもの:03/04/27 19:17 ID:Nxoy33fN
 まったく、計算外のことだ。
 舞の身柄を保護するのに帝国や共和国と争うことがあるのはある程度予想していた。
 秘宝塔の村で見た両者の荒っぽい行動を見て、予想は確信に代わってもいた。
 だが、まさか、共和国の首都で剣を交える相手が帝国の部隊だとはさすがに彼女の想像力の限界を超えている。
 
 この街区のこの路地は、最初から封鎖された場所だったのだ。川澄舞を誘い込むため、誘い込んだ彼女を取り逃がさぬため、そして外からの、つまり共和国の干渉を断ち切るために。
 ふらふらとこの場に迷い込むような者は、問答無用で追い返される。
 やってくる者のうち、自分たちのようにあからさまにワケありの者は、情け無用で切り殺す。そんな手はずだったのだろう。
 こちら側を固めていたのが十一人、となると多分反対側の路地にも同数ほどは兵を伏せているはずだ。

 少なく見て、敵は二十名。それも先の山賊どものようなチンピラなどではない。
 天下にとどろく軍事強国、レザミア帝国の正規軍人。
 ちょっとどころではない、かなりの厄介ごとを抱え込んでしまったらしい。軽くこめかみを押さえ、ため息をつく。

 そのため息は一度途切れ、しかしすぐにより深く、より重い二度目へと続いた。
「晴香さん……あまり、道を汚さないでください」
 背中越しに聞こえる、非難がましい琴音の声。
 今から戦場とすべき場所の不潔さを嫌ったのだろう。そういえば琴音は良いとこの育ちだっけ、とどうでも良いことが脳裏をよぎった。
 先ほどまで傍らにいた彼女は後ろへと下がっている。
 前衛に剣士、後衛に術師。それだけなら順当なポジションだ。
 琴音が晴香に背中を預けるのではなく、目前の敵に向けて術を練っていたなら、の話になるが。
「……仕方ないじゃない、一応、多勢に無勢なんだから」
 まずいかな。渋面も焦りの言葉も、すべては胸の奥に押し込められる。
 向けられた抗議に軽く肩を竦めるのは、つくろわれた演技に過ぎない。焦慮というどんよりとした雨雲が、急速に心の中を覆いつくしてゆく。
 振り向かなくとも、事態は掴める。
756闇の影に潜むもの:03/04/27 19:21 ID:Nxoy33fN
 琴音の反応と、背後に現れた鮮烈な殺気。
 数と質、そのいずれも正面の敵とさして変わらない。

 二対二十。絶望的にも思える数。
 しかし、その戦力比は、二人になんの恐れももたらさない。
 獅子が豺狼を恐れる必要などどこにもないのだから。

 彼女たちの抱く焦慮の理由はただ一つ。 
 地面に転がる木箱を理想的な位置―――前方から迫る敵の動きを妨げるようなポジション―――に蹴り飛ばし、晴香は背中越しに一瞬の視線を保護対象へと向けた。
 庇い、庇われる少女たちは先ほどの姿勢からほとんど動かず、悠然と近づく女と鬼とを睨みすえている。
 相手の駒をいくつ倒しても、こちらのキングを取られてはお話にならない。
 視線を戻し、居並ぶ敵手の顔を一瞥した晴香の双眸がすっと細められた。
 その口元に、薄く笑みが浮かぶ。
「チェック・メイトになる前に……なんとかしなくっちゃね」

【巳間晴香 前門に虎】
【姫川琴音 後門に狼】
【まいさゆ 鬼が内ー】


 ども、Uスレの1です。>>674-676の遭遇のリレーになります。
 未だに帝国の女の正体わかりませんなw
 誤字脱字、流れにおかしなところがありましたらご指摘くださいまし。
757名無しさんだよもん:03/04/28 00:28 ID:uz2fvoxo
おお、新作!しかも二つも。

> 狂人の正義
妖精さん乙(w 久々の瑞希佳乃組ですか。
まあ、事態は進展無し、とりあえず状況の確認という感じですかね。

> 闇の影に潜むもの
ダークエルフキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
いや、やっぱりこの手の世界観では彼らは便利ですな。
迎撃側のレベルの高さも暗示できるし。
758名無しさんだよもん:03/04/28 10:08 ID:09JMEa45
ダークエルフつまんね。
お手軽悪役ですか。
759名無しさんだよもん:03/04/28 21:49 ID:zODR2e5T
お手軽悪役って意味わからんが。
Uスレ氏乙。久々の投稿だねw
帝国の女の正体云々は、もう誰か決めちゃっていいんじゃないかな。
出した人がまだ見てるんならともかく。
760559 一部修正:03/04/29 00:34 ID:Dbl4aLQW
「ふぃー、やっと着いたわね」
私達がレフキーに到着したのは、すでに辺りがすっかり暗くなってしまった後だった。
「それにしてもこれ。テレポートジャムって凄いのね」
「あの大きな魔方陣、なんでも魔術アカデミーが何十年も前にレフキーに作ってまだ動いてるらしいですよ」
「でもそのアカデミーっていうのでもかなり上の人じゃないと使えないんでしょ?なんでそれを琴音が持ってるのよ?」
「葉子さんが渡してくれたですよ。もう一回しか使えないけど、きっと役に立つって」
「ふ〜ん……なんか裏がありそうねぇ」
巳間晴香と私こと姫川琴音はFARGOというとある宗教団体に所属しているテンプルナイトと呼ばれる者である。
FARGOは表向きは単なる宗教団体だけど、その実、裏では異能力者と呼ばれる人とは異なる力の持ち主を保護する活動も行っている。
私達二人は今回、異能力Aランク分類者、川澄舞という少女の保護の任務を受けたのだが、保護対象が発見された場所から
すでにレフキー共和国に連れて行かれたという情報が入ったため、それを追ってレフキーに行く事にしたのだった。
そこで葉子さんに貰った道具を使って、レフキーの郊外に人知れずある転送魔方陣まで来たのだが……
761559 一部修正:03/04/29 00:34 ID:Dbl4aLQW
街に入った所で晴香さんが提案した。
「とりあえずもう暗いし、今日は宿屋で一泊して、川澄舞の捜索はそれからにしましょうか」
そういうわけで私達はまず旅の疲れを癒す宿を探す事にした。
「でも一晩眠ったら気合入れて探すわよ」
「はい、わかってます」
「見つけたらなんとしても説得して、場合によっては力ずくで引っ張っていくわよ」
「え……強引ですね?」
「こうなったら意地よ!私の一日が無駄に終わったなんて事になるの、我慢ならないわ」
と、なぜか一人憤慨している晴香さんに、私は長い間の疑問を問い掛けてみる事にした。
「晴香さん」
「んー?」
「宗団……いえ、郁未さん達はどうして私達みたいな人達を保護して、力の使い方まで教えてくれるんですか?」
「あれ?琴音をFARGOに連れて行く時に言ってなかったっけ?」
「異能力者を狙う者から守ったり、力の暴走を防ぐため、でしたよね?」
「なんだ、知ってるんじゃない」
「いえ、そういう事じゃなくて。なんで宗団がそういう事をしているのかって事です」
「そっか……琴音にはまだ話してないんだ」
晴香さんはそう意味有り気に呟いて、続けた。
762名無しさんだよもん:03/04/29 00:37 ID:Zg4h3Pjy
>758
個人的にはダークエルフ等=悪役って、その考えが少々引っかかるかなーなんて。
いいですか? その意識は黒人蔑視がベースとなっていてですね、そのような思想は……。
あー、なんですか、長くなりますから割愛しますが、つまり彼らをあなたの言うような
お手軽な悪役として扱って欲しくないと言いたい訳で。
なんていうか、帝國側なりの正義というか、大義名分というか、
あの二人を襲撃するだけのそれなりの理由が作ってあるんです。多分。
ダークエルフその他亜人種達が積極的に動くだけの理由が。
英雄がどうとか戦争がなんだとか、そんな我が侭みたいな理由でなくて、別の、
国の為にだとか種族の為にだとかの、言ってしまえばプロパガンダが、あって、欲しいな、と。
763名無しさんだよもん:03/04/29 00:37 ID:Dbl4aLQW
長らく放置してスマソ。
一応問題の>>559の修正版うぷ。
とはいえなんの説明にもなってないのでこれを伏線にして、もう一つ二つなんか書きます。
迷惑かけちゃってホントスマソ。
764名無しさんだよもん:03/04/29 00:37 ID:rPgu776g
つい最近このスレを見つけました。
始めから読んで気がつけば1日で此処まで読んでしまいました。

このスレに投稿されたSS職人さん、絵師さん、編集サイトさんに
最上級のありがとうを。

とは言っても、ど−も最近失速気味ですね。
SSなんて書いた事の無い俺ですが、
書いてみようと思います。

さし当って、誰か過去スレにあった「地図」を保管されている方はいませんか?
ちょっと地理関係が頭の中でこんがらがってしまったので。
765名無しさんだよもん:03/04/29 00:41 ID:Zg4h3Pjy
おっと、割り込んでしまった。すんません。
修正作業お疲れです。これで、それ以降を展開しても問題なくなる、と。
766名無しさんだよもん:03/04/29 00:53 ID:rl5BkUbM
テレポートジャム_| ̄|○

767Uスレの1:03/04/29 01:19 ID:b+1t8dtj
兵隊さんと偉いさんが考えてることは一緒とは限らないのでつ。
亜人たちの自由意志もまた然り。

などと適当なことをのたまいつつ、559氏乙でつ……テレポートジャムてw
お味のほうはどうだったのでしょうかw

しかし、地図ですか。
あれ、クラッシュするまではHDDの中に入ってたのですけどねー……(遠い目
どなたかお持ちでしたらうpしていただければ、サイトに掲載いたしますが……
768名無しさんだよもん:03/04/30 04:23 ID:au9gRr9T
Uスレの1さん、今更勝手ですみませんが、編集サイトの話数にして242話の、
>それじゃ、村から馬でも借りてさっさとレフキーに行きますかっ」
この一文から『村から馬でも借りて』の部分を削除してくさい。
誰も気付かない一文のようでしたし、どうやらテレポートジャムを使ってレフキーに行くのが本決定みたいなので。
769名無しさんだよもん:03/04/30 07:23 ID:uUlHTc32
魔術アカデミーの偉い人しか持ってないって書いてあるけど。
770名無しさんだよもん:03/04/30 23:07 ID:x0Zh4J2A
GW期待sage
771名無しさんだよもん:03/05/02 01:40 ID:ivmOVOTI
GW期待sage
772おだやかに:03/05/02 05:51 ID:y7QrS31q

 かくしてみさきと楓は青の錫杖へと踏み入った。
 中に入ると、誰もいなかった。気配が無いのである。普段の喧騒を知っている者なら、
「?」
 である。
 不思議に思いながらトコ、トコと規則正しく歩いてみる。異様な静けさの中を一人、歩く。
「あらあら、これは珍しいお客さんですね」
 憶えのある声。女主人は来客の気配を敏感に察知し、迎えるべく奥から出てきたらしい。けれど、隠し切れていない怒気が、敏感な二人に似たような感想を抱かせる。

(怒ってる……)
(怒ってますね)

――入る前に気付くべきだったな、と苦い笑いを噛み殺しながらみさきはカウンター席に腰を落ち着かせた。


「それで――今日はどういったご用件かしら」
「うん、このお店の味が、懐かしくなってね」
 その言葉に嘘はない。何故なら数あるレフキーの酒場の中から青の錫杖を選んだ理由がそれだったからだ。
 秋子は軽く微笑むとすぐに作りますからね、と言って手際よく動きながら黒猫に尋ねる。
「楓ちゃんはどうしますか?」
 猫の姿のままで、顔を背ける。
「残念ですが……仕事中ですから」
 その返答に真面目なんだね、とこちらも残念そうにみさきが呟いた。仕方が無い、その真面目さも彼女の良さでもあるのだから。
「そうですか。久しぶりに楓ちゃんの早食いが見られると思ったのだけれど、残念ですね」
 茶化すようなその言葉に、楓は猫の姿のまま、顔を俯かせてしまった。それが人の姿であれば、恥ずかしげに俯く少女が見れていたのだろうか。
773おだやかに:03/05/02 05:53 ID:y7QrS31q

 そうこうしている内に次々とみさきの前に料理の皿が並べられる。
 喜色満面を見事に浮かべるみさきから、楓は飛び降りる。

 流石に食べにくいだろうとの配慮と、ここでは仕事ができないという見切りをつけたのだ。
 昼間にちょっとした騒ぎがあったコトは楓も既に知っていたのだが、詳細までは流石に判らなかった、が。外の鼠と秋子の機嫌の悪さで大体察しはついた。そして、それをわざわざ秋子に確認するようなバカな真似は――楓にはとてもではないができなかった。
 この様子では暫くは客はこない――少なくとも外の鼠が片付くまでは。常連客なら尚更入りにくいだろう――それが楓の結論であった。

 降り立つ物音さえ響かせずに着地して、そろそろ失礼しますね――と、声だけを響かせる。
 みさきは、その声に体ごと振り返り、
「もう、行っちゃうんだ?」
 と、僅かに驚きを込めて言った。
「ええ、すみません。ほんの少しの間しか、ご一緒できなくて」
「ううん、気にしくていいよ」
 慈しむような、微笑。黒猫は、その瞳を限界まで見開く。――それは、数秒にも満たない一瞬の隙。
 楓が振り切るように踵を返す。その後身に、もっとゆっくりしていっていいのよ――と秋子が言う。
 その言葉に釣られて思案してみる。最高の料理が所狭しと並ぶ中。やはり食べる訳にはいかないので、それを眺めるだけの黒い、猫。
 ああ、そんな――

「――そんな酷な事はないでしょう」
 そんなさよならの言葉を呟いて、楓は青の錫杖を去る。みさきは黙ってその猫を見送った。

 例え、その猫の姿が見えなくても。
774おだやかに:03/05/02 05:54 ID:y7QrS31q

               …

 それからみさきは料理が冷めないうちに、いただきますの挨拶をして食べ始めた。
 品揃えは、秋子にお任せである。作る本人がどのような状態であろうが、大変美味しい料理の数々であった。
 清楚な顔立ちを子供のように輝かせながら食べるその様が、万言にも勝る賛美を秋子に送っていた。
 そうして軽めの食事を――無論、彼女の常識の中での表現だが――終えて、赤色の液体が満ちているグラスを眼前で弄びながら、彼女は考える。
――さて、そろそろだろうか、と。
 二時間程度で帰る、と告げた以上あの鶴来亭には一度戻らなければなるまい。
 正直、気は進まないのだが。

 ゆらゆらとゆれる、ちいさなみなも。よせてはかえす、ちいさななみ。
 みさきの眼前で繰りひろげられている筈の、空想のイメージである。

 そう揺れる心も揺らぐ心も――己に迷いを生みだすだけなのだ。
 眼前に水面と波を作っている筈の液体を一気に飲み干し、みさきはごちそうまの挨拶と勘定を済ませ、青の錫杖を出た。
 その立ち去る間際、少女のような――声音からして十代の――声が鼠の処理が終わりました――と、秋子に報告する声が聞こえてきた。
 これでお客もすぐに集まるだろう――と、みさきはほんの一瞬思い、それから夜の街を進みだした。
 踏み出す勇気に迷い無く、自分の信じた道を歩きながら。
775おだやかに:03/05/02 06:02 ID:y7QrS31q
【川名みさき/鶴来亭へ?】
【柏木楓/他の酒場へ】

お話としては「レフキーの夜」の続きです。
鶴来亭の方はどうなるんだろうか……
776名無しさんだよもん:03/05/03 19:28 ID:UPAf9C4o
(´ー`)y━・~~~
777名無しさんだよもん:03/05/03 20:35 ID:OddXz6MY
お、珍しく順調に新作が出てますな。
時間的には北川組帰還前ですか。
この二人の組み合わせ、なんかいいなぁ。
しかし、みさきはこれから大変そうだ。
778みさきと雪見のそんな関係:03/05/05 01:31 ID:u4/srS/2

 七瀬達の乱入によって水を注された格好になった雪見は、わざとらしく溜息をついた。
「……私とみさきは、この国の端っこにある、小さな田舎町の出身なのよ」
「ふぅん」
 どこか投げやりに、雪見は間をたっぷりとって、ゆるゆると話しはじめる。
 智子自身、みさきと何度か組んで仕事をした事はあったが、彼女の素性まで知ってはいなかった。
 事実、みさきに幼馴染の親友がいるなんて、今初めて聞いたのだ。
 傭兵の間にはいくつかの決まり事があって、その内のひとつに、相手の過去を詮索しないというものがある。
 智子自身は傭兵ではないものの、みさきが自分から語らない以上、あえて聞き出すような話ではない、そう思っていた。
 とはいえ、風変わりな傭兵であるみさきの素性に、興味が無いと言えば嘘になるだろう。
「子供の頃は、まるで姉妹みたいにして仲良く育ったんだけどね……
13歳の時、急にみさきが、冒険者になりたいなんて言い出したのよ。
正直言って……冗談じゃないと思ったわよ。
そりゃあ、最近あの子がいやに熱心に剣の修行をしていたとか、旅に必要な道具を集めていたとか…
そういうそぶりは見せてたけど、まさか本気だなんて思わなかった」
「それで、あの人を家に連れ戻すつもりなんか」
 足を組みなおし、眉を片方上げた智子は、胡乱げに雪見を見た。
 雪見がイエスと答えたら、そのまま酒場を出ようと思った智子だったが、意外にも彼女は首を横に振る。
「まさか。そりゃ、家に連れ戻せたらそれに越した事は無いけれどね」
「じゃあ、何が目的や」
「連れ戻しに」
 無言のまま席を立って、出ようとする智子に構わず、雪見は言葉を続ける。
「なんたってあの子、借金まみれなんだもの」
「………はぁ?」
 意外な雪見の言葉に、智子は思わず立ち止まって、変な声をあげた。
779みさきと雪見のそんな関係:03/05/05 01:32 ID:u4/srS/2

「借金まみれ……? あほ言いなや。あの人ほどの腕があったら、よほどの借金で無い限りすぐ返せるやろが」
「そうね。本人に返す気があれば、の話だけど」
「……踏み倒す気、って事なん?」
「さぁ? それも含めて、本人にきっちり聞きたいんだけれどね」
 テーブルの上の料理を口に運ぶ雪見を、智子は難しい顔で凝視する。
「……参考までに聞きたいんやが、みさきさんに金貸したん、どこの高利貸しなんや」
「なに、立て替えてくれるわけ?」
 面白そうな顔をする雪見に、智子は不機嫌そうに唇を尖らせた。
「そうやない。ただ、盗賊ギルドのマスターと知り合いなんや、よほどの金貸しでもない限り……?」
 そこでふと違和感をおぼえ、智子は雪見の顔を見詰めた。
 雪見は人差し指を伸ばすと、ひょいと自分の胸を指差す。
「金貸し」
「……ひょっとして、貸したんあんたかいな」
 どっと緊張感が吹き飛んで、智子は拍子抜けした顔になった。
「あの子、昔から大食いだったからね……それに、冒険の出発資金も、ほとんど私から巻き上げてったのよ」
 智子はこめかみを押さえ、頭痛を堪える様にうめいた。
「なんや、自分があほらしくなってきたわ……」
「というわけで、教えてくれるでしょ、みさきの居場所」
「……悪いけど、私も知らんのや。さっき出ていったばっかりやしな」
 智子の返事に、雪見は大きく息を吐き出した。
「はぁ……けどあなた、みさきのパートナーしてるんでしょ。じゃあまた戻ってくるまで、待たせてもらうわ」
「……好きにし」
 投げやりにそう言って、智子はぐいっと酒を煽った。
780期待外れ:03/05/05 01:35 ID:u4/srS/2

 隣の話が一段落した頃には、すでに七瀬と浩之は、あらかた料理を胃袋に詰め込み終えていた。
「ふぅ……食った食った」
「初音ちゃん、また料理が上手になったわね」
 満足げな二人に笑みを返しながら、初音はぱたぱたと皿を運び回っている。
 すでに夜もかなり過ぎている為、鶴来亭の中はかなりの人でごった返していた。
 店主の千鶴も、耕一の方も、すでにこの場にはいない。
「……う」
 急にがくん、と頭が崩れ落ち、浩之は慌てて手で支える。
「眠い?」
「あ……まぁ……」
 ほとんど寝る寸前の声音で、浩之は呟いた。
 いくら身体には自信があるとはいえ、ただの一般人には、ここの所の冒険は辛すぎただろう。
 無限の体力、とあだ名される七瀬はともかく、浩之の体力はすでに限界に来ていた。
 浩之がそのまま、机に突っ伏してしまったのを見て、七瀬はちょいちょい、と片手で初音を呼びとめる。
「初音ちゃん、まだ部屋空いてる?」
「えっと……ごめんなさい、もう全部埋まってて……」
 その時、急にどこからともなく耕一が現れた。
 何やら顔がげっそりしていたが、それでも七瀬に愛想を振るう。
「部屋を探してるのかい? だったら、俺の部屋を使っても構わないよ」
「えっ、いいんですか?」
「構わない、構わない」
「良かった。じゃあ、明日の朝までお願いします」
「そうか、それじゃあ……」
781期待外れ:03/05/05 01:35 ID:u4/srS/2

 と、さっそく自分の部屋に案内しようとした耕一より早く、七瀬はぐったりしている浩之を抱かかえた。
「はい、これお願いします!」
「………へ?」
 なんとも間抜けな顔になった耕一を見て、遠くで初音がくすくすと笑う。
「あ、七瀬さんは……」
「あたしは泊まるアテがあるので。で、浩之をお願いしますね。お金は明日払いに来るんで」
 七瀬はそれだけ言うと、さっさと浩之を耕一に持たせ、自分は背を向ける。
 ぐっすり寝こけている浩之を腕に持ったまま、耕一は呆然と呻いた。
「……どうすればいいんだ」


 お金を払い、鶴来亭を後にした七瀬は、とたんに鋭い瞳を夜の闇に向ける。
 家々や宿から漏れる灯りが、夜の街角を照らしていた。
 しかし、零れ落ちる小さな光は、かえって隙間に滞る闇を深める。
 傭兵としての勘が、たった今も自分を見詰めている者の存在を、教えていた。
「さて、と……」
 元々、追っ手を巻けるとは思っていない。
 むしろ本題は、足手まといになりがちな浩之を、どこか安全な場所で休ませる事にあった。
 七瀬は自分を見詰めている存在を重々承知しながら、ゆっくりと志保の家に向けて歩き出す。
(ふん……来るならきなさいよ。相手になってあげるわ)
 殺気も敵意も無いその気配は、普段なら気付かないほど、細く沈められていた。
 だが、移動に費やす僅かな動きと、相手を知っているという警戒感から、七瀬はその気配を見抜き出す。
 相手は恐らく、あの黒騎士……ただ一人。
 ならば取る作戦は、おびき出して捉える、そのひとつに限っていた。
782名無しさんだよもん:03/05/05 01:37 ID:u4/srS/2
【智子 雪見 話は一見落着】
【浩之 鶴来亭の耕一が使ってる部屋に】
【七瀬 鶴来亭を出て、志保の家に】


続きもの&短い話だったので連続で。
783名無しさんだよもん:03/05/05 02:57 ID:eGOOWdWq
新作乙〜。
二組進みましたか。とりあえずみさきの借金苦(wが明らかに。
伯斗も粘ってるようだし、どちらも続きが面白そうですな。
しかし耕一は一体何を期待していたのやら。
784名無しさんだよもん:03/05/05 22:49 ID:vDSeo61j
おお、久々に順調。
・・・平日忙しい書き手さん多いんやね。
お仕事頑張って下さい。
785名無しさんだよもん:03/05/06 23:24 ID:4jpigFIC
お、次は七瀬対伯斗とみさき対雪見ですか。期待期待。
耕一は災難というか自業自得というか……
786名無しさんだよもん:03/05/07 22:15 ID:K43IA5qE
大食いと早食いの対決は不発か・・・
787名無しさんだよもん:03/05/08 21:45 ID:UruO5Gr1
ま、そういうのは敢えてやらないのも風流かもしれん。
788名無しさんだよもん:03/05/09 02:04 ID:RsFRsVB6
つか、大食いと早食いってイマイチ噛み合わないような・・・
789名無しさんだよもん:03/05/11 15:09 ID:eQVO4SOT
保守
790もうじゅうちゅうい!:03/05/11 22:43 ID:oURJ4qq6
 彼女には、守るべき人々がいた。
 病に伏せる母、ひもじさを表に見せぬ弟妹。
 他の何にもかけがえのない、何に替えても養わなければならない大切な家族がいた。

 養えるのは自分だけ。
 助けを求める相手などいない。
 ましてや、病魔に苦しむ母の薬、今ある伝手を失えば手に入れる術はない。

 だから、彼女は今ここにいる。
 母を救い、弟妹の糧を得るためにここにいる。
 たとえ、それが彼女の望むことでなくても。

 しばらく屋敷を空けると告げ、宮廷に赴いた主の―――かりそめの主の下を離れ、その主に所用ありとの名目で、王城へと潜り込み。
 向かった先は、
 彼女の勤めを果たすため。
 本来の勤めを果たすため。

 もう三年になる。
 彼女と彼女の家族が、住みなれた町を追われてから。

 戦火の中に父を失い、その背中に迫り来る虐殺と略奪に怯えながらレフキーの城門に逃げ込んで。
 家を失い、畑を失い、家財道具の一切を捨て、都会に身一つで逃れきた田舎者。
 国境とレフキー街道沿いの数万人が、狂信者に集落を焼かれ都市に逃げ込んだご時勢に、彼女らのような境遇に気を払うものなどない。
 まともな市街に収容されることもなく、他の難民同様スラム街に転がり込み―――そこで迎えた過酷な生活に、母は二年で体を壊した。
791もうじゅうちゅうい!:03/05/11 22:44 ID:oURJ4qq6
 後で思えば、彼女にとっては誰でも良かったんだろう。
 そうでなければ、自分が選ばれた理由は思いつかない。自分と同じ年頃、同じ境遇の娘など、スラムに幾らでも転がっていた。
 街区に踏み入って最初に見かけたそんな娘が、たまたま母の薬を求めて駆けずり回っていた自分だったというだけの話。

 運命の転機ってものなのかな。
 漠然とそう思うことがあった。
 それが良い運命なのか、悪い運命なのかはわからない。
 彼女が薬といくらかのお金、そして彼女の身分には見合わぬ仕事を手にすることができたのと引き換えに、与えられた任務は新たな仕事の新たな主、絵に描いたような好人物である彼女を裏切るという行為そのものだった。

 身分の差、生まれの違い、そんなものに関係なく向けられる柔らかな笑み、暖かな心。
 誰もがこの人の従僕として使えることを喜ぶだろう、かりそめの主はそんな人だった。
 無論、それは理緒にとっても同じこと。願わくば、いつまでもこの主に仕えていたい。それは彼女の偽らざる願い。

 だが……母の病は、侵略者が持ち込んだ帝国の特殊な風土病。
 病自体が希な共和国に、その治療薬は存在しない。
 帝国においてすら高値の特効薬を得る唯一の伝手は、彼女の真なる雇い主たる帝国の女間諜に頼るほかないのだ。

 裏切りは、母の死を意味する。
 薬を手にする術を失う母だけではない。理緒も、弟妹も、無事では済むまい。
 帝国、というよりこの街に巣食うスパイ網は、裏切り者を黙って見逃すほど甘くはない。必ずや刺客が放たれる。
 いや、そもそも自身の素性が発覚した時点で共和国の厳しい詮議も免れないのだ。
 あの優しい主とて、自身を欺き続けたものを庇いはしないだろう。

 良くて、牢獄に放り込まれた後に国外追放。
 悪くすれば、王宮広場に引き出され、数万の市民の前で一家もろともギロチンにかけられる……

792もうじゅうちゅうい!:03/05/11 22:46 ID:oURJ4qq6
(そんなの…………)

 絶対に嫌だ。
 はっきりとした思惟が生まれ、遠のきかけた意識が急速に現実に戻ってくる。
 なんとかしなくちゃ。だめだ、だめだよ。
 このままじゃ危ないかも。
 っていうか、絶対に危ない。うん、なんとかしないと絶対に危ない。

(……で。何が危ないんだっけ?)
 フリーズした思考がそこまで全力疾走でカムバックところで、急速に色を取り戻した視界の一転点が警鐘を鳴らした。
 トップスピードからフルブレーキ。視線がその鈍色の点に集中し、焦点が間近に再設定されてぼやけた輪郭が収縮する。
 そして、その物体の正体に理解が及ぶと―――再び頭と体がフリーズした。

「貴様……何とか言ったらどうだ?」
 理緒の視線を絡め取った鉛色、その向こう。
 敵意が二つ、こちらをねめつけていた。
 彼らが理緒の鼻先に突きつけたのは、屋内での戦闘を考慮した柄の短いスピアの穂先。
 募る苛立ちを示すかのように、じりじりと迫るその鋭利な物体を凝視する理緒に弁明を試みる余裕もない。
「釈明もなしか? ……いい度胸だ」
 吐き捨てるように、衛兵の片割れが言った。
 視界の片隅で何かが跳ね上がった。ガツンという衝撃がこめかみを打ち据え、手にしたトレーから温かいスープと腸詰がぶちまけられる。
「あぐうっ……ぎゃっ!?」
 侍女の沈黙を無視、反抗と受け取ったのだろう。
 たった今汚された石床に倒れ伏す彼女の腹に、追い討ちとばかりに石突が叩き込まれた。くぐもった悲鳴とともにびくんっ、と理緒の触覚が跳ね上がり、そして全身から力が抜ける。
793もうじゅうちゅうい!:03/05/11 22:47 ID:oURJ4qq6
 あまりにもあっけない様には、煮立った衛兵たちの嗜虐心を満足させるには程遠かったものらしい。
 人気のない廊下に、なおも鉄棒が柔らかい肉を打つ音、口汚い罵声、そして悲痛な苦鳴が数度にわたって響く。
「……この、このっ! くそったれの、帝国の第五列め!」
 四度、五度、力任せに打ち据えて、なおも手を休めずに鋼の柄を振り下ろす。
 侍女はすでに身じろぎもせず、もはや悲鳴もなく、あちこちに青痣と出血を作って転がるばかり。
 それに気がとがめたというわけではない。ただ、単純な事実を自覚するのがわずかに片割れより早かった。
「お、おい……こんなことしてる場合じゃないぞ。隊長に連絡しないと」
 慄きもあらわに肩を揺する同僚の言葉に、なおもスピアを振りかぶっていた兵が、凍りついたようにその動きを止めた。
「そ、そうだな……」
 がくがくと、壊れた人形のように首を縦に振る……そして、しばし考えた。
 ―――読み書きがやっとの男の頭でも、このままだとどうなるか、ぐらいは流石にわかる。
 自分の想像にすっかり怯え、先ほど縦方向に運動したその首を、今度は横へと小刻みに振った。
「で、でも……せせ責任問題になったら、どうする?」
「このまま放置しておくほうが、よっぽど責任問題になるだろ!」
 泣きそうな声でわめく同僚をどなりつけ、彼はあわただしく腰を屈めた。
 侍女の襟首に手を掛け、手荒く力任せに引き起こす。

 そして槍を床に置き、腕を彼女の両脇に通したとき、誰かがすっと傍らを通り過ぎた気がした。
(何をうろうろしてるんだ―――)
 手を貸せばいいものを。何をしようとしているのか、見ればわかるだろうに。
 日ごろバカだとは思っていたけど、ここまでとは。苛立ちの余り思わず奥歯を鳴らし、彼は前方に回りこんだらしい同僚へと視線を上げた。
「バカやろう、手伝え。早く、詰所に戻る……ぞ……?」
 罵りの言葉が、中途で掠れてきれぎれとなる。
 ほんの少し、視線を上げたところで彼の脳裏に警報が鳴り響いた。
794もうじゅうちゅうい!:03/05/11 22:49 ID:oURJ4qq6
 同僚の兵士は、もう三十歳を超えた自分と同じむさいおっさんだ。
 体は無駄にごついし、顔はもっと無駄にいかつい……っていうより、自分よりも格段に野卑だ。
 もちろんそんなワケだから、足なんかは丸太とは言わないまでも、太目の枝ぐらいには太い。それに、毛も濃いし。

 つまり、ということは、だ。

 嫌な汗が、兵士のこめかみを流れ落ちた。
 今、自分がわずかに上へとずらした視線。
 その視界に飛び込んだ、誰がどう見たって若い女のものにしか見えない生足は―――誰のものだ?

 どさり、と重い音を立てて、彼の背後で何かが倒れた。
 何が倒れたのか、彼は確認しようとは思わなかった―――あまりにも、ソレが何であるのかの予測が簡単であったから。
 恐れ、ためらい、躊躇して、しかし何かに突き動かされるようにして、彼は顔を頭上へと向けた。
「えへへ……」
 そこにあったのは、確信と寸分たがわぬ女の顔。
 その視線の先に、まるで聖書を奉る聖女のように、分厚い何かの書物を高く高く振り上げた女が一人。
 だが、その力の抜けきった満面の笑みが、天上の神ではなく眼下の自分に向けられていることに気づいて―――そして、その本の見るからに硬い背表紙に、赤黒い染みが付着していることに気づき、彼は声にならない悲鳴を漏らす。
「じゃ、いっくよー♪」
 槍に手を延ばす間もない。
 空気の層を穿つ豪快な音がして―――兵士の思考は、永遠に絶たれた。


<糸冬>
795名無しさんだよもん:03/05/11 23:44 ID:eQVO4SOT
↑何これ?
796Uスレの1:03/05/12 00:25 ID:dJIzH6Gc
ぐあ。
あとがきどっかに誤爆したか?(汗

と、とりあえず場繋ぎ事故リレーってことで……(汗
797名無しさんだよもん:03/05/12 01:25 ID:Wd51Qj5N
いやあこう言う過去を絡めた話はなんというか広がりが出来る気が
して個人的には好きですぜ。

それはそうとあとがきは結局なしっすかw
798名無しさんだよもん:03/05/13 01:09 ID:F5EdO4ds
新作乙。
ほう、そっちで来ましたか。
しかし、理緒、こんなとこでも不幸。

ところで、その後書きがどんなだったか、
ひじょーに気になるんすけど・・・
799名無しさんだよもん:03/05/13 22:26 ID:Ku5CkXja
う〜ん。松本はいったい何を考えてるんだろうか?
相変わらず読めない奴。
800名無しさんだよもん:03/05/14 22:13 ID:7yQBnFxj
新作乙〜
801名無しさんだよもん:03/05/16 00:47 ID:sCkbOTyr
保守
802名無しさんだよもん:03/05/16 02:03 ID:6aa4f63l
レフキーにいる面子の時系列がいまいち把握しきれない・・・

大抵は浩之たちが帰還した日の夜または日中で

梓や岩切、あゆたちのパートがその翌日?
803名無しさんだよもん:03/05/16 04:51 ID:yR4slZmH
梓はわからないけれど、岩切志保あゆ組も帰還した当日。時間不明。
ってゆーか過去ログみて気付いたけど、久瀬がわずか10分の間に消滅していた。
話は飛躍するが、松本のは帰還した数日後の話でいいのか、それとも捕まった当日か翌日ぐらいなのか。いつ脱走したのかで梓関係の時間軸もある程度縛れると思う。
って、理緒……トレー二回落としてないか? 違う場面なの?
ついでに補足すると瑠璃子由宇郁未組は秘宝塔組が帰還した数日後の話で、今現在の北川も数日後が現実的。北川の独白も数日経過しているような口調だし。
804名無しさんだよもん:03/05/17 20:32 ID:VRn4nSOX
 トレー二回落とし……自分で書いたのに……首括ります(喀血
 時間軸、一度立ち止まってきちんと整理するか。
 まだ曖昧にしておいて、これからの流れを見ながら作中で理屈付けていくか。
 考え時かもですな。

 てか、その最大前提として誰か次を(略
805名無しさんだよもん:03/05/18 14:18 ID:LV4Mv/B8
(゚∀゚)
806名無しさんだよもん:03/05/18 14:21 ID:2l7cQVwa
女の子でも安心して買えるよ!
新品アダルトDVDが税込み900円〜!
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807名無しさんだよもん:03/05/21 01:52 ID:vLZJBfMR
結構入り組んでるなぁ。どうやって整理したらいいんだろ?
808名無しさんだよもん:03/05/21 02:22 ID:UKeORzSx
積み重なった矛盾、込み入った伏線。そんなものにウンザリしてはいませんか?
そんなあなたにぴったりの商品を御紹介しましょう。
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809名無しさんだよもん:03/05/22 16:29 ID:LHmjhcZ8
この頃新作が出ないな…。
810名無しさんだよもん:03/05/22 23:19 ID:f9c7HPYi
まぁ、マタ―――――リ、待つ。
811名無しさんだよもん:03/05/24 20:03 ID:yBZZiXgm
うし、久しぶりに点呼行くか。
寒い結果になりそうだがw

書く気まだある香具師ー
812名無しさんだよもん:03/05/24 22:36 ID:1GY2VQRU
書きかけのtxtファイルがあって、たまに情景を思い浮かべたりもするけど、
最終更新が4/27という駄目書き手ならここに……。
813764:03/05/25 00:24 ID:p3QgKGwX
地図待ってま――――――――――……。
814名無しさんだよもん:03/05/25 11:52 ID:ecs6+8vJ
懐かしき挽歌氏が書いたやつだっけ?<地図
悪いが俺は保存してないな。反応がないってことは皆持ってないんじゃないのか?
たしか、川を挟んで東が帝国でレフキーが西だったけ? うろ覚えにつき、もれなくフォローよろ。

確認したら作成日時が5/1、最終更新が5/2というtxtファイルが最後ですな(脱字で死にたくなる)
……書く気は一応残ってるけれど……やる気は微妙な書き手ならここに……
815Uスレの1:03/05/25 18:15 ID:ZcMDrHMR
 やる気はまだまだ……ありますけどー(笑
816名無しさんだよもん:03/05/26 00:56 ID:j+FkOwpS
>>813-814
ごめん、持ってる。
>764の地図の下り読み飛ばしてたよ(;´Д`)

ttp://banaga.axisz.jp/cgi-bin/hakagi/img-box/img20030526005409.jpg
817名無しさんだよもん:03/05/26 02:01 ID:LEdBukBf
うろ覚えどころか・・・…全然違ってた(汗 川は国境沿いだったか。
適当なことはいうもんじゃないな。とにかく提供サンクス。
818764:03/05/26 23:20 ID:2Ai3RiXk
>>816
おおおお、サンクスです。家宝にします。
暇を見つけてちょこちょこ書くぞー。
819名無しさんだよもん:03/05/27 23:05 ID:etSXCqAH
>816
なるほど、こうして見ると確かにレフキーって要衝ですな。
820Uスレの1:03/05/28 01:13 ID:Yginw4vy
 地図ゲトー(ズザー

 次回更新時(多分今週末。続編でてるだろうか?)にうpしまつ。
 でも……いくらか手を加えるべき点もありますにゃ。
 ほわーる、帝国共和国国境地帯の栞たちの故郷から一山(だっけ)の距離にあるのに、地図上反対方向になってますし。
821名無しさんだよもん:03/05/29 08:10 ID:GjxXSiEa
でも……誰が手を加えられるのだろうか? 地図書いた人以外無理っぽいけど……
現状ではあの地図は目安程度に捉えておくしかないかな。
822名無しさんだよもん:03/05/29 12:34 ID:aLiLg0kJ
地図自体、挽歌氏が即興で描いたネタみたいなもんだからね。
そこまでこだわらなくても良いかと。
823名無しさんだよもん:03/05/30 13:45 ID:vh2lDuK6
しかし、アレだな。続ける気がある書き手が四人しかいないとは……
824名無しさんだよもん:03/05/30 17:41 ID:8gxZXP67
んじゃ5人目挙手(-_-)ノ

でもネタが無いんです……
825名無しさんだよもん:03/05/31 00:32 ID:oDpBElzc
……書けない書き手に意味はあるんでしょうか?
826名無しさんだよもん:03/06/01 15:48 ID:HMLit3BN
枯れ木も山の賑わい。完全に氏んでなければ
もしかしたら新芽が吹くかもしれない。
827名無しさんだよもん:03/06/01 18:52 ID:QjycPwa/
http://members.tripod.co.jp/chiaki5555/

栗山千明 小○生当時の発禁写真集。
コラじゃない本物です!!!!
*URLの間違いと、画像のリンクが切れてたのを修正しました!!
(夜中は繋がりにくいかも・・・)


828764:03/06/02 12:17 ID:50BIrUk+
時間的には昼ですが、人生の夜を歩いている紳士淑女の方々、今晩は。
この間地図を欲した者です。
はじめてのSSで、敢えて割物に挑戦します。
では駄文ですが……
829仮面:03/06/02 12:18 ID:50BIrUk+
 闇の中に、幽かな気配。
『宰相閣下。かの者につけている同胞より、報告です』
 窓から差し込む月明かりとテーブルの手元を照らす燭台。帝国宰相ニウェ邸の自室兼政務室を照らす灯りはそれだけである。
 部屋の大多数を占める闇から、何所とも無く声が響く。

「終わったようだな」
 闇から響く声に、手元の書面に達筆な文字を書き連ねつつニウェ言葉を返す。
「何か変化はあったのか?」
 どんな内容かは聞かなくとも、把握はしている様である。
『今の所は、何も』
「そうか、引き続いて監視を怠るな」
 ニウェは幽かに嘲りを浮かべ、丁寧に折り畳んだ先ほどの書面を闇の中へと放る。
 かさ、という、紙特有の着地の音は無い。
『……確かに、承りました』
 これは彼からすれば、さっさと行け、という事なのだろう。
 闇の中の気配は消える。

 ふっ、と燭台の火を吹き消す。これで部屋を照らすのは月明かりのみとなる。
「やはり」
 しかし、窓から射し込む月明かりはニウェを照らしてはいない。
「良い獣には、もっと良い餌を与えねばならぬのう」
 その月明かりでさえも今は雲に隠れてしまい、闇が支配する世界となる。
「クク、クカカカカッ……」
 彼独特の、大気を振るわせるだけの哄笑は闇へと吸い込まれていった。
830仮面:03/06/02 12:21 ID:50BIrUk+
 その哄笑が、この男に届いたかどうかは定かではない。

 燃える街を背に仮面の男が山々の向こうに存在するニウェ邸の方を振り返っていた。
 正確には、その途中に居る犬の様な獣の耳を持つ少女に名を呼ばれたからである。
 仮面の男と少女は野営地のはずれ、燃える街を一望できる場所で対面していた。
 帝国軍の野営地にいるには、少々不相応な少女ではある。
「! アル……っ」
 その少女を見て名を叫びそうになったが、寸での所でその名を飲み込む。
 そこには、自分を義父と慕う少女の面影は無い。

 少女の手には先ほどの書面。
「宰相閣下からお前に、との事だ」
 もう、彼女は『少女』ではない。
「わざわざ、御使いとあろう方が……、恐れ入ります」
 彼女は『御使い』なのだ。
 いくら頭では理解しているとはいえ、
(何故だ……? 何故アルルゥが?)
 心はそれを否定している。

 仮面の男はギクシャクとした動きで、ニウェからの書状を受け取り、それを開く。
(……。…………。
 ……捕虜となった将の処断の為、手勢と共に引き連れ速やかに帝都へ凱旋する事。
 ……手勢以外の兵は、戦後処理と治安維持の為そこに留めておく事。 
 ……捕虜となった兵士はその場に留まらせ、処遇は替わりに送る将に任せる事。
 ……労いの言葉は、無し、か……)
 妙なものを感じつつも仮面の男は書面を折り畳み懐に入れた。
831仮面:03/06/02 12:25 ID:50BIrUk+
 それを見計らい、御使いが仮面の将に声をかける。
「思ったよりも、簡単な戦のようだったな」
 御使いの顔には、元の『少女』が決して浮かべる事の無い、邪な『御使い』の笑みを顔に浮かべている。
「……元々人心の無かった皇でしたからね。帝国に攻め込んだとあれば尚更です。兵の士気も低く、民も我々を歓迎したほどです」
 『少女』と『御使い』のギャップに戸惑いつつ仮面の将は言葉を返す。
 御使いは小さく鼻を鳴らし、
「その皇はどうなった? このみすぼらしい都と共に燃やしてしまったのか?」
 御使いは燃える都を一瞥して訊ねる。
「……いえ、首は討ってあります」
 丁度その頃、想像以上の大きい首に、やれ箱が小さい作り替えろ、やれこの妙な髪はどうする、やれ塩は足りるのか、とか何とか、作業班は四苦八苦していた。
「……御覧になられる、のですか?」
 いくら『御使い』とはいえ、流石にそれには堪えられないのだろう。仮面の将は顔を逸らす。
「いや、あのような醜い物は我とて見たくは無い」
 その言葉に、仮面の将は心なしかほっとする。
「……しかし、あの醜い豚のような皇の事、虚しく意味の無い抵抗をして生け捕りにされると思っていたのだがな」
 呟くような御使いの疑問に、仮面の将が答える。
「……最後の最後で、側近の将が皇の首を持参して我が軍に降ったのです」
 ふっ、と御使いは小さく嘲りを浮かべる。
「ハクオロよ、その将はどこにいる?」
「あちらに。他の捕虜と共に拘束してありますが、お会いになるのですか?」
 その問に答える変わりに、ハクオロと呼ばれた仮面の将が示した方へと御使いは歩み出す。

「御使いよ! 無礼を承知でお尋ねします。エルルゥは如何していますでしょうか?」
 柵の影に消えかかる御使いに問いかける。
 半身だけ振り返った御使いは「知らぬな」とだけ唇を動かし、消えていった。
 その時見えた少女の横顔には、邪な微笑が張り付いていた。
「……トゥクスルさん、すみません。私が、不甲斐無いばかりに……」
 空を仰いでいる仮面の男は誰とも無く呟いていた。

 振り仰いだ空は、焼ける臭いがした。
832764:03/06/02 12:27 ID:50BIrUk+
【ハクオロ:帝国軍の将、階級的には不明】
【ニウェ:ハクオロの監視を指示。ハクオロに関して何かに気付いている様子】
【アルルゥ:ラルヴァ憑き。ハクオロの監視をしている模様】
【エルルゥ:不明】

駄文過ぎてつまらん、というのは初挑戦ということでご容赦を。
ホントになんてモンかいたんだ俺。
こんな駄文でも、ネタの間口が広がるきっかけになればと思います。

 ∧||∧ ホントニマワリニハダレモイナイ。
(  ⌒ ヽ アカイイヌヨウノロープデクビヲツルナライマノウチ。 
 ∪  ノ
  ∪∪
833名無しさんだよもん:03/06/02 12:49 ID:EfNZVx0X



思わず股間にシャブりついてマンコを舐めまくる俺!現役コンパニオンの彼女
http://www.oshioki.net/video.html
834764:03/06/02 13:05 ID:eBEkMSQC
ああああ、なにやってんだ、俺。
>>832に追加します

【裏切った側近の将:不明】

マジでなにやっているんだか、俺。
では吊って来ます
835為すべきこと:03/06/02 23:09 ID:hl6z51Bj

 暴風のごとく斧を振り回す男に、追い詰められ、御堂と矢島は窮地に陥っていた。
(ちっ!ここまでか、せめて武器がありゃあな)
 御堂は舌打ちし、飛ばされたレイピアを悔しげに見やる。
(奴だって不死身じゃあるめえ、矢島の言うように首でも落としてやりゃ、さすがに死ぬはずだ)
 ふと視界の端に何かが見えた。そこに見えたのは反撃の兆しだった。
 勝つ為、何より生き残る為、御堂の脳が高速で答えを求める。
(落とした武器、さっきのスーパー何とか、火、酒……”あれ”が使えるか?)
(倒すのは無理でも、接近戦なら届くだろうし、隙くらいは出切るだろうぜ)

「おい矢島、俺様が合図したら、椅子でも何でも良いから、やつに投げろ」
「え?でも」
「説明してる暇はねぇ、とにかくやれ」
 矢島は御堂を信じた。
「わかりました!」
 言って矢島は、斧で壊された椅子を拾う。
 じりじりと後退しながら機をうかがう。
「今だ!」
「おりゃー!!」
 御堂の合図で、矢島が椅子を投げつける。
「無駄だぁぁぁーー!!」
 斧を持った男は、軽くそれを叩き割り、そのまま向ってくる。
 その顔は狂気と、勝利を確信した笑みで彩られていた。
 その時男の横から、何かが勢い良くぶつかって来た。
836名無しさんだよもん:03/06/02 23:10 ID:AUnwdffe
お疲れー
>【裏切った側近の将:不明】
普通に考えればヤツなんだろうけど……。あえて違うのをいくのも吉
837為すべきこと:03/06/02 23:12 ID:hl6z51Bj

          *          *          *

 高瀬瑞希はこの凶事が始まってから、ずっと店の片隅で震えていた。
 恐怖で過敏になっていたのだろう。小さな物音がして、そちらを見て、そしてギョッとした。
 隣にいた小さな女の子が、コップを投げようとしていることに気づいたからだ。
「な、何してるの。殺されちゃうわ!!」
 言ってその女の子、椎名繭を抱き止める。
「みゅー、おじさんを、助けるんだもぅん」
 そう言った繭は、瑞希以上に震え、目には涙を浮かべていた。
(こんな小さな子まで、戦おうとしている。なのに私は、ただ怯えて震えるだけなの?)
 その瞬間、瑞希の体の震えが止まった。
「おじさんは私が助けるわ。こう見えてもお姉ちゃん強いんだから!だから、そこで見ててね」
 そう言った瑞希を繭は見上げ、こくりと頷いた。

 斧男は御堂達に気を取られている。
 大丈夫、瑞希は自分に言い聞かせた。
 瑞希は気取られないよう、慎重に倒れていたテーブルに手をかける。

「今だ!」「おりゃー!!」「無駄だぁぁぁーー!!」
 三人の掛け声が次々上がり、続いてバキィと椅子が斧に割られる。
 そこへ瑞希がテーブルを抱えて、男に突っ込んだ。
「やーーーーーー!!!」
「ぐがあぁ!?」
 予想だにしない衝撃を受け、男は壁まで吹き飛ばされた。
「なんて力強い、流石は俺の運命の人」
 よくわからない矢島の賞賛。
「あ、あんたなんかに、私やこの子の夢を潰させやしない!」
 言って瑞希は繭に片目を瞑って見せる。
「みゅー♪」
 そして繭はコップを投げつけていた。
838為すべきこと:03/06/02 23:13 ID:hl6z51Bj

          *          *          *

「よくやった、胸のでけぇ姉ちゃん!矢島、急いでさっきの酒か、もっと強いの見つけろ!」
 言いながら、御堂は素早く、落としたレイピアを拾いに走る。
「何よそれ!」「は、はい!」
 瑞希と矢島は、それぞれ非難の声と返事を発する。

 御堂はレイピアを構えて、頭を振りながら起きあがろうとする斧男に向き直る。
「矢島、見つかったか?俺によこせ!」
「こいつは効きまっせ!」
 言って矢島は酒瓶を放る。
 御堂はそれを掴み取り、今度は佳乃に向って叫ぶ。
「さっきのスーパー何とか、もう一回やれるか?」
「スーパー何とかじゃなくて、ファイヤースーパーボールだよぉ」
「どっちでも良い、やれるか!?」
「で、出切るよぉ」
「なら俺に向けて撃ってくれ」
「えぇ!?」
「良いから頼んだぞ!」

 御堂は酒瓶のコルクを抜き、軽く口に含むとレイピアに吹き付けた。
「どうなっても知らないよぉ」
 佳乃は再び、かのりん特製ファイヤースーパーボール(自称)をポピュ〜♪ と発射した。
 その火の粉に御堂はレイピアをかざす。即席の炎の剣の出来あがりだ。
「おおカッコイイ!」「うわぁ君を炎の剣士一号に任命するよぉ」
「何、馬鹿なこと言ってるのよ!」
 矢島と佳乃の場違いな言動に、突っ込む瑞希。
「みゅー♪かっこいい」
 繭もだった……
839為すべきこと:03/06/02 23:15 ID:hl6z51Bj
          *          *          *

「そんなもんでぇえぇ俺がぁぁ倒せるとぉお思うのかぁぁあ」
「思ってるぜぇ」
 にやりと笑い、御堂はレイピアを振るう。だがそれは斧男が、躱すまでもなく届きそうにない。
「なんだそれはぁあぁ、ちっともぉお」
「いいや、届くぜぇ。俺の『火鞭』ならな」
 レイピアから火線が走り、斧男の顔に蛇のように撒きつく。
「ぐわぁ!」
「おら!」
 御堂は間髪入れずに、開いた口にレイピアを突き出す。
 レイピアが喉を突き抜け、首の後ろから刃先が顔を出すと、男はビクンと痙攣した。
 なんと男は、それでも斧を振ってきた。しかしさすがに勢いは落ちている。
「往生際が悪ぃぜ」
 御堂は軽くそれを躱し、腹に蹴りを入れ、レイピアを引き抜く。
 男はそのまま後方に倒れたが、信じられないことに、まだ起きあがろうとしている。
「末期の酒だ。こいつを飲んだら、もういい加減成仏してくれや」
 言いながら、御堂は斧を持ったほうの手を踏みつけて、先ほどの酒を男の口に流し入れる。
 そして手にしたレイピアを、動かそうとして止めた。
「おい、お前ら。後ろ向いとけ」
 意味がわからず、互いの顔を見合わせる。
「良いからこっち見るな。矢島!繭の目を塞いどけ」
(ま、今更って気はするがな)
 全員がそっぽを向いたのを確認して、御堂は燃える剣を男の口に入れた。
 体の内から焼かれ、ついに男は動かなくなった。
 各人が為すべきことを為し、手にした勝利であった。
840為すべきこと:03/06/02 23:17 ID:hl6z51Bj

【男 死亡】
【御堂 炎を操る能力『火鞭(かべん)』】
【矢島、繭、瑞希、佳乃 大変よくがんばりました】

同じく参加させて頂きます。
841名無しさんだよもん:03/06/03 01:34 ID:xTEYCSes
おお、新規書き手さん?二人も?す、すげー。

>仮面
なかなか意欲的な新章といった所ですかね。
とりあえず重要性の割に進みが遅いラルヴァ関連イベントの一つの
方向性として、あるいは少し前に話題になった帝国における亜人の
立場の問題なども含め、結構大事なエピソードになるかも。

ところで、うたわれ勢、どうしますかね?前回の議論からは時間が
たって知名度も上がったことだし、本格解禁します?とりあえず
今回新出のメンバーについては、この書き手さんにある程度責任を
持って進めてもらえるのであれば問題ないとは思いますが。

>為すべきこと
こちらはオーソドックスなリレー、瑞希佳乃組とりあえず危機を脱出の
巻ですな。ここまでに比べると多少展開が早かった気もしますが、
一つ一つちゃんと決着をつけていくことが当リレーに一番大事なことと
思えば、むしろ順当かと。しかし、彼ら自身にとっては、これはむしろ
何かもっと大きなことの始まりなわけで、その辺り次が楽しみ。
842名無しさんだよもん:03/06/03 01:39 ID:K9dZ3yKM
>>840
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1039184347/373
見覚えありますよね?

……次は熱血かのぅ(w
843剣聖:03/06/04 01:55 ID:tAuYOdJX

 ここは鶴来亭。レフキー街道を旅してきたものが、先ず最初に目にする宿である。
 客の入りもそれなりのようで、つい今し方も、髪を左右でまとめた少女と、異国風の衣装を着た
 黒髪の少女が、入り口ですれ違ったばかりである。
 その異国風の衣装の少女が鶴来亭に入ると、中にいたこれも少女の二人組が声を掛けてきた。
 入って来たのは川名みさき。二人組は神官衣を着ているのが保科智子、剣を背負っているのが深山雪見である。

「いらっしゃいませー。あ、さっきのお姉ちゃん」
 鶴来亭の看板娘兼調理人、柏木初音が愛らしい笑顔で入って来た客を出迎える。
「戻ってきたよ」
「えーと、あそこで二人が待ってるけど……」
 初音はそこまで言って、みさきに近づいた。
「お願いだから、お店壊さないでね」
 そして耳元に囁いてトテトテと奥の厨房に戻っていった。

「お帰り、みさきさん」
「ようやく会えたわね、みさき」
 智子と雪見は、それぞれの言葉で、みさきを迎えた。
「ただいま智子ちゃん。久しぶり雪ちゃん」
 何故かみさきは、そう言って立ったままでいる。
「座らんの?みさきさん」
「え〜と、雪ちゃん怒ってる?」
「どうして?それより久しぶりに会ったんだもの、ゆっくり話さない?」
 雪見はにっこりと微笑んで、隣の椅子を引く。
 気乗りしない様子で、みさきは勧められた席に座った。
 すると椅子に腰掛けた途端、雪見の手がみさきの顔に伸びて、頬をムニュッと摘まんだ。
「いひゃいよゆひひゃん。ひゃっぱりおこっへるよ〜」
 みさきが情けない声を出す。
「梃子摺らせてくれたわね、ようやく捕まえたわよ〜」
「あんたらほんまに、久しぶりに会うた親友同士かいな」
 名の通った剣士二人には到底見えない、その感動的な再会に智子は思わず洩らす。
844為すべきこと:03/06/04 01:55 ID:tAuYOdJX

          *          *          *

「で、一体この人に幾ら借りたんや?みさきさん」
 顔を撫でるみさきを見ながら、智子はさきほど聞いた借金の件を問い質す。
「え〜と」
「それは良いわ」
 借金の額をみさきが答える前に雪見が遮った。
「なんでや?そのためにわざわざ、みさきさん捜しとったんやろ?」
「勿論、後でちゃんと返してもらうわ。でも今すぐじゃなくても構わないのよ」
 特にお金に困ってるわけじゃないしね。と雪見は肩を竦めた。
 それを聞き智子は、やや目を細め、先ほどの話のもう半分を口に出す。
「なら連れ戻すほうか?」
「ええ、でも無理やりそうするつもりは無いわ」
 雪見は相槌を打ちみさきの方を向く。
「みさき、あなた街を出てから一度も帰ってないじゃない。別に私だって、街から出るななんて言わないわ。
 でも一度くらいは帰りなさいよ。帰れない理由があるわけでもないでしょう?」
 その真剣な眼差しが、みさきに見えるはずもないが、声からそれを感じ取れたのだろう。
 みさきは軽く頷いて言った。
「わかったよ。でも今すぐは無理だよ?ちょうど仕事が入ったばかりなんだ」
「そう、なら良いわ。それが終わったら一緒に一度帰りましょう」
(ああ、やっぱ親友同士ちゅうのはほんまなんやな)
 そのやり取りを見て、智子は一人杯を呷り納得した。
845為すべきこと:03/06/04 01:56 ID:tAuYOdJX

「ところでみさき」
「何、雪ちゃん?」
 雪見はコホンと小さく咳払いなどして続けた。
「私もあなたみたいに、通り名がついてるんだけど知ってた?」
「うん知ってるよ。『剣聖雪ちゃん』だよね」
 会話が進むにつれて、何故か雰囲気が悪くなるのを智子は感じた。
「そう、だけど初めは『剣聖雪見』だったのよ。これも知ってた?」
「うん知ってるよ。だから私が違うよ、雪ちゃんだよってみんなに教えてあげたんだよ」

「やっぱりあんたかー!!」
 言うなり雪見はみさきの胸倉に掴みかかり、前後に激しく揺らす。
「やめてよ〜ゆきちゃ〜ん」
 それを見て、智子は心の中で前言を撤回し、独り言ちた。
(もしかしてこれが理由かいな)

「あんたのせいで、私には世にも珍しい、ちゃん付けの通り名がついちゃったでしょうがー!!」
「ゆらさないでよ〜」

          *          *          *
846為すべきこと:03/06/04 01:58 ID:tAuYOdJX
「それでその仕事は何時終わるの?」
 ようやく落ちついた雪見が、当然の疑問を投げ掛ける。
「ああ、それなんや、けど……?あーー!!」
 突然智子は立ちあがり、その勢いで椅子を倒す。
「何よ突然?」「びっくりしたよ、どうしたの智子ちゃん?」
「どうしたのやあらへん、みさきさんあんたの懐にあるんはなんや!?」
「え?懐?」
 言われてみさきは胸元に手をやり、何か封書らしきものを取り出す。
「えーと、これは何だっけ?」
「クルス商会商隊長宛ての手紙やーーーー!!」
「そうそう、そうだったよ。忘れていたわけじゃないよ?本当だよ?」
 説得力と言う言葉がこれほどに合わない状況も珍しい。

「あなたも大変ねえ」
「あんたとは他人の気が、せえへんようなってきたわ」
 出会ったばかりの二人は、妙に気が合っていた。
 こちらは、共通の悩みや苦労と言ったものは、共感を呼ぶというのが良くわかる光景であった。
847為すべきこと:03/06/04 02:00 ID:tAuYOdJX

>>772おだやかに
>>780期待外れからのリレーです。

【川名みさき、保科智子 商隊長に手紙を渡しに行きます】
【深山雪見 ここで待つか付いていくか】
【柏木初音 何も起こらず、ほっ】
【柏木耕一 のろのろと藤田浩之を自分の部屋に運んでいます】
【川名みさき、深山雪見 後で一度故郷に戻る約束をする】



>>840
下記が抜けていました
>>750狂人の正義からのリレーです。
【御堂 肩に軽傷】

>>841
個人的には逆にこの戦闘は、時間が掛かりすぎていたと思います。
何故ならまだこれは、単なる遭遇戦の可能性もあり、そうで無くとも秘宝塔やネズミ退治での、
兎や宿襲撃になどの序盤に当るものだと思うからです。
一つのクライマックスなら確かに短すぎるでしょうね。

>>842
すみません、何のことか全くわかりません。
848名無しさんだよもん:03/06/04 02:05 ID:tAuYOdJX
う、題名ミスを……
>>844-847はもちろん剣聖です。
849Uスレの1:03/06/04 21:46 ID:Aelm+CtD
新人さんイラシャーイヽ(´∀`)ノ

……ログ更新は今週末必ず致しますゆえ、今しばしの御寛如を(汗
850名無しさんだよもん:03/06/04 23:34 ID:wxLJZ/E7
おお、久々に順調。

>剣聖
マイペースな人がパートナーだと苦労しますな。>二人。
「剣聖雪ちゃん」の由来にニヤリ。確かに言われてみれば
ちゃん付けの二つ名って変わってるかも。個人的には
「トテトテ」厨房に戻る初音たんが妙にツボ。

>847
序盤の一戦闘としては長過ぎるという判断は現状では
妥当かと。ともかく前に進まないことには。
851再会そして船出:03/06/05 02:30 ID:GCg0PWu5

「長瀬、祐……くん?」
 沙織のその声に全員が眼差しを集める。
 綾香は単純に知り合いなの?といった視線だったが、他のメンバーは違った。
 僅かな時間とは言え一緒に過ごした彼女から、今まで出たことの無い、消え入りそうな声だった。
「祐くんだよね?あたしよ、新城沙織。ほら子供のころ一緒に遊んだ」
 沙織は身を乗り出して、自分の存在を相手の少年に伝えた。
 祐介はぼんやりとした記憶の中にあった、あどけない少女が目の前の少女に重なるのを感じた。
(沙織……ちゃん?)
 それは暖かさを伴う懐かしい想い出だった。
 だが彼の口から紡ぎ出されたのは、冷淡とさえ言えるものだった。
「人違いじゃないかな、確かに僕の名前は祐介だけど」
 そう言って彼は視線を逸らした。

(こいつ、こんなしおらしい素振りもできたのか)
(ぱぎゅう、何か緊張しますの)
(ふむ、若さ故の修羅場か)
 往人、すばる、セバスが三者三様の感想を抱く。
「何?二人は幼馴染なの?」
 気まずい沈黙を気にも留めずに振り払う、綾香の明るい声が響く。
「いや、違うよ」
 だが祐介は頑なに否定した。
 ふうんと特に気にする風でもなく綾香は続けた。
「って彼は言ってるから、初めて会ったことにするとして。知り合いに似てるなら仲良くやれそうね」
 暗い雰囲気など、彼女には生涯無縁なのかもしれない。
 こうして総勢六人の新たなパーティーが生まれた。

 その中にあって彼女の心は、舞い落ちる木の葉のように揺れていた。
(祐君、どうして?)

          *          *          *
852再会そして船出:03/06/05 02:31 ID:GCg0PWu5

「あの船よ。ちょっと小さいけど、そんなに沖にでるわけじゃないし十分でしょ」
 そう言って綾香は波止場に浮かぶ船を指差した。
「マジか、あれで小さいのかよ」
「ぱぎゅう、往人さん立派な船ですの」
 往人とすばるは顔を見合わせた。
「へ〜良い船ね、そう思わない祐君?」
 さすがに気持ちの切り替えが早い沙織も率直な感想を洩らす。最も彼女は何時でも率直だが。
 沙織はさすがに王宮勤めだけあって、圧倒されることもなかったようだ。
 祐介はそうだねときのない返事をする。返事をしただけましと思うべきか。
(何があったか知らないけど、この冒険の間に必ず聞き出してやるわ)
 彼女は祐介が何と言おうと、彼は自分の幼馴染だと確信していた。
「さあ乗りましょう、冒険とそして秘宝が私達を待ってるわ」
 そう言って綾香は桟橋を渡ろうとした。
 そこへいかにも海の男といった風体の男が反対側から歩いてきた。

「来栖川のお嬢さんですね?話は聞いています。自分はこの船の船長です」
「よろしく船長さん、今日は御世話になるわ」 
 綾香は片目を瞑ってそう挨拶した。
 だが返って来た船長の言葉は意外なものだった。
「申し訳ありませんがそれは無理です」
「どういうこと?私達をあの島まで乗せて行ってくれる手筈でしょう?」
 何だか雲行きがおかしくなってきた。一行は不安げに成り行きを見守る。
「その島のせいです」
「勿体振ずに簡潔に答えて」
 綾香は腕を組み指で軽く叩きながら問い質す。
「沖合いに現われたあの島の影響で、海流に変化が生じています」
 まさか、と幾人かがその先の言葉を予想した。
 船長はその顔色を伺い大きく頷いた。
「そう、今あの島の回りは波が荒れに荒れ、近づくことは自殺行為です。おそらく明日か明後日には
 波も多少落ちつくでしょう。それまでは船上で命を預かる者として、出航を許可できません」
853再会そして船出:03/06/05 02:33 ID:GCg0PWu5

「つまり延期か?」
「うむ自然の猛威の前には為す術もない」
「ぱぎゅう、折角船に乗れると思ったのに残念ですの」
「まあ、仕方ないわね。ちょうど良いから、あたしはこの暇を利用して手紙でも出そうかな」
 祐介は例によって無言のままだったが、他の四人はそれぞれ受け入れたようだ。
 そして綾香は一瞬呆然としていたが、我を取り戻すと一言発した。
「何なのよそれ!」
 海の荒れはそのまま綾香の心を荒らした。
 いかに世界有数の財閥の令嬢とはいえ、無理なものは無理。
 円滑とは到底言えぬものの、一つの再会は果たされた。
 だがそれに続く筈であった一つの船出は、まだ今は果たされなかった。
 どうやら冒険と秘宝は、あまり彼らを歓迎していないようであった。

【島の周りの海は荒れ模様、収まるには1〜2日ほどかかる予定】
【六人組 足止め】
【長瀬祐介 心閉ざしたまま】
【新城沙織 開けてやる】

編集サイト266「パーティー」からのリレーになります。
遅れたものの何とか今日も執筆。
854名無しさんだよもん:03/06/05 02:49 ID:Yx/i5k/Z
で、そのメール欄はコテの代用のつもり?
855儀式:03/06/05 08:11 ID:Rcd3ehFr
ニノディーまで半日程度と近づいた村で、茜、明義、ルミラの三人は宿を取ることにした。
村に着いたのは夕方になる前だったが、夜に移動を続けて怪しまれてはごまかすのが難しくなると判断したためである。
途中で出会った農夫もこのあたりで休む予定だったと言い、同じ宿に泊まっている。

かすかな物音で、明義は目を覚ました。物音は隣の部屋から聞こえてくるらしい。茜が泊まっている部屋のはずだ。
『……何をしてるんだ?』
ゆっくりと体を起こしながら耳を澄ます。部屋はまだ真っ暗だったが、既に意識はほとんど覚醒していた。
冒険者として染みついた習慣というものだろう。休んでおいた方が良いとも思ったが、もう眠れそうにない。
ベッドから降りると、手早く上着を身につけ、剣を手に取る。そして、こちらも音を立てないように気を付けながら足音を追いかけた。
 宿の一階まで降りていくと、ちょうど扉が静かに閉じられるところだった。
一瞬、かすかな月明かりに、真っ白なローブと金色のおさげ髪が照らし出される。
茜であることを確信し、明義は後を追った。
 外はかなり冷え込んでいた。辺りを見回すと、茜が裏手の森の方へ入っていくらしいのが見えた。
月が出ているとはいえ、かなり暗い。足下に気を付けながらそちらへ向かう。
「……何をしているんですか?」
突然の光に、明義は思わず立ち止まった。杖の先に明かりを灯した茜が目の前に立っている。
「それはこっちの台詞なんだが……」
眩しさに目をこすりながら明義は疑問を返した。
「……一つ、今のうちに準備しておきたいことがありましたから」
答えて、森の奥へと歩き出す。明義もすぐに後を追った。
魔法の白い光で照らし出された森の中を歩いていく。道はなく、しばらく二人が下生えを踏み越えていく足音だけが聞こえていた。
ようやく光に慣れてきた目で見ると、茜は幾つか荷物を携えている。明義はその中に見覚えのある物を見つけた。
「それは、確か、澪の……何に使うんだ?」
茜の持つ袋からは、澪のスケッチブックが飛び出していた。
856儀式:03/06/05 08:11 ID:Rcd3ehFr
「準備です。澪を助けるための」
歩調を落とさず、振り返ることすらせずに茜が答えた。
そのまましばらく歩き続ける。山に近づいているのだろう、だんだんと道に起伏がつき始めた。
「普通、魔族のような者に魔法で十分な影響を及ぼすことはできません……魔族の抵抗力はかなり強いものですから。
でも、私になら……澪に取り付いた魔族になら、魔法をかけることができるはずです」
「なぜそう言えるんだ?」
答えが返るまでにはまた少し間があった。
「術者と相手とのつながりが強ければ強いほど、魔法はかけやすくなります。
魔族が取り憑いているとはいえ、澪のことはよく知っていますから……可能性はあります。
でも、それだけではおそらく足りないでしょう」
言って、茜は突然立ち止まった。懐からペンダントのような物を取り出して胸の前に垂らす。
少しの間そうしてから、再び歩き出した。
「他にも、相手の体の一部や関係の深い物を利用すれば魔法をかけやすくなります。
澪がずっと大切にしていたこのスケッチブックなら……多分、役に立つと思います……」
「それで、そのための作業をしようって言うんだな?」
今度は肩越しに頷きが返ってきただけだった。道はいつしか斜面になっており、茜はそこを降っていく。
しばらく進んで平坦になったところで、茜は手に持っていた荷物を置いた。明義が問いかける。
「ここでやるのか?」
「はい」
短く返事をして、茜は作業に取りかかった。まず白い布を取り出して1メートル四方ほどに広げ、地面に敷いた。
そして銀製の小さな盆と燭台2つを取り出して布の中央に置き、火を灯した。
「右手の方に進むと小川か何かあるはずです。水を汲んできてもらえますか」
明義は頷いて差し出された革袋と明かりが灯ったままの杖を受け取り、言われた通りの方向へと歩いていった。
すぐに小さな泉が見つかった。
857儀式:03/06/05 08:14 ID:Rcd3ehFr
明義が水を汲んで戻ると、茜は銀製の盆の前に跪いていた。
白い布には青い顔料で二重に魔法陣が描かれ、中央に置かれた盆には小石と燭台が乗っている。
盆の向こうに折り取られたばかりの小枝が横たえてあった。そして、茜の傍らには澪のスケッチブックが置かれている。
茜は戻ってきた明義に小さく礼を言い、水袋を手に取ると半分ほどを使って手を清めた。
そして盆に薄く水を張り、最後に口をゆすいでから、小さな水晶の破片を取り出して目の前に置いた。
「邪魔にならないように、その木の辺りで待っていて下さい」
茜の言葉に少し肩をすくめながら、明義は側の木に寄り掛かった。
そんな明義を気にした素振りもなく、茜は瞳を閉じた。森の静けさが辺りに満ちた。
初めは小さな声で、茜がルーンを唱え始める。囁き歌うような詠唱は次第に高くなり、それと呼応させるかのように茜は両手で印を切り始めた。
明義は知らず知らずのうちに儀式の様子を食い入るように見つめていた。これほど近くで魔術の儀式を見るのは初めてである。
魔法を使えない明義にも、茜の周囲に魔力が張りつめているのがわかるほどだった。
高まっていた茜の詠唱が不意に止んだ。印を解いた茜がゆっくりとした動作でスケッチブックを手に取る。
初めのページを破りとり、燭台の火を移した。燃え尽きるまでの微かな時間、片手でページを目の前に掲げて数語のルーンを囁き、空いている手で印を切る。
灰を盆の水に落とし、優しくかき混ぜるようにしてから水を手にとって。再びルーンを唱えながら水晶の上に垂らしていく。
それが終わると、またスケッチブックを破りとり、燃やしては灰を水に浮かべ、水晶へと注ぐ作業を続けた。
スケッチブックを全て燃やしきるまではたっぷり2時間ほどかかっただろう。
もう一度詠唱し、印を結ぶ。最後の音節が森の奥へ消えてから、やっと茜が立ち上がった。水晶を小さな布にくるみ、懐に収める。
そして今まで儀式を行っていた簡素な祭壇を手早く片づけた。
「終わりました」
茜にそう言われて、やっと明義は寄りかかっていた木から体を起こした。手足はすでにかなりこわばってしまっている。
「じゃあ、戻るか」
思い切り体を伸ばして、声をかける。
858儀式:03/06/05 08:16 ID:Rcd3ehFr
明義の目の前で、茜がふらりと膝をついた。
「大丈夫か?」
「……平気です……」
返事はさっきまでの詠唱とは比べものにならないほど微かだった。
「疲れたんだろ。肩貸すぞ」
「大丈夫です」
茜の言葉を無視して腕をとり、肩に回す。茜はほんの少し抵抗しようとしたが、それも弱々しかった。
さらに、明義は茜の荷物を取ると空いている肩にかけた。
「こっちで良いんだよな?」
「……あってます」
そうして、茜の歩調に気を付けながらゆっくりと歩き出した。
森の中はまだ完全に闇に包まれている。露が宿り始めたのか、下草が湿り気を帯びて歩きにくい。
「澪……悲しむでしょうね……」
茜がぽつりと呟いた。
「スケッチブック、無くなったからな……」
「……大事にしていましたから……許してもらえないかも知れません……」
沈んだトーンで言葉を継ぐ。
「でも、いいんです。澪が助かるなら……」
「こんなに無理をしてもか?」
「……少し無駄なおしゃべりをしすぎただけです」
視線を地面に落としながら茜が答える。そしてどちらからともなく黙ってしまった。
「ちょっと聞いて良いか?」
沈黙を破ったのは明義の方だった。茜が明義に視線を向けて先を促す。
「里村はどうしてそんなに魔法を修行しようと思ったんだ?
俺は魔術儀式をこんなところで一人で成功させるような魔術師なんて初めて見た。
しかも、俺とそんなに年は変わらないだろ……?」
言ってから、止めた方が良かったと明義は思った。茜の視線が少し険しくなっていた。
引っ込みがつかず、明義は適当に言葉を続けた。
「……生まれつきで才能があったとか……そういうものでも……」
「生まれつきです」
遮るように茜が言い捨て、そっぽを向いてしまう。
そうしたきり、二人は一言も言葉を交わさなかった。
859儀式:03/06/05 08:17 ID:Rcd3ehFr
「……ありがとう。助かりました」
茜が小さな声でそう言ったのは、宿の前まで来てからだった。
そのときも茜は明義に視線を向けなかった。

【里村茜 何か準備。澪のスケッチブックなくなる。疲労】
【南明義 茜を支えて帰る。まだ夜】
初参加ですが……長すぎました。以後気を付けます。
860シッポをつかむ?:03/06/05 09:08 ID:Rcd3ehFr
茜たちが宿を抜け出した頃。
宿では他にもまだ目を覚ましている者がいた。
茜たちを馬車に乗せてきた農夫である。
明義が出て行った後、少し眠そうに目をこすりながらこちらも一階に下りようとする。
「何をしているのかしら?」
はっとして振り返ると、ルミラが二階から見下ろしていた。
「あ、ああ。いつも畑仕事で暮らしてるからな。朝は目が覚めやすいんだ」
「まだ夜中よ?」
ルミラの返答に、農夫は一瞬言葉を詰まらせた。ルミラの顔には微かに笑みが浮かんでいる。
「いやぁ、あまりこんなところで寝ないからなあ。なかなかよく寝れなくて」
「私もよ。旅をするのは久しぶりなの」
さらりと言って、農夫の様子を見守る。
「……さて、もう一眠りしてくるか。明日も早いうちに出るからな」
少し間があってから、思い出したかのような調子で農夫が言い、階段を登り始めた。
「そうね。お休みなさい」
軽く手を振りながらルミラが答えた。
そして、男が部屋へ戻るのを見届ける。
(また何か絡んできたみたいね……)
一見しただけではわからないように隠されていたが、ルミラは男の様子が違うのに気付いていた。
(獣人……犬か何かかしら? ふふ……)
再び部屋へ帰るルミラの顔には楽しげな笑みが浮かんでいた。

「ふう……」
部屋へ戻ると、農夫――テオロは溜まっていた息を吐き出した。
(大事な頼みとはいえ、慣れないことはするもんじゃねぇなあ……)
少し冷や汗すら浮かんでいる。昼間は簡単に言ったが、運が良かっただけとすら思えてきた。
(ニノディーまで怪しまれずに送り届けろっていうんだから、それだけにしておいた方が良いかもな……)
そんな風に考えながら、あまり慣れないベッドに寝転がる。
無理に起きて疲れていたせいか、眠気はすぐに訪れた。
861シッポをつかむ?:03/06/05 09:08 ID:Rcd3ehFr
【ルミラ 農夫=テオロが獣人であることに気付いた様子】
【農夫=テオロ 誰かに頼まれて活動中。少し冷や冷や】
長すぎたので分割。
プロット自体は前から考えてはいたのですが、>764氏が書いた後で大丈夫かと不安……。
862名無しさんだよもん:03/06/05 13:26 ID:fNFqvhtw
っていうか、さ。
なんで綾香たちが島に行こうとしてるの?
マジでわけが分からないのだが。
863名無しさんだよもん:03/06/05 17:49 ID:XAwJwV0X
今現在、浮島を目指してるのは誰もいなんんだっけ。
まぁ、ちゃん様が探索を命じているし、裕介も秘宝狙いだから流れ的には
不自然じゃないけど、過程がすっ飛んでるのは疑い様がないな。
NGではないが補完キボンヌ。
864名無しさんだよもん:03/06/05 20:18 ID:fWmThlV+
>>862-862
祐介が青い石で島に導かれ、綾香はそれに協力することになったと、勘違いしていました。
今過去ログを確認しましたけど、そんな記述ないですね。
236と240あたりの記憶が、混ざっていたようです。
改訂版を考えてみます。

>儀式
雰囲気が上手く出ているんじゃないかと。
865再会そして船出-改訂版-:03/06/05 22:36 ID:QvYAdJIs

「長瀬、祐……くん?」
 沙織のその声に全員が眼差しを集める。
 綾香は単純に知り合いなの?といった視線だったが、他のメンバーは違った。
 僅かな時間とは言え一緒に過ごした彼女から、今まで出たことの無い、消え入りそうな声だった。
「祐くんだよね?あたしよ、新城沙織。ほら子供のころ一緒に遊んだ」
 沙織は身を乗り出して、自分の存在を相手の少年に伝えた。
 祐介はぼんやりとした記憶の中にあった、あどけない少女が目の前の少女に重なるのを感じた。
(沙織……ちゃん?)
 それは暖かさを伴う懐かしい想い出だった。
 だが彼の口から紡ぎ出されたのは、冷淡とさえ言えるものだった。
「人違いじゃないかな、確かに僕の名前は祐介だけど」
 そう言って彼は視線を逸らした。

(こいつ、こんなしおらしい素振りもできたのか)
(ぱぎゅう、何か緊張しますの)
(ふむ、若さ故の修羅場か)
 往人、すばる、セバスが三者三様の感想を抱く。
「何?二人は幼馴染なの?」
 気まずい沈黙を気にも留めずに振り払う、綾香の明るい声が響く。
「いや、違うよ」
 だが祐介は頑なに否定した。
 ふうんと特に気にする風でもなく綾香は続けた。
「って彼は言ってるから、初めて会ったことにするとして。知り合いに似てるなら仲良くやれそうね」
 暗い雰囲気など、彼女には生涯無縁なのかもしれない。
 こうして総勢六人の新たなパーティーが生まれた。

 その中にあって彼女の心は、舞い落ちる木の葉のように揺れていた。
(祐君、どうして?)
866再会そして船出-改訂版-:03/06/05 22:38 ID:QvYAdJIs

「であんたの言う当てってのは?」
 往人は早速とばかりに、秘宝について聞いた。
 綾香はそうねと前置きし、ちょっと考えるかのように間を空けて言った
「実は祐介が啓示、とでも言うのかしら?それを昨日受けてね。どうやら彼、秘宝に導かれているらしいわ。
 勿論それだけじゃ雲を掴むような話だけど、今この町に起きてる事件は知ってる?」
「海賊のことか?」
 昨日のマラソンを思い出し、往人はゲンナリしながら言った。
 綾香は首を軽く振り否定した。長い髪がそれに合わせて揺れる。
「それは昨日の話。驚かないでよ?今日になって沖合いに、突然新しい島が現われたの」
 言っていることの意味が理解できず、往人達は目を瞬かせた。

 あのーとすばるが手を上げる。
「島って出たり消えたりするものなんですの?」
「普通はありえないわね。だから事件なのよ」
 しかもこの島は、伝説に謳われる千年に一度現われる島だと言う。
 続けてくれと往人は先を促す。
「秘宝の啓示を受けた人の前に、突如現われた伝説の島。どう?この符合」
 往人は腕組みしながら言う。
「面白い話だが、単なる偶然じゃないか?」
「そうね、そうじゃないとは言えないわ。でも仮にも伝説の島なら、例えそれと無関係だとしても、
 秘宝の一つや二つ眠っていてもおかしくないわ。そうでしょ?」
867再会そして船出-改訂版-:03/06/05 22:40 ID:QvYAdJIs

 確かに千年もの間、語り継がれる伝説なら、それなりの秘宝財宝は期待できそうだ。
 それに今の自分たちには、他の情報があるわけでもない。
「わかった。その島とやらに行こうじゃないか。お前らもそれで良いか?」
 往人は承諾し、すばると沙織に同意を求める。
「はいですの」
「うん」
 すばるは元気良く、沙織はまだ何処か上の空で答えた。
「決まりね。それじゃ早速手配しましょう」
 綾香はそう言ってパチンと指を鳴らすと、従業員を呼び寄せる。

「手配?」
「船の手配に決まってるじゃない。あなた島に徒歩か何かで行くつもり?」
 セバスじゃあるまいし、綾香はやれやれと言った具合に付け加えた。
「お嬢様、無茶を言いなさいますな」
「冗談よ」
 綾香は悪戯っぽく笑って見せる。
「この装備では10メートルも渡れませぬ」
 そう言って目を瞑りながら首を振るセバスに、従業員を含めた全員が心の中で突っ込む。
(渡れるのかよ!)

          *          *          *
868再会そして船出-改訂版-:03/06/05 22:40 ID:QvYAdJIs

「あの船よ。ちょっと小さいけど、そんなに沖にでるわけじゃないし十分でしょ」
 そう言って綾香は波止場に浮かぶ船を指差した。
「マジか、あれで小さいのかよ」
「ぱぎゅう、往人さん立派な船ですの」
 往人とすばるは顔を見合わせた。
「へ〜良い船ね、そう思わない祐君?」
 さすがに気持ちの切り替えが早い沙織も率直な感想を洩らす。最も彼女は何時でも率直だが。
 沙織はさすがに王宮勤めだけあって、圧倒されることもなかったようだ。
 祐介はそうだねときのない返事をする。返事をしただけましと思うべきか。
(何があったか知らないけど、この冒険の間に必ず聞き出してやるわ)
 彼女は祐介が何と言おうと、彼は自分の幼馴染だと確信していた。
「さあ乗りましょう、冒険とそして秘宝が私達を待ってるわ」
 そう言って綾香は桟橋を渡ろうとした。
 そこへいかにも海の男といった風体の男が反対側から歩いてきた。

「来栖川のお嬢さんですね?話は聞いています。自分はこの船の船長です」
「よろしく船長さん、今日は御世話になるわ」 
 綾香は片目を瞑ってそう挨拶した。
 だが返って来た船長の言葉は意外なものだった。
「申し訳ありませんがそれは無理です」
「どういうこと?私達をあの島まで乗せて行ってくれる手筈でしょう?」
 何だか雲行きがおかしくなってきた。一行は不安げに成り行きを見守る。
「その島のせいです」
「勿体振ずに簡潔に答えて」
 綾香は腕を組み指で軽く叩きながら問い質す。
「沖合いに現われたあの島の影響で、海流に変化が生じています」
 まさか、と幾人かがその先の言葉を予想した。
 船長はその顔色を伺い大きく頷いた。
「そう、今あの島の回りは波が荒れに荒れ、近づくことは自殺行為です。おそらく明日か明後日には
 波も多少落ちつくでしょう。それまでは船上で命を預かる者として、出航を許可できません」
869再会そして船出-改訂版-:03/06/05 22:42 ID:QvYAdJIs

「つまり延期か?」
「うむ自然の猛威の前には為す術もない」
「ぱぎゅう、折角船に乗れると思ったのに残念ですの」
「まあ、仕方ないわね。ちょうど良いから、あたしはこの暇を利用して手紙でも出そうかな」
 祐介は例によって無言のままだったが、他の四人はそれぞれ受け入れたようだ。
 そして綾香は一瞬呆然としていたが、我を取り戻すと一言発した。
「何なのよそれ!」
 海の荒れはそのまま綾香の心を荒らした。
 いかに世界有数の財閥の令嬢とはいえ、無理なものは無理。

 円滑とは到底言えぬものの、かくて一つの再会は果たされた。
 だがそれに続く筈であった一つの船出は、まだ今は果たされなかった。
 どうやら冒険と秘宝は、あまり彼らを歓迎していないようであった。

【島の周りの海は荒れ模様、収まるには1〜2日ほどかかる予定】
【六人組 足止め】
【長瀬祐介 心閉ざしたまま】
【新城沙織 開けてやる】

編集サイト266「パーティー」からのリレーになります。
>>851-853改訂
これでどうでしょう。

>>854代用と言うかそのものです。
870名無しさんだよもん:03/06/06 00:48 ID:m1PYJnH5
おお! また新作ですか。 一体何が? と一瞬戸惑うほど順調ですな。

>儀式 >シッポをつかむ?
帝国の闇、ガディム教団の真実に一番近い所にいる茜パーティー、
久々に進展ですか。獣人の思惑まで絡んで来る展開になるんでしょうか?
茜の頑なさも、らしくていいですね。長さはこれくらいなら大丈夫と思います。

>再会そして船出-改訂版-
改訂版でのストーリーの流れ、とりあえずは大丈夫そうですかね。
全体的な方向性は順当と思うので。お話的には国家レベルの動きや
裏世界の動きがどう連動してくるか楽しみ。

ところで、ここまで浮島は「レフキー沖合」と描写されて来ましたが、
位置関係は大丈夫ですかね? 上の地図を採るならば、湾内の真ん中辺りと
考えれば一応OKかな?
871闇の世界へと続く道:03/06/06 18:31 ID:r/LfkRDl

「――って、けんたろじゃないの!? こんなところで何してんのよ!」
「お知り合いなのですか?」
「いや、こんなお子様は知らない……けど、なんか初めて会った気がしないかもしれなくもない」
「だから縮んだって言ってるでしょ……もしかして忘れたの!? スフィーよ、すふぃー」
「ああ! あの行き倒れていた魔術師か! あの時はまだ幼い少女って感じだったけど、今は本物の幼女だな〜」
「……クッ。数年経ったら人は成長するものよ……」
「いや、成長って言わないだろ。っていうか初めから俺だって、気付けよ」
「あはは。いや〜なんかさ、すっごく疲れてたり焦っていたせいもあるんだけど……あの頃のけんたろと比べると全然顔つきも雰囲気も違ってたから――今まで気付けなかったんだと思う」

 いきなり本人達が盛り上がっている展開だが、なんてことはない、朝食の風景の一コマだ。
 泊まった宿屋での質素な食卓。それを囲んでいるのは三人だけである。

「……まぁ、それは、あの頃の俺とは違うってゆーか、なんというか……あ、そんな事よりさ、スフィー達はアカデミーの秘宝探索なんとかかんとかでレフキーに来たんだっけ? セリオに聞いた限りでは四人組で飛んできたって話だけど」
「秘宝探索特別課題ね。それも進級に関わる大問題だけど、ほんとうの目的は妹――リアンを捜しにきたのよ」

 その発言で朝食は終わった。スフィーは良く食べ、健太郎は軽めに、そしてセリオは手をつけなかった。
 部屋に戻ってから、スフィーは己の目的を詳しく話した。

「そうか……そんな事があったのか。んで残りの三人は無茶な飛行の疲れで未だに眠ってるんだな。セリオが言うには名前を名乗る元気もないくらいに疲労してたって聞いたぜ」
「うん。見てきた様子ではまだ起きそうになかったから無理に起こさなかったんだけど……ねぇねぇ。それよりけんたろは今何してるの?」
「俺? ちょっと野暮用でな。セリオに店を紹介してやらなきゃならないんだ。レフキー内に存在してる店なんだが、これがまた特殊でな」
872闇の世界へと続く道:03/06/06 18:32 ID:r/LfkRDl

「ふ〜〜ん……じゃぁあたしも付いていくね」
「え? でも……妹さん捜しはどうするんだ?」
「はぁ、もう忘れちゃったの? けんたろはあたしから離れると死んじゃうんだよ。どのくらいで完治するかは判んないけど、あたしの課題終了期間までには治ると思うから安心しといて」
「しとしいて、ってそんな事言われも……大体お前の無茶が過ぎてこうなったんだろ!?」
「それは、ごめんって謝ったでしょ! あたしだって魔力の使いすぎてこんなに縮んじゃっただし、けんたろだってぼけーっと突っ立てたのがわるいんでしょ?」
「それを言われると少々辛いが……まぁ別に、俺に付いてくるのはいいんだけどさ。スフィーは妹を――捜さなくてもいいのか?」
「あーーうん。それはあたしもちょっと反省してるの。そりゃ心配だけど、けんたろには迷惑をもういっぱい掛けちゃったし、こっちの都合でふりまわすわけにもいかないしね。リアンを捜すのはあの三人に任せようと思うの」
「それじゃ、例の課題はどうするんだ?」
「ああ、あたしの勘だとリアンはすぐに見付かると思うの。あの子もあたしを捜しているはずだから、結果的に色んな場所に顔を出してることになるからね。見付けるのはそんなにむずかしくはないだろうし。
 それにね。あの課題は実は名ばかりなの。毎年毎年そんなにぽんぽんと秘宝が見付かる訳ないじゃないの。近年でも秘宝が発見された、なんて報告もないしね。精々秘宝に関係している場所の調査が主になるだけだよ」
「レフキーに近くて秘宝と関係ある場所ってなると、有名な『秘宝塔』か。そういえば俺達もつい先日に行ったばかりだったよな」
「はい。噂通りに秘宝もありました」
「へぇ〜けんたろも秘宝塔に行ったんだ。それで噂の秘宝まで発見したなんてすごいねぇ〜〜って、ぇぇぇぇええええええええ!?」
「ベタな反応だなぁ」
「ホ、ホントなの!? それって歴史的大発見じゃないのよっ!! なんでそんなにおちついてんのっ」
「ああ……まぁ、それには色々と訳があってな。話すと長くなるからできれば店に行く道中で話したいんだが――」
873闇の世界へと続く道:03/06/06 18:37 ID:r/LfkRDl

 このアト、誰かさんの大声で目覚めた三人組がスフイーの元に集まり、この現状の説明を、求めた。それはもう、熱烈に。
 その三人組を隣の部屋に押し込めてスフィーは簡潔に語った。それから今後の方針と指示を飛ばし速攻で健太郎の部屋に戻り、早く秘宝について語れ、語れと問い詰めた。部屋を飛び出すその勢いはまるで台風のようだった――とは、あかりの言葉である。

「――とまぁ、秘宝塔で起きた事はこんな感じかな」
「けんたろの話は主観的で時々感情的な私見が交ざっていて解りにくかったけど、セリオさんのフォローが所々にあったからすごく楽しめたよ」
「大したことではありません」
「ち、ちくしょう……」
「ところで、リアンさんを捜しに行かれた三人のお名前はなんというのでしょうか?」
「えっ!? ざんねんなんだけど、秘宝探索特別課題は公にできないんだ。アカデミーがそんな大っぴらに秘宝探索にのりだしているなんて思われるとレフキーや帝国が黙ってないからね。
 まぁ、両国も気付いてるから公然の秘密ってやつなんだけどね。そういうわけで極秘任務ってコトになってるからあたし達の素性は明かしてはいけない規則になってるの」
「その割にはスフィーはさっきからペラペラ喋ってるじゃないか」
「それはこれからしばらくの間いっしょに行動するんだから、あるていどの情報は公開しとかないといけないでしょ?」
「そういうことですか……ならば仕方ありません」
「ん? どうしたんだセリオ? そんなに残念そう顔して」
「いえ、ただ捜している人に似てる方がいらしたので名前を――と思ったのですが」
「ふーん。ま、似てる人なんて世の中には結構いるしな――っとここだここ。この路地の向こうに行けばすぐだ」
「ここってかなり街の中心からはなれてるよね――スラム街っていうのかな……うりゅ。せっかくけんたろに買ってもらった新しい服が汚れそう……」

「――ここですか」

               ◇

「――ここですね」
「ここ、らしい……ですね」
「…………」
874闇の世界へと続く道:03/06/06 18:38 ID:r/LfkRDl

 理不尽なまでに元気なスフィーの声で目覚めた三人。
 長旅の疲れがないかのように早口で縮んだ原因やらリアン探索の指示をまき散らし、秘宝探索特別課題のことはあたしに任せないと、ない――正確にいうとなくなった――胸を張り、突風のように昨日衝突してしまった青年と出掛けて行ったスフィー。
 寝起き直後のぼんやり感と疲労が蓄積した肉体では鈍い反応しかできなかったが、これだけは判ったいた。
 つまり、大事な妹の事を任せられたという事実。それだけは、判った。
 食欲のない三人はニヒルな笑顔を浮かべる宿屋の親父による朝食の誘いを丁寧に断り、早速リアンを捜し始めた。

 首都である。人は、多い。あさひの目には、あかりがやけにキョロキョロとしながら道行く人々を流し見ている姿が映っていた。
 緊急の用事がなければ逢いたい人がいるのだろう――と、あさひは気付いた。よく話にでてくる浩之という男の子と、偶然でもいいから出会いのだろうか。
 そんな想いをよそに、スフィーの予想通りにピンクの髪の女性を捜している青い髪のめがねっ娘を知っている、という人が結構いた。
 更にあかりの出身がこのレフキーという事で、迷うこともなく効率的に情報を探ることができ、予想以上にあっさりと、リアンの泊まっている宿屋まで辿り着けたのだ。
 だが、それとは別に気になる情報もあった。リアンの情報の影にちらほらと姿をみせる剣士のことだ。男の。
 スフィーが知ったならどうするのだろうか――と、思った芹香。彼女にも妹がいるが、もう何年も会ってはいない。何にせよその男のご冥福を祈るのは早計だ、と判断しておいた。
 中央広場から比較的に近い宿屋、その主人に適当な事情を話してリアンがいるかどうか尋ねたが、期待していた情報は得られなかった。
 つい先日から姿をみせなくなり、男の方だけは一度泥酔状態で帰ってきたが、またふらふらと出て行った、とのことだ。
 更に三人は入り浸っているらしい酒場の場所や男の名前まで宿屋の主人に教えてもらった。やけに愛想が良かったのは、溜まっていたツケを払ってあげたからだろう。
 そうして、三人はこの目の前の酒場に辿り着いたのだ。リアンの行方を知っているのはおそらく、その男だけ。

 ちなみにその男の名を――千堂和樹という。
875名無しさんだよもん:03/06/06 18:45 ID:r/LfkRDl
【スフィー・セリオ・健太郎/ショップ屋目前】
【芹香・あさひ・あかり/千堂和樹がいるらしい酒場の目の前】

リレーとしては「断ち切れぬ絆」(>>612-618)の続きです。
さくっと進めてみましたが……どうでしょう。
876名無しさんだよもん:03/06/06 21:15 ID:aNJ0DtY8
 新作乙です〜♪

 とりあえず、けんたろ&すふぃーは旧知路線で進むのですね。
 浩之をさりげなく捜し求めるあかり萌え。
 佐祐理なり七瀬なりと一緒のところ見かけられたりデモしたら、修羅場モード突入でせうか(今は一緒にいないから良いがw
 
877名無しさんだよもん:03/06/07 01:45 ID:4CItMhSt
本当に一体何が?と驚きつつ楽しむ日々。妖精さん、頑張ってるなぁ(w

>闇の世界へと続く道
個人的に気になってるパーティーなんで、キター!!ってな気分でつ。
しかし、なるほど、そういう風にパーティーが分かれましたか。
あかり達が茜組に続いて帝国の闇に挑むことになるのかな?
意外と言えば意外な展開だけど、面白そうですね。
878名無しさんだよもん:03/06/07 03:19 ID:ZQdbh5ix
お疲れー
なんかいっぱい新作が!!

ところで、セリオと芹香って面識あるのかな?
879剣の主:03/06/08 01:55 ID:c+B9dZfL

 体躯の良い男が、少年を抱えあげ階段を上っている。
 ここは鶴来亭。抱えているのは耕一で、抱えられているのは浩之だ。
 七瀬に頼まれて、彼に一夜の宿を貸すこととなったのだ。
「くっ、こんな筈じゃあ」
 ぼやきながらも耕一は、鶴来亭で普段自分が使っている部屋に浩之を運び込んだ。
 そして彼をベッドに横たわらせ、階下に戻る。

「あれ?初音ちゃん、皆は?」
 さっきまで人数の割に賑やかだった食堂は、人気がなくなりガランとしている。

「お姉ちゃん達なら出掛けたよ。何か用事が有るみたい」
 洗い物の途中だった初音が、ひょいと顔を出して答えた。
「ああ、そうなんだ」
 どうするわけでもなかったのだが、先ほどのことも有り何と無くがっくりする。

 そんなやり取りをしていると、上からドアの開ける音が聞こえてくる。
 二人の女性が階段を降りてきた。
 一人はこの鶴来亭の女主人柏木千鶴、もう一人は商談相手の篠塚弥生である。
「お疲れ様、商談は終わりですか千鶴さん」
「ええ、少し長引いてしまいましたけれど」
 と言ってにっこりと微笑む千鶴。
880剣の主:03/06/08 01:56 ID:c+B9dZfL

「篠塚さん、良ければ食事を御一緒しませんか?姉の私が言うのもなんですが、初音の料理は中々ですよ」
「お誘い有り難うございます。ですがこれからもう一件、仕事があるもので」
 小さなため息は残念さのためか、それとも憂鬱さか。
「御多忙なんですね」
「次の機会には是非、御相伴に与らせて下さい」
 弥生はそう言って出口に向う。

「それでは失礼します」
「ご苦労様でした」
 千鶴達に見送られ、弥生は次の仕事へと向った。

「さてと、俺も鍛冶場に一度戻るかな」
「あら耕一さんも帰っちゃうんですか」
「お客さんも引けたみたいだし、明日の準備をしないと」
 手伝いようの前掛けを外しながら、耕一はそう言う。
 すると いつの間にか厨房から出てきていた初音が声を掛ける。
「お疲れ様、またね耕一お兄ちゃん」
「初音ちゃんもお疲れ様」
「さようなら、耕一さん」
 じゃあまた明日、と耕一も鶴来亭を後にした。
881剣の主:03/06/08 01:57 ID:c+B9dZfL

          *          *          *

 鍛冶場に戻った耕一は、しばらくの間、仕事道具の点検をしていた。
 すると壁に立て掛けてあった剣から、また光が漏れ出した。
 そう以前にもその剣は光出したことが有った。
 それは例の“魔族の剣”である。
 耕一は壁を背に作業していたので気づかなかった。

 カランと乾いた音を立てて、壁に立て掛けてあった剣が床に倒れた。
 耕一はそこで初めて気づき後ろを振り向く。
(また光ってる……)
 そう思い、剣を掛け直そうと手を伸ばした耕一は、目を見張る。
 剣が鞘から独りでに抜け出した。
 しかもその輝きは先ほどより強くなっている。
 耕一が固まったように凝視していると、剣は一瞬さらに輝き、刀身を半分ほど抜き身にしたところで
力尽きたように輝きを失い、動かなくなった。

 我に返ると耕一は剣を拾い上げ、その倒れた方角を見つめ、剣に語り掛けた。
「もしかして、お前の持ち主が近くに、そっちにいるのか?」
 無性に胸騒ぎを覚えた耕一は、剣を鞘に収めるとその指し示す先へ走り出した。
882再会そして船出-改訂版-:03/06/08 01:58 ID:c+B9dZfL

          *          *          *

 FARGO宗団のテンプルナイト、巳間晴香と姫川琴音は焦りを感じ始めていた。
 最初の切り合いで、二人の実力を手強しと判断したのか、敵は自分たちからは仕掛けてこない。
 かと言ってそれを無視して進もうとすれば、五月蝿く背後や横から牽制する。
 これではわかっていても迂闊に動けない。
「拙いわね」
「少し派手に行きますか?」
「仕方ないわね、でもなるべく川澄舞には危害が及ばないようにね」
「晴香さんこそ」
 言って二人は魔術か何かを駆使するため、その力を集中する。
「待ってください、誰か来ます」
「新手!?」
 敵もそれに気づいたのか、走ってくる大柄な男に注意を向ける。
 帝国の援軍?それはない。敵に走った動揺がそれを示している。
 王国の衛兵?これもない。魔法で眠りにつき通報者のいない街区に、これほど早く現われるはずもない。
 では一体何者?

          *          *          *
883剣の主:03/06/08 01:59 ID:c+B9dZfL
 入り組んだ街路を耕一は走った。
 剣の示した方角は大よそのものであり、距離もわからない。
 だが鞘から漏れるその光は着実に強くなり、それは持ち主に近づきつつあることを確信させた。
 人気のない通りを走ることしばし、ついに耕一は現場に辿り着いた。

 蹲っている二人の女性、さらに別の女性二人、それぞれの女性を囲む亜人、亜人を従えているらしき女性。
 耕一はこの状況をそう受け取った。
 どう見ても、少女に襲いかかろうとしているようにしか見えない
 だがそれ以上はわからない。
 だから彼は叫んだ。
「おれはこの町に住む者だ。お前達は何者だ!ここで何をしている!」

 当然その場のほぼ全員から返事はなかった。
「私はこの町の議員の娘、倉田佐祐理です!」
 佐祐理は次々と現われた訪問者達の内、この男だけは他と違うものを感じた。だから助けを求めた。
「あちらの二人はわかりませんが、他の者達は」
「喋らせるな!」
 語気荒く帝国の女は命令を発し、それを受けて佐祐理の側にいた者が、殴りつける。
 悲鳴をあげ倒れる佐祐理。
「やめろーー!!」
 耕一は叫ぶ。だがそこで迷う。
 あの娘はこの町の住民と言った。だから助けるべきはあの二人だ。
 それにおそらく剣の持ち主は、あの倒れている二人のどちらかだ。
 持ち主に危機が迫った時、剣が光る。耕一はそう推論づけていた
 そう思うのだが、今になって剣の由来が耕一に躊躇させていた。
(これは魔族の剣、もしかしたら持ち主に渡すのは危険かもしれない。本当に渡して良いのか?)
 しかし耕一はその考えを振り払う。
(いいや、この剣はそんな邪悪なもんじゃない)
 耕一は自分の鍛冶師としての目と感を信じることにした。
(さてと、後はどうやって手渡すか……そうか、悩むこともない。こうすりゃ良いんだ)
 そして耕一は……剣を放り投げた。
884剣の主:03/06/08 02:00 ID:c+B9dZfL

          *          *          *

 また邪魔が入ったことに帝国の女は、苛立ちを禁じえなかった。
 ベラベラと余計なことを言ったのも拙かった。
 だがまあ良い、不幸な死体が増えるだけだ。
 そう思い襲わせようとした時、なんと男は自分の武器を投げた。
 呆気に取られたが、何か嫌な予感を憶え命令を下す。
「その剣を奪え!誰にも渡すな!」

「何を考えているの!?」
 晴香は自分たちに続いて現われた男が、唯一と思われる武器を投げ捨てたのを見て、驚くより呆れた。
 鞘ごと投げられた剣は、緩い放物線を描いていたが、巨漢のオーガーがそれを鷲掴む。
 しかし掴み取られたかに見えた剣は、滑るように鞘から抜け、そのまま一直線に飛ぶ。
「晴香さん、あの剣もしかして!?」
 琴音の言葉は途中で途切れる。
「!!!!!」
(行け、お前が仕える主の下へ)
 耕一は拳を固めた。

 剣は少女の元へ辿り着いた、その瞬間一際剣が明るく輝く。夜の路地はほんの一時真昼に変わった。
 その剣は倒れたままの舞の手に、しっかりと握られていた。
 光が収まると舞はゆっくりと目を開けて、自分の手の中にある剣を見た。
 剣と母の秘宝とが、舞に語り掛ける。
「お父……さん?」
885剣の主:03/06/08 02:06 ID:c+B9dZfL

【川澄舞 魔族の剣を入手、意識を取り戻す】
【倉田佐祐理 気絶】
【柏木耕一 丸腰】
【巳間晴香、姫川琴音 現状維持】
【帝国の女 謎のまま】

>>752 闇の影に潜むもの
>>843 剣聖 からのリレーです

また途中でタイトル間違えてるし……

>>870
あの地図はそのままでは使えないでしょうね。
湾の中では沖合いとは言えないでしょう。
描かれたころには、島なんて無かったはずですし。
自分はイメージの助けくらいに考えています。
正しい地図があればそれはそれで嬉しいですが。
886名無しさんだよもん:03/06/08 02:39 ID:2EaFSkES
自立がどうのと親の意向そっちのけで好き勝手やってる割に
「この街の議員の娘」と名乗る佐祐理。
計算高くて良いね(w
887名無しさんだよもん:03/06/08 03:18 ID:RRRGaQdT
>「おれはこの町に住む者だ。お前達は何者だ!ここで何をしている!」
この台詞には惚れるね(w
888楓、散る:03/06/08 21:53 ID:KJgLV3YB

 夜の闇にその身を溶かし、瞳だけを浮かび上がらせた一匹の黒猫が街を歩いている。
 街の名はレフキー。王国そのものと同じ名を冠するこの国の首都である。
 その中の通りの一つを行く黒猫――正確には猫ではない――柏木楓は疲れを感じていた。
 彼女は人を捜していた。同じギルドの岩切と、マルチの捜索をさせる雇うべき冒険者とを。

 ところが、捜すとなるとこれが案外見つからないものである。
 岩切は所在が知れぬ為、し方がないと言えなくもないが、まさかこの街で冒険者不足に悩むとは予想もしなかった。
 先ほど見た何か騒動があった酒場にも、冒険者は見当たらなかった。
 正確には三人いたのだが、二人は生前はと付けねばならなかったし、もう一人は先約有りの様だった。
 今夜はこの街で、冒険者が総出で駆り出されるようなことでも起きているのだろうか。
 そんなことを考えながら歩いていると、前方に見知った顔を見つけた。岩切である、ついでにあゆ。
 良かった、兎にも角にも仕事の一つは片付いたようである。

 篠塚弥生に伝言した岩切とあゆは、二人の情報屋と別れたその後、報告の為ギルドへ足を運んでいるところだった。
 ただしあゆの変装のために岩切が気絶させたメイドの服を着替えさせたり、志保が水晶の使用料を請求したので、
 またも不毛な値切り合戦が行われたりと、余計な時間が掛かってしまったが……

「……岩切さん」
「楓か、どうした?」
 物陰から楓が魔法を使い、岩切にだけ聞こえるように話す。
「うぐぅ、楓さん?」
 当然それは岩切にしか聞こえていないので、あゆは岩切を見上げる。
「捜しました。篠塚弥生さんですが……」
「ああ例の件なら、彼女には伝えた。今は鶴来亭にいるはずだ」

「おい、楓?」
 しばらくしても返事がないので、岩切は訝しんで声の主を捜す。
 路地裏を覗きこむと、そこに何やら落ちこんだ黒猫を見つけた。
 そう結局彼女は、二つとも仕事をこなせなかったのである。
889楓、散る:03/06/08 21:55 ID:KJgLV3YB

【岩切花枝、柏木楓、月宮あゆ 盗賊ギルドへ】

編集サイト290 合縁奇縁
>>772 おだやかに からのリレーです。

例によって、おかしな点があれば御指摘願います。

>>886
単なる身元保証のつもりだったんですが、それならそう書くべきでしたね、反省。
890Uスレの1:03/06/09 00:18 ID:XDM0b7G6
 ごめな……ログ整理……明日か明後日……(´・ω・`)
891名無しさんだよもん:03/06/09 00:28 ID:24Baypn8
>剣の主
ふむふむ。確かにありましたね、「魔族の剣」。いいところで
繋がりましたね〜。しかし、原作では圧倒的な戦闘力の耕一も
ここではそうでもないのかな?彼にとって初の戦闘シーン。
どうなりますやら。

>楓、散る
落ち込む黒猫の図にニヤリ。確かに言われて見れば弥生は
既に岩切達とコンタクト取れてましたな。
しかし、相性悪そうな組み合わせの三人ですね〜。
タイトルで一瞬びっくりしたのは秘密。
892名無しさんだよもん:03/06/09 02:33 ID:ExHYDqFW
耕一なんて舞の引き立て役位がちょうど良いんじゃない?
ここの耕一って鬼でもないんだしただの鍛冶屋だし。
なんか動物に変身できるらしいけどさ。

まぁエルクゥ厨のエルクゥ最強理論も何の意味もなさないから気が楽だ。
どう控えめに考えても剣聖である雪見やみさきの方が強くなるだろうしね。
893名無しさんだよもん:03/06/09 03:35 ID:T5YhB35v
最近アンチエルクゥの釣りをやたらと見かけるのはなぜだろう?
ここのところエルクゥ厨は大人しいのに。
ひょっとして一人でやってんのかな? 煽り方が似てる気がするが。

釣られてゴメン。
以下何事もなかったかのようにどうぞ。
894名無しさんだよもん:03/06/09 07:56 ID:96VwHYCH
>893
>892はアンチエルクゥではないと思われ。
むしろ他に引き合いに出されてるキャラへの皮肉では?
嫌SSスレあたりの発想に近い気がした。
895名無しさんだよもん:03/06/09 09:29 ID:MFUOeLzP
随分と遠回しな皮肉だな。
せっかく妖精さんたちが頑張ってるのに全く。
そう言うことなら嫌SSスレで愚痴ってろっつーの。
もっともマジでアンチエルクゥでもお引き取り願いたいところだが(w
896名無しさんだよもん:03/06/09 12:56 ID:ylrTY8yw
なんつうか……20対2だぞ? いくら強くても……なぁ? 
しかも2人ってまだ手抜いてるんだろ。余裕ありまりくで全然緊張感無いし。
敵は敵で20人以上もいながら誰も佐祐理と舞を連れさろうとしないし。何がしたいんだよ……。
敵の思考がキャラの都合のいい方にしか動いてないから(鼠の時もだし)素直に誉められないだよな。
897名無しさんだよもん:03/06/09 13:18 ID:tsRU8ifO
狭い路地だってことを忘れるべきじゃないんじゃ?
一度に一人二人しか突っ込めないんじゃ数的優位も薄れるし。
テルモピレーの時のスパルタ軍なんか(略
898名無しさんだよもん:03/06/09 13:58 ID:avnHPNQN
Uスレの1
899名無しさんだよもん:03/06/09 16:21 ID:HR72xRVQ
敵も雑魚じゃあるまいに…
仮にも敵の首都に潜入する精鋭が古代民族の不思議パワー&ミラクル剣技で一蹴なんてハッピーな展開ご免こうむるな。
900名無しさんだよもん:03/06/09 18:01 ID:avnHPNQN
一人で勝手に予想してブー垂れてたら世話ないよな(w

900ゲッツ!!
901名無しさんだよもん:03/06/09 18:42 ID:/fFMzpYa
>>899-900
そうやって先の展開をつぶすのはイクナイ!!
902名無しさんだよもん:03/06/09 19:54 ID:DIHU9q+j
でも、無傷ってのはそろそろ止めてほしい。
塔でもその帰り道でも浩之にしか目立ったダメージないし。その浩之ですら傷がないかの様な活躍。
鼠の時もノーダメ。海賊の時もノーダメ。傷を負った描写はあるけどないも同然な展開。そして何時の間にか傷がなくなっている。
そりゃいちいち傷を負ってたら動かしにくいのは分かるけど……それは結局作者の都合でしかない訳で。

>>897
まぁ、実際には2〜5人しか一度に相手にしてないと仮定しても、残りのやつは何してる? って話。
出される作品に全てマンセーしたいのは分かるけど、やっぱり書き手の人には頑張ってほしいし。
文章や描写、構成なんかは目を瞑るとしても、物語的な展開に不自然さが目立つときはやっぱり指摘したいと思う。
今回のは許容範囲だけどね。素直に誉められないってだけで。
903名無しさんだよもん:03/06/09 20:54 ID:YNsc4NMv
だったらそろそろ黙っておかないとただの粘着にしか見えないぞ。
大体、鼠だとか海賊だとか別の作品を今挙げてもどうしようもないだろう?
それとも同一作者による自作自演か?
だとしたら究極のマゾプレイだな。
904名無しさんだよもん:03/06/09 22:09 ID:Qum3fhJj
>>903
何が「だったら」なんだかw
理解できない意見はみんな粘着くんや煽りの類ってか?
>902は今までリスクの少ないお手軽な事件ばかりだったからここらで引きしめを図りたいって意見だろ?
わかった風な口利いて何が「別の作品今挙げてもどうしょうもない」だ、おめでたい奴め。



と言う訳で以下何事もな(ry
905Uスレの1:03/06/09 23:42 ID:SLpmtJ7F
 あー。
 とりあえず、『仮面』までログ生理&収録完了。
 後は明日になりますー。

 地図の扱いどうしましょ?
 公式の設定として掲載するか、参考資料に留め置くか。
 そこらへんの指示を希うものでありまする。

>>898
 ん?
 何か御用で?
906名無しさんだよもん:03/06/10 00:19 ID:YtEL9CXd

賑やかですね。
FARGOの二人が余裕綽々なのは、前回からの流れなのでいきなり変えたら
それこそ辻褄が合わなくなると考えたからです。
舞は帝国の標的ではないですし、帝国兵の足元で寝ている佐祐理も、捕まったも同然でしょう。
それと今回時間経過はほとんどしていません。
場面転換による別視点の同じシーンと、モノローグが多いので長く見えるかもしれませんが
それでもやはり変でしょうか。
もっともそれらが伝えられていないのは、文章力の無さのせいです。

精鋭云々についてですが、他の書き手方がどう考えているのかは知りませんが
自分は名前も無いようなキャラは、程度の差こそあれ所詮引きたて役、雑魚の類と考えています。
傷については治癒術の設定と、作品内時間の進行の遅さのせいでしょうね。
簡単に治せないのに時間は進まない、結果負傷しなかったり、してもほとんど無かった事にされている。
これが現状かと。
この二つは行き過ぎると拙いと思うので、個人的には何とかしたいところです。
でも厳しい戦闘で重傷者続出なんてことになると、動かせるキャラがいなくなりそうで困るんですよね。

>>905
更新ご苦労様です。地図は参考に一票です。
907名無しさんだよもん:03/06/10 00:27 ID:YtEL9CXd

>>仮にも敵の首都に潜入する精鋭が古代民族の不思議パワー&ミラクル剣技で一蹴なんてハッピーな展開
そんな展開を用意してみました。パクリですが。

電光石火 川澄舞!
第X話 不思議ミラクルパワー剣技
 舞は魔族の剣を手に入れた。
 その途端、体の奥底から不可思議な力が湧き上がりまくり。
 何だか気分も体調も良くなって、剣振り回しまくり。
 そのまま帝国の精鋭二十人余りを滅多切り。
「破地光熊斬」
 ズバァ。
「本歩弧狸斬」
 ズバァ。
 全滅。佐祐理も。――完――

などと新作が上げられなかったので、お茶を濁してみる。
908名無しさんだよもん:03/06/10 03:29 ID:v6WOmgKy
>905
更新乙〜。

>907
ワラタ。まあ、時代小説とか昔の軍記ものとかでも無茶なのは
いくらでもあるし、個人的には人数差云々はそれほど
気にならなかったりする。ただ、話に緊張感をというのも
正論だとは思うので、その辺りはバランス感覚が求められるところかな。
909855とか:03/06/10 07:37 ID:ujWub14C
>905
更新お疲れ様です。
すみませんが、856の最後から数えて4・5行目、857の最後から数えて7行目に
算用数字が混ざってしまったので、収録の際は漢数字に直していただけないでしょうか?
理系の癖でつい……。
910Uスレの1:03/06/11 00:06 ID:aWBtPOIV
ログ更新完了しますた。
ご意見も乏しく地図の収録は一時見送り、今回はログ編集のみに留めております。
週末、以前から自分を含め数人の方が上げられております設定まとめも掲載したいなとか。

ただ……html技能に乏しいので、テキスト形式になるかもしれないですが(だめじゃん

で、そろそろ新スレのヨカソ?
911Time of Arcane Things:03/06/11 02:09 ID:M48dVic+

 女王大庭詠美は少々不機嫌だった。
 突如現われた謎の島について、源之助から説明を受けたのだが、いきなり難しげな詩を聞かされて
その内容がさっぱりだったからである。
 ただそれをそのまま言うのも癪なので、その前後でわかった部分だけ聞くことにした。

「レフキーと同じなんて、ずいぶんでっかい島ね。この国だってそこまでちっちゃいってわけでもないのに」
「さすがにそこまで大きくはありません。レフキーの街と同程度と言う意味です」
 確かにそこまで巨大な島なら、もう少し早く発見されて良さそうなものである。
「だったら紛らわしい言い方しないで、始めからそう言いなさいよ!」
 苛々と詠美は声を荒げ、それを横にいる梓がまあまあとなだめる。
 ここでは極ありふれた光景だ。

「大体、その千年の迷宮?ってのが出るんだったら、もっと前に教えておきなさいよ」
「記録に残ってて千年に一度なら、今年だってわかってたんでしょ」
 むしゃくしゃした詠美は、源之助にそう言ってあたる。
「いいえ、千年の迷宮は千年ごとに決まって現われるわけではありません」
 それを聞いた三人がそれぞれの反応を示す。
「あんたさっき、千年前に現われたって言ったじゃない!」
「へえ、そうなんだ」
「む。そうなのか」
 詠美の反応だけが妙に強く、まるで源之助はわざと曖昧な言い方をして、それを楽しんでいるかのようだ。
 もっともそんなことをするのは、この老人くらいのものだろう。

「あれは伝承特有の比喩表現ですから。前回現われたのは、およそ八百年程前のことです」
 源之助はさらりと言ってのける。
「でんしょうとくゆうのひゆ?」
「例えのことです。つまりそれくらい長い年月に一度しか現われないと」
「そ、それくらいわかってたわよ」
 そう言って取り繕う詠美。
912Time of Arcane Things:03/06/11 02:10 ID:M48dVic+

「ここからが重要です、女王陛下」
「そ、そうなの?」
 源之助が改めてそう言うので、少し緊張する詠美。
「はい、先ほどの詩文にありましたように、この迷宮には間違いなく秘宝が眠っております」
「冒頭の『偉大なる宝』、とやらか」
「それに続く『神々より与えられし、至高の輝き』ってのもそのことだね」
 蝉丸と梓が口々に答え、源之助は軽くそれに頷く。

「文献によればこの秘宝自体、神の名を冠する強力なものですが、それ以上に重大な事実があります」
 果してゴクリと喉を鳴らしたのは誰だったのか。
「本来秘宝が滅多にお目に掛かれない、貴重なものであることは周知の事実です」
「しかし時に多くの秘宝が、次々と世に現われることがあります。これを『秘宝覚醒の時』と言います」
「秘宝覚醒の時……」
 呟きを受けて源之助はさらに続けた。
「秘宝覚醒の時には小覚醒と大覚醒があり、かの迷宮が現われたのは今が大覚醒である証拠」

「と言うことはつまり……」
「はい、今後も多くの秘宝がその姿を発見されるでしょう」
 源之助はそう締めた。
 つまりは秘宝奪取の機会が、多くもたらされると言うことだ。
 それこそ彼らにとって望むところだ。
 同時にそれは、秘宝争奪戦の更なる激化を意味してもいた。

「ふみゅーん、つまりどういうことなの?」
「女王陛下が自由に絵をお書きになれる日も、遠くないかもしれないと言うことです」
「だったら始めからそう言いなさいよ!」
 源之助と詠美はついさっきやったのと同じようなやり取りをした。
 案外この二人は楽しんでいるのかもしれない。
「むかつくっ!むかつくっ!ちょおむかつく〜〜っ!!」
 気のせいかもしれない。
913Time of Arcane Things:03/06/11 02:11 ID:M48dVic+

編集サイト272 円卓の間 からのリレーです。


>>884 剣の主 の最後から二行目にとんでもない間違いを発見。
下記の通り修正願います。

×剣と母の秘宝とが、舞に語り掛ける。
○剣が、舞に語り掛ける。

正直この手の間違いこそ指摘して欲しいです。
914名無しさんだよもん:03/06/11 03:34 ID:zB/cil7Z
『剣と母の秘宝とが、舞に語り掛ける。』
一般人の場合
( ´_ゝ`)フーン


>>913の場合

        _,..-───-- 、
     ,. '"  _ -−ニ二二`ヽ、
    /   /  _,.−'⌒ヽ,ノ``'ミ,、
  ,.'   /  /  ,,イ゙\ /入、ヾ,
. /  / // -‐''"_ヽ'、 l l′/`_''l}
 '  / ,.イii/ /∠´ `ヾ' l lレ'´ 'ヾ
   / ,.' ii/u i{,_,,  ゚ }! l li{,_,. ゚ }
.  / /ii i/u uヾく,_,ノ′ l lゞi-rイ
 ,' /-、 i| u    ' ' ` ,__〉〉  |    うわあぁぁぁぁぁぁあ
.  /l 「ヾ'i|   ,.r‐     `'U'U__,.ィ}|
 / | ー}.l| /,r 'T"丁 ̄| ̄ | l|'|
 }i iト、}( l! ,イ  |__, ⊥ _|__,l|.ト、
 `i iiiハ `| i l_/       _,ノノ|| \
.  }iij. |. l |Y/      ‐┴''" ||\ \
  ゙l!  | l|. 仁   _,__      ||  \ \
  /   | |l lニレ'´     `ヾ'、  ||  
  /   |. |ヽ 「]、       ヾ>、||   
    .|  |. ヽ`「ヽ        }H|\
      |  |  ヽ`「ヽ、、,__,,ノj‐||  ` ー─
   u  |    \`'〔`'T''''''T´ ,ノ|
            \ ` ̄ ̄ ̄ /
              `−──‐′
915代償の大きかった発想:03/06/11 04:58 ID:71RlMjz5
共和国城内・作戦会議室

「難しい話は後でいいから、とりあえずサッサと秘宝を取りに行きなさいよ」
「いえ、それがですね陛下、現在浮島周辺の海は大波でして、浮島に近付くことが難しく…」
「波なんて2〜3日も経てばおさまるじゃない」
「まぁ…そうなんですけど…」
「時化がおさまった途端、我先にと冒険者やトレジャーハンターの類が押し寄せるでしょうな」
「う…」
 浮島は、普通の人間から見れば不気味で、危険な場』に見えるのだろうが、
秘境や魔境、未開の地には財宝がツキモノと考える貪欲な探求者にとって、
浮島はまさに宝島のような存在であろう。
 現にいくつかの気が早い冒険者ギルドが港の船と交渉を始めているとの話だ。
 スタートで出遅れれば秘宝を手に入れる確率も当然落ちるだろう。
「じゃあさ、軍港にいっぱい並んでるでっかい船を使えばいいじゃない」
 詠美が意気揚々と提案する。
「共和国艦隊…確かにあれだけの規模の船なら時化にも耐えられるかもしれませんが…」
「でしょでしょ?」
「海軍の主力艦隊が動けば、嫌でも国民の不安を煽ってしまうでしょうな。
 それに、帝国との外交にも影響がでる恐れがあるかと」
「ふみゅ…」
 源之助が間髪入れずに問題点を突く。
 大型軍艦なら時化を乗り切ることも可能かもしれないが、目立ち過ぎる。
 民に不安感を与え、帝国にあらぬ誤解を抱かれるというリスクは、大きい。
「アレもダメこれもダメ…いったいどうすればいいのよっ!
 目立たないで大シケの海を進んで浮島に乗り込むなんてできっこないじゃないよバカっ!」
「だから今、我々がこうして議論しているのですよ」
 梓が乱心気味の詠美をなだめる。
916代償の大きかった発想:03/06/11 05:00 ID:71RlMjz5
 作戦会議は暗礁に乗り上げていた。 
 問題は大きく分けて3つ。

 ひとつはなるべく目立たないように浮島に上陸すること。
 もうひとつは荒れ狂う海の真っ只中にある浮島に接近すること。
 そして、誰よりも早く浮島に到着すること

 この3つの条件を満たす方法が今のところないのだ。
 生半可な民間船は大波の前ではあまりにも非力であるし、
 かといって軍艦を動かすには都合が悪い。
 モタモタしていたら冒険者やトレジャーハンターに先を越されてしまう。

 会議は詠美の突拍子もない発案、梓のアシスト、源之助の突っ込みの繰り返しであった。
「さて、どうしたものか…」
 すでに日付が変わり、城内で灯がともっているのはこの部屋だけだった。
 蝉丸は先ほどから議論に参加せず…というよりか、詠美・梓と源之助の応酬が激しくて口を挟めないでいた。
 …もっとも、口を挟めたとしても大層な意見など言えないため、この状況を甘んじて受け止めいていた。
 俺の出番はない…そんな安心感で気が緩みきっていたためか、
「ふぁ〜…」
 大あくびをしてしまった。
 慌てて口を閉じるが時すでに遅し。 ものすごい勢いで三人に睨みつけられる蝉丸。
「ほう…会議中に大あくびとは、隊長殿はずいぶんと余裕がおありのようですな」
「いや、違う」
「坂神ぃ、そういえばアンタさっきから全然会議に参加してないよねぇ」
「待て梓、それは寝てないから――」
「こっちだって寝てないわよっ!!」
「……すいません」
 詠美の一喝に縮こまる蝉丸。
「謝ったって遅いわよっ! “せーい”があるんならアンタもなんかいい案を考えなさいよっ!」
「む…」
917代償の大きかった発想:03/06/11 05:02 ID:71RlMjz5
 困る。先程から何も考えてない。
「ホラ、どうしたのよ。 何とか言いなさいよ」
 焦る。考えてないから何も言えない。
 どうする
 どうしよう
 どうすればいいんだ…

 ガチャ。

 ちょうどいいタイミングで会議室の戸が開き、彩とはるかが入ってきた。
「……あの…お茶がはいりました…」
「みんな、少し休憩すれば? 珍しい紅茶が手に入ったんだ」
 助かった……
 蝉丸の目には、彩とはるかが女神に見えた。
「あ」
 ガチャン。
 女神の一人がティーポットを倒した。
 溢れた紅茶は一直線に蝉丸のほうへ侵食していき、端から滝のように流れ―――
「む?」
 落ちなかった。
 紅茶の海は円卓の縁で凍ったように停滞していた。
 どうやらはるかがティーポットを倒したのを見て、とっさに彩が水に術をかけたようだ。
 止まった紅茶を手際よく拭き取る梓。
918代償の大きかった発想:03/06/11 05:05 ID:71RlMjz5
「おいはるか、せっかくのお茶が台無しじゃないか」
「あはは、ごめんね。蝉丸大丈夫? 濡れてない?」
「…………………」
 蝉丸は応えない。
「………あの、蝉丸さん?」
「彩、はるか、お前たちのおかげで小舟1艘で荒波を乗り越える方法を思いついた」
「えっ、ホント!? どうやんの?」
 詠美が身を乗り出して蝉丸に問いかける。
 他のメンバーも蝉丸の挙動に注目する。
「海を、止めるのです。こぼれた紅茶のように」
「ほう」 「なるほどね…」 「ふみゅ?」
 約一名理解できなかったようだが、とりあえず道は開けた。
 あとは行動するのみである。そう、浮島上陸に向けて。

「ところで、珍しい紅茶って、どんなの?」
「ん、よくわからないけど、高そうなの」
 そう言いながら、はるかは風格のある茶筒をふわふわと弄ぶ。
 蝉丸は、その茶筒に見覚えがあった。
「…はるか…それ、何処から持って来た?」
「蝉丸の部屋。暇だから彩と一緒に掃除してたら出てきた」
 やはり。実はこの茶葉は異国の最高級品で、レフキーでは滅多に手に入らない貴重品なのである。
 この茶筒一本手に入れるために、蝉丸は清貧を極め、コツコツとへそくりしてようやく手に入れた、いわば汗と涙の結晶なのである。
 ちなみに、まだ一口も飲んでいない。
「返せ、今、すぐにだ」
「いいけど、もう空だよこれ」
「中身は何処へ?」
「さっき倒したティーポットの中に全部入れたよ」
「…あの、ごめんなさい……勝手なことをしてしまって…」
 蝉丸の目には、彩とはるかが悪魔に見えた。
9191 ◆z2mYCw53h6 :03/06/11 05:20 ID:71RlMjz5
【 特務部隊  浮島上陸に向けて行動開始 】

長い間消息不明で申し訳ありませんでした。
1です。しかもトリップ微妙に忘れました。……もうダメダメですねw
久々に書いたもので多分矛盾とか誤字脱字とかいっぱいあると思います。

えーと、間違いとかはビシバシ指摘してくださいw

一応>>911-913の『Time of Arcane Things』からのリレーです。
戻ってきてからまだ日が浅いのでこれからログ読み返して話の流れを掴もうと思います。
920名無しさんだよもん:03/06/11 22:07 ID:4KFkiXkX
>×剣と母の秘宝とが、舞に語り掛ける。
>○剣が、舞に語り掛ける。
まぁ……実際に秘宝がすぐそこにあるわけだし、致命的な程間違ってるわけじゃないから
皆、脳内補完してたんだろ。

>正直この手の間違いこそ指摘して欲しいです。
自分のミスを棚に上げておいて、非難するような言い方ですなー(w
921名無しさんだよもん:03/06/11 22:26 ID:GlccXS7f
>>919
おかえりぃ。
以前作ってた流れのまとめ、まだ頑張るんだよね?w

しかし、なんか昨日一昨日あたりから変なのが一匹紛れ込ん
でるよな……
勢いがなけりゃ静かだが、ひさびさに活気付いたら荒れるっ
てのも困ったもんだ。
922名無しさんだよもん:03/06/11 23:24 ID:om86Nmi1
>>921
「一人」が「荒らしてる」と思っているのなら認識を改めるべきだろう。

というか合間に入る茶々に惑わされて批判をケチ付けられたくらいに受け
止めていてはいけないと思うのよ。
923名無しさんだよもん:03/06/11 23:36 ID:KbOiBZdT
>>921
わかってると思うけど、放置安定だから。
924名無しさんだよもん:03/06/12 00:27 ID:RlBiARRv
はて?舞の母の秘宝は、ラルヴァ憑き澪に奪われたはずですが?
925Uスレの1:03/06/12 01:30 ID:tvAsMRej
 流れを無視してカキコ。
 なんかびみょーに忙しくてさりげに今週末の再更新は微妙だったりしますが、少しばかりお伺いしたいことが。

 提案、ってのもおこがましい過去のリレー総合スレのアイデアの窃取なんですが、カノンSSリンクに登録するというのはどうでしょうか?
 ぶっちゃけ、今現在結構進んでるとはいえ書き手の数を見るとかなり限られてるわけで、新しい血を取り入れる努力をしてみるのもいいんじゃないかと……
 遅きに失した感もありますが(汗

 あわせて、葉鍵板各リレースレの編集サイトとの相互リンクも申し入れてみようかと思うのですが……
 なんにしても、皆さんのご意見を賜りたくー。
926名無しさんだよもん:03/06/12 02:18 ID:T+RGCQKP
kanonSSリンクか……
カンフルとして働くか、劇薬として働くか……

キャラの無敵化、出番の極端な偏りさえ気をつければ良いかもね。
927名無しさんだよもん:03/06/12 02:32 ID:m9M7ZPe9
KanonSSリンク。
たしかに、やってみるのも一つの手かもしれない。
けど、とりあえず書き手さんにはログ読みを義務づけないと……。
まあ、大半は読み手だからログを見に来るんだろうけど。
928名無しさんだよもん:03/06/12 02:50 ID:IVRuInwZ
更に流れを無視したカキコさせてもらいますが、Uスレの1さん。
編集サイトの話数にして316のタイトルがちゃいます。永遠ぢゃなくて道です。
それと307登場人物の名前が違います。
後は前にも言った憶えがありますが、242の「馬でも借りるかー」みたいな事を言っちゃってる一文の一部分を削ってください。
馬なんて誰も使ってないので。余裕のある時にでも修正願います。

>>925の提案については……kanonSSリンクは止めといた方が無難な気が。
相互リンクについては、反対する気はないです。
929名無しさんだよもん:03/06/12 15:55 ID:Go94QLC4
KanonSSリンク…
いつの間にか祐一がU-1化していたなんて笑える展開が容易に予想できますな(w
930名無しさんだよもん:03/06/12 23:05 ID:P2CLqbUk
上手いこと考えるね。
話がつまらなくなったら、全部KanonSSリンクから来た人のせいにすればいいってことか。
931名無しさんだよもん:03/06/12 23:36 ID:yRjOon2U
いやぁ、Uスレの1氏は文字通り新しい血=U-1ネタを求めてると見たねw
932名無しさんだよもん:03/06/12 23:37 ID:BgrWnld7
> Time of Arcane Things
ふむ。大覚醒ですか。魔族の蠢動と因果関係を絡めても良さそうだし、
直接の因果関係がなくても話を動かす方向に使えそうだし、上手く使えば
面白くなりそう。しかし、ちゃん様陛下の一々ふみゅーんな反応にはワラタ。

> 代償の大きかった発想
いよいよ秘宝争奪戦の様相を呈してきましたね。共和国、帝国、冒険者達。
次の焦点の一つに向って役者が出揃いつつある感じです。そして、今度は
蝉丸がとほほの巻。こういう強面がボケキャラやるのは和むなぁ。

>舞の母の秘宝の件
確かに澪=ラルヴァが持ち去ってますね。すっかり忘れてました。
ここも大分長くなってるので、細部まで無矛盾とは行きませんよねぇ。
まあ、気付いたときに適宜修正していくしかないのでは。
933Uスレの1:03/06/13 01:17 ID:XYw6LhfI
>>928
 承知です。
 次回更新時には、必ず。

>>931
 わたしゃwaffen-ssの吸血鬼じゃないので、一心不乱の大殲争は御免蒙りますw

 ……っかし、そうか。
 U-1現象という脅威があったんだ……
934事情聴取:03/06/13 02:06 ID:e2k5bJcM

 ようやく動かなくなったことを確認し、御堂は視線を男から持っていた斧に移した。
 それは乱闘の始めに見た通り、不気味な模様を浮かびあがらせ、男の手と一体化しているようであった。
(腕が斧に……いや逆か?斧が腕に貼り付いていやが……ん?)
 御堂がしばらく斧を眺めていると、刃に浮かんだ幾何学模様が薄れていきそして消えた。
 同時に一体化したかのように握られていた柄が男の手から離れる。
 御堂はレイピアの先で斧を突つく。何も起こらない。
 レイピアを置き、躊躇しつつも指先で斧に触れるが、やはり何も起こらない。
 意を決して拾い上げてみた。
(何ともねえな、てっきりこいつが原因だと思ったんだが)

 斧をしげしげと見つめていると、先程までなかった外の喧騒が聞こえてきた。
 入り口に目を向けると、何人か衛兵らしき姿が靴音を響かせ入ってくるところだった。
(そう言や、奴を倒せば元に戻るって言ってたな)
「おう、もう終わっちまったぞ。まあ後片付けが残ってるから、そいつは任せるぜえ」
 そう言って御堂は衛兵を迎えた。

 衛兵達は男を取り囲むと武器を構えて言った。
「ようし、そこを動くな!!」
「通報にあった斧で暴れた男だな。連行する!」
 衛兵達が囲んだのは御堂だった。
 斧を持ち、足元に人が倒れたその状況では無理も無い。
「ゲーック!俺は犯人じゃねー!!」
 御堂に言われて後ろを向いていた矢島や瑞希たちが、その叫びに振りかえる。
 そして口々に弁護?する。
「ちょ、ちょっと。御堂の兄貴は悪人面だけど犯人は倒れてるそいつッスよ」
「犯人に見えるかもしれないけど、その人は犯人じゃないよぉ」
「そうよ、人相も口も悪いけど悪い人じゃないわ。……多分」
「手前ら……」
 御堂は一言文句を言ってやりたかったが、これ以上余計な誤解をされないように、この場は抑えた。
935事情聴取:03/06/13 02:08 ID:e2k5bJcM

 衛兵達が顔を見合わせていると、その後ろから声が届く。
「その人達の言う通りです。犯人はそこに倒れている男です」
「あたしも証言するわ。足りなければ逃げ出した店員や他の客からも聞いてみて」
 事件が起こり店の外へ避難していた広瀬真希と天野美汐の二人であった。
「みゅー!」
「繭!良かった。無事だったのね」
 その姿を見て繭が広瀬に飛びつく。広瀬は繭を抱きしめた。
「ってことだ。物騒なもんは仕舞ってくれ」
 ようやく納得したのか衛兵達も武器を納めた。

「その凶器の斧は預からせてもらうぞ」
「ああ、当然だな」
 御堂はそう言って衛兵の一人に斧を渡そうとする。ふとその時、何かが聞こえたような気がした。
(……セ)
「ん?何か言ったか?」
「何のことだ?」
 空耳だったか、と御堂は斧を手渡す。
「ああ、すまねえ。気のせいみてえだ」
 見回すと他の連中もそれぞれ聴取を受けていた。
 斧の男とそれに殺された男の死体も運び出されようとしている。
 この事件はこれで終わった――その筈だ。

「おい」
「何だ?」
 斧を持ち去ろうとしていた衛兵は、御堂に呼びとめられて足を止めた。
「その斧、さっさと処分したほうが良いぜ」
「そうはいかん。大事な証拠だ」
 そう言って、その衛兵は斧を持ち去っていった。
(まあ、問題はねえ……よな)
 そう自分に言い聞かせながら、御堂はいつまでも胸の奥の不安を晴らせずにいた。
936事情聴取:03/06/13 02:08 ID:e2k5bJcM

【御堂、矢島、椎名繭、霧島佳乃、高瀬瑞希 異界化した酒場から解放】
【旅芸人一座 久瀬以外再合流】
【御堂 肩に軽傷、一抹の不安】

編集サイト311 為すべきこと からのリレーです

次スレは950ですか?

>>933
Story Jump やタイトルからのLinkもかなり違っているようなので
お手数ですがそちらもお願いします。
937名無しさんだよもん:03/06/13 16:11 ID:NuXLWj9M
あの、先ほどから疑問なのですが「U-1現象」て何ですか?
祐一最強化ネタのこと?
938名無しさんだよもん:03/06/13 17:05 ID:0J7Qm5HR
>>937
その通り、元は嫌SSスレで生まれた蔑称。
特徴としては重みのない強さ、お手軽な称号、なんだか凄いらしい武器、などを
好み祐一の髪が延び笑顔で人を魅了し始めたら赤信号っていうか手遅れ。


…あれ、既にかなりやばいな(w
まぁもっと広義でとると原作じゃあり得ない設定を添加してキャラを強化させる
事も該当するのでこのスレは始まりから既にU-1的であるとも言える。
939名無しさんだよもん:03/06/13 22:32 ID:NuXLWj9M
>>937
ありがとうです。疑問が解けました。

>まぁもっと広義でとると原作じゃあり得ない設定を添加してキャラを強化させる
>事も該当するのでこのスレは始まりから既にU-1的であるとも言える。
まあ、ファンタジーですからね。w
うたわれとフィルスノーンくらいしかオフィシャルのままじゃ使えませんよ。
痕やmoon、雫も特殊能力はありますがRPGじゃあ、雑魚〜中雑魚レベルですし。
940名無しさんだよもん:03/06/13 22:59 ID:7aSnVXV3
>>937
頭コチコチの原作依存者たちが、ちっぽけなプライドを満足させるために生み出したもの。

何かの原作を元に自分流の作品を作るってのは、二次創作のもっともシンプルな定義。
ところがこの板には、お客様根性だけ肥大して、
原作の設定を尊重しないSSなど二次創作と認めない、とわめいてる人達がいる。

それはそれで考え方の一つなんだろうけど、所詮何も生み出さないマイナス思考だから、
人の悪口言い合って、仲間同士でダベる程度のことしかできない。
(例のスレでも、これこそ原作に忠実なSSだという作品や紹介を誰も出してないしね。
 まあ出せないということなんだろうが)

ある意味哀れな人達だけど、あれはあれで楽しんでるみたいだから、放っておくが吉。
幸い他のSSスレを荒らす気は(今のところは)無いようだし。
941名無しさんだよもん:03/06/14 00:03 ID:AuTTJZ4u
ところで、残りバイト数がヤバげ。499kbと出てる。
>945あたりにお願いした方がいいかも。
942名無しさんだよもん:03/06/14 01:00 ID:nUuu8nLy
>>940
嫌SSスレはもともと文字通り嫌なSSをあげるだけのスレだから原作に忠実だと
あまり晒される事がないのでは無かろうか。
って言うかU-1作家か信者の方ですか(w
943名も無き語り部:03/06/14 01:18 ID:p1fxMaDQ
容量ヤバそうなので勝手に立てさせてもらった

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944名無しさんだよもん:03/06/14 01:21 ID:lCOJ3Djs
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945名無しさんだよもん
立ってました。

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