女神転生シリ-ズでバトロワは可能か?

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501協力者
目を開けた時、見えたのは天井だった。
高い天井。人工の明かりが眩しい。背中には、硬い床の感触。
建造物の中だ。次第に意識がはっきりとしてくる中で、それをまず認識する。
次に浮かび上がったのは、疑問。
あの場所は屋外だった。そこで意識を失ったはずが、何故こんな場所にいるのか。
誰かに、ここまで運ばれたのか?
――誰に?
その疑問の答えは、不意に目の前に現れた。

「やあ。気が付いたかい」

こんな状況で、見知らぬ相手を前にしているというのに、警戒の色もない柔和な表情で。
スーツ姿の男が、細い目を更に細めて覗き込んできたのだ。
502協力者:2006/06/23(金) 11:16:39 ID:6+8Hvq6D
「あなたが、助けてくれたのか……」
「助けたってほど大したことはしてないさ」
壁に凭れて床に座ると、男はポケットから煙草を取り出して咥え、火をつけた。
濁った白い煙が、ゆっくりと立ち上り始める。
「ここに引きずってくるのが精一杯だったよ。君が重いものだから」
冗談めかして言う彼は確かにひょろりとした体格で、大の男一人を運ぶには明らかに力不足だ。
――が、重かった、というのは体格差だけの所為ではないだろう。
脇腹に手を触れる。固まった血と、それとは違う硬い、冷たい感触。
あれからどれだけ時間が経ったのかは判らないが、石化は確実に進行している。
「傷、痛むかい?」
傍らに座る男が、心配そうに覗き込む。
「支給品の傷薬で、簡単な手当てだけはしておいたんだが……ただの傷じゃなさそうだな」
そういえば、先程よりも僅かに痛みは治まっている。
「……ありがとう」
状況の深刻さには触れず、ただ感謝の言葉だけを返した。
そのまま少し、二人とも沈黙する。

「しかし、大胆なことをしたもんだ」
先に沈黙を破ったのは、スーツの男だった。
「格好の的になるって、判らなかった訳じゃないだろう?」
「それでも……できるだけ、犠牲は出したくなかったんだ」
全員が賛同してくれるとまでは、期待していなかった。
しかし、この都市に集められた中には、殺し合いを望まない者も決して少なくはないだろう。
行動を起こすことで彼らを助けられる可能性があるのなら、動かない訳にはいかなかった。
そして、仲間が集まれば、この忌まわしいゲームの主催者に一矢報いることもできるかもしれない。
こんな所業は、許されるべきことではないのだ。
503協力者:2006/06/23(金) 11:17:40 ID:6+8Hvq6D
男はまた目を細め、笑った。
「頼もしいな。どうやら僕の選択は正解だったようだ」
彼が深く息を吐き、白い煙が空気に溶ける。
「君なら少なくとも、敵になることはない。それに味方にすれば頼もしそうだ。
……そう思ったから、君をここまで引きずってきた訳だが」
「あなたも……このゲームを、止めたいと?」
「そりゃそうさ。僕は見ての通り、戦いなんてからっきしだからな。
それに、このゲームに巻き込まれた中には仲間もいる」
仲間、という言葉に、アレフのことを思い出す。彼は無事に逃げ切っただろうか。
それから、あの部屋に集められていた中にはベスも、脱走の罪で拘束されているはずのテンプルナイト、ヒロコもいた。
彼女達も、こんな無益な戦いは望まないだろう。
今このどことも知れぬ都市に閉じ込められている以上、支配者はこのゲームの主催者であり、殺し合いのルールこそが法だ。
しかし、それは神に仕える者の従うべき法ではない。
「……僕も、仲間と合流したいと思っている。
同じ考えの人が集まれば、こんなゲームを終わらせる方法も見付けられるかもしれない」
「同感だよ。保証はないが、今はその希望に賭けるしかない」
男は頷き、今までの飄々とした笑顔とは打って変わった真剣な眼差しで口を開いた。
「同盟といこうか」
無論、断る理由はない。
「喜んで。……本当に、ありがとう」
「いやいや。お互い様だよ」
男はまた、穏やかな顔で笑った。彼に拾われたのは、まさに奇跡のような幸運だったようだ。
504協力者:2006/06/23(金) 11:18:27 ID:6+8Hvq6D
「さて、と。君の荷物も持ってきたんだ。足りているかい?」
男が立ち上がり、少し奥へ歩いて行くと、ザックを持って戻ってきた。
中身を確認するため、上体を起こして壁に凭れる。
「起きても平気なのか?」
「ああ。お陰で、少し楽になったよ」
笑顔を返し、ザックを受け取って中身を確認する。
中身に不足はなかった。食料と水、方位磁針、地図、着火装置とランタン。――参加者リスト。
「そうだ……」
リストをザックから引っ張り出し、開く。
これから行動を共にすることになる男の仲間――それから、この男本人の名前も、確認しておかなくては。
「自己紹介がまだだったな。僕はザイン。あなたは?」
「ああ……スプーキー、とでも呼んでくれ」
リストに視線を走らせる。その名前はどこにも書かれていない。
「参加者リストに、名前がないみたいだが……」
「……すまない。桜井雅宏、だ」
今度はリストの中に、その名前は見付かった。
「スプーキーの方が通りがいいんだが。これには本名で載ってるんだな」
小さく苦笑して、スプーキーこと桜井は肩を竦める。
「このリストの中で、あなたの知っている人は?」
リストを横から覗き込み、スプーキーは二つの名前を示す。
片方は男、片方は女。どちらも漢字で書かれた、日本人の名前だ。
505協力者:2006/06/23(金) 11:18:57 ID:6+8Hvq6D
互いの仲間の名前、そして大まかな特徴を教え合ってから、参加者リストをザックに戻す。
次に確認したのは、支給された武器と道具。これも、しっかりザックに入っている。
武器は皮製の鞭。扱い慣れていないと自分が怪我をしかねないので、使わずにしまったままでいたものだ。
ベスかヒロコなら、これも使いこなせるのだろうが。
メガホンはアレフに支給されていたのを受け取って使っていたのだが、撃たれた時に落としてきてしまった。
そして、一番奥に入れていた物。
「お、ノートPCか」
それを取り出すと、スプーキーが目を輝かせた。
「コンピュータのようだけど、操作方法が掴めなかったんだ」
膝の上に乗せて、二つ折りになっているそれを開く。
持ち運びを考えて設計されたのだろう、さほどの重さは感じない小型のものではあるが、
ミレニアムで使い慣れていたアームターミナルに比べるとやはり嵩張る。
恐らく、古い時代のものだろう。操作感覚もミレニアムで使うコンピュータとはかなり異なっていた。
アレフと一緒に電源を入れて動かそうとしてみたが、オペレーティングシステムに馴染めず二人とも挫折し、
短時間で把握するのは難しいと考えて半ば諦めていたのだ。
「こいつは最新式だな。しかもアルゴンOSじゃないか」
電源を入れたコンピュータの画面に表示されたロゴを見て、スプーキーはますます上機嫌だ。
最新式――そう彼は言った。旧時代の遺物にしか見えない、このコンピュータを。
その言葉に、確信する。彼は、違う時代から来た人間なのだ。
いや、そもそも今は、ミレニアムが存在するのとは別の時代なのだろう。
集められた参加者の中には、記録映像でしか見たことのないような服装の者もいた。
この都市の町並みにしても、古めかしい――地下世界の廃墟が在りし日の姿を留めていたらこうだったろうか、という趣のものだ。
空間だけでなく、時間まで超越して、主催者はここに人を集めた。殺し合わせるために。
そんな力を持つ主催者とは、何者なのだろう。
506協力者:2006/06/23(金) 11:20:12 ID:6+8Hvq6D
「ちょっと、貸してくれ」
「動かせるのか?」
「任せてくれ。これでも、ハッカーグループでリーダーを張れる腕なんだ」
PCを渡すと、スプーキーは自分の膝の上で手早く操作を始めた。
しばらくすると咥えていた煙草を指で挟み、話し始める。
「さすがにネットワークには繋がっていないな。プログラムも、ほとんど入っていない……おや?」
モニタの中の何かに目を留め、スプーキーが不思議そうな顔をする。
横から画面を覗き込むと、彼の目に留まったものが何であるかはすぐに判った。

"DEVIL SUMMONING PROGRAM"

「……悪魔召喚プログラム」
覚えのある言葉だった。ミレニアムで、アレフが使っていたものだ。
行方不明だったアレフがセンターに戻ってきた時、彼は悪魔使いになっていた。
どうやって、と聞いたら彼は、悪魔召喚プログラムなるものを入手したのだと答えた。
それと同じものが、このPCにインストールされている。
「これは……ひょっとすると、大当たりかも知れないぞ」
声に緊張と興奮を滲ませ、スプーキーが言った。
悪魔を召喚する、即ち味方に付ける――このプログラムがあれば、それが可能になるということだ。
確か、この都市にも悪魔が出現する場所はあると説明されていたはずだ。
交渉次第ではあろうが、そこに行って悪魔を味方にし、身を守るための戦力にすることができる。
しかし。
「悪魔を……使うのか……」
躊躇があった。悪魔という総称で呼ばれる中には天使や精霊なども含まれてはいるが、大部分はその名の通り、「悪」の存在なのだ。
アレフが悪魔を従えていたのを見て多少認識が変わってはいたが、少なくとも、メシア教の教えではそういうことになっている。
507協力者:2006/06/23(金) 11:21:11 ID:6+8Hvq6D
「まあ、使うかどうかは別として……だ」
スプーキーが顔を挙げる。
「PCがあるなら、僕の力も活かせる。ケーブルでもあれば、コンピュータ制御の設備は好きに使えるし……
希望的観測だが、ネットワークが生きていれば可能性も広がるな」
この都市だけしか存在しない世界、と主催者は言っていた。
それを考えると、ネットワークは使えない可能性が高いだろう。
が、考えてみれば、この建物には電気が通っている。地図を見た限り、発電所はなかったはずなのに。
もしここが、近代に存在した一つの都市を、機能はそのままに写し取ったような場所だとしたら――試してみる価値は、ある。
「ケーブルに……それだと、予備のバッテリーも必要かな?」
旧型のコンピュータについての知識にはあまり自信がないが、その推測は取り敢えず当たっていたようだ。
「そうだな。欲しいソフトもいくつかあるが……
電器屋かPCショップでもあれば、最低限必要な物は揃うと思う。規格が違わないとも限らないが」
この都市の文明レベルと、このPCが作られた時代の文明レベルが同じという保証もない訳だ。
しかし、心配していても始まらない。
「探してみよう。動けば、誰か協力的な人に出会えるかもしれない」
「お、おい」
服の埃を払って立ち上がると、スプーキーは戸惑う顔をした。
「もう動いて大丈夫なのかい?」
「動ける内に動いておかないと、もっと大丈夫じゃなくなりそうだ」
動かずにいるというのは、いずれ完全に石化してしまうということなのだ。
石化を治すか、進行を止める方法も、できれば探したい。そのためにも、動くしかない。
「あなたの護衛程度ならできると思う。……けど、危なくなったら逃げてくれ」
「怪我人に無理はさせたくないな。足手纏いにはならないように気を付けるよ」
508協力者:2006/06/23(金) 11:21:54 ID:6+8Hvq6D
PCはそのままスプーキーに持っていてもらうことにし、ひとまず目的地を決めようと地図を確認する。
今いる場所は、市の中心部の蓮華台。この辺りには住宅が多いようだ。
「店が多そうなのは……夢崎区、かな」
煙草を持った手で地図の北側を示して、スプーキーが言う。地図の上に僅かに落ちた灰を、彼は慣れた様子で吹き飛ばした。
「物が集まる所には人も集まりそうだ。誰かに出会うこともあるかも知れないな……
同じことを考えていたとしたら、僕の仲間もそこに向かおうとするはずだ」
先程名前を聞いた二人のことだろう。どういう知り合いなのかは聞かなかったが、ハッカー仲間なのかもしれない。
「何かしら収穫はありそうだな。行ってみよう」
頷いて、ザックを肩に担ぐ。
傷はまだ痛むが、怪我の功名と言うべきか、石化が進んだために出血は止まっている。
とはいえ、激しい戦闘をする自信はない。襲撃を受けたとして、スプーキーを守り切れるだろうか。
自分のためにも、相棒となった彼のためにも、そして相手のためにも――敵対的な誰かとは出会わずに済むよう、祈った。


【ザイン(真・女神転生2)】
状態:脇腹を負傷、石化進行中
武器:クイーンビュート(装備不可能)
道具:ノートPC(スプーキーに貸与)
現在地:蓮華台から夢崎区へ移動開始
行動方針:仲間を集めてゲームを止める、石化を治す

【スプーキー(ソウルハッカーズ)】
状態:正常
武器:?
道具:傷薬
現在地:蓮華台から夢崎区へ移動開始
行動方針:PC周辺機器・ソフトの入手、仲間との合流
509名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 11:34:43 ID:6+8Hvq6D
お試しだと思って勢いで書いたらそのまま話続いてるので慌てて書いてみた。
一人称形式と三人称形式、どっちで書いた方がいいんだろこれ。
名簿の名前ですが、ネミッサは遠野瞳で載ってるつーことでひとつ…
って書いてから気付いたけど既にネミッサって名乗って行動してるじゃんorz
すいません、舞耶姉は名簿気にしてないか既に説明済みってことで…。

あと、ワルオ編書いた職人さん超GJ!
読み応えある心理描写で、ネタにしてもらえて光栄です。
他の職人さんの作品もどれも熱い展開でワクテカ。
510名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 14:05:46 ID:A0r5QM7M
GJ! GJ!
ザ・hーローかっこいいよ!
スプーキーかっこいいよ!
最近は投下作品増えてきて嬉しい。
自分も感想掲示板欲しいな。
511名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 14:42:12 ID:RLGIKK8o
そろそろ他のロワスレと同じように投下用スレと議論雑談スレに分けた方がいいかもしれませんね。
というわけで立てようとしたけど駄目だったんで誰か議論雑談スレ立ててくれると嬉しいです。
ついでに予約。周防克哉と白鷺弓子で書こうと思っています
512名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 15:02:21 ID:+diKYUWy
皆さんGJ!
>>511
立てようと思っているんですが、テンプレや、希望する板はあります?
513449:2006/06/23(金) 15:22:16 ID:xqj4cm0a
書き手さん乙!
>>512
したらばに避難所・打ち合わせスレ・感想スレって感じでどうだろう


まとめサイトにキャラそれぞれに行動も記載したから
登場させたいキャラの参考にしてもらえれば幸い

あと、ゲーム開始時間だが
夜明け前から始まってるんでいっそのこと
丑三つ時=2時半〜3時(このパラレルワールドでは)でどうだろう
それぞれの出身世界では、普通の活動時間から連れて来られてる…で
夜明け・日没はそれぞれ午前・午後6時だと今までの行動が可能かと
514名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 15:48:34 ID:RwvHrY8p
したらばだと、管理人にIPだかなんだかがバレるってことで書きにくいって人も多そう
ゲサロあたりのほうがいいんじゃないかな
515名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 16:13:04 ID:RLGIKK8o
テンプレとしては>>449のまとめサイトと参加者リストぐらいかな
女神転生バトルロワイヤル議論・感想スレみたいな感じで。板は同じ板かゲサロあたりでどうでしょう。
516512:2006/06/23(金) 16:24:05 ID:+diKYUWy
ただ今戻ってきました
見る限り、ゲサロがスレ重複の心配もなく、個人情報漏れに対しても
安心して意見を書きやすいのかな?
ゲサロだとIDが出ないため、自演で荒れる心配が少し気がかりですが、
ゲサロに立ててきても良いでしょうか?
517名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 16:31:52 ID:RwvHrY8p
荒れたらここの投下スレを一時借りればいいかと
>>516氏任せた
518名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 16:39:35 ID:xqj4cm0a
とりあえず、基本ルール以外の事項を書いてみた
添削して使ってもらえたら幸い

= 書き手さんへのお願い =
※話に矛盾(時間軸・場所・所持品など)、間違いが起こらないよう注意してください
※作中に登場した人物の状況や所持品などを、レス末に記載してください
※タイトルは名前欄に記載してください
※キャラを新しく参加させることは、できるかぎり避けるようにしてください
※他の書き手さんにつなぐためにも時間描写をできるだけ入れてください
※SSの登場キャラは基本的に早いもの勝ち(書きたかったキャラが先に死んだりしても文句は言えない)
※キャラの予約(〜を書きたい)は自由。この場合予約者が優先されます
※他の書き手のSSで登場したキャラを書くのも自由(殺してもOK)
 ただし元の書き手が「このキャラは最後までorこれ以降も書きたい」と言えばそれを優先。
※死亡者報告の放送を作中で流す場合はスレで報告してください
※叩かれても泣かない

= 基本注意事項 =
※原作を知りたい方は、原作をやるかストーリーを教えてくれるスレへ行きましょう

「キャラがどんな扱い、結末だろうと 絶 対 に文句を言わないこと」
519512:2006/06/23(金) 16:46:18 ID:+diKYUWy
テンプレ作ってみました

こちらは、RPG板にて現在進行中の、女神転生シリーズの
キャラクターを用いたバトルロワイアルのリレー企画
「女神転生シリ-ズでバトロワは可能か?」の議論・感想スレです。
作品への感想や、設定についての討論などにご使用ください。

現在の本スレ
ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1135066355/501-600

まとめサイト
ttp://playmemo.web.fc2.com/megatenbr/
520512:2006/06/23(金) 16:52:54 ID:+diKYUWy
テンプレ続き
参加者一覧
【真・女神転生】
ザ・ヒーロー(作中名未定)  ヒロイン(作中名未定)
ロウヒーロー(作中名未定)  カオスヒーロー(作中名未定)

【真・女神転生II】
アレフ(主人公)  ベス  ヒロコ   ザイン(=サタン)

【真・女神転生III-NOCTURNE】
主人公(人修羅・作中名未定)  橘千晶
新田勇   氷川

【デジタル・デビル物語女神転生】
中島朱実   白鷺弓子  リック

【デジタル・デビル物語女神転生II】
主人公(作中名未定)  ダークヒーロー(作中名未定)
ヒロイン(東京タワーの魔女・作中名未定)

【デビルサマナーソウルハッカーズ】
主人公(作中名未定)   スプーキー
ネミッサ(=遠野瞳)   ナオミ

【真・女神転生デビルサマナー】
葛葉キョウジ   レイ・レイホウ(麗 鈴舫)
シド   秦野久美子

【デビルサマナー 葛葉ライドウ対超力兵団】
葛葉ライドウ   鳴海昌平   大道寺伽耶   朝倉タヱ

【女神異聞録ペルソナ】
主人公(ピアスの少年・作中名未定)   園村麻希   南条圭
桐島英理子  サトミタダシ

【ペルソナ2罪・罰】
周防達哉(罪主人公)   天野舞耶  リサ・シルバーマン
周防克哉   上田知香(チカリン)  反谷孝志(ハンニャ)

【真・女神転生if...】
内田たまき(女主人公)  宮本明   赤根沢玲子   狭間偉出夫(魔神皇)


= 書き手さんへのお願い =
※話に矛盾(時間軸・場所・所持品など)、間違いが起こらないよう注意してください
※作中に登場した人物の状況や所持品などを、レス末に記載してください
※タイトルは名前欄に記載してください
※キャラを新しく参加させることは、できるかぎり避けるようにしてください
※他の書き手さんにつなぐためにも時間描写をできるだけ入れてください
※SSの登場キャラは基本的に早いもの勝ち(書きたかったキャラが先に死んだりしても文句は言えない)
※キャラの予約(〜を書きたい)は自由。この場合予約者が優先されます
※他の書き手のSSで登場したキャラを書くのも自由(殺してもOK)
 ただし元の書き手が「このキャラは最後までorこれ以降も書きたい」と言えばそれを優先。
※死亡者報告の放送を作中で流す場合はスレで報告してください
※叩かれても泣かない

= 基本注意事項 =
※原作を知りたい方は、原作をやるかストーリーを教えてくれるスレへ行きましょう

「キャラがどんな扱い、結末だろうと 絶 対 に文句を言わないこと」
521512:2006/06/23(金) 16:55:04 ID:+diKYUWy
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><参加者リスト><着火器具・携帯ランタン>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<COMP>が渡される。※地図は放送とともに禁止エリアに印、リストも放送とともに人名に斜線が入る
 <ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る
・生存者が一名になった時点で、ゲーム終了。その一名はどんな願いもかなえられる。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用の感知器がついた『呪い』が付けられる。
 この首輪には爆発の魔法が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が爆破を念じるで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。

+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します

522512:2006/06/23(金) 16:58:45 ID:+diKYUWy
+マップに関して+
・舞台は浮上スマル市全域(鳴海区除く)
【スマル市】
蓮華台
 町の中心に位置する
 ・七姉妹学園、シルバーマン宅、アラヤ神社、本丸公園、民家多数
 ・悪魔出現:七姉妹学園

平坂区
 西側
 ・春日山高校(地下に防空壕あり)民家多数
 ・悪魔出現:春日山高校 スマイル平坂

夢崎区
 北側
 ・繁華街、店多し、消防署、パチンコ屋なんかもあったり
 ・悪魔出現:GOLD(スポーツジム) ギガ・マッチョ(CDショップ) 
       ムー大陸(ゲームセンター)ゾディアック(クラブ)

青葉区
 東側
 ・野外音楽堂公園 キャスメット出版 スマルTV等
 ・悪魔出現:野外音楽堂公園 スマルTV(2F以降)

港南区
 南側
 ・海に面している、住宅多し 警察署あり
 ・悪魔出現:廃工場 空の科学館

・参加者はスマル市のどこかにランダム転送される
・支給品は武器+アイテム(例:アタックナイフ+傷薬5個 コルトボニー+魔石)


以上で大丈夫でしょうか?
>>518さん、まとめサイト管理人さん、有難う御座います
523449:2006/06/23(金) 17:06:41 ID:xqj4cm0a
>>522
乙です
基本ルールは議論がまだ終わってない点もあるようだが
現状はそれでいいんじゃないかと

実は自分で書いて誤植があった
>= 基本注意事項 =
>※原作を知りたい方は、原作をやるかストーリーを教えてくれるスレへ行きましょう
正しくは
※原作を知りたい方は、原作をやるか「ストーリーを教えてもらうスレ」へ行きましょう

正直スマンカッタorz
524名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 17:10:36 ID:RwvHrY8p
乙!
525449:2006/06/23(金) 17:18:31 ID:xqj4cm0a
もう一つ。正確には「首輪」ではなく「呪い」だったよな
ということは、首輪関連のルールを下記に書き換える必要があるんじゃないか?


+呪いの刻印関連+
・参加者には生存判定用の感知器がついた『呪いの刻印』が付けられる。
 この刻印には爆発の魔法が内蔵されており、授呪者が禁止された行動を取る、
 または運営者が爆破を念じる事で爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の刻印が爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
526512:2006/06/23(金) 17:25:30 ID:+diKYUWy
何とか立ちました

女神転生バトルロワイアル議論・感想スレ
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1151050496/l50

こちらの不注意で>>525を見落としてしまったのですが、
次スレ以降は>>525さんのレスで、首輪関連のルールを書き換えて下さいますと幸いです。
527名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/23(金) 17:27:36 ID:RwvHrY8p
乙!よくやった!
528449:2006/06/23(金) 17:29:10 ID:xqj4cm0a
乙でした
ところで本スレ(このスレ)の誘導アドレスが501-600になってるんだが…なぜ?
529512:2006/06/23(金) 17:31:14 ID:+diKYUWy
しまった・・・一番やってはいけないミスを犯してしまいました
>>1の本スレは

ttp://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1135066355/
の誤りです
530512:2006/06/23(金) 17:32:57 ID:+diKYUWy
>>529は誤爆です。gdgdで申し訳ない
531神に選ばれし者:2006/06/24(土) 20:30:45 ID:fDgicnmb
「そろそろ青葉区だ・・・」
ザ・ヒーローと大道寺伽耶廃工場を出てから数十分。
誰にも合わないように歩きづらい場所を歩いてきた。
最初は伽耶の体力を心配していたがそこはお嬢様とはいえ大正の女性。
ザ・ヒーローの認識する女性の体力よりはいくらかあるようだった。
「ええ・・・」
伽耶は答えた。
「言ってなかったのだけれど・・・」
ヒーローが口を開いた。
「これから入る青葉区は・・・僕の考えではおそらく激戦区だ」
「・・・そうなのですか?」
「うん・・・ビジネス街、あーつまり仕事をするための会社が多くある場所だから、役に立つものも多いだから・・・」
「人が集まる・・・ということですね?」
「そう、このゲームにのって本気で殺しに来ている人間がどのくらいいるかわからない・・・だが警戒は必要だ」
「・・・・・・」
伽耶は口ごもった。
伽耶は死ななければいけないと思ってはいたが、死ぬのが怖くないわけでも、まして自分の意思で死にたがっていたわけでもない。
当然恐怖はある。
「最悪の場合・・・君を守りきれないような奴と戦うことになるかもしれない、その時は何体か仲魔を付ける、覚悟をしておいてくれ」
「・・・・・・」
「怖いかい?」
「ええ・・・でも覚悟はできています」
「・・・わかった」
二人は激戦区、青葉区に入る・・・。
532神に選ばれし者:2006/06/24(土) 20:31:34 ID:fDgicnmb
どうして自分がここにいる?
他のものはともかくなぜ自分が?
自分は神に選ばれた人間では無かったのか?
参加者は名簿によれば45人・・・自分が選ばれたのはどのくらいの確率だろう?
偶然で片付けていいものなのか?
あの「声」・・・スピーカーから流れて来た声は言った。
「殺しあえ」
あの悪魔のような声。
あれを聞いた瞬間自分は震え上がるのを感じた。
恐怖?畏怖?畏敬?
どれとも付かぬ感情が体を駆け巡った。
「人を殺す」
その行為自体は経験したことが無いわけではない。
どうしても捨てておけぬ悪人を殺したことはある。
しかしそれは神のためであり正義のためである。
あの声が言ったことはつまり
「生き残りたければ虐殺せよ」
自分はこれまで献身的に生きてきたはずだ。
自分の信念とは真逆のこと・・・。
「怖い・・・神様・・・」
自分は・・・こんなところで死んでいい人間であるはずが無い。
そうだ、死んでいいわけがない無い。
神に選ばれた自分が・・・。
「・・・そうか」
頭にひとつの考えが浮かんだ。
そうだ神が間違いをするわけが無い。
ここに自分がいるのは・・・そう、試練だ。
自分が本当に選ばれたものなのか図るための神の試練。
そうだ、そうに違いない。
とすればあのスピーカの声は・・・神の意思。
ああ・・・自分はなんと愚かなのだろう・・・神の声をよりにもよって悪魔などと形容するとは・・・。
どうかしていたに違いない。
「神よ・・・無知故の無礼をお許しください・・・主の与えたもうた試練・・・謹んでお受けします」
祈りを始める・・・。
この祈りが終わったとき・・・自分は試練に出向く。
必ず・・・超えてみせる・・・自分は選ばれたものなのだ。
人の気配がする。
研ぎ澄まされている・・・絶好調だ。
自分の武器は「当たり」だ。
これ以上の武器はこのゲームにおいてそうはあるまい。
やはり神は・・・自分の味方だ。
・・・・・・・・祈りは・・・・・・終わった。
533神に選ばれし者:2006/06/24(土) 20:32:26 ID:fDgicnmb
「伽耶・・・さがっててくれ」
ヒーローは緊迫した声で言った。
「え?」
「人の気配がする・・・悪魔じゃない、参加者だ」
既にヒーローは鉄パイプを構えている。
「出て来い・・・とっくに気づいてるよ・・・こちらにやりあうつもりは無いそちらに敵意が無いなら何もしない」
ヒーローの声が響いた。
次の瞬間。
何かが光った。
「うあっ!?」
ヒーローは即座に反応するが左腕にかすった。
血がぽたぽたと流れ落ちる。
「ふふふふ・・・誰かと思えば・・・ヒーロー君じゃないですか・・・後ろにいる子はヒロインさんじゃありませんね」
光の走った方向から男が現れる。
長髪に痩躯の体・・・片手には銃を持っている。
間違いない、今撃った男だ。
「・・・ロウヒーロー」
ヒーローは男の名をつぶやいた。
そう、男はヒーローのかつての仲間。
そして袂をわかつた男。
献身的な精神と魔法の能力を持つ男。
ロウヒーローその人だった。
「そうですよ・・・久しぶりですね」
「お前は・・・」
目が・・・違う。
昔の献身的な目をしていた彼ではない。
狂気に取り付かれている。
この男は自分を・・・。
「昔のよしみです・・・楽に・・・殺してあげますよ」
殺しに来ている。
「伽耶!逃げるぞ!」
ヒーローが叫んだ。
次の瞬間再度銃から光が走る。
先ほどまでヒーローがいた地面に穴が開いた。
「はははははは!!すごいでしょう!この銃!ジリオニウムガンて言うんですよ!弾丸がいらない光線中・・・」
「つまり絶対に弾切れしないんですよ!逃げられますかね?女の子ずれでぇええええええええ!!」
ロウヒーローが叫んだ。
再び銃を乱射する。
その時。
「ジオンガ!」
「うっ!?」
ロウヒーローの体に電撃が走った。
ダメージはほとんど無い。
だが体が痺れて動きが一瞬と待った
「スクンダ!」
「!?」
次に飛んできたのは一時的にすばやさを下げる魔法。
ロウヒーローが振り向いた。
その先にいた魔法の出所、それは妖精ピクシーと地霊ブラウニー・・・ヒーローの仲魔だった。
「下級悪魔がぁああああ!!」
怒声と共にロウヒーローは二匹に銃を向ける。
「RETURN!」
発射される前に二匹は姿を消した。コンピュータに戻ったのだ。
ロウヒーローが一人取り残される。
ヒーローは気配を感じた段階で仲魔を召喚、迂回させ見えない位置で待機させていた。
ヒーローとて大破壊を乗り越え生き抜いた悪魔使い、備えは万全であった。
「フフ・・・ククククク・・・ハハハハハハハハ・・・さすがはヒーロー君・・・でもねぇ・・・」
「こんな小細工をするってことは!今のヒーロー君じゃあ僕に勝てないって!自分で言ってるようなもんなんですよぉおおお!!」
534神に選ばれし者:2006/06/24(土) 20:32:59 ID:fDgicnmb
「あの人追ってきていますか?」
走りながら伽耶がたずねる。
「舌噛むよ、喋らないほうがいい・・・大丈夫、あの手の魔法に威力は関係ない、時間は稼げたはずだ」
言いながらヒーローはGUMPを展開しピクシーとブラウニーに帰還を確認する。
次に召喚コマンドを打ち込む。
<妖鳥召喚・・・ハーピー・・・・GO!>
画面に六亡星が現れ鳥型の悪魔が目の前に現れる。
「どうしました・・・ヒーロー様」
鳥型の悪魔、ハーピーはヒーローに尋ねる。
「伽耶、正直言ってロウヒーローは強い・・・あいつは魔法も使える上にあの武器だ、正直守りきれない・・・そこでだ」
ヒーローは早口で続ける。
「ハーピー、伽耶をつかんで・・・あのビルの屋上に行ってくれ、安全になり次第GUMPを通して連絡する・・・いいね伽耶」
「ヒーロー様のためでしたら・・・」
「・・・わかりました・・・どうか死なないで・・・」
ハーピーはそういうと足で伽耶の片をつかむと飛び上がる。
「っ・・・」
伽耶から声が漏れた。
「痛かったですか?申し訳ありませんが私こういうつかみ方しかできませんの・・・」
「い、いえ・・・大丈夫です」
「ほほほ・・・そうですか、ヒーロー様の命です、あなたはなんとしてもお守りいたしますわ」
そんな声もだんだん遠くなる。
「さて・・・これからだな・・・」
撃たれた左腕の止血を済ますとヒーローはつぶやいた。
ロウヒーローは確実にゲーム乗っている。
ほおって置くわけには行くまい。
「あいつと戦うのは・・・2度目か・・・」
ヒーローはかつてロウヒーローを自身の手で殺している。
名簿にロウヒーローとカオスヒーローの名前を見たとき、伽耶の生まれた時代を聞いたとき。
いろいろな時空から参加者を集めていると気がついた。
あのロウヒーローはおそらくメシアとして転生した直後のロウヒーローだ・・・交渉は・・・通じまい。
ザ・ヒーローは覚悟する。
最悪の場合再びかつての友を殺す覚悟を・・・。
535神に選ばれし者:2006/06/24(土) 20:33:49 ID:fDgicnmb

【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:疲労 左腕に傷、応急手当済み
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ インストールソフト×3
道具:マグネタイト1200(使用により減少)
仲魔:妖精ピクシー 地霊ブラウニー始め10匹(ただし妖鳥ハーピーを伽耶に付けているため実質9匹、同時召喚は4匹まで)
現在地:青葉区
行動方針:戦力の増強 ロウヒーローの迎撃

【ロウヒーロー(真・女神転生)】
状態:ごく少量のダメージ スクンダによりすばやさ減少(時間経過で解除)
武器:ジリオニウムガン
道具:?
現在地:青葉区
行動方針:ゲームに勝ち、生き残る ヒーローの殺害


【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:疲労
武器:スタンガン 包丁 
道具:無し
仲魔:妖鳥ハーピー(但しザ・ヒーローの使役、そのため伽耶の命令を聞くかは定かではない)
現在地:青葉区
行動方針:ザ・ヒーローについていく



536名無しさん@お腹いっぱい:2006/06/24(土) 20:50:42 ID:Bgw5gCbn
>>531-535
乙です。面白かったです。

ロウヒーロー怖いよー。
537脱出への挑戦! 弐:2006/06/24(土) 21:56:27 ID:eQ9Ej3ku
この街をもっとよく知るため、七姉妹学園の生徒を探し、ライドウ、鳴海、レイコの三人は一路、
七姉妹学園の校舎が置かれている蓮華台に向かって移動していた。
まさか学校に生徒そのものが来ているとは考え難いが、
何処にいるのか解らない以上、目標はそこしか思いつかなかった。
ルートは死角が全く無く、やたらと開けた四車線の大通りを避け、
それとは真逆の北側にある山際のルートを通ることにした。
こちらなら多少隠れることが容易な上、
今頃街中で情報収集に奔走しているであろう他の参加者と鉢合わせになる可能性が低いと思われるからだ。
それに、他の二人は知らないが、少なくともライドウは幼少の頃より山の中で育ったため、山道の移動には慣れていた。
一応、先ほど基本的な行動方針は決まった。
この街の動力源を探すことだ。だが、課題は多い。
まずは飛び道具の確保である。
一応こちらにもクロスボウはあったが、前日の内から何度も聞こえる銃声で判ることだが、
銃を持っていてやる気になっている相手がいるということだ。
そんな連中と出会ってしまった場合、一撃ごとに新たな矢の装填が必要なボウガンはあまりにも頼りない存在だった。
それにこれをまともに扱えるのが鳴海だけというのもマイナス点である。
それから、出来ることなら封魔の管を何処かで確保したい。
これはこの街に存在するかどうかすら怪しいが、鳴海の支給品の中に悪魔召還に使えそうな道具が入っていたことから可能性はゼロでは無いだろう。
誰かの支給品に含まれているのなら、是非交渉して手に入れておきたい所だ。そう上手く行くとは思えないが…。
管があるかどうかで、ライドウのデビルサマナーとしての真価がようやく発揮される為、今後の戦局が大きく変わるのである。
それから、誰の眼にも付きそうに無い、隠れることが可能な場所の確保だ。
デビルサマナーとして危険で厄介な激務に慣れているライドウや、探偵として張り込み、追跡を数多くこなしているであろう鳴海はともかく、
今まで普通に生活していたのであろうレイコにかなりの疲弊の色が見えているのだ。
昨晩は一睡もしていない上、この数時間舗装されていない山道を歩き通しなのだから無理も無いだろう。
「この辺で休憩でもしないか?」
少々息の上がっているレイコを見るに見かねてか、鳴海がそう進言し、二人は足を止めた。
538脱出への挑戦! 弐:2006/06/24(土) 21:58:35 ID:eQ9Ej3ku
三人は昼間だというのに太陽の光があまり届かない茂みに隠れるようにして座り込んだ。
古い切り株に腰を下ろしている鳴海は煙草を取り出し、一本口に咥えるとマッチで火をつけた。
それから大きく空気を吸い込み、ゆっくりと煙と一緒に吐き出す。
「それにしても、魔法の力って偉大なもんだな。全く。」
実は鳴海がゲーム開始早々半谷教頭にやられた腕の傷は、レイコが魔法で完治させていたのである。
「これさえあれば医者要らず薬要らずだよ。」
「でも…ちょっと気になってるんですけど。」
落ち葉の上にきちんと足を揃えて上品に座っているレイコが言った。
「どうも回復魔法が使いにくいような気がするんです。何ていうか、別の大きな力に無理矢理押さえつけられているような…。」
実際、レイコが鳴海に使用した魔法は、瀕死の重傷者でも歩けるようになるほど強力なものだったが、
浅い傷を塞ぐので精一杯の効果しか上げられなかった。
「多分、これが一枚噛んでるのではないでしょうか。」
今まで黙っていたライドウが、詰襟の先を摘みながら呟いた。
この下には、ゲーム参加者全てに平等に与えられた死の宣告が刻まれているのだ。
姿すら現さなかった主催者がその気になれば一瞬で全員の命を奪うことすら可能な呪いの刻印である。
だが、魔神皇の強烈な魔法を見る限り、攻撃魔法の威力が殺されているとは思えない。
当然、奴の実力の半分以下であの破壊力だということも考えられるが、
魔法を使った当の魔神皇が違和感を覚えている風には見えなかったからだ。
「厄介だな。」
「えぇ、厄介です。」
運よくこの地獄の街を脱出出来たとしても呪いが消えてくれるとは限らない。
恐ろしい相手だった。
と、その時。
「なっ!」
ライドウの優れた動体視力がそれを捉え、咄嗟に隣にいたレイコを庇う様に押し倒した。
刹那、木と木の隙間から勢いよく飛んできたそれはライドウのいた位置にぶつかると、破裂して真っ白な煙を噴き上げた。
発煙筒である。一体何処から投げられたのか…
ライドウが煙の中で考えを巡らせているとその奥から人影が飛び込んできた。
反射的に脇差を抜き、襲ってきてそれに備える。直後、柄を握る両手に重い衝撃が圧し掛かった。
衝撃を押し返しながらレイコを確認する。

二人とも、発煙筒の発するくもった気の中にはいない。
どうやら鳴海がレイコを連れて逃げてくれたらしく、少し安心した。
539脱出への挑戦! 弐:2006/06/24(土) 22:01:48 ID:eQ9Ej3ku
「そうだ。それでいい。」
突然刃を押し付けてきた人物が低くくぐもった声で言った。
西洋剣の刃といっしょに押し付けられた顔は、ライドウと同じくらいの年頃の少年だった。
寝癖のような癖毛で、耳に銀のピアスを着けている。顔は限りなく無感情に思えた。
ピアスの少年がもう一度大きく剣を振りかぶった時、ライドウは枯葉だらけの地面を転がってその場を逃れた。
だが、少年が剣を振り降ろすほうが少し早かったのだろう。
ライドウの白い頬に傷が入り、右の肩口が大きく抉れた。裂けた学生服からどろりとした血液が吹き出す。
少年が、間合いを取るため背後に飛び、その隙に立ち上がって体勢を整える。
少年よりも先に素早く攻撃を仕掛けるが、ライドウの一撃は少年の剣であっさりと薙ぎ払われた。
無理に仕掛けるのではなく、自分の丁度良い間合いを取ってから攻撃に移る。
見かけによらず、なかなか戦い慣れているようだ。
しばらく無言の睨み合いが続いたが、発煙筒の煙が晴れた頃、
少年の口元が微妙に歪み、ライドウは強烈な殺気に気圧されることとなった。
「ペルソナ…」
そう言った単語を彼が呟いた瞬間、少年の背後に別の人影が浮かび上がる。
三面六臂の黄金の魔神、ヴィシュヌである。
インドの叙事詩「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」で名高いその美しき神はヒンズー教三神に数えられる。
ペルソナと呼ばれたそれはライドウが使役する悪魔とは別の能力らしいが、
こちらにろくな武器が無い以上、その力に晒されるのはまずい。
「くっ!」
ライドウは奥歯を噛み締めると、召還されたヴィシュヌが何かの力を発する前に刀を構えて突撃した。
肩の傷は大して痛まない。
それほど深い傷では無かったのか、単に感覚が痺れているのかは解らなかったが。
相手が強力な切り札を出した時は下手に逃げ回るよりも先に仕掛けて一撃で終わらせる方が安全。
それはライドウの積み重ねられた戦闘経験がもたらした最大の防御法である。
「……!」
手負いの筈のライドウが、予想以上の動きを見せるので少年も少し動揺したのだろう。
刀の一撃は何とかかわしたが、ヴィシュヌの影は消えていた。
だが、怯むことなく少年は剣を構える。
が、突然体が、ぐらりと大きく傾いた。
少年の肩に後ろからスチール製の矢が刺さったのである。
彼の背後を見ると、木陰から鳴海がクロスボウを抱え、次の矢を装填しようと手を動かしていたのだ。
その横から顔を出したレイコがこちらに向けて何かを投げる。
それは空中で破裂し、先ほどの発煙筒とは桁違いの量の煙を噴き上げた。鳴海に支給された煙玉である。
煙で視界が覆いつくされる前にライドウはレイコが思わせぶりに右手を上げるのを見た。
それから眼で訴えた。「逃げて」と。
540脱出への挑戦! 弐:2006/06/24(土) 22:08:19 ID:eQ9Ej3ku
ライドウたちは山の斜面を転がり落ちるように逃げまくった。
「何だよあれ! もの凄いヤバイのがいるじゃねぇか!」
鳴海が走りながら喚くが、ライドウもさっきの襲撃者は全くの想定外で、何者かまでを観察している余裕は無かったのである。
しばらく走り、ようやく人の気配が無い辺りまで来た所で足を止めたが、ライドウはあることに気付いた。
「ライドウどうした?」
きょろきょろと周囲を見渡す。鳴海も気付いたようで、目を大きく見開いた。
「レイコさん…?」
そう、レイコの姿が無かったのである。

聖エルミン学園の制服を纏ったピアスの少年、藤堂尚也は背中に矢を刺したまま、思惑した。
考えているのは矢のことではない。
かなりのダメージには違いないが、これを今抜くわけにはいかないのだ。
何の考えも無しに体に刺さった鏃をを無理矢理抜けば大量出血によるショック死は免れないからである。
今は放っておくことしか出来なかった。
それよりもまず、先ほどの混乱に乗じて捕まえたこの少女をどうするかである。
用事があるのはさっきの黒いマントの男だけなので、この少女を今すぐ殺す必要は無い。
このまま連れ歩いた所で人質としての価値が見出せるかどうかも怪しかった。
相手があの、黒いマントの男なら…。

尚也は夜明け前、青葉区の通りを歩いていた。
急なことだったから自分一人でこの先のことを判断することは出来ないような気がして、仲間を求めていたのである。
自分の知っている人物、同じ学校の園村麻希、南条圭、桐島英理子、里見正…。
他にはハンニャ教頭もいたようだが、あの糞ハゲジジイが自分に協力してくれるとは思えない。
こいつは除外するとして、夜明けまで街中を探した挙句、発見したのが園村麻希であった。
だが自分が彼女に声を掛けた瞬間のことだ。
突如抜き身の刀を手にし、まるで時代錯誤とも言えるような黒マントを羽織った先ほどの男が麻希に走り寄り、
麻希が自衛手段として持っていたのであろう包丁を奪って容赦なく刺し殺したのである。
(本当は園村麻希の自殺を止めようとしただけなのだが、暗闇と角度の関係で尚也の眼にはそう映ったのだ。)
園村麻希が自分にとってどういう存在なのか、尚也にはうまく掴めていなかった。
セベクスキャンダルを共に乗り切った麻希とは、ただのクラスメイト、友達と言える仲ではない。
だが、恋人同士というほどの間柄でも無かった。
それなのに、麻希の死を間近に見た時のあの喪失感はとても口に出来るような感情ではなかった。
胸のぽっかりと大きな穴が開き、それはもう二度と塞ぐことは出来ないだろう…。
その瞬間、自分のやるべきことが決まった。あの男を殺すのだ。自分の手で。
麻希の命を奪った男の顔は殺すまで、絶対に忘れない。
彼女の鮮血を浴び、不気味に笑った(ように見えた)あの顔は、必ず自分の手で潰してやる!
「離して。」
細腕をがっちりと掴んでいる眼鏡の少女が抗うように身を捩った。
「逃げるのか?」
当然だろう。あの男の仲間なのだから。
だが、少女の口から飛び出した言葉は尚也の予測を大きく裏切った。
「背中を見せてください。早くしないと手遅れになってしまいます。」
541脱出への挑戦! 弐:2006/06/24(土) 22:15:15 ID:eQ9Ej3ku
【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 顔と右肩を負傷
武器 脇差
道具 傷薬×2
現在地 蓮華台に向かう山道
行動方針 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出

【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上

【赤根沢レイコ(if…)】
状態 正常
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ゲームからの脱出

【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 背中にスチール製の矢が刺さり負傷
武器 ロングソード
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
現在地 同上
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇をうつ


せっかくのピアスの少年が復讐に燃えていてすみません。
彼の名前は上田信舟先生のコミック版からです。
自分ではいい名前が思いつきませんでした。
542名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/25(日) 00:14:57 ID:Z3Qbvv30
すみません。ピアスの少年の矢が当たった場所が最初違っています。
背中ということにしておいて下さい。
失礼しました。
543セーブ機能:2006/06/25(日) 00:55:58 ID:fDphoNLC
>>542
具体的な変更点を記載記載してもらえば、
まとめで変更しておきますよ?
勝手に変更すると意図が変わってしまう場合もあるので
544誕生そして再開:2006/06/25(日) 01:05:15 ID:OiVmB8jM
走る。
動きが鈍いのがもどかしい。
先ほど受けたスクンダのせいだ。
だがこんなものすぐに効果は消える。
ヒーロー君の出した仲魔・・・先ほどのピクシーとブラウニー。
いずれも下級悪魔だ。
成るほどさすがはヒーロー君、最小限のダメージですむよう弱い悪魔ながら厄介な魔法を使える奴を選んだようだ。
しかし、僕をけん制するために構えたあの鉄パイプ・・・武器はコンピュータだけのようだ。
そして僕とて仮にもメシアあんな下級悪魔の攻撃魔法を食らったところでたいしたことも無い。
注意すべきは状態異常魔法やンダ系の魔法のみ。
それもあんな下級悪魔では連発はできまい。
「ヒーロー君・・・物事には前座とトリがあります・・・もちろんこれは演劇の話しですが・・・」
体が軽くなる、スクンダが解けた。
軽い、スクンダをかけられる前より軽くなったようだ。
「このゲームは所詮!神が僕のために作り上げた試練という名の演劇でしかない!これがどういうことかわかりますかぁあああああ!?」
速く速くもっと速く。
速く追いつくんだ。
「僕が最初に出会った君はぁぁぁぁあああああ!!僕に殺されるための前座でしかないんですよぉぉぉおおおお!!!!」


ロウヒーローの声が聞こえる。
「あいつがあんな大声を上げるなんて・・・」
ヒーローの知るロウヒーローは落ち着いた人間だった。
まるで人が変わったようだ。
「・・・このゲームの魔力・・・か」
人の心にすむ魔。
それは時として人を蝕む。
献身を重んじ神の法に従う彼にもそれは例外ではない。
「ロウヒーロー・・・確かに現状の戦力は君が上だ・・・だが」
ヒーローは鉄パイプを構えた。
「策はできた・・・悪魔召喚師っていうのは力押しだけでどうにかできるような生き物じゃないんだよ・・・」
545誕生そして再開:2006/06/25(日) 01:05:54 ID:OiVmB8jM
見えた。
ロウヒーローの視界にヒーローの姿が浮かぶ
追いつくのには時間がかかるだろうが近距離武器しか持たぬヒーローと銃、しかも弾切れの無い銃を持つロウヒーロー。
どちらが有利かは明白であった。
その状況にロウヒーローは笑みを浮かべる
「ふふふ・・・どうやら狩るもとと狩られるもの・・・立場は決まったようですね・・・ふふふふふふふふ」
ふとヒーローが立ち止まったのが見える。
「おや・・・そうか・・・観念しましたか・・・!?」
そう思ったその時ヒーローが何かを投げた。
ロウヒーローはとっさに防御する。
ガンッという音がした。
「ぐぅ・・・」
ロウヒーローの傍らにはカラカラと鉄パイプが転がっている。
「う・・・腕が・・・この威力・・・この遠投・・・タルカジャ・・・ですか」
ヒーローの傍らには獣の姿が見える。
「あれは・・・魔獣サンキ・・・でしたか・・・久しく見ていませんが・・・下級悪魔ですね」
ヒーローの姿はもう無い。どうやら横のビルに入ったようだ。
「ですが・・・僕の治癒魔法・・・忘れたとは言わせませんよぉおおおお!ディアラマァ!!」
ロウヒーローの手が光を放ち腕に受けたダメージが癒えていく。
しかし。
「治癒魔法が鈍いよぉですねぇ・・・」
今使ったディアラマはいつものディアラマではない。
この回復魔法の出力では大ダメージを負ったとき回復しきれまい。
「しかし仲魔を使うヒーロー君とて条件は同じ・・・・・・立場は変わりません・・・」
ロウヒーローはヒーローの入ったビルへと歩いていく。
「追い詰めた・・・わけではありませんね、飛べる仲魔がいればそれにつかまって移動できますからねぇ」
実は飛べる仲魔は先ほど伽耶に付けたハーピーのみなのでそうではない・・・がロウヒーローが知るはずも無い。
「・・・これは」
ビルの入り口に立って気づいた、入り口が凍らされている・・・いや。
「巨大な氷でふさがれていますね・・・ブフ系魔法ですか・・・これでは入れませんねぇ」
ロウヒーロは銃を構え引き金を引く。
光が走る。
しかし。
小さな穴が開いただけだった。
「おや・・・?そうですか、物を貫通するこのジリオニウムガンでは砕くことはできませんもんねぇええ」
ロウヒーローは叫びながら氷に手をかざす。
「マハザンマァ!!!」
ロウヒーローが叫ぶと手から衝撃波が発生して氷を打ち砕く。
「くくく・・・魔法なら問題なく砕けますねぇ・・・」
ロウヒーローは砕けた氷の破片を踏みにじりながら中に入る。
「ジオンガ!」
「スクンダ!」
入ったと同時に先ほどの2匹が魔法を仕掛けてくる
「ぐぅ!?」
「「RETURN!」」
ロウヒーローが振り向く前に2匹はコンピュータまで戻る。
「下級悪魔の分際でぇえええええ!?」
ロウヒーローは気がついた。
「フフフ・・・エレベーター・・・壊されてますねぇ・・・それに・・・」
ロウヒーロは階段の方に目をやる。
そこは先ほどの入り口と同じように氷でふさがれているおそらくその奥にも何枚も氷があるだろう。
「ふはははははははははは!」
ロウヒーローは高笑いを始める。
しかし顔が憤怒の表情に変わる。
「どこまでも小細工をぉぉぉおおおおおお!?いいでしょう!そちらが小細工というなら圧倒的な力で!」
「あなたを蜂の巣にしてあげますよぉおおおおおお!!!」
546誕生そして再開:2006/06/25(日) 01:07:31 ID:OiVmB8jM
階下から叫び声が聞こえる。
「氷に切れてるようだな・・・あいつ意外と激情家だからなぁ・・・それですむレベルじゃない気もするけど」
ヒーローは既に最上階まで上っていた。
「ヒホホー・・・もう駄目ホー・・・」
最後の氷を張り終わったジャックフロストが倒れる。
「ご苦労様、ありがとうジャックフロスト・・・COMPに戻って休んでてよ」
ヒーローがジャックフロストに声をかける。
「ヒホ・・・ヒーロー、聞きたいことがあるホ」
「ん?」
「ヒーローは合体で戦力を増強するつもりなんだホ?」
「・・・うん」
「気にしなくていいホ。オイラ達が弱いのはわかってるホ」
「それにヒーローの仲魔になったのはそうされてもいいと思ったから仲魔になったんだホ」
「・・・・・」
「だからお願いが有るホ」
「え?」
「最初の合体は・・・オイラとランタンで合体させて欲しいホ」
「君と・・・ランタンで?」
「そうだホ、ランタン役に立てそうに無いって悩んでたホ」
ジャックランタンはジオやブフなどのような追加効果の無いアギ系しか持たない。
圧倒的に戦力の高いロウヒーローを迎え撃つ際それは致命的だった。
「それは・・・」
「ヒーローがいい奴だってのはみんなの気持ちホ、役に立てなくて悔しいのはよくわかるホ・・・だから」
「フロスト・・・」
「だから合体で役に立つホ、お願いホ」
ヒーローはそっとジャックフロストの頭をなでる。
「わかった・・・ありがとう・・・MAGの都合でみんな呼ぶことはできないけど・・・」
「ヒホヒホ、ランタンにも他のみんなにも伝わってるはずだホ」
フロストが嬉しそうに笑う。
「じゃあオイラは戻るホ、バイボイホー」
そういってフロストはコンピューターに戻る。
「・・・生き残らなくちゃな」
そういうとヒーローは部屋に入る。
ロウヒーローを迎え撃つ最後の仕上げのために・・・。



547誕生そして再開:2006/06/25(日) 01:08:16 ID:OiVmB8jM
「フーフー・・・また・・・氷ですか・・・マハザンマぁ!!」
氷が砕け散る。
今のを入れて15枚。
すなわち15発マハザンマを撃ったことになる。
その疲労はどんどん蓄積されていく。
「ふーふー・・・マハザンマは・・・後一発が限界って所ですか・・・」
ロウヒーローは息を荒げている。
螺旋階段を上り折り返す。
また氷が有る。
ロウヒーロは歯軋りをする。
しかし透き通って見える氷の向こう。
「やぁ・・・お疲れのようだね、ロウヒーロー」
ヒーローだ。
「氷はこれで最後だよ・・・とっとと割ったらどうだい?僕を殺したいなら・・・」
そういってヒーローは部屋の中に入っていった。
「フフフフフフフフ・・・ククククククク・・・・マハザンマァ!」
最後のマハザンマと引き換えに最後の氷か破壊される。
それを乗り越えヒーローを追う。
角を曲がりヒーローの入った部屋に入る。
「追い詰めましたよぉぉおおおおおおおおお!?ヒーローク・・・!?」
瞬間。
ロウヒーローの銃を持った手を何かが高速で打ち据える。
「ぐぅ!?」
銃が床に落ちる。
「アドバンテージは無しだだね・・・ロウヒーロー・・・」
ヒーローの鉄パイプだった。
奥に言ったと見せかけ曲がり角の死角で気配を消す。
初歩的な奇襲だが激昂したロウヒーローには効果覿面だった。
「今度有利なのはこちらだよ・・・魔法の連発でお疲れのようだ・・・その上こちらはタルカジャスクカジャともに限界までかかってる」
ヒーローが鉄パイプをロウヒーローに向ける。
「殺す気は無い・・・ただちょっと・・・気絶してもらうだけさ」
「フフフフフフフフ・・・あなたは・・・何時も何時も中途半端だ」
ロウヒーローが何かを取り出し地面に打ち付ける。
とたんに煙があたりを包む。
「煙幕弾!?・・・・ぐっ!?」
通常逃走のために使用するそれを地面に打ち付けた。
548誕生そして再開:2006/06/25(日) 01:09:21 ID:OiVmB8jM

煙が・・・はれた。
そこには。
銃を突きつけられたヒーローとヒーローの上で銃を構えるロウヒーローの姿があった。
ロウヒーローが口を開く。
「あの隙に銃を弾くだけで頭を砕くことをしない・・・かといって他人のために死ぬ気にもならない・・・ほんとに中途半端ですよ、あなたは」
ロウヒーローの銃が光る。
「ぐぁああ!?」
打ち抜いたのは右腕・・・握っていた鉄パイプが転がる。
「最初僕・・・昔のよしみで楽に殺してあげるって言いましたよねぇ・・・アレは撤回します」
再び、光。
「うぁああああ!」
今度は左腕に風穴が開いた。
「散々コケにしやがってぇえええええええ!!!じわじわとなぶり殺してあげますよぉおおおおお!?」
次に肩に風穴

「両肩ぁああああ!次に両足ぃいいいいいい!!その次は腹ぁあああああ!さらに目ぇえええええええ!」
「僕が満足して脳漿をぶちまけるまでぇええええ!恐怖と痛みにのたうちまわれぇええええええ!!」
「はぁはぁ・・・ふっ」
ヒーローがにやりと笑った。
「何がおかしいぃぃいいいいい?!怯えろ!怯えて僕を満足させろぉおおおおお!?」
「気が付かないか?悪魔召喚師が・・・コンピューターを持っていない・・・何かあるかと思わないか?」
先ほどのヒーローの手には鉄パイプのみ。今も、体のどこにもGUMPは無かった。
「右を見てみな」
ロウヒーローが右を向く。
次の瞬間。
黒い巨大な影。
それがロウヒーローの左側から襲い掛かった。
「ああ・・・ごめん、僕から見て右だったよ」


549誕生そして再開:2006/06/25(日) 01:10:29 ID:OiVmB8jM
「最初は悪魔の現れた日、2回目はTDLに向かうあの日・・・」
ロウヒーローを襲った黒い影。
それは今もロウヒーローを押さえつけている。
「なっなっなっ・・・何でこいつがここにぃいいいいいいい!?」
それは・・・。
「君に助けられるのは3回目だね・・・ありがとう・・・まさか君が来てくれるなんて・・・久しぶり、パスカル」
青いたてがみを持つ地獄の番犬。
ケルベロスだった。
「グゥ・・・ヒーロー・・・コイツハ・・・死ハズデハ・・・」
ケルベロスが尋ねる。
「説明は後だ・・・さて・・・ロウヒーロー・・・実は僕は・・・あるものを探してここに入ったんだ・・・君を迎え撃つためじゃない」
ケルベロスの現れたほうにあったもの・・・それはノートパソコン・・・。
「詳しい説明は省くけど・・・強力な仲魔を作るためには・・・パスカルが来てくれたのは嬉しい誤算だけど・・・パソコンが必要だった」
ザヒーローのインストール作業は既に完了していた。
銃創もガリバーマジックにより非常にゆっくりとではあるが回復しつつある。
「でも町はこんなだ・・・電源があるかどうかもあやしい・・・ところでこのビル・・・何の会社か知ってるかい?」
「キャスメット出版・・・出版社だ」
「当然記者だっているだろう、となれば当然ノートパソコンは必需品・・・予備電源と共にね」
「もくろみはあたったよ・・・さよなら・・・ロウヒーロー・・・パスカル、頼む!」
「ガゥ!!」
ヒーローの支持と共にケルベロスが爪を振り上げる。
瞬間。
「トラフーリ!!」
脱出呪文。
ロウヒーローのおそらく最後の魔力。
その呪文は・・・成功した。
既にケルベロスの前にロウヒーロウはいない。
「グゥ・・・スマン・・・逃ゲラレタ・・・」
「・・・まだ魔法が使えたなんて」
「・・・追ワナイノカ?」
「いいよ・・・もともとぼくから殺しにいったわけじゃない・・・それに迎えに行かなきゃ・・・仲間がいるんだ」
「ソウカ・・・ヒーロー、俺ノ背中ニ乗レ・・・銃創ガ痛イタムダロウ・・・」





ヒーローは屋上の扉を開ける。
ここに伽耶とハーピーがいるはずだ。
「伽耶・・・?・・・どこにいる?伽耶・・・」
ヒーローが一歩踏み出す。
妙な感触がした。
ヒーローが下を見る。
「!?」
髪の毛だ。
ヒーローの足の下には無数の髪の毛が散乱していた。
「ヒーローさん?」
後ろから伽耶の声が聞こえる。
ヒーローが振り向くとそこには長かった髪がばっさり切られた伽耶がいた。
「よかった・・・無事だったんですね」
伽耶がヒーローに近づく。
「あっ・・・この髪ですか?やっぱり包丁じゃ切りづらいですね・・・変じゃないですか?」
「え?ああ・・・似合ってるよ」
「私が切ってあげましたの・・・」
ハーピーが後ろから現れた。
「私・・・少しでもヒーローさんの足手まといにならないようにって思って・・・気休めですけどね・・・」
伽耶が少し笑顔になった。
「・・・うん、休んでる暇も無い・・・速く青葉区から出よう、インストールは終わったよ・・・ノートパソコンと変えのバッテリーも貰ってきた」
新たな仲魔を得て再び二人は動き出す・・・天秤は今だ揺れず・・・しかし別の何かが・・・動き始めた。
550誕生そして再開:2006/06/25(日) 01:11:28 ID:OiVmB8jM

【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:疲労 負傷(両腕と右肩に銃創、但しガリバーマジック効果と仲魔ディアによりほぼ回復)
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み)
道具:マグネタイト700(使用により減少) ノートパソコン 予備バッテリー×3
仲魔:魔獣ケルベロス、妖鳥ハーピーを始め9匹(ジャックフロストとランタンの合体事故によりケルベロス誕生 他も合体予定)
現在地:青葉区から離脱中
行動方針:戦力の増強 青葉区より離脱

【ロウヒーロー(真・女神転生)】
状態:爪あと、鉄パイプなどによる軽症 疲労大 現在魔法使用不可
武器:ジリオニウムガン
道具:煙幕弾×9(ひとつ使用)
現在地:青葉区(逃走中)
行動方針:ゲームに勝ち、生き残る 体力の回復


【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:疲労 髪の毛を切る
武器:スタンガン 包丁 
道具:無し
仲魔:無し
現在地:青葉区から離脱中
行動方針:ザ・ヒーローについていく
551名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/25(日) 01:23:34 ID:5Xkn7vZ9
か、伽耶ーっ!
552名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/25(日) 01:36:38 ID:Z3Qbvv30
>>543
すみません。
では鳴海が放った矢が藤堂に当たったところが肩になっているのですが
背中に直しておいてください。
お手数お掛けしてすみません。
553脱出への挑戦! 参:2006/06/25(日) 03:11:42 ID:Z3Qbvv30
それが何を意味するのかを悟ったライドウは、何も言わず元来た道を遡ろうとした。
だが、鳴海が翻されたマントの裾を掴んでそれを止めた。
「離してください鳴海さん! このままじゃレイコさんが!」
強力な敵がまたも出現し、レイコの所在が知れなくなった以上、ライドウはどうしても冷静ではいられなかった。
「待てよ! レイコちゃんは大丈夫だから! 絶対逃げ切ってるはずだ!」
「どうしてそんなことが言えるんですか貴方は! さっきの力見たでしょう!?」
それはピアスの少年が発したペルソナという未知の能力のことである。
発動だけはライドウの咄嗟の機転で何とか回避出来たが、あの強力な殺気はただ者では無い。
インドの主神、ヴィシュヌの名は伊達では無いということか…。
ピアスの少年には鳴海が多少のダメージを与えた。
だが同時にライドウもまた、傷を負ったのである。
「だからって、今引き返したらお前まで…!」
「レイコさんを助けないと!」
(やれやれ、こいつゴウトがいなかったらこんなにガキだったのかよ。
……それとも、レイコちゃんのせいか?)
ライドウがこの街にやって来てゴウトと逸れ、それからレイコに出会ってからというもの、
鳴海の知っている彼とは全く別人のような変化が続いている。
無愛想、無口、無表情と三拍子揃っている奴だと思っていたが、それは師匠のゴウトがいたからこその姿だったらしい。
元々少し浮世離れした奴だったから、自分の感情表現が豊かになったことは良い変化かもしれない。
だが、冷静に対処しなければ、それこそ命に関わるこの状況で、こんなに熱くなられたら元も子もないのだ。
「…悪いな、ライドウ。」
鳴海は低く呟くと、今まさにライドウが脱ぎ捨てようとしているマントから手を離し、代わりに負傷した右腕を捻り上げた。
「ぐっ!」
激情に駆られ、忘れかけていた痛みにライドウが顔を歪ませるのも束の間、鳴海はライドウの頬を叩いた。
「お前が落ち着かなくてどうするんだよ。眼を覚ませライドウ! 眼を覚ませ!」
それから鳴海は、ライドウが落ち着きを取り戻すまで何度も、何度も頬を張り続けた。
554脱出への挑戦! 参:2006/06/25(日) 03:12:28 ID:Z3Qbvv30
兎にも角にもようやく冷静さを取り戻したライドウの傷の手当が先決である。
利き腕負傷ではこの先まともに戦うことが不可能だ。
だが、レイコがいない以上、回復には支給された道具を使うしか無かった。
「これは…もしもの時のために取って置いてください。」
一応鳴海の支給品の中には瀕死の重傷をも一発で治す宝玉があったが、それを使うのはライドウが拒否した。
だからライドウの手持ちの傷薬を使っての応急処置で済ます結果になってしまったが、それでも無いよりはましだろう。
ペットボトルの水で簡単にだが、傷口を洗い、傷薬を塗る。
「すみません鳴海さん。手間を掛けました…。」
「まぁ、仕方無いさ。いきなりの事だったからな。」
ライドウが学生服の下に来ているワイシャツを裂いて作った即席の包帯を腕に巻いて、当面の手当てを終了させる。
それから学生服を肩に掛けてやりながら鳴海は続けた。
「それにしてもさっきの奴、あんなに近くまで接近を許してしまってたとは。
休憩中って言っても少し気を抜きすぎてたな。」
「……。」
鳴海がどうなのかは知らないが、少なくともライドウは気を緩めていたつもりは無かった。
自分から立ち入る隙を作っていたとは思えない。
と、言うことはつまり、あのピアスの少年は完全に気配を殺した上で、ライドウたちに接近し、襲い掛かってきたということである。
一体彼は何者なのか。だが少なくとも自分たちの味方では無いということは確実である。
「いずれ…また戦うことになるかもしれないな。」
再び咥えた煙草に火をつけながら、遠い眼をしてそう言う鳴海に、ライドウはゆっくりと頷いた。
ライドウは既に覚悟を決めていた。
少し前までは誰も殺したくは無い。出来るだけ多くの人間を説得して脱出を試みるつもりで行動していたが、
だがそれは自分で思っていたよりも、遥かに甘い見通しであるということをたった今痛感したのである。
危険な敵はあのピアスの少年だけではない。魔神皇もしかりだ。
おそらく他にもまだいるのだろう。
「次は僕も本気で…斬ります。たとえ誰かを殺す結果になっても、守らなくてはならない人がいるのだから…。」
555脱出への挑戦! 参:2006/06/25(日) 03:13:38 ID:Z3Qbvv30
【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 顔と右肩を負傷
武器 脇差
道具 無し
現在地 蓮華台に向かう山道
行動方針 レイコを探す 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出

【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上
556出会い:2006/06/25(日) 13:15:26 ID:xbdelXMf
浮上した都市。周防克哉はそのかつて海岸だった場所を歩いている。
「これ以上進めば落ちるか…」
ここ港南区の警察署に勤めている克哉にとって土地勘のある場所に飛ばされたのは幸運といえるだろう。
浮上の名残か、幾つかの建物の残骸が見える。
「主催者め…かならず逮捕してやる。」
下らないゲーム。実際に一人殺された。見せしめとして、無意味に。
こんな許しがたい犯罪、何としても止めさせなくては。
学園にいた顔触れには知っている者もいた。
「天野君は無事でいるだろうか?達哉、あいつめ…また無茶をしていなければいいが…ん?」
海岸(であった場所)に沿って歩いていると、廃墟の辺りに人影が見えた。
(参加者だろうか?)
このような極限の状況で彼ら民間人を守る義務は謹慎中とはいえ刑事である自分にある。
克哉は驚かせないよう、ゆっくりと近づいた。
廃墟の影になったところに彼女はいた。
長い黒髪の女性で、年は高校生ぐらいだろうか。動揺しているようだが怪我は無さそうだ。
557出会い:2006/06/25(日) 13:21:41 ID:xbdelXMf
「君…大丈夫か?」
「あ、あなたは?」
「僕は周防克哉。警察だ。心配しなくていい。君を保護する。」
きっちりとスーツを着込み眼鏡をかけた男性が警察手帳を見せて穏やかに言う。
悪い人ではなさそうだ。
「君の名前は?」
「あ…白鷺弓子です」
「白鷺君か、とりあえずここから移動しよう。この近くに署がある。あそこなら安全だろう」
他に行くあてもないので、彼についていくことにした。
「武器は携帯しておいた方がいい。使えるものがなければこれを持っていたまえ」
克哉はボウガンを差し出す。
「いえ、私にはこれがあるので」
「それは…変わった形の機械だな。使い方は分かっているのか?」
「ええ、だからそれは刑事さんが持っていてください」
頭にゴーグル、腕にはキーボードと画面がついた機械。
克哉と出会う前にしばらくいじってみて、ある機能がついているのに気が付いた。
悪魔召喚プログラム
弓子のパートナーである中島朱実が開発したプログラムだが、なぜこの機械にインストールされているのかは分からない。
少し時間がかかったが、使用者として登録し、ある程度使い方も理解した。
形こそ違うものの、中島が使っていたCOMPと大して変わらない。
仲魔は入っていないので今のところ武器としての役目は果たさないが、魔法を使える彼女が他に自衛の手段がないように見える克哉からボウガンをもらうわけにはいかなかった。
558出会い:2006/06/25(日) 13:25:09 ID:xbdelXMf
瓦礫がひしめく海岸付近を越えて舗装された道路まで出た。
「署まではもう少しだ。疲れてはいないかい?」
「大丈夫です。…!刑事さん、後ろ!」
克哉の背後に現れたのは異形のものだった。
槍と盾を持つ、上半身は人、下半身は蛇の悪魔ナーガ。
同区にある「悪魔が出現する工場」から出てきたものであろう。
「白鷺君、下がっているんだ!」
不意を狙われ、咄嗟にボウガンで防御するが、槍によってあえなく真っ二つにされてしまった。
「キシャアアッ!」
ナーガは止めをさそうと克哉の胸元に狙いを定める。
「…ペルソナ!」
姿を現したのは黒く、正装をした猫のような姿をした神ヘリオス。
克哉の弟達哉の分身アポロと同様に太陽光線を象徴する日輪の御者。
ナーガが槍を突き出した瞬間、防御の余裕がなくなった瞬間。
その姿に違わぬ俊敏さで、鋭い爪によって鱗に覆われた喉元を切り裂く。
それは、槍が克哉の胸に届く寸前だった。
ナーガは喉から青い血を噴出しながら後向きに倒れた。
(肝が冷えたな…)
「白鷺君、無事か?…!」
振り向くと、少し離れたところで彼女は別の悪魔と対峙していた。
しまった、迂闊だった。目の前の敵に気をとられていた。
本来は彼女の護衛を最優先に考え、守りながら戦わなければならなかったのに。
克哉は急いで弓子の方に駆け出した。
559出会い:2006/06/25(日) 13:29:24 ID:xbdelXMf
急いで克哉の援護をしようとしたとき、別の方角から二人を狙っている悪魔に気が付いた。
弓子は不意を突かれる前に片付けようとしたのだ。しかし…
「ホウ…ウヌハ普通ノ人間デハナイナ」
戦闘態勢に入ろうとすると、悪魔が話し掛けてきた。
水を司る龍王ミズチ。青みを帯びた水が龍の姿をなしている。
「コノ感ジ…モシヤウヌハコノ国ノ母神(ハハガミ)ノ…?」
「…分かるの?」
横目で克哉のことを気にかけつつ、問い返す。
「我トテ、日ノ元ノ地デ生マレタ神。ワカラヌハズガアロウカ。」
白鷺弓子は日本を生み出した神イザナミの転生後の姿である。
同一人物というわけではなく、弓子はイザナミの"器"のようなものだ。実際にイザナミの力を借りて危機を切り抜けたこともある。
「あの…できたら、私に協力してくれないかしら?」
「我ヲ仲魔ニシタイト?」
「ええ。どうしてもとは言わないけれど。」
正直、今の戦力では不安があった。この世界に来てからイザナミの声が聞こえない。この世界に干渉できないのかもしれない。
となると、この殺し合いの場を切り抜けるのは厳しいだろう。
「…ヨカロウ」
ミズチは少し考える素振りを見せたが、すぐに頷いた。
「え?そんなあっさりと…」
少し驚いた。弓子のパートナー中島は悪魔との交渉には金や道具で機嫌をとったりして苦労していたのに。
「他ナラヌ母神ノ頼ミ、聞カヌワケニハイカヌ。ソレニ、我ハアノ方ノ戯レノ行ク先ガ見タイ…」
「…え?今なんて?」
終わりの方がうまく聞き取れず、聞き返す。
「大シタコトデハナイ。サア、契約ヲ交ワソウゾ。」
「え、ええ、それじゃあ…」
―コンゴトモヨロシク。
560出会い:2006/06/25(日) 13:37:06 ID:xbdelXMf
「白鷺君?」
克哉は、二人の会話を少し離れたところから眺めていた。
悪魔とのコンタクト。彼自身も経験があるが、ペルソナ能力を持たない弓子が躊躇せずに悪魔と話したのに驚いた。
(思ったより、肝のすわった女性なのだな)
悪魔が消えると、克哉はそっと弓子に近付いた。
「交渉して、帰ってもらったのか」
「いえ、仲魔になってもらったんです」
「仲間?」
「ええ、いつでもこのCOMPで召喚して一緒に戦ってもらえますよ」
「悪魔を使役するというのか?馬鹿な…ナンセンスだ。」
これまで悪魔とのコンタクト得られる協力は道具や金銭だけで、一緒に戦うなどということはなかった。
「え?でも、刑事さんにもいるじゃないですか。さっきの、可愛かったですよ」
弓子にも、克哉の戦闘を見ていて気になった点があった。
「COMPもないのに、どうやって召喚したんですか?」
「ヘリオスのことか?あれは悪魔ではなくて…それに、COMPというのは…?」
多くの疑問が浮かぶ。
「…どうやら、僕達は互いのことについてもっと知る必要がありそうだな」
克哉は小さくため息をついた。
561出会い:2006/06/25(日) 13:40:29 ID:xbdelXMf
港南署に着くと克哉はペルソナによってドアを破壊し、保管してある銃と防弾チョッキを二人分確保した。
「…いいんですか?」
克哉に拳銃の使い方を教えてもらった後、弓子が気遣うように言う。
「本来は許されることじゃないが…今は非常時だ。しかたない。」(
…謹慎じゃ済まないだろうな)
職を失う予感がして、内心苦笑する。
「ではまず、互いの能力について…」
港南署のロビーに座り、情報交換をはじめようとしたとき、外から大きな音がした。
「この音、すぐ近くです。行きましょう!」
おそらくは戦闘音。二人は話を中断し、外へ向かう。
【周防克哉(ペルソナ2罰)】
状態 正常
降魔ペルソナ ヘリオス
所持品 拳銃、防弾チョッキ 鎮静剤 (ボウガン破壊)
行動方針 主催者の逮捕 参加者の保護
現在位置 港南警察署
【白鷺弓子(旧女神転生1)】
状態 正常
仲魔 ミズチ
所持品 アームターミナル、MAG2000 拳銃 防弾チョッキ
行動方針 中島朱実との合流
現在位置 港南警察署
562再会  ◆F2LGKiIMTM :2006/06/25(日) 17:47:28 ID:/FuBPgcL
(……逃げ切った、か)
追ってくる者のいないことに安堵し、足を止めて息を整える。
緊張状態のまま走り続けるというのは、さすがに疲れるものだった。
銃を腰のホルスターに収め、辺りを見回す。誰もいないことを確認し、ザックから地図を取り出した。
現在地は蓮華台。判っているのはそれだけだった。
オートマッピングや位置表示の可能なアームターミナルも持っていないし、慣れない土地でもある。
勘に頼って適当に逃げてきたため、今いるのが蓮華台のどこかも定かではない。
もう一度、周囲を見回す。立ち並ぶ建造物は見慣れない様式のものばかりだが、どれも似通っている。
住宅地、だろうか。目立つ建物はなかった。つまり、地図上での目印になるものもないということだ。
(まずは……地図に載ってる場所を探すことからか)
地図に目を落とす。蓮華台にある施設は――七姉妹学園、本丸公園、アラヤ神社。
学園、というのは確か学校を意味する単語だ。少年が集まって勉強をする場所である。
公園。これは解る。植え込みや花壇、遊具などが置いてある憩いの場だ。
神社というのは、文字通り読めば神の社。土着の神などを祀っている場所なのだろう。
神という言葉が、メシア教の説く天の父だけを意味するものではないことには、薄々気付いていた。
悪魔と呼ばれる存在の中にも、かつては神と呼ばれ、信仰された者達がいる。
いや、今でもガイア教徒辺りには信仰されているのかもしれない。
増して、ここは異世界だ。違う神が信仰されていても、何の不思議もない。
学校か、公園か、宗教施設。そのどれかを見付ければ、地図上の現在地は確認できる。
元いた場所に戻るにせよ、違う道を通るにせよ、まずは道筋を把握してからだ。
563再会  ◆F2LGKiIMTM :2006/06/25(日) 17:48:37 ID:/FuBPgcL
歩き出してから、十数分ほどになるだろうか。
時計もなく、時間の経過を感覚でしか測れないというのは思った以上のプレッシャーになる。
どれだけの時間をロスしているか。こうして歩いている間に、何人の命が奪われているか。
それに、負傷していたザインは無事に逃げ延びることができただろうか。
思考が暗い考えに塗り潰されそうになっていた頃、その音は聞こえた。

(――足音だ)
目の前のT字路の、右側の道から。
小さな足音ではあったが、このゴーストタウンの静寂の中でははっきりと聞こえる。
相手も、こちらの足音に気付いたのだろう。ぴたりと音が止む。
互いに足を止め、角を挟んで相手の出方を窺う。ここを歩いているのは、ゲームの参加者に他ならないのだ。
戦うことに、なるかもしれない。
ホルスターから銃を抜き、いつでも撃てるよう構える。
相手はまだ出てこない。警戒しているのだろう。
少なくとも、見境なしに襲い掛かってくるタイプの相手ではないようだ。
意を決して、声を掛けてみることにした。
「戦う気がないなら、危害は加えない」
甘いかもしれないが、戦わずに済むならそれに越したことはないのだ。
相手によっては、味方になってくれるかもしれない。
しかしもし、角の向こうに潜んでいるのがゲームに乗ろうとしている人物だったら――

「……アレフ?」
返ってきたのは、聞き覚えのある声だった。
564再会  ◆F2LGKiIMTM :2006/06/25(日) 17:49:14 ID:/FuBPgcL
先程までの警戒はどこへやら、全く無防備な様子で角の向こうの相手が姿を現す。
その姿を認めて、銃を再びホルスターに収めた。安堵に溜息が洩れる。
「ベス。君か」
この異世界に飛ばされてくる直前まで行動を共にしていた、パートナー。
彼女は絶対に敵にはならない。それは確信できた。
「良かった……ずっと、あなたを探していたの。無事で、本当に良かった……」
駆け寄ってきたベスの肩を抱く。
こんな状況で怯えていたのではないかと思ったのだが、顔を挙げた彼女の表情には不安の色はなかった。
「大丈夫よ。私がついているから、あなたのことは誰にも殺させない」
「守ってなんてもらわなくても、俺は平気だよ」
場違いなまでに優しい笑みを浮かべる彼女に、少し苦笑する。
「それより、ザインが怪我をしてるんだ。早く合流して手当てをしないと」
「ザインと……一緒にいたの?」
「ああ。二手に分かれて逃げてきたんだ」
「そう……」
ベスの表情から笑みが消える。
ザインのことを心配しているのか、と思ったが――次に彼女の口から飛び出したのは、意外な問いだった。
「アレフ。あなたも、誰も殺さないつもりなの?」
「え……」
答えに詰まる。そんなことを、ベスに聞かれるとは思っていなかった。
565再会  ◆F2LGKiIMTM :2006/06/25(日) 17:50:01 ID:/FuBPgcL
コロシアムの闘士だった頃には、人を殺すのは日常茶飯事だった。
相手を殺さなければ、自分が死ぬ。闘士にとっては殺すことが唯一の生きる道であり、仕事だった。
センターの命で動くようになってからは、襲い掛かってきたガイア教徒と戦ったこともある。
だから今更、殺人は犯したくないなどと言う気はない。
しかし、今この街にいるのは、自らの意に反して殺し合いのために呼び集められた人々だ。
死を覚悟して戦っているコロシアムの闘士や、ガイア教徒とは違う。
それに――参加者同士で殺し合うというのは、主催者の思惑に乗せられるということなのだ。

「できれば、殺したくない」
躊躇いながら、ベスに答えを返した。
「絶対に誰も殺さないとか、全員助けるとかは言えないけどさ。少なくともこのゲームに乗る気はない。
こんな馬鹿げたゲームを考えた奴を見付け出して……止めさせてやろうと思ってる」
「……解ったわ」
ベスが頷いた。
「あなたがそう思ってるなら、私もできるだけ人は殺さない」
「ベス……」
「最初は、あなたに最後の一人になってもらおうと思っていたの」
穏やかな眼差しで、彼女はその姿からは予想も付かないようなことを口にした。
最後の一人にする、というのは――他の全員を殺して、それから自分も死のうと思っていたということだ。
(ザインや、ヒロコさんや、戦う気のない他の参加者のことも……殺す気だったのか?)
問おうとして、踏み止まった。その答えは、きっと聞かない方がいい。
「あなたは救世主だものね。あなたの方法でここにいる人達を救えるなら、私もそれに賭けてみる。でも」
とても穏やかな、しかし決意を秘めた表情。
「誰かがあなたを殺そうとしたら、私は迷わずその人を殺すわ」
清楚で優しい、聖母のような少女だと思っていたベス。
彼女のことを、初めて――恐ろしい、と思った。
566再会  ◆F2LGKiIMTM :2006/06/25(日) 17:50:32 ID:/FuBPgcL
【アレフ(真・女神転生2)】
状態:正常
武器:ドミネーター
道具:なし
現在地:蓮華台の住宅地
目的:ひとまずザインと合流する(その後、主催者をどうにかする)

【ベス(真・女神転生2)】
状態:正常
武器:?
道具:?
現在地:同上
目的:アレフを守る
567悪魔に愛された少年:2006/06/25(日) 18:31:59 ID:fDphoNLC
高尾祐子は教室に立っていた。
傍らには鞄が置かれている。
そっと首に手を触れてみると、確かに何かの違和感がある。
「これは神が私に与えた罰――」
彼女もこの死のゲームへ強制的に参加させられているのだ。
誰も居ないその場所は、嫌でも記憶を呼び覚まされた。

――-もう一度、東京受胎を引き起こすあの日の前に戻れたら、私は生徒を巻き込んだかしら?

心の中で繰り返した言葉。あの日以来ずっと後悔し続けてきた心の言葉。
弱い自分には氷川を止めることができなかった。
そればかりか、生徒へ試練を与えてしまった。
思想を異とする者を排除し、神を降ろし、新世界を創造する。
あの日引き起こしたことは、このゲームと変わりない。
この場所に立っている理由は、もう一度考えてみよという神のご意志か。
椅子と机が並んだその暗い部屋を祐子は一周し、教壇へと向かった。
自分が本来立つべき場所へ。

外はまだ闇の静寂が支配していた。
暗い部屋へ差し込む月の光のもとで祐子は教壇の机に手を組み、祈った。
もし神が傍にいるなら、聞き入れてもらえるなら…。
「自分の命を賭けて願えるなら、ただもう一度あの日に、
 彼らの自由を奪ってしまったあの日に戻りたい。
 神よ。どうか彼らに試練を与えないでください。」

「――神なんて、この世界にはいませんよ。」
568悪魔に愛された少年:2006/06/25(日) 18:32:47 ID:fDphoNLC
この世の者とは思えない、ひどく冷たい声。
祐子ははっと顔を上げ、声のする方へと顔を向けた。
差し込む月の光に溶け込むように立つ人影。
「誰?」
ふと恐怖に襲われその人影へと声をかけた。

「もう忘れてしまわれたんですか?…先生」
祐子へ声はクスリと笑いかけるが感情全くこもっていない。
近づいてくる声の主を見ようと目を細める。
無感情な声は祐子への言葉を続けた。
「僕は、貴女が望んだように、どんな世界でも生きていけるようになりましたよ。
でも、貴女は結局人に頼るだけで、自ら道を切り開くことなんてできなかった。」
「人はみな弱いの。いくら強がっても誰かに依存してしまう。それが人間。
 結局一人でなんて生きていけないわ」
「――言い訳…ですか。」

祐子は背筋が凍った。
見切られている。自分の心の中を全てを。
人影は落胆したように祐子へと言葉を投げかけた。
「貴女の言う通り、どこかに神はいるのかもしれませんね。でも――」

光に溶け込んでいた人影がふっと消え、室内の闇が深くなる。
祐子は声に身構えた。
月の光さえも遮ってしまうほどの漆黒。闇がさらに魔を呼び寄せる。
人影は彼女の傍らに立っていた。
全身に青く光る刺青を纏った、人の姿をした悪魔。
祐子を悲しげに見つめていた。
彼の目は赤く、背後には無数の強大な悪魔の気配を引き連れて。

「もう、祈るのは終わりにしましょう。尊敬する貴女を、これ以上苦しませていたくない。」
祐子は彼を見て悲しそうに微笑んだ。教え子の姿を、悪魔になったその姿を見つめて。
「そう――彼方には自由に生きる権利があるわ。それを全て奪ったのは私の罪。
彼方がそれを望むなら、私は罰を受けましょう。」
少年は静かに目を閉じ、祐子を抱擁した。
569悪魔に愛された少年:2006/06/25(日) 18:33:38 ID:fDphoNLC
――あの日にもう一度戻れたら。
僕も考えなかったわけではない。
もう一度戻れたら、同じ事をしただろうか?
同じように全てを受け入れず、闇の誘惑に負けただろうか?
最後まで自分を強く持ち、先生の言葉を信じただろうか…・
ぐったりと腕の中で横たわる祐子の身体は冷たくなっていく。
祐子の鼓動が、吐息の音が、徐々に弱まる。
熱いものが頬を伝った。
悪魔に身も心も染まってから失ってしまったはずの。涙が。
苦しげに見える彼女の表情がゆっくりと微笑をうかべた。
彼の心を察し、細い声を搾り出す。

「それでも彼方は死なないで。生き延びて、世界の末を見届けて…」

緩やかに命の火が消えた。
もう声を発することも、微笑みかけることもない。
祐子の身体をそっと床へと置くと、人修羅はその場を去った。
教室の闇は月の光に薄れ、元の姿へと還っていった。



【主人公(人修羅・真・女神転生V-nocturne)】
状態:正常
現在位置:七姉妹学園
行動指針:自分の世界へ帰る手段を求める。

【高尾祐子(真・女神転生V-nocturne)】
状態:死亡
所持品;不明
死亡場所:七姉妹学園
570名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/25(日) 22:19:04 ID:skQw3+WG
アキラは目覚めて最初に自らの体の違和感を感じた。
「ん…?俺の体…?」
不思議なことに彼の肉体はアモンが取り付く前であった。
ハザマもいたのだ、自分の身体をそこまで引き戻すのも容易だったのだろう。
(…そういえばアイツ、たまきもいたな…。アイツと合流できれば…何とかなる)
自分がいたのは見たことの無い学校だった…だが学校は学校だった。
あるべき部屋ぐらいはある…そして彼の支給品は防具、髑髏の稽古着。
そうとなればやることは一つ――――――――――――。



家庭科室の表記を見るや否やドアを蹴り、中に押し入り包丁やら鍋の蓋やらを回収し、
理科室の表記を見るや否や科学薬品やらアルコールランプやらを回収し、
保健室の表記を見るや否や薬箱等を回収する。
磨りガラスだろうがなんだろうが軽高一の不良の手に掛かればあっというまに破られてしまった。

校舎を出る前に校長室の前で何故か立ち止まる。
…異様な雰囲気を感じるのだ、人のような…悪魔のような…?
不思議と、警戒心は抱かなかった、今までと同じ要領でドアを蹴破る。

中には一人の鎖につながれた男が座っていた。
「豪快な方法で入ってくるな…ああ、私の名はリック。
 ごらんのとおり鎖で両腕が動かせなくてね…この鎖を外してくれないか?
 もちろん…外れたらそれなりの礼はするし、外れた途端君に襲い掛かることもしない」
怪しかった、男は上半身半裸であったし、両手は鎖でグルグル巻きにされていた。
…それでもやはり、警戒心は抱かなかった。いや抱けなかった。
ゆっくりと男に近づき、その鎖を力任せに引きちぎろうとした。

…鎖はビクともしなかった、見る限り細い鎖なのだが、どうも特殊な素材で作られているようだ。
「…やはりナカジマでなければ駄目か…すまなかったな」
「用件はそれだけか?」
アキラが今度は問いただした、少しリックは考える。
鎖の擦れる音が、少しだけ響いた。
「そうだ…私も…連れて行ってくれないか?
 ナカジマに会って…この鎖が外れれば君たちの力になれると思う」
…無視してアキラは振り返る。
リックは一瞬溜息をついたが、もう一度口を開いた。
「待ちたまえ…じゃあこの剣は君に渡そう。
 私じゃ…扱えそうに無いからな」
渡されたのはヒノカグヅチ、どんな剣よりも破壊力に優れ。
どんな剣よりも素早くふるうことのできる最強の剣。
それを受け取り…アキラは無言でリックに包丁を渡した。
リックが意味を理解する前にアキラは口を開く。
「…断っても着いて来そうだからな。
 自分の身はそいつで守りな」
アキラは歩き始めた、後ろからリックがゆっくりとついていく。
歩き出したアキラのヒノカグヅチが少しだけ重く感じた。
571名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/25(日) 22:19:39 ID:skQw3+WG




――――俺のやることは一つ。
ハザマをもう一度、ぶっ飛ばす。

【アキラ(真・女神転生if...)
 状態:GOOD
 装備:ヒノカグヅチ(少し重い)、鍋の蓋、髑髏の稽古着
 道具:包丁*2、アルコールランプ、マッチ*2ケース、様々な化学薬品、薬箱一式
 現在位置:春日山高校
 第一行動方針:たまきと合流
 基本行動方針:ハザマの殺害、ゲームの脱出
 備考:肉体のみ悪魔人間になる前】

【リック
 状態:GOOD
 装備:包丁
 道具:なし
 現在位置:春日山高校
 第一行動方針:アキラに同行
 第二行動方針:ナカジマ(若しくはそれ以上の力を持つ人間)に会う
 基本行動方針:鎖を外し、ゲームの脱出
 備考:鎖がついたまま、外せれば…?】
572信頼と、友愛と、疑心暗鬼と…  ◆VzerzldrGs :2006/06/25(日) 23:16:05 ID:/s0L4Emy
レイコは戸惑うピアスの少年を強引に座らせると傷口を広げないように矢を抜き、回復魔法を掛けた。
少年の背中に手を当て、精神を集中させる。自分に宿るガーディアン・妖精ナジャが暖かな力を貸してくれる。
だが、どうしてもいつものような力が沸いてこない。
ライドウが言うように、自分の首に書き込まれた呪いの文様が回復魔法の効果を妨げているのだろうか。
確かに回復魔法使い放題では、殺し合い前提のこの街において使える人間が圧倒的に有利だ。
使うタイミング次第では傷一つ負わずに永遠に戦っていられることも可能な力である。
これを封じると理由は…おそらく手っ取り早く死亡者を稼ぐためだ。
どうしてそこまでして自分たちに殺し合いを強要するのか謎である。
だが、考えを巡らせている内にレイコは一つの結論に達した。
ひょっとしたら…いや、おそらく。
「どうした。止めを刺す気になったのか?」
少年が、別のことを考えているレイコに向かって、ぶっきらぼうにそう言い、
レイコは一瞬動きを止めそうになった。自分の意思とは真逆のことを言われたからだ。
別にこうやって甲斐甲斐しく手当てをしてあげることで逃げ出すチャンスや、ましてや殺すチャンスを探しているわけではない。
ただ、怪我をしている人間を放っておくことが出来なかったのだ。
殺されかかったライドウを救うためとは言え、鳴海が本当に矢を当てるとは思っていなかった。
自分の考えは、やはり甘いのだろうか。
だけど、たった今自分の中に出てきた可能性を信じるなら、無意味な殺し合いを続ける必要は無いのだ。
「終わりましたよ。」
何とか傷が塞がり、レイコは顔を上げると額の汗を拭い、眼鏡のずれを直した。
一息付くと、かなり強い脱力感に襲われたが、ここで倒れるわけには行かない。
「敵の傷を治して、どういうつもりか聞かせてもらおうか。」
少年は振り返ると、静かにそう聞いてきた。
「敵…ですか。私が貴方に対してそう思っていなかったとしても?」
「君の仲間を殺そうとした。これだけでは敵になる理由にならないのか?」
「何故、葛葉さんを…彼だけを狙ったのか教えてください。
本当に勝つことが目的なら、武装している男の人ではなく、最初に私のような手ぶらの女を狙うのが道理でしょう。
だけど貴方の狙いは葛葉さんだけだった。鳴海さんと…私には一切眼をくれず。」
驚いた。この少女は先ほどの混乱の中、ちゃんと冷静に状況を観察していたのである。女性というのはいつでも侮れない存在だ。
この少女に嘘をついてもすぐに見抜かれるだろう。正直に話すことにした。
「あの男は…」
少年は地面に置いていた剣を取り、厳しい視線でそれを見つめながら語った。
「俺の大切な人を殺した。それだけだ。」
その言葉を聞いたレイコは、口をぽかんと開き、眼を丸くした。あの温和なライドウが、とても信じられない話だった。
「そ…そんな…それは何かの…」
言いかけた所で言葉に詰まる。
昨晩ライドウが突然飛び出し、今朝になって帰って来た時に血みどろになっていたのを思い出したからだ。
573信頼と、友愛と、疑心暗鬼と…  ◆VzerzldrGs :2006/06/25(日) 23:18:15 ID:/s0L4Emy
昨日はライドウに一体何があったのか…。何故か聞いてはいけない雰囲気がして、レイコも鳴海も詳しい事情には眼を瞑った。
だが、本人は無傷であったのにも関わらず、全身が真っ赤に染まっていたのは普通ではない。
どうひいき目に考えても返り血にしか見えなかったのである。
レイコの頭を、今までで自分の知っているライドウが反芻する。

魔神皇の説得は危険だからと何度も説得するライドウ。
不安で冷えきった手を、不器用ながらも暖かく握ってくれたライドウ。
ピアスの少年…目の前にいる彼が奇襲を仕掛けてきた時、真っ先に自分を庇ってくれたライドウ。

そして、彼の大切な人の命を奪ったというライドウ―――。

あまりにも噛み合わなかった。しかし、何か予測のつかない事故で血を浴びることになったのなら、どうしてそれを話してくれないのだろう。
ライドウのことは信用したい。だけど、それには彼を知らなさ過ぎる。彼は何故黙っているのか。
もしかしたら本当に……。
レイコは、いつの間にか自分が疑心暗鬼に駆られていることに気付いてはっとした。
自分から信用できないのかと怒っておいて、今のこの有様は何なのだろう。
「君は何かの間違いだと言いたいみたいだな。
だが俺は見たんだ。あの黒マントの男が…無抵抗な彼女から包丁を奪って冷酷に刺し殺す所を。」
強い怒りと悲しみを押し殺しながら語る少年を、レイコは否定しようとしたが、言葉が見つからなかった。
一度浮かび上がった不信感はなかなか拭いきれない。
頭では違うと言い聞かせているのに、何故か心の底では解ってくれない。そんな自分が苛立たしかった。
「だから、俺が彼女の仇を討つ。それから先は…また考えるさ。」
立ち上がる少年を、レイコは止めた。
「待って。彼を追うなら私も連れて行ってください。」
「……。」
無言だが、不思議な吸引力のある瞳をこちらに向けていた。
だがその吸い込まれそうな眼が、今は必死で自分を拒否しているのだ。
「君の仲間を君の目の前で殺すつもりなんだぞ、俺は。」
「彼は…そのことは何かの間違いです…。」
自分で言いながら、どこまでが本当なのか確信が持てない。つくづく自分が厭な女だと、胸の奥が痛む。
だけど、ライドウを見捨てる程、彼を突き放せないことも嘘ではないのだ。
「…だから、私もついて行って、自分が納得出来るまで…あの人と話がしたいんです。」
「…まぁ、いいだろう。だが俺は俺であいつを今度こそ斬り捨てる。それは覚悟していてもらうぞ。」
「……。」
レイコは、ライドウが握ってくれた自分の手に眼を落としながらこっくりと頷いた。
そうすることしか出来なかった。今の自分に彼を止める資格など無いことを、彼女は彼女なりによく解っていたのだ。
574信頼と、友愛と、疑心暗鬼と…  ◆VzerzldrGs :2006/06/25(日) 23:19:25 ID:/s0L4Emy
【赤根沢レイコ(if…)】
状態 やや疲弊
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ライドウたちを探す ゲームからの脱出

【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 正常
武器 ロングソード
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
現在地 同上
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇をうつ
575 ◆VzerzldrGs :2006/06/25(日) 23:22:27 ID:/s0L4Emy
同上って何だ…。
現在地は蓮華台に向かう山道でお願いします。
576セーブ機能 ◆XBbnJyWeC. :2006/06/25(日) 23:51:19 ID:fDphoNLC
っと書き忘れ

リックおかげで思い出した!
悪魔人間明もいい感じですね
乙でした

レイコの先が気になる展開GJ!
577セーブ機能 ◆XBbnJyWeC. :2006/06/25(日) 23:52:23 ID:fDphoNLC
あぁ…誤爆すまんorz

>>575
修正しておきます
578集う仲間達 ◆C43RpzfeC6 :2006/06/26(月) 00:33:59 ID:OwdAyQcq
どれだけ走っただろうか?
英理子はただあの場所から離れることだけを考え、ペルソナによって速度を上げながらひたすら逃げ続けた。
リサの最期と千晶と呼ばれていた少女の姿が頭から離れない。
蓮華台を通り、夢崎区から最も離れた港南区の通りまで来たところで、英理子はようやく落ち着きを取り戻した。
ここまでくれば、もう追いつかれないはず。
実際は英理子が見えなくなった時点で追跡は止まってあたのだが、恐怖心が彼女をここまで走らせた。
心臓が早鐘を打ち、ペルソナを連続で使った疲労が全身に重くのしかかっている。
何より、リサを助けられなかった自分の無力さと罪悪感が英理子を責め苛んでいた。
(Maki…Kei…Naoya…)
彼らに会いたい。彼らならきっとこの痛みを理解し、励ましてくれるだろう。
しかし、彼女の目の前に現れたのは仲間達とは程遠い存在だった。
「ククク…人間かぁ?殺してやるよぉ!」
真っ赤な肌に、頭から突き出た一本の角。日本古来の悪魔オニ。
投げられたナタを、英理子はとっさに避けた。
ナタは背後にあった信号にあたり、信号は大きな音をたてて倒れる。
英理子は急いでペルソナを発動し、応戦しようとした。
しかし…
(もういい…もう、どうでもいい)
一度は上げた腕を、静かに下ろす。
同じヒトに殺されるぐらいなら、悪魔に殺された方が幸福かもしれない。
もう、誰かが殺されるのも、誰かが殺そうとするのも見たくない―
オニは手に戻ってきたナタを振り上げ、襲い掛かる。
「何をしてる!右だ、右に避けろ!」
どこからか声が聞こえ、思わず英理子はその声に従って避けた。

オニの追撃をうまくかわしつつ、英理子は声の主を探すが、周りに人影はない。
579集う仲間達 ◆C43RpzfeC6 :2006/06/26(月) 00:36:42 ID:OwdAyQcq
「全く…なぜ力を使おうとして止めた?あいつでもそんな馬鹿な真似はしないぞ。」
黒い毛皮と緑の眼、子猫の姿をしたゴウトは英理子の戦いを見ながらつぶやく。
「どこを見てる、ここだ、塀の上にいる!」
声の主を探す英理子に呼び掛ける。その声は声帯から出ているものではない。
テレパシーによって頭のなかに直接話し掛けているのだ。
「い、いや、やっぱり見るな!相手の攻撃に集中しろ!」
ゴウトの姿を見て驚きを隠せない様子の英理子に、戦闘に専念するよう促す。
その背後から、一羽の巨大な鳥が躍り出た。
突然だったため、ゴウトにはうまく対応しきれない。
英理子の方も疲労のためかうまく体が動かず、わずかな隙ができた。
―殺される
一人と一匹が同時に思った、その瞬間だった。
「ブリザー!」
「ペルソナ!」
同時に声がした。
そして、オニはその背後から放たれた冷気によって一瞬にして凍り付き、怪鳥は正装をした猫の爪によってばらばらに引き裂かれた。
「君、大丈夫か!?」
克哉はへたりこむ英理子に駆け寄り、無事を確認する。
「頭を怪我しているようだな。白鷺君、回復を頼む。」
白鷺も二人に近寄り、回復魔法によって英理子の傷の治療をする。
この世界では回復魔法の効果が減少するようだが、軽傷だったためすぐに治すことができた。
「道具なしに悪魔を召喚したり、魔法を使えたり…よくもまあ色々と揃ったものだ」
その声に克哉と弓子は振り向き、驚愕した。
「ね…猫がしゃべった…?」
「…悪魔やら魔法やらを見てきて、今更話す猫程度で驚かないで欲しいものだな」
ゴウトが嘆息して言う。
580集う仲間達 ◆C43RpzfeC6 :2006/06/26(月) 00:42:11 ID:OwdAyQcq
「さて…何から話すか…」
英理子にも拳銃と防弾チョッキを渡し、ロビーに戻った三人と一匹はとりあえず名前を教えあった。
英理子の名前を聞いて克哉は驚いたが、それぞれのいた世界について話してからでも遅くないと思い、口を挟むことはしなかった。
「待て。話を始める前に、お前に一つ聞きたいことがある。」
ゴウトは英理子に向かって言った。
「…私に?」
「ああ。さっきの戦いの始め、なぜ力を使おうとして止めた?あのときのお前は、死のうとしているように見えた。」
「本当か?桐島君」
ゴウトの言葉に克哉は少し衝撃を受けた。元の世界で共に戦った彼女の印象を思うと、死のうとするなど考えられなかった。
「ええ、私は…死んでもいいと、No、死にたいとすら思っていました…」
英理子はゆっくりとこの世界に来てからのことを話し始めた。
リサとの出会い、千晶の襲撃、リサの死…

「…私のせいで、Lisaは…」
あの時もっと早く開扉の実を使っていれば、千晶の反撃の前に追撃を行い、しとめていれば…
「それは違う。君のせいじゃない。僕達がいくらこう言っても、優しい君は自分を責めてしまうのだろうな…」
悲壮な表情で英理子の話を聞いていた克哉がゆっくりと口を開く。
「しかし、死を選択するのは間違っている。もし今でも死にたいと思っているなら、その命を僕に預けてほしい。
もうリサ君のような犠牲者を出さないためにも…力を貸してほしいんだ」
「Mr周防…」
「私も、刑事さんと同じ気持ちです。」
静かに話を聞いていた弓子が口を開く。
「英理子さんが死んでも、リサさんは絶対に喜ばない。最後まで帰るために戦おうとしたリサさんの思い、どうか受け継いでほしい…」
「Yumiko…」
「どうだ、ここまで言われてはまだ死にたいなどとは言えないだろう。」
ゴウトが英理子に近づき、喉を鳴らした。
「死は安易な逃げだ。何の解決にもならないぞ?」
「…ええ。ありがとう、皆さん。私、どうかしていましたわね。」
英理子は顔を上げ、ゆっくりと微笑んだ。これだけ自分を気遣ってくれる人(+猫)がいる。
(Lisa…見ていてくださいね
)心の中で友人に誓いを立てる。
もう二度と、絶望しない。先にあるのがなんであろうと、立ち向かい続けよう。
581集う仲間達 ◆C43RpzfeC6 :2006/06/26(月) 00:46:37 ID:OwdAyQcq
【桐島英理子(女神異聞録ペルソナ)】
状態 疲労、精神的には安定を取り戻す
降魔ペルソナ ニケー
所持品 拳銃、防弾チョッキ(他は夢崎区で全消費)
行動方針 仲間との合流
現在地 港南警察署
【ゴウト(超力兵団)】
状態 正常
所持品 なし(持てない)
行動方針 ライドウとの合流
現在地 港南警察署
克哉、弓子は「出会い」の状況と同じため割愛します。
582名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/26(月) 00:51:40 ID:8liZjJT2
超力GJ!
いい話や…。・゚・(ノД`)・゚・。
エリー、いい仲間に会えてよかったな
あと猫好きの克哉もよかったな
583名無しさん@お腹いっぱい。:2006/06/26(月) 00:53:54 ID:dlcxPXF0
パロスレにでも行けや
ボケ
584蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:08:48 ID:TMx6ZxoL
時刻は朝方を示そうとしていた。
空は夜の帳を徐々に白く染め上げている。
電波の通じない、時計代わりの携帯電話を閉じて、青年は深く息を吐き出した。

弱肉強食なゲームのご説明は、それはそれはもう痛み入るほどに理解できた。
メガホン越しにゲーム放棄を訴えていた男の声が、何の面白味のない銃声によって倒されたのだ。
少なくとも一人、銃を持った人間がこのゲームに乗ったという証だ。
その人間が誰か確認することはできなかったし、撃たれた男が無事なのかも分からない。
しかし確実に分かることがある。
あの時、何の迷いもなく敵意はないと名乗り出ていたら、己の身体には必要のない風穴が空いていただろう。

「まずは生き残ることが最優先、だな」
場合によっては、人を殺すことになるかもしれない。
間接的ではあるが、青年は人を――それも所属していた集団のリーダーを殺害した経験を持っている。
(そのリーダーが何故か生きており、この下らないゲームに参加しているという事実は
 思考の彼方へ放り込んでおいた。考えてても答えなど出るはずもない)
正当防衛なんて甘っちょろい思考だけでは、恐らく行動はできないだろう。
もしも出会った相手に敵意があるのなら、戸惑ってはならない。
生きることを優先に、そして可能なら仲間との合流。それから先は、状況次第か。

配給された武器は、何の変哲もない作業用のハサミだ。
GUMPでも入っていればと期待していたが、そんな強運でもあればこのゲームに参加することはなかった。
心許ないそのハサミを手に、青年――塚本新は、身を隠していたアラヤ神社から離れていく。
585蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:09:55 ID:TMx6ZxoL
ヒロインは常に辺りに気を配っていた。
その手の中には、ロイヤルポケットと呼ばれている小型の銃を収めている。
まるで知恵の輪のような金属の塊が銃だと分かった時、ヒロインは興奮と恐怖を胸に抱いた。
自分は、このゲームで有利な位置に立ったのだ。
だからと言って、人をそう簡単に殺めてしまおうとは思っていない。
死にたくないと思う心は、誰でも同じだ。
人でも、悪魔でも。

ならば自分は、何をするべきなのだろう?
パートナーであるヒーローとの再会。
連絡手段が一切無いこの都市で、再び巡り会える可能性は絶望的だ。
ああ、なぜだろうか。この殺戮の舞台の幕が開いてからずっと、頭が軋むように痛い――

突如思考を止め、ヒロインは背後を振り返った。
その視線の先には、さきほど歩いてきた道以外には何もない。
「思い過ごし……?」
歩き詰めで疲れているのか、それとも単に神経質になっているのか。
ヒロインは再び視線を前に向けようとして、

背後から、草を踏む音がした。
586蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:10:51 ID:TMx6ZxoL
「――ッ!!」
反射的に、ヒロインは身体ごと振り返る。
その時、引き金にかけていた指に力が入ったことを彼女は知らない。
発砲には大した反動もなく、弾が本当に吐き出されたのかも疑わしいほどだった。

背後にはこちらを窺っていた人間がいて、撃ち出した弾丸が偶然にも相手に命中したと理解できたのは
「ぐッ……!」と苦しむ男の声と、道に滴る赤い雫のおかげだった。
緑のジャケットにサングラスを頭に乗せた青年は、左肩を押さえて踞る。その足下には、ハサミがあった。
そう、例えば、例えばあのハサミが喉元にでも突き立てられたなら――どうなっていたのだろう。
数多ある可能性の示唆でさえも、不安定な精神を揺れ動かすには十分すぎるほどだった。
ざあ、と血の気が引き、ヒロインはその場から脱兎の如く走り去る。

人を撃った、撃たなければ殺られていた
もしあの足音に気付いていなかったら私は
わたしはどうなっていたのだろう
まだ死ねない死ぬわけにはいかない
かれに、
ヒーローに、あうまでは。

――このゲームは、人の心の魔を増幅させる。
ヒロインの精神に、蜘蛛の糸が張り巡らされる。
それはヒロイン自身が気付かないまま、ゆっくりと、心を蝕み始めていた。
587蜘蛛の糸:2006/06/26(月) 01:11:57 ID:TMx6ZxoL
新は撃たれた肩を押さえながら、少女が走り去った先を呆然と見つめていた。
殺す気などは更々無い。うまく交渉に持ち込み、共に行動して戦力増加ができればと思っていた。
しかし――現実はうまくいかないものだ。
特に人間相手の交渉だ、悪魔を相手にするのとはわけが違う。
(余談だが、彼はうまく話し合いに持ち込めたなら
 悪魔相手と同様にウシシ!イヤーン!でバキューン!な交渉をするつもりだった。
 ヒロインの行動は、至極当然の結果であり、正解だったと言えよう)

敵意を感じたなら、躊躇なく反撃する。
それができなかったのは、新が軽度のフェミニストであったというどうしようもない性分の所為だ。
「痛ってぇ……いきなり撃ち込んでくれやがって……美人さんには攻撃できねえってーの」
新は痛みに耐えるような掠れた声で、しかし軽い調子のまま呟くと、ザックを開けて肩の治療に取りかかった。

一日の始まりが、最初の戦果発表の時が近付いてくる。



【塚本新(主人公・ソウルハッカーズ)】
状態:銃創による左肩負傷(応急手当済み)
武器:作業用のハサミ
道具:?
現在位置:蓮華台・アラヤ神社付近
行動指針:スプーキーズとの合流、その後は状況次第

【ヒロイン(真・女神転生)】
状態:アルケニーの精神侵食によるパニック状態
武器:ロイヤルポケット
道具:?
現在位置:蓮華台を闇雲に逃走中
行動指針:ザ・ヒーローに会う
588ママノタカラモノ  ◆VzerzldrGs :2006/06/26(月) 01:56:12 ID:qPEinRzy
ライドウと鳴海が打ち合わせた通りに移動しているなら、予定通り蓮華台の七姉妹学園に向かっている。
そう踏んでピアスの少年こと藤堂尚也と赤根沢レイコはそれを追うルートを選んだ。
だが、藤堂がこのまま山道を行くことに異論を唱えた。
「このまま見通しの悪い山道を行くのはあまり感心出来ない。」
「でも…」
あの二人と全く逆のことを言う尚也に反論しようとしたが、彼の方が先に言葉を紡いだ。
「さっきのことを忘れたわけじゃないだろう。
もし…木陰に隠れて奇襲してくる奴らがいたらどうだ。俺のようにな。厄介だろう?」
「……。」
自嘲気味に発する言葉は重く、レイコには何と答えればいいのか見当が付かなかった。
「大体山を通るルートはかなり迂回することになる。一度下山して道路を歩いた方が近いはずだ。それに…。」
「それに?」
尚也はくるりと後ろを向いた。まるで自分の顔をレイコの視線から隠すように。
「此処を降りたらすぐに夢崎区だ。あそこは商店や、食べ物屋が沢山あるからな。
お前、腹が減ってるんじゃないのか? その、顔色悪いぞ。」
レイコにとっては心外な、気遣いとも言える言葉を発しながらちらりとこちらに向けた尚也の眼は、
先の戦っている時が嘘のように優しく、レイコは複雑だった。

誰にも会わないように慎重な足取りで下山し、スマル市最大の繁華街である夢崎区に二人は降り立った。
普通なら、平和ならば、此処は昼夜関係なく、娯楽を求める若者で賑わっているはずなのだが、
自分たち以外の人影が全く無い街の姿は恐ろしく非現実的に映った。
しかも余ほど大急ぎで住民を追い出したのだろう。無人だというのに立ち並んだ商店のシャッターは殆どが開いたままである。
まるで映画や漫画で描かれる世紀末だ。恐怖の魔王が光臨し、人々を瞬時に焼き尽くした―――。
しばらく進んだ所で二人は夢崎区に来て初めて動くものを見た。
それは道路の脇で黒い塊がごわごわと蠢いているのである。その中の一つが鎌首を持ち上げ、「ぎゃー」と鳴いた。
「!」
レイコはそれが何なのかを悟った時、声を上げそうになった。尚也も戦慄している様子だ。
カラスが三羽、死んだ人間の肉を啄ばんでいたのである。
白いラインの入った黒のセーラー服を着た金髪の少女の死体は既に目玉と唇が無く、顔の肉や、露出した白い脚も多くが食い散らかされていた。
「酷い…こんなことが…。」
「…そこで待ってろ。」
尚也がそう言い、さり気なくレイコの腕を引いて、少女の死体とカラスが見えないように後ろ向きで立たせた。
そして彼はしばらく死体の周辺を探索し、少女が投げ出していた鞄を抱えて戻ると、その中からコルトライト人グを取り出し、ズボンのベルトに差し込んだ。
このダブルアクションの拳銃はおそらく少女の支給品だったのだろうが、一発も撃った形跡が無い。
だがそんなことよりも…。
「…これで解っただろう。あんな風になりたく無ければもう甘いことは考えないことだ。」
尚也は感情の無い声でそう言うと、脚が震えて止まらないレイコを置いて先に進んだ。
589ママノタカラモノ  ◆VzerzldrGs :2006/06/26(月) 01:56:42 ID:qPEinRzy
夢崎区の外れに位置する商店街、夢崎センター街の入り口近くにあるファーストフード店「ピースダイナー」に二人は入った。
尚也はそこで、レイコに席に座っているように言い、自分は勝手にカウンターの中から適当にバーガー類をいくつか持ってくると、一つをレイコに渡した。
それは当たり前だがとっくに冷えてカチカチになってしまっている上、先ほどの惨状をまともに見てしまったレイコにはとても食べる気にはなれなかったが、
前の席に座った尚也は構わず包み紙を剥がすと口にし始めた。
あれから二人は会話をしなかった。
何も言葉が浮かんで来ないのだ。
さっきの女の子、年は自分と同じくらいだろうか。顔は既に判別が付かない状態だったが、色が抜けるように白く、美しい金髪から、きっと白人種の外国人なのだろう。
本来なら周囲の日本人から羨望の眼差しで観られるように美しいであろう少女が、一体誰にやられたというのか…。
その上、そのまま放置され、無残にもカラスなんかに食べられて…。
自分があの少女だったら耐えられない。死んでも死に切れないだろう。それくらい強烈にレイコの眼に焼きついた。
尚也が装備した銃は、彼女の物であろう鞄の中にまだ納まっていた。
と、言うことは、彼女は一発も撃つこと無く誰かに殺されてしまった。いや、ひょっとすると自分と同じように戦う意思が無かったのかもしれない。
そんな少女が殺されてしまうなんて。これも尚也に言わせると、そういう女だから真っ先に殺されたということなのだが…。
「食べないのか?」
バーガーを一つ平らげ、二つ目に手を掛けようとする尚也に、レイコは眉間に皺を寄せた。
「よくそんなに食べれますね。関心します。」
尚也の無神経な行動に対し、レイコなりの厭味のつもりだった。だが、本心でもある。
彼はさっきのことを何とも思わなかったのだろうか。
「食べれる時に食べておかなければこの先どうなるか解らないだろう。だからお前も…」
「貴方は何も思わないんですか!? さっきの人のことを!」
レイコは力いっぱいテーブルを叩き、立ち上がった。テーブルの上に置いている残ったバーガーや丸められた包み紙が跳ね上がる。
水の入ったペットボトルが倒れ、尚也が慌てて起こした。水道が止まってるのだから水は大切に、ですか。
その冷静な仕草も、レイコの怒りを増長させる役割を大いに果たした。
「少しは、少しは殺された人のことを考えたらどうです? 貴方だって大切な人が殺されたんだから、気持ちは解るはずでしょう!? 
なのに貴方は…!」
レイコの感情に任せた言葉を遮るように尚也は立ち上がると、「ちょっとトイレに行ってくる。」とだけ言って店の奥に立ち去ってしまった。
「!!」
これだけ言ってもまだ…! 後ろから思いっきり罵倒しようと思ったが、何もかも無駄に思えてレイコは席に座りなおした。

あれから随分時間が経った。レイコは腕時計を見ると、すでに十五分は過ぎている。用を足すにしては少し長いような気がしてきた。
それとも、彼はよっぽど長い間我慢していたのか?
だが慎重派である尚也がそんなに長い間出てこないのは不自然なような気がして、レイコは呼びに行くことにした。
店の奥にある男子トイレの出入り口のドアが半分開いていたのでレイコはそこから呼びかけた。
「藤堂さ…――」
だが、途中で止めた。中から、小さな嗚咽が聞こえてきたのである。
勝手に覗くのはデリカシーが無いとも思ったが、レイコは気付かれないように少しだけ顔を覗き込んだ。
中では、洗面台の前でうずくまった尚也が手にしている何かを見つめ、小さく震えていた。
「園村…俺は……」
尚也が手にしているのは女物の白いコンパクトであった。細い鎖が繋がっているが、それは無残にも半分で千切れ、頼りなくぶら下がっている。
「あいつは…あいつは絶対に許さない……俺が…。
……これが、終わったら…そしたら…お前の所に、すぐに行くから………。」
その言葉を耳にし、レイコは心臓を杭のような物で打ちつけられたような気がして立ち尽くした。
「あ…」
すぐ傍に人がいる気配に気付いたのだろう。眼にいっぱいの涙を溜めた尚也がこちらに振り返り、レイコとまともに眼が合ってしまった。
尚也は慌てて潤んだ眼を学生服の袖口で拭い、コンパクトをポケットにしまうと、何事も無かったかのようにレイコの横を通り抜けた。
何も出来ずに見送った彼の後姿は、さっきまで見ていた粗野で横暴なそれではなく、
まるで子供のように小さく、砕けてしまいそうに見えた。
590ママノタカラモノ  ◆VzerzldrGs :2006/06/26(月) 02:00:17 ID:qPEinRzy
【赤根沢レイコ(if…)】
状態 やや疲弊
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ライドウたちを探す ゲームからの脱出

【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 正常
武器 ロングソード コルトライトニング
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
現在地 同上
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇を討つつもりだが、その後は…
591名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/06/26(月) 06:01:40 ID:763/ypBV
初カキコです
バトロワにでてくる登場作品のキャラクターの動きが凄く面白いです
皆さんの文章表現にが素晴らしく続きが気になります
いやいやマジで
希望なんですが・・・・
合体前のカオスヒーロー君(わるお君)と
闇に染まりきってしまったノクタン君(という表現で良いのでしょうか?)
両者の対峙とか出来ないでしょうか?

方や悪魔と合体してでも力を求めたかった少年
方や問答無用で悪魔の力を得てしまい闇に染まりきった少年

個人的にはこの両者の行動、あるいは対決等が見てみたいです
もちろん結果がどうなるか等は言いません
宜しくお願いします

でもロウヒーロー君(よしお君)の状況みると合体後の姿で登場ですかね?
それもまた面白いとも思います
最もカオスヒーロー君が既に脱落してたら・・・実現しないわけなんですが・・・

長文失礼しました







592名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/06/26(月) 06:04:40 ID:763/ypBV
すみません
感想スレあったの思い出しました
駄文で消耗してしまって申し訳ありません
593混沌:2006/06/26(月) 14:23:25 ID:763/ypBV
どうやら奴は逃げたようだ……
「彼」はそう判断した。
薄汚れたジャケットにハーフパンツ、ややくせのある短い髪の、自分と同じかあるいは少し年下であろうと思われる少年。
しかし素人であるらしいものの戦況判断ができる相手である事は間違いない。
良く言えば的確、悪く言えば臆病。
「彼」はそう判断した。
少なくともそういった判断が的確に出来なければ文字通りの殺し合いしか出来ないこの世界では真っ先に死ぬだろうから……
そういえば……と「彼」は思い出す。
「あいつもそうだったな……」
いつの間にか口に出していたらしい、思わず口を手で塞いでしまった。
−ヤバい!−
本能的に思考が回転する。もしも誰かに聞かれたら、ここにいるのがばれてしまう!
…どうやら今は幸運の女神が「彼」に微笑み続けてくれているようだ。周囲からは何も音がしない。
銃口から放たれる音も、魔法を唱える声も……聞こえない。そして近づいてくる足音もだ。
少し安堵感を「彼」は覚えた。もしかしたら俺も先程の少年と変わり無いのかと自虐的な思考も脳裏を掠めた。
そして皮肉的な感想を今度は「心の中」で言った。
「幸運の女神が本当にいたら俺があんな親の元で育ち、チーマーに嬲られ、銃火器を持って悪魔との戦闘も無いんだろうな」と……
そしてふと気付いた。
−ああ、そういや少なくとも「女神」は確かに存在していたな。「あいつ」が使役していやがった−
暗く、そして薄く笑った「彼」は先程の思考を続きを開始した。

「あいつ」は「彼」とは異なり魔法を使えることは出来なかった。その点は「彼」の自慢でもあった。火炎系を主とした攻撃の要、アタッカーとの自覚もあった。
しかし「あいつ」は戦況を判断する能力、言い換えるなら戦略的な視点を持った仲間であった。アタッカーと自分を比喩するならば、さしずめコマンダーとでも言うべきか。
むぅ、と顔をしかめる。ならば俺は「あいつ」の兵隊だったのか?と
そう、「彼」はある意味短絡的な人間であり、彼の言う「あいつ」が「彼」を抑えていてくれたからこそ「彼」があの様な文字通りの弱肉強食であった世界で生き抜けたかもしれないのだ。
銃火器を使う能力も物理的な攻撃を行う能力も恐らくは自分と大差は無いだろう。互いに元々はずぶの素人から全てが始まったのだから……
ここまではいい……だが……
「悪魔召喚プログラム」
「彼」にはそのプログラムを使う事が出来た。そして「彼」には出来ないコンピューターを使える技能すら持っていた。
「彼」が魔法を使う特別な能力があったように「あいつ」にも(機械的な助力があったにせよ)特別な能力があったのだ。
遭遇した悪魔と容赦なく殲滅するのではなく「交渉」と言う状況化に持ち込み戦闘結果を左右できる能力。「彼」が負傷した際、その能力で「あいつ」は戦闘を行わずに済ませてしまったのだ。
さらに「あいつ」は交渉を行った「悪魔」を「仲魔」として自軍の戦力として使役し戦力増強を図る事が出来た。
かつて「彼」は力を求め、「あいつ」と行動を共にした。
あの時は確かに有効的だった。
しかしこの状況化では異なる。
仮に「あいつ」と遭遇した場合、多勢に無勢と言う最悪の状況すら想定できるのだ。
状況が状況だ。「殺しあい一人しか生き残れない」とするならば「あいつ」ともいずれは戦う事になるのだろう。あの能力が厄介だ。
自分が最初に持っていた持ち物から察すると「あいつ」はそのプログラムを運用する術を持っていないのかもしれない。だが油断は出来ない。
このスマルと言う都市はあの「大破壊」があった状態以前であるからだ。
何処かからパソコンを調達しているかもしれない。もしかしたらプログラムを持ち、既に運用してこの殺戮劇に参加しているのかも知れない。
「いなきゃいいんだよ、ここにいなきゃな」
小声で呟く。しかし「彼」は「あいつ」が七姉妹学園と呼ばれた学校(そういえばそのような「単語」がこの世にはあったのだ)で確かに居た事を確認しているのだ。
「彼」の本能的と言える能力とでも表現すれば良いのだろうか?
「彼」はその場で最も強みとなる要素を見出す能力に長けていた。それが裏目に出た。「あいつ」はあそこに居たのだ。
不安要素が一つ確実に増えた。
否、もともとあった不安要素を再確認してしまったのだ。
594混沌:2006/06/26(月) 14:29:16 ID:763/ypBV
無意識の内に呪いが科せられた箇所に手が触れる。
冷たかった。
この殺し合いが開始されて一日もまだ経過してはいない。そして「彼」は「確実には」人をまだ殺していないのだ。
先程の男もまだ生きているだろうと思ったほうがいい。
ルールを思い出す。
誰かが二四時間以内に誰かを殺さないと全員が死ぬ。
本当だろうか?……ブラフではないのだろうか……
「主催者」を名乗る輩の機嫌を損ねても即死する。これは「彼」も目撃した。
うん、これは本当だ。「彼」が使う事が可能な「呪殺」と言う魔法に酷似していた。
この二つのルールがあるとするならば……
結論、嘘ではないと推察する事が出来る。少なくとも「主催者」の気紛れで「彼」自身が殺されるケースがありうるのだ。
冗談ではない。
背筋が凍る。
心細い。
逃げ出したい、だが逃げ出したら間違い無く自分が死ぬ。
誰かを殺さねばならない。
有効的な武器として銃も持ってはいるが弾丸も無限ではないのだ、魔法が使えるとはいえ近接戦闘の武器は調達せねばならない。
どうすればいいのか?……と考える。
まずは優先順位を見極めなくては……
混乱しかけた頭脳を落ち着かせる。
なんだ……と「彼」は思った。
要は「大破壊」の時と一緒じゃないか……と「彼」は結論した。
異なるのは(現状での判断として)一人で行動しなければならない。と言う事だけ。
まず最初に武器を調達しよう。このままでは弾丸が尽きたら餌食になる可能性がある。魔法も絶えずに使える訳ではないのだ。まずはそこからだ……
しばし瞑目、目的が出来たからであろうか、先程より気分は落ち着いた。武器の調達先……出来るだけ遭遇が無い場所かつ武器がありそう、あるいはなりそうな物があると考えられる場所……勿論一番近い場所……
ザックの中に入っていた地図を確認する。
「学校」
この単語が脳内で再び浮上した。
かつての自分を思い返す……
教室で授業を受ける自分(殆ど居眠りしかしていなかった記憶しかない)……
休み時間に廊下を歩く自分(意味も無く歩いていただけだった気がする)……
校庭にある芝生で寝っ転がっていた自分(つい眠ってしまい担任にゲンコツを喰らった)……
放課後でクラブ活動を行っていた自分(事実上「彼」は帰宅部だったが)……
ろくでもない記憶しか浮かばない自分に後悔した「彼」だった。
まてよ……まてまてまてっ!
「校庭」。
この単語で一つ「彼」なりのアイデアが浮上した。
陸上部は何処の学校でもあるはず。恐らくスタート時に撃つ銃みたいのがあるに違いない、あれで相手を威嚇できないだろうか?
少なくとも相手に若干の隙は与える事が出来そうな気がする。火薬も魔法と併用して上手く使えるはずだ。
一つ閃いた「彼」の脳裏に様々な思考が浮かび上がる。これが天啓と表される類なのか?
剣道部は何処の学校でも存在するはずだ。剣道部で木刀は入手出来ないだろうか?
あの学校には弓道部は無いだろうか?
弓はともかく、練習用の矢でもあれば先を尖らせて使えないだろうか?
あの学校には非常用にと置かれた事故災害用の斧が残っていないだろうか?
刃が無いかもしれないが鈍器である事に間違いない。
よしんばその部類が無くとも最悪はボールペンやシャープペンシルでも良い、武器が無いと油断した相手に突き刺す事だって可能だ。
そして最後に浮上した最も重要な理由……生き残る上で重要な要素、敵(そう全員敵なのだ)との遭遇を避ける……
「我々の魔法によって町のどこかに転送させてもらう、各人違う場所へだ」
あの言葉を思い出した。確立的に学校に戻る、あるいは転送される人間は少ないのではないだろうか?
「彼」が現状で最も妥当であろうと思った行動方針が固まった。
方針が決まると彼の実行速度は速い。
595混沌:2006/06/26(月) 14:30:33 ID:763/ypBV
動こうとした瞬間……
腹が空腹を訴えた事に気付いた。どうやら「彼」の体は言ってみれば正常に機能していると言って良い。
僅かな苦笑。そしてザックの中にあった食料と水を取り出した。
警鐘が脳裏に響く。
生き残るのであれば出来るだけ温存しろ。食料と水を求める輩は必ずいる。食料や水を入手する時に戦うべき相手と遭遇する可能性が十二分に考えられる……誰だって腹は減るし、喉は渇くのだ。
(腹の調子にもよるのだろうが)幸運にもザックの食料と水には一食以上の余裕があるように思えた。
ここでまた「彼」の頭に不安要素が過ぎる。食料が無くても人間は一週間近くは生きる事が出来る。水が無い場合は三日で死ぬ……
「大破壊」前に本屋で立ち読みした何かの本に書いてあったのだった。
−だがとりあえずは腹ごなしが先決か……「腹が減ったら戦も出来ぬ」と「あいつ」も言ってたしな……−
そういいながら食事する「あいつ」、その笑顔が「彼」には眩しかった。羨望とも言って良い。
「彼」にはあのように笑いながら食事をすると言う記憶が少年期には全く無かった。そう、今考えてみれば「彼」は「あいつ」との食事が楽しかったのだ。
「彼」はその時気付かなかったが、その思い出に浸っていた時、口元には確かに微笑みがあった。もしかしたら最後かもしれない人間的な微笑みが……
水はペットボトルに入っていた。有難い、少なくとも一回で飲み切る事は無いのだ。
続いて食料。これは煮炊きすような物では無い。缶きり等を使う代物でもなかった。(ザックには缶きりの部類に属する「アイテム」が存在していなかった)日本語で書かれていたので「彼」にもその食料を名前と食べ方は理解できた。
懐かしい名前の食料であった。大破壊前にはよく売られていた食品だ。
「彼」はそう思いながらその食料の紙製で出来たパックを破る。
その中にはガムを包む銀紙のような物で封がされていた。
その数二つ。
保存状態をかなり重視した作りの様に「彼」は感じた。あの時以前の「彼」あったなら「なんでこんななんだよ!面倒臭せぇっ!」と怒鳴っていただろう。
「大破壊」後の状況が「彼」を変えたのだろうか?
今の「彼」にはその保存状況を重視した造りがとてもありがたかった。
その二個のうち、一個の封を破る。やっと食料が顔を出した。スティックにも似た形状の食料が二つ入っている。それを見た「彼」は食欲が一気に上昇したのを自覚した。
貪る様に一個、そして味わう様にゆっくりもう一個。
そして今度は喉が渇きを訴える。
「彼」は再び苦笑しつつもペットボトルの栓を捻り、中の水を口にする。「大破壊」で得た経験か「彼」には大量に水を飲まない習慣がついていた。
気持ち喉を潤す程度。うん、今はこれで我慢だ……
596混沌:2006/06/26(月) 14:31:19 ID:763/ypBV
落ち着いたところで「彼」はふとザックから手持ちの参加者リストを取り出し眺めた。ざっと目を通す。
殆どの名前に記憶に無かった。吉祥寺で「彼」に多人数で暴力を奮った男の名前も無い。
だが「あいつ」の名前とレジスタンスのリーダーだと名乗った「女」の名前、そして「もう一人」の名前が目についた。
「奴」もこの殺し合いに参加したのか……いや、させられたのか?
もう一人の仲間、「奴」の事を思い出す。
「彼」なりの言葉で評価するのであれば只の「偽善者」だ。
「奴」も魔法が使えるのだった。
何かあったら「助けましょう!」の一言が真っ先に出る男。
それ故か「奴」は負傷した場合の回復を助長する魔法に長けていた。先程の比喩でいうならディフェンダーであろうか?
「彼」と「奴」は魔法を使う事は共通していても使える魔法のベクトルが逆であった。
気に入らない、と「彼」は思った。正直「奴」の回復魔法には感謝している。が、「奴」への感謝とは別次元の話であった。少なくとも「彼」にとっては。
そういえばあの時もそうだった。
「あいつ」の母親が文字通り喰い殺され、「あいつ」が絶望的な悲しみに満ちている時に「奴」は「優しさ」と言うものを口で表現したのだ。
ふざけるな、と正直「彼」はあの時に思った。あえて黙っておいてやるって方法もあるのだ。そもそも肉親が(あの時の様な平和で「あったはず」の世界で)有り得ない(はずの)方法で殺されたのにかけるべき言葉があるものか。
少なくとも「彼」には「あいつ」にかけるべき言葉が無かった。だから黙って見ることしかできなかったのだ。そう「彼」は思ったのだ。そしてその論理の結果を実行したのだ。
持ち前の性格故か「奴」と「彼」との相性は良くは無かった。最悪だったと表現しても良い。何かしらあれば必ずと言っていいほど意見が対立していたのだから。
今更ながら良く共に行動していたとも思う。
そうか、と「彼」は呟いた。「あいつ」がいたからだ……「あいつ」が仲裁役に入ってくれたからこそあの時はやっていけたのだろう。
そうでなければ「奴」とはウマが合うわけが無く、あのような殺伐とした世界では結果として間違いなく銃を撃ち、手持ちの武器で斬り合い、そして魔法を放っていたに違いない。
「奴」への気持ちは今も変わらなかった。当然だ、ウマが合わないと言う事は「奴」との妥協が出来ないからだ。「奴」となら戦うだろう、否、戦う。もっとも「奴」が生きていたらの話ではあるが……
しかし……「あいつ」とは……
友達。
そう「彼」は「あいつ」と友達になりたかったのだ。それも出来ればあの様な状況になる前に、だ。
「友達か……」
「彼」からため息が漏れた。友達になりたかった人間と殺し合う事になるとは……
出来れば他の誰かが殺してくれないものか…あわよくば共倒れになってはくれないだろうか……
客観的な点から見れば、「彼」の心境は友達になりたかった人間への思いとは到底思えない。
だが、「互いに殺し合い、たった一人しか生き残る事が出来ない」と言う特殊な環境に置かれた人間の心境としたら……どうであろうか?
「彼」のこの思いは「彼」なりの精一杯の優しさかもしれなかった。
しかし同時にふつふつと沸き上がる心の奥底からの欲求……
「あいつ」とも「奴」とも戦ってみたい……自分が求めた強さ、これを得る事が出来るのかもしれない……
……「彼」は覚悟を決めた……
そして目的として決めた武器入手の為、最初に放り込まれた七姉妹学園へと歩を進めるのだった。
かつて「彼」が言う「あいつ」は夢の中で遭遇した悪魔に「彼」の事をこう告げられた。
「これは力を求める渇いた魂」
その「彼」が向かう七姉妹学園には「力を与えられた少年」がいた。
「力を求める者」と「力を与えれた者」、その二人の邂逅は近い……
597混沌:2006/06/26(月) 14:32:00 ID:763/ypBV
【カオス・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:正常
武器:銃(経緯から狙撃が可能?)
道具:カーボライナー(弾丸:追加効果STONE)
現在地:蓮華台
行動方針:銃以外の武器入手の為、七姉妹学園校内に移動
598混沌VS混沌:壱:2006/06/26(月) 20:45:10 ID:763/ypBV
七姉妹学園……そう呼ばれる学園の校舎の中に「僕」はまだ立っていた。

あの時「僕」は尊敬する先生を抱擁した、
「僕」はほんの少し、力を加えたのを記憶している。ほんの少しの力のはずだった。
もしも「僕」の体が「人間の体」であったのならば……
受胎前に見ていたドラマの様な展開があったのかもしれない。
「僕」だって男の子だ。異性に興味が無いとは言わない。先生は理知的で美人だった、うん。悪魔になった今でもそう「僕」は思う。
しかし……
今の「僕」は既に「人間の体」では無くなっていた。
尊敬していた先生が引き金となって起こってしまった「東京受胎」、それまでは確かに「僕」は人間だった。
しかし目を覚ますと僕は「悪魔」の姿に変貌していた。
金髪の少年と喪服の老婆……
あの二人によって選ばれた(らしい……)
そして禍玉と呼称される蟲(まさに蟲と言う表現が相応しいと思う)の力を得たのだ。
「悪魔」としての力を……
そして文字通り魑魅魍魎が跳梁跋扈する砂漠と化した東京……いやボルテクス界と呼ばれるようになったトウキョウを彷徨った。
魔人と呼ばれる骸骨と戦い、メラーと呼ばれる蝋燭立てを入手し、アマラ宇宙の理を知った。
受胎前の時に読んだ漫画にこんな単語があったのを今でも覚えている。
「等価交換」。
要は何かを得る為には何かを失う必要があるという事……そんな意味であったような気がする。
考えてみれば僕はボルテクス界で己の命や魔貨と呼ばれる通貨と引き換えに仲魔と言う味方をつけてきた。
そして味方にした仲魔を犠牲にする事で仲魔を強化し戦力増強を図った。
結果的に考えるならば成功といっていい。弱肉強食のあの世界で僕が生きぬいたのだから成功には違いない。
でも常に何かを僕は失い続けた…
尊敬する先生、幼馴染の千晶、クラスメイトだった勇、新宿で知り合った聖……
特徴的な頭にどうしても目が行ってしまう男も居たが……「僕」と出会った直後に悪魔(今思い返すとバフォメットだったんだな)で殺そうとしたから……どうでもいいか。
そしてアマラ宇宙の事を知る事と引き換えに僕は「人の心」も失っていった。
最深部で響いた凄まじいまでの歓声。
待ちに待ったぞ!と心の底から思える程の歓喜の声。
そう彼らは「僕」を待っていたのだった。待っていてくれたのだ。
あの時、僕の心は本当に震えた。
将来を期待された皆の声程嬉しいものは無いと思う。それが例え人であっても悪魔であっても……
そして最終試験とも言うべきあの戦い。
僕はそれに勝利し、皆の期待に答えることが出来たのだ。
そして僕は歩いた。皆の期待に答えるべく先頭に立って。
599混沌VS混沌:壱:2006/06/26(月) 20:45:56 ID:763/ypBV
そうだ。
そこでだったんだ。
そこで意識が吹っ飛んだ。
気がついたらこの七姉妹学園に居て「殺し合い」の説明を受け、もう一回また意識が飛んだんだ。
今考えたらアマラ経絡を利用したワープに近い感覚だった。
そして気がついたらまたこの学園……そういや何回か行き先を間違えてワープしたな……
「僕」はなんとなく「人間」であった時を思い出して廊下を歩き、教室に入り校庭を眺めた。それも上半身真っ裸、普通なら先生が怒鳴り散らす所だろう。
自嘲気味に笑いつつ、ある教室(掲げられた札からニ年生の教室と推察できた)に入った時、僕が手を掛けるべき最初の犠牲者は決まった。
高尾先生……
あっさりと死んでしまった……
最後の言葉。
「それでも彼方は死なないで。生き延びて、世界の末を見届けて…」
僕はその言葉を聞いてどう思ったか……等は言わなくても理解できるだろう?
でも、正直「人はこうも簡単に死ぬ事が出来るのか?」と再認識したのは事実だ。
最も悪魔すら弱点をつけば簡単に死ぬのは一緒だが……
涙が頬を濡らしたのは自分でも意外だった……

そこまで思い返した所でふと気付いた、この世界のルールを。
二四時間以内に一人以上の死亡者が発生しなければならない。
この生き残り戦争の条件は少なくともクリアしたわけだ。二四時間は何もしなくてもいい。
ルールブックもあり(丁寧な事に日本語で表記されていた、全く有難い)それを見ると死亡者通知が定期的にされると書いてある。
つまりは死亡者通知が無かったら……殺し合う必要がある訳だ。
「僕」はできれば人とは接したくはなかった。関わりも持ちたくない。
「僕」にはやるべき事が存在する。
きっと他の人もそうだろう。勝手にするがいいさ、殺しあおうが共闘しようが。
しかし……気になる点が「僕」にはあった。
いつの間にか背にあったザックの中には参加者リストが入っていた。後は煙幕弾と呼ばれる敵から逃げる際に使用するアイテムが目についた。
当然最初に確認したのは参加者リスト。
敵の情報を得る事が出来なければ勝てる敵にも勝てない場合がありうる、ボルテクス界で学んだ正に「僕」の理だ。(そういえばこの時、「パト」と言う二文字が脳裏を過ぎった。何だろう?)
殆どの人名は知らない、知る必要もなかった。殆どが「人間」であるだろうから。それはリストの名前で判別はつく。外人も居るみたいだ。
ああ、ここに外人ならぬ人外な存在が一人いるな、と苦笑しつつ眺めた。
苦笑して見続けることが出来たのは中盤あたりまでだっただろうか、その名前が出てた時は体が凍るような感覚を覚えた。
今さっき殺してしまった先生を始め、倒したはずの皆の名前が並んでいたからだ。
全員に配られたとしたら倒したはずの皆のリストに「僕」の名前も表記されているはず……つまりは最悪、もう一回戦う必要がある訳だ。
そこまで考えての「僕」の結論を言うならば……
「まぁその時は戦うしかない」
この一言だった。
正直な所彼らとは二回戦っている事になるのだから……まぁ要領は得ているつもりだ。なんとかなるだろう。
もしかしたら誰かが既に倒されているのかもしれない。そうしたら手間は省けるし結局の所、定時報告がされるのだ。嫌でも誰が生き残ってるかがわかる。
600混沌VS混沌:壱:2006/06/26(月) 20:47:18 ID:763/ypBV
……そんな事を思っていた……さっきまでは。
教室にある時計を見ると秒針が確実に動いている。
少なくとも時間は把握できるわけだ。
だがこの時計が正しいとは限らない。
念のために「僕」は他の教室の時計も見てみた。
若干のずれが時計によってあるようだが大体が同じ位置を短針が示していた。
とすれば今は午前五時……この殺し合いが開始されて二時間あまりが経過した事になる。
ルールブックによれば後一時間程で最初の報告と言ったところか……どのような内容で報告がされるのかは興味があった。
状況の経過が気になった。
ふむ、現状待機といこうか?ノルマは既に達成したのだから……と思ったその時だった。

「彼」にも予想外の大きな音が発生した。
当然といえば当然であった。鉄板を銃で撃ったのだから。
「彼」はここまで「彼」なりの隠密行動を行ってこの七姉妹学園まで戻ってきた。(あくまで「彼」なりのとだけ補足する)
見つけるべきは強い武器、それも直に使えるものがいい。確か…廊下に多く設置されてるはずだった。
薄明るい廊下の中で赤く光るランプが一つ。
あった。アクリルの覗き板から覗くと斧に似たような鈍器が中に飾られていた。
勿論それを悪用されないように頑丈な鉄製の板で構築された箱でそれを強固に保護している。
それを見た「彼」は脳内の何かが弾け飛んだ。有体に言うならばキレたのだ。
銃をその鉄板で構築された箱に向け引き金を引く。
当然ながら発生した眩いマズルフラッシュと響く銃声、そして匂ってくる火薬臭、おまけに薬莢が転がる音。
後悔先立たずとはこの事か、「彼」は激しく後悔した。
誰かに聞かれたかも知れない。
貴重な弾丸を消費してしまった。
しかしその見返りとして箱に収められた斧に似た鈍器を得る事が出来た。
それを手に取る。結構な重量だった。だが重さの分殺傷能力は高いはず。それに彼にはかつて斧を手に持ち悪魔と交戦した記憶があった。
要領は一緒だ、大丈夫。
自分に言い聞かせる。そして近くの教室に目をやると扉が開いていた。「彼」は反射的に飛び込んでしまった。
そこで見たもの……
寝ている人間であった「もの」。
女「で」あった。
死んでいたのだ。
美人であることには間違いない。端正な顔立ちだった。何故か微笑みにも似た表情を浮かべて彼女は動かぬ人となっていた。
ドラマ等であればここで「彼」は叫んでいたのかもしれない。だが「彼」も修羅場を潜った経験の持ち主だった。
思考を開始。
誰かが「この場所」で「この女」を「殺した。」
更にこの結果状況から判断する。
抵抗を試みた形跡は無い。抵抗したのならこんな顔で死んだりはしない。恐らく顔見知りに出会い殺されたのだろう……
結論。
「ここには敵がいた。」
誤算だった。まだ少なくとも一人はこの近辺に敵がいるのだ。
思わず教室の出入り口から見える教壇の反対側、つまりは進入して来るであろう死角に身を寄せる。
恐怖からか歯が音を鳴らしだした。それも連続で。
同時に吹き出る嫌な冷や汗……
一人だと心細かった。「あいつ」や(思い出したくはないが)「奴」が一緒の時はこんな事は無かったはずだった。
静まり返る学校……
「敵」は消えたのか?と「彼」が思ったその時だった。
廊下に響く足音が聞こえた……
「敵」が来たのだ!