SS統合スレ#6

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1名無しさんだよもん
dat逝きにも負けず、不死鳥の如く蘇ったSS投稿スレ。
投稿、感想、アドバイス、葉鍵っぽいSSネタならなんでもOK!
トラブルのない投稿の方法は>>2-5を参考にしてね。

力作はもちろん、実験作、シチュ等、君がSSだと思ったらそれはSSだ!
職人修行中の方も気軽に質問、投稿よろしく。
初心者の質問・素朴な疑問なども大歓迎。
スレを盛り上げるためにも、投稿作品には(・∀・)イイ!の一言でも
いいので感想を書いてみよう!
もちろん無言で答えるのも感想のうちだけど(;´Д`)

前スレ等は>>3-5

※SS投稿の告知があった場合は、投稿を優先させてあげましょう。
※板が重くならないように、長文投稿後しばらくはageない方が良いでしょう。
※スレの寿命を伸ばすために、雑談などではリダイレクトの使用を控えよう。
 かちゅーしゃ対応(>1、>1)がお勧め。

【便利な関連サイト】
mio_2ch氏による回収サイト(thx!)
http://members.tripod.co.jp/mio_2ch/
三告平氏によるSSトレーニングルーム
http://www.hakagi.net/ss/
2名無しさんだよもん:01/10/03 20:56 ID:yE2szgAo
【投稿の手順】

1:まず、投稿する旨を告知するカキコをすると良い。
  「今からSS投稿します。なお、××な内容です」など。
  鬼畜・陵辱・スカなどのジャンルでは特に。読むのを嫌がる人もいます。
  (時間帯・スレの状態・信念・その他で省略可)
2:書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
  (名前欄に、タイトルと通しナンバーを入れると分かりやすい)
3:回しは不要。旧スレからの変更です。
4:最後にsageで作者名・タイトル・あとがきなどと共に、
  アップしたところをリダイレクトする(>>1-2みたいな感じ)と(・∀・)イイ!

基本的には、手順の【3】だけでOK。
初めて投稿する人は、前スレや、前回投稿なども参考に。
3名無しさんだよもん:01/10/03 20:56 ID:yE2szgAo
【前スレ・関連スレ】

SS投稿スレ
1:http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=999983591

鬼畜SS投稿スレ
1:http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=992895490

葉鍵板的SS討論スレッド Ver.5
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=995773504
4なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/03 21:14 ID:68iJUufc
再建おめでとうございます。
スレ建て有り難うございます。>1 の方。
5なにがしなの:01/10/03 21:32 ID:u1IPTwbE
いい加減、ホームページ作りなよ
6名無しさんだよもん:01/10/03 21:44 ID:8BkrpAzo
スレ立てお疲れさま>1
今度こそこのスレを最後まで使い切ろうね。
7名無しさんだよもん:01/10/03 23:39 ID:DAL3t9r6
おお、復活おめでたう。しかし前スレは結構盛り上がってたのに。
おのれ、上げ荒らし。
8名無しさんだよもん:01/10/04 01:11 ID:nc9mRXR6
#5の1です。死んだんだね…(泣
とりあえず再建おめでとう。
9なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/04 02:53 ID:QZreQZBg
前スレの『accord』。感想。

二人はラブラブだった。
名雪が触り放題だった。
萌えるというか、うれしはずかしで悶絶するシチュエーションだった。はぁはぁ。

いちゃつく途中で突然鬱になる祐一に、話をはしょったかなと感じた。
いきなりシリアスに移行する前に、ワンクッションあると良かった。

あと、ラスト近くで、子供の仮面がはがれ落ちたあゆの魂の叫びが、
うまく場面を盛り上げていると思った。
10名無しさんだよもん:01/10/04 04:30 ID:QcKThkyA
文章が(゚д゚)ウマーく伸ばせないんだけどどうしたら(・∀・)イイ??
11名無しさんだよもん:01/10/04 04:48 ID:K5SGG6DA
祐一?ね
ねえ、祐一。
私との想い出忘れちゃったんだよね?
あんなに楽しかったのに忘れちゃったんだよね。
私が悪かったんだね。
ごめんね、祐一。
でも、とっても楽しかったんだよ。
毎日が過ぎていくのが惜しいくらい・・・・・。
もう一度、やり直せたら・・・・・・。
12名無しさんだよもん:01/10/04 11:57 ID:0JZ6Z9DY
>10
どういうSSか分からないけど、状況描写や心理描写を入れてみるってのは?
13Aqua:01/10/04 23:19 ID:onY9Vx/U
新スレおめでとうございます。
お疲れさまです。>1
またいろんなSSが読めますように……

で、復活祝いと言う訳じゃないですが投稿します。
KANONネタで13分割です。
14春の日差しの中で(1/13):01/10/04 23:21 ID:onY9Vx/U
春の訪れは、どんな気分でも嬉しいと思う。
辛く長い雪の街が装いを変え、新しい色に変わる。
冬の間は凍り付かないためだけに動いていた噴水も、今は春の喜びの声を上げている。
穏やかに降り注ぐ日差しが温かく、気持ちまで安らかになる。

あの子がよく訪れていた公園。お気に入りの場所。
ここに一緒に来たことはほとんど無かったけど、それだけに大切にしたい場所。
あの子と一緒に訪れることはもう出来ない。
この冬に起きた、あたしのたった一人の妹との悲しい別れ。
あの子の事を忘れないために、あたしはここにいる。
手にはあの子が使っていた絵の具とスケッチブック。
誕生日の日に持って帰ってきたもの。大切な人からのプレゼントだと言っていた。

『もう書きたい物は書いてきたから』

1枚だけ千切れたページを見て少しだけ悲しそうに、でも嬉しそうに笑っていた。

辛い想い出が頭を過ぎる。
それを振り払うように頭を振ると、あたしは手にした鉛筆を動かしはじめた。

公園には親子連れやカップルが春を楽しんでいる。
春と言ってもまだ水は冷たいだろうに、子供達が噴水に入り込んで歓声を上げている。
いや、少しばかり日差しがきつい分、気持ちいいのだろうか。
暖かい風が吹く中、芝生に寝ころんでいるカップル。
周りにはあたしと同じ日曜画家も何人か居た。

やっぱりいい天気ね……
15春の日差しの中で(2/13):01/10/04 23:22 ID:onY9Vx/U
どのくらい経ったのかは分からないが、太陽が上にあるところを見ると、そろそろ昼のようだった。
この公園には憩いの場として有名なので、その人たちを狙った屋台も多い。
ぐぅっと背伸びをすると、あたしは昼食を買おうと立ち上がった。
と、そこに見慣れた二人の姿があった。

「あ、香里。何してるの?」
声をかける前に名雪があたしを見つけたようだ。相沢君も一緒にいる。
「久しぶりだな」
「お久しぶり、二人とも。こんな所でどうしたの?」

二人の顔をまともに見たのは久しぶりだった。
栞が居なくなってから、特に相沢君の顔を見るのが辛かった。
それに顔を見られるのも嫌だった。
でも本当は言葉を掛けたかったのに、それなのに声を掛ける事が出来ない。
それは相沢君も同じだったのだろうか?
学校でただ一人、同じ苦しみを味わった者として話が出来るはずだった。
だけどそれはあの子が居ない苦しみが増すだけだと思った。
自然と相沢君とは顔を背けるようになっていたし、そんなあたし達を名雪は悲しそうに見ていた。
あたしが悪いのは分かっていたけど、どうしようもなかった。
最後に二人と会ったのは終業式だから、そんなに日は経っていない。
それなのに懐かしい感じがした。

「天気がいいし、二人でデート? 羨ましいわね」
「わ、何言うんだよ〜。ただの買い物だよ」
「俺はただの荷物持ちだ。服を買うんだとさ」

いとこ同士なのに端からみれば恋人同士に見える。
いや、仲の良い兄妹といった感じかもしれない。
16春の日差しの中で(3/13):01/10/04 23:22 ID:onY9Vx/U
「仲良くていいわねー。見せつけないでくれるかしら?」
「わ、だから、そんなんじゃないってばー」
「服を買うのならあたしを誘ってくれればいいのに」
「だから香里。祐一はね、いとこなんだよ。いとこが仲がいいのは当たり前だよ」
「あら。振られたわね、相沢君」
「……何言ってるんだか」

名雪の顔がくるくると表情を変える。
学校以外の場所で会っている所為だろうか。
普段感じていた重苦しい雰囲気はあたしの中にはなかった。
春の風が重い空気を運び去ってくれたのかもしれない。

「で、香里こそ一人で公園で何してるんだ?」
「別に。ただ絵を描いていただけよ」
「あれ? 香里、絵なんて描いてた?」
「たまには、ね。こんなにいい天気なんですもの」
足下のスケッチブックを名雪が拾う。
「こら、人の絵を見るんじゃないわよ」
「うわー。結構うまいんだね。見てよ祐一」
「へぇ。凄いな。香里の絵は初めてみたけど、かなりいい線いってるな」
「ありがと。でも、おだてても何も出ないわよ」
「……あ……このスケッチブック……」

あたしのスケッチブックをパラパラとめくる名雪。
その本来の持ち主に気付いたのか、相沢君が視線を逸らす。
17春の日差しの中で(4/13):01/10/04 23:22 ID:onY9Vx/U
「ん? どうしたの祐一」
「あ、なんでもないぞ」
慌てて取り繕う。
「そうかな?」
「なんでもないって」
「そう?……あ、これって学校だよね。うわぁ、猫さんの絵もあるよ……」
「だから勝手に見ないでよ……」

大の猫好きな名雪には、どんな出来の絵でも猫が居たら嬉しいのだろう。
そんなに面白いものでも、まして上手なわけでも無いのに食い入るように見ている。

「ところで二人とも。お昼はもう食べたの?」
「ううん、これからだよ。どうしようかって祐一と話をしてたところだったんだよ」
「あ、それだったらここで一緒に食べない? お花見やピクニックみたいでいいと思うんだけど」
「うわ、それいいね。私は賛成だよ。祐一は?」
「あ、ああ……別にかまわないぞ」
「だったら決まりだね。でもどこかで売ってるかな?」
「あそこに屋台のバンが出てるわ。ホットドックとかがあったと思うわ」
「だったら私買ってくるよ」
「あたしも行くわ。名雪一人じゃ心配だし」
「私、そこまでドジじゃないよ。二人ともなんでもいいよね?」
「ああ……」

じゃ、買ってくるね〜と言い残して名雪は走っていった。
18春の日差しの中で(5/13):01/10/04 23:23 ID:onY9Vx/U
「……ひょっとして、気を利かせてくれたのかしら?」
呟くあたしの顔を相沢君がじっと見ていた。
「どうしたの? 取りあえず座ったら?」
「ああ……」

相沢君が座ったのを確認してあたしもまた腰を下ろす。

「どうしたの? 名雪とうまくいってないの?」
わざとからかい口調で聞くと、相沢君がふっと顔をゆるめた。
「もう元気になったみたいだな」
「そうね。あの時は迷惑をかけたわね」
「それ、栞のスケッチブックだろ?」
「そうよ。相沢君があの子にくれたもの」
「そうか……」

相沢君がスケッチブックを懐かしそうに見た。
ゆっくりとページをめくる。

「最初の方のは栞だな。線が歪んでる」
「ひどい言いぐさね。病室では花とか花瓶とかしか描けないんだから」
「あ、花瓶か、これ」
「それ以外に何があるっていうのよ」

一枚一枚、ゆっくりとページをめくる。
絵の中にとどめられた、想いと時間。それを感じ取るかのように。
19春の日差しの中で(6/13):01/10/04 23:23 ID:onY9Vx/U
「ねぇ相沢君。あなたこそ元気になったみたいね」
「俺はいつでも元気だぞ」
「そうね。元気にしてないと名雪が悲しむものね」
「……別に名雪とはそんな関係じゃないぞ」
「あら、どんな関係なのかしら? あたしは同居人として名雪が悲しむ、と言ったつもりだけど」
「こいつは……」

相沢君が軽く睨む。と、お互いが思わず吹き出した。
あたしも相沢君も自然に笑えていた。
こんな風に笑える日が来るなんて、あの時には想像もできなかった。

「しかし、なにやってるんだ、あいつは」
名雪がバンの屋台の前で考え込んでいる。メニューに悩んでいるみたいだった。
「あの子らしいわ。どうせ苺のなにかがあったんじゃないの?」
「そうかもしれないな。俺が行くべきだったか」
「まあ、いいじゃない。時間に急かされているわけじゃないんでしょ」
腕を組んで悩んでいる名雪のその姿は幸せの象徴のように思えた。
20春の日差しの中で(7/13):01/10/04 23:24 ID:onY9Vx/U
「……こうして、絵を描いているとね」
相沢君と二人きりで話をするのは、栞のことを打ち明けた時以来だった。
穏やかな空気の中では辛いことも忘れることが出来る。
今なら素直に話が出来ると思った。

「うん?」
「あの子が見ていた風景が見えるんじゃないか、と思えるのよ」
「そうか……」
「あたしは馬鹿だったわ。あの子を否定しても何も変わらないのに」
「もし相沢君が居なかったら……あの子も、あたしも、救われなかったわ」
「あの子は相沢君のおかげで生きていたわ。それに今もあたしのなかでも生きている」
「そうだな。俺もそうだ」
「だからあらためて相沢君には感謝するわ。本当にありがとう」
「いや、俺は何もできなかった……」
「そんなこと無いわよ。……それで、相沢君は? もう大丈夫なの?」
「俺は……」

相沢君が顔を背けるように空を眺める。
でもその横顔は悲しんでいなかった。

「……俺はまだ吹っ切れてない……まだ栞が居ないことが信じられない」
「でも、栞は一生懸命だった。そんなあいつが強いと思ったし、そんなあいつが好きだった」
「落ち込んだりしていたらきっと栞は怒る。だから俺は悲しんだら駄目なんだと思う」
「……あの時、あいつは『一緒にいて後悔しないか』と聞いてきたんだ。俺は『後悔しない』と答えた」
「だから、今悲しんでいるわけにはいかないんだ。そうじゃないと俺は栞が想ってくれていた俺じゃない」
「俺は嘘つきにはなりたくない。だから、俺は大丈夫だ」
21春の日差しの中で(8/13):01/10/04 23:24 ID:onY9Vx/U
相沢君が笑っていた。
自分に言い聞かせるように。あたしに言い聞かせるように。
静かに笑っていた。
「だから俺は後悔なんてしていないし、あいつのことで悲しんでなんかやらない」
「……そうね。それがいいわ。それがあの子の願いだったから」
「そうか……」

あの子が最後に望んだこと。願ったこと。それはたくさんあった。
『お姉ちゃんには笑っていて欲しい』
『お姉ちゃんが悲しまないでいて欲しい』
『祐一さんが元気でいて欲しい』
『祐一さんが私のことを忘れないでいて欲しい』
『いつまでもみんなが私のことを覚えていて欲しい』
『いつまでもみんなが幸せでいて欲しい』
他愛のない、小さなたくさんの願い。
自分の事を願わずに、それ以外の事だけを口にした栞。
自分のことは全てを諦めて、それでもたくさんのことを祈った栞。
そんなあの子のためにこれから出来ること。忘れさえしなければ出来ることばかり。

相沢君が芝生の上に寝ころんだ。
あたしも真似をして寝ころんでみる。
ゆったりとした時間。
流れていく雲を眺めていると、今の時間が幸せなものに感じる。

「俺達がこうして笑ってたら、あいつも笑ってるさ」
「……そうだといいわね」

横を向くと、相沢君は目を閉じていた。
その奥には何が写っているのだろう?
22春の日差しの中で(9/13):01/10/04 23:25 ID:onY9Vx/U
「だから俺は笑ってるし、それに、出来れば香里にもそうなって欲しい。それがあいつの願いだっただろうから」
「……その通りよ……」

あたしも真似をして目をつぶる。
瞼に浮かぶのはあの子の顔。
それがいつまでも笑っているように。悲しみに彩られないように。
だからあたしは笑っていないといけない。

「あの子はたくさんのことを祈っていたわ。だから少しでもあの子の願いは叶えてあげたいのよ」
「例えば?」
「これ」
トン、とあたしは相沢君の体にスケッチブックを預けた。
受け取ろうと彷徨った手が、あたしの手と触れる。
そのままあたしは手を掴み、そっと握った。
今、あたしに浮かんでいるあの子の顔が伝わるように。
あの子の願いが相沢君に伝わるように。
握る手に想いをこめて。
伝わってくれるだろうか?
相沢君の手はあたしより大きくて、暖かかった。

「あたしが絵を描いているのもあの子の願いなのよ」
「そうなのか?」

『このスケッチブックにいろいろな想い出を書いて欲しい。そうすれば私も幸せになれる』
『祐一さんがくれたスケッチブックだから。でも時間がないから代わりにお姉ちゃんが描いて』

「……そうか……」
「あの子が願ったことは叶えてあげたいの。そうすれば、あの子が安らかにいられると思うから」
「……そう、だな」
23春の日差しの中で(10/13):01/10/04 23:25 ID:onY9Vx/U
あの子が望んだこと。
それは生きている間には全てを叶えてあげられなかった。
だけど。
きっとあの子は、今もあたしを見ている。
だから出来る事はやり遂げたい。
あたしはあの子の姉だから。いつまでもあの子の自慢の姉で居たいから。
だから。

「だから相沢君も描いてね」
「え?」
「あの子の願いなのよ。描いてくれるでしょ」
「いや、俺……絵は描けないぞ……」
「駄目。描いて貰うわよ」

優しくて、穏やかで。春の日差しを想わせる空気を持つ人。
あの子が好きだった相沢君は今もここにいる。
こうしているとあの子の気持ちが分かるような気がする。
穏やかに訪れる春。
あの子と共に辛い冬に一緒に居てくれた人。
あの子が待ち望んでいた春を一緒に過ごしたい人。

あの子の気持ちが分かるような気がした。
24春の日差しの中で(11/13):01/10/04 23:26 ID:onY9Vx/U
「しかし名雪遅いな。何やってるんだ……ってあれ? あいつ何処いった?」
あたしも体を起こして屋台を見る。名雪の姿がない。
「別の場所に買いに行ったのかしら?」
「私ならここにいるよ〜」
「うぁ!」
「な、名雪!?」
突然の声に振り向くと、名雪がにこにこと笑って座っていた。
そばにはたくさんの紙袋がある。

「い、いつからここにいたんだ?」
「さっきから居たよ。二人で楽しそうにお昼寝しておしゃべりして。すっごく、いい雰囲気だったね」
「な、何言ってるの、名雪」
「だって手を繋いでお昼寝してたよ」

名雪の視線があたし達の手に向けられる。
振り向いたときに外れた手は、今も相沢君の体温を覚えている。
相沢君みたいに、あたしの顔も赤くなってるのだろうか?

「名雪が遅いから、寝てしまっただけだ」
「そうそう」
「そんなに遅くなってないよ。それに騙されないんだから」
「そ、それに戻ってきてたんなら、声掛けろよ」
「掛けられる雰囲気じゃなかったよ。だって、すっごく、いい雰囲気だったもん」

名雪の視線が痛い。おたおたと慌てているあたし達と対照的だ。
「二人がラブラブだったなんて知らなかったよ〜」
「だから違うっていってるだろ」
「学校では喧嘩してるみたいだったのに、あれ嘘だったんだね」
「違うって」
「違うわよ。全部名雪の勘違いよ」
25春の日差しの中で(12/13):01/10/04 23:27 ID:onY9Vx/U
そんなあたし達をにこにこと笑っている。
その目は悪戯っぽく輝いている。
「そんな二人とも、大慌てしなくてもいいよ。私、分かってるから」
「多分、お前の考えは間違ってる」
「あたしもそう思うわ」
「そんな事ないよ〜。絶対あってる自信あるよ」
「……ったく……んなことより買ってきたんなら早く喰おうぜ。腹減った」
「あ、そうだね。ホットドッグとサンドウィッチ。飲み物はイチゴシェイクだけど良かったかな?」
芝生に置いてあった袋を手に取る。
「駄目って言っても、もう遅いだろ」
「そうかもしれないね。はい、香里の分。あ、ポテトと唐揚げもあるよ」
「ありがと」
順番に手にしていた物を配る。
「でもね、デザートにアイス食べようと思ったんだけど、イチゴのアイス売り切れてたんだよ……」
悲しそうに成果を報告する。
「だからバニラにしたけど、よかった? 確か祐一好きだったよね?」
「俺は全然かまわないぞ」
「そうね。あたしもバニラを食べたい気分だったわ」
「よかったよ〜」

ペタン、と座り込むと名雪はあたしの顔を見つめた。
「どうしたの、名雪?」
「でも良かったよ。香里」
「何が?」
「なんか香里が笑ってるのって、久しぶりだよね」
「そんなことないわよ」
「そうかな? 今までずっと何か我慢してたみたいだけど」
「そんな事ないって。気のせいじゃない?」
「だったらいいんだけど。でも香里は笑ってたほうがいいよ」
「……そうね。ありがと」
26春の日差しの中で(13/13):01/10/04 23:27 ID:onY9Vx/U
3人で食べる昼食。穏やかな中で過ごせる時間。
本当ならこの場に居るのは4人のはず。
でも、それはあたしの夢。
あの子とともに消えてしまった夢。
それでもあの子はここにいる。
あたしの中に。相沢君の中に。

「あ、そうだ。名雪も絵を描かない?」
「え?」
「相沢君が一緒にスケッチするんだって。名雪もつき合うでしょ?」
「おい、俺は描くとは言ってないぞ」
「うわ、祐一、絵を描くんだ。……うん、私も描きたいな」
「……だから言ってないって……」
「諦めなさいって。往生際が悪いわよ」
「でも私お邪魔虫さんだけど、いいの?」
「だからそれは違うって言ってるだろ」
「あれ〜? でも二人とも、顔が赤いよ〜」
「違うって言ってるでしょ。名雪の気のせいよ」

遅すぎたけど、それでも出来ることは全て叶えてあげたい。
たった一人の妹のために。
きっと今もあの子はあたし達を見ているはずだから。

あの子のために。あたしのために。この小さな穏やかな日々のために。
訪れた、この小さな奇跡を忘れないために。

だから、これからスケッチブックを埋めていこう。
あの子の想い出と共に。
27Aqua:01/10/04 23:30 ID:onY9Vx/U
>14-26 「春の日差しの中で」

今は秋ですが、内容は春……
季節感がまるで無しですが、許してください(笑)
28名無しさんだよもん:01/10/05 01:05 ID:bt9MzkfI
よかったですよ。ぱちぱち…
長めだったけど読みやすいですね。
いわゆる、くどい文章ではなくシンプルでいいです。
香里スレが最近勢い弱いので貴方のSSでテコ入れきぼんぬ。

個人的にもっと長〜い超大作も読みたい、と思ってたり。
SS討論スレで大作とか続く投稿スレは読む気失せる。とかいうアフォがいたけどね・・・

そのへんは今後、犬威氏あたりに期待しましょうか。ま、誰でもいいですけど。
最近、小粒にまとまりすぎたSSが多いと思うので・・・その中でかなりの意欲作だと思います。
29なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/05 02:00 ID:c9.sztNI
>14-26 『春の日差しの中で』

穏やかな雰囲気に魅了された。

"悲しみの一歩あと、喜びの一歩まえ"とでもいうべき、切なさの織り混ざった明るい情景描写が佳い。
私は、こういう物語は好きだ。
過去の重力に心引かれながらも、前を向いて歩いていく人々の物語がとても好きだ。

悲しい思い出の象徴であるスケッチブックに、みんなで新しい絵を書き込んでいこうと提案する香里。
それは、止まってしまった過去に、新しい未来を積み重ねていこうという意志。
死が全てを隔ててもなお、いつまでも共に居ようという、深い感情の表れ。
…。
メッセージ性においても申し分ない。素晴らしい。

技術面では、短文を多用した手法を評価したい。
この方法は、一つの文を読み下す時間が短く、また個々の文は最低限の構成しかないために
読者は常にある種の飢餓状態にあり、結果、「次」を期待してどんどん先へと読み進めていく、
という特徴を持つ(ふと、作者は速読が得意なのかなと思ったりした)。
長くとも読んで貰える文章は得難いもの。大切にしてください。

酷評ではなく、申し訳ない。
30狗威 ◆0gUxWrwc :01/10/05 10:46 ID:0F9sLrm.
>14-26
よかったです。ふたりの掛け合いうまいですね。
自分はそういうのが苦手なので羨ましいです。

>28
あたしゃ大作なんて書けませんよ。
31Aqua:01/10/05 23:37 ID:izCUjx0w
読んでいただいてありがとうございます。
前回投稿したSSが私の中では重かったので、軽く明るい内容にしたかったんです。

>28
やっぱり長めですよね。
最初に一気に書いて、いらない所とか削って、足りない所を追加したら……
元の文より長くなってる(汗)
これより長いのは訓練所に投稿したSSぐらいです。
どうも私の書くSSは平均300〜400行近くいってしまうみたいです。

>29
いつも丁寧に評論していただいて、ありがとうございます。
なにがしだよもん さんの評論はいつも参考になります。
言われて気付いたのですが、長くなる要因として「短文の多用」があるみたいです。
前から感じていた、淡々とした文章になるのもこれが原因のようです。
どうも完全に癖になってるようで、次に書くときは変にならない程度に意識してみようと思います。
それとどうして「速読が得意」って分かったんですか?(^^;)
文章から特徴が読めるとは聞いてましたけど、当てられるとかなり吃驚しました。

>30
誉めていただいて光栄です。
私が書く場合、キャラが走ってしまうことが多いので、推敲する段階で苦しむ事も多いんです。
狗威さん(犬威さん)の前作のように計算して書きたいとは思うのですがまだまだです。
32名無しさんだよもん:01/10/06 02:02 ID:IYEgI0DU
>>14-26
なんか暖かくていい感じ。
ほっとするような文章がいいね。

Aqua 氏の作品ってやっぱり長いね。
でもすんなりと読めるから長いのは気にしなくてもいいかも。
キャラスレだと長いのは嫌がる人が居るかもしれないけど
SSスレでは別に長くてもいいと思うよ。
昔は連載SSもあったんだから。

ところでこのスレ下がりすぎ。
まわってないけどageるよ。
33なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/06 22:36 ID:CHWX.Sn6
>>31
>それとどうして「速読が得意」って分かったんですか?(^^;)

いや、バレンツ海の氷の下で、良く似た音紋のフネと、モンキーターンで
遊んだことがあって。

…というのは大嘘です(スレ違い)。

読んでいて何となく、「速読の人が読みやすいと感じる文章というのは
こんな感じなんだろうなぁ」と思ったものですから(^_^;)
34或る名無し:01/10/06 23:38 ID:eZqxhp7.
>>16-24
 よかったです。
 栞バッドエンド後、というと意味もなく暗く落ちていく話が多い中、前向きなと
ころが好感をもてました。
 細かいツッコミ……もないです。
35Aqua:01/10/07 00:38 ID:OAMnkBTc
>32
やっぱり長いですよね。
短い文章の方がいい、って人も居るわけですから……
内容と行数のバランスはまだ難しいです。
もっと上手く書ければいいんですが。

>33
何となく、で当てられる私って一体……
でも、文章から書いた人の性格を読めるのはすごいと思います。
……私が単純なだけかも(笑)

>34
ちょうど前回書いたのがそんな感じだったです。
暗い話は苦手なので明るくしてみたい、と言うのもあったんです。
……その割には書く話が鬱っぽいのが多いのはなんでだろう……?


皆さん、読んでいただいてありがとうございました。
36名無しさんだよもん:01/10/07 00:56 ID:BN/rugK2
新作期待age
37狗威 ◆inui/iEQ :01/10/07 01:30 ID:378ZllQk
450を超えましたね。
これから、半日に一回くらいのペースで書き込みがあった方がいいかもしれません。
書き込みの少ない投稿スレの自衛策ですな。
38名無しさんだよもん:01/10/07 01:36 ID:qZdx1DTE
Aqua氏の作品は起承転結がしっかりしてるのが好感もてるなぁ。
なんというか、話に一本ちゃんと筋が通ってる。
俺も頑張らないといけないなぁ。
39名無しさんだよもん:01/10/07 02:05 ID:pHmOjVxo
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/2113/mai1.html
↑1年前のあれ。
これ書いた人、文章力もあったなぁ。
40なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/07 02:28 ID:DWBWGOuE
>39
おもしろいっ! が、この作品しか載ってません! なんで!?
41名無しさんだよもん:01/10/07 02:38 ID:SGFBrxYw
>39
あー、懐かしい。明太時代のSSスレの奴だったよな。
なんだっけ、「川澄舞はごちそうさまを言わない」だったっけ?
4239:01/10/07 02:38 ID:pHmOjVxo
>>40
これは1年前にSSスレで投稿されていたものだけど、
mio_2chさんのeternalwindにどういう意図か(続きを期待して?)あぷされていなかったので、
さっきgeoのアカウント取ってあげた物だからです。
43名無しさんだよもん:01/10/07 02:45 ID:SGFBrxYw
>42
続編が地図鯖移行後のSSスレになかったっけ?
少なくとも、再開予告はどっかで見たよーな。
44なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/07 02:51 ID:DWBWGOuE
>>42
ありゃま(^_^;)
それはそれは、お疲れさまでした&有り難うございます。


>>43
さーがせ、さーがせ、cheeseをさーがせー♪

と思ったら、過去ログみれませんがな(;´_`;) 何故にパスワードが…
45名無しさんだよもん:01/10/07 02:52 ID:pHmOjVxo
>>43
そこらへんあったような記憶もかすかにあるんですけど
地図鯖の過去ログ、見られないんですよね。
46名無しさんだよもん:01/10/07 02:55 ID:oFpF8bt6
このまま雑談スレとして利用すれば落ちないよ。
となればなりきりだが・・・昔SSスレにあゆのなりきりが居たなあ。
「うぐぅ、SS雑談スレ」として再利用すっか?
47狗威 ◆inui/iEQ :01/10/07 05:00 ID:378ZllQk
雑談スレ化はご勘弁。
48名無しさんだよもん:01/10/07 05:06 ID:acwoEnjg
>14−26
俺もこの作品好きです。
スケッチブックが埋まった先には何があるんでしょうか?
勝手に想像して幸せになってます。

あと、細かいつっこみというかあくまでも俺の好みなんですが
今まで書くの躊躇してたけど、書かせてもらいます。

>春の日差しの中で(5/13)
>相沢君がスケッチブックを懐かしそうに見た。
>ゆっくりとページをめくる。

この文章の「懐かしそうに」という表現には違和感を感じました。
「懐かしそうに」という説明ではなくて、描写して欲しかったです。

それと、こっから先は本当に俺の好みなんですが、もし「懐かしそうに」が
無くても、その後の「ゆっくりとページをめくる」だけで十分に描写出来てる
とも思いました。直接書かれない故の美しさっていうと大げさですが、
そういうのも大切だと思います。もちろんやりすぎはダメですが。
49名無しさんだよもん:01/10/07 12:11 ID:U9Tg9BAg
ウマー(゚д゚)
50Aqua:01/10/07 20:37 ID:T04BduRM
>38
誉めていただいて恐縮なんですが、実は起承転結はあまり意識してなかったりします(汗)
「結」は纏めるために考えてるから自然と出来ているのかも。
本当を言えば書きたい事書いてるだけなんですよ。

>48
「直接かかれない故の美しさ」ですか……
そういう手法もいいですね。
ちょっと難しいですけど「描写で心情を表す」方法もやってみます。

それとこのスレですが、「多少」の雑談は許可しても良いんじゃないでしょうか?
投稿系スレは誰かが書かない限りスレが続かないですし。

旧スレではどうやってスレを持たしていたんでしょうか?
やっぱり、頑張って投稿して盛り上げていくしかないんですかね?

……頑張るしかないな(^^;)
51名無しさんだよもん:01/10/08 02:56 ID:6YUJEDXY
>50
頑張れー。
貴方のSSは大好きだぞー。
これからも期待してるぞー。
52名無しさんだよもん:01/10/08 05:06 ID:tqQtC4Ec
    
53名無しさんだよもん:01/10/08 14:24 ID:KZWwCw9s
     
54名無しさんだよもん:01/10/08 16:56 ID:oJtoftWc
復活しましたか、SSすれ。
しかし、この板は落ちるのが早すぎます…。
55名無しさんだよもん:01/10/08 20:08 ID:Ql7.U04k
56名無しさんだよもん:01/10/08 21:56 ID:Ny5KkVm.
>16-24
んー、長いけど読みやすくて苦にならない。

短いのが好きな人がいるから……ということを気になさっているようですが、
長いのが好きな人だっていると思います。

短いのが好きな人向けのはなし「も」描けるのは(自分も好きだから)嬉しいけど、
長いの描ける人は貴重だと思います……
57甘えん坊将軍@DEATH:01/10/08 21:56 ID:6XDyp0XA
 ちと暗いカモ。
 そういうのが苦手な方はお読みにならないほうが宜しいかと存じマス。
58甘えん坊将軍@DEATH:01/10/08 21:57 ID:6XDyp0XA
「いもうとたちのこと…たのみます…」
 これが、彼女が口にした最後の言葉だった。
 その瞬間、千鶴さんは微かな笑みを浮かべ俺の前からいなくなってしまった。

 山頂から太陽が顔を覗かせた。
 温かい光が谷川の空気の冷たさをやわらげる。
 水門の上にいる俺と、俺に掻き抱かれている千鶴さんの身体にも早朝の太陽の光が降り注ぐ。
 朝。
 悪夢に苛まされている夜は、朝の到来がどれほど待ち遠しかった事か。
 だが、先ほどまで…いや、今も悪夢に苛まされている俺にとっては太陽の光が忌まわしい
ものとしか思えなくなっていた。
 その顔に、そして衣服にこびりついた血も固まりかけ、相変わらず微かな微笑みを
浮かべたままでいる『千鶴さん』をよりはっきりと俺に見せつけるから。
 千鶴さんがいなくなってから、俺はずっと彼女の身体を抱きしめていた。
 先ほど見た、初めて出会った時の、そしてまだ小さかった俺に優しく話し掛けてくれる
千鶴さんとの明晰夢の最中も。
 いくら強く抱きしめても千鶴さんの体温は感じられない。
 俺の体温を奪うだけで、千鶴さんの身体はこの俺にぬくもりを返してくれないのだ。
 昨夜愛し合った時はお互いの体温、唾液、汗が混じり合い、身も心も一つになれたのに。
 夜が明けたとはいえ、まだまだひんやりしている空気に晒され冷たくなってゆくだけの
千鶴さんの身体を抱きしめたまま、俺は何度も何度も彼女との思い出を反芻していた。
59届かない想い(仮題):01/10/08 21:58 ID:6XDyp0XA
 俺は、千鶴さんの亡骸を目の前にしてあてどもなく考え続ける。
 千鶴さんは俺に『いもうとたちのこと…たのみます…』という言葉を遺した。
 そして笑みを浮かべたまま千鶴さんはいなくなった。
 だが、俺が千鶴さんの願いを実際に聞き届ける、つまり梓、楓ちゃん、初音ちゃんが
姉の死という悲しみを乗り越えて生きてゆけるように支えたとしても果たして意味が
あるだろうか?
 彼女が…千鶴さんがいない今、俺にはもはやすべき事などないから。
 ただ一つ、自分でも良かったと思えることは千鶴さんが心残りなく向うへ行けた事だ。
 いや、たとえ千鶴さん本人に心残りがあったとしても、この俺自身がそう判断したのだ。
 そう。今も残っている彼女の表情から。
 俺は体温を完全に失った千鶴さんの躯を抱き上げ歩き始めた。
 早朝の太陽の熱で冷たい空気が溶けて靄がかかり始めた谷川を後にし、山道に足を
踏み入れる。
 そして昨夜来た道をそのまま戻る道すがら、俺は千鶴さんに謝った。
『ごめんよ・・・千鶴さん。俺は願いを叶えてあげられない。俺もこれから千鶴さんと同じ世界に行く。
同じ世界にいったとしても、千鶴さんを欺いた俺が同じ場所に居られるわけはないけど。
でも、絶対越えられない、破れない壁を隔てたこの世で生きてゆくよりも、千鶴さんと
同じ世界に居続けたいんだ』
 先ほど見た夢の内容が俺の脳裏をフラッシュバックする。
『何を泣いてるの? 耕ちゃん』
 我が子を慈しむ母親のような表情で俺の顔を覗き込む千鶴さん。
『千鶴さん…俺、もう泣かないよ』
60届かない想い(仮題):01/10/08 21:59 ID:6XDyp0XA
 俺が柏木家の敷居を跨いだ瞬間、3人の女の子が俺と千鶴さんを出迎えてくれた。
 だが、彼女達の反応は予想外のものだった。
 俺たちの帰りを待ち侘びていた様子を一瞬見せてくれたところまではいい。
 でもその後、大声で叫ぶことはないだろう。
 俺に昨晩の出来事を問い詰めることもないだろう。
 千鶴さんの身体に取り付いて大声で泣くこともないだろう。
 救急車や警察なんか呼んでくれと誰が頼んだっけ?
 ああもう。
 朝っぱらからサイレンを鳴らして近所迷惑ってものを少しは考えろっての。
 白い服と群青の服を着た人間は一体何様のつもりだ?
 俺と千鶴さんを引き離すなよ。
 そこまで考えて、俺は冷静さを取り戻す。
『別に身体が引き離されても構わないな…』
 そう。
 俺は今から千鶴さんを追いかけるから。
 千鶴さんの身体はもう既に暖かくもないし、俺に柔かな笑顔を向けてもくれないし
優しく話し掛けてもくれない。
 だから俺は千鶴さんの心がいる処と同じ場所へ行くと決めたんだっけ。
『千鶴さんは、『もう何も失わなくてすむ』って言ってたな…』
 これから何も失わずにすむのは千鶴さんだけではない。
 俺もだ。
61届かない想い(仮題):01/10/08 22:00 ID:6XDyp0XA
 だが…俺の心の内に渦巻くものがある。
 何か大事な事を忘れているような。
 俺はその『何か』を記憶の糸を辿り、思い出そうとはしたが徒労に終わった。
 なくした物を探す時とは違うこの感覚。
 なくした物が何であるかという事自体解らない。
 解っているのは、ただ『自分が何かを忘れている』という事のみ。
 俺は頭を振り、これ以上考える事を止めようとした。
 何故俺が今更昔の事を思い出さなければならないのか?
 俺が生まれるより遥か昔の事を…。
『遥か昔?』
 どうして俺が、自分が生まれる以前のことを忘れていると解るんだ?
 疑問への疑問がますます膨れ上がる。
 だが、別に千鶴さんとは関係なさそうだ。
 遥か昔に千鶴さんが生きていたわけじゃないから。
 俺は自分にそう言い聞かせながら目を閉じた。
 その瞬間。
 月を背にした少女、燃え盛る炎を背にした少女、そして『俺』の腕に抱きかかえられた少女の
姿が俺の脳裏を掠めた。
『!?』
 次いで、その少女を少し幼くした雰囲気の、別の少女の姿が重なる。
『エディフェル・・・リネット』
 その二人の名前なのだろうか?
62届かない想い(仮題):01/10/08 22:01 ID:6XDyp0XA
 千鶴姉さんの四十九日も過ぎて、漸く私たちの周りは静けさを取り戻した。
 あの日、耕一さんが全身血にまみれた千鶴姉さんを抱きかかえて帰ってきた時のことは
一生忘れられないだろう。
 いや、その時、眼前の凄惨な光景を目にして気が狂いそうになる自分がいる一方で、
不思議と冷静に事態を把握しているもう一人の自分がいた。
『これは起こるべくして起こった出来事』
 べつに第六感でも、あてずっぽうの推理でも憶測でもない。
 私の身体に流れる柏木の血…いや、エディフェルの血が伝える事実だから。
 尤も、この出来事を単なる殺人事件として捉えている警察…いや、人間に真実は
永遠に解らずじまいで終わるだろうが…。
 その警察は私たち遺族が年端の行かない子供であるということを慮ってくれたのだろう。
 随分言葉を選んで現場検証や鑑識の結果を説明してくれた。
 掻い摘んで言うと、千鶴姉さんの衣服に付着していた『鉄分』は水門のそれと一致する事。
 つまり、それは千鶴姉さんが水門の床に人間離れした強い力で何度も何度もその身体を
叩き付けられたことを意味している事。
 致命傷となったのは千鶴姉さんの腹部に残されていた大きな裂傷である事。
 そして、その裂傷の原因となった凶器が見つからず、捜査を打ち切ったという事。
 これが普通の事件であれば、遺族はまだ見つからぬ犯人に怒りを燃やすか、警察の
遅々として進まぬ捜査に難癖をつけるかの何れかだろう。
 だが、梓姉さんも、初音も、そして私も、程度の差こそあれこの事件の真相を知っている。
 人と人の間で起こった犯罪ではなく、鬼と鬼との間での殺し合いだったという事に…。
 だから別にこれ以上の捜査…というより無用な詮索を警察…ではなく人間にされることを
私たちは拒んだ。
 決してこの出来事を一刻も早く忘れたいからではない。
 これは私たち柏木家の血を引く者の問題だから。
 何の証拠もないがゆえに耕一さんを不起訴処分にすることを無言で望んでいた何も知らない
人間達にとって、遺族による捜査続行の拒否は干上がった大地に降る慈雨に思えただろうが。
63届かない想い(仮題):01/10/08 22:02 ID:6XDyp0XA
 いや、仮に耕一さんを千鶴姉さんの殺人容疑で起訴しようとしても裁判に持ち込む
ことはおろか被疑者取調べを行う事自体不可能だったことだろう。
 あの日以来、耕一さんは能動的に行動を起こす事はなくなったから。
 人間は勿論、私たちの問い掛けにも全く反応する様子は無い。
 私達も何度か耕一さんが収容されている病院へお見舞いに行ったのだが、病室で私達を
出迎えてくれるのはただ天井をうつろな瞳で眺めつづける姿だけだった。
 医師の話に因れば、脳波も正常、脈拍も血圧も特に異常は無く外傷も無い、全くの
健康体であるらしい。
 当然精神鑑定等もなされたらしいが、鑑定される側が全く無反応である為に判定の
下し様が無いということだった。
『ご家族の皆様の前でこう言うのもなんですが…まるで抜け殻…』
 皆まで言わさず、梓姉さんが医師の白衣の胸元を締め上げる。
『耕一が…耕一のやつが…なんだって!?』
『梓お姉ちゃん! やめて! やめてよ!』
 消毒薬の臭いが漂う廊下で、人の良さそうな初老の医師に掴みかかる梓姉さんと
それを泣きながら必死で押さえようとする初音の姿を、私は他人事のように眺めていた。
『耕一さんは…抜け殻…』
 私は病室に入り、ただベッドに横たわったまま天井を眺め続ける耕一さんの顔を見つめる。
 お医者さんの言うことはあながち間違いとはいえない。
 当事者よりも、その件には何の関係も無い部外者である人間が問題の本質をズバリ
言い当てる事があるのと同様、日々の仕事以上でも以下でもないものとして耕一さんを
診ている医師の方が私たちよりも客観的に耕一さんを捉えている。
『耕一さんはいつか起き上がる』
 そんな淡い望みを抱いている私達よりも。
64届かない想い(仮題):01/10/08 22:04 ID:6XDyp0XA
 千鶴姉さんの四十九日が終わるのと前後して、耕一さんの身体は病院から柏木家に帰された。
 耕一さんの面倒を自宅で看るということは私たちの間で一致したからだ。
 三人で話し合ったあのときの事が思い出される。
『別に入院させなくとも三人で役割分担すれば耕一の面倒は看られるし、それに…』
 梓姉さんが言葉を続ける。
『耕一だって親父や千鶴姉と同じ家に居たいんじゃない…』
 勿論本音であろうが、それとは別に入院費の事を云々しなかったのが梓姉さんと言えば梓姉さんらしい。
 今まで家事を切り盛りしてきた梓姉さんだからこそ、これからは出来るだけ出費を
切り詰める必要があるのを痛感しているのだろう。
 初音も私もその事に気付いていたので特に異論を差し挟むということはしなかった。
 私も見知らぬ人間に耕一さんの身体を渡すのは嫌だったし、第一私にはまだすべき事があったから。
 そう。千鶴姉さんの死を悼み、起き上がらない耕一さんをまざまざと見せ付けられて悲しみに
打ちひしがれる一方で、今の自分にできることを考えている私がいるのも事実だった。
 他人が今、私の心の内を知ったなら、それはさぞ醜いものに見えるだろう。
 今の私は現実から逃避してドロドロとした快楽に身を投じようとする獣だから。
65届かない想い(仮題):01/10/08 22:05 ID:6XDyp0XA
「耕一さんの…こんなに大きくなって…」
「…」
 私は耕一さん自身を咥えつつ思う。
 私は、びくっ、びくっと脈打つ耕一さん自身に舌を這わせ、両手で撫で擦っていた。
 アソコからエッチな汁を垂れ流しながら。
 私の手によって膨張してゆく耕一さん自身を口の中いっぱいで味わうと、嬉しさは
勿論だが、背中を震わせるような背徳感と奇妙な興奮に襲われる。
 耕一さん自身の先端の割れ目…尿道口に舌先を押し入れると私の唾液に耕一さんの
ちょっと苦い体液が混じりだした。
「耕一さんのを愛しているうちに…私もこんなになってしまいました」
「…」
 私は自分のアソコに空いた手を持ってゆき、慰める。
 耕一さんに身体を重ね始めた頃は、アソコを直接自分の指で刺激しない限り濡れることは
なかったのだが、今では耕一さん自身を愛するだけで濡れてしまう。
 私の拙い愛撫でも耕一さんが反応してくれるのが嬉しいから。
 ぴくぴく震える耕一さん自身を口腔内から一旦開放し、改めて両手で愛撫を始めた。
 左手で股間の付け根にある袋状の部分をやわやわと揉みつつ、右手の親指と人差し指で
輪を作り、サオの根元からくびれまで満遍なく、力を入れすぎないよう優しくしごく。
 頃合を見計らって、再び口の中にはちきれんばかりになった耕一さん自身を含み
耕一さんの体温を口で味わう。
 左手で耕一さん自身を持ちつつ、右手の人差し指と薬指で私の割れ目を開き、膣口に中指を
挿し入れるとぞくぞくする感覚が全身を震わせる。
「私…耕一さんのが欲しいです…」
「…」
「耕一さんのを…私のに挿れて…いいですか…?」
「…」
「はい…」
66届かない想い(仮題):01/10/08 22:06 ID:6XDyp0XA
 私は耕一さんにまたがり、カチカチになった耕一さん自身をゆっくりと自分のアソコへ導いた。
「ああ…」
 私の割れ目が耕一さん自身の先端を包み込むと快感が全身を走り、期せずして甘いため息が
漏れてしまう。
 今にも絶頂を迎えてしまいそうだったが、私は何とか押し寄せる快感の波をこらえ
逞しい耕一さん自身を私の一番奥深いとこまで迎え入れる。
「くぅぁああ…」
 既に愛液でとろとろになった私のアソコは、いともあっけなく耕一さん自身を飲み込んだ。
 膣壁いっぱいに、そして子宮口に耕一さんが感じられる。
 私の膣に入りきらず、サオの根元の部分を残した耕一さん自身を見ながら、私は
腰を上下に振り始めた。
「んっ…ふぁっ! あっ!」
 耕一さんのが、私の子宮口にコツンコツンと当たるたびに私の膣そのものを押し広げん
ばかりに膨張する。
 先ほど耕一さんを射精直前にまで追い込み、私も絶頂を迎える直前にまでアソコに刺激を
与えていたから絶頂は近そうだ。
「あっ…あっ…こ…耕一さぁん…」
「…」
 身体を前に倒して耕一さんの唇に口付けた瞬間、耕一さんはびゅくびゅくと熱い精液を
私の膣内に射出してくれた。
「ひっ…! ふぁぁぁぁぁっ!」
 同時に私も絶頂に達し、私の身体中の全神経が一点に集中したような感覚に襲われる。
 下半身から全身に広がる、じんわりとした感覚。
 耕一さんの温かい精液を膣壁と子宮口で味わいつつ、私は耕一さんの唇に口付けたまま腰の動きを更に早めた。
 快感を貪り尽くすために。
 今度は先ほどとは違い、私は自分自身の愛液と耕一さんの精液が交じりあったモノがたてる
ぐちゅぐちゅという卑猥な音を耳にしつつ行為に没頭し始めた。
67甘えん坊将軍@DEATH:01/10/08 22:09 ID:6XDyp0XA
 続きはまた後日。
 投稿される方がおられましたら気になさらずにどうぞ。
68なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/08 22:32 ID:T8/99FIM
>>58-66 『届かない思い(仮題)』 その1(?)

遺骸を抱えて自宅に戻った直後の、茫然自失する耕一の描写が良い。
家人の混乱ぶりをそのまま描かなかったところが、あまりの衝撃に心が萎えきった様を表現出来ていて、
優れていると感じた。

いきなり楓が耕一との交合に走る展開には、(前世が絡むとは言え)やや性急さを感じた。
ではあるが、それは、この後に続く十八禁描写の出来を損ないはしない。
兄と仰ぐはずだった男の身体に跨る少女の貪婪さが、実に魅力的だ。
口でねとねとに愛撫を繰り返して放精寸前に導いてから、その怒張を自らの中に導き入れる楓。
みずからを娼婦のような指遣いでくつろげるくだりは、姉の想い人と身体を重ねることへの背徳感と
相まって、何とも淫猥である。
射精を身体の奥深くで受け止めたあとも結合を解くことなく、小刻みに腰をゆすり立て、さらなる快楽を
追い求める様が刹那的で、これもまた良い。

今後の展開が気になる。果たして家人は彼らの行為を知らぬのであろうか。
それとも…?

続編に期待しています。

変な感想で申し訳ない。
69>>58-66:01/10/08 22:45 ID:v1nV5pto
エロい!
ただエロツール(失礼)としてはつかえそうだけど
いまいちあれでないか、楓エロすぎないか。
せめて49日ぶんとはいわないからもうちょっとまえふりがほしい。
これじゃエロ猫、、、

さらなるエロきぼんぬ
70名無しさんだよもん:01/10/09 02:57 ID:c39UME7c
71OVA:01/10/09 23:49 ID:SL1uVZY.
久しぶりに葉鍵板にSSを投稿します。
昔、Kanonをプレイする前に書いたやつをリメイクしてみました。
それでは逝きます。
72OVA:01/10/09 23:51 ID:SL1uVZY.
 「ふう、すっかり遅くなってしまったな・・・」
 「こんな遅くまで、お疲れ様でした、久瀬会長」

  三月下旬の春休み、久瀬は新年度の新入生達を迎える為の準備の為、学校の生徒会室で他の生徒会役員達と共に準備をしていた。
  準備を済ませた頃には既に辺りは真っ暗になっており、久瀬は同じ生徒会の役員である斎藤と共に帰路へと着くため、渡り廊下を歩いていた。

 「あれ?」
 「どうした、斎藤?」
  不意に立ち止まった斎藤に久瀬が尋ねると、斎藤は渡り廊下の先を指差して答えた。

 「あんな所に、人が・・・」

                                『川澄舞のそ・の・後☆』

 「おい!そんなところで何をしているんだ!?」
  久瀬は廊下の先に佇んでいる人物にずかずかと近づいて注意をする。
 「・・・・・・・・・」
 「黙ってないでなんとか言いたまえ!」
73OVA:01/10/09 23:52 ID:SL1uVZY.
  相手の顔が確認出来る距離まで久瀬が近づくと、そこには一月下旬にこの学校を退学になったはずの川澄舞、その人であった。
 「!?」
 「・・・・・・・・・」
  舞は左手に洋剣を持ち、暗い渡り廊下に静かに佇んでいる。
  久瀬はそんな舞に嫌悪感を露にして詰め寄った。

 「・・・川澄舞、君はこの学校を先日退学になったはずだ!何故ここに居るんだ!」
 「・・・しかもこんな時間にそんな物まで持って!どういうつもりなんだ!」
  舞は久瀬の顔をちらりと一目だけ見ると再び視線を戻す。
 「ここはもう君の居るべき場所ではない!今すぐ出て行きたまえ!!」
 「・・・・・・・・・」
 「・・・このっ・・・」
  舞が久瀬の罵声を受けてもまったく気にせずそのまま立っていると、業を煮やした久瀬は舞の腕を掴んで校舎の外に引きずり出そうとする。

「・・・!?」
  久瀬が舞の腕を掴もうとした瞬間、その場の空気が変わった。
  舞が倒すべき物、姿の見えない敵・・・魔物が現れたのだ。
  魔物は久瀬と舞の間、即ち久瀬の正面に踊り出るように移動して舞に攻撃しようとする。
  舞はこちらに腕を伸ばした久瀬をとっさに剣を持ってない右手で突き飛ばすと、左手に持った剣を横薙ぎに振り払った。
74OVA:01/10/09 23:53 ID:SL1uVZY.
  どんっ。
 「うわっ!?」
  どすん・・・。

  ぎいぃぃぃんっ!

  魔物に舞の攻撃がヒットする。
  舞の攻撃を受けた魔物はじりじりと後退する。
  舞は魔物の気配を頼りに距離を取ろうとする魔物をじりじりと追い詰める。

 「な、何をするつもりなんだ・・・。や、止めたまえ・・・」
  舞に突き飛ばされた久瀬はじりじりと剣を片手ににじり寄る舞に情けない声で抗議する。
 「・・・魔物は許さない」
 「な、何を言っているんだ・・・」
  久瀬は尻餅をついたまま後ろに下がる。
  舞は剣の切っ先を久瀬に・・・いや、久瀬の目の前の魔物に突きつけたまま、じりじりと迫ってくる。

 「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!た、助けてくれぇぇぇぇぇぇっ!」
  久瀬は情けない声を上げ、舞に背を向け走り出した。
  久瀬がその場を逃げ出すのと同時に、魔物も久瀬の後を追うように移動し始める。
 「・・・逃がさない」
  舞は魔物を逃がすまいと魔物の追跡を始めた。

 「ひいぃぃぃぃぃっ!誰か、誰か助けてくれぇぇぇぇぇっ!」

 「た、大変だ・・・。け、警察を・・・」
  逃げ出した久瀬を追いかけていく舞の後姿を見ながら、あまりの出来事に驚いて固まっていた斎藤は公衆電話の場所へと駆け出した。
75OVA:01/10/09 23:54 ID:SL1uVZY.
 「ひいぃぃぃ、ひいぃぃぃぃっ・・・」
  久瀬は全力で舞から逃れようとするが、普段から生徒会での仕事等で運動不足気味の久瀬に、魔物と毎日戦っていた舞を引き離すことは出来ない。
 「ひいっひいぃぃっ・・・がっ!?」
  やがて、息を切らせた久瀬は足をもつれさせ、階段を踏み外してしまった。

 「うわあぁぁぁぁぁっ!!」
  どっしぃぃぃぃぃぃん。
 「・・・う、うう・・・」
  階段の踊り場に落ちた久瀬は何とか起き上がろうとする。
  だがその時、魔物が久瀬の頭上を通り過ぎようとした。

  たんっ。

  階段から何かが飛ぶような音を聞き、久瀬が後ろを振り向くと舞が剣を振りかぶって久瀬目掛けて飛び込んできた。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

  舞は空中からの落下する勢いも込めた渾身の一撃を久瀬の頭上に居る魔物目掛けて放った。

  ・・・・・・ファンファンファン・・・・・・。

 「・・・逃げられた」

  舞は斬る瞬間に姿を消した魔物に苛立ちながら、ぽつりと呟く。

 「・・・・・・あ、あぁぁぁぁ・・・・・・」

  どんどん近づいてくるサイレンの音を聞きながら、久瀬は目を一杯に見開いたまま、涙と小便を垂れ流しながら虚空を見つめ続けていた・・・。
76OVA:01/10/09 23:55 ID:SL1uVZY.
  ・・・翌日の朝、相沢祐一は顔を洗ってから食堂に向かうと、朝食の準備をしている叔母の水瀬秋子に挨拶をして席に着いた。

 「祐一さん、もう少し待っててくださいね」
 「わかりました」

  朝食が出切るまでの間暇を潰そうと祐一はTVをつけようとすると、従姉妹の名雪が目を擦りながら二階から降りてきた。

 「うにゅ・・・おはようございます〜」
 「なにいっ、休日なのにこんなに朝早く名雪が起きてくるとはっ。今日は大雪かっ。天気予報天気予報っ」

  祐一がおおげさにそう言ってTVをつけると、名雪は頬をぷうっと膨らませて文句を言う。

 「もしかして、酷いこと言ってる?」
 「全然、そんな事はないぞ」
 「うー」

 「名雪、祐一さんは今日あゆちゃんとデートだから、今日の天気を気にしているのよ」
  秋子が朝食をテーブルに運びながら祐一を茶化す。

 「あ、秋子さん・・・」
 「そっか、あゆちゃん昨日退院したんだよね」
 「よかったね、祐一」
 「あ、ああ・・・」
77OVA:01/10/09 23:55 ID:SL1uVZY.
  祐一達がそんなやり取りをしていると、
  TVのニュースが、丁度昨日起きた事件のコーナーに替わった。

 「あ、ほらほら、昨日起きた事件だってさ」

  祐一が話題をすりかえようとTVの音量を大きくする。

 『昨夜、奇異市内の私立高校で今年一月にこの高校を退学になった女子生徒が、新入生歓迎の準備で遅くまで校内に残っていた男子生徒を洋剣で襲うという事件が発生しました』
 『襲われた男子生徒はこの高校の生徒会役員で、女子生徒の退学に関わっていた為、女子生徒は襲われた男子生徒を恨んでいたという事です』
 『襲われた男子生徒は幸い軽症で済んだものの酷くショックを受けており・・・』

 「うわあ・・・怖いね・・・」

 『今回逮捕された女子生徒は在学中もたびたび問題を・・・』

 「今時の子は忍耐力が無いっていいますけど・・・」

 『警察の取り調べに対し、この女子生徒は私は魔物を討つ者だから・・・などと意味不明の供述を繰り返しており・・・』

 「おいおい・・・キチガイのフリして罪を逃れようってか・・・最悪だな、この女・・・」
 「あれ、キチガイ?・・・もしかして・・・」

 「ん、どうしたの、祐一?」

 「・・・もしかしたら、この犯人、俺が転校したばっかの頃会った奴かも・・・」
78OVA:01/10/09 23:57 ID:SL1uVZY.

 「・・・どういうこと?」
 「ほら、前にお前から借りたノートを教室に忘れて、夜中に取りに行った事あったよな」
 「うん」

 「その時にな、剣をもって夜の校舎にいた女子生徒が居たんだよ」
 「それで何してんだって聞いたらさ、私は魔物を討つ者だからとか、訳わかんねー事言ってんだよ」
 「んで、その女その日はそのまま帰っちまってさ、次の日また学校で会ったんだ」
 「そしたらさ、意味も無くへらへら笑ってるちょっと頭の弱そうな女子生徒とつるんでたんだよ」
 「それで一緒にいた子のほうがさ、一緒にメシでもどうかって言ってきたんだけどさ、なんかあいつらやばそうだったんでさっさと断って逃げたんだよ」

 「そうだったんだ・・・。あっ、そういえば、わたしも同じ部活の子から、なんか問題ばっかり起こしている先輩がいるって聞いたことあるよ」
 「そうか。じゃあ、やっぱりあの女だな。特徴が全部一致してるし…」
 「…ふう・・・あの時、関わり合いにならなくて良かったぜ…」
 「こんなキチガイと関わってたら、今ごろどうなってたかわからないもんな・・・」
 「まったく、こんなキチガイ、永遠に塀の中に閉じ込めておいて欲しいぜ!」

 「祐一さん、名雪、ご飯ですよ」

 「はーい。行こ、祐一」
 「ああ」

  祐一は手に持ったリモコンでTVを消すと、さっさと食卓へと向かった。
79OVA:01/10/09 23:59 ID:SL1uVZY.
 「祐一さん、もし良かったらあゆちゃんを家に誘ってもらえますか」
 「え?どうしてですか?」
 「実は、あゆちゃんの退院祝いにたい焼きをご馳走してあげようと思いまして」
 「そうだったんですか。・・・でも、もうたい焼きなんて売ってませんよ?」
 「大丈夫ですよ。わたしが作りますから」
 「秋子さん、たい焼きなんて作れるんですか?」
 「はい」
 「ありがとうございます。きっとあゆも喜ぶと思います」

  祐一は秋子に礼を言うと、朝食を素早く平らげて家を出ると、あゆとの待ち合わせ場所へ歩き出した。
80OVA:01/10/10 00:00 ID:TheD1sR2
  しばらく歩いて商店街の一角にたどり着くと、祐一は足を止めて誰にとも無く呟いた。

 「ここであゆと再会したんだよな・・・」

  祐一の脳裏にあゆとの思い出が蘇ってくる。
  ここで、初めて出会った。
  ここで、毎日待ち合わせをして遊んだ。
  ・・・そして、ここで再会した。
  あゆとの思い出はここから始まって、そしてこれからも続いていく・・・。
  祐一はそんな事を考えながら、あゆとの待ち合わせの場所まで再び歩き出した。

  …やがて、待ち合わせの場所に祐一がたどり着くと、あゆは猫耳みたいな白い帽子と一生懸命うしょうしょと格闘していた。
  祐一はそんなあゆの姿を見て、思わず優しい顔で微笑むと、あゆの背後に近づいて、ぽんと背中を叩いて話し掛けた。

 「よお。不審人物」
 「遅いよ。遅すぎるよ!」

  祐一は、再びあゆと出会えたことを、思い出を紡いで行ける奇跡に、誰にとも無く感謝した。

  ・・・・・・ありがとう。
81OVA:01/10/10 00:01 ID:TheD1sR2
 『EDテーマ 風の辿り着く場所』

  足元に風 光が舞った
  日常にだけ積もったぶんの奇跡が
  見上げれば雲 遠くへの帰路
  幼い日の自分よりも早く
  雪解けを待っていた
  子供のように走る 光る滴 飛び跳ねてる
  明日の出会いさえ 気づかずにいる
  季節たちの中で
  輝いているよ
  世界中には どんな想いも
  叶う日がくる
  ずっと旅をしてゆく僕らに
  小さな精たち舞い降りる

                                                                           完
82OVA:01/10/10 00:08 ID:TheD1sR2
おわりです。
前回名無しさんに指摘されたとこを直してみました。
ただ、一時間で書き上げた代物なので、すこしつめが甘かったかも。
前回書いた時はカノン未プレイでドリキャスで書いた物だったんで今回の物のほうがちょっとはマシになったと思います。
83OVA:01/10/10 00:15 ID:TheD1sR2
84OVA:01/10/10 00:22 ID:TheD1sR2
あれ?半角で打ったはずの・・・が全角になってる・・・。
おかしいな・・・。
メモ帳からのコピペはこうなるのかな・・・?
85なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/10 02:31 ID:bn.6lp5.
何処かで見たことがあると思ったら、そうでした、mio_2chさんのところで
おみかけしたんでした。

>72-81  『川澄舞のそ・の・後☆』

「へらへら笑ってるちょっと頭の弱そうな女子生徒」に大爆笑。
こっ、このイノチ知らずがッ!
誰しもそう思っているが、言ってはならんことだぞ、それはっ!
さゆりん親衛隊に捕まる前に自刎せよッ! (自刎せよッ!)

…というのは冗談ですが、

通るルートが違うとこうなるという、夢も希望もない、ある意味リアルな物語が
面白かったです。
…舞がキチガイって。いや、確かに、そうなんだけど。そりゃあの人は常軌を
逸してるんだけどっ!
ヒロイン2名を容赦なくコキおろした後、すがすがしく健康的な会話を
弾ませる辺りが、これがまたなんとも毒々しくて…ひどいなぁ…(;´_`;)

難を言えば、舞がとっつかまったあと、なかなか物語が収束しなくて、
やきもきさせられたくらいですかね。
でも読みやすくて良かった。

また、毒電波を放出してください。フヒッ。
86名無しさんだよもん:01/10/10 10:39 ID:kb98DvJ.
>72-81
最初読んだときは舞主観で進むものと思ったので、急に祐一主観に
変わったときにちょっとついて行けなかった。

ちょっと祐一が鬼畜な感じがしたけど、知らない人が見たら舞と佐祐理さんは
ああいう感じに見えるんだろうな。

うん、結構面白かった。

あ、それと最後のEDは要らないんじゃないかな?
87或る名無し:01/10/11 01:47 ID:a01OcIlQ
>>72-81
 以前拝見した時に「舞のその後」というより、始まる前みたいだ、ということをコメント
しました。
 なるほど、これなら確かにあゆシナリオに入った時に起きた、舞の結末の様に見え
ます。
 ですが、86さんも言われているように最後のあゆとの会話の部分は要らないのでは
ないでしょうか。付けるのであれば、「一人のヒロインと結ばれた影で、別のヒロインが
不幸になっている」ことをもっと全面に押し出した書き方をされるとよかったのではな
いかと思いました。
88名無しさんだよもん:01/10/11 21:08 ID:xaKNyKJA
保守
89狗威 ◆inui/iEQ :01/10/11 21:25 ID:MGOUz8G.
これよりSS……、というよりネタを一本投下します。
投稿が終わるまでレスはご遠慮下さい。
90Prologue:01/10/11 21:25 ID:MGOUz8G.
「いってきます」
 そう言って玄関のドアに手をかける。
 開け放ったれたドアの向こうからは、温かな春の陽射しがさしこみ、新たな季節の訪れ
を肌で実感することができた。
 久しぶりに袖を通した制服は、なんだかわたしの物じゃないみたいで、なかなか体に馴
染まない。まるで長い間使われなかったことに、制服が怒ってるみたいだった。

 わたしは、ずっと学校をお休みしていた。別に学校が嫌いなわけではない。むしろ大好
きなくらいだった。

 小高い丘の上にある校舎、教室の窓から見える風景、校門までまっすぐにのびる坂道。
 わたしは、それらすべてが大好きだった。
 でも、わたしは長く学校を休んでいた。それにはちょっとした理由があった。

 制服を着て、久しぶりに歩く通学路。学校に近づくにつれ、わたしと同じ制服を着た生徒
たちが目立つようになる。
 真新しい制服に身を包んだ数人の生徒がわたしの横を通り過ぎた。
 この春から、わたしと同じ学校に通う新入生。その表情はとても輝いていて、これからの
学校生活に大きな期待を抱いているようだった。

 そんな生徒達の中に混じって歩く通学路の途中、わたしはふと、足を止めた。
 わたしの目の前にあるのは、まっすぐにのびる長い坂道。少し見上げれば、そこには、
わたしの通う学校の校門が見える。
91Prologue:01/10/11 21:26 ID:MGOUz8G.
 道の両脇には、満開の花を咲かせたさくらの木々が立ち並び、まるでアーチのように学
校までの道のりを覆っていた。

「はぁ……」

 と、わたしは小さなため息をもらした。
 そよ風が吹き、さくらの木々がわずかにそよいだ。

「この学校は、好きですか?」

 だれに対するでもなく、そうひとり言をつぶやく。
 さくらの花びらが風に吹かれ、ひらひらと舞い落ちた。

「わたしはとってもとっても好きです。でも、なにもかも…変わらずにはいられないです。楽
しいこととか、うれしいこととか、ぜんぶ。……ぜんぶ、変わらずにはいられないです」

 だれに対するでもない言葉。
 舞い散るさくらの花びらにのせるようにして、ただつぶやく。

「それでも、この場所が好きでいられますか?」

 風にのったわたしの言葉は、ひらひらと宙をただよい、そして地面に落ちた。

「わたしは……」
92Prologue:01/10/11 21:27 ID:MGOUz8G.

「見つければいいだけだろ」

「えっ……?」

 突然かけられた言葉に、わたしはおどろいて声の方向に頭をむける。
 そこには、わたしと同じ学校の、同じ学年の制服を着た、見知らぬ顔の男の人が立って
いた。

「次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ。あんたの楽しいことや、
うれしいことはひとつだけなのか? 違うだろ」

 そう言って、その人は面倒臭さそうに坂道を登り始めた。
 次の楽しいこと、次のうれしいこと、わたしにとってのうれしいこと……。

「ほら、いこうぜ」

 ――なんとなく、わたしもその人のあとに続いて坂道を登った。

 まっすぐにのびる、長い、長い坂道。
 さくらの花びらは、ひらひらと舞い落ち、長い坂道を絨毯のように彩っていた。


 FIN
93狗威 ◆inui/iEQ :01/10/11 21:30 ID:MGOUz8G.
>>90-92 『Prologue』
クラナドSS一番乗りを目指して急造したSS(というかネタ)です。
しかし、残念ながらその栄誉は、母乳スレの職人さんにとられてしましました。南無〜。
94OVA:01/10/11 21:59 ID:tHeWvkOM
>>なにがしだよもん氏
いつも感想ありがとうです。
・・・と言っても、このコテは複数あるコテのひとつなんでわからないでしょうが( ̄ー ̄)ニヤリ

>難を言えば、舞がとっつかまったあと、なかなか物語が収束しなくて、
やきもきさせられたくらいですかね。

確かに構成の練りこみが甘かったですね・・・。
次はもう少しマシなの書いてみます。

>また、毒電波を放出してください。フヒッ。
いつだってだしてますよ〜。
ここじゃないどこかで別の名でね( ̄ー ̄)

>>86
>最初読んだときは舞主観で進むものと思ったので、急に祐一主観に変わったときにちょっとついて行けなかった。
やはり視点変更に不満を持たれましたか・・・。
実は以前ある人物にSSを進呈した事があるんですが、その時も視点変更について指摘された事があるんですよ。
どうにかうまい方法ってないですかねぇ・・・。

ほんとはSSでなくて、同人漫画かDMNL辺りで発表出切ればいいんですけどね・・・。
そんな知恵も技術もないし。(泣

>>或る名無し氏
前回に引き続き今回もありがたい指摘をありがとうございます。
mio_2ch氏に回収されるようなら、指摘された所を直してみます。
95なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/11 22:08 ID:A.lMraWQ
>>90-92
いや、なかなかな出来ですよ。
なにげに本編との互換性がかなり高いと思われるです。
あの限られた資料だけで、うまく物語に仕上げたもんだなぁ、という印象を受けました。

ホームページの説明を読んだだけだと、何が何やらちんぷんかんぷんだったんですが、
本作を読んで、やっと、クラナドの目指す萌えが分かった…ような気がするです。

犬威氏の作品で3本目ですね。クラナドSS。
正式発表からまだ一日も経ってないのに…うたわれるもののときとはエライ違いや。
…コンチクショウ(笑)
96高野山の呪いだよもん:01/10/11 22:21 ID:A08qNchE
久々にSS書き込むです。アレな内容ですが結構長いので、
終わるまで書き込みを控えてもらえると嬉しかったり。
97早苗さん萌えSS(テーマ:母乳):01/10/11 22:25 ID:A08qNchE
その日俺は、いつものように渚を迎えに来ていた。
「おはようっす」
 ぞんざいな挨拶をしながら店内に入る。香ばしい焼きたてのパンの匂いに、つい鼻がヒクヒクと蠢く。
「あら、おはよう、朋也くん。…今日はどうしたの?」
 レジの中から、いつも通りのほんわかとした笑顔で答えてくれたのは早苗さん。渚の母親…のはずだが、どう見ても20代にしか見えない。いや、下手すると10代かも…。
「…ねえねえ、朋也くん?」
 まさか血が繋がってない母娘とか…いや、それはない。顔立ちといい性格といいそっくりだし…。
「…もしもーし、聞いてるのかなーっ?」
 いや、実は二人は姉妹だとか…うーむ、これはありうるかも…。
「えいっ!!」
 とりとめのない妄想に耽っていた俺の身体に、不意に暖かい感触が密着するのが感じられた。
 この柔らかい感触は、もしや…。
「もーっ、朋也くんってば。返事くらいしなきゃダメでしょ」
「…って早苗さん、いつの間に…」
 いつの間にかレジから出てきた早苗さんが、背伸びをするようにして俺の耳元を覗き込んでいた。俺の身体にしがみつくような体勢のため、俺の肩から二の腕にかけてが、そのふくよかな胸に密着するような格好だ。
 しかし、渚は見事なまでにぺったんこなのに、これは意外と豊かな…って、何を考えてるんだっ、俺。
「…とりあえず離れてくれませんか、早苗さん」
 イーストのものと早苗さん本来のものが混じり合ったような甘い香りにクラクラしつつ、何とか平静な声を作って言う。
「うーん、ちょっと冷えちゃってたところなの。朋也くんの身体って暖かいから、もすこしこうしてちゃダメ?」
 俺に体重を預け掛けながら、邪気のない表情で問い掛けてくる早苗さん。
「…もちろんですとも、早苗さんっ。それに、もっと暖かい場所もありますよ…」
 と言いつつ俺は、ズボンを下ろし…などといったことができるわけもなく、心残りに思いつつも冷たく告げる。
「ダメです。ほら、さっさと離れて離れて」
「もうっ、朋也くんのけちんぼ」
 ぷうと膨れた表情になって、俺の身体から離れる早苗さん。うーむ、勿体無い事をしたか。
98早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)2:01/10/11 22:26 ID:A08qNchE
「それで、今日はいったいどうしたのかな?」
 何事もなかったかのように、小首を傾げて聞いてくる早苗さん。いや、実際何もなかったんだけど。
「どうしたって…いつも通りに渚を迎えに来たんですが?」
「あらあら、それは大変」
 ちっとも大変そうに見えない表情で、のんびりと言う早苗さん。
「大変って、何がですか?」
「もう渚は行っちゃったのよ。朋也くんが来ないって心配しながら」
 早苗さんの言葉に、慌てて腕時計を見る。午前8時30分。早くはないが、いつも通りギリギリ間に合う時間だ。
 と、早苗さんが肩をちょいちょいと突っついているのに気付き、そちらに視線を向ける。
 そして、斜め上に見上げている早苗さんの視線につられ、更にそちらに視線を動かす。
「…なるほど」
 店内に掛かっている妙にファンシーな時計の針は、10時30分を指していた。明らかに大遅刻だ。
「これだから安物の腕時計はだめですね」
「…きっと、単なる電池切れに不注意で気付かなかったんだと思うな、わたし」
 ジト目でこちらを見る早苗さん。さりげなく話を逸らす。
「しかし早苗さん、なんでもっと早くに言ってくれなかったんですか?」
「うーん、あんまり朋也くんが普段通りだったんで、ひょっとしたらわたしのほうが勘違いしてるのかなって」
 しかし相変わらず大らかというか何も考えてないと言うか…まあ、早苗さんらしいし、これはこれでいいか。
「ところで朋也くん、急がなくていいの?」
「ええ、どうせ遅刻ですからね。のんびり行きますよ」
「きっと渚は拗ねてるから、後でフォローよろしくね」
「ううっ…」
 渚の拗ね顔を思い浮かべ、ちょっとげんなりとする俺。あの表情されるとどうも調子が狂うんだよな…。
99早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)3:01/10/11 22:28 ID:A08qNchE
「ふふっ、よろしくお願いしましたからね」
 にこやかな笑みを浮かべる早苗さん。俺は何となくその立ち姿を眺めた。
 薄手の白のブラウスの上に、お馴染みのピンクのエプロン姿。先ほどの感触のせいか、どうしても胸に目が行ってしまうのは仕方ないな。しかし、こうして見るとさほど大きくも見えないが、フカフカで柔らかかったよな…。
 などと邪な感慨など抱きつつぼんやりと見つめる。と、俺はとある異変に気付いた。
「…あれ?」
 ピンク色の布で隠された柔らかそうな隆起の突端が、何故か白く湿っているのだ。
 そう言えば、さっきまで早苗さんの胸が触れていた俺の二の腕にも、ちょっと濡れたような感触が…。
「あの、早苗さん…」
 俺の視線に気付き、きょとんとする早苗さん。
「もう、朋也くんったら。あんまりまじまじと見ちゃダメよ…」
 目に「?」の色を浮かべたまま自分の胸に視線をやり、数秒後、表情を凍りつかせる早苗さん。
「あ、あ、あ、あ、あの、これは…」
 絵に描いたような動転っぷりの早苗さん。と、俺は以前に早苗さんから聞いていた話を思い出した。
 そう言えば、最近なぜか胸が張って、おっぱいが出そうだって言ってたよな。
 あのときは単なる冗談かと思っていたが、まさか本当だったとは…。
「こ、これはその、だからつまりっ、ねっ、朋也くん。わかるでしょ?」
 羞恥に顔を赤く染めて、支離滅裂な言葉を口走る早苗さん。いかん、悪戯心が疼く…。
「あれっ、胸が濡れてますよ。どうしたんですか、早苗さん?」
 故意に驚いたような声で聞いてみる。みるみる真っ赤になっていく早苗さん。
「あ、あのね…」
 恥ずかしげな風情で、モジモジと口ごもる早苗さん。ううっ、可愛い、可愛すぎる…。
「えっ、聞こえませんよ?」
 つい、ワザとらしく耳に手を当てて聞き返してみる。
「その…おっぱいが…」
 更に真っ赤になる早苗さん。ダメだ、どうしてもいじめたくなってしまう…。
「困るなあ、早苗さん。もっと大きな声で言ってくれないと」
「ううっ…わかってるくせにぃ…朋也くんのイジワル…」
 とうとう、涙で目を潤ませる早苗さん。やばいっ、調子に乗って苛め過ぎたか。
「わーっ、冗談ですっ。すいませんっ、早苗さん」
「…ぐすっ、朋也くんのばかぁ…」
 泣きべそをかく早苗さんを、慌てて慰める俺。
「ごめんなさい、早苗さん。俺、ちょっと調子に乗っちゃって…」
「あ、あの…朋也くん…手…」
「えっ…わあっ!!」
 早苗さんを泣き止ませようと慌てる余り、いつの間にかその華奢な肩に手を回していたことに気付き、慌てる俺。
 手のやり場に困ってあたふたする俺を見て、泣き顔のままクスッと微笑む早苗さん。
「でも、朋也さんも男の子ね。ちょっと安心しちゃった」
「…安心したって、何がですか?」
 妙に感慨深げな早苗さんの言葉に、思わず聞き返してしまう。
「ほら、渚って泣き虫なところがあるでしょ。こんな風にしっかりと慰めてくれる彼氏がいたら安心だなーって」
「…俺は別に渚と付き合ってるわけじゃないんですが」
 当然のようにしれっと問題発言を口にする早苗さんに、思わずツッコミを入れてしまう。あと「あんたの方が泣き虫だろっ」というツッコミも入れたかったが、また泣かれると大変なので、そっちは口にしない。
「またまたーっ、照れちゃって。もう、可愛いんだから、朋也くんってば」
 そんな俺の気も知らずに、きゃいきゃいとはしゃぐ早苗さん。つーか、さっきまで泣いてたはずなのだが。
「はあ…もういいです…それじゃ、俺、そろそろ行きますんで」
 この話題をつっこまれると大変な事になりそうなので、そそくさと店を出ようとする。
「あっ、ちょっと待ってくれるかな、朋也くん」
 と、俺の制服の裾をつまんで制止する早苗さん。
「何ですか?」
「あのね、朋也くんにお願いがあるんだけど…」
 上目遣いで俺を見上げ、お願い光線を照射してくる早苗さん。ううっ、その視線は反則っす…。
「…お願いっていったい、何ですか」
 俺の疑問に対する回答は、それこそ想像を絶する、驚天動地、前代未聞の内容だった。
「あのね、胸が張って苦しいんだけど、吸ってもらうのをお願いしてもいいかな?」
「……」
 頭にぼんやりと靄がかかったようで、上手く働いてくれない。今、確かに、胸を吸ってくれって言ったよな。
いや、まさか。そんなことあるわけないじゃん。相手は級友の母親だぜ。でも、同級生と言っても通じるかも
しれない若々しさだよな。おいおい、そんな問題じゃねーだろ。母乳を吸うって事は、当然あのけっこう豊か
なおっぱいに吸い付くってことで、ってそれはいくらなんでもないよな。うんうん、聞き間違いに違いない。
そりゃそうだよな、そんな上手い話が転がってるわけないよな。
 ようやく脳内会議に結論を出した俺。一応、もう一回確認してみる。
「すいません、どうも空耳が聞こえたようで。もう一度お願いできますか?」
 俺の言葉に、何故かぷうと頬を膨らませて答える早苗さん。
「もう、ちゃんと聞いて欲しいな。わたしのおっぱいを吸い出して欲しいの。こんなこと、朋也くんにしか頼めないんだから」
 何てこったいハニー。どうやらアレは聞き間違いじゃなかったらしいぜ。どうする、俺。これって誘われて
るんだよな。据え膳食わぬは男の恥って言葉もあるわけだし、ここはリクエストに答えとくか。いや待て、相
手は渚の母親だぞ。うっかり誘いに乗っちまったら、明日からどんな顔して渚に会うんだよ。それに早苗さん
だってそれは承知のはずだろ。ってことはからかわれてるんだよな、やっぱ。そうか、意外とお茶目な性格の
早苗さんだけにありうるよな。つーか、さっきからかわれたのへの反撃だろ。おお、これでつじつまは合うな。
やるな、俺。とすれば、ここはさり気なく切り返すのが一番だな。
「いいですよ、早苗さん。じゃあ、胸をはだけてもらえますか?」
 余裕たっぷりに切り返す俺。
 これで早苗さんは真っ赤になって「もう、冗談なのに。朋也くんのえっち」とか言うはず、言うはずなのだが…。
「はい、判りました。…なんだか恥ずかしいですね」
 頬をほんのりと赤く染めて、素直にエプロンを外す早苗さん。余りの展開に目が点になっている俺をよそに、白のブラウスのボタンに手を掛ける。その姿にようやく石化状態が解け、慌てて止めに入る俺。
「わーっ、ストップストップ!! ちょっと待ってください、早苗さん!!」
「はいっ?」
 本当に胸をはだける寸前で、ぴたりと手を止めた早苗さん。きょとんとした顔で俺を見ている。
「…あの、冗談じゃなかったんですか…?」
「もう、朋也くんたら。冗談でこんなこと頼むわけないでしょ」
 真顔で返答され、リアクションに窮する俺。
「いやしかし、早苗さんは渚の母親なわけだし、こーゆーのはちょっと」
「だから、もう少しすれば朋也くんはわたしの息子になるわけだから、ほら、頼んでも問題ないでしょ」
 当然のことのように説明する早苗さんに、どこからつっこんでいいのか判らず、呆然とする俺。
 と、急に悪戯っぽい微笑みを浮かべる早苗さん。
「ははーん。ちょっとえっちなことを考えてたでしょう。でもダメよ。えっちなことしたら渚に言いつけちゃうからね」
 …早苗さん、えっちな事を考えずにおっぱいを吸う自信なんて、俺にはないです。
「…いや、そんなことはないんですけど、ほら、やはりこういうのは良くないんじゃないかと…」
 言葉を濁す俺に、一転して悲しげな表情になる早苗さん。
「そうよね…こんなおばさんのおっぱいなんて吸いたくないよね…渚に比べると張りもないし…ぐすっ」
 みるみるうちに涙目になる早苗さん。やばい、朋也ちん、ぴんち。
「わーっ、待ってくださいっ!!」
 慌てて宥めに入る俺。そんな俺を涙目のまま見上げる早苗さん。
「…じゃあ、やってくれる?」
 …だからその視線は反則ですってば、早苗さん。
 結局俺は気が付いた時には「はい」と答えてしまっていたのであった。
「じゃあ、よろしくお願いしますね」
 そう言って、ゆっくりとブラウスのホックを外す早苗さん。見てはいけないと思いながらも、
そのちんまりとした指先から視線を外す事ができない。
 そうしているうちに、ブラウスの前はすっかりはだけられ、大人の女性の下着と言うにはシン
プルすぎるデザインの白いブラジャーが露わになった。そのフロントホックに手を掛けた早苗さ
んだったが、食い入るように眺めている俺の視線に気付き、たしなめるように言った。
「もう、朋也くんったら。そんなに見つめちゃダメよ」
 その声に、心臓を鷲掴みにされたかのようなショックを受け、慌てて反対側に振り向く俺。
「はい。よくできました」
 早苗さんがクスリと笑う気配が伝わってくるが、とてもそんなことを気にしている余裕はない。
全身の感覚神経は、もぞもぞとブラの外す衣擦れの音に集中してしまい、つい生唾を飲み込みそ
うになるのを堪えるので精一杯だ。
「よいしょっと…はい、振り向いてもいいわよ、朋也くん」
 その言葉におずおずと振り向く俺。と、その視界に飛び込んできたのは、前を大きくはだけ、
胸を申し訳程度に片手で隠した早苗さんの姿だった。
「あ…」
 何も言えずに口ごもってしまう俺。早苗さんの透けるように白い二つの膨らみは、形よくふっ
くらと盛り上がっており、先端の方だけがなんとか柔らかそうな二の腕で隠されているといった
状態だ。ブラウスの内に篭っていた熱気がほんのりと甘い匂いで、俺の鼻腔を心地よくくすぐってくる。
「すっかり垂れちゃってるでしょ。こんなところを見られるのって、ちょっと恥ずかしいわ」
 何か見当違いの恥ずかしさを感じているらしい早苗さん。俺は声が出ないので、ぶるぶると首
を振って「そんなことないです」という思いを伝える。実際、早苗さんの膨らみは、確かにぴち
ぴちに張り切っているといった感じではないものの、しっかりと均整の取れた盛り上りを見せ、
何より、押さえる腕によって微妙に形を変えているのに、どこまでも柔らかそうな印象を受ける。
「それじゃ、お願いしようかしら」
「……」
 早苗さんにそう言われても、どうしていいのか判らずに呆然と立ち尽くす俺。
「もう、早くしてくださいってば」
 と言うと早苗さんは、右手を胸から外すとぐいっと俺の身体を自分の方に引き寄せ、顔を自分の胸に押し付けてきた。
ちなみに俺はと言うと、そのはずみでちらりとみえた、ぬめぬめと濡れたピンク色の乳首に目を奪われたままで、何の
抵抗もできずになすがままである。ううっ、情けないぞ、俺。
「さあ、朋也さん。よろしくお願いしますね」
 顔全体が、まるでふわふわのマシュマロのように柔らかく温かい膨らみに埋め込まれ、危うく窒息しそうになって息
を大きく吸い込む。と、うっとりするほど甘く、それでいて懐かしいような匂いが胸一杯に広がり、自分が何をしてい
るのか判断できないような、そんな陶然とした気持ちになる。目の前に薄い桃色の突起物が目に入る。それが早苗さん
の乳首だと気付いた時には、既に俺はそれに猛然としゃぶりついているところだった。俺は、夢中でその乳首を口に含み、
頬をすぼめて吸い付いた。いつしか、舌にうっすらと甘い味が感じられてくる。
「はぁ…」
 気持ちよさげな吐息を漏らす早苗さん。俺は、口腔内にじわじわと滲み出てくる母乳の感触を感じながら、口の中に
広がるほんのりとした甘さに酔いしれた。唇で乳首をしごくたびに、霧のようにじわっと染み出してくる母乳。味その
ものは薄いが、何となく郷愁を呼び起こすような独特の甘味に舌が蕩けてしまいそうだ。俺は夢中でそれを飲み干しては、
更なる母乳を吸い出していく。
「もう、無理して飲まなくていいのに、朋也くん。ここに吐き出してくれればいいのよ…」
 傍らに置かれた容器を示しているらしい早苗さんだが、そんな言葉は耳に入らない。
 とめどなく湧き出してくる母乳を、無我夢中でひたすら飲み込んでいく。
「ねえ、朋也くん。もっと強く吸ってくれないかな。軽く噛むみたいな感じで」
 俺の頭を軽く抱きながら、耳元に囁いてくる早苗さん。俺はそのリクエストに応えるべく、いつの間にか硬くなっている乳首を、更に強く挟んで吸い上げた。
「はぁ…そうよ、そんな感じでよろしくね…」
 と、今度は、滲み出ると言うより、勢いよく噴出してくる母乳。幾筋ものスプレー状になったそれが、俺の口腔内を溢れんばかりに満たしていくのが判る。ゴクゴクとそれを飲み込み、咽喉を潤していく。
「ふふっ、朋也くんったら一生懸命吸っちゃって。もう、赤ちゃんみたいで可愛いんだから」
 穏やかな笑みを浮かべながら、あくまで優しい声で言う早苗さん。その手はいつの間にか俺の頭に乗せられ、髪の毛を軽く櫛けずるように撫でてくれていた。何も考えず、早苗さんのおっぱいに集中する俺。
 途中、言われるがままに反対側の乳首に移動したような気はするが、詳しい事は覚えていない。俺は、早苗さんの、
「はい、おしまい」
 という声が聞こえるまで、ずっと赤ん坊のような無心な気持ちのままだった。
「はぁ、すっかり楽になったわ。ありがとね、朋也くん」
 再び反対側を向き、身繕いを整えながら言う早苗さん。俺はと言うと、アブノーマルな体験にすっかり元気に
なってしまった息子を押さえるのに精一杯だった。明らかにこれって誘われてるよな。今度こそ、据え膳食わぬ
は男の恥だぞ。いやしかし、渚のことはどうする? そのときのことはそのとき考えればいいさ。早く決心しな
いと早苗さんにも失礼だぞ。そうか、確かにそうだな。年上の女性にここまでしてくれたんだ。きっちり最後ま
でしてもらうってのが筋ってもんだよな。よし、行くんだ、俺。
 そろそろと身繕いを終えようとする早苗さんの肩に手を回そうとする。あと10センチ、あと5センチ、あと…。
「おい」
 突然、後ろから掛けられた声に、心臓が飛び出すかのような驚きを感じる俺。おそるおそる振り向く。と、そこには、予想通りの人物の不機嫌そうな顔があった。
「ところでお前、何してんだ?」
 相変わらず無愛想な秋生の声に、ぱあっとした笑顔で振り向く早苗さん。既に服装の乱れは完全に直され、いつも通りの格好だ。
「お帰りなさいっ。もう、いつになっても帰ってこないから、心配してたんだからっ」
「ああ、すまんすまん。配達の帰りに薬局の親父と話し込んじまってな。ほら、春の新製品の試供品だとよ」
「わあっ、嬉しい。ありがと、秋生さん♪」
 俺を完全に無視してラブラブモードに突入する二人。その隙にこっそり逃げようとするが、そうはいかなかった。
「そういえば、こいつと二人で何やってたんだ?」
 不機嫌そうな顔に戻り、俺を顎で指し示す秋生。
「ほら、あなたがいつになっても帰ってこないから、あなたの代わりにおっ…」
「わーっ! わーっ! わーっ! わーっ!」
 素直に答えようとした早苗さんを、慌てて遮る。そんなことをこのクソ親父に知られたら、いったいどうなることやら…。
「ん? どうしたの、朋也くん?」
 不思議そうな表情の早苗さんの耳元に、急いで囁く。
「すいませんっ! このことは二人だけの秘密ってことで」
 一瞬、きょとんとした早苗さんだったが、すぐににんまりとした表情になって囁き返してきた。
「うふっ、赤ちゃんみたいで恥ずかしいんでしょ。もう、朋也くんたら、本当に可愛いんだから♪」
 ふう…相変わらず誤解があるようだが、なんとか秘密にはしてくれそうだ。
 と一息ついたのも束の間、今度は目の前に秋生の猛禽類めいた顔があった。
「おい、朋也」
「は、はい」
 いかん、つい弱腰になってしまう。やはり後ろめたさが…。
「俺の愛娘だけならいざしらず、愛妻にまで手を出しやがったらどうなるか、判ってるな?」
 本気の声に思わず怖気づく俺。こいつはやると言ったことは必ずやる男だ。ばれたら果たしてどうなるか…。
「そ、それじゃ俺、学校に行くんで…」
 柄にもない愛想笑いを浮かべながら、じりじりと後ずさる俺。と、早苗さんが、置いたままになっていた俺のカバンを持ってきてくれた。とてとてと歩み寄ってきて、カバンを渡し際に俺に耳打ちしたセリフは、
「またよろしくお願いね。でないと今日の事を、渚に言いつけちゃうんだから」
 ぺろりと舌を出した早苗さんに見送られ、よろよろと外に這い出る。ああ、これからどうなるんだろ、俺。
 そんな俺の問いに答えてくれるはずもない、あくまで晴れ渡った春の空なのであった。

                           <END>
109高野山の呪いだよもん:01/10/11 22:55 ID:A08qNchE
>>97-108

「早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)」

でございます。我ながらああ長かった。しかし一行の文字数制限うざいっす。
という訳で、今朝がたに某スレで書いていた、鍵の新作「CLANNAD」の早苗さん母乳SSの完成版だったり。
構成も何も決めずに勢いだけで書いたのでアレな内容ですが、お祭りだと思って勘弁してください。
主人公がなんとなく鍵主人公にあるまじき性格になってますが、まあお祭りということでひとつ。
所要時間は全てひっくるめて4時間くらい。生涯で一番早く書けたSSでした(w
推敲不足のために見苦しい点もあるかと思いますが、そこはお祭り…ってしつこいですね。
しかし情報が殆どないってのは、書きやすかったり書きにくかったり。
それでは、そーゆーことで。
110名無しさんだよもん:01/10/11 23:03 ID:T5oQxRKY
へ……?
あ、あの史上初の「CLANNAD」SSの作者は高野山の呪いだよもんさんだったのか!!
マンセー!
111なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/12 00:57 ID:iIAydgEw
はわわっ、また葉鍵板閉鎖かと思ったですぅ。
game鯖へようこそですぅ。今度こそ幸せになりましょうー。はぅぅー。


>>97-108  『早苗さん萌えSS(テーマ:母乳)』

妄想ちからの偉大さというか、末恐ろしさを見せつけられたというか。
早苗母さんの、萌え要素(おさな系人妻萌え)まで天真爛漫ぶりがイイ。
な、なんか、あまーい声まで聞こえてきそう。

ここまでキャラ作り込むのは、Keyに対する破壊工作と言えなくもないです(笑)
ゲームをやる前にイメージ固まってしまいそう…(;´_`;)


クラナド発売日の翌日。
「はい、こちらサポート室」
「早苗ちんのイメージ違うぞゴルア」
「ハァ? 弊社のクラナドは発売されたばかりで、イメージも何も」
(聞いてない)「セリフ回し全然違うじゃねーか! あとぼにぅ! ぼにぅ!」
「ぼ、ぼにう? ですか?」
「早苗ちんのイメージ壊すKey逝ってよし」
「…。そういうあなたこそ、回線切って首吊って氏んでください」(がちゃん)
112狗威 ◆inui/iEQ :01/10/12 00:58 ID:DLOaNVUY
>高野山の呪いさん
ぐはっ! あなたが一番槍だったのですか。
こんな短時間に、これほどの量の文章が書けるとは……。
しかも面白いし、やっぱり技術と経験が違いますね〜(シミジミ
それとなにより度胸がある。まだどんなキャラかもわからないのに
こんな大胆にキャラを弄くるなんて驚愕です。
自分は本作とキャラが違ってたらと思うと、恐くて恐くて手を出せませんよ(w
なにはともあれ、クラナドSS一番槍おめでとうございます。
正直、これを読んだ後では、一番槍が自分でなくてよかったと思いますよ。
113なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/12 00:59 ID:iIAydgEw
×早苗母さんの、萌え要素(おさな系人妻萌え)まで天真爛漫ぶりがイイ。

○早苗母さんの、萌え要素(おさな系人妻萌え)いっぱいな天真爛漫ぶりがイイ。
114名無しさんだよもん:01/10/12 03:06 ID:FDltmHzY
マンセー!!
115名無しさんだよもん:01/10/13 02:32 ID:cUy3.NE2
新作あります的定期age
116名無しさんだよもん:01/10/13 15:57 ID:F6fSyTKU
訓練所にも新作が投稿されてるよage
訓練所創設時の祭りが終わったためか、それとも職人さん育成スレッドが
統合されたためか、あちらへの投稿数はかなり減ったね。
117なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/14 00:54 ID:PrV1xxU6
>94
(´-`).。oO(疎開先で会ったあのひとかな…)
118甘えん坊将軍@DEATH:01/10/14 14:47 ID:yT56uLHR
>>58-66の続きです。
それでは、本番スタート。
119甘えん坊将軍@DEATH:01/10/14 14:48 ID:yT56uLHR
 私には、何も残されていない。
 心を無くした耕一さんの身体以外には。
 私はあの日まで…耕一さんの心が失われた日まで…耕一さんの中に棲む鬼が覚醒しないよう、話し掛ける事はおろか近寄らないでいることを余儀なくされていた。
 別にそれで構わなかった。
 なぜなら私が耕一さんに接触しない事で、鬼の覚醒を遅らせる…ひょっとしたら覚醒そのものを止められるのではないかという一縷の望みがあったから。
 大好きな耕一さんに私の想いの丈を伝えるという我がままを通すよりも、耕一さんに人間らしく生きていてほしかったから。
 耕一さんに近寄る事すら出来なかったのは確かに辛かったが、その一方でほんのささやかな幸福感を得ていたのも事実だった。
『私の辛さが、耕一さんが柏木の忌まわしく、呪われた血とは遠ざかったところで生きてゆく幸福に繋がっている』と思っていたから。
 いや、私は『耕一さんと接することは出来なくとも幸せだ』と自分で自分に言い聞かせていたのかもしれない。
 耕一さんを恋しく思う自分の気持ちを紛らわせる為に。
 しかし、耕一さんが鬼化した為なのか、鬼の血に関係する『何か』があったのかどうかは知らないが、千鶴姉さんは亡くなり、耕一さんも心を無くしてしまった。
 結局私のしてきたことは泡沫の夢のように無に帰してしまったのだ。
 だから私はこれからずっと耕一さんの身体を求め続ける。
 もう二度と心が通い合わないのだから、せめて身体を重ねることで耕一さんと一つになろうとして。
「あっ! あっ! いや…嫌ですッ! あはあっ!」
 身体を動かす事のない耕一さんから必死に快感を得ようとして激しく腰を動かす。
 尤も、世の中にこんな奇妙な性行為はないだろうし、第一、自分から一方的に求めておいて『嫌です』と叫ぶ事自体間違っているだろうが。
120届かない想い(仮題):01/10/14 14:49 ID:yT56uLHR
 私は耕一さんの腰に背中に手を廻したまま、何度も何度も耕一さんの屹立した肉棒をアソコで貪る。
 半開きになった耕一さんの唇に自分の唇を合わせ、上下の歯列の間から下を侵入させて耕一さんの温かく柔らかい口腔内を蹂躙する。
「んぐうぅん…。ちゅぱっ…、じゅっ…」
 唾液と唾液が、そして私と耕一さんの繋がっているところから溢れ出しているエッチな汁が混じり合っていやらしい音を立てているが、別に誰にも聞かれているわけではないので以前ほど気にならない。
 むしろその音が私を更なる高みへと導く。
 私は狂った快楽を覚えてしまったから。
 先ほど私の膣内で熱い精液を破裂させて一度は柔らかくなった耕一さん自身だが、今ではその硬さを取り戻しており、私の膣壁に余さず密着して快感を与えてくれている。
 私の腰が沈むたびに膣奥にゴツゴツ当たる耕一さん自身が更にその硬さを増す。
 一度絶頂を迎えた私の身体も先ほどに比べてすっかりほぐれているため、普段なら激痛でしかないであろう下半身を引き裂く刺激も今では身体と心を融かすものでしかない。
 コンプレックスの原因でしかない私の小さな胸だが、耕一さんの大きな手で優しく愛撫されるのをイメージしつつ、自分の手で何度も揉む。
 時折、先端の乳首を指でつまんだり、押し込んだりすると全身が震えるくらい気持ちいい。
 胸を覆う甘美な感覚を求める一方で、硬く、熱い耕一さん自身に貫かれ、激しく身体の内側を何度も何度も犯されると頭の中がとろりとたゆたったモノに満たされてしまう。
 欺瞞に満ちつつも快楽に溺れていられる耕一さんとのSEXの最中だが、私の心の中ではドス黒い感情が渦巻いていた。
 耕一さんの身体を愛する事によって得られる快楽を以ってしても紛らわせる事の出来ない感情が。
121届かない想い(仮題):01/10/14 14:50 ID:yT56uLHR
 私は、千鶴姉さんに嫉妬していた。
 今もしている、といった方が正しいかもしれない。
 私の前世…エディフェルは耕一さんの前世である次郎衛門と恋に落ちたが、それは同時に異端の者との繋がりを意味しており、結局エディフェルは実の姉であるリズエルとアズエルの手によってその命を奪われ、次郎衛門とも引き裂かれてしまった。
 いくらエディフェルの記憶が後世の私…楓に残されているからといっても私自身がエディフェルであるというわけではないし、私の耕一さんに対する想いを培ったわけでもない。
 私は自分の意思で耕一さんを好きになったのだから。
 だが、今では千鶴姉さんが私と耕一さんとの絆を断ってしまった。
 耕一さんの心を奪うことで。
 もしかしたら私はエディフェルの代わりに殺された彼女の恨みを晴らしているのではないだろうか?
 それゆえに耕一さんの心を奪った千鶴姉さんに嫉妬しているのではないだろうか?
 それはない。
 何故ならエディフェルはその命を終える寸前、次郎衛門に『リズエルを…恨まないで…』と言い残したから。
 耕一さんを好きになったのも私なら、前世に於いてエディフェルの命を絶ったリズエルを恨んでいるのも私だし、耕一さんの心を奪い私の手の届かないところへ連れ去っていった千鶴姉さんに嫉妬しているのも他ならぬ私。
 私が…楓がエディフェルではないのと同様に、耕一さんも次郎衛門ではない。
 だから耕一さんが千鶴姉さんに心を奪われてもそれは仕方のない事だ。
 だったら私は耕一さんの身体を奪う。
 この世にはいない千鶴姉さんから。
122届かない想い(仮題):01/10/14 14:52 ID:yT56uLHR
 私の思考は耕一さん自身の先端から滲み出したモノによって中断させられた。
 今までの体験から、男性が達する寸前には少量の精液が出るということは知っている。
 あと少しで耕一さんが絶頂に達する。
 私は耕一さんと繋がったまま身体を上げ、今度は背中を海老のように思い切り反らした。
 手の平を畳の上につけて身体を安定させると、先ほどとは違う快感が私を襲う。
 耕一さんの身体の正面から愛していた時とは態勢が変わったせいで、私のアソコを犯している肉棒の入ってくる角度が変わったためなのだろう。
「耕一さん…耕一さん…耕一さん…耕一さんっ!!」
 足を思い切り開いて耕一さんの硬い肉棒を迎え入れ、腰を浮かせたり沈めたりする一方で時折左右に揺らす。
 もう、今の私は本能のままオスを求めるメスだった。
「あっ! あんっ! あはぁっ! あぁぁぁぁ…っ!!」
 耕一さんの名を呼ぶ声が喘ぎ声に変わったその時。
「!!」
 私の全身にとてつもなく甘美な感覚が走る。
 耕一さん自身から熱い精液がほとばしって私の子宮口を叩き、余さず焦がす。
 耕一さんの精液を膣内で存分に味わいながら、私は再び耕一さんの胸に顔を埋めた。
「はぁぁ…」
 互いの汗と体温、そして愛液と精液といった互いの全てがが混じり合う。
 心以外は。
 私は耕一さんに優しい言葉を掛けてくれるのを期待しているが、決してそんな事はありえないだろう。
 だが、私は激しく求めた後の緩やかに流れるこの時間も好きだと思っている。
 私は耕一さんの唇に、先ほどとは違って軽く口付けた。
『この何も考えないですむ時間が…ずっと続いてくれれば…』
 だが、いくら快楽に溺れようと耕一さんと二度と心を通じ合わせることはできないのを忘れる事は不可能だろう。
 私は深いため息を一つついた。
 現実に戻された瞬間、私は初めて背後からの視線を感じた。
「…!?」
 耕一さんと繋がったまま振り向くと、ぺたんと尻餅をついている女の子がいた。
123甘えん坊将軍@DEATH:01/10/14 14:56 ID:yT56uLHR
>>119-122
スープの次の前菜です。
メインディッシュは次回・・・。
レスをつけてくださった方へのレスは完結してからということで。
124帰ってきた早朝妄想:01/10/15 23:35 ID:az2m52xp
>119-122
メインディッシュが丼モノならスープは何ですハァハァ?
汁モノですかハァハァ?
125甘えん坊将軍@DEATH:01/10/16 22:39 ID:dDZw1wTT
 落ちるのを防ぐ書き込みはsageでも有効なのだろうか・・・?
126名無しさんだよもん:01/10/16 23:27 ID:yL/a99AR
スレ数500越えまではメンテを気にしなくても良いのでは?
127なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/16 23:37 ID:A5UJD97r
>>119-122 『届かない想い』 (前菜終了編?)

前菜か。前菜でしかないのかッ。
何が何でもあのょぅι゛ょを贄に捧げるおつもりか…。

あな恐ろしや…。
128名無しさんだよもん:01/10/19 00:22 ID:wf4BPcoH
念のため
129名無しさんだよもん:01/10/19 00:24 ID:Zw/rULZ7
>>125
sageでも大丈夫です
130名無しさんだよもん:01/10/19 00:26 ID:q5avwfzP
酷くどうでもいい話だが、なにがし氏の星座って何?
131なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/19 00:52 ID:IkjB8QMg
>>130
アストラギウス座…
132名無しさんだよもん:01/10/19 01:18 ID:tqTDh0iT
>>124
おおお! 早朝妄想さん!? まじっすか?
133名無しさんだよもん:01/10/20 08:48 ID:W/b33N6g
134届かない想い:01/10/21 18:22 ID:WWdFoTNU
 性行為、またはそれに類する事をしているのを見られた場合、普通の人はどのような反応をするのだろうか。
 それも実の妹に。
 恥ずかしさのあまり大声をあげる?
 照れ隠しの笑いを浮かべる?
 それとも何事もなかったようにその場からそそくさと立ち去る?
 私の頭の中で一瞬の内にそういった考えが渦を巻いたが、次の瞬間に私のとった行動はそれらとは全く異なっていた。
 常識に照らし合わせると、恐らく『異常』な行動なのではないだろうか?
 だが、私の脳はその行動を起すべく肉体に命令を下した。
 私は別に理性的な判断を止めたわけではないし、勿論反射的に身体を動かしたわけでもない。
 これは紛れもない私の意思。
 ふすまを半開きにしたまま、私が耕一さんにその届かない想いを必死で届けようとしている様子の一部始終を伺っていた初音に対しての。
 私は耕一さんの顔に目を向けた。
 先ほどと同じ、自分の意思を持たない人間の表情のままだ。
 私はゆっくりと立ち上がり、硬度を失った耕一さん自身を惜しみながらも、しばしの別れを告げた。
 二度も耕一さんの精を浴びたせいなのだろうか。私の膣内には納まりきらない耕一さんの精液が内腿を伝って垂れてゆくのが感じられる。
 そして私は再び後ろにいる初音の方を向き、一歩を踏み出した。
 初音の目におびえの色が浮かぶ。
 自分の方向に歩を進めてくる実の姉に対してどうすればよいのかが解らないのだろう。
 初音に近付きつつも、私は考えていた。
『どうして私は、これからとるであろう自分の行動が異常だと認めているのだろう?』
『どうして異常な行動をためらうことなく、且つ冷静にとれるのだろう?』
 ここまで考えて、私は恐るべき事実を知ってしまった。
 私は既に狂っていることを。
『エディフェル』の記憶を持ったまま生まれた『柏木楓』は。
135届かない想い:01/10/21 18:23 ID:WWdFoTNU
 私は初音の正面に腰を下ろした。
 初音は腰を抜かしているのだろうか。両手を畳につけて立とうとしている。
 私が自分の顔を初音の顔の間近に近づけると、初音は背中を反らして少しでも私から離れようとする。
 実の妹に私自身が拒絶されたようで悲しいけど、私は初音を安心させたい一心で言葉を掛けた。
 自分より遥かに大きい人間を目の当たりにしておびえる子犬に話し掛けるように。
「大丈夫…怖がることはないよ」
 初音の瞳に安堵の色が浮かぶ。
 だが次の瞬間、それは驚きへと変わった。
 私が初音の唇に口付けたから。
 大きく見開かれた初音の瞳は『楓お姉ちゃん!?』という声をあげているようだった。
 私はそれに構わず、初音の口の中への侵入を試みる。
 私は舌で初音の唇を味わいつつもその機会を窺ってはいるが、初音の歯によって固く閉ざされているのでそれはできそうにない。
 口付けをしつつ、初音の胸に手をやった。
 パジャマの上からも、膨らみかけたつつましげなその感触がはっきり分かる。
「あっ…」
 初音が小さな声を漏らしたその瞬間を逃さず、私は初音の口の中に舌を入れた。
 初音の上下の歯が私の舌を噛み切るかのように合わせられる。
 だが、初音はそれ以上顎に力をこめることなく、私の舌をその小さな口の中に迎え入れてくれた。
 それをいい事に、私は自分の舌を初音の小さな舌に絡める。
 初音が私を迎え入れてくれたのを嬉しく思う一方で、私は興奮に身を震わせていた。
 耕一さんのをカチカチに固くすることのできる私の舌は、初音の身体にどのような快感を与え、どんな反応を引き出し、どんな声をあげさせるのだろう…。
136届かない想い:01/10/21 18:24 ID:WWdFoTNU
 楓お姉ちゃんの舌が私の舌に絡みついてくる。
 これって…キスなんだろうけど、普通キスって唇と唇を合わせるんじゃなかったっけ?
 第一男の人と女の人との間でするんじゃなかったっけ?
 でも、口の中をヌルヌルした舌で舐められるのは変な感じだけど、気持ちいい。
 胸を優しく揉まれるのも。
 楓お姉ちゃんが耕一お兄ちゃんの身体にまたがって変なことをしていたのを見てしまったから、恐いことをされるんじゃないかと心配だったけど、楓お姉ちゃんは怒らずにいてくれた。
 怒るどころかこんなに気持ちいいことをしてくれている。
 でも…これって…さっき楓お姉ちゃんがしていた怖いことと何か関係があるのかな…?

 初音の身体から力が抜ける。
 私は口付けを続けたまま、初音のパジャマを脱がせ始めた。
「あっ…」
 初音は驚きの声を漏らすが、私はそれに構わずパジャマの上着の部分を脱がせた。
 私は口付けをやめ、初音から顔を離して露になった上半身を眺める。
 年齢は私よりも下で身長も低いが、そのぶん身体の膨らみが強調されているように見える。
 ひょっとしたら、初音の身体は梓姉さん似なのかもしれない。
 ほんの少し嫉妬の念が沸き起こる。
 私は初音の胸の先端に息づく淡い桜色をした突起に口付けた。
「きゃっ」
 くすぐったいのか、それとも気持ちいいのかは分からないが、初音は身を捩らせる。
 初音は私の真意に気付いているのだろうか…?
 初音がいたら耕一さんの目を醒まさせることができるかもしれないと思っている事に…。
137届かない想い:01/10/21 18:26 ID:WWdFoTNU
 私に初音という妹がいるのと同様に、エディフェルにはリネットという妹がいた。
 遥か昔に於いて、リネットはエディフェルが次郎衛門と愛し合っているのを黙認してくれていたのだ。
 地球に不時着したエルクゥの長…ダリエリにも隠して。
 そうでなければ、エディフェルが仲間に隠れて自分の体組織を次郎衛門に植え付け、彼が回復するまで見守るという芸当はできなかっただろう。
 リネットは下等な存在である人間を救ったエディフェルを異端の者として見るのではなく、姉として見ていた。
 いや、彼女はエルクゥの中でも姉のエディフェル以上に『異端』だった。
 争いを好まず、エルクゥの行く先々で繰り広げられる虐殺を嘆き悲しんでいたから。
 そんなリネットだから、エディフェルの亡き後、悲嘆に暮れる次郎衛門を何らかの手段で救ったのかもしれない。
 尤も、リネットが次郎衛門を救ったのかどうかを確かめる手段などないし、それ以前に初音がリネットであるという根拠など何処にもない。
 だが、エディフェルの記憶を持って生まれたが故に耕一さんと距離をとって過ごさざるを得なかった私とは違って、初音は耕一さんにとって身近な存在であったことは確かだ。
 ひょっとしたら…耕一さんには初音を懐かしむ心が残されているのかもしれない。
 ここまで考えて、私は耕一さんとの心の距離が遠いことを再確認した。
 仮にこれから始まる『ある事』が耕一さんの目を醒まさせたとしても、それは初音の存在によるもので、決して私の想いが通じたという事ではないから。
 だが別に構わない。
 不可能だと諦めていた、『耕一さんの心を千鶴姉さんから奪い返す事』が可能になるかもしれないから。
 その後で、初めて私の想いを耕一さんに伝える事ができるようになるのだ。
 そうすれば、耕一さんの全てが私のものになるかもしれない。
 もし初音が私の心中を知ったならば、さぞ醜い物を見るような目でわたしを見るだろうが。
138届かない想い:01/10/21 18:27 ID:WWdFoTNU
 私は、初音のパジャマと下着を脱がせた。
 さすがに一気に脱がせる事はできず、パジャマと下着は膝のところで止まったが、初音のアソコが露になる。
「あっ…」
 全裸に近い姿になった初音は慌てて足を閉じようとするが、私はその太股を掴んだ。
 全くの無毛でつるつるの恥丘が目に入る。
 初音の純粋さと可愛らしさを表しているようだが、その下に走る縦筋は、私が耕一さんを求めていたのを見ていたためか、それとも私の愛撫のためかどうかはわからないが既に透明な液体でぐしょぐしょになっていた。
 私は初音の股間に顔を埋め、その縦筋に舌を這わせる。
「ひゃっ!」
 指を使って左右に初音の割れ目をこじ開けると、恐らく誰の目にも触れた事はないであろう、初音の桜色をした肉襞が露になる。
「あっ…んあぁ…」
 私の舌が初音の綺麗な肉をちゅぷちゅぷと音を立てて舐めあげる度に、小さな穴からさらさらした愛液が滲み出してくる。
 初音は先ほどのように、足を閉じようとはしない。それどころか自分から腰を蠢かし、更なる快感を得ようとしている。
 年齢不相応に幼い容姿で純真ないつもの初音とはかけ離れた淫らな反応だ。
「楓…お姉ちゃぁん…」
「初音…全部脱いで…」
「はい…」
 一旦、私が初音の股間から顔を離すと、初音はうっとりとした表情を浮かべたまま素直にパジャマと下着を脱いで仰向けになった。
「いい子ね…初音…」
 頭を撫で、乳首に口付けると、初音は特に抵抗する事もせず私を受け入れる。
 初音の乳首に口付け、空いた方の乳首を片手で愛撫しつつも、私はもう片方の手で
初音のアソコを撫で擦った。
 初音の頬は紅潮し、喘ぎ声にも甘い響きが混じり始めている。
139届かない想い:01/10/21 18:27 ID:WWdFoTNU
 私は再び初音のアソコに口付けた。
「ひゃっ…」
 今度は包皮に包まれたままの初音の突起を唇で軽く咥える。
「んッ、んはぁッ…」
 くすぐったいのか、それとも気持ちいいのかどうかは分からないが、私が唇に力を加えてクリトリスに刺激を与えると、初音はびくびくと腰を振るわせた。
 クリトリスを愛撫しつつも、初音の割れ目の奥に中指を差し込むと、やはりそこはぴたりと閉ざされている。
 私は構わず、密着している肉同士を引き剥がそうと、中指の先を初音の更に奥に進めた。
「ひぐぅっ…いっ、痛いよっ! 楓お姉ちゃんッ!」
 私の愛撫に身を任せきりだった初音から今度は苦痛の声が漏れる。
「初音…これはお仕置きよ…」
「えっ…!?」
「さっきからずっと覗いていたあなたへの…」
「で、でもっ…」
 何か言いたげな初音だったが、私がクリトリスを咥えている唇に力を加えると、今度は甘い喘ぎ声が漏れてくる。
「はぁっ…んふうぅ…」
 再度中指を初音の奥の部分に進めると、ぷちぷちと肉同士を引き剥がす感触がする。
「い…痛いよ…」
 そう私に訴えかけてくる初音だが、先ほどよりはその声色も穏やかになっている。
 純潔を奪われている痛み以上に、クリトリスに加えられている快感の方が強いのだろう。
 そして、初音のアソコは私の中指の根元まで飲み込んだ。
140届かない想い:01/10/21 18:29 ID:WWdFoTNU
「か…楓お姉ちゃん…」
「何…? 初音…?」
「なんだか…変だよぅ…」
「変って…どんな風に…?」
「痛いんだけど…気持ちいいような…」
「これからもっと気持ち良くなれるよ…」
 私は、痛みを紛らわせるという意味でも話し掛けてくる初音に答える。
 私は初音のクリトリスを啄ばみながらも、初音のアソコに中指を先ほどより激しく出し入れする。
 ほんのりとした甘い匂い…ミルクのような匂いがするが、これは初音の女の匂いなのだろう。
 同姓の私がいうのもなんだかおかしいが、母親に包まれているような、母性に満ちた匂い。
 今、初音を責めているのは間違いなくこの私だが、逆にいえば私が初音に甘えているのではないだろうか?
 初音は私を嫌がることなく受け入れてくれているから。
 ひょっとしたら、エディフェルの死後にリネットは次郎衛門と一緒になって柏木家の遠い祖先になったから、私が初音に母性を感じてしまうのではないか…? とも想像してしまう。
「お姉ちゃぁん…わたし…」
 初音の甘く、媚びたような声で私は現実に引き戻された。
 中指を通じ、初音の膣壁がひくひく蠢動しているのがわかる。
「なんだか…怖いよ…」
「…」
 私はそれに答えず、初音のクリトリスと膣壁に刺激を与えつづける。
「あっ…んはっ…ああっ…」
 初音の息遣いが荒くなり、下半身がびくびくと小刻みに震え始める。
 私が指の動きを止めても、初音は自分から腰を動かして私の指が膣壁をこする事によってもたらされる快感を求めている。
141届かない想い:01/10/21 18:29 ID:WWdFoTNU
 私は初音の膣内から指を引き抜いた。
「あはぁっ…」
 初音は切なげな声をあげる。
 どうして…? とでも言いたげな表情だ。
「初音…私のよりも、耕一さんの方がいい…?」
 私の真意を理解したのだろう。初音は怯えた目で部屋の真中に横たわっている耕一さんの方に目を向ける。
 そして、私にすがるような目を向ける。
 私が笑みを返すと、初音は意を決したように立ち上がり、引き寄せられるかのように耕一さんのところへと向かった。
 私が激しく耕一さんを求めていたのを覗いて興奮していた余韻が初音に残っていたのか、私の愛撫のせいなのか、それともただ単に、初音がこれ以上の快楽を得たいという欲望に駈られたためかどうかは解らないけど。
 耕一さんに近付いたのはいいが、初音はさすがに自分がどうすればいいのかわからない様子だった。そんな初々しい姿を見ていると、初音が尚更可愛らしく思える。
 初音は、おずおずと耕一さんの唇に口付けた。
「んぐうっ…んぐうっ…ちゅっ…ちゅぱっ…」
 私にされたように、舌を耕一さんの口の中に入れているのだろう。
 耕一さんの口を貪る初音を横目で見ながら、私は再び耕一さん自身に手を伸ばした。
 初音の純潔を破った証の、血にまみれた私の指が触れた瞬間、耕一さん自身がぴくりと動く。
 手の平で袋状になっている部分を揉みながら、サオの部分を優しく手でしごき、先端に口付ける。
 力を失っていた耕一さん自身だが、だんだん固さを取り戻してゆくのが解る。
 ちらりと初音の方を伺うと、初音は私が耕一さん自身を手と舌で愛撫しているのに見とれている。
 私と目が合うと、初音は恥ずかしげに目を閉じた。
142届かない想い:01/10/21 18:31 ID:WWdFoTNU
「初音…今度はあなたの番よ…」
 私が促すと、初音は耕一さんにまたがった。
 そろそろと腰を下ろし、耕一さん自身が初音のアソコに触れると、くちゅりと水音がする。
「ふあぁぁ…」
 鼻に掛かった声を漏らす初音を見て、私は奇妙な興奮に襲われていた。
 耕一さんの身体は誰にも渡したくはないが、初音が乱れるのも見てみたいという相反した感情が渦巻く。
 初音はといえば、これ以上腰を下ろす事を躊躇している。
 さすがに私の指と耕一さんの肉棒では太さが違うのを今更のように理解したのだろう。
 だが、次の瞬間、初音は大きく息を吸って腰を下ろし始めた。
「うっ…うはあぁっ…!」
 愛液が分泌されているとはいえ、小さなその孔に不釣合いな、大きく太い耕一さんの肉棒で余さず膣壁を擦られる痛みは相当なものなのだろう。
 二度達した耕一さんの肉棒は、初音の奥に入ってゆくにつれて更に膨張してゆく。
 耕一さん自身を半分ほど飲み込んだ後、さすがに痛みに耐えかねたのか、初音は腰を上げて抜こうとするが、私と初音の愛液を吸って膨張した耕一さんの肉棒は既に二度射精しているにも関わらずカチカチに勃起し、初音の小さな孔からはそう簡単には抜けなくなっていた。
「うっ、うあああ…っ。いっ、痛いよ…」
 文字通り身体を貫かれ、引き裂かれるような痛みに初音は泣き声を漏らす。
 泣き声を漏らす初音を見ていると、痛ましさと共になんだか不思議な高揚感と、苦しむ初音をもっと見てみたいという奇妙な感覚に襲われる。
 多分、性行為の際には男の人もこんな感情を抱くのかもしれない。
 初音が、耕一さん自身を抜き取ろうとしても、奥に迎え入れる時と同じ痛みに耐えなければならない。ならば早く耕一さんを絶頂に導いて初音を解放してあげようと、私は耕一さん自身に顔を近づけた。
143届かない想い:01/10/21 18:32 ID:WWdFoTNU
 初音が腰を動かすのをやめても、耕一さん自身はその固さを保ったままだ。
 私は、膣内に耕一さんを迎え入れている初音のアソコを優しく撫で擦った。
「あっ…あんっ…」
 固い耕一さん自身を飲み込んで限界いっぱいまで開かれている初音の割れ目からは、愛液と共に鮮血が流れ、小さな真珠のようなクリトリスが恥ずかしげにその顔を覗かせている。
 私が豆のような肉芽を唇に含むと、初音は激痛と快感を交えた喘ぎ声を漏らす。
「お…お姉ちゃん…。楓お姉ちゃあん…」
「まだ痛い…?」
「う…うん…」
「もう少し我慢して…」
 今度は初音の肉芽を歯で優しく噛んだ。
「あはぁぁ…」
 多少強めにクリトリスを愛撫される事にも慣れたのだろうか。顎に力を加えるたびにびくびくとその幼い身体を震わせる。
「ふふっ…。エッチね…初音…」
 私が初音のクリトリスに刺激を与える度に初音の腰は上下し、耕一さん自身が初音の秘肉を捲り上げる。綺麗な桜色をしていた初音の肉は真っ赤に充血し、流れている血もその赤身を彩っている。
 私は初音の肉芽から口を離した。
 すると初音は自分から腰を動かし、耕一さんの肉棒を飲み込もうとする。
 両手を耕一さんのお腹の上に置いて、自分の姿勢を安定させた。
「どうしたの…? 初音…?」
「な…なんだか…体の奥が…痛いような…むず痒いような…」
 そう言いながらも、初音は自分で腰を動かして耕一さん自身を貪り始めた。
 互いの性器がいやらしい水音をたてて絡み合い、互いを絶頂へ導き合おうとしている。
「か、楓お姉ちゃん…わっ、わたし…んぷっ」
 わたしが初音の唇に口付けると、初音は狂ったように舌を私の舌に絡めてくる。
 痛みと快楽の狭間にあるので、更なる快楽を得て痛みを紛らわせようとしているためなのかもしれない。
144届かない想い:01/10/21 18:33 ID:WWdFoTNU
 わたしは、遥か昔の事を思い出していた。
 わたしの前世…リネットが姉のエディフェルを失って悲嘆に暮れていた時、同じくエディフェルを失った事を悲しんでいる次郎衛門に出会ったことを。
 次郎衛門の悲しみを少しでも掬い取ろうとして、一緒に過ごす事にしたのはいいが、エディフェルの事を忘れられず、慕い続ける次郎衛門の姿を見せ付けられるだけだったこと。
 そしてわたしは、結果的だとはいえ、姉の恋人を死後に奪うという、最も卑しい事をしてしまったこと。
 ひょっとしたら、エディフェルから次郎衛門を奪った罪を体に走る激痛という形で償わされていたのかもしれない。
 そこまで考えたのはいいが、わたしにはどうしても理解できないことがある。
 なぜ楓お姉ちゃんは、わたしが耕一お兄ちゃんで気持ち良くなっているのを許してくれているのだろう?
 もう今は、さっきに比べて痛くなくなっているのに。

「初音…気持ちいい…?」
 私は初音のクリトリスにちゅぱちゅぱと吸い付きながら聞く。
「わ…わたし…なんだか…」
 初音の全身は赤く染まり、時折小刻みに震えて、絶頂が近いことを知らせている。
 膣口も何度も何度も耕一さんを迎え入れるうちにすっかりほぐれてきたのか、初音は痛みよりも快感を貪っている状態だ。
 初めて絶頂を迎えるのが怖いのかもしれない。私は初音を見上げながら囁く。
「大丈夫…怖くないから…」
 そう言いつつ、私は先ほどまで吸い付いていた初音のクリトリスを思いっきり吸った。
「ひっ…ふっ、ふああああっ!」
 初音が体を震わせるのと同時に、膣壁がきゅんと締まる。
 それと同時に耕一さんの肉棒が脈動して精液を初音の膣内に放った。
 膣奥に熱い精液を浴びた初音は全身の力が抜けたように耕一さんの体に倒れ込む。
 そして耕一さんの肉棒が抜け、初音のアソコからは、初音の愛液と血と耕一さんの精液が混じったモノが溢れ出した。
145甘えん坊将軍@DEATH:01/10/21 18:35 ID:WWdFoTNU
 数日中に完結させます。
146なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/10/21 22:37 ID:eCW4a8mm
ハァハァ……。待ち遠しい……。 >145

「ふほっ! 初音を開発する楓の、なんとやらしいことっ!」
「膜を指でッ!? ああっ、たまらんっ、あの"引きはがす"という描写が!!」
「あれをついばむ舌技も、なんかこう、クルでござるな!」
「淫乱じゃ! 淫乱じゃが、そこはか漂う哀しみの描写が感じられて良い!」
「な、難を言えば、視点が、かっ変わるのが、唐突でっ…ハァハァ…ウッ!!」
「トイレじゃ、トイレタイムを所望致すッ」

(暫時)

(一同すがすがしい顔で)「ごちそうさまでしたッ」

(えっ、まだデザートがッ!? こりゃ、しんぼうたまらんわいッ!)
147狗威 ◆inui/iEQ :01/10/22 00:26 ID:qrwsvsQE
それでは、これよりSSを投下します。
しばらくの間、レスはお控えください。
148敬介:01/10/22 00:27 ID:qrwsvsQE
 薄暗い部屋の中、ひさしぶりに吸う煙草の煙を見つめていた。
 部屋に漂う焼香の匂い。大きく吐き出した紫煙は、ゆっくりとその中を立ち昇り、やが
て、かき消されるかのように霧散する。
 薄汚れた壁と、使い古された畳にすべての体重をあずけ、まだ中身の残っているコー
ヒーの缶に煙草の灰を落とした。薄い襖一枚を隔てた隣の部屋からは、延々と女性の
慟哭が聞こえてくる
 あの日以来、晴子はずっと泣き続けていた。まともに食事を摂ることもなく、泣き疲れ
ては眠り、起きては泣いていた。ずっとそれの繰り返しだった。
 ゆっくりと煙を吸いこみ、そして吐き出す。前回煙草を吸ったのはいつだったか? 何
年振りかに吸う煙草は、ただ舌を痺れさせるだけで、なんの味もしなかった。
 今、晴子の目の前には観鈴がいた。火葬場で焼かれ、真っ白な骨になってしまった観
鈴。僕と郁子と、晴子の娘。小さな金属製の壷の中に納まり、大きな白黒写真をバック
にしながら静かにたたずんでいる。その目の前で、晴子は泣き続けていた。
 娘の死。僕はそれを晴子からの電話で知った。嗚咽で混じりで、聞き取りにくい晴子の
声を聞きながら、僕は不思議と落ち着いている自分を自覚していた。頭の中では、通夜
の事や、葬儀の事など、今後自分のやるべき仕事について考えていた。
 無論、涙は一滴も落ちてこなかった。悲しいという感情すら働かなかった。自分でも驚
いたくらいの精神状態の中で、僕はその理由について考えてみた。
 それはとても簡単な答えだった。いくら実の娘だとはいえ、僕が観鈴と過ごした時間な
どほんの僅かなものだ。第一、僕には娘の死を悲しむ権利などはない。実の娘を、自分
の勝手な都合で晴子に押しつけ、一人で生きてきた僕にはそんな権利などないのだ。
僕自身、その事をよく自覚していたからこそ、悲しみという感情は、僕の中で自然と抹殺
されたのだろう。
 葬儀も一通り終わり、親戚の人々も皆それぞれの家に帰った。自分のやるべき仕事
もようやく一段落ついたところで、僕はこうして煙草をふかしている。
149敬介:01/10/22 00:28 ID:qrwsvsQE
 葬儀は晴子のたっての希望により、彼女の家で行われる事となった。親戚の人々の
間からは少なからず反対の声があがったが、それは、観鈴の父親である僕が賛成する
事で抑える事ができた。贖罪……というわけではないが、これくらいは晴子の望みを適
えてやらなければならないと思った。
 吐き出した煙をぼんやりと眺めながら、今日の事について考える。
 葬儀はなんの問題もなく終わった。晴子は式の間もずっと泣き続けていて、僕はそん
な晴子の分も働かねばならなかった。少し疲れはしたけれど、式の進展にはまったく問
題はなかった。
 僕が始めて観鈴の遺体を目にした時、それはすでに棺の中へと納められたあとだっ
た。つい数日前、この家の近くの海岸でおぶった観鈴の体。それは、あの時とまったく
変らない姿のままで、真っ白な棺の中で眠っていた。
 それを見た時、僕は観鈴の体に触れづにはいられなかった。夏の陽射しを受け、穏
やかに微笑むような表情を浮かべた観鈴。それは僕に死という現実を忘れさせる程だ
った。しかし、そこにあったのはロウ人形のように固く、そして冷たくなってしまった体。
あの時、背中越しに感じた柔らかな感触は、もはや微塵も感じる事はできなくなっていた。
 死者と生者の間にある絶対的な境界線。観鈴の体に触れ、僕は改めてそれを実感した。
 たとえ、生前の姿をそのままに留めていても、その表情に微笑みのようなものを浮か
べていたとしても、それはすでに『あちら側』へ旅立ってしまった観鈴の残影のようなもの
に過ぎなかった。『こちら側』の僕には、その僅かな残影から、観鈴が生きていた頃の面
影をつたない記憶をたどって思い出す事しかできない。
 僕にとっての観鈴の記憶。
 それは、観鈴が本当に幼いころの記憶。まだ、ろくに言葉もしゃべれず、二本足で歩
く事もままならなかったころの記憶から、観鈴が学校に入るか入らないかというころまで
の記憶。それは、悲しみを知らない無垢な赤ん坊が、常に他人の顔色を伺いながら生
きていくような少女へと変るまでの記憶だった。
150敬介:01/10/22 00:28 ID:qrwsvsQE
 観鈴が赤ん坊のころ、その笑顔は僕と郁子にとって最大の宝物だった。その時の僕
らは幸せの絶頂だった。僕らの前には沢山の問題が山積みにされていたけれど、そん
なものはまったく問題にならなかった。この幸せと、それをもたらしてくれる観鈴の笑顔
を絶対に守ろうと、僕はそう心に誓った。
 だけど、そんな幸せは長く続きはしなかった。
 ある日を境にして、観鈴は笑顔よりも泣き顔を見せることが多くなった。最初、僕らは
赤ん坊特有のただの癇癪だと思っていた。観鈴の笑顔が見れないのは残念だけど、ま
たすぐに元の笑顔を取り戻してくれると楽観的に考えていた。しかし、観鈴の癇癪は日
を追うごとに酷くなり、一日の内で、泣いていない時間の方が短いのではないのかとす
ら思えるようになるまでさして時間はかからなかった。
 昼も夜も関係なく泣き続ける観鈴。郁子はつねに観鈴の側らでその面倒をみていた。
僕が仕事から帰った時そこにあったのは、延々と続く観鈴の泣き声と、疲れきった郁子
の表情だった。しかし、どんなに疲れていても郁子はいっときも観鈴のそばから離れる
ことはなかった。郁子の疲れは癒されることなく、日を追うごとに蓄積された。その頃、
ちょうど僕の仕事は多忙を極め、観鈴の面倒をかわってやる事ができなかった。郁子
と観鈴の事は限りなく心配であったけど、僕達には日々を生きぬく為のお金が必要だっ
た。
 やがて、それまでの無理が祟ったのか、郁子はこの世を去った。医者からは過労が
原因であると診断されたが、あとで聞いた話では理由はよくわからなかったらしい。どち
らにしろ、僕は最愛の女性(ひと)を失い、観鈴は最大の保護者を失った。幸い……と
いうか、不思議な事に郁子がいなくなった後、観鈴の癇癪はぱたりとおさまった。観鈴
の癇癪の原因がわかったのは随分あとになっての事だった。
 その後、僕らはしばらくふたりで暮らした。人と親しくなると癇癪を起こす観鈴は、常に
人と距離をとり、他人の顔色を伺うような少女へと成長していた。誰から聞いたのか、
郁子の顛末も知っていたようで、そのことも観鈴の性格形成に大きな影響を与えていた。
151敬介:01/10/22 00:29 ID:qrwsvsQE
そしてなにより、観鈴をこのような少女にしてしまったのは僕の責任でもあった。郁子が
いなくなり、僕は父親としての責任を果たさなければならなかった。だけど、僕はその責
任から逃れようとした。人に近づく術を失い、自分の母親の死に負い目を感じている観
鈴を優しく包みこまなければならないはずなのに、僕はそれから逃れようとした。あの時、
僕らに幸せをもたらす観鈴の笑顔を絶対に守ると誓った。だけど、僕はその誓いを果た
すことができなかった。守ろうとしたはずの笑顔はそこにはなく、あるのは常に誰かの顔
色を伺う怯えたような顔。僕はそんな観鈴の表情を直視する事ができなかった。あの日、
郁子がいなくなったあの日以来、観鈴は僕に対して癇癪を起すことはなかった。
 結局、僕は観鈴の側にいる事の苦痛に耐える事ができなくなり、晴子の元へ無理矢
理押しつけた。都会で暮らすよりも、のんびりとした田舎で暮らす方が観鈴の為になる
と無理な理由をつけ、自分自身を納得させた。そして、それはつい先日まで信じていた
理由だった。
 観鈴を晴子に預けた後も、僕は何度かこの町を訪れた。それはどこかで父親としての
責任感が働いた為だったのかもしれない。いや、自ら責任を放り出した事の後ろめたさ
があった為だろう。僕はこの町を訪れても、ただ観鈴を遠くから見守る事しかできなか
った。
 しかし、観鈴を晴子に預けた事は、今となっては正解であったと思っている。観鈴を連
れ戻ろうとした時、観鈴は僕ではなく晴子を選んだ。今にも倒れてしまいそうな体で、僕
の必死で背中から逃れ、晴子の元へ帰ろうとした。きっと、観鈴は晴子の元で幸せに暮
らせたのだ。僕なんかと暮らすより、よっぽど幸せだったはずだ。そう信じたかった。
 僕と郁子と観鈴の3人で暮らした日々の笑顔と、永遠の眠りの中での小さな微笑。夕
焼けの海岸で背中越しに感じた柔らかな感触。それが、今、僕の中にある観鈴の記憶
のすべてだった。
 しかし、それらはやがて時の中に埋もれ、記憶の片隅の僅かな空間に押し込められ、
思い出す事さえままならないようになるのだろう。暗い天井と、白い煙の中に思い浮か
152敬介:01/10/22 00:29 ID:qrwsvsQE
べる観鈴の笑顔は、すでに曖昧な形でしか再現されず、煙草の煙とともに浮かべては
すぐに立ち消えた。『こちら側』の僕と、『あちら側』の観鈴をつなぐ唯一の細い糸は、も
う、すぐにでも切れてしまいそうなほど弱々しいものだった。人の死は、柔らかで温かな
体を、固く冷たいロウ人形のようにしてしまうように、鮮明で確かな記憶も、曖昧で不確
か想い出へと変えてしまう。あの日の笑顔も、あの日の温もりも、すべてを曖昧な想い
出の中に封じ込め、『こちら側』と『あちら側』を結ぶ細い糸は、やがて記憶の片隅で断
ち切られてしまうのであろう。
 痺れる舌を無視して吐き出した煙の中に、幼い日々の観鈴の笑顔を映し出した。僕と
郁子の手の中で無邪気に笑う観鈴の顔は、一つ前に吐き出した煙の中の観鈴よりも曖
昧で、それでもまだ、あの日の温もりは失われていなかった。今、吐き出した煙の中の
観鈴が、前の煙の中の観鈴よりも曖昧なように、次の煙の中の観鈴は、今の煙の中の
観鈴よりも曖昧なのだろう。こうやって、僕は少しづつ観鈴の温もりを忘れていくのだろ
うか? 使い古した洋服を押し入れの奥にしまいこむように、観鈴の記憶も想い出の片
隅にしまいこんでしまうのだろうか?
 煙草の煙はゆっくり広がりながらと天井まで立ち昇り、やがてかき消させるように霧散
した。それとともに、その中にいた観鈴の輪郭は曖昧なものとなり、やがて煙とともに消
滅する。
 僕はそれをぼんやりと見つめていた。そして、次の煙を吸い込もうとした時、なにかが
ポタリと畳の上に落ちた。
 それは、畳に小さな丸いシミをつくり、やがて2こ、3こと増えていく。次々に増えていく
小さなシミが、やがて大きなひとつのシミへと変った時、僕はそれが自分自身の流す涙
である事に気づいた。
 涙は、僕の意思とは無関係に次々と流れ落ちる。とめどなく流れ落ちる涙の雫。僕は
それを必死で止めようとた。顔がぐしゃぐしゃになるくらい顔の筋肉を使いながら、部屋
153敬介:01/10/22 00:30 ID:qrwsvsQE
の隅で小さく、丸くうずくまる。声を出す事はできない。隣の部屋にいる晴子に、今の僕
の声を聞かれたくはなかった。
 いくら必死になっても涙は止まらない。それでも僕はなんとか涙を止めようとした。晴
子から観鈴の死を聞かされた時も、観鈴の遺体をこの目にした時も、決してこぼれる事
のなかった涙。今になって流れる涙は、自分自身への言い訳であるかのように思えた。
実のの娘に対し、なにもしてやれなかった父親が、許しを乞うような哀れな涙。涙を流す
事で、自らの罪をも流し去ろうとしている。そんな涙。
 だから、僕はますます顔面に力をいれて涙を止めようとした。今の僕は、一体どんな
顔をしているのだろうか? とてもじゃないが晴子に見られるわけにはいかないな。必
死で涙を止めようとする一方で、頭の片隅ではそんな事を考えていた。



 どれくらい時間が経ったのか、ようやく涙がおさまった時、指にはさんだ煙草は根元の
部分まで灰になって畳の上に落ちていた。薄暗かった部屋は、完全に夜の暗闇の中に
包み込まれ、隣の部屋から延々と聞こえていた晴子の泣き声もいつの間にか止んでい
た。
 泣き疲れて寝てしまったのだろうか? 晴子はここのところずっと、泣き疲れるとその
場でそのまま寝てしまう。そして、起きるとすぐに泣き出すのだった。いくら夏だとはいえ、
そのまま寝てしまうのでは風邪をひいてしまうかもしれない。
 僕は畳に落ちた煙草の灰を手で払い、よいしょと気合を入れて立ちあがった。なんと
なく体が重たいように感じられたけど、それでも普通に動くくらいは問題なかった。
 部屋の押入れから一枚、薄手の毛布を取り出し、それを晴子にかけてやる為、隣の
部屋へと通じる襖に手をのばす。そして、僕もそろそろ眠りにつかなければならないな
154敬介:01/10/22 00:31 ID:qrwsvsQE
と思った。葬儀が終わったとはいえ、僕にはやるべき仕事が沢山残っていた。『こちら
側』に生きる僕には、明日の為の休息が必要なのだ。
 襖を開けると、案の定、そこには真っ黒な喪服を着たままで寝息をたてる晴子の姿が
あった。その寝息は、さっきまで延々と泣き続けていたとは思えないほど静かなものだ
った。多分、よほど疲れていたのだろう。あれだけ泣き続ければ誰だって疲れる。
 僕はそっと手にした毛布を晴子にかけてやった。頭の位置がちょっと低いところにあ
るのが気になったので、近くにあった座布団をまるめてまくら代わりにして晴子の頭を
その上に乗せた。そうして一通りの作業を終えたのち、僕は自分の寝床へと戻ろうとし
た。部屋をあとしようよしたその時、ちょうど僕と観鈴の目があった。四角い額縁の中に
おさまった白黒の観鈴は、ただ無邪気に微笑んでいるように思えた。


FIN
155狗威 ◆inui/iEQ :01/10/22 00:33 ID:qrwsvsQE
>>148-154 『敬介』
以上、橘敬介さんでした。
156ー`):01/10/22 02:02 ID:0d+vb313
>145はまだ続くのな 早く(´ー`)早く
>155はもう続くかんのな >154がなかなかにカコイイね

> 「ただ無邪気に微笑んでいるように思えた」

(´ー`。)ホロリ
157名無しさんだよもん:01/10/23 05:53 ID:dnYMLvBm
抑えた筆致がすげえ好みでした。敬介さんをちょっと好きになれました。
弱くて悲しい人だけど。

あとやぱラスト一文かね。巧いね。俺はかなり好きだ。
158名無しさんだよもん:01/10/25 02:10 ID:xR5I/GaD
age
159まこプー:01/10/26 12:13 ID:nRsLCNV9
以前書いた断片を一応形にしたのでアップします。
ちょっと不出来ですがまぁご容赦を。
160猫ねこ:01/10/26 12:15 ID:nRsLCNV9
 どうしてこんなことになったのかしら……。
 ぼんやりと濁った意識の片隅で香里は思った。一体、何がどう転がればこうして妹に自慰行為を見られるなんて状況になるというのだろう──。

 その日、夕食と就寝とに挟まれた余暇の時間、香里は自室のベッドに横たわりしばし微睡んでいた。しばらくすれば階下の母親が、入浴の順番が回ってきたことを知らせるだろう。
 そうした寸暇を無為に過ごすのは彼女の常ではなかったけれど、かといって例外がないわけでもないし、今日がその例外であってはならない理由もない。
 そう、人が行動を選択するのに一々もっともらしい理屈など必要ないのだ。だから香里がふいに股間に手を伸ばし、部屋着の上から陰部を指先で擦り始めたとしても、それはよくある出来事の一つに過ぎない。
 もっとも、彼女があまりに行為に専念し過ぎた為に誰かが廊下を歩く気配に気付かなかったことや、風呂が空いたことを知らせに来た妹に、突き上げた臀部を見られてしまったことは不幸な偶然だったけれども。
 ましてや羞恥に顔を染める香里に、栞が熱っぽい眼差しで「やり方」を教えて欲しいだなんて懇願するに至っては彼女に何の非があったと言うのか。
 それが栞なりに気まずい姉を気遣ってのことなのか、あるいは言葉通りの意図だったのか、それとも姉の痴態を自分のものにしたいという歪んだ欲求から出たことなのか、香里は幾つかの可能性を想起したが判断することすらせずに妹の願いを聞き入れた。
 そうしていざ事に及んで見ると、香里は先ほど一人でしていた時とは較べ物にならないほど強い刺激を感じる自分を発見した──。
161猫ねこ:01/10/26 12:15 ID:nRsLCNV9
 栞の様子に変化を感じ取った香里は、自らの花弁を弄る手を休めた。
 妹に見られながらの自慰行為と言う状況が生む、かつてない快楽に霞んだ視界に映るのは、雪のように白い頬を赤く上気させ、切なげな表情を浮かべてぐっしょりと湿った下着越しにおぼつかない手つきで性器を擦る、栞の姿だった。
 今まで見る側だった栞は、いつの間にか自分が見られる側に回っている事に気づき、慌てて声をあげた。
「ああ、お姉ちゃん、見ないで……下さい…んあっ」
 姉に懇願しながらも、栞の手は動きを止めようとはしない。むしろ、より強い刺激を得るために激しくなっている。
 衣越しで弄り続けるもどかしさから逃れようと、下着の隙間に指先が潜りこもうとするが直接性器に触れることへの恐怖がそれを押しとどめ、その葛藤がまた彼女の性感を高めた。
 香里ははしたなく音を立てて息をのむと、栞に覆い被さり、桜色に色づく彼女の妹の唇を奪った。
「……栞」
「お、おねえ、あ…うむっ……」
 ピチャピチャと音を立てて舌を絡め、唾液を交換する。一旦始めてしまえば、香里よりも栞の方が貪欲だった。香里は栞の舌が咥内をまさぐる心地よさに酔いしれながら、更にあふれ出した愛液がふとももを伝うのを感じていた。
「…ぷはっ」
 数分にわたる香里とのディープキスから解放された栞は、慣れない行為に困難になった呼吸に、息を荒げた。いつもより口の中がぬるぬるする。二人の混ざり合った唾液がまだ口内に残っているからだ。
162猫ねこ:01/10/26 12:16 ID:nRsLCNV9
 栞は彼女の胸を舌で愛撫する香里の豊かな髪に触れた。指先を髪に通し、頭を抱く。そして、口内に残ったものを喉に流した。言葉に出来ないほどに、栞の中で姉への想いが広がってゆく。
 言葉にしなくてもいい。今の栞には、それを表現する手段があった。
「お姉ちゃん…」
「…?」
 香里の肩をつかみ押し倒す。体勢を入れ替え上になった栞は、短いキスの後、顔を香里の股間あたりまで下げた。香里はこれから妹が行おうとしている行為を黙って待っていた。
「あ…。お姉ちゃん、濡れてる…すごく……」
 栞は舌先を突き出し、おそるおそる香里のものに触れた。
「あっ、はあっ…ん…そこっ、いいっ!」
 香里の嬌声を道標に、栞は彼女の姉の陰部へと舌による愛撫を与え続ける。潤沢な愛液で潤っているとはいえ、舌を這わせればやはり陰毛のざりざりとした感触を覚える。
 どうしてか栞は、自分の姿に親猫の毛繕いをする仔猫を想起した。
 そしてその連想は、様々なタブーに捕らわれた彼女たち姉妹の行為を、栞の中で、愛情あるものへと変化させたのだった。
「んはっ…はああぁっ、栞、しおりぃ…!」
 より大きな快感を香里に与えるために、栞は自然と両手の親指の腹で香里の性器を押し広げる。開かれたひだの間を丹念に舐め掬った。
「ああっ! それ…感じ過ぎ……や、やめ…ひっ」
 舌全体を大きく使って、陰部全体を刺激していた栞だったが、それだけでは不足を感じた。手の位置を変え、香里のふとももに手をかけると顔をあそこに密着させ、つんと尖らせた舌先を香里の膣へと差し入れた。
「ひあっ! あああっ! …んあぁっ!」
 口を塞がれた栞の呼吸がまた、香里の最も敏感な器官を刺激する。抑えきれない快楽に仰け反る姉の腰を押さえつけ、愛撫をくわえながら栞は、触れてもいないのに自分の膣内が水気で潤っていくのを感じた。
163猫ねこ:01/10/26 12:17 ID:nRsLCNV9
「し、しおり…」
「……え」
 香里に名前を呼ばれ顔を上げた栞は、上気した顔で姉が発した言葉を一瞬、理解出来なかった。
「…ほ、欲しいの……。入れて…栞の……ゆび…」
「お姉ちゃん…本当にいいの…?」
「だ、大丈夫だから…入れて……はやく…」
 息も絶え絶えで懇切され、栞はこくりと頷いて見せた。あそこに指を入れるなんて、栞には未経験のことだった。
 まさかそれが、これまでずっと想い慕ってきた姉、香里のものになるなんて…。栞は夢でも見ている心地だった。
 人差し指を立て、じっと見る。これがこれから、香里の膣に入るのだ。
 ぱくっと口にくわえ、よく唾液を絡ませた。待ちきれずに脚を閉じてもじもじしている香里の股を開き、そして。
 …つぷっ。
「はああぁ!」
 栞の指は、思いの外すんなりと飲み込まれた。香里のなかを傷つけないよう細心の注意を払いながら、指を奥へと押し込んでいく。栞は香里に指全体をぎゅっと締め付けられ、その熱さに昂ぶった。
「…お姉ちゃん、気持ちいいですか」
「ああっ、いいっ…! んんっ…」
 指の腹で香里のなかを探る。
「…ああっ、ああっ…! 栞、栞っ!」
 もう香里は、同じ言葉を繰り返すだけしか出来なくなっていた。香里が絶頂に近付いていることを悟り、栞は指を激しく出し入れする。
「…あああっ、いくっ…いくっ…ん…はあっ…」
 指の動きを止めないで香里の秘所へと顔を寄せ、栞はぷっくりと充血している姉のクリトリスを唇で挟み、ちゅ…と吸った。
「ひゃあっ、ああぁっ、しおっ…ああああああああああぁっっ!!」
 香里は絶頂の嬌声をあげながら、弓なりに躰を仰け反らせた。突然の動きに、栞はあわてて指を抜いた。一瞬、姉のなかを傷つけたかと心配したが、そうではなかった。
「お姉ちゃん……イッたんだ…」
 栞はそう呟いた後、姉の愛液に濡れる指に舌を這わせた。
164猫ねこ:01/10/26 12:18 ID:nRsLCNV9
 翌朝、香里は幾度もあくびを噛み殺しながら通学路の登り坂を歩いていた。すぐ後ろを上機嫌の栞が付き従っている。香里は改めて昨晩の情事を振り返り、何度目になるか分からない溜め息をついた。溜め息、吐息、あくびに後悔。香里の朝はどんよりとした灰色に彩られている。
 一方栞は時折遠い目をしては「ほぅ…」と息を洩らし頬を赤く染める。まだ夢見心地といった様子だ。香里はどうすれば栞に「あれは一夜だけのこと」と納得させられるのだろうと頭を抱えた。
「お姉ちゃん、大好き!」
「あああああ──」
 だが、結局その夜も彼女の部屋を訪れた栞を追い返すことは出来ないのだった──。
165なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:18 ID:nRsLCNV9
1.

 陽光眩しく、小鳥囀る清々しい朝。
 いつもと同じく、目覚まし時計に先回りして目を覚ました佐祐理は、ナイトキャップの先が顔にかかるのを、軽く払いのけ、目を擦った。
 寝起きでぼんやりとした瞳が、ベッドの上のある一点を捉えていた。彼女の股間のあたりにある……不自然な隆起。
「ふぇ?」
 手を伸ばし、そっと触れる。その瞬間、佐祐理の背筋に電流が流れた。
「ひゃっ!」
 それで完全に目が覚めた。ふとんを捲りあげる。隆起はまだそこにあった。……佐祐理の股間に。恐る恐るパジャマのズボンの中を覗き込んだ佐祐理は、小さな下着からはみ出してしまったそれに、元気の良い挨拶を受けた。
『こんにちわ! これから、どうぞ宜しく!』
 佐祐理のこれまでの人生に於いて二本目のソレとのご対面だった。初めては幼い頃に見た父親のものだ。まさかその次が自分のものになろうとは誰が想像し得ただろうか。
「あ、あはは……。佐祐理ったら、ねぼすけさんですねー」
 とにかく、もう一度最初からやりなおせばこの珍妙な夢も覚めると思った。再び掛け布団をかぶり目を閉じる。すると無意識に下腹部に力が入り、アレがぴくんと跳ねる感触がわかった。
「きゃ……きゃあああああああああああああああっ!!!」
 佐祐理の慌ただしい日々の始まりだった。
166なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:19 ID:nRsLCNV9
2.

「おはよう、舞、佐祐理さん」
「あ、祐一さん、おはようございます」
「……祐一」
 朝の通学路、駆け足で二人に追いついた祐一はあからさまにおかしい舞の態度と、佐祐理のわずかなそれに首を傾げた。
(いつもの佐祐理さんなら『祐一さん、おはようございますーっ』だよなあ……)
 実際、こうして一緒に登校していると今朝の佐祐理は明らかにおかしかった。ぱっと見では普段と変わらない笑顔を浮かべるあの佐祐理なのだが、付き合いの深い舞と祐一には、その笑顔に別の「何か」が混入していることが隠せない。
「……今日の佐祐理は変」
「確かに……」
 佐祐理の内心を「アレ」のイメージがかすめるが、動揺を押さえ込んだ。努めて、そうした。
「はぇ? やだなぁ二人とも、佐祐理はいつもの佐祐理ですよーっ」
 だが、二人の訝しむ視線は佐祐理から離れない。
「──そう言えば」祐一が言う。
「……歩き方が変」それを舞が受けた。
「あ、あ、あははーっ。もう、二人して同じこと言うなんて、本当に仲良しですねーっ」
「佐祐理、もしかしてあの時の怪我が……」
「また痛むのか?」
「ち、ち、違いますよぉ。本当に何でもないんですから。あ、舞、だから悲しい顔をしないで……きゃっ」
 「アレ」による異物感に、ぎくしゃくとした歩みだった佐祐理は、舞をフォローしようと駆け寄りざま、浮き上がった歩道のタイルに足を取られた。真っ正面につんのめりそうになるのをこらえたが、その反動で道ばたに尻餅をついてしまう。
 舞と祐一は、佐祐理を気遣うことすら忘れ、彼女を凝視していた。
「ふぇ? あ、あ……」
「さ、佐祐理さん……」
「……トランクス」
 慌ててめくれあがったスカートを正した佐祐理だったが、すでに遅かった。だが、まだ良かったのかも知れない。もし、彼女がいつもの下着を身につけていたなら、この場で二人に「アレ」を見られていたのだから──。
167なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:22 ID:nRsLCNV9
3.

「ぷはっ。佐祐理さん、ごちそうさま」
「……佐祐理」
「は、はい……。仕方ありませんね……」
 お昼ごはんの後にわけを話すから、ということで今朝は佐祐理と別れた祐一は、普段の何倍もの速度で佐祐理お手製のお弁当を食べ終えた。
 何気なく舞も食べ終えていることに驚いたが、それよりも佐祐理だ。
「信じてもらえるかどうか……」
「佐祐理を疑うはずがない」
「俺はどんなことを言われたって、佐祐理さんを信じるよ」
「……じ、実はですね」佐祐理が口元に手をあてメガホンを作ったので、二人は耳を寄せ彼女の言葉に耳を傾けた。
「ははは、なるほど。佐祐理さんが男にって、んなーッ!」
「……祐一、声が大きい」
「あはは、やっぱり信じられませんよねぇ。佐祐理だって、まだ夢じゃないのかなって思ってるんですから……」
「あ、ご、ごめん、驚いただけ。う、疑ってなんてないさ。な、舞?」
「……確認するから」
「はぇ? え? え? こ、ここで舞が見るんですかー?」
「……ゴクリ」
「……祐一は邪魔」
 舞の鋭い眼光に、抵抗する意志も無かった祐一は、二人が見えなくなる位置まで階段を下りた。
 だが、見えない分だけ想像が働き、耳はより多くの情報を拾おうとフル稼働をする。
「こ、これなんですよ、舞……」
「……祐一のものと似ている」
「あっ、ま、舞っ。急に触らないでっ」
「佐祐理、動くとよく見えない」
「で、でも……!」
「こっちもついてる……」
「ま、舞っ、やめ……」
(な、何が起こっているんだー!?)
 壁に頭を打ち付けながら、淫らな妄想を振り払おうとしていた祐一は、階段の手すりから覗き込む舞の視線に、我に返った。
168なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:24 ID:38P6LIcS
「祐一、何をしてるの」
「……ちょっと頭が痒くて」
「そう」
「で、佐祐理さん、どうだった?」
「やっぱりわたしだとよくわからない」
「そ、そうか」
「だから……祐一が見て」
「お、おう。って、え?」
(祐一が見て? 祐一って俺か、俺だな? 俺が見るのか? 佐祐理さんの「アレ」を? おれにもついてる、アレを──!?)
169なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:24 ID:38P6LIcS
4.

「……私のせいかも知れない」
「ま、舞のせいですか?」
「どういうことなんだ」
「おととい、佐祐理の家に泊まった時……」
 その日の深夜、佐祐理はぐしゅぐしゅという音に目を覚ました。勘のいい佐祐理はすぐにそれが、舞が泣いているためだとわかった。
「どうしたんですか、舞……」
「……なんでもない、なんでも……」
 佐祐理はふ、と息をもらすと舞を抱き寄せ、頭を撫でた。
「大丈夫。佐祐理はいつだって舞と一緒だから。ずっと、いなくなったりしないから。だから、舞は不安になることなんて、ないんだよ?」
「佐祐理……」
 それから、佐祐理は舞が寝付くまでずっと彼女の手を離さなかった。
「…あの時、佐祐理に思った」
「……」
「……」
「佐祐理にも『祐一がするみたいに』して欲しいと……」
「……はぇー」
「な、な、そんな馬鹿な」
「……だから、わたしのせいだと思う」
 佐祐理と祐一は、舞の告白に混乱しながらも、それ以外にこの非現実的な自体を説明することは出来ないと考え出していた。
170なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:25 ID:38P6LIcS
 ──不可視の力。純粋な想いの力。不可能を可能にする力。

「だからって、こんなことに使わなくても……」
「あはは、仕方ないですよ、祐一さん。舞だって、わざとしたんじゃないんですから……」
「……だから、祐一が佐祐理を見て」
「って、無茶言うな。佐祐理さんだって嫌だろ」
「……た、確かに、すごく恥ずかしいです」
「ほら」
「で、でも」
「……?」
「……その、舞の力が原因なら、お医者さんに見てもらうわけにもいきませんし、だから、あの……」
「ま、まさか…」
「……ゆ、祐一さん、あの、ご迷惑でなければ、……あの、さ、佐祐理の……あ、アレが、本当に……お、男の人の……そ、それと……」
「……わかった。もうそれ以上言わなくてもいいよ、佐祐理さん」
 祐一の言葉に、佐祐理は緊張に引きつった顔をほんの少し弛めた。でも、本当に恥ずかしいのはこれからなのだ。
「祐一、変なことしたら許さないから」
「……わかってます」
171なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:26 ID:38P6LIcS
5.

「あはは、恥ずかしいですね……」
 緊張をごまかす為か、不自然ながらも笑顔を絶やさずに、佐祐理はスカートに手を入れ、膝の辺りまでトランクスを下ろした。スカートの端からトランクスが覗く。祐一は音を立てずに唾を飲んだ。
「佐祐理さん、大丈夫だから」
「は、はい……」
 何が大丈夫だかわかったものでは無かったが、祐一にはそう声をかけるしかない。佐祐理は羞恥に顔を真っ赤に染め上げながらも、両手でスカートをつまみ、そろそろと持ち上げた。
 次第に上昇してゆくスカートの端から、佐祐理の太腿が露わになる。
 そして、ついに彼女の秘所までもが祐一の眼前に晒されることになった。
「こ、これは確かに『男の子』だ……」
「……は、恥ずかしいです」
 佐祐理は目を閉じ、この耐え難い時間をやり過ごそうとしていた。スカートを支える手は小刻みに震え、その緊張が祐一にも伝染する。
「ふ、袋はないみたいだけど、その……」
「は、はい」
「えと、あの、さ、佐祐理さん。……お、『女の子』の方って……」
「あ、ありますっ。……そ、そっちは普通で……」
「そっちも見ていいかな……」
「え、で、でも…!」
「あ、いや、ゴメン! その、そっちも見た方がいいのかなって……」
「……ご、ごめんなさい」
「いや、いいって。そっちは普通らしいし……ん」
「……あっ」
172なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:27 ID:38P6LIcS
「さ、佐祐理さん……大きく……」
 祐一の視線をただ羞恥と覚えていたはずだったが、いつの間にか佐祐理は奇妙な昂ぶりを覚え始めていた。そして『男の子』はそうした変化に対して非常に敏感であることを、佐祐理は今、身をもって学ぼうとしていた。
 それまで垂れ下がった『アレ』によって隠されていた佐祐理の秘所が、覆いを無くしてしまう。
「あ、み、見え……」
「いやっ、……もうだめですっ」
 ぷすっ。
「いてーっ!!」
 佐祐理がスカートを降ろしてしまうより先に、舞の箸つっこみが祐一の眉間に突き刺さった。久々の激痛に祐一は手で眉間を押さえながら、頭を振る。
「祐一、やりすぎ」
「お、俺のせいじゃねー!」
173なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:27 ID:38P6LIcS
6.

 それから二時間の午後の授業を、心ここにあらずといった様子で受け終えた三人は──舞はいつだってそんな感じだけれど──再び最上階の踊り場に集い、佐祐理のこれからについて話し合っていた。
「とにかく、原因はハッキリしているんだ。そこから考えよう」
「……でも、舞の意志でどうこう出来るんでしょうか」
「問題はそれだよ。なあ舞、お前言ったよな。そ、その……佐祐理さんに『俺がするみたいに』して欲しいって思ったって」
 舞は無言でコクリと頷く。その頬が微かに上気していたことに祐一も佐祐理も気付き、二人ともきっと自分も舞と同じになっていると思った。
「じゃあ、その、ね、願いが叶えば佐祐理さんは元に戻るんじゃないのか」
「断言は出来ない……でも、きっと……」
「そうか、じゃあこれで解決の糸口はつかめたわけだ」
 祐一は意識して楽観的な口調で話すが、かえって肝心なことをさて置いていることを強調する結果になった。佐祐理が遠慮がちに訴えた。
「でも、わたしには祐一さんが舞に……その、『どういう風に』しているかわかりませんし……」
「……やっぱりそうだよな」
「そ、それに……、佐祐理だって今はこんなのですけど、女の子ですからやっぱり初めては、その、す、好きな人と……。
 あっ、違うの! 舞のことも好きですよ、でも舞は女の子だから……」
 慌てて言い繕う佐祐理に舞は静かに頷いて見せた。
「佐祐理の気持ちはわかってる……」
「ご、ごめんなさい……」
「……佐祐理は悪くない。悪いのは私だから」
 そして二人とも黙ってしまった。三人を気まずい雰囲気が包み込む。それを振り払うように、祐一が口を開いた。
174なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:28 ID:tNQ2tyzL
7.

「まあ、そんなに焦る必要もないよな! ほら、いつか佐祐理さんにも恋人が出来るだろうし、それまでに自然と解決するかもしれないしさ!」
 だが祐一の意気に反して佐祐理の反応は冷静そのものだった。
「でも……ずっとこのままかも知れませんよね。それに、こんな身体じゃ……」
「その時は、俺が責任を取るよ」
「……え?」
「だ、だから! 俺の責任でもあるんだし、さ、佐祐理さんさえ嫌じゃなければ……。いや、別に今どうこうって話じゃなくて、その、俺は控えだと思ってくれていいから、……ほら、保険だよ、保険!」
 予期しない祐一の言葉に佐祐理は戸惑う。
「でも、祐一さんには舞がいるじゃないですか。駄目ですよ、佐祐理にはそんなこと出来ません……」
「違うんだ、舞は以前からずっと佐祐理さんのことも好きだったんだよ」
「……私にはどちらか一人なんて選べないから」
「だ、だから佐祐理さんさえ構わないなら……。俺だって二人とも大切なんだ。世間的に見れば無茶言ってるのはわかってる、でも」
 佐祐理は祐一を舞の顔を交互に見つめたあと、天井を見上げ深く溜息をついた。
「わたしにも黙ってたことがあります。……佐祐理はずっと、祐一さんのことが好きでした。……舞、わたしも仲間に入れてもらっていい?」
 そう言って佐祐理は照れくさそうに微笑んだ。大事を決定するには余りに幼い言葉だったけれど、それが三人の関係には似つかわしいと祐一は思った。
175なりたふ佐祐理さん:01/10/26 12:28 ID:tNQ2tyzL
8.

 週末、佐祐理は元の身体に戻った。

9.

「でさ、なんでこうなるわけ?」
「さて、どうしてでしょう」
「…………」
 あれから後、通常の生活に戻った佐祐理だったが──あくまで身体面に限った通常だけれど──舞が祐一とケンカしたときなど、ことあるごとに『男の子』にされてしまうのだった。
「でも祐一さん、佐祐理はだいぶこのコに慣れてきましたよ」
「いやね、そういう問題じゃないんですよ」
 祐一はやりきれないといった体で舞に詰め寄る。
「おい舞、聞いてるのか?」
「……祐一、嫌い」
「あはは、祐一さん仕方ないですよ。舞だってわざとしているんじゃないんですから」
「そうか!? 本当にそうかなのか!?」
「ね、舞。今日は一緒に寝よ、佐祐理が慰めてあげるから」
「……佐祐理は大好き」
 そう言って舞はぎゅっと佐祐理に抱きつく。そんな二人の様子に疎外感を一杯にした祐一は「用済みか!? 俺は用済みなのかー!?」と叫びながらいずこかへと走り去ってしまった。
 佐祐理の慌ただしい日々はまだまだ終わりそうにない。
176まこプー:01/10/26 12:31 ID:tNQ2tyzL
以上、お目汚しでした。

★「猫ねこ」>160-164
★「なりたふ佐祐理さん」>165-175

改行規制と文字数規制に連続投稿規制と、なかなか手こずってしまいました(;´Д`)
佐祐理の方はふたなり佐祐理、舞、祐一の3Pを書くつもりだったんだけど
寝かせた時間が長すぎてやる気が萎えたのではしょってしまいました(;´Д`)
177Alfo ◆bIGaAlfo :01/10/28 02:03 ID:5Fkpba1t
瑠璃子さんもの、行きます。
しばし投稿のほうはご遠慮ください。
178『月灯り』:01/10/28 02:04 ID:5Fkpba1t
『月灯り』

 灰色のカーテンから光が漏れている。
 それともこれは、透過光なのかもしれない。この微妙さ、曖昧さが心地よく。
 透明でない布を通して透明な光が差し込む。しかし光はその透明さを失うことなく、僕の左頬を緩やかに暖めていた。

 季節は夏。夜は昼から遠く、月の光は未だ日の光に隠されている。
 でも、それでも僕は月を見ることができる。
 その真昼の空の頼りない月。光るでも輝くでもない、ただの白。

 その白の光は、本当に幽かだが、この左頬にも差し込んでいるはずだ。
 確か今日は、そういう月齢。

 あまりに静かな図書室の中、ページを繰る時のそのささやかな音だけが脳髄にリアルを叩き込む。
 ともすれば文字の世界に没入しそうな中、その刺激と、僕には少々難しいその本の内容のおかげで、なんとかぼくは踏みとどまっている……のだろうか。
 本当は僕はどこにいたっていい。
 たった一つの、今もそこにある奇跡が、それからもずっとありつづけるのならば。
 だから僕は、できることならば、彼らのいる彼岸に――

 ガラス戸が、きぃと開いた。
179『月灯り』:01/10/28 02:04 ID:5Fkpba1t
「……瑠璃子さん」
「勉強家だね、長瀬ちゃん」
 いきなり肩に抱きつかれて狼狽する僕の真後ろで、瑠璃子さんはくすくすと、いつものように笑っていた。
 でも僕は、まるでいたずらっ子のようだと思った。
「何の本、読んでるのかな」
「え、あ、ちょっと」
 ひょこっと右肩から顔を前に動かす瑠璃子さん。
 つられて瑠璃子さんの顎とか頬とかが僕に当たるので、動悸がさらに激しくなっていく。
 その上髪とか吐息とかがじかに当たってくる距離だったりするワケで、僕はその、なんというか――
 辛抱たまらなくなった、とか言うべきなのか。
 そんな僕の内面の葛藤をよそに、瑠璃子さんはさっきの悪戯っぽい微笑みのままで、手元の文庫本を見ていた。
「瑠璃子さん、その、あの……」
 ついでにいうと、瑠璃子さんがだらしなく体を僕の背中に預けているおかげで、その、瑠璃子さんの暖かさだとか柔らかさだとかその内に秘めた弾力とかで、僕はもう正常な判断は出来なくなっていた。

 ――ほんとうは、こんなことしているところはみられたくなかったのに。
180『月灯り』:01/10/28 02:05 ID:5Fkpba1t
 案の定、月が雲の陰に隠れるように、笑顔が自然に消えた。
 なぜなら、僕が読んでいた本は。
「精神分析学入門」
 せいしんぶんせきがくにゅうもん、と、一字一句を区切るように瑠璃子さんは言った。
 僕は、いまさらに、裁きを待つ咎人のような、そんな心境になっていた。
 誰も、僕を責めているわけでもないけど、なぜか、そんな気分。
「理由を」
「え」
「理由を教えてくれるかな。長瀬ちゃん」
 すっ、と、ぬくもりが背中から離れる。
 振り返ることも出来ぬまま、僕はただ、コタえた。
「夢のことを知ろうと思ったんだ」
「……」
「そのためにいろいろ、本を当たってみたら、偶然目次にそれらしいことがあってさ」
「どうして夢のことを?」
「それは……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
 長い沈黙の末、答える。
181『月灯り』:01/10/28 02:05 ID:5Fkpba1t
「月島先輩や、みんながいる場所だから、だよ」
「……そうなの」
 その返答に、わずかだが悲しみが混ざりこんだ。
 純粋無垢な透明に僕の余計な汚濁が混ざりこんでしまった。そのことに僕は後悔した。
「長瀬ちゃん」
「……」
「こっちを向いて」
「……」
「向いて?」
「――うん」
 哀願するその声に、逆らえるはずもなかった。
 と。

 笑う、瑠璃子さん。

「長瀬ちゃん、星を見に行こうか」
「星を?」
「そう。もう日の沈む時間だから」
 気が付くと、誰もいない図書室は、僕たち二人を残して、眠りの為の夜に向けて動き始めていた。
「この時間帯なら、きっと一番星も見えるよ」
 まるで夢のような雰囲気の中で瑠璃子さんが言う。
「ね?」
 首を傾げて誘い込む瑠璃子さんに、やっぱり逆らえるはずもなかった。
182『月灯り』:01/10/28 02:05 ID:5Fkpba1t
 屋上の重い扉を開くと、いつか見た溶鉱炉の紅が目を刺した。
 手をかざしている所をすっと瑠璃子さんが横から抜けていくので、デ・ジャヴはより激しいものとなった。
 脳を刺激する既視概念。その向こうに、夢とも現とも判らない瑠璃子さんがいた。
 瑠璃子さんがすう、と両手を空に掲げる。途端、あたりの電波の濃度が比べ物にならないほど高まっていった。
 僕のものとも、月島さんのものとも、根本から異なっているその波動は、静かに蒼色で心を満たしていく。
 目を刺す紅。
 染み渡る蒼。
 風は髪を揺らす。
 空には一番星。
 両手を上げたままの瑠璃子さん。
 僕は瑠璃子さんを後ろから抱いた。
 綺麗な青い髪が溶鉱炉の中で輝いていた。
183『月灯り』:01/10/28 02:06 ID:5Fkpba1t
「ん……長瀬ちゃん…………」
 呟くその唇を僕のそれで塞ぐ。
 横を向く姿勢だった瑠璃子さんが少しでも楽になるように、抱きしめる方向を変える。
 お互い正面を向いたままの、暖かいキス。
 腕の中で少し身じろぐ瑠璃子さんがいとおしい。
「ふ、はっ……」
「はあ……はぁ………ぁ……長瀬、ちゃん――」
 目と唇を半開きにして恍惚の表情で僕の目を見つめてくる瑠璃子さんを、もう一度だけ強く抱きしめる。
 瑠璃子さんの体から強張りが消えたのを確認してから、アスファルトの屋上に横たえ、制服の赤いスカーフを外した。
 その間、瑠璃子さんも僕の制服のボタンをぷちぷちと外していく。
 それはなんとなく気恥ずかしい行為だったけど、それでもお互いに止めることはなかった。
 下着姿になった瑠璃子さんは、もう何度もこの目にしたというのに、その美しさに飽きるということはなかった。
 その柔らかい乳房も、丸みを帯びたその腰も、肩も、お尻も、髪も、肌も、眼も、鼻も、口も、爪も、何もかもが、ただ愛しい。
 ブラジャーの中央から手を差し入れて、ゆっくりと右にずらしていく。
 掌が瑠璃子さんの乳房の上を這わせていると、すぐに突起の感触。
「あ……」
 人差し指と中指で挟み込むように刺激を与えると、瑠璃子さんの体が少し震えるのが分かった。
「はあっ……うぅ」
 そのまま刺激を与えつづける。手のひらの中で突起が勃起しつつあるのが分かった。
 ブラジャーをはいで、左の乳房にも舌で刺激を与える。
 ささやかなピンク色の乳輪の周りから、次第に中央へと、じらすように寄せていく。
184『月灯り』:01/10/28 02:06 ID:5Fkpba1t
「ひゃっ! な、長瀬ちゃぁん……」
 赤いその器官が瑠璃子さんの乳頭に当たると、それだけで瑠璃子さんは甘い声を漏らしていた。
「んっ! あ、あぁ……」
 知ってか知らずか、瑠璃子さんは、まるで更なる快楽を求めるように僕の頭を抱いていた。
 しばし、この行為に没頭した。
 瑠璃子さんの甘い息が少しずつ規則的になった頃を見計らって、右手を瑠璃子さんの腹部へと動かしていく。
 お臍の周りをしばらく愛撫してから、なるべく不意をつくように、指先を白いショーツの中に滑り込ませる。
「ん、長瀬ちゃん、そこは……」
 まだ胸への愛撫に未練があるのか、瑠璃子さんは惜しむような声を上げた。
 そんな声を無視して、さらに指を奥へと忍び込ませる。
 中指と薬指が、瑠璃子さんの愛液に触れた。
「瑠璃子さん、濡れてるよ……」
「いや……、長瀬ちゃん、いわな……あっ!」
 中指を、くんっと曲げて、瑠璃子さんの敏感な部分を刺激する。
 包皮をめくり、くっくっとノックするように触る。たったこれだけで、その数倍の振動が瑠璃子さんの体を駆け抜けていった。
 その間も胸への愛撫は忘れない。上下同時の攻めに、瑠璃子さんの呼吸がどんどん乱れていく。
 と、背中を、かり、と瑠璃子さんの指が引っ掻いた。
 かり、かり、かりと難解も繰り返すそれは、僕のシャツの裾を抓もうとしているらしかった。
「どうしたの……瑠璃子さん」
「ね、長瀬ちゃんも、脱いで。気持ちよくして……あげるから」
 ……その言葉に、頭の中のスイッチが切り替わった気がした。
185『月灯り』:01/10/28 02:07 ID:5Fkpba1t
 僕はシャツを脱ぎ捨てる。と同時に、瑠璃子さんの指が脊髄をついっとなぞった。
 眩暈の如き悦楽。
 この瞬間、二人の間での攻防関係は、一瞬にして入れ替わってしまった。
 瑠璃子さんの体が僕の下から持ち上がり、自然、座ったまま対面するような形になった。
「ね、ほら、全部脱いで」
 性器から愛液を溢れ出させたまま、瑠璃子さんは僕に『命令』した。
 脳髄を心地よく引っ掻く電波の感触。僕の知らないところで腕が動き、ベルトのバックルを外させた。
「る、瑠璃子さんん……ああ」
 僕の哀願するような目を前にしても、やっぱりいたずらっ子のような瞳で笑う瑠璃子さん。
 すこし腰が浮いて、黒い制服のズボンが足の先から抜けていった。
 次はトランクスを脱がされるのかと思ったが、瑠璃子さんは僕を半裸にしたまま、ゆっくりと四つんばいでこちらに歩いてきた。
 後ろ手についた姿勢の僕の上を、瑠璃子さんが這い上がってくる。
 脛、膝、内股、腹、肩と、瑠璃子さんの手がゆっくりと上がる。
 そして、瑠璃子さんの右手が頭の後ろに回され、もう一度二人はキスをした。
 触れ合った唇を離さないまま、トランクスに手を掛ける瑠璃子さん。
 ああ、どうにかなってしまいそうだ、と思った。
 触れ合った体中のありとあらゆる場所から、瑠璃子さんの電波が流れ込んでくる。それが血管の流れの中で僕の劣情とない交ぜになり、脳といい心臓といいペニスといい何もかもを愛欲の血液で満たしていく。
 激しく、心地よく、刺激的で、安らか。
 頭が酸欠やら何やらでくらくらし始めた頃、瑠璃子さんの唇は僕の唇から僅かに離れ、そのまま下へと動いていく。
 瑠璃子さんは既に期待に濡れたペニスにそっと口付けをすると、僕の脳髄を犯したその唇で性器を犯し始めた。
186『月灯り』:01/10/28 02:07 ID:5Fkpba1t
「く……あっ、る、る、り、りり、こさささ、ん」
 ここにきてついに僕はイカれてしまった。
 体中に染み込んできた電波が、まるでペニスに一極集中していくような、そんな恐ろしい程の快感。
 意識ははっきりとしているのに、もう脳髄のほうが役立たずになったようだ。
 ただ僕の口はうめく事にしか役立たない。
 ただ僕の体は快感を得ることにしか役立たない。
 ただ僕の脳髄は劣情のためにしか役立たない。
 瑠璃子さんの唇が、つ、と陰茎を弄る。まるで止む事を知らないような先走りが、瑠璃子さん自らの唾液とともに、頬を濡らしている。
 ちゅ……ちゃぷっ……ぬ、ぬ……ぷちゃっ。
 陰茎から亀頭へ下が這い上がると、追い討ちのように瑠璃子さんの口がペニス全体を包み込む。
 口腔で舌が動き回り、竿に纏わりついては離れ、亀頭を舐め上げては吸い込んだ。
 その動きに耐え切れずに絶頂を迎えようとした寸前、それを感じ取ったかのように瑠璃子さんは唇を離した。
 瑠璃子さんは涎でぐちゃぐちゃになったその顔を僕に向ける。
「もう……、いいよ。長瀬ちゃん」
 そういうと同時に、僕の体を戒めていた電波の力が、少しだけ弱くなった。
「長瀬ちゃんの電波も、感じさせて」
 言われるまでもなく、僕は瑠璃子さんを押し倒した。
 痛いほど怒張したペニスを瑠璃子さんのヴァギナにあてがい、責められている最中ずっと練りこんでいた特上の電波とともに、一気に突き入れた。
187『月灯り』:01/10/28 02:07 ID:5Fkpba1t
「ああぁっ! う、わ、ああぁぁぁ……」
 わずか一突きで瑠璃子さんは絶頂に達してしまったらしく、僕の体の下で何度も何度も体を震わせた。
「やだ、ちょっと、すご……い」
 二度目の絶頂。一度目とは、ほとんど間隔がない。
「な、ながせちゃん、電波、強すぎるよっ……あ、ふああああああっ!」
「……る瑠璃子さん、気持ちいい?」
「よすぎて、頭の中が長瀬ちゃんで一杯で……うあ、ま、また……」
「僕も気持ちいいよ、瑠璃子さん……ああ、本当に、狂ってしまいそうだ――」
 瑠璃子さんの言う通り、僕は電波を使っている。
 それも、ただの使い方ではない。
 僕が瑠璃子さんから与えられる快感を、そのまま電波の波動に乗せて送り返す。
 その波動も、また、瑠璃子さんの電波に乗せられる――。
 言わば、快感と狂気の倍々ゲームだ。
「ながせちゃぁん、な、がせ、あ、あううぅぅ……」
 ヴァギナを犯す律動のスピードが速くなる。愛液がクレバスから溢れ出し、後肛だけではなく屋上のアスファルトにまで広がっている。
 ぐちゅっ、ぐちゅっと、突き入れるたびに卑猥な音が二人の結合点から漏れる。
 瑠璃子さんはまるでこの快楽から逃れるかのように目をぎゅっと閉じ、頭を左右に振っている。しかし、ボクのペニスを飲み込んだヴァギナも腰も、まるでそれとは正反対に淫乱に蠢いて、僕に快感を与える。
 このアンバランスさが、あまりに刺激的で、僕の体は急速に絶頂を迎えていく……。
188『月灯り』:01/10/28 02:08 ID:5Fkpba1t
「る、瑠璃子さん、僕、僕もう……ッ!」
「長瀬ちゃん……、中で、中で出して……」
 目は虚ろに開き、だらしなく舌を口からはみ出させたまま、涎にまみれた顔で哀願する瑠璃子さん。
 また、首の後ろに腕が回され、強く強く抱きしめられた。
「一緒に……一緒に、ね?」
 その甘い一言で、僕の脳髄は完全にショートした。
「う……あ……る、瑠璃子さんっ!」
 ドクッ!
 瑠璃子さんの膣内で、僕自身は弾けた。
 白濁液を瑠璃子さんのお腹の奥にしぶかせる。
「ふあ、あ、あああああぁぁぁぁぁぁ……」
 瑠璃子さんもまた、これまでにないほど激しい絶頂を迎えた。
 更なる精を求めるかのような蠕動に、僕はしばらく瑠璃子さんの中にいたまま、肩で息をする瑠璃子さんと抱き合っていた――。
189『月灯り』:01/10/28 02:08 ID:5Fkpba1t
「星が、綺麗だね」
 僕と背中合わせに座ったまま夜空を見上げている瑠璃子さんに、そう話し掛ける。
 月はもう地平線の彼方に沈み、星だけが空を彩る夜。
 少し視線を下げれば、暗闇の彼方に街の明かりが見える。
 それもまた、星ほど美しいとはいえないけど、それでも生命力のようなもので溢れているので、決して夜空の輝きにも劣ってはいなかった。
「そうだね、長瀬ちゃん」
 幽かな声で答える瑠璃子さん。
 その声は本当に幽かで、まるで夜空の中に消えていくように思えた。
 けど、彼女は僕の後ろにいる。声を出すときに背中が震えるのも分かる。
 だから、彼女はそこにいる。安心感のような、安らぎ。
 すっ、と、瑠璃子さんの体が傾いて、僕の肩の上に後頭部を預けてきた。
 その視線は、真上にある星を見ていた。
190『月灯り』:01/10/28 02:08 ID:5Fkpba1t
「本当に、綺麗」
「うん、本当に、綺麗だ」
 ――ああ。
 誰かと美しいものを共有することの、なんと甘美なことか。
「みんなにも、見せてあげたいね」
「……うん、そうだね」
 瑠璃子さんは、僕の気持ちをわかってくれていた。
 できることなら、みんなに、このことを教えてあげたい。
 そう、現実のいとおしさも知らずに、非現実へと去って行った、あの――。
「――瑠璃子さん?」
「……」
 瑠璃子さんは落ちるように眠りに入った。
 規則正しく、安らかな寝息を感じた。
「……寝ちゃったのか」
 僕は、瑠璃子さんの頭を膝枕して、その綺麗な髪を梳いた。
 さらさらと心地よい手触りに、僕はしばらくに間、飽きもせずに指を絡ませつづけていた。
191Alfo ◆bIGaAlfo :01/10/28 02:10 ID:5Fkpba1t
>>178-190
『月灯り』

初エロヽ(´ー`)ノ
ということで、瑠璃子さんに清き一票を。
192観月 ◆MANA.n.c :01/10/28 02:33 ID:GKD5uWum
(・∀・)イイ! 巧いしエロも(・∀・)イイ!

(´-`).。oO(エロ合戦の予感…だから投票はギリギリまで待つよw)
193甘えん坊将軍@DEATH:01/10/28 18:22 ID:s2UWywYq
 翌朝。
 私たちは三人で食卓を囲んだ。
 以前に比べてめっきり会話も減り、黙々と各々の食事をかき込むのが当たり前の光景になっている。
 いつもは話題を振ろうとする初音も、今日ばかりは押し黙ったままだ。
 昨晩の出来事が関係しているのかどうかは私に知る由もないが。
「あっ、そうだ」
 食卓の重苦しい沈黙を破ったのは梓姉さんだった。
「あたし、夕方買い物をして帰ってくるから。楓と初音は耕一を風呂に入れといて」
「うん…」
「はい…」
 さすがに炊事、洗濯、掃除といった家事に加えて、心を無くした耕一さんの身の回りのお世話をするのは大変なのだろう。
 耕一さんの着替え、トイレへの付き添い、入浴等は、いきおい私たちの役目になっていた。
 この毎日の役目は他の人から見れば大変に見えるかもしれない。
 耕一さんの身体を誰にも渡したくない私にとってはむしろ幸せだけど。
 私は、初音のほうに目をやった。
 私の顔色を窺っていたのかどうかは解らないが、初音は私から目を逸らした。
 いつも遠慮深い初音のことだ。
 私と耕一さんの間に割り込むことをためらっているのかもしれない。
『私に遠慮する事はないのよ…初音』
 そう。
 耕一さんの身体は私のものだが、耕一さんの心を千鶴姉さんから奪い返すには初音の存在が必要なのだ。
 初音は、耕一さんにとって私よりも身近な存在だったから。
 だから別に初音が耕一さんのお世話をするのは構わない。
 身体を重ねるのも構わない。
 他ならぬ私が決めたことだから。
 …尤も、耕一さんが起き上がるまでに限ってだが…。
194甘えん坊将軍@DEATH:01/10/28 18:24 ID:s2UWywYq
 わたしには、楓お姉ちゃんには無い思い出がある。
 次郎衛門と過ごしたリネットとしての思い出が。
 確かにわたしは今も耕一お兄ちゃんの事が大好きだけど、それはリネットの次郎衛門に対する『好き』という感情とは全く違う。
 遥か昔、リネットは次郎衛門がエディフェルを偲ぶ姿を見せ付けられる日々を送ってはいた。
 だが別に未練を残して死んだわけではない。
 エディフェルのように。
 だからわたしには楓お姉ちゃんの耕一お兄ちゃんに対する『好き』という感情が解らないし、楓お姉ちゃんのように耕一お兄ちゃんの身体を求める理由もない。
 多分、今の楓お姉ちゃんはエディフェルに捕り憑かれているのだろう…。
 そう思いながら、わたしは楓お姉ちゃんの方に目をやった。
 こっちを見ている。
 ひょっとしたら、楓お姉ちゃんは、リネットの記憶を持っているわたしが耕一お兄ちゃんを奪おうとしているとでも思っているのかもしれない。
『そんな事はしないよ…お姉ちゃん』
 でも、その一方で昨日の耕一お兄ちゃんとの交わりを思い出していたのも事実だった。
『最初はものすごく痛かったけど…最後の方はとっても気持ちよかったな…』
 ただ一つ解らないのは、何故昨日、楓お姉ちゃんはわたしが耕一お兄ちゃんと交わるのを許してくれたかということだ。
 そこまで考えて、わたしは自分の食事に戻った。
 そろそろ登校する時間だから。
 そして…楓お姉ちゃんは耕一お兄ちゃんを求め、わたしは快感を求めているという違いがあるとはいえ、している事は同じであることに気付いたから。
195甘えん坊将軍@DEATH:01/10/28 18:25 ID:s2UWywYq
 その夜。
 私は相も変わらず耕一さんの身体を求めていた。
 私『達』といった方が正確か。
 今までとは違って初音が傍にいるから。
 別に私たち二人は耕一さんの身体を奪い合っているわけではない。
 今は二人で耕一さんの肉棒に舌を這わせている。
「うむぅ…んっ…ちゅっ…」
「ぷはぁ…はむっ…んぐぅ…」
 私が耕一さんの先端を啄ばむと、初音はサオの部分に舌を這わせ、初音が耕一さんのくびれに舌を這わせると、私は袋の部分を咥えるといった風に。
 ひとしきり耕一さんを味わった後、初音が口を開いた。
「楓お姉ちゃん…昔から…耕一お兄ちゃんの事が好きだったんだよね…?」
 私は初音の問い掛けには答えず、耕一さんに跨る。
 今までに何度も耕一さん自身を飲み込んだ私のアソコはいとも容易く耕一さんを受け入れた。
 耕一さんの腹部に手を置き、腰を動かし始める。
 私の膣壁に余さず密着した耕一さんの肉棒は、私が腰を浮かしたり沈めたりするたびに甘美な感覚を与えてくれる。
「あっ…ああっ…ふぁっ…」
 その時。
 私の乳首が優しく摘まれた。
「あぁぁぁっ…初音ぇ…」
 後ろを振り向くと、初音の唇で私の唇が塞がれる。
「んっ…ふっ…むぅ…」
「んぱっ…ちゅぷぅ…」
 一人で耕一さんを一方的に求めていた時とは違って、胸や唇をも愛されているという感覚が私を更なる高みへと導く。
196甘えん坊将軍@DEATH:01/10/28 18:25 ID:s2UWywYq
 快感に身を任せつつも梓姉さんの事を思う。
 梓姉さんが私たちのように耕一さんを求めないのは、前世に於いて次郎衛門との思い出が無いからなのだろう。
 その梓姉さんが、耕一さんの肉棒を求めて、初音の優しい愛撫を一身に受けている私の姿を見たならばどのような言葉を私にかけるのだろうか…?
 おそらく、狂っていると吐き捨てるだろう。
 それでも別に構わない。
 前世からの絆を持たぬものの戯言でしかないから。
 私が何度も何度も耕一さんの精液を膣内に受け入れるのはエディフェルと次郎衛門との絆を後の世に残すためでもある。
 耕一さんが起き上がるのを願うが故に、初音と耕一さんの絆を利用する一方、耕一さんが起き上がらないままでいる時のことを考えて、エディフェルと次郎衛門の絆を利用する私。
『知らないでいるほうが…幸せだった…』
 私はこれ以上余計な事を考えるのをやめた。
197甘えん坊将軍@DEATH:01/10/28 18:30 ID:s2UWywYq
 タイトルに変えるの忘れてた…。
『届かない想い』
>>58-66 >>119-122 >>134-144 >>193-196
198名無しさんだよもん:01/10/30 18:02 ID:WxLzJkIX
あげ
199名無しさんだよもん:01/10/30 19:22 ID:sPZa+qJf
ttp://wing.zero.ad.jp/~zbh90888/
ほかほか兄さんのサイト引っ越したみたいね。
とりあえず告知。
200因果応報〜お嬢様はマゾ〜:01/10/31 00:26 ID:91UBW53n
 昼休み。
 俺は上機嫌で購買のパンをかじっていた。
 あたかも手ごたえを感じた試験の結果が返って来たときのような気持ちで。
 3時限目の休み時間に先輩に会って『それ』を確かめた時は全く問題が無かった。
 この分だと放課後まで頑張ってくれそうだ。
 今日は5時限目までだし、多分問題なく俺のお願いは叶うだろう。
 今朝、先輩にした俺のお願いが。
「浩之ちゃん。今日は随分ご機嫌だね」
 弁当箱と自分の椅子を手にして、あかりが俺の席にやってきた。
「おう、あかりか。俺は何時だってご機嫌だぜ」
 咀嚼して唾液とよく混ざり合ったパンをぐいと飲み込みながら俺は答える。
「そういえば、浩之ちゃん。最近来栖川先輩とよくお話してるね」
「さすが藤田浩之研究家の神岸あかりだな」
 軽口を交えつつ、俺はカフェオレにストローを挿した。
 一息に薄茶色の液体を流し込む。
 ぬるくなりかけてはいるが、ぱさぱさのパンを食べて乾いた口の中を癒すには充分だ。
 俺は席を立ってパンの袋とカフェオレの容器を教室の隅っこにあるゴミ箱に押し込んだ。
「でも…浩之ちゃん」
 席に戻った俺にあかりが訊く。
「先輩と…何してるの…?」
 俺はあかりの質問には答えず、自分の机に突っ伏した。
 初夏の太陽が俺の窓際の席に降り注ぐ。
 いくらあかりでも、俺と先輩の秘密を教えるわけにはいかない。
「ふあぁ…」
 俺は生あくびを一つし、窓の方に顔を向けて頬杖をついた。
201因果応報〜お嬢様はマゾ〜:01/10/31 00:27 ID:91UBW53n
 つい先日、俺が先輩に冗談半分に頼み込んで作ってもらった惚れ薬の効果はてきめんだった。
 惚れ薬のおかげで俺と先輩は結ばれたから。
 元々俺と先輩の心は通じ合ってはいたようだが、あの薬のおかげでお互いの身体までもが結ばれたのだ。
 あの薬の副作用はそれだけではない。
 部室での先輩とのSEXの後も、俺は四六時中先輩のことを想うようになっていた。
『四六時中』と言うのは決して大袈裟な表現ではない。
 先輩の存在が俺の頭から離れることはあの時以来、全く無くなったから。
 当然、先輩が作ってくれた薬の効果は今もなお続いている。
 分量の違いこそあれ、俺と同じ薬を飲んだ先輩も今の俺と同じくらい、俺のことを想ってくれているに違いない。
 俺と先輩が部室で結ばれて以来、放課後のSEXが日課になっているのが何よりの証拠だ。
 あかりと何気ない会話を交わしている今も俺のナニははちきれんばかりに勃起し、先輩の柔かな肉襞を求めている。
 股間の不自然な膨らみを隠すのはかなり骨が折れるが、校内で勃起したまま歩き回ると変態扱いされるのは間違いないし、第一志保にナニを言われるか解ったものじゃない。
『何気ない普通の生活』を送っている事をあかりや志保といった身近な人間に見せておかないと俺と先輩との愛の営みが勘付かれ、余計な邪魔が入る可能性もある。
 トイレで欲望の丈を思い切り吐き出し、スッキリしたいところだが、そうすると俺は先輩を裏切る事になる。
 もし、今朝俺が先輩にした『お願い』が叶えられたならば、俺と先輩の絆はさらに深まるに違いない。
 先輩だって、今、俺の期待に応えるべく頑張っているのだから俺も我慢しなければ申し訳が立たない。
 俺はあかりに顔を向けた。
 さすがに先輩特製の惚れ薬も、先輩以外の女の子には効果が現れないようだ。
 あかりの顔を見ると、俺の下半身の疼きは多少なりとも収まったのが何よりの証拠だ。
「ねえ…浩之ちゃん」
「あん?」
「ううん…なんでもない…」
202因果応報〜お嬢様はマゾ〜:01/10/31 00:28 ID:91UBW53n
 放課後。
 俺はわき目も振らずにオカルト研の部室に向かった。
 今日の結果如何で、先輩が俺をどのくらい想っていてくれるかがわかるのだから勇み足になるのは無理もない。
 先輩に貰った部室の合鍵でドアを開けて、俺以外のもう一人の部員が来るのを待つ。
 程なくして、鉄のドアが開き、俺の可愛い先輩がその姿を表す。
「いよう。先輩」
「…」
 いつもと違い、先輩の顔は上気し、頬は赤く染まっている。
 余程注意してないと解らないだろうが、息遣いも多少荒い。
 初対面は無表情で一見とっつきにくいような雰囲気を立った先輩だったが、今や俺の虜になっているのだ。
 勿論そういう俺も先輩の虜だが。
「どう? 俺のいう通りにしていてくれた?」
「ぃ…」
「へえ。さすがは俺の先輩だ。すごいな」
 さも感心したように俺が言うと、先輩はこくんと頷き、恥ずかしげに目をそらせた。
「じゃ、じゃあ先輩。早速服を脱いで」
 俺の言葉を聞いた先輩はますます顔を赤らめるが、別段嫌がる様子もなく、制服を脱ぎ始めた。
 ブラウスを脱ぐと、先輩の豊かで形のいい胸が露になる。
 ただ、いつもと違ったのは先輩のたわわな胸を搾り出すように縄がきつく縛り付けられていることだ。
 更に、胸の先端に色づく桜色の乳首は洗濯バサミに挟まれている。
 そして先輩はスカートを脱ぐ。
 上品で清楚な下着は先輩のいやらしい汁でぐしょぐしょになり、大きな染みで彩られている。
 先輩のアソコを包む下着が取り払われると、俺は改めて『お願い』が叶った事を実感した。
 今朝、俺が先輩のアソコに挿し込んだローターはそのままになっているから。
 ただ、3時限目に確認した時と違っていたのは、ローターがもはや動かなくなっていたことだ。
 さすがに朝からずっと電源を入れたままでいると電池が切れてしまうか、壊れてしまうかのどちらかなのだろう。
203因果応報〜お嬢様はマゾ〜:01/10/31 00:28 ID:91UBW53n
「先輩…ローターでアソコを苛められるのは好き?」
 俺が尋ねると、先輩は恥ずかしげに顔を背け、こくんと頷いた。
「じゃあ今度は、俺のとローターとのどっちでアソコを苛めて欲しい?」
 先輩は頬を赤らめたまま、浩之さんのでです、と答えた。
 俺はローターを先輩のアソコから抜き、先輩を絨毯の上にうつ伏せにする。
 代わりにナニを思い切り深く押し込んだ。
 絶え間なく刺激を与えられ、弄られ続けて、いやらしい汁でドロドロになった先輩のアソコはすんなり俺のナニを飲み込む。
「ぁぁぁぁぁ…」
 先輩は控えめな喘ぎ声を上げる。
「じゃあ先輩。今から俺が思い切り苛めてあげるからね」
 俺がナニを先輩の奥深くまで送り込むと、先輩は背中を折れそうなくらいに仰け反らせ、苦痛なのか快感に喘いでいるのか解らない声を上げて俺に答えてくれた。
 先輩のひくひく蠢く膣の動きからすると、ひょっとしたら入れただけでイッてしまったのかもしれないが、それに構わず俺は腰を動かして先輩の膣内を犯す。
「ふはぁぁぁぁっ…」
 先輩の腰も俺の腰の動きに合わせて蠢き始めた。
 俺は、先輩のお尻をがっちり掴んで更に先輩を突き続ける。
 俺の腰の動きに合わせて先輩の豊かな胸がたぷたぷと揺れる。
 胸が揺れて洗濯バサミが振られると、先輩の乳首に痛みが走っているかもしれない。
 俺は、縄で縛られて質感の増した先輩のたわわな胸に後ろから手を廻し、乳首を挟む洗濯バサミを外してあげた。
「あはぁ…」
 手の平で先輩のすべすべした胸を搾り出すように揉みしだき、両の人差し指と親指で思い切り乳首を摘んだ。
「ひっ…」
 小さな叫び声と同時に、先輩の柔かで温かい膣がきゅんと締まる。
 先輩は顔を絨毯につけ、腰を浮かせたようになった。
「先輩…先輩…先輩…」
 俺は憑かれたように先輩を呼び、何度も何度もナニで先輩の膣奥を犯し続ける。
204因果応報〜お嬢様はマゾ〜:01/10/31 00:29 ID:91UBW53n
「あぁ…可愛い…可愛い…俺の先輩…」
「あはぁっ…浩之さん…浩之さん…」
 ひたすら互いの名前を呼び合う。
 本能のままに。
 力一杯先輩の胸を揉みしだきつつ、ナニの先端で先輩の子宮口を何度も何度も小突くと、俺の肉棒を包み込む先輩の膣壁がひくひくと蠢き始めた。
 朝からずっと勃起したままでいたせいか、限界は近そうだ。
 射精感がこみ上げる。
 思い切り中出ししたいところだが、天下の来栖川家のお嬢様を妊娠させたのでは後々厄介な事になる。
 俺は最後に残った一欠けらの理性を総動員して先輩の膣内からナニを抜いた。
「ううっ…先輩っ!」
 ちゅるんという水音と共に、俺のナニが先輩のアソコから抜けた瞬間。
 俺の先端から精液が迸った。
 いきおいよく射出された精液が先輩の背中に降りかかる。
 先輩の薬の効果がまだ続いているせいか、俺のナニは未だに萎えずにカチカチに硬度を保ったままだ。
 先輩もイッてしまったらしく、ぴくぴくと小刻みに身体を震わせている。
「先輩…二回イッちゃったの?」
「ぃ…」
 辛うじて顔だけをこちらに向け、先輩はそう肯定した。
「ふ〜ん。じゃあ不公平だな」
「…」
 俺は無理矢理先輩を仰向けにした。
 先輩の両足を左右に思い切り開くと、半透明の粘液でとろとろになった桜色の肉襞がひくひく蠢いているのがよく見える。
205甘えん坊将軍@DEATH:01/10/31 00:32 ID:91UBW53n
>>200-204
『因果応報〜お嬢様はマゾ〜』(前編)
 後半は今週中に。
206新着情報:01/10/31 02:40 ID:HYYERNpZ
SS Training Room 現役職人用

「真夜中の国」 (倉科さん)

 ttp://hakagi.net/ss/active/index.cgi?action=html2&key=20011101033018
207名無しさんだよもん:01/10/31 23:11 ID:5vNlRbcw
208長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:25 ID:1ufoG7IF
七瀬SS投下します.
暫し書き込みを控えていただけると幸いです.
209長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:26 ID:1ufoG7IF
 「最っ悪」
 漸く辿り着いた我が家の玄関で、七瀬は辟易した顔で呟く。
 俺も無言で同意した。

  話は十分ほど前に遡る。
 俺と七瀬はいつもの如く例の十字路までは一緒に帰っていた。
 日によってはお互いの家に寄る事も有るのだが、今日はどちらとも行くとも来いとも言わないのでそのまま帰宅の運びの筈だった。
 が、十字路の一個手前の丁字路に差し掛かった頃、正に桶をひっくり返した様な大雨。
 たちまちのうちに二人は濡鼠と化し、溜まらず走って俺の家まで逃げて来た訳だ。
「風呂使っていいぞ、そのままだと風邪ひくだろ」
 大き目のタオルを調達してガシガシと頭を拭きながら七瀬に言った。
 未だ十一月頭とは言え、雨に濡れて大丈夫な季節ではない。
「うん、そうさせてもらう」
 同じくタオルで解いた髪を拭いてた七瀬は頷いた。
210長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:27 ID:1ufoG7IF
 「ねぇ〜何か着る物貸してくれない〜?」
 少し経った頃、浴室の方から七瀬の声が聞こえた。
「なんだ〜?」
 浴室のドアの前まで歩いて応える。
 流石の俺もここでドアをあけて踏み込みはしない。
「制服が全部濡れちゃってて着れないのよ」
「残念だったな七瀬。生憎俺の服は全部洗濯中だ」
「えぇ〜」
 えぇ〜と言われてもなぁ。
「ここの所由紀子さんは出張ってたし、丁度今日の朝一念発起して溜まってた洗濯物を全部洗ったんだよ」
「へぇ、それで今日は珍しく起きてたのか。でも洗濯しても未だストックがあるんじゃないの?」
「ふっ、甘いな、俺は使える服が全部洗濯籠に溜まってから洗濯する主義でな。お陰で俺も学校の夏服だ」
「威張るな、ど阿呆」
 がしん、とドアに何かが当った。
 多分洗面器か何かだろう。
「うぅ、こまったなぁ」
「そうだ、今日体育があったから体操着持ってるんじゃないのか?」
「あ、そっか」
「鞄と体操着袋の二重コーティングだ。多少は濡れてるかもしれんが着れる事は着れるだろ」
「そうね。鞄取ってきてくれないかな」
「あぁ、待ってろ」
211長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:28 ID:1ufoG7IF
  そうして七瀬に鞄ごと体操服を渡した。
 渡す時少し七瀬の裸体が見えたが、既に関係を持っているのだからそれくらいでは向こうも怒りはしない。
 いや、怒ったり恥ずかしがったりしてくれてもそれはそれで可愛いのだが………
「ん〜お待たせ。折原もお風呂入りなさいよ」
 髪を結わきながら、体操服姿の七瀬が出てきた。
「ううむ、やっぱり体操服はえぇのう」
 風呂を勧める台詞を無視しして『ブルマ万歳〜』と内心喝采。
「変態………」
 そう冷ややかな目で見るなって。
「ぬ?」
 体操服をまじまじと見詰めていた俺の瞳にある物陰が映る。
「どうしたの?」
「乳首がうっすらと………」
 ニヤリ、としながら言ってやる。
「きゃぁっ。見ないでよ。ノーブラなんだから仕方ないでしょ」
 胸元をとっさに腕で隠すとは何たる横暴。
 この抵抗勢力め!
 さては胸だけにムネオちゃんの手先だな。
「隠すなって、減るもんじゃないし」
「そういう問題じゃないでしょうが」
 ううむ、こういう恥らってる七瀬もかなり可愛いのだが………惚れた弱みか?
「時に七瀬」
「何よ?」
「上も下着を着けてないと言う事は、下も着けてないのか?」
「!!」
 返事も無く顔を赤らめる。
 ま、それが何よりの返事だな。
212長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:28 ID:1ufoG7IF
「いやぁ、素晴らしい。ノーパンブルマは人間の作り出した服装の極みだね」
「素晴らしくないっ!」
「男としては憧れの格好だぞ。いやぁ、協力的になったな、七瀬」
 正面からぎゅっと抱く。
「あ、あんたっ…んぐ」
 怒鳴る七瀬の唇を自分の唇で無理やり塞いだ。
 数秒たって七瀬が腕の中でもがかなくなってから舌を入れる。
 最初は前歯をなぞるように、段々七瀬もとろんとしてきた所で、あいつの舌に絡める。
「ん………」
 鼻で息継ぎをする七瀬の声が妙に色っぽい。
 既にあいつの体が俺に預けられているのを確認して、OKの意思表示と受け取る。
 あいつを抱いてた片方の手を下に回し、ブルマの上からあそこをなぞった。
 ビクン、と素直に反応する辺りが可愛らしい。
「可愛いぞ、七瀬」
 唇を離して近くのソファーに横にさせる。
「卑怯者っ」
 聞こえない聞こえない。
 あいつの股間に顔を埋めて、ブルマをついばむ様に布の向こうに刺激を与える。
「ひゃん」
 しつこく責めていると、俺の唾液と『そうでないもの』でかなり濡れてきた。
 ブルマに覆われて匂いがこもっているのか、汗と女性の匂いが俺を襲い理性を奪おうとする。
 どうしょうも無く襲う挿入欲を何とか抑えて顔を擡げた。
 ならぬ、折角のノーパンブルマだ、しっかり堪能せねばならんのだ。
 何とか理性を取り戻しつつ、今度はブルマを少し掴んで七瀬の恥部にこすり付けた。
213長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:29 ID:1ufoG7IF
「どうだ、気持ち良いだろ〜〜」
 言葉に返事もせず、七瀬は力なく顔を振ってヤダヤダしている。
 七瀬よ、そのリアクションは余計に苛めたくなるぞ………
 と、言うわけで俺は次の行動に入る。
 ブルマでごしごし作戦は右手に任せ、我が左手君の任務は右手の担当地域よりも数センチ奥、あいつの菊穴だ。
 指でその辺りを軽く撫でた後、人差し指をブルマ毎菊穴の中に侵入させる。
「いやぁ、そこは違っ」
「ほうら、どうだ。ブルマが中に入っていく感触は?」
「そんなの聞かないでよ」
 上ずって叫ぶ。
 流石に深く入れるのは可哀想なので、人差し指関節一つ分だけ入れて後は中でぐりぐりする。
 勿論、右手君も休まず作戦に従事している。
 既に七瀬の息遣いも荒く、恍惚とした表情だ。
 そろそろかな、と思い七瀬の耳を口で軽く愛撫してから聞く。
「そろそろ入れてもいいか?」
「うん」
 意識が定かだか怪しい顔で必死に返事かえす。
 ううむ、こいつのこういう顔の方が卑怯だと思うのだが………
「ふぁ、そうだ。今日危ない日だった」
「なぬ!ここまで来てそれかよ。ゴムの買い置き無いぞ」
 このままでは生殺しもいいところだ。
「ご、ご免」
「参ったなぁ」
 自分の股間を見詰める。
 おぉ息子よ、こんなに立派に育ってくれてお父さんは嬉しいぞ。
214長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:29 ID:1ufoG7IF
「お、折原がしたいならこのままでも私は………いいよ?」
 ぐ、やめろ七瀬。
 その表情と台詞はまずい。
 幾ら俺でも……いや、しかし………
「そ、その………口でするとかでもいいし」
 ううむ、申し出はこの上なく嬉しい。
 若し俺が昨日抜いておかなかったら間違えなくノックダウンだったろう。
 それくらいに今日の七瀬は積極的な上に言動が可愛い。
 然しそれにしても、どうしたもんか。
 このまま放置じゃ息子が余りに不憫だ。
 いや、待てよ。
 折角ブルマなんだから―――
「こうしよう、七瀬」
「へ?」
 俺は突然七瀬を抱えて床にうつ伏せにさせた。
「ちょっと腰上げてくれ」
「う、うん」
 腰を上げさせると、下半身と床に幾分かスペースが出来る。
 俺はそのまま七瀬に後ろから密着し、息子を七瀬の又にはさんだ。
 柔らかい恥丘と太ももに挟まれてなんともいえない感触だ。
「動くぞ」
 一応断ってから腰を前後に振る。
 既に色々な体液でぬめっている七瀬の秘部一帯は滑りよい。
 更にブルマのザラザラ感と今までに無い触り心地が俺を責める。
 上向いた亀頭がブルマにめり込んで前後する度に先端に七瀬の淫部を感じた。
 先走汁をブルマに擦り付けつつ、前屈んで胸を揉みしだく。
215長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:30 ID:1ufoG7IF
「七瀬って……結構……くっ……胸大きいよな」
「ふうぅんっ………」
 俺もしっかり喋れてないが、七瀬のは既に言葉になってない。
 前屈みになると、今まで股間に埋まる形だった息子が太ももの方に少し移動した。
 七瀬の太ももは元々運動をしてせいか肉付きがよく、俺の息子をキュンと締め付ける。
 ブルマと違いスベスベの肌の上にヌルヌルした液体があるそこは、先ほどとは違った快感を与えてきた。
 耐え切れずに、段々と腰の後ろの方から射精欲が俺を襲いだす。
 そろそろかな、と自覚しつつ体勢を元に戻す。
 矢張りブルマ様がおわします以上、果てる時はその御身の上に果てたい。
 上体を起こすと、再び亀頭がブルマをなぞる。
 さっきよりもその部分のがシットリ――――いやグッチョリと濡れていたので、感触としては既に布ではなかった。
 生暖かくヌメリ気の多い又別な何か、それが俺を包み込む。
「七瀬っ」
 名前を叫んで亀頭をブルマに押し付けたまま果てた。
 ブルマの布地の中に俺の精液を流し込み、昼下がりの常時は終わりを告げたのだった。
216長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:30 ID:1ufoG7IF
 「で、私は何を着て帰れば良いのかしら?」
 事が終わり後に残ったのは相変わらず乾かない二人の制服と、体液に塗れた七瀬の体操服。
「仕方ない、責任を取ろう。七瀬、この服を着てゆけ」
 俺は潔く自分の制服を脱ぎにかかった。
「あほかっ!」
 ゴス、と快音を響かせ七瀬のこぶしが俺を打つ。
「どこの乙女が男の制服を着て往来を闊歩するのよ。しかも夏服を十一月に!」
「大丈夫だ、別の策は考えてある」
「何よ?又変なのだったらもう二発殴るわよ」
 目が本気だ。
 握ったこぶしも震えている。
 さっきの可愛らしい七瀬はどこに……
「詐欺だ」
「へ?」
「いや、なんでもない。気にするな」
「今更折原の変な言動に驚きもしないわ。で、その別の策ってのは?」
「由紀子さんの服を借りる。下着も探せば新品のがあるだろし」
 何せ出張が多い由紀子さんは買いだめする性質だからな。
 多分たんす探せば買い溜めした下着もあるだろう。
「あのさ………」
「どうした?不満があるか」
「不満は無いけど………体操服なんて着ないでその方法を最初から使えばよかったんじゃないの?」
「………気にするな」
「するわっ。綺麗に洗わないと使えないじゃない!」
「まぁ、そういうことも有るさ。と俺は自分の迂闊さを鼻で笑いながら、今日もウィスキーのグラスを傾けるのだった。FIN」
「勝手に終わらすな!!!…………はぁ、何でこんな男に惚れちゃったんだろう」
217長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/01 16:32 ID:1ufoG7IF
>>209-216
七瀬留美エチィSS@援護射撃用

駄作でスレ、誤字多数でスレ汚しとは思いますが読んでいただければ嬉しいです.
218七瀬留美羞恥SS――前編――:01/11/01 16:59 ID:IcSGkF9Q

「え?」
七瀬は、信じられなかった。
目の前の、氷上シュンと名乗る男子生徒の、その言葉が。
「おりはらに、あえる、の………?」

「そうだよ。彼の居所は僕が知ってる」
涼しい顔で言ってのける氷上。
七瀬は、未だにその言葉を信じられなかった。
しかし同時に、彼の言葉に嘘はない。そう確信していた。
細かな根拠や理由など、そんなものはどうでもいい。
“彼が折原浩平を知っている”。それだけで、十分すぎた。

「おりはらは……?」
呆然とした、その形容通りの表情を浮かべる七瀬。
彼女の気丈さと、想いの強さを表す瞳には、みるみるうちに、大粒の涙が溢れてくる。
「折原は、折原はどこにいるの!? どうしたら逢えるの!? ねえっ!!」
氷上の肩を揺すりながら、約1年、溜まり溜まった想いを爆発させる。
そんな七瀬に肩を揺すられながら、こんな状況にもかかわらず、氷上の顔は醒めている。
「まあ、落ち着きなよ」
「――ぅ!」
がっ。
華奢な外見に似つかぬ腕力で、七瀬の手首を掴み押さえる。
「彼に逢わせてやってもいいけど、その前に、君の覚悟を試させてもらう」
「え……?」
醒めた表情から言い放たれる彼の言葉に、一瞬七瀬は戸惑うも、
「どんなことをしたっていい! あいつに逢うためなら、どんなことでもやってやる!」
「そう」
七瀬の決意をしかしながら彼は軽く流し、そしてさらりと口にした。
「それじゃとりあえず、脱いでもらおうかな」
219七瀬留美羞恥SS――前編――:01/11/01 17:01 ID:IcSGkF9Q

「え?」
一瞬何を言われたのかわからず、ぽかんとした表情に。
しかし何を言われたのか、その言葉が染み透った途端、みるみるそれが真っ赤に染まる。
「え、あの……脱ぐ、って……?」
「そのままの意味さ。まずはキミの裸が見たいな」
「はだ……」
そのストレートな物言いに、戸惑い混じりの朱顔が、怒りを混じりしそれに変わる。
「ふっ……ふざけないでよ!」
氷上に向かい、七瀬は怒りをぶちまける。
「人が本気で話してるのに! 冗談もほどほどにしてくれる!?」
「キミのほうこそ、冗談はほどほどにしてほしいね」
「なっ……!」
醒めていた、氷上の顔が更に一層表情を無くす。
その無表情さに、その得体の知れなさに、七瀬の舌鋒も勢いを無くす。
「僕はキミの覚悟が見たいって言ったんだ。それが出来ないって言うんなら」
睨むでもない。淡々と氷上はそう告げる。
「もう話はここまでだ」
「く……」
唇を噛み締める七瀬。
折原浩平への心当たりは、もう、この少年以外にはない。
「……わかったわよ」
七瀬に選択肢など、そして。
「脱ぐわよ。――脱げばいいんでしょ!」
逡巡など最初から、あるはずもなかった。
220七瀬留美羞恥SS――前編――:01/11/01 17:02 ID:IcSGkF9Q

バサッ!
浩平がいなくなって後、この学校のものと合わせた制服が、乱暴に床に投げ捨てられる。
「くっ……」
唇を噛み締めながら、スカートのホックを外し、チャックを下ろし、
パサッ。
持ち主の身体から離れたスカートが、無造作に床に落とされる。
「……どう?」
シンプルで清楚。
飾らない、本来の彼女を表しているような、純白の下着。
僅かに脚を震わせるも、気丈に七瀬は言い放つ。が。
「ダメだね。裸が見たいって言ったろ? その邪魔っ気な布も取ってよ」
「言うと思ったわ……」
そういうと同時に躊躇なく、七瀬は腕を後ろに回す。
唇を噛む力がより強くなる。
音もなく、ブラジャーが緩んでいく。
片方の腕で胸を庇いながら、七瀬はそれを外していく。
「へぇ、やっぱり恥ずかしいんだ」
バサッ!
氷上の言葉に、胸の下着を思いきり地面に叩き付けたことで答えたのだろうか。
「ふーん、パンツ一枚のキミも、なかなか可愛いね」
両手で両胸を庇いながら立っている七瀬に、氷上が揶揄の言葉を投げる。
シンプルな白パンツと、恥じらいに染まった肌とのコントラストが、なんともいえず
興奮を誘われる。
221七瀬留美羞恥SS――前編――:01/11/01 17:05 ID:IcSGkF9Q

「これで許してくれるわけ、ないわよね」
皮肉混じりの七瀬の言葉に、氷上は何も返さなかった。
あえて、何も返さなかった。
七瀬の動きが、ここに来て止まる。
もし氷上が何か――その言葉はなんでもいい――とにかく何かを言ってきたならば、そ
の言葉をバネにして、七瀬は最後の一枚を、一気に脱ぎきっていただろう。
しかし、何も返ってこない。
バネにすべき言葉は何もない。無論許してもらえるわけもない。
いや、許してもらえはするだろう、それもいとも簡単に。
だが、彼女の最後の希望は、そこで潰えることになる。
胸を庇いし両腕が震える。
身体を支えし両脚が震える。
悔しい。何より恥ずかしい。
でも。
でも。やっと見つけた、やっと出会えた一縷の望み。
震える歯を食いしばり、頬を真っ赤に染めて、固く閉じた瞼を、震わせて。
(おりはらぁ……っ!)

「――――あああああああああああぁぁぁぁぁああああああああああぁぁああっ!!!」
まるで喧嘩のように腕を胸から引き剥がし、最後の砦を自ら捨てる。
その喉から、想いを込めた絶叫を吐き出しながら。
パサッッッ!
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………っ!」
激情を、床に叩きつけ。
羞恥に白き肌を朱に染め、鍛えられししなやかな肢体を恥辱に震わせて。
氷上を睨み付けるその気丈で、意志の強きその瞳は。
今にも零れ落ちんとする涙に溢れ、それでも、落とさず堪えていた。
222七瀬留美羞恥SS――前編――:01/11/01 17:09 ID:IcSGkF9Q
>>218-221
とりあえず前編分、書かせていただきました。
恥じらいの中でも、七瀬らしさが出ていたなら、幸いに思います。

後編、あと何時間後には出させていただきます。
223七瀬留美羞恥SS――中編――:01/11/01 19:14 ID:IcSGkF9Q
「これで………これでいいんでしょ」
文字通り、一糸まとわぬ素っ裸となった七瀬留美。
左腕で健康的に膨らんでいる乳房を、右腕で自身の女の源泉を庇いながら、目指すもの
をハッキリと見据えた、雫で膜が出来つつも光溢れる瞳で、氷上を見据えて言い放つ。
つとめて声を抑え。内に激情を潜ませた声音で。
「ふーん……」
そんな七瀬を目の前に、氷上の口元が薄く笑みを形どる。
その彼に、視線をそらさず見据えていた七瀬であったが、途端にその面差しを、沸騰し
たかのように上気立たせ。
視線だけはそらすまいと必死に睨み付けるが、あまりの辱めに視線を逸らしかける。
氷上の視線は先程とは異なり、まるで爬虫類の舌がそうするかのように、一糸まとわぬ
七瀬の裸身を、その肌を、ジワリジワリと這い回っている。
かつて剣道で鍛えられしも、女の丸みはいささかも失っていないその肢体。
思ったより小さく、か細い肩にも。
彼女の最大の泣き所でありながら、それをおくびにも見せずくびれる腰にも。
そのやや上部に、ひっそりと潜んでいる臍にも。
鍛え上げられしカモシカのような、しなやかに伸びる双の脚にも。
そして、両の腕で懸命に護りし乳房と股間にさえ、潜り込むように、視線と言う名の
見えざる蛇舌は、七瀬の桃に染まりし肌を蹂躪してゆく。
224七瀬留美羞恥SS――中編――:01/11/01 19:17 ID:IcSGkF9Q
「そうだね……」
視姦と言う名の鑑賞をひとまず中断し、氷上が七瀬に向き合い言う。
「な……」
そして、無造作に一歩一歩、無防備そのものの七瀬に近づいていく。
一歩一歩、裸の自分に男が近づいてくる。
そんな状況に知らず知らず膝が震える七瀬。
それでも。それでも一歩も引かず、男を気丈に睨み付ける。
そんな七瀬に触れるところまで氷上はついに近づいて。
無造作に伸ばされた男の腕に、庇いし両腕に力を込めて七瀬は縮こまる。
「え? や、やだ…っ?」
伸びた氷上の指は、何故か七瀬の髪にかかり。
浩平がいなくなってから後の髪型、ポニーテールを解いてしまう。
「……どういうつもりよ?」
訝しげに七瀬が問う。
解かれし七瀬の髪が裸の肌に優しくかかり、なんともいえぬ眺めとなる。
好き勝手に髪をいじられるも、両腕は乳房と股間を庇っている為に、彼女にはどうする
こともできない。
そういう無防備な七瀬に、氷上はさらりと言い放ち。
その言葉を聞いた瞬間、その指が動いた瞬間。
気丈な七瀬が真っ青に、その表情を凍りつかせた。
「やっぱり君は、ツインテールが一番だね♪」
225七瀬留美羞恥SS――中編――:01/11/01 19:19 ID:IcSGkF9Q
「――やめてええぇっ!!」

ガシッ!
彼女の女を主張し乳房を庇う左手を、引き剥がしてまでも七瀬は氷上の腕をつかみ、彼
の行為を阻止しようと、必死の形相で押さえつけようとする。
「おや、どうしたの? 胸を丸出しにしてまで」
「うるさいっ!やめて!やめなさいよ!!」
あらん限りの声を振り絞り、氷上の行為を止めんとする。
股間を庇いし右腕さえも使い、氷上の腕にぶら下がるかのように、必死に食い止めんと
七瀬は力を両腕にこめる。

(嫌だ! 嫌だっ! “あたしの裸”を見ていいのは、アイツだけなんだから!!)
打ち込んでいたものを、断念せざるを得なくなった時。
そんな時、尊敬する先輩が教えてくれた、自分のもう一つの道。
そして、その道を。いや、その自分自身を、受け止めてくれた男。
その男にだけは見せられた。一番自分らしい自分。
だから、耐えられた。
裸になれと言われても、裸を他の男に見られても。
今の自分は、かつて彼に見せた、唯一の自分ではないのだから。
でも。
でも、例え形だけといえども、あの時の自分を。
一番好きな、一番の自分の裸を、アイツ以外に見られるなんて。
――――耐えられない!
226七瀬留美羞恥SS――中編――:01/11/01 19:21 ID:IcSGkF9Q
「嫌あっ!やめてっ!やめてよバカ!!」
自分の裸身を晒してまで、そこまでしても、髪をいじる手を止めんと七瀬は叫ぶ。
嫌だ。
絶対嫌だ。
あの髪型での自分の裸を、アイツ以外に見られるなんて。
それだけを、ただそれだけを思いながら、必死に七瀬は抵抗する。
そんな努力も、何故ここまでの力を出せるかという氷上の腕力に、全然効を奏せず。
ガチャ!
「あぁっ!」
絶望的な状況に七瀬が喉震わせる。
暴れる七瀬の両腕が、後ろに回され、冷たい手錠をかけられる。
これで七瀬は身体を隠すことも、反撃することも、抵抗することすらできなくなった。
両腕を後ろ手に拘束されながら、それでもなお身を捩り抗う全裸の七瀬。
しかしそんな彼女の努力は、男の一言で撃ち砕かれた。
「ほぉら、キミの大好きな髪型だ!」

美術室にか細い鳴咽が響く。
ここまで堪えに堪えていた涙が、次から次へと溢れ落ちる。
後ろ手に縛られた両の手は、泣き顔を隠すことすら叶わない。
絶対に、アイツ以外に見られたくなかった、ツインテールの自分の裸。
乱れた髪を垂れさせて、七瀬はただ、一糸まとわぬ身体を震わせて。
ただ、泣きじゃくっていた。
227七瀬留美羞恥SS――中編――:01/11/01 19:23 ID:IcSGkF9Q
>>223-226
七瀬えちぃSS中編です。
こんなSS書いていても、やっぱり七瀬は可愛いと思ったりもいたします。
228七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:21 ID:IcSGkF9Q
「く、ぅく、んん、は、ぁ……!」
氷上の舌が、七瀬の秘唇を蛇のように這いまわる。
その異様で生暖かい、鳥肌が立ちそうな感触に、七瀬は歯を食いしばり必死に耐える。
「ひっ!?」
ぬめる舌の先が、七瀬の花芯を軽くつつき刺激を加える。
その度に、ビクリビクリと七瀬の腰が、跳ね上がる。
手首を後ろ手に拘束された七瀬の抵抗は、しなやかな両脚をばたつかせることのみ。
それにしても、仰向けに寝かされた状態では、虚しく空を切るばかり。
「くうッ!!」
ビクリ。宙を舞っていた裸の左脚がピンと張る。
指で花芯をつままれ、舌で攻撃を加えられ。
その度に、首が仰け反り、身体を震わせ、脚を舞わせ悶え苦しむ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」
「すごいねキミ。どこを触っても弱点だらけ」
「う、うるさ………っっはぁ!」
揶揄を返そうとする七瀬の唇を、秘唇を責めて、黙らせる。
「こうやって、彼にも可愛がってもらったのかな?」
「!!」
かああっ!
ツインテールを振り乱し、悶えていた七瀬の面差しが、さらに真っ赤に染まりゆく。
229七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:22 ID:IcSGkF9Q
「へえ、図星みたいだね。なら」
「っくぅぅっ!」
「こんなことも……れろっ……されたのかな?」
「ぅぅくぅ………ぅ、ぅ、は、っぅく……!」
七瀬の弱点、鍛えられし太股の盲点・内股をくすぐりながら、七瀬のもう一つの弱点・
乳首を優しく甘噛みする。
上半身、下半身のウイークポイントを同時に責められては、性的経験の極めて薄い七瀬
が、到底耐えられるはずもなく。
「く、ぅっく、ん、は……!」
歯が鳴るほどにキツクキツク噛み締めて堪えようとするが、背中から伝播される桃色の
電流が、七瀬の呻きを喘ぎに変えて。
「っは!、あ、あ、ああ……!」
そして七瀬留美最大のウィークポイント、秘唇にそっと指が入る。
既に経験済みの七瀬の唇は、さほど抵抗もなく受け入れて。
さらにもう一方の指が、七瀬の花芯に添えられる。
「それじゃ、行くよ」
氷上の言葉が伝わる刹那、七瀬の肢体が跳ね上がり。
「は、あ、あ、あ……!」
瘧にかかったような、喉から漏れる七瀬の喘ぎ。
「ぅあ、あぅあ、ぁぁぁあ!」
ツインテールを振り乱し、虚空に脚を苦しげに舞わせ。
瞼を固く閉じて、懸命に耐えようもするも。
「あ、は、あ、く、あ、ああぁぁ……っ!」
喉を引き攣らせ、背を逸らせ、脚を張り、絶頂に、絶頂に――
230七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:23 ID:IcSGkF9Q
「……、ぇ?」
汗に濡れし面差しを、七瀬は疑問符を顔に浮かべる。
砕かれかけていた。絶頂に昇りかけていた七瀬。
その寸前に。指が、舌が、止められる。
「な、なに……、っはぁ、ぁ!」
やや間を置いて繰り出される攻撃。
再び襲い来る快感の津波が、華奢な七瀬の身体を打ちつけ飲み込む。
が、またしても絶頂寸前で、その身体が覚まされる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」
3度目。
4度目。
何度も何度も。
絶頂に昇り駆ける度に氷上は、その責めを止め裸身を冷ます。
そしてある程度冷めたと見るや、再び七瀬の弱点をついた酷な愛撫で、絶頂寸前まで追
い上げる。
「ぁ……ぁ……ぅ……、……ぁ……」
もはや息も絶え絶えの七瀬。
全身は快感という名の苦痛によって、脂汗が止まらずに。
肌は既に、無限の性感責めで桃の色に染まりきり。
「…っぁ!」
ほんの少し触られただけで、苦痛の喘ぎを止められず。
ビクリビクリ。
快感という名の電流に打たれ焦がされた七瀬の肢体が、ビクリビクリと痙攣す。
そんな中。
氷上シュンの、今までと同一人物とはとても思えぬ優しい声音で、囁いた。
「降参すれば助けてあげるよ? どう?」
231 ◆RieszyxY :01/11/01 21:23 ID:gdpcP7aY
ここって転載OK?
漏れが昔(2年ほど前)に書いたやつなんだけど、Web上からあぼーん
したんで、もしOKならここで公開しますが。

えちなしシリアスなんで、つまらないかも。
読んでみたいって人がいたら、今夜のテレホタイム中にでもうpします。
232七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:25 ID:IcSGkF9Q
>>231
すみません。ちょっと待っていただけますか?
申し訳ありません。
233七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:26 ID:IcSGkF9Q
「く、ぅく、んん、は、ぁ……!」
氷上の舌が、七瀬の秘唇を蛇のように這いまわる。
その異様で生暖かい、鳥肌が立ちそうな感触に、七瀬は歯を食いしばり必死に耐える。
「ひっ!?」
ぬめる舌の先が、七瀬の花芯を軽くつつき刺激を加える。
その度に、ビクリビクリと七瀬の腰が、跳ね上がる。
手首を後ろ手に拘束された七瀬の抵抗は、しなやかな両脚をばたつかせることのみ。
それにしても、仰向けに寝かされた状態では、虚しく空を切るばかり。
「くうッ!!」
ビクリ。宙を舞っていた裸の左脚がピンと張る。
指で花芯をつままれ、舌で攻撃を加えられ。
その度に、首が仰け反り、身体を震わせ、脚を舞わせ悶え苦しむ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」
「すごいねキミ。どこを触っても弱点だらけ」
「う、うるさ………っっはぁ!」
揶揄を返そうとする七瀬の唇を、秘唇を責めて、黙らせる。
「こうやって、彼にも可愛がってもらったのかな?」
「!!」
かああっ!
ツインテールを振り乱し、悶えていた七瀬の面差しが、さらに真っ赤に染まりゆく。
234七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:27 ID:IcSGkF9Q
「へえ、図星みたいだね。なら」
「っくぅぅっ!」
「こんなことも……れろっ……されたのかな?」
「ぅぅくぅ………ぅ、ぅ、は、っぅく……!」
七瀬の弱点、鍛えられし太股の盲点・内股をくすぐりながら、七瀬のもう一つの弱点・
乳首を優しく甘噛みする。
上半身、下半身のウイークポイントを同時に責められては、性的経験の極めて薄い七瀬
が、到底耐えられるはずもなく。
「く、ぅっく、ん、は……!」
歯が鳴るほどにキツクキツク噛み締めて堪えようとするが、背中から伝播される桃色の
電流が、七瀬の呻きを喘ぎに変えて。
「っは!、あ、あ、ああ……!」
そして七瀬留美最大のウィークポイント、秘唇にそっと指が入る。
既に経験済みの七瀬の唇は、さほど抵抗もなく受け入れて。
さらにもう一方の指が、七瀬の花芯に添えられる。
「それじゃ、行くよ」
氷上の言葉が伝わる刹那、七瀬の肢体が跳ね上がり。
「は、あ、あ、あ……!」
瘧にかかったような、喉から漏れる七瀬の喘ぎ。
「ぅあ、あぅあ、ぁぁぁあ!」
ツインテールを振り乱し、虚空に脚を苦しげに舞わせ。
瞼を固く閉じて、懸命に耐えようもするも。
「あ、は、あ、く、あ、ああぁぁ……っ!」
喉を引き攣らせ、背を逸らせ、脚を張り、絶頂に、絶頂に――
235七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:28 ID:IcSGkF9Q
「……、ぇ?」
汗に濡れし面差しを、七瀬は疑問符を顔に浮かべる。
砕かれかけていた。絶頂に昇りかけていた七瀬。
その寸前に。指が、舌が、止められる。
「な、なに……、っはぁ、ぁ!」
やや間を置いて繰り出される攻撃。
再び襲い来る快感の津波が、華奢な七瀬の身体を打ちつけ飲み込む。
が、またしても絶頂寸前で、その身体が覚まされる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」
3度目。
4度目。
何度も何度も。
絶頂に昇り駆ける度に氷上は、その責めを止め裸身を冷ます。
そしてある程度冷めたと見るや、再び七瀬の弱点をついた酷な愛撫で、絶頂寸前まで追
い上げる。
「ぁ……ぁ……ぅ……、……ぁ……」
もはや息も絶え絶えの七瀬。
全身は快感という名の苦痛によって、脂汗が止まらずに。
肌は既に、無限の性感責めで桃の色に染まりきり。
「…っぁ!」
ほんの少し触られただけで、苦痛の喘ぎを止められず。
ビクリビクリ。
快感という名の電流に打たれ焦がされた七瀬の肢体が、ビクリビクリと痙攣す。
そんな中。
氷上シュンの、今までと同一人物とはとても思えぬ優しい声音で、囁いた。
「降参すれば助けてあげるよ? どう?」
236七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:29 ID:IcSGkF9Q
この場合。
降参とは、七瀬唯一絶対の目的を、断念することを刺す。
心から好きな、アイツと再び出会うという目的を。
「キミは本当に頑張ったよ。もう彼も許してくれるさ」
「……ぅ……ぁ……、……っぁはぁぁ!」
降伏勧告をしながらも、七瀬の喘ぎを絞り出す。
「まあ、降参しなかったら………わかってるよね?」
ビクリ。
身体が痙攣する。無限の電撃という耐え難い地獄を前に。
「さ。どうする? 留美ちゃん?」
「ぅ………」
ことさら名前で、そう呼びかける。
ビクリ、ビクリ。
もう十数度にもわたるお預けにより、七瀬の身体は悲鳴すら枯れ。
お願い、もう耐えられない!
そんな悲鳴すら出せないほどに。
「さ、どうする?」
氷上の最後通告に。
七瀬は。七瀬留美は、最後の力を振り絞り。

「な………ナメないでよ…ね……、
……アタシ、ナナセ……、……ナナセ、ルミ……、なん、だ、から……、……っ」



「――――――っっっっぁぁぁぁぁ…………っ!」

七瀬の最後の意地とともに。
氷上の最後の一撃が、七瀬の快感の堤防を、いともあっさり打ち崩した。
237七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:30 ID:IcSGkF9Q
「参った。……僕の負けだよ」
身体を拭いて、服を着せ。
最後の一撃で失神した七瀬を、すっかり元の状態にもどし。
彼の特徴、淡い笑みをそっと浮かべ、美術室を音もなく去る氷上シュン。
――彼は戻ってくるよ。
深き眠りについている七瀬に、彼は優しく囁いて。

こっちの世界に来た奴らも、ここの世界に戻れるんだ。
ここの世界の誰か一人でも、本当に、本当に帰って来て欲しいと、そう願えば。
だから大丈夫。きっと彼は戻ってこれる。



「ね? ――ナナセ・ルミさん?」
238七瀬留美羞恥SS――後編――:01/11/01 21:33 ID:IcSGkF9Q
>>233-237
やっと完結しました。
七瀬羞恥えちぃSS。
七瀬留美の魅力、どこまで書けたでしょうか?

>>231
申し訳ありません。
お邪魔いたしました。
239 ◆RieszyxY :01/11/01 21:35 ID:gdpcP7aY
>>238
こちらこそ割り込み大変失礼致しました。
わざとじゃないんで、お許し下さい。<ALL
240読専な住人:01/11/01 21:48 ID:0M47wLGu
>◆RieszyxY 氏
自作なら転載しても構わないと思いますよ。
前スレで訓練所に投稿した方が、こっちに転載されてましたから。
個人的意見ですけど、是非投稿してください。

ただ、今は最萌トーナメント用の長文SSがここに投下されてますけど(w
それじゃ、お言葉に甘えて投稿します。
主人公が誰なのか、想像しながら読んで下さい。
いないとは思いますが、もし「どこかで読んだことがあるな」って思った方が
いらっしゃったら、パクリではなく本人の手による転載なのでお気になさらないよう。



始業20分前。
それが私の登校時間の定刻です。
いつからそうなのかは覚えてません。
でも体が勝手に行動してしまいます。

――そう。
最近ずっと感じている、違和感のままに……。
私はぼーっとしていました。
学年末試験が近いのでこのままじゃいけないのは分かっているけど、それでも身が入りません。
春の到来を感じさせる、気持ちいい風がそうさせるのでしょうか?
それとも、なにか他の要因が私を無気力にしているのでしょうか……?

あいかわらず、先生がしゃべっています。
先生の学生時代のお話――いわゆる与太話をしているので、今はノートをとる必要性はありません。
もてあましている右手で、自分の三つ編をいじってみたりします。
小さい頃からこの髪型だったけど、変える機会を失ったままそのままになってしまいました。
自分では、これはこれでいいと思っています。

どうやら先生の学生時代の話が終わり、授業が再開されたようです。
私は普段から予復習をまじめにやってるので、授業中はとりあえずノートだけはとっておきます。
いつでも他人に見せられるような、模範的なノートを。

別に、見せたい人は誰もいないんだけどな……。
いないけれど、いつのまにか習慣になってしまったので、別に苦痛ではありません。
好きな人がいれば、私のノートを見せてあげられるのにね。

やっぱり授業に集中できないようです。
ついついそんなことを考えてしまいます。

私、どうして好きな人できないんだろう?
私、どうして好きな人できないんだろう?

不思議と、私はいままで、男の子を好きになったことがありません。
小さい頃、男の子によくいじめられたからでしょうか。
ううん、それが理由じゃないと思います。
私には、いつも優しく接してくれた、幼なじみの同級生がいます。
ちょっと童顔だけど、次期サッカー部のエースでかなりもててます。
ひいきめに見てもかっこいいと思います。
それでも、私は彼を特別な目で見れないのです。

ふうぅっ。

思わずため息が出てしまいます。
最近、自分でもはっきり自覚できるくらい、物思いに耽ってしまいます。
よく考え事はするものの、まったく行動力が湧いてこないのです。
ただ寝て起きて、食事をして学校へ来るだけの毎日。
もしかしたら最近普及し始めた家庭用メイドロボットよりも、むしろ今の私の方がロボットに近いかもしれません。


教室が騒がしくなってきました。
周りを見渡すと、お弁当を開いている人がちらほら……。
いつのまにか授業が終わって、昼休みになっていたようです。
重傷だな……。
あらためてそう認識してしまいます。
「ねぇ、一緒に食べよっ!」
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、いつものお昼のメンバーが声をかけてくれました。
「うん。いいよっ」
私は意識して明るく返事をしました。
「――でさぁ、よかったら紹介してくれない? 私、ファンなんだよね」
「……へっ?」
突然話を振られ、素っ頓狂な声をあげてしまう私。
「だーかーらー、サッカー部の。幼なじみなんでしょ?」
「う、うん」
どうやら私に橋渡しをして欲しいようです。
よくあることなので、いつもの使いまわしたセリフで応対しました。
「あのね、そういうことは自分で言った方がいいと思うよ。たしか『その方が嬉しい』って本人も言ってたし……」
「――あのさ、ちょっといいかな?」
さっきの人とは別の人が話しかけてきました。
「ちょっと最近、変なんじゃない? さっきも上の空だったし」
とうとうクラスメートにまで指摘されてしまいました。
あまり触れられたくない話題だけど、とりあえずこう返事しておきます。
「うん。なんか違和感があるんだ。大切なピースが欠けてるような……。なんでだろう」
「違和感? なぁんだ、恋の悩みかと思ったのに」
かなり残念がっている様子。
でもそのおかげで、どうやらこの話題は打ち切りのようです。
ホッとしました。
だから。
恋の悩み、というフレーズを聞いた時、心臓を鷲づかみにされたように感じたのは、きっと気のせいなのでしょう。
辺りがオレンジ色に染まっています。
通学路の途中にある、下り坂をてくてくと歩いている私。
私、どうしちゃったんだろう?

何かがおかしいのは間違いない。
そうでなければ、日常生活に違和感を感じることなど無いはずです。
朝、ちょっと早めの時間に登校する。
――これには違和感を感じない。
早めの時間に教室に入る。
――かなり違和感を感じる。
この違いはなんだろう?
早めに出発するから早めに到着する。
ごく普通の因果関係です。
そこに矛盾など存在しません。
私が毎日、誰かを待っていたり、寄り道したりしてないかぎり。

ふうぅっ。
今日、何度目かのため息。
もうこれ以上考えても、埒があきません。
止めよう。
私は、自分にそう言い聞かせました。
公園に着きました。
公園の中を通ると近道になるので、いつも私は通学路として通ります。
そういえば、小さい頃よくここで遊んだっけ…。
そんなことを思い出します。
夕焼けの公園というのは、人に過去を思い出させるのでしょうか?

――ここで置いてきぼりになったんだよね。

小さい頃、男の子にいじめられた記憶。
かくれんぼで私が鬼になった時、みんな私を置いて帰っちゃいました。
だけど、ひとりの幼なじみの少年が迎えに来てくれました。
その少年は、少年、は――!?
「!!」
私の中で、なにかが弾けました。

「はぁっ、はぁっ」
家まで全力疾走。
息が切れていますが、そんなことは気になりません。
「ただいまー!」
私は勢い良くドアを開けると、自分の部屋に駆け込みます。
探すのは、自分の記憶……。
――あった!
程なく探し物は見つかりました。
アルバムの一番最初のページ。
そこには、私の違和感の答えが写っていました。
「ひろ……ゆき……ちゃん」
「浩之ちゃん!!」

――私は、すべてを思い出しました。
汝、我を開けよ。
さらば、汝の求むる世界を与えん。

ある朝、浩之ちゃんと登校している時、浩之ちゃんに言われました。
「あかりは変わらないな」って。
確か髪型の話だったと思います。
でも、そのとき、私の中では絶望が生まれました。

やっぱり、浩之ちゃんは私を恋愛対象に見てくれないんだ。

浩之ちゃんの、私に対する態度は、小さい頃からまったく変わりませんでした。
私が、浩之ちゃんに抱いていた気持ちと同じように。
そんな絶望に呼び寄せられたのか、ふと気がつくと脳裏に不思議な言葉が響いてました。
だから、私は想像してしまったのです。

もし浩之ちゃんと出会わなかったら、私はどうなっていたんだろう?

「承知した」
それが最後の記憶でした。

結局、変化を望んでなかったのは私だったのかもしれません。
小さい頃から、同じ容姿のまま、同じ性格のまま。
私は浩之ちゃんに気持ちの変化を望んでいたけれど、私自身はなにも変わっていなかったのです。
いや、変える努力をしていなかったのです。
もし私がそういう努力をするような女の娘であれば、浩之ちゃんがいない世界なんて想像すらしなかったでしょう。
私は大切なものを失う事で、そこに気づいたようです。

この世界はパラレルワールド。
私が作り出した、本来存在しない世界。
だから自分で変えられる。
気がついたら朝でした。
背中にべっとりと寝汗をかいています。

なにか悪い夢でも見ていたような気がします。
どんな夢だったかは覚えてないけれど。
でも、二度と考えたくない内容だったことだけははっきりと覚えています。

夢見が悪かったせいか、いつもよりちょっと早い起床。
汗をかいたのでシャワーを浴びます。
体を拭いて、ドライヤーで髪を乾かします。
そして制服に袖を通して、三つ編に髪を編む――。

ちょっと考えて、それから髪をほどきました。
櫛で髪を梳かしつつ、左右のバランスを整えて。
鏡の前で、新しい私を確かめてみました。

結局、その日私は冒険をしました。
その甲斐は十分あったようです。
浩之ちゃんが、「今の髪型の方がいい」って言ってくれたから。




彼女が開けたのはパンドラの箱。
千億の絶望が詰まっている、呪われた宝箱。
でも、彼女は手に入れた。
箱の中に眠る、ひとつだけの希望を。

自分で、自分を変えていく力を――。
249 ◆RieszyxY :01/11/01 23:09 ID:skedvMZg
以上、「彼女が開けた、パンドラの箱」>241-248でした。
駄SSスマソ。
途中でID変わってるのは気にしないで下さい。
250名無しさんだよもん:01/11/06 01:51 ID:iYUKwVcd
たまにはage
251狗威 ◆inui/iEQ :01/11/07 00:16 ID:ibFveB8V
それではこれよりSSを投下します。
しばらくの間、レスはご遠慮ください。
252おみやげ プロローグ:01/11/07 00:17 ID:ibFveB8V
 無知故の過ち。
 私は知らなかった。この世界は人の想いとはなんの関係もなく動いているということを。
 どんなに強く願っても、どんなに涙を流しても、人の想いが叶えられるとは限らないとい
うことを。
 あの頃の私は、そんなことも知らず、ただ純粋に、無知故の無邪気さから、善意は報
われると、そう単純に信じていた。
 無垢なる善意が、私自身と、私の大切な友達を傷つけることになるなんて信じられな
かったあの頃。ただ、純粋に友達になろうとしてかけたその言葉が、心に大きな傷を刻
む凶器となった。
 それでも私は信じている。
 たとえ、世界がどんなに冷酷であったとしても、人々の想いは、かけがえのない温もり
であることを。人々の善意は、闇を照らす篝火であることを――



「あの、神尾さん……。ちょっと、いいかな?」
 ゆっくりと、大きく深呼吸をするようにその子に話しかける。
「……えっ? 川口……さん? なに、かな?」
 話しかけられたその子。私の前の席に座る神尾さんは、どこか怯えるような、まるで私
の顔を窺うように、上目使いで見上げながら聞き返す。
「あのさ、私、連休中に家族と旅行に行ってきたんだ」
 私は、そう言いながら両手で抱えるように握り締めている小瓶の存在を確認した。
「それで、クラスのみんなにおみやげを配っているんだけど……だから、これ、神尾さん
へのおみやげ」
253おみやげ プロローグ:01/11/07 00:17 ID:ibFveB8V
 そして、両手で握り締めていた小瓶を神尾さんに渡す。
「たいしたものじゃないんだけど……よかったら貰ってくれるかな?」
 七色に輝く砂が入ったきれいな小瓶。神尾さんは、どこか緊張したような面持ちでそれ
を受け取りながら「あ、ありがとう」と小さく囁いた。
 小瓶は、私の手から、神尾さんのきれいな手に渡る瞬間、太陽の光を受け、きらりと小
さく輝く。神尾さんは、それをとてもまぶしそうな表情で眺めていた。
「それ、『星の砂』っていうらしくて、お守りみたいなものなんだって」
 私は、そんな神尾さんの表情を見つめながら、そう説明した。
「えっ? ……わたしがそんな大切なものを貰っちゃって……いいのかな?」
 神尾さんは驚いたように聞き返す。
「うん、それは神尾さんのために買ってきたものだから……だから、貰ってくれると嬉しい」
「……うん、ありがとう。大切に……するね」
 そう言って、神尾さんは『星の砂』を両手でぎゅっと、優しく握り締めた。
「……それじゃ、私、他の人にもおみやげ配らなきゃならないから……だから、もう行くね」
 私がそう言ってその場を離れようとする時、神尾さんは「本当に、ありがとう」と言ってく
れた。
 私は、くるりと振りかえり、ただ一言、言葉にする。
「……あのさ、また、神尾さんと……一緒にお話できるといいね」
 神尾さんはそれには答えず、ただ静かに『星の砂』を握り締めていた。
254狗威 ◆inui/iEQ :01/11/07 00:19 ID:ibFveB8V
>>252-253 『おみやげ プロローグ』
続けて前話を投下しますので、もうしばらくレスはご遠慮ください。
255おみやげ 前話:01/11/07 00:20 ID:ibFveB8V
「私、川口茂美。よろしくね」
 私がその子に声をかけた理由。それは同情や憐れみといった類のものだったのかも
しれない。
 進級にともなうクラス換えで、私の前の席に座っていたその子は、新たな環境に対す
る不安と期待が充満する教室の中で、ひとり浮いた存在だった。
 周囲のクラスメイト達が、新しい教室で、新しい友達を作ろうと互いに声を掛け合う中、
その子はただそれを眺めているだけで、周囲の人間は明らかにその子を避けいるよう
に見えた。
 その子が周りから避けられる理由。それは私も知っていた。
 その子は重度の癇癪持ちだった。
 授業中、休み時間、放課後。その子は周囲の状況に関係なく、なんの前触れもなしに
突然泣き出すという話しだった。それも、生半可なものではなく、周囲の人間を寄せ付
けることを許さないような、そんな激しい泣き方だと聞いていた。
 私自身、その現場を見たことはなく、少し噂で耳にしたことがあるだけだったが、その
ために、その子が周囲から孤立している現状を見れば、それがあながち嘘ではないも
のと思えた。
 でも私は、楽しげな喧騒に包まれた教室の中で、周囲の人間が楽しそうにはしゃいで
いる姿を、ただ眺めていることしかできないその子のことを、見過ごすことができなかった。
 せめて、私だけでもその子の友達にならなくてはならない。その時の私は、そんな使命
感じみたものまで抱いていたのかもしれない。
 私にとって友達という存在は、ごくあたりまえのもの、空気のように自然なもの、あって
当然のものだった。
 小学校、中学校、そして高校と、私は常にクラスの中心にあり、私の周りには、必ずだ
れかしらの存在があった。それが私にとってのあたりまえだった。
256おみやげ 前話:01/11/07 00:21 ID:ibFveB8V
 だから、私にはその子を救う義務があると信じていた。
 今にして思えば、すごく傲慢な考え方だと思うが、それがその時の私の偽らざる本心
だった。
「えっ…? あ、あっと……えっと……」
 突然、声を掛けられたその子は、私の言葉になんて答えから良いかわからずどきまぎ
と慌てふためいていた。
 私は、そんなその子の姿を見て、『かわいいな』と思うと同時に、『かわいそうだな』とも
思った。
 この子は、自分がこんな風に他人から声を掛けられるなんて想像もしていなかったの
だろう。
「……あっ! わ、わたしは、神尾観鈴……よ、よろしく……」
 思い出したかのように自分の名前を答える。ちょっと上目使いで、私の顔を窺うような
仕草。それを見て、私は思わず「くすりっ」と微笑をもらした。
「うん、よろしくね。そういえばさ――」
 そのあと、私達はどうでもいいような話に花を咲かせた。
 始めはどぎまぎとしていた神尾さんも、話しているうちにだんだんと馴染んできてくれて、
色々と自分から話してくれるようになった。
 神尾さんはとてもいい子で、私達はきっと良い友達になれると思った。
 窓の外を見上げれば、そこには一面に広がる青空が見える。
 私は、その青空が私達の出会いを祝福してくれていると、そう単純に考えていた。



「ねえ、茂美。あの子と友達になったって……ホント?」
 ホームルームが終わり、帰りじたくを済ませている私に、友人のひとりがそう尋ねてきた。
257おみやげ 前話:01/11/07 00:21 ID:ibFveB8V
「?? あの子って?」
「ほら、神尾観鈴……だっけ? あなたの席の前に座ってる子」
「ああ、神尾さんの事? 友達って言っても、さっき少し話しただけだけだよ。たしかに今
日一緒に帰る約束くらいはしたけど……それがどうかしたの?」
 そう言うと、その子は『やれやれ』といった感じの顔をした。
「まったく、茂美はあいかわらずのお人好しなんだから……。そうやって、すぐに誰とでも
友達になれるっていうのは、たしかにあなたの良いところだけど……」
 そう言って、その子は「はぁ〜」と小さくため息をつく。
「でもね、あの子は違うの。あの子は普通じゃないんだから…」
「ひどい癇癪持ちだってこと?」
 私がそう言うと、その子はちょっとびっくりした顔をした。
「なんだ、知ってるんじゃない」
「そりゃ知ってるわよ、そのくらい」
 と、私は答えた。
「じゃあ、なんで友達になろうなんてするのよ?」
「なんでって……。だって、可哀想でしょ。神尾さんだって好きで癇癪起こしてるわけじゃ
ないだろうし……。それに、私はそういうことで差別をするのは好きじゃない」
 それは、その時の私の偽らざる本心だった。
 私は、本気で神尾さんのことを可哀想だと思っていたし、そんなことで差別を受けてい
る神尾さんの現状を許すことができなかった。
 そして、なにより私はそんな彼女を救う義務があると信じていた。
 しかし、私のそんな思いは伝わることなく、その子は大きなため息を吐き出す
「茂美は、あの子が癇癪起こしているところを見たことないからそんなこと言えるんだよ。
あの子の癇癪ってホントに凄いんだよ。先生達だって、あの子のこと扱いかねてるんだ
から」
258おみやげ 前話:01/11/07 00:22 ID:ibFveB8V
 たしかに、それは私も感じていた。担任の教師の神尾さんに対する態度。それは正し
く『腫れ物にさわる』という形容詞がぴったりくるような態度だった。
 友達はおろか、教師からも見捨てられた神尾さん。
 私は、ふと、先程一緒に話していた時の神尾さんの笑顔を思い出した。
 最初は、話しかけられたことにとまどい、ただ曖昧な笑みを浮かべていただけだけど、
それでも話しているうち、その笑顔は本物のそれへと変っていった。
 その笑顔はとても可愛くて、学校中の生徒から、教師達から、その存在を疎まれてい
る子のようには見えなかった。ああ、本来この子はこんな顔で笑うことのできる子なんだ。
と思った。
 教室の片隅で、なにかに耐えるようにじっとしていた神尾さんの寂しそうな横顔と、私
に話している時の、まるで、なにかから解放されたかのような彼女の笑顔。その二つが
私の中で交錯し、私の意思はより強固なものとなった。
「とにかく、今日は神尾さんと一緒に帰るから。その時にお互い気が合えば友達になる
んじゃない?」
 私は言葉ではそう言いつつも、心の中では神尾さんと友達になろうと決めていた。
 あんな風に笑える子が、何百人もの生徒達の中、ひとり孤立している状況なんて絶対
に間違っていると思った。
「もーっ! どうなっても知らないからねーっ!」
 鞄を持って、教室を出て行く私に、その友達は最後の抗議の声を上げたが、私はあえ
てそれを無視した。
 私と神尾さんが友達になれば、あの子も考えを改め、神尾さんの友達になってくれると
思った。そして、それはその子だけじゃなく、クラスのみんなも、神尾さんに対する考えを
改めてくれると思っていた。
259おみやげ 前話:01/11/07 00:23 ID:ibFveB8V
 私を含む何人もの友達の中、みんなと笑い合う神尾さん。もう教室の片隅で寂しい顔
をすることはない。教室を出て、神尾さんとの待ち合わせ場所へと向かう中、私はその
未来を信じて疑わなかった。



 始業式の後の放課後。長い休みが明け、久し振りに会う友達同士の話しに花を咲か
せる。
 校舎から校門までの道のりには、そんな生徒達がつくる下校の列ができていた。
 そんな中、神尾さんは校門の壁に背中を預け、友達と楽しく下校する生徒達を眺めな
がら私のことを待っていた。
 しかし、その表情はとても友達を待っているようには見えなかった。なにかに怯えてい
るような、さもすれば今にも泣き出してしましそうな、そんな表情をしていた。
 もしかして、私のしたことは神尾さんにとって迷惑なことだったのかもしれない……。
 一瞬、そんな考えが頭をかすめた。しかし、すぐにそんな考えは頭の中から振り払う。
こんなところで私が弱気になってはダメだ。教室で神尾さんが見せてくれた笑顔。あれ
は絶対に本物だった。まれに孤独を好むような人もいるけど、神尾さんはそういう人で
はない。そう信じた。
「ごめーん、待ったーっ?」
 私は胸中の不安を隠すかのように、務めて明るく声を掛けた。
「ううん、わたしも、いま来たところ」
 神尾さんはそう言って「にははっ」と笑った。
 神尾さん独特の可愛らしい笑い方。その笑顔は、教室で私に見せてくれた笑顔とまっ
たく同じものだった。その笑顔を見て私は内心ホッとする。やっぱり神尾さんは孤独を好
むような人間ではなかったのだ。
260おみやげ 前話:01/11/07 00:23 ID:ibFveB8V
「それじゃ、行こっか」
 そう促がし、私達は学校を後にする。
 私と神尾さんの通学路は、途中まで一緒だった。
 晴れ渡った青空の下、右手には海、左手には住みなれた町並みを抱え、私達は色々
なことを話した。学校のこと、家族のこと、趣味のこと……。とても他愛もない話だったけ
ど、話している間に、ふたりの距離がどんどんと近づいていくのを感じた。ふたりは必ず
良い友達になれる。その時の私はそんな確信を抱いていた。
「あっ……わたしの家、こっちだから」
 楽しい時間はあっという間に過ぎ、やがて別れの時間が訪れる。自分の家の方向を
指し、別れの挨拶を告げようとする神尾さんの顔は、どことなく寂しい影があった。それ
は、このひとときが神尾さんにとっても楽しいものであったのだと思えた。
「あっ、ちょっと待って」
 神尾さんが、別れの言葉を告げようとする瞬間、私はそれをさえぎった。ふたりが別れ
るまえに、私にはやることがあった。
「あのさ、今度の休み。どこかふたりで遊びにいかない?」
 私の突然の提案に、神尾さんは困惑の表情を浮かべる。
「ねっ、いいでしょ。今度の休みは、私、暇なんだ」
 困ったような、嬉しいような、そんな複雑な表情。彼女は、今までこんな風に人から誘
いを受けたことがないのだろうか?
 最初こそ困惑していた神尾さんも、やがて私の提案に乗り気になってくれた。元々、彼
女も私の提案に反対ではなかった。ただ、こういう誘いに馴れていなかっただけなのだ。
「うんっ! それじゃあ、約束っ!」
 そういって私は、右手の小指を差し出す。
 それを見て、神尾さんは再び困惑の表情を浮かべた。
「指切り……嫌?」
261おみやげ 前話:01/11/07 00:24 ID:ibFveB8V
 私は、小指を差し出したまま、小さく首をかしげて問い掛ける。
「あっ! ううん、そんなことない。そんなことないよ」
 正直、高校生にもなった私達が道端で指切りなんて、とても恥かしくて出来ないことだ
と思う。でも、神尾さんはそんな素振りを見せることなく、私の指にそのきれいな指を絡
めてくれた。
「それじゃ、いくよっ!」
 抜けるような青空。繰り返す波の音。歌うような小鳥たちのさえずり。住みなれた町の
片隅で、今日、始めて知り合ったふたり。そのふたりが、互いの指を絡め、声を合わせ
て『ゆびきりげんまん』を歌い上げる。
「ゆびきりげんまん うそついたらはりせんぼんの〜ますっ」
 どこか恥かしさを感じながら、それでもふたり笑いながら、約束の呪文は最後の一節
を向かえる。
「ゆびき〜たっ!」
 その瞬間、彼女の指は私の指から離れ、ふたりの約束は成立する――はずだった。
 だけど、神尾さんの指は私の指に固く絡められ、約束の呪文は、最後の瞬間に反古
された。そして、神尾さんは私に指を絡め、顔を伏せてたまま動こうとしない。
「どうしたの、神尾さん? 指……離さないと……」
 私は、そう言って神尾さんの顔を覗き込み、そして、その瞬間愕然とした。
 神尾さんは泣いていた。その大きな瞳からは、遠慮というものを知らないかのように
涙が溢れ出ていた。
262おみやげ 前話:01/11/07 00:25 ID:ibFveB8V
「う……ううっ……うううっ……」
 やがて、神尾さんの口から、そんな呻きのようなものが漏れ始める。

 ――癇癪。

 神尾さんに対する噂。『なんの前触れもなく』『突然』『先生達でも手がつけられない』
次々とそんな噂の断片が私の頭をかすめていった。
 私はなんの解決策も見出すことができず、神尾さんの癇癪はますます酷くなる一方
だった。
「う……ううっ……うわ―――――ん!」
 爆発したかのように泣き出す彼女。そしてその瞬間、切れることのなかった指は、約
束を拒絶するかのように乱暴に切られた。
「か、神尾……さん?」
 私は、あまりのことに、恐る恐る声を掛ける。
 でも、その声は神尾さんの泣き声にかき消され、差し出すその手は乱暴に跳ね除けら
れる。私はただ、激しく泣き続ける神尾さんの側らに立ち、その姿を呆然と見つめること
しかできなかった。
 さっきまで繰り返し聞こえたきた波の音も、小鳥のさえずりも、いつの間にか聞こえな
くなっていた。抜けるように澄んだ空は、残酷なほど青く、そして冷たかった。
263狗威 ◆inui/iEQ :01/11/07 00:32 ID:ibFveB8V
>>252-253 『おみやげ プロローグ』
>>255-262 『おみやげ 前話』

以上、川口茂美SSです。
かなり前に観鈴スレに投稿したものですが、最萌トーナメントでの
火力支援に用いる為、サルベージし、少々の改良を加えました。
ちょっと長めですので、後日、中話・後話と分けて投稿します。

なお、余談ですが、このSSをリメイクしている時、サラ=ブライトマンの
『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』をエンドレスで聴いていました。
264名無しさんだよもん:01/11/07 00:37 ID:02lQMjWm
>>263
…なんとマイペースな。今やSSスレはぴんちだというのに。
でも川口さんで攻めるあたりはなかなか。全部揃ってから読みますね。
265長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/07 00:40 ID:cnVw1UUq
>今やSSスレはぴんちだというのに
支援サイトの閉鎖の件ですか?
266長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/07 00:40 ID:cnVw1UUq
失礼.
正確には更新停止ですね.
267狗威 ◆inui/iEQ :01/11/07 00:43 ID:ibFveB8V
これ投稿した後に知りました(汗
268長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/07 00:46 ID:cnVw1UUq
月一更新で良いなら続投に名乗り挙げても委員ですがどんなもんでせう.
269狗威 ◆inui/iEQ :01/11/07 22:45 ID:2QuCx/wA
押忍! 続きを投下するであります!
しばらくの間、レスを控えて頂けると幸いであります!
270おみやげ 後話:01/11/07 22:46 ID:2QuCx/wA
 しん、と静まり返った教室。カリカリという音だけが教室を支配している。
 教師が黒板に板書する音と、それを生徒達がノートに書き写す音。
 私も、そのカリカリという合唱に加わりながら、しかし、その心はここになかった。
 ふと、教室全体を見渡してみる。
 新しいクラスになってから、まもなく1ヶ月が過ぎようとしてた。
 最初、よそよそしい雰囲気があったクラスも、今では、みんな新しい環境に慣れ始め、
その空気を満喫していた。ただひとりのクラスメイトを除いて……。
 神尾観鈴さん。ひとつ前の席に座る私のクラスメイト。

 始業式の日の帰り道。
 癇癪を起こした神尾さん。
 その場に立ち尽くすだけの私――

 結局、あの後、私は神尾さんが泣き止むのを待つしかなかった。
 神尾さんが泣き止むまで、恐らくそれほど時間はかからなかったと思う。
 しかし、それは恐ろしく長い時間だった。その永遠とも思える時間、私は神尾さんの
身を心配するわけでもなく、ただ、この地獄のような時が、早く過ぎ去ってくれることだけ
を願っていた。
 そして、癇癪がおさまり、なんとか話せるくらい落ち着いた後、神尾さんは「にははっ、
また……やっちゃった……」と力なく笑った。
 その表情は、いままで私と話していた時に見せてくれたようなものではなかった。
 なにか怯えているような、誰かにすがるような、弱々しく、今にも消え入りそうな、そん
な表情だった。
 それを見た瞬間、私は、なにがなんだか分からなくなった。
 なにもしてあげられなかったことの無力感。神尾さんが苦しんでいる間、自分のことし
か考えていなかったことの罪悪感。
271おみやげ 後話:01/11/07 22:46 ID:2QuCx/wA
 それらが、私の中でごちゃごちゃに掻き混ぜられ、私は混沌の渦の中に放り込まれた。
 とても混乱した状況。そんな中で、私はわけも分からず「ごめんっ!」という一言だけを
残し、自分の家の方向へと走り去った。その時の私は、その場から一刻も早く逃れたい
という気持ちしか持ち合わせていなかった。それは、最悪の別れ方だった。

 翌日、教室で再開した神尾さんは、本当に申し訳なさそうな顔で、無言で頭を下げた
後、自分の席に着いた。
 なぜ、神尾さんがそのような顔をしなければならないのか、悪いのは私のはずなのに、
なにもしてあげられなかった私が悪いのに……。
 せめて、私のことを怒って欲しかった。なにもできなかった無力さを罵って欲しかった。
自分の事しか考えていなかった卑しさを軽蔑して欲しかった。
 そうすれば、私は心の底からに謝れた。自らの罪を償うつもりだった。
 だけど神尾さんは、私の犯した罪を背負うように、全て自分が悪かったとでも言うかの
ように、私に対し静かに頭を下げた。

 ――私は、なにも言えなくなってしまった。

 なにか声をかけようとしても、癇癪を起こした苦しそうな神尾さんの顔や、その後のな
にかに怯えるような表情、そして、全ての罪を背負うかのように頭を下げる姿が、フラッ
シュバックのように私の脳裏をかすめ、本来かけるべきはずの言葉は失われてしまう。
 結局、私は神尾さんに一言も声をかけることが出来ないまま、1ヶ月という時間が過ぎ
去ろうとしていた。
 神尾さんは、一人も友達をつくれないまま、今も私の目の前に座っている。
 なにかに耐えるような神尾さんの後ろ姿。
 私には、それが無言で泣いているように見えて、思わず視線を窓の外へ逸らした。
272おみやげ 後話:01/11/07 22:47 ID:2QuCx/wA
 窓の外は、今日もよく晴れている。
 雲ひとつない、どこまでも澄み切った抜けるような空。それは卑小な私を軽蔑するか
のように、冷たいほど青かった。



「ねぇ、今度の連休。どこかいくんでしょ?」
 通いなれた通学路とは違う道を歩きながら、隣を歩く私の友人がそう尋ねてきた。
「あっ、うん……。家族と、旅行にね……」
 通いなれていない道。
 あの日以来、遠回りになることを承知で、通学路を変えた。
 神尾さんが癇癪を起こした場所。あの場所を通ることは、私にとって耐えがたい苦痛
だった。
 あの場所を通るたびに、神尾さんが苦しんでいる姿と、あまりに無力で卑怯な自分の
姿を思い出し、自責の念に責めたてられる。
 それを避けて通るために、わざわざ、この友人と一緒に帰るといった口実までつくって
通学路を変えた。
 それは、神尾さんに対する無言の言い訳のようなものだった。
 別にあの道を、神尾さんのことを避けているわけではない。ただ、この友人と一緒に
帰らなければならないからしょうがないんだ。そう言葉にすることなく神尾さんに対して
言い訳をしている。
 私は、そんな言い訳までつくって自分を守ろうとしている。そんな自分が、たまらなく嫌
だった。
「あ〜、いいな〜。あたしもどっか行きたいよ」
273おみやげ 後話:01/11/07 22:48 ID:2QuCx/wA
 うらやむような友人の声。その声はとても明るく、それは私を元気づけてくれているよ
うだった。
「ねっ、おみやげ買ってきてよね。絶対だよ」
 まるで、おねだりをするかのように甘えてくる。
 普段から明るい子ではあるが、今日はいつもにも増して明るい。
 実際、この子は長い間塞ぎ込んでいる私を見かねて、元気づけようとしてくれている
のだろう。それは、すごくありがたいことだと思う。
 落ち込んでるとき、励ましてくれる存在。
 悩んでいるとき、その悩みを聞いてくれる存在。
 そういう存在があるからこそ、辛いときも、悲しいときも、私はそれを乗り越えていくこ
とができるのだと思う。前に進むことができるのだと思う。

 ――だけど。

 だけど、あの子は……神尾さんは、辛いときや、悲しいとき、どうしているのだろうか?
 落ち込んでいるとき、励ましてくれる人はいるのだろうか?
 悩んでいるとき、その悩みを聞いてくれる人はいるのだろうか?
 そう思うと、私だけがこうして励ましてもらっていることが、ひどく申し訳ないことのよう
に思えてきた。
 本来なら、私が神尾さんにとって、そのような存在になるはずだった。
 神尾さんの友達になるつもりだった。
 だけど、私のやったことは酷い裏切りだった。
 期待をもたせて、そして、それを裏切った。
 神尾さんが一番辛いとき、私は救いの手を差し伸べることなく、彼女を見捨てた。
 神尾さんにとって、最も残酷な方法で、彼女を傷つけた。
274おみやげ 後話:01/11/07 22:48 ID:2QuCx/wA
 そんな私に、友達に励ましてもらう権利などがあるのだろうか……?
「もーっ! あたしの話、聞いてるの?」
 そんな物思いに耽っていた私の顔を覗きこみながら、その子は抗議の声をあげた。
「あっ、うん。おみやげでしょ。ぜったい買ってくるよ」
 私は、努めて明るく振舞った。
 たとえ、私にそのような権利がなくとも、この子の気持ちを無駄にしてはいけない。そ
う思った。
「まったく……。まだ、あの子のこと気にしてるの? いつまで気にしててもしょうがない
んだから、さっさと忘れちゃいなさいよ」
 一見、冷酷そうに聞こえるその子の言葉は、私を動揺させた。
 そう、私はいつもでこうして悩んでいるのだろうか?
 この子の言う通り、こんなことはさっさと忘れてしまい、みんなと同じように神尾さんの
ことを避けるようになるのだろうか? それともまた別の方法があるのだろうか?
 通い慣れていないけど、通い慣れ始めたこの道で、私はその答えを見出すことがで
きなかった。



 始めて訪れる街を、なんの目的もなく歩いていた。
 私の生まれ育った田舎とは、まったく違った都会。
 街を行き交う人々は、周囲のことに関心がないかのように、足早に歩みを進めている。
 5月の始め、日本中がほんの一時の休息を得るゴールデンウィーク。
 私は、家族と共にこの街へと遊びにに来ていた。
 本当は、遊びになんかいく気分ではなかった。だけど、家族に心配はかけたくなかった
し、あの町から少しでも離れられるならと思い参加することにした。
275おみやげ 後話:01/11/07 22:49 ID:2QuCx/wA
 それでも、家族と一緒に遊びまわる気分にはなれず、私は適当な理由をつけて家族
とは別行動をとっていた。
 ――それにしても、
 都会に住む人々は、『他人』というものに関心がないのだろうか?
 次々と早足で私を追い越していく人々を眺めていると、そんな些細な疑問が浮かんで
くる。
 みんながみんな、回りは目もくれず、まっすぐ前だけを見て歩いていく。
 都会に住む人間にとって、他人などは路上に転がる障害物に過ぎないのだろうか?
 周囲をたくさんの人に囲れながら、私はなぜだか酷い孤独を感じた。
 どこからか涌き出てくるような人々の目の中に、私の存在など、どこにも写っていない
のではないか? そう感じたからだ。
 しかし、その孤独感は、その時の私にとってありがたいものだった。
 他人の優しさや、気遣い、思いやり。そういったものを受けたくはなかった。
 今の私には、そういうものを受け取る資格はないのだ。
 それは、自らに課した罰のようなものなのかもしれない。

 そうして、ひとり見知らぬ街をさまよい歩いている時、私は一軒の店の前で歩みを止
めた。
 それは、看板に『長瀬古物店』と書かれた、あまり綺麗とは言い難い店構えで、ガラス
越しに見える店内には、ところ狭しと様々な商品が雑然と置かれていた。
276おみやげ 後話:01/11/07 22:50 ID:2QuCx/wA
 普段の私なら、決してこのような店に足を踏み入れることはしなかっただろう。でも、
その時の私は、なんとなくこの店に惹かれるものを感じていた。
 どことなく寂れた雰囲気の店先が、その時の私の心理と合致したのかもしれない。

 どこかに惹かれるものを感じつつも、恐る恐る、店内を窺かがうようにして足を踏み入
れる。
 薄暗い店内、雑然と積み上げられた商品の山、そして、その店の奥にはこの店の主
と思われる一人の中年男性が、新聞を読みながら座っていた。
 その人は、どこか抜けたような感がする人で、この店をそのまま人間にしたかのよう
だった。
 私が店に入っても、ちらっと一瞥しただけで、いらっしゃいと声をかけるわけでもなく、
すぐに新聞に視線を落とす。
 そんな店主の姿を見て、ちょっとした気後を感じてしまったが、気をとりなおして、店の
中を一通り見て回ることにした。
 店内に置かれた商品のほとんどは、私には、なんの価値があるのかわからないガラ
クタのように思えた。
 古びた人形、なんだかよくわからない置物、どこかのアフリカの部族が使っているよう
な仮面、そんなものばかりだった。
 なんでこんなガラクタばかりの店に入ったのか? そんな後悔を憶えながらも店内を
回っていると、ふと、綺麗な小瓶を見つけ、私は足を止めた。
 それは、周囲のガラクタとは一線を画すかのように光を放っている。まるで、砂利の山
の中に埋もれた宝石のようだった。
 私は、思わずそれを手にとり、あらためて、じっくりと眺めてみた。
 小瓶の中には不思議な砂が入っていた。
277おみやげ 後話:01/11/07 22:50 ID:2QuCx/wA
 七色に輝く綺麗な砂。小瓶を傾けてみると、サラサラと音たてるように瓶の中を転が
りながら輝いた。それは、とても綺麗だった。
 私は、しばらくその綺麗な砂の入った小瓶に見とれていた。だから、自分のすぐ後ろ
に人が立っていたことなんて気づかなかった。

「それが気に入ったのかい? お嬢さん」

 突然、自分の真後ろから声を掛けられ、私は、思わずびくっとしながら振り向いた。
 そこには、さっきまで奥で新聞を読んでいた、この店の主らしき人が立っていた。
「えっ!? あっ……。はい、とても、綺麗な品ですね」
 あまりに突然のことに、私はどぎまぎしながらそう答えた。
「それは星の砂といってね、沖縄の海岸で採れる古代原生生物の化石なんだよ」
「化石……ですか?」
「ああ、そうだよ。かつてその砂は、その一粒一粒が生きていたんだ」
 私は、あらためてその七色に輝く砂を見つめてみた。
 この砂の一粒一粒が、かつて生命としてこの星に息づいてきた。太古の地球を、懸命
に、精一杯生き、そして今は、こうして仲間とともに眠りについている。この砂の輝きは、
そういった生命の輝きなんだと思えた。
「すみません、これ譲ってもらえませんか?」
 私は、急にこの砂が欲しくなった。
 この綺麗な砂は、私になにかを教えてくれている。そんな気がした。
「うん? ああ、別にかまわんよ……」
 私は、その星の砂を売ってもらい、「ありがとうございます」とおじさんにお礼を言って
店を出た。
278おみやげ 後話:01/11/07 22:51 ID:2QuCx/wA
 おじさんは笑顔で私を送り出してくれた。
 さっきまで暗い店内にいたせいか、外に出ると太陽の光がすごくまぶしく感じられた。



 その夜、私はひとりホテルのベットに寝転びながら、星の砂を眺めていた。
 小さな瓶の中で、サラサラと音をたてるように転がる星の砂。
 人工の光を反射して、七色に輝くその姿は、かつて生命としてこの地球で輝いていた
ころの姿を誇っているようだった。
 生命の輝き。
 この砂が綺麗なのは、かつて一生懸命生きたことの証なんだ。
 精一杯生きてきたからこそ、何万年という時が経た今も、こうして光り輝くことができ
るのだ。
 この七色に輝く命の先輩達を眺めながら思った。
 私もこの砂のように輝きたい。
 たくさんの仲間達とともに輝きたい。
 どれだけの時が経とうとも、その光を失うことなく輝いていたい。
 そのために、私は精一杯生きなければならない。
 やるべきことをやらなければならない……。
 私は心の中で一つの決意を固め、そして眠りについた。
 七色に輝く星の砂。その生命の輝きに願いを託して。



 久しぶりに吸う教室の空気。
279おみやげ 後話:01/11/07 22:52 ID:2QuCx/wA
 連休明けの教室は、長い連休をどのように過ごしたのか? そんな話題でいっぱい
だった。
 家族と山へ出掛けた人、友達と少し遠くの街まで遊びに行った人、教室のあちらこち
らからクラスメイト達の明るい声が聞こえてくる。
「茂美〜、連休中はどこに行ってたの〜?」
 扉を開け、教室に一歩足を踏み入れた瞬間、私にもその明るい声がかかる。
 私のクラスメイトで、友人のひとり。その子の声を聞いて、さらに数人の友人が私の元
に集ってきた。友人達は、私が連休をどのように過ごしたのか、しきりに聞いてくる。
「ごめん、ちょっと用があるからあとでね」
 私はそう言って友人達の質問責めをかわし、そそくさと自分の席についた。
 そして、私は自分の鞄の開け、その中から一つの小瓶を取り出す。
 それは、私が連休中、古ぼけた古物店のおじさんに譲ってもらった綺麗な小瓶。生命
の輝きを放つ星の砂。
 旅行から帰ってきたあと、私は星の砂を半分に分けた。
 その半分は、今、私の部屋の引出しの中にしまってある。
 そして、もう半分は、今、私の手の中に握られている。
 同情とか憐れみとか、ましてや義務感なんてものじゃない。
 私自信が輝くため。たくさんの友人達とともに輝くため。
 そのために、私は、今すべき事をしなければならない。
 今、私の視界の中心にあるもの、私のひとつ前の席に座っているクラスメイト、その
長い髪の毛を一つに束ねた後ろ姿が寂しく揺れた。
 周囲の楽しげな喧騒からはずれ、ひとり、なにかに耐えるようにじっとしているその子
の背中を見つめながら、私は手にした星の砂をぎゅっと握り締めた。
280おみやげ 後話:01/11/07 22:52 ID:2QuCx/wA
 心臓がバクバクと音をたて、自分が緊張していることが嫌でもわかる。
 そんな胸の鼓動を落ち着かせる為、大きく深呼吸をしながら自分自身に言い聞かせた。
 大丈夫、きっとうまくいく。私達は絶対に友達になれると――
 私の願いを託した星の砂。
 私は改めてそれを握り締めた。
 手のひらから勇気が伝わってくるような気がした。
 小さな命の先輩たちも私を応援してくれている。
 そう思うと嬉しかった。
 私は立ちあがり、そして一歩を踏み出す。
 ともに輝く未来のために。



「あの、神尾さん……。ちょっと、いいかな?」


 FIN
281狗威 ◆inui/iEQ :01/11/07 22:56 ID:2QuCx/wA
>>270-280 『おみやげ 後編』

以上、川口茂美SS完結です。
282狗威 ◆inui/iEQ :01/11/07 22:57 ID:2QuCx/wA
>281
× 『おみやげ 後編』
〇 『おみやげ 後話』

誤字、失礼しました。
283こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:08 ID:YgdtlbL5
こみっくパーティーの面子に「傀儡の教室」の松原海里が催眠術を
かけまくるSSです。たぶん、陵辱が入ります。
284こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:15 ID:YgdtlbL5
 牧村南は、会社で帳簿付けやらカタログ製作などしているうちに今日もやっと仕事が終わった。
 同僚が全員引き上げた後で仕事場を一回りし、最終点検をする。
 いつもは社長がするのだが、今日は個人的な理由で仕事場に残る南の役目になった。
 問題なしと確認して南は自分の机に座っていると、入口の戸をトントンと叩く音がした。
 戸を開けると、長く美しい髪を持つ可憐な美少女がいた。
待ち合わせの約束をした御影すばるが訪れて来たのだ。
「あの……お待たせしましたの……南さん………」
 すばるは思いつめた顔をしていた。
 「ここじゃなんだから、ここに座って?」
 南は、会社の応接室にすばるを招いて二人きりで話す事にした。
 同人誌即売会の運営を仕事にしている南は、こうやって参加者の相談事に乗ることがある。
もっとも相談に関しては、南が個人的な趣味でやっている事なのだが。
 「は、はい。いいですの」すばるは、南の誘いを承知した。
 仕事場の小さな応接室にすばるを招き入れて、ソファーにに座らせる。そして、紅茶を出しながら南
はすばるに訊いた。
「どうしたの、すばるちゃん?」
 「あの、同人活動についてなんですの……。」
「えっと、すばるちゃん、即売会なんかで何か嫌な事でも会ったの?」
 すばるは{うりゅ〜」とうつむいた。いつも笑うにしても怒るにしても、元気の塊みたいな彼女が
そうすると、普段そんな素振りはまるで見せないだけに、陰気なことこの上ない。こんな顔をすばるにさせてはいけない。
 「すばる、だめですの。和樹さんと同じになれないですの」
 「そんな、和樹さんは和樹さん、すばるちゃんはすばるちゃん。それでいいじゃない」
 
285こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:16 ID:YgdtlbL5
「すばるは和樹さんといっしょにプロになるって約束しましたのに、編集長さんが一月後の即売会で
千部販売する同人誌をすばるが作らないと駄目だと仰ったですの。けど、まだ下書きも出来てないです
の〜。和樹さんや、すばるのお手伝いに来てくれる由宇さんや詠美さんは『すばるは漫画の才能がある。
あの編集長を見返してやるんだ!』と仰ってくれますけど、このままではすばるは和樹さん達に
見捨てられてしまいますの〜☆」
 すばると同人歴は同じと言っても、前以て美術の基礎を身に付けている和樹と、それまで合気道を
主にやっていて絵を描くのは市販の漫画を写す程度だったすばるとはレベルが違いすぎる。
 そんなすばるが千部売れる同人誌を作ろうと勝負をかけるのは、即売会にとっても迷惑なのだが。
「無理よ、だいたいそんなことに即売会を使うなんて…」
 南はきつく言った。売れる売れないより参加者が楽しむのが一番と言うのが南の考え方だ。
「でも、和樹さんと一緒にデビューしたいですの……」と言ってすばるはうなだれた。
 和樹への憧れが、こんな形で騒動を起こしてしまっているのである。
 南は半分呆れながら考えこんだ。そして、すばるには普通の説得ではなく、ちょいと荒療治が必要
かもしれないと思った。
「……じゃあこんなのはどう? 私が力を貸してあげる。和樹さんにに追いつくために」
「……どういう…ことですの…?」
 南はが大学(夜間)で精神カウンセリングみたいなことを齧ったことがあった。
 だから、南は提案した。軽い気持ちで。
「すばるちゃん、催眠術でもかけてあげようか?」
286こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:23 ID:YgdtlbL5
すばるは最初きょとんとした。
 いきなり催眠術と聞かされたらまあ反応は当然だろう。
 だがすばるはすぐにその目つきがいつになく真剣になった。
「お願いしますの、南さん」
 南がたじろぐほどの勢いで言ってきた。
「すばる、和樹さんと一緒にプロになりたいですの……だから、どんなことでも……!」
 詰め寄られて、南はかえって返答に困った。でも南はこの思いは何としても受け止めてやりたかった、
そしてすぐにうなずいた。
「じゃあ、すばる、どうしたらいいんですの?」
「慌てないで。まずは少し落ち着いてから、そこでちょっとした暗示をかけて あげる」
「はい、わかりましたですの!」
 催眠術や暗示についてどの程度わかっているのか怪しいものだが、すばるは勢いよく言った。嵐の海
で陸の灯を見つけた船乗りみたいに。
 南も俄然やる気になった。

 仕事場の応接室では、気持ちを落ち着かせるため紅茶を飲みながら南とすばるが対面に座っている。
 仕事が終った後なので、さすがに窓の外は薄暗くなってきている。催眠をか
けるにはいい感じになってきた。お日様の下ではやっぱりかけにくい。だから催眠にはどうにも妖しげな
イメージがつきまとう。
「さて……っと」
 南が肩に手を置くと、すばるはびくっとした、結構緊張しているようだ。
「ほんじゃまあ、やってみようかしら?」
「は、はいですの!」
「……だけどすばるちゃん、催眠術ってどんなものだと思ってるの?」
「どんなものって…ですの…?」
287こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:24 ID:YgdtlbL5
南は大体察しはついていた。世間一般で思われている通り、相手をどんな風にでも操ってしまう、
魔法めいたものと。
 施術前に催眠について一通り説明しておくのがセオリーだが、今のすばるは南が不思議な力を与えて
くれると思いこんでいて、南の言うことなら何でも聞いてくれるだろう。
(そういう精神状態でいてくれた方がかけやすいわ)
南はまず催眠状態に入れて、すばるの望む効果が出てから説明しようと思った。
「じゃあまず……そうね、そのままでいいから足を伸ばして、思い切り伸び
をしてみて。後ろに倒れちゃいそうになるくらい」
「はいですの……」
「言っておくけど、これは催眠術でもなんでもないからね。ただリラックスし
てもらいたいだけよ」
「え、そうなんですの」
 すばるは何ですのぉという顔になった。緊張がほぐれる。それでいい。
「もう一回。思いっきり伸びて、手も指先までばあっと伸ばして、それか
らだらあんと全部の力を抜いてみて。だらあんと、だらあん、だらあん」
 南は我ながらどこか間抜けなアクセントだなと思いながら繰り返す。すばるも面白がってちょっと笑い、
言葉通りに深々と息を吐き、手足をだらしなく投げ出した。
「それでいいわ。楽になったでしょ? じゃあもう一回。そぅら、腕を伸ばし
て、体中をぴんと伸ばす感じで、伸びて、伸びて、延びて、そう、目一杯伸ば
して。苦しいくらいになったら、はいだらあんとして、だら〜ん、だら〜ん、息も深あく吐いてみて、」
 すばるは本当に気持ちよさそうに椅子の上で脱力した。
 南はさらにもう一回伸びをさせた。すばるはもう体に力を入れるのが面倒そうだ。南は少し言葉を変え、
暗示を忍びこませていく。すばるはまだ催眠をかけられているとは思っていない。
288こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:27 ID:YgdtlbL5
もうちょっと力を入れてみて、少し力んでみて、自然と全身が伸
びていくわよお、全部伸びきったら、はいだらあんと、だらあん、
、力が抜ける、体の力がどんどん抜けていく、手も、足も、だらあんと
なって、すごおくリラックスした、いい気持ち、」
 すばるはまぶたが半分閉じたようになっている。南はもう一回やらせた。すばるは今度はもう眠りこん
でしまいそうな顔つきになった。
「目を閉じてもいいわ。目を閉じて、目を閉じて、今度はいっぱい息を吸ってごらんなさい、そう、
たあっぷり息を吸いこんで、ふうううっと全部吐きだしてえ、ほうら、もっとだらあんとなって、
 力が抜けていくでしょう? いい気持ちになったよね。もう一回吸ってえ、そう、ゆうっくり吐いてえ、
 体の力が抜けてくるう、とおてもいい気持ち、もうどこにも力が入らないよ、どこにも力が入らない。
 いぃい気持ち、とぉってもいい気持ちぃ、」
 目を閉じたすばるの首がぐらぐらしはじめ、やがてがくりと前に傾いた。
 南はその額に手をあてて、静かに起こしてあげる。
「首の力がすぅっと抜ける、首の力がすうっと抜けてえ、どこにも力が入らない、」
 すばるにそう暗示を与えて首を上向けさせると、それまであったわずかな抵抗が完全に消えた。
 額を押しながら頭を大きく上向かせる。すばるの唇が半開きになった。南は右に左に、ゆっくりと揺らし
、回してやる。
「ほうら、こうされていると、頭の中がゆらゆら揺れて、もうなんにも考え
られない。ゆうらゆうらと頭が揺れてえ、もうなんにもわからない、何か余計なことを考えちゃうかも
しれないねえ。でも浮かんできた片っ端からどこかへ流れていっちゃうの。だからなんにもわからない。
 頭が揺れる、ぐらぐら揺れる、揺れて、回って、いい気持ち、」
 南はリズムをつけて歌うように言う。すばるの体は簡単に揺れ動く。手をだらんと体の脇に垂らし、
もう南のなすがままだ。
289こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:28 ID:YgdtlbL5
「すごおくいい気持ちね。なんだか深い海の底でゆらゆら揺れているみた
い、今から私が十、数を数えるよぉ。一から始めて、十って数えて指を
こんな風に鳴らすと、今よりももっともっと深ぁい所に入っていって、もっ
ともっと気持ちよくなるよ、」
「はいひとーつー」
 と南は言いながら少しだけ額を押す。ゆっくり元の状態に戻したところで、
「ふたーつー」またそっと押す。
「数が増えるたびにどんどん深い所へ入っていく、」
 五つで手を離した。しかしすばるの首はゆるやかな前後運動を続ける。南も首が後ろに倒れたところに
タイミングを合わせてカウントした。
「ここのーつぅ。次でとっても深い所に入るうーはいとぉお!」
 パン!
 南は平手を叩いた。すばるの指がぴくっと動いた。深々と息を吐く。暗い静かな所へぐうんと沈んでいく
イメージが南の頭の中にも湧いてきた。
 間違いなく、すばるはもう相当に深い催眠状態に入りこんでいる。
 南はもうちょっと手間取ると思っていたんだけが、すばるがそれだけ自分を信頼してくれているのかと
思って嬉しくなった。
「ほうら、すううううっと、深ぁいところへ入っていくよ、もうどこにも力が入らない、何も考えられない、私の声の他は何も聞こえない、もう何もわからない、」
 すばるの首が斜め後ろに倒れ、引っ張られるように体がぐらりと傾いた。お尻が前へ滑りだし、椅子から
転げ落ちる。南は急いで支え、頭を打たないようにしてやる。すばるの長いフレアスカートがめくれて太腿
の上の方までのぞいている。とっても色っぽい。
「じゃあすばるちゃん、立ち上がってみようね。体に力が入るよ。体に力が入ってきて、楽に立ち上がるこ
とができる、」
290こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:29 ID:YgdtlbL5

 すばるはそれこそ操り人形のように、まったくの無表情のまま身を起こした。目はまだ閉じたままだ。
「静かにまぶたを開けてごらん。なぁんにも見えない。なぁんにも見えない
、」
 南はうつろな目の前で手をひらひらさせてみた。すばるの目は動かない。焦点がどこにも合わないまま、
じっとどこか遠くの方を見るような感じでいる。
「はい、じゃあ目を閉じて、深いところに入っていくよ、もっともっと深い所に入っていく、」
 腰を支えてちょっと揺らしてやりながら、いよいよ本題の暗示を与えはじ
める。
「これから私の言うことをよく聞きましょうね。
 すばるちゃんは漫画を描くのが大好き。白い紙に夢を広げ、自分の描きたいものをそのままイメージした
通りに手が動く、売上なんか関係無く、世界中の読者の面白いと喜ぶ顔が大好き。そうよね」
 すばるの顔がほころんだ。南はそうやってすばるに漫画を書くのが上手になると思われるような暗示をか
け続けた。
 皆実は一通り暗示をかけ終ると、すばるを椅子に座らせ、覚醒暗示を与えた。
「今から十数えてぱんと手を打つと、すばるちゃんはとてもすっきりした気分で目が覚めるよ、」こうして
南はすばるを覚醒させた。
 すばるはぼんやりした表情でいたが、すぐに目をぱちぱちさせ、驚いたように周囲を見回した。
291こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:29 ID:YgdtlbL5

「ぱぎゅ……?」
「気分はどう?」
「南さん…………私…………ぱぎゅう?」
「頭が痛かったり、嫌な感じがしたりしない?」
「大丈夫ですの…………だけど…………今、何かしてましたですの……?」
 南は特に忘却暗示は与えなかったが、すばるは深い催眠状態に入ったので、催眠中の記憶が飛んでいるの
だろう。
 南はちょっとしたいたずら心を起こした。
「すばるちゃんに魔法をかけてあげたのよ。これで明日からはずっとうまくなっているわ」
 南はここでも催眠のことを説明しなかった。そうやって、すばるに暗示の効果が出るのを、当のすばる自
身がびっくりするところを見物してみたかった。
「本当ですの!?」
「ええ。じゃあ、今日はこれでおしまい。暗くなってきたから、気をつけて
帰ってね」
 すばるは腕時計を見てまた驚いた。
 一緒に廊下を歩きながら、すばるはしきりに首をかしげていた。
 南はその様子が面白くて、催眠についてはすばるが効果を確信してからあらためて説明すればいいと思っ
た。それからもう一度施術してあげよう。そうすればもっと効果が出る。本人が心からかけてほしいと思っ
てくれた方が暗示の効き目は強い。

 南には解らなかった、これが失敗であることが、取り返しのつかない、最悪の……。
292こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:31 ID:YgdtlbL5
数ヶ月後。すばるは大手作家になっていた。

今回は遂に和樹さんや詠美さんよりも多く本が売れたですの☆
 自分でも信じられないですの☆
 それもこれも全部、南さんのおまじないのおかげですの☆
 余分な事を考えず、自分の描きたい漫画が描けるようになったですの☆
 これでみんなが愛と正義に目覚めてくれればうれしいですの☆
 「なにが愛と正義だ、とんでもないズルをしたくせに。」
 なんですの、そんなこと言う人は。ズルとはどう言う事ですの?
 「ふざけるな」
 すばるはふざけてなんか無いですの☆
 「おまえの同人誌がバカ売れしてる理由、俺は知ってるんだぞ。」
 な、なにをですの?
 「おまえが牧村って女によって、いんちきを施されたってな。」
 ぱぎゅう…?
 …いんちき…って何ですの…?
 「そうだ。だいたい過去全ての漫画描きであんな事をやった奴なんか誰もいない」
 そんな…ですの。
 「だから、今のお前は実力じゃない、いんちきだけの砂上の楼閣だ」
 南さんがすざくにしてくれた事はいんちきですの?
 でも、南さんはそんな事一言もいってないですの。
 「だから牧村って女もいんちきなんだよ。二人そろっていんちきだ」
 …ちがうですの…南さんはいんちきじゃないですの…。
 「これは漫画その物に対する重大な冒涜だ」
293こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:32 ID:YgdtlbL5
…冒涜…ですの…?
 「おまえは漫画と同人誌と即売会を冒涜し、汚したんだよ!」
 …いや…ですの…。
 「だからおまえはズルをした罰を受けなければならない」
 …罰…ですの…?
 「そうだ。罰を受ければ今度こそ本当に正しい同人誌を作れる。
 おまえの好きな愛と正義を伝える事が出来るんだぞ」
 …罰を受ければ…ですの…?
 「おまえが罰を受ければ、牧村って女のズルを見逃してやろう」
 …すばるが罰を受ければ…南さんは助かるですの…?
 「おまえが反抗するなら、共犯の牧村に罰を受けてもらうが」
 いやですの!
 「南さんは悪くないですの。全てすばるが悪いんですの。
 すばるが自分勝手な話を持ちかけたから…」
 「じゃあ、おまえが罰を受けるんだな」
 …全て…すばるが…悪いんですの…。
294こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:33 ID:YgdtlbL5
 とある即売会が終了し、撤収作業も終りに差し掛かった頃、
 「牧村南って、あんたか」
 南は、眼光が酷く鋭い男達に呼びとめられた。
 「そうですけど、なにか御用ですか?」
 初めて見る男達だった。喩えるなら、小林よしのりの漫画に出てくるサヨクやらシナ人鮮人やらアメリ禍
や淫具乱奴や漏シ唖や腐乱巣の白人のような胸糞悪い雰囲気を持つ男達が10人ほど連れたっている。
見た所不良高校生といった雰囲気で、運営スタッフでもボランティアでもない様だった。
 最初に話し掛けたのはリーダー格の男だろう。
この男は胸糞悪い雰囲気の上に粘着質の視線を南に投げつける。
その男がいった。
 「更衣室に来てよ」
 「更衣室って、男性コスプレイヤー用の更衣室ですか?」
 南が訊き返す。
 男達はそうだと告げると、南を誰も居ない男性用更衣室に連れこんだ。
 更衣室に入るとリーダー格の男が言った。
 「すばるって女が見て欲しいってよ」
 「すばるちゃんが?」
 南はその男の印象と、すばるとが繋がらなかった。
 「ほれ、出て来い」
 その男がすばるちゃんを呼び出そうとしている。
 「どうしたの?」
 南は、少々訳が解らないまますざくが出てくるのを待った。
 「あっ…南さん……」
 「すばるちゃ……!」
 南は、すばるを見て愕然とした。
 すばるは自分の青く長いフレアスカートを自分の胸あたりまで捲り上げていた。
 それだけでなく、すばるの股間にはあるはずの下着が無く、
 かわりに、股間にある二つの穴両方にローターが捻じ込められていた。
 そして中に埋められたローターが大きな震動音を発てながら、ぐにぐに動いてすばるの両穴を貪っていた。
  南は、男に声を荒立てて詰め寄った。
295こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:34 ID:YgdtlbL5

 「あっ、あなたたち!すばるちゃんになにを…!」
 男が鼻で笑いながら、
 「おっと、勘違いするなよ。この女が自ら進んでやってる事なんだ」
 「なっ、なにをバカな事を、今すぐすばるちゃんを放し…!」
 訳のわからないまま、すばるを助けようとする南、しかし
 「そうですの。南さん、これはすばるが自分でやってる事ですの…。」
 すばるの口から、南の想像を超えた言葉が吐き出された。
 「なっ…何ですって…!」
 半分涙声のすばるが続ける。「すばるは罰をうけているですの…」
 「ばっ…罰って何よ…!」
 「南さんがすばるにしてくれたこと、あれはいんちきでズルで創作活動に対する冒涜なんですの…」
 「……?」南はすばるの言ってる意味がわからない。
 「だから、今のすばるはいんちきですの…。絵も、お話も、売り上げも、
 和樹さんや詠美さんと対等な今の地位も、全部ズルといんちきの上に成り立っているですの…」
 「…もしかして、すばるちゃん、『あの事』(催眠術)をいっているのかしら…」
 南の背筋に悪寒が走った。
 「だからすばるは、今こうして罰をうけているですの…」
 「違う!」
 南は大声で叫んだ。
 「すばるがいけないんですの…。すばるが和樹さんに嫉妬して、
 変な色気を出したばっかりに、南さんにも迷惑かけて…」
 「そんな、そんな悲しい事を言わないで…」
296こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:35 ID:YgdtlbL5
 (私がしたことは、気に病んでいたすばるちゃんを気分を楽にさせて、
 ほんのちょっと彼女の背中をポンと押してあげただけなのに)
 「漫画家さんにも、小説家さんにも、絵描きさんにも、ゲーム屋さんにも、
 今まで催眠術に頼った方は誰もいませんですの…。すばるだけが…ズルしたんですの…」
 すばるは、催眠についての知識がない。
 南は魔法と言ってすばるをからかった。
 そのせいですばるは、何か不正をしたのだと、真っ当ではないことをされたのだと思いこんだのだ。
(そうえば、「なぁスの字、あの時、いきなりウマなったよな?ウチに隠れて秘密特訓でもしてたんちゃ
う?』」
 って由宇ちゃんに尋ねられても、「いや…………別に…ですの…」と曖昧な笑みを浮かべて逃げてたわ
。すばるちゃんは自分一人だけ上手くなろうとするような子じゃない。
教えなかったのは、"魔法"の力でうまくなったことに罪悪感をおぼえていた
から。
 和樹さんも、 「すごいよ。俺が教えてほしいくらいだぞ、うらやましい」なんて言ってたっけ。
 和樹さんは向上心が強い。すばるちゃんの実力、売り上げも信じられない急上昇の仕方を見て奮起した
のだろう。
 しかも詠美ちゃんが、
 「ちょおちょおむかつくぅ!どんなあやしげな魔法を使ってんのよ!真の実力者は、この詠美ちゃん様
だけなんだからぁ!!ふみゅ〜ん」
 詠美ちゃんは知ってか知らずか、とにかくこれがすばるちゃんの罪悪感を決定的にしてしまったのだろう。
憧れのカリスマ同人作家達が一斉に羨望の眼差しを向けるようになった
 すばるちゃんの同人環境はまばゆいばかりに激変した。そのきっかけは
 自分の、不正。
 みんなが賞賛すればするほど、和樹さんが奮起すればするほど、
すばるちゃんの中に深く突き刺さってくる)
 南とすばるとの誤解だった。今日明日にでも催眠についてきちんと説明
して、他の子にも同じことをしてやれば、すぐに解消できたはずのことだっ
た。
297こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:35 ID:YgdtlbL5

 だが、それより早く、この男はすばるをずるをしてうまくなりやがってと散々に責め立て、引け目を感
じていたすばるをすっかり打ちのめした。
だからわずかな時間で完全に彼らの奴隷に成り下がった。
 すばるの生真面目な性格が裏目に出たのだ。
 南に声をかけたときの奇妙な表情、あそこにあって、南が読めなかった
のは、罪悪感と、隠していた罪が明らかになった安堵だったのか。
「すばるちゃん、しっかりして! あれはずるじゃないの!」
 南は必死に叫んだ。 だが、
「いいんですの、南さん………私、反省してるですの………だから……」
 すばるはうつろに口にした。言いながら腰をみだらにくねらせた。
「やめなさい!反省? こんな陵辱が反省だというの?ただ、この男達がすばるちゃんを犯したいだけなの
よ!それに、こんな事で反省なんか出来るわけないでしょう!」
 南は激怒した。そんな言葉ではとても物足りない、激情を。
 リーダー格の男に飛びかかり、平手で頬をぶった。 そして首を締め上げる。
「南さん、やめて…ですの………」
 すばるの懇願が耳に流れこんできて、南は我にかえった。
でなければこの後何をしてしまっていたかわからない。
 男は喉をぜいぜい言わせながら仲間たちの後ろに逃げこんだ。
「すばる、反省してるですの………南さん、怒らないで………すばるが悪い
ですの、すばるが、だから……」
「すば……るちゃ…ん…」
 南は涙があふれてきた。 言わなければならないことが山ほどあるのに、口ばかり動いて、声にならない。
298こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:36 ID:YgdtlbL5
(すばるちゃん、違うの。
 催眠はずるでも何でもない。メンタルトレーニングの一環として、あちこ
ちで使われているのよ。
 催眠は魔法じゃなくて、技術なの。やり方を覚えればあなたにもできる、
そういうもの。
 あんなに上手くなったのは、元々あなたが素質を持っていたから。それが
発揮されただけ。あなたには能力があるの。誇っていいのよ!
 あなたは何も悪くない!
 こいつらが、こいつらが……! )
「……ひどいな、南さん」
 リーダー格の男がまた言ってきた。
「自分がやったことを暴力で誤魔化そうとするなんて。そういう人だったな
んてな。だからこの女にもずるさせたんだよな」
「違う! すばるちゃん、しっかりして! 私の話を聞いて!」
「おいすばる、この女はまだお前にずるさせ続けるつもりだぜ」
「……南さん、やめて…………もう、すばる、ずるしたくないですの………」
「ははははは、いいぞ、よく反省できてるじゃないか!」
 ボケリーナと呼ばれる南が初めて持った感情、『絞め殺してやりたい』
 南にとって口惜しい事に、この男は催眠については無知で、ついでに品性は下劣を通り越して最低だが、
人の心の操り方をよく心得ているらしい。
 心をおかしな方へ誘導されたままのすばるの中では、
すばると南はずるをした共犯同士。この男たちはその歪んだ性根を
叩き直してくれる指導者となっている。
 男の言葉はすばるにとっての"正しい"構図を補強する。
どんな人間にとっても、自分が正しいと思っていることに同調して
もらうのは快感だ。
だからすばるには男の言葉が心地よい。心地よいからますます
受け入れる。
299こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:37 ID:YgdtlbL5

私よりも男の言葉の方を受け入れ、自ら望んで奴隷に堕ちてゆく。
(どうすればこの構図を崩せる?
 一番いいのはこの場から逃れること。ここは文字通り閉鎖された空間だ。こういう場所では己を取り戻す
のは難しい。
 だが相手は大勢の男達。簡単には逃してくれないだろう。下手に反抗して
興奮させたら、もっとひどいことになる可能性もある。 ーどうしたらいい?)
「それで…………私を呼びだしたのは、なぜかしら?」
「……ふふ、決まってるじゃないですか、罰を受けてもらうんですよ、ずる
をさせた罰を…………」
(やっぱり。)
 たしかに不良男子高校生丸出しの考えだ。
「………………」
 ショックを受けた風に押し黙っていると、案の定男は言いつのってきた。
「嫌なんですか。別にいいですよ。こいつがこんなになっているビデオが2ちゃんねるで流れるだけだ
から……」
「なんてこと……」
 そんな時、リーダー格の男が突然提案して来た。
「南さん……自分に催眠術ってかけられる? くく……」
「………………?」
 南は頭が回転して、意味を理解できるようになるまでに少しかかった。
「かけられるけど…………それが……?」
「じゃあ、南さんには自分に催眠術をかけてもらいましょうか」
「………………」
「いやならいいんですよ、このままこいつを公衆便所にするだけだから」
「ま、待って」
 南は頭の中の霧が一気に晴れた様な気がした。
 (これは…………チャンスかもしれない!)
「どんな催眠を……かけるつもりなの……?」
300こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:37 ID:YgdtlbL5

「それはね、南さんが俺の言った歳になっちゃう催眠術」
 やっぱり。 南は、男が催眠術については詳しくないことに安堵した。
 (確かに自己催眠というものがあるにはあるけど、あくまで深くリラックスする程度のもの、人格変換
や年齢退行ができる記憶支配段階に達する
のは他人の力を借りないと無理よ。それを知らないなら、言うとおりになったふりをして、逆手に取って
やる)
「さ、やってください」
 すばるが自分でスカートを捲り上げたままなのを横目で見て、(なんとしてもすばるちゃんだけは助け
ないといけない)と意を決した南は、ベンチに腰かけ手を膝の上に置いて目を閉じた。
 少なくともかかったふりはしてみせなければならないのだから、軽いトランス状態ぐらいにはなった方
がいいだろうと思った。
 南は深呼吸をし、体の力を抜く。
(手が温かい…………手が、温かなお湯にひたしたみたいに、じわーっと温
かくなってくる……)
 手や足が重く感じる、いわゆる重感暗示から入るのがオーソドックスな手
法だが、常日頃から自己催眠を練習している南は、これですっとトランス状態に入ることができた。
(気が楽になる…………お腹がぽかぽかしてきて、額はすーっとしてくる…
…)
 南のまぶたがひくひくする。手足が痺れたようになってぴくぴくし出した。
 だが、これまでにない激情のすぐ後にリラックスの暗示を与えたせいか、南の意識が急激に薄らいでい
った。意識だけは残さないと行けない南はさらに意識を集中させる。(いけない、このまま眠っちゃう、
集中、集中、)
 男の手が触れてきたのはその瞬間だった。
301こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:38 ID:YgdtlbL5
南の表情筋の変化を男は見過ごさなかった。
 人間、特別な訓練でも受けていない限り、必ず内心は顔に現れる。
 南の目尻がゆるみ、頬も垂れ、完全にリラックスしきった、だらしないくらいの顔つきになった。さっ
きまで痙攣していたまぶたが今はしっかりくっついている。
 かなり深く催眠に入ったことを表していた。
 男は手を伸ばし、南のこめかみを押さえた。
「!?」
 南は驚いて目を開けたその顔を上向かせ、のしかかるようにしてのぞきこむ。
「俺の目をじいっと見て…………じいっと…………ほうら、もう目が離せな
い…………目を閉じることができない…………!」
 南は愕然としたように身じろぎしたが、強く投げかけた男の暗示に
絡めとられて、視線をそらすことができなくなり、目を丸くしたままでいる。
(俺が催眠術についてまるきり無知だと馬鹿にしていただろう?
 残念でした。実際にやったことはないが、テレビや映画で色々見て、大体
のことは知っているんだ。
 もっとも、一からかける自信はなかったから、途中までこいつ自身にやって
もらうことにしたのだが)
 男は作戦の大成功で歓喜に打ち震えた。
 南の頬から鼻のあたりが激しくひきつっている。目を閉じたいのに
閉じられない。どこをどうすればいいのかわからなくなっている。
 南に催眠をかけているリーダー格の男は、すばるが声を出させないように「今から皆実さんは罰を
受ける。おまえは邪魔するんじゃないぞ」と言い含めてから声のトーンを落とし、南に向かってゆった
りとささやきかける。
302こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:39 ID:YgdtlbL5

「目を閉じたいでしょう? でも閉じられない。目がしょぼしょぼして、痛
くて、たまらないでしょう? 閉じたい。まぶたを下ろしたい、俺がハイって言ったら、その目がすっと
閉じますよ、閉じるよ……ハイ!」
 男が鋭く言うと、南は一度だけびくっとして、まぶたが幕でも下ろすよ
うにすっと下がっていった。赤くなってきていた瞳が隠され、にじんでいた
涙が粒になって流れていった。
「そうら、すご〜く、すご〜くいい気持ちだ、あたたか〜い、まっく
らな所へ〜、ぐんぐん沈んでいく、いい気持ちだ、すご〜くい
い気持ち、もうどこにも力が入らない、首ががく〜んと後ろ
に垂れてえ、体の力がすうっと抜けてえ、そうら、もう完全に体
の力が抜けてしまった」
 首が後ろに倒れてゆき、上体が傾くに合わせて腿の上を手が滑ってゆく。それまで視線を気にして
ぴったりくっついていた
膝が離れ、スタッフ衣装のタイトスカート(電撃大王)のすそから白いパンツがのぞいた。
南は完全にかかっている。
 男は南の頭の後ろへ手を入れ起こした。
「今から三つ数えると、南さんは目を覚まします。それから俺が手を目の前にかざすと、あなたはまた
今と同じ催眠状態に入っていってしまいます。その時には、もっともっと深い、もっと気持ちいい状態になることができますよ」
 三つ数えると南はぼんやりと目を開けた。 顔にはさっきの涙の後が残っている。
「さあ南さん、この手を見て、じっと見て…。この手が額に触れると、あなたはまた深いところに入って
いく…」
 軽く額を叩く。まぶたが落ち、かくんと後ろに倒れてゆく。
「深〜く、深〜く、さあ、三つ数えると、また目を覚まします」
「ほうら、この手をじっと見て」
「はい、また深く、深く眠る、もっともっと深い催眠状態に入っていく、すご〜くいい気持ちだ、」
 数回繰り返すうちに、南はすっかり男の言いなりになってしまった。
303こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:39 ID:YgdtlbL5

「もう何も考えられない、お前は、深い所に沈んでいて、俺の声しか
聞こえない、俺の言うとおりにするのがとても気持ちいい、お前は深い催眠術にかかっている。俺に
催眠術をかけられるのはとても気持ちいい。気持ちよくて、逆らおうという気にならない。逆らったら
、体がものすごく重たくなって、つらくてつらくてたまらなくなってしまう。わかったな。わかったら、
返事をするんだ」
「………………はい……」
「それじゃあ駄目だ。もっとしっかり、はい、わかりました、ご主人様と言
え。そう言ったらとても幸せな気分になれる」
 南は抵抗するように唇を震わせた。
「言わないと脳に電気の粒子が走って、体中が電気でびりびり痙攣してくる、体中が電気で痺れて気持ち
悪くなる」
 それでも南が我慢していると、男は電気の量をだんだん強くした。
 その暗示を重ねると、猛烈な電撃に耐えかねたか、体中震わせながら口にした。
「ははは、はいいいい、わわわかかりりままししたた、ごごご、しゅしゅしゅじじんんん、さささまま
ままま、」
 すかさず肩を押さえ、左右に揺らしてやる。
「そうだ、よく言えた、言えたから、ほうら、電気の痺れがなくなって、も
のすごくいい気分だ…………とても気持ちがいい…………たまらない快感だ……」
 南は安堵の笑顔を浮かべ、熱い吐息をついて身をくねらせた。
 手を引いて立たせた。目を開けさせる。皆が息をのんだ。いつもにこにことしていた南が、蝋人形の
ようなうつろな目に変わり、あらぬ方向を見つめたまま身動きひとつしない。
「よし、目を閉じて…………俺の言うことをよく聞くんだ。
 今から五つ数えるとお前の意識は元に戻る。でも俺に催眠術をかけられた
ことは覚えていない。俺のいいなりになりたいということで頭がいっぱいで、他のことは何も考えられ
ない。でもお前は催眠術にかかったままで、俺の言うことにはなんでも従ってしまう。わかったな。
じゃあ数えるぞ。ひとつ、ふた
つ、みっつ、よっつ、いつつ、はい!」
 南は目が醒めたように表情が戻った。しかし南は醒めた後もリーダー格の男を名にかを待ち望んでいるか
のような表情で見ている。御主人様の命令を待っているのだ。
304こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:40 ID:YgdtlbL5
 「南」男は奴隷を呼んだ。
 「はい、ご主人さま」皆実が応える。
 「あの女にお前の催眠術を施してやれ」
 南はためらいもせずすばるに向かった。そして、自分のスカートを捲ったままのすばるの両腕を軽く握る

 「すばるちゃんは催眠術にかかりました、ほうら気持ち良くなって、なにも考えられない、どんどん深く
入れば入るほど、どんどん気持ち良くなっていく…」
 あれから何度も南から催眠術を施されたすざくは、簡単に催眠状態に入った。
 そこで男が南にある命令を出した。それを南は忠実に行う。
 「すばるちゃん、いまから私の声は男の人の声になります。その男の人の声を聞いたら、すばるちゃんの
意識はさらに奥深くに沈んでいきます。もっと深い催眠状態に入ります、いち、にぃ、さん、」
 「はい!」男の声が南の声に割って入った。
 「さあ、これですばるはこの俺、松原海里の催眠術にかかった。もう俺の声しか聞こえない、俺の声を聞
くととても気持ちが良い、常に催眠状態のままで居たくなる、俺に逆らったら脳に電気の粒子が跳びまわり、
体が芯から痺れ出して気持ち悪くなる。俺の言う事を聞いていれば、体の心から温かくなりとても気持ち
良くなる」
 海里はすばるに暗示をかけていく。
「すばる、わかったな。わかったら、返事をするんだ」
「………………はい…ですの…」
「それじゃあ駄目だ。もっとしっかり、はい、わかりました、ご主人様と言
え。そう言ったらとても幸せな気分になれる」
 南によって催眠術にかかりやすくなっていたすばるは、抵抗して電気で痺れるそぶりもみせずあっさりと

「はい…ですの………わかりました…ですの…………ご……しゅじん……さま……」
 海里は南にそうしたようにすかさずすばるの肩を押さえ、左右に揺らしてやる。
「そうだ、よく言えた、言えたから、ほうら、体の芯が温かくなって、ものすごくいい気分だ…………
とても気持ちがいい…………たまらない快感だ……」
 すばるは安堵の笑顔を浮かべ、熱い吐息をついて身をくねらせた。南によって催眠の導入を受けた
ことも、この容易さに繋がっていた。
305こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:41 ID:YgdtlbL5

 海里は二人を跪かせると、
 「すばる、南、俺が今から三つ数えたら目を開け。そしてお前達の目の前に出される物をしゃぶれ。
しゃぶらないと脳に電気の粒子が跳びまわり体が芯からびりびり痺れてどんどん気持ち悪くなる、
音を立ててしゃぶればしゃぶるほど、体が芯から熱くなって幸せな気持ちになってくる」
こう海里がいうと、二人の目の前には10本ほどのペニスが突き出された。
 海里が「いち、に、さん!」と言った。目を開いた二人の目の前には、沢山のペニスが並んでいる。
 彼女達はさいしょはためらっていたが、電気で痺れる暗示を重ねられるとやがて派手な音を立てながら
しゃぶり始めた。
 「はむっ、ちゅう、ぶちゅうう、ぺちょ、ぶちょぺちょ」
 「ほかのも手を使って扱け」
 海里の命令で2匹の奴隷は両手にペニスをつかんで扱き始めた。特にすばるはまだ二つのローターを両穴
に入れたままだ。
 「ちゅうちゅう、ちゅうぶちゅう、ぺちょ、べちょぶちょ」
 「出すぞ、全部飲み込め!」口に含んだペニスから射精された。
 「ちゅうちゅうちゅうちゅうぶぞうじゅるじゅるぶちゅ」
 2匹とも命令通りに精液を全部飲み込んだ、そして
 「…ちゅううううう」尿道に残った精液も全部吸い出した。
 その最中にも手で扱いていた他のペニスが次々に射精し、南とすばるの顔を白くべとべとにした。
 「よし、南、すばる」
 海里の声に二人は精液べとべとの顔を命令を待つメイドの表情で向けた。
 「俺が三つ数えると『お願いですセックスしてください』と繰り返し言い続ける。言い続ければ言い
続けるほど脳とま○こに電気の粒子がじりじり飛び交い、体の心が熱くなってとっても気持ち良くなる、
脳とま○こが電気でびりびり痺れて、たまらなく気持ち良くなる、いち、にっ、さん!」
 海里が言い終わると間髪入れず二人は言い始めた。
306こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:42 ID:YgdtlbL5

 「お願いです、セックスしてください、お願いです、セックスしてください、お願いですセックスして
ください、お願いですセックスしてください、お願いですセックスしてくださいお願いですセックスして
くださいお願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてくださいおね…」
 まるで壊れたCDプレーヤーのように南とすばるはその言葉を言いつづけた。言えば言うほど二人の顔
は喜悦に満ち、あそこは小便を漏らしたかのようにぐしょ濡れだ。
 海里は高らかに笑いながら、取り巻きの男達に南の下着を脱がしすばるのローターをはずさせ、挿入の
準備を差せた。
 「南、すばる、お前達はま○こにちんぽを挿入されると、これまで生きてきた人生の中で最も激しい
快感を得るようになる。気持ち良すぎて、あそこにちんぽを入れてくれることだけを望むようになる」
 そう言い終わると一気に突き入れた。
 「あひいいいい」二人は獣のように嬌声を上げた。
 あまりに滑らかに入っていったので、その勢いで処女膜を突き破った。
 「ぎゃひいいいいい」暗示によって、処女膜を破られた激痛さえこの世のものとは思えぬ快感となって
南とすばるを襲い、二人ともそのショックで白目をむいてしまった。
 「気持ち良いか、気持ち良いだろ」
 海里は容赦無く白目を剥いた二人に服従の言葉を要求する。
 「気持ち良いです、ご主人様、気持ち良いです、ご主人様、きも…」
 「気持ち良いですの、ご主人様、気持ち良いですの、ご主人様、きも…」
 二人は白目をむきながら服従の言葉を復唱させられながら突き上げられていた。そして二人で十人以上
の男達の精液を膣と肛門にぶちまけられた。
 「気持ち良いです、ご主人様、気持ち良いでえぇぇえええぇぇぇ!!」
 「気持ち良いですの、ご主人様、気持ち良いですのおおおぉぉおおぉぉ!!」
 
307こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:43 ID:YgdtlbL5
 「南、すばる、起きろ、催眠術にかかったままでな」
 陵辱が終ってすぐに、激しい疲労で眠っていた二人をたたき起こした。
 二人は、すぐに体をよろけさせながらも起き上がり、ぼうとした表情で海里の命令を待っている。
着衣こそしている物の、上は胸が丸見えになるまでめくれあがり、スカートも股間が見えるぐらい捲り
上がっている。そして、衣服の全て、身体中が精液でべとべとだ。
「そうそう、それでいい」
「はい…………ご主人さま……」二人は声を揃えた。
 二人が催眠状態のままなのを確認すると、海里は次の暗示を与えた。
「『淫乱マゾ奴隷』、これからずっと『淫乱マゾ奴隷』と言われると南とすばるは深い催眠状態になって
、この俺、松原海里の言うことを何でも素直に聞く、とっても利口な、いい女になるんだ。わかったな?』
『はい……南は、すばるは、いつでもすぐに催眠状態に入ります、の……』
『ははは、よくできた。じゃあ、今からお前達は声を揃えて数を一万数えるんだ、そう、一万だぞ、
いち、に、と数えて一万まで数えるんだ。声を揃えて数え終わると、お前達は今催眠状態になったことは
すっかり忘れて、二人残って会場の撤収作業が終わった事を喜んでいる。何一つおかしなことは起こって
いない。何も思い出せない。口や顔や股間や身体中の精液にも全く気付かないし、見えもしない。でも、
キーワードは心の奥底でしっかりとおぼえていて、いつ、どこででも、言われたらすぐに催眠状態になる
んだ。いいな。じゃあ数えはじめろ』
 南とすばるは一から順番に声を揃えて数をつぶやきはじめる。海里を始めとした男達はゆっくりと後
片付けをして、し終わったら海里は高笑いしながら出ていった。
 二人が一万まで数え終ると、南とすばるはそろってはっとした表情になり、ちょっとだけきょろきょろ
した。そして皆実が言った。
 「ふー、やれやれ、やっと撤収作業が終ったわ」
308こみパ催眠・南&すばる:01/11/08 18:45 ID:YgdtlbL5
夕方まで即売会場だった広いホール。
 その中心に女が二人で会話していた。
 「こんな夜遅くまで撤収作業を手伝ってくれて、助かったわ、すばるちゃん」
 「いいんですの☆ 南さんのお役に立てて嬉しいですの☆」
 「スタッフ以外の即売会の設営撤収は自由参加だけど、すばるちゃんがよかったらこれからも…」
 「ぜひ、参加させてくださいですの☆ 南さんのお手伝いしたいですの☆」
 そう会話し合いながらホールから出ていく二人は、いずれも顔を精液でべとべとにして口の中も精液
まるけ、そして股間から太股にかけて大量の精液とマン汁と鮮血が止め処も無く流れ落ちていた。
 しかし南とすばるは海里の催眠術によって、体中を精液でベトベトにしている事どころか、今の自分が
ノーパンである事にすら気付く事は無かった。

>>284-307こみぱ催眠・南&すばる でした。
引き続き、こみパ催眠・南&瑞希でお楽しみ下さい。
309こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:50 ID:YgdtlbL5
 とある高校の下校時間。
 白とえび茶色のセーラー服に身を包んだ少女が校庭を歩いている。彼女の名前は高瀬瑞希。セーラー服の
上からでも判るバスト92センチの巨乳を異性同性関係なしにからかわれるので、彼女自身は外見に多少コ
ンプレックスを抱いている。だから、いつもは長い髪を右横で青紫色ののリボンでポニーテールのように纏
めている程度のお洒落しかしていない。しかし、そのベビーフェイスな顔と巨乳のアンバランスさは学内
トップクラスの美少女といってもよかった。
その瑞希は、校門をくぐった所で見知った顔に出会った。
 「あれ、南さん、どうしたんですか?」
 「瑞希ちゃんと一緒に、お茶でも飲もうと思って」
 牧村南はそう言って瑞希を誘った。
 瑞希は同人誌サークルで売り子などの手伝いをしていて、さらに即売会スタッフのボランティアもした事
があった。その縁で南とも知り合いになっていた。
 瑞希は不思議そうに「だって、この時間だと仕事のほうはいいんですか?」と訊く。
 「私の仕事は忙しい時と暇なときの差が激しいの。今は暇な時だから大丈夫よ。」南はそう応えた。
 「それだったら、御一緒します。南さん、紅茶に詳しいから会話が楽しくて」瑞希は喜んで了解した。
 「それじゃあ、私の家で紅茶をご馳走するわ」
 「はい☆」
 こうして、南は自分の家に瑞希を入れるのに成功した。
310こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:51 ID:YgdtlbL5
 南の家は狭いアパートの一室だった。しかし、彼女のインテリアのセンスが良さですっきりとして住み
心地良さそうな印象を与えていた。
 「南さんのロシアンティーって殆どイチゴジャムを入れないんですね」
 「風味を付けるだけだから。瑞希ちゃんはジャムもミルクも一杯入れるのね」
 「え、ええ(焦)。でも南さんの飲み方のほうが大人っぽいですよね」
 「そうでもないわよ。寧ろ、瑞希ちゃんのほうが本場の飲み方に近いかも」
 その中で南と瑞希の二人は紅茶談義に花を咲かせていた。
 「あの、南さん、肩こりに効くハーブティーってありませんか?」
 瑞希が話題を変えてきた。
 「肩こり?」
 「ええ、最近肩こりが酷くて、いろいろハーブを買って試してるんですけど、なかなか効き目が無くて」
 瑞希は中学の時からどんどん胸が豊かになり、今ではバスト92cmまで育っていた。その急激な成長の
為、激しい肩こりに悩まされていたのである。
 「そっか、肩こりねぇ」
 瑞希の話を聴いて、南は何か思案していた、ように見せた。
 「突然だけど瑞希ちゃん、催眠術って知ってる?」
 「さ、催眠術ぅ?」当然、瑞希は訝しがった。
 「そ、そりゃあ知ってますけど、何でいきなり?」
 南は瑞希の反応にも落ち着きを払っている。
 「私、大学で心理学を専攻していたんだけど、その過程で催眠術も齧った事があるのよ」
 「は、はぁ」
 「大丈夫よ、心配しなくても」
 「で、でもぉ」瑞希は心配そうな顔になる。
 「瑞希ちゃんも知ってると思うけど、同人作家さんってああいう作業だから、肩こりとかで悩んでる人が
多いのよ」
311こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:52 ID:YgdtlbL5
「ええ、わかります」実際に漫画を描いている作業を手伝った事もある瑞希はうなずいた。
 「だから、そう言う人達に頼まれて、催眠術で肩こりを治してあげるのよ」
 「で、でも、催眠術なんかで治るんですか?」渋る瑞希に、
 「ええ、和樹さんや由宇ちゃんもよく訪ねてくるわよ」
 南は瑞希のサークルの主宰の名前を出した。
 「そっか、由宇ちゃんや…和樹もやってるんだ……」
 クラスメートの少女と幼馴染の少年の名前を出されて、瑞希の心からは不安と猜疑が薄れ安心感と好奇心
が膨らんできた。
 「それじゃあ、ダメモトでやってみようかな」瑞希は催眠術にかかることを承諾した。
 「だめよ」南が言った。
 「えっ?」当然、瑞希は聞き返す。
 「ダメモトなんて気持ちじゃ効果ないわよ。本気で治したいって思わなきゃ」南がダメを押した。瑞希を
本気で催眠術にかけやすくする為に。
 「は、はい。お願いします、南さん」瑞希は気合を入れた。
 「そんなに堅くならなくていいわよ、リラックスして」
 「は、はぁ」瑞希は固い返事だ。
 「さて、っと」
  南が瑞希の肩に手を置くと、瑞希はびくっとした。緊張ありありだ。
 「それじゃあ、はじめるわよ?」
 「は、はい!」
 「…だけど瑞希ちゃん、催眠術ってどんなものだと思ってるの?」
 「どんなものって、言われても…」
 瑞希の催眠術の印象は世間一般で思われている通り、相手をどんな風にでも操ってしまう、魔法めいた
もの。
 「大丈夫だって、瑞希ちゃん、そうだ、あなたテニスをやってるって言ってたっけ」南が話しを振る。
 
312こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:53 ID:YgdtlbL5
「え、ええ。もう引退しましたけど」
 「それじゃ、イメージトレーニングってやった事がある?」
 「は、はい。自分の一番良い状態をイメージする訓練ですよね」
 「そう、それなら話が早いわ。それこそ催眠術が世間一般で活用されている例よ」
 「そ、そうなんですか」実際にイメトレをやった事のある瑞希は理解したような顔をした。
「それに催眠術と言っても、肩こりを治すだけだから、勝負を競うスポーツのイメトレよりはよっぽど軽い
物よ」
 「そうですか。なんか、南さんの話を聴いて安心しちゃったな」瑞希がほっとした顔になる。 南から
催眠術のレクチャーを受けて納得したみたいだ。
 「よかったわ、じゃあまず、そうね、そのままでいいから足を伸ばして、思い切り伸びをしてみて
。後ろに倒れちゃいそうになるくらい」
「はい」
「言っておくけど、これは催眠術でもなんでもないからね。ただリラックスし
てもらいたいだけよ」
「あ、そ、そうですよね、私もイメトレの最初はこういう事をやってました」
 瑞希は柔かな笑顔を見せた。経験した事だから緊張がほぐれる。
「もう一回。思いっきり伸びて、手も指先までばあっと伸ばして、それか
らだらあんと全部の力を抜いてみて。だらあんと、だらあん、だらあん、」
 南は間抜けなアクセントをつけて繰り返す。瑞希もも面白がってちょっと笑い、
 「南さんがテニス部に居れば私ももう少し成績が良くなってたかも」
 と軽口を叩きながらも言葉通りに深々と息を吐き、手足をだらしなく投げ出した。
 「それでいいわ。楽になったでしょ? じゃあもう一回。そおら、腕を伸ばし
て、体中をぴんと伸ばす感じで、伸びて、伸びて、伸びて、そう、目一杯伸ば
して。苦しいくらいになったら、はいだらあんとして、だらあん、だらあん、息も深あく吐いてみて」
 瑞希は本当に気持ちよさそうに椅子の上で脱力した。
 南はさらにもう一回伸びをさせた。瑞希はもう体に力を入れるのが面倒そうだ。南は少し言葉を変え、
暗示を忍びこませてゆく。瑞希はまだ催眠をかけられているとは思っていない。
 
313こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:54 ID:YgdtlbL5
「もうちょっと力を入れてみて、力むくらいにして、自然と全身が伸びていくよわよお、全部伸びきった
ら、はいだらあんと、だらあん、力が抜ける、体の力がどんどん抜けていく、手も、足も、だらあんと
なって、すごおくリラックスした、いい気持ち、」
 瑞希はまぶたが半分閉じたようになっている。もう一回やらせると今度はもう眠りこんでしまいそうな
顔つきになった。
 「目を閉じてもいいわ。目を閉じて、今度はいっぱい息を吸ってごらんなさい、そう、たあっぷり息を
吸いこんで、ふうううっと全部吐きだしてえ、ほうら、もっとだらあんとなって、力が抜けていくでしょ
う? いい気持ちよね。もう一回吸ってえ、はい、ゆうっくり吐いてえ、体の力が抜けてくるう、とても
いい気持ち、もうどこにも力が入らないよお、どこにも力が入らない。いぃい気持ちぃ、とおってもいい
気持ちぃ、」
 目を閉じた瑞希の首がぐらぐらしはじめ、やがてがくりと前に傾いた。
 南はその額に手をあてて、静かに起こす。
 「首の力がすうっと抜けるぅ、首の力がすうっと抜けてえ、どこにも力が入らない、」
 そう暗示を与えて首を上向けさせると、それまであったわずかな抵抗が完全に消えた。
 額を押しながら頭を大きく上向かせる。瑞希の唇が半開きになった。右に左に、ゆっくりと揺らし
、回してやる。
 「ほおら、こうされていると、頭の中がゆらゆら揺れて、もうなんにも考え
られない。ゆうらゆうらと頭が揺れてえ、もうなんにもわからないぃ。何か余計なことを考えちゃうかも
しれないわねぇ。でも浮かんできた片端からどこ
かへ流れていっちゃうの。だからなんにもわからない。頭が揺れる、ぐらぐら揺れる、揺れて、回って、
いい気持ちぃ、」
 南はリズムをつけて歌うように言う。瑞希の体は簡単に揺れ動く。手をだらんと体の脇に垂らし、もう
南のなすがままだ。
 「すごおくいい気持ちだね。なんだか深い海の底でゆらゆら揺れているみた
い、今から私が十、数を数えるよお。一から始めて、十って数えて指を
こんな風に鳴らすと、今よりももっともっと深あい所に入っていって、もっ
ともっと気持ちよくなるわよお、」
314こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:55 ID:YgdtlbL5
 「はいひとーつぅ」
 南は言いながら少しだけ額を押す。ゆっくり元の状態に戻したところで、
 「ふたあつぅ」
 またそっと押す。
 「数が増えるたびにどんどん深い所へ入っていくぅ」
 五つで手を離した。しかし瑞希の首はゆるやかな前後運動を続ける。南も首が後ろに倒れたところに
タイミングを合わせてカウントした。
 「ここーのーつ。次でとっても深い所に入るー、はい、とぉお!」
 パン!
 南は平手を叩いた。瑞希の指がぴくっと動いた。深々と息を吐く。
 瑞希は間違いなく、もう相当に深い催眠状態に入りこんでいる。
 南はもうちょっと手間取ると思っていたが、イメトレの経験と言うよりは、瑞希自身の被催眠性が抜群に
高いと言う事だろう。もちろん、瑞希が南を信頼しきっているからでもある。
 「ほうら、すううううっと、深あいところへ入っていくよお、もうどこにも力が入らない、何も考え
られない、私の声の他は何も聞こえない、もう何もわからない、」
 瑞希の首が斜め後ろに倒れ、引っ張られるように体がぐらりと傾いた。お尻が前へ滑りだし、椅子から
転げ落ちる。南は急いで支え、頭を打たないようにしてやる。横ポニーが揺れ、瑞希の短いプリーツ
スカートがめくれて太腿の上の方までのぞいている。とっても色っぽい。
 「じゃあ瑞希ちゃん、立ち上がってみようね。体に力が入るよ。体に力が入ってきて、楽に立ち上がる
ことができる、」
 瑞希はそれこそ操り人形のように、まったくの無表情のまま身を起こした。
目はまだ閉じたままだ。
315こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:56 ID:YgdtlbL5
 「静かにまぶたを開けてごらんなさい、なあんにも見えない。なあんにも見えない、」
 南は瑞希のうつろな目の前で手をひらひらさせてみた。目は動かない。焦点がどこにも合わないまま、
じっとどこか遠くの方を見るような感じでいる。
 「はい、じゃあ目を閉じて、深いところに入っていくわよお、もっともっと深い所に入っていく、」
 腰を支えてちょっと揺らしてやりながら、いよいよ本題の暗示を与えはじ
める。
 南の目が怪しく光った、様に見えた。
 「これから私の言うことをよく聞きましょうね。肩こりを治すにはまず体を解さなければならないの。
体を解すには、体の中に軽い電気を通して少し刺激する必要があるわ。はい、私が三つ数えると瑞希ちゃん
は体中にぴりぴり電気が走ってとっても気持ち良くなる、体中を走る電流の力でどんどん肩こりが取れて
いく、いいわね?」
 「……はい…」瑞希が虚ろに返事をした。
 南が数える。「いち、にっ、さん、はいっ」
 「あはあんっ」瑞希の体が電気で痺れた蛙の足のようにビクンと撥ね、恍惚とした顔で奮えだした。
 「瑞希ちゃん、気持ち良いわよね、体が軽くなったよね」南は暗示をかけて条件付けをしていく。
 「は、はい。体が軽くなって、気持ち良いです」軽く奮えながら瑞希は喜びの声を上げた。
 「瑞希ちゃん、これから電気の量を増やすと、どんどん気持ち良くなる。電気の量が増えれば増えるほど
体の芯が熱くなって、体が軽くなって、とっても気持ち良くなる。はい、電気の量が増えたわ、どんどん
増えていく」南が言った。
 「あはあぁあぁん」瑞希はとろけそうな表情で喜んだ。
 「瑞希ちゃんが気持ち良いですっていえば言うほど気持ち良くなる」南は矢継ぎ早に条件付けをしていく。
 「気持ち良いです、気持ち良いです、気持ち良いです、」瑞希はそう叫びながらどんどんうっとりした
顔になっていく。
316こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:56 ID:YgdtlbL5

 「はい、もういいわ、瑞希ちゃんは体の力が全部抜ける、そして、体中の電気もスーと消える」
 南がそう言うと瑞希は糸が切れた操り人形のようにがくんと崩れ落ちた。
 それを見届けると南は、瑞希を椅子に座り直させてから覚醒の暗示に入る。
 「これから催眠術の世界の扉を開ける方法を決めましょう。いいですか、瑞希ちゃんは私に両手を握ら
れたら催眠術にかかります。いつでもどこでも私に手をギュッと握られたら深い深い催眠状態に入って、
命じられた通りに動いてしまう操り人形さんになってしまいますよ」
 「はい…」
 「お人形さんになってしまうのを怖がらなくていいですよ。人形は命令のままに動く、人形になれば
自分は何も考えなくていいから楽ちんでとても気持ちいい、だから自分から進んで人形になりたくなる、
そうですね。」
 「はい」
 「じゃあ確認しましょう、瑞希ちゃんはどうされたら気持ちいい催眠術の世界に入ることができますか?」
 「南さんに両手を握られたら、私は催眠術にかかります」
 「そして何になっちゃうのかしら」
 「南さんの言う通りに動くお人形さんになります」
 「そうなるととっても素敵な気分になります、これからはお人形さんになることが瑞希ちゃんにとって
最高の楽しみになりますね」
 「はい、楽しみです」
 「でも、このことは誰にも内緒ですよ、瑞希ちゃんは他の人に話すことは絶対にできないし、話したいと
思うこともないわ、催眠術のことは二人だけの大切な秘密だから、いいわね」
 瑞希はコクリとうなずき、秘密を守ることを南に約束した。
 「それでは今から十数えてぱんと手を打つと、瑞希ちゃんはとてもすっきりした気分で目が覚めます。
当然肩こりも完全に取れています…」
 そうやって南は瑞希を覚醒させた。
 瑞希はぼんやりした表情でいたが、すぐに目をぱちぱちさせ、驚いたように周囲を見回した。
 
317こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:57 ID:YgdtlbL5
「あれ……?」
 「気分はどう?」
 「南さん…?…私…あれ?」
 「頭が痛かったり、嫌な感じがしたりしない?」
 「だ、大丈夫です」
 「肩こりのほうはどう?」
 「肩…?あ、軽い、痛くない、肩こりが治ってる!」
 「催眠術で治したのよ」
 「本当、信じられない、あれだけ悩まされていたのに、本当にありがうございます!」瑞希は満面の笑み
で感謝した。
 「どお?催眠術の効果は」南が訊いた。
 「ええ、すごいです!」瑞希は少し興奮した口調だ。
 「また催眠術をかけて欲しくなった?」
 「えっ?」南の言葉の意味を瑞希はわからなかった。
 「それってどう言う・…」瑞希が訊き返す間も無く、南は瑞希の両腕をぎゅっと握った。
 「あっ…」瑞希の表情が変わった。
 「あ、あっ…。」
 瑞希はうっとりとした表情を浮かべ、潤んだ目で南の顔を見ている。
 「ついさっき経験した気持ちよさが体を包んでいるでしょう。瑞希ちゃんはまた深い催眠術の世界に沈ん
でいきますよ」
 「はい…」
 「さあ、これで思い出せたわね。今、瑞希ちゃんは何になる事ができましたか?」
 「…皆実さんの操り人形になれました」
318こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:58 ID:YgdtlbL5
翌日。
 とある高校の下校時間。
 白とえび茶色のセーラー服に身を包んだ瑞希は、校門の前で見知った顔に出会った。
 「あれ、南さん、どうしたんですか?」
 南は何も言わずいきなり瑞希の前に立つと両手を取り、固く握りしめた。すると瑞希の記憶の中にある
催眠状態になった時の快感が一瞬のうちに甦り、体中がその時と同じ感覚にスゥっと変化していく。
「あ、あっ…。」
(この感覚…、前に何度も経験している、気持ち、いい、とっても、気持ちいい、確か、これは、)
 瑞希はうっとりとした表情を浮かべ、潤んだ目で南の顔を見ている。
 「昨日何度も経験した気持ちよさが体を包んでいるでしょう。瑞希ちゃんはまた深い催眠術の世界に
沈んでいきますよ」
「はい…」
(そうだ、思い出した、これは催眠術だわ、催眠術をかけてもらうととってもいい気持ちになっちゃうんだ、あの気持ちよさをまた味わうことができるなんて、そして私は、)
 「さあこれで思い出せたわよね。今、瑞希ちゃんは何になる事ができましたか?」
 「…南さんの操り人形になれました」
 すっかり催眠状態になってしまった瑞希は南の問いかけに素直に応じる。
 「そうそう、瑞希ちゃんはいつも素直ないい子ね。それじゃ私の家にまでついてきていらっしゃい」
 「はい…」
 こうして、瑞希は南の後をついてアパートの部屋に入った。
 南は瑞希を椅子に座らせると、
 「はい、私が手をパンと叩いたら瑞希ちゃん、あなたは眼を閉じます、閉じて眠ったように意識が無く
なります、しかし、もう一度私がパンと手を叩いたら瑞希ちゃんは催眠術にかかったままで目が開きます、
はい」
 パン。南が手を叩くと瑞希は目を閉じて糸が切れた操り人形のように椅子にもたれ掛った。
 その事を確認すると、南はある人物に電話を入れた。
 「もしもし、ご主人様…」
319こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:59 ID:YgdtlbL5
 しばらくしてご主人様『松原海里』が南の家に入ってきた。
 入ってきた途端、海里はいきなり南の額に手をあて、
 「南、おまえは信用できない。一昨日のこともあるからな、まだ何かたくらんでいるかもしれない、
よって今から、あんたの口をスピーカーにする。
 南の口は、自分の意志とは関係なく、心の奥底で思っていることを何で
も言葉にしてしまうようになる。本当にそうなる、口だけがスピーカーになって心のうちをさらけだす」
 「本当です、奴隷がご主人様の命令を守らないはずがありません、ですが、ご主人様にそのような御疑念
を抱かせてしまう南は慎んで、如何なる罰もお受け致します」
 「ははは…よいよい」海里は苦笑した。
 一昨日に新しい奴隷を調達してこいと命じた時、同じように南の口を心のうちを曝け出すスピーカーに
した時は、
 「いいえ、今は何でもはいはい言って、入れて、満足させてもらって、この場さえ切り抜ければ何とで
もできる、絶対にそんなことは、しない、」
 などと言ってたから、海里は毒電波の暗示で性的に屈服させたのだ。
 (時間はかかったが、まあ満足できる状態だ)
 「首尾はどうだ」相変わらず粘着質な視線で海里が南に聞く。
 「はい、これまでに20回は催眠術をかけてます。催眠術はかければかけるほど、痕が深くなりますから
より深い催眠に誘導できます」
 南が海里に説明する。
 「で、結局どうなんだ?」
 「上々です、御覧下さい」南は海里を瑞姫の前に案内した。
 セーラー服姿の瑞希は、椅子に座ったまま目を閉じ頭をゆらゆらさせている。深い催眠に入っているよう
に見えた。
 「どうぞ、ご主人様の御自由になさってください」
 南の誘いに、海里は南に何事か命令した。命を受けた南は早速両手を叩いて瑞希を起こした。
 瑞希はゆっくり目を開けた。しかし、焦点が合ってないように虚ろな瞳をしている。再び南が言う。
 
320こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 18:59 ID:YgdtlbL5
「私が三つ数えると、瑞希ちゃんは松原海里さまという男の方の奴隷になります。瑞希ちゃんは海里様の
言うことを何でもききます、奴隷とはそういうもの、瑞希ちゃんは奴隷だから、御主人様の言う事は全て
喜んでやり遂げる、逆に海里様に罵られると、ちょっとした一言だけでも涙か止らない程すごく辛くなる、
でも同時にぞくぞくともする、快感が走り、もっとひどい、きついことを言ってほしい、瑞希ちゃんが
そう思っていることを知られたらもっとひどい折檻をされる、嫌なのに、想像するだけで全身を電流が
突きぬける様にぞくぞくしてしまう、わかった?」
 「はい…」
 「いち、にぃ、さん、はい!」
 南のカウントが終るとすぐに、海里が瑞希の目の前に立つ。
 「俺が松原海里だ」
 「はい…」瑞希はとろんとした目で華入を見る。
 「挨拶しろ、ミズキ」
 「はい、私は高瀬瑞希です…」
 「馬鹿が、『よろしくお願いします、ご主人様』ぐらい言えないのか、ブス!」
 海里の罵倒に、瑞希は恐怖と恍惚の表情を見せる。
 「も、申し訳ありません、よ、よろしくお願いします、ご主人様」
 「遅い!」海里が一喝すると、瑞希は激しく怯えて、
 「お、お許し下さい、ご主人様」と深々とひれ伏した。しかし、ひれ伏した瑞希の股間から粘り気のある
液体が流れてきた。
 「南、お前は俺と瑞希との行為を見届けるんだ。見れば見るほどお前は体中に電流と快感がかけ回り
続ける、脳と股間が電気で痺れて気持ち良くなる」
 「はい」南は、海里と瑞希が見える位置で手を股間前の位置に添えて起立した。
 「瑞希、セーラー服はそのままで、下着だけを脱げ」
321こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 19:00 ID:YgdtlbL5

 いきなりの命令に、しかし瑞希は困惑した表情を見せ、躊躇した行動をする。
 「三つ数える。俺の言う事に逆らうと、毒電波である電気の粒子が脳の中を跳びまわり、体中が電流で
痺れ、とても気持ち悪くなる。しかし、俺のいう事を聞けば、電流は走ったまま、特に乳首と股間が電気で
痺れて気持ち良くなる。俺のいう事を訊けば聞くほど、電気の痺れが大きくなり快感が大きくなる、いち、
にぃ、さん!」
 「もう一度言う、瑞希、セーラー服はそのままで、下着だけを脱げ」
 瑞希がそれでも躊躇しようとすると、突然瑞希の体が癇癪を起こした子供のようにがくがく震え出した。
 「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
 慌てて瑞希がセーラー服の上の中に手を入れて白いスリップと白くしゃれっ気のないブラジャーを外し、
スカートのなかに手を入れて清純な白い木綿のパンツを擦り下した。
 「パンティーは片方の膝に引っ掛けておけ」
 海里の命令で、瑞希は右足だけ抜いて左足の膝にパンツを引っ掛けた。
 瑞希は癇癪を起こした子供のようにガクガク震えながら、顔は気持ち良さそうに恍惚とした表情になった。
 「あぁあぁあぁあぁあ……」口から漏れる声も苦しみに満ちた絶叫から、喘ぎ声に変わった。
 「俺の前に来て、そして跪け」
 瑞希は何のためらいもなく海里の前に跪く。
 海里は南の方を向いて訊いた
 「南、瑞希に何回オナニーショーをさせた」
 「11回です」恍惚とした表情で南は即座に答えた。南は海里の命令で、瑞希を立て続けに何回も催眠術
にかけていくうちに、後半から瑞希にオナニーをさせて羞恥心を無くさせていたのだ。
 オナニーをやらされてしまった瑞希は、南そして海里の命じることにますます従順に応じるようになって
いる。
322こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 19:01 ID:YgdtlbL5
 海里は自分のペニスをズボンのチャックから出して、瑞希の目の前に出した。
 「瑞希は目の前の物を咥えたくなる、咥えないと電流で気持ち悪くなる、咥えると電気の痺れで気持ち
良くなる」
 さすがに瑞希は数秒ガクガク震えながら辛そうな顔をしていたが、すぐに顔をペニスに近づけて口では
むっと咥えると、とても気持ち良さそうな表情になった。
 「首をペニスの奥まで上下させて、激しく音を立てて舐め回せ」
 ペニスを咥えた瑞姫はもう抵抗を見せずに、
 「ぶちゅぺちゅぼしゅぞぞぞぞぞぞぞちゅぶちゅちゅぞぞじゅ……」
 激しいフェラ音を立てながらディープストローを始めた。
 相変わらず瑞希の体は電気で痺れて小刻みにガクガク震えているが、それもペニスに良い刺激を与えて
いた。
 「瑞希、俺の玉袋を優しく揉んで、俺の肛門に優しく指を入れて優しく刺激しろ」
 海里の命令で、セーラー服姿の瑞希はまさに百戦錬磨の娼婦の様なフェラを続けた。
 「出すぞ、全部飲め」海里は瑞希の口に射精した。
 「ぶちゅべちゅ、ぶじょぞぞぞぞぞぞ、ごくごく、ぬぐ、ぶちゅ」
 瑞希は出させた精液を全部のみ、
 「口で綺麗にしろ」
 の海里の命令で、
 「ぷちゅ、ぞぞぞ、ちゅううううぺちゅ、ぽちゅ、」と、尿道の精液まで吸い出して綺麗にした。
し終わると瑞希は潤んだ瞳で海里を見つめる。海里は瑞希の肩を軽く押してペニスを口から抜き取る。
しかし、表情はきょとんとしたままだ。次の命令を待っているのである。
 海里のペニスは硬度を保ったままだ。
 「セーラー服の上を捲って胸を見せろ」
 相変わらず電気でびりびり痺れながら瑞希は、もう抵抗することなくセーラー服の上を胸の上まで
捲った。バスト92センチの巨乳が曝される。
323こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 19:01 ID:YgdtlbL5
 「パイ擦りしろ、瑞希、優しく、献身的にな」
 しかし瑞希は困惑した表情を浮かべ、跪いたまま一向に動こうとしない。
 (ちっ。こいつはパイ擦りがどんなことか知らなかったか。しょうがない、きちんと奉仕の仕方を教えて
やらんと)
 「胸を持ち上げて俺のチンポを挟み込むんだよ。きちんと挟めたらそのまま優しく揉み上げろ」
 瑞希はぎこちない手つきで胸の谷間にペニスを挟み込み、ゆっくりと動かし始める。柔らかな肌の感触が
華入のペニスを包み込む。
 「ご主人様に奉仕しているんだ、もっと嬉しそうにしろ」
 無表情で胸を動かしていた瑞希はすぐに幸せそうな笑顔になる。
 「ご主人様に早く発射してもらえるように頑張ってパイ擦り続けろ。舌でチンポの先を舐めろ、そうする
ことが瑞希の最高の幸せだ」
 海里の言で瑞希は胸を動かし続けながら深くうつむき、舌を伸ばしペロペロとペニスを舐め始めた。
セーラー服の少女がパイ擦りをするというのは傍目から見ても扇情的な光景だ。しかし、海里は南に
命じた。
 「南、俺の尻の穴を舐めろ」
 南はすぐに海里の後に跪いてズボンを下ろし、海里の尻に顔をくっつけて自分の舌を海里の肛門に差入れ
た。
 「ぶちゅぐちゅべちゅぼちゅぺちゅぺろちゅ、」
 「ちゅぶずちゅずちゅzふべずちゅう、」
 海里はパイ擦りとフェラチオとアナルの三段攻撃であっという間に二発目を発射した。
 (いよいよメインディッシュだ)
 再び瑞希に射精の後始末をさせながら海里はほくそ笑んだ。南を自分の尻からどけて再び自分たちの行為
を傍観して股間を濡らす様に命じた。そして、
 「三つ数える、そうすると瑞希の脳の中のを飛び交う電気が増えて、『お願いですセックスしてください』
と繰り返し言い続けながら足を限界まで開いてま○こを両手で限界まで押し開く。そうするととても気持ち
良くなる。そうしないと電気が瑞希の首と頭を締めつけてとても苦しくなる。『お願いですセックスして
ください』と繰り返し言い続ければ言い続けるほど、足が開いて両手がま○こを押し開き、それがドンドン
快感になってくる」
324こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 19:02 ID:YgdtlbL5
 「いち、にぃ、さん!」
 「あ"がが」瑞希は一瞬抵抗したが、すぐに頭と首が痺れながら締めつけられるような感覚がした。
そして、
 「がおおおお願いです、セックスしてください、お願いです、セックスしてください、お願いです
セックスしてください、お願いですセックスしてください、お願いですセックスしてくださいお願いです
セックスしてくださいお願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてくださいおね…」
 瑞希はガクガク震えながら、その言葉を壊れたレコードのように言いつづけた。そして言いながら瑞希
の足はプリーツスカートをずり上げながらどんどん開いていき、まるで体操選手のような柔らかい体を
見せ付けるような角度まで開ききった。そして、両手が膣口に添えられ、目の前の海里にグジュグジュ
になった子宮まで見せつけるように思いっきり開いた。
 「お願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてください
お願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてください、
お願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてくださいお願いですセックスしてください
お願いですセックスしてくださいおね…」
 セーラー服姿の少女が、胸を見せながら子供の癇癪のようにガクガク震えてグジュグジュのま○こを
おっ広げている光景は、海里をこの上なく興奮させた。
 海里は黙って瑞希の膣にペニスを入れた。
 すぐにペニスの先に膜みたいな抵抗を感じたが、すぐにプチンと切れて、海里のペニスは鮮血及び愛液の
量と締め付けが激しい奥深くヘと飲み込まれた。
 「あぅっ、お、あん、ねが、いいいい、でぇ、すぅううん、せっ、くううう、すぅ、しって、
えええええ、くだ、さ、ああああああいいい、おね、ぐああああいん、ど、ええ、すうう」
 言い続けろと命じた言葉を解除してないので、処女膜が破れようが、鮮血と愛液を垂らして
セックスしてようが、瑞希は涙を流しながら電気で痺れたような顔でその言葉を言いつづけた。
 
325こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 19:03 ID:YgdtlbL5
「瑞希、俺が射精すると同時にお前もイク、そしてお前がイク時は『高瀬瑞希は松原海里さまの
永遠の性奴隷です』と言え、そうすれば大人の女になれたとして、一生忘れられない幸せとなる」
 言い終わると海里はすぐに今日三度目の射精を瑞希の中に注いだ。
 「高瀬瑞希は、松原海里さまの、えいえんのせいどれいですうううぅぅ!!」
 そう言いながら瑞希は昇天した。イッた後の瑞希の顔は幸せと恍惚に溢れていた。
 精液を瑞希の膣内に出し尽くした海里は、瑞希の口で射精後の後始末をさせながら、
側で傍観させていた南に、
 「こいつはちゃんと安全日だな」と確認した。
 「はい、本人が言ってましたから、間違いありません」
 勿論、南が催眠術で瑞希に言わせたのである。
 「よし、南、俺がパンと手を叩くとお前もイク」
 パン
 「あひいいぃいいいぃぃぃぃ!!」
 立て続けに3回射精して疲労していた海里は、指一本触れずして南がイカせた。
 
326こみパ催眠・南&瑞希:01/11/08 19:04 ID:YgdtlbL5
南と瑞希に催眠術で行為の後始末をさせた海里は、催眠覚醒を始める。
 「これから瑞希は今の状態のまま家に帰る。そして家の扉を開けると催眠から醒めて、今日の放課後の
出来事はすべて忘れる。しかし、また俺に催眠術をかけてもらいたくなる。この事は決して他人に話す
ことは出来ない」
 「…はい、ご主人様」
 「南は俺と瑞希が家から出てから五分後に催眠から醒める。そして、今日の終業後からの記憶を全部
忘れる……」
 こうして、二人の記憶を操作し終わって、ふらふらしながら帰宅していく瑞希を見ながら海里は悪魔の
笑みを浮かべた。 
327こみパ催眠・南&すばる&瑞希:01/11/08 19:07 ID:YgdtlbL5
283-326
以上です。陵辱嫌いの方、葉鍵以外のキャラが出てきてたのが気に入らない方
ごめんなさい。
ほかの方も催眠系のSSを書いてください。それでは。
328名無しさんだよもん:01/11/10 02:03 ID:Fywi+1JZ
   
329或る名無し%『静かな夜』1/4:01/11/10 22:34 ID:d7NfdA6s
   静かな夜
     by 或る名無し

 最後に鈴の音が聞こえた気がして目が覚めた。
 ベッドの上に起きあがったまま、動悸が治まるのをじっと待つ。もう何度
こんな目覚めを経験しただろう。
 午前三時。窓から差し込まれる月明かりに、目覚まし時計の針が薄く浮か
び上がっている。
 背筋を流れる冷たい汗に体を震わせ、ベッドから降り立った。無性に喉が
乾いた気がする。
 水でも飲もう。
 そう思うと俺は部屋を出て廊下を階段へと向かう――けれど、途中の部屋
の前で足が止まった。
『まことの部屋』
 可愛らしい文字で書かれた真新しいプレートがドアにさがっている。俺と
真琴が作ったものだ。名雪の部屋とお揃いのプレートが欲しい、との先日の
騒ぎを思い出し、不意におかしくなる。
 そうだ。真琴は帰ってきたんだ。あの生意気なころの真琴のままで。騒が
しい日々も再び日常の一部となった。もう二度と真琴がいなくなることはな
い。ないはずだ。
 でも……。
 さっき見た夢のせいだろうか。無性に真琴の顔が見たくなった。昼間、飽
きるほど眺めているというのに。
 音がしないように慎重にドアノブを回し、少しだけ扉を開けた。軋むよう
な音に、思わず周囲を窺ってしまう。誰もいないことに安心しつつ、部屋の
中に滑り込んだ。
330或る名無し%『静かな夜』2/4:01/11/10 22:35 ID:d7NfdA6s
 昔と同じようにマンガが散乱した部屋。コンビニの袋もあちこちに転がっ
ている。
 そんな中に敷かれた布団の上に、一人の少女が体を丸めて眠っていた。月
明かりに照らされた横顔が白く浮かび上がり、一種幻想的な雰囲気が漂う。
 真琴――。
 声に出さずに名前を呟く。音にするのははなぜか躊躇われた。この雰囲気
が壊れるような――そんな気がしたからだ。
「あ……う……ん……」
 呼びかけが聞こえた訳でもないだろうが、もぞもぞと体を動かす真琴。楽
しい夢でも見ているのだろうか、その顔に浮かぶ微笑みに、ようやく自分の
中の何かが落ち着いた気がした。
 剥がれかけていた布団をかけ直し、そっと頭を撫でる。さらさらした感触
が心地いい。起きてるときは触らせてもくれないのだが。
「おやすみ、真琴」
 そっと囁き、背を向ける。
「ゆー……いち……?」
 慌てて振り返ると、寝ぼけ眼をした真琴が起きあがろうとしていた。
「ど……したの……?」
「い、いや、その……」
 上半身を起こし、トロンとした目で俺を見上げる真琴。普段は全く見せる
ことないその表情に、妙に心が高鳴る。
「祐一も、ぴろと一緒に、ねたいの?」
「そ、そんなところかな」
 まだ寝ぼけているのか、ぴろが今は家に居ないことに気が付いていない。
それとも夢の中でぴろと遊んでいたのだろうか。
「じゃあ……」
 真琴は屈託のない笑みを浮かべ右手を差し伸ばすと、俺の袖をちょこっと
摘んだ。
「祐一も一緒に、ねよ?」
331或る名無し%『静かな夜』3/4:01/11/10 22:35 ID:d7NfdA6s
 腕を退けばすぐに外れてしまうような頼りなさ。それが嫌で俺は、逆に真
琴の手を取った。……そうでなくてもこの状況に逆らえる男なんていないだ
ろうが。
「あはは、こっちこっち」
「ああ」
 真琴が空けてくれた隙間に、もぞもぞと入り込む。両腕をどこに置いたら
いいのは迷ったあげく、体の正面で組んだ。
 顔半分まで布団に埋めるようにすると、真琴らしい匂いがする。さわやか
な――草原を渡る風のような匂い。なんだか懐かしいような――
「えへへ、祐一〜」
「わわわっ!」
 突然真琴が俺に抱きついてきた。そのまましっかりと俺にしがみつく。胸
の柔らかさが感じられるくらいしっかりと。
「祐一……暖かい……」
 そう言いながら、俺の首筋に鼻先を埋める。
 まるで恋人同士のように。
 まるで……小動物がじゃれつくように。
 ――あの時もこうやって一緒の布団に寝たんだったな。その時もこうやっ
てじゃれついてきたっけ。
 それは昔の記憶。まだ俺が子供でこいつは――狐だった時の。
 けど今は。
 俺は男でこいつは――真琴は、人間の女。そして俺の最愛の人。
 だから――。
332或る名無し%『静かな夜』4/4:01/11/10 22:36 ID:d7NfdA6s
「……真琴……?」
 スー、スー。
 暖かい寝息が、寝間着の隙間から俺の素肌をくすぐる。
「……おーい」
 軽く揺すってやっても、起きる気配はない。
 結局寝ぼけていただけ、か。まったく、寝ぼけていてもこんなイタズラを
するとはな。
 けれど……。
 俺は改めて真琴の体を両腕で包み直した。
 小さくて、柔らかくて、暖かい体。
 寝間着越しにふれあった胸に、直接鼓動が伝わってくる。
 それは……確かに生きている証。真琴が現実にここにいるという証。
「もう……二度と離さないからな」
 小さく呟く。この温もりを失わないために。
 そして真琴を抱きしめたまま、俺も穏やかな眠りへと落ちていくのであっ
た――。

――終わり――
333或る名無し ◆MakOpkuw :01/11/10 23:24 ID:d7NfdA6s
 以上、真琴SS「静かな夜」でした。>>329-332
 最萌トーナメント用に書いたものですが、トーナメントスレに投稿するタイミングを
逸したためこちらに投稿しました。
334名無しさんだよもん:01/11/11 01:19 ID:GNmUKtbh
うーん萌え(・∀・) だね。
てっきりこのままえちぃに逝くのかと……(藁

いや、ここで止めているのが(・∀・) イイ!んですけどね
335通りすがりの八本脚:01/11/11 05:29 ID:ZUw5+E7u
 苦笑……。

 拙作を読んでくださったことには感謝いたします。
 けれども、次にやるときにはソースぐらいは最後につけてくださいね。
 拙作だけならまだしも、びーろくさんの作品まで引用なさるとは……。
 引用元が記載してあればそれほど怒りはしませんから、以後どうぞご留意ください。
336通りすがりの八本脚:01/11/11 05:34 ID:ZUw5+E7u
すみません、追加です。
335の発言は、283−326こみパ催眠・南&すばる&瑞希さんへの発言です。
337名無しさんだよもん:01/11/11 09:02 ID:TFt34mLY
age
338 :01/11/11 09:08 ID:kMoGu1nU
>283-326を貼り付けた奴、恥ずかしい事すんなよ。
339名無しさんだよもん:01/11/12 02:03 ID:PyASmlzk
俺は335氏の作品を知らなかったので
ここで読めた事には感謝だが
無断引用はちょっとねぇ…問題あり過ぎだぞ

335氏、次からはこちらにも書いていただければ
有りがたいのだが如何か? トリップ付きで
340なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/11/12 04:07 ID:u4IYc69z
>>335-336
うが……。
気付かなかった……。

通りすがりの八本脚さま、差し支えなければ、原典を教えていただけないでしょうか。
よろしくお願い致します。
341名無しさんだよもん:01/11/12 21:55 ID:+OeQPdw/
>340
氏の上げられたもう御一方のPNで検索してミソ
342名無しさんだよもん:01/11/13 15:57 ID:OGcQQfhC
最近感想が薄いよage
343 :01/11/14 04:59 ID:jINmwyOL
エターナルウインド終っちゃいましたね
344弐死産:01/11/15 00:46 ID:hCyYpP6p
はじまるよ〜
萌えなんざカケラも無い作品がはじまるよ〜
(Key作品はヌけるか?)→真琴との子供は何だ?→(ポケモン)→それじゃぁ…
というワケのわからない流れで出来た作品。
最早ポケモンでもなんでもないが(藁
では、行ってみよう。

『魅琴伝説〜意志を継ぐ者〜』
345弐死産:01/11/15 00:50 ID:hCyYpP6p
祐一「ミコト! 吠えるんだ!」
ミ「にゅううううううううう!!!」
秋子さん「……笑止。名柚影、『却下』なさい」
名柚「『キャッカ!』」
祐一「くそぉぉぉぉぉ!」
秋子さん「では、次はこちらからいきますよ……」
名柚「謎ぢゃ……!」

そして世界は暗転した。

『炎の章』
346弐死産:01/11/15 00:52 ID:hCyYpP6p
ミコト「にゅぅぅ……負けちゃった」
試合は一瞬で終わった。本気を出した水瀬母娘の前にミコトは抵抗らしい抵抗もできずに叩きのめされた。
祐一「……ミコ、お前、本気出してなかっただろ」
ミ「え? だって……闘うの怖いもん」
祐「……いいか、オレ達は秋子さんに勝たなきゃ……」
真琴「祐一……それ以上は……」
奥から真琴が出てきた。
ここは祐一と真琴の新居。とはいえ水瀬家の裏なのだが(笑)
ミ「にゅぅぅ……おかーさん今日の晩ご飯なに?」
真「今日はたぬき鍋よ」
ミ「わーい」
祐「(……真琴……)」

その夜。

祐一が真琴を抱き寄せながら囁く。
祐「……いつまで持ちそうだ?」
真「……あと……一ヶ月くらいかな……?」
真琴の表情はさっきまでとは違い、青ざめている。
祐「…ミコは……ダメだ。真面目に戦おうという気がない。このままでは勝てる戦いも…」
真「ゆっくりやれば……いいよ。この子は精神的にに弱いから……教えたら傷つく……」
二人の間で寝ているミコの頭を撫でる。
祐「だが……」
真「言いたいことはわかるよ、祐一。………でもね………」
347魅琴伝説・炎の章:01/11/15 00:54 ID:hCyYpP6p
二週間後。

ミ「にゅぅぅ……イタイ……」
祐「……ミコ……お前今日も真面目に闘わなかったな」
ミ「だって……」
祐「もう……いい」

祐「真琴……最後の手段だ。もうこれで行くしかない」

次の日。
ミ「にゅぅぅ……ごちそうさま」
真「ミコ……大事な話があるわ」
ミ「なに?」
真「……ここでは言えない、一時間後、胴着に着替えてものみの丘に来なさい」
マ「う……うん」

真「来たわね……」
ミ「で、なんなのお母さん?」
真「その前にテストです。まずあれを攻撃なさい」
真琴の指さした先には大きな岩があった。大体祐一の背と同じくらいの大きさだろうか。
真「実戦じゃないから……本気をだせるわね?」
ミ「わかった……じゃあ…… ・・・・狐火!!!!!」
ゴォォ!!!! 火柱が立ち上り、岩が一気に熱した飴細工のように融ける。
ミ「どう?」
嬉々とした表情でミコはふり返る。誉めてもらえるのを確信しての事だ。
だが
真「……」
真琴の表情は曇っている。そして……
バサァッ! あのローブを纏った。
ミコ「ど・・・・・・どうしたのお母さん?」
348魅琴伝説・炎の章:01/11/15 00:55 ID:hCyYpP6p
真「見ていなさい……これが妖孤の力!」
真琴が印を組む。
真「我が体に宿る、幾千の、妖孤が叫び、いざ哭かん!!! 超狐火炎!!!!」
光しかなかった。
ものみの丘が紅い光に染まった。
ミ「な……え?」
次の瞬間ミコが見たもの。それは、岩はおろかその周辺の地面を深々とえぐりとられた丘の姿だった。
ミ「嘘……」
真「妖孤たるもの、岩石の沸点程度超えなければなりません。あなたにはそれが出来なかった……」
真琴がゆっくりを構える。
ミ「お母さん……? どういう……」
真「妖孤たる資格は無い……」
ミ「お母さん、私にはお母さんが何を言ってるのかわからないよ!」
ゆっくりと言葉を続ける。

真「………あなたを、殺します」
349魅琴伝説・炎の章:01/11/15 00:57 ID:hCyYpP6p
ミ「え?え? どういうこと? 私を殺すって……おかあ」
真「問答無用! ハァァ!!!!」
真琴の手刀が空を切り裂く。
ミ「きゃああっ!!」
ドバォ!! ミコトは寸前でなんとかかわし、手刀はそのままミコトの背後にあった大木を貫いた。
ミ「ひっ……」
真「……少しはやるわね」
その時、ミコの目が森の入口に立つ祐一の姿をとらえた。
ミ「お……お父さん! お父さん! お母さんが変なんだよ! 止めてよ!」
祐一に泣きつくミコ。だが。
祐「……戦え。ミコ」
ミ「え……」
祐「ほら、来るぞ……」
真「ハァァァァァァァ!!!!!」
ミ「いやぁぁぁぁっ!!!」
身をかがめてかわす。
真「甘い……!」
パァァァン! 真琴の足がきれいな円を描き、ミコの体が高々と舞い上がった。
祐「コンボで足払いか……相変わらずやるな」
ミ「おかあ……」
空を覆うように立つ真琴を見る。そらが、赤い。かつて見たことが無いほどに。
真「終わりよ……さようなら」
真琴の尖らせた手が振り下ろされ。
ガシッ!!!!
なかった。
美汐「やめなさい、真琴! 実の娘を殺すつもり!?」
美汐が飛び込んで来た。真琴の手首をしっかりと掴む。
真琴「美汐……」
350魅琴伝説・炎の章:01/11/15 00:59 ID:hCyYpP6p
めずらしく美汐が声を荒げている。
美「あなたも……どういうつもり!?」
祐一を睨みつける。
真「どうもこうもないわ。妖孤に足らざる者は生きていてはいけないのよ」
ミ「あ……うう……」
ミコは三人の足元でうずくまって泣いている。それを美汐が抱き締める。
美「もう大丈夫よ……私がついてるから……」
真「どきなさい、美汐。その子は闘わなければいけないの」
美「そんなこと……私が許しません」
真「……私はあなたまで殺したくないのよ……」
美「やっぱり……あなたも本心ではこの子を殺したくないんでしょう? だったら、何で……」
祐「ああ、わかったわかった。もうこのくらいでいいだろう」
それまで黙っていた祐一が不意に口を開いた。
祐「だったらこうしよう。一週間、天野、お前がミコを預かれ」
美「……私が、ですか?」
祐「ああ、そうだ。んで一週間後、改めて真琴と再戦だ。それでいいだろう?」
美「そんな……親子が殺しあうなんて……」
祐「大丈夫だ。ミコが真琴を殺さずに倒せるようになればいいんだからな。いいだろ?真琴」
真「……私はかまわないわ」
美「………わかりました。なら私がこの子を預かりましょう。少なくともあなたたちみたいな殺人者の親よりましでしょう…」
ミコを抱き上げる。はまだ泣いている。
ミ「えぐっ……えぐっ……ヒック……」
美「かわいそうに……」
美汐が跳躍した。
美「ならば、私がこの子を育てましょう。我が家に伝わる『天野流骨法術』を……」
そして姿が見えなくなった。
351魅琴伝説・炎の章:01/11/15 01:03 ID:hCyYpP6p
真「祐一……がはっ!!!!」
真琴が胸を抑えてその場に倒れる。
祐「大丈夫か! 真琴!」
真「私は……大丈夫。それより……あの子が……」
祐「ああ、ナイスだったぜ真琴。まるでホントに殺そうとしてたみたいだ」
真「でも……美汐を騙すことみたいに……」
祐「……全部終わったら謝ろう。二人でな」
真「ああ……祐一……」
祐「さぁ、今日はもう帰ろう。全ては一週間後だ……」

345-351 作者:弐死斬
続きます。
今ネタ考えてます(藁
明日あたりには書けるかな……?

冬コミ落っこちたしなー。しばらくコレ書いて過ごすか……
352なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/11/15 01:47 ID:dPRX0SDS
ただいまー(謎&汗)
オヤ、新刊デスネ? 立ち読みしてみませう。
フムフム、ちょっと毛色の違う作品デスネ。

だがそれがイイ。

>>345-351 『魅琴伝説〜意志を継ぐ者〜』

元ネタがピンと来ないし、序盤、事情が掴めなくて「え? 水瀬家と戦ってる?
なんで??」というのが第一印象だったのですが、真琴と祐一が娘のミコトを
鍛えるあたりからは、俄然面白くなってきました。
命を賭した親子のバトルが、少年ジャンプのようなノリで楽しめましたです。
てゆーか、お約束に忠実って感じで。間一髪の止め役に美汐を持ってきて、
いきなり骨法使いですか! あ、あやしい…。あやしいけど、こうでなくちゃ
という展開でして、それもまた良し、なんであります。

はてさて1週間後の再戦、柔よく剛を制するのか、如何にして新必殺技に
開眼するのか、楽しみなんであります。
353弐死斬:01/11/15 02:17 ID:hCyYpP6p
>352
どうも……
改めてスレを読み返してみたら……
なんつーか、もうこの作品は毛色が違うとかんな問題ではないですな(笑)
少年ジャンプ? 鋭いです。かなーり意識しております。
狙ってるのは80年代(藁

さてさて……どうしよっかなー、勢いで美汐に骨法使いなんて設定くれてやったが……
修行にするか、決戦にするか……

まぁいい。明日考えよう。
354或る名無し ◆MakOpkuw :01/11/15 09:23 ID:fki6SWGA
>>334
 どうもです。えちぃに逝く展開も考えたんですが、雰囲気に合わないのでパスしまし
た。
 それに個人的には寸止めで妄想に任せるパターンが好きなものですから(w

 それと……。
 なにがし氏に放置されてしまいましたか(苦笑)
 沈黙もまた感想の一つ。
 さらなる精進をするのみでございます。
355なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/11/15 12:26 ID:Y245sJqo
>>354
先遣隊が>>345-351にレスを付けましたが、
主隊は未だ>>147の手前で止まっています。
放置ではありません…
決して…
たぶん…





……ゴォール……。
356魅琴伝説:01/11/15 12:42 ID:aFvQq7KE
美「肉を切っても人は死なん、骨を砕けば人は死ぬ」
ミ「肉を切っても人は死なん! 骨を砕けば人は死ぬ!」
美「声が小さい!」
ミ「肉を切っても……!」
357名無しさんだよもん:01/11/15 12:50 ID:757jrjqm
帰れ。以上。
358魅琴伝説・炎の章:01/11/15 12:55 ID:aFvQq7KE
失敗……書き込んじまった……
では、改めて続きます。

美「天野流骨法の理だ!」
ミ「……もう……いやだよ……」
もう修行は四日目だ。その間、ミコは毎日毎日木人を殴らされていた。
美「人体には七百八の経絡秘孔がある……たとえ目が見えなくともその全てを把握できねば天野流骨法は身につかんと思え!」
ミ「……いつまで……こんなことを……」
ガスガスガス! ガスガスガス!
来る日も来る日も叩かれ続けた木人はすでに穴だらけだ。
美「泣き言を言うな!」
ミ「にゅう……」
だが、ミコは気づいていなかった。その穴の位置は全て秘孔の位置だということを……
美「(……スジは、いい。時間さえあれば私の術を全て伝授できるかもしれない……)」
ミ「えいっ! えいっ! えいっ!」
美「(だが、一週間というのはあまりにも早すぎる……まして相手はかつて『炎帝』と呼ばれた真琴……)」
ミ「せいっ! やあっ! とうあー!」
美「……ミコト、今日はもう休みなさい……」
ミ「えっ……もうですか?」
美「今日はもういい……早く体を休めなさい。明日の修行はキツイですよ……」
ミ「! と、いうことは……やっとこの単調な作業をやめれるの!?」
美「そういうことになりますね……」
ミ「やったっ! それじゃあ師匠、私ご飯の準備してきますね〜♪」
美「……」
美汐はしばしミコが立ち去った先を見ていた。純粋無垢な瞳。なぜ祐一達はあんな可愛い子供を殺そうとしたのだろう?
……美汐は頭を振った。
美「今は、そんな事を考えている場合ではないですね……今は、何としてでもミコトを……!」

そして、その夜。
359魅琴伝説・炎の章:01/11/15 13:07 ID:aFvQq7KE
ミ「すーーーっ、すーーーーっ、すーーーーーっ」
美汐の隣でミコは寝ていた。静かな寝息をたてている。髪の毛からはほのかな石鹸の香りが漂う。
美「……」
美汐は起き上がった。ミコを起こさないように静かに。そして手早く着替え、外に出た。
サァァァァァァァ………
夜風が木々を揺らす。そらには大きな満月が。
美「………」
美汐は一言も喋らずに歩き出した。町外れの山へ向かって……

ギィィィィ………
軋む音がそれがすでに使われなくなって何年も経つことをうかがわせる。埃だらけの祠の中、美汐は立っていた。
美「父上……母上……ごめんなさい……」
そう呟き、一番奥の扉を塞いでる南京錠に鍵を差し入れた。
ガ、ガ、ガ………ガチィッ!!!!
錆ついていたのか、酷く不快な音を伴って南京錠は床に落ちた。
美「……これが……」

ミ「ねーししょー、今日からどんな修行なの?」
美「……ついてくればわかります」
ミ「にゅう……」
美汐はミコを伴って歩き続けた。昨日と同じ道を、昨日と同じように一言も喋ることなく。
そして、当然昨日と同じ祠にたどり着いた。
ミ「ここは……?」
美「天野宗家が造りし最強にして最凶の修行場、『紅い力の部屋』です」
ミ「修行場……? じゃあ、ここで……?」
美「そう、あなたは今日からここで二日間、生死を別つ境界線を見るでしょう……」
ミ「………」
360魅琴伝説・炎の章:01/11/15 13:27 ID:aFvQq7KE
美「来なさい……」
美汐はミコの腕を引っ張り、一番奥の扉の前まで来た。昨日までとは違い、扉は開いている。
ミ「カビ臭い……それに、暗い」
確かに、部屋の中はほとんど何も見えなかった。外から入ってきたばかりということもあるが、直射日光が入ってきている様子は無い。
美「その時、あなたがどちらに行くか……それに全てがかかっています。さぁ、行きなさい!」
そう言って、ミコの背中を蹴り飛ばした。部屋に派手に突っ込む。
ミ「いたぁぁい……師匠何する……」
バタン! 不平を言おうとしたミコに答えたのは閉じられる扉だった。ついでにガチャっと鍵を閉める音も聞こえた。
ミ「………ふぅ、師匠も強引なんだから………」
とりあえずミコは現状を把握することにした。暗闇に目が慣れるのを待ってみる。
ミ「ん……? あれは……」
ミコが何かを発見した。白っぽいものなので目立ったのだろう。
ミ「なんだろ?」
と、確認しようとしたその時。
ガッ!
ミ「………」
『それ』がミコの顔の真横を通り過ぎ(動く空気が感じられた)、後ろの壁に刺さったような音が聞こえた。
ミ「嘘でしょ?」
一瞬だったが、ミコは見た。
ミ「なんでこんなところで刃が飛んでくるのよ〜〜〜」
次の瞬間、
ヒュ、ヒュ、フュ……
部屋中から空気が切り裂かれる音が聞こえた。

ミ「わっ! わっ! わっ!!!」
ミコはすんでのところでかわし続ける。見るとどうやら刃だけ飛んでくるのではなく、木人(昨日までさんざ付き合ったヤツ)に刃が括りつけてあり、それが落ちてくるようだ。振り子のような動きからして、天井につなげてあるのだろう。
ザクッ!
ミ「痛ッ! ……っ」
ミコのふくらはぎに赤いスジができた。
ミ「どうしろって……のよ!!!!」
361名無しさんだよもん:01/11/15 13:28 ID:I91IsnWM
>>弐死斬氏
あんたはKanonのSSを書きたいのか問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。
単に自分の書きたかった話に、Kanonのキャラをはめ込んでるだけなんとちゃうか?

などとちゃかして書いてみる。
でも真琴が全然真琴らしくない。真琴がどういう喋り方をするのかぐらい、調べて欲しい。
362弐死斬:01/11/15 13:35 ID:aFvQq7KE
一休み……

>361
ゴメンヨ…
冬コミこういう本出す予定だったんだよ……最近SS書いてなかったし……萌えやエロもいいけどたまにはこういうのも……ダメ?
真琴は……まぁ、人妻になって母親になれば少しは変わるかな、と。
363なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/11/15 13:55 ID:Y245sJqo
>>302
悪くない。

原作との互換性を保つのも大事だけど、そうじゃない二次創作があってもイイ。
むしろここまで変えられたら、どう収拾を付けるのかワクワクしてきませんか?
364なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/11/15 13:56 ID:Y245sJqo
>>363
間違い。

× >>302
○ >>362
365魅琴伝説・炎の章:01/11/15 14:11 ID:q7m8uZ/c
ageてあるとちょっと恥かしい……(藁
それはともかく、行くぜ! 我が道!

>>360の続き
ミ「がっ! あっ! うわぅぅ……ああああああ!!!」
美「………」
『紅い力の部屋』前、美汐は壁にじっと寄りかかっていた。静かな森の中ではミコの叫びがいやでも聞こえる。
美「フッ……」
美汐の唇がほころんだ。
美「どうやら……私はまんまとハメられてしまったみたいですね……。結局、やってることはあの二人と変わらない……骨法術は一子相伝……なるほど、確かにこうでもしなければミコトの新たな力は手に入らない……」
どんっ! 美汐が目の前にあった大木を殴りつけた。折れた。
美「ミコ……頑張りなさい……死んではダメ……」

ミ「ううっ……ううっ……」
どれほどの時が経ったのだろう?
一時間だろうか?
半日だろうか?
一日だろうか?
それとももうすぐ二日経つのだろうか?
そのどれでもある気がする。
ミコは、ボロボロだった。体中をなます斬りにされ、イモムシのように部屋のスミに丸まっていた。こうしているのが一番安全だ……。
ザシュッ……
ミ「……!!」
それでも時々背中を浅く切られる。だが、この痛みにももう慣れた。ミコは少し体を動かし、血だらけの自分の手を見た。
ミ「……まだ……終わらないのかな……」
祐一と真琴の姿が脳裏に浮かぶ。
ミ「なんで……こんなになっちゃったんだろう……」
想像の祐一と真琴の間でミコトは眠った。
だが、
ガラララッ!!!!
366361:01/11/15 14:14 ID:I91IsnWM
いいとかダメとかじゃなくて、Kanonっぽさがないってのが
俺の感想。シナリオも絡んでないし、設定的な部分も真琴が
妖狐だ、って部分がわずかにひっかかるだけ。で、口調が
全然違う、と。
母親になれば口調、かわるかもしんないけど・・・じゃあ
どういう経緯で何があって、どの部分がどういう風に変わったか、
なんて考えてる?
バトル物は特に元の話と違う設定になることが多いんだから、
口調とかそういう部分を似せる努力をしないとなー。
367魅琴伝説・炎の章:01/11/15 14:22 ID:q7m8uZ/c
暗かった部屋に不意に光が差し込んだ。しかしあまりキツくはない。どうやら月光のようだ。ならば、今は夜か。
ミ「にゅ……?」
目を擦りながらミコは光が射す方向を見た。どうやら部屋の真ん中の天井に扉があったらしい。
ミ「やっと………終わったの……?」
ミコは這いずりながらなんとか部屋の真ん中までたどり着いた。そらには大きな丸い月が見える。
美「……」
美汐が覗き込んでいた。
ミ「師匠……やっと……終わったんだね……早く……出して……」
自分の血にまみれた手を差し出す。しかし、紙袋が一つ、落ちてきただけだった。
ミ「師匠……? これは?」
ゴソゴソと袋を開くと、菓子パンが数個とパック牛乳が出てきた。
美「夕飯よ。………今は午後9時37分。まだ修行開始から六時間ほどしか経っていない。また明日の朝来る」
バタンッ。
それだけ言い放つと、天窓は閉じられた。
ミ「あ……ああっ………」
恨み言を言う気力も無く、ミコは這いずって部屋のスミに戻り、パンをかじった。
ミ「……」
涙の味がした。

美「さようならミコ……また明日の朝来ます……」
美汐は本当に山を降りた。そこにいたらいつか助け出してしまいそうだったから。
その日の遅い夕飯は、味がしなかった。

ミコは眠った。人間とはスゴイ。こんな状況下でも眠れるのだから。体中がズキズキするが、もう慣れた。全く人間とはスゴイ。
(ははっ……)
少年がいた。
(クゥ〜……)
小さなキツネもいた。どうやら少年が世話をしているらしい。
そして、その2人の後ろに、成人した女性が……
ミ「あうううっ!!!!」
368名無しさんだよもん:01/11/15 14:29 ID:Jn0SF3UC
>弐死斬氏
内容は全部読んでからにしたいのでコメントはしないけど、
投稿するときは >>1-2 の手順で一気に投稿するようにお願いしたい。
連作にするなら連作にするで構わないが、その旨を一言添えて欲しい。

中途半端な状態だと投稿途中なのかどうかの判断が出来ない。
読み側としてもコメントを書いて良いのかどうかわからないし、
割り込んで投稿の邪魔をしたくないので。
それと感想等は作品中に書かない方が良いと思われ。

投稿内容に触れていない意見で申し訳ない。
それとこの書き込みが投稿の邪魔になっていたらスマソ。
369魅琴伝説・炎の章:01/11/15 14:34 ID:q7m8uZ/c
夢は、中断された。
ミコの二の腕から血がだくだくと流れていた。服を破り、止血した。
それから夢は見なかった。

美汐は、焦っていた。木人の数が全く減っていない。
本来木人とは、秘孔を突けば簡単に動きが止まるのだ。そして、全ての木人を止めればこの修行はクリアとなるのだが……
美「やはり、早すぎたのでしょうか……」
修行が始まってから丸一日が過ぎたが、ミコの衰弱は激しくなるばかりだ。今回などは差し出された腕しか見えなかった。
美「……いざとなったら……」
真琴はおそらく全力で戦うだろう。たとえ、それが望まざるものだとしても。
そして、殺すだろう。我が子といえど。
美「私が、この子を連れて……」
決意を固めつつ、山を降りた。
西の空は赤くなってきていた。

ミ「ケッコン………」
ミコは呟いた。母親がかつてあこがれた、『結婚』の言葉を。
ミ「そして二人は、いつまでも仲良く過ごしましたとさ………」
ミ「私は、その結晶。愛により生まれ出たもの」
体からは血が流れ、顔は青く、ほほはコケていた。
おそらく、今木人が全て消えても起き上がることはできないだろう。
ミ「相沢祐一……沢渡真琴……結婚……約束………愛……そして」

『私は、生まれた』
『私は、生まれた』
『私は、妖孤』
『相沢真琴の娘』
『………そして………』

『意志を継ぐ者』
370魅琴伝説・炎の章:01/11/15 14:38 ID:q7m8uZ/c
>368
わかりました。すみません……
とりあえず、まとめて書いてからにします。

>344-351
>356
>358-360
>365
>367
>369
ですね。確かにバラバラだ……
出直してきます。
371弐死斬:01/11/15 16:59 ID:AGTro1mY
さて、魅琴伝説 〜遺志を継ぐ者〜 『炎の章』
なんとか書き上げたんでこれから一気に貼り付けます。
しばしカキコはお待ちを……
372弐死斬:01/11/15 17:02 ID:AGTro1mY
美「はっ、はっ、はっ………」
美汐は山道を走った。急いで走った。山が明るかったのを見てしまったからだ。赤く。
時刻は8時。まだ夕飯には少し早い。それでも、走った。
美「ミコ……無事でいて……」
そして、着いた。

美「こ……これは……!」
美汐が見たもの。それは、燃え上がる祠の姿だった。
最初からわかってはいたが、それでもいざ目の前で見るとショックは大きい。
美「……はっ! こんなことをしてる場合では……」
美汐は近くの池の水を浴び、あわてて祠に飛び込んだ。
美「ミコ! ミコ! 何処にいるの!!!!!」
燃える角材を蹴り飛ばしながら進む。ミコはあの体だ。とても自力脱出などは無理だろう。
美「私のせい……私のせい……」
ここに連れて来たのは自分だ。部屋に入れたのは自分だ。鍵をかけたのは自分だ。ミコを弱らせたのは自分だ。
美「ミコ!! 何処なの!? 返事をして!!!」
せっかく、せっかく、せっかく、真琴は消えずにすんだのに……また、また私の目の前で命が消えてしまうの!?
美「ミコ!!!」
ドベキャァ!! 最後の扉を蹴破った。
ミ「………」
ミコは、いた。そこに立っていた。炎の中、いや、炎を身に浴びながら。
美「ミコ!!!」
慌てて駆け寄る美汐だが、あまりの熱に近づけない。
美「ミコ………?」
おかしい。ミコは立ち上がれないほど衰弱していたはずだ。
ミ「……フーッ、フーッ、フーーーーー………ッ」
しかも……ケガが………
美「治って……る?」
ミ「私は………相沢魅琴……」
そう呟くと、倒れた。同時に集まっていた炎が散った。いや、本来の燃え方にもどった。
373魅琴伝説・炎の章:01/11/15 17:04 ID:AGTro1mY
美「ミコ!!!!」
美汐はミコを抱え上げると、急いで祠を脱出した。

ギュッ………
美汐は自分のベッドに寝ているミコの頭に濡れたタオルを置いた。
美「……傷が……無い……それに火傷も……」
美汐は思い切ってミコの服を脱がせた。もはやボロボロのそれはほとんど服としての意味は無いが。
まだまだ未発達の肢体がさらされる。しかし、それよりも……
美「どういうこと……?」
体中にあったはずの斬り傷は、ほとんど消えている。深かったものもうっすらとした赤いスジがあるだけだ。
そして、あの炎の中に立っていたのに火傷一つない………」
美「これは……まさか……」

真「はぁぁぁ……っ!!!!」
ガバと真琴が跳ね起きる。
祐「ど……どうした!? 真琴!」
真琴はガタガタと震えている。
祐「大丈夫か? ……苦しいのか?」
真琴はふるふると頭を振る。
祐「どうしたんだ?」
真「……降りた……」
祐「降りた? 何がだ?」
真「わからない……けど、何かがどこかに降りた……それは確か……」
祐「真琴……」
374魅琴伝説・炎の章:01/11/15 17:05 ID:AGTro1mY
真琴は祐一に抱きついた。
真「祐一……どこにも行かないで……ずっとここにいて……」
祐一はそんな真琴を抱き返す。
祐「大丈夫さ、真琴。俺達は『結婚』したんだ。いつまでも一緒だよ……」
真「ゆういち……」
しばらくそうしていた後、
祐「明日は……」
真「わかってるよ……」
祐「……嫌ならやめても」
真「ううん……私、やるよ……」
祐「そう、か……」
またしばしの沈黙。
祐「だが、最終決定権はお前にある。最後の最期にどうするかは……」
真「うん……ありがと」

キーーーーーーーンコーーーーーーーンカーーーーーーーーーーーンコーーーーーーーーーーン………
『夜六時を、お知らせします』
地方自治体の仕事が一つ終わった。
同時に約束の時は来た。
真「少しは強くなった?」
ミ「お母さん……」
ものみの丘の中心で対峙する2人。
祐「………」
美「………」
それを少し離れたところから見つめる2人。
祐「天野……おまえ、その怪我どうしたんだ?」
見ると美汐は体のあちこちに包帯が巻かれていた。『雫』のキャラにこんなのがいた気がする。
美「すぐにわかりますよ……」
祐「すぐに……って、まさか……」
美汐がクスリと笑った。彼女にしては珍しい笑い方だった。
375魅琴伝説・炎の章:01/11/15 17:06 ID:AGTro1mY
スッ…… 真琴が拳を前に突き出した。
真「いざ行かん……」
そして、跳躍。月を背に。
真「汝に真の妖孤たる資格を問う!!!!!」
ミ「お母さん! 私、闘うよ! そして……お母さんを倒して見せるよ!!!」
ミコも飛んだ。真琴とほぼ同じ高さに達する。
真「その意気や良し! さぁ、母を超えてみせろ!!! 我が娘、魅琴よ!!!!」

真「炎よ! 荒々しき始まりの力よ! 今一度我等がもとに! 焔!!!」
真琴が先手を取った。数個の巨大な火の玉がミコに向かう。
ミ「フゥゥ……!!!!」
ミコはその場から動かず、待ち構える。両手のひらが淡い光を放っている。
ゴォォォォォォ!!!! 火の玉が当たる瞬間、
ミ「ハァァァ!!!!」
左右から同時に来た2個を手のひらで弾き、頭の真上でぶつける。相殺した。
真「!」
ゴッ!
一陣の風が疾(はし)った。残りの火の玉の間をくぐり、ミコが疾る。
ミ「斬影拳!!!!!」
パァァーーーーーーーーーン!!!!
真「グッ……!」
ミコはその勢いのまま真琴に体当たりした。衝撃は真琴の背中を突き抜けた。
真「だが……まだ!」
真琴は後ろに倒れながらもミコの脇腹に手刀を叩き込んだ。そして、ミコの腹を高々と蹴り上げる。巴投げの格好になった。
真「これで終わりだ! 燐! 然! 壊! 厳! そして對! 五色の光の名の元に! 炎殺鳳凰弾!!!!」
ミコの着地点を狙い、術を放つ。巨大な炎の口が開いた。
真「さようなら……魅琴」
祐「(真琴……本当に殺すのか!?)」
だが、ミコは笑った。満面の笑みで。
ミ「お母さん! 私だって炎を使えるんだよ!」
376魅琴伝説・炎の章:01/11/15 17:07 ID:AGTro1mY
炎の口に降り立つ、そして次の瞬間、その強靭なバネをフルに使って飛び出した。服の所々がコゲているが、致命傷は無い。
真「な……っ!」
ミ「この時を待っていた! 術は使う前後にスキを作る!」
美「行きなさい、ミコ」
ミ「はぁぁぁぁ…………骸哭掌撃!」
ドゴ……ッ。
真琴の腹部にミコの手が埋まった。
真「ぐ……ぁ……」
ミ「and………Fire!」
ボッ!!!!!
瞬間、真琴の体から火柱が上がった。
真「ぐぅぅぅぅああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
祐「真琴!!!!」
美「真琴!!!!」
決着はついた。急いで祐一と美汐が駆け寄る。
ミ「はっ!!」
ミコも我に帰る
ミ「お……お母さん!」
急いで抱きかかえる。
ミ「お母さん! ごめんなさい! ……大丈夫!?」
真「………」
真琴がミコの頬にゆっくりと手を当てる。
祐「真琴!!! 大丈夫か!!??」
美「真琴……」
ミ「どうしよう……私……お母さんを……」
祐「いや……」
真「おめでとう……ミコ……」
ミ「え? ……もう今更合格なんてどうでもいいよ! お母さん、しっかりして!」
真「ミコ……これでいいのよ……私が死ねば……もうあなたは戦わずにすむ……」
ミ「え? どういうこと?」
377魅琴伝説・炎の章:01/11/15 17:08 ID:AGTro1mY
祐「もういい、真琴。オレが説明する」
ミ「お父さん……」
祐一はミコを真っ直ぐに見つめ、話し出した。
ミコが闘っていた理由。
復活した真琴。
妖孤の呪いを打ち破った真琴。
しかし、ミコを産む時……
祐「考えてみろ……真琴は元々キツネだ……それが、オレの……人間の子を産む……」
ミ「………」
祐「再び呪いがぶりかえした。真琴の存在が虚ろになってきた」
ミ「そんな……私のせいで……なの……」
祐「……残念だが、そうだ。しかし、一つだけ真琴を助ける方法がある」
ミ「な……何なの? 私、何でもするよ!」
祐「『奇跡』だ」
ミ「え?」
祐「この街には、持ち主の願いを一つだけかなえるという『天使の人形』がある。それを手に入れるんだ」
ミ「でも……それはどこに?」
祐「それゆえの戦いだ。今度、人形を巡る武闘会がある。……なんとしてもそれに出場し、勝つしかない」
ミ「じ……じゃあ、今まで秋子さんや名雪さんと戦ってきたのは……」
祐「秋子さんのお眼鏡にかなう事が出場条件だ。その為に今までお前は……」
ミ「なんで? なんでもっと早く行ってくれなかったの? それさえ聞いていれば……」
祐「戦えた、か? この間までの自分の姿を考えてみろ」
ミ「………」
美「2人とも! そんな事は後でもいいでしょう! 今は一刻も早く真琴の手当てを……」
「了承」
いつの間にか三人の後ろに秋子さんと名雪が立っていた。
祐「あっ! 秋子さん、ちょうどいいところに! お願いします」
秋子さん「了承」
378魅琴伝説・炎の章:01/11/15 17:08 ID:AGTro1mY
そう言うと秋子さんは真琴の胸に手を当て、精神を集中し始めた。
秋子さん「ふぅぅぅぅ……」
真琴と秋子さんの体がぼんやりと光る。
秋子さん「喝!!!!!」
気合とともに、胸を強く押す。秋子さんの光が全て真琴に移った。
祐「真琴!」
ミ「お母さん!」
美「真琴!」
秋子さん「………」
真「………」
全員が固唾を飲んで見守る。
真「う………」
ミ「お母さん!!!」
どうやら今回も乗り切ったようだ。
秋子さん「ふぅ……でも、私の力も万能ではないですよ。早く出場を決めてくださいね」
祐「秋子さん……その事だったら心配無用ですよ。いいな? ミコ」
ミコ「うん!」

秋子さん「名雪、準備はいい?」
名「うん、オッケーだよ」
祐「ミコ?」
ミ「のーぷろぶれむ」
秋子さん「では……始めます。Kanonファイト……レディー……ファイ!!!!」
ミ「ごめんなさい、名雪さん。お母さんのため、勝たなきゃいけないの。力は抜いとくからね」
秋子さんが叫んだのと同時に、すでにミコは名雪の懐に飛び込んでいた。
名「え……?」
ミ「七獄大罪をその身に浴びよ! 灼熱地獄でのたうちまわれ!! 滅却!!!!!」
ミコの正拳突きが名雪のみぞおちにキレイに入り、同時に(手加減した)炎が名雪の体に流れ込んだ。
名「うああああああああああ!!!!!!!!」
379魅琴伝説・炎の章:01/11/15 17:09 ID:AGTro1mY
秋子さん「勝負あり、そこまでです。勝者、魅琴!」
ミ「やったよお父さん!」
祐一に抱きつくミコ、抱き締める祐一。
祐「よくやった、ミコ!」

秋子さん「それでは……相沢祐一、相沢魅琴、あなた達に『樺音武闘会』への参加を許可します」
祐&ミ「はい!」
秋子さん「開会式は明後日。ギリギリでしたね。場所は……」

祐「まさか……またここに来るとはな……」
ミ「お父さんの学校だっけ?」
祐「ああ、一年ちょっとだがな。色々あった……」
祐一は懐かしい母校の前に立っていた。あの、人生で一番波乱に満ちた日々を思い返しながら。
祐「(そんな時に、真琴と出会ったんだよな……)」
ミ「お父さん! 置いてくよ!」
感傷にひたっていた祐一だが、その時出会った少女そっくりの自分の娘に呼ばれ、我に帰った。
祐「ああ、スマンスマン、今行く」
体育館の扉まで来た。いくら今は卒業したといっても、かつての母校。道を間違えるハズがない。
中からは大量の人間特有のざわめきが聞こえる。
祐「……行くぞ? 後悔しないな?」
ミ「もっちろん♪」
祐「よし……行こう!」

二人は扉を開いた。
それは、愛する人を守る為。
愛ゆえに。
愛ゆえに戦う。
その運命を、二人は選んだ。

その話はまた別の機会に語られるであろう……
380炎の章・おしまい:01/11/15 17:12 ID:AGTro1mY
魅琴伝説 〜遺志を継ぐ者〜 『炎の章』

完。

>>371-380


疲れました……
久々に一本書いた……
冬コミさえ受かっていれば……
なんて、泣き言いってもしょうがないですね。
さて、「萌え」とも「エロ」とも似ても似つかない作品でしたが、いかがでしょう?
え? KanonのSSなのかって?
……気にしちゃいけません。まぁ、たまにはこんなのあってもいいじゃないですか。

なお、『炎の章』完。とありますように、まだ続けようと思えば続けれます。
続けるかどうかは決めてませんが。
やるとしたら……『修羅の章』ですね。
ミコがあのメンバーと闘う(?)と。

もし何かございましたら、感想ください。

では、弐死斬でした。
381名無しさんだよもん:01/11/15 18:59 ID:RScCsBG2
(´∀`) < あのさぁ〜

捉え方の違いだろうけど、真琴スレにシチュとして貼り付けるのが適当な気がする。
個人的に会話並べてSSとか言われても (  ´_ゝ`) って感じだ。
382七資産 ◆3uoJfB4Y :01/11/15 21:11 ID:LnCANOxa
こっちに炎の章感想書いたほうがいいかな?
一応全部見た感想としては、よく難しいジャンルに
挑戦したな。って感じでしょうか。まぁ、そのせいあってか
最後のまとまり方は、「・・・・?」って感じですね。
後は気になるのは、口調ですかね。原作やったこと
ある人だと、「え・・こんな事言わないよ」って感じになりますね。
そもそも格闘にKanonらしさは残せないだろう。と思って
いましたし、しょうがないかな?色んな意味で変わっている
作品でしたね。批判的な意見ばかり言ってますが
個人的には別に嫌いじゃないですよ。

しかし、好きで書いたのかもしれないけど、新種のポケモン
からよくここまで持ってこられたと関心しているよ。その発想力
を是非次のコミケに使って欲しいね。(本当は私はあまり同人
には興味ないのだが・・・)
383名無しさんだよもん:01/11/15 22:44 ID:w9GgngRZ
シチュはSSスレに投稿不可?
384名無しさんだよもん:01/11/15 22:47 ID:lcsF99pN
>383
可だと思うけど? >1 参照

>力作はもちろん、実験作、シチュ等、君がSSだと思ったらそれはSSだ!
>職人修行中の方も気軽に質問、投稿よろしく。
>初心者の質問・素朴な疑問なども大歓迎。

シチュ入ってるよ。
ただ短いシチュだったらキャラスレに投稿した方が住人に喜ばれるような気もするけど。
ま、そのあたりは書き手の判断次第でしょう。
385闇野神殿:01/11/15 23:13 ID:7yNsfKr7
はじめまして。
トーナメント支援の一環として、SS投稿させて頂きたく思います。
長めですが、よろしくお願いします。
PC版あさひシナリオのその後です。
386闇野神殿:01/11/15 23:19 ID:7yNsfKr7

九品仏、襲来

 「さようならっ!」
 「聴いて・・・・・・ください!」
 「みんな・・・・・・スキだったみんな、愛してるあの人、それに・・・・・・」

 「本当のあたし!」

 ・・・・・・あれから数ヶ月が過ぎた。俺の名は千堂和樹。
かつて同人作家をしていた元大学生だ。今では・・・・・・
「あ、あの、か、和樹さん、お昼、できましたよ。」
「ありがとう、あさひ。今行くよ。」
セーブ、セーブ・・・と、ほいっ。
『・・・それじゃ、次もこの時間に、マジーン・ゴー!』
ポチッとな。ゲーム機の電源をOFFにする。
 そう。俺はあれから、あさひとともに暮らしている。
 逃げるように離れたあの街だったが、人のうわさも何とやら。
次第にあの事件も忘れられ・・・まあ、あの直後に、いくつもの事件が続けて起こったせいもあるのだろうが・・・
(念のため言っておくが、俺達の一件とも、この話とも無関係だ。)
少しばかり離れたこの街で、アパート暮らしをしているのが、あの桜井あさひだなんて、誰も気づいていないようであった。
387闇野神殿:01/11/15 23:23 ID:7yNsfKr7
もちろん、俺達も無防備に暮らしているわけではないのだが。
 だが、もちろん、俺達のことが、まだ完全に忘れられてはいない世界もある。
言うまでも無く、アニメ界、そして、同人界だ。
とくに、アニメ界から、桜井あさひの名前が消え去ってしまうことなど無いだろう。
・・・それほどのものを、あさひは、アニメ界と、そのファンの心に残して、―それも劇的なかたちで―去ったのだ。
 それを思うと、やはり一抹の罪悪感が胸中をよぎるのも、仕方の無いことかもしれない。
あさひはあさひで、俺がマンガを描くのをやめた―やめざるをえなかった―のをやはり、気に病んでいるようだった。
もちろん、それはまず何よりも、生活のためなのだが・・・・・・
だが、やはり、あのような事件を引き起こして去った俺が、今更、こみパにもどることなど出来ないと思ったからだ。
 それに、仲間たち―世話になった人達―にほとんど何も告げずに去ったのだ。
今になって、彼ら、彼女らを頼るわけにも・・・もちろん、みんなは、俺達を再び暖かく迎え入れてくれるだろう・・・
しかし、だからこそ、そんなみんなを捨てていった俺が、みんなを都合良く頼るなんて事はできないのだ。
「ど、どしたんですか、和樹さん?」
 おっと、いけない、暗い顔をみせてしまったようだ。
388闇野神殿:01/11/15 23:26 ID:7yNsfKr7
「何でもないよ、いや〜、今やってるマップのボスが手ごわくてね。」
「くすくす・・・和樹さんったら・・・」
 それでも、何とか生活できているのは・・・恥ずかしながら、そう、編集長のおかげだった。
あの後、いくつかのバイトを転々とし
―1年間の同人活動で貯めた貯金はあったが、いつまでもそれでは持つわけがないし、それに―
幾つ目かのバイト先で、編集長に偶然出会ってしまったのだ。
そして編集長は、何も聞かず―事情は知っているようだったが―俺に、仕事を依頼してくれたのだ。
もちろん、マンガではなく、編集の手伝いや、カット描き
―もちろん、絵柄もペンネームも変えて―
など、あまり表に出過ぎないようなかたちで。
 おかげで、たまの・・・本当にたまの、だが。休日には、こうしてゲームなどしてもいられるようにもなったのだ。
もちろん、あさひのことを放っておくなんてことはしないが・・・だって・・・
389闇野神殿:01/11/15 23:27 ID:7yNsfKr7
 ピンポ〜ン
「あ・・・誰かきましたよ。」
「・・・俺がでるよ。」
そう、まだ油断は出来ない。
「千堂和樹さんですか?」
「はい、そうですが・・・」
やってきたのは、実直そうな男性だった。もちろん、知らない顔だ。
「失礼ですが・・・桜井あさひさんは、ご在宅でしょうか?」
「!!」
 ついにやって来たのか!?
「あ、そんなに硬くならなくても結構ですよ、私、こういう者です・・・」
 思わずこっちもつられてしまいそうな笑顔で名刺を差し出す。
「あ、ど、どうも・・・」
 つられるように名刺を受け取る。
 名刺には、ゲーム会社の―おいおい、こりゃ、今やってるゲームの―名前が入っていた。
それに、男の名前。
「あ・・・し、白河さん・・・?」
後ろから顔を出してきたあさひが、男の名を呼んでいた。
「どうも、お久しぶりです、あさひさん。」
「し・・・知ってるのか?あさひ。」
「え、えと・・・ま、前にげーむのお仕事で・・・で、でも、ど、どして、ここが?」
 そうだ。一体、なぜ・・・編集長が漏らしたとは思えないし・・・
390闇野神殿:01/11/15 23:30 ID:7yNsfKr7
「ふはははははっ、久しいな、同志、和樹っ!!」
 だああああああああああああああっ!!
き、貴様かっ、九品仏大志っっっ!!
「と、とにかく、中へ入れっ!近所迷惑だっ!」
 あわてて思わず大志と白河さんを中へ招き入れる。
「ふ・・・近所迷惑とは、心外だな、まいぶらざー。」
 等と抜かしよるが、貴様は存在自体が近所迷惑じゃい。しかし・・・
(・・・思わず中に入れてしまった・・・)
「ふ・・・相変わらずのお美しさ、あさひちゃんにはご機嫌麗しゅう・・・」
「あ・・・え、えとぉ・・・そ、その・・・」
「くぉらぁっ、そこ!おれのあさひに何ぬかしとるんじゃっ!!」
「か・・・和樹さん・・・・・・(ぽっ)」
「・・・・・・すみません、お話、宜しいでしょうか?」
 ・・・・・・白河さんは、困っていた・・・・・・
391闇野神殿:01/11/15 23:32 ID:7yNsfKr7
「ふはははははっ、久しいな、同志、和樹っ!!」
 だああああああああああああああっ!!
き、貴様かっ、九品仏大志っっっ!!
「と、とにかく、中へ入れっ!近所迷惑だっ!」
 あわてて思わず大志と白河さんを中へ招き入れる。
「ふ・・・近所迷惑とは、心外だな、まいぶらざー。」
 等と抜かしよるが、貴様は存在自体が近所迷惑じゃい。しかし・・・
(・・・思わず中に入れてしまった・・・)
「ふ・・・相変わらずのお美しさ、あさひちゃんにはご機嫌麗しゅう・・・」
「あ・・・え、えとぉ・・・そ、その・・・」
「くぉらぁっ、そこ!おれのあさひに何ぬかしとるんじゃっ!!」
「か・・・和樹さん・・・・・・(ぽっ)」
「・・・・・・すみません、お話、宜しいでしょうか?」
 ・・・・・・白河さんは、困っていた・・・・・・
392闇野神殿:01/11/15 23:37 ID:7yNsfKr7
鋼の同人魂!!マスターオタク西より来る!!

 ・・・・・・こほん・・・・・・
 軽く咳払いをして、白河さんは、話し始めた。
「スーパーロボット大戦というゲームは、ご存知・・・ですよね。」
 ゲーム機のそばには、当のゲームのケースが置いてあった。それをちらと見て言う。
「ええ、そりゃ、まあ。」
 控え目に言う。実際は・・・
「くすくす・・・和樹さん、暇さえあれば、やってますよね・・・」
 ・・・あさひが、思いっきりバラしてくれる・・・
「むぅ?同志和樹よ、貴様、あさひちゃんを放っておいてゲーム三昧とは言語道断!
やはりあのとき、成敗しておくべきだったか・・・!?」
「こらこら、勝手なこと言ってるんじゃねえ!俺はあさひを放っておいたことなんかねえぞ!」
「そ、そです・・・あたしも、一緒に楽しんでますから・・・だ、だいじょぶです・・・」
 本当だ。元々アニメ好きのあさひは、暇なときは俺と一緒にスパロボを楽しんでいるのだ。
・・・腕前は・・・まあ、なんだ。
393闇野神殿:01/11/15 23:40 ID:7yNsfKr7
「そ、それでは、゛秘神黙示ネクロノーム"という作品は、ご存知でしょうか?」
 俺と大志のノリに戸惑いながら(当然か・・・)白河さんが言う。
「・・・あ・・・そ、それ・・・」
 あさひが反応する。ひょっとして?
「もしかして、それが・・・?」
「そうです。今度の新作で、この作品が新規参入作品の候補になっています。
そして・・・」
「それに、あさひを出演させたい・・・と、おっしゃるんですね?」
「その通りなのだよ。まいふれんどっ!
この作品こそ、あさひちゃんが多くのアニメファンにその名を知らしめた、いわば出世作!
そして、ロボットアニメ史上不滅の金字塔でもある傑作!!それがスパロボに参戦するとなれば、
ヒロインたるあさひちゃん無くして、なにが・・・・・・・・・・」
「おっしゃることは、判りました。暫く、考えさせていただけますか・・・・・・?」
 遠くの世界へ逝ってしまった馬鹿はとりあえず前向きに無視することにして、白河さんに答える。
「・・・私、なにも話していないような気もしますが・・・
ま、まあ、話は通じているようですのでいいでしょう。
はい、もちろん結構です。元々今日はお話だけのつもりでしたから。
・・・事情も、承知しておりますし。」
「・・・ありがとうございます。」
394闇野神殿:01/11/15 23:44 ID:7yNsfKr7
 返事は後日、ということで白河さんが引き上げた後のこと。
 当然のように、大志の奴は部屋に残っていた。
「・・・・・・で、やっぱりお前が教えたんだな、ここの場所を・・・・・・しかし、どうやって調べたんだ?」
 そうだ。大志にも、この場所は教えてはいないはず。
「ふ・・・簡単なことだよ、まいだーりん。お前が以前寄越した手紙。
消印からどの辺りから出したかくらいは見当がつく。そこから先は・・・まあ、ちと苦労させられたがな。」
 ・・・・・・この男は・・・まあ、今更この位では驚くまい・・・・・
「しかぁし!だ、まいはにーよ!」
 ・・・だから、だーりんとか、はにーとかはよせ、そーゆーのは・・・
「・・・・・・・・・・・・(じーっ)」
 あ、あさひの視線が・・・・・・
「だーかーら、そーゆー呼び方はよせ、っつーとろーが!」
 すぱーん!と虚空より取り出した張り扇で大志の頭をしばき倒す。
かつての相棒より伝授された技だ。
「ふ・・・そう照れるものではない、まい兄弟よ。
そもそも我輩がここまでやって来た目的はもう一つあるのだ。
それは・・・」
 うう、猛烈に悪い予感がするのう・・・・・・
395闇野神殿:01/11/15 23:45 ID:7yNsfKr7
「同志、和樹よ、お前は、再び起つのだっ!いや、起たねばならんっっっ!!」
 やっぱり、そう来たか。しかし、俺は・・・・・・
「・・・・・・でもな、俺は、もうマンガは・・・・・・」
 そう言いかけたときだ。
 「何いうてんねん!!このボケがああっ!!」
 こ、この声はっっっ!
 ぐわっしゃあああああああああんっっっ
「なんてトコから来やがんだ、馬鹿野郎オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ・・・・・・・・・!!」
 ・・・・・・窓ガラスを蹴破って入って来やがったのは、例の、『かつての相棒』であった・・・・・・
396闇野神殿:01/11/15 23:47 ID:7yNsfKr7
デスマッチ!!甦れ我等の千堂和樹!!(嘘)

「あああああ・・・・・大家さんに何て言えとゆーのだ・・・・・」
 思わず頭を抱える俺・・・
「か、和樹さん、し、しっかりして・・・」
「ふ・・・そのような事、我らの野望の前には、ほんの些細な事にすぎん、気にするなまい同志・・・」
「せやせや、こんくらいの事でガタガタ言うようなら、こっちからおん出てやりぃ」
「・・・・・・お、お前等なぁ・・・・・・」
 相も変わらず妙に歯車の噛み合った奴等だ
・・・こいつらが揃うと性質の悪さが自乗するような気がするんだが
・・・そうそう、思えばあさひと初めて会った前の日、こいつらに『遊ばれて』えらい目にあったっけ・・・
 などと現実から目をそらしつつそんな事を考えてみたりしていたのだったが、そのような事を許している二人ではなかった。
「それより和樹、あんた、さっき、『マンガは、もう』とか言いよったな、『もう』なんやねん、言うてみい!」
 由宇―猪名川由宇、以前、俺とユニットを組んでいた神戸の同人作家だ―が詰め寄ってくる。
「そおおおおおおおおおおだっ!!同志、和樹よっ!!貴様、あの燃える魂をどこに置き忘れて来たッ!!」
 大志もいつになく激昂している。
「お前は、あのとき約束したではないか、必ず、また戻ってくると!!
今こそが、そのときなのだ、今をおいて他にはないのだ、同志よっ!!」
397闇野神殿:01/11/15 23:48 ID:7yNsfKr7
「・・・でもな、あさひのこともあるし・・・」
「ふ・・・それなら心配無用だ、まいぶらざー」
「・・・・・・え?なんだって?」
「なんだ、知らなかったのか?あさひちゃんの所属していたプロダクションな、つぶれたそうだ」
「そ、そんな、も、もしかして、あ、あたしの・・・せいで?」
 あさひが泣きそうな声で言った。
「いやいや、あさひちゃんのせいではありませんよ。
・・・まあ、きっかけにはなったのかもしれませんが、どうやら、時間の問題だったようです」
「・・・どういうことなんだ、大志?」
 大志によると、こういうことらしい。
398闇野神殿:01/11/15 23:50 ID:7yNsfKr7
 つまり、あさひの一連の事件に対して、所属する声優、タレント達から一斉に非難が挙がったそうなのだ。
以前から、プロダクションがこのような圧力をかけていることに対して反感を覚える人は多かったらしい。
その中には、やはり似たような圧力をかけられて好きな人と別れさせられた人もいたとのことだ。
 そんな不満が高まっていた上に、あさひが春こみであのような形で引退したことで、一気に爆発したらしい。
所属声優がごっそりと抜け、自分達でプロダクションを立ち上げたのだ。
必然的に、責任を取らされて社長は退陣、プロダクション自体、経営が立ち行かず倒産・・・
わずか数ヶ月の間の出来事だったという。
「結局、あまりにワンマンで強引なやり方に反感が高まっていたのだな。あさひちゃんのことがなくとも、いずれこうなっていたであろう」
399闇野神殿:01/11/15 23:51 ID:7yNsfKr7
「そ、そんなことが・・・」
 あさひも驚いたようだ。無理も無い。俺だって驚いている。
しかし、こういったことでの大志の情報網や分析は的確だ。信用してもいいだろう。
「新しいプロダクションでは、あさひちゃんに対しては同情的です。
もし連絡がついたら応援したい、もし復帰するならぜひうちで力になりたい、というのが所属声優さんたちの総意になっているようです。
ですから―あさひちゃんのことは心配ご無用ですぞ」
 大志があさひを落ち着かせるように語り掛ける。
「ちゅうこっちゃ。あとは・・・あんた次第・・・やな。」
 由宇が俺に言った。まっすぐな目だ。責めるというより、訴えかけるような眼差し・・・
「由宇・・・でも、俺は・・・」
「あんたのことや、大方、みんなに申し訳無い、とか考えてるんやろ、でもな・・・そう思うてくれてるんやったら・・・だからこそ、描いてくれへんか、マンガをな・・・」
「あ、あの・・・」
 とてとてとて・・・とあさひが引出しから数冊のノートを取り出して持ってきた。
「!! そ、それは・・・・・・」
「ご、ごめんなさい、か、和樹さん、で、でも、あ、あたし・・・や、やっぱり、あなたにマンガ、描いてほしいから・・・」
 そ、そのノートは・・・
400闇野神殿:01/11/15 23:54 ID:7yNsfKr7
「で、でも、なかは、見てないから・・・いつか、あなたがみせてくれるまでって思って・・・
ゆ、由宇さん、大志さん、こ、これ・・・和樹さんが、描き溜めてたマンガの・・・こ、コンテ、ってゆのかな・・・です」
 そうだ。やはり、俺はマンガを描くことから完全に逃げることなどできなかった。
だから、発表するあても、つもりもないコンテを、ずっと描き続けていたのだ。
しかし、これはあさひにも内緒にしていたつもりだったのに・・・気づいてたんだな・・・。
 だが・・・俺は、本当に発表するつもりはなかったのか?俺は・・・
 こうして考えているうちにも、由宇と大志はノートのページを捲ってゆく。
二人の表情が俄かに真剣味を帯びてゆくのが判る。
「同志、和樹よ・・・」
 ノートを読み終えた大志がこちらに向き直り言った。
「このマンガを・・・描いてくれまいか?」
「せや・・・うちも読みたいで、完成した・・・このマンガをな・・・」
「由宇・・・大志・・・」
「他に気兼ねなどいらん。何より、我輩が、お前のマンガのファンとしてこのマンガを読みたいのだ。
同志由宇も同じであろう。それに、素晴らしいマンガさえ描けば、周りの雑音など、すぐに、静まる」
「お前が俺のファンだったとは、初耳だな」
「そうであったか?当然、知っているものと思っていたが」
 にっ、と互いの顔に笑みが浮かぶ。
「わかった、描くよ。俺」
「そうか、描いてくれるか」
「あ、あああの、あ、あたし・・・」
 あさひが、何か決意したような表情で声をあげる。
401闇野神殿:01/11/15 23:55 ID:7yNsfKr7
「あの、あ、あたしも、さ、さっきのお仕事のおはなし・・・受けたい・・・です!」
「いいのか、あさひ?」
「は、はい。あ、あたしも、もう、逃げてちゃ、だめだって・・・そ、それに・・・あの、約束・・・守りたいから・・・」
「あの約束?」
「え、えへへ・・・な、何でもないです・・・」
「き、気になるな・・・」
「じゃ、じゃあ、和樹さんの、マンガが出来たら、教えてあげます・・・」
「お・・・それじゃ、がんばらないとね!」
「は、はい・・・(ぽっ)」
「ぅあー、暑い暑いでー」
「ふっ、最早照れもないかね、まい同志よ」
「わぁっ!」
「きゃ・・・・・・(ぽぽぽぽぽっ)」

 余談だが、その後、俺達は、ものの見事にアパートを叩き出されたのであった・・・・・・(とほほ)
402闇野神殿:01/11/15 23:56 ID:7yNsfKr7
スーパーあさひ大戦Ω(オメガ)(大嘘)

「こ、ここって・・・」
 そうだ、ここは、以前俺が住んでいたマンションじゃないか。
 アパートをおん出された後、大志に案内されて新しい住家に来てみれば・・・妙に用意がいいとは思ったが。
「やーっとかえって来たわね、バカかずき☆」
「み、瑞希・・・」
「ほら、部屋の鍵!全部、あのときのまんまだよ・・・」
「あ、ああ・・・・・・」
 鍵を受け取った俺達は部屋に向かった。そう、数ヶ月前まで、俺が住んでいたあの部屋に・・・・・・。
「あれ?開いてるぞ、鍵」
「え?そんなはず・・・あ!ひょっとして・・・」
 瑞希がドアを開けると・・・
「お帰りー、和樹☆」
 だああああああっ!!
「ゆ、由宇・・・な、何で、ここに?」
「なに言うてんねん、明日、こみパやないか。せやから、この部屋泊まらせてもろてん。いつものことやろー☆」
「い、いつものってなー、俺が住んでた頃ならともかく、どーして今いるんだよ」
「す、住んで・・・・・・と、泊まる・・・・・・?」
 し、しまった、あさひが・・・
403闇野神殿:01/11/15 23:58 ID:7yNsfKr7
「わあああああああっ、ち、違うんだ、あ、あれは、由宇が、宿泊代浮かせるために来ただけで、な、何にも無かったって!!」
「せやなー・・・なにしろ、お風呂上りのうちが、バスタオル一枚でいたって手ぇださへんかったもんなー☆」
「ば・・・・・・ばすたおる・・・・・・」
「だあああああああっ、んなことまで言わんでいい!!」
「へー・・・そぉんなことがあったワケね」
 い、いかん、このままでは、お、俺の人格が・・・
「そ、それよりだな、なんで、由宇がここにいるんだ?」
 何とか話を戻さねば。
「せやから、言うたやろ、明日、こみパやって。この部屋の家賃、一部肩代わりしとる代わりにな、こみパの前はここ使わせてもろとるんや。
ホテル代よりは安くあがっとるしな、重宝しとるで〜♪」
 なんだって?
「家賃、肩代わりだって?それって・・・」
「うむ、お前がいつ戻ってもいいようにな、我輩と、同志瑞希、同志由宇とで共同でこの部屋をそのままお前名義で借りつづけていたのだ。
家賃については心配するな、三分割したうえ、お前の残して行った在庫の同人誌を同人ショップで委託してその売上げもあわせればひとり頭の負担はかなり安く済む」
「そうだったのか・・・すまないな、みんな・・・」
「まあ、ショップの委託分もそろそろ底をつく頃ゆえ、そろそろお前に戻ってもらいたいところではあったがな」
 がく。
404闇野神殿:01/11/15 23:59 ID:7yNsfKr7
「おいおい、俺に戻って来いっていったのはこれが理由か?」
「ま、それも理由の一つではあるがな、しかし、無論、まいぶらざーとあさひちゃんの復活こそ最大の理由に決まっている。
今のおたく界にはお前とあさひちゃんがどうしても必要なのだよまい同志」
「なんか釈然としないものがあるが・・・まあ、とにかく、みんな、本当にありがとう・・・今すぐは無理だけど、肩代わりしてもらった分は、なるたけ早く返すから」
「あー、うちの分は気にせんでええで、言うたやろ、ホテル代より安くあがっとるって。それにな・・・」
 由宇が俺の耳元でささやく。
「もうすぐあさPの事で金、かかるやろ、そっちに使い」
「!」
 ま、まいったな・・・判ってたか・・・。
「あ、ああ、ありがとうな、由宇・・・」
「ちなみに、大学の方も、半年間の休学届けを出してある。もうすぐ期限だからな、復学するなら早目に準備しておくことだ」
「そ、そこまで・・・ありがたいが、よく受理してもらえたな」
 ・・・どっかの某ゲームみたいだねぇ、全く・・・。
「な、なんか、なにもかも、元通りになっちゃったみたい・・・ゆ、夢みたい・・・」
「・・・いや、なにもかも、なんてことはありえないさ・・・けど、少しづつ、取り戻していこうな、二人で・・・な」
「は、はい、和樹さん・・・」
「それにさ、新しく手に入れたものだって・・・あるだろ?」
「あ・・・・・・は、はい・・・・・・(ぽっ・・・)」
 幸せそうに、あさひが微笑む。この微笑みを守るためなら・・・なんだって出来る。今、改めて、そう思った。
405闇野神殿:01/11/16 00:02 ID:rG2pC+6q
まだ続くの!?ちゃん様さん現る

 ・・・・・・それにしても、この章タイトルの一連のネタは、一体どのくらいの人に理解してもらえるのであろうか・・・・・・
などと、どうでもいいことを考えつつ、原稿用紙に下書きのシャーペンを走らせる。
と共に、昨日のこみパでのことを思い出すと、自然に表情が和らいでいくのがわかる。そう・・・・・・

「で、明日のこみパはどないすんねん?」
 由宇が聞く。
「そうだなあ・・・一般だからなあ、午後からのんびり行くのもいいんじゃないかな?」
「あのな、良ければ・・・なんやけど、うちのサークルの売り子、ちゅうことで一緒に来いへんか?
もち、あさPも一緒にな」
「邪魔じゃないか?」
「かまへんよ、ま、新妻をこき使ったりせぇへんし、うちが席外したりするときちょこちょこっと手伝うてくれればええんや。
どや?」
「に・・・・・・新妻・・・・・・(ぽーっ・・・)」
「由宇が迷惑じゃないんなら、有難くそうさせてもらうよ」
「そっか、じゃ、決まりやな☆」
 ・・・その晩は、結局、みんなで騒いで明けてしまった。二人の邪魔はしない、という由宇だったが、
いまさらホテルもなんだし、追い出すわけにもいかないだろう、と言って引き止め、
大志や瑞希まで一緒に部屋に残って話して、騒いで、時々由宇の張り扇が閃いて・・・
もう二度と、こんな時間が過ごせるなんて思っていなかったのに・・・俺は・・・。
406闇野神殿:01/11/16 00:03 ID:rG2pC+6q
 そして、数ヶ月ぶりのこみパ当日の朝。
 あさひは、こみパに行くときは恒例の、オーバーオールに伊達眼鏡のいつものスタイルだ。
しかし、このカッコも久しぶり・・・
「ど、どしたんですか、和樹さん?」
 ・・・・・・どうやら、顔がにやけていたようだ。
「いや〜、あさひのこのカッコも久しぶりだな〜ってね」
「で、でも、このカッコ、あ、あんまり女のコらしくないから・・・」
「いや、可愛いよ。初めて会ったときも、初めてあさひの事知ったときも、初めてデートしたときもこのカッコだったろ?俺は、好きだよ、このカッコ」
「そ、そですか?な、なんか、意識したら、ちょ、ちょっと、照れちゃいます・・・」
「朝からラヴラヴとは、妬けるなあ、お・ふ・た・り・さ・ん♪」
「わああっ」
「きゃ・・・(ぽぽぽっ)」
407闇野神殿:01/11/16 00:04 ID:rG2pC+6q
「いらはいいらはい〜♪安うしとくで〜♪」
 いつもの由宇の威勢のいい啖呵が気持ちいい。
「まあ、和樹さんじゃないですか、久しぶりです・・・本当に・・・」
「あ・・・南さん・・・こちらこそ、ご心配、おかけしました・・・」
「いえ、いいんですよ、こうして、また、こみパに来て下さったんですから・・・」
 いつもの南さんの優しい笑顔だ・・・俺は、このこみパに帰ってきたんだな・・・と改めて実感する。
いや、いつも以上に優しく見えるのは気のせいかな?
「今日はサークルじゃないんですよね?」
「ええ、今日は由宇の手伝いです」
「あ、あのぉ、お、お久しぶり・・・です、み、南さん・・・」
「え?あ・・・あさひちゃん?」
 南さんが周囲を気づかい声を低くして応える。
「南さんとは知り合いだったの?」
「は、はい、ミニコンサートのときとか、お世話になったから・・・」
「そっか、なるほどな」
「でも、和樹さん・・・あさひちゃんも、あんな事になる前に一言私に相談してほしかったです・・・
そりゃ、大したことは出来なかったかもしれませんけど・・・ふたりとも、私の大切なお友達なんですから、ね・・・」
「す、すみません、南さん・・・本当に、心配かけまして・・・」
 本当だ。あの時、俺達は、あまりに自分達だけで解決しようとしていたのかも知れない。今になって、改めてそう思う。
408闇野神殿:01/11/16 00:06 ID:rG2pC+6q
「ふふっ、でも、こうして帰ってきてくれたんですから・・・許してあげますっ☆」
 あ・・・南さんの目に光るものが一滴・・・俺達は、本当にみんなを心配させていたんだな・・・・・・
「むかつくむかつく、ちょおむかつく〜〜〜〜〜っ!!」
 どわわっ!!こ、この声は・・・
「あんたぁっ、一体誰のゆるしをえてこの詠美ちゃん様の前からいなくなってたのよっ!!あんたが勉強見てくれないから、卒業試験、できなかったじゃない〜!!」
 い、いや、そげなこと申されましてもな・・・
「アホくさ、勉強サボって原稿ばっかしとったからやない、自業自得やな」
 ・・・・・・由宇が、的確で冷静で非情なツッコミを入れる。
「ふみゅうっ!!」
 どうやら、詠美は卒業できなかった・・・要するに、ダブり、ってやつだな・・・らしい。いとあはれなり・・・
「ぱ、パンダああっ!!な、な、な、なんてことゆーのよっ!!べ、べんきょーなんかより、げんこーのほーがよっぽどだいじなんだからぁっ!!
しょーがないじゃないっっっ!!」
「・・・あんた、台詞から漢字も無くなってるで・・・」
「ふみゅみゅうううううっ!!」
「あ、あ、あの、お、大庭、せ、センセイ・・・ですよね、あ、あ、あたし・・・」
「ふみゅ?」
 ・・・あさひ?
409闇野神殿:01/11/16 00:08 ID:rG2pC+6q
「あ、あたし、せ、センセイの、だ、大ファンです・・・あ、あの・・・」
「ほーっほっほっ!やーっぱ詠美ちゃん様は偉大よね〜♪パンダのとこの売り子まであたしのファンだなんて〜♪
・・・って、あ、あれ?あんた、どっかで・・・ポチきと一緒で・・・え?え?え?」
 や、ヤバイっ!!
「ま、まさかぁ、さ、さく・・・・・・・(むぎゅうっ!!)」
 間一髪、俺と由宇で詠美の口を押さえる。
「(むぅ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!)」
「じゃ、じゃっ、後、頼むっ!」
「おう、まかしとき〜♪」
「はい、いってらっしゃ〜い、和樹さん、詠美ちゃん、あさひちゃん☆」
「(むぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!)」

「・・・・・・ったく、不用意だぞ、あさひ」
 こつん、と、かるく触れる程度にあさひの頭に拳固を当ててたしなめる。
「ご、ごめんなさい・・・ま、まいあがっちゃって・・・」
 しゅん、としてうなだれるあさひ。まあ、そんなとこが可愛いんだが。
 とりあえず、会場の外まで詠美を連れ出し、何とか事情を説明し落ち着かせることは出来たのだが・・・。
「ほーっほっほっ!!やっぱり詠美ちゃん様は偉大よね、ぐれーとだわっ!いだいなゆうしゃはまじんがーだわっ!!」
「は、はいぃ、え、詠美さん、とっても、その、あの、あの・・・」
「ふむ、よろしい!特別に、あたしのこと、詠美ちゃん様と呼ぶことを許可するわっ!!」
「は、はいぃ、詠美ちゃん様さん・・・」
「ふみゅう!さんはいらないのよぉ・・・」(ちゃん、ちゃん♪)
410闇野神殿:01/11/16 00:10 ID:rG2pC+6q
約束、そして・・・

 ・・・・・・そして、俺は次のこみパに向け、新刊の原稿に取り組んでいる。あさひも手伝うと言ってくれたが、あえて断った。
残念そうな様子だったが、完成したものを一番に読んでもらいたいからだよ、と言ってあげると、はにかんだ表情で微笑んでくれる。
 時々、由宇や、実に、いやもう、本っっっ当に珍しい事に大志までもが手伝ってくれる。
 数ヶ月間に描き溜めたコンテはマンガにして数本分、いくつかのネタがあるが、俺はその中から最初はこれしかない、と『この一本』を選んだ。
由宇や大志も納得してくれた。

 そして、あさひの久々の収録の日がやってきた。
「俺も行っていいのかな?」
「は、はい、心細いからじゃなくて・・・あ、あたしの、お仕事、見ててほしいから、あなたに・・・」
 精一杯の決意を秘めた表情であさひが言った。
「それじゃ、行こうか」
411闇野神殿:01/11/16 00:11 ID:rG2pC+6q
「あ、あさひちゃん!?ホントに、あさひちゃんだよね!?」
「あ・・・し、心配かけちゃって・・・ほ、ほんとに、ごめんなさい、み、みねちゃん・・・」
 あ・・・この人は、たしか、あさひと同じ声優の・・・
「あ、か、和樹さん、あの、こ、こちら、あたしの先輩の、ぷ、プロダクションは違ったんですけど、
すごくお世話になった、み、みねちゃん、じゃなくて、か、辛島美音子さん・・・」
「千堂和樹です。よろしくお願いします」
「あ、辛島美音子ですっ、よろしくね☆・・・ふ〜ん、そっかあ〜あなたがね〜☆」
「な、なにか?」
「『あの』あさひちゃんが、あ〜んな思いきったことするなんて、どんな人なのかな〜って思ってたんだよ☆
・・・ふふっ、思ってた以上に素敵な人みたいだねっ☆」
「は、はいぃ・・・そ、そです、ほ、ほんとにぃ・・・(ぽ〜っ)」
 彼女は、あさひの性格のことは知っているみたいだな、って、声優仲間なら知ってても不思議じゃないかな?
「あ、あの、それで、みねちゃんも、収録なんですか?」
「ううん、あたしはこのゲームには出ないけどね、あさひちゃんが来るっていうから、ね。会いたかったから・・・」
「あ・・・ありがと・・・み、みねちゃん・・・」
「ほらほら、泣かない、泣かない。涙もろいのは変わってないね・・・あさひちゃん」
 俺は、ちょっと安心していた。こんな友達がいてくれるなら、これからもあさひの支えになってくれそうだ、と思ったからだ。
そして、とても暖かな気持ちを感じていた。
412闇野神殿:01/11/16 00:15 ID:rG2pC+6q
 収録は、無事に終了した。あさひの演技力は以前にも増して冴えているようにさえ思われた。
事前に渡されていた台本を何度も練習していたのは知っているが・・・
そもそも、このゲームの台本は、戦闘シーンのデモ画面の台詞の応酬、それに、イベントデモの部分的な台詞だけなのだが、それでも、あさひは少しも手を抜かない。
生真面目なくらい、すべての台詞を一生懸命考えて演技しているのだ。
俺は、あさひの実力の一端を垣間見た気がした。あさひは、自分は、台本通りの演技しか出来ないと言っていた。
でも、そう思っているからこそ、台本から出来る限りの演技を引き出そうと努力しているのだ。

 収録が終わった後、白河さんがやって来た。
「あさひさん、素晴らしい演技でしたよ。苦労してあなたを探し出した甲斐がありました!」
「そ、そんな・・・で、でも、あ、ありがとうございます・・・
あ、あたしも、や、やっぱり声優のお仕事、選んで良かったって、今、思えます」
「そうですか・・・そう言って頂けると、私もプロデューサー冥利に尽きるというものです」
「あ、あたし、声優のお仕事、続けたいです。
アイドルには、もうなれないけど、一人前の声優になって・・・やりたい役が・・・あるんです」
「やりたい役・・・ですか?」
「は、はい、で、でも、ま、まだ内緒・・・なんですけど・・・えへへ・・・」
「ふふっ、それじゃ、いつかその役をやるときに、お力になれることを願っていますよ、あさひさん」
413闇野神殿:01/11/16 00:17 ID:rG2pC+6q
 そして、運命の入稿日がやって来た。
「っしゃあああああああああああああっ!上がったぜぇええええええええいっ!!」
 へばっていた、バテバテだった。それでも、久々の充実感に全身が満たされていた。
「お、お疲れ様です、和樹さん、は、はい、こ、これ、コーヒー・・・」
「ありがとう、あさひ。それじゃ、このマンガ、一番に読んでくれるかな?」
「は、はい・・・あ・・・こ、これって・・・」
 そうだ。俺が復帰一番目に選んだ題材は、外でもない、俺とあさひの、出会いからあの旅立ちまでを描いたものだった。
・・・もちろん、あまりにプライベェト☆な部分は除いてあるが・・・(わははっ)
 読み進むうち、あさひの表情が刻一刻変わっていくのが判る、微笑み、悲しみ、幸せ、涙・・・
俺のマンガを読みながら、あの日々を追体験しているようだった。
「和樹さん、あ、あたし・・・」
 頬を涙で濡らしながら、幸せそうに微笑んであさひは言った。
「あ、あたし、あたし、あなたに出会えて、良かった・・・あたし、幸せ・・・です・・・」
「俺も・・・幸せだよ。あさひに出会えたから、あさひが、ここにいてくれるから・・・」
 今まで言えなかったこと、逃げていたころの俺には言えなかった言葉・・・
「結婚・・・しよう、あさひ・・・」
「う、うれしい・・・です、か、和樹さん・・・あ、あたし・・・」
 俺は、あさひの肩をそっと抱き寄せ、あさひも俺に寄り添って来る。
 そして、ふたりの唇が近づいて・・・
「おーおー、これから入稿やっちゅうのにいきなり濡れ場突入かぁー?あーあ、独り者には目の毒やな〜」
「くくく、これから復帰第一回目のこみパを控えていながらこの余裕、
さすがはまい同志・・・といったところかな?」
「どわわぁあっ!」
「きゃ・・・っ!(ぼぼぼっ!!)」
 俺達は落ち着いてラブシーンもできないのであろうか・・・(とほほ)
414闇野神殿:01/11/16 00:18 ID:rG2pC+6q
「にゃあああああっ、お兄さん・・・帰って来たんですね、千紗、千紗ぁ・・・」
「ありがとう、心配かけてごめんね、千紗ちゃん」
「また、またお兄さんのご本印刷できるんですね?」
「そうだよ、これから、またよろしくね」
「はいです・・・千紗・・・がんばってお兄さんのご本刷るですよ・・・(ぐしゅ)」

 俺は・・・俺達は・・・沢山の人達に支えられて、今、ここにいる。
そう、俺達の出会った、こみっくパーティーに。
「そうだ、あさひ、この前言ったよな、俺の本が出来たら教えてくれるって、あれって、何だったんだ?」
「ふふ・・・和樹さん、マンガの中でも描いてたじゃないですか・・・」
「え?って、もしかして?」
「そ、そです、あのときの約束・・・いつか、和樹さんのマンガがアニメになったら、
あ、あたしが、ヒロインの役・・・やりたいって・・・」
「そうか、白河さんに言ってたのも・・・」
「いつか・・・いつになったとしても・・・あたし、その日目指して、がんばれるから・・・」
「ふふっ、それにはまず、和樹くんがプロとしてデビューしなくてはね」
「あ、へ、編集長、ど、どうも、ご無沙汰してました」
「いいのよ、ふぅん、これが、あなたの新作ね・・・読ませてもらうわよ?」
「は、はい、お願いします!」
 や、やっぱり、緊張するぜ・・・
「ふぅん・・・やっぱり、ブランクのせいかしら、絵が硬いところがあるわね、それと・・・」
 や、やっぱり厳しいぜ、でも、本当だし、ここを直せば確実に良くなるポイントを指摘してくれている・・・真剣に聞かなきゃな。
415闇野神殿:01/11/16 00:19 ID:rG2pC+6q
「3ヶ月ね」
「え?」
「あと3ヶ月で、昔のあなたを越えられるかしら?」
「え?え?」
「3ヶ月後にうちの雑誌の主力の連載マンガが一本、完結するの。
もし、あなたが、それまでにそれに見合うだけの実力をつけられたなら・・・」
「そ、それって、ま、まさか・・・」
「あなたって、本当に、不思議なコよね・・・ブランクの間に、以前は持っていなかったものを身につけているわ。
深み・・・とでもいうのかしら。ふふ・・・ひょっとしたら、あなたのおかげかもしれないわね、あさひさん」
「え、え?そ、そんな、あ、あたし・・・」
「いや、きっと、あさひのおかげだよ。あさひがいたから・・・ここまで来れたんだ」
「あ、あたしも・・・あなたがいたから・・・」
「約束するよ。俺は、プロになる。そして、いつか、もし俺のマンガがアニメになったなら、必ず、あさひにヒロインをやってもらうって」
「ふふ・・・楽しみね、あたしも、いつかそんなときが本当に来るんじゃないかって気がするわ」

 数年後、その約束は果たされることになる。
 けれどもこれはまた別の話、また、別のときに・・・・・・。

                                              Fin
416闇野神殿:01/11/16 00:28 ID:rG2pC+6q
「約束・そして・・・・・・〜桜井あさひ〜」 完
>>386-415
>>391はミスによる多重です。申し訳ありません。

長々とお付き合い頂き、ありがとうございます&長すぎで申し訳ありません。
以前コピー誌として発行したSSを改訂したものです。数出てないので、持ってる人はほとんどいないと思いますが。
PC版をプレイして思ったところをSSにしてみました。
SSはこれが初なので拙い出来ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
417弐死斬:01/11/16 00:37 ID:Mkgtc5eh
ああ………そういえば、葉鍵トーナメントなんてもんがやってたな……
真琴の次の相手は……なんだ、楽勝じゃん。
魅琴伝を投下するまでもないか。
……あれを投下したらファンから叩かれそうな気がするが(藁

>>416
読みました。
瑞樹の話っぽくきれいにまとまってますね。プロデビューしますし。オレのとは大違いだ(藁
ただ、そうですね……ちゃん様は……顔出しだけですか?
一人一言状態ですが。

総括。
『萌え』のような激しい感情は起きませんが、落ち着いて読めるいい作品だと思いますよ。
418名無しさんだよもん:01/11/16 03:16 ID:1KUMphtB
>>417晒しage

二回首吊って氏ね
419名無しさんだよもん:01/11/16 03:17 ID:1KUMphtB
そしてage忘れた俺を晒しage
420名無しさんだよもん:01/11/16 03:29 ID:5u8OmGGU
>416
ほろりとしたよ…。
こういうアナザーエンドも悪く無いと思った。
あさひちゃんの魅力をうまく引き出しているいい作品だね!
421 ◆hGrdp//E :01/11/16 10:25 ID:Q4Dgqd2I
ネ…ネクロノーム…
よりによってネクロノーム…

>417
えーと、あえて無視してたけど、一言だけ。

帰れ
422名無しさんだよもん:01/11/16 11:52 ID:V7KluDRe
>417
いやいや、面白かったですよ。
…アンタの書き込み自体が。

>ああ………そういえば、葉鍵トーナメントなんてもんがやってたな……
いきなり"なんてもん"呼ばわり!カコイー

>真琴の次の相手は……なんだ、楽勝じゃん。
すごいねー、第1回戦、相手がどれほどの激戦を潜り抜けたか知らないんだー(ワラ
周りを見ないで脳内イメージで語る。これぞ厨房の証。

>魅琴伝を投下するまでもないか。
すごい自信だー。どこからその自信が湧いてくるのか小一時間問い詰めたいね(ワラ
大体このトーナメント、萌えのトーナメントってちゃんと理解してる?
萌える話じゃない、と言いつつ、萌えのトーナメントに話を投下しようとする矛盾!
気が付いてないッぽいところがさらにカコイー

>……あれを投下したらファンから叩かれそうな気がするが(藁
無視される、って事を考えないあたりがいいですねえ。
まさに厨房的思考(ワラ

いやいや、なかなか笑いどころたくさんの書き込み、面白かったYO!
投下したSS?読んでないからしらなーい(ワラ
423 ◆hGrdp//E :01/11/16 11:57 ID:akjx0PcO
リンチは良くないよ。
だから、上げてみんなの感想を聞いてみようか?

>344-351
>356
>358-360
>365
>367
>369
>371-380

個人的には朝鮮製に匹敵する素晴らしさ。
424日本茶:01/11/16 12:10 ID:rOXdme+b
会話文の前にキャラの名前を付けてる段階で萎えちゃうの、ボク。
ちゃんとキャラを書き分けていればそんなの付けなくっても全然
オッケーだし。

というか、全部読めませんでした。よって評価不能。
425700/1300@長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/16 12:16 ID:J8N/bStr
>>417
取り敢えず尊大な態度は改めた方が良いかと.
ネタや冗談半分かもしれませんが,文字媒体では伝わりにくいものです.
折角SSを書いても,不注意な言動のせいで読んでもらえなかったり評価してもらえなかったりしたら不幸ですから.
SSの内容に就いては後日時間のある時によっくり読ませてもらいます.

マァ、ミンナオチャノンデマターリシヨウ( ・∀・)っ且~~~~~~
426長瀬なんだよもん:01/11/16 12:44 ID:OJh6h+Xa
俺もよく凹む事があるからなー自分の不用意な発言で。
人事とは思えんよ。もうちょい馴染んでいこう。

マターリいこうな、マターリ。( ・∀・)っ且~~~~~~
427名無しさんだよもん:01/11/16 12:45 ID:5nRVq7nc
>弐死斬 氏
こういう独自設定の話があっても良いとは思います。
ただ、独自設定の話はどうしても読み手側に好き嫌いが発生しますし、
その設定を納得させるだけの描写等が必要になると思います。

が、ただ独自設定を用いたSSにしては、状況説明が不足していると
思います。
申し訳ないですが、自作SSにKanonキャラの名前を借りただけの作品
という印象が拭えません。

それと会話型シチュなら判りますが、SS(長編)として書くなら会話だけで
進行するのは、難しいと思います。
今回の話はシチュには向かない内容です。
そしてSSとして書かれるのであれば、状況描写・心理描写が必要ですし、
書き方としても会話の前のキャラ名はない方が良いです。

SSの発想自体は面白いと思いますので、書き方を練って推敲を繰り返せば
もっと良くなると思います。
428422 :01/11/16 13:24 ID:V7KluDRe
ちょっと読んでみたYO!
アニメ版ヘルシングの様なスラバシさ(ワラ
429なにがしだよもん ◆ie2wgyeo :01/11/16 13:27 ID:f6BDWZvz
>>>417

>真琴の次の相手は……なんだ、楽勝じゃん。
>魅琴伝を投下するまでもないか。


…。
えーと……。
こういうノリが好きな人間としては誠に言いにくいことですが…
葉鍵SS界では、オリキャラ主人公の作品の評価は大きく分かれます。
気にしない人もいる一方、それこそ石つぶてでもって追い立てようとする人も
いるのです(^_^;)
『魅琴伝』はオリキャラである魅琴が余りにも前面に出過ぎており、
後者の人たちの反感を買うおそれがあります。

また、『魅琴伝』は「ジャンプのテイストが好き!」という前提に依存するところ
大な内容なので、
ジャンプ的なお約束のノリが嫌いな人たち、
物語として完結していることを望む人たちにとっては、
わかりにくいお話として見えてしまうでしょう。


>……あれを投下したらファンから叩かれそうな気がするが(藁


えー…あー…うー……。
まぁ、そうですね……最萌トーナメントへの投下物は、
まこぴーが主人公の短めのものを用意されたほうが無難かと(^_^;)
430名無しさんだよもん:01/11/16 15:38 ID:fgrG9kYi
個人的な趣味の話で申し訳ないんだけど、自分の作品について言及する時、
自分の作品に価値があることを全面に押し出した発言はなんか萎えるんです。
別に「駄作ですが読んで頂けたら幸いです」みたいに無駄に卑下しろってことじゃなくって、なんていうかその、

>魅琴伝を投下するまでもないか。

投下することがムーブメントになり得る確信って言うんですか?
つまり、謙虚さとかそういうわけでもなくって、あくまで姿勢の問題として、
要は何が言いたいかって言うと、言葉の選び方って難しいですね、ってことです。
431名無しさんだよもん:01/11/16 15:41 ID:bJID2NgW
>魅琴伝を投下するまでもないか。
>……あれを投下したらファンから叩かれそうな気がするが(藁
是非投下してくれ。
そして辛い現実を目の当たりにして欲しい。
432名無しさんだよもん:01/11/16 15:43 ID:bJID2NgW
>投下することがムーブメントになり得る確信って言うんですか?
ムーブメントにはなるかもよ?
別の意味で…。
433名無しさんだよもん:01/11/16 15:49 ID:OJh6h+Xa
オリキャラって難しいよな。
100のオリキャラが出るSSがあれば、その内80〜90は萎える。
どうでもいいが、SSについて議論するのは、討論スレだな。
俺はそっちに逝くよ。
ここにはSSを読みに来たい。
434名無しさんだよもん:01/11/16 23:43 ID:KgAWXsZH
自己満足に陥らず、ついたレスで考えたほうがいいと思う>SS評価
あと、書き手は、あんまりうだうだ言わないほうがカコイイよね…
435名無しさんだよもん:01/11/16 23:58 ID:eA/XMwsU
417の発言は、ギャグのつもりのような気もするのだが。
436高橋・水無月原理主義者穏健派 :01/11/17 17:02 ID:Qr01BphN
>>386-415
すんばらしい
わち的あさひちゃん補完シナリオ確定ですだ
こういう作品が出てくるから
ココを見るのも止められないもんですだ
書き方なんかで初心者特有の微々たるミスは
有りますけど そんなの帳消しです
これからも、頑張って下さい
437第8航空軍 ◆eBbp7yEo :01/11/18 00:13 ID:h7JdiUJQ
これよりSSを投稿しますので、書きこみは作業完了までひかえて頂きたくあります。
浩平×瑞佳の18禁(非陵辱)、最萌トーナメント支援です。
438彼の瑞佳 彼女の浩平(1):01/11/18 00:15 ID:h7JdiUJQ
「ずっと前から好きだったんだ……オレともう一度……付き合ってくれっ!」

「うん……いいよっ」

 折原浩平が「えいえんのせかい」から帰り着いたその日、彼は幼なじみの長森瑞佳に衆人監視の中で告白した。
 およそ1年の間、浩平の居ない寂しさと悲しさにひたすら耐え続けてきた瑞佳は、当然のように浩平の想いに応え、ふたりは再び付き合い出すこととなった。
 その日の授業が全て終わると、ふたりは浩平が消える前と同じように、世間話などに興じながら家路に着いていた。
 互いに話すことはいくらでもあった。浩平の存在しなかった1年間、一体どのような出来事があったのか、浩平が今までどこにいたかについて……。
 だが、これらのことを全て話し合うには、下校する間の時間はあまりにも短かった。ふたりはやがて浩平の家に辿り着いた。
「じゃあ、また明日な。瑞佳」
 しかし、瑞佳は浩平の家の前から離れようとはしない。瑞佳はゆっくりと口を開き、言葉を紡ぎ出した。
「浩平……、寄っていってもいいかな……?」
「え? あ、ああ。別に構わないけど……」
 一瞬、浩平は面食らったような顔をしながら答えた。そしてすぐに、瑞佳がなぜこのようなことを言い出したのか、その理由を尋ねる。
「明日も逢えるのに、いきなりどうしたんだ?」
 この問いに対する瑞佳の返答は実に単純なものだった。
「わたし、もっと浩平と一緒に居たいよ。だって、せっかく帰って来てくれたんだもん」
「……そうか、そうだな」
 浩平は瑞佳に対してというより、むしろ自分に言い聞かせるような感じで言った。そして瑞佳に向き直って、言葉を続けた。
「オレも同じだからな。まぁとにかく上がれよ、積もる話もあるしな」
 浩平の顔は赤くなっていた。夕日に照らされていたという理由だけでは決してなかった。
439彼の瑞佳 彼女の浩平(2):01/11/18 00:18 ID:h7JdiUJQ
「おじゃましまーすっ」
 瑞佳はそう言うと靴を行儀良く脱ぎ、家の中に入って行った。そんな彼女に、先に家へ入った浩平が声を掛ける。
「今コーヒーを入れるから、居間ででもゆっくりしててくれ」
「あっ、いいよ。わたしがやるから」
 瑞佳は長年浩平の保護者(?)として世話を焼いてきた実績がある。そのため、浩平の家の台所も彼女にとっては勝手知ったる場所である。何がどこにあるかはすっかり熟知していた。
「ばか、客にそんなことさせられるか」
「えっ、でも……」
「いいから、ゆっくりしてろよ、なっ?」
「うん……わかったよっ。ありがとう」

 やがてコーヒーを入れ終えた浩平が、それを盆の上にのせて、瑞佳の元にやって来る。
 湯気とふくよかな香りを立てるカップをテーブルの上に移して浩平が言った。
「お待たせ、瑞佳」
「あっ、ありがとう、浩平」
 浩平もテーブルを挟んで瑞佳の向かい側に座った。そしてふたりは無言でコーヒーを口にする。
 一口だけ飲み終えた瑞佳が、カップをテーブルに戻して言った。
「次は、浩平の番だよ」
 学校とそこからの帰り道で、瑞佳は浩平のいない間に起きためぼしい出来事の大部分を話し終えていた。だが彼女は、浩平がなぜ消えたのか、今までどうしていたのか、それらをどうしても知りたかったのだった。
「……ああ」
 浩平も瑞佳の心情を感じ取り、瑞佳を真っ直ぐに見つめた。その眼差しはどこまでも真剣だった。普段くだらない悪ふざけや悪戯に興じている時とは根本的に異なっていた。
「話せば長くなるんだが……」
440彼の瑞佳 彼女の浩平(3):01/11/18 00:23 ID:h7JdiUJQ
 その後、浩平が叔母に引き取られ、瑞佳との出会いを果たしたことは彼女も良く知るところである。
「えいえんのせかい」については、瑞佳は最初、浩平の話を「信じられない」といった面持ちで聞いていたが、最終的にはその全てを信じざるを得なくなっていた。
 彼女は「盟約」の内容、すなわち「えいえんはあるよ」の一言で、かつて泣き暮れる浩平を慰めた幼い日の出来事を記憶の奥底から発掘することに成功していたし、何よりも瑞佳の目の前で浩平が不可思議な姿の消し方をしたのはまぎれもない事実だったからである。
 無論、この頓狂な話をするのが「浩平だから」という点も大きい。瑞佳は浩平にそれほどの信頼を置いていた。
 それらを全て話し終えた時には、コーヒーはすっかり冷めきっていた。

「悲しかったんだね……浩平は」
「ああ……悲しかった。その時のオレは、あんな楽しい日々がずっと続くと無邪気に信じてたんだ……」
 ふたりは暫し口を閉ざした。部屋が静まり返る。普段は意識することのない、壁に掛けられた時計が秒針を刻む音のみがふたりの耳に響いていた。
 その静寂を破ったのは、瑞佳の方が先だった。うつむきながらポツリと口にする。
「ごめんね、浩平……」
「なんで謝るんだ?」
「だって、わたしは浩平を助けられなかったもん」
 そう言って顔を上げた瑞佳の頬を水滴が伝った。声はくぐもり、震えていた。
「わたしは何もわかってなかったんだよ……浩平の苦しみも、悲しみも。だからわたしは浩平に無責任なことを言っちゃったんだね。それで浩平は……ごめんなさい……」
「違う、違うんだ!」
 瑞佳の自分を責める、絞り出すような悲痛な発言を遮って浩平は叫ぶように言った。
441彼の瑞佳 彼女の浩平(4):01/11/18 00:24 ID:h7JdiUJQ
「オレが今ここにいるのは瑞佳のおかげだ。お前との絆がオレをこの世界に連れ戻してくれたんだ! 瑞佳はなんにも悪くないんだ!」
「でも……」
 何かを言い掛けた瑞佳だが、彼女は二の句を継ぐことはできなかった。浩平が急に立ち上がり、両腕でしっかりと抱きしめられたからである。そして彼は静かに、優しく語りかけた。
「そんな悲しいこと言うなよ。オレが弱かったんだ。だから、瑞佳にも寂しい思いをさせちまったんだよ……。本当にごめん、瑞佳。もう、お前を置いてどこにも行かないから……」
「浩平……」
「瑞佳、だから泣くなよ、なっ?」
「ありがとう、浩平……」
 再び静寂が居間を支配した。その間も浩平は瑞佳を自分の腕の中に強く、優しく抱き続けていた。それから5分も経ったころだろうか、今度は浩平が静寂を破る番が来た。
「瑞佳……オレの部屋へ行こう」
「えっ?」
「オレは、瑞佳が欲しい。もっと絆を深めたいんだ」
「うん……」
 瑞佳もその言葉の意味を理解し、緊張した顔つきで小さく頷いた。
442彼の瑞佳 彼女の浩平(5):01/11/18 00:26 ID:h7JdiUJQ
 浩平の部屋はカーテンこそ閉じられていたが、天井から下がる蛍光灯はその存在感を示すように白くまばゆい光を放っていた。そのため、部屋の中はまるで昼間のような明るさを呈している。
 瑞佳は自分の裸体をさらすにあたり、部屋の電気を消すことを浩平に望んだが、浩平は、
「そんなことをしたら良く見えないじゃないか。オレはお前の全てが見たい」
 と真面目な顔つきで言った。その後少しの問答の末、瑞佳は結局、
「はあ……わかったよ」
 と、1年前までの朝のやり取りのように溜息をついて、それを黙認したのだった。

 そして現在、部屋の中には水っぽい音が微かに響いている。浩平と瑞佳は生まれたままの姿(ただし、彼女のトレードマークである黄色いリボンは健在だった)でベッドに腰掛け、唇をぴったりと重ね合わせていた。
 最初は互いの唇をついばむような軽いものだったが、徐々に濃厚なものとなっていった。
「……ふっ……んっ……ふぁっ……」
 瑞佳の甘い息が唇の隙間から漏れる。しかし唇は離そうとしない。彼女は浩平が口内に挿し入れる舌に、自分のそれを絡めることにすっかり夢中になっていた。
 それは浩平もまた同様だった。彼は約1年ぶりに大好きな女性の口唇の感触を思う存分堪能していた。
 ふたりがようやく唇を離したのは、キスを始めてから約10分後のことだった。
「ふぅ……」
「ふはっ……」
 ふたりの口の間に透明な線が発生し、すぐに消えた。
(そう言えばあの時は、キスに夢中になって遅刻しかかったんだっけな……)
 浩平は、瑞佳の2度目のキス(初めてはふたりが出逢って間もない幼少期)を思い出しながら言った。
「瑞佳、お前は相変わらずキスが好きだな」
「えっ!? だ、だって、それは浩平が……」
 急に顔を赤面させ、あたふたとなる瑞佳。それでも彼女は反撃に転ずる。
「それに浩平だって同じだもん。ずっと離さなかったじゃない」
 だが、浩平の口から出た言葉は彼女を素直にさせるのに十分な威力を持っていた。
「それはな、瑞佳。お前だからだよ。オレは瑞佳が大好きだから……」
「うん……わたしもだよ。浩平……」
 ふたりは自然に抱きしめ合った。
443彼の瑞佳 彼女の浩平(6):01/11/18 00:31 ID:h7JdiUJQ
 浩平が瑞佳の体を離し、ベッドの上に寝かせた。一糸まとわぬ姿で横たわる瑞佳を、この上なく美しい――世界で最も美しいと浩平は感じた。
 彼女の上に覆い被さり、形の良い胸に手を伸ばす。
「あっ……」
 瑞佳が声を上げる。だが浩平はそれに構わず瑞佳の胸を触り続け、83センチのサイズを持つ瑞佳の乳房は浩平の手の動きに合わせてふにふにと形を変える。
 瑞佳の胸は柔らかいのに弾力感があった。浩平はその感想を一言に集約して口に出す。
「触り心地がいいな……瑞佳のおっぱいは」
「へっ、変なこと言わないでよおっ」
「オレは誉めてるんだぞ。だからこういうこともしてしまうぞ」
 と言って今度は瑞佳の右胸に顔を近づけ、先端にある桜色の突起を口に含んだ。
「うんっ……浩平、なんか赤ちゃんみたい……」
 瑞佳は自分の乳首を吸う浩平の頭を、母親のような慈愛に満ちた表情をして撫でるが、それも長くは続かなかった。浩平が瑞佳の乳首を吸うだけでなく、唇で挟んだり、歯で軽く噛んだり、さらには空いている左胸に手を伸ばし、そちらの先端にも刺激を与え始めたのである。
「んっ……んんっ」
 瑞佳が浩平の愛撫に反応して声を上げそうになるが、口に手をあてて辛うじて恥ずかしい声を抑える。
「瑞佳……我慢しなくていいんだぞ」
「でもっ……恥ずかしいよ……あっ、はぁん……」
 浩平はさらに瑞佳の胸を愛撫し続ける。そうしているうちに、彼女の乳首がしこりを帯びてつんと尖り、自己主張を始めた。
(堅くなってきたな……感じてくれてるのか?)
 瑞佳の胸の反応に嬉しくなった浩平は、そこを指で、口で重点的に攻める。
 そのような浩平の積極的な愛撫に、とうとう瑞佳は声を我慢しきれなくなった。
「んんっ、あっ、ああんっ」
 その甘い声をもっと聴きたいと思った浩平は、優しく彼女に話し掛ける。
「可愛いよ、瑞佳。もっと聴かせてくれよ……」
 そうささやいて空いている左手を彼女の下半身へと伸ばす。
444彼の瑞佳 彼女の浩平(7):01/11/18 00:33 ID:h7JdiUJQ
「あっ、そ、そこは……」
 浩平がまず触れた部分は、若草が覆い茂る丘の上だった。そこを優しく撫でる。瑞佳にはあまり生えていないと彼は指先から得られる感触から判断していた。
(なんか瑞佳らしいな……)
 浩平は瑞佳とのこれまでの付き合い――浩平に好意を持ちながら、常に傍に居ても自分からその本心を明かすことがなかった控えめな付き合い――と彼女の慎ましやかな若草の部分を比較して、思わず顔に笑みを浮かべた。
「えっ? ど、どうしたの?」
 急に浩平が笑ったのを見て、自分に変な所でもあるのかと不安げに聞く瑞佳。しかし浩平は本音をごまかす。
「いや……ただ可愛いなって思ってな」
「……」
 瑞佳は顔を赤くして黙ってしまった。
 そして浩平は肝心な部分へと指を移動させ、そこに触れた。その部分は、すでに瑞佳の熱い液体が溢れ出していた。
「あっ、そこは……!」
 瑞佳は反射的に脚を閉じた。それが精一杯の抵抗だった。だが浩平はすでに指を熱くなっている裂け目に添え、上下に動かし始めていた。この時点で瑞佳は下半身から全身へと電撃的に伝わる快感に襲われ、沈黙を保てなくなった。声が喉の奥から断続的に漏れる。
「うんっ……はっ……やあぁ……だめだよ、浩平っ……」
 瑞佳の脚からは徐々に力が抜け、自然に開いていった。浩平はさら瑞佳の秘部をもてあそびながら追い討ちをかける。
「濡れてるな、お前」
「いっ、言わないでよっ! 凄く恥ずかしいよ……!」
 瑞佳の濡れ具合を確認した浩平は、これまで瑞佳の胸の先端に刺激を与えていた口を徐々に彼女の下腹部へとずらしていく。浩平の舌先が瑞佳の肌を伝い、瑞佳はそれにも敏感に反応した。
「はっ……うん……ふぅっ……」
 浩平はやがて、瑞佳の両膝の間に収まり、彼女の大切な部分を目視できる位置についた。
445彼の瑞佳 彼女の浩平(8):01/11/18 00:38 ID:h7JdiUJQ
 浩平の愛撫に暫し恍惚となっていた瑞佳だったが、浩平が今どんな場所にいるのかに気がついて非難の声を上げる。
「いやあっ! みっ、見ないでっ! 浩平っ!」
 浩平はその非難を無視し、じっくりと瑞佳の女性の部分を観察する。先に手で触った時に感じたように、彼女の飾り毛はあまり濃くなく、恥丘を慎ましげに覆っているだけだった。
 しかしそれは今、彼女自身の液体――先に浩平の手によって秘所全体に塗り広げられた――によって素肌に張りついていた。
 そして浩平が最も気になる部分――瑞佳の女性そのものの個所は綺麗なピンク色をしていた。彼女の花びら――俗に大陰唇と呼ばれる部分は心持ち開いて内部を少し覗かせていた。
 しかもそれは瑞佳の呼吸に合わせてひくひくと動き愛液が溢れ、まるで浩平を誘っているかのようだった。
「そっ、そんな……恥ずかしいっ……!」
 瑞佳が悲鳴のような声を上げる。白い肌はもうすでに恥じらいの桃色に染まっていた。
 しかし浩平はそれを意にも返さず、ついに両手で瑞佳の割れ目を思い切り押し広げた。水っぽい音と共に、浩平の眼前に鮮やかなピンク色をした内部、まだ包皮に包まれていた秘芽も含めた全てがあらわにされる。
「ああっ……浩平、だめっ!」
 羞恥のあまり両手で顔を覆ってしまう瑞佳。だが否定の言葉とは裏腹に、彼女のその部分から分泌する愛液はにわかに量を増し、音を立てて溢れ出した。その実に甘美的な光景を見つめる浩平の頭の中に、少し邪な考えが浮かんだ。
 ちょっとしたいたずらに成功した子供のような口調で瑞佳に話し掛ける。
「瑞佳、なんだかさっきよりも濡れてきたなぁ。お前って結構えっちなんだなぁ〜」
「そっ、そんなことないもん!」
「うそつけ。ほら、もうこんなになっているぞ」
 浩平は瑞佳の秘部に手を添えて、彼女の液体をすくい上げる。そしてべとべとに濡れた手を瑞佳の目の前に運び、それを見せた。
「だっ、だって、浩平が見てるからだよっ! だからひとりでするよりも……」
 自分の愛液でまみれた手を見せられ、混乱の真っ只中にある瑞佳は自分で何を口走っているのかわからなかった。言葉の最後は消え入りそうなほど小さな声だったが、しかし浩平はそれを聞き逃さなかった。
446彼の瑞佳 彼女の浩平(9):01/11/18 00:41 ID:h7JdiUJQ
「??? ひとりって……?」
「えっ? あっ、それは……」
 瑞佳が顔を真っ赤にして口篭もる。ようやく自分が何を言っているのかに気づいた。
 だが浩平は追及を緩めようとはしない。
「みずかぁ〜、ひとりっていったいどういうことかな〜?」
「それは……」
 瑞佳の口調が急に悲しげなものになる。暫し躊躇していたが、ゆっくりと語り始めた。
「浩平……わたしのことを置いて行っちゃったからだよ。わたし、悲しくて、寂しくて……だから時々ひとりで、浩平のことを考えながら……でも心は満たされなくて、余計寂しくなって……」
 浩平は愕然となった。
 瑞佳の切ない告白を聞いた浩平は自己嫌悪にさいなまれ、心の中で自らを糾弾する。
(畜生、オレって奴は……瑞佳をこんなにも苦しませていたのか……。ごめんな、瑞佳)
 そして彼は、瑞佳への想いを実行に移そうとする。
「今まで悪かったな、瑞佳……。だから、これからはお前のことを全力で可愛がってやるよ」
 そう言うと、浩平は左右に開かれた瑞佳の脚の間に顔をうずめる。
「あっ、そんなっ……ふぁぁっ!」
 浩平の舌が瑞佳の裂け目に触れた途端、彼女は甲高い声を上げた。
「こっ、浩平、そこ汚いよ……」
「そんなことないさ。凄く綺麗だぜ、瑞佳のここ」
 浩平はそう言うと、さらに愛撫を続ける。口唇で溢れ出る瑞佳の液体をすすりながら花びらの内側をなぞり、舌を膣内に突っ込む。
 そのたびに瑞佳は高い声を上げた。
447彼の瑞佳 彼女の浩平(10):01/11/18 00:42 ID:h7JdiUJQ
 やがて浩平の舌が瑞佳の最も敏感な部分――秘部の頂点にある、まだ包皮に包まれたままのクリトリスに触れると、瑞佳は大きく仰け反った。
「はぅっ! あっ、うわぁっ! ふぅんっ!」
(やっぱりここが一番気持ちいいんだな……、よし)
 浩平は指で包皮を剥き上げた。するとそこからは真っ赤に充血したクリトリスの本体が顔を出した。まるで綺麗な真珠みたいだなと浩平は思った。
「きゃあっ! や、やめて……はうっ!」
 瑞佳が悲鳴のような嬌声を上げるが浩平はそれを無視し、クリトリスを指でもてあそぶ。少し触っただけでも瑞佳は極めて敏感に反応した。それにつれてクリトリスも堅さを増し、大きくなっていった。
(ふぅん……女の子も勃つんだな……)
 浩平は瑞佳の身体の神秘に心を奪われながらも、今度は舌と唇でクリトリスに刺激を加え、さらに人差し指を膣内に挿し入れる。そしてそのままゆっくりとかき回し始めた。指を動かすたびに粘着質な音がして愛液が新たに溢れ出す。
「あふっ! うあっ、浩平っ!」
 瑞佳の裸体が、跳ねるようにベッドの上で何度も震える。
「あっ……だっ、駄目ぇっ……」
「でも、ここは駄目なんて言ってないぞ」
 などと意地悪な答えを返すと、浩平は瑞佳のクリトリスと膣内を同時に、執拗に攻める。また唇を秘部にぴったり重ねて、その部分に何度もキスをしたり愛液を音立てて吸い上げた。
「ひあっ! こっ、浩平っ……そんなとこっ……ああっ、あっ、ああんっ!」
 瑞佳は浩平の愛撫に異議を申し立てるが、それも迫り来る快感と絶頂への予兆が喘ぎ声へと変えてしまった。そして、さほど時を置かずに、
「はふっ、うっ、ああん! あああああああああぁっ!」
 と大きな声を上げて絶頂に達した。体を大きく反らした後、全身から力が抜けベッドに身を委ねる。そして肩で息をする。
 浩平はそんな瑞佳を愛おしそうに抱き寄せた……。
448彼の瑞佳 彼女の浩平(11):01/11/18 00:44 ID:h7JdiUJQ
 浩平に抱かれながらしばらく呼吸を整えていた瑞佳がゆっくりとその身を起こしたのは、彼女が絶頂に達してから約5分後のことだった。
 一緒に起き上がった浩平に言う。
「ずるいよ、浩平ばっかり」
「は? 何が?」
 浩平の問いには答えず、頬を赤らめて言葉を続ける。
「だから、わたしも……して……あげるよ」
 浩平の分身はすでに大きさ、仰角共に最大値を示していた。瑞佳は浩平の屹立したそれにゆっくりと手を添える。
「これが浩平の……凄く堅いよ、それに熱い……」
 一瞬躊躇した瑞佳だったが、それもほんの数秒のことだった。彼女は勇気を出して浩平を口に含んだ。
「うわっ、おい、瑞佳っ!」
 浩平は思わず叫んだが、その時には彼の亀頭の部分はすでに瑞佳の口内に包まれていた。彼女はそのまま顔を上下に動かす。
 瑞佳の行為そのものは慣れていないためかぎこちなく、歯が時々浩平の亀頭にぶつかるが、本来苦痛であるはずのそれも今の浩平にとっては快感となっていた。そして改めて瑞佳の自分に対する想いを感じる。
「うっ!」
 瑞佳の舌が浩平のペニス、その先端の裏側に絡みついた時、浩平は思わず呻き声を発していた。
「あっ! ごめん浩平っ、痛かった?」
 瑞佳が慌てて口を離して謝る。しかしそれは彼女の勘違いで、浩平は痛みではなく快感で叫んでいたのだった。浩平は続きを促す。
「い、いや、違う。続けてくれ……」
「う、うん」
 瑞佳はそう言って頷くと、再び浩平のペニスに口を近付ける。そして浩平は自分の強張りが温かい瑞佳の口内に包まれる感覚に酔いしれる。
 視線を下に向けると、瑞佳が健気なまでに自分に奉仕してくれる姿が網膜に映った。
449彼の瑞佳 彼女の浩平(12):01/11/18 00:47 ID:h7JdiUJQ
(瑞佳がオレのモノを咥えている……)
 その光景を見て、実際に瑞佳の温もりに包まれる感触を感じていると、瑞佳の口の中にある浩平のペニスは、これまで限界と思われていた大きさを越えて膨張していく。
 そして浩平を含んでいる瑞佳も、それを感じ取っていた。
「んっ、うくっ、んんぅん……」
(えっ……まだ大きくなるの? なんか不思議……)
 だがその理由が、浩平が自分の拙い行為で感じてくれているからだと悟った瑞佳は嬉しくなり、さらに浩平への奉仕を続ける。
 唇をすぼめて圧迫し、舌を使って竿の部分を舐めあげる。
 瑞佳の熱心な奉仕を受ける浩平も、たまらず声を上げる。
「ぐわっ……瑞佳、も、もういい……」
 瑞佳はそんな苦しげな浩平の声を聞いても、愛する男性の性器から口を離そうとしなかった。それどころか浩平をより奥まで含む。喉の奥に浩平の亀頭が触れると、そこからからくぐもったように声が出た。
「んんんんんっ……」
 この瞬間、浩平に限界が訪れた。彼は叫んで瑞佳に警報を発した。
「瑞佳っ、口を離せっ! 出ちまう……!」
 しかし瑞佳はそれでも口を離さなかった。そして浩平の白濁液が彼女の口内奥深くで勢い良く放出された。
「んくっ……んんんっ? んふっ、ううんっ……」
(えっ? これって、浩平の……? たくさんで出てる……)
 瑞佳は浩平の精液を喉の奥で受けとめながらそう感じた。苦しくはあったが、不快感は全くなく、それどころか何か大切なものを与えられたようにも思えた。
 だから彼女はそれを懸命に飲み干そうとする。
「うんっ……んっ、んっ……ぷはっ……」
 浩平から放たれた白濁液を飲み干した瑞佳はようやく口を離した。しかし、浩平の放出量があまりにも多かったため、飲みきれなかった分が口の端から漏れ、顎へ伝って落ちた。
450彼の瑞佳 彼女の浩平(13):01/11/18 00:50 ID:h7JdiUJQ
「おっ、おい、ばか。そんなもん飲むな」
 だが瑞佳は自分の顔についたその液を指で拭い、自らの口へと運び、すすり上げた。
「苦いよ……でも、これが浩平の味なんだねっ」
 瑞佳が明るい声で言った。そして自分を気遣う浩平に天使のような笑みを浮かべて、
「浩平、気持ちよかった?」
 と尋ねた。
 その瑞佳をあまりにも可愛いと感じた浩平は思わず彼女をベッドへと押し倒してしまう。
「きゃっ」
 突然のことに小さい悲鳴を上げる彼女の上に覆い被さり、優しく語りかける。
「瑞佳……オレもう我慢できない。いいか?」
「うん……あっ、でも……」
「でも……なんだ?」
「お願い、優しくして……」
「ああ、わかってる。悪いようにはしないから、オレを信用してくれ」
「うん、ありがとう、浩平……」

 まず浩平は自分の分身を瑞佳の秘部にあてがい、瑞佳の愛液を塗りつけた。そうすることによって摩擦が減り、挿入が少しでも楽になると思ったからである。
 彼は少しの間亀頭を瑞佳の膣への入り口に擦りつけていたが、やがて自分の屹立と瑞佳の秘部の濡れ具合を確認し、これくらいでいいかと判断した浩平は、いよいよ瑞佳の中に侵入しようと狙いを定める。
 それに対して、彼を受け入れるべき瑞佳は、緊張したように体を強張らせていた。無理もない。彼女もこのような経験は全く浅いのだった。
(オレもまだ2度目だけど、リードしてやらなくちゃな……)
 浩平は瑞佳を安心させるように、唇に軽くキスをすると、その緊張をほぐすように優しく言った。
「瑞佳、じゃあ挿れるぞ。ゆっくりいくからな」
 浩平が瑞佳の中に納まってゆく。瑞佳の花びらがめくれて先端が埋没し、同時に水っぽい音が発生して浩平の先端は瑞佳の膣のぬくもりと感触を得る。そしてそのまま挿入を続ける。宣言通り、ゆっくりと、ゆっくりと……。
 浩平が快感を得たいのなら、そのまま瑞佳を一気に貫き欲望の赴くまま腰を動かしてしまえば良いのだが、浩平はそれを堅く戒めていた。
 瑞佳と身体を交えるのならば、彼女も満足させたい。瑞佳と一緒に気持ち良くなりたい。これが浩平の最大の目標だった。
 だから彼は、とにかくゆっくりと自らを押し進めていった。瑞佳をなるべく苦しませないように……。
451彼の瑞佳 彼女の浩平(14):01/11/18 00:53 ID:h7JdiUJQ
「うぐぅっ……あああっ……くううっ……」
 瑞佳は浩平を自らの膣に受け入れながら苦痛を感じていた。それもそのはずで、彼女も浩平と同じく今回でまだ2回目、約1年前に浩平を受け入れて以来の行為である。
 その間、瑞佳は自らをひとりで慰めたこともあったが、それはせいぜい指を挿れる程度だった。
 そして今、瑞佳の膣内に侵入しつつある浩平のペニスは、当然指とは比較にならない大きさである。浩平が奥に進んでくるにつれ痛みは大きくなった。
 だが、浩平が挿入をゆっくりと進めるのは、それが自分を気遣ってのことであると瑞佳には良く理解できた。
(浩平、わたしに優しくしてくれてるんだ……)
 浩平の想いを感じた瑞佳は、浩平が進入しつつある部分の奥からより多くの愛液を自然に分泌させた。それが瑞佳の痛みを和らげ、浩平の進入を容易にした。
 やがて、浩平は完全に瑞佳の内部に納まった。
「瑞佳……全部入ったぞ……」
「……うん、わかるよ。浩平がわたしの中にいるよ……」
 その時、瑞佳の両眼がじわりと滲み、涙の雫が頬を伝って輝いた。
「おい、痛いのか? 大丈夫か?」
「ううん、違うよ……」
 浩平は慌てて声を掛けたが、瑞佳はゆっくりとかぶりを振った。
「浩平と、浩平と一緒になれたから……浩平が、帰って来てくれたから……嬉しいんだもん……」
 そして、泣き笑いの表情を見せた。そんな瑞佳が、浩平にはたまらなく愛おしかった。
 浩平はもう一度彼女にキスをして言った。
「瑞佳、動いていいか……?」
 瑞佳は首を縦に振ると、
「うん。わたしはもう大丈夫だから……」
 と健気に答えた。だが、彼女の表情からはまだ苦痛が抜けきっていない。それは浩平にもわかっていた。しかし彼はゆっくりと腰を引き始めた。彼女を気持ち良くさせるために……。
「ぐううっ、凄くきついな、お前の中……」
「そう言う浩平のも凄く大きいよ……」
 一旦抜けそうになった所で、再び挿し入れてゆく。それを何度か繰り返すうちに、動きは徐々にスムーズになっていった。
452彼の瑞佳 彼女の浩平(15):01/11/18 00:57 ID:h7JdiUJQ
「くううっ……ううんっ……はぁっ……あん……」
(もうそろそろかな、あまり苦しくなくなったきたみたいだ)
 往復運動を10回ばかり行った時点で、その表情と声から瑞佳が苦痛から脱したと判断した浩平は、
「よし、一緒に気持ちよくなろうな、瑞佳」
 と言った。そして、抜けかかったペニスを力強く前に突き出した。
「ああんっ! ああっ、ひあああっ!」
 一番奥まで突き入れた所で、すかさず引き抜く。そしてまた深く挿し込む。
「はあうっ! こっ、浩平……はっ、激しい……よっ、あうっ!」
「激しい方が……気持ちいいだろ?」
 そう言う浩平の動きはますます速く、強くなっていった。
 ふたりの結合部から淫秘な水の音と摩擦の音が響き、同時に液体が多量に溢れ出している。
 そしてその液体はふたりの激しい動きによってベッドの上に撒き散らされ、大きな染みを形成しつつあった。
「あっ!? はうっ! 奥にっ、あたって、るっ、よおっ!」
 瑞佳が両手でベッドのシーツを強く握り締めて襲いかかる快感に耐える。そのため声は途切れ途切れにしか出せない。彼女の言うとおり、浩平の先端部分は瑞佳の子宮を容赦なく突き上げていた。
 しかもそのたびに、浩平の恥骨の部分が瑞佳の充血したクリトリスに接触、圧迫するので、彼女を襲う快感は倍増していた。その刺激に反応して、瑞佳の内部も浩平を断続的に締めつけた。
(ぐううっ、きつい……。すごく気持ちがいいぞ……!)
 浩平も瑞佳の膣内の感触とその部分の締めつけに、脊髄から全身へと電流のような快感が走る感覚を体感していた。それは瑞佳も同様で、彼女の腰は浩平の動きに合わせて自然に律動していた。
453彼の瑞佳 彼女の浩平(16):01/11/18 01:02 ID:h7JdiUJQ
「くっ、んっ、はああんっ! ひうあっ! ひゃあっ! 気持ち……いいよおっ! 勝手に動いちゃうよおっ……」
 ペニスからの感覚だけではなく、視覚と聴覚、嗅覚も浩平を快感の淵へと追い詰めつつあった。
 快感に抗えずに口を開け涙を流す瑞佳の美しい顔、浩平に突かれてリズミカルに発せられる甘美な音楽を思わせる瑞佳の声、そして瑞佳の美しい裸体から漂う彼女の甘い香りの3つが、浩平の快感と彼女への想いを増幅させていた。
「ああんっ、はうんっ、あふっ!」
 それら4感から得られる絶大な気持ち良さに、浩平はもしも先に瑞佳の口の中で出していなかったら、恐らくはとっくに果てていただろうと思った。おかげで腰の動きは緩めずに済んでいる。
 いや、緩めようとしても緩められないだろう。もはや浩平は制御不可能になっていた。
「あっ、あっ、あっ、ああっ! こう……へいっ、浩平っっ!」
 制御不可能なのは瑞佳も同じだった。彼女も声と感情を抑えられず、喘ぎながら浩平の名を連呼し、自ら腰を動かし、浩平を貪欲に求めていた。
 そしてふたりの動きは自然に同調して、彼らを高みへといざなう。
 一心不乱に瑞佳を突いていた浩平は、彼女を両手で抱きしめながら湧き上がる射精感に耐えようとした。
「瑞佳っ、瑞佳っ! 愛している、瑞佳……!」
「うんっ、浩平っ! わたしもっ、好きっ、好きだよっ! 大好きだよっ!」
 浩平は瑞佳の唇を強引に奪い、舌を彼女の口内に侵入させる。瑞佳も浩平の舌に自分のそれを積極的に絡ませて応える。
 ふたりの口の間から瑞佳の吐息と喘ぎ声が漏れる。
454彼の瑞佳 彼女の浩平(17):01/11/18 01:03 ID:h7JdiUJQ
「んむ……ふう……んん……んふうっ! ぷはっ!」
 息が続かなくなった瑞佳が口を離す。そしてまたすぐに恥ずかしい声が発せられる。
「はああっ、あん! ああっあっ、はぁっ! あうっ! あふっ……」
 ふたりの臨界点はもう目の前に迫っていた。浩平が苦しげに声を絞り出し、ラストスパートをかける。
「くっ……瑞佳、オレもう……」
「わっ、わたしもっ、もうだめっ、だめだよっ! 浩平っ!」
 恋人の名を叫んだその時、瑞佳の膣内がこれまでにない強さで浩平のペニスを締め上げた。
「瑞佳っ……!」
「はふんっ! うあああっ! あああああああああんっ!」
 瑞佳の子宮を強く突き上げた浩平はその瞬間、愛する女性への想いを、大量の白濁液に変えて彼女の最深部へ注ぎ込んだ……。
455彼の瑞佳 彼女の浩平(18):01/11/18 01:04 ID:h7JdiUJQ
 ひたすらに愛し合い、身心共にひとつに結ばれた浩平と瑞佳は、結ばれた時の姿のままベッドに横になっていた。
 ふたりに言葉はなく、ただ互いに大好きな人を間近に感じる満足感をかみ締めていた。
「なぁ……瑞佳」
 ベッドの上に仰向けになりながら、その胸元に瑞佳を抱きとめている浩平が不意に言った。
「どうしたの?」
「うん……あのな……」
 浩平が口篭もる。
「何? どうしたの?」
 瑞佳が再度尋ねる。どこか暖かい口調だった。この声に、浩平は意を決するように言った。
「瑞佳、オレと一緒に暮らそう」
「えっ? えっ? それって、もしかして……プロポーズ?」
 急に慌てふためき、続いて照れる瑞佳。しかし浩平は瑞佳の発言を否定する。
「ばかっ、それはまだ無理だ。オレが言ってるのはだな……」
 だが彼は内心で付け加えることも忘れなかった。
(将来的には必ずプロポーズしてやるけどな)
 しかし内心で思ったことは口にはせず、浩平は赤面しながらも真面目な口調で話を続けた。
「同棲しないか、って言う意味でだ」
456彼の瑞佳 彼女の浩平(19):01/11/18 01:05 ID:h7JdiUJQ
「浩平……!」
 彼の思わぬ誘いに嬉しくなった瑞佳が浩平に抱きつく。しかし彼女はあることに気が付き、それへの疑問を口にする。
「あっ、でもでもっ、大丈夫かな? わたしたちまだ高校生だよ……わたしはもうすぐ卒業だけど」
 いわゆる「えいえんのせかい」に行っていた間の浩平は瑞佳以外の全てから忘却されていたが、それも浩平の帰還と同時に皆が彼を思い出していた。
 しかし、この間の浩平は学校を欠席扱いとされており、彼の今期卒業は現状ではまず不可能となっていた。
「ぐはっ……ま、まぁ卒業のことはひとまず置いといて、だ」
 浩平は気を取りなおして続けた。
「うーん、多分大丈夫だろ。由起子さんはお前のことは良く知ってるし、それにあの人はある意味放任主義だからな」
 そして浩平は、瑞佳を抱きしめて、この世で最も愛しい女性にしか見せない優しい笑顔を向けて言った。
「オレは瑞佳と一緒に居たい。ずっとな」
 瑞佳も負けじと、この世にある全ての幸せを凝縮したような満面の笑顔を浩平に見せる。
「わたしもだよっ、浩平。ずっと、ずっと一緒だよっ!」
 そしてふたりは、まるで何年も前からそうしてきたかのような自然な動作で、唇を重ね合った……。

 ――Fin――
457第8航空軍 ◆eBbp7yEo :01/11/18 01:10 ID:h7JdiUJQ
>>438-456「彼の瑞佳 彼女の浩平」

ようやく終わりました。長いこと占有してしまってすいません。
初の18禁SSなので、文章を短くまとめられずこんなに長くなってしまいました。
しかも投稿に不慣れなので、あらかじめ分割しておいたのにエラーがでまくって焦ったりとか(藁
時間があれば読んでやってください。お楽しみ頂ければこれに勝る喜びはありません。
458長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/18 02:34 ID:yT4uoLlI
これより長森瑞佳SS投下します.
459長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/18 02:34 ID:yT4uoLlI
  なんだか改まって相談があるらしく、長森は俺の部屋に来ていた。
 散らかってるが今更長森に隠す気は無い。
 寧ろこの散らかってる状況を改善する役こそ、誰であろう長森だ。
「んで、何だ?相談って」
「う、うん。あ、あのね、笑わないでよ?」
「あぁ、問題ない」
「さ、最近ね、ぉ、おっぱいが出るの………」
 なるほど、それは大変だ。
 ところでおっぱいって何だっけ。
 胸、柔らかくてふにふにでもちもちな胸。
 いや、違う。
「おっぱいって母乳のことか?」
「うん」
「何で又?」
「うぅん、解らないよ。お医者さんはホルモンバランスの関係だろうって言ってたけど」
 難しい顔をする。
「で、病気とかじゃないのか?」
「うん、それは大丈夫だって。高校生くらいの娘には偶にあるらしいよ」
 ふむ、その点は安心なのか。
460長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/18 02:34 ID:yT4uoLlI
「それに、出るって言ってもほんとに少しだし、お月様の前にしか出ないから」
「よし、長森の言いたいことは良く解った。その ぼにう を俺に飲めと言うんだな」
 可愛い事言うじゃないか。
 お前の粋な計らいはしっかり受け取るぞ。
「ち、違うもん。浩平絶対そう言ってえっちの時に吸ってくるから出てるときはえっちやめようねって話だよっ」
「顔赤くして騒ぐなって」
 座って腕をばたつかせていた長森を正面から抱きしめる。
「俺は母乳の出る長森も好きだぜ」
 と、気障っぽく耳元に囁いても
「はぁ、ヤッパリこうなっちゃうんだもん、浩平の助平」
 と、溜息を疲れてる俺は一生三枚目確定らしい。
 それはそれとして取り直して長森に口付ける。
 今日は他に本命があるので悪いがキスは軽めに済ませる事にしよう。
 そのまま首筋にも口付けながら上半身を脱がせにかかった。
461長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/18 02:35 ID:yT4uoLlI
「昼間から駄目だよ」
 と言う長森の声は無視して露になるブラジャー。
「ふむふむ、今日はピンクの可愛らしいブラ、と」
 無駄に実況しつつブラを外した。
 遂にご本尊がそのお姿をお見せになる。
 綺麗な形の丘陵の上に既に硬くなっているピンクの乳首。
「そういや、そろそろ生理だよな」
 今まさに乳首を口に含もうと口を開けたまま、間抜けに長森を見上げて聞く。
「な、何でそんなこと知ってるんだよ?」
 そりゃぁ長いこと一緒にいれば知ってるわな。
 長森の反応を肯定と受け取り、それ以上は追求せずに乳首を口に含んだ。
 舌で突起を包むようにしながら、唇で甘噛みする。
462長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/18 02:35 ID:yT4uoLlI
「ふぅん」
 見上げると長森は切なそうに吐息を漏らしている。
 その顔に見とれているうちに、待望の液体が確かに俺の下に触れるのを感じた。
 甘い味が口の中に広がる。
 牛乳よりも濃い、なんとなく少しどろっとしてるような気がする。
「結構美味いぞ」
 口を離して報告してから又含む。
「ぅんっ、そんなこと一々報告しないでよ」
 恥かしそうに顔を隠す長森に、今更ながらキュンとした感覚を覚えた。
「ほら、長森も飲んでみろ」
 母乳を口に含んで、長森に口付ける。
 最初こそ抵抗のそぶりを見せていたが、俺の顔が近付くとキスの誘惑に負けて結局唇を開く。
 甘く暖かい液体を長森の口内に流し込んでから、舌を差し入れる。
 応える様に絡まってきた長森の舌と戯れながら、唾液と母乳の混ざった淫酒を味わう。
 こくん、と長森が自分の母乳を飲み下したのを確認して、顔を離した。
「甘くて美味いだろ?」
「う、うん」
「これから毎回俺が飲んでやるから安心して母乳を出していいぞ」
「余計心配だよっ!」

             ――― 一旦終劇 ―――
463長森後援会員 ◆VzNvc6/6 :01/11/18 02:36 ID:yT4uoLlI
>>459-462
長森瑞佳SS ぼにう
464第8航空軍 ◆eBbp7yEo :01/11/18 03:09 ID:VNcBcsXH
しまったぁぁぁぁぁぁっ! 一文いれ忘れたぁぁぁぁっ!

>>439>>440の間には以下の文が入ります。「彼の瑞佳 彼女の浩平(2.5)」です。
投稿は慌ててやるもんじゃないね(鬱

 浩平は、今は亡き妹のみさおについてと、彼を1年間行方不明にさせた「盟約」と「えいえんのせかい」について、順を追って説明した。
 彼にかつて妹が存在したことから始まり、重い病気にかかったこと、そして徐々に弱っていき、やがて……。

失礼をばいたしました。

>>463
萌える上に(;´Д`)ハァハァ……
母乳の口移し(;´Д`)ハァハァ……
大変(・∀・)イイ!ものを読ませていただきました。
465瑞佳萌え ◆AuMiZUKA :01/11/18 16:28 ID:pwUaVZl9
ぐぁ…あたまいってぇ…。

もー、昨日ばかやるからだよ…。

そんなこと言ってもなぁ…最後の焼きそばパンだったんだぞ。
住井の奴め…。

追っかけ回してバケツの水ばっしゃーんだもんね。風引いて当然だよ。

あんな所にバケツがあるのが悪いんだって。

はいはい。お粥食べる?

お、はやくれっ。実質昨日の昼からなにも食べてないんだ。
ちょっと待て…牛乳粥じゃないよな…?

え? そうだよ。牛乳、体にいいんだから食べなきゃだめだよ。

く・わ・な・い。甘すぎるって。

ふーんいらないんだぁ。じゃあ、わたしが食べるね。
466瑞佳萌え ◆AuMiZUKA :01/11/18 16:28 ID:pwUaVZl9
ふー、ふー…はむ…ん、今日はいつもよりおいしくできてるかな。

ぐっ…分かった分かった。食べる食べるから…口移しでくれ。

…はむ…んー、牛乳粥っておいしいよね。ふぅーふぅー…。

ぐあーっ、瑞佳様お願いします、食べさせてくれ、口移しなんて言わないからっ。

じゃ、はい。

んぐっ…ぐぁちちちちちっ!

あ…ご、ごめんね。大丈夫だった?

長森ぃ〜やけどしたぞ…。
これはあれだな。口移し一回以上の権利はあるぞ。

はぅ〜、そんなに口移しが良いの…?

男のロマン言うことにしておいてくれ。

はぁっ…。
http://hskqpu.tripod.com/se/jyaa.mp3
467瑞佳萌え ◆AuMiZUKA :01/11/18 16:29 ID:pwUaVZl9
お、よし早く早く。

ふぅー、ふぅー…はむ…んんっ…。
んー、んぅむぅんー。

んくっ……。

ぷはっ…浩平、早く口開けてくれないとこっちが苦しいよ。

おまえ、口から糸引いてるぞ。なんか…。

わわっ! 恥ずかしいこと言わないでよ〜。

むむ…なんか良いな。エロいぞ、長森。うんうん。

はぁっ、また馬鹿なこと言ってるし…。



「じゃぁ…いっかい…だけだよ…?」
 は(・∀・)イイ!
468瑞佳萌え ◆AuMiZUKA :01/11/18 20:13 ID:pwUaVZl9
長森、なんか食いに行こうぜ。腹減って死にそうだ…。

そうだねぇ…じゃあ、今あまりお金もないから、肉まんってのはどうかな?

肉まんか…ほかほかのが良いな。よし、商店街にダッシュ!

わ、ちょっと待ってよ〜。まだなにも用意してないのにぃ〜〜〜

……。

はぁはぁ…腹減ってたのにダッシュなんかするもんじゃないな…今にも倒れそうだ…。

もぅ…。走ったりなんかするからだよ…。
あ、見えてきたよ。

お〜、いい匂いだ…。やっぱり冬はこういう暖かい物が一番だな。

じゃあ、浩平はなににする? 私は普通のにするけど…。

ここは奮発して「特性ジャンボ肉まん」にするか。

浩平、おなか減って死にそうとか言ってたもんね。
すみません、肉まん一つと、特性ジャンボ肉まんください。
469瑞佳萌え ◆AuMiZUKA :01/11/18 20:13 ID:pwUaVZl9
あぅ…特性ジャンボ肉まん…。真琴の分がなくなっちゃうよぅ…。

え…?

ああっ、何でもない、何でもないよ…。えと、肉まんとジャンボ肉まんで350円です…。

はい。

あぅ…ありがとう、ございました…。

……。

なぁ、長森…さっきの店員、なんか涎垂らしてなかったか…?

うーん、肉まん大好きなのかもしれないね。

じゃあ早速食べるか。
はぐっ…うんうん、うまいうまい。

じゃあ私も食べよっと。うわぁ…ほかほかだよ〜。
はむっ…おいしいねぇ…。

長森ぃ〜割って食べるなよ…。食いつきたくなるだろ…。

わ、だ、だめだよっ。浩平は自分のがあるでしょ?

はぐっ…腹へってんだからしょうがないだろ?
470瑞佳萌え ◆AuMiZUKA :01/11/18 20:13 ID:pwUaVZl9
もー、いつも朝早くおきないからそうなるんだよ? これからは早くおきようね…。

おっ、UFO!

えぇっ? どこどこどこ〜?

はぐっ…んぐっ…あー、普通の肉まんもうまいぞ、長森

ああっ! たべた、わたしの食べた〜っ。

隣の芝は青く見えるってな…。

もぅ、お返しっ! ぱくっ…うんうん…特性ジャンボもおいしいよね。

っておまえ…前みたいに指に食いつくなよ…。

ばか、それは浩平だよ。わたしじゃないもん。
たい焼き食べてたら指ごとぱくーって…。
すっごい痛かったんだからねーっ。

んー、はぐっ…そうだったか…?

って、どんだけ食べれば気が済むんだよーっ。
471瑞佳萌え ◆AuMiZUKA :01/11/18 20:14 ID:pwUaVZl9
食い合い萌え〜ということで…。
店員さんありがとう(笑
472長瀬なんだよもん:01/11/19 14:10 ID:cQScF2At
瑞佳三連発……うひゃあ。
これは凄いものを読ませていただきました。
>>438
らぶらぶですね……ええ、らぶらぶです。
らぶらぶには耐性ないんですよねー(一部例外除く)
ごくストレートな結ばれ系の話ですな。浩平が妙に優しいのがなんとも。
瑞佳への思いが伝わってきます。
挿入に至るまでの前振りが長いのは、個人的に好みですよ〜

>>459
母乳…母乳ですか。
母乳にも耐性が(以下略)
シンプルにまとまっていて、非常に読みやすいです。
しかし、母乳の口移しは……羞恥度かなり高いです(恥

>>465
こっちもらぶらぶ…瑞佳愛されてますねぇ…
一行空いてるのってかなり読みやすいですね。容量取るんで、まとめるのが大変ですけど。
それにしても、こっちも口移しで…ただし、瑞佳が責めですが。
ごちそうさまとしか言い様のない状況ですな。

ところでONEやったことないんですが(死)なんで瑞佳=母乳なんでしょうか?
473名無しさんだよもん:01/11/19 14:20 ID:MOkiNgmE
>472
瑞佳は牛乳好き。
瑞佳は母性本能爆発。
つまり瑞佳=母乳。
474名無しさんだよもん:01/11/19 22:53 ID:4ZaOZKXg
>>471
お見舞いの話も肉まんの話も、ほのぼのしてていいですね。
ただ読んでて気になったのですが、台詞を「」で括らないのはわざとなんですか?
「」で括ってあった方が読みやすいかなぁと思うのですが。
475名無しさんだよもん:01/11/20 02:14 ID:FxR2ULCW
そろそろageとくべきじゃないか?
476名無しさんだよもん:01/11/22 00:13 ID:NMRR8foj
そうさのう。
477名無しさんだよもん:01/11/22 02:30 ID:aWJB9KgO
このままではキケンだ。
age
478名無しさんだよもん:01/11/22 21:32 ID:0kHsWd9W
どうも皆さんはじめまして。
初カキコがスレッドの作成と言う大馬鹿者です。
で、その立てたスレッド
「妄想超爆裂ハーレムスレッド」
http://game.2ch.net/test/read.cgi/leaf/1006178327/l50
ですが、あんまり人が来てくれず、
戴けたSSは名も無き闘票者さんの編集長3PSSだけ、
エロシチュに至っては皆無というお寒い状況です。
暇な方は、是非いらして魅力的なSSやエロシチュを書き込んでいってください。
お願いします。
479名無しさんだよもん:01/11/23 01:50 ID:7L9kh670
訓練所(初心者)に新作が投稿されてるage
それと、そろそろ移転を考える時期ですかね?
480名無しさんだよもん:01/11/24 20:48 ID:Mlo0Rfl+
>479
スレ容量そろそろキツいの?
481名無しさんだよもん:01/11/28 04:31 ID:B2uN9g3X
sageメンテ。
訓練所に新作あるよ…
482長瀬なんだよもん:01/11/29 15:02 ID:n9vns7sa
どうしてSSスレは落ちるのが速いんだろうか?
483名無しさんだよもん:01/11/29 16:59 ID:y/HrY2mu
どうすればスレが落ちるのかを考えれば一目瞭然だと思うんだよ。
こみパも近いので、今日は和樹さんのお手伝いです。
初めの頃は失敗しましたけど、もう今は、ベタでもホワイトでも上手にできますですよ。 え
へん。

とはいえ…。にゃあ…疲れてきましたですよ…。

「ちょっと休憩しようか、千紗ちゃん?」
「にゃあ〜、うれしいですよ。和樹お兄さんっ」…ちょっと、休憩です。
「あ、おにいさんの原稿読んでもいいですか?」

原稿を読んでみます、お話はどんなのですか。わくわく…。

「今日は浩之さんとピクニックです。
『そろそろお昼にするか、マルチ』『はいっ』
 今日のお弁当はわたしの自信作ですが、浩之さんは喜んでくれるでしょうか?」

 『み、水…』
 あっ、浩之さんがのどを詰まらせましたーっ!水筒、水筒!
 『はい、み、水ですか。ジャー、コポコポ…。あうっ?!』
 はわわ〜、お水をこぼしちゃいました…。浩之さんが胸を叩いて苦しんでます。
 え、え〜と。ど、どうしましょう?…そうだっ!
 ジャー、コポコポ…。

 『はい、お水です。浩之さんっ』
 『ごくごくっ…ハァ…。助かったよ、マルチ』
 『はいっ。お役に立ててうれしいですー』
 よかったですー。
 『あ、あのー、マルチ。聞いていいか…・。』はいっ、どうしました浩之さん?
 『スカートの下、パンティはいてないのは…どうして?』
 『え、え〜と…』
 『……』
 『…み、水です…から』」

「にゃあーっ、こんなお話、千紗駄目です…ぐすっ」
「ご、ごめん…。女の子にこんな本みせちゃダメだよな…。」
「そうですよ…ぐすん。好きな人とのデートにパンティも買えないなんて、千紗よりかわ
いそうですう…。マルチちゃんは、千紗と一緒で貧乏なのですね…」
にゃあ…千紗、かわいそうなお話しに弱いですよ…。
(おわり)
486名無しさんだよもん:01/11/30 18:40 ID:3RwgsI74
あげてみますですよ、お兄さん?
487美汐だって、女の子ですから。1/2:01/12/01 12:28 ID:/8qI2P3u
かちゃかちゃかちゃ…

平日の昼下がり、広い今に机を挟んで座る俺と天野
彼女は、俺の目の前でお茶をたてていた。

『相沢さん』
『ん?ああ、天野か。どうしたんだ?』
『今日、相沢さんの家にお邪魔してもよろしいですか?真琴に会いたくなって』
『構わないけど…かばんと一緒にもってる包みは何だ?』
『ふふ、内緒です』

そして、彼女と一緒に帰り、家に着いたのだが、
玄関先に秋子さんの「真琴と一緒に買い物にでかけています」を見た時に、
少し、何かが変わってしまった。それは、天野も同じだったのかもしれない。
『せっかくですから、これだけでもします。相沢さん、お暇ですか?』

そして、天野は「これ」と言った包みをあげて、お茶の道具一式を取り出し、
今、こうして、俺の前でお茶をたてているのだ。

「良いですね。こういうのも」
「あ、ああ。やけに静かだけどな」
「テスト中ですから。平日の昼さがりに、静かにお茶を飲む。いつまでもこうして行けたら良いです」
「そうだな。悪くないな」
「………」
「そうだ、天野。テレビでも…」
「相沢さん。私と一緒じゃ、つまらないんですか?」
「そういうわけじゃないけど」
「それなら、テレビはつけないでください」
488美汐だって、女の子ですから。2/2:01/12/01 12:29 ID:/8qI2P3u
なんとも、居心地が…いつもの天野と様子が違う。よくわからないけど、違う気がする。
そして、今日の天野は、

綺麗だ。

それから、少しして天野がお茶をつくりおえて、俺に出してくれた。
自分にも注ぎ、二人でお茶を飲む。
http://ice.prohosting.com/lemoekey/cgi-bin/moe2/img-box/img20011130192854.jpg
それから、少しして天野は帰ると言い出した。

「今日はありがとうございました」
「ああ、俺もありがとうな。おいしかったよ」
「また、いつでも呼んでくださいね。つくりにきますから」
「そうだな、真琴も喜ぶだろう」
「ええ、真琴のためにも来ますけど…相沢さんに会う為にも来ます」
「…は?」
「ふふ、私、こう見えてもしつこいので、覚悟してくださいね」
戸惑う俺を、微笑んで見つめながら天野は続ける。
「真琴はこの事、知ったらどうするのかな?ふふ。楽しみ」
「お、おい。天野」
それはどう見ても、楽しんでいる様子である。
「では」
そして、天野は帰っていった。
どうやら、相沢祐一。平穏な日々はまだまだ過ごせそうに無い。
489名無しさんだよもん:01/12/02 01:06 ID:xpckmVU4
スレ圧縮警戒メンテsage
490あのSSさんだよもん:01/12/02 02:22 ID:hRyMnDYo
俺と彩が結婚してはや数年……
俺達はやっとの思いで夢のマイホームを静かな田舎町に建てることができた。
ここまでくるまでの努力はハンパではなかった。
俺の連載の原稿が落ちそうになったり、俺の連載が打ち切りになりそうになったり……
って、コケてるのは俺だけかよっ!
彩は幸いにも、あの澤田編集長に才能を見出され、童話作家としてデビューした。
それからは頭角をメキメキと現わし、彼女独特の不思議な雰囲気の物語を次々と生み出していった。
本当は子供向けの童話なのだそうだが、大人の俺が読んでも惹き込まれてしまう魅力的な作風がウケて、
今、静かなブームを呼んでいるとか……
編集長曰く、
「もし、彩があなたの恋人でなかったら、
 私ですら、これほどまで素晴らしい才能を見つけ出すのは不可能だったでしょうね、
 もっとも、あなた自身の才能をも見逃していたら、私は編集者として失格だったでしょうけど…」
だ、そうだ。
ま、俺も編集長に拾われた身だし、家が持てたのも彼女のおかげとも言えなくもないな。
こんなド田舎に家建てるって言ったときは「原稿を取りに来る私の身にもなりなさい!」って怒鳴られたっけかな。
そんなことを懐古しながらリビングでくつろいでいると、
くいっ、くいっ、
「ん?」
振り返ってみると、彩が何やら手元をもじもじしながら佇んでいた。
491あのSSさんだよもん:01/12/02 02:23 ID:hRyMnDYo
「あの……和樹さん、最近……減りましたよね?」
「ん?何が?」
「…あのっ、その…夜にする…ことです」
「いや、睡眠時間はたっぷり摂ってるつもりだけど?」
「そうじゃ…なくて……男の人と…女の人が……その…ベッドの中で…すること…ですっ」
「ん〜?何だろ?分からないなぁ、はっきり言っみてよ」
「…そのっ…………え……えっち……」
「へぇ、彩はえっちがしたいの?」
「……あ、私…」
「したいの?したくないの?」
「…………………したい…です」
「そっか、彩はしたいんだ…よし、するか!」
「…あ……はいっ…」
ま、ちょうど俺もしたいと思っていたところだし、願ったり叶ったりってトコかな?
「ここでいい?それとも、ベッドでする?」
「………じゃあ…寝室の…ほうで……明るいと…恥ずかしいから…」
「えー、もったいないなぁ。明るいほうがよく見えるのにさ」
「(ふるふるふるっ…)」
うぅっ、相変わらず彩はガードが固いというか何と言うか…
……でも、俺もたまに彩にすごいえっちなコトさせたりしてるし、ここは彩の気持ちを考慮するか。
492あのSSさんだよもん:01/12/02 02:24 ID:hRyMnDYo
「よし、寝室だな。それでは、彩お嬢様を寝室までお運びいたしましょう…」
「………あっ…」
俺は調子こいて彩を抱きかかえてみる。………俗に言う「お姫様抱っこ」だな。
うん、そんなに辛くは無いぞ。よし、このまま寝室へ―――――
「あ、あのっ……私、おんぶの方が……その…」
「ん?おんぶ?結構こだわり派だねぇ」
「…あ…ごめんなさい……あの…お父さんがよく、おんぶして……くれたから…」
「ははっ!彩は甘えん坊さんだなぁ!ホラ!おんぶしてあげるから、しっかり掴まって」
「……あっ…はいっ…」
彩は俺の背中にぎゅっとしがみつく。その瞬間―――――
むにゅっ……
彩の胸が俺の背中に押しつけられる。
っかぁ〜〜〜〜〜っ!!普段とは一味違うこの触感!!生きてて良かったぁ!!
「……和樹さんの背中…大きい……お父さん…みたい…」
「えっ?」
ヤレヤレ、何やらしいコト考えてるんだ俺は。せっかく彩が喜んでくれてるってのに……
それにしても、彩のファザコンぶりはすごい……
よっぽどイイおやじさんだったんだろうな。
う〜ん、なんかジェラシー。
そんなつまらないヤキモチを妬いてるうちに寝室に到着してしまった。
493あのSSさんだよもん:01/12/02 02:25 ID:hRyMnDYo
この寝室、天井の中心部がガラス張りになっていて、
昼は日光がさんさんと降り注ぎ、夜は月明かりがぼんやりと照らす造りになっている。
そのためこの部屋では、昼はひなたぼっこ、夜は星を眺めたりすることができ、
今ではすっかり彩のお気に入りの場所だ。
「彩、寝室だぞ?」
「……えと…その……もう少し、このままでいて…いいですか?」
「え?あ、ああ。構わないけど」
「………よかった…」
どうやら彩は俺の背中が名残惜しいらしい……すりすりと頬擦りまでしてる……
すりすりすり…

―――――それから5分後……
「あの〜、彩さん?そろそろ……」
「…あ…ごめんなさい…もう少し……もう少しだけ…待ってください…」
すりすりすりすり…

―――――さらに5分後……
「あ〜や〜?」
「…お願い……あと、1分だけ…」
すりすりすりすりすり…
494あのSSさんだよもん:01/12/02 02:25 ID:hRyMnDYo
うっ……つ、辛い……いくらなんでも足腰にも限界が………
俺が地獄を見ているのに対し、彩は幸せそうな表情で俺の背中に頬擦りをし続けている……
まさに天国と地獄だな……
一体、彩は俺の背中のどこに惹かれてるんだ?
………いわゆるフェチってやつかな?
背中フェチ・彩………ちょっと可愛いかも。
って、もう足腰の感覚が……あ、ダメ、ギブ。
「おっとっと!」
「きゃっ!」
ぼふっ!
ふぅ、倒れこんだ場所がベッドでよかったぜ…
床だったら二人ともケガしてるところだ。
そういえば彩は大丈夫だろうか?
「彩?悪ィなぁ、急にコケちまって―――――って、おおっ!?」
気がつくと俺のすぐ目の前に彩の胸元が……服に覆われてはいるが、その形ははっきりと分かる。
うむ、実にいい眺めだ。
「彩…俺、もう…」
「………あっ…」
彩の胸に手を伸ばし―――――
スカッ…
「へっ?」
俺が伸ばした手のひらは虚しく空を薙ぐ。
495あのSSさんだよもん:01/12/02 02:25 ID:hRyMnDYo
一方、俺が触れようとしていた人物は、上体を起こし、ぼんやりと硝子の天井を見つめていた。
「……和樹さん…アレ…」
彩の指がぴっ、と天を指す。
「ん?」
俺は指先の延長線上にあるものを見据える。
「おぉ…」
彼女が見惚れていたもの……それは冬の凍てつく空を彩る星屑達であった。
小さな星のひとつひとつが瞬き、とても幻想的だ……
都会にいたらスモッグやネオンに阻まれて見ることが出来きなかった美しい夜空……
「……田舎に来て…本当に…よかった……」
彩も俺と同じことを考えていたみたいだ。
「そんなこと言うと、編集長が渋い顔するぞ?」
「…ごめんなさい」
東京の方角へ、ぺこりと頭を下げる彩。どうやら編集長に謝っているつもりらしい…律儀な娘だ。
「……………………………………」
「……………………………………」
「……綺麗……ですね…」
「……あぁ…」
496あのSSさんだよもん:01/12/02 02:26 ID:hRyMnDYo
詩人か何かだったらもっと洒落た返事ができるのかもしれないが、俺のセンスじゃあこれが限界だ。
と、いうよりか、もう既に起きていること自体限界だ……ふぁ……ね…む……
彩………悪ィ……もう、寝…る………

次の日の朝、俺は朝イチで彩に謝ることにした。
彩はキッチンで大根を切っていた。今日の味噌汁の具は大根らしい。
「……昨晩……私…すごく寂しかった……です」
「スマン!急に眠くなっちまって……つい」
「…私、あれから一時間くらい……お星様と…お話…してました…」
「うっ…この埋め合わせは絶対にするから、そうだなぁ…週末にでも―――――」
その言葉を聞いた途端、彩は嬉しそうな顔でくるりと俺の方へ向き直った。
……包丁を片手に持ったまま。
「……本当、ですか?…約束…ですよ?」
「うわっ!あ、ああ、約束する!彩の好きな所に連れて行くから……だから、包丁置いて……」
「………嬉しいっ…」
最後の言葉が聞こえていなかったのか、彩は包丁を握りしめたまま、ぱたぱたと駆け寄ってきた。
刃に付いていた大根が縦横無尽に飛び跳ねる。
「どわぁぁぁぁっ!?彩っ!!頼むから包丁置いてくれぇ!!うわっ!うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

教訓:約束をすっぽかしてはいけない。例え、どんなに些細なことであっても。
497あのSSさんだよもん:01/12/02 02:27 ID:hRyMnDYo
彩支援SSです。
SS総合スレの皆さん、すいません…お借りします…
498Another Air Before Dream:01/12/02 20:50 ID:QMT+GFPJ
「じゃあ往人、お母さんこれからお仕事するからしばらく待っててね」
 母親に言われ、少年はその場を離れる。
 そうしてしばらく歩き、落ち着くのにいい場所を見つけてしゃがみこむ。
 来た方に目を向けると、母親が人形やらボールを使って大道芸を行っていた。
 その表情は何か楽しいことが待っている、といった風で嬉しそうだ。
 そしてその芸も見慣れているはずなのに、いつも違う表情を見せてくれる。
 それは凄いことだと思う。
 いつの間にか、母親の周りには人だかりができていた。
 自分にもやらなければならないことがあったはずだ。
 そう思い出し、ポケットから人形を取り出す。
 母親から貰った大切な、そして少年の唯一の持ち物だ。
 これを上手く動かすことができれば、さっき見た母のように嬉しい気持ちになれ
 るのだろうか。
 そんなことを考えながら、人形に意識を集中する。
 法術――母親がそう呼んでいた力、人形を動かすことができるという力。
 その力を込めて、人形を動かそうとする。
 しかし……。
 トコトコ……ぽて。
 どうにもうまく動かすことができない。
 母親は、だれかを笑ってほしいと思わなければ人形はうまく動かない、と言って
 いた。みんなに笑ってほしい、みんなが楽しい気持ちになってほしいという思い
 は少年も持っている。
 けれど、そのみんなの顔がイメージできない。
 うまく動かせないのはそのせいなんじゃないか、最近特にそう思うようになった。
 よけいなことを考えてるせいで、なおさらうまく動かない。
 そうやってちっともうまくならない練習を続けていると、ふと視線を感じた。
499Another Air Before Dream:01/12/02 20:50 ID:QMT+GFPJ
 顔を上げて視線の主を捜してみる。……いた。
 少女、というより幼児といったほうがいいような女の子が少年の足下の人形を
 じーっと見ていた。
 うっとうしいのでにらんでやる。
 少女は動かない人形を見ていたが、動かないと分かると少年の方に視線を向けた。
 一瞬視線が合う。
 きつい視線に、少女は物陰へと隠れる。
 いなくなったのを確認してから、再び集中し、人形に念を込める。
 トコトコトコ……ぽて。
 そうやって練習を再開する。
 またすぐに少女が出てきて、人形を見る。
 少年がにらんで、物陰に隠れる。
 そんな出たり隠れたりを繰り返しながら、少女は徐々に近づいてきた。
 とうとう少年の目の前に来て、足下の人形を興味深げにながめる。
 ふと、こいつの保護者はいないのか、そう思い、辺りを見回してみる。
 見つからなかった。
「おまえ、ひとりか? 親はどうしたんだよ?」
 少女に尋ねてみる。
「もっと」
「え?」
「さっきのもっとみたい」
 少女は足下の人形をながめる。
「人の話、聞けよな」
「これ、もううごかないの?」
 そんな言葉も無視して、少女が尋ねる。
500Another Air Before Dream:01/12/02 20:51 ID:QMT+GFPJ
「こんな下手くそなやつより、あっちの方が面白いぞ」
 そう言って、人だかりのできている母親の方を指さす。
 しかし、少女は頑固だった。
「これがうごいてるのがみたい」
 少年の方をじっと見つめる。
「しょうがないな……。それじゃあ、おまえが最初のお客だ」
 再び人形を動かそうとする。
 トコトコトコ……ぽて。
 やっぱり全然上手く動かせない。
「なあ、絶対あっちの方が面白いって」
 けれど、少年の人形の動きに少女はきゃっきゃっと喜んでいる。
 最初は渋々やっていたが、そんな顔を見ていると、こちらも嬉しい気持ちになる。
 母親もこんな気持ちなのだろうか。
 穏やかで、暖かくて、幸せな……。
 そんな気持ちでいると、人形の動きにも変化が現れる。
 相変わらずぎこちない動きだが、それでも人形を上手に動かせるようになってきた。
 笑ってほしいという思いが実感できるようになったかもしれない。
 そんなことを考える。
「面白いか?」
「うん、おもしろい」
 人形をじっと見たまま答える。
 いつの間にか、こいつが喜ぶ顔がもっと見たい、そう感じ始めていた。
 そんな思いに応えるように、人形の動きも軽やかになる。
 少年は思いを込める。
 人形は踊る。
 そして……。
 少女は笑う。
501Another Air Before Dream:01/12/02 20:52 ID:cVKww50b
 やがて日が落ちて、人通りが少なくなる。
 辺りの人だかりがなくなった頃を見計らって、少女の手を引き母親の元に行く。
「あ、往人、おまたせ」
「うん、それでね……」
 少年が言うより早く、母親が後ろの少女に気がつく。
「その子どうしたの? 迷子?」
「うん、そうみたい」
「きっと親御さん心配してるよね……。近くの交番まで送って行くけど、往人一人
 で待ってられる?」
「うん、大丈夫」
「送って行くから、一緒にいこ」
「……」
 母親が手を差し出すが、少女は少年の後ろに隠れて動こうとしない。
「うちに帰らなきゃダメだろ?」
「うん」
「ほら、お母さんが連れていってくれるから……な?」
 そう言って、少女を前に押し出す。
 少女は渋っていたが、ようやく母親の手を取る。
502Another Air Before Dream:01/12/02 20:53 ID:cVKww50b
 手を取ったものの少女はまだ動こうとしない。踏ん切りがつきやすいように別れの
 言葉を告げてやる。
「じゃあな」
「うん」
 頷いたものの帰ろうという気配がまるでない。
 しょうがないので、また今度見せてやるという約束をする。
「しかも、今度見せるときは絶対バック宙できるようになるから、楽しみに待っとけ」
「うんっ」
 その言葉に少女は目を輝かせ、頷く。
「じゃあ、いこっか」
 母親が少女の手を取り、二人で歩き出す。
 少女はなごり惜しげに、少年の方を見る。そして歩きながら、勢いよく手を振る。
 いつまでも手を降り続けているので、少年もしょうがなく手を振る。
 それに合わせるように、少女はさらに強く手を振る。
 結局、手を下ろすタイミングが分からず、二人の姿が見えなくなるまで手を振っていた。
503しーおーじー:01/12/02 20:54 ID:cVKww50b
>498-502
『Another Air Before Dream』
 元・ゴール○人ことしーおーじー初お披露目です。
 望、毀と貶、です。
504引越し屋:01/12/03 17:14 ID:ES07JLNi
現在のスレ容量: 453268/512K

512kを超えると通常のブラウザでは表示できなくなるため、
そろそろ引越し時かも知れません。

▼スレ容量の見方
http://game.2ch.net/test/read.cgi/leaf/1002110157/?raw=0.0
スレのURLの後ろに『?raw=0.0』とつけると
>+OK 453268/512K
ページの一番上にこういう表示が出て、容量チェック出来ます。

この際、一気にdatを読み込もうとするので、容量さえ確認したら、
datの受信を途中で止めたほうが無難です。

以上、スレ引越し時のご参考に。
505名無しさんだよもん:01/12/03 19:59 ID:rr2qOkJI
>504
トーナメントでも使われてることを考えると、早めに移行した方がいいんでしょうかね?
50kほどだと中編SS2本ぐらいで消費しそうですし。

こういうのはSS討論スレで聞いた方がいいのかな?
506700/1300@長森後援会員 ◆PXmizukA :01/12/03 22:23 ID:TGXKCPLZ
507名無しさんだよもん:01/12/09 17:50 ID:HQmyirQ7
(゚д゚)ウマー
508名無しさんだよもん:01/12/09 19:05 ID:uvSsFT7Q
     ∧∧  ミ _ ドスッ
     (   ,,)┌─┴┴─┐
    /   つ 糸冬 了. |
  〜′ /´ └─┬┬─┘
   ∪ ∪     ││ _ε3
           ゛゛'゛'゛
509名無しさんだよもん:01/12/09 19:50 ID:AKbnScRX
最下層
510名無しさんだよもん:01/12/09 20:09 ID:HiTBZTAK
511名無しさんだよもん:01/12/09 21:28 ID:1gDnborD
test
512名無しさんだよもん:01/12/09 21:51 ID:DYrz7zGq
うんこ!
513名無しさんだよもん:01/12/09 21:53 ID:DYrz7zGq
(゚Д゚)ハァ?
514名無しさんだよもん:01/12/10 10:42 ID:jgU3NbAs
sage
515名無しさんだよもん:01/12/12 12:53 ID:1Q0DTWLJ
保守sage
516名無しさんだよもん:01/12/12 12:57 ID:FtCyfUXo
>515
何故こっちをメンテするんだ?


次スレ はこちら。

SS統合スレ♯7
http://game.2ch.net/test/read.cgi/leaf/1007385613/
517名無しさんだよもん:01/12/12 13:10 ID:XAux2Dqc
さげ荒らしに使われてるんじゃないか?

倉庫送りかスレッドストップ依頼しようと思うんだが、どこでやるんだ?
誰かやってくれてもOKだけど、面倒ならやり方教えてもらえれば
俺がやっとく。
518名無しさんだよもん:01/12/12 15:49 ID:D2MehKgC
倉庫送りを依頼をしてきました。
以後、放置よろ。

leaf,key板@倉庫関係
http://teri.2ch.net/test/read.cgi/saku/990034235/65
519名無しさんだよもん:01/12/13 12:39 ID:MX+mgiBL
(゚д゚)ウマー
520名無しさんだよもん:01/12/13 14:07 ID:F29eF/Zk
シュッツシュタッフェル?
521名無しさんだよもん
>520
それは違うと思うぞ。