ロボゲーSS・小説投稿スレ

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1それも名無しだ
・萌えスレにSS(ショートストーリー)を投下したいがレス数や容量が心配。
・俺スパロボ、俺AC等々を書きたいが自分でサイト作るの('A`)マンドクセ。
・とにかく妄想を吐き出したい!
そんな時のためのロボゲーSS、小説投稿スレ。

書き手の人へ
・叩かれても泣かない。
・なるべく投げ出さないこと。
・きつくてもぬるくても感想は肥やし。
読み手の方へ
・親の敵のように叩くくらいならきっぱり無視。

関連スレ
スパロボ二次創作小説を語るスレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1133277308/l50
2それも名無しだ:2005/12/27(火) 19:03:47 ID:JXwe0YWc
2ゲッ
3それも名無しだ:2005/12/27(火) 19:05:15 ID:Rj/5puyr
投下しないだろうが質問。
単発・続き物のどっちでもいいのか?
4それも名無しだ:2005/12/27(火) 19:06:09 ID:IllBNbts

>>3
なんでもありだからOKだろ
5それも名無しだ:2005/12/27(火) 19:11:19 ID:XNchVqzV
>>3
むろん何でもありで。
ただ、台詞だけ等の小説の形をなしていない物は

スパロボ風に会話イベントを妄想するスレ 5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1130599267/l50
こちらの方が向いているかと。
テンプレに入れておけば良かったか。
6それも名無しだ:2005/12/27(火) 19:16:29 ID:Rj/5puyr
>>4-5
ああ、そうか
糞スレ立てる前に〜スレで気になったから
7それも名無しだ:2005/12/27(火) 21:22:16 ID:hteBpmhZ
age
8それも名無しだ:2005/12/28(水) 00:20:58 ID:tX89K986
【地上編第一部】マジンガーZ・ゲッターロボ・鋼鉄ジーグ前半

【地上編第二部】グレートマジンガー・ゲッターロボG・鋼鉄ジーグ後半
↓ 【宇宙接触編】ガンダム(一年戦争周辺)・グレンダイザー・コンバトラーV・エルガイム

【静寂の中の戦乱編】0083・ダンバイン・ザンボット3・ダイターン3・ナデシコ・飛影・ガガガ前半

【地球圏混乱編第一部】Zガンダム・ZZガンダム・ボルテスV・ダイモス・ダルタニアス・ドラグナー・劇場版ナデシコ・ガンダムW・ガガガ後半・ゴッドマーズ

【地球滅亡編】Gガンダム・逆襲のシャア・ガガガファイナル・種

【未来編】∀ガンダム・ガンダムX・ザブングル・ビゴー・勇者ライディーン・キングゲイナー

みたいなのをプロットを組んでサイト作ろうとしたけど文章が全然まとまんなくて挫折したことがある。
9それも名無しだ:2005/12/28(水) 03:15:34 ID:nsjTN3t9
【第一部:第三新東京市編】
エヴァ(EOEまで) レイズナー(前半) ドラグナー(ギルトール元帥暗殺まで) Gガンダム(予選編)
ガンダムX(新連邦政府誕生まで) 電童(螺旋城編) ガガガ(対EI-01編) ジャイアント・ロボ(電磁ネットワイヤー作戦まで)
チェンゲ(真ドラゴン崩壊まで)
他、ダンクーガ、ゴッドマーズ、ガンダムWなど

【第二部:アフターEOE編】
エヴァ(オリジナル展開) レイズナー(後半) ドラグナー(最終話まで) Gガンダム(決勝編)
ガンダムX(最終話まで) 電童(ガルファ本星編) ガガガ(原種編) ジャイアント・ロボ(最終話まで)
チェンゲ(最終話まで)
他、ダンクーガ、ゴッドマーズ、ガンダムWなど


第一部は基本的に第三新東京市(及びその周辺地域)を中心に話が進む。
獣戦機隊はネルフに程近い御殿場駐屯地に居を構え、ドモンはミサトのマンションに居候。
大作と銀鈴、戴宋や鉄牛もやがて日本に出向する。(フリーデンの面々だけは世界各地を回っているが…)

世界はギガノス軍の反乱や異星人の襲来に沸いているが、その裏に流れているのは「ゼーレvsBF団」の構図。
様々な組織の野望が交錯する中、EI-01や螺旋城の駆逐には成功するも、ゼーレの手によりGGGとGEARは
連邦軍の権力下に置かれ、ついには劇場版エヴァの通りサードインパクトが発動してしまう。


第二部はEOE後の世界が舞台。
依代たるシンジの心の変化によりサードインパクトは不完全に終わり、補完された筈の人々はLCLの海から
再び元に戻ったものの、その余波により世界は荒廃、その隙をついてグラドス・ギガノス連合軍が地球を
権力下に。
一方、混乱醒めやらぬ死に体の連邦政府を後目に、急進派による新連邦政府が誕生。
各地で凄惨かつ不毛な戦いが繰り返されるが、やがて機界31原種やガルファ本隊の侵攻が始まり
地球人類のみならずグラドスにとっても滅亡の危機が訪れる。
しかし、散り散りになったかつての戦士達もまた、少しずつ再起を図っていた。

そんな中、かつての宿敵たるBF団軍師・諸葛孔明から思わぬ提案が持ちかけられる…


こんな話を妄想中。
ちなみに主人公はミサト。
10それも名無しだ:2005/12/28(水) 06:20:38 ID:mHBA9WWP
ほしゅ
11それも名無しだ:2005/12/28(水) 16:18:06 ID:b57oj+eg
このスレは事前に以下のスレで立てることを相談したうえで、複数の承認を貰って立てられました。

糞スレ立てる前にまずここに書き込め!Part2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1135594787/12-21
12それも名無しだ:2005/12/28(水) 16:20:50 ID:JY6aG52T
長編書くのはなかなか難しいよね
俺もなんか書きたいけどネタがないしな〜
>>9の人が書き終わるのをマターリ待つとするか
13それも名無しだ:2005/12/28(水) 20:57:50 ID:J2vG6iAg
ニルファの「BYOND THE TIME」のシャアvsアムロを書いてます。
書き終え(られ)たらあげてみます。
14それも名無しだ:2005/12/28(水) 23:23:17 ID:VVzaB3Em
>>1
後、踏み台は極力書かない方良い。大概叩かれるから。
15それも名無しだ:2005/12/29(木) 01:30:48 ID:J3f35Js0
>>14一人でエヴァオンリー小説読んでろ。
1613:2005/12/30(金) 12:24:07 ID:w/NxVp2/
第2次α 「BYOND THE TIME」のシャアvsアムロ

シャア「ララァが死んだ時の苦しみ…存分に思い出せ!」
アムロ「シャア、お前…」
アムロが言い終える瞬間、シャアの『ナイチンゲール』がビームトマホークを振り上げ襲い掛かる。
ア「シャア!」
アムロは『Hi-ν』のビームサーベルを抜き応戦する。
(ガシィッ!)二つのビーム兵器がぶつかり合う。
ア「シャア!人類の粛清が、本当に正しいと思っているのか!?」
シャ「…」
ア「答えろ、シャア!」
シャ「貴様は、まだ私がやろうとしている事を理解していないようだな…!」
ア「何だと…!?」
(ピキーン)
ア(下!?)
アムロは咄嗟に退いた刹那、『ナイチンゲール』の隠し腕が空を裂いた。
ア「シャア…!!」
だが、アムロの言葉が聞こえてないかのように『ナイチンゲール』はファンネルを展開する。
ア「ちぃっ!」
アムロはファンネルをよけながらも、ビームライフルで1基、2基と打ち落とす。
シャ「アムロ!!」
中距離からのメガビームライフルが『Hi-ν』めがけて襲い掛かる。
アムロは回避が間に合わないと判断した。
ア「くっ!?フィン・ファンネル!!」
寸前でI-フィールドを展開する。
ア「行け!」
フィールドに使用した4基のフィン・ファンネルをシャアへと向ける。
『ナイチンゲール』のモノアイが不気味に輝き、ブーストを最大噴出させる。
払いのけるようようにトマホークを振り回し、1基打ち落とす。
包囲を脱した『ナイチンゲール』は、振り向きざまに拡散ビーム砲を発射し残りの3基を撃墜した。
その時、シャアは背後に殺気を感じた。
シャ「甘い!」
再びビームサーベルとビームトマホークがぶつかり合う。
ア「くっ…!!」
シャ「このナイチンゲールをなめてもらっては困る!」
ナイチンゲールはバーニアを全開にし、いっきに押し込もうとする。
ア「くっ…うぅぅ…!」
アムロも押し返そうとするが出力では相手の方に分がある。
ア(このままでは押し潰される…!!)
アクシズが背後に迫る。
(ぶつかる)
そう思った瞬間、落下速度が下がったことをアムロは感じた。
ア(なんのつもりだ…!?)
だが、今はそんなことを考えてる場合ではない。
アムロはスラスターを水平にふかし、出力を上げ、『ナイチンゲール』をサーベルで払いのける。
シャ「ぬっ…!」
2機はアクシズの表面に立ち対峙する。
ア「なんのつもりだ、シャア!!」
シャ「私の真意を知らずに死なれては困るのだよ、アムロ」
ア「真意だと…!?この戦いに意味があるというのか!?」
シャ「貴様なら見出せると思ったのだがな…。
   ならば、私に力を見せろアムロ!!それが答えかどうかを確かめてやろう!!」
ア「お前の真意を教えてもらうぞ…、行くぞ、シャア!!」

アクシズ落下まで残り8分

続く。
17それも名無しだ:2005/12/30(金) 18:19:24 ID:lxxJS4E9
18それも名無しだ:2005/12/31(土) 03:15:43 ID:oqCMwGKJ
>>16
あんま文句は言いたくないけど
人名「セリフ」っていう台本形式はなるべくやめてくれ
まだ途中だしこれからの展開に期待してます
1916:2005/12/31(土) 10:52:57 ID:YLp0RgHB
>>18
批評ありがとうございます。
確かに人名かかなくても誰がしゃべってるかがちゃんと分かるのが小説でせすからね。
気をつけて頑張らせてもらいます。
20それも名無しだ:2005/12/31(土) 15:07:02 ID:EdI9eECg
21それも名無しだ:2005/12/31(土) 15:48:15 ID:8kZLlJrG
定期age
22スーパー携帯機ジェネレーション:2005/12/31(土) 22:33:48 ID:DVsX8ORc
「ん……ここは…?」
宇宙、広大な暗闇の中でその機体のパイロットは目覚めた。
「…クソッ、センサー類は半壊か…出力もあがらない…」
大規模な戦闘があったのだろう。機体のいたるところに大小沢山の傷がある。
「……救援信号……は生きているか。」
しかし、この暗闇の宇宙である。
付近にたまたま、戦艦や輸送船があるとは考えにくい。
「…ここで死ぬのか。申し訳ございませんことよ、レモンさま…。…ん、あれは…」


その機体は突如として現れた。
(………特機か。大分破損しているようだな)
大きな焦げ跡を残す機体を、死んでいないサブカメラを使い肉眼で観察する。
(破損値は……私の機体と同程度か。しかし、『こちら側』には転移技術は……)
…一分、二分。機体はまったく動かない。
(パイロットが気絶しているのか?それとも絶命したか…)
機密保持のため、パイロットが自ら命を断つ事は十分有り得ることだ。
(しかし、それなら自爆した方が効率的だ)
動かない機体に近付き、腹部を手で掴む。
(生体反応はあるようだな)
機体のセンサーの生きている部分がそう示したのに、パイロットは安堵した。



今度はその宙域に、戦艦がやってきた。
(…あれは…ナデシコか)
即座に国際救急チャンネルに回線を合わせ、通信する。
「………そちらの戦艦、聞こえるか」
「……!……い……こち……ネルガ…………ナデ…コ……で………!」
激しいノイズ。チャンネルをいじり、調整する。
「こちらは怪我人がいる。救援を求めたい…至急、その艦に着艦させて欲しい」
「……い、繋がりました?あ、えぇと……すみません、着艦準備をしますので、所属と名前をどうぞ!」
はて、困った。こちらとしては所属はまだ言えない。
「…所属は、極秘任務につき回答不可能だ。名前は…そうだな、ラミア・ラヴレスという」
ラミアは、機動戦艦ナデシコの通信士に、そう名を名乗った。
23スーパー携帯機ジェネレーション:2005/12/31(土) 22:58:05 ID:DVsX8ORc
「………?」
着艦したはいいものの、なにやらあわただしい。皆してひとつのモニターを見つめている。
『ウリバ………整備班長。モニターを見てらっしゃったりしてますけれど、いかがいたしちゃったりしてますの?』
(む……言葉が……)
ラミアは自身の言語形態に不調があることを悟った。独白時にはみられなかったので、おそらく敬語時における故障だろう。
『変なしゃべり方をするねーちゃんだな。モニターで外見てみろ!検査用の外線繋いであるからナデシコのモニターに繋げられる!』
知らない機体と戦艦を繋げるなんて、無用心なことだと思いつつ、モニターを展開。そこにうつったものは…

「バカな………」
青く美しい地球。それが、南極側から、黒く染まりつつある。
「いや……なんてことだ………」
正確には染まっているわけではない。反対側の星が見え始める。
「地球が、消える………?」
ラミアは、自分の『任務』の前途多難さを思いつつ、目の前の光景に見いっていた。




「はじめまして〜。私がナデシコの艦長の、ミスマル・ユリカでーす。ぶいっ!」
「………」
(ミスマル・ユリカ……)
「あ、あれ?外した?」
「バカ」
「艦長〜、さすがにそりゃぁないわよ」
オペレーターと操舵士に突っ込みを入れられながら、艦長はまぬけに笑っていた。
「ラミア・ラヴレスでございますです。所属は極秘のため、言えませんことよ」
「そうですか〜…まぁ本人がいいたくないものを無理に言わせるのも、有り得ませんね。あっ、個性的なしゃべり方ですね〜?」
(こいつ、バカか?)
ラミアは内心でユリカを嘲った。一戦艦を預かるものとして、この決断は無いだろう。
「あの、ラミアさん。一つ頼みたいことがあるんですが…」
「何でございますでしょうか?」
「あなたの助けた機動兵器のパイロットが、今医務室にいるんです。顔を見に行ってあげてください」
はぁ?
「私の尋問などはよろしいのでございますですか?」
「あ〜そんなの後々!二人まとめてやった方が効率的ですし、あなたも助けたパイロットがどんな人か気になりません?」
「………」
データでは、ミスマル・ユリカは実のところかなり強情な部分がある、らしい。
意見は曲げないだろう。
「…わかりましてございますです」
「あ、プロスさん、案内してあげてもらえませんか?」
「えぇ、よろしいですよ」
ラミアは背を向け、プロスと呼ばれた男について行くように歩きだした。
24スーパー携帯機ジェネレーション 作者 876:2005/12/31(土) 23:20:15 ID:DVsX8ORc
一応、一話(半話?)終了です。
この作品のコンセプトは「携帯機スパロボごちゃまぜ!」です。
GBAのA、R、D、Jのストーリーを出していきます。

版権は…
Z〜逆シャア
Vガンダム
MS08小隊
機動戦艦ナデシコ
ガンダムX
真(チェンジ!)ゲッターロボ
マジンカイザー
フルメタルパニック!
テッカマンブレード
ブレンパワード

で行こうかと思います。(ぶっちゃけ他ので書けるか微妙なので。断空牙あたりならだせるか…?)
地上編はJ,Rの主人公が出ますです。
25876:2005/12/31(土) 23:24:41 ID:DVsX8ORc
連投すんません。参戦作品に冥王計画ゼオライマーを入れ忘れました。申し訳ないっす。
26それも名無しだ:2006/01/01(日) 14:04:43 ID:1aiNjG4a
>>25
いい感じだと俺は思うよ
携帯機をまとめるってのはシナリオ的にも難しいと思うけどダメ出しされても
最後まで続けることが大切だと思うんで最後まで頑張ってください
>>9の人も>>16の人も頑張ってください
マターリ期待してます
27876:2006/01/01(日) 18:44:26 ID:t0YPWONS
ありがとうございます。
略して携ジェネは形式的に、D本編をメインに進めようと思うのですが、このまま宇宙編を進めるか、地上編に行くか迷うのですが…どう進めるべきでしょうか?

ちなみにAはラミアルートオンリーです。私がA未プレイなのでOG2知識を使って書きたいと思います。
28それも名無しだ:2006/01/01(日) 21:04:37 ID:IVYYvj4P
アドバイス

壮大な構成は頭の中じゃ楽しく思えるけど、いざ形として吐き出すとうまい形にならない
なる人は上手い

SS書くならまずは軽めのを俺は勧める
29それも名無しだ:2006/01/01(日) 21:13:05 ID:72IP/8Jy
>>28にほぼ同意

今書いてる人はSS初挑戦なのかな?
だとしたら短・中編から慣らしていった方がいいと思う
今まで結構書いてていろいろ評価貰ってるなら長編でも何の問題もないけど

なんか偉そうな事言ってゴメン
なんだかんだ言ってけど書いてくれれば少なくとも俺は応援するよ
30876:2006/01/01(日) 21:34:55 ID:t0YPWONS
えっと…子供スレの2〜3スレ目くらいからで色々書いてました。初級〜中堅の間かと自分は認識してます。
今は課題のレポート中なのでしばしおまちを…orz
31それも名無しだ:2006/01/01(日) 21:35:54 ID:URawBcDg
>>27
A未プレイなら空気にしたほうがいいぞ。ラミアを主軸にするべきではない。
版権作品にも言えるが原作を知らずに書くとモチベーションも下がる。
OG2では削られたエピソードもあるしな。A厨は怖いから気を付けろよ。

ちなみに俺は地上派。
32それも名無しだ:2006/01/01(日) 21:50:36 ID:72IP/8Jy
なんかウダウダと書き連ねて肝心な>>27の質問に答えてなかった

地上・宇宙どっちもやる気なら好きな方を最初に書けばいいと思う
一番いいと思うのは両方同時展開なんだけど無理してグダグダになるより
スッキリ片方合流まで書き終わらせてからもう一方を書く(インパクトみたいに)
方がいいかな

Aについては厳しいかもわからん
理由は>>30が言った通り知らないキャラを動かすのは何かと大変だから
まあOG版ラミアが気に入ったから出したんだろうけど
今からラミア消すのもAやるのも難しいし微妙なとこですね
33それも名無しだ:2006/01/01(日) 21:51:49 ID:72IP/8Jy
悪い>>30じゃなくて>>31の言った通りですた
34876:2006/01/01(日) 22:29:37 ID:t0YPWONS
ラミア&シャドウミラーについては、ほぼいるだけ参戦にしようと思ってます。
A、ほぼいるだけ
R、いるだけ?
D、ストーリーを追う形
J、半分以上オリジナルw
のつもりっス。

ストーリーの関係上、オリキャラオオスwになりますが、ご了承のほどを。
ラミア自身はキャラとの絡み→成長、シャドウミラーとの離反、という指針だけで書くつもりです。セリフの改変も多量にでて来るかと…
Rは、原作そのものがいるだけ参戦みたいなモノなので正直変化させようが…モウシワケナイデス
DとJに関しては、大部分を原作ストーリーに沿って書くつもりです。ただJは、三人娘設定をすこし改変します。
35それも名無しだ:2006/01/02(月) 00:23:33 ID:hRYlE81G
>>34
オリね。もっとも嫌われる手法だな。
叩かれると思うが、まー頑張れ。
36それも名無しだ:2006/01/02(月) 00:32:56 ID:miLYUByk
>>24
10作品以上あれば十分だと思うし、あんまり参戦作品を増やし過ぎると収集付かなくなって、
空気キャラが大量発生するからこれ以上増やさない方良いと思う。
「医務室はここです。私は外におりますので…」
「了解」
プロスペクターに連れられたラミアは、自身が助けたパイロットが寝かされている医務室に入った。
(防寒服……?宇宙空間でパイロットスーツも着ていなかったというのか?)
脱がされた服の入ったカゴを見て、ラミアは疑問を覚える。
当の助けたパイロット…濃い紺の髪の男は、首だけ布団の外に出してすやすやと眠っている。
ラミアは、近くのティッシュを取りだし、こよりを作った。
(まずは、起きてもらわないと話にならない)
男の鼻にこよりをさしこむ。
はたから見るとかなりシュールな画である。
「ん……ふぁ……っくしィ!」
「起きたか」
「…あ、アンタは…」
男は目を覚まし、身を起こした。
その男は、服を着ていなかった。
(地球消失騒ぎだなんだと起こった直後だったから、か?医療班は何をやっていたんだ)
「ラミアだ。貴様を助けたのが私だ。」
「助けた?……ここは?」
「ネルガルの宇宙戦艦ナデシコ。今はおそらくKX─6宙域を航行中だ」
「宇宙だって!?」
男は目を見開き、ラミアに詰め寄り問うた。
「嘘をつかないでくれ。俺はさっきまで南極にいたはずだ!」
「南極だと?」
南極からあのような場所まで、飛ばされたというのか。
「空間転移したのではないのか?」
「空間転移?なんだそれは」
(空間転移に反応しない…何者かによって強制的に転移させられた、と見るのが正しいか?)
「ラミア…といったよな。アンタらは、この戦艦は何でこの宙域にいるんだ?出来れば、南極に帰してくれないか?父さんやリムたちが心配だし…」
「落ち着け。実は私も、機体が故障してこの艦に拾われた口だ。それに今は地球には行けない」
「何故だ。フォン・ブラウンにでも降ろせば…」
「…見させて説明するしかないか。モニターの準備をする。その前に…」
「…なんだ。じっと見て」
「名前と所属だ。報告しなければならないのでな」
男は、一息ついて、述べた。
「…ジョシュア。ジョシュア・ラドクリフだ。傭兵をやっている」
(ジョシュア…か。利用できるかもしれんな)
ラミアは心中計算しつつ、パイプ椅子から立ち上がった。
「わかった。モニターの準備をする…と、ジョシュア」
「なんだ?まだ何かあるのか」
ラミアはモニターの方へ体を向け、呟いた。
「とりあえず、服を着ろ。風を引いてしまうぞ」
「……………うわ」
ジョシュアは自分が半裸な事に初めて気付いた。
38あらすじっぽいもの:2006/01/02(月) 02:44:28 ID:CnmhD7Q7
人類が宇宙に進出し、遠隔操作用ロボットから
MSと呼ばれる搭乗型ロボットへの進歩が進み、半世紀近くが過ぎようとしていた頃
アースノイド、スペースノイドのすれ違いから第7次宇宙戦争は起きた。

シャアによるアクシズ落としは阻止されたが、
当時の最新鋭ガンダム「X」により人類史上最大の悲劇、コロニー落しが起きてしまう。
これはセカンドインパクトと呼ばれ、90%以上の人口を失い、地球と宇宙間の交流断絶という最悪の結果を招きながら
地球連邦、革命軍、ネオジオンによる三つ巴の戦争は終結した。

だが悲劇はそれだけで終わる事は無かった。
東京・マンハッタン両ジュピターの形成、ヘテロダインの出現、バシュタールの惨劇がほぼ連続した形で起きる。

そして第7次宇宙戦争から13年の月日が経とうとしていた

宇宙ではC・V、宇宙革命軍等の勢力により地球との交流回復の兆しを見せるが
ラフレシア・プロジェクトの実行や反革命軍組織サテリコンにより宇宙圏内での戦争が起きる。
結果的にラフレシア・プロジェクトは失敗に終わるが、地球との交流回復は振り出しに戻ってしまう。

地球では戦争終結とともに新連邦が組織される。
比較的、被害の少なかったアジア地域は、治安維持を目的に梁山泊を本部に国際警察機構を樹立。
国土の三分の一を失いながらも驚異的な科学、経済の回復をする日本を中心に
数十年は掛かるであろうと言われた全世界レベルでの復興が進み、
宇宙との交流回復の兆しが見え始めるなど少しずつ平和を取り戻していた。

しかし、13年前以来のヘテロダインの出現、BF団の暗躍、地下勢力の地上侵略
宇宙では木製圏内での不穏な動き、異星人の襲来など
悪魔の影もまた忍び寄っているのが事実であった。
39それも名無しだ:2006/01/02(月) 02:59:01 ID:CnmhD7Q7
参戦作品

第一部
勇者王ガオガイガー
マジンガーZ
ゲッターロボ
闘将ダイモス
ジャイアント・ロボ THE ANIMATION 地球が静止する日
地球防衛企業ダイガード
超電導ロボ鉄人28号FX

第二部
勇者王ガオガイガー
マジンガーZ
ゲッターロボ
闘将ダイモス
ジャイアント・ロボ THE ANIMATION 地球が静止する日
地球防衛企業ダイガード
超電導ロボ鉄人28号FX

★機動戦士クロスボーンガンダム
★グレートマジンガー
★ゲッターロボG
★機動戦艦ナデシコ
★銀河旋風ブライガー

第三部
機動戦士クロスボーンガンダム
勇者王ガオガイガー
マジンガーZ
グレートマジンガー
ゲッターロボ
ゲッターロボG
闘将ダイモス
ジャイアント・ロボ THE ANIMATION 地球が静止する日
機動戦艦ナデシコ
地球防衛企業ダイガード
銀河旋風ブライガー
超電導ロボ鉄人28号FX

★機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
★機動新世紀ガンダムX
★THEビッグオー
★ネオゲッターロボ対真ゲッターロボ
★機動戦艦ナデシコ〜The Prince of Darkness〜
★新世紀エヴァンゲリオン
★THE END OF EVANGELION/Air まごころを、君に
★ラーゼフォン

(※★は小説内新規参戦作品)
40そのほか:2006/01/02(月) 03:19:49 ID:CnmhD7Q7
構成としては第一部がほぼ分岐の無い一本道で20話ぐらい
第二部は第一部直後の宇宙編と地球編に分けてあって初期の携帯機ぐらい
第三部は1〜2年経った辺りの分岐の結構ある据え置き機ぐらいの話数を想定してます。

こういう話数の増やし方は徐々に書き方ならしていこうかなと思っての事です。何分、初心者なんで。
とりあえず第一部は大体できてるので今週中には第三話までうpする予定です。
自分がやる気無くなったり不評だったりしたら第一部で終了するかもですが・・・

ガオガイガーFINALを切ったのは、第三部が地球圏内でほぼ収まるストーリーなのに
外宇宙まで飛び出しちゃうのがそれくらいだったもので(サルファの真逆ですね)
原作と設定が一部違う作品はその度、説明する予定ですので。
自分の手元に資料が少ない作品はキャラが違ったりするかもしれませんがその時は言ってください。

第1話は明日のこのぐらいの時間にうpします。
41それも名無しだ:2006/01/02(月) 04:25:29 ID:hRYlE81G
>>40
ネオゲっつー事は無印下駄も漫画版か。
何げに初参戦じゃね?ちょっと楽しみ。

しかし初心者ならちと作品多すぎるな。大丈夫か?
三部あたりはきついぞ。いくつか削るべきと思う。
42それも名無しだ:2006/01/02(月) 19:26:12 ID:u+E5+0gj
>>37
今までガチガチのまじめストーリーだと思ってたらあやしいスパロボワールド
に少し踏み込んでてワロタw俺的にはGJでした
続き頑張ってください

>>40
初心者にはキツイかもわからんが第三部を書く頃にはうまく書けるようになっている
だろうと目論んでのことだろうから頑張って書いてみてください
自分でダメだと思ったら作品削ればいいし
43スーパー携帯機ジェネレーション 4/4の1/2:2006/01/02(月) 23:29:43 ID:ecxY9zZ2
モニターに写る宇宙空間。
「なんだこれは……?」
あるはずのものが無い違和感。
「地球は今、消失している」
ラミアは、出来るだけ淡々と、己の動揺を隠すように告げた。
「ラミア、こんなトリック画像を見せてどうしようっていうんだ?地球が消えるだと?馬鹿馬鹿しい」
「残念ながらこれが現実だ。第一、お前にトリック映像などを見せて何になる」
実際、これがトリックなら私はどれだけ安堵できることか。
「しかし、俺を地球に帰させまいとすることは出来るだろ」
「それに何のメリットが?私はこの目で、南極から地球が消えていく所を見た。信じてもらうしかあるまい」
「南極から?」
ジョシュアの顔色が変わった。
ラミアはそれを見逃さない。
「何か知っているのか」
「………いや。俺が居たのも南極だったから、少し思う所があっただけだ」
(親父………くそっ、リ・テクノロジストの馬鹿どもめ)
「………ふん」
(何か知っているようだな……まぁいい。地球があの状態ではしばらくはどうにもなるまい。手筈通り次の指令が来るまで、この艦で待機。正体が露見せぬように行動すること、か)


「………」
ブリッジ、オペレートモニターには医務室の光景が写されていた。
(大袈裟な情報はない…か)
「プロスさんに何て言おう…」
「ルリルリ、何か言った?」
「いえ、何でもないです。ミナトさん」


「フォン・ブラウンに?」
『はい!』
コミュニケの立体モニター。艦長のミスマル・ユリカの顔が写し出されている。
「艦長さん、そこで俺らを降ろすつもりか?」
『たしかに戦力として志願してくれるなら、願ってもない幸運ですけれどね…』
「じゃあ、ここで雇ってくれ。俺は傭兵だ。賃金無しでいいから寝床と食糧を貸してくれ。ガナドゥールの整備も可能な限り一人でやれるし、戦力にもなる。とにかく今の状況を打開するには、この艦に乗って地球が消えた原因を探りたい」
ジョシュアは、なかば原因を確信していた。
しかし、宇宙から今の地球に戻るためには何もしないという選択肢は存在しなかった。
『いいんですか?』
「戦いの中が俺の居場所だ、なんて事はいわないけれど、フォン・ブラウンで待つだけよりは遥かにマシだ」
『…わかりました。プロスさんに相談しておきます』
44スーパー携帯機ジェネレーション 4/4の2/2:2006/01/03(火) 00:20:04 ID:OZkc7sEZ
「艦長、私は…」
『あ、ラミアさんには何か私あてに指令文来てますよ?』
「…は?」
ラミアは、自分自身信じられないくらいま抜けな声を発した。
『えっと…アナハイム・エレクトロニクスからですかね。ナデシコに協力しつつ、SMSCアンジュルグのテストを続けよ……ラミアさん、テストパイロットだったんですか?』
「そ、そうでございますことよ……」
(なるほど、そういうことか……)
ラミアは、自分の所属する「組織」が救済措置を下したのだと理解した。


「ユリカ、フォン・ブラウンに行ってどうするんだ?」
聞いたのはコック兼パイロットの青年、テンカワ・アキトだ。
ブリッジに自作であろう炒飯オニギリを差し入れに持って、上がって来たのだ。
「アキト、今日はもう上がりなの?」
「気になったから抜けて来たんだよ。ガイのやつは新しい二機の機体がうんたらかんたらしか言わないし、他の人たちも拾った二人の話題しかない」
「そうなんだ。えっと、一人迎えにいかなきゃ行けない人がいるんですよね、プロスさん」
いつのまにやら戻ってきたプロスペクターは、眼鏡をきらりと光らせた。
「えぇ。今はエステ乗りしかこの艦に居ませんが、本来なら発艦前に戦技教官を招く予定だったんです」
「たしか、しろやまねこさんとかいいましたっけ?」
「しろやまねこ?随分と可愛い名前だな。…ってそんな名前があるかァァァッ!」
アキトは、ノリ突っ込み技能レベルが1上がった。
「…『ホワイトリンクス』ですよ艦長。交渉が難航していたのですが、なんでも居候が増えてしまって、今の稼ぎでは食わせられない、とか言ってました」
45876:2006/01/03(火) 01:32:56 ID:OZkc7sEZ
第一話、ようやく終了です
…えぇそうです駆け込みすぎ詰め込みすぎなのはわかってますけどこうでもしないと進まないし終らないしモチベーションも維持れないし無理なんですごめんなさい。
さて、Jの設定改変といいましたが、なぜ改編するのかの理由をば。
それはずばり
「統夜とカルヴィナを両方同時に出す方法」
につきます。
オリジナル展開とはいいましたが、あくまで原作を踏まえた上での統夜編&カルヴィナ編のクロスとお考えくだされば、一番合うかと。
これで叩くなら、どうぞ叩いて下さい。開き直りと言われても仕方ありませんが、この方法を取る以外、自分に統夜とカルヴィナを同時にだす方法を思い付けません。
46それも名無しだ:2006/01/03(火) 01:53:13 ID:RU94/YlJ
>>45
乙&GJ!
俺はスピーディな展開が好きだから面白ければご都合主義もドンと来いです
今のところキャラもうまく動かせているようだし
後は・・・まだ序盤だからだろうけど他のキャラも出してほしかったかな
ダメだしされようと叩かれようと最後まで続ける事が大切ですたい
じゃあ頑張ってください
47それも名無しだ:2006/01/03(火) 02:09:35 ID:XHjsKH1B
>>45
設定改変はいいと思うよ。
そんなん気にしてたらダンクーガがミスリル所属なんつースパロボできんw

むしろオリキャラ出すほうが問題じゃ?

応援してるからなー。
48それも名無しだ:2006/01/03(火) 02:43:37 ID:VgP3GUCS
>>45
GJ!
そしてカルヴィナが出てくるということは、
統夜が出てこないのではと思ったが、出てくるらしいので良かった。
3人娘はどうなるのかな?楽しみだ。
宇宙世紀、ロボット工学は飛躍的な進歩を遂げた。
悪の組織たちはこれを利用し巨大ロボットを使い人類に宣戦布告をしたのである。
だが、正義のロボット軍団がこれを防ぐために立ち上がったのである。

 第7次宇宙戦争から13年の間に幾度ものダメージを受けながらも
 驚異的ないや、異常とも言えるほどの速度で復興を成し遂げた日本。
 日本は失われた国土を取り戻すべく海上都市を作る事でその国土を回復していった。
 その海上都市の一つでで世界の主要都市がほぼ復興を成し遂げた記念として
 「ワールドロボットコンテスト」が開かれていた。
 
 現在、ロボットは大まかに三つの種類で分けられている。
 まずはMS。主に新連邦で運用され一つ一つの力は弱くとも
 量産され、数で押すのがこのタイプの特徴だ。
 次にスーパーロボット。世界各国の各研究所が製造しコストが掛かるながらも
 その高い戦闘力は一機で戦局を変えることも可能である。特機と呼ばれる事もある。
 そして遠隔操作で動く新型鉄人シリーズ。
 ミノフスキー粒子の増加により電波が混線するなどし衰退していった遠隔操作用ロボット達だが。
 草間博士の新理論によりミノフスキー粒子の濃度の高い場所でも遠隔操作可能になり
 その本格的な運用を目的に新型鉄人シリーズが世界各国で製作されるようになった。
50876:2006/01/03(火) 03:00:13 ID:OZkc7sEZ
読んで下さってありがとうございます。
さて876です。
質問、
統夜を先に見たいか、カルヴィを先に出すか。
どうしましょ…
地上編はV、X、08、マジンカイザー、真ゲッター勢、フルメタ、ブレン、ゼオライマー等
宇宙編はZ、ZZ、CCA、テッカマン、ナデシコです
…って地上多いな!宇宙が舞台の作品があまりに無いから…か?
地上編は版権濃い目(08、フルメタ以外は原作未視聴ゆえ、どうなるか作者自身解りませんすいませんw)です。
世界各国のロボットのパフォーマンスに人々の歓声が上がる中
 会場外の自動販売機の前で顔だけを出した機ぐるみの状態で青年がうなだれていた。
「はぁ、何が悲しくて会場の警備なんてやらされてるんだ・・・
 しかも俺なんて着ぐるみ着せられて、こっちにだってロボットはあるってのになあ・・・」
 彼は対ヘテロダイン用戦闘ロボット、ダイガードの一号機
 ガードファイターのパイロットである赤木駿介である。
「なにやってるの、赤木君!出番よ」
 会場の入り口の方から女性が赤木に声をかける。
 彼女は二号機、ガードストライカーのパイロット桃山いぶきだ。
「はぁい、今行きますよ。」
 ちなみに赤木のほうが年上なのだがいぶきの方が入社が早いと言うだけで敬語を使っている。
 ここら辺はさすが防衛大学出の体育会系といったところか。

「ちゃんと、この会場にだって来てるのになあ」
 宇宙世紀警備保障のマスコットであるダイガード君の着ぐるみを着ながら赤木がぼやく。
 ドーム内ではさまざまなロボット、MSらが自らの特技などを披露しているが
 ダイガードだけがその巨大な体をドーム外の特設ステージ
(と言っても組み立て用の野外デッキに置いてあるだけだが)にたたずませている。
「ぼやかない!ちゃんと仕事をこなしてちょうだい。
 あそこにだってちゃんと着ぐるみで働いている人が居るんだから!」
 いぶきの指差す方向にパンダの着ぐるみが風船を配っている。
 しかし慣れていないのか、動きがぎこちない。
「あれは俺たちとは関係ない会社の営業じゃないすか。
 それにここで俺らが営業やってたってみーんな、中のコンテスト見に行っちゃってますよ。」
 確かに、特設会場では閑古鳥が鳴いていた。
 
 そんな会話をしていると会場のほうへ、緑掛かった髪の少年と眼鏡をかけた少女が走ってきた。
 二人とも会話をしながら走っているのか、前に赤木が居る事に気づいていない。
「うわっ。」
 少女と赤木がぶつかってしまった。
「すみません、大丈夫ですか?」
 少年が声をかける。
「ああ、大丈夫。そんなに焦らなくてもまだコンテスト始まったばかりだよ。」
「本当にすみませんでした!」
「気にしない、気にしない。はい、風船。」
「あ、はは。どうもありがとうございます・・・」 
 眼鏡の少女はもう風船をもらう年頃でもないのだが、断っている時間もないので受け取った。  
「よお、赤木似合ってんな。」
 たくさんの女性をはべらすキザな雰囲気の男、青山圭一郎。
 ダイガード三号機ガードビークルのパイロットだ。
「なに女といちゃついてんだよ!仕事しろ!仕事!」
「これも仕事だよ、今回は警備権営業だろ?女の子たちが道に迷ったっていうから案内してんだよ。」
 そう言ってはいるがとてもそんな風には見えない。
「ちくしょー、すげー惨めだ・・・」
 そういっている赤木にはどこから来たのか子供たちが群がっていた。
「ま、お前はガキの子守をしてな。」

 そんな事をしていると上空からもの凄いスピードで会場の中へ飛んでいくロボットがある。
 青い、ドラム缶の様な独特の体型をしたレトロな雰囲気の漂うロボット、そうあれこそが
「鉄人28号・・・?40年前の英雄がこの目で見られるなんて!」
 ロボット好きである赤木が驚きの声を上げる。
「どうやら今回の特別ゲストのご登着のようだね。」
「課長!知ってたんですか?」
「まあね、今回の行程はだいたい聞かされとるよ。しかし古いものは長持ちするねえ。」
 課長が微妙に外した感じの感想を述べているとドームの中ではただならぬ歓声が挙がっていた。

「はあ、やってらんないすよ、いぶきさん。
 別に鉄人の事、悪く言うつもりは無いすけど
 40年前のロボットが今でも現役バリバリだって言うのに
 作られて10年経ってないロボットがこうも無用の長物扱い・・・。」
「だけどダイガードが活躍しないって事はヘテロダインが現れないって事でしょ?
 それならいいじゃない。ヘテロダインが現れないほうが。」
「はぁ・・・そりゃそうなんですけど、でも・・・」
「災厄なんて、来ないに越した事ないじゃないの。」
「そうっすね。」
すみません。>>51>>52の間にこれを。

「ほら、やっぱりダイガードに目もくれないで会場に行っちゃうし・・・
 ダイガード動かして俺らもパフォーマンスでも何でもしてやれば良いんですよ!」
 赤木が名案を思いついたといわんばかりにいう。
「課長、とか言ってますけど?」
 あきれた声でいぶきが課長に声をかける。」
「良いよ。でも赤木君の今月の給料、無しね。それに起動するだけね。」
「へ?」
 思わず、着ぐるみの目まで点になってしまう。
「当たり前でしょ、あれを私用で動かそうってんでしょ。うちの課から経費下りるわけないじゃん。」
「あれ、起動するだけでいくら掛かると思う?赤木ちゃんの基本給ぐらいかかるんだから。」
「それに今のダイガードじゃ、あの中に入ってもMSにだって勝てないね。」
 畳み掛けるように会話に口を挟むのは広報二課名物デブトリオの伊集院、田口、石塚である。
「装甲はトタン並み、動きもしないんじゃ仕方ないわよ。」
「はぁ〜」
富士山頂界震観測所
 ここではヘテロダイン発生の前兆である界震を日々、観測する事を目的とされている。
「ワールドロボットコンテスト開催地付近、10km海上で界震発生。」
「エネルギーゲージ、7.5hP。日本海溝界震級ですよ!」
 ここまで大きい界震は久々のため、やや興奮した様子で 
 観測員二人が所長らしき人物に報告する。
「でかいな。各所に報告。第一非常体制の発令を要請しろ。」
「「はい!」」

宇宙世紀警備保障本社会議室
 ヘテロダイン発生の可能性のある界震が起きれば、緊急の役員会議が行われる。
 円の形で囲まれた机には、宇宙世紀警備保障の役員がずらりと並ぶ。
 宇宙警備保障社長 大河内も居るが、彼はあまり口を開く事はない。
「またいつもの空騒ぎじゃないのかね?」
 そう、12年間、大きな界震が何度か起きたが一度も、ヘテロダインは発生しなかったのである。
「ワールドロボットコンテスト開催地付近では一週間程前から界震が群発されていました。
 今回はその中でも最大のものです。」
 大河内社長の秘書、神村がそれに答える。
「あの程度の界震なら今まででもあったのでは?」
 今度は女性役員が口を挟む。
「そもそもなぜ我々がここに呼び出されなければならないのだね?」
 回答が帰らぬまま、先程の男性役員がまだ質問を続ける。
「緊急時の出動には役員会の承諾が必要です。これは諦観に定められた規則です。」
「だから、そんな規則は早く改正すべきだと言っているんだ!」
「それは困りますねえ。どさくさに間切れて権力の拡大を狙う方もいらっしゃられるのでね。」
 女性役員が軽い笑みを浮かべながら言い放った。
「む、むぅ。」
 どうやら図星だったようである。
「で、我々はいつ解放させて頂けるのかね?」
 別の男性職員が今にも帰りたいといったような顔で神村に聞いた。
 結局、会議に進展が見られる事は無かった。
先程の眼鏡の少女が風船を持ちながらむすっとした顔で走っていく。
「どうしたんだよ、双葉。急ぐぞ!」
「だって、三ちゃん!あたしもう風船もらうような年じゃないんだよ!」
「お前、馬鹿か。今はそんな事いってる場合じゃないだろう。
 早く金田所長に鉄人を動かせない事を伝えないといけないだろ。
 まあ、それに双葉じゃ間違われても仕方ないしな。」
「ああ、もう!」 
 会話こそ、年頃の少年少女らしいが彼らこそ金田正太郎の妻、陽子が開発した
 新型鉄人シリーズ28番目のロボット「鉄人28号FX」の 
 操縦者候補生、夏木三郎と光瀬双葉なのである。 
 
 さてこちらは会場の中。
 一通り、ロボットたちのパフォーマンスが終わり
 中央にあるホログラフィが映像を映し出す。
 過去の鉄人と金田正太郎少年の活躍の映像を流し、アナウンスにも熱が入る。 
 そして現在の鉄人が空から颯爽と登場する。    
「これが鉄人28号です。
 全てのロボットはこの鉄人から誕生したといっても過言ではありません。
 そして皆さんにご紹介しましょう。鉄人28号の操縦者、金田正太郎さんです。」
 ステージがせり上がり、そこには金田正太郎がリモコンを操作しながら姿を現した。
「みなさん、こんにちは。私が正義の味方で有名な金田正太郎です。」
「いやあ、自分で正義の味方といってしまうのはさすが往年のヒーローの貫禄ですねえ。」
「いやいや、しかし私もこの鉄人もいささか年を取ってしまいました。
 これから、悪と戦い、世界の平和を守り未来を担っていかなければならないのは
 この会場に集まってくれた新しいロボットたちとその若きパイロットたちなのです。」

会場地下
 どうやら三郎たちは正太郎に事情を説明するのが間に合わなかったようである。
「やばいな、所長のインタビューが始まったぞ。」
「予定だと、このまま鉄人28号FXが紹介されるんだよね。急がないと。」
 急いで、空いているリフトを使い、ステージまで行こうとする。

 しかし無情にもインタビューは順調に進んでしまっていた。
「さて金田さん、今回は日本でも新しい鉄人が開発されたようですね。」
「そう新型鉄人シリーズのナンバーもなんと28ば・・・」
 幸か不幸か正太郎がFXの紹介をする前に観客たちがざわつき始めた。
 正太郎が会場の外に目をやると海上の空に黒い雷雲が立ち込めているのが見えた。
 それはゆっくりそして確実に会場へ近づいていた。
 雲の下に異変が生じ、巨大な怪物が姿を現したのだ。
 たとえて言うならそれは海洋生物、サメとヒトデを足したような姿をしているのだった。
 あれこそが12年前、OE兵器使用という最悪の結果で決着をつけ
 また12年間、一回も姿を現さなかった怪物ヘテロダインなのである。
 ざわついていた観客も今では逃げ惑う群集とかしていた。
「みなさん、落ち着いて下さい。ここには私と鉄人。
 そして次の時代を担う正義の味方たちが揃っているのです!」
 そこに一番まずいタイミングで二人がステージへ上ってきた。
「おお、三郎に双葉。ちょうど良いところに来た。 皆さん、ご紹介しましょう。このふ・・・」
 また正太郎のパイロット紹介が三郎によってさえぎられた。
「すみません。所長、それがそうも行かなくて。」
 二人が事情を説明する。
「ええっ?嘘だろう。だって、母さんは間に合うって言ってたじゃないか・・・」
 思わず、だんだんと声の小さくなってしまう正太郎。
「ええぃっ、仕方が無い。この会場のロボット達だけでどうにかするしかないか!」
 しかし、すぐに勇ましくリーダーシップが取れるのはヒーローの貫禄と言ったところか。
 
 だが、会場の中でも異変は置き始めた。
 さっきまで晴れ渡っていた空が曇り始めたのだ。
 その厚い雲から戦艦らしきものが姿を現す。
 そして、光の柱が戦艦の底から放たれそこに青い髪をした人間が宙に浮いていた
「わが名はデビル火刀。今からこの会場は我々ネオブラック団が占拠する。
 まずは手始めに新型鉄人シリーズを操らせていただく。」

「な、なんだ。こ、コントロールが効かない。」
 先程まで異変にも動じなかった鉄人シリーズのパイロット達もさすがに
 これには動揺が隠しきれない。
「さすがだな、デビルウェーブ発生装置の威力は。
 いけいっ、鉄人シリーズよ悪魔の手先となって他のMSや特機どもを蹴散らせてしまえ!」
 パワー自慢のスーパーロボット達は別として
 鉄人シリーズ相手に量産型MS達では相手にならない。 

「くっ、絶体絶命のピンチか!しかしこんな時にこそ新しい正義のヒーローが現れるものなんだ!」
 
5738:2006/01/03(火) 03:19:23 ID:/QyF+VLR
一応今回は初めてなので原作コピペの部分を多めに描いてみました。
昨日の段階では第一話は戦闘パートも終わらせて
次回へ続くという形にしたかったのですが意外と時間が掛かったのと
量が多くなってしまったのでインターミッション、戦闘パート、戦闘後で分けて行きたいと思います。

今週中に三話投下の予定でしたが調子がよければ一話終了、二話のインターミッション終了までにしたいと思います。
 
あとは細部の説明なんかも。
冒頭のナレーションはFXのOP前に掛かる奴です。
21世紀警備保障は宇宙世紀にあるので宇宙世紀警備保障に変えました。

鉄人シリーズの設定ですが
昔は遠隔操作型ロボ主流だったのがミノフスキー粒子のおかげで電波の混線で操縦が困難になったり
MSの登場で搭乗型ロボガ主流になり衰退しかけていたのを
ジャイアントロボの草間博士が新しい電波発生理論で操縦しやすくさせてまた発展し始めた。
というこの作品のみの設定です。
58876:2006/01/03(火) 03:25:46 ID:OZkc7sEZ
乙。あと途中割り込んでごめんなさい。
見苦しくなっちまいましたな。
二作品のクロスだけれども、クロスな部分が少ないからか単品を見てる感覚だった。今後に期待です。
5938:2006/01/03(火) 03:30:11 ID:/QyF+VLR
>>50
876さんの作品はギャグとか普通に出来てるのと読みやすくて尊敬してます。
自分的には統夜が良いですね。

>>41
すいません。TV版です。
TVの竜馬達がゴウ達と絡むのが見てみたいなと思ってそうしました。
隼人はやや、OVAよりになると思いますが。
>>42
はい、とりあえずその予定です。結構きついですが・・・
60それも名無しだ:2006/01/03(火) 11:52:44 ID:VgP3GUCS
どっちかというと俺も地上かな、Xみたいし。
61それも名無しだ:2006/01/03(火) 13:15:11 ID:XHjsKH1B
>>50
>フルメタ以外は原作未視聴ゆえ
ビデオ借りて来いよ。ゼオライマー以外はどこにでもあるだろ。

>>57
乙。コピペ以外の部分もらしさがよくでてました。
ミノフスキー粒子に着目したのは嬉しかったり。
世界観は統合し一度に絡ませる作品を減らすことで、
丁寧に書かれてるのは好感が持てます。
62スーパー携帯機ジェネレーション 地上編:2006/01/03(火) 13:51:05 ID:OZkc7sEZ
ピッ、ザザザ……
『隼人か、久しぶりだな』
通信モニタの向こう、フリーデンのジャミル・ニートがふっと微笑む。
「ジャミル、そちらの首尾はどうだ?」
『リガ・ミリティアとしての活動は変わらんよ。カサレリアまでいって、現地のメンバーを回収した』
「ジン・ジャハナムは?」
『自ら戦場に出るやんちゃな若僧だが、指揮官としての素質はあるな。奥さんともども頑張ってるよ。旧式の陸戦機体のカスタム機二機だけで、よくあれだけ活躍出来るものだ』
「そりゃ一時期『ツインバード』の中身じゃねぇかって言われたコンビだものな」
『ツインバード』とは、前大戦中に活躍した二機のつがいの機体のことだ。空間戦のコンビネーションを得意とし、百舌鳥と隼と呼ばれて恐れられているが、実際にその戦う場面を見たものは存在していないらしい。
『あと、ニュータイプかもしれない子供を保護した。カサレリアに不法入居していた子供だが、リガ・ミリティアのMSに乗って頑張ってる』
「ニュータイプ、ね…」
『そちらは、どうなのだ?』
「ゴウたちも真ゲッターに慣れてきた。だがいまだに機体とパイロットの慢性的な不足があるから、極東地区で補充の交渉を行う予定だ」
『具体的には、どうゆう形で?』
「光子力研究所に打診してみる。それから臨海部においてのノヴィス・ノアとの共同戦線、ミスリルからの部隊派遣交渉」
『やはり時間がかかりすぎるな。こちらから送ってやれれば楽なのだが…』
「無理を言っても仕方あるまい。フリーデンに取りつけたゲッター線汚染駆除装置の調子は?」
『上々だ。まだまだ改良の余地があるとウチのメカニックは言っているがな』
「改良案を出させろ。真ドラゴンを解体するまでは、使い続けなければならない」
『無論だ』


いつからか、同じ夢を見ていた。
空や海より蒼い髪の女の子が出てくる夢だ。
その女の子は、繊細で、華奢で、儚げに祈っていた。
その姿は、芸術品としてのハイエンド。
しかし、口から漏れるのは、赦しを乞う言葉。
─赦して…どうか赦してください。もう私には止めることが出来ない。
私には止められないのです。
滅ぶべきは私達、立ち去るべきは私達、
この世界は、あなたがた子供たちのものなのに。
待ち続けた永き刻の、その暗闇の冷たさが全てを狂わせてしまった…
どうか、力なき私を赦して下さい…


目覚めるといつも彼女の言葉を忘れている。
まどろみの中に、込められた想いすらも。
63876:2006/01/03(火) 14:00:52 ID:OZkc7sEZ
地上編1話、導入部終了です。
本編の方は、しばしお待ちを。
地上は部隊が多いので、二手に別れさせました。統夜は真ゲッタールートになりますな。
場合によってはフリーデンが合流するまでフリーデンの話は省略するかもしれません。
地上編は宇宙編より大分長くなる予定です。


あと自宅でVHSやDVDが見れる環境が揃ってないです……申し訳ないです……
64それも名無しだ:2006/01/03(火) 17:16:41 ID:Z1/U4Car
携帯さんも鉄人さんもGJ!!
65スーパー携帯機ジェネレーション 地上編1話:2006/01/04(水) 00:37:32 ID:F3AnYJpL
「おはよう」
「あ〜…おはよう紫雲くん」
「キツそうだね千鳥さん。相良のお守りで…ってことはないか」
「…紫雲くん、それはどういう意味かな?」
「……何でもないっス、副会長」
「よろしい。アンタこそ、その万年貧血と遅刻癖直しなさいよ。そろそろ校門閉めるわよ?」
「あぁ、はいはい……」
(あの女の子の夢を見る時は、起ききれないんだよな……)
都立陣代高校。俺みたいな平凡な学生が多数を占める平凡な高校だ。一部例外はいるが。
しかし、13年前の「早乙女の反乱」によって広まったゲッター線汚染による被害の中でもこの高校は閉鎖もせず頑張っている。それは、この近くにある光子力研究所のスーパーロボットたちが、ゲッター汚染の被害の多数なる所、インベーダーを駆除しつづけているからだ。
「うぃっす、統夜。いつもの事ながら朝から元気ねぇなぁ」
「おはよう、兜。いつもの事ながら宿題を見せるつもりはないからな」
「…統夜、お前いつからエスパーになった?」
「やっぱりか……池か千鳥さんあたりに見せてもらえよ。千鳥さんは時と場合により金を取られるけどな」
兜甲児、光子力研究所のスーパーロボット、マジンガーZのパイロットだ。学校での学問は苦手みたいだけど機械工学には妙に強い。パイロットにはそれ相応の機械技術が求められるってことか。将来は地球版UFOを作りたいとか言ってたっけ。
チャラッラー チャラッラー チャラッラーララララ ララーラ ズンタタズンタ ズンズン ソーラニー ソビエルー クーロガネノー
「ん……俺の電話か?はい、兜です…え?本当ですか?…わかりました、直ぐに行きます(ピッ」
「どうした?」
「インベーダーが出たらしいんだ。悪いけど、神楽坂先生か一限の大樹先生に早退するって伝えてくれ。直ぐに行かねぇと」
「わかった。大変だろうけど、頑張れよ」
「恩に切るぜ、じゃあな!」
インベーダーか……。スーパーロボット乗りは大変だな。
「えっと……次は一限だよな」
神楽坂先生も大樹先生も職員室にいるはずだ。職員室にむかうとしよう。
まったく、平凡で平凡な一日が今日も始まる、か。自分から厄介事に首つっこむつもりはないけど。
66スーパー携帯機ジェネレーション 地上編1話:2006/01/04(水) 01:08:23 ID:F3AnYJpL
「ジュア=ム様、よかったのですか?逃がしてしまって」
「あぁもウジャウジャとインベーダー連中が出てきちゃあ、仕方ないだろう?軍の肖戒ライン上ど真ん中で長い事居座るつもりだったのか。それにアレに乗ってたのは実験体が一人づつ、三機とも副座式だし動かせても戦うことは出来ないはずだ。
一機は捕獲したし、二機目は廃棄コロニーのデブリ帯で行方不明、次の三機目は、てこずらせやがったが結局大気圏に落下したとなっちゃあ、問題は無かろう。このまま地上まで追う必要は無い、後から調査隊を派遣すりゃいいんだから。帰還するぞ」
「ハッ!」


俺は、空に何か光点があるのを見つけた。
目の錯覚かと思ったら、次の瞬間には、何かが落下してきた。

着地、
轟音が響く。
粉塵を巻きあげ、その「何か」は校庭の、統夜のいる校舎ギリギリに落下した。
「…な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁっ!?」
統夜は、故・松田優作ばりのシャウトを上げ目を見開いた。
その何かとは…ロボットだった。
余計な物が一切無い、美しいフォルム。
猛禽類のような獰猛そうな顔部と人に例えるなら筋肉質なマッスルボディのような胴体。
みとれていると、胸部ハッチが開き、人…らしきものが出てきた。窓越しに
「…ぺっぺっ、舌噛んじった…あ、アンタ、危ないよ!さっさと逃げな!」
「な、何なんだお前は!」
統夜にはとっさにそう言い返す。
「んなことはどうでもいい!インベーダーが近くにいるんだよ!」
「何だって!?」
「だから、早く逃げろ……っ!…」
機体から降りてきた女が、俺の隣まで来た。…よく見ると、小さい。女の子、というより少女だ。
「…アンタまさか…」
「な、なんだよ」
「…決めた!アンタ、この機体に乗って!」
「はぁ!?」
「アンタならやれる!そら、乗って!」
「ちょ、待て…おい!こんなの、動かし方なんてわかんないぞ!」
「アタシがサポートする!あとはサイトロンが教えてくれる!早くしないと、来る!」
「待てよ、おい!来るって…う、うわ!?」
(なんだ!このロボットの事…手に取るようにわかる!一体どうなってんだ!)
乗り込んだ直後に突如、校門側からインベーダー飛行型が三機、やってきた。
「兜が行った方角じゃない…別動隊!?」
「来た!行くよ!今ここでこの機体を…クストウェルを壊されるわけには行かないんだ!」
「わ、わかったよ!ちくしょう、やれっていうならやってやるさ!」
67876(弥七朗):2006/01/04(水) 01:38:07 ID:F3AnYJpL
第一話接触編、終了です。
最初のジュア=ムのセリフで、J本編をどう改編しようとしているか、勘がいい人は気付いていると思います。
戦闘編は、調子がよければ今夜中にでも。駄目なら…いつになることやら。
宇宙世紀警備保障 会議室
「ヘテロダインが出現しただと!」
「それで現地の状況は?」
「あそこにはうちの広報二課が・・・」
 ヘテロダインの出現に重役達は震え上がる。
 その震えはヘテロダインそのものの脅威よりも
 これから自分達に降りかかるであろう責任からだろうか。
 そんな重役達のざわめきを気にも留めずに
 大河内がその重い口をあけ神村に質問する。
「あれは現地にあるな。」
「はい。」

 「課長、なんで動かしちゃ行けないんすか!?
 ダイガードを動かせば、足止めぐらいならできますよ!」
 一刻も早く、ヘテロダインの脅威を食い止めたい赤木は大杉に詰め寄った。
「落ち着け!闇雲に飛び出しても何も出来はせん。本社の命令を待つんだ。」
 しかし、大杉はそれを止める。上からの命令を待つ事にした。 
 それに今のダイガードの武装ではヘテロダインを倒す事が出来ないくらい事も分かっていた。
「大山君、本社からの伝達は?」
「今、呼び出しています。」
「課長!」
「いい加減にしろ、赤木!
 戦闘訓練も碌に積んでない俺たちが出て行ってどうする?やられるのが落ちだ。」
 それでも食い下がろうとしない赤木に青山が言い放つ。
「赤木、我々は軍でも、警察でもない。
 一度も戦闘経験も無いのに飛び出して行ってもそれは自殺行為だ。」
 大杉もそれに続けて答える。
「でも、このダイガードは奴と戦うために造られたんでしょう!」
 赤木がそう叫んだ瞬間に会場の上空から戦艦が舞い降りてくるネオブラック団の物だ。
「くそっ!あんなものまで出てきて!」
6938:2006/01/04(水) 03:13:58 ID:m9U/X88J
数分後、本社からの命令が下る。
「課長、もちろん出動ですよね。」
 はやる気持ちを押さえつけられず、赤木が大杉に問う。
「いや非難、撤退だ。ネオブラック団が出てきた以上、あちらも相手にすることになるかもしれん。
 ヘテロダインだけでも一杯一杯なのにこれ以上相手を増やす事はできないからだろうな。」
 本社からの命令は単なる撤退命令だったのだが大杉はもっともらしい理由を付けて赤木に答えた。
「新連邦と国際警察機構からそれぞれ、陸上部隊と機動部隊が出動するそうだ。
 さあ君達、パイロットはダイガードの撤退準備を頼む。」
 納得のいかない赤木は唖然として立ちすくむ。
 ヘテロダインが海からはいあがり陸上に進攻しようとしている。
 それを見て撤退準備を進めていく広報二課の全員。
 耐え切れず赤木はリフトでダイガードのパイロット席まで上がっていく。
「赤木っ!撤退命令はもう降りているんだぞ!」
「黙ってみていられませんよ!首にでも何でもしてください!」

 そこに新連邦のものらしきヘリが到着する。
 そこからサングラスを付けスーツを着た男が降りてきた。
「この地域には撤退命令が出ている。
 会場に居る非常識な連中とは別ならば速やかに退去、撤退をして欲しい。」
 すぐに大杉のそばへ行き、威圧的な態度で撤退を促す。
「はあ。ええっと、あなたは?」
「新連邦日本支部幕僚本部の城田だ。」
 幕僚本部といえば、かなりのエリートでなければ入れない日本軍部の中枢といって良い。
 そんなやりとりの後、陸上に上がったヘテロダインが本格的な攻撃を開始する。
 新連邦のMSたちは次々となぎ倒されていく。
 その時、道路のほうへ投げ飛ばされた一体が爆発し人々の唯一の脱出口が塞がれてしまった。
 人々の目の前には絶望の二文字がよぎったであろう。
 そんな状況を打破するため、赤木が動き出す。
「やるっきゃないか!」
 赤木がパイロット席のハッチを開ける。
「赤木!なにをしとる!」
「道がふさがれて逃げ遅れた人たちが居るんです!あのMSをどかさないと!」
「素人が手出しするのは危険だ!民間人の救助は我々が行う!」 
「俺達がやったほうが早い!」
 赤木の目が輝く。こうなった赤木は誰にも止められない。
「止めさせてください!あなたの現場管理能力が問われますよ?」
 城田が威圧的に大杉へ詰め寄る。
「・・・はぁ・・・すみません、あいつ言う事聞かなくって。」
 眼鏡を吹きながら少しおどけた雰囲気で大杉は答えた。
 
「ほらっ!青山、いぶきさんも!」
 また、いぶきの中であの記憶が蘇る。
 自分の父親を奪われたヘテロダインの姿だ。その後の行動は早かった。
 早速、二番コクピットへのリフトに乗り込む。
「おいおい、いぶきさんまで・・・」
「青山っ!はやく!」
 ヘテロダインがMS部隊をなぎ倒していくのが見える。
(冗談じゃない。こんなことに命をかけられるか。)
 そう思っている青山に赤木の声がかかる。
「三人揃わないとダイガードは動かないんだよ!わかってるだろうが!」
 動かない青山、しかし人々の悲鳴や逃げ惑う姿が嫌でも目に飛び込んでくる。
 左胸に手をやり、いよいよ決意を決めて赤木に答える。
「あとでおごれよ!赤木!」
 そういいながら青山は三号機コクピットへのリフトに乗る。
「そうこなくっちゃ。よっ!イイ男!」

 コクピットに全員が乗り込むとカードを取り出す。
 これがキーとなり、三つが揃う事でダイガードは動く事が出来るのだ。
「いぶきさん、青山、準備は良い?」
 赤木が準備万端といった面持ちで三人に問う。
「いいか?目的は人命救助。奴と取っ組み合うのだけは簡便だからな!」
「わかってるって!それじゃダイガード」
「「「発進!!」」」
 ダイガードのカメラ部分に光が宿る。
 今、ダイガードの初陣が始まる。
7138:2006/01/04(水) 03:23:43 ID:m9U/X88J
今日は戦闘パート投下する予定が
その前の部分の量が多くなりインターミッション二回目となりました。
しかも今回は多作品との絡みが一切無くて・・・すみません。
ダイガード知ってる人は見なくても大丈夫ですね・・・

>>58
やっぱり原作コピペばかりだとクロスオーバーしにくいですね。
これからはもっとクロスさせていく予定です。

>>61
そういっていただけると嬉しいです。
結構叩かれるかなとか思っていたので。

戦闘パートは鉄人やダイガード以外にも
GGG機動部隊や意外なキャラも登場させる予定ですので
クロスオーバー不足で不満な方にも満足できてもらえるように頑張りたいと思います。

72876(弥七朗):2006/01/04(水) 03:39:48 ID:F3AnYJpL
乙カレー様。いや、ダイガード知らないけど面白いと思う。
新年会帰りの頭脳で書いた接触編は読み返してみると微妙な出来だしね。原作コピペも必要な部分はあるだろうし。
73それも名無しだ:2006/01/04(水) 05:52:52 ID:E5zxU+Gf
>>67
お疲れ様です。楽しく拝見させて頂いてます。
一点気になった事があるのので書き込みをします。
ゲーム中でラフトクランズに乗った時の最強技がFソードだった為。
テニア(ですよね?)がクストウェルに乗っているのが少々違和感を感じました。
これは作者さんの嗜好で深い意味は無かったのでしょうか?
失礼な事を書いて申し訳ありませんm(__)m
74876(弥七朗):2006/01/04(水) 09:46:47 ID:F3AnYJpL
メル欄にて回答いたしたほうがよろしいでしょうか?真面目に考えてクスト+テニアにした訳でして。
一応、ネタバレ甚だしすぎる展開なので、あまり言わない方がいいんじゃないかと……
75それも名無しだ:2006/01/04(水) 10:07:00 ID:OeYU7bBc
>>74
趣味とかでもいいけどまじめに考えてクストテニアにしたんなら何の問題もないでしょ
俺はメルアが好きだけどねっ!じゃあ頑張ってください
76876(弥七朗) 目欄ネタバレ注意:2006/01/04(水) 10:29:00 ID:F3AnYJpL
まぁ、三人娘の組み合わせにはそれぞれ意味が無いわけじゃ無いので…(汗)それぞれの後継機必殺技の組み合わせで考えてました。ラフトは一応隠しですしね。
しかし主役機三機、または四機とも話に登場させる予定です。「Jの素材ならこういった展開もありかな」っていうオリジナル展開になりますゆえ、そういったものがお嫌いの方は今のうちに読まない方が苛々せずにすむのではないかと…
空を飛ぶ怪物が、インベーダーが迫り来る。
(学校の連中は無事に逃げたのか?)
「ちょっ……アンタ、来るよ!」
「う、わぁ!」
インベーダーの触手攻撃を、すんでの所で避ける。
くそ、余計な事は考える暇は無い、ってことか…
ふと、思ってしまった、ある意味では致命的な事態になりえる事を叫ぶ。
「武器は………!?」
と、その時、脳内にヴィジョンが広がる。
(………これは!?)
コクピットのレバー、ペダル、ギア、クラッチ、スイッチ、トリガー、計器とレーダー……脳に直接、それらが何を意味し、どう扱うのか、知るはずのない『知識』が流れこんでくる。
「サイトロンが教えてくれるって、言ったでしょう!?」
「…ああ!わかった!」
やっとこさ理解の追い付いた俺は右手のレバーを引き、エネルギーを収束させた拳撃……Oショットを放った。
緑の光を放つ拳弾は一体のインベーダーの翼部に吸い込まれ、爆発四散。羽根をもがれた怪物は地に落ちる。
「今だ!とどめを!」
「言われなくたって!こ、のぉっ!」
ペダルを踏み込み、ギアを高速機動モードへ。落ちた怪物めがけ走り出す。
「っけえぇぇぇぇ!」
拳撃と踵落としのモーションデータの連動によるラッシュ攻撃…Oスラッシュ。
落ちた怪物、インベーダーは、ぐしゃりと嫌な音を立てて潰れた。
(…うわ)
ふと、場違いな思いに駆られる。間近で戦闘を感じた、ゆえに思い煩うこと。
(潰れてたのは、俺の方かも知れなかった…?)
もしこの機体をうまく扱えなかったら、あのように潰れていたのは自分かもしれない。

「アホ!後ろ!」
「う、うわあぁぁぁぁぁぁ!」
とっさに、サイドステップを使い、急降下してきたインベーダーを避ける。おそらく、一体ずつでは分が悪いと感じたのだろう。
「くそっ…どうしたら…!…そうだ!」
さっきの方法、サイトロンに訴えかけて、この機体のスペックから武器まで全てを調べてることは出来るか?
「くっ……!」
思った瞬間に、頭の中に情報が溢れだす。必要な情報だけ搾取して機体の特徴を把握して……はぁ!?
「なんだよこれは!近距離用の格闘武器しかないのか!?」
「知らない!アタシたちは、あそこからこれに乗せられて、逃げてきただけだもん!」
「な…」
さっきまで一人で動かしてた機体のことを、何も知らないってのか!?
ちくしょう、これじゃどうしようもないじゃないか!
この機体は一対多数の戦いには、向いてるとは言い難いし、飛行は可能らしいが、慣れないモノで飛んだ所で、撃ち落とされるのが落ちだろ!
「万事窮すかよ……!」
そう、自分の無茶苦茶な最期を嘆いていると、



遠くの方から、
羽根が羽ばたくのが見えた。
赤く、長大なマサカリを担いだ、
鬼のような巨人の羽根が。
赤い巨人は空からこちらに向かって来て……


『ゲッタァァァァァトマホォォォォゥクッ!!!』
赤い巨人は雄叫びと共に、インベーダーに切りかかった!
「うそぉ……」
あれだけ梃子ずった怪物を、一撃で両断した。
『そこの機体、大丈夫!?』
赤い巨人から、さっきと別の声が響いた。…女の人?
「無事だよ!」
後ろの少女が叫ぶ。
「あ、あんたらは…」
『リガ・ミリティア、タワー所属の真ゲッター1』
感情のこもらない声が聞こえた。
「ゲッター!?」
ゲッターと言えば、前大戦中から活躍するスーパーロボットだ。名前だけは聞いたことがある。
「危ない!」
最後のインベーダーが、真ゲッターに突進するのが見えた。…駄目だ!あの速度ならかわせない!
『ゲッタァァァァァビィィィィィムッ!!!』
ゲッターは、額の水晶体から緑の光条を放った。
インベーダーはかわせず……
「……うわお」
ジュッ、と大きな音を残し、蒸発してしまった。


「………はぁ」
「終わった…」
『あ〜…その機体のパイロット!所属と名前は!』
所属?
「所属なんてない!俺はたまたまこの機体に乗せられて戦っただけだ」
『はぁ!?アンタ、軍属、及び研究所等それに順ずる者の戦闘行為は重罪よ?』
「…え!?えぇっ!?」
「そんな!お前、知らなかったのか?」
「お前じゃない!フェステニア・ミューズ!ってゆうか普通に知らなかった!アンタこそ知ってろ!」
「無茶苦茶言うな!それにアンタじゃなくて紫雲統夜だ!」
『あ〜……あんたらさ、とりあえずタワーに来たら?事情も聞かなきゃいけないし』
「…拒否権は?」
『好きにすればいい。だが行く先はあるのか』
無表情ボイスが響いた。
「…紫雲。行くしかないよ。とりあえずは」
「…そうか、そうだなフェステニア…」
…とりあえずはこの機体をどうにかしないと家にも帰れそうにないな…
79876(弥七朗):2006/01/04(水) 22:58:54 ID:F3AnYJpL
戦闘編終了。バトルシーンはムズーイ…。
次は欧州編か宇宙編を書きます。十中八九は宇宙編ですが。

突っ込み所多そうだなぁ………
80876(弥七朗):2006/01/05(木) 00:13:38 ID:/PON8/gl
その前に事後処理を書けよ俺…
次の事後処理編書いたら、宇宙ナデシコ(バンプレオリはカルヴィナ・ジョシュア・ラミア)か欧州フリーデン(バンプレオリはラウルorフィオナ?)です。
81それも名無しだ:2006/01/05(木) 00:15:42 ID:/PON8/gl
ageちゃった…ごめんなさい…
82第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートA〜:2006/01/05(木) 00:16:35 ID:dPMvVGqI
 はっきり言って会場内の戦況は芳しくなかった。
 鉄人シリーズを相手にするのに頼みの綱であったスーパーロボット達も
 今回のワールドロボットコンテストに参加していたのは
 二流、三流の研究所が建造したものばかりだった為に次々と破壊されていっている。

 なぜ、コンテストに参加した
 スーパーロボット達が二流、三流のロボット達ばかりであったのか。
 本来はマジンガーZやゲッターロボなども参加する予定だったのだが
 三ヶ月ほど前から有名研究所のロボット達を狙った事件が
 多発していた為に防衛が優先されコンテストに参加できなかったのだ。
 率直に言ってしまえば今回、ここに居るスーパーロボット達は狙われる心配が無い。
 その程度のロボットだったことになる。
 ただ、一体を除いては・・・

 一見すると西部劇に出てきそうなカウボーイの姿をしたロボット。
 新連邦が初めて独自の技術だけで作り上げたスーパーロボット、テキサスマックだ。
 新連邦のアメリカ支部で作られたものらしいが
 どう見てもアメリカに対するイメージ上の勘違いで作られたようなデザインだ。
「ヘイヘイヘイ!ユー達のパワーはその程度デスカ!?」
「兄さん、もうちょっと、安全運転で戦って!」
「メリー、バトルというのは常にデンジャラスなモノネ!」
 パイロットまで胡散臭いカウボーイの外見をしている。
 アメリカ国民が見たらなんというのであろうか。
 しかしパイロットも正真正銘のアメリカ人、キング兄妹である。
 兄のジャック・キングは英語も交えた奇妙な日本語を使っているが
 妹のメリーは兄よりももう少し流暢な日本語を使っている。
83第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートA〜:2006/01/05(木) 00:20:32 ID:dPMvVGqI
観客席は避難が完了しもう誰も残っていない。
 テキサスマックはそこに陣取り、暴れている鉄人シリーズを
 マックライフルで狙撃するが有効な一撃は与えられない。
(思ったトーリ、ネオブラック団には何体か機械獣が与えられている様デスネ。)
 観客席のような高台から敵を狙撃していたのは敵戦力の確認だったのである。
 そしてジャックはおかしな所に気づいた。
 多発する研究所襲撃事件に何度か使用されている機械獣が配備されていたのである。
 そしてなぜか、そのそばに着ぐるみのパンダの男が立っていた。
(少なくとも、ネオブラック団とDrヘル一味には繋がりがあるという事デスネ。
 シカシ、あのパンダは一体ナンなんでショウカ?
 トリアエズ、敵勢力の確認もデキマシタシ、本格的に戦闘を行うとシマスカ。)
 マックライフルを変形させマックリボルバーを装備しテキサスマックは走り出した。

 鉄人の前方に中国製らしい、鉄人シリーズが攻撃を仕掛けてくる。
 鉄人は攻撃を自らの鋼鉄の身体で受け止め、そのままパンチを繰り出す。
「機体自体は40年前の代物でも、メンテナンスはちゃーんとやってるんだ!
 新型にだって引けは劣らんぞ!」
 中国製鉄人はそのまま倒れたものの、
 今度は背後から双頭の機械獣ダブラスM2が迫りくる。
「いかん!鉄人、後ろだあ。」
 鉄人は回避行動をとるもののダブラスに組み付かれ、高圧電流を食らってしまう。
「ちい、私も鉄人もここまでか!?」
 鉄人はもがくが、しっかりと抱きつかれうまく動く事が出来ない。
 あと一〜二分でも電流を食らえば鉄人は電子回路がショートし機能停止に陥ってしまう。
 その時であった。ダブラスの二つの頭が次々と吹っ飛んでよろよろと倒れてしまう。
 テキサスマックがマックリボルバーを連続して放ったのである。
「Oh!まさかジャパニーズヒーローの鉄人が
 この程度でロストっしてシマウなんて事はアリマセンヨネ!」
「ちょっと兄さん、口が過ぎるわよ!すみません、Mr金田。」
「いやいやお嬢さん、ヒーローはそんな小さい事は気にしませんよ。」 
 メリーに対しては紳士的な態度で接するが実際は
(ええいっ!日本のヒーローがあんなアメリカンに遅れを取ってたまるか!)
 意外と大人気無かったのであった。

「Mr金田!ここじゃ、バラバラでのバトルは苦戦するダケネ!
 ここは共同戦線と行きマショウ!」
「そんな事は分かってる!日本の初代ロボットヒーローに遅れを取るんじゃないぞ!」
 正太郎がリーダーシップを取りながら、ここに奇妙な日米ロボットタッグが誕生した。
8438:2006/01/05(木) 00:24:32 ID:dPMvVGqI
戦闘パートのAを書き終えました。

予告してた意外なキャラ、キング姉妹です。
ジャックは今回、原作ともSRWとも違う微妙な設定ですので
キャラがかなり変わってます。原作のファンの方、すみません。(居るかどうかは分かりませんがw)

次回はいよいよ、FX、GGG機動部隊の登場です。
85876(弥七朗):2006/01/05(木) 00:32:39 ID:/PON8/gl
乙。ジャックかよっwwww
86それも名無しだ:2006/01/05(木) 15:32:56 ID:Pn2tG7w8
まずは弥七朗乙です
弥七は携帯からなのかな?改行してなくて見みくいとこがあったよ?
あと
>「所属なんてない!俺はたまたまこの機体に乗せられて戦っただけだ」
>『はぁ!?アンタ、軍属、及び研究所等それに順ずる者の戦闘行為は重罪よ?』
>「…え!?えぇっ!?」
の流れでケイのセリフがなんかおかしいと思ったんだけど俺の頭が変なだけかな?
地の文での!の多様もしない方がいい・・・かな。俺があんま好きじゃないだけだから別にいいけどね
以上が気になったとこ。んでよかったとこ
戦闘シーン難しいって言ってるけどよくできてると思うよ
展開もなかなかテンポいいし俺は好きだな
インターミッションでのゲッターチーム&その他とオリのクロスに期待してます。頑張ってください
87それも名無しだ:2006/01/05(木) 15:50:17 ID:Pn2tG7w8
38もバンプレイ乙です
いきなりジャック&メリー兄妹登場にワロタ
気になったのは全部段落落ちしなくてもいいんじゃないかな?ってとこ
まあ些細な問題ですけど「、」や「。」で区切ったんでなければ一段落とさなくても
普通に書いていいんじゃないかな〜と思った。つなげてもそんなに長くならないし
長くなるならそこで区切ればいいし

初心者らしいけどうまく書けてるんでない?
鉄人とマックのタッグを楽しみにしてます(オックスも早く出してぇ)
頑張ってください
88876(弥七朗):2006/01/05(木) 16:12:14 ID:/PON8/gl
いやどうも弥七朗です。
弥七は携帯です。しかも、キリのいいところで切りづらい文なので、改行多すぎを食らいまくった上に投稿してます。
一回改行多すぎと言われると、何故か書いた文章の半分が消しとぶので困ってます…。

ケイのセリフは、「法律文そのまま読みあげた」って感覚です。いや国家があるかどうか微妙ですが。…それに、統夜たちを確保するためのハッタリかもしれませんよ?

原作未視聴でスパロボDでのチェンゲの感覚のみで書いております。
お見苦しい文章、失礼しました。
89それも名無しだ:2006/01/05(木) 16:27:32 ID:Pn2tG7w8
>>88
いやそういう意味でなくて
>軍属、及び研究所等それに順ずる者の戦闘行為は重罪
だとおかしいんじゃないか?ってこと
これだと『軍や研究機関所属のものは戦闘を禁じられている』ことにならない?
弥七が言いたいのは『軍や研究機関に所属していないものは戦闘を禁じられている』じゃないのかな?と思って
90876(弥七朗):2006/01/05(木) 16:35:41 ID:/PON8/gl
…オウ!?す、すみません。ミスですねコレ…。
確にその通りです。見直し不十分でしたすみません。
「軍属、及び研究所等それに準ずる者以外の戦闘行為は重罪」に書き換え、で……。
「要望だけを言おう。戦力になれ」
タワーの司令……神隼人と名乗った中年男は、挨拶も抜きにそう切り出した。
「我々リガ・ミリティア、タワー隊は、各地区のゲッター線汚染の除去と、インベーダーの駆逐のために動いている。しかし現状、タワーの中で動ける機体は真ゲッターしかない」
「クストウェルの力を、貸せってコト?」
「そういうことだ」
フェステニアの疑問に、隼人は肯定の意を返す。
「てことは衣食住の心配とかは「好きにすればいい。だけど、俺は乗らないからな」の?……へ?」
「何と言った、紫雲統夜」
「もう、アレには乗らないっつったんだ。戦闘なんてゴメンだ。俺は家に帰らせてもらう」
そうだ。これから戦いつづければ、あの怪物みたいに、いつか潰れて死ぬかもしれないってことなんだ。
「しかしだ、君の守りたいモノが、今、現実として脅かされているとしたら?
これは地球圏全域における問題なんだ。君と、君の機体にはそれを少しでも…」
「ゴメンだって言っただろう!」
俺は、いつの間にか激昂していたらしい。
頭に血が上る。何も考えられない。
「いつやられるか解らない戦いなんかに、俺を巻き込むな!」
「紫雲……」
あぁもうそんな目で見るなフェステニア。
俺は、女の子一人守れるような強い戦士なんかじゃない!
「アンタ!こんな娘一人だけおいて逃げるつもり!?」
「あぁそうさ!俺は違う、アンタらとはさ!
だれもがあんな鬼のようなロボットで、グチャグチャのグロテスクな怪物どもと戦えるわけじゃないだろ!」
「………」
「やめろよ、ゴウ……」
ゴウとか言ったか。無表情野郎がじっとこちらを睨んでやがる。
言いたいことがあるなら、はっきりと言えよ。
「とにかく、俺は帰る。機体は好きにしろ。フェステニア、あの機体に乗せるヤツは他のヤツを探せよ。じゃあな」
「そ、そんな……だって紫雲は……サイトロンが見せてくれた未来に……」
「しつこい……しつこいな!誰だって良かったんだろ!?たまたまあの場に俺が居ただけで!
なんならもう一度サイトロンとやらに、他の未来を見せてもらえ!俺があんなことを、あそこまでやれるわけが無いんだ!」
その瞬間、
視界が消しとんだ。
「紫雲とか言ったな、お前は」
気が付くと、床に這いつくばっていた。
目の前に居るのは…神隼人。
「いいか、お前を戦力として連れてきた理由はいくつかある。
まず、一度でもなんらかの機体に乗った民間人。こういったヤツは大抵軍あたりに連れていかれて、処罰を受ける」
頬に痛みを感じる。
「しかし、お前とその機体を連れていかれるのは惜しいと思った。なので先に改修した」
殴られたのか。
「第二に、力だ。お前には力がある。あれに乗って戦えるだけのな。それは今の地球圏が必須とし、しかし足りないものだ」
「………」
「いいか、よく聞け。………お前は力を持っている。ならば………力を持つものなら、その力の意味を理解しろ!」
ブリッジに轟声が響いた。
「いいか、力ってのはな、誰かが誰かにくれてやるもんじゃない。先天的に、あるいは努力によって奪い取り、誰もが持ち併せてるもんなんだ。
逃げるだと?戦えないだと?ふざけるな!お前の力は、お前のものだ!
その力の使い方を誤るな!使わなければならない時に、使えないならばそんなものはいらん!」
「だけど、俺には…」
「だけど何だ!覚悟がない?戦いの中で身に付けろ!経験がない?これから積め!
あるべくして存在するお前の力の使うべき所を誤って、インベーダーの侵略に屈したいのか!」
「………」
絶句だった。
この男は、俺なんか見ちゃいない。
全ての、「使うべき力を持つ者」に投げ掛けた、宣告だ。
「……やる気があろうが無かろうが、戦える以上は戦力になってもらう」
「………逃す気は無いってことか」
「統夜とか言ったっけ?司令は本気だよ」
「ケイ、余計な事は言わなくていい」
「…はい」
今、初めて思った。
この男、…怖い。
「よし、ヤマザキ。これから臨海部へ向かう。マジンガーの収容も兼ねるので、光子力研究所を経由して行くぞ」
「はい」
「あと……統夜」
「……?何ですか」
不意に敬語になる。笑えるもんだ、一発殴られたくらいで。
「出来るわけがないと言ったな。一度は出来た事を……自分の過去を否定するな。一瞬たりともだ。お前がいくら否定しようが、お前がインベーダーと五分に渡り合えたのは事実だ。そのことは自覚しろ」
その時、
神隼人は、確に俺の事を見ていた。
93876(弥七朗):2006/01/06(金) 01:20:07 ID:CzoYB53B
地上編第一話、やっと全編終了です。
なんか隼人がいいとこ全部もってっちゃった…
まぁ統夜が殴られるってのは大分前から構想にありました。Jにはなかったよね?殴られる所。


次は、個人的には宇宙に戻りたい所ですが、要望多数なれば欧州編を書きます。
94第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートB〜:2006/01/06(金) 04:34:52 ID:tNOdJZc2
 金田邸兼探偵事務所
 地下の研究施設でネオブラック団の宣戦布告の生中継を見ながら陽子は焦っていた。
 新型鉄人シリーズ最後の一体、鉄人28号FXがコンテストに間に合わなかったのは
 そのコントローラー『グリッドランサー』の調整が間に合わなかった為である。
 しかし、その『グリッドランサー』も今、調整が終了した。 
「待っててパパ。今からそっちに行くわ!」
 グリッドランサーを傍らに車に乗り込む。
(本当はあの子に・・・正人に・・・これを渡したかったのだけれど・・・)
 金田正人。金田夫妻の実の息子であり、
 後々は探偵家業を継ぎFXの操縦者として活躍するはずであった。
 一年前、搭乗していた飛行機が行く不明になるまでは・・・
 陽子の乗る車が庭を抜け出そうとした時、前方からパトカーが現れる。
 陽子が急ブレーキをふみ、間一髪衝突は避けられた。 
「なんなの、一体?あら、あのパトカーもしかして・・・」
 突然現れた謎のパトカーは一体なんなのであろうか。
 
 先ほどから、鉄人シリーズと旧28号&テキサスマックの戦いを見続けていた、
 パンダの着ぐるみの男がデビル火刀の元へ走り出した。
「おいっ、デビル火刀!貴様、新型鉄人シリーズで遊んでいるだけか!
 我々の真の目的は新型鉄人シリーズ最強の28号FXの奪取であろう!
 この会場にFXが搬入されているのは我々も掴んでいる情報だ。何をしている!」
 着ぐるみの男が甲高い声で猛講義する。
「言い訳するようだが、このデビルウェーブ発生装置は草間式電波発生装置で
 コントロールされている新型鉄人シリーズが操れるんだったな?」
 その光景を見たものは少しばかり滑稽に思うかも知れない。
 パンダと青い髪の麗人が会話をしているのだから。
「そうだ。だから我々も草間博士を誘拐しその理論を逆利用してデビルウェーブ発生装置を作成したのだ!」
「それがどうもおかしい。新型鉄人は意図も簡単に操れた。もちろん旧式の鉄人は操れなかったがな。
 しかしFXもデビルウェーブ発生装置では操れんのだ。
 もしかしてFXには電波発生装置は詰まれていないのではないかね?」 
 火刀の読み道理であった。
 草間式電波発生装置はミノフスキー粒子からの干渉を受けにくい、
 新たに発見された周波数帯の電波を発信している。
 しかし、周波数帯の中で一番強い周波数の電波を受けると、
 設定されたものでなくとも動いてしまうという欠点があったのだ。
 もちろん、その周波数帯は関係者にしか知らされていないものであったのだが、
 今回はその欠点を利用した作戦だったのである。
 が、操る者の手によって正義の味方にも悪魔の手先にもなる事を、
 一番良く知っている正太郎が開発に参加したFXである。
 そんな不安定な装置は使えないという事になり、
 更なる新理論で動くグリッドランサーが搭載されていたのだ。

「そんな事を調べる情報収集能力も無いのかね?あなた方、B・・・」
「そこまでにしてもらおう、デビル火刀。今はまだ我々の名を公けにする段階ではないのでね。」
 着ぐるみの男はそこまでいうと言うと着ぐるみを爆破させ煙幕を発生させて言葉を続けた。
「まあいい。今回はこちらの詰めが甘かったばかりに借りを作ってしまったわけだからな。
 ただし、鉄人とテキサスマックの処理だけはやってもらおう。
 私は先にDrヘル一味のアジトに行っている。
 それと礼儀には気をつけろ。
 貴様らが活動できているのも我々が協力しているからだという事を忘れるな!」
 そのまま、着ぐるみの男は誰にもその正体を見せぬまま、煙だけを残し去っていった。
(一度も正体を現さずになにが礼儀だ。オロシャのイワン、やはり信用できんな・・・)
95第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートB〜:2006/01/06(金) 04:38:11 ID:tNOdJZc2
やはり、二体だけで十数体の鉄人と機械獣たちを相手にするのは無謀だった。
 それで居なくともダブラスの電流でボロボロだった鉄人だ。
 正太郎の巧みな操作とテキサスマックのフォローにより、倒されてはいないがそれも時間の問題であろう。
「Shit!こんな時に弾切れデス!
 Mr金田、観客の非難も完了したようデス。ソロソロ退散とイキマセンカ?」
 カチカチという音しか鳴らなくなったリボルバーをしまい、ジャックがいつも言わないような弱音を吐く。
「いかん!会場内の非難は完了しても、外にはまだヘテロダインが居る。
 この地域全体の避難が完了するまでは戦い続けなければならない!
 それが我々ヒーローの務めだ!
 それにな、ヒーローは敵に背を向けて逃げ出すなんて真似は出来んのだよ。」
「やっぱり、日本のヒーローはCOOLね!兄さん。」
「私もそう言うだろうと思ってイマシタヨ。Mr金田!
 シカシ、共倒れはミー達もさけたい。なにか早めに終わらセラレル方法があればグッドデスガ・・・」
 正太郎の言葉に勇気付けられたのかすぐにいつもの調子に戻るが冷静に提案するジャック。
「私に良い考えがある。」
 どこかの司令官めいたような発言をしながら笑みを浮かべた。

「三郎、観客の避難誘導は終わったな。」
「はい。」
「なら、これで鉄人を操作するんだ!」
「でも、こんなボロボロの鉄人じゃあ。」
「ばかもん!そこを根性で何とかするのがヒーローの務めだろうが!」
 観客の非難誘導を終え、戻ってきた三郎にコントローラーを渡し、走り出す正太郎。
「Mr金田!ドコへ行くおつもりデスカ?」
「鉄人シリーズと機械獣軍団を操る、大元がどこかに居るはずだ!恐らくデビル何とかいう奴だろう!
 これは危険な賭けだが、そいつを直接叩いて装置自体を破壊する!君達は道を確保してくれ!」
「ワカリマシタ!ソレくらいしか方法は無い様デスネ!」
 リボルバーを鉄球状の武器、テキサスハンマーに変形させて振りまわす。
「コレで破壊は出来なくとも牽制ぐらいは出来るはずデス。
 サブローはMr金田が危なくなったら鉄人で守ってあげてクダサイ!」
「了解しました!出来るだけの事はやってみます。」
 テキサスハンマーの猛打撃が、鉄人シリーズと機械獣軍団を倒して道を作る。
 その中を走り抜けていく正太郎。
 それを頑丈な数体が襲い掛かるがつたない操縦ながら鉄人がそれに立ち向かう。
 そんな戦い方が何回か繰り返されたが、まだ火刀には辿り着かない。
96第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートB〜:2006/01/06(金) 04:39:22 ID:tNOdJZc2
 やはり、この作戦はすぐに限界は迎えた。
 ボロボロの状態であった鉄人の動きが鈍くなり、
 その隙を見て鉄人が新型や機械獣に攻撃されたのである。
 正太郎にも機械獣たちの魔の手が伸びている。
「くそ、私も鉄人もこれまでか・・・」
 長年、戦ってきた正太郎が一日に二回も限界を感じるのは今日が初めてだった。
 その時である。場内からどこからともなくサイレンの音が聞こえたのだ。
 間一髪、機械獣の鉄拳を先ほど金田邸に出現したパトカーが体当たりし、正太郎は助かった。
 パトカーは先程のダメージなど微塵も感じさせずに不時着し。中から少年が降りてきた。
「よお!父さん、苦戦してるようじゃない?」
 この状況を気にもとめずに少年は正太郎に挨拶した。
「まさかお前、正人なのか・・・」
 正太郎が驚きの声を上げるが久々の再会に喜ぶ暇も無いまま正人はグリッドランサーを握った。
「新ヒーローの初陣だ!みんな、しっかり目に焼き付けてくれよ!」
 グリッドランサーを地面に向けて赤いビームを発射する。
「目覚めろ、鉄人!」
 地下の格納庫から這い上がってくる鉄人28号FX。
 その青いボディーは旧鉄人よりも鮮やかなな色をしている
「ゴッ!」
 目覚めたFXは雄たけびを上げ初代から続くポーズを取った。
「よーし、その調子、その調子!行こうぜ、ボルフォグ!」
「了解しました。正人隊員。」
 パトカーが喋ったのである。事情を知らない人間は驚いていたがさらに驚く事になる。
「システムチェーンジ!!!」
 今度はパトカーが一瞬にして忍者のようなロボットになったのだ。
 国際警察機構直属の対地球外生命体組織GGGの諜報部員ボルフォッグだ。
9738:2006/01/06(金) 04:54:34 ID:tNOdJZc2
やっと、FXを出撃させる事が出来ました。
しかし第一話のくせにマイナーなキャラしか出てきてませんね・・・

草間式電波発生装置のくだりですが
自分、科学にも物理にも詳しくなくて適当ですので
詳しい方は何だこれってなると思いますがフィクションですので大らかに行ってください。

あと、イワンがやってるパンダの男は原作では
ネオブラック団幹部がやってるんですが重要なキャラでもないんで省きました。

>>87
ありがとうございます。
そこら辺を意識して今回書かせて頂きましたがどうだったでしょうか?
>全部段落落ちしなくてもいいんじゃないかな?

FXに関してなんですが頼みの綱だったレンタルビデオ店からなくなってしまっていたので
もしかしたら今後、居るだけ参戦になっちゃうかもしれません・・・
個人的にブラックオックス出したいんで頑張って他のレンタル屋を探してみますが難しいかもしんないです・・・

あとジャック兄妹が受けて良かった。
98876(弥七朗):2006/01/06(金) 09:59:57 ID:CzoYB53B
乙GJ。
ボルフォッグってパトカーだったのか。知らなかったぜぃ。
特に悪い所は見当たらないと思いまつ。─以上。
9916:2006/01/06(金) 12:17:29 ID:lmgEyR2n
アクシズは少しずつ地球へと近づいていた。
その様子は、地上からも肉眼で見ることが出来た。
ダイヤを潰したような影が。地球に住む人間は悪魔が迫ってくるような恐怖感を抱いていた。
だが、人々はどこかに逃げようともしなかった。
逃げても無駄だというのもある。だが、それだけではない。彼らは信じていた。
地球を護る勇者達。αナンバーズを…。


宇宙では地球圏の未来をかけた戦いが続いていた。
小惑星アクシズをめぐる攻防。その、アクシズを舞台に2つの機体が激突していた。
一方は地球連邦の象徴。そして、もう一方は真紅の鳥のようなMS。
互いはビームライフルを撃ちあっていた。牽制の意味合いとしてだ。
お互い当てるつもりは無い。相手の力量は知っている。
いや、知り尽くしているのだ。
戦場で出会って約10年。ライバルとして、時には味方としてともに戦った。
そして二人は、再び敵として出会った。
(これもまた運命なのかもしれん)
撃ち合いを繰り返す中、シャアは思った。
自分が今、この場所にいることがそうだろう。
本来ならジオンの皇子から指導者へと移行するだけで終わっていたのかもしれない。
だが、ザビ家により自分はその座を追われ復讐の為にジオンのパイロットとなった。
今思えば、これにより自分はパイロットとしての技術を身につけ、ニュータイプとして覚醒することができた。
そして、今自分は『ネオ・ジオン』の総帥としてここにいる。
(運命に感謝せねばならんな…)
ふと、ビームライフルの弾数が切れそうなことに気付いた。
と、なれば相手もそろそろ切れるころだろう。
(仕掛けるか)
ドヒューン!
最後の弾を撃ち終えると『ナイチンゲール』はビームライフルを捨て、ビームトマホークを抜き出す。
アムロの『Hi-ν』もビームサーベルを抜く。
再びビーム兵器がぶつかり合う。
「貴様の力はその程度ではないはずだ!」
出力では勝る『ナイチンゲール』が圧す。
「うぉぉぉ!!」
『Hi-ν』はシールドで側面に殴りかかる。
「ぬぅっ!?」
シールドは、『ナイチンゲール』の右肩を捉えた。
相手の一瞬のよろめきをアムロは見逃さなかった。
すかさず腹部へ蹴りをかます。
「ぐおお!!」
メインモニターにノイズが走る。
後退した『ナイチンゲール』へアムロは更に追撃をかける。
「シャアー!!」
『Hi-ν』はビームサーベルを振りあげる。
シャアの眼前に光の束が迫る。
(ここまでか…!)

10016:2006/01/06(金) 12:19:28 ID:lmgEyR2n
サーベルが振り下ろされる瞬間、別方向から多数の光の束がガンダムを襲った。アムロはとっさに回避する。
「ギュネイか…!?」
巨大モビルアーマー『α・アジール』。この戦いであれに乗ってるのはギュネイしかいないのだ。
通信が入る。
「大佐!ここは一度引いてください!」
「ギュネイ…」
「あの男は…ガンダムはクエスの仇なんです。俺が…討ちます!」
クエス。
その名前を聞いたときシャアは下唇を噛んだ。
(クエスか…)
彼女を撃ったのは確かにアムロだ。だが、彼女を戦場に連れてきたのは自分なのだ。
(いや、彼女のこともまた運命なのだ)
シャアは自分に言い聞かせようとしたが納得はいかなかった。
「大佐!」
そのギュネイの言葉にシャアは現実に戻った。
「ギュネイ…」
「急いでください!最低でも足止めくらいならできます!」
「…すまない」
その言葉には多くの意味が含まれていた。
ギュネイはその言葉の意味に気付いたのだろうか。それは、分からない。
だが、ギュネイは自分が負けることは分かっていた。
悟り。それに近いものなのかもしれない。
(あの男に、一矢報いてやる。見ててくれ…クエス!!)
『α・アジール』は無数のファンネルを展開する。
「この感じ、あの男か!」
アムロは『Hi-ν』の残りのフィン・ファンネルを展開する。
「行け!」
フィン・ファンネルは着実に『α・アジール』のファンネルを打ち落としていった。
「く…くそっ!」
たかだか2基のファンネルに。これほど実力の差がでるとはギュネイは思わなかった。
(せめて…せめて一撃を…!)
メガ粒子砲をチャージする。だが、遅かった。
ファンネルに気をとられすぎたのだ。モビルスーツが目の前に現れるまで気付かなかった。
(俺は本当のニュータイプじゃなかったんだな。いや、ニュータイプ以前の問題だな。)
死が迫っているのに不思議と怖くは無かった。
(クエス…)
光が全てを溶かす寸前に彼はこの世にいない恋した少女の名前を思った。
そして、彼は『今』その少女がいる世界へと行った。


「……」
アムロは爆発する巨大モビルアーマを見つめていた。
(あの男も、この戦いの犠牲者か…)
一刻も早く終わらせなければ。
アムロは思った。敵母艦へ飛んでいく真紅の鳥を見つめながら。
『ラーカイラム』へと通信を入れる
「ブライト、一時帰艦するぞ!」


アクシズ落下まで残り5分。
『ぐうぅぅぅっ!』
金色の光、ジャングルに降り注ぐ、メガ粒子の雨。
『守ったら負ける、攻めろ!』
仲間を鼓舞する自分、
『泣け!叫べ!MSの性能を活かせぬまま死んでゆけ!』
戦場で出会った、青き鬼神の叫び、
『……俺は……俺はアイナと添い遂げるっ!』
決意の言葉。
『背負って行こう………二人で』
全てを背負ったつもりだった。
だが……
『………まだ、まだアプサラスは、ギニアス・サハリンは終りはしない!』

「!!!」
簡易ベッドから飛び起きる。
義手と義足を着けた、見た目の若い男だ。
「……夢、か」
「シロー……」
気付くと、隣に寝ていた筈の、女も起きていた。
「悪夢を、見たのですね」
「………ああ」
「………貴方がまた戦うと決めた時は、こんな日もあるとは思ってましたが………もう、忘れましょう。あの頃のことは」
「そうだな。戦いの記憶なんて、楽しいもんじゃない」
(だが……)
男は考えていた。あの男の存在を。
「……ザンスカール、か」
フリーデンに搭乗して、もう随分と立つ。
リガ・ミリティアの幹部の一人になってくれと頼まれて、今はジン・ジャハナムを名乗っている。
「アイナ、少し外に出て来る」
「えぇ。わかりました」

「………」
色の無い空。空が閉じられて、今日で三日目だ。
「………」
しかし、シローは感じていた。
ザンスカールに、あの男の影を感じる。
「………ギニアス・サハリン」
欲望と妄執の果てに、散った男。
散った筈の男。
「まさか、いるのか………?」
ザンスカールが、宇宙から地表を狙撃するレーザー砲要塞を建築中という情報がある。
独自のルートで手にいれた情報だ。
「………」
今は宇宙への道が閉ざされている。
だが、
「………潰してやるさ。何度でも」
シロー・アマダ……元・極東地区連邦軍コジマ中隊所属、第08MS小隊隊長は、決意を新たにした。
「ウッソ、シャクティ、ガロード、ティファ……誰も彼も死なせやしない」
102876(弥七朗):2006/01/06(金) 13:10:55 ID:CzoYB53B
欧州編はサブシナリオ形式でお送りします。弥七朗です。

08小隊は原作終了後を舞台とします。
しかも、シローは欧州編の主人公っぽいです。
こう御期待ください。
10316:2006/01/06(金) 13:33:21 ID:lNNnpDCU
あとがき書き忘れてた…。

初めて書き込んでからだいぶ経ってますが第2部書き上げました。
いつ、続き書けるか分かりませんが、頑張ります。
104876(弥七朗):2006/01/06(金) 14:34:29 ID:CzoYB53B
っと、>>16さんGJ。
105それも名無しだ:2006/01/06(金) 19:58:40 ID:8k3/aXXu
>>876
すごく面子が個人的に好み。
ガンガレ。
10616:2006/01/06(金) 20:45:56 ID:fFQ/pdA9
>>104
どうも、レスありがとうございます。
私も876さんみたくうまく書けるよう頑張ります。
107876(弥七朗):2006/01/06(金) 21:31:54 ID:CzoYB53B
いやいや全然上手く無いっスよ自分なんて……
108それも名無しだ:2006/01/06(金) 21:50:38 ID:7mUq6WUg
とりあえずネタを考えてみたんだ

「スーパーロボット大戦MX〜そして、再会の日〜」

プロローグ

「ルリちゃん、みんな…お疲れさま。もう大丈夫だよ」

死と新生を迎える直前であった地球は、マグネイト・テンの活躍により、
救われた。

そして……

宇宙歴93年…
「調律戦争」と呼ばれる戦いが終結し、3年の月日が流れていた。
あれから自分たちの場所に戻った元マグネイト・テンのクルー。
みんなはもう、それぞれの道を歩んでいた。
かつての仲間…神名綾人が見守るこの世界で…

そんな中、元クルー達の手に1枚の手紙が届けられた。

「同窓会、開きます」

手紙の主は、連合宇宙軍中佐、ホシノ・ルリだった。
3年という時を経て、再び集結する元クルー達。
かつての仲間達と再会したクルー達は、何を思い、何を考えるのだろうか…

どうだろうか?「調律戦争」含めて。
109第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートC〜:2006/01/07(土) 00:56:37 ID:dbWlUUYV
 FXを始めてとは思えない操作で操り、機械獣に立ち向かう正人。
 しかし新型鉄人も攻撃に加わり、中々思うように有効な一撃を加えることが出来ないでいた。
「くそっ!やっぱり三体のロボットでこの数は不利だな。
 ボルフォッグ、まずは操られている新型鉄人達の無効化だ!
 新型鉄人達に発せられている特殊電波を破る事は出来るかい?」
「可能です、正人隊員。メルティングサイレン!」
 ボルフォッグが叫ぶとまたサイレンの音が鳴り出す。しかし今度のサイレンはただのサイレンではない。 
 本来このメルティングサイレンは特殊音波を発する事で、地球外生命体のバリアを無効化するために装備されたものだ。
 そしてボルフォッグのサポートマシン、ガンマシンを電波妨害下においても誘導、指揮するためのツールともなる。
 それを利用し、デビルウェーブ発生装置の電波を分解する事に成功したのだ。
 次々と機能を停止していく新型鉄人シリーズ。
「これはどういうことだ。なぜ、動かない?鉄人シリーズよ!」
 これにはデビル火刀も慌ててしまう。
「よしっ、後はこの機械獣連中を倒すだけだ。」
「ここは任せて下さい!正人隊員はデビル火刀を!シルバーブーメランッ!」
 ボルフォッグが叫ぶと同時に巨大なくの字型の手裏剣を取り出し、機械獣たちに向けて投げる。
 テキサスハンマーによりダメージを受けていた機械獣たちは止めの一撃をくらい次々と爆破されていく。
「分かった、ボルフォッグ!」

「ちっ!鉄人シリーズも機能停止し、機械獣もやられたとなっては・・・
 仕方が無い、ここは退散するとしよう。しかし、四体のロボットだけでここまでやるとは・・・」
 戦艦の方へ赴こうとするデビル火刀。
「待て、デビル火刀!ここは俺と鉄人が相手だ!」 
 そこへ現れる正人とFX。
「相手をしたいのは山々だがこちらも手駒が無くなってしまってね。
 戦うのはまた今度という事にしよう、金田正人!」
「逃げるって言うのか!卑怯だぞ!」
 血気盛んにデビル火刀に叫ぶ正人。
「その鉄人28号FX。私はいたく気に入ってしまってね。
 戦うのなら万全の体制で戦いたい。そして必ず、その鉄人は私がいただく!
 それではまた会おう、鉄人28号FX、そして金田正人よ!」
 デビル火刀は姿を現したのと同じように光の筒に乗り戦艦の中へと姿を消していった。
「くそっ、鉄人は飛べないしな。逃がしちまったか・・・」

「おいっ、何をボヤボヤしてるんだ正人!」
 瓦礫の向こうから、正太郎がボルフォッグやテキサスマック、三郎と供にやってくる。
「その前に所長、こいつ誰なんですか?いきなり現れてFXを操作するなんて?」
 三郎が自分こそがFXの正式な操縦者だと言わんばかりの顔で正太郎に聞く。
「一年前、行方不明になった私の息子、正人さ。」
「そういうこと。で、なんだい父さん?一年ぶりの再会でも喜ぶかい?」
 正人からのやきもちにも似た目線に気づいていないのか
 それとも意にも介していないのかどちらにしろ気にせず飄々とした雰囲気で正人が答える。
「確かにお前に言いたい事は山ほどある。だがな、その前にあのヘテロダインを何とかして来い!」
「おっと行けねえ。忘れてたや。じゃあ、まだ戦えるのは・・・」
 そういいながら、正人はテキサスマックに目をやる。
「スミマセンネ、ショウタロー。テキサスマックはボロボロの状態でとても戦う事は出来マセン。」
 そういいながら、旧鉄人を抱えた状態のテキサスマックからジャックが答える。
「なんだ、じゃあ結局戦えるのは俺とボルフォッグだけか。」
「その様ですね。あちらはダイガードとガイ機動隊長が応戦してるはずです。早速行きましょう。」
「ダイガード?ああ、あの外にあったロボットのことか。動いちゃいなかったからただの張りぼてかと思ってたぜ。」
 たしかに、コンテストにも参加していなかったロボットである。三郎がそう思うのも当然かもしれない。
 とにもかくにもFXとボルフォッグは会場を後にした。
110第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートD〜:2006/01/07(土) 00:57:23 ID:dbWlUUYV
ネオブラック団を撃退した数十分前、ヘテロダインが襲来現場
 初めてのダイガードの操縦に意気揚々と発進したものの、動きはぎこちなかった。
「中は意外とうるさいんだな。」
 確かにコクピットでは様々な稼動音や駆動音が鳴り響いていた。 
「よしっ、まずはあっちのMSをどうにかするか、行くぞ、青山!」 
 走り出そうとするがバランスを失い、転びそうになるダイガード。
「なにやってるのよ、赤木君!」
 すかさずいぶきがバランス調整をし、転倒は免れた。
「馬鹿野郎っ!出力調整はこっちでやってるんだ!走るんなら走るでちゃんと言えっ!」
 本日、何度目になるだろうかは青山は怒鳴った。
「すまねえ、すまねえ。」
 どうにか、倒されたMSの所までやってくるダイガード。
 いまだ、勢いよくMSは燃えていた。
「うわっ、結構、熱いんだな」
「赤木っ!お前は上だから良いだろうがこっちは直接、火を浴びてるんだ。」
「あっ、そうだったよな。で、どうしたら良いんだ。」
 勢いよく跳び出したは良い物の計画などはまったく考えていなかった。
「あのねえ、赤木君・・・右下にパネルがあるでしょ?
 あれを引っこ抜いて。後は雪かきの要領でMSを海に落とすのよ。」
 見れば確かに『ワールドロボットコンテスト会場はこちら』とデカデカと書かれたパネルが置かれてある。
「おおっ。、アッタマ良いすね。いぶきさん!」
「アンタに褒められても良い気持ちしないわよ・・・」
 あきれた様子でいぶきが答える。

 一方、特設ステージが組まれていた場所で広報二課の課員はダイガードの活動を見守っていた。
「赤木さん達、無茶しなきゃ良いけど・・・」
「赤木の性格上、絶対にすると思うけどねえ。」
「バカは死ななきゃ直らないっていうからね。」
「入江ちゃん、不吉な事言わないの!」
 緊張感のない会話をしているのは広報二課、真の名物、女性四人組みである。(いぶきを入れれば五人になる。)
 メガネッ娘の谷川、コギャルのような中原、ミステリアスな入江、まとめ役の大山
 と各種様々な特徴を兼ね備えているのが売りである
 すると、大杉がヘテロダインの動きに変化が見られる事に気づいた。
 いきなり、進路を変更しダイガードのほうへ動き出したのである。
「いっ、いかん。大山君、至急ダイガードに通信を繋いでくれ!」
「はい、わかりました。」
111第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートD〜:2006/01/07(土) 00:58:00 ID:dbWlUUYV
そうとは知らない赤木たちはMSを海に落とす作業をしていた。
 燃えていたMSを落としたのだから当然、水蒸気を発し視界が悪くなっている。
「これで終了たわ。赤木君、やったわね。」
「ああ、これで逃げ道は確保できた。」
「とっとと戻ろうぜ。赤木。ヘテロダインに襲われち・・・」
 青山が言いかけたその時、大杉から通信が入る。
「あっ、課長。こっちは任務終了しました今からそっちへ戻ります。」
「それどころじゃない!右だ。赤木!」
「へっ?」
 水蒸気で視界が悪くなっている右モニターを見る赤木。
 ゆっくりとした動きの大きな影が居るのが見える。 
「うわあっ!」
〈キシャアアアアアアアア!!!〉
 ヘテロダインが雄たけびを上げ、触手を使いながらダイガードに攻撃を仕掛ける。
 不意を突かれた為、今からでは回避行動も防御行動もとる事が出来ない。

 そのときである。
「イィークイィーップッ!!!」
 どこからともなくそんな声が聞こえると目の前にオレンジ色の長髪の人間が飛び込んでくる。
「ウィルナイフッ!」
 その長髪の男が持っているナイフで次々と触手を切り取っていく。
「に、人間がヘテロダインと戦ってる・・・」
 驚きの声を上げることも無く、ただ唖然とした顔でその光景を見る赤木たち。
「よっしゃあ!さあ、俺がサポートするからこいつを倒すぞっ!」
「あっ、ああ・・・」
 赤木たちの息つく暇も無いままヘテロダインとの戦いは開始された。
11238:2006/01/07(土) 01:07:26 ID:dbWlUUYV
いよいよ登場、ガイ機動隊長です。
雰囲気的にはニルファで登場していた感じで出しました。
もうちょっとFXとボルフォッグの活躍は丁寧に書きたかったんですが量の関係でこうなっちゃいました。
次回で戦闘パート終了、戦闘後パートです。
しかし、第一話だけでえらい長いなあ・・・

>>16さん、乙です。
雰囲気が出てて良い感じですね。
頑張ってください。

>>102
弥七朗さん、乙です。
やっぱりシローってカッコいいですね。

>>108
良いんじゃないでしょうか。
後日談的なスパロボって中々無いですし。
楽しみにしてます。
113スーパー携帯機ジェネレーション 月面邂逅編:2006/01/07(土) 02:22:34 ID:7PIWyAwT
「…メルア・メルナ・メイア」
「はい、カルヴィナさん」
「…わたしは、掃除をやっておいてねって言ったわよね?」
「…確に言いました」
「しばらく家を離れるから綺麗にしたいっていいだしたのは?」
「…私です」
「なぜ片付いてないの?」
「…」
あぁもう………この娘ったら。
三週間前、金髪の少女を玄関先で倒れているのを見つけた。
とりあえず、家でご飯を食べさせてあげると、匿って欲しいと頼まれた。
二周間前、メルア・メルナ・メイアと名乗った少女は、フォン・ブラウン郊外にわたしを連れだした。そこには、ベルゼルートという機動兵器があった。
これを壊されては困る、という。
馬鹿馬鹿しい。わたしに何の関係があるのだ。
メルアは「サイトロンが…」と言っていたが無視。しかし、アーマー乗りの性か、乗って見ろと言われて断れなかった。
わたしは引退したはずなのに、ベルゼルートを軽やかに動かせた。
アシュアリー・クロイツェルで無くしたはずの自信を、少しだけ取り戻した。
一週間前、前々から誘いの来ていた、ネルガルの戦技教官の件を受けることにした。
二人分の食費が、パートの稼ぎではきつくなったというのと、乗れる機体があることでパイロットとして自信を取り戻したからだ。
そして今日、ナデシコへの乗艦日。
なのに…
「……メ〜ル〜ア〜」
「い〜〜〜!いひゃいいひゃいいひゃいれふぅ〜〜〜!」
メルアの頬を両側に引っ張る。
「アンタが来てから元から整理してない家ん中もっと汚くなったんだから!掃除してかないと留守中にカビ生えたりGが出たりするでしょ!?わかる!?」
「わひゃる、わひゃりまふかひゃ〜……しぇいひひへはひっへひはふはっはんは〜…」
「誰が整理してない自覚あったんだってぇ!?この口かっ!?この口がそんなこと言うか!?」
「いっひゃ〜〜いぃ!いひゃいいひゃい〜〜!!」


家の中の掃除は業者に頼むと結論をだし、わたしたちはナデシコへ向かうことにした。
プロスペクターが迎えにくると言っていたが、機体の搬入の件もあるのでベルゼルートに乗って先にナデシコに行くことにした。
あの嫌味面のプロスペクターを出し抜いてやるつもりでもあるが。
とにかく今日から新しい日々となるのだ。

ねぇ、アル=ヴァン。わたしを見てる?わたしはちゃんとやれてる?
ちゃんとやれるか見ててね、アル=ヴァン。

心の中で死んだはずの恋人に話しかけ、ベルゼルートの主動力を機動した。
114スーパー携帯機ジェネレーション 月面邂逅編:2006/01/07(土) 02:45:32 ID:7PIWyAwT
「ふむ………」
アル=ヴァン・ランクスは、格納庫にある機体のデータを見て嘆息した。
「本当にこの機体を動かしたというのですか?アル=ヴァン様」
「それは事実だ」
「しかし、この操縦系のピーキーな仕上がり、絶妙絶無のバランス、無理に動かそうとしても、限りなく騎士に近い準騎士………そう、例えばジュア=ム様でも動かせませんよ」
機体全体の能力で言えば、準騎士機ヴォルレント並だろう。
動かすことが難しいだけだ。
「私が乗れるようには出来ないか?」
「あの実験体の誰かを乗せないと、動くことすらままならないかと」
「解った。出力系と駆動系のチューンナップはやっておけ。塗色も頼みたいが」
「これに乗るというのですか?」
「解析が終ってからでいい。もし、取り逃がした二機が、パイロットを得て牙を向いたとしたら……恐らく互角のスペックであろうこの機体で戦って、相手の力量を測る。
それに、この機体を何のために逃そうとしたか、あの方の真意はわからないが、乗って居ればわかると言うこともあろう」
「ハッ、了解しました!」


「カティア・グリニャールと言ったね、君は」
「…イエス、マスター」
「そう堅苦しくしなくていい」
「…」
目の前の格子牢には、黒髪の少女が入れられていた。
「君はあの機体に乗って、動かして逃げた」
「そうです」
「なぜ戦わなかったんだ?あの機体の武装なら…」
「元々副座式の機体です。私一人では動かすことは出来ても、武器を扱うことは出来ません」
「何故?」
「戦闘機動中の出力制御が、貴方がたの機体と違って不安定だから」
「ふむ…」
敬語だが、警戒した口調だ。手足は壁に鎖で繋がれてるが、目は真っ直ぐとこちらを見ている。
(くそっ、研究者どもめ)
心の中で、研究材料かそうじゃないかでしか物を見れない連中に憤った。
「…私をどうしたいんですか」
「そこから出したい」
自身…意外だ。こんな即答は。
「? どういう…」
「君たちを研究のためなんかではなく、きちんとした生き方を選べるようにさせたい」
「?」
混乱か。無理もない。
「まず君を私の養子にしたい。それから我々の目的を達してから、我等の仲間に迎えいれる」
「それは…」
「断わったなら、君は前の生活に戻るだろう」
少女の体がぶるりとふるえた。
「…養子になればいいんですか?」
「決めるのは君の意思だ」
彼女を救いたいのは私のエゴだ。
「………」
彼女は、暫くしてから首肯した。
115876(弥七朗):2006/01/07(土) 02:49:31 ID:7PIWyAwT
宇宙編、第二話。導入部終了っス。
アル=ヴァン・ランクスとカルヴィナ・クーランジュ…オリジナル展開甚だしいものになってます。
叩かれたら痛いので叩、あっ、やっ、痛っ、だっ、っつぁあ…
116それも名無しだ:2006/01/07(土) 10:40:58 ID:fNnkRE7K
>>115
乙。なんつーか……思い切ったな。
「ここがフォン・ブラウンか…」
「ジョシュア、月は初めてなのか?」
「地上で傭兵をやっていたからな。ラミアはどうなんだ?」
「…かなり昔に一度だけだ」
(しかも、『向こう側』のだがな)
それも、ある企業の破壊工作のためだった。
ジョシュアとラミアは、それぞれの思惑からナデシコとは外様的な立場を取り、そのためか二人で話すことが少なくなかった。
「ここで補給を済ませたら火星、か…どこか出かけないのか?」
ジョシュアは、ラミアに人に外れたような雰囲気を感じ取っていた。
ひとえに、傭兵として多数の組織を渡り歩いた、勘によるものか。
「…一度だけ、よる所がある」
「どこに行くんだ?」
「買い物に、な。アンジュルグがアナハイムに運ばれたから、そちらにも寄りたい」
「そうか、アナハイムのテストパイロットって言っていたものな」
(女性の買い物、ならば大抵は怪しまれないはずだ)
ラミアは、次の指令が届かないことを不審に感じていた。
(隊長かレモン様……エキドナあたりは常駐しているはずだ)
もしかしたら、次の指令を受け取れる可能性がある。私用も済ませられるだろう。
(言語シナプスの交換を要請せねばなるまい)
「よし、行くか」
「は?」
「は?って、アナハイムまで行くんだろ?買い物にも付き合ってやるよ。一回行ってみたかったんだよなぁ、アナハイム」
「怪我は…大丈夫なのか?」
「このくらいなら大丈夫だ。リハビリも兼ねて、な」
ジョシュアは、人好きのいい笑顔を向けた。
(これは……計算外だな)
ラミアは、無表情な顔に困惑の色を浮かべた。

結論、ジョシュアはただ単に、私を気遣っているらしい。
「買い物ってこれだけか?」
「コーヒーメーカーとコーヒー豆、十分では?」
「…フィルターとミルミキサーは?」
「ミルミキサーは厨房のフードプロセッサーで代用できる。フィルターは忘れていただけだ」
お徳用フィルターパックをジョシュアの持つ籠にいれる。
(必要無いものばかり買っても……使わないと言うのにな)
ジョシュアが、険しい顔で言う。
「フードプロセッサーだって?駄目だ、ちゃんとしたミルミキサーを使わないと。フードプロセッサーなんかで砕いたら風味が粗くなる」
「……いい、それが好きなんだ」
「ならいいが…」
(誤魔化せたか…)
ジョシュアは直ぐに、安物のミルミキサーを籠に入れた。
「俺が買っとく。使いたい時は言えよ」
「…」
私は、心の中で嘆息した。
「あとココアと…」
ジョシュアは不思議な男だ。
傭兵だ、と聞く。なのにそれらしい雰囲気は微塵もない。
隊長のような、殺気の塊のような。
傭兵であれ正規軍であれ、兵士には多少はそんなものがついて回る物だ。
なのに…
「ジョシュア」
「ん?」
「お前は、何で傭兵なんてやってるんだ?」
私は、何故そんなことを聞いたのかが不思議だった。
(この男がなんであれ、私には関係無いだろう)
心はそう言えど…口から出た言葉は引き返せない。
「ん〜…妹が居てな。その妹を守るって意味合いもあった。インベーダーに殺されたくは無かったし」
「インベーダー?」
「え、インベーダーを知らないのか?」
「あ、いや……」
(…どうやら向こうとは随分と様子が違うようだな)
地球圏内の宇宙のことは、調べ尽したはずだ。しかし肝心の地球を忘れていたとは。
(我ながら情けない…他にも故障部があるのか?)
「じゃあ、そろそろアナハイムに……うわっ!」ドスッ
「おわっ!」ドサッ
ジョシュアが反対側から歩いてきた男にぶつかった。
「…ってててて」
「大丈夫か、ジョシュア?」
「あ、ああ…すみません」
「あ、えっと、こちらこそ…」
背の高い、人の良さそうな青年だ。
本当に申し訳なさそうにしている。
『兄さーん!タカヤ兄さーん!そろそろ行くよー!』
「あ、すみません。家族がよんでますので、これで」
「あぁ、はい…」
青年は走っていって、家族と合流した。
「…アナハイムに行くか」
「そうだな。…あ、さっきいい忘れたけど」
「?」
「俺が傭兵やってるのは、さっきの家族みたいなのでも俺の力で守れるから、でもあるな」
「…」
(何を言っているのだ…馬鹿馬鹿しい)
私自身のその理由が馬鹿馬鹿しいものであることに、この時はまだ気付けなかった。


アナハイムの工場に着くと、一人の女性が出迎えた。
いや…一体の人形と言うべきか。
「帰ってきたか、ラミア・ラヴレス」
「エキドナ・イーサッキか」
「ラミア、この人は誰だ?」
誰、と言われても。正直には答えづらい。
「アンジュルグの開発主任だ」
「あぁ、そうですか」
(ということになっている)
(了解)
アイコンタクトで了承を取り合い、エキドナは口を開いた。
「すまないがラミアと二人で話したい。工場の見学にでも行ってくれないか」
「まぁ、そういうことなら」

「W17、それで用件は」
「通信機の修理、言語シナプスの交換だ」
「了解」
119876(弥七朗):2006/01/07(土) 17:47:15 ID:7PIWyAwT
弥七朗です。インターミッションと言うことで、今回はラミアの掘り下げをやりました。
言うほど掘り下げれては居ませんが……

版権キャラを待っている方にはスミマセン。ナデシコ勢はまた出れません。
戦闘には出しますから石は、石は投げないで…
120第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートE〜:2006/01/08(日) 03:32:56 ID:cV2QqAdv
 青山は怒っていた。
 計画も無しに飛び出した赤木に。
 突然、共同戦線を張れと言い出した謎の長髪男に。
 そしてそのまま降りる事も出来ずに操縦している自分にだ。
「おいっ赤木!話が違うぞっ」
 耐え切れずに青山が赤木に当たる。一日でこんなに怒鳴るのは初めてだ。
「あの場合、仕方ないだろ!
 それに生身で戦ってるあの人に任せちゃこのダイガードの意味がない。」
 青山と赤木の怒鳴りあいを少々ウンザリ気味に聞いていた、いぶきが口を挟む。
「喧嘩やめっ!それよりここに居ちゃせっかく逃げ道確保したのに皆逃げられないわ!」
「んな事言ったって・・・」
「文句言わない。青山君、出力上げて!」
「仕方ないな。」
 ダイガードに乗るのを決めたときのように覚悟を決める青山。
 レバーを上げるとダイガードの計器類は見る見る上がっていった。
「そこの長髪の人!危ないわよ!」
「その長髪の人ってのはやめてくれ。俺は獅子王凱って言うんだ。」
 いぶきが声をかけると、凱は自己紹介と同時に
 人間業とは思えない動きで、ヘテロダインとダイガードの間を飛び跳ねていった。
121第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘パートE〜:2006/01/08(日) 03:33:37 ID:cV2QqAdv
 なんとかヘテロダインを道路とは反対方向に押しやる。
「ようし、このまま一気に!」
「ちょっと待って、非難する方が先!」 
 戦意高揚とした赤木にいぶきがストップをかける。 
「みなさん、ヘテロダインを押さえている間に早く逃げて下さい。」
 非難民が逃げたのを確認するとダイガードは攻撃に出た。
 倒れているヘテロダインを殴りつける。
 一見、ダメージがあるように思える光景だがダイガードの装甲の硬度では効き目がない。
(ヘテロダインの反撃も時間の問題だな。
 今は倒れた瞬間のダメージで反撃できないだけだ。すぐに通信を・・・)
 凱が通信を開始した瞬間にヘテロダインが起き上がる。
 それを受け止めるがやはりその装甲の危うさからか、両腕はすぐに限界を迎えた。
「うわっ、もろい!」
 その時であった。凱から通信が入ったのだ。
「そういやなんでアンタ、さっきからダイガードに通信できるんだよ?」
「その話は後。今はこいつをどうにかするのが先決だろう?」
「そりゃそうだけど・・・なんか作戦でもあるのか?」
 渋々、赤木が男の話に耳を傾ける。
「ああ、今の俺達の戦力でこいつを倒すのは難しい。
 だがまずあの崖っぷちの岩山まで追い込んで被害を最小限に抑える。
 その後、俺の仲間が応援に駆けつけてくれる事になってる。あいつならこいつも倒せるはずだ!」
「わかった。それじゃあ行くぞ!青山っ、出力限界まで上げろ!」
「赤木君!そんな事言ったって、ダイガードが持たないわよっ!」
 ガイと赤木の無茶な注文にいぶきが抗議する。
「大丈夫、俺と君達の勇気を信じるんだ!」
 凱はいぶき達に叫ぶ。
「勇気ねえ・・・分かった、やってやるさ」
 青山がそれに口元を緩ませながら答える。
 一気に限界ギリギリまで上がる出力。ゲージは緑から赤の危険ラインまで上昇する。
 ダイガードの各関節部から煙が上がる。
 一気にヘテロダインを岩山まで押さえつけるが、今度は触手がダイガードの右腕を絡めとった。

「おいっ。あんたの仲間ってのはまだなのかよ!」
「ああもう少しのはずだ。」(ボルフォッグ、まだなのか・・・)
 そんなやり取りをしている間にもヘテロダインの攻撃は続く。
 そして長くはない赤木の堪忍袋の尾が切れるのも時間の問題では無かった。
「腕ぐらい、くれてやらぁっ!」
「待てっ!早まるな!」 
 凱の制止も聞かず左腕でヘテロダインを殴りとばす。
 絡めとられたままのダイガードの右腕は豪快な音と供に千切れる。
 ヘテロダインはそ右手を絡めとったまま海中に沈んでいった。
「だから、言わんこっちゃない・・・」
 凱はそれを見ていることしか出来なかった。
「ボルフォッグ、ただいま参りました!」
「金田正人と鉄人28号FXもただいま到着!・・・って、もう終わっちゃったの?そんなあ・・・」
 いつのまにかワールドロボットコンテスト会場は夕日が沈みかけていた。
12238:2006/01/08(日) 03:37:57 ID:cV2QqAdv
なんとか戦闘パート終了しました。
今回、ヘテロダインをこのまま倒そうかと思いましたが
次回に話を繋げる為にも原作どうりに逃がさせました。
明日は戦闘後パート行きたいと思います。
1239:2006/01/08(日) 04:15:19 ID:VXhoHPu5
SS職人の皆様、お疲れ様です。
僭越ながら俺も少しずつ書いてみたり。

ちなみに設定はttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1115913335/の
822-826が元になってまつ


第一話

(1)
意識が戻って最初に感じたのは、鈍い痛みだった。

痺れるような、身体の奥で燻る種火のような、鈍い痛み。

それが、自分が胸から脇腹にかけて負った傷からくるものだと
頭で理解できたのは、しばらく経ってからのことだった。

腑(はらわた)まで達しようかという深い裂傷。
本来なら、叫び出してもおかしくないほどの痛み。
しかし、凍てつくような周りの冷気と、混乱する思考が、皮肉にもそれを中和していた。

ゆっくりと瞼を開く。
ぼんやりと視界一杯に映る人影。
防寒着越しに微かに感じる温もり、揺られる身体。
自分は、抱かれているのか。


ごとん、と音を立てて、何かの上に寝かせられた。
朦朧とする意識の中で、それでもさっきより大きく、瞳を開いてみる。


見慣れた人間の、見たこともない表情が、そこにあった。
情の欠片も感じられなかった人間の、情を湛えた顔が、そこにあった。


「……………………お父、さん……?」


不意に視界が闇に包まれる。

次の瞬間、激しい衝撃が全身を襲った。
1249:2006/01/08(日) 04:16:30 ID:VXhoHPu5
(2)
暗闇の恐怖から解放されたのは、それからどれ位経ってからだろうか。

押し込められた非常用脱出カプセルの扉が開く。
凍てつくような南極の外気が、再び頬を刺す。

胸の激痛をこらえ、上体を起こす。
そして、見た。

稲光轟く曇天。
つい先刻まで一面氷の大地だった筈の、暗く澱む大海原。

そして、遙か彼方に、天を裂き、雲を貫いてそそり立つ、巨大な羽根。

「羽根」と呼んで良いのかどうかは分からない。
そもそも、この世にそんな巨大な「羽根」が存在するわけもない。
しかし、少女には、とにかくそれが「羽根」に見えた。



絶叫。


喉を潰さんばかりの、絶叫。



それは、自身の置かれた状況に対する絶望からではない、
もっと根元的な恐怖からくる叫びだったように思えた。
125それも名無しだ:2006/01/08(日) 04:17:57 ID:VXhoHPu5
(3)
目が覚めると、時計はAM5:00を指していた。


   ―――――また、あの夢か。

暗澹たる気持ちで布団を蹴り上げ、跳ね起きる。
じっとりと脂汗が下着を濡らし、シーツを汚していた。

寝付いたのは、確かAM2:40。
最悪の目覚めだった。

いや、そもそも、良い目覚めを迎えた事など無い――――この街に移り住んでから。

『グアム諸島近海に標的とおぼしき物体の存在を確認』の報を受け、自身の所属する特務機関・ネルフ、
地球連邦軍、戦略自衛隊までもが(極秘裏に)臨戦態勢に入ったあの日、
自分は長野の第二新東京からこの第三新東京市へと居を移した。


全人類の命運を左右する――――いや、それ以上に自分の蟠りに決着を付ける戦いが
15年の時を経て、ようやく始まる。
そう思うと、穏やかに眠ってなどいられなかった。

以来、あの夢を見るようになった。

15年間、胸の奥に封じ込め続けていた記憶が、ここへ来て急激に吹き出した。
一番掘り起こされたくない記憶。一番見たくない光景。一番思い出したくない顔。
ガブ飲みした睡眠誘発剤も、何の効果もおよぼしてはくれない。


頬を冷たい物が伝った。

「……くそッ」

そう吐き捨てると、その艶髪の女性…葛城ミサトは
脂汗で重くなった下着を剥ぎ取るように脱ぎ、壁に叩き付けた。
126それも名無しだ:2006/01/08(日) 04:19:48 ID:VXhoHPu5
(4)
シャワーで嫌な汗を流し、髪を拭きながら居間のTVを付ける。
早朝ニュース番組で、アナウンサーが抑揚のない声で先日の出来事を伝えていた。

『―――日本時間の今夜未明、バグダッド郊外の森林地帯において警戒中の連邦軍機とギガノス軍の
 メタルアーマー部隊の間で激しい戦闘があり、両軍合わせて少なくとも40人が死亡、90人以上が
重軽傷を負いました。
 当時、この森林地帯にはギガノス軍の兵器工場が隠されていたものとみられ、連邦政府当局はこれを
 “偵察中の斥候部隊がギガノス側の迎撃を受けたため起きたものだ”と説明しています。
 戦闘地域周辺には僅かながら民家も存在し、この戦闘により逃げ遅れた民間人50名余りが巻き添え
 となり、うち一部は避難したものの、19人が死亡、現在も18人の人間が瓦礫の下に閉じこめられて
 いるということです。詳しい状況は不明ですが、最終的な死者は120人に上るとみられ……』


再び、暗澹たる気持ちがミサトを襲った。


かつて人類は、セカンドインパクトという未曾有の大災害を経験し、
その直後に起きたBF団を名乗る秘密結社の一大反乱―――通称『ビッグファイア戦争』を経て
その総人口を4割以下にまで減らしながらも、逞しく生き延びた。

そして今、残された人間達の更なる生き残りを掛けた前代未聞の戦いが、
密かにではあるが始まろうとしている。


それなのに、相変わらず共食いを繰り広げているのか、私達は。
127それも名無しだ:2006/01/08(日) 04:22:52 ID:VXhoHPu5
(5)
かくいう自分も軍人の端くれである。
戦争が単なる「悪」ではなく、双方に譲れない主張があるため必然的に引き起こるものである事も、
そしてその主張が話し合いで解決できるようなものばかりではない事も、重々承知している。

しかし、それでもこういうニュースを耳にする度、やりきれない気分にさせられる。


かつてBF団は
『全能神ビッグ・ファイアの元、イレギュラー(異端能力者)達の手による完全平和な世界の創造』
を標榜して戦いを繰り返していた。
イレギュラー達の統治する世界が果たして今より平和なのかは甚だ疑問だが、こうした人類の愚かさ、
浅ましさに絶望すれば、そんな風に思い至るのも無理はない話なのかもしれない。

もっとも、結果として彼等自身が人類史上最悪の大戦争を展開してしまったのだから、彼等もまた
愚かな存在と言う他無いのだが…。


一体、私とどっちがマシなのかしらね。
人類のため、と大儀を掲げつつ、本当は極めて私的な理由のため軍に身を置き、
それでも結局は体制に流され、体の良い組織の歯車のとして働く私と……


……もう止そう、下らない事を考えるのは。
ミサトは冷蔵庫を開けると、ぐい、とえびちゅビールを喉に流し込んだ。
128それも名無しだ:2006/01/08(日) 04:25:17 ID:VXhoHPu5
(6)
ふと、テーブルに目をやる。
コンビニ飯の残骸とえびちゅビールの空き缶が散乱する中、無造作に放られた書類束。
その一番上にある履歴書を、何となく流し見てみた。

「…………碇シンジ君、か…」

自分達の上司である総司令・碇ゲンドウの息子。
そして、世界中の適格者候補の中からようやく見つかったサードチルドレン。
本日PM1:00、自分が迎えに行く事になっている少年。

ミサトが少年について得ている情報は、それだけだった。
それ以上の事は興味無く、いや、むしろ知りたくなかった。

この子もレイや、ドイツ支部のアスカと同様、これから想像を絶する地獄に送られるのだ。
大人の都合で“人類の平和”とやらの礎となるために。


ならば、自分の取るべき態度は決まっている。
「気さくで優しいお姉さん」の顔と「軍人」の顔を使い分け、互いに傷つかないよう、
それでいて上手く利用できるよう、付かず離れず、適当に接するだけだ。

そう、誰に対しても行っているように。


外を見ると、空がうっすらと白け始めていた。

(第一話 了)
129それも名無しだ:2006/01/08(日) 04:34:58 ID:Ta/mnafy
>>9
乙です。
第一話とても良かったです。
ジャイアント・ロボが中心の小説は>>9氏が初めてなので
これからもとても楽しみです。

自分のペースで焦らず頑張って下さい。
応援しています。
130876(弥七朗):2006/01/08(日) 09:19:30 ID:i0xANDGM
>>9
乙です。
描写が上手いですね。自分は会話主体の描写を得意とする方ですから、単純にすごいなぁと思いました。
131それも名無しだ:2006/01/08(日) 09:29:53 ID:eD1FEr/J
皆さん乙&GJ
ここ職人はいるけどGJとか言ってくれる人少ないな。みんな反応したってや

職人殺すにゃ言葉はいらぬ スルーが最も効果的

という言葉もあるしボロクソに貶しても何かしら反応してくれたほうが職人は嬉しいと思う。スルーよりはね
1329:2006/01/08(日) 14:06:50 ID:VXhoHPu5
>>129-131
ありがとうございます。

今日、皆さんの書かれた作品を改めて読み直してみたのですが、思ったのは
とにかく「スピード感」がある!
文字を目で追うのと同時に情景がリアルタイムで頭に浮かぶため、いやがおうにも気分が盛り上がります。
一方、その後に自分のを読み返してみると、何とテンポのタルい事か…(つд`)
いかに小気味良いテンポを作り出すか、今後の俺の課題ですね。


どうでもいい事ですが、話数表記を「第一話」→「第壱話」に訂正。
第弐話ではゴッドマーズのタケル、ダンクーガの忍を登場させる予定です。
ではまた。
133それも名無しだ:2006/01/08(日) 14:24:58 ID:VXhoHPu5
ちょいとアンケート(?)。
主にエヴァの世界観を中心に書き進めている自分ですが、他の作品のキャラの姓名も
エヴァ風にしてみるかどうか検討中です。
つまりこんな具合に…

藤原 シノブ
草間 ダイサク
出雲 ギンガ
草薙 ホクト
獅子王 ガイ
流 リョウマ

……提案した本人が言うのも何ですが、こう書き並べてみると微妙ですね(´・ω・`)
「忍」じゃなくて「シノブ」と言われても読み手はイメージ的にピンと来ないだろうし、
スパロボSSじゃなくて単なるエヴァ厨の自己満足SSと言われてもおかしくなさそうだし…
134それも名無しだ:2006/01/08(日) 15:38:36 ID:wOWGtROM
>>133
やめたほうがいいと思う。
135それも名無しだ:2006/01/08(日) 16:28:03 ID:dCuuAdZ0
リョウマとかはいいけど、忍とか凱はすごく違和感があるな
136876:2006/01/08(日) 16:49:44 ID:i0xANDGM
バイト中の短い時間質問アンケートその二。
J改編についてどう感じました?
137それも名無しだ:2006/01/08(日) 16:56:31 ID:HXNNBRR7
反対にノシ

スパロボでもそのままだし。
138それも名無しだ:2006/01/08(日) 20:09:02 ID:HXNNBRR7
>>136
いや、違う、>>137>>133へだ。

J改案はなんともいえないな。
カティアとアル=ヴァンはずっとそのまま?
1399:2006/01/08(日) 20:34:35 ID:VXhoHPu5
皆様、ご意見ありがとうございます。

考えた結果、従来のスパロボと同様に名は漢字表記でいくことにしました。
今第弐話をチョコチョコと書き進めているのですが、読み手の感じ方とか以前に
書いている俺  自  身  が  違  和  感  を  拭  え  な  い事が発覚。
ただでさえキャラの性格を改変しているのに、名前までカタカナだと
本当に単なるオリキャラにしか見えねぇ(つдT)  やっぱ忍は「忍」じゃなきゃダメだ。

アホな質問ですみませんでした
140それも名無しだ:2006/01/08(日) 20:58:37 ID:TJkxTren
OK!シノブ!


どこの萌キャラかと。
141876(弥七朗):2006/01/08(日) 21:09:48 ID:i0xANDGM
>>138
それはネタバレになりますが、言うべきですか?





まぁ「スパロボの鉄則」みたいなのもちゃんと作用しますけど。
142それも名無しだ:2006/01/08(日) 23:20:32 ID:TJkxTren
876さん。ちと投下以外の話が多いですよ。
他作家の激励や雑談は問題ないと思いますが、自分語り多くて萎えますよ。
143876(弥七朗):2006/01/09(月) 00:22:34 ID:+H4dmKrt
(´・ω・`)
そうっすよね自分語りうざいっすよね…。
投下以外のレス数が半端無く少ないから間が持たないと思ってたの自分だけなのね…。
さっさと次書きます…。
1449:2006/01/09(月) 01:34:05 ID:DTLNb8Rx
第弐話

(1)
「おーい、タケル! 何やってんだ? ミーティング始まっちまうぜ!」

静岡県・御殿場駐屯地。
旧世紀、陸上自衛隊の三つの駐屯地(駒門、滝ヶ原、板妻)が置かれていたその地域は
セカンドインパクトの動乱を経て一つに再編され、戦略自衛隊の関東方面における最重要拠点として
機能していた。
その庁舎の一角に、木曽アキラの声が響く。

「あ、ああ……済まない」
しかし彼が見たのは、通路の隅にうずくまる同僚・明神タケルの姿だった。

「? タケル…?」
「タケル……また具合悪いの?」
言うが速いか、アキラを押しのけてタケルの元に駆け寄る少女。
まだ顔に年相応のあどけなさが残るその少女連邦兵は、名を日向ミカといった。

「いや、もう大丈夫だ、ミカ… 心配掛けてごめん」
「ホントに大丈夫? 朝からずっと顔色悪いけど…」
ミカに支えられるようにして立ち上がるタケル。彼女の言うとおり、その顔色は優れなかった。

艶やかな漆黒の長髪に、華奢な外見、端整な顔立ち。
およそ世間一般の「軍人」のイメージとはかけ離れた、十人中十人が“イケメン”の評価を下すであろう
彼の容貌も、今日ばかりは精彩を欠いていた。

「オイオイ、そんなんで平気か?」
ブリーフィングルームの入り口では、やはり同僚である伊集院ナオトが
苛立ちを隠さずタケル達の到着を待っていた。

「…ごめん… でも、もう大分良くなったから…」
「お前は良くても、一緒に乗る俺たちゃ良くないんだよ。コスモクラッシャーの操縦は誰が一人欠けても
 ヤバいんだって知ってんだろ? 特に今日なんて、戦自の連中が見てる前で飛ばなきゃならないんだ。
 飛行中にブっ倒れて、俺や隊長に恥かかすなよ?」
「ナオト! そんな言い方無いでしょ?!」
「へぇへぇ。すいませんね、愛しのタケル様を傷つけるような事言っちゃて…」
「なっ……!!」
顔を真っ赤にして拳を振り上げるミカ。
咄嗟にアキラが間に割ってなだめる。この辺のフォローは慣れたものらしい。

「まぁまぁ、アレがあいつなりの励ましなんだよ。……多分」
1459:2006/01/09(月) 01:35:46 ID:DTLNb8Rx
(2)
程なくして、ブリーフィングルームに一人の青年が入ってきた。
コスモクラッシャー隊隊長・飛鳥ケンジである。

「みんな、揃ってるな? ……と、見りゃ分かるか」


―――全領域可変分離重戦闘機『コスモクラッシャー』。

ビッグファイア戦争以降、MS(モビルスーツ)を始めとした人型二足歩行兵器が戦いの主力となったこの
時代においても、戦力としての航空機は相変わらず必要とされていた。
特に索敵、空輸、情報解析、戦場指揮等の分野に関しては、実用化されて日の浅いMSより航空機の方が
信頼性も高く、現在も数多くの機体が生産され続けている。
連邦軍極東支部の開発したこの機体は、中でも最新鋭の技術を惜しみなく投入された傑作機であった。

「戦闘機」と呼ぶにはかなり大型のこの機体は、運用に最低4名以上の人員を要し、大気圏のみならず
宇宙空間での活動をも可能にする新型エンジン・最新鋭の電子設備・下手なMSをも上回る堅牢な装甲を
与えられ、高出力レーザー砲を始め数多くの武装を装備、さらに有事の際には小型の移動司令室としても
機能するという、まさに“空飛ぶ要塞”と呼ぶに相応しい代物だった。

ケンジ以下5名の青少年士官達は、若輩ながらその試験運用を行うべく選出された
連邦極東方面軍の虎の子……いわばエリートの卵である。


「隊長、何故…」
「言いたい事は分かっている、ミカ。 何故俺達がここに招集されたかという事だろう? …宇宙ではなく、な」
「…ええ」

本来ならば今日、コスモクラッシャー隊は宇宙空間での初飛行試験を行うべく、衛星軌道上の
宇宙ステーションに向かう予定であった。
しかし、前日になって突如、この御殿場への出向を命じられたのである。

「あ〜あ、今頃は晴れて宇宙の上だったんだろうになぁ…」
「ボヤくな。軍の決定ってのは、往々にして変化するものだ」
「ボヤきたくもなりますよ…。俺達、この日のためにどれだけ訓練積んできたと思ってるんですか」
「不服ならば辞めろ。誰も止めはしない」
「う…」
沈黙するアキラ。

「……気持ちは分からんでもないがな、そういう事は口に出さず自分の胸の中だけにしまっておけ。
 そうでなければこの先、軍人は務まらんぞ」

「…で? 宙間飛行試験よりも優先された俺達の重要任務って一体何スか?」
頭の後ろで手を組みながら、ナオトがぶっきらぼうに聞く。
「待機だ」
1469:2006/01/09(月) 01:37:59 ID:DTLNb8Rx
(3)
「……………………は?!」
数秒の間の後、素っ頓狂な声を上げるナオト。

「聞こえなかったか? コスモクラッシャー隊は御殿場駐屯地にて戦略自衛隊関東方面防衛部隊と合流、
 以降、別命有るまで待機。 これが今回、司令部から俺達に下された任務だ」

「な……何ですかそりゃ?!」
「あれだけ急かされてた試験をドタキャンされて、与えられた任務が“留守番”ですか?!
 何考えてんだよ、上は!」
「いくら何でも、それって……」

「…ボヤくなと言ったろう?」
険しい顔でナオト、アキラ、ミカを睨み付けるケンジ。こうなると、彼等もしゅんと黙り込むしかない。

「どんな内容であろうとも、任務には必ず意味がある。それに従わない事は、軍規に背くというだけでなく
 軍全体の足並みを乱し、ひいては市民の安全を脅かす事にもなりかねん。貴様達も分かっている筈だ。
 もう一度言う。厭なら辞めろ」


「…へっ、良かったなタケル。恥かかずに済みそうだぜ?」
「………………うん……」
悪態を付くナオト。しかし、タケルは上の空といった様子である。

(一体どうしたんだ、タケルは……)
厳しくも部下に対する面倒見の良いケンジだが、中でもタケルは常日頃から弟のように可愛がっている存在だった。
人当たりは良くもどこか影のあるタケルを、ケンジは何かにつけて叱咤激励してやり、タケルもまた、そんなケンジを
良く慕っていた。
それだけに、今日のタケルの様子は一際異様に映る。


「ところで隊長、戦自の連中。何ですかありゃ? どいつもこいつもピリピリしやがって、俺達をまるで
 厄介者を見るような目で見やがる」
「無理もあるまい。事実、俺達は“厄介者”なのだからな」
「いや、そりゃそうなんですけど……」

戦略自衛隊は、セカンドインパクト以降に国内で幅を利かせた連邦駐留軍に対抗するため、日本政府が
旧世紀の自衛隊をベースに再編成した政府直属の軍事戦闘組織である。
有事の際には「国際貢献」と称して他の軍隊との連携は取るものの、基本的に連邦軍とは犬猿の仲と言ってよい。

「司令部によれば、彼等も特殊任務のため待機中との事だ。また、一部の部隊は今日、イレギュラー隔離地域に
 回されたらしい。それもあって色々とナーバスになっているんだろう」


イレギュラー。
隔離。

その言葉を耳にした瞬間、タケルの表情が険しくなった。
147第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘後パート〜:2006/01/09(月) 03:35:45 ID:E2O5QlaP
 海は先程までの戦闘など無かったのかのように静けさを取り戻していた。
 ワールドロボットコンテストの会場も新連邦の迅速な対応もあり、
 火災等の二次被害も食い止められていた。
 ダイガードは移動の為、先ほどから解体作業が進んでいた。
 
「さっきの戦い、俺のせいでヘテロダイン逃がして、すみませんでした!」
 赤木が凱に深い礼をしながら謝る。
 どうやら自分のミスで頭が一杯で凱の正体などどうでも良くなっているようだ。
「いや、いいんです。気にしないで下さい。
 赤木さん達のおかげで被害も比較的、少なくて済んだし。」
 凱は申し訳なさそうに謝る赤木を見て笑顔で振舞った。
「でも、もう少し待っていれば・・・」
 赤木が謝罪の言葉を続けようとするが凱がそれを遮る。
「良いんですよ。 
 それよりさっきから敬語ですけど俺より赤木さんのほうが年上でしょう?
 普通に話してくれて大丈夫ですよ。」
「ああ、これは俺のクセなんすよ。
 やっぱり年下でも経験が上ならやっぱり敬語を使わなきゃ。
 獅子王さんこそ敬語なんて良いっすから。」
 赤木が
「いや、俺も目上の人には敬語を使うんで。それより俺の事は凱って呼んでください。」
 いつのまにか赤木の謝罪から二人の自己紹介になっていた。
 そこにいぶきが声をかける。
「赤木君、ちょっと、ちょっと。」
「じゃっ、凱さん。俺、呼ばれてるんで行きますね。」
「俺も、とりあえず本部に報告しなくちゃいけないから。」
 赤木は走ってその場を去っていった。
148第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘後パート〜:2006/01/09(月) 03:36:47 ID:E2O5QlaP
「なんなんすか?いぶきさん?」
「あのねえ、赤木君。突然飛び出してどっかいったと思ったら 
 あの怪しい男に謝りに行ってたの?」
 いぶきは赤木に怒りの眼差しを向けていた
「そうすっけど、どうかしたんすか?
 あ、それにあの人話してみたらいい人そうでしたよ。」
「『いい人そうでしたよ』じゃないわよ!こっちはあたし達二人で解体作業やったんだからね!」
「あっ、すんません。でも俺のせいで作戦失敗しちゃったし。」
「そんなの作戦って言ったってあの人の独断だったみたいよ。
 マスコミだってあたし達のヘマを報道するかと思ったら勇敢に戦ったとか撃退に成功とか盛り上げてるし。
 でも、意外だったわ。赤木君、ヘテロダインを撃退して大喜びするかと思ってたもん。」
 いぶきがふと、赤木に対する疑問を問いなげた。
「確かに、ダイガードだけで戦ったらそうなったかもしんないすよ。
 あれだけの装備で倒せる可能性はまず無いですもん。 
 でも今回は凱さん達や鉄人が居て倒せる可能性は充分あったじゃないですか?
 そう考えると居てもたっても居られなくて・・・」
「そうだったの・・・でも、解体作業サボったのは許さないわよ!」
「は、はーい・・・」
 二人が会話をしているとふと、
 ヘテロダインの攻撃で負傷した民間人が救助を待っているテントが目に飛び込んだ。
「いぶきさん、これって?」
 いぶきが民間人を不安がらせないよう小声で答える。
「道が渋滞してて救急車が間に合わないみたい。
 医者も看護婦も足りないんだって。」
 それを聞いて赤木がダイガードに乗り込んだ時と同じ目をした。
「よし、じゃあ俺達がなんとかしてあげましょうよ。」
149第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘後パート〜:2006/01/09(月) 03:37:17 ID:E2O5QlaP
「みなさーん、慌てないで並んでください!」
 企画二課各員が避難民達を四機ある社用飛行機『アホウドリ』へ誘導する。
「よおし、これでどうにかなるな。」
 赤木の顔からも笑顔がこぼれる。
 しかしその背後から城田が現れた。
「なにをしている?」
「なにをしてるって見れば分かるでしょう。避難民の救助ですよ。」
「避難民の救助は我々、新連邦の管轄だ。民間人が手を出すな、余計に混乱するだけだ。」
 赤木が城田の意見に反論しようとした時だった。
「ちょっと待ってください。民間人じゃ無いなら良いんですね?
 それなら俺達、国際警察機構直属の組織、GGGが責任を持って目的地まで護衛します。」
「凱さん。」
「君は・・・分かった。それなら良いだろう。ただし、私も同行させてもらうがね。」
 渋々と言った表情で城田がそれに答えた。
「それは一体どういうつもりで?」
 凱が不振な表情でその真意を探る。
「少なくとも、現在は避難民救助は新連邦の管轄だ。
 それなのに君たちと民間人に任せたとなっては私の現場管理能力が問われてしまう。」
(そして、それと同時に君たちの実力をうかがい知る事が出来る・・・)
「そうっすか。結局、軍の人ってのは面子が大事なんですね。
 凱さん、ありがとうございました。すみませんけど俺、また作業の方へ戻りますから。」
 赤木はそういって避難民の誘導の仕事へ戻っていった。
15038:2006/01/09(月) 03:50:05 ID:E2O5QlaP
第一話なんとか書き終わりました。
第二話はマジンガー&ゲッターが登場です。

>>9
乙です。
文章能力がすごいですね。
ただ、台詞書いて雰囲気と勢いだけで周りの説明書いてる自分とは違うのが分かります。
頑張ってください。

しかしなんだか最近、自分のSSだけ幼稚で浮いているようで怖い・・・
まわりの作品に埋もれないように頑張ります。
151それも名無しだ:2006/01/09(月) 11:51:25 ID:UaqELTDB
>>150乙&GJ
大丈夫だ。浮いてない。ガンガレ
「ここがアナハイムのMS工場か…やっぱリガ・ミリティアのとは少し違うな」
ジョシュアは、アナハイムの技術者に案内されて工場を見学していた。
連邦最大の、技術倉庫。アナハイム・エレクトロニクス。MSから電気自動車や電化製品などの一般工学品まで手広く扱う大企業グループだ。
新鋭のネルガルに追われかけてはいるがまだまだその地位は揺るがない。
と、ひとつのMSが眼に止まった。
「シローさんのMSに似ている…ガンダムタイプ?」

「サイコフレームの調整はまだ済んでないのか……」
「ごめんなさい、他の部分は殆んど終わってるんだけど…」
技術者とその機体のパイロットらしい男が話し込んでいる。ジョシュアは、その男を見た覚えがあった。確か、あの人は…
「アムロ・レイ?」
「ん?君は…」
「え?貴方は?」
隣に立っていた技術者が、説明した。
「ジョシュア・ラドクリフさんです。ウチの新型特機のテストパイロットの知り合いで、工場見学をしてまして」
「あ、はじめまして。ジョシュア・ラドクリフです。地上で傭兵やったりしてます。今はネルガルの戦艦に乗ってますけど」
「へぇ、ネルガルの戦艦でね。僕はアムロ・レイ。所属は連邦軍のロンド・ベルで大尉だ」
お互いの自己紹介を済ませている隙に、案内役の技術者は退出していた。
「所でチェーン、アナハイムの特機?って一体どういうことだい?」
「そういえば、さっき40m級の係留ドッグに特機らしき機体が入ってたわ」
「アンジュルグ、って言うらしいですね」
「…ああ!思い出した。確かこの前入ってきた技術者の…エキドナ・イーサッキ?その人の持ち込みだって聞いてるわ。
作ったはいいけど個人の管理下に置いておけないし、アナハイムに技術を売りに来たってところね」
「なるほど、データをやるから整備環境をくれってことか」
「え?アムロさん、アンジュルグはナデシコで運用するんですよね?整備環境って…」
「あぁ、要は整備に必要な資材ってことさ。
いくら最新鋭機動戦艦でも、特機用のパーツを中で作るってわけにもいかないだろう?」
「あぁ、そうか…」
(シローさんのMSだって、現地改修型だから殆んど原型を留めてないものな…まったく、俺だって特機乗りだってのに)
「そういえばジョシュアは、どんな所にいたんだ?」
「それは…」
ビィーッ!ビィーッ!ビィーッ!
サイレンランプが点滅する、工場内が赤い光に満たされる。
「襲撃か!?くっ、リ・ガズィで出るぞ、チェーン!」
「はいっ!三番格納庫、発信準備を!」
アムロの反応は早い。だが機体がナデシコにあるジョシュアは、どうするべきか迷った。
「………くそっ、ナデシコはどうなっているんだ!?」
アナハイムの工場からナデシコまで、モノレールを使っても30分はかかった。
しかし、現在の状況ではモノレールなんて動いてないだろう。
「ジョシュアくん!君の機体はナデシコにあるのか!?」
「はい!」
「…よし、わかった!!チェーン!!ナデシコに搬入予定だった機体は!?」
「元リ・テクの技術者が設計したやつですか?いつでも出せます!」
「よし、君は八番格納庫に向かえ!機体はそのままナデシコに乗っていっても構わない!」
「はいっ!」

八番格納庫にあったのは、青い色の機体であった。
『エンジンが本来の物と違うので、出力系が多少物足りないかもしれません!!戦闘には直接支障ありませんが、お気をつけて!!』
「わかった!…この機体、ガナドゥールと同じ?……くそっ、リ・テクどもめ」
通信機越しの技術者に答えると、ジョシュアは悪態をついた。

「発進準備完了しました!どうぞ!」
「出力よし…!ジョシュア・ラドクリフ!エール・シェヴァリヴァー!出るぞ!」


「むっ?」
「敵襲か……恐らく木星トカゲだろう」
来賓室、エキドナとラミアは別室に保管されているはずの言語シナプスの予備が届くのを待っていた。
「敵襲か……アンジュルグはもう出せるか?」
「出るには出れるが……出るつもりか」
「立場が立場なのでな……怪しまれないよう、迎撃くらいは出撃する」
「了解した。小型戦艦用の40m級ドッグにある。行け、W17」
「わかった」
154876(弥七朗):2006/01/09(月) 13:33:54 ID:+H4dmKrt
風車は持ってない弥七です。宇宙編やっと戦闘の前まで行けました。
戦闘シーンは難しいから苦手です…すぐ改行多すぎといわれるし…。
155それも名無しだ:2006/01/09(月) 13:46:39 ID:HHVpnU2t
愚痴らない愚痴らない。
戦闘は別に悪いと思わないぞ。
156それも名無しだ:2006/01/09(月) 21:33:48 ID:CdM8Nsfr
いちおage
157ミスッた:2006/01/09(月) 21:35:11 ID:CdM8Nsfr
いちおage
158それも名無しだ:2006/01/09(月) 23:35:11 ID:oP1NRqX+
俺も前から暖めてるのを書こうと思ってるのがある。まだ固まりきってないけど近いうちに書き始めようと思う。

そんで参戦作品・プロット・設定とかを書くのにちょっとスペース借りるよ。
159参戦作品:2006/01/09(月) 23:44:37 ID:oP1NRqX+
グレートマジンガー
ゲッターロボG
鋼鉄ジーグ
UFOロボグレンダイザー
勇者警察ジェイデッカー
勇者司令ダグオン
ウルトラマン
怪傑ズバット
超電磁ロボコンバトラーV闘将ダイモス
大空魔竜ガイキング
機動戦士ガンダム
機動戦士ガンダム第08MS小隊
機動戦士ガンダムポケットの中の戦争
機動戦士ガンダム0083スターダストメモリー
機動戦士ガンダム逆襲のシャア
160設定1:2006/01/09(月) 23:52:23 ID:oP1NRqX+
世界観はドクターヘル・恐竜帝国による世界征服を食い止めたマジンガーZ・ゲッターロボの影響により急速にロボット技術が進んだ世界。

その為日常的にロボットが存在し、それによる凶悪犯罪なども発生している。

161設定2:2006/01/09(月) 23:59:53 ID:oP1NRqX+
更に本格的な宇宙移民プロジェクトもかなり進行している。

ある日を境に突如ミケーネ帝国による世界侵攻・多くの宇宙人による地球侵略・様々な原因で現われた異形の生物「怪獣」が世界を襲う。

更に日本では恐竜帝国と同様の土着の勢力である邪魔大王国の復活。さらに人類全体を鬼とせんとする百鬼帝国の暗躍が始まっていた。
162設定3:2006/01/10(火) 00:08:14 ID:cfC/fFJ6
↑みたいな感じで始まる。
ジェイデッカーは日本が舞台の場合のみスポット参戦みたいな感じになる。

グレートマジンガー・鋼鉄ジーグ・ゲッターチームも基本的に日本で戦う。

鋼鉄ジーグは宇宙戦闘用のオリジナルジーグパーツがある。

ウルトラマンは話の中盤で退場する。怪傑ズバットは色々と便利に使う。

コンバトラーVとダイモスはいるがボルテスVは参戦させると話が複雑化するので見送り。
163それも名無しだ:2006/01/10(火) 00:21:56 ID:xfre77FM
なんかガンダム系の参戦が結構異質だなw
164876(弥七朗):2006/01/10(火) 00:36:34 ID:7YXmi5FQ
>>158さんがんがって下さい。
参戦作品多いと後からキツイっスよ。
165設定4:2006/01/10(火) 00:40:54 ID:cfC/fFJ6
ミケーネ・キャンベル星人は途中で一旦退場する。

宇宙人は世界中に侵攻しているので宇宙人と戦うロボットも世界中に出張する。大空魔竜が完成するまでは基本的に単独行動。

侵略行為をする宇宙人の減少・バームとゼーラとの和平・百鬼帝国と邪魔大王国の打倒により地球は一旦平穏を取り戻す。

地球連邦発足。大空魔竜隊ツワブキサンシローを除き地球連邦軍に所属。ツワブキサンシロープロ野球復帰。バーム・ゼーラの技術提供によりスペースコロニーが短期間の間に多数建造される。

兜甲児地球連邦の宇宙開発部門に特別参加。

三年経過。邪魔大王国の残党や宇宙人の小規模な侵略行為はあるものの地球圏は平和を謳歌していた。

だが、突如地球より最も離れたコロニー郡サイド3がジオン公国を名乗り地球連邦政府に戦線布告。それに呼応するかのようにミケーネ帝国・キャンベル星人再来。
166それも名無しだ:2006/01/10(火) 00:47:28 ID:Yt0ksz1a
スーパー、リアルともに4作ずつで書いてみようかな?

あんまり期待しないでね。初めてだから。

167それも名無しだ:2006/01/10(火) 00:55:29 ID:CCB6MDkp
ドラえもんの声優が変わったので(スネ夫がドモンに)
期待してしまう今日この頃・・・。


話は変わりますがスパロボに参戦する可能性が不可能に近いドラえもんを
参戦させたスパロボ小説を構想中。

当然ドラえもんは巨大ロボットが出る[のび太と鉄人兵団]になります。

オリジナル展開になると思いますがオリキャラは出ません。
(考えるのが大変なのと自分自身が作ったオリキャラを出すのに抵抗がある為)
ただバンプレキャラは出ます。

主人公はスパロボRの主人公を使う予定(キャラが好みなのとドラえもんを絡ませるため)
見たこと無い作品は公式設定や既存のスパロボなどを参考にします。

現在決まっている参戦作品はGガンとジャイアント・ロボとエヴァ。

使徒vs生身決戦や東方不敗&十傑集(+諸葛亮孔明)が所々に登場するなどの予定。

ストーリーの中心は上記の作品で行こうと思っています。

小説初めてなのでいつになるかわかりませんが完成したら投稿します。

>>159
頑張って下さい。
応援しています。
168設定5:2006/01/10(火) 01:16:21 ID:cfC/fFJ6
ジオン公国完全なる奇襲により開戦6時間後にスーパーロボットによる妨害を受けずにコロニー落とし慣行(兜甲児も自作の航宙戦闘機TFOにより参戦)。

コロニーは目標地点である地球連邦軍本部ジャブローを外れオーストラリアに落着。ジオン公国軍量産型ロボット兵器「モビルスーツ」による地球侵攻開始。

各地でスーパーロボットがジオンの侵攻に対抗するが数の違いにより徐々に制圧されていく(バーム・ゼーラの技術が転用されている為ザクでも機械獣程度の戦闘能力を持つ)

地球連邦軍ザクに対抗する為のモビルスーツを開発する「V作戦」に着手。
169設定6:2006/01/10(火) 01:27:25 ID:cfC/fFJ6
日本に多数の怪獣、宇宙人出現の為スーパーロボットジオンの侵攻に対抗しきれなくなってくる。

ミケーネ帝国・キャンベル星人もジオン軍と多数交戦。戦局は降着状態に陥る。
ツワブキサンシロー大空魔竜隊復帰。コンバトラーV・ダイモスと共にルナツーを拠点に宇宙での戦闘を担当。

建造中のコロニー「サイド7」にて兜甲児のTFOによる護衛のもとホワイトベースV作戦の試作モビルスーツ回収に来航。ジオン軍の奇襲を受ける。試作モビルスーツの一機「ガンダム」に民間人であるアムロ・レイが搭乗。兜甲児とシャア・アズナブルコロニー外で交戦。

170第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘後パート〜:2006/01/10(火) 01:35:06 ID:NBvAv+rG
 ヘテロダイン、ネオブラック団の襲撃から三ヶ月前―――
 富士山、河口湖近くのある別荘で謎の団体の襲撃事件がおきていた。
 襲撃事件の後、別荘に秘密裏に設計されていたロボット兵器の格納庫。
 そこには人間の作り出した魔神が乗り込むこととなる主人を待ち続けていた。 
「おじいさん、いったい誰がこんな化け物みたいなロボットを・・・」
「それは私だよ、甲児、これにはお前が乗ることになる。
 そしてこのマジンガーZに乗ればお前は神にも、悪魔にでもなれるのだ・・・」
 そう言いきるか言い切らないか、襲撃により重症を追っていた兜十蔵は息を引き取った。
「おじいさん、おじいさん。
 ・・・許さねえ!おじいさんをこんな目に遭わした奴らを絶対に倒してやる!」
 この日から十蔵の孫、兜甲児はマジンガーZのパイロットとなった。 

 この兜家別荘襲撃事件を皮切りに各地のロボット開発を目的にした研究所が
 謎の組織によって襲撃される事件が多発していたのであった。
 その謎の組織は古代ミケーネのロボット技術を利用した戦闘獣軍団であり、
 それを率いていたのは昔の十蔵の研究仲間、Drヘルである事が分かった。
 そして地底の恐竜帝国である事も。
 研究所の襲撃事件により研究をストップしてしまう研究所や壊滅状態に陥る研究所も出てきた。
 しかし何度も襲撃されていた兜博士が在籍していた光子力研究所、
 宇宙開発のためのロボット運用計画、ゲッター計画を研究していた早乙女研究所などは
 その度、各々の研究所で開発されていたマジンガーZやゲッターロボにより全て未遂で終わっていたのであった。

 光子力研究所所長の弓弦之助は所長室のモニター越しに
 早乙女研究所所長、早乙女博士と今後の活動について会談をしていた。
「では弓教授は全日本万能科学研究所移籍計画に参加するのですな。」
「ええ、今でもマジンガーZに助けらる形で超合金Zや光子力エネルギーは
 守られていますが、今後もそれが続くとは限りません。
 ですが国際警察機構直属の組織GGGの近くでなら自由に研究も続けられ、
 襲われた時はマジンガーだけではなく他の研究所のロボットやGGGの応援も期待できますからな。
 早乙女博士はどうなされるおつもりですかな?」
「ワシは敷島博士とゲッターチーム、それとゲッター計画で培った宇宙開発の研究成果をあちらに向かわせる予定です。」
「では、早乙女博士は研究所に残られるつもりで?それはあまりにも危ないのでは?」
「大丈夫、地底のトカゲどもはゲッターを恐れ、襲うのなら彼らを襲うだろう。
 それに私にはやらなければならない事がありましてな・・・すみませんが弓教授、私はこれで。」
「早乙女博士?切れてしまったか・・・しかし、博士もまるで人が変わった様だったな・・・」
 たしかに早乙女博士はなにかに追われている様なそんな強迫観念を見せていた。
 
 ちなみに先程の会話で出ていた全日本万能科学研究所移籍計画とはなにか。
 度重なる日本各地の研究所襲撃事件。それの対策もせず、重い腰をあげようとしない新連邦。
 それらを重く見た国際警察機構はGGG本部の置かれているGアイランドシティ近郊の土地に
 日本最大級の万能科学研究所を設立し密かに各研究所の所長達に参加を呼びかけていたのだった。
 これにダイモビックなどいくつかの研究所も参加の回答をし、
 鉄人とFXを所有する金田探偵事務所も防衛を目的に参加を表明するなど、着々と準備は続けられていた。
  
「……メルア!この反応は!?」
「未確認……いや、敵性機体です!10時方向におよそ15体!」
敵性機体?どういうこと?……そういえばフォン・ブラウンの北、距離800地点にチューリップがあったはず。まさか…
「…応戦しつつナデシコへ!ナデシコに合流するのを優先するから、戦闘はなるだけ避ける!」
「はいっ!」
「さぁ…駆け抜けるわよ!」

「コノヤロー!良いところで出てきやがって!」
アキトは、ナデシコを包囲し今にもに群がりかかりそうな木星トカゲの無人兵器と相対していた。
『アキト!頑張って!もうすぐラミアさんたちが帰ってくるから!』
「ガイのヤツは何やってんだよ!」
『山田さんは足の骨折で出られません』
「ッのバカーーーー!」
叫ぶ合間にも襲いかかるバッタ。IFSによる思考操縦を駆使し、
ラピッドライフルで腹部を撃ちつつ、ワイヤードフィストでエネルギー切れを起こした他のバッタの足を掴む。
掴んだバッタを振り回し、他のバッタに投げつける。が、すぐさま立ち直り攻勢をかけてくる。
「くそーっ!エステ一機で相手できるかよー!」
『援護する!』
と、聞こえた瞬間には五機のバッタが潰されていた。
荷電粒子砲の類が鋼鉄製の地面をえぐったらしい。
「あ、あんたは?」


「カルヴィナ・クーランジュ、今日からそっちでお世話になる予定の戦技教官よっ!」
「カルヴィナさんのパートナーの、メルア・メルナ・メイアです!よろしくお願いしますっ!」
誰がパートナーですって?
聞き捨てならないことを聞いた気がするが、今は戦闘中。無視することにしよう。
あとで目一杯責めるけど。
『アンタが?援護してくれるのか!?』
「喋りは後!今は奴らを潰すのが先っ!」
ライフルの可変式レバーをBモードに。オルゴンライフルBモードをナデシコに飛び付こうとしたバッタに浴びせる。
「カルヴィナさん!また10時方向から、15.6機くらい来てます!」
「了解!聞いた!?そこの君!」
『アキトっス!テンカワ・アキト!10時方向って何スか!?』
…あぁもうこれだから非軍属は!
「北西の方角!ほら、来てるわよ!」
先ほどと同数のバッタ。まだ残っている分と合わせても、披我の戦力差はついているわね。
非力な無人機といえど数が揃えば恐ろしい…アシュアリークロイツェルで、アルに散々教わったことだ。
「オルゴンライフルAモードに…!?」

炎の翼を広げた不死鳥が
バッタの群れに飛込んだ。
172第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘後パート〜:2006/01/10(火) 01:44:31 ID:NBvAv+rG
第二話、インターミッション終了です。
なにかと地味な感じで終わってしまいましたね。
次回はマジンガーとゲッター登場の戦闘パートです。

日本万能科学研究所に関しては二次創作スレで出ていた
今のスパロボで多い戦艦に乗って様々な場所に出て行く味方の部隊というような感じのストーリーではなく
スーパー系らしく研究所が襲撃されてそれを撃退していく
味方のロボット軍団というようなストーリーを進めて行きたかったのでこういうオリジナル設定にしました。
基本的に第一部はそんな雰囲気で進めていきます。
しかしネーミングセンスが無い・・・

>>158
頑張ってください。
特撮ヒーローの参戦も独創性が遭って素敵ですね。
ただ、設定を挙げるなら最初にまとめてから連投して言ったほうがいいのでは?
そのほうが見やすいですし。

>>167
ドラえもんのび太のスーパーロボット大戦ですね。
頑張ってください。

しかしこのスレのSSのGRとエヴァの参戦率は異常だなあw
173876(弥七朗):2006/01/10(火) 01:45:07 ID:7YXmi5FQ
弥七です。
…何か割り込んじゃってる!?(´・ω・`)ごめんなさい。

戦闘パートは一旦切ります。
ここから先を投下しようと思ったら穴が見付かったので…すみません。
17438:2006/01/10(火) 01:47:15 ID:NBvAv+rG
>>173
あ、弥七さんすみません。割り込んじゃって・・・
さっきのも名前欄間違えて書き込んだだけなので気にしないで下さい。
ではでは私は退散します・・・
175それも名無しだ:2006/01/10(火) 01:50:00 ID:cfC/fFJ6
以下ガンダムのストーリーをなぞりつつ進行。


大気圏突入後ガルマ隊を打ち破ったホワイトベース隊日本に立ち寄りマジンガーZを受領。さらにゲッターチームと合流。

ビルドベース隊アジア方面コジマ大隊に協力。巨大モビルアーマー撃破と共に日本へ帰還。シロー・アマダ行方不明に

制圧した地域の大多数を奪還されたジオン軍起死回生のジャブロー進行作戦に失敗。ホワイトベース隊ジオンに対する一斉反抗作戦の為宇宙へ。

地上。邪魔大王国残党ミケーネの協力によりヒミカの霊魂を呼び寄せる。ヒミカ最後の力と闇の帝王の霊力により竜魔帝王復活。だが即座に袂を別ち、新たな勢力としてミケーネ・キャンベル星人と共に再び地上を混乱に陥れる。大空魔竜隊・コンバトラーV地上に帰還。

176それも名無しだ:2006/01/10(火) 02:14:11 ID:cfC/fFJ6
ちょっとマイペースに書きすぎたな。スマソ。

>>163もっと一杯ガンダム出したかったけどまとめるの無理・・・逆襲のシャアはモビルスーツは出さない。

>>164途中いなくなる作品があったりルート分岐後の合流の「こんな事があった」みたいなのを多様するから多分大丈夫・・・。

最初はスーパーロボット風の一話完結(ジョジョみたいにスポット当てる奴を毎回変える)により怪獣・宇宙人勢力(バーム・ゼーラ・)・宇宙人(ウルトラマン・ダグオン)・戦闘獣・百鬼ロボやハニワ幻人との戦いを書いていく。

これが今書いててメチャクチャ楽しいからひょっとしたらプロット無視してここだけで完結するかもしれない。

後半はホワイトベース隊のストーリーを軸に「一方その頃」みたいなのを入れていく。まだ大まかな流れしか出来てない。設定は無駄に細かいのに。

ズバットさんがかなり「それも私だ」してる。やばい。どうしよう。

以上酔っ払いの書き殴りスマソ。
177それも名無しだ:2006/01/10(火) 17:27:04 ID:aCxCsrVv
余計なお節介を焼いておいた。
見づらいのは、まぁ勘弁してくれるとありがたい。
なお、作品ごとに題名が無い、もしくはわからないのはこっちで勝手に題名を捏造してあてておいた。
各自で確認していただけると助かる。
できれば、次からも「誰が、どの題名のを書いてるのか」がはっきり明らかにわかるようにしてくれると支援する側も助かる。

ttp://www7.atwiki.jp/srw-if/pages/7.html

なお、ロボットものやSF的なものの世界観や設定をまとめたサイトの情報を求む。
情報が寄せられ次第、リンクに追加していくから。
他にも「これがねぇのはどういうことだゴルァ」とかあれば言ってくれ。
178それも名無しだ:2006/01/10(火) 17:36:05 ID:Yt0ksz1a
>>177
まとめサイト乙
179それも名無しだ:2006/01/10(火) 17:56:23 ID:HgxWJBSs
何げに良スレ。創作意欲が刺激されたんでプロットを組み始めた。
ゼノギアス、ライブレード、サクラ大戦、エグザクソン等の絶対参戦しない作品だけの話。
難しすぎて断念しそうだ・・・
18016:2006/01/10(火) 17:57:51 ID:c2rpQRO2
>>177
まとめサイト乙です。
次に書き上げるのはいつになるか…。
…というか、実は学生なんで…。
でも、他の作者さんのように書けるよう頑張ります。
181それも名無しだ:2006/01/10(火) 19:02:25 ID:xfre77FM
>>177
まとめサイト乙
あと恐縮だけど、作品ごとに参戦作品も書いておいたほうがいいと思います
182それも名無しだ:2006/01/10(火) 19:41:29 ID:f8oxvBfD
>>177
まとめ乙

確かガガガの設定資料で、GGG公文書館とかいうのが結構詳しかった希ガス
本当かどうかはしらないが…
183876(弥七朗):2006/01/10(火) 20:11:04 ID:7YXmi5FQ
>>177

まとめ乙です〜!
うわぁ、見易くなってる…!?
184ロボゲSSまとめサイター$999:2006/01/10(火) 20:41:36 ID:aCxCsrVv
ロボゲSSまとめサイターです。
名無しのまんまじゃ、ちっとこの先やりづらいなと思って。
ってことでよろしくメカドック。

労いサンクスです、このスレのみなみなさま。

>>181さん
助言サンクスです、早速そのようにします。

ところで。
BYOND THE TIME…の書き手さんへ。
申し訳ないが、参戦作品をまとめて書き出していただけると助かります。

>>182さん
情報提供、感謝。
GGG公文書館
ttp://www3.osk.3web.ne.jp/~siraisi/GaGaGa/archives/00_gggwordtop.htm
これですな、早速貼り付けておきます。

ともあれ、改めてよろしく。
185ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/10(火) 20:43:55 ID:aCxCsrVv
・・・・・・。
$と#を間違えちまったよ、おっかさん。
てぇことで、コレ。コレよ、コレね。ね。
186それも名無しだ:2006/01/10(火) 20:50:03 ID:f8oxvBfD
>>ロボゲSSまとめサイター
他サイトを張り付ける前に先方に伝えておいた方がいいんじゃない?
あとでややこしくなることもありうるわけだし…
18716:2006/01/10(火) 21:06:57 ID:1ilqQ744
>>184
参戦作品は第2次αの参戦組なんですが、全員でるというわけではないので…。
いまのとこ、83、逆シャア、クロスボーン、ガイキング、マジンガーあたり考えてます。
まぁ、展開しだいですね…。
どうも、すいません。
188ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/10(火) 21:23:54 ID:aCxCsrVv
>>186さん
リンク先にそれぞれ飛んでみてリンクについて確認してみた。
はっきりしないのはGGG公文書館だけで、あとはリンクフリー。
GGG公文書館のほうへは、メールで確認をとっていただくという事で。
助言、まこと感謝。

>>187の16さん
了解、では今しばらくそちらのイメージが固まるのを待つとします。
現時点で考えているものをこちらでも記録しておきます。
1899改め常緑:2006/01/10(火) 22:03:17 ID:HVqyDA4g
ロボゲSSまとめサイターさん乙!
今仕事から帰ってきたんだけど、いきなり自分のSSがサイトに載ってたんでビビりました。
基本的に土日・祝日しか書けないダメ作者だけど、これを励みに頑張ります。

分かり易くと言うことなのでHNを「常緑」に変更。SSの題名も一応決めました。
あと、参戦作品リストも清書しましたんで、宜しければ設定ページに差し替えておいて
頂けるとありがたいです。

『Eの残滓』

<登場作品>
超獣機神ダンクーガ
新世紀エヴァンゲリオン
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に THE END OF EVANGELION
GEAR戦士 電童
勇者王ガオガイガー
蒼き流星SPTレイズナー
機甲戦記ドラグナー
機動武闘伝Gガンダム
新機動戦記ガンダムW
機動新世紀ガンダムX
真・ゲッターロボ(原作漫画版)
六神合体ゴッドマーズ
ジャイアント・ロボ THE ANIMATION 〜地球が静止する日〜
バンプレストオリジナル
190それも名無しだ:2006/01/10(火) 22:03:29 ID:cfC/fFJ6
>>177乙。昨日は酔っ払っての書き込み正直スマンかった。今夜か明日にでもプロローグだけ投下する。
191常緑:2006/01/10(火) 22:09:45 ID:HVqyDA4g
新機動戦記ガンダムW 〜Endless Walts〜

すみません、↑コレが抜けてました。
ガンダムWとガンダムXの間に挿入してやって下さい。

サイト紹介。
ttp://www.geocities.jp/teltusen7/genkan.htm
ロボット系ではないが、ゴッドマーズのストーリーと登場人物について
説明されている貴重なサイト。第弐話を書く際、ホントに参考にさせて頂きました
192それも名無しだ:2006/01/10(火) 22:24:32 ID:HVqyDA4g
>>150
遅ればせながらありがとう。
38さんの作品も、いつも楽しみに読ませてもらってます。

むしろ38さんのような無駄な状況説明を削り、改行を減らした作風の方が
ロボット同士のスピーディーな戦闘シーンの多いスパロボSSには合ってると思いますよ。
(何かにつけて改行や“―――”を入れ、やたらと会話に間を持たせようとするのは俺の悪い癖ですw)
これからも期待してます。
193Eの残滓 第弐話:2006/01/10(火) 23:41:43 ID:HVqyDA4g
(4)
旧世紀2080年代より突然世界各地で確認され始めた、異端能力を持つ人類『イレギュラー』。
生まれつき、あるいは後天的にテレパシー能力・予知能力・自然発火能力・念動力…etc.
を持った人間達。
遙か昔から伝承や都市伝説の中にその存在は示唆されていたものの、それがここへ来て
科学的に実証され、しかも全世界規模で急激に増加し始めている。
この事実は、旧来の社会通念・常識・構造をたちまち根底から揺るがし、人類の進化形・ヒトの
新たな可能性・ニュータイプなどと騒がれる一方で、深刻な社会問題にも発展していった。

しかし、……今更語るまでもないが、人間は
自分達と異なるモノの存在を恐れ、ストレスを抱き、それを排除することによって初めて
安堵を得る生き物である。

彼等イレギュラー達が偏見・迫害の対象となってゆくのに、そう時間は掛からなかった。


やがて、そんな彼等に対する世論の評価を決定的にする事件が起こる。

ビッグファイア戦争。
構成員をほぼイレギュラーのみで固めたその『BF団』を名乗る武装秘密結社は
「イレギュラー達の独立及びイレギュラー主導の世界の創造」を旗印に、セカンドインパクト直後の混乱の隙をついて突如全世界に侵攻を開始。
彼等はその超人的戦闘能力を存分に振るい、瞬く間に世界を火の海へと包み込んだ。
この戦いの終結までの3年間に失われた生命は、実に世界の総人口の1/4に上る。

以来、BF団はもとより、全てのイレギュラー達は
一人の例外なく「地球の害悪」になった。
194Eの残滓 第弐話:2006/01/10(火) 23:45:00 ID:HVqyDA4g
(5)
「戦自が“異端村”に派遣……? あの、それって…」

その問いに答えるべきか、ケンジは一瞬迷った末、あえて真実を伝える事にした。
「…脱走者が出たらしい」

「脱走者?! マジかよ?!」
「い、一体、どんな能力の持ち主が逃げ出したんですか? 戦自が出動する位って事は
 相当ヤバい奴って事じゃ…」
「ま…まさか俺達がココに集められたのって、そいつを捕まえる手伝いをやらされる為だってんじゃ
 ないでしょうね…?!」

騒ぎ出すナオトとアキラ。
その様子を、タケルはやりきれない気持ちで見つめていた。

別に彼等が憎いわけではない。
“イレギュラーは人間に非ず”……彼等は、物心付いた時からそう教えられて育ってきただけなのだ。
この時代に生きる大多数の人間がそうであるように。

タケルもまた、同様にそう信じて育つ筈だった


―――他ならぬ自分自身がイレギュラーであることに気付くまでは。


通常、イレギュラーであるか否かは、この世に生まれ落ちたその時点で判明する。
イレギュラー能力を持つ者はその身体に必ず何かしらの染色体異常を先天的に抱えており、
この時代の新生児には皆、遺伝子スキャニングの検診を受ける事が義務づけられている。
例え生まれた時点では何の能力も持たずとも(極論、死ぬまで能力が開花せずとも)、そのスキャンに
引っ掛かった者は有無を言わさず「イレギュラー因子保持者」の烙印を押され、その人生の大半を
イレギュラー隔離地域……俗称“異端村”で過ごす事を余儀なくされるのである。

タケルは、このスキャンに掛からなかった。
その「掛からなかった」という事自体が一つの異端能力であったことに、やがて彼は気付いてゆく。
本当の彼は『念動力(サイコキネシス)保持者』……
それも、間違いなくS級イレギュラーにカテゴライズされる程の強大な力の持ち主である。
この事実はタケル本人と、両親である明神夫妻しか知らない。

『力』の存在を両親に打ち明けたとき、普段穏やかな彼等は激昂した。
そしてタケルに固く誓わせた。二度とその『力』を使ってはならぬと。見せてはならぬと。
「先生、マジンガーZと超合金Zの詰め込み作業終わりました。」
 マジンガーZのパイロット、兜甲児が弓に作業の終了を告げる。
「おお、すまないね、甲児君。」
「いえいえ、マジンガーもこういう風に使われた方が嬉しいに決まってますよ。
 しかし良いんですか?光子力研究所の警備を手薄にしてしまって・・・」
「なあに、それなら心配はいらんよ。研究所には三博士が残っているし光子力バリアも好調に作動している。
 それにな甲児君、あのマジンガーのパートナーロボットとして開発されたミネルバXも常時、警備をしてもらっている。」
 ミネルバX。マジンガーZのパートナーとして設計されたが
 ついに十蔵もマジンガーと供に完成させる事が出来なかった機体である。
 兜家別荘の地下に派パートナー回路と組み立て段階に入る前の各パーツが見つかり、
 弓やその他の博士の力によってつい一週間ほどに完成したばかりである。
「へえ。あのミネルバが・・・なら心配はいりませんね、所長。」
「なによ、甲児君たらっ!ロボットなんかにデレデレしちゃってさ。」
「おっと、さやかさん。居るなら居るって言ってくれよ。
 それにそのロボットなんかに妬いてるさやかさんもどうなんだい?」
「ふんっもう良いわよ!じゃお父様、私も船に乗っているわね。」
「ああ、では甲児君、そろそろ出発の時間だ。早乙女研究所との合流地点に遅れないようにしないとな」
「はい。分かりました。
 しっかし、さやかさんはミネルバの話になると怖いんだから。」
 国際警察機構の全長200mの超大型飛行船『グレタ・ガルボ』
 今回はその同型機、『デートリッヒ』が光子力研究所に赴いていた。
 そして今、合流地点を目指し発進するのであった。
「おおーい!兜っ!俺を忘れちゃ困るんじゃないの?」
 ダルマに手足を付けたようなそんな妙な体系のロボットが表れた。
「なんだ。誰かと思ったらボスじゃないか。やめとけやめとけ。
 お前が付いてきたって足手まといになるだけだぜ。」
「なに言ってんのよ。俺とボロットに比べたらお前とマジンガーなんか月とスッポンポンじゃないのさ!」
 なんともボスらしい低レベルなネタである。
「はいはい。月とスッポンな。それになお前がどう思ってるか知らないが俺とマジンガーが月だと思うぜ、ボス。
 ま、どっちにしろもうすぐ発進だ。付いて来るならはやく乗り込め。」
「なぁんだ。連れてってくれるんじゃないの。」
「あら、甲児君、優しいじゃない?どういう風の吹き回しよ?」
「(さやかさん機嫌直ったみたいだな。)
 まあ、どうせボスの奴は置いていったって付いてくるからね。手間省いたってだけさ。」
「ふうん。でももう発進したのにボスはどうやってここまで来るのかしら?」
「あれ、そういや?」
 ボロットは表れた時よりももっと速い速度で走っていた。
 足元はまるで漫画のように回転している。
「おおいっ!乗せてってくれるって言ったのになんで止まらないんだよ!」
「わりい、わりい。一旦発進したら寄り道せずに合流地点まで行く予定だからさ。
 まあ、見失わないようにせいぜい頑張れよ。」
「そんな勝手な事納得できないわよ!」

 先程の会話から数十分も経過しない頃。
「あ〜あ。ボスったらもう見えなくなっちゃったじゃない。」
「まあ、ボロットなら仕方・・・」
 そういいかけた瞬間だった。
 突然飛行船全体が右舷から横殴りの衝撃を受けたのだ。
「一体なんだってんだ!?」
「甲児君、さやか、どうやらグールと機械獣軍団が現れたらしい。」
「なんだって!?それじゃあ、マジンガーZ出撃します。」
「私もビューナスで出るわ。」
 もともと、物資の運搬用ではないグレタ・ガルボ級の飛行船。
 その胴体部の下方部分の床が割れ、そこからマジンガーとビューナスは降り立った。
「やいやい、あしゅら男爵てめえも、懲りない野郎だな!何度やられたら気が済むってんだ!」
 甲児がそう啖呵を切るがグールからの応答は意外なものだった。
「あしゅらだと?そんな無能と一緒にされてはこのブロッケン伯爵の名が廃ると言うもの。
 兜甲児!俺はお前を倒すためにDrヘルの右腕となったものよ!ここでお前も最後というわけだ。」
 モニターには首を抱えた不気味な男の姿が写っていた。
「へっ!そりゃこっちの台詞だ!お前を倒して、その頭サッカーボールにでもしてやるよ!」

19738:2006/01/11(水) 03:09:33 ID:iYXJWAA/
第二話、戦闘パート入りました。
ミネルバは原作とちょっと違う設定ですが一応後半、操らせるつもりです。
>>170はタイトルミスです。
正しくは『第二話「マジンガーZ対ゲッターロボ」〜インターミッション〜』ですので。

>>177
乙です。ありがとうございます。
それとなんだかわがまま言ってしまうようで悪いのですが
「憧れのヒーロー」は第一話のタイトルですので悪しからず。
作品のタイトル考えてなかったんですけどスパロボCでお願いします。
CはクロスオーバーのCで。

あと、自分の活用してる設定が乗っているサイト

鉄人28号FXのサイト
ttp://www.geocities.jp/tetsujin_fx/
ジャイアントロボのサイト
ttp://www.yk.rim.or.jp/~furfur/dictionary/anime/gr/
ラーゼフォンのサイト
ttp://www5b.biglobe.ne.jp/~kakekomi/xephon/frame.html
そのほか、スパロボ参戦作品のサイト
ttp://members.jcom.home.ne.jp/superrobot/db/srw.htm

自分、学校が始まったので更新速度は遅くなると思います。
198876(弥七朗):2006/01/11(水) 13:22:07 ID:9pYdgPHl
書き手さん方へ。

一旦切るにしても後書きは必ず書きましょう。
作品投下中には書き込み辛いので、切目を示すって意味でも。
「一旦切ります」の一文でもいいので…。
199ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/11(水) 16:13:08 ID:pHCCfYeg
業務連絡です。

まとめサイト、細かい部分を修正しました。

「無銘の9」を「Eの残滓」に改題しました。
「憧れのヒーロー」を「スーパーロボット大戦Cクロスオーバー」に改題しました。
ただ、スパロボC、だけじゃ味気ないので…。表示はスパロボCになってますがよろしいでしょうか。
その他、修正と追加を幾つか施しておきました。
お手数ですが、書き手各自で確認していただけると幸いです。

リンクを幾つか追加、もしくは変更しました。
「GGG公文書館」を本サイトである「我が心のGストーン」にリンク変更しました。
管理人様のご好意により相互リンクしていただける事となりました。
それと同時に、同じ管理人様によるベターマンサイトをリンクに追加しました。
寄せられた情報のうち、ラーゼフォンのサイトについては本サイトであるFSSサイトのほうをリンクに貼りました。
結果として、ラーゼフォンだけでなくFSSの濃い情報をも得られるようになりました。
…まあ、リンクフリーなれど改めてメールで事後承諾申請中なのですが。

ロボットゲーム公式サイトを無意味かつ無駄に追加しました。
フロム・ソフトウェアにアーマード・コア系を2件追加しました。
フレームグライドを追加しました。A・C・E系を2件追加しました。

カプコンに鉄騎大戦を追加しました。
こんな肝心なものを忘れてしまうとは失態でした、申し訳ありません。

血迷って某ホイホイさんと某マ○チを追加しかけて我に返って止めました。
以後、このような事のないように注意します。

http://www7.atwiki.jp/srw-if/pages/1.html
200常緑:2006/01/12(木) 00:41:26 ID:n/cj4Pu6
>>198
すみません。夕べは途中で寝てしまってあんな形になってしまいました…
自分としては投下中に書き込まれても構わないのですが、読者の立場にしてみれば
読んでいる文章が中断されるのは辛いかもしれませんね。
今後気を付けます。

>>199
乙です。
こうして纏めて頂けると非常に助かります。

ただ、一点気になった事が。
載せてもらっている私のSSの第壱話ですが、後半部分に
38さんの書かれた>>170の 第一話「憧れのヒーロー」〜戦闘後パート〜 が
挿入されてしまっているようです。
お時間のあるときで結構ですので、直しておいていただけませんか。
宜しくお願いします。


えらく中途半端な所で止まっている私のSSですが、仕事が本格的に
忙しくなってきてしまい、次の土日まで更新できそうにありません。
お見苦しい状態が続くとは思いますが、どうぞご了承下さい…。

忍を登場させられるのはいつのことやら(´・ω・`)
201 ◆XiLFbsY806 :2006/01/12(木) 02:38:16 ID:+SlKft3q
ー新番組予告ー

かつてない危機を乗り越えた地球。

「じゃあ日本の平和はグレートマジンガーに任せたぜ!」

「安らかに眠れ・・・ゲッターロボ」

しかし・・・それは地球圏を包む巨大なる戦いの前触れにすぎなかった!

「人間共よ、地上は我らミケーネのものだ!」

「この星は混乱に陥ったようです。仕掛けるなら今ですよ」

「はっ母上!」

地球に潜んでいた者達。

「地球か・・・あの星は我らを受け入れてくれるのだろうか」

(ベムラーはあの星に逃げ込むつもりか・・・!)

遥か宇宙からの来訪者達。
それぞれがそれぞれの思惑を地球に交錯させる。そして・・・。

「新型のゲッターロボ・・・?」

新番組スーパーロボット大戦N第一話「不滅のマシン」に、スイッチオン!!
202 ◆XiLFbsY806 :2006/01/12(木) 02:52:23 ID:+SlKft3q
つーわけで>>158です。プロローグ書こうと思いましたが電波を受信したんで次回予告風にしちゃいましたよ。

序盤は世界観を語りつつ戦闘シーンは原作コピペ(とか言って一話からゲッターVS戦闘獣をやりますが)な感じでいきます。

一話で扱う作品は
ゲッターロボG
グレートマジンガー
超電磁ロボコンバトラーV(触りだけ)
ウルトラマン(触りだけ)
闘将ダイモス(触りだけ)
の予定です。なお投下時期は一切不明です!(キッパリ)
「くくくっ・・・兜甲児。軽口を叩いていられるのもそこまでだと思えよ。
 見よっ!我が機械獣空襲部隊をっ!」
「なっなんだ、ありゃ!?」
 グールから次々と発進する空中戦用機械獣。
 そのどれもこれもが以前、空を飛ぶことの出来ないマジンガーZを苦しめたものだった。
 今までなら一体ずつ、多くても三体程度で攻め込まれる程度のものだった。
 それならなんとかマジンガーの性能と甲児の機転でなんとかなったのである。
 だが今回は別だ。十数体とも呼べる空とぶ機械獣が相手となると流石のマジンガーでも苦戦は必至である。
「どうだ!驚いたであろう?お前の弱点が空を飛べん事ぐらい重々承知だ!」
「どうしよう甲児君?これじゃあ勝ち目なんて無いわ。」
 不安そうにさやかが聞くが甲児はものともせず表情で言い返した。
「勝ち目?それなら充分あるじゃないか。さやかさん。
 このマジンガーが居る限り、空とぶ機械獣が何体で攻めてこようとも無敵だぜっ!
 やいっブロッケンだかなんだか言ったな?このマジンガーの力目に物見せてやるぜ。」
 甲児の言葉はやせ我慢などでは無かった。
 今までいくつもの修羅場を供に潜り抜けて来たマジンガーZである。
 その信頼感は絶対的なものであると言っていい。
「小僧ごときに嘗められたものだな。よかろう、その言葉後悔するなよ!
 いけいっ!機械獣空襲部隊よっ!マジンガーを八つ裂きにするのだ!」
 ブロッケンの掛け声と供に機械獣空襲部隊は一斉に行動を開始した。
 機械獣たちはマジンガーめがけ空爆を開始してきた。
 ビームを放つもの、爆弾を落とすもの様々である。
 マジンガーはその攻撃をもろに受けるが
「甲児君っ!?大丈夫?」
「心配すんな!さやかさん。
 こんな攻撃でこのマジンガーがやられるかってんだ!」
 甲児の言う通り、マジンガーはビクともせずに立ち上がっていた。
「今度はこっちの番だ!ドリルミサイル!」
 マジンガーの肘から下が持ち上がりミサイルが何発も発射されていく。
 何体かの機械獣に命中するが致命的なダメージにはならない。
 ドリルミサイルを撃った後、命中した機械獣の一体がマジンガーに接近戦でマジンガーに迫る。
「こいつは好都合だぜっ。」
 マジンガーと機械獣が接触する瞬間である。
 その一瞬のタイミングを甲児は見逃さずそのまま機械獣の背中に飛び乗った。
 機械獣は振り払おうとするがマジンガーはしがみつき、馬乗りの状態になる。
 他の機械獣達がマジンガー目掛けて突進してくる。
「わざわざ、突進してくるたあ、賢くねえなあ。ルストハリケーン!」
 マジンガーの口の部分から竜巻が起こる。その竜巻の正体は強力な酸である。
 酸をカメラ部分に直接くらった機械獣は周りが確認できず他の機械獣と激突し爆発した。
 また、翼や動力部分が溶けた機械獣はそのまま墜落していってしまう。
「よぉしっ!結構結構。お前もご苦労さん。」
 乗っていた機械獣から飛び降りると機械獣は仲間の攻撃で爆発していった。

 マジンガーとアフロダイの活躍で、
 当初十数体居た機械獣たちもいつの間にか片手で数えられる程度になっていた。
「どうだ、ブロッケン!?何体空飛ぶ機械獣を使ったってな、
 俺とマジンガーが入れば無敵なんだよっ!」
 しかしグールの中のブロッケンはやけに落ち着いて見えた。
 いや、それ以上に口元が緩んで見える。
「やはり切り札というのは残しておく物だな。見ろっ!兜甲児っ!」
 またグールから機械獣が発進してくる。
 今度の機械獣が先程までのものと違う点、それは
「ボッ、ボロットじゃないか!?」
 そうボスボロットが機械獣の腹部にガッチリと括り付けられていたのだ。
「す、すまねえ、兜。こいつらに捕まっちまっただわさ。」
「やいっブロッケン、こいつは卑怯過ぎるんじゃないか!?」
「ふははっ、兜甲児。そこが俺とあしゅら男爵の決定的に違うところだ!
 マジンガーZと貴様は手も足も出せずにここで朽ち果てるのだっ!」 
20538:2006/01/12(木) 05:39:07 ID:Laq6vb9W
Bパート終了。
次回はこのピンチにゲッターチームが登場。
でひとつ訂正を。
昨日のAパートですがアフロダイって書く所をビューナスにしちゃいました・・・
すみません。

>>199
お疲れ様です。
無理言ってしまってありがとうございました。
あと、申し訳ないのですが上の訂正部分を訂正していて下さい。

>>202
頑張ってください。
楽しみにしてます。
206ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/12(木) 09:48:57 ID:N0LRGgWE
業務連絡です。

>>86 >>90より…
スーパー携帯機ジェネレーションのテキストの一部を以下のように修正しました。
×『はぁ!?アンタ、軍属、及び研究所等それに順ずる者の戦闘行為は重罪よ?』
○『はぁ!?アンタ、軍属、及び研究所等それに準ずる者以外の戦闘行為は重罪よ?』

>>200より…
常緑氏の指摘の通り、当まとめサイトにて『Eの残滓』の掲載に重大なミスがありました。
まことに申し訳ありません。
『Eの残滓』第壱話の後半にスパロボC第一話「憧れのヒーロー」の文章が間違って挿入されていました。
修正を施しておきました、改めて確認していただけると助かります。
ご指摘ありがとうございました、今後ともよろしくよろしくお願いします。

>>205より…
スパロボC第二話「マジンガーZ対ゲッターロボ」にて修正を施しました。
弓さやかの駆るマシンの表記をビューナスからアフロダイに書き改めました。

今後とも、何かあれば遠慮なく修正依頼など申し出てくださればかえって幸いです。
ありがとうございました。

そこで提案なのですが、御一考いただければ幸いです。
書き込む際、名前とメール欄を以下のようにしては如何でしょう。
名前にはその作品のタイトル+トリップ、第何話の何々はその章の最初に。
メール欄には、sage と書いた横に、各作者様の名前を(仮名で結構です)。
エロゲーのSSスレで用いられるのですが、わかりやすくてまとめやすいのです。

血迷ってロー○ンメイデンの公式Webサイトをリンクしようとして我にかえってやめました。
以後、このような事のないように気をつけます。
207例として、こんな感じです。 ◆CSZ6G0yP9Q :2006/01/12(木) 10:47:35 ID:N0LRGgWE
第零話「ストロンガー決死の超電子の技!キングジョー夕陽に燃ゆ」

「ヘッ…そんなの、俺が知るか」
仮面ライダーストロンガーは満身創痍で、なおもそう不敵に笑う。
不敵に笑って…全身から血とオイルを流しながら前へ前へと折れた片足を引きずって歩く。
身体のあちこちは切り裂かれ、電子部品が露出しところどころ火花が散っている。
一歩、一歩…また一歩進むごとにストロンガーのあとに血とオイルの混ざった溜りが点々と続く。
とても、彼は戦える状態では無かった。
しつこく襲い来るブラックサタンとデルザー軍団の再生怪人の大部隊を一人で全滅させたものの。
いかに百戦錬磨、連戦連勝を重ねたストロンガーとて満身創痍にならざるを得なかったのだ。

ましてや、先の神戸港での戦いでウルトラセブンを追い詰めたキングジョーに戦いを挑むなどと。

家屋やビルなど建造物の類は多くが倒壊し、業火を吹き上げていた。
かつて道路だったものには転倒したり玉突き衝突したりで見る影も無い鉄塊となった乗用車が無数に転がっている。
連邦軍やティターンズのモビルスーツが必死に応戦するが、次々に爆散していく。
ぺダン星人という外宇宙知的生命体の科学技術に、地球は全く成す術が無かった。
ふと、ストロンガーの視界にとまった物体がある。

それは、幼い子供二人の亡骸だった。
幼い兄は、幼い妹をかばおうとしたのか両手に抱きしめて…兄妹ごと瓦礫の下敷きになっていた。
兄妹の側に無理やり駆け寄ったストロンガーは二人が事切れているのを確かめて。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
その剛腕で瓦礫を砕き、投げ飛ばし…兄妹を重圧から解放した後に安全な場所へ運んでいった。
死んでいるのは、わかっている。わかってはいるが、そうしないではおれなかった。
兄妹の身体をゆっくり横たえ、顔の汚れを拭いてやり、二人の手を繋げてやる。
そうしてストロンガーは兄妹の亡骸に背を向けて…再び、暴れまわるキングジョーのいる方角へ歩き出す。
遥か遠くに霞む炎の壁と煙の向こうで、キングジョーはまるで楽しんでるかのように暴れ続けている。
その光景を見て、ストロンガーは拳を握り締めて理不尽な暴力への怒りに身体を震わせる。
「許さねぇぞ、ガラクタ野郎」
一歩、前に踏み出す。
「テメェは…必ずブッ壊す」
走り出す。
「行くな、ストロンガー!その身体でチャージアップしたらお前が死ぬぞ!」
キングジョーに砲撃を加えつつモニターでストロンガーを見守っていたクワトロが叫ぶ。
しかし、クワトロの制止に対しストロンガーはわざと大げさに肩をすくめただけだった。
「ハン…それこそ俺の知ったこっちゃねぇな」
自ら、全身から激しく紫電をほとばしらせチャージアップしようとするストロンガー。
208ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/12(木) 10:54:11 ID:N0LRGgWE
とりあえず、名前欄とメール欄については上にあげた例のように、と。

ちなみに勢いと即興でストロンガーVSキングジョーを書きましたが、続きはありません。
そのへんは悪しからず。
209876(弥七朗):2006/01/12(木) 11:50:02 ID:gSMH5xPb
まとめサイターさん乙です。
メール欄はこんな感じでよろしいので?
『テンカワ、無事か?』
『アンタは………』
40m級、空中のナデシコよりたかい位置に、天使と戦乙女を足して二で割ったかのようなフォルムを持つ機体が浮いていた。
弓を、構えている。
『ラミア・ラヴレスだ。そちらで拾ってもらったアナハイムのテストパイロットのな。そちらの、機動兵器のパイロットは?』
『カルヴィナ・クーランジュ、今日からナデシコに乗る予定の戦技教官よ』
『了解。味方、なのだな………くっ、次が来たぞ!』


遠くで、ナデシコが襲撃にあっている。
「くそ、間に合え…!」
持続的出力の低さに苛立つ。飛べない、というのも厄介だ。
俺は、エネルギー残量を確かめつつ、ブースターを蒸かした。


「コード、ファントムフェニックス………!」
弓を引き絞り、矢状のエネルギーを放つ。
高出力の矢が変化した火炎鳥を、敵陣に突っ込ませる。
(………使いたくはなかったがな)
出力を限界ギリギリに引き絞って撃っているので、隙の大きい武装だが、何しろ数が数だ。
出し惜しみは出来ない。
『…聞…える…!…ミア!』
「ジョシュアか?」
『アンタがもう一人の?』
『誰?』
三者三様の反応だ。
『…あ…っ!…ジョシュア・ラドクリフだ!援護するっ!』
下からのキャノン砲撃。バッタが落ちる。
手持ちのライフルで牽制しながらの、通信が入るの。
『………敵機、撃墜!悪い、ラミア!ちょっと、ナデシコまで持ち上げてくれないか!?』
「ジョシュア、その機体は?」
『アナハイムで受け取った!だけど調整不足か何かで、ろくに出力も上がりゃしない!ナデシコにあるガナドゥールに乗り換えたい!』
「わかった………クーランジュ、テンカワ、すまない。少し持たせてくれ」
『了解』『わかった!』
ラミアは、機体を地表に降ろした。
体格が二倍近く違う。が、ブースターがどうも心もとない。
「しっかりつかまってろ」
『了解!』
211スーパー携帯機ジェネレーション:2006/01/13(金) 12:16:53 ID:MrBv70Sp
「くぉらぁあぁ!着艦するときゃ事前に通信しやがれ!」
「すみません、整備班長!」
ジョシュアは、ナデシコの格納庫にエール・シェヴァリヴァーを滑り込ませると、即座にコクピットハッチを解放。飛び出る。
「俺のガナドゥールは動かせますか!?」
「ばっちり整備してあるよ!緊急チェックだけしたら乗って行きな!」
「ありがとうございます!」
ジョシュアは、格納庫の隅にあったガナドゥールに搭乗すると、レースオペレータからの通信だ。
何回か、食堂であったことのある少女だ。
「ルリちゃん?」
『戦況報告です。今現在、こちらの戦力4機。敵機、撃墜31機、残数14機。しかし、チューリップ方面から際限無く増援を確認しています。
ラミアさんとカルヴィナさんの機体がMAPWを持った機体だから今はしのげてますけど、このままじゃ、潰されます』
「うん、それで?」
『そこで、あなたには元凶のチューリップを潰してほしい。というのが艦長の作戦です』
「こっちはしのげるのか?」
『あと10分もすれば離陸出来ますから、グラヴィティブラストが撃てますし。
それに、既にチューリップには一機むかってます』
「なんだって?」
『アナハイムから出撃した、リ・ガズィみたいです』
「アムロさんか!?くそ…わかった、どっちに行けばいい!?」
『フォン・ブラウンから北に800。増援が来てる方角に行って下さい。増援は無視して構いませんので、チューリップは確実に潰してください』
「わかった。…ガナドゥール!ジョシュア・ラドクリフ!行くぞッ!」
『ハッチ解放、どうぞ』
ブースターを吹かす。解放されたハッチに向かって、出力の八割をブースターに解放。カタパルトダッシュを利用して、空中に飛び出した。

212876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/13(金) 12:19:21 ID:MrBv70Sp
弥七っス。戦闘、中編を書かせていただきました。

お、終らねぇ……エール・シェヴァリヴァーが思ったより活躍しなかったのが残念無念です。
しかしエンジン不良のまま動かすのもどうかと思ったので……
213876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/13(金) 12:24:52 ID:MrBv70Sp
「ばっちり整備してあるよ!緊急チェックだけしたら乗って行きな!」
「ありがとうございます!」
ジョシュアは、格納庫の隅にあったガナドゥールに搭乗すると、レース<・アルカーナを起動した。
この機体のエンジン……因果不詳の古代の遺物、レース・アルカーナ。既存のコンデンサで大きな出力に変換できるため、高性能なエンジンとして利用している。
「これがどんなものかなんて知ったことじゃない………」
『ジョシュアさん』
「?」>
オペレータからの通信だ。
何回か、食堂であったことのある少女だ。





コピペミス………<>内のを入れてくださいです。
214それも名無しだ:2006/01/13(金) 16:35:52 ID:ZSaO873g
弥七朗さん乙かれ!
助手は地味でこそ助手!キニスンナ(´∀`)

ところで1点>>211なんだがラミアのMAPWて何だ?
後、台詞なら広範囲攻撃とかにしてくれ・・
それ以外は流石の出来ですな。GJ!
215876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/13(金) 17:45:50 ID:MrBv70Sp
ラミアのはMAPWとは『ファントムフェニックス』の広範囲版です。出力ギリギリまで絞らないと広範囲に撃てるだけのファントムフェニックスは形成できない、っていうことに。
最初にバッタの群れに飛込ませてるってんで、対多数用にも使えるものっぽいので……捏造武器ですね。すみません。
あとMAPWはそれ自体が対多数用兵器か何かの略だと聞いた覚えが………。次からは広範囲戦略兵器と書きます。
今回の武装関連のような原作改編っぽいのはまた結構出るかもしれません。やりすぎないように注意します。
216それも名無しだ:2006/01/13(金) 21:14:10 ID:ly8V1oQj
Fフェニックスは小隊攻撃だったらALLっぽいし
個人的にはありかと。

バーストレイヴは持ち越しか……気長に待つさ。
217それも名無しだ:2006/01/13(金) 22:04:31 ID:ZFVOW4lS
MAPWは大量広域先制攻撃兵器(Mass Amplitude Preemptive-strike Weapon)の略だったはず
OG1で解説されてた
218214:2006/01/13(金) 23:45:52 ID:ZSaO873g
俺が無知だっただけか。
弥七朗さんゴメンネ(´・ω・`)

捏造兵器は大歓迎だ。
もういっそ設定では存在したバーストレイヴ2刀流とか!
219 ◆/lRLw6b6BY :2006/01/14(土) 01:53:23 ID:/B3InOJx
捏造っつーか設定改変しないとキツイもんねぇ。

22016:2006/01/14(土) 12:26:31 ID:3760IbhT
「バ、バズーカだけ!?それだけでいいんですか!?」
ロンド・ベルの旗艦『ラーカイラム』の整備士、アストナージはアムロの言葉に驚いた。
「今は、一刻を争うんだ!最低限の装備があれば十分だ」
「確かに大尉の腕なら、それくらで大丈夫でしょうが…」
アムロはここでアストナージとの会話を切り、艦長のブライトに通信を入れる。
「ブライト、戦況はどうなんだ?」
艦長であるブライト・ノアは重々しい表情で話す。
「今のところ、我々が圧している。デラーズ艦隊も、ハマーンの残存部隊もほぼ壊滅的だ。だが…」
「どうした?」
アムロはブライトに問いかける。
「木製帝国が、いまだに大きな動きを見せない。それが、気になるのだ…。」
「木星帝国…クラックス・ドゥガチか…」
あの男の目的は地球を滅ぼすことだ。だからこそ、シャアのアクシズ落としに賛同し手を結んだのだろう。
(だが、あの二人の真の目的は違うところにあるはずだ)
そうとしか思えなかった。木星帝国とネオ・ジオンほどの勢力が手を組むのなら早急に決着を着けられるはずだ。
地下勢力、リクレイマー、メガノイド、ゾンダー、異星人。彼らとの戦闘の最中にこの計画を発動させれば間違いなく地球は死の星になっていた。
ハマーンと手を組んだのは自分達が同盟を断ったあとである。そのころはまだ、アクシズは所有していなかった。
そうとなると、その前から何を落とすかは決めていたと考えるべきだ。
だが、この二つの勢力、いや、シャア・アズナブルとクラックス・ドゥガチはそうしようとはしなかった。
むしろ、全ての勢力がαナンバーズに倒されるのを見計らっていたかのように行動を開始した。
(だが、あの二人が同じ考えとは思えない)
木星帝国が動きを見せないのがそれを表していた。
ネオ・ジオンは現戦力の全てを持って戦闘に望んでいる。総帥であるシャア自らが出撃するほどである。
一方の木星帝国は、戦闘はしているもののネオ・ジオンほどの戦闘姿勢を見せてはいない。
(ネオ・ジオンと俺たちの共倒れを狙っているのか…?)
そう考えられなくも無い。だが、現時点での戦力の差を考えれば漁夫の利は狙えない。
アクシズを破壊した際の戦闘で木星帝国は死の旋風隊、カラスといった優秀な指揮官を失っている。
残っているのはザビーネ・シャルくらいだが、そこからひっくり返せるほどα・ナンバーズの戦力は低くはないことは分かっている筈だ。
「大尉!バズーカの搬送終わりました!」
下から、アストナージの呼び声が聞こえる。
「ん?ああ、すまない」
『Hi-ν』はハンガーからバズーカを取り、出撃体勢にはいる。
「よし、アムロ『Hi-νガンダム』出る…」
(ピキーン)
「!?くっ…」
巨大なプレッシャーが突如襲ってきた。
(これは…ドゥガチか…!?)
シャアとは違う。あこがれに似た巨大な憎悪。感じたことの無いプレッシャーだった。
「どうした、アムロ!?」
ブライトはアムロの異変に気付き問いかける。
「ブライト…ネオ・ジオンと…戦闘中の部隊を…木星帝国軍…側に回すんだ」
所々で、息切れをしながらアムロはブライトに伝える。
「どういうことだ?」
「…ドゥガチは…何かを隠している…間違いない…急がなければ…ならない…」
ゴホッゴホッと大きな咳が出る。
「…分かった」
ブライトはアムロの言葉を信じた。一年戦争時代からの付き合いであり、アムロの力には何度も助けられている。
「交戦中の部隊に伝えよう。だが、アルビオン隊とマジンガーチーム、ゲッターチームには残ってもらい戦線を維持してもらう」
「すまない…、ブライト」
ブライトは小さな笑みを浮かべる。
「気にするな。…アムロ、決着を着けて来い」
ブライトのその言葉に答えるように『Hi-ν』は出撃体勢を再びとる。
(貴様らの狙いが何なのか、今度こそ教えてもらうぞシャア)
開いたハッチの向こうでは多くの光の玉が見えた。その、光の中へ再び『Hi-ν』は飛んでいった。


アクシズ落下まで、残り4分
22116:2006/01/14(土) 12:33:38 ID:3760IbhT
第3部書き終えました。
本当ならシャア側の様子も書きたかったんですが、時間が無くて…。
あと、2、3部ほどかかりますが、頑張ります。
兜甲児とマジンガーZはボスを人質に取られ成す術も無く機械獣たちになぶられ続けていた。
 二体の機械獣がはるか空の上までマジンガーを持ち上げ、他の機械獣がじわじわと攻撃を与え続けていた。
「甲児君っ!」
 それまでじっと見続けていたさやかだが耐え切れなくなり声をかける。
「さやかさん、俺とマジンガーはまだ大丈夫だ。それより早く救援を・・・」
「でも甲児君を置いていくなんて!」
「大丈夫っ!弓教授達を連れて早くっ!」
「わ、わかったわ。」
 走り出すアフロダイの前に立ち塞がる残りの機械獣達。
「ぐははははっ!マジンガーを倒せると思って忘れておったわ!
 その飛行船に乗せてある超合金Zとその資料を頂こうか?小娘!?」
(やはり、Drヘル一味は移行計画について知っているか・・・しかし何故?)
 弓が今回の襲撃について思案を巡らせているときだった。
「ゲッタートマホークッブーメランっ!!!」
 ブロッケンの笑いを途絶えさす青年の声。
 それと供にトマホークがアフロダイの目の前に迫る機械獣達に攻撃を与える。
 爆散する機械獣、トマホークは回転しながら持ち主の下へと戻っていく。
「時間になってもこないと思ったらやっぱりこういうことになってたのか。」 
「さっさと奴さんたち片付けて目的地に急ぐとしようぜ、リョウ。」
「へへっ、オイラもトカゲじゃなきゃ本領発揮できるんだっ」 
 表れたのは六角形の特徴的な顔を持つゲッター1。
 そしてパイロットの流竜馬、神隼人、巴武蔵の三人である
「くっ、現れたかっ!ゲッターロボっ!しかしこちらには人質が居るのだっ!
 これ以上の手出しは出来まいっ!」
「人質?そいつはあそこで待ってる二人か?なあミチルさん。」
 ブロッケンが気づいたときには遅かった。
 そこには支援戦闘機コマンドマシンが既にマジンガーとボロットを救出し、
 捕らえていた機械獣達を倒してしまっていたからだった。
「ええっ、リョウ君。マジンガーZともうひとつのロボットの方は救出したわよ。」
「もうひとつのロボットとは失礼だわね!ボスボロットっていうちゃんとした名前があるだわよ!」
「あらっ、それはごめんなさいね。」
「なにっ!一体いつの間に!?」
 ゲッターがブロッケンの注意をひきつけ、
 コマンドマシンがその間にマジンガー達を救出するという作戦はうまくいったのだ。

「あんたたちがゲッターチームか。ありがとよ、助かったぜ。」
「話は後だ、その前にこいつを倒すぞ!」
「分かってるって。で、どうするブロッケン?お前の手駒は無くなったみたいだけどよ?」
 余裕の表情でブロッケンに問いかける甲児
「ちっ。撤退だ。機械獣が居なくなっては作戦も中断するしかないからなっ!」   
「なんだ。逃げるのかよ?それじゃあ、あしゅらと変わらないぜ?」
「うるさいっ!兜甲児、そしてゲッターチームよこの屈辱忘れはせんぞっ!」
 ブロッケンが良くある捨て台詞を残しながらグールと供に去っていった。
22438:2006/01/15(日) 03:35:12 ID:q/GlnCz3
第二話、戦闘パート終了。
今回は原作コピペな部分が無いんで
いちいちビデオを巻き戻しながら台詞を書き取るとかの作業が少なくて楽だったかも。
その分、シナリオが薄いような気もしますが。

今回、甲児達と竜馬たちは初対面です。
スパロボのマジンガー勢とゲッター勢ってOVA版でもない限り
前にあったことがあったり、共闘した事があったりなのでそういう所でも新しくしていこうかなと思った次第です。

次回は、終了後パートです。
225それも名無しだ:2006/01/15(日) 11:48:43 ID:wFBWU9Yg
>>220>>222
乙と言わせて頂く
226それも名無しだ:2006/01/15(日) 12:13:09 ID:W5tAnA/C
>>220>>222
乙&GJ!であります
「くっ…………これくらいが何だというんだ!」
チューリップからまた、大量の虫型機動兵器が飛び出す。
出鼻をメガ・ビーム・キャノンでくじかせ、突撃。一体を焼き、三体のバッタにかすったビームはチューリップの中に吸い込まれる。
「一体どうなって……!」
チューリップの中にメガ・ビーム・キャノンを二回、ビームキャノンを三回撃ち込んだが、まったく効果があがらない。
中の底が無いように感じる。
「…!まずい!」
後ろに数体のバッタを確認、急加速上昇で降りきろうとするが、的確に追尾してくる。
「チッ…来る!」
バッタの小型ミサイルが、リ・ガズィの後ろから追いすがる。
すぐさまリ・ガズィを旋回、バッタの正面に出て、ブレーキ。機体をバレルロールさせながら降下する。
「……まだまだか!」
ミサイルは全てバッタの群れに突っ込んだが、いかんせんバッタの数が多すぎる。
残ったバッタがまたミサイルを……
『……ッジブラスター!!』

荷電粒子砲のビームがバッタをなぎ払った。
『アムロさん!』
「ジョシュアくんか!」
『援護します!』
ガナドゥールは大刀を引き抜き、上段から振り降ろす。リ・ガズィを追尾していたバッタを止まらせ、ガナドゥールは群れの中に切り込んでいく。
必然的にガナドゥールは敵機を引き付け、リ・ガズィをフリーにさせる。
『……チューリップの外壁を攻撃して、外郭を剥がして下さい!トドメは刺します!』
「……了解!」
アムロとて、リ・ガズィの非力さを知っている。
リ・ガズィのメガ・ビーム・キャノンを無理矢理連射し、チューリップの外壁を一点攻撃する。
だがチューリップ自体の防御も相当に高く、なかなか破壊まで至らない。
「ジョシュアくん!今だ!」
『……ヒート、ダイヴ!』
ジョシュアのガナドゥールが、熱エネルギーの塊となってチューリップに突撃する。チューリップの外壁にぶつかって、擦るように、螺旋状に駆ける。
『……これで、終わりだ!』
さっきアムロが集中砲火をかけた外壁を、熱核の弾丸となったガナドゥールで撃ち抜く。
爆撃の騒音、反対側からガナドゥールが突き抜る。
「やったか…?」
『……いや、まだ!』
しかし、撃ち抜かれたにも関わらず─バチバチとスパークが散っているあたり、ダメージは大きいようだが─虫型兵器は飛び出してくる。
と、
『ジョシュアさん、避けて!』
『!!』






ガナドゥールでリ・ガズィを掴み、無理矢理回避。
途端、
『グラヴィティブラスト!てぇぇーっ!』
極太重力波動砲が、上空から撃ち込まれる。
『ナデシコ?』
『無事でしたか!?』
「こちらは、まぁ…」
アムロはチューリップの方に目を向ける。
チューリップは重力という圧力を受けて壊滅した。
アナハイムが躍起になって追い求めている…重力系の技術。
ふと、疑問を口にする。
「…まさか君がナデシコの艦長なのか?」
『はい!私が機動戦艦ナデシコ艦長の、ミスマル・ユリカです!ぶいっ!』
『…艦長!?貴方が!?』
砲撃戦仕様と思われる機体のパイロットが、そう叫ぶ。
『…カルヴィナさんだってかなり若い身でエースパイロット崩れじゃないですか?』
『…後半が余計よ、メルア』
『艦長……ジョシュアたちを着艦させたらどうでございませんことですの?話は中でもできちゃったりしますですし……』
『ところでラミア、あの機体は誰?』
「随分とまぁ……楽しそうだな、ナデシコは」
アムロは思わず嘆息する。
『あはは、そうですか〜?』
『艦長、着鑑許可出します』
『あ、どーぞルリちゃん。アムロさんはどうするんですか?』
「アナハイムに戻るよ。久々の実戦データだ、技術屋が喜ぶ」
『そうですか〜なら仕方ありませんね。お茶くらいならお出しできるんですが』
「…本当にそこは戦艦なのか?」



『アムロさん』
「ン…ジョシュアくんか」
『今日は援護してもらってありがとうございました』
どちらかと言えば、救援に来たのはジョシュアの方なのに…そうアムロは思ったが、生真面目なこの青年の性格なのだろうと、あらためて評価した。
「ああ、こちらこそだ。…これから火星に行くんだろ?」
『はい』
「またどこかで会おう。じゃあ」
『では、またどこかで会いましょう』
ガナドゥールは手を降ると、ナデシコに飛んで行った。
229876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/15(日) 20:29:38 ID:liHZbbqN
弥七ッス。戦闘後編やっと書き上がりました。
なんつーか……カルヴィナの性格が違うよなぁ……とか思ったり。鬱だ氏のう系美女は自分には厳しいっス……
230それも名無しだ:2006/01/15(日) 22:00:20 ID:+T8CDJT2
乙。ただ個人的にはアムロの口調が気になった。
もうちょっと富野節がきいてたと思う。
231常緑:2006/01/15(日) 22:55:07 ID:ayFyZjMO
皆さんこんばんは。土曜出勤で無理をし、日曜にインフルエンザに掛かったという
ステキな週末を過ごした常緑です。
「土日に投稿する」と言いながら、今週もロクに物が書けませんでした…
本当に申し訳ない。
やむなく寝込みながら、38.9℃の頭で最終話のプロットなどを妄想してました。

38さん、876(弥七朗)さん、16さん、毎回楽しく読ませてもらってます。
158さんも、期待してますので是非頑張ってくださいね。


最後にロボゲSSまとめサイターさんへ。
いつもお世話になってます。第弐話修正の件、ありがとうございました。
……実はもう一点、サイトにおける文章の改行幅・横幅についてお願いがあります。

しつこいくらいに改行を入れる私の文体ですが、サイトに載せていただく際、その改行が
私の意図したものと違った場所に入ってしまう、又は改行そのものが消えてしまう事が
あるようです。
また、当初2ch上で閲覧する事を意識して文章の横幅を調整していた私ですが、サイト
に載せていただく際、想定していたよりもかなり短い場所で改行が区切られてしまう事
が判明しました
(お見受けしたところ、サイターさんのサイトは『IE フォント中』の環境においては、文章の
 横幅が下記の幅を越えると自動的に改行されてしまうようです)。
←――――――――――――――――――――――――――――――――――→

そこで、近日中に(若干の内容修正も含めた)第壱話・第弐話の原本テキストファイルを
こちらに貼り付けようと考えておりますので、それをそのままコピペして載せて頂けると
嬉しいです。
お手を煩わせないよう、今後は私もこれらを意識して書いていこうと思います。

本当に手前勝手なお願いで申し分けないのですが、ご一考頂ければ幸いです。
232876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/15(日) 23:03:49 ID:liHZbbqN
富野節をいまいち理解しきれていない弥七です。
逆シャアを見たりはしたんですが、そもさん自身がラノベ厨ってこともあり、映像よりも小説派なので正直口調については勘弁願いたいところであります。
気を付けれるだけ気を付けますが…すんません。
233230:2006/01/16(月) 00:29:33 ID:VmK5HR1Z
>>232
小説まで読んでるとは……どうやら間違っているのは俺の方だな……。

いや、映画しか見てないのですよ。
234それも名無しだ:2006/01/16(月) 00:32:44 ID:rTnq0CM7
>>232
GJです。それと、富野節というのは
シャア専用辞典によれば

【富野節(とみのぶし)】

富野監督の作品では、独特なセリフ回しが使われていることは有名。主な特徴としては

・たまに、合理的な理由なくフルネームで相手を呼ぶ
・興奮していると、男が女言葉を使うことも
・戦闘の真っ最中でもしゃべる
・やたら芝居がかっている(〜なのだよ)(〜ということか!)
・会話が噛み合ってないことが多々ある
・独り言は、自己完結多し

だそうです。原作見てから注意して書けば再現できそうですが
どう書くも作者さんの勝手ですんで戯れ言と流してもらっても。
235230:2006/01/16(月) 01:05:10 ID:VmK5HR1Z
>>232
うわ、度々スマン。
ただ1個だけ……アムロは相手を基本的に呼び捨てにする。
236それも名無しだ:2006/01/16(月) 03:27:30 ID:CdXsDxbo
>>235
スパロボアムロに毒され杉
237それも名無しだ:2006/01/17(火) 13:16:41 ID:vQ2edMVR
よし、ageるぞ
238ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/17(火) 17:23:10 ID:kc45vUmD
業務連絡です。

BYOND THE TIME…を更新しました。
スーパー携帯機ジェネレーションを更新しました。作者名を追加しました。
スパロボCを更新しました。

以下のリンクのサイト名を書き改めました。
正式サイト名…SOUGNE KARLINE'S REPORT
リンク先の管理人の要望により、正式名称と正式URLに書き改めました。
管理人さんには、大変ご迷惑をおかけしました。
なお、この管理人さんは2ちゃんねると二次創作には完全ノータッチの人です。
あくまでも、こちらから頭を下げてお願いしてF・S・Sとラーゼフォンの情報を提供していただいているのです。
書き手様も読み手様もそれぞれに、その事を重々承知いただけると非常に幸いです。

以下のリンクを追加しました。
アーマード・コア情報サイト ダンバイン情報サイト Z・O・E情報サイト
冥王計画ゼオライマー公式Webサイト

ロボットゲーム公式Webサイトを5件追加しました。

>>231常緑氏へ
通達について了解しました。

書き手の皆様、いつも大変にお疲れ様です。
冷害で野菜が高くなったりと何かと厳しい新年ですが、どうか幸がありますよう。

血迷って、先○者関連のリンクを貼ろうとして我に返って止めました。
ただでさえ混乱している地球園なのに、いらんことしいでリリーナ外務次官の頭痛と胃痛を悪化させるところでした。
今後、このような事のないように気をつけます。
239それも名無しだ:2006/01/17(火) 18:06:01 ID:gF8GGoaa
>>238
そのまま貼っちゃえばよかったのにw>>先○者関連

まあ乙
240ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/17(火) 18:47:10 ID:kc45vUmD
まとめサイト管理人も、本当はちょい書いてみたかったりします。
ですがまとめサイトでいっぱいいっぱいなので諦めています。
せめて妄想だけ脳汁に胆汁や先走り汁とその他色々な汁と一緒に垂れ流させて。

スーパーロボット大戦・絶叫

参戦作品
覚悟のススメ(原作漫画版)
強植装甲ガイバー(原作漫画版)
仮面ライダー(原作文庫漫画版)
キン肉マン(原作漫画版)
BAOH来訪者(原作漫画版)
聖戦士ダンバイン(テレビアニメ版)
機動武闘伝Gガンダム(テレビアニメ版)
ゲッターロボ大決戦!(PSゲーム)
マジンガーUSA(大型ムック本でしか語られていないマジンガー)
ゴジラ対ビオランテ(100%コミックス版)

こうして自分で見てみると、改めて物凄く無理がある組み合わせですな。
241それも名無しだ:2006/01/17(火) 19:04:10 ID:vQ2edMVR
ちょwwwおまwwwww
24216:2006/01/17(火) 19:07:06 ID:U8DQoxNn
>>238
更新ありがとうございます。作品をまとめるのは大変でしょうが、頑張ってください。
週末に書き上げられたらあげてみます。
243それも名無しだ:2006/01/17(火) 19:30:56 ID:5JERAc7P
>>238
乙です。
ちなみにリリーナ外務次官はタフな五歳の(美人のお姉さんが好きな)健全な幼稚園児でもあるので大丈夫ですよ
「あんた達がゲッターロボのパイロットか。俺は兜甲児だ。よろしくな。」
「ああ、俺は流竜馬。そしてこいつが神隼人、巴武蔵だ。」
「よろしくな。」
「ああ。」
 一通り、自己紹介が終わり、竜馬がマジンガーを見つめている。
「これが噂のマジンガーZか・・・」
「ああ、かっこいいだろ!」
 甲児が嬉しそうにマジンガーについて話し始める。
 しかし、竜馬の反応は甲児にとって気分の良いものではなかった。
「無敵のスーパーロボットと言われていても実際は空の敵にはてこずってしまうのか。」
「なんだと?どういう意味だよ?」
 マジンガーの悪口には敏感になる甲児。
 それが今、一番気になっている空の戦闘についてなら尚更である。
「リョウ、今の言い方はお前さんがイケねえぜ。」
「いや、悪気は無いんだ。怒らせてしまったんなら、すまない。」
「まあ、それなら良いんだけどよ・・・」
 ――大空を飛ぶ、それができたなら。
 今のマジンガーZに足りないもの、それは翼以外の何物でもない。

「私達、これからどうしたら良いのかしら?」
 少し気まずい空気が流れているのを察知したさやかは話題を変えることにした。
「ああ、それなら心配ない。もうすぐ俺達を運んできた飛行船が来るはずだ。
 甲児君たちはそれに乗ってくれ。」
「すまねえな、リョウ君。でもゲッターはどうするんだ。」
「それは心配ねえさ。なんてったっておいら達のゲッターは飛べるからな。」
「おい、武蔵!」
 デリカシーの無い発言に竜馬が口を尖らせる
「す、すまねえ、甲児。悪気はねえんだよ。」
「悪気は無いんだろ。なら良いって良いって。」
 とはいえやはり気になった甲児だった。
日本近海・海底要塞サルード
 Drヘル一味の幹部、あしゅら男爵の所有する海底要塞サルード。
 その暗い深海の中に佇む砦はいつになく外部の人間が入り、賑やかといえば賑やかな状態となっていた。
「ふむ。結局、デビル火刀もブロッケン伯爵も失敗に終わったか・・・」
 特徴的な長い鼻を持つ男、BF団B級エージェントオロシャのイワンが訝しげに呟く。
「貴様がそう嘆く必要もあるまい?
 我々は機械獣をネオブラック団に貸し出してまで協力したのだ。」
 半身が男、半身が女といった奇妙な姿のあしゅら男爵が 
 今回の作戦で表立って協力姿勢を見せなかったイワンに嫌味たらしく言う。
「我々の活動はまだ世間に知られてはいけないのでね。
 それに今回は情報収集にデビルウェーブ発生装置の用意と色々とやって来たのだ。」
「ふんっ、その情報も穴があったそうではないか。」
「貴様ら、何をつまらぬ事で喧嘩をしておる。」
 そこに恐竜帝国の科学長官ガリレイ長官が現われる。
「ほう、今回の作戦は三段構えの物・・・トリを勤めるのは恐竜帝国という訳か。」
「まあ、成功するかどうかはBF団の情報収集能力の正確さが決めてだがな。」
 不穏な空気の漂う中、四つの組織の共同作戦は着々と進められていた。
24638:2006/01/18(水) 02:56:21 ID:P2GPj17f
風邪で約三日ぐらい寝込んでました・・・
竜馬はTVアニメ版を意識してスパロボ版より
やんちゃにしようかなと思ってるんですがあんまりそこら辺出てませんね。

次回はとりあえず今までの登場したキャラが勢ぞろいします。

人数が増えると活躍させにくい・・・
247それも名無しだ:2006/01/18(水) 10:31:19 ID:eGqB8HTB
>>246
乙&GJ
大丈夫か?風邪。夜更かしして体壊すなよ?
毎日書かなきゃダメってわけじゃないんだからマイペースで書いてればおk
頑張ってくださいな
248ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/18(水) 12:02:36 ID:REd+RTtQ
業務連絡です。

スパロボC第二話「マジンガーZ対ゲッターロボ」を更新しました。

スーパー携帯機ジェネレーションをもう少し読みやすいように整理しました。
最初からこうすべきでしたが、色々あって今頃になってしまいました。
今まで申し訳ありませんでした。

トップページに貼り付けているリンクも、もう少し増えたら整理する予定です。
妄想のネタになりそうな情報サイトはそのままに、ロボゲー公式サイトを別のページにまとめます。

血迷って、真・女神転生シリーズ関連サイトのリンクを貼ろうとして我に返って止めました。
金子画伯のメタトロンは確かにロボっぽいですが、あくまで大天使でしたね。
他にもロボっぽいのとかマジにロボだったりとか改造教師オオツキとかありますが忘れたほうが身のためですね。

あと、アレ関連サイトを貼ってません。
例え、貼ってあって見えても辿り着けてもソレは幻覚です。
何があっても、まとめサイト管理人は決して絶対に責任を持ちません。

http://www7.atwiki.jp/srw-if/pages/1.html
249876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/18(水) 13:25:40 ID:qdh9uIHz
まとめさん乙です。
失礼ですが御要望をば。

三章と四章は、まとめてくっつけちゃってください。
宇宙編の話がブツ切りになっちゃってるので。
題名は三章のまま、月面邂逅編で。

お願い致します。
250それも名無しだ:2006/01/19(木) 02:47:22 ID:MisAGECg
とりあえずage
251 ◆XiLFbsY806 :2006/01/19(木) 23:01:03 ID:2S9BoQ9s
ようやく一話のメドがついたので日曜日にまとめて投下する。
 早乙女研究所に派遣された飛行船「ジャンヌ・ダルク」は
 Gアイランドシティ郊外の港を目指し東へと進んでいた。
 その飛行船の中では
「しかし、さっきは災難だったわよ・・・」
 機械獣に吊るされた事を思い出し、呟くボス。
「あれは置いていった俺も悪かった。すまねえな。」
 そんなボスに申し訳なさそうに甲児が謝る。
「まあ、甲児君も助けてくれたんだ。そんなに怒るなよ、ボス
 これでマジンガーチームの絆も深まっただろう。」
「ま、そういう事にしといてやるわよ、甲児。」
「へへっ、今度何か奢ってやるよ。」
 とまあ何気ない談笑が和やかに包んでいた。

 そこに隼人が現われる。
「どこに行っていたんだ、隼人?」
「なあに、あんまり和気藹々とした雰囲気は俺に馴染まないんでね。」
「なんだあの野郎、キザな奴。」
 ボスが露骨にムスッとした顔をする。
「ふっ、冗談だ、冗談。実はな、博士達に目的地の変更について説明を聞いてきた。」
「なんだって?なんでまたいきなり変更なんだよ。」
「まあ、良いから話を聞けって。
 本当は最初から目的地は俺達が教えられていた場所、
 宇宙警備保障本社近くの港じゃ無かったって事だ。
 これは両研究所の所長ぐらいしか知っている人間は居なかったそうだ。」
「そんな、お父様ったら私にも話してくれないなんて・・・」
「そこはそれ。敵を騙すにはまず味方からって奴さ、さやかさん。」
 甲児がさやかに気を使い声をかける。
「じゃあ、さっき俺を置いていったのも敵を騙す為だったのか、甲児?」
「まだ、根に持ってんのかよ。さっきから謝ってるだろ?」
 悪い気はしていたものの少々、甲児もうんざり気味だ。
「で、その本来の目的地は何処なんだ?」
 竜馬が話を元に戻す。
「ああ、なんて事はない。研究所に直接向かう。」
「なあんだ。それなら余計な手間が省けるだけなんじゃないか。」
 研究所に着けば休めると思い、自然と顔が綻ぶ武蔵。
「ところがだ、武蔵。さっきもマジンガーチームを
 Drヘルの一味が襲ったようにもしかしたら他の組織にも漏れていて
 俺達が聞かされていた目的地に敵が現われるかもしれん。」
「しかしよう、隼人。おいら達が最初に聞かされていた目的地の近くには
 宇宙警備保障の本社があるくらいで今からじゃ会社にゃ誰も残ってないだろ?
 人的被害は無いだろう。そんなに急がなくても良いんじゃないか?」
 武蔵が楽観的な態度で隼人に言い返す。
「俺達もここ数日は色々あって情報はあまり無かったが
 今日がワールドロボットコンテストの開催日なのは覚えてるだろ?」
 突然、隼人が話を切り替える。
「そうそう。本当なら俺様のボスボロットだって出場する予定だったのによ〜。
 あしゅらの野郎が連日襲ってくるもんだからこっちは対応に精一杯で。」
「ボス、そいつは言いすぎじゃないのか?」
「なにを?俺を置いていったくせに!」
「だからさっきから謝ってんだろ!」
 さすがに甲児も堪忍袋の尾が切れた。
「もう恥ずかしいでしょ。やめてよ。」

「まあ、知ってるならそれで良い。
 今日そこでネオブラック団という新組織と12年振りにヘテロダインが現われたらしい。」
「な、なんだってえ!?」
 さすがにこれには甲児達も喧嘩をやめる。
「それで、そいつらはどうなったんだ?」
「ああ、ネオブラック団は鉄人28号と新型の28号、アメリカのロボットが対処したらしい。
 ヘテロダインはダイガードが逃がす事に成功したらしい。」
「へえ、言っちゃ悪いがあのポンコツがねえ。」
 甲児が少し驚いた声をあげる。
 昔、どこかでその性能を見たが明らかにボスボロットよりマシ程度の性能だったからである。
「いや、どちらにもGGGが一枚噛んでいるという事らしいがな。」
「GGG?ってなんなんだよ、隼人?」
「おいおい、そんな事も知らなかったのか武蔵。今回の移行計画の発案下じゃないか。
 へえ、でもそれなら納得だ。いくらなんでも今のダイガードだけでヘテロダインは無理だろうからなあ。」
「とはいえ、元々はヘテロダイン用の戦闘兵器だ。実際、手助けもあまりいらなかったらしいからな。」
「で、それと目的地の変更に何の問題があるんだ?」
 竜馬がまた、それた話を元に戻す。
「ああ、そこで大量の避難民が出た。地元では救助が追いつかない。
 で、宇宙世紀警備保障で護送する事に決まったんだが、目的地が何処か分かるか?」
「もしかして、私達が聞かされていた目的地?」
 ミチルが答える。
「正解だ。ミチルさん、冴えてるな。
 まんまと騙されたどこかの組織が現われるかも知れない。
 そこで俺達の出番だ。研究所についたらすぐに戦えるように準備をしておくんだ。」
「ようし、そういう事ならいつでも発進できるように準備しておくぜ。」
 飛行船は進路を少し変えながらその速度は早まっていった。 
 
25438:2006/01/20(金) 03:02:16 ID:mbhdkKMZ
第三話インターミッション、ダイナミック編終了。
少し、隼人を喋らせすぎたかもしれないですね。こんなに喋るキャラじゃない様なきがしますし。

>>247
ありがとうございます。
食生活の乱れが原因で弱ってるらしいので以後気をつけます。
生活上、時間的には今ぐらいしか無く、
少しでも更新を怠ると自分の性格上、この企画を放っちゃうと思うのでやってます。
ヤバイと思ったら休息するので大丈夫です。
皆様にご心配かけないよう、頑張っていきますので。

>>まとめサイター様。
スパロボC第二話のインターミッション部分が抜けているので追加してください。
名前欄、描き間違えて分かりにくいと思いますが>>170です。
あと、毎回トリップつけようと思うのですが書き込んだ後に思い出して出来てません。以後気をつけます。

というかトリップが良く分からない・・・

次回はインターミッションその他編です。

255Eの残滓 第弐話:2006/01/21(土) 21:57:44 ID:9X0u4Txz
(第弐話−6)

 また彼自身もそんな『力』を恐れ、憎み、固く封印した。
 元々心優しいタケルである。他人に対して破滅的な危害を及ぼしかねない
それを憎むのは、ある種必然の流れでもあった。

 ……ただ、一つだけ、封印せずに残しておいた力もある。
「危険察知能力」である。
 所謂“虫の知らせ”というやつであるが、タケルのそれは恐ろしい程の精度を
持っており、自分及びその周囲に何かしらの災厄が降りかかろうとしている時は
必ずその能力が彼の脳内に“警報”を発してくれた。
 実際、タケルは自身はもちろん、両親や友人を何度かこの能力で救っている。


 その彼の危険察知能力が、今、過去最大級の警報を発していた。


 数日前までほんの胸騒ぎに過ぎなかったそれは、日を追う毎に膨らみ始め、
今朝から強烈な眩暈と吐き気となってタケルを揺さぶっていた。

 ―――今日、必ず何かが起こる。恐ろしく良くない何かが―――


「タケル… 本当に気分が優れないのなら、今回は乗るな。
 ナオトの言う事は正しい、お前がその調子では本当にチーム全員が
 被害を被るのだからな」
 気が付くと、眼前にケンジが立っていた。

 自分が乗らなくとも、ケンジ達が災厄を被るのは明白である。
 かといって『スゴく厭な予感がしますからみんなでボイコットしましょう』、
などと馬鹿な事を言えるわけがない。
 何より正義感と使命感の強いタケルが、そんな言葉を吐くわけがなかった。

「大丈夫です。いけます」
 込み上がる胃液を無理矢理胃に押し戻し、今自分が作る事の出来る最大限の
凛々しい表情と声で、タケルは答えた。

 ―――大丈夫だ。
 今日まで厳しい訓練に耐えてきたんだ。
 それに俺には、こんなにも頼れる仲間がいる。
 どんな困難だって乗り越えてみせる。
 そして………………いざとなれば、俺は『力』を解放してみせる。
 みんなを救う為ならば、
 この忌まわしい『力』だって使ってみせる―――!!



 この数十分後、コスモクラッシャー隊に初の実戦配備命令が下される事を、
まだ彼等は知る由も無い。

 ましてやその相手が、ヒトの常識を遙かに逸脱した怪物である事など。

(第弐話 了)
256それも名無しだ:2006/01/21(土) 21:59:40 ID:9X0u4Txz
長らく中断していた第弐話、とりあえず完了です。
後でレス追加します。
257常緑:2006/01/22(日) 16:45:35 ID:21lyOhgx
−ロボゲーSSまとめサイターさんへ−

先日お話しました、改行幅・行幅を調整し若干の内容修正も加えた
第壱話・第弐話のテキストファイルをお送りします。
 第壱話 ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1141.txt.html
 第弐話 ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1142.txt.html  DLKey:srw

本当はDLkeyなど設けたくないのですが、最近はどのロダもkey無しじゃ
使わせてもらえないようなのでやむなく設定。お手数お掛けします。m(_)m
(key無しで使え、なおかつログの流れにくいロダって無いものでしょうか…)


本来第弐話に登場させる予定だったものの、思うところ有って先送りする事になった忍。
第参話でようやく登場予定です(まだ獣戦機は登場しませんが…)。
今のところ第四話〜第伍話でドモン、そしてシンジを描き、第六話で使徒襲来〜ガイヤー覚醒。
何話か掛けてサキエル戦を描いた後、舞台を一度宇宙に移してドラグナー、レイズナー絡みの話を
書こうかと思っております。
258 ◆XiLFbsY806 :2006/01/23(月) 00:17:35 ID:OjQeEz+w
イデが・・・文章が消えました・・・欝だ。

前置きと戦闘シーン後半しか残ってないorz
259それも名無しだ:2006/01/23(月) 08:13:15 ID:sOZMP2zt
>>258
カワイソスwイデの怒りに触れたのかw
頑張って書いてくれよ
26016:2006/01/23(月) 20:43:36 ID:TNBr9vEh
どうも、16です。
先週忙しくて、入りしか書けませんでした…。
暇が出来たら、頑張って書き上げますのでよろしくお願いします。
261それも名無しだ:2006/01/24(火) 07:40:14 ID:CQa6e27Q
>>258
イデの怒りに触れるってw
何したんだよw
262それも名無しだ:2006/01/24(火) 16:08:30 ID:Q9DU2FBx
>>258
ガンバレー。 

俺もクォヴレーとデス種世界メインでメモ帳にでも話書いてみるか・・・。
263それも名無しだ:2006/01/24(火) 20:37:27 ID:wdy29/kH
>>258
前にもこんな事を見たような・・・
264それも名無しだ:2006/01/24(火) 22:54:46 ID:BuerF/UM
>>263
 奇遇だな、確かエロパロ板じゃなかったか?
265それも名無しだ:2006/01/25(水) 10:15:35 ID:KAtGUrtb
>>264
そこは某所って言うんだぜ、Dボゥイ?
266それも名無しだ:2006/01/25(水) 16:45:30 ID:ClyCJErb
えーと、
エロパロスレ→スパロワスレ→ここ
の順にイデは発動してるな
ここ活気あんなー
805でいいからロワスレに分けてほしいよ
267それも名無しだ:2006/01/25(水) 21:03:55 ID:OhbgZVWF
ageてみるか
268それも名無しだ:2006/01/27(金) 17:42:38 ID:/XwLo5Gs
最近更新されてないな。どうしたんだ?
269Eの残滓 第参話−1:2006/01/28(土) 03:16:49 ID:p/S9/77c

 厚い雲間を抜けると、真っ青な海原が視界を覆い尽くした。

 セカンドインパクトの影響で歪められた地軸。
 その影響で、かつて四季のあったこの国は、今では亜熱帯気候に属する
常夏の国と化している。
 眼下に広がる海が、その南国の西日を受けて光り輝く。


「もうすぐ陸が見えてくるぞ」
「…あぁ」
 気さくに語りかける同僚に、男は怠そうな声で答えた。
「何だよ、素っ気ない野郎だな。久々の生まれ故郷だ、少しは嬉しいんだろ?」
「知らねーよ」
「もしかして、柄にもなく照れてるとかか? フジワラ少尉殿」
「いちいちウゼェんだよ。…シメんぞ」
 元々切れ長の目を更に鋭く吊り上がらせて、男は同僚を睨み付けた。

 “照れる”だァ? 笑わせんな。
 この国に、照れたくなるような良い思い出なんざ何一つ無ェ。
 そう、何一つとしてな―――。

 そう心の中で呟く藤原 忍の眼前に、
突如、異様な光景が広がった。

「…………………………何だありゃ…?!」
270それも名無しだ:2006/01/28(土) 03:19:10 ID:p/S9/77c

 海岸線に面した道路を数kmに及び隙間無く埋め尽くす、連邦軍の戦車の群れ。
 その更に後方では、双肩に長大なキャノン砲を担いだ中長距離重砲支援MS・
トラゴスが防風林からその砲身を覗かせている。
 その数は、ざっと百数十機にも及ぶだろうか。
 これだけの数を揃えようと思ったら、関東中の駐留部隊だけでは賄いきれない筈であった。

 ギガノス軍との開戦以来、連邦のMS乗りとして幾多の戦場を渡り歩いた忍である。
大規模な戦闘も幾つか経験してはいたが、それでもここまで大袈裟な迎撃体制は
見たことが無かった。
 仮にギガノス軍の二個師団が攻めてきたとて、ここまで大それた出迎えはしないだろう。
 いや、それ以前に、中東・欧州地域を中心に戦線を分散展開するギガノスが
今頃こんな辺境の島国に大挙して押し寄せるような事自体が考え辛い。

 ビッグファイア戦争以降、他の先進国に先駆け、一種異常とも言える早さで
復興を遂げた日本ではあるが、彼等がこの国の周辺で本格的な軍事行為を行った
事は今まで一度も無かった。
 彼等の標的は目下最大の敵である連邦政府及びその後ろ盾たるロームフェラ
財団であり、それらの息の掛かっていないこの国は開戦当初から“蚊帳の外”と
囁かれてきたのだ。
 …そもそも、本気で侵攻する気が有ったのなら、わざわざ大部隊など投入する
前にマスドライバーの一発や二発でも落としておけば楽な話である。


一体、何と戦おうってんだ、コイツ等は?―――

眼下に流れるその異様な光景を見ながら、忍は心の中で呟いた。


彼等を乗せた輸送機は、御殿場駐屯地到着まであと十数分の所まで来ていた。
271常緑:2006/01/28(土) 03:21:19 ID:p/S9/77c
すみません、>>270は第参話−2です。

遅レスだけど>>258ドンマイ。イデ恐ろしや…
確かに最近活気がないですね。まあ年始の仕事が忙しくなってくる時期なんで
仕方ないと言えば仕方ないでしょうが。

今夜は取り敢えずここまで。出来れば明日続きを投下したいですね。
「いよう、ジョシュア。お疲れ」
「お疲れ様です、ウリバタケさん」
格納庫、戦闘から帰還したガナドゥールを整備ベッドに固定した。
ノーマルスーツは蒸れる。エステバリスの予備用とはいえ、普通の服と比べたらなおさらだ。暑いなぁと思いつつ、機体のチェックを開始する。
「ジョシュア、チェックなら整備班でやっとくぜ。パイロットはブリッジに集合だとよ」
「そうなんですか?解りました、ありがとうございます」

「全員揃いましたか?」
ブリッジ。ブリッジクルーとエステバリスのパイロット、そしてジョシュア・ラドクリフとラミア・ラヴレス、カルヴィナ・クーランジュとメルア・メルナ・メイアが集合していた。
「艦長。ここで何を?」
「まだ皆さんにしっかりとした紹介をしてませんでしたから、自己紹介をしてもらいたいと思います」
「自己紹介?まぁいいけど…」
「お疲れの所すみません。でも次の戦闘まで
こういった機会が取れるかわからないので…」
「そう………で、誰から?」
カルヴィナは手を組み、壁に背をもたれている。ユリカは、んー、と思案すると、
「まずパイロットの皆さんからお願いしたいと思います。
じゃあ…五十音順で、カルヴィナさん、いいですか?」
はぁ…と溜め息をついて今もたれかけた壁から背を離した。


「カルヴィナ・クーランジュよ。戦技教官としてこっちに来てるけど、
艦載機動兵器隊の隊長ってことになるのかしら?」
「ジョシュア・ラドクリフ、傭兵だ。地球の南極に居たんだが、
何故か宇宙空間に放り出されていた。よろしく頼む」
「えと、メルア・メルナ・メイアです。カルヴィナさんの機体に同乗して、機体制御とかをやってます。
好きな食べ物はチョコパフェとー「…メルア」…は、はい。えと、よろしくお願いします」
「…ラミア・ラヴレス、アナハイムの試作特機のテストパイロットだったりしますことよ」
「えっと、艦長のミスマル・ユリカです。ぶいっ!」
「…副長のアオイ・ジュンです」
「コックのテンカワ・アキトっす」
「ダイゴウジ・ガイだ!スペースガンガーに乗ってるっ!」
「本名は、ヤマダ・ジロウ。スペースガンガーじゃなくてエステバリス」
「うるさい!」
「それから前に座ってるのが、右から操舵士のミナトさん。真ん中がオペレータのルリちゃん。左が通信士のメグミちゃんです」
ミナトとメグミはそれぞれ後ろを向いて会釈をしたが、ルリは見向きもしなかった。



「それで艦長、これからどうするんだ?」
俺としては一刻も早く、地球に戻りたい。
何故閉ざされたのか……。解らないことが多すぎる。
「本艦はスキャパレリ・プロジェクトを成功させるため、火星に向かいます」
「スキャパレリ・プロジェクト?」
(聞いたことがないな……こちらではナデシコは軍用艦ではなく、ネルガルの私艦というのも気にかかる)
ラミアが腕組みしてとことんいぶかしそうな顔で艦長を見ている。
「はい!火星のテラフォーミングのお陰で火星には若干の居住者がいたのですが、木星トカゲの侵攻のために連絡が途絶してしまったんです」
「それで火星住民の生き残りを月まで護送、ついでに火星のをレポートをするのですな。経済的効果は無視ですが」
アンタ誰だ。
「申し遅れました。私、ナデシコの会計監査役のプロスペクターと申します?」
「ふぅん……で、プロスペクターさん。ネルガルの本当の目的は?」
「カルヴィナさん、目的って今言ったのじゃないのか?」
「軽々しくカルヴィナって呼ばないで。クーランジュ教官とでもつけなさい」
おお、怖。
プロスペクターはしたり顔で語りだす。
「まぁいいでしょう。話します。
スキャパレリ・プロジェクトは、火星に残されたネルガルの研究施設から、データを持ち出すことです。ナデシコの超技術のほとんども、そこで開発されたもの。ならば敵の手に渡す道理はない」
「やっぱり。アシュアリーに居たときからネルガルの火星開発関連の噂は聞いてたけど」
「ご慧眼、恐れ入ります」


「ふぅ、…火星ね」
「お前は地球に帰りたいのではなかったのか?妹が心配だとか」
食堂、テーブルの上にはラーメン定食が二つむかい合わせに、ラミアと俺の分が乗っていた。
「だけど、多分仕方無い気もするんだ。地球がああなっちまった理由。探らなきゃならないんだけど、一人じゃどうしようもない。
お、このラーメン美味いな」
「……だが、地球が消えたままで、何故火星に向かうなどと」
(あるいは、もっと重要な任務が?)
「おそらく、別の理由はあるでしょうね」
「んむ…カルヴィナさんか」
「クーランジュ教官でしょう、ジョシュア・ラドクリフ。いくら正規の軍艦ではなく、階級なんか無いにしても、やっぱりそういうモノは大事なのよ。まぁタメ語でも構わないけどね」
(確にな。命令系統のなってない組織ほど瓦解するのは早い)
「俺は傭兵だからなぁ。戦闘以外ならさん付けで構わんと思うが。まぁ、気を付けるよ。クーランジュ教官。
それで?別の見解があるのか?」
「まぁね。多分、技術関係よ。それを手にしたらトカゲとの戦争に有利に働くような。
だから今の時期誰にも見向きされない火星へ行くのでは?連邦やネオジオンに戦艦ごととっ捕まらないように」
後から知ったのだが、ネオジオンと連邦の宇宙統合軍はこの事態に対し手を組み対応することにしたらしい。
カルヴィナは俺の隣にチャーハンセットを置いて座った。
「……まぁなるようになるさ。クーランジュ教官、ウリバタケ技術主任が機体のスペックのデータを模擬戦シミュレータに入れといてくれたらしい。確認がてら後から模擬戦をやろう」
「ん、解った。一つ揉んでやるわよ」
「ラミア、お前もやるだろ?テンカワとダイゴウジも呼んでリーグ戦でもやるか。ビリが何か奢るってことで」
「……わかった」



「アムロ、軍の方から電文が」
「ん、ありがとうチェーン…ふむ………なに?ナデシコを追え、だと………?………コルベットのヤツか……」
275876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/28(土) 15:53:29 ID:P0VNWgwt
月面邂逅編インターミッションやっとできた……弥七です。
ほんと疲れた……。忙しくてしばらくこれなかったので久々の続きになります。
さて勉強しないと…orz
276それも名無しだ:2006/01/28(土) 16:55:46 ID:7ptg73AB
常緑さんも弥七朗さんも久々の投稿乙&GJであります

別に毎日載せろってわけじゃないんですから好きに書いてください
ただあんまり音沙汰がないのも不安なので作品を投稿しなくても
週一くらいで近況報告とかしてくれると読み手としては嬉しいです
277それも名無しだ:2006/01/29(日) 00:04:04 ID:XdMgA4jn
ここでリレー小説やるのってあり?
3人ぐらいでやりゃあなかなかいいのができると思うが
278それも名無しだ:2006/01/29(日) 00:09:10 ID:J9b/xbP1
>>277
駄目じゃないとは思うが、

【リレー】スーパーロボット大戦【小説】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1134354939/
というスレもある。大したことやってないからそっちを乗っ取れ。
279それも名無しだ:2006/01/29(日) 00:53:40 ID:A1ttDid6
ココって誰でも書き込めれるの?
280それも名無しだ:2006/01/29(日) 02:04:30 ID:8Hav6R6T
>>279
おk。ネタがあるならドンと来い
281108:2006/01/29(日) 05:24:05 ID:BiGjGEPC
かなり遅くなってすまん。>>108だ。
というわけで、「スーパーロボット大戦MX〜そして、再会の日〜」第1話を。

第1話 3年越しに、出会える時

宇宙歴90年5月27日、13時42分…
地球連邦軍独立特機部隊マグネイト・テン、メディウス・ロクス、及びAI1の撃破を確認…

世界は、ラ・ムーの星によるドゥーリットル作戦の強制発動により、破滅の寸前を迎えていた。
しかし、それを救ったのがマグネイト・テンだった。
そして、ヨロテオトルへと至った綾人が「時の観測者」となることにより、
世界は非常に不安定ながらも残ることになった。

こうして、後に「調律戦争」と呼ばれる戦いは終わりを告げた。
元マグネイト・テンのクルー達も、それぞれの道を歩み始めた…

あれから3年…
宇宙歴93年5月………

「…今日はこれで終わりですね」
戦争終結後、ナデシコCはヒサゴプラン再建のため、木星にいた。
ブリッジには、1人しかいなかった。
それは、この艦の艦長である地球連邦宇宙軍中佐、ホシノ・ルリだった。
調律戦争を終結させた功績で、昇進したのである。
「…あれから、もう3年も経ったんですね…」
ルリは、艦長席に置いてあったアキトとユリカの写真を眺めながらつぶやいた。
と、しばらくすると、突然不意にブリッジの扉が開いた。
「タカスギ少佐〜! 手伝って下さいよ〜!!」
「だーめ。男だったらしっかりやること成し遂げるの!もう14だろお前も、マ・キ・ビ・中尉?」
「そんな呼び方しないでくださいよ!!」
漫才を演じながら入ってきたのは、ナデシコC副長のタカスギ・サブロウタと
同じく副長補佐のマキビ・ハリだった。
「………」
ルリが小さくほほえむと、再びブリッジの扉が開いた。
「相変わらずだな、お前らも」
「本当に。調律戦争の時と変わらないわね」
入ってきたのは、木星行きを志願し、ナデシコCに乗艦したジュドー・アーシタとルー・ルカだった。
「変わらない…だけど、人は変わっていくものです。変わらなきゃ……そこから踏み出せませんから」
ルリが言った。
「でも、会いたいね、またみんなと」
いつブリッジに入ってきたのか、やはりジュドーと共に参加したエルピー・プルが言った。
それを聞いたルリは、何かを思いついた様子で、こう言った。
「じゃあ、会いましょう」
「…え?」
その場にいた全員が、異口同音に言った。
しかし、ルリはこう続けた。
「だから、会うんです。……同窓会、開きます」
282108:2006/01/29(日) 05:25:39 ID:BiGjGEPC

      *

フリード星。
ベガトロン放射能により、汚染され尽くしたと思われていたが、
実際は緑が蘇りつつあった。
そして、デューク・フリードは再建のため、母星・フリード星へと戻ってきていたのである。
その再建を手伝うために、ロム・ストールをはじめとするマシンロボ達も来ていた。
(…ルビーナ、フリード星はまもなく蘇る……だから、君は安心してくれ…)
デュークは、調律戦争中に昔の婚約者であったルビーナを自分の不注意で死なせてしまっていた。
しかし彼女は、春が来るたびに赤い花となり、デュークの元へと来るのだ。
そう思い返し、しばらく空を見上げていた。
「兄さん! だらけてる暇があったらこっちも手伝ってよ!」
「…あ、すまない…」
妹のマリアに呼ばれ、慌ててそちらのほうへと向かっていってしまった。
「…昔のままね」
「ああ…あの戦いが終わって3年も経ったが…最近の事のように思える…」
そこを見ながら、もう1組の兄妹----ロムとレイナが言った。
「ロムさんもこっちに来て手伝ってください!」
やはりマリアに呼ばれて、そちらへと向かっていった。
そのまま仕事をしている最中に、マリアがつぶやいた。
「…みんなにまた会いたいな…」
「………」
「だから、みんなと早くまた会えることができるように、早く復興を進めなくちゃ!」
「ああ、早く甲児君やひかるさんを呼べるように…」
そして同調するようにデュークも言った。
すると、いきなり何かを手に持って走ってくる影があった。
…ドリルだった。
「もう、仕事サボッてどこに行ってたのよ!」
「ごめんよ、レイナちゃん。だけど、こんなものが…」
手渡されたのは手紙だった。
しかも、それぞれに宛てて1枚1枚…
「…差出人は…ホシノ艦長…?」
283108:2006/01/29(日) 05:26:58 ID:BiGjGEPC

      *

「ったく、いつまでボケーっとしてるのよ、バカシンジ!今日はこの仕事を手伝ってもらわないといけないんだから!」
「そんなこと言われたって、僕にだって都合ってものはあるよ!」
「バカシンジのくせに、あたしに口答えする気ぃ!?」
第3新東京市内の高校。
結局、碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、鈴原トウジ、相田ケンスケ、洞木ヒカリは
全員同じクラスとなっていた。
「腐れ縁…って奴やなぁ」
「本当にね。あの2人も全然進展してないし」
「「だ、誰がっ!!」」
トウジとヒカリが突っ込んだが、2人は全否定であった。
「だから、そうやって一生懸命否定するところがますます怪しいんだよ」
ケンスケも続けて言った。
「だ、だから、違うわよ!誰がこんな…」
しかし、当のシンジは、違うことを考えていた。
(…AI1を倒して、綾人さんが残って…だから、今の僕たちがいるんだよな…)
(もしも、綾人さんがいなかったら、こうしてみんなでケンカもできなかった…)
(そして、綾波もカヲル君も、きっとどこかの世界で生きてるんだ…)
「………なバカシンジと付き合う必要があるのよっ!!」
しかし、当の話を全く聞いていなかったシンジは、アスカが何を言っているのか分からずにいた。
「僕がどうかしたの?」
「どうかしたのじゃないわよ! 話は聞いておきなさいよっ!!」
それでも、シンジの心はここにあらずだった。
今、仲間と存在できる理由を確かめながら…
「そや、シンジも惣流もあの手紙届いたか?」
「え?ええ…」
「あの…ホシノ艦長からの…手紙だよね…?」
284108:2006/01/29(日) 05:27:55 ID:BiGjGEPC

      *

「ふーっ、今日も疲れた…」
「ああ…乙女も今年から小学生で…俺たちは今年は受験生で…」
話しながら家に帰っているのは、出雲銀河と草薙北斗の2人だった。
「…受験、か…もうそんなに経ったんだ…調律戦争から…」
北斗がつぶやくと、それに応えるように銀河も言った。
「3年も経ったのか…。こないだ終わったと思ってたのに…」
「時間ってあっという間だもんね」
こう言ったのは北斗ではない。
「「エリスう!?」」
いつからいたのかは分からないが、エリス・ウィラメットまで一緒にいた。
「エリス…いつから…」
「『もうそんなに経ったんだ…調律戦争から…』のあたり」
「あ〜そ〜ですか…」
呆れ気味に銀河がつぶやいた。
そのまま、何故か3人は近くの河原へと来ていた。
しばらく座り込んでぼーっとしていたが、いきなり北斗が口を開いた。
「ねえ…AI1倒して…あれで終わりじゃなかったんだよね…」
いきなりの話にしばらく無言になってしまう2人。と、話を続けたのは銀河だった。
「そっか…もし綾人さんがいなかったら…あそこに閉じこめられっぱなしでお終いだったんだよな…」
エリスも続けた。
「そうか…私たちが今こうしていられるのも…綾人さんのおかげなのね…」
「うん。きっと綾人さんは僕たちの世界を見守ってくれてるんだよ」
「だな!」「そうね!」
こうして再び家路へとついていった。

「じゃあな、北斗!」
「うん、また明日ね!」
互いの家に着いた時、銀河はあの日の状況を重ね合わせていた。
(…よく分からないまま電童に乗せられて…そんでネェル・アーガマに乗せられて…あの時も、こう言って別れたっけな…)
そうして彼は、おもむろにポストを開けた。
「…あれ?俺宛てだ…差出人は…ホシノ艦長…!?」

ちょっと色々な事情が重なってここまでしか書けなかった。
1時間半かかった…まあ、何とか頑張るから楽しみにしててくれ。
285常緑:2006/01/29(日) 13:40:13 ID:/7r6thYL
>>276
了解しました。土日・祝日には毎回何らかの報告をしようかと思います。

また少しずつ活気が戻ってきて嬉しいです。弥七朗さんも108さんもGJ!
読んでいただいてる方々も、どうぞ遠慮無くレス付けてここを盛り上げてやって下さいね。


リレー形式は非常に面白そうだけど、今ここで連載されている作品については
作者各々の頭の中に確固たるストーリーボードというかイメージが出来上がっちゃってる
と思うのでやり辛いと思う。参加者も元ネタ提供者も。
>>278氏の言うとおり、気が向いたら自由に
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1134354939/のスレに行って
途中参加するなり新規に始めるなりし、状況に応じてこのスレで参加者を募ってみる、
という感じがベストでしょうね。


昨日は第参話の続きそっちのけでこんなの↓書いてました。
ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1173.txt.html (keyはメル欄)
何やってんの俺。
286それも名無しだ:2006/01/29(日) 18:11:31 ID:gcFM4h3O
期待age
287876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/01/29(日) 18:56:14 ID:s1TOlKB0
弥七、了解です。暇があれば近況報告したいと思います。
ただまぁ自分語りウザイ言われたし…あんまり作品以外で書き込むのを躊躇ったりします。
以下近況報告(見方によっては十中八九は自分語りかと)








火曜から後期試験で、しかも生徒自治会の副会長に当選しちゃって、
自分の生涯かつてないほどの忙しさだったりする大学生なヤシチローです。
次回作も大分遅れてしまいそうです。暇を見て書きますけど……あぁ、頭痛い……orz
288ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/01/29(日) 21:04:30 ID:iH0sQLL0
まとめサイト管理人です。
ごめんなさい、色々あって更新が遅れています。
書き手の方々、読み手の方々、大変に申し訳ございません。
289それも名無しだ:2006/01/30(月) 08:24:33 ID:a/GaOPMU
作家さんもまとめ管理人さんもお疲れ様です。いつも楽しんで見させてもらっております。
近況報告に関しては俺も賛成です。ただ頻繁だとウザがられるでしょうし、間が開くと不安なので4〜5日間隔、投下前日くらいが妥当でしょう。
また何も知らない人間が『自分語りウザイ』と言い出した時のためのフォローも必要でしょう。これは俺達スレ住人が意識していけば大丈夫だと思います。
気が早いかもしれませんが、次スレには『近況報告は自分語りではないので非難しないように』等といったテンプレ項目も必要かと。
以上、自治厨になってしまいましたが、自分の見解と提案を述べさせてもらいました。ではこれにて失礼させていただきます。
290それも名無しだ:2006/01/30(月) 19:47:28 ID:+igS+8X9
>>289
そんなんテンプレに入れたら余計荒れそうな気がするけどな
291それも名無しだ:2006/01/31(火) 22:01:19 ID:YBtZ4kEa
ゲッター全部参戦を無理矢理実現する展開を考えてみた。
ゲッターロボ
ゲッターロボG
真ゲッターロボ(原作漫画版)
真(チェンジ!!)ゲッターロボ〜世界最後の日〜
真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ

最初はアニメ版初期のゲッターチーム。序盤で連邦軍でのゲッターロボ運用計画がスタートし、ネオの新ゲッターチームが
軍が開発したネオゲッターに乗って参戦。
その後旧ゲッターとネオゲッターの戦闘データから早乙女博士がゲッターロボGを開発。そこに恐竜帝国が襲撃するが、
武蔵が旧ゲッターで自爆してゲッターG出撃のチャンスを与える。旧チームがゲッターGに乗り換える。
中盤、恐竜帝国との最終決戦を前に各研究所の博士、所長などが協力して、決戦用兵器真ゲッターロボを開発する。
真ゲッターにネオゲのゲッターチームが乗り換え、恐竜帝国との最終決戦に挑む。無敵戦艦ダイを倒したあと帝王ゴールが
オーバーテクノロジーを使って巨大化。しかし真ゲッターが覚醒し、神ゲッターへと一時的に進化。その圧倒的な力で
ゴールを倒し、恐竜帝国に勝利する。
その後、宇宙から蟲とも機械ともつかない敵が飛来する。「ゲッターを破壊しろ」と。蟲の襲来は一度だけでなく、来るたびに
数が増え続け、ついに蟲の大群が宇宙から侵攻してきた。さらにミケーネ帝国が軍が進めていたゲッターG量産計画の量産型
ゲッターGの設計図を奪取。大気圏付近の宇宙で蟲とスーパーロボット達が戦っている所に、大量の量産型ゲッターGが敵として現れる。
絶望的な状況の中、蟲の大群を指揮するギィムバグ軍曹の映像が現れ、竜馬達にゲッターが破壊する未来の宇宙を見せる。
その未来を見て唖然とする竜馬の乗るゲッタードラゴンに蟲達が総攻撃をかけ、ドラゴンは大破、大気圏へと落下していく。
ドラゴンが落下する中、ゲッター線に取り込まれた武蔵が現れ、「未来は自分達で造るんだ。」と竜馬たちに告げる。
今見せられた未来とは違う未来を造ることを決心した竜馬。その竜馬の意思に量産型ゲッターGの炉心が反応、ゲッターGたちは暴走し、
落下するドラゴンを追う。そして竜馬たちの乗るドラゴンを中心にゲッターGが融合、真ドラゴンとして復活する。
真ゲッターに乗る号虎達と真ドラゴンに乗る竜馬達は自分達で未来を切り開くため、蟲たちと最終決戦をする。

コピペスマソ
他のスレで書いたらここにコピペしてみろと言われた。
292それも名無しだ:2006/01/31(火) 22:43:19 ID:3wc3UFJh
>>291
ネオゲチームが真ゲッター乗るってことはチェンゲチームは出てこないってことっすか?
293それも名無しだ:2006/01/31(火) 23:06:58 ID:YBtZ4kEa
>>292
チェンゲチームは生い立ちなどを大幅に改変しなければならないので入れられなかった。
294それも名無しだ:2006/02/01(水) 00:52:08 ID:CylzZVfM
>>293
アニメ版と漫画版を混合する時点で生い立ちをかなり変更してるだろ。
殺人空手マンとサッカー部キャプテンとか。親父の生死とか。

気にせずチェンゲも混ぜれば?
295293:2006/02/01(水) 01:45:33 ID:c7qjN2B5
>>294
漫画版真ゲを出したのは蟲を敵として出したいからであって竜馬達の性格は
アニメ版という設定で書いたんだ。それとチェンゲはこの内容だと入れる場所が
思いつかなかった。同じ名前の人間が二人居るとややこしくなるし。
296それも名無しだ:2006/02/03(金) 00:22:20 ID:JNfMJ/ER
なにこの過疎スレは
297876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/02/05(日) 09:04:19 ID:O/5irXAh
近況報告。
あいっかわらず忙しい弥七です。
死んじゃいないんでぼちぼち書いてはいますが…
次回はかなーり先の話になりそうです。

まとめさんへ
http://aw0015.hp.infoseek.co.jp/index.html#index
GXのセリフ集があるサイトです。リンクには無い…はず。うん、リンクに加えて下さい。
298それも名無しだ:2006/02/05(日) 12:03:04 ID:Shu9h+8w
過疎ってるから俺も何か書こうかな
別に長編じゃなくてもいいんだよね?
299それも名無しだ:2006/02/05(日) 15:22:57 ID:iJG6ANFR
>>298
書く時間&気力があるうちにどうぞ
個人的には裏話的なサイドストーリーのが好きだったりするし
300ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/02/05(日) 22:33:16 ID:0doNrim2
業務連絡です。

ようやく、まとめサイト更新が出来ました。遅くなってしまって申し訳ありませんでした。

以下のLINKを追加しました。

GundamX-Portal
大概の問題は、コーヒー一杯飲んでいる間に、心の中で解決するものだ。
あとはそれを、実行出来るかどうかだ。
このサイトの管理人も大好きなガンダムXの様々な情報があふれてるポータルサイト。


以下の作品を修正または追加しました。

スーパー携帯機ジェネレーション 作者:876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY氏
作者の要望によりそれまでの三章と四章を一つに、三章としてまとめました。
ありがとうございました、お疲れ様です。

スーパーロボット大戦Cクロスオーバー(スパロボC)

作者からの指摘要望により第一話「憧れのヒーロー」の抜けていた部分を追加、修正しました。
ありがとうございました。
第三話「夜のGアイランド大攻防戦」スタート、追加しました。お疲れ様です。 

『Eの残滓』作者:常緑氏
作者の要望により、第壱話と第弐話を指摘に従って修正しました。
何故かわかりませんが、赤い囲いが出来てカッコよく見えるようになりました。
情けない事にサイト管理人は何がどうしてこうなったのか全く理解できていません。
ありがとうございました。
第参話スタート、追加しました。
お疲れ様です。

スーパーロボット大戦MX〜そして、再会の日〜
新しい風が吹き始めました。
第一話 3年越しに、出会える時 を追加しました。
なかなか無い後日談もの、これからに管理人自身かなり期待しています。
ありがとうございました、お疲れ様です。

血迷ってモン○ターファームの公式サイトをリンクに追加しようとして我にかえって止めました。
確かに育成対象のモンスターにメカはいますが、決してロボットゲームではありませんね。


追伸
まとめサイト管理人は、ガンダムXが大好きです。DVDボックスを所有しております。
疲れている時にぼーっと観てると癒されます。個人的に「センスのいい」ロボットアニメだと思っています。
そのガンダムXのポータルサイトを教えていただいた事、とても嬉しく思っております。
ありがとうございました。
301常緑:2006/02/05(日) 23:59:25 ID:WrZ+CUFb
皆様お疲れ様です、常緑です。
結局今週は一文字も書き進められませんでした……スミマセン

>>298
是非気兼ねなく投稿して下さい。むしろ短編の方がオススメ。
長編はその性質上、ホントに自分の書きたい場面・テーマまで中々辿り着けず、
作者も読者も途中でダレてしまいがちですから……(つД`)

>>300
いつもお疲れ様です。修正の件、ありがとうございました。
第参話についても終了次第、修正版ファイルを貼らせていただこうと思っていますので、
お手数ですがまた宜しくお願いします。
赤い囲については私も謎です。


忍と戦自隊員の喧嘩、タケル達のやりとり、ドモン、シンジの登場……
そこまで書いてようやく物語のプロローグが完了予定。
……期末決算前に終わるかしらん。
302それも名無しだ:2006/02/06(月) 07:54:07 ID:NFOm9x1h
職人の皆さんお疲れ様です
保守
303それも名無しだ:2006/02/09(木) 19:23:48 ID:lAuAqCZS
ほすあげ
304それも名無しだ:2006/02/11(土) 14:09:54 ID:Zc9o780g
なんか書きたいけどネタがない
誰か一発ネタのシチュエーション提供してくれ
305それも名無しだ:2006/02/11(土) 15:49:24 ID:oX+0TA+w
>>304
BF団、ヌビア、晴明(神のほうがいいか?)対自軍の戦いとかどうよ?
306それも名無しだ:2006/02/11(土) 17:52:59 ID:Zc9o780g
>>305
ヌビアもBF団も俺には結局何がしたかったのかよくわからんのよ(´・ω・`)
晴明って新ゲッターだっけ?新ゲまだ見てないからこれまたわからん…
ヘタレでごめんなさい。他にない?
〇〇と〇〇の絡みがあったらな〜とか
307ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/02/11(土) 21:14:54 ID:vPK/4UhW
>>306

何も無理に「アニメ」「スーパーロボット」にこだわる必要はないと思います。
むしろ、ゲーム(というか実際のスパロボ)で出来そうもないのをやるのが面白いかと。
例えば、ごく当たり前に勇者系がいたりとかボトムズ世界だったりとか。
もしくはふつーのシナリオじゃなくて悪役やダークヒーローが次々と主人公格を倒すのも面白いかも。
バーン・バニングスがたった一人でショウ・ザマやアムロを倒して憎悪の果てに虚しい勝利エンドの物語とか。
ガンダムだって、アニメ版じゃなくて最後にアムロが死んじゃう小説版から持ってきてもいいんだし。
あと、本当に原点に立ち返ってダイナミック系だけで固めるとかもアリ。
ホビージャパンに連載されてた3Dシアターの類もいいね、キカイダーとかふつー知らないオリジナル世界とか。
リアルロボッツファイナルアタックやリアルロボット戦線にA・C・Eを舞台にするのも悪くない。

案外と身近にネタは転がってるもんですよ、もっと肩を抜いてリラックスリラックス。
308それも名無しだ:2006/02/11(土) 21:27:24 ID:MAGgaKZz
>>291
命を懸けて戦う訳を教えて下さい。

……フンだ。
309876(弥七朗) ◆DHL5JWc6iY :2006/02/11(土) 22:04:09 ID:LIEQYFTp
近況報告。
社会の厳しさと春休みって何?な忙しさにくじけそうな弥七です。大学は春休みなのに学校に行かない日がありません。すいません、今週は一筆も筆が進んでません。この前まで書いてた続き分は進み方がおかしくなるのでまとめて破棄してしまったし……。
ぼく頑張らないと……!

新しい構想は出来てきました。書き出すと早い方なので、暇さえあればなんとかします。
次回予告(変更の可能性多大)
インターミッション オブ ザ ムーンクライシス

「いいんだな?」
「いいんです。使って下さい。……この子に乗ってれば、また会える気がするの」
「……わかった」
月の中で進行する事態。
「…アル=ヴァン・ランクス」
「?……フー=ルーか」
「また、余計なモノを抱え込んでいて?」
感付く者。
「総代……」
「消えた地球……我等が新しき天地が、何者かに消されてか」
「次元の断層……我等が持つ戦力の上位機体オルゴン・クラウドなら、越えることも可能です」
「………(アル=ヴァン………前回の任務より様子がおかしい)」
疑う者。
「アル=ヴァン様、今回の出撃は何処へ?」「ジュア=ムか。なに、テストパイロットの真似事さ」
「テストパイロット……アシュアリー・クロイツェルを思い出しますね」
「……あぁ」
慕う者。
「アル=ヴァン様……」
「……シャナ=ミア姫?」
「……何か、良くない事が起きているのでしょう?」
「……えぇ」
「……(………統夜………)」
想う者。
月に成り立つ者による想いの線、交差せし時、
また、新たな光が生まれ出る。
「……アル=ヴァン・ランクス。グランディード、出撃する!!」
次回、スーパー携帯機ジェネレーション!
「月下の陰謀」
310108:2006/02/11(土) 22:08:52 ID:PmxuXmu8
どうも、108です。
最近期末テストやら何やらが重なって書けない状態なうえ、
もう最近は1 週 間 に 1 回 P C 触 れ る か ど う か怪しい状況になってきた。
とりあえず何とかネタをひねっていくから第1話の続きを楽しみにしててくれ。
311それも名無しだ:2006/02/12(日) 20:52:19 ID:nPVX9kYG
>>308
地底勢力とか外宇宙からの侵略者が撃退されて地球。
往年のスーパーロボットたちは止むにやまれぬ事情で腐敗した地球連邦
(別にティターンズでも何でもいいが)に組し人々を抑圧する側に。
主人公らは反体制勢力としてスーパーロボット軍団に立ち向かう!!

ぶっちゃけΞガンダムvsマジンガーとかアーバレストvsコンバトラーとか
WガンダムvsゲッターGとか読みたいわけです、ハイ。
312それも名無しだ:2006/02/17(金) 00:30:56 ID:pibfIEJX
ちょっと書いてみたので投稿。

舞台はサルファにつながらないニルファ後。
中心人物はαナンバーズを離れたビルギット。
参戦作品はガンダムシリーズ脇役がほとんどで。


何分主役が主役なので大した長さにはならない予定。
313それも名無しだ:2006/02/17(金) 00:38:05 ID:pibfIEJX
打ち捨てられた都市の中心部に人の気配は無く、大量に振り積もっていた砂塵が時折舞い上がるだけだった。その中でかすかに響くのは、二機のモビルスーツの駆動音である。
「ノーマルスーツを着てくるんでしたな。」
「フィフスが落ちて以来、これだ。我慢してくれ」
こうして顔を合わせる前に目の前の男がつけていた防塵マスクを外したのを見て、ビルギット・ピリヨはとりあえずもう少しこの任務を続けてみようと思った。
彼のGキャノンは半壊したビルの陰に片膝をついた形で身を潜めている。
キャノンの隣で低い駆動音を唸らせているモビルスーツの下半身にあるものは足ではなくキャタピラである。それは俗にガンタンクと呼ばれる機動戦車であった。
「あちらさんはもう一戦するつもりですかね」
「だろうな」
ビルギットとそれに答える男は、ガンタンクの上部操縦席の横に並んで立っていた。以前はモビルスーツの頭部にも見えたその操縦ブロックは、いまや上半身に半分埋もれたかのごとき構造となっている。
自分の足元にあるブロックの接合部を見て、現地改修だろうとビルギットは思った。顔を上げれば天を突くかのような長い砲身が二本、両脇にそびえ立っている。さてこれをどうしたものだろうか。
「何機確認した?」
「グフが一機にザクが五つ、確認できたところはこれぐらいですか。さっきの対地攻撃で一機撃墜ですな。あのバルキリーのパイロットは褒めてやってもいいでしょう。
もっとも、あれだけ弾を使って一機というのも寂しいかぎりではありますがね。向こうも粘るもんです」
「君の僚機が一機……」
「腕一本取って戦闘不能じゃ割に合いませんぜ」
「残りは五機か。しんどいな」
「こちらも四機ありますよ。そう悲観するものでもないと思いますがね」
「だが二機がタンクだ。これではどうしようもない。……すまない」
ガンタンクのパイロットであるその男は遠くを眺めながら謝罪の言葉を口にした。その間にも周囲に警戒の目を向けている態度に、ビルギットはもう謝罪の言葉を聞き流していた。
考えるべきことはまだ他にある。
314それも名無しだ:2006/02/17(金) 00:41:16 ID:pibfIEJX
「散開していたら厄介になりますか。最後に見た時には結構密集してたんですがね」
お互い同じようなことを考えているだろうなとビルギットは思った。
側面攻撃は不可能、機動性が違いすぎる、地形も圧倒的に不利だ。そうなるとただ退却するという手も塞がれる。
正面攻撃? まさか。向こうは散開して、タンクを庇いつつ戦うこちらをなぶり殺しということになる。
ええい畜生。だから救援作戦にバルキリーなんぞ必要無いと言ったんだ。適当に粘っていれば向こうだって退かざるを得ないだろうが。
ヘビーガンでなくともジェガンが三機で十分だったんだ。第一バルキリーってありゃなんだ。いや機体はいいんだろうが、問題は使う側にある。満足な整備体制も取れないくせに、高価な新型ばかり欲しがりやがって。
系統の違う機体の維持がどれだけ大変か分かってるのかあの司令官は。あの時スペースアークがどれだけ苦労したと思ってる。
目を見張る馬鹿げた戦果はパイロットがずば抜けて優秀で、その辺りの機転が利く奴だったからだ。さすが、スペースボートに年端もいかない子供を詰め込んで脱出してきたような奴は違うぜ。
そこまで考えたところで、タンクの男がこちらを見ていることに気がついた。どこまで同じことを考えていたのだろうか。まあバルキリーに文句をぶちまけたあたりまでは共通した認識であったと思いたい。
「いやあどうも」 一呼吸入れた。
「君も打つ手無しか。まあ俺もそうだよ。なあせめて君たちだけでも離脱させたい。タンクの砲撃も目くらまし程度にはなるだろう。そうしたら一気に……」
「やめましょうや。どうもね、それは性に合いませんよ」
男は口を閉じた。何を考えているかは大体想像がつくな、とビルギットは思った。
ここに逃げ込んだのはどうかと思うが、それ以外はほんの少しの不幸が重なって、この状況に至っただけなのだ。時間を稼ぐという意味において言えば、その判断は市街地というこの場所に限られていたのかもしれない。
315それも名無しだ:2006/02/17(金) 00:43:46 ID:pibfIEJX
オールズ・モビル。最近急速に勢いづいているいわゆるテロリスト集団である。正式な呼称ではない。
向こうが一切の声明を出してこないことと、使用するモビルスーツがことごとく旧型の形をしていること、この二点を持って仮の名称とされたのである。
地球上ではオーストラリア大陸を中心に活動を続けている。先の大戦におけるフィフス・ルナの落下によって相当のダメージを負ったこの大陸の状況下では比較的根を張りやすかったのだろうと推測された。
そして事実その通りになった。ただのテロリスト集団とは思えないほどの潤沢な装備を用いる彼らに対して、どうにも連邦軍は後手に回らずを得ない。仕方ない、とビルギットは思う。
どこも混乱しているのだ。物資も機体も何もかもが足りない。このガンタンクを見ろ。部隊自体はよく訓練されて、実戦慣れもしているがいかんせん機体がこれでは。旧型のモビルスーツや足の遅い機械獣相手ならまだしも。せめてヘビーガンでも与えてやれば。
いや、無理だろう。たかだかオーストラリアの一部隊に。どうも複雑な気分だが、予算も補給もやはり優先されてしまうのは……。
「アルファナンバーズの流儀ってやつか」
ビルギットは苦笑するしかなかった。どうも考えていることが同じらしい。いやしかし、その名前が意味するところはちょっと違っている。決して仲間を置き去りにすることはない。俺はそんなに勇猛に見えるのだろうか。
いやこの男自身が勇猛なのかもしれない。おそらくそうだろう。そうでなければ、どうしてガンタンクで四機のモビルスーツを撃墜する、エース一歩手前のところまで登りつめることができるだろう?
「買いかぶらんで下さい。自分も何とか逃げる方法を考えているだけですよ。気を悪くしないで下さい、タンク二機じゃ足止めにもなりません」
「そうか。そうだな」
「とにかく、向こうとしては最低限タンクは潰しておきたいでしょう。それがすんなり行けばモビルスーツを。どうですかね。自分としては、向こうもあと一機落とされると辛いはずですが」
「一機失っているからな。そこが境界線といったところか」
「上手い落としどころがないもんですかね」
「せめて、な」
せめて、何だろう。その先は口にはしないだろうとビルギットは思った。援軍は期待できなかった。どこの戦線もそれぞれが手いっぱいの状況だったからだ。戦線というのは不適当であるかもしれない。
固定化された戦場を持たないテロリストに対して、戦線を引くも引かないもないからだった。それでも警戒に倍以上の戦力を必要とする。これは事実である。そんな状況下で、都合よく援軍が来るとは思えない。
廃墟の影から何かが飛び出したのはその時だった。それを確認した瞬間、ビルギットと隣の男は腰の拳銃に手をやった。男はホルスターから拳銃を取り出したが、ビルギットの手は途中で止まった。
彼は隣の男とはまた違った驚きで、叫んだ。
「曹長! こんなところで何してんのよ!」
316それも名無しだ:2006/02/17(金) 00:45:33 ID:pibfIEJX
彼らの前に現れたのはワッパに乗った、ビルギットの小隊の最先任下士官を務めるバムロであった。ヘルメット一つで飄々と現れたその姿に、一年戦争帰りはだから違うとビルギットは改めて思う。
ワッパは両輪から砂塵を巻き上げて、タンクのコクピットまで上昇した。その腕前は見事であった。
しかし隣の男の反応は違っていた。ビルギットの言葉で拳銃こそ下ろしていたが、それを戻す気力も無くなったと言うかのように彼は深くため息をついた。
「せめてとは言ったがな。まあ大した援軍じゃないか」
その通りだった。曹長の後ろに増援のモビルスーツが来ているなら話は別だが、それならばわざわざ曹長が危険を冒してワッパなどでやって来る必要は無い。
「ご無事で何よりであります。少尉殿」
皺の深い中年顔がヘルメットの下で笑った。それは不敵といってもいいかもしれないものだった。
「曹長。こりゃ洒落にならないぜ。まさかミデアもこの近くに?」
「はっ、遺憾ながら予定降下地点より若干内寄りに降下、現在待機中であります。しかし戦闘状況におきまして、必然的誤差であったと認識しております」
「必然的だと?」
もうどうにでもしろといった具合にタンクのパイロットは吐き捨てた。
「なあ曹長」
ビルギットは面白くなってきていた。
「小隊以下、作戦終了後可及的速やかに退却すべく、準備完了致しました。つきましては少尉殿に殿を勤めていただくのが位置的に最も適任であるかと」
「位置的に?」
ビルギットの声の調子に合わせてバムロはにやりと笑った。
「位置的に、であります」
「おい、君たちいい加減にしてくれ。そんなことを話している場合なのか。僅かだがあったかもしれない退却のチャンスを俺たちは無駄にしたんだぞ。
分かっているのか。俺たちはともかく、君らの部隊、それもミデアまで落とされるなんて俺はごめんだぞ」
そう言って男はコクピットの中へ滑りこもうとした。ビルギットは男の腕をつかんでそれを制止する。
「君な、いくら君がアルファナンバーズだからといって……」
「いや失礼」
「離してくれ。もういい時間だ。奴らも動くぞ。不意打ちなんて冗談じゃない。せめて奴らの1機でもな」
「一機はどうなるか分かりませんが、三機で手打ちってところでどうです?」
「何だと?」
ビルギットは男の顔を見返した。実に勇敢だ。理想の戦車兵。死ぬ時は戦車の中で、というわけか。それが彼の考えるアルファナンバーズ流儀。
なるほど。だがそこに所属していた当人は、残念ながらその期待と比べていささか無責任なのだ。
「大した援軍。全くです。こいつは実に大した援軍ですな。ガンダム、マジンガーにゲッターもかくや、といったところですよ」
317それも名無しだ:2006/02/17(金) 00:53:23 ID:pibfIEJX
とりあえずここでつづく、となります。

ニルファ、ガンダム関係共に設定うろおぼえで書いてしまっているので間違いなどありましたら指摘の方お願いします。
318それも名無しだ:2006/02/17(金) 01:27:21 ID:AaA7cw9/
なんでそんなに低姿勢なの?
319それも名無しだ:2006/02/17(金) 12:57:26 ID:HEfqbmqD
>>318
どゆこと?ビルギットがタンク乗りに対して低姿勢過ぎるって事?
だったらただ単にビルギットよりタンク乗りの方が階級が上って設定なんじゃない?

>>317
まずは乙&GJ
とりあえず改行ヨロ。ちょい読みにくい
しかしビルギットを主役に持ってくるとは渋いですね
スパロボにはないワンシーンって感じでよかったです
続き頑張ってください
320それも名無しだ:2006/02/17(金) 13:06:42 ID:AaA7cw9/
>>319いや、書いた人が。傲慢になる必要もないけど。
321それも名無しだ:2006/02/17(金) 15:20:31 ID:HEfqbmqD
>>320
ほんなら別にいいでしょ
高圧的で煽るような言い方がデフォの奴よりは丁寧に言ってくれる人の方がいいし
322それも名無しだ:2006/02/17(金) 20:20:56 ID:GbDdOrQA
>>317
普通に上手いと思う。
こういう地味な話好きだわ、俺。

それとオールズモビルに着目したのは珍しいですね。
UCシリーズで唯一火星が根城の勢力だから、木製蜥蜴に襲撃される
ユートピアコロニーでアキトは謎の旧式(っぽい)MSに助けられる。
それは火星に潜伏していたジオンの残党たちだった・・・
ってSSを書こうとしたことがある。
公式記録にも残らず(政治的に黙殺)誰にも知られぬまま雄雄しく
戦い全滅した最後のジオン、なんてシチュを書きたかったな〜、と。
323312:2006/02/17(金) 21:13:03 ID:pibfIEJX
部隊を散開させるのが幾分遅かったかもしれない。五機のザクを従える隊長機であるRFグフのパイロットは舌打ちした。
少し前に降り立ったミデア。あれがいけなかった。あれを警戒し過ぎたのだ。相手の位置も全く掴めないでいる。
そして忌々しい戦闘機。あの無策とも思える爆撃によってまるで地形が変わってしまったようだ。
爆炎と舞い散る砂塵。センサーが働くわけがない。ミノフスキー粒子を戦闘濃度以上に散布したことが裏目に出た。
畜生。タンクだけなら。有視界でのタンクなんざモビルスーツの機動性で瞬く間に始末できたのだ。
しかし動き始めた以上は、彼は部下と共に任務を全うするしかなかった。逡巡するのは一度でも多すぎる。
彼は自機に持たせた装備を確認する。異常は無い。
手に持たせた禍々しい刀身のサーベル。腕に仕込んだヒートロッド。左の手首に備え付けられた五本指のマシンガンをフルオートに設定する。
素晴らしい。彼は身体の奥がいきり立つのを感じていた。彼もそのモビルスーツも、今はまさしく白兵戦の権化であるといえた。
素晴らしい。このモビルスーツ。彼は自分からは決して見えない、その姿を脳裏に焼き付けた。戦士の姿だ。
俺はジオンの教義なんざどうでもいいが、少なくともこいつをこの姿のままで復活させようとした今のパトロンには感謝する。
名前、何と言ったかな。奴らが声を潜めて話しているのを耳にしたことがある。末端のパイロットには聞かせられないというわけか。
あいにくだったな。俺は耳がいい。何だったか、デュ、デュラ何とか。……デュランデュラン? ええい畜生。
グフは慎重かつ俊敏にビルの陰から飛び出した。先の戦闘で腕を失ったザクがその姿を確認して接触を図った。
グフのパイロットは周囲を警戒しつつ、グフの腕を伸ばす。接触回線である。
「前に出ました」
「モビルスーツか?」
「音が拾えなくて。タンクはいます。ノロマですよ。やっちまいましょう」
二射目だ。その間にタンクを包囲、一気に潰す。彼はそう決断した。
奴ら、援軍の目処が立ったのか? どちらにせよタンクは潰しておける。モビルスーツは数の差で押し切れるだろう。
落とせるにこしたことはないが、そこまで欲を張るわけにもいかない。モビルスーツはタンクの護衛。離れてはいない。部下もそれは分かっているはずだと彼は確信する。
「来るぞ」
324312:2006/02/17(金) 21:15:38 ID:pibfIEJX
そう言うか言わないかの間に周囲に轟音が響き渡った。タンクの主砲だ。いつ聞いても腰の下あたりが縮み上がる。
しかし彼はただ縮み上がるだけではなく、音が聞こえた瞬間に隣のザクから離れ、グフにシールドを前面に構えさせていた。
ザクも同様の姿勢を取り、移動を開始していることを確認し、彼は口の端で笑った。来るか。だが、当たるわけが無い。
弾着があったのはグフの後方だった。ビルの残骸、そこに降り積もった土、そこに埋もれていたかもしれない何か、そういったものが全てひっくるめて、更に粉々にした形で吹き上がる。
激しい爆炎と衝撃だった。あんなものが掠りでもしたら、いや隣に落ちただけでも。考えるだけで恐ろしいとグフのパイロットは頭を振る。
しかし。今ので大体の位置は分かった。接近できる。彼はグフを加速させる。周囲に潜んでいるだろうモビルスーツとタンクの両腕に備え付けられた連装式のミサイルへの警戒は怠らない。
だが、このグフならどちらにせよ一撃は耐えてくれる。その間にグフはサーベルをタンクかモビルスーツのコクピットに突き刺しているはずだ。勝負は二射目を撃たれるかどうかだ。その前に。
ビルの陰にザクが見えた。彼はグフをそのまま加速させる。そのザクはグフの後方を警戒するように進む。これでバックアップもできた。
タンクは近い。もうすぐ。この先。さあ見えたぞ。観念するんだな。よく粘った。貴様はいい戦車兵だった。動きを見れば分かるんだ。
モビルスーツには、いやタンクにだってパイロットの気性は透けて見えるものさ。最後にその姿を見届けてやろうじゃないか。
彼のグフはタンクを正面に捉え、そして彼は絶望した。
何てこった。この味気ない動き。自動操縦か。やられた。奴はどこで降りたんだ。
ガンタンクのセンサーがグフを感知し、申し訳程度に放ったポップミサイルは全てが几帳面に、コンピュータの性格そのものであるかのように直進し、そして当然のように全弾が外れたのだった。
そしてそれが合図であったかのように、タンクの装甲は一瞬中から膨れ上がった。その圧力に耐え切れなかったのは、現地改修を受けたコクピット・ブロックだった。
今そこは全くの無人である。
325312:2006/02/17(金) 21:19:18 ID:pibfIEJX
離れた前方に突如立ち上がった巨大な火柱を見て、ビルギットはGキャノンの姿勢を更に低くさせた。
先ほどタンクのパイロットと話した際には無かったいくつもの傷がキャノンの装甲に食い込んでいた。左腕の反応が鈍くなっていることを除いて、特に問題はないだろうと思えた。
あのザクはもう一度こちらを狙うだろうか。押されていたのは俺の方だったから、来るかもしれない。ビルギットは舌打ちする。彼はそれほど優秀なパイロットではなかった。
ビルギットはそのままキャノンに後退をかけた。本来両肩にあるべき砲を外されたその機体は軽い。機動性は確かなものだった。
しかし反転できるくらいの余力は残しておく。先ほどのザクはともかく、他のモビルスーツの位置は分からない。
曹長が持ってきた大体の位置と、絨毯爆撃で変わり果てた街の航空写真、それが頼りだ。それにしても。俺の周りには……。
左側に影が差したと思った時にはもう遅かった。一機のザクが肩から圧し掛かってくたのだ。
ビルギットは座っているシートから跳ね飛ばされそうになる。反射的に目をつぶり、叫ぶ。
「何機の敵がいるんだよぉ!」
Gキャノンの全身のスラスターが自動的に体勢を立て直す。ザクから離れつつ、モニターにノイズが走るコクピットの中でビルギットは事態に対応した。
肩と腰にシートベルトが食い込んでいた。降りた後が心配だなと頭の片隅で考えながら、腕と足はモビルスーツを降りる場所へ向かうための動作を続けている。
後退しながら一閃したサーベルはザクのシールドを掠めて、重金属粒子の衝撃を受けたザクは接近戦の距離を離れた。
その姿を目の端で追いつつ、ビルギットは予測される攻撃の回避コースを取る。離れた瞬間の一撃が危険だった。Gキャノンは腕のビームキャノン砲、ザクはマシンガンか、それとも。
お互いがお互いから目を離さない、そんな均衡はほんの一瞬で崩れた。
先ほど火柱が上がった方角から、更に激しい爆発が起きたのはその時だった。一秒を過ぎるか過ぎないかの間にらみ合っていた二機のモビルスーツの微妙なバランスはそこで変わった。
ビルギットはその爆発の正体を知っていたが、ザクのパイロットはそうでなかったために、一瞬爆発の方に気を取られてしまった。
ビルギットは優秀ではないが、歴戦のパイロットではある。パイロットの気の乱れは、モビルスーツのそれを見ただけですぐに分かる。
やっちまったな。正気かい?
「戦場でよそ見を……」
一瞬生まれた余裕が言わせたその言葉は最後まで続かなかった。
軽く上昇をかけていた目の前のザクが突然跳ねたように不自然な体勢で飛び上がったかと思えば、次の瞬間には上半身が砕け散ったからだった。
突如飛来したその物体はモビルスーツの硬く厚い装甲をいとも簡単に突き破り、その下の精密機械に満ちた駆動部をことごとく食いちぎる。
中にいたパイロットは機体を通り抜けた衝撃と流れ込んだ熱、そしてコクピット内を跳ね回る無数の破片に切り裂かれ、肉片になったかならないかの内にその意識は消えただろう。
どう見てもそれは、モビルスーツに砲弾が直撃した光景そのものであった。それも極めて強力な砲から放たれたものであるはずだった。
そう、例えばガンタンクの120ミリ低反動キャノン砲のような。
ビルギットはそのまま後退を続けた。今度は全速に近い速度である。モビルスーツが爆発する。どうだろう。ジェネレーターまで完全に誘爆してしまうだろうか。
一度浮き上がって落下を始めたザクの腹部から軽く炎が吹き上がった。大丈夫かもしれない。そんな安堵感が、言いかけていた言葉を飲み込んでもう一度口を開かせた。
326312:2006/02/17(金) 21:22:22 ID:pibfIEJX
「あの野郎」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。あのパイロット、曹長を焚きつけて自分をもう一機のタンクに運ばせやがったな。
前に出したタンクの自爆、そして砲弾やら燃料やらの誘爆。その間中、間抜けな奴が上昇をかけるのを狙い済ませていたというわけだ。
大した奴だ。その一瞬を逃さない思い切りのいい腕前。勇敢、練達、まさに理想の戦車兵じゃないか。
今度アルファナンバーズが編成されたら、俺の代わりに出向してもらおう。熱く炎にたぎる心根、アルファナンバーズにぴったりじゃないか。
それがいい。俺にはいささか肩の荷が重過ぎると思っていたんだ。
なあ手前もそう思うだろう。Wに戻ったと思ったら何を思ったのか俺を編隊に組み込みやがって。
それが終わるやいなや次は手前一人で海賊稼業。いや、あのお嬢さんも一緒だったか。
全く。ようやく終わったんだぜ。落ち着いたんなら連絡の一つもよこしやがれ。これだからな、エースってのは気にいらないんだよ。
待てよ。エース。そうか、エースだ。あの戦車兵。これで五機撃墜か。ははは。おめでとう。
これで貴様もエースの仲間入りというわけだ。エースってのはこれだからな。きっちり自分の取り分は取っていくってことか。
だがな。アルファナンバーズに行ったら大変だぜ。あそこじゃエース扱いは五十機撃墜からだからな。狂ってる。全くだ。
まあせめて奴の名前ぐらいは覚えてやってもいいな。どんな名前だったか。話に聞いたところだと、親父が退役軍人だったか。
こりゃあれだな。あの戦車兵気質は生まれつきだろうな。そうに違いない。親父さんもさぞかし名の知れた戦車兵だったんだろうな。
そう、親子揃ってのタンク・エース。最高だ。軍の広報が放っておかないぜ。それでは偉大なる戦車兵の家系に……。
「思い出した。ユングだ。ロイ・ユング・ジュニア。いやはや、これからはジュニアは抜きだな」

そんなことを呟きながら、ビルギットは双方の距離が離れて戦闘空域ではなくなった、その中心地で今だ炎と煙を立ち上らせている、この戦闘の記念碑に向かって敬礼を送った。
右手の先はしっかりと伸ばされていた。ビルギットの目は真剣である。救援部隊としての任務はどうだったのだろう。ガンタンクを二機失い、ヘビーガン一機が戦闘不能。ああそれと、バルキリーが思う存分吐き出したモビルスーツ三機分は優に賄える燃料と弾薬。
そしてガンタンクの乗員二名が戦死。どうだろう。ともすればもう二名が増えたのだろうか。それとも四名が。
それは分からない。これは結果論だ。まあいい。俺は逃げを打った。それは確かだ。それは変わらない。
こんな俺がアルファナンバーズの一員だったなんて笑えるさな。無茶な任務に過大な期待。どうしろってんだ。
俺だってどうにかできるものならそうしたい。しかし無理はできない。できないものはできない。そうだろう?

ここは命をかけるべき戦場ではない。そうだろうシーブック。
327312:2006/02/17(金) 21:33:39 ID:pibfIEJX
とりあえず1話終了。
続くかは……分からない。

>>318
態度が気に障ったならすまない。 いろいろ、こだわりがあったから。これからは楽にいこうと思う。

>>319
改行はこれでいいかな。慣れてないもので。また駄目だったらすまんかった。

>>322
オールズモビルはかなり設定改変してしまっているので、良ければ322のシチュも読んでみたい。
328それも名無しだ:2006/02/17(金) 22:17:06 ID:GbDdOrQA
ビルギットの諧謔がいい感じ。
確かに並みのエースパイロットじゃあ元アルファナンバーズって肩書きは辛い物があるだろうな。
ゲームじゃあ雑魚ユニットなガンタンク(縁の下の力持ち)の火力を生かしてたりして面白い。

あと、ロイ・ユングって戦争博物館の人だっけ?
329それも名無しだ:2006/02/17(金) 22:22:27 ID:GbDdOrQA
>>327
読み返して頭が痛くなるようなへっぽこな出来だったので・・・
そのうち精進して書き直してどこかにupできるといいな〜、と。

この作品のオールズモビルは無印シリーズのDCみたいなイメージに見えるな。
330常緑:2006/02/18(土) 17:31:04 ID:+auXQaDv
>>312さん乙。
ビルギット始めとするキャラの細かい機微描写といい、躍動感ある情景表現といい、
非常に書き慣れている感じがします。
ミリタリーに関する知識も凄いです。うらやましい…
これからも是非書き続けてみて下さい。

状況報告。
相変わらず第参話の続きをゆっくり作成中。
明日中に投下できれば良いのですが…。
331それも名無しだ:2006/02/18(土) 17:48:05 ID:FuFZ3LvM
>>327
乙&GJ
改行ってか段落分けだったな、重要なのは
まあ面白かったし続き物でも一発ネタでもどんどん書いてくださいな
332312:2006/02/18(土) 21:04:49 ID:sY9XgTGx
よくよく面倒なことになりそうだな。ビルギット・ピリヨはそう考えながら目の前の男に敬礼した。
男は表情一つ変えることなく、背筋の伸びた敬礼を返した。
「ビルギット・ピリヨ少尉であります」
「ご苦労、少尉」
ビルギットの名前を聞いても男はこれといった反応は示さなかった。
まあ当然といえば当然だなとビルギットは自嘲するように思う。有名な部隊にいる人間が全て有名というわけではない。
形式的な挨拶を終えると、ビルギットは改めて男の背後に鎮座した物体に目をやった。
幾分わざとらしいその動きに合わせて、男も身体の向きを変えた。
それは不時着した輸送機だった。エンジンを増設した高速型だ。
しかし不時着のダメージが大きすぎて、もう一度飛ばすことは不可能であると思われた。
一通り機体を観察すると、腹部に抱え込まれるようにして固定されたコンテナの前面の損傷が一層目立っていた。
随分と無茶な離脱をしたんだろうなとビルギットは思う。これでは積荷も無事というわけにはいかないんじゃないか。
いやしかし。ビルギットは嘆息した。問題はそんなことではない。
いくらか離れた巨大な岩陰の向こうからモビルスーツの上半身が見えた。ビルギットの部下が操縦するヘビーガンである。
そして横には不自然な形で輸送機の翼が地面に突き刺さっているのだろう、その先端が空を向いている。
気は進まないが、俺はこの目の前の男に確認しなければならない。
「輸送機は一機であると報告を受けておりますが」
男は面白くもなさそうに言った。
「では訂正する。二機だ、少尉」
どう考えてもまともな任務には思えなかった。前途多難だ。さて、どうする。
333312:2006/02/18(土) 21:06:16 ID:sY9XgTGx
「どういうことでしょう、少尉殿」
「俺に聞くなよ。しかし厄介なことになりそうだな」
廃棄されて久しい鉱山の一角に小隊のミデアが着陸したのはモビルスーツから遅れること十五分のことだった。
周辺のとりあえずの安全を確認するのにそれぐらいの時間が必要だった。
周辺警戒に数名を機内に残し、曹長であるバムロは残りの人員全てを不時着に失敗した輸送機の回収に向かわせていた。コンテナをこじ開けるための大型機械を積んだワッパが滑るようにして鉱山の斜面を走っていく。
当のバムロは真っ直ぐビルギットの方へ向かってきていた。二人の横で輸送機の機長が回収作業に取り掛かろうとしているモビルスーツを遠目で眺めている。
「中尉殿」
「何だね少尉」
「よろしければ、まずこちらの輸送機の積荷を確認させていただきたいのですが」
「いいだろう。来たまえ」
そう言うと機長は黙って歩き出した。一歩下がる位置についてビルギットもそれに従う。
バムロは少し遅れてついてきた。彼が周囲を警戒していることをビルギットは知っていた。
そして恐らくはこの機長に対しても、その警戒の視線は向けられているはずだ。
334312:2006/02/18(土) 21:08:38 ID:sY9XgTGx
コンテナの内部はその外観ほど損害を受けてはいないようだった。少なくともハッチの縁から見る分はそう思えた。
装甲にいくつか亀裂が走ってはいたが、これもさほど問題にはならないだろう。どちらかといえば損害が激しいのは機体の方なのだろう。
しかしビルギットが気になる点は別のことにあった。
「積荷が見当たりませんが」
ビルギットがコンテナ内を観察するのを黙って眺めていた機長は静かな声で言った。
「分かるだろう。こちらはダミーなのだ。オールズモビルが情報を掴んでいる可能性は無視できなかった」
「なるほど。それはありえますな。最近の情報管理はいかんせんザルですから。
それでコントロールできる範囲で墜落を見せかけた不時着をしたわけですな」
「そういうことだ、少尉。不運にも本命に流れ弾が当たってしまった。だが君たちが迅速に到着してくれて助かった」
「いえ。こちらもそうと分かっていれば」
そんな会話を交わす間にもビルギットの目はコンテナの内部を点検している。俺が気がつかなくとも曹長が何か見つけるはずだ。
ダミーだと。下手な言い訳しやがって。しかし、だとすると積荷は一体何なんだ。
確かに俺たちは迅速だった。不時着してから到着するまでに三十分もかかっていない。
その間に運び出せるもの。それもこの輸送機の二人のパイロットだけで。
二人だけで運び出せる荷物なんざたかが知れている。データか何かか。それならバルキリーでも使った方が確実だ。
二機の輸送機。輸送機の積載能力が必要だったのだ。それなりの大きさを持ったもの。かつこちらを欺かなければならないほど重要なもの。
それは何だ。ええい知るかそんなもの。
ビルギットは観察を諦め、機長の側に振り返った。彼の顔には一切の感情が表れていなかった。
バムロの方を見る。こちらは駄目だという表情が浮かんでいる。思わずため息が出る。
ひとまず、向こうの輸送機を引っ張り挙げるまで待つしかないか。いや、その前に聞いておかねばならないことがある。
「ところで中尉殿。この輸送任務の目的地はどこなのでしょうか」
「軍機だ。少尉」
有無を言わさぬ口調だった。
馬鹿野郎。分からないと思っているのか。この鉱山地帯を抜けた先にあるものといったら一つしかない。
オーブだ。オーブ首長国連邦。畜生。手札が揃ってきたぞ。どれを切ってもまずいことになりそうだ。
「中尉殿、副操縦士の方はどちらに」
「別方面を警戒中だ。じきに戻る」
別方面だと。いよいよもっておかしな話だ。一体何を隠してやがる。
335312:2006/02/18(土) 21:11:33 ID:sY9XgTGx
コンテナのハッチが開けそうだという連絡が入ったのはそれからすぐのことだった。
ビルギットはバムロと共にもう一機の墜落地点へと向かった。機長はフライトデータを回収するといってそこに残った。
たとえそれが信用できなかったとしても、今ビルギットが行うべきことはもう一つの積荷を確認することだった。
片翼を吹き飛ばしながら岩肌にめり込んだ輸送機は、固定したワイヤーをモビルスーツが引っ張ることによって本来の姿勢を取り戻していた。
「こんなことならトラクターを持ってくるんでしたよ」
そう言った部下に笑って答える。
固定された輸送機はもう片方のものと同型だったが、同じようにして輸送機の腹にはめ込むようにして搭載されたコンテナは上部にハッチがあるとのことだった。
「変わった形だな」
それが意味するところを半ば予想しつつ、ビルギットとバムロは差し出されたヘビーガンの手の平に乗り、コンテナ全体を見下ろせる位置までその手を上げさせた。
ヘビーガンの腰ぐらいの高さから見る輸送機は前面のコクピット部が完全に潰れてしまっていた。
あれではどうにもならない。そう思いつつ、部下に合図する。
「いいぞ、開けてくれ!」
潰れたコクピット以外の配線を探し出して何とか処置を行った部下が手を上げて答える。
巨大なハッチがゆっくりと開き始めた。片側に残っていた土が滑るようにして落ちていく。
日の光がコンテナに隠されていたものを余すところ無くビルギットの眼下に映し出した。

そこにあったものは予想通り一機の人型機動兵器であった。
全身が暗い青で染められたその機体は、一見するだけでは細部の判別は難しい。
しかし全体として醸し出されるその鋭角的、攻撃的なイメージはビルギットがよく知ったものであった。カラーリングも似ている。
異なる点は、頭部に備えられた二本のアンテナの中心に位置するメインセンサー、そして機体中央に位置するコクピット・ハッチがやけに禍々しい赤で塗られていることあった。
よく見れば、その赤色は機体の至るところで線を結んでいた。まるでその機体の神経系統そのものであるかのように。
「モビルスーツ、ですか」
ビルギットの背後でバムロが言った。彼も当然この事態を予測してはいたが、この機体がどんなものであるかは知らない。
ビルギットはゆっくりとその発言を訂正した。
「違う。モビルスーツじゃない。こいつはパーソナル・トルーパーだ」
この任務はどうなってるんだ。まさしくこいつは最悪のカードだ。
持っている手札。それをどう組み合わせたらこいつに結びつく。
畜生。いい加減厄介ごとはたくさんだ。

「聞いたことはないか? これがパーソナル・トルーパー、ヒュッケバインだ」
336312:2006/02/18(土) 21:14:32 ID:sY9XgTGx

「フッケバインですか。アルファナンバーズの? いや不勉強なものでして」
バムロの発音には訛が混じっていた。
ビルギットはまじまじとヒュッケバインを眺めるバムロと共に、コクピット近くへ降り立った。ハッチはロックされていなかった。
「無用心だな」
「いざとなれば持ち出すつもりだったのでは」
そうだろうと思えた。そして持ち出す前にこの輸送機は鉱山の斜面にめり込んでいったというわけだ。
運がない。あの機長が言っていたように、この輸送機は何から何まで不運だったのだ。
「向こうに積んであったのもパーソナル・トルーパーか何かだったのか」
「それはどうでしょう。向こうのコンテナには固定用のハンガーがなかった。
モビルスーツやパーソナル・トルーパーでも専用ハンガーを簡単に撤去できるとは思えませんな」
「同感だな。さて開いたぞ。動かせると何かと楽なんだがな」
コクピット・ハッチの下はまさに異様であった。目に付くあらゆるものがハッチと同じ赤のカラーリングを施されていた。
脇に見えるシリンダーやビスまでもが全て赤に染められている。
それは言い様も無く不吉で不気味なイメージであった。
「現代美術ってやつですか。どうもそういったものには疎くて」
「俺もだ。こりゃどうにも趣味が悪いな。
あれだ、極秘輸送しているのは作ったはいいが思い直してお蔵入りにしてしまいたくなったからなんじゃないのか」
コクピット内は当然、シートもそれを支えるアームも、リニアシートの全天球モニター部分も全て例外なく赤であった。
ビルギットは嫌々ながらシートに腰掛ける。腕の下にあるコンソールなどを確かめて、起動プログラムを立ち上げるのだ。
その間中ビルギットの視線は落ち着かずに宙を泳いでいた。
「だめだ。これはいかんよ曹長。出撃する前にこっちの神経が参っちまう」
「技術者の気まぐれにはほとほと参りますな。私も九年前にそれを痛感させられましたもので。それで、どうです。動きますか」
ビルギットはしばらくコンソールをいじった後で、手を止めた。
ジェネレーターに火は入ったはずだが、駆動系がコントロールを受け付けない。出力も予備電源が最低限働くだけだだった。
「妙だな。これは……OSがおかしいのか」
「ますますうさんくさいですな。それはともかく、少尉殿、気付きませんか」
コントロールスティック、フットペダル、その他の操作ユニットに手を触れる度、ビルギットの胸にも妙な違和感が次第に募り始めていた。
何かが違う。微妙だが、決定的な何か。
ビルギットのモビルスーツ飛行時間は優に千時間を超えているはずだが、その間乗った何種類かのモビルスーツとも違う。
これがモビルスーツとパーソナル・トルーパーの差異なのだろうか。
そうではない。何かもっと、根源的な、人の肉体に由来するものだ。
337312:2006/02/18(土) 21:18:31 ID:sY9XgTGx
「曹長、あんたサイド3の出身だったよな」
「そうです。少尉殿もあれですか、お国はどこかの田舎ですか」
「辺境のど田舎コロニーだった。曹長、会ったことはあるか?」
「片手より多い程度なら。最後に会ったときには名産品を交換しました。まあ内密に」
「俺は話だけだ。決まったな。段取りを立ててくれ。
こいつを見た時にはこれ以上悪いカードは引けるわけがないと思っていたけどな。
どうもあの中尉、まだとんでもない切り札を隠していやがった。正直これはあの男の手には負えんと思うがね」
ビルギットはそう言ってシートから立ち上がる。そのまま開かれたコクピット・ハッチの横に立ち、二人が検分を終えるのを待っていた部下に命令した。
「爆薬を持って来い! こいつを爆破せにゃならないかもしれん!」
それを聞いた部下は飛び上がるようして動き出し、ワッパに跨るとミデアの方角へ走り去っていった。
ビルギットは目の感覚を元に戻すかのように空に目をやった。
よく晴れている。空はフィフスが落下時に巻き上げた砂塵によっていくらか霞んでいたが、それでも空の色は今のビルギットの目には優しかった。
しかし彼はそれほど悠長にしてもいられなかった。
「曹長、考えはまとまったか。そろそろオールズが動いてもいいころだ。早いとこあの中尉を絞り上げにゃならん」
バムロはそれには答えなかった。
ビルギットがコクピット内に視線を戻すと、バムロはシートのヘッドレストの部分に顔を近づけていた。
眉間に皺を寄せているので、ただでさえ皺だらけの中年顔がますます見られないものになってしまっていた。
「何だよ曹長、いい枕でも見つけたか」
「いえ少尉殿。ここに何か書いてありまして」
そう言ってバムロはヘッドレストの中央を指差す。ビルギットは仕方なく赤一面のコクピットの中に戻った。
どれだいと言ってバムロと同様に顔を近づける。
「試作機みたいなもんだろ? 注意書きなんて珍しくも無いぜ」
「いやしかしこれは妙な感じです」
バムロの指が文字の表面を撫でた。そしてビルギットの顔を見る。同じことをやれということらしい。
ビルギットは黙って同様に指で撫でてみる。確かに文字だ。シートの表面、強化ビニールに印刷されている。
「何?」
いやそうではなかった。印刷ではない。もっと硬い。ビニールに押印されているのかと思えばそれも違う。
ビニールがずれてもその文字は位置を変えない。つまり、ビニールの下の材質に打たれた文字が浮き上がっているということなのだ。
だがそれはおかしい。ビニールの下はそれなりに厚い衝撃吸収材が何層も入っているはずだ。そしてその間に硬いものなど入れるわけがない。
モビルスーツ、いやたとえパーソナル・トルーパーであっても操縦中パイロットに走る衝撃は相当なものだ。そこにこんな硬いものがあれば。
頭部だからヘルメットがある? ヘルメットを被っていなければどうなる。
兵器というものはそういう事態を考えて作られている。それに……。

「これは、マークか?」
文字の下に小さな円がある。円の中に何本かの線が走っている。円の左半分には三角形。
「曹長、これは何だと思う」
「はて。プラグにしては形が変ですな」
「そしてこの文字。ああうさんくさいにも程があるぞ。おい曹長、字は読めたのか。もういい加減にしておこうぜ」
「もうちょっと、もうちょっとです。思い出しました。これ、古代のギリシア文字ですよ。
うん、思い出せました。何々、……ナイト」
「古代、何だって?」
バムロは一人で頷いている。
「これ、この材質の名称じゃないですか。少尉殿。技術者ってのはだから嫌になりますな。インテリのやることにろくなことはありません」
「分かったんならもう行くぞ。正直古代文字なんてものはオールズの連中にでも任せたいな。連中、見ての通りの懐古主義だから、案外いけるぞ」
「面目ありません少尉殿。始末書でも書かせていただきます。帰ったらギリシア文字をお教えしますよ。これで結構私も学があるもんで」
ビルギットは嘆息した。
「いいよ沢山だ。それで、なんて書いてあったんだ。材質の名前とか言ってたな」
「ええ、多分」
二人はコクピットから顔を出した。息苦しさがあったのか、共に深く息を吸い込む。

「イデオナイト、と書いてありました」

ビルギットはせせら笑ってみた。
「何とも嫌味な名前だな、なぁ? これだから主義者ってのはつきあいきれんさ。
あの中尉も存外そんな感じかもしれんよな」


338312:2006/02/18(土) 21:20:53 ID:sY9XgTGx

「遅かったじゃないか。少尉」
「申し訳ありません。動かそうと奮闘したのですが、どうにも八方塞といった具合でありまして」
ビルギット達を待っていた機長は無表情にそうかとだけ言った。
「正直時間が多くは残されていません。あのモビルスーツは残念ながら回収不能として、爆破してしまうべきであると考えます」
「爆破だと?」
機長がビルギットを睨む。ようやく感情の一端が見えたかなとビルギットは思った。
「もうまもなくオールズモビルもここを見つけ出すでしょう。残念ながら動かないモビルスーツを空輸する手段は自分の部隊にはありません。
モビルスーツ輸送用のセッターがありますが、あれに機体を合わせるだけでどれだけ時間を取られるか分からないのです。
仮に作業を決行したとしても、その間に敵の攻撃を受けるのは必至であるかと」
「君に言われるまでもないことだ」
「失礼しました」
ビルギットは機長から視線を外さなかった。彼も目の前の男も、しばらく眉一つ動かしはしなかった。
「では少尉」
「はっ」
機長は静かに腰から拳銃を抜き、その銃口をビルギットに向けた。表情一つ変えることもない。
これはこの男の美徳ではあるなとビルギットは他人事のように考えていた。

「ここに命令する。貴官の部隊のミデア並びにセッターH926一機をこれより当方の所領とする。
当方はこれにより任務の貫徹を目指すものとする。尚、貴官らの部隊はこの地点において可能な限りの抗戦を行いたまえ。
その際の撤退、加えて当然この命令に関するいかなる反論も許さん。以上」
ビルギットは肩をすくめた。とりあえずそうするしかなかった。男の機嫌を損ねすぎるほど大げさではなかったが、機長は目の中心に何本か皺を走らせた。
意外に怒りやすいのかなと思った。まあ言うだけ言ってみよう。
「それはこういうことでしょうか。お前たちの輸送機をよこせ、そしてお前たちは盾になれ、と」
「反論は許さんと言ったはずだが」
「任務の確認であります」
「ならば君が理解するようにしたまえ」
「ありがとうございます、中尉殿」
これ以上の問答は無用と考えたのだろう。機長は引き金にかけた指に力を入れたようだった。
その視線が一瞬ビルギットの顔から逸れたのを見逃さなかった人間がいた。それはビルギットではなかったが、背後から近づいたその人物は機長の足を素早く払って銃を持っていたはずの腕を極めてしまっていた。
ビルギットは口笛でその一連の動きを讃えた。
「さすが、元ジオンの野戦経験者は違いますな」
「セント・アンジェに比べればですな。しかしこりゃ昇格ものですよ。少尉殿」
「そりゃ勘弁だ。あんたみたいな優秀な下士官に抜けられりゃ困る。昇給で手を打ってくれ」
バムロに極められ空しく宙を掴むその右腕からこぼれ落ちた拳銃を拾ったビルギットは、それを何度か叩いて表面についた土を落とした。

「オーブへの亡命、ちょっと諦めてもらうわけにはいきませんかね。中尉殿」
339312:2006/02/18(土) 21:23:14 ID:sY9XgTGx

「ヒュッケバイン。
マオ・インダストリーがオーブとどんな繋がりを持ちたいのかは知らんが、あそこにはモルゲンレーテだか何だかってでかいメーカーがあるんじゃなかったか。
それにしたって直でオーブってのも目立ちすぎるから連邦軍経由でオーブへ。
あんたオールズの連中が情報入手したって言ったよな。あれもあながち嘘じゃないんだろう。
大方それを掴んで奴らに流したのはアナハイムってところだろうが。
ところがあんたはそれすら利用した。襲われたってのはあれ、嘘だろう? 
もう一機を墜落させたのはあんた。救援部隊を要請したのもあんただな。
連邦軍の展開状況は当然知っているだろうから、そりゃ動く部隊も予測はつくわけさ。
ブラフの襲撃をダシにして、あんたこの任務を軍内で失敗、行方不明に終わらせてしまいたかったんだろう。
オーブも派手に軍備増強のネタを仕入れるわけにもいかないだろうからな。
マオからこの基地までの便宜を図ったのは誰なんだか興味も無いが、そうなるとこの機体を俺たちが馬鹿正直に持って帰るわけにもいかないのかね」

俺はどうしてこんなことを考えているのだろう。あの部隊にいる間に知らず知らずの内に頭に入ってきていた名称、関係、ある種の陰謀。
ビルギットは心底そんな自分が嫌になっていた。普通なら一生縁が無い方がよっぽど幸せな、そんな関係図ばかりじゃないか。
素人が手を出していいものじゃないんだよ。どうして回ってくる手札がことごとく危ないものばかりなんだ。
畜生。それも最悪の組み合わせで回ってきやがった。
「売りますか。高くつきますよ」
ビルギットは軽く笑ってみせた。
「いい考えだが、インテリアが最悪だ」
機長は腕を極められたまま口を結び続けていた。
バムロが力を緩めたのだろう。その表情に苦痛は見られなかった。

「というわけで俺も考えを決めかねている。中尉殿に何かお考えがあるのなら」
「何が、狙いだ」
340312:2006/02/18(土) 21:25:03 ID:sY9XgTGx
上空を何かが突き抜けていった。それは一機の航空機だった。
その両翼が切り裂いた空気の痕跡は、余りの鋭さ故にビルギット達の位置からも見えてしまうかと思われた。
そしてその後に続くのは地面もろとも揺らしてしまうほどの轟音。

「来たか。偵察機だな。おい、見えたか!」
ビルギットはワッパに跨っていた部下に大声で呼びかける。彼もまた大声でそれに答えた。
「ダミーはいくつか撒いてあります! しかし誤魔化しゃできませんよ!」
「畜生。さっきは外れ引いて奴ら怒ってるかもしれんな。正直当たりこそ外れだったって気もするんだがな」
冷静な戦力分析の後で、ビルギットは機長の方に向き直った。
「それで、中尉殿にはお願いしたい次第です」
「何をだ」
「先ほどの命令を撤回していただきたい。あれです。撤退は許さんとかってやつですよ」
機長はここで初めてビルギットの言っていることが分からないという顔をした。とことん無表情な奴だなと思う。

「我々はこれから撤退します。徹底的に、全力で撤退しますよ。
中尉殿にもご協力を仰ぎたいのです。そのためにはまず先ほどの命令を撤回していただきたいのです。
そうすれば、我々は大手を振って逃げることに専念できるってものです」
「君は……」
ビルギットは目を逸らした。それを見たバムロはなかなか寂しそうな表情をするもんだなと思った。

「どうも、自分は逃げるのにも理由がいるみたいなんですな」


「それともう一つ。そうは言っても任務を放棄するわけにもいきません。我々は救援部隊であります。
中尉殿におかれましては、残された積荷、コーディネーター達の居場所を教えていただければ、これ非常に幸いであります!」
341312:2006/02/18(土) 21:34:49 ID:sY9XgTGx
2話前編終了。
台詞多め、テンポ早めを目指してみたけどどうだろう。

読んでくれた人、ありがとう。
続きが書けたらまた読んでみてください。
342それも名無しだ:2006/02/18(土) 21:51:55 ID:+s2KeyD1
GJ!!!

最初オーbて出たときはアストレイが積荷かと思ったよ。
にしてもトンデモない爆弾を造ったもんだな、マオ社。
確かに始末に困るわこれw
あと、元αナンバーズって立ち位置をうまく生かしてると思う。
主人公部隊にいればイヤでも舞台裏をのぞかざる得ないし。
ビルギットも相変わらずいい、自分が英雄ではなく凡人である
ときっちり自覚しるのだろうな。

というか無限力込みの凶鳥なんて代物よく思いつくなぁ
343それも名無しだ:2006/02/19(日) 16:18:51 ID:LgAuNKTr
GJ!
続きwktkして待っとります
344312:2006/02/20(月) 00:46:42 ID:6nCkC/yG
鉱山地帯の無骨な岩肌の影に隠れるようにしてその教会はひっそりと建っていた。
そこは切り立った崖を背にしていて、建造物の半分近くに暗い影が落ちている。対照的に日の当たる部分は高地特有の強い日差しと、白い石造りの外壁が眩いばかりの光を放っていた。
尖塔の頂点に据え置かれた十字架はゆるやかに傾いてしまっている。
「こんなところに教会なんてあるんですな」
「随分古い鉱山だったってことか」
ワッパを操縦するバムロとその後ろでシートの背につかまっているビルギットの会話に、もう一人の同乗者である機長は何の反応も示さなかった。
ただでさえ小型のワッパに三人が乗るというのはいささか無理があるものだったが、バムロの操縦はそんな不都合を感じさせることがない。
教会の古い木扉の前でワッパは止まった。教会自体の位置は輸送機の不時着時点からそれほど離れてはいなかったのだが、そそり立ついくつかの岸壁がちょうどそこを死角にしてしまっていたらしかった。
大きな木製の扉は古かったが造りはしっかりしたものだった。幾十年、もっとかもしれない、風雨にさらされ続けてきたであろうその扉は、それでもほんの少しの隙間も生み出してはいなかった。
厚い扉である。様々な意味において。
ビルギットは拳銃を手にしていた。先ほど機長から奪ったものではなく、自身の装備である。一度でも自分の手で分解したことがない拳銃を使うということは、よほどの場合で無い限りは遠慮したいと彼は考えていた。
しかし実際においては、そのよほどの場合の方が多く発生するものだということも、ビルギットはそれなりに理解している。
バムロは後ろからついてきた。ワッパに備えてあった自動小銃を構えている。この用意周到さ、徹底さには敵わないとビルギットは思う。
「では中尉殿。お願いします」
ビルギットはそう言って機長を促した。バムロと二人で機長の両脇に立つ。お互いがお互いの後方を確認できる一方で、扉の影から教会の中を確認できるくらいの位置である。
中から一斉射というのはなるべく避けたい。中への一斉射も同様だ。
「私だ。開けてくれ」
先頭に立っていた機長がゆっくりと言った。合言葉にしては捻りが足りないなと思った。
一瞬の間をおいて、それとは反するように重い扉はゆっくりと開き始めた。周囲にそれとなく目を配るも、伏兵はいないようだった。
ビルギットの位置からはまだ内部は見えなかったが、少しずつ開き始めたその扉の内側からは、人間がひしめき合っているあの独特の空気が流れていることははっきりと分かった。
「では少尉」
後は任せるといったように機長は一歩横に退いた。この男は彼らに対してどんな感情を抱いているのかとビルギットはほんの少し考え、そして止めた。
予想通り、彼の目前にいたのは人間の一団であった。ビルギットが前に立った瞬間、それまで機長の方を向いていたであろうその視線が一斉にビルギットに集中した。
その目の色は彼の予想とは明らかに違っていた。
何だろうなとビルギットは思う。通常こういう時には人間身を寄せ合って固まるものだ。極度の不安がそうさせる。
それがどうだろう。彼らはとりあえずのまとまりを見せてはいるものの、どこかお互いに距離を取って位置しているように思える。不安や恐怖を感じてはいないのか。
そうだ。おそらくそうなのだろう。その証拠に彼らの目の色と顔を見ろ。一応避難民として扱うべきなのだろうが、こいつらのこの視線、あの時俺に閑職を言い渡したティターンズの官僚にそっくりだ。

こいつらどこまでも俺を見下してやがる。
コーディネーターってこんな奴らだったかな?

345312:2006/02/20(月) 00:49:47 ID:6nCkC/yG
「どれくらいで収容できる」
「三十分てとこですか」
「二十分だ。それ以上は待てない」
それがミデア自体の安全を保障できる限界であることは承知しているからバムロも反論はしない。
ワッパで到着した部下が二人、教会の外に出たコーディネイター達を開けた場所に整列させている。
総勢五十二名。女子供を先にして、それから男たちという順番は相手が何者であろうと変わらない。部下にも小銃を持たせているが、それによって罪悪感を感じないということもやはり変わらない。
どんな人間の集団であれ、反乱の可能性は十分にある。整列を終えた者から腰を低くした姿勢で待機させる。ミデアが降りてくるのはもうすぐであろう。
それを見ながら警戒すべき人間は何人ぐらいいるだろうとビルギットは考えていた。
誰もがそうだというのはまさにその通りであった。あの目を見れば誰が銃を取ろうが不思議には思わない。
コーディネーターは民族総闘士というわけか。民族、いや種族だと言っていたな。冗談じゃない。
「曹長、どう思う」
この場をバムロに任せてしまう前にビルギットは確認するように言った。
「とりあえず、目を離したくないのは二人ですか」
「同感だ」
そう答えて件の二人に目を向ける。彼らがこちらの指示に従う態度は正反対のものであったが、それだけに疑いは同じようなものになる。
一人は従順で率先、もう一人は反抗的で拘泥していた。
「最初に協力を言い出した奴、彼には先頭の婆さんの補助を任せましょう」
「いい考えだ。もう片方のガキは殿ってとこか」
そういった二人は離しておいておくべきだとビルギットは考えていた。全員の身体検査もできないこの状況でできることは限られていた。
頑強そうな男を列の前の方に置き、その腕に幼児を抱かせておくことさえさせた。両手を塞いでおきたかった。
君が責任を持って面倒を見てくれたまえと言い添えて。もちろん君がの部分をことさらに強調しておくことは忘れない。
畜生。何が責任だ。教会の中でやったことも含めて、俺のこの行為の責任は誰が取ってくれる。
もうアルファナンバーズには呼んで貰えないだろうな。ははは。
しかし他にどうしようがあった。

周囲の木々の枝葉が揺れ始めた。抑え気味のエンジン音が周囲を包み込む。コーディネーターを並ばせていた二人の部下が、彼らに頭を低くしろと命令している。
幼児を胸に抱えた何人かの男は小さな身体をしっかりと守ろうとしているように見えた。ビルギットはその光景にひとまず胸を撫で下ろす。
垂直着陸を行おうとするミデアが激しい逆噴射を行いながら、空中でその姿勢を安定させている。
五十二人は優に収容できるその巨体はゆっくりと地面に足を下ろした。舞い上げられた落ち葉や砂が余韻を残すかのように風に揺られている。

時間だな。ビルギットは押し黙ったままその光景を見つめていた機長の前に立った。そして最初に顔を合わせた時と同じ姿勢を取る。
肘を曲げ、先を伸ばした右手を額に当てる。


「避難民五十二名、確かに引き継がせていただきました。
これより当小隊は避難民の安全を確保すべく、地球連邦軍オエンベリ基地に帰還します。
任務引継ぎの件に関する中尉殿の迅速なる御判断に感謝致します」


346312:2006/02/20(月) 00:51:47 ID:6nCkC/yG

「中尉殿、あんたはどうなさるんです」
助け舟を出したのはバムロだった。機長は目だけを動かしてバムロを見た。
「フッケバインでオーブまで逃げますか。しかしありゃ動かんですよ。我々には動かせません」
「そうだ。OSが入っていない」
機長の声は静かなものだった。ほんの一瞬バムロに向けられていた視線はもうビルギットの顔に戻されている。
「あのコーディネーターたちが持っているんじゃないですかね」
「詰問したが、誰も持っていなかった」
「隠し場所はいくらでもありますさな。胃の中にでも、歯の裏にでも」
着陸したミデアがハッチを開き始めた。ビルギットの部下が列の先頭の老女とその手を取った従順そうな男に指示を出している。
「ないしは奴らの頭の中に入っているか、だな」
ビルギットが口を挟んだ。

「中尉殿。あんたもオーブもコーディネーターの存在を入国の建前にするつもりだったんでしょうが、彼らはそれを逆手に取りましたな。
彼らにしてみれば保険のつもりだったんでしょう。もしくはオーブとマオが仕組んだか。OSと機体を分ける。どちらが欠けても本当の目的は闇の中ですか。
オーブ特例市民でしたっけ。彼らが声高に言ってましたね。オーブにしてみればどちらに転んでも損のない話でしょうよ。
失敗すればオールズのせいにして、オーブ周辺のオールズ勢力拡大を理由に軍備増強の建前が出来る。
あんたがコーディネーターを連れて行ければ避難民、いや特例市民ですか、それをマン・ハントからの保護だか何だかと理由をつけてヒュッケバインごと確保してしまえる。
どちらにせよ、あのヒュッケバインの存在なんてマオもオーブも手引きした奴も知らん顔でしょうが」

「なるほどな」
分かっていてこう言っているのかなとビルギットは思った。
「しかしオーブはコーディネーターの存在を対外認知しますか。驚きましたな」
次の言葉をどう言うべきか、上手くいかないものだと考えた。

「ワッパと数日分の糧食は提供できます。どうします」
それぐらいしか俺にできることはないだろうな。


347312:2006/02/20(月) 00:54:18 ID:6nCkC/yG

輸送機が不時着した地点の下には結構な広さの森林地帯が広がっている。立ち並んだ木々の間に頭だけを出すような形でいくつかのダミーが置かれていた。
敵が引っかかってくれるとは思えない。それぞれのダミー間には誘導機雷が仕掛けてあるが、これも無いよりましといったところだろう。
ビルギットはGキャノンを直立させていた。僚機のヘビーガンと先の任務の後に補充されたジムUが林の中と、岩壁の影にそれぞれ身を潜めている。
ヘビーガンの頭部と肩には迷彩スモックが被せられていた。ビルギットが戻ってきた時にはジムがヘビーガンにそれを被せているところだった。
そのモビルスーツらしからぬ甲斐甲斐しい光景にビルギットは思わず吹き出した。

その時、正面のコンソールモニターに新しい情報が映し出された。カメラが移動する物体を捉えている。レーダーは使えないのでカメラに映った映像をコンピューターがいちいち解析しているのだ。
何秒かの後に解像度が上がった映像に切り替わった。望遠で捉えられたその映像に映ったものは、それ自体の姿よりもそれが進むことによって背後に発生する乱流によってこそ判別されるものだった。
ビルギットの身体を包み込んでいる全天球モニターの端で、固定されて捉えられているヘビーガンの頭部が合図を示すかのごとく動いた。見てはいないがジムも同様だろう。
小隊は戦闘態勢に入った。

「曹長。ドムが来たぞ。飛べるか」
「山攻めはドムに限りますな。あと十分です」
「後方にザクでもいるだろう。多分ドダイに乗ってるぞ。そこまでは面倒見切れないからな」
「振り切ってくれ。迂回して合流だ。一度振り切れば向こうの燃料も切れる。ドダイは燃費が悪いらしいからな」
「了解。中尉はワッパに乗りました」
「分かった」
「ではまた」
曹長が回線を切った。無線通信ではない。有線通信である。光ファイバーを用いた、要は野戦電話である。
完全に使い捨てのそれはこういった状況下で時折利用される。ビルギットはワッパで戻る際、それのコードを引っ張ってきていたのだった。
Gキャノンの肩に備え付けられた照準機がドムの姿を捉えている。だが捉えているだけで、今撃ったところで当たりはしないだろう。
向こうもこちらの動きは不完全ながら見えていると考えるべきだ。
地上戦と、中途半端な時間ではあるが空中戦を同時に可能にしたモビルスーツの存在はその巨大さと相まって大抵の地形効果を失わせた。
それでも山の上と下である。いくらかはこちらに有利な状況ではあるだろう。
ただ問題はこちらがやるべきなのが防衛戦ではなく、撤退戦であることだった。
348312:2006/02/20(月) 00:59:36 ID:6nCkC/yG
来たぞ。一瞬ドムの動きが止まり、それを捕捉したコンソールに警告が出る。
その次の瞬間にはそこを離れたGキャノンの背後にビームが撃ちこまれていた。
長距離で放たれたビームは一応弾着するが、本来の威力を発揮できずに岩を砕き、それを焦がした程度で終わる。
ビルギットは機体の全身を捕捉されていたために動いたが、ダミーに惑わされた他の砲撃は隠れていたヘビーガンの左右にそれぞれ行われていた。
置いておくものだなと思う間もなく、ダミーにしかけられた爆薬が衝撃を伴った炎を巻き上げた。数秒騙されてくれればいい。
モニターはドムを映し出している。動きが速いので画像解析で追跡を行うそのシステムでは誤差が出来てしまう。
それを修正するための照準機が正確に働き、ビルギットは部下に命令しておいたタイミング通り、ビームライフルの一射目を行った。
そして素早くその場を離れる。一対一ならともかく、敵機が複数いるならば射撃直後に狙われていない敵機はその場所に砲撃を集中させるのは当然であった。
Gキャノンは弧を描くようなコースを取る。ドムと接近戦を行うのは避けたい。つかず離れずの距離で、上下を逆転、離脱に入りたかった。
ドムは重装甲、それをカバーするための高出力であるがために継戦能力はそれほど高くはない。追撃任務には向かないはずだった。
こちらは何かにつけて長持ちだけが美点のモビルスーツだらけだ。ドムの後方から現れるであろう敵の援軍に挟まれる形になるかどうかは、敵がミデアをどう扱うかで状況が変わる。上手くいけば固まってくれるだろか。
こちらに近づいてきたドムは二機だった。距離を置かずに一気に勝負をつけようという腹だ。定石だった。
Gキャノンの装備では一撃でドムを破壊することはできない。一機が小破で敵一機撃墜ならば安いものだろう。


349312:2006/02/20(月) 01:00:57 ID:6nCkC/yG
ビルギットはそれに向かってシールドの裏に装備されていたグレネードを全弾発射する。
シールド裏面のラックが外れると同時に噴射炎と煙を撒き散らして三発のグレネードはドムに向かって直進した。
ドムが反応を示す前にグレネードの内二発は軌道を変え、的外れともいえるドムの前方に着弾する。
弾頭が林の中に消えたと思った瞬間、ライフルもバズーカでも及ばない、轟温灼熱の衝撃波が辺り一面を包んでいった。グレネードの弾頭はナパームだったのだ。
ドムの地上戦での頑強さを支えるのは脚部のホバーユニットであるから、そこに攻撃を集中させるのは間違いではない。しかしそんな策は敵機も承知の上と考えるべきである。
それでもドムは一瞬怯んだ。ドムが頑強であることと中のパイロットが頑強な心根を有していることは必ずしもイコールではない。
それをビルギットは予測していない。この状況でパイロットの心理状況を踏まえた作戦を展開できるほどにビルギットは余裕を感じてはいないし、人間も出来てはいない。

だから、岩壁に隠れていたジムが両手のバズーカを動きが止まったドムに向けて発射したのは、冷静かつ沈着にその光景を観察した結果、そこにたまたま好機があったという、極めて常識的な判断によるものでしかなかった。
それでも、その砲撃はドムの肩を抉り、外れた一発も背後に弾着し、その衝撃がドムの体勢を大きく崩した。
無傷のもう一機のドムがその機体でしか支えられないことから「ジャイアント」の名を冠することになったバズーカを構えた時には、ジムはまるで正反対にバズーカを捨てて身軽なその機体を移動させていたのだった。
ビルギットはライフルと腕のビームキャノン砲で体勢を崩したドムを攻撃したが、必死に回避運動を続けるドムに致命傷を与えるほどにはその攻撃は熱心なものではなかった。
ドムとの位置を逆転しかけたGキャノンのカメラとコンピューターは、コクピットに座るビルギットに頭が痛くなるような情報を提示した。最悪だとという言葉しかこの瞬間には出てこなかった。
予想していた援軍が、見事にモビルスーツを挟み込む形でやって来たのだった。遅すぎるんだよとビルギットは唾棄する。オールズモビルはミデアを捕捉することは難しいだろう。
しかし、今彼らが対峙しているモビルスーツ部隊は、全く持って窮地に立たされたことになる。俺はあの輸送機の重要性を高く見すぎたのかな、と頭の隅で思った。
通信が入ったのはその時である。野戦電話の回線はとうに切り離していたから、これは無線である。傍受されるのは当然である。
一応暗号化されてはいたが、敵も解読するのは容易であろう。
コンピューターが解析を終えるタイムラグは長くて十秒といったところだった。
そして敵より十秒は早く、Gキャノンのコンピューターはそのメッセージを伝えた。

ビルギットはとりあえず叫んでみることにした。
そうでなければ湧き上がった感情は行き場を失って戦場での判断をいつか狂わせる。

「あのガキ! 死んじまえ!」
350312:2006/02/20(月) 01:04:23 ID:6nCkC/yG

ハイネ・ヴェステンフルスはコーディネーターとしての自分に大層自信を持っているから、自分の前に現れたその鼻が細長く目つきの悪いナチュラルの軍人が救援と称するからといって、彼にはいそうですかと従おうとは思わなかった。

そして彼の感情はその場にいた全員の総意であると思われた。隣の男も、若い夫婦も、老婆も、全員が誇り高き優性種族としての視線をその軍人に向けていた。
それは正しいことである。距離さえ近づけば、瞬く間に叩きのめしてやれるだろう。
拳銃を持っているがそれくらいなら。そう言ったのは隣の男だった。ハイネは自分の思いが通じたような気がして嬉しさを感じる。

その言葉に反応したのかどうかは知らないが、その軍人は後ろにいた中年の軍人から自動小銃を受け取ったかと思うと、それを天井に向けて乱射し始めた。
女たちと子供は例外なく悲鳴を上げた。激しい銃声と薬莢が石畳の床に転がる音だけが教会の敬虔な空間に響き渡った。
ハイネも内臓が冷や汗をかいたような気分に襲われたが、こっちを撃つわけはない。撃てるわけがないと心に言い聞かせ、その軍人を睨み続けた。
鍵鼻、ニキビ、不細工といった外見上のあらゆる嘲りの文句を口にしながらハイネは萎んでしまいそうなその心を支えた。
そんなものはコーディネーターには存在しないのだと。このニキビ野郎。

その軍人はカートリッジ二つを使い切った後、ようやく口をひらいた。
みなさん、私は地球連邦軍所属のビルギット・ピリヨ少尉であります。
フィフス・ルナ落下の際の避難民としてのみなさんのご苦難におきましては、小官もその作戦を阻止できなかった軍の一員として、大変申し訳なく思う次第です。
どれだけの罪滅ぼしとなるか分かりませんが、小官と小隊員はみなさんを可能な限り安全かつ迅速に、連邦軍オエンベリ基地へ保護することをお約束致します。
それでは以後はこのバムロ軍曹の指示に従い……。



351312:2006/02/20(月) 01:07:00 ID:6nCkC/yG

誰もが呆然としてその言葉を聞いた。そして案内人だったはずの輸送機の機長を見た。
男の顔にはどんな感情も浮かんでいなかった。
ただハイネたちと同じように、その少尉の言葉を黙って聞いていた。

ハイネは改めて怒りを感じる。ナチュラルに対する根本的な怒り。
何も言わずに銃を乱射するこのパッとしない見た目の男への怒り。
避難民だと。何を言いやがるんだこいつは。俺たちはコーディネーターだ。
新人類。優れた才能、無限の潜在能力。どんな苦難を受けても折れない高貴な精神。その全てを有している。
おっと、この美貌のことまで言うと奴にも失礼すぎるか。いや失礼なんてことはナチュラルには勿体無い。
俺たちは全てを利用してオーブ経由でプラントに戻るはずだった。
それだけでも不当な扱いだというのに、この男は偉そうに何を言っている?

「俺たちはオーブ特例市民だ! 命令は受けない」
一応集団のリーダー格であった男がそう言った。拍手にも似た賛同が巻き起こる。
いいぞ。オーブ特例市民なんてものはただの建前に過ぎないが、そういうものを利用するのが知恵というものだ。
さてどう答えるつもりだニキビ野郎。

「ではオーブ政府がみなさんを迅速に保護されることをお祈りします。それでは失礼」

今度こそ誰も口を開けなかった。または開いた口を閉じることができなかった。
この男は、この軍人は俺たちを見捨てるといったのだ。お前にそんな権利があると本気で思っているのか。
そうだ。きっと小銃の弾も尽きている。後先考えずに撃ったに違いない。
あんなもので俺が縮み上がると思っているなら大間違いだ。よし、後ろを向け。
そうだ。見てろ。目にもの見せてやる。

「待ってください。僕を保護してください。お願いします」
その言葉はハイネが腰を浮かせたところで発せられた。思わず動きが止まる。
中腰の、傍から見れば間抜けな姿勢。しかしハイネは動けなかった。そしてその言葉を信じる気にはなれなかった。
耳を疑った。誰だ。今言った奴は誰だ。出て来い。ナチュラルに保護を求めるだと。貴様本気で言っているのか。だとしたら俺が。
「分かった。君を連邦軍に保護しよう。そこの君、君もかい」
男はハイネに向かって言い放った。ハイネが腰を浮かせていた分、目立ってしまったのだった。
ハイネは頭に血が上るのを感じていた。
怒りだ。こいつは俺を侮辱したのだ。ナチュラルがコーディネーターを。それは許されることではない。
「ちが……」
言い終る前に、一人の母親が立ち上がった。両腕で幼児を抱きしめている。母親のスカートを掴むようにして、もう少し年上の幼児がぐずっていた。
「私も、保護を求めます」
その声に導かれて次々と人々が立ち上がる。みな納得はしていない。有無を言わされない状況なのだ。
悪夢だ。そうとしか言い様のない光景にハイネは目の前が暗くなった。
「五十二名、全員ですな。了解しました」
この男はいつの間に人数を数えたのだろうとハイネは思った。
352312:2006/02/20(月) 01:11:08 ID:6nCkC/yG

これがコーディネーターだ。ハイネは心の中で喝采を叫ぶ。
その証拠にこのモビルスーツは自分の操作に反応し、起動を開始したではないか。内部は趣味の悪さが際立つ赤一色だったが、この際贅沢は言っていられない。
俺がこのモビルスーツを受領した暁には、専用のカラーリングを施そう。色はもう決まっている。

輸送機に収容される直前だった。一人の男が駆け出したのだ。モビルスーツを動かすと言った。
OSを持っているのは俺だと、走り出す前に小声で言ったのだった。
収容を指示していたナチュラルの一人が銃を撃った。何発かが彼の足元を襲った。当たらなかったことにハイネは嘲笑した。
下手糞め。銃撃が一度止んだと思ったら、またその男が一発撃った。今度は走り出した男の足を掠めた。
男は倒れ込んだ。うめいている。

ハイネは頭の中が渦巻くのを感じた。湧き上がる何かがある。
俺だ。俺しかない。俺が行くしかない。この位置を見ろ。俺が一番近い。
運命。ディスティニー。走り出せ。ナチュラルをなぎ倒せ。

ハイネは走り出した。背中に軍人の制止の声がかかったが、当然そんなものは無視して走り続ける。男の側に駆け寄った。
OSは、と聞く。男は口の中からカプセルを取り出した。唾液に濡れたそれを受け取る。
頼む、と男は言った。足の傷は大したことがなさそうだった。

「俺がナチュラルを叩き潰す。待っててくれ!」

そう叫んだ。それまで陰鬱な顔をしていた彼らは一斉に声をあげた。
行け、やっちまえ、頼むぞ、お前ならできる。その歓声がどれほど心を高揚させるか。
ハイネはしばし立ち止まってそれを聞いていたかった。しかし今は走らなければならない。
止まらんと撃つぞ、と軍人が言った。そんなもので止められるわけがない。

再び走り出した時、目の前にワッパが止まった。乗っていたのは案内人としてハイネたちが利用していた男だった。
この男には用はない。使えなかったのだ。しかしワッパは使えるな。そう思った時だった。

「ヒュッケバインまで案内する。頼む。俺をオーブへ連れて行ってくれ」
この男にもまだ利用価値はあるかなとハイネは思った。
353312:2006/02/20(月) 01:12:40 ID:6nCkC/yG

ヒュッケバインという名前のモビルスーツに取り付く寸前で、ワッパが衝撃波で大きく体勢を崩した。
男が振り落とされる。モビルスーツは目の前だ。もう奴に用はなかった。
ハイネはそのまま全速でコクピットに向かう。ハッチは開いたままだった。


いける。いけるぞ。リニアシートが周囲の光景を映し出す。
正面のコンソールに自機の体勢を示したグラフィックが表示される。
なかなかいかしたデザインだ。さすがコーディネーター用は一味違う。

シートのヘッドレストに微かな違和感を感じるが、それは問題無い。
操縦方法は大体分かっている。立ち上がるにはオートにすればいい。
さあいくぞ。離れたところで大きな炎が上がった。
俺は恐れない。俺は戦士だ。
英雄として、俺は一歩を踏み出した。

今に見ていろナチュラル、全滅だ!
354312:2006/02/20(月) 01:15:19 ID:6nCkC/yG
ヘビーガンを警戒していたドムのパイロットがその機体を目にしたのはそれと同時だった。
彼はヒュッケバインが起動したことに驚き、ヘビーガンに構っている場合ではないと判断した。
今ならばやってしまえるかもしれない。彼は危険な綱渡りを行うことを決断する。

ホバーで全速接近する。コンテナからヒュッケバインが立ち上がる。このままの勢いでヒートサーベルをなぎ払えば。
装甲がどんなものかは不明だが、衝撃でパイロットはしばらく戦闘不能になるだろう。上手く行けば内臓破裂で死んでくれるかも。
とにかく、最短距離で突き進むしかない。あれを放っておけばどんなことになるか分からないのだから。
だから立ち上がった直後にヒュッケバインの動きが止まったことは彼の理解を超えていたのだった。
何故止まる。何故動かない。
彼の心に迷いが走ったが、彼は今、そのまま突き進んでサーベルを振り払うしかなかった。


彼は知る由もなかった。
ヒュッケバインが立ち上がった衝撃で、中にいたハイネ・ヴェステンフルスが胃の中の内容物を口から逆流させ、そのまま気絶してしまったことを。
ドムのパイロットは何も知らずにサーベルを振り払い、そのままヒュッケバインは後ろに倒れていった。
ヒートサーベルの熱により、その胸部装甲は破壊された。しかし、赤く染められたコクピット・ハッチは少しへこんだくらいのダメージしか受けてはいなかった。
球体のコクピット、リニアシートの内部が弱弱しいが暖かい光に包まれていたことも、当然彼が知るはずはなかった。
彼がドムを反転させ、ヒュッケバインの様子を確認すれば気付いたかもしれなかった。
しかしそれは叶わないことだった。



そのドムは、背後を狙っていたヘビーガンの放った200ミリ口径の弾頭の命中により、パイロット共々その役目を志半ばで終えてしまっていたからだ。
355312:2006/02/20(月) 01:23:46 ID:6nCkC/yG
2話後編終了。

ハイネの設定は完全に変えてしまいました。
SEEDは本編しか見ていないので、出生その他の設定が分からない。
だったらまあいいかという具合で。

納得いかんという人には正直すまんかった。
一応本編のキャラクターに繋がるように動かそうとは思っています。

プラントの設定はサルファのものとほぼ同じとしてあります。
宇宙育ちならまあ知っているという感じで。
356それも名無しだ:2006/02/20(月) 01:31:58 ID:EmjQMuud
乙!!
リアルタイムで楽しませていただきますた。

いや、ビルギットさんがいいね、いいキャラしてる。
戦闘描写も地味だがしっかりしているし。
ドムの継戦能力云々とかあまり熱心でないビルギットの射撃
とか非常に“リアルっぽい”雰囲気が出てていいです。

ハイネもすげームカつく(ほめ言葉)
357ロボゲSSまとめサイター ◆wl6aSDxcj. :2006/02/20(月) 17:09:59 ID:ewsuFswY
業務連絡です。

以下の更新を行いました。

>>312氏(仮名)のビルギット主役のミリタリー連載SSを掲載。

タイトルが無いと極めて不便なので、こちらで仮題をつけました。
「第二次スーパーロボット大戦αアフター 〜ビギン・ビルギット・ビギニング〜」と仮につけさせていただきました。

愛称は、あえて「ビギビギ」です、よろしく。

冗談です、ごめんなさい。

恐れ入りますが、作者様の方から正式タイトルなど提案して欲しく願います。
現在、第一話、第二話まで掲載。
第二次スパロボαのアフターという事で、そのように分類してあります。
また、当方からWEBサイト上で少しでも読みやすいように改行をいじってあります。
これも、恐れ入りますが作者様の方から注文などつけて欲しく願います。

今回で、ついに血迷うネタが尽きました…ちょうどいいのが何もありませんでした。
ドラえもんやテコンVは当たり前すぎるのでパス、鉄腕アトムはリンク許可申請必要、世界最大のドリルはサイト消滅。
ファミコンやセガMK3のロボゲーのサイトの発掘も試みましたが色々あってダメでした。
どうやら次回更新からは特撮系に走る事になりそうです。
しかし管理人は特撮は専門外のため、長期的かつ無補給無支援での単独行動になるのがイヤンなのです。
まぁアラレちゃんとか原作漫画版とか玩具展開モノとかマジに無いわけでもないんですが、どうしようかなあと。

そんなわけで、今回は以上までに。

追伸
かなり渋いヤツが入ってきましたな。
読んでいて脳内では近藤和久の絵でイメージが展開されてました。
渋くてカッコイイのは大歓迎なので、続きを期待しております。

※近藤和久=機動戦士ガンダム ジオンの再興を描いたミリタリー系コミックアーティスト。
 遠い昔、氏のデザインしたモビルスーツがガレージキットでシリーズ展開された事もある。
 氏のデザインしたギャプランやゲイ・ドライ、PMX-005ブレダは死ぬほど渋くてカッコイイ。
358312:2006/02/20(月) 21:31:15 ID:6nCkC/yG

「あんよは上手。お転びお下手」


手持ちの拡声器で増音されたその掛け声が荒地に展開していた前線基地内に響き渡る。
声の主はビルギット・ピリヨが率いる小隊の最先任下士官を務めるバムロ曹長であった。
言葉自体の内容とは裏腹に、その声は厳しい。

その声に合わせるようにして、一呼吸置いたあとに大質量の鉄鋼が大地と激突する轟音が鳴り響く。
その光景は基地の反対側からでも十分に見渡すことができた。
それもそのはずである。
全長十八メートルの鋼鉄の巨体が一歩一歩地面の感触を確かめるが如く慎重に歩くその姿を視界から隠してしまえる遮蔽物は、この前線基地周辺には存在していないのだった。


「何とまあ、奇妙な光景だな」
「訓練の一環です。気にせんでください」
基地の一角に停められた大型のホバートレーラーの一室で、二人の男が強化ガラスで覆われた窓からその光景を眺めていた。
その部屋はこの前線基地を統括指揮する司令官専用のものであった。
「分かるよ。ここにいる連中であの訓練の意味が分からない奴などいない。
もっとも、オエンベリの革張りソファにふんぞり返っている、たるんだ腹をもてあましている男はどうかは知らんがね」

ビルギット・ピリヨは前線基地司令のあからさまな言い方に苦笑した。
その言葉に含まれているものはただ一つ。純粋な侮蔑である。
折り合いが悪いのだろう。それも当然だなと思う。

359312:2006/02/20(月) 21:32:59 ID:6nCkC/yG

目の前の男は野戦任務に関わる全ての事柄を具現化したような人間だった。
日に焼け焦げた黒い肌は荒れ果てて、硬く尖った顎のあちこちに髭の剃り残しが不揃いな長さで生えている。
その肉体は皺くちゃの軍服の上からでもはっきり分かるほど盛り上がっていながらも引き締まり、背筋の鋭さは鉄骨にスチールファイバーの人工筋肉を盛り付けたかのようだった。
そのくせ眼光は鋭さを目の奥の奥に隠している。
口は悪い。だが無能どころか、極めて優秀な士官だ。

そりゃ、腹ぼて司令官と反りが合うわけはないよなとつくづく思う。

だからこそだ。
そういう彼がいるからこそ、ビルギットはあの鉱山地帯からの撤退後、いの一番にこの前線基地に向かったのである。
目の前の男と個人的なつながりは皆無だが、ビルギットが輸送機の事情を彼が予想した背景のことを除いて述べた後、男はビルギットの小隊に一切の補給を認めてくれた。

それは前線基地内の全ての兵士も同様だった。
彼らはこのオーストラリア大陸において、オールズモビルの一挙手一動に絶えず最大級の警戒の視線を送り続けている人たちであったから、鉱山襲撃の動きもいささか遅れてはいたが掴んでいたのだった。
彼らも認識している危機を脱してきたビルギットの小隊が、その存在を肯定的に認められるのはしごく当然のことである。

360312:2006/02/20(月) 21:34:52 ID:6nCkC/yG

前線基地司令はコーディネーターに関しては面白そうにほうと言っただけだった。
オーブに亡命を図るコーディネーターはさして珍しくもないのだろう。
ここはオーブの目と鼻の先である。
まあ無理もないだろうと男は言った。最近マン・ハントが動きすぎているとも。
よくよく強力な後ろ盾がついているんでしょうとビルギットは答えた。
独立していて気に食わんが手が出せないと男は苦々しく言った。

「しかし映像を見せてもらったが、連中相当お高いな」
ミデアに収容したコーディネーター達はこの三日間、コンテナ内から一歩も外に出ていなかった。
もちろん自由行動を許すわけにはいかなかったから、ミデア周辺に置ける簡易居住ブロックを基地から提供してもらい、彼らにはそこで基地滞在の間過ごしておうとビルギットは考えていたのだった。
さすがに全員分は揃えられなかったので、女子供を中心にして交代で泊まらせようとしたのである。

しかし彼らは説明を繰り返してもコンテナから出ようとはしなかった。
その顔にはビルギット達に対する不信がありありと浮かんでいた。

まあ無理もないかと思いはする。初対面で自動小銃を乱射してしまっては。
信用も何もあったものじゃない。

それに彼らはあと一歩でオーブに行けるとそう思っていたはずだ。
それをオエンベリ、しかも連邦軍基地へ連行すると言われて素直に従う奴がどこにいるだろう。

361312:2006/02/20(月) 21:37:56 ID:6nCkC/yG

「コーディネーターはもう少し人当たりがいいと思っていたんですが」
「そういう奴もいないことはないが、全体的に高慢だな」
「宇宙では何度か通信を交わしましたが、冗談のセンスは悪くなかったですよ」
そうかといって司令は笑った。

「そういうコンタクトの際にはお互いちょっとしたものを交換すると聞いているが」
「ばれたら懲罰ものですが」
司令は口の端で笑った。
なあちょっといたずらをしようじゃないか。そんな感じの笑い方だった。

「教えろよ」
「こちらが持っていたのはウィスキーでした。名産でしてね。自分も飲んだことはありませんでした。
いいものだったみたいですよ。向こうが今の手持ちじゃ申し訳ない、次はとっておきのものを用意しておくといって引き返しましたから」
「一度飲んでみたいものだな」
「潰れましたよ。貧乏コロニーですから。
で、次の飛行訓練で向こうが接触した際に持ってきたのがポルノグラフィでしたね。
音楽ディスクも同封されてました。
向こうで流行っているアイドルと、そのそっくりさんが出ているポルノでしたよ。
ラクス・クラインものとか、シリーズになっているそうです」

「見たのか」
司令は面白くてたまらないという顔をしている。
「髪がピンクって言われましてもねぇ」
我慢できなくなったのだろう。司令は大口を開け、そのまま後ろにひっくり返ってしまうのではないかと心配させるほどに大笑いした。
その笑いは優に一分は続いていた。


「変わらんな。何も変わらん。人間考えることはそうそう変わらないってことだ」


362312:2006/02/20(月) 21:40:50 ID:6nCkC/yG

「あんよは上手。お転びお下手」


バムロはその掛け声をすでに一時間は続けていた。
それに合わせてモビルスーツも足を上げ、それを下ろし、一歩一歩前に進んでいる。
十歩進ませたところで回り右をして、今歩いた場所を十歩進む。その繰り返しである。

モビルスーツは機械であるから燃料が切れない限りは半永久的にその行為を繰り返すことができる。
疲れ知らずなのである。
しかし疲れを知る人間であるはずのバムロもまた、その声に一片の疲労も滲ませない。
その光景を眺めているものがいれば、モビルスーツが疲れているように思えるほどだった。

「やってるな」
ホバートレーラーから歩いてきたビルギットがバムロの横に立った。
「申し訳ありません。ありゃ駄目です。全然駄目ですな」
「まだ三日目だ。それにものになろうがならまいが、それはどうでもいいしな」
そう言ってビルギットは手に持っていた小瓶をバムロに差し出した。
茶色の瓶に、所々が掠れたラベルが張られている。古いものだろう。
「司令官の差し入れだ」
「気が利きますな。では遠慮なく」
バムロは栓を指で押し開け、軽く一口飲んでみた。
香り深い芳香が口の中に広がる。飲み込んでしまうのが勿体無く、しばらくその琥珀色の液体を口の中で転がしていた。
それが喉の奥に流れていった後、余韻を楽しむように鼻で息をしたバムロは司令官の気遣いを讃えた。
「極上ですよ」
「だろうな。そういう人だった。全部飲むなよ。小隊に回してやれ」
そう言った時にはバムロは二口目を口に運んでいる。

「最先任の役得これに尽きるものはありません」

お互いがにたりと笑った。
こういったずるさの一つもなければ小隊を動かすことはできなかった。
それぐらいは許されるべきなのだとビルギットは思う。

363312:2006/02/20(月) 21:42:35 ID:6nCkC/yG

最先任下士官の任務は激務だ。小隊内の全ての管理を任される。人員についても同様だ。
指導教官であり、実戦指揮官でもある。時には担任教師にもなる。
小隊の屋台骨は曹長のバムロである。
ビルギットの仕事はその骨組みが傷つかないように、上からの厄介ごとを押し留める屋根でしかないのだ。
屋根が変わっても骨組みさえしっかりしていれば、中の人間は救われていくだろう。

嗚咽と何かを吐き出す声がモビルスーツから聞こえたのはその時だった。
コクピット内に備え付けられたマイクがその声を拾い、前線基地で活動する全てに人間の耳にそれを届けてしまう。
誰が聞いてもそれが嘔吐のものであると分かっただろう。
それに構わず歩行を続けるモビルスーツ、ジムUのコクピット内で、リニアシートに座るパイロットは絶え間なく脳と内臓を揺さぶり、筋肉と骨を裂いてしまうようなその突き上げる衝撃にとうに耐え切れなくなってしまっていた。

「これで何回目だ」
ビルギットが苦笑して訊ねる。誰もが通る道だとは思う。
「六回、いや七回目でしたな」
バムロは響き渡る苦悶のうめきにも表情一つ変えないで答えた。
「もう出すものもないだろう。一番きついところだな」
「なに、まだこれからですよ。あと一時間は耐えてもらわんと」
何気に恐ろしいことをバムロは言った。

俺の教官が彼じゃなくて良かったよ。ビルギットはつくづくそう思う。
でも似たようなところはあったな。自分がモビルスーツを乗りたての頃を思い出す。
全く、誰もが通る道ってことだよな。

バムロが一際大きな声で罵声を上げる。
これなら拡声器なんか必要無いと思わせるぐらいの勢いで。
さて、あの鼻高坊主はどんな表情でこの罵りに甘んじているのかな。


「何をやっているかぁ、この大馬鹿野郎が! 
貴様には罰として腕立て腹筋受身500本追加、追加だ!
甘ったれるなよ。二度や三度死んだくらいで済むと思うな糞坊主!」


364312:2006/02/20(月) 21:44:05 ID:6nCkC/yG

ハイネ・ヴェステンフルスは顔から出せる限りの液体を体外に噴出していた。
もはや意識は混濁として、目の前に見える空の色が何色であるのかもわかってはいなかったが、それでも下半身の制御だけは何としても維持する必要があった。


「あんよは上手。お転びお下手」

その声を何度聞いただろう。最初は屈辱で頭にどれだけ血が回ったか分からない。
ナチュラルに命令されるなどという耐え難い事実に加え、貴様が口にしたその文句は一体何だ。
ハイネはあらん限りの罵声を拡声器を通して自分を馬鹿にするその中年男にぶつけた。

その声が出せなくなったのはいつだっただろう。
このモビルスーツが何歩目を踏んだところであっただろう。
ハイネはその高い自負心から、自分は今雌伏の時を迎えているのだと己を納得させていた。
そしてしばらくしてその思考もどこかに消えた。

ハイネは終わることなく自分の肉体を上から下へと突き上げる衝撃に全てを破壊されていた。
肉体的な抵抗。冷静な思考。今日が何月何日なのか。
両腕はすでにコントロールスティックから離れ、力なく両足の間で揺れている。
シートの上の身体を支えているのはただ四本のシートベルトのみであった。
口の端からこぼれた唾液はいつしか酸味の混じった胃液に変わっていた。

365312:2006/02/20(月) 21:46:32 ID:6nCkC/yG

モビルスーツに乗る前に一枚の袋を渡された。
ハイネは余りの屈辱にバムロの手からその袋を叩き落した。
バムロは眉一つ動かさずにハイネの頬をしたたかに打った。目の奥で火花が散った。

その時ハイネの肉体には力が十分有り余っていたから、怒りに任せてその身体をバムロにぶつけたのは当然であるといえた。
しかし殺意以外の何物をも含まないその拳は、ハイネが期待した結果を何一つとして生み出さなかった。
ハイネは腕を取られ、地面に転がされた。
ハイネ自身はそれが足を取られた結果によるものだとは気付いてはいなかった。
バムロはハイネの腕を左右に動かしたかと思えば、わざわざ彼の顔面を地面にこすりつける。
バムロの腕はハイネの顔も頭にも一切触れてはいなかった。

どうしてこうなるのだ。ハイネには全く分からない。
ただ思う。嘘だ。これは何かの間違いだ。俺は力をセーブしている。
そう、仲間達のためにだ。
俺が本気を出せば奴らに捉われている仲間達はどうなる。
落ち着けハイネ・ヴェステンフルス。お前は冷静な男だ。
ここでこの男を油断させ、機会をうかがうのだ。ナチュラル程度、そんなに長時間注意力が持続するわけがない。
しかし俺には忍耐が、決して折れないコーディネーターの誇りがあるじゃないか。

こいつらは俺を恐れている。それで俺を標的にしたのだ。
そうハイネは考えてモビルスーツに乗った。
渡された袋はコクピットに入る前にこれ見よがしに投げ捨てた。

戦時特例として君に小隊に加入してもらおう。教会で銃を乱射した男はそう言った。
そしてあらゆる種類の雑用を押し付けた。
それは俺の時間を拘束するためだ。俺に反乱計画を練られないようにするためなのだ。
同時に最初にナチュラルどもに屈服したあの男も加えられたが、それが奴らの甘さというものだ。
俺は何もかもを観察して、頭に入れている。
隙さえあればすぐにでもみんなを連れてオーブへ行けるだろう。
そのためにモビルスーツの操縦を確認しておくのも無駄にはならないか。

それが一時間前の彼の思考である。
今現在彼がそれを覚えているかどうかは分からない。
ただ彼は、開かれたままのコクピット・ハッチから見える太陽が早く沈んでくれないかと、ただそれだけをぼんやりと考えていた。
366312:2006/02/20(月) 21:49:51 ID:6nCkC/yG

ハイネがモビルスーツを降りた時、彼を待っていたのはコーディネーターの同胞たちによる暖かい労わりの言葉ではなく、バムロが予告していた通りの追加メニューであった。
ハイネは彼の目の前に立った時のバムロの表情を覚えてはいない。
ただそれを見た時に、どうしようもなく胃が握りつぶされるような感覚を覚えたことだけは記憶していた。
バムロの背後には汚れたブルーのマットが敷かれていた。
彼はこう言った。

さあ受身の時間だ。
受身を取れば死なないから、安心して死んでいいぞ。


それが三日間続いて、終わった時には自分がカートに乗せられてミデアまで運ばれていることをハイネだけが知らないでいた。
気がついた時、同胞たちは心配そうにハイネの顔を見つめていた。少ない配給から全員がハイネに食べ物を分けてくれた。
気遣いは嬉しかったが、ハイネの内臓は何も受け付けてはくれなかった。

二日目に分けてくれる人が少なくなったのは、昨日の自分の状態を見たからに違いないとハイネは思った。
親切を断るのもあれはあれで疲れるからな。ハイネはそう考えた。

今日気がついた時、若い女が申し訳なさそうに言った。
ねえ、悪いけどその服着替えてくれない。

どうしてこの娘は今そんなことを言うのだろうとハイネは思う。
無意識に口が動こうとした。ハイネはそれを止めた。


コンテナの外に居住ブロックがある。嫌ならそこに行けばいい。

どうして自分はそんなことを考えたのだろう。
ハイネは水分の一滴まで搾り取られたような思考の中で、ぼんやりとそう思っていた。


367312:2006/02/20(月) 22:02:21 ID:6nCkC/yG
3話前編終了。

汚い描写の多い話になってしまいました。
次回は初の女性キャラが出る予定なので、少しは華が添えられればいいのですが。

>まとめサイターさん
掲載感謝です。それに痺れるようなタイトルまで。
そのタイトルでこのままいかせていただきます。
どうもありがとう。

書き溜めていたストックがなくなりかけてきたので、次回はしばらく先になるかもしれません。
では『ビギビギ』ないしは『ビビビ』3話後編で。
368それも名無しだ:2006/02/21(火) 07:16:18 ID:D1wGXbi7
乙。面白かったよ。泥臭い話って大好きだ。


あと職人様方にリクを一つ、

チェンゲ風ブレンパワードを見てみたい。
「ブレェェェン!!!!」と叫ぶユウとか。
ダイナミック富野風味?
369312:2006/02/21(火) 19:28:29 ID:l1SnhcPP

「戦艦が一隻君達を迎えに来るそうだ。心当たりはあるか」
「タイミングが良すぎはしないかということ以外、特にありませんな」

前線基地司令官の通告にビルギットはそう答えた。
司令は頷き、気に入らんよなとだけ言った。
ビルギットの小隊が基地に到着して三日目の太陽が地平線に沈みきった頃のことだった。

「いつです」
「明朝」
「オエンベリにそんな任務に使えるだけの手持ち無沙汰な戦艦は無いと思っていたんですが」
「その通りだ。大方北米から動かしてきたというところだろう」

一介の少尉に過ぎないビルギットに北米地区の艦船配備状況が分かるわけはないのだが、それでもいくつかの要素がこの動きの背景を成しているということは推測できる。
コーディネーター。ヒュッケバイン。
どちらも厄介な代物である。強いて言うならば後者の重要性が高いのかもしれない。
当然であった。
コーディネーターは大勢いるが、オーブに持ち込まれようとしたヒュッケバインは小隊のミデアの横のコンテナ内に隠してある一機しか存在しないのだから。

それでも。ビルギットは考えを訂正する。
ヒュッケバインだけならもっと直接的な方法を取ってもよさそうだ。
オエンベリからの直援。十分ありえる。
何と言っても半分正体不明のパーソナルトルーパーだ。
確保すべきである。それがどんな部隊の指揮官であってもそう考える。
370312:2006/02/21(火) 19:31:22 ID:l1SnhcPP

それに対してコーディネーターはどうだろう。
指揮官によっては、もっと言えば地区によっては。
その扱いに温度差があるのは事実だ。
地球と宇宙という大きな区別だけではなく、それこそ例えば北米と南米であっても。

まだ訓練生だった頃、暗礁空域での演習中に密かに会話したコーディネーターのことを思い出す。
彼の実家は農業と牧畜を営んでいるとのことだった。
プラント、それが彼らのコロニーの通称だったが、そこには連邦軍が管理するサイドのどこよりも優れて、そして大規模な農業コロニー群が存在するのだと。
彼が持ってきた土産物は豚肉の腸詰だった。確かに旨かった。

やり方に陰湿さを感じる。
それが一応の結論だった。
ビルギットは目の前の男にそう伝えた。

「北米はあれだな。現段階における地球圏最大の農業地区なんだよな。
いくら宇宙にそれ専用のコロニーを浮かべたところでそれは変わらない。
まあ宇宙は自足自給が基本だがな。君は当然承知の上だろうが」
「近年は不作が続いていると聞きましたが」
「そりゃそうさ。二年前のバルマー以来戦争続きだ。
食料難民が目立っていないのは奇跡のようなものだ。バルマーの年は何とかなったがね。
去年はここにフィフスが落ちただろう。あれで、かなりやられた」

そうだろうなと思いながらビルギットは続けた。
「軍にいるとそういうことには気付きにくいですな」
「連邦政府は是が非でも軍を維持させるさ。そうだろう。
あと十年の内に何が起きるか想像もつかない。
いや、この前の報告では致命的な危機は二十年後に先延ばしされたんだったか?」

それが何を意味しているのかはビルギットにはよく分かっていたので、まずは当面の問題に話を戻すことにした。
「まだ暴動は起きていませんね」
「アジアの一部で二三小競り合いがあったぐらいか。
そう、北米も騒がしくなってきている。
また別の意味でだ。連中、かなり大規模なデモをやってるよ」
「予想はつきますな。地球は食料自足を維持するべき。そういうことですか」
司令官は両腕を胸の前で組み合わせた。
過酷な前線勤務の中で常に鍛え上げられ続けてきた胸筋が服の上からでも分かるほどに盛り上がる。

「額面だけ見るなら正しいがね。そういうことだ。
あそこには農業だけでなく重工業も固まっているからな。
それで連邦政府の一部がそれに絡んでいるとなると、大分分かり易くなってくるだろう。違うか」

その通りだった。
371312:2006/02/21(火) 19:32:48 ID:l1SnhcPP

ブルーコスモスという単語を聞いたのはそれが初めてのことだった。
北米地域の連邦内部で大手を振るい始めている派閥の名称なのだという。
詳細はともかく、この時点で重要なのは彼らがコーディネーターという種族に対して非常に強圧的な態度を取り、そして弾圧に対する賛同を周囲に求めているということだった。
種族か。ビルギットは思う。
そういえばコンテナの中に篭っている連中もそんなことを言っている。
種族が違うのだと。そうなのだろうか。
遠い銀河の果て、まさに星の海の向こうから遠路はるばる渡ってきた宇宙人を実際目にしていたビルギットからすれば、少なくとも腸詰の味の好みに関しては彼らと自分はさほど違いを持たないのではないかとは思われた。
まあ、あのポルノは見掛け倒しだったけどな。
それはビルギットがいた訓練部隊の共通認識でもあった。
ブルーコスモスとやらも随分と外れのポルノでも掴まされたのかな。
たぶん違うのだろう。だから厄介な問題になるのだ。





「一年ぶりだけれど、随分久しぶりのような気がするわね」
「そうかね」

ブルーコスモス。ビルギットはその慣れない単語を頭の中で並べてみた。
そして今この瞬間目の前に立っている人物とそれを重ね合わせてみる。
事は厄介になったというべきか。それとも。いやどうだろうな。

「あんたも元気そうだな。レアリィ艦長代行。
いや失礼。御健勝何よりであります。ラドベリ少佐殿」

基地司令との会話から一夜明け、太陽が基地内全ての物体の影を色濃く映し出した頃に、基地の展開範囲よりやや小さいくらいの戦艦がその巨体をゆっくりと日に焼けた荒野に落ち着かせた。
やって来た戦艦が他の何ものでもないスペースアークだったことに、その姿を見た最初こそビルギットは驚きを隠せなかったが、すぐにその思考は小隊指揮官のそれへと戻る。
372312:2006/02/21(火) 19:35:24 ID:l1SnhcPP

スペースアークはかつてビルギットが乗艦していた戦艦であった。
まずは基地司令と艦長が会見を行なう。
この時点でビルギットにはスペースアークの艦長がレアリィ・ラドベリその人であるということは知らされていた。そのことにもビルギットは驚くしかなかった。
二重の意味で、である。
まずはこの胡散臭いにもほどがある任務においてレアリィがやって来たこと。
そして彼をそれ以上に驚かせたのは、連邦軍がクロスボーン戦役終了後から現在に至るまで彼女にスペースアークという一隻の戦艦を任せ、さらに彼女がその状況で先の封印戦争を生き残っていたということであった。
果たして彼女にそこまでの手腕があっただろうか。
自分にせよ彼女とこの戦艦にせよ、クロスボーン戦役に限って言うならば、
幾多の厳しい戦況の中でかろうじて生き延びてこられたのはF91という例外的に高性能なモビルスーツと、それを駆るこれまた例外的に優秀なパイロットの功績によるものがほとんどだったはずだ。
それがだ。
その疑わしさこそがビルギットに冷静な判断を成すように求めたというのは間違いのないことだった。

「少佐殿? せっかくの再会にそれはどうかと思うわ。いつからそんな殊勝になることにしたの」
「違いないね。俺もあんたの顔を見れば艦長代行としか呼べん」
「マヌエラもケーンもまだそうやって呼ぶのよ。時々ね」
そうかいとビルギットは言った。確かに懐かしい名前だった。
案内されたのは艦長の執務室だった。狭い空間に備え付けの机が一つ。その前に建前程度の来客用のソファが二脚。ビルギットとレアリィはそこで向かい合わせて座っていた。
一度下士官が紅茶を持ってきたが、それはビルギットの知らない人間だった。紅茶には手はつけなかった。
殺風景な部屋である。もっとも派手だったのは十字とVの字が組み合わさった連邦軍の軍章が大きく描かれた、壁掛けの軍旗であった。
もちろんそのマークはビルギットの着る軍服の左胸にも備わっている。レアリィのそれも同様だった。だが二人の着る制服はどこか微妙に異なっていた。
それは性別の違いに基づくものではない。随分白っぽい制服だな。新調したのかとビルギットは思った。
しばらくの間お互いがお互いの様子を眺めていた。
ビルギットは次に発する言葉を探していた。多分向こうもそうなのだろうと思った。
最初に口を開いたのはレアリィだった。やっぱり先に何か言うべきだっただろうかとほんの一瞬後悔したが、彼女が口にした内容で全て忘れた。

「シーブック、大変だったそうね。右腕のこと」

先制攻撃だった。
その言葉を聞いて、ビルギットは自分が抱え込んでいたものと戦う覚悟をしていなかったことにようやく気がついた。

畜生。何が元アルファナンバーズだ。
373312:2006/02/21(火) 19:36:50 ID:l1SnhcPP



「わぁ、ビルギット少尉! お久しぶりです!」
マヌエラ・パヌパはその丸い顔に笑顔を浮かべてオペレーターシートから飛び上がった。
顔だけでなく、身体全体も丸みが増したもんだなとビルギットは思った。
「ご無沙汰してます少尉。去年もいろいろ大変だったそうじゃないですか」
ケーン・ソンの色素の足りなそうな顔は相変わらずだった。
「まあな。お前たちも無事で何よりだ」
「そうですよぉ! 大変だったんですから。恐竜と戦ったり、火星から来るロボットと戦ったりして。
クロスボーンよりよっぽど強かったんですよ」
マヌエラの声は普通に喋っていても語と語の間が妙に間延びしていた。
「そうか。それは苦労したんだな。まあゆっくりしていけ。見ての通り、周りはただの荒地なんだけどな」


確かにここは懐かしいな。
スペースアークのブリッジに上がるとさすがにビルギットにも感慨深いものがあった。
キャプテンシートの横に立つ。この位置で目の前の戦況の打開策を何度話し合っただろうか。
こちらを向いているマヌエラとケーンもあの時のままだった。
そしてあの頃は。そう思った。
ちょうどこの二人の真ん中あたりに奴が立っていたんだよな。
そしてバルマー戦役が終わった後は、その横にあのお嬢さんが並ぶようになったのだ。
とは言っても出る結論はいつも同じ。
一撃加える。そして何とかそこを逃げ出す。
とにかく生き延びること。まずはそれだった。
フロンティアTのあの時だってそうだった。奴がいなければ。
374312:2006/02/21(火) 19:38:00 ID:l1SnhcPP

畜生。
身体の中で膨れ上がっている感情は多分怒りだ。
F91のことを思い出す。いいモビルスーツだった。
そして見た目は冗談半分の海賊モビルスーツ。
F97だったか。まあそんな名前で呼ぶ奴はどこにもいない。
多分今、奴はそのどちらをも持ってはいない。
捨てたのだ。恐らくは永遠に。
誰もがそれを望んだ。そうするべきだと思った。
だから奴がそう決めた、誰もがその二人を祝福の声で見送った。

畜生。
俺はこんなところで何をしてるんだ。
俺はニュータイプでもなければ念動力者でもないし、スーパーロボットのパイロットでもない。
地球連邦軍の平凡な一軍人に過ぎないのさ。
この船でお前と会っちまったのが俺の運の尽きだった。そういうことか?

「少尉もオーブまでご一緒されるんですよね?」
マヌエラが一切の含みもない明るい声で言った。

なあシーブック。俺の戦友よ。俺はどうすればいいと思う。




「ビルギット。あなたは何を言っているか分かっているのね」
「再会して一時間かそこらしか経ってないんだぜ。そんな怖い顔しないでもらいたいね」
「そういう問題? 違うでしょ」

ビルギットはレアリィの顔を正面から見る。
茶色の短めの髪が頭の形をすっきりと見せている。清潔感のある髪型だった。
しかし彼女の表情のどこかには険しさがある。
向かい合わせたソファが置かれた執務室にビルギットは戻ってきていた。
もう紅茶は出てこなかった。
375312:2006/02/21(火) 19:39:55 ID:l1SnhcPP

「分かった。承認しよう」
「お言葉ですが、自分らはある意味勝手に行動するのです。承認は必要ありません」
前線基地司令は鼻で笑った。彼がそうすると一陣の風が舞うようだとビルギットは思った。
「迷惑をかけるつもりはない、か? 馬鹿も休み休み言うんだな。悪いが俺もお前を利用させてもらうんだ。北米地主の手綱を握っている連中にこれ以上でかい顔をされたことにゃオールズの一つも叩き潰すにも手間がかかって仕方ないからな」
ビルギットは司令の顔に以前見たものと全く同じ表情が現れていることに気がついた。
なあ、これからひとついたずらでもしようじゃないか。
こりゃ負けたな。こういう男に対してそう思うのは悪いことではなかった。
「オエンベリの方はどう反応しますか」
「ちょうどいい任務がある。お前たちにはそれに当たってもらう。オエンベリまで遠回りになるぞ。嬉しいだろう」
「涙が出ますな」
司令は執務室の壁にはめこまれた大型のモニターに大陸地図とその上の部隊展開図を表示させた。オールズモビルの潜伏予想地点はビルギットの予想よりも多かった。
「オールズの地球降下部隊を大気圏突入前に叩く作戦があってな。前衛の何機かはそのままこちらに降りて来ることになる。彼らと合流してくれ。
ああ、ここに戻ってくる必要はない。面倒だからな。冗談だ冗談。ガルダ級の輸送機と途中で合流できる。降下部隊を彼らに任せて、君らは心置きなくオエンベリへ向かってくれたまえ」
「タイムラグができます」
「その間に情報チームを一隊オエンベリへ向かわせる。コーディネーター判別用のチェックマシンはかなり大掛かりだというが、本当か?」
ビルギットは黙って頷く。一度見たことがある。
「存在が公表されてない以上、公然の秘密になっているとはいえ大急ぎでそんな機械を輸送するわけにもいかないだろう。
特にこの大陸に運ばれる荷物は軍のものであっても厳重なチェックを受けるからな。何重にもだ。そこに一人使える奴がいる。仮に運ばれてもそこでしばらく止めさせる」
「もしオエンベリに最初から置かれていたら」
「その時は連絡するが、まあもしそうなら」
司令は机の上を三度叩いた。パンパンパンと乾いた音が鳴った。
「アウトですな」
「そういうことだ。それでも賭けに乗るのか?」
ビルギットは答えなかった。そういう返事もある。
その代わりに訊ねた。
「司令は何故自分を利用しようと思ったんですかね」
「貴様がいい兵士だからだ。他に理由などいらん」
彼が考えている理由の内十中八九はアルファナンバーズの功績だろうなと思った。その通りだ。
だが司令が続けた言葉は全く意外なものであった。
「貴様の作戦記録を見せてもらった。いつも上手いところで逃げているな。なあ? そんな貴様だからこの作戦を任せるのだ。
分かっているだろう。まだ撤退作戦は続いているんだよ。避難民五十二名を連れて撤退しろ。
いいな。徹底的に、全力で撤退を行え。そのための援護は惜しまん。
成功させろ。命令だ。以上」
ビルギットはあと一言だけ言うつもりだった。両足を揃え、背筋を地面を垂直に向ける。
訓練生時代、何度となくこの姿勢を叩きこまれた。鬼教官達にだ。
これ以上伸びないというところまで伸ばした右指の先を額につける。
司令官はそれを鏡で映したかのような同じ姿勢を取った。
一瞬の沈黙。
先に司令が言った。
「健闘を祈る」
ビルギットは声を張り上げた。

「イエス、サー!」
376312:2006/02/21(火) 19:42:51 ID:l1SnhcPP

ハイネ・ヴェステンフルスが基地に停留していた戦艦の目的を聞かされたのは、彼と同胞たちを乗せたままの輸送機が三機のセッターを伴い飛び立った、その数時間後であった。

基地を出発することを聞かされた途端に、ハイネの同胞たちは口々に喚き出し、しばらくしてそれが無駄に終わったと知ると我先に移住ブロックのシャワールームと洗濯機に群がった。
女と子供が先という最低限のルールは残っていたのが唯一の救いだった。
ハイネはその光景を一瞬だけ目にしたが、山積みになった雑用をこなしている内にその光景を忘れてしまった。それが何を意味しているかを考えることさえしなかった。
輸送機が飛び立った後も、大量に運び込まれた荷物の整理でハイネは立ち止まることを許されなかった。
荷物の中には鋭利な先端を持つ工具や人間の頭ぐらいなら一撃で割ってしまえるようなパイプが混ざっていたが、それを取ってどうこうしようという気力は不思議と湧いてこなかった。
その時ハイネが嫌だったのは、毎日の受身の訓練による背中と肩の痛みだった。後頭部も激しく打ち付けること甚だしいものだった。
荷物に混ざっていたブルーのマットを見て身体がおこりのように震えたことは都合よく頭の中から消した。

ハイネともう一人戦時徴収という名目で部隊を手伝わされていた少年は見るからに貧相に思われた。
そんな彼が一言も発せずにただただ言われたことをこなしているのを見て、ハイネはこの三日間考えていたことを忘れて目の前の少年に心底嫌気が差す。
なぜこいつはナチュラルにこうも従うことに抵抗しないのか。
荷物の山の中でこれなら外に声は聞こえまいと思ったハイネは彼を連れてそんなことを一方的にまくし立てた。
なぜ抵抗しない。なぜ反論しない。なぜ従うんだ。

少年は笑いもせず、かといって怒りもせずに言った。
だって仕方ないじゃない。嫌だからってどうなるものでもないし。どうもならないだろ。
ハイネが顔を真っ赤にして反論しようとした時に少年は遮るようにして続けた。
その口の挟み方は余りに見事だったから、ハイネは開いた口から言葉を発することが出来ずにただぱくぱくと動かすだけであった。

「だって、今もこうして僕らはオエンベリに連れて行かれるんだぜ。そしてチェックを受ける。正体が分かる。
そうしたらどうなる。多分処刑される。内密に。抵抗できるかい。気を悪くしないでくれよ。
君だって抵抗できてないじゃないか。背中が痛いんだろう。見れば分かるよ。それに食事だって満足に取れてない。
みんなギスギスしてて協力しようなんて雰囲気でもない。無理なんだ」

でも俺たちはコーディネーターだ。ナチュラルよりも数段優れている。方法はある。
俺たちがコーディネーターである限り、方法はあるんだ。
377312:2006/02/21(火) 19:44:01 ID:l1SnhcPP

ハイネがそう言うと、少年は初めて表情に感情を浮かばせた。
それは諦めだった。諦観である。

「力は外にあるものだよ。内側じゃない」

そして続けた。
僕らには武器もない。金もない。武器を買うにも金がいるんだよ。
あの戦艦、取引するつもりだったんだろう。君が乗ったモビルスーツと僕らをオーブに運ぶために。
でもこの部隊の指揮官。ピリヨとかいったよね。あいつはそれを断った。
僕らを売るんだよ。
分かっただろう。力は外にしかないんだよ。

ハイネは黙ってそれを聞いていた。
頭に上った血はすっかり別の場所に移っていた。
血の気が退いたと言ってもよかった。
こいつはどうしてこんなことを考えるのだろう。同じコーディネーターなのに。

そこであることに気がついた。
まだこの男の名前も知らなかった。
いくらかの申し訳なさを感じて、ハイネは彼の名前を聞いた。

「ジブリール。ジョージ・ジブリール」

ジブリールはそう自らの名前を語った。
名前を知ったことで彼に対する親しみが少しではあるが湧き出たハイネは言った。
ジョージって。素晴らしいじゃないか。あの偉大なファースト・コーディネーターと同じ名前なんだな。

やはり彼にもコーディネーターの誇りがどこかにあるはずなのだ。
そう希望を新たにしたハイネは、その時ジブリールが非常な嫌悪感に満ちた表情を浮かべたことに全く気付いていなかった。

378312:2006/02/21(火) 19:45:31 ID:l1SnhcPP



ハイネがその荷物の山から抜け出した時、彼の前を部隊指揮官であるビルギット・ピリヨが通り過ぎた。
ビルギットはハイネに一瞥を向けた後、特に何を言うわけでもなく歩いていこうとした。
そのことを含め、先ほどジブリールが語った奴が自分たちを売ったという言葉が混ざってハイネの怒りに激しい炎を起こさせた。

「この、ナチュラルがぁ!」

もし通りかかったのがビルギットではなく日頃彼を直接痛めつけているバムロであったら。
ハイネがこういった反応を示したかどうかはわからない。
しかしハイネにはビルギットがバムロより手ごわいわけがないという確信があった。
そしてそれは真実であった。

ハイネが殴りかかった次の瞬間、ビルギットはあからさまに体勢を崩した。
ハイネはというと、まだ次の一歩を踏み出す余力がある。
勝てる。奴を殴れる。
ハイネは心に走り抜けた歓喜の中でそう確信した。
今の俺は激しいトレーニングを積んだ、研ぎ澄まされたボクサーのようだ。
そうも思った。

ハイネのそんな心の動きはビルギットにとって隙というほど長いものではなかった。
その意味において、やはりビルギットはバムロよりは弱いのである。
しかし攻め方がまるで違っていた。

ハイネは伸ばした手を完全に握り締めてはいなかった。その一撃が外れた瞬間に拳を開いてしまっていた。
掴まれたと思った。しかしバムロが行うそれとは違う。
腕ではない。掴まれたのはもっと先の方。
指だ。
379312:2006/02/21(火) 19:46:43 ID:l1SnhcPP

ビルギットはハイネの小指を拳全体で完全に掴んでいた。
呆然としたハイネの身体をそのままコントロールし、身体を接近させる。
それもバムロほどスムーズな動きではなかった。
しかしビルギットはハイネにこう言うのである。

俺は曹長ほど強くないんだよな。
投げられないし、極められない。
そういう時はどうするか知っているか。
まず指を取る。そして折る。
一本一本折る。足もだ。
あっけなく折れるぞ。
ほら折れた。

指に加わる圧力が強くなった瞬間、ハイネの身体は跳ねるように反応した。
恐怖で身が縮み上がる。そんな反応であった。
そして指が解放されると、痛みはなかった。
ビルギットはただほんの少し強く握っただけだった。
ハイネの顔が赤くなる。
それは屈辱であったが、恥辱が混じっていたことをハイネは気付いていただろうか。

ハイネはビルギットの方を見た。
ビルギットはそんなハイネを一切気にすることなく言った。

「そろそろだな。お前も来い。ヒュッケバインを出す」

呆けたようにその言葉を聞くハイネの後ろで、ジブリールが複雑な表情をしながら彼の顔を眺めていることを、ハイネは気付く余裕など持ち合わせてはいなかった。



380312:2006/02/21(火) 19:48:41 ID:l1SnhcPP



戦闘が始まって十五分は経過していた。
ビルギットはコンソールに表示される戦闘空域の概略図とその周辺を縁取るようにしている一本の線を横目で見た。
そのデータに連動するようにリニアシートの一角にはある光点を追い続けるウィンドウが開かれていた。
まだそれは光を放っていた。ノズルから発せられる噴射炎である。
どうやらあのガキはまだ生きてるみたいだな。生きた心地はしていないだろうが。
リニアシート内が眩しい光に包まれる。
機体の左右にビームが走ったのだ。夜明け前の薄闇の中で、両軍のモビルスーツは背中からバーニアの輝き、そして正面からはビームや弾丸の爆光を煌かせていた。
しかしモビルスーツが起こすことができる最大級の発光はまだどちらの軍の中にも見られることは無かった。
あちらさんも本気じゃあないよな。ビルギットはそう思う。
敵を叩いておきたいと躍起になっているのは今現在彼らの遥か上空にいるモビルスーツとそのパイロット達であり、ビルギットと彼に対峙しているオールズモビルの部隊の目的は、その中で生き残った機体を地上からの攻撃にさらすことなく回収するというものである。
だから自然と両軍の位置は綺麗に別れることになる。乱戦にはならなかった。
ただ一機、戦闘空域の外周を回り続けている群青の機体を除いては。



ハイネはヒュッケバインの真紅のコクピットの中で、空に走った赤い光跡を見つけた。
流れ星かなと彼の朦朧とする意識は考えた。
いや違う。降りてきた。降下してきたのだ。
彼のコントロールスティックを握る手に力が込められた。
一度手を離してから、再度握り直す力が出たのはこれが初めてだった。
乗り心地は昨日まで乗ってた奴とは大違いだ。どうしてだろうか。
これがコーディネーター用だからか?
思考に疑問符がついたことにハイネは気がついていない。
時折彼の機体にもビームが向けられる。その度にハイネはシートの上で身をすくませた。
一度ビームの粒子が装甲を掠め、チリチリと弾ける音がした時はしばらく目を瞑ったものだった。
しかし今はそれも止んだ。どうやらモビルスーツは上空の光跡に注意を集中させているらしい。
光跡は三つだった。モニターがその姿を拡大する。
あれは何だろうとハイネは思った。一つ変わった形のものがある。
二つは球体であるらしかった。しかしもう一つは三角形に見えるのである。
モニターが次にその姿を映し出した時、三角形はその形を崩した。
やられたのかなとハイネは思った。
いつ自分がそこに加わるかもしれない空間に身を置いているということは余り感じていなかった。
もうそんな感覚はとうに麻痺してしまっていた。
それに気がつかないのは本人だけである。
381312:2006/02/21(火) 19:50:59 ID:l1SnhcPP

空中で砕けたかのように見えた三角形のシルエットは降下を続けるにつれて人の形に変わっていった。
ビルギットもそれを確認する。彼はその正体に他の機体のパイロットよりも数秒早く気がついていた。
ウェーブライダーを使っている。
その判断のタイミングで遅れてしまったオールズモビルのモビルスーツは、ビルギットの攻撃を受けて機体を後退させた。
三角形であった機体が降りてくるコースに合わせて、戦闘空域に隙間ができたかのようだった。
その隙間に滑り込むようにして人型の機体は悠々と大気圏突入のシークエンスを完了させた。

その機体は落下を止め、空中で制止する。
その直前に機体の背中にあったユニットが四方に腕を伸ばすが如く展開した。
ビルギットはそのシルエットに見覚えがあった。
通信回線が開かれた。敵機も後退を開始しているから、ビルギットは問題なくそれを開いた。
しかし目はその機体の四本のスラスターに釘付けになっている。
ビルギットは疑いを振り払うために、心の奥底にしまい込んでいた機体の名を口に出してしまっていた。


「こいつは……クロスボーン・ガンダム?」


返事が返ってきた。



「それは違う。
こいつはF90Xタイプ。クロスタイプスラスター搭載型だ。

こちらエイブラム所属、ベルフ・スクレット少尉。
地球降下に成功した。いい援護でした。
感謝します。どうぞ」 



382312:2006/02/21(火) 19:56:50 ID:l1SnhcPP
「ビギビギ」3話後編終了。

前編が短かったので後編がやけに長くなりました。
以後構成にもっと気をつけなければならないようで。

>>368
ブレンは好きなんだがネタがないのでタップ。
しかしユウは本編でもしょっちゅう「ブレェェェン!!」と叫んでいるような気がするのだが、どうか?
383それも名無しだ:2006/02/21(火) 22:14:25 ID:thdVZJ0r


今度はF-90Uか、スペースアークといい意外なラインナップだなぁ。
面白いので期待しているが改行には気を遣って欲しい、一行を50文字
ぐらいでそろえると読みやすくなると思う。
384それも名無しだ:2006/02/22(水) 23:41:30 ID:Lo9H7iz2
びっしり詰められた文もこういうミリタリーものには合うと思うけどね。


ブレンの力を信じろ!チャクラエクステンショォォォォォンッ!シュゥゥゥゥゥトォォォォォォッ!(ユウcv神谷明)
385312:2006/02/22(水) 23:56:23 ID:XQ7ILpKG

見渡す限りの開けた草原地帯の一角に山のように盛り上がった大きさを誇るガルダ級輸送機がゆっくりと着陸していったのは、まだ陽光が強く降り注ぐ正午を過ぎたあたりのことだった。

その草原地帯はフィフス・ルナの落下による衝撃波で地表上の全てを根こそぎなぎ払われたはずだったが、
それも数ヶ月を過ぎた頃になれば緑が点々と大地を彩り始め、今では剥き出しの土と短いが根のしっかりした草が半々といった状態にまで回復していた。

ガルダ級輸送機、ガーウィッシュの巨体はそんな草の生存への飽くなき努力を文字通り踏みにじるようにして飛行時の速度を地表との摩擦によって落としていった。
草はもちろん地表の岩も、着陸コース上にある全てのものは一年前と同じような形に戻されていった。
それでも一ヶ月もすればそこには再び緑が姿を見始めさせることだろう。


「現時点をもって本艦は第二種警戒態勢に移行。
モビルスーツパイロットの諸君は作戦開始時刻まで十分英気を養うように。
周辺警戒は斥候部隊を三交代で。
整備班は艦、モビルスーツ並びに各装備の確認を五時間後までに。
日没は十八時二十分。作戦開始時刻は十九時。
各員準備に滞りのないように期待します。
以上。解散」


ガーウィッシュの艦長であるレイラ・ビアス大佐はそう言って集まったクルーを解散させた。
随分簡潔なミーティングだったなとビルギット・ピリヨは思った。

ガーウィッシュの艦橋では慌しかった人の流れがようやく落ち着き始めていた。
シートに腰掛けてモニターや計器を眺めるオペレーターたちにもどこか余裕が感じられる。
オールズモビルの部隊はこの周辺には展開してはいなかった。
彼らの当面の主力が集結しているのはこの草原地帯を抜け、小さな山を二つほど越えた山脈地帯の入り口のはずであった。




386312:2006/02/22(水) 23:58:49 ID:XQ7ILpKG

ガーウィッシュはこれから八時間もしない内にその山脈地帯を目指して発進する。
主な目的はその地域のオールズモビル部隊の牽制であった。

時を同じくして別の地域で大規模な対オールズモビルの作戦が開始される。
その部隊がよけいなものに気を取られないようにするためにこの任務はあるといえる。

連邦軍はオールズモビル殲滅に本腰を入れ始めたらしい。
ビアス大佐は本命の作戦の布陣を大型モニターに映して説明した。

なるほど大掛かりな召集があったわけだとビルギットは感心する。
それはオールズモビルの主力が潜伏されると思われる地域の包囲と、その包囲網による敵部隊の殲滅を意味していた。
前だけを向かねばならない作戦である。
伏兵が気になるわけだ。そう納得した。

ただしこの任務はビルギットと彼の小隊にとってはあくまで表向きのものであった。
彼らは山脈地帯入り口での牽制攻撃を終えた後、ガーウィッシュと別れるようにして山脈を迂回する。
そして当初の目的地であるオエンベリ基地へと向かうのだった。

オールズモビルに対しては牽制が主な目的であるから、彼らに戦闘能力が残される可能性は十分にある。
モビルスーツを多数搭載したガーウィッシュはともかくとして、ミデア一機とセッター三機に乗るモビルスーツしか持たないビルギットの小隊が単独行動を行うのは非常に危険であった。

そう、たとえミデアのコンテナに五十二名の民間人が乗り込んでいたとしても、その任務は行われなければならなかった。
その迂回するコースはガーウィッシュが取るコースよりも大分早くオエンベリ基地に到着することができる。

そしてオエンベリ基地にはビルギットの小隊が単独行動を取ることは知らされないことになっている。
つまりそれは万が一の場合に援護を期待できないということでもある。
何から何まで危険という言葉で塗り固められたのが今回の作戦内容だった。

それでもこの任務を行う必要がビルギットにはあった。
失敗するとは思ってはいないが、何をもって成功とするのか。
ビルギットは迷いながら、それでも小隊指揮官として動き続けていた。


387312:2006/02/23(木) 00:00:20 ID:XQ7ILpKG


「ビルギット少尉」
遥か遠くを流れている雲の下に稜線を描く目的地の山脈がそびえている。
その姿を艦橋の窓から眺めていたビルギットは横から声をかけられた。
声の方向に顔を動かす。
横に立っていたのは先ほどまでビアス大佐と言葉を交わしていたベルフ・スクレット少尉だった。

「やあどうも。お話は終わりましたか」
「ええ。お待たせしてしまって」
「気にせんで下さい。ガルダ級は初めてなもので。こうしてただ見ているだけでも面白い」
ベルフは薄く笑った。肩の力を抜いた笑い方だった。
「それで話というのは何でしょうかね」
ビルギットがそう言うと、ベルフは艦橋の出口に向かって一歩踏み出して言った。

「その前に御覧になりませんか。F90を」



「F90。見るのは二年ぶりですよ」
「二年前というと、SDF、ロンド・ベル隊ですか」
「まあ昔の話ですがね」

ビルギットとベルフはガーウィッシュの巨体の大部分を占める格納ブロックを歩いていた。
ガルダ級の大きさをもってしても立ち並ぶモビルスーツたちにとってはそれほど十分なスペースではなかった。
そのため警戒用にいつでも動けるようハッチ付近に立たされた二機のモビルスーツを除いて、残りは奥に詰め込まれるような形になっている。
その周囲を整備兵たちが慌しく動き回る。

格納ブロックの左右に並べられたモビルスーツ。
F90の白い機体は右列の中央に佇んでいた。

「ロンド・ベルというのはあれでなかなか贅沢なところがあるもんで、F90は格納庫の中でした」
「そうですか」
ベルフはおかしそうに答えた。
気を悪くしてもおかしくない質問を敢えてしたビルギットはその反応に悪い気がしなかった。
真意を聞いてみたいと思った。
「怒らないんですか」
ええ。ベルフは頷いて続けた。


388312:2006/02/23(木) 00:04:25 ID:B8np2JYZ

「これでF90っていうのもどうも中途半端な機体ですから。
乗ってる人間が一番痛感してます。運用方法が面倒なんです」
「換装パーツのことですか」
「そうです。ロンド・ベル隊にあったのはどんなパーツでしたか」

ビルギットは格納庫で埃を被りかけていたF90の姿を思い出そうとした。
「肩に放熱用のフィンがついてたような気がしますな。うろ覚えですいませんね」
「そりゃVタイプです。よりにもよってそれですか。だったら仕方ないな」
ベルフの笑いは一段と大きくなった。

よく笑う男だが、心底陽気というわけではないな。
ビルギットはそう観察していた。
どこかに影がある男だ。

実戦の影。
戦場と兵器に関して冷静な判断があるからこそ、こうして笑うことができる。
顔つきは鋭いが全体的に温厚そうなその青年の姿に、ビルギットはアルファナンバーズにいた何人かのパイロットの姿を思い出していた。


「VタイプはF90本体だけじゃ出力不足なんです。半分机上のプランってやつですよ」
「出力不足。あれですか。背中のビーム砲」
「ヴェスバーです。ご存知でしょう」
ビルギットはとぼけてみせたのだが、ベルフは鋭く言い添えた。
「あれはF91クラスの出力がなければ十分じゃない。ビームシールドもそうです」

来たな。
ビルギットは腰を入れ直した。
この話は本題に入りかけている。
「一応F91にも乗りました。ちょっと変な機体でしたね」
それは意外な言葉だった。だから訊ねた。

「F91にも? 本当に」
「ええ。俺は最終テストのパイロットとして。短期間でしたが実戦に使ったんですよ。
F90のパイロットということが理由だったんでしょうが」
「なるほど。そりゃありえる話だ」

「その後オーバーホールを受けてフロンティア・サイドに持ち込まれたそうです。
それ以来F91には乗っていませんが、その後のことはビルギット少尉の方がご存知でしょう」
「まあ、そうですな」
何だ。主導権を握られているのは俺の方じゃないか。
回りくどいことは止めていってみるか。

「それで、あんたはキンケドゥ・ナウとどういう関係があるんだい」



389312:2006/02/23(木) 00:08:02 ID:B8np2JYZ

ベルフはその内容がさも当然であるかのように話し始めた。
それを聞いている内にビルギットはあることに思い至っていた。
こいつ誰かに似ていると思ったら、あいつじゃないか。
この奇妙な肝の据わり方。
シーブックに似てやがるんだ。



「これをアムロ・レイ少佐から預かってきました。少尉宛てにと」

士官用の談話室でビルギットと向かい合わせて座るベルフはそう言って封筒を差し出した。
照明の強くないその談話室には二人以外に誰もいなかった。
ガーウィッシュ勤務の士官はそのほとんどがモビルスーツパイロットであるから、作戦前のこの時間には大部分が睡眠を取っているはずだった。
ビルギットもこの話が終われば数時間は眠っておくつもりだった。
しかし思いのほかこの話は長引きそうだ。

「アムロ少佐とは?」
どういう関係だと聞いた。
「オールズモビル追撃で何度か指揮を。
俺はオールズが活動開始した時から奴らに関わってきているので、直接会ってお話も」

「ふうん。あの人もう現場には出てないんだろ?」
「そうですね。宇宙でのオールズモビルは随分下火になりました。
シャルル・ロウチェスター。有力な指揮官の一人です。
それを撃墜してから」
「あんたがかい」
答えなかった。そうなのだろう。

「ネオ・ジオン残党が意外と粘っているようなんです。俺はそっちには余り詳しくないんですが。
アムロ少佐はそうした各種残党勢力制圧の現場指揮を担当されてます」
「なるほどね。もうモビルスーツには乗らないというわけだ。
ブライト艦長もあれだ。政治家になるなんて噂も沸いてきているみたいだからな。
あれだろう。ネオ・ジオンに関してはカミーユ・ビダンが部隊の中心になっているんじゃないのか」
「確かそうでした。それが何か……」

「いや、別にな」
カミーユ・ビダンとはさして親しくはなかった。
しかしアルファナンバーズが解散した直後のカミーユの様子から考えて、その任務は酷なのではないかという気がした。
彼の師同然の存在だったシャア・アズナブルがああいった形で最後を迎えたことに、彼の精神は相当参ってしまっている。
ビルギットにはそう見えたのだ。

まあベルフの話し振りからすると任務に支障は出ていないのだろう。
人間荒療治が必要な時もある。

彼が第二のシャアになるなんて誰が保証できる。
そんなことにはならないさ。
390312:2006/02/23(木) 00:10:07 ID:B8np2JYZ

「それでキンケドゥ・ナウとサナリイで一緒にクロスボーン・ガンダムを開発した君が、こうして俺に届け物をしてくれるわけだ。奇妙な縁だな」

F90がビルギットの小隊と合流した際に展開した四本のスラスター。
それを見てビルギットは思わずクロスボーン・ガンダムの名前を口にした。
瓜二つだったのである。
無理もない。元々が同じものだったのだから。

比較的フレキシブルな運用を目指した増加装甲。
それがF90Xタイプの当初の予定だったらしい。
こうして聞いてみても分かる通り、そんな胡散臭く目的がはっきりしないコンセプトでまともな兵器が完成するわけがなかった。
残ったものは増加装甲の重量をカバーできるくらいの強力なスラスターが四本。

そこに木星帝国の脅威を知ったシーブックとセシリー・フェアチャイルドがキンケドゥ・ナウとベラ・ロナとしてサナリィに協力を求めにやってきた。
要求したのは木星圏で活動できるモビルスーツ。
どのメーカーも本腰を入れた開発には乗り出していない領域。
フォーミュラ・シリーズの成功で発言権を増したサナリィは開発に動き出した。

まず最初に決まったものは、背中に備えられた四本のスラスターだったと。
そういうわけだった。


「いろいろ教わりました。シーブック・アノー。
優秀なパイロットでした。何度も救われています」
こいつ過去形を使ったなと思った。
奴がモビルスーツから降りたことを知っている。


「そして友人、戦友です。少なくとも俺はそう思っているんです」

なるほど。馬鹿野郎。
どこかで聞いたような話じゃないか。

「そうなるとあれだ。あんたはこの中身が何か知っているんだろう」
「見てませんが。予想はつきます」
端を千切ろうととして手に力を入れた。

しかし途中で止まった。
見てしまっていいのだろうか。
これを見てしまうことで、俺はまた踏んではいけない一歩を地に降ろしてしまうのではないか。



391312:2006/02/23(木) 00:12:00 ID:B8np2JYZ

手に力は入らなかった。
ベルフが息をついた。失望の色が確かにあった。
何か言うべきだろうかと思った。

「何というかな」
ベルフは黙っていた。言葉を待っている。
本当は俺が封筒を開けるのを待っているのだろう。

「あいつは腕を無くしたんだ」
こいつは驚きはしない。知っているのだ。

「もう何も無くすべきじゃないと思うんだがな」


ベルフはそのまま立ち上がった。
ビルギットは一瞬影が差したその顔を見つめた。
彼の顔にはビルギットに対して特にどうというものは浮かんではいなかった。

俺は今内心胸を撫で下ろしたのだろうか。
そんな疑念がうっすらと浮き上がるのを感じる。

取りこぼしてしまったのかもしれない。
だが何を。何かをだ。何かってなんだ。
そしてどうしようがあった。


ベルフは談話室を後にしようとした。
今ビルギットに見えるものは彼の背中だけだった。
背中は顔ほどによく語る。
そういえるのかもしれないと思う。
ベルフは背中を通してビルギットを非難していた。
ベルフが発した声が壁に跳ね返るようにしてビルギットの耳に届いた。

「少尉の話もしてましたよ。感謝してると。生き残り方を教えてもらったと」

彼の言葉を聞きたいのか聞きたくないのか。
ビルギットにはよく分からなくなっていた。

「その封筒を開けないことで守れるものもあるのかもしれないけれど」
最後の言葉は談話室の扉が話しているような気がした。

目を開けた時、ベルフ・スクレットはビルギットの前から姿を消していた。


「あんたがそうしてしまったら。
シーブックはあんたっていう大事な戦友を無くしてしまうんじゃないのかって。
俺はそう思う」


畜生。
お前に何が分かるんだ。
いや違う。
分かってるんだろうな。
ベルフ・スクレット君よ。そうなんだな。
お前も戦いの中で誰かを失ってきたんだな。


392312:2006/02/23(木) 00:14:31 ID:B8np2JYZ


彼は地球降下部隊回収任務の際に戦闘空域の外周を延々と飛行することを続けさせられていた。
ハイネ・ヴェステンフルスはこの扱いに納得はしていなかった。
少なくとも出撃前はそうだった。
心の準備もできていなかった。
その命令は唐突に過ぎた。指を折ると脅されてのことだった。


ヒュッケバインの群青の機体は全開より少し下回るくらいの出力で背中のバーニアから炎を発し続けていた。
出力のコントロールと機体が取るべきコースは出撃前に設定されてしまっていた。

ヒュッケバインは地表に対して水平に円を描くようにして空を舞う。
そんな決まりきったコースは敵機にしてみれば狙撃の格好の的になるものである。
しかしヒュッケバインが取らされたコースは実際の戦闘空域、そこからの有効射程範囲からちょうどいい位に離れてしまっていた。
この状況でヒュッケバインを狙った狙撃はほとんどが外れるだろうし、ビームの重金属粒子は大気圏下では機体に届く前に拡散してしまうのがオチだった。

空気中であっけなく拡散した高熱の粒子がいくつかヒュッケバインの装甲に跡を残した。
それは機体のコクピットに座るパイロットの肝をこれ以上ないほどに冷やした。
だがそれ以外には、これといった戦術効果を何一つとして生み出しはしなかった。

その内に敵機はヒュッケバインに構うことを止めた。
それでも賢明な彼らは時折センサーの範囲内に現れるその機体にほんの数秒気を向けることを忘れることはないのだった。


ハイネ・ヴェステンフルスに以下のような任務を押し付けた小隊指揮官の戦術的意図というのは、つまるところこの程度のものである。

ハイネは任務の間、ただコクピットのシートに腰掛けている。
ただそれだけだった。
最初こそ憤りを覚えたハイネではある。
しかしビーム粒子が装甲を掠めた弾けるような音を聞いて、その後はモニターとセンサーの反応を示すコンソールの表示を見比べることにただただ専念することになったのである。


任務が終了したのは上空から飛来した機体の一つが戦闘空域内の比較的静かな隙間に滑り込んだ後のことだった。
ハイネにはどうしてその空間に敵機が存在しないのかがまだ分からない。
その空間で降下してきた機体は一瞬制止し、そして隣にいたモビルスーツと共に戦闘空域を離脱した。
ハイネが乗るヒュッケバインはその時既に帰還コースにその機体を乗せていた。



393312:2006/02/23(木) 00:16:08 ID:B8np2JYZ

大気圏を突破してきたそのモビルスーツをハイネは視界に入れた。
さすがにハイネはその名前を知っていた。

ガンダムじゃないか。そう思った。
小隊のミデアが待機していた地点で、ビルギットが乗るGキャノンからハイネに先に着陸しろと命令が入った。
ハイネはその命令に反感を覚える。
どうせオートプログラムでやらせるんだろうにと。

次の瞬間ヒュッケバインはそれまで機体をコントロールしていたプログラムを停止させた。
ハイネはコンソールの表示を見て目を疑った。
どういうことだ。
速度を調節しながら飛行していた機体は半滑空状態に入る。
ハイネの両腕が成す術もなく宙を彷徨う。
どうすればいいんだ。一体何が起きたんだ。
地面が近づいてくる。
このままではぶつかる。

その時ヒュッケバインはいわゆるセミ・オートマティックモードに切り替わっていたのだった。
ハイネはそのことを知る由もなかった。
焦ったハイネは闇雲にフットペダルを踏み込んでしまう。
それに合わせて全身のバーニアが勢いよく吹け上がり、機体は軽くジャンプをする形になる。
ハイネは己の身体がシートから飛び上がるような感覚に襲われた。
唾を飲み込む。
逆流してきたものを押し留める。胃液は口の中にまでは侵入してこなかった。
ハイネは機体はともかくとして、自身の身体のコントロールは取り戻す。

踏んだら飛んだ。これを踏んだら飛ぶのか。
ハイネの思考は今の動きをそうまとめた。
踏みすぎた。そうなんだな。
今度はゆっくりやる。ゆっくりだ。
一度足を離したペダルの上に恐る恐る足を乗せる。
少し踏み込んだ気もするが、バーニアは反応しなかった。
その動きはペダルの遊びの範囲内なのだった。
そのことにハイネは思い至っていなかった。
どうして機体の姿勢が元に戻っているのか。
そのことにもハイネは気がつかない。
ハイネの全神経は今現在、モニターに映る地表と足を置いたペダルだけに注がれている。

よし。今度こそいける。
ヒュッケバインの足の裏が地面に触れる直前、ハイネは最後に軽くバーニアを吹かせた。
コクピット内に衝撃が走る。
軽いものだったが思わず歯を食いしばる。
その一瞬後で、ハイネの厳しい表情は徐々に明るいものになっていった。
やった。成功だ。着陸したぞ。
上手くいったんだ。凄い。凄いぞ。
できたんだ。今度はできたんだ。

「馬鹿野郎。気を抜くんじゃねぇ」

通信回線から小隊最先任下士官であるバムロの怒声が聞こえる。
それと同時にハイネの視線は上空に向かっていった。
どうしたんだ。おかしいぞ。
俺は上なんて向いてない。ずっと前を、それどころか下を向いていた。
もしかして。
どうしてこうなったんだ。

394312:2006/02/23(木) 00:18:21 ID:B8np2JYZ

ヒュッケバインの巨体が大地に横たわったのはそのすぐ後のことである。
余りの出来事に目を皿にしたハイネは彼の視線の正面を見た。
つまり空を眺めたのである。

ビルギットのGキャノンと降下してきたガンダム。
二機がヒュッケバインの上を滑るようにして降りて来た。

ハイネの視線はガンダムに向けられた。
重力によってシートの下から引っ張られるような感覚を覚えながら、ハイネはガンダムから目が離せなかった。
ガンダムは滑らかな曲線を描くようにして地面に降り立った。


凄い。
ハイネはそう思う。
凄い。綺麗だ。
ガンダムの機体もその背中から伸びた四本のスラスターも、一糸乱れぬ一体化した動きをハイネの眼前に表出させたのだった。

ハイネはその感情が驚くほどスムーズに自分の胸の中に収まったことに気がついていなかった。
それはガンダムという機体の特殊性が、ハイネにそうさせたのかもしれなかった。
それは他人の知るところではないし、今のハイネにして分かるものでもない。

ガンダムのパイロット、ベルフ・スクレットがどれだけ慎重かつ基本に基づいた着陸シークエンスを行ったか。
ハイネがそのことを理解するにはまだ相当な時間を必要とするだろう。




「大体どうして私たちがこんな食事で我慢しなきゃならないの」
若い女性が声を荒げる。
投げ捨てられたトレイはそれでも盛り付けられた食事を綺麗にたいあげられていた。
見ればコンテナの床にはそうして投げ捨てられたトレイがいくつも転がっている。
コンテナの一角を区切ってそこに腰を落ち着けたコーディネーターたちは、暇さえあればそうした文句を口々に喚きたてていた。

ハイネがそんな彼らの前を通り過ぎたのは、ミデアとガーウィッシュが合流して数時間が過ぎたあとのことである。
ハイネはバムロに命じられて外に立つヒュッケバインの交換部品を運んでいるところだった。

見たくないものを見てしまった。
その様子を見て出てきた感想をハイネは頭の中で打ち消した。
何を考えているんだ俺は。
みんな不当な弾圧を受けているんだ。仕方ない。
悪いのはナチュラルじゃないか。

しかし今のハイネは一刻も速く部品を運ばなくてはならなかった。
遅れたことを指摘されて、ペナルティの受身百本を課せられるのは彼らではなくハイネなのだから。
ハイネが部品を積んだカートを再び押し始めると、それに気がついた中年男が彼に声をかけた。

395312:2006/02/23(木) 00:22:58 ID:B8np2JYZ

「なあ君」
何ですかとハイネは聞き返す。一応年長者だ。
男は声を潜めて言った。
「君、奴らの管理している荷物に触れるよな」
触れる。そんな軽いものじゃないとハイネは反論しようかと思った。
担がされる。運ばされる。右から左へ。上から下へ。楽な仕事ではなかった。
男はハイネに囁いた。

「食料。掠め取ってこれないか」


意外な言葉にハイネは驚いて男の顔を見返す。
「食事、足りてないんですか」
男は奇妙に汗をかいていた。目は探るようにして左右をうかがっている。
妙な態度だな。ここには同胞しかいないのに。ハイネはそう思った。

「足りてないなんてもんじゃない。全然駄目だ。奴ら、俺たちを飢え死にさせるつもりなんじゃないのか。
分かってないんだ。コーディネーターはナチュラルの倍のカロリー摂取が必要だって。常識じゃないか」

「そんな。じゃああの子達も?」
ハイネは区画の片隅で走り回る何人かの幼児の方を見た。
その内の特に元気のいい一人が開かれたままのハッチから外に出ようと走り始めるが、慌てて母親が子供の袖を引っ張った。
当然子供は不満の声をあげる。

「外に出てもいいのに」
ハイネは思わずそう言ってしまっていた。
男がとんでもないという顔で言い返す。

「お前、何言ってるんだ。外に出てみろ。奴らが俺たちをどうするか分かったもんじゃない。
罠だよ。罠なんだから。
とにかく、君が奴らを内部から崩していくんだよ。そのための食料奪取だ。
期待している。ほら、今隠し場所を教えるから。そこに置いておいてくれよ。
なあ頼むぜ。期待しているからな。絶対やれよ」

まるで強制するかのように男はハイネの肩を抱く。
何でこんなにこの男は匂うのだろうとハイネは思った。
コンテナに運び込まれた居住ブロックの浴室は使用制限こそあるものの、彼らに開放されていた。
今それが使われた様子はなかった。
ハイネには使っている時間がなかった。

時間があれば俺はどうするんだろう。
考えもしなかった疑問がハイネの頭に小さく、しかし確実に居座り始めている。


ハイネはコンテナを出る前に、走り回っていた子供を外に出してあげたらどうかと母親に言ってみた。
俺が面倒見ます。かわいそうですよと言った。
子供は出たいと言った。母親はその子供を頭ごなしに叱り付ける。
そしてハイネに対して口を開いた。

ごめんなさいね。でもやっぱりほら、心配だから。
母親はハイネの顔をまっすぐ見ることはしなかった。時折盗み見るようにする。
子供の袖を引っ張って、ハイネの反対側に置くようにした。
ハイネがそうですかと言ってカートに戻る際、その後ろ姿に疑わしげな視線が向けられていたことにハイネは気がつかない。

そうだ、食事足りてないのかどうか聞くのを忘れたな。
ハイネはそう思いながらコンテナの外に出た。
草原地帯に振り注ぐ日差しは強かったが、それを不快だとは思わなかった。
396312:2006/02/23(木) 00:24:44 ID:B8np2JYZ


ガンダムが立っていた。
ガーウィッシュの格納ブロック。
立ち並ぶモビルスーツの中にそのガンダムの姿はあった。
白と青を基調にしたそのカラーリング。全体としてどこか角張ったそのフォルム。
しかしそれはどこから見ても、やはりガンダム以外の何物でもなかった。

ヒュッケバインの交換部品を運んだ後、ハイネはバムロを探していた。
一つ仕事を終えたことを報告しなければならない。
その後次の仕事を言い渡されるか、もしくは終えた仕事に対してをチェックされてペナルティを与えられるかは分からなかった。
しかし報告をしなければそれ以上のものが待っている。
そのことを今のハイネは認めざるを得なかった。

同じくヒュッケバインの側にいたジブリールに尋ねると、バムロはガーウィッシュに向かったという。
それでガーウィッシュにやって来た際に、ハイネの目はガンダムに留まったのだった。


「俺の機体がどうかしたかい?」

突然背後から声をかけられた。
驚き振り向くとそこには二十台の半ばといったあたりの青年が立っていた。
俺の、と言った。
ということはこいつがガンダムのパイロットなのか。

そうして口に出たハイネの言葉は自分でも意外なものだった。
「俺と、貴様……あんたで」
男は次の言葉を待った。
俺は。俺は何を言おうとしてるんだ。

「何が違ってたんだ」

さっきの着陸で。
そう付け加えるのを忘れた。
ハイネは失敗したと考えていた。


397312:2006/02/23(木) 00:25:22 ID:B8np2JYZ


ベルフ・スクレットはガーウィッシュの外を歩いていた。
失敗したかなと思った。胸倉を掴んだのはやり過ぎだっただろうか。
仕方ない。俺だってそうそう完璧な人間じゃない。

ビルギットの煮え切らない反応。
久しぶりに会ったレイラ艦長の言葉。
そしてあの少年。

ちょっと抱え込みすぎたのかもしれない。
レイラが言った。
人間は戦場で切り替えるほど、普通は感情を切り替えることはできないわ。

自分はそう考えてはいなかった。
もう過去のことになったと考えていたのだ。
確かに思い出すことはある。その度に心は痛む。
しかし俺は成長した。
シャルル・ロウチェスターと決着もつけたのだ。
ある意味で、全ては終わったはずなのだった。

それがどうだ。
俺はまだ永遠の闇の中でこうしてもがいている。
大気圏突入。
今の俺になら可能だと思っていた。

戦士としての俺は確かに成長したのかもしれない。
作戦としてだけ見るなら俺の取った行動に間違いはなかった。
しかし俺は確かに思い出してしまった。
彼女の顔を。

アンナフェル・マーモセット。
初めて大気圏突入作戦を行った時、そのまま帰ってくることはなかった女性。
俺は強くなんてなれない。
ビルギットがあの封筒を開けられなかった理由が俺にはよく分かるんだ。

多分あの封筒の中身にはシーブックの居場所が記されているのだろう。
それを見ることでビルギットは向き合ってしまうのだ。
腕を無くしたシーブック。
それを助けることの出来なかった自分。
シーブック本人が気にしていなかったとしても。
罪悪感というものはえてしてそういうものだ。


398312:2006/02/23(木) 00:27:38 ID:B8np2JYZ

そうして迷いを抱えていたベルフがヒュッケバインの足元で部品を整理している少年を見かけたのは、偶然とはいえ不幸なことであった。
ベルフは少年の陰気な顔を見て、その素性を瞬時に看破した。
通常のベルフであればその言葉を押し込んだかもしれない。
ただ、半分は驚きと疑念であったからその言葉を出さなかったかといえばそれは定かではないのだ。

ちょっとしたものでも異常を発見し、それに対応する。
ベルフの実戦経験が少年に声をかけたのだとしたら、それはあながち間違ったことではない。


「君、もしかすると。
いや間違っていたらすまないけど。
君、ゼントラーディなんじゃないのか?」





声をかけられた少年、ジョージ・ジブリールにとってそれはまさに悪夢を形にした言葉であった。

彼の灰褐色の肌からは只でさえ少ない血の気が完全に失せた。
貧相な肉体で隠していた、普通の人間よりも遥かに強靭な筋組織が脈動する。
それをジブリールは意思の力で押し留めた。
放っておけば、時折彼の理性を飲み込んでしまう攻撃本能がジブリールに何をさせてしまうか分からなかったからだった。

ここでしちゃいけない。
何もしちゃいけない。
ジブリールの意思の力は、生体兵器としての血が流れるその肉体を抑えこんでしまえるほどに強大かつ苛烈なものだった。

だからベルフがジブリールの内面での激烈な戦いに気がつかなかったからといって、彼を無能と判断するのはそれこそ無能の成せる業である。
ベルフは優秀な戦士であり、そしてよく出来た人間であった。

それは人の限界の一つではあるが、超えるべきでない一線にもなるのである。
多くのニュータイプや念動力者たちがそれを身を持って示してきたのが、ここ数年の戦争の歴史の一側面ではあった。


それを裏付けるかのように、ヒュッケバインのコクピットには弱い光がその存在を灯し始めていたのである。


399312:2006/02/23(木) 00:41:13 ID:B8np2JYZ
4話前編終了。

これで7回目。ちょうど半分になります。
一応全7話。合計14回ということで。

それで少しばかり補足説明を。
本当ならば小説内で全て書いてしまわなければいけないんですが、そこは力量不足ということで。

現在までの参戦作品は以下の通りです。加えて登場人物の内訳も。
機動戦士ガンダム
(バムロ)
機動戦士ガンダムF91
(ビルギット、レアリィ、その他スペースアーク乗員)
機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122
(ベルフ、レイラ、アンナフェル、シャルル)
機動戦士ガンダムSEED DESTENY
(ハイネ、ジブリール)

舞台はサルファに繋がらないニルファ後なのですが、SEEDのプラント設定は残しで。
ただSEEDが現在より二年後、DESTENYに関してはSEEDから五年後の話というイメージ。
そうして七年後あたりに、ハイネとジブリールが本編スタート時の位置に収まってくれるように話を持っていければと。
400それも名無しだ:2006/02/23(木) 21:21:33 ID:zcJZc3fa
乙カレー

だんだんとハイネに感情移入している俺がいる。
後日談でハイネ(inミネルバ)とビルギットの戦場での再会とか書いて欲しいな。
401それも名無しだ:2006/02/24(金) 20:42:26 ID:BDG7OQo0
ttp://zip.2chan.net/2/src/1140767754947.jpg

ベルフってシーブックに似てるな
402312:2006/02/26(日) 04:10:28 ID:nHCqEZuR

周囲は太陽がその姿にひとまずの休息を与えてから一面の闇に染まっていた。
ガルダ級輸送機であるガーウィッシュは徐々に日の光の熱を失い始めた草原を飛び立ち、高度を上げていくに従って日差しの残り香は完全に失われていった。

夜の闇の中でガーウィッシュの後部ハッチがゆっくりと開いていく。
機体内部の格納庫を照らしているだろう照明の光線が、開き始めたハッチの隙間からその鋭く、それでいて儚く消える輪郭を表出させた。

現在この空域において視認できる光源はガーウィッシュからこぼれ出るその光線と、後は右翼の翼端灯が発する赤く点滅する光点のみであった。
ガーウィッシュの右隣ではそれより大分小さな輸送機であるミデアが、これも無灯状態での飛行を続けている。
作戦が開始された今となってはこの闇の中で自ら光を発するのは敵の狙撃を求めることに等しい。

ガーウィッシュの後方でモビルスーツをそれぞれ一機ずつ乗せたセッターが三機、編隊飛行を続けている。
その内の一機のコクピットで、操縦席の後方に備え付けられた予備用シートに一人の男が身を沈めていた。
ミデアと三機のセッター並びにモビルスーツを指揮するビルギット・ピリヨである。

彼の乗るセッターはガーウィッシュの格納ブロック内が覗き見れる位置を飛行していた。
無論拡大映像によるものである。
実際の双方の距離はかなり離れているといっていい。

ビルギットはコクピットのキャノピー部分に映し出されたガーウィッシュの格納ブロック内の様子を黙って眺めていた。
操縦席に座る部下が声をかける。
「航空機第一陣、発進時刻です」
「ああ。見りゃ分かるよ」
ビルギットは拡大映像を映すウィンドウから目を離さずに答えた。
ですねと言って操縦士は笑った。

拡大映像がハッチ全体を映し出す。
翼を二つ折りにした高速機が開かれたハッチからその後ろ姿を覗かせている。
エンジンの出力を上げているようだ。まだアフターバーナーの炎は見えない。
当然だ。
あの高速機は前に飛び出すのではなく、後方に向かって開かれたハッチから滑り落ちるようにして発進するのだった。
403312:2006/02/26(日) 04:11:55 ID:nHCqEZuR

ゆっくりと機体が後進していく。その先端は強固なワイヤー・チューブによってガーウィッシュと接続されている。
そして高速機の機体は完全にガーウィッシュを離れて、夜の闇の中に混じっていく。
ただ一点、輸送機と接続を続けるチューブを除いて。

その姿はまるで凧糸に引きとめられながら宙を彷徨う凧のようであった。
不安定に空を揺らめくその機体は、まるで親の保護を求めるかのようにして、機体表面にガーウィッシュからこぼれ出た光線を反射させていた。
その光を名残惜しむかのように。

そしてチューブが切り離される。
瞬間、翼をいっぱいに伸ばした高速機はその後方から猛烈な炎を噴出して加速する。
そして猛然と、親であったはずのガーウィッシュの鈍重にも見える機体を追い越していくのだった。

こうした手順で次々と高速機が出撃していく。
それを見ながらビルギットはゆっくりと腰を上げた。

「そろそろ行くか。ミデアから離れるなよ」
「了解」
操縦士は短く言った。
長々と指示する必要はない。この操縦士も何度も実戦を潜り抜けてきていた。

ビルギットは地上用パイロットスーツのポケットに手を突っ込んだ。
そこから取り出したものを操縦士に向けて放り投げる。
「食っとけ。辛いだろ」
操縦士は渡されたものを見た。
キャラメルをチョコレートでこれでもかと包み込んだスティックバー。
一般的な携帯食料の一つであった。
甘すぎる程に甘いが、エネルギーにはなる。
「少尉。大丈夫ですって。事情はみんなわかってます」

ビルギットは笑ってみせた。
「情けないこと耳に入れないでくれ。上官の気苦労なんか知るもんじゃない。
貴様らの食い扶持ぐらい何とかするさ。いいから食っておけ。役得だ。
口うるさい上官の運転士役にはそれぐらいあったっていいんだぜ」
「違いない」
操縦士は振り向くこともせず、指で摘んだスティックバーをビルギットに向けて数回振った。
ビルギットはそのままコクピットを後にした。
404312:2006/02/26(日) 04:13:00 ID:nHCqEZuR

セッターから搭載されたモビルスーツのコクピットまでは強化ビニール製のチューブが繋がれている。
短い距離ではあるが、ビルギットの身体はそこを滑るようにしてコクピットへ到達した。
Gキャノンの二重のハッチの内、内側のハッチが閉じられるのと同時にチューブが機体から切り離される。
切り離されたチューブは瞬く間にセッターに収納されていくが、ビルギットからはその光景は見ることができない。
非常灯だけが光を放つそのリニアシートの中でビルギットは一呼吸置いた。
そしてコンソールを操作し、モニターに火を点す。

全天球モニターが映し出す夜の空に、高速機の発する眩い炎がもう一つ浮き上がった。
あれでとりあえず第一陣は打ち止めか。
ビルギットは今夜ガーウィッシュが行う作戦を立案した作戦士官の顔を思い出した。

ケネス・スレッグ。
金髪の青年士官。人を物色するような鋭い視線。攻撃的だ。
そして彼が提案した波状攻撃。実に攻撃的だ。

夜の空は未だ静けさを保っている。
もうしばらくしない内に、その静けさは地上の爆光によって破られるはずだ。
願わくばそれが空中のものではないことを。

ビルギットはため息をつく。
そんなものは。
まあ土台無理な注文ではあるな。




405312:2006/02/26(日) 04:13:59 ID:nHCqEZuR



作戦準備の続く小隊のミデアにガーウィッシュ艦長であるレイラ・ビアス大佐がやって来たのは、作戦開始の二時間ほど前のことだった。
その時セッター内の簡易ベッドにて仮眠を取っていたビルギットはインターホンの甲高い着信音に眠りを妨げられ、硬く狭いベッドから身を起こした。

そんなビルギットと顔を合わせた時、ビアス大佐は一瞬だけすまなそうな顔を見せた。
しかしそんな表情はすぐに消え、彼女はガルダ級輸送機の艦長らしい話に移っていった。
最初に持ち出されたのは目前に迫っている作戦の段取り。
それに関してはビアスの隣に立っていた金髪の若い士官が説明した。

「ガーウィッシュ作戦士官のケネス・スレッグです」

青年士官はこう自己紹介を述べた。
ビルギットはその態度に怪訝な顔をした。

「大尉だと伺っておりますが」
「まあ、そうなんですが。アルファナンバーズでは特に階級間の隔たりは無いと聞いているものですから」

こいつ俺を試していやがるな。
その言葉と彼が示した作戦案を見比べて、ビルギットはそう思った。
波状攻撃。
第一波は徹頭徹尾電撃戦か。随分と野性的だな。

「高速機による集中爆撃。なるほど。しかし高速機に続くモビルスーツはどうします」
「F90のAタイプを使用します。航続距離、速度共に申し分ありません」

Aタイプと言われてもビルギットにはその姿が思い浮かばない。
ケネスが言ったような特徴を持つタイプなのだろう。
そうした感情を察知したのか、ケネスは手持ちのモバイルにAタイプのデータを映してビルギットに示してみせた。

「ありがとう」

小癪だなと思いながらモバイルの画面を見る。
背中に大出力のブースターユニットを装着したF90。両腕と足には増加燃料タンクが備え付けられている。
なるほど。接近戦はともかく、長距離侵攻にはもってこいの機体というわけだ。


406312:2006/02/26(日) 04:15:26 ID:nHCqEZuR

「それでF90がしばらく前面を抑えておくと。後続が来るまでもつのかね」
「それに関しては」

言葉を引き継いだのはビアス大佐だった。
私が説明すると言って、一歩前に踏み出した。

貫禄あるじゃないか。
ビルギットは感嘆にも似たものを感じた。
目の前の中年女性。ゆったりとした身体つきだが、全体の雰囲気は精悍だった。
これならば多少きつい言い方をしてもいいのかもしれない。

「つまりF90に問題があると」
「正確にはそのパイロットに」

参ったな。このおばさん。
俺よりよっぽどきつい物言いしやがるじゃないか。

「どういうことでしょう。ベルフ・スクレット少尉は。
回収作戦の際にお手前を拝見しましたが、大したパイロットではないかと思いますが」
「腕には問題はありません。今回もそれなりに上手くこなしてくれるでしょう」
「それなりに、ではいけないと」

当然だなと思った。
ケネスが提示した作戦では、高速機の爆撃の後、間を置かずしてモビルスーツの柔軟な攻撃が加えられなければならない。
だが速度に優れた高速機の後ではどうしても間が空いてしまう。それを埋めるのがF90であった。
しかし後続を待つ間、F90には戦局を支えなければならないという非常に困難な任務が課されていることになる。
並のパイロットでは勤まるはずもなく、並以上のパイロットであっても精神状態が完全でなければ。

「メンタル面に問題があると」
「少々。あなたの小隊員と揉め事を起こしてしまったらしい」
「うちの? 初耳ですな」

正直驚きであった。
自分の部下の中で、大事な作戦前の時間帯に誰かと揉め事を起こすような人間がいただろうか。
それも相手方の上官が作戦成立を危ぶむほどの揉め事とは。

407312:2006/02/26(日) 04:16:20 ID:nHCqEZuR

「大したことではないから。ヴェステンフルス戦時徴収二等兵と、少しばかり言い合いになったと。本人から申告がありました」
ああそうだ。そんな馬鹿が確かに自分の部下にはいたのだった。
ビルギットは嘆息した。

「申し訳ありません。自分の監督不行き届きであります。この件に関しては自分に責任があります」
「違うわ」

断固とした口調でビアス大佐は言い放った。
ビルギットは思わず彼女の顔を見てしまう。
あの馬鹿たれがヘマをするのは分かるが、それは違うのだろうか。
ということは向こうが仕掛けた。分からない話だ。
ベルフという男はそこまで愚かな兵士ではないとビルギットは思っている。

「大気圏突入任務に関して意見の相違があったらしいの」
「二等兵は簡単にできるとでも言ったんでしょう。失礼しました」
「それは当たっているわ。それにベルフが過剰に反応してしまった」

過剰な反応。
ますます分からないとビルギットは思う。
あのガキが何一つ知らない新兵以下だということはベルフなら一目で分かるはずなのだ。

レイラ・ビアス大佐は彼の疑問に答えた。
その顔に初めて女性らしい細やかさが映った。

「ベルフ・スクレットは彼にとって最初の大気圏突入作戦で同僚を亡くしています」

来たかとビルギットは思った。そういうことなのかと。
ならばここで下手な遠慮をしても仕方ないわけだ。

「女かい」
「そうだと聞いているわ」

なるほど。
分かった。全て分かった。
ベルフ・スクレットよ。
お前が抱えていた影の正体はそれだったんだな。



408312:2006/02/26(日) 04:17:26 ID:nHCqEZuR


ビアスとケネスがガーウィッシュに戻っていった後のミデアの操縦室で、ビルギットはひとしきり考えを並べてから、それら全てを頭の中から締め出した。
余計なことを考えている場合ではない。
作戦開始まで残り二時間を切っていた。
ベルフ・スクレットに与えられたものに比べれば自分の役割はさほど困難ではないだろう。
それでもそこかしこに注意を散漫にしておきながら無事で帰られると思うほどビルギットは楽観的ではなく、また戦場を知らないわけでもなかった。
そしてひとまず感情と行動を分けてしまうこともできた。
戦場用の思考回路ともいうべきものは、ビルギットの頭の片隅に確かに格納されている。
それを動かすのだ。
要は戦場慣れなのである。
それはまた、ベルフにしても同じことであると思われた。
そうでなければここまで生き残っていられるわけがない。

まだ仕事が残っていた。
ビルギットは操縦席を後にする。何か軽く口にしておいた方がいいかもしれない。
そう思いながら開いたドアの前には先ほど話題になったハイネが立っていた。

「どうした」

責めるつもりはないが、声に厳しさが混じるのは仕方ない。
ハイネは俯いていた。
いつもは真っ直ぐにこちらの顔を睨みつけてくるにも関わらず。
おやとビルギットはその姿を見て思った。

「あいつ」

絞り出すような声でハイネはそう言った。
少し待ってみたが次の言葉は出てこなかった。
仕方ないので促してやる。

「ベルフ少尉か」
「そうだ」
409312:2006/02/26(日) 04:19:11 ID:nHCqEZuR

俯いたまま頷いたものだから、ただでさえ表情が見えないハイネの顔が完全に隠れてしまう。
それでも、今こいつは俺が見たことがないような表情をしているんだろうとはビルギットは思うのである。

「大気圏突入で」
「聞いての通りだ。彼は恋人を亡くしたそうだ」

ハイネは顔を上げた。
先ほどの話を立ち聞きしていたのは当然分かっているが、それを指摘しただけでこうも驚く。
こうして話すためにドアの前で立っていたのだから、それが明るみに出ることは自明のことなのだが、今はハイネも混乱しているのだろうと予測する。

「聞こうと思ったんだ」
「何を」

それきりハイネはまた黙ってしまった。
しかしビルギットには次に来るだろう言葉が何となく分かってしまっていた。
鉱山で収容してから今までのハイネの言動と態度を見る限り、その言葉を口に出すことには相当葛藤があるのだろう。

「どうやったら、あいつみたいにできるのかって。
俺と奴と何が違うのか。そうしたら、何も違わないって。そう言ったんだ。
くそっ。そう言いやがった。
だから、ガンダムがあれば大気圏なんてって、そうしたら」
「胸倉を掴まれて」
「……すぐに離された」

これ以上は今話したところでどうしようもないだろうとビルギットは判断した。
彼自身にもそれほど時間がなかったし、ベルフの問題について頭を悩まし続けるのは作戦に挑む以上よくないことだと思ったからだった。
だからこう言った。

「分かった。ではペナルティとして作戦終了後受身二百本を課する。反論は許さん」
「そういうことじゃ……」
「反論は許さんと言ったぞ」

ペナルティを課したところで落ち着くかと思ったがそうではなかった。
それがビルギットには意外だった。
上官に課されるペナルティというのはいわば免罪符である。
それをこなせば罪は免除されるのだから、つまり気負いがちな兵にとっての精神安定剤に成り得るものなのである。
その上で尚抗弁するハイネはまだ何か言おうとしているらしかった。
410312:2006/02/26(日) 04:20:05 ID:nHCqEZuR

「さっきの奴らが、あんたにも何かあるって」

余計なことを言う奴らだとビルギットはため息をついた。
恐らく出て行く間際にでも話していたのだろう。それをハイネは聞いてしまったのだ。
全く厄介な話だ。

「貴様に話す理由はない。作戦準備は済ませたのか」
「お前っ」
「上官には敬語を使え。受身百本追加だ」

突き放されたのが分かったのか、ハイネはいつもの反抗的な顔をした。
しかしビルギットとしてはこの問題についてこれ以上ハイネと議論するつもりは毛頭なかった。
だからハイネを突き飛ばすようにして操縦席を出ようとする。

「お前……いや」

また間が空いた。
語尾が下がっていた。怒りを抑え、まだ何か言おうとしている。
ハイネの横をすり抜けたビルギットはこれが最後だと思いながら足を止めた。

「少尉」
「何だ」

色々な感情が混ざりに混ざって、自分でもどうなっているか分からないんだろうなとビルギットは思った。
その声は苦々しげであり、それでいてどこか必死だった。

「早く言え」
「ジョージ、いやジブリール二等兵が気分が悪いと。
それで、奴に聞いたら作戦中は機銃砲座担当だって、そう言っていた。
しかし、それは無理だと、無理であると思われ……ます」

言葉の最後は本当に小さく、掠れるような声だった。
それだけでハイネの抱える葛藤の大きさが読み取れる。

「それで」
「俺、いや自分は、作戦中はみんな、同胞たちの護衛を担当になっていて、だから、自分はジブリール二等兵と担当を変わってやりたいと」
「ほう」
411312:2006/02/26(日) 04:22:39 ID:nHCqEZuR

ビルギットはゆっくりと振り向いてハイネの顔を見た。
ハイネは自分の中の何かに負けじと真っ直ぐと顔を上げて睨み返してきた。
大した意気じゃないか。ビルギットは苦笑する。
ならば答えは決まっている。

「貴様。作戦時の担当部署は曹長が割り当て、俺が承認する。
貴様のやっていることは越権行為だ」
「そ、それでも! ジョージは今にも倒れそうなんだ……なんです!」

二歩三歩とハイネに歩み寄る。
今こいつが殴りかかってきたら俺は吹き飛ばされるなと思う。
しかし今はその種の警戒は解いていた。
ハイネの目の中を睨むようにする。ハイネの顔が少し後ろに動いた。
まだまだだなと思った。

「そうまで言った以上、貴様の責任は重い。分かっているのか。
ミスがあればその場でミデアから放り出す。覚悟しておけ。返事は」

呆気に取られたようにハイネはビルギットを見ていた。
何といっていいのか分からないようだった。

「返事はどうした!」

怒声を浴びせて右腕を振り上げるとハイネは身をすくませるが、すぐに歯を食いしばった顔で見返してきた。
なるほど。戦場には出してみるもんだ。
そう思いながら右腕をハイネの頬目掛けて振り下ろす。

ビルギットはその腕を頬の直前で止め、軽く反対側の頬を打ってやった。
虚を突かれた様にハイネの表情が変わる。
ビルギットは意地悪く笑った。上官のそうした笑みは、新兵にとって十分畏怖の対象になるものだった。

「生意気言いやがって。
曹長に言ってジブリールの様子を見てもらえ。いいな」

「……り、了解、した」

最後まで生意気な態度をどこかに残しながら、ハイネはビルギットの横を走り抜けていった。
ビルギットは狭い通路に一人残された。喉の奥で低い笑い声が出る。
何だこれはと思う。アルファナンバーズ。
そう、実にアルファナンバーズ的な光景じゃないか。
まああのガキが素直に命令に従うようになるとは思えんが。

それにしても、部下ってのは持ってみるもんだよな。
ビルギットは気分が軽くなっているのを感じていた。

412312:2006/02/26(日) 04:25:47 ID:nHCqEZuR


Gキャノンが脚部と接続しているベースジャバーは通常セッターの後部に接続されているものである。
航続性能と積載能力に関しては優秀なセッターではあるが、戦闘時の機動性という面においては通常のベースジャバーに一枚劣る部分があった。
セッターがモビルスーツを二機搭載するという重量的な面からみても不利だった。
それを解消とまではいかないにせよ妥協の一環として用いられたのが小型のベースジャバーをセッター後部に接続、戦闘時に分離させ使用させるという方式だった。
本来用いられる大型のベースジャバーに比べれば航続距離は劣るが、セッターと合わせて考えた場合、特に遜色あるものではなかった。
モビルスーツの空中戦自体の時間はそれほど長いものにはならない。

既に眼前にそびえる山脈の下方では高速機の爆撃によって周辺のあちこちから炎が上がっている。
この辺りはほぼ無人地帯であるし、フィフス・ルナの落下によってその状態は良くも悪くも徹底されているはずだった。
仮に誰かが住み着いていたとしても、オールズモビルの部隊が近所で集結を始めていれば避難をしているというのは当然だ。
それぐらいしてもらわなければ困るというのは軍人の勝手な理屈ではあるが、今はそんな議論を頭の中で展開させる必要をビルギットは認めない。

爆撃を行った高速機は全機無事にガーウィッシュに帰還するはずだった。
すぐに補給を受け、第二波攻撃に備えるのである。
こちらの被害が無いことは喜ばしいことだが、当然そんな攻撃でオールズモビル部隊に大きな損害が出ているとは考えにくい。

電撃戦ではあるが、最初の爆撃はあくまで牽制でしかない。
航空機はモビルスーツよりも格段に速い戦闘速度で攻撃を行うが、ミノフスキー粒子下ではその攻撃の有効性は極端に低下する。
無駄弾といっても過言ではない。オールズのモビルスーツはミサイルの最初の一発が飛び込む前に散開を済ませているはずだった。
そして彼らもまた、遥か上空から攻撃して瞬く間に去って行く航空機に無駄な砲撃を行うことはない。
下手に撃って自分の位置を相手に知らせることもない。それが狙いである。
その間にモビルスーツ部隊は全速でオールズ部隊に接近する。

どちらも決定打を放つことなく、最初の攻撃は終了した。
その後はモビルスーツ同士による乱戦だ。
低空を飛行するモビルスーツ部隊は全部で九機を数える。ビルギットの小隊の三機を含めた数だ。
高速機が帰還コースへ回頭を始めた瞬間、部隊に向けて砲撃が開始された。
同時にその砲撃点にビームの束が次々に撃ち込まれていく。先行しているF90の攻撃だった。
部隊への攻撃が薄くなる。ここだなとビルギットは考え、一気に切り込んでいく。
地表を這うようにして飛ぶジャバーの上で、ビルギットはGキャノンの両肩に彼としては珍しく背負わせた四連の大型マシンキャノンを乱射した。
周囲にいくつかバーニアの炎が灯っては消える。
そしてビームの朗々たる光が地面を焼き、周辺の物体全てを溶かし吹き飛ばす。
しかしその時点ですでにGキャノンを乗せたジャバーは旋回を開始して、センサーが示すビーム発射点周辺にマシンキャノンの鉄鋼弾を高速でばら撒いていくのだった。

山脈麓のいくらか開けたその空間では、似たような光の饗宴が次々と展開されていた。
全ては夜の闇の中で行われ、四方に立てられた爆撃による炎の柱が戦闘空域を縛り付けるかのようにして燃え盛っている。
ケネス・スレッグの意図した点はここにあった。
広めの空間を囲むようにして爆撃することで、敵部隊に空間的限界を作り出させようと考えたのだ。
今のところ、その試みは成功しているといえた。炎が吹き上がる場所にわざわざ近づくものはいない。
413312:2006/02/26(日) 04:28:48 ID:nHCqEZuR

引き時かなとビルギットは考えた。
コンソールで秒を刻み続けるタイマーもそれを示している。
ガーウィッシュが戦闘空域に近づきつつある。敵部隊からもそれは確認できているはずだ。
ということは高速機による第二波攻撃が考えられるということだ。

モビルスーツ部隊が一斉に後退し、残されたオールズモビルに集中爆撃を加える。
都合が良すぎるプランではあるが、確立は良くて半々だろうとビルギットは思っていた。

モニターの端に一機が後退をかけたであろうバーニアの光が見えた。タイミングを合わせなければならない。
ビルギットはジャバーもろとも一気に後退を仕掛けた。追撃の砲撃が機体近くを掠めていく。
左右にマシンキャノンを撃ちこみながら他の機体を確認する。
上手いことに両隣が小隊のモビルスーツだった。二機とも無事らしい。
シールドを前面に構えて、流れ弾で余計な被害を受けないよう注意する。

順調のはずだ。そう思った。
ガーウィッシュから高速機が順次発進していく。
敵は気付いただろうがもう遅い。発進した途端、モビルスーツから送られたデータを元に高速機はミサイルを全弾撃ちこんでいるはずだ。
これも当たる確立は高くはないが、完全に的外れというわけでもない。
多かれ少なかれ何らかの損害は受ける。抵抗力は下がる。
そして第三波の攻撃を仕掛ける。

そのはずだった。
しかし高速機がミサイルを発射した様子がない。
三機目が発進していた。しかし撃ちこまない。
どういうことだ。
ビルギットは前面のモニターとコンソールを見比べた。そして舌打ちする。

ベルフ・スクレット。
あの野郎。突っ込みすぎて離脱できてないじゃないか。
何を考えてやがる。あれでは狙撃覚悟で上昇をかけるしかない。
畜生。撤退できる時にしないでどうするんだ。

ビルギットはコンソールを操作して、ヘルメット内のマイクに一声叫ぶ。
それは隣の小隊機に向けたレーザー発信による通信だった。
次の瞬間ビルギットはベースジャバーを急速に前進させる。散漫だった砲撃がGキャノンに再び集中し始める。
馬鹿野郎め。俺はこんなことはしたくないんだよ。
ああ畜生。ビームが飛んでくる。当たったらお終いなんだぞ。
しかしまあ、根性の一つぐらいは見せなけりゃいけないのか。
あのガキだってやってみせたんだから。

ジャバーは地表をスライドするようにして滑っていく。
曲線を描くそのコースからはひっきりなしにマシンキャノンの弾丸が放たれていた。
その曲線が目指す先にF90と包囲網を固めるオールズの戦闘が放つ光が見える。

414312:2006/02/26(日) 04:31:34 ID:nHCqEZuR

それと同時に、それまでGキャノンが突き進んできたコース目掛けて高速機が次々とミサイルを放ち始めた。
まるでGキャノンそのものを目指すように、爆発が周囲を包み込む。
爆撃はGキャノンが数回放った発煙弾を目印にしていた。
それはGキャノンそのものを敵機の砲撃に晒す行為ではあったが、その直後にそこには高速機による爆撃が行われるので、敵機は緊密な包囲網を構成できずにいた。

ビルギットはF90の姿を捉えた。
周囲には四機。F90は不利であるが、よく戦っている。
それはベルフというパイロットの腕前故のものだろう。
しかし今のベルフは戦局を見ているのだろうか。
そして自分は心のどこかで怯えながら彼の尻拭いをしようとしている。妙なものだ。

その時F90はGキャノンを見つけたらしい。驚くべき行動に出た。
敵機の包囲網の中に前進をかけたのである。
馬鹿か。ビルギットは内心叫んだ。
その挙動は鈍重ではない。機敏ですらある。
だからビルギットには分かってしまった。ベルフの意図するところが。

あいつ、俺を守ろうとしてやがる。全くどっちがだよ。
ヘルメットの下で唾を吐くようにしたビルギットはジャバーに上昇をかけた。
そうなれば地表の敵機からはいい的になる。それは承知の上である。
だからジャバーに発煙弾を仕掛けておいたのだ。
ベルフがこれに気付いてくれることを祈った。そうでなければ流石に庇いきれるものではない。
そしてベルフはビルギットの考えるところに気がついた。
牽制の射撃。そして離脱をかける。

次の瞬間、Gキャノンが離脱したジャバーに向けてミサイルが撃ちこまれた。
ミサイルの弾頭はジャバーと激突した瞬間ひしゃげていって、一秒もしないうちにその信管を起動させ、ジャバーもろとも高温高圧の衝撃の中に包み込まれていった。
その熱と圧力はジャバーの動力部と燃料の誘爆を引き起こし、爆発の中に飲み込まれていく領域はミサイル一発のそれではなかった。

Gキャノンはジャバーをジャンプ台にするようにして飛び上がっていた。バーニアを全開にするが、通常のモビルスーツの推力ではこういったジャンプ程度がせいぜいであり、ガーウィッシュが待機する高度までは到達することはできない。
それは横に位置したF90も同様であるらしかった。
それなりの時間の飛行を可能にした背中のブースターはいまやその機能を失いつつある。
F90はそのユニットを惜しむことなく切り離して地上に落下させた。同時に手足の予備燃料タンクも切り離している。
頭部のバルカンが火を噴き、タンクを狙い撃った。
タンクは内部に詰め込まれた燃料に弾丸を撃ちこまれて、瞬く間に爆散した。
これも目くらましの一つにはなるだろう。

415312:2006/02/26(日) 04:33:19 ID:nHCqEZuR

センサーが反応を捉えた。
頭上に一機のセッターが待機している。
砲撃から安全に飛行できる高度はとうに切っているが、それでもここまで降りてきてくれている。
ならば急がなくてはならなかった。
F90を見る。見るだけなら必要ないが、わざわざ頭部を動かす。
伝わっているはずだ。

タイミングを合わせてセッターに向けてバーニアを吹かした。
まだ何発か撃ちこまれる砲撃をすり抜けるようにしてGキャノンとF90はセッターに取り付いた。
接触回線で感謝を伝える。

「曹長。すまない。助かった」
「無茶しますな。こりゃ昇格ものです。
スクレット少尉。ご無事で何よりです」

バムロの言葉にベルフが何か言った気がしたが、ビルギットは聞いてはいなかった。
顔をつき合わせて言わなければならないと何故か思った。
第三波、いや第二波攻撃までまだ少し時間があるかもしれない。
一言でも、二言でも言わなければならない。


それが巡り巡って自分に跳ね返ってくる言葉であったとしても。
ビルギットは何かは言わなくてはならないのだと、そう考えていた。

416312:2006/02/26(日) 04:44:59 ID:nHCqEZuR
4話中編終了。

本来ならば後編1回で終わらせるはずだったのが妙に長くなったので前中後編に変更。
前回の見通しの「全14回」が早くも狂い始めてしまった。
もっと構成を練っていかないと駄目だ……。


>>400
そう感じてもらえると本当に嬉しいというか、安堵です。
今後はもう少しハイネっぽさを入れていきたいなと。

>>401
懐かしい。実に懐かしい。
うん。アンナフェルよりアリーナの方がとかそういうのはアレですよ。
417それも名無しだ:2006/02/26(日) 15:32:32 ID:usbhCiaL
あいかわらず渋いですな。
418それも名無しだ:2006/02/27(月) 03:21:26 ID:wM4k5iRD
ちょっと伺いたいことがあるんですけど、ご意見聞かせてくれるとありがたいです。

・別にスパロボの形式じゃなくても良いのか。
・参戦作品が少なく、しかもリアル系に偏っていても良いか。
・キャラクターの設定を大幅に変えても良いのか。
・捏造MSが出てきても良いのか。(08小隊が参戦する時にすでにmk2が出来ている設定なので、陸戦型Gを陸戦型mk2にしたい)
・作品のストーリーを改変しても良いのか。(ex.キラ達がラクスに迎合せず、あくまでテロリストと認識する)

どの程度までなら許されるんでしょうか?
419それも名無しだ:2006/02/27(月) 15:02:42 ID:Mj84Bezi
こういう質問は真理を言うと「面白ければそれで良い」としか言えない。
420それも名無しだ:2006/02/27(月) 18:04:07 ID:u2fREVVA
>>418
キャラやメカの原作改変・オリジナル設定はなかなか厳しいものがあると思う
上の2つは別にいいと思うけど
421それも名無しだ:2006/02/27(月) 22:45:50 ID:wQ6a4g0g
>>418
・スパロボ形式〜
スレタイが「ロボゲーSS・小説」だからいいと思われ
・リアル系に〜
問題なし
・キャラクター〜
よほど上手く変えないと、叩かれることは覚悟したほうがよいかと
・捏造MS〜
あんまり厨な機体でなければOK
・ストーリー
問題なし

個人的に好きなキャラクターの設定変更の例だが
とあるSSだと、イザークがアムロの大ファンという設定に。
そのSSではイザークはナチュラルへの蔑視がなく、アムロを超えるべき
目標として彼に恥じぬ行動を心がけてる(具体的にはシャトルを撃墜しない)
といった改変をしている。
422418:2006/02/28(火) 00:08:10 ID:isbtHRLH
>>419、420、421
回答ありがとう。
いっそ叩かれまくること覚悟で書いてみようかと思ってます。
プロットが我ながらあほみたいな状況になってきましたが・・・・
>>421
個人的にそのSSかなり読んでみたい気が。
423それも名無しだ:2006/02/28(火) 00:41:12 ID:JnOwDawl
スーパーロボット大戦Tってタイトル。
ナデシコのオリキャラがかなりうざいがそれさえ我慢すれば十分面白い、と思う。
424それも名無しだ:2006/03/02(木) 01:01:31 ID:nWTUg7yq
完結できる自信があれば頑張ってくれ
425312:2006/03/02(木) 07:10:19 ID:KyYLp775
「まあ一息入れて下さい。かなり薄いですが」

差し出されたカップに注がれていたコーヒーは確かに薄かった。
静かに口をつけると、なるほど申し訳程度の香りがようやく嗅ぎ分けられるくらいだった。
それでもそんな頼りないコーヒーの香りは、戦場という極度の混乱状況が思考に働きかける影響のいくばくかを軽減し、日常の側へ振り戻そうとする。

かといって自分はこの数年の内どれだけを日常の側に足を置いて過ごしてきたというのだろう。
ベルフ・スクレットはそう考える。

同じくカップを受け取ったビルギットが中身を一口飲んだ途端に顔をしかめた。

「こりゃ薄すぎる。曹長。客に出すものぐらい何とかしてくれ」
「少尉殿が飲んでいるものよりは多少ましかと思われますが」
「何てこった。なあ、あんたの上官がそれなりに気苦労の多い仕事だってこともよければ頭に入れておいてくれ」

曹長と呼ばれた中年男が笑うと顔中に皺ができた。
年季の入った顔だった。長年戦場に立ってきたのだろうと思う。

「どうですベルフ少尉。士官ってのはいつでも割を食うもんだとは思いませんかね」

ビルギットがそう声をかけてきた。
ベルフはどう答えたものかと思う。
その質問に対してではなく、この場にいる自分は彼らに何を言えばいいのだろう。

作戦は失敗した。
いやそうではない。しかし成功はしなかったとはいえる。
第二波攻撃は最大の効力を発揮することはできなかった。それは事実だ。
しかし第三波攻撃までは当初の予定に入っている。オールズモビル部隊が退却した場所も予定通りなのだ。

その意味で作戦は滞りなく進んでいると考えるべきだ。
状況がどうであれ、全てが当初の予定通り進む作戦などは存在しない。
あるとすればそれは徹底的に敗北を宿命付けられたものでしかないだろう。
数年間オールズモビルを追い続けてきたベルフなのだから、その程度のことは理解している。

自分の行動は迂闊だった。
しかしそのことで責める人間は部隊にはいないし、ベルフ自身も同じ行動をした人間に対して責めようとは思わない。
作戦が想定した誤差の範囲内に留まっている。

それでもとベルフは思う。
問題はそこではない。
行動とその結果が問題なのではない。
それを引き起こしたもの。
確かにそれは今も自分の中にあって、次の攻撃は三十分もしない内に始まってしまうのだ。
そしてベルフはそれを整理する方法をまだ思いついていない。
426312:2006/03/02(木) 07:12:13 ID:KyYLp775

「煙草の本数とコーヒーの薄さは前線の厳しさに比例しますか」
「古い話だな。そりゃ嘘だよ」
「昔は煙草にだけは不自由しなかったもんです」
「サイド3は名産地だったんだっけか」
「地球産は吸えたもんじゃないですな」
「空気も水も悪いんだよ」

ベルフは関係無い話を延々と続ける二人を見た。
F90とGキャノンを回収したセッターの操縦室には少々の風切り音とそれを簡単にかき消してしまうエンジンの轟音が鳴り響いていた。
辺りに漂うコーヒーの微かな香りだけがそこで静寂の隙間を保っている。

「そういえば昼間はあの馬鹿が失礼をしたみたいで。申し訳ない」

ビルギットが唐突にベルフに話を向けた。
カップを持っていた方の手が一瞬震える。
なみなみに注がれていても優々に底が見えてしまうほどに薄いコーヒーの表面がそれに合わせて微かに揺れた。

「いえ。俺の説明が足りなかったんでしょう。彼には上手く伝えられなかった」
「多分ご存知だと思いますが、あのガキはコーディネーターでしてね」
「みたいですね。自分でそう言っていましたから」

ビルギットと曹長は顔を見合わせた。
二人共に頭が痛いという表情を作る。

「オエンベリに着く前に口に栓をした方がいいようですな」
「全くだ。言って聞くとも思えんがね」

ベルフも事情は大体察している。
昼間彼に突っかかってきたコーディネーターの少年。
戦時徴収という身分とあの態度。
そしてここがオーストラリア大陸であることを考えれば想像はつく。

「オーブへの亡命者ですね」
「まあそうですな」
「オエンベリへ向かうんですか」
「二三問題があるもんですから。オーブ直行というわけにも」

ならばあの少年が苛立っていたのもよく理解できる。
ベルフは自分がまだ完全には落ち着いていないと思った。
だから、あの少年の苛立ちに便乗するようにして口を開いてしまう。

「オエンベリへ行ってどうするんです。あそこの司令官はブルーコスモスですよ」

ビルギットが鋭い視線を返してきた。先刻承知ということらしい。
ベルフは謝罪するべきだと思ってそうした。
427312:2006/03/02(木) 07:14:02 ID:KyYLp775

「すいません」
「いいんです。まあその通りでしてね。さてどうしようかって状況なのは確かです」
「それでどうするんです少尉殿」
「それなんだよ。どうすればいいと思う」

分かるもんかといった具合に曹長が顔をしかめる。
ビルギットは少し考えた末に口を開いた。
曹長にではなく、ベルフに対してである。

「あのガキも二度ほどモビルスーツで出させましてね」
「ヒュッケバインでしょう」

嘘を見破られてビルギットは苦笑した。
本人にしたところで用心というほどのものでもないのだろう。そのまま話し続ける。

「まあ一度目は死んだようなものです。二度目は無様に転びやがりました。
余計な仕事を増やしてくれて涙が出ますな。それであの態度でしょう。腹が立つのなんのって。
我々もとんだ荷物を背負い込んでしまったとほとほと後悔しているわけですが。
少尉にもこう、失礼をしてしまうぐらいの馬鹿なガキなんですよ。
実にね。馬鹿というしかない」

曹長はにやにや笑いながらその話を聞いている。
ベルフもその先を待った。

「馬鹿で手が焼けるんですよ。コクピットはゲロまみれです。
誰が掃除するんだっての。全く。
さっきも勝手に配置変更を要求してきましてね。越権行為甚だしいってやつですな」

ビルギットは一息ついた。
その視線は操縦席のキャノピーを流れる夜の闇へと向けられている。
遠くを眺めているようなその目は、きっと昔を見ているのだとベルフは思った。

「それでもまあ、ガキはガキなりに反省はしているみたいです。
ベルフ少尉にもすまなそうにしていました。まあそんなもんで済ませてやる気はさらさら無いんですがね。
配置転換の話も、同じく戦時徴収したコーディネーターの一人を庇って言い出したものだったわけですよ。
ええ。何というんですかね。ちょいと考えさせられました。
こりゃアルファナンバーズだよなって」
「アルファナンバーズ」
「そうですな。俺はこう思ったんですよ。こう、アルファナンバーズ的な光景だなと。
そういうことがよくあったんですよ。敵が気がつけば味方になっていたりとか。あの部隊には。
馴染めない部分もまああったもんです。
それでも、いざ自分の部隊でこういうことが起きると俺はああこれじゃまるでアルファナンバーズじゃねえかと思ってしまう。妙な話です」
「少尉は、認めたくないんですか」

ビルギットは頭を振った。
それが肯定なのか否定なのか。どちらを指すものなのかはベルフには窺い知ることができなかった。

「分かるわけがないですよ。俺もよく分かってないんです。
俺もね、自分が元アルファナンバーズということが気に入らん時があるんですよ。
そんな名前が何になると。実際戦場で役に立ったことはないですからね。
だから自分がそれに対してどうすりゃいいのかは分かりません。
ただね、まあ思うわけですな。あのガキはまあ、あのガキも含めてコーディネーター達を、腹が立って仕方ないんですが、何とか無事に連れて行けないものかと」
「オーブに」
428312:2006/03/02(木) 07:15:35 ID:KyYLp775

ビルギットはそれには答えず言った。
声のどこかに諦めに近い冷静な響きがあった。それは難しいことなのだ。

「死なれることだけは避けたいってね。まああれです。化けて出てこられても困りますんで……」

いやぁ長々と一人で喋ってしまってすいませんな。つまらなかったでしょう。
最後にビルギットはそう言って笑った。

そうは思わなかった。
向こうも時間潰しのためにこの話を持ち出したわけではないだろう。
過去のこと。彼は照れているんだとベルフは思う。
ビルギットは一部ではあるが、昼間の問いの答えを返してくれたのだ。
ベルフにはそれが分かっていた。





「まあ珍しいものを見たもんです」

セッターに繋留されているF90のコクピットまで見送りに来た曹長が言った。
先ほどのビルギットの話を指していることは明らかだった。

「長い付き合いというわけではないですが、ああいうことを話す人でもないんですが」
「ああいうこと。過去の話ですか」

曹長は頷いて続けた。

「そうですな。お互い大まかなことは知っているんですがね。そこで何があったかは全く知りません」

それでもビルギットと曹長の間には何か通じ合うものがあるとベルフは見ていた。
これは取り立てて珍しいことではない。
実戦経験が豊富な前線部隊の士官と下士官の間に生まれる理解というものは、時にその個人性に関係なく発生するものだということぐらいはベルフも知っている。
その段階で部隊が上手く機能していればお互いに踏み込む必要はないし、その方が部隊にとっては理想的である場合ももちろんある。

それでもとベルフの胸には残るものがある。
ビルギットは今ここでその線を一歩踏み出したのだ。
そのことを考えないわけにはいかないのである。

「まあまだ色々と抱えているものもあるみたいですが。それはお互い様ということですか」

喉を鳴らすようにして曹長は笑った。
いい下士官だなと思う。地上で鍛えられ続けてきた兵士だ。

ベルフがコクピットとセッターを繋ぐチューブに身を乗せた時、これが最後という風に曹長は口を開いた。
429312:2006/03/02(木) 07:17:43 ID:KyYLp775

「大方ご承知でしょうが私はジオンの出身でして」
「ええ。何となくは」

「一年戦争で負けて地球に取り残されてから、何かと苦労したもんです。
分からんものですよ。今はあれだけやりあってきたはずの連邦軍の下士官です。
給料は悪くない。これは結構なことですが。
宇宙人様々ですか。いやいや、宇宙人に会う日がこようとは。
長生きはするもんだと思いませんか」

ベルフは黙っていた。
彼はアンナフェルの顔を思い出していた。
記憶の中の彼女の笑顔は、今は大気圏の炎とは結びつくことは無かった。
今までもきっとそうだったはずなのだと、ようやく彼は思う。

「とにかく、ここはひとまず生き残ってみませんか。少尉殿。
ええ、生きていればそのうち給料も上がりますよ」

ここで初めてベルフは笑った。
それが答かと言うかのような笑みを返して、曹長は彼を見送った。




山脈地帯に後退したオールズモビル部隊の反撃は激烈を極めるとはいわないまでも、それなりに激しいものだった。
集結していた部隊は当初の予想より多かったらしい。
その対空攻撃の執拗さにガーウィッシュは足止めを受けていた。
もっとも、頭を抑えられて身動きが取れないのはオールズモビルも同様ではあった。
距離を取った応酬の中で戦線は徐々に山脈へと近づいていき、ビルギット小隊のミデアはガーウィッシュから離れるタイミングを窺っていた。
彼らの部隊は山脈地帯を迂回してオエンベリ基地へと向かうのである。

戦線は山脈の目と鼻の先まで迫っていた。
Dタイプに換装したF90のコクピット内でベルフは周囲の状況を確認する。
戦局は有利というには不十分ではあったが、少なくとも不利ではなかった。
オールズモビルのモビルスーツはその数を大分残してはいたが、それはベルフ達が山中に設置されていた対空ミサイルランチャーを優先して狙っていたからである。
そして今この瞬間にもF90は左腰に装着した大型ガトリング砲を用いて一両のミサイルランチャーを破壊している。
半固定式の対空ミサイルランチャーは大小様々なミサイルを狙いは二の次だといった具合にガーウィッシュに撃ち込んでいたが、その大半は外れてしまう。
その中で命中に近いコースを取った数発のミサイルも周辺を飛ぶ護衛機によって阻止されていた。
それでもガーウィッシュの前進が大幅に阻まれたのは事実であったし、ミサイルランチャーを破壊されたオールズ部隊はあっさりとその陣地を捨てて鼻先の山の背後に後退を仕掛けたのであった。

430312:2006/03/02(木) 07:22:09 ID:KyYLp775

そしてガーウィッシュとミデアはこの山の手前でコースを分けなければならないのである。
ガーウィッシュはともかくとして、離脱したミデアに戦力を集中されればという危険は残されていた。

攻撃の時間が長すぎた。
第二波攻撃のタイミングが遅れた。
敵に後退する時間を与えてしまった。
ベルフは自らが招いたその状況に舌打ちする。
それでも。

捨て身になる必要はない。
F90はガトリング砲で接近を仕掛けたモビルスーツを牽制する。
その大きさ故に腰に固定せざるを得ないガトリング砲は取り回しが非常に悪かった。
そのためベルフはこの兵装を専ら中距離攻撃に用いることにしていた。
兵装において距離は最も重要な要素であるといっていい。
そしてベルフはその原則に極めて忠実なパイロットであった。

一体のモビルスーツが左斜め前から突進をかける。
そのコースはF90のガトリング砲の弾幕から上手く外れているものだった。
今からそのモビルスーツに何発か命中させたとして、その数もそれが生み出す威力もたかが知れていた。

ベルフはコントロール・スティックの武装セレクターを切り替える。
コンソール上にはF90の全身図と装備されている武装が表示されているが、ベルフの目はそんなものには向くことはない。
装備の全ては頭に入っているのが当然であるし、リニアシートの正面から左右それぞれ四十五度までの視界から目を離すわけにはいかなかった。
モビルスーツ戦闘における視界はそれで十分であるとベルフは考える。
もちろん正面モニターには背後を映すウィンドウが常に映し出されているし、ベルフもそこに注意を向けることは怠らない。
しかし現実として戦局において後ろを振り返る時間はないのだし、本来人間の目は背中にはついていないのだから、まずは前と横に見えるものに注意を払っておけばいいというのがベルフの経験に基づく考えである。
そして有視界戦闘である以上、それは敵機においてもある程度当てはまるのであった。

ベルフがセレクターを切り替えると同時にF90の右腕が腰のフロントアーマーに伸びている。
その手が腰に装備されたクラッカーと呼ばれる接近戦用の手榴弾を掴むと同時に、F90の掌のコネクターがクラッカーに接続され、腰のラックからそれを引き離した。
F90はそのまま掌を突進してくるモビルスーツの方へ突き出してみせる。
接近するモビルスーツ、RFザクはシールドの裏から同じく接近戦用兵装であるヒートホークを取り出して、今にも振り落とせる位置まで近づいていた。

ベルフはコントロール・スティックの射撃スイッチを押し、その一瞬後にスティックを右に回りこませるようにして動かす。
その操作をF90の機体は忠実にトレースした。
射撃スイッチと連動していた右掌のコネクターは、接続していたクラッカーを勢いよくザク目掛けて射出した。
そのスピードはいわゆる手榴弾のそれではない。
モビルスーツに腕があり武装が手榴弾であっても、何も馬鹿正直にそれを放り投げなければならないということはないのだ。
そしてコネクターからクラッカーが離れた瞬間に、F90は全身のスラスターを用いて機体を右側に回りこませる。
それはちょうど突進してくるザクの真横に滑り込むようなコースであった。
ザクはその動きを当然追いかけるが、射出されたクラッカーはザクの面前で激しく爆散する。
その破壊力は大したものではないにせよ、一瞬で放出された衝撃はザクの体勢を崩し、次の動作をするまでのほんのわずかなタイムラグを生み出すには十分すぎるほどのものだった。
ベルフはその間に次の行動を起こしている。
心の迷いがあるにせよ、戦場に出たベルフは確かにエースパイロットであったし、その心の迷いは戦場における彼の無意識に働きかけられるほどの強さはすでに失っていたのだった。

次の瞬間には既にF90が左手に構えたビームサーベルはその柄が発振する重金属粒子の束を、ザクのコクピットに向けて伸ばし始めていたのである。
その粒子が発振を始めて目標に到達する速度は、人の知覚できるところのものではなかった。
それはF90の正面に立っているザクのパイロットにしても例外ではない。
431312:2006/03/02(木) 07:25:46 ID:KyYLp775


「時間か」
ベルフはコンソールで戦場の大まかな見取り図とその横で減り続けるタイマーを見比べてそう呟いた。
もうミデアは離脱コースに入っているはずだった。
ガーウィッシュの予想進攻コースと自機の位置を比べれば、それほど自分は先行してはいない。

まだ爆炎の煙がたなびく方角からモビルスーツが一機接近してきた。
ガーウィッシュ部隊のジェガンである。
ジェガンは手首から接触回線用のワイヤーをF90に向けて射出する。
直後に多少くぐもってはいるが明活な声がF90のコクピット内に響く。
ワイヤーが伝える音声をF90のセンサーが拾い、それを増幅しているのである。
そうした経路で届いた声が伝える内容にベルフは一瞬身を硬くした。

敵の主力はミデアの方に向かいつつある。少なくとも第一陣がミデアに向かったことを確認した。

ジェガンのパイロットはベルフにそう伝えた。
観測機器を多数装備して、策敵任務を主に担当していたそのジェガンの情報は本当だと思えた。

ガーウィッシュは果敢に攻撃を続けているが、山の背後に回りこみ始めているオールズ部隊に対しては思い切った攻撃が加えられないでいた。
だからオールズモビルは少ない部隊で戦線を支えることができていた。
そこで浮いた戦力をミデアに差し向けて、せめてミデアだけでも落としてやる腹積もりなのだろう。

オールズモビルがそう考えたのならば、ビルギットの小隊がその攻撃を逃れられるとは思えなかった。
しかしガーウィッシュもこの場で足止めを食い続けるわけにはいかない。
そうすればこの地形ではこちらの損害ばかりが大きくなってしまうだろう。

ベルフは瞬時に考えを巡らせた。
同時にF90に上昇をかけ、ベースジャバーの一機と接触している。
機体をガーウィッシュへの帰還コースへと向けた。
そして考えが決まる。
対空射撃の範囲外に近づいたところで、ベルフはガーウィッシュの艦橋と回線をつないだ。

通信に出たのは作戦士官のケネス・スレッグであった。
一言伝えるとケネスは回線を切った。
切れる直前、ケネスが大声を張り上げて何事か指示しているのがベルフには聞こえた。
判断の早い男だと思った。



ベルフの視界は猛烈な対空攻撃に占められていた。
ありとあらゆる火器が降下するF90に照準を合わせている。
ベルフは重量が増えて挙動が鈍くなったF90を必死に動かし、火線の中をかいくぐらせていた。

ガーウィッシュから再出撃したF90には四本のスラスターの他に各タイプで装備される多種多様な重火器が備え付けられていた。
Sタイプの二門のメガビームキャノン砲、Lタイプの長距離射撃用のロングレンジライフル。
Dタイプで使用していた大型ガトリング砲は今度は右腰に備え付けられた。
そして無数のミサイルポッド。足には大型のクルージングミサイル。

それらは一部を除いてそのほとんどが背中から伸びた四本のスラスターに接続されている。
各武装はまるで収納されているかのような状態で接続されているので、激しく襲い掛かる対空射撃に向けて撃ち返すこともできない。
かろうじて両手に持たせたビームライフルを牽制程度に撃ちこむぐらいであった。

432312:2006/03/02(木) 07:28:31 ID:KyYLp775

山を越えたあたりで、その遠方に火線が見えた。センサーもそれを捉える。
ミデアとそれを襲うオールズモビルのモビルスーツであろう。
かなりの遠距離であって、流石にベルフもそこに対して援護射撃ができるとは思ってはいない。

ベルフの狙いは、ミデアを襲う部隊を援護しようと今まさに飛び立つ第二陣であった。
確認できるだけでモビルスーツは五機以上。この数が加わればビルギットの部隊はひとたまりもなく捻り潰されるだろう。
ガーウィッシュを危険に晒してまでこの地点に拘泥し続けるわけにはいかない。
かといってF90一機が突出するというのも無駄である。
しかしただ何もしないというのは論外だ。

ならばとベルフは決断した。
せめて一歩進むぐらいはしてもいいだろう。

F90が収納していた四本のスラスターを展開させる。
そのフォルムはビルギットが誤解したように、クロスボーン・ガンダムのそれであった。
しかし今のF90の姿を見れば、ビルギットもそんな間違いは犯さないであろう。

スラスターが展開すると同時にそこに接続された各武装も一斉に正面を向く。
全砲門が地上を離れ始めたオールズの第二陣に狙いを定めた。
F90を狙っていた地上部隊はその異様な姿を見て、焦ったような攻撃を加えてくる。
無数の重火器を構えたF90がその後どういった行動に出るのか。
戦場にいた誰もがそれぞれの視点で行方を見守った。
期待。驚き。警戒。そして恐怖。

当のベルフはといえば、そういったもの全てから離れてしまっていた。
戦場に立った時に感じる特有の無意識が思考を満たしている。
敢えて言葉を探すとすれば、それは慣れなのだろう。
優秀な兵士は訓練という訓練をいつ果てることなく繰り返し、そして戦場での経験をそこに加える。
その全てが無意識を形作り、戦場での行動を導き出している。
今この瞬間のベルフに、ほんの一時間前まで彼を捉えて離すことの無かったあの迷いは一片も存在していなかった。

ベルフの目が一瞬コンソールに向けられる。
今のF90の状態は彼にしても初めて経験するものであったから、一度確認する必要があったのだ。
機体全身図の上にはこの武装の名称が映し出されていた。
ベルフはその名称を口にする。
その声は彼の頭の中までは届くことはない。


「タクティカルアームズ展開確認。
フルバーストモードスタンバイ。発射よろし。
これより貴官を援護します。どうぞ」
433312:2006/03/02(木) 07:30:26 ID:KyYLp775


攻撃が薄くなった。
機銃座に座るハイネ・ヴェステンフルスの頭にそんな考えが一瞬よぎって消える。
戦闘経験が皆無と言って差し支えないハイネが出した判断であったが、それは事実だった。
確かにほんの一瞬の間、ミデアに取り付こうとしては部隊のモビルスーツの抵抗にあって離れていく、そんな敵の動きは止まったのだ。
ミデアを護衛するモビルスーツの隙間を潜り抜けてきた砲撃もその瞬間は止まっていた。

だからといってハイネがこの状況を用いて何らかの行動を起こすということはなかった。
彼が行ったのは事実の認識だけである。
これで数秒後に死ぬということはなくなった。
そんな安堵ともつかない認識であった。

その認識の正しさを証明してくれるかのように、次の瞬間には再び激しい攻撃が開始された。
ミデアは全速でこの戦闘空域を離脱しようと試みていたが、いかんせん敵部隊に捕捉されかけているという状況は変わっていなかった。
ハイネはミデア上部に位置する機銃座に座り、視界に一瞬入ってはこちらを目指して高速で飛来する弾丸を残して消えるモビルスーツに向けて、当たる見込みのない機銃掃射を続けていた。
手は震えてトリガーを引くことすらままならない。口も痙攣を繰り返して、上下の歯がひっきりなしに当たっては苛立たしい音を立てている。

それは直接的な恐怖である。
ヒュッケバインのコクピットの中とは何もかもが違っている。
薄い、実際はそれほど薄くもないがハイネにはどうしてもそう思えてしまうキャノピー一枚を隔ててモビルスーツが彼目掛けて攻撃を仕掛けてくる。
彼が今座っているのはそんな空間であった。
ハイネ自身、自分が逃げ出さないのが不思議であった。
しかしその理由は簡単なもので、彼の腰は機銃座のシートの上で半端抜けてしまっていたのだった。
だから立ち上がることもできないのだ。

「ヴェステン坊主! もっとよく狙え! 無駄玉を撃つな」

ヘルメットに内蔵されたスピーカーからそんな怒声が響いた。
それはハイネの背後でもう一つの機銃座に座っている小隊員のものであった。

勝手なこと言いやがって。大体何だその言い方は。
ハイネは心中叫んでいる。もう口はそんな言葉を発するように動いてはくれなかった。
それでも心には今の言葉を向けてやらなければならない。
そうしなければハイネは自分が今にも全ての行動を止めて蹲ってしまうだろうということが、何となくではあるが分かりかけてきていた。
もちろんそんな認識は彼の頭の中ではっきりとした言葉にはなっていない。
それは慣れが生み出す認識の一つである。

ハイネはトリガーを引き続けた。
銃身から直接伝わるものではないが、それなりの反動がトリガーと操作レバーを握るハイネの腕に伝わってくる。
これが無ければ自分が機銃を撃っているということを忘れてしまいそうだった。
キャノピーの向こうに見える銃身からは夜の闇を切り裂くかのような烈光が一閃し、そこから細い光点が線を結ぶようにして伸びていく。
その光点の一つ一つが弾丸なのだという意識はハイネにはなかった。
彼の網膜はただただその光の筋が闇の中に消えていくのを焼き付けていた。
そして高速で銃口から放たれる光の筋の先にモビルスーツの姿が飛び込んでくることは一度としてなかった。
ハイネの放った銃撃はことごとく外れていた。
434312:2006/03/02(木) 07:32:47 ID:KyYLp775

ハイネの目が機敏な動きを示すモビルスーツに向いたのはその時だった。
銃口から放たれるマズルフラッシュから目を保護するために彼は専用のゴーグルを着用していたが、そこに映し出されたコンピューター解析によって処理された映像には確かに一機のモビルスーツが映っていた。

ザクか。
ハイネは瞬時にそう思った。指はその思考から一秒も遅れることなくトリガーを引いている。
ゴーグルのセンターカーソル内に捉えられたモビルスーツに、彼の銃撃は届いていくように見えた。

それが彼の願いであったが、願いも銃撃も望む場所には辿り着くことは無かった。
モビルスーツはいとも簡単に銃撃を掻い潜り、ハイネから見えるその大きさを徐々に増していったのだった。

大きい。来る。
極度に緊張したハイネの思考がようやく紡ぎ出せた言葉はそれだった。
もう彼にはトリガーを引く指の力さえ生み出すことは出来なかった。
言葉という枠から完全にはみ出してしまった恐怖がハイネの全存在を捉え切ってしまっていたのである。


「ザクじゃない。ザクとは、違う!」


ハイネは自分の口の端からこぼれ落ちた言葉に気がついていただろうか。
少なくともその言葉が正しかったことには気がつくことはできなかった。
ミデアに接近したそのモビルスーツは右腕からザクには存在しない武装であるヒートロッドを伸ばし、柔軟な動きを見せながらその実硬質かつ大質量の鞭をミデアの機銃座目掛けて振り下ろした。
ハイネは自らに死が迫っていることすら理解できていなかった。


だから今まさにハイネに死をもたらすはずだったそのモビルスーツが彼の視界から突然姿を消したところで、ハイネには何が起きたのかなどは分かるはずがなかったのだ。
この間ハイネがしたことといえば数回の瞬きぐらいのものだった。
その直後に狙いが逸れたヒートロッドがミデアの表面を掠って、発生した衝撃が機銃座にまで届かなければハイネはしばらく呆然と瞬きを続けていることしかできなかっただろう。

横から何物かの突進を受けたモビルスーツは苦し紛れにヒートロッドの先をミデアの装甲表面に走らせた後で、機体を突き飛ばしたその物体の攻撃を受けた。
機体は腹部中央、すなわちコクピットを潰されて力なく山脈地帯へと落下を始めた。
一連の行為を流れるようにこなして、つまりはハイネの危機を救ったその物体は頭部を彼に向けた。

機銃座を襲った衝撃はキャノピーの一部を粉砕し、その破片を機銃座内に飛び散らせた。
ハイネは本能的に身をすくめるようにしてその衝撃から身を守った。
ヘルメットに何かが当たって跳ね返ったような感触があったが、頭を揺らすほど強いものではなかった。
次にハイネが感じたのは鼻から吸い込んだ空気の煙たさである。
はっとした。火災だ。

ほんの少し前まで腰が抜けていたはずなのに、ハイネは飛び上がるようにしてシートから立ち上がった。
ヘルメットから覗くゴーグルをつけた彼の顔に強い風が吹き付けている。
機銃座のキャノピーが割れたのだ。
ハイネはそのことにも危機感を覚えた。
早くここから。
彼を見下ろしていたその物体と目が合ったのはそう思った時だった。


「ヒュッケバイン」

435312:2006/03/02(木) 07:34:11 ID:KyYLp775

ハイネはそれだけ言った。
ヒュッケバインと呼ばれたその物体は全てを了解したように機銃座の前から離れた。
バーニアが発する噴射炎の眩い光が夜の空の一角を照らした。

ハイネは力が抜けたように立ち尽くしていたが、鼻をつく煙の匂いにすぐさま正気を取り戻した。
ここから出なければならないのだ。
そう考える間もなくハイネは足元にあるハッチを開こうとそこに手を置いた。
そして手が止まった。
濡れた感触がある。
粘度が高い液体。そして奇妙に熱い。

ハイネは咄嗟に自分の身体を確かめた。
痛みはない。怪我はしていない。
そう、俺じゃない。

振り向くともう一つのシートには先ほどまで彼を怒鳴り続けていた小隊員がもたれかかっていた。
腹部は黒く染まっていて、ヘルメットを被ったままの頭は力なく垂れ下がっていた。
ハイネの目は眼前の光景に焦点を失い、そしてすぐに光を取り戻す。

「お、おい! どうしたんだよ!」

小隊員の肩を掴んで揺さぶる。
反応は無いが、腹部から液体が撥ねるような嫌な音がした。
血を流している。さっきのでやられたんだ。

ハイネの頭をとめどなく思考が流れていくが、そのどれもが今この状況の答えを導こうとはしなかった。
だからハイネはその全てに言い聞かせるかのように大声を出して言った。

「どうする。どうすりゃいいんだよ!
 おいナチュラル、起きろよ!」

言葉面だけみれば侮蔑であるその叫びをハイネは悲痛さをもって周囲に響かせた。
彼にはうな垂れている男をそう呼ぶことしかできなかった。
ハイネは男の名前すら知らなかったのだ。

目尻に涙が浮かび上がってくるのを感じた。
それは悲しみであるとか、そういった明確な感情の発露ではなく、ハイネの混乱を極めた心の具現であるのかもしれなかった。
ハイネは男の肩に手を回す。そして身体を起こさせようとする。
男の身体はハイネの動きに抵抗することなく、しかし自ら力を入れようとする仕草を欠片も見せなかった。
男の全体重がハイネに圧し掛かる。
ハイネは歯を食いしばり、男の腕を引きずるようにしてハッチまで連れてきた。


436312:2006/03/02(木) 07:35:24 ID:KyYLp775

火の手は徐々に広がっていた。
誰かにこのことを知らせなければならない。
その前にこの男を運ばなければならない。

ハイネはその動作を行う間、傍から聞けば意味を成さない叫びを延々と繰り返していた。
それはこれまで心の中に溜め込んできた沈んだ色の何かの発露であり、自らの生存を世界に向けて宣言する赤子の鳴き声のようでもあった。

転がるようにしてハッチを抜け出したハイネは、そこから男の身体を引っ張り出した。
夜の空に半分溶け込んだ機銃座の中では黒く見えた男の腹部は、照明のついたミデアの通路内では鮮明なほどに赤く染まっていたことが分かった。

ハイネは自分の両手と言わず全身が赤で染められていることにも気付くことなく、通路に備え付けられていた操縦席への機内通話の受話器を取った。
そして震え続ける口で何とか言葉を紡ぎだそうとした。



「誰か、誰か助けてくれ。
血なんだ、やられたんだ、俺じゃなくて、やられちゃったんだ。
助けてくれ、頼むよ、誰か来てくれ! 

来て下さい、少尉、曹長!」


437312:2006/03/02(木) 07:45:46 ID:KyYLp775
4話後編終了。

また長い文が多くなって読みにくくなってしまったかと。
そういう場合は「。」以外でも改行してしまった方がいいんでしょうか。


438それも名無しだ:2006/03/02(木) 22:01:13 ID:n1NlQo8K
乙カレー!!
ハイネいいね、ハイネ。
最初はただの嫌なガキだったのにw

相変わらず戦闘シーンも渋い。スパロボSSで反斜面戦闘をやるとは思わんかった。
それにタバコの話とかクラッカーの描写とか色々と細かい演出がいかにもリアルっぽい
雰囲気を出してる。

あと、私としては句読点以外でも改行して行の長さをある程度そろえるほうが好みだな。
439それも名無しだ:2006/03/03(金) 15:42:22 ID:qspNfc7i
第四話祝いage
440312:2006/03/04(土) 08:05:46 ID:9stzOzqk

「本当にこいつを使うのか? 俺は納得できん」

パイロットスーツを着込んだその男は腰に手を当て、仁王立ちといった具合で目の前の暗い顔をした
男を見つめた。
パイロットのその態度は新兵ならば萎縮してしまい、顔を伏せて黙り込んでしまうような厳しいものだったが、
彼と正対している男はいささかの動揺も示すことはなかった。

パイロットは舌打ちして自分の背後にそびえ立つモビルスーツの姿に視線を移す。
目の前の男が話す気の滅入るような作戦内容を聞いて、今はこのモビルスーツの猛々しい姿だけが
彼の心を静めてくれるのだと思ったのである。
男はその心の動きを見透かしたかのように、どこか病的な細い声でパイロットに呟いた。

「君のそのグフとて結局は同じことではないか。もたらす結果は破壊と殺戮だ。同志よ」

それはグフのパイロットであるコムにとってはどこかで意識していながらも認めたくはない認識であった。
しかしコムには男の背後でその封印を今まさに解かれようとしている兵器には、どうしても受け入れ難い
生理的な不快感があった。だから言った。

「古臭い言い方だがな。目的のために手段を選ばないというのは主義に反する」

それがある種の言い訳であり、無意味な方便であることはコムにしても承知していることである。
しかしコムは彼の言うところの手段のためにモビルスーツに乗るような男でもあったから、あながち嘘を
言っているわけでもなかった。
そして彼の乗るグフは己の信条をそのまま形にしたようなモビルスーツであった。

「連邦軍の決起作戦は想像以上に我々を窮地に追い込んだ。
同志。使えるものは使うべきだとは思わないのか」

それがスポンサーの言い分というわけだな。コムはそう断定した。
確かに大層大口のスポンサーがオールズモビルにはついているらしいということは一介のパイロットで
あるコムにも薄々理解できていた。

彼が乗るRFグフの内部構造を丸々新規設計のものに変えてしまえるほどの余力を持つスポンサー。
そのスポンサーにとってみればオールズモビルの戦場はあながち都合のいい実験施設ということに
なるのだろう。
そろそろ大きめの戦争が始まるのかもしれない。そうも予測した。

「ならばなぜあの気色悪い機械を連邦軍基地、例えばオエンベリあたりに直接投入しない。
そっちの方がよっぽど効率的だと思わないのか。なあ同志君よ」
「技術的問題がある」

その言い切り方にコムは感心すらした。
男が言ったことは真実なのだろう。

狙えるならば基地を狙う。しかしそれはできない。
その地点からの考えだけが違っていた。
コムはその時点で作戦を変える。例の兵器は使わない。
だが男はその兵器の運用を諦めない。だから目標を変えるのだ。
コムが考えを巡らす間に男は続けて言った。

「それに同志コムよ。オエンベリに関しては心配する必要は無い。
もう一つの特機を用いてあの基地を殲滅するのだ」
「もう一つのって、まさかあのデカブツは動くのか」
「我々は冗談や酔狂で連邦傀儡政権を討ち果たそうとしているのではない。
同志。全ては運命の定める楽園を目指すための試練なのだ。
そのために私は手段を猶予するつもりは断じて無いことを同志コム、君にも理解してもらいたいものだな」

441312:2006/03/04(土) 08:09:28 ID:9stzOzqk

もうこいつには何を言ったところで無駄だ。
男の奇妙に熱のこもった言葉を聞いてコムはそう判断した。

戦争が主義で始まるのは不幸だが、戦場に主義が持ち込まれるのは全くの論外だ。
それはコムのような男にとってすれば許されざる行為であった。

ならばせめてこの場を離れようというのがコムの考えである。
それに男が動くといったもう一つの特機。
それが本当なら、コムは実際にその巨体が動くところを目にしたいという思いもあった。

何より、九年前にセント・アンジェ付近で見た様な光景はもう沢山であったのだ。
モビルスーツがもたらす結果が同じであるのなら、その対象はそれなりに覚悟を決めた連邦軍兵士で
あるべきだというのがコムという男の偽りなき心情ではある。

「悪いが俺はそのデカブツの方に加わらせてもらうぜ」
「好きにしたまえよ。こちらは全て完璧に仕上がっている。
問題は無い。どちらかといえばもう一つの方が現状些かの不安を抱えているのだ。
同志。君のような勇猛なパイロットが援護に加わるならばそれに越したことは無い」

その言葉が終わるのを待たずにコムは男から踵を返した。
俺が倉庫から出た後、奴は一体どうするんだろうか。
コムは不快なものだと分かっていながらそんな想像を行った。

あの円盤。無数の刃。
いや止めだ。考えるのはよそう。
あの奇怪な兵器がクロスボーンの悪しき遺産であることは疑いようもない事実であるが、
それでも彼が愛でて止まないグフをこの世界に蘇らせた人間が、同時にあんな兵器の使用を容認するとは。
コムには甚だ理解できなかった。

機会があれば顔を拝んでやりたいものだ。
名前は何と言ったか。
デュラ何とか。そう、デュランデュラン。

いや、違ったかな?





今はミデアのコンテナ内に横たわるその機体の装甲にはほとんど傷らしい傷はついていなかった。
小さなものに限って言えばいくつかついているのかもしれないが、一度戦場に出た機動兵器が受けたものとしては、
そんなものは損傷の内には入らない。
それも、敵機を二機撃墜した機体であるなら尚更のことであった。

こんな傷はどこかで見たことがあるな。
ビルギット・ピリヨはふとそんなことを考え、次第に浮かび上がったその考えを慌てて頭から振り払った。
背中に寒気がする。

思い出すだけでこれか。ビルギットはそう嘆息する。
しかしまあ、二度とあんなものを相手にする必要はあるまい。
彼はそう自分に言い聞かせた。宇宙人ですらあのような奇妙な兵器は使わなかったのだ。
あれを使う人間はどういう神経をしているのあろう。
人間。果たして人間なのだろうか。
だからあの親玉は鉄の仮面を被ってしまったのか。
ええい。だから考えるなっての。
442312:2006/03/04(土) 08:12:31 ID:9stzOzqk

「しかし驚きましたな。そのお陰で我々はこうして生きているわけですが」

不意に後ろから声をかけられた。
横たわる機体を見上げていたビルギットの後ろにはいつの間にか小隊の最先任下士官である
バムロが立っている。

「全くだ。念動力様々ってところだな」

ビルギットは振り返る事もせずにそう答えた。
腰に手を当てているが、本当は両手で頭を抱え込んでしまいたいところである。
先ほどの事態に対して考えるべきことは山積みであったが、考える糸口はほとんど見つかっていなかった。
それでも今の段階で分かっている事柄を何とかして突破口にしようと試みる。

「曹長。あんたが前いた部隊に念動力者がいたってのは本当かい」
「ええ。二人ほど」

この言葉を聞いて驚くことはしない。これが二回目だった。
最初に聞いた時は飛び上がらんほどに驚いたものだった。
念動力者というものはビルギットが想像していた以上に世間にとってありふれた存在であるのかもしれない。
彼は自分の認識を改める必要があった。

「私もチェックを受けましたもんで。
ええ。欠片も無かったそうですが。
その二人もほんの僅かの兆候が見えるぐらいのものでして、検査の翌日には部隊に戻されました。
その程度の素質であれば結構多いらしいのです。念動力キャリアというものは。
ところで少尉殿。念動力ってどんな代物ですか」

「俺にもよく分からんが。
まあとんでもない超能力の一種だってことぐらいしかな。
アルファナンバーズ、いやあの頃はSDFロンド・ベル部隊か。あそこに何人かいてな。
それを付け狙う宇宙人がいたりして、何だかんだで厄介なものだって印象しかないもんだ」

バムロも首を傾げていた。
彼の頭の中では今まさに念動力のもたらす威力が必死にイメージされているのだろう。
その内にバムロは深く息をついた。上手くイメージできなかったらしい。

「想像がつきません。ニュータイプとはまた別ですか」
「らしいな。傍から見れば敵の存在を感じられたりして、変わらないように見えるんだが」
「スプーン曲げと何が違うんですかねぇ」
「案外それの凄いものなのかもしれんよな」

そう言いながらビルギットはSDFの念動力者の名を何人か思い出していた。
リュウセイ・ダテ。アヤ・コバヤシ。ブランシュタインは違ったんだっけか。
ならどうしてチームを組んでいたのかね。
それに途中で加わった元バルマーの女がいたか。

困ったことになったもんだな。
ビルギットは改めてそう思いながら、思い出した念動力キャリアの人間と親しく話したことがなかったことに少し後悔した。
まあ仕方ない。
自分がその後こんな風に念動力と関わることになるなんて想像できるわけがない。

443312:2006/03/04(土) 08:14:52 ID:9stzOzqk

「じゃああの坊主、ジブリールにも宇宙人が狙ってくるような力があるんですか」
「どうかね。バルマーが狙っていたのは確か一人だけだった気がするんだよな。
サイコ何とかって、念動力者の中でも優秀なタイプがいるらしい。まあ凄い力の持ち主でな。
そりゃあんな奴が世間にごろごろしているんだったら今ごろ俺たちは商売鞍替えしなきゃやっていけんだろうぜ」

バムロは片眉を上げてビルギットの顔を覗いた。何事か考えているようだった。

お互い何かにつけて考えてばかりだな。ビルギットは内心苦笑する。
仕方あるまい。この状況は異常だ。
一介の少尉と曹長で手に負える問題ではない。
ならば。

「そうならば少尉殿。このフッケバインに念動力を増幅させる装置があるとも考えられますな」

その時すでにビルギットの思考は違う方向を向いていたから、バムロの言葉には曖昧な返事しかしなかった。
彼の言葉を聞いている頭の片隅が思い出したように付け加える。

「ああ。そんなものもあったな。
T−LINKシステムとかいうんだったか。ついててもおかしくないだろう」
「ははあ。となればこのフッケバインには微弱な念動力キャリアでも使えるシステムが載っている
といったところなんでしょうか」
「念っていうぐらいなんだから、気合とか思念とか、いろいろ混ぜて使ってんのかもな」

バムロは得心したかのように笑った。

「気合に思念とは。まさしく無限のエネルギーですな。
あいや素晴らしい。これは将来の教練科目に加えなければなりません。
気合を無限に維持させる方法ですか。
まあ学者連中はもっと上手い方法を思いつくんでしょうが、とりあえずは昔ながらの方法で坊主連中を
鍛えてみることにしましょう」

そう言ってバムロはその場を離れていった。
昔ながらの方法。いつもやっていることじゃないか。
ほんの僅か、ビルギットはその対象になるであろうヴェステンフルスとジブリールに同情する。
ヴェステンフルスは反抗的だから、きっと目もくらむほどのペナルティを課されてしまうのだろう。

「ジブリールにヴェステンフルスか」

バムロとの会話とは別に積み上げられていた思考が二人の名前を口にさせた。
ヒュッケバインにコーディネーター。
そんなお荷物を背負って、ブルーコスモスの根城になっているかもしれないオエンベリ基地へ向かう。
彼らの向かう先は強制収容所か。それとも兵士が銃を構える先に掘られた塹壕か。

そうはなりたくないもんだな。
ビルギットは思う。
確かに厄介ではあるし、手に負えない問題だ。
極東支部に連絡を取るか。しかしそんなラインは最も監視が向けられていると考えるべきだ。
ビルギットは自ら動かなければならない。

444312:2006/03/04(土) 08:17:07 ID:9stzOzqk

動く。そう動くのだ。
しかし何のためにだ。

分かりきったことを聞くな。
自らにそう言い聞かせて、気弱な思考を諌めた。
まあやってみるさ。俺一人だが。

そしてビルギットの表情は引き締まったものへと変わる。
口元は二人の名前を出したままで固まっていた。
そうすることで彼は頭の中から追い出してしまいたいその名前と向き合おうとしているかのようだった。

ハイネ・ヴェステンフルス。
ジョージ・ジブリール。

五十二人、いや五十一人を救うためにこのどちらかには犠牲になってもらわなければならない。
ビルギットはその覚悟を決めた。

オエンベリ基地への到着までは二日を残すばかりであった。





「貴様、これは一体どういうことだ。俺の目は誤魔化せんぞ!」

そんな怒鳴り声を耳にした時、ハイネ・ヴェステンフルスは一瞬身体が震えるのを感じた。
しかし直後にはその声が彼を常日頃から怒鳴り続けてきた人間のものではなく、さらに声が
彼に向けられているわけでもないことに気がついた。
ハイネはこの十日余りで小隊の人間全てにいいだけ怒鳴られていたから、その声の主が小隊員
ではないこともすぐに分かった。

となればこの怒声は彼の同胞、コーディネーター達の中から発せられたことになる。
ハイネは両手に抱えた荷物を床に置き、慌てて同胞達のところへと走っていった。


「違うんです。これは。お願いです。聞いてください!」

ミデアのコンテナ内に区切られたコーディネーター用のスペースに、怒鳴り声に続いて
そんな悲痛な声が響いたのはハイネがようやくそこに到着した直後のことだった。
今度は女の声だった。
ハイネは周囲を囲みながら微妙に距離を取っている同胞達が作る人垣を掻き分けるようにして、
声の方向へと近づいていった。


「お願いだから聞いて……」

その声は最後まで発せられることはなかった。
嘆願の叫びは途中で悲鳴によってかき消された。
叫んでいた女の頬を、おそらくは怒声の主である男が強烈に張ったからであった。
女はその衝撃にひとたまりもなく崩れ落ちる。
女の顔から涙とも唾ともつかない液体が数滴跳ねた。

445312:2006/03/04(土) 08:20:28 ID:9stzOzqk

「おかあさん!」

それまで女の足にしがみつくようにしていた幼児二人が、女が倒れるのに巻き込まれるようにして尻餅をついた。
二人の内年嵩の方は彼の弟と思われる幼児の身体をしっかりと抱きとめている。
年少の幼児はそんな一連の出来事に火がついたように泣き出した。
顔を抑えたまま崩れてしまった母親に、年嵩の幼児が何度も必死に呼びかける。
その内に彼の声にも涙が混じり始めていた。


「おい、止めろよ! どういうことなんだよ!」

わけが分からないままにハイネは男と母親と幼児達の間に割って入った。
理由は全く分からないが、放っておいていいような事態ではないことは確かだった。
そんなハイネの姿を見て、女の頬を張った男は彼に侮蔑の表情をあからさまに見せた。

「役立たずのヴェステンフルスじゃねぇか。引っ込んでろよ。
こいつは極めて重大な問題。裏切りだ。
ナチュラルに媚び売ってる貴様がしゃしゃり出てきていいことじゃないんだよ」

ハイネは一瞬言葉を失った。頭が真っ白になったといっていい。
こいつは一体何を言ったんだ。俺がナチュラルに媚びを売っただと。
いい加減なことを言うな。どうして俺が。

「あのモビルスーツをナチュラルから奪って俺たちを解放するかと思いきや。
毎度毎度醜態を見せてくれやがって。
貴様はコーディネーターの恥さらしだ。
あげくにナチュラルの使い走りか。いい加減にしろ。
少しはジブリールの能力を見習うんだな。
あれこそが真のコーディネーターの姿ってやつだ。
さすが、偉大なるファースト・コーディネーターと同じ名をいただくだけのことはあるさ。
貴様とは大違いだな。
見習えとは言ったが、どうせ無駄骨に終わるさ。
貴様の遺伝子には最初から欠陥が刻まれているに違いないんだよ。
貴様の運命は負け犬だ。ここから失せろ」

その言葉を最後まで聞いていたのかどうかハイネには分からない。
真っ白になったはずの頭がどす黒い何かに覆われて、気がつけば男に歩み寄り、その頬を一発張っていた。
掌に熱く鋭い感覚が走る。
掌も頭もどこか痺れているようだった。


「貴様! この、ナチュラルの子分が!」

頬を張られたことに気がついた男は、瞬きを数回した後で顔に身体中の血液を集めたかに思われるほどの
紅潮を見せてハイネに掴みかかってきた。
肩を強引に掴もうとするその腕をハイネは一歩下がっただけでかわした。
男の乱暴に伸ばされた腕がそのまま宙を泳ぐ。

「貴様っ」

ハイネはその叫びを聞いてはいなかった。
耳に入ってきてはいたが、そちらには全く意識を向けていなかった。
ハイネは思い出していた。
なぜこんな時に何かを思い出すのだろうと疑問に思うほどに、その記憶は彼の思考に大量に流れ込んできた。
頭の中だけ時間の流れが変わってしまったかのようだった。
446312:2006/03/04(土) 08:23:14 ID:9stzOzqk

そうだ。あの時奴に足を払われた。
地面に倒された。腕を極められた。足も極められた。顔を地面に擦りつけられた。
顔には指一本触れていないのに。なぜだったんだろう。
あんな芸当はできない。

次はどうだろう。腕を取られた。
あいつは奴より、曹長よりは下手だった。
それでこう言った。
こういう時は指を取る。そして折る。
すぐに折れるぞ。ほら……。

ハイネは目を見開いた。
それは彼の今までの痛みの記憶であり、そして次に取るべき行動を決める思考でもあった。
目の前の男は体格的にハイネより強靭に見える。腕も太い。
腕に覚えがあるのかどうかは知らないが、少なくとも自分は腕に覚えなど全く無い。
ならば。

ハイネは伸ばされたままだった腕を取り、そのまま男の外側に身体を回りこませた。
男がどういう反応をするのか、もう一本の腕が自分を狙って振り落とされるかもしれない、
そんなことは一切頭の中から捨てた。
とにかく目は取った腕の先にのみ向けられていて、ハイネは全ての意識を腕の先、最も外側の指、
小指を取ることに集中させた。

途中いくつかのイメージが脳裏に浮かんでは消えた。
シートから突き上げられるような衝撃。
装甲を焼くビーム粒子の音。
キャノピー越しに迫る青いモビルスーツ。
あの時男の腹を染め上げた鮮血。
毎日毎日嫌になるほど頭を打ち付けている薄汚れたブルーのマット。

ぎゃっという叫びがようやく耳に届いた時、ハイネは自分の試みが全て成功していたことを知った。
彼の拳は男の小指をしっかりと握り締めている。
ただし本来ならば指が取ることはありえない角度をもって。

「折れた」

ハイネはそれだけ言った。
指をつかんだ拳は離そうとは思わなかった。
男はまだ何事か叫んでいるが、ハイネの耳に届くその叫びより、目に映る男の様子と口の動きが
その苦痛をより鮮明に伝えているような気がした。

「貴様、貴様ぁ」

どうしてこの男は貴様としか言わないのだろう。
ハイネは呆然とそんなことを思った。
頭をブルーのマットにしたたかに打ち付けてしまった時のような、漠然とした思考が彼の頭を包んでいる。

447312:2006/03/04(土) 08:26:40 ID:9stzOzqk

「おかあさん。泣かないで。おかあさん」

その半端嗚咽が混ざった、それでも心は折れまいとする意思のこもった言葉を聞いて、
ようやくハイネは正常な意識を取り戻した。

時間はどれだけ経ったのだろう。
思わず周囲を見回すが、男と母親達を囲んでいた人垣は数歩ずつ後ろに下がっているような気がした。

倒れた母親にすがりつく幼児二人は、年嵩の方がうずくまったまま起き上がらない母親とその場に座り込んで
泣き喚く年下の幼児を何とかして慰めようとしているようだった。
そうすることで、年嵩の幼児は自分の心を強く保とうとしているかに思われた。

それを見てハイネは思い出す。
真っ白かつ黒く染められた頭にその直後に見たはずの光景が蘇ってきた。
ハイネが今しがた指を折った男が、この幼児達の母親の頬を張ったのだ。
そう、そうだった。
だがどうして。

「ちょっと。どういうことなんです。みんな、何があったんだよ」

ハイネは周囲の同胞達を見回すようにして言った。
ハイネの視線が向けられると心なしかほとんどが目を逸らしたようだった。

指を折られた男が低く唸り声をあげる。
男は顔中に汗をかいていた。
顔色は青ざめている。血の気は完全に引いてしまっていた。
男は息も荒く言った。

「そいつはなぁ、その女のガキはな、ナチュラルなんだよ。
隠していたんだ。今まで。
俺たちを、コーディネーターを、コーディネーターの誇りを欺いたんだ。貴様は。
そんなガキは今すぐ叩き殺すべきなんだ」
「何?」

ハイネは男が何を言っているのか分からないでいた。

子供がナチュラル。
コーディネーター同士から生まれる子供はほぼコーディネーターのはずだ。
仮に片親がナチュラルであったとしても、子供はいわゆるハーフコーディネーターとして生まれる。
男はそのことを言っているのだろうか。

「どういうことなんだ。どうしてそんなことが分かる」

男は蔑んだような目でハイネとその背後の母親達を見た。
その手は必死に折られた指を抑えている。
どれぐらい痛むものなのか、折った当人であるハイネには分かっていなかった。

「そこに転がってるトレイ、見てみろよ」

男は指で示す代わりに顎でその方向をしゃくってみせた。
大量に湧き出ていた脂汗が顎の先から雫をたらす。

ハイネはひっくり返ったままのトレイを見つけ、それを注意して見つめてみた。
特におかしいところはない。
それもコーディネーターとナチュラルを分けるものなんて。

448312:2006/03/04(土) 08:29:37 ID:9stzOzqk

そこで気がついた。
食べかけになっているトレイ。
それがひっくり返されて食べる途中だったものが周辺に散乱している。
米、温野菜、果物。
その中の一つにハイネの目は注がれた。
それは彼の目を疑わせるには十分過ぎるものだった。

「鶏肉だ」

ハイネの目に止まったものは一口齧られていた鶏肉だった。
それだけなら何の変哲も無い代物であるはずなのだが、ハイネとこの場にいるコーディネーター達には
それが男の言葉を裏付ける証拠となるものであった。

「分かったか。
そのガキがな。食ってたんだよ。
貴様だって知っているだろう。
コーディネーターは鶏肉なんて食わない。
強いアレルギー反応があるからな。死に至る。
食う必要なんてないのさ。そんなものはナチュラルのチキンどもに与えてやればいい。
それをこのガキは食ったんだよ。
これがどういうことか、貴様がいくら救いようの無い馬鹿でも分かるってもんだろうが。ああ?」

「でも、母親は、この人はコーディネーターだろう。だったら」
「戻したんだよ。遺伝子を。
回帰させたに違いねぇ。どうだ、そうなんだろうが」

その言葉は泣き続ける母親に向けられたものだった。
母親はようやく身体を起こし、とめどなく流れていた涙を指で拭った。
彼女を呼び続けた年嵩の幼児とその傍らで泣き叫んでいた年下の方の、両方の頭を撫でてやってから
両手で二人を抱きかかえる。

それは周囲の無言の攻撃から自分たちを守ろうとする態度であった。
ハイネは彼らと同胞達の間に出来上がっていた強固な壁の存在に初めて気がついた。
そして今自分はどちらに立っているのか。
そんなことを無意識のどこかで考えていた。

「そう。この子はナチュラルよ。
だって、仕方なかったのよ。
あの時は私たちに流行の病気があって、その時丁度この子の妊娠が分かって。だから」
「回帰って。そんなことできるのか」

ハイネは誰に言うというわけでもなく呟いた。
答えたのは指を折られた男だった。
脂汗まみれになりながらも、その顔には優越感が浮かんでいる。
それがハイネには一段と奇妙に見えた。

「最近な。そんな馬鹿げたことをする奴らが出てきたりする。
出生率が低下しているからだと。ふざけたことを言うな。
我らコーディネーターの英知はそんな問題はすぐに乗り越えられる。
問題はこの女の腐った心根とそのガキの存在だ。
許すわけにはいかないんだよ。
処分だよ。処分するんだ」

449312:2006/03/04(土) 08:32:22 ID:9stzOzqk

「処分って。おい待てよ。まだ子供じゃないかよ」
「そいつが!」

男は突然声を張り上げた。
そうすると指に痛みが走るらしく、すぐに指を抑えて苦悶の表情を浮かべた。
それでも男は続ける。

「そいつが、将来コーディネーターに危害を加える存在にならないと誰が保証できる。
それにナチュラルみたいな劣等人種の一人や二人、軽く捻り殺したところで何の問題がある。違うか」

「止めて! お願いだからこの子には何もしないで! 悪いのは私、私よ!」

「だったら! 貴様も罪を償わなければならないんだよ。
偉大なるファースト・コーディネーターのジョージ・グレンと、我らが血脈に繋がるこの同胞たちに!
死んで罪を償え!」

この違和感は何だろうとハイネは他人事のように考えていた。
どうしてこの男はそこまで威張り散らすことができるのだろう。

確かこの男は以前ハイネに食事を掠め取ってこいと命令した男だった。
戦闘が続いたこともあってそれを果たすことはできなかったが、その時の妙に尊大な態度を思い出す。

そして今この瞬間、指を折られてうずくまり、脂汗で顔中濡らしているこの男。
こいつのどこがそれだけ誇らしい存在だというのか。


「お前。お前何言ってんだよ」
「何だと」

ハイネがぽつりと呟いた言葉に男は敏感に反応した。
これ以上はできないというぐらいに目尻を吊り上げて、ハイネの顔を睨んでいた。
しかし目に留まらないように自分の手をハイネの視線から隠そうとしている。
その仕草が余計に女々しく見えた。

汚い。そう思えた。

「お前、俺に指折られたのに、何偉そうなこと言ってんだよ」

男はハイネが指と言った瞬間に身をすくめた。
どうしてこんなに弱いのだろう。コーディネーターなのに。
ハイネの頭には止めることの出来ない思いが押し寄せてくる。

コーディネーターだというのに。
どうしてこの男はここまで醜態を晒すのだろう。
俺に指を折られて。別に俺は強いというわけじゃない。
それは分かった。もう分かったことだ。

ジブリールとか。あいつみたいな奴は特別だ。
俺はヒュッケバインも操縦できない。
着陸も失敗した。
そう、あのガンダムの着陸は凄かった。
どうやったらああいう風にできるのか。
オートじゃない。多分それは違う。
450312:2006/03/04(土) 08:35:26 ID:9stzOzqk

俺に指を折られたこいつ。
俺の指を簡単に折ることができたはずのあの男。
俺をひょいひょい投げては地面に叩きつけるあのおっさん。

どうしてこんな違いが出てこなきゃいけないんだ。
コーディネーターはナチュラルなんて及ばないくらいに優秀なんじゃなかったのか。

どうして俺は手玉に取られる。
どうしてこの男は俺に指を折られて悶絶している。

この男。この男はそんなに偉いのか。
だったら何が、どこが、どうして偉いんだ。

「お前なんか、お前なんか死ぬぞ。
モビルスーツに乗ったら、戦場に出たら、すぐに死ぬんだからな。
本当だぞ。分かってんのかよ。
お前戦争したことあるのかよ。
怖いんだぞ。死ぬんだぞ。
それなのにあいつらは、少尉とか曹長とかは、戦って、生きてるんだぞ。
分かってんのか。ジブリールとかは確かに違うけど、俺もお前もナチュラルに負けてるんだぞ。
分かってんのかよ!」

「貴様、貴様ぁ! ナチュラルに魂を売ったな、恥を、恥を知れ!」
「恥ずかしいのはお前なんだよ! どうして、どうしてそんなことも分かってくれないんだよ!」

ハイネは自分が涙を流していることに気がついていなかった。
この男を見ていると自分がとんでもなく汚い存在に思えて仕方ない。
どうして誰もこの男にそう言わないのだろう。

自分たちを取り囲んでいる同胞達から、どうして同意の言葉が出てこないのだろう。
誰か、誰か何か言ってくれ。お願いだから他の誰かが、俺でもなくこの男でもない誰かが口を開いてくれ。


「おかあさん。ごめんなさい。僕がいけないの。でも、でもね。僕お腹空いちゃったの」


その言葉を聞いた瞬間、ハイネは全身から力が抜けてしまうのを感じた。
無力感が全身を捉え、神経を麻痺させてしまったかのように思われた。
彼の身体は膝から崩れ落ち、涙が止まることなく頬を伝っていった。
目の前の惨めな男。そして自分。

そう、食事が足りてないんだったか。
もし俺が食事を掠め取ってきていたら。こういうことにはならなかったのかな。
でもそういうことじゃなくて。そういうことじゃなくて。
俺は今、どうしてこんなに情けない気分なんだろう。

「ごめんなさい。ごめんなさいね。お母さんを許してね。
お母さん、怖かったのよ。言えなかった。誰にも言えなかったの。
でもあなたが悪いんじゃないのよ。お兄ちゃんも悪くないの。
悪いのはお母さんだけ。お母さんが悪いんだから……」


騒ぎを聞きつけたビルギットとバムロがやって来るまで、ハイネは涙を流し続け、
母親は子供たちに懺悔の言葉を繰り返すばかりで、指を折られた男はハイネと母親たちに悪意に満ちた言葉を延々と投げかけていた。

その間中、彼らを取り囲んだ人垣は一言も発することなく、息を潜めてその光景を見つめているだけだった。

451312:2006/03/04(土) 08:43:39 ID:9stzOzqk
5話前編終了。

コーディネーターと鶏肉アレルギーの話は完全に捏造です。
回帰の話も怪しいものです。
本編見ただけじゃ分からんという言い訳で勘弁して下さい。

7回目で予告した全14回は完全に破綻してしまいました。
全7話であることは変わらないので、それまで何回か増えることになりそうです。
452それも名無しだ:2006/03/04(土) 20:28:09 ID:dLPZJwvt
GJ!!
回帰の話は面白いと思うよ。
そしてグフ男の再登場、鉄仮面の遺産、変わるハイネに悩むビルギット。
文量が増えるのは全然OK、このクオリティーを最後まで維持して欲しい。
453シンジの未来:2006/03/04(土) 23:16:12 ID:9DO13ZcZ
使徒は全て滅びた。最後の使徒 渚カヲルの死を持って。戦乱を収める大役を買って出たのは
碇シンジというわずか14歳の少年だった。その後自己嫌悪に陥り葛藤の日々を過ごし
シンジは15歳になった。アスカはドイツへは戻らず日本に残っている。なんでもネルフは
平和維持の為の組織になったとシンジは聞いた。高校生になり普通の生活を過ごしていた
シンジは思った。
このままでいいのか。本当にいいのか。自分には義務はもう無い。エヴァなどもう乗る事も無い。
だがこの先どうなる。自分はエヴァとのシンクロ率が高い唯の人間。唯それだけだ。
スーパーパワーもなければ何の特殊能力も無い。エヴァから降りればただ逃げ回るしかない。
そういう事を学校に行く途中でぼんやりと考えていた。
「おはよー!」
不意に誰かがシンジに声をかけた。シンジが振向くと傍にアスカが立っていた。
「おはよう・・・。」
「何、暗い顔してんの?ほら遅刻するよ。」
目の前にいる可憐な少女。ミサトと同居しているシンジにとって最も身近な同年代の異性。
(僕はこの子を守ったのか。)
最後の戦の時アスカは病室で寝ていた。そういう意味では守ったのか。
「ねぇアスカ・・・」
「何?」
「君はどうして日本に残ったの?」
「私は日本の方が好きだから。ゼーレのジジイ達がいる所なんて住みたくないわよ。」
ゼーレ。使徒を作り出しネルフに向けてけしかけてきた連中。しかもネルフはゼーレの部下組織みたいな
モノだった。とんだ茶番。幻想。下らないショー。
その中で翻弄され続けてきたのがシンジ達チルドレンだったのだ。
454シンジの未来:2006/03/04(土) 23:17:53 ID:9DO13ZcZ
えーとイントロ書き終えました。高校生になって大人びた考えが出来るようになったシンジです。
スパロボにしようか考えていますが・・・ニルファの前だと思ってください。シンジとアスカって
上手くいけば恋愛も可能だと思えるんですがね・・・。
455312:2006/03/09(木) 14:03:27 ID:Ir0WZJ2C

唐突な救難信号が小隊のミデアに受信されたのはその日の昼を過ぎた頃であった。
重く垂れ込めた雲の厚さに日の光はその大半を遮られてしまっている。
ミデアの広めの操縦席にはこの時間にして既に照明が点されていた。

「救難信号だと」
「この近くの街からです」

報告を受けて操縦席へ上がってきていたビルギットは正面のキャノピー越しにその方角を見る。
周辺地図を交互に街の方角を観察するものの、低地に位置するその街の遠景と、
最大望遠で捉えて出された映像には別段変わった様子は見られなかった。

「観測は」
「してますが、何も」

部下の答にビルギットは頷く。確かに何か異変を認めることはできなかった。
映像から目を離さずに続ける。

「救難信号だけか。内容は」
「それがシグナルだけで。恐らく送信者はもう」

救難信号のデータがキャノピー上のモニターに表示される。
発信元は軍駐留所。街の規模もあって、大した戦力は置いていない。モビルスーツもない。
戦略的に重要な拠点ではないのだ。
しかしそれは街を襲撃する側にとっても同じ条件であるはずだった。

「他の通信は。何か拾えないのか」
「民間の電波ですか? どうも弱くて」
「ミノフスキー粒子散布を一旦止めてもいい。あるなら拾え」
「オールズに見つかりますよ」
「状況が分からんよりはいい。急げよ」

了解と答える代わりに部下は命じられた作業に取り掛かり始める。
ビルギットは無意識に襟元に手をやりながら、後ろに立っているバムロに意見を求めた。
モビルスーツを用いた戦闘を除けば、バムロの実戦経験はビルギットの比ではない。
その事実を無視できるほど自分は優秀な士官であるとはビルギットは一片も思わない。

「陸戦兵力、歩兵かな」
「あの駐屯所には二個小隊がおるはずですが」
「なあ、オールズの台所事情じゃ無理だと思うだろ」
「同感です少尉殿。それも真昼です」

それにしちゃ暗いけどなと答えながらビルギットは軽く顎を撫でた。
この明るさならば夕方前には出発できるはずである。
ミデアは現在問題となっている街から二十キロといったところの岩場に身を隠していた。
日が沈んだ頃にこの場を発てば、オエンベリまでは半日といったところだ。


456312:2006/03/09(木) 14:06:07 ID:Ir0WZJ2C

本来ならば昼夜関係なくオエンベリへ向かいたいところではあったが、それを行うには小隊は人員装備共に疲弊し切っていた。
戦死者も一名出ている。対空砲座担当の軍曹だった。
攻撃を受けて飛び散った破片が腹部を切り裂いてしまっていた。
運が悪かったともいえるかもしれなかった。

しかし小隊全体としてみれば運は良かったのだ。
ジョージ・ジブリールという少年が念動力を発揮してヒュッケバインを駆り、敵機二機を撃墜。
ミデアの追撃を断念させた。
本来ならばありえない事態だ。奇跡といってよかった。

だからそこで得られた奇跡を無駄遣いするつもりはビルギットにはなかった。
それがこの慎重さに繋がっている。
奇跡を前提に小隊を動かすことはできない。

それは極めて普通の軍人の認識であった。
それこそバーゲンセールの如く奇跡が立て続けに沸き起こる部隊も世界には存在して、
他ならぬ自分ですらそこに一枚噛んでいた時期があったビルギットではあるが、
根底に持つ認識は通常軍人が持つべきものとさほど変わることはない。

「あちらさんは我々に気付いていないと考えるべきでしょう」
「だろうな。オエンベリからも近いし、唐突過ぎる」
「ならば我々は伏兵となりますか。少尉殿。どうします」
「どうするも何も、地上兵力が駐屯所を占領したのなら手が出せるかよ」

その発言に対してはバムロは無言だった。それは同意である。

恐らく街にはモビルスーツは投入されていない。
ヘリ程度の航空戦力を含んだ地上兵力で制圧されたと考えるのが適当だろうとビルギットは思った。

もしそうならば、この小隊では対応できない。
モビルスーツで駐屯所を吹き飛ばせるのなら話は簡単だが、捕虜の生死等事態の全容が掴めない現状ではそれも不可能である。
となれば静観しつつ情報の収集に努めるということ以外、できることはないというのが現実ではある。

「隊長。拾えそうです」
「いけるか」
「何とか。救急関係のものみたいです」

そう言って部下はヘッドホンを被った。
コンピューターが可能な限りノイズ処理を行うとしても、受信した電波自体が微弱であり、
恐らくは部分的なものでしかないのだから、結局は再生された声を人の耳で補完していくしかないのである。
それを理解している操縦室内の人間は彼が耳を済ませている間一言も発することはなかった。

しかし全ての事柄においてそうであるように、ここでもまた例外はあった。
そんな状況を理解していない人間が一人、操縦室に駆け込んできたのだった。
彼の一連の動きで発生した騒音は、それまで静寂が支配していた操縦室では一際耳障りなものとして響いた。

457312:2006/03/09(木) 14:08:04 ID:Ir0WZJ2C

ヘッドホンを被った部下が苛立たしげに首を振ったのを見て、
ビルギットは一息ついた後で駆け込んできた人間を睨みつけた。

しかしビルギットの眉間に湧いた皺はすぐに怒りのそれから疑惑のものへと変わっていった。
駆け込んできた人間の様子が彼にそうさせた。
少なくとも取るに足らない用件ではないらしい。

「どうした。何かあったのか」

駆け込んできた男、ハイネ・ヴェステンフルスは息を整えることもなく口を開いた。
端正なその顔からは血の気が完全に失せていた。

「あの、昨日の人たち、あの親子が、いなくなった、なりました」
「降りたのか」
「多分。街があるからって。最後にそう言っていたって」

肩で息をしながらハイネはそう伝えた。

その内容に、無理もないかとビルギットは思うしかなかった。
あの母親は子供をナチュラルにしてしまったことで、コーディネーター達から完全に浮いてしまったのだ。
オエンベリに着いたところで先行き不明な現状、出て行くしかなかったのだろう。
近くに街があるという事実が彼女を後押ししたのかもしれない。
街の中でコーディネーターであることを隠し通すということは、
荒野の中で親子三人生き延びるよりは容易なことだと考えたのだろうか。

通信を拾っていた部下が大声を張り上げたのは、そんなやるせない気分をビルギットが感じていたその時だった。

「隊長。今度はいけそうです」
「そうか。おいヴェステンフルス。しばらく黙ってろ。いいな」
「あ、りょ、了……」

最後まで言わない内にハイネの口はバムロの手によって塞がれてしまっていた。
目を白黒させていたハイネは通信を解読しようとする小隊員の姿をバムロに示されて、自分から口を閉じた。
全員の視線がその小隊員、彼の耳元に集中した。
一瞬間を置いて、彼は傍受した内容を伝え始めた。

「ええ、襲ってきた、街中を、ええと何だ、人が襲われている」

ビルギットとバムロは顔を見合わせた。
オールズモビルの部隊は民間人を襲っている。彼らの地上兵力にはそこまで余裕があるとは思えない。
小隊員は続けるが、その表情には怪訝なものが浮かんでいた。


「襲っているのは、何だって、車輪? 車輪が人を襲う?」


それを聞いた瞬間、ビルギットの表情は完全に凍りついた。




458312:2006/03/09(木) 14:10:23 ID:Ir0WZJ2C

「何だってんだよ、畜生、あの野郎!」

ミデアの操縦室と通路を隔てる鋼鉄の扉が閉じられた瞬間、通路に飛び出していた
ハイネ・ヴェステンフルスはあらん限りの怒声をその空間に響かせた。

「その辺にしとけよヴェステン坊主、いやヴェステンフルス。気持ちは分からんでもないがな」

ハイネと共に操縦室を出た小隊員が諌めるように言った。
字面ではハイネを抑えているものの、その口調からは彼自身納得していないという感情がありありと窺えた。

「事態を静観しつつ速やかにこの場を離脱するって、見捨てるってことかよ。あの親子を」
「隊長にも考えるところがあるんだろうさ。
バグとかいったか。オールズの新兵器って話じゃねぇか」
「だからって、只の車輪なんだろうが。モビルスーツで行けばそんなもの」

そこまで言ったところで小隊員は流石にハイネを叱責した。

「ジブリールが二機落としたからってお前が調子に乗る理由にはならんぜヴェステン坊主。
お前の抱えている感情は尤もだ。それは認めてやる。
しかしお前がそう考えているからって思った通りに動ける保証なんてないんだ。
自重しろ。いいな」

ハイネは納得いかないという表情で小隊員を見返した。
拳は今にも誰かに向かって振り上げられそうなほど強く握り締められていた。
彼はその拳を人間に対してではなく、通路の壁に向けて叩きつけた。
その音は暗く狭い通路に低く響いた。

「あんたはそれで納得してるのかよ。
それでいいのか、見捨てたままでいいのかよ」
「しているわけがないだろう」

「でもあんたは命令に従うんだろう。
そりゃあんた達はいいさ。あの街にいるのは結局関係無い人たちなんだろうから。
でも俺は違う。あそこには仲間がいるかもしれないんだ。
そこで今殺されかかってるかもしれないんだぞ。
それでどうして黙っていられるんだ!」

自分の言った内容の重さに耐えられないといったようにハイネが首を振ったその一瞬の間に、
小隊員の腕がハイネの襟を掴み上げていた。
予期していなかったその動きにハイネの頭が激しく揺れた。
掴まれているのは服の襟であるはずなのに、何故か首の辺りに鋭い痛みを感じる。
小隊員は襟を掴んでいるのと同じくらい、またはそれ以上の力をこめてハイネを睨み返した。


459312:2006/03/09(木) 14:12:31 ID:Ir0WZJ2C

「平気なわけがないだろう。ああ? 
なめたこと言ってんじゃねえぞこの坊主が。
仲間だと。お前らはそう考えているのかもしれんよな。
三人の仲間か。そりゃ大事だろう。
だがな、お前らがそう考えるなら俺たちはどうなる。
あの街には一万人の、お前らが言うところのナチュラルが住んでいるんだぞ。
彼らが今どうなってるのかまるで見当がつかん。
全員民間人だ。戦争とは関係無い。
分かってるのか。あの親子みたいに女もいれば子供もいるんだ。
それでどうして平気でいられるのか、まだ何か言い足りないことがあるなら言ってみろ!」

小隊員は余りに強い剣幕でまくし立てたので、口から飛んだ唾が数滴ハイネの顔にかかっていた。
しかし今のハイネはそのことに怒りを感じる余裕は持ち合わせていない。
男の言ったことにハイネは圧倒されてしまっていた。
その内に男が襟を掴んでいた力を緩め、半端宙に浮いていたハイネの足はようやく地に着いた。
ハイネは俯きながら呟いた。

「悪かった。でも、俺は納得できない」
「それは分かっている。だが現実的に手段が無いのは事実だ。
仮にあの親子だけを助けるとしよう。
だとしても、俺たちにはあの親子が街のどの辺りにいるのか全く見当がつかないんだ。
そんな状況でどんな作戦が立てられる」
「だったら、だったらそのバグってやつを全部破壊してしまえばいいんだ」

通路の中に一瞬沈黙が流れた。
次に口を開いたのはハイネではなく、小隊員の男だった。
男はハイネに尋ねるというよりは自問自答するように言った。

「俺もそう思っている。なあ、どうして隊長はそれを決断しない。
バグはベースから射出されてしばらく活動するって言ってたよな。
そして人間だけを判別して殺すとも。そんな機械に敵味方の判別がつくだろうか」

「そもそも、そんな機械を使うんならその場にいる必要はないだろ」
「そうだ! そうだよヴェステンフルス。多分そうだ。
仮に判別可能だったとしてもわざわざ街にいる必要は無いんだ。
機械のすること、間違いがないとも限らないしな。
おい、あの街には今オールズはいないぞ。間違いない」

その言葉にハイネは顔を上げた。
驚きと希望が混ぜ合わされたような表情を浮かべていた。

「なら、モビルスーツがあれば、バグを全部破壊できる」
「そうだ。俺がセッターを出す。営倉入りは覚悟しろよ。いいな?」

460312:2006/03/09(木) 14:15:10 ID:Ir0WZJ2C

ハイネが男に返した視線は自信に満ちたものだった。
営倉入りが何だ。今この場所で大勢の人が死ぬ。
中にはあの親子がいる。
あの親子がここを出て行かなくてはならなかった理由の一つは俺が作ったようなものだ。
だから俺は行かなくちゃならない。

目の前のこの男。こいつは今俺と同じような怒りを抱えている。
だから俺たちは一緒に行動する。
俺たちか。こういう気分をどう言えばいいのだろう。
まあいい、それは終わってから考えよう。

バグだって。たかが車輪じゃないか。
あの野郎、少尉は何をびびっているんだ。
らしくない。
俺に対してはさんざん威張っておきながら、車輪兵器の一つや二つに何をおじけ付いているんだ。
あいつ、もしかしたらバグってやつに襲われたことがあるんじゃないのか。
全く。情けない。
車輪は対人用の武器でしかないっていうじゃないか。
モビルスーツでいけば。モビルスーツなら問題無いさ。


その時ハイネは気がついていなかった。
対地戦においてモビルスーツに乗った人間は、特に経験の乏しい兵士は
自分がまるで不死身の存在になったかのような錯覚を覚えてしまうことがあるということに。

その錯覚は実戦経験をそれなりに積んだ人間でもつい持ってしまうことがあるほど、
モビルスーツというある種の偶像的な兵器に特有の心理効果であった。

ハイネはこの瞬間、新兵の誰もが陥ってしまうその穴にはまり込んでいたが、
本来彼を引き上げるべき役目にいる目の前の小隊員も、そこに仕掛けられた
巧妙な心理的罠を掻い潜るにはまだ若すぎたことを、この二人は一片も理解してはいなかった。




「らしくないと言ったらどうします」

ミデアの操縦席で撤退準備の指示を出していたビルギットにバムロがそう声をかけた。
ビルギットはあるモニターに映し出された内容に一通り目を通してから、ゆっくりとバムロの方を向いた。
しかし顔は完全には動かし切ってはいなかった。
そんな横顔を眺めつつバムロは続けた。

「ハイネの坊主はありゃとてもじゃないが納得してませんよ」
「そういうあんたはどうなんだい」

461312:2006/03/09(木) 14:17:30 ID:Ir0WZJ2C

最大望遠で捉えられた街の遠景には変化はなかった。
煙の一つや二つはたなびいているのかもしれなかったが、空がこうも暗いとそれを確かめることもできないでいる。
街を捉えているモニターは時折別のセンサーが観測した情報に切り替わり、
その後で再び変わらぬ様相の街を映し出していた。

しかしあの中では一体どんな光景が展開されているのか。
ビルギットの記憶は瞬時にその有様を脳裏に蘇らせることができる。
脳だけではない。身体全体があの時の記憶を拭い去ることができないでいるのだった。
鳥肌が全身を覆い、心臓の動悸が一段階上がったような気がする。
何より腹の中身が冷たい手に丸ごと掴まれてしまったようだ。胃の腑が縮み上がる。

「バグは駄目だ。ありゃ手を出しちゃいけないよ」

ようやくそう言った。この声はどんな風に曹長の耳に響いたのだろうか。
震え、掠れ、そこかしこに恐怖を滲ませてはいなかっただろうか。

「援軍を要請するしかない」

ビルギットは額に浮かんだ汗を拭ってしまいたかった。
背中をゆっくりと流れ落ちる不快感の塊のような冷や汗も、拭ってしまえばそれでお終いである。
しかし肌の一枚裏、内臓に絶え間なく滴り続けているこの気色の悪い汗はどうやったら引いてくれるというのか。
それが分からなかった。

クロスボーン戦役でのフロンティアT。
先の大戦でのロンデニオン防衛戦。
一度は死にかけ、次は身体が動いてくれなかった。

今こうして生きているのはそこにシーブックがいて、そしてアルファナンバーズがいたからだ。
そうでなければあの時自分はバグの無数の刃によってミンチ同然にされてしまっていただろう。
現在この瞬間、自分が特に取り乱すことなく部下に指示を送っていられることが正直不思議でならない。

「残念だがあの親子の救出は断念する。一時間後にこの空域を離脱。
予定より早いがオエンベリへ向かう。各員準備を続けろ」
「断念ですか」

ビルギットの背中にそんな言葉が投げかけられた。
声の中にはどこか落胆したような、そんな響きがあった。

「一度でも考えてみたんですか。救出できるかどうか」
「この戦力ではバグに対抗できない。あれは危険だ。危険すぎるんだよ曹長」
「自分は実物を見ていないものですから何とも言えませんが」
「そうだ。見なきゃ分からんよ。あれは。言葉じゃ説明なんかできん」

462312:2006/03/09(木) 14:20:17 ID:Ir0WZJ2C

背後でバムロが深く息をついたのが分かった。
しかし他にどんな言い様がある。ビルギットはそう叫んでしまいたかった。
そうすれば楽になるだろう。
しかし叫んだ瞬間、それまで必死の思いで支えてきた現状維持の努力が
全て崩れ去ってしまうであろうことも十分分かっていた。
だからその口は閉じられたままなのである。

「まあ自分はともかく。若い奴がそれで従いますかどうか」

バムロがそう言うのと、操縦席に座っていた部下が異変に気がついたのはどちらが早かっただろうか。
部下はコンソールに表示された情報を見て目を丸くしていた。
被ったままのヘッドホンから伸びていたマイクに向かって大声でまくし立てた。

「おい、お前ら、何やってる!」
「どうした。何があった」
「いや、それが。おい、お前ら止めろ!」

要領を得ない答にビルギットは部下の肩を掴んで揺する。
相変わらず部下はマイクに呼びかけていたが、その理由はすぐに明らかになった。
そのことに最初に気がついたのは背後から二人を見ていたバムロであった。

「少尉殿。外を」
「外だと」

ビルギットは正面のキャノピーから外を眺めた。
正確に言えば、眺めるために視線を上げた。
その瞬間、巻き上がった土煙が視界を完全に覆ってしまった。
同時に轟音が周囲一帯に響き渡る。
それは大出力のバーニアのみが発することのできる重層的な音であり、
そして上空へ伸びていく、そんなものだった。

そんな諸々が意味するところは只一つである。
ヘッドホンを被っていた部下はその事実を極めて簡潔に表現した。

「ジムU並びにセッター一機が出撃。パイロットはヴェステンフルス、スミスの二名」
「やっぱり、連中納得してませんでしたな」

部下は再び口元のマイクを掴んだ。
その間にもかなりの速度をもって街へと接近していくセッターに届く様に通信出力を上げようとする。

「至急呼び戻します」

そう言って部下は回線を開こうとした。
ビルギットは素早く手を伸ばして部下が動かした手を止める。
彼は驚いてビルギットの顔を見た。
ビルギットは無言で首を横に振った。

「隊長、何故です!」
「今の出撃でこちらの存在が知れたと考えるべきだ。今すぐ離脱する。
通信は行うな。こちらの位置まで特定されればお終いだ」
「そ、それじゃ」

「見捨てるということですか。坊主たちも」

463312:2006/03/09(木) 14:22:25 ID:Ir0WZJ2C

「見捨てるということですか。坊主たちも」

絶句した部下の言葉を引き継いだのはバムロだった。
その顔には冷ややかなものが浮かんでいた。

「命令違反だ。そうされても文句は言えまい。
曹長。あんたはコンテナに降りてくれ。連中に説明する時間も惜しい」
「そりゃないでしょう。少尉殿。
ヘビーガンを出します。今からなら間に合います」
「駄目だ! 今すぐここを離れるんだ、いいな!」

そう吐き捨てるように怒鳴り、ビルギットは足早に操縦室を飛び出した。
背中越しに扉が閉まったことを確認し、地の底から出ているのではないかと錯覚させるような深い息をつく。
両手が震えているのが分かった。
足は固まったままだった。
逃げ出したのだという自覚はあった。

それでも恐怖を拭うことは出来ない。
あの時ヘビーガンを満たしていた金属同士が削り合う、甲高い音。
モニターの表示が消えた暗闇の中に、その内に火花が散り始めた。
バグの刃はヘビーガンの装甲を焼き切ってしまうつもりだったのだ。
ビルギットはそこで絶叫したことまでは覚えていた。

二度目はバグの跳梁跋扈する戦闘空域に入ることすらできなかった。
それでも生き延びることができたのは彼がアルファナンバーズに所属していたから、
つまりは他の人間がバグを排除したのである。
その間中、心のどこかで彼らに任せれば大丈夫という安堵感があったことを否定するつもりはなかった。

しかし今、ビルギットの側にはアルファナンバーズの仲間はいない。
そして彼は一度目の光景を目の前に蘇らせようとはどうしても思うことができないのだった。
湧いても湧いても途切れることが無い汗によって、軍服の下に着た下着は完全に濡れてしまっていた。

今ビルギットは一人である。




「距離二千。そろそろ来るぞ!」

ジムUのコクピットに響く音声はセッターからの接触回線である。
ジムのセンサーによって増幅されたその声は多少くぐもってはいるが、明晰に聞き取ることができる。

コクピットに座るハイネ・ヴェステンフルスは緊張した面持ちで全天球モニターの各方向を見つめた。
ジムのコンピューターにはバグのデータは入っていなかったために、
その存在はハイネ自身が眼で持って確かめるしかなかった。

「おい見ろ、下だ!」

464312:2006/03/09(木) 14:25:38 ID:Ir0WZJ2C

セッターを操縦する小隊員、スミスは驚いたような声でハイネに呼びかけた。
ハイネもすぐに反応してモニターの下部を高速で流れていく地上の様子に目を向ける。
そこで彼の目は見開かれた。

「車だ。車が斬られてる」

荒野に一本伸びた舗装道路に、上部をこそぎ落とされたかのような具合で鎮座していた
乗用車が何台かモニターに捉えられた。
その内一台は縦に真っ二つにされてしまっていた。
乗員がどうなっているかは考えるまでもなかった。

「逃げようとしたのか」
「街の人間を狙うなら、まずは外周から攻めるはずだ。用心しろ。近くにいるぞ」
「セッターじゃ危ない。下がれ」
「予備コクピットに下がる。あそこは深い。大丈夫だ。それより離れるな。
セッターのセンサーで何とかベースの位置を割り出す。
数分置きにワイヤーを伸ばせ。捉えた情報を送るからな。
お前はできるだけ沢山バグを潰しちまえ。いいな!」
「了解だ。スミス!」

ハイネはここで初めてスミスの名前を呼んでいた。
彼自身はそのことに気付く由もなかったが、名を呼ばれたスミスはセッターの予備コクピットに
下がる間に思わず口元をにやつかせていた。
その時セッター全体に大きな揺れが走る。ジムが離脱したのだった。

「バグ、どこだ!」

ハイネの駆るジムは市街地の端にその足を降ろした。
静止したジムのセンサーは周囲の映像を解析して、その情報をコンソールに映し出す。
センサーはいくつもの爆炎とたなびく煙を捉えていた。それを異常として警告しているのである。

ハイネはジムを一歩歩かせた。
コクピット内に伝わる衝撃はあの酷かった訓練時よりずいぶんと軽いものだった。
慣れたのかなとハイネは頭の隅で考える。
実際はそうではなく、訓練時のショック・アブソーバーの設定がきつめのものに変えられていただけなのだが、
今のハイネはそんなことには思い当たらない。

そこの角を曲がる。操作が思ったより順調なことに気を良くしたハイネはモビルスーツの
肩ほどまであるビルが立つその角を曲がろうとした。
用心してシールドを先に出しておくのを忘れない。
この辺りの設定は街に接近するまでにスミスが行っていたものだった。

現在ジムはほぼオートプログラムで動いており、ハイネが決定するのは主に行動の内容、
それだけであった。
いざとなれば音声指示すら可能な設定である。
ジムの全身に備え付けられたセンサーが動く物体を捉えたのはその時であった。

ハイネの頭がその情報を理解すると同時に、軽い振動がコクピット内に走った。
それは大したものではなかった。
ハイネははっとして正面のモニターを見つめる。何かが動いている。縦長の。

「車輪、バグか!」

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高速で回転するバグは、ジムのシールドの最初の攻撃を防がれた後で、
再び攻撃目標をジムに定めて各部のバーニアを吹かしていた。
車輪の側面からいくつか光が発するのが、そのバーニアの出している炎である。
この時バグは半ば停止していた。

「このお!」

センサーが停止したバグを捉え、射撃用のターゲット・カーソルがモニター上に映し出される。
その中心にバグの縦長の姿があった。
ハイネは最初に設定したあった武装を変えることなく、そのままの勢いで射撃スイッチを押した。
それに連動するようにして、ジムの頭部に二門備えられていたバルカン砲が激しく火を吹いた。
その度にコンソール上ではメーターの形で残段数がカウントされていく。

「落ちろ!」

カーソル内でバグが数回跳ねたかと思うと、その姿は力なく地上に落下していった。
車輪が横を向いて、その時初めてハイネはバグの大きさを知った。
意外な大きさだった。直径は十メートルはないくらいであった。
車を真っ二つにしてしまえるわけである。

バグは各部から時折火花を散らしながら、その内に中心から軽い爆発を起こして機能停止したようだった。
車輪の回転も収まっている。
回転を止めた刃は想像以上に鋭いものだった。ハイネは大きく頷いた。

「一機撃破。よし!」

これならいけるかもしれない。ハイネの胸に自信が湧いていた。
やはりバグはモビルスーツ用の兵器ではないのだ。
車はひとたまりもなかったようだが、モビルスーツは違う。
現にシールドの負ったダメージもそれほどではない。
バグが何機いるのかは不明だが、確実に破壊することは可能だとハイネには思えた。
バルカンの残弾が残り三分の二ほどであるということにはハイネは思い至っていなかった。

ジムは角を曲がったところで頭部カメラを正面に向けた。
もちろん全身にカメラアイは備えられてはいるのだが、
最も情報量が多いのは頭部の目の部分を形成する大型のカメラアイであった。
それはコクピット内に次々と表示される情報の量を見ても分かる。
そしてその内容にハイネは絶句した。

「人、人だ」

ハイネはようやくそう言った。それきり口は動かなかった。
ジムのセンサーが捉えたものは人であった。
正確には人の残骸である。
全身の各部が切り刻まれて、血とおぼしきものが周辺を染め上げていた。

ジムのモニターはいちいちその残骸を捉えて拡大するものだから、ハイネの頭はその光景に完全に圧倒されてしまう。
オートにしていなければ全天球モニターの全てが残骸をキャッチしたウィンドウで埋められてしまったことだろう。
つまり、今街は人の死骸で埋め尽くされつつあるのだった。