しのようだ Mail: sage 投稿日: 2010/01/11(月) 01:35:59 ID: OYXbovA10
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
※sage推奨。
※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。
※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
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前スレ
FFの恋する小説スレPart10
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/ff/1263141359/l50
【参考】
FFDQ板での設定
http://schiphol.2ch.net/ff/SETTING.TXT 1回の書き込み容量上限:3072バイト(=1500文字程度?)
1回の書き込み行数上限:60行
名前欄の文字数上限 :24文字
書き込み間隔 :20秒以上※
(書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
連続投稿規制 :5回まで※
(板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
1スレの容量制限 :512kbまで※
(500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)
落ちていたので上げました。
ここも大変な事になっていますね。
前スレのログをアップ出来る所を探して来ます。
6 :
前スレログ:2011/01/10(月) 13:30:05 ID:AbSJKz+M0
>>1-6 乙!&過去ログまでありがとう。
あの騒動がここまで波及してくるとは正直思ってなかったw
ってなワケで保守。
9 :
6:2011/01/11(火) 00:59:24 ID:rFCVldEd0
過去ログ無事読めていますか?
当方Macなんでちと心配。
たくさんのSS投下お待ちしてます。
>>9 windowsで読めました
ありがとうございます
>>9 読めてるよー、乙!
ひとまずは落ち着くかな?念のため保守。
いちおつ保守
のんびりSS待ち期待中
wktk保守
書き手さん期待sage
ほ
永久に氷結せし氷。人々はそれを呪術に使い、ザストゥンと名付けた。
刻み込まれた、生命の清冽な輝き。その結晶の守護者を――クリスタル・ガーディアンズと呼ぶ。
穏やかなビスガ緑地に、ぽかぽかと柔らかな日差しが当たる。
「ぎゃあああ! モルボルが行列してるぞー!」
「行進してますねえ」
ソルジャーの絶叫に、おっとりとした声で時魔道士が応える。
勢い良くシーフがモルボルのお財布を漁る横で、ホワイトモンクが首を傾げた。
「なぜモンスターが財布を」
「きっとですねー。モンスターの国がどこかにあるんですよー」
絶賛スロウ連発中の時魔道士が、妙な事を言う。
「魔王に税金を収めて、モンスター宿屋やモンスターショップがある国ですね」
「ねー」
耳の長い黒魔道士と時魔道士が、仲良く頷いた。
「そんな国嫌だ、嫌だよ!」
「来るぞ、行け!」
叫ぶソルジャーを、ウサ耳弓使いが前線に放り投げた。
クリスタルを狙いし異形の者共。それは、鮮血の色に染まる醜悪な肉冠を持ち
ぞっとする程に真白き翼を携えた――そんな、まんまるのニワトリスの群れ。
ヴィエラのお姉さんAが、動きの鈍ったニワトリスの羽根をモコモコしてみた。
「やーん、カ・ワ・イ・イ〜(星:記号省略)」
帽子から飛び出たポンポンを震わせ、モーグリ族も羽根をモコモコしていた。
ヴィエラのお姉さんBは、黙々と弓を引き続ける。
「この鶏共は何をしたいんだ」
寡黙なバンガ族が、行進するニワトリスを蹴倒しながらぽつりと呟く。
「クリスタルを奪うためだ」
ビスガ緑地の一本道。その向こうには貴重なクリスタルがあった。
そこに群れ集うモンスターを撃破するべく、彼等は今日も戦い続けていた。
突如、シーフの悲鳴が上がった。
「まずい!」
僅かながらに体力を残したニワトリスの一羽が、陣営を突破しクリスタルに迫る。
そこに小さな黒魔道士が飛び出し、呪文を詠唱し始めた。
「極寒の地の氷の神よ、我に力を与えたまえ」
「あの呪文は……!」
不意に、大気が刃の如く震え、生暖かく見守るが如き空気が流れる。
「言葉は氷柱、氷柱は剣。身を貫きし氷の刃よ、今嵐となり我が障壁を壊さん……。
――エターナルフォースブリザード!!」
敵味方を問わずに。戦場を埋め尽くすざわめき。氷結したのは、たぶん、場の空気だった。
「あれは『一瞬で相手の周囲の大気ごと絶対零度で氷結させ、辺り一面を暴風雪に巻き込み、
相手を氷の棺(フリージングコフィン)に永久に閉じ込める』相手は死ぬ呪文!」
「あれ、見たわー。二年ぐらい前に見たわー。相手は死ぬ呪文っすわー」
「獲侘穴流譜王棲・鰤座亜土か! 古代に伝わる、究極の黒歴史(民明書房刊)!」
犬耳のン・モゥ族が歴史書を繰りながら、ぴたりと敵を足止めする。
エターナルなんとかを唱えたモーグリ黒魔道士が赤面し、ちょんとニワトリスをつつく。
そして、最後のニワトリスも無事撃破した。
「ごめんなさい、ちょっと言ってみただけです……」
そして、ビスガ緑地最後の戦いが始まった。敵が誰であるか、それすら伝わらぬままに。
「最後って、『アイツ』かなあ」
「いやー、ないでしょー。探検がドリ○ンドとか、怪盗がロワ○ヤルとかじゃないからー」
ルッソ・クレメンズと呼ばれた少年。彼は、異世界からイヴァリースに迷い込んだ。
勿論、彼の持ち込んだ品々は大半が使えなかったが、大切な手帳は無事であり
FFXI、もとい「ネトゲ」呼ばれる玩具は、クリスタル防衛隊の間でも話題になっていた。
「心細いな。ヴァンさん、来ないかなあ」
「それはないでしょー」
気弱な声の黒魔道士を、ホワイトモンクが撫でる。
「ここは、まだ楽な戦場だ」
モンクは異様な気配を感じ、入り口を睨む。
そして、それは現れた。光を身に纏い、凄まじい力を秘めて。
「まさか……そんな!」
戦慄するソルジャーに、弓使いが振り向く。
「大丈夫。お前は鍛えただろう? 私もこの戦いで少しは鍛えた」
いつに無く優しい弓使いBの言葉に、ソルジャーXも頷く。
敵へホワイトモンクが怪力を叩き込み、吼える。
「――いける!」
その声が待機する仲間達に伝わり、一斉に攻撃が始まった。
「いきますよー」
「はい!」
「稼がせてもらうぜ!」
イヴァリースに息づく、クリスタルの守護者達。
勇者でも魔王でもなく。しかし彼等も又、彼等の歴史を綴り始めていた。
おわるよ
ぼ
>>19-21 幻想的な情景描写の上を和やか(時にはアグレッシブw)にキャラクター達が走り回っている
作風が大好きです。
しかしニワトリスと聞いて「美味しそうな焼き鳥になると、嬉々としてファイア系を唱える黒魔道士」
の姿を連想した自分が色々間違っていた事を反省せざるを得ないw(以下、個人的黒魔道士像)
ジョブ :調理士
サポートアビリティ:黒魔法(ファイア系)
趣味・特技 :倒したモンスターを材料にその日の晩ご飯を作る「モン飯」。
ああっ、モニターに石を投げないで!w
ま
り
何故ここの保守は「まりも」なのかについて。
前話:前スレ263-266
(まとめページで言うと29-2,3辺りの続き)
----------
各々がここに至るまでに遭遇した出来事をふまえて考えてみると、リーブの中には仲間に
対する揺るぎない信頼と、それ故に重荷を背負わす事への葛藤があるのだろう、とヴィンセント
は自身の推測を口にした。その上で彼は、寄せられた信頼に応えると決意した。ただし、それを
引き受けるのは自分一人でという条件が付いていた。
その為にも、ティファとシャルアにはここで引き返してもらう必要があった。
ヴィンセントの決意も、その言い分にも一理あるとティファには思えた。だからといって、彼の
主張が自分には受け容れがたい物であるのも間違いなかった。だからティファは反論の糸口を
必死になって探した。けれど考えれば考えるほど、反論のために用意した言葉は頭の中から
次々と消えて行った。結局なにも言えないまま、それでもヴィンセントから視線を外そうとしな
かった。それが無駄と知りながらも、せめて自分の意思は示していたかった。
ティファの沈黙を返答ととらえたのか、しばらくするとヴィンセントは立ち上がって二人に背を
向けた。こうしてティファとシャルアがエレベーターに乗る以外の進路を塞ぐ。言葉はなくとも
「ここから先へは来るな」と、その背中がはっきりと告げていた。
なにも反論できない以上、ティファはそれに従うより他になかった。ここで無理やりにでも進もう
とすれば、阻まれるのは目に見えている。寡黙でも決意を宿したヴィンセントにはとうてい太刀
打ちできない、という事をティファは理解していた。何もできずにとうとう俯いたティファは、悔しさ
に唇を噛み締めた。
そんな重苦しい沈黙の中、口を開いたのはシャルアだった。
「残念だが引き金を引く役はあんたじゃない」言いながら小さく笑う「……もっとも、仲間に銃口を
向けるのを楽しみたい、と言うなら止めはしないが」。
口調こそ喧嘩腰ではあったが、どこにも本意が無いと見透かしていたヴィンセントは振り向くと、
静かにこう返した。
「そんな口上では挑発にもならない」
その言葉に応じて顔を上げたシャルアは、観念したよと苦笑を浮かべてこう言った。
「察しの良いあんたの事だ、もう分かっているのだろう? 局長は心からそれを望んでいない」
その言葉に今度はティファが顔を上げる。それこそが、ティファの探し求めた反論だった。
「あんた達への信頼は、局長にとって“期待”なんじゃないのか?」
自分自身ではどうしようもない事態を、信頼する仲間達なら変えられるかも知れない。局長の
信頼に応えると言うならば、為すべきは彼に銃口を向ける事ではないはずだ。
ほんの僅かだがヴィンセントの表情が変わった。なるほどシャルアの言うとおり、確かにそれも
信頼の一面だ。
「つまり、引き金を引く役はあんた達の中の誰でもダメなんだ」それから、自身の胸に手を当てて
続けた「そのために私がここにいる」。
「シャルアさん!?」
「おいシャルア」
ティファとヴィンセントの制止を気にせずにシャルアは話を続けた。
「……さっきの話、不自然だと思わなかったか?」WROのデータベースから消えたSNDの実験
記録。リーブが持つとされる異能力と、その存在を示唆する研究論文。未完成のまま人知れず
放置された論文と一致するキーワードを、同じ場所で目にしたシェルク――直接的ではないに
しろ、シェルクがこの件に何らかの形で関与していると疑うのなら、なぜシャルアは直接シェルク
の元へ行かなかったのか?――それは、話を聞き終えたヴィンセントが不可解に思った点だった。
この口ぶりからすると、やはりシャルアは自覚していた様だ。
「あいにくと私は、あのインスパイアの論文には否定的でね。そんな生命など無い、あったとして
も単なるまがい物だ。これでも科学者の端くれ、まがい物を認められる筈ないだろう? 私は
それを証明するためにここへ来た。それは、星に還り損ねた私が果たすべき役目なんだ。……
ただの自己満足と言われれば、否定はできないが」言い終えると、自嘲するように口元を歪めた。
「つまり人が新たな生命を生み出す術は、子に対する親の祝福のみだと?」
ヴィンセントの言葉にシャルアは迷い無く頷いた。
あの時、自身が生み出された理由を問う人形に対してヴィンセントが示した答えとシャルアも
同じ結論だった。
彼らの遣り取りを眺めていたティファは、言葉の裏にある別の意図に気が付いて思わず声を
上げそうになり、慌てて口に手を当てた。
「……ティファ?」
訝しげな視線を寄越すヴィンセントから逃げるように顔を背け、ティファは俯いた。自身の発想
が突飛なのかも知れないと恥じ入る反面、考えれば考えるほど自分が立てた仮説は正しいと
確信は増すばかりだった。
「どうした?」ティファの異変に気付いて今度はシャルアが手を伸ばし、その額に触れる「熱でも
あるのか?」。
違うんです。ティファはそう言って額に添えられたシャルアの手をそっと退かすと、それを両手
で包み込む。
「シャルアさん……」その先を続けようと顔を上げたものの、いざ口に出そうとすると耳の辺りが
熱くなるだけでなかなか言葉が出て来なかった。首を傾げながら、それでも辛抱強く自分の
言葉を待っているシャルアを前に、このまま黙っていても仕方がないと意を決してティファが言う。
「シャルアさんがここまで来た理由、本当は違いますよね……?」科学者ではない自分には、
シャルアの語るすべてを理解できそうにない。けれど、ひとつだけはっきり分かった事がある。
シャルアは嘘を吐いている。その嘘に悪意はなく、それどころか本人の無自覚によるものだと
しても。
「違う、というのは?」
「それは……」
ティファにとって返すべき答えは出ていた。けれどそれを口にして伝えようとした瞬間、喉元まで
出かかった言葉が一気に膨れあがった。自分の内にあれば間違いではない。しかし、いざ口に
出してしまうとどれも正確ではなくなってしまうように思われた。
言葉に詰まったティファの姿を見下ろしていたヴィンセントは、なるほどと頷いてから先を続けた
「当事者が自覚するまでは、我々が口を差し挟む問題では無いと思うが」。こういった類の問題に
慣れている、と言う自負がある訳ではもちろん無い。ただ、得てして当事者よりも第三者の方が
はるかに状況を把握しやすく、一方で言葉としてそれを伝えるのは非常に困難だと言うことは、
多くの場合に共通して言えるのだと経験から学んだ。
だからそれで良いのだと、ヴィンセントはティファに向けてもう一度うなずいた。
「お前達、さっきから何を言っている?」訝しげな声でシャルアが問うと、ヴィンセントは当然と
言うように答えた。
「私とてこれが本望ではないし、だからこそ我々はここへ赴いた。お前もそうなのだろう? 仮説
としてのみ示されている異能力への反証と言うならば、わざわざ危険を冒すまでもない。自身の
行動を裏付けるために、理屈を並べる必要はない」それこそがシャルアの話に覚えた違和感の
正体だった。
シャルアは反論せず、ただ黙ってヴィンセントを見つめていた。
落ち着きを取り戻したティファが、助け船を出したヴィンセントを見上げて頷いた。
「だからと言って黙って見てるだけなんてできません。リーブさんが私達を呼んだ理由は、
シャルアさんの言ったことが正しいんだと思います」そう言って頭を振ると、苦笑がちに続けた
「……思いたい、かな?」。
もし仮に、ヴィンセントの言った“信頼”の解釈が正しいとすれば、ティファの主張はお節介以外
のなにものでもない。彼女自身もそれは承知のうえだった。
「どうしても私には、インスパイア能力の事や局長さんの事情を理解できそうにありません。けど、
今はこうして招かれて舞台に上がった役者だと言うのなら、ラストは最高の笑顔で迎えたいって、
そう思うんです」
そう言って、ヴィンセントとシャルアに微笑を向ける。
「それに。このキャストでシナリオ通りに事が運ぶと思います?」
その問いに、ヴィンセントはふっと小さく笑んでから答えた「……そうだな」。
「もしもリーブさんが役者の心情を理解しない脚本家だって言うのなら、私達も脚本家の意図を
理解しない役者になって、シナリオを書き換えれば良いんです!」
もちろん出演料はきっちり頂きますよ? いたずらっぽく笑うティファはすっかりいつもの自分を
取り戻していた。ふたりにつられてシャルアも笑顔を浮かべた。
ティファの携帯が鳴ったのは、その直後だった。
『や〜っと繋がった!』受話口からは相変わらず賑やかな、けれど焦りを含んだユフィの声が
聞こえて来た。ヴィンセントとシャルアは、ティファの話しぶりから電話の相手がユフィだという
事を察した。
しかし、ティファの言葉で穏やかだった空気は一瞬にして緊張に包まれる「……空爆、ですって!?」。
こちらの驚きをよそに、電話の向こうのユフィはさらに捲し立てる。
『シドは飛空艇に戻って、万が一に備えて上空待機してる。でも大丈夫、そうならないように
アタシ達がいるから安心して』
一方的にそれだけ言うと、ティファにこちらの状況を尋ねている様だった。それから質問の隙を
与えずに通話は途切れ、電話を片手に半ば呆然と立ち尽くすティファは、うわごとのように繰り返す。
「……空爆って」
「我々がし損じたときの為の備え、と言う事だろうな」
「どうあっても考えは曲げないつもりらしい」ああ見えて相当の頑固者だからなとシャルアが苦笑する。
「飛空艇師団の事はシドに任せよう」そんな無茶をシドが認めるはずがないと言い当て、ヴィンセントは
冷静に続けた「いずれにせよ、この件に臨むリーブが本気だと言うことは分かった筈だ」。
あわよくばこれで二人が引き返してくれればと、僅かばかりの期待を込めて言ったのだが、
これは当てが外れた。
「もう容赦しないわよ!」
引き返すどころか、ティファなど俄然やる気を増している様に見えるのは気のせいだろうか。
「説教してやるんだから!」
そう言って歩き出すティファの背中を見つめながら、呆れたように溜息を吐いたシャルアが言う。
「局長に負けず、お前達は頑固だな」
ふっと小さく笑みを作り、視線だけをシャルアに向けたヴィンセントが言う「お前も含めた皆が、
他人のために頑固になるお人好し、と言うわけだ」。
そう言ったヴィンセント自身が改めて考える。
――他人のために頑固になれるお人好し――そんな仲間達に寄せる信頼の形とは、確かに
期待と呼べるのかも知れないと。
----------
・一応スレタイに則しt(ry テーマに対して直球だとは思うけど、直球過ぎてよく分からなくなった話。
・インスパイア能力(「命を吹き込む」)の解釈って、性質上いろいろアレなんですが、まあ作者がアレなんで。
・ティファさんこんな役回りでごめんなさい、悪いのは表現力のない作者です。
乙!
乙乙!!
GJ!
最後のヴィンセントのセリフにぐっときた。7の面子のそういう所が好きなので、そういう所を書いてくれるうp主に感謝だ。
※DFF012の女性陣が温泉に入ってガールズトークを繰り広げるというお話。
※ガールズトークなので、セリフが多いです。あと、入浴シーンがあります。
※FFXは未プレイのため、ユウナの言い回しがおかしいです。ごめんなさい。
※内容はトレーラーを見た投稿人の勝手な妄想です。
完全なるフライング小話です。ゲーム本作の内容とは異なります。
決して陽のさす事のない月の渓谷に突然巨大な火柱が上がり、噴煙はあっという間に月を覆ってしまった。
敵とは違う自然の脅威にコスモスに召還された戦士達は息を詰めてその様を見守っていた。
噴火がおさまった所で、ヴァンとスコールが偵察に向かった。
「温泉?」
戻って来た二人の報告を聞いて、ウォーリア オブ ライトは首を傾げた。
「なんだ、知らないのか?」
言いにくい相手に言いにくい事をずけずけと言ってのけるヴァンに、スコールが眉を顰める。
「地下からお湯が沸き出すんです。」
召還士の少女、ユウナがうれしそうに口を挟んだ。
「泉のようにか?」
「はい。沸き出したお湯には薬湯の効果もあって、私達の世界ではその湯に浸かって、病気を治したり疲れを癒したりするんです。」
「疲れを癒す」というユウナの言葉に、では早速入りに行こう!とジタンとバッツが盛り上がり、ジェクトとラグナがおもしろがって
それを諌めようとしたウォーリア オブ ライトだが、セシルの「明日からの戦いに備えるためにも、たまにはいいんじゃないかな?」という一言で、漸く首をたてに振ったのだった。
**********************
温泉の湧く岩場で、ユウナはうれしそうに手の先を湯に浸す。
湯の中からは小さな気泡がぷくぷくと沸き上がり、炭酸が含まれた温泉のようだ。
「丁度良い湯加減ですよ。」
レディファースト、という事で男性陣は見張りで場を外している。
「ユウナの世界では外でお風呂に入る習慣があるのね。」
横からティファが覗き込む。
「だが、水着がない。」
憮然とライトニングが言い放つ。
「ライトニングさん。水着なんか着ませんよ。」
ユウナ以外の女性陣が凍り付いた。
「そもそも水着、持って来てないでしょ?」
「じゃあ……裸で?」
驚くティナに微笑みかけると、ユウナは刈安色の帯をするすると解き始めた。
「で…っ、でも!誰が見ているか…」
「皆さんが見張っててくれてるじゃないですか。それに、この世界には私達しか居ないんでしょう?」
袴がストン、と地面に落ちた。
ユウナは着ていた物を脱いだ順番に丁寧に畳み、最後に靴を脱ぐと、爪先からゆっくりと湯には入る。
腰を屈め、肩まで浸かった所で、ほう…と大きく息を吐いた。そして、呆然としている三人を見て首を傾げる。
「皆さん、入られないんですか?とっても良いお湯ですよ。」
ユウナはリラックスして、う〜ん、と腕を伸ばす。
本当に気持ち良さそうだ。
いつ敵が現れるか分からず、元の世界へ帰る術も記憶すらあやふやな状態で戦いに明け暮れる毎日。
そんな中で目の前の温泉は魅力的過ぎた。
「…よし!」
ティファは決心すると、思い切ってタンクトップを脱ぎ捨てた。
「入るのか?」
ライトニングが呆れ返る。
「いつ敵が来るか分からないのに。」
「そこは男性陣を信用しましょ?」
「ライトニングさんもティナも入りましょう?本っ当に良い気持ち…」
恥ずかしがると却って気まずいと、ティファは潔く着ている物を脱ぎ捨てると、
ユウナに続いて湯に浸かる。
「わぁ…本当!」
温かい湯に浸かると、一瞬で身体の力が抜けた。
湯はまろやかな感触で淡いエメラルド色をしている。
小さな気泡が身体にまとわりついては弾ける。
「でしょ?」
ユウナはティファの長い髪をまとめてやりながら、
未だにモジモジとしているティナと呆気に取られているライトニングに声を掛ける。
「服を脱ぐのが恥ずかしいなら、あっちを向いてますから!是非!」
「女同士なら平気よ!」
すると、ティナがおずおずと温泉に歩み寄り、
「本当に…あっちを向いててもらえる?」
「ええ、いいわよ。」
ティファは鷹揚に応えると、ユウナと二人してティナに背を向けた。
ティナは何か言いたげにライトニングを見る。
「分かった!あっちを向いていれば良いのだろう!」
ライトニングが背を向けると、背後で衣擦れの音がする。
「まったく…何を考えているんだ。」
ブツブツ言っている間に衣擦れの音が止み、ティナが湯に入る音がした。
「……わぁ……」
ティナは両手に湯を掬って、落とした。
「いい匂い…」
「ティナ!もうそっちを向いても良い?」
「ええ!……本当に……気持ち良い……」
ライトニングも振り返ると、三人が頬をピンクにして楽しそうに湯に浸かっている。
(これでは…入らない私がなんだか…)
急に居心地の悪さを感じたが、だからと言って一緒に入るのもなんだか悔しい。
そんなライトニングの心中を察したのか、ティファがおずおずと声を掛ける。
「ねぇ、ライトニング…?」
ユウナもティナも、お願いする瞳でライトニングをじっと見つめる。
決してブレない光の戦士、ウォーリア オブ ライトとサシで渡り合い、
男どもを怒鳴りつけるライトニングだが、年下の女の子には弱い。
「分かった!入れば良いのだろう、入れば!」
半ば自棄になってそう言い捨てると妹分二人は歓声を上げ、
ティファもうれしそうに微笑んだ。
**********************
湯に浸かったライトニングは、肩どころか顎のラインすれすれまで身体を縮めている。
「鉄壁ね。」
ティファが呆れる。
「…どうせ私の身体なんか誰も見たがらないだろうが。」
「あら、ライトニングは素敵よ。」
ティファにストレートに褒められ、ライトニングは面食らう。
「私もそう思います。私の居た世界に足の速い、とても美しい動物が居るんです。
ライトニングさんが敵の攻撃をくぐり抜けて走っているのを見ていたら、
いつもその動物の事を思い出すんです。」
「そうよね、ライトニングの足はカッコいいな。すらっとして。」
ライトニングはやれやれと肩をすくめ、隣に座るティファの膝を軽く叩く。
「ティファに言われるとは、光栄な事だな。」
「そう!ティファさんの胸!」
「私もいつも羨ましくて…」
ティファは困ったように首を傾げ、
「う〜ん…これはこれで大変なんだけどな。」
「でも胸がそんなに大きくて、でもウエストはすごく細いし…」
「全くだ。」
「あら、胸ならライトニングだって。E(カップ)あるんでしょ?」
「…かもしれんが、どうも私の身体は鍛えてるせいか女性らしさに欠ける。
ユウナのようなまろやかな肩と背中とか、抱きしめたら折れそうな華奢なティナとか…
羨ましい限りだ。」
話をしているうちにしっかりとガードしていたライトニングも足を伸ばし、くつろいだ座り方になる。
「そうかな…」
「ライトニングさんに言われると、自信、持ってもいいのかなって思っちゃうね。」
ティナとユウナが顔を見合わせて笑う。
おや?とティファは興味深げにライトニングを眺めた。
(今のって、ティナとユウナをフォローしてあげてたんだよね…)
キツい物言いをするが、
(本当は優しいんだな…)
「それより、この世界に私達しか居ないとしても、
そこで見張っている奴らは大丈夫なのか?」
「鎧を着ている騎士さん達は、そんな事しないでしょ?」
裸での入浴にすっかり慣れたのか、ティファが大きく伸びをする。
「騎士の誇りにかけて?」
一番最初に入ったので、少しのぼせ気味なユウナが岩に腰掛けながら尋ねる。
「そう!特に眩しいあのお方なら、ね?」
ティファの冗談にティナとユウナがわぁ、と声を立てて笑い、
ライトニングも笑いを堪えているような表情をする。
「怪しいのは…」
「バッツ?ジタン?」
「でも、ジタンは女の子を大事にするから、嫌がる事しないんじゃないかな。」
「バッツはつかみ所がないから分からんな…」
「以外とスコールとか!」
「かもな。まだ17らしいし。」
「お年頃ね。」
「でも、そんな風には見えないな。クールで真面目だし、興味なさそうだよね。」
「そういう奴程ムッツリだったりするからな。」
「ジェクトさんとラグナさんは…大人だからない…かな?」
「あと、セシルな。ああ見えてどうやら妻帯者らしい。」
「ええええ?いつ聞いたの?」
三人は色めき立って、ライトニングに詰め寄る。
その釣られようと三人の盛り上がりにライトニングは驚きつつ、
「本人に聞いたわけじゃない。指輪をしているのを偶然見ただけだ。」
「そっかぁ。ライトニングさん、いつの間にセシルさんと
そんなお話をしたのかと思っちゃいました。」
(…驚いたのはそこなのか。)
「きっと優しい旦那様なんだろうね。」
「いいなぁ、セシルさんの奥様。」
「カインは?」
「プライドの高い男だからな。」
それはないだろう、と行動を一緒にしていたライトニングが太鼓判を押す。
「たまねぎ君は?」
「あの子は小さくても騎士だよ。」
そこはティナがすかさずフォローする。
本当に男性陣が覗きに来るなんて、誰も思ってはいない。
ただ、コスモスの戦士と言えども、やはり女性だ。
こんな他愛もない話が楽しくて、きゃっきゃとお喋りに花が咲く。
「ねえ?誰か気になる人とか、居ますか?」
こういう場ならお約束でしょう、とユウナが口火を切る。
「私は…」
言いかけてティファはすぐに黙ってしまう。
「カオスの、あの人が気になるんだね…」
「うん…前に会った事があるような気がして…彼の事を考えると、
急き立てられるみたいな…記憶はないのに…不思議ね。」
「不思議じゃないよ。私…大事な人の事を覚えていたよ。
だからあの人はきっとティファの大切な人だと思う。
それは記憶をなくしても忘れない気持ちなんじゃないかな。」
「だが、ティファには奴みたいなタイプはどうかと思うな。」
「どうして?」
不思議そうにユウナが尋ねる。
悪い奴ではない、きっと光に惹かれる者だろうが…とライトニングは前置きをして、
「何度か手合わせしたが…いつも何か言いたげだ。
言いたい事があるならはっきり言え!思う。」
「はっきり言うなぁ…」
ティファが苦笑いをする。
「じゃあ、ライトニングさんは誰がタイプなの?」
「わ…私は…別に…っ…」
唐突なユウナの質問にライトニングはまごついた。
温泉でリラックスし過ぎて、普段はまともに取り合わない様な他愛もない会話が思いがけず楽しく、
興が乗って話をしていたが、まさか自分にその手の話題を振られるとは思ってもいなかったからだ。
また軍属のため年頃の同性との付き合いも少なく、どう流して良いのか分からず口ごもる。
「あ〜怪しいな?意外と、眩しいあのお方だったりしてね?」
「喧嘩する程仲が良いって言いますしね。」
ティファとユウナがからかう。
「ち…っ違う!少なくとも、アイツはっないっ!」
(…そんなに思いっきり言わなくても…)
「少なくとも…って事は、他に誰か居るのね?」
同じ年の気安さか、ティファは年下二人が聞きにくい事をずばりと聞いてみる。
「………フリオニール…かな。」
いつもなら決してに口を滑らしたりしないのだが、女同士の気安さからかライトニングばぽろり、
と本音を漏らしてしまう。
たちまち、ティナとユウナが歓声を上げる。
「そういう意味ではない!私がいた世界は文明は進んだが、人が人を信じられなかったり、
心が荒んでいる者がたくさんいた。だけどあいつは…なんと言うか、人間の…原種とでも言うか…
純粋培養とでも言うか…」
「原種…」
あまりもの言い方にティナが目を丸くする。
しかし、ひどい言い方はライトニング独特の照れ隠しと、
慣れない会話に動揺しているからだと女性陣はとっくに理解している。
「一応褒めているのね。でも、もう少し素直になっても良いんじゃない?」
「確かに…言い過ぎた。」
ティファが嗜めると、ライトニングは素直に認め、顔を赤くして膝を抱えてしまう。
「良い人ですよね、フリオニールさん。」
「そうね……ね、ティナはどうなの?」
あまり追い詰めては気の毒、とティファはティナに話を振ってみる。
「私…まだ、そいうい気持ちが良く分からなくて…」
「ヴァンはどうなの?ティナを私達の所に連れて来てくれたでしょ?」
と、ティファ。横ですっかり姉性(?)愛に目覚めてしまったライトニングが
「アイツは単純だから繊細なティナには…」などとブツブツ言っている。
「ずっと一緒だったんだよね?」
「…私の事を守るって言ってくれて、頑張ってくれたのを見ていたら胸が温かくなったけど…
でも…まだよく分からないの。それが好きとか、愛なのか…」
「それは分かりかけているんだよ。焦らなくて良いよ。」
寂しそうに目を伏せてしまったティナに、ユウナが優しく声を掛ける。
「心配しなくても良い。」
不意にライトニングが凛と言い放つ。
「ティナは分からないんじゃない。今は忘れているだけだ。」
三人は驚いてライトニングを見上げる。
「みんな記憶を失っているんだ。でも、元の世界に戻れば思い出せる。ティナは…」
ライトニングはどう言葉を続けるか少し考え、
「私達よりも、少し多めに忘れているだけだ。」
「ライトニングさん…」
ティナはラベンダー色の瞳をすぅっと細め、笑顔を見せた。
「私…うれしい…ありがとう。」
「ライトニングにしては、かわいらしい言い方ね。」
「私だって、一応女だからな。」
ツンと横を向いてしまったライトニングが微笑ましくて、三人は顔を見合わせて笑う。
「お風呂…って、いいですよね。」
ふと呟いたティナの言葉に全員が頷いた。
裸の付き合いという言葉があるが、お互いの事が少しだけだが分かった気がして、
距離が縮まったような気がするのだ。
(私達…仲間だものね…)
神々に選ばれた戦士であり、人間だ。単なるゲームの駒ではない。
この仲間となら最後まで戦えるとティファは思った。
「そろそろ上がりましょうか?」
「男性陣が首を長くして待ってますよね。」
「鼻の下じゃないのか?」
「もう…ライトニングさんたら…」
女性陣は湯から上がると身支度を整えた。
ユウナが起用に帯を結ぶのに残りの三人が感嘆の声を上げたり、ティナの髪を結うのを手伝ったり。
ライトニングの襟足から伸びる巻き髪は「デジタルパーマ」という技術だそうで、
「こうやって指で巻いてやるだけできれいな巻きが出来るんだ。」
というライトニングの説明に驚いたり。
その楽しそうな声が遠くに聞こえてきて、なんだかあれこれ想像してしまっていた男性陣は
何故かお互いの目を合わせないようにして、すっかり無口になってしまったのだった。
おわり。
=========================================================
※温泉に入っていたらすごくスタイルの良いお嬢さんが入って来てほぉー!と眺めていたら
「そう言えばX-2って温泉入浴シーンがあるんだよね」で思いつきました。
※Xは「アジアっぽい世界観」とどこかで読んだので、ユウナは裸でお風呂に入ると主張させましたが、
間違っていたらごめんなさい。
※ユウナの喋り方は本当にごめんなさい。動画見て勉強しようかと思ったのですが、
今すごく10をプレイしたいので、ネタバレは避けたかったんです。
※「(キャラクター名)はそんなこと(覗きとか)しない!」とかそういう話ならパスだ、
の方向でどうぞお願いします。投稿人はFFキャラクター全員好き過ぎて生きているのが辛いです。
悪意よりも愛で書きましたが、もし不快に感じられたらごめんなさい。
GJ
ガールズトークは良いものだ
乙
乙
ほ
45 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/02/05(土) 14:50:23 ID:HvVE2BwB0
ぼ
惜しむらくはティファとライトニングは同い年じゃないところー
ティファ20歳
ライトニング21歳
学年が同じかもよ。
セラの進学が決まった時点で21だから
下手すると2学年上かもねー
ライトニングは作中で21歳になったんじゃなかったか?
誕生日パーティやってたような
回想だけど本編の数日前くらいの出来事じゃないか?
だからティファより2学年上ってことは無いんじゃね
ライトさん21歳(ファイナルファンタジー用語辞典 Wikiのキャラクターの項目より)
ティファは無印の時点で20歳(ウィキペデイアのファイナルファンタジーVIIの登場人物より)
のようです。
投稿人の調査不足でした。ごめんなさい。
年が近いということで気安い二人という感じで読んでいただけるとうれしいです。
乙
ほ
年齢以外にも言えますが、年の考え方(数えや満)って苦手なので、この辺の事を考える時は
相当気を遣う(そして間違うw) それにしてもみんな良く読んでるし、作品を遊んでる事が
伝わって来ますね。書き手にとってはイイ緊張感かも。
>>35-40 トランス時には所構わず脱衣するギャップにティナの魅力をって……へ、変態じゃないぞ。
で、個人的には↓こうなる。
ジタン「なあなあ、俺らがトランスする時もティナ見習おうぜ!」
クジャ「君の裸を見て誰かが喜ぶとでも?まぁ僕なら…」
ジタン「それもそうだな!」 ←聞いてない
ビビ=まっくろくろすけ。いやしかし鎧を脱いだベアトrうわなにをs
(書き込みはここで途絶えている)
ところで関係ない話(投稿時に関係して来そう)だけど、この「冒険の書」規制はなんなんだ?w
テスト段階なので色々変更中みたいですね
ほ
ぼ
携帯ですまん。
最近ここに来るようになったんだけど、ラストダンジョンのまとめページってどこにある?
過去ログの中を探すしかない?
ま
前話:
>>27-30 ----------
クラウドとの合流地点に向けて飛空艇は徐々に高度を下げ、いよいよ着陸態勢に入ろうかと
言うところに来て、通信担当のクルーが異変を知らせる。
クルーの報告から僅かに遅れでロケット村からも同じ異変を告げる通信が入ってきた。「まる
で通信妨害を受けているみたい」と言ったシエラの声も、ノイズ混じりだった。呼びかけに応じて
シドが答えようとするが、その頃には通信機器が使い物にならなくなっていた。
通信担当によれば、異変はこの1分にも満たない時間で急激に起きており、さらに全帯域の
通信周波数で同じ現象が観測されていると言うのである。
「あり得ない……」報告を終え、半ば呆然として呟く通信担当のクルーの背後から、にやけ顔の
レーダー要員が助言する。彼は今し方、レーダーに映るモンスターの大群を発見したばかり
だった。
「お前、ちょっと落ち着いてまばたきしてみろ?」
「こんな時にふざけないで下さいよ」
呆れと焦燥の入り交じった声で通信担当が応じると、レーダー要員は真顔になってこう続けた。
「『あり得ない』と思うんなら自分の目を疑え。次に計器の故障を疑え。そのどちらでもなければ、
そいつは事実だ。迷ってる暇は無い。お前が迷った分だけ、この飛空艇は耳を塞がれ口を閉ざす
事になっちまう」
直前までとは打って変わった真剣な口ぶりに、思わず通信担当が振り返る。すると、待って
いましたと言わんばかりにレーダー要員は満面の笑みを浮かべた。「そ〜んな情けない顔
すんな。だからホレ、休んでる暇も無いっての」言いながら通信担当の背中を叩く。
「途中まではもの凄く説得力があったのに……」
はあ、と盛大に溜息を吐いて肩を落とし、通信担当のクルーが項垂れる。しかし当のレーダー
要員は意に介す様子はなかった。
「どうよ、俺の笑顔を見て肩の力抜けたろ?」悪気も屈託もない笑顔を絶やさなかった「そんじゃ、
しっかり頑張ってくれよ」。
さり気なく先輩風を吹かせてから背中を向けると、レーダー要員は小走りに自分の持ち場に
戻っていった。
「……って言うわりに、自分だって持ち場を離れてるじゃないですか!!」
抗議めいたつっこみを入れようとして、ふと考える。
他機とのコミュニケーションを担う通信を飛空艇の耳と口とするなら、レーダーは“目”だ。
目は周囲の状況を把握する為には必要不可欠であり、その機能を失えば帰還はおろか、飛行
の維持さえままならない。
飛空艇のどの機能を欠いても安全な航行はできない。そんな中でも重要な目を担う彼の
重圧は、自分以上であるはずだった。にもかかわらず笑顔を浮かべながら、他のクルーに配慮
する余裕があるのだから敵わない。
(ちょっと悔しいけど、俺がまだまだ未熟って事は認めなくちゃ)
そう考えると気が引き締まった。
依然として通信機から聞こえてくるノイズは止むことは無い。彼はもう一度、目の前の現実と
通信機器に向き合った。今もって原因は分からないものの、そうすることに迷いはなかった。
***
一方その頃、荒野のど真ん中に突如として現れた巨大な亀裂を前に立ち往生するトラックの
運転席では、すっかりくつろいだ姿勢でレノが空を眺めていた。フロントガラスの向こうでは、
降り始めた夜のとばりを背景に輝きを増す星々と、その合間を翼端灯の規則的な明滅が横切る。
車載ラジオは相変わらず耳障りなノイズ音だけを垂れ流していた。
任務の途上、待機を余儀なくされる場面は過去に何度も経験があった。だからこういった状況で
どうすべきなのかは分かっていた。ただ性格上、“先の見えない待機”というのはレノの好むもの
ではない。しかし退屈を持て余しているはず彼の表情は、期待に満ちていた。
その期待が現実となるまでには数分を要した。耳障りなノイズの合間に小さな異変を捉えたレノ
は、ボリュームを上げる。
車外で作業をしていたルードは、運転席から聞こえてくるノイズ音に反応して手を止めた。
彼らの耳に聞こえてきたのは、彼らが待ち望んだ異変を知らせる声だった。
エッジのセブンスヘブン2階。
ヴェルドは頭を抱える以外にすることを思いつけず、さらに眉間に深いしわを寄せていた。
マリンは全てを見届けた後、部屋を出て急いで階段を駆け下りた。
エッジ郊外にある変電所の職員詰め所では、ちょうどラジオの電源を入れたところだった。
ケリーはスピーカーから聞こえてくる声に耳を傾けながら、顔をにやつかせ。
フレッドは復旧作業と並行して、ポケットの携帯ラジオを通して自分達の行動の結果でもある
短い放送を聞いていた。
デンゼルは毛布にくるまりソファに身を横たえたまま、目覚める気配はない。
ロケット村に設営された管制室では、少し前から機器の不調を疑い作業に奔走していた。
シエラは予期せぬ出来事に戸惑いながらも、他のスタッフと共に作業の手を止め放送に
聞き入った。
上空を航行中の飛空艇師団では。
シドが苦虫を噛みつぶしたような表情で、かつて旅路を共にした仲間の声を聞き。
クルー達も各々に困惑しながらも、一言も聞き漏らすまいと艇内は静寂に包まれた。
とある建物にいたタークス。
イリーナはモニタリングを続けながら、シェルク達の協力で実現した放送を聞く。
ツォンは携帯電話を片手に、複雑な表情で聞こえてくる言葉の意図を考えていた。
ルーファウスも別室でそれを聞いていたはずだが、この時どんな反応をしたのかを知る者は
いない。
1分にも満たない僅かな時間ではあったが、こうして各地ではまったく別々の境遇にある者達
が同じ放送を耳、あるいは目にすることになった。
経緯はどうあれ、視聴者の多くは事情を知らない者ばかりだった。何の前触れもなく突然
始まった放送を聞かされた人々には少なからぬ混乱をもたらし、それは信じがたいスピードで
世界中に広がっていった。
その中心にいたのは、様々な制約下におかれたケット・シーだった。彼は1分という限られた
時間の中ではとうてい伝えきれない沢山のメッセージを伝えなければならず、突飛な内容は
苦肉の策だった。
ケット・シーの語った内容はこうだ。
――実はボクが本体で、今のリーブは本物のリーブではない。
だから、囚われの身のリーブを助けて欲しい。
それは事情を知らない者からすれば、にわかには受け入れがたい話であり。
事情を知る者からすると、質の悪い冗談としか言えなかった。
***
ナナキ達の目の前にWROの輸送用トレーラーの一団が現れたのは、ケット・シーの放送が
終わって程無くしての事だった。受信機器を持たない彼らがその放送を知るのは、もう少し後に
なってからだった。
「もしかして、オイラ達を迎えに?」
徐々に歩幅を狭めながらナナキが言うと、背中のダナは「ちょっと不自然ね」と首を傾げる。
トレーラーから振り落とされた自分の迎えにしては規模が大きすぎる。
「さっきの騒ぎを知ったみんなが、来てくれたんじゃないのかな?」
ナナキが口にした予想は無きにしも非ず。とは言え、既に捜索にはナナキが出ているのだから、
わざわざ出迎える必要もないはずだとダナは訝しむ。
「ダナって疑り深いんだね?」ナナキが振り返って茶化すような口調で言った。
「思慮深い、に訂正してちょうだい」
談笑するふたりに向かって、スピードを落としながら尚も接近してくるトレーラーのヘッドライトは、
やがてダナの視界を焼き尽くす。眩しさに耐えきれず手をかざしたところで、ようやくトレーラーが
停車した。
トレーラーの正面まで来るとナナキも足を止め、ダナは背中から降りた。これとほぼ同時に
車列先頭の助手席の扉が開き、そこから一人の女性隊員が降りてきた。自身の背丈ほども
ある高さの助手席から地に足を付けるまでの身のこなしの中に、日々の鍛錬を窺い知ることが
できた。恐らくこの女性も少なからず戦場を経験しているのだろうと、短い間にナナキは想像した。
降車した女性隊員は、ダナも良く知る人物だった。
「副長……?」
3年前のオメガ戦役当時、彼女はディープグラウンド勢との熾烈な戦いの中、しかも最前線に
立った経歴の持ち主だった。あれからずっと副長と呼ばれているが、その呼称が持つ意味合い
は当時とは少し異なっている。
特に笑顔を浮かべるでもなく、真っ直ぐダナと向き合った女性はこう切り出した。
「私があなたの前に立つ理由は、説明するまでもないわね?」
「…………」
「ダナ?」対峙する両者の間に緊張が走った事を肌で感じ、ナナキは顔を上げる。無言で立ち
尽くすダナは、ナナキに促され視線を向けたものの、彼女の口から何かが語られることは
なかった。
しばしの沈黙を経て、最初に口を開いたのは副長と呼ばれた女性だった。
「逃げる気は無いみたいね」
「最初から逃げるつもりなら、わざわざ戻ったりはしません」
向き合ったふたりは一歩も退かず、そればかりか互いに相手を牽制するような言葉をぶつける。
彼女たちの事情を知らなかったナナキにも、両者の間には敵意にも似た意識が存在している事
だけは分かった。こうなったら静かに成り行きを見守るしかできないと覚悟を決めて、ナナキは
その場に腰を下ろした。
しかしナナキの予想に反して、膠着状態が続く事はなかった。
「あなたらしい物言いね」そう言うと、女性は柔らかな笑みを浮かべてこう続けた「話は後で
ゆっくり聞かせてもらうわ。だから今は、力を貸して」
「副長?」
思いがけない要請に、状況が呑み込めないダナは問い返す。
「仮にこの混乱があなたの狙い通りだったとしても、この先にあなたが期待するものは手に
入らない」そう言いながら、副長と呼ばれた女性は懐から携帯電話を取り出した。
型だけを見ればありきたりな量産品とはいえ、ぶら下がっていた質素な装飾品には見覚えが
あった。これこそ先程ダナがトレーラーから振り落とされた時に一緒に車外へ投げ出された
自身の携帯電話だった。
先程の発言から想像するに、副長は既にダナの企みを把握している様だ。携帯電話は確たる
証拠、それを手にした副長が目の前に立ちはだかるという状況が何を示しているかは、考える
までもない。
「『ミイラ取りがミイラになる』あなたに限ってそれは無いと思っていたけど……」
「私自身、最初からミイラだったのかも知れませんね」冗談ともつかない口調でダナが言うと、
副長はうっすらと笑みを浮かべて切り返す。
「それは無いわね。ミイラだろうと何だろうと、そうなる過程が必ずある」
彼女の笑みも言葉も、ダナに対する信用の現れに他ならない。
「いつから私を?」
単刀直入にダナが尋ねると、副長の顔から笑みが消えた。
「……正直なところ、今でもあなたを疑っているとは言い難いの」そこまで言うと、いよいよ困った
という風に眉を顰めて一度ダナから視線を外した「私達が最初に監査を担当したのは4年前。
ちょうど、WRO内部監査制度導入の年――」
各地の復興事業が進む中で拡大を続ける星痕症候群。それに伴う市民の混乱。人々の往来や
物資輸送路確保のための警戒任務。その後のオメガ戦役の混乱という情勢もあって、WROが
担う役割は確実に増えていった。
そんな中、徐々に肥大化する隊の秩序維持を目的として、旧神羅出身の隊員を中心に監査部
の新設が提案された。ダナもその中の一人だった。
局長の直轄にあたる監査部は、WROの各隊から選出された人員で構成され、定められた
任期で隊内部の監査任務に携わる。局長に次ぐ執行権を持っているのは副長で、彼女は現在
2回目となる副長の任に就いていた。
「内部監査制度とは言っても、それが文字通りの機能を発揮する事は殆ど無かった。せいぜい
隊員同士のちょっとした揉め事の仲裁役か、出来心の域を出ない悪巧みに灸を据える程度。
どれも予想の範疇だった。当初、どちらかと言えば私はこの制度そのものを快くは思っていなかった」
銃弾の雨にさらされながらも、己の命を賭して戦う最前線の隊員達。彼らの結束を疑う余地は
なく、後方支援の部隊や非戦闘員であれ、同じ隊に属す同胞だ。それを疑って掛かる事自体が、
他ならぬ背信行為なのではないかと言う思いが強かったのだと、副長は語った。
「隊の創設当時は世の中が混乱の極みにあった。その後も外部に重要な案件が多かったです
からね。副長のおっしゃるように、結束して事に当たらなければならなかった。逆に言えば誰もが
それに追われて、造反の余裕なんて無かったです。けれど、ある程度まで組織が安定してくれば
そうはいかない」
メテオの痛手から立ち直り、星痕症候群の脅威が消え、ディープグラウンドを退けた今が、
まさにその時期だとダナは続けた。
「あの時も同じ事を言っていたわね」
「神羅にいた人間なら、多かれ少なかれ経験というか……反省があったんだと思います」
そして、ダナはこう告げた。
「ひとたび制御を失った組織が暴走の果てに起こす悲劇を、誰よりも近くで目の当たりにしている
のは末端の社員です。たとえ銃を持って戦場に立っていなくとも、その人が立つ場所が現場で
あり戦場になるんです」
それこそが監査班設立の動機であり、ダナの行動原理だった。
副長はダナに視線を戻すと、ゆっくりとした口調で問う。
「それが、あなたが隊を裏切ろうとした動機?」
問われたダナは頷くことも首を振る事もせず、ただ目の前の副長を見つめているだけだった。
----------
・副長ねつ造し過ぎです(DCで出てくる女性隊員です)。
・ここでまさかの『ケット・シー本体説』を推してみる。
これまで語るスレでもこのネタを見かけなかったので、誰もそんな発想はしないのかなー…なんて。
(「ねーよw」って言われそうですねw)
・この規制(忍法帳?)は長文投下時にはちと厳しい(改行や文字数などで引っ掛かっても再投稿まで
時間制限)ですね。
・
>>60 携帯用に作ってないので、閲覧の際にご不便をお掛けするかも知れませんが。
www5f.biglobe.ne.jp/~AreaM/PiAftSt/LCFF7PiAftSt/LCFF7_dat.html
GJ!
GJ!
乙!
60です
>>61,67
ありがとう!
パソコンと奮闘して読んでくる!
作者GJ!!
ほ
ぼ
ま
消えてしまった・・・
どなたか前スレのログもってらしたらお願いします・・・
り
>>76 ありがと---- 。・゚・(ノ∀`)・゚・。
ほ
ぼ
ま
り
前話:
>>63-67 ----------
『主要地域の電力と信号の回復を確認しました。……すみません、時間切れです』
スピーカーから聞こえてくるシェルクの声音が変わっていた事にイリーナは気が付いた。それ
が疲労によるものなのか、気分的なものなのかは分からなかった。
それでも、モニタの前にいたイリーナは口を開かずにはいられなかった。
「あなたが謝る必要はどこにも無いわよ、むしろこっちがお礼を言わなきゃ」
決して慰めなどではなく、落ち込むことなど無いのだからと。
「だって私達だけじゃ、こんな大々的な呼びかけなんてできなかったもの」こういう派手なやり口
は、いかにも先輩が好みそうだとイリーナは口元をほころばせた。
残念ながら彼は今この場にはいなかった。建造中の新本部施設監視の任を帯びてルードと
ふたりで荒野へ向かったが、きっと今ごろは退屈になって運転席で大あくびでもしているのだろう
と、その様子が想像できた。
一方のシェルクは、イリーナの心中を知る由もなくただ淡々と事実を述べる。
『私のした事はサポートに過ぎません』やっていることはディープグラウンドにいた頃と変わら
ない、単体では何の役にも立たない能力だと言うのは、嫌と言うほど分かっている。今回だって
そうだった『そもそも各地の協力者がいなければ、これも実現できませんでした』。
「……協力者?」
その言葉にイリーナは首を傾げた。シェルクはケット・シーを経由して得た情報――エッジの
ヴェルドをはじめ、元タークスの面々が各地の通信基地局への送電を一時的に停止させていた
事――を伝えた。つまりシェルクは停電から復旧までの間を利用して、SNDによる通信網の
乗っ取りを実行した。彼らが外から送電を停めてくれなければ、各施設のセキュリティを破るのに
かなりの時間と労を費やすことになったはずだ。
それを聞いてイリーナは最初こそ驚きはしたものの、その表情はすぐに苦笑に変わった。出か
かった言葉は辛うじて呑み込めたが、堪えきれずに溜息が零れた。
(姉さん、私には何も言ってくれなかったのね)
イリーナと入れ違う様にしてタークスを抜けたメンバーの中には、彼女の姉もいた。メテオの
迫るミッドガル八番街スラム住民の避難活動――イリーナにとって、それが彼らと活動を共に
した最初で最後の“任務”だった。たった一度の任務でも、強い信頼と絆で結ばれたタークスの
連帯を実感することができた。それは一方で、自分達が歩んでいる道が既に別のものであると
いう現実の裏返しでもあったのだ。
これまでも口に出すことはしなかったし、この先も出すべきではないと思っていた。けれど
イリーナの胸中には疎外感とも孤独感ともつかない不安定な感情が横たわっていて、それは
時折ほんの少しだけ顔を覗かせる事がある。
不自然な沈黙を察知したシェルクが何事かと尋ねると、イリーナはやや芝居がかった口調で
こう返した。
「……諸先輩方はさすがだなぁ〜と、不肖イリーナ感心しておりました」
口調の裏にある動揺を察して、後ろからツォンが声を掛ける。
「我々には我々の、彼らには彼らの果たすべき任務があり、彼らはそれを完遂した。こちらも
感心ばかりしている暇はないぞ」
……そうですよね、主任? 声には出さず、ツォンは手にした携帯電話に視線を向けた。
***
エッジにいたヴェルドは眩暈よりも脳震盪に近い感覚から立ち直れず、未だに頭を抱えていた。
電話の向こうにいる元部下の心労や機転以上に、今や目先の問題が思考の大部分を占めている。
ようやく顔を上げると、絞り出すように声を出す。
「正気なのかケット・シー?」
『せやかて、ああでも言わな伝われへん。それに、まるっきりウソっちゅーワケでもないやろ?』
愛嬌たっぷりに向けられた問いを、ヴェルドは素っ気なく退ける。
「お前が“本体”と言われて、信じられると思うか?」
『ん〜。せやなぁ、ボクやといまいち貫禄が足らんしなぁ』
そう言って腕組みをしながら首を傾げるケット・シーの姿から、貫禄と言う要素を見出すのは
極めて困難である。
「貫禄どころか説得力の欠片もないぞ?」
『なんやオッサン、ごっつ厳しな〜!』
それでもめげずにケット・シーが愛嬌を振りまくものだから、ヴェルドは言葉も出ずに深い溜息
を吐いた。
「確かに空爆阻止が最優先なんだが、……これでは無用な混乱を招いているだけではないか?」
もっとも、リーブの声明を否定する為にはまず“ケット・シーを操作しているのはリーブ”という
周囲の認識を覆す必要があり、それに伴う多少の混乱はやむを得ないと覚悟もしていた筈だった。
しかし、まさか「本体はケット・シーの方だ」と主張するには無理がある。さらには――リーブは
誰に囚われているのか? そんなことができる者がいるのか? いたとしてその目的は何なのか?
――時間を稼ぐにしても、いたずらに人々の不安や憶測を煽るのが好ましいとは言えないし、
WROにとって醜聞にでもなれば今後の活動や組織運営にまで影響を及ぼしかねない。今が
異常事態なのは確かだが、混乱は最小限に留めるべきで、もう少し言い様があったのではない
だろうか。
ケット・シーの自主性に委ねた自分の選択を悔やみながら、ヴェルドは首を振り、いっそう深く
なった眉間のしわに手を当てて俯いた。今さら嘆いたところで始まらないのだと、分かってはいる
が頭を切り替えられずにいた。
そんなヴェルドの元に戻ってきたマリンが下の状況を伝える。
「外の街灯もついたし、ちゃんと電気も復旧してるみたいです。それと、下の戸締まりも確認して
きました」
ここにいるマリン達以外の住民にしてみれば、なんの前触れもなく突然あたり一帯が停電した
のだから驚くのも無理はない。その直後にケット・シーの放送が流れたのだから、混乱した人々
が情報を求めてセブンスヘブンに殺到するのも予想はつく。
「外にいる大勢の人達を一度におもてなしするのは、ちょっと難しいですから……」
ちょっと困ったような表情で言ってから、マリンが微笑んだ。
自分などよりもよほど冷静な少女の対応ぶりを目の当たりにして我に返ると、ヴェルドは再び
顔を上げる。彼女は、ケット・シーの言葉を聞いた直後から事態に対応するべく行動を起こして
いた。侮っているつもりはなかったが、彼女の機転には相当に救われていた。
現役を退いてから久しい事も踏まえて、ヴェルドは自身の老いを感じずにはいられなかった。
(……とうとう頭にまで焼きが回ったか?)
いくら何でもこれでは元部下達に合わせる顔がないと、自嘲せずにはいられなかった。
「すまない。助かった」
ところが、話の先を続けるマリンの表情はなぜか沈んでいた「でも……」。
部屋の外に向けられたマリンの視線を追ったヴェルドが、階下にあった電話の姿を捉えると、
鳴り出したコール音とマリンの言葉が重なった「こればっかりは……仕方がないですよね」。
殺到する人々を阻むには門戸を閉ざせばいい。しかし電話となるとそうも行かない。回線を
遮断することも考えたが、それは好ましくないとヴェルドは判断する。
「耳障りかも知れないが、しばらくは我慢するしかないな」
「もうちょっと可愛い音で鳴ってくれたら良かったんですが」
マリンが覚えているのはバレット、ティファ、クラウドの携帯電話番号だけで、こちらからアクセス
できる人物は限られているうえ、状況が状況だけに今は通話もままならない。逆に、向こうから
エッジへアクセスするためには、ここの電話回線しか無い。
彼らに繋がる最後の道を、自らの手で断つわけにはいかなかった。
***
エッジでの一連の遣り取りをケット・シー経由で垣間見たシェルクは、今し方思いついた提案を
口にする。
「端末を特定できるのであれば、“ここ”を経由して双方向の通信を確立してみては?」
『なんやて?』
先ほど全帯域に対して一方的な送信しか行わなかったのは、カバーする帯域が広すぎて他
からの応答を反映させる余裕と、それらの処理を賄うだけのエネルギーが無かったからだった。
しかし、送受信する端末を指定できれば必然的に通信帯域も限定される。
「要するに、ここを仮想の中継局にすれば良いという事です。転送の負荷を考えれば音声通信が
限度になりますが、対象の各端末とここを直通通信で結べば、ほぼリアルタイムでの入力に
対応できます。出力までのタイムラグを極力減らす為に、符号化したデータには手を加えず
受信側に復号処理を……」
シェルクの講釈が長くなりそうだったので、ケット・シーが慌てて口を挟む。
『わ、わわわわ分かった! とにかくここはボクらの出番、っちゅー事やね!』
「そうです。復号処理プログラムを導入する為にも、いちど各端末とここを直通通信を結ぶ必要が
ありますが……」
端末さえ特定できれば、いざとなれば力業でとシェルクは言う。
『……ほな、その辺の小難しい話はシェルクはんにお任せしますわ』ケット・シーはいつものよう
に戯けながら、シェルクに向けて手を伸ばすとこう続けた『指定する端末情報、ボクが殆ど記録
してますんで。さっきみたくボクのライブラリ覗いてくれたらエエですよ?』
「……あ、はい。ではその際、こちらからもフィールド作成の手順などをお渡ししておきます」
そうしてふたりは手を繋ぐ。
かつて旅路を共にした仲間達や、エッジにある端末や操作主であるリーブの端末情報は
ケット・シーが。一緒にいるタークスや姉シャルアの端末情報はシェルクが持っている。手を
繋いだ瞬間に、彼らの持つ記憶と記録は情報として瞬時に交換される。
『こんなして実感する日が来るとは思わんかったけど、これホンマに便利やなぁ〜』
原理さえ理解できれば、機能を持たせたフィールドの組み上げにそう時間は掛からない。
ものの数分でフィールドを組み上げると、シェルクから渡されたコードを組み込んでネットワーク上
に仮装中継局ができあがった。あとは、呼び出した端末にプログラムを送って直通通信を確立
すれば良い。コードの受取にはいったん各端末との通信が必須条件になるが、少なくとも現時点
で呼び出しに応じられる端末は、すべてを繋いで双方向の通話が可能になったと言うことだ。
***
持ち主を示すアルファベットと割り当てられた呼出番号、その通信状態を示すリストがイリーナ
の目の前のディスプレイに現れた。シェルクは経緯を説明し、念のためこちらのモニタリングも
依頼した。
一通りの話を聞き終えたイリーナは振り返ると、後ろに立つツォンにいったん携帯での通話を
終了するよう伝えた。ツォンがそれに従い終話するとすぐさま着信があった。普段とは違い画面
には、発信元の番号ではなくコードが表示されている。その指示通りにキーを入力することで、
直通通信に必要なプログラムを受け取ることができる。導入作業終了後に改めて認証コードを
入力すると、直通通信で仮想中継局に繋がるという具合だ。
これ自体はシェルクが3年前にヴィンセントの端末に対して直接行った操作を遠隔で実施した
ものだったが、遠隔操作の場合は対象の端末が通信圏内にある状態で、しかも初回は持ち主
自身がプログラム導入の為に認証コードの入力をしなければならないと言う欠点があった。ちな
みにヴィンセントの認証コードは#VINだ。キー入力さえすれば、3年前にプログラムは
インストール済みなのですぐにでも起動できる。とは言っても、呼び出しても繋がらない現状では
無意味だったが。
***
イリーナが見ているのと同じリストはエッジの端末にも表示されていた。ケット・シーからリスト
が示す意味と手順を聞いたヴェルドもまた、ツォンと同じく導入作業を行い、特に苦もなく認証
コードを入力する。
するとケット・シーの声は、ヴェルドの携帯端末からも聞こえるようになった。
『ディスプレイの表示、変わってますやろ?』その言葉に、ヴェルドはケット・シーの横に置かれた
ディスプレイ表示に目をやった。リストに並んでいた灰色の文字列のうち、自分の名を示す
アルファベットから始まる一行が、水色に変わっている。
『これでここと繋がったっちゅー事ですわ。そっちもふつうに喋ったら、繋がってる端末同士で
会話できる様になってます』
目の前にいるケット・シー本体、それからケット・シーと繋がった端末のスピーカー。そして手に
持っている携帯端末から声が聞こえてくる。ここだけ無駄にサラウンド効果が得られたのと同時
に、通信で生じる時間差がほとんど無いことに気が付いた。
「リスト上の水色で示された人物と、こうして会話ができると言う事だな」
『その様です。……水色で示された端末の持ち主に限られますが、複数名が同時に会話できる
というのは便利ですね』スピーカーと、手にしていた携帯端末の受話口を通して聞こえてきたの
は元部下の声だ。なんだか不思議な感じがする。
『その声はヴェルド主任!? え、えっと……ご、ご無沙汰しています……』
後に続いたのはイリーナの声だった。なるほど、彼女の姉のものとよく似ている。ご無沙汰と
言われると、ヴェルドとしてはいささか返答に窮するところだが、聞こえてきた彼女の声からは
緊張がうかがえた。
「ああ。そちらも元気そうで何よりだ」
少しでも緊張を和らげようと、意識的に穏やかな口調で声をかけてみたが、残念ながら期待
したような効果は得られなかった。
----------
・直通通信はDCFF7の7章で出てくるアレです。アプリのDLみたいな要領だと言う勝手解釈w
・色々書いてますが、端的に言うと「電話会議したい」って話(夢の無い書き方ですがw使った事は
ありません)
・どことなく中途半端になってしまいましたイリーナの心中描写(Part7 154-158=まとめ5-2から
地味に続いてます)。技量足らずですが妹組のこの二人が組んでも面白そうだなーと思い。
・エネルギー問題と常に隣り合わせの脆弱な基盤に成り立つ利便性。
その上に、互いが依存し合い片足立ちで立っているような不安定な社会構造。
FF7の世界観を要約するとそんな感じだと、個人的にはとらえています。
・FF7世界に生きる人々が好きなのは、それが幻想への憧れではなくて
現実にもお人好しの方が多い、という親近感からなんだと信じたい。
GJ!
乙!
乙!
乙です!
ほ
ぼ
ま
り
も
ん
ディシディアの012組に萌えつつ保守
前話:
>>83-87 ----------
あまりにも唐突で、何が起きたのか分かりませんでした。
――「それでは……、さん。……お願いします」
はじまりは不鮮明な男性の声でした。その声には聞き覚えがありません。
どうやらこれは視聴覚記憶として保管されているもののようですが、その所有者は判然としま
せん。少なくとも自分の物でない事だけは分かります。
そこで、6年前に埋め込まれたルクレツィアの断片ファイルが再び干渉したのだと疑いました。
けれど彼女の残した物とは共通項がありません。
――「……その姿は……亡き母の、あるいは亡き兄のものでした。
それぞれに、過去の幻影を見せるのです」
応じるようにして聞こえてきたのは、落ち着いた女性の声でした。
いまひとつ話が噛み合っていない様に感じられるのは、記憶の一部が欠損しているせいでしょう。
この記憶の持ち主にとっては「朧気な記憶」になってしまうほど風化したものと言えます。
――「いったい何者なのですか? まるで見当が付かないのですが」
そこでようやく音声以外の情報を得ることができました。
困惑したように問う白衣姿の男性に背を向け、女性の長い髪が揺れていました。顔に手を当て、
声を詰まらせながらも彼女はこう答えます。
――「その者は親しげな顔でセトラに近づき、欺き、そして……
ウィルスを、ウィルスを与えたのです!」
彼女の言う『セトラ』とは何なのか、私にはそれすらも見当が付きません。
そもそもこの記憶自体に接続した覚えはなく、何の脈絡も前触れも無くいきなり再生されてい
るものでした。
――「ウィルスに侵されたセトラ達は心を失い、
やがてモンスターと化しました」
そう語る女性の声は震えていました。
怖れか悲しみか、あるいは怒りなのか。彼女の胸に去来するものの正体までは分かりません。
ただ、彼女に怯えている様子はありません。むしろ質問者に対して協力的に答えている様でした。
太古の昔、この星に住む人々に感染したウィルスは猛威をふるい、感染者はモンスターへと
姿を変え破壊を繰り返した。また別の感染者は同族を欺くために擬態を施し、勢力を拡大して
いった――記録の要約として、記憶者が理解した概要を閲覧しているのが今の私だという関係性
も、把握することができました。
記憶には所々に不鮮明――欠損している部分があるものの、どうやら口述記録の様でした。
形式から見て恐らくオリジナルデータがどこかに存在する筈ですが、ここには無い様です。
(……彼らが見たという亡き者の幻影……。もしも、その記憶が幻だとしたら?)
彼女の言うウィルスは「幻影を見せる」のではなく、「記憶そのものを書き換える」ものだとした
ら?
それは欠損部分を補うよりも、興味を惹いたものでした。
人もシステムも、層構造を持っているという点では同じだ。顔の表情や声、発する言葉――
直接的に他者との関わりを司る表層。その下にあるのが本音や心象などの心層。更にその奥に
は、記憶や本能によって形成された深奥層がある。対象がネットワークにさえ繋がっていれば、
シェルクはその領域にも自身を投影し潜行することができる。しかし元は異なる存在なのだから、
この時にかかる負荷は両者とも大きくなる。肉体に備わる免疫機能と同じように、精神にも防衛
機制があるせいだ。
今回の場合だと、ここへ来る前にシェルクが通ってきた『集落』と『迷路』がそれに当たる。
こうして他者との境界を超えたのは今回が初めてではなかった。むしろ6年前まで過ごして
いたディープグラウンドでは日常ですらあった。
ディープグラウンド時代にシェルクが行ってきたのは、SNDを利用した他者の操作、具体的
には被験者の記憶の改ざん作業だった。
多少の個体差はあるものの、被験者の全員に共通していたのは第一次接触──つまりSNDで
最初に意識へ潜入──の際、自分とは異なる存在に対し拒絶反応を示す点だった。シェルクに
とっての負担はこの時が一番大きいが、一度でも侵入に成功してしまえば、その後は自身の
記憶を対象に上書き・改ざんすればいい。
こうすることで時には居もしない妹の夢を見せたり、ありもしない記憶を再現して、被験者の
感情を煽り立て自発的な行動を促す。
その為、SNDを使った対象の操作と言っても、間接的な方法で時間も掛かった。
しかも最終的には負荷に耐えきれず、対象の脳は機能障害を起こすに至る。こちらが意図する
行動を取っていられる期間は短く、掛ける時間とリスクの割には合わない。
こうなった対象はまるでウィルスに感染した肉体、あるいはプログラムのように隔離され、実験
データ回収後に打ち棄てられた。もっとも、この段階まで耐えられるのは本当にごく僅かで、多くは
その前段階――SNDでの初接続時の拒絶反応によって身体機能のどこかに異常を来し、廃棄
処分扱いになる。
遅かれ早かれ、どの被験者も行き着く場所は変わらなかった。
自ら望んで行った事ではないにせよ、彼らの末路が紛れもなく自身の所業だった事をシェルクは
理解している。けれど自分が生き残る為にはそうするより他になかったのだと言い聞かせ他人の
記憶を覗き、都合良く書き換え、挙げ句の果てには対象にとって致命的な行為と知りながらも感情
を煽った。
(私がSNDで潜った相手は、そうして全員が死にました)
それはまるで。
――「ウィルスに侵されたセトラ達は心を失い、
やがてモンスターと化しました」
(私が……やっていた、事……?)
ディープグラウンドへ連れてこられた当時、まだ幼かった私は考えもしなかった。
そもそも、なぜSNDという技術が研究されるようになったのか?
長年にわたって大規模な地下施設で秘密裏に行われていた研究と、繰り返されてきた実験。
そうまでして、神羅が欲しがった理由があったはず。
その答えが、この先にあるのだとしたら?
(私が、……やった……)
この中に埋もれている記憶情報の中に、その手掛かりがあるのだとしたら。
(……私、の)
どんな事をしてでも、それを手に入れたい。
どうしても知りたい。
(わたし……)
幼い子どもの持っている純粋な好奇心にも似た、ゆえに獰猛な狂気をはらんだ情動が、
シェルクの意識の中に広がっていく。
情動は衝動を呼び起こし、衝動は心を支配する。
それに抗う術は無かった。
***
「ところで……ケット・シー?」躊躇いがちなシェルクの声は、仮想空間にいるケット・シーだけに
向けられていた。
「どないしました? ボクの組んだフィールド、どっか穴でもあいてますか?」
ケット・シーはきょろきょろと首を振る。直通通信で繋がった端末どうしの中継地点となる“経由
地(フィールド)”とその“交信(ルート)”を制御するプログラムを配した、言ってみれば「箱」の中にいる
彼らの声は、そのままでは外部には聞こえない。
「いえ、あの。そうではなくて……」
歯切れの悪いシェルクの様子は気に掛かったが、そこには触れずにケット・シーはにこやかに
告げた。
「なんやシェルクはん水臭いですな〜、こうしてボクとライブラリを共有するほどの仲やないです
か! 遠慮せんと、なんでも言ったってください」
果たして「ライブラリを共有する仲」と言うのは、親密さの尺度として用いる場合にどの程度の
説得力があるのかは未知数だった。ただ、こうして接続できる相手はそう多くない。境遇という
意味で捉えるならケット・シーの言い分も的外れではないような気がして、シェルクはなんとなく
頷いた。
さんざん考えた挙げ句、ここは素直にケット・シーの厚意に甘えることにした。
「すみません。実は、あなたのライブラリの中に気になる項目があるんですが……」
一方で、こうして繋がれると言うことは本来であれば見ることのない対象の本音の部分まで
見えてしまうという事だった。性質上、過去の記憶や感情を互換可能なデータとして蓄積している
ケット・シーと、そこへ接続できる能力を持ったシェルク。何の因果か、シェルクはそこでSNDに
関連のありそうな記録を見つけたのだと告げた。
「ちなみにこの記録は、一体どこで?」
あの口述記録のオリジナルデータの所在が分かるかも知れないと、期待を込めてシェルクは
尋ねた。
「あれ? 何やろこれ。ボクのとは別モノっぽいですけど……」ケット・シーは身に覚えが無いと
言った「でもホラ、ボクって他にも何体かおったから」。もしかしたら3年前にいた別のケット・シー
のモノかも知れないと、そんなことを言った。
中を見ても構わないか? と尋ねられ、ケット・シーは快諾する。
持ち主の承諾を得てシェルクは目的のフォルダ――そこは人の視覚で直接認識することの
できない記憶という名の保管庫――を開いた。本来であれば記憶の持ち主以外は立ち入れない
場所に、彼女はこうして足を踏み入れた。
その中は一見すると無造作に、それでいて時系列を崩さず、しかも分類毎に整然と並べられた
記憶の数々があった。しかし先程の記憶情報はどこにも見当たらない。シェルクはひとまず
手近にあったファイルに触れると、それは自動的に再生を開始した。
その正体が抑圧された記憶ファイル――本来、それは再生されないよう厳重にしまわれている
筈のもの――であることに気付いたのは、シェルクがフォルダを開いた後の事だった。ケット・シーが
必死になって呼びかけるが、たとえ記憶の持ち主であっても、いったん再生をはじめた記憶ファイルは、
全て終えるまで止めることはできない。
----------
・冒頭の台詞はFF7Disc2アイシクルロッジで見られるイファルナの記録より。
・シェルクの体験は、DCオンライン版より。
・イファルナの記録からSND技術の開発に取り組んだと考えても不自然ではないかも?という
お話です。(FF7本編で22歳。3年後のDCで25歳=エアリスとDG生まれのロッソがほぼ同い年)
・そう考えると、ジェノバ(細胞自体の変異=擬態)とSND(認識機構の操作)で、やっていることは
真逆だけど、同じ結果を生む事になります。むしろ同じ結果を生むためにやろうとした事だったら、
恐ろしい実験ですよね。…こういう繋げ方でFF7後日談を作って欲しかったな〜と言うのは、
いちユーザーの希望としてw
GJ!
穂
test
ほ
ほほほ
ほほほほほほ
ほぼ
ほほほほほほほ
ま
ま?
ままままま
!ninja
り
も
ん
ば
ん
ぺ
125 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/05/23(月) 17:12:34.22 ID:KuKWEepz0
ぺ
ネタバレ妄想注意報です。
--------------------------------------------------------------------キリトリ------
それは温かい場所だった。世界は明るく、溢れんばかりの自然が城を囲む。
村人は勇者を尊崇し、預言者もまた勇者に祈りを捧げた。
騎士達がその神殿――時を超え、二千年前の神殿に訪れし際。
なんでかおんも出れなかった。光の戦士達は二頭身でちっちゃくて、なんで出られないのか、
スーパーモンクオブライトにも、赤魔オブライトにも、白魔オブライトにもよく分かんなかった。
騎士だけどウォーリア・オブ・ライトさんだけは、相変わらずぶれない顔で事情を察していた。
神殿の外は崩壊していたのだ。世界は重い雲に覆われ、冷たい雪と雨が瓦礫を削っていた。
ムチムチプリンプリンセスな女神様と、角おっ欠けて羽ボロボロのデカオくんが居る次元。
倒しても倒しても戦士は浄化されて復活、連戦でデスぺラード・カオスことデカオくんは満身創痍だ。
そんで宝箱からミミック的登場してたデカオくんも仲間に入れて、かつての仲間達はわいわいしてた。
集いし戦士の一人、ジタンが口を開いた。
「コスモスは美人だよな」
ウォーリア・オブ・ライトことWoLが、少しきょとんとして返した。
「アレクサンドリアの姫も美しいと聞いたが」
「うん。プリッシュやティファみたいな綺麗な髪だった」
人懐こい目でジタンに笑いかけられ、女性二人が頬を染める。
「そうなの? 嬉しい」
と、ティファが頷くと、プリッシュが元気な声で
「なんか照れるぞ!」
ってジタンをどついた。結果、ちょっとジタンが吹っ飛んだ。
「大丈夫かい? コスモスに回復して貰おうか?」
そしたらなんか、闖入者がガチャガチャ鎧鳴らしてやって来た。
「あれは大いなる意思の妻。女神はその写し身よ。ふははは! 貴婦人への不倫は騎士の伝統だ!」
「なっ。なんちゅー事言うんだガーランド!」
ジタンが尻尾を振り上げ全力で反論する。あとWoLがすげえ怖い顔してる。
「嫌ですねえ。NTRが伝統! エローい騎士様のナンパ相手はひ・と・づ・ま!」
「我が主を愚弄する気か」
茶々を入れるケフカが、ヤバげで険悪な空気を作る。そこでヴァンがひょいっと返した。
「未亡人に不倫とか、ある訳ないだろ」
アーシェ殿下は一応独身なので『バルフレアー!!』しようとそれは自由なはずだった。
ねぎ坊主、じゃなかった、オニオンナイトもガーランドに振り向いた。
「サラ姫は独身だよ?」
「王女のロマンスねえ……ロマンス?」
フラグクラッシャーことバッツも顎に手を当て、首を捻った。
「おいおい、ウチの大事なお姫様は愛娘だぞ」
と、陽気なラグナも反撃した。
「二人に、やましい点は何もないクポ」
シd、大いなr、じゃなくて。さっくりモーグリも答えた。そこまでは良かった。のだが。
ティナの脳裏に、かの超イケメンな王様、エドガーが浮かんだ。
スコールも内心、ぎにゃああ! なサイファーを回想した。
フリオニールは不意に『君のお父さんになっていいかな?』と口走るリチャードを思い出した。
クラウドもアルフリードを思い浮かべたが、相手は王様と悪竜王だったので黙った。
ティーダははっきりと「シーモアの事っスか?」と言った。
何よりもカインが「……フッ」としか言わなかった。
そして、言いだしっぺのガーランドがセーラ姫に横恋慕なので、皆困った。
ややソープオペラくさい微妙な騎士話になりつつある時、オニオンナイトが叫んだ。
「そんな騎士道は嫌だ!」
「そうだね……」
セシルがよろよろの笑顔を浮かべながら、全身で困り果てていた。
バッツがギルガメッシュに質問する。
「なあ、武士道はどうなんだ?」
全身全霊で歌舞伎っぽくポーズを取りながら、ギルガメッシュが解説した。
「想いを香に込め、花鳥風月に重ね、歌に詠むのだ! 風流なものよ」
「素敵ですね」
「なかなかのロマンチストだな」
ユウナが優しい声でギルガメッシュに返す。ライトニングも感心したように頷いた。
綺麗なお姉さんに囲まれて、ギルガメッシュは感涙と共に武者震いした。しかしそこに。
「不義密通は、姦夫姦婦を重ねて四つに斬る」
囁くような低音で、セフィロスがドロドロした事を口走った。
ややメロドラマっぽい武士話にされた事で、ギルガメッシュも困惑していた。
全身に鳥肌を立てながら、オニオンナイトがかぶりを振る。
「そんな武士道も嫌だ!」
するとゴルベーザが、静かに答える。
「騎士も姦通は焚刑もの。それほど甘くは無い」
「それも大変だな」
ヴァンが何となくガリの肩を叩いた。カインが言葉を続けた。
「本来は、高齢の王侯達が若き妃を迎えたが故の悲恋だ。口付けも交わさぬ純愛でもある」
セシルが高齢に該当するかどうかはさておき、騎士道はそれなり純情なようだった。
「アレよ。俺達に色恋沙汰があるとすりゃ、精々チューぐらいのもんだ。なあティーダ」
「んー。ウチもはぐはぐ以上の事はないなあ。そうだろ、スコールくん」
「なっ……」
「何言ってんだよ、オヤジ!」
世界一ピュアじゃないPTA発言に、スコールは超高速で長文の反論を考えていた。
「宜しいんじゃございませんこと? 下駄箱のチョコまで、目くじら立てる必要もありませんしね」
「汚い、流石大人汚い」
「俺の世界で最も進んでたのは、チョコボだ。孫もひ孫も産まれていた」
バッツの脳裏で、大量に雛を孵して増殖したボコが草原を行進し、
ライトニングは一瞬、アフロを埋め尽くす雛チョコボを想像して陶然とした。
もはやコスモスもカオスも境界グダグダな中で、皇帝陛下がお出ましした。
「姫を守るなぞ笑止。野薔薇の紋章は散らせてこそ意味がある……フッフッフッ」
「貴様、ヒルダ王女に何をした!」
フリオニールが怒った。それはもう超怒った。
――行け、ブラッドソード。正義は僕らの味方だ。皇帝の野望を打ち砕け! って位怒ってた。
いや、ミンウ返せ。スコット返せ。ヨーゼフ返せ。リチャード返せ。シド返せ! って位怒ってた。
「これは。もはや純愛と言う次元では無かろう」
「少々、CEROレーティングを越えているのではないですか?」
「背徳の皇帝マティウスか。そうか。そっちの背徳なのか」
そんな喧騒の中で。ユウナが指笛を鳴らし、そして叫んだ。
「おまわりさん、こっちです!」
皇帝が、背後の異様な気配に振り向く。
そこには。散々ぱらぱら道場扱いされた挙句、『やだー騎士フケツー』みたいな雰囲気に激怒した、
EXモード姿のジャッジマスターことノア・フォン・ローゼンバーグが、殺る気満々で立っていた。
「失意の荒野を彷徨うがいい! イェア!」
「ウボァアアアアアアアァ!!」
同時に、闇と光を竜の爪牙に驚くのはこれで終わりだの終わりだっ! が、皇帝を包んだ。
つぶらな瞳のデカオくんが、半死半生よれよれウボァー皇帝を介抱した。
「申し訳……ございません……」
「ウグルルルルルル」
「おや? いばりんぼの皇帝陛下が敬語だな」
「王も神には勝てぬ。じゃが、あの男。以前は魔導師であったとも言っておったな」
「生まれつき王家じゃないのかー!?」
「あれ? WoLもどこかの王様名じゃなかったっけ?」
「アーガス王とダウ王とサーゲイト王にドマ王にジオット王だね……ジオット!?」
「トーイやパフィもあったような……」
「まあ。ひこにゃんはドワーフで宿屋の娘なのですわね」
「何だよ、ちゃんと俺が付けた名前があるんだぞ。ん? そう言えばWoLはどこだ?」
ふと、プリッシュが仲間の不在に気付く。
WoLは、なんかコスモスのとこにいた。ぴたりと主に傅いて。剣を捧げ静かに額づく。
調和の女神はたおやかに騎士を支え、慈愛に満ちた眼差しを浮かべる。
「お、何だ? なんか仲いいな」
「僕達はお邪魔かな?」
「しかし跪き方がなってない。神の前では両膝を付くべきだ」
「出たな、妖怪ムスカめ」
玉座の物陰から皆してあーだーこーだ言ってたら、即座にWoLに見付かった。
「何をしている?」
「!」
すると。コスモスは満面の笑みで、光と闇の戦士達を迎える。
「ああ、皆、良く来てくれました」
「では10ギルを」
軽快な金属音と共に、WoLが女神に寄付とかしてた。
「何事かと思ったら、募金かよ!」
「やべ、ショップで買い物したばっかりでギルがない」
「金のエンゼルを売るか?」
「そうだねえ。誰かにトレーニングリング・背水の陣・スタンドバイミーを装備させようよ」
「うっかり変な名前付けた、アーティファクト売ればいいんじゃな〜い?」
それは、悪夢の世界。けれどその場所は光も闇もなく。戦士達は全て仲間だった。
冷酷な女神。その女神が優しい感情を取り戻し、我が身を捨てて守り抜いた戦士達。
そのきっかけは。命懸けで女神を守る、光の騎士の姿。
二千年前のカオス神殿で。WoLはもう一つの世界を思い返す。
天地は暗く荒廃し、しかしそこは賑やかで、様々な戦士が集っていた。
まだ壊れてはいない過去の神殿。その外に、懐かしい友人達がいるのかもしれない。
セーラ姫の困り顔に、かつての女神の面影を重ねながら。
光の戦士は、もう一人の騎士――ガーランドの元へと向かった。
おわるよ
GJ!
楽しく読ませてもらいました
ほ
ぼ
ま
>>126-130 なんというカオス(良い意味で)w騎士とゆーか武士とゆーか、みなさん紳士ってやつですね!
(断じて紳士という語に後ろめたい意味は含んでいないんだ。いやそうなると用法的に少し
間違ってる気もしないでもないけど)
背景を考えるとセフィロスの発言は重たすぎるというか、皮肉めいて聞こえた自分に少し後悔。
DFFやってないので本意を汲めてない気がします、すみません。
ところで。
> アフロを埋め尽くす雛チョコボ
そのゲームはいつ発売ですか?
前話:
>>99-103 ※細切れ投稿になる事を予めご容赦下さい。
----------
――『死んでしまった人にとっては、それが“全部”なんやて……!』
それと接続した途端、私の中に流れ込んできたのは――恐らく対象がその事柄について
最も優先すべき――“感情”なのだろうとは容易に想像が付きました。
生きた人間へのSND実施には潜入対象、なにより私自身の負担が大きくなるという欠点が
ありました。それ自体は既に、ディープグラウンドでの度重なる実験を通して確認されている
問題でした。
さらに目的となる記憶情報に付随する感情――私からしてみれば不要な情報であり、ノイズ
として扱われる物――が大量に含まれるせいで、データをフィルタリングするにも相当な
エネルギーを消費しなければならず、他者からの情報収集の手段としてはおよそ効率的とは
言えない時間と手間を要します。
けれどケット・シーが“コンピュータを搭載したぬいぐるみ”である以上、生身の人間よりは
感情ノイズの影響を受けているとは考えにくく、彼の中のライブラリ、つまり記憶領域の閲覧に
ついて、ケット・シーが操作主の感情をフィルタリングする媒体になり得る、というのが当初の
目算でした。
しかし、どうやらそれは誤りだった様です。
――『死んでしまった人にとっては、それが“全部”なんやて……!』――私が最初に触れた
それは、強烈な感情。しかもその他に付随する情報が無いか、あるいはその量が多すぎるため
に転送自体に支障を来すものの様です。触れるだけで裂傷を負わせるような、そんな痛みすら
伴う強い感情でした。それほどの感情ともなれば、記憶の持ち主ですら思い返す度に同様の
痛みを覚えているのかも知れません。
(……ずいぶん厄介なものにアクセスしてしまったようですね)
好奇心に駆られて安易に手を出してしまった事を悔やんだところで後の祭り、いずれにしても
嘆息したくなる状況である事は確かでした。記憶保有者の意図するしないに関わらず、完全に
こちらの目論見が外れたわけですから。
その先に見えたのは、膨大な数の視覚情報でした。それぞれの場面を切り取った断片。
やがてそれらは時間をさかのぼるようにして整列し、繋がった私自身へと送られて来ます。
3年前のミッドガル上空、オメガの顕現。旧ミッドガル市街地での大規模な交戦。WRO本部の
襲撃と陥落。ディープグラウンドによるエッジ、カーム急襲……。
4年前の星痕症候群。エッジ幹線道路や周辺地域での交戦。
5年前には街の復興風景と、片や蔓延する謎の病“ミッドガル病”に怯える街の人々。
6年前のメテオ襲来。北の大空洞での死闘。ミッドガルや各地の避難風景。ビルに据え付け
られた巨大砲身。鋼鉄の要塞都市。荒廃した砂の流刑地……多くが、実際に私自身が目に
したことのない土地でした。けれどそこに付随する情報がきちんと整理されている為に、それらが
いつ、どこで起きた出来事なのかを正確に把握する事ができました。恐らくこれは、この数年間
にケット・シーの辿ってきた記憶なのでしょう。厳密には操作主の記憶なのかも知れませんが、
今の私にとってそれを特定する意味は無いので、追究することはしませんでした。
それにしても情報の多くが6年前に集中しています。
特に6年前、ミッドガル地上部の第7プレート支柱破壊の情報と、その直前の壱番魔晄炉爆破
については、かなり詳細な情報も含まれていました。
この当時ディープグラウンドに収容されていた私が知る由もありませんが、データから知る限り
でも相当の死傷者を出した様です。支柱を破壊され落下したプレートは地上部に暮らす人だけ
ではなく、プレート上に作られた街とそこに暮らす住民もろとも押し潰したのですから、多数の
死傷者が出るのは火を見るよりも明らかです。さすがにディープグラウンド内でも、これだけ
大規模かつ無差別な殲滅作戦、あるいは実験は例がありません。
たしか地上では『リミッター』の取付は行われていなかったはずですが、これではそんな物も
必要ないでしょう。
その意味では、ディープグラウンドの方がいくらかマシと言えるのかも知れません。この街に
暮らしていた人々にとっては皮肉な話ですが。
(…………)
どうやらその光景を、ケット・シー……あるいは操作主は神羅本社ビルから文字通りに高みの
見物をしていた様です。こうしてアクセスした視覚情報がはっきりと示しています。それを覗いて
いる自分の存在が、少し可笑しく思いました。理由はよく分かりませんでしたが、とにかく可笑し
かったのです。
記憶データはそこで終わりました。
(これだけ……?)
転送に支障がある程の量だった割には、ずいぶん呆気ないと思いました。人のみならず生物
が本能的に厭う死という概念。こうしてそれを目の当たりにしているにも関わらず呆気ないと感じ
るのは、そこに痛みが伴っていないせいだと言うのは分かります。
(では、私が最初に触れた鋭利な刃のような“感情”は誰の……?)
そう疑問を抱いた瞬間、まるでそれが引き金になったかのように、受け取った断片ファイルの
残りが次々と開かれて行きました。先程とは違い、そのほぼ全てが無尽蔵に湧き出る感情の
類で、データの多くを占めていたものの正体にようやく気が付きました。
怒りや悲しみ、失望と落胆の狭間にただよう自責の念。さらにミッドガルを支える躯体が軋んで
轟く金属音に、人々の怒号や悲鳴が入り交じった――目を覆い耳を塞ぎたくなる、それはまさに
地獄のような――光景。戦場ではなく、ある日突然に日常が崩壊する"恐怖"そのものに呑み
込まれ麻痺する思考。これまで大切に育み見守ってきた都市の崩壊に立ち会いながらも、為す
術も無くその様を見ていることしかできない自分自身への憤怒と諦念。それでも尚、守る者を
持つ自身の立場が枷となりこれらの感情を抑え込もうと働く理性……。
行き場のない膨大な感情は、あっという間に思考領域を埋め尽くしていきます。
私が見た物を言語データとして取り扱う分には簡単です。しかし、そんな物では収まるはずは
ありません。展開されたひとつひとつの感情は一瞬のうちに膨れあがり精神を圧迫、他の記憶
と競合しさらに膨張を繰り返します。
(これは……感情の源泉?)
感情の源泉。
それは人が何かしらの行動を起こす契機、あるいは行動理念。
シェルクにとっては、ディープグラウンド時代の過酷な日々を耐えるための支えとなった姉への
強い思い。信頼からくる期待と希望。一方で日々増え続ける不安と不満。その鬩ぎ合いを他者に
投影し、SNDによる行動操作の拠としていた。
妹を救う、あるいは仇を討つ。
そうやって感情の源泉さえ与えてやれば人は自らの足で立ち、勝ち目のない戦いにも勇んで
身を投じる。そうして、倒れていった試験体達を何人も見てきた。
度重なるSNDの副作用で機能障害を起こした脳と、敵の一撃を受け倒れ伏し瞼を閉じる間も
なく息絶えた試験体の目は、シェルクに向けられていた。彼らは最期まで、妹の仇討ちだと信じ
ていた。
「あなたに妹などいませんよ……」
床に横たわり動かなくなった試験体を見下ろしながら、胸の内に広がる罪悪感を様々な理由で
上書きした。
シェルクはこうして10年もの間を生き抜いてきた。彼女の行為は、善悪という尺度だけで計る
ことはできないだろう。しかし間違いなく、善の側には属さない。
「お疲れ様でした。ごきげんよう」
シェルク自身の願望と感情を投影し操った試験体はどれも皆、仇討ちを果たすことなく倒れて
いった。弔いにしては残酷な響きを持ったその言葉は、本当の妹を捜している筈の姉に向けた
皮肉であり、願いだった。
姉との再会を遂げディープグラウンドから解放された今でさえ、当時の記憶に触れるのは
シェルクにとって容易いことではなかった。
けれどそもそも人は、一瞬と言えるほどごく短時間のうちに、これだけ多くの情報と、それに
付帯する感情を処理する能力を持っていません。それほど多量の情報を取得する機会も、
処理する能力も無いからです。
人は無意識のうちに入力される情報を選択しています。さらに時間の経過と共に、保管に
都合の良いように書き換えと圧縮を繰り返し、記憶は意識の下層へと送られます。
ディープグラウンド時代の実験棟でさえ、ここまでの混濁を作り出す事はできませんでした。
そもそも、繰り返し与えられる恐怖と苦痛によって形成された服従という体制は、システムへの
順応を目的とした操作・拘束の手段であり、逆に言えばそれしかないのです。どれほどの恐怖や
苦痛も、パターンさえ判れば回避する手段を構築できるもので、それこそが人に備わった環境
への適応能力に他なりません。
しかしこの適応には、相応の時間が必要です。
瞬時に他者の記憶情報へ接続できるSNDでは、それは致命的な欠陥となりました。
結果的には、私が3年前ディープグラウンドで試験体にやったことと同じ。
ならば私が受ける報いとしては、これ以上に相応しいものはありません。
想定された容量以上の処理を要求されたコンピューターがそうなるように、私自身の脳と心が
機能を停止させるまでに、時間は掛かりませんでした。
***
イリーナが事態の異変に気付いたのは、モニタの隅に表示された控えめなエラーメッセージ
と、小さな警告音だった。その音を聞けば、次にやや面倒な操作を要求されるのだろうと感じる
程度に耳慣れたものだった。
「やだ、エラーって……」
“接続状況を確認してください”
表示されているのはそれだけだった。コンピューターに疎いという訳ではないが、仕事以外の
場面で好んで使用するほどではなかった。具体的にどうすればいいのかが分からずに、
イリーナは横たわるシェルクの方へ顔を向ける。
「……どうやらまずい事になっている様だ」
ツォンの声に振り返ったイリーナは、その視線を追うようにして右側のモニタを見やった。
その中の『潜行深度』と書かれていた数値が、急激に上昇しているのが分かった。あっという間
に80を超え100に近づいている。
「『潜行深度48で2時間』、それが彼女の示したリミットだ」
SNDの原理などツォンが知り得たはずがない。その表示がどういう意味を持っているのかも
分からない。ただ、シェルクが事前に教えてくれた指標に従えば、少なくとも現状が好ましくない
状況だというのは分かる。それに深度が増す毎に負荷が掛かるのは、水圧と同じだと考えれば
感覚的な状況理解ぐらいはできそうだ。
「シェルク大丈夫?」
イリーナが呼びかけてみるが反応はない。こうしている間にも、深度を示す数値は100を超え
150にまで迫ろうとしていた。イリーナはとっさに席を立ち、横たわるシェルクの傍に駆け寄ると、
頬を叩いて直接呼びかける。
「シェルク、ねえシェルク聞こえる? お願いだから返事をして!」
横たわり微動だにしないシェルクの手を取ったイリーナは、その手から体温が急速に奪われ
ていく事に気付いて、血相を変えた。
「シェルク?!」
気が動転したイリーナは、横たわるシェルクの背後に繋がっていた接続ケーブルを思い切り
引っ張ろうと手を伸ばす。すんでの所でイリーナの腕にツォンの手が届き、手を止めさせる。
「ツォンさん!?」
言外になぜという抗議を込めて見上げた先では、ツォンは静かに首を振り窘めるように言った。
「落ち着くんだイリーナ。最初にシェルクが言っていたことを思い出すんだ」
SND実行中の端末の強制終了は避けなければならない。その接続を切る事も、当然できない。
「だけどこのままじゃ……」
「確かに事態は急激に悪化した。今のところ外の我々には原因が分からない以上、打つ手立て
もない。ただ、すべての事象がネットワークの世界で起こっているのなら、最低限その世界を
維持する事に徹するべきだろう」
事態が好転する可能性を消してはならない、とツォンは言った。
----------
・“削除できない記憶のお話。”
ケット・シーの意識下に眠る感情の源泉に触れてしまったシェルク、というのが主題。
・オンライン版のシナリオで行けば、他人の記憶を上書き(思い込ませる)事ができるなら、
自分の記憶も逆に改変(感化)させられる可能性があるのよねと。
(DC本編でもルクレツィアデータ云々で触れてる話ですが)
・FF7Disc2飛空艇内で口論の発端となった台詞(「死んだ人〜」)は本当に重たい。
初プレイ時にこの台詞を見た時の衝撃は今でも忘れられない。そう言う事を書きたかったらしい。
・1回あたりの投稿文字数制限614文字(多分)。数えるのしんどいですw読みづらくてすみません。
「文章で遊べるスレ」にとってこの規制は致命的かも…。
GJGJ!
147 :
sage:2011/06/06(月) 22:38:43.92 ID:wBzmZSlo0
乙です!
乙!
ほ
ぼ
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り
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ん
前話:
>>136-145 ----------
同じ建物内の別室にいたルーファウスは、身の丈ほどもあるモニタに映し出されたケット・シー
の映像をひとり眺めていた。彼がこのぬいぐるみに特別な愛着を持っていたというわけではない
が、今や全チャンネルが同じ映像を映し出していたから仕方がない。つい先程、何の前触れも
なく唐突に始まったケット・シーの発表を目の当たりにしたルーファウスは、ぬいぐるみの語った
あまりにも突飛な話に最初は我が耳を疑い、次に状況を整理しようと頭を働かせた。
そんなとき、彼の携帯電話が鳴った。ルーファウスはまるで予期していたかのように携帯を
取り上げ通話ボタンを押した。ディスプレイに表示される発信元も、相手の声さえ聞こうとせずに
ルーファウスは開口一番こう切り出した。
「『私に見せたい物がある』と言うから、それなりに期待はしておいたんだが。……まさかこんな
茶番とは」
嘲笑しながら言い捨てるが、電話の相手は無言だった。それでも構わずにルーファウスは先を
続ける。
「いつから君たちは笑いを売る芸人になったんだ?」モニタの中で静止しているケット・シーに
一瞥をくれてから「……と言っても、こんなもので買えるのはせいぜい失笑ぐらいのものだ」。
大掛かりなパフォーマンスのわりに中身が伴っていない、そんなものを見せられてとにかく
不愉快だった。そんな侮蔑を隠さないルーファウスの物言いにも、相手は応えない。
「オヤジは金の力で世界を支配しようとしたが、詰めの甘さが失敗を招いた。……なるほど、
その方法論にも一理あると認めることができる。しかし残念ながら君は、オヤジの失敗からは
何も学んでいない様だ。現状の『英雄統治』も、それほど長くは続かない。そう言っていたのは
確か君だったと記憶しているが?」
煽るような様に言ってみるが、相手からの応答はなかった。ルーファウスの口調が徐々に
苛立ちを帯び始めていた。
「自分から電話を掛けておいて無言とはな。いったい君は何がしたい?」
『これまでご協力いただいたお礼と、最後のご挨拶を』
ようやく聞こえてきた声は、至って平静だった。相変わらず煽り甲斐のない男だと、
ルーファウスは溜息を吐いた。
『あなたの言う“英雄統治”も、結局のところ恐怖支配と同類のものだと私は考えています。
ですから、それほど長くは続かないと申し上げたまでです』
ほんの僅かの恐怖があれば民衆の心を支配するのは容易いことだ――それは6年前、
ルーファウス自身が外部に向けて語った運営方針だった。
「私がいつまでも同じ考えに固執しているとでも?」
『いいえ。……そうではないからこそ、これまで私どもにご協力いただいたのだと理解して
います』
どこまでも穏やかな口調だった。
『あなたのご尊父……プレジデント神羅からは私も多くを学びました。そのうえで、彼の打ち
出した方針とは異なるものを見出しました』
「それがこれだと?」
視界の端に映るケット・シーと共に相手の発言を鼻で笑うと、ルーファウスはこう続けた「だと
したら、私はかなりの資金をムダに捨てた事になるな。どうやら投資家には向いていないらしい」。.
僅かの沈黙を置いて、電話の相手が堪えきれずに笑い声を上げた。
『どう見たって、あなたは投資家向きではありませんよ』
さも楽しそうに語る声が、一層ルーファウスの不快感を増した。
「何がそんなに面白いのか、私には理解できんな」
その言葉に、笑いを収めた声は真摯にこう告げた。
『椅子に座って世界を眺めているのにも、そろそろ飽きた頃じゃないですか?
あなたに投資家なんて向いてませんよ。第一線に立って自ら組織を率いていく、
その方がよっぽど性に合ってるんじゃないですか?』
それを聞いたルーファウスの目つきが変わった事に気付く者はいなかった。自身の姿を映す
ものがない室内で、張本人のルーファウスでさえも。
「ずいぶんと私のことを知った風な口を利くものだ」
不快感をあらわにするルーファウスに、受話口からは満足げな声が返ってくる。
『こちらの見立てに誤りがある様でしたら、謹んでお詫び申し上げる準備はしておきますよ。
もっとも、その準備は無駄になると思いますけどね』
声からも、笑みを浮かべる程の余裕が感じられた。ルーファウスは眉間にしわを寄せる。
腹の底からふつふつと湧いてくる怒りが喉元にまで達するが、どれも言葉になって口から
出る事はなかった。
それはルーファウス自身も、心のどこかで相手の指摘が正しいことを認識していたからに
他ならない。しかもそれを分かった上で直接的な指摘をして来ないから余計に面白くなかった。
(どいつもこいつも分かった風なことを)
ルーファウスは黙って拳を強く握りしめる。
「先程からずいぶんと自信たっぷりに言うものだな」
この男、神羅勤続時代とはだいぶ印象が変わったとルーファウスは言った。すると彼から
返ってきたのは、思いがけない言葉だった。
『以前プレジデントが仰っていた事がありました、“息子にも、私と同じ景色を見せてやりたい”と。
当時まだ若かった私には、その真意まで理解できませんでしたが――』
「この期に及んで私に説教でもする気か?」
無意識のうちにルーファウスの口調が強くなる。話を遮ろうと口を挟んだが、それを予測して
いたとばかりに相手の話は続く。
『説教? とんでもない。ですがそこに留まっている限り、あなたには反論の術は無いんです』
「なにが言いたい?」
『問わずとも既にお分かりの筈です』
後に続いた沈黙はそれほど長いものではなかったはずだが、ルーファウスにとって耐え難い
ものだった。
『かつてご尊父の立っていた同じ舞台に自らの足で上るか否かを決めるのは、他の誰でもない、
あなた自身です』
反論したければまず舞台に上れ――物言いこそ穏やかではあるが、言っていることは明確
だった。
言うまでもなくルーファウスにとっては屈辱的な言葉だった。しかし指摘されている通り、自分に
は反論の余地がないことも分かっていた。
正確に言えば術が無いのではなく、封じられていたのだ。つまり、どんなに優れた理論も、実績
には敵わないと言うことをルーファウスは理解していた。
プレジデント体制下の神羅で幹部になるほどの功績を残し組織の一翼を担い、ウェポン襲来と
メテオ飛来の混乱期を乗り越え、さらに社の解体後にはWROという新たな組織を立ち上げ神羅
とは別の形で世界を率いてきた。神羅時代はもとより、ジェノバ戦役の英雄という過去さえも肩書き
として利用する強かさと狡猾さを併せ持つ――彼の経緯そのものが、ルーファウスの反論を封じて
いた。
彼の言うとおり、問うまでもなく分かっていたし、口論になる前から結果は見えていた。
ワンサイドゲームどころかゲームすら成立しない、返すべき言葉を持ち合わせていなかった
ルーファウスには、これ以上どうすることもできなかった。
『楽しみにしていますよ。それでは』
その声には厭味ではなく、本心からの期待を込めた響きがあった。しかしルーファウスの
返事を待つこともせずに、通話は終わった。
「……実に身勝手な男だ」
携帯電話を握るルーファウスの手に力がこもる。彼は明らかに苛立っていた。
その矛先が、電話の先で身勝手に振る舞う男だけに向けられるものではないことを、
ルーファウスはまだ気が付いていなかった。
----------
・電話の相手はリーブです。(名前を出しそびれ…ってあれ以前もそんな事が)
・本編でこの二人の舌戦(があればの話)かなり見応えがあると思うんだ。拙作では
再現できないから是非作ry
・個人的にACの「車椅子」描写は、肉体的な問題ではなくルーファウスの自立についての
比喩だったのでは?と初見の印象から脱却できない結果がこれ。
・英雄統治についてはヴェルドの解説パート(Part8 601-603/まとめ26-3)辺りと関連している
話…のつもり。
※作者の視点がリーブ寄りなのでルーファウス側の掘り下げが甘いと思います。誰か補完しryごめんほんとごめん。
GJ!
乙!
おつおつ
おもしろい!
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前話:
>>155-158 ※作者の勝手解釈ルーファウス編です。
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「破壊と創造、人間はどうして繰り返すんだろうね?」
少年――のような容貌を持った、少なくとも我々と異なる存在――は、それを全く理解できない
と言い捨てた。
美化し拡大された記憶を拠に、後悔は懐かしさに変換し過去を克服しようとする。それが人の
記憶システムであり、行動を司る動力源なのだと説いた。防衛機制についての解釈であれば
それも外れてはいない。しかし自身を「忘れっぽい」と評したルーファウスの本意は、そこには
なかった。
私に言わせれば「破壊と創造」、そんなものは経済活動の一環――いわばビジネスチャンス
でしかないのだと。現に我々の文明社会を支える技術の進歩は多くの屍の上にあり、その礎が
あって成り立っている。それは歴とした事実であり、それを認識している。
人にとっての脅威はなにもモンスターだけではない、同族同士で殺し合う事だってある。尽きる
事の無い需要を満たすことで神羅は巨万の財を築いた。私はその過去を、誇ることも恥じること
もない。“忘れっぽい”とはそういうことだ。
それさえも星命学を用いて言えば、「星を巡る生命の循環システム」の一部なのだろう?
思い出がどうとか言う話ではないのだ。それでも彼らの主張に沿おうとするなら、人が本当に
恐れているのは「他者に敗する」事だ。多かれ少なかれ、あるいは表に出すか否かの違いこそ
あれ、それは誰しもが必ず持っている感情だ。
私にとって星命学に興味を示せずにいるのは、それが惑星の仕組みを解き明かす高度な理論
であるのだとしても、社会の仕組みを説くには役に立たないという理由が大きい。
だから我々は何度でも繰り返す。たとえそれが過ちだと分かっていても、形や方法を変えて。
あるいは隠れ蓑になりそうな大義名分を探してでも、何度でも繰り返す。
君はそれを愚かしいと言うかね? まあそれも間違いではない。
ただ君も、自分が愚鈍だと言うことを知るべきだ。
「観客にとって、ワンサイドゲームほど退屈な物はない」
ルーファウスはぽつりと呟いた。
「プレイしている側とて、これ程つまらない物はない。だから私からハンデをくれてやった。
そうでもしなければ楽しめないだろう?」
口元に笑みを浮かべながら、出てきた言葉のぎこちなさに違う種類の笑みが混じる。
「……そうか。腹が立っているのは現状に甘んじている私自身に対して、という訳か」
だとすればなんと滑稽な姿だろうと、ルーファウスは乾いた笑いを浮かべた。
「元神羅重役、星を救った英雄……」一見すると相反するような経歴の持ち主、矛盾している
ようにも見える言動「強か、狡猾。そんな生ぬるい表現では済まされないな」。
自身の経歴や世の情勢、リーブが利用したのはそんなものばかりではない。
――『椅子に座って世界を眺めているのにも、そろそろ飽きた頃じゃないですか?』
かつてプレジデント神羅がそうであったように、彼もまた人心を巧みに利用する術を持って
いたのだ。
「私を焚き付け行動を起こさせる。……今回の君の狙いは大方そんなところか?」
危うく踊らされるところだったと笑ったところで、ルーファウスは額に手を当てながら天井を
見上げた。
そうと分かったところで、見透かされているのには変わりないのだ。この苛立ちが何よりの
証拠。この礼は必ず返さなければなと口にしようとしたところで、思い至る。
. . . . .
「……まさか、あの男の狙いは……親父と同じ……?」
事ここへ至ってようやく気づくとは。眉根を寄せ今度こそルーファウスは不快感をあらわに
呟いた。
父親――プレジデント神羅と同じ。さんざん口出ししておきながら勝ち逃げする気でいる。
だとしたら、身勝手以外の何ものでも無い。
「フッ……」無理矢理に浮かべようとした笑みは、すぐに崩れて消えてしまう。ルーファウスは
左手の拳を強く握った「ふざけるのもいい加減にしろ」。
小刻みに声が震える。気が付いてしまえばこの上ない屈辱感に呑まれそうになる。何よりも、
今に至るまでそうと知らずに踊らされていた自分の不甲斐なさに呆れ腹が立つ。
考えてみれば、不自然な点は多かった。
始まりはおよそ5年前。
秘密裏にと言う条件付きで始められたWROへの資金提供。その全容を正確に把握している
のは提供者のルーファウスと、受領者のリーブだけだ。彼らにとってこれは“取引”だった。
未曾有の危機を乗り越えたものの、混乱の極みにあった世界。
その災厄を招いた主因となった神羅への批判を抑えることは不可能。
となれば今後、大々的に神羅の名を掲げる事はできない。
また当時のルーファウスが統率者となるには実績が不足している。
その一方で、極度の混乱に陥った世界で大規模な復興事業を行える経済的・人員的基盤は
神羅しか持っていない。
一日も早い復興を願う反面、神羅への帰属を拒むという矛盾。
その矛盾を解決するアイディアと、実践に必要なノウハウを持っている人物。
実践に必要な資金と物資を持っている人物。
幸いなことに、舞台も役者もそろっていた。
「種まきせずして収穫は無い」――思想の隔たりを埋める猶予は無く、両名にとってそれ以外の
選択肢は無かった。
ディープグラウンドの脅威を退けてしばらくたった頃。出資先の使途不明金の調査をツォンに
言いつけたのはもちろんルーファウスだった。
なにもそれは気紛れに出した指示では無い。
リーブに言わせるところの「収穫」であり、彼からの返済に他ならない。
やろうと思えば彼は利益の供与もできたはずだ、その方が少なくとも今よりは安定した関係を
維持できただろう。
なのに敢えてそうせずに、醜聞という形で挑発的な方法をとった。
その意図を、今になって知ったのだ。
――『同じ舞台に自らの足で上るか否かを決めるのは、他の誰でもない、
あなた自身です』
ルーファウスにとって、表舞台へ再帰するための足掛かり。
これもすべてリーブの描いたシナリオなのだとしたら?
(…………)
脳裏によみがえった声に、ルーファウスは唇をかみしめる。
――『楽しみにしていますよ』
6年前、ルーファウスが最後に神羅ビルを出たとき、パネルに自身の誕生日を入力した時と
同じ感覚が全身を駆け巡った。
とてつもない敗北感。どうあがいても覆すことのできない決着。文字通りに頂点から一気に
転がり落ちながら、父によって自身の命を救われ――未だ庇護の元にあったのだと思い知った。
資金提供者という誂えられた席に座り、そこから舞台を眺めながら罪滅ぼしでもした気に
なっていたのか? いや、これまでの自分ならばそう言われても仕方の無いこと。現に反論は
できなかった。しかしそうと分かれば話は別だ。
「あの男のシナリオ通り、このまま勝ち逃げなどさせんさ」
薄く笑みさえ浮かべながら、ルーファウスはモニタに映るケット・シーに視線を向けていた。
----------
・使途不明金云々についてはPart6 550-552(まとめALERT3)辺り…というか、ようやくここまで
来る事ができましたw(年どころかとうとうオリンピック単位になりそうですねw)
・リーブがこの騒動を起こした1つの理由は、ルーファウスをあおるためなんです。…が
うまく表現できてない!のは作者の頭に問(ry。前話の補足的な位置づけに。
・小説神羅編のルーファウス(特にビル脱出)辺りを踏まえた勝手解釈。…後ろ向き思考が
強いですごめんなさい。
・ちなみに作者内ではリーブとルーファウスって対立構図を好む傾向が(もちろん政敵な意味で)。
・意表を突いた配置転換があったり、今更シロディールを俳諧したり、ニューデトロイト走り回った結果が
このペースです。
こんな長々間があいても待って下さってる方(が、いらっしゃったら)本当にすみません。
と同時に保守に感謝。
――『楽しみにしていますよ』
6年前、ルーファウスが最後に神羅ビルを出たとき、パネルに自身の誕生日を入力した時と
同じ感覚が全身を駆け巡った。
とてつもない敗北感。どうあがいても覆すことのできない決着。文字通りに頂点から一気に
転がり落ちながら、父によって自身の命を救われ――未だ庇護の元にあったのだと思い知った。
資金提供者という誂えられた席に座り、そこから舞台を眺めながら罪滅ぼしでもした気に
なっていたのか? いや、これまでの自分ならばそう言われても仕方の無いこと。現に反論は
できなかった。しかしそうと分かれば話は別だ。
「あの男のシナリオ通り、このまま勝ち逃げなどさせんさ」
薄く笑みさえ浮かべながら、ルーファウスはモニタに映るケット・シーに視線を向けていた。
----------
・使途不明金云々についてはPart6 550-552(まとめALERT3)辺り…というか、ようやくここまで
来る事ができましたw(年どころかとうとうオリンピック単位になりそうですねw)
・リーブがこの騒動を起こした1つの理由は、ルーファウスをあおるためなんです。…が
うまく表現できてない!のは作者の頭に問(ry。前話の補足的な位置づけに。
・小説神羅編のルーファウス(特にビル脱出)辺りを踏まえた勝手解釈。…後ろ向き思考が
強いですごめんなさい。
・ちなみに作者内ではリーブとルーファウスって対立構図を好む傾向が(もちろん政敵な意味で)。
・意表を突いた配置転換があったり、今更シロディールを俳諧したり、ニューデトロイト走り回った結果が
このペースです。
こんな長々間があいても待って下さってる方(が、いらっしゃったら)本当にすみません。
と同時に、保守に感謝。
よりにもよって多重投稿すみません。
乙!
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前話:
>>179-182 (場面は
>>63-67の続きでナナキ編)
※ブラウザの挙動が著しく不安定なので、投稿に不備があったらすみません。
----------
ナナキとダナを収容したWROの輸送車両は大陸を南下した。車中、副長はここへ来るまでの
経緯をふたりに説明した。この直前に流されたケット・シーの演説のことを、ナナキ達はここで
知った。
「……根拠も脈絡も無い話ね。ぬいぐるみが人を操っているなんて話、どうやって信じろと言うの?」
「オイラだってもうちょっと上手いウソを吐けるよ」
話を聞かされたダナとナナキはそれぞれに感想を零した。ふたりの反応を見て、もっともだと
副長も頷いた。しかし話の中身はどうあれ、その規模が規模だけに無視することはできないし、
今が非常事態である事は誰の目にも明らかだった。
やがて車が停車する。副長が何事かと尋ねると運転手から返答があった。彼らの行く手には
これまでになく隆起の激しい地形が現れ、これ以上の前進を阻んでいた。その正体は6年前の
ライフストリームの奔流が変えた地形と、さらに干潮で剥き出しになった海底だった。
「ここから先は車じゃ無理だ、だからオイラが行く。みんなはここで待ってて」
「ですが!」
引き留めようとする副長は、それ以上なにも言えなかった。ナナキの言っていることは正しい、
けれど彼ひとりにこの先の全てを任せてしまうのはどうなのだろうか? と言う思いが口をついて
出た格好だった。冷静に考えれば引き留める理由は無い。
「オイラならみんなよりも小回りが利くし、モンスターの相手も慣れてる。だけど小さいし武器
だって無い。だからみんなには、ここでオイラを助けてほしいんだ」
その言葉を聞くなり副長の表情は引き締まり、承知した旨を短く告げる。踵を揃えて背筋を
伸ばし敬礼の姿勢のままで口を開いた。
「我々は自身の力量を過信しているつもりではありませんが、確かにこの場合は仰るとおり
後方支援に回ることが最善ですね。ここで準備を調えておきます」
物資と情報の中継、我々にもまだやれる事はある――それが嬉しかった。より正確に言えば、
嬉しさよりも安堵の方が大きかった。その気持ちは、表情と口調によく表れていた。
そんな副長の勢いに圧倒され、ナナキはやや後ずさりながら首を振る。
「あ、いや……。ええと、ごめん」
しまいには困ったように顔を逸らし、ふわふわと尻尾を揺らすナナキに、思わず副長の表情も
綻ぶ。彼女が内心で(そう言う仕草は反則ですよ)と負け惜しみのように呟いていた事を、当の
ナナキが知る由はない。
その一方で、自分達の所属する部隊の記章が、あの賑やかな猫をモチーフにした局長の
意図を少しだけ理解できた様な気がした。
(……。ダナ、あなたは気づいてるのかしら?)
後ろを振り向きたくなる衝動をぐっとこらえ、副長は膝をついてナナキを呼び止めた。
「では念のため、これをお持ち下さい」
副長は携帯していた自身の無線機を差し出すと、それをナナキの首に巻いてやった。
「私たちが作戦中に使用する物なので音声通信のみですが、特別な操作は必要ありません。
それに防水防塵仕様で頑丈にできていますし、集音機能にも優れています。きっとお役に
立てると思います」
バックルに通すバンドの長さを調節しながら、頤の下に無線機が来るように位置をずらす。
ナナキは半ば無意識に首を振るわせてみたが、ずり落ちたりはしなかった。ふだん身に着け
ない物だけにしばらくは違和感があるだろうが、この分ならすぐに慣れそうだ。
「ありがとう! 携帯電話ってオイラじゃ上手く使えないから助かるよ」
それからナナキは、車を降りる前にモンスターの大群についての情報を語った。その録音
データを預かった副長は、飛空艇師団にいるシドにそれを送ることを約束する。
なんだかんだと世話を焼いてくれた副長を見上げながら、目を細めて感謝の意を伝えた後、
ナナキは小声でこう告げた「ねえ副長さん、ダナのこと怒ってる?」。
「えっ?」
唐突な質問に困惑したような表情を浮かべた副長に、ナナキはこう続けた。
「オイラとここへ来る時、ひどく緊張してるみたいだったんだ」一見すると強気な態度や言葉とは
裏腹に、彼女の手は汗で滲んでいた「だから……」。
ナナキの言葉の途中で、副長は薄く微笑んで見せた。
「怒ってなんかいない。……ただ心配なだけ」
「よかった」
心底ホッとしたように呟くと、ナナキは車から駆け下りた。とにかく今は時間が無い。一刻も早く、
モンスターの群れが向かった先――みんなのいる場所――へ急がなければ。
地平線の遙か彼方に沈みゆく夕日が、潮流とライフストリームによって削られた起伏の激しい
地形を照らし出していた。岩場の間から顔をのぞかせるオレンジ色の空を背景に、作り出された
陰影は故郷の谷にも似ていた。けれど乾燥地帯にあったそれとは違い、足場となる岩に自生す
る藻や、潮だまりに取り残された海洋生物を避けながら慎重に進まなければならない。ナナキは
目的地までの最短距離を取るために、不安定な足場から足場へと飛び移る。とにかく今は、足を
止めている暇は無い。
走り出してからしばらく経った頃、無線機から副長の声が聞こえてきた。飛空艇師団と通信が
つながり、ナナキからの伝言を無事に渡すことができたという内容だった。
礼を言ったナナキに、無線の先にいた副長が心配そうな声を返す。
『大丈夫ですか? だいぶ息が上がっている様ですけれど』
副長に指摘されるまではナナキ自身も気が付かなかった。けれど言われてみると確実に疲労
は蓄積している。二本足で立つヒトよりも優れたバランス感覚と、長距離を走ることに適した肉体
があるとはいえ、休むこと無くほぼ全力でしかも悪路をひた走ってきたのだから仕方が無い。
「オイラは大丈夫」短く返答すると、副長はそれ以上なにも言わなかった。余計なところで体力を
使わせたくないと察したようだった。
『何かあればいつでも言って下さい』
うんと返答してから、ナナキは考える。
(そういえばあの時)
脳裏によぎったのは4年前のエッジ。仲間達とともに飛空艇からパラシュートで降下したエッジ
市街地での出来事だった。
(オイラがあそこで召喚獣と戦ってた時……)
今みたいにひとりじゃないし、みんながいた。だけど。
(こんなに疲れたかな?)
高く組まれた鉄柱を駆け上がり、自身の何倍もある召喚獣が振り下ろす鋭い爪や攻撃をかわし
ながら、わずかの隙を見て召喚獣に攻撃を仕掛ける。その後も、カダージュ達が街に残していった
召喚モンスターを掃討するため、細い路地を駆けずり回った。そのときは戦闘に集中していたし、
平時よりは昂揚していたのは確かだ。なによりもう4年も前の事だから、記憶も朧気になっている
かも知れない。けれど、これっぽっちも疲労なんて感じてなかったんじゃないか。
それはまるで、回復魔法リジェネを唱えた時の様な感覚。
(だけどあの時、マテリアは持ってなかった。なのに……?)
今と違うのはただ1つ、背中にケット・シーを乗せていたという事だけ。ではケット・シーが?
そこまで考えてナナキは違うと即座に否定する。
(ケット・シーだってマテリアは持ってなかったはずなのに)
4年も経った今更になって、唐突にナナキの中には疑問が浮かんだ。むしろその疑問は、
「どうして今まで気が付かなかったのだろう」と言う方が大きかった。
自分の足と思考は今、着実に核心へと近づいている。ナナキは確かな手応えを感じていた。
先ほど聞いた話を鵜呑みにしたわけではないし、ケット・シーが言っているのとは違うのかも
知れない。けれどこの騒動の鍵を握っているのは、リーブでは無くケット・シーの方なのだと。
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・FF7ACで「ケット・シーなにもしてねーじゃんw」と言われているけど、実際はこういう設定?なのかな。
そうなると、インスパイア能力の解釈の幅が広がるんじゃないかなー、というお話。
ナナキ視点を書くのは難しいけど、身体面でもヒトとは確実に違うので書き分けはし易い…はず。
(うまく表現できているかは別問題なんですがw)
・PCを新調して(前回)からというもの、専ブラの挙動がものすごく不安定でどうしたものかと。
前回の反省を踏まえ二重投稿はないと思いますが、もし投稿不備があった場合はご容赦下さい。
GJ
GJ!
GJ!
前話:
>>195-197 (場面はPart10 263-266の続き)
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時間にすればほんの数十分ぶりの再会であるはずなのに、タラップを駆け上がって飛空艇に
乗り込むなりクラウドは愛車に駆け寄ると、入念にコンディションをチェックしていた。
そうしたくなる気持ちも分かるだけに、シドは複雑な笑みを浮かべながら言った。
「なんつってもオレ様の艇だ、そいつも乗り心地は悪くなかったはずだぜ?」
シドの声に応じて顔を上げると、クラウドは一瞬すまなそうな表情を作って視線をメーターに
向けた「ありがとう」。
「へっ、補給と回復薬はオレ様からのサービスだ! モンスター群のど真ん中でエンストしたん
じゃ、笑い話にもなんねぇ」
シドは口元をつり上げて笑んでみせると、クラウドもつられて笑顔を浮かべた。
「……まあ、てめぇの事だから心配しちゃいねえが」後に続く言葉を躊躇ったようにして僅かの
間があいてから、シドはやや声を落とす「流れ弾なんかに当たるんじゃねえぞ?」。
言いながら親指を立てて後方にあったパネルを示す。パネルには等間隔に並んだ経線と
緯線の上に周辺の地域図が描かれていた。そこには新本部施設の建物を中心とした同心円が
幾重にも重ねられ、さらに飛空艇師団の飛行軌道と爆撃範囲も示されている。
「建物を中心としたこの円内なら安全だ。けど、逆に言やあそれ以外は保証できねえ。前と
違って今回は急ごしらえ、そもそも味方の地上部隊なんてのも想定してねえからな」
そんな物、とても作戦などと呼べる物ではない。そう言ってシドは苦笑した。
シドの言う「前」とは、3年前のミッドガル会戦の事を指していた。地上と上空に展開するディープ
グラウンド勢に対して、陸路から進軍するWROと上空制圧を担う飛空艇師団の共同作戦は、
短い時間ではあるが綿密に練られた計画を元に実施された。
この作戦立案に一役買ったのがリーブだった。7基の魔晄炉停止作戦は言うまでもなく、
元ミッドガル都市開発責任者としての知識は、地の利を活かした敵の配置予測と進攻ルート、
効率的な空挺団降下ポイントの割り出しに有益な情報をもたらす事となった。また、限られた
兵力を有効に活かすための補給ルートや退路の確保など、リーブの口から出たのはおよそ
都市開発とは無縁のものばかりだったので、兵法こそが彼の本業なのではないかとシドが疑い
たくなるほどだった。
しかし今、リーブはいない。ここでクラウドに伝えられる情報と言っても、たかが知れている。
言外に含まれたシドの懸念を汲み取ったクラウドが、静かに頷いてみせる。
「大丈夫、上手くやる。それにシド達なら心配する事なんてない。違うか?」
そう言って、ゴーグルを着け愛車に跨るとグリップを握った。持ち主の帰還に呼応するする
ように、フェンリルは低い咆哮をあげ始めた。ゆっくりと開き始めたメインハッチから差し込む
夕陽が艇内をオレンジ色に染め、吹き込む風がクラウドの髪を小さく揺らす。回転数を上げた
エンジンは鼓膜と鼻腔を刺激し、全身に伝わってくる心地よい振動は疾走への期待感とともに
気分を昂ぶらせる。いよいよ発進というところで、貨物室内にクルーの声がこだました。
『艇長! WRO輸送部隊からの通信が入っていますので音声をそちらに回します』
通信担当に続いて聞こえてきたのは、予想もしない声だった。名前を呼ばれたシドと、前傾
姿勢だったクラウドはとっさに両足を地に着けてアクセルグリップを戻すと体勢を立て直す。
アイドリング音はまるで、急に足止めされ不満を漏らすフェンリルの呻り声にも聞こえた。
『シド! オイラの声、聞こえてる?』
「……ナナキ!?」
残念ながらシドの声はナナキに聞こえていない。どうやらそれを承知しているようで、ナナキは
一方的に話を始めた。どうやらナナキの声は録音された物のようだ。
『オイラ偶然、東大陸の南でガードハウンドの群を見つけたんだ。様子がおかしいと思って後を
追っていたところにWROの輸送車を見つけて、今はそのトラックに乗せてもらってる。大体の
話はWROの人達に教えてもらったよ。シド、空爆なんてしないよね? そっちでは一体なにが
起きてるんだい?』
そこまで言うと、ナナキは言い直す。
『……ええと、シドに聞きたいことは沢山あるんだけど、今はオイラが伝えるのが先だね』それから
さらにナナキは続けた『多分あのモンスター達はニオイにつられて南下してるんだと思う。ニオイの
正体が何かはオイラにもよく分からないけど、むかし魔晄炉で似たようなニオイを嗅いだことが
あるんだ。ガードハウンドの群は、多分そのニオイに引き寄せられてるんだと思う』
話ながらもナナキなりに言葉を選び、必死に状況を伝えようとしているのが分かる。
「ありがとよナナキ! お前の話、参考になりそうだって伝えといてくれ!」
シドの声を聞いた通信担当のクルーは回線を切った。貨物室内には飛空艇とフェンリルの
出す低いアイドリング音が響いている。
「……魔晄炉の、ニオイ……?」
クラウドがナナキの言葉を確かめるようにして呟く。魔晄炉周辺にモンスターが出没するという
のは自身の経験則からも納得のいく話だったが、モンスターを惹き付けている要因が嗅覚的な
刺激によるものかと問われると、確かなことは分からなかった。それに、特別に魔晄炉周辺のみ
にモンスターが出没するという訳でもない。つま先から頭の天辺までどっぷり魔晄に浸かって
いた経験もあるが、残念ながらニオイについての見解に彼の豊富な経験は活かせそうも無かった。
「そもそも魔晄にニオイなんてあったか?」
シドは腕を組んで目を瞑り、自身の記憶を辿った。パイロットとしての長年の経験上、魔晄
エンジンを搭載したロケットや飛空艇は身近だったが、そこで魔晄のニオイなんて物を意識した
事は無い。同じ魔晄でも宇宙開発とは縁遠い魔晄炉と言われて最初に思い浮かんだのは、
ミッドガルだった。
「……ミッドガルはなんだ? こう、独特の『いかにも体に悪そう』って臭気が漂ってたのは
覚えてるけどよ、ありゃ魔晄炉だけじゃねぇしな」
それを聞いてクラウドは内心、煙草の方がよっぽど体に悪いのでは? と考えたが口に出す
のはやめておいた。
「ナナキにはああ言ったけどよ、さすがに魔晄炉はオレ様の専門外だ」
これこそリーブの本職じゃねぇかと舌打ちしてから、それでもしばらくは考えを巡らせていた
シドだったが、導き出した結論を口にしながら両手を広げた。
「悪いがオレ様にゃ、これっぽっちも思い当たらないぜ」
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・短めですが保守のお供に。
・FF7のロケット推進剤≠魔晄。で、飛空艇動力も魔晄…じゃないような気がしてきました。
ここは考察不足です本当にごめんなさい。(雰囲気でw)
GJ!!!
205 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/25(日) 03:53:52.27 ID:T3t6YYyW0
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GJ!!
前話:
>>201-203 ----------
一方クラウドの脳裏では、ナナキとシドの言葉がまるで残響のように繰り返されていた。
魔晄炉。
モンスター。
ミッドガル。
反復される単語が引き金になって呼び起こされた記憶は、急速に時間をさかのぼり瞼の裏に
過去の光景を映し出す。
(モンスター……)
それは故郷ニブルヘイム。ニブル山の頂にそびえ立つ、寒く薄暗い場所。
(……魔晄炉)
整然と並べられたカプセルの覗き窓から垣間見える異形の生物。
それを見下ろしながら男は言った。
――「こいつらはなんだ? お前達とは比べものにならないほど
高密度の魔晄に浸されている」
人の形によく似た、異形の生物。その正体を男は明かす。
――「魔晄のエネルギーが創り出す異形の生物。それがモンスターの正体」
そう言った男は刀を鞘から抜き放つと、カプセルを斬りつけた。
何度も、何度も。執拗に刀を振り下ろす度にキン、と耳障りな金属音がこだまする。そうしなが
ら、男は反駁する様に呟いた「ではオレは人間なのか?」と。
答える者はいなかった。それでも男は問い続けた。
――「オレは……モンスターと同じだというのか……」
男の中に芽生えた疑問はやがて疑心へと姿を変え、生まれたのは復讐心だった。
復讐の炎は故郷の村を焼き払い、立ち上る黒煙と猛火に包まれる中で、かつて英雄と称え
られた男は鬼と化した。
ついに男は焔と血潮に染まった凶刃を振ることを厭わなくなった、むしろ口元に笑みさえ浮か
べそれに興じる節さえあるように思われた。その姿はもはや復讐の鬼ではなく、殺戮と破壊を
もたらす悪魔でしかない。
(セフィロス……)
刹那、くぐもった笑い声と共に男の振り上げた刃の前に佇む仲間の顔が脳裏を過ぎった。
背後に迫る危機と狂気を察しながらも、彼女は一切の抵抗をせずに、ただ一心に祈っていた。
これまでに幾度も振り返った過去。後悔と共に喪失感をもたらす記憶。
しかし今は違う。
祈りを捧げる彼女の口が、形を作る。まるでクラウドに何かを訴えかけるかのように。
(エアリス?)
決して届くことはないと分かっていても、彼女に向けて手を伸ばす。彼女の声は聞こえないが、
依然として何かを繰り返すように唇は同じ動きを繰り返していた。クラウドにしてみれば、まるで
悪い夢を見ているようだった。
振り下ろされた刃が彼女の身体を貫く直前、クラウドはその言葉の正体を知った。
「ク・ロ・マ・テ・リ・ア」
確かめるように発したクラウドの言葉を聞き届けると、彼らの姿は忽然と消えた。
後に残ったのは、仄かな光を帯びて祭壇から落ちていくマテリアの奏でた心地よい音色と、
誰もいなくなった水の祭壇の光景だった。
悪い夢に違いない。そうだ、きっと悪い夢なんだ――。
「……おい、クラウド?」
肩に置かれた手で強く引っ張られ、自分の名を呼ぶシドの声でようやく我に返った。朧気
だった視界は途端に晴れて、心配そうに覗き込むシドと目が合う。
「……大丈夫か?」
「なんでもない。ちょっと考え事をしてて……」
言い淀むクラウドに、シドは含み笑いを浮かべてこう言った。
「よく考えるってのは悪い事じゃねえけどよ、おめぇの場合は大抵ひとりでロクでもねー事を
しょい込んでるんじゃねぇか? ってな」
そう言ってクラウドの肩を叩いた。
「……参ったな。もう少し信用してほしい」
言いながらクラウドは小さな笑顔を向けた。乱暴な言いぶりだが、それが自分の身を案じる
シドの真意と言うのも分かっている。
それにしても、とクラウドは考える。
(黒マテリア……?)
炎に包まれ騒然たる故郷ニブルヘイムと、水と静寂に沈む遺都の祭壇。クラウドにとっては
どちらも忘れがたい過去であり、セフィロスにまつわる忌まわしい出来事の舞台という点でも
共通している。その意味で記憶同士が交錯した可能性は否定できなかった。しかしなぜ
白マテリアではなく黒マテリアなのだろう? 確かにあの中でエアリスは「黒マテリア」と言って
いた。
(俺の記憶……じゃない。だとしたら?)
悪い夢には違いない、けれど単なる夢や幻覚では無い様な気がする。
天啓、と言ったら彼女は大袈裟だと笑うだろうか? ふとクラウドは考えて思わず目を細める。
「彼女はずっと見守っててくれた」――いつかのティファの言葉を思い出す、きっとそうだ。
それで良いんだ。クラウドは確信した。
これは、彼女からのメッセージなのだと。
(黒マテリアがあったのは、忘らるる都じゃない)
「……古代種の神殿」
意識せずに声が出た。
「なんだよ急に? あのカラクリ神殿がどうかしたのか」
シドが茶化すように横やりを入れるが、決して悪気があるわけではない。逆にシドから見れば、
唐突に古代種の神殿の名を口にしたクラウドの思考こそ脈絡を見出せない。
「カラクリ……そうだ、確かに古代種の神殿だ」
今まで心のどこかで引っ掛かっていたものの、まるで見当も付かずに考える事を諦めていた
疑問が、シドの言葉で蘇った。それは新本部施設の中でクラウドやユフィが目にした“手品”だ。
あれが膨大なエネルギーによって引き起こされた現象だと言うのなら、その源はどこにあったの
だろう?
仮に魔晄炉だとして、しかしその影響の中には人に錯覚を見せる様な作用があるのだろうか?
あくまでもエネルギーを汲み出し、利用しやすい様に加工する施設だったはず。
魔晄エネルギーの凝縮現象の結果、炉内では稀にマテリアが生まれる。錯覚の正体が
マテリアによるものだとすれば、一種の広域魔法という事になる。
(……だけどそんな話は聞いたことがない)
ニブルヘイム魔晄炉やミッドガル、ヒュージマテリアを抱える海底魔晄炉やコンドルフォート、
クラウドの知る限り魔晄炉やその周辺で幻視幻聴を来したと言う経験も無い。
そもそも媒介が無ければ、魔法として効果が発現することは無い。マテリアを使える者がいな
ければ、そこら辺に転がっているガラス玉と変わり無い。
(それに、あそこで起きた出来事は幻や錯覚なんかじゃない……)
では、古代種の神殿のようにそれ自体がマテリアだとしたら? 迷路のように入り組み、常人
では理解できない構造の建物。その点では見せられた“手品”と一致していると言えなくもない。
(あの建物がマテリアでできている? ……そんなこと可能なのか?)
今は無き古代種の神殿は、全体の構造はもちろん工法や仕掛け、それらの動作機関の何も
かもが謎に包まれた遺跡だ。今ですら実際に神殿を訪れたクラウド達以外には、ほとんど存在
すら知られていない。知っていてもおとぎ話の類としてだ。神殿について唯一はっきりしているの
は、それが黒マテリアを安置するため、古の時代にエアリスの祖先――セトラ達の手で築き
上げられたものだという事だった。
(まてよ)
クラウドははっとして顔を上げ、シドの後ろにあったパネルを見返した。経線と緯線の上に、
縁取られた海岸線。その形は6年前とは異なるものの、当時の面影を残っている。
「もしかして……この場所って」
島の南西に広がる外洋、北東には入り組んだ海峡を挟んで大陸からは隔絶された場所に
あったため、今でも人々の暮らす街や集落の存在しない未開の地。その為、島の殆どが広大な
森と草原に覆われていた。
「ウッドランドエリア」シドが答える「……6年前とはずいぶん地形が変わっちまったが、この辺に
街や村が無かったのは不幸中の幸いだったぜ」。
でなければ、押し寄せるモンスター群を前にして飛空艇師団は手も足も出せなかったろうなと
語るシドの言葉に確証を見出したクラウドは、パネルの上に自身の記憶とを重ねてから、改めて
呟いた。
「やっぱりあそこは、古代種の神殿のあった場所……」
仮にそうだとしても、今更それを知ったところで状況を変える手がかりになるのだろうか?
その疑問を口にしたのはシドだった。
「なあクラウド、さっきからなんで古代種の神殿なんかにこだわってるんだ?」
クラウドは建物内で遭遇したいくつかの不可解な事象――飲み込むように突如として床に空い
た穴。ユフィとともに乗ったエレベーターごと建物の外へ放り出されたとしか思えない瞬間移動
――をシドに話して聞かせた。しかも自分だけでは無く、聞けば他の仲間達も似たような現象に
遭遇していた。と言う事は、個人の錯覚でない事は明らかだ。
「言われてみりゃあ、確かに空耳みたいなのはあったけどよ。さすがにそんな突飛なモンは見て
無ぇなあ……」
シドの口調は残念だと言わんばかりだった。しかしクラウドの話す通りなら、あの建物内では
通常起こり得ない現象が起きている。シドをして“カラクリ神殿”と言わしめた古代種の神殿を
連想したくなるのも頷ける話だ。
だからといって、古代種の神殿との共通点を見出せるとは思えなかった。
「つっても古代種の神殿って、ありゃあ黒マテリアだったんだよな?」
「そうだ」
クラウドが頷く。
「マテリアで建物を作れると思うか?」
「……分からない」
クラウドの返答は限りなく否定に近いものだった。ここまでは互いの認識と意見は一致して
いるのを確認したシドが、話の先を続ける。
「いくらリーブがミッドガル都市開発部門のトップだったって言ってもよ、やれる事には限度って
モンがあるだろ。そもそも古代種の神殿なんざ、どんな作りしてるかも分かん……」
そこまで言ってシドの言葉が不自然に途切れた。クラウドは話の先を促すようにシドに視線を
向けたが、腕組みをして仁王立ちのまま微動だにせず、俯き気味に珍しく硬い表情を作って
いた。あまりにも無反応だったので、実は居眠りしているのではないかと心配になったが、
眉間に刻まれた深いしわを見て、そうでは無いと知った。
ややあってシドは顔を上げる。
「なあ、クラウド」ゆっくりと自身の推測を話し始める「古代種の神殿の正体は黒マテリアだった。
そんで、黒マテリアを持ち出せるようにする為には、誰かが中に残って神殿パズルを解く必要が
あった」ここまでは間違いないよな? 確かめるように問う。
「黒マテリアを簡単に持ち出させないようにするために、だな」
頷いたクラウドを見て、シドは先を続けた。
「つまり、神殿パズルの内容はそれを解いた奴にしか分んねぇし、解いた奴は黒マテリアの中に
閉じ込められちまうんだな」
「あの時ケット・シーがいなかったら、どうなっていただろうな……」
それでも結果的に黒マテリアはセフィロスの手に渡ってしまったが、少なくともケット・シーが
いなければ他の誰かが犠牲になっていたかも知れない。
「あの黒マント野郎がパズルを解いたとしても、黒マテリアを手に入れる事はできた」重要なのは
そこじゃねぇんだと断った上で話を続ける「けどよ、たぶん古代種の連中からしたらケット・シーの
存在ってのはイレギュラーだったんじゃねぇか?」。
「イレギュラー? ……たしかに古代種が栄えていた時代にロボットは無かったから……」
違う。とシドが首を振る。
「犠牲を払って黒マテリアを持ち出すこと、それは連中も考えてただろうよ。あの神殿の仕掛けは、
その想定の上に建てられたんだってのも分かる。けどよ、パズルを解いた奴が神殿の外にいる
って事は、あいつらも想定してなかったんじゃねぇか?」
確かに黒マテリアのためにケット・シーは犠牲になった。しかし、それを操っていたリーブは
その後も生きている。パズルを解いたのは、ケット・シーを操作していたリーブだ。
「神殿パズルの内容は誰にも分からねぇ。おそらくは古代種だったエアリスにも、だ」
シドの言うとおり、黒マテリアを持ち出す為の仕掛けは分かっても、パズルの内容は解いた
本人にしか分からない。そしてパズルの内容とともに、黒マテリアの中に封じられる。
あくまでもオレ様の予想だがと前置きして、シドは話の先を続けた。
「たとえばそのパズルが、古代種の神殿の設計図。……だとしたら?」
黒マテリアは持ち出せても、パズルは決して持ち出せない。古代種はそう考えていた。だから
パズルが神殿構造の根幹にかかわる物だとしても、それが外部に漏れることは無い。
つまりケット・シーはリーブを経由して、本来であれば門外不出の古代種の技術を持ち出して
しまったのではないか。
----------
・一つだけお願いがあります。
いなくなってしまったケット・シー(1号機)の事、時々で良いから思い出してあげて下さい。
・おとぎ話の件は、FF7でキーストーン捜索中に聞ける武器小屋のオヤジの台詞に由来。
その程度の認知度はあったのかな?
・ねつ造にも程があるというか。…今更ですけどね。
GJ!
GJ!
本編絡んでいい感じだね!
乙
乙
ほ
ラストダンジョン作者氏乙
ティファとデンゼル可愛い杉
前話:
>>207-212 (場面は
>>136-142の続き)
※今回、読み手を置いてけぼりにする展開になるかも知れません。
…そうなっちゃったら申し訳ありません。遠慮無くツッコミ入れて下さい。(今に始まった事じゃ無いかw)
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一瞬と呼ぶには些か長く、暫しとするには短すぎる程度の時間、ケット・シーは思考を止めて
呆然と佇んでいた。それは彼の目――正確には視覚情報ではなく脳裏――に映った、とても
奇妙な光景のせいだ。
「……さて、ようやくあなたと接触をもつことができましたね」
目の前にいたのは見知った人物。それどころか飽きるほど見慣れた姿であり、だからこそ
奇妙に感じた。
「“お久しぶり”ですね、ケット・シー」
なぜ自分の操作主がここにいるのか?――呼びかけられたケット・シーは状況を呑み込めず、
返答はおろか反応することができなかった。そもそも、操作主と自分がこうして向き合う事は無い。
操作主の一部である自分が、鏡を見ているわけでもないのに対峙しているという状況自体が
あり得ないのだ。
「シェルクさんには少し気の毒なことをしました。ですが、しばらくすれば心身共に元通りの機能
を取り戻せるはずです」リーブとして体験してきた積年の記憶と、それに付随する感情を一気に
取得した事により、彼女の脳と精神は飽和状態にあると言う。彼女自身に備わった防衛機制の
働きにより、心身保護のため一時的にその機能を停止しているだけ。それはちょうど許容量を
超えて回路に流れた電流を遮断した安全装置と同じように、機能が正常である為に起こる現象
だと説明したうえで続ける「あくまでもこれは私の記憶情報であって、彼女の物ではありません。
ですから一時的な過負荷とはいえ、それほど深刻なダメージは受けていないはずです」。
いずれにせよ回復までは安静にしておく必要はあると言いながら、ぐったりとして動かなく
なったシェルクをその場に静かに横たえさせる。
『なっ!? アレはボクの――』
ようやく言葉を絞り出したケット・シーに向き直ると、彼は顔を上げて頷いた。
「そうです。あなたの実体験であり、かつて共有していた『私』の記憶。そして……感情」
『あんなん、単なる記憶と違うで』
トラウマだ。そう言おうとしたケット・シーの言葉は最後まで続かなかった。
「そうですね。容易に触れることのできる物ではありませんし、振り返ったところで楽しいことも
ありません」
『そんなモンを、なんでわざわざ?!』
こうなる事は予想できた筈やないかと、ケット・シーの語気が僅かに強まる。
「ここから先、彼女に動かれると少々都合が悪いので」そう言ってリーブは微笑を浮かべる。
『んな勝手な理由でシェルクはんを危険な目に遭わせたっちゅうんかい!?』
駆け寄ろうとしたケット・シーを制するように、リーブの手がシェルクの額に伸びる。
「……今の彼女には安静が必要です。私からこれ以上の情報を彼女に渡すとどうなるか、
あなたなら説明せずとも分かりますね?」
状況をたとえるのなら、なみなみと水をたたえた容器に水を注ぎ続けるのと同じだ。
『つまり、シェルクはんを盾にしてボクを脅しるっちゅー事かいな?』
「理解が早くて助かります」
『最低やな』
ケット・シーの声には明らかな怒りがこもっている。
「今さらですね」
リーブはそれもさらりと受け流す。
「……それにね。私が彼女にしたことは、彼女が6年前にディープグラウンドで行って来た事と
ほとんど同じなんです。ただし今回は、“自分とは別人の記憶”情報であるとはっきり断ってい
ますから、欺瞞にならない分まだ救いはあるでしょう?」
『せやかて、今のアンタを正当化する理由にはならんやろ』
「はじめから正当化できるなんて考えていませんよ。ただ、シェルクさんもそれは同じでしょうね」
『……“シェルクはんにアンタを責める資格はない”とでも言いたいんか?』
微笑を崩さずに、リーブは返す。
「資格までは問おうとは思いませんが、」
『要するに』言葉を遮ったケット・シーは不快感を隠すつもりは微塵も無い様だ『シェルクはんが
昔やって来た事やり返して、当時の被害者の仇を取ったつもりかいな?』。
リーブに対するあからさまな非難。憤り。
『アンタ何様のつもりや? それとも何か、偉くなったら人を裁ける様にでもなるんかい?』
そんな物、ただの慢心以外の何物でもない。
「話を最後まで聞けばそんな結論にはなりませんよ」相も変わらずリーブは淡々とした口調で
応じる「……少なくともそう言った要素を踏まえて、無いと分かっている相手の反論を牽制して
いるわけですから、あなたが思っている以上に卑劣な行為だと言う自覚はあります」。
これも神羅にいるうちに身についた能力かも知れないと、リーブは笑う。
『アンタの自己評価はどうでもエエわ。で? 何年ぶりか知らんけど、なんや用あって接続して
来たんやろ? いちいちまどろっこしい説明要らんから、早う用件を済まさんかい』
いつになく辛辣なケット・シーの物言いに、リーブは首を傾げ思案を巡らせていたが、ふと思い
ついたように口を開いた。
「私があなたを操作するという訳ではありませんよ? むしろ、あなたが要件を満たしてくれさえ
すれば、私はここからすぐにでも退散しますのでご安心下さい」
『せやから御託は要らんから、用件は何や?』
「簡単です、私をここから退かせる事。残念ながらこれは、あなたにしかできません。その為に
ずいぶんと根回しに時間が掛かってしまいました」
『根回し……? って、まさか』
言外の意図に思い当たったケット・シーが後退る。そんなことは無いと信じたかったが、もし
考えていることが正しいとすれば、とんでもない話だった。
リーブは立ち上がると、ケット・シーを見下ろしてこう言った。
「この茶番劇の幕を引くためにも、あなたには事の次第をお伝えしておく必要がありますね」
その言葉を境にして、リーブの記憶と彼の意思が媒介なしにケット・シーに伝わる。伝わると
言うよりも、まるで以前から自分の物の様な、自分の一部であるという感覚――これこそが
インスパイア能力。ケット・シーにとってはずいぶんと久しく、また懐かしい感覚だった。
***
さてケット・シー。あなたが私からの干渉を受けなくなった時期がいつ頃だったか覚えて
いますか?
古代種の神殿で1号機が修復不能になって以来、あなたはよく働いてくれました。北の
大空洞での決戦を凌ぎ、メテオを退けたあなたの躯体は耐用限度をとうに超えていました。
これ以上の使用に耐えられないと判断した私は、エッジのセブンスヘブンにあなたを預ける
ことにしました。カダージュ達の件は想定外でしたが、結果的には最善策でした。あの後も
マリンちゃんはいつか私が回収に来ると思い込んでいた様ですが、最初からそのつもりは
ありませんでした。
しかしそれから約半年後に予期せぬ事態が起きました。ミッドガルの幽霊事件です。私は
あなたを操作してこの件の調査に乗り出そうと考えました。しかし、こちらとの情報共有は
できても操作ができませんでした。私が最初に異常を自覚したのはこの時です。
「そらアンタが『操作せんかった』、の間違いと違うんか?」
個人的にはミッドガル調査の件にマリンちゃんやデンゼル君を巻き込む事は得策とは
考えていませんでした、ですから意図的に操作しなかったという事はありません。結果的に、
あなたは私の考え得る最善の行動を取ってくれたので、問題はありませんでしたが。
「……まぁ、あの子らを危ない目に遭わせとうない、って言うんは分かるケドな」
その後しばらく経ってようやく、あなたが自律行動を取っている事に気が付きました。以来
こちらは新しく用意した躯体を使い、表向きはこれまで同様の活動を行うことができました。
けれど、今日に至るまでの間、あなたは私の操作を受け付ける事はありませんでした。
その理由、お分かりになりますか?
「……分からへん」
あなたがインスパイアの制御下にある動体ではなく、固有の意思を獲得したからです。
より正確に言うならば、“あなたの意思がインスパイア能力に対抗する術を手に入れた”のです。
「なんや、出来合いの空想科学小説みたいな話やな。……んで? なんでボクなんや」
他のケット・シーとあなたには決定的な違いがある。それが、あなたがインスパイアの影響下
から外れて自律行動を取り、さらにインスパイア能力そのものに対抗しうる要因なのです。
「インスパイア?」
私があなたを操っていた力を、そう呼ぶのだそうです。正直これは私もつい最近知ったこと
なんですがね。『あやつる』のマテリアを媒介とした“操作”との違いは、体感的にお分かり
頂けますね?
ここに学術的な根拠は何一つもありません。ただ言えるのは、インスパイアというのは私の
感情の一部を核として躯体に付与、それを動力源として操作する能力なのです。
「せや、ボクはあんたの操る通りに動くぬいぐるみやった。中に入っとるコンピュータはあくまでも
動作支援。それと周囲の目をごまかす物でしかない。そらボク以外のケット・シーも同じハズやで?」
最初は私もそう思っていました。ですから理解できなかったのです、私の操作を受け付けなく
なった理由が。
「サッパリ分からんなぁ」
現に、今もシェルクさんのSNDを利用してようやくここまで辿り着いた程です。従来通り私が
あなたを操作できる状況であれば、こんな事をする必要はありません。
「あぁ、それ聞いてやっと納得いったわ。そんでシェルクはんやったんか」
こうして再接続するために、かなりの時間と手間を要しましたよ。
「……でもまだ分からんわ。仮にアンタの言う通りボクが操作されるんを拒否しとったんだとしても。
どうしてそれがボクだけ可能やったんか、っちゅー話や。ボクと他のケット・シーの何が違うんや?」
気が付いてしまえば簡単な事なんですよ、ケット・シー。
しかもそれは、はっきりと目に見える形で示す事ができる。
「もったいぶらんと、何やさっさと言わんかい」
あなたの左腕に結んでいるリボン、それが答えですよ。
「リボン……って。これはエアリスはんの……?」
そうです。
「まぁ、確かにリボンは1コだけやし、付けとるんはボクだけやけど……」
あなたは、左腕に結ばれたリボンの意味を理解している。2つの死を経験する事で、その意味
を知ったのです。
「……2つ」
ひとつめは本来リボンの持ち主でもあるエアリスさん。水の祭壇での彼女の事は……お話し
するまでもありませんね。
「忘れる訳ないやろ」
そしてもうひとつ。……それが、古代種の神殿に残ったケット・シーです。
「……ボク……やのうて。1号機の?」
先ほどもご説明したとおり、本を正せばインスパイア能力とは私の記憶とそれに由来する感情
を動力源にする機関を構築するというもの。その原理は、ライフストリームという記憶・思念の
集合体である奔流の一部を汲み出し、エネルギーに変換する魔晄炉にも通じます。
また、これと似た原理は個体にも当てはまります。ある種の鍛練を積んだ者であれば、マテリア
を介さずして魔法と同等の効果を発揮する事が可能です。これはあなたも良くご存知ですね。
リミット ブレイク
「 限界 突 破……?」
その通りです。一瞬とはいえマテリア無しにあれだけの現象を起こせるだけあって、必要な
エネルギーは相当な量になります。感情を引き金に生命エネルギーを増幅させるというのが
発動原理とされていますが、ともすると生を維持するための箍を外す行為です。そこに必要な
ものは死という概念。自我の消失、肉体の消滅、言葉にすれば死の定義はあいまいになりがち
ですが、それを本能的に理解しているからこその限界突破です。
自身に迫る死の危険を回避するための最終手段であると同時に、一歩間違えれば肉体さえ
破壊しかねない程のエネルギーを放出します。ですから通常では起こり得ないし、仮に起こせ
てもその放出を制御できるものではありません。つまり、あらゆる生物に備わった究極の防衛
機制。それは文字通り諸刃の剣。
「それってのは、つまり」
あなたにも覚えがあるはずです。
「けど、ボクは……」
インスパイア能力によって生み出された――つまり元が私の記憶や感情に依存する存在で
ある以上、他の皆さんと比較すれば能力面で劣るでしょう。それでもあなたは自身の臨界点を
認識し、それを超える術を持つまでに至った。
だからこそ他の誰もが持ち得ない、あなただけの能力がある。それは、対峙した生命の全てを
終わらせる事のできる文字通りの異能力。
「オールオーバー」
インスパイアによって生み出されたあなたが、インスパイアそのものを否定するための能力。
下手をすればあなた自身をも滅ぼしてしまえる力。ですがその効果の及ぶ範囲はごく小さく、
非常に限定的なものです。一方で、インスパイアを確実に葬るためには、あなたの能力が
不可欠です。
言ってみればインスパイアと対を成す力であり、暴走した能力に歯止めを掛ける唯一の手段。
あなたはそれを手に入れたのです。
これが、他のケット・シーとの決定的な違いであり、あなたがリボンを結んでいる理由です。
「……分からんわ……。なあ、なんでそんなに必死になるねん? アンタの能力が世界を滅ぼせ
る程たいそうなモンには思えんのや」
確かにこの能力を破壊という尺度だけでみれば、あなたの評価通り、脅威としてさほど重要視
するものでは無いでしょう。しかし“継続的な支配体制の構築”という意味において、この能力は
絶対的な力を発揮します。
その模範となるのが私の役割であり、局長として全うすべき最後の責務です。
「アンタが反面教師になるって?」
そんなところです。
さあ、話は終わりですケット・シー。
あとはあなたの役目です。きちんと情報を整理して、私を倒しに来て下さい。あなたの心に
僅かでも迷いがあれば、臨界点を超える事はできません。理性、情動、そして生物としての
本能。どれ一つも欠かしてはなりません。
「なんや大げさな話になっとるけど、要はリボルバーと実弾が一発あれば成立する遊びと一緒
やないか」
そうですね。私が局長という地位にいなければ、恐らくそうした事でしょう。
どちらにしてもピースの欠けたパズルでは私を倒す事はおろか、あなたが倒れる羽目になる
でしょう。ふざけている余裕はありませんよ。
「いくら回しても揃え甲斐が無い、おもろないスロットやな……。どうせ命賭けるなら弾倉回しとる
方がいっそ潔いやないか」
まぁ、私の目的はあなたと賭け事をする事ではありませんし、遊戯に興じようという意図でも
ありませんからね。
「…………」
安心して下さい、あなたの準備が整うまで逃げも隠れもしませんよ。
----------
※今更ですが作者はケット・シーとリーブが好き(過ぎ)でこの作品を書いています。
お付き合い下さる方へ、心からありがとう。
・リミット技をこじつけて解釈した話。というかこれを書きたいが為の拙作。
テーマは“Lv2までしか無いのにオールオーバーとジョーカーデスが強すぎる件。”
(耐性無視の即死というのは、無機物に命を吹き込むインスパイア能力からすると真逆?)
その辺を制作者が意図して作ったのだとしたら、これこそ続編要素に相応(ry
※強すぎる、といってもルーレット揃わなければ意味が無い。
・ピースの欠けたパズル=リールの揃わないルーレット。前回の古代種神殿パズルとかけて
描写上こう書き換えてます。
ロシアンルーレットという言葉を出すとちょっと違和感があるので遠回しな表現に。
・ライフストリームがすべての生命の基盤と位置づけられた世界観の中で、魔法の媒体となるマテリア。
個の感情によって発動するリミットブレイク。…個人的にFF7の設定の中で一番好きな部分なので
大いに語らせて頂きましたw…少しでも伝わっていれば良いなーと。
・後半、一人称表現でリーブとケット・シーの会話になっているところがインスパイア能力使用時の描写。
…という書き分けで伝わるかどうか不安だったので後書きにw書き手として卑怯ですごめんなさい。
GJ
GJ!
GJ!
228 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/29(土) 20:58:45.73 ID:9j41mOAiO
ぽいぽいぽいぽいぽいぽぽいぴーぽいぽいぽいぽいぽいぽぽいぴー
前話:
>>219-224(場面はエッジに戻ります)
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「……おかえりなさい」
唐突に聞こえてきたマリンの声で、ヴェルドは視線を巡らせる。が、誰かが室内に入ってくる
気配はない。その言葉が誰に向けられたのかを知ろうと今度はマリンの視線を追うと、机の上
に座ったケット・シーに行き当たる。
『ん〜。なんや、追い出されてしもたんか……?』
独り言を呟きながら、まるで傷の具合でも確認するかの様に頭を振り、次に両手と両足を
動かし、最後に尻尾を振ってみる。ディスプレイに映し出されている通信リストは先ほどと同じ
ままで、特に変化した様子は見られない。どうやら通信網の方は無事らしい。
「どうかしたのか?」
『あん中でリーブに会うた』そう言ってケット・シーはディスプレイを指す。
「どういうことだ?」
さらに問うヴェルドの横で、マリンは不安げな視線を送る。大丈夫? どうしたの? 尋ねたい
気持ちは山々だったが、彼らの会話の邪魔をしない様にと喉元まで出かかった言葉を飲み
込んだ。
マリンの目には、ケット・シーの様子が先ほどまでと明らかに違って見えた。しかもその変化は
外見上の物ではない。だから余計に不安が募った。
『よりにもよって、シェルクはんを盾にボクを脅しよった。あんな卑怯者とは思わんかったで!』
その言葉を聞いたマリンは安堵に近いため息を漏らした。ケット・シーの様子の違い、その「変
化」の具体的な理由が分かったからだ。
「良かった、具合が悪いわけじゃないんだね。でも、どうして怒ってるの?」
ケット・シーがここまで怒りを露わにするのは珍しいとマリンは思う。日頃から歯に衣着せぬ
物言いこそするものの、ひとつの対象にここまで露骨な怒りを向けている姿は、今まで見た事が
無かった。正確には怒りと言うより、嫌悪や憎悪に取り憑かれている様な危うさを感じたというのが
近い。それこそがマリンの抱いた不安の正体だった。
呼びかけられてケット・シーがマリンに顔を向けた途端、はっとして小さな肩を震わせると、
ぎこちない動作で顔を逸らし右手で頬の辺りを掻く仕草をして見せた。
『ああ、なんや恥ずかしいトコ見られてしもたなぁ……』そう言ってもう一度マリンに顔を向ける
『ボクのこと心配してくれて、おおきに』。
それはいつもの気さくで愛らしいケット・シーだった。マリンは内心でホッと胸をなで下ろす。
頬にやった手を今度は口元に持ってくると、わざとらしく咳払いをしてみせる。それから、
ケット・シーは質問に答えた。
『おふたりさんにも話した通り今のボクはリーブの操作やのうて、ボク自身の意思で動いてる
んやけど、どうもリーブは“ボク”を動かす事ができなくなったみたいなんや。そんで、ボクと
接触を図るために利用したのがシェルクはんのSNDやった。確認した訳やないけど、多分ボクと
シェルクはんが接触する機会を待っとったんやろうな』
目の前にいるふたりに事情を説明しているうちに、ケット・シー自身もこれまでの状況を落ち
着いて整理する事ができた。
何らかの理由でインスパイア能力を使ってケット・シーとの接続ができなくなったリーブが、
外部――つまりネットワーク経由でケット・シーと接触を試みるためには、人の記憶や精神に
さえも干渉できるシェルクのSNDが必要だった。そのために彼はシェルクの能力と、SNDの実験
データを利用したのだろう。ケット・シーが直接、SNDに関する情報収集にあたった覚えは無い。
となるとこれらの記憶はリーブが用意したものだ。
仮にこの推測が正しければ、リーブの中でこの計画はかなり前からあったと言う事になる。
しかもシェルクは、ケット・シーのライブラリの中にSNDに関連しそうな記憶情報を見つけたと
言ってその閲覧を求めた。つまり、わざわざシェルクの興味を引く様な項目であると見せかけ、
さらに保管形態を変えていたのだろう。その証拠に、その記憶情報はシェルクを陥れるための
罠だった。支障を来すほどでは無いにしろ、シェルクを欺き一時的にでも危険にさらすという
狡猾なやり方が、ケット・シーは気に入らなかった。
いくら過酷な過去や後世に伝えるべき過ちであったとしても、記憶はあくまで自分が立ち返る
為のもの。自分以外と共有するべきは客観的な記録であり、個人の主観によって形成された
記憶では無い。何よりケット・シーの癪に障ったのは、その押しつけ行為だった。
考えれば考えるほど腹立たしくもなる一方で、何に腹を立てていたのかが見えると冷静にも
なれる。
『んで、シェルクはんを盾にしたリーブの要求は1つ「インスパイアっちゅー異能力をもつ自分を
抹殺してほしい」。ついでに、それができるのはボクしかおらんそうや』
こうやってボクの怒りを煽るのもリーブの思惑なのだと付け加えるが、分かっているからと
言って腹の虫がおさまるわけでは無い。
話を聞き終えた頃には、胸の前で手を組んだマリンは眉を顰め苦悶の表情を浮かべていた。
一方のヴェルドは、思いついた疑問をストレートに口に出す「それにしては随分と話を大きく
したな。あいつらしくない」。
リーブの性格からして不要な混乱は好まない。当事者同士で片の付く問題ならば、その範囲
外に問題を持ち出す様な行動は考えづらかった。だが今回に限ってはその逆で、積極的に
周囲を巻き込もうとしている様に見える。
『そこなんやけど……』ケット・シーが首をかしげながら続ける『ボクも同じこと思って聞いてみた
んや。そしたら「皆の反面教師になる」んやて。それが局長としての責務やからって』。
ケット・シーはリーブから聞いた事を説明する。
『――“継続的な支配体制の構築”という意味において、この能力は絶対的な力を発揮します。
その模範となるのが私の役割であり、局長として全うすべき最後の責務です。 ――やと』
言葉として伝える事はできても、ケット・シー自身はその意味を計り兼ねていた。
一通り話を聞き終えたヴェルドは目を閉じ、ついには眉間に深いしわを寄せたまま黙り込ん
でしまった。
『なあ、これってどういう意味やろか?』
問われたヴェルドはゆっくりとまぶたを開けると、低い声でこう問い返した「デンゼルがここを
出て行った後、俺の言った事を覚えているか?」。
『ええと、空爆は絶対させたらアカンって話やったか?』
「そうだ。正確にはその空爆がもたらす影響について」
――ジェノバ戦役以降、世界を保っていた“『英雄』の秩序”は崩壊する事になる。
「現在の『英雄の秩序』、それをもたらした一番の要因は間違いなくリーブだ。WROという組織を
立ち上げ、為政者として表立った活動をしているのは彼だけだからな」
先のメテオ災害の元凶となった神羅カンパニーの重役幹部でありながら、ジェノバ戦役の英雄
という相反する面を併せ持つのは彼の他にいない。リーブが適任者と言うよりも、彼にしか
できなかったと言った方が正しい。
飛空艇師団長のシドも表立った活動という意味ではリーブと似ているが、彼の場合は各地の
政に干渉することはしない。また高度な専門性を要する特性上、飛空艇師団の構成員もかつて
の神羅カンパニー宇宙開発部門出身者が多く、WROほどのばらつきは無い。
「さっきお前が指摘した通り、人々は世に起きた不条理や身に降りかかった不幸を、誰かの
責任にさせたがった」たとえそれが百パーセント人災とは言えなくても。ヴェルドは敢えてそれを
声に出す事はしなかった。
「――それがかつてのアバランチであり、神羅だった」
世界には神羅に対して未だ抵抗感を持つ者も少なからずいる。これはルーファウス神羅が
表舞台に表れない理由の1つだろう。恐らくリーブはその意識を逆手に取って、WROの運営に
利用している。
「要するに彼らが求めているのは“象徴”だ」メテオ災害後に登場したWROは、人々にとって
格好の寄る辺となり、ディープグラウンド騒乱を経てその地位は不動の物となった。
「……言っておくが、象徴を求める行為の是非を論じる気はないからな」そう前置きした上で、
ヴェルドはケット・シーの語っていた結論をなぞる。
「つまりWROは神羅の二の舞……いいや、リーブはそれも見越して組織を立ち上げたんだろう」
ヴェルドの言葉に続いて、マリンとケット・シーがそれぞれに呟く。
「みんなの期待や希望を一身に背負って……」
『同時に、不満や怒りのはけ口も引き受けた』
両者の言葉に黙ってヴェルドは頷く。所属する隊員の経歴や出自もばらばらのWRO、言わば
巨大な寄り合い所帯を束ねるためには、同一の目的と強い象徴が必要だった。メテオ災害から
の復興、ディープグラウンドソルジャーという共通敵の存在。それら共通の目的が消滅した今も
なお、WROが組織としての機能を保っていられるのはリーブの持つ象徴性だった。
(あいつは英雄というカリスマに頼らない象徴性を選んだ。それが局長のとった戦略なのだろう)
規模で言えばタークスなど遠く及ばない、何より自分の判断と行動が世界に及ぼす影響は
計り知れない。局長という立場で受けるプレッシャーなど見当が付くはずも無い。仮にそれが
自分にしかできないと分かっていても、生半可な覚悟で就ける職では無いし、維持はそれ以上
の困難を伴う。常人では到底――少なくとも自分には不可能だとヴェルドは思う。
(局長となった時点からあいつは個を捨てた。隊員の、あるいは民衆の象徴であり続ける事を
選んだ。それが『局長』であることの意味。……俺が英雄統治と呼ぶ物の本質)
しかし、その不可能を可能にしたのはリーブの持つ精神力。そして、リーブに言わせるところの
異能力。
「だがな、恐らくリーブが見ているのはその先だ」
『先?』
ケット・シーは首をかしげる。ヴェルドの言う「先」に思い当たるところが無い。
「神羅の二の舞……」ケット・シーに促されたヴェルドが答える「メテオ災害の影に隠れてしまった
本当の脅威を、あいつは再現しようとしている。それは目に見える破壊や災害の類では無い、
けれど確実にある脅威」。
『そういえばリーブも似た様な事言ってたっけか……』
――確かにこの能力を破壊という尺度だけでみれば、
あなたの評価通り、脅威としてさほど重要視するものでは無いでしょう。
つい今し方まで聞いていたリーブの声がよみがえる。その先に続いた言葉と、ヴェルドの声が
重なった。
――しかし“継続的な支配体制の構築”という意味において、この能力は絶対的な力を
発揮します。
「英雄統治。……すなわちその先にある独裁体制の構築。神羅がかつて目指した世界。
あいつになら、それが可能なんだろう」
『まさか!?』
「リーブさんに限って、そんな事……」
戸惑いがちに呟いたマリンに向き直ると、ヴェルドは穏やかに答えた。
「そうだな。リーブに限ってそんな選択はしないだろう。ただ、あいつがいなくなった後の保証は
無い」聡明な君主が去り治世が乱れるという教訓は、歴史に多く残されている。
「ケット・シー。リーブと同じ異能者、もしくはお前と同じ様な存在は他にもいるのか?」
『分からん。少なくともボクは聞いた事あれへん』
質問したヴェルドも答えは同じだった。神羅の情報網を持ってしても、そんな能力の存在すら
把握できていない。同じ社員だったリーブがその能力を口外したがらなかった事もあるが、
リーブひとりが努力したところで、他に同じ様な能力の持ち主がいれば、何らかの形でその
存在は露見するはずだ。たとえば古代種の様に。
なにより、不確定だったとしてもそんな能力が存在する可能性を知れば、あのプレジデント
神羅が見過ごしておく筈は無い。
「どれだけ優れた統治者でも、人々を従え治世を維持するのは難しい。さらにこの情報化社会に
おいて、人々の思想をひとつに束ねておくのはさらに困難になる。人の数だけ多様な見方があり、
思想がある。それらが互いに触れる事を容易くしているのがネットワークだ」
そこまで聞いてケット・シーにもようやく脅威の正体が見えてきた。
『監視か!?』
「簡単に言えばな」神羅はミッドガルの至る所にID検知エリアを設けて、人々の移動を監視して
いたのは不穏分子の早期発見という意図もある。が、思想まで監視する事はできないし、人の
脳を覗く技術というのも存在しない。
『ディープグラウンドでこっそりSNDっちゅー技術を開発しとったんは、そういう目的もあったん
かいな……』
いくらなんでも身体は一つ。規模が大きくなればなるほど組織内でも目の行き届かない部分
は増える。しかしリーブの様な能力の持ち主なら、それこそ隅々にまで目を配れる。組織内に
起きようとする変化の前兆を早期に察知できる確率は格段に上がると言う事だ。
「しかも監視役は影武者としても機能する。支配者にとってこれほど都合の良い能力は無い」
その有用性についてはここへ来てヴェルド自身も目の当たりにした。
『リーブが本気出しとったら、今ごろ世界はWROの支配下っちゅー事か』
「しかもリーブの様な異能者が他にいるのかどうか分からない。異能力の原理はおろか、存在の
確証すら無い。すると今後、自分以外に悪意のある異能者が現れた場合、そいつが世界の
覇権を握ろうとすれば最悪の事態に陥る」
神羅でさえ成し得なかった思想の監視と統制――人々の自由が奪われた世界。仮にそこが
争いの無い世界であっても、平和と呼ぶには些か疑問が残る。
「だからリーブさんは、それを演じた……?」
マリンの言葉にヴェルドは頷く「大方『そうする事ができるのは異能者たる自分だけだから』と、
あいつの行動理念はそんなところだろう」。
憤然とした口調でヴェルドは吐き捨てた。
----------
・インスパイア能力の持ち主が独裁者だったらとんでもない世界だよね、という話。
インスパイアの政治的利用を目論んでみた。むしろ「リーブならその方が似合いそう」
という個人的な印象と妄想が飛躍した結果とも言う。
・ヴェルドさんの解説=英雄統治にまつわるお話はPart9 626-627(まとめ:21-2)辺りに。
・要約するとシェルクはサムネに釣られたっていうオチです。
GJ!
GJ
GJ!
乙!
乙
ほ
前話:
>>229-234 ----------
いつになく語調が強くなってしまったヴェルドの声で、反射的にマリンは肩を竦めた。その様子に
気付いたケット・シーが慌てて間に入る。
『ちょお待ってや。なんやよう分からんけどマリンちゃんに八つ当たりすんのは筋違いやで?』
「……すまん、そんなつもりは無かったんだが」
両者の視線が正面からぶつかった後、一瞬の沈黙。
『そ〜んな顔してよぉ言うわ。いっぺん鏡の前に立ったらエエ』
途端にケット・シーの口調が茶化すようなものに変わった。ちらりと横目で見たマリンの表情から、
おおよその意図を把握したヴェルドだったが、一方でこういう場合に取るべき最も効果的な対処法
をとっさに思い付けずにいた。
そんなヴェルドを導く様にケット・シーが片手を振って手招く。何の疑いも抱かずにヴェルドが机の
傍まで来るとケット・シーも机の上で立ちあがり、おもむろにヴェルドの頬に両手を宛がい、それを
思い切り左右に引っ張った。
「んっ?!」
元がぬいぐるみと言うだけあってつねられても痛みは無いものの、不意を突かれてヴェルドは
思わず素っ頓狂な声を上げる。頬を引っ張られている事もあり、その姿はいっそ滑稽だった。
『さすが元タークスっちゅうだけあってそうとう身体を鍛えてはる様やけど、明日からは表情筋も
鍛えた方がエエで』おっさん表情がカタいんや、とケット・シーがどこか説教じみた口調で言う。
「……そうか?」
両頬を引っ張られ、くぐもった声になりながらもヴェルドが応じる。
『アカンわ〜、言うてるそばからコレやもん』
大袈裟なため息を吐くケット・シーに抗議しようと口を開きかけたヴェルドだったが、横合いから
聞こえてくる小さな笑い声に視線だけを向ける。
すると目が合ったマリンはぱっと口元に手をやって、こみ上げる笑いを必死でこらえていた。
『な?』
それ見た事かと言わんばかりにケット・シーがたたみかける。
「……これはなかなかの難題だな」
観念したと言う代わりに、ヴェルドは肩を落とした。
『そうでもないやろ? フェリシアはんに手伝うてもろたらエエ。さっきのあんた、めっちゃエエ顔
しとったで。……ま、ボクと比べたらまだまだやけどな!』
言いながら、今度はぐりぐりと頬を押し込みながらケット・シーが返す。
そうこうするうち、受話口から辛うじて聞こえてきた僅かな音声に気が付いた。
「……おいツォン? まさかお前まで」
抗議の声は不鮮明な発音になりながらも、しっかりと通話先に届いた様だ。
『さすがにこれは、ケット・シーの主張を全面的に支持せざるを得ませんね』
相変わらず冷静な物言いの元部下に、ヴェルドはケット・シーの両手を押さえながら反論を試みる。
「ちょっと待て、万年仏頂面のお前が言えた義理か?」
『ボクからしたらどっちもどっちやな〜。アンタらにらめっこしたら延々と勝負つかなさそうやし』
ケット・シーがおもしろがって横やりを入れる。言いながら、この二人が向き合う場面を想像して
みたが、勝負が付かないどころか表情が変わらず見応えは無さそうだという結論に至る。
「ところでケット・シー、そろそろ手を離してくれないか?」
『また表情筋の訓練したくなったら、喜んで手伝ったるで〜』
ヴェルドは自分の両頬を軽く撫でながら、今ケット・シーに言われた事を少しだけ心に留めておく
べきかと真剣に考えていた。
『やっぱアカンな〜。こりゃ毎朝ウィスキーから始めな』
腕組みをしてヴェルドの姿を見上げていたケット・シーがため息混じりに感想を漏らす。
ちなみにウィスキーは、神羅時代に朝礼で受付のお姉さんが“笑顔の練習”と称して発声訓練して
いたものだという記憶を元に言っている。これがリーブのものなのか、他のケット・シーの物なのか
は判然としない。
何はともあれケット・シーの思惑通りに場の雰囲気が和んだところで、控えめな声でマリンが
尋ねる。
「……おじさんは、どうして迷っているんですか?」
質問者に顔を向けたヴェルドは、その真意を計り兼ねて首を傾げる。
「いきさつは分かりません。だけどデンゼルがおじさんをここへ連れて来たと言う事は、おじさんも
リーブさんを助けたいと思ったから。ですよね? なのに」
マリンはそこで言葉を止めた。目の前にいたヴェルドの表情はこれまでに無く硬かった。そこから
は頼もしさや威圧感は消え、あるのは困惑だけだった。先ほどの憤然とした態度もケット・シーの
言うような八つ当たりではなく、どちらかというと自身の中の迷いが振り切れない事に対する憤りに
見えた。
(どうしてだろう?)
……まるで昔の父を見ているようだった。自身の抱える苦悩や、あるいは悩む姿を見せまいと
振る舞い背を向けた父。見せまいとすればする程、見えてしまう事に気が付かないでいる。だから
いつしかマリン自身も、見えないふりをするようになった。けれど見えないふりをしていても、問題は
無くならないと言う事も分かっている。だからいつか、私達はきちんと向き合わないと行けない。
向き合った先に何があるのかは分からない。だけどそれは、また別の話。
マリンは目を閉じ小さく頭を振って、目の前のヴェルドに視線を戻すと再び問いかけた。
「なにを迷っているんですか?」あれだけ冷静な状況分析ができるのに、何を迷うのだろう?
マリンにはどうしても分からなかった。
ヴェルドはケット・シーの横にあった端末へ顔を向ける。通信リスト上に並んだ名前にリーブの
名が無いのを確認する。
『心配せんでエエで、ボクとリーブの接続はとっくに切れとる。ここで何か話してもアンタの声を聞か
れることは無い』
リストに視線を向けたヴェルドの懸念を酌んだケット・シーが答える。
さらに電話の向こうからは、元部下の落ち着いた声が聞こえてきた。
『あなたは我々やWROとも行動を共にせず、ここまでほぼ単独で動いている。私も個人的にその
理由はお伺いしたいと思っていました』
つまりそれは、ヴェルドの“目的”が誰とも一致しないと言う事を示唆している。ならばこの先、
互いにとって不要な衝突を避けるためにも、あらかじめ彼の目的を聞き出しておくべきだとツォンは
考えていた。
長い沈黙の後、ぽつりぽつりとヴェルドは語り始める。
「単独行動を問われるなら答えは簡単だ、今の俺は自己満足のために行動している。……そう、
独善ですらもない身勝手な理屈のためにな」
落ち着いた、というよりはどこか弱々しい声は、これまでの自信に満ちたそれとは正反対だと
ケット・シーは思った。
「メテオ災害以降、局長としての自身を象徴とすることで隊をまとめ上げ、世界を復興へ導こうと
したリーブの取った選択は最善だし行動は賞賛に値するものだ。ケリー達をはじめWROの隊員も
よくやっている。……誰もリーブを批難する事はできないし、そうされるべきでは無いと思う。局長
を取り戻そうとケリー達が躍起になる気持ちもよく分かる。俺がケリーの立場なら同じ事をした
だろう」
そう語るヴェルドの脳裏には、かつての部下達の姿がよぎる。
話を聞いていたツォンの脳裏には、過去の自分の姿が重なる。
「だが、俺の目には……」自身の本音を言葉として口に出す事、ことさら元部下だったツォンに聞か
せる事に躊躇いが無いと言えば嘘になる。それでもヴェルドは、話の先を続けた。
「あいつが『局長』であればある程、リーブという個は失われていく様に見えるんだ」
ヴェルドにとってリーブは、社に背き追われる身となった自分を助けてくれた恩人であり、信頼の
置ける数少ない旧知だった。その恩に報いたいという気持ち、昔馴染みを救ってやりたいという思い
が、ここまでヴェルドの背中を押してきた。
「……つまり俺が助けたいのは、“リーブ”であって、“WROの局長”ではないんだ」
もちろん、積極的にWROを混乱させたいと言う意図はない。ただ、WROが組織維持のために
リーブに依存し続けなければならないとしたら、それはヴェルドの知るところではない。それが
ケリー達と行動を共にしなかった理由だった。
一方でヴェルドの思いがリーブの意に沿ったものではなく、むしろ局長として奔走するリーブから
すれば相容れないものだと言う事も承知している。
なぜなら、局長としての生き方を選んだのは他の誰でもないリーブ自身だからだ。
「しかしあいつなら、どうあっても自ら局長である事を望むだろう」もし万が一、リーブに局長職から
離れる様にと説得したところで聞き入れないだろうし、力ずくでそうさせようとしたならば、そこで決別
する事になるだろう。
「だからこれは、俺の自己満足でしかないんだ。そうと分かった上で他の誰かを最後まで付き合わ
せる気にはなれない」
互いに最終目的が異なるのだとしても、至る道程の一部が同じなら一時だけ利用すればいい。
現役を退いて久しい老いぼれの自分でも、まだ利用価値があるというのなら悪い気はしない。
「だがな、リーブにだけ俺は身勝手を押しつけようとしてるんだ。矛盾だろう?」
言い終えた後、肩の荷が下りた様な安堵感からため息をはき出す。それを聞いていたマリンは
目を閉じて考え込んでいる。
最初に聞こえてきたのはツォンの声だった。
『正直なところ、今の話をあなたの元部下として聞くには少々複雑な思いもありますが――』
先ほどまでと変わらず、落ち着いた声音だった。
『あなたを信頼し慕う一個人として聞くには、これほど嬉しい事はありません』
ツォンにとってヴェルドは、タークスとしての信念と誇りが何たるかを叩き込み、進むべき道を示し
た張本人だった。
たとえ命懸けの任務でも意識を集中できたのは、自分の背後をしっかりと固める上司がいたから
に他ならない。
しかし最後は主任としてではなく一人の親として生きる事を選び、一時は娘の救命と世界の危機
とを秤にかけた男。
それがツォンにとってかつての上司ヴェルドという人物だった。
やがてタークスの後を継ぐ者としてその背中を見送る事になった。そんなツォンにとって、今は
まだヴェルドの進んだ道のりをすべて理解する事はできないまでも、彼自身が望んでその道を
選んだという事、道を分かつ彼を最後まで信じ抜いたかつての自分も評価してやりたいと、心から
思える様になった。
それが何よりも嬉しかった。
「……やれやれ」ヴェルドが苦笑したように口を開く「お前の言葉を聞いてどこか安堵している
自分が情けなくなる一方で、これほど頼もしい部下を持てた事を誇りに思うよ」。
局長自ら隊を混乱させてどうするとリーブを追及すれば、自分の方こそ職務放棄しただろうと
あっさり反論されてしまった。しかも事実であるだけにそれを否定する事はできず、そんな自分が
リーブを救いたいなど、それこそ矛盾以外の何ものでも無い。何より、リーブ自身がそうしてくれと
言っている訳ではない。
『過酷な任務や、なによりあなたの厳しい指導にも耐えてきた元部下です。もう少し信用して頂いて
も損はしませんよ?』
そう言ったツォンがくすりと笑ったような気がした。
『せやな〜。ツォンの仏頂面なんかまさに指導のたまものや』
からかい口調でまたもケット・シーが横やりを入れる。
「きっと」マリンがゆっくりと顔を上げる「リーブさんは、ぜんぶ知った上で行動しているんだと思い
ます。おじさんが今日ここへ来る事も。このことを知って私達がどんな風に感じるのかも」。
通信越しに聞かされた父の声が語った真相は悲しいものだった。あふれる涙が止まらなかった。
だけどその後は夢中だった。そんな事させないと、自分にできる事を探して必死になった。
ここにいるみんながそうだった。
そのことに気付いた今なら、自信を持ってこう言えた。
「だけどこれって、私達がものすごく信用されてるって事ですよね? ……その、ちょっと素直じゃ
ないだけで」
ケット・シーとヴェルドがマリンに顔を向けると、彼女は満面の笑みでこう続けた。
「だから私達はなにも迷う事なんて無いと思うんです。おじさんは……」
言いかけてから違うとマリンは首を振る。おじさんや私だけじゃない、デンゼルやケリーさん達
だって同じなんだ。
「……おじさんも、私達もみんなリーブさんが“独裁者”になって欲しくないと思ってる」
ほらね、迷う事はなにもないでしょう? マリンは小さく首をかしげて微笑んで見せた。
つられたようにヴェルドは目を細め、そのまま視線を机上に向けた。
「そうだな。お前さんが素直じゃないのも本体譲りだと考えれば納得もいくしな」
『なんやてーっ!? ボクはリーブと違てもっと素……』
反論しようと両手を挙げたケット・シーだったが、途中でそれを諦めた。
『……せやね。ボクが言うたらおかしいかも知れんけど、ひねくれ者っちゅーか』
――なんて言うんやろ、お人好しすぎるっちゅーか?
ああ、せや考え方や……。
『ちゃうわ。頭がカタいんや』
――みんなの幸せ考えてるんは、よう分かる。
あんたは昔っからそうやった。
せやけどな、ボクから言わせたら根本的に間違っとるんや。
『こんなにみんなが心配しとるのに、それ分かっとるクセにそうするから腹立つんや』
――なんやろ? なんでこんな腹立つんやろ?
これじゃまるで……。
『ホンマに、腹立たしいぐらい、どうしようもないアホなんや』
――ああ、そうか。そうやったんや。
ボクは。
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・毎度ぐだぐだですみません。登場人物数に比例して煩雑度が増す傾向があるという一番の例にorz
・ヴェルドが本音を吐露する場面での葛藤はPart8 201-202(まとめ19-4)から続いています。
(部下を持つ者としての責務か、個としての感情か。ヴェルドが後者を選んだ事に対するリーブの
指摘があっての話として)
・マリンの心中描写については、Part7 655-657,661-665(まとめ14)から続いています。
バレット親子(形見のペンダント)の件は、別のお話としてきちんと書けば良かったと反省している。
・作者の中でマリンちゃんは読心術(=ライフストリームの気配を察知する能力)があるんじゃないかなと。
FF7のエンディングとか。
GJ
GJ!
乙
ほ