FFの恋する小説スレPart6

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
 ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
 ※sage推奨。
 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
 ※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。
 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
=======================================================================

前スレ
FFの恋する小説スレPart5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134799733/

記述の資料、関連スレ等は>>2-5にあるといいなと思います。
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 15:56:10 ID:3DJh2wuD0
     ,,iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii,,,,,_       
     illlllllllllllllllllllllllllllllllliiii,,,,,,,    
   .,,,llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllliiii,,, 
    ゙li、;゙”゙゙゙゙゙!!!!lllllllllllllllllllllllllllllllllllliii、
   ,i!°;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゚'゙゙゙llllllllllllllllllllllllllllll|   まずはおさらいだ
   ,il″;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,lll゙゙` ゙゙゙゙!!lllllllllll!゙″   2getからいくぞ
   ll;;;;;;;;;;;,,,e,,。:、,l!゙゛,,、  .、.゙ll!゙゙゜  
   ll:;;;;;;;;'i!゙,#゙ll!゙゙”””゙!lliii,,,..゙li,,il     >>1 3分でこのスレを平らにして見せようか?
  .,l|;;;;;;;,,ll,!゙ll゙`    ゙゙lllllliii,,ll      >>3 やるねェ
ii,,,, ll°;;;;,,l!゙lll_     ゙!!゙゙゙゙l,i´     >>4 期待はずれだねェ
llllllll!llllllllll゙;;;;;l|’         ,,_: '!i,     >>5 酒はダメなんでオレンジジュースください
lllll゙;;;;;;;;;;;;;;;;,,;ll      ,,,,,,,lll゙゙゙°   >>6 ウーロン茶も捨てがたい
llii,,,;;;;;;;;;;;;;;;ll;'゙l,,、    .~:il゙      >>7   俺は品性まで売った覚えは無い 
llllllllii,,;;;;;;;;,i!;;;;;゙゙lli,,,    i!′    >>8 初めて“敵”に会えた…いい試合をしよう…
lllllllllllllii,,.;;ll;;;;;;;;;;`゙llill,,__,il     >>9 今のお前に足りないものがある…… 危機感だ
lllllllllllllllllliil,、;;;;;;;;;,i!゜.゙゙゙゙゙゙″    >>10-29 世話ばかり かけちまったな・・・・・・・・・
lllllllllllllllllllllllii,,;;;;;;,l゙         >>30-1000  邪魔だ兄者
lllllllllllllllllllllllllllii,..,l°            
lllllllllllllllllllllllllllllllll,


3名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 15:56:40 ID:mirqaio10
【過去スレ】
初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048776793/
*廃スレ利用のため、中身は非エロ
FFの恋する小説スレ
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/
FFの恋する小説スレPart2
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1060778928/
FFの恋する小説スレPart3
http://game8.2ch.net/test/read.cgi/ff/1073751654/
FFの恋する小説スレPart4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101760588/
FFの恋する小説スレPart5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134799733/
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 15:58:01 ID:mirqaio10
【お約束】
 ※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
   その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
 ※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
 ※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。

 初心者の館別館 http://m-ragon.cool.ne.jp/2ch/FFDQ/yakata/

◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ】)
 FFDQ板の官能小説の取扱い ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/kijun.html#kannou
 記述の一般的な決まり ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/guideline.htm
◇関連保管サイト
 FF・DQ千一夜 ttp://www3.to/ffdqss
◇関連スレ
 FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2・5
 http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137717472/
◇21禁板
 FF総合エロパロスレ2
 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1129822592/
 【FF】FINAL FANTASY Z 総合スレ【7】
 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1128715926/
 FFDQカッコイイ男キャラコンテスト〜小説専用板〜
 www3.to/ffdqss

【補足】
 トリップ(#任意の文字列)を付けた創作者が望まない限り、批評はお控えください。
 どうしても議論や研鑽したい方は http://book.2ch.net/bun/

 挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ ttp://ponta.s19.xrea.com/
5名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 15:58:58 ID:mirqaio10
【参考】
 FFDQ板での設定(game10鯖)
 http://game10.2ch.net/ff/SETTING.TXT
  1回の書き込み容量上限:2048バイト(=2kb)
  1回の書き込み行数上限:32行
  1行の最大文字数     :255文字
  名前欄の文字数上限   :24文字
  書き込み間隔       :45秒以上
  (書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
  連続投稿規制       :3回まで
  (板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
   1スレの容量制限    :512kbまで
  (500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)

【FF・DQ板内文章系スレ】
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その7
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1144319254/
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/
6名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 18:59:55 ID:IXeAVxHP0
>>1
乙です
7名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/17(土) 21:56:18 ID:0CAV3+5EO
>>1
乙!
たくさん作品が読めるの楽しみにしてます。
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/18(日) 00:57:41 ID:llImUeJY0
>>1
乙です 。ありがとう!
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/18(日) 09:02:01 ID:7czqfqxh0
スレ立て乙です>>1
念のため保守。
10DC後 【74】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/18(日) 22:57:01 ID:llImUeJY0
※DC後、ヴィンセントが戻って来るまでの仲間達のお話です。
※プレイされてない方はネタバレになるのでご注意願います。
※シェルクがオリジナルメンバーにどういう風に受け入れられていったかという話なので、
彼女が苦手だったり、オリジナルメンバーと絡むのがお嫌いな方はご遠慮下さい。
※所々で夢見がちなクラティ入ります。

前スレ>>694-696 の続きです。

「…はん、シェルクはん…」
耳元で聞き覚えのある声がして、シェルクはぼんやりと目を開いた。
枕元に何かの気配を感じ、すぐに跳ね起きた。ベッドヘッドにかけてあるホルダーに手を伸ばし、
スピアを抜くと、枕元の何かに突き付ける。
「ひいぃぃ〜、い、命ばかりはお助けを〜っ!」
暗闇に目を凝らすと、毛を逆立てたケット・シーが両手万歳の降参ポーズで震えている。
「ケット・シー!」
思わず声をあげるシェルクを、ケット・シーは
人差し指を口に当てるという古典的なポーズで黙らせる。
「あ〜ビックリしましたわ。ところで、これ、下ろしてもらえまへんか?」
シェルクは慌ててスピアを下げる。
「すいません、私たちはこうするように訓練されてましたから。」
ケット・シーはさもありなん、と何度も頷く。
「仕方おまへんわ。夜中にコッソリ来たわいが悪いんや。」
11DC後 【75】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/18(日) 22:59:40 ID:llImUeJY0
そして、隣りで寝ているユフィの気配を伺う。
(よし…大丈夫なようやな。)
しかし、相手はユフィだ。
「油断は禁物…っと。」
ケット・シーはベッドからピョン、と飛び下りると、ユフィのベッドによじ登る。
「よぉ寝てはるなぁ。」
どんな時でも冷静に状況分析が出来るよう訓練されてきたシェルクだが、
ケット・シーが何をしようとしているのかさっぱり分からない。
やっと彼らが強い絆で繋がっている事を理解出来たところなのに、
(それなのに、何故味方が味方の所に忍び込むのでしょう?)
わけが分からず、呆然と彼の様子を眺めている。
ケット・シーは眠るユフィの頬を突いている。
かと思うと、おもむろに自分の髭を1本抜いて、
それでユフィの鼻をこしょこしょしたりしている。
ユフィは無意識にそれを払いのけると、うぅ〜んと寝返りをうち、
シェルクやケット・シーに背を向けてしまった。
ケット・シーはしめしめと頷くと、ユフィのベッドを飛び降り、
また、シェルクのベッドによじ上る。
そして、目を丸くして自分を見下ろしているシェルクに何度も頷いてみせ、
「なーんも心配おまへんで〜。実はこっそりシェルクはんを迎えに来ましたんや。」
「私を?」
「そうです。ナイショですけどヴィンセントはんが見つかったんですわ。」
「彼は無事なのですか?」
思わず声を上げるシェルクに、ケット・シーはまた手をバタバタさせて黙らせる。
「無事です。だけど、他の皆さんには申し訳ないですが、
もうちょっとナイショにしててもらえへんやろか?」
「私を迎えに来たと言いましたね?それはどういう意味ですか?」
「それは…その…ヴィンセントはんをシェルクはんに迎えに行ってもらいたいんですわ。」
「私に…?」
はい、とケット・シーが大きく頷く。
でも…とシェルクは隣で寝息を立てているユフィを見る。
12DC後 【76】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/18(日) 23:02:00 ID:llImUeJY0
気丈に明るく振る舞ってシェルクを励ましているが、
ユフィは時折溜め息を吐いて外をぼんやり眺めている。
いや、それはユフィだけでなく、ティファやナナキも同様だ。
「心配していたのは私だけではありません。」
「ま…そら、仰る通りですけどな…」
「どうして私が迎えに行かなければならないのですか?
みんなと一緒ではいけないのですか?」
「シェルクはん…」
シェルクの言い分はもっともだ。
そして、僅かの間に彼女に仲間を思いやる気持ちが
育っている事にケット・シーは深く感動した。
しかし、シドやバレットに任せておけと胸を叩いてみせた手前、
ここで彼女を連れて帰らなければ、
(2人に何言われるか分からへんどころか、“スカウト権”まで取り上げや…)
「どうしても、一緒に来てもらえまへんか?」
「はっきりした理由がないのならご同行出来ません。」
「どうしても?」
「はい。もしくは、ティファに断ってからにして下さい。」
「そうでっか…」
頑なシェルクの反応にケット・シーは腕を組んで考え込む。
しかし、もちろん、この事態は彼にとっては想定内だ。
(しゃあないなぁ…)
ケット・シーはどこからか青白く光るマテリアを取り出し、シェルクの目の前にかざした。
「悪いけど、一緒に行ってもらわへんと困るねん。」
「それは…!」
13DC後 【77】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/18(日) 23:03:49 ID:llImUeJY0
その時だった。
何か黒い塊が2人の間に割って入り、ケット・シーは
あっという間に床に押さえつけられていた。
「ユ…ユフィはん…!」
「ウータイのNo.1忍の目の前で、随分ナメた事してくれるじゃん、ケットぉ?」
首を掴まれ、床に押さえつけられているケット・シーは必死でじたばたと暴れる。
「そ…そんな、寝てはったんや…」
「アンタが入って来たとき、とうに目は覚めてたんだよ!
シェルクに魔法をかけてまでして連れ出そうとして、一体何を企んでるの!?」
「お許しを〜!」
「しかも、アンタ、ヴィンセントが無事とか言ってなかった?」
「ひぃぃぃぃ〜!地獄耳!」
「ユフィ?」
騒ぎを聞きつけたのか、ティファがドアをノックする。
「ユフィ…何事?ナナキがケット・シーが来てるって…」
「ティファ!入って!」
ティファがドアを開けると、ケット・シーを見て目を丸くする。
「ケット…?どうしたの、こんな夜中に…?」
後に続いてナナキも部屋に入って来る。
「やっぱり居たね、ケット・シー。」
「ナナキはん…」
ナナキは床に組み伏せられているケット・シーの顔に鼻を擦り付ける様にして喜ぶ。
「なんで分かりはったんや?」
「ケットの臭いがしたからすぐに分かったよ。」
「うかつやぁ〜〜」
ケット・シーは床を叩いて悔しがる。
14DC後 【78】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/18(日) 23:05:51 ID:llImUeJY0
「うかつも何も、アンタ、アタシらをなめてんじゃない?
さぁ、何でこんな夜中に忍び込んだのか言いなってば!」
ますます強く押さえつけられ、ケット・シーは悲鳴を上げる。
「ユフィ…ちょっと待って…」
ティファが慌てて駆け寄って、ケット・シーの傍に屈む。
「そんなに強く押さえたら、話も出来ないわ…ちょっと緩めてあげて?」
「ティファはぁ〜ん…」
ケット・シーは地獄に仏とティファを見上げる。
「ケット…一体どうしたの?あのね、クラウドも帰って来ないのよ。
一緒じゃないの?何かあったの?」
あぁ、クラウドはんなら…と言いかけて、
ケット・シーは慌てて手で自分の口を押さえた。
(あかん…クラウドはんに“スリプル”かけて眠らせてるなんてティファはんにバレたら…!)
地獄に仏どころか、前門の虎、後門の狼だ。
「ティファ〜…どうやらコイツ、クラウドの事も何か知ってるみたいだよ。」
押さえつけられる手に、再び力がこもる。
「白状しちゃいなよ、ケット。」
ナナキは気の毒そうに、首を傾げる。
「言っとくけど、回線切ったりしたらこっちも徹底抗戦だからね。
シェルクを渡さないどころか、アタシとティファでWRO本部に殴り込みだよ。」
ユフィにすごまれ、ケット・シーはがっくりと顔を伏せた。
(ああああ〜…パーティが、ドラフト権が…)
15 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/18(日) 23:21:11 ID:llImUeJY0
すいません、上げてしまいますたorz
専ブラ壊れたので、普通のブラウザから書き込んだらsage忘れ。
新スレになっても相変わらず粗忽者でごめんなさいm(__)m

引っ張り過ぎてスレ二つまたいでしまったので
まとめサイトの様な物を作ろうか考え中です。
今の所、Part4、5のログしか持ってないので
それを貼付けただけの物の予定ですが、
「こんな風にまとめて欲しい」みたいな
ご意見ご要望がありましたら参考にさせて貰いますのでお願いします。
またそれ以前のログを提供して下さる方がおられたら
公開後にご協力下さいませ。
16名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/19(月) 12:15:35 ID:62kmHeRP0
17名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/19(月) 22:48:42 ID:PRUfsgv+0
長いスレなんだね
18名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/20(火) 02:03:23 ID:KOGRtvzi0
>>10-15
乙!ケットやユフィの掛け合いがいいね。
キャラの個性がでてて読んでて楽しい。続き楽しみにしてます。
19名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/20(火) 05:18:25 ID:xP62sM+v0
>>1
遅ればせながら乙。

>>10-14
ユフィが格好良い…!
ちょっと時代劇調で成敗しようと迫り来る迫力がたまりません。
ここでは間者ケット・シーはさながら悪代官ですか?w
今回なんとなく「中間管理職ってツライよね」と思う展開ですがw、続き期待。
20鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(45):2006/06/20(火) 05:41:36 ID:xP62sM+v0
前話:前スレ>>708-713より。
舞台:DCFF7第8〜9章近辺の飛空艇シエラ号内
   :FF7本編開始の15年前を回想中。
----------


                    ***

 ミッドガル郊外に広がる草原に、銃声が響き渡ったのはその直後だった。
驚いて背後を振り返ったリーブは、信じられない光景を目にする。
「……な、にを?」
 片手で銃を構えているのは総務部調査課の彼だった。闇に浮かぶ彼の
表情からは一切の感情が取り払われ、真っ直ぐに前方を見据えていた。
視線と銃口が向けられた方向、ゲートの先にはたった今別れたばかりの
彼女がいた。
 全身から血の気が一気に引くのが分かった。火薬の炸裂音が、耳に張り
付いているようだ。
「何をするんですか……っ!」
 闇に紛れるようにして佇むその男に向けて、リーブは非難の声をあげた。
しかし返されたのは、感情を伴わず事実だけを淡々と並べただけの言葉。
「機密漏洩に対する社の方針……君ならそのぐらい分かるだろう」
「待ってください! ディスクなら、ここに!」
 リーブはそう言って、先ほど手渡されたばかりのディスクを取り出すと
早口にまくし立てた。同時に銃を持つ男の腕を掴み、狙撃を阻むべく目の
前に立った。しかしこの男が本気を出せば自分を退ける事など雑作もない
だろう、せいぜい自分には時間を稼ぐことしかできないとリーブは考えた。
それでも、その間に彼女がここから離れてくれれば、あるいは逃げ延びる
ことができるかも知れないと。
 そんなリーブの思いをよそに、頭上から聞こえてくる冷徹な声は、容赦
なく現実を突きつける。
21鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(46):2006/06/20(火) 05:48:23 ID:xP62sM+v0
「データはいくらでも複製が可能だ。複製された記録が社外へ出た場合は、
我々はその媒体を破壊しなければならない」
 彼が示しているのはディスクなどではない、彼女自身の脳に刻まれた記憶だ。
そして、それを破壊するのが彼の役目なのだと。

「それは彼女自身が一番良く知っている。だから今夜……私をここへ寄越した」

 そう語った男の語尾が、僅かに震えている事にリーブは気がつかなかった。
ただ、彼をここへ呼んだのが彼女自身だと言うことが衝撃だった。
「なっ!?」
「君にはできないと、判断したからだろうな。私でも同じ事をするだろう」
 男の腕を掴む手に力がこもった。
「……あ、当たり前じゃないですか……」
「惚れた女を殺す事はできない、か?」
 あからさまに揶揄するように男は尋ねた。それが挑発だと分かっていながらも、
ただその一言だけで頭が沸騰するような怒りを覚えた。脳から全身へと伝達された
その感情にまかせて、リーブは拳を作る。
 惚れたと自覚するほどの時間もないまま、歩む道を別にしたリーブには、
男の言葉を肯定も否定もできない。それ以前に、そんな事を平気で問えるこの男に
対する怒りの方が大きかった。ただ見下ろしてくる男の顔面めがけて拳を振り上げたが、
いとも容易く避けられてしまう。
「君はタークスには向かないな。
 殴るならもう少しまともにやってくれ。これでは当たる方が難しいぞ」
「誰がお前らみたいな……!」
 睨みつけるリーブの顔を、まるで子どもをあやすように見下ろしながら、彼は続ける。
「君らしくないな、いいか落ち着いて良く聞くんだ。君には選択肢が用意されている、
よく考えろ」
22鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(47):2006/06/20(火) 05:51:35 ID:xP62sM+v0
「選択……って」
 リーブの手を苦もなく振り解いてから、男はこう続けた。

「自分が信頼を寄せる男に殺されるか、
 自分が信頼を寄せる男を殺すか。
 ――彼女にとって幸せなのは、どちらだと思う?」

「!?」
 それを聞いたリーブは身を強張らせた。何を言っているんだ? と、覗くようにして
相手の顔を見上げたが、その表情から感情を垣間見ることはできない。
 男は無言で顎をしゃくる。つられてリーブはゆっくり後ろを振り返った。
 恐る恐る視線を向けたゲートの外。広がる草原の中に彼女は、立っていた。
 驚いてもう一度、男の顔を見上げる。相変わらず表情のない顔が向けられている。
「言ったはずだ、選択の権利は君にある」
「あんた……もしかして」
 彼はわざと狙いを外したのだと、この時になってようやくリーブは思い知る。となれば、
返すべき答えは1つしか無い。
「……愚問や。あんたらにはさせん。――そら、後任者の仕事やで」
「ならばよろしい」
 そう言った時、男ははじめて笑顔を向けた。手にしていた拳銃をリーブに差し出すと、
彼もまた彼女の背に向けて黙礼し見送るのだった。
 受け取った拳銃が、こんなに重たい物だとは思わなかった。リーブは扱い慣れない
拳銃を放り出して、ゲートをくぐり草原へと駆け出た。
23鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(48):2006/06/20(火) 05:53:33 ID:xP62sM+v0


「主任。必ず、ミッドガルを完成させて見せます。理想の都市として……。ですから
その時は……!」
 声に応じて振り返った彼女は、心からの笑顔を向けてくれた。髪を束ねていた
バレッタを外すと、薄闇にとけ込むようにして黒髪が風になびく。
「あなたが迎えに来てくれることを、楽しみに待っているわ」
 その姿は、とてもきれいだと思った。去ってしまうと分かっているから、そう思うの
だろうか? 脈絡もなくリーブは考えた。
 彼女は思い出したようにこう付け加える。
「……あと、あの鉢植え。くれぐれも水はあげすぎないでね」
 そうして今度こそ、彼女は背を向けた。それを見たリーブは立ち止まる。
 そうだ、まだあの朝の答えを聞いていない。と叫ぼうとしたが、結局そうする事は
しなかった。なんとなく、聞かないでも答えは分かる気がしていた。
 それに答えを聞くのは、再び彼女に会ってからでも遅くはない。
 ミッドガルが完成するまでは、振り返らずにいよう――と、決意した瞬間でもあった。
 一度深く頭を下げてから、彼女の背中が見えなくなる前にリーブは草原に背を向け、
再びゲートをくぐったのだった。

                    ***
24鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(49):2006/06/20(火) 05:57:55 ID:xP62sM+v0
 それから放り出したままの銃を拾い上げ、申し訳なさそうに持ち主へと返した。
彼らにとっては大事な道具だと言うのに、粗末な扱いをした事を心から悔いていた。
「すみませんでした。……あなたには助けられてばかりなのに」
 苦笑しながら銃を受け取ると、男は何かを思いついたように意地悪く微笑んで
こう返した。
「そうか? そうだな……ならばいつか借りを返してもらおうか」
「是非そうさせて下さい。もし、総務部調査課が退っ引きならない事態に陥った
時は、全力でお助けします……ヴェルドさん」
 名を呼ばれ、男は楽しそうな笑みを浮かべてこう言った。
「これは頼もしい限りだな」
 こうして彼らは、本社へと戻る帰途につくのだった。

 数年後、この会話が実現することになると知った時、心のどこかで必然だったの
だろうと思った。総務部調査課が直面する危機は、しかしリーブにとっては前哨戦に
過ぎなかった。


 壱番魔晄炉、七番街、……そして空からの災厄。多くの住民の命を犠牲にし、
それでもミッドガルが完成することはなかった。
 よみがえった記憶は僅かな痛みを伴って、リーブの意識を戻るべき場所へと導く
のだった。
 彼女と交わした最後の約束を破り、自ら立てた誓いにも背くために。


 心の奥に閉じこめた過去が、ミッドガルを終焉へと導くために目覚める。


                         ―鼓吹士、リーブ=トゥエスティY<終>―
25言い訳長くてすみません ◆Lv.1/MrrYw :2006/06/20(火) 06:09:13 ID:xP62sM+v0
・BCFF7第20章で描かれるリーブの、協力動機を妄想。
・FF7本編に登場するID検知システムと、DCFF7オンラインに登場するという
 思考統制システムの併用って面白いなと言う衝動。
・DCFF7第2章「上層部でも知らない」理由と経緯を捏造してみた。
・DCFF7最終章で描かれるリーブの、ミッドガル魔晄炉破壊に寄せる
 元都市開発従事者としての皮肉
・宇宙開発部門→飛空艇師団で直面する“ミッドガル墜落”
----------
そんないろいろな妄想という名の思いを詰め込んでみました。
書いてるときはもの凄く楽しかったのですが、改めて読み返して
こんなに恥ずかしい話はなかったと、珍しく反省しています。
お付き合いいただけました方、本当にありがとうございます。
BCFF7についての考察が等閑だった事が悔やまれますが、
現時点ではこれが精一杯やれたので、良かった事にします。

で、結局古代種失踪の話(ネオ・ミッドガル計画の凍結)が
ちゃんと掛けなかったというオチもありますが、その辺はどうか
笑ってやって下さい。
26名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/20(火) 18:38:41 ID:UfY4pjDN0
GJ!!
27名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/20(火) 21:04:07 ID:WRpFw8yw0
>>20-24
別の主任さんキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!完結乙です
登場人物が責任感のある大人ぞろいで素敵です
大都市の建造と終焉にまつわる叙事詩GJ!!次回作も楽しみにしてます
28名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/21(水) 20:49:53 ID:hbZIwSNz0
>>1
乙です。あと少しで即死回避かな?


>DC後
ケットが面白いですね。ユフィの切り返しに笑いました。

>鼓吹士、リーブ=トゥエスティY
完結乙華麗様でした。その後500年続くミッドガルの物語、凄いです。
29精霊 1/3  ◆SIRO/4.i8M :2006/06/21(水) 20:52:23 ID:hbZIwSNz0
「お別れだな。ごめん」
その人は、私に触れながらそう言った。
冒険の仲間達が盛り上がっている。
「俺様はやるぞ! 魔晄を使わねえ、でけえ船を拵えるんだ!」
「あてはあるのか?」
「ある。古い船だ。そいつがよ……」

 掌の内で、宝玉が微かに光る。
『もう、出番は無いのかい?』
「星の命を削るから」
だから冒険は、武器のみになった。我々マテリアは、戦いから外された。

 私もかつては肉体があったのだ。
魔晄の流れに飲まれて。それからどれだけ時間が過ぎただろう。
魔晄の泉。魔晄炉。
ライフストリームの濃い場所で。ゆるりと球状結晶が育ってゆく。
遠い昔に、騎士であり、神々であった者達。その魔力を内に秘めて。
30精霊 2/3:2006/06/21(水) 20:53:42 ID:hbZIwSNz0
 そう。私は精霊だった。神と人の狭間で、沢山の時間を過ごした。
太古の、穏やかな大陸。緑に満たされた世界。
 炎の精霊が夜空を指す。
『星の向こうに、別の世界がある。俺達はそこで、冒険を手伝った』
『覚えていない』
『教えてやろう。異世界の記憶を』
逞しく温かい、炎の精霊が好きだった。
肉体がある時に、結晶に囚われる前に。数え切れぬ口付けを交わした。

 星の向こうの世界。それは本当だった。
宇宙から、食い尽くされ、呪われた星が落ちた。
放射能と衝撃波が星を飲み込む。大陸が溶け、海流が変わる。
地表は灰燼と化し、粉塵が太陽を隠す。大地は凍り、大気は希薄になった。
やがて星の内から厄災が現れ、人々を魔物に変えた。
ようやく現れた太陽は、強烈な紫外線を叩き付ける。地表に沸き起こる毒の風。
ウィルスやジェノバが生ぬるく思える程の、衝突の冬。

 それでも。人は滅びなかった。我々もまた、人に力を貸した。

 そうして。戦いの結果、我々精霊は肉体を失った。
仲間と離れ、自我を失い、ライフストリームの中を漂う日々。
突如、私は魔晄の結晶に生まれ変わった。
魔晄の中で――炎の精霊の声を聞いた気がする。
31精霊 3/3:2006/06/21(水) 20:56:40 ID:hbZIwSNz0
 「すっげーマテリア! これ、ぜーんぶあたしの?!」
「でもユフィ、魔法は使わないでね?」
「ホンマ、頼んます。星の為ですから」
「星の命、削っちまったら元も子もねえんだ」
「もっちろん♪ で。管理はクラウドに任せたよっ!」
「なっ、なんでだ!」

 おやまあ。賑やかな事だ。そうそう、ずっと言い忘れていた。
『久しぶりだね、イフリート』
『そうだな、シヴァ。次の冒険に備え、休むとしよう』
『おやすみ。また戦いで会おう』
しばらくは。炎の精霊の側にいられるはずだ。この小さなマテリア箱の中で。

 「なんでもかんでもあるかあ! 皆忙しいんでい!」
「オイラの所じゃ、星命学の人達が反対するんだ」
「フッ。責任重大だな、クラウド」
「うわははは! 頑張れよ!」
「えええ?」

 ああ、全く。冒険者達は元気だねえ? 
冒険者達がマテリアを集めなければ。私が再び炎の精霊に会う事は無かった。
感謝しているよ。この世界の勇士達に。


END
32 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/21(水) 22:49:33 ID:/mUxJuc30
>>20-25
GJ!!
そして、完結乙です。
なんてハードボイルドなエンディング…

>>29-31
こちらもGJ!!
マテリア達も一緒に戦い、彼らを見守ってたんですね。

>>16
ありがトンです。
ただ今鯖申し込み中です。
スペース確保出来たらうpさせて頂きます。
33 ◆Vlst9Z/R.A :2006/06/22(木) 00:34:19 ID:cmQzIVLD0
職人様方おつれさまです
気が付けば半年近くこちらに顔を出していないことに気付き舞い戻ってまいりました(礼)

まとめの話が上がっていますが、一応FFDQ板の二次創作作品はこちらで収集、掲載を
行っております
http://www3.to/ffdqss
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Part/1039/

折角のところ大変申し訳ありませんが、◆BLWP4Wh4Oo氏には、ログ提供という形で
ご協力をいただければと考えておりますが、よろしいでしょうか?
なお、スレを跨ぐような長編作品の場合、作者自身で簡単な保管用サイト(ジオ、ブログなど)
を用意するという方法もありますので、作家様方にはこの機会にご検討してみてはいかがかと
思います

突然のスレ汚し申し訳ありません
引き続き「FFの恋する小説」をお楽しみください
34名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/22(木) 00:58:33 ID:KN93qn4o0
保管人さん、乙!!
35名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/22(木) 11:17:18 ID:3+qIlPGOO
36 ◆Vlst9Z/R.A :2006/06/23(金) 02:27:17 ID:d4BAYEqv0
また落ちるといけないんで、今のうちにpart4、5のログ保管しておきました
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Part/1039/novel2/1101760588.htm
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Part/1039/novel2/1134799733.htm

個別編集はまた次回に、エロスはほどほどにお願い致します
37名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/23(金) 06:06:37 ID:UoNipMmF0
ログキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!GJ!!
38 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/23(金) 07:32:58 ID:sdkpoZlW0
保管人さん乙です。
まとめの方を覗いてみたら復活されてたんですね。
更新が止まっていたようでしたので心配しておりました。
また、そのこともあったのでまとめサイトを考えていましたが、
引き続きお願い出来るなら書く方に専念致します。
これからも頑張って下さい。
そして、よろしくお願い致します。

39名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/24(土) 12:45:55 ID:lnVVjp3n0
保守
40名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/25(日) 16:03:45 ID:RQTp1nBd0
41DC後 【79】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:25:45 ID:Qo08SoCR0
>>10-14の続きです。

※DC後、ヴィンセントが戻って来るまでの仲間達のお話です。
※プレイされてない方はネタバレになるのでご注意願います。
※シェルクがオリジナルメンバーにどういう風に受け入れられていったかという話なので、
彼女が苦手だったり、オリジナルメンバーと絡むのがお嫌いな方はご遠慮下さい。
※所々で夢見がちなクラティ入ります。

そこまでしなくても…というティファを一喝し、
ユフィはケット・シーをロープでぐるぐる巻きにすると、
店のカウンターに放り投げるようにして乗せる。
「で、ヴィンセントはどこよ。」
「いえ、わいはホンマに知ら…」
「嘘だね!」
言い終えない内にぴしゃりと言うと、ユフィは冷たくふん、と笑う。
「リーブのおっちゃんが根拠もなしにこんなことしでかすワケないじゃん。」
「ねぇ、ケット…私達が心配しているのは知ってるはずでしょ?」
「私が彼を迎えに行くというのはどういう意味でしょう?」
女性陣3人にアメと鞭の両方で懇願されるが、
ケット・シーは口をきゅっと結び、なかなか白状しようとしない。
ナナキは時間の問題だなぁと思いつつ、
これからの持久戦を思って大きなあくびをした。
そこでふと妙案を思い付き、ユフィの怒声を背にこっそりと2階に上がる。
「ちょっとぉ!なんでわざわざシェルクなのよ!」
「参考までに聞かせてもらいたいんやけど、
わいがヴィンセントはんが居る場所教えたら
ユフィはんはどないするんです?」
「決まってんじゃん。」
ユフィはケット・シーに顔を突きつけると、
「みんな心配してんのにさ!なんで隠れてたんだよって、
首根っこ捕まえてみんなの前に連れて来るよ。」
「ひぃぃぃ〜!やっぱり…」
42DC後 【80】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:28:36 ID:Qo08SoCR0
「ユフィ…彼が隠れている理由、本当は分かってるんでしょ?」
ティファに優しく宥められ、ユフィは頬を膨らませる。
「ねぇ、ケット・シー…私、彼がどこに居るか分かったわ。」
一同が驚いた様にティファを見る。
「ヴィンセントは一見冷たいようだけど、そう振る舞うのは、
人と深く関わると、後で辛いからって知っているからでしょ?
本当は優しくて繊細で…ちょっとロマンティストよね。」
そうでしょ?と問われ、皆が彼の人となりに思いを馳せる。
「これがヒントよ。どこに居るか、もう分かったでしょ?」
ユフィとシェルクの二人があっと小さく叫び、何かを口を言いかけた同時に、
だだだだだ!と階段を駆け下りる音がし、かと思うと勢い良くドアが開いた。
「ケット・シーだぁ!」
「こんな遅くにどうしたの!?」
マリンとデンゼルが歓声を上げて部屋に入ってくる。
マリンはスツールによじ上ると即座にケット・シーを抱きしめ、頬ずりをする。
デンゼルは目を輝かせてリーブは一緒ではないのかと聞いて来る。
「ねぇねぇ、何があったの?」
「どうしてぐるぐる巻きにされてるの?」
「かわいそう…ねぇ、ほどいてあげてもいい?」
一転の曇りもない子ども達の目に見つめられ、
ケット・シーはがっくりと項垂れた。
「この子達も心配してるんだよ。」
遅れて入って来たナナキに言われ、
「ナナキはん…あんた、ズルですわ〜…わいが子どもに弱いの知ってて…」
「女性にも弱いと思うよ。放っておいても話してたと思うけど。」
ケット・シーは大きくため息を吐き、一同をぐるりと見渡した。
「ティファはんの仰る通り、ヴィンセントはんは“ルクレツィアの祠”です…」
43DC後 【81】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:31:44 ID:Qo08SoCR0
「それは分かったけど、なんで夜中に忍び込んだりするんだよ。」
ユフィの追求は容赦ない。
「そ…それは…」
ケット・シーは思わずデンゼルに目がいく。
自分を慕い、憧れてくれている少年を目の前にドラフト権だの
パーティで懐柔されたとはさすがに言いにくい。
ましてやシェルクにドラフト権の話がバレたら、
(あかんわ、そんなん…!)
かと言って、隠し通せるはずもなく…
「あの〜…これ言い出したんは艦長とバレットはんと、うちのおっさんであって…」
ケット・シーはあまり言い訳になっていない言い訳をぼそぼそと言うと、
親父3人の悪巧みを、漸く話し始めたのだった。



「信っっっじられないっ!」
全てを話し終えたケット・シーを前に、ユフィはわなわなと震える。
「大体、リーブのおっさんもおっさんだよ!何悪巧みに乗ってんだよ!」
怒りのオーラ全開のユフィを恐れ、ケット・シーは思わずマリンにしがみつく。
「いえ…その、おっさんも日頃任務任務で鬱屈してはると言いますか…」
一応フォローしてみるが、ユフィの耳に届いているかどうか。
シェルクはワケが分からず、ただ目を丸くするばかりだ。
「どういう…事なのです?」
隣に居るティファに聞いてみる。
ティファはう〜ん…と少し考えて、
「男の人って子どもっぽい所があるから…
心配した反動で、ちょっといたずら心が起きたのよ。」
「ティファっ!」
ユフィがじれったそうに地団駄を踏む。
「どぉしてティファはそう甘いの!」
44DC後 【82】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:33:40 ID:Qo08SoCR0
「だって…本当にそうなのよ?クラウドだって、
配達を頼まれた頃なんか私に内緒でもらったお金を
全部バイクにつぎ込んだり。高いパーツが欲しい時なんか、
なかなか言い出せなくて私の周りをウロウロしたりして。」
「はぁ…!?」
聞いてもいないノロけ話を聞かされ、
ユフィは脱力して傍らのソファにへたり込み、
ケット・シーとナナキは顔を見合わせて笑っている。
仏頂面のクラウドが子どもみたいにティファの後を
付いて回っている姿を想像したのだろう。
「ティファあ〜…」
「ご…ごめんなさい。」
ティファは何故か赤くなる。
しかし、今の例え話のお陰で、ティファの言わんとする事が
シェルクにはなんとなく分かった気がした。
ディープ・グラウンドにいた時、確かに自分もヴァイスに従ってはいたが、
ネロやアスールらの心酔ぶりを見て、自分とは違う何かを感じていた。
(彼らが無邪気にヴァイスに心酔して見えたのは、そういう事なのかも…)
考えてみれば。
真っ先に最愛の人の元に駆けつけるヴィンセントの行為も、
なんだかそれに似ているような。
(でも…そういう所が…彼にもあったんですね…)
大人だと思っていた彼の意外な一面を発見したようで、
シェルクは思わず微笑んでしまう。
45DC後 【83】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:36:17 ID:Qo08SoCR0
「ユフィ。」
すっかり毒気を抜かれ、テーブルに肘をついて
ふて腐れていたユフィが顔を上げる。
「ユフィが怒る気持ちは私にも分かります。でも…」
「あ〜!もう、分かったよ!」
ユフィは肩を竦めると、ちろり、とシェルクを見る。
「まったく…みんな、男どもには甘いんだから!」
やれやれ…と肩を撫で下ろすティファとシェルクとナナキだったが、
「ただし!条件がある!」
ユフィはやおら立ち上がると、にやりと笑ってケット・シーを見る。
「ななななな…なんでっか、ユフィはん…?」
カタカタと震えながら、ケット・シーはおそるおそる尋ねる。
「パーティは、するっ!」
「は…?」
途端に子ども達が“パーティだ〜!”と歓声を上げる。
「ユフィ…はん…?」
「もう、アイツが困って、困って、困りまくるくらい派手なのね!
い〜い?中途半端なのにすると、アタシが許さないからねっ!」
「はっ、はい〜っ!」
一旦は喜びかけたケット・シーだが、
(それって…ユフィはんが仕切るって事で…)
しかも、中途半端は許されないそうだ。
「す…スグ戻って準備させてもらいますうううぅぅ〜っ!」
わたわたと慌ただしく出て行くケット・シーに、
「分かってると思うけど、星を救った英雄なんだからね〜!」
と、更にプレッシャーをかける事を忘れない。
シェルクは心配そうにティファを見上げる。
ティファもやれやれと困り顔だが、
「これくらい息抜きさせてあげないと、ユフィがかわいそうだもんね。」
と、ウィンクしてみせる。シェルクも釣られて笑い、
「じゃあ…私は彼にはパーティの事は内緒にしておきます。」
46DC後 【84】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:39:01 ID:Qo08SoCR0
それを聞き逃すユフィではない。
「さっすがぁ!シェルクも分かって来たじゃん!」
ユフィはシェルクの両手を取ると、
ダンスでも踊るかの様にフロアをぐるぐる回る。
最初は戸惑っていたシェルクだが、いつの間にか楽しそうに笑い出し、
いつの間にかマリンとデンゼル、ナナキまでもが加わり、大はしゃぎする。
ティファはそれを微笑ましく見ていたが、
(そう言えば…クラウドはどうしたのかしら?)
ケット・シーの様子だと、親父達ににWRO本部に足止めを喰らっているようだ。
試しに電話をかけてみるがやはり出ない。
(心配ないと思うけど…)
電話をテーブルに置いて、小さくため息を吐く。
と、いきなりユフィの手が伸びて来て、引っ張られた。
「きゃ…ユフィ!…もう、ダメよ、ご近所に迷惑…」
「ティファも辛気くさい顔しない!ヴィンセントが無事だったんだからさ!」
そして、ティファも加え意味もなくぐるぐる回ったり、
歓声を上げ、抱き合ったりと大はしゃぎだ。
ティファはご近所の事を考えると気が気ではなかったが、
(でも…無事で本当に良かった…)
もっとも、その翌朝の喧噪を思えば、
これくらいの騒ぎはどうって事なかったのだが。



漸く解放され、家に戻ったクラウドは、その瞬間真剣に引っ越しを考えた。
家の周りに人だかりがしているのを見た時から嫌な予感がしていたのだ。
「リーブ!!」
傍らに居るリーブに掛ける声が荒くなるのは仕方がないだろう。
脛に傷を持つリーブ、申し訳なさそうに肩を竦め、
「これでも…マスコミだけはシャットダウンしたんですよ。」
クラウドは続ける言葉が見つけられない。
47DC後 【85】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:41:12 ID:Qo08SoCR0
何故ティファがこの趣旨に賛同したのかが分からない。
だって、ユフィさん、怖いじゃないですか…と、
情けないな声で言い訳するリーブを背に、
『蜜蜂の館』顔負けの電飾とモールで彩られた我が家にクラウドが入ろうとすると、
上空を七色の排気煙を吐き出しながら飛空挺団が横切る。
ふと、玄関の横を見ると、バレットとデンゼルが嬉々として花火を仕掛けている。
目眩を覚えつつも扉を開けると、中は表同様、
壁や天井が見えない程びっしりとモールで覆われていた。
カウンターの中で、いつもと変わらず料理を作るティファを見た時、
クラウドは情けない話だが安堵のあまり、目の前がぼやけた程だった。
が、彼のオアシスは瞬く間に何かに遮られる。
料理を抱えたユフィがカウンターを飛び越え、クラウドの背後に隠れたのだ。
「だめだよ、ユフィ姉ちゃん!そんなの食べたら死んじゃうって!」
小さなエプロンを着けたマリンがカウンターから出て来る。
「アタシの動きを見切るなんて、マリン、アンタ、ただ者じゃないね!」
クラウドの肩越しにユフィが叫ぶ。
クラウド、キンキン声を耳元で怒鳴られ、腰が抜けそうになる。
「クラウド!ユフィ姉ちゃんを捕まえて!そのお料理、
タバスコ漬けにして、ヴィンセントに食べさせるつもりなの!」
高周波攻撃に自分を見失っていたクラウドが我に返って手を伸ばすと、
ユフィは料理をこぼさないないようひらりと身をかわす。
「もう!クラウドはダメね!」
一晩帰してもらえなかったのに、労りの言葉を掛けてもらえないどころか
ダメ出しまでされ、クラウドは言い返す事も出来ない。
48DC後 【86】 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:43:56 ID:Qo08SoCR0
そんな彼のダメージを知る由もないマリンはその傍らをすり抜けると、
ユフィを追いかけてクラウドを見向きもしない。
呆然と立ち尽くすクラウドに、ティファが慌てて歩み寄る。
「ティファ…これは…」
「ごめんなさい…みんながここまでやるとは思ってなかったの…」
ティファはまるで自分のせいだとばかりに謝る。
「クラウドはんはまだマシですわ…」
足下から声がして、クラウドが見下ろすと、
身体中にペイントや飾りを着けられた
ナナキに跨がったケット・シーがいた。
「ワイなんか、ユフィはんにお仕置きやってこんな格好でっせ…」
クラウドも見覚えのあるマリンの人形のドレスを着せられて、
細い目にアイラインと着け睫毛までされ、ケット・シーは悲しそうに俯く。
「オイラは巻き添えだよ。」
ナナキも憤慨気味だ。
「いや…」
何かを言おうとして、クラウドが吹き出す。
「…似合ってる。」
一応笑っては悪いと思ったのか、声を上げない様に肩を振るわせ、
それでもやはり笑っている。
「ひどいよ、クラウド!」
「ほんまやぁ〜!」
ティファはほっとして、クラウドの頬にお帰りのキスをする。
それを受けながら、ここにやって来た時のヴィンセントの反応を想像し、
そして、1年前自分が帰って来た時は何事もなくて本当に良かったと
心の底から思うクラウドだった。

おわり。
49 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/25(日) 20:57:43 ID:Qo08SoCR0
長らくのお付き合い、ありがとうございました。
投下ミスったり、引っぱり過ぎたり、勘違い表記をしたりと
ご迷惑をさんざお掛けしましたが、皆さんのお陰で無事完結致しました。

長い話なのに、読んで下さった皆さん、ありがとうございました。
最初シリアスだったのが、バカ騒ぎで終わってごめんなさいよ。
投稿人、ハッピーエンドが大好きなのでどうぞお許しを。

そして、やはり書くのはとても楽しかったです。
ですので、他の職人さんもがんがって下さいませ。

今の所ネタ切れですが、また何か浮かんだら参りますね。
50名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/25(日) 23:14:14 ID:/R/epEyC0
キターーーー!!
GJ!!
楽しそうにはしゃぐメンバー達の様子が目に浮かびます。
装飾ケット、見てみたいwユフィとケットの掛け合いが絶妙でとても好きです。
ハッピーエンドでよかった。・゚・(ノД`)・゚・。

長期連載お疲れ様でした。
次回作、wktkしながら待ってます!!
51名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 00:46:24 ID:SSDiQi300
>>41
DC後 ◆BLWP4Wh4Oo さん乙!
仲間達のバカ騒ぎに和んだよ。どのキャラもいい味出してた。
最後装飾されたケットとナナキにワロタw長い間おつかれさんでした。
次回作を楽しみにしてます。
52名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 21:21:22 ID:mjtOOd890
GJ!!
ドレスアップケットw
53名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/26(月) 23:29:25 ID:sFNKWIwT0
保守
54名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/27(火) 01:16:49 ID:Z/W4Tn7t0
BLWP4Wh4Oo氏、心の底からGJ&乙でした。

自分は個人的にゲームとしてのDCの第一印象がちょっとアレだったため
(好きな方申し訳ない)新キャラについても当初は総じてあんまり好きになれず、
エンディングのシェルクがセブンスヘブンにいるシーンを見ても、
新キャラが大好きなオリジナルキャラ達の間に入り込んで
幅を利かせてるような気がしてやや複雑だったりしたんですが、
こんな出来事があったと思ったらあのシーンが凄く愛おしく思えてきました。

BLWP4Wh4Oo氏の書くティファは強くてしっかり者で優しくて、あと可愛くて、
ほんとに彼女らしいなぁと思いました。
他キャラについても同じく、彼ららしくて良かったです。

とにかくもう、ほんとに良いものを読まして頂きました。
次回作も楽しみにしてます!
55名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/27(火) 22:09:15 ID:HrGW+frU0
保全
56 ◆BLWP4Wh4Oo :2006/06/27(火) 23:10:52 ID:iMejg6pb0
乙コールありがとうございます。

>>54氏同様、自分も最初はDCがアレだったのですが、もやもやしている部分が
ああだったら、こうだったら…と考え、まとめて、ここで投下させて貰っている内に、
そして他の職人様のお話や、考察を読んでいる内に改めて
ヴィンセントやリーブとケット・シーの魅力に気付かせて貰いました。

自分内で完結してても良かったのですが、やはり読み手さんが
居たから形になったし、最後まで書き終える事が出来たと思います。
なので、こちらの方こそありがとうございました。

後は、帰って来たヴィンセントにベソかいて縋り付きつつ、
実はこっそり舌を出してるユフィとか、
タバスコ漬けの料理を食べさせられて
口元を押さえてキッチンに駆け込むヴィンセントとか、
ケット・シーを通じて女装させられたのが軽くトラウマの局長とか、
そんな賑やかなパーティの妄想を楽しんで下さいませ。
57名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/28(水) 10:47:18 ID:0Vd+hCwR0
>>29-31
マテリアGJ!!
「昔の人は戦ってばかりだったんだね」っていう、FF7本編でユフィが言ってたセリフが
思い出されます。肉体を失い思いだけを残し、流浪の末に再び出会う。エエ話だ…。
オメガとカオスの理論(DCFF7での設定ですが)も上手く活きてて、神秘的な雰囲気の中に
仲間達の賑わいが同居する、毎度の事ながら堪能させてもらってます。

>>41-48
完結乙! そしてGJ!! 賑やかな仲間達、こちらも良い味出してます。(特に自分はリーブの
描き方に惚れ惚れしました。ちょっとお茶目なオッサン具合が良く出てて、そりゃあもう目から
鱗どころか何か別の物体が出てきそうな騒ぎです)
ところでクラウドの発言は、ウォールマーケットで自分に向けられた仕打ちへの腹いせですか?w
(尚、リーブはトラウマどころか逆に病みつきになったと言う事で個人的にFAですw)
 DCは色々悪評も聞きますが、こうして同じゲームを楽しんだ人が書いてくれるSSに出会えて
 とても楽しかったです。


次回作、新作、勝手に待ちつつ日に一度の保守を慣行。
58名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/29(木) 00:38:11 ID:HcSFiXD/0
保守!
59ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw :2006/06/29(木) 01:29:21 ID:aP4CdBNC0
鼓吹士書いてる者です。
長くなったのでまとめてみました。興味のある方はどうぞ。(言い訳つき)
ttp://www5f.biglobe.ne.jp/~AreaM/PiAftSt/DCFF7/index.html

鼓吹士は8で完結予定です。そんなに長くないと思います(8は10レス程度)
ので、今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。
60鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(1):2006/06/29(木) 01:37:08 ID:aP4CdBNC0
前話:>>20-24
舞台:DCFF7第11〜12章。ミッドガル上空
   :シエラ号脱出の経緯。
注意:投稿者の「インスパイア」についての解釈が主題となる回です。
    起きてるウチから寝言いってる様な気がするので、その点ご注意下さい。
----------



 自分は無力だ――ずっと、そう思っていた。
 星を救った英雄だと言われても、実際に救うために戦ったのは自分であって
自分ではない。『ジェノバ戦役の英雄』ともてはやされたが、結果は見るも無惨な
有様だった。多くの命を失い、本部ビルも破壊し尽くされ陥落した。
 昔も今も、戦う仲間達の背中を見つめながら、どこかで後ろめたさの様なものを
抱いていた。自らが武器を持ち、戦線に立って人々を守れればと――もっとも、
人ひとりまともに殴れない自分が、そんなことを悔いても仕方がないのだと同時に
苦笑しながら。それでも思わずにはいられなかった。

 ――自分に戦えるだけの力があれば、彼女を守れたのかも知れない。
    彼女を、あるいは彼女と交わした約束を。

 意識を取り戻した時、気怠さが全身を支配していた。腕を動かすことさえも疲労を
伴う、そんな状態だった。しかし、身体機能そのものに関しては先程に比べれば
大きく回復していた。
 それよりも思い出してしまった記憶の方が、全身に重くのしかかっている気がして
ならない。
「今さら……こんな個人的なことはどうでもいい……はずなんですが」
 笑ってごまかそうと呟いてみたが、身も心も軽くなることはなかった。
61鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(2):2006/06/29(木) 01:45:35 ID:aP4CdBNC0
 シエラ号艇内でやかましく鳴り響く警告音が、辛うじて意識を逸らしてくれた。
決して心が落ち着くことはないが、後悔の念に囚われ立ち往生するよりは、
騒ぎ立てる警報に耳を貸す方が幾分かマシに思える。
 「マシ」どころではない、飛空艇に迫り来る危機を知らせてくれるその音は、
そこにまだ望みが在ることを教えてくれているのだから。
「……時間がありませんね」
 思い出してしまった記憶と、そこにまとわりつく感情もろとも吐き出すように、
大きく深呼吸をしてからリーブは立ち上がった。
(見つめるべきは過去ではない、今です……急ぎましょう)
 自分を励ますように心の中で呟くと、ロックされたドアの横に備え付けられて
いた小型ディスプレイに目を落とす。表示されている情報を見れば、この飛空
艇が置かれている状況を察することができた。
 “退避勧告”。簡潔明瞭な表示は、飛空艇出力が最低値を下回り、いよいよ
航行維持に支障を来すレベルにまで達してしまった事を示していた。飛行高度を
示す数値は、見る間に下がっていく。ディスプレイを操作しようと手を伸ばした時、
不意に扉が開かれた。
「……き、局長!!」
 コントロールルームから出て来たふたりのうちの一人が、直立不動で半ば叫ぶ
ようにして声をあげた。そんな彼らにもリーブはいつもと変わらない穏やかな口調で
対するのだった。
「遅くなってすみません。……それで、状況は?」
 問われた隊員のうちの一人が、相変わらず姿勢を維持したままで答える。
「はい。飛空艇出力低下により現在、シエラ号のコントロール機能に障害を来しています」
「回復の見込みは?」
「……残念ながら」
 そう語る横で、もう一人のクルーが首を横に振った。その姿を横目に、話は続く。
「緊急脱出用のプログラムを起動し、我々も脱出艇へ向かうことになったのですが……」
62鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(3):2006/06/29(木) 01:50:53 ID:aP4CdBNC0
 そこまで言ってクルーはリーブから顔を背けた。横に立つもう一人も伏し目がちに
「すみません」とだけ発したきり、黙ってしまう。言いよどむ彼らの姿を見れば、この
先に何が続くのかは簡単に予測できた。
 彼らに代わって言葉の後を引き継いだリーブは柔らかく微笑んで、回答を示した。
「シド……いえ艦長が、ですね」
 クルー達は無言で頷く。リーブもそれ以上は口に出さなかった。これ以上、この件
について話していても事態の進展は見込めないと判断し、話題を変える。
「緊急脱出プログラムは?」
「高度、軌道設定ともに完了しています。落下地点は……」
 その後に続いた座標を聞けば、ミッドガルのどの地点を指しているのかが手に取る
ように分かった。――すべての出発点、座標軸は限りなく0に近い点が示すその場所は、
かつての神羅ビル付近。各魔晄炉までの距離、陸路の状況を考えて設定されたのだろう。
 リーブは分かったと頷いてから。
「……それでは、あなた方はそちらで待機しておいて下さい。必ずシドをお連れしますので」
 その言葉にクルーは勢いよく顔を上げると、リーブを見つめた。応えるように黙ってもう一度
頷き返す。“万が一”と言う言葉は口にしなかった。
「必ず、お連れします」
 自信に満ちているというのとは少し違う、かといって威圧感ではない、けれど不思議な力を
秘めている。クルー達はリーブの言葉に首を縦に振るしかなかった。
「脱出の手配、よろしくお願いします」
「分かりました」
 そう言って敬礼し、ふたりはリーブの前から走り去っていった。彼らの後ろ姿を見つめながら、
リーブはふと思い出したように呟いた。
「コントロール機能に障害……?」
63鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(4):2006/06/29(木) 01:55:48 ID:aP4CdBNC0
 脳裏を過ぎったのはついさっきまで、ここにいた相棒の姿だった。
 ――『アカン、行ったらアカンのや!』
 そう言ってケット・シーはリーブの服の裾を掴んで離さず、エンジンルームへ
向かうのを阻んでいた。
 そもそもケット・シーはリーブの操作するぬいぐるみだ。中に仕込まれている
機械は動作を補助するためのものであり、基本的な操作は全てリーブの意志で
行う――インスパイア――それが、リーブの持つ能力だった。
 あのとき確かにケット・シーは主の意志に反し、その進路を阻んだのだ。今まで、
そんなことは一度もなかった。操作をしているのがリーブで、操作されるのが
ケット・シーという関係性なのだから当然だ。
 コントロール機能、つまりリーブの能力に異常が発生した。先程のケット・シーの
不可解な行動を説明できるとすれば、これしかないと考えた。
 存在する事がそもそも異常な能力だとするなら、それを失うことこそが正常化
なのかも知れないが、リーブにとってあるべき能力が無くなった事には変わりない。
 ところがその考えは、すぐに自身の記憶によって否定された。
 それはここで意識を失う直前、最後に聞いたケット・シーの言葉だった。

 ――『オモチャのわいに命をくれて、おおきに。』

 もう聞こえてくるはずのない声と知りながらも耳を澄ますが、甲高い音で鳴り
続けている警報音だけが聞こえてくるだけだった。
 声は聞こえて来ない。
 それでも何かに気づいたようにして両手を広げ、視線を落とす。
 暗い意識の底に封じ込めるようにしてしまっておいた記憶。その封印を
解いたあの夢も、もしかしたら……。
「……ケット・シー……。あなたが教えてくれたんですね?」
 そう呟いてリーブは両の手のひらをじっと見つめて、頷いた。
 開いた拳を握りしめ、顔を上げるとコントロールルームの扉をくぐった。

 ――戦うんじゃない。今度こそ、守るのだ。

----------
64名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/29(木) 21:52:37 ID:eraa7k9j0
インスパイアキタコレ!スリリングな展開が気になります
局長ガンガレ超ガンガレ
65名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/30(金) 02:15:06 ID:PG7E4UUA0
緊迫した状況の中で自分を見つめるリーブ カコイイ!
続き期待!
66名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/30(金) 18:05:14 ID:dcX7CKCh0
保守
67名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 09:09:47 ID:5AvPfcCC0
68名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 12:15:09 ID:bPWcIVCi0
職人さん来ないかなー
69名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/02(日) 16:31:37 ID:lUhiOz7L0
保守
70名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 11:16:39 ID:jcZ1LOjL0
71名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 22:19:48 ID:8jKkBWuQ0
ぼまりもんばの保守乙です。

>鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ
遂にシリーズVII作目ですね!昔本編プレイ中に、この台詞見て
「このおんなじボディのんが、ようさんおるんやけど、このボクは、ボクだけなんや!」
ケット・シー個々にも意志があるんだな、と切なくなったの思い出しました。
本体さんもクルーの人も心配で心配で、とっても先が気になります。
72アドベンt(ry 1/10  ◆SIRO/4.i8M :2006/07/03(月) 22:21:24 ID:8jKkBWuQ0
 炎を纏った緋色の獣が三体、断崖を駆け上がってゆく。
そして伝承と戦乱の歴史を秘めた街へ、高らかな咆哮を上げた。
それより遡る事498年――

 銀の髪と翠の眼を持つ兄弟が、崖下の青年を見つめる。
「ほら、兄さんだ」
三人は頷き、崖下へ駆け下りる。バイクを駆ると同時に、兄弟の一人が叫ぶ。
「ぶるうん!!」
一方、崖下では。
「配達終わったー。あー、レノ達は元気かなあ」
などと、デリバリー屋のおにーさんがゆっていた。
「兄さん!」
「へ?」
 デリバリー屋の前に並ぶ、黒装束集団。
「なんすか?」
思念体。肉体を持たず、黒き厄災の意志で動く者。その思念体が、笑う。
「ふふっ。聞いて驚け、見てびっくりしろ! 我等こそは……」

 バッ! ザザッ! ズザァッ! 複雑な体勢が、次々と決まってゆく。
「ジェノバ思念隊!!!!」
「はあ、そーですか。じゃあ俺、急いでますんでこれで」
「待てやデリバリー屋!」
73アドベントドラゴンボーノレ 2/10:2006/07/03(月) 22:22:59 ID:8jKkBWuQ0
 ふと。妖艶でイケメンな思念隊の一人が、震え始めた。
「や……やはり完全体でないとポーズが決まらない……!」
何だかよく分かりませんが、怒っている様子。

 「と、言う訳で兄さん。母さんの首はどこだ?」
「兄さんが隠してるんだろう?」
兄さんって誰だろう。デリバリー屋はそう思いながら、
「いや、持ってないです」と答えた。
 少年ぽい思念隊が、手を伸ばした。
「兄さんの持ってるその機械。マテリアレーダーだよね?」
「これは単に携帯って、あああ!」
デリバリー屋の携帯が奪還されました。
「返せー!」 
恥ずかしい宣伝メールとか、クリアしかけのバカゲーとか
人に言えないアホ画像の仰山入った携帯です。
そんなもの人に見られたら泣いてしまいます。

『やっほー♪ ユフィちゃんだよっ!
 クラウド、マテリア箱ちゃんと管理してよね!』
「兄さんが困っていたな。首も持ってないみたいだ」
「まあ、嫌がらせだよ。それより、マテリア箱があるようだね」
「よっしゃー! 行くぜ!」
結果的に教会がピンチになりました。
74アドベントドラゴンボーノレ 3/10:2006/07/03(月) 22:38:55 ID:8jKkBWuQ0
 不意に、教会の扉が開いた。子供と若い女性が教会に入る。
女性の、光に透ける紅茶色の瞳。陽光を透過する、子供の柔らかな皮膚。
「クラウドはここに住んでるの?」
カンテラ。毛布。マテリアの箱。
山積みの洗濯物。読み止しの漫画。カップラーメン。
「……帰ったら、お説教だね」
「賛成!!」
何となく、クラウドが廊下に立たされそうな予感です。

 唐突かつ脈絡もなく、轟音と共にマッチョな思念隊が現れた!
マリンは物陰に隠れた! しかし回り込まれてしまった!
静かな目で。ティファはグローブを装着する。
「母さんとマテリアくれよ」
「やだ」
「じゃあ、遊ぼう」
「ねー、何して遊ぶの?」
 間。
「やったぜ! あがりだ!」
「え? ジョーカーはそっちだったの?」
ババ抜きの結果、惨敗。
「店のデザート全品は俺のものだ!」
「くっ……!」
「マリン、負けないもん! 次は7並べで勝負しようよ!」
するとマッチョが、凄い勢いでマテリアボールを奪い取り、
「ふははは! マテリアは頂いていくぞー!」
飛び去って行ってしまいますた。
75アドベントドラゴンボーノレ 4/10:2006/07/03(月) 22:41:00 ID:8jKkBWuQ0
 建造途中のビルに、思念隊の少年と社長が佇む。
「目的は何だ」
思念隊は腕を振り上げ、そして唱えた。
「出でよ、バハムート神龍! タッカラプト・ポッポルンガ・プリピットパロ!!」
暗雲が集合し、エッジの上空に固まってゆく。
うねりながら、絡み合いながら。巨大な召喚獣が形成されてゆく。

 閃光と共に、バハムートが現れた。
「……さあ、願いを言え。どんな願いでも三つだけ適えてやろう」

 「愚かしい。このような物はソーセージを出し、鼻に付けて外して終わりだろう」
「社長には分からないさ。実体の無い者の気持ちなぞ。
 バハムート! 僕達を完全体にしておくれ!」
「果たして。その願いが適うかな?」
社長はローブを剥いで立ち上がる。その手には、ジェノバの首。
「!!」
 思念隊と社長のドタバタをよそに、エッジの人間が口々に叫んだ。
「ギャルの○○○○○おくれー!」
「百個願いをかなえて」
「PS3くれよ」
「中華丼一丁!」
「星痕を治して! お願い!」
モグ子の叫びに、エッジ住人の意志が一つにまとまった。
「「「「「病気の治療でいいです」」」」」
76アドベントドラゴンボーノレ 5/10:2006/07/03(月) 22:42:54 ID:8jKkBWuQ0
 バハムートが首を振り、住人達に問う。
「ご注文を繰り返します。
 完全体一つと肌着一つにPS3一つと中華丼一つ、
 星痕治療で宜しいですか?」
「ファミレスかよ!」

 『だいじょうぶ。病気の事は、わたしに任せて』
「エアリス?」
何も願わず、何も欲を持たず。ティファは天上の声に振り返る。

 社長の放り投げた母の首を追い、思念隊が宙を舞う。
「社長。僕のリユニオン、見せてあげるよ」
「ええー?! いきなり?!」
「俺も行くぜ!」
「フッ。俺もリユニオンと行くか」

 そうはさせるか! とコワモテルードが飛び出した。その目前に。
「セフィロス……!」
身長を超える長剣。冷酷な瞳。
「久しぶりだな。社長とタークスとアバランチの皆さん」
「なんか人数多くね?」
「その通り。しかも状況は不利だ。私は完全体で、お前は星痕のままだ」
ふと、バレットが叫んだ。
「いいや、違うぜ! 俺達がいる!」
「そうとも。俺達だっているぞ、と」
77名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 23:54:43 ID:D3YDImi7O
終わりか?
結構楽しみながら読めてたんだが
78名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/04(火) 21:22:53 ID:9Z/ViXpSO
結構どころか、ゲラゲラ笑いながら読んでた。
続きキボンヌ。
79アドベンt(ry 6/10  ◆SIRO/4.i8M :2006/07/04(火) 22:05:27 ID:5UTzPKta0
レスありがとうです。つづきです。前話は>72-76です。
-----------------------------------------------------------------
 セフィロスのぬこ目がぴくりと動く。
「ならば、私も仲間を呼ぶとしよう」
 思念隊が体内に押し込んだマテリア。そのマテリア達が次々と実体化し、
リトルグレイっぽい、百人のマテリアンとして飛び出した!
クックッ笑ってるイカはクマウドに押し付けて、皆でマテリアンを追いかける。
「負けたら承知しねーぞ!」
「待ってくれ。俺もマテリアンを追う!」
「そうか。では街を破壊する」
「貴様あああああああ!」

 ちょろちょろワラワラ、エッジの街を駆け回るマテリアン。
一応マテリアの魔力を持ってるので、何しでかすか分かりません。
「待て!」
頼もしいタークスと仲間達が、かなり必死こいてマテリアンを回収。
「やだー」
「うえーん」
「HPたったの5……これはか弱い」
「何だか可哀想な事をしてる気がします。先輩」
「街の為だぞ、と」

 「整列! 前へならえ! えーと、25、30……」
タークスの前に揃ったマテリアン達。イリーナの頬が上気している。
「先輩、揃いましたよ!」
「……流石に」
「疲れたぞ、と」
「油断すんねえ! ドンパチの最中だぜ!」
と、ほうじ茶を啜っていたシドが吼えましたが。
「なんだ、説得力0だな」
80アドベントドラゴンボーノレ 7/10:2006/07/04(火) 22:08:13 ID:5UTzPKta0
 照準が合う。刃が光る。拳が風を切る。牙が唸る。
仲間達の集中砲火が、セフィロスに命中する。
「この程度の攻撃。効くとでも思うか……グフッ」
「効いてるじゃねーか!」

 ふと、シドがヴィンセントに問うた。
「なあ、ありゃ出ねえのか?」
「カオスか。あれは、エンシェントマテリアがある限り無理だ。
 それに電話屋を見つけて、更にオメガが目覚めなければ……」
物陰からアスールが参戦したがってましたが、ネロに引き止められました。
そっとネロをパトラッシュが見守っていました。更にそれを物陰から、
ロリと田中と散弾銃とゴリとロッドと手裏剣と短銃と格姐と二丁が以下略。
「メテオを落とせばいい。カオスもオメガも目覚めるだろう」
「ぬをわっ!?」
いきなり割り込んだセフィロスは、そのまま続けた。
「全く。ここは騒々しくてかなわない」
そう言って、空高く飛び立つ。
「逃げる気か、と?!」

 するとバレットの逞しい手が、がっつりクラウドの腕を掴んだ。
「行け、クラウド!!」
「一人で戦わせてやろう」
「そんなー!!」
クラウドリレーで投げられて、そのまま神羅ビルに突入するチョコボ頭。
「クラウドが飛べねえって、あら嘘だよなあ」
「完璧に舞空術だねえ」
バハムートが空中で泳いだまま、街では残りの願いをまとめる算段中。
81アドベントドラゴンボーノレ 8/10:2006/07/04(火) 22:10:19 ID:5UTzPKta0
 で。廃墟の神羅ビルに目出度く到達。
神羅ビルが黒い思念に覆われた。新型飛空艇から、ブーイングが上がる。
「見えねえじゃねーか!」

 「何故マテリアを使わないんだ?」
「全部マテリアンにしたの誰だよ!」
セフィロスの問いに、ふと真顔になるクラウド。
「それに、星の命を削りたくない」
「馬鹿馬鹿しい。お前が星痕ならば、私は自由に操れるのに」
クラウドの腕が、炎に炙られたように痛んだ。
「うっ……ぐうっ!」
「何故戦わない」
「誰も助けられなかった。家族だろうが、仲間だろうが、誰も」
目前で死んでいった、親しい人々。消えない悔悟。
 クラウドは壁に叩き付けられた。正宗がクラウドの肩を貫く。
その切っ先が、胸に当てられる。
「星もろともに死ぬがいい。そうだな。この携帯の中身も晒してやろう」

 ――プツン。何かの切れる音。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」

 クラウドの眼が翡翠色の光を放つ。ざわりと。髪が逆毛立tいや、元からですが。
「うおっ、まぶしっ」
「何をしたんだ。街の人達に。この星の人達に!」
「黒き思念は星を喰らう。お前こそどうした? その瞳は、ジェノバのものだろう」
82アドベントドラゴンボーノレ 9/10:2006/07/04(火) 22:12:24 ID:5UTzPKta0
 ゆっくりと。クラウドは剣を構えた。対峙した正宗に、鋭い光が宿る。
「俺は。穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた……
 超ソルジャー、クラウド・ストライフだ!!!」
「ええー?!」
ガビーン。ってゆうかソルジャーは自称じゃなかったっけ。
「ニブル、ミッドガル、ウータイ、古代種、星痕患者、コピー達。
 全てあんたの犠牲者だ。
 バレットの似顔絵が化粧したのも、子供達が0点取ったのも!」
「それは私の所為なのか?!」
ドカバキやってる間に、黒い思念はじわりと街を飲み込み始める。
「どうだ? 思念隊に入らないか。この星よりももっと素晴らしい、
 新しい星の輝ける未来も思いのままとなる……」
「興味ないね」
 クラウドの全身が、金色の光に包まれる。重い音を立て、分解する大剣。
迷いの無い切っ先が、幾度となく魔王の全身を切り刻む。
「これで変わる……この俺の運命……この星の運命も!」
「待て。それは死亡フラグだ」
再び地上に戻る勇者。轟音。

 でもセフィロスはケロッとしている。
「またな」
「なんですと?!」
 セフィロスは自らを翼で覆い、消散する。
同時に、全てのダメージを喰らったっぽいゾナー少年が戻り、
空を覆う暗雲が消えてゆく。人々の星痕を癒しながら。
明るい空から、大いなる福音の雨が降りかかってゆく。
83アドベントドラゴンボーノレ 10/10:2006/07/04(火) 22:13:34 ID:5UTzPKta0
 その後。何やかやあって木っ端微塵になったクラウドがあっさり帰還し、
マテリアンが元のマテリアになって、サクサクと水泳も終わった明るい朝。
「さて。お前達。願いは何だ?」
「えーと、星痕は治って中華丼は作ってPS3はまだ出てないから」
「……下着か?」
「マジでえ?!」
ものすごーく嫌そうな、女性陣の白い目。

 ふと。デンゼルがバハムートに願う。
「みんなが、戦わないですむ時間が欲しい」
「ワイからも頼んます」
「そうだな。俺もそれを願いたいぞ、と」
 バハムートは。DGもある、まだライフストリームに思念隊も残ってる、
Gはニヤニヤしていると説明した上で、こう言った。
「承知した」

 束の間の平和が街に訪れた。賑やかで騒がしい日常が戻る。
「携帯無事で良かった」
「ぶち切れた理由はそれかよ!」
「キレてないっすよ。だって、携帯無かったら寂しいじゃないか」
レッドXIIIが振り返った。
「みんないるよ。オイラもいる」
珍しくクラウドが、笑った。


おわるよ。
84名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/04(火) 23:38:24 ID:OB7c60qlO
GJ!
笑いながら読ませてもらいました
85名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/05(水) 16:00:46 ID:66Btb7gR0
激しく乙!!
ずっと待っててくれたバハムートに愛www
86名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/06(木) 00:59:05 ID:EHPjkYaI0
すげぇネタ豊富な職人さんだな
禿ワロタwww GJ!!
87名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/06(木) 23:41:50 ID:dbKD+WJJ0
ほっしゅ
88名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/07(金) 05:59:48 ID:CZRa0u/F0
>>79-83
GJ!!
何が入ってんだ、クラウドの携帯w
テンポよい文章で引き込まれた。
89名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/08(土) 01:27:27 ID:eqv8BsQ80
>>72-76,79-83
GJ!! 懐かしい…! そして腹が痛いw。
デンゼルがまとめなかったらどんな方向に突っ走ったんだよお前らw
DCFF7でヴィンセントが入ってたカプセル見て、「やっぱドラゴンボールの時代から
回復カプセルってのは変わってないもんだよな」と思っていた自分のツボつきすぎですw

 ところで「ディープグラウンドの方向性を変えた《G》」(byシエラ号内WRO隊員)について議論するネタを
 リクエストしてもいいですか? 頭文字Gとかそんなテキトーなタイトルまで思い浮かんだんですが
 自分には消化できないお題でした。
 「やっぱり果敢に散ったアイツこそ漢の中の漢だろ、《G》はアイツに決まってる」とか
 「愛孫のためにHPが尽きても、ゲームシステムさえも超越して戦い続けるアイツこそ《G》なんだ」とか。
 「飼い犬に手を噛まれた挙げ句、最後は浮遊大陸から蹴落とされた哀れな犬が実は《G》」とか。
 「見た目が正義の味方なあの人と間違われるけどこっちの《G》は立派なパパなんだぞ」とか。
 「っていうか実質(アビリティ)的に最強の《G》が少なくとも2人いるだろ」とか。
 なんかそんな賑やかな話…を。(該当11人+2匹?)

…すまん悪ノリが過ぎました。
90鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(5):2006/07/08(土) 10:11:15 ID:y4m7sCI80
>>60-63より。
※注意:
  今回ばかりは捏造にも程がある。そんな内容です。
----------

                    ***

「シド」
 名を呼ぶ声は力強く、しかし呼ばれた方は返答どころか、顔を向けることも
しなかった。反応がないことを認めて、彼は一方的に話を続けた。
「聞いていますか? シド。シエラ号は操縦を受け付けません。このままでは、
ミッドガルに墜落するのも時間の問題です」
「……うるっせーな! んな事、今さらいちいち言われなくても分かってらぁ!」
 声を荒げ、シドは叫ぶようにして答えた。対照的にリーブの声は落ち着き
はらっている。冷静を通り越して事務的にすら聞こえる。それが余計にシドの
苛立ちを募らせた。
「分かっているなら結構です。……脱出プログラムに従い、我々もここから
退避します。急いでください」
 言いながら、足早にコントロールルームの階段を上ると、操縦席までやって
来た。言葉だけで納得し動くような男ではないと、知っているからだ。
 一方のシドも、叫ぶばかりではこの頑固者を退散させることは不可能だと
知っている。近づいてくる足音に、ムダとは思ったが言葉を投げつけた。
「俺はこの飛空艇師団の長だ、そんでもって……このシエラ号のパイロットだ」
「ええ」
「だからここを離れるわけには行かねぇ」
「そうですか」
 足音と共に言葉が途切れた。操縦桿を手に視線を前方へ向けたままだった
シドにも、自分の横にリーブが立ったと分かる。
91鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(6):2006/07/08(土) 10:15:06 ID:y4m7sCI80
 リーブはまったく反論する様子を見せなかった。頷き、肯定するような返答を
寄越す彼に、「分かってんなら」とシドが続けながら顔を上げた時、はじめて
その声と向けられた表情に、正面から対することになる。
 それは明らかに、シドの油断が生み出した隙だった。

「あなたのくだらない意地の為に、これ以上犠牲を払う訳には行きません」

 告げられた言葉は未だかつて聞いたことのない声によって紡がれ、同時に
すべての反論が封じ込められてしまうような威圧感を伴っていた。
 そんなリーブに向け、シドは口ひとつ動かすことができなかった。
 かつて神羅の都市開発部門統括と言えば、穏和で誠実な男として他の部署に
まで知れるほど人望のある人物だった。3年前、偶然と必然の作り出す縁によって
出会い旅路を共にする中で、実際に接してみた印象も、その噂に違わない男だった。
 彼の誠実さは神羅に対してではない、ミッドガルという都市と住民へのものなのだ。
壱番魔晄炉破壊を行ったテロリストへの思いが諜報員としての、その後はミッドガルを
含む星への思いが彼を動かしていた。
 シドの知る限りそれが「リーブ」なのである。だからこそ、今目の前に立つこの男に、
言葉を返すことができなかった。
 姿は同じでも、まるで別人のような何かを纏っている。触れることのできない、あるいは
触れてはならない何かが、両者を隔てている様な気がした。
 場に張り詰めた緊張を解いたのは、リーブだった。
「それに、シド。二度もミッドガルに墜落されたら、さすがの私だって怒りますよ?」
 そう続けたリーブの声はいつもの柔らかなものに戻っていた。が、それでもシドは
恐る恐るリーブの顔を見直した。
「二度、って……お前まさか……!」
 心当たった出来事に問い返してみれば、リーブは剣呑な笑みを浮かべる。
「ば、バカ野郎! あれはオレ様の操縦じゃねーってんだ」
 悔し紛れに反論してみたが、リーブに「冗談ですよ」と一笑されただけだった。
92鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(7):2006/07/08(土) 10:19:37 ID:y4m7sCI80
 それから間を開けずに、彼はこう続けた。
「私はこのまま、この飛空艇をミッドガルに墜落させるつもりはありません。
……そして、あなた方の誰も、死なせるつもりもありません」
 柔らかな口調に乗せて穏やかに語られた言葉に絆され、危うく頷きそうに
なるのをすんでの所で止めてから、話を遮るために名を呼んだ。
「おいリーブ」
 シドは呆れたようにリーブを見やった。「はい?」と問い返す相手に向けて、
わざとらしくため息を吐いてから。
「お前、自分の言ってることが矛盾してんの分かってるか?」
「いいえ。矛盾なんてしてませんよ」
 否定したリーブは相変わらず柔らかく笑んだままではあるが、裏付けられた
自信の上にある言葉なのだと、目がそう言っている。
「飛空艇も墜落させずに、あなた方とミッドガル魔晄炉の破壊を達成させる。
その方法があるのです」
 言い終えてから一歩進み出る。シドにはリーブが何を言っているのか分からずに、
ぼんやりと彼の姿を見つめていた。
「……シド。操縦桿を貸してもらえますか?」
「まさか、お前が操縦するってのか?!」
「いいえ。……残念ながら私に操縦技術はありません。ですから正確に言えばこの
飛空艇自身に動いてもらうんです」
 リーブの言わんとしている事の意味が、シドにはさっぱり分からない。
「ちょっと待て。自動航行システムだって動かねぇんだぜ?」
 シドの懸念を、やはりリーブは一笑した。
「そうでしょうね」
「じゃあ……」
 リーブは左手を差し出し、もう一度その言葉を口にした。
「操縦桿を、貸してください」
「…………」
 柔らかい物腰で、どこにも威圧感などないはずなのに、その言葉に逆らう事が
できない。そんな不思議な感覚をこのとき確かにシドは感じていた。言われるまま
操縦桿の前から退くと、やはり普段のリーブの柔らかな表情が向けられる。
「……ありがとうございます」
93鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(8):2006/07/08(土) 10:28:12 ID:y4m7sCI80
「何する気だ?」
「…………」
 リーブは黙って、シドに背を向け両手で操縦桿を握りしめた。
 思いの外それは不安定だと感じた。操縦のことはよく分からないが、シドがこの場所を
離れられない理由は、実際に操縦桿を握れば納得がいく。少しでも力と気を抜けば、
たちまち操縦桿に押し返されてしまうのだ。短時間ならまだしも、長時間こうしているのは
自分にはつらいだろうと思う。
 操縦桿を譲り渡したシドは、後ろの壁に背を凭せかけて成り行きを見守ることにした。
どうせほんの少しの辛抱だと、そう思っていた。
 シドが煙草に手を伸ばして、ここがコントロールルームだと思い直してそれをしまった。
そんなことを3回ほど繰り返した頃になってようやく、手に操縦桿がなじんできた。
 背後で手持ち無沙汰にしているであろうシドに向けて、リーブは静かに問うのだった。
「ところでシド。……今回の一件をあなたはどう思いますか?」
「ディープグラウンドか?」
 唐突に話を逸らされたような気がしたが、シドは思っていた言葉を口にした。その返答に
頷き返すリーブの視線は操縦桿に注がれたままだった。表情は見えない、感情も見せない。
それでも語り続けるリーブの声だけが、シドの耳に届けられる。
「科学部門の宝条、治安維持部門のハイデッカー、兵器開発部門のスカーレット。そして
プレジデントの関与していたディープグラウンド。
 見つめているのは同じ“闇”でも、地底の事なんて宇宙開発に携わるあなた方は
何も知らなかったでしょうね」
「……どういう意味だ?」
 含みを持たせる言い方が、シドは気に食わなかった。言い咎めるのならもっと分かりやすく
しろと、そんな風に思う。操縦桿も煙草も取り上げられていたこともあって、声には苛立ちが
混じっていた。
 返された言葉にその意図をくみ取ったリーブは顔だけを向けて、気まずそうに頭を下げた。
「すみません。別にそれを非難しているわけではないんです」
 それだけ言うと再び視線を操縦桿へと移す。言葉はさらに続いた。
「都市開発部門はその建造段階で闇を知り、なにより深く関わっていました。私はそれを
知らなかった……いいえ、知ろうとしなかった。だから許される筈はありません。そして――」
94鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(9):2006/07/08(土) 10:37:24 ID:y4m7sCI80
 ゆっくりと息を吸い、まるで意を決したように唇を噛みしめた。そして
脳裏に過ぎる様々な思いを打ち消していくように、淡々と言葉を紡ぐ。
「誰よりも酷い事を、私はしていたのだと今さら気づきました。
 自らの命を賭して戦いに赴き、相手の生命を奪う彼らは……むしろ被害者
だった。私はそれを救うどころか」
 それから全てを拒絶するように瞼を閉じた。握っていた操縦桿から一度
左手だけを離すと、手のひらを当てる。
「放置した挙げ句に、無関係であるはずの人々を生け贄として差し出した」
 反論しようと口を開いたが、とうとうシドには語るべき言葉が見つからなかった。
誠実で実直ゆえに、自らを欺けないのだと――そんなリーブだからこそ慕われ、
今の「局長」という座に就いたのだろうとも同時に思う。
 自分以上に神羅に近く、そして深く関わり、ミッドガルを間近で見てきたのは
リーブだった。それはシドに置き換えてみれば、自分の夢を乗せて打ち上げた
ロケットが、実は誰かの生命を奪う兵器であったと後から知らされたようなもの
だろう。後悔や屈辱、失望。なによりも知らず知らずに奪った命への罪悪感。
そんなものは容易に想像が出来た。想像だけでも苦しいのはよく分かる。
 だからこそリーブに、どう反論すればいいのかが分からなかった。何を言った
ところで、反論どころか慰めにすらならない。そう思ったからだ。
 それに恐らく、リーブが求めているのは、そんなものではない。

「それでも……愚かしくも守りたいと思ってしまうのです。
 私の、全てを賭けて」

 シドは黙って壁に預けていた背を離しリーブの横合いに立った。操縦桿を見つめる
横顔からは感情を読み取ることはできない。ただ、明らかに操縦する風ではない彼の
姿を、興味と一抹の不安を抱きながら見守っていた。
95鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(10):2006/07/08(土) 10:54:45 ID:y4m7sCI80
 やがて、不自然な風を肌に感じた。最初は気のせいかと思っていたが、徐々に
その勢いは強まった。風は正面の方向から吹いていて、強風というまでには行かない
ものの、目を開けるのがつらくなってきた。最初は機体の損傷を疑い、どこから風が
漏れ入って来るのかが気になってシドは周囲を見回した。計器類にも目を走らせたが、
機体損傷を知らせる表示や警告は見られない。
 それから、目の前に立つリーブの前髪も揺れている事に気がついた。
 渦を巻くように広がる風の中心が操縦桿だと分かるまでに、それから少しかかった。
「な、……なんだってんだ!?」
 右手をかざして操縦桿をじっと見つめた。やがて、風の中心に淡い光が見えて来た。
それは、薄い緑色のようにも見える。
「……な、何だ……こりゃ……」
 リーブの袖や裾、髪だけではなく彼らの衣服はぱたぱたと風に靡いていた。マテリアを
媒介として魔法を詠唱している時の姿に似ていると言われれば、そう見えなくもない。
しかし、マテリアを持っている様子もなかった。
 そんなことを考えているうちに、視界が一瞬にしてまぶしい光に包まれた。襲いかかる
閃光からとっさに顔を庇ったせいで、その瞬間に何が起きたのかは分からない。手を
どけた時には風も止み、つい数分前と変わらないコントロールルームが目に飛び込んできた。
 目の前で操縦桿に手を当てながら立っているリーブも、先ほどと同じだった。
「おいリーブ」
「…………」
 一度呼びかけてみても反応がない。まるで立ったまま居眠りをしているように見えた。
「リーブ!?」
「……っと。すみません」
 はははと笑いながら、リーブは操縦桿からゆっくりと両手を離した。そしてすぐさま真剣な
声と表情を取り戻すとこう告げた。
「我々もここから退避しましょう。さあ、急いでください」
96鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(11):2006/07/08(土) 11:04:12 ID:y4m7sCI80
「おいちょっと待て……」
 そう言ってなおも場から離れようとしないシドに、リーブは目配せする。
「なんだよ?」
「ご覧下さい」
 そう言って手近にあったディスプレイを指さした。何のことはない、備え付けの
ディスプレイだった。ふだんは飛行状況を示してくれる心強い存在だが、今は
退避しろとまくし立ててくる、やかましいだけの存在だ。
「コイツがどうした?」
「よく見てください」
 言われるまま、もう一度ディスプレイを注視した。何も変わったところは……。
「……な、なんだこりゃ?!」
 シドは目を丸くしてディスプレイをのぞき込んだ。表示された退避勧告は先ほどと
変わっていない――はずだった。

 “不時着するで〜、ひとまず退避や”

 しかし表示されている文字が先ほどとは違う。意味としては同じ内容を示しているが
――それにしても、どこか緊張感に欠けるこのメッセージは何だ?
「自動航行、恐らく行けそうです……ギリギリでしょうけどね」
 そう言って向けられるリーブの表情に笑顔はなかった。それは明らかに、何かを
知っている顔だった。
97鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(12):2006/07/08(土) 11:06:55 ID:y4m7sCI80
「おいリーブ、どういう事だ?」
 そう問われてもとっさには返す言葉が見つからず、リーブは気まずそうに視線を
逸らし、小さな声で呟いた。
「これが……私の能力です」
「オレ様に分かるように説明しろ。……この艇に、何をした?」
 その声は怒気よりも、恐れを多く含んでいるように聞こえた。
 だからできるだけ穏やかに、且つ慎重に言葉を選んでリーブは答えた。
「私には戦う能力はありません。ただ、物を操る力があるんです」
「……ケット・シーか?」
「はい」
 シドがことさら驚いた表情を向けてくる。
「……まさかとは思うが、おめぇこの艇ごと"操る"ってのか?」
「そうですね。……とにかく今は時間がありません。話は移動の合間に。向こうで
彼らも待機しています。さあ、急ぎましょう」
 そう言ってリーブはシドを促した。それでも心配そうに操縦桿を見つめた。
 視線の先では信じられないことに操縦桿がゆっくりと、だが独りでに動いていた。
「よろしいですね?」
「…………」
 半ば唖然とするシドの背を押し、操縦席から延びる階段を下りた。


----------
・なんか色々な方向に謝りたくなった。長くなってすんません。
98名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/08(土) 13:48:26 ID:eqcr6bj90
GJ!!!!
シエラ号が墜落とインスパイアの能力がうまく結びついて…
あぁ、もう、この感動をなんて言やぁいいのかなぁ!
(はしゃぎ過ぎスマソ)
2人のやりとりも良かった。
続き期待sage
99名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/08(土) 21:38:44 ID:VSFvxrVg0
なるほどインスパイアをそう使うのか〜!
>“不時着するで〜、ひとまず退避や”
に不謹慎ながら笑ってしまったw
シエラ号と関西弁のミスマッチイイ!
DGについて語るリーブの苦しみと守りたいという強い意志が
ひしひしと伝わってきた。GJです!!

100名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 21:06:28 ID:Xgq7dNE10
巨大インスパイヤキタ*・゜゜・*:.。..。.:*・゜(゜∀゜)゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*!!
101名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 21:08:45 ID:Xgq7dNE10
×インスパイヤ
○インスパイア

逝ってきます…
102名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 22:01:25 ID:olE+JyxV0
公式コンプリートガイドの表記だと「異能者インスパイヤ」なんだよね。
複数形ってことなのかな?
103名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/10(月) 00:54:28 ID:0XlKKhAbO
能力そのもの→インスパイア
インスパイアを使える人→インスパイヤ

…と俺は解釈してる
104名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/10(月) 14:39:52 ID:Ri6NAmQb0
保守
105名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/11(火) 13:10:47 ID:+lsUL9nY0
保守
106名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/11(火) 19:27:40 ID:RLBla6l00
保守乙です。レスありがとうございました。重ねて御礼申し上げます。

>鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ
凄いアイデアだ!戦場の轟音が聞こえるような、勢いがあるですね。
大人の局長と子供な艦長の、危機への対比が鮮やかで良いです。
飛空艇に魂を分かつとはどう言う事か、続き期待sage。
頭文字G爆笑しますた。てか、しげの御大の絵でDCを妄想し(ry
107極光 1/7  ◆SIRO/4.i8M :2006/07/11(火) 19:30:10 ID:RLBla6l00
 雪に囲まれた村がありました。
堅牢な材木を切り出し、簡素な家具に仕立てる。そんな小さな村です。

 凍てつく夜、吹雪の中に駆け込む者がおりました。
「お医者さん、いませんか?」
それは近くに住む、トナカイを追う娘です。ところが、村には医師がおりません。
痩せこけた男が、村に運ばれました。長い間吹雪に晒されたのでしょう。
からだは氷のように冷たく、指は真っ白な凍傷にかかっていました。
「お湯を使っちゃ駄目だよ。ゆっくり、雪で暖めるんだ」
旅人は眠り続けました。村の老人達は、薬湯を飲ませ暖炉の近くに休ませました。

 三日後。旅人が目を覚まし、そしてしくしくと泣くのです。
「すいません……すいません……」
「どうなすったね」
「に、にげっ、逃げて来たんです。すすすすぐ村を出ます。許してください」
「逃亡兵かね?」
「よしとくれよ。こんなひょろい逃亡兵がいるものか」
旅人は何度もお礼を言い、そして村から消えました。

 トナカイが旅人を追います。
「もっと、休まなくては。また、倒れる、心配」
娘に、旅人は問いかけます。
「アナタは……?」
「トナカイと、暮らしている。そうやって、移動している。
 村に居られない。なら、わたしの天幕に来て」
きれいな娘です。やさしい表情で旅人に頷きます。
「カワイイ、トナカイですね」
「汗、かかないの。だから、寒さに強い」
108極光 2/7:2006/07/11(火) 19:31:35 ID:RLBla6l00
 天上に、ちりりとオーロラが燃えています。
天幕の中で、ぽつりぽつりと旅人が語り始めました。
「ワタシには、難病の友達がいました。治したい一心で、医者になりました」
「お医者、さん?」
「医者だとお?!」
気になったのでしょう。いつの間にやら、村人が天幕に溢れていました。
「病気を治す為に、ワタシはガンバリました。
 気がつけば、もっと高度な研究組織に推薦されました。
 ……けれどそこで。恐ろしい人体実験が待っていたんです」
いつしか。村人も娘も黙っていました。

   ウータイの人を知っていますか? モンスターに変身出来るんです。
  軍はウータイ人を誘拐し、研究機関に収監しました。
  死にかけた母子を助けると言う名目で、モンスターの細胞を移植しました。
  全ては、強い兵士を作る為でした。たくさんの人が死にました。

 「あなた、悪くないです。抜け出さなかったら、もっと、大変な事になった」
「はあ、神羅か。かわいそうな事をするもんだ」
「酷いのはワタシです。気の毒な事をしたのはワタシなんです……!」
村人達は、知っていました。神羅が、辺境から先に厳しく徴兵する事を。
 「なあ先生よ。名前はなんて言うんだい?」
「――ファレミス。ガスト・ファレミスです」
「ファミレス先生。助けてくだせえ。この寒さだ、おっ死んじまいますよ」
「あんた、反省してるじゃないか。ファミレス先生、皆を診ておくれ」
村人は真剣です。けれど先生は、首を横に振るばかり。
 「ワタシは駄目です。人を殺してしまう」
「それじゃー、藪医者なのかい?!」
「あああ……その通りです」
冗談が通じません。そして田舎のジョークも剛速球です。
109極光 3/7:2006/07/11(火) 19:33:15 ID:RLBla6l00
 先生は、天幕に匿われました。
日がな一日ぼんやりとトナカイに乗り、不器用に群れを移動させています。
ってゆうか、いっちゃんでっかいトナカイが鼻で笑ってます。
「いよう、先生! あの娘はどこだい?」
材木を積んだ車から、いかにも頑健そうな樵が声をかけました。
「おや、どうしました?」
「いやねえ。女房の腹がでかいんで精をつけに、枝肉を」
「枝肉……ですか?」
「そうそう。セトラ族の娘なら、喜んで分けてくれるからねえ」
「セトラ?!」
「秘密ですがね。先生なら教えてもいいそうで」

 セトラ。伝承に伝わる古代種の名前。ガスト博士が捜し求め、発掘した筈の。
「あの娘なあ、ひとりぼっちなんだよ。身内みんな前線に送られちまったんですと」
「辺境民は屈強で、かつ紛争の当事者ではない。
 だから支配者達に利用され易いんです。可哀想に」
「やっぱ、神羅でも先生はまともだねえ」
「ワタシには、ジェンナーのような。一線を越える探究心はありません」

 目がいいのでしょう。韋駄天の走りで、娘を乗せたトナカイが戻って来ました。
おや、これは。聞いた事のない言葉が交わされます。
『トナカイ、買う。妻、食わせる』
『良く凍っていますよ。とても美味しいです』
基準が分かりません。どうやら霜が降りる程凍結してると上物らしいです。
正に霜降りですが、おそらくたぶん駄洒落ではないっぽいです。
「あ、あ、あ、アナタがセトラなんですか?」
娘はにっこり笑って、続けました。
「そう、セトラ。セトラの、イファルナ」

 ずっと捜し求めていたものが、そこにありました。
110極光 4/7:2006/07/11(火) 19:35:44 ID:RLBla6l00
 透き通った星の夜。天幕の中で話し声がします。
「アナタの言葉で話してもらえませんか? 少しなら理解できます」
『分かりました。何からお話しましょうか』
それは、典雅な響きでした。
片言なのではない。セトラにはセトラの言語があったのです。
『セトラは旅するものと言う意味ですが。かつて砂漠を旅したセトラは
 セトラに、星と言う意味を持たせました』
『星、ですか』
『星を旅するのです。遠く、どこまでも遥かに』
ガスト博士は、後悔したんです。どうしてビデオカメラを持って来なかったんだろうと。
なぜ、着の身着のまま、飛び出してしまったんだろう。そう思いました。
記録したい、伝えたい。生き残った種族の物語を、と。

 共に過ごす内に、娘の言葉が滑らかになりました。
「セトラの人は、癒しの力を持つと聞きましたが」
「出来ますよ。星の力を借りるのです」
「……何と言う事だ」
ガスト博士は、片手で額を抱えました。
「どうしたのですか?」
「ワタシは、大変な間違いをしてしまった」
博士は写真を差し出しました。
「きれいな子」
「セフィロスです。アナタ方の言う、厄災です」
「ど、どうして?!」


つづくよ。
111名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/13(木) 00:15:50 ID:/ozekvLe0
>>107-110
古代種失踪前のお話でしょうか?(違ってたらすんません、DG→ジェノバという研究の流れかな?)
っていうか村人全員ファミレスになってるよ!!w
DC本スレでビーストソルジャーの件を読んで、実際に画面で確認したらもの凄い衝撃でした。
それを踏まえてガスト博士の告白が重たくて切ないです。ハンカチ用意して続き待ってます。

ちょっとそれますが、DGとジェノバプロジェクトってどのぐらい時期を同じくしてたんでしょうかね。
7は分からないことだらけです。(だからオモシロイ)
112名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/13(木) 01:12:05 ID:nkRlEVUU0
疎いんですが、DGは古そうですよね。ネロがビーストソルジャーに
「……僕、もう疲れたよ……なんだかとっても眠いんだ」と(ry
-------------------------------------------------------------------
前話は>107-110です。
113極光 5/7  ◆SIRO/4.i8M :2006/07/13(木) 01:13:55 ID:nkRlEVUU0
 二千年前の地層。仮死状態で発掘された若い女性。
それは古代種に見えました。たった一人、宝条博士を除いて。

「ジェノバの擬態能力が働いたんです。
 意志の強い父親にはちゃんと見えていた。モンスターの姿が」
死にかけた胎児。そこに、セトラの移植が提案されたのです。
「他に救う方法がなかったんですよ。実験で、もう結果が出ていたのに」
ジェノバ細胞は、一つの生き物のように動きました。
胎児の組織片は強化されました。けれど、両親の組織片はそうではなかった。
母親は結晶化し、父親はモンスター化しました。
「だからワタシは、手術に反対したんです」

 「ウィルスは、どうしたのですか?」
「誰にも触れさせず、一人で除去しました」
ぞっとする話です。娘が身震いしました。
「それから銃で囲まれました。ワタシは無力です」
 母親は壊れ、そして産まれた肉食獣の眼をした子供。
「父親は元気な我が子を見て、喜びました。それは分からなくもないんです。
 セフィロスは、戦闘で力を発揮しましたが。とても賢い子でした」
「賢い厄災……」
「ウィルスは遺伝子に残っていました。なのに誰も感染しなかった。
 治療はしましたが。彼が抑えていたとしか、説明のしようがないんです」

 いつしか、娘の手が先生の手を握っていました。
「生体実験の全面中止を告げた時、それは起こりました。
 『私の世界を作るのだ。誰にも邪魔はさせない』
 ああ……プレジデントの言葉は、誰よりも強かった。
 ジェノバの意志が働いたのでしょう」
先生は娘の手を額に押し当て、呻き続けます。
「洗脳されそうになったんです。患者を置いて、逃げるしかなかった」
114極光 6/7:2006/07/13(木) 01:15:31 ID:nkRlEVUU0
 するとそこに、村人が駆け込んで来ました。
「出産ですか?」
「全然違うよ、ファミレス先生! 
 樵の奴が、倒木の下敷きになっちまったんでさあ!!」
「何ですって?!」
「コレに乗ってください。この子が、一番速い!」
 それは威風堂々とした――先生を笑ったデカブツトナカイでした。
けれどトナカイの眼は真剣に、村を見ています。見事な角と真っ赤なお鼻で。
まさに宇宙開発部門がクリスマスに追ってる、未確認飛行物体です。
「冬に角? あ、アナタ牝ですか!」
駿馬、じゃないや、駿牝馴鹿が凍土を駆け抜けます。
クレバスを飛び越え、自ずと覚えた道順に沿って。

 「うう……」
同じ血液型の村人A、B、Cにも、樵は大怪我なのが分かりました。
「ファミレス先生。それはなんだい?」
「診察鞄です。なぜでしょうね。どうしても手放せなかった」

 すると樵が、先生の腕を掴みました。
「なあ……メス握るのは、辛いだろ……『ファレミス』先生」
「いいえ。ワタシは君達に、なんのお礼もしてない。
 アナタは、これから父親になるんです。死んではなりません」
充分な道具も無く、薬も足りない。けれど先生の目つきは、変わりました。
「麻酔です。責任者は、ガスト・ファレミスです」
「頼ん……だよ……先……」
ぐらりと。麻酔が回りました。的確に、意識が吸い込まれてゆくのです。
先生は、メスを執りました。村人が守った指で、誰よりも細やかな動きで。
115極光 7/7:2006/07/13(木) 01:22:02 ID:nkRlEVUU0
 凛と凍った空気の中。三角の雪が舞い散ります。
古代種の娘は、ゆるやかに手を広げ、祈りを捧げました。
大地から。天空から。あでやかな光の帯が娘の全身に降り注ぎます。
いのちの流れが太古の民に呼応し、医師の手に注ぎ込まれてゆきました。
ガスト博士が来るまで。娘は村人を癒し続けていました。
けれど娘は、季節ごとにしか村に寄れなかったのです。

 娘は、信じていました。人の知恵を。そして、経験を。

 「たいしたもんだ。まさか助かるとはねえ」
「アナタの生命力が凄いんですよ。それにワタシには、森の手入れは無理です」
「ちげえねえや! いででで」
戦士と魔法使いの違いのようなものです。どちらも大切な仕事なのです。

 娘はトナカイを遊牧民に譲り、村で暮らすようになりました。
やがてロッジが出来、村は繁栄してゆきました。
「ワタシは人殺しです。でも、それ以前に医者だったんですね」
「忘れていたのですか? どうして」
「権力闘争に巻き込まれました。ワタシをライバルだと思う人がいたんです。
 ……彼は天才なのに。だけどワタシは、患者を笑わせた。実験動物を撫でた。
 たったそれだけの事で、成果に違いが出たんです」
「あなたは村に必要な人よ」
「ありがとう、イファルナさん」
それは。ガスト博士が初めて得た、穏やかな生活でした。
アルカディアの豊かな暮らしが、そこにあったのです。

 ――老人達は言います。むかしはここにも、いいお医者がいたんだよ、と。


END
116名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 03:30:43 ID:+nKMWgOd0
>>113-115
…ああ、こういう呼称ネタ(?)にはめっぽう弱いです。
覚悟を決めた、と言うよりも最大の信頼表現なんですね樵さん。
てっきりファミレスはお笑い要素なのかと思ったらとんでもない、心憎い演出に
良い意味で期待を裏切られました。ハンカチ用意したのは正解でしたw。

 ちなみにガストとイファルナは神羅から逃げた(=神羅の研究施設にいた)と
 思ってました。でも調べてみるとこれ、自分の思いこみが大きかったみたいですw。
 7は色んな意味でハマれる作品です。(だからこそオモシロイのかも)
117鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(13):2006/07/14(金) 03:47:56 ID:+nKMWgOd0
>>90-97より。
※注意:投稿者の「インスパイア」についての解釈が主題となる回です。
      色々突っ走ってると思います。
----------



 飛空艇内の各エリアは、それほど幅の広くない通路で結ばれていた。リーブは
まるでシドが引き返すのを妨げるように後ろからついて歩く。
 そのためシドは半ば追い出されるようにして通路を前進しながら、相変わらず
鳴り続ける警報音をBGMに背後で語られる話を聞くことになった。
「もともとこの能力のこと自体、私自身にもよく分からなかったんです」
 正直なところ、現時点でもよく分からないというのがリーブの本音ではあったが、
さすがにそこまで口に出すわけにはいかない。
「ケット・シーはロボットなんだよな?」
「はい。ケット・シーに組み込まれた機械は彼の動作を補助することと、データの
記録を目的としています。最初はどちらかと言えば、私の能力の方が機械を
補佐する役割を担っていると考えていました」
「“誘導”ってことか?」
「はい」
 しかし、自身が持っていた認識それ自体が間違っていた、とリーブは続けた。
ちょうどコントロールルームを出て最初の隔壁を通過し、シエラ号下層部へと続く
長い階段を下り始めたところだった。
「私が操っている筈のケット・シーは時折、私の意志に反した動きをする事があった
のです。……最初は、システム的なエラーだと考えました。しかしエラーという理由では
説明のできない現象が起きました。実はつい先程も、そうだったのですが」
「お前が急に倒れた事と関係があるのか?」
 問いに対するリーブの答えは否定だった。ついでに、最終的にとどめを刺したのは、
腹を殴ったシドだと付け加えることも忘れない。
 指摘を受けてそうだと思い出し、だがあの状況では他の方法を思い浮かばなかったから
仕方がないのだ、と内心で言い訳しながらも慌てて視線を前方へ向けたシドの姿を見て、
リーブは表情をゆるめた。
118鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(14):2006/07/14(金) 03:56:12 ID:+nKMWgOd0
 そのまま、世間話でもするような口調で話は続いた。
「ケット・シーが受けた衝撃や感覚の一部を、私も共有しています。ですから、
あの時エンジンルームで何が起きているのかも、“見えた”のです」
「それでシェルクを行かせまいと?」
「はい。……結果的には失敗しましたが」
 申し訳なさそうに告げたリーブに、シドは進める足を止めることなく顔だけを
向けて問う。
「この飛空艇にも、同じ事をした?」
「そうです」
「…………」
 それはシドが知る限りの常識とはかけ離れた話だった。しかし、語るリーブの姿は
真剣そのものだったから、嘘を吐いているとは思えない。
 もっとも、そう簡単に読めない男でもあるのだが。
「……ケット・シーと感覚を共有してるっつーことは、だ。あれが壊れたら、それも?」
「はい。ただしこちらに伝わってくる衝撃はほんの一部です」
 長い階段を下りきり、シエラ号の上層部と下層部を隔てる隔壁が見えた。そこで
シドは今度こそ足を止め、振り返るとリーブと向き合った。
 必然的にリーブも足を止めざるを得ない。向き合ってから待つこともなく、シドから
問われた。
「この飛空艇にも、同じ事をしたと言ったな?」
「はい」
「ケット・シーと同じっつーことは、お前が感覚を共有しながらこの飛空艇を動かしてるんだな?」
「そうなりますね」
「それじゃあ……」
 本当は、その先を口にするのが恐ろしかった。
 ケット・シーは自分たちよりも小さなぬいぐるみだ。それが壊れた時でさえ、一部を
共有する本体が意識を失う、あるいは身体機能に失調を来すほどの衝撃だった。
とするならば、ぬいぐるみとは比べものにならない大きさの飛空艇が壊れた場合、
その一部にあたる衝撃を受けた本体はどうなる?
 操る物が巨大になっただけで、操っている張本人は何も変わっていない。
生身の人間なのだ。
119鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(15):2006/07/14(金) 04:01:20 ID:+nKMWgOd0
「艇が落ちたら……?」
「落ちませんよ」
 柔らかく微笑んで、リーブは即座にその予測を否定した。シドにそれ以上、
先を続けさせないためだ。
 しかしリーブの意に反して、シドは言葉を続ける。
「マトモに動くんなら、わざわざお前が操る必要はねぇだろ? オレ様の腕と
目を見くびるな」
 確かにシドの言う通りではある。飛空艇出力低下による航行機能へのダメージで、
考えられる原因の最たるはエンジンへの被弾だった。
 もしそうなら、たとえリーブがこの飛空艇ごと操ったところで、結果は変わらない
のではないか――それは翼に傷を負った鳥が飛べないのと理屈は同じで――飛ぼう
という意志を持っても、飛ぶための機能が損なわれていれば重力に逆らうことは出来ない。
 返答次第では、すぐさまコントロールルームへ引き返す必要がある。
 意を決して、シドは口を開いた。

「もう一度聞く。飛空艇が落ちたら、お前はどうなる?」

「…………」
 リーブは答えなかった。正確には、「答えられなかった」。
 なにせこんな巨大な物を操ったことは、今までなかったからだ。先程の試みも
実のところは賭だった。こうして飛空艇が動くと、100パーセントの確証がないまま
見切り発車したと言うのが本音である。
「ちょっと待て! お前……」
 両肩を掴んでリーブを壁に押しつけると、シドは叱責するように言葉を浴びせた。
それは沈黙という返答を、最も深刻にとらえた結果だった。
 向けられた鋭い視線に身が強張る。しかしまた殴られては敵わないと、リーブは
シドの言葉を遮り毅然と言い放った。

「話はまだ終わりません。
 それからシド。どのみち今、私が意識を失えばこの飛空艇はそのまま墜落しますよ?」
120鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(16):2006/07/14(金) 04:09:21 ID:+nKMWgOd0
「妙な脅しには乗らねぇぞ、リーブ。そん時はオレ様が操縦すりゃあ済むだろ。
 ……このシエラ号のパイロットが誰か、忘れたか?」

 置かれた手をどかし前進を促そうとしたが、シドは動こうとしない。逆に加わる
力が増した様な気さえする。だからといってこのまま引き下がるわけにはいかない
ので、リーブは事務的に話の先を続けた。
「……先程も申し上げた通り、ケット・シーを動かすために組み込まれた機械を
誘導し操作するのが私の能力だと思っていましたが、それは間違いでした」
「どういう事だ? ケット・シーは勝手に動いてるってことか?」
「そうです。正確に言えば……成長と学習……と言えるでしょうか」
 確かに最初はリーブの意志に対して忠実に動く。その後もほとんどは、操縦者の
意志に沿った動きをしてくれる。しかし、そうではない事もある。
「ケット・シーは……生きているのです」
 操作されているのではない。彼自身にも意志があり、心が宿っているのだと、
リーブはそう語った。
「それってのは、つまり……」

「私の持つ能力は、物を操るだけではなく、そこに“命を吹き込む”という……
とんでもないモノだったのです」

 それに気づかなかった自分を浅はかだと自嘲するように笑った。呆気にとられ
力の抜けたシドの手を、できるだけ丁寧に退けてから、リーブは顔を背けた。
 操るどころか、生命を吹き込むとは――もたらされた予想外の返答に、しかし
言われてみれば納得がいった。
 この時シドの脳裏に過ぎったのは、3年前の古代種の神殿での出来事だった。
121鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(17):2006/07/14(金) 04:14:14 ID:+nKMWgOd0


 古の昔、黒マテリアを安置しておくためにセトラの民が築き上げた『古代種の
神殿』。そこに残り、仕掛けを解いて黒マテリアを得る代わりに、ケット・シーは
神殿内に閉じこめられる役を買って出た。自分は、作り物のオモチャなのだからと
戯けながら、古代種の神殿から出て行く仲間達を見送った。
 彼が最後に語った言葉を、神殿の外から通信を通して聞くことになった。
 ――『同じボディのがようさんおるけど、このボクは、ボクだけなんや!』


 スパイで、しかもぬいぐるみのクセして何を言ってるんだ? と、当時は心の
どこかで思っていた。しかしあれは、リーブではなくケット・シーの思いだった
のだとすれば、その言葉にも頷ける。
「お前……」
「この能力を持った私は、死神……なのかも知れません」
「ああ?」
 顔を背けたまま唐突に告げられて、思わずシドは素っ頓狂な声で問い返した。

「死を知らない彼らに、命を吹き込むという行為は……知らなくても良い“死”という
 恐怖を与えているのと同義なのです」

 生命あるものは必ず死を迎える。生まれたその瞬間から死に向かって歩き始める。
魂はライフストリームへ還ると言っても、肉体が滅びる時の苦痛や感情を避けることは
できない。
 知らず知らず、それを使い続けていた自分がどれほど残酷な事をしていたのかと、
リーブは言った。
122鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(18):2006/07/14(金) 04:20:47 ID:+nKMWgOd0
 今までに、何体のケット・シーを失った? ケット・シーだけではない。創設当初から
これまで、有志で集ってくれた仲間達を、何人失った?
 失ったのではない、殺したのだ。その決断を下したのは他でもない自分。それは
異能者として、あるいは局長として。
 これでは、地底で命を弄んだ彼らと同じ――いやそれ以上に残酷な事をしていたのだと、
リーブはそう思った。無意識のうちに、その事実に気づく事を恐れ、これまで自分の能力と
向き合って来なかった。忙しさにかまけて、他の理由にかこつけて。
 しかし誰にも告げられず、心の内に積み重なって行くそれを、口にできただけでも進歩
なのかもしれない。
 異能者――それは本来、存在すべきではない者。存在してはならない者だとするならば。
与えられた能力の意味を、あるいは持ってしまった理由を問おうとすることも、求めたいと
願うことも、すべてが異端視されることだろうか。




----------
・一部のケット・シーにLv3リミット技が存在したのは、ある意味制作者側からの示唆だったと思っている。
・FF7本編では語られず、DCFF7で明かされたインスパイアの解釈。後付に対する自己解釈。
 (それでもゲーム中は直接の描写なかったですが)
・てんこ盛りの自己解釈と、誤認があったらすみません。遠慮無く突っ込んでやってください…。
123名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 19:51:14 ID:g8x/Ml/70
GJ!リーブさんに墜落の衝撃が伝わったら・・・ガクブル
シエラ号とリーブさんの活躍に期待!
124名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 23:12:54 ID:YM8PRWRk0
リーブの心中を思うと、涙が出て来ます。
続き期待sage
125名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/15(土) 11:55:41 ID:ZCGLRom00
>知らなくても良い“死”という恐怖を与えている
リーブがあの明るいキャラクターの裏でこんな風に考えてると思うと
テラカナシス
誰かリーブに希望の光を
次の展開期待。
126名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/16(日) 12:54:43 ID:4ratfeKFO
イイヨイイヨー
ガストもイファルナも村人もリーブもシドもケットシーもシエラ号も
うまく言えないけど懸命に生きる姿になんかじーんと来た
127名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 16:49:42 ID:z7B3HTU90
保守
128名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/18(火) 18:25:24 ID:i5Y3AVQt0
129名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/19(水) 01:03:29 ID:o/big7dx0
1日1レスで保守?
130名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/19(水) 02:07:29 ID:2UgBRzId0
           _
        rォY、ヽ\
        | } 〈 ヘ_ノリ                /´7
        t'^ーヘ_∨              /_ /
          ` ̄rヘ_〉`ヽ        _ ,. -―' 、.}- 、     このスレにゴーストを授けてくれる叔父さんが
          l ー ' ノヽ , '⌒>ニ、7〈  ∴  ヽ..__`ヽ、  いると聞いてきたのですがー
             lー‐ '   ヽ_´_ `゙´ ヽ.`ー- ..__ノ}ヽ、`ヽヽ
           〉、__,.、  ハ_―-- ..__` ー‐ '' ´ (.ヽ\亠、
             f、_  / V  l、 ̄`〃´ ̄ ヽ_‐ ._  `  ヽ、ヽ
          !  ̄ !  ゙、 }、ヽ {{ `丶 ノ}__` ‐`.丶 (ヽ、i l }
       _   ヽ   ! /´_ノ ! l.{{ヽニ ´イ辷} __`ヽ\' | lイ    _
     /   `丶冫T_7<-'_,ノノ ヽ、__,.ノノ ,r', -―-ヽ ヽ Y´ ,. ‐''´   `ヽ
    /        _ノ、 ̄  `i' ̄ ―=._'´ { { _   }___ノノ`}         ヽ
   / !       l'´  }ニニ=!      `ヽ〉'´___ ヾ. /_/ `l        rl
.  / ,'        r|   /ヽ.__,. -ヘ¨ 二_‐ ._   {/´   `Y l     ト.      ||
131名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 01:01:18 ID:9py4M2ww0
ほほほほほwww
132名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 01:58:35 ID:IW8j8TyU0
なにかよくわかりませんが保守お手伝いします。レスありがとうです。

>鼓吹士、リーブ=トゥエスティVII
二重スパイの告白が切ないです。意志がある、心を持たせるってすごいなあ。
生きた機械になれたメカは幸せだと思います。
操縦桿離さないシドも素敵です。続きに激しく期待sage。
133挽歌 1/4  ◆SIRO/4.i8M :2006/07/20(木) 01:59:35 ID:IW8j8TyU0
 空間を満たす、柔らかな光。清流に守られし祠。
結晶のあわいに眠る佳人。鳴り渡る瀑布の轟き。誰かの靴音が近づいて。
「……ヴィンセント?」
「外れ。私で悪かったなあ?」
「近寄らないで!」
我らが宝条先生の前に、ツク、いえルクレツィアさんが化けて出た。

 「そう言うな。ほら、土産だ」
生鮮食品の詰まった、おかんの仕送りダンボール一式がゴロンとな。
「どうしてこんな奴と……くやしいっ!」
どっかで聞いたような台詞はさておき。
ソルジャーを上回る稼ぎを持ち、顔も腕も良いタークスを振るあたり、
ルクレツィアさんは、だめんずうおーかー気質やも知れません。
超一流の宝条先生には、全く該当しませんが。
 「帰って」
「妻に会うなと言うのか?」
ルクレツィア博士の、ひんやりとした目。宝条博士に至っては絶対零度。
視線がぶつかる。雰囲気としてはエイリアンVSプレデター。

 ふと。宝条先生の脳裏に蘇る風景。
『宝条君……どうしてここが?』
『いやぁ、骨を折りました。
 貴方達が、ここに居る事ぐらい、とうに分かっていたんですよ』
134挽歌 2/4:2006/07/20(木) 02:01:07 ID:IW8j8TyU0
 「ガストを射殺した」
ルクレツィアの眼が、見開かれる。
「裏切り者だからな。当然だ」

 「どうして。あんな大人しい人をどうして!」
ひやりと。水気(すいき)が頬を打つ。
「私が手を下すまでもなく、同じ事になっただろう。
 むしろお情けだ。同僚の私に命令が来たのは」
嗚咽と、静かな笑いが交差して。
「ふん。猶予を与えてやったにも関わらず、逃げなかった愚か者は誰だ?」
怒気を含んだ声に怯まず、ルクレツィアが叫ぶ。
「どこに逃げるのよ? 監視されている、この世界のどこに!」
「怒った顔も美しいな」
「止めて」

 「お陰で。牝の古代種を二人手に入れた」
「……その人達に、何を」
妻の面が曇る。夫は、哂う。
「これからだ。増やす必要がある」
「どうするつもりなの?」
「交配実験を」
「酷い人!」
 刹那。岩壁を軋らせ、奔流が外へと弾き出される。
白いヒラヒラを振り上げつつ、ルクレツィアさんが怒髪天。
「ワレホンマいてまうぞコラ跪けしばくぞ」
「是非お願い致します」
イカのママンが怖いです。騒音おばさnもとい、ジェノバ級のおっそろしさです。
135挽歌 3/4:2006/07/20(木) 02:02:32 ID:IW8j8TyU0
 奥さんに踏んずけられたまんま、宝条先生がちょっとだけ笑って。
てか、宝条先生は笑顔を絶やしません。常にスマイルです。
「お前に相談して良かった」
「分からないわ」
「今後古代種が増えずとも、妻に反対されたと申し開きが出来る」
「優しい事は……全部人のせいにするのね」
ぶちキレ奥さんによって、古代種の人達に当面の安全が確保されますた。
 白衣の内から、包みが一つ。
「そうだあ。(野沢那智ボイス)薬も置いて行こう。早く結晶から出て来ぉい」
「いらない」
「そう言うな。この薬を開発する為に、兎が百羽犠牲になった」
「余計にいらないわよ!」
キレた奥さんに追い出されますた。

 一方、その頃研究所では。
「あー、うー、ぷー」
「いたいでするー。いたいってば、やめてえ」
「わんわん、引っ張っちゃだめよ」
テスト0とセトラの人達が戯れておりました。

 外は能天気なまでの上天気。宝条先生が通信を始めますた。
「もしもし。何か失敗をした者はいるか?」
『は? いえ、おりませんが』
「いるだろう。仕事が遅い、効率が悪い、顔が悪い。なんでもいい」 
『はあ……ビーカーを割った者なら一人』
「飛ばせ」
『は?』
「そうだなぁ。僻地がいいぞ。アイシクルロッジがいい。無能者はいらん」
『待ってください、博士! あああ左遷は許してえええええ』
通信が切れますた。
「ガストめ。死んでまで尻ぬぐいをさせおって」
136挽歌 4/4:2006/07/20(木) 02:04:13 ID:IW8j8TyU0
  「処刑命令を、二年引き延ばした。どうして逃げなかったんだ。
   ――貴方にもっと。教えて貰いたい事があったのに」

 滝の音が、声を掻き消す。誰にも聞こえないから、誰も見てないから。
ひっそりと宝条先生が呟く。ほんで、奥さんが見ていた訳で。
「むう。聞こえていたのかね」
「ふふ」
 とびっきりいい会社の重役さんになって、激強い息子と
物凄い美人の奥さんがいる、宝条先生は勝ち組です。
でもなんとなく。
ズバリ勝利者って名前のサンプルに勝てません。
ちょっと、いやだいぶキレやすい、奥さんにも勝てません。
黙って全員養う男気はあるんですが。でも息子にパパだよってゆえません。

 「どうしても、結晶から出ないつもりか」
「触られたくないの」
ものごっつい拒否っぷりです。月桂樹になったダフネもびっくりです。
「又来るぞ。ああ、来るとも!」
「忙しいのね。お茶を用意したのに」
「……お?」
「さようなら、あなた」
ルクレツィアの声が消え、結晶に再び閉ざされる。
「おやすみ。ルクレツィア」
宝条家の人々は、たまに。家族みたいな顔をするんです。


END
137名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 12:31:59 ID:6mZuZop80
>>133-136
読んでて思わず。

博士です…
研究に妻子にと、地上でのストレスが主因で前髪が後退してるとです。
ジェノバ因子も育毛には効果がなかとです。
都市開発部門統括の名前を目に耳にするたびに、私への当てつけなのかと思って落ち込むとです。
…一応博士号は持ってる、博士です。

と、きっとヴァイスに愚痴っていたに違いない。DGSがヴァイス救出に乗り出す理由はきっとこれだ。
(微妙なネタですんません)なんて妄想が駆けめぐった…。
138鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(19):2006/07/20(木) 13:04:09 ID:6mZuZop80
>>117-122より。
※:一部、実際にその職に従事されている方から見るとオカシイ表現があると思います。
  その場合は…笑ってやって下さい。
※:尚、全編通して文中の「艇」は「ふね」と読んでもらえると有り難いです。
----------



 しかし、そんなリーブの思いをシドは豪快に笑い飛ばした。
「なにも、おめぇが気に病むことはねーだろ?」
「え?」
 返された意外な言葉に顔を上げれば、シドは言う。
「飛空艇の話で悪ぃけどよ……部品にだって寿命はあるもんだぜ?
 だいたい飛空艇のメンテナンスってーのはよ、そいつらと向き合う地味ーな
 作業なんだぜ? ま、オレ様はこの艇を愛してるからよ、全然苦じゃねえし、
 それを苦痛だと思う野郎は、はなっからパイロットには向かねえよ」
 胸を張り、誇らしげに語るシドの言葉に偽りはない――神羅が宇宙開発事業からの
撤退を宣言しても尚、いつ飛び立つかも分からない神羅26号に注いだ熱意と実績が、
彼の言葉を裏付けている。
 それに彼の言うとおり、確かに物にも寿命がある。経年劣化と呼ばれるものだ。
それを見越して設計の段階からあらかじめ耐用年数を設定する。都市開発部門
勤続時代のある時期、リーブはそれを管理する仕事をしていた。仕事の中では
減価償却という概念と付き合って来たが、自分の能力に対してそれを当てはめる事は
なかった。だからシドの言葉をとても自然なものとして受け入れることができた。
 けれどシドが言わんとする事は、その向こう側にある。

「翼を持たねぇ人間が空を飛ぶのは、もちろん飛空艇の力を借りてだ。
 だがな、一番大事なのは……ここさ」

 そう言って胸を指す。
 パイロットに大事なのはハートってヤツだ。と、シドは恥ずかしげもなく言い放った。
139鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(20):2006/07/20(木) 13:11:19 ID:6mZuZop80
 操縦士は操縦桿を握って飛空艇を操るんじゃない。
 操縦桿を通して心を、交わしているのだと。
「オレ様ぐらいのパイロットになるとよ、操縦桿を握っただけで飛空艇のコンディションが
 分かっちまうもんだ。逆もそうだぜ? パイロットの状態は飛行に反映しちまうんだ。
 ……だからよ……、なんだ? おめぇの言うその“能力”ってーのも、さっぱり分かんねー
 って訳じゃねぇ」
 恐らく、リーブとケット・シーの関係は、自分と飛空艇のそれに似ているのではないか? 
というのがシドの見解だった。

 もしかすると、インスパイアとは――人間誰しもが持ちうる能力なのではないか?
 翼を持たず大地に生きる人々は、空を見上げ憧れてきた。その思いが空を飛ぶ原動力に
なった。思いを育み、それは知識の助けを借りて形となって、やがては雲を超え青空を超えて
宇宙にまで人を到達させた。そうやって人々は進歩を遂げてきた。
 人の思いから物は生まれ、さらに思いを注がれ進化する。
 それは人が人である所以。
 シドの言葉は慰めではなく、説得力を伴ってリーブに向けられていた。

「お前も同じだろ、都市は作ったんじゃねぇ、育てて……いや一緒に歩んで来た……違うか?」

 投げかけた問いへの返答を聞かないまま、槍を担ぎ直すとシドは背を向け再び歩き出した。
「どうした、時間がねぇんだろ? とっとと行くぜ」
「……は、はい」
 思い出したように慌てて壁から背を離し、ようやくと言った状態でリーブは一歩を踏み出す。
 そう言えば昔、誰かにも同じことを言われたような気がする。
 ――「植物にとって水や日光以上に必要な物があるの。なんだか分かる?」
 分かったつもりでいた言葉。それをようやく、知った。
140鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ(21):2006/07/20(木) 13:16:39 ID:6mZuZop80
 ほんの僅かだが、進める足をためらったリーブに、シドは背を向けたままでこう告げた。
「オレ様はよ、信じるっつーことを忘れてたぜ。お前の事も、この艇も。
 お前の言う通りだ、シエラ号は落ちねぇよ。オレ様が言うんだ間違いねぇ。
 ……なあ?」
 まるでシドに呼応するように、エリアを隔てる隔壁がリーブの背後で音を立てて閉ざされた。
横合いのディスプレイに目をやれば。

 “お嬢さんは任せとき”

 とのメッセージ。
 リーブが吹き込んだ命が、どこまで保つのかは分からない。
 しかしシエラ号は、リーブの願いを受け入れ、飛び続けることを誓った。それは相手を攻撃する
ための飛行でもなければ、逃走の為のものでもない。
 リーブは振り返り、閉ざされた隔壁を見つめた。そして今一度、壁に左手を添えてこう告げた。
「よろしく……お願いします」
 ディスプレイに現れる文字は、それ以上変わることはなかった。
「おーいリーブ! ぼさっとしてんな早くしろ」
 その後ろから、シドの声。
 リーブは壁から手を離し、駆けだした。
 直後、まるで見計らったようにディスプレイの表示が変わる。

 “誰かを守るために飛ぶ、……なんや格好エエやないか”

 これまで響き渡っていた警報音は、いつの間にか鳴りやんでいた。
 やがてシエラ号から切り離された脱出艇を見送ると、艦内のディスプレイも光を失い沈黙する。
 ただ一箇所、メディカルルームを除いて。




                         ―鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ<終>―
141俗に言うチラシの裏 ◆Lv.1/MrrYw :2006/07/20(木) 13:24:48 ID:6mZuZop80
論点と視点がぼやけ気味な文章にお付き合いいただきまして、有り難うございます。

・DCFF7では描かれなかったシエラ号からの脱出の経緯を妄想。
 (インスパイアの可能性実験)
・同時にDCFF7第4章スプリンクラーの件を拡大解釈してみたかった。
・微妙にスレ違いを承知で言わせて下さい。
 宇宙開発部門と都市開発部門では扱う物が真逆(空と地)なのと同時に、神羅という
 企業にとっても全く逆の面を担っていたんだろうなと思います。
 (宇宙開発はイメージ戦略>実益、魔晄エネルギーを境にして実益重視の都市開発事業へ
 経営シフトしたという点から推察。)
 そう言う背景を考えると、なんかすっごい楽しいです。そんな側面も描写できて(伝わって)いれば…。
・っていうか、厨な事書いてすんません。投下文章中で語り尽くせないのは未熟さ故、平にご容赦を。

これも残すところ終章(前編・後編とED)をまとめて終了となります。今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。
142名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/21(金) 16:55:59 ID:oa0+0n+qO
乙!
143名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/22(土) 03:19:53 ID:whoqmOr+0
>>挽歌 ◆SIRO/4.i8M
キレぎみのルクレツィアと、どことなくまったりした雰囲気の漂う宝条との
かけあいがワロスwカカア殿下で放蕩息子の宝条一家…ひろしの生え際後退は
苦労の証なのか


>>鼓吹士、リーブ=トゥエスティZ
>パイロットに大事なのはハートってヤツだ
ってシドが言い切るあたり、さすが宇宙に夢を抱き続けるロマンチック男だとおもた。
自分を異能者だと思い悩むリーブに、ポジティブさが少し戻ってきてよかった。
144名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/22(土) 19:00:52 ID:0PPNJzPi0
保守
145名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/23(日) 21:18:15 ID:Y0NM8ThB0
ほしゅ!
146名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/24(月) 18:38:27 ID:Vi8eg1lB0
>>139-140
(E)……熱いぜ痺れるぜ。
リーブもシドも、もちろんケットシー(シエラケット含む)もすげーカッコイイ。漢だ…!

中の人も、ハートは漢の中の漢だと思いますた。あなたの文章大好きです。
ラストへ向けての今後の展開に、マターリ期待sage.
147名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/25(火) 21:23:01 ID:a1NcYOrR0
148名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/25(火) 23:42:14 ID:RUvNVjmKO
下がり過ぎだから一旦ageるよ
149名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/25(火) 23:49:36 ID:cVlvBis4O
キモッwww
150名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/26(水) 15:26:42 ID:xZlboQrM0
保守
151名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/26(水) 23:48:09 ID:Wa2sptTD0
保守とレスddです。

>鼓吹士、リーブ=トゥエスティVII
艦長テラカッコヨス。リーブさんは優しいから魂が込められるのかもしれませんね。
経営シフトの背景も面白そうです。終章、楽しみにしてます。
152伝承の向こう側1/2  ◆SIRO/4.i8M :2006/07/26(水) 23:49:29 ID:Wa2sptTD0
 勇者よ、臆するなかれ。
 王国の興亡は刃の上に。
 戦(おのの)きの歌声を鳴り渡らせよ。
 烈火の怒りを持て、猛き刃を呼び起こせ!

 汝(なれ)、帆を張り終焉の地を目指せ。
 大海原より渦巻く潮を越え、フルツの峻山へ来たれ。
 失われし至宝を、讐敵の躯より奪回せよ。
 そは、正に探求の道。

 深淵の魔導が、汝をいざなう。
 再び還らぬその道を。
 求むる物は何か、与うる物は何か。
 真理は魔導の羅針盤に刻まれている。

 射手は陣を敷き、魔導士は光を掬う。
 おお、雅なる尤物――王国の恋人よ!
 吐息はかぐわしき麝香。優美なる接吻。
 調和と均整の生きた彫像。

 しかあれども王兵は、竜の一群れに打ち倒された。 
 邦は倦み、笛も太鼓も鳴り止む。
 至宝が悪鬼羅刹に勾引(かどわ)かされた故に。
 美姫は失われ、善良なるガルディア王は悲嘆に沈む。
153伝承の向こう側2/2:2006/07/26(水) 23:50:44 ID:Wa2sptTD0
 アルフリードよ。
 ガルディアに授けられし剣よ。
 泡沫の痛哭を覆し、世に光を齎せ。
 されば無限の法悦が、汝を待つだろう。
 
 悪しき王は、創生の秘密を知る。
 天地を生み出した、混沌より出でし者。
 魔導も剣も王には効かぬ。
 王の、唯一つ持たぬもの。それが王を弑(しい)す。

 呼び覚まされた神々が、航路を教えようぞ。
 悪しき王者に連なる道にと。
 世界の果てへ。フルツへ。
 名花の肉(ししむら……よみがなおおすぎ)が、汝を勝利へ見(かんじよめない)えるのだ。
 

 つーのをですね。クマウドとレッドXIIIとチョコボがやらされる羽目になったですよ。
例のゴールドソーサー、今度は200組目の学芸会で。
ついでにフルツの意味は「屁」です。はい。
「オイラがやるの?!」
「カップルじゃねえええ!!」
「ぶるあああああ!!」
「「「誰だー!?」」」
たぶん。勇者アルフリードも苦笑いです。伝承の向こうで。


おわるよ。
154名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/27(木) 21:22:13 ID:ge2mzgx4O
乙!
155名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/28(金) 15:59:44 ID:f9fslM9HO
156名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/29(土) 08:33:02 ID:pxhZfrrM0
保全
157名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/30(日) 12:09:41 ID:U90b/fsZ0
ほしゅ
158名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/31(月) 08:57:52 ID:PyYIm5Q20
保守
159名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/01(火) 00:08:35 ID:QGMp63IF0
160名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/01(火) 15:23:09 ID:lId9izW10
161名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/02(水) 14:23:43 ID:SsSGNAZ20
162名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/03(木) 00:58:30 ID:WHtWVz9x0
163名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/03(木) 01:39:58 ID:qN8emQas0
164名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/03(木) 11:31:19 ID:C40kahJt0

>>152-153
石版に刻まれた碑文の雰囲気と、テンポが心地良いです。
毎度思いますが神秘的な表現がうまいなぁ〜と。
笑いのエッセンスも良い具合で楽しかったです、乙!
(元ネタがあったらすみませんw)
165鼓吹士、リーブ=トゥエスティ[(1):2006/08/03(木) 11:45:20 ID:C40kahJt0
前話:>>138-140
舞台:DCFF7第12章(「待たせたな!」〜ED前まで)
----------
 切り離された脱出艇は予定通りの軌道を進み、無事ミッドガルに降り立った彼らを出迎えたのは、
今は廃墟と化した旧神羅本社ビルだった。
 リーブと一部のWRO隊員はデータ収集などで何度か訪れていたものの、シドが地上からこの
ビルを見上げるのは実に久しぶりの事だった。パイロットとして神羅に在籍していた頃はおろか、
旅の途上でも本社ビルに来る用など殆どなかったからだ。
 シドはまじまじとビルを見つめてから振り返り、脱出艇から機材を運び出しているリーブに向けて
問いかけた。
「こりゃ皮肉か?」
 でき過ぎた演出だなと眉をしかめるシドに、手を止めて穏やかに笑うとこう答える。
「考えすぎですよ、シド。このミッドガルで神羅にゆかりのない場所を探すことの方が難しいでしょう」
「そりゃそうなんだが、よりによってここは……」
「各魔晄炉へのルートは本社を起点に設計されていますから、この場所を選ぶのは妥当な判断です」
 この地に降り立つのは、あくまでも当然の状況判断なのだと、理路整然と語られるリーブの話
そのものには頷ける。
 しかし、まるで用意していたかの様な回答だとも同時に思う。
 もしかしたら、これを皮肉だと一番感じていたのはリーブ自身だったのかも知れない。だが、
シドが何事かを口にしようとした瞬間、思わぬ言葉が耳に届く。
「シェルクさん!」
 彼女の姿を見出すやいなや、リーブは機材もそっちのけで駆けだした。呆気にとられたシドや、
他の隊員が彼の後ろ姿を見送りながら。
「ありゃ、どこのオヤジだ?」
「……局長らしいですね」
 隊員の一人が、WROの腕章を見ながらぽつりと呟いた。
「とても心の優しい方なんです。それなのに、隙がない……だから私達は、ここまで来ることが
出来たんだと思います」
「そうだなぁ」
 別の隊員がその言葉に頷く。彼らは神羅と、メテオがもたらした数奇な縁によってWROに集った者達だった。
 しみじみと語う隊員達を見ながら、シドは吐き出したくなったため息を飲み込むと空を見上げた。
 分厚い雲が広がる空に、シエラ号の姿を見出すことはできなかった。
166鼓吹士、リーブ=トゥエスティ[(2):2006/08/03(木) 12:02:34 ID:C40kahJt0



「シェルクさん! よかった……無事でしたか」
「…………」
 いきさつを話そうとしたが、語ることが沢山ありすぎてどこから始めれば良いのかが分からず、
シェルクは無言のまま駆けつけてきたリーブを見上げた。
 呼吸を整えるのもそこそこに、穏やかな語り口で次々と言葉が落ちてくる。
「お怪我は?」
「ありません」
「体調は大丈夫ですか?」
「問題ありません」
 素っ気ないシェルクの返答にも、いちいち安堵のため息を吐くリーブの姿は、まるで家出娘の帰郷を喜ぶ
どこかのオヤジである。
 しかし、残念ながらリーブ=トゥエスティはただのオヤジではない。
 一息吐いて、向けられた笑顔からはとんでもない言葉が紡がれる。
「それではシェルクさん、これから私達は魔晄炉の破壊に向かうのですが、同行をお願いできますか?」
「…………」
 シェルクは驚いて目を見開く。
 記憶は一部あいまいだったが、恐らくディープグラウンドでさえこれだけ人使いの荒い者を見たことは
なかった。しかも彼の言葉はどれも“命令”ではない。拒むことも抗うことも、その気になれば不可能では
ないはずなのに、そうする事ができないのはなぜだろう。あそこで繰り返されてきた服従訓練によって
植え付けられた意識の影響、だけではない様な気がする。
 シェルクが口を開き何かを告げる前に、リーブはこう続けた。
「オメガ復活を阻止するために……我々に出来る事は少ないでしょうが、それでも、ヴィンセントの負担を
減らせるのなら、その行動には大きな意味があります。協力していただけますね?」
 立ってるものは親でも、あるいは娘でも、そして物ですら使う。
 それが、元神羅カンパニー都市開発部門統括責任者であり、現WRO<世界再生機構>の局長、
リーブ=トゥエスティという人物なのである。
「彼を……ヴィンセントをサポートすると、最初に申し出たのは私……ですからね」
 根負けしたようにシェルクは頷くと、彼らと共にミッドガルの大地に立つのだった。
167鼓吹士、リーブ=トゥエスティ[(3):2006/08/03(木) 12:16:13 ID:C40kahJt0

                    ***

 頭の中には、今でも詳細な設計図面が記憶として残されている。
 魔晄炉のどこを破壊すれば機能が停止するのか、もちろんそれを割り出すことは容易いことだった。
リーブの指示に従い、爆薬は仲間達の手で魔晄炉にセットされていく。
 悩んでいる暇も、理由もない。
 それが今、自分の成すべき事だと確信したからこそ、過去の自分が立てた誓いにも背くことができるのだ。
 魔晄炉の破壊。それはかつて繁栄を極めた魔晄文明の否定であり、決別だった。同時に休眠状態に
あったミッドガルに、自らの手で終止符を打つ事に他ならない。
 この都市は星の意志に導かれ、二度と目覚めることのない永遠の眠りにつく。

「……点火」

 数秒後、リーブの思い描いたとおりの光景が現実に展開された。
 崩れ落ちる魔晄炉を見つめながら声には出さずに礼を言うと、短く別れを告げた。

 空を見上げれば雲を突き抜けるほどの巨大なオメガが姿を現し、ミッドガルを見下ろしていた。
そんな中、彼は自らの手で魔晄炉を破壊するに至った。
 オメガからすれば一瞬にも満たない、だがリーブにとっては半生を費やしたミッドガル。その中枢を担う
魔晄炉は自分と、自分が信頼する仲間達の手によって破壊された。
 それでも尚、オメガは地上から飛び立とうとしている。
 オメガ復活を阻止する切り札とはいかないまでも、我々の力ではなにも出来なかったか――いや、
そんなはずはない。
 その証拠に、地上にいる我々はまだ生きている。
 ――すべての命を集める究極の生命、「オメガ」。
    命を集めしオメガは、終わりを始まりへと導くため星の海へと飛び去る。
    オメガは命を宇宙へと還すための箱舟。
    そして、すべての命がなくなった星は……やがて静かに死を迎える。
 それはまだ、オメガが完全に復活していないという事に他ならない。オメガレポートの一片は、
希望を示していると解釈し、リーブは空を見上げた。
168鼓吹士、リーブ=トゥエスティ[(4):2006/08/03(木) 12:20:32 ID:C40kahJt0
 それから、まるで語りかけるように呟く。
「オメガが飛ぶ。……これでは」
 遙か頭上にいるヴィンセントに、その声が届く筈もないと知りながら。それでも見上げた
空のどこかで、彼が頷いたような気がした。
 ライフストリームを纏い、生命の色に輝くオメガの巨体を追い抜かんとする勢いで上昇する
一筋の光を見出したのは、それから後のことだった。

 地上に残されたリーブにとって、あとは見守り信じることしか出来なかった。
 ――神など存在しない――いつかと同じように、リーブは今でもそう思っている。
 だから祈ることはしなかった。
 それに祈るよりも、仲間を信じる思いの方がはるかに強かったのだ。



 思いと希望を託し、空に向かってその名を叫んだ。
 祈りではないその声と、思いは、きっと届く。
 そう、信じていた。

                         ―鼓吹士、リーブ=トゥエスティ[<終>―


----------
・DCを語る上で外せない名場面(?)「いっけー!」の、特に画面上部のこと。
 (ゲーム内での時間経過は、ラスボス戦を境に前後します)
169鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(1):2006/08/03(木) 12:30:10 ID:C40kahJt0
舞台:DCFF7エンディング(REDEMPTIONが流れてる間の出来事。)
   :妙な投稿方法ですみません。この「9」で完結です。
----------



 宇宙の深い闇の中に輝く星々を背景に、大地へと降り注ぐライフストリームの雨は、
幻想的な光景を作り出していた。星を救う希望と願いを託し、飛び立っていった仲間を
思いながら、地上から大空を見上げる仲間達は言葉を失い、目の前で起きた出来事に
目と心を奪われていた。
 そんな中で、リーブは声を聞いた気がした。聞き覚えのある懐かしい、声。

 ――ありがとう。
    約束通り、迎えに来てくれたのね。

「……!」
 息が詰まり、まるで声の出し方を忘れてしまったとでも言うようにリーブは無言のままで
振り返った。全身に緊張が走る。
 聞き覚えのある懐かしい、声。
 その声の主を、リーブはよく知っている。

 ――リーブ君。どうやらあなたを後任にした事、間違ってなかったようね。
    期待通りの……いいえそれ以上の、結果を出してくれたもの。

「あ……」
 最初は恐る恐る周囲を見回した。声の主と顔を合わせるのが怖いと、どこかで思っていたからだ。
しかしそんな思いはすぐに消えた。
170鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(2):2006/08/03(木) 12:33:25 ID:C40kahJt0
 声のする方を振り返っても、今度はまったく逆の方向から声がした。向くべき方向を見失い、
リーブは周囲を見回しながら、呟くような小さな声で呼びかけた。
「あなた……は」

 ――しかもあなたらしい、最高の演出ね?
    こうしてミッドガルで再会できて良かった……。
    本当に、ありがとう。

「主、任……」
 声のする方向が頭上であると知り、リーブは再び空を仰ぎ見た。降り注ぐライフストリームの
中から、彼女の声がする。かつて自分とこの地に立っていた、彼女の声。
 その名を呼ぼうとするが、のどが震え息が詰まる。

 ――私も約束を守るわ。
    ミッドガルと言わず、世界中を見て回りましょう。
    もう一度、再生する
    いいえ何度でも。
    その姿を、一緒に……。

「ま、待ってくだ……」
 自分が発した声を自身の耳がとらえる。あまりにも弱々しく震えている声音に、普段なら
笑いそうなものだが、今はそれどころではない。伝えなければと、その思いだけしかなかった。
171鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(3):2006/08/03(木) 12:35:34 ID:C40kahJt0

 ――あなたが見る風景の中に、
    私はこの星の中に、
    あなたが私を覚えている限り……

「待ってください!」
 相変わらず自分勝手だと、そう思った。
 出会った朝の出来事、配置転換。そして、突然とも思える後任指名。
 同時にそれは、いつでも正しい判断だったのだと今なら理解できる。あの時告げなかった地底の闇、
その真実を背負っていたことも。
 だからこそ、この世界の再生への道を、共に歩んで欲しかった。

 ――生きているわ。
    あなたの中に。

 それが何を意味しているのか、今は考えたくなかったけれど。
 彼女は微笑んでいた。あの夜、闇に沈む地平線を背にした時と同じように。
「主任。私は……」

 ――さあ、立ち止まってる暇はないわよ。
    待っている間にやらなければならない事はたくさんあるでしょう?
172鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(4):2006/08/03(木) 12:42:08 ID:C40kahJt0
 星命学では、人の肉体が滅びその魂はライフストリームとなって星を巡ると説いている。
この星に住む生命を支え、星もまた、彼らに支えられて生きている。その間を絶え間なく巡るのが、
ライフストリーム。
 一度はこの星から飛び立とうとしたそれは、還ってきた。
 この星はまた、生き続ける。
 この星でまた、生き続ける。
 我々は今、その開始点に立っただけに過ぎない。
「……そうですね」

 ――それじゃあ、元気で。

「ええ、あなたも」
 リーブは空に向けて両手を広げた。降り注ぐライフストリームが呼び起こす記憶と、星を巡る
彼女の思いが、差し出した手の上で交差する。
 まるで最後の抱擁を惜しむように、ひととき淡い光が舞い降りて、やがてミッドガルの大地へと還っていく。
 込み上げてくる感情が、ほんの少しだけ視界を揺らして風景に霞をかけた気がした。


----------
・次回の投稿で終了です。広げすぎた風呂敷を畳みきる自信はありませんすみません。
173名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/03(木) 21:34:47 ID:uihV4ph20
・゚・(ノД`)・゚・。
174名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/04(金) 18:40:03 ID:rzhXzTcK0
次で終わっちゃうのか……………保守。
175名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/06(日) 00:20:08 ID:2eN8ZbAK0
ふぉしゅ
176名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/06(日) 08:45:18 ID:6nChUdOJ0
>>165-172
>しかし、残念ながらリーブ=トゥエスティはただのオヤジではない。

いつでも「お願いします」なのに、なんだろうあの断れなさ加減は。ニヤニヤが止まらないw
WRO隊員の、>「心の優しい人なのに隙がない」 という言葉になんかすごく納得。
しっとりした文体が心に染みます。早くラストを読みたいような、読みたいんだけれども
終わってしまうのがMOTTAI NAIような。マターリ期待sage
177愚か者の恋【1】 ◆DvBI45asCU :2006/08/07(月) 01:36:32 ID:B3NHiM0H0
※FF12のバルフレアとパンネロのお話。お嫌いな方はスルーよろしこです。
※投稿人、夢見がちです。甘ったるいのがお嫌いな方もご注意下さい。
※最終的に2人をくっつける予定ですが、続くかどうかは今の所未定。


うっそうとした濃い緑の中で白い喉がやけに印象的だった。

あれはどこでの戦いだったか。
バルフレアはぼんやりと思い出す。

(森の中だったから、ゴルモア大森林辺りだったけな。)

モンスターを薙ぎ払い、ふと後ろを振り向くと、
“お嬢ちゃん”が喉の辺りを手で押さえてこっちを見ていた。
『沈黙』の魔法をかけられていたのはすぐに分かった。

眉を寄せ、息苦しさの為か頬が紅潮し、目が潤んでいた。

実際、あの状態はかなり不快だ。
喉に何か粘っこい、得体のしれない物が詰まって
話せないだけではなく、すぐに息が上がってしまう。

その時の残りのメンバーが誰だったか覚えていない。

(お嬢ちゃんにしたって、たまたま傍にいた俺に頼んだだけだろう)

柔らかそうな金髪をお下げにして、短く切りそろえた前髪は
“お嬢ちゃん”をより一層幼く見せていた。
バルフレアにしたって、乳臭い子供だと思っていたのだ。
178愚か者の恋【2】 ◆DvBI45asCU :2006/08/07(月) 01:37:36 ID:B3NHiM0H0
(いや、子供だからこそ…)

そう考えかけて、それだと自分がそういう趣味の持ち主のようで
バルフレアは慌ててそれを取り消そうとする。
だが、どう言い繕っても自分の心に嘘は吐けない。

とにかく、その時の表情にバルフレアは心を動かされたのだ。
長い間自分でも忘れていた部分を思い出させ、強く揺さぶられた気がした。

息苦しさのせいで潤んだ瞳に上目遣いで見つめられ、

(とにかく…保護しなきゃ…って思ったんだ。)

その時沸き上がった感情をうまく言葉に表す事が出来ないが、
『保護』という言葉が一番近い気がする。

立っていたその場から、アイテムを放り投げてやればいいだけだった。
だが、その時は引き寄せられるように彼女の傍に歩み寄ると、
喉を押さえている手を自分の手の平で包み込んだ。

(手も…柔らかかったよなぁ…)

きめ細かい肌で、真っ白な手だった。
“お嬢ちゃん”は自分の行動が意外だったのか、
ちょっと困った顔をしたが、大人しくなすがままだ。

そのまま呪文を唱える。
と、喉に引っかかってるやっかいな呪いから解放された“お嬢ちゃん”は
うっとりと眼を閉じて、心持ち顎を上げて、ほぅ…っと小さく息を吐いた。
まるでキスの後みたいだったとバルフレアは思い返す。
179愚か者の恋【3】 ◆DvBI45asCU :2006/08/07(月) 01:38:11 ID:B3NHiM0H0
閉じられた瞳を縁取る睫毛、うっすらと開いた唇、
指先で突いてみたくなる様な柔らかそうな頬、
思わず唇を寄せたくなるような、無防備にさらされた白い喉。
いつもと違う彼女に見えた。

「ありがとうございました、バルフレアさん。」

“お嬢ちゃん”の声で我に返るまでの記憶が曖昧だ。
多分、惚けた様に彼女を見つめていたのだろう。
そんな自分の動揺を悟られてはと、何か軽口を言ってから手を離した。
“お嬢ちゃん”も、「もう!バルフレアさんたら!」なんて言って笑ってた。

それ以来、気が付くと目が“お嬢ちゃん”を追っていた。
最初は信じたくなかった。認めたくなかった。

「参ったな…」

幼なじみの世話を焼いている彼女の様子を
少し離れた所で頬杖をついてぼんやりと眺める。
隣に座っていた相棒は、聞こえなかったのか、
それとも聞こえない振りをしているのか、
黙って遠くを見つめているだけだった。

                    つづく。
180名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/07(月) 12:58:39 ID:9TcP+kVJ0
おぉ新作ですね!
これから始まりな感じが、とてもいいと思います。
続きwktkしながら楽しみにしています!
181FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:36:48 ID:AAxwo0lP0
※全体的に文章が下手ですがコレから上手になっていくつもりなので生暖かく見守ってください

プロローグ〜

眠りから醒めた

いつの間に眠っていたのだろう、ドーターの邸宅から窓を見つめると空が紅く染まっている
もう半刻ほどで夜が訪れるだろう

当たり前の様にやってくる夜のはずなのだが、私には強烈な違和感を感じる。


予感はあったのだ

私は腰を掛けていた長椅子から体を起こすと地下の貯蔵庫から私と同じ年に生まれた酒をとりだし
氷の入った容器に酒瓶ごと突っ込む

実はこんな歳になっても酒のどこが美味いのか私には理解できなかった
ムスタディオの奴は「酒は人類の相棒」などと言っていたが・・・

だがこの取って置きの一本は今夜彼らと飲み明かすために私の手元に来たのだろう

ふと、笑みがこぼれる、脚が軽い、待ち遠しい!
まるで恋でもしてるかのようである
少しばかり錆びたスラッシャーを手元に引き寄せ私は待つ

かつてシドのじーさんが亡くなる少し前に彼らが我が家に来たと云う旨の手紙を見た時は
信じられなかったが、今ならわかる。

狼の遠吠えがこの街に響き渡る、明らかに普通の狼ではあるまいその咆哮ー
数十年ぶりに彼の声を聞いた私は過去に想いを馳せる。
182FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:39:15 ID:AAxwo0lP0
どうやってココに来たのだろう?
僕は貿易都市ドーターのメインストリートの往来を虚ろに歩いていた。

アカデミーの仲間とはあのジークデン要塞の爆発のおりにはぐれていた
探そうとも思わなかった、彼らの道はどうやら自分の道とは違うらしい
違って当然だ
だって僕は逃げたのだから

人込みに紛れて僕は逃げる
あの爆発から、仲間から、べオルブから、ティータから、ディリータから。

夜は暮れてこの街の様子は少しずつ変わってゆく
街角に立つ娼婦や往来を肩で風切って歩く無頼漢
なんだかよくわからない物を売っている露天商
やる気の無さそうな官憲etc…

ドン、と胸に衝撃が疾る大柄な男とぶつかった様だ
失礼、と声を掛け立ち去ろうとした所止められた
「待ちな、にーちゃん人にぶつかってゴメンナサイもせず行こうとするなんざお行儀が悪いぜ?」
思考を切り替えて風景を見やるとチンピラ風の三人の男と二十歳そこそこの女性が居た
…どうやら僕はこの女性を口説いていたチンピラ達に空気を読まず前を見ず突っ込んで当った様だ
183FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:41:13 ID:AAxwo0lP0
「痛てーなぁ、こりゃちゃんと診療所行って治療してもらわないとなあ」
大柄な男が痛そうな素振りをみせて、中肉中背の方はこちらを何も言わず見ている
小男の方が何が可笑しいのかゲラゲラと笑っている

女性の方は気の毒そうにこちらを見ている
ベージュ色の髪をポニーテールにして、白い肌、露出が下品過ぎないくらいに仕上げた洋服を着ている
凄く綺麗と言うほどでは無いが美人な方だろう。なにより気の強そうな切れ長な目
茶色の瞳が印象的だ

頬に衝撃がきた、どうやら殴られたらしい
「この女に見惚れてる場合じゃないだろーがにーちゃん」
大柄な男がこちらを睨み付けながら威勢よく更に殴りつけてくる
別に当ってやる義理は無いのでそのテレフォンパンチをかわして後ろに下がる
「てめえ、いつ避けていいなんて言った!」
大柄な男が叫ぶが白刃が飛び交い矢が雨の如く降ってきた戦場に比べ
男のそれはまさしく素人の暴力だ、当る方がおかしいだろう。
「にーちゃんは兵隊くずれかよ、北の方で大規模な掃討戦があったらしいな。大方途中で逃げ出したんだろ?」
184FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:43:30 ID:AAxwo0lP0
小男の方が笑いながら言った。僕の中で適当な思考だった精神が切り替わる
「…逃げて何が悪い」
そうつぶやくと未だに当るわけの無いパンチを繰り返す大柄な男を
大降りのパンチにあわせて足を払う。無様に転んだ大柄な男の顎を足の踵で踏む
「☆▲××」
踏まれた蛙の様な声を上げた大柄な男の腹を蹴り飛ばして残りの二人の動きを視界にとめる
小男の方はあわててダガーを手にこちらに向かってくる。中肉中背の方は僕の動きを見て
初めて警戒心を顕わにした
「この野郎!」
小男に意識を向ける、ダガーを片手に持ち、無造作に近寄ってくるチンピラ
哂ってしまう。今まで相手にしていた命懸けの兵士達とは違いすぎる。

ワカラナイノカ

どうしてやろう?あんな危ない物を持てないように両腕の骨を折ってやろうか、
それともふざけた口を利けないように死なせてやろうか
気を練り、丹田に力を込め、目の前の愚者に集中する、と横やりが入る。
「止めろ」
中肉中背の男が素早く小男と僕の間に立ち、小男を止めていた。
185FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:45:08 ID:AAxwo0lP0
! その動きは戦士のそれ。小男を止めながらも僕に決して背を向けずこちらを見てくる
「悪かった」
男は短くそう言うと呻いてる大柄な男を起こして肩を貸し、小男にもう行こうと言う
小男の方はもうニヤニヤと笑ってはいない。恐怖を感じたのだろうか足が小刻みに震えて、顔色は真っ青だ

彼らが行った後。女性の方を見やると彼女はビクンと震えて僕を見た
彼らが怖かったのだろうか? いや、あの手の輩には手馴れた様子だった。

そうか、僕か…
街中で見せるような顔じゃ無かったのだろう。苦笑して、空を見上げた
曇っていた。月も見えない。しばらくしたら大雨になりそうだ
畜生、簡単な気分転換も出来ないのか

もうここに居る必要も無いだろう、黙ってまた歩き出そうとしたら。
「あ、あの!」
「助けてくれてありがとう…」
彼女はそう言ってお辞儀をした。
僕は彼女に軽く手を振って別れを告げた六秒後ゆっくりと雨が降ってくる
ゴロゴロと雷が鳴り本降りまで時間が無さそうだ。
まあどうでもいいかと思い、止めた足を歩かせる
と、彼女が近くまで寄ってきて僕に話しかける
「良かったら私の家で雨宿りする?」
186FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:46:46 ID:AAxwo0lP0
いくら助けて貰ったと言えども見ず知らずの人を家に誘うのはあまり良い事じゃないだろうに…
考えが顔に出たのだろうか彼女は慌てて首を横に振ると、
「違うの。私の住んでる所が宿屋なの、一階は酒場だしゆっくりできるよ。」
そうだったのか、思い違いを少し恥じると僕は彼女に話しかける
「お願いしていいかい?」


メインストリートから二つ程すじの外れた角にある宿屋の前に僕は居た
雨に濡れても良い事は無いため駆け足で走ったので少し息が荒い
看板を見ると【渡り鳥の木】と書いてある
一階が酒場でその上の階からは宿になっているありふれたスタイルの宿屋だ
外観は石造りで、オレンジ色の明かりが看板とドアを照らしている。
「入って。」
彼女に勧められてドアを開けると賑やかな光景が目に映る。
バイオリンを弾き歌を唄う弾き語りが楽しそうに酒の席を回り
客が酒を飲みながら今日一日の疲れを取るかのように向かい合った友人と歓談している

此処はあたたかい
187FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:48:53 ID:AAxwo0lP0
ジークデン要塞から逃げて以来、ろくに眠らず食べず過ごしてきた僕にとってこの風景は
安心感をもたらしてくれる。

彼女は店のマスターに話しかけしばらくするとドアに立ち尽くしていた僕に語りかける。
「しばらくゆっくりしていって。カウンターが空いてるわ」
カウンターに移動してしばしぼんやりしていると
「兵隊さん、何か食べる?一品だけ奢ってあげる」
彼女に言われて初めて自分が空腹である事に気がついた
が、僕はもう兵隊じゃない。
「もう辞めたんだ…」
「そう、お腹空いてるでしょ?何か適当に持ってきてあげる」
深く尋ねようとはせず軽く流してくれる配慮がありがたかった
僕は事実、色々放棄して逃げ出した脱走兵なのだから。
「フィッシュ&チップスとミルクを頼むよ」
「少し待っててね」
此処で彼女は働いているのだろうか、服を着替えている事に気がついた僕は
酒場のお客さん達に料理を運び軽く話しながら厨房へ行く彼女を眺めていた
と、お盆を手にこっちに近寄ってくる。
「ハイ」
「ありがとう」
受け取って見てみると美味しそうな料理と暖かいミルクが乗っている
夢中になって食べた、ふと視線を感じて料理から目を外すと彼女がさっき料理をくれた場所に
立ったまま、すなわち僕の近くから動かず見つめていた。
(美味しい?)
彼女の茶色の瞳が尋ねていて移動せずジッとしていた事に気がついた僕は恥かしくなり
声を出さず、コクンと頷いた。
188FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:49:45 ID:AAxwo0lP0
「ふふっ」
彼女は軽く微笑んで席を離れようとする。
「あ、待って」
「うん?」
「部屋空いてるかな?」
「ちょっと待って、お父さんに聞いてみる」
といい改めて席を離れた、しばらくすると戻ってくる

「相部屋でいいなら空いてるわ。どうする?」
「それでいいよ」
料理に夢中な僕は生返事をして彼女は僕に名前を尋ねる
「台帳に記入するから名前教えて」
食べるのを止めて、悩んだ
僕は、何者なんだろうかと。
もうべオルブじゃないだろう。妹のように思っていたティータを助けられず、
あの時撃てとアルガスに命じたザルバック兄さんを思い浮かべると僕とは違うと思う
べオルブというモノを僕は確かに見た。立派だった父、思慮深い長兄、勇猛な次兄、優しい末娘
…僕にはべオルブが相応しくないから、こう答えた。

「ラムザ・ルグリア」
189FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:57:45 ID:AAxwo0lP0
ライザ

ワショーイ!楽しい方がいい〜♪
脳内で変な歌を歌いながら私は歩く

酒の卸売り業者へ酒の注文を終わらせてから
家路を急ぐ。空模様が怪しい、多分降ってくる。
だというのに、チンピラに絡まれた。
適当にあしらってさっさと帰ろうと思っていたところに
まだ少年と言っていい年齢の子が彼らにぶつかった。

哀れな子だなと思い彼を見やる。亜麻色の髪に優しげな瞳、均整の取れた体
少し成りは汚いが風呂へ入れればさぞ良い男になるだろう。

…あ、殴られた、でも大して効いてないみたい。殴られる瞬間に首降ってたな
やる気の無さそうに大柄な男のパンチを避けてゆく。
大柄な男と小柄な彼は大人と子供が反転してるかの様ね
小男が台詞を語った後、状況が一変した。
190FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 18:59:21 ID:AAxwo0lP0
私は酒場に勤めていて、酒の席で暴れる人達を良く見ていた。
それらとは全然違う。暴力によってあの子を屈服させようとした彼らだけど
今はあの子のさらなる暴力の前に怯えている。
恐怖に負けたのだろうか、小男がダガーを腰から取り出して彼に駆ける

ああ、私は見てしまった。あの少年の貌を、暗い愉悦に浸っている瞳を。

あの人コロサレル

徒手空拳の彼なのに、あの表情を見た途端理解した。
あーあ、殺人現場に居合わせちゃった…

真ん中の人が小男を止めていた。度胸があるなあと素直に感心する。
戦争帰りの少年兵らしい彼に短く謝った後、大柄な彼を引き連れて逃げた。

彼が私を見る。怖い、震える。

あの子は私を見て悲しく笑った。

胸がキュンとする、鼓動が少しおかしい。
これが巷でいうブリッジ効果という奴だろうか?

彼はなにも言わず空を見上げた後顔をしかめて何処かへ行こうとする。
せめて礼をと思い立ち、感謝の気持ちを告げる。
191FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 19:03:13 ID:AAxwo0lP0
手を振り立ち去ろうとする彼、なんだか勿体無い気がする。
と、雨が降ってきた。おそらく結構な雨になるだろう
Oh!アジョラ
好機を頂いた事に感謝を。

夢中で料理を食べる彼、可愛くてジッとみつめてしまう。
あー、気がついた ねえ美味しい?

あの子は少し赤くなって、コクンと頷いた。

うーん、めんこいなぁ、だけど強いんだよね イイ!

呼び止められて振り返る。
泊まりたいらしい。だけど部屋はもう無いなあ いや、あった。
これはいい、お父さんも結婚しろってうるさいしどうせなら彼としたいかもしれない
容姿には自信がある。機転も利く方だ、彼も本望だろう。


Chapter1.5 第一話おしまい★
192FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:02:37 ID:AAxwo0lP0
悪夢だ。
いや、夢じゃない
だって、ディリータの叫びはホンモノの嘆きで
アカデミーの仲間は仕方が無いだろうという表情で
撃ったアルガスは当たり前の様に笑っていて
僕はアルガスに剣を抜き、戦いを仕掛けた。
アカデミーの仲間達と北天騎士団は手を出せずそれを眺めていた

「いい加減に気付いたらどうだ! 『違う』ってことにな!
「生まれも違うなら、これからの人生もまったく違う! 宿命って言ってもいい!
「ヤツとヤツの妹はここにいてはいけなかった! 花でも売って暮らしていればよかったんだよッ!

アルガスは弓を捨て、アイアンソードを構え突進してくる
嫌な奴だけどその剣技は本物だ。 
上段から切り掛かってきた剣を袈裟懸けから剣で払い間合いを取る

ラムザ、おまえはどうなんだ?
「何故、オレと戦うッ? オレに剣を向けるということは、北天騎士団を裏切るということだぞ!

アルガス、違うんだ。僕が剣を振るう理由はティータを殺したからだよ
ティータ。僕に花冠をくれた。妹と仲良くしてくれた。
貴族の学び舎で平民だからと言われても
僕やアルマやディリータのために泣き言を言わなかったティータ

「許せないんだ、平民だからって理由で殺した君が」
「君が!憎いんだ!」
193名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/07(月) 22:04:30 ID:AAxwo0lP0
そう叫ぶと彼に駆け寄り、遠心力を利用するように横薙ぎに切り掛かる
彼は剣でそれを受け止める、しかしその威力まで殺し切れなかったのだろう、
アルガスはバランスを崩して横に転がり距離をとる。

「筋金入りの甘ちゃんだぜッ! 何故、おまえなんかがベオルブ家に?

「僕だって、好きで生まれたわけじゃないッ!!

「それが甘いって言うんだよッ! 自分に甘えるなッ!!
「ベオルブ家は武門の棟梁だ! トップとして果たさねばならない役割や責任があるッ!
「おまえでなければできないことがたくさんあるんだ! それができないヤツの代わりに果たさねばならない!

「利用されるだけの人生なんてまっぴらだッ!!
アカデミーの仲間もそうだった。成績が良くて当たり前と言われて教官からは子供の頃から世辞を言われて、
僕をちゃんと見てくれたのはディリータとティータとアルマだけだった…なのに!コイツは!!

利用されるだけだと? ふざけるなッ!!
「ベオルブ家がベオルブ家として存在するために、オレたちは利用されてきた!
「いや、もちろん、オレたちだってベオルブ家を盾として、その庇護の下生き続けることができた!
「そうさ、持ちつ持たれつの関係を築いてきたんだッ! そうやっておまえは生きてきたッ!
「利用されるだけだと? おまえは、“親友”と称するディリータでさえ利用してきたんだ!
194FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:05:59 ID:AAxwo0lP0
「僕がいつディリータを利用しただって!?」
あまりの怒りの前に肉体の制限を無視した行動に移る。
立ち上がろうとした彼に向って剣を投げ、さらに

渦巻く怒りが熱くする!
 これが咆哮の臨界! 波動撃!

雪を蹴り飛ばして接近する
彼は慌てて自分に向ってくる剣を剣で弾いたがさらなる攻撃が直撃して
「がはっ」もう逃げれない敵を目前に
叫ぶ、拳を血が出るほど握り締めて

熱き正義の燃えたぎる!
 赤き血潮の拳がうなる! 連続拳!


全ては彼の体に打ち込まれ戦意を失う敵
彼が弾いた剣を拾い上げる。

「く…くそッ…… おまえたち……な、軟弱どもに………やられ……

「死んでくれ」

止めを刺した
195FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:07:34 ID:AAxwo0lP0
「ハァハァ…」

息を整える、周囲を見渡した。
ディリータがティータの亡骸を抱きしめて呆然としている。
砦から小さな爆発が起きている、ディリータ。そこに居ちゃいけない

「ディリータ!」

叫ぶ、彼は僕を虚ろな目で見つめなにかつぶやいている
罵られてもいい、嫌ってくれてもいい、だから〜

「そこから…!」

ひときわ強い光りが要塞を包む。白銀の世界が強烈な炎に圧倒されている
要塞が、爆砕した。
196FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:09:01 ID:AAxwo0lP0
「アッー!」

夢から醒めた。変な声をだして横長のソファーから毛布を蹴っ飛ばして起きる。

「ちょ、ちょっと、どうしたのよいきなり! TDN?」
「いや、なんでもないよ ところでTDNってなに?」
「さあ、よく分からないわ。」

ベージュ色の髪をといた半裸の彼女。ライザを前に悪夢でハァハァしてると、ふと疑問が浮かぶ
「ねえ、ライザ」
「なに、ラムザ」
「どうして僕の部屋に半裸で?」

ライザはハァ、と軽くため息をつくとこう述べた。

「昨日相部屋だって言ったでしょ?私の部屋よ」
「ええっ!」

部屋を見渡すと確かに簡素な作りの部屋ではあるが普通の客間とは違い
カーテンや絨毯、出窓に花があしらえてあったり、なにより女性の部屋特有の良い香りがする。
昨日疲れて眠かったタメ彼女に案内されるがままにソファーに倒れこんだので
部屋の様子を探る機会など無かった
驚いた、彼女には貞操を守ろうとする心構えが無いのだろうか…?
197FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:11:41 ID:AAxwo0lP0
「ダメだよライザ。その、親しくない人と同じ部屋で眠るなんて」
「あー大丈夫、お父さんには彼氏だって紹介しておいたよ。」

「ちょ、」二度目のサプライズに僕は言葉も出ず彼女は着替え出す。
「★■μΩ」
「とりあえずラムザも着替えなよ」

変な声を出してる僕を横目に彼女は服を調えて、髪を昨日と同じポニーテールに結い
軽く香料を塗り薄化粧をする。僕はボーっとそれをみていた。

「なーにみてるのよ、スケベ。」
「い、いや」

僕が貴族の名門、べオルブ家に生まれて市井の生活を知らないせいなのだろうか。
悩んでいると彼女は告げる

「…誰にだって部屋に泊めるような女じゃないわ。」
「じゃあ、なんで?」
「助けてくれたし、強いのに照れ屋だし、可愛かったからからかな。他にも理由あるけど…」
198FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:13:15 ID:AAxwo0lP0
ライザは頬を染めて、だけど僕をしっかり見てそう言う。
僕が恥かしくなってくる、それに僕は決して強くは無い。
本当に強い人を知っている。以前山賊狩りにザルバック兄さんの小姓のような感じで従軍した時
兵団の先頭に立ち、必死の反撃をしてくる山賊を嘲笑うかのように切り捨てていった様子を思い出す。
…あれくらい強ければ、ティータを助けられたのだろうか
思考を深めていると彼女は不機嫌そうに話しかけてくる。

「もう時間無いよ?一緒に朝御飯食べよう」

僕は考えるのを止めて彼女と一緒に一階に降りた。



朝ご飯がおいしい。
ライザのお父さんが不機嫌な顔で出してくれた料理がどんどん口に入る
不機嫌なのは仕方が無いだろう、娘がいきなり彼氏と紹介して
あまつさえ娘の部屋に一泊していったのだ。
やはり変だ、市井とか貴族とか関係なさ過ぎる。向かいに座る彼女に疑問の声をあげた

「ねえ、どうして彼氏って紹介したの?」
「聞いてくれる?」
199FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:15:02 ID:AAxwo0lP0
ライザがため息混じりに説明してくれる

「お父さんがさ、そろそろ結婚しろって」

変では無いだろう、アカデミーの同僚達を思い浮かべれば既に婚約している奴らも居た。
結婚適齢期がやや過ぎてるライザが心配で彼女のお父さんは見合いを勧めたのだろう。

「変な事かい?」
「紹介されたのが三十過ぎてる人でも?」

彼女の立場に自分を置き換えてみた。こうするのが一番わかりやすい

「いやだ」
「でしょ」

真剣な彼女の顔を見ると、ホントに嫌そうだ。

「だからしばらく彼氏の役してくれないかな?」
「どうせ今は無職なんでしょ、お願い!」
200FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/07(月) 22:16:33 ID:AAxwo0lP0
うーん、彼氏って職業だったのだろうか。
そんな事を考えていると彼女の顔がすぐ近くに見える。
テーブルから身を乗り出し、今からキスでもするのかと言わんばかりだ。
お父さんがカウンターで憤慨してるようだが気にしてはいけないのだろう

どうせやることももう無いしなによりしばらく逃げたかったのだ、昨日の夢から。

「いいよ」
「わーお」

彼女の軽い返答に頷いて、食事を再開するとライザはこう言ったのだ。

「じゃあ、しばらくうちで働いてお父さんに気に入られてね。」
201名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/08(火) 00:00:18 ID:ePHouxdf0
>>165-172
いつもGJです。
いよいよラストですか…wktkして待ってます。
でも、終わるのが寂しいような…

>>176
遅レスですが、リーブ本スレで『リーブが主役のゲーム』
ネタで盛り上がってましたよね。
確か、リミットブレイクが「お願いします」だったかな?

202名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/08(火) 08:45:03 ID:JAt94ymCO
FF12 バルフレア+フラン
※死ネタ



もう何十年も前のことよ。
聞きたいの?…仕方の無い子。
大切なヒュムよ。ええ、ヒュム。
ヴィエラではないわ。
…違うわ。恋とか愛とか、そういう括りではなかった。
信頼してたわ。大切な仲間だった。
…病だったわね。彼、お酒が大好きだったから。
そんな無粋なこと言わないわ。
死ぬまで自分の好きなように生きたいでしょう。
最高に素敵な人だったわ。
…それ、今度彼の墓前で言ってごらんなさい。
現れるかもしれないわよ。
かわいい子には目がなかったから。
…さあ、もうお話しは終わりよ。
眠りなさい。森も眠る時間よ…。
203名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/08(火) 13:48:35 ID:KIxrLySW0
>>177-179
新作待ってました! すいませんバルフレアとかパンネロの前に
沈黙(12もサイレンスで良かったか?)の魔法が思いがけずエロいことに気づきましたw
効用までさり気なく解説されてかなり説得力があってその辺も面白かったです、…いいなサイレンス。
心優しく純粋なお嬢ちゃんと、GB解説が印象的な愉快なお兄さん…SSの今後の展開を楽しみにしてます。

>>177-200
2章で登場するラムザが1章と比べやけに大人びていたのは、ガフガリオンの指南だけではなく、
むしろ女の方が特効薬になってるかも知れない!? …という新たな視点に興味がわきました。
両者の対照的なとらえ方と、ライザ視点で使われる言葉が斬新で面白いです。続きお待ちしてます。
句点を意識的に付けるようにすると、もうちょっとメリハリが出て読みやすくなるかも?
(特に長編だと、どうしてもダレてしまう…様な気がするので。文章のテンポは維持した方がいいかな、と。
あくまでも主観ですが)
一読者からの余計な感想と思っていただければ幸いです。それから、好きこそものの上手なれ、ですよ!

>>202
冷静沈着なフランらしい、だけどバルフレアへの気持ちがちゃんと出てて(良い意味で)切なくなりました。


レイスウォール王墓の壁の前から動けずに、早4ヶ月…ナンデヤネン!>orz
204FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 18:53:00 ID:e4/odqhT0
※感想頂けるとやっぱり嬉しいです。句点にも注意してみます。


かれこれラムザが【渡り鳥の木】で働き出してから一ヶ月が過ぎたある日。
皿洗いをしつつ食器をテーブルから引き上げ、12:00のチェックアウト時間を境目に、
ベッドメイキングをしてそれらの雑多な仕事を終わらせるとラムザは一階に降りた。

遅い昼食を食べて次の仕事の事を考えていると自分がこの生活を楽しみ始めているのがわかる。
最初はなれないベッドメイキングに腰を痛めて仕事が終わったら自室にてひっくり返っていた
ものだが、慣れるにつれてコツの様なものを理解した。
酒場のマスター、親父さんはなんやかんやで手抜きをしない僕の事を認めてくれているようだ。
…ライザはやらん と言われたけど。

彼女との関係は一緒に働く職場仲間という感じだろうか、不慣れな作業を丁寧に教えてくれたり
たまに一緒に出かけたりする。ふらりと夜に僕の部屋にやってきて僕の頭をグリグリしてくる事もある。
朝起きたら何故か不機嫌そうな彼女がプレッシャーを掛けてくるけど…

食事タイムもピークを過ぎ、3:30ごろに男がやってきた。
205FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 18:55:29 ID:e4/odqhT0
しっかりとした作りの剣を背に乗せ、眼光はするどく、歩き方は自然なのに隙が無い。
道で出会ったら間違いなくモーゼの怪異が起こる事間違いなしの空気を放っている。

使い古した各部を守る鉄製の部分鎧。
磨耗してはいるがその事実が歴戦の兵である事を証明している。
次兄ザルバックと比べるとさすがに劣るだろうが、それでも自分より遥かに強いだろう。
とラムザが考え事をしていると、

「小僧 酒と軽い物を用意してくれンか?」

奥の厨房からマスターの作り置きを片手に狼っぽい被り物を被った傭兵のところに向うと
マスターと儲け話の会話をしている、自然と耳に入る。

「ああ、一週間前に入港予定だったサルヴァドル商会の船の積荷かい?」
「おう、そこの商会からサルベージの依頼でな。浅瀬で座礁した貨物船の事について知ってるか?」
「あんたなら大丈夫だろ…サハギンなんてあの周辺には居なかったし、積荷も一般雑貨なはずだ。
 あんた程の猛者がするような仕事じゃないと思うがなあ」

傭兵は頭を少し振ると話しをすり替える。

「実は腕の立つ奴を探してるンだが、心当たりは?」
「入港管制センター付きの水夫が居るじゃないか。サルベージなら連中も手馴れたもんだろ?」
「いや、水夫だけじゃ駄目なンだよ。ところで料理はまだか?」
206FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 18:57:34 ID:e4/odqhT0
彼の声で足を止めている事に気がついた。酒もアルコール度数が高くない物を選び持ってゆく。
彼の座るカウンターの前に料理と酒を並べて皿洗いの続きをしようとしたのだがー

「待ちな、小僧」

呼び止められて、振り向く。彼の気に障ることでもしただろうか?

「小僧、金を稼ぐつもりはねえか?」

? よくわからないという表情を浮かべ彼に仕草で尋ねると、

「そこそこ場数は踏んでンだろ?ーー歩き方が戦士のソレだぜ。
 自然に気配まで探ってる、そこまで出来るなら戦えるンだろ?」

「1000ギルでどうだ?」

1000ギル。およそ一般家庭での一ヶ月分の収入だ。だけどこの手の大金を払うような仕事は大抵ヤバイ。
207FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 18:58:46 ID:e4/odqhT0
どうしたものか返答に困っていると、

「ただいまー」

ライザが帰ってきた。両手に野菜が入った袋を持ち、
エプロンドレスのポケットからは伝票がはみ出している。

「ラムザー、重いよ」

暗に持てというのだろう、そう告げる。
僕は彼女の手から荷物を受け取ると貯蔵庫に足を運びーー

「明日の朝の7:00にメインストリート南門外で集合だ、やる気があるなら来い。」

食事を終えていた傭兵がそう言って席を立つ。

時刻はすでに5:00を迎え、外は夕日に染められてる。
傭兵はドアを開け、赤光の中へと征くーー
208FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:02:02 ID:e4/odqhT0
全ての仕事が終わり自室で準備をしていると彼女に襲撃された。
「Hi」
短くそう言うとベッドに座り込む。僕を見つめる彼女の茶色の瞳は、見咎めるようで辛い。

「ねえ、夕暮れの傭兵さんとサルベージに行くの?」
「いや、まだ決めてないんだ。」
「うそつき。」

そう、確かに嘘をついているかもしれない。だって明日の準備をしているのだから。
皮製のロングコートに部分鎧つきの革服、一ヶ月使ってなかった薬品類の入ったポーチを肩に、
多分一番僕の持ち物の中で高級品なミスリルソードを帯剣している。

「あの人ラムザと似てたね」
「全然違うと思うよ?」
「そうじゃなくてさ、歩き方とか、空気とか。」

そうなのかもしれない、もう僕の戦いは終わったはずなのに何故か戦う事に執着している。
何故だろうーー多分、ライザは僕にも分からないこの気持ちを分かっている。そんな気がした。

「うちのアルバイトさん、怪我しないで無事に帰ってきてね」

すっと、コートの中に入ってきて僕をみつめる彼女に言い表せない感情が込み上げてくる。
この一ヶ月、ライザに助けてもらいっぱなしだった。困っていたら手を添えて色々教えてくれた。
最初の頃疲れてベッドで倒れていたら上に乗ってマッサージをしてくれた。
さりげなく頭を抱えられ抱きしめられたまま朝が来た事もある。      
ドキドキする、どうすればいいんだろう--彼女を目前に今回も僕は固まっていた。
何故か申し訳ない気持ちでいっぱいになる…
と、手で目隠しされ唇に暖かくて柔らかいものが触れる。

彼女は微妙に速い、そそくさとしたスピードで部屋から去っていった。
209FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:07:49 ID:e4/odqhT0
かくして、朝は来る

仕込みをしていたマスターにさりげなく今日行く事を告げて、
彼女と鉢合わせしないように早朝出発する。

メインストリートを歩く。まだ人気は少ない、開店してる場所など足の速い商品を売る卸売り業者ぐらいだろう。
蜂蜜を縫って軽く焼いたフランスパンを齧りながらゆっくり僕は進む。門外へと。

やはり速すぎたのだろう、人気はあまり無い。早朝集合組みの水夫が事前準備のために
チョコボに物資を積んでいる。何故か一羽のチョコボが接近してくる。「クークー」
僕を見つめて、頭を僕の胸にこすり付けてくる。人懐っこい奴だと思いしばし撫で回す。

「おう、早いな。」

彼だ、特徴的な被り物を被りゆっくり僕に近づいてくる。

「結局使えそうなのはお前しか見当たらなかった、名前は?」
「ラムザ・ルグリア」

彼はフン、と鼻をならし自らも名乗る。

「ガフ・ガフガリオンだ」
210FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:09:41 ID:e4/odqhT0

何処かで聞いたことのある名前だ、有名な傭兵だったのかーー
視線を感じる。その方向へ目を向ける。
一ヶ月ほど前に出会った大、中、小の三人組が居た。
ああ、水夫だったのか。彼らをジッと見ていると居心地が悪くなったのか仕事へ精を出す。

「なンだ、水夫の中にも出来そうな奴が居るじゃねえか。」

中肉中背の事だ。彼は斧を持っていた。バトルアックスだろう、所々刃や柄が欠けているのは
その鉄でいくつもの凶刃を防いできたのだろう。
今日の仕事が尋常に終わらないのなら、頼りに出来ると思った。

「今日の俺達の仕事はな、キャラベル級の船底の一番奥にある。
 一般雑貨は水夫達に任せりゃいい。まだ座礁して一週間程だ、
 モンスターもそんなに巣くってねえだろ」

「どんなものだ?」

彼は真剣な目でこう言った。

「チョコボだ」

道中チョコボだけでは分からなかったのでガフガリオンに詳細を聞いてみた所。
いわく、新種のチョコボだ。狼のようなチョコボだ。
いや、単眼の悪魔の様な幽霊の憑いたチョコボだ。
つまり、よく分からないらしい。
ただ綺麗で獰猛だと。
チョコボを捕まえるか、始末してほしいというのがクライアントの要望だった。
放置しておけば飢え死にするだろうが…

こうしてサルベージ隊は座礁した船へと向かい11:00頃に現場へ到着した。
211FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:13:33 ID:e4/odqhT0

あらかじめ用意されていた小船に乗り移りキャラベル級の甲板にロープをつたって上がる。
予想されていた様な雑多な海洋モンスターは存在しなかった。楽な仕事になるのだろうか?

「水夫はサルベージを開始しろ!」

ガフガリオンが渋いよく通るバリトンボイスで叫ぶと水夫達は船倉を目指して駆け足で行く。
僕とガフガリオンは船底に行くので彼が指示を終えるのを待つ。
少ししたら彼が近づいてくる。

「そろそろ行くか」
「わかった」

急に賑やかになったキャラベル級をさっと見渡しながら僕らは降りる、船底へ。
降りるにつれ異様が増す。まるで階段をひとつ降りる度に空気の重量が増して僕らへ圧し掛かる様だ。

なにかある 
212FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:15:02 ID:e4/odqhT0
そっと剣の柄を握りいつでも抜剣出来る用意をする。
先頭を行くガフガリオンは仕事の見通しが暗くなってきたのを感じて不機嫌そうだ。

頑丈に施錠された一つの船倉へたどり着く。
…ガフガリオンはムゥ、と唸ると鍵を開けようとする。

「待って、イキナリ開けて平気なのか?」
「開けなきゃ話しにならンだろうが!」

まったくその通りだ、言葉も無い。

「少し待って」

白魔法の詠唱を始める

森羅万象の生命を宿すものたち
 命分かち、共に在らん! リジェネ!

続いてプロテス、シェルを唱え準備を整える。
彼がおっ?といった感じで僕を見る。

「おいラムザ、他には何が出来るンだ?」
「白魔法が少しと拳術、後は武器一通り使える」
「なンだそりゃ、便利な野郎だな」
「よし、開錠するぞ準備はいいな?」
「大丈夫」

ー今修羅場の門が開く
213FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:18:13 ID:e4/odqhT0
開門した途端だった。
黒だったり、銀だったり、色がよくわからないあの生き物はー
僕らを吹き飛ばしその辺へぶちまける。

「ガッ!」
「クッ!」

立ち上がる、駄目だ立てない。
ガフガリオンの方を見る、彼も同様のスタイルでひっくり返っていた。

「糞が!アレの何処がチョコボなンだ!」

ガフガリオンが悪態をつく、確かにあんなものチョコボじゃない。
肉体など無いかの様に銀と黒のナニカを行き来するアレはー

意識を戻し冷静になる。状況判断を開始する、アレは上に凄まじい速度で上がっていった。
上か。水夫が居る。ヤバイ、彼らとアレじゃ屠殺される羊と狼のようなものだ。

「ラムザ!」
「ああ!」

リジェネの効果でようやく立てるようになった僕は詠唱時間の短いケアルを唱える。

駆け上がる!遅れたら遅れた分だけ水夫が死ぬ、彼は紅黒い剣を抜き僕もそれに習う。
彼らの叫びが聞こえる、屠られているのだろう。
214FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:20:58 ID:e4/odqhT0
ひどい有様だった。上半身を吹っ飛ばされた者、両足が無いもの、顔半分が無いもの、
まさしく貪られている。いやそれだけじゃない、魂が欠けているように見える。
…クリスタルにも慣れやしないだろうな。
と、内臓が出てヒューヒューと音のなる誰かに足をつかまれた。
「た、助けて」
…もう、無理だろう。レイズでは肉体は直せても魂までは直せない。
首を振りすまない、と告げる よくみれば一ヶ月前の小男だった。
「たすけて、たすけて…」
うわ言の様に繰り返す彼には悪いが、此処で行かなければもっと死ぬ。
手を振り解いて、僕は進む。彼を見ないようにしてー

「ラッドをたすけて」

脚が止まる。彼は自身が死の間際だというのに、その生命を省みず他者の心配をしているのだ。
苦しい、何故かティータを抱きしめたディリータが脳裏に浮かぶ。
「アレは何処へ行った?」
ガフガリオンが尋ねる。
「ら、ラッドのののの方へ、い、いった」
「ラッドとやらは何処に居るンだ!」

命の全てを使い果たしてでも彼は伝えたかったのだろう、上の甲板ではなく
中層の船倉へ震える手を向ける。
それが彼のー名も知らぬ小男の最期だった。
多分僕はこの人の事を一生忘れないだろう。
闘志が湧いてくる、戦う理由も出来た。
ガフガリオンの方を見ると彼も胸に何か想う事があったのだろう。
無表情だが、彼から湧き出でるその赤いオーラを確認できる程に猛っている。

今は疾れ!疾れ!疾れ!
215FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:24:59 ID:e4/odqhT0
彼は、ラッドは確かに居た。バトルアックスを構え、かなりの速度で船倉内を上へ横へ駆け回る
あのナニカと必死に戦っている。

否、逃げている。

ガフガリオンが剣を振るう。その距離からでは当らないし、あの速度で走るナニカに当てるのは
至難の業と思って居たがー

「神に背きし剣の極意
 その目で見るがいい… 闇の剣!

闇が迸る!
ナニカにかすって、アレは軌道を変える。
ラッドの方へと。
彼は逃げずに斧を振りかぶり、一撃を入れんと振るう。
直撃!
ナニカは黒と銀に別れ失速して蹈鞴を踏む。
黒い方がありえない速度で僕に迫る!
それを追撃するように襲い掛かる更なる銀!
216FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:27:25 ID:e4/odqhT0
迫り来る黒に僕は意識を集中する、当れば必殺となるその悪意に更に集中する。
駄目だ、アレに秘孔なんてない、いいや、それでも視ろ!
銀が黒に覆いかぶさる。アレに、秘孔が視えるー
この一撃に全てを掛ける!


「この指先に全身全霊を込めて!
 地獄への引導! 秘孔拳! 


「…………………………」


消えた、と云えばいいのだろうか?アレは内側にグルグル廻りだして体をどんどん小さくして。
消えた、消えたのだ。

得体の知れないナニカが居なくなり重圧に感じた空気が軽くなる。
終わったのだ。




なのに、終わったのに、終わったのにおわったのに終ったのに!!!!!
217FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:30:25 ID:e4/odqhT0
今度は外側にくるくる廻りだして、生まれてくる!!
銀と黒が廻り、どんどん大きくなる…


ラッドの方を見る。絶望を顔にいっぱい浮かべて、泣いている。
ガフガリオンを見る。呆然としていたのは一瞬、怒号が響き渡る。

「逃げろーー!!」

生きている水夫に叫びながら甲板へ僕ら三人は走る!


思考は真っ白、もう何がなんだか分からない。
ただ、上へ行きたい。

出口が見える。あれを通り抜ければ甲板で、小船に乗って戻る。
ああ、助かるー

ライザが待っている、暖かい腕で抱きしめてくれる。
僕の世界に帰れる!
218FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:32:46 ID:e4/odqhT0
ソレハイタ

楕円の動きをして、甲板を這っている。
…出口なんてなかったのだろうか


歪んだ 否 哂った ワラッタ

来る!

僕に向けて、奔るナニカに体当たりされてー


命が汚染されてゆく、魂が冒涜されてゆく。
ああ、コイツに殺された水夫達はこんな目にあったのか。
暗い深遠の果てで僕は人をみた。

父さん?

父さんらしき人が近寄ってくる。
ぽんぽんと、僕の頭を叩く、暖かくてー
「このまま終ってもいいのか?」
219FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:35:45 ID:e4/odqhT0
嫌だ

「アレに全て食われるぞ?」

嫌だ!

「アルマも、ライザも、ラッドとやらも、今日を生きる者すべからく喰われるぞ?」

嫌だ!!

父さんは、優しい顔でー


「なら、征ってこい」

僕を蹴り飛ばした


「AAAAaaaaaaAAAA!!!」
220FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/08(火) 19:36:52 ID:e4/odqhT0
SHOUT!

叫ぶ!叫べ!命を燃やせ!


緑色のオーラに包まれて、
魂そのものをぶつける。
言葉は思い浮かぶままにー

ナニカに向って放つ

「虚栄の闇を払い 真実なる姿現せ
 あるがままに! アルテマ!」 

極彩色の光りが甲板を中心に広がる。

あるべきものをあるがままに
あってはならないものをなくして

光りは収まった。

コロン、コロンと転がってきた黒と銀の宝石を尻目に周りを見渡す。
ガフガリオンもラッドも水夫も呆然と僕を見る。
限界だ、意識を失った。



銀の狼と、単眼の脅威が争っている。
永劫に続くかに見えたその戦いはついに終る。
溶け合って、堕ちてゆく。
221名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/08(火) 20:54:50 ID:O6cPy4IO0
新作ラッシュwktk!!
222名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 10:49:40 ID:KlXjVUQo0
>>220
なぜこの時点でアルテマが使えるのかの解説を
wktkしながら待ってます!
223FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:08:08 ID:kIzH54Aj0
※私にもなぜ使えるのかさっぱりわかりません

紅い、光りが窓から刺している。
体が痛い、だけど動けないほどじゃない。
ベッドから身を起こし一階へ降りようとする。
違和感を感じてベッドの真ん中をみる。
ライザがベッドにもたれ掛かる様にして眠っていた。
僕を看てくれていたのだろうか、少し元気の無い彼女の横顔を見つめて、
揺すってみる。

「うぅん…」
「ライザ、ライザ」

のそりと彼女は起き上がり僕を見つめると、
抱きついてきた。

「馬鹿!バカバカ!」

胸を力の入っていない拳で叩かれる。
こんな気持ちにさせた事を申し訳なく思って、少し強めに抱きしめる。

「もう、目覚めないんじゃないかって思ってた。」
「ちゃんと起きたよ。」
「だって、三日間も眠っていたのよ?
 もう、駄目なんじゃ無いかって思ってた…!」

そうか、三日も寝ていたのか。命を燃やした代価にしてはこうして
再び自分の世界に帰ってこれた事を天に感謝しないと。
一時の間だったが共に生死を分かち合った彼らの事が気に掛かる。
224FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:10:27 ID:kIzH54Aj0
「ねえ、ガフガリオンとラッドは?」
「傭兵さんと斧を持った水夫さんは下でお酒を飲んでるわ」

そうか、無事だったか、良かった。
他の水夫達はどうなったのだろうか?

「他の水夫達は…?」
「合同葬儀も終ったよ」

「下へ降りましょう?美味しいの作ってあげる」
努めてなんでもないようにさらりと彼女は言うと僕をベッドから連れ出す。
手を引かれて、僕らは下へ降りる。
彼女は手を離すと厨房へ行く。
ああ、随分皿洗いサボったから大変じゃないかな、馬鹿な事を思い浮かべる。

「ラムザ!目が覚めたのか!」
「!」

酒場の隅の方のテーブルから声が上がる。
ガフガリオンとラッドが飲んだくれていた。
少し、不満に思う。僕はずっと眠ってたのに彼らはずっと此処で酒浸りだったのだろうか…
「ボーっとしてねえでこっちに来いよ!」
「…」

ラッドがイスを引いてくれる、ガフガリオンがまだ僕が席に着いてないのに、
一人でグラスを持って乾杯している。
ー笑みがこぼれる。しかめっ面して不機嫌だという事を表そうとしたのに脆くも企みは崩れる。
「なに変な顔してンだよ?とりあえず飲め!」
「飲むよ!」
225FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:11:41 ID:kIzH54Aj0
ガフガリオンの持っていたグラスを取り上げて飲んだ。喉が熱い、美味い!

「この無口な奴とサシで飲んでもつまらンよ!」
「…悪かった」

二人は僕が寝込んでる間に随分仲良くなったようだ、楽しそうに笑っている。

「「乾杯!」」

二人して祝ってくれる、嬉しかった。僕の事を心配してくれる。
マスターが酒を持ってやってくる。ドン、と安い酒を置いてカウンターへ戻る。
奢ってくれるのかな?
ライザが料理を持ってきてくれた。いい匂いのするステーキをテーブルに置いて
僕の頭を後ろから抱きしめてくる。

ガフガリオンは下品に笑って、ラッドは俯いている。見苦しいのだろうか。

僕らは飲んだ、飲んだくれた。
226FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:12:47 ID:kIzH54Aj0
夜も更けた、ラッドはテーブルに突っ伏して眠っている。

「ガラック…
 カーン…」

大柄な男と小男の名前だろうか、ラッドだって悲しく無いわけは無いのだ。
酔って一時忘れようとしても、忘れられないのだろう。
黒い瞳からは涙が零れてテーブルに伝っている。
ガフガリオンがクライアントに怒鳴り込んだ所、そこまで凶暴な生物では無かったらしい。
時間の経過によって他のものへと換わっていったのだろうか…

マスターはカウンターで食器を洗っている。
そろそろ今日も終るな、と安酒をちびりとやりながらツマミに手を伸ばす。

「なあラムザ、俺がやっと一人前になった頃にな、
 見た事があるンだよ」

彼は約束の報酬を僕に渡してそう言う。
何を見た事があるのだろう?
あのナニカだろうか。
僕の表情に苦いものが浮かんだのを見て彼は違うと首を横に振る。
227FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:14:41 ID:kIzH54Aj0
「おまえさンのオーラだよ」

自分でもよく覚えてないが、僕にも一握りの人間しか出せないオーラが出たのは確かだ。
気までなら大抵の人は修練さえすればその体の内側で燃やせるけど、オーラは違う。
ガフガリオンは、何処で見たのだろう?
仕草で先を促すと、彼は思い出すように語る。

「あれは俺が東天騎士団の騎士になっていた頃だな、ゼルテニアの総力戦だった。
 鴎国はまだ負けてもいい状況だったさ、畏国は負けたらおしまいのギリギリだったがな。」
「北天騎士団との合同作戦でな。あの緑色のオーラで鴎国兵を吹っ飛ばして、鴎国の戦列を
 瓦解させてたトンデモ騎士が居たぜ」

彼は東天騎士団に居たのか、やはり恩賞を受けられず傭兵に身をやつしたのだろう。
しかしオーラの色は大抵赤か青と決っている。緑となると、珍しい色になるな。

「名前、聞きたいか?」
「ああ」

別に特別知りたいわけでは無かったけど、ここで話しの腰を折るほど無粋じゃない。

「バルバネス・べオルブっていうんだ」
「!」
「そういえば少し前に骸旅団の討伐に関わったべオルブ家の末弟が行方不明なそうだな」
「…へえ」
「まったく、あの超人一族の非常識ぶりには敵わンよ
  親父は剣術で圧倒してたがお前さんは魔法の方か」
「まあ、どうでもいいさ。俺はしばらくしたらこの街を発つ、お前も来るか?」
228FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:16:43 ID:kIzH54Aj0
…ばれたなあ。ガフガリオンは大して気にしていないみたいだ。
…あれは魔法じゃ無いと思う。気でもない、魔力でもない、変換される前のエネルギーの気がする。
よく考える、今回は明らかに自身の力を凌駕してオーラを振るったけど、
ベオルブの一族は当たり前の様にコレを使って剣技や魔法を詠唱してるはず。

行ってしまうのか、気まぐれに誘ったのかもしれない。僕は行ってみたいと思う。
僕は、あの時逃げたけど、このまま逃げていいわけじゃない。

だけど彼女は許してくれるのだろうか?

ふと、あの銀と黒のお互いを侵食し合う様な宝石を思い出す。

「じゃあな、寝るわ」
「まって、ガフガリオン」

「なンだ?」
「あの宝石はどうしたの?」
「なンだそりゃ?」
「あの化物が落として無かった?」
「いや、そんなもン見当らなかったがな」
「そうか、おやすみ」
「おう」
短くそう告げて階段を上がってゆく。
さあ、どうしようか。

カラン と氷が解けてスコッチが揺れるー
229FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:17:36 ID:kIzH54Aj0
トントンっと扉を叩く、初日以来彼女の部屋には入ってなかったな。
恥かしくなって俯く、酒の力まで借りたんだ、大丈夫。

「だれ?」
「僕だよ」

カチャリと施錠の外れる音がして彼女が顔を覗かせる。

「珍しいね、こんな時間に尋ねてくるなんて」
「少しいいかい?」
「ええ」

彼女の部屋にお邪魔する。柔らかいソファーに掛けるよう勧められて、
そこに腰を落とす。ライザは隣に座り、もたれ掛かってくる。
彼女を見やるとパジャマ姿だった。胸元が結構開いていて、
油断すれば控えめな乳房が見えそうだ。

「お酒臭いね?」
「たくさん飲んだからね」

「そう」
230FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:19:25 ID:kIzH54Aj0

ライザ

扉を叩かれて開けてみれば、ラムザが居た。
お酒臭いな。アルコールをエネルギーに、勇気をだして来たんだろうな。
部屋に来てくれて普段なら嬉しいのに今夜に限っては悲しかった。
彼の隣に座り、横顔を覗き見る。
・・・情け無い顔をしてた。
傭兵さんの話ではラムザは凄く強かったらしいけど、私にはこんな顔を見せてくれる。
私みたいな普通の女の子に別れを告げるのに必死になるくらい弱いのに、
困った事があっても決して逃げずに、立ち向かう彼がそこに居た。
…少しだけ、背中を押してあげよう。どちらにしても彼は行くだろうから。

「行っちゃうの?」

頭を彼の肩に乗せてそう尋ねたら、ビクッと震えて私の目を見つめる。

「うん、ガフガリオンとイヴァリースを旅してみたいんだ」
「あーあ、言うと思った」

力なく私は笑う。コートを着て剣を提げたラムザを見た時にわかってたよ。

「サルベージに行く前の事覚えてる?」

思い出す、唇の感触ー

ラムザはキチンと答えてくれた。もう怯えは見えないなぁ。
今なら私の本気も言える。 彼の気持ちもきっと訊ける。
231FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:21:59 ID:kIzH54Aj0
「覚えてるよ、ライザが出発前にキスしてくれた」

私をしっかり見つめて、手を握ってくれる。

「好きだからキスしたのよ、また此処に無事に帰ってきてくれるようにって」

「僕のどこが良かったの?」

「最初はね、怖い人だと思ってた、だってそうでしょ?
 水夫さんが止めなければ、彼の仲間を痛めつける気だったよね」

「確かにね、嫌な事があってさ、八つ当たりだった」

「それで私を見て、ラムザは笑ったよね」

「そこまで覚えてない、ゴメン」

「ラムザのその時の顔、覚えてるよ。どう生きればいいのかわからない子犬みたいだった」

「私が連れてってあげなきゃって、思ったの」

「彼氏の話は半分本気で半分冗談だったよ、でもラムザは男前だしそれもいいかもって思った」

「それからラムザは必死に頑張ったよ、お皿を教えられた通りにしっかり洗って、
 重い食材を文句も言わず運んで、朝が早い料理の仕込みもお父さんとして、
 一生懸命なラムザを見ていたら、胸が暖かいの。」

「サルベージのお仕事からラムザが帰ってきた時、私は悲しかった。
 チョコボに乗せられたままぐったりしてて、もう動かないんじゃないかって思った
 でも、でも私少し嬉しかった。ずっと一緒に居られるかもしれないって思った。
 最低かもしれない」
232FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:24:37 ID:kIzH54Aj0

「ねえ、ラムザはどうなの?
 私の事どう思ってるの?」

言いたい事全部言った。
いや、言ってない。だけどそれは言っちゃ駄目だ。
彼は苦しむだろう。

「皿の洗い方も分からなかった僕に手を添えて教えてくれたのはライザだったよ。
 重たい物をライザに持たせたくないって思った。
 朝が早くても平気なのはライザが起こしに来てくれたからだよ。
 ベッドメイキングが終って疲れて動けない僕を労ってくれたのも君だ」

ラムザは頬を染めて、私に触れてくる。
ー嬉しい。もっと彼に触れていたい、亜麻色の髪を撫で回したい。
私を触って欲しい、抱きしめて欲しい、貴方を感じたいの。
鼓動は加速していくー ラムザは続ける。

「君が、好きだ。君がいたずらでそのベージュ色の髪で僕をくすぐったり、 
 僕を抱きしめてくれたりしてくれるたびにドキドキしていた。
 透き通った茶色の瞳で僕を見つめてくれるだけで僕は幸せを感じていたよ」

言った、ついに言ってくれた。
涙が零れる。ああ、大丈夫。これで明日ラムザが居なくなっても私は頑張れる。
今度はラムザの方から、口付けをしてくる。背中をしっかり抱きしめられてー
233FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:31:57 ID:kIzH54Aj0
ー旅立ちの朝はやってくる

【渡り鳥の木】を見上げる。
此処は僕の家のようで、なにより彼女が居る。
厨房でマスターとお弁当を作ってくれているのだろう。
店を出た所で僕らは待つ。

感慨に耽っているとガフガリオンがイライラした声で話しかけてくる。
「ラッドが来ねえ」
ラッドも来るのか。初耳だ、いつ決ったのだろう?
トコトコと歩み寄ってくる人影を目に留める。
肩に戦斧を背負い、軽装鎧に身を包んだラッドがやってくる。
「待たせた」
彼はあまり喋るのが得意では無さそうだ。
話術士に転職してしまったらどうなるのだろう。
しばし、待つ。だんだん暖かくなってゆく冬の日差しを浴びてー
ドアが開く。ライザとマスターが出てくる。

「たっしゃでな」
「近くに寄ったら必ず着てね」

僕らに食事を持たせて、二人は手を振ってくれる。
ガフガリオンは何も言わず背を向けている。彼らしい。
ラッドは微笑みを反している、お辞儀をして、歩む。

僕はライザに向って喋る。彼女も僕に向って語りかけている。
この距離じゃお互い聞こえてないだろうけどきっとわかってくれる。

「「またね」」

Chapter1.5 終
234FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/09(水) 17:38:12 ID:kIzH54Aj0
191辺りで
第一話とか書いてましたが途中から入れ忘れていったい
何話編成だったのかさえわかりません。

Chapter2の方もある程度完成の目処が立てばまた貼り付けにきます
つたない文章ですがこれからもよろしく。
235名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 17:41:46 ID:F5AdlYph0
236名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 18:12:29 ID:pGe8qzLx0
読み応えもあって続きが楽しみなんだけど、
フランスパンとかスコッチとか、現実の地名に基づく単語が出てくるのがちょっと気になった。
FFTの世界にも偶々フランスとかスコットランドがあると思えばいいんだろうけど。
237名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/09(水) 21:14:49 ID:/gN+PMjw0
俺は「フランスパンのようなパン」「スコッチみたいな酒」に
自動で脳内変換してた。だから、変だってことに今気がついたw
238名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/10(木) 23:30:45 ID:b5NjpJwy0
そういやラムザって酒場でミルク注文するほどの人材だったような…
239名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/11(金) 19:06:19 ID:CymyBD4w0
240名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/12(土) 13:51:12 ID:7qHsjAIH0
241名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/12(土) 15:03:10 ID:00xHRn5J0
242FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:31:59 ID:uWqiSlc60
※FFTに居るわけの無い20世紀初頭の詐欺師とか登場予定なのでミルクぐらい勘弁してください。3/5ぐらい完成したのでちびちび貼ってみます

オーボンヌ修道院礼拝堂

歴史ある建造物なのだろうか、
所々傷んではいるが造りが非常にしっかりしているためか大規模な補修跡などは無い。
ドーターを出てしばらく色んな仕事をガフガリオンとラッドと僕の三人でやってきた。
旅をしているうちに分かった事がある。ガフガリオンはお金に非常に汚い。
仕事を請けた後、請ける前に必ず値上げ交渉をする。
きつい仕事になった場合は当たり前の様に多めのギルを吹っ掛けて、
楽な仕事でも結局多めのギルを吹っ掛ける。…なんでそんなにお金に執着するんだろう?

ラッドは意外と博識だ。荒野を移動中、綺麗な花を見かけたのでなんとなくつんで
手に持っていた所、足早にやってきた彼にビシッと手を打たれた。
なにをするんだ。という不満を表情にあらわすと、「それは幻覚を周囲に振りまく毒草だ」

結論から言おう、もっと速く言ってほしかった。
僕はアルマに弓で撃たれまくって逃げ回る変な幻覚を一晩中見る羽目になった。
アルマに会った時に脚が震えそうだ。

今回の依頼主は北天騎士団。高貴な方の護衛だそうだ。
ガフガリオンが何故か詳しく説明してくれなかった。
…何かあるのだろうか?
243FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:34:17 ID:uWqiSlc60
しかし遅い。僕は構わないけど、ガフガリオンの機嫌が空の天気と同じぐらい
悪くなって行くのが分かる。
正直今は彼と視線を合わせたくない程に。

「もう待てンよ!!」

ガバッと彼は立ち上がり、僕らに語りかける。

「トロい姫様を迎えに行くぞ!」

「…我ら罪深きイヴァリースの子らが神々の御力により救われんことを」

客間を離れ、礼拝堂に入る。
透き通った声の祈りが聞こえた。
祈りを捧げる少女、今回の護衛対象だろうか?
武装した女騎士も居る、くすんだ金色の髪が綺麗で気の強そうな目をしている。
簡単に表現すると、凛々しいと言えばいいのだろう。


「まだかよ! もう小一時間にもなるンだぞ!」
244FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:39:06 ID:uWqiSlc60
ガフガリオンの怒りの声が静謐な礼拝堂に響く。

「無礼であろう、ガフガリオン殿。王女の御前ぞ」

なんだって! 王女様の護衛だったのか!
しかし、王家の人の前でよくこんな態度がとれる彼につくづく驚嘆する。
ガフガリオンがひざをつき頭を垂れる。
僕とラッドもあわててそれに習う。
あっさり彼は立ち上がり騎士殿を睨む。

「これでいいかい、アグリアスさんよ。
 …こちらとしては一刻を争うンだ。」

女騎士殿の方はアグリアスというのか。
白銀の胸当てに清楚な青いスカートに、鉄製のブーツを履いている。

「誇り高き北天騎士団にも貴公のように無礼な輩がいるのだな」

良い声だと思う、女性にしてはやや低めの声だが戦場でもよく響く声だ。

「辺境の護衛隊長殿には十分すぎるほど紳士的なつもりだがね…。
 それに、オレたちは北天騎士団に雇われた傭兵だ。あんたに礼をつくす義理はないンだ」

「なんだと、無礼な口を!」

この二人の相性は良く無さそうだ。
確かにガフガリオンはガラの悪い口調だけど、
女騎士殿の方もわざわざ挑発するような事を言わなくてもいいのに…
いや、あれで素の彼女なのかもしれない。
245FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:40:11 ID:uWqiSlc60
「お待たせしました。参りましょう。

王女様が告げる。白い衣類に身を包み赤いマントを羽織るその姿は確かに高貴なものだった。

「どうかご無事で」

「シモン先生も」

老人と短い別れを告げ、これから玄関に向おうとー

傷ついた女騎士がドアを派手に開ける、雨が降っていたのでかなり濡れている。

「アグリアス様…、て、敵がッ!」

彼女がそう叫ぶやいなや、アグリアスは玄関に向かいその身を雨にさらして行く。

「…ま、こうでなければ金は稼げンからな。
 さあ儲けに行こうぜ!」

ガフガリオンがいつもの様に不敵な笑みを浮かべ駆ける。
ラッドも斧を両手に走る。
僕は傷ついた女騎士にケアルをかけ、彼らに続く。

「神よ…。」

後ろから、祈りが聞こえた。
246FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:42:28 ID:uWqiSlc60
「黒獅子の紋章だと…!?
 ばかな…! ゴルターナ公はいったい何を考えているのだ!
 ここまでして、戦争を起こしたいのかッ!!」

「そこの女ッ! 無駄な抵抗はやめておけ!
 おとなしく王女を渡すんだ! さもなくば、その奇麗な顔に傷がつくことになるぞッ!」

ありきたりな台詞を語る騎士だが問題はその鎧だ、南天騎士団正規軍の甲冑を纏っている。
数は10人と少しといった所か。判断をするにその数では僕らに勝てない。むしろガフガリオン
一人にさえ勝てないかもしれない、彼は強い。
剣技だけならまだしも彼は戦術も使ってくる、ベテランの戦士だ。
特に彼の振るう闇の剣は他者の力を奪い己の物とする異端の剣、
その力はガフガリオンの強さを際立たせる。

「フン、真正面から攻めてくるとはな。ゴルターナ軍も能無しばかりだぜ!」
「ならば、ここは我々だけに任せておくのだな!」

「それでは金が稼げンのだよ!
 ラッド、ラムザ! オレについてこいッ!!」

戦闘が、始まったー
247FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:44:54 ID:uWqiSlc60
駆ける、闇雲に接近戦を仕掛けても数を頼りに押し切られるだけだ、
一番近い騎士に波動撃を放つ。
仕留め切れない、だけどこれでいい。
ガフガリオンの闇の剣が傷ついた騎士を襲う
絶命した騎士を乗り越えて別の騎士が迫るがラッドの戦斧が一閃、近寄らせない。
ガフガリオンが攻めて、ラッドが周囲に気を配り危険を排除して、僕がその両方をする。
しばらく旅をしていたらこの配役が出来上がっていた。
正直いいチームワークだと思う。

強い気を感じる。注意を向けるとアグリアスが気を変換し、敵に放っていた。

 「命脈は無常にして惜しむるべからず…
  葬る! 不動無明剣!」

地面から剣の形をした気が、護衛騎士の一人に二人で襲い掛からんとした
南天騎士達をを前に炸裂していた。
強い!ガフガリオンと良い勝負をするんじゃないだろうか。

「ここで奴らを殺してしまってはまさにゴルターナ公の思うつぼ! 追い返すだけでいいッ!」
248FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:46:51 ID:uWqiSlc60
そうは言うけれど、彼女の放ったアレは南天騎士に深いダメージを与えている。
今から治療しても生きるも死ぬも、もはや運次第だろう。

「そんな器用なマネができるもンかッ!」

ガフガリオンが叫ぶ、まったくその通りだ。

時間は経過し、大勢が決ってきた。満足に動ける南天騎士は二人。
他の騎士は死ぬか怪我をして満足に動けない者のみー

悲鳴が雨音に混じって聞こえる。

「離しなさいッ!」
「しまった!!」

アグリアスが慌てて礼拝堂に飛び込む。

南天騎士達は撤収してゆく。もう時間稼ぎは終ったというところか。
249FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:47:50 ID:uWqiSlc60
「こっちへ来るんだッ! おとなしくしないかッ!!」

ー聞き覚えのある声だ、そちらに集中する。

「誰が貴方の言いなりに…!」
「うるさいお姫さまだ」

姫様の意識を奪い、チョコボに乗せる彼はー
要塞でティータを抱えたディリータが目に浮かぶ。
間違いない、ディリータだ!

「ま、待てッ!!」
「悪いな…。恨むなら自分か神様にしてくれ」
チョコボが疾走してゆく。

「…なんてことだ」

アグリアスや姫様には申し訳ないが、彼のことで頭がいっぱいだった。

「生きていたのか、ディリータ? …でも、どうしておまえがゴルターナ軍にいるんだ…?」

「なンだ、ラムザ、さらっていった奴を知っているのか?」

ガフガリオンが近くに居る、何時の間に居たのだろうか。

「…………。」

何か声を出そうと思ったが、出てこない。
それほど僕は驚いていた。
250FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 21:49:10 ID:uWqiSlc60
「オヴェリア様を連れているのだ、そう遠くへは行けないだろう」
「追いかけるつもりか?」
「当然だ! このままでは王家に対して顔向けができん!」
「おれたちは手伝わンぞ。契約外だからな!」

それは、そうだろう。僕らの請けた依頼は護衛であって奪還ではない。
プロの傭兵であるガフガリオンがそんなこと納得しないだろう、でも。

「正式な騎士でもない輩の手助けなどこちらから断る!
 自分の失敗は自分の力で補うのが騎士というもの。これは我々護衛隊の役目だ!
 行くぞ、ラヴィアン、アリシア!」

「「ハッ!」」

「僕も、僕も行きます! 足手まといにはなりません!」
気がつけば自分が思っていたよりも大きな声で話していた。
彼女たちは驚いている、関係の無い傭兵がついて行くなんて考えもしなかったろう。

「何を言ってンだ! オレたちには関係ねぇことなンだぞ!」

ガフガリオンが怒る。ラッドも目を丸くしている。
それはそうだろう、僕らはチームだ。勝手な事をしていいわけがない、
だけどー
251FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:01:14 ID:uWqiSlc60
「…さっきの小僧か?」

ガフガリオンとラッドに向ってうなずく。
申し訳ないと思う、だけど行かなきゃ!

不機嫌そうな顔をして、ガフガリオンはだるそうな声で言ってくれた。
ラッドも驚いていたが、頷いてくれる。
ガフ   「チッ、仕方ねぇなぁ。どうなっても知らンぞ、オレは…!」
ラッド  「ラムザが行きたいなら俺も行くよ」
ラムザ  「二人ともゴメン、ありがとう」

特にガフガリオンに至っては自分を曲げてまで付き合ってくれるというのだ。
申し訳ないと思う、同時に嬉しさも込み上げてくる。
僕の都合のために折り合いをつけてくれたのだ。

「この雨もすぐ上がるだろう、街道はドーターしかない、
 時間が惜しいのですぐ出発する!」

街道を行軍する。
護衛騎士達三人は全員女性で、アグリアス、ラヴィアン、アリシアと言うらしい。
ガフガリオンの印象が悪かったためか、彼女らは僕らと積極的に話をするつもりはないようだ。
252FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:02:29 ID:uWqiSlc60
アグリアスは潔癖で硬いという感じだろうか、王女様の身を案じて早足だ。
護衛騎士隊の隊長らしい、騎士らしい性格をしていると思う。

ラヴィアンは好きになれそうもない。
ショートカットでなによりも身長が高い。180ぐらいあるんじゃないだろうか。
黒色の髪、緑色の瞳。容姿は美人なのだろうがー
僕らを見下した感じがする、アルガスを女にしたような性格かもしれない。
そのうち「平民が!」と言いそうだ。

アリシアはいい娘だと思う。道中僕に近寄って、服の袖を引っ張ってきた。
「ケアルありがとう」と言った。
よくみれば敵襲を知らせた弓騎士だった。
小柄な身体にストレートの赤髪、赤茶色の瞳だ。
印象としては小動物っぽい性格かもしれない。

ドーターが見える。彼女に会いたかったが時間が無い。
残念だけど、次の機会になるだろうな…

ガフガリオンとラッドがニヤニヤ笑ってる。
そんなに顔に出ていたのだろうか…
ラッドがぽんぽんと僕の肩を叩き残念だったなという仕草をする。
ガフガリオンは 色気づいてる場合じゃねえだろ?って表情だ。
253FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:04:25 ID:uWqiSlc60
街に到着してすぐ東門を目指す。
べスラ要塞に王女を連れ去るとの見立てで東へ急ぐ。

東門付近で異変を感じる、ピリピリするー
囲まれてるか?
メンバーに目を向けるとガフガリオンは獰猛な表情で笑っている。
アグリアスも足を止め、剣の柄に手を掛けていた。
ラッド、ラヴィアン、アリシアはまだ気がついてないようだ。

口笛が鳴る、来るかー

わらわらと出てきた。高地に弓兵が三名、
後ろにモンクが二名、後は前方に盗賊のなりをした傭兵が五名ほど。

頭目らしい傭兵がガフガリオンをみて帽子を地面に叩きつけ踏みつける。
これまで何度かこんな場面になったことがある。
仕事でかち合った傭兵も彼が絡んでると知ると、かなりの数が手を引いてきた。
彼は色んな意味で凄い傭兵らしい。
戦闘の予感を肌で感じ、ミスリルソードを抜く。

「撤退だ!」
254FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:05:22 ID:uWqiSlc60
頭目が怒鳴り声をあげ逃げてゆくー
多分、ガフガリオンが居るなんて知らなかったんだろうな…
敵に容赦するような男じゃない、並みの戦士が敵う相手でもない。
死ぬよりは逃げた方がいいに違いない。
周囲を囲んでいた傭兵達も頭目の号令に従い散開してゆく。

「なんだったんだ?」

護衛騎士達が不可解な表情を浮かべていた。

「根性無しが!」

彼が悪態をついている。
彼らの目的は追撃の足止めだったのだろうな。
無意味に終ったが。

ラッド「よくあることさ」

彼は苦笑して先を促す。
東門を超えしばらくしたらアラグアイの森につくだろうー

日は暮れて、夜が訪れる。
アラグアイの森を前に僕らは野営をする。

食事も終わり、見張りの順番も決まり後は眠るだけとなった時、
僕の体の中で異変が訪れる。

痛いわけではない、辛いわけではない。ただ疲れる。
ゴトンゴトンと暴れる。サルベージの仕事に携わって以来 幾度と繰り返されるこの異変。
眠れず目を開けるー
255FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:10:27 ID:uWqiSlc60
アグリアス

オヴェリア様は無事だろうか?
焚き火に薪をくべて、さらわれた王女を想う。
自らが戦禍の火種になる事を恐れ、長い時間を修道院の中で過ごした姫。
それでも戦争は王女に迫り、修道院が危なくなってきて王都へ、
御身を移さねばならない破目になってしまった姫ー
怒りが溢れる、ゴルターナ公め!そうまでして己の栄達のために戦争を始めたいのか!

共にオヴェリア様を救出に行く事になった傭兵三人組の
一人、亜麻色の髪の青年が辛そうに目を開けていた。
短い間だが分かる。落ち着いたその物腰、傭兵らしくない時々の作法、
端整な顔立ちに意志の強い光りを持った瞳。
彼は他の傭兵二人とは違い貴族の出自だ。

「眠れんのか?」
彼に話しかける。
彼は頷くと焚き火の近くに、つまり私の近くに寄る。
季節は春とはいえまだ寒い、吐く息が白い。
やはり寒かったのか彼は手を焚き火にあて幸せそうに顔を緩めている。
もうすぐ夜が明けるだろう、空が白み始めている。
256FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:13:31 ID:uWqiSlc60
彼は五十年戦争で没落した貴族の子弟なのだろうか?
となるとあの戦斧を持った方は従者かもしれない。
旅の間三人を気付かれぬよう観察していたが
斧を持った傭兵は理知的で、沈黙を美徳にしているようだ。
古風だが悪くはあるまい。
しかしあのガフガリオンという方はなんだ?
彼らのリーダーらしい。凄腕だが粗野で横暴、言葉が出れば金、金、金。
金が世の理というワケではあるまい。私とは決定的に相性が悪そうだ。

奇妙な組み合わせの傭兵達に対する疑問は
好奇心に変わり彼に尋ねてみる。

「なぜあの二人と旅をしているのだ?
 短い間だが君は貴族の出自だというのがわかる。
 彼らと君は違うと思うが」

「何故と言われても、成り行きだと思う。
 だけど二人とも大事な仲間だよ。
 ガフガリオンはお金に汚くて、口も悪いけど
 本物の傭兵のプロで、不器用な優しさもときどきみせてくれるよ」

「ラッドは無口だけど頼れる仲間さ。
 僕らが怪我をしない様に周囲に気を配ってくれる。
 困った事があれば何とかしてくれるのも大抵彼だよ」
257FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:14:41 ID:uWqiSlc60
彼はそういうと得意気に胸を張る。
仲間を信頼しているのだな。
我々はどうだろうか、ラヴィアンは協調性に欠け、
アリシアは気が弱いのか強く問い掛ければオドオドとした態度をとって来る。
それに私にも問題がある、どうすればいいのやら。
このままではいかんな…

「そうか、羨ましいな」

彼が心配そうな表情を見せる。
根っからの優しい奴なのだろうか?
今朝出会った私の問題に真面目に聞いてくる。

「上手くいってないの?」
「いやそういう訳では無いんだが、
 仕事の話以外に何を話せばいいのか悩むのだ」

かわいい事を言う、という表情で彼は笑い出した。
ムゥ、私は真剣に悩んでいるというのに、大した問題では無いのか?

「ずっと一緒に居れば悩む必要なんて多分無くなるよ、
 時間が経てば普通に気心の知れた仲間になれるさ」

「そうか、実は二人とはドーターで合流したばかりで
 まだ仲良くなっては居ないんだ。
 これからチームワークを深めればいいという事だな」

私はウンウンとうなづいて、少し機嫌を良くする。
士官学校でもそうだったが確かに私も時間の経過によって同輩と仲良くなっていたな。
だが彼は不満そうな顔をして語る。
258FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:16:33 ID:uWqiSlc60
「僕らも仲間だよ?」
「お前達も?」
「短い間で終るかも知れないけど、一緒に旅をする仲間さ」
「そうか、君も仲間という事だな」

私は微笑む。どうせ共に行くなら仲良くなった方がいい、
彼は少し照れながら手を伸ばす、これから仲良くしていこうという
意思表明を兼ねて握手を求めて私の手を握る。

「よろしくね、アグリアス」
「う、うむ。よろしく頼む、ラムザ」

名前を呼ばれ私も彼の名前を思い出す。ガフガリオンが確かラムザと言っていた。
握った手は戦士特有の硬い手のひら、まだ若く、
どちらかといえば幼い顔をしてるのに鍛えた体の一端に関心してしまう。
士官学校の貴族の男達は大抵軟弱で訓練も自主的にはしない輩ばかりだったがラムザは違うようだ。
たわいの無い旅の出来事を話してくれる、仲間の事ばかりであのガフガリオンを褒めている。
やはりお人よしのようだ、だがそれがラムザらしい。
彼は私の手元に置いた騎士剣ディフィンダーをみつめる。
少しばかり自慢したくなる。どうだ?良い剣だろう。
剣を媒介に聖剣技を使う私にとって剣とは業物であればあるほど威力を増す。

「この剣は私が聖騎士になった時父上が渡してくれた物だ。
 叔父上の形見らしい」

「ねえ、アグリアスはなんで騎士になろうと思ったの?」
259FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/12(土) 22:21:15 ID:uWqiSlc60
不思議な事を聞く。急に如何したのかと彼を見ると
真剣な瞳で私をみつめる。 
こうも異性に見惚れられると恥ずかしいが彼の問いに答えねばなるまい。

「何故と言われてもな、オークス家は歴史は浅いが父も祖父も騎士であったし
 理由など無いのかもしれん。しかし剣を握り誰かを守るというのは
 騎士の誉れではないだろうか。叶うならこの騎士剣で多くの人を救いたいものだ」

ラムザは満足そうな顔をしてコクリとうなずいた。うむ、君もそうなのだな。


欠伸が漏れそうで品を欠く前に口元に手をやる。
そろそろ眠いな、見張りも交代の時間だ。

「見張りお疲れ様。僕の番だから今のうちに眠って」
「そうさせて貰おう、おやすみ。ラムザ」
「おやすみ」

ラムザは今まで自分が着けていた毛布を私に掛ける。
大胆だと思う、私とて女なのだ。恥ずかしくなり離れた所で横になる。
薄目を開けて見ると彼は焚き火に薪をくべている。

照らされた柔らかい横顔を見つめまだ彼の匂いのする毛布をかぶり、
いつもより鼓動を早めながら私は眠る、得体の知れない感情だが悪くないー
260愚か者の恋【4】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 22:46:53 ID:nJaRpQoX0
※FF12のバルフレアとパンネロのお話。お嫌いな方はスルーよろしこです。
※投稿人、夢見がちです。甘ったるいのがお嫌いな方もご注意下さい。
※最終的に2人をくっつける予定ですが、続くかどうかは今の所未定。

>>177-179より続きます。

眠れない夜は昔の事ばかり思い出し、ますます眠れなくなる。
すっかり目がさえてしまったバルフレアは仕方なく起き上がり、
少し外でも歩こうかとテントを出た。
用心の為に剣を持って行く。
空を見上げると満天の星だった。

(ここんとこ、地上ばかりだな…)

上手く言えないが、身体が乾いて行く様な気がする。
思いがけず向き合う事になった自分の過去がそれに拍車をかける。

(さっさと終わらせて、空に帰りたいもんだ。)

だが、その“終わり”がどんな物なのかは想像もつかない。
いや、考えるのが怖いのか…
その時、ふと何かの気配を感じ、思わず剣に手をかけた。
何かの息づかいと、剣が空を切る音がする。

(なんだ…)

草原の斜面の途中に大きな木があり、
それが雨で流れて来る土をせき止め、平らな土地を作る。
そこでパンネロが一人で剣の稽古をしているのだ。
真剣な眼差しで、かけ声と共に剣を振るう。
261愚か者の恋【5】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 22:48:18 ID:nJaRpQoX0
あんなちっこい身体でよく剣が振れるものだと感心しながら、
バルフレアはしばらくその様子を眺めていた。
声を掛けるかどうか少し悩んだが、

(こんな時間に一人で置いておけない…な。)

この前もそうだった。
年齢の割にしっかり者だし、腕が立つのもよく知っている。
なのに、なんだか放っておけないのだ。

(まぁ…妹とか、そんな風に思ってるんだろ。)

そんな言い訳を自分にしながら、緩やかな傾斜を下りる。
それに気付いたパンネロが手を止め、こちらを見た。

「随分と夜更かしだな。」
「眠れなくて。」
「本当にそうか?」
「どうして?」
「その割には、随分気合いが入っていたようだ。」
「だって…」
パンネロは首を少し傾げ、微笑んだ。
「強くならなきゃ。」

バルフレアはやれやれと肩を竦め、大木の根本に腰掛けると、
パンネロにも隣に座る様に促した。
パンネロは素直に従う。
きちんと揃えた膝を抱える様にしてバルフレアの隣に腰掛けた。
262愚か者の恋【6】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 22:50:03 ID:nJaRpQoX0
「今でもなかなかの使い手だと思うが?」
「そうかしら?」
「アーシェならともかく、お嬢ちゃんの口から“強くなりたい”ってのは意外だな。
バッシュが言ってたみたいに、王家にでも仕えるつもりか?」
「そんなんじゃないんです…」

パンネロはじっと目の前の草むらを見つめる。

「あのね、バルフレアさん。私の家族はみんな戦争で亡くなったの。」
「そうだったな…」
「残ったのは私だけ…最初は寂しくて、
早くみんなの居る所に行きたいって思ったの。」

返す言葉が思い浮かばず、バルフレアも黙って前を見つめる。

「でもね、もし私まで死んじゃったら、お母さんの作ってくれたおいしい料理とか、
お父さんが釣りに連れて行ってくれたことも、お兄ちゃんが剣を教えてくれた事も、
みんな…私の家族の事を覚えてくれる人が誰も居なくなっちゃうって思ったの。
それって、寂しいよね…」

パンネロは言葉を切ると、バルフレアを見る。

「ねぇ…バルフレアさん…アーシェが王位を継いだら、戦争なんか終わるよね?」
「…そいつはどうかな。」
「私…そうなればいいなぁって思ってるの。
そうしたら…お父さんみたいなステキな旦那様を見つけて…
子供もいっぱい欲しいの。子供達に教えてあげたいの。
お前達のおじいちゃんやおばぁちゃん、叔父さんはこんな人だったよって。」

パンネロが自分の顔を見て話しているのは分かっていたが、
バルフレアはまともにパンネロの顔が見られなかった。
263愚か者の恋【7】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 22:52:16 ID:nJaRpQoX0
「お嬢ちゃんなりに…ちゃんと考えがあって旅をしてるんだな。」

パンネロはふるふると首を振る。それに合わせて短いお下げが揺れた。

「本当はね、成り行きなんです。ヴァンが放っておけなくて…でも…
旅をしている間に考えたの。そんな世の中にする為に、私も戦えるんだって。」

やはり、声を掛けるべきではなかったとバルフレアは後悔した。
保護してやらなければと思っていた少女の方が
自分よりもよっぽどしっかりと過去と向き合い、未来を見つめている。
いたたまれなくなったが、座って話をするように勧めたのは自分だ。

「ごめんなさい、こんな話。」

黙り込んだバルフレアを気遣って、パンネロが心配そうに顔を覗き込む。

「いや…お嬢ちゃんの方がしっかりしているなと思っただけさ。」
「でも、ヴァンだって、最近は色々考えてるみたいですよ。」

バルフレアが言ったのは、もちろん自分の事なのだが、
パンネロは都合良くヴァンの事だと勘違いしたようだ。

「それにね、私、みんなの足を引っ張りたくないんです。
この前もバルフレアさんに怒られちゃったし。」

膝の上に肘を乗せ、頬杖をついていたバルフレアは
その言葉に姿勢をがくりと崩してしまう。

「俺が怒った…?お嬢ちゃんを?」
「だって、あの時…」

前に“沈黙”の魔法をかけられた時の事だとパンネロは言う。
264愚か者の恋【8】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 22:54:47 ID:nJaRpQoX0
「あの時のバルフレアさん、ちょっと怖かったですよ。」

バルフレアのリアクションがおかしかったのか、クスクスと笑うのに、
彼女がからかっただけなのだと分かり、バルフレアはホッとした。
しかし、やはり普通でなかったのだと分かり、
その時の自分の様子を少しでも聞き出そうとする。

「怖かった?俺が?」
「はい。目がとっても真剣で…怒られるのかと思ったけど、
後であれは心配かけちゃったんだなぁ…って。」
「すまん。怯えさせちまったな。」
「そんな事ないですよ。」

“お嬢ちゃん”相手だとどうも調子が狂う。
何かうまい言い訳を考えても、何故か頭が回らない。
いつもなら軽口一つで切り抜けられるのだが。
バルフレアは不意に立ち上がると、持っていた剣を抜いた。

「立ちな、お嬢ちゃん。」

パンネロが驚いて見上げる。

「相手してやるよ。一人で素振りしてるよりはいいだろ。」

パンネロが顔を輝かせる。大喜びで跳ねる様にして立ち上がると、
バルフレアに剣を捧げ、軽く膝を曲げてかわいらしい礼をする。
その仕草に思わず見とれていると、鋭い剣先が襲って来た。
慌ててそれを受け止める。
驚いて目を見開くバルフレアに、パンネロはいたずらっぽく笑う。

「バルフレアさん、本当は眠いんじゃないですか?」
「言ってくれるな。」
265愚か者の恋【9】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 22:56:26 ID:nJaRpQoX0
何度か切り結んだが、パンネロの剣は予想以上に鋭く、重かった。
アーシェの様に洗練された剣ではない。
おそらく騎士団から市井に広がって変化した物だろうが、柔軟で実践的だ。
軽い気持ちで稽古相手になることを申し出たが、

(これじゃあ、どっちが鍛えられてるか分からないな。)

手合いで本気も大人げないと、パンネロの剣を流すだけだったが、

「バルフレアさん、これじゃつまんないですよ。」

勘がいいのだろう、気が付けば懐に飛び込まれている。
剣先を突きつけ、無邪気に笑う少女に翻弄されっぱなしだ。

(やれやれ、だ。人の気も知らないで。)

剣を握る手に力を入れる。

「泣いても知らねぇぞ。」
「泣きませんよ。」

受け止めていた剣を払うと、パンネロが後ろによろめく。
手が痺れたのか少し顔を歪ませたが、
すぐに体勢を立て直し、また斬りつけてくる。
バルフレアが下から振り上げる様にして剣を振ると、
身体を柔らかくのけ反らせてそれを避ける。
そこを狙って今度は横に払うと、身体を小さく屈ませて避ける。
と、立ち上がる勢いで腹の辺りを狙って来る。
266愚か者の恋【10】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 22:58:31 ID:nJaRpQoX0
(猫みたいだな。)

くるくるとよく動き、隙がない。
気が付けば随分と長い時間、打ち合っていた。

「キャッ!」

不意にパンネロが悲鳴を上げて、尻もちをついた。

「大丈夫か?」

バルフレアは剣を放り投げると、パンネロの傍に駆け寄った。

「大丈夫。バルフレアさんたら、少しオーバーですよ。」

立ち上がるパンネロに手を貸してやる。
知らない間に、かなり本気になっていたようだ。
ケガでもさせていないか、つい腕を取ったり、
顔を覗き込んだりと、あちこち調べてしまう。

「ちょっと根っこにつまずいただけですよ。心配し過ぎです。」

バルフレアの狼狽ぶりがおかしいのか、パンネロはまたクスクスと笑う。

「悪ぃ。お嬢ちゃんがあんまり強いんで、俺も本気になっちまった。」
「本当ですか?」
「あぁ。」

うれしそうに笑うと、真っ白な歯がこぼれそうだ。
267愚か者の恋【11】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 23:00:25 ID:nJaRpQoX0
「ねぇ…バルフレアさん?」
「なんだ?」
「もし…明日も眠れなかったりしたらでいいんですけど、
また…お相手してもらえませんか?」
「眠れなかったらな。」

そう答えてから、バルフレアはしまった!と思ったが後の祭りだ。
パンネロはバルフレアの手を取ると大はしゃぎだ。

「うれしい!ヴァンだといつもすぐにぐーぐー寝ちゃうんです。」
「言っておくが、俺だって寝ちまうかもしれないぜ?」
「いいんです…時々で。」

おねだりがうれしくて、ついOKしてしまったのが、
こんなに喜んでもらえると悪い気はしない。
いや、むしろうれしいのだが、その部分はしっかりと閉ざしておく。

「そろそろ帰るぞ。あんまり遅くなると、明日起きれなくなる。」
「さっきも思ったんですけど、バルフレアさん、
私のことすっごく子供だと思ってませんか?」
「…まぁな。」

この「まぁな。」は色々と複雑なニュアンスを含んでいるのだが、
パンネロは知る由もない。
やっぱり!などと言って、頬を膨らませている。
なんだ、そう来るならばと、バルフレアはパンネロの肩を抱いて引き寄せてみる。

「子供扱いがお望みじゃないなら、
俺とお嬢ちゃんの仲を疑われたりしても平気だな。」
「私とバルフレアさんが?」

冗談のつもりが、パンネロの返事に緊張している自分が居た。
268愚か者の恋【12】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 23:01:48 ID:nJaRpQoX0
「こんな夜中に逢い引きしてたら、みんなに何言われるか分かんないぜ?」

さっきの約束を反古に出来るかもしれないと、
脅し目的で口説きモード全開にしてみる。
パンネロはきょとんとした顔でバルフレアを見つめ返す。

「逢い引き?」
「そうだ。」
「私とバルフレアさんが?」
「他に誰がいる?」

パンネロはもう一度“私とバルフレアさんが?”と、
小さく口の中で呟くと、途端に吹き出した。

「大丈夫!そんなこと 絶 対 ないですもの!」

パンネロはするりとバルフレアの腕から抜け出すと、
軽やかに斜面を駆け上る。
子供扱いすれば不満だし、じゃあ女だと思ったら思い切り否定されて。
空賊バルフレア様がお嬢ちゃんにいい様に振り回されて。

「バルフレアさ〜ん!」

気が付くと、斜面の上でパンネロが手を振っている。

「おやすみなさい!また明日!」

バルフレアは降参だ、と言わんばかりに肩を竦め、軽く手を振る。
パンネロはうれしそうに一際大きく手を振ると、テントの中に消えた。
それを見届けると、バルフレアはがっくりと肩を落とした。

「あいつ…絶対にないって言い切りやがった…」
269愚か者の恋【13】 ◆DvBI45asCU :2006/08/13(日) 23:07:04 ID:nJaRpQoX0
冗談めかしで、ぼかしまくりのお陰で即死は免れたが
バルフレアのダメージは相当な物で、プライドはズタズタだ。
そこまで言うなら、無理矢理にでも盗んでみるかとも思ったが、

「ばかばかしい…無粋もいいところだ。」

“お嬢ちゃん”は夏に太陽に向って咲く大輪の花のようだ。
飛空艇の中では枯れてしまうだろう。

「…ったく、厄介な時になんでこんな面倒を背負い込んでるんだ、俺は?」

バルフレアは一人ごちると、自分の寝床に戻った。
今度は別の意味で眠れそうにないが、
でも、2人で過ごした時間に思いがけず安らいだのも事実で。

過去に思い悩まされるより“お嬢ちゃん”の笑顔の方が
よっぽどマシだとバルフレアは観念して眼を閉じた。

===============================================
※剣に関する記述は投稿人の勝手な解釈です。間違っていたらごめんなさいよ。

>>180
ありがとうございます。頑張って続けますのでまたよろしこです。

>>203
サイレンスの魔法は自分勝手な解釈ですが、それなりに説得力があった様で安心しました。
少女漫画みたいなお話ですが「心優しい純粋なお嬢ちゃんに振り回される伊達男」が大好きなんですよ。
2人のハッピーエンディング目指してがんがります。

>>◆HOZlQYR1MY
オリジナルの方をプレイしていないので、感想が付けられませんが、
とても読みやすいです。長文乙ですが、完結目指して頑張って下さい。
270名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/13(日) 23:12:09 ID:dyWNq+uM0
愚か者の恋 ◆DvBI45asCU さん
激しくGJ!!
なんか投下されてると思ったらFF12ではないかー!
以前バルフランスレで『出会い』というSSを読んで以来
FF12SSにはまってしまいましたw
バルフレアとパンネロはすごき以外でビクーリしましたが
読んでみたら自然にどんどん引き込まれました。
続きが楽しみです。頑張ってください。
271名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/13(日) 23:16:04 ID:dyWNq+uM0
×バルフレアとパンネロはすごき以外
○バルフレアとパンネロはすごく以外

失礼しましたw
272名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/14(月) 01:03:43 ID:hebE3SLc0
>>FFTwolf ◆HOZlQYR1MY
乙! 以前よりも句点が付く分もあって読みやすくなってる様に感じました。
緊迫感と心理描写も適度に配分されてて、長くても飽きずに読むことが出来たし、そのままゲームのOP戦に
繋がるのも良かった。続きにも期待。
(これ以降はFFT好きの戯言という程度に聞いて頂けると有り難いです)
それだけにアルテマは残念だった。>>220の二行目>>223の後半があるなら、無理にアルテマではなくて、
詠唱文との意味を併せて考えてもフレアで良かったと思う。(滅び行く肉体=自らの肉体と捉えて、「始原の炎」
という解釈。その代償で>>223なら違和感ないと思ったので)お節介かも知れないけど、せっかくラムザもガフガリオンも
ラッドもライザも「生きてる」作品なのに、あの時点での無根拠なアルテマ登場で、FFTの世界そのものを無意味に
殺してしまっている気がする。アルテマがFFTの中でどういう位置づけだったのか? 決して軽い物ではなかったはず。
FFT好きの一読み手として、SS自体が面白かっただけに残念な思いが強く残った。
(まあアレです、セリア、レディに苦戦したとかアルテマのラーニングに四苦八苦したとかそう言う個人的な事情がry)
その意味でも以降の展開に期待してます。

ミルクを注文するのは本編中の儲け話(だっけか?)で見られる。「ラムザとはそう言う男だw」…って事を言いたいんではないかと。
273名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/14(月) 01:18:15 ID:hebE3SLc0
>>260-269
剣劇の描写が、すごく楽しそうだった。稽古なんだろうから「楽しそう」ってのも変かも知れませんがw。
きっとパンネロの繰り出す切っ先も言葉も、純粋故に鋭いんだろうなと。
バルフレアは、きっと多くを知っている故にその切っ先の鋭さがはっきり見えるんだろうなと。
そんな風にとらえると深いなーと思う。
…レイスウォール王墓から出られないヘタレが言うのもオカシイですが、このふたりの
まるで対照的だけど、向かおうとしてる方向(直面してる現実…って旅してるから当然か?)が
同じっていう、そんなの姿が愛おしいです。

FF12未クリアだから変なこと言ってたら申し訳ないw。続き期待sage
274FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:07:20 ID:azTM476w0
※なんとか理由つけてみました。これからも面白ければ是非感想聞かせてくださいね
※機工都市ゴーグの辺りでKIAI入れて戦闘描写書いてみました

出発の時刻になる。まだみんな眠そうだけどのんびりしている時間はない。
森に入ってしばらくするとゴブリンの集団に一匹のチョコボが追い詰められていた。

「こんなところにチョコボが!」
「ゴブリンの森に迷い込むとはマヌケなチョコボだぜ!」
「可哀想だが、今はオヴェリア様をお救いするのが先決だ。すまない」
「まったくそのとおりだ。金にならんことはするもんじゃない」

変なところで意気投合してるアグリアスとガフガリオンだけど、少し考える。
待って欲しい、それは判断ミスだ。急ぐならあの子を助けるべきだ。

「あの子に僕らの物資を持って貰ったら行軍速度が飛躍的にあがるよ。
 どうせゴブリンに見つかった、なら助けよう!」

「む、それもそうか」
「助けたいのに無理に理由つけンじゃねえよ!」

二人は返事をしてゴブリンに突っ込む、ラヴィアンとラッドがそれに続く。
僕は白兵戦が苦手っぽいアリシアの側に寄る。

所詮ゴブリンだ、何匹か仲間がやられたら散らばって逃げるだろう。

ある程度の抵抗はあったものの仲間の数が減っている事を理解すると
ゴブリン達はバラバラに逃げ出した。あっけない。
275FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:08:52 ID:azTM476w0
「ク…クェ〜ッ!!」

チョコボが情けない声で鳴きながら僕らに近寄ってくる。
意外な事にラヴィアンが嬉しそうに撫で回している。
人の全てを初印象で決めちゃいけないな…

ガフ「よかったな、おまえ。ラムザに感謝しろよ」

ラヴィアン「こいつの名前、あたしが決めていいか?」

うーん、やっぱり意外だ、彼女は動物が好きなのだろうか・・
問題は無いので「いいよ」と告げると彼女は嬉しそうに笑った。

ラヴィアン「おまえはボコだよ、これからよろしくな」
ボコ「クークー」

…そのネーミングセンスはどうかと思う、みんな変な顔をしてるけど
文句を言うつもりも無いので変な空気になってる。

こうしてボコを仲間に入れた僕らは旅路を急ぐ。
初期の計算ではゼイレキレの滝の辺りで追いつく予定だったけど、
ボコに物資を持って貰ったおかげでさらに予定が早くなりそうだ。


アラグアイの森を抜け、時刻は夕方。
街道で、北天騎士団とディリータが言い争って居るのが見えた。
北天騎士団が回りこんだのだろう、僕らと一番近いのは王女様だ。
アグリアスが走り出す、僕と他のメンバーもそれに続く。
ガフガリオンは唸っていた、どうしたんだ?
276FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:11:50 ID:azTM476w0
アグリアス「オヴェリア様ーッ!!」
オヴェリア「アグリアス!!」

「チッ! 余計な連中がやってきたか!
 ガフガリオン! そいつらを殺せッ!! 一気にカタをつけるぞッ!!」

あの騎士は何故そんな事を言ったのだろう?
彼らは救出に来たのではないのか?
疑問が浮かびガフガリオンの方へと振り向く。

「どういうことか、よくわからンが、これも契約だ。仕方ないな!」

彼は言い放ったー

アグリアス 「ガフガリオン、貴様、裏切る気かッ!!」

ガフ    「裏切る? とンでもない。こいつらはホンモノさ。
       オレたちの仕事は、お姫さまが“無事に”誘拐されるようにすることだ。
       そして、こいつらの任務は誘拐したやつらを
       口封じのためにここで始末することなのさ!」

      「邪魔なンだよ、そのお姫さまはな!
       正統の後継者はオリナス王子だけでいいんだ。
       お姫さまが生きていると担ぎ出すヤツがあらわれるからな!」

ガフガリオンは既に剣を抜き、王女様を狙っている。

怯えた目で僕らを見ている。
ああ、王女様に、あの子に味方なんているのだろうかー
277FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:12:47 ID:azTM476w0
ラッドを見る、僕と一緒で計画を聞いていなかったのだろう、
固まっている。同様にアリシアとラヴィアンも同じ有様だ、ついでにボコも。
僕とアグリアスは駆ける、ディリータと王女の方へと。

「ラムザ!貴様も奴と組んで最初からオヴェリア様を害するつもりだったのか!」

「違う!僕はこんな話聞いていない!
 王女様をお守りするつもりだ!」

「!ッ その言葉、違えるなよ!」


アグリアスはディリータと肩を並べ北天騎士団と向かい合う。
僕はガフガリオンへと、意識を向ける。

「ラムザ!? なにやってンだ!こいつらを皆殺しにするぞ!」
「出来ないよ、ガフガリオン!そんなことを許しはしない!
 これ以上、ティータのような犠牲者を出してはいけないんだッ!!
 何故、こんな汚い仕事をッ!!」

「汚いだと!? 金を稼ぐのに奇麗もクソもあるか!
「オレ達はプロの傭兵なンだぞ! 請け負った仕事は
 どんな内容でもやり遂げる、それがプロってもンだ!」

「何故、僕に話してくれなかった! どうしてッ!!」
278FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:13:46 ID:azTM476w0
「話したらどうした? オレを止めたか?
「オレたちがやらなくても誰かがこの仕事を請け負うンだ! わかるか!
 結局は同じなンだよ!」

アリシアが北天騎士団に立ち向かう、
ラッドはどうしたらいいのか迷っているようだ。
ラヴィアンは王女様を護っている。

ラッド「ガフガリオン、ラムザの性格ぐらい知っていたろう?」

ガフ「昨日今日出会った奴らのタメに北天騎士団、更に俺と
   事を構えるとまで思っちゃ居なかったンだよ!
   なんて馬鹿だ!!ラッド、お前はどうするんだ!」

ガフガリオンに距離取られたらマズイ、肉迫して剣を拳を振るう。
ラッド、せめて王女様を狙わないでくれ!

ラッド「俺は、王女様を助けたい」

ガフ「ッ! そうかよ!!」

ガフガリオンのするどく重い斬撃が縦横無尽に迫る。
なんとかミスリルソードで軌道を逸らして拳で牽制する。
彼のような猛者相手にいつまで耐えれる?
どれくらい時間が経ったのだろう、僕とガフガリオンは未だ互いに攻めあっていた。
手加減されている、なんとなくわかる。時間が経過すればディリータとアグリアスの二人と
戦う北天騎士団の方が敗北する公算が強い、つまり彼にとって時間が経てば経つほど
不利になるだけなのに。そんな事が分からない彼じゃないはずなのに…?
ついに均衡が破れてアグリアス達ががこちらに来る。
脳裏に危険信号が鳴る、これでいいのか?
279FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:38:13 ID:azTM476w0
アグ「自分が何をしようとしているのか 貴様はわかっているのかッ!?
   オヴェリア様は養女といえども王家の血筋。
   そのような方を貴様は手にかけようというのだぞッ!」

ガフ「ああ、わかっているさ! よぉく、わかっているとも!
  「王女といえども邪魔なら排除される! それが頂点に立つ
  “王家の血筋”ってヤツなンだろ?」

アグ「貴様ッ、オヴェリア様を愚弄するか!」

ガフ「邪魔なら殺される…、オレたち平民と変わらんってことさ!
   違うのは、おまえのような頭の固いヤツらが
   何も考えずに忠誠を誓うってことぐらいか!!
   生きていたって、頂点に立たない限り利用されるだけなンだ。
   だったら今、殺された方がマシだぜッ!」

彼は叫んで後ろに飛び、僕らから更に距離を取る。
懐から切り札を取り出したー

転移石
280FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:40:48 ID:azTM476w0
アグ「自分が何をしようとしているのか 貴様はわかっているのかッ!?
   オヴェリア様は養女といえども王家の血筋。
   そのような方を貴様は手にかけようというのだぞッ!」

ガフ「ああ、わかっているさ! よぉく、わかっているとも!
  「王女といえども邪魔なら排除される! それが頂点に立つ
  “王家の血筋”ってヤツなンだろ?」

アグ「貴様ッ、オヴェリア様を愚弄するか!」

ガフ「邪魔なら殺される…、オレたち平民と変わらんってことさ!
   違うのは、おまえのような頭の固いヤツらが
   何も考えずに忠誠を誓うってことぐらいか!!
   生きていたって、頂点に立たない限り利用されるだけなンだ。
   だったら今、殺された方がマシだぜッ!」

彼は叫んで後ろに飛び、僕らから更に距離を取る。
懐から切り札を取り出したー

転移石
281FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:43:12 ID:azTM476w0
※ミスって1レス分無駄に消費しちゃいました、申し訳ない(´д`;)

数回しか使えないが、ある程度の距離なら好きな所へ転移できるソレをー
僕らを引きつけていたのか!!
拙い、手加減なんてする男じゃなかった!狙いは明らかだ。
もうみんなは至近距離に居て今更間に合わない、ラヴィアンにはこの距離では見えていない、
切り捨てられ血の海に沈む王女様が脳裏に浮かぶ。
自分の事しか考えない奴らに利用される為に、
あの子がティータの様に死んでいいわけがない!
やれるか?いや、やれ!

魂を揺さぶり、叫ぶ、かつて理不尽なアレと立ち向かった時と同様に緑のオーラが迸る。
今更王女様のところに走っても間に合わない、ならば!

「aaaaAAAA!」
「「「!!!」」」

距離を取ったガフガリオンに加速して迫り彼と身体の一部を合わせる。
王女の横に現れたガフガリオンが赤黒い剣を振るう。
僕も身体が触れ合ったままの状態で一緒に転移する。
間に合え!

王女に体当たりをする、背中に熱いモノが疾る。彼の斬撃だろう、
痛い。だけど王女様が痛い思いをしなくてよかったー
282FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:45:56 ID:azTM476w0
「ラ、ラムザ!
 クソったれ!」

ラヴィアンの斬撃が来る前に彼は再び転移石を使う。
痛い、命を使ったせいもあるのだろう意識が朦朧とする。
ああ、だけど僕は今度こそ護れた。

「ティータ…」

ティータと目をあわせる、呆然としてる。
利発なティータがそんな顔するなんて不思議だな…       

「もう、怖がらなくても大丈夫。後はディリータが
 なんとかしてくれるからー…」

視界が狭まり暗くなるー

オヴェリア

パチパチと焚き火の爆ぜる音が聴こえます。
彼の頭をひざに乗せて、その髪を撫でてみました。
心地良さそうに口がつり上がります。
シモン先生に教えて頂いた治癒魔法に今日ほど感謝した日はありません。
彼が目覚めないまま夜を迎えました、膝枕をしながらゆっくり魔法を詠唱します。
アグリアスがそれを諌めていましたが、聞く耳持ちません。
命を賭して私を守ってくれた彼に対してこれくらいなんともありませんよアグリアス。
ーでも
283FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:47:38 ID:azTM476w0
急に彼が寝返りをうちました、びっくりして叫んでしまいます。
「キャッ!」
「ラムザ、起きた?」

見張り役のアリシアさんが声を掛けてきます。
ラムザ? 何処かでー
いいえ、毎日のようにその名前は聞いてました。
私の友達が愚痴を言いつつ自慢する兄の名前と一緒ですね。

彼はサッと周囲を見渡すと状況判断をしているようです。
おそるおそる上を、私を見上げてきます。
ー慌てて離れていってしまいました。膝に感じていた心地よい重さを失い
少し残念です。

「具合はどうですか?」
「どなたかが白魔法を使ってくれたようで痛みはありません、
 王女様こそ御怪我は?」

「貴方が守ってくれたおかげで怪我はありません、
  −押し倒されましたが」

ふふっ、と微笑んで。ジョークのようなものを言ってみました。
あ、冷や汗… アルマにもたまにするのですが大抵変な顔をされます。
ー慣れない事をするものではありませんね…

「ごめんなさい、慣れない事は言うものではありませんね。」

彼はホッとした表情を見せています。
284FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:54:50 ID:azTM476w0
彼に尋ねたい事がいくつかあります。
他の者達もほとんど眠っているようですし、聞いてみましょう。

 「尋ねても構いませんか?」
 「何をでしょうか?」
 「ティータという方はどんな方なのでしょうか?」

 彼は非常に慌てた様子で私に逆に尋ねてきました。 

「申し訳ありません、王女様。ディリータは何処に?」
「私を誘拐した騎士殿でしたら、あなたの傷が癒えた後、東へ向いましたよ」

「そうですか、残念です…」

「ティータさんはディリータさんとも関係があるのですか?」
「彼の、妹ですよ」

彼は楽しそうに、悲しそうに話してくれました。
彼の幼馴染と、その妹と、自分の妹の話も交えて懐かしむように話してくれます。
ですが、つくづく私の友達と話しが重なります。もしかして?
ティータという方の最期の話もして下さいました。
しばらくの間アルマがふさぎこんでいた理由もソレなのかもと思います。
ラムザさんは私とティータさんが重なって見えたのでしょうね…
少し怖いですけど彼女の兄なら、彼女の云う兄なら信じられます。
勇気を出してみましょう。

「失礼な事を聞いてゴメンナサイ、
 私を助けたのは私が王女だからですか?」
285FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 07:58:24 ID:azTM476w0
彼は優しい瞳を私に向けて、首を横に振ります。

「いいえ、理不尽な脅威をその身に受ける人が居るなら
 王女様でも、知らない人でも助けたいと思っています」

ああ、コレがラムザという人なのですね。
その答えが嬉しくて、私が特別だからというわけでも無くて少し悲しくてー

この人の事をもっと知りたくなってきます。
彼に近寄りぴょこん、と飛び跳ねてる髪の毛を手で握って居ました。
無意識に。

「ご、ごめんなさい、殿方にいきなり失礼を…」

恥かしいです、手の甲にキスをされる事はありましたが
自分から異性に近寄ることは無かったのに…
はしたない女と思われたでしょうか、彼の方を見ます。
優しく笑って居ましたー
それは、つまり、もっと触ってもいいという事でしょうか?
お腹の下辺りが暖かくなってきて鼓動が早まります。
彼と微妙な距離を保ってこれ以上自分がおかしくならないうちに最後の質問をします。

「アルマ・べオルブという妹さんがいらっしゃいませんか?」
「!、気づいていらっしゃったのですか?」
「ええ、話しの中でべオルブを隠してらっしゃった様ですが
 彼女は私のたった一人の友達なのです」
286FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:01:50 ID:azTM476w0
「そうでしたか、あいつ、無礼を働いていませんか?」
「よく、修道院の器物を壊していましたね」

うふふ、笑みが零れます。やはり彼女自慢の兄上でした。
嬉しい、嬉しい! 広い畏国の中で彼女の口からしか語られる事の無かった
噂のラムザが私のそばに居ます!彼女から彼の恥かしい話も聞いていましたので
確かめてみましょうー

夢中になってお話をして、気がつけば私はうつらうつらとしていました。

「オヴェリア様、そろそろお休みください」
「まだお話したいです…」
「いけませんよ、眠らないと疲れが取れませんよ」

彼が私をあやすように頭を撫でて毛布を掛けます。
アルマにもこうしていたのでしょうか、
まるで私には縁のなかったお父様のようです。
わがままをひとつ、言ってみたら快く承諾してくれました。
彼に膝枕をして貰って、私はまどろみます。
見上げると優しい瞳が私を見ています。
もっと、見て欲しい、私をみて。
ー…お父様
287FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:04:44 ID:azTM476w0
アリシア

ラムザがお姫様に膝枕して柔らかい瞳で見つめている。
凄かった、隊長ほどの人でさえ出せないオーラを放ち
お姫様を救っていた。私は、彼らに比べてなんて弱いのだろう。
多分私はこの一行の中で一番弱い、わかってはいたけどやっぱり辛い。
彼と視線が合う、見ていた事に気がついたみたい。

「今日は大変だったね」
「そうだね」

羨ましい、嫉妬してる、彼の強さに。
自分は矢を放ってアイテムを使うだけ、
近寄られたらただ防御して耐えるしかない自分とは違いすぎる。

「ラムザは、強いね」

嫌な娘だと自分でも思う、まるで彼を責めるような声色で話してる。
彼は不思議そうな顔をしてる。

「強い?僕が?」

彼が確認してくる、憎い。
オーラまで出して弱いわけ無いじゃない。
288FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:06:55 ID:azTM476w0
「強いよ、桁が違う」

彼は首を振り私は驚く。
彼の浮かべた表情は、敗者のソレ。
力の無い己に絶望して、何かを置き去りにして去っていった者の
ー私が努めて出さないようにしてる貌。

「強いってなに?」
 この世に強い人なんてきっと居ないよ。
 ましてや僕が強いなんてあるわけが無い。
 僕は、逃げたんだ」

彼は、何から逃げたのだろう?
私は嬉しくなった。ココに同類が居る。
彼はそれ以上なにも言わず、見張りは交代の時間になり
私は安らぎを感じて眠る。こんなに気持ちよく眠れたのは久しぶりだー



夜は明けて、朝が来る

ラッドに起こされて、クァっと欠伸をして立ち上がる。
王女様は既に起きて僕から離れていたようだ。
アグリアスがうるさいと思ってくれたのだろうか
その配慮に感謝する。
彼女が申し訳無さそうに話しかけてくる。
289FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:08:36 ID:azTM476w0
「ラムザ、加勢してくれたことに感謝する。、昨日は疑ってすまない
 しかし、よいのか? 北天騎士団を敵にまわしたのだぞ。」

「気にしないでください。自分で選んだ道です。
 それより、これからどうします? 僕らを助けてくれる人はいない…。」

「ドラクロワ枢機卿に助けを求めてみようと思う…。
 ライオネルはグレバドス教会の所轄領だ。
 教会ならなんとかしてくれるのではないだろうか…」

選択肢は、無いか…
誰に頼る事も出来ないよりかはまだマシだな。

「たしかにライオネルなら北天騎士団もうかつに手を出せない…。
 行きましょう。僕らにはそこへ行くしかない。」

話しは決まり僕らは街道を歩く。
言わなければいけない事を思い出し歩みを遅め彼と並ぶ。

「ラッド、僕がわがままを言ったばかりに辛い事に巻き込んでしまった」
「ごめん」
「その台詞を一番聞きたいのはガフガリオンだっただろうな」

ホントにそうだと思う、ガフガリオンとラッドの三人で今まで楽しくやってきたのだ。
彼からみれば、僕の方が裏切ったようなものだろう。
290FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:13:06 ID:azTM476w0
「仕方ないさ、今は急ごう」

彼はそういって、前を見て歩む、確かに急がなければ。
と、なぜか前の方に居たオヴェリア様が側に居る。どうしたのだろう?
彼女をみると、ブイっとそっぽを向かれてしまった、けど離れない。
ー昔アルマと喧嘩したときこんな感じだったなと思い出し笑う。

城塞都市ザランダを超えバリアスの丘を行軍中、ターン、という音が鳴り響き
男があらわれ、駆けている。
彼を追うように数人の男達が彼をを狙う。


アグリアス「なんだ、追われているのか?」
ラヴィアン「そうみたいだね、罪人には見えないけど」

僕らだって余裕があるわけじゃない、急ぐべきだけど…

オヴェリア「ラムザ、助けられませんか?」


この一言で決った、オヴェリア様の意向にしたがい、
僕とラッド、ラヴィアンが彼の救出に向かい
アグリアスとアリシアが王女を守る。あとボコも。
291FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:23:11 ID:azTM476w0
※ここから手抜き、退屈な人は飛ばしてください

連中はだだのゴロツキにしかみえない、手こずるとは思えないので少人数で向う。
案の定、二人ほど痛めつけた後ゴロツキ達は逃げてゆく。あっけない。
追われていた彼に話しかける。

「大丈夫かい?」
「ああ、なんとかな。ありがとう。助かったよ。」

僕らは王女様達と合流し、彼に訳を聞いてみた。

  「…やつらはバート商会に雇われたごろつきどもさ。
アグ「バート商会? 貿易商として有名なあのバート商会?

「知っているのか? だが、ただの貿易商じゃないぜ。
「裏では阿片の密輸から奴隷の売買まで悪どいことを手広くやっている
 犯罪組織なのさ、バート商会は。」

疑問が浮かぶ、素直に尋ねてみる。

「そんな奴らに何故、追われていたんだい?」
「…オレたちがなんで機工士って呼ばれてるか知っているかい?」

わからないので首を振った、そこに理由があるのだろうか。
292FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:25:24 ID:azTM476w0
ムスタディオの腰に目をやる、パーンと音のする鉄の小斧みたいな形をした物に興味がある。

「さっきの戦いで、きみが使ったそのヘンなモノが機械なのか?」

「ああ、これかい?これは『銃』と呼ばれているモノで、
 火薬を使って金属の『弾』を飛ばし相手をやっつける武器なんだ。
 こんなのは一番シンプルなもので昔は『魔法』をつめて打ち出すこともできたらしい…」

「ふ〜ん…」

どうやら僕には使えなさそうだ、興味が薄れて生返事を反す。

アグ「おまえがバート商会に追われている理由はなんだ?

機工士だから。では確かに理由にならないだろうな。
そんな輩に狙われて居るとなると厄介だ。
なんとなく彼の言いたい事の先がわかる。

「一緒に連れていってくれないか? オレも枢機卿に会いたいんだ」
「何故だ?」

「親父を助けるためだ!
 バート商会に囚われた親父を助けるには枢機卿のお力を借りるしかないんだ!
 でも、ただの機工士のオレなんかに
 枢機卿は会ってくれないだろ? お願いだ。連れていってくれ!」

「だから、おまえが追われている理由はなんだと聞いている!」
293FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:26:45 ID:azTM476w0
アグリアスがキレた。仕方が無いだろう、彼女の性格なら何かを隠して同行を求めても許しは
しないだろうな…

「…今は話すことができない」
「では、ダメだ。おまえを連れていくことはできない」

彼の選択は間違ってはいない、嘘を言うより全然印象が違う、だけどー
当然の如く結論を出して、アグリアスは立ち上がる。確かにココで立ち止まっている暇は無い。
ライオネル城はもうすぐなのだ。

「お願いだ! オレを信用してくれ! 枢機卿に会わなきゃいけないんだ!

彼は必死だ、頭を下げて頼んでくる。助けてあげたくなる、アグリアスを説得してみようか?
と、オヴェリア様が彼に話しかける。きっと、助けてあげるつもりなんだろうな…

「わかりました。一緒に参りましょう」
「ホントかい? ありがとう、お姫さま!」

ムスタディオが跳ねて、王女様の手を握ってお礼をする。
だけどそれは拙い、またアグリアスの沸点を超えた行為に苦笑をする。

「無礼者!」

やっぱり怒られた。

「わかった。おまえを信用しよう」

…アグリアスはあっさり自分を曲げて同行を認める
オヴェリア様が大好きらしい。
身分だけではなく、イヴァリースのため修道院で身を捧げてきた
彼女の生き様に好意を持って居るんだろうな。
294FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:30:18 ID:azTM476w0
※手抜き終了

道中オヴェリア様が、アルマから教えてもらったという草笛を吹こうとしてるけど
上手く出来ないようで、残念そうな顔をしていた。彼女から草を手に取ると
こうするんですよと告げて、草笛を吹く。オヴェリア様は何故か真っ赤になっていた。
けど口元が笑っている。悪寒を感じて振り向くとアグリアスが睨んでいた、怖い。
ラヴィアンはニヤリと笑っている。アリシアは興味が無いようで構わず進む。
ラッドとムスタディオがヒューと口笛を吹いている。伴奏してくれるのだろうか?
ついでにボコもクェ〜と鳴いていた。

やっとライオネル城につきアグリアスが門兵とのやりとりをして、開門する。
ついたのは夜で正直眠い、ゴトンゴトンとした衝動もきた。話しをうつらうつらと聞いていると
枢機卿が宝石を懐から取り出す、眠気が吹っ飛んだ。
アレは、座礁した船でみた宝石とそっくりだ。

「勇者たちが所持していたクリスタルを我らは『聖石』と呼んでいます。
 そして、今、我らが目にしている石こそ、伝説の秘石、『ゾディアックストーン』」

枢機卿がムスタディオに尋ねる、この石を狙っていたのではないかと。
彼は頷き、父が囚われた事を枢機卿に話し救ってくれるよう願っていた。
…バート商会のやつらはこの聖石を狙っていたのか。
聖石が気になるな。それに彼を、助けてあげたい。助力を申し出た。

「僕もゴーグに行くよ、親父さん、放っておけないだろう?」
「ありがとう、ラムザ!」
295FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:32:17 ID:azTM476w0
親父さんの救出の見通しがたったので彼は嬉しそうだ、だけど気を緩めちゃいけない。
まだ、助かったわけじゃない。
枢機卿の兵がバート商会の私兵と戦っているうちに聖石と親父さんを助ける算段がつき
今宵も更けたので、眠る事にする。

枢機卿が離れ、ムスタディオが今までの疲れもあったのだろう。あてがわれた自室へ行く。
アグリアスが真剣な目でこちらを見つめている事に気がつく。オヴェリア様はうつむいている。

「ラムザ、世話になった、
 お前に助けて貰わねば、王女様は…」
296FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:35:17 ID:azTM476w0
その光景を想像したのだろうか、彼女は手をギュッと握り締めている。
そうか、此処で彼女達との旅は終わり、か。
ラヴィアンは何か言いたそうだ、アリシアも残念そうな顔をしている。
決して長い旅の仲間では無かったけど、濃密な出来事を繰り返して旅路を歩んだ仲間だ。
ー別れも辛い。ラッドは、どうするのだろうか?
一緒に来て欲しいなんて都合がいいだろうな…

「ラムザさん、一緒に来てくれてありがとう」

心なしか潤んだ瞳でオヴェリア様に手を握られて、頭を下げてお礼を言ってくる。
僕は跪き、手を握られたまま返答をする。

「オヴェリア様と旅を出来て光栄に思います。
 楽しかったですよ」

「ーお気をつけて」



「アグリアス、頼みがあるのです。聞いていただけませんか?」
「ハッ!オヴェリア様の願いならば叶えてみせましょう!」
297FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:39:00 ID:azTM476w0
ラヴィアン

奴らとの旅もついに終わりだ。
己の足で立たずまだ自分が不幸だと勘違いしている姫様や
騎士道を妄信している頭の固い隊長殿、
人の顔色ばかり伺うアリシアと一緒に居なければならないのは
不本意だがまあいい。

最初に奴がついて来ると言った時は何が目的かわからなかった。
ガフガリオンが裏切った時、こういう腹積もりだったのかと納得したが
奴は犠牲だの汚いだの叫びあたし達の方に助力してきた。
どうせやばくなったら普通の人間の様に逃げると思っていたが
あろうことか奴は駆け出し本来なら自分が傷つかずに済むというのに
姫様の代わりに切られていた。

あたしは理解した、こいつはただ利用されてるだけだと。
それで満足そうな顔をして親切を押し売りする。なんて偽善者だ。
いや、あいつはそんな事さえ理解出来ていない。

自分の両親を思い出す、頼まれてもしないのに誰かを助けた挙句
だまされて借金を背負い、勝手に死んだー
他人の為に人生を掛けてもあたしの為に生きてはくれなかった。
298FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:41:01 ID:azTM476w0
傭兵供とはここでお別れ。
これで顔を見ることも無いと思うと清々しいが
どうせ最後だ、あのお人よしの馬鹿に教えてやろう。
部屋のドアをノックする、ほどなくしてドアは開き
奴のピョコっと飛び跳ねた髪の毛が出てくる。

「こんな時間にどうしたの?」
「なに、大した事じゃないさ、中に入っていいか?」

ドアが開き目に映ったのはあたしの部屋と同じ調度品の揃えた部屋。
真ん中に置かれたテーブル付きの椅子にあたしは腰を落とす。
奴をみると疲れているようだ、無理も無い。もう時刻は24:00をまわっている。
簡単に言いたい事だけ言ってやろう。

「ラムザ、お前ムスタディオとかいう奴について行くと言ったな?
 もう、やめとけよ、どうせ誰かを助けてもすぐ忘れて今度は自分が困った時に
 助けてくれと言ってもそっぽを向いて知らん振りする奴らしか世の中には居ないぞ?
 それと無理に連携を組もうと思うな。お前足を引っ張られてる」

奴はキョトン、とした顔であたしを見ている。
ジッと見るとやはり馬鹿が顔に出てる、間抜けヅラだな。
もういい、どんどん不愉快になってくる。
299FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:42:25 ID:azTM476w0
「いきなりどうしたの?」
「いや、なんでもないさ、じゃあな」

立ち上がり、馬鹿に背をむけドアを開ける。
そうやって他人を信じ続ければいいさ。裏切られる日まで、な。
あたしは違う、利用されるのは御免だ、したいとも思わないが。
…言い忘れていた事があったな。

「ボコを頼む、お前のお人よしに引きずって殺すなよ?」









「やあやあ、初めまして、初めまして 少年!」
300FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:44:22 ID:azTM476w0
誰かの書斎だろうか?薄暗い部屋に乱雑に散らばった本。
重厚なデスクに一人の壮年といっていい年齢の人が居る。
彼の後ろには見たことも無い魔方陣の印が示されている大仰な旗、
僕は自室に戻りラヴィアンが帰った後は眠りについたはずだけどー

「あー、気にしなくていい、此処は俺と君の脳内で作った部屋だし
 つーかなんで少年はカエルになってんだ?」

この人はなんだろう?正気とは思えない、淀んだ目。
あまり関わりたく無い、直感が危険信号を出す。

あなたは誰だ、そう聞きたかったのだけど声が出ない?
カエル? 今の僕はカエルにされている!

「よくぞ聞いてくれました! 人呼んで 外道、詐欺師、
 悪徳の権化! 不滅の星!その名もюыЁЧ!」

言葉を発した訳じゃないのに壮年の男は僕の言いたい事を理解している?
逆にこの状況が理解できないー

「あれ?フィルター掛かってる?
 じゃーわからんか、でも良かったな」

ハァ、と失望した表情を浮かべ、首を振る。
彼はニヤニヤと嫌らしい笑顔を浮かべ語りかける。
301FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:47:29 ID:azTM476w0
「実は用事があって呼んだのさ。
 君、俺がせっかくバランスを取って調整した封印崩してるだろ?
 困るよ困るよ、いや、俺はもう、この星に居ないから関係無いけどなー」

 封印とはなんの事だ?
 そもそもあなたは何のために僕を此処に?

男は真剣な目に変わっていた。

「なに、忠告にね。時代が違えども共に悪意と戦った英雄の子孫にな。
 あんな物騒な妖怪が襲ってくるのが嫌で世界から逃げ出したのに
 星間宇宙にも居たんだぜ?詐欺師の俺が詐欺られたようなモンさ。
 アレ等はいつの時代にも現れる。過去に、現在に、未来に
 海に、空に、陸に。生き物の心を依り代に現界するんだ」

悪意ー 人類が文明を築く前から存在するナニカ。
今の世じゃ伝承には残ってはいるが、みな御伽噺としか思っていない。
事実、イヴァリースにも、オルダリーアにも、ロマンダにも存在しないのだから。
彼の云う事が嘘か真かどうかわからないが
べオルブは昔から続く武門の名門だ、歴史を辿ればそんな
大英雄も居たのかもしれない。

「いいかー、よく聞けよ?
 おまえさん、銀色の巨狼と黒くて一つ目の悪意と出会ったろ?
 あれな、黒い方はこの星以外から来た大陸を喰らう悪意に
 乗り移られた人間だったのさ、身体を化生に換えて世界中で暴れまわってたなー
 んで、俺の家が食われたら困るから、神様から頂いた大切な
 【法の書】の一ページ破いて俺の書いた【777の書】原典を器にして
 狼出して同じ速度で黒い単眼を食わせてたんだ」
302FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:54:07 ID:azTM476w0
そんなものに遭った事は無いー
そう言おうとしたがサルベージの出来事を思い出す。あれのことだろうか?
星とは夜空に浮かぶ星の事か?じゃあ「この星」って?益々わからない。
星の力とはなんだろう?ナニカに放った魔法?のようなアレのことか。
そういえばこの人自分で詐欺師って言ってたっけ?

「アルテマの事か?ありゃあ本来は人の技じゃない。
 元々は同じ名前の悪意の中のド腐れ一派が使ってた魔法でな、
 己のエネルギーを高純度の力に換えて放ってるだけだ。
 人間にそんなエネルギーは無いが、別に無いなら無いで
 クリスタルなりマテリアなりで代用すりゃいけるさ。
 少年は星のエネルギーを変換して放ったって事だな。
 少年が使えたのは少年の祖先が一度その身にあの魔法を受けて身をもって
 体得した技だからだろうな〜、感謝しろよ?ご先祖様に。
 人間という種が記憶の片隅に残したモノの中で
 お前さんのじーさん達ががちょっと凄かっただけさ。
 まあそんな事はどうでもいいさ、時間が無いから続けるぞ?」

彼はかまわず話す、まるで今話しているのは義理で 
君が理解していようがいまいが関係ないといった感じだろうか。
303FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:56:11 ID:azTM476w0
「単眼も狼を食う、狼が勝っても本能むき出しのトンデモ狼になるから
 どちらも滅びないように同じスピードで貪りあう、擬似ウロボロスしてたのに
 少年が星の力を使って二匹を攻撃した結果、次の宿主に少年を選んだ。
 ここまでなら問題ない、現象が発露するもしないももう宿主次第だ。
 だが、君を通して出るあふるる星の力が狼の方に、
 この星に存在する形状に力を与えだしたんだ。
 黒い単眼はもう敗れ去った、しかし狼の方は君の体に残っている」

黒と銀。いつか見たあの光景では交じり合って落ちたはずだ。
…僕に落ちてたのか。
 
「発露のキーワードは死だ、少年が自然に死ねば、獣も少年と一緒に死ぬ。
 だが、誰かに刺されて死ぬとかすると、弱まった君の存在に乗じて現れるぞ。
 弱まった君と狼は融けて同一になる、上手くいけば本能しか無い狼を理性で
 制御できるだろうけど、どうなるかは実際なってみんとわからん。
 下手すれば悪意に匹敵する災いになるっつーこった。
 つまり少年はこの大陸における爆弾みたいなもんだから
 身の振り方には気をつけてな」

「そろそろ時間だし行くわ、俺の愛しのワイフ達が待ってるしなー
 んじゃガンバレよ!」

本棚が崩れてゆく、床が腐敗してゆく、
いつの間にか天地が逆転し僕は腐れ堕ちてくる床を見上げながら埋まってゆくー
304FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 08:58:11 ID:azTM476w0
どうしようもない悪夢にうなされて起き上がる。
僕の体はもうカエルじゃなかった。結局あの人の言う事の
半分も理解できなかったが、理解しなくていいとさえ思えた。
何故か僕の頭の中でアルマの歌う唄が逆に聴こえてくる。
こんな事あるはずがない、あの人の語った叡智の中で
恐ろしい事に少しだけ分かってしまった部分が流れ込んでくる。

嘘は現実を侵食し人はそれに騙されて生れるはずの無い死海が産まれ
鳥が地面に潜り空には魚が泳ぎ回る
明日の次に昨日が来て老人が母の体の中に還って円環の中で踊り狂う
部屋の存在が希薄になり見上げた月が気炎を吐いて落ちてー

頭を思い切りテーブルに叩きつけて正気に戻る。
なんという狂気。正真正銘少し前の僕は狂っていた。
息も荒くなる。ついさっきまで居た場所が尋常ならざる異界である事に気付いたのだ。

ー生きて、帰って来れた。
もう普通に戻った情景を目に焼き付けて
疲労した精神を休める。
願わくば、目が覚めたら明日もまたこの世界でありますようにー
305FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:02:34 ID:azTM476w0
二日後出発の準備を整え、
城門前で待ち合わせたムスタディオとラッドがいる。あとボコ。

彼は着てくれるのか、喜びが込み上げる。

「ラムザ、これからもよろしくな」
「さあ、行こうぜ、到着の頃にはライオネル騎士団が
 バート商会の奴らをやっつけてくれてるさ!」

能天気だが悪くない。
数日を掛けてツィゴリス湿原を抜け機工都市ゴーグに到着する。

? 不自然だ、戦闘の後は無く街は平穏そのもの、めでたい事だけどこれはおかしい。

「ラムザ、様子がおかしいぞ
 しばらく様子を見てくる」

気が競っているのだろうか、彼は街へ行こうとする。
そんな彼をラッドが呼び止めて大事な事を伝える。

「待った、待ち合わせ場所を決めてないが?」
「スラム街の方で待っててくれ、あっちだ」

ラッドとボコはスラムの廃屋で休憩して、
僕はムスタディオを待つ。
もうすぐ夜が来るという時刻になっても彼は来ない。
…なにか あったのだろうな、人気の無かったスラムだけど、わかる。
剣呑な気配がする、ラッドとボコに知らせようか。
306FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:05:14 ID:azTM476w0
「手前がムスタディオの仲間か?」
「誰だッ!」

西日を浴びる太目の男に意識を集中する。
アレは、ムスタディオ! 捕まったのか!
異変を感じ、ラッドとボコが廃屋から飛び出してくる。

「そういうワケだ、さ、聖石を出しな」

あの男、馬鹿なのだろうか?彼は猿轡を噛まされているのに言えるわけがないだろうに…
しかし、かなりの数のゴロツキ達だ、二十は超えているか?乗り切れるのだろうかー

「ハッ!まだ言いたくねえのか?
 コレを見てもまだだんまり決め込んでられるのか?」
「そうか、それじゃ喋れんか」

太い男が気がつき猿轡を解く。
ゴロツキがずた袋のような物を引きずるー
いや、人だ。察するに彼の親父さんだけど…

その姿は見るに耐えない。逃げれないように足は潰され、手は無理な角度に捻り曲がっている。
ーッ外道が!! 罪の無い人を傷つけるのがそんなに楽しいのかッ!
意識した訳でもないのに身体から気が溢れてくる、体は正直だ。
あの男を同じ目に遭わせてやれと要求してくる!
307FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:06:49 ID:azTM476w0
ムスタディオは真っ青な顔をして震えている。
それはそうだろう、僕だってアルマがあの様な目に
遭わされたらマトモじゃ居られない。
憎悪に、悔恨に、怒りに燃える表情を浮かべ彼は言う。

「ラムザ、その廃屋の煙突に聖石がある、取ってくれないか…」

仕方が無いだろう、渡さなければ自身はおろか親父さんが死ぬ。
屋外の階段から屋根に上り煙突を探る。硬い感触が感じられる、これか?
僕は聖石を手に握り外道に向って怒鳴る。

「聖石を渡す!ムスタディオと親父さんを離せ!」
「聖石が先だろうが!選択の余地なんかあると思ってんのか!」
「わかった!聖石を僕等の真ん中に置く、ムスタディオ達をこちらに歩かせろ!」

聖石を中間の石畳に置き、元の場所に戻る。
奴等はムスタディオを拘束から解き親父さんを抱えさせて
こっちに歩かせる。気配を探ると中央付近の廃屋の角に人影がみえる。
遮蔽物を利用しようとして利用しきれていない?
ならばー さらに己の気を練り周囲に流し、
その波紋が歪になる所を把握する。
高地に固まったかなりの人数、弓兵だろうな。
廃屋のあちこちに白兵仕様の戦士といったところか。
308FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:09:57 ID:azTM476w0
あの外道が約束を守るとは思えない、
ラヴィアンが言ったように今回ラッドと連携を取る余裕は無いな。
奴等から視線を離さず近くに居るラッドに小声で話す。

「ラッド、何かあるとしたら聖石とムスタディオが交差する時だ、高台に居る弓兵に気をつけて。
 ボコを連れて二人を乗せて逃がしてくれないか?」
「ラムザ、お前はどうするんだ?」

彼は心配そうな表情と親父さんをみて怒りに震えている。
しかし冷静な判断が出来ない男じゃない、
今は不利だという事を正しく認識している。
ーそれは、間違っているのだけれども。
人数比はおよそ1:10、数だけ考えれば最早覆せない程の戦力比。
だけどろくに訓練も受けてない奴等が殆どのはず。
ならば、勝機は十分にある。アカデミーで基礎を習い
ガフガリオンが実戦で見せてくれた戦術の使いどころだろう。

僕は、哂っていた。奴等はどんな気持ちで親父さんを私刑に掛けたのだろう?
ゴロツキ達は、まあいい。殺せるだけ殺して逃げた奴は許してやる。
だけど、あの下衆は生かして帰す訳にはいかないな!
このままじゃムスタディオがかわいそうじゃないか…!

「見せてあげるよ、外道に今日を生きる資格なんて無い事を…!
 援護は考えなくていい、多分大丈夫。」
「…わかった」

ラッドは驚いたような表情で僕に頷く。
もうすぐ、交差するー
309FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:14:13 ID:azTM476w0
ムスタディオは、置いていた丸い聖石を蹴り飛ばしたー
親父さんを抱え、こちらに必死に走る!僕とラッドもボコの馬具を引き駆ける。
中央付近に隠れていた(つもり)のゴロツキが獲物を手にムスタディオに走り寄る!
気を練り、意識を極めて高くして、一撃で戦意を奪えるような波動撃を放つ!

ゴロツキは派手に吹っ飛び廃屋に激突して動かなくなるー
近くに潜んでいた雑魚がもう一匹、ラッドとボコに駆け寄る。
行かせはしないさー
抜剣したミスリルソードを力いっぱいに投合する。
何が起こったのか理解してない表情で首に刺さった剣を見つめている。
、その隙にムスタディオはボコに騎乗し親父さんを抱えて走る。
頼んだよ?ボコ。ラッド。
風を切る音が空から聴こえる、矢がかなりの数で飛んでくるが既にボコは疾走し
ラッドは遮蔽物を盾にやり過ごす、僕は首に剣を受けて絶命した死体に走り寄ると
ソレを盾に矢をかわす。

矢が止まる、ロクに訓練も受けてないゴロツキが三名ほど僕に近寄ってきたからだ。
馬鹿がー 近寄ってくる。戦士として三流、弓兵の足を引っ張るのだけは一流か。
310FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:16:30 ID:azTM476w0
一番近い男が剣を上段に勢いよく振り下ろしてくる。
そんなに力をかけて振ったら軌道を変えれないのに…
横に避けて、無防備な腹に抜いたばかりの剣で刺殺する。
もう目前にまで迫ってきた残りの二人を高地側に誘導しつつ迎撃する。
ナイフを持った方が僕の後ろに必死に回りこもうとするが少し遅かった。
廃屋の壁を背にして、死角をなくす。
槍を手にした方が僕の顔を狙って突きを突いてくる。
槍とは本来その長大なリーチを生かして薙ぎ払い、
近寄らせずに、チャンスをみて突き刺すモノだ。
ましてや、面積の少ない頭などを狙う必要なんて無いー

首を振るだけで刺突をかわす。男が必死の形相で
廃屋の壁に刺さった槍を抜こうとしている。
笑わせてくれる、手を離せば生きていれたのかもしれないのにー
愉快な男の首を掴み、捻って引く。
ゴキっと骨の折れた感触がしてヒューヒュー言ってる、しばしこのまま。

ナイフ使いは出来るようだ、両手に獲物を持ち、
己の射程に僕を入れるため片手の塞がっている僕に突進してくる、ようこそ!
気合いの声を上げやってきた彼の斬撃が僕を襲う前に、握った肉を彼に向って差し出す。
せっかくの鋭いソレも肉に埋まり少しだけ時間を掛けて抜く、勢い余ったのか蹈鞴を踏んでいる。
だけどその無駄は致命傷だ、剣を捨て、サイドキックを放ち、
吹き飛んだ彼に迫り殴打殴打殴打!
311FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:21:17 ID:azTM476w0
15秒ほど休憩してから剣を拾い、二本のナイフを奪いベルトで固定して腰に巻く。
動かなくなった彼をやっぱり掴んで引き摺る。
この方角に僕が逃げ込んだ事を見ている、それがアダになるぞ?弓兵共!
廃屋づたいに高地に迫り、掴んだソレを彼等の視界に写るように放り投げる。
反応良く矢が飛んでくる、哀れ、彼は貫かれ、息絶える。
第二射が飛ぶ前に駆ける、駆ける、駆け抜ける!
勘のいい奴がダミーに騙されず矢を番えたままの状態で静止していた。
集中しろ、大幅に避ければその間に再び矢が飛んでくる!
真っ直ぐ、僕の身体目掛けて飛んでくる殺意ー
ビュウッと空気を裂けて迫る一撃を、手甲で守られた手のひらで掴み、
走る勢いを殺さず投げ返す。肩に刺さり、奴は膝をつく。
その光景に驚いた弓兵達の統率が乱れて、二射が遅れる。
もう、手遅れだよ。こんなにも僕等は近い!
哂いながら、近くに居た弓兵に飛び蹴りをして倒れた奴の首を刺す。
近い順に、あの世へ送葬してあげよう。至近距離の弓兵など、大した脅威では無い。
斬って、刺し、殴り、蹴り、血祭りに挙げてくれる!
まだ、弓を捨てず、震えながら必死に矢を装填する弓兵が目に留まる、
ここまで近寄られたら弓を捨てろ。愚者メ!

番えてる最中、横殴りに襲い掛かる。弓ごとぶん殴り、
折れた弓を必死に手に持つ転がった雑魚の顎をカカトで踏み砕く。
奇妙な声を垂れながら転がるソレを捨て置き、
逃げ去る弓兵に向けて奪ったナイフを投合する。一人背中に刺さった。コケル。
一人は外した、そのまま逃げ去る、運ガイイナ、オマエ。
312FFTwolf ◆HOZlQYR1MY :2006/08/14(月) 09:28:01 ID:azTM476w0
※面白いなって思って下さったら感想おねがいします
※物語を書く力がBBS電波からホントに湧き出てきます

あらかた始末したのち、高地の異常に気がついた戦士風の男達が上ってくる。イラッシャイ
呆然としている。十人を超える死体の惨劇に圧倒されているのだろうか?
ああ、そんな所に固まってると大変ダヨ?

いまや気など練らずとも勝手に溢れ出でる、思うが侭に、放テ!

「大地の怒りがこの腕を伝う!
 防御あたわず! 疾風、地裂斬!」

緑色に光り揺れるオーラを右手に宿し、地を穿つ。
迸るエネルギーが指向性を持って大地を疾走し、地面を爆砕させながら
固まっていたゴロツキに炸裂する。
派手に吹き飛んだ奴等を無視して高地から戦場を確認するどうせ、放って置けば死ヌ

ラッドの近くに死体が三つほど転がっている、しっかり仕留めた様だ、さすがラッド。
さあ、問題の奴は何処に居ル?

ー居タ



何故、彼女が此処に?
313名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/14(月) 21:58:50 ID:fEZnE1XX0
FFTwolfさん乙!
黒ラムザこわーい!(((゚Д゚;)))ガクブル
ところでユウイヨーチなんて詐欺師いたっけ?>>300

続きをとても楽しみにしていますが、ひとつ気に入らないところが。
なんで追いついたのがゼイレキレの滝じゃないの!?
滝が劇的な雰囲気を出してて好きなのにぃー。

ボコを使ったので早く追いつくのはいいけど、
ディリータ達と北天騎士団も早く出合ってしまうのは変じゃない!
返せ戻せ!舞台を滝にしろ!王女様をピョンピョン跳ねさせろぉ!
314名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/14(月) 23:02:24 ID:3liAnyXc0
>>FFTwolf ◆HOZlQYR1MY
GJ&乙。
ストーリーを追いつつ、なかなか斬新な展開ですな。
ラムザがいろいろな意味で凄い。

ただ、自分で手抜きとかは書かないほうがいいし
コメントはまとめて、本文とは別に書いたほうがいいと思うよ。
そこに今回の分はここまでと書いてくれれば、感想レスもしやすくなるし。

なんにせよ続きを楽しみにしてるよ。
315名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/15(火) 12:02:18 ID:CIejKy060
>>FFTwolf ◆HOZlQYR1MY
読み手である自分の中で、ある程度FFT像が確立されてしまっているという事と、
FFTプレイの記憶が曖昧になっている事、ついでに読解力もあんまし無いw事を
差し引いて考えても、…置いてけぼり感が否めないというのが正直な感想でした。
アルテマの根拠もそうですが、唐突な“彼"の出現について行けずorz。おそらく
作者さんの頭の中にはきちんと筋道が立っているはずなのでしょうが…うーん、
もうちょっとゆっくり、その世界観を伝えてもらえると面白くなるかな、と個人的に
思います。(あくまで個人的に、です。詐欺師のネタを理解出来ないのが原因か?)
反面、戦闘描写がもの凄く迫力あって良いです。鬼気迫る闘志と戦場の緊迫感、
おぞましい思念と戦う正義が紙一重で存在する不安定な世界(雰囲気)が、ここ
まで伝わってくる文章は、読んでいて緊張すらします。

それから、>>314で既出ですが投下終了を示す目印を入れていただけると、他の
書き手さんと時間が重なった時などにも有効ですので、宜しくお願いします。

>>313
> 王女様をピョンピョン跳ねさせろぉ!
横レスですみませんが…感動したw
316鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(5):2006/08/15(火) 12:13:44 ID:CIejKy060
>>165-172より。
----------

                    ***

 呆然と立ち尽くす仲間達の中で最初に声をあげたのは、リーブだった。
「さあ、戻りましょう」
 飛び立っていった仲間の帰還を待たずに告げたリーブに、僅かばかりの非難を込めた視線と、
明かな疑問を含む声を向けたのはユフィだった。
「おっちゃん?!」
「大丈夫、彼は必ず帰ってきます」
 自信に満ちた声を前に反論の機会を失ったユフィの後ろで、クラウドが賛同するように頷いた。
「その通りだな」
 短く告げただけで、すたすたと歩き出す。彼の背に向けて頷くと、ティファはユフィの肩に手を
置いて微笑んだ。
「そうね。それに……私達には私達のできることをやらなくちゃ。帰ってくるまでに、ね?」
「そ……だよね」
 視線を嫌うように俯いてから「帰ってくるよね?」と小さく、尋ねるようにしてユフィが呟くと、ティファは
「もちろん」と頷いた。
(そりゃアタシだって戻ってくるって信じてる。信じてるけどさ……でも仕方ないじゃん、心配なんだから)
 口に出すことをためらった言葉たちを胸の奥に押し込めて。それを振り切るようにユフィは
顔を上げ、空を見た。
 満天の星空を背景に、浮遊したライフストリームの一部がひらひらと舞い落ちて来る。
「ヴィンセントが、帰ってきて。……このままってんじゃ、格好つかないもんね!」
 視線をおろし残骸が積み上げられた周囲を見渡して、大げさに手を振ってみせる。なにも
この状況はここに限ったことではない。
「おう! あとは俺たちに任せとけってんだ! …………。で」
 出だしこそ威勢の良かったバレットだが、妙な間を置いてシドを振り返ると、少し声量を落としてから
問うのだった。
317鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(6):2006/08/15(火) 12:19:40 ID:CIejKy060
「ところで俺たちよ、こっから歩いて帰るのか?」
 地上部隊が乗ってきたS.FOXは負傷者の搬送に回される。そうでなくても、飛空艇の姿が
見えないことを言っているのはすぐに分かったが、それにしてもすっかり弱気である。
 問われた方のシドも飛空艇の行方を知っている訳ではないので、何とも返せずに言葉を濁す。
「ああ、それでしたら心配ありません」
 そこでシドの代わりに答えたのはリーブだった。にこやかに微笑むリーブの笑顔に、バレットは
一抹の不安を覚える。それをすかさず代弁してくれたのがユフィだった。
「……おっちゃんがそーやって笑う時って、だいたいロクな事ないんだよね」
「そっ、そうですか?」
 的を射た指摘に内心ぎくりとしながらも、リーブはさらっと言ってのけた。
「とにかく飛空艇の方は大丈夫です。私が責任と、身をもって保証しますよ。……おっと、原理を
説明すると長くなりますので、またいずれ。さあ、戻りましょう」
 そう言って背を向け、来た道を戻り始めた。あまりにも自然な(一部不自然に聞こえても、それが
リーブなのだと納得させられてしまうのが不思議ではあるのだが)言葉運びに、そのまま頷いて
歩き出そうとしたバレットは、ふと気づく。
「おい! やっぱり歩くのかよ!」
「仕方ねぇだろ、どこ飛んでっちまったか分かんねぇんだからよ!」
 悔し紛れにシドが言い返すが、墓穴だった。
「……シド、それはパイロットが胸を張って言える事なのか?」
 冷静なクラウドの指摘がシドの胸を貫いた。悔しいが確かにその通りで、目を逸らすついでに天を仰いだ。
 シエラ号の姿は見えない。
 少しだけ、切なくなった。
 ――女房は大切にしなくちゃいけねぇな――と、場違いだがそんなことを思いながら感傷に浸る
シドの背後では、ユフィが声を張り上げている。
「文句言わないでとっとと歩く!」
「わ、分かったぜ……。ったく人使いの荒いヤツだな」
「口を動かさないで足を動かす!」
 逐一ユフィに窘められながら、バレットも渋々だが帰途につく。ティファはその辺を心得た物で。
「マリンも待ってるし……ね?」
 それだけでバレットの足が軽くなるのを知っている。その姿を見てユフィが両手を広げて降参の
ポーズを示すと、ティファは小さく笑った。
318鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(7):2006/08/15(火) 12:29:28 ID:CIejKy060



 歩き始めた彼らの後ろ姿を見つめながら、少女はまだ迷っていた。
 シェルクにとって進むべき道――戻る場所など、地上にはない。
 このまま彼らの後について行ってもいいものか、分からなかった。
 どうせこの身体も、放っておけば機能を失うだろう。ディープグラウンドで過ごした長い年月の間に、
魔晄に頼らなければ生存を維持できない不便な物に作り替えられてしまった。かといって、代償として
得たツヴィエートとしての能力「SND」を駆使してまで探し出す物も、もはやここには無い。そんな
自分は、地上で生きる術を知らない。
 彼らに背を向けてもう一度、夜空を見上げた。降り止まないライフストリームの合間からは、輝く
星々が見えた。 
 その風景に見入るうち、地上のノイズが遮断され静寂の中にひとり立っている気がして来た。
 まるで、ネロの闇が作り出す静けさに似ているようだと、そんな気がした。

「……シェルクさん」

「!?」
 自分の名を呼ぶ声で我に返ると、途端に周囲の音が耳に流れ込んできた。声のする方に顔を
向ければ、いつの間に戻ってきたのだろうか、リーブが心配そうな表情でこちらを見つめていた。
「どうされましたか?」
「…………」
「“戻りましょう”」
 地上に戻るべき場所を、シェルクは知らない。言葉に出せない思いを、リーブは見透かしたように
こう続けた。
「厳しいことを言うようですが、これからあなたには、あなたにしか出来ない仕事を
してもらわなければなりません」
319鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(8):2006/08/15(火) 12:35:59 ID:CIejKy060
「……え?」
 驚いて再び顔を向けたシェルクに、リーブは手を差し出してこう告げる。
「どこかで居眠りしてるお姉さんを、迎えに行くのはあなたの役目ですからね」
 目を細め、少し戯けたような口調でそう言った。さあ、と言ってシェルクを促す。
 思わず後ずさるシェルクの足に、突き出た鉄柱がぶつかった。それはただの残骸のはずなのに、
逃げ場はないと言われているようだった。


 ――「私も、星に還っていいかな?」


 取り込まれた闇の中で見た光景と、そこで出会った姉の姿を思い出し、シェルクは何かに弾かれた
ように顔を上げた。あの時、シャルアから問われてシェルクははっきりとこう答えた筈だ。


(だめ、まだ……。)


 そうだ、地上でも探すものはある。捜す者がいる。
 今度は誰かの命令からではなく、自分が望むままに。
 そして、伝えなければならない。
(迎えに……?)
 リーブは何も言わずに手を差し出したまま、じっと待っていた。彼女が自らの意志で選択し
、最初の一歩を踏み出すのを。
 そんな二人の姿を、少し離れた場所で仲間達が見守っていた。彼らもまた、少女が自分の足で
一歩を踏み出すのを待っていた。

 踏み出せば、そこから道は延びていく。
 戻るべき場所は、その先にある。
320鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\(9):2006/08/15(火) 12:47:11 ID:CIejKy060
「……お……姉、ちゃん」
(迎えに……。今度は、私が)
 リーブは無言で頷いた。
 あの時、リーブの耳に聞こえてきた声がシャルアでなかった事は、告げなかった。
 そう。
 彼女はまだ、この星のどこかで生きている。
 たとえ良くない状態だとしても、生きているのなら。
「一緒に、いきませんか?」
 その言葉にシェルクはぎこちないながらも頷いて、差し出された手にそっと自らの手を乗せた。
 リーブの手はとても、暖かかった。


「おーい二人とも〜、早く早く〜!」
 遠くから、ユフィが両手を大きく振ってふたりを呼んでいる。
「そうだぞ、もたもたしてると日が暮れっちまうぜ!」
「……バレット、日はとっくに落ちている」
「だからいちいち訂正すんな!」
「事実だ」
 笑顔で言い争う同居人達の横に立って微笑むティファも、槍を振っているシドも、
皆あたたかい表情だった。



 踏み出せば、そこから道は延びていく。
 平坦ではないと知りながら、それでもこの道を歩くことをリーブは心に誓った。

 それは新たな、世界再生への道。

                         ―鼓吹士、リーブ=トゥエスティ\<終>―
----------
・リーブの「いきませんか」、は2つの同音異義語。
・要約するとDCのエンディング「迎えに行く」行為について、シャルアにも触れて欲しかったという個人的且つ大げさな愚痴。
321ラブレター?Fromチラシの裏 ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/15(火) 13:00:09 ID:CIejKy060
(↑微妙に古いネタですごめんなさい、どうやらタイトルだけでもスレタイに沿いたかった模様w)

長きにわたり、書き手の愚痴とか妄想とかを沢山詰め込んだSSにお付き合い下さいまして、
誠にありがとうございます。
投下するのがこんなに緊張したのは、実は初めてなんじゃないか? とさえ思えるほど
書くことだけではなく、読んでもらえる事への楽しさや緊張感を改めて感じました。

・まとまりない長話でしたが、
 書きたかったのは、「インスパイア」の自己解釈でした。
 (インスパイア=人を励ます=鼓舞・鼓吹。作中の「頼む」ってこの象徴だなと)
 (関西弁になるのは副作用。で、結局シエラ号はどうなったんだってツッコミへの対応が不完全だった事をお詫びします。)
・インスパイアやDCFF7について色々書きたいことがあるのですが、いい加減スレ違いに
 なりそう(というか考察という名の間違った妄想)なので、一部をまとめのページに載っけてみたりしました。
 …少しでもタシになれば幸いです。

次のネタが浮かんだ時は、作中で全てを伝えきれるような文章を書きたいと思った次第です。
322名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/15(火) 14:57:43 ID:Rg1fJQSV0
長期連載、心から乙です。
感動と連載が終わったという虚脱感で何を書いていいのやら…
とにかく本当に乙&ありがとうございました。
323名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/15(火) 21:39:47 ID:eOz2TW680
>>鼓吹士、リーブ=トゥエスティ
長きに渡り乙でした。そしてGJ!!
リーブはインスパイアの能力を受け入れて前に進んでいくんだろうな。
毎回読み応えのある内容で楽しく読ませてもらいました。
貴方の書く小説がまた読みたいです
324名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/17(木) 11:17:29 ID:288FWoia0
GJ!!そして乙!!
325名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/18(金) 16:32:35 ID:HlRfEAjC0
326名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/19(土) 09:07:44 ID:OARqxbg5O
ここってVIIシリーズオンリーなんだ?
327名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/19(土) 11:29:17 ID:UR8RpOv/0
んなこたーない
328名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/20(日) 17:57:45 ID:M9VpI0fh0
ほしゅほしゅ
329名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/21(月) 21:21:46 ID:fF1WMsO+0
330TUTORIAL 1  ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/22(火) 18:32:55 ID:5SZEjBAc0
舞台:DCFF7、表題通りのチュートリアル改変ネタ + リーブのリミット技についての妄想。
注意:色々無理がある話ですが、それでも宜しければ保守のお供に。
----------


 遠目にも古めかしい施設の扉はひどく錆び付いていた。こびりついているのは錆のはずなのに、
赤褐色のそれは、まるで血痕のように見えて気味の悪さという色を添えている。
 ここは社員であっても許可がなければ立ち入ることのできない特別区画内にある建物だった。
 その正体は、神羅製作所時代に建造された戦闘訓練施設。さまざまなタイプの武器弾薬と、
演習場を備えた本格的なもので、およそ一企業が持つべきものとは思えない規模だった。しかし
今は、ほとんど使用される事もなくなり、最近はここへ立ち入る人間もなかった。
 そんな場所に、これまた戦闘とは無縁のはずの都市開発部門所属のリーブがいるというのも
奇妙な話だったのだが、ある人物の紹介もあって彼は今ここに立っている。
 残念ながらその人物の消息は、今のところ不明とされているのだが。
 思っていたよりスムーズに扉が開き、一歩室内に足を踏み入れると同時にスキャンが始まる。
数秒ほどで機械的な音声がホール内に響き渡った。

 ――認識データ照合中……。
    認識番号:CAT001。
    こんばんは、リーブ=トゥエスティ。
    神羅製作所、戦闘訓練施設へようこそ。
    認識番号より、
    都市開発部門諜報活動特別訓練プログラム『ケット・シー』向けセッションをスタートします。

    セッション1:
    物資回収と敵地潜入を想定した
    基本動作の訓練を行います。

    なお、訓練中の生命保証および機体保証は一切ありません。
    神羅製作所の一員としての責任と技術を期待いたします。
    トレーニング中に不明な点がある場合は、
    『TTT』より情報の確認をしてください。
331TUTORIAL 2  ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/22(火) 18:37:58 ID:5SZEjBAc0
 この訓練プログラムは神羅製作所時代に使われていたもので、それを特別に改良したものらしいと分かる。
わざわざご丁寧に作り替えてくれたのが誰だか知らないが、リーブは居心地の悪さを感じていた。訓練とは
いえ、持ち慣れない拳銃をスーツの懐に忍ばせているせいもあるだろう。そもそも戦いは苦手だし好まない
彼が、こんな場所に立っても良い気分になれるはずはない。
 総務部調査課の主任失踪に関わり、治安維持部門統括から直々に捜査協力の要請が回ってきた。なぜ
自分のところに? とも思ったが、ヴェルド主任とは旧知の仲だった。そのためリーブが彼を庇う、あるいは
匿っているという嫌疑を掛けられているのかも知れない。ハイデッカーにしては気の利いた推測だとも考え
たが、だとすれば恐らく、それは彼だけのものではないだろうと思い直した。
(いったい誰が?)
 ちょこまかと動き回る小型ロボットを追いかけ回すよう、前方にいるケット・シーを"操作"する。簡単な追跡
動作と回避訓練。最初のうちは精神を集中してケット・シーと自身の感覚とを同期させなくても、難なくクリア
できる内容だった。だからこそ他のことに考えを巡らせる余裕もあった。
 しかし訓練プログラム自体は、段階を踏んで徐々に難易度が増す。施設の奥へと進むに連れて、集中力と
緊張は否が応でも高まっていく。
 こうした本格的なケット・シーの操作訓練は、リーブにとっても初めての経験だった。今回の訓練参加への
動機に、好奇心があった事は否定できない。
 そもそもケット・シーを偵察機として使用する事を最初に提案したのは副社長だと聞き及んでいるが、今回の
訓練実施にはタークスが関与している。まったく厄介な事件に関わってしまったと言うのが本音ではあるが、
ヴェルドの敵に回るつもりは毛頭無い。
 神羅という企業以上に、彼を信頼しているからだ。
 そのためにはまず、味方から欺かなければならない。本来であれば全く気乗りしないこの訓練への参加も、
その一環だったのである。
332TUTORIAL 3  ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/22(火) 18:44:25 ID:5SZEjBAc0

                    ***

 ケット・シーを操作してアイテムを回収しながら通路を進んで行くと、やがて開けた空間に出た。
ここまでは、さして深刻な事態に陥ることもなく到達できた。反対側に見える階段上の小さな扉を
見つけて、どうやら出口のすぐ近くまで到達したらしいと知る。
 訓練はもうすぐ終わる。そう確信した時だった。
 また、あの機械的な声が聞こえてくる。

 ――最終セッション:
    ここでは実弾を用いた脱出訓練を行います。

 その声が響き渡った途端、背後と前方の扉が一斉に閉ざされた。
「!? ……なっ」
 遮蔽物がわりのコンテナと、アイテムボックス。銃で撃ち抜けば破裂する仕掛けのドラム缶などが
配置されている以外には、逃げ道も隠れ場所も用意されていない空間の真ん中に、ケット・シーは
佇んでいる。
 奇妙なほどの静けさに、フロア入り口前に立っていたリーブの足はすくみ、背中には嫌な汗が流れた。
 ……かちゃり。
 静寂の中、リーブの耳が捉えたのは小さな金属音だった。まさかと思う、まさかとは思う反面、
それは銃に弾を装填する音に酷似していた。
 逡巡する間を与えんと言わんばかりに、弾はケット・シーめがけて発射された。重々しいライフル銃の
発砲音が鼓膜を叩き、続いて無数に撃ち込まれるマシンガンの音で理性と堪忍袋の緒を切られた気がする。
「ケット・シー!」
 リーブは夢中で駆けだした。使用されているのが実弾だと言うことを承知の上で、承知しているからこそ
フロアの中央に向かって走る――ケット・シーを、守るために。
 動揺したせいかコントロールが乱れ、一度バランスを失ったケット・シーが地面に倒れた。それからすぐに
起き上がりはしたものの、意図する方向に動いてくれなかった。走り寄るリーブとはまるで反対の方向へと
逃げていく。ケット・シーを狙っている銃弾も、必然的に同じ方向へと向けられる。
 リーブはケット・シーを“操作”するための集中力を完全に欠いていた。

「止めて下さい、当たったら死んでしまう!」
333TUTORIAL 4  ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/22(火) 18:50:59 ID:5SZEjBAc0
 叫びながら銃弾の雨の中へと飛び込んだ。一瞬、ケット・シーに向けられる銃撃が止む。
 頭から突っ込み地面に這い蹲って無様な格好になりながらも、その身を盾にたくさんの埃と
傷だらけになってしまったケット・シーを庇おうと必死だった。銃声が聞こえなくなってから身を起こすと、
リーブは沈痛な面持ちで彼を抱きかかえる。彼の表情が曇っているのは、痛覚の一部を共有するため
ではない、感情の一部を害したからである。
「……痛ないか? もう戻ろな」
 そう言いながら額を撫でてやったが、ケット・シーは何も言わない。“操作”していないのだから当然か。
 そんなリーブに向けて躊躇するように数発、まるで見当違いな方向に発砲される銃声に顔を上げた。
そのまま首だけを動かし、ある一点を見つめた。……その先には、おそらくスピーカーとカメラが設置されて
いるであろう場所に。
 それから静かに言い放った。
「訓練プログラムを中止し、今すぐここから出してください」
 しかし返答はなかった。
 かわりに一発の発砲。これもやはり見当違いの方向ではあったが、先ほどよりも明らかに着弾地点は
リーブに近くなっている。
 威嚇――あるいは警告の意味合いを含んだ射撃。そしてこれが、自分の放った言葉に対する答え。
 リーブは瞬時にそう判断し、身を翻すとコンテナの後ろに回り込んだ。都市開発部門に所属する社員だと
いう事を考えれば、彼の身のこなしはまだ機敏な方だと言える。だが、この場所ではあまりにも愚鈍と
評価せざるを得ない。
 最後にもう一度、銃声が響いた。今度はリーブのすぐ真横の壁面に着弾する。弾道に近い側の頬に風を
感じるほどの距離に撃ち込まれた銃弾は、まるでこう言っているようだった。
 “……これは最後通告だ。”
 狙撃者の意図に思いを巡らせた後、この施設の入り口に立った時の放送を思い出す。

 ――なお、訓練中の生命保証および機体保証は一切ありません。

 まさか社員をという、最後までその思いは拭えない。それに、まがりなりにも都市開発部門の役職者である
自分を、本気で狙撃する事はないだろうと考えていた。ふつうならそれで間違いない、だがここは、どうやら
“ふつう”が通用する空間ではないらしい。
334TUTORIAL 5  ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/22(火) 18:57:20 ID:5SZEjBAc0
 「それが君の甘さだ」と、誰かが言っていたのを思い出す。
 ケット・シーを左腕で抱え、地面についた右手と左膝でバランスを取りながら姿勢を低くしてリーブは
壁面を背にした状態で遮蔽物から周囲を伺う。戦術は分からないが、建物の構造を最大限に利用して
逃げ切ればいい。狙撃者が身を隠せる場所は限られている、そこから死角となりそうな地点を割り出せば、
脱出ルートは自ずと見えてくるはずだ。
 現在地点から15メートルほどの間には、遮蔽物となるコンテナが複数配置されている。この辺は死角も
多くルートのパターンも数通り考えられるので、慎重に行けば問題はないだろう。そこから5メートルほど
先に進むと、ドラム缶が並ぶ地帯がある。そこを抜けてから出口までの約15メートルは、まったく遮蔽物の
ない場所が続く。ロックされた扉を開くまで直線距離にすれば50メートルほどだった――脱出ルートはこれ
以外に考えられない。後ろの扉には、こちら側からロックを解除する装置はない。文字通り後戻りはできな
かった。
 一番問題になるのはドラム缶地帯だ。あそこで発砲されれば、銃弾をこの身に浴びずとも爆発の余波を
受けることは避けられない。しかし、等間隔に並んだドラム缶の間を抜けなければ、その先にある出口までは
辿り着けない。
 どうするか?
 そんなとき、抱えていたケット・シーがひとりでに動き出す。“操作”はしていない筈だった。驚いて見下ろすと、
リーブの腕の中で首を傾げながらにっこりと微笑んでいる。
 それから彼は、こう告げた。
『ホンマにおたくアホやなぁ〜。さっき、ボクがせっかくオトリになっとったのに、アンタわざわざ着いて来よった。
……せっかくの作戦が台無しやで』
335TUTORIAL 6  ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/22(火) 19:01:32 ID:5SZEjBAc0
 驚いたままの表情で固まったリーブを見上げて、ケット・シーはしっぽを振って楽しそうに話を続ける。
『そないにボーッとしとったら撃ち殺されてまうで? アンタまだ死にたないやろ』
「……ケット・シー?」
『今さらそんなアホ面、向けんといてや。
 ボクが死んでもアンタは助かる。けどな、アンタが死んだらわいも死んでまうんや。そら困るっちゅー
 だけのハナシや』
 事も無げに言ってのけるケット・シーに、リーブは眉をひそめてこう告げる。
「それは困ります」
『なんも困る事なんてあれへんがな。単にボクが死にたないだけや。
 ……エエかリーブ、ボクらは運命共同体や。生きてこっから出るためには、協力せなアカン』
「それは分かりますが……」
『したら悩む必要なんてあらへん。……んじゃ、さっそく始めよか』
「ちょっと待って!」
 思わず声を大きくしてしまったリーブは、相変わらず周囲を気にしながら口元に手を当ててこう続けた。
「そもそも私は今、“操作”をしていない筈なのに……?」
『アンタ、さっき夢中で飛び出して来たやろ? よう分からんけどあん時、発露したんやろな』
「……発露?」
 まるで初めて聞く言葉に反応する子どものような顔を向けるリーブに、ケット・シーは得意げに言って
見せた。

『せや、これがアンタのホンマの能力や。……ボクは生きとる、操作されとるだけの人形とちゃうで』

 その言葉にはっとする。
 幼い頃からいつの間にか身についていた不思議な力は、本人が思っている以上の可能性を秘めた
能力であったことを、今になって知る。
 いや、正確に理解できたとは言い難いのだが。

 ――「止めて下さい、当たったら死んでしまう!」

『さっきのアンタ、ボクを守りたい一心やったやろ? その集中力の賜やで』
 確かにそう叫んでいたのかも知れない、とっさの出来事で自分でも良く覚えていなかった。ただ、
なんとなく言われてみればそんな気もする。
336TUTORIAL 7  ◆Lv.1/MrrYw :2006/08/22(火) 19:07:26 ID:5SZEjBAc0
『あんな、ボク平和主義やねん』
「分かってます、軍事転用なんてされたら困りますからね」
『それとな、科学部門も嫌いや。実験材料にされるんは堪忍な』
「ええ」
 姿無き狙撃者から銃口を向けられる中で、穏やかな笑みを浮かべ頷き続ける主を不思議そうに見上げ
ながら、ケット・シーは言った。
『ドラム缶地帯を抜ける妙案があるねん』
「あなたがオトリというのは無しですよ」
 ぬかりなく釘を刺しておく。しかしケット・シーはこう続けた。

『……新しいケット・シーがきても、ボクの事覚えといてくれたらそれでエエ』

 するりとリーブの腕から抜け出て、彼はコンテナに上った。それを追いかけようと立ち上がったリーブを
遮るように、背を向けたまま手を振り下ろす。
『ちょい待ち! さっき言うたやろ? ボクは死にたないんや。ボクとアンタは運命共同体、そう言ったの
聞いとらんかったか?』
 その言葉にリーブは首を大きく横に振った。そんなことは分かっている、むしろ話を聞いていないのは
ケット・シーの方だと反論しようとした。
 しかし、背を向けたままのケット・シーはこう続ける。

『……アンタが生きとる事が、ボクの生存の第一条件や。忘れんといてな』

 その言葉がまるで合図であるかのように、銃撃は再び開始されたのだった。



----------
・時間軸はBCFF7第20章終了〜FF7本編開始までの間ぐらいだと思っておいて頂けると非常に助かります。
・時系列で見るとちょっと矛盾点がありますが、そこは…どうかお見逃しを。
・「インスパイア」はリーブのリミット技なんじゃないか? という投稿者が勝手に立てた仮説に基づく話。
 …と書いてますが、その実「ケット・シーとリーブ」という関係性に萌えたk(ry…すんません、もう少し続きます。
337名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/22(火) 23:15:36 ID:EeBOm4V40
超乙!
もう少しと言わず、どんどん続けて下さい。
ケットの為に銃弾の中に飛び込むリーブに萌え。
338名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/23(水) 17:25:28 ID:Ar0gg9TXO
浮上
339名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/23(水) 20:59:51 ID:BgMW/t4ZO
FFTwolf氏マダかなー。
340名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/24(木) 15:39:09 ID:oWYMW9z2O
DSリメイクFF3発売記念保守!
リーブ話もバルフレアとパンネロ話も続き楽しみに待ってます
FF3話も投下されるといいなー
341名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/25(金) 18:54:09 ID:BMAMDYvT0
ワクテカしながら保守
342名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/26(土) 23:06:48 ID:BXJwhaXA0
FF3(DS版)
ネタバレはしてないと思います。アルクゥ視点でルーネス合流まで。
----------




 ――ルーネスの力なんか借りない、僕ひとりで何とかしてみせる。
    みんなを、見返してやるんだ!

 アルクゥの足を動かしているのは、そんな少年らしい純粋な思いだけだった。
 いつもなら過剰に働く彼の理性は、わき上がる悔しさの前にその機能を失い、
彼をカズスへと向かわせる。
 ウルから南へ――目の前の景色を見ているようで、その実アルクゥの目には
何も見えていない。悔しさに視界をふさがれた彼の行く手は、深い思慮によって
生み出される恐怖が阻むことはなかった。
 ひたすらに草原を進むアルクゥの前に立ちふさがったモンスターを、彼の視界が
とらえる。
 その姿は本の中で何度も見た。
 とっさに携えていた短剣を引き抜き、モンスターに向けてそれを構える。短剣の
扱い方も、本で読んだことがある。
 脳裏に蘇った記述が、彼に力を与えてくれる。蓄えた知識を、目の前の現実という
点に集約すればいい。
 怖れることは何もない、怖れる必要は何もない――アルクゥは短剣を振りかざし、
モンスターへと向かった。

 ――ルーネスの力なんか借りない、絶対に借りない。僕ひとりで何とかしてみせる。

 モンスターもまた、アルクゥの前進を阻むことは出来なかった。
                    ***

 日が暮れる前にカズスへ到着した。ミスリル鉱山の裾野に広がるここは、腕利きの
鍛冶職人たちが暮らし、ミスリルを求めて遠方からも人々が集まる活気のある町だった。
 少なくとも、アルクゥの知る「カズス」はそう言う町だった。
 鉱山を前に初めて前進をやめ、足を止めたアルクゥを出迎えたのは、不気味なまでの
静寂だった。
 往来する人々の姿も、声も、すべてが消えてしまった町。
 その中を吹き抜ける風の音だけが、アルクゥの耳に届いた。
「どなたか、いらっしゃいませんかー?」
 呼びかけてみたが返事はない。
 町を支配する静寂と沈黙は、少年が孤独であると言うことを教えてくれる。

 悔しさに曇っていた視界が晴れ、理性はその機能を取り戻す。
 それと引き替えに、臆病な心が顔を覗かせる。
(みんな……どこへ行っちゃったんだろう)
 浮かんだ疑問の真相を確かめるべく、足を踏み出そうとするが動かない。
 ――みんな、どこかへ行ったんじゃない。
    呪いによってみんなユーレイにされた、町……。
(どうしよう……どうすればいい?!)
 アルクゥは必死に考えた。記憶をたどり、記述を探したがどこにも見あたらない。
 ウルからここまで、あれほど動いていた足が竦む。身体が動かなかった。
 ひとりでは何も出来ないのだと思い知る。
 悔しかった、悔しいけれどそれだけ信頼している幼馴染みの名が、頭に過ぎる。

(……ルーネス)

 次に後ろを振り返ったとき。
 アルクゥの小さな旅が終わり、仲間達との壮大な冒険が始まるのだった。
                                            《おわり》
----------
・ノリと勢いを根拠に保守。
345名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 13:55:58 ID:0DctUPJP0
>>330-336
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
ケット・シーの台詞の一つ一つが飄々としているのは
リーブを気遣ってかと思うと切ないです。
2人が無事脱出出来る事を願って期待sage
346愚か者の恋【14】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 13:57:06 ID:0DctUPJP0
※FF12のバルフレアとパンネロのお話。お嫌いな方はスルーよろしこです。
※投稿人、夢見がちです。甘ったるいのがお嫌いな方もご注意下さい。
※最終的に2人をくっつける予定ですが、続くかどうかは今の所未定。

>>177-179 >>260-269より続きます。

さて次の日の夜である。

寝床に引き揚げるまで、バルフレアは悩みに悩みまくった。
夕食の時、パンネロと目が合った時、にっこりと微笑まれた。

(あれは“今夜もお願いします”って事だろうな。)

パンネロにしてみれば他意はないのだが、
ナントカは盲目だし、男とはそういう生き物だし。

でも、彼女の真っすぐさが怖くもあって。
だけど、身体を横たえても落ち着かない。

「…仕方ないか。」

やはり夜遅くに女の子一人を外に放り出してはおけない。

色んな言い訳を頭の中でぐるぐると繰り返しながら
剣を手にすると外に出た。
なんとなく、誰にも見られたくなくて、
相棒にも気付かれないようにそっと。

テントから少し離れた大木の下で、
昨日と同じ様にパンネロが一人稽古をしていた。
今日はバルフレアが来るのを待っていたのか、
バルフレアにすぐに気が付いて手を振る。
347愚か者の恋【15】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 13:58:42 ID:0DctUPJP0

(にやけんなよ、俺。)

バルフレアはわざと億劫そうな顔をして歩み寄る。
そして、剣の相手をしてやり、その後少し話をして
それぞれの寝床に戻る。

話の内容は他愛のない事ばかりだ。
パンネロの家族の話や、踊りの事、
ダウンタウンでの暮らしなど。その間に、

「バルフレアさんと話してると、
なんだかお兄ちゃんと話してるみたい。」
「えー、バルフレアさんって落ち着いているから
もっと年上だと思ってました。」

等の発言がバルフレアに大ダメージを
与えていたとはパンネロは知る由もない。

それでも話していると、この少女の心は珠玉だと思わずにはいられない。
そこいらの男どもより真っすぐで強く、
バルフレアが出会ったどんな女よりも優しく、純粋だった。

(おっと…フランは別格だがな。)

ただ、相棒と決定的に違うのは、
この少女を見ていると、かまってやりたい、
守ってやりたいという気持ちを強く引き起こさせるのだ。
348愚か者の恋【16】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 13:59:59 ID:0DctUPJP0
隣に座っていると、パンネロの息づかいや体温を感じる。
彼女の口から語られる話を満天の星空の下で
いつまでも聞いていたい。

(…ったく、何を考えてんだ、俺は?)

我に返ったバルフレアが話を打ち切り、お喋りタイムが終わる。
なんだかんだ言いつつも、毎晩律儀にやって来るバルフレアに、
パンネロの別れ際の挨拶はいつの間にか、

「じゃあ、明日の夜に、また!」

そう言って手を振って駈けて行く。

(なんとも艶っぽい別れの挨拶だぜ…)

バルフレアは自嘲的に笑うと、パンネロの姿が見えなくなるまで見送る。
そんな夜が何日か続いた。



久しぶりに小さな街で宿を取った。
宿の主人のすすめで全員で宿の食堂で
その街の郷土料理を食べる事にした。
田舎料理だが、これが予想以上に美味しく、
久々の屋内の食事で一同がくつろいだ雰囲気になった。
349愚か者の恋【17】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:01:20 ID:0DctUPJP0
ワインの種類も豊富で、バルフレアは早速1本頼む。
運ばれて来た瓶はたまたま入り口の一番近くに
座っていたパンネロの前に置かれた。
パンネロはその瓶を手に持つと立ち上がり、
わざわざ反対側に座っているバルフレアの傍に来て、

「はい!バルフレアさん!」
と、お酌をしてくれる。
「あー!パンネロ、ずりぃぞ!バルフレアが1番かよ。」
早速ヴァンが文句を言う。
「ヴァンはダメ!お酒飲んだらすぐにヘロヘロになっちゃうんだから。」

ここまではいつもの風景だった。
バッシュが何かを言って、ヴァンをたしなめ、
ヴァンがふてくされて、それをフランとアーシェが笑い…

しかし、何故か嫌な予感がした。
パンネロが口を開きかけたのが目に入る。

(よせ!何も言うな、お嬢ちゃん!)

しかし、そんな心の声が届くはずもなく。

「それにね、私とバルフレアさんは毎晩逢い引きしている仲なのよ。
一番にお酌するのは当たり前でしょ?」

和やかな雰囲気が一瞬にして凍り付いた。
350愚か者の恋【18】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:03:57 ID:0DctUPJP0
バッシュはナイフとフォークを持ったそのままの姿勢で固まり、
フランは冷ややかな視線をバルフレアに投げ、
アーシェの眉がきりきりと釣り上がる。

ただ一人、ヴァンだけが“えー、いつの間にそんな事になったんだよ”
などと悠長な発言をし、冷たい空気に拍車をかける。

し〜んと静まり返った一同に、さすがのパンネロも
自分の言った冗談が冗談だと受け止められない事に気付いた。

「や…やだな、みんな。冗談です…よ?
私とバルフレアさんが恋人同士って、
そんなことっ!
絶っ対!
あるはずないじゃないですか!」

力一杯否定するパンネロに、バルフレアに投げかけられていた
冷たい視線が一転して気の毒そうな物に変わった。
今度は別の意味でいたたまれないが、
ここで上手く調子を合わせれば、この話は冗談で終わるはずだ。
さて、どう言った物かと考えていると、

「逢い引きって言うのは、バルフレアさんが言った冗談ですよ。
本当は、毎晩、剣の稽古をしてもらっているだけなんです!」

バルフレアはテーブルに突っ伏してしまおうかと思った。

(いいタイミングだ、お嬢ちゃん…)

何故なら室温がまた一気に下がったからだ。
351愚か者の恋【19】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:06:27 ID:0DctUPJP0
「どういう事か、説明してもらえないか?」

さすがにこのままでは、と思ったバッシュが口を開く。
が、その口調はどことなくバルフレアを非難しているようだ。

「説明も何も、お嬢ちゃんが言った通りさ。
夜、眠れなくて散歩してたら、たまたまパンネロが剣の稽古をしていた。
あんまり熱心だったから、相手してやった…それだけだ。
確かに“逢い引き”なんて言葉は使ったが、そりゃ、冗談だ。
俺にだって一応良心はある。こんないたいけなお嬢ちゃんに手は出さねぇよ。」

変に言い訳がましい事を言うとかえって話がややこしくなる…
そう判断してありのままを話す。

「そういう事なら…」
「相手をするよりもまず、どうして部屋に戻る様に言わないのです?」

バッシェの言葉を遮ってアーシェがぴしゃりと言う。

「あんまり熱心だったんでね。あんたにも覚えがあるだろ?」
「それとこれとは別です。大体あなたは普段の言動がそんな風だから、
こうやって皆にあらぬ疑いをかけられるのです。」
「やれやれ、悪いのは全部俺かよ。」

「いい加減にしろよ!」
不毛な言い争いを止めたのは意外にもヴァンの怒声だった。
「アーシェもバルフレアもいい加減にしろよ。
パンネロが困ってんだろ!?」

ちょっとした冗談のつもりが思いがけず大騒ぎになってしまい、
パンネロはワインの瓶を持ったまま立ち尽くしている。
ヴァンは立ち上がると、パンネロの手を引いて外に出て行ってしまった。
352愚か者の恋【20】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:11:43 ID:0DctUPJP0
「悪いが、俺も失礼するぜ。」

バルフレアは不機嫌そうに眉を顰めて立ち上がる。

「話はまだ終わっていません。」
「これ以上、何を話す?」

アーシェはぐっと言葉を詰まらせた。
「あんたの旅の目的はなんだ?俺とお嬢ちゃんの仲を疑うことか?」
バルフレアは乱暴に扉を閉め、出て行ってしまった。


食堂を出た途端、ヴァンに呼び止められた。
てっきり責められるのかと思ったら、
さっぱりワケが分からないといった様子だ。

「なぁ…バルフレア、アーシェはなんであんなに怒ってんだ?
最初はびっくりしたけど、だって、冗談なんだろ?」

ヴァンによると、困り果てているパンネロを放っておけなくて
連れ出しただけらしく、やはり根本的に騒ぎの要因は分かっていないようだ。

それでも、分からないなりに真っ先にパンネロを助けようとしたのだ。

「全く…時々お前が羨ましいよ。」
「なんだよ、またワケ分かんねー事言って!
それより、パンネロが気にしてんだよ。」
「何をだ?」
「あんたに迷惑かけたって。」

バルフレアは深い溜め息を吐いた。
353愚か者の恋【21】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:12:56 ID:0DctUPJP0
「お嬢ちゃんは部屋か?」
「うん。」

バルフレアは小さく舌打ちをすると、部屋への階段を上る。

「おい!どうすんだよ、バルフレア!」
「お嬢ちゃんに“気にすんな”って言ってくるだけだ。」
「アーシェは?」
「フランが上手くやるさ。」



ドアをノックすると、少しして扉がゆっくりと開いてパンネロが顔を出す。
バルフレアを見ると、目を伏せてしまうが、
意を決した様に再び顔を上げ、何かを言おうとする。

「ごめんなさい…」
「なんでお嬢ちゃんが謝るんだ?」
「ほんの冗談のつもりだったの…」
「冗談だったとは残念だな。」

パンネロは、え?という顔でバルフレアを見上げる。

「…冗談だ。」
「…こんな時に…笑えませんよ。」
「気にすんな。アーシェの言う通りだ。疑われる方が悪い。」
「…そんな…」
「色男の辛い所さ。」

軽口ばかり叩くバルフレアに、パンネロの顔が少し明るくなる。
354愚か者の恋【22】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:14:18 ID:0DctUPJP0
「お嬢ちゃんが気にする事じゃない。
それと…もう稽古もお終いだ。夜遅くに一人で出歩くんじゃない。」

すると、パンネロはとても傷ついた様な顔をした。

「もう…お終いなんですか?」
「あぁ。そうだ。」
「…そっか…そうですよね…」

悲しそうな顔を見ると、胸が痛んだ。
と、いきなりパンネロの瞳から涙が溢れた。

「あれ…私…?」
パンネロは慌てて目をごしごしと擦る。
「えへへ…ごめんなさい。“もう終わり”って聞いたら
急に寂しくなってきちゃって…」

涙を浮かべながらも健気に笑う。
そんな彼女を抱きしめたいという衝動を必死で堪え、
バルフレアはパンネロの頭に手を置く。

(でも、これは恋じゃない。)

バルフレアは自分に言い聞かせる。
パンネロはバルフレアの次の言葉をじっと待つ。

「俺も…楽しかったさ。妹が出来たみたいだった。
稽古にはもう付き合えないが…そうだな、
この旅が終わったら…またシェトラールに乗せてやるよ。」
「本当ですか?」
355愚か者の恋【23】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:17:17 ID:0DctUPJP0
パンネロの顔がぱっと輝く。
そして、踵を上げて背伸びをすると、バルフレアの頬にキスをした。

「ありがとう、バルフレアさん…ねぇ、本当に?」
「あぁ。楽しみにしてな。」
「そうじゃなくて…安心したの。旅が終わって、急に居なくなったりしませんよね?
バルフレアさんとフラン、何も言わずにどこかへ行ってしまいそうで。」

やはり、お嬢ちゃんの切っ先は鋭いと思う。

「約束する。」

パンネロは良かったぁ…と小さく呟き、漸く笑った。
手を前に組んで、その事が心配で心配でたまらなかった…といった風情だ。
その仕草に胸を締め付けられた。

「メシも途中だろ?食べて来いよ。」
「はいっ!みんなにも謝りたいし…バルフレアさんは?」
「後ですぐ行く。」

パンネロはにっこり笑うと、階段を下りて行った。
その姿が見えなくなると、見送るバルフレアの顔が一瞬にして曇った。

お嬢ちゃんには嘘を吐いた。
きっと、自分は何も言わずに姿を眩ますだろう。
食堂に戻る足取りが重いのは気のせいだ。
嘘が辛いのも今だけだ。

パンネロの唇が触れた頬に手を当てる。
思わぬ展開だったが、これで良かったのだと言い聞かせた。
356愚か者の恋【23】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:20:28 ID:0DctUPJP0
話を少し戻して。

残されたバッシュはアーシェのバルフレアに対する気持ちが、
信用を越えている事に気付き、どう声を掛けていいのか分からなかった。

「分かっています…」
アーシェは手が白くなるほど握りしめる。
「殿下…」
「明日、彼に謝ります。」
「気にすることはないわ。」

すっかりぬるくなってしまったワインを優雅にグラスに注ぐと、
フランは事も無げに言ってのける。

「でも…」
「あなたの言った事は間違ってないわ。彼が怒ったのは…」

フランはワインを一口飲んで頷き、
別のグラスに注いだ物をアーシェに渡す。

「そうね。例えばこの旅が終わって、私たちが別れ別れになって…
それでもし、あなたが困っていたら、バルフレアは世界の果てからでも駆けつけるわ。
そしてそれはパンネロも同じよ。彼にとって、あなた達は“特別”になったの。
なのに疑われたから怒っているのよ。」

「彼には“特別”はたくさん居そうね。」

357愚か者の恋【25】 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:23:47 ID:0DctUPJP0
アーシェは無理に笑うと、グラスに口をつけ、一気に飲み干した。
横でバッシュがオロオロしている。
フランは静かに首を横に振る。

「たくさん居るガールフレンドと、あなた達は違うわ。」
「ありがとう、フラン。」

アーシェは漸く笑顔を見せる。
横で心配そうなバッシュに、心配しないでと笑いかけ、
バッシュは、はぁ…と頷く。
上手くなだめてくれたフランに感謝しつつ、
ことが落ち着いた様でホッとする。

「彼の事を信じていないわけではないが…」
おずおずとバッシュが口を開く。
「パンネロには…その、もっと家庭的な男性がふさわしいと思って。」

「すっかりあの2人の父親ね。」

フランが冷やかすと、アーシェも笑う。

「せめて兄と言ってもらいたいな。」

そこにヴァンとパンネロが、少し遅れてバルフレアも戻って来た。
パンネロが皆に謝り、アーシェも非礼を詫び…
ぎこちないながらもまた食事が再開された。
バッシュが父親の様にパンネロを心配していた話で一同が大笑いし…
そうして、夜が更けていった。

それは、この旅の仲間が一緒に摂った最後の食事だった。

つづく。
358 ◆DvBI45asCU :2006/08/27(日) 14:33:18 ID:0DctUPJP0
番号ミス
>>356
○【24】 ×○【23】 です。ごめんなさい。

>>273 個人的にバルフレアはものすごーく楽しんでた思います。
クリア、密かに応援しております。

>>270 私もそのお話好きです。これからもお付き合いよろしこです。

あと1回の投下で終わる予定。バルフレアって書くの難しいしですね。
359名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/27(日) 21:48:12 ID:LYLavRHQ0
>>270です。
なにか投下されてると思ったら・・・
バルパンキタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!
楽しみにしてましたよー。
すっかりどっぷりFF12SSにはまりまくってますw

続きwktk
360名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/28(月) 02:48:57 ID:nDfWPk2V0
バルパンて凄い響きだな。
どこかの宇宙忍者のようだ。
361名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/28(月) 23:24:22 ID:ewp079lR0
ガンガレ
362名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/29(火) 23:27:35 ID:3077Idu00
363名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/30(水) 20:37:49 ID:ONhlKrz2O
364名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/08/31(木) 21:18:52 ID:nnuGQ3iX0
365名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/01(金) 20:58:01 ID:Bmx0YHXz0
366貴方がいたから 1/6:2006/09/02(土) 05:28:13 ID:h3WQSl+/0
保守を兼ねて投稿します。駄文かつ他スレにも貼ったので恐縮ですが……。
作品はFF3(DS版)です。

目の前にはのどかな風景が広がる。耳を澄ませば鳥の囀りが聞こえる。
私達が訪れているのは古代人の村。悠久の時を感じさせてくれる村だ。
色々な人の話を聞いているうちに、いつのまにか夕刻過ぎになっていた。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん達。世界一周してきたら良いものあげるよ!」

急に村の子供に話しかけられてびくっとしてしまう。
そんな中、ルーネスだけは目を輝かせて子供に言葉を返す。

「本当か?よーし、すぐに一周してきてやるよ!」

その言葉にすぐ反応してしまう私。

「ちょっと〜。もう遅いし、時間あんまりないわよ?」

憎まれ口を叩いてしまう私だが内心はそうではない。
子供が言う「良いもの」が気になるし、何よりルーネスの好奇心いっぱいの
輝いている目にどきどきしていた。

「いやぁ、大丈夫だろ?まだ時間あるって!なぁ、アルクゥ?」
「え?……う、うん。大丈夫じゃない……かなぁ」

急に話をふられたアルクゥにイングズが助け舟を出す。

「……まったく。お前は一度言い出したら聞かないからな。
 幸い、チョコボの森も近くにある。夜までには帰ってこれるだろう」
「だよな?じゃあ、早速行ってくる!」
367貴方がいたから 2/6:2006/09/02(土) 05:28:54 ID:h3WQSl+/0
走り出したルーネスの肩をつかみ、イングズが引き止める。

「ルーネス、ちょっと待て」

ルーネスの肩に手を置いたまま、イングズが私のほうを見た。

「レフィア。悪いが、ルーネスと一緒に行ってきてくれないか?」

その言葉にルーネスと私が同時に反応する。

「どうしてだよ?」
「どうしてよ?」

二人の反応が同じだったことがおかしかったのか、イングズは笑いながら答える。

「ルーネスを一人にしておいたら、いつ帰ってくるか分からないからな」
「それは……そうかも」
「アルクゥ……お前まで……」

イングズの言葉に即同意したアルクゥに肩を落とすルーネス。
私は、その光景がおかしくて笑顔になってしまう。

「ふふ。そういうことなら仕方ないわね。
 じゃあ、レフィアおねぇちゃんと一緒に行きましょうね。
 ルーネスちゃん……ふふ」
「へいへい……分かりましたよ」

渋々了承したルーネスにイングズが再び言葉を発する。

「それでは、私達は先に宿の予約を済ませておくので」
「うん。そうだね。待ってるから早く帰ってきてね〜」
368貴方がいたから 3/6:2006/09/02(土) 05:29:40 ID:h3WQSl+/0
手を降るアルクゥに別れを告げ、私達はチョコボの森に向かう。
チョコボの森は村のすぐ横だ。村を出て数分で到着した。

「俺一人でもちゃんと帰ってこれるのになぁ〜」
「なによ?私と一緒なのがそんなに嫌なの?」
「い、いや。そういうわけじゃないけどさ。……あ!チョコボみ〜っけ」
「ちゃんと話をききなさい!……んもう!」

口調は怒っていたが、私は笑顔になっていた……と思う。
ルーネスといる時間がそうさせていたのだと確信できる。

「じゃあ、世界一周に向けて出発だ!」
「そうね!れっつご〜」

チョコボに乗りながらルーネスが言う。

「うわぁ。俺達の住んでる世界って広いんだな」
「そうね。知らない街もたくさんあるかもしれないわね」
「これからいろんな人に出会えるといいな!」
「きっと出会えるわよ。実際、私は……」

言おうとして慌てて口を閉じる。危ない危ない。
もう少しで「大好きな人に会えたから」というところだったわ。

「なんて言ったんだ?風で聞こえなかったよ」
「な、なんでもないわ。能天気な楽天家さんに会えたって言ったのよ」
「誰のことだよ!」
「ふふ……さぁね?」
369貴方がいたから 4/6:2006/09/02(土) 05:30:41 ID:h3WQSl+/0
会話を繰り広げているとあっという間に村に着いてしまった。
ルーネスはチョコボにお礼を言っている。

「ありがとな!またよろしく」
「クェッ!」

私は走っていくチョコボの背中に向かって叫んだ。

「ありがとね!チョコボちゃん」

チョコボへのお礼を済ませたルーネスが私に話しかけてきた。

「じゃあ、早速あの子のところに行こうぜ」
「あ、待って。ちょっと待ってよ〜」

そう言うや否や駆け出したルーネスを私は追いかける。
近すぎず遠すぎず。この距離感が私達二人の関係を示しているのかもしれない。

「世界一周してきたぜ。良いものくれるんだよな?」
「本当?すごいなぁ、お兄ちゃんは。じゃあ、はいこれ」

ルーネスは子供から小人のパンを受け取った。

「今日のお小遣いで買ってきたんだ。きっと美味しいよ!」

(小人のパン……ね。ちょっとルーネスが期待していたものとは違うんじゃないかしら)
370貴方がいたから 5/6:2006/09/02(土) 05:31:20 ID:h3WQSl+/0
きっとルーネスは落ち込んでいると思い、ルーネスの顔を覗き込んだ。
ところが、私の予想は見事に外れていた。
私の目に満面の笑みを浮かべたルーネスの顔が飛び込んできた。

「やった!ありがとな!また世界一周の話を聞かせてやるよ」
「本当?わーい。ありがとう、お兄ちゃん」
「じゃあ、俺達は宿に行かなけいといけないから。また明日な!」
「うん。バイバイ。おねぇちゃんもバイバーイ」
「うん。またね!」

子供と別れてから私はルーネスに話しかける。

「まさか「小人のパン」で、あんなに喜ぶとは思わなかったわ」
「んーだってさ。あの子にとっては大切なもんだろ?」
「そうでしょうね、きっと」
「そんなに大切なものをくれたんだぜ?そりゃあ、嬉しいさ。
 それにさ、こっちが喜ばないとあの子が悲しい思いをするじゃないか」
371貴方がいたから 6/6:2006/09/02(土) 05:36:19 ID:J3kfPeLd0
笑顔のルーネスを見つめて想う。

(……そうね。私は貴方のそんなところに惹かれているのかもね。
 周りの皆を元気にすることが出来る。そんな力に)

無言になった私にルーネスがからかうように言う。

「あーお前、もっと良いものを貰えると思ってたから元気ないんだろ?」
「ち、違うわよ。だって、私は……」

(世界で一番大切なもの。もう貰ってるもの!)
心の中でそう大きく叫んだ私は微笑みを浮かべる。

「……ふふ」
「な、なんだよ。急に笑って変なやつだな」
「まぁ、いいじゃない?さて、宿に向かいましょう。二人が待っているわ」
「そうだな。明日からの冒険に備えてゆっくり休むとするか」

貴方に出会えて、私は変わったわ。そして、これからも変わっていくと思う。
そんな私を見ていて欲しい。貴方に。いつまでも。いつまでも……。

―――――Fin―――――
372名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/02(土) 23:22:43 ID:uVkmy9cy0
>>366
まずは乙。
>駄文かつ他スレにも貼ったので
作品を『駄文』というのは謙遜には聞こえない。一生懸命書いたのなら、そういう言い方は好ましくないです。
それとマルチ投下は止めた方がいいよ。ここならここ、他スレなら他スレで。
373名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/03(日) 00:06:23 ID:5tMoXrw+0
乙です!
374366:2006/09/03(日) 04:36:37 ID:yQ9udo5Z0
>>372
了解しました。注意してくれてありがとうございます。
以後、気をつけます。
375名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/03(日) 14:48:19 ID:kNok5ldfO
FF3のレフィア&ルーネスの小説希望です!
376名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/04(月) 00:53:33 ID:EQILc9Ct0
>>346-357
フランの年長者っぷりや、バッシュの親父っぷりや
ヴァンの純真さやパンネロへの無自覚な優しさとか
鋭いし良く気が利くパンネロはきっと良い奥さんになるなーとか
大人(もしくは、それを装おうとする)バルフレアとか
強がりアーシェとか。
とにかくパーティーメンバーの個性が、この短い文章の中でも活かされてるのが良い。
だからこそ(恐らく最後への伏線となるであろう)ラスト一行が胸に来る。続き待ってます。

>>366-371
乙です。
思わず「チョコボみ〜っけ!」の使い方が上手いと!w (先頭キャラが誰でも同じ事言うんですが)
小人のパンをもらったときは確かにレフィアと同じ事を感じたプレーヤーですが、ルーネスの
フォロー(解釈)で救われてますね。それがまた彼の個性を上手く描けている要因なんだなと同時に
感じました。とりあえずここはイングズにGJの称号を贈りたい気分になりましたw
377TUTORIAL 8  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/04(月) 01:09:39 ID:EQILc9Ct0
前話:>>330-336
主題:リーブのリミット技とケット・シー(1)との出会いを妄想してみたかった。
----------


 ケット・シーの言葉と、同時に再開された銃撃によってリーブの反論は完全に
封じられてしまった。
 容赦なく浴びせられる銃弾の的になるのはケット・シーだった。もちろん、そのことは
彼自身も承知している。だからリーブから離れるようにして逃げ回った。
小さな身を活かして、銃弾の隙間を縫うように、とにかく逃げ回る。その間に、リーブが
ドラム缶地帯を突破し出口の扉を開放してくれればいい。
 ケット・シーの狙いは、その1点のみだった。

『エエかリーブ、ボクとアンタは運命共同体や。せやけど同じモンやない。
 ……分かるか? 別の個体なんや』

 逃げ回りながらケット・シーは声の限り叫んだ。
 彼がアホだと言うリーブならばおそらく、ケット・シー自身に危険が及んだ時には“操作”
して来るだろう。ここで言う“操作”とはリモコンの類で行うものではない、自身の感覚の一部を
共有しての同調操作だ。しかしそれではリーブの命が危険にさらされてしまう。そのリスクを負ってでも、
彼なら“操作”しかねない。だからアホなのだ。
 そうとは分かっていても、感覚を共有したままではリーブを無用の危機にさらすだけだ。
 だから、そうさせない為にケット・シーは叫び続ける。
『痛みまで共有したらアカン、切り離して考えなアカンで。ボクの痛みと、アンタの痛みは別モンや』
 幸か不幸か発露してしまったその能力を、けれど使いこなせなければ互いの身を滅ぼすだけなのだ。
 せっかくもらった生命なのに、こんな場所で短すぎる一生を終えるのは本望ではない。

『リーブ! 聞こえとるか〜?
 アンタはいつか、本当にボクの力を必要とする時が来る、絶対や。
 エエか、今はそんためのチュートリアルや!! しっかりせなアカンで〜』

 この言葉が現実になるのは、それから間もなくのことだった。
378TUTORIAL 9  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/04(月) 01:15:32 ID:EQILc9Ct0

                    ***

「あいつら、命を投げ出して黒マテリアを手に入れるくらいなんでもない。」

 耳に当てたイヤホンから聞こえてきたのは、深い溜め息と共に吐き出されたクラウドの
声だった。
 そこは古代種の神殿。
 ケット・シーは神殿の外で、リーブは神羅本社ビルの一室でこの会話の一部始終を
聞いていた。ここで下すべき決断は1つしかない。それでも、リーブは実行命令をためらった。
『おいリーブはん、……なにボーッとしとんねん』
 脳裏に直接聞こえてくるのはケット・シーの苛立ったような“声”だった。それはリーブを
捲し立てるように次々と続く。
『状況的にどう考えてもボクしかおらんやろ?』
「……それはそうなんですが」
『アンタが“操作”せんなら、ボクが行くで?』
 リーブは返答をためらった。声に出さずとも、心が決断をためらっている。業を煮やした
ケット・シーは自律行動で通信機器を操作し、神殿内のクラウドに呼びかける。
『ボクのこと忘れんといてほしいなぁ……。クラウドさんの言うてることは、よお分かります』
 いったん自律行動を始めたケット・シーは制御しきれない、それがリーブの能力の利点であり
弱点だった。
 あの“訓練”の日以来、ケット・シーの自律行動――言わば機転によってリーブは何度も
救われていた。
 だからこそ、この先に続くであろうケット・シーの言葉を遮ろうとした。その一方で、どうにも
ならない事も分かっていた。
 それでも彼の思いは行動に表れた。机に両手をついて勢いよく立ち上がったリーブの脳裏に、
ケット・シーの明るい“声”は残酷なまでに響いたのだった。

『この作りモンの体、星の未来のために使わせてもらいましょ』

 投げ出された椅子が激しい音を立ててフロアに転がった。
379TUTORIAL 10  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/04(月) 01:24:22 ID:EQILc9Ct0
 リーブは何も言えなかった。声に出すことも、思いを訴えることすらも出来なかった。
 黒マテリア入手の重要性、スパイという立場、魔晄都市開発に関わった人間として貫いて
きた信念と、一方で抱く星への思い。それに――なによりケット・シーは……生きている。
 それらの感情や思いが複雑に絡み合って、リーブから言葉を奪う。
 ただ一つ、はっきり分かることがあった。
「私も……“あいつら”と同じですね」
 誰もいない薄暗いフロアの中でひとり呟いて俯き、自嘲気味に笑った。
 命を投げ出してまで、黒マテリアを手に入れる。「分身」達はねじ曲げられた生命。捨て
られるために生まれた命――命を物として扱う研究を続けていたと噂に聞く科学部門を、
どうしても好きになれなかった。統括の宝条とは重役会議の席上でも言葉を交わすことは
ほとんど無かった。
 しかし、結局はあれだけ嫌悪を抱いていた“あいつら”と、自分は同じ事をしようとしている。
 これも命を物として扱うのではなく、物を命として扱った結果、生まれた擬似的な葛藤に過ぎない。
(…………)
 それ以上、リーブは言葉を紡げなかった。
『ほんな、任せてもらいましょか! みなさん早う脱出してください。出口のとこで待ってますから』
 自律行動を続けていたケット・シーの意識は“声”として、相変わらずリーブの脳裏に
直接聞こえてくる。どうやら先方との交渉は上手くいったらしい。
 まるで他人事のように考えていた。



----------
・チュートリアル改変ネタだけの予定でしたが、思わず黒マテリア入手時のアレの話に…。
・DCFF7をプレイしてFF7のこのイベントに臨む姿勢が変わった、制作者側の罠だと思った。
380名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/04(月) 10:50:39 ID:sN7jiHFC0
GJ!FF7へのつなげ方がうまい!
381名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/05(火) 22:21:29 ID:lCvxuDq0O
FF3も7も12もイイヨイイヨー
続きも新作も楽しみにしてます
382名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/06(水) 22:43:49 ID:udOpk0eQ0
ワクワクテカテカ
383FF3 : 配達人(1) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:14:27 ID:CB2DHjtG0
FF3(DS版)ネタ。以下に投下するものは、オーエンの塔攻略にまつわるネタバレを含みます。

・オーエンの塔未クリアの方。
・FF3の(主にキャラクター)イメージを損ないたくない方。(投稿者の主観入り)

…は、スルー推奨です。
----------



 光が失われようとしている――たしか、クリスタルはそんなことを言っていたと思う。
 最初は意味が分からなかったし、私がこの旅に参加した目的は、お父さんを傷つけずに
修行を抜け出すための良い口実になるからという理由だけだった。本当はクリスタルなんて、
どうでも良かった。
 だけど、今なら分かる。
 光の輝きが強ければ強いほど、人はその輝きに依存するのだと。
 光が失われた後に訪れる闇が、静寂が、人から何を奪うのかも。

                    ***

 ――ドワーフの住む島へ行け。

 デッシュの遺志を確認した4人の前には、海原が広がる。
 晴れ渡った青空と、それを映し出したかのような海の色。その間をエンタープライズは進む。
甲板に立つ彼らの横を、潮風が通り過ぎてゆく。
 目尻にたまった滴を密かに拭い、レフィアは空を見上げた。髪を揺らし頬を打つ潮風が心地
良いとは感じなかったが、目に浮かぶ滴の言い訳にはなるだろうと、そう思えば悪くはなかった。
384FF3 : 配達人(2) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:19:21 ID:CB2DHjtG0
 遠くの方で聞こえる潮騒の音が、風に乗って運ばれる。
「……見て!」
 唐突にアルクゥが叫ぶ。彼の指差した方向に目をこらしてみれば、渦を巻いていた海流が
徐々に鎮まっていくのが見えた。
「これで外海に出られるね!」
 彼は明るい声でそう言った。
 出会った頃は内気だった少年は、旅を共にする中で確実に変わろうとしている。レフィアは
そんな風に思っていた。
「よし、行こう!」
 ルーネスが言うと、その横でイングズが頷いた。


「……大丈夫か?」
 ルーネスに声を掛けられて、思わず驚いた表情を向けたのだろう。怪訝そうな顔をされた。
「ごめん、ちょっとぼんやりしてただけ。大丈夫よ」
 慌てて返事を返した私の顔をルーネスは覗き込む。心配してくれるのは有り難いけど、少し
だけ鬱陶しくて顔を逸らした。今は放っておいて欲しい。
 それを見て何かを言いかけたルーネスを遮ったのは、イングズだった。
「疲れているなら休んだ方が良い。海の上も安全とは言えないからな」
 そう言って、さり気なくルーネスと私の間に立つ。気を遣ってくれたのだろうかと、申し訳なく思う。
「一旦、近くの村へ戻った方がいいだろう」
「えっ?!」
「そんな……」
 イングズの提案に、ほぼ同時に私とルーネスが異を唱える。それでも動じた様子もなく
イングズは続けた。
「装備を調えてから船出した方がいいだろう」
「……確かに、塔で回復薬もたくさん使っちゃったからね。僕もイングズに賛成だよ」
 賛同したのはアルクゥだった。彼の言うとおりオーエンの塔では沢山のアイテムを消費した。
このまま外海に出れば、立ち寄る村や町が見つかるまで物資の補給は難しそうだ。
385FF3 : 配達人(3) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:21:55 ID:CB2DHjtG0
「先を急いで危険を冒すことはない。……そう思わないか?」

 ――私たちはデッシュに生かされたんだ。

 イングズが呟いた言葉が蘇る。
 私は、顔を向けた彼に無言で頷いた。

                    ***

 物資調達という目的から考えて、ここから一番近いのは古代人の村だった。
 トックルにほど近い場所に接岸し、砂漠を避けるようにして陸路を行く。モンスターに
遭遇しても手こずることも無くなった。
 同じ道を歩いているはずなのに、船を入手したばかりの頃に比べるとずいぶん楽に
なった。それだけ、自分たちが強くなったという証だ。
(あの頃は、デッシュに良く助けられたわね)
 ドラゴンの住む山から一緒になった彼とは、ずいぶん長い間旅をしてきたような気がする。
 デッシュと別れてから、必要以外の会話をしなくなった。あのルーネスでさえ口数が減った。
 同じ道を歩いているはずなのに、運ぶ足を重たく感じた。道のりが長く感じた。
 それだけ、私達にとってデッシュの存在が大きかったという証だ。


 古代人の村に着いた頃には、太陽が雲海の向こうに沈もうとしている頃だった。背後に迫る
宵闇から逃げるようにして村に入ると、さっそく回復薬を調達しに道具屋へと足を運ぶ。ついでに
装備品も一通り見終えた頃には、すっかり夜のとばりが降りていた。
 夜に出歩くよりも明日の早朝、ここを発った方が危険も少なく行程も楽だろうと言うことで、今日は
この村で宿を取ることになった。
 夕食を済ませ、特にやることもなかった私達は早めに床に就いた。今日はあまり話をする気分には
なれなかった。できれば、この村も早々に発ちたいという思いもどこかにあった。
 思い出として振り返るには、まだ早すぎる。
386FF3 : 配達人(4) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:27:33 ID:CB2DHjtG0

                    ***

 横になって瞼を閉じても寝付けそうになかった私は、宿から外へ出た。ぼんやりと周囲の
風景に目を走らせていると、崖下に見慣れた人物の姿を見つけた。
 階段を降りた先、村の入り口のすぐ傍にはモーグリがいる。彼女はその隣に立っていた。
(お父さんに手紙を送っているのかな?)
 なんだかんだ言ってもレフィアは父を気遣う優しい少女だった。だから自然にそう考えた。
特に今日のような日には、遠くにいる大切な人の事を思い出すのだろう。
(…………)
 携えた手紙を懐にしまい、しばらくその場に佇んでいた。こういった場合、他の者と顔を
合わせるのは気が引けるだろうと思ったのだが、もしかしたらそれはレフィアへの気遣い
ではなく、私自身がそう思っていただけなのかも知れない。
 しかし、様子が変だ。
 モーグリは短い両手を必死に振って、レフィアに何かを訴えているようにも見える。何か
あったのだろうか?
 そんな好奇心にも似た思いに背中を押され、階段を降りた。
「……イングズ!? こんな時間にどうしたの?」
「なかなか寝付けなくてね」
「そうよね……」
 そう言ってレフィアは俯いた。右手に握られた紙片を見て、やはりと思う。
「タカさんへの手紙かい?」
「…………」
 俯いたままのレフィアから返事は無かった。
「そのお手紙は届けることができないクポ〜…」
 かわりに聞こえてきたのは、困り果てた様子で語るモーグリの声だった。
「ん? レフィアの手紙の事かい?」
「クポー…」
 私の問いにモーグリは少し申し訳なさそうに、短い首を縦に振って答える。
387FF3 : 配達人(5) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:29:33 ID:CB2DHjtG0
「どうし……」
 言いかけた私は、あることに思い至った。

 モーグリが運べないと言った手紙――その理由を。

「……。そうだね、この手紙は私達で届けよう」
「クポ?」
「えっ!」
 ふたりが本当に同時に顔を向けたから、なんだかその姿がおかしくて。
「少し寄り道にはなるが、それがいいだろう」
「…………」
 察したのだろうか、レフィアは黙ったまま俯いた。
「その代わり……これをお願いしたい」
 そっと差し出した手紙をモーグリが嬉しそうに受け取ると、勢いよく頷いた。
「分かった、サラ姫に届けてくるクポ!」
 その言葉に顔を上げたレフィアと目が合う。少し照れはするが、気落ちするよりは良い
だろうと思った。
「さあ、そうと決まれば明日に備えてゆっくり休んだ方が良い。塔を経由してそのまま外海へ出る、
もう戻らないからな」
 それを聞いたレフィアはゆっくりと頷き、小さな笑顔を向けてくれた。

                    ***

 翌朝。
 村の前で声をあげたのはルーネスだった。
「なんでまたオーエンの塔なんだよ!」
 必ず出ると思った反論だった。だから昨晩、あれから必死で考えて用意した言い訳を披露した。
「……どさくさで、取り損ねた宝箱があっただろう?」
「イングズ、おまえ宝箱とかに執着するタイプじゃないだろ。なに企んでんだ?」
 ルーネスの洞察力を甘く見ていた私の負けだと、素直に思った。
 しかし感心している場合ではない、私の口から本当のことを語るわけにはいかなかった。
レフィアにも申し訳が立たない。背中に彼女の視線を感じたのは、恐らく気のせいではないだろう。
388FF3 : 配達人(6) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:32:21 ID:CB2DHjtG0
(どうする?)
 そこへ絶好のタイミングで助け船を出してくれたのが、アルクゥだった。
「岬の渦の事を考えると、たぶんモンスターの生息分布は内海とは違うんじゃないかな? 
取り損ねの宝箱もあるなら、塔に寄ってから外海へ出るのも無駄にはならないと思う。それに……」
 それからアルクゥは笑顔でこう言い放つ。
「このまま先へ進む? 宝箱の中身、ルーネスは気にならない?」
 さすがは幼馴染みだけあって、ルーネスの好奇心を上手く煽る術を知っている。心の中でアルクゥの
機転に感謝した。
 ルーネスは渋々だが頷いた。やはり取り損なった宝箱の中身が気になるようだ。
「それじゃあ、行こうか!」
 気を取り直して村を出る。チョコボを駆って船の接岸場所へと急いだ。

                    ***

 カエルになることを嫌だと、レフィアは言わなかった。
 取り損ねた宝箱のあるフロアまでたどり着いた時、オレは先へ進もうとする彼女の背に声を掛けた。
「おいレフィア! 戻るぞ」
 ほんの少し立ち止まったが、そのまま振り返らずに先へ進んでしまう。後を追おうとしたオレの肩を、
誰かが掴む。
 イングズだった。
「……少しだけ時間をくれないか?」
「イングズ!?」
「ルーネス、ここで待ってよう?」
 アルクゥも加勢する。
 一体なにがどうなってるんだ? ふたりはそれ以上何も言わない。訊いても無駄だと思ったオレは、
イングズの手を振り解いてレフィアの後を追った。
389FF3 : 配達人(7) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:36:46 ID:CB2DHjtG0

                    ***

 オーエンの塔、今なお燃えさかる動力炉の前にレフィアは立っていた。その姿を見つけて、
何も考えずに呼びかけようとした。
「レフィ……」
 彼女の足元を見て、声が止まった。
 しばらく無言だったレフィアは、背を向けたまま語り出す。
「……手紙をね、出そうと思ったの。そしたらモーグリさんを困らせちゃったみたいで。見かねた
イングズが提案してくれたの。寄り道させちゃったね、ごめん」
 彼と共に過ごした時間は、紛れもなく楽しい旅だった。
 だからこそ、それを失った後の喪失感は耐え難い。
「デッシュ、ありがとう……」
 無事でいると信じている。だからレフィアは手紙を書いた。
 この手紙を、読んでもらえると信じてる。
 手紙と一緒に、動力炉の前に小さな包みを置いて振り返ったレフィアは、曇りのない笑顔を
ルーネスに向けた。

「さあ、ドワーフの島へ行きましょう」
390FF3 : 配達人(8) ※オーエンの塔ネタバレ有:2006/09/08(金) 00:37:32 ID:CB2DHjtG0

                    ***

デッシュ、元気ですか?
あなたのお陰で、私達4人はこれから外海へ出るところです。
モーグリさんが困っていたので、直接手紙を届けに来たの。

光が失われようとしている――たしか、クリスタルはそんなことを言っていたと思う。
最初は意味が分からなかったし、私がこの旅に参加した目的は、お父さんを傷つけずに
修行を抜け出すための良い口実になるからという理由だけだった。
本当はクリスタルなんて、どうでも良かった。
だけど、今なら分かる。
光の輝きが強ければ強いほど、人はその輝きに支えられて生きている。
光が失われた後に訪れる悲しみが、どれほどつらいのかも分かった気がする。
あなたのお陰よ。ありがとう。

だから、がんばって旅を続けます。
そして立派に成長して帰ってくるから、楽しみに待っていてください。

あなたがこれを読む頃、私達はどこにいるかしら?
また会えるのを楽しみにしています。


                                   ――レフィアより


 追伸:
 回復薬を入れておきます、良かったら使ってください。

                    ***

「ところでレフィア」
 部屋の外で待っていてくれたふたりと合流したところで、ルーネスがふと尋ねる。
「手紙と一緒に置いた小包の中身って、何?」
「……えっ?!」
「いや、ちょっと気になってさ」
 急に口ごもったレフィアの顔を覗き込んだルーネスは、返答の代わりに平手打ちを
喰らったりとか、それから一悶着あったりとか、相変わらず賑やかな旅が続きます。

 尚、フェニックスの尾が1つ無くなっていた事に気づいたイングズは、敢えてなにも
言わなかったそうです。
 また、同じくフェニックスの尾が無くなっている事に気づいたアルクゥは、それを手紙と
一緒に添えても意味がないんじゃないか? という疑問を持ったそうですが、同じく何も
言わなかったそうです。

 レフィアの平手打ちは、それだけでもミスリルを鍛えるだけの破壊力がすでに備わって
いるんじゃないか? そんな風に思ったからですが、間違っても口には出せません。

 光の4戦士の旅は、まだまだ先が長そうです。

                                              《おわり》

----------
・FF9を先にプレイしたプレーヤーには、あのモグネットの正体が
 モーグリ版SNDなのか、FF9的モグネットなのかが気になっていたりします。
・単に取り逃した宝箱があるだけ…だったのかもしれない。
・ちょっと長くなりましたが、勢いとノリを根拠に引き続き保守。
392名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/08(金) 01:44:55 ID:oZ1c2OYj0
キャラが生きててGJ!
393名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 04:06:09 ID:cP4fJmDx0
乙です!
394名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/10(日) 10:43:31 ID:dRpOzTD50
GJ!
395名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/10(日) 13:04:12 ID:NC1C5Yqe0
>377-379
>・DCFF7をプレイしてFF7のこのイベントに臨む姿勢が変わった、制作者側の罠だと思った。
禿同!
ついでに言うと、 ◆Lv.1/MrrYw 氏の罠でもあると思った。
ここに来て以来、リーブとケット・シーコンビがより愛おしくなりました。
396愚か者の恋【26】 ◆DvBI45asCU :2006/09/10(日) 13:06:52 ID:NC1C5Yqe0
※今回、ネタバレがたくさんあります。未プレイの方はご注意を。

※FF12のバルフレアとパンネロのお話。お嫌いな方はスルーよろしこです。
※投稿人、夢見がちです。甘ったるいのがお嫌いな方もご注意下さい。
※最終的に2人をくっつける予定ですが、どうなるかは今の所未定。

>>177-179 >>260-269 >>346-357より続きます。


最後の戦いの後、シェトラールからバハムーとに戻る決心をした時、
お嬢ちゃんに何か言おうと思ったが、止めた。

(縁起でもねぇよなぁ…)

死ぬつもりは毛頭なかった。
だが、姿を眩ます決心が、一度だけバルフレアを振り返らせた。
フランに何か教わりながら一生懸命に計器類を覗き込む
小さな後ろ頭がバルフレアが最後に見たパンネロの姿だった。


**********

バハムートから負傷したフランを連れて小型艇を見つけて脱出した。
その後の騒ぎに巻き込まれるのは面倒だったのと、
何よりフランの身体の事を考え、エルトの里に身を隠したのだ。

あまり歓迎はされていないようだが、
よそ者のバルフレアの長期滞在を黙認してくれる辺り
閉鎖的なヴィエラ達の間でもゆっくりとした変化が起こりつつあるようだ。
397愚か者の恋【27】 ◆DvBI45asCU :2006/09/10(日) 13:08:35 ID:NC1C5Yqe0
昼間は里に害をなすモンスターを退治し、フランを見舞い、夜は酒を飲み、
たまに近くの集落に出かけては情報と必要な物を仕入れる、そんな毎日だった。

お陰で考える時間はたっぷりあった。
それはバルフレアにとって必要な時間だった。
自分が逃げ出した過去、父との葛藤。向き合うのは辛い事だった。

考えが煮詰まると、ふと思い出すのはパンネロと過ごした夜だった。
他愛のない話の数々が暗闇に灯された小さな暖かい灯りの様に思えた。
今になって思うと、自分はその灯りに照らされ、
守られていたかったのではないかと思う。

思い出してみると、幼いのに母性を感じさせる少女だった。
甲斐甲斐しく面倒を見ていたのはヴァンだけではない。
食事の時はなかなか自分の席には着かず、スープを取り分けたり、
誰かの体調の変化に真っ先に気が付くのはパンネロだった。

(やれやれ…だ。)
これでは自分がお嬢ちゃんに甘えていた事になる。
「…ったく、冗談じゃねぇぜ。」
「何か言った?」
近くの集落への買い物に行くのに、付いて来ていたミュリンが尋ねる。
「いや…なんでもない。」
「バルフレアは独り言が多いね。」
ミュリンがおかしそうに笑う。
「早く帰ろう!姉さんが待ってるわ。ねぇ…チョコボに乗って帰りたいの。いい?」
「別に…構わないさ。」
自分がこの若いヴィエラに甘いのは、おそらくパンネロと重ねているのだろう。
「やれやれ…だ。」
今度の独り言は、幸いチョコボを選ぶのに夢中になっていた
ミュリンの耳に入る事はなかった。
398愚か者の恋【28】 ◆DvBI45asCU :2006/09/10(日) 13:09:54 ID:NC1C5Yqe0
里に戻り、フランの寝室に顔を出す。
ミュリンが集落で見聞きした事を大はしゃぎでフランに伝える。
フランもそれを聞いてやる。
その横でバルフレアは薬湯を煎じ、フランに手渡す。

一頻り(ひとしきり)喋り終えると、ミュリンは、
「ねぇ、バルフレア、明日のモンスター退治は連れて行ってくれるんでしょ?」
「ヨーテが良いって言ったらな。」
「もう!バルフレアの意地悪!」
ミュリンは可愛らしく頬を膨らますと、
少々けたたましく部屋を出て行った。
「別に構わないのよ。」
「またつるし上げはごめんだからな。」
フランは少し考え、あぁ、と小さく呟く。
「パンネロね。どうしているかしら?」
「さあな。」
「きっと綺麗になってるわ。」
「やけにはっきり言い切るな。」
フランは薬湯をゆっくりと飲み干す。
「もちろんよ。だって、ちゃんと教えてあげたもの。」
「教えた?何を?」
フランは薬湯の入ったカップをベッドサイドテーブルに置く。
「聞きたい?」
「そうだな。」
バルフレアは椅子を持ってくると、背もたれを抱える様にして座った。
399愚か者の恋【29】 ◆DvBI45asCU :2006/09/10(日) 13:11:38 ID:NC1C5Yqe0
フランが語ったのはパンネロがメンバーに加わってから
初めて宿に泊まった時の事だった。
たまたま部屋が2つしか空いておらず、女性陣、男性陣とで部屋が分かれた。
なんとなく遠慮がちなアーシェとパンネロを気遣って、
フランが最初にバスルームを使った。
汗を流し、髪を洗い、身軽になって出て来たフランを見て、
2人は思わず息を飲んだ。

「フラン、きれい…!」

フランの部屋着は飾りが一切付いていない
シンプルなタンクトップにフレアパンツだが、
髪と同じ色の光沢のある素材で高価な物である事が分かる。
丈の短いパンツからはすらりとした足が伸び、
ヴィエラ独特の踵を支える為の室内履きのヒールは
いつもの物よりも一回り細かった。

「本当に…」
溜め息混じりにアーシェも言う。
「うん…本当にきれい…ううん、いつも…初めて会った時から
きれいな人だなぁって思ってたけど…」
パンネロが熱に浮かされた様に呟く。
飾り気のない装いが、却ってそのスタイルの良さや
美しさを際立たせるようだ。
フランは羨望の眼差しを向ける2人に軽く微笑み、
ありがとうと答え、ベッドに腰掛ける。
そしてまだ濡れたままの髪を丁寧にタオルで叩く様にして拭く。
400愚か者の恋【30】 ◆DvBI45asCU :2006/09/10(日) 13:15:01 ID:NC1C5Yqe0
「ねぇ…フラン、髪はそうやって拭くの?」
おずおずと隣に腰掛け、それでも好奇心を
押さえ切れないといった風でパンネロが尋ねる。
「そうよ。擦ると、髪が痛むの。」
パンネロは感心した様に何度も頷く。
「ねぇ…フラン、私もフランみたいになりたいな。なれるかな?」
フランは思わず手を止めて少女を見つめ返した。
「えぇ。なれるわ。」
「本当?…でも、どうやって?」
フランは手を止めてパンネロのお下げを手に取る。
「…少し痛んでるわね。」
「そう?」
パンネロは心配そうに空いた方ほお下げに目をやる。
「いらっしゃい。」
フランはパンネロの髪をほどいてやると、ブラシで優しくといてやる。
パンネロは少し緊張したようだが、すぐに気持ち良さげに目を閉じた。
きれいにとかし終えると、パンネロを振り向かせて、
「洗ってあげるから、着替えてらっしゃい。」
「本当!?」
パンネロはうれしそうにバスルームに飛び込むと、
服を脱ぎ、バスタオルを巻いたまま、ドア越しに顔を出す。
「フラン、これでいい?」

フランはパンネロをバスタブに座らせると、シャワーで髪を濡らす。
そして、植物性のオイルから作った石けんを泡立てると
パンネロの頭をそれで洗ってやる。
「いい匂い…」
「髪を洗う時は必ずブラシで梳いてからよ。
石けんもケミカルな物や怪しい魔道物に手を出しちゃだめよ。」
「うん。ねぇ、フラン、すごく気持ちいい。」
「洗うときもゴシゴシ擦っちゃだめよ。」
「は〜い。フランってすごい。私がそうやって洗ってたのを見てたみたい。」
401愚か者の恋【31】 ◆DvBI45asCU :2006/09/10(日) 13:17:06 ID:NC1C5Yqe0
髪を洗い終えた後も肌や手の手入れの仕方を教えてやり…
「フラン…私も見てもらっていい?」
最初は遠巻きに見ていたアーシェも加わった。
「知らなかったなぁ…きれいになるのって大変なんだ。」
一通りのお手入れを教えてもらい、パンネロは普段よりも
しっとりとした自分の頬に手で触れる。
アーシェも肌のマッサージまでしてもらい満足げだ。
「きれいになりたいなら、メンテナンスも大事よ。」
「飛空艇みたいね。」
と、アーシェ。
解放軍に身を投じて以来、忘れていた楽しみだった。
「ねぇ、フラン、毎日するの?」
「ええ。」
「私、頑張る!」
パンネロは自分は男兄弟しか居なかったので、
こうやってお姉さんに色々教えてもらうのが夢だったと大はしゃぎだった。


**********


「…それで、毎晩そっちの部屋ではそうやって遊んでたのか?」
「遊んでたんじゃないわ。」
女性としては当然の嗜みだとフランが言う。
「で、お嬢ちゃんはお母さんの言いつけを守ってきれいになってるとでも言いたいのか?
こっちの部屋は毎晩ヴァンの寝言や将軍の鼾で大変だったってのに、随分と楽しそうな事で。」
「羨ましい?」
本当を言うと、ちょっと覗いてみたい。
部屋着姿でキャッキャと楽しそうな3人を。
「誰が。」
吐き捨てる様に言うバルフレアの本音をお見通しなのか、フランがくすりと笑う。
「もう1年になるのね。あの子達はちゃんと恋人同士になったかしら?」
402愚か者の恋【32】 ◆DvBI45asCU :2006/09/10(日) 13:24:36 ID:NC1C5Yqe0
「あの子達…?」
「ヴァンとパンネロよ。何かあるとすぐ2人で寄り添っていて、可愛かったわ。」
「ガキ同士でじゃれあってただけだろ。」
「この1年で変わったかもよ。パンネロはしっかり者でヴァンの面倒を
見ているようだけど、本当は彼が居ないとダメみたいだし、それに…」
フランはふと黙ると、訝しげに眉を寄せる。
「どうしたの?」
バルフレアの顔がいつになく真剣だったからだ。
「…相談がある。」
「何かしら。」
フランはいつもの様に眉一つ動かさないでバルフレアの話を聞き、
最後に一言、あなたの好きにすればいいわとだけ言った。
「毎日ここで寝ているのにも飽きた頃だし。」
「決まりだな。」

つづく。

===============================================

ごめんなさい、今回で終わる予定でしたがもう1回。次で終わります。
以下チラシの裏。
女子部屋は書いててすごく楽しかったです。
パンネロの部屋着はこう、アーシェが王女様時代の愛用の化粧水はこう、
フランの部屋着、室内履きは全てバルフレアがチョイス等等、
書いてて止まらなくなったのでだいぶ削りました。

>>360
投稿人、夢見がちなのでもうちょっとロマンティックな喩えでおながいします。orz
403名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/12(火) 01:48:25 ID:WfAUGFNT0
GJ!
404名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/12(火) 20:31:22 ID:lDio1tl2O
保守
405名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/12(火) 22:46:43 ID:P39MoG8f0
>>402
ものすごくGJ!!
続きwktk。

以前もコメントさせていただいた者ですが・・・
元々バルフラ好きなのですが、
愚か者の恋 ◆DvBI45asCU様のバルフレアとパンネロのSSすごくいいです。
まだかまだかと続きが待ち遠しかったです。
削ってないのも読みたかったなぁ・・・。
406名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/13(水) 01:23:55 ID:VbfFo4IB0
>>396-402
バルフレアに同意。ちょっと覗いてみたい…っていうか混ざりたいですねw
弓使いフランをリーダーに女子3名で行軍した砂漠では、いつも前線をこき使っていた冷静沈着な
フランとはまた違った面が補えて良かったです。(プレイスタイルに問題が)

ちなみにジークフリード(FF6で世話になった)がいたらジーパンとか
大好きなフライヤさん(FF9でかなりお世話になった)がいたらフライパンとか
うっかりパンネロと組ませると楽しい事になるなと連想していたことをここに白状しときますw
407TUTORIAL 11  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/13(水) 01:33:39 ID:VbfFo4IB0
前話:>>377-379
舞台:FF7Disc1/古代種の神殿とミッドガル
注意:「インスパイア」の拡大勝手解釈実施中。
----------


『……クラウドはんらが戻って来るまでもーちょい時間があるさかい、やれることやってしまおか?』
 リーブに向けられたその呼びかけにも、答えはなかった。
 別に声を出して返事をする必要はない、両者の意識は共有化されている。本来はそれを元に“操作”
するのがリーブの能力なのだ。
『アンタの悪いクセは相変わらずやな。ボクが言うのもおかしな話かも知らんけど、まったく難儀な性格
しとるで』
 リーブからの返答はない。
 ませた子どものような口調でケット・シーの言葉は続く。
『あんなリーブはん、ボクがここにおる理由は自分でよお分かっとるねんで? アンタが何をためらうねん。
 黒マテリアを手に入れる。今はそれが最優先課題や』
「そんなことは言われなくても分かってますよ」
 ようやく返されたリーブからの返答に、ケット・シーは密かに安堵した。
『なら悩む必要なんてあれへんがな。何ウジウジしとんねん』
「なっ……!?」
 リーブの姿はまるで、子どもにケンカを売られて本気になる大人のそれだった。作った拳を振り上げた時、
我に返って大人げないなと反省し、そのまま手を下ろし再び机に両手をついて項垂れる。
 ケット・シーはどうやらそれを"見て"笑っているようだった。
 ひとしきり笑った後で、こう言った。
『アンタが思とる以上に、ボクはアンタの事をよぉ〜く知っとるねんで?
 アンタはミッドガルのため、この都市に住む人達の為なら命張る覚悟やろ? それと同じや』
 リーブはその言葉を素直に聞き入れることができなかった。果たしてそれが「覚悟」と呼ぶような大げさな
物なのだろうか? と。
『自覚しとらんだけや。ホンマに難儀な性格しとるでアンタ』
 リーブからの返事はなく、しばらくの間"交信"は途絶える事になる。
 これから死地へ向かう、だからそれでも構わないとケット・シーは思った。
408TUTORIAL 12  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/13(水) 01:39:22 ID:VbfFo4IB0

                    ***

 「がんばって」やって。……なんや嬉しいなぁ。

 なあリーブはん。あの日の事、覚えとるか?
 ……もちろん、アンタが初めてボクと会うた日の事や。
 結局あの後、ドラム缶地帯越えたまでは良いけど無茶な“操作”しよって気絶したやろ?
 あんだけ忠告しとったのに、「ボクとアンタの痛みは別モンや」って。
 調子こいて慣れん事するからや。
 けどな、ホンマは嬉しかったで。

 最後まで一緒やって、張り切って“操作”してそんで気絶しよった。
 医務室でひっくり返っとった時は笑たな。

 声に出さなくても、隠そうとしても、分かってまうんや。
 ホンマは誰の血も、誰の涙も見とうない。
 そんために歯ぁ食いしばってるんやろ?
 アンタはがんばっとる、「がんばれ」って言われてもないクセに、がんばり過ぎなんや。
 ……ボクなんもでけへんけど。
 せやけどこれだけは覚えといてほしいんや。

 アンタが生きとる事が、ボクの生存の第一条件なんや。
 ボクは、アンタのお陰でここにいるんやで。

                    ***
409TUTORIAL 13  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/13(水) 01:42:34 ID:VbfFo4IB0
『いててて……』
 バランスを崩してデブモーグリごと回廊の真ん中でひっくり返った。視界の上下が反転し妙な
景色が広がる。
『……どないなったんやろか?』
 そこで、ケット・シーは思いがけない声を聞いた。
「……案外、集中力が要ること。ご理解いただけましたか?」
『うおっ!?』
 意識への干渉――リーブが“操作”を再開したと分かった。彼は笑いながらこう告げる。
「あれこれ余計なことを考えていたでしょう?」
『余計な事やないで!』
 即答してみたが、リーブは笑うばかりで取り合ってくれなかった。体勢を立て直そうと、ふたりは
同時に手を動かしてみる。
 最初はケット・シーが単独で地面に手をついて立ち上がろうとしたが、力不足なのか自身の重量を
支えきれず立ち上がれなかった。そこへ別の力が加わる。ちょうど、横合いから補助を受けているような
感覚に近かった。それはリーブの"操作"によるものである。
 単独では不可能な事も、リーブの力を借りれば可能になることがある。それをケット・シーは、
表現できない喜びの様なものとして感じていた。
 無事に立ち上がったケット・シーが、今度はデブモーグリを操作してその上に跳び乗った。

『まだ動けるようやな』
「まだ動けるようですね」

 それはとても妙な感覚だった。操作しながら会話を交わす。自分であって自分ではない感覚。誰に
打ち明けたところで理解はしてもらえないだろうけれど、確かに現実なのだ。
 以前にケット・シーが語った言葉を借りるならば、文字通り「共同体」だ。自分一人の力では成し得ない
事でも、ケット・シーの力を借りれば可能になることがある。それを今、リーブは実感していた。
 こうして壁画の間に到達すると、壇上に安置されている神殿模型と対面する。
410TUTORIAL 14  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/13(水) 01:51:08 ID:VbfFo4IB0
『これやな!』
 古代種の残した巨大なセキュリティ・システム――安易な侵入を防ぐための防壁、侵入者を排除する
ための様々な仕掛けを施した神殿内部、意識のみとなった今なお任に就く守衛――その中でも、最後にして
最大の仕掛けがこの神殿模型だった。
 ケット・シーにとって、ここが最後の場所になる。
『……リーブはん。こっから先はボクひとりでも大丈夫やで。一応、スペシャルな知能内蔵やし』
 ケット・シーは単なるぬいぐるみではない。リーブ以外の人間でも“遠隔操作”が可能なように超小型の
コンピュータが内蔵されている。皮肉にもこのことが、対外的にリーブの“能力”をカムフラージュしてくれていた。
 最期――別れるときは笑顔でと決めていた。だから、なるべく明るい口調で言った。少なくともケット・シーは
そのつもりだった。
 しかしリーブはあっさりと拒絶する。
「都市開発部門統括……いいえ、一技師として。この古代種の神殿は大変興味深いものです。
 あなたがなんと言おうと、最後まで同席させてもらいますからね」
 半分は本心から出た言葉だった。それを受けてケット・シーが感心したように周囲を見回しながら呟いた。
『古代種さんたち、こんなシカケよう作りはったなぁ〜』
 そのうち半分はリーブの、半分はケット・シーの思いが言葉として現れたものだ。
 それから模型を手に取る、まるで精巧に作られたオモチャのようだった。幼い頃にこれと似たような
オモチャで遊んだような気がするが、よくは覚えていない。後になって知ったことだが、そのオモチャは
建築家が発案した物らしい。これも何かの縁なのかも知れないと、そんな取り留めもないことを考えながら
主にリーブの“操作”でパズルを解いていく。時折、行き詰まった時にはケット・シーが手助けしてくれる。
自身曰くスペシャルな知能内蔵なので、その辺はお手の物と言うわけだ。
 夢中で作業を続ける中、ケット・シーはこんな事を口にした。
『ボクもこの星を守るんや! なんや、照れるなぁ……』

 ――だから。
    パズルを解くと、その人はこの神殿
    ……いいえ、黒マテリア自体に押しつぶされちゃうの。

 その瞬間、古代種の唯一の生き残りであるエアリスの言葉が脳裏に過ぎった。
411TUTORIAL 15  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/13(水) 02:02:00 ID:VbfFo4IB0
 リーブはためらいがちに告げる。
「……こんな役を押しつけてすみません」
 動かす手を休めずに、ケット・シーが答える。
『謝る事ないで。ボクが言い出したことや。
 それになボクは、アンタに感謝しても恨むことなんてあれへんで?』
「……そんな事を言われたら、寂しくなるじゃないですか」
 リーブはそう言って力なく笑った。
『だってそうやろ? アンタは、こんな面倒な能力持ってしまって難儀するやろうけど、
 自分を生んだ両親を恨んだりはしとらんやろ? ボクがアンタを恨まない理由もそれと同じやで』
「…………」
 目の前にある最後のパーツをはめ込めば、パズルは完成する。圧迫感はそれほど感じなかったが、
神殿そのものは着実に縮小を続けている。
 しかし、パズルの完成を目前にリーブの手は止まった。模型パズルから目を逸らそうとするリーブを
制したのは、ケット・シーだった。
 目を逸らしたらアカンで――まるでそう言っているようだった。それでも干渉を続けるリーブに、
気絶するなよと苦笑気味に呟く。
 最期――別れるときは笑顔でと決めていた。
412TUTORIAL 16  ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/13(水) 02:03:23 ID:VbfFo4IB0

『この同じボディがようさんおるんやけど、このボクは、ボクだけなんや!
 新しいケット・シーが仲間になっても、忘れんといてな! ほんな……行きますわ!』

 ケット・シーは手を伸ばし、再び模型パズルを取り上げた。
 最後のパーツを組み、静かに元の場所へと戻す。
 轟音と共に神殿自体が揺れ始め、役目を終えたことを悟り最後の時を迎える。

『しっかり、この星を救うんやで〜……!!』

 その思いをリーブに託し、古代種の神殿と共に役目を終えたケット・シーは、こうして短い生涯を
閉じたのだった。



                                        ―TUTORIAL<終>―


----------
・2号機召喚の件に触れられなかったのは、投稿者の技量と勇気が足りないためです。
・神殿の模型パズルを、ルービック○ューブだと今でも思っていたりするせいで余計なこじつけがありますが気にしない。
・お付き合い下さいまして有り難うございました。
413名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/13(水) 22:09:17 ID:23x4jP2d0
乙!前向きなのに切ないよう
414名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/15(金) 01:19:08 ID:Q7YFdgBX0
・゜・(つД`)・゜・
415名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/16(土) 02:45:28 ID:AYQJLSsg0
保守
416名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/17(日) 00:02:02 ID:Rm2AxFal0
417名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/18(月) 00:50:40 ID:o+2Z5Lh+0
ほっしゅしゅ
418名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/19(火) 00:48:47 ID:OYM2uGNG0
保守保守
419名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/19(火) 19:32:05 ID:UePgGG+N0
 
420名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/20(水) 20:33:08 ID:RbEWF3T00
>>407-412
乙!愛しくて切ない話GJ!!!
この二人が更に好きになりますた。
421名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/21(木) 22:51:11 ID:+rAe+IlQ0
保守しときます
422Se la gatta va al lardo 1 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/22(金) 00:12:30 ID:JPpmsdCA0
舞台:FF7(本編開始前)
注意:(他シリーズ含め)これまでのどの作品よりも、恐らく捏造度が高いはず。
   :恋っていうより濃い(?)話、スレタイに沿ってないのはご愛敬。
   :意味間違ってましたらごめんなさい、小生の力不足です。笑って許してあげられる寛大な御心で…。
----------



 オフィスの窓から空を見上げる。
 薄い靄がかかった青空を、どこよりも間近に望むこの場所にいる時がいちばん落ち着く。
 自分以外には誰もいないフロアを振り返り、それからもういちど窓外へと視線を向けた。

 窓の外、頭上に広がる空。
 そこはかつて、私が目指した場所。
 夢はいつも、空の彼方にあった。

 オフィスの窓から空を見上げる。
 薄い靄がかかった青空を、どこよりも間近に望むこの場所が、私はどうしても好きになれなかった。
 手に持ったカップの中で揺れるそれを口にした時と同じように、ここから空を見上げるといつも、苦みを伴うからだ。

 時計を見れば、会議の始まる時刻はもうすぐまで迫っていた。

423Se la gatta va al lardo 2 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/22(金) 00:18:38 ID:JPpmsdCA0

                    ***

 そもそも悪夢の始まりを告げたのは、聞き慣れた内線の呼び出し音だった。
 それは自分宛に端末指定で直接かかって来たもので、通信記録をたどれば、どうやら社内
――それも総務部調査課からのものらしいと分かる。彼らならこういう趣味のわるい悪戯もする
だろうと思いながら、8回目のコールで受話器を取り上げた。
 応答代わりに自分の名を告げると、通話の相手は実に一方的に話を進めた。先方の要求は
たった1つ。
『今度の試作ロケットを貸して欲しい』
 一体何を言っている? と、こちらが問い返す間もなく通話は切断された。
 通話の中で「もし、要請に応じてくれるのならば都市開発部門のある女性に詳細を聞いてくれ」
とも言っていた。全くもって話が見えてこない。
 そもそも何故、我々の事業――言うまでもなく宇宙開発事業――に、総務部調査課やまして
都市開発部門が介在してくるのか? 少なからず不愉快ではあった。だから直接、彼らの指定する
場所へ出向こうと思った。

 宇宙開発事業は、趣味や道楽ではない。ましてロケットはお遊びの道具ではないのだ。



 指定されたのはミッドガル郊外、およそ神羅社員の出入りする用があるとは思えない路地裏の、
さらに奥にある雑居ビルの最上階だった。
 まったく何が楽しくてこんな場所を指定して来たのかと、指定者の趣味を疑いながらその部屋の
前にたどり着く。さび付いたスチール製の扉を、指定通りの回数と間隔をあけて叩いた。
 それに応じて中から聞こえてきたのは、落ち着いた女性の声だった。いっそ落ち着きすぎていて、
機械的にも思える。けれど、覚えのあるその声は聞いていて不快感はなかった。
「――“聞こえてくるのは誰の声?”」
424Se la gatta va al lardo 3 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/22(金) 00:26:39 ID:JPpmsdCA0
 これもまた、指定された合い言葉だ。指定した場所といい、ノックの回数といい、合い言葉といい、
まるで子どものスパイごっこの様だった。
 それでも、私は指定されたとおりの言葉を返した。
「“猫と星”」
 どうでもいいが、この合い言葉は一体なんだ? 本当に、ここへ呼んだ人間の趣味を疑う。いたずら
なのか? とも思えたが、それにしては手が込んでいる。
 そんなことを考えていると、何度かの金属音を伴って部屋の扉が開かれた。中から出てきたのは
黒いパンツスーツに、スーツと同じように黒くて長い髪を持った細身の女性だった。ネームタグを見なくても
彼女が誰なのか知っている。
 深々と頭を下げ、丁寧な口調で彼女は私を出迎えてくれた。
「このような場所へお呼び立てして申し訳ございません。ご足労頂いて恐縮です」
「いえ。こちらこそまさかこんな場所で都市開発部門の統括にお目にかかるとは」
 私のこの言葉に顔を上げようとした彼女は一瞬動きを止め、それから驚いたような表情を向けたが
すぐに口元に笑みを浮かべるとこう言った。
「お言葉を返すようですが。……私、都市開発部門の統括じゃなくて主任なのよ? 所属は管理課」
「なんだって? まだ引き受けてなかったのか、あの話」
 さすがにその事実には驚いた。都市開発部門には統括責任者が居なかった。彼女の評判は方々から
耳に入ってくるし、内々に打診もあったとも聞いている。なにより彼女自身にとっても悪い話ではないはずだ。
だからてっきり昇進していたのかと思ったのだが、そうではないのか。
 僅かな沈黙の後、彼女は告げた。
「そんな話をする為にあなたを呼んだんじゃないわ。さあ、入って」
 結局こちらの質問には答えないまま、彼女は室内へと私を案内した。私もそれ以上追求する気はなかった
ので、案内に従い部屋に足を踏み入れた。
425Se la gatta va al lardo 4 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/22(金) 00:30:50 ID:JPpmsdCA0
 通された部屋は、外観からは想像も出来ないほど整っていた。数台のパソコンと必要最低限の
周辺機器、ファイル類はすべてディスク管理されている様だ。さながら小さなオフィスといったところだが、
パソコン画面を見て驚いた。
「……これは」
 映し出されているのはミッドガルのプレート建造計画書、おそらくシミュレーション映像だ。
(そんな物が、なぜここに?)
 声には出していないはずの問いを察したのか、彼女は答えた。
「言っておくけど社外に持ち出したデータじゃないわ、私がここで作ったのよ」
「本当に優秀だね君は」
 いやみではなく、本心だった。
「ありがとう。で、話を始めるけど構わないかしら?」
 応接用のソファなどないからと、適当な椅子に座れと促された。まったく彼女らしいと思いながら、
こんなところで長話をするつもりはなかったので、腰を落ち着けることはせずに先手を打った。
「ロケットの件なら断る」
 彼女の話を聞くつもりはなかった。ただ、こちらが言いたいことを伝えるためにここへ来たのだから。

「宇宙開発事業は、趣味や道楽ではない。ましてロケットはお遊びの道具じゃない」



----------
・需要は皆無だと言う認識はありますので、その辺のお気遣いは不要ですw
・いわゆる一つの保守というヤツです。
426名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/22(金) 00:37:19 ID:YXxuMJGp0
>>422-425
乙!語り手が誰なのか気になるw
427名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/23(土) 11:42:49 ID:EBiTTEbX0
GJ!
428名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/24(日) 18:04:30 ID:DA1BrYNj0
429名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/24(日) 19:42:41 ID:UsezoOHH0
>>422-425
GJ!新連載、続きをwktkしてます。

>>426に同じく、自分も誰か気になる!
どうかスカーレットじゃありませんように…(_人_)
430愚か者の恋【33】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:17:08 ID:UsezoOHH0
※今回、ネタバレがたくさんあります。未プレイの方はご注意を。

※FF12のバルフレアとパンネロのお話。お嫌いな方はスルーよろしこです。
※投稿人、夢見がちです。甘ったるいのがお嫌いな方もご注意下さい。

>>177-179 >>260-269 >>346-357 >>396-402より続きます。

上空からシュトラールを見つけ、地上に2人の姿を確認したヴァンは大喜びだった。
「見ろよ!パンネロ!あそこだ!無事だったんだ!本当に無事だったんだ!」
ヴァンは地上に向かって大きく手を振る。

パンネロも身を乗り出して二人の姿を確認する。
上空からだと表情までは見えないが、
手を腰に当てたバルフレアがこちらを仰ぎ見、
横でフランが眩しげに手をかざして空を見ている。
2人は無事だと信じていたが、やはりこうして再会出来るまで
悪い予感が過らなかった事がなかったと言えば嘘になる。
「うん…本当だ…」
涙がこみ上げて来て、それだけ言うのがやっとだった。
飛空艇を着陸させると、2人は操縦席から飛び下りて懐かしい仲間に駆け寄る。

「なぁ、フラン。」
「なぁに?」
「おまえの言う通りだ。」
(背も少し伸びたか…)
フランは何も言わないが、どことなく得意そうだ。
久しぶりに見たパンネロは線が少し細くなって大人びた感じがする。
服装も明るくなり、それがとてもよく似合っていた。
431愚か者の恋【34】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:19:51 ID:UsezoOHH0
「バルフレア!」
パンネロより一足先に飛び出して来たヴァンはバルフレアに飛び付かんばかりだ。
「悪いが、男に抱きつかれる趣味はないんでね。」
突進して来るヴァンの頭をまるで犬を制する様に手の平で押しとどめる。
「なんだよ!人に心配かけといて!無事に会えたのにいきなりそれかよ!」
口ではそう言いつつ、ヴァンはやはりうれしそうだ。
今までどこに行ってたんだ、どうしてすぐに姿を見せない、
と矢継ぎ早に尋ねてバルフレアを苦笑させる。
「フラン!」
少し遅れて、息を切らせて駆けて来たパンネロがフランに抱きつく。
「よかった…無事で…」
「心配かけたわね。」
パンネロは健気に首を横に振る。
「おいおい、どうせ抱き付くならこっちにしてもらえないか?」
じゃれて来るヴァンの頭を押さえて「おあずけ」をしているバルフレアはパンネロに軽口を叩く。
パンネロは手を腰に当て、頬を膨らませてバルフレアを見上げる。
「知らないわ。だってバルフレアさん、約束を破ったんだもの。」
「悪かった。」
バルフレアは臆面もない。
「黙って居なくならないって言ったのに…」
パンネロの顔が歪む。目に涙が浮かんでいる。
バルフレアはパンネロの肩に手を置くと、そっと引き寄せる。
自分の胸の中で泣きじゃくるパンネロがまるで小鳥の雛の様に儚く、愛おしく思える。
バルフレアはパンネロの肩に手を置き、涙を指でそっとぬぐってやる。
「もう嘘は吐かない。約束は必ず守る。」
パンネロはまだ少ししゃくりを上げている。呼吸を整えようとして、上手くいかない様だ。
「本当?」
バルフレア、頷く。
「もう黙ってどこにも行かない?」
「約束する。だから…」
パンネロに分からない様に小さく息を吐き、そして正面から彼女の瞳を見つめる。
吸い込まれそうだなと思いながら、ずっと温めていた言葉を口にする。
432愚か者の恋【35】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:25:56 ID:UsezoOHH0
「結婚してくれ。」

横でヴァンが凍り付いた。
フランも“パンネロを連れて帰る”とは聞いていたが、
一足飛びに求婚までするとは思っておらず、さすがに驚いた様だ。
「…え?」
パンネロは目を丸くしてバルフレアを見上げる。
ちょっとやそっとの口説き文句で
お嬢ちゃんを連れて行けるとは思っていなかった。
ましてやその相手は幸せな家庭を夢見ているのだ。
空賊をしながら幸せな家庭を築けるかどうかは疑問だが、可能な限り叶えてやりたい。
プロポーズはバルフレアの女性に対する最大の誠意であり、
それだけの価値のある娘だと思うからこその物なのだ。

だが、最終的に彼に決心させたのはフランの一言だ。
(ヴァンと恋人だ…?冗談じゃねぇ。)
「結婚…?」
「あぁ。」
「私とバルフレアさんが…?」
「他に誰が居る?」
驚くとおうむ返しになるのはパンネロの癖らしい。
パンネロはもう一度私とバルフレアさんが?と呟く。
(笑うなら笑いやがれってんだ。)
その辺の耐性ならバッチリだ。
(さんざん鍛えられたからな。)
だが、大笑いでうやむやにされては困る。
冗談ではない事だけは伝えなければ。
バルフレアはポケットから何かを取り出すと、パンネロの手の平に乗せた。
「わ…きれい…」
パンネロが思わず見入ったのは繊細な透かし細工の銀の指輪だった。
モチーフは蔓草と花で、花びらにはさまざまな色の宝石が散りばめられている。
呆然としていたパンネロだが、どうやら冗談ではないことが分かったらしい。
433愚か者の恋【36】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:28:37 ID:UsezoOHH0
「本当にプロポーズなの?」
「あぁ、そうだ。」
パンネロは改めて手の平の指輪をまじまじと見つめる。
と、大事そうに胸の前でぎゅっと握りしめる。
「バルフレアさん、私のこと好きなの?」
「あぁ。」
「ずっと前から?」
「そうだ。」
パンネロがにっこり微笑む。

「なぁんだ、やっぱりそうだったんだ。」

「おい、今、何て言った?」
「どうなのかなぁ?って思ってただけなの。バルフレアさん、私の事を
ず〜っと子供扱いしてましたけど、それくらい分かりますよ。」
横でフランが小さく吹き出すのを、バルフレアは苦々しい思いで聞いた。
「お見通しだったってわけか。」
「驚いた?」
パンネロは得意そうで、うれしそうだ。
バルフレアは降参だ、と言わんばかりに肩をすくめる。
「驚いたさ。ところで、肝心の返事の方はどうなんだ?
これ以上引き延ばされると、俺の心臓が止まっちまうんだが。」
パンネロは指輪を左手の薬指にしてみる。
「サイズ、ぴったり。」
しかも、モチーフになっている花はパンネロの好きな花で、肩から二の腕にペイントしているのと同じ物だ。
こういうマメな所はヴァンにはないなぁ…とパンネロは思う。
「うれしい。」
パンネロはバルフレアに微笑みかける。
「こんな風にプロポーズされるのって夢だったの。だからとてもうれしい。」
しかし、死刑台の上で首に縄を掛けられた状態で、後は床が落ちるか落ちないか、な気分で
パンネロの返事を待つバルフレアの耳にはあまり届いていない。
ただ、感触としては悪くはないようだ。これはいけると確信する。
434愚か者の恋【37】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:30:22 ID:UsezoOHH0
「あのね、私もバルフレアさんが好き。」
じゃあ…と喜びかけたバルフレアをやんわりと制す。
「だけど…ごめんなさい、お断りします。だって…」
パンネロはかわいらしく首を傾げ、どこか楽しそうにバルフレアを見上げる。
「どうしてだ?何が気に入らない?」
バルフレアはパンネロに掴みかからんばかりだ。
人生において最も大事である自由を切り札に出したのに、
笑顔で断られてしまったので無理もないが。
「だって…」
バルフレアは真剣な眼差しでパンネロの言葉を待つ。

「バルフレアさん、私の事も好きだけど、アーシェの事も好きでしょ?
私、私の旦那様が私と同じくらい好きな人がいるのって嫌だもの。」

この答えにはさすがバルフレアもうろたえてしまう。
「ちょっと待て、お嬢ちゃん、なんで俺が…?」
「じゃあ、バルフレアさん、アーシェが再婚するって言ったらどうするの?」
関係ない、何故かそう言い切れなかった。
アーシェが再婚と聞いて、言葉に出来ない程不快な気分になったからだ。
「ほらね。」
クスクスと笑うパンネロに、バルフレアは
“お嬢ちゃん”が予想以上に手強い事に漸く気が付いた。
百戦錬磨の自分が上手く躱されてばかりだ。
とっておきのカードすら通用しない。
どう言えば彼女を説き伏せられるか頭を巡らせていると、
横で凍り付いていたヴァンがいきなり奇声を上げて、
パンネロを肩に抱え、自分たちの飛空艇に向って走り出した。
435愚か者の恋【38】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:34:11 ID:UsezoOHH0
「おい、ヴァン!何をする?」
「うるせー!何が結婚だよ!お前なんかにパンネロを渡せるかよ!」
「この野郎、師匠を捕まえてお前呼ばわりかよ!」
「都合のいい時だけ師匠面すんなよ!」
バルフレアはすぐに追いかける。
パンネロが呑気にヴァンの肩越しに手を振っているのを見て、
バルフレアは舌打ちをする。
(そうやって笑ってられるのも今の内さ。)
バルフレアはヴァンにタックルをする、と、
ヴァンはパンネロの下敷きになって倒れてしまう。
バルフレアはすぐにパンネロを抱き上げる。
そこにヴァンがしがみついて…と、
まるで子供2人がパンネロを取り合っている様だ。
「パンネロは俺と2人で空賊をするんだよ!
ずっと一緒だったんだ!これからだって!」
「うるせー!こっちは教会とドレスまで用意してんだ。
そんなガキ臭い理由で連れて行かれてたまるか。」
「知らねーよ!大体なんだよ、アーシェが好きならアーシェの所へ行けよ!」
そんな2人の様子を呆れて見ていたフランだが、

(隠遁生活の挙げ句、出した結論がこれなのね。)
だが、どことなく陰りのあった表情が
やけに晴れ晴れとしているので良しとする。
ふと聞き覚えのある音がした。
遠くから大型のグロセアエンジンの音が近付いてくる。
(帝国の駆逐艦だわ…それも大艦隊ね。)
436愚か者の恋【39】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:35:56 ID:UsezoOHH0
自分達を捕らえに来たとは思わないが、何故ここに?
快晴だった空が不意に一転して薄暗くなり、
大人げない取っ組み合いをしていたヴァンとバルフレアも上空を見上げる。
と、空は瞬く間に一面帝国の駆逐艦で覆われていった。
「おいおい、なんだこりゃ?ヴァン、お前帝国に追いかけられる様な悪さでもしたのか?」
「知らねーよ!俺、まだ何も盗んでねーし!」
2人が言い合っていると、旗艦らしい大型空母から着陸艇が降りて来た。

「ジャッジ専用機だ。」
「こいつはどうも、昔なじみのようだな。」
「バッシュ小父様ね?」
「多分な。おいヴァン、うっかり将軍の名前で呼ぶんじゃねーぞ。」
「分かってるよ!」

突然の艦隊の出現に、一時休戦となる。
着陸艇が土ぼこりを巻き上げ、3人の前に着陸すると、正面の扉が開き、
いかめしい鎧に身を包んだ一人のジャッジマスターが降り立った。
兜を取ると、確かに良く知った顔だ。
「久しぶりだな、バッ…!」
と、ヴァンが叫びかけたのを、慌ててパンネロの手が塞ぐ。
そんな様子をバッシュは目を細めて見ている。
そして、バルフレアに目をやると、
「無事で何よりだ。」
「お陰様でな。で、ジャッジマスターがこんな辺境に何の用だ?」
「うむ、今日はラーサー様の命で来た。
貴公等を捕らえに来たわけではないので安心してくれ。」
「それにしちゃあ随分と仰々しい事で。」
「驚かせてすまない。ただ、帝国の未来の王妃を
迎えに来るとなると簡素には出来んのだ。」
437愚か者の恋【40】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:37:32 ID:UsezoOHH0
「未来の王妃〜?」
「未来の王妃だと?」

同時に叫び、嫌な予感に顔を歪ませる2人を後目に、
バッシュはパンネロに歩み寄る。
「久しぶりだな、パンネロ。」
「小父様もお元気そう。」
バッシュは静かに頷くと、手に持っていた鑞で封のされた封筒をパンネロに渡す。
「これ…?」
「ラーサー様からだ。」
パンネロは受け取ると、遠慮がちに封を切って中の手紙を読む。
「パンネロ、ラーサー様は君を帝国に迎えたいとお考えだ。」
何が書いてあるのか、パンネロの頬がポッと赤くなる。
パンネロは困り果ててヴァンとバルフレアを見る。

「どうしよう、一度に2人からプロポーズされちゃった。」

バルフレアは突然のライバル出現に言葉を失い、
ヴァンはわなわなと震えている。
「パンネロ、確かに帝国で君が王妃になるのは大変な事だ。
だが、ラーサー様は何があっても君を守ると…」
「ちょっと待て、将軍!悪いがその話はこっちが先でね。」
横取りされてたまるものかとバルフレアが遮る。
「貴公が心配なのは分かるが、パンネロにはラーサー様の様なお方が
相応しいと思うのだが?確かに宮殿暮らしは大変だが、
ラーサー様にはちゃんとお考えがあっての事だ。何も心配する必要はない。」
状況を飲み込めないバッシュがとんちんかんな答えをする。
「それにな、何より私は2人のお世継ぎが見てみたい。」
「お世継ぎだぁ?あんた、親父通り越しておじいちゃんかよ。」
冗談じゃない、と叫ぶ前にヴァンが素早く飛び出し、
またパンネロを抱えて走り出す。
438愚か者の恋【41】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:39:13 ID:UsezoOHH0
「2人ともいい加減にしろよ!パンネロが困ってるだろおおおおーっ!」
ヴァンは転がる様にして飛空艇に乗り込むと、大慌てで離陸する。

「もう、ヴァンったら…私、まだバッシュ小父様にお返事してないのに。」
「放っときゃいいんだよ!ラーサーもバルフレアも勝手な事言って!」
「じゃあ、ヴァンはどうなの?」
「え?」
ギクリと、ヴァンの動きが止まる。
「私と一緒に居たいって言ってたけど、あれはどういう意味?」
いつになく真剣な、それでいて探る様な目で見られ、ヴァンは首まで赤くなる。

「ねぇ?ヴァン…私のこと、好き?」
ヴァンは魚の様に口をぱくぱくさせるが、後が続かない。
こういった事を考えるたり言葉にするのは、彼にとって尤も苦手な事なのだ。
「そ…そんなの分かんねーよ!好きとかどうとか…ずっと一緒に居たんだぞ?
だから…よく分からねーけど、とっ…とにかく、俺、もうちょっとパンネロと居たいんだ!」
ヴァンらしい開き直りにパンネロは、やっぱり子供なんだからと溜め息を吐く。
そして、左手の薬指にしたままの指輪を見る。
(きれい…)
指輪をした手を空にかざしてみる。
「外しちゃえよ。そんなの。」
「どうして?だってキレイだもん。私が空賊になって初めての獲物よ?」
ヴァンにはおもしろくないようだ。
「ねぇ、バルフレアさん、ドレスも用意してたって言ってたね。
どんなのかなぁ〜?バルフレアさん、おしゃれだもん。
きっとステキなドレスだろうな〜。」
途端に艇がぐらりを揺れた。
「パンネロ!バ…バルフレアがいいのかよ?」
「ヴァンより大人だし。」
「だけどアイツ、アーシェが好きなんだろ?」
「それはヴァンもでしょ?」
艇がさっきより大きく揺れた。
439愚か者の恋【42】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:42:08 ID:UsezoOHH0
「な…なんで俺が…?」
「じゃあアーシェが再婚するって言ったらどうする?」
「相手の奴、ブッころ………………あ。」
ほらね、とパンネロが笑う。
そして操縦席で小さくなってるヴァンの肩を優しく叩く。
「安心して。私も、もう少しヴァンと一緒に居たいから。」
パンネロの答えに一瞬顔を輝かせたヴァンだったが、
(もう少し…ってどれくらいだよ!)
考えてみると、余計に不安になってしまうので、
とにかく今は少しでもこの場を離れようとフルスピードだ。
そんなヴァンを見ながらパンネロはまたこっそりと笑う。

ヴァンもバルフレアも分かっていない。
パンネロも、自分とアーシェの両方を好きな2人が好きなのだ。

「ねぇ、逃げられる?」
「任せとけ!」

一方、出遅れてしまったバルフレア。
「あの野郎、また…!」
「ちょっと待てくれ、一体どういう事だ?」
「悪いが将軍!話は後だ!おい、フラン!追うぞ!」
シェトラールに駈けて行くバルフレアの姿をバッシュは呆然と見送る。
そして、すっかり傍観者なフランに助けを求める。
「彼、あのコに夢中なのよ。プロポーズしてフラれた所。」
「では、ラーサー様の恋敵という事か。」
「あなたも追うの?」
「主君の命だからな。だが、宮廷勤めより楽しい任務になりそうだ。」
440愚か者の恋【43】 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:49:13 ID:UsezoOHH0
そう言って踵を返して着陸艇に向かう、がふと足を停めて振り返ると、
「この事はダラマスカの殿下には…」
「分かってるわ。ちゃんとね。」
バッシュは頷き、そして扉が閉まる直前に、フランに向って手を振った。
「君も…無事で良かった。」
フランも軽く手を振って応える。

着陸艇が母艦に戻るのを見届けてから、フランもシェトラールに乗り込む。
「追うぞ。」
「フラれたのに?」
バルフレアは相棒の言葉に怒るでもない。むしろわくわくしている。
「惚れ直した。絶対に手に入れる。」
フランは副操縦席に座ると、ヴァン達の機影を追う。
「早いわね、あのコ達。いい飛空艇を手に入れたのね。」
「軽いだけだろ。それに、どんなに逃げても居場所は分かる。」
見ると、バルフレアの席に見覚えのない計器が増えている。
「指輪に仕込んでおいた。これで逃がさない。」
どうやら渡した指輪には追跡装置が取り付けてあるようだ。
ラーサーにも言える事だが、自分の相棒は女という生き物は
追えば逃げる習性があるのを誰よりも良く知っていたはずなのだが。
そして、この騒ぎを戴冠式を控えた王女様に是非知らせてやらなければと思う。
さっきバッシュが言いたかったのはそういう事だろう。目が笑っていたし。
活動的な王女様の事だ。きっと戴冠式が終わったら…
いや、今すぐにでも飛び出してくるかもしれない。
結末がどうなるかは分からないが、当分は退屈しなくて済みそうだし、
また6人で食卓を囲む事が出来るかもしれない。
機体を加速形態にし、全力で帝国軍を振り切り、
ヴァンとパンネロを追うバルフレアを見ながら、
フランはのんびりとそんな事を考えた。

おわり。
441 ◆DvBI45asCU :2006/09/24(日) 21:52:07 ID:UsezoOHH0
お付き合いありがとうございました。

>>405楽しみにしてくれる人がいると張り合いが出ます。ありがとうございました。

>>406フライパンにジーパンですか。これは何かのプレイですかそうですか、本当に(ry
投稿人、夢見がちですが軽く変態なのでそんなプレイもうれしい秋の夜長。

以下チラシの裏。
伊達男と純情少女のラブロマンス、目指したのは“3番目少女”な世界でしたが、
大騒ぎで終わってごめんなさいよ。最終決戦からエンディングを見てたら、
なにかあると寄り添うヴァンとパンネロもかわいいし、
唐突と不評ですがアーシェのバルフレアの思いも切なくていいし、
バルフレアとフランの不思議な仲もいいなぁと。
12は妄想のしがいがあって楽しかったです。
でも難しかったので、もう一巡プレイして出直して来ます。ノシ
442名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/24(日) 21:58:45 ID:wNxc/ZyTO
乙っす。12はキャラしか知らないんだが楽しませてもらったよ。
再プレイがんがれ。
443名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/24(日) 22:21:32 ID:kxC0B1El0
>>430-440
完結乙でした! 読み終わった後。
「つまりアレか、この先の遁走曲的な作品がレヴァナント・ウィングなんだな!?」と
半自動的にそう解釈してしまい、今後も楽しそうだと思いました。
FF12は未クリア(EDだけ見ちゃった愚か者)なので、これを機にレイスウォール王墓から
がんばってみよう…と思う。
幸せを願うみんなの中でも、バッシュおじさんとフランねーさんが良い味出してるなあと
惚れ惚れしました。

新作もお待ちしてます!
444名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/24(日) 22:54:06 ID:d4OVfjJW0
◆DvBI45asCUさん

お疲れ様でした。毎回楽しみに待ってましたよ。
いい感じの大団円なおわりでしたね。
まさに「恋する小説スレ」にぴったりの作品だったと思います。
また新作が出来たら投下してください。FF12が大好きなのでお待ちしています。
445愚か者の恋【エピローグ1】 ◆DvBI45asCU :2006/09/25(月) 23:51:13 ID:FufnzlWF0
一旦終わったけど、乙のお声でフラフラ出て来ましたよ。
>>177-179 >>260-269 >>346-357 >>396-402 >>430-440 のオマケです。

※出番が少な過ぎた王女殿下のお話。
※投稿人、夢見がちです。甘ったるいのがお嫌いな方はご注意下さい。

「殿下…どうしても行かれるのですか?」
アーシェが幼い頃から仕えてきた侍女頭は泣き出さんばかりだ。
「ええ。帝国の艦隊が動いたと聞いてじっとしては居られないわ。
この目で確かめないと。」
実はこれは口実で、本当の理由は懐かしい仲間からの手紙なのだが。

ドレスを脱ぎ、旅をしていた頃の服に着替え、愛用の剣を腰に差す。
「あと一月で戴冠式なのに…」
年老いた侍女頭がさめざめと泣く。
「こんな大それたこと…民に知れたらどうなる事か…」
「もう泣くのはお止め。」
アーシェは少々うんざりした口調で言う。
「アーシェさま。」
「まぁ、フロリー!」

フランからの手紙が届いたのはつい2時間程前の事だった。
読み終えたアーシェはすぐに一番忠義深く、自分に心酔している侍女のフロリーを呼んだ。
「お呼びでしょうか、殿下?」
「フロリー。私は今から旅に出ます。」
驚くフロリーを言いくるめ、そして彼女に頼んだのだった。
446愚か者の恋【エピローグ2】 ◆DvBI45asCU :2006/09/25(月) 23:52:35 ID:FufnzlWF0
「戴冠式までには戻るわ。それまで私の身代わりをして欲しいの。」

アーシェがフロリーを選んだのは忠義深さだけではない。
背格好がどことなく似ているのと、なかなか機知に富んだ娘だからだ。
「戴冠式までの潔斎と言って、ベールを被って誰も近づけない様にすれば大丈夫よ。」
そうして、髪を染め、似た様な髪型にカットし、アーシェのドレスを着て、
ベールを被って出て来たフロリーにアーシェは歓声を上げたのだ。

「大丈夫よ、これなら。」
「はい、殿下もどうぞお気を付けて。」
アーシェは真っ黒なマントを羽織り、フードを被る。
「裏門にチョコボを用意してございます。」
「ありがとう、フロリー。」
「お待ち下さい、殿下!」
侍女頭が扉の前に手を広げて立ちはだかる。
「どうしても行かれるおつもりですか?」
「お願いよ、行かせてちょうだい。」
侍女頭は動こうとしない。
「では命令です、そこをおどきなさい。どかぬなら、切ります。」
侍女頭は青ざめ、のろのろと扉から離れた。
アーシェはその傍らをすり抜け、隠し通路へと姿を消した。
「侍女頭さま…どうしてあのような…」
「これで良いのです。」
不思議そうなフロリーに、侍女頭は大きく頷いてみせる。
「もし、殿下の不在が皆に知れたら、私達も罰せられるでしょう。
陛下のご命令で、切ると言われたとなれば誰にも咎められる事はありますまい。」
「そんな…」
「殿下もそれを承知であの様に言われたのですよ。」
447愚か者の恋【エピローグ3】 ◆DvBI45asCU :2006/09/25(月) 23:56:14 ID:FufnzlWF0
3年前、この隠し通路を通ったのは父の死を知らせてくれたウォースラに連れられてだった。
あの時は突然の事に、ただ彼に付いて行くしか出来なかった。
失った物の大きさに、悲しみより先に戸惑うばかりだった。

亡くした父や夫の事を忘れたわけでもない。
だが、今を、未来を生きようとするアーシェにとって、旅の仲間はかけがえのない宝だ。
その仲間達が揃っていると聞いて、大人しく戴冠式を待っていられるわけがない。

そして、自分の心を盗んで行ったまま姿を眩ませた空賊に、一言言ってやらねば。
(私を目の前にして、もう一度パンネロに同じ事が言えるかしらね。)
きっとパンネロも同じ事を考えているはずだ。女部屋の絆は伊達ではないのだ。

隠し通路を抜けるとフロリーの言う通り、一頭のチョコボが繋いであった。
アーシェは鞍にまたがると、軽く鞭を打ち、静かに裏門を出る。
城から少し離れた所に来ると、全力でチョコボを走らせた。
空は満天の星だった。夜風が心地よい。
仲間との再会に思いを馳せながら、アーシェは夜の街を駆け抜けて行った。

今度こそ終わり。

===============================================
後だしスマソ。
昼間弁当食べてて突然閃いて書いてしまいました。今は反省している。

>>442-444
なんの接点もない2人の話で、いいのかなぁ?大丈夫かなぁ?と
おっかなびっくり書いてましたがうれしいお言葉に救われた気持ちです。
本当にありがとうございました。

投稿人、空賊がお嬢ちゃんにハンカチを渡した瞬間からこの2人にノックアウトです。
そんな話でよろしければまた参りますノシ
最後までお付き合い下さった皆様、本当にありがとうございました。
448名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/26(火) 01:58:31 ID:3pKfC1T30
◆DvBI45asCUさん

おまけ、超乙です!!
頭の中に情景が浮かぶような描写。素敵なエピローグですね。

>空賊がお嬢ちゃんにハンカチを渡した瞬間からこの2人にノックアウトです。
そうなんですね。
私は終始、空賊の言動にドキワクでした。
フランに対してもアーシェに対してもパンネロに対しても。
いつだって空賊はクールかっこいい。
FFはFF7からFF12までやりましたが(FF11を除く)FF12が一番好きです。
もちろん個々に好きなキャラはいますが、
世界観もキャラも全て好きなのは12ですねー。

また何か新作ができましたら是非投下してください。
それまで楽しみにお待ちしてます。
449名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/27(水) 18:58:36 ID:PEQY5Z2KO
450名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/27(水) 20:21:07 ID:PEQY5Z2KO
451名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/28(木) 01:46:16 ID:xt7FbIA60
バルフレア×パンネロ最高だった乙!
新作wktk
452名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/29(金) 00:36:25 ID:ENH8Wwg40
>>445-447
エピローグ乙!
侍女頭達(臣下)への気遣い、アーシェ殿下と他の者達への配慮。
扉を前にして、それらを察しての両者の行動が信頼している者同士
その絆だな〜と感じました。
…自分がこういう話にめっぽう弱い事も判明しつつwワクワクする
締めくくりで読後感が良いです。新作も待ってます。
453Se la gatta va al lardo 5 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/29(金) 00:50:49 ID:ENH8Wwg40
前話:>>422-425
舞台:FF7本編開始前(試作ロケット墜落を巡るあれこれ)
----------

 私の言葉にも、彼女は全く動じる様子を見せなかった。それどころか、微笑さえ浮かべている。
「そう言うと思ったわ。……だけど勘違いしないでもらいたいの、私達も真剣……いえ、必死なのよ。
でなければロケットを使わせて欲しいなんて突飛な話を持ちかけたりしない」
 確かに、彼女が言うのももっともな話だ。それに彼女の姿を見ていれば、ふざけて出た言葉では
ないのだと分かる。少なくとも私の知る限り、彼女の口から嘘と冗談を聞いたことは、これまで一度も
無かった。
 だから今回の話に、全く興味がなかったと言うわけでもない。そうでなければ、わざわざここへ足を
運ぶこともなかっただろう。
「理由は?」
 その問いに、彼女は一度目を閉じて何事かを考えている様子だった。
 それから程なくして顔を上げ、私を真正面から見据えてこう言った。
「……人命救助よ」
 返されたのは意外な言葉だった、意外と言うよりも唐突すぎて話が繋がらない。
「ちょっと待ってくれ。ロケットと言っても試作機だ、有人飛行はしない」
「ロケットでなければ到達できない場所での人命救助、と言う訳じゃないわ」
 そう言って彼女は1枚の写真を差し出す。写っているのは見たこともない女性の姿だった。
「……ミッドガルのある場所に閉じこめられている人を、救いたいの」
「それじゃあ私よりも君が適任だ。ミッドガルの構造は君が一番詳しいだろう? 場所の見当が
ついているなら、君自身が助けに向かったら良いじゃないか」
 ましてロケットの出番などどこにも無いではないか、そう反論した私に彼女はこう続けた。
「ええ。でも私が使える手駒では彼女たちを救うことが出来ないの。……せいぜい」
 そう言って彼女は私に背を向けて椅子に座り、数度キーボードを叩いた。すると、画面上に
表示されていたミッドガル全景の何ヶ所かが赤く点滅を始める。
 画面から目を離し、彼女は私を見上げてこう告げた。
454Se la gatta va al lardo 6 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/29(金) 00:54:56 ID:ENH8Wwg40
「……8、基。ある魔晄炉だけだもの。それに、このうち完成しているのは半分にも満たない」

 都市開発部門管理課に所属し、これまでミッドガルの建造に携わる中心人物の一人として手腕を
振るってきた。そんな彼女が、私利私欲のために魔晄炉を使うと言い出すなど、考えられなかった。
だから彼女が魔晄炉のことを「手駒」と表現した事には驚いた。
「……もっとも。これを使ってしまったら、魔晄炉建設計画担当者に怒られるわ」
「君が部下のことを気に掛けるなんて珍しい」
「失礼ね、まるで私が血も涙もない人間のような言い方に聞こえるけど?」
「そうじゃなかったのか? 都市計画のためなら多少の犠牲も厭わない、それが君のやり方だろう。
魔晄炉誘致の件も聞き及んでいるよ。君の入れ知恵か? だとしたらまったく力ずくだな」
 魔晄炉建設予定地の住民に対する強制退去は、都市開発部門から総務部調査課への協力要請が
出され、秘密裏のうちに処理されたと聞いている。統括責任者が不在と言うことは、この件を承認した
――それほどの決裁権がなかったのだとしても、認知はしていただろう――のが彼女ということになる。
 確かに彼女は理想論者である。ミッドガルに対して、恐らく誰よりも強い愛着と執着を持ち、理想都市
実現のために奔走してきた。しかし、だからと言ってこれほど強硬な態度にでるとは考えにくい。
 反論が返ってくると思ったが、遂に彼女の言葉を聞くことはなかった。
 もしかしたら私は、自分でも気づかない無意識のうちに彼女からの反論を期待していたのかも知れない。
 そしてこの時、私は気づかなかったのだ。
 ディスプレイ上に示された魔晄炉を示す赤い点が、全部で9つあったことを。

 それは、私が彼女の口から聞いた初めての嘘であり、彼女の姿を見た最後となった。
455Se la gatta va al lardo 7 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/29(金) 00:59:24 ID:ENH8Wwg40

                    ***

 宇宙開発事業の規模縮小について、会議の席上で最初に提案したのは都市開発部門統括のリーブ
だったと記憶している。
 もっとも統括責任者に着任したばかりだったこの頃の彼は、ミッドガルの都市開発事業に対してとても
大きな夢と野心を抱いていたのだろう。宇宙開発事業と都市開発事業の必要性を論理的に説明し、
両事業に費やす費用の割合を算出、次年度の予算について我々の事業を縮小するかわりに、都市開発へ
予算を充てるべきだと言うのが彼の主張だった。
 神羅カンパニー。
 その前身をたどれば元は神羅製作所という兵器製造会社、つまりは戦争屋だ。ウータイとの戦争で
富を築き上げた死の商人。我々をそう揶揄する人間もいたが、あながち間違ってはいない。事実、
現在の基盤となる資金源は製作所時代の収益にあり、今でも兵器開発部門は神羅カンパニーにとって
重要な収益源であることが、何よりもそれを裏付けている。治安維持部門と共に、この2つの部署は神羅の
屋台骨となっている。
 ――宇宙開発部門は所詮、収益を生み出す部署ではない。
 そんなことは統括責任者である自分が一番良く分かっている。
 神羅にとって宇宙開発部門は、お飾りでしかないのだ。


「採算性だけで考えればもはやお荷物。……と言った方が正確かと」
 重役会議が終わった直後、皆が席を立って部屋を出て行く中で彼は私にそう話しかけてきた。
 彼とはもちろん、都市開発部門統括である。
 不思議なことにそれほど怒りは感じなかった。彼はきっと、就任したばかりと言うこともあってやる気に
満ちているのだろう、会議中のプレゼンテーションを聞いていれば否が応でも彼の気概が分かった。
同時に、これはその裏返しだと。
「君のようにやる気のある統括が就任してくれれば、部下も安泰だろうな」
「お言葉ですが、やる気だけでは統括職になんて就けません」
456Se la gatta va al lardo 8 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/29(金) 01:04:13 ID:ENH8Wwg40
 口調こそ穏やかではあるが、言っている内容には私に対する明らかな敵意が含まれていると
感じるのは、気のせいではないだろう。
「私に何か恨みでも?」
「……今のところは『いいえ』とお答えできますが、今後の返答については保証しかねます」
「と言うと?」
「お伺いしたいことがあります。少しお時間を頂きたいのですが」
 なるほど、その返答次第で私への心象が変わるということか。しかしながら、私は彼と面識がない。
数日前の重役会議で初めて言葉を交わしたのが、覚えている限り最初だったと思っていた。
 やれやれとため息を吐かずにはいられなかった。この年若い統括責任者は、一体何を考えているのかと。
 それでもまあ、時間はたっぷりある。
 幸いなことに宇宙開発部門は、それほど多忙を極める部署ではない。
 私はひとつため息を吐いた後、席を立った。



 会議室を出て私達はエレベーターへと乗り込んだ。統括室のある目的階のボタンを押したのは、
後から乗り込んだ彼だった。
「私がお伺いしたいのは他でもない、試作ロケットの件です」
 扉が閉まった瞬間、まるで見計らったように彼は声を潜めて尋ねてきた。これまた彼女同様、
単刀直入な物言いだと思った。
「……試作ロケット?」
 最初こそ首を傾げたが、すぐに彼の言わんとすることに察しがついた。
「ああ、先日の事故か?」
 ミッドガルに墜落した試作ロケットの件――都市開発部門の統括責任者が興味を寄せることといったら、
確かにそのぐらいだろう。
457Se la gatta va al lardo 9 ◆Lv.1/MrrYw :2006/09/29(金) 01:09:51 ID:ENH8Wwg40
「あれは本当に“事故”だったのですか?」
「というと?」
「……何かしら作為的な物を感じるのですが」
 鋭い指摘だと思った。が、私が彼に本当のことを話してやる必要性はどこにもない。
「気のせいだ」
「そうおっしゃる根拠は?」
 真っ直ぐ私を見据えて彼は問う。ここまで言うからには恐らく、彼の言葉には裏付けがあるのだろう。
「では私からも1つ質問させてもらうよ。……君がロケット墜落に作為を感じた根拠は?」
 僅かな沈黙。
 狭い密室内に響いた機械音は、目的階到着を告げると同時に扉を開いた。
 先に歩みを進めたのは私だった。彼は無言のままパネルを見つめ、開閉ボタンを押している。
エレベーターを出た私は振り返り、彼が出てくるのを待ちながらこう言った。
「……私を疑うなら、まずはその根拠をお聞かせ願おうか」
 彼は顔を上げ、「分かりました」と言って頷いた。


----------
・語り手については最後のオチがあるので、このまましばらく進行します。
・無事にオチつくといいな…。
458名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/30(土) 05:24:07 ID:Vb1NU1cl0
乙!試作機ワクテカ
459名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/30(土) 12:16:33 ID:uGEELjZh0
GJ!
文章が読みやすい!続き期待
460名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/02(月) 02:17:21 ID:v2rTaY+00
乙!
461名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/03(火) 04:11:48 ID:ln/tkKTK0
462名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/03(火) 21:31:37 ID:VNetA34v0
463名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/03(火) 22:17:39 ID:KQ+BVNXp0
今日初めてこのスレに来たんだがバルフレアパンネロ最高
どのキャラもイメージ狂ってなくて、
何より自分の中で12のキャラクターの高感度がグンとアップした
皆大好きだ

乙でした
464名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/04(水) 00:39:30 ID:jb4WNY6J0
>>453-457
人命救助?彼女?故意の事故?そして語り手さん…
分からない事だらけで続きが気になってしょうがないです。
期待sage

465前兆【1】 ◆3hspsNyL.Y :2006/10/04(水) 00:41:44 ID:jb4WNY6J0
※FF12バルフレアとパンネロのお話。
※2人は再会後一緒に行動しているという設定。
※エロではありませんがそれを匂わせるお話なので苦手な方は要注意。
※砂糖を練乳で練りチョコチップを振りかけましたました、くらい甘いです。
 それこそ血を吐くほど甘いです。嫌いな方は読まない方がいいです。


お待ちかねの就寝時間。
エンジンンの調整に手間取り、バルフレアは一足遅れて寝室に入る。
いつもなら寝間着の裾をふんわりとひるがえし、
出迎えてくれるはずのパンネロが、ベッドで枕を抱えて何やら考え込んでいる。
バルフレアは眉を顰めた。
そう言えば今日一日、何か塞ぎ込んでいるようだった。
それでもバルフレアに気付くと立ち上がり、慌てて駆け寄る。
「お疲れ様。今日はもういいの?」
笑顔がどこか痛々しい。
「あぁ、俺の手にかかりゃ、大したことないさ。」
いつもなら顔中にキスして、ついでに首筋にもキスして、
そのまま抱き上げてベッドに直行なのだが、
「そんな事より…どうした?どこか具合でも悪いのか?」
パンネロはほんの一瞬だけ顔を曇らせたが、すぐにまた笑顔に戻る。
「そう?全然元気だよ?どうして?」
とりあえずベッドに座らせ、自分も隣に腰掛ける。
「心配しないで。なんでもないの!ほら、こんなに元気だし!」
「パンネロ。」
空元気を遮り、その瞳を覗き込む。
「具合が悪いんじゃないなら何か悩みでもあるんじゃないか?」
「………」
パンネロはきゅっと唇を噛み締めると、何かを決意した表情でバルフレアを見据える。
466前兆【2】 ◆3hspsNyL.Y :2006/10/04(水) 00:42:59 ID:jb4WNY6J0
「どうした…うわっ!」
パンネロが勢い良く首にしがみついてきて、2人でベッドの上にひっくり返った。
パンネロはそのままバルフレアの上に馬乗りになると、両手を頬で包み込み、
一瞬ためらった後、柔らかいその唇でバルフレアのを塞いだ。
2人が身体を重ねる様になってまだ3ヶ月ほどしか経っておらず、
ベッドの中でのパンネロは為すがままだったのだ。
なので、突然のこの行動はうれしいというよりも、戸惑いを隠せない。
(おいおい…一体どうしちまったんだ…?)
すぐさま身体を引き剥がそうとしたが、
パンネロが拙いなりにあまりにも必死なので、とりあえず気が済むまでさせてみる事にする。
背中に左腕を回し、優しく抱きしめてやり、
右手で髪を結わえている紐を軽く引っ張ってほどく。
柔らかな金色の髪がふわりと落ちて来てパンネロの顔を彩る。
しかし、その顔はどこか苦しそうだ。
唇が離れて、パンネロは途方に暮れた様にバルフレアを見下ろす。
バルフレアの追求を躱そうと頑張ってみたが、先が続けられないようだ。
「…続きは?」
パンネロはまた唇を噛み締める。
バルフレアは身体を起こすと、パンネロの頭を抱き寄せた。
「積極的なのは大歓迎だが、らしくないな。どうした?何があった?」
パンネロが小さく頭を振る。
「パンネロ。」
「…だめ…言えない。」
「どうして?」
「言ったら…バルフレア、私のことを嫌いになるわ。だから言いたくないの。
絶対に言わない。お願いだから、もう聞かないで。」
こうなったら梃子(てこ)でも話そうとしないだろう。
467前兆【3】 ◆3hspsNyL.Y :2006/10/04(水) 00:44:30 ID:jb4WNY6J0
「分からないな。」
バルフレアはパンネロを引き寄せ、自分の膝の上に座らせる。
正面から見据えられ、パンネロは困った様に眉を寄せる。
その部分にバルフレアはそっと口づけた。
「なぁ…もし、逆の立場だったらどうする?」
「逆…?」
「俺が塞ぎ込んでいて、そのくせお前には空元気で何もない振りをして。」
「………」
「いつもなら真っ先に押し倒してるのが、パンネロに背中を向けてぐーぐー寝ちまうんだ。」
パンネロの顔が漸く綻ぶ。
「それは…大変ね。」
「だろ?」
パンネロは小さな手をバルフレアの頬に添える。
「本当に…嫌いにならない?」
「あぁ。」
「本当に?」
バルフレア、頷く。
自慢ではないが、今の自分ならパンネロが何をしても許せる大いなる自信があったし、
そもそもパンネロがそんな失態をしでかすとは思えない。
どうせ他愛もないことだろうと高を括っていた。
パンネロは小さく溜め息を吐くと、
「あのね、私以外に、このベッドで眠った女の人ってたくさん居るのかなって。」
その瞬間、バルフレアは自分が寝た子を起こしてしまった事に気が付いた。
(そう来たか…)
「こんなコト…気にするなんてヤキモチ焼きで…私、自分でそんな自分が嫌になっちゃったの。」
「おいおい!なんでそこで自分を責めるんだ?」
「だって…気になり出したら止まらなくて…そういうのって、私嫌いなのに。」
どうやらバルフレアの過去の女性遍歴が気になる自分が許せないようだ。
468前兆【4】 ◆3hspsNyL.Y :2006/10/04(水) 00:49:15 ID:jb4WNY6J0
「いいか、お嬢ちゃん…っと。」
つい、以前の呼び方の癖が出た。
「いいか、パンネロ。…それは…“過去に捕われる”のとはちょっと違う。
パンネロが悩んでる事は…その…17歳のかわいい女の子なら当たり前の事だ。」
バルフレアの物言いに、胸の中に居るパンネロが少し笑った。
「惚れた相手の過去が気になるのは俺も同じさ。
過去どころか今だって心配でたまらくなる。
ずっとこの部屋に閉じ込めておきたいくらいだ。」
パンネロが驚いた様に目を見開く。
そんな表情にいちいち撃ち抜かれながらも、バルフレアは優しく髪を撫でてやる。
「でも…きれいな人ばっかりって聞いたもの。」
また俯いてしまうパンネロの顎を指で持ち上げ、こちらを向かせる。
内心、余計な事を言ったのはどこのどいつだと罵りつつ。
それに、パンネロが言った“きれいな人”の顔がどうしても思い出せない。
思い出そうとして浮かぶのは、何故かトマトとタマネギとカボチャのモンスターの顔だ。
だが、そんな事を言ったところで、空々しく聞こえるだけだろうし。
「なぁ…パンネロ。」
肩にかかる髪を指先で優しく梳いてやる。
「そうだな、庭一面に咲いてる薔薇の花と、
野原に咲いてる百合とどっちがきれいだと思う?」
パンネロは脈絡のない質問に意味が分からず、首を傾げる。
「確かによく手入れされた薔薇はきれいだ。
だがな、俺が歩き疲れてへたりこみそうになった時、
前へ進む事を教えてくれたのは薔薇じゃない。
そこに、自分の力でしっかり咲いてた百合の方さ。」

469前兆【5】 ◆3hspsNyL.Y :2006/10/04(水) 00:53:58 ID:jb4WNY6J0
パンネロがぽっと赤くなる。
「それが…私…?」
「そうさ。」
バルフレアはパンネロの額に自分のを軽く合わせる。
どうやら説得は成功したようだ。
パンネロがはにかんで、もじもじとするのが可愛くて仕方がない。
「もう薔薇の花に見とれたりしない?」
「もちろん。」
「はっきり言い過ぎると、ちょっと怪しいよ。」
思わず非難めいた言葉が出たのは、
気が付けば腕が背中に回され、ベッドに横たえられていたからだ。
(もう…私が機嫌を直したと思ったらすぐこれなんだから。)
人の気も知らないで呑気なんだから…と半ば呆れながらもパンネロは、
ちゃんと分からせてやるさ、などとうそぶくバルフレアの首に
優しく腕を絡めて目を閉じた。

おわり。
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ロマンティックな2人が書きたくて書いた。今は反省して(ry
読んで下さった方、ありがとうございます。
キザったらしい台詞を吐く空賊と、空賊にそんな台詞を言わせた自分を
グーで殴って逝ってきますorz
470名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/04(水) 19:19:26 ID:hX7L7RjdO
471名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/05(木) 02:40:34 ID:3s7PPN7S0
>>465-469
以前の作品を拝見していても思いますが、雰囲気の良いふたりの描写が本当に上手いと思います。
それは読んでるこっちが照れそうな程でw
それにしても油断も隙もない男だなバルフレア! 乙でした。

> 前へ進む事を教えてくれたのは
この件を読んで、なぜか某WROの背景が脳裏に過ぎったのは自分がDCやり過ぎだからです。
…雰囲気ぶち壊しな感想ですみません、グーで殴ると痛いのでパーでひっぱたきながら
大人しく次作をお待ちしておりますですはい。
472Se la gatta va al lardo10 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/05(木) 02:53:09 ID:3s7PPN7S0
前話:>>453-457
舞台:FF7本編開始前
参照:前スレ599,651
----------

 エレベーターを出たリーブの後について、都市開発部門の統括室へと招かれた私は、
ひとまず勧められたソファに腰を落ち着けた。
 個人に割り当てられるにしては広すぎる統括室内には、まだ未開封の箱がちらほら置かれていた。
それを見て、そう言えば彼はまだここへ来て間もないことを思い出す。同時に、昔の自分も
慣れるまでは雑然とした室内で右往左往していたなと懐かしい気分になる。
「すみません、まだ片付いてないもので……」
 言いながら彼は慌ただしく室内を動き回りながら、書類やらファイルやらを手早くまとめ、
応接用のテーブルへと戻って来た。
「……あっ!」
 かと思えば、短く声をあげてまた慌ただしく席を立つと部屋の奥へと足早に移動する。何を
するのかと目で追っていると。
「コーヒーで宜しいですか?」
 などと聞いてくる。それももの凄い勢いで。
「……あ、ああ」
 彼の勢いに押されて思わずそう返答してしまったが、どこか調子が狂う。……そうだ。
「なにも君がやらなくても……」
 部下にやらせればいい雑用を、なにも自分一人でこなそうとしなければいいものを。もう少し
落ち着いたらどうだ? という揶揄もこめた言葉だったが。
「あ、いえ。……すみません、不慣れなもので」
 そう言って小さく笑いながら、彼はトレイに乗せてコーヒーを運んできた。
 何かがおかしい――彼を見ていて感じるのは、小さな違和感だった。今ここにいる彼からは、
先程までの敵対心はまるで感じない――それとも、これは私の警戒心を取り去ろうとするための
演出なのだろうか?
 とにかく都市開発部門の連中と話をすると、いつもこうだ。
(まったく、彼女とは違った意味で調子が狂うな)
 差し出されたカップの中で揺れている自分の顔を見つめながら、そんなことを思った。
「コーヒーはお嫌いですか?」
473Se la gatta va al lardo11 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/05(木) 02:57:47 ID:3s7PPN7S0
「ん? ……いや。頂こうか」
 どうやら渋い顔でカップを見つめていたらしい私に向かって問われれば、思わずカップを取り上げ
口に運んでしまう――これでは向こうのペースに乗せられているだけだと言うのに。
「……苦いな」
 そこに僅かな勝機を見出そうと、抵抗を試みるも。
「お砂糖もご用意してありますから、お好みで」
「すまないね」
 あっけなく敗れ去ったのである。
 リーブもようやく私の向かいに座り、カップを口に運ぶ。私は添えられた容器の蓋を開け、スプーンで
山盛りに砂糖をすくい上げると、それをカップに流し込んだ。
 私が2杯目の砂糖をすくったところで、リーブは話を切り出した。
「……先のロケット墜落の件で、独自に資料を集めてみたんです。それらを見てみると、少し疑問な点が
ありました」
 私は手を止めず、彼の話に耳を傾けていた。話を促すように頷くと、先を続ける。
「私もロケットについて精通しているという訳ではありませんので、話の中で間違いなどがあれば、その際は
ぜひご指摘頂ければと思います。……ただ、それにしても不自然だと感じたのがこれです」
 そう言って示されたのは1枚の軌道計算書だった。これはロケット発射基地からの弾道を計算した
シミュレーションである。軌道計算と共に、ミッドガルを含めた大陸全景に重なるようにして軌道が記されている。
署名と記載の内容からも、宇宙開発部門が作成した物だとすぐに分かった。
「あの日。ちょうど外出先で墜落の一報を受けた私は、本社からの誘導に従って墜落現場とされる地点へ
向かいました。しかし、そこは実際の墜落現場とは全く異なる場所でした」
「誘導した者か、君自身が地図を読み間違えたのでは?」
「いいえ」
 示された可能性を即座に否定し、リーブは穏やかな表情を浮かべてこう続けた。
「私は、当時の都市開発部門管理課主任の誘導でミッドガルを走っていましたので」
「君らが地図を読み間違うはずはない……?」
474Se la gatta va al lardo12 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/05(木) 03:06:33 ID:3s7PPN7S0
「ええ。事実、最初に示された墜落地点と私がたどり着いた場所は地図上でも一致しています」
 そして、彼は軌道計算書を指し示してこう言った。
「当初、墜落現場と目された地点がエリアF5-268、実際の墜落現場がE3-282。それぞれ第6プレートと
第5プレートにあたる場所なんですが、そうなると1区画以上のズレが生じた事になります」
 確かにリーブが示しているとおり、1区画分のズレと言えば相当の距離だった。しかし、ロケット発射
基地からだと考えれば、その程度のズレは小さいと言える。
「着弾地点の予測としては誤差の範囲内だろう」
「おっしゃる通りです」
「では、何がおかしいと?」
「問題になるのは距離ではなく……時間です」
「速度計算でもしようと言うのか?」
 冗談めかして笑ってみたが、真剣な表情のリーブの姿を見て笑うのをやめた。
「私の持っている通信機器の着信履歴を確認しました。次に、実際の報告書とミッドガル住民の証言を
合わせた墜落時刻の裏付けを取りました」
 ――『ミッドガル魔晄炉建設予定地付近に、軌道を外れたものと見られる
    試作ロケットが墜落。死傷者、被害状況等の詳細は今のところ不明。』
 リーブへの第一報は、このようにもたらされたという。
「つまり私が第一報を受けた時点で、ロケットは既に墜落していたのです」
 その言葉を聞いて、私はなるほどと頷いた。
「では、こちらで実際の墜落時刻を調べてみればいいかな?」
「それもぜひお願いします。……ただ」
 それから僅かにためらう仕草を見せたが、彼はこう続けたのだった。
「私へ第一報が入った時点でロケットは既に墜落していた。……となると、妙だと思われませんか?」
475Se la gatta va al lardo13 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/05(木) 03:14:04 ID:3s7PPN7S0
「……妙?」
「そうです。既に墜落しているロケットを追跡するのに、わざわざ軌道計算書を辿る必要は無いはずです」
 指摘されて確かに妙だと思った。
 墜落――いったん基地を飛び立ったロケットの追跡に軌道計算書は必要ない。あれはあくまでも予測で
ありシミュレーションなのだから。
「ロケット発射から着陸までは、飛行管制センターでモニタリングされているはずですよね?」
「……飛行記録……か」
 そこまで口にした時、ようやくリーブは深々と頷いた。
 それから手元に広げていた軌道計算書とは別の書類を取り出す。それが、飛行記録だった。
「最初に私が誘導された地点は、この軌道計算書によってシミュレーションされた墜落地点でした。
ところが、次に本社から入った連絡では飛行記録によって情報は修正されていました」
「…………」
 私は無言で手元を見つめていた。スプーンからカップへと流れ落ちて行く砂糖の姿が、まるで滝の
ようだと思った。たぶん、これが15杯目だっただろうか。
 これだけ入れても尚、完全に苦味を消し去ることはできていないのだ。
「この軌道計算書は宇宙開発部門が作成した物で間違いありませんね?」
 リーブの声に、私は首を縦に動かして無言のまま肯定した。軌道計算書は、打ち上げるロケットの
燃料や構造など、宇宙開発部門でしか知り得ない機密情報を元に作成されている。これと同等の精度で
軌道計算を行うことは、部外ではまず不可能だ。
 それに何より、この計算書を作成したのは私自身だった。否定のしようがない。

「では、この軌道計算書は……エリアF5-268、5番プレートに“墜落する”前提で計算されている事も、
お認めになりますか?」

 続けられる質問にも、やはり無言のまま首を動かす。
 カップの中をかき混ぜてみたが、底にたまった砂糖のせいでうまく混ざらない事に、少しだけ苛立ちを覚えた。
それでも意地になってかき回し続ける。
476Se la gatta va al lardo14 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/05(木) 03:25:41 ID:3s7PPN7S0

「……これが、このロケット墜落について私が作為的な物を感じたと言う根拠です」

 宇宙開発部門によって作成されたのは、最初から墜落を前提とした軌道計算書。
 本来は部外秘であるはずの軌道計算書を持っていたのは、当時の都市開発部門管理課の主任。
 今回の試作ロケット墜落の件に関して、裏で宇宙開発部門が何らかの形で関与していることは明白だった。
 しかし、リーブにとって本題はここからだ。

「それでは、改めてお尋ねします。試作ロケットの墜落は、本当に“事故”だったのですか?」





----------
>>475訂正
「では、この軌道計算書は……エリアF5-268、5番プレートに“墜落する”前提で計算されている事も、
お認めになりますか?」
        ↓
エリアエリアF5-268、6番プレートに

・6番プレートに墜落する予定だった
・でも実際に墜落したのは5番プレート(しかも貫通して教会屋根を直撃)
 ……という事が言いたかった。自分でミッドガルの地番捏造したクセに間違えました。どうもすみません。
・そもそも、このロケット墜落(元々はFF7Disc2辺りでシドが呟いてる一言)を捏造し過ぎてるわけですがw。
477名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/05(木) 04:06:41 ID:NdlDEDW00
>>Se la gatta va al lardo ◆Lv.1/MrrYw
穏やかながら確実に、相手を自分の話の軌道に乗せていくリーブの描写がよかった
478ブラスカのスフィア0-1:2006/10/05(木) 05:31:40 ID:yRgkug2O0

「ちょっとちょっと、あなた、大丈夫」
「ん……あ、ああ」
「砂漠の真ん中でそんな厚着で倒れてて、大丈夫なはずないでしょ……あら、あなたその格好、もしかして、エボンの……」
「ああ、確かに私はエボンの僧官だが……ああ、ちょっと待ってくれ、私は君たちアルベドと争いをしに来たわけじゃないよ」
「どういう意味かしら?」
「私は、アルベドにエボンの教えを広めに来たんだ」
「……ぷっ、ふふっ、ふふふ、あなた、それ本気で言ってるの?」
「勿論だとも。おかしいかい?」
「おかしいわよ。私たちがそんなものを信じると思って?」
「話をしてみなければ分からないさ。君、アルベドのホームは、どこにあるんだい?」
「本当はエボンの人間に教えちゃいけないんだけど、いいわ、あなた無害そうだし。ほら、ホバーの後ろ乗って」
「え、あ、ああ、こうかい?」
「しっかり捕まってなさいよ。振り落とされたらもう拾ってあげないから」

「それにしても、あなた、水も食料も持たないでビーカネルに来るなんてそうとうな命知らずね」
「えっ、何だい?風が強くて聞き取れないよ」
「『ハチャメチャな人なのね』、って言ったのよ」
「分かっているさ。だが、エボンの僧をホームに案内する君も君だ」
「気に入ったのよ、あなたのこと。いけないかしら?」
「それは……光栄だね」
479ブラスカのスフィア0-2:2006/10/05(木) 05:32:11 ID:yRgkug2O0
「ホームシカハエサアミ?」
「トアデラヤベ」
「ヤサ、ハシアワッサナシシリルウソミミ」
「ワニダソフゾバミヤヌ……」
「驚いた、あなた、アルベド語上手いじゃない」
「わっ、君か。誰かと思ったよ」
「布教は進んでるのかしら、ふふ」
「いまいちだね。しかし、君たちは本当に合理的な考え方をする。私も時々、間違っているのは自分じゃないかと思ってしまうよ」
「だって教えを信じない人間は人間じゃないって考えてるんでしょ、あなた達は。そんな考え方間違ってるわ」
「まさか。私はそんな風には思ってはいないよ」
「でも、エボンの教えなんてただの押しつけじゃない。アルベドにはアルベドの考え方があるわ」
「ああ、しかし君たちは機械を使う。機械は罪の象徴だ。やめさせようとして何が悪いんだい?」
「その考え方よ。機械は私たちと共にあったの。機械がなければこんな砂漠の真ん中で生きるなんて絶対に無理だったわ」
「だが……いや、やめておこう。このままでは議論はどこまで行っても平行線だ」
「あなたも使ってみたら?機械。便利なのよ」
「遠慮しておくよ」
「でも、あなた、ここに来る時ホバーに乗ったじゃない?」
「それは……状況によるじゃないか」
「本当にあなた、機械を使わなければ罪は消えないって思ってる?」
「人並みにはね」
「本当に?」
「……そうだな、私の負けだよ。君の言うとおりだ。私は、ここに来て何もかもが分からなくなった。自分のことも、教えのことも」
「随分と素直ね」
「君の前だからだよ」
「もしかして、口説いてるつもり?」
「さあ、どうだろう?」
480ブラスカのスフィア0-3:2006/10/05(木) 05:33:07 ID:yRgkug2O0
「分からない……助けてくれないか」
「どうしたの?」
「我々スピラの民が機械を使わなくなれば、『シン』は消えると思っていた。
だが、それは真実なのか?私たちは何か、大きな思い違いをしているんじゃないか?」
「落ち着いて。何か飲むかしら?」
「君たちは、その答えを知っているんじゃないのか?」
「……あなたの求める答えは知らないわ。でも、あなた達の矛盾なら知ってる。
あなた達エボンは、アルベドに銃を向けたの。教えで禁じられている機械よ」
「何……だって?」
「教えを広める側が、教えで禁止されているものを使っているのよ。私たちはみんなそれを知っているわ。だから教えは信じない」
「……しばらく、一人にしてくれないか」
「ええ、どうぞ」
「ワニダソフ、ホキセ、ヌヤハミ」
「ミミオモ」

「ひどくやつれたわね。大丈夫?」
「……あ、ああ。なんとなく分かったよ。機械と罪とは関係ない。寺院は嘘をついている。正しいのは君たちだ」
「布教、どうするの?」
「今の私には無理だ。一度ベベルに帰るよ」
「海岸まで送るわ」
「本当にすまない。君には色々と迷惑を掛けた」
「迷惑なんて思ってないわよ」
「ベベルに帰る。だが、また必ずここに来るつもりだ。その時は……」
「その時は、何?」
「いや、いずれ言うよ」
「変な人。さ、ホバーに乗って。落ちないようにね。振り落とされても、拾ってあげないから……」
481名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/06(金) 08:42:28 ID:CVt//PdE0
保全
482名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/06(金) 22:45:29 ID:MlOHw6pX0
>>478-480
GJ!!!ホントにそういう会話があったようだw素敵な二人ですな。
続きをマターリと期待w
483名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/07(土) 09:35:33 ID:olbzsCNs0
ここは萌えがいっぱいだよ!
皆さんそれぞれ個人サイト開設して欲しかったり。
そしたら通いまくりまくりそうです。
書いてる皆さんこれからも期待してます!
484名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/07(土) 13:32:30 ID:PFGDeHUG0
>>478-480
乙です!
めっちゃイイ!GJ!!!
485名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/08(日) 01:13:45 ID:o1MYC5OS0
初めまして。
エ○パロ板でFF12のSSを落としていたのですが、エロ無しという事で
ここに導かれて参りました。
エロ○ロ板での続き(シリーズ物なので、一個一個は独立してます)を
ここに投下してもよろしいでしょうか?
486名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/08(日) 01:18:22 ID:B8rsbquM0
>>478-480
会話だけなのに、その中にもしっかり描写される風景や背景が伝わってきて
読んでて楽しかった。これってユウナのお母さんで良かったんだよな。
続編期待sage。

>>485
もちろん!
こちらも期待sageして待ってます。
487485:2006/10/08(日) 01:58:41 ID:o1MYC5OS0
>>486様、有難うございます。
お言葉に甘えて、投下します。もともとエ○パロに書いてたものの
続きなので、意味不明にならないようにちょっとあらすじ書いておきますね。


<某番組のパクリIII-0>

イヴァリース一周恋愛バラエティ、あいのリクサー。
男女のエンドレス&サバイバルな恋愛がシュト・ラーブワゴンを舞台に繰り広げられる。誰が
愛の告白をするのか、果たしてカップルになって帰国出来るのか。
バルフレア(借金返済のために、シュトラールをどピンクに塗り替えられて、泣く泣くドライバーと
して参加中)はあいのリクサー参加者のセクシーなフランに恋をし、放送出来ないあんな事も
こんな事も影で致しているらしいという噂。そしてパンネロとラーサーは初々しい恋を毎週
イヴァリース全土に放映中で微笑ましく見守られている。(ただ、ラーサーのエクスポーション
持ちすぎ、は若干の批判を浴びている)
アーシェは衝撃のバツイチを告白してすっきりしたようである。そんなアーシェに夜這いをかけようとする
ヴァンだが、バッシュの妨害にあう。
今のところ、ヴァンだけが頭の弱い子らしく、迷走中の模様。
488某番組パクリ III-1:2006/10/08(日) 02:01:54 ID:o1MYC5OS0
「全く……」
いちゃいちゃとお互いの身体を軽く小突きながら笑いあうラーサーとパンネロを
見てヴァンは溜め息を吐く。
(よくもまあ、パンネロもあんなお子様ランチ相手に恋愛出来るよなぁ、大体、お前なんて
――だったくせに。ラーサーのエクスポーションの持ちようを見るとずいぶんと良いとこの
おぼっちゃまみたいだから、おおかた玉の輿でも狙ってるんだろーな)
「ヴァン?どうしたの、溜め息なんて吐いて?心配事?」
先日、己の過去を告白し、すっきりした面持ちのアーシェがヴァンに尋ねた。
「なななな何でもないよ。お前こそ、もう落ち着いたのか?大丈夫か?」
にこり、とアーシェは微笑んだ。
「大丈夫よ――それと、『お前』は止・め・て」
アーシェは隣り合うバッシュに何かを囁かれて、くすくすと笑う。
(ちっくしょー!バッシュのせいで夜這いも出来ないし、つまんねー旅になってきたぜ。
誰かが降りないと新メンバーも入らないしよ。あーぁ、何だかリタイアしたくなってきた)
「バルフレア、また急降下してくれよ!ツマンネ!」
「はぁ?俺は清く正しいドライバーだから、そういうリクエストには答えかねるな」
にやり、とバルフレアは微笑む。
バルフレアは隣に座るフランに何かを囁かれると、くっくっと笑った。
(くそー、どいつもこいつも!!)
ヴァンがバタバタと床に転がる。
489某番組パクリ III-2:2006/10/08(日) 02:04:05 ID:o1MYC5OS0
「……病気かしらね」
「疳(かん)の虫でもいるんじゃねえのか。まだケツの青いガキだから」
「あら、バルフレア。貴方自身がガキじゃない、大人だって言いたげな口ぶりね。でも」
――そういう背伸びしたがりのところも好きよ、と低くセクシーなアルトの声で耳元で囁かれ、
バルフレアは思わず赤面する。
要するに、メンバー(+ドライバー)全員は床に転がって注意を引こうとするヴァンなぞ構って
いないのである。
ヴァンが床にうずくまったまま、暗く瞳を光らせた。
(判ったよ、お前ら全員ラブラブって事だよな。そうなら、一個一個それを潰してやるってだけだ)
「くっくっくっくっ、お前ら全員覚えてろイヨイヨー」
いやらしく笑うヴァン。

「…・・・病気ですかね」
「ラーサー様、心配しなくても大丈夫ですよ。誰も構ってあげないからさみしいだけだと思います」
幼馴染のヴァンが、こんな風に壊れてしまう程さみしかったのだと思い、ここしばらくラーサーに
夢中でヴァンを放置していたパンネロの胸はちくりと痛んだ。
(だって、このシュト・ラーブワゴンに乗り込むにあたって、ヴァンと幼馴染、って事は番組スタッフ
にもメンバーにも内緒だし。あんまり近づきすぎてヴァンがポロリと昔話でもしかねないし。
でも、放置しすぎたかしら……ヴァンは、追いつめられると何をするか判らない子だし――)
ラーサーとにこやかに話しつつも、パンネロは妙な胸騒ぎに不安を感じるのであった。
490某番組パクリ III-3:2006/10/08(日) 02:06:55 ID:o1MYC5OS0
一行はガリフの地ジャハラに降り立ち、バルフレアとフランはチョコボをレンタルするとあたりを
探索に出かけた。バッシュはガリフの武器が珍しくてたまらないのか、武器屋やガンビット屋を
熱心に覗き、ふんふんと頷いている。(男塾なバッシュはその内、ガリフ族たちに気に入られて
酒を飲みに連れ去られて行った。)
そして、パンネロとアーシェはそのあられもない衣装がガリフ族のツボだったのか、わいわいと
囲まれている。

「俺の仮面、新しいんスよ。この目の周りの色が斬新でしょ?」
「お前、でしゃばるなよ。へえー、恋を探す旅をしてるんですか。俺も探したいなぁ」
「俺はもう探しおわったよ――パンネロさん、あなたの旅はここで終わりにしませんか?」
「変な仮面着けてるくせにジゴロを気取るんじゃねえ、おめーは。アーシェさん。俺はあなたの
為ならこの仮面を取り去って生きても良い」

もう、モテまくりである。
アーシェもパンネロもまんざらでは無い様子で、ガリフ族たちを相手に笑顔で会話に応じていた。
気になって仕方ないようにちらちらと、ガリフ族に囲まれ笑っているパンネロをラーサーが
見つめている。そんなラーサーの服の裾をくいくい、とヴァンは引っ張った。
「なあなあ、ラーサー」
「な、何ですか、ヴァンさん?」
「お前、パンネロに惚れてるだろ?」
「なっ、何を急に――そりゃあ、素敵な女性だとは、思いますが」
「なら、何でさっさと帰国チケット渡して告らないんだよ?」
ヴァンは上手い具合に、ラーサーをじりじりと引っ張って、誰からも見えないような建物の影に
追い込んだ。
「パンネロだってお前が好きなんだぞ?さっさと告れよ。それとも何か――あんたみたいな
おぼっちゃまは平民の女は駄目だってか?」
「そんな事はありません!!」
491某番組パクリ III-4:2006/10/08(日) 02:08:54 ID:o1MYC5OS0
強い口調で、顔を紅潮させながらラーサーはヴァンに言った。
「そんな事はありません――ですが、私にとって一人の女性を、パートナーとなって頂く方を
選ぶというのは簡単な事ではないのです」
自分が娶る女性は王女になる――もしかしたら、女王にさえ。
パンネロの資質を疑っている訳ではない、彼女なら偏屈な王宮の者達を軽くいなして立派に
その責務をこなすだろう。
だが。
(大空を飛ぶ鳥を、豪華ではあるが窮屈な鳥かごに住まわせる事、それが果たして幸せなの
だろうか?)

ラーサーはパンネロに心が傾くほど、その笑顔に魅入られる程、そう思ってしまうのだ。
「おいおいおい、パンネロは多少の浮気は大目に見てくれるって。一人の人、なーんてガチガチに
固める必要無いって!だいたいお前も良いとこのおぼっちゃまなだろうだから、ただれた生活
してる家族見てるだろ?良いんだよ、恋愛なんてテキトーで」
「他の人に心を動かすくらいならば、私は女性に恋をしません!僕は――そんな侮辱を、屈辱を
パンネロさんに与えるつもりはありませんから!!」
ヴァンはにやりと笑った。
「そっかー、やっぱり、ラーサーはパンネロが好きか」
思わず口走ったパンネロへの想い。自分の迂闊さをラーサーは呪った。
「――ごめんな」
いつになく静かなヴァンの声にラーサーは面を上げる。
492某番組パクリ III-5:2006/10/08(日) 02:09:50 ID:o1MYC5OS0
「ラーサーになら言える。いや、言わせてくれ。俺――俺な、黙ってたけどパンネロとは長い付き
合いなんだ」
「長い付き合い、ですって?」
王族特有の厳しい言葉でラーサーはヴァンに問うた。
「おっと、誤解しないでくれ。長い付き合いってのは――ええと、あいつと俺は、幼馴染なんだよ」
「な――、そうなんですか?道理で、馴れ馴れしい――いえ、親しげなはずです!」
「だから、俺はパンネロだけには幸せになって欲しい。適当な想いでパンネロを傷つけて欲しく
ないんだ。あいつは、本当に良い奴だから――人の痛みの為に、自分を傷つける事が出来る
奴なんだ」
ヴァンはどこか寂しげに、遠くを見つめた。
「ラーサーなら、判るよな?」
ラーサーは、いつにないヴァンの真剣な言葉に強く頷いた。
「勿論です!ああ、ヴァンさん。僕はあなたを少し誤解していました。あなたは、何て立派な方
なんだろう!」
「言うなよ、照れるから」
恥ずかしげに、ヴァンは鼻をこすった。
「とにかく、俺はパンネロには幸せになってもらいたい。それだけは、判ってくれ」
ラーサーは感極まって、ほとんど涙を浮かべながら頷いた。
「約束しましょう――決して、パンネロさんを傷つけないと」
「よし、決まったな」
バンバン、とヴァンはラーサーの背中を叩いた。
「さあて、俺はちょっと調べ物でもしてくるよ。この里は機械文明を嫌ってるらしいけと、さすがに
ネットはつながっているらしいし。世界情勢も気になるしな」
じゃあな、と爽やかにヴァンは去っていった。
493某番組パクリ III-6:2006/10/08(日) 02:11:35 ID:o1MYC5OS0
(ヴァンさん、貴方はなんて素晴らしい人なんだ。幼馴染の心配をしつつ、世界情勢についても
当たり前のように日々ニュースを追いかけて。僕は、本当に誤解していた)

ところ変わって、某ネットカフェ。
ヴァンはにやにやしつつ、ネット上の某巨大掲示板の「あいのリクサー板」にアクセスする。

「ヴァン、Uzeeee!」
「バッシュと寝たい」
「ウホッ」
「それよりバルフリャー」
「フランのケツ、エロい。毎週おかずを有難う」
「ラーサー様、格好良い(*≧∇≦)キャー」
「ヴァン、イラネ。新しいメンバーキボンヌ」
「空気嫁よ、ヴァン。オイヨイヨーwwwwwwww」

「くっそー、どいつもこいつも勝手な事言いやがって!」
(見てろよ――「ダージャ」レベルの燃料を投下してやる!!)

ヴァンはカタカタとPCを打った。(←全部人差し指で打っている)
494某番組パクリ III-7:2006/10/08(日) 02:13:06 ID:o1MYC5OS0
「パンネロは元風俗嬢」
一つのレスをきっかけに、あいのリクサー板が荒れた。
「ソースUp」「あーあ、言っちゃったぁ」「パンネロは処女。これだけはガチ」
またたくまに板がコメントで埋め尽くされる。
(こういうネガティブなネタは、絶対に盛り上がるんだよ……俺がソースを出さなくても、誰か
が暴露してたのに決まってるしな)
「さぁてと、祭りだ――な」

そして、夕食の時間。
パンネロが居ない。
「パンネロさんは?」
ラーサーが心配気にアーシェに尋ねる。
「さあ…・・・さっき、番組スタッフに呼ばれていたけど」
「番組スタッフに?何だろう、リタイアか?」
バッシュが眉間に皴を寄せて言う。
「リタイアなんて――理由もなく、そんな事言わないで下さい、バッシュさん!」
「う、そうだな。すまん」
ヴァンは神妙な顔でおかずを突つきつつ、下を向いて思わず笑いをかみ殺した。
(バレたな――さすがに元風俗嬢を放っておくほど、この番組スタッフも狂っちゃいないだろう。
ほら、パンネロ。さっさとリタイア宣言して帰ってくれよーぅ。そうしたら新しい女メンが入ってくる!)

パンネロが泣きはらした瞳を隠そうともせず、ダイニングルームに入ってきた。
495某番組パクリ III-8:2006/10/08(日) 02:16:13 ID:o1MYC5OS0
「パンネロさん!どうしたんです?」
悲しげに小さく笑うとパンネロは椅子に座った。
「私――皆に言わなければいけない事がある」
皆が一斉に手を止め、パンネロを見つめた。
「私、両親が戦争で死んじゃって――そんなの、よくある話なんだけど。食べるものも無くって、
でも私を慕ってくれる年下の子達が沢山居てね。みんな、いつもお腹を空かしていて」
ヴァンはそわそわと尻を浮かせた。
(違う、違う。こういう展開じゃないって。パンネロ、お前、そんな事まで告白しなくて良いって!
素直に適当に理由つけて、リタイアすればそれで良いんだヨ。ラーサーが失恋するけど、
お前もちーとばかりさみしいだろうけど、でもリタイアして、新しい女の面子が入れば良いだけ
なんだってぇぇぇ!!)
思いがけない重い展開にヴァンはおろおろと、尻を浮かしては下げ、下げては浮かしていた。
「ちょっと、ヴァン。落ち着いてよ。パンネロの話を聞いてるんだから」
アーシェにピシリと言われ、ヴァンは観念して座る。
「お腹が空いてた――文字通り、動けないくらい。小さい子から、どんどん弱っていったの。
それでも私に物乞いして貰った林檎を『パンネロねーちゃん、元気ないから』って、一つ差し
出したりして――馬鹿みたい、自分の方が死にそうなのに。結局、死んじゃったのよ」
パンネロは、たまらず嗚咽する。
ヴァンは思わず叫んだ。
「もう良い、パンネロ!」
自分がしでかした事に、ヴァンは猛烈に後悔をし、かと言って始まった事を止められず、ただ
叫ぶしかなかった。
496某番組パクリ III-9:2006/10/08(日) 02:18:39 ID:o1MYC5OS0
「言うなって、もう、いいんだよ。終わったんだ、馬鹿野郎。止めろって!!」
そんなヴァンにパンネロは小さく――あ・り・が・と――とつぶやくと、皆を見渡した。
「私ね、風俗嬢だったの」
しん、と場が静まる。

「あはは、言っちゃった。ごめんね、黙ってて」
パンネロの頬に、小さくキラリと光る涙の粒が落ちた。
「ずいぶん簡単な道を選んだんだな、て言ってくれても良い。黙ってた事、謝る。でも、私、
あの小さな身体が私の腕の中で冷たくなった事、忘れられないよ」
ドン、と机を叩く音――皆はその音の方に目を向けた。
「『簡単な道』なんかじゃない。そんな筈はないんです!」
ラーサーが血を吐くように言った。
「カメラ!場をわきまえろ。私がアルケイディア帝国王子、ラーサー・ファルナス・ソリドール
だと知っての暴挙か!」
カメラマンは慌てて、その場を出た。
当然、出る前にフランに蹴り倒されて、データは残らず没収である。

ラーサーの言葉に皆が言葉も無く、呼吸さえも忘れたかのように場は静まった。
「パンネロさん、謝らないで下さい。私も、ずうっと隠していました――自分が王子である事を」
「ラーサー様……」
「貴方がした事のどこが恥ずかしいのでしょう?誰が貴方を責められますか?責められるならば
私だ――私は、民達の血の上に成り立っているソリドールの出身です」
497某番組パクリ III-10:2006/10/08(日) 02:19:36 ID:o1MYC5OS0
「ラーサー様。やっぱり、そういう人だったんですね。何となく、判ってました」
ふっ、とパンネロは笑う。
「雲の上の方と、一時でも一緒に居れて旅が出来て良かった!私、その思い出だけで、一生
生きていけます」
「誰と生きるのですか?」
ラーサーが厳しく問う。

「私はあなたがこんなにも好きなのに?」
ラーサーはパンネロに近づくと膝まづき手を取ると、その柔らかな手の甲にキスをした。
「ラーサー・ファルナス・ソリドールは、今も未来も、その命を魂をパンネロに捧げます――」
言葉に詰まって、パンネロは首を振った。
「――じょ、冗談は、戯れはおやめ下さい。私、私はそれさえも許されないでしょうが、本当に
今なら良い夢だと割り切れます。ラーサー様に話しかけられるたび、触れられる度に、私は
自分の身体を消してしまいたかったんです――こんな汚れた、身体」
パンネロは自分の身体を抱いた。
「でも、申し訳ありません。とても嬉しくて――傍に居られる事が、身体が震えるくらいに嬉しくて」
ラーサーはパンネロの頬を己の手で覆うと、パンネロの唇に自分の唇を押し付けた。
「――あなたの悲しい過去も、辛い経験も、全て私と共有しては頂けませんか?」
498某番組パクリ III-11:2006/10/08(日) 02:21:07 ID:o1MYC5OS0
ラーサーはパンネロをまっすぐに見つめた。
「結婚してください」
パンネロはびっくりしたかのようにまんまるに瞳を見開き、ただラーサーを見つめた。
「誓いの指輪は持っていません。あなたに捧げるべき宝物も――ただ、捧げられるのは私の
心のみ。ですが立会いの人たちは――」
ラーサーは一同を見渡した。
「ですが立ち会ってくださる人たちは、どんな立派な司祭よりも、真実です。貴方達は、私たちを
祝福して下さいますか?」
いつのまにか、バルフレアもその場に参加し、フランの肩を抱きながらラーサーに言う。
「祝福するぜ、ラーサー。指輪が無いなら、これを持っていきな!」
懐から指輪を投げつけると――ラーサーが思わず驚く程の豪奢な指輪――バルフレアは
フランと笑いあった。
(――馬鹿ね、バルフレア。苦労して盗んだくせに、あの指輪)
(良いんだよ。お前にはもっと良いのをプレゼントしてやるぜ)
アーシェはただ、信じられないように、パンネロとラーサーの純粋な愛情を目前にして泣いた。
アーシェの細い肩を、そっとバッシュが抱く。アーシェはそれにもたれて、またすすり泣いた。
「私は――パンネロは、ラーサー様のお傍に居ても良いのでしょうか?」
「居てください――いえ、私の傍に居なさい。でないと私は息が出来なくて死んでしまう」
ぷっ、とパンネロが吹き出す。
「ラーサー様、それって脅迫――」
「あなたを手に入れるなら、脅迫でも何でもしますよ。これでも非道な王族の出身なのですから」
小さなラーサーが、精いっぱい身体を伸ばしてパンネロを大きく抱いた。
ひゅうっ、と口笛が響く。拍手が、二人を包んだ。
499某番組パクリ III-12:2006/10/08(日) 02:27:03 ID:o1MYC5OS0
皆(除く、ヴァン)は笑顔で二人を見送った。
ラーサーは身分を隠す必要もなくなったので、アルケイディアの高速飛空艇を呼び寄せ、
自国へとパンネロと二人、帰っていった。
二人を待つのは茨の道。でも、あの二人なら全てを解決するだろう。

なんとなくやる気も無くしたヴァンはシュト・ラーブワゴンの傍で座り込み、ぶつぶつと呟いていた。
「二人も居なくなって、どうやって編集すんだよ、この番組。パンネロの事も、ラーサーの事も
放送できないだろ。情報がヤバ過ぎて」
「――お前、アルケイディア帝国を甘く見てるだろ」
シュトラールを整備していたバルフレアが背後からヴァンに声を掛ける。
「バ、バルフレア」
「どんな事だって可能なのさ――あの国に偉いさんにかかっちゃ」
苦いものを飲み込んだようにバルフレアは言う。
「あんた、まるでアルケイディアの偉いさんを知ってるみたいに話すんだな、ただの
ドライバーの癖に」
「ドライバーじゃねえよ。空賊だ」
にやりとバルフレアは笑った。
「お前達があんまりよちよち歩きだから情が沸いちまった――だから一緒に
飛んでやってるだけさ」
「ふーん……まあ、どーでも良いけど。あー、しっかし何かすっきりしないなぁ。くっそ」
「結果が良かったから、まあ、良いんじゃないの?」
何処から現れたのか、フランがヴァンに近づくと背後から思い切り耳を引っ張った。
「イテテテ!何だよ、急にぃ!」
「誰がどういう情報を世間に流しているのか、そんな事ちょっと調べれば判るのよ」
ぴくぴく、とフランの耳が怒っているかのように揺れた。
「今回は見逃してあげるわ。でも、もしもこれからもこの船に乗ってる人たちを陥れるような事を
するなら、腕の一本くらいじゃあ済まないわよ」
500某番組パクリ III-13:2006/10/08(日) 02:30:36 ID:o1MYC5OS0
ヴァンはさあっ、と青くなった。
そして、あたふたとその場を走り去る。
「――やっぱり、アイツか」
「ちょっと鎌を掛けただけで、ああだものね。若いって素敵」
「仲間の情報を売ってたってのに、ずいぶんヴァンには甘いんだな」
フランがバルフレアの肩に顔をのせた。
「パンネロはああいう子だもの。秘密を棺おけまで持ってはいけないでしょう。だから、いつかは
言わなきゃいけなかったのよ、今が一番良いタイミング――だから、ヴァンがした事は間違ってるけど間違ってない」
「ふうん、判ったような判らないような」
くす、とフランは笑ってバルフレアを見上げた。
「あなたも、若いわね」
「おいおい、ヴァンと一緒にするなよ」
「まあ、良いわ――さあ、ドライバーさん、飛び立つ準備は済んだの?」
バルフレアは、面白げに自分をのぞみこむフランの瞳を見つめると、我慢できないように
身体を抱きしめ、そのふっくらとした唇に自分の唇を押し当てた。

シュト・ラーブワゴンはまた次の目的地へと飛ぶ。
新しいメンバーが、「恋」を求めて待っている。

「可愛い子が良いなー。でも、大人っぽい美人も捨てがたいよなぁ。いやー、でも俺はもう
ちょっと旅を楽しみたいから、いきなり告られでも困っちゃうなー(でも、俺が一番好きなのは
未亡人)」

頭の弱い子、ヴァンだけは学習せずに、一人騒ぎまくるのであった――

<終>
501485:2006/10/08(日) 02:46:29 ID:o1MYC5OS0
お粗末、です。お読み頂き、有難うございました。
これくらいの下ネタやパロディ設定は許されるのかどうか、ちょっと判断に
迷いましたが投下させていただきました。
ご不快になられた方がいたら、お詫びを申し上げます。
502名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/08(日) 11:27:56 ID:p5lcDPTu0
>>487-500
GJ!
不快どころか大笑いして読んでました。
FF12のこういうのが読みたかったのでうれしい。
パンネロとラーサーがハッピーエンドでよかった・゚・(ノД`)・゚・。
アホのヴァンもいいなぁ。
新作をwktkしてお待ちしています。
503名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/08(日) 14:28:32 ID:94/SXBsc0
>>501
GJ!GJ!
このくらいのエロギャグなら青少年少女が読んでも大丈夫なのでは?
面白かったよ。

新メンバー楽しみだwktk
504名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/10(火) 22:25:30 ID:e7qDJvxd0
激しく乙!
505名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/11(水) 22:51:40 ID:m5XoKfQR0
506名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/12(木) 00:03:45 ID:ojg6TS870
>>487-500
ヴァンの尽きぬけっぷりに笑いつつ
パンネロとラーサーの純愛っぷりにほろりと涙を誘われ
思慮深いラーサーと気の利きすぎるバルフレアと大人なフランがかっけー!
良い意味で期待を裏切ってくれる作品でした、GJ!
507Se la gatta va al lardo15 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/12(木) 00:13:46 ID:ojg6TS870
前話:>>472-476
舞台:FF7本編開始前(試作ロケットのミッドガル墜落を巡るあれこれ)
参照:前スレ599,651
----------

                    ***

 無論、彼女からの申し出――試作ロケットをミッドガルの街中に落とそう、などと言うとんでもない
提案――は断るつもりだった。大体、そんなバカげた話に乗る人間がどこにいる? いたとしても
せいぜい、気の触れたテロリストぐらいだろう。こう見えても私、神羅カンパニー宇宙開発部門の
統括なんだよ……外ではあまり威厳ないと思われてるけど。
 残念ながら私はミッドガルという都市そのものに愛着があったわけではないし、都市開発事業が
どうなろうと知ったこっちゃない。いやむしろ、愛着があったのはロケットの方だ。技術の粋を尽くして
作ったロケットを、好きこのんで墜落させたいと思うか? そんな奴を見つけたらタダじゃおかない。
 宇宙開発部門の連中ならば、口を揃えて皆おなじ事を言うだろう。当然だ。我々は落とすために
ロケットを作っているのではない、飛ばすために作っているのだから。
 ……しかし、結果的に私は彼女の申し出を拒みきれなかった。
 搭載する計器類に一部細工を施したロケットを基地へと運ばせ、さらにプログラムを書き換え飛行
軌道を変えさせた。
 その時に作成したのがあの「軌道計算書」だった。彼女からの注文通り、建築予定地を着弾点とした
飛行計画だった。可能な限り死傷者を出したくないという、彼女たっての希望でね。彼女の目的は
あくまで「人命救助」であり、破壊は二次的なものに過ぎない。……いや本心では、望んでいなかった。
 おかしな事を言ってると思うだろう? ロケットを墜落させて人命救助だなんて。……今になって思えば、
だからこそ、私は彼女の話に乗ったのだろうと思ったよ。気が触れているのは私かもしれない。
 …………。
508Se la gatta va al lardo16 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/12(木) 00:26:07 ID:ojg6TS870
 軌道計算書を彼女に渡し、打ち上げの日を迎えた。
 予定通り基地を飛び立ったロケットは、私の書き直した飛行軌道を寸分の狂いもなく進んだ。ロケットに
積まれた計器類は高度のみを改ざんしたデータを飛行管制センターに送り、管制官達の目をしばらく
欺いてくれたよ。
 ここまでの飛行は予定通り。すべては順調に終わるかに思えた。
 ところが突如発生したエンジントラブルにより、飛行軌道は当初の予定から大きく外れた。管制センター
では、突然発生した問題に対策を講じたが、ミッドガルへの墜落が避けられないと分かると、ただちに
各関係機関へ連絡を取った。しかし彼らの努力もむなしく、程なくしてロケットは墜落した。
 エリアE3-282――5番プレートに墜落したロケットは奇跡的にも爆発せずに原形を留めていたが、5番
プレートは中程度の損壊、プレート下の建造物の一部を巻き込む被害が出たにもかかわらず、死者はゼロ。
あとは私の口から語るまでもない、君の方が詳しいだろう?
 もちろん、このとき各部署へ送ったのは飛行記録だった。絶望と混乱の中で管制官達は皆、力を尽くして
くれた。
 だが、恐らくセンター内でいちばん慌てたのは私だっただろう。
 すべて完璧だったのだ。
 計算も、飛行プログラムも、計器類だって事前のチェックは怠っていない、データには全て目を通していた
はずなのに。

 それでも、ロケットは定められた軌道から外れ、予定外の場所に墜落したのだ。

 これが、試作ロケット墜落に至る全容。私の知る真実のすべてだ。

                    ***

「これで満足してくれたかな?」
 私にしては珍しく長い間、それも一方的にしゃべり続けていた様な気がする。これだけ話したのは
いつ振りだろう? 今や会議の席では発言どころか、意見すら求められる事もないこの私が、だ。
 しかしお陰で喉が渇いた。再びスプーンを手に取ってカップの中身をかき混ぜてみる。やはり溶け
きらなかった砂糖が底に沈んでいたが、それでも構わずにカップを口に運んだ。
509Se la gatta va al lardo17 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/12(木) 00:28:47 ID:ojg6TS870
 喉に流れ込んできた甘苦くて生ぬるい感覚は、決して心地の良いものではなかった。甘ったるい
はずなのに中途半端な苦みを残す味も、熱くもなければ冷たくもない中途半端な温度も、どうやっても
好きになれそうになかった。
(半端者の私にはこれが似合いか)
 そう思うと自嘲が込み上げてくる。
 エンジニアになるには技術が及ばず、パイロットになるには体力が足らなかった。そんな私に残されたのは、
管理職の道だった。
 目指していたはずの空はいつのまにか遠ざかり、今ではデータばかりを追う毎日。
 どれだけ出世をして組織とビルの頂へと近づいたところで、宇宙など、いくら手を伸ばしても届かない空の
高みにあるのだ。
 そう、私はどこまで行っても半端者だ。
 私自身は統括職の地位に就いても、嬉しくも何ともなかった。それは妥協の末に選んだ道を歩んだ結果に
過ぎない。宇宙開発部門の統括をやりたいと思ってここを目指して来たのではない。宇宙開発に、宇宙に、
関わっていたかった。縋り付いていたかった。そのなれの果てが「宇宙開発部門統括」という、くだらない
肩書きを持った私の姿だった。
 だから年若いこの男が新たな都市開発部門統括責任者となったのを目にしたとき、羨ましく思えた。
 やる気と理想に満ちた瞳は真っ直ぐに未来だけを、大地に広がるミッドガルという都市を見据えている
――何よりも、彼は自分の足で夢を追い、その夢を自らの手で掴もうとしている――私と同じ地位にあっても、
まったく違う彼の姿は、同時に自分の惨めさを浮き彫りにした。
 その時点で、私は敗者なのだと思い知らされた。
 そして今回の件で完敗したのだ。
「どうしたんだね? 君の推測が正しかった事が証明されたと言うのに……」
 敗者ならば、せめて潔く負けを認めようと顔を上げた。しかし、目の前に座るリーブは瞬き一つもしないで
こちらを見つめていた。それは猫が茶でも吹いているような、いっそ滑稽とも思える表情だったが、それだけに
彼の驚きようが見て取れる。
 少なくともそれは、勝者の顔ではない。
「……なぜ、そんな顔をする?」
510Se la gatta va al lardo18 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/12(木) 00:34:19 ID:ojg6TS870
 私の問いに、やがて彼の口から言葉が零れる。

「……主任が、なぜ……ミッドガルを?」

 それを聞いて、ようやく思い至る。彼は、なにも知らされていなかったのだろう。何も知らされないまま、
後任としてミッドガルを引き継いだ。そうだとすれば、これほど驚くのも無理はない。
 ――今回の"事故"を起こしたのは私だが、起こすように依頼したのは他でもない、当時の都市開発
部門管理課の主任である彼女だったのだ。
「私も詳細までは聞いていない。ただ、『人命救助だ』と彼女は言っていた」
「人命救助……? どこにいる誰を? そもそも何の為にロケットが……」
「そう、私も最初はそれが疑問でね。今の君とまるで同じ反応をしたよ」
「彼女は……主任は何と?」
 リーブからの問いに答えようと、私はあの日の記憶をかき集めた。ミッドガル郊外にある雑居ビルで
行われた、スパイのまねごとのような遣り取り。ディスプレイに表示されたミッドガル構造図。差し出された
写真と――私に向けられた彼女の真剣な眼差し。
 しかしどれだけ寄せ集めても、彼の問いと期待に答えられるものが見つからない。
「……私が聞いたのは『ミッドガルのある場所に閉じこめられている人を救いたい』とだけ。詳しい場所や
状況、それ以上の事を彼女は何も語らなかった」
 その声に、リーブは「そうですか」と小さく呟いて、視線を窓外へと向けていた。



----------
・とにかく格好悪い大人を格好良く書きたかった。
・あと2,3回程度の投下で完結します、今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。
511名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/12(木) 00:40:35 ID:M19wmE5jO
>>507-510
GJ
リアルタイムで読ませてもらった。徐々に明らかになってくる「前主任」の思惑……続きもwktkして待ってる
で、やっぱりリーブの話相手は……?
512名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/12(木) 21:01:24 ID:hYBQAwfb0
まさか、地下に閉じ込められてるのは服にブルーのラインのあるあの人達では…
続き期待sage
513名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/12(木) 21:17:05 ID:hEHTuLjZ0
>>507-510
GJGJGJ!
続きが気になる〜
514名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/13(金) 00:14:45 ID:hc9HUuNi0

515名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/14(土) 01:52:31 ID:G9Sjm5M/O
あげ
516Se la gatta va al lardo19 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/14(土) 21:59:24 ID:kQxfL4Ic0
前話:>>507-510
----------

 ――どんな気持ちだろうと思う。
 私は多少なりとも彼女を知っている。とは言っても個人としてではなく、ミッドガルの都市開発に従事する
仕事上での彼女ではあるが。そして何より、この計画を打ち明けた時の姿も見ている。
 だからだろうか、その後を引き継いだこの年若い彼の姿にも、どこか彼女と重なる部分があった。自分の
ことを「真剣」以上に「必死」だと語った彼女の姿に、とても良く似ている。
 一方で彼は何も知らされないまま、後を引き継いだのだ。それは少々酷なようにも思える。
 ――私が彼と同じ立場にいたら、どう思っただろうか。
 ふと、そんな考えが脳裏を過ぎった。次の瞬間、考えるよりも先に口が動き言葉を紡いでいた。

「私がロケットを墜落させる事を軽くは考えていないのと同じように、彼女もミッドガルに墜落させる事を軽くは
考えていなかった」

 真相は分からない。けれど、彼女の事だそうに違いない。……そう、信じたい。
 だから無責任かも知れないが、この言葉が少しでも彼にとって救いになれば良いと思った。
「リーブ君、覚えておくと良い。自分の正義を貫きたいのなら、へたに真意を見せないことだ」
 ――彼女がそうであったように、私がそうであるように。
「…………」
「無知を装うでも構わない、バカにしたい奴にはさせておけばいい。最終的に目標を達成できさえすれば、
問題はないのだから」
 今なら分かる。彼女がなぜ、統括責任者にならなかったのか。
 それを、リーブに伝えておきたいと思った。私が見た、私が知る限りの真実を。
「しかし彼女は、それができなかった。自らの理想を求め続け……現実の前に屈した」
 神羅の宇宙開発部門に籍を置き、私も似たような経験をしてきた。だからこそ分かる、抗いようのない
現実の大きさを。私も――彼女とは違う形で――それに屈した人間のひとりだったから。
517Se la gatta va al lardo20 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/14(土) 22:04:30 ID:kQxfL4Ic0


 ――「お願いよ、この都市を完成させて。そして神羅の……暴走を、止めて。」


「主任は……ミッドガル、を……」
 彼の中に思い当たる節でもあったのだろう、リーブは何かに気づきかけたように短く呟いた。それでも
まだ信じられないと言った顔をしているリーブに、私はこう続けた。
「君が言う宇宙開発事業の規模縮小は、水面下ではこれまでにもさんざん言われ続けてきた事でね。
特に今回のロケット墜落の件では……当然だが内外からずいぶん叩かれているし、予算削減の提案には
絶好のタイミングだ。
 だがこれまでにも大小を問わず事故は起きている、中には死者を出すものもあった。しかし、それでも
会議の席上でこの話を出したのは君が初めてだった。……どうしてか分かるかね?」
 リーブは無言のまま首を横に振る。それを確認してから私は更に続ける。
「規模縮小を提案しても、実現されないと誰もが知っているからだよ。宇宙開発部門は君の指摘通り表面上の
採算性は悪い、しかしね、我々が存在する理由は収益以外にもう1つある。それは神羅にとって、目先の
収益よりも重視すべきものだ」
 それは同時に、私が屈した現実そのもの。
「……まさか」
 察したのだろう、顔を向けたリーブに頷き返す。
「そう。……所詮、我々の本質は戦争屋、死の商人……ここは変わっちゃいないよ、昔から何一つも」
「宇宙開発事業は……軍事転用を見込んでの技術開発であると?」
「その通り。ロケット技術は安易に長距離兵器にも転用できる。我々の真の目的は兵器開発に過ぎない」
 宇宙開発、人類の夢という美しい理想で飾られていても、薄っぺらい飾りを剥げば所詮は醜い現実が
顔を覗かせる。
 プレートの上は理想都市だと綺麗に取り繕っても、すぐ下は貧民層のたまり場になりつつあるこの都市と
同じだよ。
 臭い物、醜いモノには蓋を。それが我々の、いや人の本質なのだよ。
 あるいは残酷なまでの本心を、強固な建前で覆った世界。それが現実なのかもしれないね。
 それを知りながら、それでも尚その上で踊り続ける事を選んだのは、他の誰でもない私自身だ。今さら
愁いなどを感じたりはしない。
「…………」
518Se la gatta va al lardo21 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/14(土) 22:11:25 ID:kQxfL4Ic0
 黙り込んでしまったリーブに、先ほどの言葉を繰り返す。「自分の正義を貫きたいなら、へたに真意を
見せないことだ」。リーブに向けて言っているはずなのに、なぜか自分への言い訳じみて聞こえる。
 ……いや、言い訳だ。
「たとえ兵器開発の一環であったとしても、宇宙へ行ける可能性がここにあったのは事実だ。私自身が
宇宙へ飛び立つ夢が叶わない今となってもまだ、その夢を捨てきれずにいる。だから未練がましくも
ここにいる」
 夢にしがみつこうとした。他人から見ればその姿がどれほど滑稽に映ったとしても。それが、私にとっての
正義なのだ。そう、思うしかなかった。
 ここまで話してようやく気づく。
 私は、忘れてしまっていた若かりし頃の夢を思い出したのだと。
 同時にそれは、二度と取り戻せないという事も、知っている。知ってしまった。
 それを――託そうとしている? 畑違いの彼に?
 だとしたら私も、ずいぶん大きく軌道を外れてしまったと言うことか。


 それからしばらく、私達は無言だった。私はその間に、自分の過去を見ていた。ここへ至るまでの記憶
――それはまさに、私自身の飛行記録なのだろう――恐らくはリーブもそうだったのかも知れない。
 先に口を開いたのはリーブだった。
「私は……主任から、この都市を託されたのだと思っていました。私の理想とする都市を目指せば、
主任との約束を果たせると……そう、信じていました」
 続けて小さく「思い上がりだったでしょうか?」と、ぽつりと呟くリーブの姿が、少しだけ不憫に思えた。
彼は、前任者たる彼女の事を信頼していたのだろう。だからこそ私の語った真相に驚き戸惑っているのだ。
それらは短い言葉の中からも充分うかがい知る事ができた。
 しかし、この程度で屈するほど弱い男だとは思わない。……そんな弱い人間が、統括になどなれるはずが
ないと言う事は、誰よりも私が一番よく知っている。
「だとしたらそれを貫けばいい、君の思う理想を目指すんだ。たとえ、何を犠牲にしても」
「犠牲……」
 その言葉に躊躇するリーブを説得するように、こう言った。
519Se la gatta va al lardo22 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/14(土) 22:15:58 ID:kQxfL4Ic0
「なにも結論を急ぐ必要はない。君ひとりが簡単に把握できるほど、神羅は小さくないのだよ。
……それと、恐らくこのミッドガルという都市も、そう狭くはない。管轄外の私が言えたことではないがね」
 それから席を立つ。すっかり長居してしまった。
「久しぶりに有意義な時間を過ごせたよ、ありがとう」
 何かを告げようと口を開きかけた様だったが、けっきょく何も語らずに彼も席を立ち礼を返す。どこまでも
律儀な男だと思った。
「……君のようにやる気のある統括が就任してくれれば、この都市も安泰だろうな」
「あの」
 統括室の扉の前で呼び止められたが、振り返ることはしなかった。
 彼の言葉は聞かずに、最後にこう忠告しておいた。
「以後、外で私に話しかけてもまともに言葉を返す事はないだろう。残念ながら君の力になることもない。
……ここでお別れだ、リーブ君」
 背後に立つ彼は、何故ですかとは聞いてこなかった。その代わり、こんなことを言った。
「統括。……この次は、お茶をご用意しておきますね」
 この男と話をしていると、どうも調子が狂う。私がここへ来る事はないのだと忠告していると言うのに。
「……その方が有り難いな。そうそう、くれぐれもお茶には砂糖ではなくハチミツを添えるのを忘れないで
くれよ。砂糖は溶けにくいからね」
 しかしこの日以降、私が都市開発部門統括室の扉をくぐることは二度となかった。

                    ***

 あれからずいぶん経った。
 たとえ何であろうと、会議での決定には従わなければならない。そう言えば君は不在だったね?
 もっとも、今の私に意見を求める者など誰もいやしない。
 重役会議全会一致で派遣されたこの村で、まさか君に会うとは思わなかったよ。久しぶり、元気してた?
……って声かけようと思ったんだけどね、そうそう忘れるところだった。君いま諜報活動の真っ最中だったっけ。
本業の都市開発ならまだしも、相変わらず苦労が絶えないね。

 聞いてくれるかね? あれから私もずいぶん苦労してね。
520Se la gatta va al lardo23 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/14(土) 22:18:35 ID:kQxfL4Ic0
 結局。
 もう、私の中には何も残っていないんだよ。
 かつて求めた夢も、理想も。何ひとつも残ってやしない。
 信じてついて来た、その道の先頭を歩いていた人が目の前で死んだ。
 人間なんてあっけないモンだよ。
 ああ、あっけない。本当にあっけないね……。
 だって一刺しだよ一刺し。
 あれじゃ酒場でつまみに出されてるメニューと変わりないじゃないか。
 ま、ボタン一つでプレート落っこちる世界だからね。
 何が起きても不思議じゃないよ。今度はロケットどころじゃなく隕石でも落っこちて来るかもよ?
 気をつけないとね。……どうやって気をつけるのかは知らないけど。

 宇宙開発事業が再開されることはないと、新たに就任した社長の口からも聞いてしまったしね。
 ずいぶん簡単に言ってくれたもんだよ。
 とはいえ、こうなることは前々から分かっていた事だがね……。
 せめてあの時……君の提案が通っていた方が余程マシだったと思うよ。
 今さらだけどね。

 そう言えばあの猫が君だね? お互いにずいぶん妙な道を歩んでしまったものだ。
 しかも、こうして鉾を交えることになるとは。
 ……仕方がないことなのかも知れないね。
 そうそう、くれぐれもお手柔らかに頼むよ、こちらは生身なのだし。

 最後まで踊り続けよう、滑稽だと笑いたければ笑えばいい。加速してでも踊り続けよう。
 私と同じように、飛び立てないまま放置されたロケットや、パイロットのいる――宇宙に一番近いこの村で、
最期を迎えるのも悪くはない。
 これも会議の決定でね。

 ほら、迎えの車が来たよ。……トラックだけどね。


                                        ―Se la gatta va al lardo....<終>―
521俗に言うチラシの裏 ◆Lv.1/MrrYw :2006/10/14(土) 22:28:57 ID:kQxfL4Ic0
もう本当にすみません。こわくて本文中に語り手の名前を出すことが出来ずに終わりました。
笑いたければ笑ってやってください、っていうか笑われるだけで済むならむしろ御の字です。
イメージを盛大に崩しまして申し訳ありません、ふとっちょさん。

・Tanto va la gatta al lardo che ci lascia lo zampinoから。
 文字数が長くて入らなかったので、現タイトルの「Se la gatta va al lardo....」になってます。
 これって、ミッドガル(神羅)そのものな気がしたんです。間違ってたらごめんなさい、ですが。
・たぶん>>141を実現したかっただけなのかも知れない。
・兵器開発部門編が書けたらいいなと思いつつ、終了です。

こんなお話でしたが、お付き合い下さった方、レス下さった皆さんありがとうございました。
522名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/15(日) 17:48:36 ID:rAz0TwZ60
考証と構成がカコイイですGJ!うわぁぁぁぁぁあぁぁ主人公さーん!
カウントダウンまでに元気になって欲しい
523名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/15(日) 18:46:25 ID:/kFvGmkF0
>>516-521
>加速してでも踊り続けよう。

そう来たか!あの人だったのか・・・!
崩したどころか、ものすごいイメージアップですよ奥さん!
乙とGJを加速しながら贈りますwww
524名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/15(日) 21:38:46 ID:uXfbiqI00
>>516-521
狂おしくGJ!!
ハチミツでもしや…と思ったけど。
そっか…彼も一応神羅の上層部に居たんだもんなぁ。
525名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/16(月) 23:16:02 ID:N7Yr33KT0
GJ!!
本編ロケット村でタイニーブロンコ回収する時
「わし、宇宙部門統括 なのになんでわしがこんなこと…」
てかんじの台詞を言ってたけど、あのうひょひょキャラの裏に
今回みたいなシリアスな一面が隠されていても不思議じゃないと思った
◆Lv.1/MrrYw氏の書かれる小説好きなので、もし兵器開発部門編を投下されたら
また読みに来ます
526名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/17(火) 14:25:33 ID:KTW01bdZO
イイヨイイヨー!
このスレいつも楽しませてもらってます
保守
527名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/18(水) 09:03:22 ID:Tmc7UBjP0
保守
528名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/19(木) 13:16:32 ID:IkyB/0y+O
ほしゅ
529名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/20(金) 11:05:08 ID:kfuWU+bm0
保全
530FF6 : The Executor 1:2006/10/21(土) 01:48:38 ID:qzhiFqSj0
舞台:FF6(大三角島上陸後/魔大陸浮上前)
注意:FF6のとあるアイテムの安置方法について捏造してみた(つもり)。
----------



 魔導士の末裔が暮らす小さな村。この土地に代々伝わる“時計”の物語。祖父から聞かされた
その話を、今度は孫に話して聞かせる番が巡ってきたのだ――ストラゴスは幼い頃の自分を
思い出しながら、目の前で犬と戯れる孫の姿を見つめていた。
 彼女はある歌を口ずさんでいる。

 ――大きなサマサの古時計 おじいさんの時計
    100年いつも 動いていた ご自慢の時計さ

 その歌はサマサの村に伝わる童謡で、この村で生まれ育った者ならば誰もが知っている。

 ――おじいさんの 生まれた朝に
    やって来た時計さ

 しかし、歌詞として歌われている物語は、決しておとぎ話ではない。語るに忍びない凄惨な事実を、
それでも絶やすまいとした結果なのだ。
 童謡の裏に隠された悲惨な歴史。それはサマサの民として生まれた以上、知らなければならない真実。
 代々歌い語り継がれてきた、それはサマサの歩んだ悲しい物語。
 この歳にしてようやく、ストラゴスはその一端を垣間見たに過ぎない。それは途方もなく長大な歴史。

 ――今は もう 動かない
    この時計

 なぜ、時計が動かなくなってしまったのか。
 そこに秘められた歴史と、悲劇。

 それは二度と繰り返してはならない、過ちの物語。
531FF6 : The Executor 2:2006/10/21(土) 01:52:20 ID:qzhiFqSj0

                    ***

 彼らがこの土地へやって来たことも、恐らく最初から定められた運命――あるいは、気の遠くなるような
過去からの約束が果たされただけに過ぎないのだとしたら?
 しらを切り通すことを諦め、ワシは彼らへの同行を申し出た。
 あの伝承が、遠い昔に祖父から聞かされたおとぎ話が……もしかしたら現実になってしまうのかも知れ
ない。そう思うと、居ても立ってもいられなかった。

 目の前で燃えさかる家屋。その中に取り残された愛孫を救うべく、ワシは躊躇うことなく禁じられた力を
放った。確かにその時はリルムを助けたい一心だった。
 けれど魔法を放ったあの瞬間、決めたんじゃ。
 ワシはこの目で自らのルーツを辿り、最後までその行く末を見届けるのだと。

 この身に流れる魔導の血、封印せざるを得ない力。
 果たしてそれが、世界に何をもたらすか。
 その、真実を。

 その為にはまず、ワシから語らねばならないようだ。





----------
・元ネタは某板の替え歌から。
・この話の勢いとノリは分かりませんが、ひとまず保守させて頂きます。
532名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/21(土) 01:56:11 ID:uQAvXJjr0
リアルタイム新作投下キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!
FF6では爺孫コンビが一番好きなのでうれしい。
続きをwktkしつつ期待sage
でも、ストラゴスがゾイじゃないのはモノローグだから?
533名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/21(土) 10:08:33 ID:WE7iYqtS0
GJ!
ストラゴスの一人称小説とはなんとも新鮮だ
続き激しく期待
534名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/22(日) 17:42:04 ID:QEVBHalx0
>>530-531
GJです!
自分も爺孫コンビが好きなので続きが楽しみです。
535Mission Start !〈1/3〉 ◆iQTbYgzv1U :2006/10/22(日) 17:44:26 ID:QEVBHalx0
※FF7、DC後に世界がだいぶ落ち着いて来た頃の話。
※投稿人、こんな話が読みたい!で導入部分を書いただけなので続く予定は全くなし。
 ふざけんな、と思われた方はスルーよろしこです。
※登場人物はリーブとシェルクとケット・シー。シェルク嫌いな方もスルーよろしこ。


「コスタ・デ・ソルで事件?」
「はい。」
事件、とはおかしな言い方だとシェルクは思った。
トラブルではなく、なんとなく犯罪の匂いがする。
「そこで、コンピューターの技師達が行方不明になっているんです。」
大きなテーブルが2人を遮っているせいもあり、
シェルクには話をしている相手が遠く感じる。
(と、言うよりも何故その件で私が呼ばれるのでしょう?)
相手の目をじっと見つめ、次の言葉を待つ。
今話している相手、WROの局長、リーブ・トゥエスティは穏やかにシェルクを見つめ返す。
「確か、あそこの基地は新しいマシンを導入したばかりでしたね。」
「はい。その為に必要な物の調査とリストアップは私がしました。」
それだけではない。設置や設定…全てシェルクがプランを立てた。
だから自分が呼ばれたのだろうか?
それと行方不明者となんの関係が?
「そこにシェルクさんに調査に行って頂きたいのです。」
「私が…ですか?」
WRO内にも事件を調査する組織がある。彼らの役目ではないのか?
「それは…専門外だと思いますが。」
「もちろん、そうです。」
リーブは立ち上がると、シェルクにソファに掛ける様に促すと、
手ずからコーヒーを入れ、手渡す。
これは、話が長くなるか、ややこしいお願いのどちらかだなとシェルクは思った。
536Mission Start !〈2/3〉 ◆iQTbYgzv1U :2006/10/22(日) 17:45:46 ID:QEVBHalx0
「どうも…調査の報告書を読んでいると…腑に落ちない点があります。」
「彼らも共犯だと?」
事件などという言い回しをするので、思わず“共犯”という言葉が出てしまった。
「いえ、そうではないのです。あまりにも…現実離れしていると言うか…」
リーブはそう言いながら局長室内を忙しく歩き回る。
そして、シェルクの前でふと足を止める。
「あなたにお願いするのは、先入観のない状態で状況を報告して貰いたいからです。
残念ながら、私はここを離れる事が出来ないので。」
確かに。
日常が多忙なのはもちろんだが、シェルクは彼が家に帰ったり、
またこの局長室にやって来るのを見た事がない。
しかし、身だしなみはきちんとしており、食事も摂っている様だ。
隊員達にも“私生活が謎”と言われている。
「危険はないかと思いますが、ユフィもあなたのサポートに
コスタ・デ・ソルに向ってもらっています。」
「ユフィも来るんですか?」
再会出来る事を 一瞬喜んだシェルクだが、またもやおかしな事に気付く。
ユフィは自称ウータイ一の忍びで、調査のプロのはず。
そこに素人同然の自分が何故?
「シェルクさん。」
「は…はい。」
自分の考えに沈んでいたシェルクは慌てて顔を上げる。
しかし、リーブはニコニコとどこか楽しそうだ。
「考えている事が随分と顔に出やすくなったようですね。」
シェルクは肩を竦める。
「お気持ちは分かります。…わざわざあなたにお願いするのは…
場合によってはあなたの能力(ちから)が必要になるかもしれないからです。」
シェルクの表情がサッと緊張する。
リーブは確かにシェルクをネットワークのスペシャリストとして迎えたが、
彼女独自の能力は、むしろ禁じていた程だ。
537Mission Start !〈3/3〉 ◆iQTbYgzv1U :2006/10/22(日) 17:50:08 ID:QEVBHalx0
「行っていただけますね?」
技術屋達とチームを組む事が多いシェルクの一番の悩みは予算でもなく、
はかどらないプロジェクトでもなく、どうやってスタッフを動かすかだった。
なのにこの男と来たら、畑違いの仕事までこうやって引き受けさせてしまうのだから恐れ入る。
「コスタ・デ・ソルにはどのように?」
シェルクは飲み干したカップをリーブに返す。
リーブは満足そうに頷くと、カップを受け取る。
「明日、午前8時発のフェリーに乗って下さい。
船着き場にはクラウドさんが送ってくれることになっています。
ユフィさんはコスタ・デ・ソルの船着き場で待っていてくれるそうです。」
リーブは机の引き出しからチケットを取り出し、渡す。
ここまで段取りをしておいて“行っていただけますね?”も何もないと思うのだが。
「そうそう、こいつをお供に連れて行って下さい。」
机の影からぽてん、ぽてんと不思議な足音をさせてケット・シーが出て来る。
「ケット・シー」
シェルクは思わず立ち上がると、ケット・シーを抱き上げる。
「電話も無線機もありますが、彼が居ると何かと便利ですからね。」
「ほんならシェルクはん、よろしくです。」
シェルクはにっこりと笑う。
「こちらこそ、よろしく。」

=========================================================

以下チラシの裏。
書き逃げでごめんなさいよ。映画の予告編みたいな物だと思って下さい。
漫画のリ●ート読んでたら、安楽椅子探偵よろしくケット・シーを通じて
あれこれシェルクとユフィに指示を出して事件を次々と解決!な局長と、
ユフィとシェルクは変装して潜入捜査におとり捜査(ちょっとお色気アリ)、
ピンチには仲間が駆けつけて大団円!なお話を書きかけたのですが、
投稿人、謎解き物は全くダメなのでここで終わりです。orzムシロダレカツヅキカイテー
538名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/23(月) 18:50:37 ID:1bDz2ZIpO
保守
539名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/23(月) 20:09:30 ID:8hH0GJNF0
>>535-537
乙&GJ!続きが気になるww
職人さん誰か続きを書いてはくれまいか、と言ってみるテスト
540名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/23(月) 20:26:37 ID:Zywdmx+V0
>>535-537
元ネタの漫画が分からないけどGJ!
ところで安楽椅子探偵って聞くとどうしても某警部補を真っ先に連想するんですが
外見や服装(?)的にリーブ良いと思うんですよ、犯人側としてはうっとうしいことこの上ないですがw
犯人役によってはシリアスになったりするんじゃないか?
三毛猫ホームズみたくケット・ホームズでもいいな!とか、夢がひろがり(ry。
(すいません三毛猫については元ネタ知りませんが猫つながりって事で)


ところでそろそろ次スレテンプレ案でも貼っておこうかなと思います。
480kbぐらいで宣言して立ててもらえると助かります、他力本願ですみません。
テンプレは修正などあったらお願いします。
541Part7 >>1:2006/10/23(月) 20:28:27 ID:Zywdmx+V0
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
 ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
 ※sage推奨。
 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
 ※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。
 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
=======================================================================

前スレ
FFの恋する小説スレPart6
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1150527327/

記述の資料、関連スレ等は>>2-5にあるといいなと思います。
542Part7 >>2(過去スレ、板内文章系スレ):2006/10/23(月) 20:29:49 ID:Zywdmx+V0
【過去スレ】
初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048776793/
*廃スレ利用のため、中身は非エロ
FFの恋する小説スレ
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/
FFの恋する小説スレPart2
http://game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1060778928/
FFの恋する小説スレPart3
http://game8.2ch.net/test/read.cgi/ff/1073751654/
FFの恋する小説スレPart4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101760588/
FFの恋する小説スレPart5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134799733/


【FF・DQ板内文章系スレ】
FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2・5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137717472/
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その7
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1144319254/
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/
543Part7 >>3(書き手さん向け案内・お約束):2006/10/23(月) 20:31:39 ID:Zywdmx+V0
【お約束】
 ※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
   その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
 ※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
 ※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。

 初心者の館別館 http://m-ragon.cool.ne.jp/2ch/FFDQ/yakata/

◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ】)
 FFDQ板の官能小説の取扱い ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/kijun.html#kannou
 記述の一般的な決まり ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/guideline.htm
◇関連保管サイト
 FF・DQ千一夜 ttp://www3.to/ffdqss
◇関連スレ
 FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2・5
 http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137717472/
◇21禁板
 【FF】エロパロFF総合スレ 3
 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1160480047/
 FFDQカッコイイ男キャラコンテスト〜小説専用板〜
 www3.to/ffdqss
544Part7 >>4(板設定):2006/10/23(月) 20:35:55 ID:Zywdmx+V0
【補足】
 トリップ(#任意の文字列)を付けた創作者が望まない限り、批評はお控えください。
 どうしても議論や研鑽したい方は http://book.2ch.net/bun/

 挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ ttp://ponta.s19.xrea.com/


━━━↑↑ここまでが>>3(書き手さん向け案内・お約束)に記載してほしい事。↑↑━━━
━━━↓↓ここからが>>4(板設定)              に記載してほしい事。↓↓━━━


【参考】
 FFDQ板での設定(game10鯖)
 http://game10.2ch.net/ff/SETTING.TXT
  1回の書き込み容量上限:2048バイト(=2kb)
  1回の書き込み行数上限:32行
  1行の最大文字数     :255文字
  名前欄の文字数上限   :24文字
  書き込み間隔       :45秒以上
  (書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
  連続投稿規制       :3回まで
  (板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
   1スレの容量制限    :512kbまで
  (500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━
しくじったスマソ。
545名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/23(月) 20:45:27 ID:jmRqQbWy0
>>543
◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ】)

◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ)
546名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/24(火) 07:53:20 ID:GX+nr0j30
>>540
テンプレ乙です。こんな感じでおkではないかと。

自分、>>535-537 ですがGJ貰ってやる気が出て参りました。
謎解き物ではありませんが、お話が出来てきたので週末にまた参ります。
>>539>>540さん、ありがとう。
547名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/24(火) 21:38:08 ID:Djy4mMOPO
無理せずガンガレ。
548名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/24(火) 22:54:09 ID:Bm0w0zov0
マターリいこうぜ
549名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/25(水) 01:58:57 ID:2oYWemu+0
常にヒソーリ、コソーリ、マターリ。
それにしてもこのスレの作品を読んでると色々感化されるので楽しいです。
これがいわゆるインスパイアというヤツですか?w
550ALERT 01:2006/10/25(水) 02:09:50 ID:2oYWemu+0
舞台:DCFF7終了後から4年ぐらい経過した世界。
設定:FF7本編→DCFF7→FF7AC公式サイトの小説に準じた設定+個人的解釈。
    BCとかCCは考慮してませんすみません。
----------



「使途不明金……ですか?」
 彼は通信の相手に問い返すと言うよりも、直前までの会話で聞いた言葉が本当にこれだったのかを
自分に確かめる意味で復唱した。
 その意図を察したのかは分からないが、通信先はそれを肯定し、続けて彼にあることを命じた。それを
聞いて今度こそ、彼は確認するように問い返す。
「私が……その内偵を?」
 すぐさま「もちろんだ」との返答が得られた。しかしそれは“依頼”ではなく、むしろ“命令”に近いものだった。
 もっとも、これが依頼だろうと命令だろうと、こちらに拒否権が無いことは自身が一番良く理解している。
かつてはもっと汚い――身内にすら口外できないような――仕事にも手を染めていた経歴から考えれば、
内偵調査なんて今さら気が引けるようなものでもない。
 それなのに何故だろう? この違和感のような、確信を得た不安のような。とにかく心に何かが引っかかって
いる。
 通信が切断されるまで、彼は心の内を口に出そうとはしなかった。
551ALERT 02:2006/10/25(水) 02:20:25 ID:2oYWemu+0
 回線を切ると室内は静寂に包まれる。身につけた腕時計が時を刻む音、並んだ端末から吐き出される
僅かなノイズまではっきり聞こえてくる程だった。こんな場所に一人でいると、考えなくてもいい余計なこと
まで考えてしまう。
 放っておくと悪い方にばかり働く思考から意識を逸らすように手元の端末を操作し、ある画面を呼び出した。
起動と同時にプログラムが自動実行され、画面上にはそのプロセスを示すためだけに文字が流れている。
疑問も、迷いも、どんな感情も伴わず、ひたすら命令された処理を実行するだけのプログラム。それを見つめ
ながら、誰にともなく語る。
「しかし……出資している我々が、出資先の使途不明金について調査をするというのも皮肉な話だ」
 彼は実行した侵入プログラムを使い、世界的規模で展開するある機関のネットワークにアクセスを試みた。
ここに侵入するのは、正直なところ今日が初めてという訳ではない。それでも、この領域に対して接続する
のは今回が初めてである。
 流れ続けていた画面上の文字が、あるところで停止した。

 Connected to ***.***.*.*** (***.***.*.***).
 Remote system type is....

 ....access "world restoration organization"
 command _

 準備は全て整った。あとは実行者からの“命令”があるまで、この画面は動かない。端末の前にいる彼が
キーを押せば全てが始まる。逆を言えば彼がキーを押さない限り何も始まることはない。
 待機を続けるプログラムに向けて語ったところで、反応するわけではないのだが。吐き出さずにはいられない。
「世界再生機構……出資先であるこの組織の使途不明金……」
 気が引けると言うよりも、気が重い。
 いや、決して良い気分にはなれない。
「あなたは……何を考えている?」
 脳裏に過ぎった――かつて自分と同じ企業に所属し、一部門の統括責任者まで務めた――男に問う。
男は世界再生機構の創立者であり、現局長。
 ここで問う声が届くことはないと分かっていても、問わずにはいられない。それはどこか怒りにも似た衝動だった。
 会社の崩壊と共に袂を分かつことになった彼らが、再び出会おうとしている。
552ALERT 03:2006/10/25(水) 02:29:26 ID:2oYWemu+0
 出来るならば、もっと別の形で再会を果たしたいと思っていた。願えば叶うというならば、跪いて祈りを
捧げても構わないと、信仰心の薄い彼がそうまで思うのだ。事態は本人が思っている以上に深刻だった。

 祈り願うのではなく、自らの行動で叶えればいい。
 この手で実現してしまえば、思い悩む必要もない。
 任務とは、成功させるものだ。

 昔を思い出した。過酷な任務に従事する過去の自分ならば、迷わずそう思ったに違いない。
 横にあった別の端末を立ち上げる。普段であればそれほどストレスには感じない起動の手続が、ひどく
長く感じられた。その間に懐から携帯端末を取り出し、登録された番号を呼び出す。2回もしないコールで
繋がった相手に、挨拶も無しに切り出した。
「彼女の所在が判明次第、ここへ。……ああ、思っていたより状況は良くないようだ」
 伝えるべき用件以外一切の無駄が省かれた会話。それは、互いが相手を信頼している故に成り立つの
だと言うことを、本人達は無意識のうちに知っている。これを信頼と呼ぶべきかどうか、そんなことを考えは
しなかった。恐らくはこれからもしないだろう。
 考えたからといって特別なにが変わるわけでもない、だから考える必要もない。

「仮に侵入できたとしても、目的のデータに辿り着ける保証はない」
 あの人のことだ、このまま簡単に終わるとは思えない。無意識のうちに通信機を持つ手に力がこもった。
「万一の場合は……最終手段も辞さない。以上だ」
 それだけ告げて、通話を終えた。
 プログラム待機中だった端末に向き直り、男は慣れた手つきでキーを操作し、決定の意思を伝える。


 疑問も、迷いも、これが終わる頃にはすべてに結論が出るだろう。
 たとえそれが、どんな形の結末であったとしても。

                                        ―ALERT<終>―
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・これから本編に続く…ような気がします。
・コンピュータ等に関する知識に持ち合わせはあまりありません。記述に一部テキトーな部分があるのは
 どうかご容赦下さい。
553名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/25(水) 07:47:32 ID:54K2vC460
GJだ!
本編楽しみ!!
554名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/26(木) 09:20:32 ID:LTnhoDX20
GJ!
555名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/27(金) 13:10:49 ID:+++6jENmO
保守
556名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/28(土) 15:22:22 ID:dUaWrW0s0
557FF6 : The Executor 3:2006/10/28(土) 21:23:12 ID:qSSR4Goo0
前話:>>530-531
舞台:FF6大三角島上陸後/魔大陸浮上前。

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「昔、人間は魔石から魔導の力を取り出した。そして魔法を使えるようになった者を『魔導士』と
呼ぶようになった。それがワシらの祖先じゃ」
 ストラゴスは旅人の求めに応じて語り出す。それはこの村にまつわる悲しい歴史であり、これまでは
決して村の外には語られる事の無かった伝承。
「今を遡ることおよそ1000年前――長きにわたった魔大戦の後、幻獣達は封魔壁の向こうに結界を
張り、そこに隠れ住んだ。自分たちの魔導の力を、利用される事を恐れた為じゃ」
 辺境の村、外界とは隔絶されたサマサを訪れた旅人達に語った話は、いつもストラゴスの傍らにいた
リルムにとっては今日初めて聞くものではなかった。リルムだけではなく、サマサの村人なら誰もが
一度はこの話を聞かされる。
「幻獣達が去ったこの世界で暮らす人々が最も恐れたのは、魔導士の力。……当時は皆、魔大戦の
悲惨さが身にしみていたから無理もない」
(ちぇ。またじじいの長話か……もう聞き飽きたよ。それよりリルム、こいつらの話聞きたいのに)
 テーブルに肘をついて、いかにも退屈そうだという表情で祖父を見つめるリルムをよそに、ストラゴスの
話は続く。
「そこで行われたのが『魔導士狩り』。不当な裁判により魔導士達は次々と殺されていったのじゃ」
「魔法を使えること以外は何も変わりのない人間なのに……」
 旅人の一人――珍しい髪の色をした少女――が、つらそうな表情で呟いた。まるで、いま目の前で起きて
いる出来事のように心を痛めている。そんな彼女はどこか自分達と似た境遇にあるのだろうと、ストラゴスは
そんなことを思った。
558FF6 : The Executor 4:2006/10/28(土) 21:30:21 ID:qSSR4Goo0

「その時に逃げ延び、この土地に隠れ住んだ魔導士達がワシらの祖先――これが、サマサのはじまりじゃ」

 禁断の地、サマサ。
 この土地に逃げ延びた祖先から受け継いだ血。先天的に魔力を持って生まれる村人達の力の源泉。
 旅人の一人、先ほどの少女が真っ直ぐに視線を向けてくる。
 ストラゴスは観念したように小さくため息を吐いた後、こう告げた。
「君らがここへ来た目的が幻獣探しだと言うのなら、ワシも協力しよう。孫を助けてもらった礼もせねば
ならんしの」
 この言葉を一番喜んだのは、ストラゴスに協力を乞うた旅人達ではなかった。
「リルムも行く!」
 待ってましたとばかりに真っ先に声をあげたのは、まだ幼い少女だった。彼女はストラゴスの愛孫にして、
サマサに生まれた魔導士の末裔。隔絶されたこの村に生まれ育ち、まだ外の世界を知らない。彼女は
純粋な好奇心から、ストラゴスの決断を喜び、旅人達への同行を申し出た。
 それは恐らく、この場に居合わせた誰もが理解できる感情だった。同時に、だからこそこの少女を
巻き込んではならないとも思うだろう。
「ダメじゃ」
 ひときわ厳しい口調でストラゴスはリルムを制した。些か言い過ぎではないかと心配する旅人達を尻目に、
ストラゴスは一歩も引く気はないようだ。
「リルムつまんない……」
「遊びではないんじゃ。分かるな?」
 諭すようなストラゴスを睨み付けた後、リルムは無言で部屋を出て行った。感情をぶつけるようにして
閉められた扉が、ひときわ大きな音を立てた。
(……なんだよ、くそじじい!!)
 リルムが出て行った後の沈黙、部屋に満ちた空気さえストラゴスには重たく感じた。だが、これでいい。
そう必死で自分に言い聞かせながら、一方で誰かが沈黙を破ってくれるのを待つように、ただ俯くばかりだった、
「…………」
559FF6 : The Executor 5:2006/10/28(土) 21:34:05 ID:qSSR4Goo0
 一部始終を目の当たりにした旅人の一人――まだあどけなさの残る青年――は、心配そうに扉の方を
見つめていたが、やがて視線をストラゴスに向け、逸れた話を本題へと戻すべく沈黙を破った。
「しかし飛び去ってしまった幻獣を探すと言っても、一体どうすれば?」
 青年の言葉に思考を巡らし、ストラゴスはある結論にたどり着く。
「……この島に幻獣が逃げ込んだと言うならば、恐らく西にある山かも知れんゾイ」
 西の山――そこはサマサの民が代々『幻獣の聖地』と呼んできた、強い魔力を湛えた山。
「暴走した幻獣達は、その魔力に引き寄せられた……?」
 少女の言葉に、ストラゴスは黙って頷く。それを見て、青年はこう言った。
「行ってみよう」

 彼らの会話を、扉の向こうでリルムが聞いていたとも知らずに。



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・480kbも近いことですし、そろそろ次スレ移行を提案してみるテスト。
・もし今日で良ければ立ててみますが、いかがなもんでしょう?
 (新スレ保守の兼ね合いもあると思われるので)
560名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 19:55:04 ID:AUTjOIk60
乙です!
それにしても人いないっすねー
561名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 00:37:11 ID:bHB5dlBp0
>>557-559
爺と孫娘続きキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

ドット絵でちょこまか動くリルムを思い出して(´∀`*)
プレイ中の印象ではちょっとコミカルだった
ストラゴスがこちらではどっしりした感じですね。
続きwktkの期待sage

次スレ、チャレンジしてみましょうか?
こんな夜中だと人が集まらないから明日の方がいいのかな?

562名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 21:08:21 ID:HEcX9VyZ0
宿屋スレの新スレが立ったみたいなので、テンプレ入れる時は新スレで。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

このスレの移行準備が整うまで保守。
563561:2006/10/30(月) 23:20:12 ID:vpHwbPFm0
チャレンジしてみましたが弾かれましたorz
どなたかお願いします。
564名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 23:34:44 ID:wJ2CKE8L0
自信ないけどやってみる。
565名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 23:41:46 ID:wJ2CKE8L0
無理でした…
566名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/31(火) 20:23:37 ID:PT4lXM8f0
自分も駄目だとオモ。でも駄目元でやってみる。
567名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/31(火) 20:30:55 ID:PT4lXM8f0
FFの恋する小説スレPart7
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162293926/l50
テンプレ最後ミスったorzスマソ
568名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/31(火) 21:25:43 ID:HPi4gGWB0
>>567
ヨチヨチ( *´д)/(´д`、)アゥゥ
自分ダメだったのでものすごく助かりました。トン!
新スレ誘導のため、一旦ageますね。
569名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/05(日) 11:08:20 ID:eqbG9eCN0
落ちる前に誘導し隊!というわけで上げてみる
皆様次スレでもよろしくお願いいたします。
570名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/26(日) 22:12:58 ID:bqhhwaBaO
最下層あげ
571名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/26(日) 22:34:08 ID:R/Flj1mC0
じゃあ俺も記念に
572名前が無い@ただの名無しのようだ
ちょwww>>569から>>571まで21日開いてたwww落ちなすぎwww
といいつつビックリ記念あげ。