FFの恋する小説スレPart10

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
 ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
 ※sage推奨。
 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
 ※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。
 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
=======================================================================
前スレ
FFの恋する小説スレPart9
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1230802230/
記述の資料、関連スレ等は>>2-5にあるんじゃないかと思います。
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/11(月) 01:37:47 ID:OYXbovA10
【過去スレ】
初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048776793/
*廃スレ利用のため、中身は非エロ
FFの恋する小説スレ
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/
FFの恋する小説スレPart2
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1060778928/
FFの恋する小説スレPart3
http://game8.2ch.net/test/read.cgi/ff/1073751654/
FFの恋する小説スレPart4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101760588/
FFの恋する小説スレPart5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134799733/
FFの恋する小説スレPart6
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1150527327/
FFの恋する小説スレPart7
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162293926/
FFの恋する小説スレPart8
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1191628286/


【FF・DQ板内文章系スレ】
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら15泊目
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1251966357/
3名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/11(月) 01:39:03 ID:OYXbovA10
【お約束】
 ※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
   その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
 ※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
 ※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。

 初心者の館別館 http://m-ragon.cool.ne.jp/2ch/FFDQ/yakata/

◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ)
 FFDQ板の官能小説の取扱い ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/kijun.html#kannou
 記述の一般的な決まり ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/guideline.htm
◇関連保管サイト
 FF・DQ千一夜 ttp://www3.to/ffdqss
◇関連スレ
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の3
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1182600123/
◇21禁板
 FFシリーズ総合エロパロスレ 6
 yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1258013531/
 FFDQカッコイイ男キャラコンテスト〜小説専用板〜
 jbbs.livedoor.jp/game//3012/
【補足】
 トリップ(#任意の文字列)を付けた創作者が望まない限り、批評はお控えください。
 どうしても議論や研鑽したい方は http://love6.2ch.net/bun/

 挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ ttp://ponta.s19.xrea.com/
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/11(月) 01:39:54 ID:OYXbovA10
【参考】
 FFDQ板での設定
 http://schiphol.2ch.net/ff/SETTING.TXT
  1回の書き込み容量上限:3072バイト(=1500文字程度?)
  1回の書き込み行数上限:60行
  名前欄の文字数上限   :24文字
  書き込み間隔       :20秒以上※
  (書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
  連続投稿規制       :5回まで※
  (板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
   1スレの容量制限    :512kbまで※
  (500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)
5名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/11(月) 01:42:15 ID:OYXbovA10
このスレでも沢山のSSが読めますように。
6名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/11(月) 16:42:11 ID:9Vd3pU7d0
>>1
乙!!!
7名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/12(火) 18:32:08 ID:CK1VbNac0
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/14(木) 21:10:32 ID:tqt5X/eX0
いちおつ
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/17(日) 13:19:13 ID:66tlQOtV0
乙ります
10名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/19(火) 02:42:00 ID:Ij0L1OfV0
では、ちょいと保守をば。
11名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/21(木) 02:31:24 ID:VWSWtS9g0
ほす
12名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/23(土) 01:35:41 ID:P7WeeFLF0
13名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/24(日) 23:57:59 ID:vOPbkUdX0
保守。
13とかも待ってる。
14名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/27(水) 00:30:59 ID:Cwhx00N40
15名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/29(金) 21:07:23 ID:u0Lg8lUh0
16名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/01/31(日) 22:03:48 ID:fA5mfPDYO
17名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/01(月) 20:42:44 ID:jN2V61GZ0
18名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/02(火) 19:12:06 ID:c9SKVGrQ0
前スレの続きです。
19読書尚友 1/2:2010/02/02(火) 19:14:43 ID:c9SKVGrQ0
 ダゲレオの水が、静かに本を守っている。
決して本を腐らせず、痛めることもない不思議な水。
書架に眠る数々の本。あるものは精緻な装丁に彩られ、
またあるものは冒険の炎に炙られた跡を残す。
肉筆による写本もあれば、細やかな銅版や石版画に満ちた本もある。
一葉一葉の版画は、それ自体がたっぷりと物語を綴り、紐解く。

 クリスタルの伝承。失われた技術の足跡。町の人々の歌声。
様々な事柄が、ダゲレオに記録されていた。
それは世界の記憶であり、知恵であった。

 ダゲレオの重厚な本棚に、優しい灯りが照り返す。
その元に立つ、じたばたした二つの人影。
「また呼び出されたクポ! ぷふぇっ!」
「モグオは大変クポ」
「アレクサンドリアが大騒ぎで、何度も何度も呼び出されるクポー」
「即位は大切な事クポ。またここに、新しい歴史書が増えるクポ」
「モゲレオはモゲレオで、仕事があるクポね……」
モゲレオは本当に嬉しそうに、本の甘い香りを吸い込む。
そして顎に手を当て、フフフって感じで呟いた。
「ジタンがずっとお城にいたから、もしやと思ったクポ」
「また色々戦ってるクポよ。だから呼び出されるクポ!!」
モグオはまた、じたばたクポクポしていた。全力でしていた。
「ジタンなら大丈夫クポ。きっと無事にアレクサンドリアに新女王が立つクポ」
20読書尚友 2/2:2010/02/02(火) 19:15:43 ID:c9SKVGrQ0
 ふと、モゲレオが首を傾げ、モグオのふかふかな肩に触れる。
「お姫様はどうしてるクポ?」
「ガーネット姫のダガー姫のセーラ姫は、ここにもっと本を増やしたいクポ」
モゲレオが珍しく、大きなポンポンを振り回して叫んだ。
「本を増やすクポ?!」
「そのお知らせに来たクポ。物語はたくさん、たくさん生まれるからクポ」
「なるほどクポ。皆が物語を持ってるからクポね」

 ガーネット姫は舞台を愛していた。
てか、舞台の中の人とかと一緒に冒険もした。
めでたしめでたしのその後に、日々は続き、記録は綴られ続けたのだ。
多分、その後の記録はしっぽのある舞台の人込みで。

「工学や医学の本も増やしたいみたいクポ」
「クポ?」
「アレクサンドリアの図書も充実させたいみたいクポ」
「いい女王様になるクポ。ダゲレオは歓迎するクポ!」
過去に実在したアレクサンドリア。そこに大図書館があった。
そこにあったものは、国家を挙げた知識の集積。
 
 今日も産声を上げるであろう、新しい本。
あなたが持つその物語を、モーグリ達はいつでも待っている。


おわるよ
21名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/03(水) 01:28:41 ID:MdCRzUEu0
500kbで書き込み弾かれるんですよね…。

>>19-20
GJ! …んで、そのモーグリのボンボン、さ…さわりたい…!
相変わらず雰囲気に合った言葉の選び方と並べ方が麗しい文章なのに
くすりとさせる辺りはさすがというか。…とにかくそのボンボン触らせry
あたかも目の前にいるような、モーグリの可愛らしさだけでなく質感まで伝わる文章だけにボンボン触ry
(すいません感想がオカシイですw)

よし、モーグリ達に混じってこちらも新作待ちsage。
22名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/06(土) 17:57:26 ID:0I38TFtC0
23『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:36:20 ID:GIqbBKw80
FFTA2+FFナンバリングシリーズ小説
『Trois Grimoire-トリア・グリモア-』第2回目です

(あらすじ)クリア後のお話。アデルはルッソに会いたくて、異世界に旅立つ決意を固めたのでした

前回の書き込みからえらい待たせてしまってスイマセン
実を言うともう4話分ぐらい溜まってるんですが。
いっそHPのほう見てもらったほうが早いかもしれない(笑)
とりあえず前スレ第1話・プロローグの続きです。

----------------------------------------------------

「ほんとうに、大丈夫クポ〜?」

ハーディが心配そうに、見送りに来てくれた。

「大丈夫、大丈夫。あたしを誰だと思ってんのよ?」

ホントは、ちょっぴり不安だったけど。
何も言わず、ただ送り出してくれたシドに感謝しながら。
さりげなくハーディに見送らせてくれた優しさを噛み締めていた。

「ククポ…ルッソに会ったら、よろしく伝えて欲しいクポ!」

「うん、いいわよ。なんて?」

「きっとまた、一緒に冒険しようクポ!!」

「分かった、きっと伝えるわ。…そうそう、何かお土産でも持っていってやろうかしら?」

「それなら、これなんかどうクポ?」

ハーディは懐から小さな木の実のようなものを取り出した。

「なぁに、それ?」

あたしは見慣れない木の実に目を丸くした。

「これは、『クポの実』だクポ!モーグリの大好物で、貴重なものだクポ!」

そう言って、目を輝かせるハーディ。
彼には悪いけど、あいつは喜びそうにないなあ。
だって、モーグリの好物だもんね。
あたしは苦笑して、首を振った。

「そんな大事なもの、あいつにあげるの勿体無いわよ。それより、ハーディ。楽譜の写しとかどうかしら」

「クポ?そんなのでよければ、いくらでもあるクポ!」

それは、ハーディが、あいつとの別れのときに弾いた、あの曲。
楽譜の贈り物っていうのも、なんだかロマンチックでいいわよね。
あたしはハーディから、楽譜の写しを受け取り、ポーチにしまいこんだ。
うん、あいつと会ったら…一緒にこの曲を歌おう。
そう心に決めると、ハーディにも別れを告げる。

「ありがと、ハーディ。じゃあ、行ってくるわ」

「気をつけるクポ〜〜〜!絶対、絶対戻ってくるクポ!ルッソも良ければ、また来て欲しいクポ〜〜〜」

ひらひらと手を振り、あたしはラザフォードさんの家へ向かった。
24『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:38:28 ID:GIqbBKw80
「…やあ、来たね」
「お久しぶり。元気そうで何よりだわ」

ラザフォードさんは、相変わらずの調子だった。
この人、ホント不死身なんじゃないの?

「で、グリモアは?」
「ここにある。決心はついたのだね」
「でなきゃ、ここへは来ていないわよ」

ラザフォードさんは優しく微笑むと、グリモアをあたしに手渡してくれた。
懐かしい感触。
あいつの持ってた手帳と、本当にそっくりだ。

「ねえ、これ何処で手に入れたの?興味あるんだけど」
「…ある日突然、私の蔵書に加わっていたのだよ。
 全ての蔵書について把握していたつもりだったが…いやはや、不思議な事もあるものだ」
「さすが、グリモアね」

あたしはその偶然に思わず感謝した。
そして、否応なしに高まる緊張。
あたし、これから異世界に旅立つんだ…

ドキドキしてきた。
なんだろ。
ヌーキアと戦った時だって、こんな気持ちにはならなかった。
やっぱり、あいつがいたから?

…なんて、あたしらしくないわよね。
大丈夫。
あたしは独りじゃないもの。
旅立ちは独りでも、帰るべき場所がある。
そして、会いたい人がいる。

「…準備はいいかね?」

ラザフォードさんが、あたしの決心を見抜いたように呟く。
あたしは緊張を押し殺すため、多少強がりを込めて切り返した。

「ええ、勿論。
 …何も心配は要らないわ。何たって、あたしは『優れし者』なんだから」

そして、そんなあたしに最後の言葉。

「そう。君は『優れし者』。だが、グリモアにとって大事なのは何か…分かるね?」

あたしは、あいつのことを思い出した。
目を瞑り、あのときの言葉を思い出し、見開く。
そして笑顔でこう答えた。

「ええ。物事を楽しむ気持ちでしょ?大丈夫よ」

ラザフォードさんはコクリとうなずき、厳かに締めくくった。

「忘れてはいけない。大切な事は、力ではなく、心なのだということを」

それが、あたしがイヴァリースで聞いた最後の言葉だった。
25『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:39:39 ID:GIqbBKw80
****************************************************************************

(物語の空白を埋めるもの…その名は、アデル)

あたしは手帳…グリモアにそう書き込んだ。
すると、グリモアは途端に不思議な光を湛え…

―――――あたしは、飛んだ。

****************************************************************************

…地面がある。
地に足が着いた感触。その感触に安心したあたしは、
ずっと瞑っていた目をようやくのことで開いた。

いつの間にかグリモアの光は消え、あたしの足に引っ掛けてある手帳入れにすっぽりと収まっていた。
そして、あたしは周りを見渡して―――愕然とした。
気がつくと、あたしはどこかの孤島にいた。

ざざぁ… ざざぁ…

「ここ…どこ?」

ちょっと驚きだった。
あいつ、『町育ち』って言ってたし。
こんな孤島のどっかにいるなんてこと…ないわよね。

もしかしてグリモア、あたしをワケわかんないとこに飛ばしたんじゃないの?

ちょっとだけ、焦る。
でも、そんな気はちょっとしてた。

都合よくあいつの家に辿り着ける気は、あまりなかった。
まあ、それにしたって孤島は予想外だけど。

ぐるっと見渡した感じ、多分直径にして50Kmもないわね、この島。
かなり開けてて、山なんて殆ど見当たらない。湿地と草原とちょっとの森が広がる平坦な島だ。

「まいったなぁ。イカダでも作ろうかしら?…結構、大変そう。
 最低限、人が居るところに出たかったわね」

あたしは軽く愚痴りながらも呑気に構えていたが、よくよく考えたら結構ピンチかも。
まあ、何とかなるだろうけど。なんたって、あたしは『優れし者』なんだから。
そうそう命の危機なんてものに晒されても動じたりはしない。

不安と、不思議な安心感が共存する中、あたしは人の声を聞きつけた。
『キャット・アデル』の名は伊達じゃない。
『優れし者』の聴覚は、並の人間の数倍はあるのだ。

「誰かしら…」
26『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:40:23 ID:GIqbBKw80
あたしはそうっと聞き耳を立てる。
どうやら、何かの相談をしているようだ。

「あっちかな」

あたしは声のするほうへ向かった。

森を抜けた奥、開けた湿地の真ん中あたりに、その人たちはいた。

3人の男女。
一人は茶髪のボサボサ頭で碧眼。青い服に赤いマント。
一人はピンク色の髪にエメラルドグリーンの瞳。薄いオレンジのドレス。
一人は青紫色の髪に、同じくエメラルドグリーンの瞳。青のジャケット。

会話内容から察するに、彼らも遭難者(?)のようだ。

「ねえ、テントで休まない?さすがに、闇雲に歩いていても体力の消耗になるだけだし」

「レナの言うとおりだぜ、バッツ。どうやら孤島に飛ばされたみたいだし、せめてイカダでも作って大陸を目指さないと」

「しょうがないな…じゃあ、今夜はあっちの森で野宿するか。ここのモンスターがテントを落としてくれたし…」

レナと呼ばれた女性が憔悴した様子で、バッツと呼ばれた男性に休息を取るよう提案していたらしい。
どうも、敵意もなさそうだし、同じ遭難者なら何か情報を得られるかもしれない。

あたしはそう踏んで、3人の男女に近づく事にした。

「じゃあ、ファリスは火を熾しておいてくれ。おれは、テントの用意をするから。レナは、休んでるといい」

「ごめんね、慣れない土地のせいかちょっと気分が優れなくて」

「気にするな。力仕事はバッツに任せときゃいいんだから」

「ひでぇなぁ。ファリスだって力強いんだから、後で手伝ってくれよ?」

「お前なあ、仮にも女相手に言う台詞か?それ」

「都合のいいときだけ女ぶるなよ!…ったく!」

「ふふふ、姉さんったら。バッツも、ほんとに仲いいなぁ」

『どこが!?』

そんなやり取りを、あたしは傍で見ながらクスクスと笑っていた。
なんだろう、この空気。すごい楽しい。和むなあ。
特にあのバッツって人、なんかルッソと似たような感じがする。
27『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:41:56 ID:GIqbBKw80
「!誰だ?」

あたしの笑い声にバッツと呼ばれた男性が気づいたのか、警戒する。

「あ、すみません。怪しい者じゃないですよ」

あたしはすんなりと物陰から出て行く。

「…女の子?何でこんなところに」

バッツと呼ばれた男性は、あたしを怪訝な目で見た。

「あたし、遭難したんです。多分」
「多分〜?」

バッツと呼ばれた男性は、更に不審な目であたしを見る。
だが、敵意はない。そう判断したのか、やや警戒心は薄れているようだ。

「あなた、何処から?」

レナと呼ばれた女性はあたしに向かって聞いた。
この人は、なんだか物腰が柔らかくて、安心するなあ。
まるでどこかのお姫様みたいだ。

「あたし、イヴァリースから来たんです。知ってます?イヴァリース」
「知らねえな…この世界の地名なのか?」

ファリスと呼ばれた女性(?)が、あたしに尋ねた。

「いえ、多分違います。ここ、きっとあたしの世界じゃないから」
「君も異世界から、ここへ?」

バッツと呼ばれた男性はあたしに尋ねた。

「え、あなたもですか?」

互いに不思議そうな顔で見詰め合った。

「取り敢えず、落ち着いて話そうぜ。別に、敵じゃないみたいだしな」

ファリスと呼ばれた女性(?)がそう言うと、バッツもレナも同意した。

「そうだな。じゃ、まずは自己紹介からするか」

そうして、互いの自己紹介が始まった。

「おれはバッツ。元々はこの世界の住人じゃないんだけど、ガラフ…仲間を助けるために
 こっちの世界に飛んできた」
「私はレナ。バッツと同じ理由でこちらの世界に来たの。よろしくね」
「おれはファリスだ。レナと同じく。よろしくな」

「よろしく、皆さん。私はアデル。イヴァリースから、…友達に会いに異世界に来ました」

『よろしく、アデル』

バッツ、レナ、ファリスの声が揃う。
28『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:42:59 ID:GIqbBKw80
「で、アデルの友達はこの世界の何処にいるか分かってるのか?」
バッツがあたしに尋ねる。

「いえ、残念ながら。そもそも、この世界で正しいのかどうかも分かりませんけど」
あたしは正直に答えた。そう。大体、この世界にホントにルッソがいるのかしら?
まず、そこが怪しい気がする。なんか、この人たちの雰囲気…
普通にあたしたちと同じ世界の空気を纏ってる。

「随分、大雑把なワープ装置を使ったんだなあ」
ファリスが苦笑するように言った。

「わーぷそうち?いえ、グリモアっていう…魔法の本なんですけど」
あたしは反応を試してみた。
『わーぷそうち』って言葉の意味は良く分からないけど
魔法という言葉が通じるなら、きっと同じ世界の人なのだろう。

「グリモア…そんな魔法の本があったのね」
レナが反応した。
どうも、魔法に対しては自然な反応を示すようだ。
こりゃ、ミスったわね。

「ああ…皆さん、普通に魔法の存在する世界からこの異世界に?」

「?どういう意味?」
バッツが怪訝な顔をする。
さも当たり前だろう、というような感じだ。

「ええと…あたしの友達、魔法のない世界からあたし達の世界…イヴァリースに、
 グリモアの力で飛んできたんです。そこで、色々あって…あたし、そいつに会いたくて
 あたしたちの世界からあいつの世界に飛ぼうとして、このグリモア…魔法書を使ったんです」

こんな説明で大丈夫かしら?
一抹の不安を覚えながら、あたしは説明した。
29『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:43:58 ID:GIqbBKw80
「なるほどなー。おれたちと一緒じゃないか」

バッツは、そう言って納得した。

「え?」

あたしは、意味を図りかねて尋ねてしまった。

「だって、そうだろ?俺たちはガラフ…仲間を助けるために異世界に来た。君は、友達に会いたくて
 異世界に来た。同じようなものだなって」

「…そうですね」

あたしは、なんとなく嬉しかった。
なんだろう。
すごく当たり前のことを、他人に『立場が同じ』と言われただけなのに。

あたしは、やっぱり。
どこかでこういう『人との触れ合い』が少なかったんだろうなあ。

そして、どこかルッソと似ているバッツを見ると、なんだか安心した。
この人のそばに居ると、ルッソと会えないかもってちょっと思ってた自分が
どこかに飛んでいったような気分になった。
いつか会える。きっと会えるって気持ちになった。
30『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:44:47 ID:GIqbBKw80
「それで、アデルの友達は…魔法のない世界にいるってわけだな」

「ええ」

「じゃあ、少なくともこの世界は違う。おれたちは、邪悪な魔道士を倒すため…
 独りで戦おうとしているガラフを助けに来たんだ」

「魔道士…」

あたしはふと、ラザフォードさんを思い出した。
しかし、邪悪な、ってところで全然違うわね、と思った。

「暗黒魔道士エクスデス」

レナが呟いた。

「私たちのお父様の仇よ」
優しそうに見えたその目は、強い光を湛えていた。
怒りと、そして憎しみ。

「ああ、ヤツは絶対に許せない」
ファリスも同じように、強く決心していた。

「…色々あったんですね」

あたしは、その気持ちを推し量るように呟く。

「まあ、アデルとは関係ない事だからさ。あんまり気にしないでくれ」

バッツが場を和ませようとそう言った。

「そうね。ごめんなさい」「ああ、悪い」
レナもファリスも、そんなつもりはなかったというように謝る。

ああ。
この人たち、本当に。
あいつと一緒に居るときと同じだ。
この空気。

あたしは居心地のいい場所を、また一つ見つけられたのかも知れない。
そう思うと、自然と口が動いた。
31『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:46:37 ID:GIqbBKw80
「よかったら、あたし少しは協力しますよ」

『ええっ!?』

「だって、今みなさんはガラフさんが抜けて…4人の戦力が3人に減っちゃってるんでしょう?
 ガラフさんと合流するまででも、あたしが力になれるかもしれないですし」

「で、でも君には関係のないことだしさ。危険な目に遭わせる訳には」

バッツがそう言って遠慮するが、あたしは食い下がった。

「だーいじょうぶ!なんたって、あたし…イヴァリースでは名の知れたハンターなんですから!」

バッツが困ったようにレナとファリスに向き合った。
レナ、ファリスが口々に答えた。

「いいんじゃないかしら。本当に危なければバッツが守ってあげれば」
「だよな、頑張れよ、バッツ!」

…何故か、若干の怒気をはらんで。

「おいおい!」

クスクスと笑うあたし。
ああ、この2人はきっとバッツのことが好きなんだな。お互い。
あたしが入った事で、なんかそういうややこしい事になってるみたいだ。
面白いなあ。

「じゃあ、よろしくお願いしますね!ナイトのバッツさん」

あたしはワザと悪戯っぽく腕を絡ませてみた。
レナとファリスの反応が予想通りすぎて、笑えた。

「しょうがないなあ…」

バッツは照れつつ苦笑し、頭をかいた。
32『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/02/07(日) 16:50:39 ID:GIqbBKw80
はい、というわけで今回はここまでです。
バッツらとの合流は『第2世界冒頭』にしました。
前回、古代図書館って予想してくれてた人が居ましたが
残念ながらその辺の発想はなかったですw

一応、HPのほうでは結構話が進んじゃってますので今後の展開予想とか要望は
最新版以降に反映されるかも知れません。
そちらで読みたい方は以下リンクへどうぞ(随時更新です)
ttp://www8.plala.or.jp/koala0024/grimore.htm
33名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/10(水) 12:06:05 ID:cOtRQgqz0
34名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/14(日) 00:30:05 ID:RXkNRQog0
35名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/16(火) 22:46:20 ID:AxIu4qmV0
36名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/18(木) 19:31:11 ID:X9fJ3zgb0
371.名前が無い@文字数が足りないようだ:2010/02/19(金) 23:56:39 ID:3jE/tjCT0
※ご注意※
以下は時機外れも甚だしいネタです。保守のお供に。
(真面目な文章ばかり書いていると唐突にこういう衝動に駆られる)

1.慣れないとは言え、作者はギャグを書いている(つもり)。
2.文中で取り扱うゲームがまちまちですが、その全てが大好きである。 ←ここ超重要
3.主人公はリーブとケット・シー(作者にとってもはや既定値)

以上、了解できる方のみ流し読み推奨。
読んだ後はログと共に水に流してやって下さいw
----------






 既にクリアしている同僚から「面白いですよ」と勧められたのですが、時期的な忙しさもあって手が
回りません。とは言っても興味が無いわけではないので、こういう場合は諺にもある通り“猫の手を
借りて”みようと思います。


 ……と言うわけで、ケット・シーがドラクエ9を始めたようです。
              ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ところがプレイ開始後5分と経たないうちに、ケット・シーが言いました。
『大変や! 名前が決まらへん!!』
「それは困りましたね。ですが悩む必要はありません。自分の名前を入れればいいですよ」
 ドラクエには予め決められた主人公の名前がありません。これはシリーズを通して、プレイヤーが
物語の主人公を演じるという“RPG”を一貫している特徴でもあります。
『それが入らへんのや!』
「どうしてです?」カーソルを動かして決定ボタンを押す、あるいはペンでタッチするだけの操作ですから、
ケット・シーの動作範囲だとは確信があるのですが、どうやら彼が言いたいのは違う事のようです。
『5文字までしか入らへんねん。“ケット・シー”だと1文字足らんのや!!』
 そう言われてふと、濁音符や半濁符すら1文字にカウントされていた頃を懐かしく思い出しました。
もちろん、誤ってこんなことを口走ろうものなら、間違いなく年寄り扱いされるので口が裂けても言え
ませんけどね。ええ、シリーズ1作目発売当時から現役ですよ私。まだ当時は神羅カンパニーが
無かった時代ですからね。
「“ケットシー”なら丁度5文字です」
『そらアカン、ケットとシーの間の“・”は重要なんや』
 こうして出した代案はあっさり却下されてしまいました。
「……分かりました、好きにして下さい」
 この先が思いやられます。
 ただ、まあ。ケット・シーの主張する“・”の重要性については、何となく同意できてしまう自分が少し
悲しいような気がしてきます。こういうの、『ひいき目』と言うんでしょうね。「ケットシー」と表記されて
いるのを見ると、心なしか切なくなります。
382.髪の毛が無い@配慮が足りないようだ:2010/02/20(土) 00:02:40 ID:WE3Nfugy0
 その後2時間ほどは職務に集中する事ができたんですが、またケット・シーが機械を持ってやって
来ました。
『や〜っと主人公、決まってん』
 どうやら彼は、あれから2時間ほど悩んでいた様です。やれやれと吐きたくなった溜息を呑み込んで、
話を聞いてみることにしました(そうしないと、後が厄介ですからね)。
「それで? 名前はどうしたんです?」
『ボクの名前やと文字数足らんかったから』そう言って笑顔で『“リーブ”にしといたで〜。エライ物騒な
名前やけど、人生どっかで妥協せなアカン時もあるっちゅー事や』
「……物騒……ですか」
 名前に物騒も何もあるのかと思いますが、「主人公に自分の名前」を付けるという点で言えば、基本に
忠実だったので敢えて追求する事はしませんでした(そうでもしないと、後が長そうですからね)。
 にしても、主人公の名前を決めるのに2時間と言うのは些か長すぎる気がしたんです。こちらの心中を
察してくれた様子で、ケット・シーは画面を見せて嬉しそうに説明を始めてくれました。
『今回な、決めるんは名前だけと違うねん。背格好や髪型、表情もプレイヤーの意向が反映される様に
なっとるねん』
 そう言ってなぜか自慢げに画面を向けると、並んだ2枚のパネル上側には、主人公の全身像が映し出
されています。
 性別を選べたり、質問から性格が設定できたりというシステムは過去にもありましたけど、今はここまで
できるんですねぇ、と思わず感心したりしたんですが。
「……ところでケット・シー」
『ん?』
「敢えてこの髪型を選んだ理由を教えて頂けますか?」
 しかもご丁寧に、わざわざ私に見せに来たのですから、それがどういう意図なのか推し量るまでも
ありません。
『いやぁ。髪の毛の色とか設定するの面倒やったから』
「…………」
『ほ、ホラ! この主人公の師匠っつー人と同じ髪型にしたんや! 取説からストーリーを考慮したんやって!』
 主人公の師匠の名前はイザヤール、確かに彼は取扱説明書の最初のページに登場しています。
ゲームの序盤で聞ける周囲の話によると「生真面目な性格」との事です。上司(?)からの信頼も厚く、
実力もある頼もしい師匠という役回りです。
 しかし髪の毛がありません、一本たりとも。天は二物を与えずと言いますが、天に住まう天使にも適用
されるものなのでしょうか。
「一応断っておきますけど、レベルが21になったからと言って、私のところに報告しに来なくても結構です
からね」
『ははは、そら考えすぎやて……』
 とぼとぼと部屋を出て行くケット・シーの背中が少し寂しそうに見えたのは、気のせいではないはずです。

 個人の名誉のために念のため申し上げますが、決して私が操作している訳ではありませんよ? 
ケット・シーが自律的にプレイしてるんです。
393.板違い通信〜天使とタンスだぜ?(1):2010/02/20(土) 00:15:26 ID:WE3Nfugy0
『リーブはん! リーブはん!!』
 猫の手も借りたいほどの忙しさ――とは言え、諺どおり実際に猫の手を借りても不効率なだけなの
ではないだろうか?――今さらながら、そんな結論を見出して堪えきれずついに溜息を吐いて振り返る
と、ケット・シーが何かを言いたそうにこちらををじっと見つめている。私が主人公なら、ここは間違いなく
「仲間にしない」と選択したくなる場面だ。
 どうも気乗りしないんですが、声を掛けないとずっとこの状態が続くと思いますので、とりあえず声を
掛けておきます。ゲームで言うところのフラグ処理という訳ではありませんが、放っておいても「そんな
ひどい」の無限ループよりたちが悪い事は分かっていますから。
「……どうしました?」

『リーブはん。もしかしてお腹痛いんと違うか?』

 もちろん質問の意味は理解できます。ですが、意図が理解できません。
「お陰様で至って健康です」
 意図どころか、脈絡が全くありません。
『そうですか……。ならエエんですわ』
 少し冷たく当たりすぎたでしょうか? 目に見えて落ち込むケット・シーが可哀想になってしまって、
慌てて彼を呼び止めます。
「ところで今、どの辺まで進んだんです? 見せてもらっていいですか?」
 そう言って画面を見せてもらったのですが、ステータス画面を目にした途端、口にした質問とは別の
ところが気になってしまいました。
「……主人公以外は全員、魔法使いなんですか?」
 一般的には主人公以外を、直接攻撃の要となる戦士系(戦士・武闘家・盗賊)、回復を担う僧侶、間接
攻撃・補助役の魔法使いという編成にするのがバランスとしては丁度良いとされている気もしますが。
いえ、昔やったゲームでの話ですけどね。
403.板違い通信〜天使とタンスだぜ?(2):2010/02/20(土) 00:25:18 ID:WE3Nfugy0
 魔法使いは全体攻撃など便利な反面、体力的な不安もありますので編成が魔法使い一辺倒というのは
バランスが悪いでしょう。何らかの制限を設けているのなら分かりますが、そうではないはずです。
『せや、全員サイドワインダー装備や! これ作るん苦労し……』
「We cannot authorize a retreat. Intercept them.」
 ここが敢えて英語なのは、タイトルから察してください。サイドワインダーと聞くとまったく別の、それこそ
物騒なあれを思い浮かべるのは仕方が無いんです。
『オイオイ、どこの美声やと思たら。マトモな事しか言わんのも張り合いあらへんなぁ』
「……ケット・シー。無駄口を叩く前にゲームを進めなさい」
『やっぱアレか? “良ェ整髪料”やってるせいなんやろか』

 ―注意、冷たい視線を浴びている。―

「ここまで言っておいて何ですけど、スレというより板違いですよね」
『(ネタとして)はなっから場違いや!』

 「機体の愛称が猫でも良いが、コイツを後ろに乗っけて飛ぶのは勘弁だ」とは、シドの弁。それは私も
同感です。ケット・シーを乗せるぐらいなら、後部座席には誰もいなくていいと思います。誰ですか猫耳
戦闘機って言った人? あれはむしろ七面鳥です。
 わざわざ雄猫と愛称を付けるより、私ならケット・シーを飛ばせる仕様にしたいところですけどね。ミサ
イルなんて物騒な代物は持てないので、きっと平和的に全面戦争ができると思います。
 そうですね、ここはひとつ魔術師編成で手を打つとしましょう。ただし、口が裂けても「天使とダンス」な
んて言わない方が無難です。なにせ本当に天使と踊っちゃった人がいますからね。え? 興味ないです
か、そうですか。


バレット 「なんだかんだ言ってもアバランチって憎めない奴らだよな」
ケット・シー 「お前が言うな」
フレディ 「そうだな、褒められると照れて帰りづらくなっちゃうもんな!」
ケット・シー 「アンタは帰(投)れ!」
414.スレ違い通信〜それは女神の贈り物:2010/02/20(土) 00:36:09 ID:WE3Nfugy0

 お陰様でここ数日の間は仕事が大変捗っています。が、ケット・シーがゲームの進行具合を逐一
報告に来るものですから、些か疲労というのがありまして。彼の話をボタン連打で読み飛ばせたら
どれほど負担が減ることでしょう。
 しかし今日のケット・シーは機嫌が悪い様子です。進行上やむを得ないので声は掛けますが、
気乗りがしないのは変わりません。おかしいですね、昔はケット・シーこんなに鬱陶しくなかったん
ですが。中に不具合でもあったのでしょうか?
「どうしました?」
『……このトカゲ、なんやエライ腹立つねん。トカゲのくせに』
 そう答えるケット・シーからは、トカゲに対する明らかな敵意が感じられます。
「そうは言っても、あなたはぬいぐるみなんですけどね」
『せやかてボク、お腹痛ないで?』
 またお腹の話題ですか? どうにも話の意図が掴めないのですが。
「そもそも、ぬいぐるみが腹痛を起こす要因がありませんよ」言いかけて思い当たりました。もしかして
ケット・シー、私に隠れてコスモキャニオンで本当に夕ご飯を食べましたね? メンテナンス大変なん
ですから、あまり変な行動はしないでください。
「……っと、そんなことより前回からどうしてお腹に拘るんです?」
 ケット・シーが言うには。
 前回は拾い食いしたお人形が実体化。今回は拾い食いしたトカゲが巨大化してさらに関西弁を
しゃべり出すというストーリーなのだそうで。
「それが腹痛と何か関係……」
『拾い食いしたのは落ちてる果物だったらしいで? 輝く果実』

 それはまさに“命はぐくむ 女神の贈り物”。

「いざ語り継がん、君の犠牲……」
『ちょちょ待って〜な! 勝手にボクを亡き者にせんといて下さい』
「こうでもしないと、落ち着かないでしょう?」
 と、言うわけで話のオチがつきそうにないので、この辺で。
 ……続きはありませんよ。道に迷った訳じゃありません、血迷っただけです。


 ところでインスパイア能力の正体が、拾い食いして食中りしたショックで身についたものだったりしたら、
それはそれで切ない話ですよね。

                                                <終わり>

----------
・中の人ネタまである始末。(今さらですがDQ1のCMが、リーブの中の人だった事を知って驚いたw)
・お粗末様でしたw
42名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/20(土) 21:20:02 ID:mcz+biw70
乙!
43名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/22(月) 18:53:10 ID:fZskUxyV0
GJ!
44名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/25(木) 20:31:27 ID:kUOBILNp0
乙!
45名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/02/27(土) 16:25:45 ID:U+0MYkeH0
昔ここで書いてたことを思い出した
相変わらず平均レベル高いな
46名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/03(水) 22:10:33 ID:8XqQFNvI0
>>45
いつかまた書いてください
待ってます
47名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/05(金) 21:29:54 ID:++KJlA0d0
48月水:2010/03/05(金) 22:58:26 ID:3vqCpdRm0
※全三回構成です。
※舞台はFF7。
時間軸はBC終了時の暗殺事件のその後の“大”捏造話です。

――――――――――
『Tomorrow never knows.』(1‐3)

朧げな意識の中で、担がれた後
やや乱暴に狭い場所に投げ込まれたのが解った。
暗闇が動き出して、暫く揺られ続けている。
麻酔で痺れた身体は動きが極端に制限され、腕を上げる事すら難しい。
隣からくぐもった声が聞こえた。
ああ、そうだ。
私は一人じゃない。
やっと巡り逢えた家族と一緒にいた。
そして、同じように横たわっている。
私達はつい先程“死んだ”。
その“死体”を何処かに棄てる為に車に乗せられた。
眼を閉じる。
頼りない布の屋根にぽつぽつと何かが当たりだす。
決して居心地良いと言えない荷台の揺れが大きく感じられた。
すっかり弱った体力が更に削られていくようだ。
停車して、外へ引きずり出される。
雨が染み込んだ剥き出しの地面に落ちた。
泥が跳ね、雨粒が服に滲み出す。
横腹を蹴られ、仰向けになった。
忌ま忌ましそうに睨みつける兵士がいた。
唾を吐き捨てられる。
兵士が立ち去り、何処かも解らない荒れ地に“三人”が残った。
「生き延びてください」
自分を“殺した”黒髪の男が力強く言った。
あなた方には幸福になって頂きたいのです、と
告げるとその場から気配が消えた。
何かを掴もうと硬くなった手を伸ばすと、その先に人の手があった。
ぎこちなく握られる。
温かい。
失っていたものが、今この手の中にある。
ぼやけた視界に顔が写る。
皺と傷が刻まれた父親の顔だった。
その時に見た微笑みはきっと忘れられないだろう。


49月水:2010/03/05(金) 23:03:17 ID:3vqCpdRm0
Tomorrow never knows.』(2‐3)

あの雨の日から、月日が随分経った。
目覚めてから数ヶ月の内に星が再び危機に曝され、大きな傷跡を遺した。
それから二、三年の間に奇妙な病が流行り、更には大乱も起きた。
日々は常に動いている。
だが。
「気分は、どうだ。今日は天気が良いな」
ベッドに寝かされている娘に声を掛けた。
返事が返ってこない事は解りきっていても、ずっとそうしている。
あれ以来、未だに意識が戻っていない。
ルーファウス個人の計らいで設備の整った医療室と
コレルの牢獄から連れて来た闇医者によって治療が施されているが、
容態は一向に良くならないままだった。
身体にいくつもの管が通され、
その先にある大型の機材が規則正しく働いて生命を保っている。
高い音に合わせてモニターに映し出された線が一定の山を作り、
人工的に機能している呼吸音が室内の静寂を破っていた。
肩までしかなかった髪は肘の辺りまで伸び、
それだけが長い時間を感じさせる。
瞳を閉じた表情は穏やかで、初めて見た時はひどく驚いたものだ。
ただ、こんな日だけではない。
突然発作が起きる日もある。
原因は体内に残留している魔晄かもしれないと医者が見解を述べた。
かつてある実験によって手に埋め込まれた異物。
不完全なそれから溢れ出した魔晄が
ある種の中毒症状を引き起こしている可能性を示唆された。
強い自責にかられ、暫く顔を合わせられない時期も過ごした。

父さん。

そう呼ばれた気がした。
慌てて手を握る。
俺はここだ、傍に居るぞ。
必死に込めた。
相変わらず、微笑んでいるかのような安らいだ顔を見せている。
聞き間違えたのか。
そうは思いたくない。
もう一度呼んでくれ。
願った。
「父、さん」
また聞こえた。
今度ははっきりと解った。
僅かながら口元が動いている。
「フェリシア」
祈るように娘の手を両手できつく掴んだ。
うっすらと瞼が開かれていく。
「ただ、いま」
「ああ、おかえり」
ずっと待っていた。
声が上擦ってうまく出ない。
手を握り返される。
それ自体は弱々しいものだったが、確かに返された。
「いつも、居て、くれた」
ありがとう。
礼と共に見た、柔らかな笑顔が眼に焼き付いた。
50月水:2010/03/05(金) 23:11:05 ID:3vqCpdRm0

『Tomorrow never knows.』(3‐3)

随分身体が楽になった。
しかし、年月は思った以上に過ぎ去っていて、
取り残されたような気分になる。
コレルの魔晄炉で大きな発作を起こして以来、
約七年もまともに動けていなかったから、
仕方がないといえばそれまでかもしれない。
そうやって半ば子どものように拗ねるのを見られては、からかわれた。
「明日退院したら少しずつ外を見て回ろう」
見舞いに来ていたシアーズが優しく言った。
「いい大人が二人して道に迷うのはごめんだが」
「大丈夫だ、多分」
冗談めかしているが、彼もまた時の流れに置いていかれた一人である。
あの日、別の場所でシアーズは決死の行動を起こしていた。
そして表舞台から降りて、尚生きながらえていた。
私が昏睡している間に、発見され暫くは隣で治療を受けていたらしい。
眼が覚めたらウ゛ェルドに睨まれていた、と笑いながら話した事があった。
「多分、では心配だな」
間を割って入るように噂していた人物が現れる。
「三人で、なら」
「それは良い。そうするか」
「なにぃ」
提案が即決され、三人家族の旅行みたいで楽しそうだ、と言ったら
何故かシアーズが落ち込んだ。
笑い声が室内を明るく彩る。
ここから、また動き出せばいいのだ。
自分の足で、自分なりの早さで。
〈了〉

――――――――――
・ここまでお付き合いありがとうございました。
ドキドキ、ビビりつつの初投稿でしたが、楽しんで頂けたら幸いです。
※※ところで、名前の部分にリンクないのってまずいのでしょうか…。

以下、ちょっとした事についての補足です。

■コレルの闇医者
BC本編中でシャルアやシアーズが言っていた
コレルプリズンにいる医者。

■シアーズの事
本編で最期が若干ぼかされてたような気がしたので、
ここは強引に生存説に一票。
是非幸せになってほしい。
51名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/06(土) 02:44:06 ID:UiAU7Ucc0
>>48-50
この三人には是が非でも幸せになって欲しい! と思っている自分には凄く良いお話でした。
誰も知らない明日への出立ですが、心のままに赴けば迷子になることはない、という希望的な
結末で読後の余韻も良かったです。

携帯用という事もあってか、フヒトとシアーズの描写って最後すごく曖昧だったなー。
正直なところ、シアーズが何したのかちょっとよく分からなかったw(すいません)


> ところで、名前の部分にリンクないのってまずいのでしょうか…。

メール欄に sage と入れる(=こうする事で名前にリンクが張られる)のは、簡単に言うと
スレが荒れるリスクを回避する策、とでもお考え下さい。
この辺の詳細については2chの仕様について解説されたスレなどを参照すると良い事がありそう。
ただしsage投稿はあくまで「推奨」です。
…とは言っても、最近は文章系スレってあまり活況じゃないせいか、滅多に荒れる事は無いと思いますが。
長レスご免。
52月水:2010/03/06(土) 23:04:08 ID:P16SKqdC0
>>51
ご指南ありがとうございます。
感想まで頂けて感謝感激でした。
53ラストダンジョン (356)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/03/09(火) 02:26:55 ID:ZuFp2VcN0
前話:前スレ503-508
----------

「およそ40分前、WRO本部から我々飛空艇師団への最後の通信記録を再生します」
 通信担当のクルーの言葉で、シドの意識は現実に引き戻された。
 やがてシドの目の前にあったモニタの表示が切り替わると、スピーカーからリーブの声が聞こえて
きた。

『我々WROは、“星に害をなすあらゆるものと戦う”組織である。私はこの組織の設立者として、この
 理念に従い通信を経由して飛空艇師団に次の通り正式要請します。
 ――建造中のWRO本部施設の破壊と、現局長の抹殺。
 尚、この作戦への参加は各隊員の自由意思を尊重するものとします』

 音声は紛れもなくリーブのそれだったし、この通信帯域に外部から割り込むことは極めて困難であり、
そのものの信憑性は高かった。しかし、新本部施設内での光景を目の当たりにしたシドとしては、この
通信を真に受けることはできない。
 なによりも、シド自身がそれを許せるはずがなかった。
(こんな……こんなのが、アイツの言った“夢の続き”なワケ無ぇんだよ)
 だから恐らくこれも、“リーブであってリーブではない者”からのメッセージだろうとシドは思い込んで
いた。しかし、それをどう説明すれば分かってもらえるのだろうか? それどころか自分が理解しきれて
いないのだから、説明のしようがない。
 だからといって考えている余裕も、躊躇っている時間もなかった。
「通信は可能だったな?」硬い表情で問うシドに、通信担当のクルーは短く返答するとパネルを操作
する。命令を受けるまでもなく、これからシドが何をしようとしているのかは分かっていた。チャンネルを
非常用回線に合わせてそのまま待機する。
 やがてシドは通信機を取り上げると、全艇に向けて呼びかけた。今は理解よりも先に行動が必要
だったからだ。
「……飛空艇師団長のシドだ。聞こえるなら応答してくれ」
 呼びかけに応じ本部上空へと集まった、あるいは航行中の全艇からの応答が確認できたことを
クルーが告げる。報告を受けてシドは先を続けた。
「遅れてすまねぇが、WRO本部からの最後の通信記録を確認した。が、自由意思ってんなら
オレ様はこの作戦には参加しない。……ついでに」
54ラストダンジョン (357)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/03/09(火) 02:32:17 ID:ZuFp2VcN0
 いったん言葉を切ってから顔を上げるとコントロールルームを見渡した。それから決意したように頷く
と、再びマイクに向けて語り出す。

「WRO本部施設の攻撃に対しては、どこからであろうと躊躇なく迎撃を行う。……これがオレ様の決定だ」

 同士討ちも辞さないと言うシドの言葉に、交信中の全艇が沈黙を保っていた。返答は期待していない、
とりあえず今は聞いてさえくれていればいい。飛空艇師団が空爆なんて冗談じゃない。
 それからシドは通信担当のクルーに回線を閉じないようにと告げてから、振り返って顔を上げると
搭乗員達に告げた。
「聞いての通りだ。この飛空艇は……局長の要請を無視して独自の作戦を展開する。つってもまあ、
さすがにこんなのは作戦って呼べたモンじゃねぇけどな」
 口元を歪めて笑うと、鼻下を擦った。
「オレ様は作戦以外でお前らを拘束するつもりはねぇ。だから賛同できねぇ奴は艇を降りてくれ」
 幸い、日没までには僅かだがまだ時間が残されている。どちらに従うかそう簡単に選択できるものでは
ないし、できたとしても後味が悪すぎる。せめてクルー達には余計な負担をかけさせたくないとシドは
考えていた。それは夢の先にある翼を得た自分が負うべき責務だと、最初から覚悟していた事だった。


 長く重苦しい沈黙がコントロールルームを満たす中、それでも誰一人として艇を降りようとする者は
いなかった。
 やがて沈黙に耐えかねて口を開いたのは、シドのすぐ横にいた通信担当のクルーだった。
「どれほど大きな危険が伴おうと、艇長になんと言われようと、我々は艇を降りる気はありません。
でなければ……」見つめていたパネルから顔を上げると、シドを見てこう言った「何の為にここにいる
のか、分かりませんからね」。
 口調こそ穏やかではあるが、その意思が頑なである事はクルーの目を見れば分かった。3年前の
あの日、ディープグラウンドとの交戦を前にした時でさえ飛空艇を降りたいと申し出た者はいない。
少なくはない犠牲の上に、今の彼らがある。クルーの言外に込められた強い思いをシドに否定できる
はずは無かった。
「……そうさなぁ」加勢するようにレーダー担当のクルーが言った「コイツの言ってる通り、船賃を払わずに
乗船してる奴なんざ一人も居やしないぜ?」。
 畳み掛けるようにして奥にいた年輩の航法要員が口を開く「俺たちは全員、覚悟という船賃を払って
ここにいるんだ」。彼はかつて、ロケットの発射時にも航法担当として地上に勤務した経歴の持ち主でも
あり、若いクルー達にとってはよき相談相手でもあった。
「だから艇長、今さら艇を降りるか否かというのは愚問じゃないか?」
 そう言って年輩クルーは笑った。
『それによぉ艇長』通信担当の目の前にあったスピーカーからは、エンジンルームにいる燃料担当の声
が告げた『艇の動力が変わったところで、俺らは重力に逆らって飛んでるんだ。いちど空に上がったら、
たとえどんな理由だろうが落ちて死んだとしても恨みっこ無し。……そう言うモンだろ?』。
 たとえ背後の味方に撃ち落とされたのだとしても――言葉には出さないが彼はそれを覚悟している
『艇に何かあった時、最初に燃えっちまうのはここなんだからよ? 俺らが生半可な覚悟で飛んでると
思われちゃあ、心外ってモンよ!』
55ラストダンジョン (358)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/03/09(火) 02:37:12 ID:ZuFp2VcN0
 スピーカーの向こうで豪快な笑い声を上げる燃料担当に否を唱えるべく、さらに別の声が聞こえて
きた。

『それは聞き捨てならない台詞ね。そうならないように、私達が地上からサポートしてるんじゃない? 
……それとも、私達の腕を信用して頂けてないのかしら?』

 それは飛空艇師団の本拠地――ロケット村にある地上管制室で、これまでの会話の一部始終を
聞いていたシエラの声だった。
「違いない! アンタの言うとおりだぜ」元地上勤務者として、シエラの言葉に強い共感を示し深く頷き
ながら航法要員が言う。
『しかしそれこそ愚問ってモンだぜシエラさんよ』
 通信越しに交わされる威勢の良い遣り取りと、そこに混じる豪快な笑い声が、場の空気を和ませる。
通信担当のクルーはスピーカーを見つめながら小さく笑うと、もう一度シドの顔を見上げてこう言った。
「艇長。……我々が知りたいのは、理由なんです」
 シドは黙ったまま何も答えない。クルーは話を続けた。
「理由も分からないまま艇を降りるわけにも、まして空爆なんてするわけにも行きません。他の艇の
クルー達だって同じなんですよ、戸惑ってるんです」
「この状況で『戸惑うな』って方が無理だ。分かるよな? シド」
 問われて尚も、シドは何も答えようとしなかった。通信機の向こうから、シエラが訴える。
『先ほどの空爆要請は、こちらでも確認しています。私達だけではありません、この事実はすでに
多くのメディアを通して各地の人々にも知らされています』
 各地で混乱、あるいは困惑する人々の状況は、シエラ自身をはじめ村の人達の様子を見ていれば
容易に想像が付いた。
「言っちまったら冗談じゃ済まないって事ぐらい、考えりゃすぐに分かりそうなんだがなぁ。なにやってる
んだ? WROの局長サマは」せめて猫のぬいぐるみが言ってくれてりゃ、笑い飛ばせてやったのに! 
と茶化すように言葉を続けたが、ここにレーダー要員の戸惑いが伺える。
『……局長さんが、軽々しくそんなことを口にするとは思えません』通信越しにシエラが反論する。
もちろん、彼の気持ちを汲んでいないのではない。
『ですから恐らく、あちらにも何らかの事情があるのでしょう。だからこそ私達に協力を求めたのでは
ないですか?』混乱を招くというリスクをおかしてでも、自ら要請しなければならないほど切迫した事態
なのかも知れない。
 シエラが言うのはもっともな意見だった。
『それを承知の上で、要請を拒んだ理由だってあるはずです。……違いますか? シド』
「……お前の言う通りだよ」
 吐き捨てるようにして答えると、シドは視線を逸らした。回線の向こうにいるシエラは、少し笑んだような
口調で言った。
『私達が知りたいのは、その理由です。話して頂けませんか?』
 その言葉を聞いた瞬間、シドは手元のパネルに両手を叩きつけると半ば叫ぶようにして応じた。
「あの声の主……あれはリーブじゃねぇんだ、だから従わねぇ。……オレ様に原理だの理屈だのが
分かってんなら、とっくに説明してらぁ! 今はそれができねぇし、確証も持てねぇ」パネルの上に置いた
両手で拳を作ると、ぶつけるように言葉を吐き出しながら先を続けた。
「あいつの理由とか事情とか、そんなのはオレ様の知った事っちゃねぇんだ。だがな、仲間のいる場所に
爆弾落とせだのと、そんなふざけた要請を引き受けられるか!? そんな事のために……」
56ラストダンジョン (359)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/03/09(火) 02:43:44 ID:ZuFp2VcN0
 瞼の裏に過ぎったのは、かつて飛空艇師団の設立に協力を申し出たリーブの姿と、彼の言葉だった。

 ――「翼を持てる人に協力……率直に申し上げれば、その力をお借りしたいとも考えています」

 シドは目を見開いて瞼の裏から過去の記憶を追い出し、さらに真っ向から否定した。

「そんな事のためにオレ様は空を飛んでるんじゃねぇんだ!!」

 言い終わると再び沈黙が訪れた。鼓動にも似た機械音が、時計代わりに時を刻んでいるようだった。
 シエラの言葉に我を忘れて捲し立てたまではよかったが、言ってしまった後は罪悪感に苛まれていた。
今やこうして飛空艇師団を率いる自分が、感情任せに無責任なことを言えた立場ではないのだと。夢や
理想だけで空を飛べるなんて事はない、せっかく手に入れた翼を維持するために必要な物が、とうてい
自分一人でどうにかなる物でない事も弁えていたはずなのに。
 そんなシドの耳に、クルーのひとりが漏らした大きな溜息が聞こえてきた。しかし、その先に続いたのは
呆れ声では無かった。
「誰だって目的地も知らない状態じゃフライトプランは立てられない。そんな状況なら誰だって戸惑うに
決まってる。でも今の言葉ではっきりしたじゃないか、俺らが向かうべき“目的地”がよ」
 驚いた表情で振り返ったシドに、航法班の年輩クルーは柔らかな笑みを向ける。
「『そんな事のために空を飛んでるんじゃない』……それだけで、理由としては充分ですよ」
 今まで強ばった表情を崩さなかった通信担当も笑顔で言った。
「そうだぜ。啖呵を切って俺たちを降ろしたって自分さえいりゃ飛べる、な〜んて勘違いされちゃ困るぜ?」
『ホラ、いつかのアイツも言ってたじゃねーか。……なんだっけ?』
 エンジンルームからの声に続けと、心当たりのある者達がそこかしこで一斉に声を上げた。それから
スピーカーを通して唱和する。

 “俺たちの乗った飛空艇は、途中で降りられない”ってな!

『ま、降りろって言われても無理だけどな!』
 こうして艇長シドを取り囲むように聞こえるあたたかな笑い声は、しばらくの間絶えなかった。


----------
・忘れた頃にやってくるラストダンジョン、今回もお付き合い頂けた方ありがとう。
・作者の中で“おっさんは格好良いモン”だと相場が決まってる。…しかしいかんせん文章描写(ry
・シドとシエラ以外は、DC7章シエラ号で聞ける台詞を元にねつ造した人々。っていうか全員ねつ造。
57名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/11(木) 19:20:38 ID:emBnvU9z0
乙!
58名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/14(日) 08:20:48 ID:xSEh+pN90
>>48>>53
GJGJ!
59名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/17(水) 08:34:25 ID:c6PjpYTS0
GJ!
60『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 06:03:37 ID:CTVfLvVO0
お久し振り…というほどでもありませんがちょっとだけ間を置いて投稿いたします。
>>23-32からの続きです。FFTA2二次創作小説『Trois Grimoire-トリア・グリモア-』第3回目です。
うーん、HPじゃ相当進んでるのにこんなゆったり投稿してていいのか…w
まあ、いいかな?w

****************************************************************************
バチッ、パチンッ…
焚き火の弾ける音が夜の森に静かにこだまする。
レナ、ファリスが何かを話している。

「なあ…北の山での事だけどさ…」
「…姉さん、母さんの事覚えてる?」

バッツはぐっすり眠っている。
あたしは、何故か目が冴えていた。
イヤな予感がしていたのだ。

それは、この島に着いたときから、ずっと感じていた。

そしてその予感は確信に変わった。
暗黒魔道士エクスデス…その名を聞いたときに。

あたしたちの世界にも、似たような名前の『審判の霊樹』と呼ばれる存在がいる。
この、島全体…いや、世界全体に漂う邪悪な空気は
きっとそのエクセデス、もといエクスデスが発しているものなのだろう。

警戒を怠ってはいけない。
あたしは、長らく忘れかけていた戦いの勘が
自分の中で確実に取り戻しかけているのを肌で実感していた。

そして。

―――――フッ。

焚き火が、消えた。

「?」

レナ、ファリスが一瞬呆けた、そのとき。

バサアッ!!

魔物!
エクスデスの配下にして斥候の『アブダクター』が、バッツらを捕らえるべく襲来した。
61『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 06:04:28 ID:CTVfLvVO0
「な…」

そして、バッツが異変に気づき身を起こして…物言う間もなく、レナとファリスが連れ去られる。

「退がって!」

あたしは素早く、アブダクター(名前は後で知った)に近づき、得意の二刀流で
一気にカタをつける!

魔物は一瞬にして絶命する。
バッツが驚く。

「す、凄い…君は一体…」

「ま、あっちの世界じゃレベルMAXですからね」
あたしはちょっと得意になる。
が、それどころじゃない!

「それより!」

連れ去られたレナとファリスが心配だ。
バッツは空を見上げた。

「くっ…もう、姿が見えない…くそっ!」
夜の闇に隠され、敵の姿はもうバッツには視認できないようだった。
だが。あたしなら。

「…大丈夫、見えます!」

「えっ!?」

あたしはそう言うと、木々を伝って、空へと跳躍した。
62『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 06:05:34 ID:CTVfLvVO0
既に高度20メートルあたりにはいたのだろうが。
なんとか、あたしの手の届く範囲に居てくれた。
それが敵にとっては運の尽きだ。

「甘かったわね。とっとと逃げりゃ助かったんでしょうけど!」

そう言い放つと、アブダクターの放つハリケーンを易々とかわしたあたしは
一刀の元に斬り捨てた。
レナとファリスが敵の手から離れた。
敵に抱きかかえられていた2人は何かのガスを嗅がされ気絶していたようだが…
あたしはなんとか、2人の腕を掴む。
そして。

「バッツさーん!だ・き・と・め・て!!」

レナとファリスを離すまいと必死に自分の体に引き寄せ
そのままバッツに向かって墜落した。

どしーーーーーーん!!!

「いててて…レナ!ファリス!だ、大丈夫なのか!?」
「たた…ええ、大丈夫。ガスか何かで眠らされてるけど、無傷ですよ」
「よ、良かった…!アデル、ありがとう!君も怪我はないか?」
「へっちゃらですよ。バッツさんが受け止めてくれたし」
「はは…」

安心しきったのか、バッツはヨロヨロと倒れた。
63『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 06:07:16 ID:CTVfLvVO0
「お」

と、そこであたしは気づいた。

「どうやら、お土産があるみたいです」
「へ?」

あたしは、敵が落としたであろう宝箱を目ざとく見つけ…

「何が入ってるのかしら?」

パカッ。

「あ、そういうのは多分100%罠…」

バッツが止める間もなく、ガスで眠らされました。
…なんなのよ、もう!!

****************************************************************************

「…う、う〜ん…」

「ファファファ…ようこそ、我が城へ!」

特徴的な笑い声。
あたしは目が覚めると同時に、目の前にいる甲冑に驚いた。

「う、うわ!派手なカッコ!…あんた誰?」

と、甲冑のオッサンに話しかけるあたしより前に、3人は目覚めていたらしく。

「アデル!よかった、気づいたか」
「バッツに聞いたよ。助けてくれたんだってな。ありがとな」
「私からも、ありがとう。…でも状況は最悪みたいね」

と、それぞれが口々に言った。
その言葉にあたしは、ピンときてしまった。

「最悪の状況?…じゃ、じゃあ、もしかして、この派手なおっさんが…?」

『エクスデス!』

(えええええええええええ!?)
64『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 06:08:08 ID:CTVfLvVO0
あたしは驚いた。
あたしたちの世界の『エクセデス』とはだいぶイメージが違う。
なんか、すっごい…派手だ。取り敢えず派手すぎる。
何で水色の甲冑?ていうか、マントが若干ピンクっぽいんだけど。
あと、装飾過多!何?仮装パーティですか?

いや、確かに凄い威圧感とか強さは感じるんだけど。

「こ、こいつがエクスデス…」

なんか残念!すごく残念だわ!
悪のラスボスってイメージからは程遠いような!
あたしの主観の問題なのかしら。

まあ、そんなことはいいとして。
どうもあたしたちは、ラスボスの城に捕らえられちゃったらしい。

「すまない、アデル…巻き込むつもりはなかったんだけど」

バッツがそんな事を言う。

「なーに言ってんですか。あたしもこれから、友達探しに貴方たちを巻き込む気満々なんですからね!」

「は!?いや、今そういう状況じゃ…」

エクスデスを目の前にしてこの余裕。
あたしのそんな態度に、さすがのバッツもちょっとうろたえている。
そんなやり取りを無視して、敵さんは何やら緊迫した様子。
65『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 11:43:17 ID:CTVfLvVO0
「エクスデス様!ガラフ達が、ビッグブリッジまで来ているようです!」

「そうか…大鏡を用意せい!」

「はっ!」

なんだ?
何が始まるんだろう。

と、エクスデスの配下の魔物がでっかい鏡を持ってきた。
なにあれ?

「バッツ!見て!」
レナが叫んだ。

「おれたちの姿が、空に!」
ファリスも続く。

「ええっ!?なにこれ!?」

すごい。エクスデス城は吹き抜けだったらしい。
あたしたちの姿、空に映ってるのがこの牢獄からも見え見えだよ。
ていうか、これなら上から逃げられんじゃないの?
そんなあたしの心のツッコミをスルーして、ドラマは展開していく。

「ガラフよさがれ!さがらなければ、この者たちの命はない!」

エクスデスが人質作戦に出ました!
悪のラスボスのくせに器ちっちゃ!
攻め込まれてんだ!追い詰められてんだ、今の状況!

「なんか、色々残念だわ」

あたしは思わず呟いた。
66『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 11:44:07 ID:CTVfLvVO0
「な、何が?」

バッツが聞き返すが、あたしは

「いや、気にしないで…あたしの中のエクスデスってこんな感じじゃなかっただけ」

とだけ返した。
そこで、敵の大ボスがあたしたちのやり取りをさすがに気にしたらしく。

「何をごちゃごちゃ言っている…」

と、エクスデスがこちらに向き直る。
あたしは思わず怒鳴りつけてやった。

「ちょっとあんた!悪の大ボスのくせにやる事なす事いちいち小物くさいのよ!
 もっと正々堂々と戦ったらどうなのよ!?」

あたしの啖呵に、バッツもレナもファリスもエクスデスも思わずポカーンとなっていた。

「…ファファファ!面白い小娘だ!」

「あたしは当たり前のこと言ってるだけよ。もったいぶってないで、ガラフさんと真っ向から戦いなさいよね!?」

「…黙れ」

と。
今まであまり恐ろしい印象を与えなかったエクスデスから、
明確な殺意を感じ取った。
67『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 11:44:50 ID:CTVfLvVO0
あたしの全身の細胞が悲鳴を上げた。

(まずい。怒らせすぎちゃった!?)

と、そのとき。
エクスデスが放った光弾をバッツが体で止めた。

ガァン!!
凄まじい音と熱が、バッツを襲った。

「エクスデス!きさまっ!」

バッツは痛みに顔を歪ませながらも、
あたしを護ってくれた。

「ば、バッツ…!」

エクスデスはそんなバッツを相手にもせず、背を向けたまま誰かを呼んだ。

「ギルガメッシュ!」

「はっ!」

すると、武人風の男が現れた。
エクスデスはその男に向かって命令する。

「こいつらを見張れ。たよりにしているぞ」

「お任せ下さい!」

ギルガメッシュと呼ばれた男は、あたしたちの見張りについた。
なんか、こいつも微妙に威厳を感じないけど…強そう。

取り敢えず、さっきみたいな早まった真似はやめよう。
バッツが死にでもしたら、あたし…

「ごめんね、バッツさん。今すぐ回復魔法かけるわ」

「てて…ムチャするなよ、アデル!あいつは恐ろしいヤツなんだ」

「うん。身に沁みて分かった。ホント、ごめん」

そういいながら、あたしはバッツにケアルガをかけた。
う〜ん。あたしたちの世界の魔法、どの程度効くのかな?

「ケアルガ…ケアル系最上位の魔法ね。アデルはそんな高等な魔法までマスターしているの?」

レナが驚く。

「まあ、色々マスターしてますから」

あたしは、特に自慢するつもりでもなく、さらっとそう言った。

「すげえな…」

ファリスも感心している。ちょっと嬉しい。
あたしの『優れし者』としての力が活きるなら…
こんな寄り道も、悪くないのかも。
68『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/03/22(月) 11:47:10 ID:CTVfLvVO0
…というわけで今回はここまでです。
5回連続以上の投稿は規制されるんですね…前はなんで平気だったんだろう
そしてちゃんとテンプレ読まないと自分。次回から気をつけます!

次あたりでFF5編は終わりになります。そしていよいよ…
69名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/25(木) 19:07:07 ID:J6p3DVn20
70名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/29(月) 06:51:29 ID:wh8EJAPz0
71名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/03/31(水) 05:07:20 ID:ixELAzHn0
72名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/02(金) 08:03:13 ID:mp98CaHC0
73名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/04(日) 13:12:49 ID:91j7A9vV0
74名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/07(水) 22:47:07 ID:tVfrK9YIO
75名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/10(土) 10:50:39 ID:vF3Vqqgg0
76名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/12(月) 18:44:08 ID:4PmiS2xpO
77ラストダンジョン (360)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/04/15(木) 15:41:03 ID:uxLvjDEK0
前話:>>53-56
※場面が変わります。
----------

 6つもある巨大なタイヤでさんざん荒野を踏み荒らし、背後に泥や土煙を遠慮無く撒き散らしながら
ひた走る1台のトラックがあった。お世辞にもスマートとは呼べない車のハンドルを握っていた男は、
さして楽しくもないドライブをかれこれ2時間近くも続けていた。走っているのが整地されていない悪路
だったうえ、さらに硬いシートが衝撃を体にそのまま伝えてくれるから乗り心地は最悪だった。せめて
気分だけでもと助手席の男に話しかけるが必要以外の返答は無いし、大体にしてドライブなんて男と
したって楽しい事などひとつもないのだ。救いを求めるようにしてつけた車載ラジオから聞こえてくるの
は、アナウンサーが伝える味気ないニュースばかりだった。しかもここしばらくは似たような言葉を繰り
返し、その半分以上はだろう・らしいで聞く方は飽きを通り越して呆れる出来だった。
 お陰でハンドルを握りながら「これなら自分が喋ってる方がよっぽどマシだ」と結論するに至り、口数は
増える一方だった。
「おいルード、本当にこの道であってるのか? いい加減もう疲れちまったぞ、と」
「それだけ喋ってれば当然だ」
 地図に目を落としたままで助手席の男は短く応じた。ここまで続く緩やかな登り勾配が、地図上の
等高線と一致していること。さらには速度計と自身の腕時計から走行距離を割り出し、地平線に向かう
太陽で方角を確認しながら、可能な限り走りやすい場所を選び誘導するのが彼の役割だった。
「ちょっと待て。運転してるのは俺だぞ、と」
 そんな助手席の苦労はお構いなしと言わんばかりに親指を自身の胸に当てるようにして主張するレノ
に、ようやく地図から顔を上げた男は、しかし運転者の主張には取り合わずこう告げた。
「目的地はここから西へ約15キロ。もうすぐだ」
 ところが言い終わるよりも早く、進行方向の視界が唐突に開けた。レノはとっさにブレーキを踏み込んで
ハンドルを切ると、バランスを崩した車体が大きく傾きタイヤは悲鳴を上げてようやく停車した。眉間に思い
切りしわを寄せたルードが苦情を述べようとしたが、正面を見据えるレノの真剣な横顔を見て口を閉ざした。
 地図上で言うと小高い丘の頂に到着した彼らは、ここで車を降りた。
78ラストダンジョン (361)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/04/15(木) 15:48:16 ID:uxLvjDEK0
「……おいルード」
 呆れたように溜息を吐いたレノの前方には、森の彼方に新本部施設を望む平原が広がっていた。
確かに進路は間違っていなかったし、ルードの言うとおり目的地も目に見える場所まで来ていた。
ところがここで道は完全に断たれてしまった。
「これじゃあ丘じゃなくて崖だぞ、と」
 レノは足元を見て呟いた。視線の先にはざっと見積もったところでも幅8メートル落差20メートルは
あろうかという亀裂が走っていた。いくらこの車が頑丈にできているとは言っても、落ちればタダで済む
高さではない。そんなわけで先ほどのハンドル操作を自画自賛したい衝動に駆られるが、口には出さ
なかった。
 それにしても見渡せる範囲にはずっと亀裂が続いていて、迂回しようにもかなり時間を取られそうだ。
「すまない。……地図が古かった」
 彼らの行く手を阻んでいたのは、どうやら6年前に地上に吹き出したライフストリームの爪痕らしかった。
人里離れたこの地域は地図も書き換えられずに取り残されたまま、当時の姿を留めていた。こうなった
以上、この道は諦めるしかない。
 しかし、そもそも彼らの出発地点から陸路でここへ辿り着くことは6年前までなら不可能だった。にも
かかわらず、干潮時を利用して車でも海を渡るルートを示してくれただけでもこの地図の功績は大きく、
それ以上に地形を変貌させたライフストリームの影響は絶大だった。
「なら仕方ないぞ、と」
 そう言って見上げれば、夕焼け色に塗り替えられた空には淡いオレンジ色の雲が浮かんでいた。大地
を渡る風は肌に心地よく、それに運ばれて家路を急ぐ野鳥のさえずりなども聞こえてくる。それはレノに
とっては退屈にも思えるほど平和で、のどかな光景だった。
 そんな中にあって、星とは違い規則的な点滅を繰り返す翼端灯は地上から見てもひときわ目を引く存在
だった。それが局長声明を受けて集結しつつある飛空艇師団の機影である事は考えるまでもない。
ラジオのニュースが伝えている光景が、まさに目の前に広がっていた。無骨な車体に背を預け、空を仰ぎ
見たレノが苛立たしげに呟いた。
「……まったく、とんだ迷惑だぞ、と」
 その後ろでは、ルードが黙々と荷下ろしを始めていた。彼はレノの言葉には応えず、荷台に収められて
いる物騒な代物の組み立てに取りかかる。 
「WROの内輪揉めに、どーして俺らが駆り出されるんだぁ? ったく納得いかないぞ、と」
 ここへ来た事に対しひたすら文句ばかりを並べながら、視線を下ろすと平原の先にWRO本部が見え
た。正確には、完成すればWROの新本部施設となる予定の建物である。
「なあルード、お前もそう思うだろ?」
 振り返りざま、作業を続けるルードに問いかける。
「…………」
 呼ばれて一度は顔を上げるも、特に言葉もなく再び作業に取りかかる。呼びかけた方も彼の態度を
特に気にも留めず、視線を前方へと戻した。彼らは長年にわたって仕事を共にしている間柄だが、実に
対照的な個性の持ち主だった。同じ制服でも一方は着崩しているし、一方はきっちりと着込んでネクタイ
まで締めている。知らない者には一見アンバランスだが、互いの持ち味を活かせる最良のパートナーと
いうわけだ。
79ラストダンジョン (362)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/04/15(木) 15:55:19 ID:uxLvjDEK0
「ルードは相変わらず仕事熱心だよなぁ」
「気乗りはしない」
 ルードはそう言いながら、肩に担いだそれに取り付いている望遠レンズを通してレノと同じ方角を見つ
める。中央には新本部施設が映っていた。
「どちらを狙うにしても……同士討ちだ」
 そう言って肩を上げ、少し上の方へ視線をずらすと今度は飛空艇が映った。
「『“同士”討ち』ねえ。果たして向こうはそう思ってくれるかな? と」
 冗談めかしてレノは言ったが、心のどこかにある不安と言う意味では紛れもない本音だった。
 ルードは何も答えず、無言で照準機の絞りを微調整していた。その手が一瞬だけ止まった事が、彼の
返答だった。
 もともとタークスは神羅内における日陰の存在、こういった汚れ仕事には慣れている。彼らが愁いで
いるのは、照準に入っているのがいずれも旧神羅カンパニーの関係者、それも星を救おうと奔走した
功労者達だと言う事だった。
 皆が同じ道を選べないのは仕方がない。けれどこんな形で交差するなら、いっそ二度と交わることの
ない道を進んでくれれば――特にリーブは、かつてヴェルド主任を救うため社に背いたタークスにも
密かに手を貸してくれた数少ない協力者であり、少なからず恩義があるはずと――ルードの心中に
過ぎる想念が、今日ここへ至った決意と照準を揺らした。
「……これが単なる内輪揉めではないとツォンさんも分かってる。だから俺たちをここへ寄越した」
 いったんスコープから目を離すと頭を振ったルードは、まるで自分に言い聞かせるようにして口を開く。
「そうだな。それを阻止するのが俺らの任務だぞ、と」
 どんな任務でも必ず成功させる、それがタークスだ。自分達を取り巻く環境がどう変わろうが、これ
だけは変わらない。そう言い聞かせてみても、どうにも気分は晴れなかった。レノは眉を顰めると声には
出さずに呟いた。
(今さら憎まれ役になるのを怖がってる? それもおかしいぞ、と)
 WROと飛空艇師団――密やかに神羅の遺産を受け継ぎ、世界を立て直すために表舞台で活動する
組織――ジェノバ戦役の英雄が率いる両組織の決裂がもたらす影響は当人達が思っている以上に大きく、
それを阻止するという重大な任務を負って派遣された精鋭が他ならぬ自分達であると自覚と、それでこそ
タークスだという自負もある。しかしこの任務を達成すると言うのはどちらか一方、あるいは両方を敵に
回す事を意味する。もはや表舞台には立てなくなった『神羅』に代わって“負の遺産”の清算に奔走する
彼らを救うためとは言え、これでは割に合わない。
 確かに今までレノはそう思っていた。
(いや違う。……どうもおかしいぞ、と)
 ところが、こうして改めて考えてみると何かが違う事に気がついた。あると分かっている蟠りの正体が
掴めずに、レノは苛立った。
 ちらりと後ろを見やると、機材や部品のチェックに余念がないルードの姿があった。仕事熱心な相棒に
引け目を感じ、思わず目をそらしたレノはもう一度空を見上げた。何とはなしに向けた自身の頭上はるか
高くには、一番星が孤独に瞬いていた。
(俺はなんで苛立ってるんだ?)
 そうやって自分に問いかけてみても答えは返ってこない。レノは苦笑に唇を歪めると瞼を閉じた。聞こえ
てくるのはルードの手元で鳴っている機械音、風が吹く度に遠くの方で擦れ合う枝葉の音や鳥のさえずり。
そして、車載ラジオが発する耳障りなノイズ音だけだった。
「……ん?」
80ラストダンジョン (363)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/04/15(木) 16:03:23 ID:uxLvjDEK0
 異変に気付いたレノははっとして目を開き、急いで運転席に駆け戻った。先程からずっと周波数は
変わっていないし、受信状態もいたって良好だったはずなのに今はノイズ音しか聞こえない。ダイヤル
を回して他を当たってみるが、どこもすべて同じだった。周囲を見回しても障害物になりそうな物など
見当たらない。なのになぜ急に? 今やノイズばかりを垂れ流すスピーカーに向けてレノは首を傾げた。
 それからしばらく考え込んでいたが、ふと思いついてレノは助手席の窓から顔を出し、心当たりに視線
を向けた。
「おいルード」
 ルードが入念に調整を行っている兵器に積まれた誘導装置の発する電波が、ラジオに干渉している
のではないか? そう思いついたレノは相棒に呼びかける。
「ちょいとそいつの電源を落と……」
 ところがルードは既に立ち上がり、レノを見上げてほぼ同時に言った。
「こいつは使い物にならない」
 妨碍電波か装置の故障か。いずれにせよ飛ばなければ単なるガラクタだとルードは両手を広げた。
既に装置の電源は切ってあると言う。
 それを聞いたレノは呆けた顔をしたが、次の瞬間には口元を笑みに歪めていた。
「ひょっとして――」
 根拠に基づいた推論と言うよりは勘に近い閃きだったが、これから起こる異変の前兆だと言うことは
容易に想像が付いた。しかしその異変が何であるかは皆目見当も付かない。
 ただし、その異変が自分達にとって何らかの希望になり得るのではないかと、そんな風に考えたのだ。
「俺たちが相手にしなきゃなんねえホンモノの『敵』ってのが、他にいるかもしれないぞ、と」
 どことなく嬉しそうな口調でレノが言うと、ルードは無言で頷いた。


----------
・規制を抜きにしても投稿が遅くなってすみません。
・FF7本編でハイウインド搭乗員に言わせるところの「怪電波」が拠。
81名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/16(金) 22:37:37 ID:0b+PbokBP
GJ!
82名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/20(火) 22:17:46 ID:GCRHUQke0
乙!
83名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/22(木) 22:48:51 ID:hy5iN9Zr0
おつー
84名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/24(土) 02:54:53 ID:z0MKgDEw0
85名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/26(月) 16:09:34 ID:SQZaAgaU0
86『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/27(火) 02:18:03 ID:Zk9k0YbT0
こんばんは。FFTA2二次創作SS『Trois Grimoire-トリア・グリモア-』第4回目、>>60-67の続きです。
今回でFF5編は終わり…と言いたいところですが無理かも知れません。

****************************************************************************

一方その頃、ビッグブリッジでは。
ガラフ達が、バッツらを助けるべく作戦を考えていた。

「バッツらを助けに行かねば…飛竜は、飛べるか?」
兵士が首を振り、答える。

「傷を負っていて…」
「そうか…」

落胆するガラフ。
だが、ガラフの孫娘クルルは飛竜の声を聞いた。

「飛竜……わかった!1回だけ飛ぶわ!」

「よし!クルル、お前は先に戻っていろ!わしが、バッツらを助けに行く!」
「うん!おじいちゃん、気をつけて!」

そして、単身エクスデスの城に乗り込むガラフに、クルルは手を振るのだった…

****************************************************************************

「あ〜あ…参ったなァ」

さっきはちょっとシリアスモードでバッツを助けたけど。
やっぱり何だかんだいって緊迫感のないあたし。

ごめん、バッツ、レナ、ファリス。
あたしにはこういうノリはついてけない。

(多分ガラフさん、きっと助けに来るんだろうな…マズイなぁ。
 あたしの居場所、なくなっちゃう。そしたら、どうしよ…)

あたしがこの人たちについてきてるのは、ルッソの手がかりを得るためでもある。
正直に言っちゃうと、その手がかりが得られないなら
このままダラダラとついていくのもあんまりメリットがないっていうか、リスクがあるだけな感じなのだ。

うん。悪いけどあたしの目的と利害からして、
そろそろ一緒に居る意味が微妙だ。

なんとかして、抜け出さなきゃ!
まずはあのギルガメッシュって人をどうにかしないと。
87『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/27(火) 02:19:09 ID:Zk9k0YbT0
「すいません!ギルガメッシュさん!?」

あたしのテンションにギルガメッシュは

「な、なんだ?」

と驚いたように答える。
うん。この人、きっと悪い人じゃないわ。

「おトイレ行きたいんだけど、ちょっとだけ出してくれないかなァ。
 あ、10分ぐらいで戻るから!」
「アホか!誰が人質を10分も放置しておくんだ!」

もっともなツッコミだ。
けど、相手してくれるだけ、この人はつけいるスキがある。

「ですよねー」

あたしはヘラヘラ笑いながらも、ギルガメッシュの気が緩む瞬間を狙う。

(どーせ、牢獄の鍵はあのオッサンが持ってんだろーし)

「じゃ、せめてお話しましょうよー。このままずっと閉じ込められっぱなしじゃ
 気が滅入っちゃうったら!」
「ぬ、ぬう…お前、人質としての自覚あるのか?」

とか言いながらも近づいてくれる。いい人だ。

あたしは瞬間、ギルガメッシュの腰に下げられていた鍵をスった。
音すら立てずに、目的の鍵のみを。
『優れし者』であるあたしには朝飯前だ。

バッツやレナやファリスは半ば呆れていて、じっとしていた。
好都合。ここで3人があたしの行動に気づけば、異変が嗅ぎ取られる(かもしれない)。

あたしは果てしなくどーでもいい雑談をギルガメッシュと交わしながら、こっそり、
かすかな金属音も立てずに牢獄の鍵を開けた。
そして…

「あ、そうそう。言い忘れてましたけど―――」
「?なんだ?」
88『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/27(火) 02:19:56 ID:Zk9k0YbT0
「あたしの得意技、スリなのよね!」

あたしはそう言い放つと、一気に牢獄の扉を開き、ギルガメッシュの顔面にぶつけてやる。
ガツンッ!!!
狼狽するギルガメッシュ。

「なにィ!!?」

『!!!』

「ほら!ボサッとしてないで!」

あたしは3人を促す。

「よ、よし!」

残念な事に3人は『クリスタルのかけら』とやらを奪われていて
ジョブの力を発揮できないが、運の良い事に、このタイミングで…

「バッツ!レナ!ファリス!」

『ガラフ!!』

カッコイイおじいちゃんが、助けに来てくれました。

「やりっ!」

あたしは思わず飛び上がり、4人は一瞬にしてギルガメッシュをノした。
劣勢に立たされたギルガメッシュは、わざとらしい演技と捨て台詞を残して去っていった。

「うっ!用事を思い出したぜ!必ず戻ってくるからな!
 覚えとけよ!ぺっ!」

「あはは、三流悪役〜!」

あたしは腹を抱えて笑わせてもらった。

そんなあたしを横目で見ながら、4人は再会の感動と結束を新たにしていた。

「ガラフ…ありがとう!」
「ええい、礼は後じゃ!まずは脱出するぞい!」
「おう!」
「ええ!」

「よーし、脱出よー!」

「…誰じゃ、この娘は?」

『いやまあ、色々あってさ…』
89『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/27(火) 02:23:18 ID:Zk9k0YbT0
****************************************************************************

「異世界から、友人を探しに…か」

「ええ、心当たりありませんか?ガラフさん」

「確かに、隕石を使ったワープ技術がこの世界にあるのは事実じゃが…ううむ」

駄目か。
どうも、この世界からルッソの世界に行く術はなさそうだ。
うーん、それじゃあしょうがないな。

「じゃあ、あたしはこれで。丁度4人が揃ったことだし、もういいですよね。
 短い間だったけど、ありがとう!」

「ちょ、ちょっと待ちなさい」

ガラフさんがあたしを引き止める。
なんだろう?

「いや、ものは相談じゃが…おぬしが友人の世界に飛ぶ協力をする代わりに、
 我々の戦いに加わってはくれんか?」

「ええー…でも、あたしには…」

そんな事してる暇ないんだけどなあ。

「ガラフ、ムチャ言うなよ。これまで協力してくれただけでも充分だ!」

「それはそうじゃが・・・」

「ありがとうアデル。ここからは私たちだけで戦うわ。貴女は貴女のやるべきことをするのよ」

「ああ、ホントに助かったぜ!バッツなんかより随分頼りになったしな!」

「おい、それは言いすぎだろ!…いやまあ、確かに頼りになったけどさ…」

ああ。
いいなあ、この空気…
確かに、もう少しこのパーティに加わるのも悪くないかも。
でも、あたしの目的はあくまで『ルッソの世界に行く事』だ。
別の世界のファンタジーやバトルに巻き込まれるのは、不本意。
ここは、気持ちを切り替えていこう。

「ええ、ごめんなさい。もう少しぐらいなら協力してもいいけど…
 あたしは、友達を探すのが優先なので!」

「そうか。しょうがないのう。じゃあ、せめて安全なところまでは一緒に行くかのう?」

「はい!」

というわけで、ガラフさんの居城であるバル城までは、
あたしも同行する事になった。
90『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/27(火) 02:29:31 ID:Zk9k0YbT0
****************************************************************************

そしてあたしたちは、ビッグブリッジに辿り着いた。

「ここが、ビッグブリッジ?」

「うむ。ここから先は魔物の巣窟じゃ!気をつけていけ!」

「まっかせといて!あたし、先行きますから!」

「ちょ、ちょっと!…もう!危なっかしいったら!」

「すげえな、この切り込み隊長っぷり。どっかのヘタレ男にも見習わせたいぜ」

「ファリスさん、その発言はおれの心を激しく傷つけるんですが。勘弁してくれませんかねえ!」

クスクス。
あたしはみんなのやり取りを聞きながら、敵を蹴散らす。
楽しいなあ。
いつ振りだろう、こんな充足感。
あいつが居なくなってから、ホント、久し振りに楽しい。

そして、ビッグブリッジも中盤に差し掛かる頃。
あたしは、勢いよく扉を開けた。

ばーん!!

「ぐはっ!!」

「え?」

どうやら、扉の向こう側に居た人の顔に思いっきりぶつけてしまったらしい。

「ご、ごめんなさ…ってアンタ、ギルガメッシュじゃん!」

「ま、またお前か…と!この扉の向こうでずっと待ってたぜ!
 来なかったらどうしようかと思ってたところだ!」

「なんで待つ必要があるのよ…そっちからかかってくりゃいいじゃん」

「う、うるさいな!!行くぞ!」

「あー、悪いけどあたし、あんたのコントに付き合ってらんないの。
 とっとと退場してくれる?」

「な…」
91『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/27(火) 04:56:54 ID:Zk9k0YbT0
そういうと、あたしは目にも留まらぬ速さで
ギルガメッシュの武器を破壊する。

「…」

唖然とするギルガメッシュ。
だが、武器を破壊されてはどうにもなるまい。

「じゃ、お先に♪」

「お、俺の最大の見せ場が…」

ギルガメッシュが何事か呟いていたが、知ったこっちゃない。
どうせ「俺が悪かった〜」とか言ってフイ打ちでもする気だったんだろうし。
そんな彼を尻目に、バッツたちも追いつく。

「一瞬で倒したのか?」

「まーね。あんな雑魚に構ってらんないでしょう」

「…は、はは」

バッツが苦笑する。
ガラフも思わず笑う。

だが、笑いはそこまでだった。
クルルが、目の前で待っていた。

「おじいちゃん!急いで!!バリアが!!」

「え」

「な、なにっ!?」

あたしは驚愕する。
真っ赤なドームが、エクスデス城を中心に広がっていく。
あ、あれってバリアっていうの?
なんかもう攻撃魔法とかそういう感じじゃない?

「きゃあああっ!!」
レナが、バリアの圧力で吹き飛ばされる。

「うわああー!!」
続いてファリス、バッツが飛ばされていく。

「レナ!ファリス!バッツー!!!」
最後に、ガラフが…

無常にも、クルルだけが避難できた状態で…

「いやぁっーーー!!」

あたしたちは、吹っ飛ばされた。

****************************************************************************

…というわけで、若干投稿規制から足が出ちゃいましたが今回はここまでです。
FF5編は以上で終了、次からは…
92名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/29(木) 02:42:13 ID:98MKzwd00
>>『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56
…作者さんに悪気は無いって前提での感想です。
荒らす意図はないですし、作者さんを愚弄する意味で書いてるワケではありません。気に食わなければ
スルーして下さい。(読み手の取り方の1つだと思って頂きたいのですが)

まず、既にサイトで公開中の作品をわざわざ掲示板に投稿する意図がいまひとつ理解できない事。
次に、今のところ混作の悪い部分(混作の難しさだと個人的には思います)が目立っている印象を受けて
しまう事。この2つの要素から、あまり作品に対して好感(続きへの期待)を持てません。
前者は単にマルチポストと似たような印象だからという理由。
後者は、>>64の様に世界観の外から見たエクスデス(衣装や行動)への指摘なんかは、混作の醍醐味
と言える面白さがあります。(余談ですがエクスデスの元が樹なので、植物の特性に準えて「派手な衣装」
の件を考えると、彼の衣装は、自らの在処を主張する花弁の役割に見立てているのかな? なんて邪推も
できそうです)
ところが、一方的な偏り(この場合は『優れし者』の圧倒的すぎる強さ)が顕著だと、他方の作品を軽んじて
いる様に受け取れてしまうので、二次創作もそうですが、混作の場合は特にそこに注意を払う必要があると思います。
DFFなんて良い例がありますが、あれもバランスをかなり考えて作ってありますよね。システム面はもちろん、
キャラクターの持ち味という意味でも。(どの作品のキャラクター(個性)も“殺さない”バランスを保って
いるという意味です。
全作知る人・一部のみを知る人・DFFからの入門者…と言った具合に、どの立場のプレイヤーにも偏らない
作りを心がけている事は、やっていてもある程度は汲めます)
今後の展開にもよりますが、現段階だと「優れし者(TA2)が各作品世界を渡り歩いて蹂躙する」という
風にしか読めず、これでは優れし者ではなく単なる破壊者であって、この先にあまり期待が持てません。
(それを逆手にとる展開なら別です。この感想が早計だったという事になります)
元作品のTA2を知らないので、この辺に認識の誤りがあったらすみません。

長くなっちゃいましたが、要するに勿体ないなぁと言いたかったって事です。2つの意味での見せ方さえ
直せば、面白い作品だと思います。
93『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/29(木) 03:37:55 ID:9ll7gVHR0
作者です。

サイトで公開中の〜について言うと、まぁ凄く単純に感想がまったくなかったりするから、なのですが
やっぱり良くないですかねえ…すいません。

あと、アデルの持ち上げっぷりについては本当、自分でも結構
『やりすぎだな、こりゃw』とツッコミが入るぐらいだったので
至極尤もな意見だと思います。そのまま校正せず載せたのは軽率だったかなぁ。

一応弁解しときますと。
他作品を軽んじる意味は全くなく、単純にFFTA2クリア後のアデルなら
あの辺の敵は楽勝になるんだろうなぁ、というゲーム的な意図と
『あくまでもアデルはルッソの世界に辿り着く為の通過点として
 たまたま他のFF世界を渡り歩いてるに過ぎない』ので
出来るだけあっさりイベントをクリアしていく(特に戦闘は)のが
痛快で楽しい。異世界を旅するにあたって彼女が
『色々と苦労しつつも、ルッソのように楽しく』過ごせたら、という意図があったりします。
まあこの辺は正直『TA2を全て理解しつつ、5や6や7が好き』って人じゃないと
ハードル高いかな、と書き始めた当初から思ってはいました。
中々両作品の良さを両立するのが難しいですね…

感想ありがとうございました。取り敢えず、投稿はお終いにして
サイトでの公開のほうを続けていきたいと思います。

お付き合い頂いた方々ありがとうございました。
94『Trois Grimoire』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/04/29(木) 03:54:08 ID:9ll7gVHR0
あ、それと蛇足的ですが自分はFFだと5,7,9が一番好きだったりします。
TA2は久々に自分の中でクリティカルヒットしたゲームだったので
SS書こうと思ったんですが、『クリア後』『異世界へ旅する』という発想の段階で
『他FFも絡めたいな』があってこういう形に。

TA2自体、知る人も少ないようなので…一度、TA2のみに焦点を絞ったSSを書いたほうが
良いでしょうかね?(ここへの投稿用、という意味では)

また性懲りもなくお邪魔するかも知れませんが、生暖かい目で見てやってくれると嬉しいですw
ではでは。
95名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/04/30(金) 02:49:32 ID:Sn0xzvR90
個人的には未プレイのTA2、その魅力がぎっしり詰まった作品を楽しみに待ってますよ!
96名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/02(日) 11:34:37 ID:D48s9upw0
保守
97名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/03(月) 19:57:35 ID:8kZuUViq0
98ラストダンジョン (364)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/05/04(火) 01:56:09 ID:O6HUDhoT0
前話:>>77-80(場面はダナ視点Part9 169-170からの続き)
※Part9 344-347(ナナキ編)をご覧頂いた上で見てもらえると良いかも。
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 目を覚ましたダナを出迎えたのは、ナナキだった。
「……だいじょうぶ?」
 意識を取り戻したばかりの相手をできるだけ驚かせないようにと、ナナキは細心の注意を払い、
かける言葉を選びながらダナと向き合っていた。
「あなたは……ナナキ?」
 その声にナナキは首を縦に振って答えた。
 翳んでいた視界が徐々にはっきりしてくると、暗がりを照らし出していたのがナナキの尾に灯った炎
だった事に気がついた。周囲に見える岩肌があたたかな色に染められ、ゆらゆらと揺らめく影が映し
出されていた。
「こっ、ここは?!」
 ダナはようやく自身の置かれている状況を認識し、飛び起きようとしたところを頭上にせり出した岩盤に
阻まれ、再び身を横たえた。今し方取り戻したばかりの視界が眩く発光し、その中を飛ぶいくつもの
流れ星を見た気がした。
「窮屈な思いをさせてごめんね。もうちょっとの辛抱だから」ナナキはそう言うと、外の様子を覗おうと、
振り返って洞窟の出口を見つめた。
「どうなっているの?」左手で額を抑えながら、右手で地面に触れる。目を開けてもまだ景色の輪郭が
はっきりしない。ただ、ここが先程まで乗っていたシャドウ・フォックスの中で無いことは確かだった。
「ガードハウンドの群れに向かって、君たちの乗った車が近づいてきたのが分かったんだ。だから急いで
知らせに行こうとしたけど、一足遅くて……」
 話を聞いたダナは、意識を失う直前に見た銃撃戦のことを思い出して血相を変えた。その様子に気が
ついてナナキが早口で付け加える「心配は要らないよ。他の人達は大丈夫、大きなケガをした人もいない」。
 ダナは安堵の表情を浮かべた。それを見てナナキもホッと息を吐いてから先を続ける。「でも車が故障
したみたいで動けないんだって。だから今は応急の修理と本部への連絡に追われているよ」あんな無茶
な運転をしていたら無理もないよ、と笑った。
「それよりも皆、外に放り出された君を心配していたよ。だからオイラが来たんだ、みんなよりはこういう
場所に慣れているからね」
「そうだったの。……ありがとう」感謝を述べつつも、最初にガードハウンドの群れを率いていたのがナナキ
だと勘違いしていた事を思うと、何となく気まずくて視線を逸らした。
「どうしたの? どこか痛い?」
 その様子を取り違えたナナキが、心配そうにダナを覗き込む。ますます気まずくなって肩をすくめる。
「ち、違うの。私、てっきりあなたが……」
 崖の上に立っているナナキを見て、ガードハウンドの群れを率いているものと勘違いしてしまった事を
白状すると、ナナキは思わず声を上げて笑った。
「もしかしてオイラ、クリムゾンハウンドにでも見間違えられたかな?」
「ご、ごめんなさい」
 図星を指されて居たたまれない心地になったダナに、ナナキは柔らかな口調でこう言った。
99ラストダンジョン (365)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/05/04(火) 02:02:17 ID:O6HUDhoT0
「いいんだ、モンスターに間違われるのには慣れてるから」
「…………」
 今度こそダナは言葉を失う。
「ええと……ごめん」皮肉のつもりで言ったのではない。でも、結果的にダナにはそう聞こえてしまった
ようだ。その誤解は解いておきたいと、ナナキは話を続ける。
「それにオイラ、ガードハウンドの群れを追っていたんだ。だから行く手を先回りしたところを見たなら
間違えられても仕方ないよ」
「群れを追って?」
 どうして? と尋ねようとしたところで、ダナはふと思い至る。そう言えばあんなに沢山のガードハウンド
が群れを成して一斉に行動しているのは今まで見たことがない。ダナの知る限り、殺戮や破壊衝動
以外の意思を持たないモンスターには協調性など無く、人間の前に複数で現れる場合も行きずりである
事が殆どだ。しかし先ほど見たガードハウンドの群れは明らかにどこか、あるいは何かを目指している。
「……確かに、モンスターがあれだけの大群で一斉に行動しているのは珍しいけれど……」
「君もそう思う?」ナナキの声色が変わった。
 片肘をついて、頭上に注意しながら慎重に上半身を起こすとダナは頷く「昔、ミッドガル周辺をモンスター
の群れが襲った事はあったけれど、群れていてもせいぜい4〜5頭が限度。遭遇数が異常に多いことも
あったけど、それでもあれほどの大群ではなかったわ」。
 洞窟内は高い所でもダナが膝立ちになると頭を天井にぶつけてしまう程の高さしかなく、幅も2メートル
程度、大きさからすると洞窟と言うよりは岩場にできた隙間だった。どうやら外に放り出されたダナを発見
したナナキが、しばらく安全な場所にとここへ匿ってくれた様だ。
 ナナキに先導されて洞窟を抜けると、曇天の下に広がる荒野に出た。
「みんなの所まで少し距離があるんだけど、歩ける? それともここで待つ?」
「問題ないわ」
 その後もナナキが先導する形で荒野を歩いた。どちらとも無く、先ほどの話の続きが始まる。
「モンスターが群れを成して行動する事は無い。オイラもそう聞いてきたし、実際に見てきたモンスターも
そうだった」それは6年前から始まった旅の間に、多くの地域を巡り様々な種類のモンスターに出会った
経験からの言葉だった。
「大挙して襲ってきたらさすがに太刀打ちできない。その意味では、彼らに協調性がないことを感謝した
いとすら思ってしまうわ」
 最初は冗談のつもりで口に出した言葉だった。けれど言い終てからダナは改めて考える。逆を言えば
他者と協力したり道具を作り出す事で、人はモンスターをはじめとした脅威に対抗する術を持った。
先人達の知恵と知識が技術を生みだし、技術が社会を育み世界を形作った。諍いの果てに犯した過
ちでさえ新たな知識の源となり、後世の人々に受け継がれて行く。マテリアが無くても、人は過去の
知識や記憶を引き出し、あるいは未来に託す術をずっと昔から持っていた。魔法が無くても、自分達を
脅かす脅威に対抗する手段を持っていた。

 ――魔晄エネルギーが無くても、豊かな生活を営もうと試行錯誤を繰り返して来た。

 ひとりでに肩が震えた。前を歩いていたナナキがどんどん遠ざかっていく。
 もうずいぶん以前から分かっていた事だとしても、否定された過去と向き合うのは簡単ではなかった。
その過去が、自らの心血を注いだものであれば尚更だ。
100ラストダンジョン (366)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/05/04(火) 02:07:59 ID:O6HUDhoT0
「……私達の行為やあの都市も、過ちとして後世に伝えられるのかしら」
 ぽつりと零したダナの言葉に、ナナキが振り返って問い直す。
「どうしたの?」
「ごめんなさい。ちょっと昔の事を思……」そうだ、とダナは足を止める。本来モンスターは群れを成さな
い。しかし、今日ほど大きな規模ではないにしろ、過去にもモンスターの群れに足止めされソルジャー
部隊の派遣を要請した事があった「……そう、ミッドガル建造中!」
 思考過程の断片だけを拾った言葉を聞いていたナナキには、ダナが何のことを言っているのか分から
なかった。少し先を歩いていたナナキも足を止めて振り返ると、もの凄い勢いでダナが駆け寄って来た。
「ねえあなた、ガードハウンドの群れを追っていたと言ったわね?」
「う、うん」ダナの勢いに圧倒され仰け反るような格好でナナキは答える。
「群れが向かった方角、教えてくれるかしら?」
 それからダナはポケットをまさぐった。いつもあるはずの携帯電話が手元にないことに気付くと、あの
とき落としたままだった携帯電話も自分と一緒に車から放り出されてしまったのだと知る。
 仕方なくダナは転がっていた石を使って地面に略地図を書いた。エッジを出た後、シャドウ・フォックス
が取っていた進路を矢印で書き込むと、さらにナナキが合流した地点を憶測し×印も加えた。
「ガードハウンドはどっちに向かっていたのかしら?」
「ええと、……こんな感じかな」
 ナナキは前脚を使ってガードハウンドの群れが進んでいた方角を書き足した。
「南南西? 本当にこれで間違いない?」
 確認の問いに頷くナナキを見て、ダナは期待が外れたという口ぶりで言った。「そう。……てっきりコン
ドルフォートに向かったと思ったのだけど、違ったのね」ここからコンドルフォートへ向かうには大陸を
南東方向へ進む必要があったが、ナナキが指した方角は違っていた。
「どうして?」
 ナナキが尋ねると、ダナは先ほど思い出した「昔の話」を聞かせた。
 それはミッドガル建造中のある日、神羅が手配した資材運搬車両が次々とモンスターに襲われた。
それ自体は珍しいことではなかったが、その遭遇数が異常に多かったために運搬が捗らず、後日
ソルジャー部隊に大規模な掃討依頼を出したという出来事だった。
「それが、ちょうどミッドガル魔晄炉の試験稼働の時期と前後するの。それだけじゃないわ、地方の
魔晄炉勤務者が集団で失踪するという事件も、最終的にはモンスターの仕業だったと言う話も聞いたわ。
それで、魔晄炉とモンスターには何か関連性があるものと思ったのだけど……」
 そもそもコンドルフォート魔晄炉も、6年前から稼働していない事をすっかり忘れていた。ダナは自分の
早とちりに気がついて、照れ隠しの笑顔を浮かべた。
 ところが、話を聞いたナナキは意外な反応を示した。
「……そうか、ニオイだ!」
「え?」
「たぶんニオイのせいだと思う。ええと……魔晄炉の、って言えばいいのかな?」
101ラストダンジョン (367)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/05/04(火) 02:15:48 ID:O6HUDhoT0
「魔晄炉の……におい?」そんな物があっただろうかと、ダナは首を傾げた。
 ナナキは言葉を選びながら、人間であるダナにも理解してもらえるように説明を試みた。
「オイラ達はみんなよりも嗅覚が発達している……と思う。それで、魔晄炉のニオイ……みたいな物が
分かる」正確にはニオイとは異なるもので、草花や動物の発する匂いの様に嗅覚で感じるのではなく、
もっと体感的な物なのだとナナキ自身は考えていたが、敢えてニオイと表現したのは、それがもっとも
近い言葉だと思ったからだ。
「だからモンスターの群れはニオイに引き寄せられているんじゃないかな? 団体行動は苦手だけど、
それぞれが魔晄のニオイを目指した結果なんだと思う。オイラ自身も群れを追っていたと言うよりは、
ニオイに引かれていたようなものだから」
「じゃあ、昔この魔晄炉の上に陣取った母鳥もそのニオイに?」
 ダナの言う母鳥の件は、かつてこの魔晄炉の頂に卵を産んだコンドルの事を指している。それは母鳥
と卵を守ろうとした村人と、彼らもろとも排除しようと攻め入った神羅軍との戦いでもあり、ジェノバ戦役の
陰に隠れ世間ではあまり知られていない出来事だった。
「分からない。でも、あのコンドルもオイラ達と同じようにそれを感じていたと思うよ」
 どちらにせよ今のコンドルフォートには何もないし、群れの行き先でもない。つまり、これ以上この話を
続けても得られる物はなかった。
 ナナキは改めて地面に描かれた地図を見つめる。コンドルフォートとは反対側――ガードハウンドの
向かっていった方角に、さらに前脚を乗せて到達地点を予測する。
「でもこの先は海だ……」
 いくら大群とはいえ、ガードハウンドでは海を越えられない。ナナキは項垂れると足踏みをした。確かに
ガードハウンドの向かった先も、ニオイの方角にも間違いはない。だとしたら、この海の向こうに何か――
これまでの話の流れからすると魔晄炉という事になるが――がある。
「仮に海を越えたとしても、この先には何も無いはずよ」
 ダナがさらに海より南側の大陸を書き足す。6年前、ライフストリームが多少地形を変えている事は
あっても、略地図としては充分だ。
「ここからジュノンに向かっているのだとしたらまるで見当違いだし」大陸南西部には入り組んだ海岸線が
作り出す海峡と、そこに浮かぶいくつかの小さな島々があり、海峡を越えたさらに南西には大森林を抱え
る無人島があった。
「それに、あの島には村どころか人も住んでいないはずよ」
 ダナの説明に違和感を覚えながら、けれどもそれが何と指摘する事ができずにナナキは地面に書か
れた地図を注視している。
(そう、この島には大きな森があったんだ。だけどここって……)
 ちょうどその時、ナナキが見つめる地面の上にぽつりと雨粒が落ちて来た。
「ここもとうとう降ってきたわね」
 曇天を仰ぎながらダナが呟く。ナナキも顔を上げてダナを見ると、決心したように頷いてから声を掛け
た「ねえ、君?」。
「ごめんなさい、まだ名乗ってなかったわね。私はダナ」そう言ってナナキに笑顔を向ける。
102ラストダンジョン (368)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/05/04(火) 02:21:41 ID:O6HUDhoT0
 ナナキは頷くと、何の躊躇いもなくダナに尋ねた「ダナって重さどのぐらい?」。
「…………」
 まったく予想外の質問に、目を丸くしたまましばらく固まっていたダナを見て、ナナキが首を傾げる。
「あれ、聞こえなかった?」
「聞こえてるわよ」明らかな怒気を吹くんだ声に、ナナキはさらに首を傾げる。
「どうしたの?」
「……『どうしたの?』じゃなくてね」両膝に手をついて、ナナキに視線を合わせると、ダナは引き攣った
笑みを浮かべて先を続けた「女性に聞いちゃいけない事が2つあるの。それが、年齢と体重」
「どうして?」
「どうして? って……」こうして面と向かって聞かれると、根拠として述べる言葉がとっさに思い浮かば
ず声を詰まらせた「……マナーよ。そうね、覚えておいて損はないわ」。
 ふーんと呟くナナキだったが、どうも納得している様子は無かった。
「言いたくないならいいや。多分ダナぐらいだったら運べそうだから、オイラの背中に乗って」
「ちょ、ちょっと! 荷物扱い?!」
「違うよ」首だけを後ろに向けてナナキが続ける「オイラの方が走るの速いから、本降りになる前にみんな
の所に戻れるって事。そしたらオイラも安心して群を追える」。
 ナナキの提案は合理的だった。しかしその方法がよろしくなかった。
「いくらあなたが世界を救った英雄の一人だって言ったって、もう少しデリカシーってものを持ってても
良いんじゃないかしら?」
「なんだよデリカシーって」ナナキにしてみれば、ダナはよく分からないことで真剣に怒っている。でもそれは
自分が知らないだけで、やっぱり世界にはまだまだ分からない事が沢山あるんだと、ダナの意図しないと
ころで前向きな気持ちになっていた。
「もう、乗らないならオイラ先に行くよ?」
「あ、ちょっと待ちなさいってば!」
 なんやかんやと悶着の末、ナナキはダナを背に乗せて走り出した。走っている間もあーだこーだと騒ぐ
ダナの声を背中で聞きながら。
(でもこの人、ケット・シーよりはまだ大人しいかな?)
 と、前向きではあるのだけれどちょっと愚痴っぽい感想を持つのだった。



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・ここでの魔晄エネルギーは、あくまでも都市開発部門視点での認識です。
 (魔晄を実験に使う科学部門とはちょっと見方が違います。この辺はまた後ほど)
・コンドルフォートのイベント関連にこじつけたかったけど、ちょっと無理があった。
・3年で1歳(人間換算)で加齢するって事で、ナナキも体格良くなったんだと都合解釈。
103名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/05(水) 14:36:38 ID:DNhBNGdw0
乙!
104『Trois Grimoire Episode0』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/05/08(土) 12:33:38 ID:rDE8UMpQ0
どうも、ちょこっとぶりです。今回からは
『トリア・グリモアエピソード0』、即ち
『FFTA2本編』に限りなく近い、というかほぼなぞる流れで
暫しお付き合い頂けると嬉しいです。
ではでは。
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―――もうすぐ夏休みだ。

先生の長〜いあいさつが終われば、
いよいよ待ちに待った夏休み。

夏休みの宿題は、日記をつけること。
さっき、クラス全員にノートが配られた。

日記なんてすごくめんどうくさいけど、
宿題だから仕方がない。

とりあえず『おばさんにお説教された』と
書かずにすむよう努力しようと思う。

おふさげはほどほどに、そこそこに…。
努力だけは、ね。

先生から配られたものがもうひとつ。
『夏休みのアンケート』。

夏休みの予定や目標を書いて、
帰るまでに提出しなくちゃいけない。

よし、さっさとかたづけちゃおう。

オレは夏休みの目標、予定、新学期の目標を書き終えた。

夏休みの目標…100m泳げるようになる!
夏休みの予定…友達と楽しく遊ぶ
新学期の目標…先生に注意されないように…

これでバッチリ。
ステキな夏休み計画のできあがり!

…ステキな夏休み? 本当にそうかなぁ。

なにも決まってないからこそ、
ワクワクすることだってあると思うんだ。

今年の夏休みは、
いったいなにが起きるかなってさ!

************************************************************
105『Trois Grimoire Episode0』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/05/08(土) 12:35:23 ID:rDE8UMpQ0
ある学校の、放課後。
終業のベルが、けたたましく鳴る。
ジリリリリ!
級長の声が凛と響き、終わりを告げる。

『起立ー!』

ガタガタ!

『礼ー!』
『さようなら』

皆が口々に別れを告げる。
オレも、友達と夏休み前のワクワクした気持ちを抱えながら
最後の別れを…

と。
そこへ、青天の霹靂とも言える、ショックな出来事が待ち受けているとは
その時のオレには想像も付かなかったんだ。

…うん。想像も、付かなかったさ。

「ルッソ・クレメンズ!」

先生の声がオレの名を呼ぶ。
なんだろう?

普段から先生に呼ばれ慣れているオレだが、
まさか夏休み前というこのタイミングで呼ばれるなんて。
―――少し、イヤな予感がした。

「残念だがきみの夏休みは少しおあずけだ。
 教室を出たら、昇降口ではなく図書室に行きなさい」

その予感、当たらないで欲しかったな…
オレは、しらばっくれるように尋ねる。

「どうしてですか、先生」

先生は、表情一つ変えずに淡々とオレに質問し返した。

「どうしてだと思う?」

オレは再び、しらばっくれるように答えた。
先生に合わせるように、淡々と。

「まったく心当たりがありません、先生」
106『Trois Grimoire Episode0』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/05/08(土) 12:36:42 ID:rDE8UMpQ0
すると先生は予想していたとばかりの質問をオレに投げかける。

「きみは冬の休暇明けから今日まで、
 いったい何回のイタズラと遅刻をしたかわかるかな?」

「わかりません」

オレは正直な答えを返した。
だが、先生は動じない。
ちょっとは呆れて、オレを解放してくれないかなと思ったけど、甘かった。

「そう、わからないほどたくさんだったということだ」

先生はきっぱりと断言する。
これから先、先生が紡ぐ言葉も大体予想できる。

「きみは決して悪い生徒ではないが、
 多少痛い目を見なくては物事を学習しない傾向がある」

先生はオレの事を本気で嫌ってるのではない、と前置きした上で
オレに対する冷静な評価を下す。
苦手だなぁ、こういう先生。
言ってることは正しいんだけどさ。

「と、いうわけで、日頃の反省をうながすために――、
 今日これから、きみに図書室の片づけを言いつけることにする」

そらきた。
…冗談じゃない。
オレは一応、抵抗を試みる。

「先生、いくらなんでもこれからっていうのはひどいです。
今から夏休みなのに―――」
107『Trois Grimoire Episode0』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/05/08(土) 12:37:30 ID:rDE8UMpQ0
その言葉に、オレの友達もうんうん、と頷く。
だが、そんな支援など意に介さない、とばかりに
先生は冷静に続けた。

「きみにはちょうどいいクスリだと先生は考えます。
 さ、行きなさい。図書室にランデル先生がいるから」

ランデル先生、というのはメガネをかけた温厚でちょっと優男風の
うちの学校の司書の先生だ。

「……」

オレが納得行かないような顔で黙っていると、先生は追い討ちをかけてきた。
留めの一撃、とも言う。

「もし、すっぽかしたり逃げ出したりしたら、
 休み中、家まで先生が話をしにいくから、そのつもりで」

完全に逃げ場を封じられた。
仕方が無い。
オレは腹を括って、図書室に向かう決意をした。

「…はい、わかりました。
 さようなら、先生。いい夏休みを!」

オレは吐き捨てる様にそう言い残すと、気の毒そうに
オレに同情の目を向ける友達と別れを告げ、図書室へと向かった…

************************************************************

図書室。
オレは静寂が支配する、本に囲まれた教室へと立ち入った。
いつも通りの光景。
オレには、殆ど縁の無い場所。
紙とインクの匂いがオレを出迎える。

だが、いるはずの先生は…何処にも見当たらない。

「あれ? ランデル先生、いないじゃないか」

オレは図書室を見て周り、閲覧用テーブルに置かれている
二つの物体に目を惹かれた。
108『Trois Grimoire Episode0』 ◆NNtQXWJ.56 :2010/05/08(土) 12:40:12 ID:rDE8UMpQ0
…オルゴールと、古い本だ。

オレはオルゴールを開け、机においてある本を眺めた。
牧歌的な、それでいて少し勇壮な曲が流れ始める。
耳に心地よい音楽。
その曲を聞きながら、オレはイスに座り、本を開けた。

「ずいぶん古そうな本だなぁ」

装丁を吟味し、中身に思いを巡らせる。
片付けなんていうつまらない仕事を任された今、
普段読みもしない本に興味を持つのも、致し方ない事なのだ。

「なんの本だろう?挿し絵は剣とか魔法使いとか、そんなのだけど…」

オレは絵本なのかな、と期待を込めてページをめくった。
だが、そこにあったのはただ、真っ白な紙。紙。紙。

「ん…?この本、冒頭にはなんか書いてあったけど、
 途中からなんにも書かれてないや」

オレは更に、ページをめくる。

「えっと、最後のページは…。
 なになに?
 『空白を、埋める、者…、その名を…告げよ』」

…実にイタズラ心をくすぐる内容だ。
本来、図書室の備品である本に書き込むなんて許される事じゃない。

うん、許される事じゃ、ないんだけど。

「空白を埋める、かぁ…。
 へへっ、これはもう、書き込むしかないよな」

オレはこんな内容を書いた本の筆者が悪い、と心の中で言い訳し…

「『空白を埋める者』の名前は…、
 ルッソ・クレメンズ!」

と、デカデカとオレの名前を書き込んだ。

すると…

オレは何もしていないし、風も吹いていない。

なのに、突然ページがめくられ…
本が飛び回り…

―――オレは、何処とも知れない世界へ、旅立った。

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というわけで今回は以上です。
基本的にゲーム内の台詞を忠実になぞるようにしてみました。
行間を自分の言葉で埋めていく感じで、TA2の説明をざっくりとしつつ
魅力が伝えられればなぁと思います。プレイ済みの人は今更ですが
「ああ、そんな話だったなぁ」と思い出す感じで楽しんで頂ければ幸いですw
109月水:2010/05/09(日) 20:40:00 ID:d4ZLiEAh0
舞台と設定:FF7。BCエンディング後。カームの事件を絡ませた大大大捏造話。(またやらかしました)
全5回の構成です。
――――――――――――――
『Start For Home.』(1-5)

そびえ立つ山脈。その麓に小さな村がある。ひっそりとした所だった。
「ここがニブルヘイムか。静かすぎるな」
手にした刀を握り、気を引き締める。
「新羅屋敷ならあっちだぜ」
「そうか」
声に反射的に答えた。人がいた事に、一瞬遅れて気が付く。
「お前は、ロッド。何故ここに」
「たまたま、かな」
何とも曖昧な返事が返ってくる。
「まあ、いい。ところで、お前はあの建物に詳しいのか」
「詳しいというか、入った事はある」
「では、あの建物で何が起きていたのかも知っているのか」
私の言葉に活発な奴の顔色が少し変わった。
「あそこに行くのは危険だぜ。何たって変な幻覚が襲い掛かって来るし」
若干柔らかい口調だが、警告といったところか。
「危険なのは承知だ。どれだけ悍ましいかもよく解っている」
「何で今更あの場所に行くんだよ」
わざわざ首を突っ込むこともないだろう、と続ける。
「夢を見る。あの暗い部屋の夢を。何かを暗示しているのかと思えるくらい頻繁にな。だから、確かめに来た」
人が聞けば、理由というには抽象的で、納得しかねる内容だと思う。
だが、何かに呼ばれているような気がしたのだ。
「主に、じゃなくてヴェルドさんには」
「言っていない」
ここに行くと言うと引き止められそうだったから。
「だよなぁ」
ロッドが一人で納得している間に、倒れかけた門に向かって歩き出す。
「て、おい待てって」
「ついて来る気か」
こいつに引き止められるとは。自然と溜息をついてしまった。
「一人じゃ何かと厄介だろうからな」
「保護者気取りは必要ない」
何故かついて来ようとしているロッドを振り切ろうとした。
「資料」
呟いた言葉が気になって足を止める。
「何の事だ」
「前、俺ある資料を燃やしちまってさ。仕事だったと言えば言い訳に聞こえるかもしれねぇけど」
「はっきり言え」
「中身見たんだ。マテリアの融合実験に関する書類だった」
融合という言葉が引っ掛かった。
「まさか」
思い当たる事は一つしかない。
「多分、お前とそれからヴェルドさんの」
一瞬の沈黙。
「燃やした、か。なら、もう残っていないのだな」
「ああ」
ロッドが静かに肯定する。
「残っていないのならば仕方ない。が、だからと言ってそれと今は関係ない。責任をどうこう追求する気もない」
もし遺っていたとしても、収穫があったかどうかは解らない。資料の事を動機として同行されたくなかった。
「どうしてもついて行く、と言うなら一つ条件をつける。手を出すな。何が起きても、絶対に」
これは、自分の問題だから。他人を巻き込みたくない。
「な、何だよそれ」
「出来ないなら帰ってくれ」
抗議するロッドにきつく言って、屋敷に足を向けた。
110月水:2010/05/09(日) 20:43:15 ID:d4ZLiEAh0
※途中、食事中の方に申し訳ない表現があります。(2〜4回分まで)

『Start For Home.』(2-5)

さっさと行ってしまったフェリシアを追って行こうとしたら、上着に突っ込んである携帯の振動が伝わった。
「誰だよ、こんな時に」
サブディスプレイの画面に相手の番号が表示されている。それを確認すると自然と背筋がシャキッと伸びた。
「もしもし」
報告をした後、要請を受ける。
「了解です」
無理をしないように、と言われ通話が切られた。俺じゃなくて、あいつに言ってくれよ。
携帯を閉じてポケットに捩込む。愛用の武器を持ち直して気合いを入れた。
「さて、仕事すっか」
かつて訪れた屋敷の扉を蹴り飛ばした。

――――――――――――――

澱んだ空気が立ち込めている。薄暗い部屋。あちこちに積み上げられた本の山。
朽ちかけた机の上には、毒々しい色をした液体が入った瓶。実験体を保管する為の装置。
その一つ一つを見る度に、嫌な記憶が浮かび上がってくる。
奥から物音がした。注意がそちらに向く。刀を抜いて様子を窺った。
何かに腕を掴まれ、そのまま奥に引っ張られそうになる。絡まったそれを切り落とした。
暗闇から引きずったような音が聞こえる。
幾つもの触手が姿を現した。続いて、膨れ上がった巨体が現れる。
蜘蛛に脚が余計に付いているような格好だ。
青紫に変色した皮膚によく見知った顔があった。
間違いない。間違いであってほしかった。
「母さん」
異形のものに姿を変えていた。顔だけが、思い出の中にいる母のものだった。
無防備になった身体に容赦なく触手を打ち付けられる。
吹き飛ばされ、辺りに散らばった硝子片を巻き込んでいく。
途中で身体を反転させ、体勢を整えた。背中が鋭く痛む。
「大丈夫か」
後ろから、ロッドが合流する。
「条件は覚えているな」
「今そんな事言ってる場合かよ」
「“手を出すな”」
ロッドを突き返すと、床に刀を突き立てた。そこから淡い緑色の光る糸が紡がれていく。氷塊が出来上がっていった。
徐々に氷壁が下から上に盛り上がっていく。
「な。ま、魔法」
「上手くいったらしい」
少しふらつく。体力を消耗するのは承知していたが、予想以上だった。だが、ここでもたついている時間はない。
「何があったんだよ」
ロッドの問いに答えずに走り出した。

――――――――――――――

分厚い氷の壁が立ちはだかっている。
いくら打ち掛かっても、小さなひびが入るだけで、崩れる気配がなかった。
大体、マテリアなしで何で魔法が使えるんだよ。
「くそったれが」
力任せに振り下ろした武器が弾き返された。
全てを拒絶するような壁が憎たらしく見下ろしている。
奥で響く派手な物音を黙って聞くしかないのか。
苛立ちだけが募っていく。
111月水:2010/05/09(日) 20:45:30 ID:d4ZLiEAh0
『Start For Home.』(3-5)

床に叩きつけられ、息が詰まった。直ぐに身体を起こして、繰り出された触手を斬りつけていく。
対処しきれなかった数本が刺さった。
肩を突かれ、左腕が使い物にならなくなる。肺に溜まった血が口から溢れた。
床ごと大腿部を貫かれている。
それらが身体から抜けると同時に壁際まで跳ね飛ばされた。
立ち上がれない。視界が霞む。赤く染まっていく。呼吸するのも辛い。
防御の為に振り上げた右腕があっさり弾かれた。
手から離れた刀が遠くに落ちたのが見えた。力が入らない。
「ごめんなさい」
助けられなくて。帰られなくて。
目の前に迫る変わり果てた母と、家にいるであろう父に向けた。
迫り来るものに対して、眼を閉じる事だけはしたくない。
触手が伸びてくる。
銃声と、氷の割れる音が響いた。
「謝るのは後にしてもらおうか」
「父さん」
牽制するように相手の足元を狙って銃弾を撃ち込みながら、私を抱えて後退する。
地下室の入り口まで来て降ろされた。差し出された回復薬の効果で、傷口がなんとか塞がる。
「“俺が”手を出さなきゃいいんだよな」
ロッドが階段を降りてきた。
「最後まで違えるなよ」
所々痛む身体を起こして、奥に戻ろうとした。
「無理するな。あとは俺がやるから」
進路の先に父さんがいる。
こんな状況は以前にもあった。でも、前と同じにしたくない。
「私が。私も行く、行かせて」
「駄目だ、とは言わせてくれないか」
私を心配そうに見ていた眼が、決心した眼に変わる。
「ロッド、ここは頼んだぞ」
「いつでも退く準備しておきます」
父さんが頷く。そして、私に振り返った。
「行こう。母さんを一緒に家に連れて帰ろうな」
「うん」
112月水:2010/05/09(日) 20:47:56 ID:d4ZLiEAh0
『Start For Home.』(4-5)

久々の獲物を探し回っている姿が不憫に映る。咆哮が虚しく聞こえた。
「待たせたな。ずっと一人にさせて、悪かった」
銃に弾を詰め、スライドを引く。
どんなに辛かっただろう。理不尽な事故に遭って、非人道的な扱いを受けて。
「いくぞ」
物陰から飛び出したフェリシアの周りを守るように銃で撃ち出す。
彼女が床に投げ出されていた刀に飛び付いて、そこから触手を斬り上げた。
勢いを保ったまま、隙間から覗いた本体に向かって振り下ろす。
反撃を避ける為にバックステップで距離を取った所で、今度は俺が連続的に鉛弾を相手に撃った。
どす黒い液体が方々に飛び散る。動きが明らかに鈍りだした。
トリガーに掛けた自分の指が緩むのを自覚する。そこに手が添えられた。
「躊躇したら、母さんが苦しむよ」
娘の手が微かに震えている。こんな状況で動揺しないわけがない。上から軽く握って気持ちを落ち着けた。
「そうだな。早く終わらせてやらなくてはな」
フェリシアが動き始めると同時に、俺は目標に向かって構えた。
引き金を引く。
「しまった」
ジャムだ。途中で弾が詰まって役に立たなくなってしまった銃を棄てる。
なんの因縁か。もうこれしか残っていない。
義手を外して、中に仕込まれた機銃を目標に向けて照準を合わせた。
「退け」
フェリシアが斬り込んでいく直前で身を翻したのを確認して、弾を放った。
相手がまともに受け、弾ける。それでも、動きは止まらなかった。
悶絶寸前の状態で這ってこちらに向かって来る。崩れ落ちていく身体を抱き留めた。
「すまん。迎えに来るのが遅れてしまった」
「お仕事大変なんでしょう。しょうがないんだから」
形が妻のものへと変わっていく。
「今度の休暇は久々に三人で出掛けたいな」
「そうだな。そうしよう」
「あの子とても喜ぶわ」
いつも見ていた無邪気な笑顔が向けられた。
「母さん」
「フェリシア。どうしたの、どこか痛いの」
娘が泣きながら母親にそっと抱かれ、何度も何度も言葉を詰まらせながら謝っている。
「貴方の謝り癖が移っちゃったんじゃないの」
娘の頭を撫で、宥めながら俺を咎める。
「す、すまん」
「ほら、また」
笑いつつ、もうと口を尖らせた。
彼女の身体が光に包まれていく。
「もっと傍にいたいけど、そろそろ時間みたい」
「想いは消えないから、大丈夫だよ」
「ああ、やっと笑った」
消え行く手を掴む。
私、幸せ者ね。
そう残して星に還っていった。
俺の方こそ幸せ者だ、と心の中で呟いた。
113月水:2010/05/09(日) 20:50:18 ID:d4ZLiEAh0
『Start For Home.』(5-5)

二人が並んで無事な姿を見せた時、俺は心の底からほっとした。
柄にもなく眼からしょっぱいものが出てきた程だ。
慌てて黒スーツの袖で拭った。
「お、お帰りなさい」
「仕事はまだ終わってないぞ」
そうだ。俺は仕事中だった。
元上司から頼まれた、ある人の帰宅までのサポート。
「じゃ、仕事に戻ります」
依頼人と対象者から距離をとって走り出した。

――――――――――

私は家路につく。
温かい家族に囲まれながら。

〈了〉

*****************
お粗末様でした。
今回は主任の奥さんの存在が気になって仕方がなかったので、
こんな感じかなと思いながら書いてみました。
こんなのもありかも、と思って頂けると幸いです。
114名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/11(火) 01:51:32 ID:UnRHBCOxP
乙!
115名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/14(金) 02:18:43 ID:dSu944A00
お、繁盛してるね!僭越ながら感想をば。

>>104-108
ルッソの心中描写は、彼の世代らしい言葉でつづられていて上手い表現だと思いました。
…ただ全体的にちょっと物足りなさというか、淡々としすぎているというか。
(ゲーム中の台詞を忠実になぞるだけだと、単なるテキストになっちゃうので読み手の飽きは早いです。
グラフィック、BGMといった重要な表現が欠けるので、補うべき「行間」はもっと多いはず。それらを補う
方法をもう少し模索してみてほしいところです。それがノベライズって事になるのかな?と。勝手解釈ですが)
それと、ルッソ一人称で進む本文のこの段階で「オレは、どことも知れない世界へ〜」は認識が早すぎるんじゃ?w
という疑問が。(せめて飛ばされた先で誰かと出会ったり、風景を見た後にその認識になるはず。三人称
視点だったらまだ不自然ではないものの、こういった細かい描写にも気を遣った方が雰囲気作りの助けに
なると思います)。次回に繋げるにしても、ここは彼(ルッソ)の視認できる範囲の現象を書くのがベストだった様な。
…とりあえずこれ読んで四神天地書を即座に連想しちゃった事は謝るw

>>109-113
投稿日が母の日という演出にもGJ! 間違ってたら申し訳ないけど、もしかして正体不明になってたって事かな…?
カーム誤爆事件の後、奥さんの消息についてって語られた記憶が無かったので、ゲーム本編の良い
補完話だと思います。しかし家族の誰にとっても悲しすぎるよなぁ…。家族ネタにめっぽう弱い自分には
もうね・゜・(つД`)・゜・。

しまった…母の日忘れてた事をこれ書いて気付いたorz
116名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/14(金) 23:14:30 ID:V/7ZXJ290
>>115
感想乙。良いところと悪いところを上手くまとめられてるのがいいなあ。
個人的に感想はSS書くのより難しいと思ってます。
117名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/17(月) 13:47:52 ID:iOJ+veSTP
乙でござる
118名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/19(水) 07:33:25 ID:nTXppFNX0
119名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/22(土) 23:35:57 ID:IZhEHloP0
FFの二次創作スレのプロット考えたのではじめて覗きに来たんだけど職人さんで賑わってるなぁ……
自分なんか恥ずかしくなってきました
120名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/05/24(月) 16:40:57 ID:dAjASvP2P
>>119
テカテカと正座しながらSSお待ちしております
121名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/01(火) 16:02:21 ID:tEhVpFM+O
>>109
乙です
122月水:2010/06/01(火) 19:33:51 ID:5qUfioYz0
感想や反応を頂けて、とても嬉しいです。
ありがとうございます!
123名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/02(水) 18:13:03 ID:lLcq/fgQ0
124名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/04(金) 18:19:30 ID:Fw1yPwoN0
125名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/07(月) 18:21:44 ID:eowJTVll0
126名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/11(金) 00:20:09 ID:3DqZNILt0
127名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/11(金) 08:28:46 ID:4K0F8mbg0
128名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/13(日) 19:21:22 ID:r8MsRBCW0
129名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/15(火) 07:06:18 ID:s9hkW/p90
130名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/18(金) 02:47:01 ID:Mw8Dwwnv0

131名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/21(月) 01:24:58 ID:vghcOMW10
132名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/24(木) 05:45:13 ID:x64WQd070
133名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/24(木) 13:16:18 ID:NXnTwda40
住民の皆さん、ちょっとDFFのWOLスレから失礼します。

DFFでそのキャラクターが飛躍的に掘り下げられ、その言動のブレなさで一定の好評を博した
初代FF1の主人公、通称「WoLさん」のあのキャラクターを核にFF1をノベライズアップでき
ないものかと無謀きわまりないことを思い立ち、
とりあえずその一歩としてDFFとFF1をつなぐ「あのシーン」をノベルチックにまとめてみたん
ですけど、明日にでもここに投下していいですか?
134名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/24(木) 14:49:36 ID:EVuOCHf80
DFFって手を出してない奴多そうだな
135名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/24(木) 22:09:13 ID:D3ClasBm0
いんじゃね?俺読みたいわ
136133:2010/06/25(金) 12:24:53 ID:UAfEAr/40
それでは以下に投下してみます

キャラクターの性質上、ネタ要素や萌え要素に欠ける、どシリアスタッチになるかと
思いますがどうかご容赦ください
137The Worrior of Light プロローグ1:2010/06/25(金) 13:16:59 ID:UAfEAr/40
 あふれんばかりの光の乱れ散るどこまでもすみ切った気層のなか、まばゆいばかりの陽だまりのなかを、
一人の男が、歩いていた。

その身にはマントと腰布を備えた、濃紺の厚い鎧をまとい、両手には剣と盾が握られている。
青年―と言うには大人びすぎ、かといって中年、と言うには若すぎる。雰囲気は壮年のそれであり、男はその外見の
若々しさからは計り知れないほどの歴戦の重みを、見るもの全てに直観させそんないかなる者の目
からもそれ、と知られるような―

 戦士、だった。

 そこは平原を臨む林野と湖畔の接する街道で、戦士はいずこからかやって来た旅人らしきことは窺い知れた。
 しかし、どこから?
 その身にまとう鎧はいずこかの国の戦士団、騎士団のものにしてはあまりにも意匠が凝りすぎている。集団戦の命題として必要な
意思の統一を測るために簡略化され規格化されることが常である軍装(ユニフォーム)とはあまりにも趣を異にして、かけ離れすぎていた。

 まず目を引くその兜から雄牛のそれのごとく天に突き出た角は、戦場の指揮官がときおり示威のために用いる装飾にしては長すぎた。
むしろ、頭頂に突き出た突起とそこから出る飾り毛がそうした装飾の意匠につうじるものとは思えたが、そのなかば冗談のような二本角と
合わさることで、戦士が全体として醸し出す非現実的な雰囲気に奇妙な現実感をも、わずかな彩りとして添えていた。
 身を覆う兜と同じく濃紺の鎧は、パーツのひとつひとつが戦士の細身ながらもたくましい肉体にフィットし、重厚でありながらも武骨さ
を一切感じさせず、兜とともに統一感をもって、戦士の引き締まった身体を際立たせていた。

 おそらく、それなりの身分と財力をもつ騎士がその道の一流の職人にオーダー・メイドし、採寸に慎重に慎重を期したとて、これほどの
一体感は出しえなかっただろう。戦士とその武装の一体感は、まるで両者が両者の意志でもって両者を求めているがごときものだった。

―蛮族の鎧(バーバリアン・メイル)―

 ある限られた領域を城壁で仕切り、その内部に自分たちの秩序を布(し)く文明人ならば戦士の鎧を、あるいは、そう呼んだかもしれない。
己の領域の外で造られ、戦士同様、未知の領域から現れたものとしてみなすならば、その呼称も正しいと言えたかもしれない。
138The Worrior of Light プロローグ2:2010/06/25(金) 13:55:56 ID:UAfEAr/40
戦士の手に目を向ければ、その手に握られている剣もまた、

―蛮族の剣(バーバリアン・ソード)―

そう呼ぶよりほかがなさそうな形状の代物であり、いま一方の手に握られる小振りの盾も
形式の上では丸みを帯びた五角形のカイト・シールドと言えたがそこに刻まれた紋様が
いずこのものとも知れなかった。
 蛮族は文明人とは違い、理論ではなく直観をもってものを造る。
 なるほど、戦士の武装はいずれもそうした精神によって造り上げられたものと思えば、
とりあえずの納得ができないこともなかった。理論は精巧なるものは造り得ても直観とは
違い、神秘なるものを決して造り得ないのだから。

 ただ苦しいといえば苦しいことは、戦士のたたずまいには蛮族に特有な粗野さが微塵も
なく、それでいて、文明人の指導者たる貴族の洗練さが備わっている・・・
そんなこの世のものならざる二律背反が認められたことだっただろうか。


 ふと、戦士がその歩みを止めた。


 それに伴い、周囲の時が止まったかのようにすら感じられた刹那―

―オレは、ここにいるから…―
 風もないのに湖畔が、さざめいた・・・

―…帰るんだ。約束の場所に…―
 雲もないのに太陽が、翳った・・・

―…また、ともに任務を果たすのもいいかもな…―
 どこからともなく、白い綿毛がそよぎ、舞った・・・

―…ふ…興味ないね…―
 光のそそぐ一面の花畑が、揺れた・・・

―…私…これからもがんばれるよ、だから…さよなら…―
 陽気のなか、雪が一粒、溶け消えた・・・

―…楽しいときって、なんであっという間なんだろな…―
 林のほうで、小枝の落ちる音がした・・・

―…繋いでみせる…みんなにもらった強さを…―
 昼下がりの三日月が、一瞬満ちたように思われた・・・

―…みんな!ありがとう!…―
 大気いっぱいに、幼い声が響いた気がした・・・

―…終わらないさ…新しい夢が…始まるんだ…―
 路傍の野ばらが、たしかに、笑った・・・
139The Worrior of Light プロローグ2:2010/06/25(金) 14:26:31 ID:UAfEAr/40
 陽だまりの中、戦士はふたたび歩みかけ・・・そしてまたふたたび、足を止めた。
 そして、わずかにその己の歩んできた背後を、振り返りかけたようにも、見えた。

 戦士は、確かに、逡巡していた。

 はるけき過去の追憶か、白昼の刹那の幻想か、それは知る由もなかったが、たしかに戦士の心は過
ぎ去った何かを追っていた。
 戦士が立ち止まっていた時間はほんのわずかな時間に過ぎなかった。ほんのわずかな時間に過ぎな
かった、ではあるが、戦士には永遠に等しかったかもしれない。

 しかし、戦士は振り返らなかった。心はどうあれ、その身でそれをすることは戦士には許されない
ことだということは戦士にとって、あまりにも明らかに知悉(ちしつ)されたことだったのだ。


―…ここに来る前の物語だけが思い出ってわけじゃないだろ?…―

 止まった時の中で、最初に自らの胸を指差し、湖畔へと還っていった「思い」の言霊(ことだま)
が戦士の胸のうちに木霊(こだま)する。

―…もしオレたちが別々の世界に帰って別々の道を歩むんだとしてもさ…一緒に戦ったこと…たまに
 は思い出してくれよな!…―

 それは太陽のように明るく溌剌とした、それでもどこかに深いかげりを背負った青年が戦士に向け
て口にした願いだった。


―忘れはしない…―


 それは、
 それこそは、
 そこまでずっと沈黙していた・・・ほかならぬ戦士自身の思いだった。


(忘れるものか・・・)


 それは、戦士とひと時たしかに寄り添い、ともに歩み、そして、いつとも知れずに別れ、
いずくへとも知れず帰っていった九つの「思い」たちへの、戦士の確かな誓い。

140The Worrior of Light プロローグ3:2010/06/25(金) 15:01:12 ID:UAfEAr/40
 戦士は振り返らない。
 振り返ってももうそこには「思い」たちの影すらもないことは判っていたのだから。
 しかし、戦士は口を開き、ひとこと、言った。そう言わずには、おれなかった。

 それは「彼ら」への別離のことば。「彼ら」に届かずともそれはそれでいっこうに構わない。
「彼ら」ならば自分が別れにそのことばを選ぶだろうことなど言葉に依らずとも知れたろう。
自分たちの絆はそれほどまでに強かったのだから。



「光は、我らとともにある。」



 みたび、歩み出されたその足が止まることがもはやないだろうことは、その語気と歩みの確かさ
から容易に測り知れた。

 戦士がどこから来たのか?そして何に別れを告げたのか?この世界のものに知るすべはない。
 戦士には判っていた。己にはただ使命のみがあることを。だれかに呼ばれるべき名も追想すべき
記憶がなくとも、それは己が受け入れるべき痛みであるということを。
 そしてそれを永劫の果てとも思われるはるか彼方の過去の己のはじまりにおいて、他ならぬ己自身
で選択したということを。


 戦士は振り返らない。
 振り返らずとも、そして、その記憶を失おうとも彼らは己のうちに在り、己自身もまた、彼らのうち
に共に在ることを知っているから。

 戦士の目の前では林野と湖面が終わりを告げ、今まさに大平野が地平のはるか彼方へと戦士をいざなう
かとも思われたが、戦士はその手前に人の営みの領域を認めた。

 それは湖面にその影を落とす荘厳なる都城だった。

 白亜の壮麗な城壁を備え、その周囲の大自然から趣において孤立し、その人為に成る大方形の上部
からは物見の大櫓と塔が頭を出し、その主の鎮座するであろう中央のひときわ高い塔を際立たせていた。


 戦士は振り返らない。
 そこに己の使命が待っていることは判っていた。


 戦士は振り返らない。
 闇に沈みつつあるこの世界にあって、誰よりも光を渇望するものがそこに待っていることが判って
いたから。



 戦士・・・・・・否、光の戦士の歩みにはもはや一片の迷いもなかった。


141133:2010/06/25(金) 15:07:53 ID:UAfEAr/40
とりあえずは以上です。
ナンバリングを間違えてしまいましたが平にご容赦を;


今回はDFFからテキストをかなり拝借しましたが、次回からはコーネリアでのエピソード
ということで独自性を若干出さざるを得なくなってくるかと思います。
よければ感想とご意見をください。
142名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/25(金) 17:17:08 ID:yyCycHS60
誰も突っ込まないから教えるが、レス乞食やマルチと言って嫌われる行為
143名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/25(金) 18:39:40 ID:ULj5yE7t0
>137-140
144名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/06/26(土) 02:52:01 ID:USXpefL+O
投下時間が妙に空いてるが、まさかリアルタイムで話書いてるのか?
メモか何かに予め書いておいて、まとめて書き込んだ方がいい
145133:2010/06/28(月) 12:45:35 ID:BWNbvGlV0
>>144
一応、そうしてはいるんですが、タイプが遅いのと叩き込む時点で最後の推敲も
ついやってしまうせいで遅くなってしまいました。修行します。
146133:2010/06/28(月) 12:47:06 ID:BWNbvGlV0
>>142
以後気をつけます

>>143
ありがとうございます!!
147名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/01(木) 03:56:18 ID:5FiLMrWA0
ガンガレ
148名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/03(土) 22:14:36 ID:RK95kAkp0
149名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/07(水) 00:38:54 ID:ZbWwzGuu0
150名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:00:38 ID:Sav21tG00
151名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/12(月) 11:05:28 ID:XxQGZs+s0
152名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/15(木) 05:41:17 ID:7N5ODRnf0
153名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/16(金) 19:44:11 ID:yHkEEmDZ0
154名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/19(月) 04:18:02 ID:Uj6Uu+Ss0
155名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/20(火) 00:21:24 ID:F7nO2FMa0
156名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/22(木) 03:21:40 ID:KHs5s2oT0
157名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/23(金) 20:49:41 ID:407Rert50
158名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/27(火) 00:23:05 ID:DROR6R3G0
159名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/29(木) 05:52:07 ID:g2xJ+qRY0
160名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/07/31(土) 05:10:55 ID:84pNaNrx0
161名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/02(月) 02:37:54 ID:B7G2ISTM0
162名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/04(水) 04:02:37 ID:A1BXoHS90
163名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/04(水) 18:24:14 ID:eWbuk0zp0
164名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/06(金) 03:07:32 ID:SZWADp8l0
165名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/06(金) 15:24:47 ID:hV0FIMbb0
166名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/09(月) 04:23:11 ID:/K8P2kPt0
167名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/10(火) 07:25:24 ID:wvZkJ+VI0
168名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/10(火) 11:38:10 ID:Tb7AamBw0
169名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/10(火) 22:20:31 ID:Tb7AamBw0
流れぶった切って非っ常〜に申し訳ないのですが……
ここってまだ書ききっていない中編、長編のFF二次創作モノもおkでしょうか
170名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/11(水) 08:23:09 ID:6KKbB/HQ0
テカテカと正座しながら、連載お待ちしています。
連載しながら書き上げる、完成させる事は、もしかしたら経験値になるかもしれません。
基本的な書き方はテンプレのどこか(>>3の記述の一般的な決まり)にある気がするので、
よろしければ参考にしてみてください。
171169:2010/08/11(水) 14:47:03 ID:R09dB2jP0
>>170
ありがとうございます。ガイドライン熟読します。
あまりテカテカ期待されるのも恥ずかしいのですけど。
男は度胸、なんでも見せて(ry的な精神で発表できたらいいなと思っております。
172名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/13(金) 01:46:52 ID:e81ey5Xh0
僭越+遅レスもいいとこですが…。

>>137-140
遅ればせながら乙です。これが巷で噂のひこn(ry
ちょっと装飾過多な印象を受けたのですが、それを除けば全体的に硬派な戦士のイメージが
うまく演出されている様に感じました。FF1(DFF内のFF1主人公含め)は未プレイ・未クリアですが、
個人的にシリアス物好きです。
遅まきながら次回投稿時の参考にいちど>>3-4をご覧下さい、有益な情報があると思います。

>>169
・ここで投下はじめたら、なるべくここで完結。(ここ以外に載せてる物ならそこで完結。)
・1回の投下は適度な区切りが大切(だと思う、これも掲示板特有かも?)。
・投下の前に>>1-4
書き手として最低限それは心得てもらいたいかな、という希望。
読み手側からすると、読んでる最中に放置されると非常に切なくなるモンです。
とは言え、書くのも読むのも自由だし、未完投下の場合は書いてる途中でレス読んで軌道修正
できるのも掲示板投稿の醍醐味(というか利点)だったりするんですよね。
他の人の解釈とか(書き手読み手を問わず)知ると、自分の理解も変わりますし、より一層原作が好きになるという。
ただ、長編はモチベーションと環境を保つのが大変だとは思いますが…投下楽しみにしてます。



…あれ、おかしいな。書いているウチに耳が痛くなって来たぞ?
173ラストダンジョン (369)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/08/13(金) 01:52:55 ID:e81ey5Xh0
前話:>>98-102
※Part8 542-546から続く場面です
----------


 無惨に積み上げられた残骸だけを映し出していたモニタを、これ以上眺めていても仕方がない。
けれどユフィの視線は動かなかった。
 こうして1階での遣り取りの一部始終を見届けたユフィは、次にどうすればいいのか分からずに、
無言のままでその場に立ち尽くしていた。
 頭の中で考えている事はたくさんあるのに、いつものように言葉が出てこなかった。自分の行動を
「過去から逃げるために前を向いている」と言ったリーブが正しいとはどうしても思えなかったし、反論
だってしたかった。実際そうしようと何度も口を開きかけたが、結局なにも浮かばずに口を閉ざした。
知っているありったけの言葉を使って抗弁したところで、自分の正しさを証明することはできないと
思った。かといって行動で示そうにも、どうしたらいいのかが分からなかった。だから黙って立っていた、
そうすることしかできなかった。
 あるいは、そうすることしかできないと無意識のうちに思い込もうとしていたのかも知れない。
 こんな風に黙っている事しかできないユフィを、リーブは否定も肯定もしないでいてくれた。その事に
ユフィは心のどこかで安堵しているのにも気がついていた。そんな自分が余計に腹立たしかった。
 どうすることもできないまま、モニタに向かうリーブの背中を見つめているだけの時間が過ぎていった。
 長い長い沈黙は、リーブが手元のパネルを操作する音で呆気なく終わりを迎えた。
 それまで目の前に並んでいたモニタには、建物の内外を問わず様々な場所が映し出されていたが、
パネル操作によって全てのモニタの映像が建物外の風景に切り替わった。並んだモニタが全体で1つの
大きな窓を作り上げ、そこから森の彼方に沈みゆく太陽が作り出した美しい夕景を望むことができた。
 画面右下の隅には現在時刻を示す数字が並び、休むことなく時を刻んでいる。
 映し出される景色も、表示される時刻も、この地に訪れる日没まで間がないことを知らせている。
「少し……」言いながら振り返ると、リーブは柔らかな口調で告げる「意地悪をしてしまいましたね」。
「え?」
「人が前を向けば、必然的に背は後ろに来ますからね。どこにも間違いはないんです」
 ちょうど今みたいに。
174ラストダンジョン (370)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/08/13(金) 01:56:36 ID:e81ey5Xh0
「ちょっ……」
「誰がどの場所から見るかによって、物事の捉え方というのは大きく変わるものです。ところが、どれも
間違いではありません。間違いではない以上、誰にも否定はできません」
 抗議の声を上げようとしたユフィを制して、リーブが画面の一角を指さした「ご覧ください」。
 画面が中央寄りにズームしたかと思えば映像が瞬時に切り替わり、今度はうっそうとした森の中を
映し出した。
「なんだよ?」
 完全にリーブのペースに乗せられていると思いながらも、ユフィは示された画面上を注視した。生い
茂る木々が夕陽を遮っているせいで森の中は既に薄暗く、風にそよぐ枝葉の影はさらに色を濃くして
いた。映し出されているのは何の変哲もない森の様子で、大した異変を見つけることはできなかった。
「これは森の中に設置した観測機からの映像です」
 リーブが言い終わるよりも早く画面内の森の景色が歪み、さらに視界が大きく回転したことで夕焼け
色に染まる空が覗いた。枝葉の作り出した影の上にオレンジ色の光の帯が幾重にも走り、不規則な
軌跡をモニタに焼き付けていった。しかしモニタが光の帯に満たされるよりも前に映像は乱れノイズが
走り、やがて何も映し出さなくなった。
 画像が途切れる直前、ノイズの向こうに枝葉とは明らかに異なる影を見出した。見覚えのある四つ足
の影に、ユフィは思わず声を上げる。
「ちょっと待って、今のって?!」
 我が意を得たりと頷いたリーブは話を続ける。「残念ながら可視画像ではこれが限界なんですが……」
そう言ってパネルに向き直っていくつかの操作をすると、モニタ全体の映像が先ほどの夕景に切り替わり、
さらに画面下の一部の表示が替わった。黒っぽい画面の端の方に沢山の光点が点滅している、レーダー
みたいな物だろうとユフィは思った。
「どうやらモンスターの群れがこちらに向かっている様です」先ほどの映像も、モンスターの群れによって
観測機の設置してあった木がなぎ倒された為に起きたのだろうと説明する。
「まっ、まさかこれ全部?!」本当だとしたらとんでもない数だ。これだけ大量のモンスターがしかも大挙
して押し寄せてくるなんて、どうしても考えられない「冗談、だよね?」。
 リーブは首を横に振り、それを否定した。
「残念ながらモンスターの群れはここを目指しています」
「なんで?!」言っては何だが、こんな何もない場所へモンスターの群れが向かってくるのかがユフィには
理解できなかった「どうしておっちゃんがそう言い切れるのさ?!」。
175ラストダンジョン (371)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/08/13(金) 02:04:54 ID:e81ey5Xh0
 顔を上げて視線をユフィに向けたリーブは、簡潔に答えを口にした。

「先ほどご説明した『インスパイアが星にとって害をなす存在』というのは、こういう意味だからです」

「え……?」
 関連性がよく分からないと頭を振るユフィの疑問には答えずに、リーブは話の先を続けた。
「ユフィさん、これは私からの最後の依頼になります。モンスターからここを守ってください」
「ちょっと待っておっちゃん! アタシは……」
「先ほどの飛空艇師団への空爆要請は、収拾が付かなくなった際の最終手段です」上空にいる彼らも、
間もなくこの事態に気づくでしょう。考えられる最悪の状況に陥ったとき彼らが判断を躊躇う要素を取り
除くために先手を打ったのだと意図を明かした上で、ユフィに告げる「そうならない為に、ユフィさんの
力を貸してください」。
 そう言ってリーブはマテリアを差し出した。マテリアを目にしたユフィは反射的に手を伸ばす、見た
ところ攻撃や回復に用いるマテリアでは無さそうだ。
「これは?」
 ユフィに見上げられたリーブは慌てて言葉を付け加える「残念ながら差し上げる事はできませんよ? 
もともと私の物ではありませんから」。
「ちょっと! アタシをなんだと思ってるのさ!」
「やや詰めの甘いマテリアハンター」
 リーブに即答されて、ユフィはがっくりと肩を落とした。
「あー、あのさおっちゃん? 今さり気な〜くアタシの事バカにした?」
「いいえ、とんでもない!」慌てた口調で言いながら、顔の前で手を振る「マテリアの扱いに長けている、
と言う意味ですよ」。詰めの甘い、という部分については言及しなかった。その事を指摘される前に
ユフィにマテリアを手渡すと、ついでに話もすり替える。
「実はそのマテリア、忘れ物なんですよ。この一件が落ち着いたら、それを本来の持ち主に返して
頂けませんか?」
 リーブの話によれば2年前、治療を終えて本部施設を出たシェルクが置き忘れていった物だと言う。
「……自分で返せばいいじゃん」
 気まずそうに視線を逸らしたユフィに、諭すようにリーブが告げる。
「シェルクさんは表現が不器用なだけで、本当はとても素直な良い子ですよ」
 だから仲良くしてあげてくださいねと言われたものだから、ユフィは「別に仲が悪いってわけじゃない」と
抗議したものの、そう言えば3年前のオメガ戦役以来シェルクと顔を合わせていない事に気がついた。
それどころか連絡すら取っていない気がする。だけど連絡を取り合って特別なにか話すこともないしと
考え直すが、結論は変わらなかった。
(あれ? それってもしかして仲悪いって事なのかな?)
 嫌ったりとかそう言うことはないけれど、確かに起伏の少ないシェルクのような性格は、どちらかと
言えば苦手かも知れないと考えて、ようやくリーブの指摘が的を射たものだった事を理解する。
「なーんかさ、物言いがすっかり保護者だよね」
 はぐらかすようにしてユフィが言う。
「そう言うつもりはありませんが、少なからず私にも」そこまで言うと、今度はリーブが視線を逸らした
「責任の一端はありますからね」。
 それからモニタに映し出された夕景を見つめ、言葉の先を続けた。
「それに、私から直接シェルクさんにお返しする機会は無さそうですので」
176ラストダンジョン (372)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/08/13(金) 02:17:22 ID:e81ey5Xh0
 その言葉を聞いたユフィは目を見開くと勢い良く顔を上げた。その先には表情の失われたリーブの
横顔と、モニタに映る夕景があった。
 淡々と語られた言葉に含まれた意味がどれほど残酷な内容であるかを、ユフィは一瞬のうちに理解
した。込み上げる怒りにまかせて言葉を吐き出す。
「いい加減にしてよおっちゃん! どんな事情があるのかは分かんないけど、そーいう話聞かされる
アタシ達が気分良いとでも思ってるの? 勝手すぎるよ! これもアンタが返せばいいだろ!?」
 言い捨ててから、先ほど手渡されたマテリアを投げて返した。
 マテリアが腕に当たってから、鈍い音を立てて床に落ちる音を聞くとリーブは視線を落とす。足下に
転がったマテリアを見つめながら、気のない相づちを返した。
「……おっしゃる通り、勝手かも知れませんね」
 尚も淡々と返ってくる言葉に、両手に拳を作ったユフィが食ってかかった。
「そうやって『自分は平気』ってカオしてるけどさ、聞かされる方の気持ちはなんも考えてないわけ!?」
句を繋ぐうちに、ユフィは自分が苛立っている本当の理由に気づき始めた「澄ましたカオしてそんな
こと言われると腹立つよ! だって……」。
 いつしか苛立ちは歯がゆさに変わり、全身から力が抜けていく。

「だってアタシ達……仲間、じゃん?」
 そう思っているのは自分だけなのだろうか? 歯がゆさの正体に思い至って言葉が及んだ時、彼女の
口調はすっかり勢いを失っていた。
「なんで? なんでおっちゃんはそんな事を平気で言えるのさ」 

 自分を見上げるユフィの視線から、今度は目を逸らさずにリーブが答える。
「そう見えるように振る舞っているだけで、なにも平気と言うわけではありません」
 そこまで言い終えると、屈んで足下に転がったマテリアを拾い上げてからユフィの正面に立った。
それからユフィの右手を取ってその上にマテリアを載せると、続く言葉を口にする。
「こちらも本音を言えば心苦しいです。ですが皆さんでなければ――」言いかけて、ひとつ首を振る
「信頼している皆さんだからこそ、なんです」
 身勝手は承知の上での我が儘ですが、どうか聞いてやって下さい。そんな風に依然として柔らかな
口調で話し続けるリーブの表情からは、感情を読み取ることはできなかった。
「どうかこの建物と、中にいる皆さんを守ってください。……お願いします」
177ラストダンジョン (373)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/08/13(金) 02:20:10 ID:e81ey5Xh0
 あなたにならそれができると、そう言ってリーブは頷いた。それでも躊躇うユフィを諭すように続ける
「私にできなかった事も、あなたにならできますよ」。
「何が言いたいのか分かんないよ」
 ふてくされた口調でユフィが返す。時折――この日は特に――リーブは回りくどい表現をする事が
あった。そうする意図がどうであれ、ハッキリしない物言いをされるのは好きではない。からかわれて
いる気がして気分は良くなかった。
 そんなユフィの心中を察したのか、リーブは断言した。
「あなたは私と同じ轍は踏まない。と言う意味ですよ」
「!!」
 予想外の言葉にこわばった表情のユフィを前にして、リーブはさらりと言葉の先を続ける「さあユフィさん、
これでやるべき事は分かった筈です」。やがてリーブは添えていた手を離した。
「やるべき事がある以上、その間は決して後ろを向いてはいけません」そう言って背を押し、ユフィを
部屋の外まで送り出す。
 名残惜しそうに向けられたユフィの視線にも動じることなく、リーブは彼女の背中を見えなくなるまで
見送った。




----------
・すっかり忘れた頃にやって来るラストダンジョンです。ご無沙汰してます。
 諸般の事情(九分九厘ロクでもない内容w)から、ちょっと遠ざかっておりました。
 お待たせして(る人がいたらの話ですがw)すみません。そりゃ耳も痛くなる。
・久々にDCFF7起動してみたら、初プレイ時より狙撃が輪を掛けてヘタになってた感じで、文章も(ry
・作者にとって、ユフィとシェルクの間柄についてはDCビンタイベントが尾を引いているのは間違いありません。
・以前このスレでも書かれてましたが、ユフィとシェルクって性質としては斥候だし、年齢も同じだしで
 シチュエーションさえあれば色々面白そうなんですけどね。
178名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/14(土) 03:15:46 ID:xxYdTR9VO
GJ!
179名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/17(火) 06:49:43 ID:hKvBkSDrP
乙!
180名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/20(金) 02:29:33 ID:0XDtDUrd0
乙です!
181名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/22(日) 09:24:13 ID:19Yw4Dn80
182名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/24(火) 18:34:31 ID:TzszV8ZX0
183みかづき ◆bkg5P8jr0A :2010/08/24(火) 23:44:07 ID:C085NKwZ0
こないだの>>169です。
ただでさえ遅筆なうえに私生活で諸々あってなかなか進められなかったのですが、私的なタイミングとしても頃合いなので、少しずつ投下させて頂こうとおもいます。
原作を気にしすぎるせいか、本来二次創作が苦手なのですが、原作を気にしすぎてもいけないというアドバイスを貰い、自分なりにやりたいようにやってみました。
内容的にはよくある話なのですが、その中で自分なりの面白さを表現できればいいなと思っております。
挨拶が長く&堅苦しくなってしまいましたが、読んでいただければ幸いです。

Final Fantasy Different Destiny

序章 〜邂逅〜

 十一月も半ばを過ぎると、外では早くも聖夜を意識した装いになってくる。
 イルミネートされていく街路樹や商店、どこからともなく流れてくるクリスマスソング、そして強がりと共に血の涙を垂れ流す独り身族。
 いや、最後のは置いといて。
 人々はたった一夜のイベントを、イコール冬と捕らえているようで、作り物の非現実を目一杯楽しもうとしていることは確かだ。
 かく言う俺、柿崎透も、そんな冬のイベントを少なからず楽しみにしていたわけですが。
 ……目の前で恐々とお茶を啜っている女の存在が、そんな非現実を、より強い非現実で塗りつぶしてしまったわけである。
「あ、おいしい──」
 口にした日本茶が気に入ったのか、女は二口目をためらいなく啜りに行く。
 背中まで伸びたブロンドの髪、意思の強そうな少し冷ややかな蒼い目、使い込まれていそうな白いマント、そして何よりも破廉恥な……もとい動きやすそうな緑色のレオタードに身を包んだ女性。傍らには本物の剣が置かれている。
 年は俺とそう変わらないと思うのだが、顔つきが大人びているので断言はできない。
 さて、なぜ俺がこんなコスプレ紛いの女の人と並んでお茶を啜っているのか。
 話は本日、十一月二十六日の朝に遡るわけだが……。


 喧しい目覚ましをKOして居間に降りると、姉貴が来ていた。
「ああ、おはよう透」
「おはよう。今日来る日だったっけ?」
「今日からまた父さん達出張でしょ。あんたの面倒見るように頼まれてんのよ」
「うわ何そのガキ扱い。そんなのいらないって」
「はいはい、自分からそう言ってるウチはまだガキなんだって事を自覚しなさい」
 この柿崎真澄は俺の姉貴で、現在一人暮らし。……の筈なんだけど、近所に住んでいるうえに頻繁に帰ってくるから、一人暮らしと言えるのかは少々疑問だ。
 ウチの父親は貿易関係の仕事をしているために出張が多く、今回は少し長い間外国に滞在するそうだから、母もついていくらしい。
 ……後になって思ったわけだけど、これって本当にご都合主義というか、お約束なんだよな。
 
 この街は住宅街を少し離れると、途端に装いが変わる。
 街を縦に割るように鎮座している大道に沿う様に商店が立ち並び、近くを通る国道に入れば、小さなビル等が立ち並ぶオフィス街になる。
 一ヶ月前に迫ったクリスマスの準備で忙しいのか、道行く人たちは多く、朝っぱらからせかせかと歩いている。あと数日で師走だ。
 そんなわけで、冴えない顔のサラリーマン風の男が、緑色の妙な服を纏った少女と共にすれ違った事など、視界の隅の景色の一欠けでしかなく、コンマ五秒後には綺麗さっぱり忘れていた。
 学校にたどり着いて教室へと向かう。
 クラスメイトに挨拶をしながら自分の席に向かうと、必ず目にするのが一人の女生徒だ。
184みかづき ◆bkg5P8jr0A :2010/08/24(火) 23:48:07 ID:C085NKwZ0
「おはよう」
 声をかけるとぴくりと反応して、少し小さめの声で「お、おはよう」と返してくる。いつものことだ。
 名前は高橋美奈都。大人しい性格で、別に虐められている訳ではないが、クラスでは少し浮いた存在。人見知りなのか友達がいる様子もない。
 彼女について知っているのはこれくらいのもので、教室の扉から自分の席までの道のりに彼女の席がなければ、こうやって挨拶を交わす事もなかったかもしれない。
 今朝のホームルームが済み、午前中の授業をいつも通り消化して、いつも通りの昼休みを過ごして、また午後の授業を消化して。
 そうやって何事もなく一日の学生生活が終わる。
「なあ柿崎、今日暇か?」
 清掃の時間に、友人の一人が話しかけてきた。
「急なんだけどよ、今日これから飛び入りでバイトやらねえ?」
「これから?……また随分急だな?」
「いやー俺がバイトしてる所で、年に一回倉庫整理するんだけどさ。今回あんまり人が集まらなかったらしくて、ヘルプ来れるやつ連れて来いって店長から電話が」
 バイト代はちゃんと出るから、けっこうおいしいから、と彼は拝み倒してくる。バイト先での体裁もあるんだろうが、人数が少ないとキツい仕事なんだろう。月末で俺も小遣いが心許ないし、日給でもらえるのならやりがいもある。
 
 そんなわけで、思いがけずにバイトをする事になり、キツい作業を終えて帰る時間になると、もうすっかり暗くなっていた。
「つかれたー……」
 どこか物寂しい道を歩きながら、そんな言葉を吐き出す。
 この街は割と都会のくせに、夜になるとめっきり人の気配が激減する。気の早いイルミネーションがきらきらとしていて、街灯も多く点灯しているはずなのに、人間が少ないというだけで嫌にに不気味だ。
 もちろん駅やスーパー、商店街の方までいけばそんな事はないのだが、道一本を隔てただけのこの小さなビルが立ち並ぶオフィス街は、人々から忘れられたようにしんとしている。
 そんな中を歩いていると、近くのビルの屋上で、何かがちかちかとしているのが眼に止まった。
 クリスマスのイルミネーションかと思ったが、それにしては不自然な光方をしている。
「──何だろ」
 よせばいいのに、ふと気になってしまった俺は、そのビルまで近寄ってみる。
 間違いなく、何かがちかちかとしている。
 ビルに入ってエレベーターで最上階まで昇る。八階建てのちょっと古いビル。
 何かのイベントでもやってるのだろうか。いや、ここは単なる個人や中小企業向けのオフィスビルだ。
 階段を上って屋上へと続く扉に近づく。
 気のせいだろうか。何か重いものが激しくぶつかり合うような、擦れ合う様な音が、不規則に、しかし絶え間なく聞こえてくる。
 何かの工事でもしているのかと思いながら、音を立てないようにゆっくりと屋上への扉を開けてみる。
185みかづき ◆bkg5P8jr0A :2010/08/24(火) 23:49:56 ID:C085NKwZ0
 そこで、全身が凍りついた。
 がらんとした屋上、寒空の下。そんな中で、手に凶器を持った二人の人間が殺し合っていた。
「あ──」
 信じられない光景が広がっている。あまりの出来事に口の隙間から間の抜けた声が漏れた。
 衝突しあう鉄と鉄、刃物と刃物、凶器と凶器。
 漫画やゲームの中以外ではそうそうお目にかかれない、文字通りの『武器』を振るっている二人がそこにいた。
 片方はブロンドの長髪の女、もう片方は黒ずくめの男。
 男が握っているそれは人の丈ほどもある大剣であり、それを棒切れでも振るかのように軽々と扱っている。対する女は、そんな獲物を持った男の猛攻を、小さな剣で凌いでいた。
 コスプレや演劇の練習といった言葉が脳裏を過ぎるが、目の前の光景はそんなものではない。わずかな隙間から伝わってくる刃物のような殺気が、眼球を通り、全身を通って脳に到達する。脳や神経は刃物に引き裂かれてズタズタになり、思考することも動く事もできなくなった。
 逃げろ。
 心ではなく、先に体のほうが本能で絶叫している。
 心臓はけたたましく鳴り響き、脚は信じられないほどに震えていた。
 逃げろ。
 しかし体は動かない。脳や神経が本当に切り刻まれたのか、自分の意思では指一本動かすことも許されない。
 動いてはいけない。今動けば絶対に見つかってしまうと、どこかで理解していた。
「っ──!?」
 一際大きな音が鳴り響くと、状況が変わっていた。
 切りあっていた男女は大きく距離を離し、女は片膝をついている。
 女はこちらに背を向ける形で、肩で息をしているのが見て取れた。
 対して男の様子はこちらからは遠くてよく伺えない。
「はは──あはっ、あはははははっ!どうだ女! これが実力の差ってヤツさ!!」
 屋上に響く若い男の声。しかし女と向き合う男の口は動いていない。
 声の発生源は丁度自分の真上、階段室の搭屋の扉の上からだった。
「ほらほらどうしたんだ、もう立って動けねえのか? 情けないね、せっかくこっちに来たってのにもうリタイヤなんて。さあザックス、止めをさしてやれ」
 その声はどこかで聞いたことがあるような気がする。しかしそんなことを考える前に、ザックスと呼ばれた男は、その巨大な剣を下ろして構えを解いた。
「ん?どうしたんだザックス」
「……今は倒さない」
186名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/24(火) 23:50:49 ID:C085NKwZ0
 そう言ってザックスは剣を背中に背負った。
「ああ、そうだな。せっかくの女なんだ。どうせなら楽しんでから始末するのがいいよね。何だ、涼しげな顔してちゃんと分かってるじゃないか」
「そうじゃねぇよ、引き上げるのさ」
「はぁ?」
 若い男は塔屋から飛び降りると、ザックスの下へ走りよる。
「どういうことだよ、せっかくのチャンスじゃないか。さっさと殺して次に」
「ギャラリーがいる。人目についちゃいけないのなら、これ以上はルール違反だ」
「おまえ……!」
 背を向けて去ろうとするザックスの前に立ちはだかる若い男は、俺と同じ学校の制服を着ていた。
「ふざけんなよザックス! それなら覗き見してるヤツも一緒に始末すればいいだけだろう! さあ早くしろ! このオレが命令してるんだから従うのが当たり前だってのがわかんないのかテメェ!!」
「リュウジ、無関係の人間を手にかけるのもルール違反だし、俺は頼まれたってそんなことはしない。第一俺たちは別に主従関係を結んでるワケじゃないんだから、あんたに"命令"される筋合いもない。何なら今ここで関係を切ったっていいんだぜ」
「ぐ──っ!」
 激昂する若い男に向けられた声は飄々としていて、つい先ほどまで殺し合いをしていた人間のものとは思えない。ザックスはこちらとは反対側の出入り口に向かって歩き出した。
「命拾いしたな。次会う時までに、そのケガ治しとけよ」
「……」
 最後に女に声をかけて、ザックスと男は屋上を立ち去っていった。
 
 屋上に取り残された女は、剣を杖代わりに立ち上がろうとするが、力がほとんど入っていない。
 気がつけば、心も体ももう悲鳴をあげてはいない、頭の中も別に切り裂かれてはいなかった。
 扉を開けて屋上に出ると、おそるおそる女に声をかける。
「お、おい、大丈夫か……?」
 振り返った女を見て俺は思わず息を飲んだ。
 大きな傷ではないが全身に切り傷が散見される。表情は見るからに疲弊していて、今にも倒れそうな顔をしていた。しかし、それ以上に目を奪われたのは、彼女の容姿だ。
 愛らしさを残した丹精な顔立ちは、その現実離れした出で立ちと相まって、銀幕(ファンタジー)の向こう側からでてきたようである。
「──見たの?」
 搾り出すように出した声に、首を立てに振った。見た所、日本人ではないようだが、流暢な日本語だった。
「そう……」
 ぐらりと傾く女の体。咄嗟に受け止めようと走るも、間に合わずに地面に倒れてしまう。
「おい、しっかりしろ!」
 目を閉じて荒い息を繰り返す女。

 冬に差し掛かった夜。
 これが彼女、セリス・シェールとの出会いであり、これからはじまる一連の不可思議な事件の幕開けだったのである。
187みかづき ◆bkg5P8jr0A :2010/08/25(水) 00:01:24 ID:sOBfMFId0
とりあえず本日はここまでです。
188名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/26(木) 18:21:32 ID:qrJ1frF30
節子それ二次創作やない、俺×キャラや
文章上手いのに惜しいな…本来批判をするスレではないが、これは海外で発表したとしても歓迎されない
セリスを助けた透もまずいが、リュウジはザックスと対等で将軍を倒してしまっているのでもっとまずい
現代が舞台だったり、オリジナルキャラクターが出ること自体はいいんだ
だけどそれが最強のキャラになったり、ゲームキャラに賞賛されたり恋愛になるのはアウト
オリキャラ全員ここでチェックしてみて、該当してしまうようだったら出せないと思った方がいい
ttp://iwatam-server.sakura.ne.jp/column/marysue/index.html
オリジナルキャラクターのみ登場する架空のゲームを創作するか、ごく普通の人としてゲーム世界に迷い込むか、
モブとしてゲームキャラに助けられるか、通りすがりにゲームキャラに倒されるなら問題ない
189みかづき ◆bkg5P8jr0A :2010/08/26(木) 18:49:20 ID:MsRnSUT40
>>188
レスありがとうございます。
今後の創作の参考にさせていただきます。
今回はすでにプロットをある程度組み上げて書いているので、ラストまでは書かせて頂こうと思っております。
厳しいご意見も文章の賞賛も有難く頂戴しました。
出来れば今後もここで発表させて頂こうと思っておりますので、よろしければまたご感想のほど、よろしくお願いします。
190名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/27(金) 05:26:53 ID:OWujS7qi0
メアリースーはだめでしょ
191名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/08/28(土) 09:48:49 ID:zXGVClIK0
詳細な一次設定ありそうだし、一次創作として仕切り直して欲しいな
ここだとスレ違いだけど、オリジナルSSとしてならどこかで読みたい
192みかづき ◆bkg5P8jr0A :2010/08/28(土) 20:01:09 ID:KicuwV740
ありがとうございます。
個人的に一度書き始めたものは最後まで書きたいので、今後は自分のところのみで載せようと思います。
真摯なご意見ありがとうございました。
お騒がせしてしまった事を深くお詫びいたします。
193名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/02(木) 07:48:21 ID:3rCk2t0F0
乙でした
194名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/02(木) 19:08:17 ID:oCwWH2f30
終わった事をとやかく言うのはアレだけど
>>リュウジはザックスと対等で将軍を倒してしまっているのでもっとまずい
読む限りじゃリュウジは何にもしてないのでは?
メアリー・スーと決めるのはいささか早計な気も
まあでも本人がもうここには来ないと言っている以上言ってもしかたないよな

みかづき氏見てたら続き読みたいのでアドレス教えてくれ
195名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/03(金) 01:46:53 ID:ARgOXT4C0
>>183-186
ザックスとリュウジはどういう契約(…か、どうかは分かりませんが)で一緒にいるのか?
彼らの言う「ルール」とは何か?(ここまで読んで連想したのは、たとえばゲームの世界から
キャラクターを召喚した、とかそんな感じで)その「ルール」が及ぼす影響がこのお話の軸っぽい?
そう言った意味では面白そうな展開だと思います。
とは言え、主観になりますが(そもそもここがFF・DQ好きな人が集う場所なので)この板・スレで書く
となると、少しでも原作軽視の傾向があるネタは分が悪い気はします。
(軽視というのは、作者が意図していなくても取り扱いに偏りがあった場合、読み手に与える印象が
相対的に変化する事を含みます。そもそもキャラクター自体が架空世界に成り立つ存在なので、
その外に出て個性を維持するのは難しいと。その辺が混作の難しさだと感じますが)
ただ、それを逆手にとって思いがけない展開が繰り広げられたら読み手は一気に引き込まれます。

>>194
横合いからすみません。意図は定かじゃないですが>>188
「リュウジはザックスと対等」の部分と、「将軍を倒してしまっている」の部分について触れてるのかな?
(なので、この関係性の根拠になる物が必要=その根拠が話の軸。つまりこの根拠の示し方によって
この先どうにでも転ぶ。この部分を不安と取るか、機体と取るかは読み手次第だと思いますが)。
あくまで読んだ時点での感想なので、188も間違ってはいないと思います。
(それに恐らく書き手はそれを踏まえて書くでしょうから、そこは気にしないで良いと思いますよ。敢えて
ミスリードさせるという手もあるでしょうし。なにせ掲示板、書き手も読み手もそれが醍醐味ですw)


長レス失礼しました。
196名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/08(水) 08:56:00 ID:c+c4QqnH0
197名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/10(金) 06:36:11 ID:8i/R4Dt40
198名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/12(日) 17:54:22 ID:yzNwt0CM0
199名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/14(火) 15:18:12 ID:lG+2Opr50
200名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/16(木) 17:54:19 ID:Yvh4ADmX0
201名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/18(土) 02:01:16 ID:1zbX+i+Y0
202名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/20(月) 12:39:24 ID:XWDbit+X0
203名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/23(木) 10:40:05 ID:d5IPjTNe0
204名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/25(土) 19:42:03 ID:1isI6bfz0
205ラストダンジョン (374)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/09/27(月) 02:14:30 ID:nqYGLRPF0
前話:>>173-177
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 あの場からユフィが動けずにいた時間は、彼女の体力回復という点において無駄にはならな
かった。部屋を出たユフィはいつもの軽快な身のこなしで亀裂だらけのフロアを駆け抜け、強固な
隔壁の下の僅かな隙間をくぐり抜けてエレベーターホールへと向かった。
 1枚目の隔壁を抜けたユフィは立ち上がると、しまっておいた小瓶を取り出してそれを見つめた。
(この調子なら、さっきおっちゃんにもらった回復薬も使わずに済みそうだ)
 リーブがここへ戻ってきたユフィに渡したのはエリクサーだった。エリクサーは今でも稀少品
だったが、だからといって重宝する時代ではなくなった。使うとしても場面はごく限られるし、もともと
店に売ったところで儲けを期待できるような代物でもない。昔も今もちょうだいと寄ってくるのは
せいぜいマジックポットぐらいだ。それでも6年前のユフィなら魅力的な対価を目当てに、今なら
半ば不要品処分といった感覚で、マジックポットの要求に快く応じたことだろう。
 けれどこの時のユフィにとって、いま手元にあるエリクサーだけは誰に頼まれたとしても譲る
気にはなれなかった。
 無意識のうちに、エリクサーを持つ手に力がこもった。
(これ以上おっちゃんの思い通りにはさせない。……こんな物、アタシには必要ないんだから)
 ここまでの経緯を思い返すと、どう考えてもリーブの計略にまんまと振り回されている気がした。
そしてユフィの認識と現実は残念ながら一致している。渡されたエリクサーを使わずにいたのは、
まるで事態を見透かしたようなリーブに対する小さな反抗意識からだったが、今やこの状況を打破
するための切り札のような存在にも思えたのだ。
 ユフィにとって手放したくないほどの価値はエリクサーその物ではなく、それを手元に残しておく
ことにあった。
 確認するようにして手にした小瓶を見つめて頷くと、再びエリクサーをしまってエレベーターホール
を目指し走り出した。
 2枚目の隔壁下から這い出たユフィは立ち上がって後ろを振り返った。ここからでは壁に阻まれ、
先程までいた部屋はもう見えない。
(……モンスターからここを守って)
 それからまた前に向き直って3枚目の隔壁の下をくぐり抜ける。
(ここにいるみんなを守って)
 同じ要領で4枚目。
(もちろん、空爆なんて絶対させない)
 そして、最後の隔壁に向かう。
(見てろよ〜)
 こうして文字通りに自分が切り開いた道を戻りきったユフィはエレベーターホールまで辿り着くと、
扉横のボタンを押した。
206ラストダンジョン (375)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/09/27(月) 02:18:07 ID:nqYGLRPF0
 ところが、ドアが開くまでにかなりの間があった。物音ひとつしない薄暗いフロアに一人でいると、
ついつい考えだけが先走ってしまう。
(……だけどさ、やっぱり意味分かんないよ)

 ――「ここはインスパイア能力そのものを安置しています。我々は、それを守るために配備された
    人形なのです。」

 あそこにいたリーブは自らのことを人形だと言い、存在している理由をそう語った。
(おっちゃんは自分のことを『星に害をなす』って言ったけど、じゃあどうやって?)
 具体的にリーブがどんな方法で星に害を与えるのだろう? ユフィは思いつく限りの状況を想定
してみた。
(街中にケット・シーがうじゃうじゃいる、とか?)これは喧しい。が、いくら数に物を言わせたところで、
相手がケット・シーならそれを惑星規模の危機だと嘆くのは大げさ過ぎる。
(じゃあ、デブモーグリが道を塞いじゃう、とか?)主要な幹線道路上にデブモーグリがいたら確かに
邪魔だし、戦闘能力と言う面でもケット・シーより深刻になる必要はあるかも知れない。とは言え
モンスター相手に戦えるWROが各地にいるなら問題ない。
(ん〜、『星に害をなす』って言うには、どれもいまいちインパクトに欠けるよなぁ)
 星にとっての脅威と言われて真っ先に思い浮かぶのは、6年前の空に禍々しく輝いていたメテオと、
北の大空洞で見たセフィロスの姿だった。自分ひとりの力では打倒どころか、抗う事すらできない
存在――この星に危害を加えようとするなら、あれぐらいの規模と力量差がなければ説得力がない。
 逆に、自分ひとりで打倒できる相手が“星にとっての脅威”となるなら、つまり“ユフィ自身”も星に
害を与えられる事になってしまう。
 そんなことできるわけがない。
(どう考えたって、おっちゃんには無理そうなんだよね。……なら、どうして?)
 リーブの言葉を思い出そうと、ユフィは意識を集中させる。

 ――「先ほどご説明した『インスパイアが星にとって害をなす存在』というのは、
    こういう意味だからです。」

 モニタを見つめていたリーブの横顔と共に、その言葉が浮かんだ。
(おっちゃんは、モンスターを召喚するマテリアかなんか持ってるって事なのかな? だいたい
『インスパイア』って何なのさ?)
 『あやつる』のマテリアならともかく、インスパイアなんてマテリアは聞いたことがない。そもそも
マテリアじゃないのかも知れない、それにしたって耳慣れない言葉だった。モンスターが大挙して
押し寄せてくるのは何故なのか、結局分からず終いだ。
207ラストダンジョン (376)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/09/27(月) 02:25:18 ID:nqYGLRPF0
(……アタシは)
 放っておくと迷走する思考を追い出そうと、ユフィは一度おおきく頭を振った。
(アタシには、みんなを守れる。おっちゃんはそう言ってくれた。アタシだってそうしたい)
 みんなを守りたい。その「みんな」の中には当然リーブも含まれている。
(だけど欲張ったって結局なにもできない。さっきみたいに、どうやって動けばいいか分からなくなる)
 今だってそうだ。いくら考えたって分からない。
(変に考えたって立ち止まっちゃうだけってんなら、そんなの意味ないよね)
 その時ポン、と軽妙 な機械音と共にエレベーターの扉が開いた。考えることに集中していたユフィ
は、この時ようやくここに来た本来の目的を思い出した。
(アタシのできることをやるんだ)
 決意して顔を上げたユフィは次の瞬間、驚きに目を見開いた。
「……って、クラウド!?」
 エレベーターの扉が開くと同時に現れたのはクラウドの背中だった。混乱する頭の中とは裏腹に、
とっさに差し出した両手で倒れるクラウドの背中を支える。この様子だと本人の足で立っていたので
はなく、エレベーターの扉に凭り掛かってようやく立てていたのだろう。しかしそうなる状況がユフィに
は想像できなかった。
 ひとまずその場に横たえさせると、ユフィはクラウドの横合いに回った。これならエレベーターの扉
も勝手に閉まることはない。
 クラウド自身に目立った外傷はなく、右手にしっかりと握られていた大剣にも戦闘の痕跡は見られ
なかった。ただ、ここへ来る直前のクラウドが大剣を振るう状況にいた事は間違いなさそうだ。しかも
一時的にでも意識を失うほど、気力体力ともに激しく消耗するほどの事態――それがクラウドにとって
あまり良くない状況だったであろう事は、ユフィにも容易に想像できた。
 頬を叩きながら呼びかける「ねえちょっと、大丈夫?!」。
 その声にようやく反応したクラウドに、ユフィは迷わずエリクサーを取り出した。
「起きれる?」
 かすかに頷くクラウドに肩を貸し、エレベーターの扉に背を凭れさせる格好で上半身を起こしてから
取り出した回復薬を施した。それから平静を取り戻すまでにそう時間は掛からなかった。
「……大丈夫?」クラウドの顔を覗き込んでユフィが尋ねると、クラウドは小さく頷いて答える。
 日頃から口数が多い方ではないから、この反応も自然と言えば自然だった。けれど普段とは異なり
表情が硬かった。そこに加えて、ユフィにはどうしても不思議に思える事があった。
「っていうかクラウド、どうしてここに? 他のみんなは?」
 ティファ、ヴィンセントと一緒に3人で地下に向かったはずだった。なのにクラウドだけが何故ここに
いるのだろう?
「……分からない」
 クラウドの視線は動かない。僅かに動いた唇から頼りなげな言葉が零れた。
「クラウド、ホントに大丈夫?」
 もう一度小さく頷く。それでも尚、ユフィと視線を合わせようとはしなかった。ここへ来てどうやら
クラウドが混乱しているらしいと見当が付いた。
208ラストダンジョン (377)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/09/27(月) 02:30:33 ID:nqYGLRPF0
「下で……なんかあった?」
 ユフィの問いにクラウドは無言で首を振った。
「もしかして……覚えてない、とか?」
 可能性として口に出された言葉に答えようと、クラウドは顔を上げ硬い表情をユフィに向けた。
「覚えてない、わけじゃない。……」
 どうにも歯切れの悪いクラウドの様子を、ユフィはもどかしい思いで見つめていた。
「ただ……」
 何も言わず、ユフィは辛抱強く言葉の先を待った。
「理由は分からない、でも……ここは……」
 歯切れが悪いだけではなく、声が小さく震えていた。クラウドが混乱だけではなく、緊張している
のだとユフィは知った。
 その理由を、クラウドは短く告げる。
「ここにいるリーブは、人間じゃない」
 そう言ってクラウドは再び俯いてしまう。
 それを聞いて安心したようにユフィは相づちを打つ「アタシも見たよ。確かに自分のことを『人形』
だって言ってるし、ひとりは本当に人形だった」。
「……そうじゃ、ない」小さな声で、だがはっきりと否定したクラウドは、首を横に振った。
「なにが違うってのさ? ここにいるおっちゃんが、人形でも、人間でもないって言うなら、
一体なんだってのよ?」
 僅かな苛立ちを含んだ声でユフィが問うと、俯いていたクラウドは手元の一点だけを見つめたまま
で答えた。

「……あいつは、モンスターだ」


----------
・マジックポットには大変お世話になりました。
・「街中に溢れるケット・シー? 最高じゃないか!」…と言ってみる(個人的に)。
209名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/28(火) 11:32:06 ID:qnqp182W0
GJ!
210名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/09/30(木) 20:25:54 ID:Xf3Jn6iL0
GJ!
211名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/02(土) 18:27:02 ID:WdDhY0z70
乙!
212名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/05(火) 11:27:41 ID:yJevKiKu0
乙です
213名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/08(金) 11:54:34 ID:mJZ/9UZB0
214名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/12(火) 00:57:20 ID:mcVZxZUC0
215名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/13(水) 08:19:41 ID:dSG72oIN0
216名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/15(金) 10:45:49 ID:OlAPrO/00
217名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/18(月) 20:52:58 ID:TwGS7XYf0
218名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/20(水) 23:08:26 ID:mWOVI50W0
219名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/22(金) 18:11:11 ID:rbyuy72S0
220名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/24(日) 20:56:05 ID:qUeRirwH0
221ラストダンジョン (378)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/10/25(月) 23:33:28 ID:Z3E9w06r0
前話:>>205-208
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 その言葉を聞いてから、ユフィが反応するまでにはかなりの間があった。
「クラウド……? なに、言って……」
 とても冗談を言っている顔には見えないし、冗談を言ってられる様な状況でない事も分かって
いる。けれど、この時はクラウドの言葉を冗談だと思いたかった。
「おっちゃんがモンスターなワケないじゃん! 下で何があったか知らないけどさ、そんな言い方
あんまりだよ!」
 亡霊の次はモンスター、しかもそれを口にしたのはクラウドだった。冗談はおろか揶揄などする
ような性格ではない彼が、なぜそんな物言いをしたのか? 事情を考えるよりも感情が先に立った
結果、ユフィの言葉は非難めいたものになった。
 ユフィにしてみても、今日ここで出会ったリーブと彼らに聞かされた話はどれも理解しがたい
ものだった。だからといって、敵と割り切れるような存在ではないと――6年前の困難な旅路を
共にした“仲間”だと――その思いだけは揺るがない。仮にリーブの方が割り切っていたのだと
しても関係ない。自分に向けて「平気と言うわけではない」と言ったリーブを最後まで信じたかった。
信じようと決めたばかりだった。
 なのに。
「ケット・シーは仲間だったよね? 確かにあの時おっちゃんは遠くで操作してただけかも知れない
けどさ、仲間に違いないじゃんか!」
 クラウドの言葉を聞いて不安になった。これ以上迷いたくないし信じたい、だけど晴れることの
ない疑いは、まだ確かに心の片隅にあった。だから不安に駆られる。その事をユフィは理解して
いた。
 だからこそ不安を吹き飛ばそうと勢い任せに声を張り上げた。そんなユフィを見上げ、クラウドは
頷いた。
「……分かってる。いつも見えないところから、俺たちを助けてくれた」今度はユフィをしっかりと
見据えて言った「大切な、仲間だ」。
「じゃあ!」尚も問い質そうとしたユフィは、改めて見たクラウドの表情に言葉を失う。ソルジャーの
証たる魔晄色の瞳が、深い悲哀を帯びながら僅かに揺れていた。
「……ごめん」
222ラストダンジョン (379)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/10/25(月) 23:36:23 ID:Z3E9w06r0
 先程までの発言が軽率だったとユフィは心の底から後悔した。言葉には出なくともその目を
見れば、クラウドが自分以上に憤り戸惑っているのだと言うことが分かったからだ。
「これじゃ押しつけだよね」



 ――いっつも自分の事ばっか、昔からユフィはちっとも変わってないね。

 6年前に旅を終えてウータイに戻った時、幼馴染みにそう言われた事を思い出した。星を救った
英雄どころか、謎の病気の媒介者という濡れ衣を着せられた挙げ句に隔離までされた当時の
ユフィにとって、どうしても自分の無実を主張したかったのは仕方がないと思っていた。誰だって
そう思うだろう。現に、そう指摘した幼馴染みだって同じだったのだから。
 けれど時間が経つにつれてこの言葉の重みが増していった。
 不思議と、6年前は顔を思い出すのにも苦労していたはずなのに、今では彼の言葉と後悔とが
ない交ぜになって心に引っ掛かっている。いなくなってから思い出に残り続けるなんて、皮肉な
ものだと思った。



「アタシいっつも自分の事ばっかしゃべって、自分の感情を押しつけてる……って、ホントそうだ
よね。ごめんねクラウド」
 人差し指で頬の辺りを掻く仕草をしながら、気まずそうに視線を逸らすユフィを見ていた
クラウドは、首を横に振った。
「気にしてない。それと、そう言う方がユフィらしくて良いじゃないか」そこまで言ってから、堪え
きれずに小さく笑う「だいたい、変にしおらしくされても気味が悪い」。
「ちょっと、気味悪いってなにさ!」
 もうちょっと言い方があるじゃないか、と勢い良く振り向いたユフィの口から猛烈な抗議が始まる
のを遮るにはちょうど良いタイミングで、クラウドが言葉の先を続ける。
「それに、どんな形であっても自分の感情を優先するのは人として自然な事だと、俺は思う。
少なくとも、それを間違いだと責めることはできないよ」
「……えっ?」
 視線の先のクラウドから笑みは消えている。
「俺たちは、良くも悪くも自分の感情に従って生きている」そう言って、いちど傍に置かれた大剣に
視線を落とす「怒りや悲しみ、憎しみ……それは時として、信じられない力を生み出す」
 ふだんは箍として機能する理性が、内在する“力”を抑制している。何らかの形でその箍が外れ、
感情がある種の臨界点を超えたときに発生する現象を『限界突破(リミットブレイク)』と呼んでいた。
それは各人で異なる性質を示すが、共通しているのはマテリアを介さずにそれと同等の威力や
効果を得られるという点だった。未だに発生原理の全容は解明されていない。ただその“力”は、
これまでに幾度となく彼ら自身を救ってくれた。
 クラウドの言う事は、ユフィにもよく分かる。そうやって道を切り開き、あるいは目の前の敵を
倒して生き延びてこられたのだ。
223ラストダンジョン (380)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/10/25(月) 23:40:46 ID:Z3E9w06r0
「でも……」クラウドは再び顔を上げる「その力に呑み込まれてしまうのも、逆にそれを捨てようと
するのも、どちらにしても“人ではない存在”になってしまう気がするんだ」形は人でも中身が人
ではない存在、それがモンスターだとクラウドは言う。
 表情こそ変わらないが、心なしか声を落とすとこう続けた「……俺たちが知るリーブは、恐らく
ここにはいない」。
「クラウド?」
 その変化が何を意味しているのかを計りかねてユフィが問うが、クラウドは答えずに話を進める。
「あいつは俺に『リーブを殺せ』と言った。でも、俺たちの知るリーブはとっくにいないんだ。少なく
とも……ここには、もういない」
 そう言って目を伏せたクラウドは、ここへ来るまでの経緯を手短に説明した。1階エレベーター
ホールでユフィ達と別れた後、3人の乗ったエレベーターは途中の階で停まった。半ば強制的に
降ろされたフロアで彼らを出迎えたのは、無数の射撃装置とそれを従えたリーブだった。自らを
人形だと告げた以外にはたいした説明も無いまま銃口は3人に向けられ、成り行きで交戦。この
混乱に乗じてティファ、ヴィンセントとはぐれたクラウドは、さらにその先でもう一体の「リーブ」と
対峙することになった。
 そこでどんな遣り取りがあったのか、具体的な話をしようとはしなかった。だからユフィもそれ
以上聞こうとはしなかった。クラウドの言う「あいつ」が、そこで対峙したリーブの事を指していた
のだと分かれば、それで充分だったからだ。
「仲間を守る力……俺はそう思って剣を振るってきた。だけど、今となっては破壊でしか役に立た
ない」そこでいったん言葉を切ると、首を小さく横に振った。「いいや、都合良く『守る』と、そんな
ものは言い訳なんだ。今も昔も、結局やってることは同じだった」
 言い終えた後、俯いたクラウドの肩が小さく震えた。笑っているらしい。その様子が恐ろしくなっ
て、ユフィは窘めるように声を掛ける。
「ちょっとクラウド、さっきからどうしたん……」
 ユフィの心配をよそに、クラウドは話を続ける。
「否定できないなら、ありのままを受け容れるしかないよな」そう言って無理やりに作った笑顔を
向ける「外見がどうだろうが、あいつはリーブなんかじゃないんだ。でなきゃ『これを壊せ』なんて
俺たちに平然と言える訳がない」なんの躊躇もなく、そこに仲間などと言う感情も遠慮もない。
だからあんな物がリーブである筈がない。
「ちょっと待って、それは違う! おっちゃんは……おっちゃんは……!!」
 クラウドの身に何が起きたのかは分からない。ただ、今のユフィには彼の心情が理解できた。
少し前までの自分と同じだったからだ。だからこそ反論した。

 ――「そう見えるように振る舞っているだけで、なにも平気と言うわけではありません」

「おっちゃんだって平気でそんなことを言ってるんじゃない!」勢いでクラウドの両肩を掴む
「……理由は……よく分かんない。けど! そうしなくちゃならない理由がある。おっちゃんは
自分の感情よりも……」
 そこまで言ったユフィの言葉を遮って、溜息混じりにクラウドは相づちを打つ「そう、ユフィの
言う通りなんだ」。まるで呆れたとでも言わんばかりに肩を落とす。
 その様子を見て、言っていることと態度に食い違いがあるとユフィは思った。
「クラウド、分かってるなら何……」
224ラストダンジョン (381)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/10/25(月) 23:43:52 ID:Z3E9w06r0
 伏し目がちだったクラウドは、そのままユフィから顔を逸らして先を続ける。
「つまり俺たちがここへ来る前、既にリーブは自分の“感情”を殺している。だから、もうここには、
“俺たちの知っているリーブ”はいない」
 目的のために自分の感情を殺す――つまり自身を放棄するのと同じ――事ができると言うな
ら、それはもはや人ではない。
 クラウドにとってそれは、過去の記憶に重なって嫌悪感を呼び起こす。
「利用できる物は何でも利用する。自分だろうが他人だろうが、そいつにとっては道具なんだ……」

 ――お前は、人形だ。

 自分がかつてそう呼ばれたのを思い出す。
「人形には感情なんて無い……」そう言って首を振る「操り主にとっては、感情なんて無い方が
都合が良いんだ」
 だからああも簡単に「壊せ」と言えたのだろう。
「同じだ。アイツと同じなんだ……」
 耳鳴りがして反射的に顔をしかめる。6年前の忘らるる都――あの時の記憶が、まさかこんな
形で再燃するとは思ってもいなかった。額に手を当て、押し寄せる苦痛に耐えるようにして目を
閉じ俯いた。
 けれど逆効果だった。瞼の裏に蘇るのは、消すことのできない忌まわしい記憶。

 ――悲しむふりはやめろ。怒りにふるえる演技も必要ない。
    なぜなら、お前は……

 そこまで思い出してクラウドははっと目を見開いた。
 あれが言っていた通り、あの時の自分は演技をしていたのだろうか?
「違う!」
 考えるまでもない、答えは明白だ。
 耳鳴りが遠ざかっていく中で、別の声が聞こえた様な気がした。それは4年前にミッドガルで
対峙した少年だった。

 ――「どうせ僕は操り人形。昔のアンタと……同じだ!」

 握りしめた拳と、怒りに打ち震える少年の姿。当時はそれと知らず、感情を利用して行動を
操作されていたのだ。昔の自分と同じだと言った少年が、まさにそうだった。だとしたら。
「……どうして、どうして気付かなかった……!」
 叫ぶようにして言うとクラウドは立ち上がる。
「感情がなければ人形は操れない。……だから操り主にとってみたら、感情は必要不可欠な
ものなんだ」
 突然の出来事にクラウドを見上げていたユフィは、今し方リーブから聞いた言葉を口にする。
「おっちゃんも似たようなこと言ってたよ。『今バレットの前にいるのは、ミッドガルの都市開発
責任者としての思いをもっとも強く受け継いでいる』とかなんとか。だから同じ人形でも、みんな
ちょっとずつ違うんだ。……とかなんとか」
 それを耳にしたクラウドは驚いた様子でユフィに向き直る。
225ラストダンジョン (382)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/10/25(月) 23:47:41 ID:Z3E9w06r0
「……それを、リーブが?」
「うん。もうちょっと難しい事も言ってたけど、アタシじゃ理解できな……」言っている間にも、
クラウドの顔から血の気が引いていくのが分かった「どうした?」。
 クラウドは呆然と立ち尽くし、自身の右手を見つめながらぽつりと呟いた。
「だとしたら、俺が……」
 そこで声は途切れてしまう。
 首を傾げてクラウドを見上げていたユフィには、その先にどんな言葉が続いたのかを知ること
はできなかった。しかし唖然としたその表情を見れば、彼がどんな事を考えていたのか、ある
程度の想像がついた。

(俺が壊した物は、まさか)
 下で会った「人形」が、実は人形でなかったとしたら――想像するだけでもおぞましい、最悪の
事態が脳裏を過ぎる。

「……あのさ、クラウド」
 殊更明るい声で名を呼ばれ、我に返ってクラウドは顔を向ける。視線の先には、満面に笑みを
浮かべるユフィがいた。
「おっちゃんに会ってみない?」
 立てた親指が指す方向に目をやると、亀裂どころかボロボロになったフロアタイルが目に入った。
「アタシにはよく分かんないけど。今、クラウドが想像してる事って間違ってると思うんだ」跳ねる
ようにして立ち上がると、クラウドの前に進み出た。
「この先にいるおっちゃんなら、きっと教えてくれると思うから」




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・小説ユフィ編を誤解していたら申し訳ない。
・リユニオンの解釈自体を誤解(ry
・リミット技の解釈を誤(ry
・色々とすまない。
226名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/26(火) 20:55:55 ID:g+RgT92Q0
GJ!
227名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/28(木) 20:57:38 ID:gCbGFHjQ0
>>223
おもしろくなってきた
228名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/10/29(金) 16:57:07 ID:N4iCR+4I0
乙!
229名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/01(月) 21:59:46 ID:c9BfxzR00
230名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/03(水) 09:06:32 ID:Qk0qYdxz0
231名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/05(金) 16:18:23 ID:b/pnVv1g0
232名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/07(日) 12:12:43 ID:XpGZoR1x0
233名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/09(火) 17:26:14 ID:mqD9FuNG0
234名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/12(金) 06:19:44 ID:QhNn0/Vu0
235名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/15(月) 00:32:27 ID:FephlOJa0
236名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/17(水) 11:17:31 ID:Vx3Nm/PG0
237名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/19(金) 00:59:10 ID:mX0rzRoj0
238名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/21(日) 20:44:51 ID:FSOBD5gQ0
239名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 00:44:43 ID:6C+hGeiW0
240名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/27(土) 20:24:03 ID:71gzfcWP0
241名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/29(月) 21:49:36 ID:eJdn1VR80
242名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/02(木) 02:50:30 ID:gkzCfSfA0
243ラストダンジョン (383)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/03(金) 01:40:58 ID:YH+jCqWP0
前話:>>221-225
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 そう言ってクラウドに背を向けると、ユフィは躊躇わずに一歩を踏み出そうとした。きっとこの先に
いるリーブに会うのが、今のクラウドにとっては最良の選択だろうと思ったからだ。
 しかしそれを全力で否定したのはクラウド本人だった。彼は無言でユフィの腕を掴むと、彼女の
前進を妨げた。
「ちょっと! いきなり何……」言いながら振り向くのと同時に、今度は腕を思い切り引っ張られた
ものだから、ユフィの体は放り投げられる形でエレベーターに押し戻された。頭部に走る衝撃に
思わず瞼を閉じれば、耳鳴りと共にきらきらと小さな光の粒が視界を横切った。
 それから数秒も経たないうちに、エレベーター内の側壁にぶつけた後頭部を押さえながらユフィ
が薄く瞼を開く。視界の中央には、伸ばした手で操作パネルのボタンを押しながら宙を舞うクラウド
の姿と、扉の向こうに走る閃光が見えた。その光景を目の当たりにしたユフィは一瞬だけ、まるで
良くできた映画みたいだと、どこか他人事のように考えていた。
 間一髪のところでエレベーターにクラウドが飛び込むと、扉は閉まった。それから息を吐く間も
なく、轟音と共にエレベーター内は激しく振動した。
「なっ、なんだってのさ!」尻餅をついた格好で踏ん張りながらユフィが叫ぶ。突然の出来事に、
状況が呑み込めずにいた。
「あのまま行ってたら、爆発に巻き込まれてた」
 前につんのめる形で体勢を崩してはいたものの、クラウドの声は冷静だった。
「爆……?!」
「どうも、あそこから先には進ませたくなかったみたいだ」
 言いながら、揺れが小さくなったのを確認したクラウドは大剣を支えにしながらゆっくりと立ち
上がり、パネルの前に立つと操作をはじめた。しかしどこを押しても扉は反応しなかった。どう
やら自分達は爆発の衝撃で傾いたままのエレベーター内に閉じこめられたのだろう、と言う状況を
把握した。
「面倒な事になったな……」
「ねえクラウド、『アタシ達を先に進ませたくなかった』ってどういう事?」
 操作パネルと向き合うクラウドの背にユフィが問う。意識せずに立ち上がった勢いでエレベーター
内が大きく揺れ、再びユフィは側壁に後頭部をぶつけた。深刻な内容の会話にあって、その鈍い
音はいっそう際立った。
244ラストダンジョン (384)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/03(金) 01:50:23 ID:YH+jCqWP0
 しかしクラウドは意に介した様子もなく、ユフィの問いに答えた。
「爆発のタイミングから見て、俺たちがあの先に進むのを妨害する為の仕掛けだと思えたんだ」
見方によっては罠という言い様もあったが、クラウドは意識的にそうすることを避けていた。
 言い終えたところで、パネル操作を諦めたクラウドは天井を見上げた。換気口があれば、そこ
から外に出られるだろうと考えた。
「って事は、おっちゃんが?」
「そこまでは分からない。時限式かセンサーかそれとも遠隔操作か、やり方は色々ある。だけど
装置を作動させるための仕組みによっては、ユフィの予想が正しい事になるな」
「なんで……?」気の抜けた声でユフィがつぶやいた、どうしてこんな状況になったのかが分か
らなかったのだ。
「ところでユフィ」支えにしていた大剣を右手に持ち替え、両足を開いて態勢を整えると視線を
真上の換気口に向けながら問いかける「ここへ来る前にリーブと会った、って言ったよな?」。
「うん」
「なにか言われなかったか?」
「えっ?」
 どうやら質問するクラウドには心当たりがある様子だったが、聞かれているユフィ当人には思い
当たるところがない「ええっと、色々聞いた気がするけど……」。急転を繰り返す事態について
行けず、思うように考えがまとまらなかった。
 その間もクラウドが大剣で天井の換気口を壊そうとする度に、エレベーター内が大きく揺れた。
神羅ビルのそれとは違い、ここはずいぶん頑丈に作られているみたいだと、妙なところに感心する。
 マテリアを携行しなくなって久しい今では、魔法は使えない。つまり脱出のための選択肢は
限られていた。しかもクラウドの剣技は狭い空間、とりわけ密室となったエレベーター内で使用
するには向いていない。それというのも扱う剣その物の大きさもあって、大型の敵や広域攻撃を
担う技が多かった為だ。仮にここで発動すれば乗っているエレベーターを壊せたとしても、ユフィや
自分自身も巻き込んでしまう危険があった。
 さらに問題なのは、先程の爆発の影響でバランスを失い非常に不安定なエレベーター内では、
動く度に籠が大きく揺れる事だった。乗り物酔いという弱点を持つふたりにとっては、もっとも危惧
すべき事態だった。
「……ち、ちょっと待ってクラウド。……なんか……気持ち悪くなってきた」こんなに揺れるんなら
飛空艇の方がよっぽどマシだと、口元に手を当てながらユフィは思う。
 閉塞された空間では、風景などで気を紛らわす事もできない。その上ひどく揺れるものだから
三半規管は半ば混乱状態だ。クラウド自身、この状況下に長時間いるのは避けたかった。一刻も
早く打開策を見出したかったが、焦れば焦るほど状況は悪くなる一方で、まさにジレンマだった。
(確かにユフィの言うとおりだ。これじゃあ潜水艦の方がまだ……)
245ラストダンジョン (385)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/03(金) 01:55:35 ID:YH+jCqWP0
 考えたくないという意識はむしろ忘れかけていた記憶を呼び起こすカギになる。次々といやな
要素が脳裏に浮かんで、クラウドは思わず眉間にしわを寄せた。これ以上ここにいると、それだけ
で心身共に参ってしまいそうだ。となれば多少の無理をしてでも、ここは強行突破しかない。
「……踏ん張れユフィ!」
「えつ!?」
 覚悟を決めたクラウドは大剣を構えて腰を落とすと、狙いを換気口に定めた。未だ不安定に
揺れる床と跳躍のタイミングを合わせると、全身を使って跳躍し勢い良く大剣を突き上げた。
金属が擦れ合う耳障りな音と共に、クラウドは大剣をねじ込むようにして持ち手を変えた。換気口
を覆っていた金網はさらに不快な音を立てると、抉れて形を変えた。
 もう少しで壊せると手応えを感じたクラウドだったが、直後にエレベーター内がひときわ大きく
振動すると、がくんと小さく落下する様な衝撃が走った。バランスが崩れ、大剣はクラウドの手に
押し戻される。
「く、クラウド!?」
 ぎいと軋んだ音を立てながら、エレベーターは傾斜したままでゆらゆらと揺れている。先程よりも
明らかに不安定になっているのが分かった。
「これってさ……もしかして」
「支えになるワイヤーの片方が切れたんだろうな」
 応じるクラウドの声は、自分でも驚くほど冷静だった。
「ねえ、エレベーターを支えてるワイヤーって、そんなに簡単に切れちゃったりするモンなのかな?」
「いくらなんでもそれは無いんじゃないか? それなりの強度はある」と信じたかった。
「……だよ、ね? 簡単に切れちゃったりするハズ……無いよね?」
 まさかねー、とユフィは乾いた声で笑ったが、すぐに笑顔は引っ込んでしまう。
「…………」
「…………」
 それから互いに顔を見合わせるが、なにも言葉が出てこなかった。
 なぜだかは分からない。ただこの時点でふたりは、このエレベーターを支えるワイヤーが、「あと
数十秒ほどしたら簡単に切れてしまうのではないか?」と言う、とてつもなく現実味を帯びた
予感を抱いていた。
 その直後に、ふたりの予感を確信に変えさらに実現してしまった事を告げたのは、けたたましく
響いた金属の摩擦音だった。同時にエレベーター内は照明と安定を完全に失い、ふたりを乗せた
まま落下をはじめた。
 そんなほんの一瞬の間に、クラウドの脳裏ではまるで走馬灯のように記憶が再生され、ここへ
来る直前に対峙したリーブの言葉がよみがえった。

                    ***

「神羅カンパニーの支配体制をいっそう盤石な物とするために、当時は裏で様々な能力開発を
行っていた様です。その中のひとつに『未来予知』なんてものもあったそうです」
 またしても自らを人形だと名乗っていたものの、クラウドの前に現れたのは姿形や声のなにも
かもがリーブだった。
「もちろん、私にそんな能力はありません。ですが予知能力が無くても確実に未来を知る方法が
あるんです。何だかお分かりになりますか?」
 目の前に立ったリーブは淡々と話を続ける。クラウドが分からないと首を振ると、こう続けた。
「自分の描いたシナリオ通りに事を運ぶんです。そうすれば、予知などする必要はありません。
予めレールを敷設してその上に列車を走らせるのと同じです」
246ラストダンジョン (386)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/03(金) 02:03:10 ID:YH+jCqWP0
「『敷かれたレールには逆らえない』、そう言いたいのか?」
 静かに問い返すクラウドの声には僅かばかりの嫌気がこもる。
 それを受けてリーブは口元を綻ばせると「少し違います」と答えた。
「正確には、その上を走ることを嫌い彼らがレールから外れる事まで想定に含めるんです」
「……あんたのシナリオでは、それが俺達だと?」
 うんざりした表情でクラウドが言うと、またもリーブは同じ反応を返す「少し違います」。
「あなたは本来とても強い人です。しかしその反面で脆くもある。ですから、こうご説明した上で
『本体の破壊』を依頼したとしても、それを快諾して頂けない事は分かっています。ですから、私は
あなたを利用しようと考えました」
 話し方こそ事務的だが、内容はどこか挑戦的にも聞こえた。
「俺達は盤面に置かれた駒じゃない、あんたの思い通りに動かせるとは限らない」
 明らかな嫌気を含んだ声で、クラウドが反発する。それがリーブの思惑通りだったとしても、
言わずにはいられなかった。
「動きますよ」リーブは断言した「直に分かります。そして我々は駒ではなく、“人形”なのですから」

                    ***

 なぜあの時、リーブはあんな事をわざわざ話したのだろう? 心のどこかで何かが引っ掛かって
いた。けれどそれも、今なら納得がいく。
(こうなるまで俺が真意に気付けない、と言うのも見通されてたって事か)
 俺はあそこで、あんたに打ちのめされた。その直後に、都合良く回復薬を差し出すユフィが現れ
た。なるほど、それもすべて用意してあった“シナリオ”通りというわけだ。
 クラウドは思わず笑みを浮かべた。

(……『何もできなかった自分の弱さに腹が立った』……あんたもそうだったんだろう? リーブ)

 俺は正直、あんたを少しだけ苦手だと思ってる。口が達者で柔和な裏に知略を巡らす切れ者。
こう言ってはなんだが、その意味ではルーファウスよりもタチが悪い。
 6年前までは神羅という巨大企業に属し、ミッドガルと魔晄文明を築き上げ支配の側に身を置い
た一人。それでも最後は俺達に手を貸した。考えてみればあの時ケット・シーを操っていたあんた
自身、自分がレールの上を走らされていたと思っていたんじゃないのか?
 自分をスパイだと明かせば俺達に疎まれる事は目に見えていたのに、図々しくも堂々と同行する
と宣言されて、当時は状況が状況だけに好感なんて持てそうになかった。だけど、今なら何となく
分かる様な気がするよ。
247ラストダンジョン (387)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/03(金) 02:04:16 ID:YH+jCqWP0
 分かったところで、あんたと同じ事が俺にできる気はしないけどな。
 たとえ感情は殺せても、最後まで理想は捨てない――俺から言わせれば、そんな事ができる
ヤツの方がよっぽど強いんだ。
(そしてここの仕掛けに気付いても、俺の力ではどうしようもない。……あんたはそこまで分かって
いた。だから種明かしをしたんだな)
 手にした大剣を強く握り、クラウドは目を閉じた。着地の衝撃に備え、できる限り身を低くして
四肢に力を入れた。
(だが生憎と俺はあきらめが悪いんだ。あんたの思い通りにはさせないさ。それに)
 遠くにユフィの叫び声を聞いた直後、クラウドの全身に衝撃が走った。

(何もしないならそれこそただの“人形”だ。……そうだろう?)




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・FF7本編を意識しすぎて不自然になった感は否めない。前回から続いてるのに
 絞り切れていない話の焦点といい、読み苦しい点が多くてすんません。
・んでもって、やっぱりコミカルな表現は苦手です…。
248名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/03(金) 20:25:11 ID:xKzLiN/20
GJ!
249名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/06(月) 05:36:13 ID:uD/t6lUT0
GJ!
250名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/10(金) 06:15:22 ID:arBQQQo50
251名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/13(月) 10:50:08 ID:wDjU1/vNP
乙!
252名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/16(木) 18:46:54 ID:cnpobrGz0
253名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/20(月) 22:54:11 ID:kvw/lQlpP
254名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/23(木) 19:37:11 ID:K4jXQhOe0
>>243
乙です!乗り物酔いw
255月水:2010/12/24(金) 22:45:17 ID:fKqrecyK0
※BCFF7でクリスマスネタな捏造SS。
------------------------------------------------
『Happy Christmas for you.』

暗闇の中を、音を立てないようにして進む。慣れた場所で、しかも前職柄(?)、この様な事は造作ない。
ただ、目的が目的なだけに内心穏やかでいられなかった。
袖と裾に毛のついた紅い衣装を着、昼間梱包した物を片手に部屋の前に立つ。
いつもなら、ここでノックする所だが、今夜は出来ない。
ノブにゆっくり手をかけ、そっと引いて開く。室内に薄明かりが出来た。
足場がゆったりとある床に爪先から踵へと慎重に体重を移動させ、前進する。
ふと、首元がひやりと感じた。
振り向かなくても、何が起こったのかが想像ついてしまった。
「こんな夜中に他人の部屋に入るとは」
何が悲しくて娘に刃物を突き付けられるのだろう。しかも、本人は寝ぼけているらしく、誰に刀を向けているのか
分かっていないようだった。俺は思わず、両手を挙げる。
「父さん」
何とも情けない状況だった。しかし、ここでばれるわけにはいかない。
「“父さん”じゃない、サンタさんだ」
取り繕う。
「では、その“さんたさん”とやらが、私に何の用だ」
振り向くと、彼女の眼が、すわっていた。
怖。
「いや、その、プレゼントを届けに」
観念するしかなさそうだ。
「何故?」
詰問されるなんて。
「今日、く、クリス、マス」
「くりすます」
手元が、漸く緩んで刀が離れた。そして、彼女は朧げな思考回路を回転させているようだった。
頭の中にある自分の辞書から該当する単語を懸命に引こうとしているが、中々見つからないらしい。
「め、メリークリスマス」
動きが止まった、今が好機。
裏返ったような声で言った後、プレゼントを渡し、逃げるようにして娘の部屋を出る。これ以上、奇妙な重圧に耐えられそうになかった。

「おはよう、父さん」
「あ、ああ。おはよう、フェリシア」
あれから、寝るに寝られず、結局リビングで一夜明かした。
娘は、昨夜の事は覚えていないようだ。
「これ、何かな」
朝起きたら持っていたという、夜俺が渡した包みだった。
「開けてみたらどうだ」
「開けていいのかな」
自分のものか疑わしくて開けられないと言った。
大丈夫だ。そう言って開くように促す。
黄色のリボンを解き、柊の模様が入った季節感ある包装紙を丁寧に広げていく。
数時間前の一騒動で、端が少し凹んでしまった細い箱を取り出した。
「これは」
不慣れな宝飾店で偶然見つけた、娘と同じ名を持つ花をモチーフにしたネックレス。小さめだが、花弁の部分にはブルーダイヤが使われている。
娘に対する、初めての贈り物だった。
ふわり、と身体が包まれる。
「ありがとう、父さん」
腕をそっと回した。


サンタには、なりきれなかった。でも、これで良かったのだ。
幸せな時が過ごせるのだから。

<fin>
----------------------------
・親馬鹿スキルがありそうに見えて仕方がない、そんなヴェルド氏に頑張ってもらいました。
256名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/26(日) 00:03:50 ID:ZxY6mWk9O
乙!
257フリオ×ライトニング(1) ◆WzxIUYlVKU :2010/12/29(水) 02:00:02 ID:OBY5H/Ne0
※DDdFFの最新トレーラーのフリオとライト義姉さんのシーンを見たら色々滾ってきて勢いで書きました。
※フリオニールとライトニングのカップリング物です。ぬるいですが恋愛要素を含みます。苦手な方はスルーして下さい。
※内容はほとんどが投稿人の勝手な妄想です。完全なるフライング小話です。ゲーム本作の内容とは異なります。(当たり前ですが)


フリオニールはものすごく困っていた。
仲間四人で野営をしていたら、その内の二人が急に見張りに行くと言い出して。
残ったのはライトニングと名乗る女戦士だけだ。
男だろうが女だろうが、仲間である事に変わりはない。だが、少し前に彼女と言葉を交わした。彼女が自分の大切にしている夢に関心を持ってくれてそれ以来、彼女の事が気になって仕方がないのだ。

席を外した二人を恨めしく思いながら、隣に座る変わった服装の女性を横目でそっと盗み見た。
たき火の炎に照らされた横顔が美しく、柔らかそうな髪は彼の好きな花を思わせる甘い色をしている。すっと通った鼻筋、伏せられた眼を縁取る長いまつ毛が落とす影、思わず見とれてしまう。
さすがに不躾だろうと慌てて目を反らしたが、その仕草が逆に隣に座る女戦士に気取られる結果となってしまう。
「なんだ?」
どうしてこの女性は男の様な話し方をするのだろう。
男勝りな女性は仲間にも居たが、それでも、そのまんま男の様な話し方をしたりしなかった。
「ライトニングは、その…どうしてそんな話し方をするんだ?」
ライトニングは怪訝な表情でフリオニールをじっと見つめる。フリオニールの顔が瞬く間に赤くなる。よく日焼けした彼の顔がたき火の炎に照らされていても、それでも分かるくらいに。
ライトニングにも男女の機微には疎い方だが、彼が少なからず自分に好意を持っていることくらいは分かる。
以前の自分はそんな感情を疎ましく思っていたのだろう。でも、この男だけは何故か違った。
何故だろう、この男と一緒に居ると心が安らいだ。良く言えば何を言っても受け入れてくれる、悪く言えば何を言っても許してくれるような、そんな感じだ。
博物館から抜け出て来た様な鎧姿に武器、堂々たる体躯にも関わらず口をついて出てくる言葉は少年の様にあどけない。今だって、ライトニングの男勝りの言動を咎めているのではないのが分かる。
「おまえは何故そんな格好をしているのだ?」
フリオニールはライトニングが言っている意味が良く分からず、首を傾げる。
「俺の…この、格好の事か?」
フリオニールは落ち着きなく、自分の鎧に触れ、
「どこか…変…か?」
「いや…そうじゃない…」
慌てる初心な反応がなんだか可愛い。
「お前の居た世界ではそれが当たり前なんだろう?」
「そうだな…兵士は大体こんな感じだ。もっとも、俺みたいに歩く武器屋みたいな奴は居ないけどな。」
ライトニングに怒っている様子はない。お互いの話が出来るのがうれしくて、フリオニールは勇気を出して言葉を続けた。
「俺の仲間にも女の戦士が居た…と思う。でも、ライトニングの様な喋り方はしなかった。だから不思議に思ったんだ。」
こんなに美しい人が、と言いかけてフリオニールは慌てて口を噤んだ。
「ライトで良い。」
相変わらず男の様な言い方だが、声が優しい。
258フリオ×ライトニング(2) ◆WzxIUYlVKU :2010/12/29(水) 02:02:40 ID:OBY5H/Ne0
「悪かったな。お前の姿がおかしいんじゃなくて…私の居た世界でもお前やセシルの様な格好をした人達が居た。だがそれは遥かな昔の話で、今はもう物語の中でしか見られない。」
「俺たちの世界では古い戦記を口述で伝える。それくらい古い、という事か?」
やはりフリオニールには分かりにくいのだろう。まるで過去から来た人間と話しているみたいだ。
「そうだな。」
その伝承とやらがどれくらい古いのかは分からないが、これ以上フリオニール混乱させないように、そして少しでも緊張を解いてやろうとライトニングは否定はしないでおいた。
「お前の世界では女性はみんな裾の長いドレスを着るのか?飾りがヒラヒラ付いた…」
「高貴な女性はそうだな。皆、華やかで美しいと…思っていた…」
「どうした?お姫様にフラれたか?」
からかう様な口調にフリオニールは気色ばんだ。
「そんなんじゃない!」
その剣幕にライトニングは驚いてフリオニールを見た。膝を立てて今にもライトニングにつかみ掛からんばかりだ。
以前誰かがフリオニールがお姫様にひどい目にあった事がある、と言っていたのを小耳に挟んだだのを思い出し、
(少しひやかそうと思ったのだが…)
どう詫びようかと考えを巡らせていると、いきなり両肩を掴まれた。痛みに顔を上げると目の前にフリオニールの顔があった。
「俺は…っ!ゴテゴテ着飾った女よりもあなたのような…」
掴まれた肩も向けられる視線も熱くて、ライトニングは目を反らす事が出来ない。
フリオニールは吸い込まれそうな青い瞳に見つめられ、赤い顔を更に赤くして顔を背けた。そのくせ、ライトニングの肩から手を離さない。
「私は…」
フリオニールの言葉の続きがなんとなく分かって、不思議と心が浮き立った。真っすぐな気持ちがうれしい。
「何かを守りたくて、軍人になった…と思う。周りの…他の奴らに負けたくなかったから…」
この男になら話しても良い、そう思った。肩を掴んでいた指から力が抜けたのが分かった。
「俺も…そうだった…」
長い長い沈黙の後、フリオニールがやっと口を開いた。
「仲間と一緒に…野ばらの咲く世界…でも、今は…そこに…あなたが居てくれたら……と思う」
ごくり、と唾を飲み込んで、なんとか言葉を絞り出す。
「守りたいんだ。」
最後の方は聞き取れない程小さな声だった。
259フリオ×ライトニング(3) ◆WzxIUYlVKU :2010/12/29(水) 02:04:18 ID:OBY5H/Ne0
ライトニングは既視感を覚えた。
以前にも誰かにもそんな事を言われた事があったような気がする。このひたむきさとか。
だからこの男に心を許してしまうのかと、ライトニングは漸く気が付いた。
「残念だな。」
崖から飛び降りる気持ちで伝えた言葉をあっさりと否定され、フリオニールは言葉を失う。
だが、ライトニングはにやりと笑ってみせると、
「生憎と大人しく待っている性分ではなくてな。どうせなら、共に肩を並べて戦う方が良い。」
フリオニールは思い出した。この女性の美しさだけではなく、彼女の言う「性分」にも惹かれていた事を。
(この人は強い…)
気圧されて何も言えなくなったフリオニールにライトニングは尚も畳み掛ける。
「抱いてくれないのか?」
「え…!?」
ライトニングの言葉にフリオニールは飛び上がらんばかりに驚いた。
「こっ、ここでか…?」
「ばか。考え過ぎだ。」
「そ…そうか…」
そういう意味か…と口の中でもごもごと言い訳をしつつ、フリオニールは大きく深呼吸をした。
肩に置いた手をそっとライトニングの背に回す。ライトニングも素直に身体を預ける。
女性の身体はもっと柔らかいものだと思っていたが、良く鍛えられたライトニングの背中には無駄な肉が一切付いていない。だが、手のひらに感じる筋肉はやはり男性のそれとは違う。
そして、自分の胸に押し付けられる彼女の柔らかい胸。
頭がくらくらして、周囲の光景が回転しているのではないかと思う程だ。
だが、胸の中のライトニングを見ると、安心しきった表情でフリオニールにもたれかかっている。
その表情はフリオニールの胸をしめつけた。
(…今だけは…)
先の事は何も考えないでおこう…そう思って、フリオニールは抱きしめる腕に力を込めた。

おわり。

260名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/30(木) 01:19:40 ID:q6y8Dfmk0
>>257
乙!
席を外した奴らは気をきかせたのかw
261名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/30(木) 23:11:49 ID:h5hJNUBL0
X3登場に同意&便乗。

会敵>>141→内部侵入〜要塞崩壊>>139-140の経緯で
辛くも大陸上空に現れた母船は退けたものの、その後進路を日本に(これが3-53)。
と言うことで、最後に「幸運を祈る!」の無線通信で締めくくってくれたら叫ぶw
(母船って36まで日本→37欧州→42〜48北米侵攻→53日本で良いのかな?)

3のラストは受け取る側だけど、「幸運を祈る」を言った側をやってみたいという妄想の賜ですね分かry
お前ら良いお年を。
262名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/31(金) 03:48:16 ID:7o139is00
>>255
互いに不器用だけど、失われた親子の時間を取り戻そうと前向きな様子が良いな〜。
ヴェルドさんならやってくれる!だって任務は必ず成功させるタークスだし!

クリスマスネタか〜(FF7には教会があるからクリスマスって風習は一般的なのかな?)
・トナカイの代わりにフェンリルを駆ってプレゼント届けようとするストライフデリバリーサービス、とか。
・「どうせならこの服も着て」とサンタクロースな格好させられてみるストライフデリ(ry、とか。
・それでもバレットに「あくまでも忙しいサンタさんの代わりにクラウドが走ってるんだ」と言われて
 はいはいと頷くマリンとか。
…よし、思いついたけど書くのは無理だw

>>257-259
これ読んで新トレーラー来てたことに気がついたw楽しみですね〜。(DFFの前の話?)

スレ違いですが、シャドウ出ない?(戦闘のバリエーション的にアサシンいいと思うのよ)
ストーリー的にも名前的にもシャドウいいじゃないか〜と言ってみる。無理やりか?w
やばい、予定無かったのに楽しみになってきたw長レスすんませんw
263ラストダンジョン (388)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/31(金) 04:22:17 ID:7o139is00
前話:>>243-247
----------

 文字通りに天と地が何度もひっくり返り、不規則で耳障りな音と全身を伝う衝撃が収まったの
を見計らって、クラウドは指先から順番にゆっくりと体を動かしてみた。ところが、どこにも痛み
や異常は無く、それどころか殆どダメージを受けていない様だった。それからゆっくりと瞼を開く
と、その理由はすぐに分かった。
「……防盾魔法?」
 自身の周囲をうっすらと光の壁が包み込んでいる、これが衝撃を吸収してくれたのだと言う
こと、その正体がシールドマテリアの作り出す防御壁だと言うことは、経験からすぐに察しが
付いた。
「はぁ〜、我ながらギリギリ間に合って良かったよ」
 声の方に顔を向けると、座り込んでいたユフィと目が合う。彼女の右手には、まだうっすらと
光を纏ったマテリアがあった。あの状況下で魔法の発動を間に合わせたのはさすがだと感心
する一方で、マテリアの出所が気に掛かった。少なくとも6年前の旅で得た物でない事は確かだ。
「それは?」
「ああコレ? さっきおっちゃんから預かったの。ホントはシェルクのなんだけどね」
 お陰で助かったよと嬉しそうに続けるユフィとは対照的に、返答を聞いたクラウドは肩を落とす。
(……ここまでは用意されたシナリオ通り、と言う訳か)
 思わず溜息を吐いたクラウドを見て、ユフィは首を傾げた「どうしたの?」。
「いや……」返答を濁して周囲を見回すと、頭上には大きく変形したエレベーターの扉が、片や
先程までは天井だった場所が横合いに見えた。換気口を覆っていた金網は歪んだままだった
が、その向こうから僅かだが外の光が漏れ入っていることに気がつくと、クラウドは躊躇なく
金網を蹴破った。
 こうして二人は無事、エレベーターの外に出る事ができた。
「ちょっと、これって……」
 ようやく解放されて安堵したのも束の間、目の前に広がる光景を見たユフィは呆気にとられて
言葉を失う。それもそのはずで、これこそ先程モニタ越しに見せられた風景――つまり建物の
外――だったからだ。
 後ろを振り返ると、白い壁面の新本部施設が見えた。少し顔を上げたところに小さな亀裂を
確認できたが、見る間にそれは塞がっていった。どれをとっても状況が理解できない。
264ラストダンジョン (389)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/31(金) 04:27:39 ID:7o139is00
「アタシ達、なんでいきなり外に放り出されてる訳?!」
 どういう事なのさー?! と、誰にともなく叫びまくっているユフィの混乱も分からなくはない。
クラウド自身、支えを失ったエレベーターがシャフト内を落下したのだとばかり思っていた――と
言うよりも、それ以外に起こりようがない――からだ。しかしクラウドにしてみれば、目を覚ました
ら突然ユフィが目の前にいたという状況でこの“瞬間移動”を経験していたから、今回の出来事
にそこまで動揺する事はなかった。言ってみれば、相手が手品師だと分かれば心構えができる
から、何が起きてもその場でいちいち驚くことは無くなる。確かに仕掛けは気になるが、今は
それを気にしている場合ではない。
 クラウドにとって問題なのは、ここまでの出来事がどんな理屈で起きた現象なのかではなく、
今のところどれもリーブの描いたシナリオ通りに進んでいて、その結末が考え得る中で最悪だと
言う事だった。
 顔を上げたクラウドの目を引いたのは、自分達を取り囲むようにして上空にあった無数の機影だ。
「飛空艇師団? ……にしても、どうしてこんなに」
 ここへ来たときには、自分達が乗っていた飛空艇以外にはいなかったはずなのに、今や編隊を
成して上空を飛んでいる。この短時間にどこから集まってきたのだろうと、クラウドが首を傾げる
のも無理はない。
「ああ、そっか」振り向いたユフィが思い出したように答える「クラウド達は聞いてないんだよね。
おっちゃんの呼びかけで集まったんだよ、ここの空爆待機の為にこの辺に留まってるんだと思う」
「空爆!?」さらりと物騒なことを語るものだから、思わずクラウドが聞き返す。
「心配は要らないよ。上にはシドも戻ったし……」言いかけてユフィがあっと声を上げた「そう、
アタシ達が頑張れば、空爆なんてしなくて済むんだ!」

                    ***

 ちょうど同じ頃、シドの乗った飛空艇内のレーダー要員は我が目を疑っていた。不自然なほど
頻繁にまばたきを繰り返し自分の目に異常がないと分かると、次に計器の故障を疑った。整備
班には絶対の信頼を置いているが、今回ばかりは計器の故障であって欲しいと願わずには
いられない。
 しかし目の前の表示は変わらなかった。意を決してレーダー要員は声を上げた「レーダーに
反応です!」。
 彼は索敵用広域レーダーから対象までの距離と方位を読み上げた後、にわかには信じがたい
状況を報告する「捕捉データによるとモンスターの大群の様です。しかも真っ直ぐこちらに向かって
きます!」。
「なんだってぇ?!」
 シドが叫ぶのと同時に、メインのモニタにはレーダー画面が映し出され報告内容が誤りでない
ことを示した。
「おい冗談だろ? 大体どっからこんな数のモンスターが湧いて出てくるってんだ!」そう言った
後、シドはあることに思い至って口元を歪めると、吐き捨てるようにして言った「ケッ、好都合って
もんだぜ!」。
 シド達をはじめとした各飛空艇はあの空爆要請を受けて以来、待機飛行のため新本部施設を
中心にした円周上に航路をとっていた。レーダーによると本部施設から見て北側から迫ってくる
モンスターの大群に対して、周回軌道をとる彼らは間隔を空けずに攻撃をする事ができた。シド
の言う都合とは、こちらへ向かってくるモンスターの足止めについてだ。
265ラストダンジョン (390)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/31(金) 04:30:52 ID:7o139is00
『おう艇長、良かったじゃねぇか!』スピーカーからは豪快な笑い声と共に、事の次第を聞いて
いた燃料担当が言った『腹ん中にどっさり積んできたモンが無駄にならずに済みそうだな!』。
 その言葉に通信担当のクルーは頷くと、穏やかな声で続けた。
「不謹慎ですけど、モンスターが来てくれて良かったとさえ思いますよ。……理由が何であれ、
局長やみなさんのいる場所に爆弾を落とすなんて、やっぱり嫌ですからね」。
「……どう言ったらいいか分からないが」年輩の航法士は苦笑混じりに言った「空爆待機とは
言え、結果的にこのルートで待機していたのが幸いしたのは間違いないな」。
 その言葉にはっとして、シドが振り返る。
(あの野郎、まさか最初からこれが狙いだったんじゃ……)
 もし仮に、こうなる事をリーブが事前に予想していたのだとしたら、何故それを素直に言わな
かったのか? 「モンスターの襲撃に備えて本部上空で待機しろ」と、そう言えば済む話では
ないか。確信が無かったにしても、わざわざあんな言い回しで伝える必要は無い。むしろ誤解を
招いていたずらに不安を煽るだけだ。そうすることでリーブが得るメリットを思いつかない。
(ちくしょう、こう言うのはいっくら考えたってオレ様にゃ分かりそうもねぇや!)
 とにかくこの事を他の連中にも伝えなければ、そう考えてシドはしまってあった携帯電話を
取り出すと電源を入れた。すると、ちょうど同じタイミングで電話が鳴動をはじめた。ディスプレイ
には発信者の名前が表示されている。2コール目が鳴る前に、シドは通話ボタンを押した。
「おーグッドタイミングだ! クラウド、状況がちぃとばかし変わった」
『こっちもその件で頼み事がある。シド、すぐに俺のバイクを降ろしてくれ。モンスターの大群を
相手にするには“足”が要る』
 あまりにもスムーズに話が進むものだから、思わずシドが聞き返す。
「おいちょっと待ってくれ。お前、その事をどこで?」
『話は今さっきユフィから聞いた』ユフィはリーブに話を聞かされたと言うことと、自分達がここに
来るまでの経過を簡単に補足してから、クラウドは先を続ける『確かに機動力で言えば、足止め
は俺とユフィが適任だ』。
「他の連中は?」
『まだ中にいる、でも今は戻ってこのことを知らせる時間が惜しい。ここからなら、戻るより
モンスターを迎えに行った方が手っ取り早い』
 クラウドの言っている通り、たしかに時間は無い。
「……分かった。すぐ降ろしてやるから待ってろ」
 合流地点を告げてから通話を終えると、シドは眉間にしわを寄せた。
「艇長、どうしました?」様子に気付いた通信担当のクルーが心配そうな視線を向ける。電話の
相手がクラウドだと言うことは、シドの話からも分かった。けれどなぜ不満げな表情をするのか
が分からなかった。
「別に……」それ以上シドは答えようとしなかった。
266ラストダンジョン (391)   ◆Lv.1/MrrYw :2010/12/31(金) 04:42:48 ID:7o139is00

                    ***

 クラウドがシドと通話している間、ユフィも携帯電話を手にしていた「クラウドは無事! こっちと
合流したよ」。
 彼女の言葉から電話の相手がティファかヴィンセントあたりとだろうと見当をつけつつ、クラウド
はシドとの会話を続けた。先程ユフィに飛空艇師団の事を聞かされた時にようやく気付いた事だ
ったが、分断された自分達がそれぞれの状況や情報を共有できていないというのは、こちらに
とって不利に働いている。
「……うん、こっちは大丈夫。シドは飛空艇に戻ってる。万が一に備えて空爆待機してる。でも
大丈夫、そうならないようにアタシ達がいるから安心して。それで、そっちはどう?」
 ティファの話を聞いているらしく、通話の途中ユフィは何度か驚いたり、頷いたりを繰り返して
いた。クラウドがシドとの通話を終えてから、少し遅れてユフィも電話を切った。
 すると開口一番、ユフィはこう言った。
「ティファから伝言『私は大したケガもしてないから心配しないで』だって」
「……良かった」クラウドは今までになく安堵したような表情を浮かべた。
 それからユフィは、ティファがシャルアに助けられた事。今はヴィンセントと合流した3名で行動
していること。それ以外には特に進展が無い事を伝えた。
「下に向かったバレットも含めて、今のところみんな無事みたいだね」ユフィは自分が見た情報も
含めて、ここまでの経緯と状況をまとめた。
 直接話のできていないバレットを除けば、これで今のところは情報を共有できた事になる。しかし
この先もこう上手く行くのだろうかと考えて、クラウドは不安を覚えた。


----------
・今年も1年間ありがとうございました。明日からの1年がいい年になることを祈念しつつ
 …ちょっと落ち着こうか自分。
・ウォール(バリアのマテリア)とシールド(シールドマテリア)って何が違うのかちょっと忘れてる
 ので、違ってたらすみません。(物理ダメージの軽減と完全無効の差だと思ったんですが)
267名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/31(金) 17:51:44 ID:K7Ny+A7q0
乙!
268名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 05:00:45 ID:rmAFztS00
>>263
乙!
緊迫した場面でユフィの明るさが救いです。続きを楽しみにしています。
269ヴァン×パンネロ【1】 ◆WzxIUYlVKU :2011/01/01(土) 05:06:32 ID:rmAFztS00
※FF12本編終了後に預かったシュトラールで旅をしているヴァンとパンネロのお話です。
※ヴァンとパンネロのカップリング物です。ぬるいですが恋愛要素を含みます。苦手な方はスルーして下さい。
※ヴァンの日本語がところどころおかしいですが仕様です。

---------------------------------------------

パンネロは夕焼けがあまり好きではない。
明るい日差しの下だと全てが明らかで、悲しいもの、寂しいもの、そんなものはこの世には存在しない、そんな気持ちになる。
辛い過去などとっくに消えてしまって、今この時と明日の事だけ考えていれば良いと思える。
(だけど、夕焼けは嫌い…)
マシントラブルでモスフォーラ山地の窪みに辛うじて不時着したヴァンとパンネロ。
パンネロはコックピットの窓から夕焼けを眺めていた。
理屈ではないのだ。美しすぎる夕焼けは全ての感情を露にする。
パンネロが涙を流し歯を食いしばりながら蓋をした悲しい思い出、居なくなった人達、行方が分からない人達、そして決して居なくなる事はないラバナスタの街の孤児達、そういった者達が蓋を蹴破って飛び出して来るからだ。
油断すると涙が溢れそうになる。パンネロは奥歯を噛み締めた。
「パンネロ!スパナ取ってくれ。」
声に振り返ると、操縦席の下に潜って操縦系統のシステムの不調を調べているヴァンが手だけ出している。
パンネロは景色に背を向けると工具箱からスパナを取ってヴァンに手渡し、そのまま操縦席に膝を抱えて座りこんだ。
ラバナスタに戻るには燃料がギリギリだった。
そんな時にシステムの不調で不時着。
たとえ直ったとしても離陸にどうしても燃料を喰う。果たして今日中に戻れるだろうか。
運悪くガス欠で砂漠に不時着でも、野宿すれば良いだけの事だ。
夜が明けたら近くの村でチョコボを調達して燃料を運んで…
そこまで考えて、パンネロは財布の中身を思い出してため息を吐いた。
バルフレアとフランから預かったシュトラールを、ちゃんとドックまで連れて帰る事が出来るのだろうか。
それよりもあれ以来行方の分からないバルフレアとフランは本当に帰って来るのだろうか。
心細くて泣きたくなって、ヴァンに声を掛けた。
「ねぇ…帰れるのかな、私達。」
本当に聞きたいのは帰られるかどうかじゃないのだけど。
「大丈夫だ。」
「本当?」
「山地は明け方に気温が上がると上昇気流が生まれる。それに乗って出来るだけ高く上るんだ。
後は少しずつ下降しながら帰る。そうすれば余裕さ。」
パンネロは驚いてヴァンを見る。
「いつの間に…」
「そりゃ、俺だって守りたい者があるからな。」
手を休めず答えるヴァンがとても頼もしく思えて、パンネロはうれしくなる。
「うん、そうだね。シュトラールはバルフレアさんとフランとの約束だもんね。」
不意にヴァンの手が止まった。
「どうしたの…?」
ヴァンは縦席の下から顔を出し、驚いて自分を見ているパンネロに気付くと、不機嫌そうにまた操縦席の下に潜ってしまった。
パンネロは驚いた。
自分でも言ったように、シュトラールはパンネロにとってバルフレアとフランが戻ってくるための約束であり、お守りだった。
(ヴァンは違うのかな?)
てっきり自分と同じだと思っていたのに。
(ヴァンの大事な物って…?)
270ヴァン×パンネロ【2】 ◆WzxIUYlVKU :2011/01/01(土) 05:10:02 ID:rmAFztS00
パンネロは考えてみた。
ラバナスタの街で面倒を見ている子供たち、かつて旅をした仲間達…どれもヴァンにとっては大事な物に違いない。
だが、今の不機嫌さにそれらは関係ないような気もする。
考えてもどうしても分からない。ただ、パンネロはヴァンの守りた存在が、
(…私だったら良いのにな。)
そう思った。
そう思うと、さっき堪えていた涙が溢れて来て、パンネロの頬を伝って床に落ちた。
パンネロが黙り込んだので、さっきの自分の態度のせいで気分を害したのかと、ヴァンがおそるおそる操縦席の下から顔を出した。
「ヴァン…」
ヴァンは身構えた。またお小言かと思ったからだ。
「私を……もう、一人にしないでね。」
突然の言葉にヴァンはうろたえ、そして耳まで赤くなった。
「な…なんだよ、急に?パンネロらしくねーぞ?」
パンネロは頭を振る。
「ずっと続くんだと思ってたのに、でも、突然、壊れちゃうから。もうそんなの、嫌だよ。
アーシェもバッシュ小父さまもラーサー様も居るんだから、もうそんな事ないって分かってるんだけど、
それでも突然不安になるの。また…皆居なくなっちゃったらって。
私…弱虫だよ。皆言うけど違うの。しっかりなんかしてない。」
ヴァンの守りたい者は言うまでもなくパンネロだ。
パンネロを守りたい。誰よりも好きだ。そう伝えたいけど、幼なじみという距離の近さが障害になってしまう。
気持ちを告げた所で「何を言ってるの?」と笑われたら?
いや、笑われるくらいなら構わない。パンネロに距離を置かれてしまったら?
どうすれば良いか分からず、気持ちをひた隠しにしてパンネロを見ていた。
誰よりも近くに居て、ずっと見守って来たのだ。
危ない目や心細い思いはさせたくないから一生懸命航空学や地理や気象の勉強をした。
どうか気付いて欲しいと祈る様な気持ちだった。
(「一人にしないで。」てことは、パンネロも同じ気持ちでいてくれたという事で…)
そう気付いてヴァンは急に逆上せたかの様に一気に頭に血が上った。
ここの所ずっと二人きりで気持ちを抑えるのが辛くて切なくて。
そこから一気に解放されたのだ。
立ち上がって、パンネロに何か言おうとして口を開いた所で、パンネロの泣き顔が目に飛び込んで来た。
「パンネロ…」
今まで自分は何をしていたんだろう、とヴァンは腹立たしく思った。
気付いて欲しいと思ってばかりで、守りたいと思っていたパンネロの不安に気付きもしなかった。
パンネロの不安を取り除きたい。その為には何を言ってあげれば良いのだろう?
「俺…」
舌が鉛のようだ。
「俺…さ、逃げるんじゃなくて本当に空賊になりたいって思ったんだ。
あの旅で…戦いで、本当に悪いのは誰だって考えた。でも、考えれば考える程分からなくなった…」
パンネロは時折、すん、と鼻を鳴らしながら、ヴァンの話に聴き入る。
「だから、何にも…関係なしにさ、色んな…世界とか、人とか見たい。
そうすれば答えが見つかるかも…ってさ。それで…」
また言葉に詰まる。喉の奥が締め付けられるようだ。
「色々…探して、見てみたいけど、それは俺一人じゃダメなんだ。そのっ……パンネロと一緒じゃなきゃ。」
ここまでなんとか話した所でヴァンはしまった!と一人焦る。
271ヴァン×パンネロ【3】 ◆WzxIUYlVKU :2011/01/01(土) 05:12:56 ID:rmAFztS00
パンネロの不安を取り除くどころか、
(これじゃあ男と男の友情みたいじゃないか…!)
ちゃんと言葉にしなければ。今、言わなければ…でも、焦れば焦る程何故だか息が苦しくて。
「だから……つまりっ…」
「私を一人にしない?」
言いかけたヴァンを、不意にパンネロが遮った。
「一人にしない?」
パンネロは尚も畳み掛ける。ぎゅっと唇を噛み締めて、祈る様な表情でヴァンを見つめている。
真剣な眼差しに気圧されたヴァンだが、
「しない。」
パンネロを真っすぐに見つめて答えた。
「パンネロ、俺…置いていかれた寂しさを知ってるから。だから、もし何かあってもパンネロの所に戻って来る。
飛空艇もチョコボもなくても、自分の足で這ってでも、パンネロの所に戻って来る。だから、心配せずに待ってろ。な?」
パンネロはヴァンの胸に飛び込んだ。ぎゅっとしがみついて来る。
ヴァンは心臓が口から飛び出すのではないかと思う程驚いた。
しかしパンネロがもう泣いていないと分かり、ホッとして、それからおずおずとパンネロを抱きしめた。
「…ヴァン?」
「ん?」
「そう言えば最近ケンカしてないね、私達。」
いつも些細な事で言い合いになったり、喧嘩になったりしていたのに。
でも、そんな子供みたいなじゃれあいは卒業しなくては、とヴァンが心に決めたからだ。
パンネロが気付いてくれていたんだとヴァンはうれしくなる。
「パンネロがずっと大事だ。ガキの頃よりも今の方がずっと。」
さっきはあんなに言葉に詰まっていたのに、今度は自然と口から言葉が溢れた。
「ヴァン、ずっと大人だね。小さい時よりも。」
二人は顔を見合わせ、そうして同時に大きな口を開けて笑った。
気まずさとうれしさがないまぜになって、幸せでくすぐったい。
さっきパンネロの気持ちを沈ませた張本人である夕陽まで笑っているように思える。
もう大丈夫だ、とパンネロは思う。
「ね!早く直しちゃお!」
この続きの展開にものすごく期待をしていたヴァン、あっさりと裏切られてしまう。
さっきまで泣いていたパンネロが突然元気になったのに釈然としない気持ちになったのだが、
「ああ、朝までに間に合わせないとな。」
と、強がってみせる。パンネロが微笑んで頷いた。
その笑顔にヴァンの心臓がまた跳ねる。なんだかパンネロが急にきれいに見えたからだ。
(やっぱ…大丈夫…じゃないかも。)
気持ちは通じたのだ。そうなるとつい考える事は一つで。
仮眠用のベッドがあるけど、そこはやっぱりヤバいよな…やっぱりラバナスタに戻ってから…
でも我慢出来るか自信がない…そんな不埒な事を考えていて気が付いた。
272ヴァン×パンネロ【4】 ◆WzxIUYlVKU :2011/01/01(土) 05:14:59 ID:rmAFztS00
(俺!風呂!入ってね〜!三日も!)
さすがにこれでは今晩は無理だろうと絶望的な気分になる。
ヴァンのヨコシマな気持ちなど知るはずもないパンネロ。
ご機嫌で、ヴァンの腕からするりと抜け出すと、
「じゃあ、私、お夜食作ってくるね!」
そう言ってパタパタと駈けて行ってしまった。と、思うとひょい、と顔だけを出し、頬を赤らめて、
「ずっと…一緒だよね。」
そうしてすぐに顔を引っ込めると、足音だけを残して夕食の支度に行ってしまった。
その仕草がまた可愛かった。
無事に帰ったら一晩中抱きしめようとヴァンは心に固く誓う。
そうしてパンネロの好きな所をちゃんと言うのだ。今なら言える。いくつでも言える。
(ずっと…一緒だもんな。)
守ると決めたのに浮かれているだけじゃだめだ、と自分に言い聞かせてヴァンは再び操縦席の下に潜って作業を再開した。
まずはパンネロを無事に連れて帰ってやる事なのだ。
それでも作業をしながら、操縦席の横でナビをしてくれたり、パンネロの歌を思い出してとても幸せな気持ちになった。
もっとも、この後栄誉ある召還が待っているので彼の期待がお預けになるのはお約束なのだが。

おわり。

=================================================

※ヴァンのDFF012出演記念です。毎朝レモンスライス持たせて朝練に送り出していた弟がまさかの甲子園出場!みたいな気持ちです。本当に良かった。
>>257シャドウが気になる…アサシンというジョブ的にも、またカオスに属しつつも、根っからの悪人ではない…みたいなストーリー的にも参戦するとおもしろそうですね。
273名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 14:49:28 ID:bkc3vjuy0
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274 【大吉】 【891円】 :2011/01/01(土) 20:44:12 ID:Fx09HYiF0
275名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/04(火) 00:29:07 ID:l911DRXI0
>>269-272
いい話だ…と思ったらおいこらwヴァンwwなんだかんだで期待を裏切らない君が好きだ!w
毎度思いますが、ヴァンこんなに可愛らしいキャラだったなんて…!DdFF(略称って何だろ?)
ヴァン参戦おめでとう。甲子園のたとえが分かり易すぎてw


今年も沢山のSSが読めますように。
276名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/05(水) 00:03:34 ID:v/7oyPn80
 
277名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/05(水) 22:29:10 ID:ub+QhOF+0
あけおめ&乙です

俺も書きたいとは思うけど、プロット立てるたびに原作の面影がなくなってしまう
○○の200年後とか需要あるんだろうか
278名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/06(木) 00:14:51 ID:ifJkgFOl0
二次創作は、あくまでも原作の延長上なので“原作をどう活かすか”がカギじゃないかなと
(少なくとも自分は)考えてます。
まず二次創作を求めるのが、出典となるゲーム本作を相当以上に好んでいる層である事。
そこを考えると作品の「需要」についてもある程度の答えが見えてくると思います。
なので手っ取り早い方法としては、本編中のイベントの隙間を縫う(補完する)という作品が
(読む・書く双方にとって)分かり易さもあって取っつきやすいのではないかなと思います。
拡大解釈かも知れませんが、二次創作も「ゲームの楽しみ方」の1つなんじゃないでしょうか。
(やり込み、制限などのプレイスタイルがある様に。文字を使ってゲーム世界を楽しんでる…
と言えばいいのかな)

仮に原作から数世代後の世界を舞台にする場合、作品の何にテーマを持たせるかによって
需要は変化するんじゃないかなと思います。ゲーム本編から時間が経つにつれ、どうしても
原作の要素は薄くなりますから、テーマを軸として作らないとなかなか読み手を引き込むのは
難しいと思います。
たとえば>>277で言えば、作品を見た読み手から「なぜ“200年後”を話の舞台にする必要がある
のか」が問われます。単にオリジナリティを持たせたいから、と言う理由で安易に時代設定した
だけと言うなら、多くの場合、そうと分かった時点で作品への興味は薄れてしまうのではないで
しょうか?(これは主観ですが)
ただ、その「200年」というところにカラクリがあるなら別です。(転生や封印といった要素が連想し
やすいですが、これも使い古されているという感は否めません。また、作品によってはその概念すら
馴染まない場合もあります)

作りたいという気持ちを持つって事は、方向性はどうあれその「ゲーム(原作)が好き」ってのは
間違いないでしょうから、“自分がなぜそのゲームが好きなのか?”ってあたりを突き詰めていくと
自然と書きたい話が組み上がったりするんじゃないかな?と思ってみたりみなかったり。
※こう書いてますが、個人的には二次創作=考察の延長という観点にいるので、
 たとえばキャラクター面の追求を主とした作品などは、この限りじゃないと思います。
 その辺については言及できないので…(他力本願)。

書きたいと思う気持ちが先に立つと言うより、そのゲームが好きだから書くという手段に出ちゃった、
その結果がここなんだと思いますw
過去ログ含め、どれも作者の好きが作品からはみ出てると言うか、滲み出てるというか。


…と、保守がてらたまには粋がって熱く語ってみるのも良いかなと思ったら長かったwすんません。
279名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/06(木) 17:23:05 ID:dj1H6xsc0
>プロット立てるたびに原作の面影がなくなってしまう。

ここの読者さんは原作とそのキャラクター達が好きで、その後(と、言ってもエンディング後からそう離れていない期間内)や補完が読みたい人が多いのでは?と、いう印象です。
あと、キャラクターAは好きだけどキャラクターBは嫌い、とかそういった人でも楽しめるようなバランス感覚も必要ではと思います。
ですので、>>278氏が言われるように「なぜ“200年後”を話の舞台にする必要があるのか」がポイントになるのではないでしょうか?
どの作品の200年後か、どういった登場人物の話なんでしょう?
個人的にちょっと気になります。
280名前が無い@ただの名無しのようだ
FF7のエンディング後200年経ってもナナキなら健在だ!

要は、二次創作なんて作者の自由に書けるので、書きたい物を書くのがベストって事でw
「需要?なにそれおいしいの?」ぐらいの気概でいいじゃない、書きたい事があって、
それを表現しようとしているなら大体は伝わる(たぶん)。

何だかよく分からないけど一応保守。(毎年1月頃になんか起きてる気がする様な…)