ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level10

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1愛想が無い@ただのツンデレのようだ
DQツンデレスレへようこそ。
ここは職人方が書いてくれるDQ関連のツンデレなSSに萌えるスレです。
新しい職人さん大歓迎です。SS題材はDQであれば3以外でもおKです。
DQ3の攻略等に関する質問は専用スレでどうぞ。

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ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜
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ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜 Level3
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142515071/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1144425198/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜  Level5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1157354640/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 6
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162828557/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 7
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1167743633/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level8
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1174664837/

まとめサイト (Level 4 までのログはこちら)
http://www.geocities.jp/game_trivia/dq3/
CC氏まとめサイト (Level 5 からのログはこちら)
http://www.geocities.jp/tunderedq3cc/
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/31(月) 19:51:41 ID:AKWpCn1h0
大晦日に自分で2get
3名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/31(月) 20:57:46 ID:mTm/7tM7O

よし、これを今年最後のレスにしよう
よいお年を〜

まあ、すぐまた来るけどね
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/12/31(月) 22:06:43 ID:zKAchsB80
>>1
職人のみなさん
来年もよろしくお願いします。
5名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/01(火) 00:18:26 ID:fNp1UjGPO
また来たよー

今年もよろしく保守
6CC ◆GxR634B49A :2008/01/01(火) 05:48:17 ID:WNcj/DBk0
>>1
超乙です。

投下ペースがなかなか上げられずに申し訳ありませんが、
皆様、今年もどうぞよろしくお付き合いくださいませ。
7名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/01(火) 09:04:37 ID:K+Cc2bp6O
オツ〜
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/02(水) 20:59:21 ID:5Gk9FYJZ0
保守
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/04(金) 00:34:02 ID:33vIA76d0
保守
10名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/05(土) 01:20:56 ID:BRz18n6PO
保守?いいえ、ケフィアです
11名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/07(月) 09:18:55 ID:3ya/zPKLO
保守
12名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/08(火) 16:14:26 ID:W9Bv84Un0
h
13名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/08(火) 17:40:27 ID:ZFVLlO370
>>1
14名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/09(水) 22:41:53 ID:0JnokG7dO
保守
15CC ◆GxR634B49A :2008/01/11(金) 07:29:59 ID:vXEmSINb0
こっちも保守。すみません、もう少々お待ちを。。。
16名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/12(土) 16:48:29 ID:L2NTv16a0
保守
17CC ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 09:28:34 ID:vxg3cq/Z0
現在、第32話を投下中です。
こちらのスレでは、13章(?)からの投下になります。
1〜12章は、全スレ668からご覧下さいませ。

http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185024927/668-
18名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 09:36:25 ID:+n+Pyqul0
支援
19CC 32-13/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 09:43:10 ID:vxg3cq/Z0
 当たり前だが、俺とエフィの結婚話は、全部嘘っぱちだ。
 全ては、裏で人攫い共を利用していた人間を焦らせて、罠にかけるのが目的だった。
 下呂助を脅して聞いた話によれば、そいつはゴロツキ共の前で顔を見せたことはなく、普段は代理の人間が指示を伝えていたらしい。
 とはいえ、捕まった連中からボロが出やしねぇかと、気が気じゃなかった筈だ。
 だからこそ、様子を確かめる為にラスキン卿を訪ねたのだ。
 そこに偶然居合わせたのは、運が良かった。最初は、屋敷で働く下女辺りから、町中に噂が流れるように仕込もうかと思ってたんだが、お陰で俺とお嬢の結婚が決まりかけていることを直接伝えられた。
 噂に頼っちまうと、そいつがソレを信じるまでには、どうしたって時間がかかる。状況への対処を考える暇を与えない、という意味でも、あれは大きかった。
 お嬢の勢いをあんだけ目の前で見せ付けられりゃ、そんな馬鹿なハナシがあるものかと思っても、もし本当に成立してしまったらと考えざるを得ない。
 今、なんとかしないと、取り返しのつかないことになる。
 お嬢との結婚を目論んでいたそいつに、少しでもそう思わせたら、こっちの勝ちだ。
 どこかに引っ掛かりを感じたとしても、今までの苦労を無駄にしない為にも、なんらかの手を打ってくる可能性は高い。
 だが、手を打とうにも、手駒は既に全員とっ捕まっている。
 改めて人を雇っている余裕も無い。
 ならば、どうする。
 自分でやるしかねぇだろ。
 そいつが取り得る手段で、最も効果的かつ一番手っ取り早いのは、俺という存在を消しちまうことだ。
 俺さえ居なくなれば、エフィとの結婚もへったくれも無いからな。
 つまり、暗殺だ。
 夜中に忍び込んで、ぶっ殺す。
 真っ先に自分が疑われるだろうが、証拠さえ残さなければ、なんとでも言い逃れはできる。上手い具合に、無防備な別棟に移されることや、手引きしてくれそうな人間の存在まで、ご丁寧にほのめかされているのだ。
 出来るだけ考える時間を削って焦らせ、精神的に追い詰めた上で、やってやれないことはないと思えるだけの逃げ道を用意して誘導する。
 但し、その逃げ道の先に待ち受けているのは、俺と入れ替わったファングって寸法だ。
 果たして、そいつはまんまと罠に嵌ったのだった。
20CC 32-14/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 09:46:28 ID:vxg3cq/Z0
「貴方だったの――!?」
 後ろ手に縛られて、不貞腐れた顔で床に座り込んでいるそいつを見るなり、エフィは驚きの声をあげた。
 眠い目を擦りつつ駆けつけたのかと思いきや、後で聞いたら気になって眠れずに、ずっと起きていたそうだ。
 同時に呼びに行かせたラスキン卿も、エフィの背後で目を丸くしている。
「なんで……ヴァイスの話では、襲ってくるのは人攫いの黒幕の筈でしょう?なのに……どうして?」
 二人には――というか、ファング以外には、誰だか分からないがまだ黒幕が居るから、そいつを燻り出すという言い方をして、スットボけておいたのだ。
 とはいえ、ちょっと頭を働かせれば分かりそうなモンだけどね。
 まるで予想してなかった顔つきを見るに、やっぱり伏せておいて正解だったな。あらかじめ教えてたら、そんな筈は無いと反対されていたかも知れない。
 この土地の人間にとって、そいつは人攫い共の黒幕である筈がないヤツなのだ。
 そいつとは――もちろん、カイの事だった。
 いつまでも入り口で目を剥かれてても仕方ないので、ともあれエフィとラスキン卿を中に招き入れる。
 ちなみに、最初から次の間に身を隠していた姫さんとアメリアは、既にベッドの上で仲良くぺたんと腰を下ろしている。
 どちらも事の次第がよく分かっていない顔つきだ。カイが何者かってことすらロクに知らない筈だから、無理もねぇけどな。
 ということで、今、この部屋にいるのは、俺とファング、それから捕まったカイ、姫さんとアメリア、俺の側付きを言いつけられていたファム、そしてエフィにラスキン卿の八人だった。
 いくら詰問しても、カイが俯いたままむっつりと押し黙っているので、痺れを切らしたエフィは俺を睨みつけた。
「これは一体、どういうことなの?説明してちょうだい」
「私も是非、聞かせて欲しいものだね」
 ラスキン卿にも重ねて言われて、俺は頭を掻く。
 やれやれ。ここでカイが、自分の企みについてぺらぺらと独白でもはじめてくれれば、俺としては楽なんだけどな。残念ながら、その気は無いらしい。
21CC 32-15/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 09:51:11 ID:vxg3cq/Z0
 説明はお前の仕事だとばかりに、ファングは悠長に腕なんか組んでるし、アメリアはきょとんとしていて、姫さんはいつになく大人しい。
 いや、助け船を期待して、あいつらを見回した訳じゃないけどさ。
 なんにしろ、ここでもカイを捕らえたのはファングな訳だし、俺も少しはいいトコ見せておかないとね。
 面倒臭ぇけど、はじめますか。
「へいへい……ジツのところ、俺の考えはほとんど状況証拠から成り立ってるんでね。まぁ、いわゆる当て推量ってヤツだから、なんか間違ったトコがあったら、指摘してくれていいぜ」
 うな垂れたままのカイに向かって前置きしてから、話の組み立てを考えつつ口を開く。
「さて――さっきエフィが言った通り、人攫い共の黒幕は、このカイだった訳なんだけど……」
「だから、どうしてよ!?だって、彼は攫われそうになったコを助けた事だってあるし、それだけじゃなくて、町の皆の為に人を集めて捕まえようとしてたのよ?」
 と、エフィ。
 まぁ、待て。ただでさえ、どっから説明したモンか悩んでんだから、あんまり横から嘴を挟まないでいただけると助かります。
「うん、まぁ、そうなんだけどさ……それは、全部そいつのお芝居だったっていうか――」
「お芝居!?なんで!?何が目的で、そんなことするのよ!?」
「それは……アレだよ」
「アレ?って、何よ?」
 全然、順番に説明できねぇ。
 まぁ、いいか。
 お前は反論する気が無ぇみたいだから、俺が想像で説明しちまうぞ?
 それでいいんだな、カイさんよ?
「まぁ、なんつーか……あんたらエジンベア人から、この土地の人間の元に支配権を取り戻すのが、そいつの目的だったんだよ」
 パン屋のおばちゃんが言ってたろ、そういう考えの連中が居なくは無いってさ。
「は――?え?意味が分からないわ。どうして、そうなるの?」
 お嬢はまるで呑み込めていない顔つきだったが、ラスキン卿は察しがついたようで、「むぅ」と重々しい唸り声を上げた。
「そんじゃ……言い直してやるよ」
 危ね。「馬鹿にも分かるように」とか言いそうになっちまった。どっかの誰かじゃあるまいし。
「カイの目的は、エフィ、お前と結婚することだったんだ」
「はぁ……?」
 なにを今さら、みたいに、エフィは気の抜けた返事をした。
22名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 09:51:53 ID:bTTkqP+eO
支援
23名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 09:52:36 ID:+n+Pyqul0
支援
24CC 32-16/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 09:56:26 ID:vxg3cq/Z0
「よく思い出してみろよ。お前とカイの結婚話が持ち上がったきっかけをさ」
「……あなた、さっきから何回も、あんたとかお前とか呼ばないでもらえる?」
 お嬢は憮然と俺を睨みつけた。
 そんなこと、今はどうでもいいだろうが。
「いいから、思い出してみろ。町で攫われかけた娘をカイが助けて、そんで礼を言う為に屋敷に呼んだのがきっかけだったんだろ?」
「そうだけど……え?ちょっと待ってよ!?」
「そういうことだ。裏で人攫い共と通じてれば、かどわかしの現場に『偶然』居合わせて、それを未然に防いでみせるくらい、朝飯前だったってこと」
「だから……お芝居って?」
 にわかには信じられないのか、エフィは口に手を当てて、少し考え込んだ。
「……それは、本当の事なの?」
「いや、さっきも言った通り、俺の想像だけどね」
「想像って……!!」
「けど、そう考えるのが、なんつーか、一番自然なんだ。こうしてこいつがまんまと罠に引っ掛かってとっ捕まってるのが、俺の想像が当たってる証拠にはなるだろ」
「それは、そうかも知れないけど……」
 なんだ?
 思ったより、エフィはカイが犯人だってことを信じたくないみたいに見える。
「まぁ、黒幕って言い方はしたけどさ、それはカイが人攫いを指示してたって意味じゃなくて、実際は事件の発生の方が先だった筈なんだ。そうだろ?」
 話を振っても、カイは反応しなかった。
「なんで俺にそれが分かるのかっていうと、とっ捕まったゴロツキ共の事、俺は知ってるんだよね。あいつらバハラタの辺りで、元から人攫いを働いてた連中なんだよ」
「あ――」
 そういえば、とエフィは口の中で呟いた。バハラタで、グプタに聞いた話を覚えていたらしい。
「連中の親玉は、どっかに雲隠れしちまったみたいだけどさ。そいつらが場所を移して、同じことを繰り返してただけだと思うね、最初はさ。そもそも、カイの目的と人攫いってのは全然別の話で、こいつは単に領主一家に近付く為に、人攫い共に接触して利用しただけだと思うぜ」
 果たして、それは自分の意志だったのか――いや、先走るな。順番に行こうぜ。慎重にな。
25CC 32-17/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:01:38 ID:vxg3cq/Z0
「まぁ、悪くない手じゃねぇのかな。元々、町では人攫いの事件を解決できない領主サマに対する不満が燻ってたみたいだし、そこにきて演じてみせた活躍だ。
 領主サマすら手をこまねいてるゴロツキ共に、一泡吹かせるとは大したモンだ、みたいな名声は得られるし、こいつを英雄扱いする空気が広まりゃ、領主サマとしても放っておく訳にもいかねぇだろ。無視したら、蔭で何言われるか分かったモンじゃねぇしさ。
 カイにしてみりゃ、遠からず目通りが叶う算段は立った筈だし、実際に呼ばれて目論見通りにお近づきになれたって訳だ」
 一石二鳥ってトコかね。
「フルってるのが、誠実ぶって領主一家に取り入ってるその裏で、人攫い共を手前ぇの元で囲ってる事を誤魔化す為に拵えた理由だよな。『人攫いを捕らえる為に、人を集めてる』ってんだから、傑作じゃねぇか」
 音頭を取ってるヤツがパトロンで、集めた人間は捕らえるべき人攫い共ときてる。そりゃ捕まるわけねぇわな。思ったより、知恵が回るじゃねぇかよ――
「なにが傑作なのよ!?」
 顔を顰めたエフィの叫び声で、はたと気付いた。
「……悪ぃ。不謹慎だった」
 ちょっとした皮肉のつもりだったんだが、実際に人が攫われてるんだもんな。誘拐自体はカイから出た指示じゃなかったとしても、目を瞑って利用してりゃ同罪だ。
 まぁ、でも、お前はここまで上手くやったと思うぜ、カイさんよ。
 実際にエフィとの縁談がまとまりそうなトコまで持っていって、言わば穏便に支配権を取り戻そうとしてたんだ、滅茶苦茶非道な悪党って訳でもない。
 ある程度の名声を得たとはいえ、ラスキン家だってそれなりの尊敬を集めてるんだから、実力行使に踏み切らなかったのは、どちらに民衆が傾くか量りかねていた部分があったからなのかも知れねぇけどさ。
 けど、異国の地に置き去りにされた他所者が、いつまでも支配権を握ってるのは不自然だとする考え自体は、土地の人間としちゃ、割りと普通の感覚に思える。
 荒事に発展させることなく、エジンベア人達をも無理なく土地に同化させ得るカイとお嬢の結婚は、ここいらの連中にとっちゃ、むしろ「いい事」なんじゃねぇかと思えるくらいだ。
26CC 32-18/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:05:37 ID:vxg3cq/Z0
 ただ、ファング辺りに感想を求めたら、多分こう言うぜ。
 やり方が姑息過ぎる、ってな。
 あと――
 それが、エフィにとっても「いい事」とは限らない。
 俺はさ、大勢の人間の世話を焼くような立場に居たことねぇからさ、やっぱり、自分に関わりのあるヤツの気持ちを優先しちまうんだよ。
 お嬢が全然知らないヤツだったら、見過ごしてたかも知れねぇけど――悪ぃね。
 という内心まで、全部口にした訳じゃないが、俺の話に納得しつつあるエフィの表情は、どんどん翳っていった。
「そう……そうなのね……」
 ちょっと迂闊だったかも知れない。
 カイが自分と結婚したかったのは、領主の座だけが目的だった。
 別に、自分を好きだった訳じゃないんだ。
 エフィにしてみれば、そんな気持ちに襲われても不思議じゃない。
 落ち込んだ顔を見るまで、その事に気付けなかった。
 ちらりとこちらを向いたエフィの瞳には、ひどく寂しげな色が浮かんでいて、少し胸が痛んだ。
 だって、結局のところ、俺もカイと大して変わらないのだ。あいつを罠にかける為に、エフィを利用しただけなんだから。
 どいつもこいつもフリばっかりで、自分を本当に好いてくれる人なんていないんだ。
 そんな風に、エフィが考えなきゃいいんだけどな。
 お前は、違うんだ。
 そんなことねぇからさ。町でも人気者だっただろ?
「……そんな訳で、カイは順調にコトを運んでたんだけどさ。そこに突然、俺っていう邪魔者が現れた訳だ。まさかカイも、良家のお嬢様がアリアハンまですっ飛んで、いきなりそこから恋人を連れてくるなんて、予想もしてなかっただろうからな。ずいぶん慌てたと思うよ」
 冗談めかして言っても、エフィはくすりともしなかった。
27CC 32-19/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:10:06 ID:vxg3cq/Z0
「俺としては、その焦りにつけ込みたかったんだよね」
 ケダモノ兄弟とグエンの奴も予定外の要素には違いないが、あいつらは向こうに付いたからな。
 グエンの野郎は、お嬢をルーラでアリアハンまで連れ出した張本人な訳だから、もちろんエフィを取り巻く事情を、おおよそ知っていたのだ。
 だから、俺達の目的地は容易に想像がついた筈だし、先回りをして人攫い共と手を組んで、準備万端待ち受けることも出来た。
 また、お嬢が俺に惚れてるって芝居を抜きにしても、カイにとって俺達は目障りな存在になる可能性があった。事実、ファングは町に着くなり、早速人攫い退治に乗り出した訳だしさ。
 その邪魔者を排除してくれるってんだから、勝手にやらせて利用しようとカイが考えても、特に不思議じゃない。
 どっかの底が抜けた馬鹿のお蔭で、それは失敗に終わった訳だが。
 結果、手駒は全員捕らえられ、新たに誰かを雇っている余裕もなく、自分で動かざるを得ない状況に立たされたカイは、まんまと俺の張った罠にかかったのだ。
 そこまで説明して、俺はカイに念を押す。
「もう一度聞いておくけど、なんか反論はあるか?」
 カイは、ゆるゆると顔を上げて、力の無い目で俺を見上げた。
「……私は充分、用心していたんだ。連中の前では顔を見せなかったのに……奴等から、私の名前が出ることは無かった筈だ」
「うん、代わりに人をやって指示を与えてたそうだな。俺も、連中から直接あんたの名前を聞いた訳じゃねぇよ」
「なら、何故分かったんだ!?」
「そうね……タマタマじゃねぇの?」
 謙遜してる訳じゃなくて。
 この一年余りで俺が見聞きしたのと同じだけの事前情報を得ていれば、誰でも想像に難くなかったと思うね。
 この先の事まで含めてな。
「タッ、タマタマだとッ!?」
「いや、まぁ……他所から来た分、冷静に物事を見れたってことじゃねぇのかな」
 フォローしてやったのに、カイは余計に悔しそうな顔をした。
「くそっ……お前みたいな流れ者に……貴様さえ、横からしゃしゃり出てこなければ……」
 その台詞は、ホントはファングに言ってやるべきだと思うけどね。
「そうだな。俺達さえ来なきゃ、あんたは多分、目的を果たせたかもな」
 間を置くフリをして、少し深呼吸をする。
28名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 10:12:00 ID:+n+Pyqul0
支援
29CC 32-20/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:13:53 ID:vxg3cq/Z0
「あんたは、結構上手くやったと思うよ。けどさ――」
 こっからが、本番だ。
「上手く事が運び過ぎた。そう思ったことはねぇか?」
 わずかに、カイの眉根が寄った。
「人攫いのチンピラ共を、堂々と町中まで引っ張り込んで、それでホントにバレねぇと思ったかよ?悪ぃけど、領主サマの手下が揃ってそこまで無能揃いだなんて、俺には思えねぇな」
「え――?何を言ってるの、ヴァイス?」
 何かを感じ取ったのか、エフィが囁いた。
「俺が説明したようなことってさ、ホントにあんたが全部、自分で考えたことなのか?」
「……何を言っている?」
 カイも、エフィと同じ言葉を繰り返す。
「自覚はナシか……」
 かと言って、自我が無いようにも見えねぇとは、思ったより厄介だな。
「そんじゃ、まるで誰かに、あらかじめ自分の選ぶべき道を用意されてるみたいだ、と疑ったことは?……無ぇか。それに気付くくらいなら、こうして俺の罠にハマってねぇよな」
「どういう……ことだ?」
「いやね。手前ぇが他人を利用してるつもりで、あんたも誰かに利用されてたんじゃないかってハナシ」
 うわ、居心地悪ぃ。
 みんなして、きょとんとした顔で俺を見るんじゃねぇよ。
「そうだ、ファング――お前には、覚えがあるだろ?これと似たような手口にさ?姿を隠して裏から操る、みたいな……ほれ、イシスとかで」
「いや、知らん」
 あっさり否定すんじゃねぇよ。
 お前、ちゃんと話を聞いてたか?
 立ったまま寝てたんじゃねぇだろうな?
「まぁ、いいや……俺が言ってること、あなたなら分かるんじゃないですかね、ラスキン卿?」
「えっ!?わ、私かね?」
 お前ら、いきなり先生に指名された出来の悪い生徒じゃないんだからさ、いちいちびっくりすんなよな。
 なんか、独りで浮いたことを言ってる気分になってきたぜ、畜生。
30CC 32-21/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:17:06 ID:vxg3cq/Z0
「ちょっと、ヴァイス!?あなたまさか、お父様が本当の黒幕だった、なんて言うつもりじゃないでしょうね?」
 エフィが、俺を睨みつける。
 いや、そうなんだけど。
 少なくとも、なんらかの形で関わってる筈なんだ。じゃないと、事が上手く運び過ぎてる。
 カイの計画がバレても、ラスキン卿は知らんフリして切り捨てるだけで傷つかない。痛くも痒くもない立ち位置にいるのが、却ってアヤシイ……とか思ってるんですが。
 ラスキン卿の驚きは、芝居には見えなかった。
 返事に窮していると、さらにエフィに詰め寄られる。
「本当にそうなの!?どうして、そんな馬鹿なことを思ったのよ!?目的は何!?お父様が人攫いに協力して、なんの得があるっていうの!?」
 おかしいな。ここは、俺がキメる場面の筈だったんだが。
 ああ、もうしょうがねぇ。
 ちょっと自信が揺らいでるけど、当初の予定通り――
「ああ――ッ……うん、目的ね……」
 そちらに目を向けて、一瞬絶句した。
 やっぱりだ。
 途中はどうあれ、最終的なトコロでは、俺は間違ってなかった。
「それは……あんたが説明してくれるんだよな?」
「は?」
 怪訝な顔をしたエフィが、俺の視線を追い――
 俺に集まっていた注目が、そちらに移動して――
 その場に居たほぼ全員が、同時に息を呑んだ。
31CC 32-22/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:22:27 ID:vxg3cq/Z0
「キャハハハハハハハハ」
 女の哄笑が、室内に響き渡る。
「ファング!!」
 俺が言うより早く、ファングはアメリアと姫さんを庇って位置を変えていた。
「こっちへ!!」
 俺はお嬢の腕をひっ掴んで抱き寄せ、ラスキン卿に声をかける。
「キャハッキャハハハハハハハハハハハハハハッ」
 ひとりしき響いた耳障りな哄笑は、はじまった時と同様に、ぴたりと唐突に止んだ。
「アァ、面白かったァ――アレ?これッて、面白い、でイイんデショ?だよネ?」
 声は、ついさっきまでファムが居た場所から聞こえていた。
 だが――
 そこに、ファムは居ない。
 見知らぬ女が、奇妙に人を不快にさせる笑みを湛えながら、覗き込むようにして俺を見詰めていた。
 見かけ上の年齢は、ファムと同じくらいだろうか。だが、容姿はまるで違う。
 いつ髪留めをほどいたのか、ゆるく波打った艶やかな黒髪は、明らかにファムよりも長かった。
 その顔つきも、似ても似つかない。純朴さを演出していたそばかすは、透けるような白い肌のどこにも浮いておらず、どちらかというと平坦だった目鼻立ちも、彫りの深い派手な顔立ちに変貌している。
 そして、女の出現と入れ替わりに、ファムの姿はどこにも見えなかった。
 部屋の扉は、さっきからずっと閉じられたまま、一度も開いていないのに。
 つまり――
「なに?なんなの……誰なのよ?」
 うわ言のようなエフィのつぶやきが、背中に聞こえた。
 俺が応えるより先に、紅をひいたように赤く濡れた唇が蠢く。
「ネェネェ、アナタがヴァイス君なんデショ?だよネ――?」
 黒い線で縁取ったみたいにくっきりとした、睫毛の長い大きな瞳が俺を覗き込む。
 焦点が合っていないような、妙に人を不安にさせる視線。
「惜ッしい、ケド、ザァンネン。アナタ、考え過ぎィ〜」
 クスクス笑う。
「そのヒトには、都合の悪いコトに目を瞑ってモラッタけどサァ、それダケなのに、キャハッ、おッかシィの」
 女はラスキン卿を指差しながら、そう言った。
32名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 10:22:45 ID:bTTkqP+eO
紫煙
33CC 32-23/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:27:02 ID:vxg3cq/Z0
「ケド、チョット面白い。ネェネェ、ドウしてアタシの正体が分カッたの?」
「しょ、正体って?」
 俺の服の背中を、エフィは強く握り締めていた。
「魔物か」
 ファングが呟いた。
「キャハッ、今サラ何言ッテんの、アンタ達!?コイツらアッタマ悪いヨ?ニッブいよネェ、ヴァイス君?」
 俺に同意を求めんな。
「な、なんなのよ……気味が悪い。あなた、どこから出てきたのよ!?」
 エフィは、俺の服を引いた。
「ううん、そんなことより……ねぇ、ファムは?ファムはどこに行ったの、ヴァイス?」
 エフィの口調には、とある予感が含まれていた。
「……あいつが、化けてたんだ。ファムに」
「――そんな事って……」
 予感が的中したのだろう。言葉とは裏腹に、エフィの声音には納得の気配があった。いや、信じられないが、そうとしか思えない、といったところか。
「本物のファムは、どうした?」
 ファムに化けていた女――魔物は、ひどくつまらなそうな素振りを見せた。
「ドウデモいいデショ、そんなコト。ソレより、ネェネェ、聞カせてヨ?」
「こっちの質問に答えるのが先だ」
「フゥン?」
 あれ、なんだ?
 声が震えないようにするのに一苦労だ。
 急に部屋が狭くなった気がする。
 息苦しい。
 ニックとの戦いの時に感じた殺気とは違う、もっとねばりつくような不気味な気配――名付けるならば、妖気。目の前の魔物が振り撒いているソレが、圧力となって全身を襲う。
 見た目より、強力な魔物なのか。
「んッ……はッ」
 喉が痙攣したようなエフィの呼吸を、背中越しに聞いた。
 うまく息を吸ったり吐いたり出来ないことに混乱している気配が、握られた服越しに伝わる。
 ファングは――流石に、平然としてやがんな。
 馬鹿が自信満々なら、アメリアが不安を抱く筈もない。
 お?姫さんまで、臆した様子もなく、気丈に魔物を睨みつけてるじゃねぇか。
 やれやれ、頼もしい連中だね――知らず気圧されかけていた俺は、平静を取り戻した。
34CC 32-24/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:31:47 ID:vxg3cq/Z0
「ドォしたッけナァ……ナンチャッテ。ヴァイス君には、分カッてるんデショ?」
 人攫い共に売っ払われた他の被害者と、同じ運命を辿ったってのか。
 エフィの手前、口に出すのを躊躇っていると、魔物はまた甲高い笑声をあげた。
「キャハハッ、まァた考え過ぎてるデショ?ザァンネン、今度もハッズれェ。今ゴロは、自分の部屋でノンキに寝てる筈だヨ。アタシがズット化けてた訳じゃァなくッて、タマに入れ替わったりシテタからネェ」
「なんだと?――なんでだ?」
 いや、本物のファムが無事なら、それに越したことはないんだけどさ。
「分カッテるクセにィ。ジッケンだヨ、ジッケン」
 実験――その言葉は、妙に腑に落ちた。
「ソレより、ネェネェ、聞かせてヨ。アタシはサァ、上手く化ケてたツモリだったんだケド?ファムってコの記憶も覗イテ、頭もちょっとイジってサァ、入れ替ワッテも、ソコのアッタマ悪い女ハ、全ッ然気付かナカッたんダヨ?ナノニ、ナンでヴァイス君には分カッたの?」
「いや、なに。この件に魔物が絡んでることは、分かってたんでね」
「ヘェ――?」
「だってよ、あの人攫い共がバハラタの辺りを荒らしてた時から、連中のお得意様は、あんたら魔物だったんだろ?」
 ロマリアでアホの王様の頼みを聞いて、『金の冠』の奪還に向かった際に初めて遭遇した頃から、カンダタ共は既に魔物とツルんでいた。
 そして、ポルトガで出会った、まるで魔物の――そう。実験材料として使われたみたいな、昼夜で入れ違いに動物に変化してしまう男女の件。
 目的はどうあれ、魔物の中には人間を理解しようとしている連中がいるんじゃないか。
 そんな俺の疑念は、イシスで再開を果たした、あの黒マントの魔物によって――彼我の絶望的な隔絶を痛感させられたのと同時に、何故か――もたらされたものだった。
『野郎でもオイボレでも、ガキや女と同じカネで買ってくださる、そりゃぁ太っ腹なお大尽がいなさるんでよぉ』
 だから、バハラタ近くの寺院跡で下呂助がそう言った時に、ピンときたのだ。
 そしてここでも、連中の上得意が魔物だったことは、この前、同じ下呂助を脅して確認してあった。
35名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 10:34:21 ID:bTTkqP+eO
私怨
36名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 10:34:39 ID:oYCm4GKk0
初遭遇!
37CC 32-25/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:37:45 ID:vxg3cq/Z0
「カイとの連絡を仲介してたのは、男好きのする若い女だって、一味の一人が言ってたぜ。俺の考えだと、それはファムがする筈の役回りなんだけどさ――」
 お嬢と一緒になんとかいう島国から来たってヤツに会いに行く道すがら、ファムとばったり出くわしたことを思い出す。あの時も、俺達の動きを連中に伝えてたんだと思う。
「けど、ファムはどう見たって、『男好きのする』なんて形容が思い浮かぶタイプじゃねぇ。だから、こりゃあどっかで絡んでる筈の魔物が化けてんのかね、と当たりをつけてたんだよ」
 尤も、俺は下呂助の意見にゃ頷けねぇけどな。
 目の前の魔物は、確かに美人で艶っぽいと言えなくもないんだが――どうも、不自然なんだ。
 人間の仕草の外面だけを正確になぞってるというか、こういう感情を他人に向かって表現したい時は、このように表情を形作るんだ、というのを知識としてお勉強しただけというか、外見と中身が一致していないというか。
 精巧に作られた操り人形か、はたまた動く死体か――ともあれ、躰の持ち主ではない他の誰かが動かしている、そんな風に感じさせる不気味な違和感。
 おそらく本人は、これでも大真面目に「人間らしく」振る舞っているつもりなのだ。
 だが、そうであるほど、違和感はより一層くっきりと浮かび上がっちまうみたいに思えた。
「エッ!?理由ってマサカ、ソレだけなの?」
 魔物は、少し大袈裟なくらいに目を剥いてみせた。
 ファムに化けていた時よりも、今の方がひとつひとつの仕草は自然に映るのに、より強い違和感を覚えるのは何故だろう。
 多分――他人の真似をすることは出来ても、自分自身を人間としてどう表現していいのか、分からないのだ。
 そりゃそうだ。人間じゃねぇんだから。
「まぁな。悪いかよ」
 実際は、確信していた訳じゃない。
 俺に迷いを捨てさせたのは――
『いえ。たとえ、カイ様が誰か他の人間を好きになったとしても、私はあの方を嫌いになったりはしませんから』
 どこかで耳にしたような、あの台詞だった。
「ひとつ、忠告しといてやるよ」
 まるきり当てずっぽうだったと思われてもシャクなので――いや、まぁ、そうなんだけど――俺は、つい口を滑らせた。
38CC 32-26/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:43:32 ID:vxg3cq/Z0
「ン?なにカシラ?」
「あんた、自分で思ってるより化けるのヘタだから、気をつけた方がいいぜ?」
 言葉の意味が分からなかったように、少し間を置いてから、魔物はニィッと紅唇の両端を吊り上げた。
「ンフッ……いいヨ、ヴァイス君。サスガ、お父サマが顔を覚えたニンゲンだよネ……」
 舌がちろりと唇を舐める。
 ヤバい、喰われる。
 そんな思いが一瞬脳裏を過ぎったが、魔物はしなりと片手を前に差し出して、誘うように自分に向かって指を折り曲げただけだった。
「折角、お勉強に来たッてユウのにサァ、アレもコレもカンタンに上手く行き過ぎちゃッテ、ニンゲンってアッタマ悪いのバッカなのかと思ッちゃうトコだったヨ」
 ふらり、とカイが立ち上がった。
「デモ、アタシ、ソンナに化けるのヘタかなァ?」
 魂が抜けたみたいなカイの足取りは、ひどくゆっくりとしていて、誰かに何か危害を加えるような動きではなかった。
「ソンナこと無いデショ?」
 ファングと目配せを交し合うだけで、ついつい口も手も出しかねている内に、カイは魔物の元に辿り着いてしまう。
 魔物の指がカイの戒めにかかったかと思うと、いとも簡単に解けていた。
 爪で縄を切ったのか?
「ンフッ……」
 艶然とはこういうものだ、みたいな微笑みをこちらに向けて、魔物はカイの首に両手を回す。
「ジャァさァ……コレなら、アタシ、ニンゲンっぽく見えるデショ?」
 紅い舌がカイの顎を這い、唇に吸い込まれた。
 くちゃっくちゃっと、舌が絡み合う音がする。
「アハァ……ンッ……」
 室内は、異様な雰囲気だった。
 蕩けるような魔物の吐息の熱さと、呆気に取られた俺達の間に出来た温度差が凄い。
 唐突に眼前で繰り広げられた卑猥な光景から、唖然として目を離すのを忘れていた。
「アメリア、キスじゃ!キスしておるぞ!?」
 妙に嬉しがってる風なひそひそ声が、横から聞こえた。
 ベットにぺたんと尻を乗せて、後ろから姫さんを抱き締めているアメリアの膝が、ぱしぱしと叩かれる。
 キスという行為を知っていることを得意がってるみたいなエミリーの様子に、思わず噴き出しそうになった。
 いや、姫さん。ここは、そういう反応を示す場面じゃねぇだろ。
39名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 10:46:45 ID:+n+Pyqul0
支援
40CC 32-27/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:50:03 ID:vxg3cq/Z0
「ハァッ……ネェ……もっとォ……」
 いつの間にやら、カイは後ろから魔物を抱きかかえていた。
 魔物は顔を後ろに向けて、カイの唇を貪り続けている。
 ブラウスのボタンを外した魔物がカイの手を握り、自分の胸へと誘う。
 カイの逆の手がスカートをたくし上げ、丸見えになった小さな下着の奥へと滑り込む。
 背後から嬲られる格好で、魔物は自らも胸を揉みしだき、もう一方の手でカイの股間をまさぐった。
 むぅ。やっぱり、目が離せん。
 だって、ファムに化けてた魔物が身に着けてるのは、いまだにメイド服のままなんだぜ。
 どちらかというと清楚な印象を抱かせる服装と、喘ぎながら魔物が見せる痴態の隔たりが、淫靡な空気をことさらに強調してるっつーか。
「んァッ……キモチイイョオ……」
 猫が鳴くように、魔物が嬌声をあげた。
 カイが弄っている下着の中から、くちゅくちゅと音が溢れ出す。
 これは、いかん。
 姫さんの教育上、よくねぇな。
 俺は、ニ、三度頭を振って、すごい頑張って目を逸らした。
 いいか、姫さん。本物の人間の女は、こんなにすぐ、あんなに音がするほど濡れねぇんだからな?
「ファング」
「……ああ」
 少し遅れて返事があった。
 ファングは急に我に返ったように、びくっと俺を振り返る。
「なんだ?」
 おやおや?
「……何をニヤニヤしている」
「いやぁ?べっつにぃ?」
 憮然とした表情で、ファングは俺を睨みつけた。
 怒ってみせても、顔が赤いぜ、ファング?
 いやぁ、お前も男なんだねぇ。
 なんか知らんが、ちょっとホッとしたよ。
41CC 32-28/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 10:54:38 ID:vxg3cq/Z0
「ンフッ……ネェネェ……アタシ、ニンゲンみたいデショ?」
 媚態を見せつけながら、魔物が色っぽい声を出した。
 今や、服の前は完全にはだけて、しっとりと吸い付くような肌をカイの手が這い、柔らかそうな胸が揉まれる都度に形を変えている。
「アハァッ……アソコ、オッキクなっちゃったデショ?」
 魔物は後ろ手にカイのソレを触りながら、ねっとりとした視線で俺とファングを見比べる。
 うむ。否定はしねぇよ。俺はな。
「まぁな――」
 服の背中が引っ張られて、「いやらしい」とかいう呟きが聞こえた。
 いや、違くて。
「さっきは、ああ言ったけどさ。確かに、ここまで人間っぽい魔物には、はじめてお目にかかったよ」
「ンッ……アハァ……デショ?……ダッテ、アタシ、第三世代ってヤツだモン」
「第三世代?」
「よくシラナイ……ネェ、ソレヨリ、アナタ達もシテ欲しいデショ?」
 ゴクリ……うわっ、だから、背中を引っ張るんじゃねぇよ。
 また、横から姫さんのひそひそ声が聞こえる。
「アレは、何を『する』と言っておるのじゃ、アメリア?」
「えっと……それは、ですね……」
「アメリア!!姫に余計なことを教えんでいい!」
「は、はいぃっ!!」
 真っ赤な顔をしてモジモジしつつも、魔物とカイの絡みをマジマジと見詰めていたアメリアは、ファングに怒鳴られてびくんと背筋を伸ばした。
 目を覆った片手の指の隙間から、やはりしげしげと覗いていたエフィも、同時にわたわたと慌てて視線を逸らす。
 いや、もう遅いから。
 カイから奪った短剣を握り締めて、ファングが一歩足を踏み出した。
「ンンッ……ハァ――ナァニ?最初は、アナタから?」
「黙れ。そのふざけた真似を、今すぐ止めろ」
「ヴァイス君も、一緒でイイヨ……タクサンされるの、スゴい好キ……アハァッ……キモチイイから……」
「……素っ首落としてやる」
 ちょっとからかわれたくらいでムキになるとは、案外可愛いな。
 ファングがもう一歩踏み出すと、魔物はするりとカイの背後に隠れた。
「ヤァン。アタシ、乱暴なのキライ。助けてェ、カイ」
 どん、とカイの背中を、ファング目掛けて突き飛ばす。
42CC 32-29/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:00:06 ID:vxg3cq/Z0
「む――?」
 カイにしがみつかれたファングが、一瞬動きを止めた。どう見ても肉体派じゃないカイが、ファングの馬鹿力に拮抗している――ように見えたが、それはホンの僅かな間だけだった。
「すまんな」
 すぐにあっさりと、カイは床に投げ捨てられる。だが、それで充分だったのだ。
「ちっ!!」
 すかさず振るわれたファングの短剣は、間に合わない。
「きゃぁっ!!」
 悲鳴をあげたのは、エフィだった。一瞬の隙をついて、魔物が手足を使って異常な速さで足元の床を這い抜けたからだ。
 続いて、ガシャンと窓硝子の割れる音が響く。
 え――?
 逃げんのかよ!?
「何をやっている、『ヴァイス』!!」
 ファングの怒声が響く。
 悪い。ぼんやり見てたわ。俺、すげぇ役立たずだな。
 窓の縁に足をかけて、魔物は振り返った。メイド服のスカートがめくり上がって、また中が見えそうだ――いや、そうじゃなくて。
「ファングとか言ったネ?ヨクモ、アタシの顔に傷ツケテくれたジャナイ……」
 魔物の頬が切れて、そこから血が流れていた。白い肌と赤い血の見事な対比に、妙にドキッとさせられる。
「アタシ、殺サレるの大ッ嫌イ」
 シィッ、という威嚇音のような音が、魔物の喉から漏れた。ファングを睨む目には、強い光。
 それまでの、どこか借り物のようだった感情表現とは違って見えた。
「ソレに、女ノ顔に傷ツケルのは、トッテモイケナイコトなんデショ?許セナイ……アンタのコトも、覚エテおくヨ」
 長い舌が紅唇からぬるりと這い出して、己の血をゆっくりと舐め上げた。
「ダカラ、ヴァイス君も、アタシのコト、覚えててネ」
 どういう理屈だ。
 造作はどう見ても人間なのに、ひどく非人間的な笑みを俺に向けたまま、魔物は窓から外に身を乗り出した。
「アタシ、名前がツイテるんだヨ?スッゴいデショ?」
 にんまりと笑う。
「アタシの名前、ニュズって言ウの。今度は、アナタにもバレないヨウニ上手くバケてみせルから、楽シミにしててネ」
 鋭く空気を切り裂いて、短剣が室内の明かりを照り返して軌跡を描いた。
 ファングが魔物目掛けて投げつけたのだ。
 危ねぇな、この野郎。
 だが、わずかに早く細身の姿は夜の闇へと消え失せ、軌跡は虚空を貫いた。
43名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 11:01:02 ID:bTTkqP+eO
支援
44CC 32-30/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:06:23 ID:vxg3cq/Z0
 ファングの治療はアメリアに任せ、気絶したカイを人を呼んで運ばせると、なんだか一気に疲れに襲われた。
 というか、気が抜けたのかね、こりゃ。
「君には、礼を言わねばならんのかな?」
 ラスキン卿が、いまだに困惑した口調で、俺に話し掛けてきた。
 あの魔物は、都合の悪いことに目を瞑ってもらっただけ、とか言ってたな。見た限りでは、その自覚すら無いらしい。俺の考えがとんだ勇み足で、ラスキン卿は黒幕の一人なんかじゃなかったとしたら、混乱するのも無理はない。
 正直、いきなり魔物なんぞに出て来られて、何がなんだか分からなかっただろう。
 こっちこそ失礼な勘違いをしてまして、とかしどろもどろに返してから、改めて自分の考えを説明しようとしたんだが、どうにも上手く頭が働かなかった。
 さっきのニュズとかいう魔物がもたらした動揺が、俺にもまだ残っているらしい。
 だから、要領を得ない俺の話に見かねたラスキン卿が、もう夜も遅いし、詳しい事はまた明日にしようと提案してくれたのは、有り難かった。
 エフィは、ラスキン卿と一緒に本邸に戻らなかった。
 ずっと黙りこくって、いまだに俺の服の裾を握り締めている。
 また怖がらせちまったかね。俺でさえ、ちょっとビビったくらいだもんな。
 と思ったんだが、どちらかというとスネた顔つきだ。
「えっと……大丈夫か?」
「私はね。なによ……あんな、気味の悪い……いやらしい」
 ごにょごにょと口の中で呟く。
 何を言っとるんだ、こいつは。
 疲れてるので、無視することにする。
「部屋に戻らないのか?ずっと起きてたんじゃ、もう眠いだろ」
 もう一度声をかけると、じろりと睨まれた。
「……ヴァイスが、部屋まで送ってちょうだい」
「へ?」
「聞こえたでしょ?」
 睨まれたまま、苦労して微笑みかける。
「ああ、うん。喜んで」
「そ。じゃ、行きましょ」
 ふっと険のとれた顔で応じると、エフィは俺の服を握ったまま扉に向かって歩き出した。
 引き摺られながら、ちょっと送ってくると姫さんに言い置いて、一緒に部屋を出る。
45CC 32-31/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:12:31 ID:vxg3cq/Z0
「あ――ちょっといい?」
 道すがら、エフィはずっと黙りこくっていたが、途中でようやく口を開いて俺に尋ねた。
 返事を待たずに服を引っ張って、屋敷の中でも足を踏み入れたことの無い方へと俺を連れて行く。
 多分、使用人の部屋が並んでいる一角なんだろう。とある扉の前でひとつ深呼吸をして、俺の服を握り締めたまま、エフィは恐る恐る押し開いた。
 中を覗き込むと、狭い室内のベッドの上で、見覚えのある顔が寝息を立てていた。
 ほぅ、と安堵の溜息を吐くエフィ。
 魔物の言葉に偽りはなく、ファムは無事なようだった。と言っても、魔物に操られてた訳だから、しばらくは監視をつけて様子を見る必要があると思うけどな。
 まぁ、その魔物は既に逃げちまったことだし、とりあえず今はいいか。
「行きましょ」
 静かに扉を閉じたエフィに、また服を引っ張られて歩き出す。
 次にエフィが口を開いたのは、自分の部屋まであと少しというところまで来た時だった。
「……ねぇ」
「ん?」
「もしかして……あなたには、はじめから全部分かってたの?」
 はい?
「最初から、全部分かってたから……初対面のカイにも、あんな失礼な態度で接してたの?」
 いや、そんな訳ねー。
 あの時は、単にムシャクシャしてたから――
「……まぁな」
 やっちまった。
 なんで俺はこう、見栄を張っちまうのかね。
 いや、だってさ。ホントのところは、ほとんどがファングの手柄な訳ですよ。それなのに、折角過大評価してくれてんだからさ、その尻馬に乗らねぇ手はねぇっていうか、そういう事にでもしておかねぇと、俺って何もしてないことになっちまうっていうか――
「そうなんだ……凄いね」
 エフィは囁くように、そっと呟いた。
 何かの皮肉だったら心も痛まないんだが、この声音はそうじゃねぇな。
 あんまり感心しないでくれよ。
46名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 11:15:27 ID:bTTkqP+eO
私怨
47CC 32-32/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:18:20 ID:vxg3cq/Z0
「お父様よりも先に、私こそお礼を言わなくてはいけないわね。あなたが、あの魔物の正体を見抜いてくれなかったら、大変なことになっていたかも知れないんでしょう?」
 まぁ、そうなるのかな。
 エフィの気持ちを別にすれば、カイとの結婚はそれほど無茶な話じゃなかったと、今でも思ってはいるけどさ、それが魔物の主導だってのは、流石にマズいだろう。
 それにしても、聞き出す前に逃げられちまったが、あの魔物は目的はなんだったんだ?
 まさか、本当にニンゲンのお勉強が目的だったってのかね。
「本当は、私が最初から、お父様にはっきりと気持ちを伝えてお断りするべきだったんだわ。それを代わりに、ヴァイスに解決してもらったようなものだものね」
 エフィは立ち止まって、小さく溜息を吐いた。
「でも……何故だか、言えなかったのよ。私の立場を考えれば、この土地の人と婚姻関係を結ぶのは、悪い話ではなかったわ。だからこそ、お父様もご検討なさっていたのだし……私だって、そのくらいは分かっているのよ?」
「うん」
「でも……今回の縁談で、はじめて自分の気持ちに気付いたって話、したでしょ?」
 自分の子供にも、自分と同じ髪や目の色でいて欲しいってアレか。
「お断りするにしても、理由を尋ねられて、そう答える自信が無かったのよ。だって……お父様は、きっと私の気持ちを分かってくださるから。だからこそ……ね。私達が、偏見を持っていると認めてしまう気がして、嫌だったのよ」
 なんと答えていいか分からずに、俺は「そっか」とか適当な相槌を打っていた。
「でもね……」
「うん?」
「なんだか、今になってみると、ずいぶんつまらないことに拘っていたんだなって、そんな気もするの」
 エフィの声は、少し明るくなった。
「そうじゃないのよ。私が嫌だったのは、そういう事じゃなかったんだって」
 伏目がちだった瞳が、俺を見上げた。
「あなた、言ったでしょ?重要なのは、相手の事を好きかどうかだって。それが最初だって」
 マズい。
 そんなに深く考えて言った台詞じゃないんだが。
 思いがけずに、自分の言葉が相手に重く受け止められちまって、冷や汗をかいている俺の内心とは裏腹に、エフィの顔には控えめな笑みがこぼれていた。
48CC 32-33/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:23:18 ID:vxg3cq/Z0
「その通りなんだと思うわ。私は結局、自分が好きでもない人と結婚するのが嫌だっただけなのよ。でも、自分の立場を考えると、それは悪い話ではなくて……だから、自分が納得できるような、もっともらしい理由を、自分で考え出してしまっただけなんだわ」
 ちょっと、照れたような素振りを見せる。
「だって、これでもね……私も、女の子ですもの。す、好きな人との、その……す、素敵な恋愛に、憧れたっていいでしょう?」
「あ、ああ、うん。なんも、悪くねぇよ」
「でしょう!?私……大好きな人とだったら……お父様の前で言ったことは、その場凌ぎの嘘じゃなくて、私の本心だったんだわ。自分の気持ちが、一番大切なのよ。それに気付かせてくれたことにも、本当に感謝しているの」
 困ったな。
 そんな大層なつもりじゃなかったのに。
 けど、今まで立場を慮って自分の気持ちを抑えていた反動と若さが相俟って暴走してるだけだ、なんて言えねぇしな。
 最後にきゅっと俺の服を握ったエフィの手が、するりと離れた。
「ありがとう……ヴァイス」
 殊勝なことを言って、可愛らしくはにかむ。
 俺は――視線が泳がないようにするだけで、精一杯だった。
 ひどく居心地が悪いんだが、ずっとツンケンされていたエフィに素直に礼を言われて、悪い気がしない自分がいるのも分かって、それが俺を余計に落ち着かない気分にさせる。
「送ってくれて、ありがとう。ここでいいわ」
 なんとも反応できない俺に、エフィはそう言った。
「おやすみなさい」
「ああ――おやすみ」
 思いの外あっさりと歩き出したエフィは、二、三歩進んだところで、くるりと振り向いた。
「そうだわ」
「ん?」
「……お休みのキスでもする?」
「へっ!?」
 迂闊にも、呆気に取られちまった。
 エフィは、今度こそしてやったり、という笑顔を浮かべた。
「嘘よ。冗談に決まってるでしょ。ふざけないで。誰が、あなたなんかと」
 ふふっと笑って、背中を向ける。
「それじゃ、また明日」
「ああ、うん……また明日」
 エフィはもう振り返ることなく、自分の部屋に入っていった。
 それを見送ってからも、俺はしばらく阿呆みたいに立ち尽くしていた。
 なんだか、惨敗した気分だった。
49CC 32-34/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:27:27 ID:vxg3cq/Z0
 欠伸をしながら扉を開けると、エミリーは既にベッドで丸くなっていた。
 さっきカイを引っ掛ける為に使った部屋ではなく、昨日まで寝泊りしていた元の部屋だ。
 静かに毛布の裾を上げて隣りに潜り込むと、姫さんが身じろぎをした。
「……あやつは大事なかったか、ヴァイス?」
「あれ、起きてたのか。うん、まぁ、心配ねぇだろ」
「……そうか」
 いらえは、かなり眠そうだった。もう明け方近いもんな。
「そういや姫さん、今日はずいぶん大人しかったな」
 いつもみたいに、もっとなんだかんだと嘴を突っ込んでくるかと思ってたんだが。
「……じゃって、話がよく分からなかったのじゃ」
「ん?ああ、そっか」
「いや、話の内容は、ちゃんと分かったのじゃぞ?」
 瞼を懸命に持ち上げて、俺を見上げる。
「馬鹿にするでない。お主らが喋っておった言葉の意味くらい、ちゃんと分かったのじゃ……じゃが、なんと言うのじゃ?あやつがケッコンしたくない理由もよく分からぬし、そもそもなんで好きな者同士でない者をケッコンさせようとするのかも、よく分からぬ」
 欠伸を噛み殺す。
「……掟によってケッコンが許されぬ、というのなら、まだ分かるのじゃがな。それとは、まるで逆であろ」
「……まぁな」
「人間の好きや嫌いを理解する良い機会じゃと思っておったのじゃが……分からぬ上に分からぬりくつを重ねられて、なんだかさっぱり分からなかったのじゃ。さっきアメリアに尋ねても、どうにも要領を得ぬしな」
 ああ、そうなんだ。
「なんというか……ひどく離れた場所から芝居を見せられておるようで、口を出そうにも、まるで現実味が無くてな――」
 姫さんは、急に顔を顰めた。
「じゃが、あの魔物は別じゃぞ!?わらわも、近くで魔物を見たことは何度もあるが、アレは特別イヤな感じがしたのじゃ。わらわは、あやつは嫌いじゃ」
「うん。俺も、もう会いたくねぇなぁ」
「……じゃが、お主には、また会いにくるようなことを言っておったぞ?」
 揶揄する口調だった。
 止めてくれ。願い下げだね。
 これ以上、厄介事を抱えたくねぇよ。
50名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 11:32:28 ID:bTTkqP+eO
しえん
51CC 32-35/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:33:53 ID:vxg3cq/Z0
「……お主も、早く寝るがよい。わらわは、もう眠いのじゃ」
「ああ、悪ぃ。おやすみ」
「うむ。おやすみ」
 再びもぞもぞと丸くなった姫さんに習って、俺も目を閉じたが、眠いのに何故だか寝つけなかった。
 こんな時、止めようと思っても、勝手に思考を弄んじまうのが、俺の悪い癖だ。
 やっぱり、あいつらとは違うんだよな。
 ふいに、そんな文句が頭に浮かぶ。
 すっかり忘れかけていた感覚だが。
 ファングやアメリア、そしてエフィと行動を伴にして、俺は思い出していた。
 あいつらは、いいよな。
 ぼんやりと、そんなことを考えている。
 あいつらは、世の中に逆らってない。
 世の中にちゃんと立ち位置があって――少なくとも、あいつらの考え方や行動は、周りから後ろ指をさされるような代物じゃない。
 ファングはもちろんのこと、エフィだって、ちゃんと自分の家柄や立場に誇りを持っていて、それはあいつの生きている世間においては肯定されるものだ。
 お嬢様として慕われてるし、その立場をあいつは嫌ったりしていない。
 いや、もちろんさ。生きてりゃ世の中の理不尽に出くわすこともあるだろうし、あいつらだって、それを不満に思う場面もあるだろう。今回のエフィみたいにな。
 けど、そうじゃなくて、もっと根っ子の部分っていうか――
 きっと、あいつらが自ら望んだ道は、世の中に邪魔をされない。
 向きが、おおよそで合っているというか。
 あいつらにとって、世間や常識は敵対するものじゃなく、だからこそ、自分の一番根っ子の土台の部分を、世界中から否定されるみたいな、ひとりぼっちの気分を味わうことも、きっと無いんだ。
 わざわざ自分を否定することもない。
 そういうのって、無意識の安心感があると思うんだ。
 それは、皆と同じだから、という安心感とは少し意味が違っていて――特にファングなんて嫌でも目立っちまうヤツだし、周囲に埋没するようなヤツじゃねぇから、それはそれで、あいつなりの苦労もあるとは思うんだけどな。
 ただ、なんていうか。
 世界と自分の、どちらが間違っているのかなんて、馬鹿なことを疑う必要がない。
 けど――
 あいつらは、そうじゃない。
 シェラはもちろん、リィナだって――
 そして、あいつも――
52CC 32-36/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:37:35 ID:vxg3cq/Z0
 俺か?
 俺は――何も無い。
 世間がよしとすることを、そのまま素直に受け入れるのもシャクだが、かと言って面と向かって逆らう根性も無い。それに取って代わるような、自分を支えるべきものも、何ひとつ自分の裡に築けていない。
 何も無い、がらんどうの、薄っぺらい、単なるへそ曲がり。
 それが、俺だ。
 簡単に言や、つまはじき者だよ。
 まぁ、でも、だからこそ、さ。
 せめて、俺みたいな人間くらいは、あいつらの味方になってやりたいじゃねぇか。
 俺はぼんやりと、そんなことを考えていた。
「なぁ、エミリー」
「……む〜?」
 寝言みたいな返事が聞こえた。
「次の仕事が終わったら、一緒にあいつらを――」
 俺は気付かれないように、そっと唾を呑み込んだ。
「――マグナ達を、探しにいくか?」
 久し振りに口にした名前は、予想以上に俺の気持ちを波立てた。
 だが、悪い気分じゃない。
「……本当じゃな?」
「ああ。本気だぜ」
「……よかったのじゃ……頑張ったのじゃな、ヴァイス……わらわも……うれし……」
 頑張った?って、どういう意味だ。
「約束……じゃぞ……」
 もぐもぐと口を動かして、それが姫さんの限界だった。
 もう、すっかり眠っちまってる。
 この調子だと、夢と区別がついてないかもな。
 まぁ、いいか。
 綺麗な銀髪を撫でながら、俺も妙に嬉しかった。
「ああ。約束だ」
 今度は、目を瞑れば、すぐに眠れそうだった。
53CC 32-37/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:42:18 ID:vxg3cq/Z0
 そして、今――
 俺達は、例の島国に足を踏み入れている。
 ジパングとか言うらしい。
 俺達がエフィの故郷を出発したのは、あれから半月ほども経ってからだった。
 まぁ、色々あってさ。
 事件の後始末もあったし、それを終えてからも、なんだかんだあったんだよ。
 暇を持て余したファングの馬鹿は、近辺の魔物掃除を手伝うとか言い出すしさ。
 それに、ここは島国だから、辿り着くには当然のこと海を越える必要があって、それにも時間を喰われちまったし。
 そんなこんなで、結局ひと月余りが経過していた。
「ねぇ、ほら、ヴァイス。見てよ、あの大きな赤い柱。あれは、なんの為に建ってるのかしら?」
 絡めた腕を引っ張って、エフィに無理矢理そちらを向かされる。
 何の目的で建っているのか見当もつかない、馬鹿デカい柱の周りでは篝火が焚かれていて、夜の闇を照らしていた。
 灯りを受けて、エフィの髪が煌めいている。
 そうなんだよ。
 お嬢も、ついてきちまってるのだ。
 あと、ついでに言えば、姫さんも。
 もちろん、俺は二人とも、あの町で待っててもらうつもりだったんだけどさ――
「ホントに、不思議な国ねぇ。着てる物も風変わりだし……アリアハンに行った時は、ここまで違いを感じなかったわ。こっちの方が、よっぽど近いのにね」
 下から覗き込むように俺を見上げて、ふふっと微笑んだ。
 まったく、人の気も知らねぇでさ。
「なんだか、不思議……世界はとても広くて、私の知らないことなんて、まだまだ沢山あるのね」
「……そうだな」
 気の無い返事に怒ったのか、エフィはぷくーっと頬を膨らませた。
「なによぉ。もう、ヴァイスったら、まだ私がついてきたことを怒ってるの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどさ」
「嘘。だったら、なんでさっきから上の空なのよ」
「ああ、悪ぃ」
 自分がないがしろにされていると感じると、すぐスネやがるんだ、こいつ。
 なんだかんだで、俺はエフィと一緒にいることが多かったから、ここんトコ意識的に注意してたんだけどな。ちょっと気を抜いてたわ。
54名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 11:45:17 ID:bTTkqP+eO
私怨
55CC 32-38/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:48:13 ID:vxg3cq/Z0
 なんかね。アメリアが姫さんまで巻き込んで、余計な気を回してやがるようにも思えるんだよな。
 いや、別に嫌な訳でもないし、俺もあえて目を瞑ってた部分もあるんだけどさ。
「なによ、もぅ!せっかく……りなのに」
 ごにょごにょと口の中で呟くと、エフィは絡めていた腕を解いて、俺から離れた。
「ホンット、相変わらず気が利かない人ね!いいわよ、私が居ない方がいいんでしょ!?もぅ、知らないから!!」
 小走りに、林のように木が連なっている方へ走り出す。
「おい、危ねぇぞ」
 声をかけると、振り返って「いーっ」と歯を剥き出された。
 そのまま、林の中へと姿を消してしまう。
 思わず、苦笑が漏れた。
 ホント、最初に会った頃とは、ずいぶん変わったよな。
 そもそも、こうして二人で外をほっつき歩いてるのだって、お嬢に誘われたからなんだぜ。
 この村に辿り着いたのは、つい夕方の事だ。例の助けを求めてきたヤツの家で、とりあえず俺達は世話になることになったんだが、夜になってエフィが辺りを散策しようと言い出したのだ。
 ついて来たそうな顔をした姫さんに、アメリアがじゃれついてる間に、急かされるみたいにして連れ出されちまった。
 アメリアのヤツも、なに考えてんだかね。あいつだって、俺みたいなゴロツキまがいが、いいトコのお嬢様とどうにかなるとは思ってねぇだろうによ。
 けど、なんというか――このひと月余り、なにかと理由をつけて構ってくるお嬢に対して、俺もまんざらでもない気分になっちまってたりするのが困りものなのだ。
 改めて、そういう目で見ちまったっていうか、そしたら存外に悪くないことに気付いちまったっていうか。
 エフィにも前みたいには嫌われてないと思うし、上手いコト立ち振る舞えば次期領主の座も夢じゃねぇかな、とか。ペテンだったとはいえ既に結婚話も出てることだし、そういう流れが無い訳じゃねぇよな、とか。チラッとは考えたよ、そりゃ。
 いや、本気じゃないけどね。
 あくまで、勘違いと自覚した上での冗談だ。
 領主サマなんて、まるきり俺の柄じゃねぇし、そんなに身の程知らずでもねぇよ。
 それに、エフィにとっても――
 それがいいことだとは、俺にはとても思えなかった。
56CC 32-39/39 ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 11:51:25 ID:vxg3cq/Z0
 さて、と。
「……るせぇな。分かってるよ」
 呟きながら、頭の中で馬鹿が何かを言う前に、脳裏から掻き消してやる。
 どっちみち、このままお嬢を放っておく訳にはいかない。
 篝火のお陰でそこそこ明るいといっても、もう夜中だ。明かりが届かないほど奥まで行っちまって、迷子にでもなられたら大変だ。
「……ス?……るの?」
 林に少し足を踏み入れたところで、微かに女の声が聞こえた。
「ああ、そこにいたのか」
 もうちょい先まで行ってたと思ったんだが。
「悪かったよ、ぼんやりしてて。ほら、暗くて危ねぇから――」
 脇の繁みががさりと音を立てて、人影が姿を現す。
「戻ろう……ぜ……」
 俺は、呼吸を忘れていた。
 目の焦点が合わなくなった。
 立ちくらみをしたみたいに、いつの間にやら体が傾いていて、慌ててその場でたたらを踏むことで、我に返った。
「え――?」
 なんだ、これ。
 信じらんねぇ。
 俺達は、お互いに穴が空くほど、まじまじと見詰め合って――
 すごく長い時間が、あっという間に過ぎた。
「ヴァイス……?」
「マグ――ナ……か?」
 ほとんど無意識に、喉から声が絞り出されていた。
 見紛う筈もない。
 今、俺の目の前にいるのは――確かに、マグナだった。
 
 
 
57名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 11:59:13 ID:bTTkqP+eO
乙!
久々のマグナ
次回は修羅場ですかw
58CC ◆GxR634B49A :2008/01/14(月) 12:13:39 ID:vxg3cq/Z0
という事で、第32話をお届けしました。
ヤベェ、途中、書き直しきれてなかったw

いや〜、それにしても、間隔空いてしまって申し訳無いです。
去年のウチは、ホントに手をつける暇が全然なくて、
今年に入ってから、他の事と平行してどうにかこうにか、
ここまで漕ぎ着けた訳ですが。。。
バカなポカしてるし。副題適当だし。もっと短くできたとか、考え始めると落ち込むので、
まぁ、今は置いといて、とりあえずゆっくりしたい。。。
でも、またすぐ次のやる事が。。。
おかしいな。こんなに忙しい筈が無い人間なんですが。
ダラダラしてるのがデフォルトのダメ人間なんですが。

今回は、いつも仕上げに使ってるマシンがお亡くなりになったこともあって、
どうも感覚が掴み辛かったです。もしなんかヘンだったらすみません。

あと、作中でまた勝手なことをしてすみません。なんとゆーか、
ここ数話は元々オリジナル的な要素が強かったということで、
どうかご納得いただければ幸いです。
ようやく、ゲームの本筋にちゃんと戻りますから〜。

さて、次回はいつになるだろう。。。
個人的には、早く書きたいです。
あ〜、今、自分が何書いてるのか、よく分かんねぇw
寝ます。
どうか、ちょっとでも皆様に楽しんでいただけますように。
59名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 12:16:58 ID:yURBWS+NO
乙でした
修羅場ktkrwww

ニュズたんみたいなえっちなまものはけしからんとおもいます!

……さて、奴から事情を聞き出(ry
60名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 13:32:15 ID:ZePe53CzO
今回なげぇぇぇ
61名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 14:08:12 ID:MPf/BdKM0
乙&GJです!
名探偵ヴァイス大活躍でしたね。

つうか、これじゃ次の投下までwktkして眠れないじゃないかw
62名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 16:37:05 ID:hpgueUiB0
>59
「H生もの」と詠んだ俺を蔑んでくれ給え!!!

c⌒っ*゚ー゚)っオジョウデレktkr
63名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/14(月) 23:06:44 ID:xKlj73I4O
昼ごろ理不尽スレにマグナが来てたみたいだな
64名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/15(火) 00:00:14 ID:pqScd8U00
まじすごいっす。
読み終わってレス番見て一瞬意味がわからなくなりました。。。
それくらい熱中して読んでしまいました。
65名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/15(火) 18:48:09 ID:Gfns59As0
俺も今回は読みに力が入っちまった。

やっぱり主人公が活躍しなくちゃあな。

CC氏乙
66CC ◆GxR634B49A :2008/01/16(水) 10:06:15 ID:6f2+/BxB0
最近、連載モノみたいなヒキが多い上に、長くてごめんなさい><
でも、今回は前々回よりは短いんだゼ?<自慢にならない

うぅ。。。ジツは、そうなんですよ。
お嬢編を始める前に、「メイ探偵、皆を集めて『さて』と云い」みたいな
推理仕立てにしてみようかな〜、と血迷ったことを考えてしまいまして。。。
でも、ホントにやりはじめると、すごい枚数喰いそうだったし、
ここではもっと他に焦点を当てるべき事があるだろ、と思い直しまして、
でも、その気分だけは引き摺ってしまったとゆうか。。。
大した謎もない割りに、分かり難くなってなければ幸いです。
ラスキン卿殺人事件にした方がよかったかなぁ、とか悩みつつ、
でもトリック考えつけない人なので、ホントはハナから無理なんですけどね。
物も知らないので、理不尽スレもよく分からないんだゼw

楽しんでくださった方もいらしたようで、ホントに嬉しくほっとしています。
結果的には、やっぱりこれでよかったと、今は思ってます。
ラスキンさんが殺されるのも、なんか気の毒だし(^^ゞ
あとニュズも、ギリギリ土壇場でちょっと(私的には)よくなったので、よかったです。ヘンな文章w

さて、次回はお察しの通り修羅場です。
書き出しだけちょっと書いてみましたが、なんとかなりそう。。。かな。。。
主人公も活躍しますよ!。。。多分。。。いや、しないかな。。。
H生ものもアリで!。。。いや、これはナシかなw
67名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/16(水) 15:42:31 ID:8RO2sIMcO
じゃあ俺は一人でハーレムルートに進んでおきますね
68名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/16(水) 21:41:44 ID:opGMIpNfO
じゃあ俺はニュズの誘惑に負けてBadEndルートに行ってくる
69名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/16(水) 21:48:08 ID:TAtarMmz0
CC氏乙です
とりあえず先に言っときますね

Nice boat.
70名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/17(木) 00:43:56 ID:nxTixICS0
ニュズとはどこかでバッティングしてエッチなイベントを起こしてもらいたい。
71CC ◆GxR634B49A :2008/01/17(木) 03:44:33 ID:N2IfzkPG0
本人はハーレムもの書いてるつもりじゃないんですが、全く少しも反論できませんw
でも、どっちかというと裏少女まんがとゆうか。。。ああ、これ、同じ意味だわ
だって、フラフラしないと面白くないじゃん!w

ニュズの次回登場は、私もちょっと楽しみです。
72名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/17(木) 13:21:35 ID:UqceaFIVO
しんさく!
しんさく!!
73名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/19(土) 15:28:37 ID:2Vk/NFec0
ヴァイスはエフィと結婚しちゃえよ
74YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/01/19(土) 17:30:14 ID:gX4KkBh10
 第二章「ハジメマシテ」

 真っ赤な世界だった。
 本来は岩と石で出来ているのだろう、洞窟の壁の色さえ錯覚させるような、暴力的なまでの真紅。
 地面から噴き出る炎とマグマ。遥か高い天井まで舞い上がる火の粉。
 それらは、ただ鑑賞するだけならばこれほど美しいものはないだろう。
 ―――だが。実際、そんな場所を進む俺たちにとっては、現実問題として危険この上ない。
 足の踏み場もない、と散らかった部屋を表現することがあるが、あれは実際踏み場がないわけではなく、単に『踏むことが好ましくない場所』が多いというだけで、その気になれば踏み荒らすことだって出来る。
 が、この洞窟の場合、『踏むことが好ましくない場所』は『踏んではいけない場所』に置き換わる。
 何しろどろどろに溶けた岩の灼熱の海である。間違って片足だけでも突っ込んだら、熱さを感じる間もなく、この鮮やかな紅の仲間入りだ。
 確かに、洞窟の面積の割合的にみて、進むことができないというほどマグマが犇めいているわけではない。だが、俺たちはここで跳ねたり走ったり戦ったりしなくちゃならんわけで。
 と、そこまで考えたところで、ぺちんという軽い衝撃が背中を突いた。
「はい、終わりっ」
 小さな嘆息とともに、傍らのアリスが立ち上がる。
 回復呪文による傷の治療が終わったのだろう、首周りの痛みが大分引いている。
「ん、すまん」
 調子を確かめるために頭を左右に振って首の骨を鳴らす。…とりあえず、支障はなさそうだ。
「ああ、もう、まだあんまり動かさないの。直接触れない中の部分は、魔力の浸透が不完全なんだからねっ」
「うんー…そうはいうけどな。あんまり悠長に回復を待ってられる状況でもねぇだろ、実際」
 怒ったように釘を刺すアリスを、地面に胡坐をかいたまま一度見上げてから、なんだいありゃあ、と呟いて視線を数間先に向ける。
 皮膚に黒黴のような色を湛え、頭部を吹き飛ばされた亜人の死骸がそこに無造作に転がっていた。
75YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/01/19(土) 17:32:23 ID:gX4KkBh10
「倍力の呪文を使うトロールとはな。元の力が桁外れなだけに、冗談みたいな馬鹿力だ…ったく」
 愚痴りながら、先ほど頭部に直撃しかけた一振りを思い出す。
 …奴の腕力は、亜人種のご多分に漏れず、十分に人外と呼ぶに相応しいものだった。しかしそれだけなら、いつも通り呪文の力で不足を補えば済む話だ。
 だが、今回は勝手が違った。あのトロールは、あろうことかその出鱈目な一撃の破壊力を呪文で倍化させやがった。これじゃあ不足を補ったところで鼬ごっこだ。
 はっきりいって、他のどんな呪文を使われるより性質が悪い。何しろ、亜人種の十八番を一点突破で強化するのだ、奴らの攻撃の威力を知る人間ならば、考えたくもない悪夢だろう。
 さっきはすんでのところで肩に軌道をずらしたが、かなりの衝撃だった。おかげで首周りがかなりがたついた。あのまま、まともに潰し合いをしたら、おそらく俺は負けていただろう。
 その情景を思い返しているのか、援護の呪文を奴にぶち込んだ当のアリスは、感じ入るように俯く。
「…ん。確かに、呪文を使うトロールは珍しくないけど、よりによってバイキルトなんてね」
「この先もこんな奴らがいるかも知れねぇと思うと、気が滅入るぜ…んぅ?」
 不意に、口の奥に異物感を覚えて、もごもごと舌で原因のモノを手繰り寄せ、赤茶けた土の上にぺっと吐き捨てる。
 やや赤味がかかったピンク色の肉片だった。多分、俺自身の口内の肉だろう。
 どうやらさっきの一撃で犬歯がざっくりやっちまったらしく、唇の端っこの裏側に穴ぼこが出来ていた。生々しい鉄の匂いが口と鼻腔を満たしていく。
「な、ちょ、大丈夫?口の中も、切った?」
 吐き出された肉片を見て、アリスはまた心配そうに、慌ててまた俺の傍に屈み込む。いや、見た目はアレだが、首より全然痛くはないぞ。
「気にするな、これくらいなら自分で何とかする」
 血の味がじわじわ広がる口の中に指を突っ込み、傷に触れながら『ふぇほいみ』と情けない呪文を唱える。それで、止血と鎮痛は十分だ。
76YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/01/19(土) 17:34:20 ID:gX4KkBh10
「本当に、大丈夫?」
「いつになく心配性じゃないか。…俺がこのくらいでどうかなるとでも思ってるのか、おまえは」
「むぅぅ…そうじゃないけど。ただ、こんなとこじゃ傷が熱を持って体調が悪くなったりしないかなって」
 尚も俺の顔を覗き込むアリスに諭すが、彼女は食い下がる。まぁ、こいつの言い分も解る。
 …ライナーも昔、似たようなこといってたっけ。運動による血流の加速や、過度な気温の高さで傷が熱を持つのは体にまっこと宜しくない、とかなんとか。俺は今更、慣れっこだが。
「そうだな…こんな戦いづらい場所とは、俺もさっさとおさらばしたいところだ。残りの細かい傷の治療は、歩きながら―――」
 ―――光の鎧に任せるとしよう。幸いコイツには、近くに魔物がいると邪気で機能が阻害されるとはいえ、装備者の傷を癒す呪文が付与されている。
 …そんな感じの言葉を、続けようとしたのだがー。
「…ん?ゴドー?」
 この場所の暑さはアリスにも堪えているだろう、とこいつの様子を伺って、汗を幾筋も浮かべる額に視線を向けたのが不味かった。その光景に、俺は小さく面食らい、台詞を言い損なう。
 俺の顔を前かがみで覗き込むこいつの体勢。勿論、額の汗は頬を伝い、顎の先へと溜まり、滴となって土に落ちる。
 だが、その顎の向こう側。鎖骨や首元にじっとりと浮かんだ汗の粒の群れに、視線が移った。
 大きな粒は重力に従って下へ向かう。道すがら、小さな粒を吸収し、その身を粒から珠へと変えながら。
 そうして完成した珠の様な汗は…まぁ、その、なんだ。当然、宿主が運動していない以上、体のラインに従って落ちるしかないわけだ。

 で――――――そいつが向かう先には、それはもう、深い谷が。
77YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/01/19(土) 17:35:34 ID:gX4KkBh10
 白い一枚布で包まれたきりの豊満な双丘の押し合う様。相変わらず、勘弁してほしい扇情っぷりである。
「ねえ、ゴドー?…もしかして、まだどこか痛むの!?」
「…いや」
 絶景を前に固まった俺を見て、まだ深刻な傷を残しているととったのか、アリスが血相を変えてズズイ、と更に顔を寄せてくる。当たり前だが、胸元の谷もこちらに迫ってくる。
 だが、こんなことは別に初めてじゃない。こいつと旅をして二年、何度胸の話をしてどつかれたことか。対処法は心得ている。
 こんな状況で蹴りでも入れられて、傷口を開くのは御免被りたい。俺はいつも通り冷静に、視線と話題を逸らして、やり過ごすのだった。

 ※ゴドー選択 選択肢安価>>78

ニア・このままながめてるのもいいか
 ・何でもない。それより…
78名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/19(土) 19:01:47 ID:YiBYtd2A0
ニア・このままながめてるのもいいか
ピッ!!



むしろ揉んで・・・いやなんでもない。続きどぞ
79名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/19(土) 19:07:10 ID:jMDgdpVz0
YANA氏乙です!
例の闘技場に向かう前の二人かな?

>>78
その選択肢を選んでくれてありがとう!
80※YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/01/19(土) 19:22:26 ID:gX4KkBh10
>>78
よし来た、任せろ!(ぁ

あ、一応こちらでも宣伝。前スレのほうで一周年記念リクとってますので、お暇な方、宜しければ埋めがてらどぞ。
81名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/21(月) 18:01:30 ID:SSXT3yXhO
前スレ埋まってた…

ゴドー×マグナの勇者論とか
アリス×ヴァイスの苦労人自慢とかが見てみたいと無茶ブリしてみるほす
82CC ◆GxR634B49A :2008/01/23(水) 13:09:22 ID:LTuTZR600
それは無茶ブリすぐるw

仕上げに使ってたマシンの代わりが、ようやく届いたと思ったら、初期不良。。。
1ヶ月も待たされたのに。。。しょっきんぐ
幸いイベントもあるみたいだし、しばらくは傷心でひっそりと進めておきますw
83※YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/01/23(水) 23:10:01 ID:qlxHr44v0
>>81
うむ、今まで何度か考えてみたけども、やはり完結してない作品でそういうのをやるのは作者さんに失礼だと思うのです。
だからもしやるとしても、CCさんが連載終えてからになると思います。
というかある意味で情緒が破綻しまくっているうちのバカ狼が、能力はともかく真っ当な感性をお持ちな女の子であるマグナに噛み付いてる(変な意味でなくて)絵面を想像すると、どう見ても悪党です。本当にありがとうございました。

今回は前スレでリク締め切りと公言もしてしまいましたし残念ながらお流れですが、機会さえあれば是非やりたい組み合わせでもあります。
あとアリスとヴァイスは、同じ苦労人ではあるかもですが、根本的な苦労の意味が方向性を異にするため相性が悪い気がします。彼らは絶対に喧嘩する(ぇー
84名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/24(木) 19:37:29 ID:d36w+PZ60
組み合わせ替えると噛み合わなさそうだな。

俺もそう思う。
85名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/25(金) 23:28:19 ID:NIDoa5IE0
保守?いいえ、ケフィアです
86名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/27(日) 19:11:11 ID:vMfNfHITO
ここのランキング間違ってるよな。ハッサンが上位とかあり得ん。お前らもっと3のキャラに投票しろ
http://dq-windom.netgamers.jp/
87YANA 1/6 ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:00:01 ID:HgmH0Rt60
 番外編04『A DAY on A RAY』


 ―――――――――朝。目を覚ますと、そこには馬鹿がいた。

「ちょっと、今、ものすっっっごく失礼なこと考えたでしょ!?」
 俺の視線に哀れみが混じっていることに気づいたか、アリスの奴ががーっ、とがなった。
 …そりゃあ、寝起き一番、相棒が鞭持ったボンテージ姿で見下ろしてれば、失礼なことも考えたくなる。
 黒いなめし革を素材にしたボンテージドレスは光沢を放って、俺の顔すら映りこむ。程よい肉付きの脚がすらりと剥き出しで、実に倒錯的だ。
 上半身部分があれの胸ごと、ぴっちりと首元まで覆ってしまっているのが残念だが、下から覗けば幾重にも交差した結び紐の網目から谷間を僅かに臨むことが出来る。眼福、と思うところだ。
 ―――こんな状況でなければ、の話だが。
「…おいアリス。これは、何の冗談だ」
 努めて冷静な語調で、ベッドの上に仁王立ちするアリスを見上げて、両腕をもぞもぞと動かながら訴える。
 だが、俺の腕は親指ほどの高さも持ち上がらない。当然だ。………ベッドの縁に、固定されてるんだから。
 万歳の状態、俺は両腕を頭上に投げ出した形で、スカーフか何かで拘束されている。寝ていてどうも痛いと思ったら、こんな様だったとは。
「うん、実はね。以前船酔いの気晴らしに、アレイが…」
 んっふっふ、と、アリスは俺の質問に薄笑いを浮かべて得意げに指を立てる。
 ・
 ・
 ・
「彼みたいに、根っこはいい人だけど愛想が悪いっていうタイプはね、被虐嗜好を潜在的に持ってることが多いのよー。
 まぞひすと、っていうのかしら?ちょーっと揺すぶってみれば何か反応を示すかも。
 私が遊び人だった頃にそういう遊び≠ノ使った装備をあげるから、機会があったらやってみるといいわ」
 ・
 ・
 ・
88YANA 2/7 ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:02:25 ID:HgmH0Rt60
「っていうお話をしてくれてね?」
 馬鹿の背後に、大馬鹿の影があった。あンの飲んだくれ、人の相棒にいらんこと吹き込みやがってっ。一緒に連れていくんじゃなかった…。
 両腕がこの有様なので、頭を抱えようにも出来ないのが残念だ。
「それで。お前は、俺のその、センザイテキシギャクシコーとやらを引き出すために、そんなものを持ち出したわけか」
「うん。だって…ゴドー、あたしと、その…してる、時、顔があんまり嬉しそうじゃないんだもん」
 僅か、しゅんと表情に影を落としながら、ごにょごにょと弁解するアリス。
 いや、嬉しそうじゃないも何も、この顔は生まれつきなんだが。そうそう、解りやすい喜怒哀楽を示すようには出来てはいねぇのだ。…言葉を濁した部分については敢えて触れない。訊くな。
「はぁ…まぁ、いいけどよ。気が済んだらこいつをほどいてくれよ」
 もっとも、いわれたところでそんな趣味はねぇつもりなんだがな。
「ゴドー、自覚がないから潜在的、なのよ。いいからやられなさいって」
 気のない返事をするが、アリスは意気揚々と屈み、俺の寝巻きシャツのボタンを外しにかかる。
 何故あいつの与太話が正しいという前提の上で話が進んでるんだろうか。…まぁ、一先ずはこいつのやりたいようにやらせておこう。
「…?どうした、アリス」
 と。溜息をついてる間に、半分のボタンが外されていた。だが、当のアリスは、四つ目のボタンに手をかけた姿勢で固まっている。何か、まじまじと俺の体に見入っているようだが。
「…ゴドーの傷。すごいよね」
「ん?ああ」
 ぽつりと呟く様に、アリスは果たして俺に言ったのだろうかというほど呆けた調子で感想を口にした。
 俺の体には、幼い頃の古傷からつい最近の生傷まで、裂傷切創火傷痕、あらゆる無茶の証拠品が雁首揃えて居座っている。
 あんまり人に見せるもんじゃないので、普段から生地の多い服や武具を身に着けてるが、こいつに見せるのは実に今更だ。そんな感慨深げに言われる覚えはねぇんだが。
89YANA 3/7 ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:03:33 ID:HgmH0Rt60
「うん、そうなんだけど。傷の手当てのときとか、ちょっと呪文を唱える間だけだし…ほら、あんた、その…いつも、脱がないから、じっくり見るチャンスがなかったし」
 …ふむ。そういえば、体に染み付いた癖というべきか、俺はするとき、いつも服を来たままことを終えてしまう。…だから何を、とか訊くな。

「終わったわよ」
 俺が記憶を反芻していると、いつの間にかアリスはボタンを外し終えていた。傷だらけの胸板をむき出しに、上半身だけが裸同然の状態だ。
 彼女は再び立ち上がりながら、手に持った鞭を握りなおす。棘や金属等の加工がされていない、およそ武装の鞭としては片手落ちのものだ。長さも俺の腕ほどしかなく、これじゃ威力も出まい。
「あー、アリス」
 とはいえ、鞭には違いないので用心はしておく。俺はアリスに、一つ忠告をする。
「一応、悲鳴とかはあげないつもりだが。宿屋であんまり無茶なことはしねぇようにしろよ」
「大丈夫よ、鍵はかけてあるから」
 俺の気遣いをどうとったか、奴はにっこり笑って鞭を張った。
 …しかし、わかんねぇな。俺は、そんなに嬉しくなさそうに見えるんだろーか。そして、それはそんなにアリスにとってのっぴきならない事態なのか。女心ってのは、ほとほと理解に―――、
「…っ!」
 途端、胸の表面に裂けるような衝撃が奔った。痛み、というより、その突然のショックが俺にうめきを漏らさせた。
 いや、痛いことは、確かに痛いんだがっ。
「どう?どう?何か、気持ちよかったりする?」
 衝撃を齎した張本人が、興味深げに俺の顔を窺う。予想外の痛みだ、馬鹿を言うな―――といいたい。
 だが、あの鞭の威力を軽んじていたとはいえ、一度了承してしまった以上、やめてくれともいえん。俺は黙って、首を横に振る。
「そう。じゃあ、もう一度」
 びしり、と、再び、今度は腹部、へその上辺りに衝撃が奔る。
 覚悟は出来ていたため、声は出さない。だが、痛みは毛ほども変わらない。…正直、辛ぇっ。
90YANA 4/7 ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:04:32 ID:HgmH0Rt60
「うーん、おかしいな…えいっ」
 そのまま、三度、四度としばかれる。が、依然として快感らしきものは芽生えない。
 アリスは試行錯誤するように、強弱の緩急をつけて鞭を振るが、それはやはり、痛覚を刺激するだけで終わる。
 その苦行のような工程を、俺はただただ耐える。気絶でもできればいっそ楽なのだが、一発一発が中途半端な痛みのせいでそれは望めない。そんな矢先。
「えいっ!」
 より強く、アリスの掛け声とともに鎌首を上げた鞭が、俺の皮膚を、文字通り引き裂いた。
 付着した血飛沫を、鞭が返す頭で彼女の顔に飛び散らせる。視線を胸元に移せば、今まで痣程度ですんでいた鞭の痕が、くっきりとそれとわかる裂傷となって残った。
 とはいえ、普段魔物にうける傷に比べれば全然大したことのない規模だ、いってみれば包丁で指を切った程度の負傷だった。
 だからそれまでと同じように、俺はその傷を黙殺した。だが。
「………あ、え…?」
 その有様を見たアリスは、呆然としたように間抜けな声を上げて固まった。
 視線は、手についた僅かな血と、俺の胸の傷を行ったり来たり。
「………ねえ、ゴドー。もしか、して」
 …暫く、そんな動作を繰り返したアリスは、眼下の俺に、何かを尋ねたそうに語りかけた。
 だが、その先の言葉は紡がれない。
「………」
 俺は、目を逸らして知らん振りをする。後に続くはずの言葉は、まぁ、なんとなくわかったからだ。
 普段であればそれを理解したうえで『当たり前だ、痛いんだよ馬鹿』と文句の一つも垂れるところだが、今回は少し勝手が違う。
 …薄々分かってはいた。こいつは、アレイが自分に渡すようなものだから、この鞭が大して殺傷力のあるものではないと思っていたのだろう。だから、嬉々としてこんな阿呆な真似を敢行したのだ。
 対して、俺は自分の痛みがどんなもんかを知らせるのを拒んだわけで。そりゃ遅かれ早かれ、こうなるのは必然だ。
91YANA 5/7 ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:06:43 ID:HgmH0Rt60
「………………ごめん」
 アリスは自分のしたことの意味に気づいたのか、やがて、消え入るような声で謝罪を口にした。
 俯いて、ベッドの端に座り込む。無論、体は俺と反対側。文字通り、『合わせる顔がない』という奴だろう。
 …意地張ったのは俺だしな。実際、こいつの弁を聞く限り、原因は俺にあるようだし。生傷は慣れてるし。別に、こいつを責める気はねぇんだが。
 ………ああ、もう、面倒臭ぇな。ちゃんといってやらなけりゃわからねぇのか、こいつはっ。
「…おい、アリス。気が済んだなら、こいつを解いてくれ」
 痛くてかなわん、と、やはりできるだけ平坦な口調で訴える。
 彼女は暫くじっと座ったままの姿勢だったが、長々と間をおいて、やがてもぞもぞとベッドを降りて、枕元へと手を伸ばした。
 きつく締められた紫色のスカーフを、コツでもあるのか、アリスはするすると容易くもとの正方形の布の形に戻す。
 すかさず―――俺は仰向けになったまま、自由になった右手で彼女の腰に手を回した。
「ひゃっ…!」
 ぐいと引き寄せ、バランスを崩したアリスは再びベッドの上に。但し、今度は俺の横に、添い寝するような形で。
「ちょっと、ゴド…っ!?」
 反射的に体を起こすアリスを追いかけるように、俺も半身を起こす。そして、彼女の体をぎゅっと抱き寄せる。ボンテージの革の感触が、ひんやりと冷たく、新鮮だった。
 彼女の頭は、剥き出しの胸板に、言い換えれば、鞭による傷と痣の群れに押し付けられる。
「ゴ、ドー、いきなりなにs」
「あー…やっぱり、こっちの方が落ち着くな」
 抗議しようとするアリスを遮って、俺は自分でもどうかと思うくらい態とらしく、全ての言葉を強調して口にした。
 アリスの頭は胸に押し付けているため、こいつがどんな顔をしているかわからないが、俺は構わずに台詞を続けることにした。
「お前は短気だし、単純だし、思い込みは激しいし、すぐ暴力に訴えるし…その上、やたらに意地っ張りだが」
 最後のは『あんたがいうな』という言葉が返ってきそうだが。
 俺は羞恥で気が変わらないうちに、自分の率直な想いを、

「―――――――――俺は、お前をこうして抱きしめてると、幸せだぞ」

 一息に、言い切った。
92YANA 6/7 ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:09:08 ID:HgmH0Rt60
「――――――」
 …長い沈黙が訪れる。アリスは無言のまま、ただ俺の腕の中に納まっている。
 何だか、胸の辺りが熱い気がする。…いや、気恥ずかしさもあるが、そういうのではなく。こう、お湯の入った瓶を押し付けられるような。
「…ゴドー」
「ん…っっ!」
 優しく、真下から名を呼ばれる。だが、返事を返そうとした途端、胸にくすぐったい感触が走る。
 反射的に、視線を胸へと落とす。
「…何をする」
「…傷。痛そうだから」
 アリスは一度だけ、頬を恥ずかしそうに紅潮させて俺を見上げた。そして徐に、突き出した舌で―――鞭で裂けた傷を撫で上げた。
「っく」
 傷の染みるような僅かな痛みと、肌を這う舌の粘液と無数の小さな突起の齎すもどかしさが、触角を刺激する。
 アリスはそのまま、胸板に顔を近づけて、ぺろぺろ、ぺろぺろ…と傷の、歪に皮が捲れて隆起した縁や、赤く滲んだ肉の裂け目を丹念に舌でなぞる。
93YANA 7/7 ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:10:05 ID:HgmH0Rt60
 ただ傷を治すだけなら呪文を使えばいいものを、敢えてそうしないのは、こいつなりのある種の意趣返しというべきか。
 ボンテージドレスに身を包んだアリスが、俺の傷を舌で愛撫する。その光景と感覚は、何ともいえないほど背徳的で、蟲惑的で―――。
「むぅ」
 俺は、いつものようにただ唸るしかなかった。
「…ばか」
 唾液と血を啜る合間に、アリスがぼそりと文句を口にする。…まぁ、否定はしねぇが。
「悪かったな」
 いつもの調子に戻ったか、と溜息とともに返事をしてやる。
「…がんこもの」
「うるさい」
「…お子ちゃま」
「お互い様だろ」
「…さびしんぼ」
「誰のせいだ」
 …今、なんだかどさくさに紛れて物凄く恥ずかしいやり取りをした気がする。
 アリスは尚も傷を舐め続けるが、俺を罵倒する声は数を経る毎に小さくなっていく。そして―――、

「―――――――――大好き」

 最後に、聞き間違いなんじゃないかというほどの小さな声で、そんなことを言われた気がした。


 〜了〜 
94※YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/01/27(日) 22:12:58 ID:HgmH0Rt60
テーマ:女王様モードな感じで
アリスはMなのでSにはなりきれません(酷い挨拶だ
六分割じゃ入りきりませんでした、スマソ。
というわけで、前スレ>>688さんのを採用させていただきました、他の皆さんも含めて、ネタ出しありがとうございました。

因みに鞭の傷を舐める、というシチュエーション。
単純に俺の趣味だったはずですが、聞けば小説版5でビアンカとリュカ(5主)が同じことやってたそうな。なんてこった。

尚、タイトルの英語の使い方が絶望的に間違ってますが、これは意図的な、ほぼ造語に近いものなので勘弁!
95名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/27(日) 22:15:19 ID:wpeyBNKg0
YANA氏乙です!
これは何ですか、読んでいるとニヤニヤしてしまう。
傷を舐めるというシチュエーションのエロさに目覚めた今日。
96名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/28(月) 15:11:27 ID:Y09MjezhO
俺の書き込みがテーマになってるワロタ
ありがとう、ありがとう

俺以外にテーマ書いた人ごめんなさい
97名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/28(月) 20:04:56 ID:XfJ/zZi10
YANA氏GJ!

8/7,9/7,10/7・・・
を詳細に描写してくださいw
98名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/29(火) 13:27:23 ID:PDUbtlJPO
ゴトーが資本主義の豚に!?
99名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/30(水) 11:05:55 ID:Dgb6+QjX0
>>97>>98から
「YANA氏、続きをSETUMEIせよ!SETUMEIせよ!」
て絶叫するシャーマンの群れを妄想した

怖っ
100CC ◆GxR634B49A :2008/01/31(木) 02:20:31 ID:t8IF7n3k0
うむぅ。どうやら1月中にもう1話は無理っぽい。
まぁ、もはや誰も1月中とか期待してなかったでしょうけどw
って、笑い事じゃないですね。なんとかしたくは思ってるんですが。
次回でこれでは、次々回はもっと大変なことに。。。
101名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/31(木) 15:07:47 ID:EALs++nC0
大丈夫、一日1レスしか読んでないからまだ読み終わってないよ!(ヲイ
102名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/31(木) 16:21:41 ID:9bvwtVgD0
>>101 その発想はなかったわ!
103CC ◆GxR634B49A :2008/01/31(木) 18:48:35 ID:t8IF7n3k0
ですよね〜。
1日1レスで換算すると、毎日投下とそれほど差は無い。。。いやいやいやw
104名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/01/31(木) 21:04:40 ID:EALs++nC0
しーしーしの後やなしのがあるからまだ全然持ちますよ‘ノ3‘)ボソ
105CC ◆GxR634B49A :2008/02/01(金) 03:46:36 ID:hzE2LuAp0
ですよね。大変助かります。。。とか、自分で言っちゃいけないんだろうなw
106名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/02(土) 16:54:49 ID:/rXUxnBDO
喉が痛い
107名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/03(日) 23:38:31 ID:Xgm3/4KT0
つイソジン
108名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/04(月) 02:04:42 ID:2eR1uJm00
っタリウム
109名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/04(月) 02:13:14 ID:X1fR5rOv0
っメタミドホス
110名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/04(月) 12:34:37 ID:2eR1uJm00
お前らまとめてキアリー
111名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/04(月) 18:56:48 ID:2eR1uJm00
と思ったら言いだしっぺ俺だったΣ(ノ∀`)
112名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/05(火) 02:07:58 ID:LpVjnssq0
バカヤロー
113名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/05(火) 09:06:17 ID:Gv7ES80LO
理不尽だなww
114名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/05(火) 09:06:29 ID:SOo9ViJ30
干す
115名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/05(火) 23:52:38 ID:2mcz46Ez0
もうすぐ最下層保守
116CC ◆GxR634B49A :2008/02/06(水) 06:47:50 ID:F5BEmKC80
warota

代替マシンがようやく修理から戻って、やっと躾もなんとなく終わりました。
また忙しくなる予定だったんですが、一転してそうでもなくなったのでw
今週中を目処にどうにか進めたいと思います。
ただ、どうも躾に手間を取られ過ぎたせいか、はたまた新マシンに慣れてないせいか、
なにやら思うように指が動かなくて焦るZE
117名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/06(水) 12:16:11 ID:Dow92zijO
分かった1日2レスにペースアップするよ
118名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/06(水) 23:54:43 ID:gzMEbOw80
通りすがりで捕手
119名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/08(金) 18:00:46 ID:jSt+Z3m90
追いすがりで触手
120名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/08(金) 20:31:50 ID:3s/o1Vj30
パーン!!( ‘д‘)⊂彡☆)д`)
121名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/09(土) 21:48:10 ID:bDkSwcHp0
インフルエンザA型ほす・・・
122CC ◆GxR634B49A :2008/02/09(土) 23:36:16 ID:/v2i/uTL0
つ【薬草?いいえ、ケフィアです】

(・3・)あるぇ〜、土曜日がもう終わるよ?
え、あれ?土曜日だよね、終わるの?
頭おかしいw すんごいスランプ中です。。。orz
でも、どうにか回復してきたっぽいので、もうしばらくお待ちくださいすみません
123名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/10(日) 04:52:27 ID:mlgYzFWK0
なあに。外は一面雪景色。
ゆっくりまったりのんびりやって下さい。
124名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/10(日) 11:12:23 ID:K5X+6QWrO
まだ18レスくらい読んでないから1日1レスに戻しますね
125名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/11(月) 22:52:29 ID:A91o1QG30
別に保守したいわけじゃないんだからね!
126名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/12(火) 13:30:37 ID:6uypC6ry0
追いついたぞー!
ほしゅ
127名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/13(水) 01:10:07 ID:1QV+Ck/6O
やっと>>50まで読みました
128名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/13(水) 20:27:57 ID:XjA4dRTG0
129名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/14(木) 11:19:44 ID:Z9HmQveCO
ないんじゃない?
130名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/14(木) 22:43:37 ID:vsf2MWiyO
伝説のAge爺
131名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/15(金) 00:33:03 ID:hH+OIr9y0
上げやがったな・・・最下層まであと僅かだったのにもうっ!

>>128
>>1 CCまとめサイトのログから読める
132名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/15(金) 11:10:03 ID:j8DpWDhuO
このスレより低いスレぜんぶageればいいんだよ
133名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/16(土) 04:08:39 ID:8tbUUPdhO
迷惑だなんてレベルじゃねえな
134名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/16(土) 10:08:07 ID:BYS/hirlO
ししし読了ほしゅ
135CC ◆GxR634B49A :2008/02/17(日) 02:38:58 ID:qpgh89P60
まじゅい。。。今までで最悪に書けない。。。orz
内容は決まってるのにここまで筆が進まないとは、
この筋立てじゃ駄目だと私のゴーストが囁いてるのかしら。。。
明日もちょっと用事があるので、今週中はリームーでした。てへっ☆
すみません、今回は(も)そのまま生暖かくお待ちください。。。orz
136名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/17(日) 08:14:07 ID:pu1iCNYqO
少佐乙
137名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/17(日) 21:47:54 ID:LEuO2C7j0
>>135
無理に書いて自分で納得いかないようなものになったら目も当てられないから、マッタリと進めてくださいな。無理は厳禁。
138名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/17(日) 22:14:20 ID:6ekU22a00
調子悪かったら、無理せずまたノレる時を待つ
で調子良い時は一気にやっちまう、でおk
139CC ◆GxR634B49A :2008/02/18(月) 00:03:52 ID:ugaY9LPl0
人の情けが身に沁みる(´Д⊂
お言葉に甘えつつ、なるべく早くお届けできるようにじたばたしてみます。
面目ねぇ。
140名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/18(月) 07:52:46 ID:+Y5P8JMbO
俺しししの作品なら3ヶ月は待てる自信があるぜ!
141名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/19(火) 04:44:23 ID:4jp8FWAOO
よし、それじゃ俺が間をもたせるためになにか書いちゃうぞ!

チラシの裏に('A`)
142名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/19(火) 19:11:54 ID:2+/CfqP40
ざんねん、ここがチラシの裏だ

保守
143名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/21(木) 00:27:24 ID:X+B01Vqv0
守って保ちに来ました。
144名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/22(金) 02:37:17 ID:pirIkTJmO
定期チェック保守
145名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/24(日) 10:48:43 ID:4Qfyau6OO
消防署の方から保守しにきました
146名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/24(日) 22:10:16 ID:vra7C5d/0
>>145
「ややっこれはひどい 大黒柱が腐ってます
 すぐに換気扇をせっちしなければ」

そんな保守
147CC ◆GxR634B49A :2008/02/26(火) 19:19:33 ID:icCt5Xcf0
('A`)ウボァー
ど、どうにか、通しての荒書きを終えました。。。
清書がまだですみません。フヒヒ
自分でも、あまりの書けなさに呆れております。
でも、他のこともあるし、今週中にはどうにか投下しないと。。。
いや、しますとも!いいですとも!!
ああ、なんか訳分かんない。すみませんすみません。
呆れ返りつつ、願わくばもう少しお待ちくださいorz
148名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/26(火) 21:20:30 ID:kZ6EYO6N0
IDにccオメ
149CC ◆GxR634B49A :2008/02/27(水) 00:52:05 ID:Rc0t93dm0
おお、ホントだ!勝った!これで、後10年は戦える!
何とだ。
150名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/29(金) 00:25:18 ID:EqzwiMWJ0
守っちゃうよ〜
151名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/29(金) 01:33:35 ID:pogakLN20
1年に約10話投下されるとして、
10年で100話か・・・
これは期待
152CC ◆GxR634B49A :2008/02/29(金) 22:08:47 ID:fS49rKmD0
いやいやいや、長くてもあと一年くらいで終わるですよ?一年戦争ですよ?
おかしいな。もしかして、誰も40話台で終わると信じてませんか。
まぁ、ボクも半信半疑ですが。いや待て。終わらせますとも。我に秘策あり。だったらいいな。

明日も用事なので、投下は日曜日の24時以降になってしまいそうです><
毎回、週末前に投下して、のんびり読んでいただきたいと思ってるんですが、
いつも間に合いません。。。すみませんorz
馬鹿みたいに全面改稿し過ぎなんだよな。。。
153名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/29(金) 23:06:20 ID:EfsvBkUo0
紙に書くのに例えれば、丸めてポイされたのは
一体何枚になるんだって話だなw
154名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/02/29(金) 23:49:11 ID:88me9Bjv0
いや、よく練り上げたものを読ませてもらって感謝してますよ
155名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/01(土) 21:54:01 ID:lWeyap8f0
ねるねるねるねはねればねるほどいろがかわっていーっひっひ。
156名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/01(土) 22:35:39 ID:s+0NkgTv0
個人的には、こんなに面白い話があと10話ちょっとで終わるのは凄く惜しい。
もっと楽しみたいです。
100話とまでいかずとも、50越えでお願いしまつ。無理に伸ばしたり、縮めたりせず、ツンデレぶりをこのペースで楽しみたいです!
毎回wktkしながら、ずっと待っておりますので。
157名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/02(日) 01:54:19 ID:tGDjmWboO
10話でも1日1レスなら読むのに一年ちかくかかるはずだ
158名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/03(月) 05:19:44 ID:9fkskd6RO
期待保守
159CC ◆GxR634B49A :2008/03/03(月) 08:04:45 ID:LVVuuYiE0
うわあああああああああああああああああああああああ
清書を終えたつもりだったのに、最初から読み返してみたら

こ れ は ヒ ド い

だめだぁ。今日の明け方には、どうやっても物理的に間に合わないいいいいい
つか、とっくに日が昇ってるよおおおおおおお

期待してくださっていた方、ホントに申し訳ないです。
すみませんが、もうちょっと時間をください。
ホントに、なんなんだ、わたしゃ。。。orz
160名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/03(月) 09:38:59 ID:PxMv16V0O
>>159
つ ●
161名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/03(月) 12:58:03 ID:snzDOYtT0
>159
さくせん
 にゃんにゃしようぜ
 おれのいうこときけ
>もちつけ!

焦りは禁物だぞ。
テンションあがるのはいいが、慌てたっていいことないぞ?
大丈夫。俺らは延期には慣れてるはずだからな!
162名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/03(月) 13:24:05 ID:xPIgc7gO0
>>159
定期連載じゃないんだから、納得いくまで推敲してください
本家DQに比べればこの程度の延期は延期じゃありませんw
163名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/04(火) 00:03:29 ID:DGyJXNvn0
ぢおn軍の俺は長いこと待つことなんてヘッチャラ!
164名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/04(火) 15:08:12 ID:riHwreB00
RSS頼りにしてるからあまりこっち見てない俺が保守に来ました
165名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/04(火) 23:01:55 ID:+/KgQqsO0
U-HO HAT-SUN! ヘイキさ
俺だって本当は投稿したいネタが多いのに
忙しいのと疲れているのとで、構想に留まってるぞ!
166名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/05(水) 11:37:23 ID:fYPtqSOxO
ハンターハンター大好きな俺は待つのへっちゃら!
167名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/06(木) 06:46:58 ID:Hs4gbeF00
保守
168名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/06(木) 18:31:28 ID:F8cbf9c00
保守です。
169名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/07(金) 11:42:25 ID:q2//gECK0
俺はEGコンバットやルーンマスカーやマジンサーガを待ってるから大丈夫さ!
170名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/07(金) 16:39:30 ID:daHgqaVuO
それじゃ俺はドラクエXVを待つぜ!


なんか話がそれてないか?
171CC ◆GxR634B49A :2008/03/08(土) 06:43:27 ID:BFMgrE9B0
ありがたや〜ありがたや〜<(_ _)>
馬鹿みたいにお待たせしてしまって、ホントに申し訳ないです。

でも、さすがに色々もうタイムリミットだあああ!!
火曜日辺りに、「あ、これだ!」と閃いた筈なのに、結局なにがなにやら。。。orz
もう分からん!!投下する!!じゃないと死んじゃう!!

ということで、明日の明け方までには投下したいと思います。
ホントは昨日の明け方、最悪でも今日の今くらいに投下して、
週末2日でのんびりお読みいただきたかったんですが、
ちょっとひと眠りしてからでないと難しそうです。

それと、今回エラい長くなってしまったことを、先にお詫びします。
よろしければ、お付き合いください。
172名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 09:18:22 ID:h5Ej8ROxO
よし、一緒に全裸正座だ!
173名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 10:03:22 ID:WakiQHs8O
待ってました!
でもあんまり無理しないでくれよ>>CC氏

さて服でも脱ぐか……
174名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 10:08:29 ID:b2tXDr3AO
自分で自分の首しめちゃだめですよ!

全裸は恥ずかしいんでブラとショーツは着けさせてください(´・ω・)
175名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 10:42:43 ID:EL0N87HhO
今夜から半日かけて船旅の俺にとっちゃ朗報。

さて、全裸で待機しとくか……おや、誰かが(ry
176名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 11:42:02 ID:J58lZ51p0
今から外出するから全裸は無理だ
帰ってから全裸になるぜ!
177名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 12:24:42 ID:juECBdN+0
ちょw 全裸っていつの間にw …しょうがない
178名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 17:25:06 ID:J6uJG0YyO
>>174
とりなさい
179名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 18:07:54 ID:arhmF/J5O
あちゃー、全裸かぁ、、、
でも喜んで明日の予定変更さしてもらうぜ。乙です。
180名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/08(土) 23:00:58 ID:w08es2Y00
やっと明日で1ヶ月の全裸生活が終わる・・・
181名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 01:47:13 ID:nN8OWYG0O
なんでお前らが脱ぎだすの?

普通は読むときだけ着るんじゃないの?
182名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 02:06:25 ID:HewgQ4FEO
仕事中だが便所で全裸になってみるテスト。
183名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 03:21:17 ID:I59qs5rc0
まあ全裸で読むのが礼儀とはいえちょっと早すぎるな
184CC ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:05:46 ID:NonHpHQU0
全裸すぎワロタw

遅くなってすみません。
大変長いですが、「うは、長ぇwww」とか心の中でツッコミながら、
のんびりとでもお付き合いいただければ嬉しいです。

そいでは、数分後に〜ノシ
185CC 33-1/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:15:07 ID:NonHpHQU0
33. Diamonds and Pearls

 それはおそらく、大して長い間じゃなかった。
 せいぜいが、ゆっくりと呼吸を十ほども繰り返すくらいしか経ってなかっただろう。
 だが、時間の感覚は消し飛び、さらには音や色、皮膚感覚までもが失せていたので、後で思い返して相対的に時間の経過を判断する術がなく、実際はどれくらいだったのか判然としない。
 おそろしく長かったような気もするし、ほんの一瞬だったようにも思える。
 俺とマグナは、互いにぴくりとも動かずに、ただ馬鹿みたいに、目の前の相手を見つめていた。
 やがて、周囲の景色が次第に色を取り戻し、普段は無意識に聞き流している自然の音を耳が再び捉え、風というには慎ましい空気の流れを肌が感じ始める。
 同時に、凍った氷が溶け出みたいに、とある感情が胸に染みていくのを、俺は覚えていた。
 ヤバい。
 俺――感激しちまってる。
 だって、マグナがすぐそこに居る。
 ちょっと歩み寄って、手を伸ばせば触れるくらい近くに。
 言葉にして思った途端、また訳が分からなくなる。
 これが現実の出来事だとは、とても思えなくて。
 白昼夢か、それとも何かのペテンか――
 だって、おかしいだろ、こんなの。
 こんなにあっさり――逢えてよかったんだっけ?
 いや、違う。
 そんな筈ねぇよ。
 俺のしたことは、そんなに軽くなかった筈だ。
 どれだけ追っても、もう届かない。
 それでもなお、追い続ける。
 せめて、そうあるべきだったんじゃねぇのか。
 なのに、やっぱり、どう見ても――
 マグナが現実に、目の前に居るんだ。
 ああ、ずいぶん髪が伸びたんだな。
 気の強そうな顔立ちは、だけど記憶よりも、いくぶん和らいで見えた。
 こいつ、もっとキツい顔してなかったっけ?
186CC 33-2/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:17:27 ID:NonHpHQU0
 止せ――
 不意に浮かんだ言葉を、俺は脳裏から必死に掻き消そうと努める。
 馬鹿なことを考えるな。
 こんなの、単なる偶然だ。
 世界中の、ありとあらゆる場所の中から、ただ「ここ」で。
 お互いに、示し合わせた訳でもなく。
 同じ日、同じ時間に。
 たまたま居合わせたってだけの話じゃねぇか。
 こんな偶然って、あるのかよ!?
 うるさい、黙れ。
 止めろ。
 違う。
 信じたく――なっちまうじゃねぇか。
 運命――
 だから、そんな仰々しい言葉を、軽々しく思い浮かべるんじゃねぇよ!!
 頭の中で、喚き散らした。
 収まり切らなかった感情の名残が、長い溜息となって口から漏れる。
 それでようやく、俺は現実に追いついた。
「……んんっ……ぁ〜、っん、あ〜」
 自分の声が、思った以上に掠れていてぎょっとする。
「え〜と……よかった。元気そうで」
 考えて口にした言葉じゃなかった。
 とにかく、俺から先に話しかけなくちゃと必死だったんだ。
 でも、いくら焦ってたにしても、これはねぇよな。
 辛うじて、自嘲するゆとりが戻っている。
 仮にも感動の再会を果した場面だぜ?
 もうちょっと、気の利いたこと言えねぇのかよ。
187CC 33-3/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:19:48 ID:NonHpHQU0
 あ、違った。
 馬鹿か、俺は。
 元気でよかった、なんて、俺が口にしていい台詞じゃねぇだろ。
「あ、違くて、なんていうか、その、健康そのものっていうか……いや違う、そうじゃない。少なくとも体調が悪いようには見えないから、そのことは良かったって意味……だよ」
 思いもよらないことに、マグナはくすりと笑ったのだった。
「うん。ヴァイスも、元気そうでよかった」
 あ、くそ。
 あっさり返しやがったな、畜生。
 なんだか、不思議な感じがした。
 だって、えらい普通に話してるよ、俺達。
 いや、俺は見っともないくらいに慌てちまってるけど――
 芽生えかけた呑気な気分が、瞬時に冷める。
 俺は、こんなに動揺してるのに。
 もしかして、マグナは、そうでもないのか。
 そりゃ――そうだよな。
 こいつの中ではきっと、俺はもう過去の人間だから。
 感情の振り子が不安に揺れる。
 今さら、俺なんかが目の前に現れて、迷惑なんじゃないか。
 いや待て。
 そんなの、分かってた筈だろ。
 それでも追うって決めたんじゃねぇのか。
 だったら、冗談みてぇな偶然だろうがなんだろうが、会えて万々歳だろうがよ。
 素直に、その気持ちを口にすればいいんだ。
「会えて……嬉しいよ」
 言えた。
「えっ……?」
 マグナは、ちょっと目を見開いた。
 そして、それきり何も言わなかった。
 唐突だったかな。
 けど、ここで出会ったこと自体が、そもそも突然過ぎるんだ。
 とてもじゃないけど、落ち着いて、順序立ててなんて、会話を進める自信が無い。
 とにかく、思ったことから口にしていくしかねぇよ。
188CC 33-4/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:22:29 ID:NonHpHQU0
 だが――
 一度降りた沈黙の帳は、気付かない内に俺の口を塞いでいた。
 あれ?
 次は――なんて言えばいいんだ?
 言いたいことは、山ほどあった筈なのに。
 頭ん中が真っ白で。
 全然出てこない。
 そうだ、まず謝らなきゃ――
「えっと……」
 だが、次に口を開いたのは、マグナが先だった。
「……あたし、人と待ち合わせてるから」
「あ、うん」
 間抜けなことに、俺は気が抜けたみたいに頷いていた。
「……じゃあ、ね」
 別れの合図のつもりか、ゆるゆると上がりかけたマグナの手が、力無くすとんと落ちた。
 そのまま、踵を返して立ち去ろうとする。
 えっ!?
 ちょっと待ってくれ。
 もう行っちまうつもりか!?
 イヤだ。
 駄目だ、そんなの――
 我知らず追い縋って、マグナの腕を掴んでいた。
 かくんとたたらを踏んだマグナは、顔を背けたまま腕を振った。
「離して」
「……イヤだ」
 力づくで声を絞り出した。
 一瞬、マグナの動きが止まる。
 だが、それは力を篭める為の準備に過ぎなかったのか。
 すぐに激しく、体ごと揺すって俺の手を振り解こうともがいた。
「離しなさいよっ!!」
「イヤだっ!!」
 俺達は、ガキが駄々をこね合うみたいにもつれあった。
189CC 33-5/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:24:34 ID:NonHpHQU0
 意地になって、どうにかマグナにこちらを向かせた頃には、お互いに息が荒くなっていた。
「なんなのよ……」
 呼吸につれて、マグナの肩が上下する。
「なんであんたが、ここに居るのよ……」
 俯いた顔は、揺れる前髪に隠れて見えない。
「なんでって――」
「うるさいっ!!」
 そんな、理不尽な。
 てっきり、怒った顔で睨まれると思ったんだが。
 マグナが見せた苦しげな表情は、覚悟していた深さを遥かに超えて、俺の胸を抉った。
「なんなの、今さら……なんで、あたしがここに居るって分かったのよ!?」
 そうか――
 どうやってか、俺が足跡を辿って、自分を追いかけて来た。
 マグナは、そう思ってるんだ。
 無理もない。
 こんな偶然、普通はあり得ねぇもんな。
「いや……俺も、知らなかったんだ」
 その言葉は、つるりと俺の口をついて出た。
「……は?」
 気の抜けたマグナの呟き。
「偶然なんだ。お前と、ここで会ったのは」
 身も蓋もない言い草だと自覚していたが、見栄を張らずに素直に言えた自分に、どこかほっとしていた。
 もうこいつに、嘘は吐きたくねぇからな。
190CC 33-6/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:26:48 ID:NonHpHQU0
「え?――なに、言ってるの?」
 呆けた顔に、半笑いが浮かぶ。
「信じられないと思うけど、ホントに偶然なんだ。でも、違う――」
 自分が喋ってるんじゃないみたいだった。
「俺――お前を追いかけるって、そう決めたんだよ」
 ほとんど無意識に、俺は両手でマグナの二の腕辺りを掴んでいた。
「そしたら、ここで会ったんだ。こんな偶然って、あると思うか!?」
「全然、分かんない……なに……言ってるの?」
「俺も、自分で何言ってんのか、よく分かんねぇよ。ホントにいきなりで、俺もまだ頭ン中ぐちゃぐちゃなんだ」
 言わなくちゃいけないことだとか。
 尤もらしい説明だとか。
 なんもかんも全部すっ飛ばして。
「だけど、俺……」
 結論だけ言おうとしてるよ、俺。
「マグナ、俺……お前と――」
 その時――
 まるでタイミングを見計らってたみたいに、マグナの背後で下生えを踏む音がした。
「そこにいるのか、マグナ?」 
 聞き覚えのある声に続いて、背の高い人影が姿を現す。
 それは、以前からずっとマグナが気にかけていた男――アルスだった。
191CC 33-7/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:32:55 ID:NonHpHQU0
「リィナとシェラに言われた場所で待っていても、一向にお前が来る様子がないんでな。心配になって探しにきた――おや?」
 さして意外そうでもなく、アルスは俺を見て片眉を上げた。
 肩透かしをくらって呆然と立ち尽くす俺から、マグナは既に身を遠ざけている。
「話し声が聞こえたから、誰と一緒に居るのかと思えば……ずいぶんとまた、懐かしい顔を見るもんだな」
 懐かしい、に妙に力が篭められていた気がした。
「なんで、あんたが此処に?」
 二歩、三歩と後ろに下がったマグナに寄り添うように、アルスは立ち止まった。
 並んで立つ二人の様は、なんだか妙にしっくりと嵌まっていて――なんて、俺は思わねぇよ。
 気を取り直して、アルスを睨みつけてやる。
 相変わらず、いけ好かない二枚目面をしてやがる。
「そいつは、こっちの台詞だろ」
 こいつ、まさかとは思うが――
「つか、手前ぇ、今、リィナとシェラっつったよな?まるで、仲間を呼ぶみてぇによ?」
 頭の中で思った以上に、実際の喋り方は乱暴になった。
 まるで、どっかのチンピラが因縁つけてるみてぇだ。
 けど、自分でも御しきれない感情の塊みたいなモンが体の中で暴れていて、どうにも抑えられない。
「お察しの通り、俺はここしばらくマグナ達と行動を共にさせてもらっている。だから、まぁ、仲間と言えば、そうなるのかな」
「ちょっと、アルス――」
 マグナが何か言っていたが、耳に入ってこなかった。
 こいつが――仲間だと?
「手前ぇ、一体、誰に断って――」
 言いかけたところで、自分がそれを口にする資格が無いことを思い出す。
 勝手に固まった俺を、アルスは鼻で笑った。
「そう噛み付かれても、困るな。あんたこそ、ここで何してるんだ。まさか、マグナを追ってきたんじゃないよな?」
 前から、思ってたが。
 どうして、こいつは――
 俺を、こんなに苛つかせるんだ。
192CC 33-8/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:35:35 ID:NonHpHQU0
「聞いてるよ。あんたは、自分からマグナの元を去ったんだろう?しかも、マグナが一番助けを必要としていた、その時に」
 視界を歪ませるほどの感情の矛先が、目の前のこいつか、それとも自分に向けられているのか、よく分からない。
「悪いが、ひと言いわせてくれ」
 アルスは、呆れ顔で続ける。
「どうして今さら、マグナの前に顔を出せるんだ、あんた?」
「ちょっと……どうしたの、アルス?あなたが、そんなこと言うなんて――」
 くそっ――
 ムカつく、ムカつく。
 何がムカつくって、全部こいつの言う通りだってことだ。
 言い返したいのに、反論できない。
 逃げ道の無い感情が頭の中で暴れ回って、どっかの線がまとめてぶち切れちまいそうだ。
「……誰?ヴァイスなの?」
 声が、聞こえた。
「……ねぇ、そこにいるの?」
 近付いてくる。
 すっかり忘れてた。
 茹で上がっていた頭が、血の気と共に瞬時に冷める。
 足音が近い。
 もうすぐそこだ。
 アルスが、そちらを見た。
 マグナも、振り向いた。
 木の陰から、ひょっこりとエフィが顔を出した。
「あ、いた!もぉ、なんで返事をしないのよ!」
 どこか嬉しそうに拗ねた顔を見て、俺はどうしたらいいか分からなくなった。
193CC 33-9/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:38:54 ID:NonHpHQU0
「……どう?」
 期待と不安の入り混じった表情で、エフィが上目遣いに俺を窺う。
 口の中のソレを飲み下してから、俺は小さく頷いた。
「うん、美味いよ」
 よかった、と口の中で呟くエフィを眺めつつ、少しいじわるな事を考える。
 でも、シェラの作ってくれたクッキーの方が、もうちょっとだけ美味かったかな。
 とある昼下がりの、エフィの自室だった。
 細かい装飾の施された華奢なテーブルの向かいに腰掛けたエフィは、紅茶を飲みながら甘ったるいクッキーを頬張る俺に頷いてみせる。
「うん、そうよね。ファムに教えてもらいながら作ったんだけれど、自分でも、それは美味しくできたと思うの」
 例の事件の後、あの場に居合わせたラスキン卿が事情を承知していたこともあり、またエフィの嘆願の甲斐もあって、ファムは罪人として扱われることはなかった。
 とはいえ、あれから数日経った今でも監視をつけられて、自室で半ば軟禁状態に置かれている。
 いずれはエフィの側付きに復帰できるかも知れないが、しばらくは先のことになりそうだ。
 多分、菓子の焼き方を教わりに行ったというのは単なる口実に過ぎなくて、お嬢はそんなファムの心身を案じて、様子を見に行ったんだろう。
「まぁ、でも、エフィの具合も良くなってきたみたいで、安心したよ」
 ここ最近、エフィは体調がすぐれないとか言って、自室に篭っていることが多かった。
 本人によれば、あの事件は、直後よりもむしろ日が経ってからの方が堪えたのだという。
 暇潰しのお相手に、なにかと呼ばれることの多かった俺の目には、多少芝居がかって映らなくもなかったんだが。
「……そうでもないんだから」
 エフィはふくれっ面をして席を立つと、ふらふらとベッドの端に腰掛ける。
「今でも、思い出すと怖くて……」
 落ち着かなげに、ひとしきり手櫛で髪を梳く。
 壁の一面を占める大きな窓から差し込んだ陽光が、エフィのブロンドで跳ねて煌めいた。
「恐ろしくなってしまうから、なるべく考えないようにしているだけなのよ……だって、あの魔物がファムに化けていたってことは、その……私のすぐ側に、ずっと居たって事でしょう?それって、つまり……」
 ぶるっと体を震わせて、両手で抱える。
「私は、いつ殺されてもおかしくなかったのよね?」
194名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 07:41:56 ID:zoICBab60
支援
195名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 07:45:36 ID:+8XvNi4kO
紫煙
196CC 33-10/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:50:42 ID:B0QWylQO0
「……かもな」
 あのニュズって魔物に操られていた自覚がファムに無いことは、これまでの尋問で分かっていた。
 ただし、入れ替わっていた間の記憶が、すっぽりと抜け落ちてしまっている訳ではない。
 ニュズがファムに化けて行った言動が、魔物にとって都合の悪い――俺達にとっては一番知りたい――部分を巧妙に取り除いた形で植え付けられているらしいのだ。
 つまり、ファム自身は、毎日普通にお嬢様のお世話をしていたという意識しかなく、むしろ、どうして自分が軟禁されなくてはならないのかと、当初はひどく混乱していたという。
 カイの場合は、さらに厄介だった。
 俺もあれから少し会って話をしたんだが、あの間抜けは、いまだに全て自分の意思で行動したと信じているのだ。
 話を整理すると、この土地の支配権を奪い返す野心を元から抱いていたカイの前に、ある日、見知らぬ女がひょっこりと現れた。
 それは、もちろん正体を隠したニュズだった訳だが、奇妙な魅力を感じたカイが女とねんごろになるのに、大して時間はかからなかった。
 すっかり心を許して、自分の野心を愚痴交じりに吐露したカイは、領主の座はあなたにこそ相応しいとかおだてられて、まんまとその気になっちまった。
 女を介して人攫い共と渡りをつけたカイは、連中の隠れ蓑になる代わりに手駒として利用することを思いつき、さらに領主の娘の側付きという大変に都合のよろしい立場の幼馴染まで巻き込んで――実際は、それもファムに化けたニュズだった訳だが――今回の計画を実行した。
 というのは、あくまでカイの視点だ。
 端から見ると、常にニュズの主導で事が運んでいたのが丸分かりなんだが、あの間抜けは、まるきりそう思っていないのだ。
 偽りの記憶を植え付けられた訳でもなく、全て自分の考えに基づいて行動したと信じ込んでいる分、ファムの場合よりも性質が悪い。
 カイのことを、おめでたいヤツとコキ下ろすのは簡単だが、正直なところ、俺は薄ら寒い気分を覚えずにはいられなかった。
197CC 33-11/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 07:57:59 ID:B0QWylQO0
 自らを評して慎重と言っていた通り、カイはどちらかと言えば小心者に属する部類だ。
 そんな男が、どう見ても得体の知れない、あんな女の口車なんかに、ホントだったら乗る筈がねぇんだよ。
 だが、本来ならば抱かなければおかしい違和感を自覚させることなく、思考を誘導するように巧妙に、ニュズはカイを操っていた。
 俺は、ウェナモンのことを思い出す。
 アッサラームで魔物に操られていたあのオッサンの場合は、もっと魂が抜けちまったような感じだった。
 つまり、あんまり考えたくもないが――
 奴らは以前より、人間を操る術に長けてきている。
 それは、魔物共がより深く人間を理解しているという事でもある。
 ニュズは、実験という単語を口にしていたが――なんの為に、魔物がそんなことをしているのか分からないところが、余計に不気味なのだった。
 俺には、魔物と人間が分かり合えるとは、どうしても思えないんだが。
 尤も、俺が考えているような意味で、魔物が人間を理解しようとしている訳じゃないのかも知れない。俺の考えは、まるで的外れだという可能性は高い。
 だから、これも単なる個人的な感想に過ぎないんだが。
 ニュズには、お嬢を殺す意思は無かったと思う。
 少なくとも、ラキスン家の断絶だとか、そんなのが目的じゃなかった筈だ。
 もしそうなら、もっと早くそうしてただろうしさ。
 この土地が選ばれたのは、もっと単純で身も蓋も無い、例えば「別にどこでもよかったんだけど、此処でいいか」みたいな、明かされたら文句のひとつも言いたくなるような――要するに、人間にとって、すんなり納得できる理由じゃないって気がする。
 もしくは、お嬢が殺されなかったのは、単にニュズの気まぐれだったとか――魔物にも、気まぐれなんてモンがあるとしたらだが。
 まぁ、いくら考えたところで、あんまり意味はない。
 ニュズがどれほど上手く化けようとしても、人間として不完全だったように、人間である俺にも、魔物の「つもり」なんて完全には分かりっこないからな。
198CC 33-12/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:00:12 ID:B0QWylQO0
「もうっ!!」
 お嬢の怒った声で、黙って考え込んでいた俺は我に返った。
「ホントにあなたって、気が利かない人よね!!」
「……はい?」
「いちいち言わないと分からないの!?」
 はぁ、すみません。
 何がお気に召しませんでしたでしょうか、お嬢様。
「あのね、私がこれほど怖がっているのよ?」
「うん?」
「だからぁ……そろそろ……その……」
 なんか知らんが、お嬢はじれったそうに、スカートの上からしきりと腿を撫でた。
「つまり……『大丈夫か?』って優しく聞きながら……その、そっと肩を抱いて安心させてくれたりしてもいいでしょう?」
 なんだ、そんなことして良かったのか。
「なのに、素っ気無く『かもな……』ですって!あ〜あ、私って、全然大事にされてないのだわ」
 腰掛けたままベッドに両手をついて、スネた顔で空気を蹴る。
 最近分かってきた事なんだが、こいつ、案外淋しがり屋というか、甘えん坊なところがあるよな。
 俺は席を立ってベッドに歩み寄り、ゆっくりと隣りに腰を下ろした。
 一呼吸置いて、仕切り直す。
「悪かったよ」
 出来るだけ優しく言って、エフィの肩を抱いた。
「べ、別に、無理に今すぐそうしなさいって言った訳ではないのよ……?」
 自分で言っておきながら、俺の手が触れた瞬間、エフィはぴくっと体を固くした。
 こうして触れていると、エフィの体は外見よりもさらに華奢だ。
 いい匂いがする。
 はじめはキツく感じていた香水にも、ずいぶん馴れた。却って、気分が落ち着くくらいになっている。
「大事にされてない、なんて言うなよ。皆、エフィを大切に思ってるよ。そんなの、分かってるだろ?」
 声音も喋り方も、鳥肌が立つくらいに精一杯気取ったつもりだったが、エフィは満足しなかった。
199CC 33-13/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:02:50 ID:B0QWylQO0
「そうじゃなくて……」
「うん?」
「みんな、じゃなくて……」
「……うん」
「だから……あなたは?」
 俯いていた顔を上げて、覗き込むように俺を見た。
「あなたは、どうなのよ……?」
「……皆と、同じだよ」
 悪い。ここが、ホントに精一杯だ。
「……ズルい言い方」
 エフィはぼそりと言って、俺の腿を抓る。
「いじわる」
『つい苛めたくなるのは、エフィが可愛いからだよ』
 そんな台詞が頭に浮かんだが、考えただけで鳥肌が立っちまって、口にするのはさすがに無理だった。
 いや、ホントごめん。ロラン辺りなら、もっと上手いこと夢見心地にさせてやれるんだろうけどさ。
 なんとなく、分かってる。
 多分、エフィは、恋愛気分を味わってみたいのだ。
 自分の気持ちが一番大事。
 やっと、それに気が付いた。
 いくら口ではそう言ってみせても、自分は結局、恋愛の末に結婚することはない。
 そういう立場の人間じゃない。
 家の事情が、相手を決めるだろう。
 こいつはきっと、それを自覚している。
 別に無理をして、自分に嘘を吐いて諦めてる訳じゃなくて。
 ちゃんと受け入れた上で、それを誇りにすら思っている。
 エフィのそういう部分に、俺は密かな尊敬を覚える。
 俺には、出来ないことだから。
 だから、ちょっとした火遊びがしたいっていうなら。
 せめて、恋愛気分を味わう真似事くらいなら。
 じきに居なくなると分かってる俺は、後腐れのないお相手として都合がいいと思うしさ。
 協力してやれなくもないのかな、と思ったんだけど。
 やっぱり、役者が不足してるみたいですよ、お嬢様。
200名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 08:03:38 ID:HewgQ4FEO
全裸支援
201CC 33-14/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:05:04 ID:B0QWylQO0
「お父様はね……私くらいの歳には、もうとっくに、色々な女の人とお付き合いしていたんですって」
 なんのつもりか、エフィは突然、そんな事を言い出すのだった。
「男の人って、ズルいわ。そういうことを沢山しても、はしたないだなんて言われないもの。咎められるどころか、むしろ嗜みだみたいに、まるでいい事のように見做されるでしょう?」
「うん、まぁ……女に比べれば、そういう部分はあるかもなぁ」
 つまり、俺もズルくていいのだと、そう仰ってるんでしょうか。
「……お母様は、知ってらしたのかしら」
 何故か、ぎくりとした。
「……もちろん、ご存じだったわよね。でも、ご結婚されてからは仲睦まじかったと聞いているし――それに男の人は、昔のことをあれこれと詮索するような女は嫌いなんでしょう?」
「まぁ、一般的には……そうかな」
 エフィは、にっと笑った。
「だったら、女だって結婚してから、昔のことで文句を言われる筋合いは無いわよね」
「……そうだな」
 こんな具合に俺達は、ある一線の上で綱渡りをしてるみたいな、微妙な関係を保っていた。
 多分、お互い意図的に。
 言ってしまえば、恋愛ごっこを楽しんでいたのだ。
202CC 33-15/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:08:42 ID:B0QWylQO0
「いちおう、アンタにゃアイサツしとこうと思ってね」
 相も変わらず蓮っ葉な口調で、ティミはそう言った。
 客が来ているとメイドに告げられた俺が、はて、この町で客になるような知り合いなんていたっけかと首を捻りつつ表に出たら、すっかり旅支度を整えたこいつが待っていたのだ。
「アンタにゃ色々、世話になったしさ」
 捕らえた人攫い共から、グエンの話を聞き出す便宜を図ってやったことを言ってるんだろう。
 こっちこそ、姫さんとエフィの危ない場面を助けてもらったんだから、いいトコお相子なんだけどな。まぁ、本人は認めてねぇけどさ。
「なんだよ、もう行っちまうのか?」
「ああ。これ以上、ここじゃ大した情報も出そうにないしさ」
 グエンの足取りを追う為に、ティミは町でも色々と聞き回っていたようだ。
「けど、俺がアリアハンに送るって話は……ああ、もう意味ねぇか」
「そういうこと。さっさと追いかけて、あのバカをとっ捕まえないとね」
 それは大いに賛成なんだが。
「それで、なんか分かったのか?アテはあるのかよ?」
 ティミは、肩を竦めてみせた。
「まぁ、そうだよな……俺の方でも、もし見かけるようなことがあったら教えるよ――って、連絡の取りようがねぇな」
「いいよ、気ぃ遣わなくて」
「いや、別にそういう訳じゃないけど」
 単に、あいつの首に早く縄をつけて欲しいってだけなんだが。
 何を勘違いしたのか、ティミはにやっと笑って、俺の胸板を裏拳で叩いた。
 げほっ。
 だから、俺の体は、拳で語るようには出来てねぇんだっての。
「いいってば。アンタがお人好しなのは、もう充分わかったからさ」
 こいつにまで言われちまった。
 おかしい。俺は捻くれ者のロクデナシの筈なんだが。
「それにアンタは、ウチらなんかに構ってる場合じゃないだろ?」
「へ?」
 ティミは言い辛そうに視線を外し、だが、すぐに再び俺を見据えて口を開いた。
203CC 33-16/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:11:37 ID:B0QWylQO0
「あのさ……リィナのこと、よろしく頼むよ」
 はい?
「なんかさ……上手く言えないけど、多分あのバカ、今もまだ、ちょっとヘンだろうからさ」
 待てまて。
「いや、俺によろしく言われてもなぁ。ほら、知って通り、あいつらとは、その……袂を分かった訳だしさ」
「けど、今の仕事が終わったら、アンタは勇者様を追いかけるつもりなんだろ?」
 だから、どうして当たり前みたいな口振りなんだよ。
「あのな……俺、そんなこと言ったか?」
「へ?――そういや、言われてないね。いや、なんとなく」
 なんとなくかよ。
「けど、そうなんだろ?」
「まぁ、待てっての。仮にそうだとしてもだ。リィナはあいつ――マグナと、今も一緒に居るのかよ?」
「ああ――」
 ティミは、そういえば説明してなかった、とでも言いたげな顔つきをした。
「だと思うんだけどね。ウチは、さっさとおン出ちまったからさ、最後はどうなったか知らないけど、少なくとも勇者様は、そのつもりだったと思うよ」
「そうなのか?」
「上の方は上の方で、違うコト考えてたみたいだけどね。けど、これまでと同じ面子でなきゃ、魔王退治には行かないって勇者様に言われたら、認めるしかないだろ?」
「そんな交換条件を出したのか、あいつ」
「いや、ウチはホラ、勇者様には嫌われてたからさ。又聞きだけどね」
 ティミは苦笑した。
「……あんたにゃ、悪ぃことしちまったな」
「いいよ、今さら。とにかく、ウチの知ってる限りじゃ、そういう雰囲気だったよ」
「そっか……」
 ちょっと、ほっとした気分だった。
 あいつらは、今も一緒に居るんだ。
 マグナは、リィナを許したんだな。
 同じ面子ってことは、当然シェラも居る筈で。
 なんか、よかったよ。
204CC 33-17/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:13:30 ID:B0QWylQO0
「ありがとな」
 自然と口をついて出た感謝の言葉は、ティミの顔を思いっきり顰めさせた。
「はぁ?別に、アンタに礼を言われるようなコトなんて、ナニもしちゃいないよ」
 このアリアハン人が!とか最後につかなかった分だけ、多少は扱いがマシになったのかね。
「ま、そういう訳だからさ。リィナのバカを、よろしく頼んだよ。ウチじゃ、何言ったらいいか、よく分かんなくてさ。アンタがまた、偉そうな説教でもしてやってくれよ」
 根に持つね。
「……案外、お人好しってのは、あんたのことかもな」
「ハァッ!?」
「だって、そうだろ。グエンはともかく、口ではなんだかんだ言いながら、リィナのことまで、ずいぶん心配してるじゃねぇか」
 少し仕返しをしてやろうと思って、からかい混じりに言ってやると、案の定、ティミは顔を真っ赤にした。
「な、なに言ってんのさ!違うッての!!ウチは別に、リィナの心配なんかしちゃいないよッ!!」
「どの口が言うのかねぇ」
「ホントだっての!!殴るよッ!?」
 あうっ、すみません。
 勘弁してください。
「ただ……さ」
「ん?」
「さっきも言ったけど、あのバカ、どっかおかしいんだよ。ありゃ、きっとヘンにモノを考え過ぎてるね。考え無しがバカの強みだってのに、いつもみたいにモノ考えないで、ヘラヘラ笑ってりゃいいのにさ、ったく……」
 続く口調は、やけに断定的だった。
205CC 33-18/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:15:34 ID:B0QWylQO0
「あのバカ、その内に負けて死ぬよ。今のままじゃね」
「……なんだ。やっぱり、心配してるじゃん」
 言葉を失いかけた俺は、ことさらにティミを茶化すことで、不安を振り払う。
「違うっての!!そンなんじゃないんだよ!!ウチはただ……」
「ただ?」
「だから……ウチはッ!!アイツが負けるトコなんて、見たくも聞きたくもないんだよッ!!」
「うん、そっか」
「違うッ!!勝手に納得すんじゃないよ!!ウチがアイツをケチョンケチョンに負かしてやるまではってコトだよッ!!ウチが勝った後なら、あのバカがいッくら負けようが知ったことかいッ!!」
「はいはい。そうだよな、ライバルだもんな」
「ッ……このッ!!」
 気付いたのは、風圧と共に視界を拳で塞がれた後だった。
 俺には全く反応出来ない速度で繰り出されたティミの拳は、鼻の頭に触れるか触れないかのところで、辛うじて寸止めされていた。
 全身を粟立てている俺に向かって、ティミは舌打ちする。
「フン。本気で殴ったら、アンタなんてイッパツで死んじまうからね。さすがにそりゃアンマリだから、勘弁してやるよ」
 あ、ありがとうございます。
「これに懲りたら、二度とウチにナメた口利くんじゃないよ」
 俺の鼻を指で弾いて、背中を向ける。
 痛ってぇな、くそ。
「肝に銘じておくよ。そんじゃ、達者でな――早いトコ、グエンが見つかるように祈ってるぜ」
「大きなお世話だよ。アンタこそ、せいぜい頑張んなよ。そっちの方が、よっぽど大変なんだからさ」
 捨て台詞を残して、ティミは去っていった。
 やっぱり、お前の方がいい奴だと思うぞ。
 おっかねぇけど。
206CC 33-19/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:19:24 ID:B0QWylQO0
 ラスキン卿が治める領内のあちこちから、魔物被害の報告が急増し始めたのは、例の事件から数日が経過した頃だった。
 時期的な符合からして偶然とは考え辛く、あのニュズって魔物が一枚噛んでると思われたが、実際のところは分かず仕舞いだ。
 それよりも問題は、話を聞いたファングが、勇んで魔物退治に出張っちまったことだった。
 事件の後始末に関しては、ほとんど俺に任せ切りだったからな。よっぽど暇を持て余していたらしい。
 勝手にしゃしゃり出ちまったモンだから、当初はラスキン卿の配下とずいぶん揉めたようだ。なのに、いつの間にやら中心になって、討伐隊の指揮を執っていたのは、流石というかなんと言うか。
 今後の魔物対策についてラスキン卿から相談を受けていたこともあり、最終的には俺も手伝わなくちゃいけないみたいな流れになって、結局、魔物被害がひと段落するまでは、エフィの故郷を離れられなかったのだ。
 他にも、蔭ながらお慕い申し上げていたメイドがファングに言い寄る一幕があったり――おかしいだろ。これは、俺の役回りだった筈じゃねぇのか。
 すわアメリアと喧嘩になるぞと、期待に胸を踊らせつつ生暖かく見守ってたら、二人ともまるで動じないバカップル振りを見せ付けられて、逆にムカついたり。
 魔物討伐が長引いて、一日顔を見せなかっただけでお嬢がスネたり、お嬢がスネた理由を姫さんに問い質されて返答に窮したり。
 その姫さんは、毎日アメリアの買出しに付き合っていたからか、俺の知らない間に町で顔見知りを作っていた。
 正体がバレやしないかとヤキモキした末に、一度コッソリ後をつけ――存外に楽しそうな姫さんの様子を物陰から覗き見て、妙に淋しい気分に襲われたりもした。
 その他、細かい出来事がなんだかんだと色々あって、それでジパングから来たヤツの件は、ついつい後回しになっちまったのだ。
 忘れてた訳じゃないんだけどね。
 いや、ホントに。
207名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 08:19:38 ID:4XWwFfte0
支援
208CC 33-20/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:23:43 ID:B0QWylQO0
「どうかどうか、ヤマタノオロチめを退治してくだせぇ」
 魔物による被害もようやく落ち着いた頃合いに、俺とエフィで宿屋に話を聞きに行くと、タタラという若い男は歳に似合わない古臭い喋り方で、そう切り出した。
 聞けば、タタラの故郷のジパングでは、以前からヤマタノオロチという強力な魔物に人里が襲われて、村ごと無くなっちまったケースも少なくないのだという。
「近頃、摩訶不思議な神通力を身につけなさったヒミコ様が、オロチには生贄じゃと教えてくださらなんだら、いま頃は国ごと無うなっとったかも知れん」
 ヒミコというのは、ジパングの女王みたいな存在のようだ。
 つか、神通力ってなんだ。そんなモン持ってるなら、そのヒミコがオロチとやらを退治すりゃいいじゃねぇか。まぁ、戦闘向きの能力じゃないのかも知れないけどさ。
 ともあれ、ヒミコの言う通りに生贄を捧げてみると、オロチによる被害はぴたりと止んだのだという。
 だが、それで目出度しめでたし、とはならない。代償に生贄を捧げてるんだから、人が喰われ続けていることに変わりはないのだ。
 しかも、ヒミコによれば、オロチの好物は若い女だそうで、そのお陰でジパングでは妙齢の女の数がどんどん減っているってんだから、もったいない――じゃなくて、痛ましい話だ。
 女達は、次は自分の番じゃなかろうかと毎日怯えて泣き暮らし、家族もひたすら手をこまねいて周章狼狽するばかりだという。
 もちろん、男達は何度もヤマタノオロチの討伐に向かったが、誰も帰ってこなかったそうだ。
 まぁ、それも無理はないんだが。
 タタラの話から推察するに、どうやらヤマタノオロチってのは、魔物の中でもとびきり強力とされている『竜種』みたいだからな。
 たとえ、結界による護りが無くてさえ、魔物が「単独」で人の集まる村や町を襲うことは、ほとんど無い。奴等にだって、野生動物と同程度の分別――と言っていいのかどうか分からないが、それが無茶だってことくらいは理解できるんだろう。
 だが、竜種となれば話は別だ。単体で人里を襲うこともあるかも知れない。それ程に強力な魔物なのだ。
 その上、ジパングの連中は魔物退治を生業にしてる訳じゃない、言ってみりゃ単なる素人だからな。敵わなくて当然だ。
 だいたい竜種なんて、俺でさえほとんど出くわしたことねぇもんよ。
209CC 33-21/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:29:33 ID:B0QWylQO0
 竜種の中では弱っちいとされるスカイドラゴンを、二、三度、隠れてやり過ごしたことがあるくらいだ――いや、そん時はマグナと二人きりの道中だったからさ。あんまり無茶する訳にもいかなくて、こっちが見逃してやったんだけどな。
 何にせよ、お嬢から簡単に話を聞いていただけだったから、ジパングの状況がそこまで切羽詰まっているとは思わなかった。
 普通の、と言っちゃなんだが、この地における魔物被害と変わらない程度に考えていたからこそ、まずはこっちを先に片付けてからと、つい後回しにしちまったのだ。
 というか、話を聞いたら、余計に行く気が失せたんですが。
 重い気分を引き摺りつつ屋敷に戻り、ファングに話して聞かせると、案の定、馬鹿はすぐに出発しようとほざきやがった。
 そりゃあな。ここの被害は、ラスキン卿の配下だけで十分に対処できる程度には収まったし、元々ジパングの件で俺達は雇われたんだから、行かない訳にはいかねぇけどさ。
 でも、竜種の相手なんぞしたくねぇなぁ。
 思った以上の危険が待ち受けているようなので、俺としては、姫さんとお嬢は置いてくつもりだったんだが。
「嫌じゃ」
 話を切り出して間もなく、姫さんは唇を尖らせて俺を睨み上げた。
「わらわも、一緒に行くのじゃ」
「いや、あのな、エミリー。聞いた話じゃ、すげぇ強い魔物が相手らしいんだよ。だから、その……危ねぇだろ?なるべく早く、帰ってくるからさ」
「信用ならんのじゃ。そんなこと言って、またわらわを置いてきぼりにするつもりなのであろ」
 うぐっ。
 まぁ、言われても仕方のないトコロではあるが。
「置いてったりしねぇって。約束しただろ?一緒にあいつらを探しにいくってよ」
「ならば、今回も一緒に行ったところで、何も問題は無いのじゃ」
「へ?なんで?」
「お主と一緒にシェラ達を探す道中も、どうせ魔物に襲われるのじゃ。どちらも危険に変わりないのであれば、今回だけ連れていかぬと言うのは、えぇと……そうじゃ、りくつに合わぬのじゃ」
 そりゃ、言葉の上では、そうかも知れませんがね。
 危険の度合いが違うっつーか――
「ヴァイス。あなたまさか、私を置いていくなんて言わないでしょうね?」
 姫さんの説得を一旦諦めて、先にエフィに出発の報告をしておこうと部屋を訪ねたら、こいつも駄々をこねはじめるのだった。
210CC 33-22/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:33:24 ID:OX4PVaQO0
「いい?これは私が最初に、タタラさんから頼まれたことなんですからね?その私が、人を雇ったらそれっきり、後はよろしくねだなんて任せ切りに出来ると思うの?」
 いやいやいや。
 お前は余裕で人を雇えるくらい金持ちのお嬢様で、俺達は魔物退治を生業にして金を稼いでる人間なんだから、役回りとしちゃ何も間違ってないと思うんですが。
「そんな無責任なこと、とても出来ないわ。私には、事の成り行きを見届ける義務があるのよ!」
 そんなおかしな義務は無いので、安心してください。
「とにかく!これは雇い主としての命令ですからね。私も一緒に連れていくこと。いいわね!?」
 そう仰られましてもね、お嬢様。
 どちらも素直に黙って送り出してくれそうになく、困った末にファングを相談相手に選んじまったんだから、俺もよっぽど血迷っていたらしい。
「二人を守る自信があるなら、好きにしろ。自信が無いなら、置いていけ」
 それが、ファングの単純明快な答えだった。
 お前ね、そんな他人事みたいに。
 足手纏いを連れて行くことになるんだから、お前にも大いに関係のある話だって分かって言ってんのか?
 いや――
 こいつの場合は、そんなのとっくに承知の上なんだよな。
 心構えを確認されてるのは、俺の方か。
 返答に詰まった俺に、ファングは珍しく言葉を重ねた。
「俺は、どちらでも構わん。だが、お前はそれでいいのか、ヴァイス」
 どういう意味だ?
 と首を捻りつつ、妙に得心している自分もいた。
 あの二人すら守り切れないようで、その程度の心構えで、あいつの――マグナ達の後を追えるのか。
 そう問われている気がした。
 関係無いけど、そういやこいつ、俺を名前で呼ぶようになってるな。
 いつからだっけ?
211CC 33-23/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:35:51 ID:OX4PVaQO0
「……結論は、ちょっと待ってくれ」
 その場ではそう答えたが、俺の心は既に決まってたんだと思う。
 それでも尚、即答出来ないところが、俺の俺たる所以というか。
 だってさ、俺が覚悟を決めることと、姫さんやエフィの安全を慮ることは、本質的には全然別の問題じゃねぇか。
 よーし、俺が守ってやるぜ。任せとけ。
 みたいに、俺が勝手に思い込むのは簡単だけどさ、実際、確実に守ってやれるかって言ったら、そうじゃねぇと思うし。そんなの自己満足に過ぎないっていうか、絶対だなんて断言する方が不誠実なんじゃねぇかと、やっぱり考えちまうんだ、俺は――
 だからと言って、ファングが不誠実だとも、今はあんまり思わないんだけどさ。
 そう、なんかズレてる。
 ファングが俺に決断を迫ってるのは、実際に連れていくの置いていくの、守ってやれるのやれないのってことより、もっと手前の部分だよな。
 要するに、いつまで経っても落ち着かない、俺の腰の据わらなさについて指摘されてるんだろう。
 自分だけのことだったら、決断するにも気が楽なんだけどな。
 これから先は、そういう訳にはいかねぇと、つまりはまぁ、そういうことだ。
 あるいは、俺はファングの馬鹿さ加減に中てられて、流されちまっただけなのかも知れない。
 ほら、俺って流され易いから。
 シンが無いもんで。
 けど、いつまでも、それでいい筈がないよな。
 本気で、あいつを追いかけるなら。
 この時は、そう思っちまったんだ。
 それで結局、姫さんとお嬢がついて来ることを認めちまった。
「本当に、いいんだな?」
 念押しをしたファングに、真面目くさった顔して頷いちまったのだ。
 自分なりに、覚悟を決めたつもりではあったんだけどな。
212CC 33-24/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:40:17 ID:OX4PVaQO0
 そして今、俺は自分の下した決断を、大いに後悔しているところなのだった。
 たとえ人生ってのが後悔の連続だとしても、さすがにこれは早過ぎるだろ。
 やっぱり、お嬢は置いてくるべきだった。
 そう思っちまうのを止められない。
 だってさ、神様じゃあるまいし、まさかこんな展開が待ち受けてるだなんて、予想できないじゃねぇかよ。
 こんな――世界の端っこにぽっつり浮かんだ島国で、俺を挟んでマグナとエフィがはち合わせるとかさ。
 なんの冗談なんだ、これは。
「もぅ、どうして探しに来てくれないの!?」
 ちらりとマグナ達の方を気にしつつ、エフィは小走りに俺に駆け寄った。
「振り向いても、どこにもあなたがいなくて……すごく、怖かったんだから」
 抱きつくようにして、腕を絡める。
「ちょっ……」
 今はヤバい。
 反射的に振り解きかけたが、俺を見上げるお嬢と目が合って力が抜ける。
「それで、この方達は、どなた?お知り合いかしら?」
 マグナはぽかんとして、こちらを見ていた。今なにが起こっているのか、まるで分かってないように。
 アルスは少し目を見開いて、ニヤニヤとした薄ら笑いを浮かべている。
「でも、偶然こんなところで会わないわよね?――あ、もしかして、ここで待ち合わせをしていたの?」
 エフィは、意外なことを言った。
「その……私みたいな足手纏いを連れて来てしまったから、アリアハンから応援を呼び寄せたとか、そういう事なのかしら?だとしたら、ごめんなさい、ヴァイス。余計な手間を取らせるつもりはなかったのだけど……」
 なるほど。
 偶然ばったり出くわした、ってよりは、よっぽどマシな解釈だな。
「けれど、私だって、駄目と言われれば大人しく諦めたわ。ついて来いと言ったのは、あなたなんですからね?」
 こら待て、お嬢。俺はちゃんと、最初に駄目って言ったじゃねぇか。
「こういう事ならそうと、先に言っておいてくれなければ、私だって困るわ。びっくりするじゃない――ほら、なにをしているの?早く紹介してちょうだい」
「あー……うん」
 この時、マグナは既に顔を背けていた。
 そして、これ以降、マグナが俺を見ることは、一度も無かった。
213CC 33-25/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:43:45 ID:OX4PVaQO0
「いや、すまないな。どうやら俺は、誤解していたようだ」
 アルスの声は、やけに上機嫌に聞こえた――実際、そうなんだろう。
「こんなに可愛らしいお嬢さんと、一緒だったとはね。そういう事なら、マグナの後を追ってきた筈もないか」
「まぁ――」
 エフィは口元を押さえてはにかむと、あなたも立派で素敵だの、そちらの方もとても可愛らしいだのと、どうでもいいべんちゃらを口にした。
 嬉しそうにすんなよな。可愛いなんて、言われ慣れてる筈だろ。
 それともアレか。やっぱり、この野郎のツラがいいからか。
「でも、追ってきた……って、どういうことなの、ヴァイス?あなたが呼んだんじゃないの?」
 エフィとアルスがのどかに名乗り合うのを苛々と聞き流していた俺は、急に問い掛けられて、咄嗟に返事が思い浮かばなかった。
「いや……」
 俺が頭を働かせる間もなく、アルスが答える。
「申し訳ないが、それはこちらの勘違いだったらしい。俺達は、たまたまばったりここで顔を合わせた、ということのようだ」
「ばったり……ですって?えぇと、お知り合い……なの、よね?そんなことって、あるのかしら?」
「まったくだ。信じられない偶然だな。だからこそ、俺も余計な気を回して、妙な勘繰りで彼を困らせてしまった。申し訳なく思っている」
 野郎は俺を見て、恩着せがましい薄ら笑いを浮かべた。
「とにかくだ。知った顔を、意外な場所で見かけたんでな、少し挨拶を交わしていただけで、俺達は別に、彼に用事があるという訳じゃない。そうだろう、マグナ?」
「……ええ」
 マグナは顔を背けたまま、低い声で短く答えた。
「そうなの?なんだか、誤魔化されている気がするのだけれど……」
 エフィは不審げな眼差しで、俺とマグナを見比べる。
「とんでもない。心配なら、彼にも尋ねてみるといい。きっと、俺達に用は無いと答える筈だ」
 油断してたな。
 この野郎、思ったより弁が立ちやがる。
「……ヴァイス?」
 俺は、エフィを見れなかった。
 かといって、マグナの方も向けずに、明後日に目を逸らす。
214CC 33-26/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:46:31 ID:OX4PVaQO0
「ああ。ここで会ったのは……偶然だよ」
「そういうことだ」
 どうにか躱すつもりが、アルスが後を継いで台無しにする。
「俺の勘違いで、もしあんたに誤解を抱かせてしまったなら、謝ろう。だが、俺達と彼は、別にあんたが疑ってるような関係じゃ――」
「もういいから」
 アルスの言葉を遮ったのは、マグナだった。
「……もういいわ、アルス」
「ん?ああ、すまない。柄にもなく、つい喋り過ぎたかな――マグナ?」
 顔を覗き込んだアルスを、マグナは突き飛ばした。
「……先に、戻ってるから」
 踵を返して、走り去ってしまう。
「マグナ!!」
 ちょっと待ってくれ。
 なんなんだよ、これは。
 なんで、こんなことになっちまったんだ。
 俺、まだお前に、何も言って――
 足を前に踏み出しても、腕だけがついてこなくて、エフィに掴まれていたことを思い出す。
「……悪い」
 エフィの手を握って、引き剥がした。
 なるべく優しくしたつもりだったが、乱暴になっちまったかも知れない。
 駆け出した俺の前に、アルスが立ち塞がった。
「どけよ」
「聞けないな」
 アルスは、俺の背後に視線を送る。
「いいのか。彼女を置き去りにして」
「うるせぇな。手前ぇにゃ、関係ねぇだろ」
「ヒドいことを言う。大きな声を出すと、彼女に聞こえるぞ」
 皮肉のつもりか、にたりと笑う。
「それに、関係が無くはないな。俺は、あんたに嫉妬を覚えている」
 黙れよ。
 のんびり手前ぇと話し込んでる暇は――
215CC 33-27/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:48:52 ID:OX4PVaQO0
「なにしろ俺は、まだマグナを泣かせたことがない」
 咄嗟に、何を言われているのか理解できなかった。
 え――?
 今、なんて言った?
 まさか――
 マグナは、泣いてたのか!?
「あんたは今、マグナの前に顔を出さない方がいい。余計に拗れるだけだ」
 馴れ馴れしく野郎に肩を叩かれたことも、あまりよく分かっていなかった。
「あいつのことは、俺に任せてくれ。どうしてだか、俺はあいつのことは、よく分かるんだ」
 アルスの台詞も、ほとんど耳に入っていない。
「もし会うにしても、お互いにもう少し落ち着いてからにした方がいい。じゃあな。マグナが心配だから、俺も失礼するよ」
 全身が脱力して、膝が抜けそうだった。
 俺は、また――
 あいつを泣かせちまったのか。
 アルスが完全に立ち去った後も、俺は動けずに立ち尽くした。
 我に返ったのは、脇の茂みから耳慣れた声が聞こえたからだ。
「うっわ〜……なんだろ、これ。まさか、こんなコトになるとは、思わなかったよね」
「ちょっ……ちょっと、リィナさん!?」
 がさりと、茂みを鳴らして姿を現したのは――
「や!ヴァイスくん、久し振り!」
 久しく聞いていなかった、軽い調子。
 挨拶のつもりか、しゅたっと片手を上げている。
 リィナだ。
「あ……ど、どうも、お久し振りです」
 リィナの腰にしがみついたまま、もろとも引きずり出されたシェラは、俺に向かって頭を下げて、曖昧な笑みを浮かべた。
216CC 33-28/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 08:53:28 ID:OX4PVaQO0
「いや〜、びっくりしたよ〜。隠れてアルスの後をつけてたらさ、マグナとヴァイスくんが一緒にいるんだもん。思わず声が出そうになっちゃって、我慢するのに必死だったよ」
 妙な身振り手振りを交えてそう言って、リィナはアハハと笑った。
 軽いノリも、いつもの道着も変わらない。
 なんだか、ひどく懐かしい――
「ホントに、びっくりしました。今もまだ、ちょっと混乱してます」
 一方、ダーマで新調したのか、シェラの旅装は変わっていた。
 毛先で髪をまとめているからだろうか、面影も微妙に変化したように思える。成長期だもんな。
 つか、こいつやっぱ、滅茶苦茶可愛いな。
 記憶ってのは、美化よりも劣化が普通なんだと、改めて思い知る。
「ヴァイスくん?お〜い」
 リィナが、俺の目の前でひらひらと手を振っているのに、遅れて気が付いた。
「あ、ああ……うん、久し振り。元気そうだな」
「えっ、なにそれ」
 リィナは俺の唇の端に指を当てて、無理矢理上に引き上げる。
「せっかく久し振りに会ったんだからさぁ、もうちょっと嬉しそうな顔とか出来ないかな」
「バカ、よせ……いや、違うって。もちろん嬉しいっての。けど、とにかく、アレもコレもいきなりだからさ――」
「ホント、そうだよね。びっくりだよ。なんでヴァイスくんが、こんなトコにいるの?」
「……そりゃ、俺が聞きたいんだが。っていうか、お前ら、また蔭から覗き見とかしてたのか?」
「へ?ああ、うん、まぁね〜」
 リィナは笑って誤魔化した。
 そんな仕草も懐かしい。
 駄目だ――
 次から次に色んな事が起こり過ぎて、御し切れなくなった感情が溢れそうだ。
 目頭が熱くなって、俺は慌てて顔を伏せた。
「んん〜?もしかして、感動しちゃって泣いてるのかな、ヴァイスくん?」
 覗き込んできたリィナから、必死に顔を背ける。
「……さっきの、お前らの仕業だろ」
 この時点では、話を逸らす意図だったんだが。
217名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 09:00:40 ID:lYYxKDFdO
全裸で支援
218CC 33-29/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:00:50 ID:OX4PVaQO0
「ん?なにが?」
「マグナとあいつのことだよ。どうせまた、お前らが妙な御膳立てしたんだろ」
「あーうん。いや、その……」
「いえ、あの、違うんです。えっと……マグナさん、あれからずっと元気無くて……それで、アルスさんだったら、元気づけてあげられるかなって、その……」
 言い辛そうなシェラの後を、リィナが受ける。
「だってさ、あの二人って、端から見ててじれったいんだよ。ボク達に遠慮してるのか知らないけど、お互い意識してるクセに、船の上でも妙に距離置いちゃってさ。だからもう、無理矢理二人きりにしちゃおうって、シェラちゃんと相談して……」
 リィナが屈み込んで、下からまた俺の顔を覗き込んできた。
 どうにか目頭の熱さも引いていたので、今度は顔を逸らさなかった。
「……ごめんね。ヴァイスくんには、悪いと思ったんだけどさ……でも、ほら。マグナにフラれちゃったら、またボクが慰めてあげるし、なんて――」
「そうじゃねぇよ」
 俺の語気は、自然と強くなった。
「俺が聞きたいのは、そうじゃなくて……なんでアルスの野郎が、仲間ヅラしてお前らと一緒に居るのかってことだよ」
 少し、間が空いた。
 シェラが何かを言いかけたが、答えたのはリィナだった。
「うん。別に聞かせてあげてもいいけどさ――その前に、教えてよ」
 俺の背後にいるエフィを指差す。
「あれ、誰なのさ」
 だよな。やっぱり、それを聞かれるよな。
 エフィはリィナの指を避けるように回り込んで、後ろから俺の腕にしがみついた。
「ふぅん……やっぱり、そうなんだ?」
「いや、ちょっと待ってくれ――」
 エフィが、俺の服の肩口を引く。
「ねぇ、ヴァイス、この方達もお知り合いなの?なんだか、何がどうなってるのか、私――」
「そりゃね、ヴァイスくんは、もうボク達とは別れちゃったんだから、誰と何をしようが勝手かも知れないけどさ……でも、これはナイんじゃないの?」
 リィナは腰に手を当てて、俺を睨む。
「あれからマグナが、どんな気持ちでいたのか分かってる?分かってる訳ないよね?だったら、こんな風に、マグナの前に出てこれる訳ないもんね?」
 お前まで――
 あの野郎と、同じこと言うなよ。
219CC 33-30/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:08:30 ID:OX4PVaQO0
「見損なったよ、ヴァイスくん」
 深い溜息。
 いや、言われても仕方ないってのは、分かってる。
 けど、違うんだ。
 今、お前が勝手に納得してるのは、違うんだよ。
「いや、あの――隠れて覗いてたんなら、聞いてただろ?俺だって、ここであいつと会うなんて、思ってなかったんだよ」
「だから、なに?」
 リィナの強い視線に出会って、言葉が詰まる。
「そういう事じゃないよね?ボクが言ってるのって、そうじゃないでしょ?」
 そうだけど、お前が思ってるのも、そうじゃないんだ。
「ボク、ヴァイスくんのこと、ホントに見損なってたよ。これでもさ、信じてたんだよ?ううん、ボクだけじゃなくて、シェラちゃんも、マグナだって、きっと……今は離れてるけど、最後はちゃんと戻ってくるって――」
 徐々に伏せられた瞳が、また俺を射る。
「でも、そうだよね。ヴァイスくんは元々、無理矢理付き合わされてただけだもん、別れちゃえば、ボク達のことなんて、どーでもいいよね」
 否定の言葉を口にしたいのに、絶句しちまって喉から出て行かない。
 リィナは、自嘲するみたいに薄く笑った。
「馬鹿みたい。なんで気付かなかったんだろ。ヴァイスくんは今ごろ、ボク達と別れてせいせいしてるとか、すっかり忘れちゃってるとか、なんで全然思わなかったんだろ……」
 だから、勝手に話を進めるなって。
 そんな風に、思ってる訳ねぇだろ――
「あまり、勝手を言わないで」
 一瞬、自分の口が勝手に動いちまったのかと思った。
 それは、エフィの声だった。
「この人は、そんな風に思ってないわ。いつも淋しそうな顔をして……そうよ、あなた達のことを考えていたんだわ。あなた達とヴァイスがどういう関係なのか、よく分からないけれど……この人が、ずっと悩んでいたことは、私には分かるもの」
 思いがけないところからの反論に、虚をつかれていたリィナの顔に、見た覚えのない皮肉らしい笑みが浮かぶ。
「へぇ……いい人見つけたんだね、ヴァイスくん。楽しく暮らしてるみたいで、なによりだよ」
「いや、お前な……」
 俺は、何言われても仕方ねぇけど……そういう言い方はねぇだろ。
220名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 09:15:12 ID:4XWwFfte0
支援
221CC 33-31/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:15:30 ID:OX4PVaQO0
「私は、そんなつもりで言ったのではないわ。ただ、あなたがあまりにも一方的に、この人を責めるから――」
「うん、黙っててくれる?悪いけど、キミには話してないから。っていうか、だからキミ、誰なのさ?キミに、ボク達の何が分かるっていうの?」
 冷たいリィナの声音に怯えたように、エフィはぎゅっと俺の腕を掴んだ。
「それは……あなた達のことは、全然聞かされていなかったし、だから、何がどうなっているのか、今でも何がなんだかよく分からないけれど、でも、私は――」
「何も知らないんだったら、黙ってなよ!!」
 たじろぎながらも、健気に言葉を続けようとしたエフィの手をぽんと叩く。
 ごめんな。お前が怒鳴られるようなことなんて、何もねぇのにな。
「この人、ボク達のこと、全然聞いてないって言ったよね!?それってつまり、ヴァイスくんはボク達のことなんて忘れちゃってたってことでしょ!?すっかり忘れて、その人と楽しく暮らしてたんだよね!?ボク達のことなんて、やっぱりどうでもよかったんだ!?」
「待てって……ちょっと落ち着こうぜ」
 こんなに取り乱したリィナを見たのは、はじめてだ。
 そうだよな。俺がしたことが、そんなに軽い訳ねぇんだよな。
「なにが!?ボクは、全然冷静だよ!?」
 だが、リィナは落ち着かなかった。
「なにやってんのさ、ヴァイスくん……なにやってんの!?こんなの……マグナが可哀想だよ!!」
 声を詰まらせて、ぎろっとエフィを睨む。
「なんでそんな、ボクの知らない女の人と一緒にいるのさ!?ヴァイスくんは、マグナと一緒じゃなきゃダメなのに!!」
「……ちょっと待てよ」
 何を言われても仕方ない。
 そう思ってたのに――アルスの野郎のツラを思い出しちまった。
「たった今、マグナとあの野郎をどうにかしようとしてたお前が、それを言うのか?」
「え……?」
 リィナは、気勢を殺がれた顔をした。
222CC 33-32/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:21:15 ID:OX4PVaQO0
「だからさ、お前は、マグナとあの野郎をくっつけようとしてたんだろ?つまりだ――お前の理屈で言や、そっちだって俺のことなんてすっかり忘れて、どうでもいいって思ってたってことじゃねぇのかよ?」
「あ……違――」
 気付いてなかったのか、思った以上にリィナはうろたえた顔をした。
「違くねぇよ。そういう事だろうが。自分のしてることを棚に上げて、俺だけ悪いみたいに言うなよな」
 マズい。これじゃ、売り言葉に買い言葉だ。
 そう思ってるのに、アルスを前にしていた時から、ずっと言い返せなかった反動なのか、口が止まらない。
「大体な、さっきから黙って聞いてりゃ、お前だって、俺がどんな気持ちでいたのかなんて、まるで分かっちゃいねぇじゃねぇか――いや、それはいいんだけどさ。関係無ぇから黙ってろとか言いながら、こいつにまで八つ当たりするなよ」
 ちらりと目を向けると、エフィは申し訳無さそうな顔をしていて、自責の念が思いがけない言葉を俺に続けさせる。
「なんか……お前って、そんなヤツだったか?」
 息が詰まったみたいに口をわなわなさせて、リィナは大声を出した。
「なんだよっ!!ヴァイスくんなんか、なんにも分かってないクセにっ!!」
 こっから先は、もう怒鳴り合いだった。
「ヴァイスくんのバカッ!!分からんちん!!もう、大っ嫌いっ!!」
 激しく地団駄を踏む。
「あ〜も〜、全っ然ダメッ!!マグナだって、アルスとくっついた方が全然いいよ!!」
「ああ、そうかよ!!そうだろうよ!!だったら、勝手にすりゃいいだろ!?」
「あ!!やっぱり、そうなんだ!?もうボク達のことなんて、どうでもいいんだ!?」
「そりゃ、お前が言ってんだろ!?ああ、どうせ、俺は何言われたって反論なんてできねぇからな!!なんでも勝手に言いたい放題言って、そう思ってりゃいいじゃねぇか!!」
「〜〜〜っ!!」
 激しく顔を歪めて溜めた言葉を、リィナは盛大に口から吐き出した。
「ヴァイスくんのバカッ!!死んじゃえっ!!」
 リィナだけに、駆け去るのもあっという間だった。
 まさか、リィナに「死んじゃえ」なんて言われると考えたこともなかった俺は、衝撃を受けて却って素に戻る。
 追い討ちをかけるように、深々とした溜息が聞こえた。
223名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 09:25:43 ID:4XWwFfte0
支援
224CC 33-33/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:25:59 ID:OX4PVaQO0
「……子供じゃないんですから、ヴァイスさん」
 えらく冷静にシェラに言われて、急に恥ずかしくなる。
「ああ、うん……そうだな。悪かったよ」
「私に謝られても仕方ないです。でも……ヴァイスさんって、そんなでしたっけ?」
 さっき自分が口にした言葉を、そのまま返された。
 なるほど。これは、かなり堪えるな。
「なんだか……がっかりです」
 うわ、そんな真面目な顔して、なんてこと言うんだ。
「いや、お前、そんな……」
「な・ん・で・す・か?」
 一音ごとに区切るように口にして、シェラは俺を睨みつける。
 それで、俺は口の中でモゴモゴ言うだけで、反論できなくなっちまった。
 なんかこいつ、しばらく見ない内に、ずいぶんしっかりした気がするぞ。
 以前のシェラだったら、オロオロするだけで、こんなこと言えなかったと思うんだが。
「あの……ごめんなさい、ヴァイス」
 おそるおそる、といった感じで、エフィが気遣わしげな声を出した。
「私が、余計なことを言ってしまったから……何も分からないのだから、黙っているべきだったのよね……」
「いや……気にすんな。エフィは、なんも悪くねぇよ」
「そうですね。悪いのは、全部ヴァイスさんです」
 まぁ、そうだけどさ。
 お前、そんなはっきり言うヤツだったか、シェラ。
 よっぽど腹に据え兼ねてるのか――あるいはアレか、反抗期か。
「あのですね、ヴァイスさん。なんでリィナさんが、あんなに怒ってたのか、ちゃんと分かってますか?」
「へ?いや、そりゃ……」
「マグナさんのことだけじゃないんですよ?そういうの、ちゃんと分かってるんですか?」
「ああ、うん。まぁ……」
「これだから、男の人って……」
 俺の内心を見透かしたみたいに、呆れた口振りで呟いた。
 これも、以前のシェラなら言わない台詞だったと思う。
 だが、自分でも不思議なんだが――さっきのリィナと違って「らしくない」とは、俺には感じられないのだった。
225CC 33-34/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:31:23 ID:OX4PVaQO0
「自覚がないみたいだから、私が言っておいてあげます。ヴァイスさんは、何も分かってないです」
「……何が、分かってないんだよ」
「私からは、説明しません。自分で分からないと、意味無いですから」
 ツンと顔を逸らす仕草が可愛くて、つい誤魔化されそうになったが、さっきからかなりキツいこと言ってるぞ。
「ちゃんと、考えてくださいね。じゃないと、そのひとにも悪いです」
 シェラに視線を向けられて、エフィは少し困ったような表情を浮かべた。
「ああ、うん……そりゃ、考えるけどさ――」
「アルスさんは、マグナさんのこと、すごいよく分かってますよ?端で見てて、怖いくらい……」
 シェラは、ちょっと頭を振った。
「いえ――とっても丁寧に、マグナさんのことを考えてあげてます。だから、こんなんじゃ、私にもアルスさんと一緒の方がいいとしか思えないです。マグナさんにとって」
 シェラはきっと眉を顰めた。
「大体、ヴァイスさんはですね――」
 途中で言うのを止めて、また溜息を吐く。
「もういいです。とにかく私も、今のヴァイスさんには、納得できないですから」
 しばらく、なんとも言えない目をして俺とエフィを眺めていたシェラは、ふいとリィナの後を追って歩き出した。
「え――いや、ちょっと待ってくれ」
「……なんですか?」
 振り向いたシェラの顔は、すごいムッとしていた。
 それでも可愛いく見えるんだから、どんだけ可愛いんだろうな、こいつは。
「いや、あの……できれば、もう少し落ち着いて話をだな――」
「お断りします」
 覚えがないくらいきっぱりと、シェラは答えた。
「今は私も、冷静にお話しする自信、無いですから。これで、失礼します」
「なら、今じゃなければ……また後で、落ち着いてからだったら、話できるか、な?」
「……お答えできません」
 シェラは、ちょっと目を伏せて、何事かを呟いた。
226CC 33-35/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:35:08 ID:OX4PVaQO0
「え?」
「なんでもないです!とにかく、私の一存じゃ決められないですから」
「じゃあ、せめてさ……どこに泊まってるのかだけでも、教えてもらえないか」
 しばし逡巡してから、シェラは諦めたように口を開く。
「……教会で、お世話になってます。でも、無理に押し掛けたりしないでくださいね」
「ああ、うん、分かった。もちろん」
 もう一つ、いつ頃まで滞在する予定なのか、聞こうとした時だった。
「……っちじゃ、アメリア!早くするのじゃ!」
「待ってくださぁい……急にどうしたんですかぁ、姫さま。もうちょっとゆっくり――っ!?」
 続いて、どさりと人が倒れる音。
「うぅ……痛いですぅ」
「なにをしておる。あれほど足元に気をつけろと言ったであろ。ほれ、早く立つがよい。もうすぐそこなのじゃ」
「でもぉ……」
「なんじゃ」
「やっぱり、お邪魔ですよぅ……」
「ヴァイスとユーフィミアのことを言うておるのか?確かに、さっきまではあやつらを探しておったのじゃが、今は違うのじゃ!!ここの者達によればじゃな――」
 出来のいい彫像みたいに動きを止めていたシェラは、見開いた瞳を俺に向ける。
 俺は、大きく頷いてみせた。
 ほどなく、木陰から小さな人影が勢いよく飛び出す――
「やっぱりじゃ!!」
 満面に笑みを浮かべた姫さんは、真っ直ぐシェラに向かって駆け寄ると、体当たりするみたいに跳び付いた。
「シェラ!!」
「――っ!?」
「ははっ――本物じゃ!!まさかと思うたが、木々達によれば、お主にしか思えなかったのでな!!」
「姫さま……どうして?」
 何歩か後ろによろめきながら、どうにかエミリーを抱き止めて、シェラは呆然と呟いた。
「まぼろしではないな?消えたりしたら、しょうちせぬぞ?ん〜〜〜っ!!会えて嬉しいのじゃ!!」
 ひとしきり顔をすりすりと押し付けてから、姫さんはシェラを見上げて不思議そうに尋ねる。
「……それにしても、どうしてお主がここにおるのじゃ?」
「それは――私が聞きたいです。どうして姫様が、こんな処にいるんですか!?」
 問い返されたエミリーは、途端にびくりと身を縮めた。
227名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 09:36:52 ID:0sofBgGmO
船内から支援
228CC 33-36/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:38:22 ID:OX4PVaQO0
「……怒っておるのか?」
「え?」
「じゃって……あの時、わらわはシェラに、里で待っておれと言われたのじゃ」
「あ――」
「わらわが約束を破ったことを、怒っておるのか?でも……我慢できなかったのじゃ!!なんじゃ!!先にわらわをおいてきぼりにしたのは、シェラの方であろ!?それなら、わらわが怒るのが先なのじゃ!!」
「えっと、あの――ごめんなさい」
「ふむ。仕方ない、許してやるのじゃ。だから、シェラもわらわを許すがよいぞ」
 こんな際だが、姫さんの言い草に、思わず苦笑しちまった。
「はい、姫様。というより、私、全然怒ってないですよ?すごく、びっくりはしましたけど」
「ホントか?」
 不安げなエミリーに、シェラはようやく戸惑いを振り払った微笑みを向けた。
「もちろんです」
「……わらわと会えて、嬉しいか?」
「はい、とっても」
「そうか……そうじゃな?わらわも、嬉しいぞ!」
 改めて、エミリーはシェラに抱きついた。
 しかしまー、なんつう絵面だ。
 どっちも可愛らしいと言うに及ばず、あまりにも微笑ましくて、さっきまでの出来事を、少しの間だけ忘れていた。
「でも、姫様。どうしてここに?」
「おお、そうじゃ、紹介せねばな。シェラ、この者はアメリアと言うてじゃな、あとファングというのがひとりおるのじゃが、その者達に、わらわは里から連れ出してもらったのじゃ」
 目が合ったシェラとアメリアは、軽く会釈をし合う。
「ファングさんって、もしかして、サマンオサの勇者様の……?」
「そやつじゃ。なんじゃ、知っておるのか」
「いえ、あの、ちゃんとお会いしたことはないですけど」
「そういえば、ヴァイスとも顔見知りじゃったな。ところで、姿が見えぬが、リィナや、あのイジワル女も一緒なのであろ?そうじゃ、皆でわらわ達のところに来るがよい。そこで、ゆっくり話をするのじゃ」
「あ……はい、えと、それは……」
 姫さんの背中に回していた腕を解いて、シェラは恨みがましい視線を俺に投げつけた。
229CC 33-37/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:42:44 ID:OX4PVaQO0
「ごめんなさい、姫様。今は、その――」
「今は――なんじゃ?」
 エミリーは、小首を傾げる。
「あの、後で――また後で、必ず会いに行きますから」
 ここに至ってようやく、最前までこの場に淀んでいた空気に、エミリーは気が付いたようだった。
「姫様のお顔を見れて、とっても嬉しかったです。ホントに、とっても……あの、今度はリィナさんとマグナさんも、一緒に会いに行きますから」
「……なんで、そんなこと言うのじゃ」
 さっきまでの元気はどこへやら、姫さんはひどく落ち込んだ声を出す。
 フードに隠れて見えないが、きっと耳もしおしおと垂れているだろう。
「お主まで、ヴァイスと同じことを言うのじゃな」
「え?」
「また、わらわをおいてきぼりにするつもりなのであろ」
 ああ、うん。
 アリアハンで再会した時、そういや一緒に行けないとか言っちゃったな、俺。
「そんな、姫様……」
「違うというのであれば、今すぐあやつらを呼んでくればいいではないか!!何故、駄目なのじゃ!?」
「……ごめんなさい。今はあの、一度に色んな事があり過ぎて……」
 姫さんは、なにやら周囲を見渡した。
「全然、分からん――いや、分かっておるのじゃぞ?今しがた気づいたが、この木々の怯えには覚えがある。どうせ、ヴァイスとあのイジワル女が、また喧嘩したのであろ」
 むぅ、意外と鋭い。
 喧嘩の相手がマグナと言っていいかどうかはともかく。
「じゃが、まるで分からんのじゃ!!会いにくると言うておきながら、全然会いに来なかったのは、お主らではないか!?口では会えて嬉しいと言いながら、お主らはいつもわらわをおいてけぼりにしようとするのじゃ!!そんなの、全然分からないのじゃ!!」
「姫様……」
 困り果てたように、シェラはその場に立ち尽くした。
「あ〜……その、なんだ」
 見かねて、横から嘴を挟んじまった。
「エミリーは、しばらくシェラ達のところに行ってるか?姫さんだけなら、そっちに行ってもいいだろ?」
「えっ!?」
 最後の問い掛けはシェラに向けたものだったが、先に声をあげたのはアメリアだった。
「あ、はい、それは……その……」
 言い淀むシェラと、胸の前で両手の指を組み合わせているアメリアを交互に見て、エミリーは難しい顔をした。
230CC 33-38/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:46:35 ID:OX4PVaQO0
「……もうよい。勝手にするがいいのじゃ」
「姫様……」
「また会えるのであろ?だったら、もういいのじゃ。シェラがわらわに、二度も嘘を吐くとは思わぬ」
「……」
 姫さんは、皮肉で言ってる訳じゃない。
 逆に、困っているシェラを気遣っているように思えた。
 エミリーも、成長してるんだ。というか、俺達人間と行動を共にすることで、物事の捉え方が自然と変化しているのかも知れない。
 エミリーにとって、それが良いか悪いかは、まだ分からないが。
「はい……また、ゆっくり……」
 シェラは未練を残した瞳を伏せて、ぺこりと頭を下げた。
「……お休みなさい」
「うむ。お休みなのじゃ」
 とぼとぼと歩き去る途中で足を止めて、俺を振り返る。
「ヴァイスさんにも、色々事情があるのは分かりました。マグナさんとリィナさんにも、私からそう言ってみますから」
 エミリーとのやり取りで、何か思うところがあったのか、シェラはそんなことを言った。
「でも、あんまり期待しないでくださいね。それから、私もまだ、納得した訳じゃないです」
「ああ、分かってる。ごめんな。シェラにはいっつも、こんなことばっか頼んじまって」
「いえ……いいです。できることをやるしかないですもんね」
 肩を落としたシェラの後姿を見送りながら、俺は申し訳ない気分に襲われる。
 俺さえ一緒に来てなきゃ、姫さんとシェラは、もっと素直に再開を喜べた筈だもんな。
 いや、考えても仕方ねぇけどさ。
「……先に戻りましょう、姫さま?」
 アメリアが気遣わしげに声をかけても、エミリーはしばらく動かなかった。
 やがて、ぎゅっとつぐんでいた口を、大きく開く。
「やっぱり、全然分からん!!お主らの好きや嫌いは、わらわにはさっぱり分からぬのじゃ!!」
 スネた口調で言い捨てて走り去る姫さんの後を、アメリアが慌てて追いかける。
 ホントにな。
 俺にも、何がなんだかよく分かんねぇよ。
 こんな筈じゃなかったのに。
 あいつらとの再会は、こんな筈じゃなかったんだ。
 そりゃ、簡単に許してもらえるとは思ってなかったけどさ。
 それにしたって、もうちょっと、こう――
231名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 09:49:12 ID:e8oJPdlG0
しえn
232CC 33-39/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:53:25 ID:bYOL7CPc0
「……私達も、戻らない?」
 エフィの口調は、平素とあまり変わらなかった。
 今の一連の出来事に対して、こいつは何を感じて、どう思ったんだろう。
 表情からは、上手く読み取れなかった。
 それでも、少なくとも俺は、エフィのことをロクに考えてやれてなかったよな。
「ああ、そうだな」
 ゆっくりとした歩調で、俺達は元来た道を戻った。
 さっきまでの慌ただしさが嘘みたいに、周囲はとても静かで、隣りを歩くエフィの足音がやけに大きく聞こえる。
 俺はもう少し、こいつのことを、ちゃんと考えてもいいのかも知れない。
 ぼんやりと、そう思った。
 だってさ、俺は別に、勇者としてのマグナに協力しようと思ってた訳じゃないんだ。
 マグナっていう、ひとりの女の子を支えてやりたかっただけで。
 その女の子がさ、言葉は悪ぃけど、もう他に男を作ってよろしくやってるんだったら、俺の出る幕なんてどこにも無いじゃねぇか。
 改めて、思い知る。
 俺が居た場所は、もうアルスに獲られちまって――
 あいつらの間に、俺が戻れる場所は、もう無いんだな。
 その考えは、足元の地面が崩れるみたいに、俺を不安な気持ちにさせた。
「ちょっと、どうしたの?大丈夫?」
 よろめいた俺を、エフィが支えた。
「ああ、うん、なんでもない。ごめんな――いや、眠くってさ。ついよろけちまったよ」
「そうね。私も、すっかり眠くなってしまったわ」
 エフィは口に手を当てて、少しわざとらしいあくびをした。
 俺は意識的に、こいつと向き合おうとしてなかったよな。
 もう、そうしてもいいんだ。
 別に、すぐにエフィとどうこうとか、そんな風に考えてる訳じゃなくて。
 エフィにしたって、本気で俺と深い仲になろうと思ってる訳じゃねぇんだしさ。
 けど、恋人ごっこのお相手に過ぎないとしても、せめて、もうちょいエフィが満足してくれるように振る舞ってもいいんだよな――
『ヴァイスさんは、何も分かってないです』
 さっきのシェラの台詞が、不意に頭の中でリフレインする。
 うん、まぁ――
 色々、分かってねぇんだろうな、とは思うんだけどさ。
 何が分かってないのかも、よく分かんねぇんだよ。
233CC 33-40/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 09:59:55 ID:bYOL7CPc0
「ヴァイスが、マグナって呼んでたあのひと……」
 隣りを歩くエフィが、ぽつりと呟いた。
 来る途中で見かけた、大きな赤い木組みの建造物を通り越した辺りだった。
「恋人なの?」
 冗談めかして、エフィは笑っていた。
 少しだけ、間が空いた。
「……ああ」
「やっぱりね」
 からかい混じりの苦笑。
「昔の、な」
 考える前に、そう言っていた。
「そう」
 短くいらえて、エフィが立ち止まる。
「なら、私は?」
 俺は、二、三歩遅れて足を止めた。
「あなたにとって、私はなに?」
 俺は、振り向かなかった。
 苦笑が、再び耳に届く。
「もちろん、婚約者に決まってるわよね」
 囁きが続ける。
「……嘘の、ね」
 俺は、聞こえなかった振りをした。
「ほら、早く戻って、もう寝ちまおうぜ。眠くて堪んねぇよ」
 俺が歩き出すと、エフィは遅れたままついて来た。
 タタラの家に着くまで、俺達の間に出来た距離は変わらなかった。
234CC 33-41/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:03:17 ID:bYOL7CPc0
 明けて翌日。
 朝から訪ねてきたサノオという知り合いと、タタラは暗い顔を突き合わせていた。
「そうか……スセリも生贄に……」
「ああ……近頃は、間がどんどん短こうなっとる……ほんに、このままでは子っこを産む女子が居のうなってしまう勢いじゃ」
 タタラよりも男前の顔立ちを悲痛に歪めて、サノオは溜息を吐いた。
 こいつも若いクセに、喋り方がやたらと古臭い。ここが島国で、アリアハンの衰退以降、外部からの影響を受け難かったのが関係してるんだろうか。
「すまんのぅ……オラが、もう少し早くこん人らば連れ戻っとれば……」
 それについては、ホント申し訳ない。
 タタラの口振りは揶揄する風ではなかったが、俺は思わず心の中で頭を下げた。
「それで、次の生贄がヤヨイに決まったいうんは、ホンマなんか?」
 ぎりっ、とサノオが歯噛みする音が、俺のところまで届いた。
「ああ……もう今晩には、連れてかれてしまうじゃろ……」
 話の流れからすると、ヤヨイというのはサノオの恋人らしい。
「おまんが帰って来なんだでも、一か八かじゃ。オレがオロチめば倒してやっかいと思うとったじゃが……」
「止めておけ」
 横から口を出したのは、ファングだった。
 土壁に背中を預けて、、腕組みをしながらサノオを見下ろす。
 ちなみに、タタラやサノオ、そして俺は、イロリとかいう――これは、なんて言うんだ?かまどと暖房の役割を兼ねてるんだと思うが、信じ難いことに部屋のど真ん中に焚き火をする場所があって、それを囲んで座っている。
 部屋が狭いこともあって、女連中は隣室に居るが、間仕切りが木枠と紙で出来た薄っぺらい引き戸だけなので、お互いに声が筒抜けだ。
 これって、夫婦が夜の営みをする時とか、どうするんだろうな。ガキが居たら丸聞こえだと思うんだが。
 昨夜は、隣室から響くファングの鼾にうなされながら、そんな余計な心配をしたりもした。
235CC 33-42/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:06:13 ID:bYOL7CPc0
「結果的に、俺達が間に合ったんだ。後は任せておけ」
「そいでも……そうじゃ、オレも一緒に連れてってくれ。オレにもなんぞ、手伝わせてくれろ」
「要らん。足手纏いだ」
「じゃけんど、凝っと待ってなどおれんのじゃ。オレの命を、どう使ってもらっても構わん。オトリやら盾くらいの役には立ってみせるじゃけ……」
「命を賭して構わんと言うなら、なぜさっさとオロチ退治に向かわなかった」
 淡々としたファングの問いかけに、サノオは唇を噛んだ。
「いや、責めている訳じゃない。それで当然だと言っているんだ。敵わんと分かっていながら立ち向かうのは、蛮勇でしかないからな」
 あれ?
「せっかく、これまで自重したんだ。今になって駄々をこね出したところで仕方なかろう。それに、貴様が死んでしまっては、たとえ助かったところで女が悲しむんじゃないのか?それが分からんとは言わせんぞ」
「むぅ……」
「分かったら、大人しく任せておけ。その為に、俺達は此処に来た」
 どうしたんだ、ファング。俺の時と違って、ずいぶん優しげな台詞をほざくじゃねぇか。
 俺なんか、出会って早々に負け犬とか罵られたのによ。
 フン。別に拗ねてねぇけどな。
「それよりも――」
 ファングは背中で勢いをつけて壁から身を離し、土間の方を見た。
「誰か来たようだぞ。複数……二人か。足音からして素人ではなさそうだが、心当たりはあるか」
「へぇ。いんや――」
 すぐに、俺にも重なり合った足音が近付いてくるのが聞こえた。
 タタラとサノオが、顔を見合わせる。
「まさか、ヒミコ様の――」
「じゃけんど、早過ぎやせんか――」
 二人が結論に達するより早く、足音は家の前に辿り着き、乱暴に叩かれた立てつけの悪い木戸がびりびりと震えた。
236CC 33-43/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:09:27 ID:bYOL7CPc0
 訪ねてきた二人の男は、この国を治めるヒミコの使いということだった。ファングの言葉を信じるならば、どうやら兵士ってトコだろう。
「そのケッタイなナリからして、まず間違いあるまい。お主ら、外からやって来た人間であるな?」
 ヒミコ様がお呼びだから、今すぐ馳せ参じろと、兵士の一方が居丈高に命じた。
「それにしても、外の連中は、皆そのように奇矯ないでたちをしておるのか?情けないのぅ」
 もう一方の兵士が、俺とファングをじろじろ見回してこき下ろす。
 まさか、ここの人間にケッタイなんぞと言われるとは思わなかったぜ。
 手前ぇらこそ、なんのつもりか、男のクセして伸ばした髪を両耳の辺りで結んでるじゃねぇか。そっちの方が、よっぽどおかしいっての。
 他所者は全員来るように言われたものの、どう見ても友好的な空気じゃない。
 女連中は置いていきたいところだったが、主にアメリアの立てた物音と声で、奥の部屋に居るのがあっさりバレちまった。
 まぁ、あいつらだけ留守番に残しても、それはそれで心配だしな。
 サノオとだけ別れて、素直に全員で向かうことにした。
237名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 10:10:39 ID:4XWwFfte0
支援
238名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 10:10:53 ID:AFLTzzxMO
支援
239CC 33-44/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:11:44 ID:bYOL7CPc0
「ヒミコ様は外の人間がお嫌いじゃで、なんぞお咎めを受けるかも知れん」
 道すがら、タタラは青い顔をしてそう言った。
 お前な、そういうことは、先に教えとけよ。
「いや、わざわざお召しがあるとは……しかも、これほど早くとは、思うとらんかったんじゃ」
 それは、まぁ、分からなくもない。
 特にこそこそしてた訳でもねぇから、隣近所のヤツがご注進に及んだのかも知れねぇが、それにしても対応が素早過ぎる気はする。俺達がこの地に辿り着いたのは、つい昨日の夕方で、今はまだ昼前なのだ。
「ヒミコ様は神通力をお持ちじゃで、オラ達のすることなど全てお見通しなのかも知れん」
 と、タタラは不気味なことを言った。
 俺のイメージでは、そういう得体の知れない真似が出来るのは、女王様じゃなくて鷲鼻の魔女の方がぴったりなんだが。
 奇妙な女王に治められた国。風変わりな格好で、古臭い言葉を喋る住人。
 木と土で造られた見慣れない家々が建ち並ぶ風景は、どこか色味に欠いて見える。
 それら全てが相俟って、なんだか昔語りの世界に迷い込んじまったような錯覚を覚えた。
 こんな気分に陥ったのは、エルフの里以来だ。
 アメリアに背中を預けて歩いている姫さんは――どうでもいいが、二人とも歩き難そうだ――昨夜はさっさと寝ちまってたので、まだロクに話をしていない。
 マグナ達とのことを、後でちゃんと説明しておかねぇとな。
 姫さんにずっとスネた顔されてるのは、淋しいからさ。
240CC 33-45/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:16:56 ID:bYOL7CPc0
 昨晩見かけた、そこだけ鮮やかに色が浮き上がって見える赤い柱――トリイとか言うらしい――の先に、ヒミコが住んでいる屋敷があった。
 その大きさにも驚かされたが、よく見ると全てが木造りだと気付いて、二度びっくりする。
 よくもまぁ、こんなデカいモンを木だけで建てやがったな。
 縦はそこまでじゃないが、規模としては俺の知る石造りの城と、然したる遜色が無い。
 いわば王城ってトコだろうが、ぶっとい木の柱で支えられた内部は、やはり薄っぺらい引き戸で間仕切りがされているだけで、城という表現は感覚的にそぐわない気がした。
 ともあれ、中に連れていかれた俺達は、とある一室に押し込められて、しばらく待つように告げられる。
 そして、そこには先客がいた。
「あれ!?ヴァイスくん!?」
 マグナ達だ。
 外から来た人間に用があるなら、こいつらが呼び出されていてもおかしくない。
 全く予想してなかった訳じゃないが、出来れば外れて欲しかったな。
 同時に呼ばれたってことは、こいつらがここに着いたのも、つい最近だろう。
「なんで――」
 普通に喋りかけたリィナは、はたと口をつぐんで、プイっと顔を背けた。
 シェラとエミリーの間でも会話が交わされかけたが、結局どちらも言葉を発しなかった。
 アメリアはぎゅっと姫さんを抱き抱え、エフィが後ろから俺の服を握る。
 マグナは――こちらを向こうともしなかった。
 ファングは特に驚きもせず、きょとんとしたタタラに「お知り合いかのぅ?」と聞かれて、「まぁな」などと頷いていた。
 き、気まずい。
 昨日の今日だけに、さすがに空気が重いです。
 誰も口を利かずに、無言のままねっとりと時が過ぎる。
 自分でもよく分からない焦燥感に駆られて、会話のきっかけを探していた俺は、シェラが申し訳無さそうに目くばせしているのに気が付いた。
 ああ、うん。
 説得してくれたけど、駄目だったんだな。
 気にすんな、というつもりで、俺は軽く片手を上げた。
 あいつにばっかり、苦労をかけらんねぇからな。
 そもそも、俺の問題なんだし。
 重苦しい空気の所為で長く感じたが、実際は大して待たされなかったと思う。
 やたらと髪の長い女が呼びに来て、俺達は気重い空気を淀ませたまま、ぞろぞろと連なってヒミコの前に通された。
241CC 33-46/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:21:52 ID:bYOL7CPc0
 通された筈なんだが、閑散とした室内に、ヒミコの姿は見当たらなかった。
 部屋の奥にすだれのような物が垂れていて、向こう側に灯された明かりが影を映し出している。
 その影が、ヒミコのようだった。
「へぇ」
「ほぅ」
 感心した風な呟きが、ほとんど同時に聞こえた。
 ファングとリィナだ。
 二人の視線は、すだれの影ではなくこちら側、その脇に佇む男に向けられている。
 割りと若い。俺より、少し上くらいか。
 見事な卵型をした顔に、鋭いツリ目が乗っている。
 外で見かけた住人とは異なり、頭頂部で結んだ髪を垂らしており――平たく言えば、チョンマゲだ――前で合わせて帯で留める型の服を着流していた。
 腰には、やけに細身の剣を差している。刀身が反っているところは同じだが、アッサラームの盗賊共が手にしていた幅広のソレとも異なる、見たことのない剣だった。
 ファングとリィナが二人して注目するってことは、相当な手練れなんだろうな。
 そういう目で改めて見直すと、確かに独特の雰囲気を感じた。
 周囲の空気すら拒絶しているような、張りつめた緊張感を身に纏っている。おかしな真似をしたら、たちどころに斬って捨てられそうだ。
「よくぞ参った、とは申さぬぞえ。妾の許しなく、日出ずる我が国へ這入りし蛮族めらが」
 不意に女の声が、すだれの向こうから、いんいんと反響して不気味に響いた。
 途端に、タタラが虫みたいに這いつくばって、へへぇと恐れ入りながら床に額を押し付ける。
 他には誰一人、控えもしなければ答えようともしなかった。
 お前らね、いちおう女王様の御前ですよ?
 全然、そんな感じがしねぇけど。
 しかたなく、俺が口を開く。
 自己紹介とか、した方がいいんだよな?
「えぇと、どうも。俺――私はですね、アリアハンから来た……」
「申さずともよいわ」
 あっさり遮られた。
242CC 33-47/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:28:02 ID:bYOL7CPc0
「汝等の名なぞ、とうに心得ておる。なれはヴァイスとか申すのであろう。ファングにアメリア、エミリー、ユーフィミア……やれ、言い難い。汝等はリィナにシェラ、マグナと申したか。揃いも揃って、珍妙な名前よの」
 うわ、なんだこいつ。
 なんで、俺達の名前を知ってやがんだ、気持ち悪ぃ。
 例の、摩訶不思議な神通力とかいうヤツか。
 俺が怖気をふるっていると、横からファングの苦笑が聞こえた。
 なんか知らんが、リィナもニヤニヤしている。
「妾の前にありて頭の高い蛮族めらに、端から礼儀なぞ期待しておらぬわ」
 ヒミコがそう言うと、迎えに来た髪の長い女が慌てふためいて俺達を座らせ、頭を下げろと小声で必死に繰り返した。
「構わぬと申したであろう。所詮は蛮族よ。もうよいから、下りやれ」
 ははぁ〜と畏まって、女は座ったままずりずりと床を後退って部屋から出ていった。
「はて、全き欠けることなく連れ参れと申しつけた筈なれど……汝等はそれで、皆揃っておると、そう申すか」
「ええ。こっちは、これで全員よ」
 答えたのは、マグナだった。
 それではじめて、アルスの姿が無いことに気付く。
 さっきは空気が重くて、それどころじゃなかったとはいえ、うっかりし過ぎだな。
「こちらも、全員揃っている」
 俺より先に、ファングが答えた。
 すだれの向こうから、ヒミコが俺達をじろじろと眺め回している気配があった。
 こちらからは影にしか見えないが、向こうからは俺達が見えているのかも知れない。
「ほほ……まぁよいわ」
 ヒミコは、お見通しだぞ、というような、含みのある呟きを漏らした。
「して汝等、如何なる由ありて、日出ずる我が国を訪れしなりや。海を渡りて来し稀人は凶兆であるが故、妾は嫌うておる。なんぞ申し開きあらば、さえずりやれ」
「俺達は、この国を脅かしているヤマタノオロチという魔物を退治する為に来た」
 今度も、答えたのはファングだった。
「ほほほ。これはまた途方も無き戯言よ……さては、そこな愚か者に唆されおったか。無知とは哀れなものよな」
 ヒミコの言葉に、タタラは小さくしていた身をさらに縮めた。
243名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 10:28:06 ID:e8oJPdlG0
しぇん
244sage:2008/03/09(日) 10:31:39 ID:AFLTzzxMO
4円
245CC 33-48/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:33:15 ID:bYOL7CPc0
「身の程を知るがよい。早々に立ち去るが汝等の身の為よ。妾は、慈悲の心から申しておる。あれな化生は、汝等の手におえる代物ではないわ」
「お言葉は聞いておく」
 ファングは短く、しれっと返した。
「所詮は蛮族、妾の慈悲は伝わらぬか……して、汝等も等しき由かえ?」
 ヒミコは、俺達とやや離れて座っているマグナ達に問いかけた。
「違うわよ。そんな、なんとかいう魔物の事なんて、知らないわ」
 マグナはつっけんどんに、そう答えた。
「ほぅ。然らば、如何なる由ありや?」
「オーブよ。あたし達は、この国にオーブがあるって聞いて来たの」
「オーブ、とな?」
 なんだ、それ。
 俺も、聞いたことが無い。
 分かってたけど――俺の知らないところで、あいつらが旅を続けている事実を、改めて突きつけられたような気がした。
「光る玉よ。どうせ、あんたが持ってるんでしょ?」
「……はて、面妖な。そのような物、妾はとんと存ぜぬが――」
「いいから、出しなさい。オーブさえ手に入れたら、お望み通りさっさと出ていってあげるわよ。それでなくたって、あたしはもう、こんなトコには一秒だって居たくないんだから」
 やっぱりそれは、俺の所為ですかね。
 無礼を通り越したマグナの言い草に、お付きの男が身構えたのが視界の端に見えた。
「ほほほ。よいよい、蛮族の女童の申すことよ。多少の狼藉なぞ、目を瞑りやれ」
 男は素直にヒミコの言葉に従い、腰の剣から手を離して、再び背筋を伸ばした。
「妾が存ぜぬは、我が国にあらぬということ。観念して、立ち去るがよい」
「いいわよ別に、勝手に探すから。邪魔だけはしないでよね」
「そうもいかぬ。稀人は凶兆と申した筈。早々に日出ずる我が国より立ち退きやれ。汝等を参らせたは、それを申し渡さんが為よ」
「用が済んだらな」
 と、ファング。
「右に同じ。話は、それだけ?じゃ、失礼させてもらうから」
 マグナが、さっさと腰を上げる。
「ほほ、まっこと愚者とは度し難いものよな」
 ヒミコの声の調子が変わっていた。
「いずれ、妾の慈悲を知ることになろうぞ」
 奇妙にかすれた声は、不気味さを増して俺の背筋をぞっと舐めた。
246CC 33-49/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:37:22 ID:bYOL7CPc0
 ヒミコの元を辞した後も、俺達とマグナ達の間に会話は無かった。
 ミシミシと床板を踏み鳴らす音だけが、廊下に響く。
 出口が見えても、俺は会話の糸口すら掴めずにいた。
 だが、幸か不幸か、そのまますんなり別れる、ということにはならなかった。
 出口の手前で、俺達の行く手を阻んで、男が立ちはだかっていたからだ。
 どうやって先回りしたのか、それはさっき、ヒミコの脇に控えていたチョンマゲの男だった。
 既に、腰の物に手をかけている。
「ほぅ」
 進み出ようとしたファングを、リィナが手で制した。
「引っ込んでなよ。キミ、武器持ってきてないでしょ?っていうか、アレ、ボクのだから」
 舌舐めずりをするみたいな表情を浮かべていた。
「おい、勝手に決めるな」
「うるさいな。別に、キミでもいいんだよ?」
「なんだと?」
「キミから先に潰してもいいって言ってるの」
 ファングを見るリィナの目つきは、尋常じゃなかった。
 まるで、ニックを前にした時みたいな――ジツは、さっきヒミコのところに居た時から、そうだったのだ。
 爛々とした目をして、ずっとあの男の方を見ていた。
「面白くもない冗談だな。貴様、俺に勝てるつもりか」
「もちろん」
 あっさりと、リィナは頷いた。
「なんなら、今ここで証明してあげよっか?」
「……そこまでいくと、冗談に聞こえんな」
「だから、冗談じゃないってば」
 二人の間に、俺にも分かる、はっきりとした殺気が渦を巻いた。
 この馬鹿共――本気じゃねぇか。
『あのバカ、どっかおかしいんだよ』
 俺は、ティミの言葉を思い出す。
 なるほどな。昨夜も多少は感じたが、今のリィナは、確かにどっか普通じゃない気がする。
 ここまで見境なく好戦的なヤツじゃなかった筈だ。
247名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 10:40:52 ID:e8oJPdlG0
寝る前支援
248CC 33-50/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:41:34 ID:bYOL7CPc0
「いけません、坊ちゃま!!」
 アメリアがしがみつくようにして、慌ててファングを止めた。
「だから、坊ちゃまは止めろと――分かっている。安心しろ、アメリア。本気じゃない」
 嘘吐け。本気だったクセに。
 ともあれ、ファングの気を逸らしてくれて、助かったぜ、アメリア。
 この二人の対決は見てみたい気もするが、本気でやられても困るしな。
「ま、キミとはまた今度ね、『坊ちゃま』」
 冷やかすように言い捨てて、リィナはチョンマゲ男に向き直った。
 らしいっちゃらしい言い草だけど、どうもやっぱり、なんか違和感があるな。
「それで、キミはなんの用かな?ヒミコサマに無礼を働いたボク達を、斬って捨てるつもりとか?」
「お屋形様に、危害を加えるのであれば」
 男は、変な喋り方をした。
 ややたどたどしく、そして抑揚がおかしい。
 俺達と同じ言葉を、生まれた時から話していればあり得ないような、ここの住人のものとも異なる、ひどく耳慣れない抑揚だった。
 一瞬、魔物が化けてるんじゃないかという疑念が脳裏を過ったが、あいつらの喋り方とも違うんだよな。
 そもそも気配が魔物っぽくないから、人間だとは思うんだが。
「フン」
 ファングが後ろを振り向いて、鼻を鳴らした。
 そちらに目を向けて、ぎょっとする。
 いつの間にやら、黒づくめの人影が三人、俺達の退路を断つようにして姿を現していた。
 リィナの道着にも似た黒一色の上下を纏い、目だけを残して頭巾とマスクで顔を覆っている。そして、三人が三人共、背負った剣に手をかけていた。
 待てまて、お前ら、どっから湧いて出た。
 天井の板が外れていることに気付く。
 そこから、音も無く跳び降りたってのか?
 なんなんだ、この国は。得体の知れねぇ連中ばっかじゃねぇか。
「だったら、危害を加えるってことにしよっかな」
 一方、リィナは挑発する気満々だった。
「マグナさん……」
「いいわ、放っときなさい。いつもの事でしょ」
 シェラとマグナの会話にも、そこはかとない違和感を覚える。
 つか、誰も止めないのかよ。
249名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 10:46:24 ID:lYYxKDFdO
支援
250CC 33-51/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:46:35 ID:0Q98XxnN0
「え〜と、ちょっといいか?俺達は別に……」
「ヴァイスくん、黙って!」
 俺の口出しは、途中でリィナに遮られた。
 やれやれ、止まりそうにねぇな。
 まぁ、リィナのことだから、大丈夫だとは思うが。
 アメリアはファングに任しときゃ心配ねぇし、いちおうお嬢と姫さんにとばっちりがいかないように、気をつけておきますかね。
「なんなの……怖い、ヴァイス」
 しがみついてきたお嬢の手を、軽く叩いてやる。
 エミリーは、凝っとリィナの方を見詰めていた。
「抜かなくていいの、そのカタナ?」
 男は答えず、鞘に納めた剣――刀の柄に手をかけたまま、より深く腰を落とした。
「ふぅん」
 リィナはすたすたと、ある程度まで歩み寄ったところで足を止めた。
「あと二歩ってトコかな?」
 リィナが言った瞬間だった。
 両足の裏を床につけたまま、男が前方にズレたように見えた。
 鋭い擦過音。
「あっぶな……もうちょい近かったら、真っ二つだね」
 互いの距離を固定したまま、リィナの立ち位置は、さっきより後ろに退がっていた。
 男はくるりと刀を翻して、流れるような動作で鞘に納める。
 って――ちょっと待て!?
 お前、いつ抜いた!?
 結果からして、目にも止まらぬ速さで鞘から抜き放たれた斬撃を、リィナが辛うじて躱したらしいことは分かる。
 けど、俺にはまるで経過が見えなかったぞ!?
「まぁ、でも、もう間合いも分かったし」
 呑気らしく口にして、するりとリィナが前に出る。
 そんな無造作な。
 今度は、そのつもりで目を凝らしていたお陰で、なんとか視認できた。
 鞘走って閃いた斬撃は、また後ろに躱される。
「よっと」
 刀が律儀に鞘に納められた瞬間を狙って床を蹴り、リィナは足の裏で柄の頭を踏み押さえた。
 危うく刀を取り落しかけた男は、続くリィナの蹴りを寸でのところで躱して後ろに引く。
251CC 33-52/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:51:26 ID:0Q98XxnN0
「駄目。全然、足んない。おっかしいな、そんなんじゃないよね?」
 リィナは蹴り足を投げ出すように、くるっとその場で一回転して、気の抜けた声を出した。
 つまらなそうな口振りからして、わざと蹴りを外したようだ。
 なんかこいつ、また強くなってねぇか?
 男は、答えなかった。
 黙したまま、再び腰を落として刀に手をかける。
 所作こそ同じだが――今までより、空気がさらに鋭く張り詰めていく。
「うん、そうそう。本気出してよ」
 リィナはまた、ひょいと間合いを詰めた。
 抜き打たれた刀は、三度空を斬る。
 二度目と違うのは、躱した後に、リィナが前に出なかったことだ。
 キン、と鍔鳴りの音が響いた。
「秘剣、『隼』」
 男が淡々と呟いた直後――
 がくりと、リィナが膝をついた。
 よく見ると、手で押さえた道着の腹に血が滲んでいる。
 え――?
 斬られたのか!?
 俺には、躱したように見えたぞ!?
 ニ撃目より、むしろはっきりと。
「むぅ」
 腑に落ちないと言いたげな、ファングの唸り声が聞こえた。
 こいつにも、躱したように見えたんだ。てことは、俺の見間違いじゃないらしい。
 駄目だ、理解が及ばねぇ。
「警告した。死にたくなければ去ね」
 たどたどしく言って、男は構えを解いた。
 警告ってことは、最初から殺すつもりはなかったのか。
 それはつまり、本気になれば斬れたと言ってるも同然だ。
252CC 33-53/53 ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 10:54:46 ID:0Q98XxnN0
 床板の上を滑るような妙な歩き方で、男はリィナの脇を抜ける。
「……やっと見つけた」
 腹を押さえて蹲ったまま、リィナが呟いた。
「キミには、ボクの踏み台になってもらうから」
 嬉しそうな声音が、俺をひどく不安にさせた。
 男は一瞬立ち止まりかけたが、特に何も言い返さずに、ヒミコの部屋の方へ戻っていった。
 そういえば、黒づくめ共の姿も、いつの間にか消えている。
 目で尋ねると、ファングはちらりと天井に視線を向けた。
 また音も無く、そこに消えたってのか。
 なんなんだ、ここは。
 アレか、びっくり屋敷か。
「もぅ……っ!!どうして無茶ばっかりするんですか、リィナさん……」
 リィナの傍らにしゃがんだシェラが、ホイミをかけていた。
「あはは。ごめんね、シェラちゃん、また心配かけちゃって。でも、ほら、浅く斬られただけで、見た目ほどヒドくないし――」
「そういうこと言ってるんじゃないです!!」
 シェラの声は涙交じりだったが、以前は無かった厳しさも感じさせた。
 リィナは、しゅんと項垂れる。
 やっぱりシェラの奴、随分しっかりしたみたいだな。
 苦労もしてそうだけどさ。
 だが、別れ際に向けられたシェラの瞳を見て、俺は少し考えを改めた。
 そこには、以前のような頼りなげな光が浮かんでいた。
 そして、マグナは結局、一度も俺を見ようとしなかった。
 
 
 
253CC ◆GxR634B49A :2008/03/09(日) 11:24:27 ID:0Q98XxnN0
大変永らくお待たせしました<(_ _)>

ということで、第33話をお届けしました。
支援ありがとうございます。
接続しなおす荒業も併用して、予定より早く投下が終わってほっとしてます。

まずは常識外れにお待たせしたお詫びを。
ホントに申し訳ないです<(_ _)>
最近の異常なペースの遅れは、引っ越してマシンも変わって、
環境ががらっと変化した所為もあると思うんですよね。。。
そろそろ慣れてもいい筈なので、後から思い返してみれば、
今が一番ペースが遅かった、ということになるといいな〜、とか思ってます。

内容についても、色々と書きたいことはありますが、
いちおうできるところまでは書いたつもりですので、
後は皆様に楽しんでいただけることを祈るばかりです。
それにしても、ヴァイスは初稿よりはずいぶんマシになってコレだもんなぁ。。。

え〜と、あと、またヘンなことしてすみません。
ヒミコの時代に(というか、ドラクエ自体に)、サムライとかニンジャが居ないのは分かってるんですが。。。
でも、日本っていったら、やっぱりその二者を出したいじゃないですか?
DQ3って、元々国ごとに時代設定バラバラだし、だったら、ひとつの国の中でも、時代気にしなくていいかな〜、とか。
ホントのサムライとニンジャじゃなくて、それっぽいっていうだけだし。。。ダメですか><
でも、もう書いちゃったから、引き返せません><
秘剣、っていうのが、やってみたかったんだよぅ。
あ、それと、ジパング人の言葉遣い滅茶苦茶ですみません(^^ゞ
雰囲気でお読みいただければ幸いです。

なんか、謝ってばっかりですが、できましたら今後とも宜しくお願いします<(_ _)>
次回は、まだ全然未定ですが、今回よりは短くしたいと思います。
うわ〜、他のこと、色々片付けなくちゃ〜。。。
とりあえず、寝よう。ぐぅ。
254名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 12:10:58 ID:/UDct0tA0
◆憲法違反てんこ盛りの人権擁護法案の廃案にご協力お願いします。


漫画・アニメ・ゲームを壊滅させる人権擁護法案(日本人弾圧法案)に抗議‐ニコニコ動画(SP1)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2421306

こんなに危ない人権擁護法案‐ニコニコ動画(SP1)  ← ★問題点がよくわかります
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2544322


※要請書、FAX、メールのご協力何卒お願いいたします。m(__)m
255名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 12:16:32 ID:I59qs5rc0
>>253
うおぅっ!面白かった!
全裸で待った甲斐があったぜ!CC師乙!

今回も程よいツンデレww
まさにヴァイスのツンデレ成長物語になってきた

侍はFFのカイエンを想像しちまった
256名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 14:05:34 ID:lYYxKDFdO
乙!
シェラがちょっと男らしくなってたなw
257名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 14:10:56 ID:FMrlFIKKO
CC氏GJです アルスうぜえと思わされた自分はCC氏の思惑に完全に嵌まってますかね?

しかしながら次回からの旧パーティのデレやオロチ戦が今から待ち遠しくてたまりません!!
とにかく乙でした!
258名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 14:11:48 ID:KfKsjUuZ0
乙!53レスってwww
間が開いたのもうなずけますな
侍、忍者は戦闘がwktkになるからいいんじゃない?
オロチ問題とどう絡ませるのか難しそうだけどw


>>256
俺の嫁に男らしいとは何事か
259名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 15:58:24 ID:pRQduL2eO
ccc乙。
シェラに男らしいってのは褒め言葉なのかはともかく・・・
侍、忍者ときたら芸者だよな!
260名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 16:49:18 ID:zoICBab60
楽しかったですよ

ロトの紋章2だと忍者っぽいのはいたかと
261名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/09(日) 21:07:03 ID:Em8CR4Uf0
CC氏乙でした!
じっくり楽しませていただきました。
53レスもあっという間だった気が。皆成長してますね〜。
悪リィナが気になりますがw
262名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/10(月) 23:04:34 ID:rJwb8GyA0
乙です。
いつのまに
旧パーティより、エフィに感情移入してるのは気のせいですかね?

ともあれ、続きが待ちどおしいです。
263CC ◆GxR634B49A :2008/03/11(火) 16:39:41 ID:P873mzno0
皆様、レスありがとうございましたヽ( ´∀`)ノ
楽しんでいただけたみたいで、ほっとしてます。ふぅ〜。
53レスもの長丁場に、お付き合いいただいて感謝です。

ありれ、シェラ、男っぽくなってましたか。
ジツは最初は、あそこまでキツくなかったんですけど、土壇場であんな感じになって、
「うはwこっちのがかわいいwww」とか思ってた私は、きっとどこかがおかしいと見たw
自分では気づけない見方は、とてもありがたくて面白いです。

サムライとニンジャも、おおむね許容していただけたようで、よかったです(^^ゞ
カイエンやロト紋がするりと出てくるあたりが、さすがわFF・ドラクエ板。
ちなみに私は、すっかり忘れてました。ダメ野郎です。
そうか、そういう方向性もあったのか。いや、他人事か<セルフツッコミ
そーなんですよ、どう絡ませるかが問題でして。。。
サムライに関しては簡単な設定らしきものが朧げながらあるので、
なんとかなるんじゃないかと。。。なるといいなぁ。。。

アルスがウザく感じたとしたら、私ではなくヴァイスの思惑に嵌まってるかもです。
あんまし言えませんが、そのウチちょっとした仕掛けを披露できたら、と思います。
ささやか過ぎて、誰も気付かないかもですが><

オロチ戦は、がんばり次第で面白くなる気がしなくもないので、なんとか楽しくしたいです。
それと、今回書きあがってみたら、意外とヴァイスがエフィ寄りになってて、私もびっくりしました。
前回までは、(作劇的に)もっとなびけよ、ヴァイスこの野郎、とか思ってたんですが、
今になってエフィがなんとなく存在感出てきちゃって、この先どうするんですかね。
リィナも、どうなっちゃうんだろ。全然分かりません。
あと、ヴァイスはマグナと、この先どうやって会話するつもりなんだ。
いや、だから他人事か。シェラがウチに来て、色々教えてくれるべきだと思う。
とりあえず、マグナ、リィナ、そしてシェラにとって、この数ヶ月は違った風に流れたことが、ちょっとでも表現できてれば幸いでありんす。語尾を芸者っぽくしてみた。いや、おいらんでした。

正直、まだ次回の構想がびっくりするほど無いんですが、なんとか頑張りますので、よろしければ、またお付き合いください。
長文失礼しました<(_ _)>
264名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/13(木) 01:29:55 ID:oxLlyLsX0
ヴァイスに感情移入しすぎて(´・ω・`)となる
しかし積み重ねた(´・ω・`)の数だけデレが来た時に(`・ω・´)となる保守
265CC ◆GxR634B49A :2008/03/13(木) 01:32:25 ID:iRiQB7I30
保守しにくいと申し訳ないので、とりあえず保守
以下、いつもの感じでご歓談くださいw
266CC ◆GxR634B49A :2008/03/13(木) 01:34:41 ID:iRiQB7I30
うはwかぶったwwwすいませんフヒヒ
(´・ω・`)は申し訳なくもすごく嬉しいです〜。(`・ω・´)となっていただけるようにがんばりますー
267名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/13(木) 01:59:42 ID:5WYi97ll0
中興の大作になってますね!

侍のイメージはルパン1stの悪・石川五右衛門っぽい
しかしリィナ気になる〜
268名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/13(木) 05:13:10 ID:8EWqp6sAO
リイナがヤンデレに見える件
いや、大好物だけどw
269CC ◆GxR634B49A :2008/03/13(木) 10:44:25 ID:iRiQB7I30
何故か、次の次くらいのリィナの展開を不意に思いついてしまいました。
予想もしてなかったけど、これでいいんだろうか。。。
合ってるのかまだ分からないけど、もし彼等がそうしたいなら仕方ない。
でも、(書き手的には)ますますめんどくさいことになりそうでーす\(^o^)/
こんなんばっかし。。。つか、次回の内容が頭に浮かんで欲しかったのに。。。orz

なんか無意味なレスですみません>< ちょっと困惑しちゃって><
270名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/14(金) 01:26:01 ID:NCb4rSfh0
現パーティと旧パーティが集合し、
人間関係がより複雑になって、次回以降の展開が難しそうだ。
CC氏はじっくり推敲してくださいな。

ほしゅ
271名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/14(金) 02:34:18 ID:BkEudeuI0
推敲無しで、思いつたままに垂れ流すのもよしw
272名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/14(金) 06:31:31 ID:RVUAyRHYO
筆が進まなくなったら気分転換だ!

って事で、


つ【風呂】
つ【覗き】
つ【ポロリ】


ワッフルワッフルな展開でもアッー!な結末でもOK、むしろ前者と見せかけて後者なら大歓迎w
273名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/14(金) 13:11:28 ID:PVgJhW810
あーいいなぁ、そういう健康的なエロ成分欲しいw
274CC ◆GxR634B49A :2008/03/14(金) 21:09:00 ID:naSK08Ej0
不思議なことに、次回のプロットが半分くらいできました〜ヽ( ´∀`)ノ
荒書きしながら残りを考えて、その後清書という感じなので、
投下はまだまだ先になりますが、とりあえず直近は本編を進めてみようかと思います。

こう書くと、なんだかちゃんと推敲してるような感じですが、
基本は登場人物の意をできるだけ損なわないようにしてるだけなので、
思いついたままに近づけるべくあがいてるだけとも言えるかも。
お陰さまで、ここはじっくりやらせていただいていて、大変ありがたいです。
翻って、本来の推敲という意味では、利用可能な時間的制限もあって、
不十分かなぁと、いつも歯がゆく申し訳なく思っております。
いや違くて、リズムと勢いの方を大事にしてるんですよ?という方向で、どうかひとつw

とはいえ、私もいい加減そろそろお気楽な話も書きたいので(いや、ホントに)、
突発的に番外編だかおちゃらけだかを投下するかもです。
どうせ本編進めても、またすぐ筆が止まるでしょうしね。って、オイ。
お風呂と覗きはあたためているネタがあるので(あるのかよ)、
そっちじゃない方で、覗きによる健康的なお色気を、とか。。。
あれ、覗きと健康的って矛盾してる?いや、してないに決まってる。

あと、外伝みたいのも書いておきたいんですよね〜。昔の話。
とりあえずはじめは、リィナかヴァイスになると思うんですけど。
数年前のヴァイスの話を三人称で書いたら、結構面白くなると思うんだよな〜。
これは、お話の展開次第で必要と思われたら、ホントにやるかもです。

なんか、最近長いレスしてばっかりして申し訳ないです(^^ゞ
今度こそ、前ほど長いことお待たせせずに本編だかおちゃらけだかを投下できたら。。。
というのは、もう心の中でひっそり思うだけにした方がいいですよねw
275名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/14(金) 22:22:53 ID:vcoIhndH0
う〜む、これは
全裸で克目して待てっ!てことですね

解りました!
276名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/14(金) 22:35:51 ID:wDxNT9yF0
かなり久しぶりにカキコ
44踏んだ新星が未だ連載中なのに俺歓喜
頑張れ獅子氏!
277名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/17(月) 00:29:26 ID:atWowE0+0
ねるまえにほしゅ
278名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/18(火) 23:31:28 ID:WUqXVjkz0
まだ仕事中なおれがウホッシュ
うにゃー( ´Д`)
279名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/19(水) 00:00:01 ID:7s87pWmr0
とりあえず服を着て捕手!
280名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/20(木) 11:14:02 ID:Kx+V8cHo0
どうやらおれは ほしゅという名のラビリンスにまよいこんじまったようだぜ・・・
281名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/21(金) 21:05:12 ID:Cx8qrioW0
hosu
282名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/21(金) 23:56:45 ID:Gfyz9MmA0
守り貫くぜ!
283名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/23(日) 00:33:51 ID:mNqcxiowO
ベホシュ
284CC ◆GxR634B49A :2008/03/23(日) 22:55:03 ID:kFzjEWdx0
保守、ご苦労様であります(゚д゚)ゝ
なんとか進んでますです。
いちおう筋立ては通して思い浮かびましたので、どうにか今月中には投下できるといいなぁ、と思ってます〜。
願わくば、引き続きまったりとお待ちください。

番外編も少し考えたんですけど、どうも思ったほどはっちゃけられそうになくて、あえなくボツになりました。サーセンw
むしろ本編の方がはっちゃける予感。。。がしてたんですけど、そうでもなさそうかも(^^ゞ
285名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 03:47:45 ID:qvrviXDw0
期待ホシュ
286名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/24(月) 17:55:15 ID:Lw2hTrk2O
月に2回もCC氏の新作を読めるとは感激だわ
287名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/26(水) 01:00:33 ID:Y9VcRKe20
ほすぃ
288sage:2008/03/28(金) 15:22:06 ID:m9bkbWMC0
捕手
289名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/29(土) 23:48:24 ID:gO2tM0EN0
全く期末というやつは保守
290名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/30(日) 22:20:36 ID:HBCAmV9M0
キャッチャー!
291名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 00:54:49 ID:CxH9DPXE0
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2201772
ダイの大冒険
ドラクエ3 サントラ
292CC ◆GxR634B49A :2008/03/31(月) 01:45:28 ID:NK1wH9/w0
保守、ご苦労さまであります(゚д゚)ゝ

荒書き段階までは、通して終わりました〜。。。
でも、後半をもうちょっと詰めないとですねぇ。。。
大方の予想通り、明日の投下はちょっと難しそうですorz
すみません、お仕事と用事で、思いの外忙しくなってしまって。。。

ということで、エイプリルフールはなんとなく避けてw
4月の早い時期での投下になるかと思います。
申し訳ありませんが、もう少々お待ちください。
久し振りに、月2回いけるかと思ったんだけどなぁ。。。
293名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 20:46:07 ID:at2n0ykJI
考え方を変えるんだ!
もう投下は始まっているんだ。ただ、0/??(つまり>>292)を投下した後に何か手間どっているだけなんだ!

というわけで支援
294名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/03/31(月) 21:12:55 ID:00DgpOS50
俺は投下してから10日後に読むぜ(のつもり)

支援
295名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/02(水) 06:31:22 ID:+RKvO7O80
ほしゅ
296CC ◆GxR634B49A :2008/04/02(水) 20:57:00 ID:qX9XkaEi0
うむむ、明日の明け方頃に投下するつもりだったんですが、
どうしても時間的な都合がつかなさそうです><
すいません、なんだか急に忙しくなってしまって。。。
でも、今を逃すと時間とれるのがもっと先になってしまいそうなので、
明後日の明け方までには、なんとか投下したいと思います。

ということで、もう少々お待ちくださいませ<(_ _)>
297名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/03(木) 04:28:41 ID:ThKN/UyLO
全裸でお待ちしております。
298名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/03(木) 19:10:31 ID:yHNd8d49O
黄色い靴下だけ履いて待ってます
299CC ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 07:09:05 ID:S9T42C+c0
今、準備中です〜。
もうちょっとお待ちください。
まだ朝は寒いので、風邪などお召しにならないようにw
300名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 07:44:34 ID:xM5gurq+O
ここで風邪真っ只中の俺が通りますよ




全裸で
301CC 34-1/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:00:51 ID:S9T42C+c0
34. Sometimes I Get Lonely

 ヒミコの元を後にした俺達は、屋敷で出くわした奇怪な住人共の毒気にあてられたように、どことなく淀んだ空気を引き連れたままタタラの家に戻った。
 土間から上がろうとしたところで腕を引かれて、危うく仰向けに倒れそうになる。
「怖かった……」
 振り返ると、元々肌の白いエフィの顔色は、いつもよりさらに蒼褪めていた。
「――ん?大丈夫か?」
 倒されそうになった文句の呑み込んで声をかけると、それまで大人しかったエフィが、ようやく緊張から解放されたみたいにまくし立てる。
「……なんなの、この国?なんだか、おかしいわよ。あのお付きの人達もそうだけれど、それよりも、あのヒミコという方……あれが仮にも一国を統治する立場の御方とは、とても思えなかったわ。すごく不気味で……まるで、あの魔物を前にした時みたいな感じがしたもの――」
 あの魔物ってのは、ニュズのことか。
 それはともかく、エフィの手を軽く叩いて、タタラの方に目くばせをする。
「あ――ごめんなさい。いやだわ、私ったら……あの、貴方の故郷を悪く言うつもりではなかったのだけれど……」
「いんや……お嬢様の言うことさ、オラにもなんとなく分からなくはねぇだ。ヒミコ様は、神通力さ身につけなすってから、なんだかお変わりになられちまっただからな」
 タタラは自嘲を漏らす。
「さっき生まれて初めて、お目通りさかなったばっかのオラが言うことじゃねぇけんどもな。んな、畏れ多い……だけんど、昔はこんな風じゃなかっただ。オロチさ出るようになってから、なんだかこの国さ、すっかり様子が変わっちまっただよ」
「……その口振りだと、ヒミコが妙な力を身につけたのは、オロチが出るようになったのと同じくらいの時期なのか?」
 そう問うと、タタラは少し首を捻ってみせた。
「あ、ああ……んだな。そう言われてみたら――」
「そこまでにしておけ」
 タタラの言葉を遮ったのは、ファングだった。
「ここでは、それ以上喋るな」
 外で拾ってきたのか、両手に拳大の石を握っている。
 なんのつもりだ?
302CC 34-2/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:05:27 ID:S9T42C+c0
「おい、『そこ』の」
 ファングは、天井に向かって呼びかけた。
「貴様等が、夕べからずっとウロチョロしてるのは分かっている。これまでは捨て置いたが、事情が変わったんでな。少し待ってやるから、大人しくこの場を立ち去るか、痛い目を見るか、今すぐどちらか選べ」
 タタラやエフィは、きょとんとしてファングを見ていた。
 多分、俺も同じような顔つきだったに違いない。
 だって、どう見ても、誰も居ないところに向かって話しかけてるんだもんよ、この馬鹿。
「フン、聞く耳ナシか」
 ほどなくファングは呟いて、ちらりとタタラを見た。
「すまんな。後で直す」
 そして、手にした石を握り締めると、天井に向かって力まかせに投げつけた。
 馬鹿力で投擲された石は、ぼすん、みたいな音を立てて軽々と天井を突き抜け、ぽっかりと穴を残す。
「ちょっ――!?」
「ほぅ」
 制止しようとするタタラに構わず、もう一個の石を投げるファング。
 屋根を貫通した石が何かに当たる鈍い音がして、微かな呻き声とまろぶ気配に続き、ドサリと大きな物が地面に落ちた音が響いた。
 呆気に取られていた俺は、ファングがすたすたと表に歩み出たのに気付いて、慌てて後を追う。
「二投目も、それなりに躱してみせたか。大したモンだな」
 タタラの家の横手に回り込み、ファングの肩越しに覗き見ると、そこには黒づくめの人影が肩を押さえて蹲っていた。
 さっきヒミコの屋敷で見かけた連中と、同じ格好だ。
「さて、どうする。やるのか?俺は構わんぞ?」
 ファングの口調は、やけに生き生きとしていた。
 暴れるのがお好きな勇者様としては、例のチョンマゲとの立会いを、リィナに横取りされた鬱憤が溜まっていたらしい。
 黒づくめは答えずに、肩を押さえながら逆の手で懐をまさぐった。
「下がってろ!」
 黒づくめを横目に捉えつつ体だけ振り向けて、一緒に家から出ていたお嬢や姫さんを後ろに押しやる。
 だが、黒づくめの行動は予想外だった。
 懐から取り出した妙な玉を、俺達の方ではなく地面に向かって投げつけたのだ。
 ショボい爆発音の割りには、異様に大量な煙がもうもうと立ち込めて視界を塞ぐ。
 微風が煙を掻き散らした後には、黒づくめの姿は、もうどこにも無かった。
303CC 34-3/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:11:36 ID:S9T42C+c0
「フン、逃げたか」
 ファングは、子供が玩具を取り上げられたみたいな、つまらなそうな口振りで吐き捨てた。
「腕に自信が無い訳でもなさそうなんだがな。やはり、どちらかと言えば間諜の類いか」
「なんじゃ?なにが、どうなっておるのじゃ?」
「なに?なんなの?」
 すっかり薄くなった煙を、なおも顔を顰めて手で払いつつ、姫さんやエフィが誰にともなく尋ねた。
「おい、今のって――」
 問い掛けると、ファングは軽く肩を竦めた。
「見ての通りだ。俺達は昨夜から、ずっと見張られていた」
「なんですって!?」
 エフィが悲鳴じみた声をあげる。
 うん、まぁ、気持ちは分かるよ。
 けど、痴漢に覗かれてたとか、そういうのとはちょっと事情が違うんだからな?
「着いたばかりで状況も分からんし、隠れて見ているだけで特別な害意も感じなかったんでな。ひとまず放っておいたんだが、ヒミコの手の者と分かった以上、あまり悪罵が筒抜けになるのは、何かと都合が悪いだろう」
「なるほどね。さっきのアレって、そういうことだったのか」
 俺は思わず、納得の呟きを漏らしていた。
「だな。下らんカラクリだ」
 俺とファングだけで頷き合っているのが気に喰わなかったのか、姫さんとエフィが立て続けに問い質す。
「なんじゃ?何が、そういうことなのじゃ?」
「そうだわ。なによ、男同士で、いやらしい。ちゃんと、説明してちょうだい」
 いや、お前、いやらしいって。
 まぁ、男同士で内緒話なんかして、って意味なんだろうけどさ。
「うん、あのさ。さっきヒミコが、こっちが名乗る前から俺達の名前を知ってたの、覚えてるだろ?」
「もちろん、覚えているわ。それで私は、余計に不気味に思ったのだもの」
「だから、つまりさ。そりゃ不思議でもなんでもなかったってハナシだよ」
「なんでじゃ?――ああ」
 姫さんは合点がいった様子だったが、エフィはさらに拗ねた顔をした。
 ちなみにアメリアは、分かってるんだかいないんだか――まぁ、ファングさえ状況を把握してりゃ、それで良しってつもりなんだろうな、こいつは。
304CC 34-4/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:15:35 ID:S9T42C+c0
「どういうこと?もっと、はっきり説明してちょうだい」
「だからさ、要するにだな。あの黒づくめ共が、俺達の名前をヒミコに伝えてたんだよ。昨日からずっと見張られてたなら、俺達がお互いに名前を呼び合うのを聞かれてても、おかしくないだろ?」
「ああ――」
 エフィは一転して、なんだそんなことか、みたいな顔つきになった。
 実際、俺も拍子抜けだ。
 ちょいと頭を働かせてみりゃ、コイツは胡散臭い占い師がよく使う手口だぜ。すだれ越しでも強烈だったヒミコの異様な雰囲気に呑まれて、あの場ですぐに思い至らなかったのは、我ながら抜けていたとしか言いようがない。
「神通力などと大層な文句を謳ったところで、蓋を開けてみれば、所詮はこんなモノだ。この有様では、生贄でオロチを鎮めるというヒミコの言い分も、どこまで本当だか怪しいモンだな」
 ファングが言うのも分からなくはないが。
「けど、いちおうホントに、オロチが無差別に村を襲うことは無くなったんだろ?」
 タタラに確認すると、躊躇いがちに顎を引く。
「へぇ。それは、間違ってねぇですだ」
「フン。どうせソコにも、なにかしら下らんカラクリがあるんだろう」
 どういうカラクリか俺は知らんが、とでも言いたげに、ファングは俺を見た。
 面倒臭い考え事は、全部俺に丸投げするつもりなのね。まぁ、お前らしいけどな。
 けど、どうなのかねぇ。多少のカラクリっつーか嘘が含まれてるにしても、オロチを鎮めるって点に関しては、事実がそうなんだし、間違っちゃいない気もするんだが。
 そもそも、国を治める立場の人間が、生贄なんて残酷な犠牲を無意味に民草に強いるメリットがあるのかよ。
 ん?待てよ――
305CC 34-5/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:18:18 ID:S9T42C+c0
「あの連中――黒づくめの奴等とか、リィナとやり合った剣士は、元からこの国に居た連中なのか?」
 チョンマゲ頭の変な喋り方を思い出して、とある考えがふと浮かんだ俺は、タタラに尋ねた。
「いんや、そうではねぇですだ。そっただ言えば、あん人らがヒミコ様のお側で仕えるようになったんは、割かし最近かも知れねぇだな」
「時期的には、ヒミコが神通力を身につけた前後じゃねぇのか、もしかして?」
 タタラは、考えたこともなかった、みたいな顔つきをした。
「んだな……確かなことさ分からんけども、大体同じ頃だったかも分かんねぇだな」
「言っただろう。ここでは、そのくらいにしておけ。連中が、どこで聞き耳を立てているか分からんぞ」
 ファングの指摘は、尤もだった。
 さっきの黒づくめが、全くの単独で行動していたとは考え辛いし、仮に独りだったとしても、すぐに替わりが遣わされそうだ。どこで耳を澄ませてやがんのか、分かったモンじゃねぇからな。
「とにかく、これでは落ち着いて話もできんな。どこか密談に都合のいい場所はあるか?」
 ファングに言われて、しばらく腕組みをしていたタタラは、ほどなくどこかに思い当たったようだった。
「ああ、そんでしたら、あすこなら大丈夫だと思いますだ――」
306名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 09:28:10 ID:BmWIwuAH0
全裸
307CC 34-6/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:37:07 ID:S9T42C+c0
 タタラに連れていかれたのは、地下に造られた酒蔵だった。
 入り口には粗末な掘っ立て小屋が建っていて、中に入ると地面の下へ階段が続いている。
 なんの灯りも無い階段の先は、本当の真っ暗闇だった。
 俺達はそれぞれ、小屋の隅に用意されていた、細い木の先っぽに蝋燭を差すだけの簡素な手持ち燭台を手に、そろそろと地下へ下りる。
「足元に気をつけろよ」
 声をかけた途端、必死に俺の服の背中を握り締めていたエフィが、ずるっと足を滑らせた。
「きゃあ!?」
「うわ、おいっ!?」
 危ね。手持ち燭台を取り落としつつ、半身になってなんとかエフィを抱き止める。
 いや、お前、そういうお約束はいいから。マジで危ねぇっての。
「あ、ありがと……」
「だから、気をつけろって言ったろ?」
「……ごめんなさい」
「いや……まぁ、いいけどさ」
 なんだよ、素直に謝んなよ。
「えぇと……そんなに必死こいて抱きつかれたままだと、身動き取れないんですが」
 俺は、とっくにエフィの背中に回していた腕を解いていた。
「え?――わ、分かってるわよ!!」
 お嬢は、あたふたと身を離す。
 いいから落ち着いて、次からはちゃんと足元に注意しろよ。
 手探りで俺とエフィの燭台を拾い上げ、消えていた火を姫さんから分けてもらう。
「やれやれ。階段を転げ落ちるのは、てっきりアメリアの役目かと思っておったが、意外じゃったな」
「そんなぁ、姫さまぁ〜」
 とかなんとかやってる内に、地面を掘り貫いて造られた酒蔵に辿り着く。
 中は思ったよりも広くて、小柄な人間ならすっぽり入れそうなデカい酒壷が、ところ狭しと並べられていた。
 地下だけに、もちろん窓も何も無いし、階段との間に質素な扉がいちおう取り付けられているのも、おあつらえ向きだった。隅っこの方で声を顰めて話せば、たとえ扉の向こう側に誰かが張り付いても、ロクに聞こえやしないだろう。
 それにしても、すんげぇ酒臭いな。当たり前だけど。
「ぅ……」
 とか呻いて、お嬢が片手を口に当てるのが見えた。
「念の為、酒壷の中も確認した方がいいな」
 こちらも臭いに顔を顰めながら、ファングが言った。
 ああ、そうね。
308CC 34-7/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:41:14 ID:S9T42C+c0
「いいよ、エミリー。俺とファングでやるから」
 手伝おうとした姫さんを止めて、手分けして酒壷に乗せられた木の蓋を開けて中身を確認する。
 いくつか空の壷もあったが、まさか誰かが潜んでいるとは、俺も思っていない。
 ファングも言った通り、あくまで念の為だ――
「うわっ!?」
 ほとんど流れ作業じみた意識になっていた俺は、十個目くらいの壷の中に蹲った人間の頭を発見して、思わず叫んじまった。
「どうした!?」
 だが、他の連中が駆け寄った頃には、どうにか平静を取り戻していた。
 壷に隠れていたのが、明らかに無害な、ぶるぶると身を震わせている女だったからだ。
「え〜と……あんた、こんなトコで何やってんだ?」
 蓋を持ち上げたままの姿勢で、少々間の抜けた問い掛けをする俺。
「お、お願いでございます……どうか、どうかお見逃しを……せめて、もうひと時、生まれ育った故郷に別れを告げさせて下さいませ……」
 女は酒壷の中で体を丸めたまま、顔も上げずに消え入りそうな声で懇願した。
 いや、俺に頼まれても困るんですけどね。
「おめ……クシナでねぇか!!」
 横合いから壷を覗き込んだタタラが、驚いた声を出した。
「知り合いか?」
「へぇ、んですだ……おめ、こっただトコで、なにさしてるだよ!?」
「……タタラ?」
 ようやく顔を上げた女の目から、一拍置いて涙が零れる。
「なにさしてるだなんて……オラの言うことだ!オメ、今まで、オラのことさ放っといて、どこさ行ってただよ!?」
 ずっと蹲って体が固くなっていたのか、縁につっかえつっかえぎこちなく立ち上がったクシナは、下半身を壷に残したままタタラに抱きついた。
「お、おい……皆さ見てるだよ……ああ、すまんかった、帰りが遅くなってすまんかっただよ……」
 タタラはきょろきょろと俺達を見回しつつ、むせび泣いているクシナの頭を、決まり悪そうに撫でた。
 タタラは照れ臭そうに言葉をぼかしたが、どうやらクシナは結婚の約束まで交わした相手のようだ。
 それなのに、タタラはロクに事情を告げることもなく、助けを呼びに海を越えたらしい。
 既にオロチによって家族を失っていたクシナには、身近に慰めてくれる相手もおらず、次は自分の番だと不安を募らせて、こうして隠れて震えることしか出来なかったのだという。
309CC 34-8/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:46:34 ID:S9T42C+c0
 そりゃ、怒られても仕方ねぇよ、タタラ。
 つか、お前、恋人がいたのかよ。
 別に……羨ましくねぇけどな。
 ほどなく落ち着いたクシナは、改めて俺達を見回して、こっちの女連中に圧倒されたみたいな顔をした。
 まぁ、本物のお姫様とお嬢様とメイドさんだもんな。すっかり慣れちまって、俺はもう違和感ねぇけど、はじめて目にするヤツからすれば、異常な面子だよな。
 けど、見目麗しいってタイプじゃないけど、クシナも頬っぺたの赤い純朴な感じが好印象だ。
 さっきまでは泣きじゃくりながらタタラを責めていたのに、今はもうすっかり安心した様子で、タタラを立てた控えめな態度に徹している。
 素直で慎み深いっつーか、俺の周りじゃ、あんまり見かけないタイプだね。
 うん……ちょっと羨ましいかな。
 全ての壷を確認し終えて、やっと落ち着いたところで、タタラから改めて詳しい話を聞く。
 ヤマタノオロチは、普段は村外れの洞窟に潜んでいるそうだ。
 生贄に選ばれた女は、オロチのもう一つの好物だという酒と一緒に、そこに運び込まれる。
 今回の生贄に選ばれたのは、今朝タタラの元に相談にきたサノオの恋人のヤヨイだ。
 生贄の女は、いつも大体、日が暮れて間も無い頃にオロチの元へ連れていかれるらしいから、そんなに時間は残されてねぇな。今はもう、昼を過ぎている。
 さて、どうしたもんかね。
「どうもこうも無かろう」
 俺の呟きを耳聡く聞きとがめたファングが、怪訝な顔をした。
 こいつは、とにかく洞窟に踏み込んで、ヤマタノオロチを倒しちまえばそれで済むと思っているのだ。
 実のところ、俺もその通りだと思うんだけどさ――
「生贄と酒は、誰が洞窟まで運ぶんだ?もしかして、あの黒づくめの連中か?」
「いんや、違いますだ。ほれ、さっきウチさ呼びに来た、偉そうな人達がいたでねか。あの人らだと思いますだよ」
 あの兵士みたいな連中か。
「そいつらは、生贄を洞窟の中に運んだ後も、なんつーか……女が逃げ出さないように、見張りに残ったりするのか?」
「それはねぇですだ。洞窟ん中さ連れてったら、すぐに引き返す筈ですだよ。あん人らも、オロチさ喰われたくはねぇでしょうから」
「おい、なんの話をしている?」
 割って入ったファングに、俺は曖昧な顔を向けた。
310CC 34-9/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:49:45 ID:S9T42C+c0
「いやね……もしかしたら、あの黒づくめの連中が、生贄が逃げないように、陰からこっそり見張ったりするのかも知れねぇけどさ……」
「それがどうした?」
 うん、いま考え中だから、ちょっと待ってくれ。
「え〜と……つまり、オロチの不意をついて、楽に倒せる方法を思いついたっていうか……」
 その場ででっちあげた作戦らしきモノを告げても、ファングは不審な表情を崩さなかった。
「回りくどいな。そんな事をせんでも、生贄が運ばれる前に、先んじてオロチを倒してしまえばいいんじゃないのか?」
 はぁ、仰る通りですけどね。
「大体、誰がその代役とやらを……」
 言いかけたところで、ファングは俺の思惑に気付いたようだった。
「なるほどな。そういうことか」
「……まぁな」
「あんのぉ……ちょっといいですだか?」
 タタラが、嘴を挟んできた。
「オロチさ姿を現すんは、ヒミコさまが予言なすった刻限だけって聞きますだ。そうじゃねぇ時は、洞窟中探し回っても、どこさ隠れてんだか全然見つからねぇって話ですだよ」
 これは、思わぬ援護射撃だった。
 口をへの字に曲げていたファングは、しぶしぶ肩を竦めてみせる。
「……まぁ、そういうことなら、お前の考えに任せても構わんが……あまり時間は無いぞ。協力を求めたところで、素直に応じる様子じゃなかったが、説得できるのか?」
「それは、まぁ……俺の言い出したことだから、なんとかするよ」
「もぅっ!!また、二人だけで話さないでよ!!」
 文句を言ったエフィをなだめるように、アメリアが後を継ぐ。
「ヴァイスさんは、あの人達に協力してもらうおつもりなんですよね?さっきお会いした、アリアハンの勇者様達に――」
「シェラ達のことか?じゃったら、わらわも一緒に説得に行くのじゃ」
 意気込んだ姫さんに向かって、俺は小さく首を横に振った。
311名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 09:52:35 ID:BmWIwuAH0
四円
312CC 34-10/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 09:55:44 ID:S9T42C+c0
「悪いけど、独りで行かせてくんねぇか。そんなに時間も無いしさ……それに、ちょっと気になることもあるし――」
「わらわじゃって、シェラのことが気になっておるのじゃ!!」
「うん、分かってる。けど、ちゃんと説得して、後であいつらがこっちに来るようにするからさ。姫さんがシェラと話すのは、その時でも遅くはねぇだろ?頼むよ」
 唇を尖らせて俺を睨みつけていた姫さんは、ぷいと顔を背けた。
「……お主らが何を考えておるのか、わらわには、もうよく分からん。勝手にするがいいのじゃ」
「ごめん。ありがとな」
「……あの人達に協力を求めるのは、本当に必要なことなの?」
 エフィの問い掛けは、詰問口調だった。
 俺は、ぎこちなく頷いた。
「ああ。俺は、そうした方がいいと思うんだ」
「……そう。ごめんなさい、おまけで連れて来てもらった足手纏いが、聞いて良いことじゃなかったわよね」
 らしくない皮肉は淋しげで、ちょっと気持ちが揺らぎかけた。
「悪い……」
「行くなら、さっさと行って来い。俺達は、タタラの家に戻っている。ここは、酒臭くて敵わんからな」
 鼻の付け根に皺を寄せながら、ファングが俺を追い払う仕草をした。
 そういやこいつ、嫌いって訳でもないみたいだが、あんまり酒は強くねぇんだよな。
「なるべく早く戻ってくるよ」
 そう言い残して、ひと足先に階段を上り、俺は酒蔵を後にした。
313CC 34-11/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:01:59 ID:S9T42C+c0
 俺のでっち上げた考えというのは、作戦というほど大したモンじゃない。
 単純に、生贄に饗されるヤヨイの身代わりを仕立てようというだけのハナシなのだった。
 さっき思いついたばっかで、細かい部分は考え中だが、兵士共がいちいち生贄の顔形まで把握しているとは思わない。歳の近い女が入れ替われば、おそらくバレないんじゃないだろうか。
 念の為、頭から布を被って顔を隠すとか、もしくは共に饗される酒壷に潜んでおいて、兵士共が引き上げるのを見計らって入れ替わるとかさ、なにかしら方法はあると思うんだ。
 で、オロチが生贄を喰らうべく寄ってきた不意をついて、初撃で深手を負わせちまえば、楽に倒せるんじゃないか。
 どっちにしても、代役は女――しかも、魔物と戦えるだけの腕前を持った女が必要だ。
 俺は、そう強弁したのだ。
 詭弁だってのは、分かってる。
 マグナ達を巻き込まなくたって、ファングさえいりゃ、やりようはいくらでもあるだろうしな。
 言ってみりゃ、これは俺の我侭だ。
 なしくずし的にでもなんでもいいから、とにかくあいつらを巻き込んで、少しでもお互いの溝を埋める契機にしたいだけなんだ。
 だって、こんなに近くに――奇跡的に――居るのに、このまま手をこまねいてたら、ロクに話もしない内に別れるハメになりそうでさ。
 俺の我侭でしかないと承知の上で送り出してくれたファングやエフィには、感謝しねぇとな。
 タタラから聞いた場所にあった教会は、一見とてもそうは見えなくて、危うく通り過ぎかけた。
 それっぽいのは玄関の脇に掲げられたシンボルくらいで、その他の見た目はまるきり普通の民家でしかない。
 こんな質素な教会、はじめてお目にかかったぜ。教会ってのは、国の援助やら喜捨やらで、どこも割りと潤ってる筈なんだけどな。
 民家の脇に、腕まくりをして洗濯物を干している人影が見えた。
 シェラだ。
 相変わらず、甲斐甲斐しく働いてるな――なんてことを思いつつ、俺は少々救われた気分を覚えていた。
 いきなりマグナやリィナと出くわすよりは、いくらか気が楽だ。
 それに――
314CC 34-12/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:06:53 ID:S9T42C+c0
「よぅ」
 わざと大きく足音を立てて近寄ると、シェラはこちらを振り向いた。
「ヴァイスさん!?」
 驚いた顔が、みるみる険しくなる。
「どうして……無理に来ないでくださいって、言ったじゃないですか!?」
「うん、分かってるんだけど、ちょっと協力して欲しいことがあってさ……」
 俺は、頭を掻きながら続ける。
「それに――シェラの様子も気になってたし」
「――え?」
「さっき、ヒミコの屋敷を出て別れた時にさ、俺の方を見たろ?」
「……はい」
「まるで、助けを求めてる、みたいな目ぇしてたぜ?」
 シェラが、少し息を呑んだのが分かった。
「それで、なんか心配になってさ……」
 俺の言葉が終る前に、シェラの瞳が急速に潤んだ。
「あれ……?ヤダ……なんで……?」
 自分でも意外だったらしく、そんなことを呟きながら、シェラは両手の甲で涙を交互に拭う。
 胸の奥を締め付ける複雑な想いが、俺に口を開かせた。
「……やっぱ、大変なのか?」
「違うんです……あれ、どうして……こんな……泣くつもりなんてないのに……」
 鼻をすすりながら、泣き笑いを浮かべる。
「ごめんなさい……なんだか、急に……気が、緩んじゃって……ヤダ、もぅ……」
「無理すんな。俺の前では、無理しなくていいって言ったろ?」
 自分に言う資格が無いのは身に染みている。
 けど、言わずにはいられなかった。
「覚えて……ズルいです。そんなの、ズルい……」
 シェラはとうとう俯いて、ごしごしと懸命に目の辺りを両手で擦る。
 俺はすぐ近くまで歩み寄って――おそるおそる――シェラの小さい躰を抱き締めた。
「うん。俺は、ズルいよな」
 シェラが突き放そうとする気配を感じたが、俺は思い切って腕に力を込めた。
315CC 34-13/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:11:31 ID:S9T42C+c0
「いいから――今だけで、いいからさ」
 自分でもよく分からないことを言いながら、片方の手をシェラの後頭部に添えて、胸に押し付ける。
 シェラは、あらがわなかった。
 教会の中に居るであろう、マグナ達を憚るように、押し殺した嗚咽を漏らす。
「ごめんな……大変だったよな」
 せめて今だけでも、好きなように泣いて溜まったモンを流しちまえばいい。
 俺は、そう思ったんだが。
 シェラは、無理矢理力づくみたいに泣くのを止めて、鼻をすすりつつ俺を見上げた。
「すみません……もう、大丈夫ですから……」
 以前のシェラなら、こうはいかなかっただろう。
 一抹の淋しさを感じたものの、それを掻き消すくらい、なんだか妙に嬉しい気分だった。
 民家の方へちらりと視線をくれて、シェラは続ける。
「とにかく、ここじゃ、その、なんですから……ちょっと向こうに行きませんか?話だったら、とりあえず私が聞きますから」
 そう言って、シェラは庭の端に建っているボロい物置小屋に俺を誘った。
316CC 34-14/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:15:25 ID:S9T42C+c0
「ここなら、向こうの家まで声も届かないと思いますから」
 小屋の中は、雑然として埃っぽかった。
 壁の隙間から差し込む日光に、漂う塵埃が浮いて見える。
 壁際に空いた場所を見つけたシェラは、ささっと床を払って腰を下ろした。
 そのすぐ横に座り込み、俺はぴったりとシェラに体を寄せる。
「なっ!?ちょっ……なんでですか!もうちょっと、離れてください!近いです、ヴァイスさん!!」
「いや、ジツはな……どうも、監視がついてるみたいなんだ」
 俺はせいぜい真面目ぶった顔をしてみせた。
「はい!?」
「ほら、黒づくめの妙な連中が居ただろ?俺達の方じゃ、あいつらが隠れて聞き耳を立ててやがったんだよ。だから、こっちでも、あいつらがどっかに隠れて覗いてると思うんだ」
「あ――そういえば、さっきリィナさんが……いくら追い払っても無駄だから、もういいや、とか言ってました。その時は、何言ってるのか分からなかったんですけど……」
「だろ?だから、もし今も、どっかから覗かれてても聞かれないように、小さい声で話してくれ」
「……まぁ、分かりましたけど」
 シェラは、いまいち腑に落ちない様子ながらも、不承不承頷いた。
「……なにするんですか」
 言われてはじめて、無意識にシェラの頭の上に手を置いて、ぽんぽんと叩いていたことに気付く。
「ああ、悪い……いや、なんつーか、シェラはすごい頑張ってそうだな、と思ったら、つい」
「……いつまでも、子供扱いしないでください」
「してないって。シェラは、すごいしっかりしたもんな。ホント、見違えたよ。でも、すごく変わったけど、やっぱり変わってないっつーか……」
「……なんですか、それ」
「つまり、その――成長したんだな、シェラ」
 そう言うと、シェラは急に俯いて黙りこくった。
 間を持て余した俺は、なんとなく話題を変える。
「マグナ達は、どうしてる?あっちの家に居るのか?」
「……リィナさんは、またどこかで修行してると思います。マグナさんは……あっちでフテ寝してます」
「変わってねぇな、あいつ」
 つい、苦笑が漏れた。
317CC 34-15/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:19:58 ID:S9T42C+c0
「そういや、ヒミコの前でも、相変わらずだったよな。身も蓋もねぇっつーか、取り付く島も無い言い草がさ」
 空気を和ませようとしてからかい混じりに言うと、何故かシェラはまじまじと俺を見た。
 そんなに見詰めないでくれ。
 お前の顔を、こんなに間近で見るのは久し振りだからさ。よろめきそうになっちまうよ。
「ヴァイスさんは……リィナさんのことは、どう思いました?」
「へ?」
 本気で見とれちまって、返事が遅れた。
「いや、まぁ……どうだろな。俺の所為かも知れないけど、ちょっとおかしい感じはしたな……なんか、ヘンに物を考え過ぎてるっていうか」
 後半は、まんまティミからの引用ですが。
 シェラは、ほぅ、と溜息を吐いた。
「やっぱり……ヴァイスさんは、よく分かってます」
 思いがけない言葉を聞いた。
「なんだよ?俺は、何も分かってないんじゃなかったのか?」
「あっ――え……と、それは、そうです。分かってないです。でも、ソレとコレとは違うんです!」
 きっと俺を睨みつけたシェラの顔が、ゆるゆると下を向く。
「でも、その……昨日は、ごめんなさい。私、生意気なこと言い過ぎました」
「いや、いいよ。ホントのことだしさ」
「いえ……あんなに言うつもり、無かったんですけど……でも、ダメなんです」
 シェラは、また溜息を吐いた。
「最近、自分でも気付かない内に、すっごく気が立ってることが多くて……よくないって、分かってるんですけど……」
 俺はもう一度、シェラの頭をぽんぽんと叩いた。
 今度は、シェラは文句を言わなかった。
「……ヴァイスさんが言ったみたいに、リィナさん、ちょっとヘンなんです。ううん、表面的には、あんまり変わってないですけど、でも……」
 シェラは俯いたまま、顔を傾けて横目で俺を見た。
 うわ、この角度、なんかゾクッとくるな。垂れた髪が顔にかかって、妙な色気みたいなモンすら感じるぞ。
318CC 34-16/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:24:07 ID:S9T42C+c0
「さっき、あの剣士の人とリィナさんが戦ったのを見て、気付きませんでしたか?」
「へ?――ああ、うん、何に?」
「もう、ちゃんと聞いてたました?」
 ごめん、呆っとしてたわ。
 こいつが身近にいて、どうして平気な顔をしてられてたんだろうな、昔の俺。
「今のリィナさんって、前より一か八かみたいな勝負が多過ぎるんです」
「ああ――」
「もちろん、ヴァイスさんと一緒だった頃から、そういうトコロはありましたけど……でも、やっぱり違うんです。前よりもっと……捨て鉢、じゃないですけど……どう言えばいいんだろ……とにかく、見ててホントに危ういんです」
「うん、分かるよ。俺も、少しは感じたし」
 シェラは両手で自分の膝を抱いて、体を揺らしはじめた。
「はっきり言ってはくれませんけど……多分、リィナさん、今までよりギリギリの死線を潜り抜けないと、もっと強くなれないみたいに考えちゃってるんです。それで失敗して死んじゃっても、それまでのことだ、みたいに……」
 前後に揺れていたシェラの動きが、ぴたりと止まった。
「でも、そんなの、嘘です」
 きっぱりと言い切った。
「私なんかが、リィナさんみたいに強い人のことを、こんな風に言うのは間違ってるかも知れませんけど……でも、そんな強さ、違うと思います。いざという時に、あっさり諦めるクセがついちゃうだけです」
「うん」
「そんなの、私みたいに弱い人が行き着いちゃう考え方で……」
 シェラは、ぎゅっと膝を強く抱いた。
「……リィナさんらしくないです」
 呟きは、正反対の意味を持っているようにも聞こえた。
「そうだな」
 俺は小さく、ニ度、三度と頷いた。
「俺も、そう思うよ」
 シェラは黙って、また体を揺らしはじめた。
 しばらく、俺も口を利かなかった。
 やがて、シェラがぽつりと囁く。
「ごめんなさい……」
「ん?」
「やっぱり、ヴァイスさんはヴァイスさんでした」
 そりゃそうだ。
 当たり前のことを言われてるだけなのに、どうしてこんなに嬉しいんだろう。
319名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 10:26:17 ID:BmWIwuAH0
連投全裸回避
320CC 34-17/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:28:30 ID:S9T42C+c0
「それは、お前の方こそだぜ。シェラはシェラで、安心したよ。いや、さっきから言ってるみたいに、すごくしっかりはしたけどさ」
「私のは……違うんです。そうしなきゃいけなかっただけっていうか……」
 シェラの声が、微かに震えた。
「だって、ヴァイスさんがいけないんですよ?みんなを繋いでた人が居なくなっちゃったら、私がなんとか頑張らなきゃ仕方ないじゃないですか……じゃないと、すぐバラバラになっちゃいそうで……」
「うん……ごめんな」
「リィナさんはあんなだし……マグナさんは、ずっとあのままで……アルスさんは、結局マグナさんの事だけだし……私、どうしたらいいんですか」
 鼻をすする音がした。
「もう……疲れました」
「……ホント、ごめん」
 俺はシェラの頭を抱き寄せて、肩口に押し付けた。
 お前は、こんなに細くて小さいのにな。
 それでも、きっと不満そうな顔ひとつ、マグナ達には見せないで、心の中では懸命に踏ん張ってたんだよな。
「……こんなこと、言いたくないんですけど」
「ん?」
「なんだか、悔しいから……ホントに、言いたくないんですけど……」
「うん、分かったよ」
 俺の苦笑を呼び水に、シェラは諦めたように続ける。
「やっぱり、すごく気持ちが楽です……安心します。ヴァイスさん……なんで、出ていっちゃったんですか」
「……」
 もう謝ることすら出来なくて、代わりに腕に力を篭めて、さらにシェラの頭を自分に押し付けた。
「……でも、調子に乗らないでくださいね」
 シェラは鼻をすすりながら、涙声で言った。
「ヴァイスさんはヴァイスさんでしたけど、それだけじゃダメなんですから。もっと、ちゃんと分かってください、色んなこと」
 意味不明だが、言われていることは理解できた。と思う。
「分かってる。ま、そんだけ言えれば、大丈夫そうだな」
「……大丈夫ですよ。もちろんです。今度は、私がマグナさんを助ける番なんですから。その為に、私、頑張って成長したんです」
 シェラは冗談混じりに、さっきの俺が口にした言葉を繰り返した。
「体の方は、そうでもないみたいだけどな」
 俺は、シェラの腰に手を回した。
321CC 34-18/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:30:57 ID:S9T42C+c0
 脇腹を抓むと、ふにゃっとほどよく柔らかい。
 なんでこいつ、こんなに柔らかいんだ。
 というか、全体的にあり得ないくらいやわっこいんだよな。
 匂いとかもそうだけど、俺の体とはまるきり違うぞ。
 絶対、尻も柔らかいに違いない。
 いや、さすがに触ったことねぇけどさ。
「やっ……ちょっと、調子に乗らないで下さいって言ったじゃないですか!!」
 シェラは両腕で突っぱねて、俺の手を振り払った。
「も〜……ヴァイスさんて、ジツはいやらしいですよね。そういうところは、少しは変わっててください!」
 いや、面目ない。
「だって、シェラが相変わらず、すげぇ可愛いからさ」
「なっ――!?」
「いや、相変わらずじゃねぇな。前から馬鹿みたいに可愛かったけど……うん。もっと、綺麗になったよ」
「な、なに言ってるんですか!?だ、誰が……馬鹿みたい、ですか……」
「いや、ホントほんと。なんだか妖しい色気が出てきたっていうの?」
「……からかわないでください。ヴァイスさんこそ馬鹿言ってないで、何か用事があったんじゃないんですか!?」
 身の危険を感じたのか、シェラは座りながら体をよじって、俺から少し離れた。
 あらら。お兄さん、ちょいとショックですよ。
 いっそのこと、色んなトコを触りまくってやろうかと思ったが、どうにか理性が勝利を収める。
 さて、まだ考えがまとまりきってないんだが、どうしたもんかね。
「うん、それなんだけどさ――そういや、アルスの野郎はどうしてる?」
 姑息に時間を稼ぐ俺。
「アルスさんは、今はここに居ないです。マグナさんに言われて、船員の人達と一緒に船の方で寝泊りしてます。もともと――あ、いえ」
 そういや、昨日も船がどうとか言ってたな。
 シェラに問い質すと、なんとポルトガ王からマグナに船が下賜されたというのだ。それも、外洋を航海できるような立派な船だ。バハラタから黒胡椒を持ち帰ったマグナを、勇者と認めたかららしい。
 その船で、はるばる海を越えてジパングまできたって訳か。
 なんだか改めて、この数ヶ月でこいつらにも色々あったんだな。
322CC 34-19/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:34:36 ID:S9T42C+c0
「それで、ヴァイスさんのお話って、なんですか?」
 再度シェラに問われた俺は、急いで頭を回転させつつオロチ退治の事情を話す。
 俺の歯切れの悪さから、本来はマグナ達に協力してもらう必要はそれほど無いんだけど、お互いの溝を埋めるきっかけにしたいんだ、というところまで、シェラは汲んでくれたようだった。
「……分かりました。私から、説明してみます。リィナさんだったら乗り気になるかも知れませんし、そしたらマグナさんを、無理矢理引っ張っていくと思いますから」
「オロチを退治したら、ヒミコから褒美としてオーブをもらえるかも知れないとか言えば、マグナに対しては説得の材料にならねぇかな?いや、実際もらえるかどうかは分かんねぇけど、ヒミコとの交渉がし易くなるのは間違いねぇと思うしさ」
「あ、そうですね。そう伝えてみます」
「うん。こんなことばっかりシェラに頼んじゃって悪いけど、よろしく頼むよ」
「……」
 何を思ったのか、俺の顔を凝っと見詰めていたシェラは、急に頭を振った。
「ううん、なんでもないです。あの……」
「うん?」
「いえ、なんでも。そうですね、分かりました。なんとかしてみます」
「うん。じゃあ、可愛いシェラに任せるよ」
 いや、なんか、言って欲しそうな顔してたから。
 どうやら正解だったらしく、シェラは両手で頬を押さえて、交互に足をバタバタさせた。
 なんでシェラが相手だと、こういう台詞が平気で口をついて出るのかね、俺も。
 我ながら不思議だが、きっと嘘を吐いてる気が全くしないからだろうな。
323CC 34-20/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:38:32 ID:S9T42C+c0
 ところが、日が傾きはじめても、マグナ達は一向に姿を現さなかった。
「もう、待っても無駄だな。仕方ない。身代わりの役は、俺がやる。それなりに装えば、誤魔化せなくもないだろう」
 痺れを切らせたファングが、とんでもないことを言い出した。
 まさかとは思うが、お前が女装をするって言ってんじゃねぇだろうな?
 頼むから、やめてくれ。そんな筋肉質のがっちりした女が、どこの世界にいるってんだ。つか、俺が見たくねぇよ。
 無茶を言うファングを宥めながら、はたと思い至る。
 もしかして、あっちの酒蔵の方に行ってるんじゃねぇのか、あいつら。
 別れ際に、タタラってヤツの家で待ってるとシェラには告げた筈だが、あの酒蔵なら黒づくめ連中にも話を聞かれないで済むって話を、同時にしちまったからな。勘違いされたかも知れねぇ。
 普通に考えりゃ、向こうに俺達が居なければ、こっちに来るとは思うんだが……なんか、嫌な予感がした。
 念の為にタタラを留守番に残して、俺達は酒蔵の様子を覗いてみることにした。
 案の定、掘っ立て小屋の中に置いてあった、手持ち燭台の数が減っていた。
 階段を下ると、扉の向こうから声が微かに漏れ聞こえた。
「あ〜、裏切り者のヴァイスくんだ〜」
 先頭に立って扉を開けた俺を、呂律の怪しいリィナの罵り声が迎えた。
 けたけたと笑いながら、こっちを指差しているのが、酒壷の上に置かれた燭台の炎にゆらめいて見える。
 嫌な予感が当たったらしい。
「お前……飲んでんのか?」
「もっちろん、飲んでるよ〜?これが飲まずにいられますか、ってね」
「あの、すみません、ヴァイスさん……ここの話をしたら、その、リィナさんが……」
 シェラが申し訳なさそうに頭を下げる。
「うん、いいよ。大体分かる」
「分かるって、何が分かるのさ。ヴァイスくんなんかにぃ〜」
 絡むなよ。
「ふ〜んだ……はじめて飲む味だけど、このお酒、おいしいねぇ。あ、お金払ったりしなきゃダメかな?ま、それはヴァイスくんに任せた!!」
 仮にも勇者様御一行が、勝手に人様の酒を盗み飲みとかすんなよな。
 まぁ、酔っ払ってくれてて、逆に助かった部分はあるけどさ。
 お蔭でリィナとは、ギスギスした空気にならなくて済んでるし。
324CC 34-21/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:41:54 ID:S9T42C+c0
 あるいは、リィナの思惑も同じだったのかも知れない。
 多分リィナは、見た目ほどには酔ってない。前に二人で飲んだ時も、そんな感じだったしな。
 こいつは、自分の動きに大きな支障が出るところまでは飲まないだろう、という気がした。
 だが、やけくそ気味に上機嫌なリィナとは対照的に、向こうで酒壺に背をあずけてだらしなく足を投げ出しているマグナは、じとーっと据わった目で俺を睨みつけたまま、ひと言も言葉を発しなかった。
 すいません……怖いです。
「やれやれ。これは一体、なんの騒ぎだ」
 ファングが呆れた口調で呟く。
「悪いが駄目だな、これは。酒に呑まれるような酔っ払いが、役に立つとは思えん」
「ん?誰が役に立たないって?」
 リィナの絡む対象が、ファングに移った。
「貴様以外に、誰かいるのか?」
「ボク?ボクは、全然酔っぱらってなんかいないよ」
「黙れ。話にならん」
「なんだよ、えっらそうに……あ、そうだ」
 なにやら、リィナはにんまりとした。
「ちょっと運動して汗かいたら、お酒なんてあっという間に抜けちゃうと思うんだけど?」
「……それがどうした」
「分かってるクセにぃ。ま、ボクに汗をかかせる自信が無いなら、無理にとは言わないけどね。キミが、かわいそうだしぃ」
「貴様は、少し頭を冷やした方がいいな。どれ、頭から酒壺に突っ込んでやる」
 いやいや。そんなことしたら、余計に酔っぱらうだけだと思うんですが。
「坊ちゃま。そんな、女の方に、いけません――」
 ファングを諌めるアメリアを見て、リィナは目を見開いた。
 そして何故か、俺の方を向く。
「うっわぁ……さっきは気付いてなかったけど、あの人、胸おっきいねぇ。ボクとどっちがおっきいかな?ねぇ、ヴァイスくん?」
 うるせぇよ、酔っ払い。
「なにを下らん言い合いをしておるのじゃ」
 ファング達の背後から、姫さんが顔を覗かせた。
「そんなことをしておる暇は無いのであろ?」
「あ、エミリーちゃんだ!!元気だった〜!?」
 それまで絡んでいたファングをあっさり捨て置いて、リィナはエミリーを軽々と抱き上げた。
 ちなみにお嬢は、ファング達の脇を抜けて、俺の傍らに寄り添っている。
 俺はついつい無意識に、マグナに背を向けるように立ち位置を変えるのだった。
325名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 10:45:14 ID:RpoYnFJbO
支援
326CC 34-22/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:46:52 ID:S9T42C+c0
「会えて嬉しいよ!!やっぱりキミって、ほんっと可愛いよね〜」
「うむ。お主も元気そうでなによりなのじゃ……なんじゃ!?頬を擦り付けるでない!!」
「うわ〜、頬っぺたとか赤ん坊みたいだよね〜。気持ちいい〜」
「こら……よせと言うのに!!」
 ひとりきりかいぐり回して気が済んだのか、リィナはエミリーの脇の下に両手を差し入れると、シェラに向かって差し出した。
「はい、シェラちゃん。愛しの姫様だよ?」
「……もう、何言ってるんですか、リィナさん」
 シェラはやや視線を外しつつ、おずおずと切り出す。
「あの……姫様……」
「お主の言った通りになったな」
 とん、と地面に置かれながら、エミリーが言った。
「……はい?」
「リィナや、あそこで怖い目をしてこっちを睨んでおるイジワル女を連れて、後で会いにくると言ってたのじゃ」
「あ……」
「その通りになったであろ?やっぱりシェラは、わらわに嘘は吐かぬのじゃ」
「はい……ごめんなさい」
 ふらふらと歩み寄ったシェラは、床にひざまずいてエミリーをぎゅっと抱きしめた。
 実際は、ヒミコの屋敷で既に顔を合わせてる訳だが、無粋な突っ込みはナシにしておこう。お互いに会おうと思って会った訳じゃねぇしな。
「なんじゃ、シェラまで。やれやれ、わらわの周りの人間は、甘えたがりが多くて大変なのじゃ」
 小さい掌でシェラの頭を撫でながら、姫さんはちらりと俺に視線をくれた。
 馬鹿言え、俺は違うだろ。
 どっちかっつーと、姫さんが俺に甘えてんじゃねぇか……いや、うん。ごめん。俺が甘えてるよな。
「とにかくだ、時間が無ぇから、話を進めるぞ。シェラから、ざっとは聞いてるよな?」
「うん、ヒミコサマに喧嘩を売るんでしょ?」
 違ぇよ。
「とにかく、ボクはあのカタナ使いの人とやれれば、なんでもいいや。ドラゴン退治っていうのも、面白そうだしね」
 と、リィナ。
「……お前、ホントに酔いは大丈夫なんだろうな?」
「もっちろん。そこまで飲んでないってば」
「どうだかな」
 吐き捨てたファングがアメリアに窘められているのは、とりあえず置いといて、俺はそろそろとマグナの方を振り向いた。
327名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 10:50:17 ID:BmWIwuAH0
しえ ん
328CC 34-23/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:51:57 ID:S9T42C+c0
「マグナも、そんなに離れてないで、こっちに来ないか」
 相変わらず据わった目をして、酒壺に背をあずけているマグナの方から、返事は無かった。
「あいつにも、がぶがぶ飲ませたんじゃねぇだろうな?」
 ひそひそ声で尋ねると、リィナはきょとんとして首を横に振る。
「ううん、ちょっとは飲ませたけど……ホントにちょっとだよ?」
 リィナと違って、あいつは酒に弱いからなぁ。酒の臭いが充満してるここに居るだけでも、ある程度は酔っちまうのかも知れない。
 からみ酒じゃないだけ、よしとしておこう。
「まぁ、いいや。それで、これからどうするかって言うとだな――っ」
 背中に強い衝撃を受けて、俺の言葉は強制的に途中で遮られた。
 振り向くと、いつの間にやら起き上がって、俺のすぐ後ろまで来ていたマグナが、片足を床に下ろしたところだった。
 こいつ、俺の背中を蹴っ飛ばしやがったな。
 つか、無言で蹴らないでください。怖いです。
「なにすんだよ?」
「……別に」
 俺の横では、お嬢が目を丸くしてマグナを見ていた。
 まぁ、こんな乱暴な女は、お嬢の周りにゃいなかっただろうからな。
「えぇと――その、マグナさんも、オーブを手に入れる助けになるなら、協力するって言ってくれましたから」
 シェラが慌ててフォローした。
 うん、お前はホントにいいヤツだな。
 俺は、マグナをこっそりと盗み見た。
 なんで俺、こいつだったんだろ。
「ところでさぁ……」
 ようやく話を進められると思ったら、今度はリィナが腰を折る。
「ヴァイスくん達って、ここにはそのドラゴンを倒しにきたんでしょ?ヒミコサマの前で、そう言ってたよね?」
「ああ、そうだけど?」
 リィナは、皮肉らしくエフィをすがめに見た。
 怯えて、俺の陰に隠れるお嬢。
「だったらさ、ボク達も協力するってコトだから、言わせてもらうケド……なんでそのヒトが、ここに居るのかな?キミ、どう見ても、戦えるヒトじゃないよね?」
 痛いトコ突かれた気分で、俺は咄嗟に切り返せなかった。
329名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 10:56:17 ID:i0P3WEPJ0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~紫煙
330CC 34-24/24 ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 10:57:43 ID:S9T42C+c0
「そ、それはそうだけど……私は、この仕事を依頼した人間として、全部を見届ける義務が……」
「なにそれ。無いよ、そんなの。どうせ無理言って、強引についてきちゃったってトコでしょ?キミみたいな足手纏いを連れてるコトが、どんだけヴァイスくん達に負担をかけてるか、分かってるのかな?」
「そ、それは……」
「どんだけ危ないかも分かってなくて、覚悟なんか全然無いクセに、気安くこんなトコに居られても、はっきり言って迷惑なんだよね」
「……っ」
 エフィは、言葉を詰まらせた。
 まいったな。昨日の晩のことで、お嬢に対する含みがリィナに芽生えちまったんだろうか。
「いや、こいつを連れてきたのは……」
「わ、私だって、気安い気持ちで、ここに居る訳ではないわ!!」
 だが、意外にも、エフィは反論してみせた。
「き、危険なことくらい、分かってたもの。貴女にどう見えても、それなりに覚悟はしているつもりです!」
「ふぅん」
 リィナは、にんまりと微笑んだ。
「じゃあ、さ。このヒトに、生贄の身代わりになってもらおうよ。危険を承知の上で、覚悟してきたって言ってるんだからさ」
 やぶにらみから表情を一変させて、リィナはけろっと突拍子もないことを言い出した。
「……お前な、無茶言うなよ」
 さすがに口を出した俺の服を、エフィはぎゅっと引っ張った。
「いいえ……やらせて、ヴァイス。私も、何も出来ずにただ足手纏いになるばかりの自分が、ちょうどイヤになっていたところだったから」
「いや、あのな、エフィ――」
「私にも出来ることがあるなら、是非やらせて。お願い、ヴァイス」
 待てって。よく考えろ、エフィ。
 お前じゃ、不意をついてオロチに一太刀あびせるとか出来ねぇだろ。
 第一、髪とか瞳の色は、どうすんだ。ここの連中、みんな髪も目も黒いんだぞ――
「本人がやりたいって言ってるんだから、やらせてあげなよ。危なくなったら、助けてあげればいいでしょ」
 なんでもないことのように言うリィナ。
「お気遣いありがとう。でも、あなたに助けてもらわなくても平気だわ。きっとまた、ヴァイスが守ってくれるもの」
 挑発的に返すお嬢。
「へぇ?」
「……なによ?」
 いや、お前らな。
 こんな土壇場で、こんなコトになっちまって、俺は一体どうしたらいいんですか。
331CC ◆GxR634B49A :2008/04/04(金) 11:09:39 ID:S9T42C+c0
リィナさん、いきなり何を言い出すんですか\(^o^)/
私の苦労も、少しは考えてください><

ということで、第34話をお届けしました。
ご支援ありがとうございました。
というか、>>306 が、いきなり全裸でフイタw

今回は、もし粗が目立ったらすみません><
その上、話が進んでないです。
でも、この先お仕事とその他の用事で忙しくなってしまいそうなので、
どうしても今投下しておきたかったんです。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

最後の展開は、ホントの土壇場のキワキワでリィナが唐突に言い出したんですが、
なってみると、ああ、こうなのかな、という気がします。
でも、次回がさらに大変になったんですけど。。。
どうすんだ、これ。。。

次回の予定は全く未定ですが、忙しい方が却って筆が進んだりすることも
あるかも。。。いや、ないか。。。
と、とにかく、またなんとか頑張りますよ!!

ということで、よろしければ、また次回も読んでやってください。
この後用事だから、ちょっと寝なきゃ〜。。。
332名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 11:25:27 ID:BmWIwuAH0
乙です。
今から睡眠削って読み耽りますw
333名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 11:27:44 ID:xM5gurq+O
CC氏、乙でした!!

修羅場ktkr……リィナ怖いよリィナ。
マグナがいつも通り(?)な分、彼女の不機嫌さが際立っとりますな(;´д`)


で、俺の嫁に手ェ回したヴァイスは女装ファングに抱き締められたらいいと思うんだ。
334名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 11:33:06 ID:i0P3WEPJ0
ccさん乙!
またもやまさかの展開w
でもこのメンバーが揃うとなぜかホッとする
335名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 12:14:21 ID:ow1j3KzI0
常識やぶりの多人数パーティーここに爆誕ですね
ところでさすがに寒いのでそろそろ服着てもいいですか?
336名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 19:17:27 ID:/LeCt92A0
CC氏乙。

原作でもジパングのオロチはダーマから直行すると
キャラのレベル足りなくなりがちだからな。
今のキャラの育ち具合でここを突破するなら
これくらいの人数いないとおかしいのかもな。
337名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 23:44:52 ID:/cVEMEFM0
CC氏おつ!
ちょっとずつ昔のふいんきが戻ってきてるなぁ
なんか泣きそうになったわ
よかったよかった・・・ってまだ終わってねぇかw
338名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/04(金) 23:47:02 ID:bxJuwgEt0
いつの間にかきてる!!
しかも続きが気になって仕方ない展開!!

お疲れ様です。
339名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 00:33:01 ID:OigXhPC2O
修羅場きたこれ。
この流れはエフィが賢者に転職フラグ
340名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 06:18:49 ID:8MpXnloS0
いやこれはむしろ……

ってかあんまり妄想膨らますのは執筆の邪魔になるから止めよう
341名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 11:11:00 ID:efYdE0YMO
だな。
CC氏が執筆時間を少しでも確保できるよう、関西から念を送るぜ( `ω´)bフォォォ
342名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 17:50:37 ID:dFVb7ktw0
なんか急にたこ焼き食べたくなってきた・・・@愛知
343名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/06(日) 19:55:56 ID:efYdE0YMO
ちょwwそれ違うwww
344CC ◆GxR634B49A :2008/04/06(日) 23:11:19 ID:KUHVXFT10
皆様、レスありがとうございました〜ヽ( ´∀`)ノ
お風邪などお召しにならないように、気をつけてくださいね〜w

人数がえらい増えてしまいましたが、姫さまとお嬢とアメリアは、
ゲーム的には戦えないNPCだと思いますので、戦力的なプラスはファングだけと言えるかも。
正直、アレがいれば十分過ぎる気もしますが。
私の手間的には、人数の分だけ増えているのが、なんともかんとも。

次回にご期待いただけたようで、とても嬉しいです。
がんばりますー。。。でも、ホント、次回どうすんだろ(^^ゞ
戦力としては、マグナ一行はそこそこ冒険をしてた筈だし、
ファングは、まぁ、置いといてw
ヴァイスくんもヴァイエルチートで呪文に関してはレベルアップしてるので、
なんとかなるのかなぁ、と思います。。。やっぱり、問題は筋立てですねぇ。
このお話を書くにあたって、自分の首を絞めることを自重しないと、
はじめから決めてたんですが、いまだに毎回のように次の話の目処が立たないのは、
なかなかキビシーものがありますにゃ〜。。。いや、まぁ、完全に自業自得ですがw

リィナやマグナはもちろん、嫁と言っていただけたシェラも今回で終わりじゃなくて、
まだひと山ふた山ある予定ですし、ファングとアメリアにもなんだかんだあることを考えると、
その辺りを処理するだけで、四十話台に突入しちゃいそうだなぁ。
先々に関して、ごく部分的なイメージがぼんやりと無くはないんですが、
今回のリィナのように登場人物によって覆される可能性も高かったりします。
私自身、どう展開していくのか、この期に及んで分かってないお話ですが、
どうか今後ともお付き合いいただければと思います。

さてー、とにかく書く時間を、なんとか確保しないとですね。
たこ焼きで空腹を満たしつつ、頑張りたいと思いますw
345CC ◆GxR634B49A :2008/04/08(火) 16:00:15 ID:s0BHyg+30
とりあえず保守。以下、いつものようにご歓談くださいw
346名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/08(火) 17:19:00 ID:dW0wl8nRO
とりあえず>>343氏、たこ焼きごちそうさまでした保守
347名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/09(水) 05:19:28 ID:/v8/29aq0
俺は自腹だったorzホシュ
348名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/11(金) 20:57:58 ID:PV4KhQPi0
保守
349名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/13(日) 16:37:17 ID:FEX5vPTg0
俺は明石焼き派だぜ保守
350名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/14(月) 22:08:35 ID:kUI4tWQ+0
ここらで恒例の

保 守 !
351CC ◆GxR634B49A :2008/04/16(水) 02:52:31 ID:WiK9oahj0
どうにも時間が取れません\(^o^)/
引き続き、のんびりお待ちいただけると幸いです。
うぐぐ。。。すみませんorz
352名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/18(金) 12:00:03 ID:3BrsTJV4O
うぐぅはたこ焼きじゃなくてたい焼きですよ保守
353名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/18(金) 22:36:51 ID:s9TJZ2XFO
闇ゾーマ撃破記念かきこ。フェニッシはギガテインだった。
354名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/19(土) 06:45:27 ID:SZYQd/LMO
賢者三人と勇者でひたすらベホマ撃ってた俺超チキンwwwwwww
355名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/19(土) 06:53:12 ID:55UV/SSL0

                   / ̄\
                  |     |
                   \_/
                     |
                 / ̄ ̄ ̄ \
                / ::::\:::/:::: \
              /  <●>::::::<●>  \
              |    (__人__)     |
              \    ` ⌒´    /
              / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
┏━━━━━━━━┓
┃ |>いいえ .  いいえ┃━━━━━━━━━━━━━━━┓
┗━━━━━━━━┛                       ┃
    ┃オプーナがおきあがって .なかまになりたそうに   ┃
    ┃こっちを見ている!                     ┃
    ┃なかまに いれますか?          .       ┃
    ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
356CC ◆GxR634B49A :2008/04/20(日) 21:07:08 ID:GUygix7s0
お仕事が終わりません\(^o^)/
うぐぅ。。。普段はこんなに忙しくないのに。。。
でも、先週頑張ったから、この先ちょっとは時間が取れる筈。。。
申し訳ありませんが、引き続きまったりお待ちくださいorz
357名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/20(日) 23:46:42 ID:6Nt4Y2wl0
仕方ない・・・そろそろ服を着るかな
358名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/22(火) 00:44:55 ID:9XrU2sB60
テイン保守
359名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/23(水) 01:07:24 ID:ilq2N/md0
やっと規制解除されたDion軍が保守!
360名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/23(水) 23:49:21 ID:JWJv0F7a0
同じく!

さて脱ぐか
361名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/25(金) 01:34:48 ID:O8af0uNg0
>360
今の君はぴかぴかに光って〜
362名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/27(日) 16:57:13 ID:D9wxOCMo0
久々に1話から読み直したらマグナのツンデレっぷりに萌え死んだ保守
363CC ◆GxR634B49A :2008/04/28(月) 07:01:38 ID:Y1KvtHsc0
うぅ。。。すみません、お仕事終わんないです。まじヤバい><
なので、ほんのちょっとしか進んでません。。。
すっかりお待たせしてしまってホントに申し訳ありませんが、
マグナに萌えていただけて、うかれ元気が出たので、なんとか頑張ります><
風邪が流行ってるみたいですから、ひとまず服は着てお待ちくださいね〜w
364名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/28(月) 19:14:32 ID:wH6Ke9X60
既に風邪引いたので全裸で待ちますホシュ
365名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 18:30:16 ID:mimmDKicO
ニアほしゅ は まかせろ
366名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/02(金) 00:06:16 ID:X/PSMFDA0
ほすしますよっと
367名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/05(月) 00:17:37 ID:obQJL/L90
GWほす
368CC ◆GxR634B49A :2008/05/06(火) 01:20:35 ID:QvXMrJ020
風邪+持病で数日動けず寝込んでました
お仕事ヤバすぎ、どーにもならねー\(^o^)/
あばばばばばばばばばばばばばばb

これはいったい、なんの呪いですか><
ちょっとだけよくなったけど、ホント、死ぬかと思った。。。
皆様も、健康には気をつけてお待ちくださいませorz
369名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/06(火) 08:40:12 ID:zhhAlIuP0
ふぇぇ('A`)
しーしーしお大事に・・・ほしゅ
370名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/06(火) 10:41:56 ID:NB79M7bmO
YANAさんのまとめ読みしてきた
感動をありがとう
 
 
一昨年くらいにこのスレでチラッと見て、昨日ふと気になったから最初から読んだんだ
読んでよかったよ
思い出してよかったよ
 
 
他の書き手さんも頑張ってくれ
陰ながら応援してる
371名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/06(火) 20:36:26 ID:zr8DtMI2O
372名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/06(火) 22:53:19 ID:vTRVcvH90
>>371
いい加減にせい
373名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/06(火) 23:16:01 ID:zr8DtMI2O
374名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/07(水) 23:14:13 ID:+Ugd1Egb0
これはひどい
375名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 09:18:56 ID:HyuvOel20
これって削除依頼の対象になるよな・・・
376名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 18:41:35 ID:gHje/GejO
角煮じゃ良く見掛けるけどなw
377名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/12(月) 09:45:02 ID:119ER4JAO
久しぶり保守?
378CC ◆GxR634B49A :2008/05/12(月) 14:31:07 ID:5tmp7qic0
うぅ。。。やっと体調回復してきました。。。ホントに死ぬかと思った。
頑張ってみますが、今月は体調と忙しさで、どうにもならない予感が。
来月になれば、またずいぶん時間も取れるようになると思うんですが。

画像は怖くてみてませんがw、間が開き過ぎるのは、やっぱりよくないですよね。
ホントごめんなさい><
今回だけは、無理すればなんとかなるという状況じゃないので、
ホントに申し訳ないですが、どうかまったりとお待ちください。
379名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/12(月) 21:08:24 ID:YQ1H6TcvO
さて……そろそろ服を着ようか
380名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/13(火) 10:50:35 ID:aCHa68Dl0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~<少し守っておこうか。
381名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/13(火) 19:00:47 ID:r9Nf8V0S0
金太、守って!
382名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 14:08:28 ID:0pvrozTn0
ネムキを読んでる俺にとっては2ヶ月ぐらい平気だ保守
383名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 20:48:54 ID:eP9yPajs0
昔、ガンダムの世界にのびた達が迷い込んだら・・・って小説があってな(略

要するに保守
384名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/15(木) 13:35:44 ID:+x8tcevEO
Mな俺にとってはみじかすぎるくらいだ
保守
385名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 23:33:52 ID:dl3RNvYC0
YANA氏の生存が気になってる保守
386名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 07:11:01 ID:xUND5onzO
見切り氏も思い出してあげて
387名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 10:53:54 ID:I8hvvRPu0
俺は執筆係氏を信じるッ!

もう終わってたっけ?
388名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 23:41:09 ID:MI5IA+Sg0
とにかくみんな大好きなんだぜ?
389CC ◆GxR634B49A :2008/05/19(月) 12:29:40 ID:TO42QjWj0
うわぁ、もう一週間経ってる。。。状況は相変わらずです><
もしかしたら、少し変則的な投下をするかも知れません。
今回ばかりは、そのくらいどうしようもなくて><
早く来月にならないかなぁ。。。
390名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/20(火) 01:14:42 ID:EhLX6D8M0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~
我々は待つことに慣れている
391名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/22(木) 19:24:36 ID:2xF+L1I30
俺は露出することに慣れている

保守。
392名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/22(木) 20:01:13 ID:mLwUQ67AO
>>391
違うな、『我々は』だ。
393名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/23(金) 11:12:23 ID:Wqe9Tw9q0
とりあえず昨日ノーブラで出勤してすごく恥ずかしかった件

はどうでもいいから保守
394名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/23(金) 15:53:13 ID:ibpbbgL3O
>>393
とりあえずkwsk
395名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/23(金) 19:06:13 ID:UIFypmss0
俺もノーブラだよ
396名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/24(土) 00:33:52 ID:Z2o6nPIA0
全部読んだ。
ヴァイス君、人生の岡崎朋也みたいな性格やなw
397名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/24(土) 08:32:49 ID:NYR8NIwN0
それに対し、起きだす前から装備を整えている勇者も変だがw
398名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/24(土) 08:42:36 ID:WzkQtBvX0
>>396
まあCC氏の作品はヴァイスの成長譚って側面も強いだろうから
そういう意味では確かにクラナドの主人公とも被る
399名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/25(日) 21:21:01 ID:vD+iuhmr0
クラナドって家族って意味じゃなかったっけ・・・?w
ほす
400名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/25(日) 22:26:40 ID:SZrMm/ty0
>>399
どこかのスレで「クラナドは人生」って書いてあるのを見たことがある。詳しくは分からんがそのことを言ってるんじゃないか?
401名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/26(月) 23:50:05 ID:gL1JvBq80
スクールデイズが聖典で〜とかそんなやつか・・・
402CC ◆GxR634B49A :2008/05/27(火) 23:35:41 ID:/GOuhW0D0
「人生の岡崎朋也」を見た時、何故か「そういうヤクザ小説かマンガが
あるのかな〜」とかゆう感想が、勝手に脳内に浮かびましたw
なんでそんな風に思ったんだろwww語感ですかね(^^ゞ
クラナドなら、聞いたことあるですよ。
ヴァイスみたいなキャラが出るですか。苦労してるのかなw

とゆうことで、お待たせし過ぎてホントにすみません。
お仕事の上に個人的な事情も重なりまして、なかなか時間がとれません><
これ以上長々とお待たせしないように、なにかいい手を考えます。
403CC ◆GxR634B49A :2008/05/27(火) 23:42:58 ID:/GOuhW0D0
ところで、ブラをつけ忘れて出勤は、相当高レベルのドジっ娘な気がする件
色々大変だと思うので、気をつけてくださいね。
保守の時はノーブラで構いませんからw
404名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/29(木) 01:14:34 ID:UxbC9NpR0
保守
405名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/30(金) 00:22:56 ID:CXSA9+DX0
ではお言葉に甘えてノーブラで保守
406名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/31(土) 00:34:03 ID:wUiED68EO
ノーパン捕手
407コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/01(日) 14:33:55 ID:UCPU8QxSO
ここは敢えてブラのみで保守


べっ、別に誰かに見られるためにしてる訳じゃないんだし、いいじゃない!
あたしがどんな格好してたって!

あんまり、見ないでよ……
408コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/01(日) 16:44:36 ID:fNCYb+aE0
セクシーギャルの作り方教えてください
409コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/02(月) 08:02:09 ID:NYzHCEUIO
>>407に負けずに自分もブラのみで保守





男だけど
410コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/04(水) 20:41:24 ID:Oy8ViBDH0
自分はおとなしくパンツのみで保守

>>409よ。
男ならネクタイのみで保守だ!
411コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/05(木) 01:58:16 ID:xD1MWcN30
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~<私は全裸だ
412コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/05(木) 09:01:51 ID:UDFiflSi0
ネクタイ、ブリーフにロレックス(シャッチョーサン、ローレックス、イチマンエンネーのアレ)
で保守
413CC ◆GxR634B49A :2008/06/05(木) 09:17:43 ID:uZc6zSN60
なんだ、この流れw

お待たせしすぎて、ホントに申し訳ありません<(_ _)>
このままお待たせし続けては、皆様お風邪を召されてしまいそうなので、
なんとか近々、なんらかの形で投下したいと思います。
いつ、というのは、まだちょっと明言できないんですが。。。
なるべく早く投下できるように頑張ります。
すみませんが、いましばらくお待ちを。。。
414※YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/06/06(金) 00:45:29 ID:ujuS13Xf0
皆様方、大変お久しぶりです。ちゃんと生きてます、ごめんなさい。長らく不在でご心配をお掛けしてます。
現在、(もう覚えている人がいるかどうかも危ういですが)某所で大昔に受けたリクのプロットが
どうにかこうにか「これならいけるだろう」というところまで練りあがり、度胸一発いざ投下開始、というところまで漕ぎ着けまして。

投下形態を誤ったらしく、スレを大炎上させてしまいました(泣

こういう時は黙ってやり過ごすが吉だと思うので、暫くはそちらでは動けません。
万が一スレが特定できる方がおりましても、どうかご静観くださいませ。

それで、あちらが沈静化するまで、どうにかこちらのお話も進めるだけの時間を捻出できればいいな、とは思いますが、
リアル生活が割りといい感じに切羽詰っている感じなので、実現できるかどうか。この根性なしめっ。
そういうわけで、申し訳ありませんが、また暫くCCさんにスレを任せっぱなしにする確率大と思われます。

あぁもう、アリワ外伝、プロット出来てるのに書けないと言うのはこうもストレスが溜まるものかー。
415コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/06(金) 10:58:14 ID:mu5FSC3b0
そんなときのためのおすすめにty
ぐわーなにをするー
( ゚д゚)ハッ!お、おまえがなんdギャー

そんな保守
416コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/08(日) 00:59:07 ID:DaM+LYiCO
何を…言っている…?
417名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/11(水) 11:59:46 ID:H+qQe8V00
全裸で待機しても寒くない季節になりました。

保守です。
418名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/11(水) 12:01:10 ID:VFjFpWtr0
ほすほす
419名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/13(金) 00:10:48 ID:iho4+rvu0
これだから作品スレは…
妄想スレにすれば万事解決!

つまるところ保守ってことです
420CC ◆GxR634B49A :2008/06/13(金) 01:38:38 ID:j4c4derg0
すみません、もう既になんらかの投下をしている筈だったんですが、
もうちょっとかかりそうです><
あと、今回は、大したことはできませんが、と先に謝っておきます(^^ゞ
421名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/13(金) 21:59:31 ID:KKhPzSrJO
CC氏キタワァ

それじゃ、脱ぎます保守
422名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/13(金) 23:40:52 ID:CpbG1U7z0
あんたにとっては大したことじゃなくても、あたしにとっては大切なことかもしれないのよ!
勝手に決めないでよねっ!
423名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 01:32:58 ID:q7Gv50Qf0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~
やっと解除されたぜ。
ついでに保守だ。無論全裸でな
424CC ◆GxR634B49A :2008/06/15(日) 02:13:45 ID:T1oObz7G0
投下しようと思ったのに、間に合いませんでした\(^o^)/
明日は用事があるので、さすがにそろそろ寝なくては。。。
週末に間に合わせたかったんですが、ホントにすみません><
明日明後日中には、なにがしか投下しますです。
425名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/15(日) 15:06:00 ID:Uvi9yrpMO
>>424
焦らしプレイなんて余所でも慣れっこなんだぜ!

さあ皆で全裸保守!
426名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/15(日) 21:10:11 ID:FfpAXHJtO
ちょっくら全裸で雨に打たれてくるか
427CC ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:21:49 ID:OU7TkNrn0
案の定、明後日になりました\(^o^)/

ということで、もうちょっとしたら、とりあえず投下しますね。
う〜ん。。。いや、投下してからにしようw
428名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 02:25:14 ID:0PeD0qEtO
おk
全裸待機
429CC 35-1/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:38:25 ID:OU7TkNrn0
35. SHOCK-IT-TO-ME(仮)

 あまり時間も残されていなかったので、酒蔵を後にした俺達はタタラやクシナと合流して、今回の生贄に選ばれたヤヨイという女の家に向かった。
 リィナの突拍子もない提案のお蔭で予定が狂っちまって、かなり行き当たりばったりな作戦しか思いつかなかったが、これ以上揉めてる時間も無い。不本意だが仕方ねぇ。
「キミ、だいじょぶ?重くて疲れたんじゃないの?」
 道すがら、空の酒壷を背負ったファングに、リィナはそんな声をかけた。
 言葉の上では気遣いだが、完全に揶揄する口調だ。
「ふざけるな。たとえ中身が酒で満たされていたところで、何ほどの事もない」
「ホントにぃ〜?」
「くどい」
「あ、そう?じゃあ、こんなことしても平気だよね」
 ファングの腰の辺りを足がかりにして、ひょーいと跳び上がったかと思うと、リィナはくるっと空中で一回転して、そのまま酒壷の縁に着地した。
 相変わらず、軽業師顔負けの身軽さだな。
「おい、貴様!?なにをしている!?」
「へぇ〜、ホントだ。全然バランス崩れないね。すごいすごい」
「……貴様こそ、奇妙な体術を使うな。人ひとり乗っているようには感じんぞ……おい、いいから、さっさと下りろ!」
「いいじゃん、別に。全然へっちゃらなんでしょ?」
 縁から両足を離した途端、リィナの体は全身の関節が外れたみたいに折り畳まれて、すとんと酒壷の中に消えた。
「楽ちんだから、このまま運んでってよ。これも修行だよ、修行」
 酒壷から肩口まで覗かせて、リィナはファングの頭をぺしぺしと叩いた。
「貴様……あまり調子に乗るなと警告したぞ?」
 あ、マズい。ファングのヤツ、本気でキレかけてやがる。
 リィナを嗜めるのを一瞬躊躇っちまったのは、やっぱり昨夜のことが頭にあったからだろう。
 俺よりも先に口を開いたのは、姫さんだった。
「おお、よいな。わらわも、乗りたいのじゃ」
「ん?いいよいいよ、おいでよ、エミリーちゃん。はい、お手をどうぞ」
 ファングの意向を全く無視して、リィナは身を乗り出して手を差し伸べると、エミリーをぐいっと引っ張り上げた。
430CC 35-2/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:43:45 ID:OU7TkNrn0
 いくらエミリーが小柄とは言っても、さすがに二人がすっぽりと入れるほどの大きさじゃない。壷の中で立ち上がってエミリーに場所を空けたリィナは、目の上に手をかざして庇を作り、芝居じみた仕草で先を窺った。
「で、そろそろ、そのヤヨイって人のウチに着くのかな?」
「へぇ……んですだ」
 リィナの馬鹿みたいな身軽さに唖然としたのか、振り返ったタタラは気の抜けた口調で答えた。もしかしたら、呆気に取られたのは、とりとめのない言動の方かも知れないが。
 マグナ達が勇者様ご一行であることは、既に説明してある。勇者様のお供ともなれば、やっぱり普通の人間とは様子が違うんだな、とでも言いたげなタタラの顔つきだった。
 一方のファングはといえば、背負った酒壷に姫さんまで乗っちまったので、渋々黙認することにしたらしい。こいつは案外、姫さんに甘いからな。
 きっと苦虫を噛み潰したような顔をしてるに違いないが、二人分の重さ自体はまるで苦にしていないらしい。体力馬鹿の面目躍如ってトコですかね。
 並んで歩くアメリアが、姫さんと会話をしながら、さりげなくファングの肩に手を置いていた。
 ちなみに先頭に立って案内をしているのが、もちろんタタラとクシナで、その後ろにファング達が続き、やや遅れて言葉少なにシェラが足を動かしている。
 その背中を見ながら歩いている俺の手を、身代わりの生贄役を務める決心をしたエフィが、思い詰めた顔をして握っていた。
 さらにずっと遅れて、しんがりをダルそうに歩くマグナ――今も、ついてきてる筈だ。少なくとも、ついさっき確認した時は、ちゃんと居た。
 景色を眺めるフリをして誤魔化しちゃいるが、俺がいちいち後ろを気にしてるのは、エフィにはバレバレだろうな。
 この状況は、俺が望んで働きかけた結果なのは、もちろん承知してるんだが。
 正直、ちょっと胃が痛くなってきたぜ。
431CC 35-3/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:52:13 ID:OU7TkNrn0
 近付くにつれて、ヤヨイという女の家は、教えられなくてもそれと知れた。
 家の中から、泣き喚く子供の声が聞こえたからだ。
 タタラを先頭に中に入ると、今朝方見かけたヤヨイの恋人――サノオを含めて、家人の全員が葬式の真っ最中みたいな打ち沈んだ顔を突き合わせていて、異常に淀んだ空気をガキの泣き声が攪拌している。
 大好きなヤヨイお姉ちゃんが生贄にされてしまうと知ったガキが、イヤだイヤだと駄々をこねているのだ。
 黙って突っ立ってるだけで、こっちまで落ち込んじまいそうだったので、早速タタラに仲介してもらって、俺達に任せてもらえればヤヨイを生贄にしないで済むと話を持ちかける。
 最初は半信半疑の顔をされたが、タタラが国外に助けを求めたことは周知だったし、さらにサノオからも今朝の話は聞かされていたらしく、最終的には縋る目をした家人全員に頭を下げられた。ガキだけは泣きっぱなしだったが。
 悪い冗談としか思えないが、生贄の女はヤマタノオロチと添い遂げるという建前になっているらしい。まさしく、死が二人を別つまでって訳だ……うん、不謹慎だったな。
 ともあれ、そんな理由もあって、生贄の女が嫁入り衣装で着飾る風習になっているのは好都合だった。頭にも被り物だか布切れだかを被せるそうだから、ぱっと見、入れ替わりが分からなくなる――かと期待したんだが。
「やっぱり、髪の色が問題ですね〜」
 襖を開けたアメリアが、奥の部屋のエフィを振り返りながら、そうこぼした。ヤヨイが着る筈だった衣装の着付けを手伝っていたのだ。
 首を傾けて覗き込むと、暑苦しく何枚も重ね着をしたエフィが、正座をして俯いているのが見えた。
 馬子にも衣装、という言葉がある。
 その上、エフィは元から見た目が悪くない。
 だから、思わず見とれちまって、こっちの部屋の隅っこで壁に背中を預けて片膝を抱えてるマグナに睨まれる……なんて展開になるのを畏れてたんだが、幸い杞憂で済んだ。
 ここの連中にとっちゃ上等な出で立ちなのかも知れないが、なんというか、センスが違うっていうのかね――端的に言えば、俺はもっと体のラインが出る薄手の衣装の方が好きだな、うん。
432CC 35-4/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 02:57:09 ID:OU7TkNrn0
「そうですね……ちょっと、怪しまれちゃうかも知れませんね」
 ぺたんと床に腰をおろしてガキを抱きかかえたシェラの控えめな表現は、顔に浮かんだ困った表情で裏切られていた。
 ちなみにガキは、ずっとシェラにあやされていた甲斐あって、ようやく泣き止んでいる。
「お姉ちゃん、綺麗!!」
 目を丸くして叫んだガキに、エフィは「ありがとう」と呟いて、強張った笑顔を返した。
 ひどく緊張した顔つきだ。これから化け物の生贄にされようってんだから、無理もない。ガキは空気を読めないからアレだが、綺麗かどうかはこの際関係ねぇしな。
 結い上げられたエフィの金髪は、頭に被せた布の内側に押し込められていたが、どうしてもいくらかはみ出ちまってる。
「ね〜。お姉ちゃん、とっても綺麗だね〜」
 ガキをあやしながら、シェラがぽつりと漏らす。
「カツラでもあれば、いいんでしょうけど……」
 瞳の色や顔立ちは、悲しげな素振りで目を瞑って俯いてりゃ誤魔化せるだろうが、シェラの言う通り髪の色はカツラでもない限り無理だな、こりゃ――
「カツラがあれば、いいだか?」
 嘴を挟んだのは、それまで大人しくタタラの陰に隠れていたクシナだった。
「え――あ、はい。あれば助かりますけど……お持ちなんですか?」
 アメリアの問い掛けに答えず、クシナは足早に奥の部屋に踏み込んだ。
 そして、長い黒髪を片手でまとめ上げると、木製の化粧台から大きな鋏を取り上げる。
 正直、俺はクシナが何をするつもりなのか、まるで予期していなかった――
「お、おい、おめ、なにするつもりだ」
 唯一、タタラだけが声をあげたが、その制止は間に合わなかった。
 じょきり。
 小気味のいい音を立てて、クシナの黒髪が鋏に切断されるのを、俺はただぼけっと見ていたのだった。
433CC 35-5/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:03:44 ID:OU7TkNrn0
「え――っ!?」
「なにを――?」
 悲鳴を呑み込んだアメリアやシェラにしても、予想の外だったろう。
「これで、代わりになるだか?」
 お嬢が両手で口を抑えて見上げる中、クシナは己の黒髪をアメリアに向かって差し出した。
 ひとつ呼吸を置いて、表情を改めたアメリアが顎を引く。
「……はい。助かります」
「なんてこと……どうして――?」
 エフィの声は震えていた。信じられないといった口振りは、自分が髪を大事にしてるからだろう。
「ん?なんでってこともねぇだけど、ヤヨイじゃちっと長さが足んねぇだろうし……」
「そうじゃないわ!そんな、なんの相談もなく、あっさり……貴女にとっても、髪は大切でしょう?」
「いんや。こんでヤマタノオロチさ退治してもらえっなら、オラの髪の毛くらい安いもんだ」
 クシナは、なんでもないことのように言うのだった。
「だからって……ごめんなさい。私が深く考えもせずに、身代わりになるなんて言い出したせいだわ……」
「なしてお前ぇさんが謝るだ?ホントはオラ達でなんとかしなきゃなんねぇのに、無関係なお前ぇさん達さ巻き込んで、申し訳ねぇのはこっちだよ」
「でも……」
 クシナがあっさりと自分の髪を差し出したことは、エフィにとって余程ショックのようだった。
 そして、俺もまた、多分お嬢とは異なる意味で衝撃を受けていた。
 クシナの行為、それ自体がショックだった訳じゃないんだが。
 ひと言でいえば、意外――そう。まるで予想できなかったという事実が、俺にあることをハタと気付かせたのだ。
 俺は、クシナやタタラのことを何も知らず――知ろうすらとしてなかった。
 自分の髪を差し出すくらいなんでもない。女がそう考えてしまう程、この国の住人達がオロチに追い詰められている状況について、俺はほとんど実感を覚えちゃいなかったんだ。
 俺の興味は、偶然この地で再会したマグナ達にすっかり奪われていて――だからこそ、クシナが何をするのかなんて、全く予見できなかった。興味の外だったから。
 多少は手強い相手かも知れないが、基本的にはいつもの魔物退治と大して変わらない。無意識の内に、その程度のつもりで構えていた俺は、ここの連中にとってオロチの脅威が文字通りの死活問題だという視点に、全く欠けていたのだった。
434CC 35-6/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:15:57 ID:OU7TkNrn0
 こういう事って、きっと俺には山ほどあるんだ。
 視角の盲点というか、目の前にあるのに気付かない、みたいなことがさ。
 いや、こんな当たり前のことさえ分かってなかったくらいだ。
 いくら注意深く振る舞ったところで、気付いてないことにすら気付けない――きっと、そんなケースがいっぱいあるに違いない。
 俺は一体、これまでどれくらい、気付かなくちゃいけなかったことを、気付けないままにして過ごしてきたんだろう。
 そんな思いに囚われて、どこかから唐突に現れた誰かに横っ面を引っ叩かれたみたいに、不意打ちじみたショックを、俺は覚えていたのだった。
 考えてみりゃ、クシナは家族を殺されてるんだもんな。オロチ憎しの念は、人一倍だろう。クシナの顔を改めて正面から見直せば、その情念がもたらす覚悟というか、自分に出来ることがあるならなんでもするという決意みたいなものは窺える。
 そんなことすら、今まで分からなかった訳で。
 俺は別に、全ての不幸にひたすら同情を寄せるような博愛主義者じゃない。
 けど、オロチ退治を請け負って来た分際で、肝心の仕事に本腰が入ってなかったのは認めざるを得なかった。
 魔物に襲われて人が死ぬなんて、大して珍しい話でもない。
 こんな商売をしてると、それに慣れちまって、感覚が麻痺してた部分もあったかも知れない。
 でも、それって、ホントはやっぱり普通じゃねぇんだよな。
 特に、俺達みたいにヤクザな商売をしてる訳でもなく、本来なら片田舎でのんびり畑を耕して暮らしてるような連中にとってはさ。
 ちらりと視線を向けると、ファングも俺を見た。
 こいつは最初っから、目的を見失ったりしてなかっただろう。
 シャクに触るが、面構えでそれが分かった。
「気合入れてかからねぇとな」
 そう声をかけると、やっと分かったか、と言うように、ファングは「当然だ」と答えてニヤリと笑った。
435CC 35-7/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:20:29 ID:OU7TkNrn0
 クシナの黒髪を被り物から垂らして目鼻立ちを見え難くすることで、どうにかエフィはそれっぽく見えるようになった。
 ホントは髪を結い上げるのが作法らしいんだが、まぁ、すぐに喰われちまう生贄の髪型なんて、運び役の兵士だか役人だかも大して気にしやしないだろう。
 一緒に運ばれる酒壷の中には、リィナが潜むことになった。
 ファングは自分が入る気マンマンだったんだが、筋肉質の図体には小さくて、すっぽりと収まり切らなかったのだ。
 酒壷に潜む役には、ある一定の時間、オロチと独りで渡り合って、致命傷を与えられないまでも、エフィを守ってもらう必要がある。
 もちろん俺達もすぐに駆けつける予定だが、運び役の目を盗んで後を追うとなると、どうしたっていくらか時間差が生じるからだ――ったく、生贄役がエフィじゃなけりゃ、もうちょいマシな手も打てただろうにな。
 ともあれ、竜種と独りでやり合うなんて非常識な役目がこなせそうなのは、ファング以外にはリィナを置いて他になかった。壷にすっぽり入れるのは、もう実証済みだしな。
「あなた……ちゃんと、自分の役割を果たしてくれるんでしょうね?」
 ところが、エフィは疑り深げな視線を、リィナに投げかけるのだった。
 守ってくれるんでしょうね?と、はっきり言わなかったのは、意地を張ってるんだろう。
「んん〜?さってねぇ、どうしよっかな〜」
 酒壷の中に立って、その縁で頬杖をつきながら、リィナはにやにやとエフィに視線を返す。
 昨夜の件で、この二人の間には妙な確執が生まれちまったらしい。
 やれやれ。
 お嬢は、ヴァイスぅ〜、と、当て付けるみたいな、妙に甘えた声で俺を呼んだ。
「ねぇ、この人選は、本当に間違いないの?私は、できたらヴァイスについてきてもらった方が、安心なんだけど……」
「いや、悪いけど、俺もその中にすっぽり入るのは、ちょっと無理だ」
 あと、竜種と独りで渡り合うのもな。
436CC 35-8/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:25:19 ID:OU7TkNrn0
「……けれど、正直に言って不安だわ。本当に大丈夫なの、この人」
「さぁ〜?どうだろうねぇ――」
「ああ、大丈夫だ」
 茶化すリィナを遮って、そう断言することに、迷いはなかった。
「リィナは、必ずエフィを守ってくれる。絶対だ。俺が保証する」
 それまでさんざん反りが合わなかったリィナとエフィは、一転して示し合わせたみたいに、同時に揃ってきょとんとしてみせた。
 なんなんだ、お前ら、その意外そうな顔は。そんなに俺らしくない台詞だったか?
「それに、リィナは俺なんかより、全然強くて頼りになるんだぜ。だから、心配すんな」
「ま、まぁ……ヴァイスが、そう言うなら……」
 狐につままれたような顔をして、不承不承つぶやくエフィ。
「リィナも、頼んだぜ。エフィは、俺達みたいに年がら年中魔物とやり合ってる人種とは、訳が違うんだからさ。なるべく早く追いつくつもりだけど、それまで守ってやってくれよな」
「ふぅん……ホントに、いいのかなぁ〜?ボクに、そんなこと頼んじゃって。心配じゃないの、ヴァイスくん?」
 リィナはニヤニヤとからかう表情を浮かべたが、悪いけど無意味だぜ。
「ああ。全然心配してねぇよ。よろしく頼んだぜ」
 こんな風に言い切るのが俺らしくねぇのは、まぁ、自分でも認めるよ。
 でも、これに限っちゃ本心だからなぁ。
「そりゃ……まぁ……その人に身代わりになってもらおうって言い出したのは、ボクだしね」
 リィナは、バツが悪そうにぼりぼりと頭を掻いた。
 リィナがエフィを守ってくれることについては、俺は一切の疑いを持ってない。
 俺達が辿り着くまでの間、リィナ独りの手にオロチがおえない可能性はあるだろうが、リィナに無理なら、他の誰にも無理だ。もしそうなったら、誰が悪いかって、こんな杜撰な作戦を考えた俺の責任ってことになる。
 とにかく、俺がついていくよりゃ、よっぽど安心なことは間違いない。
 だから、俺が引っ掛かってるのは、それとは別の事柄だった。
437CC 35-9/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:29:23 ID:OU7TkNrn0
 準備が整ってほどなく、昼前に俺達を呼びに来た連中と同じ格好をした二人の男が、生贄を迎えにやってきた。
 既に沈んだ太陽が、山の上を微かにあかく染めている――もう、ほぼ夜だ。
「酒壷も、こっちで用意しときましただから」
 あらかじめ、家の外で待ち構えていたタタラの言葉を特に訝る風もなく、「ほう、気が利くな」とかなんとか言いながら、兵士達は両端に棒を渡した板の上に、蓋をした酒壷を置き、生贄にも隣りに乗るように促した。
 それはもちろん身代わりになったエフィであり、本来の生贄であるヤヨイは、余計な疑いを持たれるのを嫌って身を隠している俺達と一緒に、家の中から様子を窺っている。
 ヤヨイの家族に軽く頭を下げて、終始俯いたエフィが板に乗ると、兵士達は前後から棒を握って持ち上げた。
「きゃっ!?」
 板の上でバランスを崩しかけて、エフィが悲鳴をあげる。
 ヤバい、馬鹿、顔を上げんな。ここの連中とは目鼻立ちがまるで違うから、しげしげと覗かれたら、さすがに怪しまれるぞ。
 肝を冷やしていると、不意にヤヨイの母親がおいおいと声をあげて泣き崩れた。
 続いて、おそらく事情を半分も理解していないガキがつられて泣きはじめると、兵士達はうんざりとした顔を見合わせた。
「気持ちは分かるが、お主の娘は大変名誉なお役目を仰せつかったのだ。笑って送り出せとは言わぬが、あまり未練を残すものではない。娘も困るであろうし、なによりこれは、お前達の為なのだから」
 用意してあった台本を棒読みするような口調で、兵士のひとりがヤヨイの母親を諭した。思うに、生贄を運ぶ際に繰り広げられる別離の光景は、毎回こんな調子なんだろう。
 ともあれ、兵士達の注意がエフィから逸れたことに、俺は胸を撫で下ろしていた。
438CC 35-10/?? ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:32:18 ID:OU7TkNrn0
「ええ……ええ、承知しております」
 旦那に肩を抱かれながら、ヤヨイの母親が小さく頷く。それにしても、咄嗟にこんな機転が利くとは思ってなかったぜ。助かったよ。
「娘――なにか言い残すことはあるか」
 妙な仏心を出したのか、もう一方の兵士がエフィに尋ねた。
 余計なことしなくていいから。
「……いいえ」
 蚊のなくような声で答えて、俯いたままエフィは首を横に振る。
「そうか……では、行くぞ」
 訳も分からず泣き続けるガキが、上手い具合にいたたまれない空気を醸し出していた。
 兵士達にしても、死ぬと分かってる娘を家族から引き離すなんて、気分のいいモンじゃないのは明らかだ。逃げるようにして、そそくさと生贄と酒壷を洞窟に向かって運び去った。
 考えてみりゃ、あいつらも憂鬱な役目だよな。
 あの分なら、途中で余計な詮索をされて、エフィの正体がバレる心配は少なそうだ。
 いちいち生贄に感情移入してたんじゃやってられないだろうし、意識的に距離を置いて、言われた仕事を淡々とこなす。そんな態度だった。
「そんじゃ、行くか」
 こっそり後をつけるべく、ファング達に声をかける。
「あの……よろしくお願いいたします」
 そう言って、ヤヨイは深々と頭を下げた。
 言いたいことは山程あるけれども、それしか言葉にならなかった、みたいな口振りだった。
「任せておけ」
 俺が口にしたくて出来なかった言葉で、ファングが答えた。
439名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 03:41:54 ID:BBE9lW0PO
仕事前の保守
440CC ◆GxR634B49A :2008/06/17(火) 03:49:17 ID:OU7TkNrn0
ということで、第35話の一部をお届けしました。
今回はここまでです。す、すみません><

いつも一話単位で構成を考えるので、通常は前半に動きがなかったら
後半に動きを持たせようとか、その逆とか、そんな具合にしてるんですが、
ここまでだと、見事に前置きだけって感じですよね。
退屈なだけだったかも知れないと思うと、心苦しいです。

けど、大変個人的な事情で申し訳ないんですが、
5月の頭。。。いや、4月の下旬から、正直生きた心地がしない、
という日々が続いておりまして。。。すみませんが、今はこれが精一杯でした。

どうにか状況が持ち直しそうな気配がしてきましたので、
なるべく早く続きをお届けできるように頑張ります。
途中で投げ出す、という選択肢だけは無いつもりでいますので、
よろしければ今後ともお付き合いいただければと思います。

では、なるべく近い内に、続きでお会いしましょ〜ノシ
。。。そうなるといいなぁ。いや、もちろんそうなるように頑張りますけど(^^ゞ
 
441名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 04:19:28 ID:BBE9lW0PO
仕事中のほs……



ズコー(AA略


あ、いやあの、CC氏、まずは乙でした!!
まぁ、前半で各キャラの心理描写やら前置きやら入れてたら大変っすもんねぇ……
あと、髪を切るシーンがやたら印象的だったり。
うーん、ためになるSSだ。


次回までの保守は我等に任せて、まずは体調を整えて下さいな。
マジでお疲れ様でした!
442名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 06:45:18 ID:u7eHMhPa0
昨日早々に寝たので仕事前にチェックしていたら更新されてる!!!!
全然退屈じゃないですよ本当に!
443名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 10:46:04 ID:vKcNU2TuO
ここから先は有料なんですね?
月3000円くらいまでなら払っちゃうぜ保守
444名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/18(水) 00:24:10 ID:E1ELudN80
ナニこの寸止め!!!!!!!!













だ が 
そ れ が い い
445名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/18(水) 01:46:52 ID:QU4f9aML0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~CC氏乙。何事もマイペースが一番
         全裸になって待った甲斐があった。
         面白い!ヴァイスがまた成長してるし!
446名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/18(水) 18:49:05 ID:dGxBzLYOO
久しぶりにきたあああ。
さあ続きまでオナ禁するぜ!
447CC ◆GxR634B49A :2008/06/19(木) 00:55:42 ID:FU0BKoaW0
ありがとうございます<(_ _)>
こんなペースにお付き合いいただき、本当に感謝です。
なんとかご期待にそえるように、続きを頑張ります。

うん。今の話、人数大杉ですよねーw
普通に書くとすんごい長くなっちゃいそうなので、ここは別に
書く必要ないよなぁ、っていう部分はざくざくカットしちゃってます。
必要な部分までカットしないように気をつけないと。。。
っていうか、クライマックスとか、もっと人数多くなりそうだしね!
('A`)

という保守w
448名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/21(土) 13:01:05 ID:9/R7n3qKO
てすと
449名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/24(火) 02:35:13 ID:FWk1aCkXO
CC氏の作品最初から読み直してるんだが面白過ぎるぜリィナ俺と結婚して下さい保守
450名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/24(火) 19:03:12 ID:Cm1Se/Mm0
わっふるわっふる
451CC ◆GxR634B49A :2008/06/24(火) 22:20:03 ID:S3hGqeu80
わっふるわっふる書こうと思って忘れてましたw

読み直していただけて嬉しいです。アホほど長くてすみません(^^ゞ
通読向けに手を入れるとか言って、そんな暇まったくねーw
リィナにも見せ場がまだまだあるので、乞うご期待です。

。。。ご期待を乞うたからには、さっさと投下しなくてはならないのに、
いつの間にやら、もう一週間経ってる。。。おそろしい。。。
が、がんばります><
452名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/25(水) 06:04:26 ID:gXXXkpKFO
内容の充実した長編小説には、長さを意識させないある種の“貫禄”がある。
CC氏の作品もその一つだ。


という事で保守
453名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/25(水) 23:16:24 ID:WBZAUWn90
>リィナにも濡れ場がまだまだあるので
まで読んだ。
454名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/27(金) 11:19:52 ID:IIXKR9pH0
漸くCC氏の最新作まで追いついた・・・
やべえ、やべえっすよw
正直続きが楽しみで仕方がねぇw

最近ヴァイスとファングの距離が縮まってきてアッー

>>YANA氏
あの流れはあんたが悪いってわけでもない気がするんだぜ。
ゆっくり待ってるよ〜
455名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/01(火) 06:18:43 ID:Xn/kJPc3O
ほしゅ
456名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 11:25:50 ID:G6102ChR0
今年も半分過ぎたのか保守
457CC ◆GxR634B49A :2008/07/04(金) 16:42:36 ID:SnMwqjiI0
ジツは先週からずっと、また忙しかったりします\(^o^)/
毎回、「次に書き込む時は、投下予告が出来るくらい進めておくぞ!」と思いつつ、
なかなかままならず。。。なんとか少しづつ進めてはいるんですが。。。
ホントにすみません><
今回の投下を乗り切れば、もう少しなんとかなると思いますので、どうか平にご容赦を。。。orz

もう半年経っちゃいましたね。ホントに、どんだけ早いんだ、月日。
458名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 07:49:34 ID:kMS2BvO/O
ごめん、CC氏の投下が待ち遠しくて俺がラナルータ使いまくったんだ。
459名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 14:40:58 ID:DltzG9oc0
その調子でもう四日分くらいラナルータ使ってくれ
460名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 20:09:35 ID:eHoD/l8q0
補習。
461名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/10(木) 18:59:29 ID:3Fgh+5Vr0
保守
462名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 01:39:40 ID:eP0LS8suO
今月の連載まだー?
463名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 02:07:48 ID:VF6IW8Gh0
とりあえず、全裸で待ち続けよう
CCを悩殺するんだ
464名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 05:55:32 ID:4R1OZ2x/O
つ【おおばさみ】
つ【やくそう】
つ【あぶない水着】
465名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 17:12:53 ID:hwjtRhdy0
つ【ガーターベルト】
つ【うさみみバンド】
466名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 18:38:17 ID:0FFVHaZ7O
つ【ハッサン】
つ【バロンの角笛】
467名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 18:44:39 ID:SewqNuJ9O
スレに関係ないけどちょっと疑問
ステテコパンツをビアンカに装備させたら上半身はなにきてるんだろうな
468名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 20:31:01 ID:ouGJ4yIqO
デフォで着てる物じゃね
469名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/12(土) 16:03:27 ID:8F/9osEG0
ビアンカってステテコパンツ装備できるの!?
470名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/15(火) 05:46:35 ID:pSKOEkq6O
半裸で保守
471名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/15(火) 23:18:15 ID:EamK+15a0
某所でCCさんの作品が紹介されてて、昨日から読み始めたんですが……めちゃくちゃ面白いっすねこれ!
気付いたら夜通し読んじゃってましたよw
お仕事が忙しくて大変かと思いますが、リアルに支障が出ない程度にがんばってください。
続きを楽しみにしてます。

リィナかわいいよリィナ
472名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/17(木) 10:48:58 ID:+B8W7Z4/0
ツンデレ保守
473名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/18(金) 20:54:44 ID:Bpx6zOsw0
べっ、別にアンタのために保守するんじゃないんだからねっ!
474名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/20(日) 09:22:25 ID:g+UgVRoy0
この私に保守をさせるとは……貸しは高いぞ。
475名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/22(火) 18:02:14 ID:hfixyfil0
ツンデレ萌え保守
476CC ◆GxR634B49A :2008/07/22(火) 20:20:01 ID:BXZ3sZG70
そうだ、樹海に行こう

うん、DQ世界って、あぶない水着とかステテコパンツとかまほうのビキニとか
うさみみバンドとかパーティドレスとかルーズソックスとかあるので、
普段着でミニスカートとか穿かせても、そこまでおかしくないと思うんだ。

ということで、ご無沙汰してしまってすみません><
投下の目処が立ってから書き込もう!
とか思ってたら、こんなに間が開いてしまいました。。。
なんとか、今週中くらいを目標に頑張りますので、
投下の折にはよろしくお願いしますです。

新しく読んでくださってる方もいるみたいで嬉しいですし、
これからはペースが少しでも上がるように頑張りますよ!
うん、まぁ、あくまで志としてはw
477名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/23(水) 00:39:39 ID:2gUBMi+k0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~<待つのには慣れてるから大丈夫
           今日も暑いから全裸で捕手だ
478名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/23(水) 21:19:52 ID:8CFf5VMn0
CC氏の更新を楽しみに今週は仕事します保守。
479名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/24(木) 01:24:29 ID:sUmepi5i0
さて、夏だし丁度いいな。
紳士スタイルで保守するか。
480名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/26(土) 16:01:21 ID:vyaFKO520
ほす
481CC ◆GxR634B49A :2008/07/27(日) 06:02:25 ID:6KSzO7Sl0
う〜ん、粗書きが記憶以上に適当だったので、
明日までの投下は、ちょっとキビしそうです。
あと1箇所ひらめきが浮かびさえすれば、なんとかなりそうなんですが。。。
引き続き、できるだけ早くお届けできるように努力します。申し訳ないです。
482名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/28(月) 13:20:27 ID:nrgfIjCX0
つ天翔龍閃
483CC ◆GxR634B49A :2008/07/29(火) 10:23:12 ID:WCashVfo0
おとりよせー!
技が違いました。

ということで、なんとかひらめきました〜\(^o^)/
。。。多分w
それに伴って、かなり書き換えが発生してしまったので良し悪しなんですが(^^ゞ
なんとか数日の遅れで済むように頑張っております。
484名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/30(水) 01:33:00 ID:03gvw6+p0
しっかしデボラはいいツンデレだよね〜。
なかなかデレをださないし。
485名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/30(水) 09:23:49 ID:ldxMamshO
遊び系キャラだけどな
486名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/30(水) 15:52:12 ID:SR624O1C0
ツンデレというよりはハルヒ系の非常識なタイプだろあれは
487名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/30(水) 18:01:17 ID:Za8Fuk6V0
>486
んー、非常識、ではない気が。
常識を持ち、空気も読めるが
あえて傍若無人に振舞っている。
とゆー個人的見解。

という意味ではハルヒと似ている気もしないでもない。
488名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/31(木) 03:27:34 ID:Allf+OOCO
デボラは話すの会話文の裏を読めると萌え死ねる らしい
俺も早く小魚になりたいものだ 金がないからな…
因みにツンデレじゃないと言ってるけどそういう訳じゃなくて
最近のツンデレではなく至極初期の頃のツンデレな感じらしい
ってデボラスレの小魚達が言ってた 羨ましい奴らだ
489名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/02(土) 22:29:13 ID:3/rb22wO0
8月最初の保守
490CC ◆GxR634B49A :2008/08/03(日) 08:43:56 ID:c6oekNUY0
すいません、横からお邪魔します。

よーし、書くぞー!と思ったら、急に用事が入る、
というコンボを連続して喰らい、遅れに遅れてしまいましたが、
今から24時間以内に投下できそうな目処が、ようやく立ちました。

また、休日に間に合わなかった。。。なんというダメ人間。
投下間隔に関しては、最早お詫びのしようもありませんが、
お手透きの時にでもお付き合いいただけると嬉しいです。

それでは、また後で〜ノシ
491名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/03(日) 13:17:07 ID:Y1gKemd+0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~<では捕手しようか。
492名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/03(日) 14:15:46 ID:l3KUNcTC0
>>490
ふぅん。今日はこの板に張り付こうかしら…。
べ、別にアンタの投下を待ってるじゃないからねっ!
493名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/03(日) 22:04:29 ID:qagTdhEV0
よーし、パパここに貼り付いちゃうぞ〜
494CC ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 06:52:49 ID:mbAjjHxg0
うはー、ギリギリだー。。。
夜の内に投下できなくてすみません。
もうちょっとしたら、続きを投下しますね。
495CC 35-11/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 07:23:21 ID:mbAjjHxg0
 生贄と酒壷を乗せた板をえっちらおっちらと運んでるので、兵士達の足取りはそんなに早くない。
 遅れて出た俺達は、ヤマタノオロチが棲家にしているという洞窟に辿り着く前に、連中の後ろ姿を拝むことができた。
 山間の道は森深く、気付かれないように身を隠す木陰には事欠かない。
「――お主らに感謝を」
 それに、こっちには姫さんもいるしな。
 かなり迷ったんだが――俺の提案で、姫さんとアメリアも一緒に連れて来ていた。
 洞窟に危険が待ち受けているのは自明の理だ。二人はヤヨイの家で待たせた方がいいんじゃないかとは、当然のこと考えた。
 俺の取り越し苦労で、余計な手間を増やすだけの結果になっちまうかも知れないが――とある気がかりを払拭できずにいた俺は、どうしても二人を無防備なまま置いていく気になれなかったのだ。
 ざわめき始めた梢の調べが、俺達の足音をほどよく掻き消す。
 風がほとんど吹いていない不自然さに気が付くだけの繊細さを、あの兵士達が持ち合わせてるとは思えねぇし、それでなくても、オロチの棲家へ向かっている恐怖心で気もそぞろな筈だ。
 余程のことが無い限り、後をつけている俺達の存在に、連中が気付くことは無いだろう。
「これで、ある程度は、木々がわらわ達の姿も枝葉で隠してくれる筈じゃ。足元には気をつけるのじゃぞ」
 姫さんが、そう注意した途端――
「あ――っ!?」
 木の根に足を引っ掛けたアメリアが、わたわたと腕を振り回した。
「……お主に言っても仕方ないと分かっておるがな。少しは自重したらどうじゃ、アメリア。いま、言って聞かせたばかりなのじゃ」
 バサリ、とすぐ脇の木の枝に受け止められたアメリアは、ファングに引き起こされながら情けない声を出す。
「すみませぇん……」
 恐る恐る兵士達の方を窺うと、かなり距離を置いてたのが幸いして、こちらに気付いた様子は無かった。
 やれやれだ。
「えっと……大丈夫ですか?」
 気遣いを口にしたシェラの顔には、困惑気味の曖昧な笑みが浮かんでいた。
 寸劇じみたやり取りに、本気で転びかけたのか、はたまたある種の冗談だったのか、判じかねている顔つきだ。
 一方のマグナは、非難がましい目つきで俺をやぶ睨みしたが、視線を返すとつんと逸らす。
 ホントに、余計な手間が増えただけかもな、これ。
496CC 35-12/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 07:32:44 ID:mbAjjHxg0
「あっつい!!」
 苛立ち紛れのつぶやきが、久し振りに俺が耳にしたマグナの声だった。
 まぁ、思わず愚痴が口をつくのも分かる。
 洞窟の中は、あり得ないほど暑かった。喋るのも億劫なくらいだ。
 それもその筈。灼熱の溶岩が、地面のあちこちに口を開けている亀裂の遥か下方で、地獄の釜さながらにぐつぐつと煮えたぎってるんだからな。
 内部は空間的にかなり広かったので、どうにか絶えられるくらいの気温におさまっていたが、用が無きゃまず入ろうなんて思わない、ひでぇ環境だ――つか、大丈夫なのかよ、これ。いきなり溶岩が溢れ出したりしねぇだろうな。
 近くに寄ると、たちまち呼吸も困難なほどの熱気に襲われちまうので、なるべく亀裂から身を遠ざけつつ、俺達は地面に生えたグロテスクな溶岩石筍に身を隠し、生贄を運ぶ兵士達の後を追って、なだらかな勾配を下り続けた。
 そうして下ってるだけでも、地獄の底へと向かってる気分に囚われちまうには充分な環境だったが、さらに不気味なことには――
 ゴオオアアァァ……
「ひっ」
 シェラが悲鳴を呑み込み、姫さんが首を竦めて辺りを見回す。
 地響きともつかない不気味な重低音が、さっきから断続的に聞こえていた。
 最初はなんだか分からなかったが、何度も耳にしている内に見当がついた。
 これって、もしかしてヤマタノオロチの鳴き声じゃねぇのか?
 いや、鳴き声なんて可愛らしい表現は相応しくない。
 咆哮だ。魔竜の咆哮――
 煉獄じみて熱い空気に流れる汗を拭う。
 地の底から響き渡る呼び声に誘われ、ゆるやかに下っている地面を黙々と踏み締めていると、なんとも重苦しくて嫌な気分に精神が蝕まれる。
「チッ……やられたな」
 ファングが小声で漏らしたのは、先を行く兵士達と距離を置きつつ、何度目かの横道を通り過ぎた時だった。
 ジツは、俺はこの時、地上の地形と現在位置を頭の中で照らし合わせるのに必死だったので、反応したのは姫さんの方が早かった。
497CC 35-13/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 07:38:24 ID:mbAjjHxg0
「なんのことじゃ?」
「いや……タタラが言うには、この洞窟にも魔物は出るという話だったんだがな。まるで出くわさんのは、どういう訳だ?」
「元々、それほど数が多くなかったのではないか?なにしろ、こんな場所じゃしな」
 姫さんは、汗で額にぴったりと貼り付いた前髪を、うっとおしそうに掻き上げた。
「ならよかったんだが……どうも、違うらしい」
「まるで、誰かが露払いした後みてぇだって言いたいのか?」
 個人的な気がかりは一旦置いといて、そう指摘してやると、ファングは苦笑を浮かべた。
「そういう事だ。ついでに言うと、そいつらに退路を塞がれた。どうやら連中は、俺達を生かして洞窟から出す気は無いらしいぞ」
「え?」
 シェラが、ちょっと目を見開いた。
「今しがた通り過ぎた横道があっただろう。あそこに潜んでたんだ。おそらく、村で俺達を監視していた連中の同類だな」
「……全然、気付きませんでした」
「だろうな。迂闊なことに、俺も気付けなかった。今度は本気で隠れていたと見えるな。間諜の類いだけあって、さすがに陰形には長けている。遅まきながら気付けたのは、俺達を袋のネズミにして、奴等が僅かに油断したお蔭か――」
 ファングの言ってることが正しければ、俺達は後をつけられてたってことか――いや、洞窟に入る前の森の中で、姫さんが尾行に気付かなかったとは考え難い――それに、これってどっちかと言うと待ち伏せだよな――とすると、やっぱり――
「いや、気配を隠す必要が無くなったと見た方が無難か。仕掛けてくるつもりかも知れんぞ」
 俺が考えをまとめる前に、ファングは足を止めた。
「お前は先に行け、ヴァイス」
「……は?」
「背後からチョロチョロとちょっかいを出されるよりは、ここで迎え撃って片付けておいた方が、後が楽だ。とはいえ、ここで全員が足止めを喰らう訳にもいかんしな。だから、ここは俺が持つ」
「いや、でも、お前――」
 アメリアと姫さんも一緒なんだぜ。いくらなんでも、面倒見きれるのかよ。
498名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 07:43:25 ID:G2NDK6Rw0
sien
499CC 35-14/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 07:46:11 ID:mbAjjHxg0
「いいから行け。急がんと、ユーフィミア達を見失うぞ」
「あ――だったら、マグナさんも先に行ってください」
 シェラまで、そんなことを言い出すのだった。
「ちょっと、シェラ――」
「ああ、それでいい。こっちは僧侶が残ってくれれば十分だが、あっちはヴァイス独りじゃ、応援としては心許ないからな」
 ニヤリ、じゃねぇよ。勝手に話を進めんな。
「いや……どっちかっつーと、回復役が必要なのは向こうなんじゃねぇのか?」
「大丈夫ですから」
 思いがけずに自信たっぷりにシェラに頷かれて、次の言葉に詰まる。
 いや、その、何の根拠も無く大丈夫って言われましてもね。
「でもさ……」
 姫さんとアメリアの方に、ちらりと視線をくれる。
 ファングの馬鹿は心配するだけ無駄だとしても、シェラは足手纏いを抱えながら戦ったりできねぇだろ――
 俺の不安を見透かしたように、シェラはもう一度力強く頷いた。
「私なら、大丈夫です。ちゃんと、姫様とアメリアさんを守ってみせますから」
 らしくない言い草に、俺は意外な表情を浮かべたらしい。
 シェラは、軽く俺を睨みつけた。
「少しは信用してください。言いましたよね?私、成長したって」
 いや、それは聞いたけどさ。
「ほぅ。聞いたか、ヴァイス?お前よりも、余程頼りになりそうだぞ」
 当てつけがましく、唇を歪めてみせるファング。うるせーよ。
「いいから、ここは俺達に任せろ。ぼやぼやしてると、本当に見失うぞ」
 ちょっと待てって。
 マジで、これでいいのかよ――
「履き違えるなよ、ヴァイス。お前には、分かっている筈だ」
 考えをまとめ切れない俺に、ファングはそんなことを言うのだった。
500CC 35-15/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 07:58:22 ID:mbAjjHxg0
「俺達は、何の為にここに来たんだ?今、お前が優先すべきことはなんだ?」
 自らの髪を切ったクシナの姿が、脳裏をよぎる。
 はいはい、そうでしたね。
 分かってますよ、こン畜生め……けどな。いいか、全面的にお前の言うことが正しいと思ってる訳じゃねぇからな。
 ただ単に、咄嗟に代案が思いつかねぇから、お前の意見を汲み入れてやるって、それだけだかんな?
 お前こそ、そこンとこ履き違えんじゃねぇぞ。
「……分かったよ。そんじゃ、ここは頼んだぜ」
「ああ、任せておけ」
 ちっ、自信たっぷりに言い切りやがって。
 分かってんだ。
 どうせお前に任しときゃ、アメリアや姫さんは元より、シェラの安全まで確実だろうよ。
 ホントは、ハナっから心配なんぞしちゃいねぇんだ。
 アホめ、誰がお前の心配なんかしてやるモンかよ。
 この先、別行動を取ることになる俺の無事の方が、不安なくれーだっての、くそったれ。
「そっちは頼んだぞ、ヴァイス。俺達も、すぐに追いつく」
 なにやらファングが拳を向けてきたので、俺も拳を握ってゴツンと殴ってやる――いってぇ。石かよ、お前のゲンコツは。硬ぇんだよ、畜生、涼しい顔しやがって。骨にヒビ入ってねぇだろうな、これ。
 くそっ、どうも釈然としねぇ――俺はいつから、こいつをここまで信頼するようになっちまったんだ。
 ふと気が付くと、アメリアが物凄い嬉しそうな顔をして、ニコニコと俺とファングを見比べていた。
 なんなんだ。
「さっさと行け。あっちの勇者まで見失うぞ」
 ファングに促されてそちらを見ると、マグナは既に走りはじめていた。
 お前な。ちょっと待てよ、コラ。
「マグナさんとリィナさんをお願いします!気をつけて!」
 慌ててマグナに続いた俺の背中を、シェラの声が追ってきた。
「……任せろ!」
 言ってやった。
 調子に乗って、肩越しに親指まで立てちまったよ。
 こっ恥ずかしい気持ちを持て余しながら、曲がりくねった洞窟をマグナを追って走る。
「さて、貴様等。そろそろ出てきたらどうだ――」
 遠ざかるファングの啖呵は辛うじて聞こえたが、ほどなく開始された筈の戦闘の音は、先刻から洞窟の壁で反響している地鳴りのような咆哮に紛れて、俺の耳には届かなかった。
501CC 35-16/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:05:16 ID:mbAjjHxg0
 先を行くマグナに並ぶ前に、洞窟が二又に分かれているのが目に入った。
 困ったことに、兵士達の姿は既に無い。
 マグナは俺を振り返ろうともせずに、左を選んで走り続ける。
 迷いの無いその様子に、先行していたマグナには、連中がそっちに行ったのが見えていたんだと思いきや――
 しばらく進むと、俺達は地割れに行く手を阻まれた。
 俺の身長の五倍はあろうかという亀裂は、とても跳び越せる幅じゃねぇし、下の方では例によって溶岩がぐつぐつと煮えたぎっている。
 つまりは、行き止まりだ。
 マグナは無言のまま回れ右をすると、俺と視線を合わせることなくすれ違い、さっさと元来た道を引き返した。
 あのな、お前――
 ついつい文句が口をつきかけて、危ういところで自制した。
 兵士達が左右どちらに向かったのか、マグナにも確認できていなかったんだとしたら、いくら考えても確率は二分の一のまま動かない。
 下手に悩んで時間を無駄にするよりは、とにかくどっちかに進んで、間違いだったら大急ぎで引き返して違う方を選べばいい。
 結果的には、それが一番手っ取り早い方法だってのは、俺にも分かる。
 だから、自制したんだけどさ――ひと言くらい、なんかあってもいいんじゃねぇのか。なんの相談も無く、お前が勝手に山勘で選んだんだからよ。
 ったく、溜息を堪えるのに苦労するぜ。
 さっきの分かれ道まで戻って、今度は右を選ぶ。
 下り勾配が続く洞窟を、俺達は無言でひたすら駆け続けた。
 それにしても、暑い。
 全力疾走を続けるのは、とても無理だ。小走りに毛が生えた程度の駆け足なのに、それでも走るのがしんどい。小刻みに息をしても、体の熱が全然逃げていかない。冷えた空気を、肺いっぱいに吸い込みたいぜ。
 汗は全身からダラダラと流れ続けてるし、このままだと脱水症状でぶっ倒れちまうぞ。
 まだ追いつかねぇのかよ――やっぱり、さっき道を間違えたロスが大きかったのか――いや、言っても仕方ねぇけどさ。
 その時、マグナが突然足を止めて、俺を振り向いた。
 内心の不満を見透かされた気がして、思わず挙動が不審になる。
 そんな俺を胡乱に睨んだマグナが次に取った行動は、完全に予測の範疇を超えていた。
 いきなり、抱きついてきたのだ。
502CC 35-17/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:09:31 ID:mbAjjHxg0
「ちょっ――!?」
 そのまま体を押し付けるようにして、石筍の陰へと俺を連れ込む。
 え、なにこれ。
 どんな展開ですか。
 唐突過ぎるだろ。
 今さっきまで、口を利くのも嫌だってな態度を取ってた癖に、お前、急に、こんな――
 これはやっぱり、アレですかね。
 今までのツンケンした態度は必死に自分の気持ちを偽ってただけで、溢れ出さんばかりの俺への想いがとうとう抑えきれなくなったとかなんとか――
「マグナ――」
 瞬間的に幸せな妄想を思い描いた俺の口を、マグナの手が塞ぐ。
 小さくて柔らかい――触れた肌から、顔全体にこそばゆい感覚がじんわりと広がっていく。
「黙って」
 体が密着した状態で、マグナが小さく囁いた。
 洞窟の奥の方を気にしている。
 それで、俺もようやく気がついた。
 小走りの足音が二対、こちらに近付いてくる。
 エフィを運び去った、あの兵士達だ。
 洞窟のさらに奥から、魔竜の咆哮が轟いた。
「ひぃ――っ!!」
「急げよ」
「ああ。こっちまで生きたまま喰われるのは御免だからな」
「まったくだ――くわばらくわばら」
 息を切らせて小声でやり取りしつつ、兵士達は石筍の陰でぴったりと身を寄せている俺達に気付く様子もなく、懸命に足を動かして通り過ぎていった。
 充分に連中が離れたのを見計らって、ひと息ついた俺は――とんでもないことに気が付いた。
 オイ、ちょっと待て!?
 なんだよ、これ、洒落になんねーぞ!?
 慌てふためいて、マグナから跳び離れる。
 カンベンしてくれよ……マジで、信じらんねぇ。
 そんなつもり、全然無かったのに。
 ヤベェ、気付かれてねぇだろうな。
 密着してたっても、服の上からだし……大丈夫だよな?
503名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 08:11:44 ID:UzLmAGJA0
支援
504CC 35-18/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:21:48 ID:mbAjjHxg0
「……何?」
 マグナが、怪訝な目つきを俺に向けていた。
 表情から察するに、どうやらホントにヤバい方はバレちゃいないらしい。
 訝しんでいるのは、いきなり跳び離れた俺の行動の唐突さの方だ――いや、それはそれでマズいか。
「待て待て、違うんだ。えっと、別にくっついてるのが嫌だった訳じゃなくてだな……むしろそれは、望むところっていうか――違くて。いや、違わないけど、そうじゃなくてだな……」
 物凄い勢いで墓穴を掘っていることを頭の片隅で意識しつつ、自己嫌悪が胸を満たす。
 なんなんだ、俺は……
 つまり、その、なんだ。
 さっき、マグナとぴったりくっついてた時にさ。
 自分でも気付かない内に、えぇと、その、なんつーか……
 下半身の、とある一部分がだな……
 だから、まぁ、なんというか。
 要するに、その……元気になっちまってたのだ。
 ……。
 いやいやいやいや。
 我ながら、これはねーよ。
 悪ぃけど、俺が自分で一番驚いてるから。
 だってさ、一緒に旅してた頃だって、こんな経験無かったぜ?
 いや、そりゃ、さ……元気になっちまうことはあったよ。割りと。
 けどさ、年がら年中そんなことばっか考えてるガキじゃあるまいし、それはそういう気分になった時であって、全然そんなこと考えてもなくて、自分でも全く意識せずにってのは、ちょっと記憶に無い。
 そういや――昨日は、どうだった?
 まさか、知らねぇ内に前を膨らませたりしてなかっただろうな!?
 うわ、怖ぇ……駄目だ。俺、すげぇテンパってたから、思い出せねぇ。
 くそっ……なんなんだ、俺は。
 今この瞬間も、エフィは迫り来る恐怖に震えているだろうし、リィナは命懸けの戦いをはじめてるかもしれない。残してきたファング達は、あの黒づくめ共と戦闘の真っ最中だろう。
 そんな差し迫った状況で、たまたまマグナと二人きりになって、ちょっとひっついただけで、コレなのかよ。
 あらゆる意味で、そんな場合じゃねぇだろ!?
 うわ、ダメだ、自分が信じらんねぇ。
 サイアクだ。
 マジで、なんなんだよ、俺は。
 でも、ホントに勝手に元気になっちまったんだから、しょうがねぇだろ!?
505名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 08:22:56 ID:91AFT1X60
しえ ん
506CC 35-19/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:28:24 ID:mbAjjHxg0
「いや、その……ホントにごめん」
「なに謝ってんの?」
 俺のうろたえ振りは、余程滑稽だったに違いない。
 マグナは、呆れたようにくすりと笑った。
 本当に度し難いな、俺は。
 明らかな苦笑でしかなかったのに、なんだか嬉しくなっちまってる。
 昨夜からこっち、マグナが俺との間に拵えていた分厚い壁が、ホンの少しだけ綻んだような気がして。
 自分の心の働きに、我ながらビックリするよ。
 そんなほんわかしてる状況じゃねぇだろっての。
「っていうか、あんたも、言われなくてもアレくらい気付きなさいよね」
 さっき通り過ぎた兵士達のことか。
「ちょっとは周りに気を配りなさいよ……どうせ、あの人が心配で浮っついてるんでしょうけど」
「悪い。気をつけるよ」
「……まぁ、どうでもいいけど」
 マグナは小さく溜息を吐いた。
「ほら、さっさと行くわよ。リィナは心配要らないけど、あんたが心配してんのは、そっちじゃないんでしょ」
 ふいと顔を逸らして、マグナは再び先に立って走り出す。
 やれやれ。ホントに、もうちょっとしっかりしねぇとな、俺。
 無節操に前を膨らましてたことを、マグナに気付かれずに済んで、胸を撫で下ろしてる場合じゃねぇぞ。
 ありがたいことに、しばらく行くと地割れは別の方向へ伸びていき、気温が多少下がった。
 引き返してきた兵士達と鉢合わせたということは、今度こそ道は間違っていない筈だ。
 その筈だったんだが。
 行く手には、またしても分かれ道が待ち受けていた。
 道なりの正面がもっとも幅広く、左右のソレは脇道に見える。
 マグナはわき目も振らずに、真っ直ぐに走り続けた。
 俺は、大人しくマグナに従った。
 考えたって分かる訳じゃねぇし――それに、今回は俺も正面の道が正解だと思ったからだ。
 そして、それは間違いじゃなかった。
 やがて、視界の先に開けた空間が広がり、奥のどん詰まりに設置された祭壇らしき人工物が目に入る。
 その上で、篝火に揺れる人影は――エフィだ。
507CC 35-20/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:37:16 ID:mbAjjHxg0
「ヴァイス!!」
 涙声が、俺の名前を呼んだ。
 走り続けて疲労した体に鞭を打ち、駆け寄った祭壇に跳び乗ると、必死にしがみついてくる。
「よかった……来てくれて……怖かった……」
「遅くなって悪かったな。無事でよかったよ」
 抱き締め返すと、エフィの体は異常なくらい細かく震えていた。
 まぁ、無理もねぇか。
 頭を軽く撫でてやる。
 横手で、トンと音がした。
 マグナが祭壇に乗った音だろう。
 このままエフィと抱き合ってるのは、色々とマズいよな。
 けど、今にもへたり込みそうなこいつを突き放す訳にもいかねぇし、どうしたモンかね。
 あえてマグナから視線を逸らして、そんなことを考えていると、しゅりんという擦過音が耳に届いた。
 イヤな予感がした。
 そろりそろりと、そちらを向くと――
 俺達に向かって、マグナが抜刀した剣を振りかぶっていた。
「おい――っ!?」
「ひっ」
 俺につられて、顔を上げたエフィが息を呑む。
 待て待て待て待て。
 お前、なんのつもりだよ!?
 イシスの武闘大会で、俺を罵倒しながら剣を振るっていたマグナの姿が、不意にフラッシュバックする。
 まさか、エフィに斬りかかるつもりとは思わないが――
 こいつ、いきなり無茶しやがるから――
「動かないで」
 淡々としたマグナの声に、エフィの体がびくっと震えて硬くなる。
「いや、お前、待て、ちょっと落ち着けって――」
 俺の制止に構わず、マグナは剣を振り下ろした。
508CC 35-21/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:41:48 ID:mbAjjHxg0
 鋭い剣閃は、エフィの背中を掠めて足元の祭壇を打った。
 石を打つ音に混じって、耳障りな金属音が聞こえた。
 よく見ると、エフィの右足は鎖で祭壇に繋がれていた。
 生贄が逃げ出すのを防止する目的だろう。考えてみりゃ、当たり前の話だ。
 マグナの剣は、その鎖を断ち切ったのだった。
 そうだよな。いくらなんでも、マグナが本気でエフィに剣を向ける訳がねぇよ。
 一瞬でも疑っちまった自分が情けない。
 けど、せめて先にひと声かけてくれても良かったんじゃねぇのか?
 寿命が縮むよ、まったく。
「それで、リィナは?」
 剣を鞘に戻しながら、マグナは視線を合わせることなくエフィに尋ねた。
 そうだ、リィナはどこに居るんだ――いや、忘れてた訳じゃないですよ?
 それに、ヤマタノオロチらしき魔物の姿も、どこにも見当たらない。
「あ、ええ……それが――」
 ひときわ大きな魔竜の咆哮が、エフィの返事を掻き消した。
 これまで耳にした中で、一番デカい。
「ひぃっ」
 体を竦めたエフィが、両手で耳を塞ぐ。
 洞窟の壁が、ビリビリと震えていた。
 これ、ヤマタノオロチの鳴き声……なんだよな?
 とても生物が発する音とは思えない。どこか洞窟の隙間を風が吹き抜けている、みたいな自然現象と考えた方が、まだしも納得できるぞ。
 正直に言うと、俺も結構ビビり入ってますけど。
 ただ、これまでは洞窟内で反響していたせいで、どこから聞こえてくるのか方向を特定できずにいた咆哮が、今は袋小路にいるお蔭で、俺達がやってきた方から響いてるのがはっきりと分かった。
509CC 35-22/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:47:11 ID:mbAjjHxg0
「リィナは?」
 再びエフィに問い掛けたマグナの口調は、落ち着いたままだった。
 お前、ずいぶん冷静だな。
「え、ええ……あの人は、邪魔だから私はここに居ろって……ヤマタノオロチがこっちに来る前に倒してしまうからって言い残して、独りで行ってしまったわ……」
「そう」
 短く呟いて、元来た道を戻ろうとするマグナの背中に、エフィは慌てて言い募る。
「で、でも――あの人、なんだかやる気が出ないようなことを言ってたのよ!私にはよく分からないけれど、相手は物凄く強い魔物なんでしょう!?それなのに、あんな……」
「……あのバカ」
 小さい舌打ちが聞こえた。
「だから、は、早く、助けに行かなくちゃ――」
「そんなこと、言われるまでもないわよ」
 マグナは終始こちらに背中を向けたまま、振り返ることなく走り出した。
 後に続きかけた俺の腕の中で――エフィが、かくんとよろめいた。
「ご、ごめんなさい……」
 重心が、片側に寄っている。
 見ると、足枷が嵌められた辺りの皮膚が擦れて、血が滲んでいた。
「大丈夫か?」
「ええ……ごめんなさい」
 なんで謝るんだ?
「だって……なんとか抜け出して、早くヴァイス達を呼びに行こうとしたのだけれど……逆に、迷惑になってしまっているんですもの」
 済まなさそうな顔をする。
「いや、別に迷惑じゃねぇけどさ……」
 足枷から無理矢理、足を引っこ抜こうとしたのか。無茶すんなよな。
510名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 08:51:53 ID:t+mltffO0
支援
511CC 35-23/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 08:53:09 ID:mbAjjHxg0
「エフィは、ここで待ってるか?そっちの方が――」
「嫌っ!!」
 ひしっとしがみついてくる。
「イヤよ……ごめんなさい。足手纏いなのは分かっているのだけれど……でも、こんな場所で独りで待つだなんて、もう本当に耐えられないの……大丈夫。自分で歩けるわ。だから、お願い。一緒に連れて行って」
 取り残されていた間、余程心細かったのだろう。
 顔面を蒼白にしたエフィは、縋る目つきで俺を見上げた。
「分かったよ。置いてきゃしねぇから」
 俺がそう言うと、エフィはひどく嬉しそうに顔をほころばせた。
 こんな顔されたら、置いてく訳にもいかねぇよな。
「走れるか?」
「ええ、平気。これ以上、お荷物になりたくないもの」
 そうは言っても足が痛むのか、俺に支えられながら祭壇を降りたエフィは少し顔を顰めた。
「さ、早く行きましょ」
 だが、すぐに表情を取り繕って俺を促す。
 無理しやがって――
 そうなんだよな。
 エフィは案外、可愛げがあったりするんだよ。
 まぁ、美人と言っても差し支えねぇしさ。
 今となっちゃ、それを認めるにやぶさかじゃない。
 日頃から噴き付けている香水が肌に染み込んでるのか、側に寄るだけでいい匂いがするしさ。
 体の発育の方だって、なかなかのモンだ。
 だけど――
 エフィの手を引いてマグナを追いながら、俺は考える。
 抱き締めて体を寄せていた間中、俺が慌ててエフィから身を離さなくてはならない瞬間は、結局一度も訪れなかったのだ。
512名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:00:56 ID:t+mltffO0
支援
513名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:00:57 ID:91AFT1X60
し ¥
514CC 35-24/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:05:48 ID:mbAjjHxg0
 さっき途中で通り過ぎた左右の脇道を、先を行くマグナが左に折れた。
「俺から離れんなよ」
 と声をかけるまでもなく、エフィはまるで命綱を握るみたいに、しっかりと俺の手を掴んでいる。
 逆の手で衣装の裾を持ち上げてるから、いかにも走り難そうだったが、俺が抱えるよりは速いしなぁ。
 足も痛むだろうが、もう少し頑張ってくれ。
 脇道を少し進むと、祭壇があった場所とは比較にならないくらい広大な空間に出た。
 天井は地上近くまで届いてるんじゃないかというくらい高く、左右や奥行きはちょっとした城ならすっぽりと収まりそうなくらい広い。
 そして、床面のほぼ全域が、地底湖さながらに灼熱の溶岩で満たされていた。
 足元の地面からは両端が消え失せて、まるで橋みたいな形で残されている。
 幅がエラく広いから、端に寄らない限り落ちることはまず無いだろうが、かなり物騒だ。
 どことなくエルフの洞窟を思い起こさせる地形だったが、寒いくらいだったあっちに比べて、こっちは馬鹿みたいに暑い。
 それに、向こうの終着点に待ち受けていたのは幻想的な巨木という平和な光景だったが、今、視線の先にいるのは――
 橋の先で、リィナと対峙している魔物を目の当たりにして、我知らず息を呑む。
 なんだよ、アレ。
 滅茶苦茶デカいぞ。
 これまで出くわした魔物の中でも、飛び抜けて巨大だ。そこらの民家一軒分より、全然大きい。
 ヤマタノオロチの名に相応しく、八つに分かれた竜頭を蠢かせ、いくつかの口に蓄えた炎を吐き出す機会を窺っている。
 しかし、まぁ、なんて迫力だ。
 圧倒的な質量――ぶっとい首をうねうねとくねらせる巨大なトカゲの親分は、実際に目の当たりにしていても、悪い夢か冗談にしか思えなくて、虚ろな笑いが漏れそうになる。
 歩みを止めたエフィに、腕を引かれてたたらを踏んだ。
「なに、あれ……無理よ、あんなの……」
 うん。
 俺も、できればお相手は御免蒙りたい。
「リィナ!」
 だが、リィナを呼んだマグナの声は、特に臆するでなく、ごく普通の調子だった。
「あ、来たんだ?」
 轟っ。
 ちらりとこちらに目配せをしたリィナ目掛けて、オロチが火炎を吐く。
 寸でのところでそれを避け、リィナは俺達の方に駆けてきた。
515名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:07:43 ID:t+mltffO0
支援
516CC 35-25/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:11:52 ID:mbAjjHxg0
「あれ、マグナ達だけ?」
「とりあえずね。シェラ達は、いま足止めされてるわ」
「あー……やっぱりね。足止め役の人達とか、いたんだ?」
 俺には理由がよく分からなかったが、リィナの声は残念そうだった。
 顔は黒ずみ、何箇所も服が焼け焦げ、あちこち火傷を負っているヒドい有様だ。
「まぁ、でも、ちょうど良かったよ。ちょっと前に、ベホイミが切れちゃってさ」
 リィナの台詞に臍を噛む。
 ほらみろ。やっぱり、シェラを連れてきた方がよかったじゃねぇか。
 ところが――
「そいじゃ、お願いするよ」
「はいはい、分かってるわよ――『ホイミ』」
 へっ!?
「ありがと。うん、まぁ、とりあえず充分かな」
 リィナは回復具合を確かめるように、手足をぶらぶらとさせた。
 いやおい、ちょっと待て――
 あれ?
「マグナ……お前――」
「なによ?」
 ギロリと不機嫌に睨まれた。
「いや……なんでもないです」
 こいつ、俺の知らない間に、まともに魔法を使えるようになってやがる。
 だからシェラは、あんなに自信満々にマグナを送り出したのか。
 やっぱり――こいつらにも、色々あったんだな。俺の想像以上に。
「いや〜、参っちゃうよね。あんだけ頭がいっぱいあると、死角がまるっきり無いみたいでさ。溜めが要る攻撃とかできなくて、ちょっと困ってたんだよ」
「リィナ。あんた、真面目にやんなさいよ?」
 リィナの言い訳を一蹴して、マグナはご無体なことを言った。
 独りでアレの相手が出来てただけでも、十分スゴいと思うんですが。
「分かってるよ……マグナ達も来たことだし、こっからはもうちょっと真面目にやるよ」
 だが、まるでマグナの言葉が正しいみたいに、リィナは頭を掻いて悪びれてみせた。
「そうしなさい」
 なんだか、すんごい頼もしいこと言ってますが。
 お前ら、あのとんでもない化け物を前にして、ちょっとは怯むとか竦むとか無いのかよ。
517CC 35-26/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:17:29 ID:mbAjjHxg0
「じゃあ、ボクが時間稼ぐから、マグナはアレお願いね」
「分かった。さっさと終わらせるわよ」
 完全に、俺が無視されてますけど。
 立場ねぇな。
 そうこうしている内にも、火炎を口に蓄えた巨大な魔竜が、地響きを立ててゆっくりとこちらに近付いてくる。
「さてと。そいじゃ、いきますか」
 お気楽に言ったリィナが、再びオロチへ駆け寄るのに合わせて、俺は呪文を唱える。
『ヒャダルコ』
 強烈な冷気が発生して、オロチの巨躯を包み込んだ。
 相手はでっかいトカゲな上に、火を操るみたいだからな。ちっとは効くだろ。
「へぇ」
 リィナが感心したように呟いた。
 レベルアップしてるのは、お前達だけじゃねぇんだぜ。
 それを、少しは証明できたかね。
 だが、俺の呪文がオロチの動きを止めたのは、わずかな間だけだった。
 八つある頭のひとつが、業火の渦巻く口腔をがばっと開く。
 炎が吐き出される直前にオロチの元に辿り着いたリィナは、疾走した勢いそのままに跳び上がって、下顎を蹴り上げた。
 力づくで閉じられた口の隙間から、火炎があらぬ方へと撒き散らされる。
 着地したリィナに、他の首が襲い掛かった。
「よっと」
 ひとつ目から身を避けたリィナは、その首を足場にして跳び撥ね、ふたつ目を躱す。
 その後も、ちょこまかとオロチの攻撃から逃れつつ、リィナは僅かな隙を縫って蹴りや拳を当てていくが、オロチもさるもの目立ったダメージは感じられない。
 やっぱり、会心の一撃を喰らわせるには、もうちょい大きい隙を作んねぇと無理か。
 地獄の業火を宿したようなオロチの眼が、苛立ちでさらに赫く燃え盛った。
 俺も呪文で援護したいところだが、唱えられるようになるまで、まだもうちょっとかかる。
 つか、なんでマグナは加勢しないんだ!?
518名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:21:21 ID:t+mltffO0
支援
519名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:21:26 ID:91AFT1X60
si e ん
520CC 35-27/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:21:40 ID:mbAjjHxg0
 縦横無尽に跳ね回るリィナを追い立てながら、オロチの首のひとつがこちらを向いた。
 大きく開かれた口の奥で、ちろちろと炎が踊っている。
 ふいごのような音を立てて、赫々とただれたオロチの腹が大きく膨れ上がった。
 結構距離があるのに――ここまで、炎が届くってのかよ!?
 背中に庇ったお嬢が、俺の服の裾をぎゅっと引いた。
「ちぇっ」
 他の首を足がかりにして、オロチの巨体を駆け登ったリィナが、炎を吐く寸前の頭を上から両足で踏みつける。
 お蔭で、俺達は助かったが――八つの頭を持つオロチに対して、それは隙になった。
 別の首が吐いた火炎が、リィナを襲う。
「――っと」
 足元の頭を蹴って宙を跳び、リィナはなんとか避けようとしたが、わずかに躱し切れなかった。
「っぁ――っ!!」
 ごろごろと地面を転がって炎を払う。
 すぐに身を起こしたところを見ると、深刻なダメージは負ってないみたいだが、ヒヤヒヤさせるぜ。
「マグナ、まだ〜?」
 ややヘバったような、どことなくやる気の感じられないリィナの問い掛けに、マグナは頷いてみせた。
「お待ちどうさま。いいわよ、リィナ」
「はいよ〜。そいじゃ、こっちで合わせるから、いつでもよろしく」
 何やら合図を交わし、リィナは腰を落として身構えた。
 一方、マグナは天に向かって右手を高々と差し上げる。
 なんだ?
 何をするつもりだ?
 オロチの八つの首が、再びリィナを襲うべく蠢いた。
 なんでもいいから、早くしろって!!
 マグナの右手が、勢い良く振り下ろされた。
521名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:23:51 ID:91AFT1X60
sien
522CC 35-28/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:28:58 ID:mbAjjHxg0
『ライデイン』
 バリッ
 空気の爆ぜる音がした。
 これは――呪文なのか!?
 直後、強烈な閃光が網膜を焼く。
 魔法使いの俺が知らない攻撃呪文だと!?
 轟く雷鳴。
 地底の洞窟に突如として出現した雷光が、神速の槍となってヤマタノオロチを貫いた。
 電撃に打たれて動きを止めた巨体の懐に、リィナが易々と潜り込む。
「せぇのっ」
 どん。
 豪快な地響きと共に、オロチの巨体が後ろにズレた。
 これまでに犠牲となった数多くの生贄の血がこびりついているような、赫くただれたオロチの腹が陥没している。
 会心の一撃をとうとう喰らったオロチの八つ首は、うねうねと悶え苦しみながら吐瀉物を撒き散らし、次々と地面に落ちて地響きを立てた。
「ま、こんなトコかな」
 つまらなそうに呟くリィナ。
 奇妙なことに、その口調からは勝利を喜ぶ響きが、まるで感じられないのだった。
「念の為に、首を全部切り落として、完全に息の根を止めといた方がいいかもね」
 物騒な発言をするマグナ。
「溶岩に落としちゃった方が早いんじゃないかな――あ、シェラちゃん達も追いついたみたいよ」
 リィナの視線に促されて後ろを振り向くと、思ったよりも近くにファング達の姿が見えた。
 手を振っていた姫さんやシェラがぎょっとして固まったのは、俺達を挟んでその先に倒れているオロチの巨体が目に入ったせいか。
 アメリアも、なにやらあわあわ慌ててるが――ともあれ、全員無事みたいだな。
「おいっ!!」
 全力疾走でこちらに駆け寄りながら、ファングが大声をあげた。
 抜刀しつつ、あっという間に俺達の脇を抜ける。
 目で追うと――オロチの頭のひとつが、静かに鎌首をもたげていた。
「うわっと」
 リィナを突き飛ばしたファングは、丸呑みにせんと襲いかかったオロチの喉元を剣で切り裂いた。
 返り血を避けつつ、返す刀でさらに斬りつけようとしたファングを、他の首が吐き出した炎が襲う。
「ちぃっ!!」
 地面を転がって身を躱したファングに背を向けて、オロチは怨嗟の唸り声と地響きを振り撒きながら、洞窟の奥へと逃げ出した。
523名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:29:50 ID:91AFT1X60
もいっちょ支援
524名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:30:20 ID:t+mltffO0
支援
525CC 35-29/33 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:33:33 ID:mbAjjHxg0
「逃がすかよ」
 すぐに跳ね起きて、後を追おうとしたファングを、オロチが置き土産に残した道幅一杯の炎が阻む。
 ふぅん。敵から逃れる為に壁を作るなんざ、トカゲの親分にしては随分と分別臭い行動だな。
 ひとつ舌打ちをして、剣を鞘に納めたファングは、リィナをジロリと睨みつけた。
「え〜……ありがとね。ちょっと油断してたよ」
 半笑いを浮かべて、言い難そうに礼を述べるリィナ。
「フン。もう少し出来るヤツかと思っていたがな。俺の買い被りか」
「――っ!なんだよ……そりゃ、油断してたボクが悪いけどさ……恩着せがましいの」
 唇を尖らせたリィナを見て、眉根を寄せるファング。
「……なにさ?」
「いや、いい」
 ふいと顔を逸らして、ファングは俺に歩み寄った。
 後ろにちらりと視線をくれて、小声で俺を問い詰める。
「おい、ヴァイス。なんだ、あいつの、あの緩み具合は?よく無事だったな?お前がどうにかしたのか」
「いや、まぁ、なんつーか……」
 すいません。
 任せろとか言っておいて、俺、ほとんど何にもしませんでした。
 トドメこそ見誤ったものの、オロチはおおむねリィナが斃したようなモンだと伝えると、ファングはますます苦虫を噛み潰した顔になった。
「フン。まぁ、いい。それより、オロチを追うぞ」
 ヤマタノオロチが残した炎は、既に地面をちろちろと舐める程度におさまっていた。
526名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:36:15 ID:t+mltffO0
支援
527CC 35-30/32 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:42:45 ID:mbAjjHxg0
 だが、天然の橋を渡って、洞窟をさらに奥へと進んだ俺達は、すぐに行き止まりにぶち当たった。
 もちろん、オロチがその巨体を隠せるような場所は、どこにも見当たらない。
 なのに、まるで神隠しにあったように、オロチの姿は忽然と消えていたのだった。
 いや、正確に言うと、そこは全くの袋小路じゃなかった。
 どん詰まりの少し手前に、小さな横穴が上向きに続いている。
 だがそれは、とてもじゃないが、あの馬鹿デカいヤマタノオロチが抜けられるような大きさではなく、人ひとりがやっと通れそうな幅しかない。
「なんだ、これは?どこに消えた?」
 ファングが、苛立った呟きを漏らした。
 他の連中も揃ってきょろきょろと辺りを見回す中、呑気な声が耳に届く。
「――ところでさ、シェラちゃん達を足止めしてたのって、やっぱりあの黒い人達だったの?」
 リィナが、そんなことをシェラに尋ねていた。
「あ、はい。ファングさんが、ほとんど倒してくれましたけど」
「ふぅん。ま、それは別に聞いてないけどさ……それで、あのチョンマゲの人も、一緒に居たの?」
 声音が、微妙に変わっていた。
「いえ、そういえば……居なかったです」
「うん、だよね。そうだと思った。一緒だったら、あのヒトが勝てるとは思えないもんね」
 ちらりとファングを見て、嫌味を言う。
 この時点ではまだ、ファングは聞く耳持たずといった感じで、黙々とオロチの姿を探し続けていた。
「あ〜あ。でも、チョンマゲの人がいなくても、ボクもそっちがよかったな〜。あの黒い人達相手の方が、まだ面白そうだしさ。魔物はいっつも相手してて飽きちゃったし、ワザとピンチ作っても、やっぱりなんか違うんだよね〜」
 頭の後ろで手を組んで、リィナがボヤく。
 ここで、ファングがピクリと反応した。
528名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:43:39 ID:91AFT1X60
しえん
529CC 35-31/32 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:48:23 ID:mbAjjHxg0
「ま、黒い人達も、あのヒトがほとんど倒せちゃったんなら、思ったほど強くなかったのかも知れないけどね」
「そんな……リィナさん!」
 つかつかとリィナに歩み寄るファングを目にして、シェラが嗜めた。
「あれ、怒った?」
 頭の後ろで手を組んだまま、にやにやと笑って振り向いたリィナの頬を、ファングはいきなり引っ叩いた。
 ゆっくりと手を下ろして、頬を押さえるリィナ。
「……なにすんだよ」
「貴様、なんのつもりでここに居る」
「なにって、そりゃ――」
「俺達がなんの為にここに来たのか、分かっているのか。遊びのつもりで腑抜けるのも、いい加減にしろよ?」
「遊びってなにさ。ボクは、そんなつもりじゃ――」
「フン。そっちの方が面白そうだと?自分の気に入った相手でなければ、本気を出せないとでも言いたいのか。何様のつもりだ。言っておくが、これは身勝手な貴様の修行の機会でもなんでもないぞ。何も分かってないな、貴様は」
 俺自身、少し前まで分かってなかったから、偉そうなことを言えた立場じゃないが。
 実際にオロチに苦しめられている人間が、ここには沢山いて――
『大会まで残って優勝者と試合をしてくれるよう引き止めたのですが、あまり興味を持ってもらえませんでした。あの者にとっては、己の力添えを必要とする者の元に駆けつけることの方が、余程大切なのでしょう。立派な人物でした』
 なんとなく、俺はイシス女王が語ったファングの評を思い出していた。
 魔物を征伐すべく旅を続けている者――大真面目に、そんな自己紹介をして恥じることのないファングにとって、どこかやる気が無いように感じられる今のリィナの態度は、腹立たしくあったらしい。
「情けないヤツだ。多少は使えるか知れんが、のぼせ上がるのもほどほどにしておけよ?」
「なんだよ……何も知らないクセに、勝手なこと言わないでよ。そんなんじゃないよ。そんなこと言われなくたって分かってるから、だからボクは――」
「無駄かも知れんが、忠告しておいてやる」
 リィナの言葉を遮って、ファングは淡々と続けた。
530名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 09:50:02 ID:91AFT1X60
sien
531CC 35-32/32 ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 09:55:42 ID:mbAjjHxg0
「いいか。貴様は、ここに居る誰よりも弱い。ヴァイスや貴様の仲間はもちろん、姫やユーフィミア嬢よりもだ」
 突然、自分の名前を出されて、姫さんやエフィはびっくりしてファングを見た。
 いやいや、お前、それは言い過ぎだろ。
 俺はリィナより、全然弱ぇっての。
 リィナはびくんと震えて、表情を強張らせた。
 その顔はみるみる顰められて、強くファングを睨みつける。
「なに言ってんの……?えっらそうに、キミこそ何サマだよ……分かった。ちゃんとやればいいんでしょ。ボクが弱いかどうか、こっからちゃんと見せてあげるよ」
 押し殺したリィナの声を、ファングは鼻で笑った。
「フン。どうだかな」
「……全部片付けたら、最後はキミだから」
 あからさまな殺気が、リィナから発散される。
 飲み込もうとした唾が、喉に引っ掛かった。
「そんなことは、どうでもいい」
 だが、ファングは涼しい顔で受け流して、俺を見た。
「それで、ヴァイス。この奇妙な状況がどういうことなのか、何か分かるか?」
 へ?
 あ、ああ、ヤマタノオロチがどっかに消えちまったハナシね。
 いきなり話題が変わって、一瞬、何言ってんだか分かんなかったぜ。
「うん、まぁな」
 かなりの急勾配で上へと伸びる横穴を指差す。
「オロチは多分、この上だな」
 不可解な状況が、逆に俺の推測を補強していた。
 あいにく頭ん中で描いてた地図は、とっくにおしゃかになっちまってたが、外に出てみりゃ分かることだ。
「え、でも……」
 疑問を口にしかけたのはシェラだったが、他の連中も頭の上にも、揃って疑問符が浮かんでいる。
 不思議がるのは当然だけどな。どう見ても、あのトカゲの大将が通れる道幅じゃねぇし。
「確かなんだな?」
「ああ。まず間違いねぇな」
「そうか。なら、いい」
 だが、ファングだけは軽く念を押しただけで、あっさりと頷くと、先頭を切って横穴を上り始めた。
 ホントは、俺に確約を求められても困るんですけどね――でもまぁ、俺の想像は間違っちゃいない筈だ。ちょっと前に出くわした事件を思い返してもな。
 しんがりを務める為か、はたまたファングと距離を置きたかったのか――リィナは最後まで残って、ぶすっとしたまま一番後からついてきた。
532CC ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 10:12:46 ID:mbAjjHxg0
ということで、第32話をお届けしました。
支援お疲れ様でした。

まずは、あり得ないほど投下間隔が空いてしまったお詫びをば。
ホントに申し訳ないです<(_ _)>
また、こんなペースにも関わらず、読んでくださった方には最大限の感謝を。
ありがとうございました<(_ _)>
いや、なんかもう色々あって、ホントどうしようもなくて。。。
今後は、もう少しマシになるように頑張ります。

え〜と、それから、今回の内容についても、お断りしておかなくてはなりません。
ゲーム内のヤマタノオロチは、首が5本しかないように見える訳でして、
そちらに描写を合わせようかなぁ、と悩んだんですが、
首が5本でヤマタノオロチって意味分からん、ということで、普通に8本にしてしまいました。
ゲームの絵は体の後ろに首が3本隠れた状態なんだ、という解釈で、どうかひとつ(^^ゞ

それと、副題を考えてるヒマがなかったので、第35話はSHOCK-IT-TO-MEのままでいきます。
まぁ、これはどうでもいいですねw

他には、なんかあったかな。。。
色々と書くべきことがあったような気がしますが、なんか思い出せません。
とにかく、つかりた。。。でも、ようやく投下できてほっとしてます。
あとは、いつも通り、皆様に楽しんでいただけることを祈るばかりです。

また次回もお付き合いいただけると嬉しいです。
ではでは。
533名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 10:37:15 ID:91AFT1X60
CC氏乙です。
楽しませて頂きました。
元気になったヴァイスで吹きましたww

しかし、リィナ暴走中ですねえ。
どうなることやら・・・

そろそろファンカデリックかパーラメント辺りが来るかと予想してましたが、無念。
534CC ◆GxR634B49A :2008/08/04(月) 10:37:46 ID:mbAjjHxg0
>>532
お届けしたのは、第32話じゃなくて、第35話でしたw
あと、最後の方まで間違ってますが、全レス数は33じゃなくて32でした。
ロクに頭が働いてないみたいですw
ああ。。。きっとミスがいっぱいあるんだわ。。。orz
535名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 10:48:46 ID:IPPn50f90
乙乙。

感想はじっくり読んだ後で
536名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 12:25:13 ID:t+mltffO0
CC氏乙

ヴァイスワロタwwwwww
537名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/05(火) 02:21:20 ID:mlDbw9Tr0
マグナが魔法少女でしかもレベル高い件。
しかもファングのデレタイム!!!!

CC氏のかっこいい世界解釈が次当たりまたくると期待。
538名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/05(火) 12:59:24 ID:JBLtndDZ0
んー……真面目に考えるとヤマタノオロチ弱すぎるって感じたかなー。

まぁいいよリィナがツンデレなら。
539※YANA  ◆H.lqZohyAo :2008/08/06(水) 02:14:14 ID:SYON+4XZ0
>>CCさんや、久しぶりに来て横から失礼。

俺もオロチの首について同じ様なこと考えてましたが、執筆中の資料集めで面白い解釈見つけましたぜ。
サイコロの五の目を見てください。あれの点一つ一つを、それぞれオロチの首に見立てるわけです。
すると、それぞれの首の「股の数」が八つになり、ヤマタノオロチが完成します。
(縦横四辺で股が四つ、各頂点から中心の点にかかる股が四つで合計八つ)

また余談として、ドラえもんののび太が「首が八つなら股は七つだから、ナナマタノオロチじゃないのか」とかいってましたが、
本来のオロチの名におけるヤマタは「股が八つある」ことではなく「八つに首が分かれている」ということを意味するのだとかなんとか。

以上、特に役に立たないトリビアでした。
540名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/06(水) 21:59:39 ID:YRhyXkLu0
つまりヤマタノオロチはサイコロだったんだよ!

と言いたげな保守
541名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/06(水) 22:51:23 ID:c/WIsUOS0
ヴァイス は げんきに なった !

でベギラゴンでも覚えるのかとwktk
542名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/06(水) 23:21:43 ID:EnS9rsak0
ヤマタノオロチの説で昔の日本には9という数字がなく、8が一ケタで一番大きい数字だから、
8には「たくさん」という意味もあって、たくさんの首をもつ、という意味で名づけられた、
と聞いたことがあるけど…

どなたか、正解知っていたら教えてください。
543名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/06(水) 23:45:07 ID:hE4M4/r80
9が無いというよりも、8は縁起がいい数字だから大きな数を表すときとかによく使われたってところじゃないか?
544CC ◆GxR634B49A :2008/08/07(木) 06:22:02 ID:it/qn7sE0
レスありがとうございました。

>>533
そうそう、パーラメント辺りから引っ張ってこようかなぁ、と思ったりもするんですが、あそこら辺って、なんというか能天気な曲名が多くて、なかなかしっくり来ないとゆうかw
なので、ついつい殿下が多くなってしまいます。。。今回は、殿下じゃないですけどw

>>533,536,541
ヴァイスくんの若さが受け入れられてよかったですw
アレ、最初は全然考えてなかったんですけど、勝手に元気になってしまいました。

>>537
ジツは、マグナの魔法はもうちょっと後で登場する予定だったんですが、
このままだとあまりにも目立たないしということで、ちょっと前倒しになりました(^^ゞ

>>538
そうなんですよね。いちおうリィナがコツコツとある程度ダメージを先に与えていたという言い訳なんですが、せっかくの数少ないボスなんだし、もっと強くする展開もあったと思います。
私の中で、お話の流れにちょっと喰われちゃった部分があったかも知れません。
おおまかな流れは、もう動かせそうにないので、次回はさらに「えーっ?」となってしまうかもなので、先にお詫びしておきます<(_ _)>

>>539
それはなかなか面白い解釈ですね。でも、作中で説明するのは難しそうだなぁw
書き上げてから気付いたんですけど、最初は5本首にして、「ヤマタじゃねーじゃん」とか言わせておいて、倒せる!と確信した瞬間に、首が新たに3本生えてパワーアップ、対峙してるヴァイス達は絶望する、みたいな展開でもよかったかなー、と思いました。
要するに、フリーザの変身みたいな?w
そしたら、グラと上手いこと絡めながら、もっとオロチの強さを表現できたのにな〜。。。
気付いた時は、思わず書き直そうとしかけましたが、また投下が遅くなるだけなので自重しました(^^ゞ

ちなみに私も、ヤマタノオロチのヤマタは、股が八つではなく八つ首という意味だと、遠い昔にどこかで読んだ気がします。
数字の見解については、色々あって面白いですね。
おそらく、ヤマタは8という数値としての意味はそれほどでもなく、沢山、みたいなニュアンスの方が強いのかも知れませんね。
そう考えると、8本に拘らなくても、別に5本でも構わなかったかも。
545CC ◆GxR634B49A :2008/08/07(木) 06:38:23 ID:it/qn7sE0
あ、ヤバい。首が徐々に増えて、「私は、変身をあとn回残しています」みたいな展開を、やっぱり本気で書きたくなってきたw
でも、お話の大筋は変わらないと思うので、今は自重します><
う〜ん、どうにかウマいこと取り込めないかな。。。もう遅いか。。。
546名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 08:46:42 ID:owGYaC9z0
「ワシの首は108本まであるぞ」ですね、わかります
547名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 16:57:29 ID:ZIqdnT7a0
>>544
>いちおうリィナがコツコツとある程度ダメージを先に与えていたという言い訳なんですが、

>>516を見れば1対1の激闘があったのは分かりますから「言い訳」ではなく立派な理由になってますよ。
勇者専用呪文「ライデイン」にインパクトを与えるという意味でも素晴らしい展開だったと思います。
それでも倒しきれてないんだから弱すぎるってことはないんじゃないですかね。
548CC ◆GxR634B49A :2008/08/07(木) 19:30:57 ID:it/qn7sE0
>>546
ワロタw 絵にしたら、物凄いことになりそうなw

>>547
仰る通り、ライデイン(+マグナの魔法)をとどめ近くにして、
ある程度のインパクトを持たせたいというのは、やっぱり考えてました。
あんまり効いてない描写ですけど、いちおうヒャダルコも当たってますしねw
ただ、数少ないボス級でもあるので、ちょっともったいなかったかなぁ、という思いも
なきにしもあらずというか、その辺りをウマく次回で消化できればと考えています。
。。。いや、まだ単なる願望でしかないので、どうなるか分かりませんがw
ともあれ、次回も楽しんでいただけるように、なんとか頑張ります><
549名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/08(金) 07:02:26 ID:1KxaxF+lO
公式小説のバラモスなんてさんざん主人公ボコボコにしておきながら戦士に魔神の斧で額割られたと思った瞬間ゾーマのジゴスパークで消されてますが
550CC ◆GxR634B49A :2008/08/09(土) 07:27:27 ID:f8q/CHwV0
そんな訳で保守。
次は投下の予告。。。は無理でも、ある程度進んでいたい。
まだ全然まとまってないけどw
551名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/09(土) 17:17:26 ID:81FHj6IhO
ライデインかっけぇ!まあゲームではコレ覚える頃には殴る方が強かったのが悲しい。
ギガの方は強かったんだが。
552名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/11(月) 23:20:02 ID:N/428s210
お盆保守
553名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/15(金) 09:04:12 ID:CkuDIa760
保守
554名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/17(日) 22:11:41 ID:hUoiu9at0
保守
555CC ◆GxR634B49A :2008/08/17(日) 23:43:16 ID:9p7fpIxZ0
わはー、次のお仕事が思ってたより全然大きくなたよー\(^o^)/
とはいえ、なんとか合間にちょこちょこ書き続けて、出来るだけ定期的に投下したいです。
書きたいシーンも待ち受けてるし。。。のんびりお待ちいただければ幸いです。
次に顔出した時に、投下予告が出来るといいなぁ。。。無理かなぁ。。。
556名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/19(火) 15:51:00 ID:h38vazcE0
ほしゅ
557名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/19(火) 22:41:38 ID:IpUNNQdB0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~やっと規制解除だ。
         捕手をしていこうか
558名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/20(水) 23:46:47 ID:LBnOnU2B0
HOSYU!
559名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/22(金) 05:41:34 ID:NGDkFmRd0
保守?
560名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/25(月) 12:27:21 ID:JsuhqQsi0
保守します
561名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/27(水) 22:14:14 ID:69e4X2gC0
うふ
562CC ◆GxR634B49A :2008/08/28(木) 15:50:01 ID:L0v6TiWa0
わはー、ちょこちょこ進めてる筈なのに、何故か書き終わりません。
おかしーおかしー。投下予告まで辿り着きませんでした。
すみませんが、引き続きのんびりお待ちください。。。orz
563名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/01(月) 00:47:16 ID:33RRD3Ad0
9月保守
564名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/03(水) 21:31:36 ID:KATkow100
ほしゅ
565名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/06(土) 09:54:03 ID:cR80pVDH0
ほす。
566CC ◆GxR634B49A :2008/09/07(日) 06:39:54 ID:Ut/sfwAd0
すみません、ちょこちょこと進めてはいるんですが、忙しくなってきてしまって。。。orz
どこかで勢いがつけば、なんとかなりそうなんですが、もう少し時間を下さい。
お待たせしてばかりで、ホントに申し訳無いです。
567名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 18:01:07 ID:/Ojp+sGAO
そんな建前口上はいらない。
れんじつ待たされてる私の身にもなってくれ。
できる事なら連載当初の投下速度を目指して欲しい。
もっと作者として自覚を持つべきだ。
気にしなくて良い、なんて甘い言葉をかけてもらえるなんて思ってないだろうね。
ミクシィの日記じゃないんだ、誰も擁護はしないよ。
頑張ってないとは言わない、でも
全ての力を出しきってる訳じゃないだろ?
期待を裏切らないでくれ。
568名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 20:20:08 ID:RgVw3s/d0
>>567
つれない事言うなよ
んなこと言ったってCC氏にもリアルの生活があるんだし
出来る限りの事はしてるわけじゃない
レスつけたりさ
オレは十二分に頑張ってると思うけどね
つきみバーガーおいしい
569名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 22:37:35 ID:rIVPPhnV0
>>567
おいおい釣りか?
プロじゃないんだから作者とはいえ
リアルの生活を優先するのは当たり前だろ
CC氏の話はすごく好きで続きも気になるし期待しているけど
リアルを犠牲にしてまで無理してほしくはないな

リアルの忙しい合間を縫って書いているのは
文面からちゃんと伝わってくる
十二分に全力で頑張っているじゃないか
570名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 22:48:36 ID:9xDKacm50
>>569
どういうつもりだ
こんなレスして>>567
を叩いて
たのしい?
てかお前なんなの
よ?
みっともないってわかんないの
571名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 22:48:41 ID:RgVw3s/d0
おプリしリ リぶじ…?
572名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 22:57:10 ID:GG9s99i50
癌前期、かと思った
573名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 23:15:37 ID:++yy2+vb0
せっかく「つきみバーガーおいしい」で>>568が分かりやすくしてくれたのに・・・。
574名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/07(日) 23:52:05 ID:skKId2Ng0
>>569の人気に嫉妬
575名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 00:20:08 ID:LyQBgfHk0
>>572>>573
おまえらのID何となく凄くね?
576名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 02:17:31 ID:A/n6Acnq0
>>569にどんなアナグラムが隠されているがずっと考えてるが見つかんねぇ
俺の脳じゃだめだ・・・orz
577名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/10(水) 11:59:02 ID:4cOyrcqz0
ほしゅ
578名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/13(土) 17:35:43 ID:8hZB8TTD0
ほし
579名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/13(土) 22:43:58 ID:SzigeSkC0
今もっともCC氏の更新と新スレへの移行を祈っているのは
>569じゃないかな。
580名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/15(月) 19:42:28 ID:UANn9g8wO
ほしゅー
581名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/18(木) 12:53:12 ID:0sSVKp680
保守
582名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/20(土) 12:31:04 ID:ZTBUraPn0
先ずは守っておく
583名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/22(月) 20:08:30 ID:RbQz7tzQO
久々に来てみればこの流れ…、>>567面倒くせーよ。
保守
584名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/25(木) 15:12:05 ID:8RWVmlsd0
保守
585名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/27(土) 00:40:41 ID:pnquQg3z0
ほしゅんっ
586名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/29(月) 21:09:17 ID:dT5OBAkd0
ほしゅ
587名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/01(水) 15:21:50 ID:tu0AtDScO
本人は和ませるつもりだったのかもしれんが
縦読みはTPOを考えるべきだと思った保守
588名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/01(水) 15:39:46 ID:Vrp8+rxP0
まぁちょっと内容がマジっぽく感じられるしな
俺だけかもしらんけど



頭に漠然とした構想はあるけども二浪してる身じゃ書けないぜ
589名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/02(木) 09:08:22 ID:qWUjwd8b0
芸術は爆発だ
思ったままに書いてみろ
話はそれからだ


あ、縦読みじゃないよ
590名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/04(土) 02:24:02 ID:zEQGBH6w0
                 __
               ト-!
             _,」-L. _
          r‐r┐,. ´      ヽ_┌r┐
         `└L′・       ・ '.」┘′
           {  rー──‐┐ }    さっさと保守しないとかもすぞー
           ,ゝ└──‐ ┘,.イ
         rく,ゝ'` ーr─┬ヘ.ム
.           `´   │ │   `┘
              `'⌒’
591名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/07(火) 14:57:10 ID:LuAsQ0Bd0
保守

書けなくてもたびたび顔を出してたCC氏が来なくなるとちっと不安になるな。
592CC ◆GxR634B49A :2008/10/07(火) 16:46:47 ID:4JBZLjck0
あれ、もしかして板移行してますか?
ちょっと待ってください、すぐにレスします<(_ _)>
593CC ◆GxR634B49A :2008/10/07(火) 17:35:29 ID:4JBZLjck0
慌ててブラウザから書いたから sage 忘れてたorz

すみませんすみません。
スレを覗くとついつい意味も無く書き込んでしまう悪癖があるので、
投下の目処が立つまでは覗かない!!という制限を自分に課していたら、
いつの間にやらこんなに間が空いてしまいましたorz
板が移行してるのにも気付かない有様。。。これはヒドい。
遅すぎると、お叱りを受けるのは尤もです。
本当にお詫びのしようもありません。

しばらくスレを覗いていなかった所為で、>>567 さんや >>569 さんには
大変ご迷惑をかけてしまい、心苦しい限りです。申し訳ありませんでした。
念の為に申しそえておきますが、前述のように、
あえてスレを覗かないようにしていましたので、
どなたかのレスが原因でどうこう、ということは一切ありません。
完全に私の不徳のいたすところであり、本当に申し訳なく。。。
今後は、最低でも週一くらいは書き込むようにしようと思います。

自ら制限を課したものの、さすがにこれ以上音信不通状態を続けるのは
良くないと思い、今回とうとう書き込んでしまいました。
本来ならば、投下のお知らせが今すぐに出来ればよかったのですが、
明確な目処はまだ立ってない、と申し上げなくてはなりません。
仕事とプライベートの関係で、どうしてもまとまった時間が取れない状況が続いていて、
ここまで書けないことを自分でも歯痒く思っているのですが、
そんな言い訳よりも、とにかく早く投下することが大事ですよね。
なるべく近い内に投下のお知らせができるように精進します。

なんかカタい。。。気の利いたことのひとつも言えずにすみません。
いつの間にやら2年経過しちゃったし。。。2年もやってれば、こういう時期もありますよね!
あ、いや、嘘です、ごめんなさい。頑張ります。
594名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/07(火) 17:47:15 ID:0GyFFQLW0
FC版でもそれ以外でも、商人ってアイテム売買する時安く買えたり高く売れたりする特技ってあるの?
595名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/07(火) 18:12:09 ID:LbaMklsp0
>>593
いつまでもwktkしてるから焦らず気負わずゆっくりじっくりねっとりと続き仕上げて下さいな
596名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/07(火) 23:32:20 ID:5KYB30up0
本人がやめると言うまでは1年でも2年でも待つよ。
気は長いほうだ。
597名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/08(水) 08:51:34 ID:1gzYxj/Y0
大丈夫、俺スレ覗かずにRSSでCC氏のブログが更新されるの待ってる人だから!w
598名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/09(木) 23:42:42 ID:Z9rklcs10
捕手〜
599dodo:2008/10/12(日) 09:32:23 ID:Bx5pSXrL0
保守。
600名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/14(火) 23:04:10 ID:LRvIbgkj0
まったり保守
601名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/16(木) 01:25:05 ID:6NUkgrv50
保守
602CC ◆GxR634B49A :2008/10/16(木) 22:48:31 ID:hyykjQ6+0
お待たせしてますが、今から一週間以内に無理矢理にでも投下したいと思います。
さて、どうなりますことやら。。。以下、次回!!
603名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/16(木) 23:31:18 ID:zKDUbXYL0
CC来た!これで勝つる!
明日からの7連勤を乗り切れそうな気がする(´・ω・`)
604名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/18(土) 11:56:16 ID:/r7JY6aG0
wktkが止まらない保守
605名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/19(日) 16:44:32 ID:eFmSI5Ku0
よし、期待しつつ月曜から8連勤・・・
連勤があけたらまた会おう・・・orz
606名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/22(水) 21:26:39 ID:uipnjqZn0
dat落ちの基準が実際わかってないけど保守
607名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/23(木) 00:22:29 ID:mY02t1890
俺も判らんが守っておくぜ!
608名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/23(木) 06:40:58 ID:FuIcRqXkO
俺のターン
CC氏を召喚
609CC ◆GxR634B49A :2008/10/23(木) 08:48:46 ID:ukA2I53p0
呼ばれて飛び出て(ry

うむぅ、微妙に宣言より遅れてしまいますが、明日の明け方頃に投下の予定です。
宜しくお願いします。
610名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/23(木) 09:19:59 ID:LrL/CyWRO
キタ――(゚∀゚)――!!
車に轢かれたけど今日は寝られねーぜ!
611名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/23(木) 09:53:32 ID:oNTgO4CVO
いやそこは寝とけ
612名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/23(木) 15:11:43 ID:MDtH9Lo00
今晩で一週間か?
忙しそうだが、何とかなったのだろうか保守
613名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/23(木) 15:12:25 ID:MDtH9Lo00
更新してなかった……orz
wktkして待ってる
614CC ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 06:34:45 ID:u6beJPRn0
>>610
ちょっ、大丈夫ですか。お大事にしてください。

ということで、もうちょいしたら投下します。
見直しながらのんびり投下になりますので、
全部終わってからの方が読み易いかと思います。

時間空きすぎたので、前回のあらすじとか書こうかと思ったけど、
とてもそんな余裕は無かったZE。

それでは、また後で〜ノシ
615名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 06:50:06 ID:JtY40Sq1O
wktk
616名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 06:51:41 ID:SylH3mIv0
寝ないでwktkしてた甲斐があったぜ
617CC 36-1/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 07:10:37 ID:u6beJPRn0
36. International Lover

「ここは……?」
 俺の手を借りて地上に這い出しながら、エフィが囁いた。
 急勾配の抜け道を登って辿り着いたそこは、建物の中だった。
 四方が木造りの壁に囲まれており、土が剥き出しの床には壷やら木箱やらが雑然と積み重ねられている。
 手持ちランプの灯りに照らし出された様子から、おそらく倉庫と見えたが、普通の民家に収まる広さじゃない。天井も高くて、そこいらの民家なら逆にすっぽり入っちまうくらいの規模だった。
「どうやら、ヒミコの屋敷だな」
 と、ファング。
 これだけデカい建築物は、この国には他に見当たらない。
 つまり、当たりってことだ。
「それで、ヤマタノオロチはここに居るんだな?」
 全員が穴から這い出したのを確認して、出口を塞いでいた木板を戻しつつ、ファングが尋ねてきた。
「ああ」
 応じたついでに、俺は大きく息を吸って吐き出した。
 横穴を登っていた途中から、暑さはそれほどでもなくなってたんだが、やっぱり地上の空気は格別だ。
 ふと気付くと、お嬢が俺の側から離れて、俯けた顔を小さく左右に振っていた。
 なにしてんだ?
 ああ――
 自分の前髪をかき上げて、額と首筋の汗を拭ったところで気付く。
 汗の匂いを気にしてるのか。
 よく見るまでもなく、全員汗でダラダラなんだから、別に気にするこたねぇのにな。
 さて、と――俺はタタラの言葉を、記憶の中から選んで掘り起こす。
 この地に姿を現した当初、ヤマタノオロチは手当たり次第に村々を襲っていた。
 放っておけば国ごと滅ぼされかねない有様だったが、突如として奇妙な神通力に目覚めたヒミコサマが、定期的に生贄を与えてオロチを鎮めるように計らい、それで被害は最小限に抑えられるようになった。
 ってな感じのハナシだったよな。
618CC 36-2/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 07:26:52 ID:u6beJPRn0
 でも、それってどうなのかね。
 尤もらしく聞こえなくもねぇけど、そもそもあんなバケモンと、どうやってナシつけたってんだよ。
 普通じゃ出来ないことをやってのけたからこそ、神通力に目覚めたとか言われてるんだろうけどさ……いくらなんでも、タイミングが良過ぎねぇか。
 しかも、ヒミコサマが予言した時間にならないと、ヤマタノオロチは姿を現さないんだってよ。
 じゃあ、普段はどこに隠れてやがんだよ。あんなでっけぇ図体してさ。
 要するに、これまでに見聞きした情報を、ごく素直に組み合わせて考えると――
 ヤマタノオロチは、ヒミコなのだ。
 それで、ほとんど説明がつく。
『オロチさ姿を現すんは、ヒミコさまが予言なすった刻限だけって聞きますだ』
 タタラはそう言っていたが、ヒミコにしてみりゃ、普段は人の姿をして屋敷の奥でふんぞり返って、いざヒトを喰いたくなったら、この時間にメシを用意しておけって命じてるようなモンだから、こんなの予言とは呼べねぇよな。
 まるで、家畜だ。
 この国の連中は、ヤマタノオロチという化け物を養う為に、ヒドく都合のいい状態に置かれている。
 バケモンの分際で、人間サマをナメやがって――そう思うと同時に、なんだか違和感を覚える。
 食料の安定供給とか、およそ俺の知っている魔物のイメージとはかけ離れてるもんな。
 地底で俺達から逃がれた時の、炎の壁を作って時間稼ぎをした分別臭い行動といい、なんというか妙に人間臭い。
 いや、人間っぽいと言っても、生贄の発想なんてのは、人でなしの類いではあるけどさ。
 ヤマタノオロチという魔物と、ヒミコというこの国の女王様を、頭の中で結びつけることに大して抵抗が無かったのは、そういった妙な人間臭さの他に、もうひとつ理由があった。
 それは、エフィの故郷で出くわした、あのニュズという魔物の存在だ。
 あいつも――化けていたのだ。ファムという人間に。
 つまり、人間の姿に化けられる魔物の存在を、実際に目の当たりにしていたからこそ、俺はあっさりヒミコとヤマタノオロチを結びつけることが出来たんだと思う。
619CC 36-3/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 07:41:42 ID:u6beJPRn0
 ただ、なぁ。
 人間に化けるって点は同じでも、サイズがまったく違うんだよね。
 ニュズは正体を現した後も、さして大きさは変わらなかったが、こっちは阿呆みたいに馬鹿デカいトカゲが正体なんだぜ?
 それとも、ニュズもあれが正体だった訳じゃなくて、ジツはもっとデカくなれたのかね。
 あるいは、あの八本首の竜はヒミコそのものじゃなく、使役されてるだけとか、そういうことかと思ったりもしたんだが、その考えはさっき捨てた。
 ヤマタノオロチが逃走経路に選んだのが、人ひとりがやっと通れそうな横穴だったからだ。
 それはすなわち、ヤマタノオロチが人と同じ大きさに変化できることを意味している。理屈はさっぱりだけどな。
 そんなようなことを掻い摘んで皆に説明すると、意外にも不審な表情を浮かべた顔は少なかった。
 普通だったら、おいそれと信じられない話だと思うんだが、謁見の時に触れたヒミコの不気味な雰囲気が記憶に新しかった所為だろう。
『まるで、あの魔物を前にした時みたいな感じがしたもの――』
 エフィですら、そんな感想を漏らしてたもんな。直感的には腑に落ちるってトコか。
 ただ、俺にはもうひとつ気がかりがあった。
「まぁ、それならそれで、別にいいよ」
 ヒミコの正体なんて、どうでもいい、みたいな口振りでリィナが言った。
「っていうか、ヒミコサマがヤマタノオロチなら、もっと追い詰めれば、今度こそあのチョンマゲの人が出てくるってことだもんね。ボクにとっては、その方が都合いいかな――あの人の相手は、ボクがするから」
 ファングに向かって、念を押すリィナ。
 そうなんだよな。まだ、あいつらが残ってるんだ。
 俺は、あのチョンマゲの剣士や黒づくめ連中のことを、いまだに頭の中で扱い兼ねている。
 ヒミコが神通力を得たのと時同じくして、この国に現れたってハナシだから、なんらかの形で関わっているのは明らかだと思うんだが。
 今のところ、連中はヒミコの私兵のようにしか見えない。
 さっき、洞窟の中で俺達の前に立ち塞がった黒づくめ共も、この倉庫から洞窟に入って、ヒミコサマの食餌を運ぶ兵士達が魔物に襲われないように露払いをした上で、俺達を待ち伏せていたんだろう。
 単なる手下と見なした方が、話は簡単なんだが――果たして、それだけだろうか。
620CC 36-4/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 07:54:03 ID:u6beJPRn0
 一番引っ掛かってるのは、連中が人間にしか見えないってコトだ。
 まぁ、カンダタ共の例もあるし、何を考えてんだか知らねぇが、魔物に協力する人間もいない訳じゃないんだろうけどさ……どうも、頭の中でしっくりとピースが嵌まらない。
 おそらく、俺が見聞きしてきた情報からは、どこか重要な部分がごっそりと抜け落ちてるんだ。それを見つけない限り、この違和感はなくならない。そんな気がした。
 てことは、これ以上考えても、当て推量にしかならねぇな。
 考えるだけ、時間の無駄だ。
「ってことで、ヒミコサマのご寝所に、いっちょ夜這いをかけるとしますかね」
「いちいちヘンな風に言わないでよ、もぅ」
 と、エフィ。
「夜這いとはなんじゃ、アメリア?」
「えっ?……と、それは、その、ですね……」
「アメリア!!」
「はいぃっ!」
「姫に余計なことを教えんでいいと言っただろう」
「……はぃ」
 相変わらず、緊張感ねぇな。
 こいつらは、どうしてこの状況で、こうも呑気でいられんのかね。
 やっぱり、誰かさんが大黒柱として、しっかりしてやがるからですか、そうですか。
 ちぇっ、面白くねぇの。
 まぁ、マグナ達との関係が未だ円滑になったとは言い難い俺としては、こいつらの空気に救われてる部分もあるんだけどさ。
「女王サマにお目通りを願うには、ちょっと非常識な時間だけど、向こうは存在自体が非常識なんだから、お互い様よね」
 思わぬ方向から、軽口が聞こえた。
 その主がマグナだと気付いた俺は、ついまじまじと顔を眺めちまった。
「……なによ」
「いや、別に」
 無節操に前を膨らませた記憶が蘇り、気まずくて目を逸らす。
 すると今度は、リィナの仏頂面が目に入った。地下でファングに好き放題言われてから、ずっとこんな感じだ。
 いやはや。なかなか上手くいかないモンだね。
 そんな心配そうな顔すんなって、シェラ。
 後で、なんとかしてやっから――無意識に漏れかけた溜息を堪える。ホント、なんとかしなくちゃな。じゃねぇと、お前らを巻き込んだ意味がねぇよ。
 けど、今は――俺は、ファングをちらりと盗み見た。
 とりあえず、ヤマタノオロチ退治に専念しねぇとな。
621CC 36-5/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 08:12:28 ID:u6beJPRn0
 ファングを先頭にして倉庫を出ると、薄暗い廊下が続いていた。
 まばらに火が灯されているものの、幅が広くて天井も高いので、見通しはかなり悪い。
 シンと静まり返った屋敷の中を、少し体重をかけただけで軋る床板の音が、ギシギシと木霊する。
 急に何かが、暗がりから飛び出してくるんじゃないか。
 そんな妄想を抱かせる、薄気味悪い雰囲気だった。
「その先を、左に進んで」
 マグナが小声で囁いたのは、廊下が左右に分かれた突き当たりが、うっすらと見えた辺りだった。
 俺には分からない目印を、得意の記憶力で覚えてたのかね。
 久し振りに他人の声が耳に届いて、俺はほっとひと息ついた。
 押し黙って歩いていたせいか、知らず知らずの内に、ある種の閉塞感に囚われていたらしい。
 それは俺だけではなかったらしく、エフィや姫さんをはじめとする一行の空気が、ふっと緩んだように感じられた。
 正に、その刹那――
「後ろだっ!!」
 ファングの叫びに重なって、空気を貫く鋭い音が俺の左右を疾り抜けた。
「あ――っ」
「くぅっ!?」
 ジャラっと音がして、何かがエフィと姫さんを絡め取る。
 なんだ――鎖!?
 背後の闇から伸びた鉄の鎖が、二人の体に巻きついていた。
「痛っ!!」
「なんじゃ!?」
 後ろに引き摺られかけたエフィの体を、慌てて抱き止める。姫さんの体には、アメリアが必死にしがみついていた。
「貴様、なんの為にしんがりに――」
 リィナを怒鳴りつけ、鎖の根元に駆け寄ろうとしたファングが、再び身を翻して剣を抜き放った。
 そのまま、虚空を幾度かなで斬りにする。
 いや――何かを打ち落としたのだ。
 ファングが剣を振る度に、微かな金属音が鳴り響き、弾き返された何かが床や壁に当たる音がした。
 なんだなんだ。なにが起こってるんだ。
622CC ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 08:23:02 ID:u6beJPRn0
うぅん、やっぱり無理矢理だなぁ。ちょっと時間かかります。
623名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 08:38:33 ID:yXNVqzy/O
おおぅ、いいところでお預け食っちまったぜ……
傷がうずくが構わず支援
624CC 36-6/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 08:50:24 ID:u6beJPRn0
「後ろは貴様がやれ!!」
「……偉そうに言われなくても、分かってるよ」
 再びファングに怒鳴られて、リィナがぶつくさ言いながら後背の鎖の根元へ向かう。
 よく目を凝らすと、暗がりに紛れて黒づくめの影がぼんやりと二体見えた。
 やっぱり、地底でファングに倒された連中で全部じゃなかったか。
 予想してたが、手負いのオロチに止めを刺すだけとはいかないらしい。
 駆け寄ったリィナの蹴りを、黒づくめは鎖から手を離して躱した。
 もう一方の黒づくめは、たわめた鎖を操って、リィナを絡めとろうとした。
「おっと」
 身を屈めて脱出したリィナの真横で、最初に蹴りを躱した黒づくめが、取り出した懐剣を振るう。
 こちらから見て奥に向かって回転しながらそれを避け、二人を同時に視界に収めるように位置取ったリィナに、鎖を握った方の黒づくめが何かを投げる――多分、ファングが打ち落としているのと同じモノだ。
「よっ」
 半身になって躱しつつ、リィナはソレを指の間で挟んで受けた。
 懐剣を握った方の黒づくめに投げ返して足を止め、その隙にリィナは鎖を握ったままの黒づくめとの距離を詰める。
 大振りの蹴りを避けて、黒づくめは鎖から手を離した。
「ん、まぁまぁだね。時間潰しにはなるかな」
 足元の鎖を俺達の方に蹴って、リィナは素っ気無く言い捨てた。
 緩んだ鎖から開放してやると、エフィはしきりと二の腕辺りを擦った。微かに漏れ聞こえた口の中の呟きからして、どうやら痣になるのを気にしているらしい。
 ちなみに、姫さんはとっくに鎖から開放されて、アメリアにしっかりと抱き締められている。
 ファングは未だに、暗がりから飛来する何かから、俺達を守って剣を振るい続けていた。
 こちらも、よくよく目を凝らすと、斜め上の方向から何か細長いモノが投げつけられているのが、辛うじて目視できた。
 ファングの剣に当たる音からして鉄製だろう。針にしては大きいし、杭と言うには細い。鉄串ってトコかね。
625CC 36-7/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 09:02:49 ID:u6beJPRn0
「地下の時といい、飽きん奴等だ。いい加減、慣れてきた」
 ファングの剣の振りが、次第に変化しつつあった。
 打ち落とす為の軌道から、次第に水平に――さらに、斜め上に向かって振り回わされる。鉄串が剣の腹を打つ音も、ガキンガキンと派手になってきた。
「案外、上手くいかんな」
 まさかとは思うが、投げたヤツに打ち返そうとしてるんじゃねぇだろうな。
 そう思い至ったのと前後して、ファングが打ち返した鉄串が、廊下の梁の上に吸い込まれた。
「――ッ!?」
 黒々とした塊が、どさりと廊下に落ちる。
「フン。こんなところか」
 さっきは左で、今度は右だ。
「ぐッ!!」
 見事に命中したらしい。
 ンなアホな。
 いや、そりゃ何度も失敗はしてたけどさ。狙って打ち返せるモンじゃねぇだろ。
 この馬鹿の非常識っぷりをある程度弁えてる俺でさえ、呆れるくらいだ。廊下に落ちた黒づくめ共が口を利けたら、さぞかし文句を言いたかったに違いない。
 まぁ、なんていうか、相手が悪かったな。
 だが、それで終わりではなかった。
 廊下の中央に、新たな黒影がふっと音も無く現れた。
 黒一色は他の連中と同じだが、頭巾や服の形が微妙に異なる。見た感じ、なんとなく他のヤツらより偉そうだ。
 黒づくめ共の元締めか?
「上だ、勇者殿!!」
 しかし、ファングが反応したのは、そいつに対してではなかった。
「――了解」
 何を了解したんだか、マグナの反応も素早かった。
 抜刀するなり、頭上に剣を突き上げる。
 直後――おわっ!?
 なんか、上から降ってきたぞ!?
 広がった何かが、バサリと床を打つ。
 なんだ、こりゃ?網か!?
 前に出て俺達を庇っていたファングと、後ろで黒づくめとやり合っているリィナを除いた全員を、天井から落ちた大きな網が絡めとっていた。
626CC 36-8/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 09:14:35 ID:u6beJPRn0
「引いて!!」
「応ッ!!」
 マグナの合図に呼応して、ファングが担ぐようにして力任せに網を引く。
 反射的に身を伏せた俺達の上を、勢い良く網が引かれ、隙間から突き出たマグナの剣に引き裂かれていく。
「そのまま伏せてろ!!」
 網の端っこを押さえようとして間に合わなかったのか、遅れて天井から降り立った黒づくめ共を、ファングが振り回した網がビタンビタンと横殴りにした。
「そっちお願い」
 ちらりと俺を見て、マグナが言った。
 へ?
「あ、ああ――」
 新たに廊下に降り立った黒づくめは四人。
 俺達を囲んで、左右に二人づつだ。
 既にマグナはファングが怯ませた隙を突いて、左手の黒づくめに向かっている。
 つまり、俺の担当は右の二人か。
 ようやく状況に頭が追いついた。
 木造の建物の中で、爆発したり火を使う呪文はマズいよな。
『ヒャダルコ』
 俺が唱えた呪文は、黒づくめ共が体勢を立て直す前に、その場に凍り付けにした。
 マグナの方も、なんとかなりそうだ――
「ぐっ」
 ファングの苦悶の声に、そちらを振り向く。
 脇腹から短剣が突き出ていた。
「ファング様!?」
 アメリアの悲鳴。
「ガァッ!!」
 網を投げ捨て、ファングは剣を振り回す。
 後ろからファングを刺した黒づくめの元締めは、易々とそれを避けて闇に溶けた。
 手で押さえたファングの脇腹から、血が噴き出している。かなりの深手だ。
627CC 36-9/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 09:35:27 ID:u6beJPRn0
『ベホイミ』
 すかさず、シェラが呪文を唱えていた。
「済まんな、さっきから。世話になる」
「いえ。これが私の役割ですから」
 どうやら洞窟で別行動を取った時も、シェラはいい仕事をしたみたいだな。
 それに引き換え、地下でもここでも、俺はロクに何もしてませんけど。
 どうも、不測の事態に弱いんだよな。あれこれ考えを巡らせて、コスく立ち回ることはできても、思考が追いつかないくらい事態が急展開すると、途端に役立たずになっちまう。
 こんな時は、考え無しの馬鹿やら、いざという時のクソ度胸があるヤツが羨ましくなるね。
 おや――?
 姫さんを抱き締めながら、ファングとシェラを見比べるアメリアが、微妙な表情をしている。
「ヴァイス――あの……もう大丈夫だから」
 胸の辺りで声がして、俺はずっとエフィを抱き締めていたことに、ようやく気がついた。道理で動き難いと思ったぜ。
「ああ、うん」
 反射的にマグナに目を向けると、ちょうど顔を逸らしたところだった。
 睨まれてましたかね。
「……痣にならないといいけれど」
 苦笑いをして袖を捲くり、エフィは鎖が絡みついていた両腕に視線を落とした。
 床の鎖が伸びた先では、リィナが黒づくめ共とまだやり合っている。あいつにしちゃ手間取ってるな。
 まぁ、他にはファングを刺した元締めしか残ってなさそうだし、多少モタついても問題無いけどな。
 だが、そうは問屋が卸さなかった。
「チッ――」
 ファングの舌打ちに続いて、突き当たりの角から新たな人影が滑るような足取りで姿を現した。
 頭の上で髪を縛り上げた、目つきの鋭い男――先日リィナとやり合った、例の剣士だ。
 闇に紛れていた黒づくめ共の元締めが、音も無く剣士の背後に降り立った。
「――ッ!?」
「ガッ」
 後方で、どさりどさりと人の倒れる音がした。
 振り向くと、黒ずくめ共を打ち倒したリィナが、こちらに歩いてくるのが見えた。
 その視線は俺達の間を抜けて、真っ直ぐ剣士に向かっている。
 いや、お前、そんなあっさり――苦戦してたんじゃなかったのかよ。
「やっとお出ましだね。待ち侘びたよ」
 リィナは、嬉しそうにそう言った。
628CC 36-10/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 09:46:22 ID:u6beJPRn0
「キミは引っ込んでなよ。アレは、ボクのだから」
 ゆっくりと脇を通り過ぎながら、ファングが構えた剣に手をかけて、リィナはぐいと押し下げた。
「ボクが弱いかどうか、ちゃんと見せてあげるから」
「……処置無しだな。好きにしろ」
 ファングの返事は、溜息混じりだった。
「リィナさん……」
 不安げなシェラの呟きを、リィナはあえて無視したように、俺の目には映った。
「さてと。やろうか」
 俺達から五歩、剣士共から十歩ほどの間を置いて、リィナは立ち止まる。
「……此度は、斬る」
 相変わらずたどたどしい口調で応じ、剣士は腰を落として刀の柄に手をかけた。
「うん、遠慮しないでいいよ」
 リィナは身をかがめて、足元から何かを拾う。
 さっき、ファングが打ち落としていた鉄串だ。
 珍しいな、武器を使う気か?
「と言いたいトコだけど……キミさ、ズルしてるよね?」
 リィナは片手を腰に当てて、もう一方の手で鉄串をくるくると回した。
「まずは、それを確かめさせてもらおうかな」
 剣士は答えなかった。
 代わりに、さらに深く腰を落とす。
 ぐだぐだ口を開く暇があったら、斬り捨てた方が早い。
 たたずまいが、そう物語っていた。
 途端に、空気が重くなった。
 いや、もちろん比喩だが――
 今からほんの少し未来、自分は死んでいるかも知れない。その可能性が実感を伴って、肌を粟立てる。
 剣士が醸し出す抜き身の刃のような雰囲気が、そう感じさせるのだ。
 だが、それには個人差がある。
 目の前の危険に対処できるだけの実力と自負さえあれば――
 鉄串を逆手に構えたリィナは、肌のひりつくような空気を気にした風もなく、するりと足を踏み出した。
629CC 36-11/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 09:58:42 ID:u6beJPRn0
 一瞬の攻防。
 聞こえたのは、床を蹴る音と風切り音。
 懐に潜り込もうとしたリィナは、凄まじい速度で薙ぎ払われた剣士の刀に行く手を阻まれ、胴体を両断される寸前で辛うじて後ろに跳び退いていた。
「秘剣、隼」
 剣士が刀を鞘に納めると同時に、キンと音を立ててリィナの手から鉄串が落ちる。
 長さが、元より短くなっていた。半ば辺りで、断ち切られたのだ。
 さらにニ、三歩退いたリィナの腹に、一条の血が滲んでいる。
「まさか、折られちゃうとは思わなかったけど――やっぱりね」
 ちょっと待て、お前、なんか考えがあったんじゃねぇのかよ!?
 前回やられた時と、何も変わってないじゃねぇか。
 もしかして、その細い鉄串で刀を受け止めようとしたのか?
 そりゃ無茶ってモンだぞ。
「なるほどな。そういうことか」
 ファングのしたり声が聞こえた。
「何が、そういうことなのじゃ?」
 アメリアに抱き締められた姫さんが、俺の疑念を代弁した。
「ん?ああ――いや、前回といい今回といい、俺には、あいつが剣を躱したように見えたんだが……」
「じゃが、リィナは斬られておるではないか。血が出ておるぞ」
「そうだな。だが、今回あいつは、手にした鉄串で太刀筋から躰を庇っていただろう」
「ふむぅ?」
 一向に伝わっていない姫さんの口振りに、ファングは苦笑を浮かべた。
「いや、つまりだな……剣が鉄を打つ音が聞こえなかっただろう?」
「うむ」
「だから、やはり彼奴の剣は、あいつに触れていなかったということだ」
「何を言っておるのか分からん。では、どうやってリィナは斬られたのじゃ?」
 ここまで説明されて、俺はようやく正解に辿り着いた。
630CC 36-12/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 10:07:57 ID:u6beJPRn0
「かまいたちとか、そういう類いの話か?」
「ああ、それだ」
 ファングは、軽く肩を竦めてみせた。
 リィナが躰の手前で構えていた鉄串を、刀が打つ音が聞こえなかったということは、つまり剣士の刃はリィナの躰に届いてなかったという理屈になる。
 じゃあ、リィナが腹に傷を負ったのは、一体何故か。
 その答えが、かまいたち――恐るべき速度で抜き打たれた剣士の刀が空気を断ち、それが真空の刃となって本来は間合いの外にいた筈のリィナを斬りつけた……って、いやいやいや、納得できるか。
「そんなこと、生身の人間に可能なのか?」
「別に、珍しいことじゃないよ」
 なんでもなさそうに応じたのは、リィナだった。
 ちらりと振り向いた視線の先には、シェラがいた。
「ヴァイス君だって、よく目にしてたでしょ」
 なんのことだ?
 ああ――バギか。
 確かに現象としちゃ似てるかも知れないが、ありゃ魔法だぞ――あ、そうか。だから、リィナは『ズルしてる』って言った訳か。
 かまいたちは剣速によって生み出された訳ではなく、かといって魔法にしては呪文を唱えた様子が無い。
 ということは、おそらく剣士の刀それ自体に付与された能力なんだ。
 俺がヴァイエルからくすねてきた『魔道士の杖』のように、魔法を発動できるように細工された道具ってのは、実際にあるからな。
「ひと薙ぎで二度斬りつけられるとは、なかなか便利な武器だな」
 感心してる場合かよ、ファング。
 リィナの言う通りだとすりゃ、風切る方の刃は目に見えねぇんだぞ。
「リィナさん――」
「だいじょぶ、シェラちゃん。ホイミはいいから。今回は皮一枚で済んだし、こっちはズル無しでやりたいんだよね」
 視線は剣士に向けたまま、リィナは身振りでシェラを制した。
631CC 36-13/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 10:23:59 ID:u6beJPRn0
「あ、キミは好きなだけズルしていいから。その上で斃すくらいじゃないと、意味ないし。もうタネはバレちゃったけどね」
「問題、無い」
 ぼそりと言って、剣士は再び魔剣を振るった。
 リィナは、間合いの遥かに外だ。
 が――
 僅かに躱す動きをしたリィナの肩口から、血飛沫が舞う。
「分かっても……躱せん」
 見えない上に、実際の刀身のずっと先まで届く刃。これは、マズいんじゃねぇのか?
「リィナさん!!」
 リィナは前を向いたまま、シェラを宥めるように手を軽く上下する。
「交代が必要か?」
 と、ファング。
「冗談でしょ。こっからが本番だよ」
「強がりにしか聞こえんな。いいから、代われ。鎧をつけている分、俺の方がマシだ」
 ファングの鎧は、全身を覆う甲冑ではなく胸当てだが、それでも一撃くらいは耐えられるだろう。その隙に捨て身で飛び込んで斃すくらいのことは、こいつなら出来そうだ。
「いいから、上」
「分かっている」
 意味不明のやり取りに続いて、何故かファングは鞘から剣を抜いて、頭上を薙いだ。
 ギンッという金属音がして、短刀を構えた黒い影が無音で床に着地した。
 黒づくめ共の元締めだ。
 さっきまで剣士の後ろにいた筈なのに――と思う間も無く、床板を軋らせることなく跳躍した黒い影は、梁の上の闇に身を潜める。
「キミは、皆が怪我しないように、その人の相手でもしてなよ――ッ」
 再び剣士が抜刀し、逆の肩口を裂かれたリィナが微かに苦痛の声を漏らした。
「勝算はあるのか?」
「もちろん」
 続く呟きは、低くて聞き取り辛かった。
「……こんなトコでつまずいてたら、いつまで経っても追いつけっこないよ」
 俺がリィナに注意を向けていられたのは、ここまでだった。
『焦れったいねぇ。いつまでモタモタしてるんだい』
 唐突に、聞き慣れない女の声が響いた。
 思わずきょろきょろと辺りを見回して分かったのは――他の誰ひとりとして、今の声に気付いてないということだ。
632CC 36-14/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 10:38:32 ID:u6beJPRn0
『ああ――もう屋敷の前まで来てるじゃないか。こんな連中は無視して、さっさと先にお進みよ。間に合いやしない』
「どうしたの?」
 俺の不審な挙動を気にして、エフィが声をかけてきた。
「いや……なんでもない」
 表情を見ても、やっぱりエフィには聞こえていない。
 声はすれども、姿は見えず――
 アリアハンのヴァイエルの屋敷でこき使われていた時の経験が、珍しく役に立った。
 これは、アレだ。
 ヴァイエルの野郎が、呼び鈴の音が届かない場所に居る俺を呼びつけるのに使っていた、音を伴わず頭の中に直接響く、奇妙な喋り方――言うなれば、念話だ。
 ってことは、この偉そうな声の主は、魔法使いか。
『状況の把握が遅い!!この能無し!!』
 頭の中で罵られた。
『分かったら、さっさと後を追うんだよ』
 追うって、誰をだよ。
『行きゃ分かるよ。いいから、さっさと足を動かしな』
 いや、そう言われましてもね。
 屋敷の奥に行こうにも、リィナと剣士に通せんぼされてる状態なんですが。のこのこ横を通ろうモンなら、斬り捨てられちまうだろ。
 大体、あんたが誰だか知らねぇが、行きたいなら自分で行けよ。
『ヤダよ、面倒臭い』
 なんだ、こいつ。
 つか、なんで俺が、どこの誰とも得体の知れないヤツに命令されなきゃいけねぇんだ。
『アンタ、自分がアタシら口ごたえできる立場だと思ってんのかい。まったく、アレもどういう躾けをしたんだか』
 なんか……モロにどっかの誰かを思い起こさせるムカつき具合だな。
『しかも、ロクに魔法も使えないときてるじゃないか。こんな有様で使ってくれだなんて、よく言えたもんだ。ま、アレの弟子じゃ仕方ない――干渉する気は無かったけど、アンタがあまりにも無能だから、少しだけ手を貸してやるよ』
 だから、手前ぇは一体誰なんだよ――ダメだ、突っ込みが追いつかねぇ。
633名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 10:54:44 ID:tUpJAFPH0
ここで支援
634CC 36-15/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 10:55:17 ID:u6beJPRn0
 声だけの女が、何事かもにょもにょと呟いた感覚があった。不明瞭というか、受け手の俺の知識に無いことだから、理解できなかったみたいな印象だ。
『ホラ、これでアンタが居なくなっても、ソコにいる連中は気付きゃしないよ。だから、さっさと行きな』
 はぁ?
 さっきから、何言ってんだ。
『いいから、とっととお行き!』
 いきなり、頭蓋骨を内側から鈍器でぶん殴られたような激痛が疾った。
 溜まらず呻いてしゃがみ込んだ俺を、今度は誰も注目しなかった。
 まるで俺なんて、ハナから『ここ』に存在していないかのような無関心振り。
 まさか、ホントに『俺がここに居る』ことを、誰も認識出来なくなっちまったってのか?
 エフィの眼前で手を振っても、目をしぱたたくだけで俺には反応しない。
 マジか。どうなってんだ。
 これ、もしかして胸を揉んでも気付かれないんじゃねぇの?
『くっだらないコト考えてんじゃないよ』
 いや、本気にすんな。冗談に決まってんだろ――つか、さっきから、人の心を当たり前みたいに読むな。
『もっとキッツいのが欲しいかい?アタシも、いつまでも優しかないよ』
 あんたが、いつ優しかったと言うのか。
 また内側から頭をぶん殴られちゃ堪らないので、俺はとても柔らかいに違いないふくらみに伸びかけていた左手を右手で押さえつけ、そろりそろりと歩き出した。
 リィナと剣士が対峙している脇を、おっかなびっくり抜けて廊下の奥へと進む。
 あれま、ホントに気付かねぇでやんの。
 蟻が床を這う音さえ戦闘開始の合図になりかねない、ヒリつくような緊張感に包まれたあの二人に気付かれないなんて、たとえ全身が服ごと透明になっていてすら無理だろう。
 どうやら、いま俺に施されてるのは、俺達みたいな職業魔法使いが扱う範疇の魔法じゃねぇな。
 ともあれ、行く手を遮っていた剣士をやり過ごした俺は、突き当たりを左に折れた。
 だが、吐き出されかけた安堵の息は、廊下の先にひょっこり現れた人影を見て、すぐに飲み込まれる。
 それは、剣を背負ったアルスだった。
635CC 36-16/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 11:12:54 ID:u6beJPRn0
 なんで、あの野郎が、このタイミングで、こんな処にいやがるんだ!?
 状況を掴み切れずに立ち尽くす俺の視線を横切って、アルスはすたすたと屋敷の入り口から奥に向かう。
『どうにか間に合ったね。ほら、さっさと後を追いな』
 姿なき声が、俺に命じた。
 ついつい、こいつの言うままに行動しちまったけど、戦ってるリィナ達を放り出して独りで先走って、果たしてよかったのか。
 その戸惑いは俺の中に存在していたが、なんでアルスがここに居るのかも気になった。
 まぁ、リィナに加えてファングもいるから、あっちは大丈夫だろう。どっちかと言えば、うかうかと単独行動を取っている俺の方が、よっぽど危険だ。
 それに、アルスの野郎は、なんか胡散臭いんだよな。
 ひょっとして、マグナが知ったら怒り出すような、何かよからぬことを企んでやがるんじゃないか――なんてことを期待した訳じゃないが、俺は野郎の後をつけることを選んだのだった。
 アルスを追って角を折れると、ヒミコと謁見した部屋までは一直線だった。
 俺は充分に距離を置いて、アルスの後ろを歩く――いや、今の俺が他人からは『認識できない』状態なんだとすれば、距離を置く意味はないんだけどさ。なんとなく、気分的な問題だ。
 だって、俺自身には、別に体が透けて見えてる訳でもないんだぜ?
 いつもと何も変わらない。
 ホントに誰にも気付かれないのか、いまいち信じ切れないというか、ヒドく心許ない。
 それで結局、俺は終始こそこそと離れてアルスについていったのだった。
 やがて、何枚も連なった引き戸が行く手を阻み、アルスが真ん中辺りの一枚を開けて入っていった。
 そろりそろりと近付いて、引き戸の陰に身を隠しつつ中を覗き込む。
 謁見した時と同じように、広い部屋の奥にはすだれがかかっていて、既にアルスはその向こうに回り込んでいた。
636名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 11:22:15 ID:qA9wcQQXO
しぇ
637CC 36-17/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 11:23:49 ID:u6beJPRn0
「――誰じゃ」
 誰何と共に、ヒミコの荒い息遣いが聞こえる。
 地底でくたばり損なったばっかだもんな。さすがの化け物も、ずいぶん消耗したと見える。
「下がりおれ、下郎が」
「悪いが、あんたを殺しにきた」
 抜刀したアルスの影が、ゆらゆらと淡い炎に揺られて、すだれの上で踊った。
「はて……まことに何奴じゃ?」
 ヒミコの声音に、不審が混じった。
「先の狼藉者共に、汝のような顔があったか?」
「さあな」
 素っ気無く答えて、アルスは剣を横に引いて構える。
 座った形のヒミコの影が、両手を押し止めるように前に突き出して後退った。
「ま、待て……何処の手の者じゃ」
「答えるつもりはないね。それに――」
 アルスが苦笑――じゃなくて、嘲笑した気配があった。
「教えなくても、心当たりがありそうじゃないか」
「き、貴様――まさかッ!?」
「同情はするよ。ただ――」
「待て――何故、貴様の如き人間風情が――」
「あんたは、少しやり過ぎた」
「お、オノ――レッ」
 一瞬、ヒミコの影がいびつに歪んだ。
 だが、それよりも早く、アルスの剣が横薙ぎに払われた。
 勢い余った剣閃がすだれを断ち、隙間から何かが飛び出した。
 ごろんごろんと床を転がり、こちらを向いたのは――
 無残な、ヒミコの生首だった。
 うへぇ、こっちに飛ばすんじゃねぇよ。この馬鹿、悲鳴が出そうになっちまったじゃねぇか。
 頭を失った躰が力無く床に崩れる。
 アルスはそれを気にした風もなく、腰に下げたフクロから布切れを取り出して、剣についた血を拭うと、すだれの残骸をぐいと引き落として、こちらに呼びかけた。
「終わったよ」
 へ?
 俺に言ってんのか?
 まさかこいつ、俺が見えてるのかよ。
638CC 36-18/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 11:31:16 ID:u6beJPRn0
「ご苦労様です」
 すぐ横で、何も無い場所から返事が聞こえて、ぎょっとする。
 見覚えのあるにやけ面が、いきなりそこに現れた。
 アルスが話し掛けた相手は、こいつか――もしかして、これまでにやけ面が突然出たり消えたりしてたのは、今の俺と同じような理屈か――いや待て、姿を現す前に声が聞こえたってことは、そうじゃなくて――
「どうしました。浮かない顔つきですね、アルスさん」
「まぁ、あんまり愉快な仕事じゃなかったからな」
「そうですか。では、他の誰か――ニックさんにでもお任せするべきでしたか」
「いや……今回は俺の我侭を聞いてもらって、有り難いと思ってるよ」
「そう仰っていただけると、私としてもホッとします。そう、あなたは充分に尊重されている。何も、気に病む必要などありませんよ」
「よく言う――ん?」
 今度こそ真っ直ぐに俺を見て、アルスがちょっと目を見開いた。
「いつからそこに居たんだ、あんた?」
 え、あれ?
 とうとう、俺に施されて魔法の効力が切れたらしい。
 くそ、肝心なトコで――おい、もう一度かけらんねぇのかよ?
 頭の中で呼びかけても、姿なき女の声は、うんともすんとも答えなかった。
 畜生、役に立たねぇな。
「お久し振りです、ヴァイスさん。またしても奇遇な処でお会いしましたね」
 別段驚いた風もなく、にやけ面は平然と俺に語りかけた。
 相変わらず、何もかもお見通しみたいな態度が気持ち悪い。
 ひょっとして、こいつに悟られるのを嫌って、声だけ女は返事をしねぇのか。ふと頭に浮かんだ想像は、なんとなくだが当たりって気がした。
「ここにいるのは、あんただけか?」
 アルスが俺の後ろを窺った。
 いくら見ても、マグナは来てねぇぞ。
「まぁ、いいや。とにかく、あんた達には感謝するよ」
 そんなことを言う。
「鬱陶しい取り巻き連中を引き付けてくれたお蔭で、俺の方は仕事が楽に済んだからな」
 ほら、見ろ。
 こいつ、俺達を利用したって、堂々と言い切りやがったぞ。
 腹に一物抱えてやがるに決まってんだ。
 だから、その馴れ馴れしい薄ら笑いを止めろ。
 もっと嫌らしく笑えよ、悪人らしく。
639CC 36-19/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 11:36:10 ID:u6beJPRn0
「あんただけしかいないのは、逆に丁度良かったな。その……マグナによろしく言っておいてくれ」
「は?」
「お迎えが来たんでな。俺はもう行かないと」
「なんで、俺が。自分で言やいいじゃねぇか」
「もちろん、俺だってそうしたいさ。けど……」
「けど、なんだよ」
「いや、情けないと笑われても仕方ないんだが……」
 アルスはバツが悪そうに、顎をポリポリと掻いた。
「ダメなんだ。自分でも理由が分からないんだが、あいつの事になると冷静でいられない。昨日せっかく、やっとのことで別れを済ませたってのに、また顔を合わせたら、もう一度別れを告げる自信が無いんだ」
 アルスは妙に気安い仕草で、俺の肩にぽんと手を置いた。
「それに、マグナ達とは、はじめからここで別れる予定だったんだ。あいつらに便乗して、連れて来てもらっただけだからな。俺が居なくなるのは、マグナも承知の上なんだ……だから、頼むよ」
 なんで『せつない俺の気持ち、あんたにも分かるだろ?』みたいな顔つきしてやがんだ。
 手前ぇの気持ちなんざ、一片たりとも分かりゃしねぇよ。
 つか、今の話がホントなら、コイツは仲間になった訳じゃなくて、単に同行してただけなのか?
 というか、最初からヒミコを殺すのが目的で――まがりなりにも、魔物退治の範疇だ。やはり、こいつらは敵って訳でもないんだろうが――
「さて。我々は、そろそろお暇しましょうか、アルスさん」
 にやけ面の呑気らしい声が、俺の思考を中断した。
「待てよ。お前ら、なにが目当てでこんなことしてるんだ?」
「申し訳ありませんが、私からは、何も申し上げることはありませんよ。ただし――」
 浮かびっぱなしの曖昧な笑みが、さらなる笑みで塗り潰された。
 悪魔が勧誘の時に浮かべるのは、多分こんな笑みだろう。
「今すぐに、私達の仲間になっていただけるのでしたら、多少のことはお話できますが」
「イヤだね」
 即答してやった。
「そいつは、順番が逆だろ。俺を仲間に引きずり込みたいなら、先にそっちがカードを切って、せいぜい関心を惹いてみせろよ。その上で、誠心誠意お願いするのが筋ってモンだろ」
 にやけ面は、喉の奥でくつくつと笑った。
640CC 36-20/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 11:40:42 ID:u6beJPRn0
「そうでしょうとも。あなたは、そのように仰ると思いました。では、残念ですが、いずれまたの機会ということで」
 ほざきやがれ。俺なんぞを誘う気なんか、これっぽっちも無かったクセしやがって。
 正直なところ、俺は事態の成り行きについていけてない。
 誰だか分からねぇ姿も見えねぇ女の声に振り回されたと思ったら、横から出てきたこいつらに、あっさりヒミコを斃されちまったんだからな。
 いま起こっている一連の出来事がどういう意味を持っているのか、訳が分からねぇし、俺の知らないところで何やら画策している連中の都合で動かされてるみたいな感覚も気に喰わねぇ。
 俺は、手前ぇらの駒や操り人形じゃねぇぞ。
 と、粋がったところで――
 所詮、俺に何が出来る?
 にやけた面を締め上げて、腹に呑んでるはかりごとを力づくで吐かせるなんて芸当は、とてものこと俺に出来る訳がない。なにしろこいつは、イオナズンすら唱えかねない物騒な野郎なのだ。
 結局のところ、はいはい大人しく言うこと聞いて、引き下がるしかないって寸法ですよ。
 まぁ、考えようによっちゃ、ヒミコ――ヤマタノオロチを斃してくれただけでも、お釣りが出るくらい十分に役立ってくれたしな。この上、情報まで引き出そうってのは、虫が良過ぎますかね。
 それに折角、アルスが自らマグナの元を去るって言ってるんだ。
 下手につついて、「やっぱり、もう一度マグナに会っておこう」とか言い出される前に、さっさとお帰り願うのが得策だ。
「分かったよ。さっさと、どこへでも行きやがれ」
「聞き分けがよくて助かります。やはり、貴方は頭がいい」
 小馬鹿にされているようにしか聞こえなかった――実際、そうなんだろう。
「マグナを、よろしくな」
 と、アルス。
 さっきから、妙に馴れ馴れしいな。
 俺がこいつだったら、とても平気な顔して、こんなこと言えないんだが。
 何かを根本的に勘違いしてやがるんじゃないか、こいつは?
 まぁ、こんなヤツのこと、どうでもいいけどな。
 しっしっ、と追い払う仕草をするまでもなく、にやけ面とアルスは連れ立って出ていった。
641CC 36-21/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 11:47:14 ID:u6beJPRn0
 さて、どうしたもんかね。
 っていうか、この状況ってさ。
 ヒミコを斃したのは、俺の手柄に出来なくもないよな。
 いや、しないけどね――
「去んだか……」
 あり得ない方向から聞こえた声に、びくっと振り向く。
「ほほ、愚か者奴らが。この程度で、妾が身罷るなぞと思うたか」
 床にごろんと転がった、ヒミコの生首が喋っていた。
 あまりのことに言葉を失っていると、生首がギロリと俺を睨め上げる。
「おや、有象無象なぞ、いちいち覚えておらぬが……なれは地の底でまみえた顔であったか?」
 血に濡れた紅唇が、にたりと笑みを形作る。
「妾の本当の姿を見た者は、汝等だけじゃ。大人しゅう口を噤みて我が国を立ち去るのであれば、先の狼藉は見逃してやらぬでもない。それで、よいな?」
 いかん――思考が停止してた。
 なんなんだ、一体。
 今度は生首が喋り出しやがったぞ。もうついて行けねぇよ。
「分かったのなら、さっさと去ぬがよい」
 あまりにも状況が現実離れし過ぎて、なんか知らんが腹の底から笑いが込み上げた。
「なにを笑う。気でも触れおったか」
「うるせぇよ。生意気ほざいてんじゃねぇぞ、この腐れ生首が」
 やけくそ混じりの啖呵が、勝手に口を突いて出た。
「なぁにが『見逃してやらぬでもない』だ。死に損ないの分際で、偉そうに言いやがって」
 生首が目をぱちくりさせるという非現実的な光景に、また笑いを誘われる。
「どう見たって、追い詰められてんのは、そっちの方だろうがよ。なのに、命乞いするどころか、偉そうな口叩きやがって。これが笑わずにいられるかってんだよ。あんまナメてんじゃねぇぞ、このくたばり損ないが」
 つかの間、言葉を失っていた生首は、次第に口を歪めて哄笑を発した。
「ほほほ……所詮は非力な人間風情が、よくぞさえずりやった」
 ヒミコの声は、途中から重なって聞こえた。
「なんとも可愛らしいものよな」
 ぎしりぎしり、と床の軋る音がして、すだれで隠されていた部屋の奥、その脇から何者かが悠然と姿を現した。
 床に転がっている生首に目を落とすと、既に生気を失っている。
 忙しく、両者を見比べた。
 おいおい、同じ顔をしてやがるぞ。
642名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 11:56:31 ID:PedVnr95O
寝る前に支援
643CC 36-22/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 11:57:00 ID:u6beJPRn0
「走狗の使い走り如きが、小癪な真似をしおったものよ」
 新たに登場した女は、アルス達の去った方を忌々しげに睨み付けた。
 髪留めで無造作に結い上げたうなじが色っぽい。
 つか、胸でけぇ。白い夜着の合わせ目から、乳房が零れ落ちそうになっている。
「ほほ……なにを呆気にとられておる。そこな木偶なぞ、妾が移し身――傀儡に過ぎぬわ」
 色んな意味で呆けっぱなしの俺の顔を覗き込み、女は片方の眉をぴくりと上げた。
「なんとまぁ、間の抜けた面構えよ。何も存じておらぬのか?……さてはと思うたが、汝は先の使い走り共と、まことに主を異にしておるか」
 腕組みをした女の胸が、寄せて上げられる。
「なれば、汝に妾を弑する道理もあるまい。じゃが――はて、面妖な。なにやら汝には、彼の走狗とは異なる呪縛を感ずる……どの道、捨て置けぬか」
 女は髪留めを引き抜いて、ふるふると頭を振った。
 長い黒髪がばさりと肩にかかる。
「妾を死に損ないとは、よくぞ申したものよ。どうじゃ――妾の先ほどの言、いまひと度考え直す気にはならぬか?」
 腰を左右に振りつつ、ゆっくりと女が近付いてくる。
 腰帯が解かれ、薄い夜着が肩からぱさりと落ちた。
「汝さえ他言せねば、愚かな使い走り共も、妾が身罷ったと信ずるであろう」
 夜着の下には、何も着けていなかった。
 眼前まで近付いた女は、しなりと俺の顔に手を伸ばす。
「それで、よいな?」
 にんまりと浮かんだ、吸い込まれそうな微笑み。
 鼻腔をくすぐる、濃厚な雌の匂い。
 頭の後ろが痺れたみたいにぼーっとして、なんだか何も考えられなくて――
「よせ……」
 やっとのことで、喉から言葉を押し出した。
「ふふ……案ずることはない。身も心も、凡て妾に委ねるがよい。さすれば、汝を縛りし呪詛も解きほぐしてやろうぞ」
『ちょいと、しっかりおしよ!』
 俺をここまで導いた女の声が、頭の奥で微かに響いた。
 ひょっとして、呪詛ってこいつのことか――ああ、考えがまとまらない。
「下がりおれ、下郎」
 鋭い声にぴしゃりと叩かれたように、姿なき女の声はぷつんと途切れた。
644CC 36-23/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:01:53 ID:u6beJPRn0
「ふん。鬼道を修めし妾の目を謀れると思うてか。妾を畏れ仇為さんとする者の、なんと多きことよ。じゃが――」
 女は俺の首に腕を絡め、豊かな乳房を押し付けた。
「汝は、妾に与するであろう。そうじゃな?」
 女から匂い立つ芳香に酩酊したみたいに、頭がくらくらする。
「妾に仇為さんとする不埒者を排し、妾を護っておくれ。汝に刻まれし諸々の呪詛は、妾の役に立ってくれそうじゃ」
「なんなんだ……よ」
 どいつもこいつも――
 本人を無視して、勝手に周りで話を進めやがって――
 沸き上がった苛立ちが言葉となって口から零れたが、それも一瞬のこと。
「畏れずともよい。妾に凡てを委ねよ。妾はヒミコ。諸力に通じ、いづれあまたの異形異類を統べし、この地上の真なる主じゃ」
 なにもかも、意味が分からん。
 辛うじて、心の一部が反発していた。
 実際は、膝が抜けちまいそうなほど全身がとろけて――だって、この女の体の感触、すげぇ気持ちいいんだよ。
 マズい。考えるの面倒臭くなってきた。
 頷いて、何もかも委ねちまえば楽になる。訳も分からないこと続きで疲れちまって、つい楽な方へと転げ落ちようとする俺を、脳裏に残った微かな面影が、寸でのところで踏み止まらせている――
「お屋形様、ご無事で――!?」
 忙しない足音を引き連れた叫び声は、途中でぶつ切れた。
 唐突に割り込んできた第三者のお蔭で、少しだけ自分を取り戻した俺は、のろのろとそちらを振り向く。
 開かれた引き戸の間に立ち尽くしていたのは、ちょんまげ頭の剣士だった。
 切れ長だった目をまん丸に見開いて、全裸で俺に絡み付いているヒミコをまじまじと凝視している。
「……きっ……貴様ァッ!!」
 聞き取れない言葉で何事か罵りつつ、腰のものに手をかけた瞬間、剣士は抜刀していた。
 え、ちょっと待て。
 狼狽が、俺をさらに現実に引き戻す。
 これってアレだろ、切っ先が届かなくても相手を斬れるっていう、例のかまいたち――
645CC 36-24/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:06:37 ID:u6beJPRn0
 この馬鹿、俺とヒミコの絡みを見て血を昇らせるなら、頭じゃなくて別のトコにしろよ。
 お前の大事なお屋形様が、俺にひっついてんだぞ!?
 身じろぎする間もあらばこそ。
 ヒミコ共々真っ二つにされる未来を思い浮かべた俺の手前で、不可視の刃が何か硬いものに遮られた気配が、空気の抜けるような耳慣れない音で分かった。
 俺とヒミコの左右の床に、がっつりと亀裂が走る。
「何――ッ!?」
 剣士が不可解そうな声をあげたが、俺にも何が起こったのか分からない。
 どうやって助かったんだ、今?
「とぅっ!!」
 いきなり横からすっ飛んできた誰かが、呆気に取られた剣士を思いっきり蹴り飛ばした。
 リィナだ。
 強烈な跳び蹴りを喰らって引き戸の向こうに吹っ飛んでいく剣士には目もくれず、こちらを覗き込む。
「ヴィアスくん、いるの!?無事――!?」
 俺とヒミコを目撃して、リィナはさっきの剣士と全く同じ反応を繰り返した。
 すなわち、絶句したのだ。
「な……」
 顔がひくひくと引き攣っている。
「なにやってんの!?」
 うん。まぁ、気持ちは分かる。
 ただでさえ、地底でオロチとやり合って服があちこち焼け焦げてたのに、さらに刀傷が増えてボロボロだもんな。
 そんなになるまで必死こいて戦ってたのに、いつの間にやら勝手に姿を消していた俺は、全裸の女と抱き合ってたって訳ですよ。
 そりゃ怒る。
 この状況は、俺にかけられた魔法が解けた所為だろうな。
 俺が居ないことに『気付いた』剣士が、リィナとの勝負よりヒミコサマの身の安全を優先した結果がこれだろう。
「なんとも役に立たぬ男よ」
 そんな健気な剣士の行動を、ヒミコは言下に否定した。
「アレは、本来であれば客分であった者じゃがな、妾が虜と為したのじゃ。いま少しは使えると思うておったが……さて、汝はどうじゃ?」
 そんなことを言いながら、ヒミコは豊満な胸と体を一層押し付けてくる。
「妾に与すれば、汝が望む褒美をくれてやろう」
 褒美の内容は、想像するまでも無いな。
 手足がまるで蛇のように絡みつき、心地良く俺を締め付ける。
 正直言って、滅茶苦茶気持ちいい。
 二人きりなら、後先考えずに押し倒してたな、これ。
646名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 12:07:16 ID:7efN/SXpO
四円
647CC 36-25/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:10:49 ID:u6beJPRn0
「ちょっ……ちょっとちょっと、ホントになにやってんの!?急に独りでいなくなったと思ったら――いいから、離れなよっ!?」
 はいはい、分かってますよ。
 ちょっと余韻を楽しんでただけじゃねぇか。
「悪いね。あんたのお誘いは、また今度な」
 今度なんてモンがあればだけど。
 なんでも無い素振りを装いつつ、内心は必死でヒミコを未練と一緒に両手で引き剥がす。
 一瞬、ヒミコは不思議そうな表情を見せた。
「ほぅ……思うたより念入りに呪がかけられておったか……」
 そう言って、にんまりと笑う。
 瞬きをする間に、唇の端が耳元まで達していた。
 これまでの篭絡する笑みではない――ぞっとするような、捕食者の笑みだ。
「よかろう……妾に仇為す愚か者奴らが。ならば、生きては帰さヌ。望み通り、喰ラい尽くシテクレるわッ!!」
 めこり、と音を立てて、ヒミコの躰がいびつに膨れ上がった。
 次の瞬間、全身から猛烈な勢いで何かが生え伸びる。
「うわっ――」
 尻餅をつきそうになりながら後退る俺を押し潰す勢いで、ヒミコが膨張した。
 皮膚がみるみる鱗を帯び、何本も伸びた首が天井を突き破って激しくうねり狂う。
 正体を現したヤマタノオロチは、降り落ちる木材から逃げ惑う俺目掛けて、口腔から溢れる炎を吐き出した。
「ぐぇ――っ」
 いきなり服の背中を引っ張られて、喉が締まる。
「も〜、なにやってんの、危ないなぁ」
 そのままリィナに引き摺られて、危うく火炎から逃れた俺は、尻餅をついたまま顔を上げた。
「悪い。助かったよ」
 目が合った瞬間、リィナは物も言わずに俺の頬を抓り上げた。
「痛っ――いてぇってっ!!」
「ほら、早く立ちなよ」
 痛ぇ〜……マジで抓ったろ、こいつ。
 まぁ、このくらいは仕方ねぇけどさ。
「――あ、マグナ達も追いついたみたいだね」
 天井から降り続ける建材を避けて廊下に出ると、こちらに向かってマグナ達が駆けてくるのが見えた。
 剣士と対峙していたリィナ以外は、黒づくめの元締めに足止めされてたってトコかね。
648CC 36-26/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:14:46 ID:u6beJPRn0
「なんだ、この有様は」
 屋敷を破壊しつつ暴れ狂うヤマタノオロチを目の当たりにして、ファングが呆れた声を出す。
「突然、現れたように見えたぞ。あんな図体をして、どこに隠れてたんだ――いかん、そんなことを言ってる場合じゃないな」
 後ろを向くと、オロチが見境無く炎を吐きはじめていた。
 やべぇな。この国の建物は、全部木造りだ。すぐにここまで延焼しちまうぞ。
 俺達は合流するなり回れ右をして、廊下を戻りかけ――ファングだけが、その場から動かなかった。
「おい、何してんだよ!?」
「このままだと、火に巻かれる。外に出るぞ」
 いや、だから、その為に入り口まで戻ろうとしてるんだろうが。
「こっちの方が早い」
 剣を抜いたファングは、横手の壁を力任せに斬り付けた。
 割れた斬り跡目掛けて、軽く助走をとって肩からぶつかる。
 壁の向こうにまろび出たファングは、俺達に向かって手招きをした。
「急げ、こっちだ」
 うん……まぁ、確かに、壁ぶち破って出た方が早いわな。
 さらにもう一枚、今度はリィナが壁を壊して、俺達は屋敷から脱出した。
 燃え盛る屋根の上から突き出したオロチの頭が、ウネウネと揺れている。
 改めて、なかなか現実離れした光景だな、これ。
「アメリア、フクロをくれ」
「あ、はい!!」
 ファングに言われて、アメリアは裾の下からスカートの内側に手を突っ込んだ。
 おいおい、何してんだ。
 もぞもぞとスカートの中を探って、取り出した大きなフクロをファングに手渡す。
 どっから出してんだ。つか、どうやって仕舞ってたんだよ。
 ファングは地面に置いたフクロのクチを開けて、中からごっつい盾を取り出した。表面に竜を思わせる意匠が彫られている。
649CC 36-27/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:17:47 ID:u6beJPRn0
「郷から持ってきたものだ。なにがしかの魔法がかけられていて、炎や冷気を防ぐと聞いているから、少しは役に立つだろう。正直、盾はあまり性に合わんが、この際言っても仕方あるまい」
 俺の視線に気付いたファングが、頼んでもいないのに勝手に解説した。
 でも、へぇ――そんな便利な盾があるのか。
 ひょっとして、僧侶が使える『フバーハ』と同じような魔法がかけられてんのかね。
 ちらりと見ると、同じ考えに至ったらしく、シェラは申し訳なさそうにふるふると首を横に振った。
 まぁ、そうだよな。『フバーハ』は、僧侶が扱える中でも最上位の魔法のひとつだ。もしシェラが既にそんな呪文を覚えてたら、同じ呪文使いとしてはかなり焦る。
「そういう訳だ。今度は俺がまず切り込むから、貴様は大人しく引っ込んでいろ」
 盾を左手で構え、右手で剣を抜いたファングが、リィナの前に出た。
「冗談でしょ。そんな重そうなカッコしちゃってさ、ロクに動けなくてやられちゃうのがオチだよ。ボクがあいつを弱らせてあげるから、キミはそれまで待ってなよ」
 だから、お前ら、事ある毎に張り合うなっての。
 ンなことしてる場合かよ――
 早くから炎に包まれていた屋敷の一部が、音を立てて崩れ落ちた。
 邪魔な障害物が無くなって、ヤマタノオロチの八つの頭がこちらを向く。
「援護を頼む!」
 俺に向かって言い捨てると、ファングが駆け出した。
 いや、おい、もうちょい準備をだな――
「マグナ!またさっきのお願いね!」
 リィナも遅れじと、マグナに一声かけて走り出す。
 小さく頷いたマグナは、集中するように目を閉じた。
 あーもー、しょうがねぇなぁ。
 とりあえず、お嬢と姫さんとアメリアは、もっとずっと後ろに退がってろ。
『バイキルト』
 呪文の対象者を識別する淡い光がファングを包み込む。
 そんな責めるみたいな顔してこっち見んなよ、リィナ。だって、お前、呪文に頼るの好きじゃないだろ。必要なら、後でかけてやるからさ。
「シェラ――」
「はいっ!」
 分かっている、という風に頷いて、シェラは呪文を発動する。
『ルカニ』
 オロチの巨体が淡く発光した。
 やれやれ、上手いことかかってくれた。これで、オロチに対するファング達の攻撃は、いくらか通り易くなった筈だ。
650CC 36-28/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:25:26 ID:u6beJPRn0
 ヤマタノオロチを囲んで猛り狂う炎の手前で、燃え残った柱に取り付いたリィナは、するすると身軽に登る。
「よっと」
 頂点付近で柱を蹴って炎を跳び越え、また火炎を吐き出そうとしていたオロチの頭を上から踏みつけた。
「ふんっ!!」
 盾で体を庇って炎を突っ切ったファングが、地面の近くまで下りて来たその首を斬りつける。
 お前ら、なんだかんだでいい連携するのな。
 俺の呪文による攻撃力の強化と、シェラの呪文によるオロチの弱体化の相乗効果も功を奏してか、ファングの剣は易々とオロチの喉元を切り裂いた。
 刀身よりもオロチの首の方が太いので、さすがに一刀両断とはいかなかったが、血飛沫を派手に撒き散らしてだらんと垂れたあの首は、もう使い物にならないと見ていいだろう。
 残るオロチの首は七本。
 さて、次は『スクルト』でも唱えて、あいつらの防御を助けてやるべきかね――いや、待て。そういや、マグナも魔法を使えるようになったんだよな。
「マグナ、ちょっといいか?」
 どんな呪文を使えるのか確認しようと声をかけたら、思いっ切り無視された。
「マグナ?」
 もう一度呼んでも、目を閉じたまま反応しない。
「おーい。おいって。マグナ、聞こえてるだろ?」
「あ〜〜〜〜〜〜〜っ、もう、うるっさい!!」
 しつこく呼びかけると、マグナはいきなり奇声をあげて俺を睨みつけた。
「もうちょっとだったのに、どうしてくれんのよっ!?」
 は?もうちょっとって、何がだ。
「あたしは、あんた達と違って、すっごい集中しないと魔法なんか使えないのっ!!もうちょっとでイケそうだったのに、邪魔しないでよっ!!」
 ああ、そうなのか。そりゃ悪かったな。
「……ちょっと、なに笑ってんのよ。悪い?」
「いや、別に――」
 慌てて頬を擦る。ニヤけたつもりはなかったんだが。
 だって、お前が、もうちょっとでイケそうとか言うから。
651CC 36-29/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:30:13 ID:u6beJPRn0
「どうせ、馬鹿にしてるんでしょ。魔法に向いてないことくらい、自分でも分かってるわよ。でも、『ホイミ』くらいなら、あたしだってすぐ唱えられるんだからね!?だけど、『ライデイン』は覚えたばっかりだし、すっごい難しいの!!分かったら、黙っててよ!!」
 うん、ごめん。色んな意味で申し訳ない。
 俺のことは気にせず、どうぞ引き続き集中なさってください。
 身振りでそう示すと、口の中でぶつくさ文句を垂れつつ、マグナは再び目を閉じた。
 はー。
 まったく、こんな時に、なに考えてんだかね、俺も。
 嫌われてシカトされてた訳じゃなくて良かったけどさ。
 気を取り直して目を向けると、ファングがリィナに蹴り飛ばされていた。
 直後、ファングが居た場所を、オロチが吐いた火炎が薙ぎ払う。
 ファングを蹴った勢いで、なんとかリィナも逃れていた。
「だから、おっそいよ!!次はもう助けないからね!?」
「ぐぅ……これが、助けただと!?貴様、本気で蹴ったろうが!!この程度の炎の一度や二度は、この盾があれば持ち堪えられると言ってるんだ!!貴様こそ、余計な真似はせんでいい!!」
 さっきの見事な連携はどこへやら、飽きずに罵り合ってやがる。
 いいから、お前ら、今だけでも大人しく協力しろよ。見てるこっちがハラハラするっての――ほら、オロチが攻撃してくるぞ。
『ヒャダルコ』
 予定と違う呪文を唱える。
 発生した強力な冷気が、オロチを中心に周囲を包み込んだ。
 さすがに巨体の全身を凍りつかせるまでは至らないが、少しでもオロチの動きを止めて、ついでに激しさを増しつつあった周囲の炎が下火になれば御の字だ。
『ピオリム』
 シェラの唱えた呪文は、リィナとファングの罵り合いを受けてのことだろう。これでファングも、多少は素早くなった筈だ。
「なんだよ、恩知らず!!じゃあ、勝手にしなよ!!」
「貴様こそな!!俺を当てにしてくれるなよ!?」
「誰が!!」
 丸呑みにせんと大きく口を開いて迫ったオロチの頭から身を躱し、リィナは素早く横に回り込む。
 一方、ファングは別の頭が吐き出した炎に対して、その場から動くことなく盾を掲げて耐えてみせた。
 ピオリム意味ねぇ。
652CC 36-30/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:36:59 ID:u6beJPRn0
「ふんっ」
「せぃっ」
 リィナは横からオロチの頭をぶん殴り、ファングは炎を吐き終えた首を斬り付ける。
 三本まで首を失ったオロチの咆哮が、夜の空気をびりびりと振るわせた。
 うるせぇ――
 塞ぎかけた俺の耳に、マグナの声が届く。
『ライデイン』
 オロチの咆哮を掻き消して、雷鳴が轟いた。
 雷光に撃たれたオロチの動きが停止する。
「うるっさいのよ、このトカゲ」
 右手を振り下ろした体勢で、マグナはぽつりと吐き捨てた。
 こりゃ、終わったか?
 ふと、動きを止めたオロチの胸元の皮膚がぐにゃりと歪み、何かを形作る。
 浮かんだのは――ヒミコの顔だ。
「貴様ラ――ヨクモ、この妾に対して……生きては帰さぬぞ!!」
「なにを今さら」
 怨嗟に満ちた言葉を、ファングは鼻で笑った。
「やられそうなのは、そっちでしょ」
 リィナに畳み掛けられて、逆上するかと思いきや、ヒミコは不敵に微笑んだ。
「ほほほ……愚か者奴らが。人間風情に、妾が死力を尽くしておるとでも思うたか」
 残った頭がうねうねと蠢いて、ぐったり垂れている三本の首に噛み付いた。
「なれど、よかろう。それほどまでに望むのであれば、妾も持てる力の凡てを統べるとしよう」
 噛み付いた頭にぐいと引かれ、三本の首が根元から千切られる――なにしてんだ、こいつは!?
 引き千切った首を吐き捨て、オロチが次に咥えたのは、足元に転がっていた生首と、向こうに倒れていた偽のヒミコの体だった。
 生首と胴体を丸呑みしたヤマタノオロチが、天を仰いで咆哮する。
 千切られた首の付け根から、新たな首が見る間に生えて、咆哮に加わった。
 勘弁してくれ。また首が八本揃っちまった。
 いや、俺より小さかったヒミコの体が、あんな巨体に変化するのがそもそも異常なんだから、首のニ本や三本、もう一度生やしてみせるくらい、お手のものかも知れねぇけどさ――つか、全身がさらに一回り巨大化してるじゃねぇか。
653CC 36-31/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:45:45 ID:u6beJPRn0
「ほほほ――今になって助命を乞うても叶わぬぞ」
「フン、面白い」
「別に面白くはないけど、そのくらいやってくれないと張り合いないよね」
 この期に及んで軽口を叩き合うファングとリィナに苛立ったように、オロチの胸元に浮かぶヒミコが顔を顰める。
「畏れを覚えぬ愚か者奴らが……妾に対する無礼の数々、黄泉でトクと悔いルガよイワッ!!」
 再び胸元がぐにゃりと歪んで、ヒミコの顔はオロチの皮膚の下に埋没した。
 さっきから聞こえていたふいごのような音が派手になり、八本すべてのアギトから炎が噴き零れる。
 まさか、いっぺんに吐き出すつもりか!?
 そうなったら、あいつら逃げ場がねぇぞ。
「離れろっ!!」
 俺の呼びかけが、間に合ったか分からない。
 次の瞬間、ヤマタノオロチの八つの頭は、一気に火炎を吐き出した。
 周囲が、まるで爆発したかのような炎に包まれる。
「リィナさん!!」
「リィナ!!」
「ファング様!?」
 左右と背後から、悲鳴が聞こえた。
 あいつら、無事に逃げただろうな!?
 ここまで届く熱気から顔を庇いつつ、必死に目を凝らす。
 炎が激しすぎて確認できない。
 だが、狼狽している暇すら無かった。
 再び炎を口腔に蓄えつつあるヤマタノオロチの八つの頭が、一斉にこちらを向いたからだ。
『スクルト』
 相当取り乱していたんだと思う。
 俺は不用意に、大して意味があるとも思えない防御呪文を唱えていた。
 後になって考えれば、この時、俺達を包んだ淡い光が、一瞬消えてまた光ったのは妙だったんだが、それに気付くどころの精神状態じゃなかった。
『ラリホー』
 続くシェラの呪文が、オロチを眠りに誘うことはなかった。
 畜生。成功してりゃ、時間を稼げたんだが。
654名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 12:48:45 ID:PedVnr95O
市¥
655CC 36-32/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 12:49:19 ID:u6beJPRn0
「逃げるぞ!!お前ら、もっと離れろ!!」
 マグナとシェラを促し、お嬢や姫さんに声をかける。
 だが、とても間に合わない。
 ヤマタノオロチが八本の首が、同時に火炎を吐き出した。
 必死に駆けてるのに、焦れったいほど足が前に進まない。
 背後から迫る炎が、あっという間に俺達を巻き込んだ。
 マジか――
 死んじまう――
 姫さんやエフィは――
 あれだけ離れてれば、なんとか大丈夫か――
 つか、あっちぃ――
 甘く見過ぎた――
 せめて、マグナとシェラだけでも――
 瞬間的に、頭の中で様々な考えが火花のように爆ぜては消え――
 あれ?
 なんか、思ったより耐えられるな。
 いや、もちろん周りを炎に包まれてロクに息も出来ないほどクソ熱いんだが、どうにか突っ切れそうだ。
 走り続けて、激しく燃え盛る炎の中から抜け出した。
 マグナとシェラも、ほとんど同時に飛び出してくる。
「無事か!?」
「はい」
「なんとかね」
 あたふたと全身の炎を叩いて消しながら尋ねると、しっかりとした返事が戻ってきた。
 どうなってんだ、こりゃ。
 助かってなによりだけどさ、とても耐えられるような炎とは思えなかったんだが。
「え――アルス?どこにいるの?」
 首を捻っている俺の横で、マグナがきょろきょろと辺りを見回した。
「やだ、ちょっと、息――え?うん……そう――うん、分かった」
 神妙な面持ちで頷いて、マグナは腰から剣を抜く。
「おい、マグナ――?」
「……大丈夫だから」
 意味不明な言葉を残し、マグナは壁みたいに燃え立つ眼前の炎を迂回して、ヤマタノオロチを目指して駆け出した。
656名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 12:52:31 ID:PedVnr95O
氏Yen
657CC 36-33/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 13:10:22 ID:u6beJPRn0
「ちょっ――おいっ!?」
 慌てて後を追う。
 相変わらず、無茶しやがる――つか、やっぱり横を通るだけでも熱ぃな。こんなとんでもない火炎の直撃を喰らって、なんで耐えられたんだ、俺達。
 ようやく炎壁を回り込むと、マグナはかなり先行していた。
 どうすんだよ――援護――呪文――まだ、もうちょい無理か――
 気ばかり焦って手をこまねいていた俺の視線の先で、オロチの全身がいきなり凍りついた。
 さっき俺が唱えたヒャダルコとは比べ物にならない、圧倒的な冷気。
 瞬間的に冷却された空気が凝固して粒となり、パラパラと巨大な氷の彫像を取り巻いて降り注ぐ。
 少し遅れて、ヤマタノオロチの頭上の空気が、バチッと音を立てて爆ぜた。
 轟く雷鳴。
 雷光が激しくオロチの全身を這い回り、皮膚に降りた霜ごと焼き焦がす。
 あれは、マグナの『ライデイン』そのものじゃねぇか。
 あいつ、呪文を唱えてねぇよな?
 そのマグナは、ヤマタノオロチの足元に辿り着いていた。
「はああぁぁっ!!」
 振りかぶって地を蹴ったマグナの剣が、鱗に覆われていないオロチの腹に突き刺さる。
 そのまま、自分の体重を利用して、マグナはオロチの腹を斬り裂いた。
 返り血を避けて、素早く跳び離れるマグナ。
 裂けた腹から血と臓物がぼたぼたと零れ落ち、立て続けに巨大なダメージを負ったヤマタノオロチは、ゆっくりと前のめりに倒れた。
「油断しないでください。まだ、生きてますよ」
 耳元でにやけ面の声がして、ビクッと飛び上がりかける。
 見回しても、フードを被った姿は近くに無い。いつものように、また消えて様子を窺ってやがったな。
「なんだ、まだ居たのかよ」
 ビビらすな。
 ある程度予測してなかったら、心臓止まってるぞ。
「とは、つれないお言葉ですね」
「いや、感謝はしてるよ。いちおうな」
 オロチの巨躯を一瞬にして凍りつかせたのは、きっとこいつの唱えた『マヒャド』に違いない。冷気を操る魔法の中では最上級の呪文だ。
 多分だが、さっき炎に包まれた俺達がなんとか耐え切れたのも、こいつが『フバーハ』を唱えてくれたお蔭だろう。
658CC 36-34/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 13:13:25 ID:u6beJPRn0
「ちょっ――おいっ!?」
 慌てて後を追う。
 相変わらず、無茶しやがる――つか、やっぱり横を通るだけでも熱ぃな。こんなとんでもない火炎の直撃を喰らって、なんで耐えられたんだ、俺達。
 ようやく炎壁を回り込むと、マグナはかなり先行していた。
 どうすんだよ――援護――呪文――まだ、もうちょい無理か――
 気ばかり焦って手をこまねいていた俺の視線の先で、オロチの全身がいきなり凍りついた。
 さっき俺が唱えたヒャダルコとは比べ物にならない、圧倒的な冷気。
 瞬間的に冷却された空気が凝固して粒となり、パラパラと巨大な氷の彫像を取り巻いて降り注ぐ。
 少し遅れて、ヤマタノオロチの頭上の空気が、バチッと音を立てて爆ぜた。
 轟く雷鳴。
 雷光が激しくオロチの全身を這い回り、皮膚に降りた霜ごと焼き焦がす。
 あれは、マグナの『ライデイン』そのものじゃねぇか。
 あいつ、呪文を唱えてねぇよな?
 そのマグナは、ヤマタノオロチの足元に辿り着いていた。
「はああぁぁっ!!」
 振りかぶって地を蹴ったマグナの剣が、鱗に覆われていないオロチの腹に突き刺さる。
 そのまま、自分の体重を利用して、マグナはオロチの腹を斬り裂いた。
 返り血を避けて、素早く跳び離れるマグナ。
 裂けた腹から血と臓物がぼたぼたと零れ落ち、立て続けに巨大なダメージを負ったヤマタノオロチは、ゆっくりと前のめりに倒れた。
「油断しないでください。まだ、生きてますよ」
 耳元でにやけ面の声がして、ビクッと飛び上がりかける。
 見回しても、フードを被った姿は近くに無い。いつものように、また消えて様子を窺ってやがったな。
「なんだ、まだ居たのかよ」
 ビビらすな。
 ある程度予測してなかったら、心臓止まってるぞ。
「とは、つれないお言葉ですね」
「いや、感謝はしてるよ。いちおうな」
 オロチの巨躯を一瞬にして凍りつかせたのは、きっとこいつの唱えた『マヒャド』に違いない。冷気を操る魔法の中では最上級の呪文だ。
 多分だが、さっき炎に包まれた俺達がなんとか耐え切れたのも、こいつが『フバーハ』を唱えてくれたお蔭だろう。
659CC 36-35/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 13:18:17 ID:u6beJPRn0
「礼など要らん――どれ、俺も手伝おう、アリアハンの勇者殿」
 無事と言っても、無傷には程遠い。ファングはらしくもなく、ややよろめきながら、ひどく億劫そうに剣を持ち直した。
『ベホイミ』
 呪文を唱えたのは、リィナだった。
 振り向いたファングから、リィナはぷいと顔を逸らす。
「……お礼じゃないから。トドメを刺すなら、キミの剣の方がいいでしょ。勝負ついたし、ボクはもういい」
 投げやりな口調で言って、ぺたんと地面に腰を落とす。
「礼は言わんぞ」
「要らないよ。ほら、さっさとマグナを手伝ってあげなよ」
 ファングは苦笑して、ヤマタノオロチに止めをさすべく、マグナの元に向かった。
「どうやら、問題無さそうですね。それでは改めて、私達はこれで失礼します」
 姿が見えないまま、にやけ面の声だけ聞こえた。
「アルス。お前も、いるんだろ」
「ああ」
 呼びかけると、思ったよりも近くからいらえがあった。
「いいのかよ。マグナにひと言も無いままで」
「さっき、ちょっと話したよ。それに、これ以上は色々聞かれて困りそうだからな、このまま行くよ」
 ああ、そう。お前がいいなら、それはいいけど。
「おっと、ヴァイスさんもですよ。先ほど申し上げたように、何を聞かれても、今はお答えするつもりはありませんから」
 ちぇっ。にやけ面に、機先を制された。
 まぁ、いいや。他に当てが無い訳でもないからな。
「分かったよ。さっさと行ってくれ」
 目に映らないお前らと喋ってたら、独り言ばっかぶつぶつ言っるみたいで、俺がおかしくなったのかと勘違いされちまうよ。
 そう文句を言うと、にやけ面はハハハと珍しく声に出して笑った。
 なにが、ハハハ、だ。何も面白くねぇぞ。
「それでは、またいずれ」
「じゃあな。くれぐれも、マグナをよろしく頼む」
 手前ぇに頼まれる筋合いじゃねぇよ、アルス。さっきから馴れ馴れしいぞ、お前。
 にやけ面が『ルーラ』を唱え、辺りから二人の気配は完全に消え失せた。
660名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 13:22:55 ID:geF/D4GD0
支援ついでに

33と34が同じになってますよ〜
661CC 36-36/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 13:27:00 ID:u6beJPRn0
 下火になった炎の向こう側に、駆け寄ってくるエフィや姫さんが見えた。
 さらにその後ろ、村の方から慌しい気配が届く。
 どうも、大騒ぎになりつつあるようだ。
 当たり前だけどな。いくら夜も更けた頃合とはいえ、国を治めてた女王様のお屋敷が、これ以上ないくらいド派手に燃え落ちてるんだから。
 しかも、それをやらかしたのは、これまでさんざんこの国の住人を震え上がらせてきたヤマタノオロチときてやがる。騒ぐなっていう方が無理だ。
 しばらくは火勢とオロチを畏れて遠巻きに眺めるだけだろうが、やがて様子を確かめに村の連中が近付いてくる筈だ。
 なんだかドッと疲れを感じて、その場にへたり込む。
 説明すんの、めんどくせぇ。
 どうせ、俺の役目になるんだろうなぁ。
 それだけならまだしも、ジツは大して何も終わっちゃいないのだ。
 飛びついてきた姫さんを抱き止め、無理をしてエフィに力無い笑みを向けながら、俺はうんざりと考える。
 確かめなきゃいけないこともあるし、マグナ達との関係にしたって、ひとまず棚上げにしてただけだもんな。
 やれやれ。この後のことを思うと、気が重いよ。
 
 
 
662CC 36-34/36 ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 13:28:29 ID:u6beJPRn0
 だが、こいつにはあまり弱みを見せておきたくない。その心理が先にきた。
「でもさ。言ってみりゃ、俺達はあんたらの不始末の尻拭いをさせられたみたいなモンだろ?」
 こいつらの企みがどうであれ、さっき本物のヒミコをきっちり斃しといてくれれば、こっちはこんな苦労をしなくて済んだんだ。
「これは手厳しい。ですから、私達も協力したじゃありませんか」
「最後だけな。どうせ、今の俺達の力を測るつもりで、途中まで手ぇ出さなかったんだろ」
「その辺りは、ご想像にお任せしますよ」
 ぬけぬけと言いやがる。
 目を戻すと、地に伏して弱々しく蠢いているオロチの首を切り落とそうと、マグナが苦労していた。
 俺は、奇妙な気分に襲われた。
 つい、マグナを制止しかけたのだ。
 この気持ちがどこから来ているのかは、見当がつく。
 言っておくが、全裸で言い寄られたからって、ヒミコに情が移った訳じゃねぇぞ――いや、ある意味、それもあるのかな。
 なんというか、ヒミコは魔物として、あり得ないほど異質だった。驚くほど人間じみていた気がするんだ。あのニュズよりも、よっぽどな。
 その感覚は、あまり面白くない想像に繋がっていた――簡単に言うと、このまま殺していいのかよ。そう思っちまったんだ。
 物思いに沈んだ俺の耳に、ガランと金属音が届いた。
 放り出された盾が、地面で揺れていた。
「やれやれ。命冥加なことだ」
 疲れた声で呟いて、ファングが大儀そうに身を起こした。
 押し倒されていたリィナも立ち上がって、ぱたぱたと全身を払いながら、ファングを睨みつける。
「フン。余計な事をしたか?」
「……別に、お礼は言わないから」
 煤けた顔でニヤリと笑ったファングに、こちらも真っ黒な顔をぶすっとさせて返すリィナ。
 炎に強いっていう盾を使って、ファングがリィナを庇ったみたいだな。まぁ、とにかく二人とも無事で良かったよ。
663名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 13:34:29 ID:JtY40Sq1O
紫煙
664CC ◆GxR634B49A :2008/10/24(金) 13:43:06 ID:u6beJPRn0
>>660
ぎゃあ!!す、すいません、34も投下しておきました。

ということで、第36話をお届けしました。
 
 
 
 
 
\(^o^)/
 
 
 
 
現状どうしようもないんですが、今回やっぱり無理矢理過ぎた。。。
途中で投下を止めたくなる気持ちを抑えるだけで必死でした><
なんかもう、色々とすみません。。。

でも、投下したからには後戻りできないので、気を取り直して次また頑張ります。
宜しければ、ご笑覧いただければと思います。
665名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 14:09:54 ID:tUpJAFPH0
おつかれちゃーん。
仕事中だけどコソーリ読んだよう。
アクションしながらきっちりツンデレ入っているところが( ・∀・)イイ!
次もwktkしながら待ってるからね!
666名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 18:22:27 ID:dXHktccx0
乙&GJ
ヴァイス君の師匠らしいあの人の知り合いとらしき方も、やはりツンデレなのでしょうかw
667名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/25(土) 00:58:35 ID:DI47XO0Y0
うおう!久々に超乙!!!!
なんかキングギドラみたいなヤマタノオロチ想像したw
ヴァイスもだんだんとカッコよくなっていきますね

投下されたばかりなのにもう続きが読みてええええええええ!!!!!!!
668名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/25(土) 01:49:08 ID:xWp4ZNt70
超久々の乙ー
ライデイン(らしき物)を使ったのはやっぱり・・・なんとなくわかってきたかもしれないような全然違うような
妄想しつつ続きを待つのみ
669CC ◆GxR634B49A :2008/10/27(月) 02:47:13 ID:vW7YIbXb0
レスありがとうございました〜。
なんだかんだで誰かしらツンデレしてますよね?よね?w
キングギドラは好きでしたねぇ。確かに魔物より怪獣って感じかもw

今回、声だけ登場した人は、本来ならば前々回あたりで存在をほのめかしておくべきだったんですが、
そこを書いていた時は、余計な描写が増えると話の焦点がボヤけるなぁ、と自重してしまったんですよね。
ヴァイエルとも、またちょっと違った性格になるかもです。

この先はアルスをはじめとする伏線の回収などで、ハナシが段々と面倒臭くなりますが、
なるべく面倒臭く感じないように書いていきたいです。
と言うのは簡単な訳ですが、さてどうなることやら。。。

続きを待ってくださる方がいるのは、本当にありがたいことです。
まだ当分は仕事の方がどうにもこうにもという感じなので、あまり無責任なことは言えませんが、
なんとか書き進めていきますので、次回投下の際には、またよろしくお願いします。
670CC ◆GxR634B49A :2008/10/30(木) 01:32:33 ID:L2+9pfoU0
保守の流れを作るべく、セルフ保守
671名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/30(木) 01:37:37 ID:XjqgrcYP0
ここらで一発保守!
672名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/02(日) 02:38:57 ID:rc3hUnbz0
ほしゅ
673名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/04(火) 15:17:20 ID:nrTTVoTd0
ちょい質問なんだが此処って百合OK?
674名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/04(火) 17:36:01 ID:krQ37qL30
>>673
個人的には…。別スレの方がいいと思います。
ツンデレですしね、ここは。
他の方の意見も聞いてみてください〜。
675名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/04(火) 19:44:04 ID:iR5Wlv200
>>673
ツンデレならばおk
百合ツンデレってみたことないな
676名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/04(火) 21:22:00 ID:dbBM4fOA0
俺的には百合ツンデレは日曜日に投下されるもの

そんなことはどうでもよくてドラクエでツンデレなら大丈夫かと
…ウホッはまずいか?
677名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/05(水) 01:41:01 ID:6yYpKqWlO
ウホッは百合と違って嫌悪感抱く人が多いからな…
俺? 俺はウホッなのは心を一時的に殺してストーリーだけ楽しむよ
678名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/05(水) 10:55:12 ID:SIVfFub90
おお久々の投下だ乙。
なんか1スレに4〜5回の投下になってきたな。
679名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/05(水) 20:10:33 ID:AJSYhwZV0
ところでツンデレって実際のデータの性格表で行くとどれになるんだろうか?
やっぱ「みえっぱり」? 「ひねくれもの」とかも考えられるし
「いっぴきおおかみ」とかでも良さそうではあるが。

後、ついでにおっとり系のあらあらうふふな人はどんな性格が適切だろうか。
一応今の所「おちょうしもの」か「せけんしらず」「おじょうさま」辺りとは思うのだが。
680名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/06(木) 01:50:08 ID:zuOJv/MM0
保守ってハニー
681名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/07(金) 20:39:28 ID:t27dgeYF0
保守
682名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/09(日) 22:44:19 ID:M5k+ik/g0
683CC ◆GxR634B49A :2008/11/10(月) 13:46:49 ID:ycKBJIg+0
ふーやばいすごい忙しい上に水漏れとか発生しててんやわんやですよあっはっは
進捗は牛歩です、すみません。。。
684名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/11(火) 01:38:05 ID:5DiUuaFA0
気にしないで頑張れ〜!

ゆるゆると保守
685名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/12(水) 00:47:03 ID:GzdIwb8TO
おじょうさまはツンデレなイメージ
マリベルもお嬢様だし
686名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/12(水) 03:52:40 ID:XazacIhqP
このスレは最近勢いがない
月に1、2度誰かが少し投稿する程度じゃだめだ
何か新しい風が必要だ

誰か長編大作をハイペースで更新してくれるとかしないかなぁ・・・
某理想郷のスクエニ板並を望む
687名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/12(水) 14:21:15 ID:yjbz0gjc0
それは俺も思ってたけど
長編大作をハイペースで最新、なんて暇人あんまりいないぞ
688名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/13(木) 18:36:19 ID:M71UOxtj0
YANAさんってどうなったの?
689名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/14(金) 00:16:24 ID:aWsCS+Hd0
あの人はかける時間に見合ったクォリティの作品を提供するタイプだと思うんだ
いい物書くけどすごく筆が遅いから、気長に鼻を長くして待つといい
690名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/14(金) 19:20:30 ID:zQbxKhtq0
>>689
thx
俺が気付かなかっただけで断筆とかしたわけじゃないんだな。安心した
いつまでだって鼻の下を伸ばして待つよ
691名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/15(土) 16:26:36 ID:cOUkkqYeP
ネタがないなぁ。
やる事ないから、上で出てる理想郷のスクエニ板作品について
適当に雑談するとかはスレ違いになるんだろうか。
692名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/15(土) 19:13:52 ID:nIpqWPgC0
まぁ、何の話題でもいいからすればいいと思うよ
一ヶ月保守だけで埋まるよりは
693名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/15(土) 20:01:16 ID:QJVFeDAlO
雑談のネタにはならんがCC氏の作品のタイトル教えて欲しい。
ブックマークが「CC投下分」なの寂しいんだ。
もしかしてスレタイがそのまま作品タイトルなのかな。
694名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/17(月) 07:27:40 ID:6GWvmjlkO
メラ
695名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/17(月) 18:51:38 ID:H6F1XKqY0
>694
逆呪文
らめぇぇぇぇっ
696CC ◆GxR634B49A :2008/11/19(水) 07:19:21 ID:DiTBjYmL0
ですよねー。最近、ホントに投下できなくて申し訳無いです。
ちょっと進みましたが、まだ予告できるほどではありません。
とても心苦しいんですが、仕事の〆が間に合うのかこれ、みたいな状態なので。。。

>>693
あっ、とうとう気付いてしまった方が現れたw
すみません、ジツはタイトル考えてないのです。
なんかしっくりくるのが思いつかなくて。。。最終話までには考えておきたいと思います。
。。。意味ないですねw
697名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/19(水) 10:25:12 ID:urQPqObwO
そしてツンデレへってフレーズについてつらつら考えてたら
オルテガ=ツンデレ という電波を受信した。
「だ、誰もついてくるなよっ!」→ホントに一人旅ショボーン

>>696
レスありがとう。
いやいや、適当なタイトルでお茶濁すより
しっくりくるタイトルついた方が嬉しいので
思う存分悩んでくれw
698名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/20(木) 02:38:47 ID:QIWrhnbW0
ドラゴンクエスト外伝
〜マグナと愉快なCC氏〜

とかどうよ?
699CC ◆GxR634B49A :2008/11/20(木) 06:17:24 ID:bvlW4jsG0
>>697
「あれ?そういえば副題は毎回考えてるけど、肝心のタイトルを考えてないぞ?」
と、何話か書いた後にようやく気付いたとゆうw
そのまま今に至る、みたいな。ジツは名前つけるの苦手です><

>>698
私がパーティ入りしてるみたいなw

。。。あっ、思い出した!!綺麗さっぱり忘れてたけど、ジツは考えてたかも!!
あー、でも今考えると、タイトルに相応しくねーなーw
もったいぶる訳ではないんですが、諸事情により、もう少し後に発表するかもです。
もしくは、もっとしっくりくるのを考え直します(^^ゞ
700名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/21(金) 22:21:16 ID:5p6hMuSZ0
ちょい、ここの読者さんに聞きたいのだが
SSの登場キャラの絵があると萎えるかな?
なんかSS描こうとしたら先に設定絵が出来てしまっている件
701名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/21(金) 22:36:25 ID:cKL8kL4z0
自分の話に自分の絵をつけるのは誰も文句言わないんじゃね。他の人のならやめておいた方が無難
小説の面白さって100人が読んだら100人が違う絵を思い浮かべる所だと俺は思う
もちろんイメージありきで面白さが伝わる作品もあるから一概には言えないけども
702名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/22(土) 10:11:17 ID:IeJvuNgq0
でも100人が読んだら〜だからこそ
「俺のイメージするアイツはこんなんだぜ!」
って晒すのも一興だと思う
俺は自分の書いたものに絵を描いて貰えたら例え自分のイメージと違っても嬉しいな
もちろん嫌がる人がいるのもわかるけど
自分で描く分には全く問題ないどころかむしろ漫画にしちゃえば?www
と思ったけどここってSSスレってなってるんだな
何でもありにすればいいのに
703名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/23(日) 13:35:55 ID:BDZUJVZ80
そういえばマグナとかの絵はあったはず。
俺のイメージとは違ったので、作品を読む際、邪魔にならないように
脳内あぼんした。

まあ作者の了解があれば、描いてもいいんじゃね?
名無しは気に入らなきゃスルーすればいいんだし。
704名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/24(月) 00:14:15 ID:3PI2XqAm0
バトルロワイアルスレなんかだと
お絵かき掲示板とかあるけど
もちろん書き手と絵描きは別人で
まーもともとあっちはリレー小説だが
705名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/27(木) 09:48:48 ID:4xMXAUzg0
706名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/27(木) 17:41:01 ID:zodamf/I0
707名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/29(土) 02:28:40 ID:MSHHKvGt0
保守
708名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/11/29(土) 20:51:01 ID:Sy2K+IgU0
隠し武器の 光魔の杖 ってどこで手に入るの?
709名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/02(火) 02:26:18 ID:9OG70nkGO
710名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 22:27:42 ID:kIVN+nsj0
711名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/03(水) 22:42:57 ID:+QYQAfxV0
につつまれてぇ〜
712名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/04(木) 21:55:47 ID:dkYJwRsx0
713名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/07(日) 00:30:52 ID:GBgRFLlO0
714名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/08(月) 00:49:03 ID:k5uwclx9O
715名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/08(月) 10:19:43 ID:/s7v67EG0
716名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/08(月) 15:13:56 ID:ayuaoxpPO
717名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/08(月) 22:34:37 ID:ZOmVOU7s0
718名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/10(水) 11:18:59 ID:GYTm5eFL0
うともがくとも、その腕は届かない・・・
719CC ◆GxR634B49A :2008/12/11(木) 05:09:09 ID:EGb9QzSE0
また書き込みの間が空いてしまいました、すみません><
えぇと、頼んでもいないリフォームが入ることになったりで、
仕事もあるのに部屋は片付けなきゃいけないしで、なんかもーどうしていいのやら。
お待たせしてばかりでホントに申し訳ないんですが、空いた時間に
ちょこちょこ進める形だと、どうしてもはかがいかず。。。
今年は特にゴタゴタし通しだったので、今の仕事と身辺が落ち着けば、
少しはペースを取り戻せるかと思います。
いちおう少しづつ進めてはいるので、今年中に1回は投下するつもりです。
次回の書き込みまでには、投下の目星をつけられるように頑張ります。
720名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/11(木) 18:39:28 ID:5BH4vFOBO
アルスとマグナて兄妹なの?
721名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/12(金) 10:34:27 ID:dzH8ji6B0
二人揃ってアルスマグナ
大いなる秘術か何かだっけ

マグナ二人でツインマグナライフr
722名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/14(日) 16:23:13 ID:5+jzlcDJ0
保守ってハニー
723名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/16(火) 22:18:23 ID:Jrpe3sbf0
724名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/19(金) 23:44:21 ID:v35Zyyoy0
守るよ!
725名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/22(月) 00:38:55 ID:8LX7RKjG0
保守るよ!
726名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/23(火) 16:54:53 ID:qTDfX3MAO
俺がサンタにCC氏の新章頼んだからきっと明日にはくるはず…
727名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/23(火) 17:08:12 ID:fX9q8db00
オルテガ「魔王なんざさくっと倒してきてやる」(ツンの状態)

魔法の玉見つからず

ルイーダの酒場で呑んだくれ(デレた)
728名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/23(火) 18:27:30 ID:NDfpgoLsO
メメントモリ
729名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/24(水) 22:54:23 ID:IlDQ5AnB0
一人きりのクリスマス保守
730名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/25(木) 02:52:54 ID:e/0JWcYA0
さっき黒サンタがcc氏誘拐してっちゃったよ・・・
731名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/29(月) 11:58:11 ID:ouyRRyMx0
732名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/29(月) 23:09:59 ID:uLaiTcC90
733名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/30(火) 04:51:21 ID:2KDkxy9j0
払子
734名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/31(水) 02:23:54 ID:kR9hsdvgO
まあ、来年もまったり頑張りましょう
735名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/31(水) 09:17:17 ID:tGUycENuO
まだだ、まだ終わらんよ
736名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/31(水) 12:06:12 ID:hiK/S3dyi
2009年もcc氏頑張れ保守
737名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/12/31(水) 16:14:43 ID:qWF1KGpC0
ここでまさかの投下が来たら今年中にスレ消化できるお( ^ω^)
738CC ◆GxR634B49A :2008/12/31(水) 22:53:32 ID:15+QFQt/0
ダメだー、タイムアップだー><
いくらなんでもクリスマス前には投下できると思ってたのに、年内にも間に合わない体たらく。
何故なら、年末年始も仕事しなくちゃいけなくなってしまったから。
これはヒドい。ホントにすみません。
大嘘吐きにならないように、せめて年内には間に合わせようと頑張ってみたんですが、
これ以上こっちに時間を使うと仕事が洒落にならないトコまで来てしまいました。。。
なんていうのは、私の勝手な事情であり、年内投下が守れなくてごめんなさい!!
でも、もう無理!!来年になります!!は〜、もう、自分で嫌になる。

ということで、今年も一年、本当にお世話になりました。
年間通して、投下がままならずにすみません。
ちょっとフライングですが、来年もどうぞよろしくお願い致します<(_ _)>
来年中に終わらせるのが、個人的な抱負です。
抱負というか、終わらせないといい加減ヤバいとゆうか。
739名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/01(木) 00:12:02 ID:ufqQoWCT0
スレのおまいら、CC氏、そしていまだ見ない作者様達。
あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします保守。
740名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/02(金) 14:20:11 ID:Chj9MRG80
ほしゅ
741名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/04(日) 01:48:15 ID:l/ZmvY680
捕手
742名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/06(火) 11:19:33 ID:/m0AmjQo0
目出度い新年に保守!
743名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/08(木) 16:18:57 ID:gnDPXd/t0
唐突だけどツンデレってもう下火だよな・・・
このスレももうCC氏しか継続して投下してくれる書き手さんがいないし
いっそNEW書き手さんが書きやすい様に
スレタイ変更andドラクエ3ならどのジャンルでもOK!ってのは如何でしょうか保守
744名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/08(木) 16:31:37 ID:GCad4uwKO
今月はマグナ達に会えるかな。

>>743
個人的にはツンデレという属性にこだわりはないんだが
「DQ3なら何でもOK」だとここで書く必要がないから
(他にいくらでも投下する場所はある)
かえって新たな作者を生み出しにくくなる気がする。
ここはツンデレという縛りがあってこそじゃないかなと。
あとやっぱこのスレタイは重要だと思うw
745名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/08(木) 23:01:52 ID:o2poLYaX0
>>743
元々このスレは、DQ3専用じゃなくツンデレ専用ですぜ。
過去に4の話も投下されてるし。
746名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/09(金) 16:08:05 ID:Dq4LrYlkO
俺達はツンデレを求めて止まないからこのスレにいる。

しかしここも長いな。もう何年になるんだ。
747名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/09(金) 22:18:13 ID:BdEb37TyO
まぁ皆もう一度過去ログ読んで来なさいよ
何回読んでも萌えれるから
ついでにスレの成り立ちも思い出せばいい

あと3の話が多いのはキャラの設定が自由に作れるからだと思う
ムーンはいいけど4以降の女性キャラは名前があって当然性格もゲーム内である程度描かれてしまうからなぁ
自由に作れるのは5王女ぐらいか?
748名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/09(金) 22:20:30 ID:BdEb37TyO
>>746
あとIDがドラクエ4
YOU書いちゃいなYO!
749名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 11:48:24 ID:9TOCR5DK0
とりあえず新年だしYANA氏の生存確認がしたい・・・
750名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 12:09:24 ID:BYzsiUqr0
明日辺り投下してみようと思う新人なのだが
えーと、何か投下する前に諸注意とか書いた方が良いんだろうか?
一応、ドラクエ3ネタ、女勇者ツンデレの予定なのだが
751名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 19:10:31 ID:u1plnxmk0
このスレに注意事項ってあったっけ?
とりあえずなんの問題も無いと思います
じゃんじゃん投下しちゃってください
752名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 19:47:31 ID:uFbcgAeu0
他の人と投下が被るとかもまずない品

>>750さんがんばってくれ。期待してるぜ
753名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 21:22:30 ID:tlIxR54PO
ツンデレならばよし
754名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 21:31:39 ID:BYzsiUqr0
750-753
レスサンクス。早ければ、明日の午前中までにはあがる予定。
では作業戻ります。
755名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 22:50:44 ID:5dQ9L3eLO
じゃあ、服を脱ぐか
756名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/11(日) 23:17:35 ID:Sr12NWQ60
ついに新しい風が・・・CC以来1年半ぶりの新人じゃね?いいことだwktk
757名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:06:37 ID:guS9cK4n0
では、投下はじめさせて頂きます。よろしくお願いします。
758名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:11:47 ID:guS9cK4n0
     ―虚救旅団―
     序章の一人目「診断結果:気が触れたツンデレ(みえっぱり) 矯正職業:世界を救うゆうしゃ」

 物語冒頭。主人公的な立場で登場する女、ムスチナ・ファシトスーナ(以下ムスチナ)は気が触れており、尚且つツンデレであった。
 前者はムスチナの深層心理を分析した結果であり、後者はおそらく表面上のムスチナの性格を形容した結果である。
 後者についての説明に入る。彼女は非常に道徳心が高く、自らを律し、己に厳しい娘である。
 ムスチナの父は旅の戦士だった。ムスチナの母は売女であり、彼女をこの世に産み落とした時、死んだと聞かされている。
 父の名も知らず、母も知らなかった少女は母親の縄張りであった酒場で育てられる。
 目つきは良い方ではないがなんとも言えぬ凄味を見せており、母譲りの艶もわずかに残している。
 しかして、彼女の半生はその痕跡を消す贖罪の様であった。
 文句も言わず働き、教会で本を読んでは勉強をを重ね、簡単な武芸の真似事も練習をしていた。
 文字通り、文武両道を絵に描いた様な優等生であった。そう、良い意味でも悪い意味でも彼女は優秀だ。
 ムスチナは人当たりはよくなかった。潔癖過ぎるのだ。冗談を理解しなかったし、常に正しくあろうとしていた。
 だが、接し慣れて優しくされるてくるとその情はきちんと伝わる感受性は持ち合わせていた。
 しかし、ムスチナはその情をまっすぐに受け止められなかった。頬を染め、解り易く緊張しながらもつっけんどんに言葉を返していく。

「別に褒めらたくてやった訳ではありません」

 この様な言葉を返してくるムスチナを大半の人間が現代的な性格表現の一つであるツンデレ、あるいはそれに類するものと評する。
 愛くるしい少女の恥じらい、それの普段のギャップが素敵だ、可憐だ、可愛い、生意気だとムスチナの育った町の人間は言う。
 健常者であるという前提の下に考えればその結論に至るのはごく自然であろう。
 多くの大人に生かされて、遠慮がちに人と接し、正しくあろうと生きているのだと彼女自身も勘違いして生きていた。

 ムスチナはある日夢を見る。気がついたら森の中に居た。崖のほうへと一本の道があった。
 導かれる様に其処へ向かうと大きな滝があった。頭の中へと声が聞こえてきた。
 女性の声だ。そして、崖の端まで歩を進める。理由は特にないというか他にいけそうな場所が無かったのだ。
 
「聞こえますか。 私の声が聞こえますか」
「はい。聞こえています」
「私は精霊ルビスです。貴女は運命の子だと告げにきました」
「はぁ」
「貴女なら世界を救えるかも知れません」
759名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:13:52 ID:guS9cK4n0
 ムスチナは疑問に思う。大人達がそういう”モノ”がいることは聞かされている。
 しかし、彼女はそんなものを実際見た話を聞いた事が無い。勿論自分も精霊と言うものを見たことが無い。
 見たことが無いのに存在する筈である精霊。この世界を創造したというルビスが何故こんな小娘に声を掛けるのか。
 ルビス〈自称〉は自分が世界を救うという。過程が抜けている。また、世界を救うという結果の意味がわからない。
 ただ、彼女はそれに疑問にし、質問して回答を期待するという思考には至らなかった。
 こんな夢に興味が無かったからだ。唯一の興味はこのルビス(自称)は一体どんな存在なのだろう。
 女の声や口調に聞こえた。では、女なのか? そもそも性別を持っているのか?
 男だけどこんな声と口調なのか?赤ん坊を産むのか卵を産むのか?
 半ば朦朧とした意識の中でぼんやり思い浮かんでくる泡沫の興味は煮立ちかけの湯の様に沸いては消えていく。

「貴女を深く知る為に今から質問をします。正直に答えてください」
「解りました。どうぞ」
「では、まず」

 ルビス(自称)はなにやら自分について質問を続けている。良く解らない。
 名前を聞かれた。生年月日を聞かれた。続けられる質問。
 些細な事例や好みで自らの性格や方向性を見出そうとしてくる。
 ムスチナは疑問に思う。何故、世界を救う運命を見知っている神がこんな質問をするのか?
 この意図は何なのか? むしろ、此処に呼ばれ自分に質問することに意味があるのか?
 疑問は連なるがムスチナにはその回答に興味が無いから逆に質問をする事が無い。
 ただただ、尋ねられて答えられていく。ルビス(自称)もその無関心さに感付いたのか
 先ほどと同じ質問をする。ムスチナは同じ質問をされたことに気付いた。
 彼女は初めて、ルビス(自称)の存在(詮索するほどの価値の無い事柄)以上の興味を持った。
 このルビス(自称)はどう評価するのか。同じ答えなら、趣旨一環した正直者か、気付かなかったただのアホか。
 違う答えなら、うそつきか、真摯に答えない怠け者か。むしろ、そんな人間が世界を救うというのか。
 やっぱり貴女ではなかった様ですと前言撤回してしまうのか。前者より後者の方の回答に興味を持った。
 この夢において初めて自主性を含める行動を取った。顔をわずかに上げ、虚空を見つめ、期待と興奮の混じりを
 ひた隠しにしたまま、喉を鳴らし、鼻息を僅かに荒げ、目の瞳孔を開きながら嘘をつく。

「貴女は嘘をつきましたね。先ほどの回答とは違います」
「嘘をつくことは悪い事だと思い、嫌いです。だけど、人間は間違えます」
「……まぁ、それもいいでしょう」
「いいのですか?」
「ではこれが最後の質問になります。」
760名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:17:48 ID:guS9cK4n0
 残念そうなのを悟られない様に言葉を返していく。ムスチナにとって此処まで故意と悪意に満ちた嘘は久しぶりだった。
 期待を裏切るルビス〈自称〉の対応にため息を心の中で吐いていた。
 世界が暗転し、目を覚ませばどこか町に居た。目の前には池のほとりにたたずむ老人と少年が居た。
 なにやら会話をしている。話を振られる。私に財布を取ってきて欲しいらしい。
 理由は先ほどわざと聞こえる様に芝居じみたやり取りで説明された。
 老人が足が遅く、少年は腹を減らしている。家に帰れば食べ物位ありそうだ。
 理解の範疇を超えている不条理だった。けど、ムスチナは夢の中で疲れることは無いだろうと快諾する。
 脊髄反射的な善行。否定する理由が無いし、この行動もルビス(自称)に見られているのだろう。

「解りました。タンスの中にあるんですね」
「宜しく頼むよおじょうさん」
「早くしてねぇー」

 普段の自分ならこうすると思われた行動だからか会話も意外とスムーズに終えた。
 指定された家へと向かう。タンスを開ける。財布を見つける。振り返れば女の悲鳴。
 それから先の記憶は彼女にはない。もとい、無かったことにしている。
 本人が思い出したくないし、内容を話の中盤に持って行きたい所謂伏線である。
 再び滝の見える崖へと景色が移る。先ほどのが幻影だったのかと汗だくで膝を突きながらも
 ムスチナはその場へと倒れ付していた。疲労の色は濃いどころの騒ぎではなく顔中体中を塗りつぶしていた。
 嗚咽の声が鳴り響く中、風景はその彼女の苦悩を無視するかの様にただ静かに同じ情景を繰り返している。

「貴女の性格がわかりました。貴女は”むっつりスケベ”です」
「ううっ、気持ち悪い……ハァッ!?」
「貴女は頭の中は色情であふれかえっています。
 しかし、それを感づかせない様に日々分厚い仮面を被って生きています」
「ちょっと待ってください。何かの間違いではありませんか? もとい、間違いにしたいのですが」
「間違いではありません。貴女は確かに確実にむっつりスケベです」

 ムスチナは口をぱくぱくとさせる。人生になんら影響があるとは思えないこの大層大掛かりな夢の戯れ言とはいえ
 当人には許容しがたい内容であった。スケベだと? 自分が色狂いだとルビス(自称)は言うのだ。
 聖人君主とまではいかなくても人としての道をまっとうに歩いていたの自分がふしだらな雌だと言うのか。
 ありえない。認めたくない。ほんの数刻前まで塵程も興味がなかったこの夢に今は彼女の掌握している脳細胞全てが働いている。
 ムスチナはルビス(自称)に口答えをする。焦りに視線をさまよわせ膝を突いたまま青い空の虚空を見つめる。
761名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:20:00 ID:guS9cK4n0
「文句や疑問点は多くありました。それはどうでも良いのですが流石にその評価は許せません」
「別に悪い事ではないのですよ。男女がある生命は大なり小なり性欲があり恋をし、肉欲的に愛し合います。
 ただ、貴女はそれに対して、恥じらいと欲求を強く持っているという事を指摘しただけです」
「仮に本当だとしてもむっつりという側面から否定してしまっているのですが
 16の娘がスケベと認められる訳がありません。居たらただのあばずれです」
「そうですね。そういうのを認めている方にはセクシーギャルと告げています。
 しかし貴女は、認めず否定している。故にむっつりスケベという評価が正しいのです」

 ムスチナの心は狂乱し、心の中で罵詈雑言を反射させて三半規管に叩き込む。
 それは性格なのか? セクシーギャルって性格なのか!?という憤怒の絶叫。
 むしろ、他にも告げているのか。一体何股をかけているんだこのルビス(自称)は!と相手への罵倒。
 ルビス(自称)が告げる様にムスチナの仮面は分厚い。それは受ける言葉も放つ言葉も遮っていた。
 しかし、表情は隠せない。顔は真っ赤になっていて耳まで赤い。まるでゆでられた蛸だ。歯を軋ませる。目を剥く。
 このまま崖から飛び降りてしまおうか? しかし、そんな事をしてもルビス(自称)に何とかされるのは
 賢い彼女には容易に想像できた。だから、歯痒い。ほどほどに賢いムスチナの思考が
 真綿で緩やかに絞殺されていくのをひたひたと感じている。そして、それを感じる事に自己嫌悪も付随されていく。

「このさっきまでのやり取りに疑問もあります……が! 兎に角、私は認めたくありません」
「だから、むっつりスケベなのです」
「わかっています。ただ、それが例え真実だとしても私には認められません。
 そんな真実なら私は嘘や虚構に身を沈めた方が良いです」
「真実の自分からは逃げられませんよ。また、全ての行動もあなたがむっつりスケベだと証明しています」
「それは詭弁です」
「そして、貴女は何より嘘や偽りが嫌いな事も知っています。本当に嘘に塗れた生き方が出来ますか?」
「それはそう……いや、けど……あああああああっ!!!!」

 声にならない声を上げる。恥じらいは身を焦がし、 脳は煮えたぎられて吹き零れる。
 爪で顔をかきむしろうとしたが夢の中で自分に物理的なダメージを与える事は適わず自傷する事も許されない。
 ムスチナはそれほどまでにむっつりスケベなのであろうか。涙が滝の様に溢れ零れ落ちていく。
 目の前の幻想の大きな滝とは違い、此方はささやかだが当人にとっての重さは雲泥の差だった。

 齢16である少女にとって性格の形容など年月や経験を重ねたりすれば幾らでも変化をするものだ。
 むしろ、存在自体怪しいルビス(自称)に何を期待しているのだろう? ”だからなんなのだ”そう思えば楽になる。
 そういう逃げ道になる思考をルビス(自称)は塗りつぶしていく。ムスチナは強烈な羞恥に
 健常な精神状態と性格だったという前提で形容すると気が触れそうになっていた。
762名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:21:06 ID:guS9cK4n0
「いや……だから……で、でも……しかし!」
「解りました」
「……?」
「貴女は見栄を張っています。この様な夢である事には自分はなんら左右されないという強さを私に見せる為
 真実を告げても尚、それに抗い自らは潔く潔癖であると思われたい。
 普段つんけんとした態度は自らの底が暴かれて、矮小だと位置づけている自分を悟られたくはないが為。
 ただし、内心はその本心に触れることを喜んでいるがそれすら恥じらい否定する」
「あ……ああ」
「恋とは、愛とは心が無防備になるのです。自分を曝け出してしまう。それが貴女は怖いのです。
 だから貴女は”みえっぱり”なのです。だが、その見栄がいつか身を滅ぼすことになるでしょう。今の貴女の様に」

 ムスチナは救われた。もとい、こんな夢に監禁されて、詰問されて、拷問されて、侮辱されて、救済された。
 この瞬間ムスチナ・ファシトスーナは勇者として覚醒した。もとい、された。
 ムスチナは歓喜する。どろどろと鼻水や涙やらの混合液を拭い去って拳を握り締める。
 ルビス(自称)はあざけ笑っているのか、涼しげな顔でこの小娘を見つめているのか。
 そんな事は正に神(精霊)のみぞ知る中、壊されて、犯されて、救われたムスチナは立ち上がる。
 ルビス(自称)はまた一人勇者を作ったという事実は揺るがないものとなった。そして、ムスチナは後に思い返してこう結論付ける。
 こんな小手先で勇者を作るのだ。きっと世界位創ってもおかしくない。故に夢の中のアレはルビスなのだろうと。

「世界を救う為の道は長くそしてきわめて困難な道のりとなります。
 しかし、これからどんな苦難を迎えても今日この日の経験が貴女を生かしていくでしょう。
 さぁ、目覚めなさい。貴女を待っている人達がいます」

 勇者(予定)ムスチナは目覚める。汗、涙、唾液、愛液etc。体中から色々な体液を搾り出しつつも
 現実へと逃れる事が出来た。生きている事に喜びを覚えていたが取り合えず母親代わりだった
 酒場の女将が作業をしている物音が耳に入り、ベットから起き上がる。
 幸い小水は漏らしていなかったのが救いだった。何年ぶりかの寝坊をしてしまっている事を恥らいながらも
 寝床から起き上がり下の階の酒場へと降り立っていく。酒場では母親代わりだった女将がなにやら貼り紙を貼っていた。
 ムスチナは小走りに道具を取りに言って朝の掃除を始める。「遅れました」と告げる少女の声が耳に届けば
 女将はそのままちらりとムスチナを見た後、手を休める事も無く店の開店準備を続けている。
 お互い何も言わずに作業が進められていく。沈黙が支配する静かな空気だが一見重そうにはみえない。
 女将にはムスチナが恥じらいの頬を染めてそれを隠しているのが足音で解っていた。

「どうしたい? まるで世界の終わりを見てきた顔をしてるね」
「悪夢を見ました。いえ、あれは何かの天啓か虫の知らせだったのかも知れません」
「死んだおふくろさんでも出てきたかい?」
「それだったらまだ幸せでした。……それは?」
「ああ、昨日船乗りが持ってきたんだよ。まぁ、志願募集って奴だね」
763名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:24:57 ID:guS9cK4n0
 あらかた作業を終えて、ふぅっとお互いが一息つけるタイミングで女将はムスチナへと声を掛けていく。
 ムスチナはその声に答えた後、くぃっと顔を上げて貼られた張り紙を見つめ始める。
 照れ隠しと興味が一遍に解消されるのが動機だった。文面は大雑把に斜め読みをして頭に入れていく。
 イシス城女性兵士募集。アリアハンの旅の酒場登録後、各地に証を手に入れ
 イシス城に来た人間を優先採用する。基本男性厳禁。
 こんな遠くの町にまで募集が来るのをムスチナは初めて見た。
 ムスチナの住んでいる町はある種陸の孤島だ。
 周りの街からあまりにも離れており、少し離れた海辺から大き目の漁船に乗り込んでいた
 行商人が物資を運んでくる以外滅多に旅人も訪れない。
 何も無い町だ。近くに洞窟すらない。立ち寄る価値も住人達ですら見いだせない。
 定期的に来る行商人以外が船を近くの陸に乗りつけてまで此処を訪れるなどなんて珍しい事か。

「ま、あそこの女王は色々うわさもあるけど、女兵士なんて長く使えないからね。
 定期的に募ってるのは聞いたけどけど、時代も変わったもんだ」
「なんでまた?」
「勇者オルテガの息子の噂もあるから人が偏ってるんだろ?
 アリアハン経由なのも猫も杓子も皆あそこへ向かっているからねぇ」

 短絡的な思考の論理帰結によりムスチナはこれを運命もしくは精霊の導きだと解釈した。
 わざわざ、この日に夢に出てきた事も考えれば当然か、あるいはそれを狙ってきたのか。
 どちらにしろ偶然と片付ける気にはなれなかった。否、そういう気にさせられていた。
 急に口ごもり、じっと視線を貼り紙から離さないムスチナの変化に女将は気付いていた。
 赤ん坊の頃は乳を与え、子供の頃からてきぱきと働き、つっけんどんだが愛らしい小娘に
 成長する合間までずっと見ていたのだ。決して母と呼ばせなかったが
 その情と絆な当然の如く親子に限りなく近く、その絆が女将にムスチナの無言の願いを届けていた。

「……あの……これ」
「……ん。あーー。ま、薄々これを見たらやりたいだろうと思ったよ。
 酒場娘やらせるにはあんたは賢過ぎるし性に合わんでしょ」
「……すいません。恩を返す前に逃げ出すみたいで」
「ま、下手な飲んだくれに手を出される前でよかったよ。
 どーせ此処に至ってあんたに釣り合いそーな男もいないしね」

 女将は「寂しくなるから出て行かない方が嬉しいけど」という最後の言葉は飲み込んで胸の中にしまっておいた。
 船乗りと商人を乗せた大きな船へと話をつけてムスチナはアリアハンへと旅立つ。
 丁度あっちこっちでアリアハンへ向かう少年少女や大人達がその船には既に乗っていた。
 十派一絡げ、一山幾らの人材の皿にムスチナは盛り付けられた。彼女の伝説はここから始まった。
764名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 11:26:22 ID:guS9cK4n0
以上です。最初の方ちょっと文章投下量がオーバーしていて少し手間取ってしまってすいませんorz
では投下失礼しました。
765名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/12(月) 22:24:03 ID:qlD6LNdY0
投下乙。
CC氏以外の人の投下って久しぶりだなぁ。
楽しみが一つ増えたぜHAHAHA
766名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/13(火) 02:24:20 ID:GbL1DzoMO
新人さんはいつも楽しみ
それはそうと一番最初の台詞
多分「褒められたくて」が「褒めらたくて」になってるね
書き上げた後どのくらいの時間を置いてから投下した?
767名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/13(火) 02:37:05 ID:QHusVyjM0
冒頭の設定でちょっと不安になったが
まぁ大丈夫そうだな。
むしろ期待大。
どろどろしたネタはじちょぅしつつ
どんどんやってくだしぃ。
768名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/13(火) 09:47:49 ID:TTgkuDvq0

これからどう物語が展開するのか楽しみです
ただ、単なるタイプミスかもしれんが一つだけ気になったんで一応
×聖人君主
○聖人君子
769名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/13(火) 11:58:00 ID:+a9j7Ubv0
>>767
>冒頭の設定でちょっと不安になったが
同じく。危うく無視するところだったw

>>764
すでに指摘されてるようにちょっとしたミスもあるけど、楽しみにしてます。
770名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/13(火) 19:50:22 ID:duTupRkKO
新人さん乙ぅ!ルビスのやりとりで吹いたぜ。

こーいうドラクエらしからぬエロティシズム漂うのもまた楽しいな。ガンバレ!
771名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/14(水) 23:41:22 ID:LeWB1TNX0
知らない間に新人さんが来てたとは


みじけえよ、もっと読みたい、などと我儘を言っておく
772名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/16(金) 10:39:05 ID:/gEQn6Yc0
新人さんがきてるところに申し訳ない
原作ブレイク気味なDQ4のSS思いついたんだけど、ここに載せていいのかしら?
批判なんて怖くないぜ!空気乱すのが怖いんだぜ!とチキンなことを言いつつ逃げるようにサヨウナラ
773名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/16(金) 14:23:44 ID:ap41LF180
>>772
まずは載せてみてくださいな!
作者さんが多いほうが盛り上がるし負担も減るはず。
楽しみにしてます
774名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/16(金) 14:44:16 ID:XVD5rTUW0
>>772
断る理由がないのだが一つ聞きたい事が。
もうそれは出来てるのか、今書いてて調整中なのか
それとも、構想だけ思いついて書き始めてるところ?
775772:2009/01/16(金) 17:18:20 ID:b1wbhi08O
骨子はできてて細々としたところを構想中です
なので完成は出だしだけですが、帰宅したらまとめ直してパパッと上げてみますね〜

4の五章ですけど、スレタイ3ですけど、上のほうで何でもいいと言われてたのでいちおう確認です
776名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/16(金) 20:35:12 ID:b1wbhi08O
ふふふ…帰宅したらネトゲつけっぱなしのはずのパソコンが青画面…Cドライブ巡回エラー…

パソコン直してから調整しつつごにょごにょしてみます…
777名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 01:01:37 ID:zQrSxIO5O
残念だな HDDの中身が無事で有ることを祈ってるさ
因みにメ欄のそれは小文字でな
778名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:17:43 ID:bJw44rHK0
こんにちは。ちょっと前回だけだとイマイチツンデレっぽくなかったので
少し間が短いですが2話目投下しようと思います。
その前に一部レス返信

>>766 >>768
すいません&ご指摘ありがとうございます。
特に聖人君子に対しては今までずっと聖人君主だと思ってたりとorz
出来るだけ誤字出さない様に気をつけます。
779名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:22:11 ID:bJw44rHK0
   ―虚救旅団―
   序章の二人目「診断結果:悲劇的救済願望持ちのタフガイ 適切な職業:厄介払い的にしょうにん」

 晴れた青い空にそれとは少し濃度の違う色合いの大海原。ムスチナはアリアハンへと向かう船へと乗っている。
 元は大きな漁船だったこの船も今は臨時の客船として大勢の人を運んでいる。
 途中途中で他の船も合流し、ちょっとした船団の様になっていた。

 この船旅で登場するのがヤターユ・イスラハム(以下ヤターユ)。この人物は狂わされていた。
 ヤターユは大家族の一員だった。詳細を付け加えるなら、5番目だったか12番目だったか良く解らない位
 親は大勢の子供を産んでおり、当人達もイマイチ人数を確認出来ていなかった。
 ヤターユの親は愛人の子、浮気の子も全て貰い受けて大きな農場を営んでいた。農業というのは人海戦術だ。
 その中で家族ほど効率の良い労働人材は居ない。自分達の食い扶持は自分達で働き
 小遣いも報酬も全てその農作業労働を持って還元し、女は男のところに嫁に行けば時折婿が手伝ってくれる。
 男は嫁を娶れば、労働力を手に入れてくれる。子供が増えればそれだけ労働力が増える。
 食べていくのが大変になったら子供を女衒にでも売って人数調整と資金調達をすればいい。
 そんな、どんぶり勘定の権化の様な家族の中で育ったヤターユはやたらと丈夫だった。びっくりする位丈夫だった。
 力もそこそこあるのだが、特筆すべき持久力と我慢強さはやはり異常だ。
 ヤターユは朝早くから働いて夕暮れの後、農具の手入れや掃除を深夜までする日がしょっちゅうあった。

 ある日、その家族の大多数が風邪をこじらせていった。次々に感染してく中、ヤターユは最後の最後まで作業を続けていた。
 段々と介抱していって日常へと戻る家族を尻目、最後の最後でぶっ倒れたヤターユの高熱は他の者より酷く
 神父の所へと担いでいったら、「命も危ういだろう」と断言された。だが、3日ほど寝かしていたら回復し、次の日には作業に戻っていた。
 その丈夫さは家族にとって恐怖であり、心配事であり、悩みの種であった。何せヤターユは
 腹が減っても、疲れていても、怪我をしても、病気を患っても、一言も泣かず、文句も痛みも訴えない。
 親達が長男長女達ほどの感動や甘えも無く、末っ子達ほどの手を焼かす事も許さなかったのが原因だった。
 だが、結果としてこの子は突然倒れてそのまま死んでしまう日が来るのではないかという懸念が
 大勢の兄弟姉妹の中でヤターユだけにあり、皮肉にも一番面倒を見る形になってしまった。
 故に親も兄姉達に何度も口をすっぱくする程言い聞かされていた言葉があった。

「辛い事、痛い事、苦しい事があったら正直に言いなさい」
780名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:25:01 ID:bJw44rHK0
 ヤターユは自分の我慢強さが怖かった。自分以外が疲れている時点で自分は全く疲れていない。
 自分以外が痛がっている怪我も自分だけは全く痛くは無い。自分以外が辛くなっている病気も全然辛くはない。
 自分はどこか壊れているのではないか? 自分はそのまま痛みを感じず、磨り潰される為に生まれたのではないか?
 何で他の人はたかだか日の出と供に起きてお昼までの間、ずっとで藁を運ぶのに根を上げているのだろう。
 何で他の人はお昼を食べてから夕暮れまで鍬を振り続けた位で疲れてしまうのだろう。
 ヤターユが年を重ねる毎……否、日増しに体力を付けていくので両親は怖くなった。
 結果的に諸々の経緯を経て、知り合いの商人の所へ丁稚奉公に出され、その奉公も終えて旅に出ていた。
 正確には親のところに帰ってもまた怖がられるだけなので帰る場所を無くして放浪していた。

「次、屈伸運動! 始め!」
「「はい!」」

 場面はヤターユの回想から船旅のシーンへと戻る。
 日常の光景として少年少女達は甲板で剣を振ったり、ランニングをしたり、ストレッチをしたりしていた。
 指導をしていたのは大人の戦士や武道家などで、甲板はさながら新兵の訓練所の様相を呈していた。
 船旅というのは長い。ムスチナがアリアハンにつくまで数ヶ月ほど掛かる計算になっていた。
 船に乗っている間、大人の武道家や戦士が体が鈍ってしまうという事で
 素振りやらストレッチやらをやっていると少年少女達は大人達に教えを請う様になり
 結局、公平に全員の修練を開始する事になった。集団的な行動に伴い、魔法使いや僧侶達も巻き込んでいった。
 どっちにしろ彼らも体が鈍ってしまったら、命に関わるのは変わりなかったからだ。
 何より女性陣は「太るぞ?」の一言で全員快諾してくれたので男達が寝転がっている訳にもいかなかった。

「よし、次は班分け!」

 大人達が手を叩けば、それぞれの得物に分かれて武器の稽古を受ける。魔法使いや僧侶の連中はようやく
 体育会系の連中から解放されて本が読めたり、瞑想出来る事に喜び船室へと足早に帰っていく。
 希望者には大人の魔法使いや僧侶による指導講習が行われていた。
 ここではムスチナとヤターユは武道家達のグループへと誘導される。
 二人の武器はそれぞれ変わっており、それの使い方を会得している大人も少なく
 その武器を得物としている少年少女も他に居なかったので
 純粋に肉体鍛錬の為だけに武道家のグループへと割り当てられていた。
 武術の方も時々やるがそれは流派や師範などの教えによるのでもっぱらストレッチ。
 所謂、体操や筋力トレーニングのの延長ばかりだった。
781名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:29:52 ID:bJw44rHK0
「では、腹筋始め!」
「「はい!」」

 ムスチナもヤターユもそれぞれの街から一人ずつ乗っていたので二人で組まされる事が多かった。
 けど、あまり会話は多くは無かった。これはヤターユには全く察せる事の無い事情だったのだが
 ムスチナはそれはこのストレッチを中心とした修練が楽しくて楽しくて楽しくて楽しくて仕方なかった。
 彼女の今まで街でしていた稽古というのは所謂、自己流であり、非効率的であり、費用対効果が全く見込めない。
 簡潔に記述すると無茶無謀で適当の一言に尽きる稽古であった。だから、彼ら武道家という体を使う専門家の修練は
 それはもう彼女の今まで行使していた自滅的な肉体酷使に比べ、効率的に筋肉が付けられて
 長時間修練がつめるという事実に感動すら覚えていた。普通この手の修練は武道家達にとって基礎で大事な事ではあるが
 楽しんでやるという人物は中々居ない。だから、周りからムスチナはちょっと変わった風に見られていた。
 しかも表情を作ったり弱音を吐いたりする労力すら惜しんでいたので、そう作られたからくり人形の様にさえ見えた。
 更にそれで困ったのは他の武道家駆け出しの少年少女達だ。彼ら、彼女らにとってストレッチはあくまで事前運動であるのだが
 それに全力を駆けているムスチナが居ることにより突きや蹴りの練習が遅れてしまっていた。
 また、素人である彼女より体力がないとなると今までの修練は何だったのだという事になり、日増しにそのストレッチ量は増えていった。

 さて、ここで一番不満が溜まっていたのは他でもないヤターユだった。
 ヤターユは密かな願望を持っていた。そして、その願望は悲しくもヤターユ以外にこの船旅でしょっちゅう起きていた。
 例えば、海の強い日差しで倒れた魔法使いの少女の様に
 船酔いでダウンした遊び人の少年の様に、パンの中に入っていた蛆を見て卒倒した僧侶の少女の様に
 大人達にそそのかされて酒を飲んだらそのまま二日酔いで寝込んだ戦士の少年の様に
 甲板で片足立ちでバランスを取る修練をしていたらそのまま船のゆれと共に海に落ちた武道家の少女の様に
 被害者になりたかった。患者になりたかった。大事にされてみたかった。
 まるで舞台劇のヒロインの様に丁重に扱われてみたかった。
 だが、ヤターユはその頑丈さ故にそれが適わなかった。日差しにも負けず、船酔いもせず
 酒はまるで水の様に飲めたし、海に落ちてもロープを投げられれば自力で這い上がれた。
 船旅でパンやクッキーや干し肉の中に蛆が入っているのは味のアクセントと認識していたので
 何故気持ち悪がるのかすら解らなかった。

「また、あの二人か」
「ほんと、良い武道家になれるのにもったいないわねぇ」
「そーか? あっちの子は鈍臭そうだが」
「基礎を怠らない人間が一番伸びるのよ。どの職業でもね」
782名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:31:52 ID:bJw44rHK0
 武道家志願の少年少女は皆根を上げたり、次の突きや蹴りの訓練の為に体力を温存してしまうのに
 二人だけは黙々とやっていた。その愚直さに大人の武道家達は驚きや惜しさなど色々な感情を持っていた。
 ただ、ヤターユはこの訓練の間ずっと葛藤に苛まれていた。ヤターユは最初、他の人たちと纏まった訓練で
 わざと根を上げてみたのだが、その時は他の僧侶や魔法使い志願の者達と纏めて体力の無い者達と同じに見られて
 扱いはもやしっ子の一人としてしか見られなかった。だから、ヤターユは体力の水準が高い武道家のグループへと入った。
 ここなら途中で根上げれば、素人なのに無理しちゃってと少し丁寧に扱われるのではと淡い期待もあったのだが
 体力の化け物であるヤターユは奇しくもその訓練に耐え抜いてしまった。
 おまけに一度わざと根を上げようとした時のムスチナの視線をヤターユは今も忘れられない。

「はぁ……もう、うちは駄目かも」
「まだ、疲れてない様に見えるけど」
「い、いやそんなことはないで?」
「……そう? 本当に?」
「……もうちょっとやってみるわ」
「頑張りましょう」

 冷たい瞳にどこか凄味を見せるムスチナの視線にヤターユは嘘をつけなかった。
 何だかつっけんどんで淡々としている態度に嫌われているのでは?という疑念すらあった。
 元からそういう性格なのではという事も当初考えていたのだが、ある時船室前の廊下で
 大人の女の武道家から武道着を貰っているムスチナをヤターユは見ている。
 頬を染めて、遠慮がちながらも感謝の意を述べている彼女を見て
 ヤターユは感情が欠落している類の人間ではない事を知っていた。

「ほんま、よーがんばるねぇ、あんさんも」
「頑張らなきゃ修行にならないじゃない」
「そりゃそやけど」

 これは一生ヤターユが知る事は無いのだが、ムスチナは所謂”商人の戦闘”というものが解らなかった。
 彼らは物資と金銭を運び、街や村の流通をする為の存在だと思っていたので
 戦闘基準や必要性というのがイマイチ良く解らない。身を護る程度には必要なのだろうという認識だったのだ。
 だから、目の前のヤターユの様な肌も白く、桃色の無駄に長い髪を縛りたくし上げ
 鎧も着込んでなく、足さばきも武道家や盗賊ほど無く、とても戦闘向きとは思えない容姿の人間が
 わざわざ修練時間にずーーっと割いている事実に首を傾げざるおえなかった。
 しかも体力的に武道家の修練についていく。だから、ムスチナは商人とは元々そういうものだと誤解していた。
 重い物を運んだりすることもあるのだから、体力はやたらあるのだろう。むしろ、それが生命線なのだ。
 その誤解もあってムスチナはより一層この修練に集中していた。自分はなんて素人だったのだろうと思い詰めていた。
 この丸み帯びた体つきをして、武具の扱いも決して上手くないヤターユですら体力はここまである。
 魔法使いや僧侶は別にして、冒険に出るというのにはそれほどまでに過酷でヤターユほどの体力は
 当然持ち合わせていなければいけないのだと結論付けていた。
 だから、自分のひ弱さやその気遣いでヤターユが本来すべき修練を終えずに体を鈍らせてはいけない。
 命に関わる事だという事でお互いに妥協をしない様にと真剣に願っていた。
 そんな二人の関係に変化が起きたのは船旅も終盤に差し迫り、数日でアリアハンにたどり着ける目処が立った日の事だった。
783名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:34:08 ID:TheqyGg40
名前付けた方がいいんでない支援
784名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:35:39 ID:bJw44rHK0
「そろそろ、アリアハンに着くことになる」
「最後まで気を緩めない……のは当たり前。ま、そんな訳で今回はちょっと余興をしたいと思う」
「全員、腕立て、腹筋を限界までやるぞ。それだけで今日は終わりだ。ちょっと誰が一番体力あるか見てみたくてな」
「はい、それじゃ始め!」

 大人の武道家の開始の手拍子と共に全員で腹筋と腕立てを交互に20回ずつ繰り返していく。
 武道家の少年少女達もムスチナも大人の武道家も含め全員参加。ヤターユ以外は真剣にそれを行っていた。
 長い長い運動だった。昼下がりから始まったその運動は夕暮れを迎える頃にまで続いていった。
 体力のある少数の少年少女の武道家と大人の武道家とムスチナとヤターユが残っていった。
 途中、単調作業に飽きてリタイアする者、単純に体力が続かなくてリタイアする者が続出していた。
 だが、一部の負けず嫌い、純粋にムスチナとヤターユの限界が知りたい人間などが最後まで食らい付いた。
 鬩ぎ合っている中(ストレッチで鬩ぎ合うのもおかしい話だが)、ついにヤターユはその場で倒れ付してしまう。
 大抵の者は体力の温存や自分の限界なども考えてこの手の運動を途中でやめる。
 だが、ヤターユとムスチナだけは常に限界ギリギリまで修練を積んでいた。
 その限界ギリギリの生活が連日続いていた事により体力の化け物であるヤターユにも体力的疲弊と
 願望と現実的に他の者ばかりそれを叶えている現状による精神的な圧迫を併せ持って
 限界を迎えてしまい、結果倒れてしまったのだ。予想だにしない結果にぎょっとしてしまう大人の武道家達。
 急いでヤターユは担がれて船室へと運び込まれていく。

「うーん。俺とした事が」
「いやいや、あんたの所為じゃないって。で、どーだった?」
「僧侶と船医の人が言うには体はぼろぼろらしい。無理してたんだな」
「担いだ時も熱がひどかったしね」
「あの、すいません」

 自責の念を感じている大人の武道家達の話にムスチナは入っていく。
 彼女は自分からヤターユの看病を申し出た。無論、修練が終わった後の時間の話だが
 それからアリアハンにつくまで、彼女は夜の間ずっとランプの灯りをつけて熱にうなされるヤターユを看ていた。
 数日そんな生活が続いていたある日、寝込んだままのヤターユはムスチナへと言葉をかける。

「うーー、しかし意外やね」
「何がですか?」
「いや、自分うちの事嫌いだと思ってたんや」
「そうなんですか」
「そうじゃないん?」
「違います」

 特に感慨も無くムスチナは否定する。本人としても特別ヤターユを嫌っていたという感情は本当に無かった。
 誰にでも解る位、嘘や何かウラも感じさせない素の返答だった。その返答すらヤターユにとって意外だった。
 というよりも今も彼女がここで看病をしている事が夢にも思わなかった。
 額に当てる布や水を替えたりする以外ムスチナは黙ってその場で本を読んでいた事から
 彼女はただ単に無理をさせた自責や償いの為に嫌々こうしているのだと思っていたからだ。
 しばしの沈黙と静寂が包む中、今度はムスチナの方から声を掛けてきた。
785名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:38:39 ID:bJw44rHK0
「明日、明後日にでもアリアハンに着くらしいからこの船旅ももう終わりですね」
「そうなんや」
「良い旅でした。もうちょっと続けたかったです」
「え?」

 ヤターユは驚愕する。あの寡黙で手厳しいムスチナが頬を赤らめて、そんなことを言うなんて想像だにしなかった。
 照れ隠しなのか出来るだけ抑揚を抑えた声でぺらぺらとわざと音を立てて本をめくっているのに動作に胸が高鳴った。
 ふと気付き状態を再確認する。彼女は願望を叶えていてくれる。手厚く大事に看護をしてくれていた。
 それは此方の本心を見透かしていたのか? ただ単に偶然か。それとも、不器用なりに一緒に話をしたかったのだろうか?
 寡黙な彼女に直接真意を聞く事が少し怖いヤターユは色々な想像を巡らせて質問と言葉を考える。

「なんで? 大変やん。だって、日の高いうちは修行、夜はこうやって遅くまで付き合うなんて」
「私は別にそれが嫌じゃありませんから。むしろ……いえ、その」

 ムスチナは口ごもる。不器用そうに、つっけんどんに言葉を濁していく。
 ヤターユは絶対知る事の無いムスチナの真意を今ここで説明する。
 ムスチナがこうやって頬を染めているのは別にヤターユに対して特別な感情がある訳ではない。

 ただ単に油は貴重で船での灯りの取り扱いが厳しいからだ。

 もう一度記述する。油は貴重で船での灯りの取り扱いが厳しいからだ。
 彼女は肉体の鍛錬が終わると魔法使いや僧侶から本を借りて読んで一日を過ごす。
 しかし、船には消灯時間がある。遅くまでランプをつけるのは許されない行為だ。
 下手に放置して火事になったら大変だし、夜遅くに灯りをつけて魔物に狙われ易いなど
 諸々の理由で真っ暗にしなければいけない。ただし、看病をしている間は例外だ。
 何があるか解らないし水や布も替えなければいけず、夜遅くまでそれに付き合わなければいけない。
 ヤターユの熱は中々下がりそうに無く、絶対安静だった。夜遅くまで見張りつつ看病する必要がある。
 だから、ムスチナはその夜遅くまで灯りをつけて本が読める事がとてもとてもとても喜ばしかった。
 昼は肉体の鍛錬、夜は勉学に励めるなどなんと言う幸せな旅だろうか。
 だが、ムスチナは一般的な常識として、他人の不幸(病気)をだしに使って本を楽しむなど恥ずかしい行為だと思っていた。
 先ほどから彼女の頬は赤い理由は全てそれに由来していた。面と向かって君が病気だから遅くまで本が読めて嬉しい
 などと言える筈も無く、道徳心が高い彼女はそんなことを思う事すら恥だと思っていた。けれど、楽しいのは事実だった。
 この奇跡的な思惑の齟齬がヤターユを大きく勘違いさせていた。まるで伝染したかの様に頬を赤く染めている。
786名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:44:18 ID:bJw44rHK0
「……そういえば、自分イシスの兵士志願やったっけ?」
「そうだけど」
「うちも一緒に行ってええかな?」
「え? ……あ、うっ……あっちで人数の集まり次第だけど、考えておきます」
「ほんまぁ? 嬉しいわぁ」

 思わず申し出にムスチナはぎょっとしてこんな曖昧な返事を返す。
 これは語るまでも無くヤターユに関する特別な感情など微塵もない。
 彼女は冒険が初めてだが、例えば戦士3人とか商人と遊び人二人とか
 そういう明らかに破綻が目に見えるパーティ構成が駄目なのは解るし、そんな構成では人が集まらないだろうと思っていた。
 また、自分の様な未経験の小娘に着いて来てくれる人がこんなにも早く訪れる事が予想外だった。
 慌てて言葉を選び、つっけんどんに言葉を返すムスチナをくすくすとヤターユは笑う。
 ムスチナには何故笑っているか解らなかったが、病は気からという言葉から
 落ち込んでいるよりは良いだろうという事で特に言及する事は無かった。

「なぁ、自分”みえっぱり”とかよう言われへん?」
「な! あ…そ………う」
「やっぱりそーなんや?」
「……う……あぅっ……も、もう寝なさい!」
「かっわいーねー自分」
「殴って眠らせましょうか?」
「あ、それはいややー。堪忍してー」

 ムスチナはヤターユの指摘に顔を真っ赤にしていた。
 これはヤターユへの特別な感情によるものでは決してなく
 指摘された事が以前夢で見たルビス(自称から推定へと格上げ)と同じ内容だった所為だ。
 それはもう、自分を真意を見透かされたかの様に羞恥心を覚え、その場から逃げ出したい位だった。
 再び奇跡的にヤターユを勘違いする方向へと誘導してしまう。顔が真っ赤になっており
 本でその表情を隠すムスチナはなんともいじらしく愛らしい一人の娘の姿を見せていた。
 それに味を占めたヤターユはしょっちゅうムスチナをからかう様になり
 終盤はずっとこんな調子でムスチナのアリアハンへの船旅は終わる。
 本人はこのからかいの終盤を含めてもとても充実していた旅であったが
 後にこれが大きな事件へとつなぐ布石になるとは
 ムスチナもヤターユも予想だにしていなかった事であった。

  次回
  〜序章の三人目「診断結果:人生が破綻しても尚のんきもの 妥当な職種:あそびにんでもやらせとけ」
                                           につづく?
787名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 14:46:11 ID:bJw44rHK0
以上で今回の話は終わりです。一応次回予告っぽいのも付けてみましたがどうでしょう?

>>783
ん、そうですね。ちょっと名前考えてなかったのとこの作品で大丈夫か自信なかったので。
次までに何か考えておきます。支援ありがとうございました。
788名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/17(土) 22:38:01 ID:134CHaPo0
投下乙。
なんだなんだ、盛り上がってきたな!
789名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/18(日) 00:07:22 ID:EZv5zu3L0
乙。
ヤターユは男かと思ったが、喋り方が女っぽい。
どっちなんだ?
790名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/18(日) 00:11:12 ID:wBhFgTue0


>>789
俺は逆に女だと思ってたが、後半の地の文で男かと思った。
一人称が「うち」なのが女性的だな
791名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/18(日) 05:27:20 ID:NKqX3NKCO
「『ヒロイン』として扱われてみたい」とは言ってるがな
正直最近のヒーローとヒロインの分類のされ方は曖昧だし…
容姿としては「桃色で無駄に長い髪」に「線の細い体」「色白の肌」と
一昔前なら間違い無く女性分類だった描写だが
髪が「無駄」に長いっていうのは女性としてはどうも引っかかるし
線が細く色白なのに男設定も最近は多いから…
でも男なのに髪が桃色っていうのはそうそう無いか?
何にせよ今の情報じゃ断言は絶対に出来んな
792名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/18(日) 13:40:13 ID:Wve/vJai0
商人で桃色の髪なら女性の可能性がかなり高い。公式絵だとそうなので。確定情報がないので絶対ではないけど。
793名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/18(日) 19:20:48 ID:/nvn59NO0
投下乙

>>791
無駄にってのはこの女勇者だと
ボブ以上の長髪は全部無駄って言いそうなんだぜ?
戦闘で邪魔になるって考えで。
794名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/19(月) 00:56:31 ID:PYf+KRdk0
女勇者ってやっぱりショートカットで頭にリングはめてるのかねぇ?
795名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/19(月) 21:29:55 ID:O07W9BwC0
この人極端に人物描写が少ないよな。
読者の想像に任せているのか書くのが苦手なだけか?
796名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/19(月) 23:05:43 ID:PYf+KRdk0
こうやって書き込みが増えるのは逆にいい傾向なんじゃない。
797名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/20(火) 03:42:49 ID:hjb9z4VxO
読み手がキャラを楽に頭の中で描けて動かせるかと(YANA氏 CC氏形)
キャラに幅を持たせて動かせるかの違いだな(今回の新人さんはこっち)
どちらにもメリットデメリット 共に有るけど
最終的には書き手の技量だし
容姿の話でこんだけスレを伸ばせるんだから
実力は十二分に有ると言えるだろうね


ところでDQWの人 HDDは大丈夫だったのかな?
798CC ◆GxR634B49A :2009/01/20(火) 10:47:15 ID:1wg89XPZ0
わぁ、新しい書き手さんが来てる〜、素晴らしいヽ(´∀`)ノ

ご無沙汰してしまってすみません。
新年早々、ノートがぶっ壊れたり、仕事が立て続いたり、
今現在リフォームで部屋がしっちゃかめっちゃかだったりで、
なんともはや、どうにもこうにもでした。
でも、仕事しててもこっちがすごい気になるし、
ホントどうしよ〜。。。などと悶々としていたら!!
新しい書き手さん来た!!これで勝つる!!

とゆうことで、新しい書き手さん(なんとお呼びすればいいでしょう?)
のお邪魔にならないように地下に潜って、
投下の準備が整ったらひっそりと投下したいと思います。

あ、そろそろ容量危なくなってきてるみたいなので(あと25KBくらいかな?)、
次回の投下の際は気をつけてくださいね>新しい書き手さん
799名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/20(火) 12:38:01 ID:2vGvI+i00
CC氏は一回の投下分の量が半端じゃないから大変だよな。
マターリ待ってる。

次立てるのはもうちょい先でいいかな?
8004の人:2009/01/20(火) 19:28:39 ID:r1v056PG0
盛り上がってる中呼ばれた気がしました
お待たせしましたっと登場したかったです

デスクトップのフォルダの内容物をうpろうと思ってたんですが・・・
デスクトップってCドライブですよねー

吹っ飛んだのCなんですよー・・・orz

思い出しながら書き溜めてますのでまた貯まり次第沸かせていただきます

ちょっとづつ貯まったら3〜5レス長さでポコポコ投下していこうかとも思ったんですよ

思ったんですが、私カイオウやヒョウみたいな後付け設定が嫌いなんですよね
たぶん長いこと続くことは無いと思うんですが、いちおう最後まで書いて小出しにしてみようかなと
そんな感じに思っておもっておりますのでひとまず私のことは忘れてくださいませ


それでは(´・ω:;.:... サラサラサラ
801名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/23(金) 21:56:03 ID:2jYpvTez0
802名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/25(日) 23:23:52 ID:3B+DrLez0
803名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/26(月) 00:45:20 ID:vtkDkuvD0
(容量的な意味で)スレの悲鳴が聞こえる保守
804名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/26(月) 09:42:41 ID:7rSbXoSEi
そろそろ新スレ建てちゃわないか?
805名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/27(火) 00:40:03 ID:nIUGm7fL0
俺に出来るのは守ることのみ!
806名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/01/31(土) 00:40:05 ID:jn0BWaCk0
ほしゅ
807名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/02(月) 16:48:51 ID:3lMJQWVo0
ほしゅ
808CC ◆GxR634B49A :2009/02/03(火) 23:48:18 ID:tbo41xHs0
あれれ、新スレ立ってなかったんですね(汗
ん?まだ立ってないですよね?

すみません、やっとこっちに手をつけられるかと思ったんですけど、
また仕事が入ってしまって、すぐに投下は難しそうです。
有り得ないほど間が空いてしまって、本当に申し訳ないです。。。
でも、ホントにもうどうしようもなくて。。。(T T)

どうにか頑張ります、とすら言えないような状況ですが、
読んでくださる方がいる限りは、途中で投げ出すことだけはしませんので、
投下の際にはお付き合いいただければと思います。
809名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/04(水) 02:22:14 ID:1pe4Y3X90
ゆるゆると待ってますんでマイペースでやってくださいノシ
810名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/04(水) 09:54:47 ID:yASe5jwX0
そろそろ建てても良いと思うんだが、テンプレ等変更すべき点はあるかな?
スレタイはこのままlevel11でOK?
811名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/05(木) 20:34:04 ID:lJtDQpWA0
建ててみようと思ったがダメだった。
他の人頼む。後、テンプレは下記の感じでよかったかね?

DQツンデレスレへようこそ。
ここは職人方が書いてくれるDQ関連のツンデレなSSに萌えるスレです。
新しい職人さん大歓迎です。SS題材はDQであれば3以外でもおKです。
DQ3の攻略等に関する質問は専用スレでどうぞ。

前スレ ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level10
ttp://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1199098241/

過去スレ
ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1132915685/
ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜 Part2
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1138064814/
ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜 Level3
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142515071/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level4
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1144425198/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜  Level5
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1157354640/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 6
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162828557/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level 7
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1167743633/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level8
ttp://game11.2ch.net/test/read.cgi/ff/1174664837/
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level9
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185024927/


まとめサイト (Level 4 までのログはこちら)
ttp://www.geocities.jp/game_trivia/dq3/
CC氏まとめサイト (Level 5 からのログはこちら)
ttp://www.geocities.jp/tunderedq3cc/
812名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/05(木) 20:40:48 ID:fq6XCXMk0
じゃあ上のテンプレでちょっと立ててくる
813名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/05(木) 20:42:56 ID:fq6XCXMk0
次スレ
ドラクエ3 〜そしてツンデレへ〜 Level11
ttp://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/ff/1233834123/
814名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/05(木) 20:45:08 ID:fq6XCXMk0
スレタイミスった・・・orz
まことに申し訳ない
815名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/05(木) 20:54:59 ID:lJtDQpWA0
>>813
スレ建て乙なのだがあーあー、非常に不躾で申し訳ないのだが言わせてくれ。

前スレwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
816名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/05(木) 21:05:19 ID:fq6XCXMk0
今後ROMに徹します・・・
817名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/05(木) 23:07:42 ID:dujF3CKT0
乙。
ちっちゃいことは気にすんな♪それワカチコワカチコ〜w
818名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/06(金) 00:57:55 ID:y59obp0/0
スレ建て乙!
前スレ吹いたwwww
スレ検索に引っかかれば何がついててもいいんよ
819名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/06(金) 01:11:06 ID:u5cczzJs0
>>816
乙!
アリガト〜〜!

前スレイイヨイイヨw
820名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/06(金) 06:07:10 ID:YV6IaY7/i
今日中に投下予定なのだが新スレとこっちどっちにやったらえーだろ?
821名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/06(金) 08:20:21 ID:rw8yuKvH0
残り容量も少ないし新スレのほうがいいと思うよ
822名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/06(金) 09:33:17 ID:iekCx4KMO
前スレ吹いた
823名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/06(金) 23:01:39 ID:ntPLh3Mg0
失礼。今夜投下出来そうにないorz ちと、修正すべき所がおおすぎて間に合わなさそうです。
ほんと、申し訳ない。明日には投下しますので待ってて下さった方にはマジですいません。
824名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/06(金) 23:23:03 ID:of/ai7MEO
これまだやってたのかw

薬草娘って完結した?
825名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/07(土) 00:09:20 ID:PebkWRC7O
VIPかとオモタ
826名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/07(土) 07:13:13 ID:RBprTONMO
メタルドラゴンに泣かされたなぁ
まさかイオラとわ!!
827楮書生 ◆n2MzhXtooQ :2009/02/08(日) 11:28:06 ID:IHhT3Wf60
と、こちらにもご連絡。新スレの方で新作投下しました。
後、ageちゃってすいませんでしたorz
828名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/08(日) 12:13:52 ID:jC269tsm0
>>827
乙!
では読んできます
829名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/09(月) 13:20:09 ID:wCfOv4L70
こっち埋めちゃわないか?
830名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/10(火) 08:46:25 ID:LkpLjppHO
前スレの前スレ埋め
831名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/11(水) 03:48:29 ID:3ca5Vyey0
アリアハンに夕日が差し込む頃、ルイーダの酒場に兵士が一人入ってくる。

「よう! あんたがこんな所に来るなんて、珍しいじゃないか」
この城仕えの兵士の幼なじみでもある女主人ルイーダが声を掛ける。
「・・・ルイーダ」
「どうしたんだい? 神妙な顔しちゃって」
「・・・僕と ・・・結婚してくれないか」
「えっ!」
「今すぐに答えをくれとは言わない、明日また返事聞きにくるから」
「――ちょっ! 待ちなよ! 急にそんな事言われても・・・」
しかし、もうすでにルイーダに背を向けていた兵士はそのまま何も言わず店を出て行った。

「姐さん、どうしたんですか? 顔が真っ赤ですよ、まだこんな時間なのにもう酔っ払ってんですか ウッヒヒヒ!」
常連客であるゴロツキ達が一斉にルイーダを冷やかしにかかる。
「あんた達! 誰に物を言ってんだい! あんな頼りない男にこのルイーダ様がなびく訳ないでしょ!」
「またまた〜 そんな事言いながらさっき顔がポーってしてたじゃないですか〜」
再び、笑い声が酒場に一斉に響く
「くっ!」
さらに顔を赤くしたルイーダはカウンターを飛び越え嘲笑をあげているゴロツキ達にムーンサルトをお見舞いした。
832名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/11(水) 03:50:47 ID:3ca5Vyey0
   〜次の日の夕刻〜

「いらっしゃい」
「ルイーダ、昨日の返事を聞かせてくれないか」
「ここはルイーダの店。旅人達が仲間を求めて集まる出会いと別れの酒場よ」
「いや、僕は仲間を募りにこの場所へきたんじゃないんだ」
「これがあなたの仲間になってくれる人の名簿よ」
「――だから・・・」
兵士は机の上に置かれた一枚の紙に目を向けた。 その名簿の紙には1名だけ名が記されていた。
≪ルーイダ≫と・・・
「ル、ルイーダ・・・」
「どうすんの? 仲間にするの? しないの? しないなら登録を抹消するわよ!」
「――ああ、よろしく 仲間にするよ」
「じゃあ、決まりね  ・・・よろしく」

そのやり取りを固唾を飲んで見守っていたゴロツキ達が、一斉に歓喜の雄たけびを上げる。
「おいっ! みんな! 今日はルイーダさんの奢りだー!」
「――なっ! 何言ってんのあんた達! あんた達、端からぶっ飛ばすわよ!!」
「おっ! 新婦さんが怒ったぜー!」
ルイーダはカウンターを飛び越えようとするや否や、ゴロツキ達は一斉に外に逃げ出した。
「待ちなさい! ムーンサルトをいくらでも奢ってあげるわよ!」

その光景を微笑みを浮かべ見送った兵士は、『ルイーダ (sake)』と名簿に書かれたの下に、その兵士の名である
『ウメ (sage)』と書き記した。
833名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/11(水) 21:26:02 ID:PUh8k4+Y0
ええ話(ume)や・・
834名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/11(水) 21:40:15 ID:/VGLgPgA0
ルーイダ(gozi?)
835名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/16(月) 23:01:50 ID:fZ9t3Kpw0
出来るだけ保つ。
836名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/18(水) 20:53:21 ID:SXDHDpPZO
ヴァイスたんに会いたい保守
837名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/20(金) 00:24:24 ID:bz40CQQ10
ゆっくりと待ちましょう〜
838名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/20(金) 00:48:31 ID:FyH+w/Ec0
今の国民にマスコミを完全に信用している人は、
ほとんどいないでしょう。
マスコミを「マスゴミ」と呼び、バカにしている人
もいます。
しかし、そんなマスコミの偏向報道にだまされてる
国民は少なくありません。
麻生内閣についての報道は実にひどいものです。
麻生総理や中川大臣の失敗は大きく取り上げ、
功績はいっさい報道しません。

今のマスコミ・日本の現状がこのサイトでわかります。
一度覗いてみてください。

『国民が知らない反日の実態』
http://www.youtube.com/watch?v=71BlxHN6THY
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6090098
839CC ◆GxR634B49A :2009/02/24(火) 01:08:54 ID:oTEcG1Ay0
しまった、こっちに書き込んで埋めればよかった。
移行後のスレって、隠れ家的な感じがちょっと好きです。

中断と言っていいほど間が空いてしまって申し訳ないです。
いちおう、頭の中で話を考えてはいるんですが、
書く時間が全く取れない状況が続いてます。
ここまで忙しいのは、せいぜいあとひと月くらいの筈なので、
その後はそれなりに投下できるといいなぁ、と思います。

えぇい、ここのトコ、景気の悪い話しかできてないぞ。
まぁ、投下してないからなぁ。。。
でも、気持ち的にはほったらかしてる訳では全然なくて、
本筋とはちょっと離れたドタバタ劇のネタも思いついたりしてるので、
なるべく早くご覧いただけるようにしたいです。



ホントはここでひっそりと掌編を投下して埋めたりできると格好良いんだけど、
なにも思いつかなかったw
840名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/24(火) 01:45:13 ID:BpZBh+xhO
まったり待つよん。
841名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/02/24(火) 20:49:06 ID:KF+3IIY60
我々は待つことに慣れている(´_`)y─┛~~
842名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/02(月) 17:29:39 ID:a1/hVjc+0
843名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/02(月) 19:58:18 ID:djY30M+cO
844CC ◆GxR634B49A :2009/03/03(火) 21:59:11 ID:GuHTNznm0
845名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/04(水) 14:52:41 ID:NLMFUb+3O
逆だw
846名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/06(金) 11:22:37 ID:jUI3nzOd0
梅津
847CC ◆GxR634B49A :2009/03/06(金) 22:35:11 ID:mKsV1kR/0
うぎゃ〜ちょっと無理してでも書こうと思って、テンションを上げようとしたところに、
またぐぃと仕事がねじ込まれたぁ〜〜〜!!
もうヤダ、いつになったら目を回すてんてこまいな日々から抜け出せるの。。。
でも、稼げる時に稼いどかないと。。。心置きなく続くを書く為にも!!

はぁ。。。それにしても、あと1話書いてから中断できてたらなぁ。。。
次の話、再開しょっぱなにお送りするような派手な話じゃないんですが、
自業自得ですね、そうですね。

ちらしの裏ですみません。
でも、あとは埋めるだけだから、いいよねw
848名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/07(土) 01:57:08 ID:e8s0Bhhu0
>>847
まずは本業頑張って!
こちらは無理の無いようにやってくれればおk
849名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/10(火) 06:46:43 ID:QVIh5YP1O
梅干し殿下
850名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/10(火) 07:02:31 ID:wysVZ/tZ0
ドラクエ3な俺が通りますよ
851名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/10(火) 07:04:22 ID:wysVZ/tZ0
↑ID変わっちゃったorz
852名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/12(木) 09:33:11 ID:eeyaQ9mD0
                 ___      _,.  _
                 \`ヽ''⌒`'´/  (E)
                  ヽ「\D/l|  / / ._  __ _
               (__<ム.゚/ヮ゚ノ!>'∨  \7´__B_ヾ/
    _,/^)、==∧       (ヨ)'ノ,,,)ノ,)/    .(_)[ヘnヘ(^>、
  /(/),[o ,,o].__    /,'∨〉卒{ヽ丶.   、_ゞ_,.(n_>> 〉
 (  ヾ{ ...:::::::::::::.} ヽ (( / (,ゝ<} ヽ ))    /\屮'´/
  \. 「ヽエエエエソイ }   /  ∧ノi/} |   (ヨ)|D)/´
    `{フ=◎={} (,,_}  .{  /::/ |::|、 }      (=◎}、
.    〈 .<⌒> 〉 (5,}   レ/::/   |::| ∨    〈 〈 〉 〉
    (⌒_」 .L⌒)       (,ノ    ト、)       と,ノ.(つ
853名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/18(水) 18:07:37 ID:zReSutXAO
保守兼埋め
854名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/20(金) 07:04:57 ID:Ydp0wa8EO
埋め
855名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/21(土) 06:07:51 ID:6xU6JhZFO
856名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/24(火) 06:47:40 ID:XoI6EwetO
埋め
埋め
857名前が無い@ただの名無しのようだ:2009/03/27(金) 08:52:14 ID:s0V/++IYO
858名前が無い@ただの名無しのようだ
三次元人間うぜえんだよ
俺にもう電話やメールすんな