FFDQバトルロワイアル3rd PART8

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
━━━━━説明━━━━━
こちらはDQ・FF世界でバトルロワイアルが開催されたら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。

参加資格は全員、
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

作品に対する物言い、感想は感想スレで行ってください。
sage進行でお願いします。
詳しい説明は>>2-10…ぐらい。

感想スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1123599006/
過去スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1099057287/ PART1
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101461772/ PART2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1105260916/ PART3
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1113148481/ PART4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1119462370/ PART5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1123321744/ PART6
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1128065596/ PART7
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 04:49:16 ID:0pnWSb7w
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
 <ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
 この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。

+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。
3名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 04:49:49 ID:0pnWSb7w
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
・ただし、スペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
・その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。

+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。


━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 04:50:22 ID:0pnWSb7w
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
5名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 04:51:07 ID:0pnWSb7w
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・ …を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
6名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 04:51:40 ID:0pnWSb7w
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレシア王子)、パウロ(サマルトリア王子)、ムース(ムーンブルク王女)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(男勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(男勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、ビアンカ、はぐりん、ピエール、
        マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ
7名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 05:04:18 ID:sDL5bfDA
■生存者リスト
FF1 0/4名:(全滅)
FF2 3/6名:フリオニール、マティウス、レオンハルト
FF3 4/8名:サックス、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 1/7名:カイン
FF5 4/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード
FF6 7/12名:ゴゴ、リルム、マッシュ、エドガー、ロック、ケフカ、トンベリ
FF7 3/10名:ザックス、セフィロス、ユフィ
FF8 4/6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー
FF9 3/8名:ジタン、ビビ、サラマンダー
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 3/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、

DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 0/3名:(全滅)
DQ3 3/6名:オルテガ、アルス、セージ
DQ4 5(+1)/9(+1):ソロ、ピサロ、アリーナ、ライアン、ロザリー、(アリーナ2)
DQ5 8/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、デール、タバサ、ピエール、プサン
DQ6 5/11名:テリー、イザ、クリムト、ハッサン、ターニア
DQ7 1/5名:フィン
DQM 3/5名:わたぼう、ルカ、テリー
DQCH 1/4名:スミス

FF 35/78名 DQ 26(+1)/61(+1)名
計 61(+1)/139(+1)名
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 05:05:11 ID:sDL5bfDA
■現在までの死亡者状況
ゲーム開始前(1人)
「マリア(FF2)」

アリアハン朝〜日没(31人)
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
「マリベル」

アリアハン夜〜夜明け(20人)
「アレフ」「ゴルベーザ」 「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」
「ラグナ」「エーコ」「マリア(DQ5)」「ギルバート」 「パイン」
「ハイン」「セリス」「クラウド」「レックス」「キーファ」
「パウロ」「アルカート」「ケット・シー」「リディア」「ミネア」

アリアハン朝〜終了(6人)
「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」
「ベアトリクス」

浮遊大陸朝〜 (19人)
「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」
「ギルダー」「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」
「アグリアス」「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」
「シド」「ファリス」「エッジ」「フルート」 「ドーガ」
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 05:05:41 ID:sDL5bfDA
■その他
FFDQバトルロワイアル3rd 編集サイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3log/
FFDQバトルロワイアル3rd 旧まとめサイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3rd/index.html
1stまとめサイト
http://exa.to/ffdqbr/
1st&2ndまとめサイト
http://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/
番外編まとめサイト
http://ffdqbr.fc2web.com/
保管庫
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/

死亡者ネタスレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1100867635/

現在の舞台は浮遊大陸(FF3)
ttp://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/up/source5/No_0069.jpg
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/152-153(参考にどうぞ)
10名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 22:58:49 ID:owJsI7yH
>>1 乙そしてGJ
11名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/04(金) 02:17:26 ID:42GD2F6f
あげ
12名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/04(金) 13:58:19 ID:fIKiGtz3
>>1乙!
13黄昏に見る夢 1/15:2005/11/05(土) 16:06:55 ID:vkgGa8Tl
「……ああーーっ、そーーだっ!!」
「ーーーっ、何だよリュック、大声出して」
「ごめんごめん。あー、ピサロさんもロックももう行っちゃったよね…
 みんなに伝えなきゃいけないことがあったんだけどなぁ」
「大事なことならいまさら思い出すなよな」
「だって色々あって大変だったじゃない。みんな疲れて休んでたしさ」
「それで、大事なことって、なんですか?」
「ああ、えーとね、アリーナって子の伝言を預かってるんだ。
 ソロとピサロと、その他の彼女の仲間宛に」
午後も半ばを過ぎたウルの村。
ピサロ達を見送った後、突然叫んだリュックの言葉を聞いてソロは驚愕した。
「アリーナ? アリーナと会ったんですか!? 何処で? 何時?
 何故もっと早く言わないんですか!?」
「おい、落ち着けソロ」
「待って、話す、話すから! 全部! だから揺らさないでぇ!」
リュックの両肩を掴み揺さぶっていたソロはヘンリーに羽交い絞めにされ、やっと落ち着いた。
「す、すみません、とにかく教えてください」
「ケホッ、ケホッ、う、うん……えーとね」
ソロの猛烈な揺さぶりから解放されたリュックは少し咳き込んだ後、アリーナと出会った所から話し始めた。
アリーナが分裂の壷を使い、分身を生み出したこと。
その分身が凶暴化し、クリムトという老人の目を抉ってしまったこと。
彼女はゲームに乗るためにオリジナルと袂を別ち、飛び出して行ってしまったこと。
アリーナはそれを追うために単独行動をしていること、そして二人の見分け方などについて。
「と、そーいう訳なんだけど……」
それら全てを話し終えると、リュックは二人の反応を見た。
ヘンリーは眉間にしわを寄せ、額に指を当てている。
ソロに至っては頭を抱え、その場にしゃがみこんでいた。
「あー、中々に個性的な思考の女性だな。そのアリーナって娘は……」
「気を使った発言、ありがとうございます……」
ソロは頭を振ってゆっくりと立ち上がる。
「彼女はいつも即断即決で、すぐに迷う性質の僕の背を押してくれる存在でした。
 そんな彼女の性格は僕にとってとてもありがたい物だったんですが……
14黄昏に見る夢 2/15:2005/11/05(土) 16:08:43 ID:vkgGa8Tl
 今回はその性格が裏目に出たようですね」
「まぁなぁ、それにしても分裂の壷か。それが本当ならとんでもねぇな」
何気なく言ったヘンリーの言葉をリュックが聞きとがめる。
「ちょっとぉ、アタシが嘘吐いてるって言うの?」
「いや、そういうわけじゃねぇよ。アンタが俺たちを騙すつもりがないっていうのは良くわかってるさ。
 俺たちを陥れたいなら他にもっと方法があるし、エリアたちの治療を手伝ってくれるわけねーもんな」
ヘンリーは肩を竦める。
「ただ、アンタが嘘を言ってなくとも、それが真実だとは限らねえってことさ」
今度はその言葉にソロが反応する。
「どういうことですか? リュックさんじゃないならアリーナが嘘を言っているとでも――」
噛み付いてきそうなソロの剣幕にヘンリーは頭を押さえ、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「今度はそっちかよ。わかったわかった、とりあえず思いつきに過ぎないんだけどな。
 俺の考えを話す。要はいくつかの場合が考えられるってことだ」
ソロもリュックもとりあえず黙ってヘンリーの言うことを聞く体勢になる。
(俺のキャラじゃねぇんだけどな……)
ヘンリーはそれを確認すると苦笑し、講師がそうするように指を立てて説明を始めた。
「順番にいこう、まずその一。
 リュックが出会ったのが本物のアリーナで言っていることも本当だった場合。
 これはまず問題ない。分身体、ワリーナに対して注意を払えばいいだけだ」
「ちょ、ちょっとストップ!」
「何ですか、そのワリーナというのは?」
突然、降って湧いた単語にソロとリュックは同時に待ったを出す。
それをヘンリーは不思議なことを聞かれたとでも言うかのように――
「ん? だっていつまでもアリーナの分身じゃ説明しにくいだろう?
 アリーナ2号やアリーナBとかだと呼ぶ時にアリーナとややこしいし、何より味気ない。
 だから悪いアリーナ、略してワリーナ。単純明快だろう?」
(いや、そのネーミングセンスはどうなの?)
リュックは内心で突っ込む。
「はぁ、まぁわかりました。じゃあ第二の場合というのはその
 ヘンリーさん言うところのワリーナがリュックさんと出会っていた場合ですね?」
(採用するんだ!?)
15黄昏に見る夢 3/15:2005/11/05(土) 16:10:26 ID:vkgGa8Tl
リュックはソロの言葉にまたしても心中で突っ込むが、不意にもうどうでもよくなり沈黙を護る。
ただ若干力が抜けたように肩を落としはしたが、他の二人は気付かなかったようだ。
「そうだ。その場合のワリーナの目的はオリジナルを陥れることだろうな。
 自分を本物、本物を凶悪な分身という情報を流布して自分に有利な状況を広げる。
 これは遅効性の毒みたいに時間が経つほどじわじわと効いてくるだろうよ。
 そして三番目――リュックが出遭ったのは本物のアリーナだが、そのアリーナが嘘をついていた場合」
「――ッ」
三つ目のケースを聞いて思わずソロは息を飲む。
「うう〜、それってもしかして……」
口篭るリュックの後をヘンリーが続ける。
「ああ、アリーナがゲームに乗っちまったってことだ。
 自分の偽者の存在を広めることで、自分の殺人現場を目撃されても
 後でそれを偽者のせいにすることが出来る。
 自分が不利な体勢の時は、それを利用して非戦派の中に溶け込むことが出来るって寸法だ。
 この場合分裂の壷は存在しないことになるが、それ以上に厄介な……」
「あり得ませんよ! そんな、アリーナがゲームに乗るだなんて……!!
 彼女に限ってそんなことは――う」
ヘンリーの言葉を遮って声を荒げてしまうソロだが、彼の静かな視線を浴びて言葉を途中で止める。
「自分の身内に限って……か、良くわかるぜその気持ち。でもな、このゲームは人を変えちまう。
 この空間の中じゃ人はどうにでも変わっちまうんだ。俺は、それを経験しちまった。
 あり得ないと思っていたことが現実になるのを目の当りにしちまったんだ」
ヘンリーの言葉がソロの心に重く圧し掛かる。
(そうだ、ヘンリーさんは弟のデールさんが……)
拳を握り締め、ソロはそれでも言葉を搾り出した。
「それでも、僕はアリーナを信じています」
それを聞いてヘンリーは諦めたように瞳を閉じた。
「それを否定はしねえさ。ただ、覚悟だけは決めておいた方がいい。
 現実って奴は時に残酷に出来ていやがるからな」
ソロは答えない。リュックも空気の重さに声を出せないでいた。
その様子を見て、ヘンリーは不意に苦笑して肩を竦めた。
16黄昏に見る夢 4/15:2005/11/05(土) 16:11:32 ID:vkgGa8Tl
「まぁこの三つ目の場合はかなり無理がある推測だ。騙すにしてももう少し嘘の内容を選ぶだろうよ。
 人間をも分裂させる壷なんて存在を知らないものにはおいそれと信じることはできないしな。
 俺たちが半分以上信じる気になっているのもそれが嘘にしてはあまりにも荒唐無稽だからだ。
 そこまで計算に入れて吐いた嘘なら凄いもんだが、アリーナって娘はそこまで考えるような奴か?」
「いいえ」
即座にキッパリと否定するソロ。
それと同時に安堵する。
「それなら三つ目の場合はほとんどあり得ないですね?」
「ああ、だけど俺が危惧しているのは最後の場合でね」
「まだあんの!?」
ついにリュックが悲鳴を上げる。
「ああ、四つ目にして最後の場合。アリーナとワリーナが共謀していた場合だ。
 これは三つ目の時に挙げた利点がそのまま適用される上に殺人者の数が倍になる。
 考えられる限りこれが最悪の場合だろうな。しかも可能性としては三つ目よりも数段高い」
もうソロもリュックも何も言わない。ただ暗い顔で俯くのみだ。
ヘンリーは溜息を吐くと、一転して明るい顔で言った。
「少し驚かせすぎちまったかな?
 まぁ実際、一番可能性が高いのは一つ目の場合だ。あんまり思いつめるな。
 ただ、さっきも言ったが現実ってのは時に残酷だ。
 他の場合もあり得る事、として頭の片隅に置いておけってことさ。
 じゃあ、ビビたちの所に戻ろうぜ」
ヘンリーは身を翻し、宿屋へと歩き出す。
それをソロとリュックは顔を見合わせて、沈黙を護ったままヘンリーの後を追った。


山の傾斜から転げ落ちてなお自分は気絶しなかった。
全身を痛打し、右腕を骨折し、爛れた皮膚が土との摩擦で削られても、まだ自分は生きている。
常人であれば既にその命を失っていてもおかしくはない。
それなのに何故自分は、デールは未だ動いているのか。
わからない。わからない。わからない。
でもそれももうどうでもいい。自分は生きている。この身体はまだ動く。
その事実があれば充分だ。身体が動けば壊しにいける。
17黄昏に見る夢 5/15:2005/11/05(土) 16:13:15 ID:vkgGa8Tl
(ああ、壊したい……壊したい……壊したい)
何故か分からないが無性に何かを壊したくて堪らない。
先ほど果たせなかった気持ちが胸の中で燻っている。
ここが何処なのかは分からない。ただ闇雲に前方に向かって歩き出してみる。
いくらかもしないうちに樹海を抜け、開けた視界のその先には――村があった。
「ハハックハハハハハハ!」
なんだ、神は自分の味方じゃないか。
この身体を未だ動かしてくれているのも神の仕業か。
そして今、自分の無性に何かを壊したいという願いを叶えてくれたのか。
村ならば何人かは参加者がいるだろう。その全てを壊してやる。
先ほどは色々と邪魔が入って何も壊せなかったが、今度はそうは行かない。

そして、壊れた身体で足を引き摺りながら彼はゆっくりとウルの村へと歩を進めた。
彼は気付くことはなかった。
彼自身がもう、どうしようもなく壊れてしまっていることに。


宿へと戻ってきたソロ達をビビとわたぼうが出迎えた。
「お帰りなさい。随分と時間が掛かっていたようだけど……それにピサロさんとロックさんが」
「うん、ピサロとロックさんは彼についていったんだ。詳しいことは今から話すよ」
「ああ、俺にも頼むよ」
不意に聞こえた声にソロが顔を向けるとそこには身を起こしたバッツがいた。
「目が覚めたのか、思ったより早かったな。調子はどうだ?」
「ああ、身体はまだ重いし、足もまだ強く踏ん張ることは出来そうにない。
 だがとりあえず心だけは落ち着いたよ」
ヘンリーの言葉にも軽く答える。
「そうか、だがこれからの話はお前をさらに混乱させちまうかもな」
「どういう意味だ?」
その疑問に答えるべく、ソロが事の経緯の説明を始めた。
話を聞いてバッツの表情が驚愕に歪む。
「ザンデのおっさんが……レナを!?」
「ザンデさんを知っているんですか?」
18黄昏に見る夢 6/15:2005/11/05(土) 16:14:41 ID:vkgGa8Tl
バッツの独白にソロが聞き返す。
「……ああ。こっから北の洞窟であんたたちと同じこと頼まれたよ……ローグとな。
 おっさんが朝に約束してるって言ったのは俺とローグのことさ」
「そうだったんですか……」
そしてバッツは考え込み、決意の表情を浮かべるとソロに懇願した。
「頼む。レナと二人きりで話をさせてくれないか。
 レナは仲間だ。彼女はあんたたちに酷いことをやっちまったかも知れないが
 本来のレナは心優しい人間なんだ。俺に何が出来るのか分からないが俺は彼女の心を救ってやりたい。
 ローグもきっと分かってくれると、信じる」
ソロは黙ってバッツの言い分を聞いていたが静かに首を振った。
「言いたい事はわかります。でも今の彼女の状態では危険です。
 話をするのはいいですけど、せめて僕が立会い……」
その言葉を遮ったのはヘンリーだった。
「いや、ソロ。やらせてみようぜ。
 監視付きだと彼女が警戒しちまうし、第三者の前では言えないこともある。
 それに男と女ってのは密室に閉じ込めちまえば意外となんとかなるもんさ」
バッツは赤面し激しく動揺する。
「ばっ、この、俺とレナはそんなんじゃねえ!」
「まーまー」
リュックが二人の間に割って入った。
そしてソロのほうに向かって言う。
「アタシも賛成だな。目覚めたらレナも少しは落ち着いてると思う。
 そんな時、そばにいるのがバッツならレナも安心するんじゃないかな。
 レナはバッツのことを話すとき、とても信頼してるって感じが伝わってきたし」
ソロはそれを聞いてもまだ決心つきかねる様子だったが、再三のリュックとヘンリーの説得により折れた。
だがせめてもの条件ということでレナのいる防具屋の隣、魔法屋にリュックが待機することとなった。
最初はソロが魔法屋に待機すると言い出したのだが、疲労の溜まっているソロよりも
余力があり、レナと同行していたリュックが適任ということになったのだ。
そしてまたビビとわたぼうを宿に残し、4人はレナのいる防具屋へと向かった。


「ここに……レナがいるのか」
19黄昏に見る夢 7/15:2005/11/05(土) 16:16:32 ID:vkgGa8Tl
防具屋の扉の前でバッツは震える声で呟いた。
リュックは既に魔法屋で待機している。
ゴクリ、と唾を飲み込むとバッツは扉を開け中に入る。
ノブを握る手に汗が大量に滲んでいるのが分かった。
鼓動は高鳴り、傍にいるヘンリーやソロに聞こえてしまいそうだ。
扉を閉めるのも忘れ、部屋の中へと一歩踏み出す。
ズキン、とレナにやられた左足が痛んだ。
(俺に、レナを救うことが出来るのか……)
そんな弱い思考が頭を掠める。
自分の言葉はレナを追い詰めてしまうかもしれない。
もしかするとローグの死因を問い詰めてしまうかもしれない。
歯を喰いしばる。胸を掴み、爆発しそうな心臓の鼓動を押さえつける。
ブルブルと身体が震え、踏み出した足が止まった。
その時、部屋の外のヘンリーから声が掛かった。
「バッツ」
「な、なんだ?」
かろうじて平静を装い、振り向く。
「レナがああなっちまったのは彼女の勘違いとはいえ、俺にも一因がある。
 だから俺はこれ以上、レナを哀しませたくない。苦しませたくないんだ。
 バッツ、頼む……」
必死に声を絞り出すヘンリーを見てバッツは締め付けられるような思いを感じた。
(この人はここまでレナを想ってくれているのか)
安心しろ、俺に任せろ、そんな言葉が口を付いて出てこようとする。
だが……。
「だから避妊はちゃんとしてやれよ」
「死ねェ!」
バタンッ! ドスン!
咄嗟にヘンリーに向かって投げたザックが瞬時に締められた扉に当たり、落ちた。
カチャリ、と再びドアが開いてヘンリーが顔を見せる。
「何だ、初めてか? がっつかずにちゃんと優しくしてや……ブゥッ」
今度はバッツの脱ぎ捨てたブーツがヘンリーの鼻っ柱に命中し、ヘンリーは倒れた。
「ああ、もうヘンリーさんは……騒がしてゴメン」
20黄昏に見る夢 8/15:2005/11/05(土) 16:17:54 ID:vkgGa8Tl
ヘンリーはソロに引き摺られていった。
パタン。
扉が閉まり静寂が戻る。
「……何なんだあの人は……」
バッツはブーツを履きなおすと頭をかきながら廊下を進み、
程なくレナの寝かせられている部屋を見つけた。
レナの顔を見ても何故か先程とは違い、動揺はしなかった。
不思議と心が落ち着いている。さっきまでの自分が嘘のようだった。
まさかヘンリーのおかげか、とも思ったがすぐにそれを否定する。
(そんなわけねぇよな……)
バッツはレナを見つめながら壁を背にするとその場に座り込んだ。
そして、レナが目覚めたらまず何と声をかけようか、
そんなことを考えながら静かに彼女が目覚めるのを待ち始めた。


「うーん、自分を傷つけた女を許す……俺ってダンディだなぁ」
「セリフが前半だけだったら僕も感動してたんですけどね」
「あれはアイツがガチガチだったから緊張をほぐす為に……」
「はいはい、わかりましたから宿に戻りましょう。後はバッツさんに任せるしかないですしね」
そんな軽口を言い合いながら二人は防具屋を後にして宿に向う。
日はもう大分西へと落ちていた。もうすぐ空が赤く染まり始めるだろう。
放送が近いことを感じ、二人とも自然と口数が少なくなった。
その時、ふとヘンリーは村の西を見る。

――足が、止まった。

「どうしたん……」
急に止まったヘンリーを見てソロも立ち止まり、ヘンリーが見ている方向を見た。
息を呑む。
ウルの村の西出口。そこには、一人の男が立っていた。
その衣服はあちこちが焼け焦げ、血と泥で茶褐色に染まっていた。
髪は縮れ、その肌に酷い火傷を負っている。右手首から先はない。
21黄昏に見る夢 9/15:2005/11/05(土) 16:19:19 ID:vkgGa8Tl
それほどまでに変わり果てても、ヘンリーとソロにはその人物が誰なのか判別できてしまった。
「……デール」
「ヒィイヤハハハハッハハ、ヘンリーぃいいい、逢いたかったぞぉおお」
デールはヘンリーの姿を認めると嬉しそうに舌を出し、歩み始める。
相手の異常さを感じ取り、ソロは剣を抜こうとするがヘンリーはそれを止めた。
「ソロ、手を出さないでくれねぇか。アイツは俺一人で何とかしてみる」
「でも!」
「頼む」
ヘンリーの鬼気迫る表情に気圧され、ソロは動きを止めた。
「危なくなったら、すぐに飛び出しますよ」
「安心しろよ……アイツはもう」
ヘンリーは途中で言葉を止めたが、言いたいことはソロにもわかっていた。
(あの人はもう……助からない)
剣を携えたままソロは一歩下がった。
ゆっくりとデールとヘンリーは近付いていく。
先に口を開いたのはヘンリーだった。
「デール、お前は何故そうなっちまったんだ。そんな姿になってもまだ止めようとしねぇのか」
「くくくく、何を、何を言っているヘンリー? こんな楽しいことがやめられるものか!
 人の悲鳴が、絶望の表情が、こんなにも僕を喜ばせてくれるのだ。
 人を壊すのは、嗚呼……何て素晴らしいんだろう。リュカもタバサも、とてもいい顔を見せてくれた……」
デールの口からこぼれ出た名前を聞いてヘンリーは叫んだ。
「何!? リュカに、タバサちゃんに会ったのかデール! おまえは……アイツ等を」
「ええ、とても美味しく頂きましたよ。
 リュカさんの信じられないといった表情がとてもとても僕の心を震わせてくれた。
 タバサ王女の鮮血はとてもとても美しいものでした」
「ぐっ、デール……! お前は!」
「後はお前だ、ヘンリー!! お前を壊せば僕は完成する。
 そして全てを壊して僕はこのゲームに勝ち残るんだ。
 ラインハットに戻ったら次は世界を壊そうか? ハハハハハハッ未来を思うと胸が躍るな!」
デールはいつの間にか左手にナイフを携えていた。
「ヘンリー! お前も僕の手によって壊れるんだぁッ!!」
ナイフを振りかぶり、デールはヘンリーへと向って疾走る。
22黄昏に見る夢 10/15:2005/11/05(土) 16:20:56 ID:vkgGa8Tl
それをヘンリーは、ただ無表情に見詰めていた。
(デール、お前はもう戻れないのか。
 マリア、それにリュカ、タバサちゃん……お前等はどんな気持ちでデールにやられた?
 デール……俺がお前に出来ることは……もう、ないんだな)
ヘンリーは剣を抜く。
デールの持つナイフの軌跡がやけにハッキリと見えた。
黙っていればその刃は正確にヘンリーの心臓へと突き立つだろう。
(一緒に、逝ってやるよデール。それが俺のせめての償いだ)
相討ちになることを決めてヘンリーもまた剣の柄を強く握り締めた。

デールがヘンリーへと駆ける。ヘンリーもまたデールを迎え撃つ。
その様子を見てソロは焦燥を感じていた。
(これで、これでいいんですかヘンリーさん。確かにデールさんはもう助からない。
 それでも実のお兄さんが弟を殺すだなんて……僕は!)
そう、こんなのは変だ。この世で二人の兄弟が殺しあうなんて許されるはずがない。
それが血の繋がらない兄弟でも、そんなのはおかしい!
ソロは剣を抜くと二人へと向って駆け出した。
「駄目だ! ヘンリーさん!!」

そして刃は突き立った。
デールの刃でもなく、ヘンリーの刃でもなく……ソロの剣がデールの鳩尾を貫いていた。
「あ、あー」
デールは気の抜けた声を発して、それで自分の中の全てが終わったことに気付いた。
後ずさり、ズルリ、と音を立てて剣がデールの体から抜ける。
そしてデールはその場へと崩れ落ちた。
「デール!」
その光景を時間が止まったようにして傍観していたヘンリーは、
デールの声を聞いて正気に戻り、倒れたデールを抱え上げた。
「ソロ! お前、何で!?」
ヘンリーに責め立てられ、ソロはギュッと目を瞑って声を絞り出した。
「だって! 例え仕方のないことだとしても!
 お兄さんが弟を殺すなんてやっちゃ駄目だと思ったんです!
23黄昏に見る夢 11/15:2005/11/05(土) 16:23:02 ID:vkgGa8Tl
 ヘンリーさんが手を掛けちゃいけなかったんですよ!」
その言葉を聞いてヘンリーは言葉に詰まり、何かを言おうとして結局何も言わなかった。
一つ頭を振るとデールへと呼びかけを続ける。
「おい、デール! デール!」

デールは自分の身体がだんだんと軽くなっていくのを感じていた。
いや、自分の重さが身体より下へと沈んでいくような感覚。
それは眠りに落ちる時に似ていた。
朦朧とした意識の中デールは考える。
(僕は……何をしていたんだろう。何かしなくちゃいけないことがあったような気がする。
 でも、もういいや。僕は終わってしまった。もう全てを忘れて眠ってしまおう)
そうして、デールは冥府へのまどろみへと身を委ねた。
深く、深く潜行していく意識。そんな時デールの頬に熱い雫が滴り落ち、僅かに意識が浮上する。
(熱い、何だろう? 雨かなぁ……でもそれにしては熱いな)
デールは何故だかそれが凄く気になった。取るに足りないことのはずなのに。
気になって気になって仕方がなかった。
重い瞼を強引にこじ開けて、熱い雫の正体を見る。
ぼやけた視界に、デールを抱え上げ涙するヘンリーの姿が映った。
熱い雫の正体はヘンリーの涙。しかしデールにはまだ理解できないことがある。
「兄……さん? どうし、て、泣いているんですか……?」
「そんな、そんなことすらもわからなくなっちまったってのか!?
 この、馬ッ鹿野郎が!」
泣きながら激昂するヘンリーを見てデールは唐突に理解した。

(ああ……そうか、『兄さん』だからだ……)

何だろう、心から暗い靄が全て取り払われたような気がする。
晴れ渡った心がとても気持ちよく、ヘンリーと話をしたいと思った。
ただ、強く思った。
「兄さん、僕は……僕はねえ、マリア義姉さんの歌がとても好きだったんですよ」
「ああ」
そんなことは知っていた。
24黄昏に見る夢 12/15:2005/11/05(土) 16:24:24 ID:vkgGa8Tl
マリアが教会で歌う時にはデールはいつも一番に駆けつけていたのだ。執務を放り捨てて。
「兄さん、僕は……僕はねえ、コリンズをとても愛していたんですよ」
「ああ」
そんなことは知っていた。
執務の合間を縫って、コリンズのかくれんぼの相手になっていたことは城の連中は皆知っていた。
「兄さん、僕は……僕はねえ、リュカさんたちの旅の話を聞くのがとても楽しみだったんですよ」
「ああ」
そんなことは知っていた。
リュカがラインハットを訪れた時は自分よりも先に迎えに出ていた。
「兄さん、僕は……僕はねえ、タバサちゃんがコリンズと一緒になったら、なんて考えていたんですよ。
 フフ、とても気の早い話ですがね。仲のいい三人を見ているとそんなことが思い浮かんで……」
「ああ、そうだな」
それは自分も、マリアも、リュカさえもそう思っていただろう。
「兄さん、兄さん……僕はねえラインハットという国を愛していたんですよぉ」
「……ああ」
―― そんなことは知っていた。知っていたのだ。
それなのに何故デールはこんなことになってしまったのか。
「ああ、だから兄さんか義姉さんを生き残らせようとして、僕は人を殺そうと……」
ガツン、と頭を殴られたような衝撃がヘンリーを襲った。
(俺か!? 俺がコイツを狂気に走らせてしまったのか!?)
デールは王として優しすぎたのだろう。
優しかったから、自分が生き残ろうとは考えなかった。
だが優しかったから、他人を殺すことが出来なかった。
殺さなくてはいけない、でも殺せない。殺したくない。
そんな矛盾を、デールの精神は抱えることが出来なかった。
優しかったから、優しすぎたから…… デールは自分自身を壊してしまうしかなかった。
それが狂気の真相。
「なのに……兄さん。どうし、て、こんなことに、なっちゃったんでしょうねぇ……」
その問いにしばらくヘンリーは微動だにできず、気の遠くなるような努力をして声を絞り出した。
「……別に。ちょっと巡り合わせが悪かっただけさ……。
 もしも少しだけ、ほんの少しだけ歯車が狂っていたら……俺がお前のようになっていたかも知れない」
25黄昏に見る夢 13/15:2005/11/05(土) 16:25:52 ID:vkgGa8Tl

幻視する。
森の中、あの小さな黒魔導師と頭巾を被った女の子を襲う自分を。
親友の妻になるかもしれなかったお嬢様の腕を斬りとばす自分を。
白銀に染まった雪山で親友に向って火炎瓶を投げ付ける自分の姿を。
幻視したその光景はあり得たかも知れないもう一つの可能性。

「だから、お前が気に病む必要はねえんだ……」
「そ、うか……兄さん、ああ兄さん。もっと話していたいのにどうしよう。
 眠くて眠くて堪らないんだ。瞼が今にも閉じてしまいそう……」
「眠ってしまえよ。疲れただろうからな、ゆっくりと休め。
 なぁに、話ならまた起きた時にすればいいさ」
「でも……」

「……王様、子分は親分の言うことを聞くものですぞ」

いつか聞いた言葉。
その言葉を聞いて、デールは安心したように瞼を閉じた。
「ありがとう、兄さん。兄さんはやっぱり凄いなぁ。
 僕は……僕はねえ、ずっと……兄さんのように、なりた……か……」

――それきり、デールは二度と動かなかった。

ヘンリーはゆっくりとデールの死体を抱きしめる。
(眠れよ、デール。お前が起きる時には全て終わってる。
 この俺が全て終わらせてやるからよ。だから……)
そしてヘンリーはしばらくそうやっていた後、ソロに声をかけた。
「ソロ」
「は、はい」
ずっと二人の様子を見守っていたソロは突然声をかけられて少し驚く。
「俺はよ、死んでもいいと思ってたんだ。
 マリアを……デールやリュカを元の世界に戻すためならこの命なんて惜しくねえってな。
26黄昏に見る夢 14/15:2005/11/05(土) 16:28:45 ID:vkgGa8Tl
 ……でも、死ねなくなっちまった。簡単に命を投げ出すわけにはいかなくなっちまったよ」
「ヘンリー ……さん」
その腕に抱えたデールを見てヘンリーは薄く笑う。
「こいつは俺に憧れていたんだと。こんな、何もできない男によ……なりたかったと、そう言った。
 だったら、俺はそれに相応しくならねえとな。コイツの言う凄い男によ」
ソロは何も言えない。言えるはずがない。
ただ、黙ってヘンリーの言うことを聞いている。
「だから決めたよ。いや、改めて考えた。
 このゲームをぶっ壊すってな。このゲームに乗る奴も全部俺が止めてやる。
 でも、でもよ……」
ヘンリーの瞳から涙が零れた。
「もう少しだけ、こうしていてもいいよな……すぐに、立ち上がるから……絶対に立ち上がるから」

ソロは空を見上げた。
静かな空間に、ただヘンリーの嗚咽だけが聞こえてくる。
空は僅かに紅く染まり始め、それは人々の血を連想させた。
一陣の風が吹く。……夜が、近いのだ。

(もう、哀しいだけの夜なんて訪れなければいい)

ソロはそう願った。
無駄とは分かっていてもそう願わずにいられなかった。

【ソロ(魔力ほぼ枯渇 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
 第一行動方針:ヘンリーを待つ
 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ヘンリー(手に軽症)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP3/4) キラーボウ グレートソード
 第一行動方針:哀しむ
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームの乗る奴は倒す)】
【現在地:ウルの村 外(西出入り口付近)】
27黄昏に見る夢 15/15:2005/11/05(土) 16:30:09 ID:vkgGa8Tl
【リュック(パラディン) 
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
       ドレスフィア(パラディン)、チキンナイフ、薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:ウルの村の魔法屋で待機
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村 魔法屋】

【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート、銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
     静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:レナが起きるのを待つ 
 基本行動方針:ファリスとの合流】
【レナ(気絶) 所持品:なし
 第一行動方針:不明】
【現在地:ウルの村 防具屋内部】

【ビビ 所持品:スパス 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:休息、見張り
 基本行動方針:仲間を探す】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:休息、見張り
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】

【デール死亡】
【残り60名】
28カナーンの夕凪 1/8:2005/11/05(土) 16:33:02 ID:YLFSUXLv

 一行は街の南口から入り、そこからすぐの家にとりあえず怪我人を運び込む。
 それから、二人の面倒と守りをパパスに任せ、死者を弔うべく探索を兼ねてオルテガは再び外へ向かった。

 ザックスを拾ったあたりを目指し、それからさらに通りの奥へ。
 血の香りが次第次第に強くなる。
 そこで、知った顔と見知らぬ後姿に会った。

 首がない躯が揺れる白いコートの足元に転がっている。
 物体としてそこにある知った顔はなんともいえない表情でこちらを見ている。
 …仲間には、妹には、会えなかったのか。
 いつか、いやそのうち必ず出会ったろう知り合いの死体に直面し、浮かび上がる激情を飲み込む。
 黙祷代わりとは行かないが数秒間目を閉じ、それからこぼれるように小さく哀れな名前を呟いた。
29カナーンの夕凪 2/8:2005/11/05(土) 16:34:25 ID:YLFSUXLv

 焦燥を表情に出さず、町の中央に横たわる大きな橋を駆け渡る。
 護衛の騎士がいない間に守るべき相手が傷ついているようではお話にならない。
 だから、通りの向こうから流れてくる血の香りは心臓の鐘を乱打する気がした。
 だから、その首の無い躯を発見した瞬間、心臓が大きく爆ぜたような気がした。
 直ぐに服装などの違いからそれが知らぬ者――恐らく起こっていた戦闘の犠牲者で、下手人はあの怪物に乗った騎士か――であると知ってその死体には悪いがほっとしていた。

 落ち着いて周囲を見ればやや離れた位置に落ちているものがある。
 丁度大きさは人の頭くらい…いや、頭だった。
 状況からそれが足元の哀れな死体のものであることは簡単に推測できる。

「問答無用、迷いなく綺麗に一撃かよ」
 身体と頭、両者の間で何度か視線を往復させたあとで、感想を漏らす。
 きれいな切断面が加害者の恐ろしい技の冴えを雄弁に物語っている。
 他に外傷が見られない、つまりほとんど抵抗できなかったということは何を示しているのか。
 圧倒的な腕の差か。超人的な気配絶ちによる奇襲か。それとも…顔見知りか。

 なんにせよ、疑問だらけだ。
 カナーンでは激しい戦闘――それこそかなり遠くまで聞こえる爆音を伴う――があったはず。
 だが、この被害者はその当事者にしてはあまりに動いていた様子が見られないのだ。
 それはつまり、あの怪物騎士、この死体のほかにまだ戦闘参加者がいるということ。

 背後からサイファーの知らぬ『第三者』に声をかけられたのはその時だった。
30カナーンの夕凪 3/8:2005/11/05(土) 16:39:30 ID:YLFSUXLv

「失礼する」
 思考を吹っ飛ばす野太い声にはっと振り返ると筋骨隆々の男が立っている。
 考えていて接近してくる気配を見落とすとはサイファーらしくない。
 動揺は見る間に沸騰へ、高揚した精神が危険信号を飛ばす。
「…重ねて失礼する。君は…テリー、だろうか?」
 大股で近づきながら誰とも知れない名前を尋ねる相手にアラームの針は振り切れる。
 沸き立った頭脳ではイザから聞いた名前は忘却の彼方へと蒸発していた。
「止まれ!そいつは捨てろ!」
 ぴたり、と男の足が止まった。


 やや興奮が過ぎている白コートの男の様子を冷静に観察する。
 白いコートはボロボロで、くたびれきって汚れている。そこには変色した血の染みもある。
 しかし、事前にザックスから得た情報から彼はここでの戦闘には関係ないこともわかる。
 あの目立つ白い色は相当に印象に残るだろう。
 何より正対する男の目はいくらかの焦燥と動揺があるにしろ、決意と責任を負ってこそいてもけして濁ってはいない。
 以上のことはオルテガにしてこの男を信用するに足る条件。
 ミスリルアクスを投げ捨てると、相手の反応を待った。


 足を止めた男はただサイファーの目を凝視する。それから、傍らへと斧が投げ捨てられた。
 続く沈黙はサイファーの言葉を待っているようでもあった。
 刃を向けたまま、しかしようやく少しクールダウンしてサイファーは口を開いた。
「……すまねぇな、ちょっと頭に血が昇っちまってよ。
 でな、これだけは言っておくぜ。オレは殺ってねえ。
 あとな、オレはサイファーだ。サイファー=アルマシー、テリーなんかじゃねぇ。
 大体そういうアンタは誰だよ?」
31カナーンの夕凪 4/8:2005/11/05(土) 16:43:46 ID:YLFSUXLv

「オルテガ、という一介の戦士だ。サイファー、そちらはここで何をしていた」
「ああ、仲間を探してんだ、ロザリーってエルフの娘とイザっつうぼおっとしたお人好しの奴をな。
 おっさんは見てねぇか? っと、あとテリーって誰だ」
「残念ながら。だが、うむ、ロザリーか、その仲間には会ったな」
 サイファーはこの街にいる二人を探しているということは伝わっていないが、それはあまり重要なことではない。
「テリーは……私も名前しか知らぬ。
 私はそこで倒れている男、ファリスには面識があってな。
 ザックスが言うにはファリスとそのテリーが組んでいたらしい」
「んだぁ、そのザックスって奴は?」
「この街での戦闘の当事者の一人。そちらも戦闘の音を聞いたであろう?」
「ああ、でけえ音させてやがったからな。
 しかし…なるほど、だいぶ状況が見えてきたぜ。ザックスと、こいつとテリーって奴。であの怪物騎士か…」
 怪物騎士。オルテガにはそれが何のことかわからないが、明らかに不快な表情がサイファーに浮かんでいる。
 次の二人の発言のタイミングは同時だった。
「チッ、思い出すのも忌々しい。アルスの奴もどっか飛ばされちまったしよ…」
「怪物騎士とは一体なn……アルスだと!?」
「なんだよおっさん、知り合いか?」
 トーンを一転させた男にやや驚きながらも、サイファーが問う。
「…息子だ。それで、アルスは? おぬしと一緒だったのか」
「こっち来てから会って組んでたぜ。
 けど、今は……なんかの魔法の類でどっかへ消えちまった。……無事だといいがよ」
「……そうか」
32カナーンの夕凪 5/8:2005/11/05(土) 16:46:57 ID:YLFSUXLv

 それから、短い会話の後サイファーは仲間を探すのだと路地の向こうへ行ってしまった。
 そんなに焦っても仕方なかろうと思う一方、その焦りも理解できる。
 とにかくオルテガはファリスの亡骸と首を連れてパパス達のところへと戻ることにした。
 パパスもまた、現実に目にする見知った者の死を悼む。
 出会った男、白いコートが特徴のサイファーのことを伝えた後、オルテガはファリスを埋葬すべく再び外へ向かった。
 簡易な墓を作り、引き続いて街の探索を開始する。


「…遅いな。本当に」 
 魔法屋が面した大きな通り。そこから横に伸びる路地からあたりを窺うイザがいた。
 魔法屋内部にいたイザが外へと出てきたのは実はサイファーが通り過ぎた数分後であるが、そんなことは当人らの預かり知るところではない。
 サイファーの姿を見つけられないことに不安を持つ一方、誰もいないことに安堵もする。通りから自分が潜む路地の奥へと視線を移したとき、イザの緊張は一気に膨れ上がった。
「誰だ!」
 見知らぬ、男。つい声量が上がる。
 不安的中、敵なのか!?
 装備していた剣の切っ先で相手を指す。だが、男は至極冷静に振舞う。
「ふむ、武器は捨てよう。私はオルテガ、敵対する意志は無い」
「え?」
 上げたテンションが拍子抜けするほど潔い態度。
「あの……オルテガさん。貴方は敵ではないんですね?」
 いつの間にか扉が開けてロザリーが戸口まで出てきていた。声、大きすぎたみたいだ。
「私はロザリー、こちらはイザさんです。私たちも戦う気はありません」
 男から返ってきたのは意外な言葉。
「ロザリーとイザ…ほう、奇縁だな!先ほどおぬし等を探しているサイファーに会ったぞ。
 まだこの街でおぬし等を探しているだろう。それにしても面白い縁もあるものだ!」
「サイファーに会ったんですか!?」
「…無事だったんですね!? 良かった…」
33カナーンの夕凪 6/8:2005/11/05(土) 16:51:47 ID:YLFSUXLv

 サイファーの話をきっかけとして互いへの警戒心は消え去った。
 続いて治癒結界の存在からまず怪我人二人がそこへ移され、それからパパスとイザが今度はサイファーを探しに街へ出る。

「んだよ、オレがバカみてぇじゃねぇか!」
 見つかったサイファーが愚痴りながら魔法屋に着いて、これで今カナーンにいる七人全員が一箇所に集まった。

 それから情報交換が始まる。
 オルテガとパパスにとって、それぞれの息子と同行したという彼らの話は何よりも聞きたいこと。
 サイファーらにとっても確実にゲームに乗っていない、共闘できそうな相手の情報は有益。
 レオ、アリーナ、スコール&マッシュ。エドガー&シンシア。
 ただまあ、スコールの話をしている時はサイファーは微妙な顔をしていたけれども。
 そして、全員にとって有益であるマーダーの情報。
 カナーンでの混乱を招いたスライムに乗った騎士のこと。
 アリーナと同じ姿をしているという手袋の無い偽アリーナのこと。
 アーヴァインという狙撃手のこと。
 狂気にとらわれてしまったティファという娘のこと。
 脅威の戦力を誇る二人の銀髪、セフィロスとクジャのこと。
 まだ判断は控えたい微妙な情報もある。
 ケフカという奇妙な男について。
 「キンパツニキヲツケロ」との謎のメッセージを伝えるメモ。
 また、口のつかえないザックスから断片的な情報を得られたテリーをイザはひどく心配していた。
 最後に、この世界で出会えていないそれぞれの知り合いのことについて情報を出し合い、交換を終えた。
34カナーンの夕凪 7/8:2005/11/05(土) 16:53:16 ID:YLFSUXLv

「世話になった。そして二人を頼む。では、再び生きて会おう!」
 低角度で入射する赤い光に染まりながら、二人の偉大な親父は北へ向けカナーンを発っていった。

「…ま、怪我人が増えたわけだがよ。動けそうなのは幸いだな」
 ティファの話に衝撃を受けていた様子のザックスであったが、今後については自らの意思でサイファーらと共に行動することを決めた。
「セフィロスやクジャに対抗するにはもっと仲間が必要だしね」
「ああ……そうだな」
 ギルガメッシュはまだ起きない。
「サイファーさん、この方も起きそうにないですし、今の内にお休みになられてはいかがでしょう。
 今日は動き詰めでしたでしょう」
 ロザリーに促されて既にザックスは壁にもたれるように座り込み身体を休めている。
「そうだな。肝心なときに疲れて万全じゃねぇんじゃ意味ねぇ」
「にしても、夕暮れか…。もうすぐまた魔女が……」
「ですね。皆様、無事だと良いのですが……」
「………」「………」「………」

 こうして、放送前の夕刻の一時は過ぎていく。
 この世界でそんなことがどれほど無意味で儚いかは分かっていても、今のカナーンは穏やかな街だった。

35カナーンの夕凪 8/8:2005/11/05(土) 16:54:22 ID:YLFSUXLv

【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:カナーンの町→北へ】

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 第一行動方針:しばらくは休息
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ロザリーの手助け
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷、仮眠)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:ロザリー達に協力
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ギルガメッシュ(HP2/5程度・睡眠)
 所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣
 第一行動方針:不明】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋】
36名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 00:31:09 ID:6gYv96iO
保守
37名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 21:45:47 ID:UMtQuEbD
新作期待age〜。
38名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/08(火) 18:40:53 ID:6NTBQbPl
ほしゅ
39スープと魔法とその例外 1/4:2005/11/08(火) 19:18:50 ID:uk0lE8+H
ターニアは目を覚まして、体を起こしました。ベッドに寝ていたのです。
時間のほどは空が真っ赤に染まるころ。
部屋にはターニアが寝ていたものも合わせて四つのベッドがあって、そのうちのひとつにエリアが寝ています。
エリアさんは……顔色は少し悪いけど、大丈夫みたい、とターニアは思いました。
ベッドの隣の椅子にビビが座っています。
眠いのか、目をつぶったまま頭がこくりこくりと揺れています。
ターニアがベッドで寝たらいいのに、と思ったとたん、ビビの首ががくんと落ちて、完全に目を覚ましてしまいました。
「ごめんね、起こしちゃった?」
「…ううん、ちょっと疲れて、うとうとしてた
 ええと、おねえちゃん、なにか食べれる?ちょっと待っててね」
そういって、ビビは部屋を出て行きました。
ターニアは見ていた夢のことを思い出そうとしました。
でも、幸せだったことしか思い出せないのでした。それがとても悲しく思われました。



廊下から、とたとたと足音が聞こえてきて、ビビが部屋に入ってきました。
ターニアはビビに話しかけました。自分が寝ていた間のことが知りたかったのです。
それに、悲しい気持ちをどこかにやってしまいたいとも思っていました。
「エリアさんの怪我、ちゃんと治ったんだ」
「うん。おねえちゃんが休んだ後に、リュックさんとわたぼうさんって人が来てくれてね…」
ビビが、エリアとレナ(近くにいたのに不思議なことですが、ターニアはレナと会ったことがないのです)のこと、
ロックがつれてきたバッツのこと、リュックとわたぼうが手伝いに来てくれたこと、
さっきソロとヘンリーから聞いたザンデの話、ザンデとピサロとロックが仲間を探しに行ったこと、
バッツがレナに会いに行ったこと、今はビビとわたぼうが留守番をしていることを話します。
隣にエリアが寝ているので、ビビはひそひそと小声で話し続けました。
ターニアが寝ている間にいろんなことがあったと知って、彼女はとてもびっくりしました。
そして、じわりと、悲しみに似た無力感に襲われました。
みんなで無事に帰れるといいな、といって、ビビが目線を落とし、
ターニアは、やっと彼がスープのカップを持っていることに気がつきました。
「みんなが外で話し合ってるときに、わたぼうさんが作ってくれたんだ。
 でも、たぶん、ぬるくなってるから」
ビビは目を細めて何かをつぶやいて
「ファイア」
小さな炎がスープの中に現れました。
ターニアはカップをわたされたので、おそるおそる中をのぞいてみました。
炎はゆらゆらと揺れています。でもなかなか消えません。
なんだか健気でかわいい、とターニアは思いました。
「すごい。魔法の炎って、水の中でも消えないんだ」
「うん、でも、魔力を送るのをやめると消えちゃうんだ」
こんな風に、とビビが言って、ス−プの中の炎は小さくなって消えました。
ターニアは手の中のぬくもりを転がしながら、もう少し見ていたかったと思いました。
「どうやったら、私も魔法が使えるようになるのかな」
ふと口に出した言葉は、なんだかとてもいい考えに思えました。
ビビみたいな小さな子供でも立派に魔法が使えていることは、ターニアをとても驚かせていたのです。
41スープと魔法とその例外 3/5:2005/11/08(火) 19:23:10 ID:uk0lE8+H
ターニアは過去に一度だけ、お兄ちゃんに魔法を教わろうとしたことがありました。
魔法を使えるお兄ちゃんたちに、実はこっそり憧れていたからです。
旅の途中、会いに来てくれたお兄ちゃんに一度だけでいいから、とねだってみたのです。
でも、ターニアに才能がなかったからなのかどうかはわかりませんが、お兄ちゃんは「やっぱり職に就かないと…」と、訳のわからないことをいって、すぐにあきらめてしまいました。
(ターニアは怒って、謝ってくれるまでお兄ちゃんと口をきかなかったのはいうまでもありません)
ビビ君ならきちんと教えてくれるかも、とターニアは考えたのです。
「魔法は、どうやって使うの? ビビ君は、どうやって魔法が使えるようになったの?」
わからない、深くかぶった帽子の中から、そう聞こえました。
「ボク、う、生まれたときから、魔法が使えたから……」
でも、と彼が顔を上げて続けます。
「例外があってね、おねえちゃんの持っているあの杖とか、魔法の力がこめられてるものを使えば、
 ほかには何もしなくても魔法が使えるよ」
「本当!?」
「効果は薄いことが多いし、いつか壊れたり、つかえなくなったりするけど……」
昔から宝石やきれいな石には魔力があるといわれていますし、
ビビの世界では、殴られると怪我が治る不思議な杖までありました。
いろんな世界の武器が集まるのなら、とビビは思ったのです。
ティーダさんからもらったターニアの杖は、いったいどんな効果があるのでしょう。
42スープと魔法とその例外 4/5:2005/11/08(火) 19:24:44 ID:uk0lE8+H
「そうだ!お姉ちゃん、よかったら、これも使う?」
ビビがザックから取り出したのは大きな鉄の塊でした。
「これ…これと似たものを見たことがあるような気がする……」
ターニアが銃を見たのは、暗い森の中。女の人がターニアに向けた拳銃です。
暗いせいもあったのですが、女の人の怖くてきれいな顔の印象が強くて、拳銃のことはよく思い出せません。
「ピサロさんも使い方がわからないっていってたし、おねえちゃん、使ってくれる?」
うん…、と返事をして、ターニアは自分のザックに、そのよくわからない武器をしまいました。
拳銃と散弾銃は形が違いすぎます。
ですが、ぽっかりとあいた深くて真っ黒な穴に、ターニアはからだが芯からが寒くなるような感じを覚えたのです。
話すことに夢中になって忘れられていた、あたたかいスープに口をつけました。



微妙な味がしました。
おおよそスープだとは思えないような味でした。
これは大変です。ターニアはわたぼうに料理の作り方を教えることを心に誓いました。
ターニアはぎこちない笑みを浮かべましたが、ビビは彼女のことを気にせずに、
彼の世界の魔法にまつわることを、彼なりの言葉で話しています。
ターニアが調理場へ行き、わたぼうの作ったおそろしい料理の数々に悲鳴を上げるのは、もう少し先の話です。
43スープと魔法とその例外 5/5:2005/11/08(火) 19:27:46 ID:uk0lE8+H
夕焼けが差し込む部屋の中で、一人の穏やかな寝息と二人のひそひそ話は続きます。
闇が世界を覆っても、この穏やかな時間があったということは、忘れられません。
いつのまにか、空の色はにじむような朱色から薄紫へ移り変わっていました。もうすぐ群青色になるでしょう。
それでも、今このときだけは、暖かな光がこの世界にくまなく降り注いでいるのでした。




(いえなかったなぁ……ボクが例外だってこと………)
例外。
戦うために、戦争のために生まれた、黒魔道士。
魔力と霧で、スープをことこと煮込むようにして作られた、人形。
いつか動かなくなる日が来る。
ジタンやフライヤ、サラマンダーに、会いたいと思った。
でもそれ以上にクジャに会いたかった。
生きる意味がわからないと言った彼は、どうしているだろう。
スープを飲み干し、わたぼうさんにスープの御礼をしないと、といって笑うターニアに
ビビは帽子を深くかぶりなおしながら、少し、笑った。

【ターニア 所持品:微笑みの杖 スパス 第一行動方針:料理を作る 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 第一行動方針:休息 基本行動方針:仲間を探す】
【エリア(体力消耗 怪我回復) 所持品:妖精の笛、占い後の花
 第一行動方針:睡眠中】
【現在地:ウルの村 宿屋内部】

【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:料理を作っている
 第二行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村 宿屋調理場】
44名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/09(水) 00:45:11 ID:USLGq+xH
和んだ
age
45星の箱舟 1/4:2005/11/09(水) 02:44:06 ID:73YeWneJ
 湖に程近い山林の中。
 その一角、幾重もの枝葉が絡むように生い茂り、偶然にして生まれた天然の死角。
 そんな木々の結界の中心で、長く伸びた銀の髪が風にゆれていた。

 大木を背もたれに、座り込んだセフィロスは瞑想をしていた。
 静かに、ともすればまるで、死者のように微動だにせず。
 目を閉じ、肉体の全ての活動を停止し、呪われた細胞に身をゆだねる。
 細胞は駆け回り、異常な速度で肉体は完全な状態へと復されていく。


 ―――星という箱舟を得て。
 ―――母のように星を回る。

 星を回る命の流れ。
 その流れに乗り箱船を流す。
 私は星を回る片翼の天使。
 運ぶは、繁栄と滅び、絶望と歓喜。
 星となり、星を得る。
 新しき大地で新しき箱舟を得て 繰り返し流れる。
 永遠に流れ続ける、星の遊牧民―――。

 ―――星を回る夢を見た。
 ―――不覚にも眠っていたようだ。
46星の箱舟 2/4:2005/11/09(水) 02:46:34 ID:73YeWneJ
 地を揺らす程の獣の咆哮に、眠っていた意識が目覚めた。
 不覚にも、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 咆哮は北、湖の方向から聞こえる。
 どうやら戦闘が行われているようだ。

 ジェノバ細胞の再生能力により回復はしているが、まだ傷は深い。
 雑魚ならともかく、まだ強者や複数の敵と戦闘が行えるほどではない。
 積極的に係わり合いになるべきではない。
 できれば、このまま静観が望ましいが、
 誰かがこちらに近づいてくるのなら、そういうわけにも行かない。
 暫くは、様子をみるとしよう。

 セフィロスはその場を動かず、再度瞑想に入り聴覚に神経を集中する。

 僅かに入る戦闘音。
 銃声、爆発音、獣の怒哮。
 そして、動き始めた巨大な足音。

 その足音はこちらに近づいてきている。
 枝葉の結界に囲まれたこの場所は、遠目から発見されづらい場所ではあるが。
 偶然ここにたどり着かれる可能性はゼロではない。

 この場を離れよう。
 ゆっくりと目を開け、早急ににその場を離れようとする、が。
 面を上げて、目の前を見上げ、その考えを改めた。
47星の箱舟 3/4:2005/11/09(水) 02:48:52 ID:73YeWneJ
 どうやら、様子見が過ぎたようだ。
 ここまで巨大な魔物が参加者にいようとは。
 完全にこちらの失策だ。
 あの視点の高さでは、この場所も視界に入っている事だろう。
 今動けば逆に発見される。
 今は、動けない。
 幸い、魔物はまだこちらに気付いてはいないようだ。
 このまま動かず、自然と同化しやり過ごすしかないだろう。

 そう思い、セフィロスは自然と同化するように、静かに目を閉じた。

 荒れ狂う巨山の魔王。
 全てを壊し、全てを殺すため森の中を突き進む。
 目的は生存。
 目的は逃避。
 体を蝕む痛みからの逃避。
 体のいい八つ当たりだ。
 ブオーンは、この痛みをぶつける生け贄を渇望していた。

 失われた左目の死角。
 偶然にも、その位置にセフィロスはいた。

 激痛が意識を覚醒させている。
 正常な思考は失われ、意識は本能に返る。
 それは魔物の本性でありあるべき姿。
 獣の本能が研ぎ澄まされる。

 そう、たとえ死角であろうとも、今のブオーンは人間の気配(におい)を見逃しはしない。
48星の箱舟 4/4:2005/11/09(水) 02:50:57 ID:73YeWneJ
 だがそれでも、ブオーンはセフィロスの存在に気が付くことができなかった。
 その気配は完全な無。
 心に乱れはなく、風のように緩やかで、木々のように穏やかだ。
 まるで自然と、この星と一体になっているかのよう。

 仮にセフィロスに僅かでも動揺が走れば、すぐさまその存在は発見される事だろう。
 魔王はゆっくりと巨大な歩を踏み出し、一歩一歩確実にセフィロスに近づく。
 そして、ついにその巨体はセフィロスの目の前迫った。
 目の前を通過する巨大な魔王。
 それを、微動だにせず、眉一つ動かさずセフィロスは静観する。
 振り上げられた巨足は、砂埃を上げ振り落ち、僅か数メートル先を霞め通る。
 それでもその心に乱れはない。
 そして、最後まで彼の気配は星から人間に移ることはなかった。

 魔王過ぎ去りし後。
 セフィロスはコケの生えた巨大な背を見つめ。

「…………ふん」
 それを一笑し、再度瞑想に入った。

【セフィロス(HP 1/7程度)、
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠
 第一行動方針:瞑想
 基本行動方針:黒マテリアを探す
 最終行動方針:生き残り力を得る】
【現在地 湖南の森】

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷、)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:生き延びるために全参加者の皆殺し
 基本行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:湖南の森→南へと移動(速度は遅い)】
49誰彼誘う闇、残照の光 1/23:2005/11/09(水) 21:39:33 ID:AMydV7VV
四時にはなっていたと思う。
少なくとも、空にかかった色とサックスの感覚からしたらそのぐらいだった。

時が経つのは、遅いのか早いのか。
言い掛かりで追いかけられて、一悶着あって、カイン達と別れて、カズスについて、また一悶着あって。
それほどのことがあったのに、まだ日が暮れないというのが、サックスには驚きだ。
未だ青さが残る空を見上げながら、彼はため息をつく。
(どうしてこんなことになるんだろうな……)

ゼル達に見捨てられた。そこまでは仕方がないと割り切れる。
過失でもリルムの目を潰してしまったこと、敵であってもイクサスという子供を殺したことは事実だ。
だが……ロランを見捨てたこと、そして曲解に近い誤解を広めていることだけは許せない。
何の罪もないはずのロランを見捨てて、自分達だけで逃げていったことが許せない。
自分のために命を賭けてくれたフルート、彼女の誇りを踏みにじるような真似をしたことが許せない。
例え悪意がなかったとしても、ゼル達がやったことは裏切りと同じだ。
サックスは四人を仲間だと思っていたのに、向こうは自分達を信じてくれなかった――

サックスはもう一度ため息をついた。
ルカとハッサンは、爆発の指輪による被害を防ぐ為に町の奥へ行ってしまっている。
なにせ、振動に反応して爆発するという。
『なんだか背筋がぞくぞくする』とか『さっきからやけに悪寒がする』とか……
風邪でも引いたのか知らないが、くしゃみや何かの弾みで爆発したりしてはたまったものではない。
ルカの提案で、一先ず爆発が起きても実害が少なそうな場所へ移動してもらう事になった。
「俺一人じゃ移動できないからルカは仕方ねぇけど、他の連中は絶対着いてくるなよ!」
そう言って雲に乗った格闘家と、数十mも間を開けてその後を追っていくルカを見送ったのが十数分前。
そして本当に被害が発生したのが、数分前だ。

「うおぉおおお! バーバラぁ!!」という雄叫びと共に、いきなり爆発が起きた時はさすがに驚いたが……
様子を見に行ったマッシュの話だと、町の奥で死んでいた少女――バーバラがハッサンの知人だったらしい。
変わり果てた姿を見つけて反射的に駆け寄り、ドカーンとやってしまったというわけだ。
50誰彼誘う闇、残照の光 2/23:2005/11/09(水) 21:42:28 ID:AMydV7VV
不幸中の幸いだったのは、距離が開いていたせいで、ルカもバーバラの遺体も何とか爆発に巻き込まれずに済んだということか。
今はルカが、身動きのできないハッサンの代わりに彼女の墓を作ってやっているらしい。

イクサスと行動を共にし、恐らくはロランと相討ちになった彼女。
町の奥で嘆いているであろう二人の気持ちを思うと、サックスの心境は複雑だった。
――あの時カズスにいなかった、事件とは無関係のはずのマッシュが同じぐらい気まずそうな表情をしていたことと
話の間、ずっと明後日の方向を見ていたスコールの態度にも、何か複雑なモノを感じたが。
自分の状況を忘れて問い詰めてみる気にはなれなかった。

ともかく、しばらくの間は――ハッサンは当然としても――ルカも戻ってこないだろう。
しかしそうなると、この場に残っているのはサックスにとって付き合いづらい人間ばかりだ。
(……)
サックスは、少し離れた木陰に腰を降ろしているスコール達を見やる。
面識はないが彼らの名は聞き覚えがあった。
ゼル曰く『無愛想で無表情だけど恋人と一緒になるとバカップル化する魔女討伐班の班長』、スコール。
リルム曰く『強くて優しくてゼルより頼りになる格闘家』、マッシュ。
今までの経緯を知らない彼らなら、あるいはサックスを仲間と迎え入れてくれたかもしれない。
だが、サックスの感情は、二人に関わる事を嫌がった。
ゼルとリルムの仲間であるという一点が、彼の心を頑なに閉じさせた。

次に、サックスはフリオニールに目をやった。
スコール達と話している最中に、あまりにもタイミング良く現れた男だ。
第一印象は『カインと一緒で人の話を聞かないタイプみたいだなぁ』といったところで、
別段マイナスの感情は持っていなかったが……

(……なんか、怪しくないか? あの人)

口では説明しきれない。だが、どことなく雰囲気がおかしいし、挙動も不振だ。
鋭い視線を常に誰かしらに注ぎ、決して隙を見せようとしていない。
『命を狙われるから警戒している』というより、『野獣が獲物の様子を伺っている』と言った方が近いように思える。
51誰彼誘う闇、残照の光 3/23:2005/11/09(水) 21:46:15 ID:AMydV7VV
――だが、それを誰かに伝えようとはしなかった。
スコール達にはあまり頼りたくない。
ハッサン達に告げに行っても、自分を襲ったカインの仲間だから悪し様に言っているのだと思われる可能性がある。
比較的好意的なルカでさえ、没収した武器を返そうと言い出すことはなかった。
つまり、自分とフルートの受けた誤解は、完全に解けているわけではないということだ。
こんな状況でカインの仲間であるフリオニールを怪しいだの何だのと言い出したらどうなるか。
『根拠も無く人を疑うなんてやっぱり悪人だ』――などと誤解を重ねられたら、目も当てられない。

吹き荒ぶ風。
廃墟となった町には、かつての面影など欠片もなく。
ただ、生気のない雰囲気だけが、ジンの呪いをかけられていた頃をわずかに思い出させる。
(どうして……)
どうしてこんなことになってしまったのか、サックスにはわからない。
やりきれない思いと幾ばくかのわだかまりを胸に、ため息をつく。
――その肩をふと、叩いた者がいた。


「どうしたんだ? 随分と暗い顔してるじゃないか」
「……フリオニール、さん」
フリオニールは薄い笑みを形作りながら、身を固くするサックスに喋りかける。
「そんな怯えなくてもいいだろ。別に取って食おうってわけじゃないんだ」
(カイン達が戻ってくるまではな)。読心能力のないサックスには、その呟きは聞こえない。
代わりに、探るような視線をフリオニールに向けながら、後ろに一歩下がる。

「悪いんですけどね。僕、カインさんのこと信用する気になれないんですよ。
 人殺しなんて言い掛かりを吹き込まれたとはいえ、何もしてないのに一方的に襲ってきた。 
 ……だから、あの人の仲間である貴方とも、話すことなんてありません」
そんな理屈を並べ立てながら、サックスはフリオニールの手を払い除けようとした。
だが、疲れのせいか、身体に残る毒素のせいなのか、あまり力が入らない。

(――他の連中がいなければ、まだるっこしい真似などせずに殺しているんだがな)
フリオニールはニヤリと笑いながら、ゆっくり手を退けてやる。
52誰彼誘う闇、残照の光 4/23:2005/11/09(水) 21:48:15 ID:AMydV7VV
(カイン達が生かした以上、雑魚でもそれなりの利用価値があるんだろう。
 表情からして、仲間が死んだか、裏切られでもしたと言ったところか……)
本性を悟られぬように笑顔を張り付かせ、値踏みながらも言葉を紡ぐ。
「そいつは災難だったな。だが、カインも決して悪い奴じゃないんだ。
 心を閉ざしていた俺に道を示してくれたし、今も俺に協力してくれてる。
 問題は……そうだな、人の言う事を簡単に鵜呑みにするってことか」

スミスや当人が聞いたら大笑いするだろう。言っているフリオニールもむず痒くてたまらない。
それでも、必死で真顔を取り繕った甲斐があったか、サックスはわずかに気を緩めたようだった。
フリオニールはその隙を見逃さず、更に攻め込む。
「ま、そういう事情があるなら無理に信用しろとは言わないさ。
 でも、話ぐらい付き合ってくれたっていいだろ?」
(敵は大勢いるんだ。
 雑魚でもバカでも駒は駒……他の奴に奪われないうちに、手中に収めておかないとな)

『こちら側』に引き込むための洗脳は、スミスに任せれば簡単に終わるだろう。
だが、最終的にはスミスもカインも敵に回す必要がある以上、フリオニールとしてもある程度手札を用意しておく必要があった。
攻撃面はマシンガンとラグナロク、それに覚えた魔法で間に合うが……防御面が決定的に足りない。
口車に乗せて防具を奪う。あるいは仲間とサックス自身の復活という約定を対価に、協力関係を取り付ける。
人目がある以上、後者も前者も難しいが、揺さ振りに使えそうな情報を聞き出すぐらいはしておいた方がいいだろう。
会話など、休憩しながらでも行える。

「話、ですか。……ここでなら聞いてもいいですけどね」
サックスはスコール達を見やりながら答えた。
人目につかない場所に連れ込まれることを警戒しているようだ。
妙な勘の鋭さに、心の中で舌を打ちながら、フリオニールはふざけた態度を装う。
「わざわざ二人きりの場所に行く必要なんかあるのか?
 ヒルダ姫が相手ならともかく、野郎となんてこちらからお断りだ」
そう言って、咳払いをしてから
「いやいや、そんなことはどうでもいいんだ」と、バツの悪そうな表情を浮かべてみせた。
……ほんの数日前までは確かに存在していた、人の良い青年の姿を思い出しながら。
53誰彼誘う闇、残照の光 5/23:2005/11/09(水) 21:49:57 ID:AMydV7VV
五時を過ぎてしまった。
時計を持っていたわけではないが、太陽の傾きを見ればスコールにも大体の時刻はわかる。
喋りたい話題はもとよりなく、知りたい事はとうの昔に聞き終えた。
後は、他人の行動に目をやりながら、ぼんやりと時を過ごすばかり。
どうしようもなく退屈だった。フリオニール達の話と同じで。

壁に向かって話してればいいような愚痴。
スコールに評させれば、そういうことになる。
恋人を失った。それを他人に話してどうする?
自分の気持ちをわかってほしい? 慰めを得たい?
それで、死んだ人間が戻ってくるとでもいうのか?
下らない。非建設的だし、後ろ向きにも程がある。
だが、フリオニールはスコールの感想など知る由もなく、延々と己の不幸や悩みを語っている。
サックスもサックスで、彼の話を真面目に聞いて、実は自分も……と打ち明けている。
フリオニールの嘘――実のところ、彼はレオンハルトと自分の立場を逆転させて話をしている――を知らぬスコールにしてみれば、
いい年をした男が二人揃って傷を舐めあっているようにしか見えない。

大切な人が死んだ。仲間と思っていた相手に裏切られた。
それがどうしたというのだ。
警戒しろという忠告のつもりなら、裏切ったという相手の名前を先に全員に伝えるべきだ。
仇を取りたいならさっさと取りに行け。
裏切られたことが許せないなら、相手を殴りにでも行け。
どちらも望んでいないなら、話などせずに胸に秘めておけ。
見ず知らずの他人に、不安だの不満だのを背負わせようとするな――

「……悪いな」
突然の声にスコールは眉を顰めた。
呟いたのは、マッシュ。
「どうかしたのか?」
スコールの問いに、彼は気まずさと申し訳なさを一対二ぐらいで混ぜ合わせたような表情を浮かべる。
フリオニールかサックスならともかく、なぜマッシュがそんな顔で謝る必要があるのか。
いぶかしむスコールに、マッシュは目線を逸らして頬を掻いた。
54誰彼誘う闇、残照の光 6/23:2005/11/09(水) 21:51:22 ID:AMydV7VV
「さっきからずっと不機嫌そうだからな。
 ……気になってるだろ、アイツのこと。
 何か、わがままにつき合わせちまったみたいで……悪いことしたなって思ってよ」

(そんなことか……)
あまりに見当外れな心配に、スコールはやれやれと首を振った。
手に持った剣の、平らな部分で肩を叩きながら、棒読み口調で返す。
「『今さら何を言ってんだよ。仲間だろ』」
マッシュは一瞬、口をぽかんと開けて呆けたようにスコールを見た。
やがてその台詞を最初に言ったのは誰だったのか思い出し、吹き出す。
「ハハッ……お前が言うと似合わないなあ」
「余計なお世話だ」
スコールはしかめっ面で答えた。本当に余計なお世話だ。

「それにしても、気になってるのは確かなんだろ? アイツのことがよ」
「まぁ、な」
スコールも、そこを否定する余地はない。
「元の世界からの、長い付き合いの仲間……なんだよな。
 ……どんな、気分なんだ?」
「別に……ただ、早く見つけてやりたいとは思ってる」
「そりゃそうだろうな」、とマッシュは天を仰ぐ。
数秒の沈黙――フリオニールとサックスの会話は続いていたが――の後、マッシュは心の中を透かすようにスコールを見た。
「今でも……仲間なのか?」
「当然だ」
スコールは即答した。そう、彼にとっては当たり前のことだ。
「あいつは大切な……大切な仲間だ。
 依頼人だからとか、そんな事じゃない。
 掛け替えのない仲間だから、傍にいなければいけないんだ」
何故か、ずっと表情を暗くしていたマッシュだったが……ふと、怪訝な声で問い返す。
55誰彼誘う闇、残照の光 7/23:2005/11/09(水) 21:53:34 ID:AMydV7VV
「依頼人?」
~~~~~~~~
「……リノアのことじゃないのか?」
珍しく狼狽の色を見せるスコールに、マッシュは肩を竦めて呆れてみせる。
「フツーに、アーヴァインの野郎のことを聞いてたつもりだったんだが」

「あまり似てないと思ってたけど、やっぱり親子なんだなぁ」
そんなコメントまで返されて、スコールは面白く無さそうに黙り込む。
しばらく笑っていたマッシュも、スコールが本格的に不機嫌になってきたのを悟り、口をつぐんだ。
どことなく気まずい雰囲気が流れる中、スコールは自問する。
なぜ、自分はこんなにリノアの身を案じているのかを。

リノアは魔女だ。力も、芯に秘めた強さも、本当は自分よりずっと上。
そんな彼女が簡単に死ぬはずがない。
そう思っていたから、アーヴァインを追い続けていられた。
敵を減らすことは、すなわちリノアの身を守る事にも繋がる。
『かつての仲間』という最悪の敵を捉えることが、彼女の命を守ることに繋がると信じていた。
(あの声と、この町のせいだ)
スコールは思う。
リノアに似た声を聞いてから、不安でたまらなくなった。
そんな嫌な予感を押し隠すために、アーヴァインを止めることだけを考えようとした。
けれど、儚い願望を嘲笑うかのように、この風景があった。
何もかもが崩れた……リノアの力をもってしても助かりそうにないほどの、凄まじい破壊の爪痕が。

紛らわせない不安だけが、際限なく膨れていく。
そんなスコールの想いを知ってか知らずか、マッシュは髪の毛を掻き毟りながら愚痴をこぼす。
「あーあ。ケフカのヤツはどこをほっついてるんだか。
 早く戻ってこいって……」

言葉は、唐突に止まった。
いつしか紅色に染まった空の端。
木陰の向こう、マッシュの視線の先には、槍を持つ男の影があった。
56誰彼誘う闇、残照の光 8/23:2005/11/09(水) 21:57:48 ID:AMydV7VV
だいたい四時半頃だろうと思う。
確証や時計があるわけでもなく、ラムザの感覚でしかないが。
テリーたちに出会ったのが山に入ってすぐのこと、その頃は三時か三時半という辺りだったから
交戦から優に一時間が経過してしまった……ということになるのか。
ラムザは焦りながら、彼方に広がる黄金色の海原へと駆け――そこでようやく、己の判断ミスを悟らされた。
反対側からやってきた二人組、竜騎士カインと道化師ケフカによって。

「俺はハッサンという男に頼まれたんだ。
 元の世界で仲間だった『青い帽子の剣士』を連れてきてほしいということでな。
 ……紛らわしい、テリーでないならそんな帽子など被るな。余計な手間をかけさせて」
苛立たしげに吐き捨てるカインを前に、ラムザは口に手をやりながら、断片的な情報を元に現状を推測する。

(金髪の僕と銀髪のテリーを誤認する?
 ……何かの手段で、上空からモノを見たということかな。
 だが、地面や木の葉の色と比較しても、銀髪のテリーを発見することは容易いはず。
 それにテリーの精神状況で、身を隠したり己の安全を図る余裕があるとは思えない。
 低空飛行が出来るといっても、やはり移動しやすい、障害物の少ない獣道を選ぶはずだ。
 ……ということは、反対方向に逃げてしまったと考えるのが妥当だろうな。
 だとすると厄介だ。この山はアリアハンと比べてはるかに険しい。
 間違っても、夜半に乏しい光を頼りにして移動できるような場所じゃない。
 飛行できるテリーならまだしも、僕やアンジェロが迂闊に踏み込めば、岩場や崖から足を滑らせる危険がある。
 ここはカナーン方面に抜けてくれることを期待し、平野部を経由して先回りした方が良さそうだな。
 しかし……問題は、途中の狭い谷だ。
 ゲームに乗った人間が待ち伏せるには格好の地形。襲撃が起きた場合、僕らだけでは戦力的に心もとない)

「あのトサカ頭、この私に無駄足を踏ませやがって!
 ちくちくちっくしょー! ゼェ〜ッタイに土下座させて靴砂払い落とし係にしてやるー!」
騒いでいるケフカに目をやる。ふざけているだけなのか、本気でやっているのかはわからない。
隣に立つカインも呆れているようだが、基本的に思いは同じなのか、止めるような真似はしない。
57誰彼誘う闇、残照の光 9/23:2005/11/09(水) 22:00:16 ID:AMydV7VV
(二人の口ぶりからして、ハッサンという人が別の場所で待機しているようだな。
 そして実際にテリーと面識があるのは二人ではなくハッサンの方らしい。
 自分ではなくこの二人を迎えに行かせたということは、怪我を負っているか、何らかの事情があるんだろう。
 だが、怪我人を単独で置いていくとは人間心理からいって考えられない。
 恐らく元のパーティは4人以上で、ハッサンと一緒にいる人間が最低一人はいる。
 砂漠のど真ん中で待ち合わせるはずがない。恐らく合流地点は東のカズスだ。
 テリーの姉についても聞いてみたいし、ここは一旦――)

「なぁ、君たちはこれからカズスに戻るつもりなんだろう?
 僕達も同行させてもらえないか? ハッサンという人達に確かめておきたいこともあるんだ」
ラムザの言葉に、カインは息を呑んで振り返る。
「なぜ知っている? 俺はそんなこと……」
と言いかけて口を抑えた。カマを掛けられたと思ったようだ。
ラムザは警戒心を解くために、人懐っこそうな笑みを形作る。
そして「大した事じゃないさ」と前置きしてから、自分の考えを一気に話し出した。
レーベの時のように、殺気を削ぐために煙に巻く必要はない。
今回はあくまで推測を伝える事が主眼だ。
ケフカやカインの態度からしても、長話はかえって逆効果だろう。
ラムザはそのことを念頭に置き、かつ話術士の知識を駆使して、簡潔にまとめてみせた……つもりだったが。

「もういい……わかった。わかったから、もういい」
それでも十分に長かったのか、カインは頭を押さえて言う。
そんな彼を見て、ケフカがニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「知恵熱でも出ましたか? ヒャヒャヒャ、何なら冷やしてあげますよ。ブリザガで」
「……俺を殺す気か」
「嫌だなぁ、お前なんかのためにぼくちんが手を汚すわけないじゃないか。
 冗談を冗談として受け取らないキマジメな奴はこの世から絶滅してしまえばいいんだ。アーヒャヒャヒャ!」
「どちらにしても死ねといっているようにしか聞こえんぞ」
ふざけているのか刺々しいのか判断のつきかねる奇妙なやりとり。
言い合う二人を、少しばかり距離を置いて眺めていたラムザに、アンジェロの声が届いた。
『ラムザ、気をつけて。 
 ……槍を持っている男の人、血の臭いがするわ』
58誰彼誘う闇、残照の光 9/23:2005/11/09(水) 22:02:09 ID:AMydV7VV
(血の臭い……?)
文字通り受け取るなら、怪我をしているか誰かと戦いでもしたか、ということだが。
アンジェロの口調と文脈には、『あの男はゲームに乗っている人間かもしれない』というニュアンスがあからさまに現れている。
実際、カインの態度と雰囲気は、平和主義者のそれからはかなり遠いように見えるが……
仮に人を殺めたとしても、正当防衛の末に過って、ということかもしれないし
相手がとんでもない悪人だったから仕留めた、というケースも考えられる。
しかし他に証拠がないし、ただの誤解かもしれない異常、露骨に警戒するような真似はできない。
また、アンジェロの勘が正しくとも、疑惑を口にすることはやはりプラスにならない。
ケフカも信用できる人間かどうかわからないし、最悪、二対一の戦いを強いられる可能性がある。

『わかった。油断はしないようにしよう。
 でも、事を荒立てられたらこちらが不利だ。とりあえず今は知らんぷりをしてくれ』
ラムザの囁きに、アンジェロは小さく肯く。
そんな二人のやりとりを知らぬまま、カインが唐突に口を開いた。
「しかし、本当に俺たちに付いてくるつもりか?」
「え?」
眉を顰めるラムザに、彼は少し慌てた様子で言葉を続ける。
「いやな。変な術を使う子供と、歩くだけで爆発する呪いにかかった男と、人殺しかもしれない男だ。
 成り行きで協力したとはいえ、俺はあいつらを信用しているわけじゃない。
 あんな変人ども、仲間に誘う価値があるとは思えんが」
「ルカ君達もお前にだけは言われたくはないでしょうねぇ。
 それにそろそろ、君のお仲間とやらも集まっているんじゃないかな?」
嫌味のようなケフカの台詞に、カインはわずらわしそうに目を細める。
「残念だが、エッジもスミスも約束を律儀に守るタイプではないからな。
 夕刻頃に会おうとは言ったが……連中なら真夜中になっても大して驚かんぞ」
殆ど本音で言っているのだろう。静かな口調に混じる苛立ちは、演技や偽りだとも思えない。
しかし、アンジェロはぽつりと呟いた。

『何だか私達に着いてこられると困るみたいよね。
 ――何があるってのかしら、カズスに』
59誰彼誘う闇、残照の光 11/23  ↑10/23:2005/11/09(水) 22:03:46 ID:AMydV7VV
五時より、少し手前だったろう。
大して広くもない砂漠だが、砂に足を取られたせいで移動に時間がかかり、
おまけにテリーという手駒どころか、ラムザという邪魔者がついてくる羽目になった。
日没までにカズスへ戻らねばならないカインが不機嫌になるのも当然である。
しかし、ケフカが全員にレビテトを使ったこと(ラムザに文句を言うカインが煩くなってきたからだ)、
見晴らしのいい砂漠であり、なおかつ周囲に人影が見当たらなかったことで
『警戒を止めて全速力で走って戻る』という手段を取ることができた。
元々、距離自体はそれほど離れていないのだ。
余裕で間に合う……とはいわないが、走れば、タイムリミットまでに十分カズスに戻れるだろう。
ちなみにケフカは自分だけヘイストを使っていたりもしたが、それはさておき。

予想外の事態が積み重なる中で、しかし運命の神はカインに協力したらしい。

犬の聴覚は、音域では人間の6倍、距離では数百倍に達するそうだ。
だからこそ、砂を踏みつけるかすかな音を感じ取れたのだろう。
耳を小刻みに動かしながら、アンジェロは仮の主人たるラムザに向かって何事かを吠える。
普通の人間には彼女の言葉を知る術がない。
だが、その様子を見れば誰でも、ある程度の察しはつくだろう。
「まーたロクデナシがやってきたんですか? うるさいのは一人で十分なんですけどねえ」
「ロクデナシかどうかは知りませんけど……」
言いながら、ラムザは真剣な眼差しで「方角は?」と問い掛ける。
しかし、アンジェロが鼻先で指し示す前に――

「カ〜イ〜ンーー!! どこにいるのーーー!!」

――やたらと甲高い叫び声が、彼方に舞い上がる砂埃の中から響く。
黄土色の煙は、三人の視界をギリギリで掠めつつ、そのまま西の方へと走り去っていく。
「……探されてるよ、カインさん」
ラムザの呆れたような呟きも、カインの耳には入らなかった。
60誰彼誘う闇、残照の光 12/23:2005/11/09(水) 22:05:38 ID:AMydV7VV
あの声は、間違いなくユフィのものだ。
エッジと待機しているはずの彼女が、なぜこんな砂漠にまで自分を探しに来ているのか?
そもそも『忍びの者』のはずなのに全く忍んでいないのはどういうことだ?
そんな内心の動揺を押し隠し、痛くなりそうな頭を押さえながら、カインは地面の代わりに宙を蹴る。
「ユフィーッ、こっちだぁーッ!!」
走りながら声を張り上げた。
百メートルほど疾走し、二度目の呼びかけをしたところで、ようやく相手もカインに気付いたらしい。
「カイン!!」
ユフィは飼い主を見つけた子犬のように、嬉しそうな声を上げる。
そして弾丸のごとき速さでカインに駆け寄り……砂に足を取られ、彼を巻き添えにしながらすっころんだ。

「……で、どういうことなんだ?」
全身砂まみれになったカインは怒りを滲ませながら、ユフィを睨みつける。
「俺達が戻ってくるまで、あの場で休むなりしててくれと言ったはずだが?
 だいたい、エッジはどうしたんだ?
 まさかお前一人に俺を追いかけさせて、自分はのうのうと休んでいるのか?」
そんなカインの甘い予想とは裏腹に、ユフィは座り込んだまま目をこすり始める。
「違うよ、そんな場合じゃなくて……エッジ、エッジが……」
ぽろぽろと零れる涙に、カインはふと、嫌な予感を覚える。
一人きりのユフィ。待ち合わせの相手。
最悪の可能性が脳裏に浮かぶ。
「落ち着け。泣かれても何が何だかわからんぞ」
(そうだ、落ち着け)と、自分自身にも言い聞かせながら。
後ろで茶々を入れてくるケフカを無視して、ラムザと二人で彼女を宥めた。

やがて泣き止んだ彼女から聞き出せたのは、想像通りにして計算外のアクシデント。
『フリオニールがエッジを殺した』。
それはリュカ達を殺すプランを、スミスを使ってエッジ達を洗脳するプランを、共に放棄しなくてはならないということを意味する。
(フリオニール……余計なことをッ……!!)
歯噛みしても始まらない。
こうなった以上、正体を気付かれる前にユフィを始末するか、カズスから遠ざける必要がある。
61誰彼誘う闇、残照の光 13/23:2005/11/09(水) 22:07:37 ID:AMydV7VV
(……だが、ラムザとケフカがいる中で、どうやって?)
悩むカインを余所に、ユフィは話を続ける。
「それで、先客にスコールとマッシュって二人組と、ハッサンとルカとサックスって三人組がいてさ。
 協力してもらえるかなって話し掛けようとしたら、フリオニールのヤツが出てきて……
 あの場にいた二人がマーダーだってんで、あたしまで一括りにされちゃったみたいなの。
 だからカイン! あいつを倒すために、みんなのこと説得してよ!」

(ふざけるな……役立たずの小娘が)
カインにしてみれば、ユフィはエッジについてきたオマケである。
片腕がない時点で、戦力として期待していない。
どうせならエッジを庇うなりして死んでくれれば、洗脳のネタとして使える……そんな程度の存在。
暴走して計画を台無しにしてくれたフリオニールには怒りを抱かざるを得ないが、
だからといって、ユフィのために強力な駒を捨ててやる義理はない。
ならばどうするか。
フリオニールはまだ切り捨てるわけにはいかない。
三人同時に始末しようにも、一人も逃さずに勝つ事は明らかに不可能だ。
残る手段は……

「――ラムザ。お前は、最終的にはテリーを追ってカナーンに向かうと言っていたな。
 頼む……ユフィを連れて行ってくれないだろうか?」

「か、カイン?」「どういうことだい?」
頭を下げるカインに、ユフィはうろたえ、ラムザは冷静に聞き返す。
カインは一息つき、思考をまとめながら言葉を紡ぎ始める。
「どうもこうもない。フリオニールが人を殺めているなら、俺には止める義務がある。
 だがユフィ。万が一お前に死なれれば、エッジに顔向けができん。
 お前をカズスに連れて行くことも、砂漠に一人置き去りにするわけにもいかない」
彼はそこで一旦言葉を切った。
そして、ラムザに向き直るが、当のラムザがカインの話を遮る。
「……カインさんの気持ちはわからなくないよ。でも、僕も話術士の端くれだ。
 説得なら自信があるし、ここは四人でカズスに戻った方が得策だと思う。
 フリオニールのことは僕に任せて、貴方がユフィをしっかり守ってやれば……」
62誰彼誘う闇、残照の光 14/23:2005/11/09(水) 22:10:07 ID:AMydV7VV
「他人に任せられることではないのだ!」
声を張り上げて、カインは叫んだ。
合理的な理論を言い負かすには、感情論で場の空気と勢いを味方につけるしかない。
フライヤと出会った時のことを思い出しながら、『それらしい』ストーリーを即興で作り上げる。

「俺は……セシルを止めてやれなかった。恋人の死を前にして狂ってしまった親友を止められなかった。
 そんな時にフリオニールと出会ったんだ。
 恋人を亡くして失意にくれていた、セシルと良く似た……あいつを」

お涙頂戴系の話というのは非常に便利だ。
内容が内容だけに、続きが思いつかずに黙ることになっても『悲しみで言葉が詰まった』ということで誤魔化せる。
目を合わせずに俯いていても、不自然に思われない。
何より、相手が善人であればあるほど、同情と共感を簡単に買える。
――唯一の欠点は、悪人には通用しないということぐらいか。
「フリオニールと一緒にいる間は……セシルを救えなかった罪から逃れられるような気がした。
 けれども、もし、あいつが……セシルのように過った道へ堕ちたなら……俺の力で止めてやりたい。
 ここで他人に任せたり、ユフィに限らず犠牲者を増やすような事になれば、俺は俺自身を許せなくなるだろう。
 ……下らぬ男の下らぬ自己満足かもしれない。だが、どうか、俺にカタをつけさせてほしいんだ」

ユフィは痛ましげな表情を浮かべ、ラムザとカインを交互に見やる。
カインもラムザを見つめ、再び頭を下げる。
「これが俺のわがままだということも、迷惑をかけているということも承知だ。
 だが……どうしてもカズスに行く必要があるのか?
 フリオニールは恐らく思い詰めてしまったんだ。説得を試みても、聞く耳を持とうとしない可能性が高い。
 俺は、あいつの犠牲者を、これ以上増やしたくはない……」
駄目押しの一言に、ラムザの思いはかなりぐらついたようだった。
「……僕の目的は先ほど言った通り。
 テリーに関して聞きたいことがあるのと、戦力を集めたいからだ。
 だが、怪我人を見殺しにしたくはないし、貴方がそこまで固い決意を抱いているなら僕がとやかく言うことじゃないだろう。
 けれど……彼女の身柄を預かる前に、一つだけ聞かせてもらう」
そう言って彼は肩を竦めると、カインに向き直った。
63誰彼誘う闇、残照の光 15/23:2005/11/09(水) 22:13:23 ID:AMydV7VV
「僕は純粋な剣士じゃない。敵に襲われた場合、彼女を守りきれる自信は僕にはない。
 貴方と一緒の方がまだ安全かもしれない。それでもいいのかい?」
「ああ」と即答しかけて、カインは口を噤む。
ラムザの目に宿る鋭い光に気がついたからだ。

――冷静に考えれば、誰もがユフィのような純真で騙されやすいお人よしとは限らない。
殺人者の仲間を殺人者と見る者がいるのは当然の話だろう。
それに思い返せば、エッジのことに関して、わずかではあるが矛盾した事を口走ってしまった。
勘が良くて頭が回る人間が注意を払わない限り、気付かないとは思うが……ケフカもラムザも切れ者だ。
迂闊に答え、尻尾を捕まれれば、一気に不利な状況へと落とされる。
良い言葉を捜しあぐねるカインに、助けはあらぬ方向から訪れた。

「お取り込み中ですけどねぇ、私からも一つお話があるのですが」
「「話?」」
ラムザとカインの声が重なる。
口を挟んだのは、珍しく沈黙を保っていたケフカだった。
三日月形に唇を歪ませたまま、心なしかトーンを落として喋りだす。
「カインには少し話したけどね、私はとある帝国のカ……ガストラ皇帝に仕える身だったんですよ。
 で、そこの小娘が見かけたマッシュという男。熊みたいなナリのくせにフィガロという国の王族でしてねぇ。
 兄貴のエドガーもムカツクけど、あいつはあいつで……アーヒャヒャヒャ、そんなことはどうでもいいんです。
 とにかく、皇帝はもちろん、私のことも見知ってるというわけなんですよ」
この時点で、カインにはだいたいの展開が読めた。
首を傾げるユフィとラムザの隣で、こぼれそうになる笑みを押さえ込む。

「フィガロは表向きは同盟を組んでいたけれど、裏では反乱組織と結託した帝国の敵でしてねぇ。
 変な言い掛かりをつけられるとシャクだし……何より、バカで暑苦しい筋肉ダルマはダーイキラーイだ!
 そういうわけで、ぼくちんもカナーンへ行きますよ!
 そうすればお前らも戦力とやらが手に入るし、僕もフユカイな思いをしないで済む!」
突拍子も無いケフカの言葉に、ラムザは驚いたようだった。
両手を前に出して、見えない何かを抑えるような仕草をする。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。
 それなら、ケフカさんがユフィを連れて行けばいいんじゃ……」
64誰彼誘う闇、残照の光 16/23:2005/11/09(水) 22:15:15 ID:AMydV7VV
弁解の途中で、カインはラムザの襟首を掴んだ。
数メートルほど引き摺り、ケフカに聞かれぬよう耳元で囁く。

「アレとユフィを二人きりにするつもりか?」

ラムザはそろそろとケフカに視線を移し、やがて、小さく息を吐いた。
「……わかりました」

それで、話は決まった。
三人はカナーンへ、カイン一人だけがカズスへ。
幾つものアクシデントのせいで手間取りはしたが、別れ際にケフカが使ったヘイストの効果で多少はカバーできそうだ。
『レオとマッシュのこと、お願いするよ』という囁きと意味深な笑みには、嫌な気配を覚えたが。
(あの男だけは信用ならんな……)
カインは独り言をこぼしながら、カズスへと疾走する。
だが……カインにはまだ考えるべき問題があった。

エッジは死んだ。
カズスにやってくるのはリュカにエドガーにシンシア、もしかしたらセージにタバサ。
現在カズスにいるのはルカとハッサンとサックス、それにスコールとマッシュ。
味方は今のところフリオニールのみ。スミスも戻ってくるとは思うが、前科があるだけに期待はしていない。
罠を張ろうにも手勢が少なく、かつ、人目と敵が多すぎる状況だ。
過ぎた欲は己の身を滅ぼすことになる。
狩り場の準備を整える為にも、少しばかり人数を減らしておかなくてはならない。
もっとも――手札は揃っている。
一つは最初のパートナーから得た情報。一つは、リュカ達から聞いた話。
一つはケフカの愚痴、一つはゼル達の存在。
後は、切り方さえ間違えなければいい話だ。

口の端を吊り上げるカインを、倒れた木々と四人の男が出迎える。
時は夕刻、黄昏時。
沈みかけの太陽は、血の色を思わせる光で崩壊した廃墟を照らしていた。
65誰彼誘う闇、残照の光 17/23:2005/11/09(水) 22:18:19 ID:AMydV7VV
「遅かったな。他の連中とスミスはどうしたんだ?」
フリオニールはカインに駆け寄り、声をかける。
カインは彼を一瞥すると、小さな声で何事かを囁いた。
サックスには聞き取れなかったが、フリオニールがかすかに肯いたことだけは見逃さない。
しかし二人は何事もなかったように、話を始めた。
「用事を頼んだからな。何もなければ直に戻ってくるはずだ。
 それより、そこにいる連中は誰だ?」
「……ああ、スコールとマッシュのことか?
 良く知らないが、お前と一緒にいるケフカとかいう奴に会いたいんだとよ」
「スコールにマッシュ……!?」
カインはどことなくわざとらしい仕草で目を見開き、高い声で叫ぶ。
名を呼ばれた二人は、きょとんとした表情でカインを見た。
「俺達のことを知っているのか?」
スコールの問いかけに、カインはゆっくり肯く。
「ああ。数時間前だが、お前らの仲間だという連中に会った」
サックスはひやりとした。そう言えばカインはゼル達と出会っていたのだ。
スコール達二人の名前を知っていてもおかしくない。
自分とゼルのしたことが、スコール達にばらされてしまうのではないか。
押し寄せる不安を余所に、しかしカインは、誰も予想していなかった事柄を口走った。

「あいつらは確か、エドガーとリュカとシンシア……
 それにゼル達四人と……もう二人、アーヴァインと、何と言ったかな……」


「「……なんだって?」」
スコールは呟いた。その声がマッシュのものと重なる。
「エドガー? 兄貴が!?」
「アーヴァインがゼルと一緒にいたのか!?」
カインは詰め寄った二人の迫力にたじろいだ素振りをみせたが、咳払いをしてから宥めるように言う。
「それが色々ややこしいんだ……とりあえず順番通りに話すから、落ち着いて聞いてくれ」
そうして彼は、静かに語り始めた。
66誰彼誘う闇、残照の光 18/23:2005/11/09(水) 22:20:37 ID:AMydV7VV
「まず、エドガー達に会ったのは北の森の奥だ。
 緑色の髪の男に遠くから射撃されたリュカを、エドガー達が助けたという話でな。
 もう一人、リノアとかいう連れがいたそうだが、彼女は助からなかったらしい。
 そしてリュカの手当てを終えたら、逃げた犯人を追ってウルに向かうつもりだと……」

――続きは、スコールの耳に入らなかった。
何気ない世間話のように触れられたフレーズが、全身の血を凍らせた。
気がついた時には、スコールはカインの胸倉を掴んでいた。
「リノア、リノアといったのか!? ふざけるな……リノア、リノアが……!!」
「止めろスコール!」「スコールさん!! 落ち着いて!」
サックスとマッシュに取り押えられ、それでようやく我に返る。
解放されたカインは苦しげに咳き込みながらスコールを睨み、フリオニールはどこか冷ややかな目で四人を見ていた。

「くそっ……俺はエドガーから聞いた話をそのまま言ってるだけだぞ。
 だいたい、こんなことで嘘をつく人間がいると思うか?
 それでなくても、あと十分もすれば放送が流れるんだ。その時になれば白黒はっきりするだろう」
吐き捨てて、カインは話を続ける。
「ゼル達四人に会ったのはその後だ。
 話しているところに、アーヴァインという白魔導師姿の男と、もう一人緑色のバンダナをかぶった男が現れてな。
 元の世界の仲間だと言って、お互いに喜んで、一緒に行こうという話になっていた。
 それで、そいつらもやっぱりウルに向かうと言っていたな」

「どっちもウルか……まさか、兄貴があいつに見つかったら……」
マッシュが不安げにこぼす。
その横で、スコールが虚ろな目つきで何事かを呟いている。
「まさか……いや、そんな……だが……」
やがてスコールは意を決したように、顔を上げた。

「……一つだけ聞きたい。
 リノアを殺した男は……本当に緑の『髪』だったのか?」
67誰彼誘う闇、残照の光 19/23:2005/11/09(水) 22:23:52 ID:AMydV7VV
カインは一瞬呆気に取られたが、ふとあることに気付き、見えないように口の端を歪ませた。
「その口ぶりからすると、心当たりでもあるのか?」
しらばっくれて問い掛ける。帰ってきたのは、想像どおりの答えだった。
「……アーヴァインと、相方の男の容姿だ。
 アーヴァインは確かにリノアやゼルや俺の仲間だったが、今はこのゲームに乗っている。
 あいつの本職は狙撃と射撃だし、……」
「そして緑髪ではないが、緑のバンダナを巻いた男をパートナーにしている、か」
嘲笑を押し隠しながら、カインはスコールの言葉を継いだ。
「俺は当事者じゃないから何とも言えんが、射撃武器で接近戦を挑む馬鹿もいないだろう。
 それと奴の相方は、金髪を隠すように、きっちりとバンダナを巻いていた。
 かなり遠くから、ちらとだけ見たなら……髪の色自体が緑と間違えることもあるかもしれんな」
「金髪……!」
「なんだ、そっちにも心当たりがあるのか」
「……いや。なんでもない」

歯切れの悪い返事だったが、想像はつく。例のメモを拾うか読むかしたのだろう。。
だとすれば好都合だ、尚更強く罠にかかってくれた事になる。

カインの最初のパートナーはお喋りな男だった。
尋ねもしないことを勝手に話したが、無駄な世間話というわけでもない。
ギルバート殺しを引き受けたのと同じで、後で取引の材料に使うつもりだったのだろう。
断片的な、小出しの情報ではあったが、殆どはカインにとっても興味深い代物だった。
選ばれた者しか扱えず、しかし不可思議な力を秘めているという武具。
ティナという女から聞き出したという、幾人かの情報。
そして――主催者たる魔女と強い因縁を持つ者、スコールとリノアについて。

『僕らの班長……スコールはね、アルティミシアの天敵なんだよ。
 あいつとリノアだけは、何があろうと甘く見ない方がいい』
嘘をついている様子はなかったし、主催者やそのしもべについて、アーヴァインは非常に詳しい知識をもっていた。
だとすれば、アーヴァインの仲間だというスコールもまた同等の知識を持っている可能性が高い。
さらに、『アルティミシアの天敵』というフレーズも気に掛かっていた。
アルティミシアのしもべと名乗る飛竜を相方にしている彼には、無視できる事ではない。
68誰彼誘う闇、残照の光 20/23:2005/11/09(水) 22:27:09 ID:AMydV7VV
ゼルがアーヴァインの仲間だとは知らなかったが、幸運にも彼はスミスには反応を示さなかった。
だが、スコールにも気付かれずに済むとは限らない。
スミスのためにもスコールは邪魔だ。
だからゼル達と一緒にいた正体不明の二人をスケープゴートに仕立て、追い出す。
上手く行けば労せずして敵を減らせるし、心を挫くための材料に使える。一石二鳥だ。
そう考えた彼は、顔を隠していて、身長も体格もアーヴァインに良く似ていた白魔導士を選んだ。
――本当にその白魔導士がアーヴァイン本人だという事には、まだ気付いていない。

ウルを選んだのは単なる消去法だ。
エドガー達がいるサスーンや、ラムザ達がいるカナーンに向かわせるわけにはいかない。それだけの話。
それにエドガー達と約束した待ち合わせ時間は『日没から二時間後』だ。
賭けではあるが、真っ直ぐウルに向かってくれれば、エドガー達と鉢合わせずに済む可能性は高い。
事実、この時点ではエドガーはサスーンにいた。
カインの計画は、即興にしてはかなり良い線まで行っていたと言えよう。

幾つかの点を除いては。


(リノア……)
スコールはぽつりと呟く。
拳を握り締め、溢れそうになる涙を拭って。
(……わかってる。俺は、後ろなんか見ないから。
 昔の……弱い俺に戻ったりなんかしないから)
風の音のような声を思い出しながら、首にかけた銀細工の獅子を握り締める、
(あんたの気持ちも、みんなの気持ちも、ちゃんと届いてるから。
 だから……いつか約束したあの場所で、少しの間だけ待っててくれ。
 ……すぐに行くから。必ず、全部終わらせて、会いに行くから)

――そう、誰もが弱い心の持ち主だとは限らない。
人の死に挫けるものもいれば、乗り越えようとするものもいる。
遺された想いと決意を胸に、前に歩もうとする者もいる。
69誰彼誘う闇、残照の光 21/23:2005/11/09(水) 22:28:37 ID:AMydV7VV
『ラムザ……私、やっぱり、スコールのところへ行きたい』
人にはわからない言葉で、彼女はそっと囁く。
『そうか……君のご主人の恋人、だっけか』
『そうよ。頼りになるけど、少し、危なっかしい人』
言葉を交わす。共に過ごしたわずかな間を懐かしみながら。
二度と出会えないかもしれないという悲しみを胸の奥にしまいながら。
『ご主人、見つかるといいね』
『ええ』
短い別れの言葉を背に、彼女は走り出した。
最後に、一声だけ吠えて。
『ラムザ……また会いましょう!』

「あれ、あれれ? あの犬、どっか行っちゃうよ?」
ねぇいいの? と聞いてくるユフィの声も、耳に入らなかった。
ラムザは願う――どうか彼女が、スコールとリノアに無事に会えるように、と。


「ちくしょー、チョコボがあればあっという間なのに」
邪魔な枝や蔓草を払いのけながら、ロックは森の中を掻き進む。
「チョコボ? 何だそれは」
聞きなれない言葉に、ピサロが首を傾げた。
簡単に説明しようとするロックの横から、ザンデが口を挟む。
「乗用に使われる鳥の一種だ。
 ギサールの野菜を好物とするだけあって独特な体臭を持つが、この匂いがモンスター避けの効果を持つとも言われ……」
……流石は分析癖の持ち主だけあって、彼の知識は詳細かつ膨大だが、いかんせん話が長い。
ロックは辟易していたが、ピサロは真剣に耳を傾け、質問までしている。
初めこそ殺伐としていたが、案外、この二人は魔王同士ということもあって相性がいいのかもしれない。
(この二人がセットで敵に回ってたら……とんでもないことになってただろうな……)
内心冷や汗をかきながら、ロックは歩く。
その先にかつての仲間がいるとも、毒牙を向く敵がいるとも知らぬまま。
70誰彼誘う闇、残照の光 22/23:2005/11/09(水) 22:31:35 ID:AMydV7VV
――そう、張り巡らされた運命の糸は、時に絡まり、時に引き寄せる。
その先にあるのが希望なのか絶望なのかはわからずとも……

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第二行動方針:ゲームを止める】
【現在地:カズスの村入り口→ウルへ】

【フリオニール(HP1/3程度 MP1/2)
 所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
 第一行動方針:カインと打ち合わせ&情報交換する
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【カイン(HP5/6程度、浮、疲労)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置
 草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
 第一行動方針:リュカ達が来るまで、フリオニールと打ち合わせをする
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
 第一行動方針:休憩 最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村入り口】

【ルカ(浮) 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 、風のローブ、シルバートレイ
 第一行動方針:休憩中。ハッサンをどうするか考える
 最終行動方針:仲間と合流】
【ハッサン(HP 1/10程度、危機感知中)  所持品:E爆発の指輪(呪) 、ねこの手ラケット、チョコボの怒り、拡声器
 行動方針:オリジナルアリーナと自分やルカの仲間を探す、特にシャナクの巻物で呪いを解きたい
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口付近】
71誰彼誘う闇、残照の光 23/23:2005/11/09(水) 22:32:29 ID:AMydV7VV
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5、浮)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:テリーを追い、保護する
 第二行動方針:仲間を集める(ファリス、アグリアス、リノア優先)
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:ラムザに同行する
 第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【ケフカ(浮、MP1/2程度)
 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:カズス西の砂漠・中央付近→平地を経由してカナーンへ】

【アンジェロ 行動方針:スコールに会う】
【現在位置:カズス西の砂漠・中央付近→カズスへ】

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 第一行動方針:仲間、あるいはアイテムを求め、カズスの村へ
 基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:ザンデに同行し相手を見極める 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 第一行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【現在地:ウル南の森→カズスの村へ】
72考える亀 1/7:2005/11/11(金) 00:31:20 ID:vXMEQFst
前方の山を境に、左に緑の森、右に黄土色の砂漠が見える。
「腹減ったなぁ……」
「ずっと歩きづくめじゃったからな」 
太陽はもう大分傾き、風は涼しさを増してきた。 
山道を避け、山脈に沿って歩いて来たので、かなり遠回りになってしまった。 
テリーはまだ肩の痛みが残っていたが、ギードに余計な体力を使わせ、負担を掛けたくなかった。 
トンヌラはすっかり落ちついたらしく、ぺたぺたとテリーの後に付いてきている。 
「この分だと、カズスへ着くのは夜になるかな」
「となれば、ここらで一休みした方がいいかもしれんな」
「ここなら回りも見えるし、安全かな…… よし! ご飯にしよう」  

ひらけた平原の真ん中に腰を落ち着けたのには、ちょっと理由がある。 
ここまで来る途中、山に大きな雷が落ちるのを見た。 
ギードが言うには、あれは自然現象ではなく、人為的、魔法の類いだろう、という事だった。 
普通に考えても、雲ひとつない青空からいきなり雷が落ちる事は、まず、無きに等しい。 
それを裏付けるかのように、落雷から間もなく、何か、影のようなものが飛び去るのを目撃した。 
遠目ではあったが、あれは――確かに人間であった。 
もし誰か、そのような術を使う者や、あのスライムナイトのような襲撃者が近づいて来た場合でも、
見晴しのいい場所ならばすぐに察知できるし、逃げる事もできる。
73考える亀 2/7:2005/11/11(金) 00:33:05 ID:vXMEQFst
草の上に座ったテリーは、食事を取り出そうとザックを開いた。 
その時、ふと、シャナクの巻物が目に止まった。
「ねえ、ギード」
「何じゃ?」
「これで首輪外せないかなぁ」 
テリーは巻物を広げてギードに示した。
「これ使うと呪いとか解けるんだろ? だから、ひょっとしたら……とか思ってさ」 
一瞬、ギードの目が大きく見開かれた。  

「まあ、無理じゃろうな……この首輪には、魔術の他、様々な力が絡み合っておるようじゃし…… 
 それに、あの魔女が、『参加者』にわざわざそんな物を持たせる訳はなかろう」 
しばしの沈黙の後、ギードは説き伏せるように、静かに言った。 
「そうだよなぁ……」 
テリーは巻物をしまい、ナプキンを広げてギードとトンヌラの分のパンをちぎり始めた。 
単なる思いつきを言っただけで、特に深い考えがあった訳ではなかった。  

だが、食事をしている間、そして休息中もずっと、ギードは何かを考えていた。
74考える亀 3/7:2005/11/11(金) 00:34:37 ID:vXMEQFst
「さて……少し急がなきゃ」 
カズスへ行くには砂漠を渡る方が距離的には近いが、砂に足を取られて歩き辛い上、暑さで体力も奪われる。 
そう判断したテリーとギードは、食事と休憩を終えた後、森の方へ向けて歩き始めた。 
が……突然、トンヌラが砂漠の方へ走り出した。
「トンヌラ、そっちじゃないよ!」
「ふむ、何かを見つけたようじゃな」 
テリーは慌ててトンヌラを追い掛けた。 

「なに? 何を見つけたの?」 
ほどなく追い付いたテリーは、トンヌラの指差す方を見た。 
草の上に、何か光るものがある。 
それは、鈍く光る、金属の造型――確か、銃とかいう物だ。 
すぐ近くに、その弾らしき物も落ちていた。 
「これかぁ」 
テリーは銃を拾い上げた。思ったよりも重く、手にずっしりとくる。 
「ルカが似たようなやつ持ってたな」 
よく分からないけど、ちょっとカッコイイ、と羨ましく思っていたテリーは、弾倉も拾い上げると、銃と共にザックに入れた。
75考える亀 4/7:2005/11/11(金) 00:37:09 ID:vXMEQFst
その時、声にならない叫びが耳を貫いた。 
「トンヌラ?!」 
少し離れた場所で、トンヌラは、黒い土塊を前に体を突っ張らせたまま、ブルブルと震えていた。 
「どうしたんだ? 何……っ……」 
駆け寄って、「それ」を見た瞬間――息が詰まり、心臓が止まるかと思った。  


土塊のように見えたもの、それは―― 人間――いや、かつて、人間であった物体―― 
焼け爛れ、手足をもがれ、胴体を真っ二つに寸断された、無残な亡骸――  


「……うわああああああっ!!」 

思わず、さっき食べたパンが逆流しそうになった。
76考える亀 5/7:2005/11/11(金) 00:40:27 ID:vXMEQFst
「テリー?!」 
テリーとトンヌラの異変に気付いたギードも、こちらにやって来た。 
「うっ……!」 
テリー達が見つけた「それ」を見て、ギードも顔をしかめる。 
「惨いな……」 
「こ……ここまでしなくたって……」 
衝撃が去り、少し落ち着きを取り戻すと、自然にテリーの瞳から涙が溢れた。 
こんな体になりながらも、命尽きるまで必死に抵抗したのだろうか…… 
亡骸は、何故かナイフをしっかりと銜えていた。  

この人に、どんな罪があったというのだろう? 
たとえ、この人がとてつもなく悪い人だったとしても……こんな仕打ちが許されていい筈はない。
77考える亀 6/7:2005/11/11(金) 00:41:45 ID:vXMEQFst
余りにも損傷が酷過ぎ、持ち上げると崩れそうだったので、テリー達は回りの土を掘り、亡骸の上へかけた。 
最後まで離さなかったナイフも胸の上に置き直し、一緒に埋めてあげる事にした。 
埋葬を終え、軽く手を合わせた後、一行は沈黙したまま森の端へと歩き出した。 

テリーの胸に渦巻いているのは、不安、悲しみ、そして理不尽なものへ怒り。 
そしてトンヌラも、それを強く感じ取っているのだろう。 
だが、ギードは別の事を考えていた。

『あれだけの衝撃を受けても、壊れもせず、融けもせんとは……』 

あの亡骸の全身が隈無く焼かれていた事から見て、普通に火を着けられたとは考えにくい。 
恐らく、強力な魔法をまともに食らったのだろう。 
にも関わらず、あの首輪には傷も歪みもなかった。

『やはり、魔力以外の力……もしや……?』
78考える亀 7/7:2005/11/11(金) 00:43:36 ID:vXMEQFst
「……ギード」 
テリーが突然重い沈黙を破り、ギードは我に返った。 
「何じゃ?」 

「首輪、外せなくても、助かる方法……もう、誰も死なずに……殺されずに済む方法……ないのかな」  

ギードは目を細め、ゆっくりと首を縦に振った。 
「……もちろん、有る……だから、それを考えるのじゃ」    



【ギード 所持品:首輪
 第一行動方針:ルカとの合流 第二行動方針:首輪の研究】
【テリー(DQM)(右肩負傷、3割回復)
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×2、鋼鉄の剣 、コルトガバメント(予備弾倉×4)
 行動方針:ルカ、わたぼう、わるぼうを探す】
【トンヌラ(トンベリ)所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ、りゅうのうろこ
 行動方針:テリー達についていく??】
【現在地:カズス北西の森西の草原からカズス北西の森南端へ】
79名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 02:43:24 ID:92od9OqN
保守
80スーパーシンラ ◆YpVfuNzTrY :2005/11/13(日) 02:53:22 ID:yOqCOcEB
あんまり面白くないし
81Born to be free 1/4:2005/11/13(日) 05:49:58 ID:FGJrEB4R

「ふぅっ……」
 何度目になるか分からない回復のための精神集中を終え、大きく息を吐き出す。
 その効力は段違いに弱体化しており、特におそらく魔力を消費しすぎたためであろう疲労の方はいつまでも消え去らない。
 チャクラはMPにかけてはほとんどその効果を失われていたが、それでも肉体の傷の方にはいくらかあてにできるようだ。
 弾丸を抉り出した右肩、肉を削ぎとられた左太腿、簡易に止血したそれらはいくらかは回復し、すでに移動程度にはほとんど差し支えがない。
 少しの無理程度で牙も持たぬ相手なら問題なく仕留められるだろう。
 しかし――思い出せ。
 自分が今まで戦ってきた相手のことを。
 アグリアス。大剣を操り自分と互角に渡り合った女剣士。
 フルート。細身にして強打、拳を肉体を凶器と化していた闘士。
 ロラン。真っ直ぐな、そして勇敢だった、すでに亡き剣士。
 サックス。防御に長けた、バランスの良い剣士。おそらくはあの女と共に生き埋めだろうがな。
 ウィーグラフ。大剣と奇妙な技を使う戦い慣れた歴戦の戦士。
 忍装束の男から武器を奪い、自分に金属の弾を撃ち込んだあの男。
 そして、カズスで目にした「あれ」。

 震えが来るくらいに強敵揃い。
 最後のは異常なる存在、別格としても他は皆十分な強者、美味なる獲物。
 彼らのような相手との戦いは命を懸けるに値し、勝利はサラマンダー自身を満足させるだろう。
 勝利のためには万全であることが望ましい。

 けれど、不思議に思う。
 当初は、殺伐としたこの世界で戦いに身をおき、ただ単純に敗れ去るまで戦い抜くつもりだった。
 だがウィーグラフとの戦いで死を垣間見た時、自分は何を不足だと感じた?
 オレは何を欲しているんだ?
82Born to be free 2/4:2005/11/13(日) 05:55:09 ID:FGJrEB4R

 ようやく森を抜け、両側に山を見ながら間の平地を行く三人。
 相変わらずザンデとピサロは長い質疑応答を続けている。どうやら今の話題はこの世界について。
 「浮遊大陸」だの「クリスタル」といった単語が聞こえる。
(この地面、魔大陸みたいに浮いてるのかー…そういや空が近いよな)
 なんだかんだいってそれを盗み聞きしているロックが三人の中でもっとも注意力散漫だった。

 唐突に会話が途切れる。
 急変した雰囲気に戸惑うロックであったが、彼もすぐに何がその原因かに気付く。
 振り向いた方角から感じられた何者かの視線はもう消え失せていた。
「早いな。正しい判断をする頭はあるというわけだ」
「隠行…シーフか忍者かといったところか。ふむ、詳細が分からないのは腹立たしいが偵察索敵だけが目的ならばもう追いつけまいな」
 冷静に分析する魔王二人と対照的に、ロックに浮かぶのは一つの懸念、一抹の不安。
 だがそれを口にするより先にザンデはもう再びカズスへ向け歩き始めている。
 ロックは歯がみして自分たちが来た方、ウルの方を見遣る。
(くそっ、みんな気をつけてくれよ)
 最悪の予想が像を結ぶ。彼の直感は今の気配がゲームに乗った相手ではないかと疑っているのだ。

「……ソロの奴も信用が無い」
 そんな不安な心をまるで読み取ったのかのように、ピサロが聞こえるくらいの声で呟いた。
「何の目的があるかは知らんが貴様もまずはすべきと思うことを為せ。
 中途半端では何もできぬままに死ぬことになる。心しろ」
 言いたい事だけ言ってピサロはザンデの横まで足を早めて行ってしまう。
 追い付いた聞き手を待ち受けていたザンデがさっきの続きか、長話を再開する。
(…だよな。『中途半場で何もできないままに』…キツイこと言うぜ。実際、そうだった。
 あいつらのことを信用して出て来たんだ。
 なのによ…まるで自分がいれば大丈夫、すべて自分がいなきゃ心配なんて…何様だ)
 不安やもやもやを吹っ切るようにパチン、とこぶしを手のひらへ打ち付ける。気持ちを新たに決意を再確認。
(この世界の真実、必ず掴んでみせる!)
 それから、ロックも二人を追って再び駆け出した。
83Born to be free 3/4:2005/11/13(日) 05:59:21 ID:FGJrEB4R

 常に自分が先行して相手を発見できる場所を選び慎重に行動していたことがプラスに働いた。
 やって来たのはクジャに匹敵するほどの強大な気配を秘めた男を二人を含む三人組。
 巨大な力との戦いへの興味と、危険信号が同時に励起する。

(!! 気付かれたか!)
 観察していた相手の雰囲気の変化を察し、彼らの進行方向とは逆へ即座に撤退。
 せっかく塞がりつつあった傷が開いてしまったが勘定に入れるべき問題ではない。
 暫く警戒しながら走っていたが、追ってくる気配が無いことを確認してサラマンダーは安堵する。
 クジャ。感じた気配の大きさに思い出した姿、破壊的な魔力を振るう姿を思い出す。彼もまた参加者としてここにいる。
 幸か不幸か自分が戦ってきた相手にはまだそれほどのクラスはいなかった。
 だが時間の経過とともに弱者が淘汰されていけば生存者はいずれすべて強者のみになる。いや、すでにそうなっているのかもしれない。
 それは当然の道理だ。

 サラマンダーにはそれが面白い。
 交戦して明確に勝敗をつけられなかった相手、実質自分を殺したウィーグラフ、4人殺しのアーヴァイン。
 剣士、拳士、魔術師、忍者。竜騎士や召喚士、その他まったく未知の武器や戦法。
 加えて自分の興味を誘うような未知の相手にどれだけ出会えるだろうか。
 そして、ジタン。
 かつての仲間ではある。あるが――今の自分では戦いへの滾りを、欲する何かへの滾りを抑えられまい。
 ともかくも楽しませてくれそうな相手、来るべき戦いへの興味は尽きないのだ。
 それに最終的に全員の頂点に上ればあの力、魔女への挑戦権が得られるわけだ。

 応急処置の後に再度チャクラのため精神を集中。それから、同じように慎重に移動を再開する。
 辺りの風景は次第に森へと変化していた。
84Born to be free 4/4:2005/11/13(日) 05:59:43 ID:FGJrEB4R

【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、MP1/5) 
 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣(天空の剣) 紫の小ビン(飛竜草の液体)、
 カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×1、各種解毒剤
 第一行動方針:慎重に移動する
 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【現在地:ウル南の森】

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 第一行動方針:仲間、あるいはアイテムを求め、カズスの村へ
 基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:ザンデに同行し相手を見極める 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 第一行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【現在地:ウル・カズス間の平地→カズスの村へ】
85名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 08:37:22 ID:9i2oS5yEO
ほしゅ
86逢魔が時 1/2:2005/11/15(火) 20:21:09 ID:Gd9rwyNV0
昼と夜のはざま、光が闇に移り変わる時刻を逢魔が時(おおまがどき)と呼ぶ。
元々は「大禍時」と書く。
この世と魔の世界との境目が曖昧となり、禍いを呼び寄せやすい時刻であると言われている。

それならば、今――
大地を揺るがせ、赤みの残る群青の空に浮かぶ魔女の姿は――まさに、逢魔と呼ぶに相応しい。


「ニ度目の日没だ。
 そろそろ貴様等もゲームに慣れてきた頃であろう。
 それでも、自らの不甲斐なさ故に命を落とし、脱落した者達がいる。名を読み上げよう。

 「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」
 「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」「ギルダー」
 「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」「アグリアス」
 「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」「シド」「ファリス」
 「エッジ」「フルート」「ドーガ」「デール」

 以上、二十六名だ。
 ……素晴らしい。既に半数を切っておるな。その調子だ。
 しかし、この後に及んで、未だ参加する事を拒否している者も少なからずいるようだな……
87逢魔が時 2/2:2005/11/15(火) 20:22:59 ID:Gd9rwyNV0

 ……まあ、それならばそれでもよい。
 せいぜい、正義だの、愛だの、思いやりだのとか言う、下らぬものを信じているがよい。
 そんなものは何の役にも立たぬ、と気付く頃には、貴様等の魂はその体を離れておろうがな……」


突如、大陸の鳴動に合わせるかのように、突風が巻き起こった。
微かに唇の端を上げ、皮肉な笑みを浮かべたアルティミシアが空に揺れる。

やがて……その姿が消え、辺りに静寂が戻り始めても……風は、尚も強く吹き荒れ続けた。
信じる者、大切な者、そして愛する者を失った、生存者達の激しい慟哭のように。

陽は沈み、逢魔が時は去り――魔の刻が訪れた。
煌めく無数の星々と、血を滴らせたような赤い月と共に。


【浮遊大陸:昼→夜へ】
88名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 21:47:12 ID:/XkocaCVO
期待age
89投下した者です。:2005/11/16(水) 10:33:31 ID:NBM7V1E20
>>86-87の放送は無効です。
90名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/17(木) 18:41:58 ID:PPVpsx4rO
保守。
91ユフィの努力:2005/11/19(土) 04:27:35 ID:hHErNZGj0
「あれ、あれれ? あの犬、どっか行っちゃうよ?」
ユフィは言った。
しかしランザはユフィを無視した。
ユフィはとても傷ついた・・・ランザは知る由もないだが・・・
急に泣き出したユフィを見てランザは言う「どっどうしたの」
「もしかして気分でも悪いのかなあ?どうしよう?」
「大丈夫よ。」
ユフィは健気だった。
ランザは顔を赤くしたが大変なことに気づいた。
「もしかして気持ち悪いの?だいじょうぶ?」
しかし二回目だった。錯乱したランザは気づかなかったが、ユフィは気づいた
そしてまた無視されたと思ったのだ
「ひどい・・・もうランザなんか!嫌い!カイン帰ってきて!」
「まっまってユフィ」
しかしユフィはオーラを放っていた。「神羅万障!」
ランザの身体をこなごなにしたユフィはカインに認められた。
カインは「ユフィがこんなに強かった。これならフリオニールはいらないな。一緒に色々殺しに行こ」
「よかった♪うれしいなあ♪私エッジのために頑張るね」
こうしてコンビが結成した。そして犠牲はたくさん出た。

【カイン(HP5/6程度、浮、疲労)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置
 草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
 第一行動方針:リュカ達が来るまで、ユフィと打ち合わせをする
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:カインに同行する
 第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】

【ランザ、マッシュ、スコール、フリオニール、ザックス、ルカ、ハッサン死亡】
92名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/19(土) 04:29:52 ID:hHErNZGj0
ランザはラムザに直しといて
93名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/19(土) 04:31:00 ID:3vj9mlyW0
>>91は無効です。

94ユフィの心:2005/11/19(土) 04:33:38 ID:hHErNZGj0
修正した「あれ、あれれ? あの犬、どっか行っちゃうよ?」
ユフィは言った。
しかしランザはユフィを無視した。
ユフィはとても傷ついた・・・ランザは知る由もないだが・・・
急に泣き出したユフィを見てランザは言う「どっどうしたの」
「もしかして気分でも悪いのかなあ?どうしよう?」
「大丈夫よ。」
ユフィは健気だった。
ランザは顔を赤くしたが大変なことに気づいた。
「もしかして気持ち悪いの?だいじょうぶ?」
しかし二回目だった。錯乱したランザは気づかなかったが、ユフィは気づいた
そしてまた無視されたと思ったのだ
「ひどい・・・もうランザなんか!嫌い!カイン帰ってきて!」
「まっまってユフィ」
しかしユフィはオーラを放っていた。「神羅万障!」
ランザの身体をこなごなにしたユフィはカインに認められた。
カインは「ユフィがこんなに強かった。これならフリオニールはいらないな。一緒に色々殺しに行こ」
「よかった♪うれしいなあ♪私エッジのために頑張るね」
こうしてコンビが結成した。そして犠牲はたくさん出た。

【カイン(HP5/6程度、浮、疲労)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置
 草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
 第一行動方針:リュカ達が来るまで、ユフィと打ち合わせをする
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:カインに同行する
 第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】

【ランザ、マッシュ、スコール、フリオニール、ザックス、ルカ、ハッサン死亡】
95名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/19(土) 08:31:34 ID:Hw2qs2hW0
>>94は無効です。
96名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/19(土) 18:25:30 ID:mhjLNxtb0
 
97今ひととき、いつかの夢を 1/5:2005/11/20(日) 20:42:07 ID:xhpx3djM0
昔の夢を見ている。蜂蜜色の髪の女性の夢。
『テリー』
呼ぶ声は、まぎれもなく懐かしい姉のものだ。
『まだ起きているの? もう寝る時間でしょう』
寝台の上で縫いぐるみを抱えた彼女は、すこし怒った顔でこちらを見つめている。
『夜更かししていたら、魔物にさらわれてしまうわよ』
自分の姿は幼い頃のもので、「姉さん」の声に応えようとして、しかし、彼女の名を思い出せないことに気付いた。
いくつかの名が浮かんで消えるのに、彼女に似合うものが思い出せない。

ファリス? いや、その名が思い出させるのは鮮やかな薄紅色の髪だ。
それにこの「姉さん」とは、振る舞いも、声も、
『思い出せ! 君の瞳と同じ色の髪を持つ、あの勇ましい女性の事を!
 緑色の瞳を持つ、優しい女性の事をッ!
 妹を、君を、家族を思いやる気持ちを持った――君の姉さんの姿をッ! 』
……瞳の色も、何もかもが違う。
男装で、ぶっきらぼうで、困ったような顔をしていたファリス。
そのどれもが、今そこにいる「姉さん」と重ならない。
けれど。
彼女を傷つけられるのを恐れるがために敵とも味方とも知れない者たちを排除しようとする俺を、彼女は何度も押しとどめた。
このゲームの中では、いつ誰に殺されるかなんてわかったものじゃないのに、それでも、人を殺そうとする俺をとがめた。
優しい、ファリス姉さん。
ああ、そうか。
強いて言うなら、その優しさが似ていた。
98今ひととき、いつかの夢を 2/5:2005/11/20(日) 20:46:09 ID:xhpx3djM0
目の前の「姉さん」を見つめる。
不思議そうに笑うその顔は、彼女の、ファリスのものではない。
そう思い、そしてそこに何か違和感を感じた。
浮かんでしまった疑問。
……目の前の彼女と違うというなら、ファリスはどんな顔だった?
思考がそこで停止する。唐突に浮かびあがってくる記憶。
彼女を護る為に魔物を切り伏せようとして。
(首が)
一瞬映ったその忌まわしい映像が消される。
それは思い出すべきじゃない。
思考を、意識を、全力で今の悪夢から逸らす。
俺にはもっと他に、思い出さなければ、憶えていなければならないことがあったはず。
――そうだ、憶えておくべきなのはレナのこと。
ファリスが教えてくれた生き別れの妹。
俺が守るべき、ファリスの、俺の妹のことだ。
――それに、思い出さないと。
ずっと探していた姉さんが目の前にいる。
すぐそこに答えがあるのに、忘れるはずなんてないのに。
それなのにわからない。
思い出す事を恐れてしまう。
忘れたくなんかないのに思い出したくない自分に、どうしようもなく苛々する。
99今ひととき、いつかの夢を 3/5:2005/11/20(日) 20:47:14 ID:xhpx3djM0
そんな時。
どこかから彼女のものとは違う掠れた声が聞こえた。
ひどく遠く感じるのに、何故か彼女の声よりはっきりと。
『……ミレーユよ、どうか、このクリムトにテリーを、おぬしの弟を――』
呼ばれた名のうち二つには覚えがあった。

『おやすみなさい。テリー』
姉さんの声。
寝台の横へ置かれた縫いぐるみには、今聞こえた彼女の名前が大きく書いてある。
――のもの。
こんな大切なことをどうして忘れていたんだろう。
眠りにつこうとしている姉さんの顔がほんの少し寂しげに見えた。
そう、俺の姉さんの名前は。
100今ひととき、いつかの夢を 4/5:2005/11/20(日) 20:50:34 ID:xhpx3djM0
クリムトは足を引きずり、杖をついて歩く。
見えない瞳は、導く者もいない見知らぬ場所では大きく体力を削る。
背には青年が一人。
その重みは潰れそうなほどだし、彼には左腕がないためバランスも悪い。
杖がなければ、躓き転び、この歩みはとうに止まっていただろう。
それでも、テリーを背から降ろしはしない。
決して、見捨てはしない。
けれど、その道行きの途中にたった一度だけ、弱音が口をついて出た。
「ぐぅ……、く、ミレーユよ、どうか、このクリムトにテリーを、おぬしの弟を助けるための力を貸してくれ……!」
祈りは彼女に。
今はもういない、誰よりも彼を大切にしていた、優しい彼の姉に。
テリーが黒い波動のうちにあってもなお、失うことなく探し続けていた女性に。
その祈りがとても大事な言葉だったことにも、そしてある思い違いにもクリムトは気付かない。
町は見えない。
この遅々とした歩みでは辿り着くにはまだ幾許かの時間が必要だし、何よりすぐ目の前にあったとしても、彼の両眼がそれを映すことはない。
気力のみで進み続ける、立ち止まれば倒れてしまう、そんな危うい歩みは今はまだ止まらない。


その背で青年は呟く。
「おやすみ、ミレーユ姉さん……」
彼を背負う者は、彼を救うためにその見えぬ眼でただ前を見据え、あまりに小さすぎた声の意味を知ることはない。
テリーのその眼はまだ何も映さず、幸せであった頃の夢の中にいる。
大切な姉を忘れようとした理由を、今はまだ思い出さないままに。
101今ひととき、いつかの夢を 5/5:2005/11/20(日) 20:51:27 ID:xhpx3djM0
夕闇が彼らに迫る。
――まもなく、彼は束の間の夢から覚める。
――まもなく、無慈悲な魔女の放送が響く。
テリーは家族を求める想いが見せた思い出の夢の終わりに、ようやく大切なその名前を思い出す。
テリーが一日にも満たぬ間とはいえ共に過ごし、姉と呼び慕った女性の名前がもうすぐ呼ばれる。
真実も偽りも、目覚める彼にもうすぐ突きつけられる。
この夢とその声が、何をもたらすのか知る者はまだいなかった。



【テリー(DQ6)(HP1/4程度、左腕喪失、左足骨折、浅い睡眠)
 所持品:なし
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:不明】
【クリムト(失明、HP2/3程度、MP消費、極度の疲労) 所持品:力の杖
 第一行動方針:テリーを背負い、カナーンへ向かう
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北東近辺、カナーンへ移動中】
102夕暮れの寸劇 1/13:2005/11/21(月) 13:07:23 ID:zhHVDrJe0
――小鳥と野兎が、夕暮れの空の下にいた。
 小鳥は、そびえ立つ塔の窓辺を舞っていた。
 野兎は、城門に立つ人影を追っていた。


野兎は見ていた。
達観とも呆れともつかぬ表情を浮かべる、中年の男の姿を。
その視線の先にある、不機嫌そうに先を行く女性と、必死で追いすがる青年の姿を。

「ユウナ、何でそんなにスネてるんだよ……俺、何か悪いことでもしたッスか?」
「別に、拗ねてなんかないよ」
「だったら、何でさっきから俺の方向いてくれないんだよ?」
「キミだってそうじゃない」

野兎は知っている。
青年は、ここにはいない仲間を案じる言葉だけを言い続けていたことを。
そして青年と同世代の少年二人、彼らが森の中で交わしていた会話は
単純に身体や心を労わっているだけとはいえなかったことを。

流行のスポーツ、自分達の町、欲しい物、将来の夢、ファッション、食べ物……
文明レベルが近いからこそ分かち合える話題、同性だからこそ話せる事柄。
そこには、女性や他の二人が入り込む余地は少なく。
三年間という溝と、女性の知らない誰かをも心配していた青年の態度が、疎外感に拍車をかけた。
そうして、マキナという言葉が通じなかった時に感じた一抹の寂しさは、時とともに募り続け。
――気がついた時には、苛立ちに変わるぐらいに膨れ上がってしまったのだろう。

「なぁ……ホントどうしちゃったんだよ? 悪いことしたなら謝るから……」
「どうもしてないってば。ね、早く行きましょう、プサンさん」
「……ユウナぁ〜!」

情けなさが溢れる声を背に、女性は鉄扉に手をかけ、中年男の袖を引っ張り城の中に入っていく。
青年がその後を追っていくのを確かめてから、野兎はゆっくり森へと引き返した。
103夕暮れの寸劇 2/13:2005/11/21(月) 13:10:32 ID:zhHVDrJe0
小鳥は静かに聞いていた。
止まらぬ涙が落ちる音を、沈んだ少女の声を。
不幸に見舞われた親と子を、案じる男達の足音を。
けれどやがて、何かを思い立ったかのように、バルコニーに舞い降りた。
そして小さなくちばしで、コツコツとガラスを叩く。

「入りたいの?」
気付いた少女が問い掛けた。
彼女の視線に気付いた青年が、微笑みながらガラス戸を開ける。
鳥はしばらく部屋を駆けてから、少女の手に止まった。

「お兄さん……小鳥さんがね、"お父さんが泣いてる"って言ってる……」
「どこの世界でも物知りだねぇ、小鳥さんは。彼らなら……完璧に人の悲しみを取り除く方法も知ってるのかな」
青年の声を聞きながら、少女は導くように、手を外に差し伸べた。
「お願い小鳥さん。お父さんが泣くのを、今は止めないであげて……お願い」
涙の代わりに祈りをこぼして、小鳥を薄紫の空へと戻す。

彼女の言葉を聞いたか聞かずか。
小鳥は懸命に羽ばたいて、何度か塔の周りを旋回し、別の窓へ止まった。
そして、錆びた鉄と生臭い死臭が漂う部屋へ飛び込む。
金色の瞳に赤い色彩を映して。
窓辺に止まった小鳥は、泣き崩れる男を見つめた。



――その城には、二匹のネズミがいた。
 一匹は塔の一室に、一匹は地下の泉の傍に。
 人の存在に臆することなく、二匹はただ、じっと見ていた。
104夕暮れの寸劇 3/13:2005/11/21(月) 13:13:53 ID:zhHVDrJe0
上階から伝わる振動に、ネズミは身を固くする。
同時に、少年が目を開けた。
「気付いたか」
男の声に、少年は小さく肯く。
「ここまで無遠慮に入ってこられればな。
 ……それよりレオンハルト、僕の本が見当たらないが何処にやった?」
「お前には判らない所に仕舞った」
「勝手に仕舞うなよ。人の形見なんだぞ?
 母さんみたいな事を言ってないで返してくれ」
「官能小説なんぞを形見にするな。それにあんな内容を朗読されたら気が散って敵わん」
「別にいいだろう。ささやかな休息の合間に読書を楽しむぐらい……」
「想像で楽しむぐらい、の間違いじゃないのか」

二人が言い争っている間にも、音と振動は少しづつ近づいてきている。
そして、それがはっきりとした足音と囁き声として聞こえ始めた時。
二人は言い争うのを止め、お互いの得物を手にした。
「そこで止まれ」
階段の奥から現れた二つの影に向かい、少年は静かに言い放つ。
影達は一瞬竦み、同時に、後ろから別の影が踊り出る。

「戦う意思がないならば、武器を投げ捨てろ」
「……あんた達もそうしてくれるってなら、やってもいいッスけど」
少年の言葉に若い男の声が応じた。彼が、他の二人を庇うように立つ影の主らしい。
勇者と黒騎士は顔を見合わせ、肯き合う。
「わかった。同時に武器を捨てよう。
 合図は君たちに任せる。それでいいか?」

わずかな沈黙の後、「オッケーッス」という返事が戻ってきた。
そして女性らしき澄んだ声が、「5、4、3……」とカウントを数えはじめる。
それが「1」になった時、ネズミはびくっと毛を逆立て、部屋の隅へと走った。
階段の上と下で、幾つもの金属音が盛大に鳴り響いたものだから。
105夕暮れの寸劇 4/13:2005/11/21(月) 13:16:29 ID:zhHVDrJe0
「良かった、話が通じるヤツでさ」
強張りの消えない笑顔を張り付かせながら降りてきたのは、緑のバンダナを巻いた青年だった。
続いて、風変わりなドレスを身に纏った女性と、何とも冴えない風体の中年男性が姿を表す。

「良くここがわかったな」
ここに来るには、巧妙に周囲の石壁にカムフラージュされた扉を見つけ出さなければならない。
男たちも、偶然の加護がなければ気付かなかっただろう。
だからこそ、感心したように呟いたのだが。

「いや、扉開きっぱなしだったから……誰かいるのかなーと思って」
青年の言葉に、黒騎士は顔を引きつらせ、少年を見やる。
「レオンハルト。肝心の戸締りを忘れてどうするんだ」
「それは俺のセリフだッ!!」
すまし顔をした少年の鳩尾に、拳が滑り込んだ。ネズミからすれば本日二回目となる光景だ。
今回は多少手加減したのか、少年が気絶する事はなかったが。

「ま、まぁ……入り口付近に、貴方達の足跡やら痕跡やらが残っていましたからね。
 きちんと閉じていたとしても、この場所は見つけていたと思いますよ」
中年男が取り成すように言った。
「そうそう、それに悪いヤツには見つからなかったんだしさ」 
青年にも言われ、それでようやく男性は攻撃の手を止める。
解放された少年は、息を整えてから三人に向き直った。
「そ、そうだな……名乗るのが遅れたが、僕はアルス。この男はレオンハルトだ。
 訳あってここでずっと身を休めていたのだが、東塔の方にいたのは君達か?」
「東塔?」
「ああ。数人が潜伏しているような気配を感じたのだが……その様子では違うみたいだな」
「俺達、さっき来たばっかだし……なぁ?」
「とりあえずこの建物が目についたから、中に入ってみたんです。
 他の所はまだ調べていません」

青年の言葉を引き継いで、女性が答える。
少年は軽く首を傾げながらも、嘘をついていない様子だけは悟ったのか、話題を切り替えた。
106夕暮れの寸劇 5/13:2005/11/21(月) 13:19:01 ID:zhHVDrJe0
「そうか、わかった。
 ところで、フリオニールという銀髪……あるいはギルダー、アーヴァイン、スコール、マッシュという奴らを知らないか?
 セージという青髪の男や、フルートという水色の髪の女性についてでもいいんだが」
「フルートにアーヴィンにスコール?!」「フルートさんにアーヴァイン君にギルダーさん!?」

素っ頓狂な大声に、ネズミは驚いて飛び上がった。
対照的に、少年は冷静な態度を装い、感情を抑えるように問い掛ける。
「……知っているのか?」
「知ってるも何も……そのラインナップは何なんッスか?
 スコールって、ゼルとアーヴィンとこの班長とかって人じゃ……」
「ギルダーさんって、サックスさんのお友達だよね?
 あ! そういえばアルスって、フルートさんが言ってた……勇者さん!?」

きゃいきゃいと騒ぎ出すカップルに、少年は刃のような視線を注ぐ。
「……フルートと、ギルダーの仲間と、アーヴァイン……?
 どういうことなんだ? 彼女と奴らと君たちは、どういう関係なんだ?」

少年がそう言った途端、二人ははっとした表情を浮かべ、気まずそうに口をつぐんだ。
しきりに視線を交し合いながら、沈黙を続ける二人に変わって、中年の男が進みでる。
「私から説明しますよ。……話し難いことも色々と有りましたからね」



「もう日没か……カズスでの約束は、確か二時間後だったな……」

慟哭を背に、階段を下りてきた三人の男達。
その一人が、小窓に目をやりながら呟いた。
ネズミは壁と柱の間に陣取り、耳と首とをせわしなく動かす。

「約束?」
「ああ。ここに来る途中で出会ったカインという男と待ち合わせをしたんだ。
 ……正確に言えば、一方的に押し付けられたんだが」
107夕暮れの寸劇 6/13:2005/11/21(月) 13:20:30 ID:zhHVDrJe0
「……何処の馬の骨ともわからぬ人間に義理立てする道理はなかろう」
「彼はアリーナの正体を知らない。簡素なものといえ、手当てをしていたのだからな。
 伝えるべきことは伝えた方がいいだろう」
「下らん事だな。愚者が招いた災いの責を負ってやる必要などどこにある」
黒服の男に、しかし金髪の男はゆっくりと首を横に振る。
「彼は手当てこそしたが、助からないと踏んで、あの女を殺そうとしていた。
 それを止めたのが私で、リュカとシンシアが回復魔法を使えるということを伝えたのも私だ。
 全ての責は私にある。私さえいなければ、あの女が生き長らえることなど無かったのだからな」

淡々とした声の裏に隠された激情は、どれほどのものだったのか。
ネズミの見ていた床に、赤い雫が弾けた。
唇の端から流れた血の筋のせいで。

「昔、私が皇帝だった頃、部下の一人が言っていた。
 失敗を悔いることは簡単だが、それだけでは何も生み出せぬと」
「良い部下だな」
「……野心も覚悟も貫けぬ、つまらぬ男だったがな」
黒服の男は、何故か自嘲するように笑い、唯一沈黙を保っていた男に振り向く。

「ゴゴよ。私はこれからカズスに向かおうと思う。
 お前はどうする。そこの男はお前の仲間なのだろう?」

目を見開く金髪の男の前で、ゴゴと呼ばれた男は事もなげに答える。
「私はお前の物真似をしている。今までも、これから先も、お前の物真似を続けるだろう」
「そうか」、と、銀髪の男は静かに呟いた。
そして二人はネズミの前を通り過ぎ、下り階段に足をかける。
そのまま下へ降りていこうとする彼らを、金髪の男が呼び止めた。

「待ってくれ、どういうことだ? 貴方達が行く理由など、それこそ何処にもないだろう?」
「私はマティウスの物真似をしている。それが理由だ」
108夕暮れの寸劇 7/13:2005/11/21(月) 13:22:47 ID:zhHVDrJe0
物真似師の言葉に、青い視線が黒服の男に注がれる。
ネズミの瞳も、流れるような銀の髪に向けられた。
三対の目を前に、男は指を三本立てる。

「私の理由は三つある。
 まず、私は元々この城を出るつもりだった。今まで残っていたのは傷の治療を済ませるために過ぎん。
 タバサ達の容態も安定したようだし、これ以上留まる必要はあるまい」
薬指が折られる。
「次に、今の状況で守りに入っても、事態が好転するとは思えん。
 後の被害を減らすためにも、戦える人間は率先して敵を倒しに行くべきだろう。
 それに私は人の情などというものを解するのが不得手でな、あの親子が必要としているような支えにはなれぬ。
 戦力を保持し、かつしがらみの無い者が戦いに赴く。当然の帰結ではないか」
――あの親子の力には興味が尽きんが、そんなことにかまけている場合ではないからな。
そう続いてから、中指が折られた。
「……最後の一つは?」
金髪の男が促すように聞く。
黒服の男は呟くように答えた。

「何故か、下らぬ事をしてみたくなった」

呆気に取られた砂漠の王に、皇帝と呼ばれた男は口の端を歪める。
それから、柱の影で動いていた小動物に目をやった。
「――西の棟にネズミが数匹入り込んでいるようだ。
 今さら接触してくるとも思えんが、油断しない方が良かろう」
それだけを言い残し、二人は階段を下りていった。



中年男の話を聞き終えた少年は、怒りとも悲しみともつかぬ表情で、三人を見つめた。
「――つまり、フルートとサックスが結託し、イクサスを殺した。
 その直後に爆発が起こったため、君たちは二人の生死を確かめることなく、仲間とアーヴァインを連れて町を出た。
 そう言うことなんだな?」
109夕暮れの寸劇 8/13:2005/11/21(月) 13:25:23 ID:zhHVDrJe0
「そうッス。でも、爆発で運良く生きてたとしても……他のヤツに殺されたかもしれない」
「どういうことだ?」
男が問うと、青年は項垂れながら、躊躇いがちに答えた。
「悪いヤツだった頃のアーヴィンと組んでたカインって男が、カズスの町に行ったんだ。
 でも、最初、あいつが人殺しだなんてわからなくて……フルート達に気をつけろって言っちまって、だから……」

「カインだと!?」
男は目を見開いて叫んだ。
「そいつは……青い飛竜を連れていなかったか?」
「飛竜……あ、ああ、連れていたっつーか乗ってたッスよ。けど、なんで……」
困惑する青年に答えることもなく、彼は急いで自分の荷物を拾い上げる。
「ど、どうかしたんッスか?」
「奴の飛竜、スミスは、俺の友フリオニールを唆して殺人者へ変えた張本人だ。
 そして、フリオニールもカズスに向かったらしい。
 俺の推測だが……恐らく、奴らはカズスに集結して、何か事を仕掛ける気だ」
そこまで言って、男は少年に向き直る。

「アルス。お前とイクサス、フルート、アーヴァインがどんな関係だったのかは俺は知らん。
 だが、この話が真実ならば、事態は急を要する。
 俺はカズスへ発つ。お前が行く、行かぬに関わらずともな」

少年は黙っていたが、やがて、男と同じように荷物を拾い上げた。

「僕の知るフルートは……手に負えない部分はあったけれど、命惜しさに罪を犯すような人間ではない。
 だが、君たちの言う事が真実ならば、僕は彼女を殺してでも止めよう。
 レオンハルト、僕も行く。これ以上の犠牲者を出さない為に、殺人者を殺す為にな」

少年の目に宿る強い光。
その意味をネズミが解することはなかったが、青年達には伝わったらしい。
俯いて、ゆっくりと、悲しさと寂しさが入り混じったような声を絞り出す。
110夕暮れの寸劇 9/13:2005/11/21(月) 13:28:07 ID:zhHVDrJe0
「なぁ……心を入れ替えて、生き直そうとしてるヤツでも……殺すのか?」
「遺された人が悲しむ事を知っていて、なお他人を殺せる様な奴ならばな」
少年は切り捨てるように答え、踵を返して階段を上り始めた。

「……フルートさんとサックスさんは」
唐突に女性が呟く。
「もし仲間が過ちを犯したら、一発殴ってしまうかもしれないけれど、その後でうんと話し合おうと言っていました。
 ……例え、それが私達を騙す為の、偽りの言葉だったとしても……
 私も……断罪するより、そうやって許す事を選びたい」

――少年は足を止めなかった。
ただ、一言だけ残した。
自分自身にも言い聞かせようとするかのように。

「ある男が言っていた……覚悟があるのにやり遂げぬ人間は傲慢だと。
 ――僕は悪を討つと決めた。真に傲慢な人間にならぬためにも、この覚悟を貫き通す」


そうして二人が出て行った後、ネズミは二つの呟きを聞いた。
一つは青年のもの。悲しげな声で、下を向いたまま囁いた。
「どんなヤツだって……死んでも、誰にも悲しまれない人間なんて、どこにもいないっつーの」

ネズミは知らない。彼がどんな人物と出会い、どんな経験をしてきたかも。
その言葉に込められた、複雑な気持ちも。

そして青年と女性が上階を調べに行き、一人残った中年男が、ネズミに向かって呟いた。
「いつの世であろうと、覚悟と命は万能の免罪符か。
 ……異界の勇者よ。悪を討つことは赦されても、悪に味方する者を討つ事までが赦されるとは限らぬぞ」

ネズミにはわからない。彼がどんな存在で、何を見てきたのかも。
その言葉に込められた、複雑な思いも。
111夕暮れの寸劇 10/13:2005/11/21(月) 13:29:16 ID:zhHVDrJe0
小鳥は静かにさえずった。
血の匂いが満ちた部屋の中で。
果てようとする涙と声に、アンコールを促すように。

野兎は見ていた。
皇帝と物真似師が城を出て行くのを。その数分後に、勇者と黒騎士が森へと駆けていったのを。
木の根元に腰を落ち着けて、ただ、見ていた。

塔にいるネズミは聞いていた。
砂漠の国の王が、少女と賢者の前で語るのを。
ナレーションを聞き逃すまいとするかのように、耳をせわしなく動かしながら。

泉の傍で、ネズミは静かに目を閉じた。
劇を見ていた観客が、その退屈さに疲れて眠りにつこうとするかのように。


昼という時は終わりを告げても――この劇はまだ終わらない。
112夕暮れの寸劇――幕間 11/13:2005/11/21(月) 13:32:50 ID:zhHVDrJe0
森の中。少年はふいにあることを思い出し、隣を走る男を睨みつけた。
「そういえばレオンハルト、小説はどうしたんだ?」
「まだ言うか」
「当たり前だ。仲間の形見だぞ」
男は小さく息を吐き、諦めたように首を横に振る。
「……一冊だけは俺が持っている。後はあの城に置いてきた」
「――なんだって?」
「二重人格者の男性強姦だの、ペドフィリアだの、爛れた趣味を他人に見られたらどうするんだ?
 比較的まともそうな一冊を残してやっただけでも有り難いと思え!」



――柱の影に隠されるように置いてあったソレに気付いたのは、不幸な事に青年の方だった。
「何だコレ?」
表紙に記されたタイトルに気付かぬまま、二冊の本を拾い上げ、その片方を何とはなしに捲ってみる。

 『腕も、足も、頬も、蜜を滴らせる花びらも。魔法使いは口付けを交わしたまま、幼い肢体をあますことなく愛撫する。
  未成熟ながらも、いや、未成熟であるが故に完璧な美しさを備えた姿。
  少女は宝石のような青い瞳を潤ませて、今にも理性が弾けそうな魔法使いに問い掛ける。
  「セージお兄さん……私のこと、好き?」
  「もちろんだよ」
  魔法使いは劣情を必死で押し隠し、にっこりと笑って答えた。
  「僕は、世界で一番――』

「……さっきから、何を熱心に読んでるのかな?」
「ユ、ユウナ!?」
「知らなかったな……キミがそんな人だったなんて」
「い、いや! 違う、これは全然違うんだって!
 たまたま落ちてて、気になって拾って確かめてみたらこんな内容だってだけで……」
「いいよ。キミも男の子だもんね、そういうの読んだりするよね。
 でも、リルム相手にそういうことやったら一発殴る程度じゃ許さないからね」
「俺はンな趣味じゃないって……信じてくれッスよ、ユウナぁー!」
113夕暮れの寸劇 12/13:2005/11/21(月) 13:33:41 ID:zhHVDrJe0
少年と男、青年と女性。
二人が仲直りするのは……あったとしても、多分、先の話。



【ユウナ(ジョブ:魔銃士、MP1/2)  所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服 、官能小説2冊
 第一行動方針:サスーンを探索した後、リルム達と合流する
 第二行動方針:機械に詳しい人を探し、首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける】
【現在地:サスーン城、隠し通路の奥を探索中】

【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋 ポケットティッシュ×4 アポカリプス+マテリア(かいふく) ビアンカのリボン ブラッドソード
 第一行動方針:今はただ泣き叫ぶ 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【現在位置:サスーン城東棟サラの寝室】

【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン 血のついたお鍋 再研究メモ
 第一行動方針:リュカを待つ 第二行動方針:アリーナを殺し首輪を手に入れる
 第三行動方針:仲間を探す 第四行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度) 所持品:ハリセン ナイフ ギルダーの形見の帽子
 第一行動方針:リュカを待つ 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復) 所持品:E:普通の服 ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 服数着
 第一行動方針:リュカを待つ 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【現在位置:サスーン城東棟の一室】
114夕暮れの寸劇 13/13:2005/11/21(月) 13:34:56 ID:zhHVDrJe0
【マティウス(MP1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)
 第一行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
 所持品:ミラクルシューズ、ソードブレーカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:サスーン城→カズスへ】

【レオンハルト(MP消費)
 所持品:消え去り草 ロングソード  官能小説1冊
 第一行動方針:フリオニールとカインを追い、カズスに向かう
 第ニ行動方針:フリオニールを止める 
 最終行動方針:ゲームの消滅】
【アルス(MP3/5程度)
 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘
 第一行動方針:フリオニールを追う  第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【現在位置:サスーン城→カズスへ】
115Just before dark 1/6:2005/11/21(月) 18:34:55 ID:Maucnz700

「見えた!あれがカナーンね!」
「あっ、おい!」
アルガスの声も気にせず、アリーナは駆け出す。
もう一人の自分は、どこで何をしているのか。
取り返しのつかないことになっていないといいが。
彼女は彼女なりに、もう一人の自分について責任を感じていた。
どんな子であろうと、確かに彼女はアリーナが生んだのだ。
「早くこないと、おいて行っちゃうからねー!」
後ろへ声を張り上げ、足に力をこめる。
もし、悪いことを続けているなら、自分が止めなくてはならない。できるだけ早く。
夕焼けに赤く照らされながら、アリーナは駆ける。心は急いている。



あの人はきっと無事だと、ロザリーは信じていた。
大事なのは、放送で自分の無事をあの人に伝えることができるということ。
放送で呼ばれる人や、その仲間の人のことを考えると胸が痛んだが、
その一点において、日暮れは辛いものではなかった。
あの人はきっと呼ばれないから。きっと。



ブオーンは歩いている。
夕暮れや放送のことは、もう気にしていない。
116Just before dark 2/6:2005/11/21(月) 18:36:05 ID:Maucnz700

カインがきてから、フリオニールはカインと話しこんでいる。
カインに対する不信感はぬぐえないし、スコールとマッシュは行ってしまった。
ルカとハッサンはまだ帰ってこない。
サックスは一人、フルートのことを考える。
命の恩人。優しくて勇ましかった。一生忘れない。
その、彼女の名前がもうすぐ放送で呼ばれるのだ。
誤解をしたまま別れてしまった、ゼル達はどう思うのだろう。
自分は、どうすればいいのだろう。
サックスは一人、座り込んでため息をついた。



「みんなが帰ってくるのは、日が暮れてからかな」
ぐつぐつと煮え滾っている鍋にふたをし、手を止める。
調理場の窓からは位置が悪くて夕日が見えないが、空気でもうすぐだな、と感じる。
そして目をつぶって、あのときのことを思う。
魔女の城、広間で次々に呼ばれ、いなくなっていく人たち―――
最後に残ったのは、僕とワルぼうだった。
あのときワルぼうと一緒に魔女に立ち向かっていたら、何か変わっていたかな。
……首輪を爆発されて、終わりだったかな。
自分にもできないことがあることなど、とっくの昔から知っていた。
それを、嘆くことは、傲慢なのだろうか。
廊下から、二つの足音が聞こえて、目を開ける。振り返る。
「おはよう!よく眠れた?僕の名前はわたぼう。よろしくね。
 それと、僕の作ったスープはどうだった―――?」
後ろで鍋が爆発。次いで悲鳴。
117Just before dark 3/6:2005/11/21(月) 18:36:48 ID:Maucnz700

「…いいよ。火はいい」
「いまさら何いってんだよ。
風邪っぽいってもんじゃないだろ。そんな高熱でぶっ倒れて」
「だって、危険かもしれない。
火は、獣を寄せ付けないけど、人を引き寄せてしまうよ」
「お前水に濡れたんだろ?日が暮れたらもっと寒くなるぞ」
「確かに倒れたけど、高熱ってほどでもないよ。風邪っぽいんだ。
ちょっと頭がボーっとして、ちょっと鼻水が出て、ちょっとのどが痛くて、ちょっと寒気がするだけだよ」
「それが立派な風邪なんだよ!」
「うん。濡れたけど結構乾いたし、大丈夫大丈夫」
「……………」
「…立派だなんて、照れるなぁ」
「……………………」
「…?どうしたの、ジタン?」
ジタンは盛大にため息をついて、集めた枯れ枝や枯葉をばら撒いた。
どこかズレてるとは聞いたが、会話がずれるとまでは聞いてないぞ。
サスーン城まであと少し、と思っていたが、病人を連れての道中は長いと思い知った。
フィンは木にもたれて座り、寒いのだろう、自分の腕をこすっている。
どっかと腰を下ろし、ザックをあさる。
移動ができないのなら、寝るか、ものを食べるかしかない。
と、いきなりフィンが笑い出す。少し怖い。
「…面白いね。ジタンの尻尾」
「え?あ?」
食料であるパンをかじっているため、変な声が出る。
「さっきからぜんぜん落ち着いてない。動きっぱなし」
ジタンは頭をかきむしった。尻尾の先を捕まえて動かないように固定。
「…火、おこすぞ。おまえ、やっぱり風邪治したほうがいい」
「駄目だよ。誰がこの火を見るか、わからない。
 お願いだから、せめて火か死か選ばないといけなくなるまでは」
そういったフィンの目は、まっすぐだった。高熱があるとは思えない程。
118Just before dark 4/6:2005/11/21(月) 18:37:53 ID:Maucnz700

不思議な奴。
キーファはボケた奴だといっていたが、その実、彼を信頼しているのはわかっていた。
パンを噛み千切る。飲み込む。
「じゃあ、もう寝てろよ。俺、見張りやるからさ」
「…うん、ありがとう。
あと、目が覚めたらさ、ジタンが隠してる肩の傷、少しは楽にしてあげれると思うよ」
そういって、フィンは目をつぶる。
ばれてたか。
ウィーグラフに回復してもらったものの、やはり完全に治ってはいないのだ。
セフィロスに撃ち抜かれた肩の傷。
―――痛む。
「いやー、左だからあんまり困らないと思ったんだけどなぁ。
 というか、いつわかったんだ?」
返答はない。
ジタンはフィンの前で手を振る。反応なし。
寝るの早すぎだろ!
心の中でそう突っ込み、ジタンはするすると器用に木に登る。
人の気配がなければ、火をおこすつもりだった。
南西に見えるは、夕闇に照らされたサスーン城。


思い出す。
リンドブルムで、たくさんの人を、その悲鳴ごと暗闇へ吸い込んだ後、跡形もなく消えた召喚獣。
召喚獣同士の戦闘の末、インビンシブルを呼び、崩壊していったアレクサンドリア城。
あのときはうまくいった。俺のお姫様と、小さなレディを格好良く救い出せた。
今はもう、二人ともいない。
アリアハン城下町に降ったメテオ、アルテマ。迎え撃つグランドリーサル。跡に残るは瓦礫。
―――嫌な予感がする。城はいつも戦いの場所ではなかったか?
ジタンはかぶりをふってその考えを頭から追い払う。
今はフィンの風邪を治すのが先だ。
木を下り、ジタンは火をおこした。もう、闇が迫っている。
119Just before dark 5/6:2005/11/21(月) 18:38:27 ID:Maucnz700
【アリーナ 所持品:プロテクトリング、インパスの指輪
 第一行動方針:アリーナ2を探して下山、カナーンへ
 第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【現在位置:ジェノラ山山頂→カナーン】

【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 第一行動方針:しばらくは休息
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷、)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:生き延びるために全参加者の皆殺し
 基本行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:湖南の森→南へと移動(速度は遅い)】

【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:料理を作っている
 第二行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村 宿屋調理場】

【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
 第一行動方針:休憩 最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村入り口】
120Just before dark 6/6:2005/11/21(月) 18:38:59 ID:Maucnz700
【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス
 第一行動方針: フィンの風邪を治す
 第二行動方針: サスーンに向かい、真相を確かめる
 第三基本方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【フィン(風邪) 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:休息  第二行動方針:ギルダーを探し、止める
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北西の森・北東部】
121逢魔が時 1/2 (修正):2005/11/22(火) 01:17:44 ID:15fzYhcu0
昼と夜のはざま、光が闇に移り変わる時刻を逢魔が時(おおまがどき)と呼ぶ。 
元々は「大禍時」と書く。 
この世と魔の世界との境目が曖昧となり、禍いを呼び寄せやすい時刻であると言われている。 

それならば、今―― 
大地を揺るがせ、赤みの残る群青の空に浮かぶ魔女の姿は――まさに、逢魔と呼ぶに相応しい。 


「ニ度目の日没だ。 
 そろそろ貴様等もゲームに慣れてきた頃であろう。 
 それでも、自らの不甲斐なさ故に命を落とし、脱落した者達がいる。名を読み上げよう。 

 「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」「ベアトリクス」
 「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」「ギルダー」
 「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」「アグリアス」
 「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」「シド」「ファリス」
 「エッジ」「フルート」「ドーガ」「デール」

 以上、二十七名だ。

 現在、この地で生き残りし者は六十名……素晴らしい。
 まだ二日目だというのに、既に半数を切っておるな。
 以後もその調子で同朋を騙し、裏切り、殺し……一分一秒でも長く生き延びる事だけを考えるのだ。
122逢魔が時 2/2 (修正):2005/11/22(火) 01:21:07 ID:15fzYhcu0
 しかし……この後に及んで、未だ参加する事を拒否している者も、少なからずいるようだな…… 

 ……まあ、それならば、それでもよい。 
 せいぜい、正義だの、愛だの、思いやりだのとか言う、下らぬものを信じているがよい。 
 そんなものは何の役にも立たぬ、と気付く頃には、貴様等の魂はその体を離れておろうがな……」 


突如、大陸の鳴動に合わせるかのように、突風が巻き起こった。 
木を、山を、人を、大気までも吹き飛ばさんばかりの勢いに、
微かに唇の端を上げ、皮肉な笑みを浮かべたアルティミシアが空に揺れる。 

やがて……
その姿が消え、辺りに静寂が戻り始めても……
冷たい風は、尚も大地に吹き荒れ続けた。 
信じる者、大切な者、そして愛する者を失った、生存者達の激しい慟哭のように。 

陽は沈み、逢魔が時は去り――魔の刻が訪れた。 
煌めく無数の星々と、血を滴らせたような赤い月と共に…… 


【浮遊大陸:昼→夜へ】
123同じ空、同じ誓い 1/5:2005/11/22(火) 01:51:54 ID:hkpW5pdO0
 どれくらいそうしていただろう。
 愛する弟の亡骸にすがり、ヘンリーは声もなく哭き続けていた。
 気付けば空に太陽は消え、夜の闇が世界を包もうとしていた。
 頬を撫ぜる風が冷え始めた頃。やっとヘンリーはゆっくりと顔を上げた。
 そして、デールの両の手を前に組ませ、ゆっくりと地面に横たえ。

「…………じゃあな、デール」

 それだけの、今生の別れを告げた。
 そこに、どれだけの思いがあったのか、自分に推し量れるものではない。

「……ヘンリーさん」
 声をあげる。
 何を言えばいいのかは分からない、けれど。
 自分は彼に何か言わなければならない。

 彼が立ち上がれなくなってしまわないように。
 自分にはその責任があった。
 彼の弟を殺したのは自分なのだ。
 どのような理由があろうとも、それは許される行為ではない。

 そんな自分が、彼に何を言えばいいのだろうか。
124同じ空、同じ誓い 2/5:2005/11/22(火) 01:53:58 ID:hkpW5pdO0
「……もう大丈夫だ」
 何かを言おうとした自分を遮るように、彼は立ち上がった。
 そして前を見据えて。

「大丈夫―――」

 大丈夫だと。
 もう立ち上がれると、前を見据えて彼は言った。

 それはただの虚勢かもしれない。
 自分すらも騙す嘘なのかもしれない
 だが、それでも、彼は立った。自分の足で。
 そして前に進もうとしている。
 ならば自分が彼に言うことはないのだろう。

「―――戻りましょう、もう日も暮れます」
 それだけを告げ、宿屋に向かい歩き始めようとした、瞬間、

 突然に、世界が揺れた。

 都合三度目。
 何が起こるかはイヤでも理解できる。

 上空に映し出される魔女の幻影。
 感情の無い魔女の声が呪いを告げる。
 その呪いは容赦なく降り注ぐ。
125同じ空、同じ誓い 3/5:2005/11/22(火) 01:56:06 ID:hkpW5pdO0


 『ビアンカ』

「―――っ」
 魔女の呪いに、すぐ後ろで喉のつかえる音がした。
 悲しみを堪えたのか、怒りを堪えたのかは分からない。
 それはたしか、このゲームが始まってすぐにであった女性の名だ。

 そんなことはお構いなしだと言わんばかりに、魔女の呪いは止らない。
 ―――告げられる。



 『シンシア』



 ―――――――――



 一瞬。頭の中が真っ白になった。
 ガツンと、後頭部を殴られたような気がした。

 立ちすくむ。呆然と。
 虚無が心の中を支配して何も考えられない。
126同じ空、同じ誓い 4/5:2005/11/22(火) 01:58:30 ID:hkpW5pdO0
「――――――」

 声も出ない。
 うまく考えが纏まらない。

 自分の心が空虚のようだ。
 大切なものをまた失って、穴が開いてしまった感覚。

 ああ、そうか、また自分は、

「また、彼女を救えなかったのか……」

 それが、悲しくて仕方がなかったんだ。

 崩れてしまわないように足に力を込める。 
 悲しみに負けないように歯を食い縛る。 

 挫けはしない。
 涙も流さない。

 “全ての悲しみを終わらせる”

 それは、悲しみにくれたあの日の誓い。
 彼女に命を助けられたあの日の誓い。

「―――止まるもんか」

 その為には、自分は止まってなんかいられない。
 このゲームを終わらせる。
 こんなゲームで大切なものを失った人のために。
 失った全てのもののために。
127同じ空、同じ誓い 5/5:2005/11/22(火) 02:00:35 ID:hkpW5pdO0
「……ソロ」
 背後から声がかかった。
 それは自分を気遣う声だ。

「大丈夫です。僕も、立ち上がって前に進めます」

 そう言って、空を見上げた。
 すでに空は暗く、微かな星の瞬きが世界を薄く映し出す。
 闇に沈んだ空はいつかと同じだ。

 手を伸ばす。
 届かない星に向かい。

 伸ばした手を強く握り締める。
 約束はそれだけ。


 同じ空と、羽帽子の少女に、同じ誓いと別れを告げた。


【ソロ(魔力ほぼ枯渇 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
 第一行動方針:宿屋に戻る
 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ヘンリー(手に軽症)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP3/4) G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 キラーボウ グレートソード アラームピアス(対人) ひそひ草 デスペナルティ リフレクトリング 賢者の杖 ロトの盾 ナイフ
 第一行動方針:宿屋に戻る
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームの乗る奴は倒す)】
【現在地:ウルの村 外(西出入り口付近)】
128風の中の「声」 1/7:2005/11/23(水) 18:33:27 ID:gNXxaUU+0
47度の満月の後、幾百、幾千の星たちが、天を覆わんばかりに降り注ぐ、星降りの夜が訪れる。
その夜、世界中のモンスターマスター達は一同に集い、その腕前を競い合う。
それが「星降りの大会」。
前の大会では、主催国タイジュの代表、テリーが決勝戦でマルタ代表を破り、優勝を果たした。
その時は出場できなかったが、必ず次の大会ではルカかイルがマルタの代表となると目されていた。

『絶対にあたしが代表になるんだから! お兄ちゃんだからって容赦しないからね!』
おてんばで、勝ち気で、生意気なイル。
『へっ、そんなんでテリーに勝てるかよ! イルの方がよっぽど見込みがあるワル』
いたずら好きで、邪魔ばっかりして、口が悪いワルぼう。
でも……
どんな魔物にも、分け隔てなく深い愛情を注ぐ、優しいイル。
本当は仲良くしたいのに素直になれない、不器用で寂しがり屋のワルぼう。
129風の中の「声」 2/7:2005/11/23(水) 18:34:47 ID:gNXxaUU+0
「ちくしょおぉぉ……! うおぉぉぉ……!」
ハッサンはギリギリと拳を握り締めた。
指輪が爆発しないのが不思議なぐらい、悔しさと怒りで体が張り裂けそうだった。

忌わしい魔女が告げたのは、バーバラの名前だけではなかった。
伝説の武器をも鍛えてしまう鍛冶屋の娘サリィ。
イザを本当の兄のように慕っていたというランド。
ミレーユやアモスに続き、巡り合えぬ内に命を落としていた同じ世界の仲間達。
ようやく見つけたテリーも、連れてきて欲しいと頼んだカインとケフカも、未だここに戻っていない。
このままでは、イザ達とも会えぬまま、永久に別れるような事にもなりかねない……

「諦めねぇぞ! まだ終わる訳にはいかねぇんだ!」
自らを奮い立たせるように叫んだ瞬間……
ぐらり、とハッサンの体が大きく揺れた。
130風の中の「声」 3/7:2005/11/23(水) 18:37:11 ID:gNXxaUU+0
「うあああああ! なっ、何だあ?!」
体力消耗ゆえの目眩か、強い風に煽られたものか……
いや、違う。体が急に沈み始め……
雲が消えていく?!
「か……勘弁してくれよぉ!」 
慌てて必死でバランスを取り、体を立て直す。
「おーい、ルカぁ! どうなってんだ?! 大丈夫なのかぁ?!」
どうにか無事に地面へ着地したハッサンは、数十メートル先に声を掛けた。
だが、返事がない。
「ルカ! 危ないぞ! このままじゃあ……」
もう一度叫んだハッサンは、途中で言葉を切った。
「……ルカ」
吹き荒ぶ風の向こう、バーバラの眠る墓の前に、うずくまるルカの小さな影が見えた。

非凡の才能を持つモンスターマスターは魔物に殺された。
マルタの国を守る精霊は自分の身を守れなかった。
131風の中の「声」 4/7:2005/11/23(水) 18:40:13 ID:gNXxaUU+0
『リノア!』
空に向かい、アンジェロは吠えた。
二度と会う事はないと……会いたくもないと思っていた姿に向かって。
『嘘でしょう?! なぜ、あなたが死ななければならないの?!』
消滅すべきは、あの魔女――アルティミシアの方であるはずなのに!
なのに、あの女は生きて……微笑みながら、死者の列にリノアの名を加えると言うの?!
喉から絞り出すような咆哮が辺りに響き渡る。
『スコール、あなたは……』
最愛の女性に先立たれた男。
その絶望はきっと、図り知れない程に深く、重いものに違いない。
せめて、側にいてあげよう……いや、自分の方が寄り添っていたいのだ……

涙を振り切り、走り出そうとした、その時――

『……だ……嘘だ……』

アンジェロは、風に漂う「声」を聞いた。
132風の中の「声」 5/7:2005/11/23(水) 18:42:14 ID:gNXxaUU+0
『……嘘だ……あいつが……簡単に死ぬ訳ないじゃないか……!』

「言葉」ではない。
人ならざる者のみが感じうる、心の「声」。
『泣いている……誰か……スコール? ……いえ、違う……』
アンジェロはじっと耳をすませた。

『……ワルぼうさえいれば……何とかなると思ってた……
 イルとマルタへ帰って……牧場を手伝って……バトルに出て……時々魔物たちと旅をして……
 何もかも、元のまま……元通りになるって……信じて……ずっと、信じて……なのに……どうして……』

まだ若い……いや、むしろ幼い男の子のようだ。
そんな年端も行かない子供が、こんな無慈悲なゲームに連れてこられていたなんて。

『……もう帰れない……たとえ生きて帰っても……
 父さん、母さんに……カメハに……魔物達に……何て言えばいいんだ……
 ……イルが……ワルぼうが……もうこの世にいないなんて!』

直接心に突き刺さるような、純粋な魂の慟哭。
思わず、こちらまで体が打ち震えるような……

『テリー……ギード……トンヌラ……早く俺を見つけてくれよ……動けないんだよ……
 俺……このままじゃ……どうしていいか……分からないよ……』
133風の中の「声」 6/7:2005/11/23(水) 18:43:44 ID:gNXxaUU+0
『テリーですって?!』
アンジェロは驚愕した。
あの血なまぐさい甲冑の男――カインは、テリーを探している人物がカズスにいると言っていた。
だとすれば……
『彼がハッサンなのかしら』
カインの話から、もっと大人の男を想像していたのだが。
『それはいいんだけど……』

何かおかしい。
彼……ハッサンは、テリーがどうなったのか、まるで知らない様子だ。
カインはラムザ達と別れ、とっくにカズスに到着している時間のはずだが、まだその事を伝えてないのか。
それとも……
『あの男、やっぱり怪しいわ……』
アンジェロは遥か前方を見据えた。
もうじき、砂漠も終わる。カズスまではあと一息だ。
134風の中の「声」 7/7:2005/11/23(水) 18:46:29 ID:gNXxaUU+0
『スコール、ちょっとだけ待っていて……リノア……その間、彼を守ってちょうだい……』
ハッサンは、訳あってカズスから動けないらしい。
それでも、テリー行方、ラムザの事、そして……あの男を簡単に信じてはいけない事を、彼に教えなくては。
離れていても、これだけ心が伝わってくる相手だ。
たとえ「言葉」はなくとも、こちらの気持ちも伝わるだろう。

アンジェロは再び、砂を蹴って走り出した。
風の中に消え去りそうな、心の「声」に導かれて。


【ルカ(浮) 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 、風のローブ、シルバートレイ
 第一行動方針:今は何も考えられず
 最終行動方針:仲間と合流】
【ハッサン(HP 1/10程度、危機感知中)  所持品:E爆発の指輪(呪) 、ねこの手ラケット、チョコボの怒り、拡声器
 行動方針:オリジナルアリーナと自分やルカの仲間を探す、特にシャナクの巻物で呪いを解きたい
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口付近】

【アンジェロ 
 第一行動方針:ハッサン(?)にテリー達の事を教える
 最終行動方針::スコールに会う】
【現在位置:カズス西の砂漠・東端→カズスへ】
135名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 18:32:09 ID:/RB0hpz80
ほしゅあげ
136最後の死闘:2005/11/25(金) 19:38:55 ID:4QB3X2Ia0
「この戦は――終焉を迎えた。」

眩い閃光が迸ったかと思うと、浮遊大陸は消滅した。
あまりにも早すぎた――消滅。
結果・全ての参加者は“死”の運命を知る事無く、塵一つ残らずに淘汰された。

FFDQバトルロワイアル 終
137名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 19:48:49 ID:qhyOgRc20
言うまでも無いけど、>>136は無効です。
138名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 20:14:50 ID:oYSk0YkP0
>>137は無効です。
139名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 20:48:10 ID:GBKyEV+t0
>>138も無効です。
140名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 20:53:01 ID:RYTYvE+2O
茶番はいい
141夕暮れの寸劇(修正) 5/13:2005/11/25(金) 21:24:23 ID:rcw2W4zB0
「そうか、わかった。
 ところで、フリオニールという銀髪……あるいはギルダー、アーヴァイン、スコール、マッシュという奴らを知らないか?
 セージという青髪の男や、フルートという水色の髪の女性についてでもいいんだが」
「フルートにアーヴィンにスコール?!」「フルートさんにアーヴァイン君にギルダーさん!?」

素っ頓狂な大声に、ネズミは驚いて飛び上がった。
対照的に、少年は冷静な態度を装い、感情を抑えるように問い掛ける。
「……知っているのか?」
「知ってるも何も……そのラインナップは何なんッスか?
 スコールって、ゼルとアーヴィンとこの班長とかって人じゃ……」
「ギルダーさんって、サックスさんのお友達だよね?
 あ! そういえばアルスって、フルートさんが言ってた……勇者さん!?」

きゃいきゃいと騒ぎ出すカップルに、少年は刃のような視線を注ぐ。
「……フルートと、ギルダーの仲間と、アーヴァイン……?
 どういうことなんだ? 彼女と奴らと君たちは、どういう関係なんだ?」

少年がそう言った途端、二人ははっとした表情を浮かべ、気まずそうに口をつぐんだ。
しきりに視線を交し合いながら、沈黙を続ける二人に変わって、中年の男が進みでる。
「私から説明しますよ。……話し難いことも色々と有りましたからね」



十字の大剣を墓標として冷たい腕に抱かせた後、三人の男は無言でその場を去っていく。
彼らの動向に気づいたネズミは、四つの手足を小刻みに動かし、飛ぶような速さで追いかけた。

「良かったのか?」
歩きながら、金髪の男が問い掛ける。
亡き女騎士から譲り受けた黒服に身を包んだ男は、静かな口調で答えた。
「優れた剣とは、例え無銘であろうと持ち主を選ぶものだ。
 あれは人を守るための剣。私が携えたとて使いこなせぬわ」
142夕暮れの寸劇(修正) 5.5/13:2005/11/25(金) 21:29:31 ID:rcw2W4zB0
――騎士の誇りと生き様を刻んだ剣。その主は、永遠にアグリアス一人しかおらぬ。
その呟きを聞いたのは、男自身とネズミだけで。
「人を選ぶ、か。……確かに、私もこの剣を扱う自信はないな」
名前に『光』を冠する剣。
幾多の血に汚れながら、なお輝きを失わぬ刀身を、砂漠の王は頭上に翳しながら見やる。
かつて皇帝と呼ばれた男は、薄紅の刃を一瞥し、思い出すように言った。
「本音を言えば、今一度あの血塗られし剣を携えたいところだがな……
 私も無粋な真似は好かぬし、あれが真に私に相応しき剣ならば、三度会いまみえる機があるはず。
 しばしの間は、この鞭を使わせてもらうことにしよう。
 扱い馴れているわけではないが……愚か者共への仕置きに振るってやるのも、悪くはなさそうだ」
金髪の男は、彼の手に握られた鋼鉄製のグリップに視線を移した。
彼の国の技術レベルさえも超えた、科学の粋を結集したともいうべき機構に気を引かれたのだろう。
だから黒服の男が一瞬見せた、冷酷な眼光には気付かない。
最も――気付いたとしても、何も言わなかっただろうが。

「そういえば……鞭で思い出したが、こちらの二つはビアンカの持ち物だったそうだな」
金髪の男は顔を上げ、焔のような魔力を纏った鞭と、風変わりなデザインの指輪を取り出した。
怜悧な声が「そうだ」と首肯する。
「……私個人の願望としては、リュカかタバサに渡してやりたいのだが」
「勝手にすればよかろう」
突っぱねるような物言いに、金髪の男は「感謝する」と頭を下げた。
そしてふと、窓辺に視線を移す。

「もう日没か……カズスでの約束は、確か二時間後だったな……」

紅から薄紫に、そして暗闇に。
紫陽花のように移りゆく光を見やりながら、彼は足を止めた。
ネズミは壁と柱の間に陣取り、耳と首とをせわしなく動かす。

「約束?」
「ああ。ここに来る途中で出会ったカインという男と待ち合わせをしたんだ。
 ……正確に言えば、一方的に押し付けられたんだが」
143夕暮れの寸劇 状態表修正:2005/11/25(金) 21:32:15 ID:rcw2W4zB0
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン 血のついたお鍋 再研究メモ
 ライトブリンガー ファイアビュート 雷の指輪
 第一行動方針:リュカを待つ/ビアンカの遺品をリュカとタバサに渡す
 第二行動方針:アリーナを殺し首輪を手に入れる
 第三行動方針:仲間を探す 第四行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン ナイフ ギルダーの形見の帽子
 第一行動方針:リュカを待つ 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服 ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 服数着
 第一行動方針:リュカを待つ 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【現在位置:サスーン城東棟の一室】

【マティウス(MP1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服) ビームウィップ
 第一行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
 所持品:ミラクルシューズ、ソードブレーカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:サスーン城→カズスへ】


上二つは>>106にあたります
本当に申し訳ありませんでしたorz
144名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/26(土) 20:36:22 ID:t2Dna2SXO
新作期待age
145消える灯、点す思い 1/6:2005/11/27(日) 02:20:13 ID:az3ZEvxD0
 蹴りを入れられた棚から派手な音を上げて本やら小物やらが床に散らばる。

「〜〜ッッ!! 何やってやがんだアイツらァッッ!!!」

 荒げられた声の音源はサイファー。その原因は夕方の定時放送にある。
 読み上げられた名前、失われた命――リノア。
 家族を探す、と言い出したリュカを手助けしたいという彼女の意見に負けて別行動を許したのは半日前のこと。
 同行者はリュカとジタン、一度は強敵を前に共に戦った間だ。二人は信頼しているしその力も理解している。
 だが、いやだからこそ、リノアだけの名が呼ばれるという現実が苛立ちを増幅していた。
 噴きあがる激情を分かりやすく表情に出したまま扉に手をかけるサイファー。

「サイファーさん、どちらへ!?」
「……すぐ戻る」

 振り返りもせずに言い放って扉の向こう、残光の街へと出て行った。

「サイファーさん……」
「かける言葉なんて…ないよ。
 僕にとってのターニア、ロザリーにとってのピサロさんみたいな存在をサイファーは…失った」
「……仲間が亡くなって、サイファーさんなんてあんなに心を痛めているというのに。
 私たち、泣くこともできなくて、思っていたよりずっと冷静で…嫌になりますね」
「サイファーが代表してくれてるから、かな。サイファーが一番辛いから…
 彼に比べれば少しだけ離れて見られる僕らは冷静でいられるんだと思う」
「……そうなのでしょうね。呼ばれた名前、覚えてますか」
「聞き覚えのあるところではリュカさんの奥さんビアンカさんと仲間のはぐりん。
 ジタンが言ってたベアトリクスさんとフライヤさん。ルカの仲間、わるぼう。
 それに僕の知り合いのランド、サリィ、そしてドルバ…バーバラも…か。
 ………四人……言うほど他人事じゃないな、僕も。……ロザリーは大丈夫?」
「はい。なんだか悪いです」

 哀しいかな、シンシアの話を、名前をロザリーは知らない。
146消える灯、点す思い 2/6:2005/11/27(日) 02:23:30 ID:az3ZEvxD0

「いや、いいことだよ。良い事といえば、ロザリーもあいつの名前を聞いたと思うけど」
「ええ。……クジャさんのことですね」
「やっぱり間違いないか。僕らの最大の標的、二人の銀髪の片割れ。
 こういっちゃ悪いけど、これは唯一のいい知らせなのかもな。
 僕らには結果しか分からない、でもとにかく強敵が一人減ったのは間違いない」
「そう、ですね。……でも、クジャさんだって日常から切り離されてここへ連れてこられたのでしょう。
 それは、私たちと何も変わらないはずです。それでこんな悪意のルールの中で命を落として。
 ……早く、こんな世界から抜け出したい……」
「………そうだね」



 同じ建物の中。
 壁に背を預けたまま、ザックスは放心していた。
 ランド、デッシュ。覚悟のとおり砂漠で助けられなかった名前が流れる。
 シンシアの名が続かなかった事に安堵する間もなく届く悲報。
 ティファ、ティファ=ロックハート。明るくて活動的な良く知っている娘。
 思考は中断・停止、しかしさらにそれを立て直すよりも早く追い討ちがかかる。
 シンシア、このゲームの中で最初に出会った優しげで、芯の強い娘。
 目の前がすぅっと暗くなる。すべて、自分の責任のように感じられた。

 何もできなかった。何も、何も、何もできなかった。
 せっかく巡り会った仇にも逃げられてしまったうえ、目の前でさらに誰かの命を奪われた。
 それにひきかえ、自分はまだこのカナーンから動くことさえできていない。
 自分は無力で、あまりにちっぽけで、何にもできやしないのではないか。

 外よりも一足早く暗くなりつつある魔法屋の中で、一人の男が無力感に包まれる。
 再び立ち上がろうとした意思が打ちひしがれる。
147消える灯、点す思い 3/6:2005/11/27(日) 02:27:39 ID:az3ZEvxD0

 揺れ動く大地が傷ついた男を乱暴に眠りから引き起こした。
 薄く目を開けた男の耳に聞きたくもない声が入り込んでくる。

…」「サリィ」「わるぼう」「……

 ただ無気力に、横になった視界に暗い床が映る。
 無力感がギルガメッシュの中に再び影を落とす。

…」「ギルダー」「はぐりん」「……

 増えていく名前は記憶に留まることなく消え去っていく。
 無力感がギルガメッシュの中でその重さを増していく。

…」「シド」「ファリス」「……

 聞きたくない名が一つ、耳から脳を通り過ぎた。
 無力感だけがただひたすらギルガメッシュの中を占めていく。

 目覚めたことすら誰にも気付かれぬまま。
 起き上がろうともせぬままただ男は臥せ続けていた。

148消える灯、点す思い 4/6:2005/11/27(日) 02:32:11 ID:az3ZEvxD0
 想い人は未だ無事でいてくれている。しかし、一日半のゲーム、79人に至った死者数。
 いとおしき姿が憎しみにとらわれて剣を振るう姿を想像してしまい、浮かび上がる疑惑疑心をはっと抑え込む。
 死の枷の脅しのもと、誰かが誰かを殺すという疑心疑惑、信じる気持ちを断ち切る呪い。
 それはこの世界を成り立たせている柱の一つ。

(ピサロ様。私は、信じております)

 信じていることを念じねばならない、それが逆にちらついている不安を浮き上がらせている。
 サイファーが出て行ったあと誰もが押し黙ってしまった建物の中。
 ムードメーカーとして先頭に立っていた彼の強がりの向こうに透けて見える落胆が今はマイナスの方向へ皆の気分を押し下げている。
 ロザリーの思考は目を背けていた、考えたくなかった己の命にかかった重さを俎上へと引き出していた。

(でも、もし私が死んでしまえば、それが伝えられてしまえば。
 あの方はきっと人への疑念に、憎悪に完全に囚われてしまう)

 自分の無力を恨めしく思う。サイファーさんのように強ければ、リュカさんのように行動力があれば、私は待つだけでなく想い人のところまで駆けていけるのに。
 何故、こんな無力な私はこの世界へ連れてこられたのだろう。これじゃあまるで他人を、あの方を呪う生贄の羊みたいで…

(駄目ですね、私。そう思っているのはきっと私だけじゃない。
 哀しいのは自分だけじゃないのに)

 不意にあたりの気配が存在を主張した気がして、ロザリーは恨み言に流れてしまう心を改める。
 隣のイザだって妹と離れたまま多くの仲間を失っている。
 サイファーについては繰り返して言うまでもない。
 傷ついている二人も多くの仲間、知人を失ってきただろう事は容易に推測できる。
 哀しい、辛いのは皆同じなのだ。
 それでも誰も必死に、そして何よりも仲間のために今このときもそれぞれの場所で戦っているのだ。

(私はみんなと生き延びて見せます。だから、貴方も…信じていてください)

 逃げ去ってゆく光、忍び来る闇の中でロザリーは虚空に祈った。
149消える灯、点す思い 5/6:2005/11/27(日) 02:32:58 ID:az3ZEvxD0

 冷静に与えられた情報を分析する自分に何か違和感のようなものがあった。
 いや、そういう風に客観的に自分を省みることのできる自分にイザは少しだけ戸惑っていた。
 慣れなのかもしれない。
 或いは、告げられる遠くの死に対応するだけの余裕がなくなりつつあるのかもしれない。
 アモスや、ミレーユの時とは違う自分の内面の変化をイザはとりあえずそんな所に結論付けることにした。

 サイファーは出て行ったきり。
 ロザリーは何か祈りを捧げているようだ。
 ザックスとギルガメッシュは眠りの中だろうか?

 多くの知っている名前の死が告げられたというのに自分はひどく冷静のまま、氷のように思考思索を試み続ける。

 城下町を破壊しつくしたクジャ、あれほど強そうだったドラゴンのドルバ。
 彼らのようなものでさえ命を失ってしまった事実はまさにこの世界の恐怖を示している。
 けれど一方、ターニアや悪いけれどロザリーみたいな非力な者も生き残ってはいる。
 それは僕らやリュカ、ジタンやギードのような反抗を決意した人たちの存在を期待させてくれるものだ。

 目の前で刺し貫かれた少女の姿が忘れられない。
 嫌というほど自分の無力さ、甘さは噛み締めてきた。
 突きつけられてきた現実から出る結論ははっきりしている。僕には、みんなを救うことはできない。
 けれど、僕らは終わりなのか。いや、そうじゃない。

 信じよう、みんな誰かの心を信じて今も必死に生きている、と。
 ギードやきっとどこかにいる知者の抵抗を援けサポートしよう。
 リュカを、ジタンを、アルスを、ルカを、テリーを、ハッサンを、アルガスでさえ信じてやろう。

 だから僕はロザリーを守る。サイファーを守る。ザックスを、その赤い人を守る。
 せめて手の届く現実は全部守りきってやる。
 それが、力及ばない僕の反抗だ。
150消える灯、点す思い 6/6:2005/11/27(日) 02:33:32 ID:az3ZEvxD0

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 第一行動方針:しばらくは休息
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:無力感に苛まれる
 最終行動方針:なし】
【ギルガメッシュ(HP1/2程度)
 所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣
 第一行動方針:起き上がる気力もなし】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋】

【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:物にやつあたり
 基本行動方針:ロザリーの手助け
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋外】
151ザ・ソルジャーブルース 1/3:2005/11/27(日) 17:15:45 ID:9CaB5xdl0

(なぁ、ランド、シンシアお前らは知らないと思うけど…俺、1度死のうと 思ったことあったんだ)

魔法屋の壁にもたれたままザックスは今は亡き2人に語りかける。
随分昔のことに感じてしまうが一日前にエアリスの名前が呼ばれた時、
彼女を守れなかったことから逃げようとする自分の心の醜さ、情けなさが許せなくて、
苦しくて死んでしまった方がマシなんて考えたこともあった。でも…

(でもな、お前らが元気づけてくれただろ?その時思ったよ。お前らより先には死ねないってな…)

もう二度と応えることもないとわかっているが心の中でシンシアとランドに話しかける。

殺人ゲームの最初からずっと一緒にいた。何度か危うい修羅場を3人で乗り切ってきた。
だから そう簡単には死なないと思っていた。しかし2人はあっけなく死んだのだ。
この腐ったゲームの犠牲となって。

(なのにお前らが先に死んでどうするんだよ…)

支えを失ったザックスは心の中でで叫び、泣き始めた。

(俺はどうすればいいんだ…)

頭に浮かぶシンシアとランドに訴えても答えることはもちろんなかった。
あの2人はもうこの世にいないのだから。
152ザ・ソルジャーブルース 2/3:2005/11/27(日) 17:17:33 ID:9CaB5xdl0
『この首輪を解析出来ればゲームを止められるかもしれない』

不意に頭によぎったその言葉が、泣き疲れたザックスに踏ん切りをつかせた。
その言葉の主のエドガーはまだ生きている。放送では名前を呼ばれなかった。
…その事実がなければ、いつまでもこのカナーンから動けなかったかもしれない。
まとわりつく無力感から離れられなかったかもしれない。
いっそ死んでしまいたい、とは、実を言えば今でも思っている。
けれども、いつだったかバイクで神羅の追っ手から逃げる最中、クラウドに言ったことがある。

「俺がトモダチを見捨てるわけないだろ」と。

シンシアとランド…あの2人も共に死線をくぐったトモダチだ。
だからまだ死ぬわけにはいかないのだ、きっと。
ここで死ねば2人を見捨てる事になってしまう。

室内を見渡す。イザとロザリーは軽く寝息を立てていた。
気丈に振舞っていてもこの極度の緊張感に晒されたせいで、身体のほうが休息を求めているのだろう。
ギルガメッシュの方はよく分からなかったがこちらも眠っているのだと思った、微動だにしない。

(悪いな。俺は1人で行く…エドガーを探す)

皆に気付かれないように、ザックスは立ち上がった。
魔法屋の屋外に出る。先ほど出て行ったサイファーの姿は見えなかった。
オルテガやロザリーに手当てされた左肩の傷は思ったより痛んだが、
この程度なら移動や多少の戦闘には支障は出ないだろう。
絶対に生きて、生き抜いて、トモダチの仇を討つ。
もう後悔にとらわれたりしない。これは俺の戦いだ。
もちろん死ぬかもしれないし、或いは今この場を離れたことが裏目に出るかもしれない。
けれども、このゲームで死んだエアリス、クラウド、シンシア、ランド、デッシュの苦しみを思えば
怒りと悲しみがこんなにも身を突き動かすのだ。
絶対に許さない。俺はこのゲームをつぶすためなら、手段も協力者も選びはしない。
魔法屋の建物を背に、ザックスは歩き出した。
153ザ・ソルジャーブルース3/3:2005/11/27(日) 17:19:46 ID:9CaB5xdl0
【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを叩き潰す】

【現在位置:カナーンの町・魔法屋外→?】
154ザ・ソルジャーブルース 追加:2005/11/27(日) 17:25:13 ID:9CaB5xdl0
【イザ(HP3/4程度、睡眠) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 第一行動方針:しばらくは休息
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー(睡眠) 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ギルガメッシュ(HP1/2程度)
 所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣
 第一行動方針:起き上がる気力もなし】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋】
155名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 21:15:22 ID:y7pfUX9o0
>>151-154は無効です。
156ザ・ソルジャーブルース(修正)1/4:2005/11/29(火) 21:17:51 ID:y7pfUX9o0

(なぁ、ランド、シンシアお前らは知らないと思うけど…俺、1度死のうと 思ったことあったんだ)

魔法屋の壁にもたれたままザックスは今は亡き2人に語りかける。
随分昔のことに感じてしまうが一日前にエアリスの名前が呼ばれた時、
彼女を守れなかったことから逃げようとする自分の心の醜さ、情けなさが許せなくて、
苦しくて死んでしまった方がマシなんて考えたこともあった。でも…

(でもな、お前らが元気づけてくれただろ?その時思ったよ。お前らより先には死ねないってな…)

もう二度と応えることもないとわかっているが心の中でシンシアとランドに話し続ける。

殺人ゲームの最初からずっと一緒にいた。何度か危うい修羅場を3人で乗り切ってきた。
だから そう簡単には死なないと思っていた。しかし2人はあっけなく死んだのだ。
この腐ったゲームの犠牲となって。

(なのにお前らが先に死んでどうするんだよ…)

支えを失ったザックスは心の中で叫び、泣き始めた。

(俺はどうすればいいんだ…)

頭に浮かぶシンシアとランドに訴えても答えることはもちろんなかった。
あの2人はもうこの世にいないのだから。
157ザ・ソルジャーブルース(修正)2/4:2005/11/29(火) 21:19:21 ID:y7pfUX9o0

『この首輪を解析出来ればゲームを止められるかもしれない』

不意に頭によぎったその言葉が、泣き疲れたザックスに踏ん切りをつかせた。
その言葉の主のエドガーはまだ生きている。放送では名前を呼ばれなかった。
…その事実がなければ、いつまでもこのカナーンから動けなかったかもしれない。
まとわりつく無力感から離れられなかったかもしれない。
いっそ死んでしまいたい、とは、実を言えば今でも思っている。
けれども、いつだったかバイクで神羅の追っ手から逃げる最中、クラウドに言ったことがある。

「俺がトモダチを見捨てるわけないだろ」と。

シンシアとランド…あの2人も共に死線をくぐったトモダチだ。
だからまだ死ぬわけにはいかないのだ、きっと。
ここで死ねば本当の意味で2人を見捨てる事になってしまう。
もう悲しみに浸る余裕はない。泣くのは後でいい。全てが終わってからでいいはずだ。

室内を見渡す。イザとロザリーは軽く寝息を立てていた。
気丈に振舞っていてもこの極度の緊張感に晒されたせいで、身体のほうが休息を求めているのだろう。
ギルガメッシュの方はよく分からなかったがこちらも眠っているのだと思った、微動だにしない。

(悪いな。俺は1人で行く…エドガーを探す)

皆に気付かれないように、ザックスは立ち上がった。
魔法屋の屋外に出ようと扉に手をかけたとき、ザックスの背に声が掛けられた。
158ザ・ソルジャーブルース(修正)3/4:2005/11/29(火) 21:25:14 ID:y7pfUX9o0
「挨拶もなしなんて、随分とあっさりしてるね」

ザックスは足を止めて声の主の方へ振り返る。
苦笑しながら見つめている黒い瞳とぶつかり、ザックスは眉をひそめる。

「眠っていると思ったのかい?あいにくそこまで僕は無用心じゃないよ」

イザは立ち上がり、ザックスへと近づいていく。
そして紙とペンを握った右手をザックスへ差し出す。

「分かってるよ。エドガーさん…だっけ?探しに行くんだろう?」

ザックスは否定も肯定もせず沈黙する。

「…なあ、僕たちと一緒じゃダメなのかな?僕も皆を守りたいんだ。
 そのエドガーさんも目的は同じなんだし、その内会えるかもしれないじゃないか」

イザの気持ちは痛いほどわかるのだが…ザックスは敢えて気付かぬ振りをして首を横に振った。

「どうして」

訊くとザックスが手を伸べたので、イザは黙って紙とペンを渡した。

『俺はトモダチを守れなかった。それでも信じてくれたトモダチに報いるために俺はもう休んでいられない』
「ザックス」
『行かせてくれ』

イザはもはや引き止める言葉を失っていた。
仲間を喪った悲しみの深さが理解できるからこそ、押し黙るしかなかった。
159ザ・ソルジャーブルース(修正)4/4:2005/11/29(火) 21:26:16 ID:y7pfUX9o0
「分かった…悪かったね」
『いや、気にしないでくれ。それにもうあんた達もトモダチだ。お互い生き延びてまた会おう』
「もちろんだ。君のほうこそ気を付けて」

最後にイザと軽く肩を抱き合い、ザックスは魔法屋を出た。


魔法屋の外はすっかり日が落ち、辺りを暗闇が包もうとしていた。
オルテガやロザリーに手当てされた左肩の傷は思ったより痛んだが、
この程度なら移動や多少の戦闘には支障は出ないだろう。
絶対に生きて、生き抜いて、トモダチの仇を討つ。
もう後悔にとらわれたりしない。これは俺の戦いだ。
もちろん死ぬかもしれないし、或いはイザ達と離れたことが裏目に出るかもしれない。
けれども、このゲームで死んだエアリス、クラウド、シンシア、ランド、デッシュの苦しみを思えば
怒りと悲しみがこんなにも身を突き動かすのだ。
絶対に許さない。俺はこのゲームをつぶすためなら、手段も協力者も選びはしない。
魔法屋の建物を背に、ザックスは歩き出した。

160ザ・ソルジャーブルース(修正):2005/11/29(火) 21:27:21 ID:y7pfUX9o0
【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを潰す】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋外→?】

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 第一行動方針:しばらくは休息
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー(睡眠) 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ギルガメッシュ(HP1/2程度)
 所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣
 第一行動方針:起き上がる気力もなし】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋】
161ザ・ソルジャーブルース(修正):2005/11/29(火) 21:49:48 ID:y7pfUX9o0
>>159の14行目
>けれども、このゲームで死んだエアリス、クラウド、シンシア、ランド、デッシュの苦しみを思えば

、を

>けれども、このゲームで死んだエアリス、クラウド、ティファ、シンシア、ランド、デッシュの苦しみを思えば

、に修正させてもらいます。
たびたびの修正スマン。
162名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 01:45:06 ID:++cpY3sa0
保守
163名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 23:48:10 ID:nccw1P710
age
164光へと向かう力 1/8:2005/12/03(土) 09:56:07 ID:pONFwbCF0

『光が、また一つ消えたか……』
木々の間から満天の星空を仰ぎ見ながら、ギードは大きく溜め息をついた。

ファリス。
海竜を操り、女だてらに海賊の一団を率いた頭領。
一度は「無」の力によって消滅したギードが、今、存在しているのも……
彼女らが持っていたクリスタルの欠片により、世界が再生されたおかげである。
だが、そんな勇ましい彼女も……クルルに続き、この地で儚く消えた。



ギードは目を閉じ、静かに祈りを捧げた。
再び、奇跡が訪れるようにと……
165光へと向かう力 2/8:2005/12/03(土) 09:57:34 ID:pONFwbCF0
テリーは大木の根元に膝を抱え座っていた。
心配そうに目の前に佇むトンヌラの持つ、ランタンの赤い火が滲んで見える。
浮かんでは消える……自分達を守り戦った、リノアの笑顔……ドルバの最後の勇姿……
……あの恐ろしいクジャでさえ、名前を呼ばれた。
ジタンが約束を守り、本当に落とし前を付けたのだろうか。



しかし……それ以上に、思ってもみなかった名前……『ワルぼう』

……思えば、テリーがモンスターマスターになる、いや、ならざるを得ないきっかけを作ったのはワルぼうだった。
もしあの夜、ワルぼうが姉さんを連れ去らなかったら……
それまで通り、平穏で幸せな日々が続いたかもしれない。
でも……
わたぼうを始め、応援してくれるタイジュの人々、慕ってくれる魔物達、引いてはルカやイルに会う事もなかっただろう。

本気で憎んだ事もあった。
けど……
淡い灯りの中で、赤い綿毛がいたずらっぽく笑い、跳ね回り……消えていく……
166光へと向かう力 3/8:2005/12/03(土) 09:59:49 ID:pONFwbCF0
「……テリー、歩けるか?」
長い長い黙祷の後、ギードは一向に動こうとしないテリーに声を掛けた。

「……悲しいのは、皆一緒じゃ……じゃが、いつまでも嘆いておる訳にはいかぬ。

 ここから歩み出さねば何も解決せぬままじゃ……分かるな」

「うん……」
テリーはようやく顔を上げた。

「分かってる……分かってるさ……だから……オレ……」

「ん?」

「オレ……強くなりたい! 誰よりも強い……力が欲しい!」
思いつめたように、テリーは叫んだ。


「何を言う。お前さんには、マスターとしての立派な力があるじゃろうが。

 魔物の言葉を理解し、心を分かち合えるという、希有な才能が……」

「それじゃ駄目なんだ!」

突然立ち上がったテリーに驚き、トンヌラが後ずさった。
弾みで、ガチャン、とランタンが地面に落ちる。
167光へと向かう力 4/8:2005/12/03(土) 10:02:35 ID:pONFwbCF0
「オレは……あのスライムナイトの心を押さえられなかった……そのせいでドルバを死なせてしまった……
 イルもあの魔物に殺されて……ルカだってどうなったか分からない……
 何が星降りの勇者だ! 世界一のマスターだ! そんなものっ……何の役にも立たないんだ!」
「テリー、それは……」
「さっきの人みたいに殺されるのは嫌だ……けど、誰かの足手まといになるのは、もっと嫌だ!」
漏れたオイルにランタンの炎が移り、テリーの顔を照らし出す。


「リュカさんやジタンさん、サイファーさんみたいに戦えたら……リノアさんやギードみたいに魔法が使えたら……
 いや、その半分でも……オレに力があったら……みんなを守れたかもしれないのに……
 ……みんな、死なずに済んだかもしれないのに!」
涙に濡れた瞳が光る――

「オレは強くなりたい! 誰にも負けない力が欲しいんだ!」



――炎を映し――光る――


「強くなれるなら……力をくれるなら何だっていい!
 相手が魔女だろうが何だろうが構わない!」

――光る――瞳――
168光へと向かう力 5/8:2005/12/03(土) 10:08:58 ID:pONFwbCF0
「ばかもの!」

なぎ払うようにギードは叱咤した。
強過ぎる衝動に、正気を失いかけている。あの時のトンヌラと同じように。
このままでは――


「今のお前が……怒りと悲しみに支配されたお前が、力を得たところで何とする?!
 そこから生み出されるのは正義でも平和でもない! 新たな悲劇だけじゃ!」

一瞬、テリーの瞳が揺らぐ。

……突然、記憶が――忘れていた記憶が蘇る。


あれは――扉の中の記憶――


――ほほう……良い目をしておるな。
  連れておる魔物もなかなかのもの! その実力、並々ならぬと見た!
  お前の実力は私と闘うに足るものか……まずはお手並み拝見といこう――

不敵に笑う魔王。そして――

――次は……なかなか歯ごたえのある奴だ。

  最強の剣を求め世界を流浪し、ついに我が元へ辿り着いた剣士だ。

  紹介しよう。

  我に魂を捧げし、世界最強の剣士――
169光へと向かう力 6/8:2005/12/03(土) 10:14:33 ID:pONFwbCF0
「そんなものは本当の力ではない!
 強大すぎる力を手に入れた挙げ句、その力に呑まれ……全てを失う者もいるのじゃ!
 テリーよ、惑わされるな! 己を見失うな!」


――

――――お前……強いな……奴にも……勝ったんだな……
    オレは……勝てなかった……奴……に――

――――――剣もロクに使えない腰抜けだとバカにしたが……あれは取り消そう……
      お前は最強だ。
      たとえ剣を使わずとも……最高のファイターだ――



――――――――お前に一つ忠告しておく……
        ……オレのようにはなるな。
        力に魅入られた者は、いずれ力に滅びる……
        ……もう遅いかも知れんが、オレみたいになりたくないだろ――


          ――――お前は――光の射す方だけを見ていろ――――


――――――――――――――


「あ……」

ふっ、と炎が消え、テリーはがっくりと膝を着いた。
170光へと向かう力 7/8:2005/12/03(土) 10:17:40 ID:pONFwbCF0
「テリー……」
暗闇の中から、今度は、優しく静かに……ギードが語り掛ける。

「お前さんは言った……誰も死なず、殺されずに済む方法はないのかと。
 ……ただ、はっきり分かっておるのは……それは、目に見える力だけではないという事じゃ」
テリーは微かに頷いた。
「お前さんの力は強き者を捩じ伏せる為のものではない。迷える魔物達の心を救い、導く為のものじゃ。
 それに従い、トンヌラはお前さんの後を追い……ドルバは、命を掛けた。
 そして、わしは……お前さんを、心から信じておる」

「ギード……」

「だからいずれ……ワシもきっちり落とし前を付け、お前さんに……全ての正しき者に報いよう」

気が付くと、トンヌラが横に立っていた。
おずおずと、テリーのザックを差し出す。

「ありがとう」
テリーはザックから自分のランタンを取り出した。
小さいが、暖かな光が灯る。
「これ……お前が持ってていいよ。何か、その方がサマになる気がする」
自分のが壊れてしまい、ちょっと落ち込んでいたらしい。
トンヌラは喜んでランタンを受け取った。

淡い光を映すテリーの瞳は、アメジストの色に輝いていた。
そう、いつも通り……ギードは安堵した。
171光へと向かう力 8/8:2005/12/03(土) 10:19:35 ID:pONFwbCF0
が、その時……

「待て……」
ギードは振り返り、後方を見た。
遥か遠くに小さな灯りが揺れ、微かに草木をかき分ける音が聞こえた。
「誰か、来る……」
一行は、じっと息を潜めた


【ギード 所持品:首輪 
 第一行動方針:様子を窺う 第二行動方針:ルカとの合流 第三行動方針:首輪の研究】 
【テリー(DQM)(右肩負傷、3割回復) 
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×2、鋼鉄の剣 、コルトガバメント(予備弾倉×4) 
 第一行動方針:様子を窺う 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】 
【トンヌラ(トンベリ)所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ、りゅうのうろこ 
 行動方針:テリー達についていく??】 
【現在地:カズス北西の森南部】
172Crazy Little Thing Called Kill 1/9:2005/12/04(日) 13:24:17 ID:sOOCA6T60
森の中、ピエールとアリーナは肩を並べて歩いていた。
眼を交わす事も、言葉を交わす事も無い。
ただ、明りも灯さずに、行くべき道と狩るべき獲物を探している。

放送前までは一人だけ『我関せず』といった表情で長大なタイトルが記された本を捲っていたウィーグラフも。
今や灯火と剣を携え、周囲に目を光らせている。
先を行くピエール達と、お互いの姿が確認できる距離を保ちながら。

方や闇夜に紛れて犠牲者を探し、方や明りを灯して血に狂う者をおびき寄せる。
どちらも伏兵、どちらも囮。
お互いに無関係を装いながら、いざとなれば即座に加勢できる距離を保ち、サスーン城へと向かう。

三人の同盟は、アグリアスの死という計算外の事態を経ても崩れることはなかった。
放送で彼女の名が呼ばれた時、アリーナなどは反射的にウィーグラフを見つめてしまったものだが――
幸か不幸か、彼が何かを言い出す事もなかった。

ピエールが言い出した『二手に別れる』作戦も、アリーナ・ウィーグラフ両名共に反対することはなく。
同盟の強固さを物語るように、三人はそれぞれの役割を果たしながら、月の下を歩んでいた。
173【Blue Blood,Taste Blood】 2/9:2005/12/04(日) 13:29:08 ID:sOOCA6T60
(あーあ。あたしってば、なんでこう、考えたことが表に出ちゃうのかしら?
 アグリアスが死んだところで、あいつはラムザが北にいるって思ってるんだから、大した問題じゃなかったのに。
 あんな風にジロジロ見たりしたら、怪しまれちゃうじゃない。
 ・……何も言ってこないってことはバレてないってことだと思うけど。
 そうよ、ダメダメ。不安になっちゃ。
 どうせあいつにもラムザの行き先なんてわかりっこないんだし、あたしを信じるしかないんだ。
 堂々としてればバレやしないわよ)

(それにしても、こういうのって、ホントあたしの悪い癖よね。
 リュカの時も、あの眼に動揺してついつい怪しまれるような行動を取っちゃったり。
 アグリアスの時も、変な方向に思考が飛んで反応が遅れたり。
 感情と行動が制御できてない。
 学習自体はしてるはずなのに、モノの考え方を根本的に切り替えることができない。
 ここまでくると頭の良さどうこうより、生まれ持った性格なんだと思うけど。
 ホント、嫌になってくる。
 アリーナがあんな単純バカじゃなければ、きっとあたしもこんな単純じゃなかったんだ。
 そう、アリーナじゃなければ、テリーの時もマティウスの時ももっと上手くやれたんだから!)

(……フン。そうよ、アリーナ。今なら大声で言えるわ。
 あたしは、バカで脳ミソ筋肉ですまし顔の偽善者のあんたが世界で一番大嫌いよ!
 あたしのこと生んで、こんな痛い目に合わせておいて、自分は正義だの何だの甘い事ばかり語ってのうのうと生きてる!
 それで最後にあたしを始末して、自分だけが善人気取りで生きていくつもりなんでしょ。
 冗談じゃないからね。
 それをやるのはあたしの方だからね!
 あんたに全部罪を着せて、葬り去って、あたしが本物のアリーナとして生きていってやるんだから!)
 
(……そうよ、だから二人に言ってやったのよ。
 『絶対にアリーナには手出ししないで』ってね。
 だってそうでしょ? 復讐するのに、一番最初に本人を狙う奴なんていない。
 本人より先に、大切な人、仲間、殺されたくない相手を、見せつけるように殺すに決まってる。
 それにね、あたし我慢するつもりなんかこれっぽっちもないの。
 ラムザもリュカもあたしの手で殺してやるつもりなのよ)
174【Blue Blood,Taste Blood】 3/9:2005/12/04(日) 13:32:32 ID:sOOCA6T60
(そうすればあいつら、きっとあたしより先にあんたを殺しに行くわ。
 復讐してやるつもりで――あたしの計画通りにね。
 あんたさえ死ねば、あたしが本物になれる。分身なんかじゃない、アリーナって本物の人間に。
 ――それだけじゃないわ。
 あんたの名が放送で呼ばれれば、あたしは居るはずの無い存在になれる。
 あたしの姿を見たソロ達は、驚くかしら、怖がるかしら?
 フフ……死んだはずの仲間の幽霊が襲い掛かってくるなんて、とびっきりの呪いじゃない。
 一石二鳥ってこういうこと言うのよ。頭にお花が咲いてる人には理解しきれないだろうけど!)

(でも、このささやかな夢をかなえる為には、学んだ事をきっちり生かさないとダメ。
 あたしは二つのことを学んだわ。
 一つは、何でもかんでもすぐに決断を下すのは良くないってこと。
 もちろん、シンシアやウィーグラフの時みたいに上手くいくこともあるけれど。
 でも、マティウスやテリーの時みたいに裏目に出ることだってある。
 ……じっくり考えようと思っても、誰かさんに似ちゃったせいか中々纏まってくれないけど。
 けれど気が散らなければ、とびっきりのアイデアを閃ける。
 今でも、ギリギリの状況なら集中できるけど、いつまでもそれじゃあやってけない。
 もっと、腰を降ろして考える癖を身に付けないとね)
 
(それともう一つ、ついつい遊びすぎてしまうってことも改めないと。
 後で呪って壊して嬲って殺そう、そう思って止めを刺さなかったから、テリーなんかにしっぺ返しをされた。
 確かに他人を呪うのは楽しいけど、でも、いつまでもふざけてちゃダメ。
 もう何十人も死んでるんだ。この先も生き残ってる奴らは、多分、黒服やソロやピサロみたいな強い奴らが殆どよ。
 邪魔になるなら即座に殺す。止めを刺せるなら黙って刺す。
 そうしないと、こっちまで痛い目見ちゃう。
 ――そうよね、ピエール?
 どうせあんた、サスーンについたらリュカの味方に回るんだもの。
 そうなったら、ただの邪魔者よね)
175【Blue Blood,Taste Blood】 4/9:2005/12/04(日) 13:36:38 ID:sOOCA6T60
(いけ好かない黒服を殺すまでは……
 いいえ、殺した後もずっとずっと利用してやりたい。それが本音。
 でも、わかってるわ。高望みのしすぎは身を滅ぼす元。
 リュカとあの黒服達が仲良くなってる可能性もあるし、そうでなくてもあれだけの武器がリュカに渡ったら危険すぎる。
 逆にピエール一人いなくても、あの雷の剣があれば、黒服やリュカを殺すのに十分な戦力を保てる)

(ううん……もしかしたら、ピエールのアイテムとウィーグラフの本があれば、二人ともいらないのかもしれない。
 放送の前、こっそり横合いから覗いてやった時、見えたあのページ。
 リュカと一緒にいたエドガーって奴の写真と、【攻略法】って書かれた文字。
 もし、あの本に全参加者のデータと対策がセットで載ってるなら……
 そして、雷を呼ぶ剣に、遠くから攻撃できる武器に、人の居場所がわかるってレーダー……
 ……あれだけあれば、どんな雑魚でも、他人の力なんて借りる必要ないわよ)

(でも、ウィーグラフは強いし、黒服共と腕の立つ奴らとアリーナを殺してもらうって役目があるからね。
 だからピエール。あんたには別の役目をあげる。
 例の黒服でも、青髪でも、通りすがりの誰かでもいい。
 サスーンに着くまで、あたしの分まで適当な奴を始末し続けて、最期に適当な奴に始末される。
 それがあんたの役目よ。
 ――ウフフフ、安心して。リュカの所にはちゃんと連れてってあげるから。
 首を切り落として、足元のスライムも兜の中に一緒に詰めて、キレイなブルーのリボンでラッピングしてあげる。
 きっと、リュカも泣いて喜んでくれるわ!)

(さーて。早く間抜けな子羊の一匹か二匹、出てこないかしら。
 飢えたオオカミが待ってるわよ?
 あたしのために頑張って死んでちょうだいな。
 羊もオオカミも、どっちもね……フフフッ)
176【Two is company,three is a crowd】 5/9:2005/12/04(日) 13:39:33 ID:sOOCA6T60
(アグリアスという取引材料が消えて、私が裏切るとでも思ったか……
 浅はかな考えだ。
 自分が賢人だと言うつもりは毛頭ないが、小娘、貴様ほど短慮になった覚えもない。
 ……フン、だが先ほどの表情で確信できたぞ。
 どうも話が上手すぎるとは思っていたが、やはり私を謀るつもりだったか。
 貴様はラムザの行く先など知るまい。
 よくよく考えれば、気絶していた人間が相手の行方を見ている可能性など、限りなく低いはずではないか。
 大方、私の気を引くために、アグリアスの居場所に合わせて北に向かったと答えた。そんなところか。
 まぁ、アグリアスの件に関しては嘘では無いようだし、今しばらく付き合ってやる。
 あの二人が邪魔をしなければ、アグリアスは私の手で仕留めていたはずなのだからな)

(しかし、二日で79人か。思っていたよりも乗っている人間が少ないのか、弱いのか。
 今まで出会った連中のことを考えれば前者だろうな。
 どちらにしても、今から狩る側に完全に回ってしまうのは後々不都合なことになりそうだ。
 ――ラムザや奴に纏わる者達を仕留めるために、この二人と手を組んで狩る側に回る。
 それ自体は一向に構わん。
 しかし危うむべきは、アリーナ達もろともに『殺し合いに乗った者』とレッテルを貼られ、
 ラムザの元に『そうでない者』が集結してしまう事。
 アリーナ達以外で殺し合いに乗っている者が、私やアリーナ達に力を貸す可能性は限りなく低い。
 だが、殺し合いに乗っていない者は、殺し合いに乗っていない者と簡単に手を組む。
 最悪の場合、三人の殺人者とそれに対する多数の抵抗勢力という図式で包囲されてしまう可能性さえ有りうる)

(それに、このメモだ。
 袋の中に入っていた首輪と、研究成果を記したらしき文面。
 最初はあの魔物が書いたものかと思ったが、二人分のイニシャルが記してあった。
 D、そしてE=R=F。
 『D』はわからない。けれども、『E=R=F』は……恐らく、アリーナの言っていたエドガーという男だ。
 エドガー=ロニ=フィガロ。
 あの『公式基礎知識完全攻略アルティマニア解体ガイドブック』とやらに記された内容と照らし合わせても、ほぼ間違いないだろう。
 本気で首輪の解析を行っている者がいる。この事実は看過できん)
177【Two is company,three is a crowd】 6/9:2005/12/04(日) 13:44:47 ID:sOOCA6T60
(我が最大の目的はラムザを殺す事。
 そのためならば、誰が敵に回ろうが構わん。
 奴をこの手で殺せるのならば、何を失おうと後悔はしない。
 ……しかし、そうでないなら話が別だ。
 無駄な戦いを仕掛ければ、傷つく率も命を落とす率も上がる。
 私はラムザを殺すまで死ぬ気はない。このような世界で朽ちるつもりもない。
 有用な札を手元に揃え、邪魔な手札は素早く切り捨てるべきだ。
 先を見通せなければ、遅かれ早かれ身を滅ぼすことになる)

(小娘、貴様はリュカが怪我を負っていたと言っていたな。
 それが真実だとすれば、貴様のような人間が怪我人を見過ごすとはおかしな話があったものだな?
 フッ……ピエールが何故、二手に別れると提案したか。
 私にはわかる気がするぞ。
 貴様は額面どおりに受け取り、それ以上のことは考えておらぬだろうがな)

(小娘。二人寄れば仲間かもしれんが、三人寄らば群集だ。
 貴様は根本的に戦略というものを知らん。
 その場しのぎで人を欺くことはできても、大局を見通す眼を持たん。
 ――エリクサーの個数を見破ったこと、私やピエールを陣営に引き込んだ手腕は認めてやろう。
 しかし、それ以外に貴様に何がある? 魔法も使えぬ、力押し以外の技も持たぬ。
 回復呪文が使えるというピエールと比べれば、貴様の利用価値は限りなく低い。
 だが、万が一貴様とピエールが完全に手を組めば、私とて無傷ではいられまい。
 人心掌握に長けていようと……いや、長けているからこそだ。
 災いの芽は間引かねばならぬ。できる限り、私の利となる形で)
178【Two is company,three is a crowd】 7/9:2005/12/04(日) 13:46:49 ID:sOOCA6T60
(小娘、サスーンであの二人組を殺すまでは、茶番に付き合ってやろう。 
 だが、それで終わりだ。
 私が手出しせずとも、ピエールが仕留めにかかるだろうが……
 リュカとエドガーに近づく為にも、貴様には死んでもらわねばならない。
 第三者を装って小娘、貴様を殺し、必要ならばエリクサーを使ってでもリュカとエドガーの信頼を得る。
 リュカを人質に取った状態ならば、ピエールも私に逆らうような真似はできまいからな)

(卑怯だと罵りたければ罵るがいい。
 誇りなどとうに捨てた。正義も理想も用は無い。
 私が求めるはラムザへの復讐。
 そのためならば手段は問わぬ、利用できる物は全て利用してくれる)

(小娘、ピエール。
 精々、束の間の夢を楽しんでおくのだな。
 自分こそが『利用する側』であるという、儚い幻想を・……)
179【Raison d'etre】 8/9:2005/12/04(日) 13:52:28 ID:sOOCA6T60
(全てはリュカ様のために)

隣を歩む少女と、後方で揺れ動く灯火。
異形の騎士は沈黙を保ったまま、小さな機械を見つめている。
兜の奥はどこまでも暗く、瞳があるのかどうかさえわからない。
垣間見える暗闇を見つめても、その本心を理解できる人間は皆無だろう。
けれど、その足元のスライムを見るものがいれば気付いたはずだ。
どんぐりのような眼に宿った光を。
『全ては主君のために』――それ以外の感情を持たない光を。

血に飢えた殺人鬼を葬る機会を作るためなのか。
邪悪な企みを抱く復讐者を遠ざけるためなのか。
純粋に人を狩る為、そのためだけの策略なのか。
全て正しいのかもしれない。
どれでもないのかもしれない。
だが、今さら理由を問う事など無意味だろう。
真意の在り処に関わらず、もはや賽は投げられた。
今、ピエールが考えているのは、主君の身を守るために全力を尽くす事。
ただそれだけ。

研ぎ澄まされた刃のように純粋な思考。
そこには一点の曇りも迷いも無い。悪意と呼べるものすらない。
だからこそ、彼は運に恵まれることができたのかもしれない。
いつの時代でも、天は強く澄んだ意志を持つ者を愛した。

(全てはリュカ様のために)

それが彼の意志。
それが彼の存在理由。
例えアリーナの嘘に気付いていようと。
例えウィーグラフが持っているザックの片方に付着した銀の輝きに気付いていようと。
それ以外の事は、彼は必要としていない。
180Crazy Little Thing Called Kill 9/9:2005/12/04(日) 13:55:38 ID:sOOCA6T60
機械に映る幾つかの光点。
遠くの木陰で瞬く、かすかな光。
それに気づいたアリーナ達は、息を潜め、近づく。

己の目的を果たす為に、異なる思考を胸に秘めて。
三人は、今しばらくの間だけ、それぞれ仲間であることを演じるだろう。
殺意という名の欲望を満たす、そのための仲間を――

【ピエール(HP MAX MP MAX) (感情封印) 】
 所持品:雷鳴の剣、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
 王者のマント ひきよせの杖[2]とびつきの杖[1]ようじゅつしの杖[0]
 死者の指輪、毛布 聖なるナイフ 魔封じの杖
 第一行動方針:リュカを探し、王者のマントを渡す
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【アリーナ2(分身) (HP MAX) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ピエールを葬り、リュカを殺す
 第二行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】

【ウィーグラフ
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×7、ブロードソード、レーザーウエポン、
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ、
 第一行動方針:ゴゴとマティウスを殺す/ラムザを探す
 第二行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
 第三行動方針:生き延びる、手段は選ばない
 基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】

【共通第一方針:利用できるうちは同盟を守る】
 共通基本方針:サスーン城へ向かう】
【現在位置:カズス北西の森南部】
181Crazy Little Thing Called Kill 修正:2005/12/04(日) 14:18:31 ID:sOOCA6T60
>>174
でも、マティウスやテリーの時みたいに裏目に出ることだってある。
→でも、アグリアスやテリーの時みたいに裏目に出ることだってある。

>>175
リュカと一緒にいたエドガーって奴の写真と、【攻略法】って書かれた文字。
→リュカと一緒にいたエドガーって奴の写真と、【対策法】って書かれた文字。

以上二点修正おねがいします
182名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 16:42:30 ID:5S7E0/ft0
F7北部
しにそう
183Crazy Little Thing Called Kill 修正:2005/12/04(日) 22:48:02 ID:sOOCA6T60
>>180

【ピエール(HP MAX MP MAX) (感情封印) 】
 所持品:雷鳴の剣、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
 王者のマント ひきよせの杖[2]とびつきの杖[1]ようじゅつしの杖[0]
 死者の指輪、毛布 聖なるナイフ 魔封じの杖
 第一行動方針:サスーンに向かってリュカを探し、王者のマントを渡す
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【アリーナ2(分身) (HP MAX) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ピエールを葬り、サスーンに向かってリュカを殺す
 第二行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】

【ウィーグラフ
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×7、ブロードソード、レーザーウエポン、
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ、
 第一行動方針:サスーンに向かいゴゴとマティウスを殺す/ラムザを探す
 第二行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
 第三行動方針:生き延びる、手段は選ばない
 基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】

【共通方針:利用できるうちは同盟を守る】
184名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/06(火) 21:22:08 ID:K7yJm6Ac0
hosyu
185名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 01:58:32 ID:VqEbBPZU0
ほしゅあげ
186名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/09(金) 17:39:07 ID:bJ6T/7JcO
新作期待あげ
187名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/10(土) 16:28:12 ID:vfXIrfNE0
リュカは刃物で自分の腹を切った。
……リュカは刃物で自分の腹を切った?

リュカは、死に対する恐怖に耐えられず、死んだ。

【死亡 リュカ】
188名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/10(土) 17:24:20 ID:uHDD9Wli0
>>187は無効です。
189保守ついで:2005/12/11(日) 15:32:14 ID:su2q4P4B0
                                           ↓今ここ
************|*** 【1st】 ****|** 【2rd】 ****|** 【3rd】 ***|
FF1  主人公|   {不在}   |  {不在}   |ジオ(スーパーモンク・男) 
            |            |           | アルカート(白魔道士・女)                    
FF3   主人公| 無名(導師・男)|  {不在}   |サックス(ナイト・男) 
           |            |           |ギルダー(赤魔道士・男) 
*************************************************|
DQ1    勇者 |   {不在}    |  {不在}    |  アレフ    |
DQ2 ローレ王子 |   {不在}  |  マイヤー  |   ロラン   |
DQ2サマル王子| アーサー  |  クッキー | パウロ   |
DQ2 ムーン王女|   無名     |  リンダ    | ムース   |
DQ3    勇者| アルス     |  アルス    | アルス     |
DQ3    僧侶 |  {不在}   | ターシャ(女)|フルート(女・元武闘家)
DQ3  武闘家| {不在}    | レオナ(女)  |   〃     |
DQ3魔法使い|サマンサ(女)|サマンサ(女)| {不在}   |
DQ3    盗賊| 無名(女)  | {不在}   | ローグ(男)|
DQ3    商人|  {不在}   |サバロ(男)   | {不在}   | 
DQ3    賢者|マゴット(女) |まりりん(女) |セージ(男) |
DQ4    勇者|  ソロ     | {不在}    |   ソロ     |
DQ5   主人公|  とんぬら   |  リュカ    | リュカ   |
DQ5    王子| クーパー  | クーパー  | レックス  |
DQ5    王女|  アニー   | アニー     | タバサ    |
DQ6   主人公|   {不在}    |  {不在}   | イザ     |
DQ7   主人公|   {不在}    |  {不在}   | フィン   |
**************************************************
190薄闇の村のディナータイム(−3) 1/11:2005/12/13(火) 19:13:31 ID:fS/X+Mjb0

真後ろの異変を華麗なジャンプで回避、テーブルの上へ着地する。
目の前には悲鳴を上げる眠ってた子と、目を丸くして固まっているビビ。
からんからんとお鍋のふたが床を転がり、からからからんと倒れる。
わたぼうはついさっきの自己紹介の笑顔のまま、くるりと辺りを見回してもう一度話しかける。

「あはは、ゴメンゴメン。ちょっと失敗しちゃったみたい。
 えーーっと……改めておはよう! 僕はわたぼう、よろしくね。君は?」
「あ……ターニアです」
「よろしく、ターニア! それで、僕の作ったスープ……はどうだった?」
「え、えと、とっても個性的な味だったけど、ちょっと…味が強すぎるかな?
 あっ、そんなことより! お鍋、片付けないと大変!」

言い終わるより早くターニアは無惨な状態のお鍋の後片付けに取り掛かった。
とりあえずビビに頼んでかまどの火を消してもらい、そこらにあった布を雑巾代わりにこぼれた液体を拭き取っていく。
なんとか作業に見切りをつけてからテーブルの上を見たターニアはただ呆然とするしかなかった。
真っ黒くなるまできっちりと火を通した炭、じゃなくてお肉。(さらに元はほしにくだったことが後で判明)
あるものを適当にボウルに放り込んだサラダ、のようなもの。複数の色で構成されたドレッシングのような何かが危機感をあおる。
後ろで説明を始めたわたぼうは自信満々。

「えへん。スープはだめになっちゃったけどあとはすごい出来だよ!」
「そ、そう……材料はここにあったの?」
「うん。そこらにあったお肉とか、油とか、草とか。テリーもやってたけど料理って楽しいね。
 スープだって我ながらどんな魔法使いにも負けないかいしんの作り方だったんだけどなぁ」
「そ、そうなんだ……」

すでに食品としてカウントしたくないお肉は残念ながらあきらめる。
甘くて、刺激的で、妙に油っぽいドレッシングとパンやチーズやお漬物や見たことない葉っぱが入ったサラダは
大丈夫そうなところを見つけて三人で少しずつ食べることにした。
それから、もう一度スープを作ろうと三人はばたばたと準備に移る。

191 薄闇の村のディナータイム(−3) 2/11 :2005/12/13(火) 19:19:26 ID:RvMpo3/z0
改めて火を点したかまどの上でお鍋の中の水が少しずつ熱されている。
日常を思い出させるどこかのどかな風景を、無慈悲に黒く塗りつぶすよう放送が流れた。

「……ワルぼう」
「嘘だよ。また、嘘だ。フライヤに、ベアトリクス? 嘘だ!」
「……ランド? バーバラさん……?」

落ち着いた声のわたぼう、叫ぶビビ、うわずって呟くターニア。三者三様に感情を声にする。
それからやってくるのは沈黙。明るい要素のない嫌な空気。
いつの間にか煮立っているお湯だけが独特の音を立てている。

ワルぼうは森にいた。自分が埋めてあげた。
だから、結果もわかっていたし覚悟だって。
けれど目の前の二人は違う。ひどく悲しいことをいきなり告げられてしまったのだ。
閃くようにアレフの姿が見えた。

「ダメだよ、いくら悲しいからって死んだりしちゃ!」
「「は?」」

わたぼうの、突然の極端な発言の真意を量りかねる二人。

「悲しいのは分かるけど、それで自分まで死んじゃったら悲しいだけだよ。だから…」
「だ、大丈夫よ、わたぼう。私もビビも死んだりしないから」
「そ、そうだよ。そんなこと、しないよ」
「本当だよ? もうあんな悲しいことはいやだから……一緒に行こう?」

なぜだか関係が入れ替わっている気がするけれど、重い空気は少しずつ和らいでいtった。
ただ、スープが出来上がるのにはまだもうちょっとかかりそうだったけれど。

192薄闇の村のディナータイム(−3) 3/11 :2005/12/13(火) 19:24:15 ID:lv2SzfNN0
「あいつがつけていた耳飾りに、指輪。それからナイフ。
 わがままだけどよ、強力な武器でもないし…こいつらは形見に俺が貰っていいか?」
「はい、それでいいと思いますよ」
「ありがとよ。ザックは開けちまってくれ」
「では。……これは、きっと魔法使い用の杖ですね。こっちは強力な力を感じる盾、と……草?」

デールが持っていたアイテムを検分しながら闇に包まれた村をソロとヘンリーは歩く。

「あとは…懐に抱えていたこいつか、なんだろう? こう持って、引き金に…こうか?
 あいつが使っていた武器になんか似てる、かな。多分武器だろ」
「なんでしょうね。…そうだ、バッツの持っていた剣にも似た引き金があった気がします」
「なら後で聞いてみるかなぁ。とにかく何にも分からないんじゃどうしようもない」
「ですね。………向こうはどうなっているでしょうか」
「何にしろすぐに解決するようなもんじゃねぇよ。時間が必要だ」

立ち止まった二人の視線の先、その方向にはすでに闇に沈みつつおぼろげに建物の輪郭が浮かんでいた。
遠目には何も変わりなく見える。
だが、リュック、バッツ、そしてレナはどうしている、どうなっているだろう。
放送では、大丈夫だったろうか。
しばし足を止めて夜風に吹かれる。

「バッツに任せるっつったんだ、行こう。ビビやターニアの方も心配だ」
「…そうですね。平穏に済むなら、割って入れるような間柄じゃないですし」
「しかし、ショックがでかすぎて二人とも放送を全部覚えてないってーのは…あー、カッコ悪いな」
「仕方ない、は言い訳ですね。とにかく僕らがしっかりしないといけないのに」
「……そうだな」

193薄闇の村のディナータイム(−3) 4/11:2005/12/13(火) 19:27:38 ID:RvMpo3/z0
それきり会話は途絶え、ただ足音だけを鳴らして宿屋へと向かう。
外からは黒一色のその建物の入り口にたどり着いたところで急にヘンリーが口を開いた。

「なあソロ。実はさ、デールから貰ったものがもう一つある」
「? なんです?」
「デールを看取った時だ、今までもあった力のほかにもう一つなんか力が俺の中に入ってきたんだよ。
 本当のところは、これもG.Fって奴だと思うんだ。似てるっつーか同じ感じだからな。
 でもよ、俺にはなんだかデールの奴の魂のかけらっていうのかな、なんかなあ。
 なんか、デールが俺の中から見守ってくれてるって気がする」
「受け継いだ魂……ですか」
「はは、ロマンチックが過ぎたか? あー、あんまり他人には言うなよ。恥ずかしいからな」


「27人かぁ……冗談きついよ」

魔法屋の入り口の段差にぺたりと座り込んでリュックはすっかり夜に移り変わって閉まった空を見上げる。
ユウナも、ティーダも、アリーナも、テリーも、告げられた中には名前はなかった。
そのことだけを抜き出せば確かに安心もしたし嬉しいことなのだが、
全体で見れば楽しくなることなんか何もないとても酷い現実が進行している。

(エリアとバッツは助けられたけど…)

思い返してみれば一体自分にどれほどのことが出来ている?

(前の世界の森で会った人たちはあたしたちにはもうどうにも出来なかったしー…
 アレフだって…目の前で。レナも……大丈夫かなー……)

闇に慣れてきた目で隣の防具屋を見る。今のところ異変はなさそうだ。
まだレナは起きていないのかもしれない。

(ん? そいや、ファリスって……あー、誰だったっけー? 絶対聞き覚えあるのにぃ)
194薄闇の村のディナータイム(−3) 5/11:2005/12/13(火) 19:29:05 ID:RvMpo3/z0

ただ、彼女を見つめその目覚めを待ち続けていた。
唐突に部屋が、世界が揺れた。
それから、逃れることの出来ない三度目の悲しい報せが告げられる。

ローグが呼ばれることは分かっていた。
けれど、バッツを打ちのめしたのはその後の名前。

『ファリス』

一瞬頭の中が白くなる。
その白い中に記憶の中の彼女の姿が浮かび、そして消える。
勇敢で、優しい、レナの姉――…レナ?

慌てて眠っているはずのレナを見る。
同時に、彼女の唇が今しがた呼ばれた姉の名を呟くのを聞いた。
そしてバッツは、そこに起こった望まざる事態を理解した。

195薄闇の村のディナータイム(−3) 6/11:2005/12/13(火) 19:30:30 ID:fS/X+Mjb0
全てがだるい。重い。暗い。
世界を揺るがせた力が彼女を半分だけまどろみから引き上げた。
今醒めた悪夢の内容は悪夢だということ以外はすぐに思い出せない。
遠くから何かが聞こえる気がする。

―――「D…uba」…「Bi…ka」…「Gil…ar…」…
ギル…ギルバート?
ああ、そうだ。なんだか知っている人を夢で見てたかな。

―――「…ja」…「Ikus…」…「Ri…a」…「Aguri…」…
…リア……エリア?
何だか、寂しくて冷たい夢だった…私は何をやっていたかな。

―――「Rou…」…「sid…」…「Fa…isu」…
ファ…ス……ファリス?
姉さんもいたなぁ…それにしてもこの声はなんだったかな。

―――『以上、二十七名だ。――現在、この地で生き残りし者は六十名……素晴らしい』
そうだ、魔女……魔女の声!?


覚醒した目に映ったのも暗闇だった。

「ファリス?」

驚きと戸惑いをのせて呟く。
それからそばにある気配に気付き、その主と目があった。

196薄闇の村のディナータイム(−3) 7/11:2005/12/13(火) 19:35:35 ID:fS/X+Mjb0
宿屋の入り口に座り込んでありあわせで作ったスープを添えたディナーを終え、キッチンへとやってきたソロ。
声を掛ける前に気配に感づいて振り返ったターニアと目があう。
テーブルではまだわたぼうとビビが食事中、ターニアは既にカップの片づけを始めていた。

「ごちそうさま。僕はリュックさんと交代してきます」
「あ、はい、気をつけてください。ところでバッツさん達の分はどうしましょう。持っていきます?」
「そうですね、後で…宿屋に来た時で大丈夫でしょう。というか、こっちからは入りにくいですよ。
 そうだ、エリアさんはどうしています?」
「さっきビビが見に行ったときはまだ眠ってたって。
 二人が食べ終わったらまた見に行ってもらおうと思います」
「ええ、ここはお願いしますね。ああ、周りはヘンリーが見張ってくれています。では」


耳元で注意を喚起する音が鳴り響き、ヘンリーは素早く後ろを振り向く。
ほんの少し遅れて手を上げながら宿屋からソロが出てくるのが目に入った。

「うん、いける。こいつがあれば侵入者も一発だ!」
「?どうしたんです?」
「いや、こいつな、人が近づくとどうも教えてくれるみたいなんだ。ってか今体験したんだが。
 こいつなら警戒にもってこいだぜ」
「へぇ、凄いですね。人が近づけばすぐに分かるアイテムなんて」
「ああ、まさに死角なしって感じだ! デールに……感謝だな。
 だから心配せずリュックのとこへ行っていいぜ。ここは任せろい!」
「はい、お願いします」

197薄闇の村のディナータイム(−3) 8/11:2005/12/13(火) 19:39:01 ID:lv2SzfNN0
守りをヘンリーに預け、暗く微動だにしないように見える防具屋を右手に見ながら魔法屋へ。
ぽつんと座っているリュックへと声を掛ける。

「今のところ変わった感じはないみたいですね」
「あ、ソロ〜。暇だったよぉ。うん、防具屋の方も、村のそとっかわも異常なーし!
 ところで、何しに来たの?」
「ターニアさんたちがスープを作ったので宿屋で夕食でもどうぞ。ここは僕が代わりますから」
「へー、スープなんて作ったんだ、やるなぁ。でも大丈夫? ソロは疲れてんじゃない?」
「いえ、食事と一緒に少しは休みましたから。さあ、どうぞ」
「んじゃあ、お願いするね」


交代で今し方ソロが通ったルートをリュックが逆に行く。
真っ暗な広場を通り抜けて宿屋の前へ。突然に横から声がする。

「よう、リュック」
「ふえっ、……ヘンリー? 脅かさないでよ」
「わるいわるい。ちぃっとコイツの実験をやっててよ。そうだ」

右手で耳飾りを弾いて見せ、それから懐から取り出した何かをリュックに手渡す。

「ん、何? あ、これ銃?」
「わかるのか?」
「まーねー。って銃、知らないの? こーやって、ばーんっ!って攻撃する武器だよ」
「ああ、そういやデールの武器もそんなだったっけかな。ちょっと返せ……こうか?
 これで向こうに攻撃が飛んでいくって算段か? んで、確か結構でかい音がするんだよな」
「そーそー。でも人に向けないでよ、ホント危ないんだから」
「お、すまん。しかし、使えそうだな、こいつ。ありがとよ、大体分かった」

それから少しだけ話をして、リュックは建物の中へ消えてゆく。
198薄闇の村のディナータイム(−3) 9/11:2005/12/13(火) 19:41:08 ID:RvMpo3/z0

「ん、ごちそーさまー。おいしかったよー。カップはそこに置いとけばいいかな?」
「はい、あとは私がやりますから。あの、見張り…お気をつけて」
「うん、まっかせといて! あ、杖と草はテーブルに置いとくから、杖はビビ君に渡しといて。
 魔法使い用のいい杖だって。盾は貰ってくね、なんかしっくりくるの」
「はい」

そう言ってテーブルの上の小さなともし火が照らすダイニングからリュックが出て行く。
もう放送から2時間が過ぎようとしていた。
先ほどビビが言うにはどうやらエリアさんも目を覚ましたらしい。
さっきかすかに笛の音が聞こえたような気がしたけれどエリアさんだろうか。
まだ数人分のスープが残っているふたの乗ったお鍋を脇にのけ、火の安全をチェック。
そうしてターニアはようやく後片付けを終えると、自分もエリアさんのところに向かった。


「ん、いない。どこ行ったのかな? 裏の方?」

入り口近辺にいないヘンリーを探して大雑把に周囲を見回すが、やっぱり見当たらない。

(んー…もしかして銃のこと、説明しない方が良かったのかなぁ…)

ヘンリーが手にしていた銃について説明してあげたらどうやらすごーく気に入ったみたいだったっけ。
『今の自分に死角はない!』みたいなことを言ってたような。
そりゃ銃は強力便利だけど使うのは素人だし、暗いしでちょーっと期待過剰だと思うんだよね。
凄いピアスだとかも弟さんに貰ったって言ってたけど、ホントにあんなので大丈夫なのかなぁ?

不安が少しだけ頭をもたげる。
しかしまあ実際にピアスは凄いし、とそれは打ち消して、リュックはその場をあとに広場へ駆け出して行った。
199薄闇の村のディナータイム(−3) 10/11:2005/12/13(火) 19:45:16 ID:isauToJC0


「おまたせー。ソロ、無事にやってる?」

闇にいるはずの相手に向かい声を掛ければ期待にこたえて声が返ってくる。

「はい、大丈夫ですよ。何もありませんでしたし」
「それじゃ代わろっか。にしても静かだねぇ〜。レナはまだ眠ってるのかな」
「そろそろ起きているくらいに時間が経ったとは思いますが……否定できませんね。
 それに実際に外から見てるだけでは何もないような感じです。
 ……本当に、どうなっているのか……変わった様子がないのは幸いなんですがね」
「ホントにね。……心配だなぁ」

不気味なほどの静寂に包まれた防具屋を二人して見る。
内側がどうなっているのか。建物は何も語ることなく立っている。

【ソロ(魔力微量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
 第一行動方針:村の見張り
 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【リュック(パラディン) 
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
       ドレスフィア(パラディン)、チキンナイフ、薬草や毒消し草一式、ロトの盾
 第一行動方針:ウルの村の魔法屋で待機
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在位置:ウルの村 魔法屋・前】
200薄闇の村のディナータイム(−3) 11/11:2005/12/13(火) 19:46:19 ID:RvMpo3/z0
【ヘンリー(手に軽症)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP3/4) G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 キラーボウ グレートソード アラームピアス(対人) デスペナルティ リフレクトリング ナイフ
 第一行動方針:宿屋周囲の警戒
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームの乗る奴は倒す)】
【現在位置:宿屋の周り?】

【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート、銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
     静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:レナと会話 
 基本行動方針:消失】
【レナ 所持品:なし
 第一行動方針:不明】
【現在地:ウルの村 防具屋内部】

【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ、賢者の杖
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:仲間を探す】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【ターニア 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草 
 第一行動方針:休息 基本行動方針:イザを探す】
【エリア(体力消耗 怪我回復) 所持品:妖精の笛、占い後の花
 第一行動方針:休息】
【現在位置:ウルの村 宿屋内部】
201殺し屋、来る:2005/12/14(水) 16:08:22 ID:ykIqqjbC0
「・・・・ここは、どこだ」
桃白白は辺りを見渡した。
あの奇妙な羽衣に覆われて・・・・あとは記憶がない。
「まぁいい。とにかく皆殺しだ」
桃白白は開き直り、歩き始めた。

【桃白白 所持品:
 第一行動方針:ジャンプキャラバトルロワイヤルからやって来ました。

202名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/14(水) 16:13:05 ID:yKSSQDaO0
>>201は無効です。
203名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/16(金) 18:10:19 ID:/ottp0sA0
保守
204名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/16(金) 22:31:17 ID:S/2PSiJJ0
>>203は無効です。
205名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/18(日) 18:10:47 ID:A3k9diqb0
保守します
206名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/19(月) 15:55:47 ID:GyMy5wcC0
>>205は無効です
207名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/19(月) 18:00:37 ID:wI1PfPks0
>>208は無効です
208名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/19(月) 22:57:40 ID:RWrJYmnnO
ちんぽっぽ
209名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/20(火) 01:26:10 ID:PHRAw6ux0
     |ヽ ̄ン、     
   _/`´__ヽ      
     |从´∀`) ̄ 
     ソノ斤川ヽ 
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎
210名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/20(火) 18:44:56 ID:iewtEXb/0
>>209のギルダーは無効です。
211名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/20(火) 22:49:01 ID:kdCNak8c0
       
       /⌒ヽ ブーン
⊂二二二( ^ω^ )二二二⊃
      ヽ   /
      (⌒) | 
        ⌒∨
212名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/22(木) 11:24:05 ID:TO1SFmie0
>>211の⊂二二二( ^ω^ )二二二⊃ 部分のみ無効です
213>>211修正版:2005/12/22(木) 19:26:55 ID:pWOIVtyI0
       
       /⌒ヽ ブーン
      ヽ   /
      (⌒) | 
        ⌒∨
214名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/23(金) 10:28:13 ID:m8Str3b70
>>214は無効です
215名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/24(土) 00:42:20 ID:m3hdjrec0
>>215も無効です
216二人の懲罰者 1/10:2005/12/24(土) 06:36:17 ID:srbayuVo0

「…で二十…七、か。明るいってのに随分派手に間引かれたな」

 読み上げられたすべての名前を線で消し、名簿をザックへ放り込む。
 聞いたことのある名前はいくつかあったが内容は自分には関係ない。ラムザの奴もまだ生きているようだ。

 仲間でも死んだのか姫様がソロだシンシアだとやかましい。
 年長二人はそいつをなだめるのが大変そうだ。
 ライアンと婆さんはまあ分かってるって感じだがお姫様は今までもこんな調子だったのか?
 それで自分がやったことが間接的な人殺しだけってんだから救い難いバカだ。もっとも同レベルの偽善者さんもたくさんいそうだが。
 大体婆さんにしたって探してると言っていたドーガとやらは死んじまったし、本当に脱出できるのかねぇ。
 バカと甘ちゃんの役立たずばかり残ったって何もできやしないぞ。

 しかし、27人も減ればずいぶん勢力図も変化していそうなものだ。
 少しは脱出計画は進んでいるのか、それともそうでないのか。流れはどうなっているのだろうか。
 自分の実力、位置付けはよーくわかっているから仮に動くとして「実動」の機会なんざ1、2回だろう。
 この半日は隔絶されていたし、まだ様子見で大丈夫のはず。なんせまだ60人が動いているのだから。
 とにかく大事なのは生き残ることだ。

 まあグダグダだがとりあえずオレの不愉快な仲間たちも街へ向かう気を取り直したようだ。
 腕の時計に目を凝らせば短針が7を過ぎていた。

217二人の懲罰者 2/10:2005/12/24(土) 06:40:22 ID:srbayuVo0
 四人は当然ながら出迎えも、それどころか明かり一つもない街の門をくぐる。
 夜を迎えやや強くなった風に晒される街の空気は冷たく乾いていた。

「暗い街…ほんと誰もいないのね。……いやな気分」
「ふむ、確かに寂しいの。とはいえ、少し探してはみないかい?」

 横で会話する二人をよそに、アルガスは彼なりに損得勘定を計算する。
 こいつらはお人よしのお節介焼きで、ただでなんでも洗いざらい教えちまうに決まってる。それでは取引もくそもない。
 だからそうだ、交渉するならオレだけでやりたい。

「おい、ライアン! オレ達は向こうの方を探ってみるぞ」
「…へえ」

 いかにも意外なことがあったという風にアリーナが反応する。

「チッ……なんだよ」
「ううん、アルガスってもっとやる気ないかと思ってたんだけど〜」
「黙れ。俺はただゾロゾロ動くより効率よく動いた方がいいって考えただけだ。
 おい、ライアン、行くぞ! お前らは向こうでも探してろッ!」

 二人の方を見た戦士にジェスチャーで行くように示すとライアンは大きくうなずいてアルガスを追った。

「おおライアン、待ち合わせは街の中央、広場にしとこう。頼んだよ、気ィつけてな!」

 背中へ向けて忘れていた合流の手筈を叫ぶと無言で手が上がる。
 やれやれ、と向き直るウネ。

「じゃ、あたしらはあっちに行くかねぇ」
「はいウネさん。………それにしても人の気配の無い町とかお城って…あっ、なんでもないの」
218二人の懲罰者 3/10:2005/12/24(土) 06:44:37 ID:srbayuVo0


「動くでない」

 カナーン、その北の丘に広がる林。
 既に夕焼けの朱も消え去った暗闇の中に小さな火が浮かんでいる。
 光源は片腕を失った男の右手。
 その光の中で目を包帯で覆った賢者がかいがいしく男の左足を手当てしている。
 苦労して見つけた真っ直ぐな当て木を衣服を破りとって作った緊急の紐で固定する。
 光無き故にクリムトにはかえってテリーが痛みに顔を歪めていることが良く分かるが、決してその男の口から苦痛の声やうめきがあがることは無い。

 警戒と、いくらかの不安、そして信頼が入り混じった視線を感じる。
 自らの肩と渡した右手の杖を支えに立ちあがった男を認識しながらクリムトは少し前のことを思い出していた。

219二人の懲罰者 4/10:2005/12/24(土) 06:47:17 ID:srbayuVo0

 地のうなりと共に天に現れた魔の感覚。それを察したのか、背後のテリーも目覚めたようだ。
 粛々と続く死者の羅列の中にも動ぜずにいたその気配は「ファリス」という名が呼ばれた時にわずかに揺らいだ。

「…知人か」

 投げ込まれた石が起こす波紋のようにざわつき乱れていく心の様子が感じ取れる。
 だが、乱れた波がやがて広がり消えていくようにその動揺はおさまっていった。

「確かに知っている。でもそれは偽名、ただの名前だ。本当はいない人間なんだ」
「偽名?」
「そう。姉さんは何か理由が――多分身を守るために、変装してまで偽名を使っていた。それがファリス。
 ……だから、大丈夫だ」

 再度作り上げられた都合のいいシナリオ。
 いや、心のバランスを保つためにはそれはテリーにとって必要なものなのかもしれないが。

「ああそうだ、姉さんを、ミレーユ姉さんを探さなければ。
 それに、もう一人の生き別れの妹、レナも。でも、姉さんは何処に? 一緒にいたはずなのに」
「ぬぅ……」

 テリーの身内にレナという者がいるという話は聞いたことはない。
 編集された記憶。テリーの状態を察することができたクリムトには適切な態度が思いつかない。

「……そうか、あいつらが…! スライムナイト! 悪魔の女! …奴らが邪魔をしているんだな。
 見てろ。必ず奴らを殺して姉さんを取り戻してみせるッ!!
220二人の懲罰者 5/10:2005/12/24(土) 06:50:48 ID:srbayuVo0
 取捨選択した記憶をパッチワークのようにつないで作り上げたストーリー。
 そんな極めて歪な形ではあるにしろ目的、悪意をぶつける敵、そして虚構の安心を備えた今のテリーの気配はかりそめの安定を見せている。
 だから黒い波動に取り込まれてもいないし、今のように考えながらクリムトに話をすることも出来ているのだ。
 それが理解できてしまうクリムトには結局、真実は告げられぬままだった。



 やがて出来る限りの治療を終え、ゆっくりとクリムトは杖をつきつつ、テリーはその肩に体を支えられつつ、二人はゆっくりと丘を下っていく。
 町外れ、林と街並みの境界線をまたぎ、寂しげな街の人気のない通りを歩く。

 その頃からテリーの鼓動が少しずつ早くなっているのはわかっていた。
 しかし賢者とて万能全知ではない、その理由までは分からない。
 ここがテリーが封印した記憶の舞台そのものであるなどとは。
 それよりもいやでも気になるのは街に蔓延する哀しみの空気のほうであり、また恐らくこの世界のいたるところで多くのものが悲しみに沈んでいるのだろう。

 クリムトはテリーの変化にもっと気を配るべきであったろうか。
 否、姿を現した積み重ねらてきた結果に導かれるものにどう抗うことが出来ただろうか。
 異変そしてトラブルは街の中央を東西に貫く通りまで二人がたどり着いたときに姿を現した。


 不意に肩にかかっていた重さが離れる。
221二人の懲罰者 6/10:2005/12/24(土) 06:57:16 ID:srbayuVo0
「どうした、テ」
「あああ……? 何故だ? どうして……?」

 出会ったときのように何事かを小声で呟き続ける。
 盲目のクリムトには見えないがその顔は蒼白で目は大きく見開かれている。

「違う! こんな街は知らない! どうして!? うわああああっ!!」
「落ち着くのだ、テリー!」
「触るな!」

 心配するクリムトを嫌い、支えにしていた杖を振り回した。
 結果、振り払われ突き飛ばされたクリムトと反動を支えきれないテリー、共にバランスを崩し冷たい路面に転がることになった。
 そのまま断続的に苦しげなうめきを繰り返すテリーを見、その原因を探るべく感覚を研ぎ澄ませるクリムトが捉えたのは絶叫に惹かれたのか奥の暗闇から向かってくる気配。
 高速で飛び込んでくるそれが発したものは確かに聞き覚えのある声であった。

「そこの人達、大丈夫? 何があったの?」
「アリーナ…どうやら元のアリーナのようだな」
「ああっ、クリムト!? ねえ、この人どうしたの? だいじょ…ッッ!!?」

 突然の絶叫を耳にしてウネを放って駆けつけたアリーナと助け起こされるクリムトの目前で、
 今までとは全く相を異にした気配が立ち上がる。
 片腕片脚を失いながらも鬼気迫るテリーの姿がそこにあった。

 見守る二人が息を呑む前で、やがて不自然に身を傾けたテリーは片脚にあらん限りの力を込め、跳躍する。その目指す先にはアリーナとクリムト。
 判断を取り戻したアリーナはクリムトを守るべく一歩前へ進み出ると、振りおろされる杖を両腕でブロック、重さが身体を走り抜ける。
 バランスをとれるはずもないテリーは痛そうな音を立てて石畳へと落下した。
222二人の懲罰者 7/10:2005/12/24(土) 07:00:34 ID:srbayuVo0

「ぃったぁ……。ちょ…ちょっと! あなた何よ!」
「黙れ、悪魔」

 地面から見上げる視線のまま、冷たく、そして黒い感情――憎悪をのせてテリーが短く言い放つ。
 再び立ち上がるべくあがきながら、テリーは敵意に満ちた視線を保ち続ける。

「ねえ、クリムト…? あいつ一体なんなのよ?」
「テリーは……事情はわからぬが随分精神が不安定になっている。
 しばらくは安定していたのだが……? む、これは…黒い波動? やめよ、テリー!」

 とっさにテリーに近づこうとしたクリムトとアリーナを放たれた魔力の波が包む。

「いきなり呪文!?」
「ルカナンか! テリーよ、その力は邪悪…抑えよ!……ぐうっ」

 なおも近づき、身体に触れようとしたクリムトを杖の一薙ぎが襲う。
 無防備の頭部を強打された賢者は、うずくまるように路面へ崩れ落ちた。

「クリムトっ! ちょっと、テリーだったっけ、あなた、何考えているの?
 クリムトはあなたを心配してくれてたのよ? それをいきなり…って、またルカナン!?
 人の話を聞きなさいッ!」
「戯言は止めろ!」

 問い掛けるアリーナを無視してルカナンを重ねるテリーに思わずぶつけた強い語調は同じような叫びに打ち消された。
223二人の懲罰者 8/10:2005/12/24(土) 07:15:07 ID:srbayuVo0
「いいか? もう貴様と話すようなことは何一つ無い……悪魔がッッ!」

 再度、身体ごとぶつかるように跳躍したテリーがアリーナへ向かう。
 先ほどと同様に杖を受けた腕に響く衝撃は二度のルカナンのためかより重く感じられた。
 バランスの悪い身体で受身を取れないテリーは今回は落下していることさえ無視して、腕力だけで脚の高さに水平に杖を打ち込んできた。
 アリーナの足と石畳の上で大小二つの鈍い音がし、二つのうめきが漏れる。

「なんだってのよ、こいつはっ!」

 睨み付けた眼下でテリーは現状できる最大の動き――すなわち地面を転がって離れ、三度ルカナン。

「こいつ、もう……いい加減に……しなさいッッ!」

 杖を支えに上半身を起こし、またも残された力を頼りに立ち上がろうとするテリーへ疾風のように影が襲い掛かる。
 まともな対応も出来ずわずかに身をよじる程度の相手を、アリーナは弱冠の手加減をこめて蹴り飛ばした。
 片腕の男が石畳を転がり、やがて止まる。
 痛みが全身を苛んでいるはずだ。しかし、休むことをせずに男はゆっくり動き出した。

「悪魔が……姉さんを……返せ。いや、力ずくで……取り返してやるぞ!」

 再びアリーナを射抜く憎悪を集めた視線。そして途切れ途切れにぶつけられた言葉。
 うすうすは予感はしていたことがアリーナの中で明確に形を取る。
 そう、自分に向かってくる敵意が一体どこからきたのか。
 そう、この目の前の相手は「誰」を悪魔だと呼んでいるのか。

 そう、それはもう一人のあたし。
224二人の懲罰者 9/10:2005/12/24(土) 07:18:53 ID:srbayuVo0


 皆が休んでいる魔法屋を出てからサイファーは積んである箱などをぶち壊しつつカナーンを縦断する水路のほとりまでやってきた。
 流れのある水面のゆらめいた輝きさえも壊したくて石を投げ落とす。

 黄昏る彼を現実へと引き戻したのは、北の丘に現れた小さな灯。
 やがてそれはふっと消える。
(敵か?)
 相談すべきだろうか? 魔法屋の方を振り向き、しばし思案する。
 しかし、サイファーはその光の場所へ一人で向かうことを決めた。
 この言葉に出来ない苛立ちをぶつける相手が欲しかった。ぶつけられる敵が欲しかった。

 それから、それほど茂ってはいないとはいえ暗い林に苦労しながら、丘の上までたどり着く。
 誰の気配もないが、ここまでの間も誰にも遭遇しなかった。
 恐らく反対側を下っていったのだろう、そう考えてサイファーはそれを追う。

 そして、今。昼間イザたちを探し回った路地にサイファーはいる。
 かすかな絶叫を耳にして大体の方向と位置が予測できる。どうやら街の真ん中辺りだ。

225二人の懲罰者 10/10:2005/12/24(土) 07:20:28 ID:srbayuVo0

「…いい加減に……しなさいッッ!」

 怒気をはらんだ女の声。質量が転がる音。

「悪魔が……姉さんを……返せ。いや、力ずくで……取り返してやるぞ!」

 執念の篭った声。

 サイファーが路地から飛び出すと対峙する二人の男女の姿がある。
 一人は左足に怪我、左腕は喪失、見るも無惨な状態でそれでも気迫をまとい杖を支えに立っている。
 もう一人はとんがった帽子、栗色の髪、素手で戦う女…どこか情報に覚えがある容姿。
 思い出せる断片の情報と今目にすることができる状態。
 そして一暴れしたい願望が重なり合い、ある1つの結論が出来上がった。
 それからアリーナへ向けて破邪の剣を手に構えなおす。

「…なるほどな。そういやそんな人殺しがいるって聞いたっけなぁ。 
 おい女。そんなに殺し合いが好きなのか……?
 ちょうどイライラしてるとこだ、なら…俺が付き合ってやるぜッッ!!」



 三人目の声が耳に届く。それらから予測される事態は平和とは程遠い。
 ようやく現場までたどり着いた老魔術師が見たものはすでに見慣れた同行者へと迫る白刃。
226二人の懲罰者 (パラメータ1/2):2005/12/24(土) 07:21:18 ID:srbayuVo0

【アリーナ 所持品:プロテクトリング、インパスの指輪
 第一行動方針:状況の沈静化
 基本二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【テリー(DQ6)(HP1/3程度、左腕喪失、左足骨折)
 所持品:力の杖
 第一行動方針:アリーナを殺す
 第二行動方針:レナを探し、姉を見つけ出す
 基本行動方針:自分の行動を邪魔する者、レナの敵になりうる者を皆殺しにする】
【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:マーダーの撃破
 基本行動方針:ロザリーの手助け
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:状況確認
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する

【クリムト(失明、HP2/3、MP消費、朦朧) 所持品:なし
 第一行動方針:気絶中
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーンの町・中央部】
227二人の懲罰者 (パラメータ2/2):2005/12/24(土) 07:21:49 ID:srbayuVo0

【アルガス
 所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、
 マシンガン用予備弾倉×5、猫耳&しっぽアクセ、タークスのスーツ(女性用)
 デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3、変化の杖
 第一行動方針:相手を見つけて取引
 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る
【ライアン 所持品:レイピア 命のリング
 第一行動方針:アリーナ達についていく
 第二行動方針:アルガスに借りを返す】
【現在位置:カナーンの町・東南部】
228二人の懲罰者(1/10) 修正:2005/12/26(月) 14:04:15 ID:WvHMW+1C0
以下の部分を修正します。

読み上げられたすべての名前を線で消し、名簿をザックへ放り込む。

読み上げられたすべての名前の変化を確認し、名簿をザックへ放り込む。

どうもすみませんでした。
229名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/28(水) 00:45:01 ID:cckELXLC0
保守
230名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/30(金) 00:38:19 ID:M7XucDmy0
保守
231傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 1/12:2006/01/01(日) 10:58:26 ID:5YOKwgXA0
赤いスープがことこと温まるにつれて、食欲を誘う匂いが漂い始める。
角が生えた兎と、何だかよくわからない野菜の絵が描いてあるシールを貼ったガラス瓶。
その中に入れられた、トマトシチューのような煮込み料理。
指をつけて舐めてみると、甘酸っぱくてスパイシーな独特の味が舌の上に広がった。

「もういいんじゃないかな。先に食べちゃおうよ」

火傷しないように瓶詰のふちを掴み、パンと一緒にニワトリ頭――ゼルの前に置く。
ゼルはぼんやりと赤いガラス瓶を見つめ、疲れたように息を吐いた。

「俺は後でいい……腹減ってねーし」
「あー? 昼間に『こんなんじゃ足りねー、ガクショクのパン腹いっぱい食いてー』とか言ってたの誰だよ」
「……この状況で食欲なんか湧くかよ」
「だからって何も食べなきゃ、おなかが空いて余計に気が滅入っちゃうよ?
 せっかく『食べてていいよ』って、瓶詰置いていってくれたんだから」

口を尖らせながら言うと、ゼルは億劫そうに顔を上げた。
パンを手に取り、噛み千切る。
無表情で飲み込むその様は、美味しくないというより、味のしないものを食べているみたいだ。

――放送で聞こえたロランとフルートの名前。
――覚悟していたって、袂を分かったって、やっぱりゼルには堪えたんだろう。
楽しかった頃の記憶は、そう簡単には消えてくれないから。

私は……――色々な人が一杯死んでいったせいかな。
それとも、ロラン達といる間だけは無理してでも笑っていようって思ってたからかな。
強がったり、泣いたり、心配してる人を見たせいかな。
なんだか悲しい気持ちにならなくなってきた。
その代わり、何人死んだとか楽しそうに言ってるケバケバおばさんをぶっ飛ばしたいって気持ちが沸いてくる。
それが怒りなのか憎しみなのかは――自分にもわからないけどね。
232傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 2/12:2006/01/01(日) 11:05:49 ID:5YOKwgXA0
でも、これだけははっきり言える。
私はおじいちゃんがいるサマサへ帰りたい。
笑って「ただいま」って言いたい。

確かに辛い事も悲しいことも一杯あった。
だけど自分が笑えなくなるような事だけは絶対しない。
『生き残る、でも人は殺めない、生きてサマサに帰る』って誓ったから。

「――そういやあいつ、どこへいったんだ?」

人の思考を打ち切るかのように、ゼルがいきなり聞いてきた。
一瞬ユウナ達のことかと思ったけど、そうじゃない。
多分、アーヴァインのことだろう。
放送の少し前に、またまた『焚き木を集めてくる』と言って、ふらりとどこかへ行ってしまった。
そのことを話すと、ゼルは首を傾げる。

「焚き木なんてこれだけ有りゃあ十分だろ。
 だいたい一人で大丈夫なのか? あんなフラフラのヘナチョコな状態でよ」
「大丈夫でしょ、自称17歳男子なんだし。だいたいテメーが人のこと言えた義理かよ」
「なんだそりゃ……」

呆れたようなゼルに、こっちもため息をつく。
今ごろになって聞いてきたり、こんな苦しい言い訳を真に受ける辺り、重症だ。
誰がどう見たって、ユウナ達が戻ってくるまで焚き火を続けるぐらいの量はあるし……
同じパーティにいたんなら、性格だの何だのなんて、一番良く知っているはずじゃない。

「どーせすぐに戻ってくるよ。寒がりなんだしさ」

そう言って、私は瓶詰の中身をパンにつけてみた。
ヘンリーとかいう人に貰ったってそれは、美味しいんだけど、ちょっぴり辛過ぎる気がして。
昼間もらったような、ふわふわで甘いパンケーキを、おじいちゃんと一緒に食べたいと思った。
233傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 3/12:2006/01/01(日) 11:08:32 ID:5YOKwgXA0
あー寒いなぁ。腰も痛いし疲れるし面倒だし。
いっそのこと、そこらへんの木の枝ぜ〜んぶ、バキバキ折って持って帰っちゃいたいよ。
これだけ風吹いてれば、多少の物音は誤魔化せそうだもんなぁ。
ま、樹液の臭いって意外と強烈だし、ハデにやって嫌な連中に見つけられたら困るからやらないけど。
奥まった場所を探して待機場所にしたり、こうしてランプも着けずに歩いてる意味が無くなっちゃう。
それに生木は水分が残ってる分、ちょっぴり燃えにくいしねぇ。

はー。枯れ枝枯れ葉に枯木はございませんか〜っと。
ティーダ達戻ってきたって、お城が危険だったら、あそこにキャンプ張るしかないもん。
寒さは体力を削る。疲労やストレスは判断力を鈍らせる。
みんなが休めるように、夜中に集めに行けとか言われなくて済むように、い〜っぱい集めておかないと。

けど……もう二十分は過ぎた気がするし、放送も流れたし、そろそろ戻った方がいいのかなぁ?
ゼルがまたヒートアップしてるかもしれないし、そうでなくてもリルムに気を使わせてるだろうしなー。
いい加減、迷惑をかける立場から脱却しないと。
ちみっちゃい子に励まされて、年下の女の子に慰められて、11歳児に見透かされて心配されて……じゃねぇ。

僕がすべきことは、死んだ人に詫び続けることでも、許しを乞うことでも、ましてや泣く事でもない。
今生きている人達の生存確率を少しでも上げること。
どうにか殺人者連中を退けて、休息を取って、首輪を解除できる人やアイテムを探して、脱出方法を探す。
それがきっとソロ達も望んだことで、僕が今生きている意味……なんだよね。多分。

――っと。なんだ、アレ?
木陰の向こうで、光がチカチカ揺れてる。

……あれは――トンベリにアダマンタイマイ? それに子供?
何でトンベリだの何だのがこんなところに……てゆーか子供って危なくない?
万が一戦闘に巻き込まれたり、襲われたり、

『――イオラ!――』

そうそう爆発に巻き込まれたりしたら…………って爆発ぅううう!!??
234傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 4/12:2006/01/01(日) 11:11:45 ID:5YOKwgXA0
瞬間的に弾けた光が三つの影を照らし出す。
それがピエールの術だと気付いた時には、アリーナが走り出すのが見えた。
私はカンテラを消し、息を潜めて様子を探る。

閃光と煙で視界を遮り、音で聴覚を奪い、混乱を起こす――奇襲としては悪くない手だ。
あえて言うならば、剣の力で雷を呼び寄せた方がより大きなダメージを与えられていたと思うが……
ここは比較的背の高い大木が密集した森林。
どれほどの範囲にどれほど指向性を持つ雷を落とせるのか試していない以上、使い慣れた魔法を選ぶのも当然だろう。

しかし、気になるのはピエールの行動。
アリーナとの共同戦線に加わらず、不思議な術――とびつきの杖とやら――を使い、奥の方へ駆けて行った。
アリーナが何も言っていない辺りからして予定調和的な行動のようだが。
確かピエールはレーダーを持っていた。もう一人か二人、あちらの方に潜んでいるということだろうか。

「うわぁっ!?」

私の予想を裏付けるように、闇の向こうから男の悲鳴が上がる。
だが……次の瞬間、予想外の自体が起きた。

地から天へと伸びた白い閃光。
それがピエールを包み、吹き飛ばしたのだ。

白亜の輝きに照らされ、一瞬だけ相手の姿が見える。
白いフードを目深に被り、同じ色のローブを着込んで杖を携えた、典型的な白魔道士。
だとすれば今の光は――白魔法唯一の攻撃魔法にして最大の奥義、ホーリーか。

どうする。
元々ラムザ達以外の相手に対しては、そこまで積極的に戦う気はない。
それに私がピエールやアリーナと手を組んだことは、極力知られたくない事実だ。
迂闊に襲撃に加わり、万が一にも私の顔を見た相手を逃せば、生存者の間に厄介な噂として広まりかねない。
二人で間に合う相手ならば、このまま傍観を決め込んでいただろう。
しかし……そうも温い事は言っていられないらしいな。
235傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 5/12:2006/01/01(日) 11:13:15 ID:5YOKwgXA0
ぼくのトモダチはマホウが得意です。
ぼくにもマホウの使い方を教えてくれました。
ぼくはほうちょうでプスっと刺す方が好きだけど、トモダチは言いました。
「目には目で、刃には刃で、マホウにはマホウなんだよ」

ぼくがいたところは寒いところでした。
ぼくのトモダチも、トモダチのトモダチも、熱いのがキライです。
ぼくも熱いのはキライです。
それなのにいきなり熱くなって、体がぽーんと飛んで、痛くなりました。
びっくりして辺りをみると、ぎどさんがてりを抱えて、ぼくみたいにびっくりしてました。
そうしたら突然へんなお姉さんが出てきて、ぎどさんを殴りました。
それから、あのぷよぷよにのった悪いヤツが空を飛んでいきました。

ぼくはあのぷよぷよの仕業なんだって思いました。
ぼくはとっても怒ったけど、さっきのもやもやはもう使っちゃダメだって、てりもぎどさんも言ってました。
だからトモダチから教わったマホウを使いました。
お城を吹っ飛ばした光よりずいぶんちっちゃいのは、ぼくがマホウを使い慣れていないせいでしょうか?
でも、白い光がぎゅいーんって伸びて、きゅいきゅいきゅいーんって音がしました。
ちっちゃくても、成功したならいいと思います。

そうしたら、お姉さんがいきなりぼくを殴りました。
二回も三回も四回も殴られて、木にばちんってぶつけられて、泣きたいぐらい痛かったです。
ぼく、何か悪い事しましたか?
悪いヤツは倒せばいいんだって、れくすも言ってたのに。
痛くて泣きたくなったら、てりが駆け寄ってきて、ぎどさんがぼくとてりの前に立ちました。
それを見たお姉さんは、悪いヤツの顔をして言いました。

「何よあんた達。魔物のくせにいい子ぶるつもりなの?」
「魔物だの何だのという括りの前に――
 お主らのような、正義も人の心も知らぬ獣でないことだけは確かじゃな」
「亀に獣呼ばわりされる筋合いはないわよ。
 正義だの何だの語りたいなら、地獄でゆっくり語らせてあげるわ!」
236傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 6/12:2006/01/01(日) 11:18:14 ID:5YOKwgXA0
おいおいおいおい。魔法カウンターでホーリーなんてアリ?
トンベリったら普通、「みんなのうらみ」と「ほうちょう」じゃないの〜?
おかげで助かったからいいけどさ。

しっかしこのヒトも随分派手に吹っ飛んだなぁ。
ザックとか全部バラバラに散っちゃったじゃ〜ん。
まぁいいや。今のうちにアイテム貰って身包み剥いじゃおっと。
子供の方は気になるけど、あんなトンベリいるなら心配なさそうだし、あっちの女のコとは絶対に関わりたくない。
どう見てもあのコ、ティーダが言ってた『サディスティックテレポーターストーカー女』だもん。
二人揃ってロックオンなんてヤダよ。

っと、なんだこの機械?
ふむふむ……ほーほー、参加者発見用のレーダーかぁ。
随分便利そうだけど、これで僕の居場所に気付いたってわけかい。
まーいいよ。とりあえずこいつと、落ちてるザックを回収回収〜っと。
これだけのアイテムにザックを二つも三つも持ってるってことは……やっぱコイツ、人殺しまくってるんだろうなぁ。
こんなヤツ、今までなら始末してたけど……
――運、良かったね。

と〜、なんだこの中身?
妙な杖が二本と、怪しい雰囲気の指輪と、やけに存在感のあるゴテゴテしたマント。
組み合わせがすっごく謎だけど、『だいじなもの』とか『きちょうひん』とか、そういう類なのかなぁ?
わかんないけど一応持っていこう……

「返せ……それは我が主君のものだ!」

――うわっちゃぁあ!? いつの間に復活したんだ、このヒト!
剣を振りかざして襲い掛かってきて……って危ない死ぬ死ぬマジで死ぬ殺される!
こういう時はジャンプで逃げー!
そんでもって、この杖で――そのアブナイ剣を吹っ飛ばしてやる〜〜!!
237傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 7/12:2006/01/01(日) 11:21:42 ID:5YOKwgXA0
ヘンなお姉さんはやっぱり悪い人でした。
ぎどさんは一生懸命戦ったけど、ぼくは何をすればいいのかわかりませんでした。
おろおろしてたら、てりが「さっきの呪文を使うんだ」って言ったので、もう一度唱えてみました。
でも、なぜだか上手くいきません。
『しっかりヤる気にならないと、マホウは上手くいかないよ』ってトモダチが言ってたけど……
ぷよぷよを吹っ飛ばして、ちょっとスッキリしちゃったからでしょうか?

どうしようって思っていたら、爆発するようなヘンな音がしました。
それから右手と体にぶすぶすって感じがして、とっても痛くなりました。
びっくりして見てみると、長いのが刺さってて、赤いのがだらだらしてました。
てりがぼくの名前を呼んで、ぎどさんもこっちを見ました。
そうしたらぎどさんにも長いのが刺さって、目をおさえてしまいました。
お姉さんはいやな顔で笑って、ぎどさんのことを思いっきり蹴りました。
ぎどさんはひっくりかえって、立てなくなってしまいました。

ぼくはどうにかしたかったけど、体が痛くて寒くて気持ちが悪いです。
困っていたら、突然キレイな剣がびゅーんって飛んできて、てりの足元に突き刺さりました。
それからあのぷよぷよの声がしました。

「貴様、その技は――ラムザ=ベオルブか!?」

お姉さんが驚いた顔で、ぷよぷよのいたほうを見ました。
剣を拾ったてりも、ぼくも驚いて、ぷよぷよのいたほうを見ました。
暗くてぐるぐるだったけど、黒くて白っぽい影が見えました。
影の人は、お兄さんの声で言いました。

「ふん、そんな輩は知らぬな。
 ……我が名はカイン=ハイウインド。グランバニア帝国竜騎士団を率いる者だ」
238傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 8/12:2006/01/01(日) 11:23:24 ID:5YOKwgXA0
一般的な白魔道士は接近戦では無力だ。
さらに止めを刺さなかった辺り、殺し合いに乗る気もないらしい。
いかにピエールが手傷を受けていようと、遅れを取る相手ではない。
アリーナの方も、子供と妙な魔物はどうでも良いように見えた。

問題にして、刮目すべきは亀の魔物。
アリーナの四連攻撃を一方的に受けているように見えて、その実、甲羅や手を利用して見事にいなしている。
真正面から耐えるのではなく、わずかな動きで力の向きを変え、分散させる……
言葉でいうのは簡単だが、並みの魔物や魔法使いにできる芸当ではない。
反撃の機会こそ封じているが――あれでは致命傷を与えるどころか、アリーナの持久力が尽きる方が先だ。

思案の末、私は一先ず矢を射掛けることにした。
相手を暗闇に陥らせてしまえば顔を見られる心配もなく、直接援護に赴く事ができるからだ。

そうして上手く亀と魔物に矢を当てた時――予想外の事態が起きた。
ピエールがあの白魔導士をラムザと誤認したこと。
そして、白魔導士が名乗った肩書だ。

アリーナの話では、確かにラムザはジャンプを使っていたらしいが――
あの白魔導士、いや自称竜騎士とは声も体格も似つかない。
態度からしても、ピエールと同郷とは考え難い。
たまたま同名の国が他にあったということなのだろう。
だが、私も、アリーナも、完全にそちらに気を取られてしまった。
そしてあの亀は――ひっくり返っていても、やはり、我々の隙を見逃すような相手ではなかった。

「スリプル!」

その声が聞こえた瞬間、強烈な眠気が襲ってきた。
それでも私は意識を集中させ、どうにか睡魔の誘惑を凌ぎきったが……
視界の向こうでアリーナの体がバランスを失い、ピエールすらも片膝を着くのが見えた。
239傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 9/12:2006/01/01(日) 11:26:47 ID:5YOKwgXA0
あ、合ってたのかなぁ……?
信憑性出すために肩書まで騙っちゃったけど、何だか激しく間違ってる気がする。
あー。ナントカ帝国とか王国とか竜騎士団長とか、そんな感じだったのは覚えてるんだけど。
レイドックとかバロンとかダムシアンとかアレクサンドリアだったかなぁ。
……なんかテストで四択問題出されて答えたはいいけど自信が無いみたいな、とってもモヤッとした気分。
まぁ、多少間違ってても仕方ないよね。とっさに思いついただけだもん。

だって誰だか知らないもん、ラムザなんて人!
僕みたいにハイジャンプが使えるとか、隠れるの大好きとか、不意打ちの天才とか、多分そういうヤツなんだろうけどさ。
いくら僕でも勘違いで殺されるなんて真っ平ゴメンだよ。
でも、本名を言えばリストで顔まで控えられる。せっかく顔と髪の毛隠してるのに、ストーキングされるのヤダ。
ソロ達の名前じゃあ向こうに迷惑がかかってしまうし、誰もジャンプなんて使えない。
万が一知り合いだったらバレてしまうから、本当にジャンプが使えた記憶があるカインの名前を借りたんだ……
あいつならいくら迷惑かかっても困らないしさ……

いいよ。結果オーライだからもういいよ。
悪い連中は眠らされたみたいだし、僕ももうヘロヘロに疲れちゃったし、このまま逃げちゃおう――
――って言いたいけど、助けてもらった義理もあるし、何よりもう一人近くに誰かいる。
この状況で出てこないってことは、少なくとも味方になってくれるヤツではなさそうだ。

僕は二度ほどジャンプして、子供の傍に降り立った。
カインって名乗った分、攻撃されてもおかしくなかったんだけど……幸いにしてアイツのことは知らなかったみたいだ。
とりあえず声をかけてみる。

「大丈夫かい? 悪い奴らに酷い事されたみたいだけど」
「オレは平気だよ……でも、トンヌラとギードが……」

涙目で言ったその言葉通り。
子供は無傷そうだけど、トンベリがかなりの深手で――カメが大変なことになっている。
僕はとりあえず子供を手伝って、カメを元に戻してやることにした。
トンベリの傷は、今の僕じゃあどうにもできない。
やっぱり、リルムのところまで連れて行くしかないかな――
240傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 10/12:2006/01/01(日) 11:29:39 ID:5YOKwgXA0
かいんって言ってたお兄さんと、てりが、ぎどさんを引っくり返しました。
ぼくはお姉さんに殴られたおなかが気持ち悪くて、長いのが刺さって痛くて、じっとしてました。
でも、何かイヤな感じがしました。あのぷよぷよがいた方からでした。

てりがぼくに気付いて、ぎどさんの名前を呼びました。
かいんお兄さんは丸くてピカピカしてるのを見て、いきなりてりを掴んで引っ張りました。
ぎどさんがぼくを突き飛ばしました。
その途端、だだだだだ、ってすごい音がしました。

目をあけたら、ぎどさんの甲羅や手に長いのが刺さってました。
お兄さんとてりの近くにあった木にも、長いのがいっぱい刺さりました。
遠くから、ぷよぷよが大きなジュウみたいなものを持ってこっちにやってきます。
ぎどさんが「逃げろ!」って言ったけど、てりは「嫌だ!」って怒りました。

「オレも……オレだって戦う!
 レックスやドルバやリノア姉ちゃんやワルぼうみたいに、ギードが帰ってこなくなったら嫌だ!」
「トンヌラの怪我はどうする! このままでは死んでしまうかもしれんぞ!
 その白魔導士殿と一緒に逃げて、治療してもらうんじゃ!」

ええっ?! って言いたくなりました。
ぼくは死んでしまうんでしょうか。目がぐるぐるして、体がぶるぶるするのはそのせいでしょうか。
それでもてりは何かを言おうとしたけど、いきなりお兄さんがぼくとてりを抱えて、杖を自分のほうに向けました。
ぴかって光って、びゅいーんって吹き飛ばされた感じがして、気がつくとぎどさんが遠くにいました。
お兄さんはそのままぼくを抱っこして、てりの手を引っ張って走り出しました。
てりは嫌がって暴れました。ぼくも暴れたかったけど、体がだるいからじっとしました。

「離せ、離せよ! ギードはオレの仲間なんだ、オレの……!」
「悪いねぇ、坊や。リノアの知り合いなら……死なせるわけにはいかなくなった」

お兄さんは息を切らしながら答えました。
どういうことなのでしょう。かいんお兄さんはりのあお姉さんの知り合いだったですか?
ぼくも驚いたけど、てりはもっと驚いたみたいで、何も言わなくなってしまいました。
241傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 11/12:2006/01/01(日) 11:34:37 ID:5YOKwgXA0
ぼくはお兄さんの肩ごしに後ろを見ました。
ぎどさんと、知らないおじさんが戦っているのが見えました。
ぷよぷよがこっちに向かって杖を振るのが見えました。
でも、お兄さんの杖みたいに光は出なくて、しばらくしてぷよぷよはこっちに走ってきました。

ぼくは死にたくないです。トモダチとまた会いたいです。
それに、てりやぎどさんが死ぬのもイヤです。
だから大切なカンテラだけど、ぷよぷよに見つけられないように明かりを消してしまいました。
それからお空に向かって、いつかのろざりお姉さんみたいに、お祈りしました。

れくす、どるば、りのあお姉さん、みんな――どうか、ぼくたちとぎどさんを助けてください。


【テリー(DQM)(右肩負傷、3割回復)
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×2、
 鋼鉄の剣 、コルトガバメント(予備弾倉×4)、雷鳴の剣
 第一行動方針:トンヌラを助ける 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【トンヌラ(トンベリ) (重症)
 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ、りゅうのうろこ
 行動方針:テリー達についていく??】
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失、疲労)
 所持品:竜騎士の靴、自分の服、ふきとばしの杖〔1〕、手帳、首輪、対人レーダー
 ピエールのザック(死者の指輪、王者のマント、ひきよせの杖[2]、ようじゅつしの杖[0])
 第一行動方針;テリーを連れ、ゼル達の待機場所まで逃げ切る】

【ピエール(HP3/5) (感情封印)
 所持品:オートボウガン(残弾1/5)、スネークソード、毛布、聖なるナイフ、魔封じの杖、とびつきの杖[0]
 第一行動方針:王者のマントを取り返す
 第二行動方針:サスーンに向かってリュカを探し、王者のマントを渡す
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

【現在位置:カズス北西の森南部→サスーン南東・山の中、森との境付近】
242傍観者と勘違いと間違いと偶然の一致 12/12:2006/01/01(日) 11:38:44 ID:5YOKwgXA0
【アリーナ2(分身) (HP MAX)(睡眠) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ピエールを葬り、サスーンに向かってリュカを殺す
 第二行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】
【ウィーグラフ
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×7、ブロードソード、レーザーウエポン、
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ
 第一行動方針:ギードを退け、ピエールを追う/アリーナとピエールを殺されないようにする
 第二行動方針:サスーンに向かいゴゴとマティウスを殺す/ラムザを探す
 第三行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】

【ギード(負傷) 所持品:首輪
 第一行動方針:ウィーグラフとアリーナを退ける
 第二行動方針:テリー、ルカとの合流
 第三行動方針:首輪の研究】

【現在位置:カズス北西の森南部】


【リルム(右目失明) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ
 第一行動方針:見張り&休憩】
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト リノアのネックレス
 第一行動方針:スコールを探してネックレスを渡す
 第二行動方針:リノアの仇を討つ(?)】

【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
243パラメータ修正:2006/01/01(日) 11:42:27 ID:5YOKwgXA0
【ギード(負傷・暗闇) 所持品:首輪
 第一行動方針:ウィーグラフとアリーナを退ける
 第二行動方針:テリー、ルカとの合流
 第三行動方針:首輪の研究】

【現在位置:カズス北西の森南部】
244名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/02(月) 13:20:54 ID:XsswuAm10
保守
245名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/03(火) 22:30:07 ID:tN+Dfd+A0
保守代わりに今更間違いに気付いたんで修正

>237
7/12
「どうしようって思っていたら、爆発するようなヘンな音がしました。」

「どうしようって思っていたら、『ばちん』とか『しゅばっ』って感じのヘンな音がしました。」
246名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/05(木) 17:45:41 ID:HzjMJjCl0
保守
247名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/06(金) 19:13:20 ID:WybazK3G0
ほしゅ
248保守:2006/01/08(日) 23:32:47 ID:K/nshBlm0
私は剣の刃を左胸に突いた。
…ドクドクと血が湧き出てくる!!
ああ!! なんて愚かなのだ。
自分の命を自分で絶ってしまうとは!!
…私亡き後の世界は闇に包まれてしまうだろう…。

残念!!
私の冒険はこれで終わってしまった!!
(アレフ 死亡)
249名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/09(月) 10:31:54 ID:6gD+BZQx0
おわかりでしょうが>>248は無効です
250名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/09(月) 19:39:16 ID:LDDMTn4t0
外見(服装、髪や瞳の色など)が
公式イラストとゲーム画面、あるいはFC版とPS版などで
大きく食い違うキャラって、現メンバーの中にいますか?
251名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/09(月) 21:24:04 ID:eSRS4/rR0
>>250
そういうのは裏方雑談スレへ
252名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/10(火) 00:33:58 ID:qY677c+60
>>253は無効です
253名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/10(火) 13:14:53 ID:WeC2XesrO
みんな死んだ
254名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/10(火) 21:45:40 ID:DsJwJ/IL0
保守
255名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/11(水) 00:55:14 ID:A/iniSzX0
捕手
256名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/11(水) 15:19:29 ID:w+qQ82aT0
保守
257名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/12(木) 00:26:14 ID:qlwmdPQQO
アスカ
258名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/12(木) 00:27:05 ID:ZH8dcAHM0
チャゲ
259名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/12(木) 01:13:45 ID:prQh0stq0
熨斗
260名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/13(金) 15:14:54 ID:77d5Upfx0
保守
261名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/14(土) 17:42:14 ID:dwskFBzGO
>>273は無効です
262名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/16(月) 10:56:56 ID:AbZkR8Im0
ほっしゅ
263名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/17(火) 00:33:16 ID:talz2KDs0
帰ってきた保守っとくぞ、コノヤロー
264名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/17(火) 11:57:15 ID:0cgleN/a0
念のため保守age
265思考の闇 1/3:2006/01/18(水) 01:57:42 ID:HpQFQSLJ0
赤く西日に染められた砂漠を抜けたのと、その赤く照らす西日が完全に沈んだのとは、ほとんど同時であった。
そして響き渡る、もはやおなじみと言っていい魔女の声。
伝えられる死者の名前。
自然に止まる、足。

「アーヒャヒャヒャヒャ!! 死んだ死んだ。ボクちんを殺そうとなんかするからだよーだ!! ヒャヒャヒャ!!!」

突然聞こえた高笑いは、隣を歩いていたケフカが発したものだった。

「ちょっと、こんなときに不謹慎でしょ!! 一体なんだってそんなに喜んでるのよ!!」

ユフィは残った片腕で目を擦りながら本気で腹を立てているようだ。
今の放送でまた誰か知り合いの死を知ったのだろうか。
対してケフカは、レオ将軍と言う人物が死んだことを喜んでいるようだ。
もとの世界では仲は悪かったが同じ帝国に使えた同僚だったそうだが、このゲームが始まるや否や付け狙われ、殺されかけたらしい。

話術の基本は人の話を聞くことだ。
人の話を聞き、整理し、自分の言葉に乗せる。
自分が話しているときであれ黙っているときであれ、どんなさり気ない言葉と言えど聞き逃さないこと。
そして入ってくる情報について絶えず思考しておくこと。

その所為か同行者二人の反応に気を取られ、つい自分の感情について受け止めるタイミングが遅れてしまった。
「リノア」「アグリアス」「ファリス」
探していた3人の女性。その誰もが、この日没を待たず命の灯火を消していた事実。
266思考の闇 2/3:2006/01/18(水) 01:59:02 ID:HpQFQSLJ0
「リノア」については、悲しみと言うより残念という感覚が強い。
何と言っても直接面識があるわけではないからだ。
ただ、この放送を聞いたアンジェロがどう思うか、それは心配だった。

「アグリアス」共に戦った仲間。
あの広間で彼女が呼ばれたとき、危険を承知で声を掛けた。それが最後に交わした言葉になってしまった。
彼女は、あの気高い誇りを全うすることが出来たのだろうか。

そして「ファリス」
再会したテリーのあんな状態から、もしかしたらとはずっと頭の片隅に思っていた。
別の言葉で言えば覚悟していたのだ。
精神の不安定なテリーが、この放送を聞いて無謀な行為を起こさなければよいのだけれど。


ラムザはため息をついた。
探していた人物が3人も、自分の知らぬ間に死んでしまったと言うのに、あまりに悲しみとか、怒りとかいう感情が沸いてこない。
これは事実を受け止め、分析しようとする話術士のジョブとしての性なのだろうか。
そうであってほしいと思う。
だがもしかしたら、こんな異常な世界に1日半もいた所為で
感性が壊れかけてきているか、少なくとも麻痺してしまっているのかもしれない。
もしそうなら、それは余りに危ういことではないだろうか?
感性の破壊は精神の病だ。人格の破壊に通じることもある。
そして多くの生き残った参加者がこの現象に陥る危険性を秘めている。

もしこれこそが魔女の狙いだとしたら……。
267思考の闇 3/3:2006/01/18(水) 01:59:57 ID:HpQFQSLJ0
「どうしたの、ラムザ。黙りこくっちゃって、らしくないよ」

心配そうにユフィが覗き込んできた。

「ヒャヒャヒャヒャ、無駄なことを考えるのは馬鹿のすることだねー。馬鹿バーカ!!」

ケフカの茶化しが、嵌まりきってしまった思考の泥沼から脱出させてくれた。
確かに、考えても仕方のないことは無駄なことで、そんなことに気を取られるのはよくないことだ。

「あんたね!! むしろあんたの方がもう少し深刻になったらどうなのよっ!!!」
「いや、いいんだ。助かったよケフカ。ありがとう」
「助かったぁ〜?何だってあんなので助かる訳?」
「つまりね。僕はこう考えたわけで――――」

「アーヒャヒャヒャヒャ。また長くなりそうですねぇ〜」

だが、ケフカの予想に反してラムザの解説は予想以上に早く終わった。
余り遠くない北の方角から、不自然な爆発音が聞こえたのだ。
むやみやたらと戦闘に関わるのは身を危険にさらすだけなのだが…、

「何か爆発したみたい。行ってみましょう!!!」

と、ユフィが骨髄反射で駆けて行ってしまったものだから、これは追いかけなければ仕方がないだろう。

ちなみにケフカは、ユフィのことを猪突猛進のイノシシだと愚痴をこぼしてはいたが、
急ぐようなことはしないけれど、一応後を追って来てはくれるようだった。
268思考の闇:2006/01/18(水) 02:01:08 ID:HpQFQSLJ0
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ユフィを追いかける
 第二行動方針:テリーを追い、保護する
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:爆発のあった方向に行ってみる(ラムザと別れたつもりはない)
 第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】

【ケフカ(MP1/2程度)
 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
 第一行動方針:疲れない程度の速度でユフィを追う
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】

【現在位置:カズス西の砂漠と平地の境界→カズス北西の森南部】
※ユフィ→ラムザ→→→ケフカ の順で到着予定
269思考の闇(修正):2006/01/18(水) 21:46:58 ID:HpQFQSLJ0
と、ユフィが骨髄反射で駆けて行ってしまったものだから、これは追いかけなければ仕方がないだろう。



と、ユフィが脊髄反射で駆けて行ってしまったものだから、これは追いかけなければ仕方がないだろう。
270名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/20(金) 13:05:13 ID:F1DFuBz50
保守
271名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/21(土) 19:02:29 ID:sik2E5dt0
ほす
272名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/23(月) 14:38:43 ID:TCboYwxLO
湖面に映る君の姿にあの日の僕の姿を重ね合わせる あの頃は世界の全てが眩しかった そう余りにも世の中の理を知らな過ぎたのだ
保守
273名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/24(火) 06:07:48 ID:zbQvocd70
>>272は無効です
274名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/24(火) 19:23:25 ID:J9zct+jW0
>>278は保守です
275名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/24(火) 22:36:26 ID:nE/W6CUx0
276名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/25(水) 18:44:18 ID:FAfTS8W30
 
277名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/27(金) 00:32:23 ID:tSvKkPJ70
保守っとくぞ、コノヤロー タロウ
278名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/27(金) 07:01:16 ID:ZNAv5DCB0
>>274は保守です
279未だ動かぬ殺人者:2006/01/28(土) 17:23:03 ID:ySk5rqYv0
瞑想しているセフィロスは放送により目が覚める。
だが、特別重要な情報が流れないことを知ると、再び瞑想に入った。

【セフィロス(HP 1/7程度)、
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠
 第一行動方針:保守】
【現在地 湖南の森】
280未だ動かぬ殺人者2:2006/01/28(土) 17:27:15 ID:2GnXviii0
瞑想しているセフィロスは再び目が覚める。
そして寝た。

【セフィロス(HP 1/7程度)、
 所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠
 第一行動方針:保守】
【現在地 湖南の森】
281名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 11:31:36 ID:BglSyzO50
このスレのすべての保守は無効です
282名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 12:47:13 ID:s7KqGNVq0
>>281は無効です
283名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 13:14:27 ID:01ibw4Ca0
すべての無効宣言は無効です
284名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 13:20:53 ID:/yaqpV++0
ユフィが最強な話は無効です
285名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 15:00:21 ID:ZQucXViyO
まあそう言うなって
286名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/29(日) 16:04:34 ID:YCQxouV50
>>285は無効です
287保守戦争:2006/01/29(日) 16:47:30 ID:ESAvFVKf0
「フン、小物共が醜い争いを…」

アルテミシアはそう言うと>>281-286に向けて波動を放った

なんと、>>281-286は単なる保守になってしまった
288名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/30(月) 18:23:27 ID:wXCSijxbO
なぁ、保守って美味いのか?
289名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/31(火) 22:25:20 ID:irLhk3Mj0
保守っとくぞ、コノヤロー 80
290名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/01(水) 14:42:29 ID:QhfSjzks0
age
291名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/01(水) 22:30:17 ID:N2FqLzUwO
ほ・し・ゅ
292名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/02(木) 01:29:23 ID:Ws0P5w5hO
最新の生存者リストってどっかある?
293首輪雑談と方向転換 1/5:2006/02/02(木) 14:41:35 ID:5VWUmTmC0
希望を打ち砕く三度目の宣告が夜の再来を教える。
南を目指していた三人は皆足を止めて押し黙り、それに耳を傾けていた。

(レオ将軍!?)
不安な心境は聞こえたよく知る名前に揺さぶられる。
動揺と狼狽に思わず泳がせた目には二人の魔王、二つの不動の背中が見えている。
(反応なしかよ。なんだコイツら…いや、魔王なんてこんなもんか)
そう思った瞬間動揺よりも怒りや嫌悪のような気持ちが勝っていた。
自分の動揺と比較したその不動に氷のような冷たさを感じ取って思わず心中で悪態をつく。
だが、背中越しで分かりにくい角度であったがロックは確かに見たのだ、
冷徹だと思っていたその魔王がため息をつくところを。
(……ため息? ……なんだよ。そう、だよな…決め付けは良くないぜ、俺。くそ)
途端抱いていた怒りと嫌悪がなんだか恥ずかしく心の中に渦を巻く。
行き場を失ってしまったそのわだかまりを拳に込めてロックは地面を叩いた。

(『また』…か)
気にかける名前こそ無かったが代わりにあまり聞きたくは無かった名が告げられた。
一人の男の顔が浮かぶ。その男は今深い悲しみに沈んでしまっているだろう。
かけがえのない存在が失われたことを告げられたからだ。
だが、沈んだままではいないだろう。なぜなら彼には仲間がいるから。
一時の哀しみはあろうとその男は己に課した勇者たる責務から逃げたりはしないだろうから。
(ソロよ……悲劇は繰り返してしまった、な)
続けて浮かびそうになったことを打ち消すように深く息を吸う。
それからピサロは心中にわだかまっていた一抹の不安を大きく息と共に吐き出した。
294首輪雑談と方向転換 2/5:2006/02/02(木) 14:43:20 ID:e28ND9iX0

(ドーガ…巨星堕ちる、か。ギルダー…どこで死に急いだか?)
その顔にゲーム内で初めて見せる憮然とした表情を貼り付けて虚空を見上げるザンデ。
他者の生死はその他者のこと、興味はない。だが自分の目的を阻害するなら別だ。
探しているのは人でも物でもいい、旅の扉をジャックするために必要と考えられる膨大な魔力の持ち主。
ギルダーはともかくそのため無条件で当てにしていた同門の二人、その片割れは失われてしまった。
(残る当てはウネのみか、ふむ。求めるレベルが二、三人欲しい所なのだが…)
目を閉じ、鎮めた心からわずかな失意を心から追い出して普段の不敵な笑みを取り戻す。
傍らからの視線に気付いたのはその後であった。

「…どうした。知己でも呼ばれたか」
「なに、使えるとふんでいた当てが無くなっただけのことだ。しかし……」
値踏みするような視線で改めて一瞥。それからザンデは仮にだ、と前置きして話を続けた。
「ピサロよ、貴公がもし魔女の立場にあったなら、どの程度の統制を行う」
「統制だと?」
「そうだ。貴公も相応の身分にあったならば支配者の立場と言うものを知っておろう。
 私のように反意を明確にしている者はどのように扱うか?」
「……ふむ」
295首輪雑談と方向転換 3/5:2006/02/02(木) 14:44:52 ID:e28ND9iX0
質問を発しているザンデの顔の下、首には鋼鉄の首輪が有る。
ピサロは自身の首にも付けられている同じものに触れながら答える。
「最初に集められた広間を覚えているか。そこで魔女の手下が言っていた。
 『禁止事項は以下の三つ。
 一、会場から逃げ出そうとする。 会場に設定された境界線を越えれば爆発するということだ。
 二、禁止された魔法や技を使用する。これは場合によって追加されることがある。
 三、力づくで首輪を外そうとする。以上だ』とな。
 貴様は脱出を考えている――反意があると言ったがこの首輪はどうする気だ?
 この枷がある限りいかな反抗も無意味のまま。魔女の世界から離れたところで首が飛ぶだけだな。
 ならば首輪をはずす手立てを何者かが見つけるまで誰を構うことはない。これが答えだ」
「ファファファ……相違ない。私は慎重すぎたか。では貴公は諦めるか?」
「馬鹿な」
即答する。向かい合う魔王の唇の端が僅かに釣りあがった。
「妨害か分解だ。この首輪、魔法と機械の結合…極めて魅惑的、古代文明の遺物に良く似ている。
 ピサロよ、簡潔に言う。貴公は私と手を組む――否、共通の利害を持つつもりは無いか?」
「…貴様の考察は興味深い。が、何をさえずろうと貴様が二心を持たぬ証拠にはならん。
 むしろ今私は貴様を監視に置くつもりで同行しているのだがな」

296首輪雑談と方向転換 4/5:2006/02/02(木) 14:48:20 ID:e28ND9iX0
「なあ、今首輪の話して…たんじゃ……なかったか?」
二人の間へ割って入ってみたがそこは妙に険悪な空気。
夕方はなんだか意気投合していた気もするんだけどなぁ、と心中で愚痴りつつ左右から来る鋭い視線にひるむロック。
「ファファファ……何か言いに来たのか? 構わんぞ、言うが良い」
悪い雰囲気を裂いて唐突にザンデが笑い、それから高慢な態度でロックの発言を許可する。
態度の悪さに気を悪くして助けを期待してピサロの方を見るが無駄だった。
むしろ言うことがあるなら早くしろ、そういう風に目が語っていた。仕方ないとっとと言う事言うか。
「あー、あのな。ソロから聞いた話なんだがよ」
ロックは二人の魔王にソロから聞いた天空の武具の話をさらりと説明する。
曰く、『天空の剣にはあらゆる魔力を打ち破る力が宿っている』
そして『魔法で動いてるなら、その剣の力で打ち消せるかもしれないってワケ』だと。

「まあ解除用のアイテムを準備するなんざ罠の気がするけどよ、今は藁にもすがりたいところだろ?」
「支給品の中に天空の剣が存在するか。だが…言うとおり安易過ぎる。ザンデよ、どう思う」
「解呪、ディスペルの力か。無理なのではないか?
 そもそも我々が単独で行使できる力で首輪をどうにかできるならゲームは破綻するであろう」
「どうかな、可能かも知れん。だが強引な解除による失敗のリスクは『死』だ。
 それくらいは誰でもわかること。既に70名近い死者が出ているが試した奴がいるとは思えない」
「それこそ言い切れぬと思うがな。しかし強力な魔力を帯びた代物であるならば使い道はあるやも知れぬ。
 とにかく直接は通じぬともよいのだ。要はどう狡猾に失敗せず無力化するか、であろう?」

ザンデの問いかけを受けてピサロが頷く。
(こいつら…やっぱり相性良いんじゃないのか? けどさっきの空気の悪さは何だよ?)
なお首輪の解除について意見を交わしぶつけ合う二人をロックは傍観するしかなかった。
297首輪雑談と方向転換 5/5:2006/02/02(木) 14:50:31 ID:GktHEsSq0
浮遊大陸の一角、カズスの北に広がる平原の片隅で続いていた議論を中断させたのは西よりの音、そして魔力の波。
言葉を止めて吟味するように思考した後、ザンデはゆっくりと歩き出す。
「……サンダガ? ファイガ…いやフレアレベルか?」
「!? おいザンデ、どこ行くんだよ!?」
二人に背を向け西へとゆっくり離れていく長身の魔王に驚いた声を掛けるロック。
「知れたこと。音の源には高レベルの使い手が確実にいるのだぞ? 協力を求めに行くのだ」
「あんたカズスに行くんじゃなかったっけ…」
「良かろう」
ロックの横から離れ、ピサロも動き出す。
「もとより貴様を野放しにする気は無い。わかっているな」
ザンデはただ哄笑し、それを返答代わりとした。二人はそのままロックを置いて西へ去ってゆく。
「ちょっと待てって! なんだよ、あいつら組んだのか?
 …なんか俺追いかけてばっかりだな……くそっ、待てって!」
慌ててロックも二人を追い走り出した。

かくて南を目指していた魔王二人と盗賊一匹の三人組は西へと歩むことを選んだのだった。

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 第一行動方針:仲間、あるいはアイテムを求め、爆発音の音源へ
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:ザンデに同行し相手を見極める 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 第一行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【現在位置:ウル・カズス間の平地→カズス北西の森南部へ】
298首輪雑談と方向転換 (修正):2006/02/02(木) 14:52:39 ID:GktHEsSq0
3/5
ならば首輪をはずす手立てを何者かが見つけるまで誰を構うことはない。これが答えだ」
「ファファファ……相違ない。私は慎重すぎたか。では貴公は諦めるか?」



ならば首輪をはずす手立てを何者かが見つけるまで誰を構うことがある。これが答えだ」
「ファファファ……相違ない。私は慎重すぎたか。しかし…ではそれで貴公は諦めるか?」

へと修正いたします。
299名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 09:38:27 ID:VmAf13rD0
保守
300名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/05(日) 20:11:24 ID:FcNf8CP20
念の為
301名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/06(月) 22:07:54 ID:zpaSGJ7J0
保守
302名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/07(火) 08:33:35 ID:KCpHZyuz0
保守
303Tears 1/10:2006/02/08(水) 00:12:00 ID:THW4A+PhO
どこからともなく響いている声の所為で、エリアは深い眠りから現実へと引き戻された。
声は何か短い言葉を感情無く紡いでいく。
『……ンカ』『ギルダー』『はぐ……』
エリアは考える気力が無かった。身体がだるいのも原因かもしれない。
この声の主や、放つ言葉の意味などを考える事はできず、冴えない頭で、つまらない音楽を聞いているかのように毛布の中で耳にしていた。


「レナ……」
バッツは静かに、目が合った相手の名前を呟いた。
「……良かった」
実のところ、レナが目を覚ましたら何をどんな風に言えばいいのかずっと考えていた。
だが考えても考えても良いと思う言葉は見つからず、ようやく訪れたレナの目覚めに、バッツはただ純粋に心から安堵した。
「…………」
レナは何事か言おうとして口を開くが、その唇はすぐに閉じられてしまった。
「起きれるか?まだ寝とくか?」
バッツが顔を覗き込みながら聞く。
わけがわからない。それがレナの正直な感想だった。
なぜ自分は温かいベッドの中で寝ているのか。なぜ隣にバッツがいるのか。
「喉渇いてねーか?それとも腹減ってるか?」
バッツはひどく心配そうな表情で話し掛けてくる。ああ、なぜ。
私はあなたに何をした?恐くなって、あなたを攻撃した。あなたと一緒に居た人を、この手で、私は……。
それから逃げた。全てから逃げたかった。なのに、どうしてあなたはこんなにも近くに居るの。どうしてこんなにも温かいの。どうしてこんなにも優しいの。
「みんな心配してるぞ。あのヘンリーとかソロとかいう奴らとか、変な綿毛とかリュックとか」
それとも全部ただの夢だったの?長い長い悪夢だったの?いいえそんな事ない。この身体の痛は確かな現実のもの。
そう。私は人殺しで、復讐鬼で、エリアを守るどころか傷つけて、何も出来ないただの臆病者なのよ。
「……エリ、ア……」
「大丈夫だ」
304Tears 2/10:2006/02/08(水) 00:13:28 ID:THW4A+PhO
消え入りそうな呟きを聞いて、バッツは答える。
「あの子の傷は塞がって、今は別の建物で安静にしてる」
らしい。と心の中で付け足した。
「あー、何だ。詳しい事は知らないけど、ずっと一緒に居たんだってな。
 きっと目が覚めたら、おまえに会いたいと思うんだ。
 つってもお互い安静にしてなきゃいけねーから、その、ゴメンな」
レナはゆっくりと首を横に振った。
「……私、エリアを傷つけた……きっと恨まれてる」
じわ、と熱いものが込み上げ、レナの視界が歪んだ。
「良かった……無事で、良かった……」
「馬鹿だな」と呆れたようにバッツは呟いた。
「こんなに自分を心配してくれる奴を、恨める奴なんて居ると思うか?いや居ない」
たぶん。と心の中で付け足した。
ぐずぐずと啜る音を響かせながら、レナは毛布を深く被り直して顔を隠した。


先程、誰かが様子を見に来た時も動きたくなくて寝たふりしていたけれど、いいかげん頭が冴えてきた。
エリアはゆっくりと上体を起こした。すると感じる右胸の微かな痛み。
鮮やかに描き出される光景があった。レナがヘンリーに斬り掛かかろうとする場面。魔法、反射、回避。そして己に突き刺さる氷の刃。
かつて光の戦士をかばった時の痛みにも似ている。けれど今回は死んでいない。
「レナさん……」
エリアはぽつりと呟いた。
あの出来事はなんだったのだろう。考えても納得できる結論はでなかった。
必死で自分を手当てしてくれているみんなの顔が思い浮かんだ。が、その中にレナの顔は無い。全てを拒絶したかのような悲鳴だけが耳に残っている。
「……あ」
耳に残ってると言えばもう一つ。先程の声。ただ単調に言葉を紡ぐ、憎悪を感じる声。
今になれば考えなくても判る。あれは魔女の声だ。窓の外ではすっかり日も落ちてしまっている。時間的にも間違いない。
305Tears 3/10:2006/02/08(水) 00:16:13 ID:THW4A+PhO
エリアは恐る恐る、傍らに置いてあるサックを引き寄せ、中から名簿を取り出した。
引っ掛かっている言葉があった。
『ギルダー』
聞き間違いであってほしい。勘違いであってほしい。空耳であってほしい。そんな事を思いながら、緊張した手付きで名簿をめくっていく。
「……あぁ……」
エリアは溜め息ともとれる、か細い悲鳴を上げた。そんな、まさか。そういった感情よりも、「やっぱり」という思いが強かった。
窓から差し込む月明かりに照らされた名前。ギルダーの部分には間違いなく緋色の斜線が引かれていた。
「あ、お姉ちゃん、おはようっ」
急に声がして、エリアは喉から心臓が飛び出るくらい驚いた。
視線を上げる。少し開けられた扉から覗いているのは、とんがり帽子の男の子。
時間的におはようは違うんじゃないかと考えつつも、エリアは記憶を辿った。
「あ、ええと……」
「身体、大丈夫?痛い?」
ベッドへと近付いてくる小さな身体。ええと、ええと。エリアは一生懸命記憶を巻き戻す。
「ええと……ビビちゃん、だっけ?」
「うん」
前の世界で一晩一緒に居た団体の一人。けど色々あったりお互い入れ違いで寝てたりと、あまり顔を合わせてないので、なかなか名前が出てこなかった。それでも思い出した私は偉い、とこっそり自分を誉めてあげたエリアだった。
ビビは傍らへと立つ。エリアの顔を間近で確認すると、少し目を見開いた。
「お姉ちゃん?……泣いてるの?」
「え?」
言われて気付いたが、エリアの頬は涙で濡れていた。指で触れて確かめる。
「だ、大丈夫?どこか、痛い?」
心配そうな目が覗き込んできた。エリアは涙を拭いながら、空いてる方の手を振って答える。
「ううん、大丈夫よ。ちょっとね、知り合いが亡くなったみたいで、泣いてたみたい」
みたい、という言い方はどこか変だが、ビビは気にしなかった。というよりは気付かなかった。
「でももう涙は止まったから、ね?心配してくれてありがとう」
急に声掛けられてびっくりしたおかげよ、と心の中で続ける。
「そうなんだ……」と、消え入りそうな声がエリアの耳に入った。
306Tears 4/10:2006/02/08(水) 00:18:44 ID:THW4A+PhO
「お姉ちゃんの友達も、誰か死んじゃったんだ」
「ビビちゃん?」
うっすらとした記憶だけれど、今回もまた随分と沢山の名前が呼ばれていた。
この様子だと、この子の知り合いも誰か亡くなったのだろう。と、エリアは思った。
胸が締め付けられる。
今日だけでもどれだけの尊い命が散っていった?その間に私は何をしていた?何もしていない。
自分達だって決して楽じゃないだろうのに手当てしてもらって、ぬくぬくと温かい毛布の中で眠っていた。
こうやって何もする事ができず、皆に迷惑ばっかりかけて、時間が過ぎてゆくのを待っているだけ。
いつか死ぬのを、待ってるだけ?
「ねぇビビちゃん、つらい?」
「え……?」
急な質問に驚いて、ビビは目をぱちくりさせる。
「友達が、知ってる人が、知り合ったばかりの人が、みんなが死んでいってしまって、つらい?
 武器を向け合って、魔法を撃ち合って、痛い思いをして、こんな世界にいるのは、つらい?」
それは私が思ってる事。こんな小さな子でもいいから同意してほしかった。私だけじゃないんだって、惨めな安堵が欲しかった。
「ボクは、あの……悲しい」
ビビは困った表情をしたが、精一杯の言葉でたどたどしく答える。
「みんなが戦ったりしてるのは、悲しいけど。
 その代わりみんながいるから、お姉ちゃんたちがいるから、つらくない。
 ボクが感じてるあったかい気持ちを、みんなにも分けてあげたい。
 ボクはみんがいるから恐くない。だから、ボクは頑張れる」
返ってきたのは期待してた返事じゃない。けど期待なんかよりもずっと素敵な返事だった。
「ボクは、みんなと一緒に、帰りたい。だから……」
エリアは身体の動くまま、ビビに手を伸ばしてその小さな身体を抱きしめた。
小さいけど、強くて逞しい心の宿る身体。
「お、お姉ちゃん?」
「ありがとう……」
困惑するビビの肩に、顔を埋めてエリアは呟く。
307Tears 5/10:2006/02/08(水) 00:20:32 ID:THW4A+PhO
「うん、私も、頑張らなきゃ……ね?」
お姉ちゃん、泣いてるの?耳元でそんな声が聞こえたが、エリアは抱きしめる力を強めるだけで、返事を返す事はなかった。


「レナ?」
「…………」
「レナー?寝たのか?」
「起きてる」
「ん、そっか。落ち着いたか?」
「…………」
「レナ?」
「うるさい!」
「え?」
がばっ。と急に毛布が勢いよく翻る。
起き上がったレナは全身の痛みで苦痛そうな表情をしたが、そんなことお構いなしといった風に枕をバッツに投げつけた。
「え?え?ええ?」
咄嗟に枕はキャッチしたが、突然の展開にバッツは混乱した。
「え、なん、え、なに?」
「どうせ私は馬鹿よ!救い様のない馬鹿よ!」
「えええええぇぇぇぇ!?」
なんだそりは、さっきの言葉をそんな風に捉えちゃった訳か?それでこんなキレてる訳か?
バッツは慌てて手を振って弁解する。
「ちが、違う、あれは冗談めかした紳士的な慰めだ!」
「わかってるわよそんな事!紳士的じゃないけど敢えて突っ込まないわよ!」
「突っ込んでるじゃねーかよ!ていうか何なんだ急に!」
威勢良く反論してみたが、やはりちょっと恐いので枕を構えて盾にする。
「やつあたりよ!」
案の定レナは枕に拳を叩き込み、枕を奪い返す。そのまま枕を胸に抱えると、そっぽを向いて蹲った。
「????」
ぽかーん。と間抜けな表情で、バッツはレナの背中を見る。しばらくして、掛ける言葉を探す。下手な事を言って刺激したらまずいんじゃないか、と考えた。
308Tears 6/10:2006/02/08(水) 00:22:44 ID:THW4A+PhO
「……ごめんなさい」
バッツが無言で唸っていると、レナはぽつりと漏らす。顔は相変わらず向こうを向いたまま。
「もう判らないの。みんな判らないの。……私、何をどうしたらいいのか判らないの」
「レナ?」
肩を震わせながら、レナが堰を切ったように喋り出した。
「ギルバートの声が聞こえたの。死んだはずの彼の声。だけど聞き間違いじゃない。あれは確かに彼の声だったのよ」
いや誰だよ。
「彼言ってたのよ、緑髪の男が自分を殺したって。だから私あいつを見て確信したわ。だってあいつしか思い当たる人なんていないんだもの」
だから誰だよ。
「だからギルバートの仇を取りたくて、魔法が、私が避けた所為でエリアに当たっちゃったの!」
先生、端折りすぎです。この辺の事情は他の人らに聞いたけどさ。
「エリアが死んじゃう、私の所為で死んじゃう、そう思ったら恐くなった。
 自分が恐くなった。違う、全てが恐くなった」
割り込む隙がねぇぇぇ。
「あなたも恐かった、あの男も恐かった、まるで自分を見ているようだった。私は何もかも傷つける。
 守りたいものもロクに守れず、全てを傷つけていってしまう!」
……レナ、泣いてる?よな。
「どうしようもなかったの!彼を殺してしまった!許されない事をしてしまった!
 遂に私は奪ってしまったのよ!」
命。あいつの、ローグの命。
「それだけじゃない、姉さんだって死んでしまった!どうして姉さんが死ななきゃいけないのよ?
 私が彼を殺したから?だから神様は私から姉さんを奪っていったの?ねえ!」
やっぱり放送、聞いてたのか。
レナはやっと振り返る。目元を真っ赤に腫らしてボロボロと泣いている。
「私のせいで、あいつもエリアもあの人も姉さんも傷つけた!なのにっ……」
ドン。とバッツの胸元を震える拳で叩いた。俯き、涙を床に零して。
「なんで私は生きてるのよ!私に何をしろって言うのよ!私から全てを奪っていくのが罰だとでも言うの?
 私は、どうしたらいいのよぉ……!」
309Tears 7/10:2006/02/08(水) 00:24:51 ID:THW4A+PhO


ごめんね、ちょっとだけ一人にさせてもらっていいかな。泣いてたのは内緒にしてね。
ビビにそう頼むと、エリアはまた一人になった。
「……ふぅ」
名簿を見つめながら、溜め息をつく。もうつらいなんて思えなかった。いや、思わなかった。
そういえば。ふと思い出して、エリアはサックをあさる。取り出したのは一本の笛。
専門の腕がある訳ではないが、それなりに嗜んでいる。息を吸い込むと、そっと口を付けた。

  ♪〜♪────

今あなたに出来る事といったら、どうか安らかに眠れるように、祈る事だけ。自己満足かもしれないけど、なにかしなくちゃいけない気がする。
だからこれは、私からの祈り。どうか、どうか安らかに。
あなたの分まで頑張る。そう誓った、強い心で奏でるレクイエム。


「おまえさ……やっぱり馬鹿だ。今度のは冗談じゃないぞ」
床にへたりこむレナに合わせて、バッツもしゃがむ。
「呆れて物も言えない。いや今言ってるけど。とにかくおまえは馬鹿だ」
レナは無反応。抱えた枕に顔を埋めて表情は判らない。
「おまえが泣いてるって事は、おまえの中に申し訳ないって思いがあるんだろ?
 だったらそれでチャラだ。ローグは話の判るやつだからな」
ぽん、とレナの頭に手を乗せる。
「大体、いつ誰がおまえを怯えさせたよ?ていうかおまえが何に怯えてるのかが判らねー。みんなおまえを受け止めようと手を広げてくれてんだぞ。
 それにな、俺がいるだろ。別に神様に奪われたりなんかしねーよ。おまえのフレア食らって生き残ってるし。奇跡だよな。俺ってもしかして凄いのか?あー脱線した」
レナの頭をぽんぽんと叩く。しだいにゆっくりになっていき、やがて止まった。
止まった手が、震えてる。
気になってレナは恐る恐る顔を上げた。
310Tears 8/10:2006/02/08(水) 00:26:49 ID:THW4A+PhO
「ファリスの事はさ、本当に、残念だよな……」
バッツが涙を堪えている。レナは釘付けになった。
「でもよ、あいつが今のおまえ見たら、悲しむだろ。妹を守れなかったって泣いちまうかもしれないだろ。
 だからおまえはあいつの分まで生きるんだよ」
「……姉さんの分まで……」
「あいつの志を守れよな。言うなれば、それがおまえの成すべき事で、罰だ」
涙をぐっと飲み込むバッツは、情けないけど格好良かった。レナは枕を抱きしめながら思った。


「あ、レナぁ!よかったよぉ、ホント。みんな心配してたんだからー。そうだソロ達に伝えてこなきゃ!
 ねぇねぇお腹空いてない?おいしいスープあるよぉ!もおぉーホンドよがったぁーぅあー」
最後の方は殆んど涙声になりながら、魔法屋の前でリュックは二人を出迎えた。
レナはバッツに支えられながら歩く。にっこりと微笑んだ。


「ねぇ、さっきから、わたぼうがいないよ、ど、どうしよっ……」
宿屋をくまなく探していたビビだが、流石に事が重大だと思い、キッチンで深刻そうな顔で話していたターニアとエリアに助けを求めた。
「あ、それなら……」
大丈夫よ、とターニアはテーブルの下を指差した。
「いつの間にかここで寝ちゃってたみたいなの。やっぱり、ベッドに運んだほうが良かったのかな……」
「わ、わたぼう……こんな所にいたんだ」
ビビは気が抜けたのか、床にへたり込んでしまった。
エリアが吹いた妖精の笛の効果でわたぼうが眠ってしまった事など、当のエリアですらも(すっかり忘れてて)知らなかった。
「あのそれで、レナさんは今、別の家で安静にしているんですよね」
エリアがターニアに尋ねる。
ターニアがエリアの様子を見に行った時、もう大丈夫という事で一緒にキッチンに出てきた。そしてターニアがおおまかな流れを(人から聞いた情報も織り交ぜながら)説明していたところだった。
「あ、はい。……仲間の方が一緒に付き添って、目を覚ましたら話をするそうです」
「確かバッツさん、って言ってましたよね……」
311Tears 9/10:2006/02/08(水) 00:30:37 ID:THW4A+PhO
レナに出会ってから、エリアは何度かこの名前を耳にしていた。だから心配いらない、とは思っているのだが。
「レナさん……会いにいっちゃ駄目、ですかね」
「それは……」
ターニアは言葉に詰まった。自分の口からは良いとも悪いとも言えない。そう素直に告げようとしたが、ターニアの言葉は突然の物音によって遮られてしまった。
ガタッゴトッ。
三人は心なしか緊張しつつ、固唾を飲んで扉を見つめた。程なくして、荒っぽく扉が開かれる。
「ただいま!」
バッツは片手を挙げて、晴れやかな笑顔を無理矢理作っていた。
しらじらしい。その場にいたわたぼう以外の全員が思った。
「だからそういうのはやめましょうって言ったのに……」
バッツの後ろでレナは呆れながら呟いた。その姿を見てエリアは駆け出す。
「レナさんっ!」
そして邪魔なバッツを突き飛ばしてレナに抱き付いた。
近くでドンガラガッシャンと激しい音が聞こえたが気にしない。
ターニアとビビも二人の感動的な再会を見守っていた。
「エ、エリアっ?」
「レナさんっ、よかったっ……もう離れちゃ嫌ですよぉ……」
「……エリア、ごめんなさい……ありがとうっ」
レナもエリアの背中をギュッと抱きしめる。二人ともこの際、全身の痛みなんてのはどうでもよかった。
「誰か助けてマジで」
倒れた戸棚の下でバッツは呟いた。
312Tears 10/10:2006/02/08(水) 00:32:28 ID:THW4A+PhO
【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:行動方針の相談
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【レナ(体力消耗 怪我回復) 所持品:なし
 第一行動方針:みんなに謝る/行動方針の相談
 基本行動方針:エリア、バッツを守る】
【エリア(体力消耗 怪我回復)
 所持品:妖精の笛 占い後の花
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:イザを探す】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:睡眠中(時間が経てば勝手に目が覚める)
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在位置:ウルの村 宿屋内部】

【リュック(パラディン)
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
 ドレスフィア(パラディン) チキンナイフ 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:ソロとヘンリーを呼びに行く
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
313Tears一行忘れた:2006/02/08(水) 00:37:50 ID:THW4A+PhO
【現在位置:ウルの村 奔走中】
3143:00(3minute) 1/10:2006/02/09(木) 14:54:27 ID:7SGqgyCR0
始点・0秒―――

罪ある女は弁明の暇すらなくただいつものように戦うしか無かった。
激昂する男はただ己の正義を信じ、目前の悪を討つべく剣を振るった。
傷ついた男はそのぼろぼろの身体を支える執念を武器に全身全霊を傾けた。

二度とは戻らぬ時間は確実にうつろう全てを刻んでいく。

三つの視線がそれぞれの相手を睨み、あたりを一瞬だけ静寂が包んだ後に
それを破って気合の叫びをあげつつサイファーが攻撃のモーションを開始する。
何か言おうと口を開きかけ、本能的にその危険を察知したアリーナはこの時点で回避行動を始めている。
やや離れて立っていたテリーもその目的を果たさんと動き出す。

神経を研ぎ澄まし間合いを慎重に見切りながら身を躍らせるアリーナ、追うサイファー。
破邪の剣の刀身が二度三度と円を描き空を切り裂く。
お互いに息を継がない高速の演舞。切っ先が僅かに地面に触れて耳障りな音を立てた。
幾度目かの攻撃の後、後方へ飛んだアリーナに対しボロボロ白コートの男は追撃することなく足を止めた。
小休止、説得の好機と見て声を掛けたアリーナを襲う異変。

「待って! 私の話を聞きなさいって…ナニこれッ!!」
「ドロー、オーラ!」

突然に自らの体を包んだ青白い光に驚愕の声を上げるアリーナの目の前で
光は対峙している男の左手へと吸い込まれ、次いでその身体を包みこむ。
どう説明すべきかわからないがとにかくアリーナの目にはその威圧感が増して映った。

「チョロチョロしやがって! 行くぜぇっ!」
「待ってって言ってるでしょう!」

再び動きかけたサイファー、弁明すべく声を張り上げるアリーナ、
二人の間に割って入るのは絶叫と予想外の高速で飛び込んでくる第三の人影。
3153:00(3minute) 2/10:2006/02/09(木) 14:56:15 ID:i+E4odgZ0

30秒経過―――

「死ねェェえええッッ!!!」

対峙する二人の左方より気合の絶叫。
先ほどまで二人が行っていた戦闘の速度に劣らぬ速さで隻腕の影がアリーナへ突撃する。
彼の世界では『疾風突き』と呼ばれる技術――サイファーの斬撃を避け続けたアリーナでさえ
腕でガードせざるを得ない速度での不意打ち。
だが、アリーナの驚愕はまだこれからだった。
片足のみでの着地をこなした男の腕は手にした杖を操り、アリーナですら見切れぬ速度での連打を繰り出してきたのだ。
ダメージを犠牲にした『はやぶさ斬り』、しかし驚くべきは杖でそれを為すテリーの天才。
一撃目こそ腕で止めたアリーナの守りをすり抜け力の杖が肩、そして膝に重い衝撃を残す。

「ぐうっ、あなたもいい加減に…」

反撃の姿勢をとろうとしてその場から一気に飛びのく。
一瞬遅れてサイファーの剣がその場所へと振り下ろされていた。
ひらりと着地するアリーナ、しかしずんと与えられた衝撃が打たれた箇所に蟠っている。
(…そういえばルカナン、ね。にしてもこいつら、人の話を聞けっての!)
これが剣でなくて杖であった事は不幸中の幸いといえるのだろうか。
とにかくアリーナの目の前にはバランス無視の攻撃のせいでリプレイのようにまた地面に倒れるテリーと、
中段に剣を構えなおしてこちらへ鋭く踏み込んでくるボロボロ白コート、休む暇はない。
腰の辺りの高さへの水平なぎ払いに対応して一歩下がるアリーナを見越したように回転を止めずに袈裟懸けの一撃。
切り下ろされる面を見切ってそれと垂直方向にこれを回避するアリーナ。
演舞の続きが始まる。
先ほどと違うのはアリーナの方針。
わずかな距離を隔てて滑りぬけてゆく剣を横目に見、サイファーの懐へと飛び込む。
回避はともかく反撃まではと油断していたサイファーの頬へと拳を叩き付けた。
3163:00(3minute) 3/10:2006/02/09(木) 14:57:58 ID:4NhXFj2d0

50秒経過―――

反撃により重なった二人の像へ向けて猛り狂った質量がその目的を果たすべく突撃する。
ヒットアンドアウェイを心がけて即座に反撃の届かない位置まで離れるアリーナ、
殴られた事に短く激しい文句を吐き舌打ちするサイファー。
そこに飛び込んでくるテリーの行動は二人にとって完全に想定外。

なぜならば振り回されるテリーの杖はアリーナではなくサイファーを襲ったから。
目標を定めずに全力でぶつかっていく『皆殺し』。
異常に気づいて咄嗟に身をよじったサイファーは身体への被弾こそなんとか回避したものの背にあるザックを直撃される。
動きの邪魔にならないようにしっかり身に固定してあるザックに引っ張られ、テリーともどももつれ倒れるサイファー。

「うおおっ!? っの、何しやがる! 俺はどうみても味方だろうが!」

背後へ向けてわめくサイファーを無視してテリーはあるものだけを見ていた。
倒れた衝撃でそうなったのか、白コートの背中のザックからのぞく柄。
じろりと顔を動かしてアリーナを見つけると
想定外の事態を見守っている彼女へ向けて腕の力だけで持っている杖を投げつけた。
それから空いた手をその柄へと伸ばし、一気に引き抜く。
ようやく背中にかかっていた質量が離れて素早く立ち上がるサイファーと
投げつけられた力の杖を難なくかわしたアリーナが見たもの、いや感じたものは急激に膨れ上がる敵意。

隻腕の先に握られた剣、それはかつて銀髪の剣士を恐怖させ、勇者の血族を殺意に捉えた剣。
その名は「破壊の剣」。
3173:00(3minute) 4/10:2006/02/09(木) 14:59:21 ID:i+E4odgZ0

1分10秒経過―――

その剣を振るっていた人物をサイファーは知っている。
そして彼がどうなったかも。あの時のパウロと同じ目をした男が眼前に立っている。

剣を手にした相手を見てアリーナは考えを変えるほか無かった。
片手、片足というハンデにもかかわらずあれほどの冴えを見せる技術。それが刃物を手に入れたのだ。
一度でも斬撃を浴びてしまえばてんで話を聞く耳を持たないこいつらに…殺される。
完全に守りきれない以上は、反撃も仕方ない。
いや。
もう殺す気くらいで行かないとこの二人、特に銀髪は止められないのかもしれない。

破壊の剣を地に突き立て、脈動するように全身で呼吸する。
殺せ。
(わかっている)
斬れ。
(わかっているさ。姉さんの、ために…、必ず、こいつ、は、こ、ろ、す!)
テリーはどこかから流れ込んでくる破壊の衝動に抵抗することなく
ただ憎むべき相手の顔をじっと見つめていた。
完全に衝動に取り込まれる前にテリーは大きく息を吸い込み力を溜める。


戦闘開始前と似た緊張をはらんだ静寂がまたわずかな時間訪れる。
短い均衡を破って戦端を再び開くべくテリーが片足で跳躍する。
誰よりも早いその攻撃は引き放たれた矢のようにアリーナへ向かい、
今度は避けようとしたアリーナの左肩を抉り取った。
3183:00(3minute) 5/10:2006/02/09(木) 15:00:50 ID:i+E4odgZ0

1分25秒経過―――

「〜〜ッ、このぉッッ!」

激痛を歯を食いしばって抑え付けて回避運動を利した蹴りをテリーへぶち込む。
鈍い音と共に足が胴にめり込み、吹き飛ぶテリー。
しかしそういう状態でありながら『はやぶさ斬り』へと移行したその神速の剣はカウンターで足を傷つける。
深く傷ついた左肩、切り傷の右足からはたちまちに血が溢れ重力に引かれて落ちた。
目の前にはまるで蹴り飛ばされ叩き付けられた痛みすら感じていないかのようにゆっくり立ち上がってくる銀髪がいる。
(狙うはこめかみ、意識を断ち切る! これぐらいしか思いつかない!)
執念を漂わせ向かい来るテリーに対しアリーナは覚悟と狙いを定め、握る拳に力を込める。

どこかで出会ったシチュエーション。遥か昔に感じる昨夜のこと。
制御不能の大きな力を携えて悪役に立ち向かう男の姿。
だが、そこにいるのは何なのだろうか。少なくとも英雄の姿には見えない。
(こいつは……)
自分以外の二人が再び交錯する。
覚悟の上か、腕輪で向かってくる剣を弾くという曲芸をやってのけた女の拳が銀髪のこめかみを捉える。
代償として腕輪をしている右手の皮、あるいは肉までも削ぎ取られ持っていかれたようであるが。
糸が切れたかのように崩れ落ちると見えた男の身体はしかし途中で硬直し、驚愕に染まる女の顔に紙一重で肉薄して跳ね上げられた剣が天を衝く。
あんな使い方をしていては腕、いや全身がいかれてしまうだろう。
激発した女の足が飛び銀髪の顎を砕く。
妙な回転で地面へ倒れ伏せる男。だがその身体は倒れ休むことを良しとしない。
(無茶苦茶じゃねぇかよ……やめろ、もうやめろって)

「お前ら、もう止めろ!!」
3193:00(3minute) 6/10:2006/02/09(木) 15:01:40 ID:i+E4odgZ0

1分40秒経過―――

誰かの絶叫がする。
ようやく朦朧とした状態から意識を取り戻したクリムトが感じたものは
辺りに満ちている怒気と殺気、そして爆発したように増大している黒い衝動。
状況は分からない、どれほど意識を失っていたかも分からない。だが、その危険だけは理解できる。

異常な気配に焦燥しつつようやく現場まで辿り着いたウネが見たものは、
身体のあちらこちらから流血しているアリーナの姿と異常な姿で跳躍し剣を振るう銀髪の男の姿。
禍々しい白刃がアリーナへと迫り―――

「やめよ、テリー!」
「アリーナ!」

別々の方向より発せられた二人の賢人の声が重なって響く。
けれどどうすることもなくテリーの剣は遂にアリーナのわき腹を貫き、銀髪が朱に染まる。

死命の刹那、その瞬間アリーナのどこかで何かが切れる――そんな感じがした。
痛みも苦しみもない、まるで時が止まったかのように敵がよく見える世界がそこにあった。
腹から生えた剣をたどり腕、そして標的の頭を確認する。
ゆっくりと腕を振るい、力を乗せ、当て、それを標的へと伝えていく。傷から血飛沫が宙へ舞い散る。

そして、アリーナの拳は打撃ごとテリーの頭を石畳へと叩き付けた。
ごちゃり、と表現する感じの嫌な音がその拳と地面の間の状態を教えていた。


走馬灯。
たおやかな長い金髪の女性、凛とした紫髪の女性、栗色の髪をした女性。
(ミレーユ姉さん、迎えに?)
それが破壊の剣から離れた最後の数瞬にテリーが見た全て。
3203:00(3minute) 7/10:2006/02/09(木) 15:03:14 ID:i+E4odgZ0

1分45秒経過―――

舞台の静止を許さぬように側面からの攻撃がその場面を吹き飛ばす。
あたりを巻き込むように炎の魔法が拡散し、それを追うように衝撃波。
サイファーの技――始末剣・雑魚散らし。
栗色の髪に帽子の女は吹き飛ばされながら何とか受身を取ろうと反応する。
その一方隻腕の銀髪の男はただゴミのように吹き飛び、動かない。
十数秒の傍観の結果は最悪の形で証明されていた。

「やりやがったな…俺の目の前でよぉッッ!」

逆上していた。自分は何のためにここへ飛び込んできたのか?
殺人鬼を〆るため? 目の前で怪我人一人助けられずに?
怒りの半分は自分への怒り、それでいったい何を救うことができるヒーローだというのか?
もう余裕さえなく、非情さを剣先まで満たすつもりで剣を構える。
下手人である女は傷のためか俯いたままこちらを見ない。
代わりに強烈なプレッシャーをまとった老婆がサイファーの前へと進み出た。

「なんだ、バアさん!? 俺はそこの殺人鬼を止めるんだぜ? それとも邪魔する気か?」
「……はっきり言って何が起こったか分からんさね。
 だがあたしはこの子…アリーナを信じてるよ。…退いてくれないかね?」

その手に、戦場に似合いの魔力を集めながらあくまで穏やかな口調で、
しかし無言の威厳というか圧力というかを隠そうともせずにウネは語りかける。
けれど相手の危険度を察知してなおサイファーの内なる熱量は外へ噴き出ようとするのをやめない。

「殺しの仲間って奴か? 俺は、俺は騎士だ。悪を無視なんざできねぇ!
 守らなくちゃならねぇんだ、ここで折れる訳にゃいかねぇんだよ!」
「やれやれ、だから若さってヤツは。……アリーナの治療もせにゃならん、時間はかけない。
 あたしは容赦しないよッ!」
3213:00(3minute) 8/10:2006/02/09(木) 15:05:24 ID:i+E4odgZ0

2分経過―――

一触即発。ウネとサイファー、その対峙はわずか一瞬の動きで終結する。
サイファーが攻撃動作のために踏み込む、ウネが魔法詠唱のために手を掲げる、その一瞬。

「バシルーラ!」
「うおわあっっ!??」

盲目の賢者より放たれた青い光が尾を引いて飛び、その勢いのままサイファーをどこかへ運び去る。
強制転移呪文、バシルーラ。
音量を減らしながらなにかの捨て台詞を吐きつつ白いコートが宙の彼方へと消えていく。
目標を失ったウネは魔法のために手にまとわせた魔力を魔力の形で保ったまま、
クリムトの方を振り向く。

「助けてくれたのかねぇ? ま、あたしもわけの分からない戦闘は勘弁ってとこだったしね。
 ……敵意も殺意も無いその沈着な気配、見事なもんだ。余程の賢人と見受けるよ。信用しよう。
 さて…ケアルガ!」

後背のアリーナの方向へ手を一振り。まといついていた魔力が光と為してアリーナを包み込む。
回復の力が弱まっているために実際のところ少し上等なケアル程度の効果にしかならないが文句は言っていられない。
応急の回復を行って傷を検分する。肩、腕、足、そして危険な腹の傷。
今度は直接回復魔法の光を当てて怪我した部位を照らす。

「片腕の嬢ちゃんの時は杖があったけどねぇ、今回は何とも言えない…
 いや、あたしらしくないね。なぁ、そこの…」
「我が名はクリムト。あなたの名は、異界の大魔道士殿」

背中越しの呼びかけを予測していたかのように答えが返り、
後ろから重ねるように回復呪文の光がアリーナを覆う。彼もどうやら手助けしてくれるらしい。
3223:00(3minute) 9/10:2006/02/09(木) 15:06:07 ID:OOGnoPZU0
「ウネだよ。ノアの弟子、ウネ。大魔道士はちょいとこそばゆいかな、クリムト」
「…ウネ殿、宜しく願う。…アリーナは…かなり生命力が弱っているな」
「賢者二人だよ、あんたとならなんとかなるさ。……助力感謝するよ」
「いや。私もこの娘とは多少縁がある身だ。事態がやや呑み込めぬが、な」
「あんたもわからないのかい? なら、後でアリーナに聞くしかないね。
 それに………その子も葬ってやらないと」


終着点・3分―――

アリーナはいつしか痛みない心地よいまどろみへと落ちていた。
ウネは、とにかく彼女の回復を考えて魔力を研ぎ澄ませ、癒しを注ぐ。
クリムトは、複雑な心境をその失われた眼窩の奥で隠し持ちつつ目の前の生命を救わんとする。
サイファーは、女拳士と老魔術師に敵愾心を滾らせつつどこかへ落着する。


テリーを救えなかったこと。
手を汚したアリーナ。
わずか三分間の現実は彼らの心に影しか落とさない。
3233:00(3minute) 10/10:2006/02/09(木) 15:07:21 ID:OOGnoPZU0

【アリーナ (左肩・右腕・右足怪我、腹部重傷、昏睡) 
 所持品:プロテクトリング、インパスの指輪
 第一行動方針:不明
 基本二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する
【クリムト(失明、HP2/3、MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーンの町・中央部】

【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:マーダーの撃破
 基本行動方針:ロザリーの手助け
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:浮遊大陸のどこかへ落着】

【テリー(DQ6) 死亡】
【残り 59名】
3243:00(3minutes) 修正:2006/02/10(金) 16:51:23 ID:3Dt6WZZJ0
ウネのパラメータを以下に修正します。

【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:ザンデを探し、ゲームを脱出する


また、タイトルを
「3:00(3minute)」 から「3:00(3minutes)」
に修正します。
325名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/11(土) 04:13:43 ID:+6IQENLJO
326名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/13(月) 02:14:28 ID:RgQtzLlU0
保守
327眠る太陽 1/6:2006/02/13(月) 03:22:21 ID:fGzjUFd/O
ひとりになると色々と考えてしまう。
やっぱり単独行動はやめといた方が良かったかも。とティーダは少しだけ後悔した。
魔女の放送があったのが十分くらい前。そこで一行はロランとフルートの名を聞く。
決別したとはいえ行動を共にしていた仲間が死んでユウナはかなり落ち込んだ。
『ゲームが始まってから知り合った人が亡くなったのは、ロランさんとフルートさんが初めてなんです。
 前の世界でもですが、あまり人に逢えませんでしたから』
とプサンがこっそりと教えてくれた。
だがティーダとしては、とっととサスーン城を調べて早くアーヴァイン達の所に戻りたいのが本音だ。
他にも首輪の解析についてや、どうせならターニアやロックやリュックらを探して行動を共にしたい。
という訳で、時間を無駄にしない為にも不安定な状態のユウナをプサンに任せ、ひとり東棟を調べているところだった。
「……真っ暗だ」
ふと窓の外に目をやって呟く。
世界はすっかり闇に包まれ、月の明かりだけが微かに輪郭を浮かび上がらせている。
ティーダはぼんやりと月を見つめた。そうしていると考えてしまう。
はたして自分は何なのだろうか、と。
元の世界・スピラでユウナ達と旅し、悪の根源である敵を倒して世界を救った。
だがそれと同時に、ティーダは消滅した。ティーダは夢の世界の存在である。夢は現実ではない。
世界が平和になった時、それは同時に夢が覚める時であった。
だからティーダは消えた。
消えた時の事が昨日のように……いや、一昨日の事のように感じられた。
──だったら今ここに存在している俺は何なんだろう。
そう考え、不安になった。
もし仮にゲームを抜け出して元の世界に帰ったとしても、はたして自分は存在できるのだろうか、と。
自分はどこに帰る事ができるのだろうか、と。
いまここにいる自分は、また誰かの見ている夢なのだろうか。
それともこの世界も痛みも人々の思いも夢なのだろうか。
こんな馬鹿げたゲームは単なる虚りなのだろうか。
だとしたらどんなに幸せなことか。
「そこの君……」
「!!!おんぎゃあああああああぁぁぁぁぁ────ッス!!!!!」
328眠る太陽 2/6:2006/02/13(月) 03:24:44 ID:fGzjUFd/O
いきなり背後からした声に驚いて、ティーダは廊下中に叫び声を響かせた。


エドガーは考えた。
目の前に少年がいる。窓の外をじっと見ている。
一人でいるという事は……殺し合いに参加している可能性も低くない。
の、だ、が。
後ろ姿はあまりにも無防備すぎる。
大体まだこちらに気付いていない。
城外の様子を伺っているという訳でもなく夜空を眺めている。
剣を持つ手も緊張感なくだらんと下がっている。
「…………」
エドガーは考えていたが、その最中もこちらに気付く気配はない。
こっちは気配を消している訳でもないのに。
とりあえず危険性はないだろうと踏んで、エドガーは声をかける事にした。
「そこの君……」
「!!!おんぎゃあああああああぁぁぁぁぁ────ッス!!!!!」
エドガーは思わず耳を押さえる。
盗聴器の向こうの魔女もびっくりしているだろうな、と思うとちょっとザマーミロだった。


魔女の放送を聞いてリュカは現実へと引き戻される。
ビアンカがいたら、いつまでくよくよしてるの、と怒られてしまうんだろうな。
そう思うと、次第にリュカは気力を取り戻す。
自分のやるべき事は落ち込む事じゃない、彼女の分までタバサを守る事だ。
リュカはビアンカのリボンをぎゅっと握り締める。
そしてビアンカの亡骸に別れを告げると、静かに部屋を出た。
……あああああああぁぁぁぁぁ────
例えるならば夜の墓場でお化けに出会ったかのような叫び声を聞きながら。
「……って、叫び声!?」
329眠る太陽 3/6:2006/02/13(月) 03:26:33 ID:fGzjUFd/O
リュカは不安を抱えながらタバサらの待つ部屋へと急いだ。
だが、その足は部屋へと向かう順路の途中で止められる。
廊下で知人を発見して。
「エドガー!?」
「ああ、リュカ。遅いから様子を見に行こうと思っていたところだ」
足音でリュカに気付いていたエドガーは、わざとらしく軽い口調で話す。
リュカは頭を抱えて考えた。
「いや、あの、それより……そのズルズルと引き摺ってる人は誰なんですか」
「よくぞ聞いてくれた」
とエドガーは悩ましげに答える。
「自分が気を抜いていたくせに、話し掛けたら勝手に驚いて慌てて転んで気絶した、見知らぬ間抜けな少年だ」
「はぁ」
さっきの叫び声の主はこの少年だったのか。
そう思いながら、リュカは気絶する少年──ティーダを見つめた。


「普通に気絶してるだけですね」
ベッドに寝かされたティーダの容態を看て、セージは言った。
「でもこの人、本当にゲームに乗ってない安全な人なんですか?」
「うーむ」
エドガーは考える。
一人で行動していたという事は、仲間とはぐれたか、もしくは仲間が殺されたか。
それより注目すべきはサックの中身。
死体の首から拝借したと思われる首輪が入っていた。
魔女に与えられた忌まわしき首輪を形見に持つという事は考えられない。
導き出される答えは一つ、この少年は首輪を調べて、おそらく外そうとしている。
つまりゲームからの脱出を試みている。
それに何より彼の持つ剣は、殆どと言っていいくらい汚れていない。
330眠る太陽 4/6:2006/02/13(月) 03:28:38 ID:fGzjUFd/O
「彼の状況から推測すると99%シロであ……」
「そうだリュカさん。鞭と指輪はどうするか決まりましたか?」
無視されてエドガーはちょっと悲しかった。
「ああ」
リュカは答える。
「二つともタバサに持たせるよ。彼女に教わっていたタバサの方が鞭の扱いは上だし、護身用という事で」
「教わっていた……んですか。それは頼もしいですね……」
セージは窓の外を眺めているタバサをちらりと見る。
あの小さい身体で鞭を振るう姿は圧巻だろうな、と想像すると少し顔を引きつらせた。
「鳥さんいないなぁ」
タバサはがっかりしたように呟いた。
新しい客人についての情報を貰おうと思っていたのだが、夜の為か鳥は見当たらない。
「鳥はおやすみの時間みたいだね」
リュカはそう言ってタバサに歩み寄り、同じように窓の外を見つめた。
「「あ」」
そして父娘の声が重なった。
直後、破裂音のような爆発音のようなものが微かに耳へと入る。
「……花火?」
音だけ聞いたセージが呟いたが、タバサは振り返って顔をぶんぶんと横に振る。
「光ったの!真っ白に!遠くのほうで!」
「へぇ、そうなんだ……うん」
セージは相槌を打ったが、表情は困惑している。リュカの方に視線をやって助けを求めた。
「森の方に白い光柱が見えました。おそらく魔法の一種だとは思うけど」
「交戦中だろうか?」
同じく音だけを聞いたエドガーが尋ねる。
「判らないけど、恐らくは。だけど……僕たちがどうこうできそうな距離じゃない」
「なるほど。逆にこちらに被害が及ぶ事は無いと思って安心するのが懸命か」
「悔しいけど、そうだね」
本当に悔しそうにリュカは呟いた。
自分を落ち着かせるように、再びビアンカのリボンを握り締めた。
331眠る太陽 5/6:2006/02/13(月) 03:33:36 ID:fGzjUFd/O
「あ、お父さん、そのリボン」
タバサがリュカの手に気付き、それからリュカの表情を見る。
「ああ、うん。これは……」
「私が結んであげる!」
タバサはリボンを奪い取ると、リュカの右腕へと巻き付けていった。
「これでいつでもお母さんと一緒でしょ?」
そう言って微笑んだ娘の頭を、リュカはそっと優しく撫でた。


「…………」
「……この釜、一度は試してみたいですねぇ」
ユウナとプサンは西棟の隠し部屋へと戻って待機していた。
ずっと黙ったまま落ち込むユウナと、手持ち無沙汰に錬金釜を調べるプサン。
「…………」
「……ティーダさん早く帰ってくるといいですねぇ」
「…………」
ティーダさん、本当に早く帰ってきて下さい。気まずいです。
と切に願うプサンだった。
幸か不幸か、二人のいる隠し部屋にはティーダの大絶叫も例の爆発音も届いていなかった。
332眠る太陽 6/6:2006/02/13(月) 03:35:25 ID:fGzjUFd/O
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服
 第一行動方針:気絶中
 第二行動方針:ユウナ達の所へ戻る/首輪の解析を依頼する
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)+マテリア(かいふく)、ビアンカのリボン、ブラッドソード
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、イエローメガホン、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー
 第一行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子
 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート、雷の指輪
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【現在位置:サスーン城 東棟の一室】

【ユウナ(魔銃士、MP1/2) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊
 第一行動方針:落ち込む
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:ティーダを待つ
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:サスーン城 西棟の隠し部屋】
333娘と父のmonologue 1/7:2006/02/15(水) 00:47:47 ID:VC8WERKGO
私が悟りの書を読んでいるときに、あの放送が聞こえました。

私の大切な人の名前が呼ばれました。
みんなの大切な人の名前が呼ばれました。
呼ばれるのは必ず、誰かの大切な人である誰かです。
人だけではありません。
魔物も、鳥も、虫も、花でさえも、全ては尊い命です。
どうして誰かの手で奪う事ができるのでしょうか。
私は不思議でなりません。

お母さんの名前とギルダーさんの名前は続けて呼ばれました。
お母さんを殺したという女の人の話を、昼間に聞きました。
私はその女の人を許せる自身がありません……。
でもその女の人も誰かの大切な人で、死んだら誰かが悲しむと思うと、なんだか苦しい気持ちになりました。

それからすぐに、はぐりんの名前も呼ばれました。
一緒に遊んでくれた、一緒に旅をした、一緒に戦った、大切な仲間です。
私は、頑張って涙を堪えました。

そして最後に呼ばれのはデールさんでした。
一瞬だけ、時が止まったような気がしました。
昼間にデールさんに襲われたときは、とても恐かったです。
でもその放送のときに思い出したのは、優しかったデールさんのことばかりでした。

昨日の同じ時間、サンチョさんやピピンさんの名前を聞いたときと同じ気持ちでした。
とても悲しくて、悔しかったです。

他にも沢山の人の名前が呼ばれていました。
でも、そのときはあんまり覚えていませんでした。
聞き覚えがあるようなないような、そんな曖昧な感じでした。
334娘と父のmonologue 2/7:2006/02/15(水) 00:49:29 ID:VC8WERKGO

放送が終わると、椅子に座って静かに聞いていたエドガーさんが立ち上がりました。
「リュカの様子を見てくる」と言うと、静かに部屋を出ていきました。
すぐに、扉の向こうから深い溜め息のようなものが聞こえてきました。
そのときにエドガーさんが何を考えて何を思っていたのかは分かりません。
けれど、その後に聞こえてきた足音は決して軽いものではないと思いました。

セージお兄さんは手を組んで、顔を俯かせていました。
その姿が、どこかお祈りのポーズにも似てると思いました。
私は窓辺に歩み寄ると、空を見上げてお祈りをしました。
どうか、失われていった魂が天国で幸せになれますように。
そんな事を、お願いするように祈りました。

もう一度お兄さんのほうを見ると、たまたま目が合いました。
お兄さんと出逢ってから、色々なお兄さんの姿を見てきました。
明るく話してくれるお兄さん、戦うお兄さん、優しく慰めてくれるお兄さん。
今のお兄さんはどのお兄さんでもありませんでした。
お兄さんの目はとても深く悲しんでいました。
私はどうしたらいいのかも分からず、何か言ってあげたい気持ちもありましたが、言葉が出てきませんでした。
「そんな顔しないで」とお兄さんは笑顔を作りながら言いました。
私はどんな顔をしていたのでしょうか。
「お兄さんも、そんな顔しないで」と私も言いました。
「そんな悲しそうに笑わないで……」

お兄さんはぽつりぽつりと話してくれました。
放送で仲間が呼ばれたこと、仲間の人がどういう人だったのかということ。
昨日も少し聞いたような気がします。
けれど喉の奥から言葉を紡ぎだす姿は、とても昨日とは違うことを聞いているかのような気になります。
私は黙って耳を傾けていました。
お兄さんの仲間を思う気持ちや悲しい気持ちが伝わってくるような感じでした。
335娘と父のmonologue 3/7:2006/02/15(水) 00:50:57 ID:VC8WERKGO


僕は涙が止まっても動こうとせず、じっとビアンカを見つめていた。
正しくは、元はビアンカだった残骸だけど、そんな表現はしたくなかった。
どれくらいの時間そうしていたのか分からない。
現実に戻るきっかけを与えてくれたのは、悔しい事に魔女の放送だった。

『ビアンカ』『ギルダー』『はぐりん』『クジャ』
僕は黙って放送を聞いていた。
『リノア』
こうも聞きなれた名前が連続するとなんだか滅入ってくる。
そうか、はぐりんを見つけたとき、すでに彼女は亡くなっていたのか。
そうか、リノアが亡くなったとき、ジタンはクジャを助けられなかったのか。
滅入ってる反面、冷静に考えている自分が恐ろしかった。

クジャが亡くなってしまった今なら分かる。
僕はレックスを殺したクジャが本当に憎くて許せなかった。
たとえジタンの兄でも、森で会ったときのあの迷っている姿を見たとしても。
だけどもっと分かったこともある。
死んでしまったら、憎むことも許すこともできないんだ。
だけど、だけど……。

『シンシア』
きっと僕はビアンカやシンシアを殺したあの女を、絶対に許せないだろう。
罪を償って、殺してきた人々に心から謝ってほしい。
それが、建前。
本音は、もっと残酷だった。
次にあいつに会ったら、あいつがシンシアを殺した血みどろの刃で殺してしまうかもしれない。
息が止まったあとも、顔が分からなくなるまで、人間としての形を留めていられないまで、斬り刻んでしまうかもしれない。
そんなの嫌だけど。
冷静になろうとしても、心は止められないだろうと思った。
336娘と父のmonologue 4/7:2006/02/15(水) 00:53:34 ID:VC8WERKGO

死んだ後に“死んでしまったら”なんて、都合のいい言い訳なんだ。

『デール』
最後に呼ばれたのは、自分を殺そうとし、リノアを殺した、親友の弟の名前だった。
彼も……いや、もう、やめよう。

こうやって考えていると、心が蝕まれていくのが分かる。
こんな自分は嫌だ。こんな自分は恐ろしい。
この気持ちを押し戻すかのように、彼女のリボンを固く握り締めた。
『いつまでくよくよしてるの』
と、彼女なら、きっとこう言うんだろう。
そうだ。落ち込んだり、悲しんだり、憎んだり、そんな事をしている暇は無い。
タバサを守るんだ。そして残りの仲間を、みんなを。

それから。僕はある人の姿を思い浮かべた。信じられないけど、確かにこの大陸のどこかにいる。
僕が小さい頃、亡くなった人。強く、厳しく、優しい、あの人。
僕の父。
父さんは成長した僕を見たらなんと言うだろうな。
父さんにタバサを見せてあげたいな。
きっとびっくりするんだろうな。びっくりさせてあげたいな。
ビアンカの事や、ヘンリーやデールのことは覚えているかな。
この放送を聞いて、悲しんでいるのかな。
『ほら、早く立って』
そうだね。しっかりと踏みしめて、行こう。タバサのところへ。それから……父さんに会いたいな。

ビアンカ。
まだ君の所へは行けそうもないから、レックスと待っていてほしい。
僕やタバサや他のみんなのことも、見守っていてほしいんだ。
337娘と父のmonologue 5/7:2006/02/15(水) 00:54:59 ID:VC8WERKGO


お兄さんの話は途中で終わってしまいました。
どこからか、叫び声が聞こえてきたからです。
男の人の声で、お父さんなのかエドガーさんなのか全く違う人なのかは分かりません。
すぐ近くではないけれど、そんなに遠くでもないことは分かりました。
お兄さんは途端に厳しい目になって、空気がぴりぴりしたものになりました。
「下手に動かないほうがいいな」とお兄さんは言いました。
そしてじっと、扉のほうを警戒していました。

どれくらいそうしていたかは分かりませんが、数分くらい、しばらくすると複数の足音が聞こえてきました。
扉の前で止まり、ノックが響きました。
「入るぞ。開けてくれ」と言った声は、エドガーさんでした。
「ごめんなさい、鍵開けっぱなしでした」と、お兄さんは胸を撫で下ろしながら言いました。
扉が開けられるとエドガーさんとお父さんが立っていました。
私は思わずお父さんに駆け寄って、抱きついてしまいました。

エドガーさんは誰か男の人を背負っていました。
「レディならともかく、なんで私が野郎を背負わなければならないのだ」と不満を言っていました。
そして男の人をベッドへと下ろしました。
「だから僕が背負いましょうかって言ったのに」お父さんはエドガーさんに言いました。
エドガーさんは何も言いませんでした。
私はエドガーさんの、お父さんの身体を気遣う優しさが、ちょっぴり格好良くて尊敬しました。

男の人は、びっくりして転んで気絶しちゃったそうです。
格好良いのに間抜けだな、と小麦みたいな肌を見つめながら思いました。
この男の人のことは誰も知らないそうです。
私は、鳥さんなら何か知ってるかもと思って窓の外を探しましたが、鳥さんはいませんでした。
338娘と父のmonologue 7/6:2006/02/15(水) 00:57:14 ID:VC8WERKGO

窓の外を眺めていると、お父さんが歩み寄ってきました。
そして、遠くの方でした光を一緒に目にすることとなりました。
とても凄い光、見たことも無い光でした。
お父さんは魔法だと言いました。
私もあんな魔法が使えたら、みんなの事をもっと助けてあげられるのに。
私の身体は少し震えてましたが、恐くて震えてたんじゃなくて、胸が高ぶって震えていました。
お父さんは、お母さんのリボンを握り締めて悔しそうにしていました。
誰かが戦っているのに、止めてあげられないのが悔しいそうです。
そうだ、あの戦いでまた誰かが死んじゃうかもしれないんだ、そう思うと悲しくなりました。
お父さんは左手が動かないそうです。
お母さんの形見と一緒にいたいけど、結ぶ事もできずに今は握り締めているのだと思いました。
私はお父さんの手からリボンも取ると、腕に結んであげました。
お父さんは、温かい手で頭を撫でてくれました。
私はお父さんのこの手が大好きです。

それから少ししてから、お父さんは私のサックにお母さんが持っていた鞭を入れました。
次に私の親指にお母さんがギルダーさんから貰った指輪をはめました。
「考えたんだけど、僕にはリボンがあるから、タバサにもお母さんの物を持っていて欲しいんだ」とお父さんは言いました。
私はお母さんから鞭の使い方を教わっていたときのことを思い出しました。
「それから、これは雷の指輪なんだって。レックスみたいだね。きっとお兄ちゃんが見守ってくれるよ」
私は少し泣きそうになりました。
でも泣かなかったのは、お母さんとお兄ちゃんが私を包んでくれているような気がしたからです。
穏やかな、安らかな、そんな気持ちになりました。
だから私は、自然と笑顔になりました。

はぐりんやデールさんのことについては、なんだかお父さんに聞けませんでした。
でもお父さんも放送を聞いたはずだから、きっと悲しいと思います。
339娘と父のmonologue 7/7:2006/02/15(水) 00:59:07 ID:VC8WERKGO
それから私は、また悟りの書を読んでいました。
けれどだんだんと目が重たくなってきて、いつの間にか眠ってしまったみたいです。
昼間もお兄さんの魔法で眠っていたのに、みんなに申し訳ないです。
けれど、もう少しだけ。
お父さん、お母さん、お兄ちゃんと、みんなで原っぱをお散歩している夢を、もう少しだけ見させていてください。

それから、言い忘れていました。
おやすみなさい。


【タバサ(睡眠中 HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート、雷の指輪
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)+マテリア(かいふく)、ビアンカのリボン、ブラッドソード
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、イエローメガホン、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー
 第一行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子
 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【ティーダ(気絶中 変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服
 第一行動方針:ユウナ達の所へ戻る/首輪の解析を依頼する
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:サスーン城 東棟の一室】
340騎士は災を振りまき進む 1/13:2006/02/16(木) 03:25:31 ID:pC3Tbrcs0
サスーン城を出てから、特に何事も無く森の中を歩いていた。
あの忌まわしい放送があるまでは。
次々と死者を読み上げる魔女の声に足を止めて顔をしかめる。
私にとって知己の者の名は呼ばれなかったものの、一時とはいえ共に過ごした者の名が呼ばれた。
「アグリアス…」

もしあの時自分がアグリアスの変わりにセージ達を護ってれば彼女は死ななかったのかもしれない。
それはひとつの可能性。最早叶うことも無い可能性。
ならば過ぎた事を悔やむより、これからの事を考えよう。
それがアグリアスへの供養にもなるだろう。

ふと同行者であるゴゴの方を見てみる。
彼も覆面の上からではよく分からないが、私と同じような顔をしているのだろう。
どうしたと尋ねればおそらく「マティウスの物真似をしている」とでも言うのだろう。
だが今まで一緒に過ごしてきていたのだから分かる。
彼も悲しんでいるのだろうと。
しかしいつまでもこうしているわけにはいかない。
「ゴゴよ、行くぞ」
そう言って再び歩き出した。

暫く進むとそれほど遠くない場所から爆発音が聞こえてくる。
「ゴゴ、どうする」
どうやらカズスへ行くためには爆発音の発信源近くを通らなければならなそうだ。
安全に遠回りをしていくか、それとも気にせずに通っていくか。
どっちにするかをゴゴに尋ねる。
341騎士は災を振りまき進む 2/13:2006/02/16(木) 03:26:35 ID:pC3Tbrcs0
「私はお前の物真似をしている。お前が決めた道が私の道だ」
「ふ、そうだったな」
もう何回も聞いたこの問答に苦笑して答えを決める。
「では、爆発音の方へ向かうぞ。あれほどの音だ、ゲームに乗ったものが居るのだろう。
 例え居なかったとしてもゲームに乗ったものが聞きつけ現れる可能性もある。
 先もエドガーに言ったが我らは率先して敵を倒しに行くべきだろう。
 それにカインとやらとの約束は遠回りしたらどのみち間に合わんしな。
 ならば少しでも敵を減らしておいた方がいい。行くぞ」
そう言うなり爆発音の方向へ走り出した。



うっひゃあ、まだ追いかけてくるよあのヒト。しつこいなぁ〜。
でもあのヒトまで残ってたらあのカメがピンチになっちゃうから、これはこれで良かったのかなぁ?
でもゲームに乗ったヒトなんか連れてきちゃったらリルム達怒るかもなぁ。
ってそんな事言ってる場合じゃないんだってば!
なんとか諦めてくれないかなぁ。
そんな希望を込めて後ろを振り向いてみるけども―――

「イオラ!」
僕のすぐ後ろで爆発が起こる。
はぁ、諦めてくれるわけ無いよね。
このトンベリを治療するためにはリルムに頼るしかないし、やっぱ仕方ないか。
僕だけであのヒト追い返す自信なんてないしさ。
ゼル、ごめんね〜、この子達を救うためなんだ。
だからこのヒトを連れてきちゃう事許してね〜!
342騎士は災を振りまき進む 3/13:2006/02/16(木) 03:27:39 ID:pC3Tbrcs0
あ〜、この子も辛そうな顔しちゃって。
いくらリノアの知り合いを死なせるわけにいかないからって、あのカメを見捨てるような形になっちゃったんだものね。
それにしてもまだ着かないのかな、このままじゃこのトンベリも危ないよ。
あ、見えてきた見えてきた。やっぱり驚いてる。
後ろからボウガンを構えたヒトが追いかけてるんだから驚くのも無理ないよね。
だからそんな事言ってる場合じゃないんだってば!
あ〜もう、あんな近くにあのヒトがいるんじゃ説明する暇もないよ、どーすればいいのさ。
えーい、もうどうにでもなれだ!
「リルム! 僕が後ろの奴をなんとかするからこの子達の事お願い!」

ふー、なんとかあの子達をリルムに預けることができたよ。
もしかしたら僕たちを無視して子供達の方へ向かうかもしれないと思ったけど、その心配は無かったみたい。
ゼルがあのヒトの相手をしてくれていたからかどうかは分からないけど、あの子達が無事だからいいよね。
っと、そんな事言ってないでゼルに加勢しなきゃね。
あのヒト結構変わったアイテム持ってるみたいだし、何かあったらいけないもんね。



ユウナ達もアーヴァインもまだかなぁ。
そう思いながらも最後のパンを口に含む。途端、爆発音が聞こえる。
私は思わずパンをそのまま飲み込んでしまった。
ゼルが慌てて水を渡してくれたのでおもむろに飲んだ。それでようやく落ち着く。
ふぅ、危なかった。パンを喉に詰まらせて死亡なんて嫌すぎる。
「なぁ、さっきの爆発音」
ゼルも気になったのか聞いてくる。
「確かあいつが焚き木拾いに言った方向だよ」
アーヴァインはもしかして何かに巻き込まれたのだろうか。
「いちおー警戒しといた方がいいかもね」
「そうだな」
343騎士は災を振りまき進む 4/13:2006/02/16(木) 03:28:19 ID:pC3Tbrcs0

私は何事も無いことを祈った。
これ以上仲間が、誰かが死ぬのは嫌だ。ケバケバおばさんのいいなりになるのは嫌だ。
みんなで生きて帰って、そしておじいちゃんに自慢するのだ。
たくさん、たくさん辛い事があったけど、それでも素敵な仲間に出会ったと。
だけどそんな私の思いに反して、アーヴァインが走って帰ってくる。
怪我人っぽい子供とトンベリ、それにゲームに乗ったっぽい奴のオマケ付きだ。
「リルム! 僕が後ろの奴をなんとかするからこの子達の事をお願い!」
アーヴァインがそう叫び子供とトンベリを私の前に置く。
ゼルは追いかけてきた奴と戦ってるようだ。
「なぁ、トンヌラを助けてくれよ! このままじゃ死んじゃうよ! もう誰にも死んで欲しくないんだ!」
子供の方が私の肩を揺さぶり必死にお願いする。
それを聞き、トンヌラと呼ばれたトンベリの方を見る。
酷い怪我だった。私に治せるかどうかわからない。
でも何もしないで諦めるのは嫌だった。例え助からないかもしれなくても、自分に出来ることをしたかった。
私と同じ「誰にも死んで欲しくない」という気持ちを持つ子供に応えたかった。
「頼むよ、トンヌラは俺の仲間なんだ!」
「落ち着いてよ、このままじゃ治療できないって」
そういうと子供は手を離す。
「ケアルガ!」
魔法の言葉を紡ぐと淡い光がトンベリを包む。それを何度も、何度も繰り返す。
しかし何度回復魔法を使おうとも一向に傷が塞がる事も無く、ただ焦りだけが生まれる。
「リルム、そのトンベリは大丈夫!?」
「わからない、こいつの気力に賭けるしか!」
「トンヌラ、頼むから死なないでくれよ!」
事実、回復魔法の効果が落ちていることもあって、確実に治るという確証は得られなかった。
悔しかった。目の前の怪我人を見ているだけしか出来ない自分の無力さが。
悲しかった。目の前の怪我人を満足に治すことの出来ない自分の無力さが。
だから自分の出来ることをやった今は、ただひたすら祈った。このトンベリが助かることを。
344騎士は災を振りまき進む 1/13:2006/02/16(木) 03:28:54 ID:pC3Tbrcs0



『イオラ!』

ドカーンッ

叫び声と同時に爆発音が聞こえる。
「ゴゴよ、聞こえたか?」
「ああ、先程の爆発音だ」
「急ぐぞ」
先程と同じ爆発音、だが聞こえた場所は違うようだ。
恐らく移動しながら戦っているのだろう。
だんだん戦闘音がはっきりと聞こえてくる。
その音の方へ慎重に油断無く、だが急いで向かっていく。
しばらくすると白魔道士とトサカ頭の男が、魔物に乗った騎士と戦っているのが見えた。
そこから少し離れてトンベリと少年、それとトンベリを治療している少女の姿。
どちらが敵なのだろうか、普通に考えると一人でいる魔物の騎士の方が敵と考えるべきだろう。
だがあちら側が敵で無いという保証も無い。
故にどちらに付くべきか見極めるために、直ぐにでも動けるようにして気配を悟られないように様子を見る。

あの回復魔法を使う少女、あれはシロだ。
この状況で無力そうな少年と一緒にいて、かつトンベリを回復している事からしてゲームには乗っていないだろう。

トンベリもシロだ。
魔物である事からゲームに乗っているかとも考えられたが、先ほどから少年がしきりに安否を気遣っている。
さらに『俺の仲間なんだ!』という声も聞こえた。
少年の言葉どおり、元の世界からのかここに来てからかは分からないが、仲間なのだろう。
それに魔物にあるべきものの邪気が感じられない。
345騎士は災を振りまき進む 6/13:2006/02/16(木) 03:29:41 ID:pC3Tbrcs0

では少年は? 彼もシロだ。
トンベリの時に言ったが、彼とトンベリは仲間らしい。
あのような純真無垢な少年が嘘をついているとも考えづらい。
残りはあちらで戦闘をしているものだが…
ここまで考えたら白魔道士から声が聞こえた。
トンベリの容態を少女に聞く声だ。
となるとあの白魔道士もシロだろう、共に戦っているトサカ頭も同じだ。
ならば残った魔物の騎士が襲撃者なのだろう。
この魔物の騎士も普通の魔物に比べれば邪気は薄いが、代わりに強い殺気を感じる。
ならば私達がどうするかは決まった。
「ゴゴ、あっちに加勢するぞ」
「わかった」



あーもう、ホントにしつこいなぁ、なにをそんなに執着してるんだか。
とはいえなんとか防いでる状態だしこのままじゃやばいよなぁ。
まさか二人がかりでも互角だとは思わなかったよ。
かといって子供達に加勢を頼むのも情けないし。
というよりそんな危険な事子供にさせられないよ。
そんな風に考えていたら、いきなり変な二人組みが現れるし。
う〜ん、まさか増援? これ以上敵が増えたらもうどうしようもないよ!
あ〜、もうどうすりゃいいのさ、スコール助けてよ〜。

ヒュッ
346騎士は災を振りまき進む 7/13:2006/02/16(木) 03:31:23 ID:pC3Tbrcs0
いたっ!
突然右肩に痛みが走る。
びっくりしてた隙をつかれてボウガンを撃たれて思わず荷物を落としちゃったよ。
その瞬間、荷物に杖が投げつけられ壊れたと思ったら、さっきまで闘ってたヒトが目の前に現れて
「イオラ」と叫んで地面が爆発したと思ったら、落ちた荷物を持って逃げて言っちゃったよ。
泥棒ーって叫びたかったけど、よくよく考えたら僕が先に盗んだんだった。
それに爆発による砂塵で周りもよく見えないし、さっきの乱入者も気になるしね。
逃げたって事は、あのヒトの仲間じゃないみたいだし、話し合いで解決できるといいなぁ。
それにしても僕があのヒトの荷物盗んだから追いかけてきたのかなぁ。
それなら僕の自業自得じゃん、これからは気をつけようっと。
…っと、砂塵が晴れてきたみたいだ、どれどれ?
ふぅ、どうやらあっちは戦う気はないみたいだね、流石に連戦になるんじゃ僕も疲れちゃうよ。
おっと子供とトンベリはどうなったんだろう。



「きゃあ!」
黒服の男と派手な服の男が飛び出したと思ったら魔法による爆発。
その衝撃及び爆風により、リルムは少し吹き飛ばされた。
「いったーっ、どーなったの?」
周りを見回すが砂煙のために良く見えない。
だが遠くへ逃げていく足音が聞こえた。
良く分からないけど魔物は逃げていったのだろうか。
それより新たな乱入者だ、特に殺気が感じられないからゲームには乗っていないみたいだが……
暫くの沈黙―――そして砂煙がはれていく。

そうだ! 子供とトンベリは!!?
直ぐに辺りを見回す。
そこに見えたのは………
347騎士は災を振りまき進む 8/13:2006/02/16(木) 03:32:15 ID:pC3Tbrcs0

「トンヌラァァァァ―――ッ!!!!!」

泣き叫ぶ子供と、血の池に伏せピクピクと動くトンベリの姿。
「そ…そんな!」
魔物の放った魔法が運悪く直撃したのだろう。
その体表の一部は焦げて黒くなっていた。
もはや助けることもできないだろう状態。
なにが自分の出来ることはやっただ。まだ自分に出来ることはあった。
そう、いくらこっちに攻撃をしてこないからといって気を抜くべきではなかったのだ。
もっと警戒していれば、注意していれば、回避できたかもしれない悲劇。
自分の不注意のせいで目の前のこのトンベリを救えなかった。
「くそっ、俺達が油断していたせいで!」
「ごめん! 戦場での一瞬の油断がどうなるかなんて知っていたはずなのに…」
アーヴァインとゼルが悔しそうに子供に謝る。
「トンヌラ、頼むよ。俺を置いて行かないでくれよぉ」
子供はそれを聞いていないのかトンベリに縋り付いて泣いていた。

「私達のせいなのか…?」
マティウスとゴゴは、逃げた魔物を追うのも忘れ目の前の悲劇を見つめていた。



ぼくはお兄さんに連れられて、りるむって人に預けられました。
りるむは驚いていたけど、手をぼくにかざしました。
すると手から光が現れぼくを包みました。
ほわほわして気持ちよくなり、少し楽になってきました。
ぎどさんが「死んでしまうかもしれんぞ!」と言ってたので怖かったのですが、怖くなくなりました。
348騎士は災を振りまき進む 9/13:2006/02/16(木) 03:33:02 ID:pC3Tbrcs0
これでぼくは助かるんだと思いてりの方を向きました。
でも首が動いてくれませんでした。
だからかわりにてりに話しかけようとしました。
そしたらむにょむにょしたイヤな感じがしました。
するとぼくのうであたりが爆発して、ぼくもてりもりるむも吹っ飛ばされました。
ぼくはとても痛くて泣きたくなりました。
でも泣く力もなかったので、じっとしてました。
今度こそぼくは死んでしまうのでしょうか。
そう思ったら眠くなってきました。
だから寝ようと思います。

「…ヌラ………………置いて………いで…よぉ」
目の前から声が聞こえてきました。
ぼくは目をあけました。
てりが泣いています。どうして泣いているのでしょうか。
ぼくは分からなかったので聞いてみようと思ったけど声が出ません。
「死なないでくれよぉ、俺を一人にしないでくれよぉ」
そうか!と思いました。そして理解しました。
ぼくはもう死んでしまうのだろう。それをてりは悲しんでくれているのだろう。

今までぼくの友達は宝箱のなかの2人だけでした。
いつも一緒にいるから死ぬときも一緒なのだと、そう思ってました。
だからぼくにはいませんでした。ぼくの死を悲しんでくれる人が。
だからぼくは嬉しくなりました。てりがぼくの死を悲しんでくれたことを。
だからぼくは最後にこういいました。
「てり、ありがとう」と……………


349騎士は災を振りまき進む 10/13:2006/02/16(木) 03:34:05 ID:pC3Tbrcs0
危なかった、あの二人が現れなかったら私も危なかっただろう。
あそこで退くのは騎士としてのプライドが許さなかったが、マントを取り戻したからいいだろう。
それよりリュカ様の下へ急がねば。
確かサスーンと言っていたな。
地図によると、ふむ、運良くサスーン方面へ逃れられたようだ。
あの女は同盟といいながらリュカ様に牙を剥くは必至。
ならば奴よりサスーンの近くにいる今、一人で行かせて貰おう。
あそこでアリーナがやられるもよし、カメのモンスターがやられるもよし。
少なくとも私がリュカ様に会うまでの時間稼ぎにはなるだろう。
となると魔法を使いすぎた今、少しは休んでおきたいな。
近くには誰もいないな? さて小休止だ。

暫く休んでいると二人ほどの足音が聞こえてくる。
私が逃げてきた方向からではないから追っ手ではないみたいだ。
幸い私には気づいていないみたいだ。
先程のようになるといかないからここはやり過ごすとしよう。

「はぁっ…はぁっ…ふぅ、なんとか気づかれなかったみたいだな」
「はぁ、はぁ、うん、悔しいけどあんな大きな魔物が相手じゃ逃げるしかないよ」
巨大な魔物…まさかブオーンとやらか!?
こいつらの証言からするとこっち方面へ向かっているわけではないからまずは安心だ。
むしろ今まで私達が戦っていた場所へ向かっているようだ。私はホントに運がいいようだ。
これでブオーンがアリーナ達とぶつかってくれれば…

「それより早くサスーンへ行かなきゃ」
「あぁ、もしかしたらあの魔物もリュカの奴が命令してるのかもしれない」
そう言った時、一瞬だが尻尾の男の方の顔が怒りに満ちたのを私は見逃さなかった。
私は二人にばれないようにサスーンへ急いだ。
(私の事がばれたらリュカ様が危険かもしれない、急がなければ!)
350騎士は災を振りまき進む 11/13:2006/02/16(木) 03:34:49 ID:pC3Tbrcs0



そしてこれらの出来事の少し前、放送直後の出来事―――
ジタンとフィンは放送が終わると打ちひしがれたように膝を突いた。
「ベアトリクス、フライヤ…」
(くそっ、また俺は仲間を救えなかったのか!)
誰かに助けられてばっかりで、誰かを助けることさえままならない。
そんな自分に嫌気がさした。
だが隣から聞こえる絶望にも似た声に我に返る。
「アイラ、フライヤさん、ギルダーまで…」
「フィン……」
「ジタン、僕の知り合いはみんな死んじゃったよ。止めようと思ってたギルダーも死んじゃった」
(そうだ、辛いのは俺だけじゃないんだ、フィンは俺より辛いんだ)
「フィン、俺達はみんなの分も生き残らなきゃいけない。そのために俺達はまだ止まってちゃいけないんだ」
「うん、分かってるよ。」
まだ吹っ切れてはいないんだろう、当然だ。
だけど俺はフィンの気持ちを汲み取ろうと思う。これ以上悲劇を生み出さないためにも。

「ブオォォォォォォォ―――――ンッ!!!!」
途端雄叫びが聞こえた。
「これはドーガさんを殺した魔物の声!」
「フィン、どうする?」
「今の僕じゃ、ドーガさんの敵討ちなんてできそうにない。だから悔しいけどサスーンに急ごう」
「分かった、走れるか?」
「うん!」
そしてサスーンに向かって走り出す。
涙は今は捨てよう。泣くのは後でも出来る。だから俺達は今しか出来ないことをやろう。
もしリュカが本当に魔物を使って人を殺しているのなら……俺が止めてみせる!
351騎士は災を振りまき進む 12/13:2006/02/16(木) 03:35:20 ID:pC3Tbrcs0

【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失、疲労、右肩負傷)
 所持品:竜騎士の靴、自分の服、ふきとばしの杖[1]、手帳、首輪、対人レーダー
 第一行動方針:話し合い】
【リルム(右目失明、魔力消費)
 所持品:英雄の盾、絵筆、祈りの指輪、ブロンズナイフ
 第一行動方針:話し合い】
【ゼル 所持品:レッドキャップ、ミラージュベスト、リノアのネックレス
 第一行動方針:話し合い
 第二行動方針:スコールを探してネックレスを渡す
 第三行動方針:リノアの仇を討つ(?)】
【テリー(DQM)(右肩負傷、3割回復)
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×2
 鋼鉄の剣、コルトガバメント(予備弾倉×4)、雷鳴の剣
 第一行動方針:泣く
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【マティウス(MP1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)、ビームウィップ
 第一行動方針:話し合い
 第二行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
 所持品:ミラクルシューズ、ソードブレイカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
352騎士は災を振りまき進む 13/13:2006/02/16(木) 03:36:30 ID:pC3Tbrcs0
【ピエール(HP3/5、MP1/2)(感情封印)
 所持品:オートボウガン(残弾無し)、スネークソード、毛布、聖なるナイフ、魔封じの杖
 死者の指輪、王者のマント、ひきよせの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]
 第一行動方針:サスーンに向かい、リュカに王者のマントを渡す
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス
 第一行動方針:サスーンに向かい、真相を確かめる/フィンの風邪を治す
 第二行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【フィン(風邪)
 所持品:陸奥守、魔石ミドガルズオルム(召還付加)、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:サスーンに向かい休憩する
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北西の森北部→サスーン城】

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:生き延びるために全参加者の皆殺し
 基本行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:カズス北西の森北部→南へと移動(速度は遅い)】

【トンヌラ(トンベリ) 死亡】
【残り 58名】

※トンベリの所持品(包丁(FF4)、スナイパーアイ、りゅうのうろこ)はその場に置いてあります。
353騎士は災を振りまき進む おまけ:2006/02/16(木) 03:37:37 ID:pC3Tbrcs0
354騎士は災を振りまき進む おまけ:2006/02/16(木) 03:38:19 ID:pC3Tbrcs0
あわわ、h抜くの忘れた
というわけで改めて【挿絵っぽいの】
ttp://dog.oekakist.com/FDBR/dat/IMG_000057.png
355名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/17(金) 04:34:18 ID:AQlMllGP0
 
356思考合戦カズスの乱 1/13:2006/02/17(金) 16:39:29 ID:JgNWFOYZ0
「……?」
ルカは視界の端にある物を捕らえた。
瓦礫の隙間の、ルカの身長だからこそ見えた判りづらい位置にある、最近しょっちゅう目にしている色。
まだ悲しみ冷めやらぬ内だが、好奇心の方が勝ってしまい、ルカはその瓦礫へと近づいた。
少しばかり手を伸ばし、見慣れた色を掴む。
「やっぱり支給品の袋だ。落とし物かな?」
そう、ルカの述べた通り、それは参加者全員が持つ支給品の入ったサックであった。
ルカはこっそりと中身を確認する事にした。
道端に落ちていた財布の中身を確認するような心境である。
「……ナイフと、あとは草ばっかりだ」
大した収穫ではないのでがっかりしたルカだが、ご丁寧に付属していた説明書を読んで顔色を変える事となる。

“ひそひ草:つがいのひそひ草を持つ人と会話が出来る”

「おぉー!」
思わず声を挙げたルカだが、慌てて口を押さえる。
そして誰かに聞かれていないか周囲を確認した。
一番近いのはハッサンだがそれでも相当離れているので気付いていない様子。
他の大人達も近くにはいなかった。
ルカは胸を撫で下ろす。
「……ふう。えーと、ひそひ草はこれかな」
説明書に描かれているものと全く同じ草を探し、手に取る。
「すごいなぁ、俺だけの秘密にしよう。みんなには内緒だ!」
こういうところは子供であった。
「あ、あー、誰か聞こえるー?」
草に向かって話し掛けるが、応答なし。
もう一つのひそひ草が焼かれたりして無いのかとも思ったが、それはないなとすぐに否定した。
草をこうして持っていると何かを感じる、絶対にもう一つはどこかにある。という気がしていた。
「……うーん、もう一個のは今みたいに袋ごと落ちてたりするのかな」
それはありえる、と今度は否定しなかった。
とりあえずいつか誰かが拾ってくれる事を願いつつ、ルカは他の草一式とナイフをサックへと放り込んだ。
357思考合戦カズスの乱 2/13:2006/02/17(金) 17:17:36 ID:tb7gxL7dO
今はハッさんをどうするか考えないと。
と、ひそひ草をクルクルと指で回しながら地面に座った。
だが直後、ルカは背後からした音に驚いて指を止める事になる。



ユフィらと別れ、単独カズスへと戻り、スコールとマッシュを追い払い、それから魔女の放送を聞いた。
その後、カインはフリオニールと情報交換をしつつ考えていた。

放送ではいくつか見知った名前を確認したが、気になるといえばシンシアの死亡のタイミングだった。
カインがサスーンを出てエッジらと会い、その後別れてしばらくしてからエッジはフリオニールに殺された。
その間にシンシアは死んだ事になる。時間的にはそんなに長くはない。
あの瀕死の女マーダーが復活して殺ったのか?それとも別の誰かが?
カインは考えたが「どっちにしろ自殺ではなく他殺だろうな」という結論しか出ない。
女マーダーが殺したとすると、お人好しそな連中だから、自分にその事を伝えにくるだろう。
「君が助けようとしていたのはマーダーだった」とかなんとか。
次に続く言葉が「逃げられたから気を付けて」か「殺したから安心して」かは判らないが、
日没二時間後にカズスに来るのは確実。
よっぽどの事が無い限り、他の誰かに殺された場合でも情報を伝える為に来るだろう。
それを利用しない手はない。

やる事も考えなくてはいけないこともまだまだ沢山ある。
とりあえずカインは手っ取り早く済ませられる事を消化する事にした。



ギルダー、デッシュ、ドーガ。今いるこの世界で、かつて世話になったり世話をしたりした人々。
特にギルダーの死は、サックスにとってショックが大きかった。
また助けられなかったのか。ロランやフルートと同じだ、とサックスは溜め息を吐いた。
358思考合戦カズスの乱 3/13:2006/02/17(金) 17:19:11 ID:tb7gxL7dO
あーもう、自分はこんな所でこんな事をしている場合じゃないのに。
苛々を抑えながら、サックスは少し離れた所にいるカインをちらりと見やった。
放送を聞き終えたあと幾分か悲しんでいたものの、先程からずっとフリオニールと話し込んでいる。
話している内容は聞こえないが、どうせ期待できるような物ではないはず。
とりあえずカインを視界から外した。ずっと見ていては不振がられる。
だいたい男に見つめられても気分の良いものじゃないだろうしな。

今の状況をどうにかしないと。とサックスは腕を組んだ。
せめて剣だけでも取り戻したい。取り戻さないまでも、代わりになる剣なら別に何でも良い。
ていうかこの二人と一緒に居たくねえええぇぇぇ。
さて、どうしたもんか。考える事は苦手だが、今は考える事しかできなかった。

しばらく考えていると、視界の隅でカインが動いた。サックスはまた目を向ける。
どこかへ行くようだった。村の奥、進む方向には鉱山の入口がある。
ハッサンやルカのいる方か、とサックスは結論付けると残されているフリオニールを見た。
フリオニールは、サックスを見張るかのようにじっと見ていて目が合う。実際にその為に残ったのだろうが。
「……いや本当に気分の良いもんじゃない」
目を逸らし、聞こえないようにサックスは苦笑して呟いた。



「残念ながら、青い帽子の人物はテリーではなかった。珍しい目印という訳でもないから、仕方のない事だろう」
カインはルカに報告していた。ハッサンには近付けないので、あとで君から伝えてくれ、と頼んで。
数メートルも離れていては叫んで会話するしかないが、そんな面倒な事はしたくない。
なにより、ルカだけに報告するのには意味があった。
ルカは子供である。嘘を織り交ぜた報告をして多少の不自然が発生しても感付かれる心配はない。
ルカがハッサンに伝えたとしても、不自然さを感じない・感じても子供だからという理由で気にしないだろうと踏んだ。
だいたいルカもハッサンも単純馬鹿そうな輩である。誰か賢い奴に突っ込まれない限り簡単に騙せるだろう。
359思考合戦カズスの乱 4/13:2006/02/17(金) 17:21:56 ID:tb7gxL7dO
「そいつは急ぎの用があるらしく、すぐに別れた」
「その人どんな人だった?」
ルカがカインに尋ねる。あまり詳しく答えたくないカインだったが、そんな素振りを見せないようにした。
「帽子以外は特に特徴の無い優男だったな。名前はすまない、忘れた。思い出したらまた伝えるが」
「ふーん。……そうだ、ケフカさんは?」
入り口の方にいる?というニュアンスだと判断したカインは、「そのことについてなんだが……」と答え、続ける。
「ケフカは新しい用が出来たらしく、青い帽子の男に同行していった。二人をよろしくと頼まれてしまったよ、まったく」
と、カインは肩を竦めてみせた。
「えぇ!?」
ルカが悲鳴を挙げる。まぁ連れが勝手にどこか行ったのだから当然か、とカインは思った。
「……ピエロって何考えてるかわかんないなぁ」
ルカの深くない考えにカインは深く安堵した。
「ケフカさん、どこに行っちゃったんだろう?」
考えてなさそうな割に質問は多いな、と悪態をつきたかったが我慢。ここまではまだ予想範囲内だ。
「まさか追い掛けるつもりなのか?」
カインは聞き返した。回答によっては答える目的地を変更せざるを得ない。
「え、あ、うん」
ルカはハッキリしない様子で返事をする。
近い場所だったら追いかけて行きそうな雰囲気だ。と判断し、カインは困ったようにしてみせた。
「おまえたちの足では夜明けに間に合わないと思うぞ。二人はサスーン城へ向かって行った」
「サスーンじょー?」
ルカは驚いた顔をする。
「ああ。あっちはヘイストを使えるが、子供の足じゃ厳しいだろう?それに夜の移動は心配だ」
ルカは地図を取り出して場所を確認しだした。
ちなみに子供の足でも、歩きつづければ真夜中には到着できる距離なのだが。
「サスーン……うん、わかった。もちろんサスーンには行かないよ」
「そうか。どっちにしろ追い掛けると言っても、心配だから俺が止めたがな」
「遠いもんね。何しに行ったんだろ」
またかよ。
「うーむ、そこまで詳しく聞けないくらい急いでいたからな。探し人らしいが、よく分からん」
「ふーん、探し人かぁ」
ルカは地図をサックへ詰め込んだ。
360思考合戦カズスの乱 5/13:2006/02/17(金) 17:23:52 ID:tb7gxL7dO
「……あ、そうだ。スコールっていうお兄ちゃんに会った?」
ルカが流れと違う質問をしてきたので、カインは少し驚いた。
「ああ、さっきな。それがどうした?」
それでも冷静に答える。
「今どこにいるのかなって思って」
ここは特に注意するべきポイントではないと判断すると、カインは素直に答える。
「スコールとマッシュといったか、あの二人はウルの村へ行ってしまった」
「えぇ!?」
今度はルカが驚く。その驚き様にカインも驚いた。
「何か用事があったのか?」
「あ、ううん!もうここにはいないんだね」
慌てたようにルカは否定した。
「ああ。放送の少し前に出ていったな」
「え?」
「なんだ?」
「なんでもないよ!」
「そうか?」
さっきから少し変な気もするが、まぁ子供だからという事でカインは別段気にしなかった。
「報告する事は以上だな。ハッサンに上手く伝えておいてくれ」
「うん、わかった!まかせろっ」
ルカは自らの胸をドンと叩いてみせた。
「頼もしいな。さて、俺は入り口の方に戻るが……」
「俺はここにいるよ。ハッさんを残してけないからね」
「そうか。爆発には気を付けろよ」
言うとカインは軽く手を振りつつ村の入り口の方へと歩いていった。
その姿が見えなくなるまでルカは笑顔で手を振っていた。
361思考合戦カズスの乱 6/13:2006/02/17(金) 17:26:31 ID:tb7gxL7dO



ルカとハッサンについては、今のところはの程度でいいだろう。
カインはフリオニール達の所に戻ると再び考えていた。問題は山積みである。
ラムザ、ユフィ。
フリオニールの事を知るこの二人は、どうも人並み以上にお喋りだ。これ以上フリオニールの事が広まると困る。
ケフカがこちらに有利な手を見せた時点で殺しておくべきだったか。
サックス。
先程から随分と大人しいが、明らさまな敵意が剥き出しだ。まぁ無理もないが。
ルカと話している間も「特に変な動きは無かったよ」らしいが、何を企んでいるか分からない。
こちらもできれば早めに始末したい。
スミス。
未だ戻る気配無し。洗脳という手段が無いのは少々面倒臭い。
どこをほっつき歩いてるんだ。いや、ほっつき飛んでいるんだ。

「カイン、貧乏揺すりはやめろよ」
フリオニールが呆れたように言った。
おまえが一番の問題児なんだ、と心で悪態をつきながらカインは考え続ける。

フリオニール。
元はと言えばこいつがエッジを殺さなければ全ては割と丸く収まっていた筈だ。
ユフィ達との事は伝え、更に少し怒りをぶつけておいたが、考えるとまた苛々が湧き出てくる。

「フリオニールを止める」とユフィに言い、更に説得は不可能とラムザを追い払いまでしたのに、
夜明けになってフリオニールの名前が呼ばれないと不自然か?
それともカズスの三人を殺し、それをフリオニールの所為だという事にし、更に逃げられたとでも言えば矛盾は無いか?
だがそれだとフリオニール本人の処理が色々と面倒になる。
どっちにしろ、この先フリオニールと行動を共にするのは厳しいと思った。
次の世界に移動する時、運悪くとユフィ達と鉢合る可能性もある。
やはりユフィはさっさと始末するべきだった。
あのお喋りコンビが何も喋らずに夜明けまでに運良く殺されれば儲けものだが、そんなに上手くいく訳がないだろう。
362思考合戦カズスの乱 7/13:2006/02/17(金) 17:28:59 ID:tb7gxL7dO
「リュカ達が来るまであと一時間半といったところか……」
カインは苛々としながら呟いた。それまでに状況を変えたいが。



軽く手を振りつつ村の入り口の方へと歩いていくカインの後姿に、ルカは笑顔で手を振っていた。
そう、見えなくなるまでは。
「…………き、きんちょうした」
ルカはその場にへなへなと崩れた。
そして誰もいない方向へ向かって話し掛ける。
「俺わけわかんないよ、ねぇ」
『そうね』
するとルカの目線の先、物陰から一匹の犬が姿を表す。
『言わなくてもわかるでしょう、ルカ』
「わかるけど……」
ルカは答える。
「うーん……もっかい考えるからちょっと待って、アンジェロ」



時は少しばかり遡る。
アンジェロは風の中の声を頼りにカズスへと到着した。

入り口付近にカインを発見すると、気付かれないように別の場所から村の中へと入った。
まずは村の様子を確認する。何が起きたのかは分からないが、崩壊と呼ぶに相応しい状態であった。
入り口付近にいるのはカインと、カインと話す男性と、一人で何か考えているような男性の三人。
ユフィの話ではスコールもカズスにいるという事だったが、姿はない。
その代わり目指していた人物の姿を奥の方で発見した。
はたしてコミニュケーションが取れるか心配だったが、アンジェロはその人物・ルカの後ろ姿へと話し掛けてみた。
363思考合戦カズスの乱 8/13:2006/02/17(金) 17:30:51 ID:tb7gxL7dO
『あなたがハッサン?』
びく、とルカの肩が揺れたが、ゆっくりと振り替える。
「びっくりした、犬か。おいでおいで」
ルカはアンジェロの姿を確認すると安堵して、ひそひ草をしまって手招きをした。
アンジェロは傍に寄る。ルカの手が伸びてアンジェロの頭を撫でた。
「僕はモンスターマスターのルカ。ハッサンじゃないよ」
『え?』
アンジェロは驚いた。当然のように受け答えをしたからである。
『あなた、私の言葉が分かるの?』
「モンスターマスターだからね!」
ルカは胸を張った。
それは一体なんなのかアンジェロは気になったが、話せるならばそれほど好都合な事はないと思い、話を切り出した。
『そう、ルカ。私はアンジェロ。テリーを探しているというハッ……』
「テリー!?ねえアンジェロ、知ってるの?」
ルカが目を見開く。その気迫にアンジェロは少し気圧された。
『え、ええ。会ったわ、その青年に』
「せーねん?」
ルカは訝しげな表情をした。
「アンジェロぉ、テリーは俺と同じくらいなんだから青年は違うだろ」
『同じくらい?何がかしら』
今度はアンジェロが訝しげな表情をした。が傍から見た感じでは分からない。ルカには分かるが。
「歳だよ。今、背比べっこ競争してんだ」
『おかしいわね……テリーはあなたよりずっと年上で背もずっと高いわ』
「えー、ずりー」
なにをずるいと感じたのかは分からないが、ルカは少しふてくされる。だが直ぐに気付いて頭を掻いた。
「あ、そうだ、テリーって名前は二人いたんだ!忘れてたよ」
『あら、そうなの?どうりで食い違う訳だわ』
すっきり。
ルカもアンジェロも矛盾が溶けてすっきりした表情をしていた。
『……すっきりしている場合じゃないわ!』
アンジェロが慌てて話を戻した。
364思考合戦カズスの乱 9/13:2006/02/17(金) 17:32:32 ID:tb7gxL7dO
『ハッサ……いいえ、それよりも大切な話があるわ、ルカ』
アンジェロは村の入り口付近にいたカインの事を思い出す。
そしてルカに、今までの事、特にカイン達に会ってからの事を詳しく話した。
自分の事、ラムザの事、カインやケフカに会った時の事、ユフィの事、フリオニールの事、
スコールを探している事、その最中に聞こえた風の声に導かれてやって来た事などなど。
つられてルカも補足する形で、この世界に来たあたりの所からの経緯を話していた。
新たな情報も入手し、アンジェロは人物関係や現在の状況を知る。

「つまり、フリオニールさんが人殺しで、カインさんの友達を殺して、でもユフィって人殺しの名前じゃないの?
 ていうかケフカさんカナーンに行っちゃったんだよね?カインさんは騙されてるの?それとも……」
ひととおり話を終えると、ルカは混乱したように捲し立てた。
『落ち着いてルカ。私の推測に過ぎないんだけど、いいかしら』
ルカは心臓を押さえると、こくんと首を縦に振る。
『フリオニールはゲームに乗っている、これは間違いないわ。彼は嘘をついている。
 それから、カインという人。ラムザやユフィをカズスから遠ざけたかった事、
 先程の彼らの相談ぶりからすると……分かるかしら』
またルカは首を縦に振り、アンジェロの言葉を待った。
アンジェロも頷く。
『カインがフリオニールと協力して、ゲームに乗っている可能性は高いわ』
「ま、まっさかぁ……」
ルカは苦笑を浮かべた。
アンジェロの話の内容から薄々疑ってはいたが、こうもはっきり言われると本能的に否定してしまう。
『そうね。もしかしたらの話よ。だけど』
アンジェロはルカの目を見つめた。真っ黒な瞳にルカは釘づけになる。
『あの男は、簡単に信じては駄目よ』
365思考合戦カズスの乱 10/13:2006/02/17(金) 17:35:38 ID:tb7gxL7dO



そしてルカとカインの会話を物陰に隠れてこっそりと聞いていたアンジェロは、ルカに呼ばれて姿を表したという訳でる。
「とりあえずアンジェロの言った通り、行き先とか色々聞いてみたけど……」
そう、ルカの質問責めはアンジェロのアドバイスの下に行なわれていた。
『間違いないわね。カインも嘘つきだわ』
「うぅ、まさか……」
『でも事実なのよ』
アンジェロはぴしゃりと言い放つ。
『ラムザの事を語ろうとしなかった。ユフィの存在を隠した。ケフカが向こうに付いていく理由を適当にでっち上げた。
 全く違う目的地を言った。嘘が多くて突っ込みきれないわ、ごめんなさい』
「あ、謝らなくていいよ!」
ルカは慌てて顔の前で手を振る。
『それから』
アンジェロはにっこりと微笑んだ。もちろん傍から見ると分からない。ルカには分かるが。
『ありがとう、ルカ。スコールの事を聞いてくれて。私の為でしょう?』
「う、うーん、まぁ」
ルカは頭を掻いた。
「アンジェロが探してるって言ってたから。村にはいないっての聞いて変だなーって思ったし」
アンジェロは「スコールを探している」とだけ伝えていた。余計な混乱を与えない為にリノアの事は口にしていなかった。
『ふふ、やさしいのね……おかげで、もう一つ分かったことがあるわ』
「うん。あのさもしかして、放送の少し前にーってとこ?」
『頭も良いのね』
ルカはちょっと嬉しい。
『カインは放送前にここに戻っていたわ。そしてスコール達を見送った。
 それなのに今の今までこちらに報告に来なかったという事は』
「とゆーことは?」
『その間に考えていたんでしょうね、立派な嘘を』
366思考合戦カズスの乱 11/13:2006/02/17(金) 17:37:24 ID:tb7gxL7dO



まずはルカとハッサンを、サックスから取り上げた剣で静かに殺す。
動けない男と子供だから簡単に殺せる。爆発されると面倒なのでハッサンが優先。
次にサックスに剣を返し、フリオニールと二人がかりで殺す。適当に斬り合って傷を負うくらいが調度いい。
やって来たリュカ達に「サックスが二人を殺し、我々も襲われたので、仕方なく殺した」と言う。
これでカズスの処理は大丈夫。ユフィとラムザは明日探して殺せばいい。
あとはユフィ達の話を聞いた誰かが、自分達に会った時の事だが。
「人伝いに聞いた話などアテにならない、フリオニールは良い奴だ。この目を見ろ」
とか何とか言えばゲームに乗ってないお人よしには通用するだろう。

と、カインはこの段取りをフリオニールに説明した。
「まぁまぁだな」というフリオニールの返事を聞くと、カインは再び鉱山の入口方面へと静かに歩いて行った。
だが数分後、カインは息を切らして村の入口付近へと戻ってくることになった。

「あの二人がいない!村の中を探したが、どこにもいなかった!」



「……って感じなんだけど、ハッさんはどう思う?」
「どう思うって聞かれてもなぁ」
ハッサンは相変わらず雲に流されながら、答えた。
「既に村を出ちまった後に聞く事じゃねーぞ」
「そうだね。ハッさん、急にゴメン」
『私からも、ごめんなさい』
ハッサンは首を傾けてルカの足元を歩く犬を見た。
「わんこ、今なんつった?」
モンスター語は分かっても犬語が分からないのは悔しいので修業するかと決意したのは内緒である。
「ごめんって言ってる」
「うーむ」
ハッサンは考えた。
367思考合戦カズスの乱 12/13:2006/02/17(金) 17:38:54 ID:tb7gxL7dO
ルカが犬とじゃれていたり、カインと話していたり、再び犬とじゃれていたりしたのは遠目で見ていたが、
まさか壮絶な騙し合いが行われていたなんて知らなかった。とハッサンは目の前の子供を尊敬の眼差しで見た。
犬とじゃれあって……ではなく話し合ってハッサンの方に近付いてくると、村を出よ、と言われる。
「気付かれないように、音を立てないで、裏の方から出よう。ってアンジェロが」
そう言って雲を移動させるルカ。
抗議をしようとすれば「爆発するよ」と注意されたので静かにせざるを得ない。

そしてなんとか村を出て、北上しながらいきさつを説明された。
アンジェロが常に鳴いている事から察すると、アンジェロの言葉をそのままルカが伝えている感じなのだろう。
ハッサンはアンジェロを見下ろした。
「しかしルカ、そのわんこは信用できるのか?」
「もちろん!」
ルカはすかさず自信満々に答えた。
「アンジェロの目を見れば分かる!」
俺は分かんねーよ、と心の中で突っ込みながらハッサンは考えた。
アンジェロの話を信じるならば、カインとフリオニールは信用しない方がいい。
ケフカについても不穏な動きがあったようだが、自分を救ってくれた恩人であるので疑うまでには至らなかった。
「ところでルカ」
「なに?」
「なんで北に向かってるんだ?」
アンジェロの話によればテリーはカナーンに居るかもしれないという事だが。
ルカはきょとんとした様子で答える。
「だって、アンジェロをスコールの兄ちゃんに会わせてあげないと」
「いや、できれば俺はカナーンに行きたいんだが」
「俺はウルの村に行きたいんだ」
仕方無いか、とハッサンは諦めた。
自分がこうして移動できるのもルカのおかげである。ルカ様様ルカ万歳。そう考えてルカに従う事にした。
一行が目指すは、ウルの村。
368思考合戦カズスの乱 13/13:2006/02/17(金) 17:40:08 ID:tb7gxL7dO
【ルカ
 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 風のローブ シルバートレイ
 ひそひ草 様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:アンジェロをスコールに会わせる
 最終行動方針:仲間と合流】
※バーバラの支給品を拾いました
【ハッサン(HP 1/10程度、危機感知中)
 所持品:E爆発の指輪(呪) ねこの手ラケット チョコボの怒り 拡声器
 行動方針:オリジナルアリーナと自分やルカの仲間を探す、特にシャナクの巻物で呪いを解きたい
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【アンジェロ
 最終行動方針:スコールに会う】
【現在地:カズスの村北部→ウルの村へ移動中】

【カイン(HP5/6程度 疲労)
 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界(FF3)の歴史書数冊 加速装置
 草薙の剣 ドラゴンオーブ レオの顔写真の紙切れ
 第一行動方針:また作戦の考え直し
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【フリオニール(HP1/3程度 MP1/2)
 所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
 第一行動方針:また作戦の考え直し(を横で見てる)
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
 第一行動方針:武器の調達、ついでにとんずらしたい
 最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村入り口】
369思考合戦カズスの乱 修正:2006/02/18(土) 14:47:30 ID:eczcILHgO
本文の内容及びパラメーターを修正します

1/13
×「……ナイフと、あとは草ばっかりだ」
○「……なんだ、草ばっかりだ」

1/13
×とりあえずいつか誰かが拾ってくれる事を願いつつ、ルカは他の草一式とナイフをサックへと放り込んだ。
○とりあえずいつか誰かが拾ってくれる事を願いつつ、ルカは他の草一式をサックへと放り込んだ。

13/13
【ルカ
 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 風のローブ シルバートレイ
 ひそひ草 様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4)
 第一行動方針:アンジェロをスコールに会わせる
 最終行動方針:仲間と合流】
370闇にもう一度火をつけろ 1/9:2006/02/19(日) 07:48:00 ID:pITEMKnm0
夜闇の孤独の中を一人走るものの耳にも魔女の声は届く。
知っていた者、知り合った者、拳を交えた者が入り混じった多くの名前が数え上げられた。

敗者として呼ばれたクジャの名前には正直驚きを禁じえない。
だが、敗れ去り命を落としたものにどれだけの価値があるだろう?
サラマンダーは見て分かるほどの反応は示さないままに、前進を再開する。

走りながら考えていた。
死ななければよい、命ある限り、生き延びている限りそれは勝利と同義だという考え方がある。
他面、挑み打ち勝っての勝利を欲する戦いに滾る自分もある。
自分は矛盾している。
先程は敗者には価値がない、と切り捨てたが自分もけして勝者ではない。
ウィーグラフとの戦闘は偶々痛み分けという結果になっただけで現実は自分の敗北だ。
そればかりか夕方の遭遇を思えば手強いと感じた相手に戦闘すら避けている。
間違いなく自分はまだ生きていたいのだ。
そして一方で、求める強者に勝利し勝利の栄光を手にしたいのだ。
行動の動機として方向性は同じ、どちらも正しく何も間違ってはいない。
だが考えるほどに生き延びる事と勝利する事の間にある戦いへの温度差で双方が矛盾しているように感じられてしまう。
心中の影があざ笑う。お前は死という究極的敗北を恐れているだけなのだ、と。
しかしどうすればいい。

事実上の敗北とその顛末が明らかにサラマンダーに影を落としていた。
今はとにかく行動するしかない、としか思考は着地しない。
戦うという意思はもはや不動ではあるが、まだサラマンダーの中には揺らぎが残ったまま。
彼が今、他の殺人者に対し劣っていたとすればその原因はこの蟠る一点にあるのだろう。
371闇にもう一度火をつけろ 2/9:2006/02/19(日) 07:52:55 ID:pITEMKnm0

耳にアラームピアス、手にはデスペナルティ。
内には引継ぎし力、心には揺るがざる決意。

虚空へ向けて銃を構え、撃つ真似をする。
ヘンリーの脳内で想定した敵の像がこれまた空想の弾に打ち抜かれ、霧消する。


ソロと交代で宿屋まで戻ってきたリュックの背を見送ってから、一人。
話す相手もいないため緊張を張ったり緩めたりしながらヘンリーは周囲を警邏していた。
といっても宿屋の周りを文字通り見て回るだけだけれども。
平穏な気配、それを破ったのは村の東側の外に広がっている林の奥の奥に揺らめくあかり。

(誰だ!?)
その光源が外部からやってきた事は間違いない。
緊張に身を引き締める。
どうしようかと思案するヘンリーをピアスが、指輪が、銃が、内なるG.Fが勇気付けてくれる気がした。

(まだ敵って決まったわけじゃねぇが…先んずれば敵を制す、だ。
 第一今はオレが宿屋を守らないとな。ここはひとつオレが調べてやろう)
決断も勇ましく光の揺れている方角へとヘンリーは慎重に近づいていった。

しかし、勇敢といえば聞こえがいいが一歩外れればそれは蛮勇に変わる。
そして今回のヘンリーのケースはまだ失点に至らないにせよ失策。短慮による失念。
相手が複数だったら? 明かり自体が誘導だったら? 一人で敵わないような相手だったら?
だが、強力な防御に初めて使う強力な武器。
つまりは皮肉にも手にした力こそがヘンリーの思考を曇らせ、守りから攻めへと変化させていたのだ。
ヘンリーが考え落としたこと、それは役目を全うするという精神。
372闇にもう一度火をつけろ 3/9:2006/02/19(日) 07:55:19 ID:pITEMKnm0

何者かの存在を念頭に置き、気配を探るようにしながら暗がりを進んでいく。
獣道程度とはいえ道があったため、足元に不安はない。
まだアラームピアスは沈黙を保ったままだ。

「あそこは……? 明かりはその向こうか?」
木々が途切れ、ぽっかりと広がる空間へとたどり着く。揺れる光はどうやらこの空間の向こうのようだ。
夜闇のステージ、中央に鎮座しているあれは井戸だろうか。
念のために目で周囲を確認し、ゆっくりとその真ん中へ進み出る。
アラームピアスが警告を発したのはその瞬間だった。


林の中、低く張り出した枝に共通で支給されている小さなランタンが結び付けられている。
風でわずかに揺らぐその明暗とヘンリーの双方を見ていられる場所、その暗闇にサラマンダーは潜む。
暗殺者としてやっていくために身につけた技能がいくつかある。
常人に比べ遥かに利く夜目はその一つだ。

今、その目の前には誘導の罠に引っかかった男が映っている。どうやら一人のようだ。
もう一度だけ、自身の中で解決されない矛盾を思い出し、声もなく哂う。

くだらない。何に葛藤しているのだ、俺は。
答えなど初めから一つしかないだろうに。

拳の武器は鈍い光沢さえ消えて暗闇に溶け込んでいる。
向こうも慎重なのだろう、ゆっくりとしかし確実に光へと近づく相手を視認。
夕方に見た奴らのような危険な気配は微塵も感じない。
タイミングを計って側面、樹上より――突っ込む。
373闇にもう一度火をつけろ 4/9:2006/02/19(日) 07:57:26 ID:pITEMKnm0

十分に速度をのせて飛び込むサラマンダーと振り向いた獲物の視線が交錯する。
反応のタイミングが何処か不自然であったが、もう攻撃は停止できない。
自分の攻撃の方向をしっかり見定めた上でターゲットは飛び出すように攻撃軸から逃れた。
どうやら、ウサギというほど楽な獲物ではないらしい。
体勢を立て直している男の手には金属の武器が握られている。
かなり形は違うもののそれがどのような攻撃をするか、体験から直感的に推察できた。このゲームにはその類の武器が複数種類ばら撒かれているらしい。
予測されるその力に心中には不安と期待が入り混じり、サラマンダーは即時の追撃を止めた。
着地した場所で攻撃の構えを取ったまま男を睨みつける。

自分の力だけで今のが避けられたろうか? いや、それほどには自分を評価してはいない。
だが、今は相手の動きが良く見えた。回避動作も自分とは思えない身軽さで完了した。
その力の源泉をヘンリーは理解している。
アーヴァインが教えてくれた力。デールが遺してくれた数々。
手の内の銃を握り締め、身体を翻して突然襲撃してきた男に正対する。緊張した対峙がそのまま十数秒、だが不意にそいつが口を開く。

「…一つ聞く。貴様はこのゲームに対して何を考えている?」
「は? 何だと?」
「生きたいのか、戦いたいのか。貴様はどこへ向かっているのか」

唐突な質問の意図を測りかね、ヘンリーは口をつぐんで相手を睨み返す。
不動のままじっと目でこちらを気圧してくる相手は今のところ動く様子も無い。
不意打ちをかけられたはずなのにこの奇妙な時間はヘンリーが先に動くことを躊躇させていた。
ついに根負けする。

「ちっ…。俺は何とかしてこのゲームをぶっ壊してやるつもりで同じ事を考えている仲間と行動している。
 魔女の甘言に乗るような馬鹿には容赦しない。お前みたいな、な」

仮に相手が人殺しだとして、なんで自分はこんな空気で会話しているんだろうか。
もし人から聞いたなら笑っちまいそうな奇妙なシチュエーションだが体験してみれば笑う気も起きない。
緊張は張り詰めたまま、下手に動けば確実に戦闘突入だ。向こうが何を考えているのかわかりゃしねぇができるなら無駄な戦闘は避けたい。
374闇にもう一度火をつけろ 5/9:2006/02/19(日) 08:00:29 ID:pITEMKnm0

「俺はヘンリーだ。あんた名前は?」
「………サラマンダー、と呼ばれている」
「……なあ、サラマンダー。お前は人殺しなのか?」

時間が過ぎる。

「答えたくないなら答えなくていいさ。…なあ、でもよ、俺だって無駄な戦いはしたくない。
 大体悪いのは全部あの魔女だって、わかるだろ?」

男は何も答えない。

「お前が誰と戦い誰を殺してきたかはわからない。
 でも先に話しかけてきたのはあんただ。わかってんだろ? 迷ってんだろ?
 本当は自分が間違ってるんじゃねぇかってさ」

夜風が吹きぬける音だけが聴覚を支配する。時間が長く感じられる。

「悩むくらいならもうやめにしたらどうだ? 俺達は何とか魔女のヤツに抵抗するつもりだ。
 ……一緒に来ないか?」

更なる沈黙の後、ようやくサラマンダーと名乗った男は口を開く。

「一緒に、か。……ジタンもそう言うのだろう、な。だが、それは出来ない相談だ」

男の気配がヘンリーを押しつぶすような強い殺意へと一転する。
強い視線がヘンリーを射抜き、その目の前で暗赤色の巨体に力がみなぎる。

「長々と答えてくれたことには感謝する。己の弱さから来る迷いは晴れんが、一つ分かった。
 俺が求めているのはそういう言葉ではない!」
375闇にもう一度火をつけろ 6/9:2006/02/19(日) 08:03:21 ID:pITEMKnm0

わずかにたじろぎながらもヘンリーも慌てて臨戦態勢へ移り、サラマンダーは僅かに満足げな笑みを浮かべた。

「それでいい、俺は結局拳でしか答えを出せん。いくぞ!」

言い終わるや否や地面を蹴り飛び込まんとするサラマンダー。
それを制してその眼前でイオが爆裂する。

「畜生が! なんなんだよお前は! なんで無駄な戦いを選ぶんだよ!」

イオで迎撃、足止めして、銃で追撃する。
それを実行すべく狙いを付けるものの引き金を引くよりも早く爆発の余波から影が抜け出す。
素早い身のこなしで自分へ向買ってくる巨体からその腕が振るわれる。動きが良く見えた。
乱雑に銃口の向きを変えてデスペナルティが甲高い声を上げるも銃弾は空を切り裂いて闇へ消える。
二発、三発と続くサラマンダーの攻撃を何とかかわす。

自分の力だけで今のが避けられたろうか?
いや、それほどには自分を評価してはいない。
だが、今は相手の動きが良く見えた。その力の源泉をヘンリーは理解している。
それでも、接近戦を続けていてはサラマンダーへの勝ち目は見えそうにもない。

「結局魔女がほくそえむだけだって分かんねぇのか!? 俺たちの争いのどこに意味がある!?」

呼びかけも虚しく、サラマンダーは無言、迫る腕は止まらない。
徐々に後退していくヘンリー。後ろに井戸が迫る。
376闇にもう一度火をつけろ 7/9:2006/02/19(日) 08:05:13 ID:pITEMKnm0

ここは強引にでも距離をとるしかない。
間合いを離されない様に後退するこちらを追ってくる相手の挙動にじっと注意しながらタイミングを計る。
上段から叩きつけられる左腕を一歩引いてかわし、足元から振り上げらて右腕が来る―――ここだ。
カウンター気味に…イオ!

自分を巻き込まない安全距離ギリギリの爆発。肌に感じる余波がその近さを実感させる。
今のうちに一旦距離を取って次の作戦を考えて……

「っぐ……あ…?」

見下ろした視界の中で自分の腹に向け大きな力が乗った焔色の拳が、怜悧な爪が伸びている。
たたらを踏んで下がる。駄目だ、まだ倒れ―――
重力から解き放たれる感じ。それから、暗闇に吸い込まれていく。



合わされたタイミング、爆発が視界を覆い、身体の前面に痛みが走る。だが、この程度。
そこにいるであろう相手へ向け、止まることなくその腕で突いた。

手ごたえが、攻撃の確実なヒットを教えている。
男の口から意味を成さない音が噴き出しているのが聞こえる。
視界を取り戻した先には青白い光におぼろげに取り巻かれたヘンリーの姿。
それがなんなのか、サラマンダーには分からない。
分からないが、貫いた爪の感覚は逃れ得なかった事実として相手を捕らえている。
爪を引き抜かれた男は淡い青い光をまとったまま、よろよろと後退。
そこにあるのは、暗い口をあけた井戸。
まるで吸い込まれるようにヘンリーはそこへ落ちていった。
377闇にもう一度火をつけろ 8/9:2006/02/19(日) 08:07:40 ID:pITEMKnm0

「戦いの意味、か……」

見下ろした井戸は暗闇の蓋の下。
ほんの少しだけ闇を凝視していたサラマンダーはまだ残っている手ごたえを思い出し、彼の死を予測する。
こちらも右腕から胸にかけて手痛い火傷を負わされているが今のサラマンダーには気にならない。

「…戦いを失った俺には一体なにが残るのか?」

誰にも聞こえないであろう小声の呟きが夜の空気に霧散する。
それからサラマンダーは村へ、見張りを失った宿の方へ向けて動き出した。



井戸の底。
入り口より広くなったスペースの片隅に横たわるヘンリーの姿があった。
そばには彼に宿るG.F、カーバンクルの姿が。

「……はは。また助けられたな、ありがとよ…ぐっ」
額のルビーを返事代わりにきらりと輝かせ、心なしか心配そうなその姿が消える。
ヘンリーを助けたのはサラマンダーが予想もしない力。宿した召喚獣の守り。
えぐられた腹は致命傷に至っていないようだが血を流し続ければ危険だろう。

いまさら改めて気付く星空が頭上に円を描いている。
おぼろに輝くそれは地上への出口。

どうやって出たものか。次はサラマンダーは村へと向かうはずだ。
とにかく早くここを脱出して…あいつを止めないと。

後悔と焦燥、そして鈍痛が消し飛んでしまいそうな意識を強引につなぎとめている。
暗闇の底にヘンリーは、生きていた。
378闇にもう一度火をつけろ 9/9:2006/02/19(日) 08:08:53 ID:pITEMKnm0

【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5) 
 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣(天空の剣) 紫の小ビン(飛竜草の液体)、
 カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×1、各種解毒剤
 第一行動方針:宿屋へ向かう
 第二行動方針:求める強敵を探して殺す
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【現在地:ウルの村 南東の井戸付近】

【ヘンリー(手に軽症、腹部重傷、HP1/2)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP1/4) G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 キラーボウ グレートソード アラームピアス(対人) デスペナルティ リフレクトリング ナイフ
 第一行動方針:井戸からの脱出
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームの乗る奴は倒す)】
【現在地:ウルの村 南東の井戸の底】
379保守:2006/02/20(月) 22:21:36 ID:nGqVqRXkO
今日、カズスに一人でいたら、前に怪しい奴らが二人やってきた。

なんか一人がデカイ声で「貧乏揺すりはやめろ〜〜!!だから雑談スレで馬鹿に
されるというのだ〜〜〜!!この〜〜〜!」
ともう片方の首を絞めました。
絞められた方は「ぐええぇーー!いいから俺の考えた作戦を聞け!!」と十字を切っていた。
割と絞められているらしく、顔がドンドンピンクになっていった。

深夜にもう一人、仲間らしいドラゴンがやってきてその二人に声をかけた。「お!カインとフリオニール!奇遇だね!」 「おお!そういう君は****(聞き取れず。何か洋楽ぽい名前)ではないか!」
「洗脳!」
「洗脳!出た!洗脳出た!得意技!洗脳出た!洗脳!これ!洗脳出たよ〜〜!」
僕は限界だと思った。
380名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/20(月) 23:20:58 ID:dcD9gJWw0
>>379は無効です
381保守:2006/02/21(火) 11:59:29 ID:V864vWw5O
わかってるよw
382名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/21(火) 18:52:09 ID:mx4S2NdY0
保守ついでに念のため最新雑談スレ保守
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1140452583/l50
383光が導く地へ 1/5:2006/02/21(火) 22:20:01 ID:T6bBsx5k0
炎を思わせる黄昏の光は消えた。
天井に輝くは紅玉のような月。投げかけられるは血の色彩。
右手に聳え立つ山脈を臨み、スコールとマッシュは歩き続ける。

兄弟。仲間。脱出の手掛かり。
白魔道士に扮したかつての友。緑のバンダナを巻いた金髪の男。彼らとは別に存在しているのかもしれない緑髪の男。
探さねばならない相手は数多く、けれども、彼らは一点を目指す。
偽りの情報に導かれたまま。

(兄貴――どうか無事でいてくれ!)
ケフカの企み。それは可能性として有り得る話。
だが、ウルに向かったという男は、現実に人を殺めている存在。
しかも敬愛する兄の命が掛かっているとなれば、どちらを追うかなど決まっている。
微塵の迷いもなく、マッシュは歩き続ける。

(……殺すのか、あいつを)
倒さなくてはいけない敵。死なせるべきではない仲間。
マリベルの意志やパパス達の言葉。スコール自身が口にした台詞。
殺された仲間達への思い。最愛の人の仇を取りたいという気持ち。
相反する感情が、スコールの足取りを重くする。
384光が導く地へ 2/5:2006/02/21(火) 22:26:18 ID:T6bBsx5k0
お互いが一歩を踏み出す度に、二人の距離は離れていく。
スコールがそのことに気付いたのは、マッシュが足を止めた時。
マッシュの視線の先にあったのは、天空を横切る淡い輝き――

「――流れ星?」

はるか南西から北東へ。
森と山脈を越え、ウルの村がある方角へ、誘うように光は堕ちる。
「隕石にしては、随分静かだな」
揺れ動く心を胸に仕舞い、スコールは冷静に分析する。
「カナーンの方から飛んできたけど……魔法か?」
「メテオにしては動きが不自然だし、弾道ミサイルでもなさそうだが……
 ……まぁ、どちらにしても、急いだ方がいいかもしれないな」

時は流星。瞬く間に流れて消える。
迷う暇も、悩む余裕も、過ぎ行く時間は与えてはくれない。
『間に合わないこと』以上に最悪なことはない。
ティナ。ラグナとエーコとイクサス。アイラとティファ。バーバラ。
今まで、嫌というほど思い知らされた。

二人は駆け出す。
誰が待ち受けていようとも、最悪の結末には辿り着かせないために。
385光が導く地へ 3/5:2006/02/21(火) 22:30:39 ID:T6bBsx5k0
猛烈な勢いで過ぎていく光景が、不意に止まった。
首を傾げる暇もなく、転移の魔力が霧散する。
地上数メートルの高さから放り出されたサイファーは、それでも何とか着地すると、忌々しげに空を仰いだ。

目前で殺された青年の姿を思い出す。
どこか、アリアハンで出会った少年に似ていた。
髪や瞳の色ばかりでなく――パウロが死んだ時、表に飛び出そうとした少年の表情と。
姉を返せと叫び、女を睨みつける表情が、どうしようもなく似ていた。

青年を、そして恐らくは青年の姉をも殺した女。
殺人鬼を庇い、自分の道を阻もうとした老婆。
サイファーは二人の姿を刻み込む。セフィロスと同じ、倒すべき悪として。
けれども、すぐさま仇を討ちに行くことは出来そうになかった。

「畜生……一体どこまで飛ばしやがったんだ」
顔を上げれば、先にあるのは森らしき影。
その奥から、茫洋とした明かりが漏れている。
他の方向に目をやれば、連なる山のシルエット。
ザックから地図を取り出し、視界にあるものと照らし合わせ――今度こそ、サイファーは叫ぶ。

「ちくしょう、ふっざけやがってェッ!!」
光の名はウル。
サイファーがいるのは、カナーンから最も離れた地域。
殺人鬼の手から仲間を護るどころではない。
夜通し歩き通しても、ロザリーとイザの元に辿り着けるかどうか。

歯噛みしながら、彼は立ち上がる。
目指すはウル。明かりが見えるという事実が、人の存在を告げている。
運がよければ、チョコボのような移動手段や、協力者が見つかるかもしれない。

騎士は歩む。
状況を打破するために、一縷の望みを賭けて。
386光が導く地へ 4/5:2006/02/21(火) 22:32:56 ID:T6bBsx5k0
倒された木々は怒りの吐息に焼かれ、天を焦がす火種と変じた。
破壊を撒き散らしながら進むのは、小山にも匹敵する巨躯の魔王。
激情の炎を静めるため、生に固執するが故に、彼は生贄を求める。
けれども、町や城を襲おうと考えているわけではない。
本能と感情が命じるまま、目に映るものを手当たり次第に攻撃しながら進むだけ。
計画性も何もなく、故に、彼の歩みは遅い。
背の翼もはためく事はなく、巨大な鎌のごとく宙を薙いでは、哀れな草木を刈り取るのみ。

放っておけば、どこまでも南下を続け、森を焼き尽くしていただろう。
しかし――ブオーンの進路は、唐突に変わった。
視界に入った『人間』の存在によって。

白いコートを羽織った男。
青の輝きに包まれた人間は、ブオーンの頭よりもなお高く、空を掠めて飛んでいく。
視線を追わせてみれば、東に広がる山並みの向こうへと消えた。

ある者は戦闘を繰り広げていた。
ある者は道を急いでいた。
ある者は自然や建物に身を潜め、傷を癒す事に集中していた。
――だから気付いたものは少なかった。
山のようなシルエットが、今までとは比較にならぬ速度で、ウルに向かって動き出したことに。

悩む理由などありはしない。
ようやく見つけた獲物を逃すはずがない。
森林も山脈も、ブオーンの歩みを止めさせるには不足すぎた。
鼠を見つけた猫のように、広大な草むらを蹂躙し、彼方にそびえる坂道に向かう。

魔物は往く。
災厄を撒き散らしながら、その先にある生命を滅ぼす為に。
387光が導く地へ 5/5:2006/02/21(火) 22:35:42 ID:T6bBsx5k0
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:急いでウルに向かう
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【現在地:カズス北の草原→ウルへ】

【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:ウル北の草原→ウルへ】

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:サイファーを追いかける
 基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】
【現在位置:カズス北西の森北部→ウルへ】
388名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/22(水) 06:49:47 ID:s8Gzi8PIO
389名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/23(木) 21:29:27 ID:D+1rYWjE0
保守
390名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/25(土) 00:06:57 ID:Q6rCExPrO
391名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/25(土) 22:39:53 ID:7yMlTD6qO
捕手
392名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 02:23:15 ID:yGMmBAP40
歩主
393ユフィと二人きり:2006/02/26(日) 02:29:40 ID:dRSPGs8XO
夜の砂漠は冷える。
ラムザとユフィは岩に腰掛け、寄り添っていた。
もちろんユフィに他意はないのだが……。
「ラムザ、顔が赤いよ?」
「だ、大丈夫だよ」
ラムザは胸の高鳴りを押さえられずにいた。
そしてラムザは絶命した
「あんたの下心は見え見えなのよ」
バトロワでは少しの油断が命取りなのだ、ラムザはそれを解らなかった
ラムザ死体は無様に白眼を向き小便どころか大便を漏らした、可哀想

【ユフィ(トランス)

【ラムザ死亡】
394名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 02:49:17 ID:T27TzMZ30
>>393
久々の無効です。
待望の無効です。
395疑心暗鬼は猫と関係ない 1/8:2006/02/26(日) 07:05:03 ID:C9fQ4zB50
沈滞していた屋内へと流れ込んでくるさっきまでとは質の違う空気を肌で感知する。
それから、物音、加えて複数人による声の応酬が鼓膜を叩いて、
床に身を横たえたままのギルガメッシュは薄く瞼を押し開ける。


暗く荒涼とした街路に人の姿は見えない。
だからアルガスは立ち並ぶ建物を探索することを主張し、ライアンはそれに追従する。
持ち主のいない、故に施錠も何もない扉を極めて注意を払いながら押し開け、
レイピアを構えるライアンを前に、用心深く暗がりを注視するアルガスを後ろにして忍び込む。

「次は…マジックアイテムの店か? 今度こそ使えるものの一つもありゃあいいがな。いくぞ」

丁寧な行動も三軒ほど空振りに終わり心中に苛立ちが波立つアルガスだが表情には出さないように努める。
それを察してか扉を指す仕草に無言でうなずいて静かに扉に張り付くライアン。
滑稽な事に店主などいないのにも関わらずかかっている看板からはそれが何らかの店舗であることを察することができた。
396疑心暗鬼は猫と関係ない 2/8:2006/02/26(日) 07:08:02 ID:C9fQ4zB50

決意を胸にザックスは去り、いくら待てどもサイファーは帰ってこない。
三人に減った室内はランタンさえ灯さずに暗く重い雰囲気に漬かっていた。
地に足のつかない思考をループさせるイザ、ただ静かに祈りを捧げるロザリー、起きる気配のない赤い男。
時間の経過を感じられなくなりつつあったその空間で扉の動きが立てる微かな物音をイザの耳が拾う。

(……静かに!)

同じ音を聞いたのであろうロザリーとすっかり闇に慣れきった目でアイコンタクトを交わし、
手振りとほとんど音を伴わない声で動きを制止する。
緊張が手の先、足の先へと伝わっていく。傍らの剣にゆっくりと手をかける。
明らかに誰かの気配を感じ、じっとその方向を睨む。
来訪者が持っているのだろうランタンの光でやってきた誰かの輪郭が黒い像となり認識できた。
イザが自身を駆り立てるための動機にはそれだけの情報で十分で、その手の剣が空間を舞う。


異常とも言えるほどに慎重であったことはけして伊達ではない。
闇から来る不意打ち、それを予期していたかのように前に立つライアンは冷静沈着に対応してみせる。
精霊の剣と細身の刺突剣が金属音をあげてぶつかり小さく火花が散る。

「待たれよ! こちらは敵対する意思はござらん! 我が名はライアン、バトランドの王宮戦士!」

打ち合ったイザは警戒を解かず動ける体勢を維持するがこの戦士との二合目が訪れることはなかった。
後ろから驚きと親しみの混じった声が今しがた名乗られた名を繰り返したから。
397疑心暗鬼は猫と関係ない 3/8:2006/02/26(日) 07:10:02 ID:C9fQ4zB50

「ライアン様? ライアン様なのですか? ああ…良くぞご無事で。私です、ロザリーですっ」
「ロザリー殿!? なんとロザリー殿ですか!? 確かにその声は…」

奥の部屋から飛び出して戦士の手を取るロザリー、
その姿を状況の変化を確認して入ってきたアルガスの手にある光源が照らす。

「…おまえらかよ。チッ、おどかしやがって」
「アルガス……君、……か」

朝方別れたばかりの既に知っている同士。お互いの認知は緊張した空気をとりあえず収拾する。
かたや喜び、かたや微妙な温度に包まれた二つの再会。
久しぶりに自分の意志をもってわずかに上体を起こしたギルガメッシュの目はどこかで会った姿を捉えていた。
思い出すのはほんの12時間ほど前の惨劇、彼もまたその渦中にあった人物。
惨劇の記憶、放送の声、省みる失望が渾然となってギルガメッシュの中で渦巻いていく。
会話が聞こえる。ライアン。そうだ、あの男の名はライアン、旅の扉の前にいた男。
既に過ぎた12時間はギルガメッシュにあの事件を冷静に振り返ることを可能としている。

被害者は三人、自分が見ることが出来たのはそのオープニングだけだ。
…しかし、フリオニール1人であの場の残り全員を敵に回しさらにわたぼうとフライヤを殺す、
そしてあまつさえ逃げ延びるなどということができるだろうか?つまり……
つまり、あの場に奴に手を貸した者がいる?
あのタイミングはやつと誰かに計画されたタイミングだったのか?
容疑がかかるのはレオンハルト、カイン、スミス、ライアン。
カインとスミスは仲間、フライヤを失っている。可能性は低い。
残るはフリオニールと同世界の仲間であるレオンハルトと、目前の…壮年の男。
398名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 07:11:55 ID:dRSPGs8XO
突然空が光る
「ギャアァ」
そしてライアンは絶命した
399疑心暗鬼は猫と関係ない 4/8:2006/02/26(日) 07:12:11 ID:C9fQ4zB50

「おおおおおぉぉっっ!!」

自身のザックから探り出した剣を引き抜きつつ気合の掛け声と共に全身を使ってだんっ、と跳ね起きる。
その場のすべての会話が中断し、全員の目がその音源であるこっちを探るために差し向けられる。
わずか半日でこれほど体が鈍るものか?という重さを引きずりながら
ギルガメッシュは埃を巻き上げつつ定めた相手へと突進する。
会話していた女性を咄嗟にかばうように前に出たライアンの剣とギルガメッシュの剣がこの屋内に二度目の激突音を響かせた。
そのまま鍔迫り合いへ。弱い光の中二人の目が合う。

「お主は……!」

競り合いは本来受けに向かないレイピアの剣身が限界を超えて折れることで終わった。
しかしギルガメッシュの剣は戦士を捉えることは無い。
横合いからイザが割って入ったからだ。

垂直に床へ振り下ろされたイザの一撃を引いてかわし、ギルガメッシュはぐるりと見る。
1対4。数的不利。出口を目の端で確認。
最も入り口に近い位置にいたランタンの男を弾き飛ばしてギルガメッシュは夜闇へと消えていった。

「ギルガメッシュ殿! お待ちくだされ!」

その背中を追ってライアンも飛び出していく。
残されたのは再度臨戦のスイッチが入ったイザと立ち尽くすロザリー、そしてわめき散らすアルガス。
400疑心暗鬼は猫と関係ない 5/8:2006/02/26(日) 07:14:03 ID:C9fQ4zB50
                                           ・・
「…んだよっ、あいつはッ! ……おいお前ッ、また、かよッ!!
 ?…??…あぁー!? ザックが一つ無いッ! う…が……クソッ、クソーーッ!!」

思い切り壁に八つ当たり、足の痛みにまた聞くに堪えない雑言を吐き散らす。

「俺の奴…はある。こいつは…はずれの奴……これは移動用…
 じゃ盗られたのはデジカメのザックか! 〜〜〜〜ッッああーーッ、畜生!!」

必要以上に血が上っているアルガスと対照的に表情も暗く沈んでいるイザ。

「…あまちゃんが。慈善活動気取りでいるからこんなことになるんだッ!
 ああ? 失策ばかりじゃねぇか! だいたいな……」
「アルガスさん、それくらいに…喧嘩はよくないです」

見かねて声をかけたロザリーはアルガスに睨み返されて少しだけ怯むものの、
精一杯の笑みを崩すことはなく、その手はイザのザックから不釣合いな剣を引き出す。
何か言いかけたイザに目配せしてアルガスに話を持ちかける。

「えーと、アイテムの交換なんて…どうでしょうか?
 ほ、ほらこの剣見てください。すごく立派な感じですよ。あの…どうですか」

不機嫌そうな舌打ちはするものの持ち出された剣はいわくありげな魅力的な代物に見える。
アルガスはふん、と鼻を鳴らしてロザリーの手からそれを引ったくりなめるように値踏みする。

「……正直あきれているがまあ確かにお前等を責めても全く建設的じゃない。
 こいつはまあまあってとこの剣だな。じゃあな…こいつと交換な。
 文句いうんじゃねぇ、釣り合わない分は迷惑料込みだ。これでも大サービスだと思えよ」
「ありがとうございます。もう言い争いはやめましょうね」

そう答えるロザリーの手に渡されるのは奇妙なアクセサリー。
401名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 07:15:45 ID:dRSPGs8XO
意外にアルガスの傷は深かった。
そして絶命した
402疑心暗鬼は猫と関係ない 6/8:2006/02/26(日) 07:16:01 ID:C9fQ4zB50

ギルガメッシュを見失ったと戻ってきたライアンから広場への移動を提案されてアルガスは時計を覗き込む。
探索しても何かを得られる可能性は低そうだ。確かに潮時かもしれない。
使い物にならなくなったレイピアの代わりにライアンに兵士の剣を「貸し」ながら、
ようやくアルガスはサイファーの不在に気付く。
イザとロザリーはザックスのことも含めて放送後のことを説明した。

「あー…単純馬鹿だな。まあ町を探してる奴がいるからそっちが見つけてるかもな」
「ロザリー殿にイザ殿も来ませぬか? アリーナ殿もおりますよ」
「まあ、アリーナ様もご無事なのですか? アリーナ様も…偽者なんてお気の毒な話です。
 ですけど、サイファーさんがこちらに戻ってくるかもしれませんから」
「だから、アルガスにライアンさん。サイファーがいたらよろしくお願いします。
 無事合流できたならまた後で会いましょう」



カナーンから遠ざかっていく孤影。ギルガメッシュ。
頭が冷えていくつれて一方的にライアンを攻撃したことを悔いるようになってきた。
いくら疑わしいといえど疑惑はグレーゾーンに留まっているのだから。
けれど心中に渦巻く他人への不信感は嘘ではない。
バッツとレナ以外の人物を信頼できるだろうか?
いや、その二人だって今の自分は無条件では信じられない気がする。
(何を考えてんだ、俺は)
人を信じるとか信じないとかそういう軋轢を片隅に追いやる。
今しっかり見据えているべきは疑わしい面々ではなくて、確実に黒いあの男。
フリオニール。
あのうつろだった目、そして最後に見た明らかに異常な悪意ある眼を持つ男。

――今はただ、復讐を成し遂げる。
403名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/26(日) 07:18:39 ID:dRSPGs8XO
しかしギルガメッシュの傷は完治していなかった。
「くっさらばバッツ」
そして絶命した
404疑心暗鬼は猫と関係ない 7/8:2006/02/26(日) 07:20:04 ID:C9fQ4zB50

「イザさん…」

二人の去った後。
託されたとはいえ助けたはずのギルガメッシュの態度、アルガスの追い討ち。
イザの雰囲気は話し掛けづらく、彼も口を開こうとせず思考にふけっている。

「ねえ、イザさん。ほら、見てください。似合ってますか?」

灯された淡い光に照らされて頭上にネコのミミを乗っけたロザリーの姿が浮かび上がる。

「………」
「…やっぱり変なのでしょうか。こういうアクセサリーは私には似合わないでしょうか?
 ……ピサロ様は…なんて…言ってくださるのかな」
「あ、いやゴメン。ええと、あー、ええと、よく似合ってると思うよ。
 ………ゴメン、気を遣わせてしまって。
 どうしたって僕らは前に進むしかないんだから落ち込んでる暇なんてないはずだ」
「サイファーさんだって、ライアン様だって、リュカ様だって、
 みんなここからどうにかして脱け出そうと頑張っています。私たちもその一員ですよ」
「…そうだね。ありがとう、ロザリー」
「いいえ、どういたしまして」

曇り空が晴れるようにイザがまとっていた暗い雰囲気は薄くなっていた。
小さなカンテラの光も心なしか明るさを増したように感じられた。

405疑心暗鬼は猫と関係ない 8/8:2006/02/26(日) 07:22:13 ID:C9fQ4zB50

【アルガス
 所持品:カヌー(縮小中)、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、
 マシンガン用予備弾倉×5、猫耳&しっぽアクセ、タークスのスーツ(女性用)、エクスカリパー
 第一行動方針:アリーナたちとの合流場所へ
 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る
【ライアン 所持品:兵士の剣、折れたレイピア、命のリング
 第一行動方針:同上
 第二行動方針:アルガスに借りを返す】
【現在位置:カナーンの町】

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、マサムネブレード
 第一行動方針:サイファーを待つ
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、猫耳&しっぽアクセ
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーンの町・魔法屋】

【ギルガメッシュ(HP1/2程度・人間不信気味)
 所持品:厚底サンダル、種子島銃、銅の剣、デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3、変化の杖
 第一行動方針:フリオニールを倒す】
【現在位置:カナーン北・北へ】
406疑心暗鬼は猫と関係ない (修正):2006/02/26(日) 07:26:49 ID:C9fQ4zB50
>>400
5/8の一番上の行、点の位置がずれ放題ですみません。
下の文の「また」の上に修正します。

パラメータ修正――ロザリーのパラメータを以下に修正
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】

すみませんでした。お願いいたします。
407(修正2):2006/02/26(日) 20:30:28 ID:C9fQ4zB50
>>397
3/8
>…しかし、フリオニール1人であの場の残り全員を敵に回しさらにわたぼうとフライヤを殺す、

…しかし、フリオニール1人であの場の残り全員を敵に回しさらにわるぼうとフライヤを殺す、


パラメータ修正――アルガスのパラメータを以下に修正
【アルガス
 所持品:カヌー(縮小中)、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、
 マシンガン用予備弾倉×5、タークスのスーツ(女性用)、エクスカリパー
 第一行動方針:アリーナたちとの合流場所へ
 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る

ミスが多く申し訳ありません。
408ウル 〜ある会話の風景〜 1/8:2006/02/27(月) 00:08:40 ID:lh1B4i/O0
「みんなーヘンリーとソロ、連れてきたよー」
「レナ、エリア! 良かった目覚めたんだな……」
「エリアさん、良かった。レナさんも」
「うん、ありがとうソロ。ヘンリーも……ごめんなさい。私どう謝ってもいいのか判らないけど」
「いいさ、俺はこの通りピンピンしてる。エリアも回復した。だから、いいさ」
「はい、私もこうして元気……とはいえないけど、ここで今笑えています。だから気にしないでください」
「ヘンリー、エリア……それレナを追い詰めてる」
「うう……ごめんなさい」
「さて、今ウルにいる全員がここに揃ったわけだな」
「あのヘンリーさん、わたぼうが寝てるんですけど。一応ビビが今様子をみています」
「ん、なんだ疲れがでたのか? まぁそっとしておいてやろう」
「じゃあこれからのことを検討しようぜ、ずっとこの村にいるわけには行かないだろう」
「いえバッツさん、エリアさんは目覚めたとはいえまだ無理できる状態ではありません。
 ヘンリーさんもバッツさんも……そして僕も無理な戦闘は厳しい状態です。
 しばらくはこの村に留まるしかないと思いますが……」
「専守防衛、か……リュカ達を探しに行きたいが今は仕方ないな。
 よし、見張りは俺がやるからおまえらは休んでろよ。ちょうどいいアイテムもあるし俺が適任だ」
「動ける奴らでパーティを組んで外に行くのはどうだ? 探したい仲間がいる奴もいるだろう。
 俺の足の怪我も歩けないほどじゃないし……できるなら留まるより動きたい」
「止めたほうがいいと思います。ここの守りが薄くなるし、外にはピサロ達が行っています。
 僕たちの役目は彼らの帰る場所を護ることだと思います」
「そうか……そうだな。レナもまだ無理はできないし」
「私なら大丈夫よバッツ、でもエリアの傍に居てあげたいから……」
「ああ、わかってる」
「…………」
「どうしたソロ、考え込んで」
「ヘンリーさん……いえ、そうですね。みんなにも言っておいた方がいいかもしれない」
「どったの? なんか深刻なこと?」
「はい、首輪を解除する方法についてなんです」
「え?」
「本当かよ?」
「まだ判りません。でも、可能性がないわけじゃないと思います」
409ウル 〜ある会話の風景〜 2/8:2006/02/27(月) 00:09:47 ID:lh1B4i/O0
「……話せよ、ソロ」
「……はい。一度ロックさんに話したことなんですけど、天空の剣があればもしかしてこの首輪を
 外せるかもしれない」
「天空の……剣? それで首輪を斬るってこと?」
「いえ、天空の剣にはあらゆる魔力を打ち破る力が宿っています。その凍てつく波動なら……」
「天空の剣なら俺も知ってる。リュカの一族にとって因縁の深い武具だからな。
 だがそれが可能だとしてそんな道具を支給するほどあの魔女がマヌケだとは思えねぇんだけどな」
「多分、支給はされてると思うんです。この天空の盾も支給されていましたし、それに……感じるんです。
 天空の剣の存在を。僕の中に流れる天空の血が教えてくれるのかもしれない。
 でも、確かに魔女の視点から見ればそれで首輪が解除できるなら支給するはずがない。
 このことから天空の剣では解除できないという推測はできます」
「なーんだ、結局無理なんだ」
「それなら話す必要はありませんよね……つまり、まだ何かあるんじゃないですか?」
「はい、エリアさんの言う通りあれから考えていたことがあるんです。
 天空の剣単体では無理かもしれない。でも……他の力で剣を強化することができたら」
「他のアイテムと組み合わせることで可能になるかもしれないってこと?」
「天空の剣は僕が最初に手に入れた時は長い年月のせいかその力の大半が失われていました。
 しかしマスタードラゴンに会い、その力を注ぎ込まれることでかつての力を取り戻したのです。
 それと同質の力を剣に注ぎ込むことが出来れば、恒久的にとはいかなくても一時的にでも剣の波動を
 強化できるかもしれない」
「ちょっと待ってくれ、話は分るがそのマスタードラゴンと同質の力とやらはどっから手に入れるんだよ。
 そのマスタードラゴンとやらがこの世界にやってきてくれるわけじゃなし、その力に当てはあるのか?」
「この盾を始めとした同じ天空の武具から抽出できれば、と思っていますが……難しいでしょうね。
 武具に秘められた力を扱える能力を持った人がいれば……」
「ラミアスの剣を打ちなおしたサリィさんなら……あぁ、駄目だわ」
「ターニアちゃん?」
410ウル 〜ある会話の風景〜 3/8:2006/02/27(月) 00:11:29 ID:lh1B4i/O0
「兄さんから聞いたんです。魔王を倒した武器、ラミアスの剣はさびていたのをサリィさんという方が
 打ち直して元の力を取り戻させたそうです。でも、彼女は放送で名前を呼ばれてしまった……」
「…………駄目か」
「うーん、釜に放り込んでコトコト煮込めば出来上がりってわけには行かない物かなぁ」
「リュック……料理じゃないんだから。そんなの錬金術の領域だわ」
「……マスタードラゴンの力、当てならあるぜ」
「「「「な、なんだってぇー?」」」」
「……ヘンリーさん、本当なんですか?」
「これ見ろよ」
「名簿……プサン? なんだこのバーテンが似合いそうなヒゲメガネのおっさんは?」
「マスタードラゴン」
「ヘンリーさん、こんな時に冗談は……」
「それが冗談じゃねぇんだよ。俺もリュカが魔王倒した時のパーティで一度しか会ってないんだけどよ。
 リュカの話じゃマスタードラゴンは時々人間に変身して下界でお忍びで遊んでたらしい。
 で、その変身した姿がそのバーテンってわけだ」
「それマジ?」
「それが本当なら天空の神さえも魔女には成す術なくこのゲームに連れてこられたってことですよね」
「ああ、でもマスタードラゴンはプサンの姿の時はドラゴンオーブって宝玉に竜神としての力を封印
 してるんだそうだ。だからプサンの力は普通の人間と変わらないらしい。
 そんな状態じゃ魔女に抗えなくても仕方ないさ」
「でもマスタードラゴンとしての力がないなら剣に力を注ぐのも無理なんじゃないのか?」
「バッツの言う通り。そこでドラゴンオーブが支給されてるか否かが問題になるわけだ」
「それってマスタードラゴンしか扱えない道具なんだろう?
 そんな他の参加者に意味のない道具支給されるか? プサンって奴が死んだら無意味じゃないか」
「マスタードラゴンが簡単に死ぬなんて思いたくないけれど……」
「今、ただの人間なんだろ?」
「……同じドラゴンの属性を持つ者ならそのオーブを扱えないかしら?」
「ドラゴンの参加者? 確か、竜王とドルバって奴がいたけどそいつらはもう放送で呼ばれちまったぜ?」
「ううん、もう一匹いるのよ。名簿ではスミスって名前になっていたけれど……」
「スミス……ああ、こいつか。確かに竜だな、飛竜ってやつか。ソロ、分かるか?」
411ウル 〜ある会話の風景〜 4/8:2006/02/27(月) 00:13:20 ID:lh1B4i/O0
「これはドラゴンライダーですね。僕の世界のモンスターだと思います。レナさん会ったんですか?」
「うん、前の世界で旅の扉を探している時に会ったんだけれど」
「え、そうでしたか? 私は会ってませんけど……」
「ほら、あの動く山を見つけたときエリアへたり込んじゃったじゃない?
 それで私だけで山を追いかけた時に会ったのよ」
「ああ、あの時……」
「動く山ぁ!? なんだそりゃ?」
「わからないのバッツ……モンスターだとは思うんだけど……」
「山のようなモンスター? まさか」
「知っているのかヘンリー?」
「多分……えーと、どのページだ? ああ、こいつだ。ブオーン……サラボナの伝説にある魔物だ。
 リュカの話じゃとんでもねぇ強さだって言うぜ」
「とんでもないな……そんな巨大な怪物まで参加してるなんて本気で滅茶苦茶なゲームだぜ……。
 そいつには気をつけたほうがいいかもな。何か弱点とかないのか?」
「いや知らん」
「役にたたねぇ……」
「オメーよりは役に立ってる自信はあるぞバッツ。それより話を戻そう」
「あ、うん。それでそのスミスって飛竜と会って……死んだはずのギルバートの声を聞いたの」
「レナさん……?」
「バッツには話したよね。信じられないかもしれないけど私は確かにギルバートだと思った。
 もう、詳しい話の内容は覚えてないんだけど……」
「そいつもまた胡散臭い奴だな……」
「……それでそのスミスならドラゴンオーブを使えるかもってことか?」
「そう、神様とモンスターでは力が違いすぎるけどその属性が同じなら……」
「多分無理だな」
「どうしてそういい切れるんだ?」
「レナも言ったとおり神様と一介のモンスターじゃレベルが違いすぎるってことさ。
 もしかしたらドラゴンオーブの力を解放することは出来るかもしれない。
 でも力の制御なんてできるわけないと思うぜ。死ぬか暴走するのが落ちだろうよ」
「ま、普通に考えればそうだよねー」
「そのスミスって奴が魔王に匹敵するような強大な魔力を持ってりゃまた話は違ってくるけどな。
 レナ、そのスミスと会ってそんな強い魔力感じたか?」
412ウル 〜ある会話の風景〜 5/8:2006/02/27(月) 00:15:01 ID:lh1B4i/O0
「いいえ。弱い魔物だとは思わなかったけど、そんなとても強いってほどの力は感じなかったわ」
「だろ? この竜王って奴の方が生きてればまだ可能性あったかもな」
「そうですか……」
「まぁそもそも天空の剣はソロの感覚を信じるとしてもドラゴンオーブが支給されてるかは
 分からないわけだからな。ここで話してても机上の空論って奴だ」
「あーあ、また考え直しかぁ」
「お前が何を考えたよ」
「それは言いッこなしでしょ。アレ? バッツのつむじって何か緑っぽいね?」
「ん? ああ、髪も大分伸びてきたからなぁ。そろそろ散髪して染めなおす頃か……」
「バッツって髪染めてたの?」
「あれ、レナに言ってなかったっけ? 地毛は緑なんだけど以前ボコに草と間違えられて齧られたことが
 あってさ。それから染めてるんだよ」
「……髪……緑……」
「どうしたんですか、レナさん?」
「…………」
「レナ?」
「へ? あ、ううん。何でもないの、何かを思い出しそうになっただけだから……ボソッ(まさかよね」
「さて、話はここまでだな。そろそろ俺は見張りに立ってくる。おまえらはゆっくり休んでな」
「あ、ヘンリー。見張りに行く前に手の包帯替えたほうがいいよ。血が滲んで真っ赤だよ」
「ん? ああ本当だ、サンキュなリュック。痛みも大分治まってたから気付かなかった」
「……取ってきました。どうぞ、この包帯使ってください」
「ありがとな、ターニア」
「貸して、傷つけたお詫びになんてなるとは思わないけど私が巻くわ」
「いや、レナ」
「どうしたの? 私じゃ駄目?」
「そうじゃない、そう……」
「あの、ヘンリーさん? 私なにかいけないことしました? そんなじっと見つめられると……」
「いや……そう、ターニアがこの包帯巻きなおしてくれるか」
「え、でも……」
「ヘンリーさん! ターニアは血を見ると……」
「分かってる。だからやってもらうんだ」
「そんなぁ、非道いよヘンリー。分かっててやるなんて」
413ウル 〜ある会話の風景〜 6/8:2006/02/27(月) 00:17:01 ID:lh1B4i/O0
「ちょっと黙ってろよリュック。なぁ、ターニア。いつまでこの現実から目をそらすんだ?
 酷い目にあったのは解る。とても怖い目に遭ったんだろう。でも、いつまでもそのままじゃ駄目だ。
 血を見るたびに身体を竦ませてたんじゃ戦うことなんてできやしない」
「わ、私戦うことなんて……できません」
「何も剣もってドツキ合う事や魔法でドンパチすることだけが戦いじゃないさ。
 危険から身を護ること。傷ついた人を救うこと。それだって立派な戦いだ。
 そりゃ俺だってソロだって身体を張ってターニア達を護るさ。
 でもそれじゃ足りない場面が来るかもしれない。そんな時ターニアはどうする?
 傷ついた仲間が君の目の前で倒れるかもしれない。そんな時どうするんだ?
 黙って、震えて、何もしないままじっとしているのか?
 自分が殺されるまで? 目の前の仲間が息絶えるまで?」
「私……私は……」
「ヘンリーさん、言い過ぎです!」
「黙ってろソロ。ターニア、ここ一時でいい。勇気を出すんだ。
 ここ一時動けたらきっといざという時にも動くことが出来る。きっとできるから」
「いざという時……イザ」
「おいヘンリー、やっぱり酷だぜ。言うことは解るが今はそれくらいに……」
「待って! バッツさん待ってください!」
「うお」
「ターニア……」
「わかりました。やります、いえやらせてください!」
「……いい娘だ」

「……………………」

「ハァ、ハァ、ハァ、……終わり、ました」
「ありがとな、手首もしっかり固定されていい感じだ」
「はい、お兄ちゃんやランドが怪我した時なんかはよく私が手当てしてあげてたんです……」
「やったな、ターニア! 良く頑張った! 感動した!」
「凄い汗よ……ほらお水」
「ありがとう、バッツさんレナさん」
「一時はどうなるかと思いましたよヘンリーさん」
414ウル 〜ある会話の風景〜 7/8:2006/02/27(月) 00:18:56 ID:lh1B4i/O0
「言ったろソロ? 案ずるよりは産むが安しってな」
「……ヘンリーさんの口からは初めて聞きましたが」
「気にするな」
「そうします」
「さて……そんじゃ、今度こそ見張りに行って来るぜ」
「気をつけてくださいヘンリーさん。しばらくしたら交代にいきますから。
 何かあったら無理せずに僕たちを呼んで下さい」
「ああ、わかってる」
「あの、ヘンリーさん」
「ん? どうしたターニア」
「ありがとうございました。私、動きます。その時が来たら……きっと動きます」
「ああ、ターニアなら大丈夫だ。じゃあ行くからみんな身体休めとけよ」
「はい、いってらっしゃい」


【ソロ(魔力少量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ヘンリー(手に軽症)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP3/4)
      G.F.パンデモニウム(召喚不能)
      キラーボウ グレートソード アラームピアス(対人) デスペナルティ リフレクトリング ナイフ
 第一行動方針:宿屋周囲の警戒
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームの乗る奴は倒す)】
【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:レナのそばにいる】
415ウル 〜ある会話の風景〜 8/8:2006/02/27(月) 00:20:55 ID:lh1B4i/O0
【レナ(体力消耗 怪我回復) 所持品:なし
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:エリア、バッツを守る】
【エリア(体力消耗 怪我回復)
 所持品:妖精の笛 占い後の花
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:休息 /わたぼうの様子を見ている
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:イザを探す】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:睡眠中(時間が経てば勝手に目が覚める)
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【リュック(パラディン)
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
 ドレスフィア(パラディン) チキンナイフ 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】

【現在位置:ウルの村 宿屋】

※この話は「闇にもう一度火をつけろ」に続きます。
416名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/27(月) 01:25:51 ID:NyynW6vM0
>>398 >>401 >>403に無効保守
417名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/28(火) 21:43:04 ID:zOGMxexnO
保守
418名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/02/28(火) 23:06:50 ID:4vJFvSob0
ほす
419名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/02(木) 08:42:31 ID:hLwTgfOt0
保守
420名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/02(木) 23:52:33 ID:DvUnqrOfO
スホッシュ
421名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/03(金) 16:37:55 ID:mQnblHqkO
保守
422名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/04(土) 01:25:35 ID:3xH+GwTv0
ターニア=アニータ
423名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/04(土) 21:56:18 ID:2DyT5p/PO
>>422に無効捕手
424名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/04(土) 23:39:07 ID:fH0uLP2hO
保守は荒らし
425名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/05(日) 18:00:24 ID:YNTATCBqO
荒らしは保守
426名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/06(月) 16:12:17 ID:zubuVvrx0
板圧縮してるらしいから、念のため保守。
427名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/07(火) 00:31:44 ID:5wvXKY5nO
保守ついでにスランプです。
他の書き手さん、がん……ば……て。

【俺 脂肪】
428名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/07(火) 22:56:09 ID:MkI8DrNq0
24時間レスがないだけで、いくつもの良スレが落ちたからな・・・
気をつけないと・・・保守。
429名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/08(水) 10:26:07 ID:6+aMkb+Y0
hosyu
430Cross Purpose 1/7:2006/03/08(水) 16:46:44 ID:FkBlY6pF0
不意のスリプル、自分は何とか凌いだもののアリーナは眠りに落ちた。
幸いにもピエールも耐え切ったようで側面より機械式のボウガンが掃射される。
非情なスライムナイトはそのまま逃げ出した連中を追っていく。一方自分の前に立ちふさがるのはカメ。

先ほどのアリーナとの戦闘、機を見るに敏なスリプル。
自分とピエールから射掛けられた矢で負傷し視界を奪われているとはいえ楽観は出来ない。
保護要因を抱えていた相手の状況不利、戦力の数としてのこちらの量的有利が無ければ格上の相手だったろう。
相手が暗闇であることを考慮すればこの機を逃さずに強敵を仕留めておく利益のほうが大きいか。
ならば迷うことなどない!

「大気満たす力震え、我が腕をして 閃光とならん! 無双稲妻突き!」

近すぎず、遠すぎず。相手の近接戦闘を殺し、遠距離に逃れることも許さない得意の距離。
それを保ったまま弓矢から持ち替えた大剣を気合とともに振り下ろす。
視界を覆う闇に夜の闇、何も見えていないであろうカメを中心に迸る雷が降り注ぐ。
黒を切り裂く白電光、肉体を貫く聖なる雷。
自身のペース、優勢を確信するに足る状況にもウィーグラフは手を緩めない。
縫い付けられるように平たく地に伏せている相手をにらみ叫ぶ。

「反撃の暇すら与えんッッ!
 死兆の星の七つの影の 経路を断つ!」

違和感があった。ぞくりと背中を這い上がる何かがあった。
魔人とまみえたときと同じ見えざる圧力。高レベルの魔力の凝集する気配。

「北斗骨砕打ッ!」

己の放った技による地より突き昇る衝撃が対象の肉体を貫く。天運無きものは絶命にすら至る一撃。
余勢を駆ってとどめの一撃を下すべく間合いを詰めていく。
止め………?…!いや――危険な何かが来る、待て。
経験が知らせる危険信号が相手の反撃を凌ぎ切る策をとれと教えている。
それが、生死の分かれ目だったと悟るのはほんのわずか先のことである。
431Cross Purpose 2/7:2006/03/08(水) 16:48:19 ID:ndplvD9H0

物理的な夜闇に魔法的な盲目。真の闇の中、雷撃が身体を焼き、衝撃が臓腑を、生命を貫く。
穴の空いた器のように肉体から命が零れ落ちていくのが実感できる。
先陣を切ってきた拳術を操る娘もながら、後詰として現れた男もまた手強い。
今感じ取れる気配はひとつであるから娘のほうは眠りに捕らえたようだが。
相手の予想以上の強さ、テリー達のために時間を稼ぐことの必要性、そしてダメージを負いすぎた事。
これらの要因がギードに決断を促した。
練り上げた高密度の魔力、それが魔法の形を成して手負いのギードから放出される。
そして世界は停止する。

最高レベルの時空魔法、「クイック」。
わずかな間とはいえ時の流れを大幅にゆがめ、術者に万能たる時間を歩む許可を与える魔法。
せいぜい術者が二度行動する程度の許可であるとしても恐るべき効果。
その与えられた時間でギードの選択は脱出でも回復でもなく攻撃。自分を襲っている暴力の無力化。
知識の中から二つの魔法を選択し、目の前の敵意へと術式を重ねる。


その瞬間、何が起こったかはわからなかった。
それからわずかな間を挟み足元の感覚が無くなる。
戦場で体感したこともあるこの不快な感覚。そう、これは重力操作魔法。
夜の闇とは違う黒が視覚を覆いつくし、嫌な耳鳴りが聴覚を塞ぐ。触覚も薄くなって身体は宙に浮いたよう。
平衡感覚がおかしい。いや、感覚全てがおかしい?
脳裏には恐怖、肉体には責め苦。重い、重い、重い重さがすべての上にのしかかっている。

(いつの間に…これは……グラビガ!? だが何だ、桁違いに重いッッ…!)

まといつく乱重力と不安を振り払うように振り回した剣が何かを食んだ手ごたえを返す。
その瞬間に時を同じくして消え失せた黒い領域の外にあったのは刃の突き立ったカメの姿と変貌した自身の有様。
自分の全身に付着している奇妙な塊、錆のようなものが目に入る。
それは極小時間から放たれた第二の魔法。ウィーグラフをそして眠るアリーナを追撃する。
432Cross Purpose 3/7:2006/03/08(水) 16:49:47 ID:FkBlY6pF0

「な、何だッ、これはッッ!!???」

何が起こったのか、何をされたのか? 理解を超えた突然の変化にうろたえる。
とにかく回復せねばまずい。大慌てでエリクサーを手探りで取り出して飲み干す。
回復という安堵を経てようやく自分を襲っていた魔法の正体を思い当てることができた。
あれは、毒の魔法・バイオ。
認識と共に異常な活性を与えられた細菌により生きながら分解される痛み、放たれる毒の痛みが全身で絶叫する。
まったく考えられない超高速の魔法連発にウィーグラフは一時的とはいえ冷静さを欠いていた。
それはいつの間にか手にしていたはずの大剣が消えていたことでも証明される。
そしてこの事態を引き起こしたのであろう憎むべきカメも。

「あ……何だったのか、今のはッ? 超高速での魔法連発だと? そんなことが可能なのかッ!?」

幸いに視界内の草陰に相棒たる大剣を見出すことができたがカメの方はもういくらか距離を稼がれたようだ。
獲物は逃した。攻撃は失敗した。痛手も負った。これ以上の失点は避けるべき。
ピエールが起こした爆発の音が時間と共に周囲からお人好しどもをひきつけるであろう事は想像に難くない。
体を蝕む毒のこともあるがまずはここを移動しなければ。
魔法による攻撃ゆえか未だ眠りの中にあるアリーナを背負う。かかる負荷に疲労が全身から反響を返す。
グラビデ系統の魔法は傷ではなく体力の消費、疲労の形でダメージを負わせてくる。
休息の見込める戦いならいざ知らず、長期戦においては厄介な魔法だ。
加えてバイオによる毒、つくづくあのカメが戦力を削るという戦い方を貫いたことには頭が下がる。
されど不満を漏らしても何の得にもなるまい。
疲れに苛む身体を鞭打ちウィーグラフは西方へとこの場を脱する。
433Cross Purpose 4/7:2006/03/08(水) 16:52:51 ID:FkBlY6pF0
Scene-2
向かっている方向には最初の音の後すぐに光の柱が見えた。
忍びの足は速い、あっという間に視界からいなくなってしまったユフィを追って走るラムザ。
ジャンプして上空より探すということも実行してみたがこの暗さでは人程度の大きさを探すのは厳しい。
ただラムザは代わりにはるか彼方に動く巨大な影と、森の木々の隙間から見える白い光の筋を見る。

その直後にもニ、三度爆発音があった。
不安の影。戦闘があるたびに犠牲が増えることを覚悟しなければならない。
いまいちその行動に掴めないところがあるもののユフィは音を追っていったと判断し、森の中をその方角へと向かう。
15分程度の時間差とはいえ命が失われるためには一瞬あれば十分足りてしまう。
戦闘があったとは思えない静けさが手遅れではないかとの疑いを膨れ上がらせる中、その先でラムザが出会ったのは、巨大な亀。

背を守っているはずの甲羅はあちらこちらで砕け割れ、傷が露出している。
その腕や背には痛々しく矢のようなものが突き立っている。
気配を察したのだろう、振り返った亀の首には自分や皆と同じ鈍い金属の輝きが見出すことができた。
年季の入った威厳を持つ彼(かな?)もまた参加者、そして彼こそが戦闘の当事者であったにちがいない。

相手のスタンスは分からないが、ラムザは冷静かつ親しげな口調で話しかけた。もちろんまじゅう語で。

『やあ、僕はラムザ=ベオルブ。大丈夫、あなたと敵対する意思はない。あなたの名前は?』

じっ、と深さを湛え輝く瞳がこちらを凝視する。目に入ったひときわ深く抉られた傷口が痛々しい。

『わしは賢者ギード。ラムザよ、こちらも敵意は無い』
『ありがとうギード。いったい何があったのですか? その様子、誰にやられたのです?』
『体術を操る娘と武器を操る魔物、弓と剣を使いさらに妙な技を繰り出す男の三人じゃ。
 全員が十分な能力を持つ戦いに乗っている危険なパーティ。
 損害を与えて何とか逃れては来た代償がこれだけの傷、というわけじゃがの。
 …生死までは分からぬ。ラムザよ、お主も注意するがよい』
『はい。あなたのいう三人のうち二人はおそらく僕の知っている危険人物と同じです。
 そうか、彼らが手を組んだ、となればその危険度は大幅に……。ギード、傷が?』
434Cross Purpose 5/7:2006/03/08(水) 16:54:38 ID:FkBlY6pF0

小さく苦しげな鳴き声を漏らし、耐えるように目を閉じるギード。
回復魔法の光がおぼろげにその全身を包み、緩やかに散っていく。
忌まわしき回復効果の制限のためか見た目ではそれが効果を上げているようには見えないが。

『ああ、済まぬな、ラムザよ。この傷じゃ、さすがに堪えるわ。
 …時にお主は単独で行動しておるのか?』
『いいえ。爆発を見た仲間がこちらへ突撃したので追ってきたのですが…見ていませんか?』
『その者は白魔道士か?』
『いえ、違います。……どこへ行ったのだろう』
『ふむ、心配じゃな。しかしならば同行は頼めぬか。
 こんな世界じゃ、共に行きたいところではあるがお互いに探す相手があるというわけならば仕方あるまい。
 お主の仲間が無事であるとよいな』

そうしてギードは会話を打ち切りゆっくりと、先ほどと同じ進行方向への歩みを再開する。

『待ってください。あなたは誰を探して、どこへ向かっているのです?』
『襲撃者は三人じゃった。二人はわしがなんとかできたがもう一人に仲間が…テリーが、トンヌラが追われておる。
 幸いに助けに入ってくれた白魔道士が先導してくれておるが心配なのは変わらぬ。
 それに、無事だとしたらわしが心配されておろう。だから急ぎ追いつかねばならんのじゃ』
『テリーだって!?』
『あの子の知り合いか、ラムザよ。ならばなおさら同行を頼みたいところだが…
 お主の仲間のこともある。危険な者が徘徊していることもある。無理強いはできぬ』
『そう……ですね』
『だがわしはそうした理由で急がねばならん。……ラムザよ、お主は生き抜くのじゃぞ』
435Cross Purpose 6/7:2006/03/08(水) 16:56:11 ID:FkBlY6pF0

あてはない。ただ向かった方向はわかっている。
どこへ逃れたのかわからないがギードは仲間達もまた襲撃者の牙をかわしたことを信じてゆっくりと進む。
受けすぎた傷を癒すということは考えない。いや、その無意味さを悟っている。
最後に受けた実剣での一撃は保護していた甲羅を打ち砕かれ露出した肉を容赦なく突き抉っていた。
老いたる命まで届く深すぎる打撃―――
ギードは、自身の生命の限界というものをしっかりと理解していた。

ここでは最上級の治癒魔法さえ基本的な魔法と同程度の効果しか発揮されない。
それでも時間と必要量の魔力、ギードほどの能力があればこれほどの重傷であってもどうにかできただろう。
しかし、ギードはその選択肢を取らない、いや選べない。
仲間の下へ急がねばならない状況、消耗した魔力。
故にギードは定期的に魔法により延命するという道を選び、その足を止めないのだ。



ゆっくりと離れていくボロボロの背中を見送る。
ラムザの心中は複雑であった。天秤の上にいるのはテリーとユフィ。

ギードは『襲撃者に損害を与えたがその生死は不明』と言った。
もちろんテリーのことは心配ではあるが、先行したユフィもどうなっているだろうか。
どちらも捨て置くことはできない。
だが自分は一人。ギードと共にテリーを探すか、別れユフィを探すか。
許された時間は短いが、考えねばならない。

選べるのは一つ。
436Cross Purpose 7/7:2006/03/08(水) 16:59:49 ID:jtXsgLQf0
【アリーナ2(分身) (睡眠、毒、スリップ) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ピエールを葬り、サスーンに向かってリュカを殺す
 第二行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】
【ウィーグラフ (疲労、毒、スリップ)
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×6、ブロードソード、レーザーウエポン、
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ
 第一行動方針:アリーナを連れ戦場を離脱し、サスーン方面へ向かう
 第二行動方針:サスーンに向かいゴゴとマティウスを殺す/ラムザを探す
 第三行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】

【ギード(重傷、MP大幅消費) 所持品:首輪
 第一行動方針:テリー、ルカとの合流
 第ニ行動方針:首輪の研究】

【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ユフィを追いかける or テリーを追い、保護する
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在位置:カズス北西の森南部】
437名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/09(木) 08:13:53 ID:1OCqGsXFO
ほしゅ
438名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/10(金) 12:09:48 ID:mpqEPoJS0
保守
439名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/10(金) 21:02:38 ID:F0czttMP0
ほしゅ
440名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/11(土) 12:17:24 ID:2KB4ZE0nO
保守
441Cross Purpose2 発展篇 1/8:2006/03/11(土) 17:31:34 ID:1FRqZmMY0
Scene-3

同行者のことなんか考えずに北へ走った。
目指すは爆音のした方…だったんだけどすぐにあたしは天へ立ち上る光の柱を見ることになった。
あれはきっと魔法の光、よね?
事態のシンコクさがより一層。どうしてあたしの足はもっと早く走れないかなぁ。

最後の爆発音が聞こえてからちょっと経っちゃった。
あたしは遅すぎたのかもしれない。
…というか、手がかりがなくなっちゃうと夜の森ってスゴク探しにくい環境よね。
なーんか同じところを回ってる気がするし。
でもあの時走り出さずにいられなかったのは本当だし。

あれ、なんか開けたとこに出ちゃった。足元、砂…じゃなくて灰ね、これは。
よーく見たらたくさん木が倒れてるし何があったのかな?
ずいぶん寂しい風景なんだけどここがさっきの光の柱の場所なのかな?
…あ、向こうのはもしかして……カンテラの光? 誰か来たみたい?
442Cross Purpose2 発展篇 2/8:2006/03/11(土) 17:34:10 ID:1FRqZmMY0
「落雷の跡、だよな。随分派手な…ラムゥでも呼んだか?」
「熱は失せているな。ファファファ、爆発ではこうはならん。これは明らかに雷撃魔法の痕跡」

西進する三人が森の中で出会った光景、それは不自然な規模で折れた木々、焼け焦げた跡。
まるで集中して落雷があったような。
誰よりも先んじてザンデが進み出て辺りを検分して回る。

「確かに随分時間が経過した跡のようだ。先程の爆発とは無関係だろうな」
「ってえことは、朝から夕方前くらいの間にここで誰かがやりあっていたってことか。
 …結構戦いに乗ってる連中も生き残っているのかな。もう…60人まで減っちまったけどよ」
「そうだな。今のところ明確に乗っていることが分かっているのは」
「青い服のテリーって剣士と…カインって竜騎士だったっけ」
「アーヴァインもまだ疑わしい。しかしそれ以外にどれ程の人数がいるのか。情報が足り」

「待ちなさいよッッ!!」

ストン、と梢から影が飛び出し、三人の前へと着地する。

「カインが乗っているって…それどういう情報よ?」
「…何者だ」

剣、魔法、めいめいの戦闘スタイルに合わせ迎撃の構えを取る三人。
急に現れれば当然そうなるだろうが、そこを考えずに飛び出したユフィは大慌て。

「ああっと、ちょ、ちょっと待って、ね? あたしはゲームに乗ってなんかいないし…
 あー…それ誤報だから! 根も葉もない噂だから、あのぅ、ほら、わかるでしょ?
 ってそっかそっかごめん、あたしはユフィ、あなた達は?」
「……オレはロック=コール。で、こっちの……」
「待て、答える必要はない。それではユフィ、貴様は何の目的で姿を現した?」

さえぎられて口をつぐむロック、端から無言のままのザンデ、威圧感と共に質問を返すピサロ。
対峙しているユフィはいまさらながら相手の発する重圧、そのヤバさを体感していた。
443Cross Purpose2 発展篇 3/8:2006/03/11(土) 17:36:51 ID:1FRqZmMY0

「…カインとどういう関係が有る。答えろ」
「あ、それよそれっ。カインがゲームに乗っているなんて誰が言ってたのよ。
 カインはねぇ、エッジの仲間なんだからそんなわけ無いじゃない。
 あ、そうだ………あのさ、もしかしてフリオニールってヤツに聞いたんじゃない? 違うかな」
「フリオニールだって!? 会ったのか、あいつに!?」
「抑えろ。私は聞いたわけではない、己の実体験から話しているのだがな。
 貴様がどう吹き込まれたかは知らないがカインは既に人を殺している」
「………殺した…」

実体験とまで持ち出されて頑強に言い張られ、その真摯な目にユフィはたじろぐ。
しかし改めてもう一度この一行を見直してみると…

(…うう、なんか悪そーな…見るからに悪の参謀みたいなやつもいるし。
 喋ってるヤツはカッコいいケド悪役は顔じゃないってのはセフィロスの例もあるしなぁ)

「…やっぱり、信じられないよ。ラムザやケフカだってそんな事何も言ってないしさ」
「ケフカッッ!? ケフカだって!?」

突然思いもよらぬ名前を聞いてロックが剣を手にしたまま一歩踏み出す。
反射的に大きく飛びのくユフィ。

「何よっ、もういい! あんたたちのほうがずっと悪のパーティに見えるわよっ!
 誰もあんたたちみたいな連中の言う事なんて信じないんだから!」

踵を返し、森の暗みへと飛び込もうと身体を反転させる途上、
明らかに思い込み勘違いを含んだユフィを追撃してライブラが重なる。
うひゃあ、と甲高い悲鳴を残してそのまま逃げ去るユフィ。
ザンデがさも可笑しそうに哂い声をあげる。
444Cross Purpose2 発展篇 4/8:2006/03/11(土) 17:41:02 ID:1FRqZmMY0

「おい、待てよ、待てって! あんたも何やってんだ! くそっ、行っちまった……」
「ファファファ、なに、いなくなるならせめて分析でもしてやろうと思っただけだ。
 とはいえ『悪のパーティに見える』とはまた。我らが本質の一片を突いている。なあピサロよ?」
「ふん。しかし、カインの手駒にでも使われているのだろうな、あの娘は。……カイン、か。
 ザンデよ、このままサスーン方面へ向かうなら方向は大体同じだ。少し追ってみても良いか」
「なあザンデ、オレからも頼む。あいつに聞いてみたいことがあるんだ」
「別に構わぬ。私にはあれは無価値だがたいした寄り道でもなかろう」
「……ならば、急ぎ追うぞ」

頷くロック、まだわずかに笑みの余韻を残して目で答えるザンデ。
同意を得たピサロは銀髪を翻して忍者の消えた闇へとそれを追う。
遅れることなく後に従う二人も走り始めた。

445Cross Purpose2 発展篇 5/8:2006/03/11(土) 17:43:55 ID:1FRqZmMY0

Scene-4

サスーンへ、西の方角へ。
幾ばくかの安心を感じられる距離を移動し、周囲の状況を確認してウィーグラフは足を止める。
それから抱えてきた荷物を地面へ転がし、剣の柄でもって地面に横たわるその腕を打った。

「!? 〜〜〜〜〜っっ、ああっ、このカメがッッ!?」

上半身を跳ね起こして辺りをキョロキョロと見回すアリーナ。
周囲の静寂と見下ろす同盟者の視線に気が付いて事態を認識する。
と、ぞくりと全身を走る寒気が。

「つっ、何よ、何だっての! なんで、この体調はなんなの?」
「毒だ」
「毒ですって?」
「その程度で済んだことに感謝すべきだな。あのカメ、想像以上の手練れだ」
「…で? 殺せたの?」
「…………いや」
「あはっ、なーによ、あなたも惨めにやられて逃げてきたってわけね?」
「ふん、恩人に言う事か。貴様はあのまま永眠していてもおかしくなかっただろうにな。
 それより急ぐぞ。ピエールが独走している。
 サスーンに先行されるのは貴様としても面白いことではなかろう」
「あははは、ピエールもやられちゃってたりして……あいつはそんなタマじゃないわね。
 同意するわ、急ぎま…待って、来客みたい」

気付いたのは二人同時、暗がりから浮かび上がるように人影が立っている。

「ヒャーーッヒャッヒャッヒャ!」

その影が、啼いた。
446Cross Purpose2 発展篇 6/8:2006/03/11(土) 17:47:23 ID:1FRqZmMY0

二人の射程距離からもう少しだけ離れて立つこの妙な闖入者に対して先んじようと力を溜めるアリーナ、
だがしかし逆に相手からの言葉がそれに先んじる。

「マホウのにおいがするねぇ、ヒャッヒャッヒャ。だーれにやられたのでしょうねー?」
「うるさいッ!」

癇に障る言い方に逆上して一気に間合いを詰めるアリーナ、その拳はしかし道化には届かない。
アリーナとウィーグラフの目の前で彼はあっという間に姿を消してしまったから。

「うそっ! なんなのよ?」

明らかに奇妙な消失を見た空間からはなんとも苛立たしい笑い声が聞こえるのみ。
聞くに堪えない罵詈雑言を撒きながら虚空に向けて無駄な攻撃を繰り返すアリーナ。
自慢の高速連続打撃も姿形のない相手には無意味なことこの上ない。

「話し合うより先に手が出るなんてナーンテ野蛮なんでしょう!
 ぼくちんシンジラレナーイ!」
「攻撃を止めろ、アリーナ。
 さて、先に手を出した無礼は詫びよう。貴様は何者で、何の目的を持って現れた」

姿は見えないが会話は可能だと判断してアリーナを制しウィーグラフが空間へ向け呼びかける。
返答はしかし会話には応じない。

「おまえたち、そうやってヒトをコロシテきたんだろう?
 なーに、ぼくちんにはお見通しなんだ、そーんなに血の臭いさせてちゃねぇ?」

二人は沈黙を保ち肯定も否定もしない。その態度自体が肯定のようなものではあったが。
447Cross Purpose2 発展篇 7/8:2006/03/11(土) 17:51:16 ID:1FRqZmMY0

「まあぼくちんはおまえたちなんかをどーこーしようなんて気はゼーンゼンないから安心しな!
 大体なんでそんなコトでぼくちんが手を煩わせなくちゃならないんでしょう!
 さっさとどこへとなり殺しに行け! ヒャーーッヒャッヒャッヒャ!」
「…………行くぞ、アリーナ」

会話にも戦闘にも応じる気のない相手に付き合う無駄を察してまだ愚痴を呟く同行者を促す。
彼女も不満を表情に浮かべたまま、渋々出発に同意した。

歩き出して数歩、奇妙な遭遇をした道化師が最後に立っていたポイントを振り返るがやはりそこには誰の姿もない。
隣には怒りと悔しさから憎悪に満ちた目でその場所を睨みつけるアリーナ。
そんな二人をあざ笑うかのように回復魔法の光がまといつき、毒に蝕まれた体力を癒す。

「回復ぐらいはしてあげましょう! 困ったヒトには親切にするのが正しい偽善者ですからねえ!
 ヒャーーッヒャッヒャッヒャ、ヒャーーッヒャッヒャッヒャ!!」

暗がりから悪意と嘲笑に満ちた道化の高笑いが響く。
それを背に受けつつウィーグラフとアリーナはサスーンへ向けて足を速めた。


【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:ラムザ、ケフカと合流する
 第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 第一行動方針:ピサロとロックに同行する
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:ユフィに追ってカインについて尋ねる 
 基本行動方針:ロザリーを捜す】
448Cross Purpose2 発展篇 8/8:2006/03/11(土) 17:53:08 ID:1FRqZmMY0
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 第一行動方針:ユフィを追ってフリオニールとケフカについて尋ねる
 第二行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【ケフカ(MP2/5程度、バニシュ)
 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
 第一行動方針:疲れない程度の速度でラムザ・ユフィを探す
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】

【アリーナ2(分身) (毒、スリップ) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ピエールを葬り、サスーンに向かってリュカを殺す
 第二行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】
【ウィーグラフ (疲労、毒、スリップ)
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×6、ブロードソード、レーザーウエポン、
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ
 第一行動方針:サスーンに向かいゴゴとマティウスを殺す/ラムザを探す
 第二行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】

【現在位置:カズス北西の森南部】
449名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/11(土) 19:12:02 ID:nZV33kef0
hosyu
450Cross Purpose2 発展篇 修正1:2006/03/11(土) 19:34:01 ID:1FRqZmMY0
2/8、「待ちなさいよッッ!!」以下を以下に修正。

「待ちなさいよッッ!!」

ストン、と梢から影が飛び出し、三人の前へと着地する。

「カインが乗っているって…それどういう情報よ?」
「…何者だ」

剣、魔法、めいめいの戦闘スタイルに合わせ迎撃の構えを取る三人。
急に現れれば当然そうなるだろうが、そこを考えずに飛び出したユフィは大慌て。

「ああっと、ちょ、ちょっと待って、ね? あたしはゲームに乗ってなんかいないし…
 あー…それ誤報だから! 根も葉もない噂だから、あのぅ、ほら、わかるでしょ?
 ってそっかそっかごめん、あたしは…」
「ほう、よく見れば昨夜の女か。ファファファ、その様子、随分と元気になったようだな」
「なによ、あなた。確かにあたしは昨日の夜ヤバい状態だったけどさ、あなたなんて知らないわよ?
 あたしを治療してくれたのはウネってお婆ちゃんだって聞いたけどあなたは何…覗き? …ストーカー?
 ーって、自己紹介が遅れたわね。あたしはユフィ、1st級マテリアハンターよ! あなた達は?」

やれやれと言わんばかりにゆっくりと手をあごに持っていき、面白いものを見るような目で彼女を眺めるザンデ。
二人の間の不思議な空気をいぶかしみながら相手の自己紹介に答えようとしたロックをピサロが制止する。

「……オレはロック=コール。で、隣にいるのが……」
「待て! これほど怪しい相手に先に名を名乗る必要はない、答えるな。目的を問う方が先だ。
 それではユフィ、貴様は何の目的で姿を現した?」

さえぎられて口をつぐむロック、思考ポーズのままの無言のザンデ、威圧感と共に質問を返すピサロ。
対峙しているユフィはいまさらながら相手の発する重圧、そのヤバさを体感していた。

451Cross Purpose2 発展篇 修正2:2006/03/11(土) 19:35:54 ID:1FRqZmMY0
>>444、4/8を以下に修正。


「おい、待てよ、待てって! ザンデ、あんたも何やってんだ!
 だいたいあんた、一方的に知っているような感じだけど前に見かけたことでもあるのか?
 ああ、くそっ、行っちまった……」
「ファファファ、昨晩、怪我を負ったユフィをわが兄弟弟子たるウネが治療したというだけのこと。
 あくまでウネの仕事、私にとって無価値である以上別に直接敵対せぬならその態度に興味などないのだ。
 まああの時からの変化を分析できた点はありがたく興味深いことではあったが」
「あのなぁ…言えよ、言ってくれよ! ヘンな誤解されたじゃないか!」
「ファファファ、『悪のパーティに見える』とはまた我らが本質の一片を突いているがな。なあピサロよ?」
「ふん。しかし、カインの手駒にでも使われているのだろうな、あの娘は。……カイン、か。
 ザンデよ、このままサスーン方面へ向かうなら方向は大体同じだ。少し追ってみても良いか」
「なあザンデ、オレからも頼む。あいつに聞いてみたいことがあるんだ。
 で、追いついてからはあんたの仲間のウネさんのことについて説明してくれよな」
「まあ…いいだろう、別に構わぬ。たいした寄り道でもなかろうしな」
「……ならば、急ぎ追うぞ」

頷くロック、まだわずかに笑みの余韻を残して目で答えるザンデ。
同意を得たピサロは銀髪を翻して忍者の消えた闇へとそれを追う。
遅れることなく後に従う二人も走り始めた。
452騎士の決断 1/4:2006/03/11(土) 22:42:05 ID:JwHyMnzz0
…これからどうすれば良いか考えなければならない。
しかし、頭に浮かぶのは現実だったこの世界で旅をしていた時の記憶ばかり。

町外れの洞窟に冒険気分で出かけて、偶然クリスタルに導かれて、僕達は世界を救う旅に出た。
そしてクリスタルの力で世界を救って…、この奇妙な殺し合いに参加させられた。
僕達4人で平和に暮らしてたあの頃は、こんな風になるなんて夢にも思ってもみなかっただろう。

ロランやフルートさんが放送で呼ばれることは予測出来ていたし、覚悟は出来ていた。
でも、まさかギルダーが死んでしまうなんて…。
孤児の頃から彼とはいつも一緒で、死ぬ時も一緒だと思っていた。

僕が殺してしまったイクサスは、ギルダーの事を殺人者だと言っていた。
今でもそれは信じられないが、今思い起こせばイクサスが嘘をついていたとも思えない。
だからこそ、ギルダーには直接会って、とにかく話がしたかった。
本当に殺人をやっていたというのなら、ぶん殴ってやりたかった。
…僕もイクサスを殺した以上、彼だけを責める訳にはいかないが。

…考えが逸れている。
頭がうまく回らないけど、とにかく落ち着いて先のことを考えなければならない。
とはいえ、僕の中では「これからどうすれば良いか」について、ある程度の考えは纏まってはいる。
453騎士の決断 2/4:2006/03/11(土) 22:43:27 ID:JwHyMnzz0
あの時決別したゼル達は僕を殺人者だと思っている。
彼らはゲームからの脱出を考えているから、同じくゲーム脱出派の参加者に会えば、僕は殺人者だと伝えられるだろう。
実際、カインはゼル達からその事を聞いたらしい。
この事が広まっていけば、共にゲーム脱出を試みる仲間を集めるのは至難の技だろう。
それにゲーム脱出派の参加者達に危険人物と見られ、命の危険に晒される可能性が高くなってくる。

仮にゼル達から噂が広まらなくとも、残りの参加者は60人程度。
殺しに乗っている者、決別したゼル達もその中に含まれているし、
ゲームに乗っていないとしても、カインやフリオニール、スコール達、ルカ達とは
共にゲーム脱出を目指して行動できるとも思わない。
ウネやエリアに上手く出会えれば手助けをしてくれるかもしれないが、
現状では仲間といえる参加者は0、この先も仲間は増えない事を前提に考えるしかない。

そして、僕1人では首輪をどうにかする事が出来ないため、
「僕がこのゲームから脱出する方法は無い」というのが結論となる。
しかし、脱出をする方法は無いが、生き残る方法はたった1つだけある…。


「殺し合いの中で1人生き残る事」
454騎士の決断 3/4:2006/03/11(土) 22:45:20 ID:JwHyMnzz0
それは自ら殺人者となってゲームに勝ち残るという事。
初めは罪の無い他人を殺して生き残るなんて考えもしなかった。
しかし、僕が生き残るにはこの方法を取るしかない。
フルートさんが自己の命を犠牲にして助けてくれた僕の命を生かすには、この方法しかない。

そう、生き残るためには、僕のこの手を汚すしかないんだ。

今の僕には武器が無い。
毒のおかげで頭がまだクラクラする。
仲間はいない。
この状況で、殺人が出来るのか? やるしかない。
騎士である僕に、殺人が出来るのか? やるしかない。
最後まで生き残る確立は0に近いだろう。でも、それしか道が無いのだから。

もし、優勝したらどうなるのだろう。
魔女に殺されるのか? 1人元世界に戻されるのか? 何か願いをかなえてくれるのか?
どうなるのかは判らないが、どうせなら最後まで抗いたい。
エリアやドーガ、ウネ達が参加している以上、魔女に死者を生き返らせる力があるのは確かだ。
もしかしたら、この殺し合い事態を無かった事に出来るかもしれない。
455騎士の決断 4/4:2006/03/11(土) 22:47:30 ID:JwHyMnzz0
…とにかく今は、あまり過度な期待をしないようにしよう。
落ち着いて、落ち着いて、ただ生き残ることだけを考えるんだ…。
近くにカインとフリオニールもいる。
彼ら自身、常にこちらを伺っているし、まるで監視をされているような状態だ。
やはり彼らは信用ならないし、向こうから襲ってくる可能性だってある。
武器が無い以上戦う事は出来ないし、地の利を生かして今は何とかやり過ごすしかないか。

ギルダー、君は本当に殺人を犯したのかい?
だとしたらなぜ君は殺人なんて事をやってしまったんだい?
今となってはそれを知る術は無いけど、僕はそれを無性に知りたくてたまらない。


【サックス (負傷、軽度の毒状態、左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
 第一行動方針:カイン達から逃れる
 第二行動方針:武器の調達
 最終行動方針:ゲームに優勝する。出来ればゲームを無かった事にしたい】

【カイン(HP5/6程度、疲労)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置、
      草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
 第一行動方針:作戦の考え中
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【フリオニール(HP1/3程度、MP1/2)
 所持品:ラグナロク、ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)、三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
 第一行動方針:作戦の考え中のカインを横で見てる
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】

【現在地:カズスの村入り口】
456名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 12:27:05 ID:otzoSJCm0
保守
457騎士の決断(後編) 1/5:2006/03/12(日) 13:42:17 ID:NrxBOEVg0
カインは考える。
今この村にいるのは自分とフリオニールを除いて3人。
武器を持たず、気力の感じられないサックス。
不思議な力を持っているが、所詮は子供のルカ。
動くと爆発する指輪をはめたハッサン。
スコールとマッシュはウルの方面へ進ませ、ユフィ、ケフカ、ラムザはカナーンの方面へ進ませた。
あと1時間半程すればリュカ達が来る。

…今後の事を考えると、リュカ達が来る前に3人を始末するのがベストか。
スミスが未だに戻って来ていない事はイレギュラーだが、
今村にいる3人を1時間半以内に殺す事は容易。

一番の問題は、フリオニールの奴自身かもしれないな。
奴自身、優勝する為にはいつか俺を殺しに仕掛けてくるはず。
そして、それはスミスがいない今が絶好の好機とも言える。
今俺達が戦えば条件は五分五分ゆえ、まさか今仕掛けてくるとも思えんが…。
スミスが戻ってきたら、そろそろフリオニールを始末する算段も考えねばならんな。
…まあ、まずは奴と共にサックスでも殺す手順を考えるとするか。
458騎士の決断(後編) 2/5:2006/03/12(日) 13:44:51 ID:NrxBOEVg0
フリオニールは考える。
俺が優勝する為にはカインとスミスも殺す必要がある。
互いの利益の為に今は組んでいるが、いずれは奴らを仕留めなければならない。
…スミスが戻っていない現状を考えると、カインを仕留めるのは今が最大の好機なのかもしれん。
1対1では辛いが、サックス辺りを誘惑して2対1で仕掛ければ、勝てぬ相手ではないだろう。
問題は、カインがいなくなる事で残りの参加者を消すのが面倒になる事だが、
エッジを殺した事により、奴からの信頼感が欠けてきていることも事実。
早い内にカインを消さねば、こちらがどんどん不利になってくる可能性も高い。
カインを殺すためにも、どうやってサックスをこちらに引き込ませるか…。


カインとフリオニールがそれぞれ思考をめぐらせている中、最初に動いたのはサックスだった。
「ちょっとハッサンとルカ君の様子を見てきます」
と言い、彼らの休んでいると思われる鉱山方面へと歩き出した。

フリオニールはカインに「俺が監視に行く」と小声で伝え、サックスの後をつける。
今まで微動だにしていなかったサックスが動き出す事は予想外の事だが、
フリオニールとしては最高の状態となった。
カインのいない場所でサックスを手駒にし、2人でカインをこの場で殺す計画。
手駒にしたサックスや、ルカとハッサンは、カインを始末した後どうとでも出来る。

そんな事には全く気づいていないサックスは、ゆっくりと鉱山方面に歩み続ける。
彼の動く理由は動けないルカとハッサンから武器を奪い取るため。
459名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 13:47:02 ID:Ma77rC+sO
前の話読んでないの?
460騎士の決断(後編) 3/5:2006/03/12(日) 13:47:28 ID:NrxBOEVg0
ミスリル鉱山の入り口に着いたサックス(とフリオニール)は、その場が妙だと言う事に気づいた。
ルカとハッサンの姿が見えない。
わざわざ近くに隠れたり、休む場所を変えたりする必要は無かっただろう。
つまり、ハッサンが自力で動けない事を考えると、ルカがハッサンをつれて何処かへ移動したとしか考えられない。
カズスの入り口にいた自分達に気づかれずに村を出たとすると、ウルの方面に向かったとするのが妥当か。

彼らの移動速度はそれほど早くないだろうし、自分も追うべきか、とサックスが考えた時点で
サックスの前にフリオニールが姿を表した。
「フリオニール…さん!」
突然の登場に思わず大きめの声を上げてしまったサックス。
「あまり大きな声を出すんじゃない…」
「ここにいるって事は、尾行してたって事ですか? 少なくとも闇討ちする気は無いみたいですけど…」
「尾行したのは悪かった。カインの奴に命じられてな」
尾行自体は自分から決めた事だが、あくまでカインを悪者扱いにしておく。

「それでわざわざ姿を現して…、僕に何のようですか?」
「サックス。お前、大切な人が死んだって言ってたよな」
「…フルートさんのことですか? 何でいきなりそんな事を…」
「単刀直入に言うぞ。もし、死んだ人間を生き返らせる事が出来るとしたら、お前は何でもするか?」
「……」

しばらく経過して、サックスが返答する。
「…僕に何を望んでいるんですか?」
461名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 13:50:41 ID:Ma77rC+sO
>>366読んでないの?
462名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 13:58:05 ID:NrxBOEVg0
>>459
申し訳ありません。
カイン・フリオ・サックスがルカとハッサンがいなくなった事を知ってる設定を
すっかり忘れておりました。

>>457-460は無効とさせて頂きます。
463名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 14:00:46 ID:Ma77rC+sO
前の話読んでないの?
464名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/12(日) 19:27:48 ID:uHlXMuti0
保ッシュ
465名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/13(月) 19:51:57 ID:0B6uO39e0
保守
466名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 02:36:30 ID:kMxIHY+l0
ほす
467名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 17:59:11 ID:sT6t2za10
468騎士の決断(後編) 1/6:2006/03/15(水) 00:08:27 ID:iLf6mHEO0
どうやらルカとハッサンがカズスの村の中からいなくなったらしい。
カインがフリオニールに叫んでいる内容を聞き取り、また彼らの顔色を伺えば真実である事は間違いない。
カインは捜索の為に再びミスリル鉱山付近に向かい、
フリオニールはカズスの村入り口付近を捜している。当然こちらを気にしながら。

ルカとハッサンは僕の持っていた武器のいくつかを持っていたままだ。
それを返してくれずにそのまま村を出たと言う事は、やはり僕を信用していないと言う事だろう。
カイン達や僕に気づかれずに村を出たとすると、行き先はおそらくウル方面。
ハッサンが自分で移動できない事を考えると、移動速度はそれほど速くないはず。
武器を取り返す事の意味も含め、彼らを追いかけるか…。

そして気になるのはカインとフリオニール。
ルカとハッサンが突然いなくなったと言うのは当然驚くべき事だが、彼らは妙に焦っている。
まるでこの場に2人がいないと困るような感じだ。

1時間半後にはエドガーやリュカという人が来るとも行っていた。
やはり彼らは殺人者で、カズスに参加者を一気に集めた後大量虐殺を試みる。
彼ら2人が何かを企んでいるのは間違いないし、その可能性が十分高いか…。
だとしたら、ルカ達がいなくなった事に焦っていることも合点が行く。
僕も今は武器を持っていないし、出来れば早めにカズスを出たいところだが…。
469騎士の決断(後編) 2/6:2006/03/15(水) 00:09:11 ID:iLf6mHEO0
とそこへ、フリオニールがサックスに声をかけてきた。
「どうやらルカとハッサンがいなくなってしまったみたいなんだ」
「…あれだけ騒いでいれば僕にもわかりますよ」
「彼らが見つからないのは何かに巻き込まれたからかもしれない。すまないが、探すのを手伝ってくれないか。
 今、カインの奴も探しに回っているところだ」
特に断る理由もないし、捜索を手伝えば彼の監視も甘くなるかもしれない。
となればカズスを抜け出すチャンスも大きくなるだろう。
「わかりました。僕も一緒に彼らを探しましょう」

サックスがルカとハッサンの捜索に加わってから約10分。
監視も甘くなると思っていたが、目に見える範囲内には常にフリオニールがいた。
やはり簡単に逃がしてくれる訳ではないらしい。
そんな事を考えてると、急にフリオニールが近づき、声をかけてくる。
「どうだ、調子は?」
「ぜんぜん見つからないですね。もう村の中にいないと考えるのが妥当じゃないですか?」

しばらく捜索の話をしていたが、突然フリオニールが別の話を持ちかける。
「話は変わるが、お前、大切な人が亡くなったって言ってたよな」
「…フルートさんのことですか? それとも…」
「まあ誰でも構わないんだが、単刀直入に言うぞ。
 もし、死んだ人間を生き返らせる事が出来るとしたら、お前は何でもするか?」
「…………」
470騎士の決断(後編) 3/6:2006/03/15(水) 00:10:49 ID:iLf6mHEO0
しばらく経過して、サックスが返答する。
「…僕に何を望んでいるんですか?」

そのセリフを聞き、フリオニールは手駒を掴んだと確認し、話を続ける。
「俺と手を組んでゲームに乗らないか? 魔女なら死者を生き返らせる事など容易に出来る。
 まず、俺と一緒にカインの奴を殺して欲しい。
 あいつもゲームに乗っているが、奴に優勝されても困るんでな。
 それにあいつはお前の命も狙っている。ここで俺と一緒に殺した方が自分の身の為にもなるぞ」

予めカインが考えていた作戦を聞きながら、フリオニールも密かに自分なりに計画を立てていた。
己が優勝する為にはカインとスミスも殺す必要もある。
互いの利益の為に今は組んでいるが、いずれは奴らを仕留めなければならない。
…スミスが戻っていない現状を考えると、カインを仕留めるのは今が最大の好機なのかもしれん。
1対1では辛いが、サックス辺りを誘惑して2対1で仕掛ければ、勝てぬ相手ではないだろう。
問題は、カインがいなくなる事で残りの参加者を消すのが面倒になる事だが、
エッジを殺した事により、奴からの信頼感が欠けてきていることも事実。
早い内にカインを消さねば、こちらがどんどん不利になってくる可能性も高い。
サックスを勧誘するためにはカインのいない所で会話をする必要があったが、
ルカとハッサンの捜索をする最中、そこでこのタイミングが生まれたのだ。
471騎士の決断(後編) 4/6:2006/03/15(水) 00:12:13 ID:iLf6mHEO0
「…わかりました。フリオニールさんの考えに乗りましょう。
 僕は、彼女を生き返らせるためなら何だってやってみせます」
「すまんな。今ならカインの奴も油断しているはずだ。
 この武器を貸してやろう。カインを探し次第、一気に仕掛けるぞ」
フリオニールはそう言うと、ザックからビーナスゴスペルを取り出してサックスへと渡す。
自身はラグナロクを手にし、カインがいると思われる方へ進もうとした時……

サックスはフリオニールとは逆の方角に向かって走り始めた。
そのまま茂みの中に逃げ込んだサックスの方に目をやるフリオニール。
辺りは暗く、サックスの逃げ込んだ茂みは思った以上に深い。
明かりを灯していても、村の地理を知り尽くしている人間でない限り追うのは不可能だろう。

サックスを手駒に出来たと確認していたのが油断となったか…。
追いかけるのは無理だと判断したフリオニールは軽く舌打ちし、サックスが逃げた方向に向かって叫ぶ。
「サックス、貴様どういうことだ。
 死者を生き返らせるためには何でもすると言ったはずではないか!」

茂みの中からサックスの返答する声が聞こえる。
「確かに魔女の力なら死者を生き返らせる事も出来るでしょう。
 僕自身、殺人者となる覚悟も出来ています。
 でも、僕はあなたと手を組むつもりはありません。
 あなたと組んでも捨て駒として利用される可能性が高いし、自分の道は僕自身で切り開く。
 …この武器はありがたく頂いていきますよ、フリオニールさん」
472騎士の決断(後編) 5/6:2006/03/15(水) 00:13:37 ID:iLf6mHEO0
幸運にもフリオニールの誘いを上手く利用する事で、サックスは武器を手にする事も出来た。
茂みの中を進んでいけば、フリオニールやカインに気づかれる事もなく村から出れるだろう。
しかし、カズスから出たとしても行く当てはあるのか? 安全な場所はあるのか? 否、無い。
だが、彼の足は自然と北に向かっていた。
孤児として拾われ、ギルダー達と一緒に育ったウルの村に向かって自然と歩き出していた。


ルカ、ハッサンにカズスから逃げられ、フリオニールの謀反に気づいていないカイン。

ラグナロクとマシンガンがある為、武器の損失は大した痛手ではないが
サックスの手駒化に失敗し、彼を逃がしてしまったフリオニール。

フリオニールから武器を奪う事に成功し、殺人者となってでも生き残ることを決意したサックス。


カズスの村に潜む3者のマーダーは、それぞれ異なる道を歩み始める事となった。
473騎士の決断(後編) 6/6:2006/03/15(水) 00:15:09 ID:iLf6mHEO0
【カイン(HP5/6程度、疲労)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置、
 草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
 第一行動方針:ルカとハッサンの捜索、今後の行動方針を考え直す
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在地:カズスの村 ミスリル鉱山付近】

【フリオニール(HP1/3程度、MP1/2)
 所持品:ラグナロク、三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
 第一行動方針:今後の行動方針を考え直す
 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:カズスの村 入り口付近】

【サックス (負傷、軽度の毒状態、左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー、ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)
 第一行動方針:ウルの村に移動する
 最終行動方針:ゲームに優勝する。出来ればゲームを無かった事にしたい】
【現在地:カズスの村 茂みの中→カズスの村を出てウルの村へ】
474名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 20:26:47 ID:bnPUghj3O
12ラッシュに備えて
保守age
475名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 00:06:52 ID:Xzii4Knk0
保守
476名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 03:39:04 ID:fR2GkO9lO
保守
477名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 09:11:34 ID:0cCRHvvp0
hoshu
478名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 13:53:38 ID:m2tmG1xV0
対策保守
479名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 17:48:36 ID:SuS0QjoY0
ほしゅ
480名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 18:21:55 ID:xC6dvbR00
一応保守
481名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 20:04:38 ID:HswnIpgG0
ほしゅ
482名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 20:11:00 ID:6RTKLpfS0
流れに乗って保守
483名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 20:34:24 ID:6DhrKLA30
そろそろ保守
484名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 01:06:14 ID:TvmZROnP0
保守
485名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 01:53:06 ID:yR0IueKg0
俺の常連スレが落ちてしまったので危機感感じて保守
486名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 02:19:17 ID:sNTQ0RdC0
ほしゅ
487名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 04:11:46 ID:C0ocO7RAO
12中々面白いよ保守
488名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 10:56:16 ID:9/PvLL+J0
6時間に一回は保守
489名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 14:15:51 ID:KDeIDFSu0
ひたすらホシュ
490名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:32:47 ID:LIfzhwstO
ホシュ
491名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 19:14:49 ID:spGBfxWMO
ボッシュ
492名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 20:55:46 ID:vSw0ZvuEO
ブッシュ
493名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 00:41:11 ID:p0+LpJbv0
バッシュ
494名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 01:43:53 ID:8foYMTmP0
hosyu
495名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 13:59:30 ID:b5cv5G3S0
hosyu?
496Cross Purpose3 完結編 1/13:2006/03/18(土) 15:31:36 ID:02kvrmeN0
Scene-4-2

蠕動する世界に疾走を阻まれ、にわかに天へ姿を現した滅すべき悪をじっと睨む。
告げられたのは守れなかった友、そして疑惑の渦中にあった彼の仲間の名。

それぞれに祈りと赦しを願い、それからレオンハルトは押し黙ったままの勇者を気遣った。
「カズスへ、急ごう」
ただそれだけを返したアルス、その決意を込めた表情にそれ以上にかける言葉は見つけられなかった。
以来二人の間に一切の会話はなく、暗い森をただひたすらに悪の待つ地へと急ぐ。
戦闘を伝える爆発音を聞くまでは。

ピサロ達、ユフィ達、マティウス達がそうしたように彼ら二人もまた悪を絶つべくこの交差領域へと近づいていた。
そんな彼らが最初に出会った人の痕跡、それは木々の奥から聞こえる奇妙な声。


「おかしいな。こっちから確かに人の笑い声がしたのだが」
「誰の姿も無いぞ。幽霊だとかいうことは…」
「おや、あなたでしたか」
「!!」「!!」

振り返った視線の先にどこから現れたのか男が立っている。
その男は、アルスに向けて面識が有るかのような親しさで話しかけていた。
突然人間が出現すると言う事態に驚いていたアルスもすぐにその顔を思い出す。

「あなたは、レーベで会った…」
497Cross Purpose3 完結編 2/13:2006/03/18(土) 15:33:30 ID:02kvrmeN0
短いとはいえ前夜のやり取りがアルスとレオンハルトの警戒心を取り除いた。
それから昨晩と同じ丁寧な装いで自己紹介するケフカにアルスは昨夜からの簡易な経緯を説明する。

「…そうですか、槍の方は…。私には適切な言葉が見つかりません」
「いや、その気持ちだけで十分だ。
 ところであなたはフリオニール、あるいはアーヴァイン、スコール、マッシュという奴らを知らないか?」
「またはカインという男、スミスという飛竜でもいい。何か知ってはいないか?」

めったに作らないシリアスな表情をケフカは一切変化させない。
だが、脳裏には走り始めた計算とほくそえみたくなる気持ちが脈付いている。

「…その連中がどうかしましたか?」
「今僕らが追っているゲームに乗っている、或いは疑わしい奴ら――悪だ。
 どうやらフリオニールとカインはカズスにいるらしい。だから僕らはそこへ向かっている」

ほんの少しの間目を閉じ、思考を加速させる。
カインの利用価値、こいつらの利用価値。仕掛ける作戦は、流す嘘は?
それともあとあとを考えて余計なことはせずに信頼を得ておくか?

「カインという男に私は会いましたよ。確かにカズスへ向かうと言っていましたねえ。
 ああそうだ、確かに仲間と待ち合わせをしているとも。ゲームに乗っていたのですか…」
「また同じような情報、やはりカズスに何かあるのか」
「あ! 待ってください。そうだ! そうだそうだ、忘れていました。
 フリオニール、スコール、マッシュ! ちょっとだけ聞き覚えがあったのですが思い出しましたよ。
 そのフリオニールに仲間を殺されと話していた女がいるのです。
 彼女はどうやらカズスから逃れてきたみたいなのですが、その三人、カズスで見かけたと言っていましたね。
 親しげに話していたとか…
 とはいえ聞いた話、どれくらい信頼できる情報かは私には判断がつきませんが」
「なんだって…!?」

相手している二人から広がる驚愕の気配を感じ取ることができる。
ケフカの心中には満足の色が広がる。
498Cross Purpose3 完結編 3/13:2006/03/18(土) 15:35:53 ID:02kvrmeN0

「どう思う、レオンハルト」
「うむ。これは、ゲームに乗った連中同士で手を組んだということかもしれん。
 普通はゲームに乗っている連中はだいたい一人か二人、小人数で動いている。
 だがそれで残り全員を殺そうと考えればいつか消耗しきってしまう。それを防ぐためには」
「そういう連中同士で手を組んで効率よく減らしていこうということか」
「そうだ。奴らにも組む理由はあると言うことだ。
 それに戦力の上昇はゲームに乗っていない大集団への対抗策としても有効だ。
 一人生き残ろうという連中にとってそういう集団は共通して目障りなはず、
 まずはそういう目障りなところを協力して潰しお互いの雌雄を決するのは最後…といったところだろう。
 とにかくこれは、厄介なことだぞ」
「………いや、僕らにはかえって好都合だ。
 奴らがカズスに集まっているというなら…まとめて砕くまで。
 レオンハルト、君だってどれ程危険でも引く気なんてないだろう?」
「ああ、そうだな。そこにフリオニールがいるのならば引く理由はどこにも無い」

心中の自分はもう遥か彼方の山から山彦がかえってくる位の大声で笑っている。
しかし、ケフカはなんとかそれが表に出るのを押さえ込んで最後の一押し。

「タイヘンな覚悟なのですね。私は戦う力があまりないですから危険を避けるのが精一杯…
 だから、これぐらいはやらせてくださいな。ヘイスト!」
「これは、補助呪文? 身が軽くなった」
「ヘイストか、支援に感謝する。MPは少しでも節約したいところだからな。よし、急ごう、アルス!」
「ああ。ではケフカ、いろいろとありがとう」
「いいえ、どういたしまして。あなた達もどうか頑張って、勝利してください」
499Cross Purpose3 完結編 4/13:2006/03/18(土) 15:38:23 ID:02kvrmeN0
Scene-2-2

自分の体が二つあったらと真剣に考える。
現実問題としてどの選択肢を選んだところで選び取らなかった方に後悔が残るだろう。
森のどこかにいるユフィ、テリー、そして明らかな重傷を負っているギード。
少しずつ離れてゆくギードの背中を見ての沈思黙考。
そして、彼は決断を下す。


Scene-5

「ラーームザーー、ケーーフカーー、どこーー?」

思いっきり仲間を捜し求める声をあげた後で、ユフィはその失策に気が付いて口を塞ぐ。
これでは自分の居場所を教えてしまったようなものだ。
けれどもだからといって今は仲間と合流する以外に思いつくことは無い。
(どうする、どうするよ、あたし!?)
頭の引き出しを引っ掻き回して選択肢を捜す。
(闇雲に森の中を走り回ったってどこにいるかわからない二人に会える可能性はわかんない。
 でも後ろには……うー、この気配、追ってきてる。…いるんだよね、怖いのが。
 えーい、こちとら逃走のプロフェッショナルよ。今は逃げることを考えた方がいいのかもっ)

500Cross Purpose3 完結編 5/13:2006/03/18(土) 15:42:08 ID:02kvrmeN0
Scene-6

道化師が正義を煽り立て、片腕の忍びが駆け去ってから少し後。
待ち受けるは、危険な出会い。

「くそ、なんて逃げ足の速さだ! どこに消えたよ」
「…逃げられたか。いや…? 待て、止まれ。そこにいる奴、ゆっくりと姿を現せ」

逃走のプロに追いつくことは叶わず追跡を諦めかけていた三人に近づく気配一つあり。
木陰に隠れたそれに気付いたピサロが後続の二人を制す。
命じられるままにゆっくりと姿を現したのは――

「………は……げげっ、ロック!!?」
「ケフカッ!!」

即座にクリスタルソードを抜き放つロック、一方ケフカは打って変わった必死さで話し掛ける。

「ま、待て、待チナサーイ! ぼくちんに戦う気なんてありませーーん!
 それともなにかロック君、君は無抵抗のぼくちんを惨殺する気かな? シンジラレナーイ!」
「先走るな、ロック。こいつは何者だ。貴様とはどういう関係にある」
「…ケフカは……」

501Cross Purpose3 完結編 6/13:2006/03/18(土) 15:49:10 ID:02kvrmeN0
自分達の世界の出来事、ケフカとの因縁を語るロックの言葉に魔王二人は熱心に耳を傾ける。
対してふざけてみせる不利を悟ったのかありえない神妙さで話の終わりを待つケフカ。

「なるほど。大した危険人物というわけだ」
「ああ、きっと今も何か企んでいるに違いないぜ」
「ふぅむ。しかしそれ程大それたことをやってのけるとは優秀な魔術師なのだな」
「ザンデ、誘う気か? 悪いこといわないからあいつだけはやめておいた方が…いいと…あーあ」

ロックの忠告を退け、進み出たザンデはケフカに対して例の傲慢な勧誘を開始する。
前置きのあとまずはライブラというやり方はかなりどうかと思うもののとりあえず
「脱出のために高魔力源と、旅の扉についての情報を求めている」ことを伝える。
内容を明かさない、説明になってない説明を一通り終えた後、少し考えたケフカの答えは驚くべきもの。

「ヒャヒャヒャ、一体何をやるつもりなんですかねぇ? ぼくちんキョーミ深ぁーい!
 いいですよ、お前の酔狂に付き合ってあげましょう。
 だからそこのバカに剣を納めるように言え! フユカイだ!」
「なっ、こいつ、言わせておけば! ザンデ、こんな奴信頼するのはやめた方がいいぜ!
 ピサロもこんな怪しい奴を仲間にしたくはないだろ? ザンデに言ってくれよ」
「私が求めるのは協力だ。能力以外の条件は特に問わん。
 ケフカよ、私は貴様が敵対するつもりでないならば同盟者として遇しよう。協力に感謝する」
「ロック、私は当面は監視に留める。まだザンデと全力で争う気はない」
「全力で、って…確かに仲間内でケンカしてもつまんねぇけどよ。
 ……チッ、おいケフカ! もし怪しい動きをしたらオレはいつでも…!」
「アーッヒャッヒャ、怖いですねぇ!
 ところでぼくちんは疲れたので少し休みたいのですが、お前たちはどうして走っていたんだい?」
502Cross Purpose3 完結編 7/13:2006/03/18(土) 15:52:52 ID:02kvrmeN0

こんな奴に、と渋々ながら少し前の経緯を説明するロック。
もちろんケフカは、大笑い。

「アーヒャヒャヒャ! ユフィの奴がねぇ! 相変わらず奔放勝手、馬鹿は楽でよろしいですねぇ。
 それにしても誤解されて逃げられたなんて…ヒャヒャヒャ、ケッサク、ケッサクだ!」
「一々むかつくな…おまえ、あの女とはどういう関係なんだ? 随分信用されてるみたいだけどよ」
「ちょっと一緒にいただけ、勝手に走っていなくなりやがったのは向こうだ。
 で、なんだって、それじゃぼくちんがあれを騙してるとでも? 心外だ!
 どっちにしろこんな場所で逃げる奴を探すなんて無理、ムリ、ムリに決まってる。
 で? お前たちの本当の目的地はどこだい? 探し物で城にでも行く途中だったかな?」

さっきのやり取りから推測しての発言。
それに肯定を得たケフカは手持ちの情報に手心を加え部分的に削りながら供出する。
不審の目で見るロックとピサロを尻目にちょっとシリアスを演じながらのその内容をかいつまむと以下のようなもの。

・カズスはゲームに乗った人間の集結地。
・サスーンは夕方は特に問題はなかったが、ゲームに乗った男女二人組が向かった。

当面の目的地として予定していた二箇所がどちらも危険そうな状況にあることを受けて、
ケフカを除く三人は臨時の会議を始めた。
道化は蚊帳の外でその言葉、態度を耳目でしっかりと捕らえ、分析する。
道化の顔で、しかし目の奥に観察の光を湛えてケフカは何を考えるか。

503Cross Purpose3 完結編 8/13:2006/03/18(土) 15:55:10 ID:02kvrmeN0
Scene-2-Result

後ろから駆け寄った気配が前進を止めないギードに並ぶ。
それから男は落ち着き払ってたった今下した決断を告げた。

『賢者ギード。僕はあなたを仲間のところまで送り届ける』

進路を見つめたまま振り向きもせず、賢者は無言を保つ。

『あなたのその傷、あなた自身の体だ、わかっているのでしょうが危険な状態です。
 そんなあなたを見捨てて僕は行くことは出来ない』
『……仲間はよいのか』
『僕の仲間、ユフィには悪いけれど彼女はまだ動く元気があります。
 でも今のあなたでは襲われた場合応戦どころか逃走すら危ういでしょう。
 僕は、一人でも多く命を救おうという自分の正義に従う』
『その決断、悔いるかも知れぬぞ』
『わかっています。しかしそれは別の決断でも同じです。それなら僕は理想を追う。
 より危ういあなたを助け、それから仲間を探す。例え甘いといわれても』

ほんのわずか、足を止めたギードはそれから魔法の光でラムザの決断に返答した。

『希望を捨てぬ心…か。気休めかも知れぬが、ヘイスガじゃ。せめて、急ごう』
『はい!』
504Cross Purpose3 完結編 9/13:2006/03/18(土) 15:57:00 ID:02kvrmeN0
Scene-4-Result

正義感ぶった人間とはまた別に大嫌いなタイプ。
アリーナは自分を嘲り、翻弄した道化師にそんな感覚を抱いていた。
しかし、本人達は否定するだろうがそこにはどこか同属嫌悪のきらいが有る。
自分が上位でなければ気が済まず、他人はすべて蔑んで馬鹿にする。
彼らは常に勝利していたい。もとよりそんな彼らは相容れられる存在ではないのだ。
そこに憎悪と嫌悪が加わればどうなるか?
ラムザやリュカ、テリーと同列の殺害リストに載る顔が一つ増えただけ。
アリーナにとってこの出会いはそれだけのことだった。

けれどウィーグラフは道化の行動に計算を見る。
その根拠は彼の言葉と最後の回復魔法にある。それらは狂い道化の理解不能な行動ではない。
あれは送られた塩、「自分のためにがんばって参加者を減らしてくれ」との意図を込めた行動なのだ。
同じ場面に遭遇したとしてその意図はゲームに乗っていない者にとってはわかるまい。
あれは戦いを避けながらまたゲームを嘲笑う道化にしか見えないだろう。
一方で誰からも信頼されにくいゲームに乗った者には少しだけ本性を垣間見られても構わないという訳だ。
道化を演じながら、誰にも本気で疑われないように。
だが、その顔の裏では自分達のような者を助けるつもりがあることを理解しておくことには使い道がある。
ともかく、ウィーグラフは裏表有る策略家の付箋をもって道化を記憶する。

押し黙った二つの影はそれぞれの考えを胸に、ひたむきに城へ走る。
505Cross Purpose3 完結編 10/13:2006/03/18(土) 15:59:19 ID:02kvrmeN0
Scene-5-Result

追跡の気配はもう感じられない。ユフィの逃走は見事成功したのだ。
安堵感。
とはいえ気付けば森から飛び出ていたのだけれども。
少しだけ落ち着き、ゆっくりと走ってきた方向を振り向く。

「ラムザとケフカはやっぱり森の中なのかな…」

疲労感。
片腕を喪った状態、慣れないバランスでの激しい動きは、知らずに大きな疲労を生み出していた。
前の大陸からこの大陸、平原、廃墟、砂漠、森。
常日頃からの鍛錬がなければとうに限界を超えへばっていてもおかしくはない。
気の緩み。
そのわずかな間隙を縫ってユフィの心中へと恐れが忍び込む。
気づけば夜の闇に一人。吹き抜けてゆく風の音が寒々しい。
恐怖心。
暗く横たわる森がけして越えられない障害のようにユフィの視線を阻む。
形のない何かに気圧され、全身を絡めとられたかのように足がすくむ。

体力面、精神面、全てにおいて持ち前の元気が削り取られていた。
動くことができない。無理が利かない。
孤独の中、闇の中、縫い付けられたかのようにユフィはただ立ち尽くす。
506Cross Purpose3 完結編 11/13:2006/03/18(土) 16:02:26 ID:02kvrmeN0
Scene-6-Result

優れた策士は少ない情報から多くを得るものだ。
傍からは狂人や道化と目されるケフカも全てがそうなのではなく悪いコトを思考する半面も持ち合わせている。
危険情報と自分の態度に対する三人からケフカはそれぞれ何を感じ取ったか?

ケフカに対する大きな興味を持って聞いていたのがザンデと名乗る長身の男だ。
一方何よりもケフカに対する注意の先行がわかるのが見知りの盗賊、ロック。
そして鋭い観察眼なくしては分からないであろう揺らぎを垣間見せた銀髪の男。

当面の行動計画を編み上げる。
この一行、正直約1名ほど非常に不満があるもののもぐりこむには悪い相手ではない。
それに今は猪突猛進娘やおしゃべりと自然に「はぐれる」には良い機会だ。
そして、喜ぶべきはガストラ皇帝と同じように力を求めるザンデという男。
無条件の協力? いや、とんでもない! ケフカは当然どこかで条件を提示してやる腹積もり。
そう、そこのロック、あるいはエドガー、マッシュ、リルムを殺すこと、を。

しばらくの後にこのままサスーンへと向かうことを決めた三人、
その傍らには疲れた、疲れたと例の調子で駄々を捏ねつつ同行するケフカの姿があった。


Scene-4-Result(2)

かけて貰ったヘイストのおかげか、その魔法が効力を失う頃にはどうにか南東へ森を抜けることができた。
眼前には吹き抜けてゆく夜風を一面の草が波のように描写する平原がある。
けれど、傍らにはまた抉り取られた破壊の痕跡が地面に刻まれている。
この世界に参加者が降り立ってから一体幾つの傷跡が大地に残されたのか。
後背に広がる森は何事か会ったことを隠蔽するように静けさを取り戻したきりだ。
その何事かに関わらずに過ぎた事にアルスはわずかに後ろめたさを覚えた後で、
けれど南東、視線の先に悪の地を見据え揺ぎ無い決意で全てを上書きする。

カズスまで、あと少し。待ち合わせには間に合いそうだ。
507Cross Purpose3 完結編 12/13:2006/03/18(土) 16:04:12 ID:02kvrmeN0
【ギード(重傷、MP大幅消費) 所持品:首輪
 第一行動方針:テリー、ルカとの合流
 第ニ行動方針:首輪の研究】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:カズス北西の森南部】

【アリーナ2(分身) (毒、スリップ) 】
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 第一行動方針:ピエールを葬り、サスーンに向かってリュカを殺す
 第二行動方針:ラムザを殺し、ウィーグラフにアリーナを殺させる
 最終行動方針:勝利する】
【ウィーグラフ (疲労、毒、スリップ)
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×6、ブロードソード、レーザーウエポン、
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ
 第一行動方針:サスーンに向かいゴゴとマティウスを殺す/ラムザを探す
 第二行動方針:アリーナを殺してリュカとエドガーに近づき、二人を利用してピエールを服従させる
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【現在位置:カズス北西の森南部】

【ユフィ(疲労/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
 第一行動方針:ラムザ、ケフカと合流する
 第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
 第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北西の森南部→カズス・サスーン間の平地】
508Cross Purpose3 完結編 13/13:2006/03/18(土) 16:06:22 ID:02kvrmeN0
【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 第一行動方針:サスーンへ向かう
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:ザンデ・ケフカを監視しつつ同行 
 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 第一行動方針:ケフカの監視
 第二行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
 第一行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:カズス北西の森南部】

【レオンハルト(MP消費)
 所持品:消え去り草 ロングソード  官能小説1冊
 第一行動方針:フリオニールとカインを追い、カズスに向かう
 第ニ行動方針:フリオニールを止める 
 最終行動方針:ゲームの消滅】
【アルス(MP3/5程度)
 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘
 第一行動方針:フリオニールを追う  第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【現在位置:カズス北西の森→カズス北西の平地】
509名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 00:12:38 ID:VZcr9uyQ0
保守
510名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 02:27:01 ID:5NDTiVT60
hosyu
511Cross Purpose3 修正:2006/03/19(日) 06:25:10 ID:nAkflhSi0
パラメータ修正:ラムザ・ギードを以下に修正。すみません。

【ギード(重傷、MP大幅消費、ヘイスト) 所持品:首輪
 第一行動方針:テリー、ルカとの合流
 第ニ行動方針:首輪の研究】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5、ヘイスト)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:カズス北西の森南部】
512名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 07:02:36 ID:Jw6qgh1U0
埋め
513名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 20:23:44 ID:fVCmZSfWO
保守
514名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 00:52:13 ID:RehvRDJJO
保守で容量オーバーする前に次スレよろ
515名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 01:35:00 ID:9ymI32Mx0
わかった。立てるから待ってろ
516名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 01:52:25 ID:9ymI32Mx0
すまん無理だった。
立ててくれる人は、裏方雑談スレで追加された心得なんかもテンプレに追加してくれるとありがたい。
517名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 12:27:09 ID:5jofwSan0
よし、スレ立てやってみる。
518名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 12:29:05 ID:5jofwSan0
ごめん、弾かれた・・・orz
どなたさんか頼んます・・・
519名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 13:29:08 ID:JO7iNG1t0
たててみるよ
520名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 13:39:16 ID:JO7iNG1t0
立ちました
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142829053/l50

以降の作品は↑のスレでどうぞ
521名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/21(火) 01:41:45 ID:dfN+pLjk0
「急げ!このフィールドはもうじき消える!!」
―戦士達は―
「アルティミシア様、ゲームが大きく動いたようです」
―生きていた―
「何でオマエはこのゲームに乗ってしまったんだ・・・フリオニール・・・」
「死ねぇ!!!!」
―繰り返される裏切り、そして殺戮―
「ホホホ、再び偏りが生じ始めたわけか。ゲームはそうでなくてはな」
―巨大な黒幕とは?―
「ターニアさん!後ろぉぉおっ!!」
―果たして―
「ハッサン!」
「何ぃ!?ぐおおおぉ!!」
―生き残るのは―
「俺を殺しても何も変わらん・・・殺し合いは終わっていない、始まったばかりなんだ」
―フィールドを渦巻く陰謀、闇―
「貴様!このセフィロスに勝てると思ってるのか!?」
―迫力のバトル―
「エドガー・・・オマエに託すよ・・・」
「ザックス・・・」
―友情、そして―
「ピサロさま・・・」
―愛―
「ぬぁぁあああぁっ!!!」
―参加者達は生き残れるのか!?―

FFDQバトルロワイアル3rd PART9乞うご期待!

脳内に映像とBGMを妄想で流しつつお読み下さい。

(この予告はフィクションです。実際のPART9の展開とは一切関係ありません)
522名前が無い@ただの名無しのようだ
>>521は無効です