RPGロワは消滅したが、テイルズのみでロワが始まったように、女神転生シリーズで
ロワが可能か考えるスレです。妄想でも構いませんので気軽に思ったルールや問題などを話し合いましょう
・できるだけ関係のない雑談は避けてください
・人数や細かい設定、ルールなどを考い合いましょう
・うまく行きそうなら本スレや感想、議論スレを立てるかもしれないことを
憶えておいていただけると幸いです
またマニアクス厨が糞スレ立てたか。せめて、ゲサロにしろよ。
>>3 頂きました。
>>3 安っぽいよなその画像
呪いに使うならもっとそれっぽいのがあるだろうに。
14 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/27(火) 17:32:50 ID:M1MeP99y
やってみたいが人イナス
ゲーキャラ板から来ますた。今までの歴代シリーズのキャラ全部出すの?
ラストバイブルやギガテンやデビチルの扱いは?
まだ出ていないライドウは?
そもそも
>>1はまだいるの?
1じゃなくてすまんが、シリーズのキャラを全員出してみるのも面白いと思う。
ただその場合、人数が多すぎて、どうしても描写しきれない捨てキャラが出てしまう危険性はあるけど。
デビチル等は自分は詳しくはしらないけど、書ける人がいるなら書いてもいいのでは?
超力兵団も出せるなら出してみてもいいかと。
しかしやっぱり人がいないな。
ナニユエ悪魔でなく人間を使うのか、これがわからない。
それとデビチルの連中は開始2分で瞬殺されるだろ。
19 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/28(水) 04:28:57 ID:/b3HC3zJ
試しにわかる範囲で主要人間キャラをあげてみる。カッコの中は人数。
旧約(2)…中島朱実、白鷺弓子
旧約2(3)…主人公、親友、魔女
真1(4)…主人公、ヒロイン、ロウヒーロー、カオスヒーロー
真2(6)…アレフ、ベス、ヒロコ、ギメル、ザイン、ダレス
真3(6)…人修羅、高尾祐子、新田勇、橘千晶、聖丈二、氷川
if(5)…主人公、白川由美、黒井真二、赤根沢玲子、宮本明
デビルサマナー(3)…葛葉キョウジ、麗鈴舫、秦野久美子
ソウルハッカーズ(6)…主人公、遠野瞳(&ネミッサ)、桜井雅宏、芳賀佑一、迫真悟、北川潤之介
ライドウ(4)…葛葉ライドウ、鳴海、朝倉タヱ、大道寺伽耶
ペルソナ(9)…主人公、園村麻希、南条圭、稲葉正男、桐島英理子、上杉秀彦、黛ゆきの、綾瀬優香、城戸玲司
ペルソナ2(9)…周防達哉、天野舞耶、黒須淳、リサ・シルバーマン、三科栄吉、芹沢うらら、周防克哉、嵯峨薫
アバタールチューナー(6):サーフ、ヒート、ゲイル、アルジラ、シエロ、セラ
デビチル(9):甲斐刹那、要未来、タカジョーゼット、葛羽将来、王城嵩治、ジン、アキラ、レナ、橿原亜美
魔神2(6):武内ナオキ、橘薫、菊地智晴、菊地彩耶、荻原将清、カレン・ブリュン・ローズ
これで計78人。抜けているシリーズの主要キャラや、敵対キャラを含めるとすると100人行くだろう。
全キャラ参加は非常に魅力的だが、瞬殺キャラや空気キャラ、物語の進行の遅さなど問題は多そう。
投票で人数を絞ると、書き手や読み手が絞られたり、
選ばれなかったキャラやシリーズのファンから叱られそうだが、物語自体はサクサク進みそう。
あと、人間キャラはいっそ全員特殊能力なし(ペルソナ、ガーディアン、悪魔化等不可)にして、悪魔とタッグを組んでみるのも面白そう。
人間か仲魔のどちらかが死んだら、もう片方も死ぬっていう形式とか。
主催は誰だろうな。やっぱり顔?
長文スマソ。何か意見求む。
うめ
21 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/28(水) 13:12:41 ID:sW8mmynr
文才無いから書けないけど、すげー期待してる。
>>19 乙。アーケード板やFFDQ板なんかのバトロワスレもそれぐらいの人数だったし俺はマイナー過ぎる作品以外は全員参加でいいと思うけど
バトロワなんだし噛ませ犬や活躍できないキャラが出るのは仕方ないでしょ。そもそもキャラが死ぬのが嫌な人はここ見ないよ
悪魔と人間を組ませると、パワーバランスがひどくならない?
主催はルイ・サイファーか捨て便きぼん
●天外魔境3 NAMIDA
●グランディア3
●コードエイジコマンダーズ
●ローグギャラクシー
決定
お疲れ様でした
各ゲームスレに決定報告コピペをよろしくお願いします。
なお、決定が遅れましたことを各関係者ならびにROMってた皆様に
お詫び申し上げます。
来年度の議論ではよりスムーズに進むよう努力いたしますので
ご期待ください。
糞ゲーRPG議会運営一同
25 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/28(水) 18:30:14 ID:HTDl6zd2
デビチルいらんだろww
他の作品の敵対ちゃんといれたら
100は行くだろうに
ライドウみたいに仲魔各自一匹のみ同伴可能でどう?
そもそも仲魔いてこそのメガテンだし。
各自一匹・ボスレベルの仲魔は控えるってことにすれば、パワーバランスは崩れないかな?
>>25 デビチルや、あまりにマイナーなものは省いた方がいいかな
あれだ、武器の代わりに悪魔配給
ソレダ
まさにそれだ!
上で書かれてる仲魔が死んだら、人間も死ぬって言うのはあり?なし?
なしだろwww悪魔は使役するものなんだから
アバチュとペルは死んだら人間も死ぬって事になるけどな
アバチュの場合はただの非常食じゃね?
倒した相手から仲魔を奪って、魔王系やらセラフ系たくさん持ってる強敵がいたりな。
悪魔そのものを配給するより、支給武器の中に仲魔入りCOMPが含まれてる方がいいなぁ。
ナカジマのノートパソコン
旧約2主のCOMP内臓サイバネティックアーム
真1ヒーローのアームターミナル
アレフのアームターミナル
八幡先生作アームターミナルモノクル型・ゴーグル型
キョウジのGUMP
シドの聖書COMP
ウラベのGUMP
フィネガンのメリケンサックCOMP
ユダのサックスCOMP
キャロルJのギターCOMP
マヨーネのテクマクマヤコン傘COMP
赤黒白光闇の各色デビライザー
ライドウの悪魔入りカプセル
ざっと上げただけでも結構な数があるし
魔神キャラの分のCOMPや八幡先生のノートパソコンも追加すれば余裕で20越えるよ
人+仲魔だと、ペル使い+仲魔とかノクタン(はっきり言って魔王同然)+仲魔と
普通の人+仲魔 が大きく離れちゃうような。
あと主人公の名前どうするか?
キャラは投票で何十人まで、でよくないか?多すぎるとマイナーで手がつけられん面子がもっさりいそう
36 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/29(木) 17:55:35 ID:Xe2eBtwB
>人+仲魔だと、ペル使い+仲魔とかノクタン(はっきり言って魔王同然)+仲魔と
>普通の人+仲魔 が大きく離れちゃうような。
人間キャラは悪魔使役能力以外はただの人って設定にするのはどうだろう?
IFの宮本アキラやノクターンの主人公は覚醒前の状態、ペルソナ使いはペルソナを使えないっていった感じで。
>あと主人公の名前どうするか?
早い者勝ちか、あるいは小説や漫画などの設定を借りるか。
>キャラは投票で何十人まで、でよくないか?多すぎるとマイナーで手がつけられん面子がもっさりいそう
投票もいいけど、あまりにマイナーなシリーズを先に省いたほうがいいと思う。
あと、非プレイヤーキャラであまりにもマイナーなもの(たとえば「マークの母さん」「レイジの母さん」など)には投票しないなど予め決めておくとか。
何か既にgdgdなのは気のせいか?
全員が全員ただの人じゃ
名前と性格だけ借りたオリバトをやってるようなものでは?
魔法や格闘能力・特殊技術込みでそのキャラなんだから
一般人との格差がどれほど開いてようが能力制限なく受け入れるべきだと思う。
バトロワは皆に対して公平なゲームであっても、決して皆が対等のゲームではないっしょ
39 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/29(木) 18:56:34 ID:InY/FdBz
そもそもメガテンに一般人っているか?
ガーディアンの不死能力以外はそのままでもいいと思う
そうだな。不死関係を除き、そのままがいいと思う。
やっぱり知恵と行動次第ではどうとでもなるのがロワのいいとこだし
41 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/29(木) 19:17:33 ID:Xe2eBtwB
じゃあ能力はそのままってことで。
キャラや、主催者はどうしよう。
>>ガーディアン
魔界と天界に中継実況されてて興味持った奴が名乗り出るなんてどうだ。
もしくは完全に代理戦争とか。
>>42の案か、ゲームで憑いたガーディアンの皆様が妥当だな。
主催者は、閣下か顔かニャルでは?この辺が妥当かな?
キャラは1人(1ID)につき1人、でよくないか?俺はス プ − キ ー(桜井雅宏)に必ず投票するがな
俺も
>>42がいいな。
キャラ、発売前のライドウはアリ?ナシ?
発売前はロワ初めて、新設定や細かい性格がワラワラ→ゼンゼンチガーウなりかねんからやめといた
ほうがいいんじゃ?
46 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/29(木) 19:52:53 ID:InY/FdBz
個人的には出したいけど、オリキャラになりそうな予感
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><参加者リスト><着火器具・携帯ランタン>が支給される。
また、ランダムで選ばれた<COMP>が渡される。※地図は放送とともに禁止エリアに印、リストも放送とともに人名に斜線が入る
<ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る
・生存者が一名になった時点で、ゲーム終了。その一名はどんな願いもかなえられる。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。
+首輪関連+
・参加者には生存判定用の感知器がついた『呪い』が付けられる。
この首輪には爆発の魔法が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が爆破を念じるで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します
ちょっと作ってみた。これにルールを追加していく形でどう?
キャラの違いはロワならすぐに出てきそうだけどな
先にNGタイトル決めてから投票に移ったほうがいいかな?
>>47
乙。ルールはそれでいいと思う。
NGタイトルって出場不可能なゲームタイトルってこと?
好き嫌い抜きで考えるなら個人的には
・デビチル(世界観が違いすぎる)
・アバチュ(同上)
・ラストバイブル(同上、マイナー)
・魔神シリーズ、ロンド(マイナー)
・NINE(マイナー)
・ライドウ(まだ発売前なのでキャラがわからない)
・ギガテン(コンシューマーじゃない)
かな
旧約と真1、2だけでいいのではないか?
ちょっと少ないか。ifからもOKにするか。
旧約1・2
真女神転生1・2・IF・ノクターン
デビルサマナー
ソウルハッカ−ズ
ペルソナ1・2
アバチュキャラ入れると書きやすそうじゃねぇ?
一度に投票できる人数を二人か三人に増やしたほうがよくないか?それとどのゲームも参加してもいいと思うんだが。。
書ける人がいればマイナーかどうかは関係ないし、制限すると人が減るよ。
漏れは投票するならこの三人!!
<<旧約・女神転生II 東京タワーの魔女>>
<<女神異聞録ペルソナ 園村麻希>>
<<デビルチルドレン 要未来>>
必死なデビチルアンチがいるな
デビチルとか別に何でもいいんじゃない?バトロワだし、個性あったほうがいいじゃん
アバチューとかも悪魔化したら体力を激しく消耗するって感じで
ある程度のバランスを取ればいけると俺は思うんだけど
配給は悪魔とアイテム1つのシステムで、アイテムの中にCOMP系アイテムがあればそこに悪魔をストックできるとかで思うんだけど
あと悪魔の配給は主催者に悪魔と契約させられるって感じでいいと思う
COMP持ってても敵倒さないと悪魔ストックできないし、敵の悪魔が仲魔になりたくないっていう
ケースもあるから話が広がると思うよ
あと悪魔は出せる数は1体だけの方がいいかな、チーム戦になってくるとごちゃごちゃになるし
悪魔は基本的になるべく能力が無い人間キャラが高位の悪魔
アバチューとかはジャックフロストとかでいいと思うんだけど
あと、ライドウ出てからやった方がいいと思うんだけど…
デビチルだろうとアバチュだろうとライドウだろうとこの際出しちゃって
「キャラがどんな扱い、結末だろうと 絶 対 に文句を言わないこと」ってルールを設けちゃえば?
それは必須だな。
……人選は投票制か総出演かも考えなきゃな
62 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2005/12/31(土) 17:59:42 ID:cTie+iGs
一応総出演形式にして、目安として百話までに書かれなかったキャラは不参加扱い…ってことにしたら?
これなら自動的に書きにくいキャラや扱いづらいキャラを削除できそう
セラと園村にみんな殺されちゃう
64 :
【吉】 :2006/01/01(日) 17:09:21 ID:G7qSPp/B
おみくじ機能が大吉ならデビチル活躍
中吉なら魔女たん活躍
小吉ならかや活躍
凶ならマキたんにみんな殺される
大凶ならセラにみんな殺される
65 :
【中吉】 :2006/01/01(日) 17:10:48 ID:G7qSPp/B
吉だったからそれなりにみんな上手くいくんだろう
人いないのであげ
無理だろ
たぶん書けるほどにシリーズをプレイしている「書き手」がいない
読み専だけがいくらいても意味がないのがこの手のスレだしな
やっぱり予めシリーズを絞っておいたほうがいいんじゃないの?
一部の人のデビチル等のマイナー作出したさに他の人が書けなくなって企画倒れなんて、あまりにむなしくないか?
人修羅最強説
70 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/02(月) 22:58:52 ID:LgOeuHlq
>>68 そっちのほうがいいよな……で、出すならどれよ?
俺が書けるのは真1〜3、if、サマナー、ハッカーズ、ペルソナ1ぐらいだが
えと、話が繋がってる方がいいと思う
真一→二→if→ペル1→ペル2
↓
三(閣下つながり?)
デビサマ、ハカーズでいいんじゃね?
ペル2賛否両論激しいから多数決でw
>>71 DDSも一応繋がってるんじゃない?
真で悪魔召喚プログラムをDLするときにに「ナカジマ」の名前が
出てきたような…
記憶がちと曖昧だが。
ペル2はアリだとは思うけど、ゆきのや南条、エリーなどのペル1→ペル2引継ぎ組みの年齢設定がややこしくなりそう
個人的にペル1の連中は高校生で出てほしいな
>>71+初代のレギュラーキャラ全員集合でいいんじゃないかな
全員に悪魔を支給したら悪魔の口調や能力を調べるだけで一苦労すると思う。
支給武器は魔法・ペルソナ使い→1つ、そうでない人→2つにして
武器の中に悪魔やらCOMPやらが含まれている形にしたらどうかな。
あと、パスカルやナジャやヒーホー君や病院ピクシーとかのイベント悪魔を
参加者としてエントリー可能にするとか
支給武器二つか…
イベント悪魔はどうなんだろう…
真1:ゆりこ、パスカル、アリス
真2:ナジャ、アヌーン、パック、セイレーン、ペテルセン
真3:病院のピクシー、フトミミ、サカハギ
真if:ヒーホー君、ケルベロス(ディスク入り)
異聞録:ヒホ子ちゃん、ヒュプノス(広瀬久美)、ネメシス(松平美智子)、タナトス(山本百合子)
ペル2:ベルちゃん(イシュキックの仲魔ベルフェゴール)
デビサマ:デビルバスターバスターズ
ハカーズ:エリカ、ロメオ、ムーウィス
イベント悪魔というとここらへんかな?
悪魔じゃないのも混ざってるけど
>>58 ロワだとそれ当然だから。
これも分からない奴はDQNこのうえないだろ
いっそ悪魔1匹と武器一個ってどうよ?
>>62の案に俺は一票
>>78 >>75の最初の行読むといいと思うよ。
口調が(悪魔によっちゃ性格も)設定されてるから実質参加者2倍に増やすようなもんだし
読み手は良くても書き手が大変だよ
イベント悪魔系はその作品にかなり詳しくないと書きづらいな。
イベントに関わらない一般の悪魔なら口調、性格の種類少ないから問題ないと思う。
悪魔を参加者に入れたら物凄く大変かと。
人数の問題もあるし。
序盤で一気にキャラをかませ犬にして消すなら別だけど
悪魔を使役してナンボのシリーズである以上
たとえヒーホー君であろうとも参加者としてではなく召喚される仲魔であるべき。
悪魔を配給品にする分武器の配給は最小限に止めた方が良さそう。
>>82 同意。魔法使えないキャラにのみ武器をあげればいいんじゃないか?
そうすると公平じゃなくならない?武器は皆に支給で悪魔は適当にウロウロしていて、会話で仲魔になったりとかどうよ?悪魔は支給されてるより、その方が書く人も楽だと思うんだが
85 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/06(金) 15:24:06 ID:rur7swh+
・悪魔を一人1匹にすると書き手が2倍疲れる
・能力を持っている参加者と普通の人間では余りにも差が出すぎなので、武器を能力の無い参加者のみに渡すか
能力をある程度制限するっていうのも手だと思う
・悪魔がそこらじゅうにいるって設定だと、ほとんど戦闘に話が持っていかれるからあんまり…
「悪魔が徘徊している」って設定なら数をある程度限らせて、要するにNPC的な扱いにするなら大丈夫かもしれないけど
あるいは主催者が手を施すとか、元から置いてあるとかそういうのにしないと
悪魔の採用方としては
1、悪魔を配給制にする(最初以外にも放送の時に生き残った参加者に追加配給など)
2、悪魔をそこらへんに徘徊させる(数を制限するのもあり)
3、悪魔を特定の場所に設置する(やるなら最初から設定しておくか、書き手が自由に書くか決める必要あり)
4、主催者が適当に召還する(書き手によるばらつきが欠点となる可能性もあり)
大まかにはこの4つだと思うんだ、書き手が集まらないとバトロワは話にならないので
とにかく書き手が書きやすい仕様にしないと
一応補足しておくけど、主催者が召還する時にいちいち主催者の話し入れてたら面倒だから無しね
召還は近くではハッキリ認識できるけど、遠くだと殆どわからないって感じの演出でいいと思う
86 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/06(金) 15:32:25 ID:rur7swh+
>・能力を持っている参加者と普通の人間では余りにも差が出すぎなので、武器を能力の無い参加者のみに渡すか
> 能力をある程度制限するっていうのも手だと思う
ごめ、上のルールちゃんと見てなかった、ここはスルーしといて
87 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/06(金) 23:53:04 ID:J+zJk0hA
1、悪魔を配給制にする(最初以外にも放送の時に生き残った参加者に追加配給など) がいいな
書き手の絶対数の問題でどうあがいても無理だと思うがな
やるんなら参加者は多くて原作程度に抑えた方がいい
それなら2,3人の熱意ある書き手が廻せばなんとかいける可能性もある
89 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/07(土) 17:12:02 ID:r4rlI8lM
うん。まだ第一回目だから、キャラは少ない方(30から40)がいいかもね
90 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 18:12:32 ID:VugaZmeG
いっそライドウ発売まで待てば
91 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/08(日) 18:18:30 ID:Eg8zuW4s
らいどううううううううううううううううえええええああああああああああああああ
このさいメガテンキャラ総出演のSRPGとかスパロボっぽいが
閣下は隠しで仲魔に
>>90 それでもいいけど、そうなるとライドウ優勝の予感がひしひしと
94 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 01:16:38 ID:lH9yMMGp
ナオミやばいな…先手+一撃で倒す以外勝ちようがないぞ。
96 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 13:46:15 ID:gkLqltj2
ベルゼブブタソとラブラブしてるから邪魔しないでよネ。
97 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 16:56:46 ID:dSsjpohd
終盤まで生き延びそうなキャラ予想
・朱実&弓子(旧約)→2人1組で大活躍しそうなイメージ。元祖主人公だから?
・魔女(旧約2)→何気にファンが多いから生き延びそう
・ザ・ヒーロー(真1)→こいつにかかわらず真1はみんな強そう
・たまき(if)→if版なら活躍しそう。だがただしが関わってくるペルソナ版なら速攻死んでそう
・宮本アキラ(if)→美味しいところ掻っ攫って終盤で派手に死にそう
・ハザマ(if)→原作の桐山(天才殺人犯)に近くなりそう
・人修羅(真3)→優勝候補の予感
・キョウジ&レイ(サマナー)→これも2人1組で活躍しそう。ハッカーズ版だったら凶悪度アップ
・主人公(ペルソナ)→どう転んでも終盤戦まではいそう。優勝候補?
・マキ(ペルソナ)→主人公同様終盤戦まではいそう
・南条(ペルソナ)→なぜか死ぬのを想像できない
・ヒトミ&ネミッサ(ソウルハッカーズ)→主人公と二人で頑張ってくれそう
・メアリ(ソウルハッカーズ)→作者に愛されそう
・ナオミ(ソウルハッカーズ)→ラストはレイとの死闘きぼんぬ
・達哉(ペルソナ2)→何気に優勝候補?
・淳(ペルソナ2)→マーダー化しそう
・刹那(デビチル黒)→デビチルファンが書き手だったら最強レベルになりそう
・アヤ(魔神2)→作者に愛されそう
・サーフ(アバチュ)→アバチュファンが書き手だったら最強レベルになりそう
・セラ(アバチュ)→速攻殺されるか原作の相馬を超える極悪マーダーとして君臨するかの二択
・ライドウ(ライドウ)→上にもあったけど発売後にロワやったら猛威を振るいそう
・大道寺伽羅(ライドウ)→どう転んでもライドウ同様終盤までいそう。マキやセラ路線のキャラだったら一番極悪かも
逆に速攻殺されそうなキャラ予想
・アヌーン(真2)→ダレス発狂フラグに使われそうだ
・男主人公(if)→カゲがうs
・マーク(ペルソナ)→マイのために死にそう
・アヤセ(ペルソナ)→落ち着きがなさそう
・ゆきのさん(ペルソナ)→仲間をかばって即死ぬ図が見える
・ただし(ペルソナ)→見せしめでいいよもう
・シックス(ソウルハッカーズ)→イケメンかつヘタレ
・ユーイチ(ソウルハッカーズ)→わーわー泣き喚いてそう
・舞耶(ペルソナ2)→原作のせいk、美人薄命なイメージ
・うらら(ペルソナ2)→終盤まで生き残ってる図を想像できない
・タカハル(デビチル白)→優男(小学校高学年)だから戦闘には不向き
・ショウ(デビチル白)→萌え系ロリッコ(小学校低学年)短命の法則。つうか戦えるのか?
・アキラ(デビチル闇・炎)→宮本さんとのアキラ対決で破れそうな予感
・ロソドご一行(ロソド)→ゲーム同様なかったことにされそう
・エミ(NINE)→萌え系ロリッコ(中学生だっけ)短命の法則。
・アルジラ(アバチュ)→アルちゃん逃げて逃げてー
・タエ(ライドウ)→萌え系ドジッコ短命の法則
98 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 17:03:34 ID:dSsjpohd
しまった。大道寺伽羅じゃなくて大道寺伽耶かorz
ステータスはどうすんだ?
アレによってはずーと相手をいたぶれる無敵キャラ誕生なわけですが
>>99 人修羅inマサカドゥスか。
人修羅はスキルとマガタマきめとかないと危険な予感
デビチル勢は漫画版だったら凄みとかがやばい
102 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 22:37:34 ID:6dM8ZQCa
103 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/09(月) 22:39:08 ID:6dM8ZQCa
終盤予想は鋭い
そういや葛葉キョウジを出す場合はキョウジ本人?
俺としてはキョウジ本人がいいんだが
俺も本人希望
106 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/10(火) 23:55:31 ID:RDtV9AJi
保守
この過疎っぷりを見ても無理という結論が出ているジャマイカ
108 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/11(水) 23:28:30 ID:Rsu6C158
学園エロパロきぼん
109 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/12(木) 20:19:49 ID:YdYCbUaB
デビチル出して
110 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/12(木) 22:03:26 ID:iqo43YBO
だいぶ過疎ってるね。
書き手とかいないのかな?
111 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/12(木) 23:15:29 ID:cmJCADof
ま、とりあえず参加する奴の投票するにしろマッブ案にしろ考察するべや。
112 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/15(日) 05:00:24 ID:fYo+v/zl
保守
この過疎り具合はみんなライドウまで様子見してんのかね?
〃〃∩ ジタバタ
| |
| |. _, ,_ 交渉出来なきゃヤダヤダ!
⊂二二二二⌒⌒( `Д´)二二ヽ
ヽ / .\\
\\ \\
ヽ二二二つ ⊂二ノ
あげ
116 :
通りすがり:2006/01/21(土) 09:47:12 ID:naRNHE88
コレを見た人は、超超超超幸せもの★★ @週間以内に好きな人に
告白されるか、好きな人といいコトがあるよ でも、そのためには次のこ
とを実行!! コレを読んだら、@時間以内にどこかに貼る★★
117 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/21(土) 12:06:24 ID:aY+hLnpw
過疎ってますなー
118 :
ワロバン2世@倭寇:2006/01/21(土) 15:54:39 ID:R64mOAmm
悪魔辞典より
エヘヘブヒー∧_∧∩ サバトマで電通を召喚
< `u´*//
⊂二 ミミ 危なくなったらトラフーリ
| ( ) トリノが終われば邪神に昇格ブヒー
豚キム口口/  ̄) ノ_丶
( <⌒<.< ||真||シュッ
疑/ ┻ (C)JOC/ワロ ||露||チュッ
┻
外道“ミキリン” LV66 HP999 MP666
特技・魔法 メギドラオン 魅惑かみつき ヘカトンプレス デスバウンド まるのみ
テンタラフー マハムドオン トラフーリ エナジードレイン サバトマ
MPから察するに、うちのスルトよりLVたけーじゃねえか
120 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/24(火) 22:12:44 ID:cDtjtxDD
ライドウ待ち?企画だおれ?
121 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/26(木) 20:06:38 ID:bt0eY9lQ
ライドウ待ちの予感age
122 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/27(金) 20:22:41 ID:tDu31dIm
先に優勝者や展開を考えるのもいいかもな
ライドウ待ちならいっそライドウを優勝させちゃうとか
考えても結局途中で設定変わりそうな予感
とりあえず人修羅は中ボス
125 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/28(土) 00:55:53 ID:uyNj2O3l
バトロワの主役やヒロイン役みたいな脱出出来るキャラや、人を積極的に殺しまくるキャラを決めといたほうがわかりやすい気がするんだ
126 :
希望:2006/01/28(土) 17:49:29 ID:gIT8mXzc
主役 中島朱実
準主役 葛葉ライドウ 周防達哉 ピアスの少年
ヒロイン たまきちゃん
マーダー 人修羅 セラ 園村
127 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/28(土) 23:16:30 ID:uyNj2O3l
>>126 そんな感じで投票とってみる?人いないけど
主人公・真1カオスヒーロー
マーダー・人修羅
希望
このスレは何のスレなんだ?
>>129 メガテンキャラでバトロワ小説を書こうってスレです
>>127 主役・・・ライドウか人修羅
ヒロイン・・・しいて言うなら伽耶
マーダー・・・ハザマか黒須淳か千晶
集計はいつまでなんだろう
マーダーって積極的に人を殺すキャラって意味であってる?
主役級
葛葉キョウジ
レイ・レイホゥ
遠野瞳(ネミッサ)
宮本明
アレフ
サブ級
スプーキー
メアリ
ヒロコ
ベス
南条圭
マーダー級
葛葉ライドウ
シド
ナオミ
神取鷹久
ゆりこ
サマナー多すぎてごめん
あと投票した後でなんだけど、主役級キャラは原作の主人公じゃなきゃダメ?悪役や脇役はダメ?
マーダー級
アゼルさん(漫画版)
この人は個人的にありだと思う。
個人的にはレス番200から250ぐらいで止めたらいいかなと思ってる
>>131 それで合ってる
>>132 いいんじゃない? あまりにマニアックで解りにくいキャラじゃなきゃ
>>133 ごめん……誰?
アゼルはデビチルの大ボス。漫画版ではラスボス
俺はやっぱ
人修羅
神代浩司
スプーキー
がいれば満足
今 後 の お 願 い
過 疎 を ど うに か し た い の で a g e 進 行 で お 願 い し ま す ! !
と言うわけでage
138 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/30(月) 22:50:47 ID:BQZ94vrz
あえて
>>97の予想を裏切ってみる
主人公:男主人公(if)、マーク(ペルソナ)、ゆきのさん(ペルソナ)
ヒロイン:舞耶(ペルソナ2)、アルジラ(アバチュ)、アヌーン(真2)
マーダーキャラ:、うらら(ペルソナ2)、タエ(ライドウ)、ユーイチ(ソウルハッカーズ)
のいずれかで
139 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/01/31(火) 00:22:45 ID:cnQlDDnH
それよりぁたしと関係無い雑談でもしなぁ〜い?
140 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/01(水) 12:16:44 ID:GgTR1c7A
主人公:ロウヒーロー(T)、主人公(旧U)、聖丈二(V)
ヒロイン:白鷺弓子(旧T)、ベス(U)、ゆりこ(T)
マーダー:ダークヒーロー(旧U)、人修羅(V)、ザイン(U)
こんな感じで
よく考えるとバトロワって凄くカオスカオスしてるな
142 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/04(土) 20:35:17 ID:/UEikucx
本気で人いないな
143 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/04(土) 21:37:10 ID:1CmDkngM
カオスヒーローが銃乱射でKO
144 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/05(日) 20:43:39 ID:CJMLggTZ
キョウジとライドウの一族内での殺し合いが見たい見たい見たい
145 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/06(月) 21:31:01 ID:NSG2g9Yx
もう勝手に書く
刹那油症
146 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/06(月) 21:34:12 ID:NSG2g9Yx
間違えてた
刹那優勝でもいい?
ヒロインは未来かエレジーか考えてる
他の作品は知らないから教えてください
油症吹いた
デビチル知らん
149 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/08(水) 00:32:59 ID:OgHVRxy5
150 :
◆x22.vkSb3w :2006/02/08(水) 19:11:34 ID:qTfHrwDR
それじゃあはじめます。好きな人物が死んでも文句はやめてください。
名簿はここのを借りました。
旧約(2)…中島朱実、白鷺弓子
旧約2(3)…主人公、親友、魔女
真1(4)…主人公、ヒロイン、ロウヒーロー、カオスヒーロー
真2(6)…アレフ、ベス、ヒロコ、ギメル、ザイン、ダレス
真3(6)…人修羅、高尾祐子、新田勇、橘千晶、聖丈二、氷川
if(5)…主人公、白川由美、黒井真二、赤根沢玲子、宮本明
デビルサマナー(3)…葛葉キョウジ、麗鈴舫、秦野久美子
ソウルハッカーズ(6)…主人公、遠野瞳(&ネミッサ)、桜井雅宏、芳賀佑一、迫真悟、北川潤之介
ライドウ(4)…葛葉ライドウ、鳴海、朝倉タヱ、大道寺伽耶
ペルソナ(9)…主人公、園村麻希、南条圭、稲葉正男、桐島英理子、上杉秀彦、黛ゆきの、綾瀬優香、城戸玲司
ペルソナ2(9)…周防達哉、天野舞耶、黒須淳、リサ・シルバーマン、三科栄吉、芹沢うらら、周防克哉、嵯峨薫
アバタールチューナー(6):サーフ、ヒート、ゲイル、アルジラ、シエロ、セラ
デビチル(9):甲斐刹那、要未来、タカジョーゼット、葛羽将来、王城嵩治、ジン、アキラ、レナ、橿原亜美
魔神2(6):武内ナオキ、橘薫、菊地智晴、菊地彩耶、荻原将清、カレン・ブリュン・ローズ
151 :
第一話 悲劇のはじまり ◆x22.vkSb3w :2006/02/08(水) 19:12:21 ID:qTfHrwDR
俺たちは謎の暗室で目を覚ました。
「ここはどこだ・・・」
周りには未来やマサキや、知らない人がいっぱいいる。
俺は初めての経験に少しだけ怖くなった。
俺は甲斐刹那。原宿小学校に通う5年生で、実は悪魔の血を引くデビルチルドレンなんだ。
だから、色々な戦いをしてきたけど今回は今までよりも恐ろしい戦いになりそうな気がする。
「目覚めたかい?今から君たちには殺し合いをしてもらう」
突然の言葉にみんなびっくりした。
「父さん・・・・・・」
「パパ!馬鹿なことはやめて!!」
俺と未来が悲しむ横で、葛羽マサキは怒っていた。
「刹那と未来の父さんだからって許せねえ!殺してやる!!」
マサキはルシファーめがけて走る。
だが、そのとき、ルシファーは手から光を放った。
マサキは血を流しながら全身がバラバラになった。
「マサキー!!」
親友の王城タカハルが近寄ったときには、当然マサキは死んでいた。
「そんな・・・マサキが死んだ・・・」
「いやーっ!!」
タカハルとショウが泣く。刹那や未来も泣きそうだった。
ほかの見知らぬ人たちも心を痛めていた。
「こうなりたくなかったら最後のひとりになるまで殺しあえ!友達や恋人や家族だからって容赦はするな」
「父さん・・・」
こうして、殺し合いは始まった。
誰も文句は言えず、涙と怒りを胸にそれぞれ無人島へと散っていった。
死亡:葛羽マサキ(デビチル)
152 :
第二話 ライドウの裏切り:2006/02/08(水) 19:13:36 ID:qTfHrwDR
「ねえこっちでいいのかな?」
「ライドウが言ってたからそうなんだろう」
朝倉タエと鳴海は、葛葉ライドウが言っていたとおり島の一番南へ向かっていた。
「でもライドウ君はどうして私とあなたと伽耶ちゃんを呼んだのかしら?私、殺し合いなんてしたくないよ」
「あいつは頭のいい子だから、こんな糞ゲームをぶっ潰す方法をちゃんと考えてくれているんだよ」
「そうか!そうよね!ライドウ君強いもんね」
タエと鳴海が安心して笑いながら島の南に来ると、大道寺伽耶が寝ていた。
「伽耶ちゃん、疲れちゃってるのかな?」
「違う・・・死んでいる・・・」
「え!?」
「誰かが殺したんだ」
よく見ると伽耶は赤いセーラー服が血でべったりだった。気づくのが遅かった。鳴海もタエもショックだった。
「二人とも遅いんだよ」
ライドウがいた。ライドウは意地悪そうな笑い顔だった。
「ライドウ、まさか伽耶を殺したのは貴様か?」
鳴海は少し切れかかっていた。
「ああ。だって伽耶はもとから自分を殺してくれって言ってだじゃないか。だから殺したんだよ」
「てめえ・・・」
鳴海が武器のかなづちを振り回そうとしたときだった。
ベシッ!!
タエがライドウに泣きながらびんたをした。彼女の武器は日本刀だったのだが、まだ友達だとおもっていたので、タエはそれを振り回せなかった。
「ライドウ君、ひどい!私たち、友達なのに殺しあうなんて最低だよ!人殺し!!」
ライドウはタエをにらみながらマシンガンをタエの心臓に撃った。即死だった。
「甘いな。ルシファーだって友達や恋人や家族だからって容赦はするなって言ってただろ」
次に切れたのは鳴海だった。
「ふざけるな、俺は残酷なおまえを部下にしたわけじゃない!お前はそんな人間だったのか?この悪魔!!」
「貴様もタエや伽耶と一緒に地獄に落ちるがいい」
ライドウはまたためらうことなく鳴海を撃ち殺した。
「・・・生きて帰れるのは俺だけでいい・・・」
ライドウは3人の遺体を埋めることなく、その場を去った。
14代目葛葉ライドウはこれから先も、残酷な暗殺者としてさまざまな人間を殺すことになる。
死亡:大道寺かや、朝倉タエ、鳴海(ライドウVS超力兵団)
153 :
◆x22.vkSb3w :2006/02/08(水) 19:14:34 ID:qTfHrwDR
今日はここまでです。明日次回作は書きます。
154 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/08(水) 20:14:06 ID:pTF7vHCD
;゚д゚)ペッ
155 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/08(水) 20:47:33 ID:IsbgpB6z
迷作さらしあげ
いきなりはじまっとるwww
「ちょっと待てぇぇぇ! 勝手に地獄に落とすなぁぁぁぁぁッ!!」
「私たちの代わりにライドウくんが死ねばよかったのよ!」
「あのぅ……伽耶ですけど、私のセリフはないんですか?」
「「「――だから、私たちが負けるわけにはいかないんだ!」」」
死の淵より蘇った鳴海、タヱ、伽耶の目から総天然色光線が放たれた!
「ウボァーッ! パッショーン!!」
それを食らったライドウは溶けていく……溶けていく……
その後、鳴海たちは総天然色ビームでルシファーと超力兵団をやっつけ、
世界を平和に導き、勇者ロトの称号を手に入れましたとさ。めでたしめでたし
【葛葉ライドウ 死亡】
【鳴海 目的:ゲームタイトルを『ライドウ対〜』から『名探偵鳴海』に変更させる】
【朝倉タヱ 目的:とりあえずロト6で稼ぎまくってセレブになる】
【大道寺伽耶 目的:友達をいっぱい作る】
バトルロワイアル 完
夜叉鴉という漫画を読むと、
ライドウたちは実は既に死んでいて地獄にいるのではないかと思えてくる。
大正時代っぽい世界観がある地獄。もちろんそこにいる住人はみんな死人。
「ひどい・・・」
爆発のあった場所に来た天野舞耶は、泣きそうな顔で目の前の死体の山をみた。
死体の正体は、武内ナオキ、菊地兄妹、橘薫、荻原、カレン。
みんなぐちゃぐちゃに爆発していて身元不明だった。
「誰がこんなひどいことをしたのかしら」
舞耶は近くにあった花をそっと死体の近くにおく。
「ぼくがやったんだよ」
背後から声がしたので舞耶は振り向いた。
「淳くん・・・」
黒須淳はにこっと笑いながら舞耶を見た。
「よかった。舞耶姉が無事で」
「淳くん、どうしてこんなことをしたの?」
舞耶は淳を問いつめた。
「舞耶姉を守りたかったから、ぼくは他の悪い人たちをダイナマイトで殺したんだ」
「そんな・・・」
「あいつら、話し合いにぼくを入れてくれなかったんだ。きっと、舞耶姉やぼくを殺す気
だったんだ。だから死んで当然だったのさ」
淳はにこにこ笑いながら舞耶の手を握った。
「ダイナマイトはもうなくなっちゃったけど、ぼく、ちゃんと舞耶姉を守ってあげるね」
「こんなの間違ってるわ!」と舞耶は心の中で呟いた。
でも、淳が自分のためにしてくれたと思うと申し訳ない。
舞耶は泣き出してしまった。彼女の心は罪の意識でいっぱいだった。
「泣いて怖がることはないよ。舞耶姉・・・ぼくが必ず守るからね」
淳は舞耶を連れて歩き出した。
死亡:武内ナオキ、橘薫、菊地智晴、菊地彩耶、荻原将清、カレン・ブリュン・ローズ(魔神2)
「ハハハ、この魔神皇に歯向かおうなんて愚かな奴らめ」
葛葉ライドウ、黒須淳と並んで凶悪な高校生がこの狭間偉出夫だ。
いじめられっこで弱虫だった彼は、あるきっかけで魔神皇になり、人間全員に復讐しようと考えていた。
だから狭間にはバトルロワイアルは憎い人類を皆殺しにする最高のチャンスだったのだ。
狭間はシエロ、ヒート、アルジラ、サーフ、ゲイルを既に葬り去った。毒ガスを彼らが会議の場所に使っていた小屋にまいたのだ。
狭間はセラがいなかったことには気付いていなかったのだが・・・・。
それを物陰から見ていた軽子坂高校の人々は顔を青くした。
「だから俺は狭間は仲間に出来ねえって言ったんだよ」
宮本明はタバコを吸いながら言った。
「でも敵に回したら厄介だよ。私たちも毒ガスまかれて殺されちゃう」
たまきは泣きそうな声で言った。
「あいつはどうせ仲間にならねえよ。いじめられてて人間嫌いになってるからな」
チャーリーは珍しくまともなことを言った。
「あいつ、これから先もいっぱい罪のない人を殺す気だよ。マジムカつく!」
白川由美は悔しそうに狭間の方を見た。
「私、お兄ちゃんを止めてきます!」
今までずっと黙って狭間を見ていた赤根沢玲子が立ち上がって言った。
彼女は苗字は違うが狭間の妹だ。狭間が悪人と知っててもどうしても助けたいし、殺害をやめさせたいのだ。
「よせ、お前一人じゃ無理だ」
「でも、お兄ちゃんが・・・・」
「よし、アタシも玲子と一緒に行く!チャーリー!あんたも行くよ!」
と由美は言った。
「は?オレもいくの?マジかったりいー」
「か弱い女の子たち二人で行かせる気?それでも男子なの!?」
「うっせぇな。わかったよ」
チャーリーは「赤根沢は天才少女でか弱いけど、お前ギャルだからマジ強いじゃん」と言いたかったが死にたくなかったから言わなかった。
「由美、私と宮本くんは?」
たまきが心配そうに言う。
「たまき、あんたたちはここで待ってて!」
「でも・・・」
「大丈夫だ。オレも白川も赤根沢もちゃんと帰ってくる!」
「絶対帰ってきてよ!私待ってるから!」
「先輩たちもお気をつけて!」
「たまきのことは俺が守るから、お前たちは生きて帰れよ!」
こうして、たまきと宮本は由美、チャーリー、玲子を見送った・・・。
死亡:サーフ、ヒート、ゲイル、アルジラ、シエロ(アバタールチューナー)
荒らし対策のためにsage進行でお送りしました。
また明日までに書けたら書きます。下手ですがコンゴトモヨロシク・・・・。
いきなり始まっててびっくりした。◆x22.vkSb3wが荒らしかと思ったw
一人で書くなら自分でサイト作って書いたほうがいいんじゃないかと思うんだけど。
偽者っておまえ何様だ。
一人でやりたいならわざわざにちゃんでやらないでブログにでも書いてろ。
まず他のロワイアルスレを読んどいたほうがいい
下手どころじゃない
166 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/10(金) 13:03:31 ID:ecLFvmup
俺たちも続き書いちゃえばよくね?
〜続き〜
おーっと、荒れ果てた戦場に愛の戦士がっ!
ラスプーチン「Hahaha! 人を殺しちゃイケマセーン!!」
魔トリョーシカ「ダメダメ! ダメダメ!」
出た! 出た! 出た!
ロシアの生んだハードゲイサマナーラスプーチンだあああああああああああ!
ラスプーチン「人を殺しちゃった悪い子はアナルセックスの刑デース! さあアナルを出しなさーい」
おーっと、ライドウと淳と狭間がパンツを脱がされた!
粗チン! 粗チン! 粗チン! ラスプーチンは鼻で笑っている!!
ラスプーチン「それでは今からこの汚いケツアナルに我が愛のライトセイバーを挿れましょう」
ズボッ
ヌルッ
グチュッ ピチャッ
ライドウ&淳&狭間&糞作者「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! イクーイクーイクーイクーイクーアッー!!」
哀れ! ライドウたちはアナルが裂けて死んでしまった!
ラスプーチン「さあ、次は誰が俺のライトセイバーでヤラれたいんだ?」
ルシファー「はーい。ボクちんです(^o^)/」
こうして世界に平和が戻った……。
リレー小説とか面白そうだな
168 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/10(金) 17:47:13 ID:ecLFvmup
全キャラ復活させてリレー形式で
169 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/10(金) 19:54:45 ID:xG8OlF9J
大人をなめるんじゃねえ!!
と、オザワが言う
170 :
◆x22.vkSb3w :2006/02/10(金) 20:28:41 ID:IOkOaUIx
みなさんも書いていいと思います。
死んだキャラが生き返ったりあからさまにふざけた展開はちょっと・・・。
へたなりに努力はしています。
もっとうまく書けるならぜひお書きください。
ヒーロー&ロウヒーロー&カオスヒーロー「うんこ!ちんこ!まんこ!」
>170
AA板に湧く厨房の典型だなあんた。
RPG板で目にできるとは思わなかった。
173 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/10(金) 20:56:01 ID:ecLFvmup
>>170 つーかやめちまえwwwお前才能ないよwww
174 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/10(金) 21:02:52 ID:ecLFvmup
リアル知的障害者か
176 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/10(金) 21:06:43 ID:ecLFvmup
>>170 お前より下手に書く方が難しいよwwwっていうかなんでお前のオナニー日記の続きを書かなきゃならないんだよタコwww
生きることに執着はない。
自らの為に他人の命を犠牲にするのは、悪魔だけで十分だ。
そう、眼前に立つ男のような。
「止めてくれよ、なぁ。向こうが襲ってきたんだ。仕方ないだろ?
こっちだって、俺だって止めろって言ったんだ。なのにアレフがどうこうって剣を向けて……」
人を殺めておきながら開き直るとは。
なんと情けない。なんと醜い。
蛇の与えた毒に冒され、神の分身の末裔でありながら罪に染まる。これが人間の姿か?
「向かってこなければ……どっか行ってくれれば俺だって撃たなかったって!
人間だぞ? 悪魔じゃないんだ! 撃ちたくて撃つわけないだろ!?」
自分は悪くないと、相手が悪いのだと言う。
真実を言う事も叶わなくなった相手に。
センターの秩序を司る、誰よりも純粋な心を持ったテンプルナイトに、罪を着せようとする。
「頼むって…ホント、わざとじゃない。俺、ヒトミちゃんやアイツみたいな柄じゃないの。
間違いだ。間違いなんだよ。事故だ、あの時みたいな事故だ。
わざとじゃない、わざとじゃない、おねえちゃんもその子もわざとじゃないんだ!」
「――わかっているよ」
僕の言葉に、その男は汚らわしい顔を上げる。
気づけ。貴様は救われる価値もない存在だということに。
「わかっているよ。君のせいじゃない、君の中に眠る悪魔のせいだとね」
呆けた顔を上げる。弱い。醜い。愚かすぎる。
このような者は、我らが楽園に――いいや、僕の理想郷にも――
「――悪魔に憑かれた若者よ、覚えておきたまえ。
お前は毒麦。焼かれねばならない、不要な存在なのだと」
悲鳴も上げず、男だったものは倒れた。
祈りは唱えない。救われるべきは、神の意志に殉ずるもの。
我が使命は、心正しき者を、千年王国が訪れるまでの地獄から救う事。
使命を為さずに死ぬわけにはいかない。
それは、神の意志に背く事になる。
そうだ。彼女は、ベスはアレフを守りきらなかった。
救世主を守る事が使命でありながら、果たさなかった。
彼女もまた、咎人だ。
「全ては神が決めたこと。
ベス……残念だが、君は救われるべき人間ではなかったのだね」
悪魔の血に汚れた剣を引き抜く。二人の武器を回収する。
本音を言えば捨てて行きたい所だが、僕とて戦う術は必要だ。
アルカディア以外の場所では、物理的手段を用いざるを得ない。
「僕は生きるよ。神の意志に従うためにね」
178 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/10(金) 23:57:17 ID:ecLFvmup
>>177 (・∀・)イイ!
これからも作品きぼん
話が見えない
・アレフのためにマーダー化したベス
・出会ったシックスに剣を向けるも、向こうがビビって発砲→死亡
・呆然としているところにギメルがやってきた
・元々ガクブル状態のシックス、姉貴の事まで思い出してパニックに
・それを命乞いととったギメルが、物分りのいい振りして油断させてザックリ→シックス死亡
というお話でいいのかな
>>157がなんか好きだ
総天然色光線ってセピアカラーだよね、おもしろ。
リレーでやるなら今一人でやっている作家さんには悪いけど、リセットして最初からスタートしてほしいかも
どうみても自分の書けないシリーズのキャラをシリーズ単位で潰している感じだしパワーバランスが滅茶苦茶すぎる
183 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/11(土) 19:26:20 ID:Ts7ZtlJU
クソ
病院ピクシーは会う度に姿が変わってそうだな
185 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/14(火) 22:14:38 ID:pDc1mlTi
そして誰もいなくなった
186 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/18(土) 22:23:20 ID:EPTG8Yqf
あげ
思うに、全シリーズクリアした職人が極端に少ないって言うか、いないんじゃないのか?
一つでも知らないのがあると気後れしそうだし。
どうみても今やってるのはギャグにしか見えないんだが…
ライドウまで間もたせてるんじゃねえ?
189 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/23(木) 17:28:53 ID:H/z8ACmj
メガテンでバトロワか。
部分的なところなら凄く書きたい。
もうショートショートを皆が好き勝手に書いちゃってもいいんじゃね?
192 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/02/27(月) 16:20:34 ID:SN0otWbI
氷川出してくれるならやってみようかなとは思ったけど。
出場リスト見る限り居ないから止めておこう。
194 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/02(木) 14:18:34 ID:SIWkC5Br
氷川いるよ
195 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/05(日) 00:30:53 ID:J7bzD7NO
ライドウキャラをバトロワに絡めたら楽しそうだなage
メガテンの主人公達って=プレイヤーだから、ほとんど喋らないじゃん?
主人公の性格がよく分からないから、書いたりすんの凄い難しいと思う
それ以外でもセリフ廻しが独特なキャラ多いからな。
氷川あたりはかなり難しいだろう。
不毛の心を理解できれば九割方把握したも同じ
キャラネタ板に居るあのハゲなら無難にこなせそうだけど、
まあ無理そうな話だな。
殆どの人は主役格とか悪魔とか把握し易い奴しか書いてくれなさそう。
適当に何かやってもOK?
OK!
202 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/11(土) 03:42:26 ID:FycGqhKc
ペルソナ3発売まで待つの?
ペル3イラネ
「我が悲願の成就まで後僅か…」
満月で照らされた世界の下でそう呟く一人の男が佇む。彼の名は氷川。
彼はその手腕で通信大手会社の重役に就く一方で、代々木の自然を破壊する横暴な側面を持つ。
当然世論では彼を称えはするが同時に批判の声も相次ぎ旗色は悪い。
しかし彼は名声も罵声も眼中に無く、ただその瞳に映るは彼の言う彼岸のみである。
「たかが一人の人間が、万物の法を動かすとは中々やるではないかね。」
不意に声があがり、その方へ氷川は目を向けると金髪の男性が立っていた。
「誰だね君は?」と氷川は問い掛けると男は
「自己紹介が遅れたな。私の名はルイ・サイファー。ルイと呼んでくれ給え。」と答える。
その男は紳士的に応じてくれたが、氷川は彼を過剰に怪しんだ。無論誰も居ない筈の空間に気配も無く
現れたのが原因であるが、それ以前にその男の赤と青の瞳の奥底に感じる、絶望へ誘うかの様なドス黒い何か…
それこそ神話上で語られる地獄へ直結している魔界への門を象っているかの如きものを
人間の本能が必要以上に訴えかけて来たのが第一の理由である。
「…何者かね?取材関係か? 断っておくが自然破壊だのと言う無意味な取材なら受ける気はせんぞ。」
「おやおや、本音を言って頂けるのは嬉しいが、建前は取り繕っておくべきものと思うのだがね。」
「構まんよ。間も無く世界は滅びの海に沈むのだ。今更世間だの建前だの下らぬ拘束具に縛られる必要性は無い。」
「そうだったな。何せミロクの予言が明日には成就され、世界はボルテクス界へ変貌するのだからな。」
「!」 思いもしない男の言葉に暫し驚きを隠せずにいたが、時が彼に平静さを呼び戻すと氷川は今一度問い質す。
「…君は何者だね?」その答えを知った所で大して意味も成さないが、初めて味わうこの得体の知れない
者の醸し出す際立った不気味さに氷川は内心落ち着かずにはいられなかった。
が、そんな彼の胸中を逆撫でするかの様に男は「なに、只の紳士だ。それ以上もそれ以下もない、ね。」と告げる。
消化不良なその答えに氷川の眉間がきしりに皺を寄せる。それ程その男を異端視しているからに他ならない反応を示す。
「……世界は確かに不毛で溢れ、君が絶望するほどの愚行の数々を人は犯し続けてきたのは事実だ。
しかし不毛とは言わば人間達に課せられた試練であり、進化を促す為のものでもある。
不毛を克服する努力が人を磨かせ、魂の質を増し、更なる進化への階段となるのだ。
その逆も然り。それを克服出来ぬ先には必然的な滅亡があるのみだ。しかし人は君が思うほど愚かではない。
その不毛が世界を滅ぼすほどのものであれば、人は生の為に徹する。そうして人は何を求めるべきであり、何を求めぬべきであるかを学ぶのだ。」
「では君はその為に世界に傍若無人の限りを尽くす不完全な生命体の横暴を見てみぬ振りをしろとでも言うのか?
世界とは全ての生命が共有する安息の住居だ。それを一種の生命の欲望を満たす為の玩具にしていいなど言語道断という言葉では済まされん。
全ての生命は安息の内に生きる権利がある。誰とてそれ無しでは生きられはしないのだよ。それを破壊する等、正気の沙汰ではないな。」
氷川は安息の重要性を語り終えると、まだ物足りなさそうに尚も語り出す。
「満月には、生死を司る他に何を齎すものか君は知っているかね? …狂気だよ。満月には人を狂わす魔性を有している。
この私にもそれは適うのだよ。それも今日ほどに特別に狂おしき事は未だ嘗てないな。
……私はこれ以上我慢を知る事が出来ん。この満月が、今まで私の内に抑えられた狂気を開放してくれたお陰でな。
私は全てを破壊し、新たな可能性を創造する者となる。君の大壮言語も褪せてしまう程の存在としてな。
満足したかの様に笑みを零し、男の方を向いたが彼の姿はそこには最早無かった。
彼の雄弁を聞き己の発言を恥じたのか、或いは語るに足らぬ愚者だと断じて去ったのか、それすらも伝えずに消えてしまったにも関わらず、
氷川には僅かな達成感を感じずにはいられなかった。そして最後に氷川は
「…心地良き静寂だ。」と呟き、以降何も言う事は無かった。
ぶっちゃけダット落ち防止でやってみたが今では反省している。
氷川がリストアップされてたからやってみたけど、やっぱ無理。
あと保守とかいったのにアゲ忘れた。
つか誰かこいよ!
はい!
なんだ、テイルズと違って何の動きもねえじゃねえか。
批判でも罵倒でも好評でもいいから動きをみせてくれよ。
身動きとれやしねえぜ。
209 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/12(日) 13:00:42 ID:o68ripWR
決めたくても人イナス
ペルソナ3まで待たずライドウまでのキャラでやる?
初代メガテンの主人公は、原作小説を参考にすれば書ける希ガス。
まあ、原作とゲーム版じゃ内容が違いすぎるが…
話変わるけど、>204って誰か見てるの?
暇だからやってみた。
「我が頭上の成就まで後僅か…」
満月で照らされた頭の下でそう呟く一人の男が佇む。彼の名は氷川。
彼はその手腕で大手育毛会社の重役に就く一方で、顧客の髪型をMハゲにする横暴な側面を持つ。
当然世論では彼を称えはするが同時に「Mhage!Mhage!」と批判の声も相次ぎ旗色は悪い。
しかし彼は名声も罵声も眼中に無く、ただその瞳に映るは彼の言う頭上のみである。
「たかが一人の人間が、脱毛の法を動かすとは中々やるではないかね。」
不意に声があがり、その方へ氷川は目を向けると無毛の男性が立っていた。
「誰だね君は?」と氷川は問い掛けると男は
「自己紹介が遅れたな。私の名はハゲ・サイファー。ハゲと呼んでくれ給え。」と答える。
その男は自虐的に応じてくれたが、氷川は彼を過剰に哀れんだ。無論誰も居ない筈の空間に気配も無く
現れたのが原因であるが、それ以前にその男の禿げた頭の奥底に感じる、不毛へ誘うかの様なドス毛無い何か…
それこそ上田の育毛CMで語られる無理にも程がある、無毛から有毛への頭の転生を皮肉に語っているかの如きものを
人間の本能が必要以上に氷川の毛を毟り取って来たのが第一の理由である。
「…何毛かね? 育毛関係か? 断っておくが顧客の髪型破壊だのと言う無意味な取材なら受ける気はせんぞ。」
「おやおや、本毛を言って頂けるのは嬉しいが、カツラは取り繕っておくべきものと思うのだがね。」
「構まんよ。間も無く世毛は脱毛の海に沈むのだ。今更カツラだの育毛薬だの見苦しい真似をする必要性は無い。」
「そうだったな。何せムモウの予言が明日には発毛され、世界はハゲリスク界へ変毛するのだからな。」
「!」 思いもしない男の言葉に暫し脱毛を止められずにいたが、時が彼に髪の毛を呼び戻すと氷川は今一度問い質す。
「…君は何毛だね?」その髪を知った所で大して毛も成さないが、初めて味わうこの得体の知れない
者の醸し出す際立った哀れさに氷川は内心痛々しく思わずにはいられなかった。
が、そんな彼の胸中に反抗するかの様に男は「なに、只のハゲだ。それ以上もそれ以下もない、ね。」と告げる。
消化不毛なその答えに氷川のMhageがしきりに抜け落ちる。それ程その男を異毛視しているからに他ならない反応を示す。
「……頭上は確かに不毛で溢れ、君が絶望するほどの愚行の数々を頭は犯し続けてきたのは事実だ。
しかし不毛とは言わば頭達に課せられた試練であり、育毛を促す為のものでもある。
不毛を克服する努力が頭を磨かせ、毛根の質を増し、更なる育毛への階段となるのだ。
その逆も然り。それを克服出来ぬ先には必然的な滅毛があるのみだ。しかし人は君が思うほど愚かではない。
その不毛が頭を滅ぼすほどのものであれば、人は毛の為に徹する。そうして人は何を生やすべきであり、何を生やさぬべきであるかを学ぶのだ。」
「では君はその為に頭に傍若無人の限りを尽くす、不完全なカツラや育毛剤の横暴を見てみぬ振りをしろとでも言うのか?
頭とは全ての生命が共有する安息のフサフサだ。それを一種の毛の欲毛を満たす為の玩具にしていいなど言語道断という言葉では済まされん。
全ての頭は安息の内に生きる権利がある。誰とてそれ無しでは生やせはしないのだよ。それを脱毛する等、正気の沙汰ではないな。」
氷川は髪の毛の重要性を語り終えると、まだ物足りなさそうに尚も語り出す。
「満月には、生死を司る他に何を齎すものか君は知っているかね? …脱毛だよ。満月には人を抜き落とす魔毛を有している。
この私にもそれは適うのだよ。それも今日ほどに特別に抜け落ちしき事は未だ嘗てないな。
……私はこれ以上ハゲを知る事が出来ん。この満月が、今まで私の頭に抑えられた脱毛を開放してくれたお陰でな。
私は全てを抜きつくし、新たな毛根を創造する者となる。君の大壮言語も褪せてしまう程の存在としてな。
満足したかの様に髪が抜け落ち、男の方を向いたが彼の姿はそこには最早無かった。
彼の雄弁を聞き己の頭を恥じたのか、或いは語るに足らぬMhageだと断じて去ったのか、それすらも伝えずに消えてしまったにも関わらず、
氷川には僅かな達毛感を感じずにはいられなかった。そして最後に氷川は
「…心地良き禿げだ。」と呟き、以降何も抜け落ちる事は無かった。
バトロワスレ関係、初見で何なのですが、"主催者側の意図"みたいな物を先に決めた方が良いんでわないかな?
ルイ様が主催者なら、ちょっとベタだけど唯一神と戦うために強力な兵となる人間を集めるためとか・・・
そんで聖書の蛇の如くシリーズのキャラクターを誘惑(駄目なら力ずく)で集めていくシーンからみんなでジワジワと書いていくのはどうかな?
そんな感じのショートストーリーみたいのなら、あまり小説書いたこと無い人でも、書きやすいんでは?
難しいかな・・・
何か、急に来てズケズケと申し訳ない;
それだったら
氷川によって受胎→各シリーズキャラがボルテクス界で何とか生存→世界を元に戻そうと提案する奴が出る
→カグツチがそれを阻止しようと刺客やら自分の理想とする世界を作ろうとする者に呼びかけて殺せと指示する
→対立→最終的にカグツチを倒せばゲーム終了
でもいいんじゃない?
>>215 真3に準じたゲーム運びはいいアイデアだな。
個人的にはマニアクスのようにルシファーが刺客送るほうが合うと思う。
それだったら
ルシファーの刺客
氷川を含めた、自分の理想とする世界を作ろうと画策する者達
世界を元に戻そうとする者達
ボルテクス界のままを望む者達
と、勢力は大別すると四つもあるんだよな。ヤハウェはさあどうなんだか。
代理戦争のが良くね
219 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/16(木) 01:36:36 ID:ax+CR5/l
人少ないな…各スレに募集かけてみるか
マルチ氏ね
荒らしを呼んだか?
>>220 もっとやり方があるだろ
あと今更遅いかもしれないけど、腐女子は絶対呼ばないでくれ
621 名前:風と木の名無しさん[] 投稿日:2006/03/16(木) 14:29:12 ID:Ii6iVgPP
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1135066355/ 「女神転生シリ-ズでバトロワは可能か?」スレではアイデア、書き手、読み手募集中です
622 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/16(木) 14:36:29 ID:KsDhN53m
>>621 マルチお断りです&厨設定代表のバトロワなんざ興味もありません
625 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2006/03/16(木) 14:52:42 ID:HMGYhGyd
>>621 一人でやってろ。つーか何で萌えキャラ殺しあわせなきゃならないんだよ。
死ねよ春厨。
ご心配なく
腐女死こわwwwwww
良かった。腐女子なんか来たら見限ってたよおれ。
粘着や荒らしの原因にならないことを祈る
マーラ様でバトロワしろ、と、そういうことかと?
うほ臭さえ消してくれれば腐女子つっても良い文章書く奴いるんだけどな
ライドウ本スレに貼られてたギャグは結構おもろかった
でもこっちはお断りだ(AA略)されてるようだな
ライドウ本スレのあれ、どんなネタであれ21禁板のネタを一般の板に貼る奴の気が知れない。
布教のつもりなんだろうけど荒らしかと思った。
俺は、真2の修正版を2枚持って、通りを歩いていた。
ゲーム屋の店員に「これは、ドミ版といって、不良品だ。お前の店は、
不良品を客に売ってるのか。」とごねて、2枚300円で買ったものだ。
まぁ、頭脳の勝利と言えよう。
向こうから大男が歩いてくる。俺の真2を見ると、自分の懐からifを
取り出して、「勝負しろ」とのたまった。
俺は、男を車道に突き飛ばした。トラックが仕上げをする。
口ほどにもない。正義と俺が勝った瞬間だった。
しばらく行くと、小学校2〜3年くらいの男の子に出会った。
「これ、あげるよ。」俺は真2を男の子に渡した。
彼が真2を受け取った瞬間、俺はつとめを果たした。2勝目。
俺に勝負を挑んでくる度胸は、買っておこう。
さらに行くと、風が吹けば折れそうな、儚げな女性に出会った。
女1と女2と真1、2、ifを持ってたような気がするが、気のせいだろう。
俺は挨拶して、通りすぎた。
俺の過酷な旅は続く。
前から、モデルの様な男がやって来た。「隠し武器か!」俺は辛くも
返り討ちにした。メガテンをどこに持ってるか分からないとは、
卑怯な奴だった。
旅は続く。前から警官がやってきた。
「君を逮捕する。」男は俺に手錠をかけると引きずっていった。
「待ってくれ。俺が何をしたって言うんだ。」
俺は当然の抗議をしたが、牢屋に放り込まれた。
警官が牢屋にやってくる。
「口ほどにもありませんね。」
彼は、懐から真3を出した。俺が持っていた真2を見る。
「おや、パッケージが修正版で、ディスクはドミ版ですか。面白いもの
を持ってますね。ディスクが傷だらけで起動しないでしょうけど、
カラスよけぐらいには、なるかも知れませんね。」
彼は、嘲笑を浮かべた。
メガテン・バトルロワイアルは過酷だ。
234 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/22(水) 01:49:36 ID:29O/4EhF
保守
五分くらいで考えた
顔「千年王国作るから選ばれそうな奴適当にひっとらえといてー^^」天使たち「イエッサー」
↓
アフォな天使たちがどう見ても悪人の奴とか微妙な奴を連れてきてカテドラルパンクしそう
↓
顔「連れ返すのもアレだし…どうすんの?」ミカエル「人間どうしで争わせて残った奴つれてけばいいんじゃね?」顔「おまえマジ頭いいな」
↓
バトロワ開始、しかしそのうち千年王国自体に反対する閣下と愉快な仲魔たちとその他もろもろが乗り込んでくる
↓
そして伝説へ…
自分で書いといて難だが駄目だなこりゃ
各シリーズの主人公・主要Boss・ヒロインと悪魔だけでやりあえば?初期レベル帯統一してさ
237 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/25(土) 16:15:39 ID:Q3T5BlWF
人間キャラは1つのIDにつき2人投票可能ってことにしてキャラが50人になったら締めきったら?
悪魔を出したい場合は、悪魔は1つのIDにつき1体投票可能、キャラ総数が25体になったら締め切り。
あわせて全75キャラ(悪魔抜きで考えると50キャラ)
例
人間
・葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)
・大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)
悪魔
・ライホーくん(葛葉ライドウ対超力兵団)
人間
・人修羅(真3)
悪魔
・クーフーリン
・オオクニヌシ
・ロキ
>>238 腐女子乙。
あからさま過ぎるけどもしかして釣り?
240 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/28(火) 02:54:07 ID:G533TaJk
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
241 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/28(火) 03:04:07 ID:G533TaJk
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
珍ポーーーーーーーーーーーーーーーーー
242 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/03/30(木) 17:56:09 ID:yiVJAeTc
終わったな
今更ながら
人間
・if女主人公(パンツは『はかない』で)
悪魔
・グレンデル
・フォービ
・ラーフ
244 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/03(月) 00:28:44 ID:XYsdn1+V
保守
245 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/07(金) 19:26:54 ID:UBtajP0m
ほ
人間
・真2主人公
悪魔
・セイテンタイセイ
・ケルベロス
・スザク
247 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/14(金) 14:37:04 ID:6Y1IuNw2
248 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/23(日) 21:29:42 ID:INb6j4ol
249 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/27(木) 02:30:30 ID:AAbIW9Pr
250 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/30(日) 13:54:15 ID:qcqKBjKQ
やりたい人は俺だけか
ノシ
やってみたいけど今P3待ち?
単に人がいないだけかと
俺もやりたいが如何せん作品の壁が・・・(´・ω・`)
真、2、3、if、デビサマ、ハッカーズ、ライドウ、ペルソナ1、罪、罰ぐらいなら何とかわかる
ノクターン
サマナーシリーズ
ライドウ
ペルソナシリーズ
デビチル
アバチュは1でやめた
作品の壁と書きたい人不足の解消はどうすればいいかな
ゲームサロン板でやってみる?
この状態で移転しても仕方ないだろ。とりあえず、発進までこぎつけないと。
ドラクエとか最近のロワを見る限り、短期決戦のほうがよさそうだし、40人くらいでいくか?
主催者は閣下か顔あたりしかやれる器あるやついないだろ。誰か強引に決めて引っ張る奴以内と無理
と思うから、やってみるか。
メガテンのキャラクターのみでバトルロワイアルをしようというリレー企画です。
小規模に進めたいと思います。
クオリティは特に求めません。話に矛盾、間違いがなければOK。短期完結を目指します。
ルールは本家に準拠、MAPはどっか。他にいいものがあれば変更します。
首輪は構造さえわかれば結構簡単に外してもらっていいです。
参加作品は、デビチル等世界観が離れすぎな作品は削ります。(支給品は外伝系も可)
各作品4、5人まで参加で計40人でスタートします。主人公は必ずしも出す必要はありません。
主催者はルシファー。
キャラ投票を始めます。各作品5名まで投票してください。自演上等、ただし同IDの投票は無効。
上位5名が参加です。オーバーしてしまう場合は少ない方で切り捨てます。
テンプレ
【真1】
【真2】
【真3】
【旧1】
【旧2】
【ハッカー】
【デビサマ】
【ライドウ】
こんな感じでどうだ?
名無しキャラ(主人公勢その他)は、第一執筆者に名づけの権利があります。
しゃべらない奴のキャラも、普通にキャラ付けしておk。
ルールは上の
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><参加者リスト><着火器具・携帯ランタン>が支給される。
また、ランダムで選ばれた<COMP>が渡される。※地図は放送とともに禁止エリアに印、リストも放送とともに人名に斜線が入る
<ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る
・生存者が一名になった時点で、ゲーム終了。その一名はどんな願いもかなえられる。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。
+首輪関連+
・参加者には生存判定用の感知器がついた『呪い』が付けられる。
この首輪には爆発の魔法が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が爆破を念じるで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します
で
1作品5人を4人にして、ペル1&2入れてもいいかもしれない。
投票は、投票系レスが30個までで締め切り。
MAPは…現実から持ってくるも、魔界ってことで捏造もいくらでもできるし今は置いとこう。
とりあえず、人がいないのが致命的なので、ガンガンはって誘導をお願いするしかないな
262 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 09:43:55 ID:iP3hy2N6
普通にアバチュの人修羅とサタンの一騎打ち
糸冬 了
このスレって思いっきり企業のデータ修習に使われてる
気がするな…。スレ立てたのも関係者だろ?
>>263 どういう意味だ?説明キボン。
あと、まぁそんなんでいいんじゃない?始まったら俺書き手やるよ。
【真1】 カオスヒーロー、ロウヒーロー、ヒーロー
【真2】 ザイン
【真3】 人修羅
【旧1】
【旧2】
【ハッカー】スプーキー
【デビサマ】
【ライドウ】ライドウ
265 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 12:02:39 ID:rVfBNDq2
真if 狭間
これサイキョ
267 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 12:12:17 ID:bIqP4+ig
そういやifは今回参加不可?
【真1】
【真2】
【真3】
【旧1】
【旧2】
【ハッカー】
【デビサマ】
【ライドウ】
【ペル1】
【ペル2】
【if】
格上位4名でいいだろ。
269 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 13:10:46 ID:bIqP4+ig
【真1】ザ・ヒーロー、ヒロイン、ロウヒーロー、カオスヒーロー
【真2】主人公、ベス、ヒロコ、ザイン
【真3】橘千晶、新田勇、高尾祐子、氷川
【旧1】中島朱実、白鷺弓子
【旧2】主人公、ダークヒーロー、東京タワーの魔女
【ハッカー】主人公、ネミッサ、メアリ、ナオミ
【デビサマ】葛葉キョウジ、シド・デイビス、レイ・レイホゥ、ヴィクトル
【ライドウ】葛葉ライドウ、鳴海、大道寺伽耶、朝倉タヱ
【ペル1】主人公、園村麻希、南条圭、桐島英理子(、黛ゆきの)
【ペル2】周防達哉、天野舞耶、黒須淳、リサ・シルバーマン(、周防克哉)
【if】宮本アキラ、赤根沢玲子、白川由美、黒井真二(、狭間偉出夫)
()内は余った旧1、旧2の枠を出したくても定員数の関係で絞らなきゃならなかったキャラに宛がっただけだから、無視してくれておk
もし始まったら何か書いてみるかも
ifとかで上位四名ってどうなんだ?ハザマはともかくとして。
まぁ、ハカーズはわかりやすい感じだから楽だろうけどな。
主人公、ネミッサ、ナオミ、フィネガンくらいか?
ハカーズではシックスを入れてもらいたい。
昔の作品あまりわからないけど参加していいんだろうか
【真1】 未プレイ
【真2】 未プレイ
【真3】 人修羅、氷川、勇、千晶
【旧1】 未プレイ
【旧2】 未プレイ
【ハッカー】 主人公、ネミッサ、シックス、スプーキー
【デビサマ】 キョウジ、レイ
【ライドウ】 ライドウ、鳴海ニート、タエ、伽耶
【ペル1】 ピアスの少年、南条、神取、レイジ
【ペル2】 達哉、舞耶、パオフゥ、うらら
【if】女主人公、明、ハザマ、レイコ
リストにアバチュ無いが入れたらダメか?
274 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 21:54:58 ID:bIqP4+ig
>参加作品は、デビチル等世界観が離れすぎな作品は削ります
だから難しそうだな
ライドウはネタバレだけど他作品とのリンクがあるからセーフなんだろう
ところでこの投票は30レスまで待つ必要はあるのだろうか。半分でよくない?
そうか残念だ
参加したいと思ったんだがこのリストじゃ俺には無理だな
>>274 確かに30レスもなくても、旧1&旧2のような場合は枠がほぼ確定しているような気がする。
【真1】ヒーロー ヒロイン ロウヒーロー カオスヒーロー
【真2】アレフ ベス ヒロコ あとは誰でも
【真3】主人公 あとは誰でも
【旧1】朱実 弓子
【旧2】ヒーロー ヒロイン ライバル
【ハッカー】主人公 ヒトミ(ネミッサ) スプーキー あとは誰でも
【デビサマ】キョウジ レイ 久美子 シド
【ライドウ】ライドウ 鳴海 タヱ カヤ
【ペル1】主人公 マキ エリー マーク
【ペル2】達哉 舞耶 あとは誰でも
【if】誰でも
277 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/06(土) 01:08:32 ID:euDG+eev
参加したところでアバチュ組は勝手に飢えて勝手に共食いしあう悪寒
278 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/06(土) 03:46:58 ID:kW/MHdNE
普通にやり合ったら人修羅、ライドウ、キョウジ辺りの独壇場になりそうな気がする。
ペルソナ勢は降魔してるペルソナにもよるけど辛そうやね。
地味に強そうなのは真1ヒーロー。あいつはICBMやら洪水やらも乗り越えてたからね・・・
でも、死因は事故だとか・・・
人修羅出したら色々やり辛そうやね。ライドウと一騎打ちしたら何かかっこいいけどさ。
ペルソナは、初期+2匹にしとこーぜ。あんまり多くてどんな攻撃にも対応できるとなるとまずいし。
あと、個人的には性格も考えて欲しい。主人公とか南条君がもしもを考えてバランス選んでも変じゃないけど、
マークとかレイジがバランスで選んでるとは思えないし。
あと、ロワ暗黙の了解だが、ネタ支給品を除く(南条君に裏表逆の10円玉とか)本人に本人のアイテムはできるだけ止めとこう。
【真1】ヒーロー ヒロイン カオスヒーロー ロウヒーロー
【真2】アレフ ベス ヒロコ ダレス
【真3】未プレイ
【旧1】ナカジマ ユミコ リック
【旧2】ヒーロー ヒロイン ライバル
【ハッカー】主人公 ネミッサ スプーキー 門倉
【デビサマ】キョウジ レイ 久美子 シド
【ライドウ】未プレイ
【ペル1】未プレイ
【ペル2】未プレイ
【if】女主人公 アキラ レイコ ハザマ
いまさら遅いかも知らんが原作での禁止エリアの変わりに悪魔出現エリアってのを作るのはどうだろう。
時間毎に増えてく悪魔地帯。
原作とは違って即死ではないが当然体力消耗、一般人なら即死。
【真1】主人公、ロウヒーロー、カオスヒーロー、ゴトウ
【真2】主人公、ヒロコ、ダレス、ザイン(サタン)
【真3】人修羅
【旧1】 未プレイ
【旧2】 未プレイ
【ハッカー】 主人公、ネミッサ、フィネガン、キャプテン・パラダイム
【デビサマ】 主人公、レイ、シド、ガルガンチュア8
【ライドウ】ライドウ、鳴海、佐竹、ラスプーチン
【ペル1】主人公、南条、ブラウン、レイジ
【ペル2】罪主人公、ミッシェル、うらら、ギンコ
【if】 女主人公、アキラ、ユミ、イデオ
こんな感じで…
【真1】ロウヒーロー、カオスヒーロー、ゴトウ、ヒロイン
【真2】ベス、ギメル、ダレス、ザイン
【真3】チアキ、イサム、ヒジリ、氷川
【旧1】 ?
【旧2】 ?
【ハッカー】 ネミッサ、マヨーネ、ナオミ、スプーキー
【デビサマ】 主人公が入る前のキョウジ、レイ、シド、クミコ
【ライドウ】ライドウ、鳴海、カヤ、タエ
【ペル1】南条、マキ、ブラウン、エリー
【ペル2】達哉、マヤ、栄吉、リサ
【if】 チャーリー、ユミ、レイコ、アキラ
284 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/06(土) 23:59:16 ID:ACztJUQI
【真1】 ロウヒーロー、カオスヒーロー、オザワ、ゴトウ
【真2】 アレフ、ベス、ヒロコ
【真3】 人修羅、橘千晶、新田勇、氷川
【旧1】 中島朱実、弓子
【旧2】 主人公、ヒロイン
【ハッカー】 ランチ、ユーイチ、スプーキー、シックス
【デビサマ】 葛葉キョウジ、麗鈴舫、シド
【ライドウ】十四代目葛葉ライドウ、鳴海、大道寺伽耶、朝倉タヱ
【ペル1】 主人公、南条圭、神取鷹久、綾瀬優香
【ペル2】 周防達哉、周防克哉、天野舞耶、石神千鶴
【if】内田たまき、宮本明、赤根沢レイコ、オオツキ先生
一般人出せるのかな
カプコンVSSNK2みたいな格ゲー作ろうぜ
真グルーブ
デビサマグルーブ
ノクタングルーブ
アバチュグルーブ
で
【真1】 カオスヒーロー、ゴトウ、オザワ、ヒロイン
【真2】 アレフ、ベス、ヒロコ、ザイン
【真3】 千晶、ヒジリ、氷川、フトミミ
【旧1】 中島、弓子
【旧2】 主人公、ヒロイン
【ハッカー】 主人公、ネミッサ、スプーキー、レティキュリアン
【デビサマ】 キョウジ、レイ、シド、クミコ
【ライドウ】 ライドウ、鳴海、タエ、ゴウト
【ペル1】 主人公、ブラウン、麻希、神取
【ペル2】 達哉、克哉、舞耶、杏奈
【if】 女主人公、アキラ、ハザマ、レイコ
ハッカーズのレティキュリアンはどちらか片方もしくは二人で一人扱いで。
【真1】 主人公、カオス、ロウ、ヒロイン
【真2】 主人公、ベス、ヒロコ、ザイン
【真3】 主人公、千晶、裕子先生、氷川
【旧1】 主人公、弓子
【旧2】 主人公、ヒロイン
【ハッカー】 主人公、トモコ、ネミッサ、キャロルJ
【デビサマ】 主人公、元キョウジ、麗
【ライドウ】 主人公、鳴海、タヱ、伽耶
【ペル1】 主人公、マキ、南条くん、エリー
【ペル2】 主人公、舞耶、淳、キングレオ
【if】男主人公、ユミ、レイコ、アキラ
そろそろ10レス突破した?集計希望
と思ったけど自分で集計してみる
キョウジが元キョウジなのか今キョウジなのかいまいちわからないな…
【真1】
ザ・ヒーロー(6) ヒロイン(6) ロウヒーロー(8) カオスヒーロー(9)
オザワ(2) ゴトウ(4)
【真2】
主人公=アレフ(7) ベス(7) ヒロコ(7) ザイン=サタン(6)
ダレス(3) ギメル(1)
【真3】
主人公=人修羅(6) 橘千晶(6) 新田勇(4)
高尾祐子(2) 氷川(6) ヒジリ(2) フトミミ (1)
【旧1】
中島朱実(6) 白鷺弓子(6) リック(1)
【旧2】主人公(6) ダークヒーロー(3) ヒロイン=東京タワーの魔女(6)
【ハッカー】スプーキー(3) 主人公(7) ネミッサ=瞳(8) メアリ(1)
ナオミ(2) シックス(1) スプーキー(4) 門倉(1)
フィネガン(1) キャプテン・パラダイム(1) マヨーネ(1)
ランチ(1) ユーイチ(1) レティキュリアン(1)
トモコ(1) キャロルJ(1)
【デビサマ】葛葉キョウジ、キョウジ、キョウジ、キョウジ、主人公、葛葉キョウジ、キョウジ、
(主人公が入る前のキョウジ)、主人公、元キョウジ
シド(7) レイ・レイホゥ=麗鈴舫(9) ヴィクトル(1)
久美子(4) ガルガンチュア8(1)
【ライドウ】葛葉ライドウ(9) 鳴海(8) 大道寺伽耶(6) 朝倉タヱ(7)
佐竹(1) ラスプーチン(1) ゴウト(1)
【ペル1】主人公=ピアスの少年(7) 園村麻希(5) 南条圭(6)
桐島英理子(4) 黛ゆきの(1) 神取鷹久(3)
城戸レイジ(2) マーク(1) ブラウン(3) 綾瀬優香(1)
【ペル2】周防達哉=罪主人公(9) 天野舞耶(7) 黒須淳(2)
リサ・シルバーマン(3) 周防克哉(3) パオフゥ(1)
芹沢うらら(2) ミッシシェル(2) 石神千鶴(1) 杏奈(1) キングレオ(1)
暫定集計。キョウジは元キョウジなのか今キョウジなのかわかりにくいから票のみを羅列しといた。
間違いがあったらよろしく。見にくくてごめん。
あと何レスでしめきる?
ごめんif忘れてた
【if】女主人公=内田たまき(5) 宮本アキラ(7) 赤根沢玲子(7)
白川由美(4) 黒井真二=チャーリー(2) 狭間偉出夫(5)
オオツキ先生(1) 男主人公(1)
あとスプーキーはスプーキー(7)だ。ごめん
暫定参加者名簿。
今の時点での上位四名だから変わる可能性大
【真1】
ザ・ヒーロー(6)、ヒロイン(6)、ロウヒーロー(8)、カオスヒーロー(9)
【真2】
主人公=アレフ(7)、ベス(7)、ヒロコ(7)、ザイン=サタン(6)
【真3】主人公=人修羅(6)、橘千晶(6) 新田勇(4)、氷川(6)
【旧1】中島朱実(6)、白鷺弓子(6)、リック(1)
【旧2】主人公(6)、 ダークヒーロー(3)、ヒロイン=東京タワーの魔女(6)
【ハッカー】スプーキー(7)、主人公(7)、ネミッサ=瞳(8)、ナオミ(2)
【デビサマ】葛葉キョウジ、 シド(7)、レイ・レイホゥ=麗鈴舫(9)、久美子(4)
【ライドウ】葛葉ライドウ(9)、鳴海(8)、大道寺伽耶(6)、朝倉タヱ(7)
【ペル1】主人公=ピアスの少年(7)、園村麻希(5)、南条圭(6)桐島英理子(4)
【ペル2】周防達哉=罪主人公(9)、天野舞耶(7)、リサ・シルバーマン(3)、周防克哉(3)
【if】女主人公=内田たまき(5)、宮本アキラ(7)、赤根沢玲子(7)、狭間偉出夫(5)
>ID:oO7uWb70
乙! キョウジの中の人は最初に作品を書いた人に任せてみては?
個人的には募集を打ち切って
>>293の名簿で始めてもいいと思うけどまだ早いか?
若干フンドシ侍はいってないのが俺としては不満だが、まぁ
>>293でおkかと
うむ、褌サムライは俺も欲しいがまあ悪くは無い
>>293の名簿の計42人で本編やってみる?
その場合最初に首輪を爆発させられる見せ占め役は名簿の中から二人選ぶのか、名簿外から選ぶのか、または見せ占め自体無しにするのか?
他に決めるのは地図や主催者かな
見せしめ訳を、参加キャラから選ぶなんて初めて聞いた
もしかして、結構あんの?
主催は、顔でお願いします。MAPどうするべ?
見せしめは……そうだな、真3の先生とかペルのトロとかどうよ?
見せしめは…サトミタダシと磯貝(ペルソナの悪魔君)でよろしくお願いしたいです
見せしめキャラは最初に書く人が
>>293のリスト以外のキャラから勝手に決めちゃっていいと思う。
地図は攻略本あたりから、よさそうなものをどなたかがうpしてくれると助かるところ。
俺も主催は顔がいい。
302 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/08(月) 23:48:08 ID:aDZ3DRJm
祐子先生が見せしめってのも面白そうかと思ったけど、最初の書き手に任せるのも面白そうだな
気が早いけど書きたいキャラは予約制にする?それとも早いもの勝ち?
攻略本が手元にないのでうpは無理だけど時間毎にマップが変わったら面白そう
それと旧約のリックが誰だか分からん
>>298 アーケードキャラバトルロワイアルの麻宮アテナ以外記憶にない
スパロボの柿崎とか
柿崎はそういう役だからなw
305 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/09(火) 23:37:14 ID:NPPTKh99
地図はオリジナルでもよくないか?
俺もリックがわからない
地図はメガテンゆかりの地にこだわらず、原作のものを使うという手もある。
あとはまとめサイト(wiki?)制作と最初の本文さえなんとかなれば…
308 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/10(水) 23:14:32 ID:m3+0yw5t
P3キャラはだめ?会長やロボ子を出してみたい
発売前だと厳しいかもな>P3
リックってのは確か助けると悪魔に変化する奴だっけ
310 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/11(木) 18:02:13 ID:uswoEuiB
主人公だから死なないとか、脇役だからセリフなしで殺しちゃえってのは勘弁
311 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/11(木) 20:41:02 ID:TxOeVVPK
>>310 同意。死の安らぎは平等に。
原作の地図らしきものを探したんだけどいいのが見つからん。とりあえずそれっぽいのがあったけど、どこでうpすればいいかな?
しかし人いないな…
312 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/12(金) 23:48:00 ID:soNGrDBd
人いなすぎage
今からこんなんで大丈夫なのかこれ
つーかP3出したいとかこのスレ前半の流れと同じだな。
ライドウ発売してないのにライドウだしたい、じゃあ発売してからスタートで。みたいな。
いつはじまるんだよw
さすがにP3は含まなくてもいいと思う
収拾がつかなくなる
316 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/13(土) 20:40:54 ID:JW2fhK3t
そもそもいつ出るか判らないもんな。
出たら出たでまた次の新作待ちになりそうだし。
今は
>>293でバトロワを成功させたいよ。
同意。で、地図とかちょっと出てたけどどうするよ?
318 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/15(月) 18:52:18 ID:n1GtY8AK
地図なくてもてきとうに最初に「どこどこに何がある」っていうのをきめとけばなんとかなる
319 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/15(月) 21:11:53 ID:W7cDr4b/
そうかなぁ。しかし過疎
ペルソナ1のキャラが毎回変わっててうける
321 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/16(火) 23:18:30 ID:cdHeAZZg
あげ
322 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/18(木) 22:12:08 ID:Nb+Zy3Qt
323 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 02:37:00 ID:a5NQGX+U
このまま停滞?
324 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 17:08:15 ID:6B8UihJJ
S 神ヒロイン(特に好感がもて、ヒロインとして申し分のない魅力的なキャラ)
ベス(真2)、麗鈴舫(デビサマ)、ネミッサ(ハッカーズ)、ゴウト(ライドウ)
A 名ヒロイン(好感がもて、ヒロインとして特に問題のないキャラ)
ヒロコ(真2)、アルジラ(アバチュ)
B 良ヒロイン(個人の好みはともかくとして、ヒロインとして特に問題のないキャラ)
ヒロイン(真1)、ユミ(真if)、エリー(ペルソナ)、ゆきの(ペルソナ)、ヒトミ(ハッカーズ)、舞耶(ペル2)
C 並ヒロイン(可も不可もなく、長所も欠点もあるキャラ)
レイコ(真if)、マキ(ペルソナ)、アヤセ(ペルソナ)、うらら(ペル2)
D 難ヒロイン(嫌われる要素がやや多いキャラ)
久美子(デビサマ)、ギンコ(ペル2)、千晶(真3) ←この辺にアメル、リノア
E 糞ヒロイン(糞要素が多すぎるキャラ。ヒロインと呼ぶのも吐き気がする)
祐子(真3)、タヱ(ライドウ)、伽耶(ライドウ) ←この辺にW美里、アリシア
Z 邪神ヒロイン(壮大なネタ、あるいはプレイヤーに対する嫌がらせ)
セラ(アバチュ) ←この辺にヨヨ、酢飯
原作の舞台は住民の全て出て行った島だから
・脱出不能
・参加者以外はいない
でもって店や家がどういう感じかわかりやすい
ってことで出展作品から持ってくるとなると
えーと異世界御影町とか浮上スマル市?
もしくはライドウの異界のどっかの町とか?
「止まって」
出し抜けにそう言うと、レイホウは僕の肩を掴んで引き寄せた。
油断なく辺りを見回しながら、手袋をはめ直し、愛用の三節棍を握り締める。
何か、感じるのか?
「あんたもいい加減気配を読めるようになりなさいよ。
鳥も羽ばたけないぐらいの殺気が充満しているのが分からない?」
頭を小突かれて、そして初めて、さっきまでうるさいぐらいに聞こえていた小鳥のさえずる声がぴたりと止んでいる事に気づく。
強いのか?
「あんたの三倍ぐらいはね」
憎まれ口を叩きながら、しかし彼女はぐっと目に力を込めて、藪の向こうを見据えていた。
敵の殺気よりも、むしろ彼女の発する緊張感に気おされ、腰に差していたCOMPを後ろ手に回して起動キーを押す。
相手が何の悪魔を引き連れているか分からない以上、こちらから先出しは出来ない。
属性が噛みあわない事を祈りながら、仲魔のリストを頭の中で反芻する。
今いる仲魔は三体。
属性は火と雷。
一度に召還できる悪魔は一体。
右手にCOMP、左手に銃を構え、レイホウが見つめている藪の向こうに精神を集中する。
周囲に落ちる沈黙が、耳の奥で金属質の音となって鳴り響く。
「奇遇ね、レイ。貴女に会いたかったのよ、私」
声は出し抜けに、自分の隣から聞こえてきた。ここが戦場である事を束の間忘れてしまうぐらいの、艶のある女性の声音。
違和感に思わず振り向こうとする自分の頭を、背後からレイの手がつかんで引きずり倒す。
直後、自分の真上で鳴り響く轟音と、吹き付ける熱波。
耳を聾する爆風の向こうで、小さく悲鳴があがる。
聞き覚えのある声。
レイホウ!
よろめきながら立ち上がり、悲鳴の聞こえた方に顔を向ける。
辺り一面黒焦げになった焼け野原、その中心でぶすぶすと煙を上げながら倒れている人影。
「誰かをかばうなんて、貴女らしくもないわね」
背中から降りかかってくる声に構わず、必死でレイホウを抱き起こす。
すすまみれになった顔と、半身が焼け爛れたスーツ。
うわごとのように唇が動く。耳を近づける。かすかに、何かを言っている。
だが、それをゆっくりと聞いてやれる余裕は無かった。
日を背負い、影法師のようにゆらめきながらゆっくり近づいてくる人影。
敵の属性も火。しかも、こちらの悪魔よりもはるかに強大な魔力を持っている。
だが、悪魔の姿が見当たらない。
まさか、こいつ、レイホウと同じ。
「にげて」
耳元にかすかに届く、彼女の声。
逃げる。どうやって。
彼女を背負って走れば、相手の標的になるだけだ。
仲魔の中に、あの魔力に太刀打ちできる悪魔はいない。できるとすれば。レイホウの身体を抱えあげながら、COMPのホルスターの横に吊り下げてあるポーチの中を探る。
「逃げないのかしら。考えるより先に足を動かしたほうが賢明よ」
ピシリと足元に突き立つ、金色の矢。次の矢を大型の弓に番え、女は頬に冷たい笑みを浮かべて言った。
「キツネ狩りと言うものを知っているかしら? 英国ではね、狩りの際にわざと獲物が逃げやすいように追っていくの。望みを失くした獣は狩ってもつまらない。それに、レイにあっさり死なれたのでは、とても私の気は……」
語尾がかすかに震える。口元から熱い吐息が漏れる。濃厚な殺気を宿した目。キリ、と弦が軋む音。黄金の鏃が自分の眉間までの射線に乗る、その一瞬の間。
ポーチの中から勢い良く手を引き抜くと、僕は手の中に握り締めたものを思い切り地面に投げつけた。
!
いきなり目の前を覆う白光に、女の殺気がゆるむ。
その隙に僕はレイホウを背中に担ぐと、手近な藪の中へと身を躍らせた。
ごう、と風が顔の横を吹き抜け、耳と頬を浅く切る。
足が藪の草むらを踏みしめる。
身体が傾ぐ。下り坂。しかも相当急な。
まずい、と思ったが体勢を立て直すことは出来なかった。
僕はレイホウを担いだままで、下が見通せないぐらいの斜面を滑り落ちていった。
>326-328
取り敢えず登場キャラ書いてってくれ。乙
>329さん
失礼しました。デビサマ主人公、レイ・レイホウ、ナオミの三人です。
331 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 20:30:39 ID:SMLNshkK
>>325 規模的に珠阯レ市を使う場合はどこかの一区に絞った方が、でかすぎなくていいかも
御影町や帝都のどこかの一区は規模的にジャスト?
マップがあれば・・・
>>326-328 GJ!!
この話を本編に「第○○話」として正式に組み込みたいね
332 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 23:47:19 ID:fhF7SRsC
上の小説見てると地図がなくてもバトロワ出来そうな気がする
図はなくても、「どこに何があって〜」みたいな設定は必要だと思う。
>>326 乙!続編や他の話も楽しみにしてます。
334 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/22(月) 20:43:20 ID:hW9ESdMF
>>333 そうかもしれないけど、そうすると後から後付け設定が増えそう
335 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/25(木) 01:46:10 ID:Ys7h+5E+
あげ
336 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/27(土) 14:03:46 ID:uH1Djnev
「つまり、そういう事なのよ。アイツが私を憎むのは当然」
あっけらかんと、彼女はそれを認めた。
「あんたには感謝してる。ここまで付き合ってくれたんだものね。けれど、ここから先は私とアイツの戦い。仇と、仇討とのどろどろの戦いになるわ。だから、あんたには手を出さないでほしいの」
時折傷の痛みに顔をしかめ、レイホウはどこか遠くを見つめながら言った。
勝算はあるのか?
そう問うた僕の方に、彼女はゆっくりと顔を向ける。
まだすすが残っている頬には、いつもの苦笑いが浮かんでいた。
「あんたは、アイツが私と同じ能力者じゃないかって聞いてたわね。半分当たりで、半分はずれ。私は自分の肉体を依り代に古代の神をおろす巫女。彼女はどちらかと言うと、キョウジ、あんたたちの側の人間よ。
悪魔を一定の術式の下に隷属化させる術を持っている。あんたのその妖精みたいに始終連れ歩くことはできないけどね」
そう言いながら、彼女は自分の傷に懸命に治癒魔法を施している、手のひらほどの大きさの羽妖精の額を小突いた。
さっきの火炎も、その隷属させた悪魔の力か?
「そう。発動にCOMPの操作も指示もいらないわ。器の蓋を開ければ勝手に術は発動してくれる。単純な威力で言えば、あのシドと互角か、それ以上でしょうね」
そんな奴が相手なら、なお更一人で行かせるなんて。
「キョウジなら、ここは素直に行かせてくれるんだけどね。やっぱり、あんたは優しすぎる」
ふ、と彼女は、物悲しそうな表情を浮かべた。
そして、まだ治癒魔法をかけようと頑張っている妖精の羽をちょいとつまむと、僕の方に投げてよこした。
細い声をあげて抗議する妖精に手をひらひらと振って、彼女はにっこりと微笑むと立ち上がる。
レイホウ。
「それとね、キョウジ。あんたには、彼女は倒せない。そういうさだめなの」
さだめ?
「いずれ、それも分かるようになるわ。マダムが言う通りなら、……」
彼女はそこで口を閉ざした。一瞬遅れて、僕も口が強張る。いや、口以外の全身も、同時に強張り、慄いていた。何に?
「お喋りは済んだかしら?」
艶のある声が、夜風の向こうから聞こえた。
「せめて別れの一夜ぐらい、そっとしておいて欲しいわね。せっかちは嫌われるわよ、ナオミ」
「そんな感傷的な言葉、貴女には一番縁遠いものだと思っていたわ、レイ」
まるで、女友達同士が交わすような軽口。
だが、僕の胸元でかたかたと震える妖精の様子を見るまでもなく、それが上っ面だけの久闊なのは明白だった。
半ば以上沈みかけた夕日の赤紫の光と、いつの間にか出ていた月の弱く青白い光に照らし出された草原の、その草の一本一本が身震いしそうなほどの、濃厚な殺気。
「さっき、放送が流れていたわね。午後の六時間で五人。残りは私たちを含めて八人らしいわ」
「そんなに残ってるんだ。あんた、私たちの代わりに残りを狩っちゃってくれてたらいいのに」
「冗談を。私にとっては他でどれだけ死のうと関わりの無い事。
ちょっかいを出してきた輩もいたけれど、弱すぎて退屈しのぎにもならないわ。
けれど、主催者の人選に文句をつけるつもりもない。むしろ感謝しなくては。
レイ。貴女と戦える機会なんて、私にはもう望むべくもないと思っていたのだもの、ね」
「私はそれと同じぐらいの怨嗟を主催者にぶつけてやりたいわ。あんたの逆恨みに付き合うのもいい加減に飽きてきたし」
「……ふふ」
女の、黒髪で半ば隠れた頬に、微笑が浮かぶ。
「しつこい女って、嫌われるわよ」
軽口を叩きながら、レイホウは手袋をはめ直し、まだ火傷の跡が残っている腕で三節棍を構える。
339 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/27(土) 21:35:24 ID:ndRry0ok
続きが気になる……。
340 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/27(土) 23:59:25 ID:4h4JgGjd
上手いなー
地図がなくてもなんとかなりそうじゃないか?
みんなが書いたのを最後、時間順にならび変えて完成させるとか
341 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/28(日) 10:06:50 ID:7v3y3nct
小さく、低い声で魔法の詠唱に入るレイホウ。
対してナオミは平然と突っ立ったままだった。
濃紫のスーツの袖からのぞく、奇妙に光る刺青を彫られた両の手。
右には昼間に見た大型の弓を持ち、そして左手には、鈍く銀色に輝く、オイルライターほどの大きさの筒が握られている。
落とせば砕け散ってしまいそうなほどの、武器とはとても思えない代物。
「キョウジ、あんたは防御に専念して」
詠唱が終わり、あとは発動を残すのみとなった魔力を右手に握り締め、レイホウは僕に向かって呟いた。
いつもは、戦術は僕が担当しているが、今回は彼女に従う。
COMPを操作して、妖精を退避させ、代わりに普通の三倍はあろうかと言う巨躯の魔犬を召還する。
相手の攻撃相性が火ならば、火炎属性のこいつで壁を。
「いい犬狼を連れているわね、ぼうや」
どこか小ばかにしたような口調で女が言う。ほとんど日が落ちてしまって青白く浮かび上がる草原の中、濃紫の刺客のシルエットは、まるで影法師のように不気味に沈み込んで見えた。
左手で弄ばれている筒が、時おり月の光を反射してちかちかと光る。
「だけど、そんな犬一匹じゃ、ね」
パチン、と音がして、筒が真ん中から割れた。
342 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/28(日) 10:08:51 ID:7v3y3nct
「!」
その音に、頃合いを見計らっていたレイホウがいち早く魔力を解放する。右の手のひらに生まれる、高密度の火球。
同時に、女の左の手にも、紅炎を糸のように引きながら火炎が集束していく。ぐるぐると渦巻きながら、あまりの密度で黒く見えるぐらいの炎。
詠唱も何も無く、あれだけの魔力を。まずい。
COMPのキーを矢継ぎ早に叩く。指示を受けた魔犬が巨大な口蓋に魔炎を溜め込む。
これまで遭遇してきた悪魔程度なら、一瞬で消し炭にしてのけてきた魔犬のファイアブレス。
しかし、今目の前の影法師が放とうとしている劫火に比べると何とも心もとなく思えた。
だが、やるしかない。
このゲームは、逃げが最後まで通用するわけではないのだから。
「始めるわよ」
了解。
レイホウの声に唇を引き結んで頷き、僕はCOMPのリターンキーを叩いた。
いい展開なので上げ
344 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/29(月) 20:03:00 ID:Tbb9ObjH
「これはまるでデビライザーだな」 と僕は思った。
345 :
d斬り御免1/7:2006/05/30(火) 08:15:36 ID:v+r0F9Zf
「みんな聞いてくれ!」
メガホンを通して、僕の声が響き渡る。プログラムに参加している誰もに届いただろう。
「こんなゲームに乗せられて殺し合う必要なんてないはずだ。力を合わせればきっと、全員で生き残る方法も見付かる。憎み合う理由はないだろう?」
誰だって、敵でもない相手と殺し合いたくなどないはず。それにこのゲームの主催者は、最後の一人になるまで――友とまで殺し合えと言うのだ。従いたくて従っている者などいるはずがない。
「僕達には、殺し合う必要なんて……」
銃声。
乾いた空気の中にその音が響いて、脇腹に抉られるような激痛が走っても、僕は自分の身に起こったことを一瞬理解できなかった。メガホンが手を離れ、地面に叩き付けられて鈍い音を響かせる。
転がるように倒れ込んだ僕を庇って、アレフが飛び出す。僕は震える手で、痛む脇腹に触れた。服が湿っている。ぬるりとした感触。血だ。
そうか。僕は、撃たれたのだ。混乱した思考がやっと状況に追い着く。
選んだ場所は声の届きやすい、見晴らしもいい場所だった。戦いを止めるようにと呼び掛けるなら、自らの姿を晒して堂々と話さなければ伝わらないだろうと思ったのだ。アレフは危険だと反対したが、安全な場所から姿を隠して呼び掛けたところで信頼は得られないだろう。
それに、戦いの意思はないことを伝えれば、みんな解ってくれるだろうと思っていた。
「この野郎!」
銃弾の放たれた方向に、アレフがドミネーターの銃口を向ける。痛みを堪えて身を起こすと、拳銃を構えた男が見えた。
迷彩柄のコート、逆立てた髪。勇ましげに装ってはいるが、その腕は細く、銃を持つ手付きからも不慣れさが見て取れた。まだ少年だ。それも、民間人の。
「アレフ、止めろ!」
叫んで、僕はアレフの腕を引く。少年が二発目の銃弾を放った。それはアレフの頭のすぐ横を掠めて飛んでいく。
「けど、あいつ……」
「僕達が人を殺してどうする!」
ここで彼を撃ったら、僕達も彼と同じことをすることになる。彼はきっと僕達を信用できず、怯えているだけなのだ。
人間同士で殺し合う気はないということを、僕達は示さなくてはならない。危険を冒してでも。
「……解った」
片手ではドミネーターを構えたまま、アレフが僕に肩を貸す。三発目の銃弾がすぐ傍の地面を抉った。
この場を切り抜けるためには、とにかく身を隠さなければ。アレフに支えられながら、二人で一番近い物陰に飛び込む。
追撃してくるためには、今度は少年の方が周囲から丸見えの場所に出て来なければならない。彼にそんな危険を冒す気はないだろう。
これでひとまず、当面の危機は切り抜けた――が。
347 :
3/7:2006/05/30(火) 08:17:46 ID:v+r0F9Zf
「傷は……」
僕の脇腹に目を遣ったアレフが顔を顰める。白い服も、その下に巻き付けたバンデージも、かなり広範囲に赤く染まっている。出血の酷さは隠しようもなかった。
「……この程度なら、まだ、動ける」
しかし、そう応えたのは気休めというわけでもない。僕達の身体は普通の人間よりも頑丈にできているのだ。アレフにもそのことは解っているだろう。彼は、その理由までは知らないが。
「でも、どうするんだ?」
「別々に逃げよう。僕達がここにいて……僕が負傷していることは、みんなに知られている。このまま留まるのは危険だ。……後で合流して、それから、またみんなに……」
「それには反対だな」
アレフの意外な言葉に、僕は言葉を止めて彼の顔を見た。
「逃げるのも、後で合流するのもいいよ。でもあんな風に呼び掛けるのには反対だ」
「……アレフ」
「いや。議論は後にしよう」
地面に置いていたドミネーターを取り上げ、アレフが立ち上がった。
「生きてまた会えるんだから、後でもいいよな」
「……ありがとう」
痛みを堪えながら、僕は精一杯の笑顔を浮かべた。
アレフが反対と言ったのは、戦うつもりだという意味ではなく、僕を心配してのことなのかもしれない。――少なくとも今は、そう信じておくことにした。
348 :
4/7:2006/05/30(火) 08:19:03 ID:v+r0F9Zf
「俺がそっちに飛び出して、あいつの気を引く。その間に反対側に逃げてくれ」
「解った……」
物陰に身を隠したまま、よろよろと立ち上がる。少しなら走れそうだ。アレフは僕を見て頷くと、ドミネーターを構えて元来た方向へ飛び出し、走り始めた。
アレフの足元に、銃弾が撃ち込まれる。あの少年はやはり、僕達が再び姿を現すのを待ち構えていたのだ。しかし、全力で走っているアレフに当てるほどの正確さは持ち合わせていないようだった。
僕は地面を蹴り、姿勢を低くしてアレフとは反対の方向へ走った。
どれだけ時間が経ったかは解らない。僕は最初にアレフと共に隠れた場所がもう見えないほどの位置にまで逃げてきていた。幸い、その間には誰とも遭遇していない。
防刃のために身体中にバンデージを巻いていたのも幸いした。それが血を吸い取ってくれているお陰で、地面に血の跡を残さずに済んでいたのだ。そうでなければ追跡が容易になってしまっていただろう。
アレフは無事に逃げ延びただろうか。空を仰いで、物陰に腰を下ろした。
349 :
5/7:2006/05/30(火) 08:19:39 ID:v+r0F9Zf
緊張の糸が切れ、身体から力が抜ける。意識の隅に追い遣っていた痛みがぶり返し始めた。これからどう動くとしても、しばらくここで休まなければどうにもならないだろう。
僕を撃った、あの少年のことを思い出す。彼のことはプログラムの開始前、参加者が一所に集められた時にも見た覚えがあった。別の二人の少年と、その時は一緒にいたはずだ。
友人であろうその二人は、どうしてしまったのだろう。はぐれたのか、意見を違えて別れたのか、それとももう――?
何故、こんな不毛な戦いをしなくてはならないのだろう。考えるとやるせなかった。考えても仕方ないのは解っていた。
僕がするべきは、今できる正しいことを貫くことだけだ。こんなゲームは止めさせて、巻き込まれたみんなと力を合わせて生還する。
正しい道を歩めば、神はきっと守ってくれるはずなのだ。
脇腹にがさついた感覚がある。血の染み込んだバンデージと服が乾き始めているようだ。出血はもう止まったらしい――が、あまりにも早い。いくら僕に常人以上の生命力があると言っても、こんな短時間で傷が塞がるのは不自然だった。
傷の具合を見ようと上着を脱ぎ、銃弾で穴が開き赤く染まったバンデージをずらして傷口を覗き込む。そして、愕然とした。
350 :
6/7:2006/05/30(火) 08:20:09 ID:v+r0F9Zf
傷口とその周囲が、くすんだ灰色に変色している。触れてみると冷たく、硬い感触。
石化弾――カーボライナーか。
僕は初めて、あの少年が僕に与えた傷が致命的なものであったことに気付いた。
僕には石化の呪いを解く手段などない。合流できたとしても、アレフも同じだろう。そして、石化は緩やかに進行し、じきに動くことさえできなくなってしまうのだ。
為す術もなく見ている間にも、冷たい灰色が少しずつ、僕の身体を蝕んでゆく。
神は、僕を見捨てたのか。
こんなゲームが行われ、誰にも止められることなく殺し合いが続くのを、神は許すというのか。
(神はおらぬ)
唐突に、どこからか声が聞こえた。
(お前に何が起ころうとも神が手を出さぬというのなら……
お前が何をしようとも、神は手を出さぬということであろう)
この声の主は何者なのだろう。僕に、何をさせようとしているのだろう。解らないまま、ただ、僕はその言葉に耳を傾けていた。
351 :
7/7:2006/05/30(火) 08:22:01 ID:v+r0F9Zf
(お前は神の名の下に生まれてきたものではないのか?
お前が何をしようとも、それこそが神の思し召しではないのか?)
何をしようとも?
その意味を推し量ろうとして思考を巡らせ――僕は、気付いた。この声が、どこから聞こえてくるかということに。
この声は、僕の内側から聞こえてきているのだ。絶望と痛みに朦朧とした意識の中から、抗い難い響きを持って。
(――神に近い者としての役目を果たすのだ)
「僕の……役目」
その言葉の意味を、完全に飲み込めたわけではない。ただ、何か、果たさなければならない役目があることを思い出しかけていた。
ここから抜け出すことでもなく、みんなを和解させ、助けることでもなく。
僕にしかできない、僕でなければならない使命を、ずっと忘れているような気がする。
「僕は……」
渇ききった喉から、掠れた呟きが洩れる。その続きは声に出せないまま、僕は意識を失った。
改行もっと多めにした方が良かったな。見辛くてスマソ。
登場人物はザイン(真2)、アレフ(真2)、カオスヒーロー(真1)ってことで。
後半ほぼビジョナリーイベントまんまだけど、
ザインが殺戮モード(サタン)に覚醒する布石みたいなつもりで書きますた。
アレフ喋らせちゃったけどイメージ違ったら御免。
新作続々来てて嬉しい限り
しかもそれぞれ上手い…
「完璧な魔界などといったものは存在しない。完璧な絶望が
存在しないようにね。
僕がデビルチルドレンのころ偶然にも知り合ったデビルは僕に向ってそう言った。
僕がその本当の意味を理解できたのは今年の4月1日のことだったが、
少くともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。
完璧な魔界なんて存在しない、と。
356 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/30(火) 22:40:03 ID:W/mTNY0c
作品続々キテル イイヨイイヨー
で、デビチル厨は荒らし?
357 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/01(木) 15:50:41 ID:uxkBg17O
ID:7v3y3nct
ID:v+r0F9Zf
GJ!
俺も何か書くか…
359 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/02(金) 19:33:16 ID:7mkIpVJn
(cレ# ゚∀゚レ<葛葉ライドウ参上!僕たちの痛みを思い知れP3!!
主人公は死んでしまった!
ゆかりは死んでしまった!
伊織は死んでしまった!
真田は死んでしまった!
美鶴は死んでしまった!
風花は死んでしまった!
コロマルは死んでしまった!
天田は死んでしまった!
ほかP3全員死んだ
登場人物は
>>293の名簿のキャラだけで、
デビチルやペルソナ3(これは嫌がらせネタだろうけど)のキャラは範囲外だから……
361 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/03(土) 20:20:18 ID:jsBDkmgR
しかし、それでもやはりビネコンで魔界に接続という
段になると、いつも絶望的な気分に襲われることになった。
一小学生に扱うことのできる領域はあまりにも限られたものだった
からだ。例えばアイスランドについて何かが書けたとしても、
セントラルランドについては何も触れないかもしれない。
そういうことだ。
1年間、刹那はそうしたジレンマを抱き続けた。---1年間。長い歳月だ。
もちろん、あらゆるものから何かを学ぼうとする姿勢を
持ち続ける限り、争いを起こすことはそれほどの苦痛では
ない。これは一般論だ。
4月を少し過ぎたばかりの頃からずっと、刹那はそういった
対応を取ろうと努めてきた。おかげでフェンリルから何度と
なく手痛い打撃を受け、欺かれ、誤解され、また同時に
多くの血なまぐさい体験もした。様々な魔物がやってきて刹那に
語りかけ、まるで橋を渡るように音を立てて刹那の上を通り過ぎ、
そして二度と戻ってはこなかった。刹那はその間じっと口を
閉ざし、何も語らなかった。
そんな風にして魔界は反乱発生後最初の月を迎えた。
362 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/03(土) 20:39:58 ID:PBU05rhM
そして、デビチル厨とデビチルはスレ違いの罪により、バトルロワイアルの見せしめとなった……。
首輪の爆発とともに、デビチルの歴史は終わった
363 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/03(土) 21:56:34 ID:jsBDkmgR
今、僕は羅刹族との争いに出かけようと思う。
もちろん問題は何ひとつ解決してはいないし、戦いを終えた時点でも
あるいは事態は全く同じということになるかもしれない。結局のところ、
戦闘能力を上げることは和平の手段ではなく、魔界統一へのささやかな
試みにしか過ぎないからだ。
しかし、正直に戦況を語ることはひどくむずかしい。
僕が正直に語ろうとすればするほど、反乱軍の信用度は闇の
奥深くへと沈み込んでいく。
弁解するつもりはない。少くとも公式コメントで語られていることは
現在のマーブルランドにおけるベストだ。つけ加えることは何もない。
それでも僕はこんな風にも考えている。うまくいけばずっと
先に、何年か何十年か先に、復旧された魔界を発見すること
ができるかもしれない、と。そしてその時、象は平原に還り
アゼル軍上層部はより醜い言葉で派閥争いを始めるだろう。
別のスレに行ってほしいところ
365 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/03(土) 22:22:25 ID:PBU05rhM
366 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/06(火) 21:17:26 ID:wE8/Uqk5
すれ違い・板違いにならない範囲で募集あげ
367 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/08(木) 20:37:39 ID:ScmruL6x
保守
大日本帝国万歳
あがれ、あがれ、天まであがれ、
あの日の丸のように
あがれ あがれ スレよ あがれ
369 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/09(金) 23:37:05 ID:FfR/6aUy
「悪いけど、今原稿を書いてるんです。あとでかけなおして
くれませんか?」
「原稿?」、女はあきれたような声を出した。「発売日の1週間前に
原稿を書いているの?」
「あなたには関係ないことでしょう。何日に何を書こうが僕の勝手だ」、
僕はちょっとむっとして言った。
「それはそうね」、女は表情のない乾いた声で言った。ちょっとした感情の
変化で声のトーンががらりとかわるのだ。「まあいいわ。あとでかけなおすから」
「ちょっと待って」、僕はあわてて言った。「どこかの出版会社の編集部だとしたら、
何度電話をかけてきたって無駄ですよ。こっちは執筆中の身だし、ネーム直しを
している余裕なんてないから」
「知ってるから大丈夫よ」
「知ってるって何を」
「だからまだ執筆中なんでしょう。知ってるわよ、そんなこと。だから早くあなたの
大事な原稿を書いていれば」
「ねえ、あなたはいったい…」と言いかけたところで電話が切れた。すごく唐突な切れ方だ。
370 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/09(金) 23:43:25 ID:FfR/6aUy
「刹那のデビライザーは不思議な銃でした。一見何の問題も無いように見える。
でもやってみると何かが違うんです。同じ銃身、同じ操作手順なんです
が、他の銃とは何かが違う。その何かが麻薬のようにデビル達をひきつけた。
・・・私が『刹那のデビライザー』を悲運の銃と呼ぶには二つばかり理由があります。
第一にその危険性がデビルに十全に理解されなかったこと。彼らがやっと
理解しはじめた頃はもう遅すぎた。第二に魔界が崩壊してしまったこと。
あまりにも非良心的にやりすぎたんですな。魔界はとある神族
に崩壊させられました。神族は魔界は必要ないと言った。それまでです。」
僕は暗い気持のまま考え込んだ。
「ところで、あなたの魔界でのレベルは?」
「五十。」と僕は言った。
「そりゃ少ない。」と彼は表情も変えずに言った。
「実に少ない。」そしてまた耳を掻いた。
371 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/09(金) 23:46:17 ID:FfR/6aUy
「予定が変更された」と聞き覚えのある声が言った。「スポンサーの具合が急に悪く
なったんだ。もう余り時間がない。だから君のタイム・リミットも繰り上げられる」
「どれくらい」
「一ヶ月。それ以上は待てない。一ヶ月たっても物語が終わらなければ、
君はおしまいだ。君が戻るべき場所はもうどこにもない」
一ヶ月、と僕は頭の中で考えてみた。しかし僕の頭の中では時間の観念が取り返し
のつかないくらい混乱していた。一ヶ月でも二ヶ月でもたいした違いがないように思
えた。そもそも一コマの間違いを探し出すのに一般的にどれくらいの時間がかかるかという
基準がないのだから仕方がない。
「よくここの場所がわかりましたね」と僕は言ってみた。
「我々には大抵のことはわかる」と男は言った。
「作業場所以外はね」と僕は言った。
「そういうことだ」と男は言った。
372 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/09(金) 23:49:28 ID:FfR/6aUy
出版会社の中には作家のための場所がある。作家たちは夜の間そこで眠る。
手を洗うための洗面所があって、その水を飲むこともできる。その向こうには見渡す限りの簡易ベッド
がつづいている。まるで海原のようにどこまでもつづいているのだ。
「まああんたはここに来たばかりだから仕方ないが、それでもしばらくここで暮らして
きちんとすりゃ、他の作家達になんて興味を持たなくなる。他のみんなとおなじようにな。
もっとも納期直前の一週間だけは別だがな。」
納期直前の一週間、作家達が戦う姿は誰も見たがらない、と守衛は言った。
作家達は納期直前の一週間だけ、いつもの温和な姿からは想像もできないほど
凶暴になり、互いを傷つけあうのである。そして床に流されたおびただしい量の
血の中から新しいストーリーと新しいキャラクターが生まれてくるのだ。
373 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/09(金) 23:53:03 ID:FfR/6aUy
「いいですか、今ビネコンシステムは完全に凍結されています。何故だかは
わかりません。たぶんなにかしらのトラブルが予想されるからでしょう。もしシステム
障害が起これば懲罰程度では済まないでしょう」
老人はビネコンの端末が入ったホルダーをまた私に差し出した。
「その最後のページをよく見て下さい。ビネコンシステムの使用許可がついてるはずです」
たしかにそこにはビネコンの使用許可がついていた。全く上層部のデビル達が
何を考えているのか私には見当もつかない。穴を掘ったらそれを埋めろといい、埋め
たらまたそれを掘れと言う。迷惑するのはいつも私のような現場の人間なのだ。
374 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/09(金) 23:59:26 ID:mGeH9hQM
またデビチルか
通報しました
むしろ下手すぎて感動したwwwww
376 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/10(土) 17:43:02 ID:2Xn51jUr
夜気を圧する熱量を孕んだ火球が、ごう、と音を立てて魔犬の口から放たれる。
同時にレイホウも右手を女に向かってかざし、力ある言葉を紡ぐ。
大聖頒(マハ・アギオン)。
燃え盛る四つの火球の輪舞が、魔犬のそれと融合して野原を真昼のように照らしながら女に迫る。
今の自分とレイホウに出来る、火炎属性最強の魔法攻撃。
これで押し切れなかったら。
"Liberation"
目の前まで迫った大火球に小揺るぎもせずに、静かに女が呟く。
解放。
火球が出し抜けに膨れ上がり、その中を何かが突き抜ける。
黒い火炎の蛇、そう形容するしかない、黒々と禍々しい光を放つ炎。
あれほどの熱量を内包していたはずの大火球が弾け飛び、四散する。
その凄まじい爆風が周囲を更地に変えていくのを、僕は呆然と見つめている事しか出来なかった。
「ぬるいわね」
女の声に呼応して、勝ち誇ったように蛇が鎌首をもたげる。
377 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/10(土) 17:43:39 ID:2Xn51jUr
「!」
目配せを交わすまでもなく、二人が同時に散開する。
その直後に、蛇の牙が更地を深々と抉り、影を孕んだ熱量を解放した。
土と石が焼け焦げる匂い。
頬がひりつく熱気から感じ取るまでもなく、戦力差は歴然だった。
ギリ、とレイホウが歯軋りをする音が聞こえる。
抑揚の激しい力ある言葉を再び紡ぐ。
青白い光が右手に凝集していく。
属性の異なる、貫通性の高い火力で叩くつもりか。
女は左手の筒をくるくると回すだけで追撃はしてこない。
次は何をしてくるのか、それを楽しんでいる風にも思えた。
ならば。キーボードを弾く。
魔犬が短く吼えて、いつでも飛びかかれるように、身を低くして構える。
「キョウジ、あんたは」
防御に専念だろう。分かってるさ。
咎めるレイホウにそう応え、リターン。
魔犬が野太い吼え声をあげて大きく身を躍らせる。
十メートル近い距離を一跳びに飛んで女の喉笛に襲い掛かる。
だが、それよりも先に筒が割れる音。
黒炎の蛇がとぐろを巻き、魔犬に向かって襲い掛かる。
魔犬の属性は火。同属性ならばお互いの属性は排斥しあうが、いかんせん力が違いすぎる。
消し炭にはされないが魔犬は圧倒的な火力に跳ね飛ばされる。
だが、蛇の牙は空を抉っただけでこちらには向いていない。
隙はこじ開けた。あとはレイホウの。
378 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/10(土) 17:44:20 ID:2Xn51jUr
聖稜火(メギド)。
右手から放たれる一条の雷光が、風を巻いて女の胸元に着弾する。
ぐら、と女の身体が傾ぐ。
続いて地を這うように身を低くして突進するレイホウ。
左手に握り締めた三節棍が、彼女の背から弧月の軌道を描いて女のこめかみに襲い掛かる。
勝ったか。
だが、その直前に、女はもう一本の筒を割り終えていた。
レイホウの背中に現れる、夜闇よりもなお暗い漆黒の影。
黒炎ではない、およそ熱量が感じられない闇の塊が彼女の上から襲い掛かる。
粘つく衝撃音と悲鳴。
COMPを操作していた指が思わず止まる。
「新月で無かった事を、感謝なさいな」
更地に頭から叩きつけられて苦悶するレイホウを冷然と見下ろし、女はこちらに向き直った。
「満月で無かった事も、ね」
女の左手に、先ほどレイホウが放ったのと同質の、だが段違いに大きな青白い光の塊が出現する。
避けろ。
意識が金切り声をあげている。
だが、足も手もぴくりとも動かない。動けない。
ダメなのか。ここで。
379 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/10(土) 17:44:54 ID:2Xn51jUr
……?
もう、次の瞬間にも吹き飛ばされる。
覚悟して身構えていたが、その最期の衝撃は、いつまで経っても自分を吹き飛ばさなかった。
半ば閉じていた目を開いて、恐々と相手を見つめる。
女の方も何か不審に思ったのか、小首を傾げる。
圧倒的な白光を宿した左手を見つめ、ついで、僕のほうを見やる。
「……そう、貴方が」
女の頬に、苦笑が浮かぶ。
左手の白光が徐々に小さくなっていき、消える。
あれほど周囲を圧していた殺気も、同じように薄らいでいく。
「残念だわ。まだ私は貴女と殺しあえないようね、レイ」
足元に転がり、荒く息をついている仇に、どこか物悲しい口調で話しかけ、女はくるりと踵を返した。
「ま、ちなさい……アンタ」
夜闇の向こうへ消えていく背中に、レイホウが途切れ途切れに声をかける。
「また、いずれね、レイ。しばらくは、火消しに回ってあげる」
そう言うと、女は横顔をこちらに向けて、親友に贈るかのような微笑を浮かべた。
「貴方も、また、ね」
Tobecontinued
381 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/10(土) 23:34:37 ID:qgxzkEVO
わけわからんバトロワとは関係ない荒らしばかりでうんざりしていたら良作ktkr
382 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/11(日) 22:18:33 ID:caLAMhuS
「なによ、これ。冗談がきついわ…」
朝倉タエは普段の気の強さを一切感じさせない弱気な声とふらふらした足取りのまま行くあてもなくサウスタウンの路地を歩いていた。
こんな知らない場所で、殺し合いしろだなんてタエには荷が重すぎる。
ここには愛してくれる家族も、大好きな友達も、頼りになる相棒もいない。
顔見知りはいたけれど彼等を殺さなければ自分が殺される。
今日ばかりはタエの日本晴れは望めなかった。いわば日本どころか、世界全てが吹き飛びそうな嵐と雨――。
そのままふらふら歩いていると
少女が壁にもたれかかり座っていた。
「ちょっと、どうしたの…」
タエは彼女に思いきり近付いた。
それは顔見知りの少女、大道寺伽耶だった。
伽耶はカッと大きな目を見開き、唇から赤黒い血を垂らしていた。
もともと白かったであろう肌は血の気を失い蝋人形のそれのような色をしている。
そして彼女の腹部には穴が、そう、穴が開いていた。
この子は殺されたんだ――そうタエが気付くと同時にタエの中の何かがぷつんと切れ、気が付けば叫んでいた。
「いや、いや、いやああああっ!! 私もういややあああっ!!!」
「そんなに嫌ならすぐに楽にしてあげますよタエさん」
「!?」
激しい音と共にタエの小さな頭が弾け、吹っ飛ぶ。それはまるで西瓜のようだった。
「ふう、あの人たちもひどいよね。殺し合いだなんてさ。・・・行こう、ゴウト」
二人の少女の死体を見下ろしながら天使のように、少年――葛葉ライドウは微笑み、可愛らしい黒猫は鳴いた。
このゲームには子どもも大人も関係ない。強き者が生き残り、弱者は死ぬ。
ただそれだけだ。
【朝倉タエ 死亡】【大道寺伽耶 死亡】
【葛葉ライドウ 所持品:拳銃(詳細不明) 目的:ゴウトと共に生き残り帝都守護の任務に戻る】
>>376 乙、そしていつもながらGJ!
決着がつくのか、つかずにそれぞれ何処かであぼんするのか非常に気になる。
>>382 新作乙。でもサウスタウンって何処?
ぐぐったら餓狼伝説ばかり出て来る……。
>>382 もしもし? これ何?
ttp://www.geocities.jp/ffdqbr3rd/ac/act0000_0029.htm >十四歳 Act0001
>「なんやの、これ。冗談きついわ…」
>一条あかりは普段の快活さを一切感じさせない弱気な声とふらふらした足取りのまま行くあてもなくサウスタウンの路地を歩いていた。
>こんな知らない場所で、殺し合いしろだなんてわずか14歳の少女には荷が重すぎる。
>ここには愛してくれる家族も、大好きな友達も、頼りになる相棒もいない。
>顔見知りはいたけれど彼等を殺さなければ自分が殺される。
>今日ばかりはあかりの日本晴れは望めなかった。いわば日本どころか、世界全てが吹き飛びそうな嵐と雨――。
>そのままふらふら歩いていると少女が壁にもたれかかり座っていた。
>「ちょっと、どないしたん…」
>近眼のあかりは彼女に思いきり近付いた。
>背はあちらの方が高いが、恐らくあかりと同い年くらいの少女だろう。
>長い髪の少女はカッと大きな目を見開き、可愛らしい唇から赤黒い血を垂らしていた。
>もともと白かったであろう肌は血の気を失い蝋人形のそれのような色をしている。
>そして彼女の腹部には穴が、そう、穴が開いていた。
>この子は殺されたんや――そうあかりが気付くと同時にあかりの中の何かがぷつんと切れ、気が付けば叫んでいた。
>「いやや、いやや、いややああああっ!! うちもういややあああっ!!!」
>「そんなに嫌ならすぐに楽にしてあげるよ」
>「!?」
>激しい音と共にあかりの小さな頭が弾け、吹っ飛ぶ。それはまるで西瓜のようだった。
>「ふう、あの人たちもひどいよね。こんな小さい子たちに死ねだなんてさ。…まあ、小さいのはぼくも同じだけどね」
>二人の少女の死体を見下ろしながら天使のように、少年――クリスは微笑んだ。
>このゲームには子どもも大人も関係ない。強き者が生き残り、弱者は死ぬ。
>ただそれだけだ。
>【クーラ 死亡】【一条あかり 死亡】
>【クリス 所持品:拳銃(詳細不明) 現在地:サウスタウン路地(五区西) 第一目的:生き残りを目的としながら殺人を楽しむ?】
『サウスタウン』 『日本晴れ』でぐぐったら出てきたんだけど。
完全にオナニーだな。文字書きとしては三流だよ
386 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/13(火) 01:16:53 ID:hSD+ip3p
村上春樹がいると聞いてきました
387 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/15(木) 12:38:01 ID:+L83hITk
光が差し込んだ。
ぼやけた視界が徐々にまとまり、頭が透き通っていく。
初めて自分が眠っていたのに気がついた。
「ここはどこなんだ!?」
「あたしなんでこんなところに・・・」
周りからザワザワと声が聞こえる。
大勢の声だ。
床に手を着いて起き上がる。
ふと、気がついた。
左手がいつもより軽い。
自分の左手にはあるはずのものが無かった。
「アームターミナル」
あの日、初めて悪魔が表れたあの日。
それ以降はほとんど肌身離さずにいた悪魔を召喚するコンピュータ。
それが無くなっている。
それだけではない、持っていた銃器も剣も薬も無くなっている。
今悪魔に襲われたらまずい。
まずその考えが浮かんだ。
ICBMが落ちて以来磨かれた危険対処能力。
それが自分を臨戦態勢にさせた。
辺りを見回す。
おかしい。
悪魔の気配を感じないことは幸いだが明らかにおかしいことがる。
いる人間の服装が統一されていない。
いまさら着る人もいなくなった旧世紀の遺物、学生服を着ている人間。
自分が生まれるずっと前に流行したらしい格好の人間さえいる。
周りには机や椅子散らばっている。
気がついた。
ここは学校の教室だ。
まだ平和だったころ自分も通っていたことが有るからわかる。
しかし今の世にこれだけ壊れていない学校なんてものがあるのだろうか?
「やぁ諸君」
そう思っていると、声が響いた。
声のするほうを見た、スピーカーだ。
それに反応して周りのざわつきがやんだ。
「いろいろ説明して欲しいこともあるだろうがまずは端的に言おう」
声はざわつきがやむのを予測していたかのように続ける。
「君たちにはこれから殺し合いをしてもらう」
声はそれがなんでもないことのように述べた。
周りのざわつきがいっせいに広がった。
「なに、ちょっとしたゲームだ。」
「そしてゲームにはルールがある・・・まずはそれの説明から始めよう」
声は淡々と続ける。
「ふざけるんじゃねぇ!」
突然、スピーカーとは違う方向から大声が響き渡る。
「突然こんなところにつれてきて・・・とっとともとの世界に戻しやがれ!!」
至極、もっともな意見だ。
しかし、スピーカーの声は意に介した様子も無い。
「ふむ・・・君のような直情型では生き残れまい、最低限一人は殺して見せねばと思っていたが君でいいだろう」
「なんだとてめぇ!」
声は完全に男を見下したようだ。
「まず、君たちの鎖骨の辺りを見て欲しい。黒っぽい刻印があるだろう」
服をまくってみる。多少見づらい位置ではあるが確かに黒い刻印があった。
「それは、呪いだ。私たちは君たちをいつでも殺すことができる・・・こんな風に・・・」
「ぐがぁ!?」
声がそういうと先ほどの男が苦しみだした。男の体に黒いものがどんどん広がっていく。
「ぐがががががががが!?」
黒いものが男の体を完全に包んだ。
「がっ!?」
次の瞬間、黒いものは消えた。
ドサリという音と男は倒れた。
自分も何度か見たことがある。間違いなくあれは呪殺の魔法・・・男は既に事切れていた・・・。
「うわぁあああああああああああああああああああああああ!!」
誰かが叫んだ。
それを皮切りに次々と叫び声が広がる。
「確認したね?我々に逆らおうなどとは思わないことだ・・・おっと、自分には呪いは効かないなんて思うなよ?
それはそんなに生っちょろいものではない。刻印が有るということは既に呪いを受けているということだ。」
スピーカーの声は叫びを無視するかのように続けた。
「次に簡単なルール説明だ、詳しいルールは後で渡すルールブックを読んでくれ」
「諸君らの今いる場所はスマル市という場所だ、参加者の中にはこの町の出身者もいるだろう」
「さて・・・この世界はスマル市以外は存在しない。浮いているのだ、この町は」
「まぁ・・・ある種のパラレルワールドと思ってもらえばいい、因みに住民は人っ子一人いない」
「とはいえ、設備はある程度生きているので利用するのもありだろう」
「そして今いるここは七姉妹学園という学校だ・・・とは言ってもここから始まるわけではない」
「我々の魔法によって町のどこかに転送させてもらう、各人違う場所へだ」
「その際鞄をひとつ付ける、その中には食料とこの町の地図、ルールブックそして・・・武器と何らかのアイテムが入っている」
「食料などは全員同じだが武器とアイテムは完全にランダムだ、役に立つものか、いくつ入っているかもな」
「さて・・・こんなところか?・・・そうそう、ひとつ忘れていた」
「町には悪魔が出現する場所がある」
「近寄らないか?あるいは逆にそこに避難するか?そうでなければ・・・彼らに協力を求めるか?・・・それは君たちの勝手だ」
「では、健闘を祈る」
スピーカーからブツッという音が聞こえた、マイクをきったのだろう。
周りには叫ぶもの、取り乱すもの、落ち着いているもの・・・さまざまな人々がいた。
数秒後、視界が歪んだ。
ターミナルの転送に似ている。
転送の途中、声が聞こえてきた。
「君がどちらに傾くか・・・期待しているよ、ザ・ヒーロー・・・」
駄文失礼しました。
見せしめになった人は参加者リストにない誰かのつもりです。
ルールのほうは適当にまとめたものですので無視していただいてもかまいません。
>>388-391 超GJ! オープニング書いてくれて本当に嬉しい
見せしめが個人的に某ペルソナの稲葉っぽく思えたw
393 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/17(土) 17:54:40 ID:8YQxfAij
男は満身創痍の状態だった。
元々召喚士としては決して有能ではない彼が、参加者残り人数一桁になるまで生き残っていたのは、ある意味奇跡的とも言えた。
だが、戦闘開始から二日が経ち、力の無い者が淘汰されてゆくにつれて、彼は戦闘の度に大きな傷を負っていた。
普通なら血を失って倒れ伏すところを仲魔の治癒魔法で何とか凌いでいたが、それももう限界に近づいていた。
時刻は午後八時。
定例放送も終わり、森はひんやりとする夜気に包まれていた。
時おり虫や蛙が鳴く音がする他には、全く何も聞こえない山中。
だが、その中には未だ八人の生存者がいて、お互いを殺す機会を窺っているのだ。
もう戦えない男の足がカセドラルへと向いたのは、ある意味必然だったのかもしれない。
そこは紛れも無い死地のはずだった。
ルール上決められた侵入禁止区域には、強力な呪法が敷かれている、との事だった。
一昨日のデモンストレーションで、喉をかきむしって血だらけで事切れた召喚士の苦悶に満ちた顔が、脳裏をよぎる。
殺し合いから逃れるために、殺されに行く。
形容しがたい矛盾を糊塗せんとするように、男の足は速まって行った。
394 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/17(土) 17:55:49 ID:8YQxfAij
「残念ながラ、参加者のカセドラルへの侵入ハ禁止されていマス」
はたして、門の前には死神が控えていた。
夜闇に溶け込む黒い僧服に身を包み、白手袋をはめた左手には血のように赤い表紙の聖書を持ちながら、しかしその牧師の頬に浮かんでいるのは、聖職者にはおよそありえないほどの、邪悪な笑みだった。
もう、いい。
もう、終わらせてくれ。
いっそ、ひと思いに。
男は無言で歩を進めた。
一刻も早く相手の攻撃が自分の身体を引き裂いてくれるように、彼は両手を広げて死神に近づいた。
神父は束の間、驚いたように男の顔を見つめていたが、やがて先ほどとは違う微笑を目じりに浮かべて聖書の羊皮紙をめくった。
「なるほド、アナタはどうやラ安逸を求めテここへ来られたようですネ。聖職者としてハその望みを叶えてさしあげねばなりまセン」
思いがけない死神の言葉に、思考力を無くしていた男の意識が覚醒する。助かるのか。
この中へ、匿ってくれるのか。
「悩み苦しむ小羊の安らぎこソ我が主の願い。貴方の身はワタシが預からせていただきまショウ」
男はがくりと膝をついた。
それは、安堵からだったのか、緊張の糸が切れた脱力からだったのか、分からない。
彼は、青白く周囲を照らす月と、黒々と聳え立つカセドラルの尖塔と、それらを負ってにこにこと笑みを浮かべながら自分を見下ろしている神父とを、呆然と見上げていた。
395 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/17(土) 17:57:42 ID:8YQxfAij
レイホウの傷は深かった。
背中から身体の中へ入り込んだのは、彼女曰く波斯の古代悪魔の呪い、との事だった。
手持ちの仲魔による治癒魔法は物理的な傷を治すことはできるが、呪いを解く事は出来ない。
白く華奢な背中の一点に穿たれた黒い点は、墨の染みのようにその範囲を広げ、それに伴って身体を蝕んでいく。
もって、あと一日。と言っても、満足に動けるのは午前まででしょうね。
じわじわと黒い死に侵食されながら、彼女は苦笑いを浮かべていた。
どうすれば。
「解呪が出来る人間が、あの主催者連中の中にいる事を祈るしかないわね。どっちにしても、私たちが勝者になるしかないのよ」
勝者。
という事は、あのナオミと、また。
「それだけじゃないわ。初日に奴らが宣言した通りなら、明日にはあんたと戦わないとならなくなる」
……そうなのだ。
このルールに従う限り、僕か、彼女か、どちらかは殺される。
主催者の用意した仕掛けがどんなものかはわからない。
しかし、悪魔を使役出来る召喚士を数十人も集めて、この狭い地域から一歩も外に出させないなどという離れ業をやってのける組織だ。
三日目には必ず何かを仕掛けてくる、はずだった。
それまでに召喚士同士で徒党を組む事が出来たなら、あるいは状況は違っていたのかも知れないが。
「考えたって仕方の無いこと。勝者が決まらなければ奴らは私たちを皆殺しにするために打って出てくる。そうなればあの城塞はもぬけの殻よ」
その間に侵入して、このゲームを終わらせる、か。
「奴らが言っていた、死帷の結界が発動しなければ、ね。でも、確実に発動は無いわ。呪いを返せる召喚士や術者があの人数の中で誰もいないはずが無いもの」
人を呪わば穴二つ。
「ええ。よしんばあの聖堂全体に防御結界を張っていたとしても、術者はまず助からない。
それどころか行き場を無くした呪いはこの異界内に留まり続ける事になるわ。
そうなったら、永久にあの聖堂から一歩も出られないでしょう。
遅効性の呪いなら解呪も間に合うけれど、ね」
つまり、全員仲良く皆殺しにはならない、という事か。
安堵の息をつく、その直前に、ある一言が耳に嫌な感触と共に残っていた。
遅効性の呪い。
その言葉に、唇を噛み締める。
十年二十年ではない、明日にも、レイホウの呪いは。
「ともかく、明日まで生き延びる。それからの事は、その時に頑張ればいいじゃない」
不安と苛立ちが顔に出ていたのだろうか。
レイホウは普段は滅多に見せることの無い、明るい笑顔を浮かべて、僕の肩をぽんと叩いた。
396 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/17(土) 17:58:38 ID:8YQxfAij
男をまどろみから引き戻したのは、鼻腔を突き刺す強烈な鉄錆の臭いだった。
続いてアンモニアの臭い混じりの獣臭が、覚醒した意識にのしかかってくる。近くで戦いがあったのか。
いや、こんなに強烈な臭いは、たとえ目の前で人間を斬り殺したとしても嗅げるものじゃない。
そう、まるで生きたままはらわたの中に頭を突っ込んだかのような。
「目が覚めましたカ。やはり生餌の腸は良く効きマスネ」
神父の声が頭に響く。
生餌の腸。
喉がごろごろと鳴る。
まるで犬か狼のような唸り声が、やけに近くで響く。
ごろり、と固形物が喉の奥へと転がり落ちる。
むわ、と生臭い臭いが鼻腔の奥から逆流する。
「ヴェアヴォルフ。素体は貧弱デスガ、山で震える獲物を狩り出すには手頃な走狗でショウ」
くつくつと笑いをかみ殺す声がする。
まだ、自分は膝立ちになったままだったのだろうか。
声がヤケニ高くからキコエル。
「狩られる側からの安逸を求める貴方にハぴったりの役どころでショウ。狩る側として、思う存分にその牙を揮いなサイ」
ぱちん、と指を鳴らすオト。
かたわらで何かが崩れ落ちるオト。
何処かで見たようなニンゲンのカオ。
女。蒼白なカオをして。
そのカオは下半分がナニカに食いチギラレテイテ。
ダラリと垂れ下がった舌を喉を鳴らして噛み千切り、飲み込む。
甘美な味が口腔に広がる。
そうだ、コイツ。いつかオレとやり合ったオンナ。剣で腹を抉っていったヤツ。
痛かった、アレは痛カッタ。許せナイ。
頭蓋骨に牙を立てる。
固いはずの頭蓋骨が容易く割れ、中からまだ暖かい中身がこぼれ出る。
それらを次々と飲み込み、胃の腑へと流し込んでいく男の様子を、神父はにやにやと笑みを浮かべて見下ろしていた。
「ここは…青葉区か」
周防達哉は緑豊かな公園の中を進む。
「とりあえずみんなと合流しなくては。」
学園にいたのはリサ、何故かペルソナの共鳴を感じた兄の克哉、そして…
「摩耶姉が生きていた…俺たちは成功したのか?…でも、俺は確かに覚えてる。それにリサからも共鳴が感じられた…」
摩耶の死を、世界の崩壊を回避するために過去を変えようとした。成功したなら戦いの記憶もペルソナ能力もなくなっているはずだ。
自分のペルソナを確認する。
アポロ。真紅をまとう太陽の神であり、達哉に最も近い分身である。
これがある限り自分たちペルソナ使いは圧倒的に有利であろう。しかし主催者の言葉が気に掛かる。
―街には悪魔が出現する場所がある
―協力を求めるか…
協力。それが意味するのは果たして自分達が行っていたような情報や道具のやりとりのみなのだろうか…。
かつて彼はたまきが悪魔を召喚するのを見たことがある。
悪魔を使役する。あんなことは自分達には出来ない。
恐らく彼女の持っていた銃のような機械が必要なのだろう。
支給品にはそれらしきものはなかった。あるのは宝玉とチューインソウル、そして…
「これは…虫?何か使い道があるのか…?」
とりあえずしまっておく。頼りない道具ばかりだが無いよりはましだ。
支給品にあの機械があるなら、まずい。悪魔と人、複数相手するのは不利だ。
ゲームに乗っている者がいるなら、強力な悪魔を仲間にする前に叩かなくては…
とにかく、仲間を探す。人数を集め、主催者に対抗しよう。
「摩耶姉…」
あの人だけは、守る。もう二度と死なせはしない。
必要なら、向かってくる人間を殺すのもしかたない。
ふと、思考を中断する。近くから視線を感じる。
ペルソナの共鳴は感じない、しかし確かに殺気を帯びた視線。
新田勇はじっと獲物を観察していた。
ごく普通の、若者だ。学生服を着てるので、高校生、自分と同じぐらいの年ごろだろう。
自分のかつての友人のように、悪魔を引きつれているわけでも、異形の姿をしているわけでもない。
―楽勝だ。
彼の上半身には幾つもの顔が張り付いていた。死んだ人の残留思念…思念体である。
この為彼には悪魔と同等の力がある。
しかし、悪魔と融合したり悪魔そのものとなったかつての友人にはかなわない
彼らに対抗するためには"神"を召喚しなければ。
その為に、人間からマガツヒを搾り取る。
マガツヒはエネルギーのようなもので、人間から大量にとれる。
すぐには殺さない。苦痛を与えて、できるだけマガツヒを搾り取ってやろう。
そうだ、思念体と融合した自分なら、悪魔と交渉して仲魔にできるかもしれない。
そいつらにやらせよう。その間に自分は他の獲物を探す。
拷問は何をしよう。鞭で打つ、皮を剥ぐ、骨を砕く…かつてマガツヒのために自分が悪魔にされた以上のことをしてやろう。
そして"神"を呼び、残りの参加者を殺し、自分がゲームに勝つ。
ゲームの参加者はなんの力も持たない連中ばかりだろう。
人間からなら2、3人分で十分だ。笑いがこぼれる。期待に胸が弾む。
「へえ…気付いたか、勘がいいんだな、ん?」
現われたのは少年。年齢は達哉とそう変わらないだろう。しかしその姿は普通ではなかった。
「お前は…」
「武器も持たないでウロウロしてるなんてな。何も武器が無かったのか?ご愁傷様。」
そう言う少年は銃を構えている。
「心配すんな。軽ーく足を撃つだけさ。死なれたらもったいないんでな。」
ゲームに乗っている。敵だ。
その姿から、常人でないのは分かる。問題は、どれだけの実力があるのか。どんな能力があるのかだ。
能力を使わず銃を向けるということは、相手はペルソナを知らない。あなどっている。
「抵抗すんなよ?それだけ痛い、怖い思いをするだけだぜ」
パンッ
引き金が引かれる。
「避けた…か。違うな、俺が外したんだ。使い慣れない武器を使うもんじゃないなあ」
「反動を受けている。狙いも正確じゃない。避ける必要もなかった」
こいつのスカした顔がむかつく。恐怖に震えさせてやりたい。ちょっと早いが、見せてやるか?
「はは…強気だな。自分の状況判ってないんじゃね?」
この顔、二度と見れないようにしてやろう。火だ。殺さない程度に焼いてやろう。
集中する。訝る相手と目が合う。ニヤリと笑い、一気に力を放つ。
火柱が燃え上がる。避けようと動いたようだが、驚きで動きが止まったようだ。
やりすぎたか?…まあいいや。他にもいっぱいいるしな。
火柱が消える。黒焦げになった奴が静かに倒れる…はずだった。
避けるつもりだった。しかし、力が放たれて、避ける必要が無いのに気が付いた。
火。太陽の神の加護を持つ達哉にそれが効くはずもなかった。
「嘘だろ…?いや、また外したんだな。実はあんま使ったことないんだ。練習しなきゃな…まあ、次はちゃんと当てるよ」
「悪いが…次はない。」
相手の背後に移動する。今のこいつには、それだけの隙がある。そして…
「もう…終わりだ…!」
ノヴァサイザー。相手を高温で焼き尽くす。至近距離で放つ必要があるが、一発でしとめるには、これが一番確実だろう。
真紅の太陽神が現われ、少年に裁きを下す。
悲鳴はなかった。ジュッと肉の焼ける嫌な音がしただけだった。
炎が消え、後に残るのは塵のみ。この地の、口をきくと噂される花々の肥料となるだろう。
達哉は静かにその場を離れる。街に出て、仲間を探そう。うまく行けばよい武器や道具も手に入るかもしれない。
駄文失礼しました。
結構勝手な設定もあるんで不満なようなら廃棄してやって下さい。
405 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/18(日) 06:08:28 ID:R6dFyEVA
良スレage
新作いいよー
いっそのこと舞台をジャンクヤードにして主催者がセラで開催理由を
セラ「生き残った人を私の王子様にします」
とかでいいんじゃね?
それだとサーフ贔屓で他イラネになるんじゃ。
408 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/18(日) 22:58:24 ID:xpbL2cPH
乙!どんどんGJ作品が来てるな
期待を込めてあげ
乙! 勝手に今までの状況まとめしてみた。間違ってると思うので補完・修正よろ
(名前の前に×マークがついてるのは死亡者、△はピンチ状態)
【真1 4/4】
ザ・ヒーロー、ヒロイン、ロウヒーロー、カオスヒーロー
【真2 4/4】
主人公(アレフ)、ベス、ヒロコ、ザイン=サタン
【真3 3/4】
主人公(人修羅)、橘千晶、×新田勇、氷川
【旧1 3/3】
中島朱実、白鷺弓子、リック
【旧2 3/3】
主人公、ダークヒーロー、ヒロイン(東京タワーの魔女)
【ソウルハッカーズ 4/4?】
主人公、スプーキー、ネミッサ(=瞳)、(×?)ナオミ
【デビサマ 4/4?】
(×?)葛葉キョウジ、 シド、(△?)レイ・レイホゥ、秦野久美子
【ライドウ 4/4】
葛葉ライドウ、鳴海、大道寺伽耶、朝倉タヱ
【ペル1 4/4】
主人公(ピアスの少年)、園村麻希、南条圭、桐島英理子
【ペル2 4/4】
周防達哉(罪主人公)、天野舞耶、リサ・シルバーマン、周防克哉
【if 4/4】
女主人公(内田たまき)、宮本明、赤根沢玲子、狭間偉出夫
有効作品(ネタ・荒らし・無関係作品・盗作除く)
>388-390 オープニング
>326-328 >336-338 >341-342 キョウジ&レイホゥVSナオミ
>345-351 アレフ・カオスヒーロー・ザイン
>376-379 キョウジ&レイVSナオミ
>393-396 キョウジ・レイ・シド・ナオミ?
>397-403 達哉VS勇(勇死亡)
投下作品って試験作品じゃなかったのか。
なんかナオミの作品の奴で残り8人とか言ってたし。
直ぐに調子に乗る。直ぐにクタバル辺りがリアルで勇らしいな。
試験作品として廃棄するのには惜しい気もする
あと勇哀れwwwwwwwwww
試験段階とかいってたらまた進まないよ
順番上手いこと調整して本編扱いでいいんじゃね?
暗い。
街灯の灯りすら掻き消され、この街が死んでいるということをまざまざと見せ付けられる。
静寂が支配する細い路地をライドウは走っていた。
独り、でだ。
いつも傍らにいるゴウトとはついさっき逸れてしまったのだ。
出来るだけ足音を立てないように、誰にも気配を悟られないように十分な気を回して走る。
この時ばかりは自分が羽織っている真っ黒なマントに感謝した。
普段はあくまでも身に着けている武器を隠すためだけの飾り物だが、今は闇夜にまぎれることが出来る。
もうゲームは始まっている。
そして、このゲームに乗った人間もいるということを彼は知っていた。
自分と同じくらいの背丈の男が、通りかかった路地裏で死んでいたのだ。
それも強烈な火力で焼かれ、かろうじて留めていた骨格で性別と身長が解るだけという壮絶な死に様だ。
ライドウは葛葉の里での過酷な修行を潜り抜け、
「十四代目葛葉ライドウ」の名を襲名後、年齢不相応の修羅場を潜り抜けてきたつもりだったが、
こんなにも容赦の無い殺し方を目の当たりにしたのは初めてだった。
しかもやったのはおそらく自分と同じ人間。このエリアなら悪魔ではないはず。
先ほど集められた教室にいたのは殆どが自分と同じ年頃の少年少女…。
軍人等に代表される戦い慣れた人種は殆ど見受けられなかった。
極限の状態で人は何処まで残酷になれるのか…。
そんな永遠に解けない謎を考えている時間は無い。
何しろ、先ほど見た死体を作った人間以外にやる気になっている男もいたのだ。
その男は白い学生服を身に纏い、たまたま鉢合わせになったライドウに向かって、
何の躊躇も無く、いきなり無差別魔法を叩き込んで来たのである。
そしてこの状況で奴は何を考えているのか高笑いしながら自らを「魔神皇」と名乗った。
そしてライドウのことを「最初の生贄」とも。
この言葉からライドウと出会う前に既に死んでいたあの男を殺した者では無いということが伺える。
兎に角、逃げるのに必死で詳しい顔の造詣や持っている武器を確認している暇は無かったが、
奴が投げかけた、暗い狂気に駆られた眼を忘れることは今後絶対に無いだろう。
それに皇を名乗るだけあってかなりの使い手だ。
あの魔法以外にも切り札をいくつも持っていると考えるのが無難だ。
いきなり恐ろしい敵に当たってしまい、その時うかつにもゴウトと逸れてしまったのである。
魔神皇と名乗った男や、黒焦げの男を仕留めた相手の対策もそうだが、
どうにかしてゴウトと再び合流しなければならない。
連絡を取る手段が全く無い状況下でどうやって合流するかは皆目見当つかないが…。
(まだ、追ってきているかもしれない。)
ライドウは走りながら背後をちらりと振り返った。
果てしない闇が延々と続いている。
幸い、誰もいなかった。いや、気配を完全に殺しながら追って来ているのだろうか。
解らない。
今までもダークサマナーのラスプーチン、伽耶に憑きし者等、自分より格上の相手と戦うことはあったが、
それはあくまでも万端な準備の上での話だ。
今は最大の武器である仲魔も、愛用の刀も銃も抜き取られた丸腰状態な上、彼は魔法という能力が無いのである。
一応武器は支給されていたがライドウにそれを使いこなせる自信は無かった。
支給された武器はクロスボウ。
上手く使えば猛獣を一撃で仕留めることも可能な優れものだが、装填に時間がかかり、この暗闇では狙いも定め難い。
第一、彼はクロスボウに触れるのが初めてなのである。
これを使おうにも先程のようにいきなり魔法をぶつけられたら終わりだ。
事態は最悪だった…。
「ライドウ、ライドウだろ?」
細心の注意を払い、直角の曲がり角を曲がった所で自分を呼ぶ声が聞こえた。
ライドウは咄嗟に身構えたが、それはよく知っている人物の声だったので、ほんの少しだけ気を緩めた。
「鳴海さん…?」
「そうだ。こっちこっち。」
ライドウの横にある古いビルの裏口と思われる錆びたドアがかすかに開き、
見知った天パ頭の男が顔を出し、小さく手招きした。
(本当に鳴海さんだ…。)
声にこそ出さなかったが、ライドウはこのゲームが始まって以来初めてほっと胸を撫で下ろした。
自分と同様、魔法の力が一切無い鳴海と合流したからとは言え、
依然自分が死と隣り合わせであることに変わりは無いが、
それでも信頼を置ける人物と同行出来るのは精神的に大きな支えとなる。
ライドウはそのビルのドアに向かって歩いた。
鳴海に招かれたビルの中は、乱雑としていた。
元はオフィスだったのだろう。事務用机や本棚はいくつかあったが、
書類は床にばら撒かれ、ファイルや雑誌の類も滅茶苦茶に転がっていた。
しかも壁に血糊がべったりと着いており、こんな所でも死闘が繰り広げられたのかと思ったが、
その血糊は乾き、既に黒く変色しているので少なくともこのゲームには関係の無いものだろう。
鳴海はライドウが中に入るとすぐさまドアを閉め、厳重に鍵を掛けた。
その上で重い本棚と机で厳重なバリケードを作る。
よく見ると全ての窓にも同じように塞がれていた。
そして、バリケードを作る鳴海の右腕は負傷しており、
腕まくりをして布の切れ端で止血をしていた。
「どうしたんですか、その傷…」
「あぁ、ちょっとな。」
それ以上は言わなかった。だが、他の誰かにやられたことは明確だし、
そもそも説明の付かないような事態なのだから仕方が無い。
ライドウはそれ以上のことは詮索しないことにした。
感染症等の心配はあるが、すでに血が止まっており、
本人も足取り一つ乱さずに動き回っていることから致命傷には至らなかったようだ。
「ライドウ、先に確認しておくぞ。お前、このゲームに乗るのか? 乗らないのか?」
バリケードを完成させ、こちらに向き直った鳴海は鋭い視線を向けた。
それは今までに見たことが無い、こちらを射抜くような眼であった。
じっと見つめながら、鳴海は密かにズボンのポケットに手を忍ばせていた。
おそらく、ポケットの中に鳴海に支給された武器が入っているのだろう。
ポケットに入る大きさだから、武器は折りたたみ式のナイフか、爆薬の類か…。
ライドウは息を呑んだ。答え方によっては鳴海とすら殺しあわなければいけない。
本当は自分自身、急な襲撃を受けた上、頼りにしていたゴウトと逸れ、混乱してしまい、
この先のことなんて考えている余裕は無かったが、鳴海と戦うのは避けたかった。
だからこう答えた。
「どうにかして逃げる方法を考えています。
僕は誰であろうと殺したくはありません…。」
数秒の沈黙があった。その間、二人は視線をかち合わせたまま微動だにしなかった。
だが、先に動いたのは鳴海の方だ。
「はぁー、良かった〜。」
「??」
いきなり緊張を解き、鋭い視線からいつもの気の抜けた鳴海に戻り、
ライドウは男の心境の変化に付いて行けずきょとんとしてしまった。
「鳴海さん?」
「もしお前が乗り気だったらどうしようかと思ってたよ。
お前に本気で掛かって来られたら絶対に勝てる気がしないもんなぁ。
いざと言う時はこいつを使って逃げようと思ってたんだよ。ま、冗談だけど。
お前を信じてたよ、ライドウ。」
いかにも軽く演じられた口調を作りそう言いながら、
鳴海はポケットの中にある自分に支給されたらしき武器を取り出した。それは小さな丸い爆弾のような物である。
手榴弾だったとしたらかなり精度の高い武器になるが、残念ながらそれはただの煙玉である。
単に大きな破裂音が出て大量の煙が出るだけの物なのだから、眼くらまし程度には使えそうだが武器としては落第だ。
「と、言うことは鳴海さんも逃げようと思ってたんですか?」
「…あぁ、まあな。」
最初からそう決めていたとは思えない端切れの悪い返事だ。
この男との付き合いは長いが、どうにも読めないところがある。
いつもはチャランポランだが急に真剣になったり、大概の面倒ごとは自分に押し付けると思ったら、自分から率先して危ない橋を渡ろうとしたり…。
「それで、だ。」
ライドウが突っ込む前に鳴海は勝手に話し始めた。
「此処に来て最初に出会ったのがお前で本当に安心したよ。
実は此処にたどり着く前にちょっと拾いものがあったんだ。会ってくれないか?」
言いながら鳴海は背後にある崩れかけた階段をくいっと指差した。
どうやらその人物は上の階にいるらしい。
「はぁ、いいですけど…」
さっさと名前を出さない辺り、顔見知りでこのゲームに参加させられた人物、タヱか伽耶では無いのだろう。
はたしてそれは安全な人物なのだろうか。信用は出来るのか? どうして鳴海と一緒にいるのか?
様々な疑問がライドウの頭を駆け巡ったが、此処でじっとはしていられない。
それにほぼ丸腰の状態で鳴海と別れ、外に出ることはもっと危険だ。
またさっきの魔神皇に襲われるかもしれない。
…その人物に会うしか無かった。
ライドウは鳴海に促されるまま、後を追い、暗い階段を上る。
ビルの二階に上がり、一つの扉の前で鳴海はノックする。出来るだけ響かないようにゆっくりと。
「誰?」
中から静かな少女の声が聞こえた。いかにも大人しそうで、まるで伽耶のような…。
「俺だ…鳴海だ。信用の置ける仲間を連れてきた。開けてくれないか?」
「鳴海さん…? はい、ちょっと待って下さい。」
中から小走りな足音が聞こえ、ゆっくりと、慎重にドアの鍵が外され、ノブが内側から回された。
恐る恐るほんの少しだけドアが開き、中から蒼白な顔の少女が顔を出す。
真っ黒な髪を肩の辺りで切りそろえ、眼鏡を掛けている。
細面で色の白い顔は、知性的で整っており、美しくもあった。
だが表情は怯え気っており、潤んだような眼で鳴海とライドウを交互に見合わせていた。
「こちらはさっき話した俺の部下の葛葉ライドウ。
大丈夫だ。こいつもこのゲームには乗らないって言ってくれた。」
「……。」
無言の少女にライドウは静かに語りかけた。
「いきなりこんなことになって見知らぬ人間を信じろってのは無理だと思う。
だけど、鳴海さんが大丈夫って言ってる以上、僕は貴女を殺したりはしない。それだけは約束します。」
しばし少女はライドウを不安そうに見つめていたが、ややあってドアを開けると二人を部屋に入れた。
「私、赤根沢レイコと言います…。さっき鳴海さんに助けていただいて。」
レイコという少女は伏し目がちにそう言った。
とりあえずここまで投下します。お粗末様でした。
一応今までの流れを取り入れた展開にしてみましたがどうでしょう?
こんな感じで良ければ近い内に続きを投下します。
もしダメだと思ったらスルーしてください。
417です。
すみません。大ミスを発見してしまいました。
達哉と勇が交戦したのは青葉公園でしたね…すみません勝手に路地裏に変換してました。
ライドウは青葉公園を通ったということにしておいて下さい。
申し訳ありませんでした。
>>414-417 (cレ ゚∀゚レ<葛葉乙ドウ対超力GJ団!
そういえば玲子と伽耶って同学年且つ参加者最年少(高一)なんだよな……。
続きも超力期待してます。
420 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/20(火) 12:03:28 ID:mMgSjfL3
ライドウキタワァ(*゚∀゚*)超力GJ!!
レイコと名乗る少女の待機していた部屋は六畳程度の小さなものだが、おそらく居住区だったらしい。
畳が敷かれ、小さいながらも流し台とガスコンロが設置されていた。
だが随分と長い間誰も使っていなかったのだろう。他の家具らしい物は無く、また畳にうっすらと埃を被っていた。
畳と同じく天井の蛍光灯の傘にも埃をかぶっていたが、電球が壊れている。使い物にはならないだろう。
この殺風景な部屋にある物と言えば支給された黒い鞄が二つ、部屋の中央に転がっているだけだ。
ライドウも二人と同じ所に鞄を置いた。
鳴海は窓に掛かったカーテンをしっかりと閉じ直すと、鞄から簡易ランタンを取り出し灯を点けた。
うっすらと黄色い灯りが三人の顔を照らす。
鳴海とライドウは畳に上がる時も靴を脱がなかった。レイコも同じだ。
この非常識な状況である。何かが起こればすぐに逃げ出せるような配慮だ。
ようやく形だけでも落ち着いた所で三人は腰を下ろし、鞄に入っていたルールブックを見ながら状況を整理した。
このスマルという街は浮遊しており、脱出はほぼ無理であること。
ゲームの主催者は不明。だが自在に爆破出来る呪いの刻印を一度に多数設置出来ることからかなりの使い手だということ。
参加者の名前だけは数十人全員分、ルールブックに挟んであった名簿に載っているが、
ライドウの知っている人物は鳴海とタヱと伽耶、そして今目の前にいるレイコという少女だ。
ゲームの制限時間は72時間で、その間に参加者は殺し合いをし、最後の一人になったところでゲームは終了。
その一人だけはこの街を脱出出来、一つだけ何でも願い事を叶えてもらえるらしい。
だが24時間の間に一人も死者が出なかった場合は全員の刻印が爆発する。
武器は何を使ってもかまわないが支給されている物は完全にランダム。ただし、魔法や悪魔を使役するのは可。
簡単に言うとこんなものだ。
街が空に浮き、首に刻印が付いている以上逃げるのはほぼ不可能である。
状況を確認した所で事態が好転するわけでは無かった。
それにライドウは見ず知らずの人間を殺すことに抵抗が大きい。
鳴海も、このレイコという少女を殺さずに助けたことから同じなのだろう。
だが鳴海はどうしてこの少女を…?
「俺たちが出会った経緯を話しておくよ。」
ライドウが疑問を口にする前にその本人から説明を始めた。
赤根沢レイコが飛ばされた先は青葉公園という大規模な公園だった。
近代的なスマル市においても緑を多く取り入れ、遊歩道の幅も広く見通しも良い。
つまり、ここにいる限り、自分が飛び道具でどこから狙われても仕方が無いということだ。
突然なことで頭の中はパニック寸前だったが、自分が開始早々かなり危険な状況であることだけは理解出来た。
レイコは足元に転がっている鞄を拾い、隠れることの出来そうな物陰を探した。
周囲には観葉植物が丁寧に植林されている花壇くらいしか見当たらないが、こんなだだっ広い道の真ん中で突っ立っているよりはマシだろう。
レイコはそちらに向かって歩き出した。
周囲をきょろきょろと見回し、花壇を覗き込む。だが、その時先客を見つけてレイコは悲鳴を上げそうになった。
頭部が大きく禿げ上がり、スーツを着た一人の中年男がそこに身を潜めていたのである。
「こ、声を上げないでくれっ。わ、私は半谷、聖エルミン学園の教頭だ…!」
半谷という男も参加者なのだろうが、いかにも脆弱でこの状況に混乱しているようだった。
だがレイコは見逃さなかった。男の手が、自分の背中に忍ばせられているということに。
「今騒がれたらそれを聞いて人が集まってしまうからねぇ!」
男は冷酷に顔を歪ませると、支給された武器、手持ちの電動ドリルを振り上げた。
その時、レイコと同じく青葉公園に飛ばされた鳴海は、見晴らしの良い木の上によじ登り、小型の双眼鏡で周囲を見渡していた。
この双眼鏡は支給された武器では無く、鳴海の私物だ。一応彼は探偵を名乗っており、これは彼の仕事に必要不可欠な物なのだ。
「お?」
双眼鏡に、一人の少女が写った。年齢は彼の部下であるライドウより少し年下だろう。
青いブレザーとストライプのスカート姿で、眼鏡を掛けている。
かなり美しい少女だったが、長髪好みの鳴海に反してショートヘアなのが残念である。
少女はしきりに後ろを警戒しながら走っていた。その後を追うのはドリルを片手にした中年男である。
無抵抗な女の子を凶器を持って追いかけるとは、普通なら見過ごせない状況である。しかし今は普通ではない。
しばらく様子を見ようと思っていたが、鳴海はあることに気づいた。
追いかけられている少女が、かなり強力な力を秘めていることである。
どういう力かは説明に困るが、何か強大な神のようなものが彼女の背後に見える気がするのである。
対して男の方は何の力も持たない一般人だ。おそらく少女の能力についても気づいていないと思われる。
この少女が本気を出せば一瞬で相手の息の根を止めることが可能だ。そもそも潜在能力自体が違い過ぎるのである。
だが少女は逃げるばかりで攻撃をする素振りが全く無かった。
(何かありそうだな。)
この時の鳴海の行動はかなり無謀だったと思う。
だが、ひょっとしたらこの少女の存在が、ゲームを下りる何かのきっかけになるのではないかと直感したのである。
逃げる少女と、それを追うドリルの男。二人は何と都合の良い事か、鳴海のいる木の方向に向かって走ってきた。
いつもながら、自分のずば抜けた幸運さに感謝を忘れない。
鳴海は音を出来るだけ立てないように木の枝を一本折った。あまり曲がっていない、丈夫な枝を選んで。
そして頃合を見計らい、槍投げの要領でその枝を男に向かって投げつけたのだ。
「うわっ!」
男は急な襲撃に声を上げた。情けない悲鳴である。
本当は顔面を狙ったつもりだったが、当たったのはドリルを持っている方とは逆の左腕である。
こんな即席の枝が刺さるとは思っていなかったが、狙いがずれたのはいささかショックである。
いつも肉弾戦は部下に任せきりだからか、こうも腕が鈍ってしまっていたとは…。
次から、少しは自分でも現場に赴くことにしようと心に決めながら鳴海は木の上から飛び降りた。
突然上から降ってきた謎の人物に男だけではなく、追われていた少女も驚いたようだが、その隙に鳴海は男の懐に詰め寄った。
「なっ何だね君は! やるのかね? このドリルと! せっかく一人獲物を見つけたのに!」
間近に見ると男はいかにも邪悪そうな顔つきをしている。だが何の威風も感じさせない小者特有のいやらしい顔立ちだ。
例えばもし、この男が自分の学校の教師だったりしたら、すぐに転校を考える所である。そんな面構えだ。
もうこれだけで良かった。鳴海にとってはこの顔だけで手加減しないで済む理由になった。
「どう見たってお前が悪役にしか見えないんでね。」
「き…貴様ぁ!」
男は鳴海の軽口に一瞬で激昂し、無茶苦茶にドリルを振り回してきた。
「うおっ!」
思っていたよりも身軽な動きで迫ってくる。少々相手を舐め過ぎていたようだ。
後退しながら鳴海はポケットに突っ込んだ拳の感覚を確かめていた。その時うっかり、男のドリルの先端を右腕に掠めてしまった。
傷は大して深く無いようだが、動脈に触れたのだろう。血が派手に吹き出した。
「おぉ、やったぞ!」
その流血に男は歓喜し、油断したのである。これも小者特有の浅はかさで鳴海は安心した。
「やってないから。」
小さくそう呟くと、最速の動きで鳴海は拳を男の腹にぶつけた。
ガードの仕方すら心得ていない男の無防備な腹部に拳はめり込み、男は汚らしい反吐を吐きながらその場に崩れた。
鳴海の拳には鞄の中に入っていた黒く、何かの文様が掘り込まれたメリケンサックが嵌められていたのである。
それで力いっぱい殴られたのだから、男はたまらない。
念のためうつ伏せで倒れる男を爪先で小突いて確かめたが完全に気絶しているようだった。
「あの…」
その一部始終を眺めていた少女が不安げに鳴海を覗き込んだ。彼女の視線はどちらかと言うと鳴海本人よりも腕の傷が気になるらしい。
だが、鳴海はあえて違うことを言った。
「大丈夫、殺してはいないよ。」
ただ、鳴海の計算では男が目覚めるのは数時間後だろうから、ここに放っておくのは危険だろうが、そこまで面倒を見ていられない。
(事実その数分後、たまたまそこを通りかかった新田勇によって男はあっさりと止めを刺されるのだが、そんなこと鳴海の知る由も無かった。)
「とにかく逃げるぞ。」
鳴海はまだ戸惑いを拭い切れていない少女の腕を強引に掴むと走り出した。
調子に乗って、早速続きを投下しました。
ゲーム本編では殆ど語られない、鳴海さんの活躍を書けて楽しかったです。
新作乙です!超GJ!軽快な感じがしていいですね。
あのニートが国士無双以外の場で輝いてる!
レイコ可愛いよレイコ
あとライドウいいよライドウ
ハンニャはリスト外キャラの参加だけど、噛ませ犬だからそのまま参加者扱いでもいい気もする。
これ以降の続きが会ったら是非!!
(cレ ゚∀゚レ<今日二回目の葛葉乙ライ対超力GJ団!
キャラの個性が出てて本当に上手い…。
更に続きを超力希望です。
ライドウ編書いてる者なんですが、
リストに無い般若を勝手に出してよかったのかどうか悩んでいたので、
426さんの意見を聞いて安心しました。
また調子に乗って投下します。
ルールまとめと疑問点
・基本はバトロワ
・舞台は浮上スマル市全域(鳴海区は無し)
・首輪の変わりに呪いの刻印(機能は首輪とほぼ同じ?)
・参加者はスマル市のどこかにランダム転送
・支給品は武器+アイテム(アタックナイフ+傷薬5個 コルトボニー+魔石 な感じ?)
・悪魔が出現する場所がある(ギガ・マッチョなんかのダンジョンだった場所ってことでいいかな?)
・神殿の有無は?(個人的には無しのほうがいいと思う)
・噂は現実になるか?
・武器の調達は可能か?(白石に武器が落ちてたり東亜ディフェンスに防具があったりするか)
こんなところか?
鳴海とレイコの出会った経緯はこれで解った。
何とも鳴海らしい判断の仕方で、この状況下でも変わり無いように見える彼に少し安心したライドウである。
だが、彼の話の中から一つのことが気に掛かった。
「お二人の事情は解りましたが鳴海さん、貴方が使ったというメリケンサックは何処で手に入れたんですか?」
全員に配布されているルールブックを読む限り、支給される武器は各自最大で一つのはずだ。
だから鳴海の武器はあの煙玉ですでに枠が埋まっているはずなのだが…。
そう言えばそうだと、レイコも鳴海の顔を見やった。
もしかしてレイコと出会う前に、鳴海は既に誰かを殺し、武器を奪っていたのでは…?
そんな疑問が頭をよぎる。
当の鳴海は二人の視線に、居心地が悪そうな素振りで後ろ頭を掻いた。
「それが俺にも解らないんだよ。最初から煙玉なんかと一緒に入ってたもんだし。」
その口調から、嘘を言っているようには見えなかった。
「ちょっと見せてもらえませんか?」
「あぁ。」
手を差し出すライドウに、鳴海は例のメリケンサックを放った。ライドウはそれを上手くキャッチするとじっと観察する。
……もしやと思っていたが、無骨な鋼の表面に掘り込まれた文様を見て確信した。
彼らが根城にしている矢来区筑土町にある金王屋という骨董品店の地下に住んでいる、
マッドサイエンティストのヴィクトル博士が以前言っていた。
いつか悪魔の召還・合体を簡略化出来る小型の機械を発明したいと。
おそらく、これは博士が言っていた機械の亜種に違い無い。表面に彫られた文様が、葛葉に伝わる封魔の文字と酷似していたからだ。
「…これはおそらく悪魔を使役するための道具です。僕の管みたいな。」
「やったじゃないかライドウ、それを使えば…!」
悪魔召還師が悪魔を使役出来れば鬼に金棒である。かなりの戦力が見込めるということだ。
単純にそう思った鳴海は嬉しそうに身を乗り出した。だが、ライドウの表情は曇っていた。
「残念ながらこれは僕には使えません。これは…僕の管と規格があまりにも違いすぎる。
おそらくこれは、僕以外のサマナーが自分に合わせて作らせた物でしょう。」
ライドウの口からそう聞いた鳴海はがっくりと肩を落とした。レイコも心なしか残念そうな表情だ。
「だが、こいつは格闘用には使えるな。俺が持っておくよ。」
鳴海はすぐに気を取り直して楽天的にそう言うと、ライドウの手からメリケンサックをひょいと取った。
確かに、剣技と射撃を集中的に修行してきたライドウよりも軍隊格闘を身に着けている鳴海が持っていたほうがいいだろう。
まさかいかにも頭脳戦専門に見えるレイコに使いこなせるとは思えない。無難な選択だった。
「で、ライドウの方はどうだった?」
「僕の方は…。」
ライドウは謎の教室から見知らぬ街の通りに転送され、此処に至った経緯を話した。
まともに使いこなせる武器が無いからひたすら逃げ回っていたこと。
既にやる気になっている人物が最低二人はいるということ。
その一人は青葉公園で一人焼き殺している。
そしてもう一人は、自らを「魔神皇」と名乗っていたということ…。
その「魔神皇」という言葉を聞いてレイコがぴくりと反応した。
「葛葉さん、その人とは何処で会ったんですか? 教えてください!」
レイコの剣幕は今までと違っていた。依然顔色が悪いことに変わりは無いが、鬼気迫るものがあった。
ライドウはレイコの突然の変化に驚きを隠せなかった。だが、静かに首を横に振った。
「すみません、僕も逃げるのに必死だったので…それに大切な仲間ともその時逸れてしまい…。」
「そう…ですか…。」
レイコは眼を伏せた。複雑で、曇った表情だった。
「その魔神皇とやら、レイコちゃんと何か関係があるのかい?」
こういう時、鳴海のような率直な性格が心底羨ましいとライドウは常々思っていた。
自分にはこうもあっさり疑問を投げかけることは出来ないからだ。
レイコは少し間を置いた後、ほんの少しだけ顔を上げて途切れ途切れに話し始めた。
「あまり…あまり話したことは無いのですが…私のかけがえの無い人なんです…。
どうしてあんな風になってしまうまで、私に打ち明けてくれなかったのか…それが気がかりなんです。」
ライドウと鳴海はお互いの顔を見合わせた。
レイコと魔神皇との決定的な関係こそ解らない言い回しだが、おそらく二人はかなり深い絆で結ばれているのだろう。
だが薄くもやが掛かっているような彼女の表情から、さすがの鳴海もこれ以上のことを聞き出すことは出来なかった。
レイコはしばらく押し黙っていたが、ふいに顔を二人に向きなおし、今までで一番はっきりとした声で言い放った。
「鳴海さん、葛葉さん、私…魔神皇…彼を説得します。」
「無茶だ!」
ライドウは眼を見開き、レイコの肩を掴んだ。
普段、感情を押し殺し、表情すら殆ど変えないライドウにしてはあまりにも珍し過ぎる反応だった。
魔神皇の力を目の当たりにしたからこそ、ライドウはそう言えるのだろう。
「貴女は魔神皇の恐ろしさを知らないからそんなことが言えるんだ! あの男は…危険過ぎる…!」
先刻、ライドウと鉢合わせした時に、何の躊躇も無く魔法を浴びせかけてきた。
そして高笑い。まるでいじめられっ子が急に圧倒的な力を手にし、いじめっ子をいたぶるかのような。
殺戮が嬉しそうで仕方が無かった。
何より恐ろしかったのはあの眼である。慈愛など欠片も無く、ただ、狂気に打ち震えているようだった。
それを説得だなんて、あまりにも無謀すぎる。見つかった瞬間に消されるのが落ちだ。
だがレイコも折れなかった。
「でも私には、出来ると思うんです! いえ、私にしか出来ないんです、彼を助けることが!」
魔神皇を助ける? どういう事だ? レイコは続けた。
「それに…自分の身は自分で守ります…私の武器、これなんです。」
レイコは肩に掛かったライドウの手を払うと、自分のバッグから一振りの刀を取り出した。
脇差と呼ばれる短い刀だった。ライドウが愛用していた太刀のように居合いには向かないが、その分小回りが利く刀である。
「だがしかし…!」
言葉を言いかけた所で、ライドウはがばっと立ち上がった。
そして、徐にレイコの脇差を奪い取ると、カーテンの閉じられた窓を開き、そのまま外に飛び出した。
レイコは言葉を失い、鳴海も窓から半身を乗り出して何度も彼の名を呼んだが、ライドウは戻って来なかった。
「クソっ…。一体何だってんだ!」
ライドウの勝手な行動に苛立った鳴海は、錆びた窓枠を殴りつけた。
遠い所で声が聞こえた。あまりにも儚く、鳴海とレイコには聞こえなかったのだろう。
それくらい遠い所からだったが、鍛え抜かれた聴力を持つライドウにははっきりと聞こえた。
まだ少年と言ってもいいような男の声で、確かにこう言っていた。
『みんな聞いてくれ! 僕たちには殺しあう必要なんて…』
その先は銃声のようなけたたましい音で掻き消された。声の主は生きているのか、殺されてしまったのか…。
だが、まだ生きていたとしても何と無謀な…!
やる気になっている者の存在を知っている以上、ライドウは動かずにはいられなかった。
自分たち以外にも、人を殺すことに躊躇っている人物がいる…!
彼を死なせるわけには行かない…!
ライドウは自分の身も十分に危険な状態であることすら忘れ、脇差を片手に声のした方に向かって走った。
432 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/21(水) 13:26:45 ID:dRoENYmL
>>428 GJです。パッションモードのライドウktkr!!
しかも切ない上に続きが気になるナイス展開とは……。
応援してます。
>>429 個人的見解。
>神殿
無しの方がわかりやすいけど、ゲームの進行や、死者数の増加に伴って出現しても楽しいかも。
>噂システム
あったら面白いかもしれないけど、
使い方次第ではバランスを崩壊させたり、洒落にならなくなりそうだから、
今回は『無し』にしておいた方がいいかもしれない。
>武器&防具
個人的にありだと思うけど、これも使い方次第ではバランスが滅茶苦茶になりそうで怖い。
特定の一人、または特定一チームが強力な武器&防具拾いまくりなんて展開になったりしたら……。
ところでペルソナ1キャラとたまきは高校生版? 2に従って社会人版?
今、書きかけの作品が高校生版なので、やばかったら破棄しなくては……。
(*'∀`*)
>>432 ペル1のキャラは高校生でいいんじゃないのかな?
高校生の方が多分動かしやすいと思うし、思い入れの強い人が多いと思う。
ここからは個人的な趣味だけど、彼らはまだ高校生だから達哉たちには出会ってないけど
達哉たちは南条やエリーを知ってたりしたら物語により深みが出るかと…。
桐島英理子が転送されたのは若者向けの店が立ち並ぶ繁華街だった。
「ここは夢崎区ですわね」
何度か来たことがあるが、いつも若者で溢れた活気のある街だった。
―今はその面影しか見られないが。
どこに敵が隠れているか分からない。常に周りを警戒しつつ、慎重に歩を進める。
しばらく進むと、目の前に人影が見えた。ペルソナの共鳴も感じる。
(これはLuckyかもしれませんわね)
前方から歩いてくるのは、金髪碧眼の端正な顔立ちをした少女。制服から、七姉妹学園の生徒だと分かった。
(交換留学生かしら?)向こうもこちらに気付いたようだ。警戒する素振りを見せている。
「Hey、I'm not your enemy.Please chill out,and listen to me.You have persona,Dont you?If you won't take part in this game,Please lend your hand to me.」
留学生とはいえ、流暢に日本語を話すのは難しいだろう。ここは英語の方がより意志の伝達をはかれると思い、帰国子女の恵理子は英語で話し掛けた。
しかし…
「ちょ、ちょっと待ってよ。あなた日本人でしょ?日本語で話してよ」
「Oh,sorry.英語圏の方じゃなかったのですね…」
「違うよ、私は日本語しか話せない。金髪碧眼なら英語が話せて当然なの?見た目で判断しないでよ…」
彼女の両親はアメリカ人だが日本に帰化しており、生まれてからずっと日本で暮らしてきた彼女は全く英語が話せない。それがコンプレックスでもあるのだ。
「本当にごめんなさい。勝手に決め付けて…嫌味に聞こえたかもしれませんわね…」
目の前の女性が深く頭を下げる。長い髪を後ろで一つにまとめ、整った顔立ちと背が高くすらりとしたスタイルの女性。
「あ…こちらこそごめん。強い言い方しちゃったね」
気にしていることだったため、ついキツイ反応をしてしまった。
「私はリサ・シルバーマン。あなたは?その制服、エルミンのだよね?」
「ええ、私は桐島英理子。よろしくね、Lisa。参加者の中に共に戦っていたpersona使いがいたので、探していますの。」
英理子の名前を聞いて、リサは驚きを隠せない様子だった。
「え、エリーさん…?」
「確かに私はEllieと呼ばれていますが、なぜそれを?」
英理子が訝りながら尋ねる。
リサは説明した。以前英理子と会ったことがあること、その英理子は大学生でモデルのバイトをやっていたこと。
セベクスキャンダルはリサのいた世界では3年前の出来事であること。
そして二人はそれぞれの経験した事件、仲間達について語りあった。
場所は、無人のファーストフード店。
二人は向かい合って座っている。「一体どういうことなんだろう?」
「Umm...もしかしたら、あの主催者は時空を越えて参加者を召喚したのかもしれませんわね。学園には明らかに昔の服装をしてる人もいましたし、Lisaの言うように亡くなった方が生き返ったのもそれで説明がつくと思いますわ。」
「そんな相手に…対抗できるのかな?」
一つの無人の空間をつくり、そこに様々な時代、場所から人を呼び出し、全員に死の刻印を押す。それは"神"の如き力を持つ者にしかできない所業に思える。「分かりません。でもみんなの力を合わせればきっと…」
不安げに目を伏せるリサに、英理子は優しく微笑む。
「そうだよね!情人(チンヤン)や、摩耶ちゃん、それにエリーさんの仲間だっているんだもん」
「Of course!みんなを探して、早くこのgameを終わらせましょう」
希望はある。英理子もリサも、強大な相手に立ち向かったのはこれが最初ではない。
仲間の捜索を続けるため、二人は立ち上がり、外に出て歩きだす。
それを見つめる影があることに、二人は気付かなかった。
「ふふっ…あはははは」
大きな娯楽施設の屋上に彼女はいた。
橘千晶。若い、細身の少女。長い髪が風にふかれてなびいている。
そのか弱げな見た目とは裏腹に、彼女の内には他者を踏み付ける残虐さが渦巻いているのだ。
死のゲーム。
全員で殺し合い、弱いものは淘汰されていく。そして最後に残った最も強いものが栄光を受ける。
それは弱肉強食のコトワリを求める彼女には世界の本来あるべき姿に思えた。
(力こそが正義。自分では何もできない弱い者に生きる価値などないわ。)
だからこそ、このゲームに勝つ。弱者を殺し尽くし自分が新たな世界を作る。
(私にはその力がある)
「千晶様。二人、見つけました。女です。悪魔を連れてはいませんが、不思議な力を感じます。」
哄笑する千晶の背後に二体の天使が降り立つ。
力を見せ付け、理想を語ることで従わせた仲魔である。
「そう…」
行こう。弱い者を糧にして新たな創世の"神"の力を得るのだ。
とりあえずここまで。続きは今日中に投下します。駄文非常に失礼しました。
ルール談義はよく読んだつもりですが、破綻や問題点があれば指摘してやって下さい。
「ここにはさ、いいカフェがあるんだ。元の世界に戻ったらエリーさんも彼と来なよー。それから、ムー大陸でプリクラとったりゾディアックで踊ったり…」
二人は談笑しながら歩いている。その様子は自然で、とても殺し合いのフィールドにいるとは思えない。
「わ、私と彼はまだそんな関係じゃありませんわ。それに、彼には…」
あまりよい出会いではなかったこの二人を結び付けたのは、片思いの相手がいるという共通点だった。
「恋愛はね、諦めちゃったらそこで終わりなんだよ。友達がライバルだからって自分の気持ちに嘘をついちゃだめ。」
「…そうですわね。自分を偽らない女になると決めたのですもの…」
そんな他愛もない会話をしながら街を探索する二人の前に、一人の少女が立っていた。
「あ、エリーさん、見て!あの子も参加者じゃない?おーい!」
リサは手を振って、目の前の青いワンピースを着た少女に駆け寄る。
「Wait!Lisa!この気配は…」
「小娘が、千晶様に馴々しく話し掛けるな!」
リサと少女の間の距離が数mほどに縮まったとき、天使が現れ、手にもった槍でリサに襲い掛かった。
「痛っ…」咄嗟に防御の姿勢がとれず、足を貫かれた。
殺すのではなく動きを止めるのが目的だったのだろう。
「Persona!」
それを見た英理子は急いでペルソナ能力を発動する。
現れたのは白い翼を背に生やしたギリシアの勝利の女神、ニケー。相対する天使とは違い、金属でできているかのような無機質な姿をしている。
ニケーの出現と同時に激しい風が巻き起こり、刄となって天使に襲い掛かる。
天使は素早く舞い上がり、後退することで難を逃れた。
その間に、英理子はリサに駆け寄る。
二人の様子を見下すような眼差しで見つめる千晶。
その左右には脇を固めるように二体の天使が浮かんでいる。
一体は赤い鎧を身につけた兵士の様な姿。先程リサを攻撃した天使である。
もう一体は聖職者のような衣をまとい、十字架のついた杖を持っている。
「力天使Powerに権天使Principality…Demonを従えるなんて…」
「その力…面白いわね。あなたたちからなら、たくさんマガツヒが取れそうだわ」
もう一度二人に襲い掛かろうとする天使達を手で制し、千晶が静かに言う。
「マガツヒ…?こんなことをして、何が目的ですの!?」
「ゲームに勝つことよ。当たり前じゃない。そして、私は新しい世界を創るの。」
「それがあなたの願いだと…?そのために他の人を殺すなど、許されるはずがありませんわ!」
「弱い者は死んで当然。私が神になるのに、何の許しを得る必要があるの?さあ、美しいヨスガの世界のための糧になりなさい」
千晶の合図で再び天使達が武器を構える。
「ふざけないでよ…」
リサがよろめきながら立ち上がる。
「変な野望抱いちゃってさ、ダサいんだよ。私は死ぬわけにいかない。あんたや主催者を倒して情人と…達哉と一緒に帰るんだから!こんなとこで負けられない!」
リサの叫びに呼応して、一人の女神が姿を現す。
美の女神ヴィーナス。千晶に向けて手を差し伸べ、水撃を放つ。
「マハガルーラ!」
英理子もまたペルソナを使い、リサの援護を行う。
旋風と激しい水流とが千晶達に迫る。(No、これでは倒せない…威力が十分ではない…)
千晶がどんな力を持っているかは分からないが、天使達の力だけを考えればかなわない相手ではない。
反撃にそなえ、防御魔法をリサのために唱えようとする英理子。
しばらくは防戦につとめ、隙を見て一気に叩く。戦いを長引かせたくはないが、今のところこれが一番よい戦い方だろう
「…待って、エリーさん!マハアクエス!」
(これなら繋げられる…!)
エリーを止め、リサは急いでペルソナを使う。
二つ目の水撃が先行する風と水とに追い付いたとき、それは起きた。
合体魔法、疾駆水爪破。
大量の水が疾風によって駆ける。元の魔法の何十倍もの威力となって天使達や千晶、そして周囲の建物や地面までをも切り裂く。
「ぐああああっ」「ば…馬鹿な…」
高圧の水に全身を引き裂かれ、二体の天使はシュウシュウと音を立て、消滅した。
「や…やったの…?」
まだ轟音をたててうずまいている水流を眺め、リサがへたりこむ
「Oh,やりましたわね、Lisa!魔法を組み合わせて威力を上げるとは、fantasticですわ!」
リサははしゃぐ英理子の方に振り向き、笑おうとした。
ゴキッ
「…Lisa?」
大きな黒いものがリサの頭部を覆い、音がした。黒いものが彼女の頭部を離すと、その身体は力なく崩れ落ちた。
顔はありえない方向を向いている。その青い目は光を失い、口元はまだ英理子に笑いかけようとしたままだ。
首が…折れている。即死だった。
「残念だったわね」
「No…No!Lisa!どうしてこんな…」
その黒いものは、腕だった。そしてその持ち主は…
魔丞千晶。
もはや彼女は人間とは言えない。悪魔の力を得た異形の存在。彼女のもといた世界で、牛頭天王によって与えられた力である。
かつて片腕があった場所から黒い触手を生やし、髪は白く変化している。
先程の合体魔法でやられたらしく、変化していない方の腕は肘のあたりからなくなっていた。
「ここまでやるとは、正直驚いたわ。でも、それだけね」
英理子は、泣いていた。状況が分からず、ただリサを呼び続けている。
つい先程まで一緒に笑いあっていた。10年も前から思いを寄せる彼のことを熱く語り、彼との結婚も夢見ていた彼女なのに…
リサの遺体から、赤いエネルギーの流れが出て、その流れは千晶に流れこんでいる。
「ずいぶんな量ね。向こうでは集めるのに苦労したけど、こっちではすぐに集まりそう」
そして、泣き続けている英理子を軽く殴り飛ばす。
数m飛ばされ、建物の残骸に叩きつけられた。どこかを切ったのか頭からは血が流れている。
「そんなに悲しまなくていいわ。すぐにあなたも殺してあげる」
「あ…」
ようやく身の危険に気付いた英理子は千晶に背を向け、遮二無二走りだした。
「馬鹿ね…」千晶は変化した腕を伸ばす。それは物凄いスピードで英理子を追い掛けた。
英理子は支給品のナイフを投げ付け、何とか逃げ切ろうとする。
黒い触手はそれを軽く弾き、追跡を続ける。
そしてその腕が英理子に届く寸前、英理子の前に扉が現れ、彼女はその中に駆け込んだ。
触手はその扉に阻まれ、扉自体もすぐに消えた。
開扉の実
戦闘から100%離脱できるアイテムで、支給品の中にあったものだ。
逃げられたことに気付いた千晶は、軽く舌打ちした。
まあいい。また新たな獲物を探すだけだ
自身の損傷は大したことはないし、仲魔はいくらでも調達できる。
もうマガツヒの放出を終えたリサの遺体を一瞥し、歩きだす。
その足取りに、迷いはない。
以上です。他の書き手さんに比べて稚拙な文章で本当に申し訳ないm(__)m
>>435-444 稚拙だなんてとんでもない、GJ!
前半だけ見て「美少女コンビ結成ktkr」と癒されてたけど、
千晶様を見て、これぞバトロワと思ってしまった……。
健気なエリーとリサの姿が切ないと同時に千晶様恐ろしすぎ。いい意味で。
これからの話も楽しみにしてます。
>>434 dクス! その方向で書かせて頂きます。
>>444 GJ!!
今まとめサイトなるものを作ろうとしてるんだけど、
ちょっと思ったんだけど、書いた物の中で出てきた人物を明記してない書き手さんもいて、
シリーズ総合だから、誰なのか把握しづらいところもある
なので、最後に作中に登場した人物の現在状態を書いてみるというのはどうだろう?
例えば、【新田勇(真3):死亡 死亡位置:青葉公園】とか
【桐島英理子(ペル1):軽症 所持品:開扉の実(1つ使用)、ナイフ 現在位置:繁華街より逃亡】
のように、誰がどうなっていて、何を持っててこれから向かう先は…
といった感じで追記しておけば、次に書く方のリレーがしやすいかと
特に考えてない場合は、現在生存か死亡かだけでもいいかと
447 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/21(水) 21:19:14 ID:Gbae4MbD
,r'゙ ,r' , ; `ヽ、
,ノ, ( ;' ,ッリ ミ゙`ヽ、
,:' 'i, ゙〈 ,、ソ′ ハ ヽ
/,r' ,: // , 、 ゙!
|ハ | i 'f゙,!r ,: , ノ,! ,'、 、:、 ,;i.!
l,i い 从l | r',ィ,ィン'゙八いミヾ`ミ、 ,:jli!'゙|
ヽ,、 i`ミ_゙L_ヾレ'゙,,ニ-ー─-`T、 '' ,!
l `'iミ rTかヽ ´ '゙でZン `tr'.ヾ、,; ノ
`ーr゙! "´ .i ` リイj.ノ' |
ヾ! / _ 'oノ゙ /
゙; ヽ__ /i"i, ;<゙
. \ 'ー-‐` r' ;' .メ; tゝ
i\ `´ ,/ _.L、-! リ
"!;\_,.、-''ヂニ-:'''""ノレ'i,
/!`!ハ 「´,.、 ,)レ,r'⌒リ、-L_
_,,,...、:-‐(!,!,',ii:| ! ,フ_',.r'゙-''"´-<、..,,_`¨`''ー-、、,,_
,.、-‐'ニ=-‐''"´ `'-'iii L''ニ-‐'''"´ ``'''ー--:、..,,_
rニ-‐''"´_,,..、:-‐ ヽ、 iii _,、-''ニニ''ー--:、,,___
||| r‐'''"´,r',ニニヽヽ ヽ iii _,.、-''"-''"´c=三``ー─---, )
童貞に処女を捧げて、孕まされました。
>>446 こんな感じでいいですかね?以降書く場合には最後に付け加えるようにします。
【リサ・シルバーマン(ペルソナ2罪)】
状態 死亡(橘千晶が殺害)
降魔ペルソナ ヴィーナス
所持品 ?(夢崎区 死亡場所に放置)
【桐島英理子(女神異聞録ペルソナ)】
状態 頭に軽い傷 精神的ショック
降魔ペルソナ ニケー
所持品 ナイフ、開扉の実(消費) ?
現在地 夢崎区繁華街より逃亡
行動方針 夢崎区から離れ、仲間を探す。
【橘千晶(真女神転生3)】
状態 片腕損傷
仲魔 なし(パワー、プリンシパリティ消滅)
所持品 ?
現在地 夢崎区
行動方針 皆殺し
まとめサイトを作成して下さった方有難うございます。
非常にわかりやすくてGJです。
そして書き手の皆さん、良作の数々乙です。
自分はほぼ読むだけの人間になりそうですが、最後までこっそり見守らせていただきたいです。
登場人数は見せしめ一人(不明)と半谷教頭(ペル1)を含めて全44人かな?
で、現時点で死亡者は教頭・勇・リサの3人。見せしめ含めて4人?(?のナオミ含まず)
どうでもいい話だけど、見せしめは誰なんだろう。
>>392のような、チャーリーやランチにも見えるような、ifの男主人公にも見えるような。
>392のような、は>392にあるようにマークのような、の誤りです。
392さん、失礼致しました。
頑張って二日目までデビサマ組は生き残るように描かないとダメ?
いま宮本あたり使って書いてるんだが。
453 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/21(水) 23:52:05 ID:LR+MT1ZQ
>>449 超乙!見やすいし、すごく上手にまとめてありますね。
>>450 リストのキャラが主役級やラスボス級が多いんで、かませ犬程度のキャラ追加は有りでいってほしいと思います。なのでまだ参加者が増えるかもしれません。
見せしめは知人の参加者にあまり精神的影響がないように非参戦作品の人間かスレのどこかで出てたようにサトミタタダシ辺りがいいのではないかと…
>>452 まとめてる時にわかったことなんだが
作中に『2日目』とあるのは2日目第3話としてまとめたものだけ
2日目1話としてまとめたものには「八人らしいわ」とあるから
42人中残り8名になるまで1日目夕刻までに殺しまくらないと繋がらん
が、製作者も含めて意義が無ければいいんじゃまいか?
「こう変更しよう」と後から書き直ししても個人的にはかまわんと思う
辺りに響く電子音の混ざった声を聞いたとき、心底馬鹿げていると思った。
自分は軍人でも自衛官でもない。しかし周りには敵だらけのこの状況下で
わざわざ自分の居場所を知らせるような行為がどれほど無謀かということくらい
考えずとも理解できる。おまけにそんな危険を冒してまですることが、仲間集めだという。
下らない。本当に下らない。
生き残りたいのであれば、言われたとおりに殺しあえばいいだろう。
連中の体格や格好からしてこの環境下で生き残るためにそれなりの力があることは
簡単に見て取れた。ルールに従うことこそ彼らにとってここから脱出するための最善の策であるはずだ。
なのに何故、あのような愚かな行為にでるのか。
「施し・・・か?」
思わず言葉が出る。
そういえば、あの連中に似た人間を、自分は知っている。
ほんの少しの時間だが、行動をともにしていた男の一人。どんな人間だろうと、いや悪魔だろうと
「助けてやる」のが好きだった男。
連中もおそらくそれと同じだ。他人を助けることがまるで自分に与えられた使命であるかのように
振る舞う人種。
だがそういった奴らはまるで気づいていない。
その行為が、相手にどれほどの屈辱を与えているかということに。
人に手を差し伸べられた瞬間に、互いの優劣関係ははっきりと決定してしまう。
助けられた人間は、否応無しに弱者の枠に放り込まれてしまうのだ。
そこから出たくてもがく者にも奴らは「施し」を与える。己の自己満足のために。
―――――――反吐が出る。
気がつけば、手には支給された銃があった。そうだ。連中には思い知らせてやらねばならない。
同じくリュックの中にあった弾丸を込める。目の前の傲慢な男を消し去るために。
狙いを定めたとき、まだ男の演説は続いていた。
改めて相手の姿をよく見る。白を主とした装束に、青地の部分には十字の紋章。
メシア教徒とかいう集団の格好だ。奴らもまた、己の嫌悪の対象であった。
神などというものに縋り、自らの力で立とうとしない者達。弱者の枠に入ることを望む者たち。
もう何の躊躇いも無かった。いつも悪魔を狩るときと同じように、引き金を引いた。
男が倒れこんだ。放った弾が命中したのだ。
自分にはそれほど高い狙撃能力は備わっていないため、どこに当たったかはわからない。
だがこれで男の死は確定のものとなった。奴の体は、これからゆっくりと固まり、やがて動かなくなるだろう。
しかし達成感に浸るのはまだ早い。もう一人の、黄色いスーツに身を包んだ長髪の男が、こちらに銃を向けている。
こちらの存在に気付かれたのでは、弾を当てることは想定した相手の力量からして難しいことだろう。
だが、こんなところでやられるわけにはいかない。
生き残り、元の世界に戻り、あの男をこの手で倒すまでは。
と、銃を構えた男の手が、自分が撃った男の手に引かれるのが見えた。
自らの死を悟り、最後の言葉でも残そうとでも言うのか。それとも、まさか。
この状況下、奴はまだ他人に――こちらに「施し」を与えようというのか。
こちらがまだ、自分が助けてやるべき弱い存在に見えているとでも?
全身に、憤怒の熱が走った気がした。もう一発当ててやろうとかとも思ったが、わずかに残った冷静さがそれを押しとどめた。
死ぬことが決まっている相手にわざわざ限られた物資を使うことは無い。このゲームがいつまで続くかはわからないのだから。
2人の間で何かがまとまったのか、先ほど銃を構えていた男がこちらに向かってきた。
何発か銃弾を放ったものの、やはり全て慣れた動きでかわされてしまった。
接近戦ともなればおそらく自分に勝ち目は無い。軽く舌打ちをして、とにかく先ほどの男を仕留めたような
状況を作り出すため、後退した。
452さんの疑問、私も思っていることです。
他の方が書いてるSSに出てくるキャラは他の人が勝手に殺していいものなのでしょうか?
それ以前に、他の書き手が出されているキャラは
別の書き手が先の展開を書いていいものかどうかが気になります。
私もそうですが、既にどのキャラが誰にどう殺されるかとかまで考えている場合、
他の書き手が勝手に殺してしまったら、細かい矛盾点などが出るような気がします。
それもリレー小説の醍醐味とも思うのですが、
書き手のキャラ被りを皆さんがどう思っているのかをお聞きしたいです。
余談ですが私の構想では三日目の午前中には鳴海もライドウも死んでいるつもりです。
もし、この二人のどちらかでも優勝候補になっているSS投下予定の書き手さんがいらっしゃった場合、
展開を変えてバトンタッチする形式にした方がよろしいでしょうか?
例えば、「○○が出てくるSSを投下したい」という感じの予告を先に書き込んで、
そのキャラの登場するSSを先に書いている書き手さんの意見を聞くとか…。
それとも、一度出したキャラは一人の書き手が最期まで書ききった方がいいのでしょうか?
書き手としてちょっと疑問に思ったので質問させていただきます。
しばらく進んでいると、高い木が密集している場所が見えた。あそこなら身を隠す場などいくらでもあるはずだ。
そう思い、中に駆け込む。だがすぐにそこが最悪の場所であることに気付いた。
地面を踏んだ感覚が先ほどまでと全く違う。木に覆われて日の光がほとんど当たらないせいか
相当ぬかるんでしまっている。これでは身を隠したところで足跡により居場所が簡単に特定されるであろうことは
明白であった。さてどうするか。
少し考えた結果、森の入り口付近で奴がここに近づいた瞬間狙撃することを決めた。
これ以上無駄に動き回るのも得策ではないだろう。大木の影に位置取り、石化弾を込めた銃を
入り口付近に向けて構える。弾丸の残りの数を考慮しても、チャンスは一度きりだ。
銃を握った腕に無意識に力が入る。来た、奴だ。
長髪の男は手に銃を持ったまま、辺りを見回している。まだ奴の警戒は高い。撃つ時ではない。
幸い森の外の地面は砂利が多く、足跡は残っていない。奴がこちらを見つけられずに
気を緩める瞬間は必ず来る。その一瞬を逃さなければ、必ず勝てる。
あんな男と行動をともにしていたのだ。奴にはこちらを積極的に殺そうという意思は無いはずなのだから。
そして、ついにその瞬間が訪れた。
男が手の銃を腰周りのホルスターにしまい、踵を返したのだ。
それを見て、己の勝利を確信した。奴が銃弾を受け倒れる姿が、鮮明に頭の中に浮かんだ。
いける。必ずやれる。
逸る気持ちを抑え、引き金を引こうとした。――――だが。
「――――っ!?」
突如、右手の甲に鈍い痛みが走った。手が痺れ、構えた銃を思わず落としてしまった。
何が起こったのか分からず、思わず声を上げてしまわなかったのは奇跡に近かった。
まだわずかに痺れる手で再び銃を取り、男がいた方向に再び構えたものの、既にその姿は消えていた。
確実に仕留められたはずの相手を取り逃がしたことに対し、ち、と舌打ちをした。
先ほどまでの高揚感が消え、冷静になった頭であたりを見回す。
と、足元に拳より少し小さい程度の石を見つけた。湿った土が上部についている。つまり今までここにあった石ではない。
どうやら敵を狙撃しようとした自分を妨害したものがいるらしい。
奴の仲間か、と思ったがすぐその考えを打ち消した。
ここで妨害するくらいなら白装束の男を狙った時点で行動するはずだ。
ならば相手は第三者、それも妨害に投石などという手段を使ったことから、おそらく飛び道具を所持していない。
しかも近くにいるはずだ。石は右手に当たった。ならば相手は東側にいる。
仕留めそこなった相手を深追いするよりも、そちらの方を狙った方が確実だ。
何より、確実な勝利を妨害した報いを受けさせねばならない。
まだ見えない敵を追い、森の中を進んだ。
長髪の男と違って、今度の相手はかなりの素人であるらしい。
石が飛んできたと思われる方角を進むと、自分がさっきまでいた場所とは逆方向に進んだ足跡を見つけた。
わずかな正義感を奮い立たせ石を当てたはいいものの、反撃を恐れて足跡のことすら気付かず逃げた、
そんなところであろう。だがいかに素人であったとしても参加者であることに変わりは無い。
殺さなければゲームは進まないのだ。躊躇など微塵も感じなかった。
やがて、続いていた足跡の終わりが見えた。大木の手前で止まり、木の周りを
半周したような跡になっている。その向こうに足跡は続いていない。
逃げることを諦め、身を隠してやり過ごそうとしたのか。だがあまりにお粗末だ。
「そこにいるのはわかってる」
大木のほうに銃口を向け、警告する。
「自分のやったことの責任くらいちゃんと取らないとな?今出てきたら、楽に死ねるぜ?」
返事は無い。相手が死を恐れて逃げだのであれば当然の結果だ。
少しの間膠着状態が続いたものの、さっさと終わらせようと思い、行動に出ることにした。
警告はもう与えない。ゆっくりと一歩ずつ大木のほうへ近づく。
相手が足音を聞いて逃げ出したとしても、追いついて仕留める自信は十分にあった。
一歩、また一歩と敵のほうへ進んでいく。
と、突然大木のほうから人影が現れた。相手が出てくるとは思っていなかったので
少し驚いたものの、すぐ先ほどまでの余裕を取り戻し、相手がどのような人物かを観察する。
予想通り、手には銃器の類は持っていない。支給されたリュックを肩にかけているだけだ。
薄汚れたジャケットにハーフパンツと、明らかに戦士の容貌とは程遠い服装。
ややくせのある短い髪の、自分と同じか、あるいは少し年下であろうと思われる少年だった。
むしゃくしゃしてやった。
>>345-351のカオスヒーローサイドなら何でもいいと思った。
今は反省している。続きはまた後日投下させていただきます。
COMPはランダム云々言ってるけどつまり元より持ってた奴でも
ランダムで持ってない状態でスタートするってこと?
あと、COMPの中身の悪魔は全部消えた状態なのか?
>460 乙
窓の鍵、そしてカーテンもしっかりと閉じられた部屋で、鳴海は壁を背に腕時計を見た。
既にライドウが飛び出して一時間が経過している。
あの十四代目葛葉ライドウの名を欲しいままにしている少年がすぐにくたばるとは思えない。
だが鳴海は、自分とレイコに何も告げずに勝手に飛び出したという行為そのものに苛立ちを隠せずにいた。
レイコも無言で下ばかり見つめている。
一応、彼女とはもしライドウが帰ってこなかった場合、どうするかを簡単に話し合った。
先ほど小規模だが騒ぎを起こしてしまったのでこのビルが完全に安全というわけでは無くなった。
だがギリギリまでは待つ。だがそれは夜明けまでが限界だ。
日が昇ればそれだけ視界が明るくなり、またやる気になっている連中も動きやすくなるだろう。
時間が経てば経つほど危険度は増すのだ。
夜明けが来れば此処を出る。書置きは残さない。
自分たちが出た後、ライドウが戻ってくる前に他の人間に見られたら非常に危険だからだ。
互いの連絡方法を最優先で決めておけば良かった…。鳴海は少し後悔した。
……。
全く、何を考えてるんだあいつは。帰ってきたらまずは一発ガツンとぶん殴ってやろう。
部下に手を上げるのは信条に反するが仕方が無い。これくらいの教育は必要だよな。
それから説教だな。
『何で勝手に出て行ったんだ!』『何も言わずに出て行って、俺たちのことがそんなに信用出来ないのか?』
『俺たちがどれだけ心配したと思ってんだ、お前は!』
…まぁ、こんな感じでいいだろう。それにしても俺、クサい台詞が似合わないのな…。
鳴海は窓のカーテンを指で少しだけ開き、外の様子を伺った。だが、その路地には人っ子一人いない。
本当に死んでいるような暗闇が続き、吸い込まれてしまいそうなブラックホールを連想させた。
ライドウはさっきの声が聞こえた方向に向かって走っていた。
だが、地理が解るどころか見知らぬ街な上、この街が本当に自分の知っている日本の何処かなのかも疑問に思い始めた。
最初に集められた教室のような部屋でも不思議に感じていた。
まるで見たことの無いような異国の服を着た者がいたのだ。
海外からの情報が豊富に入ってくるようになった大正の世だが、あんな格好は見たことが無い。
…と、最初は思っていたのだが、ライドウはあることを予感していた。
以前、伽耶に憑きし者を倒すために入ったアカラナ回廊で帝都の未来を見たとき、あのような服を見たのである。
細かいデザインは違うが、同じ時代の物に違い無い。
と、言うことは、時空を超えて参加者がこのスマル市という街に集められたということになる。
そう理解した時、ライドウはこの地獄のようなゲームを降りる方法を思いついたのだ。
このゲームを主催している連中と同じ方法で脱出が出来ないだろうか。
脱出後、首に纏わりついた呪いはどうなるのか、自分の実力では一体何人連れて行くことが可能なのか…。
そもそも天津金木が手元に無い以上、時空を移動するだけのエネルギーをどうやって手に入れればいいのか…。
色々な問題点はあるが、出来るだけ早い段階で多くの人間を脱出させたい。
そう、さっき戦う意思の無いことを大声で宣言していた男のような者達を…。
ライドウは辺りを見渡した。あの声の主はもういないのだろうか。それと、銃を撃った者も…。
騒ぎの直後だと言うのに異様な静けさである。風の一つも無い。
声の主を探し、鳴海たちの所へ連れて行こう。そう思ったが、これでは探すことすら出来なかった。
と、その時道の端で何かの塊が蹲っているのが見え、足を止めた。
「これは…。」
それは、女の死体だった。まだ若い女だ。
いかにも良家の出身者と言った服装で、傍らに彼女の私物だろうと思われるベレー帽が落ちている。
表情は眼を大きく見開き、元は美しい造型の顔だっただろうに、恐怖によって醜く歪められていた。
そして、腹部には大きな傷が口を開いていた。この傷の形状はどう見ても刃物による刺し傷だ。
血が、まだ乾いていないのだから、殺されてそれ程経っていないのだろう。
ライドウは刀の柄に手を掛けた。彼女が殺されてまだ時間が経っていないということは、
まだ殺した犯人が近くにいる可能性を示唆しているということなのだ。
いつでも刀を抜けるような体勢で、ライドウは歩みを進めた。
ライドウが少し進んだ所でまたも人影を見た。それもまた、女だった。
緑がかった灰色のブラウスとスカート姿で、頭の上に赤いリボン、首にはチェーンを繋げたコンパクトを着けていた。
道の真ん中で立っており、何やらうつろな表情で独語をぶつぶつと呟いている。
かなり混乱した様子で体は小刻みに震え、しきりに自分に言い聞かせるような独語は徐々に大きくなっていった。
彼女の手に血の付いた包丁が握られているのを確認したライドウはとっさに物陰に身を隠した。
彼女が、さっきの死体の女に手を掛けたのだろうか…。ライドウは様子を伺った。
「どうしよう…本当に刺さっちゃったよ…。どうしようどうしよう…あたし…。
あの人の話、どうして聞いてあげなかったのかしら…でも、でも…あの人だってナイフ持ってたのよ…。
だけど、信じてあげれば…あげれば…こんなんじゃあたし…どうしう…どう…。」
少女の独語がぴたりと止まった。それから首のコンパクトを握り締める。
「こんなんじゃあたし、もう!」
少女が突如言葉にならない言葉を大きな声で叫び、コンパクトの鎖を引きちぎり、地面に落とした。
それから包丁を両手で握り直し、刃先を自分の喉に向けた。
「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!」
まずい、そう思いライドウが止めに入ろうと飛び出したが、間に合わなかった。
駆け寄り、包丁を奪おうと手を伸ばした瞬間、少女はカッと眼を見開き、手にした包丁を力いっぱい喉笛辺りに突き刺したのだ。
少女の首から血が勢いよく吹き出し、もろにライドウの顔面に浴びせかかった。顔だけではない。マントにも、帽子にも…。
まるで熱いシャワーのように感じたが視界が真っ赤に染まり、それが湯ではなく血なのだということを思い知らされた。
血が地面に叩きつけられる水音と、少女の割れた喉からひゅーひゅーと空気が漏れる音が響きの中、自分の血だまりの中へがっくりと膝を落とし、そのまま仰向けに倒れる。
ライドウが顔の血を拭い、少女に手を伸ばしたが既に事切れてしまっていた。
だが、鮮血だけはしばらく吹き零れ続け、血の海を広め続けた。
ライドウも、成す術も無くその場に膝を落とした…。
以下数レス借ります
ザ・ヒーローは転送が完了してすぐ近くの民家に身を隠した。
まずは一緒に送られてきた鞄を開ける。
食料、地図、ルールブック・・・そして武器とアイテム。
武器とアイテムはランダムといっていたのを思い出した。
つまりスタートラインは同じではないということだ。
自分に支給された武器を確認する。
最初はあたりを引いたと思った。
大型の拳銃だと・・・。
しかし、違った。
トリガーはあるが銃口が無い、弾倉も無い・・・。
調べていると説明書があるのに気づいた。
その説明書によればこれはガンタイプコンピュータ・・・通称GUMPというらしい。
ざっと読んだところ、自分の使っていたアームターミナルの小型軽量版というところか。
説明書に従いトリガーを引きGUMPを展開する。
悪魔は入っていない。
機能は・・・アナライズにオートマッピング。ここまでは自分の使っていたアームターミナルと同じだった。
しかし「悪魔合体」と「インストールソフト」
大掛かりな機械なしで合体を行える機能とさまざまな機能を付け加えることのできる機能。
インストールソフトのほうはソフトが無いのでどうしようもないが合体のほうはありがたい。
ここに邪教の館があるとも思えない。
召喚アイテムを支給されたものの中では有利といえよう。
次にアイテムを確認する。
マグネタイトが3000・・・交渉と召喚に使えということだろうか。
「・・・・・」
これからどうするべきか?
ザ・ヒーローは考える。
進んで虐殺するつもりも無いが黙って殺されるわけには行かない。
そうするとまずは自衛手段の確保が最優先か。
自分の武器がこれで有る以上悪魔の出現する場所に出向かねばならない。
すぐに使える武器が必要だ。
主催者はパラレルワールドといっていたが看板の文字などは日本語だ。
つまりここは日本・・・いや、元日本というべきか。
つまり銃器の入手は絶望的といえる。
となれば現実的に見て調達可能なのはナイフや鉄パイプ、よければ刀といったところか。
民家でも包丁くらいはあるだろう・・・あとは水道か何かに使われている鉄パイプを引っこ抜ければ・・・。
台所に向かう。
予想通り包丁はあっさり入手できた。
鉄パイプもネジが硬く苦戦したがドライバーを見つけなんとか分解に成功した。
次だ。
地図を広げるこのあたりで悪魔が出る場所・・・ざっと周りと照らし合わせてみる。
どうやらここは港南区というらしい。
最も近いのは・・・廃工場。
どうして私がこの場所にいるのかわらなかった。
地下の牢獄で殺されるのを待つはずなのに。
呪いで殺される男を見て恐怖した。
落ち着いて考えてみるとそうではないことに気が付いた。
私は死ななくてはならない存在だ。
私には自殺する勇気など無い。
これで殺してもらえる・・・。
私はふらふらと歩き始めた。
見たことも無い町並みだ。
大きな敷地を取った建物を見つけた。
地図で確認すると悪魔が出る場所のようだ。
悪魔・・・それがどんなもの中は私にはわからない。
しかし、人よりも確実に殺してくれるだろう。
そう思った私は扉を開けた。
かなり重い鉄の扉だったがなんとか開いた。
その時はすぐに訪れた。
「クスクス・・・ニンゲンだぁ・・・」
「ねぇどうする?どうする?」
「決まってんじゃん・・・やっちゃおーよ」
そんな声が聞こえて、悪魔は私の目の前に現れた。
小さな妖精のような悪魔・・・しかし私に敵意を向けているようだ。
「いけぇええええええ!」
妖精たちがこちらに飛んできた。
ああ・・・これで死ねる。
私はそっと目を閉じた。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
いつまでたっても衝撃は来なかった。
そっと目を開く。
そこにいたのは2匹の倒れた妖精とおびえている1匹の妖精。
そして一人の青年だった。
彼は妖精とと何か話している。
いや、妖精が彼に命乞いをしているというのが正しい。
彼は言った。
「君が僕らに危害を加えないなら殺す理由は無い」
「僕に協力してくれないか」
妖精は彼のその言葉に安堵した表情をし、一言言った。
「アタシは妖精ピクシー、こんごともよろしく」
するとその妖精はその場から消えていった。
小さなころ元気だったお父様はよく異国の絵本を読んでくださった。
物語の最後で王子様はお姫様を助け出す。
こちらを振り向いた彼は私にこう言った。
「死にに来たのか?」
見透かされた気がした。
私は小さくうなずいた。
「そうか」
彼はため息と共にそう言った。
理由は聞いてこなかった。
「名前は?」
彼は尋ねた。
「・・・大道寺・・・伽耶」
私の声は思ったより落ち着いていた。
もっと震えるかと思ったのに。
彼は再び口を開く
「僕は君を殺さないし、目の前で死んでもらうのも迷惑だ」
「しかし、ここで君と別れても後味が悪い」
「だから一緒に行動しないか」
彼は私に手を差し伸べた。
昔読んだ絵本の王子様。
今目の前にいる彼
王子様に助けられるお姫様。
彼に助けられた私。
自分から死にに来たお姫様は鉄パイプを持った王子様に助けられた。
私は気づいたら彼の手を取っていた。
少しだけ生きたいと思った。
せめて明後日の誕生日までは・・・。
ザ・ヒーローは安堵していた。
交渉がうまくいったことにだ。
悪魔とも・・・彼女ともだ。
特に彼女の扱い。
目の前で死なれても困る。ほおっても置けない。
ましてや自分で殺すわけにもいかない。しかしこのゲームのルール上信用しきるのもまずい。
改めて自分の中途半端さが嫌になるが性分だ、仕方が無いと割り切る。
そこで彼は保護兼監視の名目で彼女に同行を求めた。
結果は成功。
彼女が生きるか死ぬかは彼女が決めることだ。
彼女がどうしても死にたいというのならば自分にとめることはできない。
ましてこのゲームだ、死にたくなくても死ぬかもしれない。
彼女を連れて戦力を増強し生き残る・・・。
自ら上げてしまったハードルだ、越えて見せよう。
ザ・ヒーローは鉄パイプを握る手に力をこめた。
彼の天秤はまだ揺らがない・・・。
【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態 正常
所持品 鉄パイプ 包丁 ドライバー他小型工具 ガンタイプコンピューター
仲魔 妖精ピクシー
現在地 港南区 廃工場第一区画
行動指針 自衛手段の確保 大道寺伽耶の保護と監視
【大道寺伽耶(デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
所持品 ?
現在地 港南区 廃工場第一区画
行動方針 ザ・ヒーローについていく 生きたいが死ななければならないと思っている
ついに夜が明けてしまった。カーテンの隙間から微かな光が差し込み、外から小鳥の囀りが聞こえる。
普通の日常なら、すがすがしい朝である。最も、鳴海がこの時間に起きていることは滅多に無いのだが…。
そして、美しい朝日すらぶち壊す放送が町中に響き渡った。
昨日集められた部屋で聞かされた放送と同じ男の声だ。
声は昨日の内に死んだ人間の名前と人数を告げ、その後に「ちょっと少ないな…まぁ、これから頑張ってくれたまえ」と零した。
鳴海は遊んでいるようなその口ぶりにむっとしたが、自分にはどうすることも出来ない。
それに結局、ライドウは帰ってこなかった。
カーテンを開き、周囲を見渡したが誰もいない。もう帰っては来ないだろう。
ライドウが今何処で何をしているのかも解らない。
本当はもう少し待っていたかったが、これ以上此処に留まるのは危険だった。
「レイコちゃん、行こうか。」
ずっと膝を抱えて座っていたレイコが顔を上げ、鳴海にいかにも悲しそうな眼を向けて小さく頷いた。
彼女もまた、辛いのだ。
「あ…」
窓をちらりと見たレイコが眼鏡のずれを直して外を見つめた。
「鳴海さん、あれ…!」
レイコが初めて見せる慌てた様相で窓の外を指差した。指を差すと同時に、いてもたってもいられないように、
もう片方の手で鳴海のベストの裾を引っ張る。
鳴海が外を見ると、見慣れた人物が遠くから歩いてきた。
黒いマントに学生帽。間違いない。ライドウである。
二人はびっくりした顔を見合わせると、有無を言わずに部屋を駆け出した。
「ライドウ!」
俯き加減で影を落とし、酔っ払いの様にふらふらとした足取りでライドウがこちらに向かって歩いてきていた。
帰ってきた彼には色々と聞きたいことが山ほどあったが、鳴海は彼の姿をまともに見た瞬間、息を呑んだ。
全身が血に塗れていたからだ。顔だけはぬぐってあるが、血色がかなり悪い。
元々色白の顔だが、まるで蝋人形のように生気の無い顔だった。
一体何がどうしてこんな状態になったのか…。
本当はぶん殴って、説教を聞かせるつもりでいた。だが、こんな姿を見せられたら鳴海の根性ではちょっと無理な話である。
掛ける言葉を捜しながら鳴海がライドウに近寄ろうとした瞬間、レイコが先に飛び出した。
そして、死んだ魚の眼をしたライドウに、平手打ちを食らわせたのだ。
「えぇっ!?」
声を上げたのは殴られたライドウではなく、何故か鳴海の方だった。
突如叩かれた頬を押さえながらライドウはレイコをまじまじと見つめた。
レイコは眉間に皺を寄せ、眉を吊り上げて感情をむき出しにした顔をしていた。
「どうして勝手に出て行ったんですか! そんなに私たちのことが信用出来ないんですか!?
私たちが…貴方が出て行った後、どれだけ心配したか…そんなこと貴方は考えなかったんですか!?」
「え…」
「私、ライドウさんは他の男子とちょっと違うって思ってたんです…。でも同じでした。
どうして男の子って、みんな勝手で人の気持ちなんか考えないで…相談もしないで一人で無茶をするのかしら。
私がどう思ってるのかなんて知りもしないくせに…」
「えっと…」
「…さぁ、これを持って!」
レイコは鳴海の持っている三人分の荷物を奪い取ると、どうしたらいいか困っているライドウにまとめて押し付けた。
「貴方が私たち全員の鞄を持っていたら、もう勝手に離れたりできないでしょ?」
そう言って、レイコはこの時初めて笑って見せた。
口元を小さく歪ませただけの、微かな笑顔だったが、それはライドウと鳴海を惹き付けるのに十分な微笑みであった。
ライドウの叩かれた頬はまだ熱を持っていたが、それは何故か心地よく、心に染み入るものがあった…。
【秦野久美子(デビルサマナー)】
状態 死亡(園村麻希が支給品の包丁で刺殺)
所持品 不明
死亡地点 青葉区の通り
【園村麻希(異聞録ペルソナ)】
状態 死亡(支給品の包丁で自殺)
ペルソナ 不明
所持品 調理用の包丁 道具不明
死亡地点 青葉区の通り
他の書き手さんとカキコ時間が被ってしまいまいた。すみません。
とりあえず、書き手側のルールがきちんと決まるまで、投下は此処でやめておきます。
読んでくれた方々、ありがとうございました。稚拙な文章でお眼汚し失礼しました。
書き忘れ
【葛葉ライドウ(超力兵団)】
状態 正常
武器 脇差 クロスボウ
道具 傷薬×2
現在地 青葉区廃ビル
行動指針 信頼出来る仲間を集めてゲームからの脱出
【鳴海昌平(超力兵団)】
武器 煙玉
道具 悪魔召還に使えると思われるメリケンサック チャクラチップ 宝玉
現在地 青葉区廃ビル
行動方針 ゲームからの脱出
【赤根沢玲子(if…)】
武器 無し
道具 不明
現在地 青葉区廃ビル
行動指針 魔神皇の説得 ゲームからの脱出
>>457 個人的な考えを書きます。
@SSの登場キャラは基本的に早いもの勝ち(書きたかったキャラが先に死んだりしても文句は言えない)
Aキャラの予約(〜を書きたい)は自由。この場合予約者が優先される
B他の書き手のSSで登場したキャラを書くのも自由(殺してもOK)
Cただし、元の書き手が「このキャラは最後までorこれ以降も書きたい」と言えばそれを優先。
私は達哉VS勇とリサ&英理子VS千晶の書き手なのですが、英理子や達哉のその後を誰か別の方が書いてくれてもかまいません。
ただ、構想はあるので達哉はまだ殺さないでほしいと思っています。
このような細かい要望でも書き手どうしで調整していけば大丈夫かと。
遅くなりましたがカオスヒーロー、ザ・ヒーロー、ライドウ編の方乙です!
>>461 〉COMPはランダムで持っていない状態でスタート
〉中身はリセット
〉余程特殊な召喚道具でない限り支給された人がそれを使える(持ち主登録も初期化されている)
私はこう思っています。それをふまえたSSを近いうちに投下するつもりなので、何か問題があれば指摘してもらえると嬉しいです。
――スマイル平坂。
普段は地域住民に親しまれる、活気のあるこのスーパーには、今は泣き声しか聞こえない。
その泣き声の主、朝倉タヱはぱっちりとした大きな瞳から溢れる涙をどうすることも出来ないまま泣いていた。
きっかけは、たった二十分程前の出来事だった。
タヱの目の前には、派手に彩られた青い髪とセーラー服が印象的な、あどけなさの残る少女が一人。
「ち、ち、チカリンはまだ死にたくないのですぅっ……!」
怯えた表情の少女は手にしていた鉄パイプを握り締め、突然タヱに襲いかかってきたのだ。
「きゃあっ!!」
タヱめがけて叩き付けられた鉄のパイプは床にカツンと音を立てるだけだった。
「に、逃げないで! お姉さん、チカリンのために死んで下さいまし!」
説得出来る状態じゃないと悟ったタヱが逃げようとするも、そこは一階へと下る階段。
タヱは血の気がひくのを感じた。
「も、もう逃げられないでですよぉ……。お願いです……チカリンの代わりに死んでください……!」
「いやあああっ!!」
そう、それはほんの一瞬の事だった。
青い髪の少女の華奢な体が宙を浮いたかと思うと、彼女はそのまま落下し、床に叩き付けられた。
真紅の水溜まりが床を満たしていく。
糸の切れた操り人形のように投げ捨てられていた少女は、
水溜まりの中心でぴくりとも動かなくなっていた。
「あ……あ……」
――私が殺したんだ……。
自分が、少女――上田知香を思わず突き飛ばしていたのだと
タヱは気付くや否や、その場でぺたりとへたり込んだ。
それからはただ泣くだけしかタヱには出来なかった。
ここはどこなのだろうか、とか
何でこんな事になったのだろうか、とか
どうすれば良いのだろうか、とか
今のタヱには何も考えられなかった。
ただ泣くことだけを、脳が命じているかのような錯覚さえ受けた。
「ねー。ここで転がってる青い髪の子殺したのあんたー?」
「こ、コラ、ネミッサちゃん! もう少しオブラートに包まなくちゃ……」
タヱの思考が現実に戻されたのは、その声によってだった。
「ちゃ、チャーオ♪ 泣いてたら、ウサギさんに笑われちゃうぞ」
声の主の内、一人は、銀髪に黒い服のどこか神秘的な雰囲気の少女、
もう一人は何故か兎の耳をつけた奇抜なファッション――少なくともタヱの瞳にはそう見える――の美女。
タヱは困惑と怯えの混じった眼差しで二人を見つめていた。
「で、どうなの? あんたがネミッサたちを殺す気なら、
今すぐに魔法どっかーんで感電死だけど……」
銀髪の少女がタヱを睨みつける。
「コラコラ。ネミッサちゃん! もうちょっとソフトな言い方しなくちゃダメだってば!」
兎の耳をつけた女性が銀髪の少女をたしなめ、タヱに微笑みながら優しく話しかける。
「大丈夫。私もネミッサちゃんも、貴方のことを意味もなく殺したりしないわ。
もしよければ、何か知ってることを教えてくれるかしら?」
「…………」
「…………」
「…………」
三人の間に沈黙が走る。その沈黙を破ったのはタヱだった。
「…………あたしが……殺したの」
「……!?」
「……」
兎の耳をつけた女性とネミッサは身構えたが、それ以上のことはしなかった。
相手がこちらの瞳を真っ直ぐに見つめながら、泣いているのに気が付いたからだ。
「殺すつもりなんてなかったし……殺したくなかった。
あの子、泣きながら鉄のパイプを振り回してきたの。
『まだ死にたくない』って言ってた」
ネミッサたちは黙ってそれを聞いていた。
「……あたし、あなたたちみたいに、相手に冷静に話しかけたり、説得なんて出来なかった……。
あたし、死にたくなくて……必死で逃げて……でも逃げられなくて……
そうしたら、襲ってきたあの子を、階段から突き落としてて…………っ……!!」
そこまで言うのが精一杯で、それから先は言葉にならなかった。
いつの間にか階段を上ってきたのだろうか。
泣きじゃくるタヱを、背の高い女性がまるで実の母親のように優しく撫で、ギュッと抱き締める。
「オッケー。わかったよ。でもアンタ、バカ正直だねー。
『あたしが来た瞬間に、この子が階段から落ちてきたんです〜』
とか適当に言っちゃえばよかったじゃん」
階段の下にいたネミッサはそのまま言葉を続けた。
「『あたしが殺したの』なんてさ、話の通じないヤツに言ったら速攻殺されちゃうよ」
女性の腕の中で抱き締められているタヱの体が、びくっとなった。
「でもネミッサは、アンタのこと気に入ったよ。馬鹿正直なのって嫌いじゃない。
アンタがノリノリで人を殺すようなヤツなら、アタシもその気で殺ってたよ。
少なくともアンタはその気じゃなかったみたいだし」
ネミッサも階段を身軽に駆け上ってきた。
「その分、舞耶やアタシはこの通り、話せばわかるよ。
どう? 一緒に来ない」
「本当にいいの……?」
「「もちろん!」」
舞耶とネミッサの声が綺麗に重なった。
「まあ、このネミッサ様がいるからにはこんな馬鹿げた事考えたヤツはボッコボコにしてやるからさ……で。はい、コレ」
ネミッサはくるくると棒状のお菓子を差し出した。
「? お菓子?」
「そう。さっき一階のお菓子売り場で拾った」
「私とネミッサちゃん、偶然何か食べられるものはないかなー、
ってお菓子売り場を探してるときに仲良くなっちゃって」
「これが戦利品ってわけ。食べられるものは食べれる時に栄養蓄えておかないとさー、
タヱも疲れて更に胸ペタンコになっちゃうよ?」
黙って聞いていたタヱだったが、ネミッサの何気無い一言に思わず頬が赤くなった。
「なっ!? 何よ! 今は胸なんて関係ないでしょ!!」
「無事帰れても、舞耶ぐらいおっきくなきゃ彼氏もガッカリするよ」
「ちょ、ネミッサちゃん!」
言葉を選ばないストレートなネミッサに、舞耶も頬を赤くした。
「いいの! あたし、大体、胸で女の子を選ぶような人なんて好きにならないもの!」
「わかってないなー。男はみんな狼なの」
「そ、そんなこと……!」
あたふたするタヱと、お菓子――俗にいう『うまい棒』だ――を頬張るネミッサを見つめ、舞耶はくすりと笑った。
「よしよし、元気になった上に、ネミッサちゃんと仲良くなってくれてお姉さんは嬉しいゾ!
えーと、あなたの名前は? 私は天野舞耶。で、この娘がネミッサちゃん」
「あたし、朝倉タヱ……。みんなには『葵鳥さん』って呼ばれ……」
「オッケー、タヱね」
「よろしくね、タヱちゃん!」
「タヱじゃないわよ! あたしは帝都新報の敏腕記者、朝倉葵鳥!!」
タヱのいきなりの激昂にネミッサと舞耶は驚いた。
先程の胸の件よりも更に怒っているようにも見える。
その姿には数分ほど前に泣いていた、か弱さはみじんもなかった。
「へ、変なヤツー! 今自分から『あたし、朝倉タヱ……』って言ったんじゃん!」
「最後まであなたと舞耶さんが聞いてなかったんじゃない!」
「いいの、キチョーさんじゃ言いにくいし、あんたが最初にタヱって言ったからタヱなの! 決まり!」
「もう……本当なら名刺をあげるところだけど、名刺の入った鞄がないんだもの。
好きに呼べばいいじゃない!」
タヱが、『結局ここでも葵鳥って呼ばれないのね……』と言わんばかりの表情でぷぅっとふくれた。
「じゃあタヱちゃんね!」
「それじゃ、コンゴトモヨロシクってことで!」
殺し合いの場であることを忘れるような、眩い笑い声がスマイル平坂に静かに響いた。
「そういえば舞耶さんの兎の耳って何?」
「これ? 可愛いでしょ?」
舞耶の自らの頭に装着された鉄製の兎の耳のようなものに注目が注がれる。
「かっなしいよねー。ウサ耳が防具だよ。ウサ耳。ネミッサも最初見た時には何も言えなかったもん」
ネミッサは呆れ顔で舞耶の耳をびよーんと引っ張った。
「たかがウサ耳、されどウサ耳! ウサ耳を笑う者はウサ耳に泣く!
このウサ耳だってきっと何かの役に立ってくれるわよ!」
「例えば?」
「んー。そうね…………。癒し系なところとか……」
さっきまでの笑い声は、乾いた笑いへと変わっていた。
「ウサ耳でも大丈夫! 武器がなくてもペルソナがあるわ!
ネミッサちゃんも魔法が使えるみたいだし……」
舞耶は何事もなかったかのように快活に振る舞った。
頭の上の兎の耳が虚しく揺れる。
「ペルソナ? 魔法?」
タヱは舞耶の揺れる耳に目もくれず、二人に聞き返す。
「もしかして、タヱ、そういうの使えない?」
「うん……二人は使えるの?」
急にまた、最初に出会った時のような不安そうな表情を浮かべるタヱに、
舞耶とネミッサは今度こそ上手い答え方が出来なかった。
「ま、まあね」
「でも武器次第でなんとでもなるわよ。タヱちゃんは武器、何だった?」
「あたしまだこの中身見てなくて……今開けてみるわね」
「猫耳やヒーホー人形だったらどうする?」
「カニ缶入ってないかな?」
好き放題言うネミッサと舞耶だが、これでもタヱの不安を取り除こうと必死なのだ。
「ふ、二人とも黙ってて! そんなもの本当に出てきちゃったらどうしてくれるのよ!! …………!?」
がさごそと袋の中を探るタヱの動きが止まった。
【朝倉タヱ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 やや正常、精神的に多少落ち込んでいる
武器 ?
道具 ?
現在地 平坂区のスマイル平坂
行動方針 舞耶とネミッサについていく、それ以降のことは落ち着いてから考える
【天野舞耶(ペルソナ2)】
防具 百七捨八式鉄耳
道具 ?、ポテトチップス(拾い物)
現在地 同上
行動方針 仲間を集め、脱出を目指す
【ネミッサ(ソウルハッカーズ)】
武器 ?
道具 ?、うまい棒二本(拾い物)
現在地 同上
行動指針 仲間を集めて、主催者を〆る
以上です。
普段全く文章を書かないので、読みづらく下手ですみません。
また、チカリンをあんな形で勝手に出してしまったこともお詫びいたします。
これからの皆様のGJ作品を楽しみに、これにて読み手に戻らせて頂きます。
>>480 乙!
どうしても見やすいマップが見つからなかったからざっと書いてみた
悪魔出現はゲーム中でダンジョンだったところ。
スマル市
蓮華台
町の中心に位置する
七姉妹学園、シルバーマン宅、アラヤ神社、本丸公園、民家多数
悪魔出現:七姉妹学園
平坂区
西側
春日山高校(地下に防空壕あり)民家多数
悪魔出現:春日山高校 スマイル平坂
夢崎区
北側
繁華街、店多し、消防署、パチンコ屋なんかもあったり
悪魔出現:GOLD(スポーツジム) ギガ・マッチョ(CDショップ) ムー大陸(ゲームセンター)ゾディアック(クラブ)
青葉区
東側
野外音楽堂公園 キャスメット出版 スマルTV等
悪魔出現:野外音楽堂公園 スマルTV(2F以降)
港南区
南側
海に面している、住宅多し 警察署あり
悪魔出現:廃工場 空の科学館
皆さんGJ
>>473 その方向でいいんじゃないか?
・誰を出すから殺さないで欲しい
・誰を作中で殺すから注意して欲しい
・時間軸的に何時ごろ(夜中など)としたい
・死亡者報告の放送を作中で流す
といったことを先に宣言してしまえば、書き手的にも考慮できるかと
基本的にリレー小説だから、みんなで物語を作るのが前提だとすると、
別の話で既に別れてるキャラを加入させるとかも
全然かまわんのじゃないかと個人的には思ってる
あと 『まとめる上で書き手さんへのお願い』 なんだけど
※作中に登場した人物の状況は、レス末に記載して欲しい。
※どこまでが1話としてくくればいいのか書き手の意志を優先したいので、
できればタイトルを(例えば『理想と現実』『達哉VS勇』とか)
つけてもらえればありがたい。
…申し訳ないけど協力してもらえます?
>>473 >>483 早速返答ありがとうございました。
これからはそういう形で投下していきたいと思います。
では早速簡単な予告をしておきます。
ライドウと鳴海はそこそこに長生きさせるつもりなのですが、
回想シーンや、移動中に誰かと出会っていたとか他の書き手の人が登場させてくださってOKです。
また、レイコは近い内にパーティーから抜ける予定なので、その後は皆さんご自由に書いてください。
こんな感じでよろしいでしょうか?
後、SSのタイトルは名前欄でいいでしょうか?
現状のまとめ
夢先区
桐嶋英理子(繁華街より移動中)リサ・シルバーマン(繁華街にて死亡) 橘千晶
青葉区
葛葉ライドウ 鳴海 赤根沢玲子 秦野久美子(死亡) 園村麻希(死亡)
周防達哉(公園内) 新井勇(公園内にて死亡) ハンニャ教頭(死亡)
狭間偉出夫
港南区
ザ・ヒーロー(廃工場第一区画) 大道寺伽耶(廃工場第一区画)
平坂区
朝倉タヱ(スマイル平坂) 天野麻耶(スマイル平坂) ネミッサ(スマイル平坂) チカリン(スマイル平坂にて死亡)
不明(高台で全域に声が届く場所、蓮華台?)
アレフ カオスヒーロー ザイン
不明
キョウジ レイ ナオミ シド
未登場
真1 ロウ・ヒーロー ヒロイン
真2 ベス ヒロコ
真3 人修羅 氷川
旧1 中島朱実 白鷺弓子 リック
旧2 主人公 ダークヒーロー ヒロイン(東京タワーの魔女)
ハッカーズ 主人公 スプーキー
ペル1 主人公(ピアスの少年) 南条圭
ペル2 周防克哉
if 女主人公(内田たまき) 宮本明
間違ってたら添削ヨロ
>>484 タイトルは名前欄でおkかと
>>485 まとめ乙
時間軸に矛盾が出ないように確認したいんだが
ゲーム開始は午前だよね?
487 :
静寂と不毛:2006/06/22(木) 21:19:46 ID:hiKyB7io
「悲しいものだな・・・・・・」
そう呟き無音の空間に一人椅子に腰をかける男。彼の名は氷川。
嘗てガイア教団に所属し、元東京を己の理想の為に破滅へ追いやった男である。
「人は皆安息がなくば生きられぬ。不毛な現実の重荷は余りにも人に残酷過ぎる。」
「私はそれを絶やし、永遠の安息を創る為、今までを生きたと言うに結果がこれだとは・・・・・・」
氷川の言葉と表情からは焦りも恐れも見当たらない。憂う表情で今の現実に滅入るのみである。
その力無き姿からは外へ一歩踏み出す気力さえ感じられず、永遠にそこで生涯を閉じるかの様にさえ見える。
しかし彼の歩んだ道は常に黒かった。喜びも楽しさも無く、一筋の光さえ届かぬ世界に生きた彼の精神は並み外れていた。
「この静寂を暫く堪能したい所だが、いい加減行動に移さねば我が理想が潰えてしまう。それだけは避けねば。」
そう言い終えると氷川は所持品の確認に移った。
確認した物は他の参加者と大差ない物ばかりで1000MGがある事を除いては氷川の求める物は無かった。
「私の数珠が無い・・・見事に貧乏籤を引き当てたか。幸先が悪いな。まあ、仕方あるまい。」
劣悪な状況下に於いてさえ顔の色一つとして変えない。この理性の強靭さこそ彼の最大の取り柄であった。
そしてその研ぎ澄まされた理性は脳にある閃きを与える事となる。
「通常の悪魔召喚を試みてみるか。どの道私一人の力では何も出来ん。」
「悪魔に食われるか、只殺されるかなら明らかに前者の方が合理的であろう。」
彼は悪魔の造詣の深いサマナーでもある。彼の言う一つ一つの言葉から召喚に必要とされる物が挙がってくる。
「煙、魔法陣、聖四文字の名、火鉢、霊性を帯びた何か、マントラ・・・そして捧げ物があれば尚良しだが。」
氷川の言葉が詰まる。捧げ物に何を送るか悩んでの事だろう。
それもそうだ。こんな現状では何があるかも判らずじまい。外へ出てお目当ての物を探そうものなら話の通じない
参加者や悪魔に殺されて命を終えてしまう危険性が高いからだ。
何とか今居る空間かその近くで得られる物で手を打たざるを得ないのである。
「近くに生きた人の肉、或いは死体でもあれば何とかなる物だが現実は甘くは無い。」
氷川は皮肉れた物言いで諦め、一先ず周辺に使える物を探しにその空間から出て行った。
幸いな事にどうやら此処には悪魔は出ない様だ。
氷川が確認した所、此処は夢崎区の消防署。先ほどまで居たのはその地下倉庫らしき場所である。
数分して戻ってくると早速召喚の準備に取り掛かった。
氷川は慣れた手付きで着々と召喚の条件を整えてものの数十分で完成させた。
次に悪魔を召喚する為のマントラを詠唱した。暫くすると魔方陣に変化が起きた。
激しく輝き周囲一体を照らす。その光の中から何かが現れた。
488 :
静寂と不毛:2006/06/22(木) 21:22:56 ID:hiKyB7io
「俺は72柱が内一つ、堕天使オセだ。この俺を呼び出した奴は誰だ、名乗りでよ。」
悪魔の目が鋭く光る。それに臆せず寧ろ懐かしむ様な態度で氷川は接した。
「久しいな、オセ。あれから先も相も変わらずかね?」
「……氷川様? いや、氷川か。お前が何故ここにいる?」
このオセは嘗て氷川が契約した悪魔の一人であるが、この世界では氷川が今まで契約した
悪魔達は何者かにより全て契約破棄、詰まり赤の他人の様な仲になっているのである。
「俺を呼び出した・・・と言う事は今一度俺の力を求めると言う事か?」
「言っておくが昔の縁など関係ないぞ。求めるなら今一度俺を物にしてみる工夫を凝らすんだな。」
「言われずとも解っている。お前を物にする為に色々と手を講じたのだからな。」
「ほう、ならばそのなけなしのマグネタイトで俺を収める気か? 笑わせてくれるな人の子が!」
「話は最後まで聞くものだ。例えばそう、私が死んだ後に魂の全てをくれてやるとしたら?」
「!!!」
男の思いもよらぬ発言に驚きを隠せないオセは、正気なのかと訝しげな顔で男に問う。
「本気で言っているのか? 確かにお前の魂なら釣りが余る程の価値はあるが、それがどういう意味が理解しているのか?」
「…私は静寂の世を創る為に生きてきたのだ。其れが出来ぬのなら生きる価値も意味も無い。」
「それは只不毛に苦しむだけだ。ならばこの魂、失う事に恐れは何も見当たらない。」
そう豪語するとオセは驚嘆したかの様に言葉を失い、男をまじまじと見つめていた。
「お前には敵わん・・・・・・」
そこには初め出合った時の様な傲慢な態度は無く、彼の力強い人柄に惚れたかの様に悪魔は言った。
「俺は堕天使オセ。今一度召喚主氷川様の命によりて共に道を歩まん。今後とも宜しく・・・」
悪魔は何事も無かったかの様に姿を消した。それに伴い異様な空気が元に戻っていく。
「さて次は基盤作りに移ろう。役立つ物と戦力の増強、この二つが必要だな。」
「流石にオセ一人では心許ないからな。」
【氷川(真・女神転生V-nocturne)】
状態 正常 オセを従える。
武器 なし
道具 なし
現在地 夢崎区消防署地下倉庫
行動指針 誰かと手を組みつつ基盤を固める。
長文だらけで誠にすみません。
何か訂正点などがあれば言ってあげて下さると嬉しいです。
集められた全員で殺し合いをして最後まで生き残ったら帰れるだと?
全く馬鹿な事態に陥ってしまったもんだ。
しかし始まってしまった以上、勝つしかない。幸い、敵は知らない人間が殆どだから、心が痛むことはあまり無い。
つまり、容赦する必要も無いということだ。
何しろ俺の彼女のタマ…内田たまきすら、俺の知らないたまきなのだから。
あいつは今の学校、聖エルミン学園に転校してくる前の制服を着ていた。最初は気分転換か何かのつもりかと思ったがそういうわけでも無いらしい。
どういう原理かはよく解らないが、参加者は色んな時代から集められているようだ。明治時代か大正時代のような古臭い書生がいたり、まるでSFみたいな格好の連中もいた。
だからあの内田たまきも俺と出会う前のたまきなんだろう。
あのタマなら此処で殺しても大丈夫だと思う。
優勝したら何でも願いを叶えてくれるらしいから、主催してる奴に頼んで元いた時間の元いた場所に帰してもらえば問題無い。それくらいは出来るはずだ。
だが、誰から殺る?
さっき見た白い学ランを着た奴はヤバイ。
例の書生(こいつはツラの良さがムカつくから後で絶対俺が殺る。)
と、戦っているのを物陰から見たが、俺の知らない魔法のような力を使ってあっと言う間に書生を追い詰めていた。
俺の武器は、銃だ。デザートイーグル。オートマチックで破壊力抜群の優れたヤツだ。
だが残念ながら俺に魔法の力は無い。もう少し強力な武器を手に入れてから対策を練った方が安全だろう。
大体あの顔がムカつく。まぁ、多少整っていたが俺には足元にも及ばんがな。まぁ、その内殺ろう。
それからヘルメットみたいな変な髪形のヤツもダメだ。こいつもまた俺の半分くらいの顔の良さでムカついたが、白い学ランのヤツ同様に魔法が使えるらしい。
襲ってきヤツを一秒で焼き殺した。
とりあえず、今の段階でこの二人と戦うのはマズイだろう。
では最初は誰から殺す?
……そうだ、女だ。女の参加者を探そう。出来れば良い武器を持っていて、魔法を使えない普通の女だ。
普通の女ならまず間違いなく勝てるだろう。
何しろ俺の武器は銃だし、取っ組み合いになっても負ける気がしない。
それに相手が女だったら、仲間の振りして近づいて、ちょっとはいい思いが出来るかもしれないしな。ヒヒヒ…。
おや? あれは…何たる偶然! これは運命か!?
タマじゃないか! 俺の女のタマ!
あ、あいつからしたらまだ俺の女じゃないか。でもまぁいい。
で、あいつの武器は何だ? そう、そうだ、鞄を開けろ…おぉ、アイスピックか。残念だったな。それでは銃には勝てんよ。
アイスピックを取ったとしても大した戦力にはならないが、ここであいつを殺して人数を稼いでおこう。
すまないな、過去のタマ。俺は未来に帰って未来のお前とよろしくやるよ。未来のお前は本当にいい女だ。ベッドの上でもな。ヒヒヒ…。
さぁ覚悟しろ! 優勝は俺だ!
…あれ?
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
他の参加者の多くと比べたら少々愚かなサトミタダシは右目の異常に気付いて絶叫した。
全く気付かぬ内に投げられたアイスピックが見事に捕らえていたのである。
慌てて叩き落したが、それは既に自分の血で染まっており、また、先端には自分の目玉の一部と思われる肉片がこびり付いたままだった。
「うがぁっ! 俺の眼がぁっ…!!」
「はああああ!!」
右目を失い、すっかりパニックになってしまったサトミタダシの脳天を鈍器のような物が捉える。
何度も、何度も殴りつけられ、彼が絶命する頃には頭にストロベリーパイを載せたような無様の有様である。
「はぁ…はぁ…。」
皮肉なことに未来の恋人を手に掛けてしまった内田たまきは肩で息をしながら、男の命を奪った大きな石を地面に投げ捨てた。
血と肉が汚らわしくて、これ以上触っていたく無かったからだ。
「いきなり銃で狙って来るなんて…。こっちもうかうかしてられないわね。
その銃は貰っておこう。」
たまきは最早顔の原型をも留めていないサトミタダシの死体をなるべく見ないようにして、
彼が手にしていたデザートイーグルを拾い上げた。
【内田たまき(if…)】
状態 正常
武器 アイスピック デザートイーグル
道具 ?
現在地 平坂区
行動方針 ?
【サトミタダシ(異聞録ペルソナ)】
状態 死亡(アイスピックで眼を貫かれた上、石で頭を殴られる。)
武器 銃だったがたまきに奪われる。
道具 ?
現在地 平坂区
リストにも入っていない噛ませ犬が主人公の章ですみませんでした。
これくらいバカなら殺すのも清清しいです。失礼しました。
乙です
僭越ながら感想を一言・・・
>ワルオ
カオスヒーロー編キター!!こういったアナザーサイドが見られるのは非常に嬉しい。
続きも楽しみに待ってます
>お姫様と王子様
オープニングでも触れられていたけれど、どっちに転ぶかわからない絶妙な雰囲気とこれからに超注目。
ヵャャヵヮィィょヵャャ。ザ・ヒーローがうらやまし・・・
>イケメンとミートとめがねっ娘。
待ってました!!本当にキャラの描写がうまく、近いうちに解散するのがもったいないチーム。
しかしレイコ可愛いな。殴られたライドウがうらやまし・・・
>女の子3人組チーム
今作きっての萌え&癒し系チームの予感。うさみみ舞耶wwwww
偶然かもしれんがチカリン・タエ・舞耶と共通の将来の夢があるキャラで揃えてるところが芸細。
>Mとオセ
「これぞ氷川&オセ!」と思わず頷いてしまった。実にお見事!
わかっているんだが、タイトルの「不毛」で氷川の寂しい頭を思い出して仕方がない・・・
>SトミTダシ
思わず「うはwwwタダシざまみろwwwwww」と言いたくなってしまうような爽快感。
タダシのどうしようもなさが良く出てるなーと思った
ライドウと鳴海、そしてレイコは支給品のパンと水で簡単な朝食を済ませ、歩みを進めながら今後のことを話し合った。
先頭は脇差を持っているライドウである。刀での一撃必殺が得意な彼が先頭に立てば急な襲撃に備えられる。
その後ろを行くのはレイコだ。
彼女は、本人こそ使いたがらないがいくつかの攻撃魔法の心得があるらしい。
鳴海の読み通り、彼女の背後にはガーディアンと呼ばれる神が憑いていると言う。
だから前後どちらから攻撃されても応用が利くのである。
そしてしんがりは鳴海だった。
これは格闘技が出来る彼を最後尾にすることで、バックアタックを阻止する為だ。
念のため、唯一遠距離攻撃が可能なクロスボウは彼が持つことになった。
昨晩の内にライドウは、時代も世界も違う自分たちがどうやってこのスマル市に集められたのかを推理し、
此処から脱出出来る可能性のある方法を思いついていたのである。
方法は以前も使ったことがあることだった。
異界開きをして、異界経由でこの街からの脱出を図るのである。
これならたとえこの街が地上から遥か上空に浮いていようが、
此処が自分たちの元いた大正帝都でなかったとしても問題は無い。
だが、異界開きをするとなると、それ相応のエネルギーが必要になってくる。
帝都からアカラナ回廊へ飛んだ時に使用した、
天津金木に匹敵する強大なエネルギーを秘めているような聖なる道具が…。
しかし、この殺戮ゲームの為だけに住民を全て追い払い、
尚且つ交通機関はおろか、電気も水道も止められているこの街で、
そのような都合の良い道具があるものなのか。
こんな時ゴウトがいたら…。
ライドウは深く溜息をついた。
ゴウトと離れ離れになってしまったのはかなり大きいダメージだった。
彼さえいれば、何か良い知恵を出してくれるかもしれない。
自分が最も頼りにしている師匠にして相棒、そして親友でもある黒猫のゴウトドウジ。
それに昨晩ライドウが暴走するのを真っ先に止めてくれていたはず…。心が痛んだ。
「あのさぁライドウ、レイコちゃん。」
後ろを歩いていた鳴海が空を見上げながら前の二人に話しかけた。
「何でこの街って空に浮いてるのかな?」
素朴な疑問である。
だが、鳴海と同じ時代から突然召還されたライドウがその疑問に答えられるはずが無い。
そしてレイコも首を横に振った。
だがライドウは「それだ!」と言わんばかりに手を打った。
「どうしたライドウ?」
「それですよ鳴海さん、さすが探偵を名乗るだけあって冴えてますね。」
珍しく嬉しそうに褒めるライドウ。鳴海はまんざらでも無い様子で後ろ頭を掻いた。
しかし一体どういうことなのだろう。
この街が宙に浮いていることと、此処から脱出する方法に何の因果関係があるというのだろうか?
「この街が一つ丸ごと宙に浮いているということは、それを浮かせている動力源があるはずです。
地図で見たところ、このスマル市はそれなりに大きな街でしょうから、かなり巨大なエネルギーで支えていると思うんです。
そのエネルギーを使えばあるいは…。このゲームの参加者全員を異界ルートで脱出出来る可能性すらあるかもしれないんです。」
「そうか! そう言う事か! お前頭いいな!」
「いえ、鳴海さんのヒントがあったからこそですよ…。」
そう言って子供の様にお互いを褒め合う鳴海とライドウだったが、冷静なレイコが口を挟んだ。
「でも、その動力源って一体何処にあるんですか?
それに解ったとしてもどうやってそこまで行くのかが解らないことには…。」
確かにそうである。
あまりにも途方の無い作戦の上で、今の彼らはあまりにも無力だった。
街を浮かせているエネルギーを使うにはあまりにもこの街を知らな過ぎる。
それに、仲間に引き込むのが不可能としか言えない敵の存在もあった。奴らが妨害して来ないとは限らないのだ。
だが、折角見つけた脱出への希望だ。それを無駄にする訳には行かない。
「そうだな。けど主催者の奴が言ってただろ? 『この中にはこの街の出身者もいる』って。
そいつが誰なのかは解らないが、ひょっとしたら何か聞けるかもしれない。」
「それなら解ります。この街の蓮華台という地区にある七姉妹学園という学校の制服を着た人が二人いたんです。彼らならきっと…。」
レイコは空を仰いだ。彼女には確信があったのだ。
集められた教室で数分間見ただけだが、黒を基調に白いラインの入った制服を着た男女。彼らとは何故か自分と近しい何かを感じたのだ。
きっと、こちらの話をちゃんと聞いてくれる…。
「なら話は早い。そいつらを探そう。制服着てるんなら解りやすくていいじゃないか。」
「そうですね。その間にも他の話が通じる相手を見つけて引き込むことが出来れば…。」
「まずはタヱちゃんだな。それから伽耶ちゃん。生きてるといいんだが…。いや、生きてるよな、絶対。」
前向きな鳴海の言い分にライドウも同調した。希望の光が強く輝き始めたような気がしてきたのだ。
だが、そんな二人を差し置いて、レイコの表情は少し曇っていた。
話の通じる相手…。
魔神皇の顔が厭でも頭をよぎる。
あの人は好きであんなことをやってるんじゃない。本当はもっと優しくて正義感の強い人のはず…。
どうしてこんな酷いことをしているのか、彼の眼を見て聞きたい。
互いに向き合って聞いて、それからこんなこと、早く止めさせたい。
いや、止めさせなければいけないのだ。そしてそれが出来るのは自分だけ…。
「レイコさん?」
急に押し黙ったレイコの顔をライドウが覗き込んだ。
乾いた血で汚れているが、はっとする程美しく整った顔だ。だがその眼は心配そうに映っている。
が、急に真剣なそれに変わった。
表情そのものは殆ど動かないが、レイコにはその微かな変化が何を言わんとするのかが解り、俯いて首を横に振った。
「いえ、何でも…」
「僕は、まだ反対してますから。」
「え?」
「魔神皇を説得するなんて無茶苦茶です。貴女が自分で言ったんじゃないですか。勝手に無茶をしないで、と。
だから僕は、絶対に貴女を止めますからね。どんな手を使ってでも。」
「そんな…。」
まだ何か言いたそうなレイコの小さな手をライドウはぎゅっと握った。
その瞬間、戸惑うように小さく震えるのが解ったが、ライドウは決して離さなかった。
「貴女は…こんな所で死んではいけない人なんだから…。」
「……。」
「若いっていいねぇ〜。」
胸ポケットのケースから煙草を一本取り出し、口に咥えながら、二人の後ろを歩く鳴海はそう呟いて肩を竦めた。
【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 脇差
道具 傷薬×2
現在地 青葉区だが蓮華台に向かって移動中
行動方針 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出
【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上
【赤根沢レイコ(if…)】
状態 正常
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ゲームからの脱出
498 :
移動開始:2006/06/23(金) 05:57:26 ID:5iG6ZPBB
「ヒーホー!おいらジャックフロストだホー!こんごともよろぴくー!!」
交渉は順調に進んでいた。
「ふぅ・・・このくらいでいいだろう」
GUMPの容量は悪魔12体。
今のジャックフロストで最初に仲魔にしたピクシーから数えて10体目。
残り2体分はいざというときのために空けておく。
だいぶ充実したといえよう。
しかしどれも低レベルな悪魔ばかり。
交渉が失敗した際伽耶を守るためには悪魔を即座に倒す必要がある。
それも手持ちのつたない武器でだ。
余り強い悪魔は危険だった。
最初の鉄パイプは既にベコベコにへこんでおり使い物にならない。
しかしここは廃工場、代わりのパイプくらいはすぐに見つかった。
仲魔は召喚していない。
ただでさえ少ないマグネタイトだ、交渉の際使いすぎて半分以下になっている現状もある。
しかし、ヒーローには弱い仲魔を集めるだけでもいい希望があった。
ひとつは自分のGUMPの機能悪魔合体。
合体を繰り返せば弱い悪魔から強い悪魔を作れる。
他のCOMPに比べて圧倒的なアドバンテージ。
少なくとも自分の使っていたものには無かったこの機能、利用しない手は無かった。
「では・・・そろそろ移動するのですか?」
伽耶は尋ねた。
彼らの次の行動もう決まっていた
その理由は伽耶の支給品にあった。
彼女の支給品、武器はスタンガン、余りいいものとはいえなかった。
しかしアイテム。
これは大当たりだったといえる。
いや、伽耶一人では大はずれだったろうがザ・ヒーローと行動を共にすることで大当たりに化けた。
それはインストールソフト。
それが三つ。
所持者の傷を自動で治すという「ガリバーマジック」奇襲を防ぐ「百太郎」
そして強制的に合体事故を起こす「コペルニクス」
前者二つの治療と奇襲防止はもとよりコペルニクスの合体事故。
通常の手順をすっ飛ばして上位悪魔を作れるのだ。
しかし、今のままでは使い物にならない。
ザ・ヒーローのGUMPはそれ単独ではソフトをインストールすることはできない。
パソコンなどを仲介してインストールするシステムをとっているようだ。
パソコンの無い現状ではインストールソフトはプラスチックの塊に過ぎない。
パソコンの有る場所への移動・・・これが二人の目的だ。
499 :
移動開始:2006/06/23(金) 05:58:00 ID:5iG6ZPBB
「私にはよくわからないのですが・・・そのぱそこんというのはどういった場所にあるんですか?」
1と書かれた扉を開け、廃工場の通路に出ると伽耶が口を開いた。
ここを調べているうちにわかったが悪魔が現れるのは数字の振ってある部屋のだけらしい。
しかし地図上では悪魔が出ると書かれているためここにくるのは伽耶のような例外を除けば自分のようなCOMP持ち
だけということになる。
COMP持ちが後から来たところでそこは先に入って仲魔を集めていた自分が有利だ。
最初はここを拠点にするつもりだったがインストールソフトのために予定変更となったのだ。
「そうだね・・・この地図には大まかなことだけしか書いてないけど・・・」
先ほど伽耶にパソコンについて簡単な説明をしたがやはりわかっていないようだ。
むりもない、聞けば彼女は大正時代の人間であるという。
それも大正20年。史実における大正は15年までだったはずだから5年のラグが有る。
ザ・ヒーロー自身も時間を越えたことは有る・・・というと語弊があるがそれに近い経験はしたことがある。
しかし彼女の場合は完全にパラレルワールド。
そこまで考えて頭が痛くなる。
ザ・ヒーローは今のところ戦力の増強に主眼を置いているが最終目的は当然生還である。
今のところ方法は見当も付かないが、ゲームに勝つ以外の方法では主催者の盲点を突かなくてはならないのは確かである。
パラレルワールドすら越えさせる相手・・・隙などあるのだろうか?
そこまで考えて、止めた。
今最も大事なのは死なないことだ。脱出方法は後でいい。
ヒーローは地図を開いた。
「まずパソコンがあって電気が生きているのが最低条件・・・」
「そうなると繁華街の夢先区かビジネス街の青葉区・・・ここは港南区だから・・・近いのは青葉区・・・か」
正直なところ二つとも余り生きたい場所ではなかった。
繁華街にビジネス街。
いかにも役に立つものがありそうな街は参加者も集まるだろう。
となれば・・・有る程度の危険は覚悟しなくてはならない。
当然人の多い場所に行くことはメリットも有る。
仲間が・・・仲魔ではなく仲間が増えるかもしれない。
ロウ・ヒーロー、カオス・ヒーロー、そしてヒロイン。
彼らならば・・・カオス・ヒーローは少し怪しいかもしれないが・・・協力はしてくれるはずだ。
自分たちを除いて40人の参加者の内・・・確実なのは3人。
少ないメリットだ。
インストールの作業を終えた後即離脱して港南区に戻る。
その後合体を繰り返し戦力の増強をした後脱出方法の模索。
これが最善の方法だ。
道は険しい。
「ふー・・・」
ザ・ヒーローはひとつため息をついた。
「・・・伽耶、目的地は青葉区だ・・・すこし歩くし、場合によっては走るけど・・・いけるかい?」
危険性は直接は言わなかった。
「・・・はい」
伽耶もそれに答えた。
「日の出まで後2時間・・・なんとかそれまでに・・・青葉区離脱まで持って行きたい」
ザ・ヒーローと大道寺伽耶。
二人は廃工場の鉄の扉を開け闇に消えていった・・・。
500 :
移動開始:2006/06/23(金) 05:59:20 ID:5iG6ZPBB
【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態 正常 少々疲労
武器 鉄パイプ×2 ガンタイプコンピューター インストールソフト×3
道具 マグネタイト1400(交渉に使用したため減少)
仲魔 妖精ピクシー 妖精ジャックフロストを始め10体(但し全て低レベル、同時に呼び出せるのは4体まで)
現在地 港南区から青葉区へ移動中
行動方針 戦力の増強 青葉区にてパソコンの入手およびソフトのインストール
【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 スタンガン 包丁(ザ・ヒーローに護身用としてもらう)
道具 無し
現在地 同上
行動方針 ザ・ヒーローについていく
501 :
協力者:2006/06/23(金) 11:15:35 ID:6+8Hvq6D
目を開けた時、見えたのは天井だった。
高い天井。人工の明かりが眩しい。背中には、硬い床の感触。
建造物の中だ。次第に意識がはっきりとしてくる中で、それをまず認識する。
次に浮かび上がったのは、疑問。
あの場所は屋外だった。そこで意識を失ったはずが、何故こんな場所にいるのか。
誰かに、ここまで運ばれたのか?
――誰に?
その疑問の答えは、不意に目の前に現れた。
「やあ。気が付いたかい」
こんな状況で、見知らぬ相手を前にしているというのに、警戒の色もない柔和な表情で。
スーツ姿の男が、細い目を更に細めて覗き込んできたのだ。
502 :
協力者:2006/06/23(金) 11:16:39 ID:6+8Hvq6D
「あなたが、助けてくれたのか……」
「助けたってほど大したことはしてないさ」
壁に凭れて床に座ると、男はポケットから煙草を取り出して咥え、火をつけた。
濁った白い煙が、ゆっくりと立ち上り始める。
「ここに引きずってくるのが精一杯だったよ。君が重いものだから」
冗談めかして言う彼は確かにひょろりとした体格で、大の男一人を運ぶには明らかに力不足だ。
――が、重かった、というのは体格差だけの所為ではないだろう。
脇腹に手を触れる。固まった血と、それとは違う硬い、冷たい感触。
あれからどれだけ時間が経ったのかは判らないが、石化は確実に進行している。
「傷、痛むかい?」
傍らに座る男が、心配そうに覗き込む。
「支給品の傷薬で、簡単な手当てだけはしておいたんだが……ただの傷じゃなさそうだな」
そういえば、先程よりも僅かに痛みは治まっている。
「……ありがとう」
状況の深刻さには触れず、ただ感謝の言葉だけを返した。
そのまま少し、二人とも沈黙する。
「しかし、大胆なことをしたもんだ」
先に沈黙を破ったのは、スーツの男だった。
「格好の的になるって、判らなかった訳じゃないだろう?」
「それでも……できるだけ、犠牲は出したくなかったんだ」
全員が賛同してくれるとまでは、期待していなかった。
しかし、この都市に集められた中には、殺し合いを望まない者も決して少なくはないだろう。
行動を起こすことで彼らを助けられる可能性があるのなら、動かない訳にはいかなかった。
そして、仲間が集まれば、この忌まわしいゲームの主催者に一矢報いることもできるかもしれない。
こんな所業は、許されるべきことではないのだ。
503 :
協力者:2006/06/23(金) 11:17:40 ID:6+8Hvq6D
男はまた目を細め、笑った。
「頼もしいな。どうやら僕の選択は正解だったようだ」
彼が深く息を吐き、白い煙が空気に溶ける。
「君なら少なくとも、敵になることはない。それに味方にすれば頼もしそうだ。
……そう思ったから、君をここまで引きずってきた訳だが」
「あなたも……このゲームを、止めたいと?」
「そりゃそうさ。僕は見ての通り、戦いなんてからっきしだからな。
それに、このゲームに巻き込まれた中には仲間もいる」
仲間、という言葉に、アレフのことを思い出す。彼は無事に逃げ切っただろうか。
それから、あの部屋に集められていた中にはベスも、脱走の罪で拘束されているはずのテンプルナイト、ヒロコもいた。
彼女達も、こんな無益な戦いは望まないだろう。
今このどことも知れぬ都市に閉じ込められている以上、支配者はこのゲームの主催者であり、殺し合いのルールこそが法だ。
しかし、それは神に仕える者の従うべき法ではない。
「……僕も、仲間と合流したいと思っている。
同じ考えの人が集まれば、こんなゲームを終わらせる方法も見付けられるかもしれない」
「同感だよ。保証はないが、今はその希望に賭けるしかない」
男は頷き、今までの飄々とした笑顔とは打って変わった真剣な眼差しで口を開いた。
「同盟といこうか」
無論、断る理由はない。
「喜んで。……本当に、ありがとう」
「いやいや。お互い様だよ」
男はまた、穏やかな顔で笑った。彼に拾われたのは、まさに奇跡のような幸運だったようだ。
504 :
協力者:2006/06/23(金) 11:18:27 ID:6+8Hvq6D
「さて、と。君の荷物も持ってきたんだ。足りているかい?」
男が立ち上がり、少し奥へ歩いて行くと、ザックを持って戻ってきた。
中身を確認するため、上体を起こして壁に凭れる。
「起きても平気なのか?」
「ああ。お陰で、少し楽になったよ」
笑顔を返し、ザックを受け取って中身を確認する。
中身に不足はなかった。食料と水、方位磁針、地図、着火装置とランタン。――参加者リスト。
「そうだ……」
リストをザックから引っ張り出し、開く。
これから行動を共にすることになる男の仲間――それから、この男本人の名前も、確認しておかなくては。
「自己紹介がまだだったな。僕はザイン。あなたは?」
「ああ……スプーキー、とでも呼んでくれ」
リストに視線を走らせる。その名前はどこにも書かれていない。
「参加者リストに、名前がないみたいだが……」
「……すまない。桜井雅宏、だ」
今度はリストの中に、その名前は見付かった。
「スプーキーの方が通りがいいんだが。これには本名で載ってるんだな」
小さく苦笑して、スプーキーこと桜井は肩を竦める。
「このリストの中で、あなたの知っている人は?」
リストを横から覗き込み、スプーキーは二つの名前を示す。
片方は男、片方は女。どちらも漢字で書かれた、日本人の名前だ。
505 :
協力者:2006/06/23(金) 11:18:57 ID:6+8Hvq6D
互いの仲間の名前、そして大まかな特徴を教え合ってから、参加者リストをザックに戻す。
次に確認したのは、支給された武器と道具。これも、しっかりザックに入っている。
武器は皮製の鞭。扱い慣れていないと自分が怪我をしかねないので、使わずにしまったままでいたものだ。
ベスかヒロコなら、これも使いこなせるのだろうが。
メガホンはアレフに支給されていたのを受け取って使っていたのだが、撃たれた時に落としてきてしまった。
そして、一番奥に入れていた物。
「お、ノートPCか」
それを取り出すと、スプーキーが目を輝かせた。
「コンピュータのようだけど、操作方法が掴めなかったんだ」
膝の上に乗せて、二つ折りになっているそれを開く。
持ち運びを考えて設計されたのだろう、さほどの重さは感じない小型のものではあるが、
ミレニアムで使い慣れていたアームターミナルに比べるとやはり嵩張る。
恐らく、古い時代のものだろう。操作感覚もミレニアムで使うコンピュータとはかなり異なっていた。
アレフと一緒に電源を入れて動かそうとしてみたが、オペレーティングシステムに馴染めず二人とも挫折し、
短時間で把握するのは難しいと考えて半ば諦めていたのだ。
「こいつは最新式だな。しかもアルゴンOSじゃないか」
電源を入れたコンピュータの画面に表示されたロゴを見て、スプーキーはますます上機嫌だ。
最新式――そう彼は言った。旧時代の遺物にしか見えない、このコンピュータを。
その言葉に、確信する。彼は、違う時代から来た人間なのだ。
いや、そもそも今は、ミレニアムが存在するのとは別の時代なのだろう。
集められた参加者の中には、記録映像でしか見たことのないような服装の者もいた。
この都市の町並みにしても、古めかしい――地下世界の廃墟が在りし日の姿を留めていたらこうだったろうか、という趣のものだ。
空間だけでなく、時間まで超越して、主催者はここに人を集めた。殺し合わせるために。
そんな力を持つ主催者とは、何者なのだろう。
506 :
協力者:2006/06/23(金) 11:20:12 ID:6+8Hvq6D
「ちょっと、貸してくれ」
「動かせるのか?」
「任せてくれ。これでも、ハッカーグループでリーダーを張れる腕なんだ」
PCを渡すと、スプーキーは自分の膝の上で手早く操作を始めた。
しばらくすると咥えていた煙草を指で挟み、話し始める。
「さすがにネットワークには繋がっていないな。プログラムも、ほとんど入っていない……おや?」
モニタの中の何かに目を留め、スプーキーが不思議そうな顔をする。
横から画面を覗き込むと、彼の目に留まったものが何であるかはすぐに判った。
"DEVIL SUMMONING PROGRAM"
「……悪魔召喚プログラム」
覚えのある言葉だった。ミレニアムで、アレフが使っていたものだ。
行方不明だったアレフがセンターに戻ってきた時、彼は悪魔使いになっていた。
どうやって、と聞いたら彼は、悪魔召喚プログラムなるものを入手したのだと答えた。
それと同じものが、このPCにインストールされている。
「これは……ひょっとすると、大当たりかも知れないぞ」
声に緊張と興奮を滲ませ、スプーキーが言った。
悪魔を召喚する、即ち味方に付ける――このプログラムがあれば、それが可能になるということだ。
確か、この都市にも悪魔が出現する場所はあると説明されていたはずだ。
交渉次第ではあろうが、そこに行って悪魔を味方にし、身を守るための戦力にすることができる。
しかし。
「悪魔を……使うのか……」
躊躇があった。悪魔という総称で呼ばれる中には天使や精霊なども含まれてはいるが、大部分はその名の通り、「悪」の存在なのだ。
アレフが悪魔を従えていたのを見て多少認識が変わってはいたが、少なくとも、メシア教の教えではそういうことになっている。
507 :
協力者:2006/06/23(金) 11:21:11 ID:6+8Hvq6D
「まあ、使うかどうかは別として……だ」
スプーキーが顔を挙げる。
「PCがあるなら、僕の力も活かせる。ケーブルでもあれば、コンピュータ制御の設備は好きに使えるし……
希望的観測だが、ネットワークが生きていれば可能性も広がるな」
この都市だけしか存在しない世界、と主催者は言っていた。
それを考えると、ネットワークは使えない可能性が高いだろう。
が、考えてみれば、この建物には電気が通っている。地図を見た限り、発電所はなかったはずなのに。
もしここが、近代に存在した一つの都市を、機能はそのままに写し取ったような場所だとしたら――試してみる価値は、ある。
「ケーブルに……それだと、予備のバッテリーも必要かな?」
旧型のコンピュータについての知識にはあまり自信がないが、その推測は取り敢えず当たっていたようだ。
「そうだな。欲しいソフトもいくつかあるが……
電器屋かPCショップでもあれば、最低限必要な物は揃うと思う。規格が違わないとも限らないが」
この都市の文明レベルと、このPCが作られた時代の文明レベルが同じという保証もない訳だ。
しかし、心配していても始まらない。
「探してみよう。動けば、誰か協力的な人に出会えるかもしれない」
「お、おい」
服の埃を払って立ち上がると、スプーキーは戸惑う顔をした。
「もう動いて大丈夫なのかい?」
「動ける内に動いておかないと、もっと大丈夫じゃなくなりそうだ」
動かずにいるというのは、いずれ完全に石化してしまうということなのだ。
石化を治すか、進行を止める方法も、できれば探したい。そのためにも、動くしかない。
「あなたの護衛程度ならできると思う。……けど、危なくなったら逃げてくれ」
「怪我人に無理はさせたくないな。足手纏いにはならないように気を付けるよ」
508 :
協力者:2006/06/23(金) 11:21:54 ID:6+8Hvq6D
PCはそのままスプーキーに持っていてもらうことにし、ひとまず目的地を決めようと地図を確認する。
今いる場所は、市の中心部の蓮華台。この辺りには住宅が多いようだ。
「店が多そうなのは……夢崎区、かな」
煙草を持った手で地図の北側を示して、スプーキーが言う。地図の上に僅かに落ちた灰を、彼は慣れた様子で吹き飛ばした。
「物が集まる所には人も集まりそうだ。誰かに出会うこともあるかも知れないな……
同じことを考えていたとしたら、僕の仲間もそこに向かおうとするはずだ」
先程名前を聞いた二人のことだろう。どういう知り合いなのかは聞かなかったが、ハッカー仲間なのかもしれない。
「何かしら収穫はありそうだな。行ってみよう」
頷いて、ザックを肩に担ぐ。
傷はまだ痛むが、怪我の功名と言うべきか、石化が進んだために出血は止まっている。
とはいえ、激しい戦闘をする自信はない。襲撃を受けたとして、スプーキーを守り切れるだろうか。
自分のためにも、相棒となった彼のためにも、そして相手のためにも――敵対的な誰かとは出会わずに済むよう、祈った。
【ザイン(真・女神転生2)】
状態:脇腹を負傷、石化進行中
武器:クイーンビュート(装備不可能)
道具:ノートPC(スプーキーに貸与)
現在地:蓮華台から夢崎区へ移動開始
行動方針:仲間を集めてゲームを止める、石化を治す
【スプーキー(ソウルハッカーズ)】
状態:正常
武器:?
道具:傷薬
現在地:蓮華台から夢崎区へ移動開始
行動方針:PC周辺機器・ソフトの入手、仲間との合流
お試しだと思って勢いで書いたらそのまま話続いてるので慌てて書いてみた。
一人称形式と三人称形式、どっちで書いた方がいいんだろこれ。
名簿の名前ですが、ネミッサは遠野瞳で載ってるつーことでひとつ…
って書いてから気付いたけど既にネミッサって名乗って行動してるじゃんorz
すいません、舞耶姉は名簿気にしてないか既に説明済みってことで…。
あと、ワルオ編書いた職人さん超GJ!
読み応えある心理描写で、ネタにしてもらえて光栄です。
他の職人さんの作品もどれも熱い展開でワクテカ。
GJ! GJ!
ザ・hーローかっこいいよ!
スプーキーかっこいいよ!
最近は投下作品増えてきて嬉しい。
自分も感想掲示板欲しいな。
そろそろ他のロワスレと同じように投下用スレと議論雑談スレに分けた方がいいかもしれませんね。
というわけで立てようとしたけど駄目だったんで誰か議論雑談スレ立ててくれると嬉しいです。
ついでに予約。周防克哉と白鷺弓子で書こうと思っています
512 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 15:02:21 ID:+diKYUWy
皆さんGJ!
>>511 立てようと思っているんですが、テンプレや、希望する板はあります?
513 :
449:2006/06/23(金) 15:22:16 ID:xqj4cm0a
書き手さん乙!
>>512 したらばに避難所・打ち合わせスレ・感想スレって感じでどうだろう
まとめサイトにキャラそれぞれに行動も記載したから
登場させたいキャラの参考にしてもらえれば幸い
あと、ゲーム開始時間だが
夜明け前から始まってるんでいっそのこと
丑三つ時=2時半〜3時(このパラレルワールドでは)でどうだろう
それぞれの出身世界では、普通の活動時間から連れて来られてる…で
夜明け・日没はそれぞれ午前・午後6時だと今までの行動が可能かと
したらばだと、管理人にIPだかなんだかがバレるってことで書きにくいって人も多そう
ゲサロあたりのほうがいいんじゃないかな
テンプレとしては
>>449のまとめサイトと参加者リストぐらいかな
女神転生バトルロワイヤル議論・感想スレみたいな感じで。板は同じ板かゲサロあたりでどうでしょう。
516 :
512:2006/06/23(金) 16:24:05 ID:+diKYUWy
ただ今戻ってきました
見る限り、ゲサロがスレ重複の心配もなく、個人情報漏れに対しても
安心して意見を書きやすいのかな?
ゲサロだとIDが出ないため、自演で荒れる心配が少し気がかりですが、
ゲサロに立ててきても良いでしょうか?
荒れたらここの投下スレを一時借りればいいかと
>>516氏任せた
とりあえず、基本ルール以外の事項を書いてみた
添削して使ってもらえたら幸い
= 書き手さんへのお願い =
※話に矛盾(時間軸・場所・所持品など)、間違いが起こらないよう注意してください
※作中に登場した人物の状況や所持品などを、レス末に記載してください
※タイトルは名前欄に記載してください
※キャラを新しく参加させることは、できるかぎり避けるようにしてください
※他の書き手さんにつなぐためにも時間描写をできるだけ入れてください
※SSの登場キャラは基本的に早いもの勝ち(書きたかったキャラが先に死んだりしても文句は言えない)
※キャラの予約(〜を書きたい)は自由。この場合予約者が優先されます
※他の書き手のSSで登場したキャラを書くのも自由(殺してもOK)
ただし元の書き手が「このキャラは最後までorこれ以降も書きたい」と言えばそれを優先。
※死亡者報告の放送を作中で流す場合はスレで報告してください
※叩かれても泣かない
= 基本注意事項 =
※原作を知りたい方は、原作をやるかストーリーを教えてくれるスレへ行きましょう
「キャラがどんな扱い、結末だろうと 絶 対 に文句を言わないこと」
519 :
512:2006/06/23(金) 16:46:18 ID:+diKYUWy
520 :
512:2006/06/23(金) 16:52:54 ID:+diKYUWy
テンプレ続き
参加者一覧
【真・女神転生】
ザ・ヒーロー(作中名未定) ヒロイン(作中名未定)
ロウヒーロー(作中名未定) カオスヒーロー(作中名未定)
【真・女神転生II】
アレフ(主人公) ベス ヒロコ ザイン(=サタン)
【真・女神転生III-NOCTURNE】
主人公(人修羅・作中名未定) 橘千晶
新田勇 氷川
【デジタル・デビル物語女神転生】
中島朱実 白鷺弓子 リック
【デジタル・デビル物語女神転生II】
主人公(作中名未定) ダークヒーロー(作中名未定)
ヒロイン(東京タワーの魔女・作中名未定)
【デビルサマナーソウルハッカーズ】
主人公(作中名未定) スプーキー
ネミッサ(=遠野瞳) ナオミ
【真・女神転生デビルサマナー】
葛葉キョウジ レイ・レイホウ(麗 鈴舫)
シド 秦野久美子
【デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団】
葛葉ライドウ 鳴海昌平 大道寺伽耶 朝倉タヱ
【女神異聞録ペルソナ】
主人公(ピアスの少年・作中名未定) 園村麻希 南条圭
桐島英理子 サトミタダシ
【ペルソナ2罪・罰】
周防達哉(罪主人公) 天野舞耶 リサ・シルバーマン
周防克哉 上田知香(チカリン) 反谷孝志(ハンニャ)
【真・女神転生if...】
内田たまき(女主人公) 宮本明 赤根沢玲子 狭間偉出夫(魔神皇)
= 書き手さんへのお願い =
※話に矛盾(時間軸・場所・所持品など)、間違いが起こらないよう注意してください
※作中に登場した人物の状況や所持品などを、レス末に記載してください
※タイトルは名前欄に記載してください
※キャラを新しく参加させることは、できるかぎり避けるようにしてください
※他の書き手さんにつなぐためにも時間描写をできるだけ入れてください
※SSの登場キャラは基本的に早いもの勝ち(書きたかったキャラが先に死んだりしても文句は言えない)
※キャラの予約(〜を書きたい)は自由。この場合予約者が優先されます
※他の書き手のSSで登場したキャラを書くのも自由(殺してもOK)
ただし元の書き手が「このキャラは最後までorこれ以降も書きたい」と言えばそれを優先。
※死亡者報告の放送を作中で流す場合はスレで報告してください
※叩かれても泣かない
= 基本注意事項 =
※原作を知りたい方は、原作をやるかストーリーを教えてくれるスレへ行きましょう
「キャラがどんな扱い、結末だろうと 絶 対 に文句を言わないこと」
521 :
512:2006/06/23(金) 16:55:04 ID:+diKYUWy
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><参加者リスト><着火器具・携帯ランタン>が支給される。
また、ランダムで選ばれた<COMP>が渡される。※地図は放送とともに禁止エリアに印、リストも放送とともに人名に斜線が入る
<ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る
・生存者が一名になった時点で、ゲーム終了。その一名はどんな願いもかなえられる。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。
+首輪関連+
・参加者には生存判定用の感知器がついた『呪い』が付けられる。
この首輪には爆発の魔法が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が爆破を念じるで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します
522 :
512:2006/06/23(金) 16:58:45 ID:+diKYUWy
+マップに関して+
・舞台は浮上スマル市全域(鳴海区除く)
【スマル市】
蓮華台
町の中心に位置する
・七姉妹学園、シルバーマン宅、アラヤ神社、本丸公園、民家多数
・悪魔出現:七姉妹学園
平坂区
西側
・春日山高校(地下に防空壕あり)民家多数
・悪魔出現:春日山高校 スマイル平坂
夢崎区
北側
・繁華街、店多し、消防署、パチンコ屋なんかもあったり
・悪魔出現:GOLD(スポーツジム) ギガ・マッチョ(CDショップ)
ムー大陸(ゲームセンター)ゾディアック(クラブ)
青葉区
東側
・野外音楽堂公園 キャスメット出版 スマルTV等
・悪魔出現:野外音楽堂公園 スマルTV(2F以降)
港南区
南側
・海に面している、住宅多し 警察署あり
・悪魔出現:廃工場 空の科学館
・参加者はスマル市のどこかにランダム転送される
・支給品は武器+アイテム(例:アタックナイフ+傷薬5個 コルトボニー+魔石)
以上で大丈夫でしょうか?
>>518さん、まとめサイト管理人さん、有難う御座います
523 :
449:2006/06/23(金) 17:06:41 ID:xqj4cm0a
>>522 乙です
基本ルールは議論がまだ終わってない点もあるようだが
現状はそれでいいんじゃないかと
実は自分で書いて誤植があった
>= 基本注意事項 =
>※原作を知りたい方は、原作をやるかストーリーを教えてくれるスレへ行きましょう
正しくは
※原作を知りたい方は、原作をやるか「ストーリーを教えてもらうスレ」へ行きましょう
正直スマンカッタorz
乙!
525 :
449:2006/06/23(金) 17:18:31 ID:xqj4cm0a
もう一つ。正確には「首輪」ではなく「呪い」だったよな
ということは、首輪関連のルールを下記に書き換える必要があるんじゃないか?
+呪いの刻印関連+
・参加者には生存判定用の感知器がついた『呪いの刻印』が付けられる。
この刻印には爆発の魔法が内蔵されており、授呪者が禁止された行動を取る、
または運営者が爆破を念じる事で爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の刻印が爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
526 :
512:2006/06/23(金) 17:25:30 ID:+diKYUWy
乙!よくやった!
528 :
449:2006/06/23(金) 17:29:10 ID:xqj4cm0a
乙でした
ところで本スレ(このスレ)の誘導アドレスが501-600になってるんだが…なぜ?
529 :
512:2006/06/23(金) 17:31:14 ID:+diKYUWy
530 :
512:2006/06/23(金) 17:32:57 ID:+diKYUWy
「そろそろ青葉区だ・・・」
ザ・ヒーローと大道寺伽耶廃工場を出てから数十分。
誰にも合わないように歩きづらい場所を歩いてきた。
最初は伽耶の体力を心配していたがそこはお嬢様とはいえ大正の女性。
ザ・ヒーローの認識する女性の体力よりはいくらかあるようだった。
「ええ・・・」
伽耶は答えた。
「言ってなかったのだけれど・・・」
ヒーローが口を開いた。
「これから入る青葉区は・・・僕の考えではおそらく激戦区だ」
「・・・そうなのですか?」
「うん・・・ビジネス街、あーつまり仕事をするための会社が多くある場所だから、役に立つものも多いだから・・・」
「人が集まる・・・ということですね?」
「そう、このゲームにのって本気で殺しに来ている人間がどのくらいいるかわからない・・・だが警戒は必要だ」
「・・・・・・」
伽耶は口ごもった。
伽耶は死ななければいけないと思ってはいたが、死ぬのが怖くないわけでも、まして自分の意思で死にたがっていたわけでもない。
当然恐怖はある。
「最悪の場合・・・君を守りきれないような奴と戦うことになるかもしれない、その時は何体か仲魔を付ける、覚悟をしておいてくれ」
「・・・・・・」
「怖いかい?」
「ええ・・・でも覚悟はできています」
「・・・わかった」
二人は激戦区、青葉区に入る・・・。
どうして自分がここにいる?
他のものはともかくなぜ自分が?
自分は神に選ばれた人間では無かったのか?
参加者は名簿によれば45人・・・自分が選ばれたのはどのくらいの確率だろう?
偶然で片付けていいものなのか?
あの「声」・・・スピーカーから流れて来た声は言った。
「殺しあえ」
あの悪魔のような声。
あれを聞いた瞬間自分は震え上がるのを感じた。
恐怖?畏怖?畏敬?
どれとも付かぬ感情が体を駆け巡った。
「人を殺す」
その行為自体は経験したことが無いわけではない。
どうしても捨てておけぬ悪人を殺したことはある。
しかしそれは神のためであり正義のためである。
あの声が言ったことはつまり
「生き残りたければ虐殺せよ」
自分はこれまで献身的に生きてきたはずだ。
自分の信念とは真逆のこと・・・。
「怖い・・・神様・・・」
自分は・・・こんなところで死んでいい人間であるはずが無い。
そうだ、死んでいいわけがない無い。
神に選ばれた自分が・・・。
「・・・そうか」
頭にひとつの考えが浮かんだ。
そうだ神が間違いをするわけが無い。
ここに自分がいるのは・・・そう、試練だ。
自分が本当に選ばれたものなのか図るための神の試練。
そうだ、そうに違いない。
とすればあのスピーカの声は・・・神の意思。
ああ・・・自分はなんと愚かなのだろう・・・神の声をよりにもよって悪魔などと形容するとは・・・。
どうかしていたに違いない。
「神よ・・・無知故の無礼をお許しください・・・主の与えたもうた試練・・・謹んでお受けします」
祈りを始める・・・。
この祈りが終わったとき・・・自分は試練に出向く。
必ず・・・超えてみせる・・・自分は選ばれたものなのだ。
人の気配がする。
研ぎ澄まされている・・・絶好調だ。
自分の武器は「当たり」だ。
これ以上の武器はこのゲームにおいてそうはあるまい。
やはり神は・・・自分の味方だ。
・・・・・・・・祈りは・・・・・・終わった。
「伽耶・・・さがっててくれ」
ヒーローは緊迫した声で言った。
「え?」
「人の気配がする・・・悪魔じゃない、参加者だ」
既にヒーローは鉄パイプを構えている。
「出て来い・・・とっくに気づいてるよ・・・こちらにやりあうつもりは無いそちらに敵意が無いなら何もしない」
ヒーローの声が響いた。
次の瞬間。
何かが光った。
「うあっ!?」
ヒーローは即座に反応するが左腕にかすった。
血がぽたぽたと流れ落ちる。
「ふふふふ・・・誰かと思えば・・・ヒーロー君じゃないですか・・・後ろにいる子はヒロインさんじゃありませんね」
光の走った方向から男が現れる。
長髪に痩躯の体・・・片手には銃を持っている。
間違いない、今撃った男だ。
「・・・ロウヒーロー」
ヒーローは男の名をつぶやいた。
そう、男はヒーローのかつての仲間。
そして袂をわかつた男。
献身的な精神と魔法の能力を持つ男。
ロウヒーローその人だった。
「そうですよ・・・久しぶりですね」
「お前は・・・」
目が・・・違う。
昔の献身的な目をしていた彼ではない。
狂気に取り付かれている。
この男は自分を・・・。
「昔のよしみです・・・楽に・・・殺してあげますよ」
殺しに来ている。
「伽耶!逃げるぞ!」
ヒーローが叫んだ。
次の瞬間再度銃から光が走る。
先ほどまでヒーローがいた地面に穴が開いた。
「はははははは!!すごいでしょう!この銃!ジリオニウムガンて言うんですよ!弾丸がいらない光線中・・・」
「つまり絶対に弾切れしないんですよ!逃げられますかね?女の子ずれでぇええええええええ!!」
ロウヒーローが叫んだ。
再び銃を乱射する。
その時。
「ジオンガ!」
「うっ!?」
ロウヒーローの体に電撃が走った。
ダメージはほとんど無い。
だが体が痺れて動きが一瞬と待った
「スクンダ!」
「!?」
次に飛んできたのは一時的にすばやさを下げる魔法。
ロウヒーローが振り向いた。
その先にいた魔法の出所、それは妖精ピクシーと地霊ブラウニー・・・ヒーローの仲魔だった。
「下級悪魔がぁああああ!!」
怒声と共にロウヒーローは二匹に銃を向ける。
「RETURN!」
発射される前に二匹は姿を消した。コンピュータに戻ったのだ。
ロウヒーローが一人取り残される。
ヒーローは気配を感じた段階で仲魔を召喚、迂回させ見えない位置で待機させていた。
ヒーローとて大破壊を乗り越え生き抜いた悪魔使い、備えは万全であった。
「フフ・・・ククククク・・・ハハハハハハハハ・・・さすがはヒーロー君・・・でもねぇ・・・」
「こんな小細工をするってことは!今のヒーロー君じゃあ僕に勝てないって!自分で言ってるようなもんなんですよぉおおお!!」
「あの人追ってきていますか?」
走りながら伽耶がたずねる。
「舌噛むよ、喋らないほうがいい・・・大丈夫、あの手の魔法に威力は関係ない、時間は稼げたはずだ」
言いながらヒーローはGUMPを展開しピクシーとブラウニーに帰還を確認する。
次に召喚コマンドを打ち込む。
<妖鳥召喚・・・ハーピー・・・・GO!>
画面に六亡星が現れ鳥型の悪魔が目の前に現れる。
「どうしました・・・ヒーロー様」
鳥型の悪魔、ハーピーはヒーローに尋ねる。
「伽耶、正直言ってロウヒーローは強い・・・あいつは魔法も使える上にあの武器だ、正直守りきれない・・・そこでだ」
ヒーローは早口で続ける。
「ハーピー、伽耶をつかんで・・・あのビルの屋上に行ってくれ、安全になり次第GUMPを通して連絡する・・・いいね伽耶」
「ヒーロー様のためでしたら・・・」
「・・・わかりました・・・どうか死なないで・・・」
ハーピーはそういうと足で伽耶の片をつかむと飛び上がる。
「っ・・・」
伽耶から声が漏れた。
「痛かったですか?申し訳ありませんが私こういうつかみ方しかできませんの・・・」
「い、いえ・・・大丈夫です」
「ほほほ・・・そうですか、ヒーロー様の命です、あなたはなんとしてもお守りいたしますわ」
そんな声もだんだん遠くなる。
「さて・・・これからだな・・・」
撃たれた左腕の止血を済ますとヒーローはつぶやいた。
ロウヒーローは確実にゲーム乗っている。
ほおって置くわけには行くまい。
「あいつと戦うのは・・・2度目か・・・」
ヒーローはかつてロウヒーローを自身の手で殺している。
名簿にロウヒーローとカオスヒーローの名前を見たとき、伽耶の生まれた時代を聞いたとき。
いろいろな時空から参加者を集めていると気がついた。
あのロウヒーローはおそらくメシアとして転生した直後のロウヒーローだ・・・交渉は・・・通じまい。
ザ・ヒーローは覚悟する。
最悪の場合再びかつての友を殺す覚悟を・・・。
【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:疲労 左腕に傷、応急手当済み
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ インストールソフト×3
道具:マグネタイト1200(使用により減少)
仲魔:妖精ピクシー 地霊ブラウニー始め10匹(ただし妖鳥ハーピーを伽耶に付けているため実質9匹、同時召喚は4匹まで)
現在地:青葉区
行動方針:戦力の増強 ロウヒーローの迎撃
【ロウヒーロー(真・女神転生)】
状態:ごく少量のダメージ スクンダによりすばやさ減少(時間経過で解除)
武器:ジリオニウムガン
道具:?
現在地:青葉区
行動方針:ゲームに勝ち、生き残る ヒーローの殺害
【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:疲労
武器:スタンガン 包丁
道具:無し
仲魔:妖鳥ハーピー(但しザ・ヒーローの使役、そのため伽耶の命令を聞くかは定かではない)
現在地:青葉区
行動方針:ザ・ヒーローについていく
この街をもっとよく知るため、七姉妹学園の生徒を探し、ライドウ、鳴海、レイコの三人は一路、
七姉妹学園の校舎が置かれている蓮華台に向かって移動していた。
まさか学校に生徒そのものが来ているとは考え難いが、
何処にいるのか解らない以上、目標はそこしか思いつかなかった。
ルートは死角が全く無く、やたらと開けた四車線の大通りを避け、
それとは真逆の北側にある山際のルートを通ることにした。
こちらなら多少隠れることが容易な上、
今頃街中で情報収集に奔走しているであろう他の参加者と鉢合わせになる可能性が低いと思われるからだ。
それに、他の二人は知らないが、少なくともライドウは幼少の頃より山の中で育ったため、山道の移動には慣れていた。
一応、先ほど基本的な行動方針は決まった。
この街の動力源を探すことだ。だが、課題は多い。
まずは飛び道具の確保である。
一応こちらにもクロスボウはあったが、前日の内から何度も聞こえる銃声で判ることだが、
銃を持っていてやる気になっている相手がいるということだ。
そんな連中と出会ってしまった場合、一撃ごとに新たな矢の装填が必要なボウガンはあまりにも頼りない存在だった。
それにこれをまともに扱えるのが鳴海だけというのもマイナス点である。
それから、出来ることなら封魔の管を何処かで確保したい。
これはこの街に存在するかどうかすら怪しいが、鳴海の支給品の中に悪魔召還に使えそうな道具が入っていたことから可能性はゼロでは無いだろう。
誰かの支給品に含まれているのなら、是非交渉して手に入れておきたい所だ。そう上手く行くとは思えないが…。
管があるかどうかで、ライドウのデビルサマナーとしての真価がようやく発揮される為、今後の戦局が大きく変わるのである。
それから、誰の眼にも付きそうに無い、隠れることが可能な場所の確保だ。
デビルサマナーとして危険で厄介な激務に慣れているライドウや、探偵として張り込み、追跡を数多くこなしているであろう鳴海はともかく、
今まで普通に生活していたのであろうレイコにかなりの疲弊の色が見えているのだ。
昨晩は一睡もしていない上、この数時間舗装されていない山道を歩き通しなのだから無理も無いだろう。
「この辺で休憩でもしないか?」
少々息の上がっているレイコを見るに見かねてか、鳴海がそう進言し、二人は足を止めた。
三人は昼間だというのに太陽の光があまり届かない茂みに隠れるようにして座り込んだ。
古い切り株に腰を下ろしている鳴海は煙草を取り出し、一本口に咥えるとマッチで火をつけた。
それから大きく空気を吸い込み、ゆっくりと煙と一緒に吐き出す。
「それにしても、魔法の力って偉大なもんだな。全く。」
実は鳴海がゲーム開始早々半谷教頭にやられた腕の傷は、レイコが魔法で完治させていたのである。
「これさえあれば医者要らず薬要らずだよ。」
「でも…ちょっと気になってるんですけど。」
落ち葉の上にきちんと足を揃えて上品に座っているレイコが言った。
「どうも回復魔法が使いにくいような気がするんです。何ていうか、別の大きな力に無理矢理押さえつけられているような…。」
実際、レイコが鳴海に使用した魔法は、瀕死の重傷者でも歩けるようになるほど強力なものだったが、
浅い傷を塞ぐので精一杯の効果しか上げられなかった。
「多分、これが一枚噛んでるのではないでしょうか。」
今まで黙っていたライドウが、詰襟の先を摘みながら呟いた。
この下には、ゲーム参加者全てに平等に与えられた死の宣告が刻まれているのだ。
姿すら現さなかった主催者がその気になれば一瞬で全員の命を奪うことすら可能な呪いの刻印である。
だが、魔神皇の強烈な魔法を見る限り、攻撃魔法の威力が殺されているとは思えない。
当然、奴の実力の半分以下であの破壊力だということも考えられるが、
魔法を使った当の魔神皇が違和感を覚えている風には見えなかったからだ。
「厄介だな。」
「えぇ、厄介です。」
運よくこの地獄の街を脱出出来たとしても呪いが消えてくれるとは限らない。
恐ろしい相手だった。
と、その時。
「なっ!」
ライドウの優れた動体視力がそれを捉え、咄嗟に隣にいたレイコを庇う様に押し倒した。
刹那、木と木の隙間から勢いよく飛んできたそれはライドウのいた位置にぶつかると、破裂して真っ白な煙を噴き上げた。
発煙筒である。一体何処から投げられたのか…
ライドウが煙の中で考えを巡らせているとその奥から人影が飛び込んできた。
反射的に脇差を抜き、襲ってきてそれに備える。直後、柄を握る両手に重い衝撃が圧し掛かった。
衝撃を押し返しながらレイコを確認する。
二人とも、発煙筒の発するくもった気の中にはいない。
どうやら鳴海がレイコを連れて逃げてくれたらしく、少し安心した。
「そうだ。それでいい。」
突然刃を押し付けてきた人物が低くくぐもった声で言った。
西洋剣の刃といっしょに押し付けられた顔は、ライドウと同じくらいの年頃の少年だった。
寝癖のような癖毛で、耳に銀のピアスを着けている。顔は限りなく無感情に思えた。
ピアスの少年がもう一度大きく剣を振りかぶった時、ライドウは枯葉だらけの地面を転がってその場を逃れた。
だが、少年が剣を振り降ろすほうが少し早かったのだろう。
ライドウの白い頬に傷が入り、右の肩口が大きく抉れた。裂けた学生服からどろりとした血液が吹き出す。
少年が、間合いを取るため背後に飛び、その隙に立ち上がって体勢を整える。
少年よりも先に素早く攻撃を仕掛けるが、ライドウの一撃は少年の剣であっさりと薙ぎ払われた。
無理に仕掛けるのではなく、自分の丁度良い間合いを取ってから攻撃に移る。
見かけによらず、なかなか戦い慣れているようだ。
しばらく無言の睨み合いが続いたが、発煙筒の煙が晴れた頃、
少年の口元が微妙に歪み、ライドウは強烈な殺気に気圧されることとなった。
「ペルソナ…」
そう言った単語を彼が呟いた瞬間、少年の背後に別の人影が浮かび上がる。
三面六臂の黄金の魔神、ヴィシュヌである。
インドの叙事詩「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」で名高いその美しき神はヒンズー教三神に数えられる。
ペルソナと呼ばれたそれはライドウが使役する悪魔とは別の能力らしいが、
こちらにろくな武器が無い以上、その力に晒されるのはまずい。
「くっ!」
ライドウは奥歯を噛み締めると、召還されたヴィシュヌが何かの力を発する前に刀を構えて突撃した。
肩の傷は大して痛まない。
それほど深い傷では無かったのか、単に感覚が痺れているのかは解らなかったが。
相手が強力な切り札を出した時は下手に逃げ回るよりも先に仕掛けて一撃で終わらせる方が安全。
それはライドウの積み重ねられた戦闘経験がもたらした最大の防御法である。
「……!」
手負いの筈のライドウが、予想以上の動きを見せるので少年も少し動揺したのだろう。
刀の一撃は何とかかわしたが、ヴィシュヌの影は消えていた。
だが、怯むことなく少年は剣を構える。
が、突然体が、ぐらりと大きく傾いた。
少年の肩に後ろからスチール製の矢が刺さったのである。
彼の背後を見ると、木陰から鳴海がクロスボウを抱え、次の矢を装填しようと手を動かしていたのだ。
その横から顔を出したレイコがこちらに向けて何かを投げる。
それは空中で破裂し、先ほどの発煙筒とは桁違いの量の煙を噴き上げた。鳴海に支給された煙玉である。
煙で視界が覆いつくされる前にライドウはレイコが思わせぶりに右手を上げるのを見た。
それから眼で訴えた。「逃げて」と。
ライドウたちは山の斜面を転がり落ちるように逃げまくった。
「何だよあれ! もの凄いヤバイのがいるじゃねぇか!」
鳴海が走りながら喚くが、ライドウもさっきの襲撃者は全くの想定外で、何者かまでを観察している余裕は無かったのである。
しばらく走り、ようやく人の気配が無い辺りまで来た所で足を止めたが、ライドウはあることに気付いた。
「ライドウどうした?」
きょろきょろと周囲を見渡す。鳴海も気付いたようで、目を大きく見開いた。
「レイコさん…?」
そう、レイコの姿が無かったのである。
聖エルミン学園の制服を纏ったピアスの少年、藤堂尚也は背中に矢を刺したまま、思惑した。
考えているのは矢のことではない。
かなりのダメージには違いないが、これを今抜くわけにはいかないのだ。
何の考えも無しに体に刺さった鏃をを無理矢理抜けば大量出血によるショック死は免れないからである。
今は放っておくことしか出来なかった。
それよりもまず、先ほどの混乱に乗じて捕まえたこの少女をどうするかである。
用事があるのはさっきの黒いマントの男だけなので、この少女を今すぐ殺す必要は無い。
このまま連れ歩いた所で人質としての価値が見出せるかどうかも怪しかった。
相手があの、黒いマントの男なら…。
尚也は夜明け前、青葉区の通りを歩いていた。
急なことだったから自分一人でこの先のことを判断することは出来ないような気がして、仲間を求めていたのである。
自分の知っている人物、同じ学校の園村麻希、南条圭、桐島英理子、里見正…。
他にはハンニャ教頭もいたようだが、あの糞ハゲジジイが自分に協力してくれるとは思えない。
こいつは除外するとして、夜明けまで街中を探した挙句、発見したのが園村麻希であった。
だが自分が彼女に声を掛けた瞬間のことだ。
突如抜き身の刀を手にし、まるで時代錯誤とも言えるような黒マントを羽織った先ほどの男が麻希に走り寄り、
麻希が自衛手段として持っていたのであろう包丁を奪って容赦なく刺し殺したのである。
(本当は園村麻希の自殺を止めようとしただけなのだが、暗闇と角度の関係で尚也の眼にはそう映ったのだ。)
園村麻希が自分にとってどういう存在なのか、尚也にはうまく掴めていなかった。
セベクスキャンダルを共に乗り切った麻希とは、ただのクラスメイト、友達と言える仲ではない。
だが、恋人同士というほどの間柄でも無かった。
それなのに、麻希の死を間近に見た時のあの喪失感はとても口に出来るような感情ではなかった。
胸のぽっかりと大きな穴が開き、それはもう二度と塞ぐことは出来ないだろう…。
その瞬間、自分のやるべきことが決まった。あの男を殺すのだ。自分の手で。
麻希の命を奪った男の顔は殺すまで、絶対に忘れない。
彼女の鮮血を浴び、不気味に笑った(ように見えた)あの顔は、必ず自分の手で潰してやる!
「離して。」
細腕をがっちりと掴んでいる眼鏡の少女が抗うように身を捩った。
「逃げるのか?」
当然だろう。あの男の仲間なのだから。
だが、少女の口から飛び出した言葉は尚也の予測を大きく裏切った。
「背中を見せてください。早くしないと手遅れになってしまいます。」
【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 顔と右肩を負傷
武器 脇差
道具 傷薬×2
現在地 蓮華台に向かう山道
行動方針 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出
【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上
【赤根沢レイコ(if…)】
状態 正常
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ゲームからの脱出
【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 背中にスチール製の矢が刺さり負傷
武器 ロングソード
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
現在地 同上
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇をうつ
せっかくのピアスの少年が復讐に燃えていてすみません。
彼の名前は上田信舟先生のコミック版からです。
自分ではいい名前が思いつきませんでした。
すみません。ピアスの少年の矢が当たった場所が最初違っています。
背中ということにしておいて下さい。
失礼しました。
543 :
セーブ機能:2006/06/25(日) 00:55:58 ID:fDphoNLC
>>542 具体的な変更点を記載記載してもらえば、
まとめで変更しておきますよ?
勝手に変更すると意図が変わってしまう場合もあるので
走る。
動きが鈍いのがもどかしい。
先ほど受けたスクンダのせいだ。
だがこんなものすぐに効果は消える。
ヒーロー君の出した仲魔・・・先ほどのピクシーとブラウニー。
いずれも下級悪魔だ。
成るほどさすがはヒーロー君、最小限のダメージですむよう弱い悪魔ながら厄介な魔法を使える奴を選んだようだ。
しかし、僕をけん制するために構えたあの鉄パイプ・・・武器はコンピュータだけのようだ。
そして僕とて仮にもメシアあんな下級悪魔の攻撃魔法を食らったところでたいしたことも無い。
注意すべきは状態異常魔法やンダ系の魔法のみ。
それもあんな下級悪魔では連発はできまい。
「ヒーロー君・・・物事には前座とトリがあります・・・もちろんこれは演劇の話しですが・・・」
体が軽くなる、スクンダが解けた。
軽い、スクンダをかけられる前より軽くなったようだ。
「このゲームは所詮!神が僕のために作り上げた試練という名の演劇でしかない!これがどういうことかわかりますかぁあああああ!?」
速く速くもっと速く。
速く追いつくんだ。
「僕が最初に出会った君はぁぁぁぁあああああ!!僕に殺されるための前座でしかないんですよぉぉぉおおおお!!!!」
ロウヒーローの声が聞こえる。
「あいつがあんな大声を上げるなんて・・・」
ヒーローの知るロウヒーローは落ち着いた人間だった。
まるで人が変わったようだ。
「・・・このゲームの魔力・・・か」
人の心にすむ魔。
それは時として人を蝕む。
献身を重んじ神の法に従う彼にもそれは例外ではない。
「ロウヒーロー・・・確かに現状の戦力は君が上だ・・・だが」
ヒーローは鉄パイプを構えた。
「策はできた・・・悪魔召喚師っていうのは力押しだけでどうにかできるような生き物じゃないんだよ・・・」
見えた。
ロウヒーローの視界にヒーローの姿が浮かぶ
追いつくのには時間がかかるだろうが近距離武器しか持たぬヒーローと銃、しかも弾切れの無い銃を持つロウヒーロー。
どちらが有利かは明白であった。
その状況にロウヒーローは笑みを浮かべる
「ふふふ・・・どうやら狩るもとと狩られるもの・・・立場は決まったようですね・・・ふふふふふふふふ」
ふとヒーローが立ち止まったのが見える。
「おや・・・そうか・・・観念しましたか・・・!?」
そう思ったその時ヒーローが何かを投げた。
ロウヒーローはとっさに防御する。
ガンッという音がした。
「ぐぅ・・・」
ロウヒーローの傍らにはカラカラと鉄パイプが転がっている。
「う・・・腕が・・・この威力・・・この遠投・・・タルカジャ・・・ですか」
ヒーローの傍らには獣の姿が見える。
「あれは・・・魔獣サンキ・・・でしたか・・・久しく見ていませんが・・・下級悪魔ですね」
ヒーローの姿はもう無い。どうやら横のビルに入ったようだ。
「ですが・・・僕の治癒魔法・・・忘れたとは言わせませんよぉおおおお!ディアラマァ!!」
ロウヒーローの手が光を放ち腕に受けたダメージが癒えていく。
しかし。
「治癒魔法が鈍いよぉですねぇ・・・」
今使ったディアラマはいつものディアラマではない。
この回復魔法の出力では大ダメージを負ったとき回復しきれまい。
「しかし仲魔を使うヒーロー君とて条件は同じ・・・・・・立場は変わりません・・・」
ロウヒーローはヒーローの入ったビルへと歩いていく。
「追い詰めた・・・わけではありませんね、飛べる仲魔がいればそれにつかまって移動できますからねぇ」
実は飛べる仲魔は先ほど伽耶に付けたハーピーのみなのでそうではない・・・がロウヒーローが知るはずも無い。
「・・・これは」
ビルの入り口に立って気づいた、入り口が凍らされている・・・いや。
「巨大な氷でふさがれていますね・・・ブフ系魔法ですか・・・これでは入れませんねぇ」
ロウヒーロは銃を構え引き金を引く。
光が走る。
しかし。
小さな穴が開いただけだった。
「おや・・・?そうですか、物を貫通するこのジリオニウムガンでは砕くことはできませんもんねぇええ」
ロウヒーローは叫びながら氷に手をかざす。
「マハザンマァ!!!」
ロウヒーローが叫ぶと手から衝撃波が発生して氷を打ち砕く。
「くくく・・・魔法なら問題なく砕けますねぇ・・・」
ロウヒーローは砕けた氷の破片を踏みにじりながら中に入る。
「ジオンガ!」
「スクンダ!」
入ったと同時に先ほどの2匹が魔法を仕掛けてくる
「ぐぅ!?」
「「RETURN!」」
ロウヒーローが振り向く前に2匹はコンピュータまで戻る。
「下級悪魔の分際でぇえええええ!?」
ロウヒーローは気がついた。
「フフフ・・・エレベーター・・・壊されてますねぇ・・・それに・・・」
ロウヒーロは階段の方に目をやる。
そこは先ほどの入り口と同じように氷でふさがれているおそらくその奥にも何枚も氷があるだろう。
「ふはははははははははは!」
ロウヒーローは高笑いを始める。
しかし顔が憤怒の表情に変わる。
「どこまでも小細工をぉぉぉおおおおおお!?いいでしょう!そちらが小細工というなら圧倒的な力で!」
「あなたを蜂の巣にしてあげますよぉおおおおおお!!!」
階下から叫び声が聞こえる。
「氷に切れてるようだな・・・あいつ意外と激情家だからなぁ・・・それですむレベルじゃない気もするけど」
ヒーローは既に最上階まで上っていた。
「ヒホホー・・・もう駄目ホー・・・」
最後の氷を張り終わったジャックフロストが倒れる。
「ご苦労様、ありがとうジャックフロスト・・・COMPに戻って休んでてよ」
ヒーローがジャックフロストに声をかける。
「ヒホ・・・ヒーロー、聞きたいことがあるホ」
「ん?」
「ヒーローは合体で戦力を増強するつもりなんだホ?」
「・・・うん」
「気にしなくていいホ。オイラ達が弱いのはわかってるホ」
「それにヒーローの仲魔になったのはそうされてもいいと思ったから仲魔になったんだホ」
「・・・・・」
「だからお願いが有るホ」
「え?」
「最初の合体は・・・オイラとランタンで合体させて欲しいホ」
「君と・・・ランタンで?」
「そうだホ、ランタン役に立てそうに無いって悩んでたホ」
ジャックランタンはジオやブフなどのような追加効果の無いアギ系しか持たない。
圧倒的に戦力の高いロウヒーローを迎え撃つ際それは致命的だった。
「それは・・・」
「ヒーローがいい奴だってのはみんなの気持ちホ、役に立てなくて悔しいのはよくわかるホ・・・だから」
「フロスト・・・」
「だから合体で役に立つホ、お願いホ」
ヒーローはそっとジャックフロストの頭をなでる。
「わかった・・・ありがとう・・・MAGの都合でみんな呼ぶことはできないけど・・・」
「ヒホヒホ、ランタンにも他のみんなにも伝わってるはずだホ」
フロストが嬉しそうに笑う。
「じゃあオイラは戻るホ、バイボイホー」
そういってフロストはコンピューターに戻る。
「・・・生き残らなくちゃな」
そういうとヒーローは部屋に入る。
ロウヒーローを迎え撃つ最後の仕上げのために・・・。
「フーフー・・・また・・・氷ですか・・・マハザンマぁ!!」
氷が砕け散る。
今のを入れて15枚。
すなわち15発マハザンマを撃ったことになる。
その疲労はどんどん蓄積されていく。
「ふーふー・・・マハザンマは・・・後一発が限界って所ですか・・・」
ロウヒーローは息を荒げている。
螺旋階段を上り折り返す。
また氷が有る。
ロウヒーロは歯軋りをする。
しかし透き通って見える氷の向こう。
「やぁ・・・お疲れのようだね、ロウヒーロー」
ヒーローだ。
「氷はこれで最後だよ・・・とっとと割ったらどうだい?僕を殺したいなら・・・」
そういってヒーローは部屋の中に入っていった。
「フフフフフフフフ・・・ククククククク・・・・マハザンマァ!」
最後のマハザンマと引き換えに最後の氷か破壊される。
それを乗り越えヒーローを追う。
角を曲がりヒーローの入った部屋に入る。
「追い詰めましたよぉぉおおおおおおおおお!?ヒーローク・・・!?」
瞬間。
ロウヒーローの銃を持った手を何かが高速で打ち据える。
「ぐぅ!?」
銃が床に落ちる。
「アドバンテージは無しだだね・・・ロウヒーロー・・・」
ヒーローの鉄パイプだった。
奥に言ったと見せかけ曲がり角の死角で気配を消す。
初歩的な奇襲だが激昂したロウヒーローには効果覿面だった。
「今度有利なのはこちらだよ・・・魔法の連発でお疲れのようだ・・・その上こちらはタルカジャスクカジャともに限界までかかってる」
ヒーローが鉄パイプをロウヒーローに向ける。
「殺す気は無い・・・ただちょっと・・・気絶してもらうだけさ」
「フフフフフフフフ・・・あなたは・・・何時も何時も中途半端だ」
ロウヒーローが何かを取り出し地面に打ち付ける。
とたんに煙があたりを包む。
「煙幕弾!?・・・・ぐっ!?」
通常逃走のために使用するそれを地面に打ち付けた。
煙が・・・はれた。
そこには。
銃を突きつけられたヒーローとヒーローの上で銃を構えるロウヒーローの姿があった。
ロウヒーローが口を開く。
「あの隙に銃を弾くだけで頭を砕くことをしない・・・かといって他人のために死ぬ気にもならない・・・ほんとに中途半端ですよ、あなたは」
ロウヒーローの銃が光る。
「ぐぁああ!?」
打ち抜いたのは右腕・・・握っていた鉄パイプが転がる。
「最初僕・・・昔のよしみで楽に殺してあげるって言いましたよねぇ・・・アレは撤回します」
再び、光。
「うぁああああ!」
今度は左腕に風穴が開いた。
「散々コケにしやがってぇえええええええ!!!じわじわとなぶり殺してあげますよぉおおおおお!?」
次に肩に風穴
。
「両肩ぁああああ!次に両足ぃいいいいいい!!その次は腹ぁあああああ!さらに目ぇえええええええ!」
「僕が満足して脳漿をぶちまけるまでぇええええ!恐怖と痛みにのたうちまわれぇええええええ!!」
「はぁはぁ・・・ふっ」
ヒーローがにやりと笑った。
「何がおかしいぃぃいいいいい?!怯えろ!怯えて僕を満足させろぉおおおおお!?」
「気が付かないか?悪魔召喚師が・・・コンピューターを持っていない・・・何かあるかと思わないか?」
先ほどのヒーローの手には鉄パイプのみ。今も、体のどこにもGUMPは無かった。
「右を見てみな」
ロウヒーローが右を向く。
次の瞬間。
黒い巨大な影。
それがロウヒーローの左側から襲い掛かった。
「ああ・・・ごめん、僕から見て右だったよ」
「最初は悪魔の現れた日、2回目はTDLに向かうあの日・・・」
ロウヒーローを襲った黒い影。
それは今もロウヒーローを押さえつけている。
「なっなっなっ・・・何でこいつがここにぃいいいいいいい!?」
それは・・・。
「君に助けられるのは3回目だね・・・ありがとう・・・まさか君が来てくれるなんて・・・久しぶり、パスカル」
青いたてがみを持つ地獄の番犬。
ケルベロスだった。
「グゥ・・・ヒーロー・・・コイツハ・・・死ハズデハ・・・」
ケルベロスが尋ねる。
「説明は後だ・・・さて・・・ロウヒーロー・・・実は僕は・・・あるものを探してここに入ったんだ・・・君を迎え撃つためじゃない」
ケルベロスの現れたほうにあったもの・・・それはノートパソコン・・・。
「詳しい説明は省くけど・・・強力な仲魔を作るためには・・・パスカルが来てくれたのは嬉しい誤算だけど・・・パソコンが必要だった」
ザヒーローのインストール作業は既に完了していた。
銃創もガリバーマジックにより非常にゆっくりとではあるが回復しつつある。
「でも町はこんなだ・・・電源があるかどうかもあやしい・・・ところでこのビル・・・何の会社か知ってるかい?」
「キャスメット出版・・・出版社だ」
「当然記者だっているだろう、となれば当然ノートパソコンは必需品・・・予備電源と共にね」
「もくろみはあたったよ・・・さよなら・・・ロウヒーロー・・・パスカル、頼む!」
「ガゥ!!」
ヒーローの支持と共にケルベロスが爪を振り上げる。
瞬間。
「トラフーリ!!」
脱出呪文。
ロウヒーローのおそらく最後の魔力。
その呪文は・・・成功した。
既にケルベロスの前にロウヒーロウはいない。
「グゥ・・・スマン・・・逃ゲラレタ・・・」
「・・・まだ魔法が使えたなんて」
「・・・追ワナイノカ?」
「いいよ・・・もともとぼくから殺しにいったわけじゃない・・・それに迎えに行かなきゃ・・・仲間がいるんだ」
「ソウカ・・・ヒーロー、俺ノ背中ニ乗レ・・・銃創ガ痛イタムダロウ・・・」
ヒーローは屋上の扉を開ける。
ここに伽耶とハーピーがいるはずだ。
「伽耶・・・?・・・どこにいる?伽耶・・・」
ヒーローが一歩踏み出す。
妙な感触がした。
ヒーローが下を見る。
「!?」
髪の毛だ。
ヒーローの足の下には無数の髪の毛が散乱していた。
「ヒーローさん?」
後ろから伽耶の声が聞こえる。
ヒーローが振り向くとそこには長かった髪がばっさり切られた伽耶がいた。
「よかった・・・無事だったんですね」
伽耶がヒーローに近づく。
「あっ・・・この髪ですか?やっぱり包丁じゃ切りづらいですね・・・変じゃないですか?」
「え?ああ・・・似合ってるよ」
「私が切ってあげましたの・・・」
ハーピーが後ろから現れた。
「私・・・少しでもヒーローさんの足手まといにならないようにって思って・・・気休めですけどね・・・」
伽耶が少し笑顔になった。
「・・・うん、休んでる暇も無い・・・速く青葉区から出よう、インストールは終わったよ・・・ノートパソコンと変えのバッテリーも貰ってきた」
新たな仲魔を得て再び二人は動き出す・・・天秤は今だ揺れず・・・しかし別の何かが・・・動き始めた。
【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:疲労 負傷(両腕と右肩に銃創、但しガリバーマジック効果と仲魔ディアによりほぼ回復)
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み)
道具:マグネタイト700(使用により減少) ノートパソコン 予備バッテリー×3
仲魔:魔獣ケルベロス、妖鳥ハーピーを始め9匹(ジャックフロストとランタンの合体事故によりケルベロス誕生 他も合体予定)
現在地:青葉区から離脱中
行動方針:戦力の増強 青葉区より離脱
【ロウヒーロー(真・女神転生)】
状態:爪あと、鉄パイプなどによる軽症 疲労大 現在魔法使用不可
武器:ジリオニウムガン
道具:煙幕弾×9(ひとつ使用)
現在地:青葉区(逃走中)
行動方針:ゲームに勝ち、生き残る 体力の回復
【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:疲労 髪の毛を切る
武器:スタンガン 包丁
道具:無し
仲魔:無し
現在地:青葉区から離脱中
行動方針:ザ・ヒーローについていく
か、伽耶ーっ!
>>543 すみません。
では鳴海が放った矢が藤堂に当たったところが肩になっているのですが
背中に直しておいてください。
お手数お掛けしてすみません。
それが何を意味するのかを悟ったライドウは、何も言わず元来た道を遡ろうとした。
だが、鳴海が翻されたマントの裾を掴んでそれを止めた。
「離してください鳴海さん! このままじゃレイコさんが!」
強力な敵がまたも出現し、レイコの所在が知れなくなった以上、ライドウはどうしても冷静ではいられなかった。
「待てよ! レイコちゃんは大丈夫だから! 絶対逃げ切ってるはずだ!」
「どうしてそんなことが言えるんですか貴方は! さっきの力見たでしょう!?」
それはピアスの少年が発したペルソナという未知の能力のことである。
発動だけはライドウの咄嗟の機転で何とか回避出来たが、あの強力な殺気はただ者では無い。
インドの主神、ヴィシュヌの名は伊達では無いということか…。
ピアスの少年には鳴海が多少のダメージを与えた。
だが同時にライドウもまた、傷を負ったのである。
「だからって、今引き返したらお前まで…!」
「レイコさんを助けないと!」
(やれやれ、こいつゴウトがいなかったらこんなにガキだったのかよ。
……それとも、レイコちゃんのせいか?)
ライドウがこの街にやって来てゴウトと逸れ、それからレイコに出会ってからというもの、
鳴海の知っている彼とは全く別人のような変化が続いている。
無愛想、無口、無表情と三拍子揃っている奴だと思っていたが、それは師匠のゴウトがいたからこその姿だったらしい。
元々少し浮世離れした奴だったから、自分の感情表現が豊かになったことは良い変化かもしれない。
だが、冷静に対処しなければ、それこそ命に関わるこの状況で、こんなに熱くなられたら元も子もないのだ。
「…悪いな、ライドウ。」
鳴海は低く呟くと、今まさにライドウが脱ぎ捨てようとしているマントから手を離し、代わりに負傷した右腕を捻り上げた。
「ぐっ!」
激情に駆られ、忘れかけていた痛みにライドウが顔を歪ませるのも束の間、鳴海はライドウの頬を叩いた。
「お前が落ち着かなくてどうするんだよ。眼を覚ませライドウ! 眼を覚ませ!」
それから鳴海は、ライドウが落ち着きを取り戻すまで何度も、何度も頬を張り続けた。
兎にも角にもようやく冷静さを取り戻したライドウの傷の手当が先決である。
利き腕負傷ではこの先まともに戦うことが不可能だ。
だが、レイコがいない以上、回復には支給された道具を使うしか無かった。
「これは…もしもの時のために取って置いてください。」
一応鳴海の支給品の中には瀕死の重傷をも一発で治す宝玉があったが、それを使うのはライドウが拒否した。
だからライドウの手持ちの傷薬を使っての応急処置で済ます結果になってしまったが、それでも無いよりはましだろう。
ペットボトルの水で簡単にだが、傷口を洗い、傷薬を塗る。
「すみません鳴海さん。手間を掛けました…。」
「まぁ、仕方無いさ。いきなりの事だったからな。」
ライドウが学生服の下に来ているワイシャツを裂いて作った即席の包帯を腕に巻いて、当面の手当てを終了させる。
それから学生服を肩に掛けてやりながら鳴海は続けた。
「それにしてもさっきの奴、あんなに近くまで接近を許してしまってたとは。
休憩中って言っても少し気を抜きすぎてたな。」
「……。」
鳴海がどうなのかは知らないが、少なくともライドウは気を緩めていたつもりは無かった。
自分から立ち入る隙を作っていたとは思えない。
と、言うことはつまり、あのピアスの少年は完全に気配を殺した上で、ライドウたちに接近し、襲い掛かってきたということである。
一体彼は何者なのか。だが少なくとも自分たちの味方では無いということは確実である。
「いずれ…また戦うことになるかもしれないな。」
再び咥えた煙草に火をつけながら、遠い眼をしてそう言う鳴海に、ライドウはゆっくりと頷いた。
ライドウは既に覚悟を決めていた。
少し前までは誰も殺したくは無い。出来るだけ多くの人間を説得して脱出を試みるつもりで行動していたが、
だがそれは自分で思っていたよりも、遥かに甘い見通しであるということをたった今痛感したのである。
危険な敵はあのピアスの少年だけではない。魔神皇もしかりだ。
おそらく他にもまだいるのだろう。
「次は僕も本気で…斬ります。たとえ誰かを殺す結果になっても、守らなくてはならない人がいるのだから…。」
【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 顔と右肩を負傷
武器 脇差
道具 無し
現在地 蓮華台に向かう山道
行動方針 レイコを探す 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出
【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上
556 :
出会い:2006/06/25(日) 13:15:26 ID:xbdelXMf
浮上した都市。周防克哉はそのかつて海岸だった場所を歩いている。
「これ以上進めば落ちるか…」
ここ港南区の警察署に勤めている克哉にとって土地勘のある場所に飛ばされたのは幸運といえるだろう。
浮上の名残か、幾つかの建物の残骸が見える。
「主催者め…かならず逮捕してやる。」
下らないゲーム。実際に一人殺された。見せしめとして、無意味に。
こんな許しがたい犯罪、何としても止めさせなくては。
学園にいた顔触れには知っている者もいた。
「天野君は無事でいるだろうか?達哉、あいつめ…また無茶をしていなければいいが…ん?」
海岸(であった場所)に沿って歩いていると、廃墟の辺りに人影が見えた。
(参加者だろうか?)
このような極限の状況で彼ら民間人を守る義務は謹慎中とはいえ刑事である自分にある。
克哉は驚かせないよう、ゆっくりと近づいた。
廃墟の影になったところに彼女はいた。
長い黒髪の女性で、年は高校生ぐらいだろうか。動揺しているようだが怪我は無さそうだ。
557 :
出会い:2006/06/25(日) 13:21:41 ID:xbdelXMf
「君…大丈夫か?」
「あ、あなたは?」
「僕は周防克哉。警察だ。心配しなくていい。君を保護する。」
きっちりとスーツを着込み眼鏡をかけた男性が警察手帳を見せて穏やかに言う。
悪い人ではなさそうだ。
「君の名前は?」
「あ…白鷺弓子です」
「白鷺君か、とりあえずここから移動しよう。この近くに署がある。あそこなら安全だろう」
他に行くあてもないので、彼についていくことにした。
「武器は携帯しておいた方がいい。使えるものがなければこれを持っていたまえ」
克哉はボウガンを差し出す。
「いえ、私にはこれがあるので」
「それは…変わった形の機械だな。使い方は分かっているのか?」
「ええ、だからそれは刑事さんが持っていてください」
頭にゴーグル、腕にはキーボードと画面がついた機械。
克哉と出会う前にしばらくいじってみて、ある機能がついているのに気が付いた。
悪魔召喚プログラム
弓子のパートナーである中島朱実が開発したプログラムだが、なぜこの機械にインストールされているのかは分からない。
少し時間がかかったが、使用者として登録し、ある程度使い方も理解した。
形こそ違うものの、中島が使っていたCOMPと大して変わらない。
仲魔は入っていないので今のところ武器としての役目は果たさないが、魔法を使える彼女が他に自衛の手段がないように見える克哉からボウガンをもらうわけにはいかなかった。
558 :
出会い:2006/06/25(日) 13:25:09 ID:xbdelXMf
瓦礫がひしめく海岸付近を越えて舗装された道路まで出た。
「署まではもう少しだ。疲れてはいないかい?」
「大丈夫です。…!刑事さん、後ろ!」
克哉の背後に現れたのは異形のものだった。
槍と盾を持つ、上半身は人、下半身は蛇の悪魔ナーガ。
同区にある「悪魔が出現する工場」から出てきたものであろう。
「白鷺君、下がっているんだ!」
不意を狙われ、咄嗟にボウガンで防御するが、槍によってあえなく真っ二つにされてしまった。
「キシャアアッ!」
ナーガは止めをさそうと克哉の胸元に狙いを定める。
「…ペルソナ!」
姿を現したのは黒く、正装をした猫のような姿をした神ヘリオス。
克哉の弟達哉の分身アポロと同様に太陽光線を象徴する日輪の御者。
ナーガが槍を突き出した瞬間、防御の余裕がなくなった瞬間。
その姿に違わぬ俊敏さで、鋭い爪によって鱗に覆われた喉元を切り裂く。
それは、槍が克哉の胸に届く寸前だった。
ナーガは喉から青い血を噴出しながら後向きに倒れた。
(肝が冷えたな…)
「白鷺君、無事か?…!」
振り向くと、少し離れたところで彼女は別の悪魔と対峙していた。
しまった、迂闊だった。目の前の敵に気をとられていた。
本来は彼女の護衛を最優先に考え、守りながら戦わなければならなかったのに。
克哉は急いで弓子の方に駆け出した。
559 :
出会い:2006/06/25(日) 13:29:24 ID:xbdelXMf
急いで克哉の援護をしようとしたとき、別の方角から二人を狙っている悪魔に気が付いた。
弓子は不意を突かれる前に片付けようとしたのだ。しかし…
「ホウ…ウヌハ普通ノ人間デハナイナ」
戦闘態勢に入ろうとすると、悪魔が話し掛けてきた。
水を司る龍王ミズチ。青みを帯びた水が龍の姿をなしている。
「コノ感ジ…モシヤウヌハコノ国ノ母神(ハハガミ)ノ…?」
「…分かるの?」
横目で克哉のことを気にかけつつ、問い返す。
「我トテ、日ノ元ノ地デ生マレタ神。ワカラヌハズガアロウカ。」
白鷺弓子は日本を生み出した神イザナミの転生後の姿である。
同一人物というわけではなく、弓子はイザナミの"器"のようなものだ。実際にイザナミの力を借りて危機を切り抜けたこともある。
「あの…できたら、私に協力してくれないかしら?」
「我ヲ仲魔ニシタイト?」
「ええ。どうしてもとは言わないけれど。」
正直、今の戦力では不安があった。この世界に来てからイザナミの声が聞こえない。この世界に干渉できないのかもしれない。
となると、この殺し合いの場を切り抜けるのは厳しいだろう。
「…ヨカロウ」
ミズチは少し考える素振りを見せたが、すぐに頷いた。
「え?そんなあっさりと…」
少し驚いた。弓子のパートナー中島は悪魔との交渉には金や道具で機嫌をとったりして苦労していたのに。
「他ナラヌ母神ノ頼ミ、聞カヌワケニハイカヌ。ソレニ、我ハアノ方ノ戯レノ行ク先ガ見タイ…」
「…え?今なんて?」
終わりの方がうまく聞き取れず、聞き返す。
「大シタコトデハナイ。サア、契約ヲ交ワソウゾ。」
「え、ええ、それじゃあ…」
―コンゴトモヨロシク。
560 :
出会い:2006/06/25(日) 13:37:06 ID:xbdelXMf
「白鷺君?」
克哉は、二人の会話を少し離れたところから眺めていた。
悪魔とのコンタクト。彼自身も経験があるが、ペルソナ能力を持たない弓子が躊躇せずに悪魔と話したのに驚いた。
(思ったより、肝のすわった女性なのだな)
悪魔が消えると、克哉はそっと弓子に近付いた。
「交渉して、帰ってもらったのか」
「いえ、仲魔になってもらったんです」
「仲間?」
「ええ、いつでもこのCOMPで召喚して一緒に戦ってもらえますよ」
「悪魔を使役するというのか?馬鹿な…ナンセンスだ。」
これまで悪魔とのコンタクト得られる協力は道具や金銭だけで、一緒に戦うなどということはなかった。
「え?でも、刑事さんにもいるじゃないですか。さっきの、可愛かったですよ」
弓子にも、克哉の戦闘を見ていて気になった点があった。
「COMPもないのに、どうやって召喚したんですか?」
「ヘリオスのことか?あれは悪魔ではなくて…それに、COMPというのは…?」
多くの疑問が浮かぶ。
「…どうやら、僕達は互いのことについてもっと知る必要がありそうだな」
克哉は小さくため息をついた。
561 :
出会い:2006/06/25(日) 13:40:29 ID:xbdelXMf
港南署に着くと克哉はペルソナによってドアを破壊し、保管してある銃と防弾チョッキを二人分確保した。
「…いいんですか?」
克哉に拳銃の使い方を教えてもらった後、弓子が気遣うように言う。
「本来は許されることじゃないが…今は非常時だ。しかたない。」(
…謹慎じゃ済まないだろうな)
職を失う予感がして、内心苦笑する。
「ではまず、互いの能力について…」
港南署のロビーに座り、情報交換をはじめようとしたとき、外から大きな音がした。
「この音、すぐ近くです。行きましょう!」
おそらくは戦闘音。二人は話を中断し、外へ向かう。
【周防克哉(ペルソナ2罰)】
状態 正常
降魔ペルソナ ヘリオス
所持品 拳銃、防弾チョッキ 鎮静剤 (ボウガン破壊)
行動方針 主催者の逮捕 参加者の保護
現在位置 港南警察署
【白鷺弓子(旧女神転生1)】
状態 正常
仲魔 ミズチ
所持品 アームターミナル、MAG2000 拳銃 防弾チョッキ
行動方針 中島朱実との合流
現在位置 港南警察署
(……逃げ切った、か)
追ってくる者のいないことに安堵し、足を止めて息を整える。
緊張状態のまま走り続けるというのは、さすがに疲れるものだった。
銃を腰のホルスターに収め、辺りを見回す。誰もいないことを確認し、ザックから地図を取り出した。
現在地は蓮華台。判っているのはそれだけだった。
オートマッピングや位置表示の可能なアームターミナルも持っていないし、慣れない土地でもある。
勘に頼って適当に逃げてきたため、今いるのが蓮華台のどこかも定かではない。
もう一度、周囲を見回す。立ち並ぶ建造物は見慣れない様式のものばかりだが、どれも似通っている。
住宅地、だろうか。目立つ建物はなかった。つまり、地図上での目印になるものもないということだ。
(まずは……地図に載ってる場所を探すことからか)
地図に目を落とす。蓮華台にある施設は――七姉妹学園、本丸公園、アラヤ神社。
学園、というのは確か学校を意味する単語だ。少年が集まって勉強をする場所である。
公園。これは解る。植え込みや花壇、遊具などが置いてある憩いの場だ。
神社というのは、文字通り読めば神の社。土着の神などを祀っている場所なのだろう。
神という言葉が、メシア教の説く天の父だけを意味するものではないことには、薄々気付いていた。
悪魔と呼ばれる存在の中にも、かつては神と呼ばれ、信仰された者達がいる。
いや、今でもガイア教徒辺りには信仰されているのかもしれない。
増して、ここは異世界だ。違う神が信仰されていても、何の不思議もない。
学校か、公園か、宗教施設。そのどれかを見付ければ、地図上の現在地は確認できる。
元いた場所に戻るにせよ、違う道を通るにせよ、まずは道筋を把握してからだ。
歩き出してから、十数分ほどになるだろうか。
時計もなく、時間の経過を感覚でしか測れないというのは思った以上のプレッシャーになる。
どれだけの時間をロスしているか。こうして歩いている間に、何人の命が奪われているか。
それに、負傷していたザインは無事に逃げ延びることができただろうか。
思考が暗い考えに塗り潰されそうになっていた頃、その音は聞こえた。
(――足音だ)
目の前のT字路の、右側の道から。
小さな足音ではあったが、このゴーストタウンの静寂の中でははっきりと聞こえる。
相手も、こちらの足音に気付いたのだろう。ぴたりと音が止む。
互いに足を止め、角を挟んで相手の出方を窺う。ここを歩いているのは、ゲームの参加者に他ならないのだ。
戦うことに、なるかもしれない。
ホルスターから銃を抜き、いつでも撃てるよう構える。
相手はまだ出てこない。警戒しているのだろう。
少なくとも、見境なしに襲い掛かってくるタイプの相手ではないようだ。
意を決して、声を掛けてみることにした。
「戦う気がないなら、危害は加えない」
甘いかもしれないが、戦わずに済むならそれに越したことはないのだ。
相手によっては、味方になってくれるかもしれない。
しかしもし、角の向こうに潜んでいるのがゲームに乗ろうとしている人物だったら――
「……アレフ?」
返ってきたのは、聞き覚えのある声だった。
先程までの警戒はどこへやら、全く無防備な様子で角の向こうの相手が姿を現す。
その姿を認めて、銃を再びホルスターに収めた。安堵に溜息が洩れる。
「ベス。君か」
この異世界に飛ばされてくる直前まで行動を共にしていた、パートナー。
彼女は絶対に敵にはならない。それは確信できた。
「良かった……ずっと、あなたを探していたの。無事で、本当に良かった……」
駆け寄ってきたベスの肩を抱く。
こんな状況で怯えていたのではないかと思ったのだが、顔を挙げた彼女の表情には不安の色はなかった。
「大丈夫よ。私がついているから、あなたのことは誰にも殺させない」
「守ってなんてもらわなくても、俺は平気だよ」
場違いなまでに優しい笑みを浮かべる彼女に、少し苦笑する。
「それより、ザインが怪我をしてるんだ。早く合流して手当てをしないと」
「ザインと……一緒にいたの?」
「ああ。二手に分かれて逃げてきたんだ」
「そう……」
ベスの表情から笑みが消える。
ザインのことを心配しているのか、と思ったが――次に彼女の口から飛び出したのは、意外な問いだった。
「アレフ。あなたも、誰も殺さないつもりなの?」
「え……」
答えに詰まる。そんなことを、ベスに聞かれるとは思っていなかった。
コロシアムの闘士だった頃には、人を殺すのは日常茶飯事だった。
相手を殺さなければ、自分が死ぬ。闘士にとっては殺すことが唯一の生きる道であり、仕事だった。
センターの命で動くようになってからは、襲い掛かってきたガイア教徒と戦ったこともある。
だから今更、殺人は犯したくないなどと言う気はない。
しかし、今この街にいるのは、自らの意に反して殺し合いのために呼び集められた人々だ。
死を覚悟して戦っているコロシアムの闘士や、ガイア教徒とは違う。
それに――参加者同士で殺し合うというのは、主催者の思惑に乗せられるということなのだ。
「できれば、殺したくない」
躊躇いながら、ベスに答えを返した。
「絶対に誰も殺さないとか、全員助けるとかは言えないけどさ。少なくともこのゲームに乗る気はない。
こんな馬鹿げたゲームを考えた奴を見付け出して……止めさせてやろうと思ってる」
「……解ったわ」
ベスが頷いた。
「あなたがそう思ってるなら、私もできるだけ人は殺さない」
「ベス……」
「最初は、あなたに最後の一人になってもらおうと思っていたの」
穏やかな眼差しで、彼女はその姿からは予想も付かないようなことを口にした。
最後の一人にする、というのは――他の全員を殺して、それから自分も死のうと思っていたということだ。
(ザインや、ヒロコさんや、戦う気のない他の参加者のことも……殺す気だったのか?)
問おうとして、踏み止まった。その答えは、きっと聞かない方がいい。
「あなたは救世主だものね。あなたの方法でここにいる人達を救えるなら、私もそれに賭けてみる。でも」
とても穏やかな、しかし決意を秘めた表情。
「誰かがあなたを殺そうとしたら、私は迷わずその人を殺すわ」
清楚で優しい、聖母のような少女だと思っていたベス。
彼女のことを、初めて――恐ろしい、と思った。
【アレフ(真・女神転生2)】
状態:正常
武器:ドミネーター
道具:なし
現在地:蓮華台の住宅地
目的:ひとまずザインと合流する(その後、主催者をどうにかする)
【ベス(真・女神転生2)】
状態:正常
武器:?
道具:?
現在地:同上
目的:アレフを守る
高尾祐子は教室に立っていた。
傍らには鞄が置かれている。
そっと首に手を触れてみると、確かに何かの違和感がある。
「これは神が私に与えた罰――」
彼女もこの死のゲームへ強制的に参加させられているのだ。
誰も居ないその場所は、嫌でも記憶を呼び覚まされた。
――-もう一度、東京受胎を引き起こすあの日の前に戻れたら、私は生徒を巻き込んだかしら?
心の中で繰り返した言葉。あの日以来ずっと後悔し続けてきた心の言葉。
弱い自分には氷川を止めることができなかった。
そればかりか、生徒へ試練を与えてしまった。
思想を異とする者を排除し、神を降ろし、新世界を創造する。
あの日引き起こしたことは、このゲームと変わりない。
この場所に立っている理由は、もう一度考えてみよという神のご意志か。
椅子と机が並んだその暗い部屋を祐子は一周し、教壇へと向かった。
自分が本来立つべき場所へ。
外はまだ闇の静寂が支配していた。
暗い部屋へ差し込む月の光のもとで祐子は教壇の机に手を組み、祈った。
もし神が傍にいるなら、聞き入れてもらえるなら…。
「自分の命を賭けて願えるなら、ただもう一度あの日に、
彼らの自由を奪ってしまったあの日に戻りたい。
神よ。どうか彼らに試練を与えないでください。」
「――神なんて、この世界にはいませんよ。」
この世の者とは思えない、ひどく冷たい声。
祐子ははっと顔を上げ、声のする方へと顔を向けた。
差し込む月の光に溶け込むように立つ人影。
「誰?」
ふと恐怖に襲われその人影へと声をかけた。
「もう忘れてしまわれたんですか?…先生」
祐子へ声はクスリと笑いかけるが感情全くこもっていない。
近づいてくる声の主を見ようと目を細める。
無感情な声は祐子への言葉を続けた。
「僕は、貴女が望んだように、どんな世界でも生きていけるようになりましたよ。
でも、貴女は結局人に頼るだけで、自ら道を切り開くことなんてできなかった。」
「人はみな弱いの。いくら強がっても誰かに依存してしまう。それが人間。
結局一人でなんて生きていけないわ」
「――言い訳…ですか。」
祐子は背筋が凍った。
見切られている。自分の心の中を全てを。
人影は落胆したように祐子へと言葉を投げかけた。
「貴女の言う通り、どこかに神はいるのかもしれませんね。でも――」
光に溶け込んでいた人影がふっと消え、室内の闇が深くなる。
祐子は声に身構えた。
月の光さえも遮ってしまうほどの漆黒。闇がさらに魔を呼び寄せる。
人影は彼女の傍らに立っていた。
全身に青く光る刺青を纏った、人の姿をした悪魔。
祐子を悲しげに見つめていた。
彼の目は赤く、背後には無数の強大な悪魔の気配を引き連れて。
「もう、祈るのは終わりにしましょう。尊敬する貴女を、これ以上苦しませていたくない。」
祐子は彼を見て悲しそうに微笑んだ。教え子の姿を、悪魔になったその姿を見つめて。
「そう――彼方には自由に生きる権利があるわ。それを全て奪ったのは私の罪。
彼方がそれを望むなら、私は罰を受けましょう。」
少年は静かに目を閉じ、祐子を抱擁した。
――あの日にもう一度戻れたら。
僕も考えなかったわけではない。
もう一度戻れたら、同じ事をしただろうか?
同じように全てを受け入れず、闇の誘惑に負けただろうか?
最後まで自分を強く持ち、先生の言葉を信じただろうか…・
ぐったりと腕の中で横たわる祐子の身体は冷たくなっていく。
祐子の鼓動が、吐息の音が、徐々に弱まる。
熱いものが頬を伝った。
悪魔に身も心も染まってから失ってしまったはずの。涙が。
苦しげに見える彼女の表情がゆっくりと微笑をうかべた。
彼の心を察し、細い声を搾り出す。
「それでも彼方は死なないで。生き延びて、世界の末を見届けて…」
緩やかに命の火が消えた。
もう声を発することも、微笑みかけることもない。
祐子の身体をそっと床へと置くと、人修羅はその場を去った。
教室の闇は月の光に薄れ、元の姿へと還っていった。
【主人公(人修羅・真・女神転生V-nocturne)】
状態:正常
現在位置:七姉妹学園
行動指針:自分の世界へ帰る手段を求める。
【高尾祐子(真・女神転生V-nocturne)】
状態:死亡
所持品;不明
死亡場所:七姉妹学園
アキラは目覚めて最初に自らの体の違和感を感じた。
「ん…?俺の体…?」
不思議なことに彼の肉体はアモンが取り付く前であった。
ハザマもいたのだ、自分の身体をそこまで引き戻すのも容易だったのだろう。
(…そういえばアイツ、たまきもいたな…。アイツと合流できれば…何とかなる)
自分がいたのは見たことの無い学校だった…だが学校は学校だった。
あるべき部屋ぐらいはある…そして彼の支給品は防具、髑髏の稽古着。
そうとなればやることは一つ――――――――――――。
家庭科室の表記を見るや否やドアを蹴り、中に押し入り包丁やら鍋の蓋やらを回収し、
理科室の表記を見るや否や科学薬品やらアルコールランプやらを回収し、
保健室の表記を見るや否や薬箱等を回収する。
磨りガラスだろうがなんだろうが軽高一の不良の手に掛かればあっというまに破られてしまった。
校舎を出る前に校長室の前で何故か立ち止まる。
…異様な雰囲気を感じるのだ、人のような…悪魔のような…?
不思議と、警戒心は抱かなかった、今までと同じ要領でドアを蹴破る。
中には一人の鎖につながれた男が座っていた。
「豪快な方法で入ってくるな…ああ、私の名はリック。
ごらんのとおり鎖で両腕が動かせなくてね…この鎖を外してくれないか?
もちろん…外れたらそれなりの礼はするし、外れた途端君に襲い掛かることもしない」
怪しかった、男は上半身半裸であったし、両手は鎖でグルグル巻きにされていた。
…それでもやはり、警戒心は抱かなかった。いや抱けなかった。
ゆっくりと男に近づき、その鎖を力任せに引きちぎろうとした。
…鎖はビクともしなかった、見る限り細い鎖なのだが、どうも特殊な素材で作られているようだ。
「…やはりナカジマでなければ駄目か…すまなかったな」
「用件はそれだけか?」
アキラが今度は問いただした、少しリックは考える。
鎖の擦れる音が、少しだけ響いた。
「そうだ…私も…連れて行ってくれないか?
ナカジマに会って…この鎖が外れれば君たちの力になれると思う」
…無視してアキラは振り返る。
リックは一瞬溜息をついたが、もう一度口を開いた。
「待ちたまえ…じゃあこの剣は君に渡そう。
私じゃ…扱えそうに無いからな」
渡されたのはヒノカグヅチ、どんな剣よりも破壊力に優れ。
どんな剣よりも素早くふるうことのできる最強の剣。
それを受け取り…アキラは無言でリックに包丁を渡した。
リックが意味を理解する前にアキラは口を開く。
「…断っても着いて来そうだからな。
自分の身はそいつで守りな」
アキラは歩き始めた、後ろからリックがゆっくりとついていく。
歩き出したアキラのヒノカグヅチが少しだけ重く感じた。
――――俺のやることは一つ。
ハザマをもう一度、ぶっ飛ばす。
【アキラ(真・女神転生if...)
状態:GOOD
装備:ヒノカグヅチ(少し重い)、鍋の蓋、髑髏の稽古着
道具:包丁*2、アルコールランプ、マッチ*2ケース、様々な化学薬品、薬箱一式
現在位置:春日山高校
第一行動方針:たまきと合流
基本行動方針:ハザマの殺害、ゲームの脱出
備考:肉体のみ悪魔人間になる前】
【リック
状態:GOOD
装備:包丁
道具:なし
現在位置:春日山高校
第一行動方針:アキラに同行
第二行動方針:ナカジマ(若しくはそれ以上の力を持つ人間)に会う
基本行動方針:鎖を外し、ゲームの脱出
備考:鎖がついたまま、外せれば…?】
レイコは戸惑うピアスの少年を強引に座らせると傷口を広げないように矢を抜き、回復魔法を掛けた。
少年の背中に手を当て、精神を集中させる。自分に宿るガーディアン・妖精ナジャが暖かな力を貸してくれる。
だが、どうしてもいつものような力が沸いてこない。
ライドウが言うように、自分の首に書き込まれた呪いの文様が回復魔法の効果を妨げているのだろうか。
確かに回復魔法使い放題では、殺し合い前提のこの街において使える人間が圧倒的に有利だ。
使うタイミング次第では傷一つ負わずに永遠に戦っていられることも可能な力である。
これを封じると理由は…おそらく手っ取り早く死亡者を稼ぐためだ。
どうしてそこまでして自分たちに殺し合いを強要するのか謎である。
だが、考えを巡らせている内にレイコは一つの結論に達した。
ひょっとしたら…いや、おそらく。
「どうした。止めを刺す気になったのか?」
少年が、別のことを考えているレイコに向かって、ぶっきらぼうにそう言い、
レイコは一瞬動きを止めそうになった。自分の意思とは真逆のことを言われたからだ。
別にこうやって甲斐甲斐しく手当てをしてあげることで逃げ出すチャンスや、ましてや殺すチャンスを探しているわけではない。
ただ、怪我をしている人間を放っておくことが出来なかったのだ。
殺されかかったライドウを救うためとは言え、鳴海が本当に矢を当てるとは思っていなかった。
自分の考えは、やはり甘いのだろうか。
だけど、たった今自分の中に出てきた可能性を信じるなら、無意味な殺し合いを続ける必要は無いのだ。
「終わりましたよ。」
何とか傷が塞がり、レイコは顔を上げると額の汗を拭い、眼鏡のずれを直した。
一息付くと、かなり強い脱力感に襲われたが、ここで倒れるわけには行かない。
「敵の傷を治して、どういうつもりか聞かせてもらおうか。」
少年は振り返ると、静かにそう聞いてきた。
「敵…ですか。私が貴方に対してそう思っていなかったとしても?」
「君の仲間を殺そうとした。これだけでは敵になる理由にならないのか?」
「何故、葛葉さんを…彼だけを狙ったのか教えてください。
本当に勝つことが目的なら、武装している男の人ではなく、最初に私のような手ぶらの女を狙うのが道理でしょう。
だけど貴方の狙いは葛葉さんだけだった。鳴海さんと…私には一切眼をくれず。」
驚いた。この少女は先ほどの混乱の中、ちゃんと冷静に状況を観察していたのである。女性というのはいつでも侮れない存在だ。
この少女に嘘をついてもすぐに見抜かれるだろう。正直に話すことにした。
「あの男は…」
少年は地面に置いていた剣を取り、厳しい視線でそれを見つめながら語った。
「俺の大切な人を殺した。それだけだ。」
その言葉を聞いたレイコは、口をぽかんと開き、眼を丸くした。あの温和なライドウが、とても信じられない話だった。
「そ…そんな…それは何かの…」
言いかけた所で言葉に詰まる。
昨晩ライドウが突然飛び出し、今朝になって帰って来た時に血みどろになっていたのを思い出したからだ。
昨日はライドウに一体何があったのか…。何故か聞いてはいけない雰囲気がして、レイコも鳴海も詳しい事情には眼を瞑った。
だが、本人は無傷であったのにも関わらず、全身が真っ赤に染まっていたのは普通ではない。
どうひいき目に考えても返り血にしか見えなかったのである。
レイコの頭を、今までで自分の知っているライドウが反芻する。
魔神皇の説得は危険だからと何度も説得するライドウ。
不安で冷えきった手を、不器用ながらも暖かく握ってくれたライドウ。
ピアスの少年…目の前にいる彼が奇襲を仕掛けてきた時、真っ先に自分を庇ってくれたライドウ。
そして、彼の大切な人の命を奪ったというライドウ―――。
あまりにも噛み合わなかった。しかし、何か予測のつかない事故で血を浴びることになったのなら、どうしてそれを話してくれないのだろう。
ライドウのことは信用したい。だけど、それには彼を知らなさ過ぎる。彼は何故黙っているのか。
もしかしたら本当に……。
レイコは、いつの間にか自分が疑心暗鬼に駆られていることに気付いてはっとした。
自分から信用できないのかと怒っておいて、今のこの有様は何なのだろう。
「君は何かの間違いだと言いたいみたいだな。
だが俺は見たんだ。あの黒マントの男が…無抵抗な彼女から包丁を奪って冷酷に刺し殺す所を。」
強い怒りと悲しみを押し殺しながら語る少年を、レイコは否定しようとしたが、言葉が見つからなかった。
一度浮かび上がった不信感はなかなか拭いきれない。
頭では違うと言い聞かせているのに、何故か心の底では解ってくれない。そんな自分が苛立たしかった。
「だから、俺が彼女の仇を討つ。それから先は…また考えるさ。」
立ち上がる少年を、レイコは止めた。
「待って。彼を追うなら私も連れて行ってください。」
「……。」
無言だが、不思議な吸引力のある瞳をこちらに向けていた。
だがその吸い込まれそうな眼が、今は必死で自分を拒否しているのだ。
「君の仲間を君の目の前で殺すつもりなんだぞ、俺は。」
「彼は…そのことは何かの間違いです…。」
自分で言いながら、どこまでが本当なのか確信が持てない。つくづく自分が厭な女だと、胸の奥が痛む。
だけど、ライドウを見捨てる程、彼を突き放せないことも嘘ではないのだ。
「…だから、私もついて行って、自分が納得出来るまで…あの人と話がしたいんです。」
「…まぁ、いいだろう。だが俺は俺であいつを今度こそ斬り捨てる。それは覚悟していてもらうぞ。」
「……。」
レイコは、ライドウが握ってくれた自分の手に眼を落としながらこっくりと頷いた。
そうすることしか出来なかった。今の自分に彼を止める資格など無いことを、彼女は彼女なりによく解っていたのだ。
【赤根沢レイコ(if…)】
状態 やや疲弊
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ライドウたちを探す ゲームからの脱出
【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 正常
武器 ロングソード
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
現在地 同上
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇をうつ
同上って何だ…。
現在地は蓮華台に向かう山道でお願いします。
っと書き忘れ
リックおかげで思い出した!
悪魔人間明もいい感じですね
乙でした
レイコの先が気になる展開GJ!
あぁ…誤爆すまんorz
>>575 修正しておきます
どれだけ走っただろうか?
英理子はただあの場所から離れることだけを考え、ペルソナによって速度を上げながらひたすら逃げ続けた。
リサの最期と千晶と呼ばれていた少女の姿が頭から離れない。
蓮華台を通り、夢崎区から最も離れた港南区の通りまで来たところで、英理子はようやく落ち着きを取り戻した。
ここまでくれば、もう追いつかれないはず。
実際は英理子が見えなくなった時点で追跡は止まってあたのだが、恐怖心が彼女をここまで走らせた。
心臓が早鐘を打ち、ペルソナを連続で使った疲労が全身に重くのしかかっている。
何より、リサを助けられなかった自分の無力さと罪悪感が英理子を責め苛んでいた。
(Maki…Kei…Naoya…)
彼らに会いたい。彼らならきっとこの痛みを理解し、励ましてくれるだろう。
しかし、彼女の目の前に現れたのは仲間達とは程遠い存在だった。
「ククク…人間かぁ?殺してやるよぉ!」
真っ赤な肌に、頭から突き出た一本の角。日本古来の悪魔オニ。
投げられたナタを、英理子はとっさに避けた。
ナタは背後にあった信号にあたり、信号は大きな音をたてて倒れる。
英理子は急いでペルソナを発動し、応戦しようとした。
しかし…
(もういい…もう、どうでもいい)
一度は上げた腕を、静かに下ろす。
同じヒトに殺されるぐらいなら、悪魔に殺された方が幸福かもしれない。
もう、誰かが殺されるのも、誰かが殺そうとするのも見たくない―
オニは手に戻ってきたナタを振り上げ、襲い掛かる。
「何をしてる!右だ、右に避けろ!」
どこからか声が聞こえ、思わず英理子はその声に従って避けた。
オニの追撃をうまくかわしつつ、英理子は声の主を探すが、周りに人影はない。
「全く…なぜ力を使おうとして止めた?あいつでもそんな馬鹿な真似はしないぞ。」
黒い毛皮と緑の眼、子猫の姿をしたゴウトは英理子の戦いを見ながらつぶやく。
「どこを見てる、ここだ、塀の上にいる!」
声の主を探す英理子に呼び掛ける。その声は声帯から出ているものではない。
テレパシーによって頭のなかに直接話し掛けているのだ。
「い、いや、やっぱり見るな!相手の攻撃に集中しろ!」
ゴウトの姿を見て驚きを隠せない様子の英理子に、戦闘に専念するよう促す。
その背後から、一羽の巨大な鳥が躍り出た。
突然だったため、ゴウトにはうまく対応しきれない。
英理子の方も疲労のためかうまく体が動かず、わずかな隙ができた。
―殺される
一人と一匹が同時に思った、その瞬間だった。
「ブリザー!」
「ペルソナ!」
同時に声がした。
そして、オニはその背後から放たれた冷気によって一瞬にして凍り付き、怪鳥は正装をした猫の爪によってばらばらに引き裂かれた。
「君、大丈夫か!?」
克哉はへたりこむ英理子に駆け寄り、無事を確認する。
「頭を怪我しているようだな。白鷺君、回復を頼む。」
白鷺も二人に近寄り、回復魔法によって英理子の傷の治療をする。
この世界では回復魔法の効果が減少するようだが、軽傷だったためすぐに治すことができた。
「道具なしに悪魔を召喚したり、魔法を使えたり…よくもまあ色々と揃ったものだ」
その声に克哉と弓子は振り向き、驚愕した。
「ね…猫がしゃべった…?」
「…悪魔やら魔法やらを見てきて、今更話す猫程度で驚かないで欲しいものだな」
ゴウトが嘆息して言う。
「さて…何から話すか…」
英理子にも拳銃と防弾チョッキを渡し、ロビーに戻った三人と一匹はとりあえず名前を教えあった。
英理子の名前を聞いて克哉は驚いたが、それぞれのいた世界について話してからでも遅くないと思い、口を挟むことはしなかった。
「待て。話を始める前に、お前に一つ聞きたいことがある。」
ゴウトは英理子に向かって言った。
「…私に?」
「ああ。さっきの戦いの始め、なぜ力を使おうとして止めた?あのときのお前は、死のうとしているように見えた。」
「本当か?桐島君」
ゴウトの言葉に克哉は少し衝撃を受けた。元の世界で共に戦った彼女の印象を思うと、死のうとするなど考えられなかった。
「ええ、私は…死んでもいいと、No、死にたいとすら思っていました…」
英理子はゆっくりとこの世界に来てからのことを話し始めた。
リサとの出会い、千晶の襲撃、リサの死…
「…私のせいで、Lisaは…」
あの時もっと早く開扉の実を使っていれば、千晶の反撃の前に追撃を行い、しとめていれば…
「それは違う。君のせいじゃない。僕達がいくらこう言っても、優しい君は自分を責めてしまうのだろうな…」
悲壮な表情で英理子の話を聞いていた克哉がゆっくりと口を開く。
「しかし、死を選択するのは間違っている。もし今でも死にたいと思っているなら、その命を僕に預けてほしい。
もうリサ君のような犠牲者を出さないためにも…力を貸してほしいんだ」
「Mr周防…」
「私も、刑事さんと同じ気持ちです。」
静かに話を聞いていた弓子が口を開く。
「英理子さんが死んでも、リサさんは絶対に喜ばない。最後まで帰るために戦おうとしたリサさんの思い、どうか受け継いでほしい…」
「Yumiko…」
「どうだ、ここまで言われてはまだ死にたいなどとは言えないだろう。」
ゴウトが英理子に近づき、喉を鳴らした。
「死は安易な逃げだ。何の解決にもならないぞ?」
「…ええ。ありがとう、皆さん。私、どうかしていましたわね。」
英理子は顔を上げ、ゆっくりと微笑んだ。これだけ自分を気遣ってくれる人(+猫)がいる。
(Lisa…見ていてくださいね
)心の中で友人に誓いを立てる。
もう二度と、絶望しない。先にあるのがなんであろうと、立ち向かい続けよう。
581 :
集う仲間達 ◆C43RpzfeC6 :2006/06/26(月) 00:46:37 ID:OwdAyQcq
【桐島英理子(女神異聞録ペルソナ)】
状態 疲労、精神的には安定を取り戻す
降魔ペルソナ ニケー
所持品 拳銃、防弾チョッキ(他は夢崎区で全消費)
行動方針 仲間との合流
現在地 港南警察署
【ゴウト(超力兵団)】
状態 正常
所持品 なし(持てない)
行動方針 ライドウとの合流
現在地 港南警察署
克哉、弓子は「出会い」の状況と同じため割愛します。
超力GJ!
いい話や…。・゚・(ノД`)・゚・。
エリー、いい仲間に会えてよかったな
あと猫好きの克哉もよかったな
パロスレにでも行けや
ボケ
584 :
蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:08:48 ID:TMx6ZxoL
時刻は朝方を示そうとしていた。
空は夜の帳を徐々に白く染め上げている。
電波の通じない、時計代わりの携帯電話を閉じて、青年は深く息を吐き出した。
弱肉強食なゲームのご説明は、それはそれはもう痛み入るほどに理解できた。
メガホン越しにゲーム放棄を訴えていた男の声が、何の面白味のない銃声によって倒されたのだ。
少なくとも一人、銃を持った人間がこのゲームに乗ったという証だ。
その人間が誰か確認することはできなかったし、撃たれた男が無事なのかも分からない。
しかし確実に分かることがある。
あの時、何の迷いもなく敵意はないと名乗り出ていたら、己の身体には必要のない風穴が空いていただろう。
「まずは生き残ることが最優先、だな」
場合によっては、人を殺すことになるかもしれない。
間接的ではあるが、青年は人を――それも所属していた集団のリーダーを殺害した経験を持っている。
(そのリーダーが何故か生きており、この下らないゲームに参加しているという事実は
思考の彼方へ放り込んでおいた。考えてても答えなど出るはずもない)
正当防衛なんて甘っちょろい思考だけでは、恐らく行動はできないだろう。
もしも出会った相手に敵意があるのなら、戸惑ってはならない。
生きることを優先に、そして可能なら仲間との合流。それから先は、状況次第か。
配給された武器は、何の変哲もない作業用のハサミだ。
GUMPでも入っていればと期待していたが、そんな強運でもあればこのゲームに参加することはなかった。
心許ないそのハサミを手に、青年――塚本新は、身を隠していたアラヤ神社から離れていく。
585 :
蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:09:55 ID:TMx6ZxoL
ヒロインは常に辺りに気を配っていた。
その手の中には、ロイヤルポケットと呼ばれている小型の銃を収めている。
まるで知恵の輪のような金属の塊が銃だと分かった時、ヒロインは興奮と恐怖を胸に抱いた。
自分は、このゲームで有利な位置に立ったのだ。
だからと言って、人をそう簡単に殺めてしまおうとは思っていない。
死にたくないと思う心は、誰でも同じだ。
人でも、悪魔でも。
ならば自分は、何をするべきなのだろう?
パートナーであるヒーローとの再会。
連絡手段が一切無いこの都市で、再び巡り会える可能性は絶望的だ。
ああ、なぜだろうか。この殺戮の舞台の幕が開いてからずっと、頭が軋むように痛い――
突如思考を止め、ヒロインは背後を振り返った。
その視線の先には、さきほど歩いてきた道以外には何もない。
「思い過ごし……?」
歩き詰めで疲れているのか、それとも単に神経質になっているのか。
ヒロインは再び視線を前に向けようとして、
背後から、草を踏む音がした。
586 :
蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:10:51 ID:TMx6ZxoL
「――ッ!!」
反射的に、ヒロインは身体ごと振り返る。
その時、引き金にかけていた指に力が入ったことを彼女は知らない。
発砲には大した反動もなく、弾が本当に吐き出されたのかも疑わしいほどだった。
背後にはこちらを窺っていた人間がいて、撃ち出した弾丸が偶然にも相手に命中したと理解できたのは
「ぐッ……!」と苦しむ男の声と、道に滴る赤い雫のおかげだった。
緑のジャケットにサングラスを頭に乗せた青年は、左肩を押さえて踞る。その足下には、ハサミがあった。
そう、例えば、例えばあのハサミが喉元にでも突き立てられたなら――どうなっていたのだろう。
数多ある可能性の示唆でさえも、不安定な精神を揺れ動かすには十分すぎるほどだった。
ざあ、と血の気が引き、ヒロインはその場から脱兎の如く走り去る。
人を撃った、撃たなければ殺られていた
もしあの足音に気付いていなかったら私は
わたしはどうなっていたのだろう
まだ死ねない死ぬわけにはいかない
かれに、
ヒーローに、あうまでは。
――このゲームは、人の心の魔を増幅させる。
ヒロインの精神に、蜘蛛の糸が張り巡らされる。
それはヒロイン自身が気付かないまま、ゆっくりと、心を蝕み始めていた。
587 :
蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:11:57 ID:TMx6ZxoL
新は撃たれた肩を押さえながら、少女が走り去った先を呆然と見つめていた。
殺す気などは更々無い。うまく交渉に持ち込み、共に行動して戦力増加ができればと思っていた。
しかし――現実はうまくいかないものだ。
特に人間相手の交渉だ、悪魔を相手にするのとはわけが違う。
(余談だが、彼はうまく話し合いに持ち込めたなら
悪魔相手と同様にウシシ!イヤーン!でバキューン!な交渉をするつもりだった。
ヒロインの行動は、至極当然の結果であり、正解だったと言えよう)
敵意を感じたなら、躊躇なく反撃する。
それができなかったのは、新が軽度のフェミニストであったというどうしようもない性分の所為だ。
「痛ってぇ……いきなり撃ち込んでくれやがって……美人さんには攻撃できねえってーの」
新は痛みに耐えるような掠れた声で、しかし軽い調子のまま呟くと、ザックを開けて肩の治療に取りかかった。
一日の始まりが、最初の戦果発表の時が近付いてくる。
【塚本新(主人公・ソウルハッカーズ)】
状態:銃創による左肩負傷(応急手当済み)
武器:作業用のハサミ
道具:?
現在位置:蓮華台・アラヤ神社付近
行動指針:スプーキーズとの合流、その後は状況次第
【ヒロイン(真・女神転生)】
状態:アルケニーの精神侵食によるパニック状態
武器:ロイヤルポケット
道具:?
現在位置:蓮華台を闇雲に逃走中
行動指針:ザ・ヒーローに会う
ライドウと鳴海が打ち合わせた通りに移動しているなら、予定通り蓮華台の七姉妹学園に向かっている。
そう踏んでピアスの少年こと藤堂尚也と赤根沢レイコはそれを追うルートを選んだ。
だが、藤堂がこのまま山道を行くことに異論を唱えた。
「このまま見通しの悪い山道を行くのはあまり感心出来ない。」
「でも…」
あの二人と全く逆のことを言う尚也に反論しようとしたが、彼の方が先に言葉を紡いだ。
「さっきのことを忘れたわけじゃないだろう。
もし…木陰に隠れて奇襲してくる奴らがいたらどうだ。俺のようにな。厄介だろう?」
「……。」
自嘲気味に発する言葉は重く、レイコには何と答えればいいのか見当が付かなかった。
「大体山を通るルートはかなり迂回することになる。一度下山して道路を歩いた方が近いはずだ。それに…。」
「それに?」
尚也はくるりと後ろを向いた。まるで自分の顔をレイコの視線から隠すように。
「此処を降りたらすぐに夢崎区だ。あそこは商店や、食べ物屋が沢山あるからな。
お前、腹が減ってるんじゃないのか? その、顔色悪いぞ。」
レイコにとっては心外な、気遣いとも言える言葉を発しながらちらりとこちらに向けた尚也の眼は、
先の戦っている時が嘘のように優しく、レイコは複雑だった。
誰にも会わないように慎重な足取りで下山し、スマル市最大の繁華街である夢崎区に二人は降り立った。
普通なら、平和ならば、此処は昼夜関係なく、娯楽を求める若者で賑わっているはずなのだが、
自分たち以外の人影が全く無い街の姿は恐ろしく非現実的に映った。
しかも余ほど大急ぎで住民を追い出したのだろう。無人だというのに立ち並んだ商店のシャッターは殆どが開いたままである。
まるで映画や漫画で描かれる世紀末だ。恐怖の魔王が光臨し、人々を瞬時に焼き尽くした―――。
しばらく進んだ所で二人は夢崎区に来て初めて動くものを見た。
それは道路の脇で黒い塊がごわごわと蠢いているのである。その中の一つが鎌首を持ち上げ、「ぎゃー」と鳴いた。
「!」
レイコはそれが何なのかを悟った時、声を上げそうになった。尚也も戦慄している様子だ。
カラスが三羽、死んだ人間の肉を啄ばんでいたのである。
白いラインの入った黒のセーラー服を着た金髪の少女の死体は既に目玉と唇が無く、顔の肉や、露出した白い脚も多くが食い散らかされていた。
「酷い…こんなことが…。」
「…そこで待ってろ。」
尚也がそう言い、さり気なくレイコの腕を引いて、少女の死体とカラスが見えないように後ろ向きで立たせた。
そして彼はしばらく死体の周辺を探索し、少女が投げ出していた鞄を抱えて戻ると、その中からコルトライト人グを取り出し、ズボンのベルトに差し込んだ。
このダブルアクションの拳銃はおそらく少女の支給品だったのだろうが、一発も撃った形跡が無い。
だがそんなことよりも…。
「…これで解っただろう。あんな風になりたく無ければもう甘いことは考えないことだ。」
尚也は感情の無い声でそう言うと、脚が震えて止まらないレイコを置いて先に進んだ。
夢崎区の外れに位置する商店街、夢崎センター街の入り口近くにあるファーストフード店「ピースダイナー」に二人は入った。
尚也はそこで、レイコに席に座っているように言い、自分は勝手にカウンターの中から適当にバーガー類をいくつか持ってくると、一つをレイコに渡した。
それは当たり前だがとっくに冷えてカチカチになってしまっている上、先ほどの惨状をまともに見てしまったレイコにはとても食べる気にはなれなかったが、
前の席に座った尚也は構わず包み紙を剥がすと口にし始めた。
あれから二人は会話をしなかった。
何も言葉が浮かんで来ないのだ。
さっきの女の子、年は自分と同じくらいだろうか。顔は既に判別が付かない状態だったが、色が抜けるように白く、美しい金髪から、きっと白人種の外国人なのだろう。
本来なら周囲の日本人から羨望の眼差しで観られるように美しいであろう少女が、一体誰にやられたというのか…。
その上、そのまま放置され、無残にもカラスなんかに食べられて…。
自分があの少女だったら耐えられない。死んでも死に切れないだろう。それくらい強烈にレイコの眼に焼きついた。
尚也が装備した銃は、彼女の物であろう鞄の中にまだ納まっていた。
と、言うことは、彼女は一発も撃つこと無く誰かに殺されてしまった。いや、ひょっとすると自分と同じように戦う意思が無かったのかもしれない。
そんな少女が殺されてしまうなんて。これも尚也に言わせると、そういう女だから真っ先に殺されたということなのだが…。
「食べないのか?」
バーガーを一つ平らげ、二つ目に手を掛けようとする尚也に、レイコは眉間に皺を寄せた。
「よくそんなに食べれますね。関心します。」
尚也の無神経な行動に対し、レイコなりの厭味のつもりだった。だが、本心でもある。
彼はさっきのことを何とも思わなかったのだろうか。
「食べれる時に食べておかなければこの先どうなるか解らないだろう。だからお前も…」
「貴方は何も思わないんですか!? さっきの人のことを!」
レイコは力いっぱいテーブルを叩き、立ち上がった。テーブルの上に置いている残ったバーガーや丸められた包み紙が跳ね上がる。
水の入ったペットボトルが倒れ、尚也が慌てて起こした。水道が止まってるのだから水は大切に、ですか。
その冷静な仕草も、レイコの怒りを増長させる役割を大いに果たした。
「少しは、少しは殺された人のことを考えたらどうです? 貴方だって大切な人が殺されたんだから、気持ちは解るはずでしょう!?
なのに貴方は…!」
レイコの感情に任せた言葉を遮るように尚也は立ち上がると、「ちょっとトイレに行ってくる。」とだけ言って店の奥に立ち去ってしまった。
「!!」
これだけ言ってもまだ…! 後ろから思いっきり罵倒しようと思ったが、何もかも無駄に思えてレイコは席に座りなおした。
あれから随分時間が経った。レイコは腕時計を見ると、すでに十五分は過ぎている。用を足すにしては少し長いような気がしてきた。
それとも、彼はよっぽど長い間我慢していたのか?
だが慎重派である尚也がそんなに長い間出てこないのは不自然なような気がして、レイコは呼びに行くことにした。
店の奥にある男子トイレの出入り口のドアが半分開いていたのでレイコはそこから呼びかけた。
「藤堂さ…――」
だが、途中で止めた。中から、小さな嗚咽が聞こえてきたのである。
勝手に覗くのはデリカシーが無いとも思ったが、レイコは気付かれないように少しだけ顔を覗き込んだ。
中では、洗面台の前でうずくまった尚也が手にしている何かを見つめ、小さく震えていた。
「園村…俺は……」
尚也が手にしているのは女物の白いコンパクトであった。細い鎖が繋がっているが、それは無残にも半分で千切れ、頼りなくぶら下がっている。
「あいつは…あいつは絶対に許さない……俺が…。
……これが、終わったら…そしたら…お前の所に、すぐに行くから………。」
その言葉を耳にし、レイコは心臓を杭のような物で打ちつけられたような気がして立ち尽くした。
「あ…」
すぐ傍に人がいる気配に気付いたのだろう。眼にいっぱいの涙を溜めた尚也がこちらに振り返り、レイコとまともに眼が合ってしまった。
尚也は慌てて潤んだ眼を学生服の袖口で拭い、コンパクトをポケットにしまうと、何事も無かったかのようにレイコの横を通り抜けた。
何も出来ずに見送った彼の後姿は、さっきまで見ていた粗野で横暴なそれではなく、
まるで子供のように小さく、砕けてしまいそうに見えた。
【赤根沢レイコ(if…)】
状態 やや疲弊
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ライドウたちを探す ゲームからの脱出
【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 正常
武器 ロングソード コルトライトニング
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
現在地 同上
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇を討つつもりだが、その後は…
初カキコです
バトロワにでてくる登場作品のキャラクターの動きが凄く面白いです
皆さんの文章表現にが素晴らしく続きが気になります
いやいやマジで
希望なんですが・・・・
合体前のカオスヒーロー君(わるお君)と
闇に染まりきってしまったノクタン君(という表現で良いのでしょうか?)
両者の対峙とか出来ないでしょうか?
方や悪魔と合体してでも力を求めたかった少年
方や問答無用で悪魔の力を得てしまい闇に染まりきった少年
個人的にはこの両者の行動、あるいは対決等が見てみたいです
もちろん結果がどうなるか等は言いません
宜しくお願いします
でもロウヒーロー君(よしお君)の状況みると合体後の姿で登場ですかね?
それもまた面白いとも思います
最もカオスヒーロー君が既に脱落してたら・・・実現しないわけなんですが・・・
長文失礼しました
すみません
感想スレあったの思い出しました
駄文で消耗してしまって申し訳ありません
593 :
混沌:2006/06/26(月) 14:23:25 ID:763/ypBV
どうやら奴は逃げたようだ……
「彼」はそう判断した。
薄汚れたジャケットにハーフパンツ、ややくせのある短い髪の、自分と同じかあるいは少し年下であろうと思われる少年。
しかし素人であるらしいものの戦況判断ができる相手である事は間違いない。
良く言えば的確、悪く言えば臆病。
「彼」はそう判断した。
少なくともそういった判断が的確に出来なければ文字通りの殺し合いしか出来ないこの世界では真っ先に死ぬだろうから……
そういえば……と「彼」は思い出す。
「あいつもそうだったな……」
いつの間にか口に出していたらしい、思わず口を手で塞いでしまった。
−ヤバい!−
本能的に思考が回転する。もしも誰かに聞かれたら、ここにいるのがばれてしまう!
…どうやら今は幸運の女神が「彼」に微笑み続けてくれているようだ。周囲からは何も音がしない。
銃口から放たれる音も、魔法を唱える声も……聞こえない。そして近づいてくる足音もだ。
少し安堵感を「彼」は覚えた。もしかしたら俺も先程の少年と変わり無いのかと自虐的な思考も脳裏を掠めた。
そして皮肉的な感想を今度は「心の中」で言った。
「幸運の女神が本当にいたら俺があんな親の元で育ち、チーマーに嬲られ、銃火器を持って悪魔との戦闘も無いんだろうな」と……
そしてふと気付いた。
−ああ、そういや少なくとも「女神」は確かに存在していたな。「あいつ」が使役していやがった−
暗く、そして薄く笑った「彼」は先程の思考を続きを開始した。
「あいつ」は「彼」とは異なり魔法を使えることは出来なかった。その点は「彼」の自慢でもあった。火炎系を主とした攻撃の要、アタッカーとの自覚もあった。
しかし「あいつ」は戦況を判断する能力、言い換えるなら戦略的な視点を持った仲間であった。アタッカーと自分を比喩するならば、さしずめコマンダーとでも言うべきか。
むぅ、と顔をしかめる。ならば俺は「あいつ」の兵隊だったのか?と
そう、「彼」はある意味短絡的な人間であり、彼の言う「あいつ」が「彼」を抑えていてくれたからこそ「彼」があの様な文字通りの弱肉強食であった世界で生き抜けたかもしれないのだ。
銃火器を使う能力も物理的な攻撃を行う能力も恐らくは自分と大差は無いだろう。互いに元々はずぶの素人から全てが始まったのだから……
ここまではいい……だが……
「悪魔召喚プログラム」
「彼」にはそのプログラムを使う事が出来た。そして「彼」には出来ないコンピューターを使える技能すら持っていた。
「彼」が魔法を使う特別な能力があったように「あいつ」にも(機械的な助力があったにせよ)特別な能力があったのだ。
遭遇した悪魔と容赦なく殲滅するのではなく「交渉」と言う状況化に持ち込み戦闘結果を左右できる能力。「彼」が負傷した際、その能力で「あいつ」は戦闘を行わずに済ませてしまったのだ。
さらに「あいつ」は交渉を行った「悪魔」を「仲魔」として自軍の戦力として使役し戦力増強を図る事が出来た。
かつて「彼」は力を求め、「あいつ」と行動を共にした。
あの時は確かに有効的だった。
しかしこの状況化では異なる。
仮に「あいつ」と遭遇した場合、多勢に無勢と言う最悪の状況すら想定できるのだ。
状況が状況だ。「殺しあい一人しか生き残れない」とするならば「あいつ」ともいずれは戦う事になるのだろう。あの能力が厄介だ。
自分が最初に持っていた持ち物から察すると「あいつ」はそのプログラムを運用する術を持っていないのかもしれない。だが油断は出来ない。
このスマルと言う都市はあの「大破壊」があった状態以前であるからだ。
何処かからパソコンを調達しているかもしれない。もしかしたらプログラムを持ち、既に運用してこの殺戮劇に参加しているのかも知れない。
「いなきゃいいんだよ、ここにいなきゃな」
小声で呟く。しかし「彼」は「あいつ」が七姉妹学園と呼ばれた学校(そういえばそのような「単語」がこの世にはあったのだ)で確かに居た事を確認しているのだ。
「彼」の本能的と言える能力とでも表現すれば良いのだろうか?
「彼」はその場で最も強みとなる要素を見出す能力に長けていた。それが裏目に出た。「あいつ」はあそこに居たのだ。
不安要素が一つ確実に増えた。
否、もともとあった不安要素を再確認してしまったのだ。
594 :
混沌:2006/06/26(月) 14:29:16 ID:763/ypBV
無意識の内に呪いが科せられた箇所に手が触れる。
冷たかった。
この殺し合いが開始されて一日もまだ経過してはいない。そして「彼」は「確実には」人をまだ殺していないのだ。
先程の男もまだ生きているだろうと思ったほうがいい。
ルールを思い出す。
誰かが二四時間以内に誰かを殺さないと全員が死ぬ。
本当だろうか?……ブラフではないのだろうか……
「主催者」を名乗る輩の機嫌を損ねても即死する。これは「彼」も目撃した。
うん、これは本当だ。「彼」が使う事が可能な「呪殺」と言う魔法に酷似していた。
この二つのルールがあるとするならば……
結論、嘘ではないと推察する事が出来る。少なくとも「主催者」の気紛れで「彼」自身が殺されるケースがありうるのだ。
冗談ではない。
背筋が凍る。
心細い。
逃げ出したい、だが逃げ出したら間違い無く自分が死ぬ。
誰かを殺さねばならない。
有効的な武器として銃も持ってはいるが弾丸も無限ではないのだ、魔法が使えるとはいえ近接戦闘の武器は調達せねばならない。
どうすればいいのか?……と考える。
まずは優先順位を見極めなくては……
混乱しかけた頭脳を落ち着かせる。
なんだ……と「彼」は思った。
要は「大破壊」の時と一緒じゃないか……と「彼」は結論した。
異なるのは(現状での判断として)一人で行動しなければならない。と言う事だけ。
まず最初に武器を調達しよう。このままでは弾丸が尽きたら餌食になる可能性がある。魔法も絶えずに使える訳ではないのだ。まずはそこからだ……
しばし瞑目、目的が出来たからであろうか、先程より気分は落ち着いた。武器の調達先……出来るだけ遭遇が無い場所かつ武器がありそう、あるいはなりそうな物があると考えられる場所……勿論一番近い場所……
ザックの中に入っていた地図を確認する。
「学校」
この単語が脳内で再び浮上した。
かつての自分を思い返す……
教室で授業を受ける自分(殆ど居眠りしかしていなかった記憶しかない)……
休み時間に廊下を歩く自分(意味も無く歩いていただけだった気がする)……
校庭にある芝生で寝っ転がっていた自分(つい眠ってしまい担任にゲンコツを喰らった)……
放課後でクラブ活動を行っていた自分(事実上「彼」は帰宅部だったが)……
ろくでもない記憶しか浮かばない自分に後悔した「彼」だった。
まてよ……まてまてまてっ!
「校庭」。
この単語で一つ「彼」なりのアイデアが浮上した。
陸上部は何処の学校でもあるはず。恐らくスタート時に撃つ銃みたいのがあるに違いない、あれで相手を威嚇できないだろうか?
少なくとも相手に若干の隙は与える事が出来そうな気がする。火薬も魔法と併用して上手く使えるはずだ。
一つ閃いた「彼」の脳裏に様々な思考が浮かび上がる。これが天啓と表される類なのか?
剣道部は何処の学校でも存在するはずだ。剣道部で木刀は入手出来ないだろうか?
あの学校には弓道部は無いだろうか?
弓はともかく、練習用の矢でもあれば先を尖らせて使えないだろうか?
あの学校には非常用にと置かれた事故災害用の斧が残っていないだろうか?
刃が無いかもしれないが鈍器である事に間違いない。
よしんばその部類が無くとも最悪はボールペンやシャープペンシルでも良い、武器が無いと油断した相手に突き刺す事だって可能だ。
そして最後に浮上した最も重要な理由……生き残る上で重要な要素、敵(そう全員敵なのだ)との遭遇を避ける……
「我々の魔法によって町のどこかに転送させてもらう、各人違う場所へだ」
あの言葉を思い出した。確立的に学校に戻る、あるいは転送される人間は少ないのではないだろうか?
「彼」が現状で最も妥当であろうと思った行動方針が固まった。
方針が決まると彼の実行速度は速い。
595 :
混沌:2006/06/26(月) 14:30:33 ID:763/ypBV
動こうとした瞬間……
腹が空腹を訴えた事に気付いた。どうやら「彼」の体は言ってみれば正常に機能していると言って良い。
僅かな苦笑。そしてザックの中にあった食料と水を取り出した。
警鐘が脳裏に響く。
生き残るのであれば出来るだけ温存しろ。食料と水を求める輩は必ずいる。食料や水を入手する時に戦うべき相手と遭遇する可能性が十二分に考えられる……誰だって腹は減るし、喉は渇くのだ。
(腹の調子にもよるのだろうが)幸運にもザックの食料と水には一食以上の余裕があるように思えた。
ここでまた「彼」の頭に不安要素が過ぎる。食料が無くても人間は一週間近くは生きる事が出来る。水が無い場合は三日で死ぬ……
「大破壊」前に本屋で立ち読みした何かの本に書いてあったのだった。
−だがとりあえずは腹ごなしが先決か……「腹が減ったら戦も出来ぬ」と「あいつ」も言ってたしな……−
そういいながら食事する「あいつ」、その笑顔が「彼」には眩しかった。羨望とも言って良い。
「彼」にはあのように笑いながら食事をすると言う記憶が少年期には全く無かった。そう、今考えてみれば「彼」は「あいつ」との食事が楽しかったのだ。
「彼」はその時気付かなかったが、その思い出に浸っていた時、口元には確かに微笑みがあった。もしかしたら最後かもしれない人間的な微笑みが……
水はペットボトルに入っていた。有難い、少なくとも一回で飲み切る事は無いのだ。
続いて食料。これは煮炊きすような物では無い。缶きり等を使う代物でもなかった。(ザックには缶きりの部類に属する「アイテム」が存在していなかった)日本語で書かれていたので「彼」にもその食料を名前と食べ方は理解できた。
懐かしい名前の食料であった。大破壊前にはよく売られていた食品だ。
「彼」はそう思いながらその食料の紙製で出来たパックを破る。
その中にはガムを包む銀紙のような物で封がされていた。
その数二つ。
保存状態をかなり重視した作りの様に「彼」は感じた。あの時以前の「彼」あったなら「なんでこんななんだよ!面倒臭せぇっ!」と怒鳴っていただろう。
「大破壊」後の状況が「彼」を変えたのだろうか?
今の「彼」にはその保存状況を重視した造りがとてもありがたかった。
その二個のうち、一個の封を破る。やっと食料が顔を出した。スティックにも似た形状の食料が二つ入っている。それを見た「彼」は食欲が一気に上昇したのを自覚した。
貪る様に一個、そして味わう様にゆっくりもう一個。
そして今度は喉が渇きを訴える。
「彼」は再び苦笑しつつもペットボトルの栓を捻り、中の水を口にする。「大破壊」で得た経験か「彼」には大量に水を飲まない習慣がついていた。
気持ち喉を潤す程度。うん、今はこれで我慢だ……
596 :
混沌:2006/06/26(月) 14:31:19 ID:763/ypBV
落ち着いたところで「彼」はふとザックから手持ちの参加者リストを取り出し眺めた。ざっと目を通す。
殆どの名前に記憶に無かった。吉祥寺で「彼」に多人数で暴力を奮った男の名前も無い。
だが「あいつ」の名前とレジスタンスのリーダーだと名乗った「女」の名前、そして「もう一人」の名前が目についた。
「奴」もこの殺し合いに参加したのか……いや、させられたのか?
もう一人の仲間、「奴」の事を思い出す。
「彼」なりの言葉で評価するのであれば只の「偽善者」だ。
「奴」も魔法が使えるのだった。
何かあったら「助けましょう!」の一言が真っ先に出る男。
それ故か「奴」は負傷した場合の回復を助長する魔法に長けていた。先程の比喩でいうならディフェンダーであろうか?
「彼」と「奴」は魔法を使う事は共通していても使える魔法のベクトルが逆であった。
気に入らない、と「彼」は思った。正直「奴」の回復魔法には感謝している。が、「奴」への感謝とは別次元の話であった。少なくとも「彼」にとっては。
そういえばあの時もそうだった。
「あいつ」の母親が文字通り喰い殺され、「あいつ」が絶望的な悲しみに満ちている時に「奴」は「優しさ」と言うものを口で表現したのだ。
ふざけるな、と正直「彼」はあの時に思った。あえて黙っておいてやるって方法もあるのだ。そもそも肉親が(あの時の様な平和で「あったはず」の世界で)有り得ない(はずの)方法で殺されたのにかけるべき言葉があるものか。
少なくとも「彼」には「あいつ」にかけるべき言葉が無かった。だから黙って見ることしかできなかったのだ。そう「彼」は思ったのだ。そしてその論理の結果を実行したのだ。
持ち前の性格故か「奴」と「彼」との相性は良くは無かった。最悪だったと表現しても良い。何かしらあれば必ずと言っていいほど意見が対立していたのだから。
今更ながら良く共に行動していたとも思う。
そうか、と「彼」は呟いた。「あいつ」がいたからだ……「あいつ」が仲裁役に入ってくれたからこそあの時はやっていけたのだろう。
そうでなければ「奴」とはウマが合うわけが無く、あのような殺伐とした世界では結果として間違いなく銃を撃ち、手持ちの武器で斬り合い、そして魔法を放っていたに違いない。
「奴」への気持ちは今も変わらなかった。当然だ、ウマが合わないと言う事は「奴」との妥協が出来ないからだ。「奴」となら戦うだろう、否、戦う。もっとも「奴」が生きていたらの話ではあるが……
しかし……「あいつ」とは……
友達。
そう「彼」は「あいつ」と友達になりたかったのだ。それも出来ればあの様な状況になる前に、だ。
「友達か……」
「彼」からため息が漏れた。友達になりたかった人間と殺し合う事になるとは……
出来れば他の誰かが殺してくれないものか…あわよくば共倒れになってはくれないだろうか……
客観的な点から見れば、「彼」の心境は友達になりたかった人間への思いとは到底思えない。
だが、「互いに殺し合い、たった一人しか生き残る事が出来ない」と言う特殊な環境に置かれた人間の心境としたら……どうであろうか?
「彼」のこの思いは「彼」なりの精一杯の優しさかもしれなかった。
しかし同時にふつふつと沸き上がる心の奥底からの欲求……
「あいつ」とも「奴」とも戦ってみたい……自分が求めた強さ、これを得る事が出来るのかもしれない……
……「彼」は覚悟を決めた……
そして目的として決めた武器入手の為、最初に放り込まれた七姉妹学園へと歩を進めるのだった。
かつて「彼」が言う「あいつ」は夢の中で遭遇した悪魔に「彼」の事をこう告げられた。
「これは力を求める渇いた魂」
その「彼」が向かう七姉妹学園には「力を与えられた少年」がいた。
「力を求める者」と「力を与えれた者」、その二人の邂逅は近い……
597 :
混沌:2006/06/26(月) 14:32:00 ID:763/ypBV
【カオス・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:正常
武器:銃(経緯から狙撃が可能?)
道具:カーボライナー(弾丸:追加効果STONE)
現在地:蓮華台
行動方針:銃以外の武器入手の為、七姉妹学園校内に移動
七姉妹学園……そう呼ばれる学園の校舎の中に「僕」はまだ立っていた。
あの時「僕」は尊敬する先生を抱擁した、
「僕」はほんの少し、力を加えたのを記憶している。ほんの少しの力のはずだった。
もしも「僕」の体が「人間の体」であったのならば……
受胎前に見ていたドラマの様な展開があったのかもしれない。
「僕」だって男の子だ。異性に興味が無いとは言わない。先生は理知的で美人だった、うん。悪魔になった今でもそう「僕」は思う。
しかし……
今の「僕」は既に「人間の体」では無くなっていた。
尊敬していた先生が引き金となって起こってしまった「東京受胎」、それまでは確かに「僕」は人間だった。
しかし目を覚ますと僕は「悪魔」の姿に変貌していた。
金髪の少年と喪服の老婆……
あの二人によって選ばれた(らしい……)
そして禍玉と呼称される蟲(まさに蟲と言う表現が相応しいと思う)の力を得たのだ。
「悪魔」としての力を……
そして文字通り魑魅魍魎が跳梁跋扈する砂漠と化した東京……いやボルテクス界と呼ばれるようになったトウキョウを彷徨った。
魔人と呼ばれる骸骨と戦い、メラーと呼ばれる蝋燭立てを入手し、アマラ宇宙の理を知った。
受胎前の時に読んだ漫画にこんな単語があったのを今でも覚えている。
「等価交換」。
要は何かを得る為には何かを失う必要があるという事……そんな意味であったような気がする。
考えてみれば僕はボルテクス界で己の命や魔貨と呼ばれる通貨と引き換えに仲魔と言う味方をつけてきた。
そして味方にした仲魔を犠牲にする事で仲魔を強化し戦力増強を図った。
結果的に考えるならば成功といっていい。弱肉強食のあの世界で僕が生きぬいたのだから成功には違いない。
でも常に何かを僕は失い続けた…
尊敬する先生、幼馴染の千晶、クラスメイトだった勇、新宿で知り合った聖……
特徴的な頭にどうしても目が行ってしまう男も居たが……「僕」と出会った直後に悪魔(今思い返すとバフォメットだったんだな)で殺そうとしたから……どうでもいいか。
そしてアマラ宇宙の事を知る事と引き換えに僕は「人の心」も失っていった。
最深部で響いた凄まじいまでの歓声。
待ちに待ったぞ!と心の底から思える程の歓喜の声。
そう彼らは「僕」を待っていたのだった。待っていてくれたのだ。
あの時、僕の心は本当に震えた。
将来を期待された皆の声程嬉しいものは無いと思う。それが例え人であっても悪魔であっても……
そして最終試験とも言うべきあの戦い。
僕はそれに勝利し、皆の期待に答えることが出来たのだ。
そして僕は歩いた。皆の期待に答えるべく先頭に立って。
そうだ。
そこでだったんだ。
そこで意識が吹っ飛んだ。
気がついたらこの七姉妹学園に居て「殺し合い」の説明を受け、もう一回また意識が飛んだんだ。
今考えたらアマラ経絡を利用したワープに近い感覚だった。
そして気がついたらまたこの学園……そういや何回か行き先を間違えてワープしたな……
「僕」はなんとなく「人間」であった時を思い出して廊下を歩き、教室に入り校庭を眺めた。それも上半身真っ裸、普通なら先生が怒鳴り散らす所だろう。
自嘲気味に笑いつつ、ある教室(掲げられた札からニ年生の教室と推察できた)に入った時、僕が手を掛けるべき最初の犠牲者は決まった。
高尾先生……
あっさりと死んでしまった……
最後の言葉。
「それでも彼方は死なないで。生き延びて、世界の末を見届けて…」
僕はその言葉を聞いてどう思ったか……等は言わなくても理解できるだろう?
でも、正直「人はこうも簡単に死ぬ事が出来るのか?」と再認識したのは事実だ。
最も悪魔すら弱点をつけば簡単に死ぬのは一緒だが……
涙が頬を濡らしたのは自分でも意外だった……
そこまで思い返した所でふと気付いた、この世界のルールを。
二四時間以内に一人以上の死亡者が発生しなければならない。
この生き残り戦争の条件は少なくともクリアしたわけだ。二四時間は何もしなくてもいい。
ルールブックもあり(丁寧な事に日本語で表記されていた、全く有難い)それを見ると死亡者通知が定期的にされると書いてある。
つまりは死亡者通知が無かったら……殺し合う必要がある訳だ。
「僕」はできれば人とは接したくはなかった。関わりも持ちたくない。
「僕」にはやるべき事が存在する。
きっと他の人もそうだろう。勝手にするがいいさ、殺しあおうが共闘しようが。
しかし……気になる点が「僕」にはあった。
いつの間にか背にあったザックの中には参加者リストが入っていた。後は煙幕弾と呼ばれる敵から逃げる際に使用するアイテムが目についた。
当然最初に確認したのは参加者リスト。
敵の情報を得る事が出来なければ勝てる敵にも勝てない場合がありうる、ボルテクス界で学んだ正に「僕」の理だ。(そういえばこの時、「パト」と言う二文字が脳裏を過ぎった。何だろう?)
殆どの人名は知らない、知る必要もなかった。殆どが「人間」であるだろうから。それはリストの名前で判別はつく。外人も居るみたいだ。
ああ、ここに外人ならぬ人外な存在が一人いるな、と苦笑しつつ眺めた。
苦笑して見続けることが出来たのは中盤あたりまでだっただろうか、その名前が出てた時は体が凍るような感覚を覚えた。
今さっき殺してしまった先生を始め、倒したはずの皆の名前が並んでいたからだ。
全員に配られたとしたら倒したはずの皆のリストに「僕」の名前も表記されているはず……つまりは最悪、もう一回戦う必要がある訳だ。
そこまで考えての「僕」の結論を言うならば……
「まぁその時は戦うしかない」
この一言だった。
正直な所彼らとは二回戦っている事になるのだから……まぁ要領は得ているつもりだ。なんとかなるだろう。
もしかしたら誰かが既に倒されているのかもしれない。そうしたら手間は省けるし結局の所、定時報告がされるのだ。嫌でも誰が生き残ってるかがわかる。
……そんな事を思っていた……さっきまでは。
教室にある時計を見ると秒針が確実に動いている。
少なくとも時間は把握できるわけだ。
だがこの時計が正しいとは限らない。
念のために「僕」は他の教室の時計も見てみた。
若干のずれが時計によってあるようだが大体が同じ位置を短針が示していた。
とすれば今は午前五時……この殺し合いが開始されて二時間あまりが経過した事になる。
ルールブックによれば後一時間程で最初の報告と言ったところか……どのような内容で報告がされるのかは興味があった。
状況の経過が気になった。
ふむ、現状待機といこうか?ノルマは既に達成したのだから……と思ったその時だった。
「彼」にも予想外の大きな音が発生した。
当然といえば当然であった。鉄板を銃で撃ったのだから。
「彼」はここまで「彼」なりの隠密行動を行ってこの七姉妹学園まで戻ってきた。(あくまで「彼」なりのとだけ補足する)
見つけるべきは強い武器、それも直に使えるものがいい。確か…廊下に多く設置されてるはずだった。
薄明るい廊下の中で赤く光るランプが一つ。
あった。アクリルの覗き板から覗くと斧に似たような鈍器が中に飾られていた。
勿論それを悪用されないように頑丈な鉄製の板で構築された箱でそれを強固に保護している。
それを見た「彼」は脳内の何かが弾け飛んだ。有体に言うならばキレたのだ。
銃をその鉄板で構築された箱に向け引き金を引く。
当然ながら発生した眩いマズルフラッシュと響く銃声、そして匂ってくる火薬臭、おまけに薬莢が転がる音。
後悔先立たずとはこの事か、「彼」は激しく後悔した。
誰かに聞かれたかも知れない。
貴重な弾丸を消費してしまった。
しかしその見返りとして箱に収められた斧に似た鈍器を得る事が出来た。
それを手に取る。結構な重量だった。だが重さの分殺傷能力は高いはず。それに彼にはかつて斧を手に持ち悪魔と交戦した記憶があった。
要領は一緒だ、大丈夫。
自分に言い聞かせる。そして近くの教室に目をやると扉が開いていた。「彼」は反射的に飛び込んでしまった。
そこで見たもの……
寝ている人間であった「もの」。
女「で」あった。
死んでいたのだ。
美人であることには間違いない。端正な顔立ちだった。何故か微笑みにも似た表情を浮かべて彼女は動かぬ人となっていた。
ドラマ等であればここで「彼」は叫んでいたのかもしれない。だが「彼」も修羅場を潜った経験の持ち主だった。
思考を開始。
誰かが「この場所」で「この女」を「殺した。」
更にこの結果状況から判断する。
抵抗を試みた形跡は無い。抵抗したのならこんな顔で死んだりはしない。恐らく顔見知りに出会い殺されたのだろう……
結論。
「ここには敵がいた。」
誤算だった。まだ少なくとも一人はこの近辺に敵がいるのだ。
思わず教室の出入り口から見える教壇の反対側、つまりは進入して来るであろう死角に身を寄せる。
恐怖からか歯が音を鳴らしだした。それも連続で。
同時に吹き出る嫌な冷や汗……
一人だと心細かった。「あいつ」や(思い出したくはないが)「奴」が一緒の時はこんな事は無かったはずだった。
静まり返る学校……
「敵」は消えたのか?と「彼」が思ったその時だった。
廊下に響く足音が聞こえた……
「敵」が来たのだ!
「僕」は大きな音がした方向へ歩いていった。後からの奇襲も考えられるがそこまで考えてはいなかった。一度「敵」と交戦したからである。
「敵。」
確かに「敵」だった。でも参加者リストには入っていない「敵」、「僕」と同じ「悪魔」だった。
通常の遭遇、だが敵の先制攻撃だ。「僕」は軽く舌打ちした。
若干ではあるものの、姿形が変わっているように見えたが、所詮は低級悪魔だ。
「僕」はその攻撃を軽々と回避、そしてカウンター気味にいつもの右ストレート。
悪魔は当然即死だった。
アイテムは持っていない……まぁ持っていたとしても傷薬程度だろうと「僕」は思った。まぁ問題はないだろう。
再び廊下を歩く。あくまで普通にだ。
先生を殺した教室の前、そこで僕は立ち止まった。
先生を見つめた。あの時のままだった。悪魔だからの目だからだろうか?
先生「だった」ものの服が異常に白く見えた。
その行動を取らせようとした理由が「僕」は何故か思いつかなかった。そのまま「僕」は教室に足を踏み入れる。
先生「だった」ものの手を組ませて何処ぞの宗教が祈りを捧げるような形にした。
「僕」はあえてもう一度言う。
何故そんな真似をしたかったのか本当の理由がわからなかった。
もしかしたら……もしかしたらだ。
「僕」は人間の「真似事」がしたかっただけかもしれない。
その時だ。
黒い影が僕の視界に突然現れた。
「僕」は思った。
……可哀相に……と。
【人修羅(主人公)(真・女神転生V-nocturne)】
状態:正常
武器:素手(但し各スキル運用が想定される)
道具:煙幕弾(9個)
現在位置:七姉妹学園
行動指針:カオス・ヒーローへの迎撃:自分の世界へ帰る手段を求める。
【カオス・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:緊張による恐慌状態=PANIC?
武器:銃(経緯から狙撃が可能?):斧に似た鈍器入手(刃は無い模様)
道具:カーボライナー(弾丸:追加効果STONE)
現在地:七姉妹学園
行動方針:人修羅への攻撃敢行:現状それ以上の思考は不可能
深い木々を掻き分け、目下の目的地である七姉妹学園を目指すべくライドウと鳴海は移動を始めた。
本当は行方不明になったレイコを探したい気持ちもあったのだが、
この見通しの悪い山の中で寄り道をするのは自殺行為に繋がるかもしれないのだ。
レイコにも、七姉妹学園を目指していることは伝えてある。だから、彼女もそちらに向かって動いていると信じるしかなかった。
それに、彼女はあんなにも大人しそうな顔をしているが、内に秘めた戦闘力は下手をするとライドウをも上回るかもしれない。
だから、そうあっさりと殺されるということは思えないのである。
そうしたことを何とかライドウに理解させ、進むことに決めた。
ルールブックに挟まっていたスマル市全体の地図を見ると、今自分たちがいるのは蝸牛山と呼ばれる場所であることが解った。
この山の頂付近からは麓に向かってロープウェーが伝っているのを見つけた。
念のため、実際に触れて確認してみたが、当然今は動かすことが出来ないようだった。
また、山の裏手に回れば森本病院という精神科病棟があるようだ。
精神を患っているとは言え、こんな山奥にまとめて隔離するのは人道ならざる行為だと思わずにはいられないが、
どうやらその辺りの偏見は、二人がいた大正帝都とさほど変わっていないらしい。
「ライドウ、その森本病院とやらに行ってみようか。」
地図に眼を落としながら鳴海が言った。
「いえ、先を急ぎましょう。もしレイコさんが僕たちよりも早く七姉妹学園に辿り着いていたら、待たせるのは危険です。」
「だが…。」
鳴海は地図から眼を離し、真っ直ぐ行き先に集中しているライドウを見やった。
マントで上手く隠しているつもりだろうが、右肩からじわじわと血が滲み出し、ぽたりぽたりと彼の歩んだ軌跡を残している。
血が足りていないのか、顔色も悪い。本人は気付いていないのかもしれないが、足取りも徐々に遅くなっていた。
一応、応急処置だけは済ませたが、やはり傷薬だけではあの深い傷を治癒することが出来なかったのである。
それに、最悪の事態を想定して鳴海の持っている宝玉を使うことをライドウは拒んだのだ。
このままでは下山する前にくたばってしまいそうだった。それではレイコと再び合流するどころの話では無い。
口数が少ない分、言い出したら聞かないライドウの性格はそれで大いに結構。
男には絶対譲れない時もある。それは十分に理解しているつもりだが、それと無駄に命を削ることはまた別の話だ。
こういう場合、年長者としての経験を生かし、きっちり言い聞かせた方がいいだろう。
鳴海は腕時計に眼を落とし、本人の神経を逆撫でしないよう、出来るだけ、まるっきりぶっきらぼうな口ぶりで言った。
「お前、このまま行けば後三十分程で死ぬから。」
「……。」
ライドウは、この時初めて鳴海の言葉に耳を貸し、足を止めた。
森本病院は精神科のみが置かれた医療施設である。
だから今のライドウに対して十分な、外科治療が可能な設備や用具が揃っているかどうかは解らない。
欲しいのは殺菌用のエタノール、それから鎮痛剤とガーゼ、包帯。それくらいはいくら何でも置いてあるだろう。
それから、可能ならば縫合用の糸と針。縫うとなれば麻酔薬も必要になってくる。
また、出来れば輸血用の血液もあれば理想的だった。ライドウと同じ血液型、O型のである。
一応、こう見えても鳴海は元陸軍所属という過去がある。その時、幸いな事に緊急用としてある程度の外科治療も訓練要項に含まれていたのだ。
だが、それについての実戦経験はまるっきり無い。だから森本病院に十分な外科設備が整っていたとしても自分にどれだけ出来るのか解らない。
それでも、やるしかなかった。
このまま本人の希望通り蓮華台に向かって歩き続ければ、鳴海が予告した通り、三十分持つか持たないかであろう。
(あれから五分経ったので後二十五分だ。)
それまでに体の血が全て流れ落ち、死んでしまう。彼が肩に受けた傷はそれくらい大きな物だったのだ。
そろそろ足取りがおぼつかなくなってきたライドウの肩を支えながら、歩みを急いだ。
ペースはどうしても緩やかになってしまうが、地図上で病院はそれほど遠くは無い。何とか間に合うだろう。
「鳴海さん…。」
大分息の上がってきたライドウが彼の名を小さく呼んだ。
「どうした?」
「厭な気配がしませんか? こう、殺気に満ち溢れているような…。僕、この気配に記憶があるんですが…。」
「あまり変なことを考えるな。ただでさえお前は瀕死なんだから。」
それは鳴海も薄々気付いている気配だった。
この蝸牛山には何か恐ろしい者が潜んでいる。怒り、憎悪、殺意、そして悲しみを一箇所に集めたような、黒く禍々しい気配だ。
この恐ろしい殺気にライドウは覚えがあると言う。それはつまり…。
ざざ、と風が通り抜け、木々に止まっていた野鳥が一斉に飛び立った。何か恐ろしいものが駆け足で近づいてくるのだ。
「来る…!」
呟くが早く、ライドウは鳴海を突き飛ばし、マントの下の刀を抜いた。
次の瞬間、立ち並ぶ木々を数十本まとめて薙ぎ倒し、ライドウの目の前に現れたのは、真っ白な学生服を身に纏った魔神皇その人であった……。
【葛葉ライドウ(ライドウ対超力兵団】
状態 顔と右肩を負傷(出血多量により持って三十分)
武器 脇差
道具 無し
現在地 蝸牛山
行動方針 森本病院に向かう レイコを探す 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出
【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上
【狭間偉出夫(魔神皇)】
状態 正常
武器 ?
道具 ?
現在地 蝸牛山
行動方針 皆殺し
全く、訳の解らないこと続きだ。
あの銃型PCを手に入れてからというもの、今まで考えられなかったような様々な経験をした。
怪しい組織に付け狙われたり、悪魔などという非科学的な存在が現れるようになったり。
腕利きのハッカーとはいえ普通の少年だと思っていた新がまるで前から知っていたかのように銃型PCを操ってみせたのも、
それを使って悪魔を召喚する能力を身に着けていたのも、
真面目だった瞳が突然銀髪に染めてきたかと思うと、いつの間にか魔法を使えるようになっていたのも。
そして、極め付けがこれだ。
この住人のいない街――よく知っている日本に似た、しかし違う世界。
主催者らしいスピーカーからの声は、パラレルワールドと言っていた。そして殺し合いの舞台だと。
これも天海市で起こっていた事件と同じく、悪魔の力が絡んだ出来事なのか。
何故、あの声の主は殺し合いなどをさせようとしているのか。
何から何まで訳が解らない。
ただ、はっきりしているのは、あの声に従って殺し合いを始めようとしている人間がいるということ。
つまり、うかうかしていたら殺されて一巻の終わり、ということだ。
「うん……道はこっちで良さそうだ。このまま進めば、夢崎区に入れる」
ビルの壁に寄り掛かり、地図を眺めながらザインが呟いた。
解らないといえば、この青年のこともよく解らない。
流暢な日本語を喋っているが、名前から考えると外国人なのだろうか。服装も浮世離れしている。
殺戮ゲームの参加者として教室に集められていた中には、他にも何人か、現代日本のものではない服装の者もいた。
彼等は、違う世界の人間なのだろうか。
少し前ならば受け入れ難かったろうが、悪魔やサマナーという非日常の存在を知っている今なら納得できる。
まるでSFのような話だが、ここは異世界で、自分も彼もここでは等しく「外の世界から来た」人間なのだ。
――それにしても。
「疲れは取れたかい?」
視線に気付いたらしいザインがこちらを向いて、問う。
解らないのは、ここだ。もう一時間ほども歩いているというのに、彼には疲労の色はない。
確かに彼は見た目からして鍛えていそうだし、実際並み外れた体力の持ち主なのだろうが、
こんな傷を負った状態で歩き通して大丈夫なものなのだろうか。
体が次第に石化しつつあるという状況で、早く行動せねばという焦りもあるだろう。
しかし精神力を頼りに動くにしても、人間には限界というものがある。それが、彼にはありそうに見えない。
「ああ……君は大丈夫か?」
問い返す。本来、暫く休もうと申し出たのも彼を気遣ってのことだったのだ。
が、休憩の間も彼は座ろうとはしなかった。
何かあった時に即座に対応できるように、と彼は言っていた。何かとはつまり、他の参加者からの襲撃に他ならないのだが。
真っ直ぐに夢崎区に向かうことは避け、人通りの少なそうな回り道を選びはしたものの、同じことを考えている相手がいないとも限らない。
(……しかし、それにしたって)
揉み消した煙草を、携帯灰皿の中に放り込む。
負傷者の彼が平然と立ったまま休んでいて無傷の自分が座り込んでいるというのは、やはり複雑なものだった。
自分が立って見張りをしていたところで、有事の際に大して役に立つとも思えないのも事実なのだが。
それが、また遣る瀬ない。
「僕のことは心配しなくていい」
ザインは答えて、地図を丸めるとザックに突っ込んだ。
(大丈夫、とは……言わなかったな)
無理しているのではないか、という気がする。
しかし、休んでどうにかなる状況でもないのだ。彼がまだ動ける内に、石化を治す方法を探さなくてはならない。
「……解った。先を急ごうか」
荷物を担いで立ち上がる。繁華街に差し掛かるまでには、まだ随分歩きそうだ。
正直、完全に疲れが取れた訳ではなかった。不安で神経が張り詰めている所為だろうか、あまり休めた気がしない。
そういえば、煙草の本数も残り少ない。
煙草屋かコンビニでも見付けたら失敬しよう、と考える。どこかしらで補充はできるだろう。
道の途中で休息を取ってから、一時間少々歩いただろうか。
もう夜は明け、辺りは明るくなり始めている。が、それと裏腹に、気分は酷く暗かった。
どのようなシステムを使っているのかは判らないが、恐らく街全体にだろう、放送が流れたのだ。
あのスピーカーから聞こえた主催者の声で読み上げられたのは、今までに出た死者の名前。
その時点でまだ、ゲームが始まって三時間である。その間に、もう何人もの命が消えていた。
もしかしたら既に誰かが、とは思っていた。
しかし、予想を大きく上回る人数の死を聞かされて、改めて思い知った。
このゲームの恐ろしさ。敵と呼ばなければならない人物が恐らくは複数、存在するだろうこと。
死者の中に知っている名前がなかったことが、唯一の救いと言うべきか。
そのことに安心してしまう自分を利己的だとは思うが、新と瞳が生きているというのは希望に違いなかった。
「……もう夢崎区には入ったみたいだな」
放送を聴いてから言葉少なになっていたザインが、電柱に表示された番地を見て言った。
歩いているのは、二車線分の広さの通り。その両側にはマンションや個人商店が並んでいる。
繁華街まではまだ少し距離がありそうだが、同じ区内に入ったと思うと目的に近付いたようで少し安心できる。
「危ない相手に会わずに済んで良かったよ。繁華街まで行けば、他にも誰か来てる奴が……」
返事の途中で、予期しなかったものが視界に入る。
「どうした?」
不自然に途切れた言葉に、横を見ていたザインがこちらを向いた。
無言で、その方向を指し示す。少し前方、車道を挟んで通りの向こう側。
マンションらしき建物の前に、何かが――いや、紛れもなく人間の体が、転がっていた。
倒れている人物はぴくりとも動かず、その周囲には赤黒い水溜まりができている。
ザインが駆け出した。少し遅れて、彼の後に続く。
(この血の量じゃ……生きていないな)
放送で名前を読み上げられた中の誰かだろうか。近付くと、その人物が制服を着た少女だということが判った。
高校生だろう。セミロングの髪を茶色に染めた、どこにでもいるような女の子だ。
しかし青い制服は血が染み込んで汚れ、肌に生気はなく、短いスカートから伸びた脚には折れた骨が露出していた。
その無残な姿に、思わず目を背けてしまう。
「酷いことを……」
少女の傍に屈み込み、既に生命を失った体を抱き起こしながらザインが呟く。その声は震えていた。
「その子……」
目の前のマンションを見上げた。十階建てだ。この角度では見えないが、その上には屋上があるだろう。
「落ちたんじゃ、ないのか?……飛び降りたとか」
「違う」
答えるザインの声に、静かな怒りが篭もる。
「刀傷がある。斬られたんだ」
はっとして、逸らしていた視線を少女の亡骸に向けた。
ザインの言う通りだ。少女の体の前面には袈裟懸けに斬られた傷があり、制服も斜め一文字に切り裂かれていた。
斬られて、屋上から落ちた――それとも、突き落とされたのか。
ぞっとして、再び上に目を遣る。彼女を殺した人間が、この上にまだいるのかもしれない。
「ここは早めに離れた方がいい。犯人に見付からない内に」
「……待ってくれ」
傷を見るために抱き起こしていた少女の亡骸を、ザインはそのまま抱き上げる。
白い衣服に少女の血がべっとりと付着するのも、気にしている様子はなかった。
「この人を、ここに置き去りにする訳にはいかない」
「って……どこに運ぶんだい」
埋葬する、という訳にもいかないだろう。
それに遺体を抱えている間は両手が塞がるし、人一人の体を運ぶとなれば体力も余分に消耗する。
「どこに……かは、判らない。ただ、どこか、安らかに眠れる所へ……」
ザインの返事は、全く要領を得ていない。
――彼も、動揺しているのだ。初めてそのことに思い当たった。
自分達よりは非日常の世界に馴染みがありそうに見えたし、冷静な振る舞いからは落ち着いているように思えたが、
彼は殺し合いのゲーム開始を宣告された中で和平を呼び掛ける程度には甘い人間なのだ。
「……いいか。落ち着いてくれ。気持ちは解るが、今の僕達にそんな余裕があるか?」
歩み寄って、正面から顔を見据えた。
ずっと眉間に皺を寄せっぱなしで険しい印象の顔だが、改めてこうして見ると、彼は思ったより年少なのだと気付かされる。
スプーキーズのメンバー達と同じ年頃だろうか。まだ大人になりきっていない、少年の顔だ。
「両手が塞がったら、君だっていざという時にすぐには対処できない。体力の消耗も避けたいだろう。
かといって僕には、人一人を抱えて歩き回れる力はない。
それに、遺体を傍に置いておくことで、誰かに出会った時に誤解される恐れもある」
「……そう、だな」
ゆっくりと言い聞かせる内に、ザインも落ち着きを取り戻したようだ。
「すまない。僕は……」
「いや、そういう優しさが君のいい所なんだろう。
こんな状況で、亡くなった人を気遣うなんてなかなかできるもんじゃない」
軽く、辺りを見回した。少女の亡骸を野晒しにしておくのは、さすがに忍びない。
せめてどこか、この辺の建物の中にでも横たえておいてあげようと思った。
「ひとまず、この辺りの――」
その意思を伝えようと、ザインの方に向き直った時。
彼の背後に、金色の髪をなびかせた人影が舞った。
時刻:午前7時前後
【ザイン(真・女神転生2)】
状態:脇腹を負傷、石化進行中
武器:クイーンビュート(装備不可能)
道具:ノートPC(スプーキーに貸与)
現在地:夢崎区
行動方針:仲間を集めてゲームを止める、石化を治す
【スプーキー(ソウルハッカーズ)】
状態:やや疲労
武器:?
道具:傷薬
現在地:夢崎区
行動方針:PC周辺機器・ソフトの入手、仲間との合流
【白川由美(真・女神転生if…)】
状態:死亡
武器:?
道具:?
現在地:夢崎区
「ようやく見つけることが出来た。我が最初の贄よ。貴様は私の造る魔界の礎となるべく命を捧げるがよい。」
口元に、不気味な笑みを浮かべ、魔神皇は身構えるライドウの前に佇んだ。
言っていることはまさしく意味不明だったが、それでも奴から発せられる負のオーラは厭でも恐怖心を煽った。
ライドウは、横で無様に尻餅をついている鳴海に眼で合図した。逃げろ、と。
それを受けてよろよろと立ち上がり、同時に後退を始めながら鳴海は奥歯を強く噛み締めた。
(クソっ、何てタイミングが悪い!)
魔神皇を初めて観る鳴海にも、それがどれ程恐ろしい存在かは一目で解った。
この揺ぎ無い憎悪、迷いの無い殺意。決して交渉で止められるようなものではない。
ライドウが是が非でもレイコを止めようとする理由が理解できた。
魔神皇は、ライドウの構えた脇差に眼を向け、今にも笑い出しそうな口ぶりで言った。
「ククッ…。武器を手に入れたか。それもよかろう。そのような脆弱な玩具一つで貴様のような只の人間が何を出来るというのか。
だが同時に貴様は手負いのようだ。ククク…これは何と好都合……フハハハハ!」
この状況が楽しくて仕方が無いといった風な魔神皇の手に、凍てつくエネルギーが宿った。
魔法だ。
それを使われるとまずい。普段なら発動される前に仕留める所だが、既に殆ど利き腕に力が入らない以上、それは不可能に近かった。
だが、やるなら今しかない。
何故なら、魔神皇はこちらの戦力を随分と過小評価してくれているのだ。
確かに手負いのライドウに何が出来るかといえば限られてくるが、その余裕に付け込むことは可能かもしれない。
それに奴の眼には鳴海の存在が映っていないのだ。
こう見えても鳴海は軍隊格闘の経験者だが、とてもそうは見えない外見に救われていることになる。
そして、此処が山の奥深くということだ。
幼い頃から山に親しんでいるライドウと、陸軍時代に高山でのサバイバル研修を耐え抜いた経験のある鳴海にとってこの地形は有利であった。
対して魔神皇の方は、いきなり遠方から魔法を撃たずにわざわざ目の前まで現れた辺り、それ程この地形には慣れていないのだろう。
ライドウは刀の柄を――肩から流れ落ちた血でいささか滑りやすくなっていたが、それでも握り直し、一気にダッシュを掛ける。
だが、思った通り余裕の魔神皇はガードの構えすら見せずに魔法を発動させようと両腕を突き出した。
(掛かったな!)
自分の思った通りの動作に、ライドウは心の中でにやりと笑った。勿論表情には出さないが。
そして、魔法、氷結魔法ブフダインが発動する瞬間を絶妙なタイミングで狙い、足元の砂を思いっきり魔神皇の顔目掛けて蹴り上げた。
「ぐっ!」
それは奴の目を直撃し、瞬間的にだが注意を逸らし、視力を奪う。
迷わずライドウはそのまま懐に飛び込み、突き出された両腕に向かって刃を振り下ろした。
「!」
本当は両腕を斬り落とすつもりで掛かったのだが、一瞬早く上体を引っ込められ、魔神皇の黒い前髪数本を切り落とすだけに留まった。
だが、ライドウの目的はもう一つ別にあったのだ
ライドウが狙ったのは魔法の暴発である。
魔法は強力な攻撃手段に他ならないが、その分、発動するための隙が大きい。そして剣のように途中ですぐに止めることも難しいのである。
ライドウが狙ったのはまさにその点だった。
「ぐあぁぁぁっ!!」
全てを凍りつかせる氷の塊は脅威である。当然それは、術者の手を離れればの話であるが。
だが、魔神皇がとっさにライドウの刀を避けたお陰で発動直前だった氷の塊は行き場を失い、反動で術者自らを凍結させたのだ。
魔神皇の胴体と両腕が急激に氷の塊が覆われ、純白の学生服を凍りつかせる。
さすがにこのカウンターで氷の像を一つ制作することは出来なかったが、
刹那、動きの止まった魔神皇の左足の甲をスチール製の矢が貫き、奴と地面を縫い付けた。
鳴海だった。ライドウが魔神皇の気を引き付けている間に近くの木によじ登り、上からクロスボウで狙ったのである。
「き…貴様ぁぁ!!! 何処から狙って!!」
耳を劈くような声で絶叫するが、両腕と片足の動きを完全に止められた魔神皇には成す術も無い。
ライドウは、その首を斬り捨てるべく刀を振り上げた。
が、そこで動きが止まり、その場で突っ伏してしまった。急に全身の力が抜け落ちたのである。
絶対安静が必要な身分なのに無理に動いていたからだろうか。
とうとう出血多量により、限界を迎えて気絶してしまったのだ。
「ライドウ!」
鳴海が木から飛び降り、刀を握ったままの体勢で転倒したライドウに駆け寄った。
「ククク…フフフフフ……はーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
魔神皇が高笑いを上げる。
両腕を拘束している忌々しい氷の塊は、高い木々の間から差し込む真昼の日差しと、自らの熱気で徐々に溶け始めていたのだ。
バキッと、無機質な音が響き、左腕を固定していた氷が砕けた。
「ちっ!」
鳴海は舌打ちをした。
このままもう片方の腕まで自由になってしまったらこちらに勝ち目は無い。そしてそれをのうのうと待つつもりも無かった。
鳴海はぐったりとしたライドウの半身を持ち上げると、そのトレードマークの黒いマントを一気に引き剥がし、
それを魔神皇に向かって投げつけて真正面から覆い被せた。
「何だと!?」
思いも寄らぬ反撃に魔神皇はうろたえる。
そして魔神皇は片腕だけで空気を含んで広がるマントを避けようともがくが、鳴海は構うことなく横から魔神皇に渾身の蹴りを入れた。
その先は急激な斜面だ。
ブチッと太い血管が千切れるような音と共に、脚を縫い付けている矢が地面から抜け、マントに包まれた魔神皇が斜面を転がり落ちる。
「貴様あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
怒りに満ちた叫びがまるで山全体に響き渡るようだったが、これで奴はこのまま下の、地図上で言えばはみ出してしまう部分――。
つまり地上から遥か上空に投げ出されることになるのだ。
何にも引っかからなければの話ではあるが、最悪でも逃げる時間くらいは稼げるだろう。
その間にライドウを担いで森本病院に行く。ライドウの出血量からあまり余裕は持てないが、院内に入ってしまえば何とかなるだろう。
物事は何でも前向きに考えなくては――。
こんな状況だ。そうでもしないと暗くなるばかりである。
だが、鳴海は急に視界が大きく歪むのを感じた。それからややあって、自分の腹辺りから激痛が襲ってきているのに気付いた。
厭な予感がしておそるおそる頭を傾けてみる。自分の腹部がどうなっているのか確かめた鳴海は愕然とした。
「何てこった…。」
魔神皇の名は伊達ではない。奴も落ちる寸前にカウンターを放っていたのである。
鳴海の腹は先端の尖った氷の矢が貫通していたのだ。
突然ごぼっという籠った水音が耳の奥で響き、口からどす黒い液体が溢れた。
鳴海の口から落ちたそれは、地面に放射線状の赤い水溜りを作り、それはさながら陸軍時代に見慣れた国旗のようだった。
と、同時にまだ氷の矢が刺さったままの状態の腹からも同じ色をした血が零れ、足元に奇妙な水玉模様をいくつも描き出す。
急に保っていた意識が遠のき、頭の中が空っぽになり、まるで血と一緒に脳味噌まで吐き出したような感覚さえ生まれた。
「ライドウ…すまん……すまなかった…………。」
視界が真っ白に染まり、ずるずると崩れ落ちながら、鳴海はうつ伏せに倒れたライドウに頭を傾けた。
死ぬ時はもっと別の、後世に語り継がれるような、気の効いた辞世の句の一つでも残そう。隣に髪の長い淑やかな美女でもはべらせて――。
常々そういう設計を考えていたはずの鳴海だが、現実はまるで違うようだ。
隣にいるのは美女どころか、血まみれで、下手をすると自分よりも先にあの世に旅立ちそうな、むさ苦しい書生一人だ。
それに、自分は暖かい布団の上で大往生を向かえる予定だったのに、この泥臭さは何なのだろう。最悪だ。最悪過ぎて笑いすら出てしまう。
「……苦労を掛けたな……。」
文句は色々言いたいはずなのに……。
どういうわけか、この時は隣で横たわり、最後まで戦い抜いた自分の優秀な部下に謝ることしか出来なかった。
「う…」
小さな呻き声を零し、ライドウは徐々に意識を回復した。
倒れた瞬間は、もうこのまま此処で死んでしまうのだと思っていたが、
どうやら気絶している間に残り少ない血が頭の中にまで循環してくれたようだった。
起き上がると、肩はそれほど痛まなかったが、頭の中がクラクラと回転する。こころなしか視界も狭い。
周囲には、下界よりも低い山の中の気温とは違う、不自然な冷気が周辺に満ち溢れていた。
それが、魔神皇が暴発させたブフダインの残り香だということにライドウが気付くのはそれから幾分経ってからであった。
辺りは、驚くほどの静寂に満ちていた。魔神皇はどうしたのだろう?
あれから何とか倒したのだろうか? がむしゃら過ぎて覚えていないのか。
それとも、何らかの事情で向こうから撤退せざるを得ない状況に陥ってくれたのか。
重い頭で考えを巡らせるが、兎に角、幸運なことに自分はまだ生きている。そしてこの場に魔神皇の姿は無い。
「鳴海さん…?」
いつもならすぐに明るい冗談を語りかけてくれる上司の声が聞こえない。
どうしたものかときょろきょろ見回し、すぐに傍らに倒れている姿を発見した。
「鳴海さん!」
鳴海は自ら作り上げた血だまり中で大の字になって倒れていたのだ。しかも溶けかかった氷の矢に腹を貫かれて。
ライドウは、自分も死に掛かっていることを忘れ、転がったまま放置されている鞄の中を漁り、宝玉を取り出した。
それから鳴海の体から氷の矢を引き抜く。
扱う自分の手は寒くもないのにがたがたと震えていたし、一気に血が吹き出すだろうと思っていたが、
不幸中の幸いか、氷の矢が傷口を凍らせていてくれたお陰でこれ以上の出血は無かった。
それから宝玉を傷口に押し当てた。
宝玉から淡い光が放たれ、鳴海の傷がみるみる塞がっていく。
良かった。驚きの余り確認を忘れていたが、鳴海はまだ何とか生きていたようだ…。
そして宝玉は、まるで鳴海の傷が完治したことを悟ったかのように、砕け、鳴海の腹の上に煌く破片を散らした。
ライドウは脇差をベルトに差込み、荷物を抱えると、まだ気を失ったままの鳴海を引きずって森本病院を目指した。
もう眼と鼻の先に白い四角の建物が木立の間から覗いているのが見えていたのだ。
病院の開かれた正門まで、何とか鳴海を引きずり、ついにライドウは力尽きた。
その時に鳴海の腕時計が眼に入る。あれからさらに十五分が経過していた。
「鳴海…さん……絶対に後……十分以内に眼を…覚まし……て…ください…ッ……よ……。
寝坊したら……晩御飯…抜き…ですから……ね………――――ッ。」
ライドウはそのままもう一度、気を失った。
【葛葉ライドウ(ライドウ対超力兵団】
状態 顔と右肩を負傷(出血多量により瀕死状態)
武器 脇差
道具 無し
現在地 蝸牛山
行動方針 レイコを探す 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出
【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常(重体だったが宝玉により回復)
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ
現在地 同上
行動方針 同上
【狭間偉出夫(魔神皇)】
状態 生死不明
武器 ?
道具 ?
現在地 不明
行動方針 皆殺し
617 :
異変:2006/06/27(火) 17:21:18 ID:mwO3J8Gq
恵まれた所ほど人が多いのは当たり前の事だ。
例えばあらゆる施設が設けられていればその分だけそれぞれの人が求める所へ足を運ぶ。
そんな需要と供給の物理的関係の上で必然的な繁栄を約束される。それが世の中の成り立ちだった。
しかし今になってはそんな事は全く無い。それはただの飾りとしてしか機能されていないのだ。
この夢崎区も例に漏れずそうである。周りには文明の進化で栄えている町並みも今では滑稽でさえある。
「穢れた文明の産物の隙間を潜り抜けて出るこの静寂・・・・・・気に食わんな。」
其処には消防署から不毛な現実へと身を出した一人の男が、不服そうに物を言う。
氷川はこの穢れた地にて求めていた。利害関係を一致した者を、この先の困難を和らぐ何かを
この富で溢れた町並みの中に求めていた。しかし現実は理想を砕く非情な存在である。
何処を見渡せど氷川が期待するものは何処にも見当たらない。探せど探れど見つからない状況が続く。
「少し休もう。」
流石に疲れには逆らえない。氷川は近くにあった店の中で暫しの休息についた。
「さて、どうするべきか。」
休息の間さえ頭を休めずに次の行動を考える。彼が心の底から休まる時は無いのだ。
そんな中、偶然ある異変を見つける。
「・・・・・・あの場だけ妙に荒れが酷いな。何かあったのか?」
アスファルトの地面が砕け散り、コンクリートの欠片が散りばめられた、明らかに
他とはおかしい場所であった。氷川はその異変に警戒したのかマントラを唱えだした。
「お呼びで?」
姿を現したのは氷川と最初に契約を交わしたあのオセの姿である。
「オセ、何か感じないかね?」
「・・・・・・そう言われると血生臭い何かを感じ取れます。」
「やはり私の読みに狂いは無かったか。この近くに何かがある。」
不変を保ち続けた今までの情況が遂に変化を表した。しかしそれは氷川にとって望ましい自体ではなかった。
「下手をすれば戦闘になると思います。氷川様、念の為に自衛の武器をお持ちになって下さい。」
「解っている。なるべく御前の手を煩わせんように努力はするつもりだ。」
「オセ、その鉄骨を四角に切り落とせ。数は三つあれば十分だ。」
「鉄骨を・・・ですか? わかりました。氷川様のお望みなら容易い願いです。」
そう言うとオセは双剣で四角に切り刻んだ鉄骨を渡すと
氷川はザックの中からガムテープを取り出して消防署で取って来た鉄パイプとにそれを撒きつけた。
「簡易型ハンマー・・・・・・まさかこんな原始的な武器を私が持つ事になろうとはな。」
「まあ、無いよりは幾分マシというものか。」
「氷川様、武器だけではいけません。防具も身につけて下さいませ。」
今度は同じ鉄骨を双剣で四角形に切り刻んでそれをまた半分に切り落とした。
それを背と腹の二つにガムテープで服の下に巻きつけた。鉄骨はたちまち防具の代わりとなった。
「・・・・・・当初に比べれば随分とマシになったものだ。やはり悪魔の力は欠かせんな。」
改めて悪魔を自分が従えていることの利便さを感じざるを得なかった。
人の力では成し得ぬ事も、悪魔であれば可能となるのだから。
これこそが劣悪な状況下においての氷川が持つ二つ目の頼れる武器となったのだ。
「では参りましょうか氷川様。」
【氷川(真・女神転生V-nocturne)】
状態:やや疲労
装備:簡易型ハンマー 鉄骨の防具
道具:鉄骨のストック;二つ
現在地:夢崎区の普通の店
行動方針:異変の確認
草木も眠る丑三つ時。ただ月と星の明かりだけが、蝸牛山の山奥にある寺豪傑寺を淡く照らしていた。
静まり返った寺の外、段になったところに腰を下ろし、青い大きめのノートパソコンのような機械を使って何かの作業を行う少年がいる。
中島朱実
中性的な美しい顔立ちで、真っ黒な学生服を着た少年。
彼こそが地上に悪魔が現れる原因となった悪魔召喚プログラムの作成者である。
そして、彼に与えられた武器にもそれはインストールされていた。
この地に転送され、持ち物を確認した彼は自分の強運に驚いた。もっとも、その驚きと喜びはすぐに落胆に変わったのだが。
使い慣れたCOMPにはかつて共に戦った強力な仲魔達が登録されていて中島の命令を待っている、そう思っていた。
しかしその中のデータは全て消去されており、使用者としての登録からすべてやり直す必要があった。
三十分間ほどかけてその作業を終えた彼は、ルールブックと参加者のリストに目を通す。
名前を知っているのは二人。かつて鎖からの解放を求めてきた男リックと、そして…
「弓子…」
彼はいとおしむようにリストにある白鷺弓子の文字を指でなぞる。
彼女と合流しなければ。
絶対に、何があっても、彼女だけは守る。
ゲームのルールを確かめていると、山道から足音が聞こえた。
急いで隠れようとしたが、そうする前に人影が姿を現した。
「…ん、よかった…やっと人に会えたか」
それは、奇妙な姿をした男だった。
頭には髷を結い、一枚の布を体に巻き付けて締め縄のような物を腰に結わえた質素な服装。
「私はフトミミという。もしよければ、脱出の為に力を貸してくれないか?」
「…………」
何を言っているのだ、この男は?お人好しなのか無知なのか…
「この姿が変に見えるかい?…だろうな、私も参加者達を見て驚いた。あんなにも多くの人間を見たのは初めてだ…」
よく分からないことを呟きながら、フトミミという男は敵意はないと言うように両手を広げる。
「君を傷つけるつもりはないし、一応武器はあるので足手纏いにはならないつもりだ。…同行させてもらえないだろうか?」
「…いいでしょう。」
朱実はCOMPを閉じ、立ち上がった。
「僕は中島朱実。」
フトミミは承諾の言葉を聞いてホッとした表情を見せた。
「早速ですが、僕には悪魔を使役することができます。この辺りで悪魔の出る場所はありますか?」
フトミミという男は、悪魔の使役と聞いて驚いたようだ。当然だろう。
「悪魔を…それでは君は彼と同じ…いや、しかし…」
あの主催者の口振りから悪魔の使役が自分だけの特権ではないことは分かる。
この男もそれができる人間を知っているのだろうか?
「どうなんですか?悪魔のいそうな場所に心当たりは?」
要領をえない男に少々苛々し、語気を強める。
「あ…ああ、すまない。悪魔ならここの山道一帯にいるはずだ。この封魔の鈴、悪魔を退ける音色を放つ鈴があったから、私は遭遇せずに済んだ。」
ずっとこの寺にいたというのに、悪魔の気配は感じられなかった。
「寺」ということから、何らかの力が作用していたのだろうか。
「分かりました。山道の案内をお願いします。ああ、その鈴はしまっておいてくださいね」
月明かりもほとんど届かない暗い森の中。下山ルートを二人は歩いている。
「…一つだけ、おたずねしたいことがあります。」
中島がそう話し掛けると、先行していたフトミミは振り返った。
「一つと言わず、何でも聞いてほしい。ここでは未来を見ることはできないが…知っていることなら何でも話そう。」
「白鷺弓子という女性に会いませんでしたか?長い黒髪で、学生服を着ています」
それを聞いてフトミミは小さく頭を振る。
「残念ながら、見てないな。ここに来て始めてあった人間が君だ。役に立てなくてすまない。」
「そうですか…」
―それなら、もう用済みだ。
フトミミが再び進行を開始しようと前方を見る。
中島は大きめの石を拾い、背後から先行する男の頭部に振り下ろした。
鈍い音が響く。
倒れこむフトミミの頭部に石を振り下ろす。何度も、何度も、何度も。
中島がようやく手を止めたとき、ひしゃげた頭部はもはや原型を留めていなかった。
その死体から腰縄に刺してある細身の剣と、先程の鈴を取り出す。
(よかった…)
共に行動して弓子に出会っていたら、こいつはこの剣で弓子を突き殺していたかもしれない。
口でなんと言っていても、その真意は分からない。
だから、誰も信じるわけにはいかない。
もし一度でも失敗して、弓子分が殺されたら…
(彼女が死んだら…僕は生きていけない)
―そんな失敗は許されないのだ。
「弓子…待っていてくれ。すぐに迎えに行くから…だから、どうか無事で…」
中島が祈るように呟く。
世界も、このゲームもどうでもいい。
ただ今はこの現世とは隔絶したスマルという空間の中で、弓子といつまでも一緒にいたい。
他の参加者連中は、中島や弓子を殺そうとするだろう。
それがこのゲームの趣旨であって、こちらには殺意を持つ者と持たない者を見定めている余裕などない。
だから、殺そう。
目の前に現れる人間を一人一人殺せば、それは弓子を守ることに繋がるはず。
死体を森のなかに蹴り入れ中島朱実は山道をしっかりとした足取りで下っていく。
悪魔が出るというこの山を探索して仲魔を揃え、戦力を整える。
それから弓子を捜し出して、刻印を解除しよう。
弓子の内に宿るイザナミの力、もしくは強力な悪魔の力を借りればそれも可能なはずだ。
そして二人きりで生きていこう。他には何もいらない。
純粋すぎる愛情はときに狂気へと変わる。
光の届かない森の中、また一人闇に落ちた。
夜明けはまだ遠い。
時刻午前4時前後
【中島朱実(旧女神転生)】状態 正常
仲魔 なし
所持品 レイピア 退魔の鈴 COMP MAG5000
行動方針 白鷺弓子との合流 弓子以外の殺害
現在地 蝸牛山
【フトミミ(真女神転生3)】
状態 死亡(中島朱実により撲殺)
死亡位置 蝸牛山
「パスカル、大丈夫かい?」
ザ・ヒーローはたずねた。
現在ザ・ヒーローと大道寺伽耶はパスカル・・・すなわちケルベロスに乗っている。
人間が二人乗ったところでパスカルの走る速さは普通に歩くよりは段違いに速い。
「アア、シカシMAGハ大丈夫カ?」
「・・・まだ持つさ」
先ほどのロウヒーローとの交戦は複数の仲魔を呼び出したり戻したりする戦法を取っていた。
ロウヒーローとの彼我戦力差を考えれば仕方の無いことだが、それゆえMAGは心もとない状態になっていた。
「ロウヒーローの奴が銃を乱射しまくった上大声で叫びまくってたからなぁ・・・」
一刻も早くあの場を離れねばならない。
別のゲーム参加者が漁夫の利を狙ってくる可能性がある。
パスカルがいる時点で敗北の目は大分薄まりはしていたが危険は避けるべきだった。
いま向かっている先は蓮華台。
当初は港南区へ戻るつもりだったが戦闘があったのはほぼ港南区と青葉区の境の位置。
あそこからより遠ざかるためには蓮華台へ行く必要があった。
「・・・スピードヲ上ゲヨウ」
「うん、伽耶しっかりつかまって」
「・・・・・・」
「伽耶?」
「あ、はい」
パスカルが速度を上げる。
本来なら車が走っていたであろう道路をそれ以上の速度で魔獣が駆ける。
今だとらえられるものはいない。
「ありがとう、パスカル・・・いったん戻ってくれ」
蓮華台の住宅街に到着し、手ごろな民家に身を隠す。
スマル市はかなり発展しているようで隠れる場所には事欠かない。
「・・・ヒーロー、俺ハ強イ奴ガ好キダ・・・死ンデクレルナヨ・・・」
そういうとパスカルは姿を消した。
「伽耶・・・少し休むといい、あっちに寝室があった」
「え?・・・しかし」
「大丈夫、これだけ住宅が密集してるんだ・・・全部探して回るような奴はいないだろう」
「・・・では・・・少しだけ仮眠を取らせていただきますね」
伽耶は奥の部屋に姿を消した。
「さて・・・やることは山積みだ・・・仲魔の合体、MAGの調達に脱出方法の模索・・・さしあたっては・・・」
ザ・ヒーローはザックを開く。
中から取り出したのは・・・パソコン。
先ほど出版社から失敬してきたものだ。
「出版社の編集者が携帯していたPC・・・なぜこの町が浮いているのか?なぜ人っ子一人いなくなったか?」
「このPCを調べればそこがわかるかも知れない・・・そこがわかれば・・・策ができるかもしれない・・・脱出のための」
ザ・ヒーローはPCを起動する。
パスワードは・・・無い。
OSが立ち上がる。
「こんな普通のPCを使うのは久しぶりだな・・・」
大破壊以後まともなPCなんてそうめったにお目にかかれたものではなかった。
「・・・あった、これか」
ファイル名・・・取材記録。
これを使っていた記者が何の編集者だったかまではよくわからない。
しかしどんな出版社だろうが町が浮いたなんて異常事態になれば特集を組むなりするはずだ。
「・・・マンガ雑誌の出版社じゃないことを祈るよ」
ヒーローはファイルのダブルクリックする。
PCの画面いっぱいに文字の列が広がった。
夢先区人気のお店
今時の高校生の夢
セブンス、イケテル高校生
「多分若者向けの情報誌か何かってところか・・・これじゃあな・・・?」
ザ・ヒーローはひとつのファイルを見つける。
そのファイルはわずかにヒーローの興味を引いた。
スマル市怪奇現象。
タイトルだけ見れば何のことは無い、よくある怪談特集だろう。
いわばだめもと・・・ヒーローは文章を読み始める。
「セブンス呪いの紋章・・・セブンスの時計台が動くと悪いことがおこる・・・願い事をかなえるジョーカー様・・・」
表示されていくのはどの町にもあるような都市伝説の類だ。
普通なら鼻で笑われて終わりといった内容だ。
「・・・噂が現実になる?」
噂の力で武器が売られだした、噂の力で店が迷宮になった、噂の力で飾り物の飛行船が本物になった。
いろいろな事例が書き上げられている。
そしてその最後。
「・・・噂の力で町が浮く・・・か」
データによれば・・・テロが多発し住民に不安が広がった、そんな時世界は滅亡する前触れだという話しが広がった。
しかしある新興宗教のような組織がこの町だけは助かるという噂が広める。
最初細部まで設定されなかった噂だが人々に伝わるうちに世界は地球の自転がとまって滅亡する。
この町は空に浮きさらにバリアを張られるので無傷。
といった噂に発展。
結果その通りになった・・・。とされている。
「以前ならまさかってところだけど・・・悪魔の存在を知ってるいまとなっちゃね」
悪魔が現れた、大破壊そして精神世界、洪水・・・自分も通常信じられないようなことは体験してきた。
それゆえ嘘だとは言い切れない。
そう思いつつヒーローは記録を読み進めた。
最後に記録者名が記されている。
「天野舞耶・・・か・・・天野舞耶?」
聞き覚えがあった、ザックから参加者名簿を取り出す。
「天野・・・天野・・・あった」
間違いない、参加者だ。
「この人に聞けば何かわかるかもしれないな・・・しかし・・・」
条件は二つ。
この人物がゲームに乗っていないこと。
そしてそれ以上に・・・。
「既に殺されていないといいが・・・」
ゲームに乗っているだけなら交渉次第でどうにか成るかもしれない。
しかし、死んでいてはどうにもならない。
しかし・・・ルールブックには夜明けと同時に死亡者発表とされていた。
暫定ではあるが今後の目標は決まった。
「後は・・・っと」
ザ・ヒーローはPCの電源を落とすとGUMPを展開する。
「もう少し・・・戦力が欲しい」
合体のコマンドを選ぶ。
仲魔のリストが表示される
地霊ブラウニー
地霊ノッカー
地霊コボルト
妖精ピクシー
妖鬼アズミ
魔獣サンキ
魔獣カーシー
妖鳥ハーピー
魔獣ケルベロス
カジャ系を豊富に持つ地霊とディア・メディアを持つピクシーとアズミ、空を飛べるハーピーは残しておきたいから・・・。
「魔獣サンキと魔獣カーシーか・・・」
この2体を選択し合体の決定を選ぶ。
GUMP内でプログラムが交差し新たな仲魔を生み出す作業に入った。
<合体事故により通常とは違う悪魔が生まれました>
「ここまでは・・・予定通り、さて・・・」
<霊鳥ホウホウが誕生しました>
「・・・よしっ」
ザ・ヒーローは小さくガッツポーズをとる。
空を飛べてディアラマ メディア リカームという回復魔法を豊富に持つ悪魔だ。
優秀な補助役といえるだろう。
「これ以上の合体は危険だな・・・低LVとはいえ有用な魔法を持つ奴が多いからな・・・あとは」
地図を開く。
MAGが必要だった。
もし万が一全力で正面から戦闘しなければならないとき。
ケルベロスとホウオウを前面に出しハーピーで伽耶を離脱させ、残りの一体で補助をかけることになる。
現状のMAGでは不安だ。
この近くで悪魔の現れる場所。
「七姉妹学園か・・・」
しかし、廃工場のように場所によって悪魔のLvが変わる構成とは限らない。
「やはり港南区の廃工場に戻るべきだな」
行動の指針は決まった。
さしあたって動くのは死亡者の放送を聞いてからだ。
それまでつかの間であるが休むとしよう・・・。
ザ・ヒーローはCOMPを閉じると壁にもたれかかった。
日の出まで後40分弱。
仮眠を取ろう・・・。
ザ・ヒーローは意識を闇に沈めた。
荒廃した世界で培われたちょっとした衝撃でもすぐに晴れる薄い薄い闇の中へ。
目が覚めた。
術は成功したのか?
成功したとすればスクナヒコナはどこだ?アラハバキは?
体を見る。
制服を着た女の体だ。
転移自体は成功したらしい。
頭がズキズキ痛む。
ここはどこだ?調度品が大正ではない・・・。
立ち上がる、ベッドだ。
・・・くそっふらふらする。
人の気配。
この扉の奥だ。
誰かいる。
扉を開ける。
男が一人。
壁にもたれかかって仮眠を取っている。
だれだ?
少なくとも大道寺伽耶の肉親ではない。
おかしい。
自分の予定とは何もかもが違いすぎる。
それにしてもこの男どこかで見たことがある気がする。
大道寺伽耶の記憶ではない。
この俺自身の記憶だ。
そうしていると、男の目がゆっくりと開いた。
「伽耶、もう起きたのか?」
男が語りかける。
この男は大道寺伽耶を知っているようだ。
大道寺伽耶の記憶を探る。
・・・・・・・・・・・・・・馬鹿な!馬鹿な!そんな馬鹿な!?
殺し合い?刻印?転送?パラレルワールド?
一体どういうことなんだ?
いやそれよりも,目の前にいるこの男。
この男は・・・。
「ザ・ヒーロー・・・」
寝室から出てきた伽耶が口を開いた。
「伽耶?」
様子がおかしい。
歩き方も以前とは違う。
以前はいかにも素人一般人の歩き方だった。
足音を消したりする方法も知らない歩き方。
今は違う。
隙が無い。
まるで格闘技、それも実践用を学んだ者の歩き方だ。
「ザ・ヒーロー・・・大破壊後のカテドラルにてアスラ王を倒した戦士・・・それ以後の消息は不明・・・」
「!?」
伽耶の口から出たのはザ・ヒーローの経歴だった。
混乱を避けるために伽耶には教えていないはずだった。
伽耶が知るはずが無い。
「・・・君は・・・伽耶じゃないのか!?」
ザ・ヒーローは瞬時に距離をとった。
「お前が・・・お前がセラフどもに味方をしなければ・・・」
伽耶の口から発せられる言葉。
それは今までのような人を気遣い、どこか控えめな声ではなかった。
憎悪、憤怒、悲哀。
様々なマイナスの感情が入り乱れた声だった。
「今ので決定的だ・・・お前は誰だ!?伽耶の口からセラフなんて出るわけも無い!取り憑いたか?偽者か?」
ザ・ヒーローは飛びのき鉄パイプを握りGUMPを構える。
GUMPは1動作でパスカルを呼べる状態だ。
「私の名は四十代目葛葉ライドウ!センターに仇名す者だ!」
「・・・四十代目・・・葛葉ライドウ?」
葛葉・・・その名は噂で聞いたことがある。
大破壊以後自分以外に悪魔を操り戦う集団がいるという噂。
悪魔使いだけなら自分以外にも数人知っていたがそのものはCOMPを使わないという。
それはいい。
聞きなれない単語がひとつある。
「センター・・・だって?なんだ、それは?」
「!?・・・知らないだと?・・・貴様が?センターの発端を築くためセラフの手先となった貴様が!」
「セラフの・・・手先!?まて!僕は確かにアスラ王を倒したがセラフも倒したはずだ!」
「なんだと?」
「僕はセラフとアスラ王を倒し太上老君に出会った・・・世界の復興は人々の手によって成し遂げられるはずだ!」
「・・・馬鹿な!?私が知っている未来は、センターの一部の民のために人々が従属を強いられる狂った世界だ!」
二人の口から離される違った未来。
ザ・ヒーローの頭には何パターンかの理由が思い浮かんでいた。
「・・・なるほど、四十代目葛葉ライドウ・・・だっけ?君はこの世界がどういう場所か分かってるのかい?」
ザ・ヒーローは鉄パイプを下ろしGUMPを閉じた。
交渉に入ったのだ。
正体不明の「何か」との交渉・・・ザ・ヒーローにとってはいつものことだった。
「この世界は・・・おそらくパラレルワールドだ、時間時空を超えて人々が集められ主催者によって殺し合いを強いられている」
「その様子じゃ分かってたようだね・・・」
「ああ、この体・・・大道寺伽耶の知識を得ることはできる」
「じゃあ話が早い・・・因みに僕は・・・聞いての通りセラフとアスラ王を倒し、さぁこれからというところで記憶が消えている」
「・・・つまり」
「君のいた世界は僕がセラフに加担した世界か・・・あるいはセラフ勢力が僕をプロパガンダとして利用した世界」
「さらにもうひとつの可能性・・・僕がこの世界によって連れ去られた、それによって歴史が変わった世界」
「!?」
「僕は・・・基本的に人々を支配するつもりなんか無かった、神にも悪魔にも頼らず人間が切り開く世界」
「そのため僕はセラフともアスラ王とも相容れず両者を倒した」
「その僕が消えた・・・つまりは・・・自分で言うのもなんだけど勝者が消えたわけだ」
「セラフもアスラ王達の勢力も消滅したわけじゃない・・・当然僕を利用するだろう」
「そして君の世界ではセラフ側が優勢になったんだ・・・」
ザ・ヒーローの交渉は続く。
「僕の予想では君は・・・どうやったかは分からないが過去を修正するために大道寺伽耶に乗り移った・・・違うかい?」
「・・・その通りだ」
「つまり君の目的はセンターってのを消してしまいたいわけだ」
「・・・ああ」
「このゲームは・・・まともにやったら・・・生き残るのは一人のみだ」
「・・・」
「しかし・・・どうにかして脱出ができたら?僕も君も元いた世界に帰れたら?」
「!?」
「僕はセンターなんて作らないし、君が協力してくれるなら・・・未来の知識を得ることになる」
「・・・俺は貴様が作った世界に生きるわけか?」
「そうじゃない、見たところ僕が消えたときには既に君は生まれているはずだ・・・未来でも君と僕が協力し合えばいい」
「・・・」
「それに僕が世界を作るわけでもない・・・作るのは人々だ、僕の仕事はそれを利用しようとする天使や悪魔を退けることだ」
「・・・・・・協力しろというのか?」
「・・・・・・有体に言えば、そうだ・・・ここでも、未来でも」
「・・・目処はあるのか?」
「え?」
「脱出の目処だ!・・・協力してやるといっている!」
「・・・あるさ、待ってな・・・そろそろ夜明けだ」
そうヒーローが言ったしばらく後、どこからか放送が流れ始めた。
<やぁ諸君・・・がんばっているようだね・・・では死亡者を読み上げるよ・・・まず・・・>
淡々と死亡者を読み上げる声・・・その中にヒーローが見出した希望、天野舞耶の名は・・・無かった。
「よし・・・えーと・・・伽耶でいいかな?」
「・・・かまわん」
「わかっ他・・・伽耶、まず質問だ・・・どうやって時空を超えた?」
「・・・我が葛葉一族に伝わる秘儀と・・・センターの科学技術を合わせた方法だ」
「・・・それはここでもできるかい?」
「・・・厳しいな・・・私は術が得意だったわけではないためセンターの魔法関係の技術を流用したんだ・・・この町ではな・・・」
「なるほど・・・ではその機械があればいいわけだな?」
「まぁそういうことになるわけだが・・・この時代ではあるはずも無いものだ」
「そこでこれを見てくれ」
ザ・ヒーローはパソコンを起動し先ほどの画面を見せる。
「噂が現実になる・・・?」
「ああ、知ってのとおり・・・ここの町は浮いてる、このパソコンはある記者の持ち物だが・・・かなり真相を究明しかけていたらしい」
「・・・その真相というのが噂が現実になることだと?」
「ああ、そして最後の署名・・・天野舞耶・・・参加者の一人だ」
「なるほど・・・そいつを探し出し・・・この情報の真偽および正確な方法を確認しようということか」
「ああ、理解が早くて助かる」
「そうとなれば善は急げだ・・・行くぞ、その女もいつ死ぬか分からん」
伽耶は出口を向いた。
「あー待て、これまでの戦闘でMAGが減っていてな・・・先に回収に行きたいんだがな」
「・・・これを使え」
伽耶が手をかざすと手のひらから何かが現れる・・・それはザ・ヒーローのGUMPに飛んでいく。
「・・・MAGが・・・増えている?」
「時空転移に使ったMAGの余りだ、それだけあればしばらくは持つだろう・・・仲間になったしるしとでも思っておけ」
「・・・伽耶」
「ふん・・・・・・私も行きたいところがある、先にそこへ行くぞ」
「そうだ、じゃあ君もこれを持っておくといい」
そういってザ・ヒーローは伽耶に鉄パイプを渡した。
「・・・お前の分がなくなるのではないか?」
「いや、さっきこの家の水道管を引っこ抜いて調達した奴だよ・・・俺のもほら」
そうやって見せたザ・ヒーローの鉄パイプもきれいなものになっていた。
「お前は嫌に鉄パイプにこだわるな・・・理由でもあるのか?」
「・・・一番手ごろで強いってだけだよ」
ザ・ヒーローと大道寺伽耶、鉄パイプを携えた二人は再び歩き出した・・・。
天秤は揺れず・・・鬼を味方に付けた・・・。
【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:正常
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み)
道具:マグネタイト10500(四十代目葛葉ライドウに10000貰う) ノートパソコン 予備バッテリー×3
仲魔:魔獣ケルベロス、霊鳥ホウホウを始め8匹
現在地:蓮花台民家
行動方針:天野舞耶を見つける 伽耶の術を利用し脱出
【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:四十代目葛葉ライドウの人格となる(葛葉流剣術とある程度の術が使用可能に)
武器:スタンガン 包丁 鉄パイプ
道具:無し
仲魔:無し
現在地:同上
行動方針:天野舞耶を見つける ザ・ヒーローと共に脱出し、センターの支配する未来を変える
「敵」は隙だらけだ。
普通に響く足音。
「彼」はこれでそう思った。警戒しているのであったなら足音など立てず行動するに決まっている。
おどり出る瞬間に「彼」は確信した。「敵」は死体に注意を向けている。
このようなルールが存在する以上、寝っ転がった人間に注意を向けるなど問題外だ。
「彼」は思った。
−俺ですら罠だと思う存在に、注意を向ける……この「敵」は戦闘に慣れてはいない!−
「彼」が下したこの判断は間違いではなかった。
「敵」は「純粋な人間」との戦闘はかつて一度も経験した事が無かったからである。
しいて言えば先程あった先生との最後の抱擁が初の対人戦闘であった。
勿論、「敵」であるこの「人修羅」はそこまでの思考は無かった。
「人修羅」の立場からすれば、この「彼」こそが初めての対人戦闘と言えた。
何せ「彼」は明確な殺意を持っていた。
そう思う理由は簡潔である。
殺意を持たなかったら鈍器を振りかざす事などしないからだ。
対悪魔戦闘の時ですら戦意を喪失した相手や、交渉を持ちかける相手に対しては武器を収めたのだ。
「彼」は満身の力を込め斧に似た鈍器を振りかざす。
不思議な事に状況把握が出来た段階で「彼」の精神には若干の余裕が発生した。
まず武器は携帯していないようだ。その証拠に「敵」は素手。
そして鎧の類は装備していない。「彼」が持つ同じザックを背にしただけ。
あまつさえ「敵」は上半身が「裸」なのだ。
「彼」には想像できない姿であった。普通に考えたらまず真っ先に狙われる存在であろう姿。
鴨葱と言う奴だな!
高揚する精神、躁状態にも似た戦闘時の快感が彼を酔わせた。
ここで「彼」は気付くべきだったのかも知れない。
「敵」の体全体を彩る青い刺青と、後頭部にある通常の人間には在り得ないはずの突起物。
その二つの存在に。
「僕」に向かってきた男が叫びながら何かを振りかざして来た。歓喜の表情が見て取れる。
それはそうだよな、「僕」は丸腰なんだから……
そう、「僕」には武器が無かった。
当然だ。
あのボルテクス界を「僕」は素手で生き抜いたのだ。
可哀相に……と再び思う。そして湧き上がる純粋な興味……
この「敵」(そう、「男」ではない「敵」なのだ)と戦った結果、この「敵」はどう思うだろう?と。
決めた。
「この世界」での戦闘推移を知る為にも「僕」はあえて一撃貰う事を決めたのだ。
「彼」は確信した。
回避はこのタイミングからでは不可能。
両腕での防御間に合わず。間に合っても骨折は免れない。
攻撃部分は肩口からの袈裟斬り。
防具らしい防具は無し、防御能力は零に近い。
つまりは「敵」を殺せる。
だが相手が悪すぎた。この「敵」は今まで「彼」が相手にしてきた悪魔とは趣が異なっていた。
確かに肩口には武器がヒットした。腕に伝わる衝撃でそれはわかる。
が……それだけであった。
改めて「敵」の顔を見る。
涼しい顔をしていた。「彼」はこの「敵」が何故か「あいつ」に似たような面立ちの様に感じられた。
「敵」との目が合った。「敵」の目が赤く光る……そして同時に湧き上がる悪魔の様な殺気……
そして何故か感じ取れる強大な悪魔の気配、それも複数……まるで「あいつ」のような……
「敵」の全身に施されたような刺青が青く光った。
−違う!こいつは「人間」ではない!−
「彼」は思わず後方に移動し間合いを取った。勿論、退路は自分の背中、その背後に確保している。
「敵」は動かなかった。
そして一言呟いた。
「直接物理攻撃はこんなものなんだね」
悪魔の様な殺気を抱きつつも喋った言語は日本語であった。それも極めて冷静。
なまじ日本語であったが為だろうか「彼」の脳裏で何かがハジけた。思わず次の攻撃体勢を取る。
「彼」は小声で何かを呟きつつ右手を「敵」正面にかざした。
その刹那、右手から野球で使用するボール位の火炎が発生する。
「彼」が得意とする火炎系魔法で最もコストの低い魔法、アギだった。
「敵」は動こうとしない。「彼」は思った。動く気が無いのか!?
その通りであった。
「敵」は動く必要が無かったのだ。
「彼」が放った火炎は「敵」の目前で吸収されるようにかき消されてしまったのだ。
なんて奴!化物か!
「彼」が再び恐怖を覚える。物理攻撃に手ごたえが感じられず、得意とする火炎魔法も無効化されたようだ。
半ば自棄になった「彼」は反射的に銃を構えた。無意識の内に引き金を引く。発砲。
「彼」は瞬間的に願った。
−石化されちまえ!−
だがその願いすらも叶う事はなかった。期待した石化の兆候は「敵」に見受けられない。
が……
左肩に着弾の瞬間「敵」が僅かに膝を屈伸させ、ダメージを軽減させるような行動を起こした事は見逃さなかった。
微少ではあるがダメージを与える事は出来たようだ。
だが残念ながら石化の兆候は見ることは出来ない。
思わずもう一発発砲する。
これは回避された。
「彼」には「敵」が真横に回避するような動きに見えた。
畜生……
この生存戦争が始まった当初に狙撃を行った男の様な重症は負わせる事は出来ない。
残りの弾丸数が気になった。
脳裏に掠めるのは……
−殺される−
その一文。
その時「敵」の目の色が赤から金に変わった。
「君さ……回避してくれるかな?」
「敵」が「彼」に話しかけて来たのだ。
「僕」はまず「敵」と思われる相手の一撃をあえて貰ってみた。
次に「敵」は「僕」に向け魔法を放ってくれた。
有難い。
「僕」が試してみたい事を「敵」が試してくれたのだ。それも率先して……本当に有難い。
結果は双方共に無効に成功。
うん、どうやら禍玉の能力は「この世界」でも通用するようだ、と「僕」は思った。まずは一安心と言った所だろうか。
三番目に出てきた武器は銃……これはボルテクス界には無かった武器だ。
「僕」はふむ?と内心で首を傾げる。銃弾に対しては禍玉はどの様に反応するのだろう?
一瞬のうちに「敵」は発砲した。
っ!!
左肩に衝撃!!
これって……何だっけ?
「僕」はふと疑問に思った。
久しぶりに感じる感覚、それは痛覚だった。
銃と言う近代兵器(と言っても四百年以上の歴史はある事を思い出した)の攻撃には流石の禍玉も効力を発揮しないらしい。
「僕」は思わず初めて悪魔と遭遇した気持ちを思い出した。
ここでもう一発発砲、今度は確実に回避した。
油断してはいけない。
しかしちょっとした興味が「僕」に湧いたのも事実だった。
「敵」は言ってみれば金縛り状態の様な状況に陥っていた。
逆の立場なら「僕」もそうだったかもしれない。
うん、これはたまたま悪魔対人間の戦いであったから起こってしまった結果なのだから。
「僕」は力を抜いてみる。
そして「敵」に交渉を持ちかけた……話してみただけなんだけども……本音はただ単に日本語を喋ってみたいだけでもある。
「君さ……回避してくれるかな?」
何匹?
何人?
単位がどちらでも悪魔には変わりはない。
無数の悪魔を屠った「僕」の右ストレート、それを「敵」に見舞うつもりだ。
四回も攻撃を受けたのだ。たった一発、これ位は構わないだろう。
当てるつもりは毛頭無い。
「この世界」での攻撃相性を確認したかった。今後を踏まえて……「僕」の能力が何処まで通用するか?
言ってみればその試験だ。
「僕」はまだ「この世界」での戦闘経験が皆無だったから色々調べておきたかったのだ。
「この世界」での防御相性は大体理解した。
それに魔法を使う人間も居る事が判明した。これは情報として大きな収穫だ。
仲魔を召喚する場合は「この世界」でも相性を考えて召喚して上手く弱点を補う必要があると言う事だ。
正直、魔貨バラ巻きは勘弁。もうウンザリだ。
魔貨は純金製だったからバラ巻いた時の音だけは気持ちよかった。うん、「僕」もそれだけは認める。
ああ「この世界」は「円」でいいのかな……酷く懐かしい響きだ。最後に使ったのは確か缶ジュースを買う為……
そうすると「この世界」で混乱した場合は紙幣をばら撒くのだろうか……紙吹雪の出来損ないの様だな、それはそれで気が滅入る。
最も最近の仲魔は「精神無効」のスキルを所持させるように努めた為そのような状況に陥る事は無かったが……
「いくよ?」
「僕」は普通に言ったつもりだった。
「いくよ?」
酷く冷たい声に「彼」には感じられた。敵意無き殺意とでも表現すべきか。絶対零度の殺意。
「彼」は「いくよ?」と宣言されても回避できる状態ではなかった。
力の差か?
右の頬に突風が吹き荒れる感覚を感じた。
拳での直接攻撃。
「彼」からすれば、あからさま、そして屈辱的な攻撃方法だった……
それ故に「敵」との実力差を文字通り体感できる攻撃方法でもあった。
−ダメだ……「あいつ」や「奴」と一緒でもこの「敵」には敵わない……?−
素直かつ客観的な意見だった。
絶望感。
そう今まではこんな言葉は浮かばなかった。金剛神界で一人彷徨った時も……
どうする!
どうする!!
どうする!!!
混乱が混乱を呼び「彼」の思考は錯乱状態に陥った。
今度は歯の根が止まらない。
もしかしたら……
今まで殺してきた「悪魔」も殺される直前の心境がこうだったのだろうか……?
「敵」は余裕の直立不動。戦闘体勢をとらず、武器も未だに持つ意思は無いようだ。
「彼」は自分が完全に舐められていると思った。
上昇する屈辱感。
同時に下降する戦意。
むくむくと鎌首を持ち上げる恐怖。
無意識のうちに後退。「彼」は思わずしりもちをついた。
(もっとも「彼」の目前に直立不動で立っている「敵」はその姿こそが戦闘状態のポーズであったのだが)
五分ほどそのまま双方の姿が止まる。
本来であればこの五分の間にいずれかの動きがあるはずであった。
1:窮鼠猫噛むの諺の如く「彼」が「敵」に決死の攻撃を敢行。
2:「敵」が「彼」に対し一方的な殺戮。
「彼」と「敵」との目が合った。「敵」の全身像が嫌でも目に入る。
まず、目に付くのは武器も防具を全く身につけていない特異な姿。
そればかりか上半身が本当の裸体、着衣は膝まで伸びたズボンと靴下、それと靴だけだ。
そう「彼」はまずこの点で当初有利だと判断した。
次に、全体を「敵」の体全体を彩る青い刺青。
先程それを縁取るように青く光った記憶がある。
ここまでであれば……
そう、ここまでであれば「彼」のかつていた「大破壊前」あるいは「大破壊後」の「世界」にも存在していたかもしれない。
奇抜かつ、特殊な趣味を持つ人間である。と周囲の人間は判断するのかもしれない。
その次だ。
一番「彼」と同じ人間と全く異なる部分……後頭部にある通常の人間には在り得ないはずの突起物。
金属質の様な鈍い光り方をしている。
その金属質な突起が後頭部から文字通り「生えている」のだ。
顔は無表情……いや「敵」の目が明らかに「彼」を見下すのが見て取れた。
先程も感じたが、何故か「あいつ」と同じような印象を受ける。何故だろう?
そして先程の敵意無き殺気。
「敵」が一歩足を進めた。
段々と周囲が明るくなっていく「はず」の時間帯なのに「敵」の周囲が底無しの闇の世界になったような感覚。
例えるならば……街頭の無い夜道で一人取り残されるような孤独感。
もう一歩「敵」が歩を進めた。さらに闇が「彼」に押し寄せる。
そしてもう一つ感じた……先程も感じてはいた……が今度は確信した。
「敵」の背後に存在する多数の存在……
「彼」に対する明確な殺意。
怯えた獲物を嬲る恍惚感。
そして何かを行うとする統一された意思。
「敵」は一人であった。少なくとも今は。
しかし単体ですら「彼」には現状敵わない。
少なくとも「彼」だけでは戦力が遥かに足りない。
その圧倒的な「力」を持った「敵」が口を開いた。
「彼」を冷静に見ていた「敵」が横目で時計を見た後、こう告げた。
やはり先程同様それは日本語であった。
「一旦、止めない?」
あれから十分弱が経過しただろうか……
「僕」の結論はこうだ。
「僕」は強すぎる。
少なくとも真正面にいる人間に比べたら。
ルールから考えるのなら今ここでこの「敵」を殺すのが正論だった。
仲魔を召喚する必要も無い。
「僕」のこの拳、いつもの右ストレートで十分だ。
威力もボルテクス界とさほど威力は変わらないように思える。
この拳一発、一撃で決着がつく。
だが……と思い返す。
既に「僕」が一人殺している。ルールは適用されているなら二四時間は全員が一気に死ぬような事はないはずだ。
ならば……こうしてみるのも一興か……
「僕」は「この世界」での初交渉を試みた……もっともこの状況から半分これは強制に近いけど……
まぁ断ったらその時はルールに従がうまでの事。その場で右ストレートを叩き込むだけだ。
戦術的な要領はあらかた得る事は出来た。
「僕」は次に情報が欲しかった。
何せ「僕」は「人間」ではないのだから……
「僕」はいつもの戦闘ポーズ。念の為にいつでも逆襲可能な態勢で身構える。
「敵」は後退したもののしりもちをついてしまった。
五分程、時間が進む。
「僕」は一歩近づく、そして動きを止める。「敵」は怯える小動物の様にすくみあがった。
そしてもう一歩、「敵」の動きに変わりは無い。
ボルテクス界でよく発生した、逆切れに近い狂おしいまでの猛攻撃も行ってはこなかった。
「僕」はふと、悪魔になった直後に発生した戦闘の事を思い出した。
小男のような姿をした全裸だった幽鬼、異常にまで伸びた耳たぶと顎、人を小莫迦にするような笑い方。
正直初めてみた時、頭に来た。頭に血が上るとはきっとあの時の様な感情なのだろう。
そして終わり方に戦慄した。結果から言おう、「僕」は瀕死に近かった。
そう「僕」は考えてみればあの時、この「敵」の様に死に物狂いで戦った。
この拳で、今では一撃で敵を屠る右ストレートで。
うん、あの時の「僕は」は滅茶苦茶に弱かった。
「僕」のこの体もこの拳も弱かった。
−だからどうした……−
悪魔となった時から「僕」の中で育ってきた「何か」が「僕」に心の中で囁いた。
−ボルテクス界でも弱肉強食、そして「この世界」もその「理」は変わらない……−
「僕」は心の中で頷いた。全くだ。当然だ。この世の摂理だ。
−ならば潰せ、屠れ、殺せ、粉砕しろ、自分の圧倒的なその力を見せ付けろ!−
でも……
「理」と言う「単語」が引っかかった。
ボルテクス界で「僕」は全ての「理」に異を唱え全てを屠った。
受胎、要は一度死んで生まれ変わろうとする世界を潰したのだ。
それも根底から。
そう、「僕」は「理」に全く興味が無くなっていたのだ。いつの間にか。
ならば……
ノルマをこなした今、「理」に沿う事をしない事。
「僕」の行動はそれだった。
面白い。
ならばここでもそう行動してみよう。
それに「僕」は先程もこう言った。
「この世界」の状況が知りたい。
「敵」に対して「僕」はこう提案した。
「一旦、止めない?」
「敵」が口を開けていた。
当然だと思う。客観的に見て状況的には遥かに「僕」が有利。
うん、だから面白いと思った。当然の事ながら召喚していない仲魔達からはクレームの嵐が吹き荒れた。
「殺せ!殺せ!」の大合唱……これは当然だな。「悪魔」である「僕」にでも容易に理解できる思考だ。
いや「悪魔」だからこそか。
「……黙れ……」
「僕」は思わず口に出してしまった。主人が従者に下す冷徹なまでの強制命令。
静まりかえる仲魔達。
「どうして……だ?」
「敵」が五分位経過した後ようやく聞いてきた。
「施しか?哀れみか?情けか?……ルールは殺し合いだぞ!」
待ってくれよ……「僕」は素直にそう思った。そう来るか?
「そうだね、殺し合いだね、基本的なルールは」
「僕」はにっこりと笑顔を浮かべた……つもりだ……最近は凄まじいまでの形相なのかもしれない。
ボルテクス界では鏡等を見たことが無かった。
学校なのだからトイレはあるだろう。見ておけばよかったかな……と「僕」は少し後悔した。
「よく思い出そうよ?」
「僕」は続けた。思わずザックからルールブックを取り出す。
「敵」である「男」に安心感を与える為にあえて視線を外した。警戒心を軽減させる為だ。
「ほら……ここのページ」
「僕」はルールブックを見たときに重要となるであろうページに折り目をつけていた。
−ページをめくっていたら「敵」の不意打ちを喰らっちゃいました。テヘ♪−
……笑えた話じゃない……
「僕」は内心でこう思いつつも(自分では)友好的とも言える表情を作ったつもりだ。
最近「僕」は仲魔に交渉を行わせていた。内心で苦笑する。
……交渉じゃないな、あれは……
半ば強制的に仲魔にしていた事を思い出す。
最終的には「ある施設」にて、魔貨を支払い召喚を行っていた。
そういや「あの施設」はこの都市にあるだろうか?
あると助かるな……
久しぶりの笑顔の為か顔の筋肉が強張る。
「落ち着いて考えようよ、二四時間以内に一人死ねばいいんだ、君は死にたいのかい?」
「僕」は続ける。
「少なくとも僕は死にたくない。無駄な手間は省けるんだよ?だってほら……」
と、ここで先生「だった」物体を指差した。
「ここで死んでるじゃないか。一人確実に。確実に殺したよ、「僕」が殺したのだから」
白状しよう。
「僕」はその時、無意識のうちに先生の遺体を蹴っていた。
「ルールはクリア、二四時間は死なずにすむ。……とりあえずはそれでいいんじゃないのかな?」
「確かに……今はそうだ……」
「敵」だった「男」はそう呟いた。
改めて「僕」はその「男(少なくとも現状の「僕」からは「敵」と判断できるレベルではないのでこれでいいだろう)」を眺めた。
白黒調の迷彩柄コートを着ていた。暖かそうだ、少なくとも上半身裸の僕よりは。
逆立てた髪、地毛なのだろうか?でもこういう男こそ髪型に気を配ると……「昔の」千晶が言っていた記憶もある。
眼鏡をかけている……近眼なのかな?それとも伊達眼鏡なのかな……勇ならこういった事を教えてくれたかもしれない。
腕は細い、少なくとも「僕」の様に右ストレートで「敵」を一撃で屠る事などは到底不可能だろう。
「一つ質問がある……」
「男」が僕に問いかけた。「僕」はにこやかな笑みを浮かべ(る努力をしつつ)、なんだい?と聞き返した。
「この人は……お前の何なんだ?……お前は人間じゃないのか?」
言ってる事が違うよ、と「僕」は内心思った。
一つの質問じゃない、二つの質問じゃないか……まいった、まだ挙動不審状態の様だ。
「僕」は答える。
「ええとね……まず最初の答え、この人は僕の担任だった女性だよ……とても尊敬していた。病気だと言う話で御見舞いにも行ったね。こう見えてもね「僕」は昔、高校生だったんだ」
「高校生」。
久しぶりに発音する単語だった。
そう「僕」はかつて「高校生」だったのだ。
そしてここで無様に転がっているのはかつて担任だった「もの」……
「次の質問に答えるよ、今「僕」は昔は高校生だと言ったよね?この人は担任だったとも言ったよね?」
「男」は頷いた。
「僕」は言葉を続ける。
「かつては「人間」だったものだよ……今は「悪魔」になった、「僕」の事を皆「人修羅」と呼ぶ」
「男」の目が驚きの色を浮かべた事を「僕」は確認した。
「一旦、止めない?」
唐突なこの一言から始まった会話であった。
「そうだね、殺し合いだね、基本的なルールは」
知ってるじゃないか、と「彼」は思った。
「よく思い出そうよ?」
何をだ?
「ほら……ここのページ」
……そういえば「彼」はあまりルールブックを読んでいない事に気付いた。
こういった作業は「あいつ」が全部事前に行っていたからだ。折り目がついている。
ああ、と「彼」は思った。「あいつ」とこの「敵」はこういった所も似ていたのだ。
「落ち着いて考えようよ、二四時間以内に一人死ねばいいんだ、君は死にたいのかい?」
勿論、死にたくは無い。だから戦ったのだ。
「少なくとも僕は死にたくない。無駄な手間は省けるんだよ?だってほら……」
無駄な手間……
「ここで死んでるじゃないか。一人確実に。確実に殺したよ、「僕」が殺したのだから」
死んでいる……そうか矢張りこの「敵」が……
「ルールはクリア、二四時間は死なずにすむ。……とりあえずはそれでいいんじゃないのかな?」
確かに……今はそうだ……
「敵」から話しかけられ、「敵」が発した日本語。そして「彼」が思ったことだ。もしかした言葉として発したものも含まれているのかもしれない。
「ええとね……まず最初の答え、この人は僕の担任だった女性だよ……とても尊敬していた。病気だと言う話で御見舞いにも行ったね。こう見えてもね「僕」は昔、高校生だったんだ」
何だって?昔?
赤の他人なら露知らず、自分の担任、しかも尊敬していた人間を殺したのか!この「敵」は!?
容赦なく!?思わず「彼」は立ち上がる。
「彼」ですら「あいつ」と戦う為に覚悟を決めたつもりだったのだ。
それをこの「敵」はあっさりと「僕」が殺したのだからと「彼」に説明した。表情を変えずに。
「次の質問に答えるよ、今「僕」は昔は高校生だと言ったよね?この人は担任だったとも言ったよね?」
「かつては「人間」だったものだよ……今は「悪魔」になった、「僕」の事を皆「人修羅」と呼ぶ」
「彼」の質問に「敵」が答えた。
「人間」から「悪魔」に?「人修羅」?
何だって?
「彼」には意味が理解できなかった。
「敵」に一つ変化が見ることができた。
「敵」の言葉自体は親しみを覚えやすい様なものに変化している。
しかし……
酷く冷たい声である事には違いなかった。
それに「敵」の顔の表情に感情が現れていない。違和感が有りすぎた。
そして人間から悪魔へと変貌したと言う衝撃。「彼」は驚いた。
「敵」が話を続ける。
「要約すれば、この人が一回世界を壊してしまった訳なんだよ……」
何処かで聞いたような話だ……「彼」はそう思った。
「それでね……この人は「僕」がどんな世界でも生き続けられるように望んだ……らしいよ。そうしたら僕はこの力を与えられた……」
「それでも彼方は死なないで。生き延びて、世界の末を見届けて……これがたった今さっき殺した時の最後の言葉」
酷く冷たい声が続く。
表情に感情が現れていないのも変わらない。
「敵」が不意に壁を拳で貫いた。
「ああ、「僕」は確か生き続ける事で出来たよ……おかげさまでね」
「敵」が二発、三発と壁に拳を打ち付ける。
普通の人間であれば壁に拳の跡か、血痕が残るであろう、(少なくて「彼」の場合はそうだ)「敵」が拳を壁に放つたび、穴が開いていく。
しかしその表情はあいかわらず感情がない。
声の質感は変わっているようにも思えるが冷たい声である事に変わっていなかった。
「彼」は壁を貫く「敵」の目に涙が浮かんだ事を目撃した。
無表情、ひどく冷たい声、しかしながらその目からは涙。
「あれ……?まただ……」
「敵」いや「人修羅」が「彼」に背をむけ涙を拭うのを見た。「彼」は攻撃が可能であったが攻撃しなかった、否、出来なかった。
再び「彼」に顔を向けた。涙は消え失せている。
「君も質問に答えたんだ、「僕」の質問に答えてもらおう」
先程の親しみを覚えやすい様な口調とか変わる。「彼」は「敵」である「人修羅」の周囲から再び闇が広がるのを感じた。
同時に彼の背後から複数の強大の悪魔の気配……「人修羅」の目が再び金色から赤い色へ変化する。体を彩る刺青が青く発光を開始する。
「僕」は「男」に聞き返す。
そうだ、僕は「悪魔」……そう「人修羅」。
「男」は僕に質問をした。
そう「悪魔」に質問をしたんだ……この「男」にその代償を支払ってもらおう。
そうすれば用済みだ。
「僕」は参加者リストをザックから取り出す。
「お前の知り合いはこの中にいるか……それを話せ。それとその能力……その辺りの情報を全てをだ」
「僕」は今度は意図的に教壇の後にある黒板に向け右ストレート。勿論「僕」の拳は易々と黒板を貫通した。痛覚は無い。
「男」は「僕」の言葉に従がうしかないだろう……
「男」は三人の名前を指差した。指差しながら名前の発音を行う。
男二人女が一人……他は知らないと言う。
知り合いのうち二人は同じく魔法を使うらしい。回復能力に長けているという。……ふぅん……
「僕」が興味を覚えたのは「男」が最後に示した「男」だった。
「悪魔を使役する男」……まるで「僕」のようだ。
面白い……少なくとも「この世界」には悪魔を使役できる人間が何人か確実に存在する事になる。
参加者リストから考えると……
氷川。
千晶。
勇。
そしてこの「悪魔を使役する男」。
この「僕」。
そして魔法を使用する事が出来るのが少なくとも三人……
この「男」
この「男」が「奴」と言う男。
そしてこの「男」が知ると言う「女」。
これで少なくとも高尾先生を含めた八人の情報を入手した事になる。これで五分の一の人数か……
……頃合だな。
「僕」はそう判断した。
「ありがとう」と「彼」に「人修羅」は言った。
「人修羅」は「彼」に自分の知る名前を告げる。そして独り言の様に付け加えた。
「彼らも……強いよ。戦った「僕」だから判る。おかしいよな…「僕」が全員二回殺したのに。まぁ何かあったらもう一度殺せばいいだけだよね?」
それは「人修羅」が彼らより強いと言う意思表示、「彼」に戦慄が走る。
「さて……改めてありがとう……君はこれで用済みだな」
「彼」に取り死亡宣告が告げられた……
「さて……改めてありがとう……君はこれで用済みだな」
一歩、「僕」は足を進めた。
ありがとう、そしてさようなら。
ゆっくり、ゆっくりと歩を進める。
「男」は「僕」が「悪魔」だと言う事を忘れていたのだろうか?
さて……どうしようか?「僕」は思案する。
仲魔を召喚し……「僕」同様に「この世界」での要領を得る事もいい。
それとも……「僕」個人の技能を試してもいい。
ざわざわと背後から僕の仲魔達が蠢動を開始する。求めているのだ、獲物を狩る快感を……
そうだな、それも悪くない……
「彼」に告げられた死亡宣告。
「彼」の前には無数の闇を引き連れた死神が立っていた。
殺される……
殺される……
「彼」は七姉妹学園に向かう前に、共に戦った仲間と覚悟を決めて此処を訪れた。
生き残る術を求め、此処に訪れた。
確かに生き残る術の助力を此処で「彼」は手に入れた。
しかし……
この学園には文字通りの悪魔が鎮座していた。
この死神にも「彼」と同じようにこの殺戮劇に参加した知り合いがいると言う。
覚悟、決意、そんな強い意志をこの死神……「人修羅」は持たなかった。
「……まぁ何かあったらもう一度殺せばいいだけだよね?」
あっさりと言った。しかも二回殺した?
意味が判らない。
「彼」が理解できるのは「人修羅」がその知り合いを遭遇した場合、躊躇無く戦うであろうと言う事だけ。
既に立ち上がっていた「彼」は「人修羅」が一歩歩くと同時に一歩後退する。
「ありがとう、そしてさようなら。君は忘れていたかもしれないけど……「僕」は「悪魔」なんだよ?」
「人修羅」が残した最後の言葉……
無意識のうちに彼は何かを掴んだ。
「彼」は本能的に一気に後退、「人修羅」に背を向け撤退を開始した。
隠密行動……等はもう必要なかった。そんな気を配れる状況ではない。
怖い……
脳裏に響くのはただそれだけだ。全力で逃げ出した。
そう、撤退、転進、退却、そんな御飾り的な言葉は必要ない。
全速力で逃げ出したのだ。
ひたすら走った。
「彼」とっての死神、「人修羅」は何故か追ってはこなかった。
恐怖と同時に湧き上がる屈辱感、劣等感、そして走りながら今までの戦闘結果を分析するように思考が回転する。
かつて人間だった悪魔……
近接攻撃の効果が無かった。
得意のとする魔法が通用しなかった。
銃撃は多少通じた……気がする。
「彼」は更なる力を求めた。この殺戮劇に生き残るにはまだ力が足りなかった。
力が欲しい、新しい力が……
少なくとも現状のままでは生き残れない!
「彼」はそう思いながら走った。
ここで一つ補足する。
「彼」が全力で逃げ出した時に「彼」は無数の「悪魔」と遭遇していた。
無意識のうちに「彼」は斧に似た鈍器でもって順次悪魔を撲殺していたのである。
「彼」が全力で逃げ出した跡には無数の悪魔の死体が転がっていた。
「彼」は決して弱い訳ではないのだ。
「僕」は「男」を追わなかった。
「男」の足が速かった事もあるが……
余りにも鮮やかな逃走に惚れ惚れした。思わず拍手。
何故だって?「男」は先生が手にしていたであろうザックを持って逃げたからだ。
さっきも言っただろう。
ノルマはクルアした。
「僕」はあまり人と関わりを持ちたくない。
先程は言ってみれば不意の遭遇戦だったからしょうがあるまい。
戦うときは戦うしかないのだ。例え友人であろうが、幼馴染であろうが恩師であろうが。
あの「男」は「僕」に比べたら遥かに弱いのかもしれない。
だが、しぶとくこの殺戮劇に生き残れそうな気がする。
もしももう一回「僕」と出会ったら……あの「男」はどう「僕」と戦うつもりだろう……
ルールは殺し合い……殆どの人間が互いに殺しあってるだろう。
ボルテクス界では様々な勢力が「僕」に協力を求めてきた。
千晶のヨスガ……
勇のムスビ……
氷川のシジマ……
アサクサのマネカタ達……
もしかしたら「この世界」でも協力を求めてくる参加者もいるかもしれない。
その時は「僕」はどうするだろう?
……今は答えがでない。
まぁいい……それはその時で考えよう。
誰もが生き残りたいと思うだろう……それは「僕」も変わりない。
そういえば「男」は逃げる事が出来たのだろうか?
ふと教室の出入り口から「彼」が逃げ出した廊下に目を向けた。
無数に転がる悪魔の死骸。一撃で葬っていた。
「僕」は思った。なんだ、結構強いじゃないか……
「僕」は薄笑いを浮かべる。
面白い……
ふと時計を見た……五時半を過ぎたところだ。始まってからまだ三時間弱しか過ぎていない。
「僕」は自分の世界に戻りたい。
それは変わりない。大体皆がそうだろう。
でも……
皆が早く終わらせたいだろうこの殺戮劇を一人位は長引かせる事をしてもいいのではないか?と「僕」は思う。
後、もう少しで最初の死亡した人間報告があるはずだ。
その次は午後六時に報告があるらしい。
先生だった物体を見やる。
ルールが正しいならこの人の名前が告げられる筈だった。
とりあえずはその連絡を聞いてからだ……あせる必要なない。
徐々に人数が少なくなれば何かしらの制限行動、あるいは強引な会敵が予想される。
体力を温存するのも悪くは無い。
そう「僕」は混沌の王……最後まで混沌を求めるべきなのだ……
【人修羅(主人公)(真・女神転生V-nocturne)】
状態:軽症(左肩銃創)
武器:素手(右ストレート:但し各スキル運用が想定される)
仲魔:不明
道具:煙幕弾(9個)
現在位置:七姉妹学園
行動指針:一回目結果報告待ち→最終的には自分の世界へ帰る手段を求める。
【カオス・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:敗北からの狂乱状態=PANIC?
武器:銃(経緯から狙撃が可能?):斧に似た鈍器入手(刃は無い模様)
道具:カーボライナー(弾丸:追加効果STONE):学園内にて三発消費
道具:高尾祐子のザック(中身未確認の為不明)
現在地:七姉妹学園→蓮華台へ逃走中
行動方針:なんとしてでも生き残る術を求める。
目の前に白壁が美しい、三階建ての校舎が佇んでいる。
建物の中心部の上下に、この学園の校章であるプレアデス星団をモチーフにした七つの星があしらわれた大きな時計台と、
アールヌーボーを基調とした設計の昇降口があった。
校舎の周りは意識して緑を取り入れた造りで、運動場にも、それをぐるりと囲むように花壇が置かれている。
此処は蓮華台の七姉妹学園だ。レイコと尚也はその校門の前で佇んでいた。
平和な時だったら、その美麗とも言える外観の校舎に、感嘆の溜息の一つでも漏らしていたのかもしれない。
時計は丁度正午を示していた。照りつける太陽と、それを反射する窓ガラスの光が眩しい。
自分たちはあの山から下山し、夢崎区を通過するルートを選んで此処までやって来た。
その間に多少の寄り道はしたものの、他の参加者に出会わなかったお陰で(死体には出くわしたが)あれから一時間程度しか経ってはいない。
もしも予定通りに事が進んでいたら、先ほど逸れてしまったライドウと鳴海の二人もこちらに向かっているはずだ。
だが、その二人はまだ此処には到着していないようだ。
彼らは、当初の打ち合わせ通りに山を迂回する道順で此処を目指しているのだろうか。
だとしたら…。
レイコは何故か奇妙な胸騒ぎがした。
あの二人は、今まさにとても恐ろしい眼に遭っているのではないだろうか。
そして、まさにその場には絶対に自分が必要だったのではないか。
そんな予感がしたが、今更後戻りが出来ないのも事実だ。
何しろ自分は今、自分から進んでなったとは言え、横にいる藤堂尚也の人質という立場なのだから。
夢崎区のファーストフード店から出た後、二人に会話は無かった。
尚也も何も話してくれないし、レイコの方からも、彼に何と言って声を掛けていいのか解らなかった。
実にばつの悪い空気が二人の間に満ち溢れている。重いと言っても過言ではない。
そんな空気だった。
「少し移動しませんか? こんな目立つ所に立っていたら危険だと思います。」
二人の間の重い沈黙を先に破ったのはレイコだった。
自分たちは確かに此処で人を待っているのだが、此処は道の真ん中に近い。
つい数日前まで、人の住んでいた形跡のある街中だから隠れる場所には事欠かないとは言え、目立つことには違い無かった。
本当は、自分だってずっと此処で待っていたい。
そんな気持ちも大きかったが、反対に、ライドウにはもう会わない方が良いのではないのかという思いもあった。
尚也は、今度こそライドウを殺すつもりでいるのだ。
そして自分がそれを止めることが出来るのか、正直今のレイコには自信が無い。
本当は、殺し合いなんてする必要は無い。だけど、尚也は…。
あのコンパクトの持ち主と尚也はどういう関係だったのだろうか。
横にいる本人にはとても聞くことが出来なくて、詳しいことは何一つ解らないが、とても大切な人だったのだろう。
自分と、魔神皇――狭間偉出夫と同じように。
コンパクトの持ち主は、――尚也の見たことを信じるなら、ライドウに殺されたという。
だが、その仇を彼に討たせてはいけない。
自分にとって、出会ったばかりだがライドウはとても大切な存在だから失うのは悲しいことだし、何よりその後尚也はどうするつもりなのか。
レイコはその先を考えないようにした。
だが、考えないようにすればする程胸が痛む。
自分が何をすれば一番良い解決方法になるのか、その答えは出ないが、兎に角尚也とライドウを再び巡り会わせるわけには行かないのであった。
「そうだな。近くの民家に隠れることにしよう。だが…。」
レイコの言葉に、しばし考えたような素振りを見せ、それから答えた尚也だったが、視線は全く別の所を向いていた。
彼の視線は鋭く、七姉妹学園の校舎に向かっていた。
「藤堂さん…?」
「俺たちが背を向けるのを待っているのなら無駄だ。出て来い。話をしよう。」
校舎に誰かが潜んでいるというのか。レイコは一瞬身構えたが、同時に少し安心した。
尚也はその相手と戦うのではなく、「話をしよう」と持ちかけてくれたからだ。
すると、グラウンドの脇に植林された針葉樹の陰から、一人の少年が顔を出した。
短く刈った髪で、都市迷彩のロングコートを着ている。
ぱっと見は随分悪ぶっている雰囲気のスタイルだが、彼が掛けている眼鏡が鋭い双眸を知的に見せていた。
少年は、腰に拳銃をぶら下げていた。
だから尚也はとっさに自分も先ほど拾ったコルトライトニングに手を掛けようとしたが、それよりも先に少年は軽く両手を挙げた。
「交渉なんだろ?」
「…両手を挙げたままもう少し近くに来てくれ。こっちの銃は安全装置が掛かったままだ。他の仲間もいない。」
やや間を置いて、少年は尚也に従った。近くで見ると少しやつれているように見える。
口元は感情を出さないように真一文字に結われているが、額に汗が滲んでおり、顔色も決して良いとは言えなかった。
そして、彼は近い時間の内によほど恐ろしい何かを見たのだろう。眼が血走っていた。
「このゲームには随分と変わり者が多いんだな。お前も、ルールはちゃんと解った上で交渉を持ちかけているんだろ?」
少年は、尚也とレイコに二メートル先まで近づいてからそう言い、口元を左右非対称に歪ませるシニカルな笑みを浮かべた。
「解っているからこそ見逃して欲しいんだ。」
「どういう事だ?」
「こちらに、君と戦う意思は無い、ということだ。」
言って尚也はレイコに視線を向けた。レイコの方も勿論それに同意して頷いた。それを見た少年は、ゆっくりとだが、挙げていた両手を下ろした。
「見逃して欲しいということは、徒党を組むつもりも無いんだな?」
「ああ。この女の子は理由あって俺が一時的に預かっているだけだからな。最終的には、独りでやるつもりだよ。」
少年は尚也の言葉に意味が解らないというように首を傾げた。だが、レイコの方はもっと複雑な心境だ。
「お前、生き残るつもりが無いのか?」
「勿論…生き残りたい、という気持ちを捨てたと言えば嘘になる。だけど…もう、俺には生きる理由が無いんだ。」
「……。」
尚也の言っている内容は、はたから聞けばおよそどっちつかずな答えだ。
ある程度の事情を知っているレイコの胸の痛みは増していくばかりだが、少年は少し苛立ってきたようで、腕を組み、ブーツの爪先を鳴らしてた。
「解らないな。理由が無いだと?
ならばどうして強くなろうとしない。強くなれば自分の生きる理由くらい見つけられるだろう。力があれば…俺にだって…。」
「強くたって、何かを守る理由が無ければそれはただの飾りに過ぎないんじゃないか?
俺には、その理由が無い。守るものが無ければ強くなる理由も必要ないじゃないか。
いや、それどころか…人間が生きている理由だって。
例えば…君にもそういうものがあるのか?」
「……。」
少年は押し黙った。彼の言葉の中から彼は強さや力に多大な拘りを見せているようだったが、改めてその理由を聞かれたことが無かったのだろう。
少し考えるように俯いていたが、顔を上げた。その表情は暗い炎が灯ったとでも言えば丁度いい表現になるだろうか。
「俺は、全てを見返したい。俺を今までゴミのように扱った全ての連中にな。
だから、俺にとってこのゲームはむしろ好都合なんだよ。
周りは全員敵。此処から出る為には戦って、戦って、戦い抜いて、最後の一人になるしかない。
解りやすくて大いに結構だ。
つまり、勝つには此処に来てる連中の中で一番強くなるということなんだからな。だから俺は負けるつもりなんてさらさら無いね。
生き残って、最後の一人になって世界中を見返してやるんだ。絶対にな!」
最初は静かに語っていたが、言葉は徐々に熱を持ち始めた。そして自分の決意を改めて固めるような最後の言葉は殆ど叫んでいるような言い方だった。
尚也は、少年の熱い魂の叫びとも呼べる言葉に笑みを漏らした。
だがそれを見た少年は少しむっとした表情を浮かべる。馬鹿にされたと勘違いしたのだろう。
尚也はすぐに表情を元に戻した。
「そうか。君には誰かを守ること意外で強くなる理由を見つけたんだね。俺は…少し羨ましいよ。
俺も君くらい純粋だったら、少しは違っていたのかもしれない。
このくだらないゲームの中でも、大切な何かを見つけられたかもしれない。
けど…もう遅いんだ。
全てが遅すぎるから、俺にはもう…。」
「お前が何か守るものが無ければ強くなれない…それはよく解った。
だったら何故お前はさっきからその女の前に立ちはだかっている? その女は…お前の何なんだ。」
「……さっきも言っただろう。この子は預かっているだけだ。いずれ、元の場所に返すさ…。」
レイコはどきりとした。尚也は、一体どういうつもりなのだろうか。
ライドウを自分の手で倒すという決意は固いはずだ。それは彼の眼が強く物語っている。それなのに、元の場所に返すとは…?
レイコの内に秘めた疑問に彼は答えない。おそらく、永遠に答えてはくれないだろう。
少年は、尚也に向かって、再びあのシニカルな笑みを浮かべると、腰に差している銃を抜き、レイコに向かって照準を合わせた。
「――ッ!」
尚也も咄嗟に銃を抜き、レイコを庇うように自分の真後ろに寄せた。
だが、少年は撃たなかった。撃たずにそのまま銃口を下ろすと、ついに笑い声を漏らした。
「くくく、それでいいんじゃないのか? お前が強くなる理由は。」
「どういう事だ!?」
「そんなこと自分で考えろ。」
少年は吐き捨てた。それから銃をまたコートの内側に差し込む。それから初めて尚也から眼を逸らした。
「もう少し頭のいい奴だったら俺の仲間に入れて利用してやろうとも思ってたんだが…。
それどころか今は殺す価値も無い阿呆だな。
おしゃべりも飽きてきた所だ。用事が無いならもう行くぞ。」
少年はそう言って校門の前に立っている尚也とレイコの横を通り抜けた。
「待て。」
そのままの体勢で、振り返りもせずに尚也は彼を呼び止めた。少年が立ち止まると、尚也は勢いよく振り返り、びしりと彼に人差し指を差した。
「少し、理由を考える。
……解るまで俺は死なない。絶対に生き延びる。だから、この疑問が晴れるまでお前に死ぬことは許さないからな。
そうしたら…俺と戦え! いいな!」
その言葉を聞いて、少年はついに声を上げて笑った。つられて尚也の顔にも笑みが浮かぶ。レイコだけはてんで意味が解らないといった表情だった。
「はははははっ、そう来たか。いいだろう。その挑戦は受けてやる。
だがその時俺は今よりもっと強くなっているぞ、お前なんか足元にも及ばないくらいにな!」
「望むところだ!」
二人はこの殺伐とした状況にも関わらず、非常に楽しそうだった。レイコには何故か解らなかったが。
やがて少年が立ち去った後も、尚也の表情はしばらくの間、晴れ晴れとしたものであった。
最終的には殺しあうということを言っているのに、何故そんなに明るく笑いあうことが出来るのだろうか。
どんなに考えを巡らせても、レイコの頭では理解することが出来なかった。
ただ、あの少年と尚也――。
彼らの出会いがこんな悲惨で非常識な状況の場でさえ無ければ、無二の親友になれたのではないのか。
そう思うと、少し残念だった。
【赤根沢レイコ(if…)】
状態 やや疲弊
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ライドウたちを探す ゲームからの脱出
【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 正常
武器 ロングソード
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
現在地 同上
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇をうつ カオスヒーローとの再戦
【カオス・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:正常
武器:銃(経緯から狙撃が可能?):斧に似た鈍器入手(刃は無い模様)
道具:カーボライナー(弾丸:追加効果STONE):学園内にて三発消費
道具:高尾祐子のザック(中身未確認の為不明)
現在地:蓮華台
行動方針:なんとしてでも生き残る術を求める。 藤堂尚也との再戦
アラヤ神社
どこの町にもをひとつはある古い神社。
百年・・・もしかすると千年以上前からこの地を見守って来たであろうその場所・・・そこに二人は訪れていた。
「行きたかった場所っていうのは・・・ここかい?伽耶」
ザ・ヒーローが尋ねる。
「そうだ・・・・・・・思ったとおり、ここは霊気が多い」
伽耶はそう答えた。
「霊気?」
「ああ、霊穴とか竜脈という奴・・・風水などで用いられる概念だな、術を行うのはできればここがいい」
「成るほど・・・下調べってこと?」
「それもあるが・・・ヒーロー、お前は確か大破壊前の生まれだったな・・・御神木というのはどれか分かるか?」
「ああ・・・それなら多分注連縄が巻いてある・・・あれだな」
ザ・ヒーローはひとつの木を指差した。
他の木と比べても明らかに樹齢の長いそれは注連縄を巻かれどこか荘厳な雰囲気が漂った霊木だった。
「・・・なるほど、いい木だ」
そういうと伽耶は木に向かって2度頭を下げ次に拍手を2回そしてまた2度頭を下げる。
「木の幹を少し・・・いただきます」
そういうと伽耶は木の幹を包丁ではぎ取り出す。
「何をやっているんだ?」
「武器がわり・・・というところだな」
次に包丁で木を研ぎ始める。
有る程度表面が滑らかに成ったものが4つ出来上がると組み合わせ底をつける。
注連縄を少し切り取ると木を組み合わせたものを結ぶ、さらに木の幹を抉りふたを作る。
木の幹だったものは管のようなものになった。
「よし・・・できた」
「・・・なんだい?それ」
「葛葉流封魔術に使用する道具・・・その原初のものだ」
「・・・よく分からないが」
「お前のGUMPの原始的なものだ、葛葉一族は元来これで悪魔を使役する」
そういいながら伽耶は管の細部をチェックする。
「・・・それで仲魔にするのか?」
「そういうことだ・・・時空転移の法を調べるうちに見つけた術で試すのは今回が初めてだが・・・よし、仕上げだ」
そういうと伽耶は管を置きその前に座る。
手を組み合わせ印を組むと呪文らしきものをを唱え始める。
「トホカミ エミタマ トホカミ エミタマ アハリヤ アソバストマウサヌ」
徐々に周りの雰囲気が変わる。
「アサクラニ イブキドヌシトイフカミ オリシマセ」
管に何かが集まっていく。
「フルベ ユラユラト フルベ」
そして全てが集まりきる。
「ハラヘヤレ ハラヘヤレ」
呪文を唱え終わるといつの間にか管は伽耶の手に収まっていた。
「ふー・・・ヒーロー、悪魔を呼び出してくれ・・・そうだな、ホウオウを頼む」
「・・・ああ、テストするんだな分かった」
ヒーローはそういうとGUMPを展開する。
コンピュータに慣れた手つきで入力を済ますと画面に魔法陣が現れる。
<霊鳥召喚・・・ホウオウ・・・GO!>
大きな翼を持った鳥が現れる。
「行くぞ・・・封魔だ」
伽耶が管を構えホウオウに向ける。
管が吸引を始めるがホウオウはこれに抵抗する。
「グウ!オレサマ、スイコマレナイ!」
「ぐ・・・無理か・・・ヒーロー、ホウオウに抵抗しないよう指示してくれ・・・」
「分かった・・・ホウオウ、その人は味方だ、悪いようにはならない・・・抵抗をといてくれ」
「グウ・・・ワカッタ」
ヒーローから指示が飛ぶとホウオウの抵抗する力が格段に弱まった。
するとホウオウは管に吸い込まれて行く。
「はぁはぁ・・・ダメだな・・・これではとても普通の悪魔を封魔するなどできそうに無い」
封魔を終えた伽耶は息を切らせていた。
あの動作でかなりの体力を消耗したようだ。
「・・・ホウオウはもう君の指示で動くのかい?」
「ああ、管に入ったということは既に術者の命令に強制力が出る」
「だったら僕が交渉して仲間にし、伽耶に渡すのではダメなのかい?」
「恐らく可能だ、しかし見ての通り・・・管の作成と封魔でとんでもない体力を消耗する・・・この神社でさえだ」
「そうか・・・ホウオウは君が持ってるといい、万が一はぐれたときのためにもね、MAGを半分かえそう」
「いや、大丈夫だ。さっきお前に渡したのが全部じゃないからな」
COMPを操作しようとしたヒーローを静止して伽耶がいう。
「・・・抜け目無いなぁ」
「よし、さしあたっては天野舞耶の捜索だったな」
「うん、どうする?別行動する手もあるが・・・」
「それはよした方がいいだろう・・・私が死んではお前は脱出できない、お前が死んでは私の目的は達成されないのだからな」
「一心同体の運命共同体ってわけだな」
「・・・利害の一致をそういうのなら、そうだ」
伽耶は照れたように横を向いた。
そんな伽耶をよそにヒーローが地図を開いた。
再び今後の相談が開始される。
「・・・既に行ったのは、港南区に青葉区そしてここ蓮華台」
「今までいった場所とはいえ全部回ったわけでもない、特に青葉区は一瞬いただけだ」
「まぁね、とはいえ単純な確率の問題で他から回ったほうがいいだろう」
「・・・すると平坂区と夢先区のどちらかか?」
「そうだね・・・明らかに敵が多いのは夢先区だろうけど・・・」
「では、平坂区か?」
「いや、もし夢先区にいた場合死の危険が多いことになる、だから・・・」
「夢先区か?」
「うん、僕らは夢先区だ」
「・・・僕らは?」
「平坂区は仲魔に行かせよう・・・」
そういうとヒーローはGUMPを操作する。
<妖精召喚・・・ピクシー・・・GO!>
ヒーローがこの世界で最初に仲魔にした小さな妖精、ピクシーが現れる。
「聞いてたね?ピクシー、平坂区・・・あっちの方向だね・・・に天野舞耶って人を探しに行くんだ」
「あまのまや?」
ピクシーが聞き返す。
「ああ・・・えーと・・・この人だね、名簿を破って渡そう・・・これで持てるね?」
「うん!」
「よし、この人を見つけたら僕にGUMPを通じて連絡するんだ・・・無理に話しかける必要は無いけど、怪我してたら治してあげるんだ」
「もし見つからなかったらー?」
「平坂区でどうしても見つからなかったらこう・・・左回りに港南区へ行くんだ、僕らはその逆周りで探す」
「うん、わかったー」
「MAGをあげよう・・・1000あれば足りるね?余りは君に上げる」
「!やったー、アタシ絶対見つける!!」
ピクシーは大喜びすると飛び立った。
「ピクシー!そっちじゃない・・・反対だ」
どうやら正反対の方向だったようだ。
「あ、ゴメーン」
「あーいや・・・じゃ、がんばって」
今度こそ正しい方向にピクシーは飛び立った。
「・・・大丈夫なのかあれは」
伽耶が不安そうにヒーローに尋ねた。
「・・・飛べて、治癒魔法が使えて、小さくて隠密行動ができる・・・これ以上の奴はいないと思ったんだけど」
「・・・だが、あれだぞ」
「・・・」
「・・・」
「さて、僕らも夢先区に行こうか」
「話をそらすな」
「見つかるとイイナー・・・できれば派手な格好しててくれれば・・・あ、それだと敵にも見つかっちゃうか」
「おい!」
二人は夢先区に向かった。
二人は知らない。
天野舞耶は二人の想像以上に派手な格好をしていることを・・・。
「クシュン!」
狂気の町に和やかなくしゃみが聞こえた気がした。
ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:正常
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み)
道具:マグネタイト9000(諸々の使用とピクシーに渡したことにより減少) 舞耶のノートパソコン 予備バッテリー×3
仲魔:魔獣ケルベロスを始め7匹(ピクシーを召喚中)
現在地:蓮華台アラヤ神社より夢先区へ移動開始
行動方針:天野舞耶を見つける 伽耶の術を利用し脱出
【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:四十代目葛葉ライドウの人格 わずかに疲労
武器:スタンガン 包丁 鉄パイプ 手製の簡易封魔用管(但しまともに封魔するのは不可能、量産も無理)
道具:無し
仲魔:霊鳥ホウオウ(ザ・ヒーローの使役していたものを封魔、自身の使役とする)
現在地:同上
行動方針:天野舞耶を見つける ザ・ヒーローと共に脱出し、センターの支配する未来を変える
【妖精ピクシー(ザ・ヒーローの使役)】
状態:正常
武器:無し
道具:マグネタイト1000
仲魔:無し
現在地:蓮華台アラヤ神社より平坂区へ移動開始
行動方針:ザ・ヒーローの命令で天野舞耶の捜索 発見し次第ザ・ヒーローへ連絡(なのだがわかっているのかどうか・・・)
ほの暗く、湿り気が多く、淀んだ空気の中……
まるで地獄のような呪わしい場に、生命の危険を示す絶叫が響き渡る。
ここは、防空壕。かつて、戦争の恐怖から逃れるために作られたはずの場所には、何時の間にか
恐怖そのもの――悪魔が現れるようになっていた。
では、先程の悲鳴は恐怖に飲み込まれた哀れな子羊のものか?
否。圧倒的に否。あの叫びは、厳然たる恐怖の権化が上げる更なる呪いの声。
「ああ……あああ………」
一人の少女――いや、少女と呼ぶべきではないだろう。本来なら、2枚の輝く羽を備えた存在。
最下級ではあるものの、紛うことなく天使の一柱だ――が両手で這いずるように更なる恐怖から逃げる。
本来あるべき羽を失い、無駄だと半ば知りつつも恐怖に駆られ、涙を流し自分を上回る恐怖、狩猟者から逃げる。
僅かに風が流れた。
「あッ……!ひッ!」
目の前には、狩猟者の足。
何故?何故こうなった?彼女は自問する。このような薄暗い魔境で、たまたま見かけた人間。
いったい何をしているのか知りたくて、彼女は無防備なまま話し掛けた。所詮は人間。
もしものことがあっても平気だろう等と考えていた。しかし、それは間違いだった。
次の瞬間には、腕がなくなっていた。その次の瞬間には右の羽が。そのまた次には左の羽が。
あっという間に彼女は地に伏せる羽目になった。
溜まらず叫んで逃げ出したが、目の前の存在は逃げることすら許さない。
狩猟者の足が胸へ食い込む。無様に転がる。倒れた彼女の胸板を足が圧迫する。
「お……お願いです……見逃してください……何でもいたしますから…ッ!」
哀れに、無様に許しを乞う。
仲魔になれ →MAG
マッカ 死ね
「MAGでございますね……なら、これを……68MAGです……これで……いいでしょうか……?」
ただでさえ実体化で少ないMAGを搾り出すように渡す。
OK
→だからお前は阿呆なのだ
次の瞬間には、彼女の首は体と離れていた。
「やれやれ、ニュートラル悪魔じゃいくら殺ってもMAGにならないからな」
得物の夢想正宗を戻し、肩をすくめて見せた。とても、あのような外道を働いたようには見えない。
「まったく、あの狭間をシバくための魔界行脚の次は殺し合いか」
突然、魔界に放り込まれ、脱出のために魔界を生き延びた青年――神代 浩次。
彼の背後をもし霊視出来れば巨大な龍が見えるだろう。龍神ラハブ、それこそが彼の人外の強さの根源であり、
同時に彼の一側面でもある。悪魔の位階を数値化するとすれば、ラハブは63位にあたる大悪魔であり、
彼自身もまた60位に迫る強さを持つのだから。
今の彼は、100mを5秒以下で走り、一撃で大木を払うだろう。
「ま、生き残るには仲間は必須。ここらの悪魔は弱いし、MAG集めに勤しむか」
もはや彼に通常の、「人としてこうあるべき」などという常識はない。
生き残るためなら何でもやる。いくらでも利用する。また、そう出なくては生き残れない世界を生きてきたのだから。
「ようは嫉妬界と一緒だ。むしろ、レイコがいないから悪魔を口説くの逆に楽そうだしな……あのモラリスト、
悪魔とヤろうとしたら切れる始末だし。」
カチカチと手にはめたCOMPを操作してMAGの量を確認する。
「341MAGか……最低2000MAGは集めたいな。あと、武器も夢想正宗だけじゃな……
投げナイフ数本と、あとは最低限の防具と、消耗品と……やれやれ、しばらくは悪魔狩りだな」
それだけではない。更に加えて合体で、ある程度強い悪魔も是非欲しい。幸い、このメリケンサック型COMPは
合体機能がついているのでそれも可能だろう。
「隣の部屋に行くと悪魔の強さがグッと変わるからな。しっかり準備してステップアップといくか」
死亡者がなかった場合の首輪の爆発に関しては、気にする必要はない。
どうせ「殺さないと死ぬんだ」とでも思っているお頭の不自由な方々が殺し合いをしてくれるだろう。
ま、精々殺し合いに勤しんでくれよ。お前らの数が減った後、しっかり準備した俺が全員ぶっ殺してやるから。
怠惰界の連中のように必死になって踊っていればいい。あとの旨味は……俺がもらうから。
【神代 浩次(真・女神転生if、主人公)】
状態:実に健康
武器:夢想正宗
道具:メリケンサック型COMP
現在地:春日山高校/防空壕
行動方針:消耗品、投具系の武器、防具、MAG、強力な仲間の回収
そこは、初めて目にする世界だった。
整然とした街並み。舗装された道路には、目立ったゴミも落ちていない。
建造物の壁にもヒビは入っていないし、ガラスも割られていない。
秩序立っているのは、シェルターの中に似ているかも知れない。しかし、ここには空がある。
地上にこんな整った、恐らくは平和だったのだろう街があるのを見たのは初めてだった。
(これが……)
その街の真ん中に転送されて、そんな光景の中に自分は立っているのだと実感した時の、感動と興奮
。
今まで記録映像でしか見たことのなかった世界が、今ここにある。
(これが、壊れる前の世界か)
状況も忘れて暫し、胸を痺れさせるその感覚に身を任せて立っていた。
この光景こそが、目指すべきものなのだ。
救世主としての使命――バエルを倒し、悪魔の脅威を退け、世の乱れを正すこと――を果たせたら、
その先にはこの街のような秩序と、平和と、繁栄がある。
一度壊滅する前の世界と同じ、いや、それ以上の。
映像だけでは具体的なイメージとしては浮かばなかった「平和な世界」。
この場に立ったことでそれが、一気に現実味を帯びた。
そうだ、自分が使命を果たせば、あの世界もこのような繁栄を手に入れられるのだ。
悪魔を恐れてシェルターの中に隠れて暮らすこともなく、太陽の光を浴びられる。
地上の人々も、いつ訪れるとも知れない死への恐怖を、享楽的に生きることで紛らわせる必要もなく
なる。
あの荒廃した世界を、救わなくてはならない。
そのために、帰らなくてはならない。
元の世界に帰る。
それを当面の目的として認識したところで、ふと冷静に戻った。
帰るにはどうすればいいか。そもそも、自分達は何故ここに連れて来られたのか。
スピーカーから聞こえた声のことを思い出す。
一方的な放送のように聞こえたが、声の主はあの部屋の様子を知ることができていた。
あの声に逆らった男が、目の前で死んだのだ。
自分の胸元を覗き込む。声が告げた通り、呪いの刻印が刻まれていた。
これがある限り、自分達の生殺与奪はあの声の主が握っているということだ。
そして、奴は最後の一人になるまで殺し合いをしろと言う。
つまりは――最後の一人にならなければ、元の世界に帰せと奴に交渉を持ち掛けることもできない。
呼び集められていた中には女も多かったし、力を持たない一般人にしか見えない者もいた。
世界を救うために無力な者を殺すことに抵抗がない訳ではない。
しかし、自分が声の主に逆らって死ねば、あの世界は救われない。帰らなければならないのだ。
ここにいる数十人に情けをかけたばかりに、世界が救われる可能性を潰してしまうようなことがあってはならない。
するべきことは、決まった。
このゲームの勝者になる――他の全員を殺す、ということだ。
集められていた中には、かつて友だったあの裏切り者もいた。あいつを惑わした魔女もいた。
(この地で決着を付けることになる、か……いや)
余計な考えは決意を鈍らせる。今は、出会った者から一人ずつ倒してゆくことだ。
改めて周囲を見回した。まずは辺りの地形、それから地図上での現在地を把握しておきたい。
手近にある一番高いビルに目を留める。この屋上か、屋上がなかったとしても最上階まで行けば、周囲は見渡せるだろう。
(その前に、と)
いつの間にか肩に担いでいたザックを下ろし、中身の確認をした。
声の主が言った通りにルールブックや地図や食料が入っている。そして、ランダムに与えられたという武器と道具。
抜き身の日本刀と、不気味な色をした宝珠のようなもの。宝玉ではない。
ザックの中を探すと、あの声の主が親切にも付けてくれたのか、その道具の説明が書かれた紙片が見付かった。
『溶魔の玉:対象の悪魔をスライムに変える』
他の参加者が何を与えられているのかは判らないが、これはまずまずの当たりと言っていいだろう。
日本刀なら扱いは容易いし、この玉は悪魔を使役する参加者に出会った時に役に立ちそうだ。
よし、と小さく呟くと玉をザックに戻し、日本刀を手にしてビルの入口に向かって歩き出す。
屋上には、先客がいた。
最上階から屋上に通じるドアを開けると、その音に驚いたように一人の女が振り向く。
屋上の縁から、街を見渡そうとしていたようだ。
茶色の髪、青い服――古い時代の学生服という奴だろう。参加者の中に、この女と同じ服を着た者が他にもいたはずだ。
ザックは足元に置いてあるが、武器は持っていない。
「あんた……悪魔?」
警戒した様子で、女が問い掛けた。この鎧ではそう見えるのも無理はない。
「俺は人間だ。お前と同じ、参加者だ」
それはつまり、殺し合うべき相手ということだ――が、女は意外な反応をした。
「良かった。ねえ、ここを出る方法を探さない?」
「何……?」
思わず眉を顰める。
「殺し合えだなんて馬鹿げてる。ここから出る方法を探して、みんなを助けるのよ」
助ける?
この女は、参加者全員を救おうと言うのか。あの声の主に逆らって。
「……無理だ。呪いの刻印のことを忘れてはいないだろう」
「それも……どうにかできる方法が、あるかもしれないじゃない。絶対無理だって判るまで、あたしは諦めない」
最初は少し口ごもり、しかし最後はきっぱりと、女は言った。
その声、その眼差しからは強い意志が感じられる。
自分は丸腰にも関わらず、武器を持った相手に堂々と反論していることからも、精神力の強さは見て取れた。
「逆らった奴が死んだのを見ただろう? 呪いを解こうとなどしたら、その時点で殺されるかも……」
「だからって人を殺すの? 恨みもない奴を殺すなんて、イカレてるよ」
(イカレてる、か……そうかもな)
あの世界には、恨みもない人間を殺す者など幾らでもいた。
そんな状況は見たこともない、平和な世界に生まれた人間なのだ――この女は。
この街のような平和な場所で、それが脅かされる状況など知らずに、その倫理観と正義感を身に着けて育った人間なのだ。
「そのイカレた世界を、俺は救わなければならないんだ」
「え?」
刀を構え、屋上のコンクリートを蹴って女との距離を一気に詰める。
対話はここまでだ。この女の考えに乗って、あの声の主に反抗的と見なされたら呪いで殺されるかもしれない。
乗らないならば、することは一つ――この女を殺すことだけだ。
「ま、待ちなよ……!」
人間が襲い掛かってくるなど、考えもしていなかったのか。女が狼狽の様子を見せる。
それと同時に、女の背後にぼんやりとした姿が浮かび上がった。
槍を手にした女戦士――妖魔ヴァルキリーだ。
悪魔を召喚したのかと一瞬焦ったが、違った。ヴァルキリーの姿は半透明で、実体化はしていないようだった。
この女に憑いているのか。いずれにせよ、油断はしない方がいい。
「ブフダインっ!」
女が手を前に突き出す。そこから冷気が放出され、叩き付けられた。
「ぐ……」
鎧の表面が凍り付く。空気中の水分も細かい氷の粒に変わり、剥き出しの肌を傷付けた。
戦意はなくとも、この女も無力ではないということか。
こちらが完全に凍り付き、動きを止めることを期待したのだろう。ダメージを与えるのみに留まったことに、女の顔に絶望が浮かぶ。
今度はこちらの番だ。大きく踏み込み、刀を振り下ろす。
手応えは確かだった。女が仰け反る。血飛沫が舞い、まだ残る冷気で凍り付いて月光にきらきらと光った。
今のところはこちらの優位ではあるが、向こうは悪魔の助力を得ている相手。反撃の隙は与えたくない。
「ザンマ!」
追撃とばかりに衝撃波を放つ。女の華奢な体が、後ろに吹き飛ばされる。
そして、屋上の縁の低いフェンスに衝突し――衝撃波を喰らって僅かに浮いていたのと仰け反った姿勢が災いして、
その体はフェンスを乗り越えて空中へと飛び出していた。
ザンマの直撃で気絶したのか、声もなく女は落下してゆく。悪魔の加護も、こうなっては何の助けにもならないようだった。
「殺った……か……」
荒い息をつきながら、刀を振って付着した血を払う。周囲の気温も、次第に元に戻りつつあった。
鎧に守られている部分を除いて、冷気を叩き付けられた胴の前面全体がひりひりと痛む。
治癒の魔法で治そうとしたが、あまり効果は現れない。何らかの力が働いて、魔法を阻害しているようだ。
それでも何回か繰り返し呪文を唱えると、氷の粒で傷付いた部分の出血と凍傷の痛みだけは止まった。
体へのダメージは残っているが、ひとまず動く妨げにならない程度なら今は無視してもいいだろう。
あまり魔法を使うと、傷よりも疲労の方が不安要素になりかねない。
屋上の縁へ歩み寄り、下を覗き込んだ。遠く離れた地上に、あの女が倒れているのが見える。
周りには血溜まり。この様子では、生きてはいないだろう。
「みんなを助ける……か」
女が言っていたことを思い出す。平和ボケした善人の、甘い考えだ。
あんなことを言っているようでは、自分が手を下さなくとも遅かれ早かれ誰かに殺されていただろう。
これで良かった。
こうするしかなかった。
――なのに、この苛立ちは何だ?
この場所に居続けたくない。自分でも理由は解らないが、そう感じた。
ほとんど衝動に近い、その思いに衝き動かされるように踵を返す。
地形を把握するなら、別の所からでもいい。違うビルを探して、それから、少し休もう。
まだ戦わなくてはならない相手は、何十人もいるのだ。
別のビルを探し、屋上から周囲を見渡した。少し遠くに見えた学校らしき建物が、最初に皆が集められた七姉妹学園だろうか。
だとすると、ここは蓮華台という場所だということになる。
そのビルは住宅だったらしく、適当に入った部屋には生活に必要な物が揃っていた。
いや、必要以上の、と言うべきか。シェルターでの生活とはまるで違う、豊かな暮らしが想像できた。
部屋にあったタオルで刀の汚れを拭い、ベッドに寝転がって休みながら、これからのことを考えた。
全員を倒すと言っても、無計画にただ戦えばいいというものでもない。
あまり早期に消耗してしまうようなことがあれば、後々の戦いが辛くなるだけだ。
力を温存しながら、まずは様子を見るべきか。
勝てそうな相手と出会ったら確実に仕留める。
徒党を組んでいたり、悪魔を使役していたりする相手は避け、潰し合って戦力が削がれることを期待する。
正々堂々としているとは言い難いが、生き残るためには――世界を救うためには必要な作戦だ。
慎重でなくてはならない。できるだけ危険は避けなくてはならない。
(そうだ、手段は選んでいられない。俺は、あの荒れ果てた世界の小さな希望……救世主なのだから)
――あれから、四時間。
休息はもう充分だろうと判断し、ベッドから起き上がる。
眠ることはできなかったが、疲れは取れた。理由の解らない苛立ちも少しは収まった。
部屋には小さな目覚まし時計があった。嵩張る物でもないし、持っていって損はないだろう。無造作にザックに突っ込む。
先程、死者の名前を告げる放送があった。読み上げられた名前には、やはり女が多い。
その中のどれかが、あの女の名前だったのだろう。
外はもう明るい。本格的に動き出す者も増えてきた頃だろう。
この近辺を通る者もいるかもしれない――そう思って窓に近付き、外を見た。
まさに予想通り、しかも絶妙なタイミングだった。
道路に、人の姿がある。このビルの入口まではまだ距離があり、降りてから建物の陰に潜んで待ち伏せることも可能だ。
問題は相手が二人いることだが、並の人間二人なら恐れることもないだろう。
まずは、力を見極めることだ。
できるだけ足音を立てないように階段を駆け下り、ビルの入口から外を覗き見る。
二人組は、立ち止まっていた。あの女と戦ったビルの真下で。
こちらには気付いていないようだったが、念を入れて裏口から外に出る。建物の陰に隠れるようにして、少しずつ近付いた。
あまり近付くと、気配を悟られる。
話す声が聞こえる程度まで近付くと足を止め、耳を澄ました。
血の匂いがする。そういえば、あの女が落下したのはこの通りに面した方向だった。
二人組は、女の死体を見付けて立ち止まったのだろうか。
「この人を、ここに置き去りにする訳にはいかない」
「って……どこに運ぶんだい」
会話が耳に入る。胸の奥のどこかが、ずきりと痛んだ。
「どこに……かは、判らない。ただ、どこか、安らかに眠れる所へ……」
死体を見付けて、殺した犯人が近くにいるという心配をする前にそんなことを言っているのか。
一度は収まっていた苛立ちが、また甦り始める。
しかし、この二人も先程の女と同様、甘い考えの持ち主らしい。
気付かれないよう、ビルの陰から姿を覗き見る。二人とも、完全に死体に気を取られているようだ。
こちらに背を向けて女の死体を抱き上げているのは、白と青を基調とした服の男。声から判断するに、年齢は若い。
鍛え抜かれた筋肉が一目で見て取れる。正面から戦えば手強い相手だろう。
が、白い服には脇腹の辺りを中心に血の染みが広がっている。負傷しているようだ。
もう一人はスーツ姿の男。細身で、若くはない。おおよそ戦いに向いているとは思えなかった。
(好機、だな……)
二人とも武器は持っていない。そして今なら、戦いの得意そうな若い男には背後から奇襲を掛けられる。
死体を抱えているのでは、即座に反撃もできないだろう。
刀を握り締める。最初の一撃で、できるだけ深手を負わせたい。
「ひとまず、この辺りの――」
周囲を見回していたスーツの男が、視線をこちらに向けようとしたのと同時に――飛び出した。
「! 危ない!」
スーツの男が叫ぶ。若い男が振り向いた。予想以上に俊敏な反応だ。
(早まったか?)
この距離からでは、避けるのは不可能だろう。が、死体を盾にすればこの一撃は防げる。
有効な奇襲にはならなかったか、と内心舌打ちをする。
しかし。
「っ……」
「な、何……?」
攻撃を命中させたこちらの方が、一瞬呆気に取られる。
男は、体の向きを変えなかったのだ。日本刀の刃は、男の背中を深く切り裂いていた。
(まさか――死体を庇ったというのか?)
信じられないが、他に考えられない。
動揺を悟られないよう飛び退き、間合いを取った。
男もよろめきながら後退し、死体を丁寧に地面に下ろす。投げ捨ててしまえばいいものを。
その間にもう一撃叩き込もうかとも思ったが、何故か、そんな気にはなれなかった。
「逃げるんだ」
掠れた声で、若い男は後ろのスーツの男に言った。
「しかし、君は」
「いいから……早く離れるんだ!」
自分が最後の一人になろうとすれば、いずれは殺さなければならない相手のはずなのに。
この二人は、殺し合いのゲームに乗るつもりなど毛頭ないのだろう。互いを気遣い合っている。
「……すまん!」
スーツの男が、ビルの陰に駆け込む。そこに衝撃波を撃ち込んでやっても良かったが、捨て置くことにした。
あの男は放っておいても脅威にはならない。それよりも、手負いとはいえ戦いに慣れていそうな若い男を確実に仕留めることだ。
魔力を行使するにも精神力と体力を消費する。今は、それは避けるべきだ。
「……どうしても、戦う気なのか」
かなりの重傷だろうに、それを感じさせない隙のない動きで若い男が身構える。
「決まっている」
苛立ちを噛み殺しながら、答えた。
<時刻:午前7時前後>
【ダークヒーロー(女神転生2)】
状態:精神的にやや不安定
武器:日本刀
道具:溶魔の玉
現在地:夢崎区
行動方針:ゲームの勝者となり、元の世界に帰る
【ザイン(真・女神転生2)】
状態:脇腹に銃創、背中に刀傷、石化進行中
武器:クイーンビュート(装備不可能)
道具:ノートPC(スプーキーに貸与)
現在地:夢崎区
行動方針:仲間を集めてゲームを止める、石化を治す
【スプーキー(ソウルハッカーズ)】
状態:やや疲労
武器:?
道具:傷薬
現在地:夢崎区
行動方針:PC周辺機器・ソフトの入手、仲間との合流