FFDQバトルロワイアル3rd PART4

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1名前が無い@ただの名無しのようだ

━━━━━説明━━━━━
こちらはDQ・FF世界でバトルロワイアルが開催されたら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。

参加資格は全員、
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

作品に対する物言い、感想は感想スレで行ってください。
sage進行でお願いします。
詳しい説明は>>2-10…ぐらい。

感想スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1110176668/
過去スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1099057287/ PART1
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101461772/ PART2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1105260916/ PART3
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/11(月) 00:56:16 ID:ZjhHr21r
3名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/11(月) 01:43:09 ID:4fQsHbiB
         /⌒ヽ
  ⊂二二二( ^ω^)二⊃
        | 2get /       ブーン
         ( ヽノ
         ノ>ノ
     三  レレ
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/11(月) 08:23:42 ID:fznVAycb
こちらは重複スレです。
書き手の方は↓のスレに投稿をお願いします。

FFDQバトルロワイアル 3rd part.4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1113148540/
5名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/12(火) 20:56:06 ID:EhPiFlvU
中日ドラ5ンズ
6名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 08:11:47 ID:kmM6umwV
DAT落ちしたからこっち使用です。

↓以下素晴らしい作品
7名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 08:26:12 ID:gioeC0lX
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
 <ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
 この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。

+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 08:27:20 ID:gioeC0lX
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
・ただし、スペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
・その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。

+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。



━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 08:28:58 ID:gioeC0lX
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
10名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 08:39:33 ID:gioeC0lX
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・ …を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
11名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 08:40:49 ID:gioeC0lX
生存者リスト
FF1 0/4名:(全滅)
FF2 3/6名:フリオニール、マティウス、レオンハルト
FF3 6/8名:サックス、ギルダー、ドーガ、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 2/7名:カイン、エッジ
FF5 5/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード、ファリス
FF6 8/12名:ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、エドガー、ロック、ケフカ、トンベリ
FF7 5/10名:ザックス、ティファ、セフィロス、ユフィ、シド
FF8 5/6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア
FF9 6/8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、サラマンダー
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 4/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 1/3名:ロラン
DQ3 5/6名:オルテガ、アルス、セージ、フルート、ローグ
DQ4 6/9:ソロ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ライアン、ロザリー、(アリーナ2)
DQ5 10/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、デール、タバサ、ビアンカ、はぐりん、ピエール、プサン
DQ6 7/11名:テリー、イザ、サリィ、クリムト、ハッサン、バーバラ、ターニア
DQ7 1/5名:フィン
DQM 4/5名:わたぼう、ルカ、テリー、わるぼう
DQCH 3/4名:イクサス、スミス、ドルバ

FF 47/78名 DQ 37/61名
計 84/139名
12名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 08:43:04 ID:gioeC0lX
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレシア王子)、パウロ(サマルトリア王子)、ムース(ムーンブルク王女)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(男勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(男勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、ビアンカ、はぐりん、ピエール、
        マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ

FF 78名 DQ 61名
計 139名
13名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 09:00:05 ID:gioeC0lX
■死亡者状況
ゲーム開始前
「マリア(FF2)」

アリアハン朝〜日没
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
「マリベル」

アリアハン夜〜夜明け
「アレフ」「ゴルベーザ」 「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」
「ラグナ」「エーコ」「マリア(DQ5)」「ギルバート」 「パイン」
「ハイン」「セリス」「クラウド」「レックス」「キーファ」
「パウロ」「アルカート」「ケット・シー」「リディア」「ミネア」

アリアハン朝〜
「アイラ」「デッシュ」「ランド」
14名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 12:48:18 ID:qZPbv5AW
+ジョブチェンジについて+
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。


ひいき良くない。
15名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/14(木) 13:57:43 ID:gioeC0lX
■その他
FFDQバトルロワイアル3rd 編集サイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3log/
FFDQバトルロワイアル3rd 旧まとめサイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3rd/index.html
1stまとめサイト
http://exa.to/ffdqbr/
1st&2ndまとめサイト
http://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/
番外編まとめサイト
http://ffdqbr.fc2web.com/
保管庫
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/

死亡者ネタスレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1100867635/

現在の舞台はアリアハン大陸(DQ3)
ttp://ffdqbr.fc2web.com/ariahan.gif
次は浮遊大陸(FF3)
ttp://www.thefinalfantasy.com/games/ff3/images/firstmap.jpg
16Adrenaline Rush!! 1/4:2005/04/14(木) 15:04:05 ID:CMXW2QE3
えらい事になった。
いや、本当にこれは凄い。
「最初から支給品は確認しとけっての!こんな良いモン入ってたんだろ!?」
「いやぁ、うっかりといいますか。まさかこんな奇妙なものが入っているとは」
ゼル達は目標を変え、アリアハンではなく砂漠の旅の扉へと爆走していた。
文字通り、爆・走!

きっかけはアリアハンに向かおうと意気込んでいた最中。
ユウナがプサンの支給品が未だに謎な事に気が付いたのだ。
もしかしたらとても凄いアイテムが眠っているかもしれない。
そう期待する彼らを尻目に、袋から無造作に放り出したそれはなんと!!


「はっはっはァ!!まぁでも確かに軽トラが入ってるなんて思うわけ無いぜ!!」


軽トラでした。
鉄で作られたそれは大体の障害にも耐えられる。
そうそう時間が無いこともあってか、彼らはそれを使う事にした。
そしてアリアハンではなく、少々無理をしてでも近場である砂漠の旅の扉を目指すことになったのだった!

そして車に一番詳しい(はずの)ゼルが運転しているのだ!
しかし慣れていないのか、確実に中心部には走っているものの、砂煙を撒き散らして暴走状態!!
じゃんけんに勝ったプサンを助手席に、そして残りの負け組共を後ろの荷台に乗せて走る走る走る!!
ゼルのアドレナリンは大爆発だ!すげぇ!!

そして砂煙が巻き起こるこの状況に、メンバーが文句を言いまくる!
「げほっげほっ!これもうちょっとスピード落とせないの!?」
「目に砂が入りそうですよ〜」
しかしゼルは無視だ!
頑張れゼル!負けるなゼル!後で絶対皆にボコられるから!!
17Adrenaline Rush!! 2/4:2005/04/14(木) 15:04:59 ID:CMXW2QE3

「む?」
一方こっちは砂に隠れているピエールである。
対人レーダーが大勢の人の塊を感知したことに気づいたのだ。
しかもやけに早い。さながら大勢の馬の塊のようだ。
「珍妙な……だがこれはチャンスだ」
立て続けに現れる大人数の参加者。どうも自分は運が向いているらしい。
今度こそ絶対に仕留めてやる。そして意気込んだピエールはそっとレーダーの感知した方向を見た。

凄い勢いで何かが迫ってくる。
ピエールの世界での文明レベルではありえないし、理解できないものが襲ってきている。
だが、何か嫌な予感だけはしていた。あれの直線上にいてはいけない気がしていた。さぁどうしようか。
「狙撃か……」
たどり着いた答えを、ピエールは袋から取り出して表現した。
そう、ロングバレルRだ。あれを狙撃しようというのだ。
砂煙に隠れて相手の姿は見えない。仕方が無いので直線上からは離れた。
そしてまた砂に隠れ、狙撃した!!


ズドォン!!


ゼル達の耳に銃声が届いた。
「うわ!何ですか今の!」
「今のは…銃!?私たちを狙っているんでしょうか。でもその割にはこちらには掠りもしなかったけど……」
「まぁ…つまりやばいんだね!おーいゼル!目の前に青い光があるだろ?アレに急いで突入してくれ!」
「おっしゃあ!皆捕まれよ!!」

だが、どうやら掠りもしなかったらしい。
相変わらず爆走する何かを見て舌打ちするピエール。
そしてまだまだ近づいてくる不思議な物に銃を構えた。
18Adrenaline Rush!! 3/4:2005/04/14(木) 15:06:08 ID:CMXW2QE3

そしてピエールは初めて見てしまった。
軽トラと言う奇妙ないでたちのものを。
「な……なんなんだあれは……」
銃を構えたまま呆然とそれを見送るピエール。
ついでに何人かの顔が見えた。全員こちらには気づいていないようだ。
今覚えているのは青い帽子と服を着けている男とオッドアイの女性、そして騎士風の男。
だが、頭の中でその奇妙な状況を整理している間に逃げられてしまった。
青い光に包まれる軽トラ。あ、なんか奇麗。いやそうじゃなく。

「………リュカ様、あの鋼の馬車にはお気をつけ下さい」
ボソリと、まだ見ぬ主君に対して気遣いの言葉を呟くピエール。
そしてまた砂に潜った。流石にあんな滑稽な事は二度三度は起こらないだろう。
彼に今出来ることは、それくらいだった。

余談だが、プサンの支給品は軽トラだけではない。しっかりと後2つ存在した。
それは錬金釜と隼の剣という豪華なものなのだが……軽トラのインパクトに負けた為、まだ誰も気づいてはいない。



【ピエール(HP3/5程度) (MP1/2程度)
 所持品:鋼鉄の剣、ロングバレルR、青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
     ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー
 第一行動方針:砂に紛れ潜伏し、参加者を襲う  基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:西部砂漠の旅の扉近くの砂の中】
19Adrenaline Rush!! 4/4:2005/04/14(木) 15:22:07 ID:CMXW2QE3
【フルート 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣】
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート】
【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ 
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト】
【サックス 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り】

【第一行動方針(五人共通):砂漠中心部の旅の扉から新フィールドへ(軽トラ搭乗中)
 第二行動方針(五人共通):なるべく仲間を集める
 最終行動方針(五人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】

【ユウナ(ジョブ:白魔道士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子
【プサン 所持品:軽トラック、錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:砂漠中心部の旅の扉から新フィールドへ(軽トラ搭乗中) 第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける 最終行動方針:ゲーム脱出】

【現在位置:アリアハン西の平原(アリアハン西砂漠から東にある平原)→西部砂漠の旅の扉から新フィールドへ】

※備考
軽トラにロラン達7人が乗っています。
「左側運転席」ゼル 「右側助手席」プサン 「荷台」フルート、ロラン、リルム、サックス、ユウナ
20名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/17(日) 10:22:17 ID:KnXGYozg
保守
21痛み 1/4:2005/04/18(月) 18:58:06 ID:QO3RBMgz
最も背の高い民家の裏だ、とピサロは言った。
その言葉は正しく、けれど少しだけ間違っていた。
そこにあったのは青年の遺体ではなく、花の添えられた小さな墓だったのだから。
「レナさんとエリアさんって人……かな」
アーヴァインの呟きに、ソロは答える。
「多分、そうだろうね」
――小娘達の要望で、人目につかぬよう木立の影に遺体を隠した――
『埋葬する余裕などなかったのでな』、とピサロは言ったが、やはりレナ達としてはきちんと弔ってやりたかったはずだ。
自分達と別れたあと真っ直ぐここにやってきて、墓を作っていったのだろう。
「優しい人なんだね、二人とも」
そう言って、アーヴァインは近くの花壇から拝借した花を墓の上に置く。
そしてしばらく黙祷を捧げると、唐突にソロの方に向き直り、やけにおどけた調子で腕を広げた。
「あーあ。なーんでなんも思い出せないんだろうな〜。
 ここは一発、ショック療法ってヤツでガツンと頭とか殴ってみよっか? なーんてね」
などと芝居っ気たっぷりに言ったあと、声さえ立てて笑ってみせる。
無神経もはなはだしく、不謹慎だといってもいい言動だ。
しかしソロは何も言わなかった。否、言えなかった。
ぎこちない笑顔と震える声。その裏に隠されたモノを感じ取れてしまったからだ。

「さーてと、僕らの用事は済んだしさ〜。
 みんなもそろそろアイテム集め終わった頃でしょ。合流して、次の世界に行ってみようぜ〜」
アーヴァインは言う。わざとらしいぐらいに明るい調子で言う。
――多分、余計な迷惑や心労をかけたくないのだろう。
吹っ切れて立ち直ったのだと。だから心配しなくていいと、ソロに示したいのだろう。
けれどにじみ出てしまっている。本当はちっとも立ち直れてなどいないということが。
罪悪感と自責と後悔に押し潰されそうになりながら、無理をして笑っている。

それがわかるからこそ、何と言ってやればいいのかわからないまま、ソロは茫洋と空を仰いだ。
すぐ傍にそびえる家、その二階の窓辺で、観葉植物らしき赤い草が揺れているのが見える。
生きることは痛みに耐えることだと誰かが言った。
ならばあの赤い草も、痛みに耐えているのだろうか――ソロはふと、そんなことを考えた。
22痛み 2/4:2005/04/18(月) 19:03:54 ID:QO3RBMgz
「ありがとう」と礼を言われたところで、イクサスの機嫌が治るはずもなかった。
「別にお前のためじゃねーよ。ラグナさんとリチャード、あとシドのヤツに言われたからだ」
ラケットで撃ち出せるように細工した毒薬入りのカプセルボールを弄びながら、ぶっきらぼうに言い放つ。
何だか知らない間に、一方的に女の世話を任されてしまった。
カプセルボールも、解毒剤も、とっくの昔に揃っているのに。
本当なら今ごろは、仇を探しに旅の扉の向こうへ行っていたはずなのに。
苛立ちは治まらない。
もどかしさと――それ以上に、結局バーバラの面倒を見てしまった甘い自分への怒りが胸の奥に満ちている。
しかしバーバラは、そんなイクサスの心境など知る由もない。
彼女は彼女で勝手に怒っている。
ただし彼女の場合、イクサスと違って逆恨みに近いものだったのだが……
「ほんと、もうダメかと思ったわ。
 アイツに追い詰められて……これもそれもあのキザ男のせいよ!
 あー、もう! 今度会ったら絶対ギッタギタにして土下座させてやるー!」
「キザ男?」
「そう! あいつ、殺人鬼がこの村に向かってるからあたしに囮になってくれって言ってきたの。
 『必ず助けに入る。あの男を倒すためだ、僕を信じてくれ』なんて言ってさ。
 あいつ……助けに入るどころか、最初からあたしを見殺しにするつもりだったのよ!」
キー、くやしー! と、どこからともなく取り出したハンカチを噛みしめるバーバラ。
そんな彼女を、イクサスは冷めた目で見つめる。
(そいつ、もう死んでるだけなんじゃねーか?)
仮に騙されていたのだとして、わざわざ囮役にさせてから見殺しにする理由がわからない。
接触した時に隙を見て殺す方が手っ取り早いだろう。しかも確実だ。
どう考えても、そのキザ男なる人物が既に死んでいる……とした方が自然な気がする。
それともバーバラが何かを隠していて、そこに理由があるのか――?
そこまでイクサスが考えた時、バーバラが叫んだ。
「アーヴァインのヤツ! 絶対許さな――」
23痛み 3/4:2005/04/18(月) 19:07:15 ID:QO3RBMgz
彼女が続きを言う前に、イクサスは胸倉を掴んでいた。
「今、なんて言った?」
子供とは思えぬ迫力と、暗い憎悪を込めた視線に、バーバラは息を呑む。
「答えろ」
イクサスは短く告げた。自分でもそれとわかるほど、空気が冷えていくのがわかった。
「あ……アーヴァインよ。
 アーヴァイン=キニアスって名乗ったの、そいつ」
「どこにいる?」
「そんなの知らないよ! あたしだって知りたいぐらいなのに!」
イクサスは小さく息を吐き、バーバラから手を離した。
そのままふらふらと数歩下がると、ぺたんと床に座り込んだ。
「ちくしょう……ちくしょう、こんな近くにいたってのかよ……」
涙が頬を伝って落ちる。
昨日の夜、夜空を焦がしていた炎を思い出す。
あの炎はアーヴァインの仕業だったのかもしれない。
怖気づかずに飛び込んでいたら、憎いあの男の姿を捉えることもできたのかもしれない。
多分無理だっただろうが、――もしかしたら、仇を討つことも。
それを思うだけで、悔しくて悔しくて仕方がなかった。
そんなイクサスに、バーバラは困惑しながらも声をかけた。
「ねぇ……何があったの?」
イクサスは答えない。答えられなかったのかもしれない。
だからバーバラは、彼が泣き止むまで待つことにした。
急かそうとは思わなかった。

部屋に満ちる嗚咽とは別に、窓の向こうから話し声が聞こえる。
距離で言ったら十数メートルも離れていないはずなのに、バーバラにはひどく遠いものに感じられた。
そして陽気な響きに満ちた声が――なぜだか、無性に痛かった。
24痛み 4/4:2005/04/18(月) 19:11:26 ID:QO3RBMgz
【イクサス(軽度の人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×4、各種解毒剤
 第一行動方針:泣く 第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスから話を聞く 第二行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:レーベの村、老人の家2F】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:ヘンリー達と合流し、旅の扉へ移動  第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【アーヴァイン(HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP〜1日目深夜までの行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:ソロに着いていく 第二行動方針:罪を償うために行動する】
【現在地:レーベの村、バーバラ達がいる家の裏手】

【ヘンリー(6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
 第一行動方針:アイテム探し/ソロ達を待つ 第二行動方針:デールを止める(話が通じなければ殺す)】
【ターニア 所持品:微笑みの杖
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:イザを探す】
【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:アイテム探し/ソロ達を待つ 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ビビ 所持品:スパス
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:仲間を探す】
【現在地:レーベの村・道具屋】
25敵ではないがお前の態度が気に入らない1/6:2005/04/22(金) 03:09:48 ID:55yzJurC
「ひでぇな…」
城下町にたどり着いたアルガスは思わず呟いてしまう。
美しかった城も街も瓦礫の山と化し、あちこちに大穴が開いている。
もう戦いが終わって何時間も経っているのだろうが、未だに炎が燻っており、煙が立ち上っている。
彼自身、戦場となって廃墟と化した街を見たこともあるが、それ以上のひどい壊れっぷりだ。
これがたった数人の参加者によって行われたことなのだからゾッとする。
門の近くには放置された2人の死体。浜辺で見た女と、塔の上から見つけた、黒いドレスを纏っていた女だ。
両方とも目が閉じており、並べられていることから、誰かが動かしたのだろう。
近くにアイテムは落ちていないようなので、無視することにした。

ももんじゃのしっぽがある方向を指し示す。
放送で旅の扉が発表されたとき、手で弄んでいたこのアクセサリが突然動き始めたからもしやと思った。
間違いない、旅の扉を指し示す道具らしい。
井戸から青い光が漏れているのが分かる。もちろん、引き出された視力のおかげで分かるようになっているのだが。
そして井戸とは逆側の、この城下町では不自然なほど原型をとどめている建物から赤い光が漏れているのも見える。
その建物の扉が開いた。アルガスは光の剣を構える。
26敵ではないがお前の態度が気に入らない2/6:2005/04/22(金) 03:11:50 ID:55yzJurC
扉から出てきた人物を見て、アルガスは剣の構えを解く。
「何だ、誰かと思えばいつぞやのあまちゃんじゃないか。こんなところで何やってるんだ?
 まさか、旅の扉の位置が分からないのか?教えてやってもいいぜ。情報量もいただくがな」
アルガスはまるでカモを見つけたと言わんばかりに、笑みを浮かべて話しかける。
「君は確か…アルガス」

「知り合いか?」
知り合いとの再開にしては少々おかしな空気が流れているため、一応尋ねてみるサイファー。
イザはほんの一瞬だけ気まずそうな表情を浮かべ、答える。
「昨日向こうの塔で会ったんだ。色々と僕らに情報をくれた。…セフィロスのことも、ね」
アルガスの忠告に気を付けていれば少なくとも一人は犠牲者を減らすことができた。
あの行動の理念は正しかったかもしれないが、よい結果は生まなかった。
やはりそう簡単には割り切ることは出来ないのだろう。

「旅の扉の位置は分かっているよ。少し休んでいただけさ」
「チッ、どうせなら迷っていてくれたらよかったんだがな…。
 まあいい、ところで脱出のメドは立ったか?」
「いや、まだだ。今、ギードさんが首輪について調べているところさ」
「ギード?あぁ、あのトロそうな亀か。やっと首輪を調べる段階に入れたんだな」
一瞬侮蔑の念が感じられたのは気のせいだろう。イザが話を続ける。
「僕たちはここを襲ってきた銀髪の二人組、…君が教えてくれたあの二人なんだが、
 彼らを倒そうと考えている。でも、彼らは強い。それで…」
27敵ではないがお前の態度が気に入らない3/6:2005/04/22(金) 03:20:38 ID:55yzJurC
まだ話の途中だというのに、アルガスが割り込む。
「それで俺に付いてこいと言いたいわけか?断る。全く勝算の無い戦いに首を突っ込むような真似はしたくないんでね。
 あまちゃんにチンピラに嬢ちゃんか。返り討ちに遭うのがオチだろうよ。
 おっと、亀にガキにトカゲがいるのか。どっちにしろあまり変わらねぇか。
 ま、たとえ勝算があろうとも、お前らと一緒に馴れ合うのはご免だがな。
 単に脱出しようとしているらしいから、協力してやっているだけさ。
 もし脱出に失敗するようなら、俺はお前らも、他の奴らも、殺してでも生き延びるつもりだぜ?」
不快発言がマシンガンのように乱射される。サイファーもさすがに黙って聞いてはいられない。
「テメェ、さっきから聞いてりゃ言いたい放題言ってくれるじゃねぇか…」
「サイファー!」
が、サイファーをたしなめるべくイザが叫ぶ。
「気持ちは分かるが、少し辛抱してくれ。ここで争っても何の利もない」
アルガスに向き直り、話を始める。
「来てくれないのならそれでもいい。強制するつもりは無いからね。
 ならばせめて、君が知っていることがあるなら詳しく教えて欲しい。僕らが今までに見た、役立ちそうなことも話そう」
「情報交換か。いいぜ。ここでの戦いは見てなかったしな」
ザックから名簿とインク、羽ペンを取り出そうとする。
が、名簿が引っかかったのか、いくつかのアイテムをその場に落としてしまう。

「チッ」
舌打ちをしながら、アルガスがアイテムを拾い集める。
たまたまロザリーが近くに転がってきたクラン・スピネルを手に取る。
「あら、これは…?」
28敵ではないがお前の態度が気に入らない4/6:2005/04/22(金) 03:23:13 ID:55yzJurC
「おい、それも俺のものだ。返してもらうぞ」
ロザリーはこの宝石に見覚えがあった。世界結界全集をめくったとき、
最高レベルの結界として紹介されていたものの材料にこの宝石があった。
もっとも、魔力も知識も必要なため、彼女自身がそのような大層なものを作れないのだが、
「何だ?それが欲しいのか。別に何かと交換してくれるんなら、やってもいいが?」
「分かりました。これと交換でよろしいでしょうか?」
脱出に一歩近づくかもしれないと感じた。故にその交渉に応じた。

取りだしたのは趣味の良い腕時計。いつでも正確に時間を知ることが出来る。
無くて困るということはないが、使い方によっては非常に有効な支給品だ。
アルガスは即座に取引に応じた。

そして十数分後、両者はアリアハンで起きた戦いの詳細やゲームに乗っている人間についての詳細などの情報交換を終えた。
アルガスの名簿にはデータ集のように色々と情報が書き込まれている。
「次に会う時には脱出できることを期待してるぜ。あまちゃん同士、みんなで仲良く頑張ってくれよ。じゃあな」
そういうと、アルガスは建物の角へ消えていった。
29敵ではないがお前の態度が気に入らない5/6:2005/04/22(金) 03:30:02 ID:55yzJurC
もうすでに放送から1時間程度の時間が経っている。
「そろそろ私達も出発しますか?サイファーさん、おけがはだいじょうぶですか?」
「まだ少し痛むが、問題ねぇ。むしろ、これ以上ここに留まって、また襲われたら困るだろ。
 あのアルガスとかいうヤツとも当分は会いたくないしな。あいつは一緒にいなくて正解だぜ」
「でも、この先彼と協力することもあるかもしれない」
「ああ、分かってるって。…さっさと行こうぜ」

「次の世界はどのような場所なのでしょうか…」
「さぁ、天国でないことは確かだろうぜ」
(ターニア、次の世界で会えるだろうか…?)
様々なことを考えながら、3人は旅の扉へと入っていった。

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【サイファー(右足軽傷) 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード
 基本行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【第一行動方針(共通):セフィロスとクジャを倒す 第二行動方針(共通):ゲームからの脱出】
【以上、新フィールドへ】

アルガスから、昼の湖周辺にいたマーダーについてはある程度聞いています。
(セフィロス、クジャ、ギルダー、デールなど)
30敵ではないがお前の態度が気に入らない6/6:2005/04/22(金) 03:37:43 ID:55yzJurC
「開けたものは、閉めておかないとな」
3人が次の世界へ旅立った直後、アルガスが井戸に備え付けの蓋をした。
明るくなってきたのもあって、目薬草で強化された視力を以てしても旅の扉の青い光はほとんど見えない。
まわりの瓦礫のせいで、注意しておかないとここに井戸があることすら気付かなくなっている。
つまり、今アリアハンの旅の扉の位置を把握しているのはアルガス1人というわけである。
「さて、死体の位置も大体聞けたことだし、アイテム回収といくか」

【アルガス(視覚聴覚向上、旅の扉をくぐるまで) 所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、インパスの指輪、他2人分の支給品、武器ではない。
第一行動方針:時間ギリギリまでアイテム回収、また他人から交渉などで有用なアイテムを頂く
最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る
現在位置:アリアハン城下町】

アルガスの殺人嫌悪は意識下でのことです。
旅の扉がある井戸に蓋がされました。
アリアハン戦の詳細をイザ達から聞いています。
31その生の理由は 1/5:2005/04/23(土) 20:04:18 ID:sqFGLGCe
アリアハン西の山岳地帯を、一人歩む男がいた。
「盲いた眼では山道は嶮しい…か」
そう言いながらも、杖を手に、汗一つ掻かずに男は傾斜を登っていく。
ただ真っ直ぐ、東に向かって。夜明けの太陽の熱を感じた、その方向に向かって。
開始時に見た地図によると、東には洞窟があるはずだった。
いざないの洞窟と魔女が言ったが、おそらくそのことだろう。
だから、其処に向かっているのだ。

彼には特に生への執着心があるわけではない。
ただ、賢者とは何たるかを考えたときに、このまま朽ちていくことの無意味さを感じたのだ。
知は、栄誉や名声の類のためのものではない。自己満足のためのものでもない。
――生かさずして知は真の力となるか。
まだ、生きる意味は、ある。
――脱出の可能性を、自分の力に見出すことはまだ出来てはいない。
だが、盲いた眼にも一筋の光が確かに映っているのだ。
賢者として皆を導くこと――まだそんな使命が残されているのだから。

彼はちょっと歩くスピードを緩め、右手を前に差し出した。
すると、一匹の小鳥がその掌に止まり、小さい声で鳴いた。
「鳥よ…私に言葉が分かればよいのだが」
無い目をその小鳥に向け、クリムトは少し溜息をつく。
小鳥は小さい声で鳴き、その翼は彼の掌を撫でる。
「幼少の頃は、動物達と会話をしたりしたものだが…。どんなに知識を得ても、あの頃の穢れなき姿には戻れぬか……む?」
小鳥は羽ばたいて天空に舞った。クリムトは小さく呟いた。
「…気づいたのだな」
この向こうで何かの気配がする。…異質な空気は、おそらく人間が齎すソレだ。
そして同時に――血の匂いを嗅ぎ取った。
「何か、あったな」
彼は歩くスピードを速め、眼の見えぬ男とは思えぬほど正確に、その場所へと急いだ。
32その生の理由は 2/5:2005/04/23(土) 20:05:23 ID:sqFGLGCe
あーあ。せっかく眠りについたのに。
すぐに地震あって、それで起きたら放送あってさ。
二時間で移動しろっての?こっちの身も考えてよね。
まだ満足に動けないってのにさ。でもこのまま死ぬのはゴメンだし。
あーあ、誰か助けに来てくれないかな…
…もちろん、助かった後は容赦しないけどさ。

――アリーナは、一人で呟き、にやりと笑った。

…って、笑ってる場合じゃないわよッ!
本当にこのまま死ぬなんてさ。
あのモヒカン男――許さないんだから…

其処で思考を止め、耳を澄ませる。
すると、足音が聞こえた。こちらに向かっている。

…ラッキー!やっぱ神様に祝福されたのかも!
あ、でも殺しをやってる人だったらどうするのよ。
こんな状態じゃ逃げようが無いじゃない!
うー、取りあえずどんなやつか見極めて…

今度は、完全に思考が止まった。
早足で歩いてくる男には――見覚えがあった。

「うそッ!」
思わず叫んで、慌てて口を手で押さえる。
もっとも、そんなことは彼の次の行動には何の意味も成さなかったが。
「…成る程…さて、こんな所で何をしているのか」
どうやら彼は、既に彼女が誰であるか気づいたらしかった。
33その生の理由は 3/5:2005/04/23(土) 20:06:31 ID:sqFGLGCe
――冗談じゃないわよ!
彼にトドメを刺さないでおいたのは、『私』が私を追いかけるのを防ぐためだったのに。
重症な上に眼が見えない人を置いていくことは無いと思ったからなのにさ!
それなのに、この人、眼が見えないのに一人でここまで来たの!?

「…起き上がれぬのか。怪我をしているのだな」
彼は、見えないくせに顔をアリーナのほうへ向けたまま歩いてくる。

…死を悟った。
何故か、包帯の下には無いはずの目が、自分を見据えているように感じた。
さっきよりも覇気があって…スキが無い。
恐ろしく強い戦士に思える。
圧倒的な威圧感を持ち、彼は仰向けのアリーナの傍で足を止める。


「…もう、さっさと殺しなさいよ!」
半分自棄になり、叫んだ。
眼が見えないのにここまで歩いてくるくらいだ。
普通じゃないんだこのジジィ――!

「私には人を殺める気など無い」
彼は静かに言った。
「そう欲したことも無い。欲する価値も必要もあるとは思っていない」
34その生の理由は 4/5:2005/04/23(土) 20:09:07 ID:sqFGLGCe
アリーナは唖然とした。
「え?何?」
「私はそなたを殺さぬと言っておるのだが」
呆然とするアリーナ、そして再び歩き出そうとするクリムト。
アリーナは、ハッと我にかえると、別の言葉を彼にぶつけた。
「じ、じゃあ、殺す気がないなら助けてよ!
このままだと死んじゃうかもしれないわよ!呪文とか使えるんでしょ!?」
「…生に固執しておるのかね」
ゆっくりと彼は言った。
「――そのような物は、生きる意味を見つけてから執着するがよい」
「ちょ、ちょっと待ってよ!あたしにだって――」
「生きるために生きる、或いは殺すために生きることは、生きる意味を見つけているとは言えぬ」
それだけ言い、彼は歩き去った。
アリーナは起き上がり、遠ざかる彼の背中に、最後の罵声を浴びせた。
「ちょっと!あたしをこのまま生殺しで放置しとくの!?…くたばれクソジジイ!あんたもソロも皆殺して絶対に生き残ってやるんだから!」
アリーナは、後はただひたすら意味の無い言葉を喚いていた。



喚き声を背中に受け、クリムトは東に歩き続ける。
一人でも多くの者をこの狂気から解放する、それが課せられた義務だ。
…だから彼は、歩き続ける。
人を傷つける事を欲する心など、一度たりとも養われることは無かった。
…だから彼は、歩き続ける。

殺す事でなく、生かす事で、この戦いに終焉を齎すために。
今、賢者として皆を狂気から救うことだけが、彼に見える唯一の光なのだから。
35その生の理由は 5/5:2005/04/23(土) 20:10:52 ID:sqFGLGCe
「――どうしろっていうのよ!」
アリーナは、クリムトの背中が消えた方向に毒づく。
――とんだ神様の祝福ね!あたしに向かって、人を殺さないなんて言いやがった。
――絶対に後悔させてやる…!
力の入らない足を無理やりに立たせ、傷だらけの四肢を少しずつ宥め騙して動かしていく。
「…有言実行!」
――皆殺して絶対に生き残る!
アリーナは、クリムトの消えた方向を鋭く見据え、痛む身体を鞭打って、ゆっくりと歩き出した。




【クリムト(失明) 所持品:力の杖
 基本行動方針:誰も殺さない。
 第一行動方針:東へ行き、旅の扉を(視覚以外で)探し、次世界へ
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】

【アリーナ2(分身) (HP 1/9程度) 所持品:E皆伝の証 E悪魔の尻尾
 第一行動方針:いざないの洞窟or最東端の旅の扉へ
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】

【現在地:いざないの洞窟西の山岳地帯】
36ギルダーを追って 1/4:2005/04/24(日) 17:20:58 ID:EhW724yA
魔法への制限のせいか、自身の状態のせいか、
結局サイトロでの周辺捜索はうまくいかなかった。
ギルダーを見失ったドーガは彼が逃走した方角へ
とりあえず向かうことにし、仲間を探すフィンも彼に従った。

森を抜けて川に突き当たる。川を越え、川沿いをしばらく遡り、
そこで長髪の男と紫色の髪をした少女―ラグナとエーコの死体を発見した。
「かような幼い少女まで犠牲になるとは…やりきれんの…」
ギルダーが消えた方角で死体に出会った。まさか、これもギルダーが?
断定はできない。証拠もない。しかし、極めて疑わしい。
ドーガの心中にはやりきれない悲しみと失望が広がっていく。


簡素とはいえ二人を埋葬し、川越えで濡れた衣服を乾かすためもあり
フィンとドーガはここで休息をとることにした。

「ドーガさん。僕の仲間、見つかるかな?」
小さな焚き火にあたりながら、フィンが不安げな声で問いかける。
「こんな世界じゃ。
 正直言って状況は厳しいの。じゃが…希望は捨てぬことじゃ。
 そなたの仲間もきっと、そなたを探しておるじゃろう」
そう言ったドーガの脳裏にギルダーの姿がちらつく。
夕暮れに見た血染めの剣。先ほどの死体。
あのギルダーでさえ魔女の呪いの言葉に踊らされ他人を害している。
ギルダーを殺さずに止める、その希望はあるのだろうか。
37ギルダーを追って 2/4:2005/04/24(日) 17:21:54 ID:EhW724yA
結局そのまま、ここに留まることになった。
疲労のせいであろう、暗闇の中、フィンは寝入ってしまったから。
その傍らであたりの気配に気を配りつつ支給品をいまさら確認するドーガ。
―これは、辞典じゃな。そしてこれは…ボムのたましい?
なになに…ふむ、生命力を破壊力に変えるアイテムか。
このようなものまで使わせる気とは、魔女も趣味が悪いの。

その時、自分たちが元来た方向、アリアハン城の方角より
ドーガは強烈な魔法の波動を感知した。
それはドーガが知っているものとは何かが違うものであったが。
一度目はメテオ。そして、いくらかの間をおいて二度目はホーリー。

禁呪であるメテオとホーリーを扱えるほどの術者がいて、
しかもそれらが行使されてしまったという事実。
おそらく多くの被害者が出てしまっただろう。

――メテオ、か。ザンデの奴は…闇に呑まれておらぬとよいが。

ふと、かつて世界を無に帰そうとした弟子仲間を思い出す。
夜のメテオ、まさかザンデの奴が、という疑念が僅かに浮かび、
ドーガはそれを振り払おうとする。

――いや、ザンデも愚かではない。それにプライドの高い奴じゃしな。
魔女が決めたルールで動こうなどとは思いもせんじゃろうな。
そういえばウネはどうしておるかのう。
38ギルダーを追って 3/4:2005/04/24(日) 17:24:35 ID:EhW724yA
緊張のせいであろうか、三時間ほどでフィンは目を覚まし、
二人は再び移動することにした。
夜の闇の中、慎重に山中を移動してゆく。
負傷しているギルダーが人が集まりそうな場所に近づくとは思えない。
そう判断したドーガは東に広がる山地へと向かうことにした。

明け方近くなって、
きわめて強力な、しかしドーガにとって未知の魔法の波動を感知する。
いや、立ち上る光さえも見ることができた。

「ドーガさん、今の光、何かな」
「わしにもわからん。どうも別体系の魔法らしい」

足を止め会話を交わす二人の足元で突然大地が鳴動し、
頭上でアルティミシアの声が響き渡る。
そして、フィンにとって聞きたくなかった名前が聞こえた。


「そんな…キーファ…メルビン…アルカートまで…」
この大陸のどこかでの仲間の死。
フィンが打ちひしがれているのは誰の目にも明らかだった。
重苦しい雰囲気が場を支配する。
39ギルダーを追って 4/4:2005/04/24(日) 17:27:36 ID:EhW724yA
「フィンよ…」
ドーガにはそれに続く言葉が見つからない。
目の前の青年にとってどれほどのかけがえの無い仲間を失ったのか。
いかなる慰めも取り繕いにしかならない。それがわかっているから。
「すまぬ…うまい言葉が見つからん。
 ただ…まことの敵が誰なのか、それだけは見失わずにいてほしいんじゃ」
ようやく、それだけの言葉を紡いだ。

少し間をおいて、ドーガは話を切り出す。
「さらに東方の洞窟に次の世界への旅の扉があるようじゃ。
時間はちと厳しいが、わしのヘイストでなんとかなるじゃろう。
 …ともかく、自分が命を失っては何にもならんよ。生きている者は先を目指さねばならん」
そうですね、何とか答えた声は小さく、沈んだまま。
それでもフィンはドーガと共にいざないの洞窟を目指すことにした。
まだアイラやフライヤは生きているという希望を抱いて。

二人とも何の会話もなく、ただ、ひたすらに駆けて行く。
…希望はすでに打ち砕かれていることを知るすべなどなかった。

【フィン(ヘイストで加速中) 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:ドーガと共にいざないの洞窟へ 基本行動方針:仲間を探す】
【ドーガ(軽傷、ヘイストで加速中) 所持品:マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:いざないの洞窟へ急ぐ 第二行動方針:フィンの仲間とギルダーを探す 
 第三行動方針:ギルダーを止める】
【現在位置:いざないの洞窟近くの祠あたり】
40名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/24(日) 20:20:45 ID:342Vmo1W
>>36−39
無効でお願いします。すみません。
41ギルダーを追って 1/4:2005/04/24(日) 20:54:08 ID:342Vmo1W
魔法への制限のせいか、自身の状態のせいか、
結局サイトロでの周辺捜索はうまくいかなかった。
ギルダーを見失ったドーガは彼が逃走した方角へ
とりあえず向かうことにし、仲間を探すフィンも彼に従った。

森を抜けて川に突き当たる。
ギルダーが消えたのはこのあたりの川岸だった。
おそらく向こう側へ逃れたのだろうと判断し、川を越える。

どこまで逃れたのかわからないが、
川向こうでもギルダーの姿も気配も見つけられない。
川越えで濡れた衣服を乾かすためもあり
フィンとドーガはここで休息をとることにした。

「ドーガさん。僕の仲間、見つかるかな?」
小さな焚き火にあたりながら、フィンが不安げな声で問いかける。
「こんな世界じゃ。
 正直言って状況は厳しいの。じゃが…希望は捨てぬことじゃ。
 そなたの仲間もきっと、そなたを探しておるじゃろう」
そう言ったドーガの脳裏にギルダーの姿がちらつく。
夕暮れに見た血染めの剣。先ほどの死体。
あのギルダーでさえ魔女の呪いの言葉に踊らされ他人を害している。
ギルダーを殺さずに止める、その希望はあるのだろうか。
42ギルダーを追って 2/4:2005/04/24(日) 20:55:36 ID:342Vmo1W
結局そのまま、ここに留まることになった。
疲労のせいであろう、暗闇の中、フィンは寝入ってしまったから。
その傍らであたりの気配に気を配りつつ支給品をいまさら確認するドーガ。
―これは、辞典じゃな。そしてこれは…ボムのたましい?
なになに…ふむ、生命力を破壊力に変えるアイテム―自爆という奴じゃな。
このようなものまで使わせる気とは、魔女も趣味が悪いの。

その時、自分たちが元来た方向、アリアハン城の方角より
ドーガは強烈な魔法の波動を感知した。
それはドーガが知っているものとは何かが違うものであったが。
一度目はメテオ。そして、いくらかの間をおいて二度目はホーリー。

禁呪であるメテオとホーリーを扱えるほどの術者がいて、
しかもそれらが行使されてしまったという事実。
おそらく多くの被害者が出てしまっただろう。

――メテオ、か。ザンデの奴は…闇に呑まれておらぬとよいが。

ふと、かつて世界を無に帰そうとした弟子仲間を思い出す。
夜のメテオ、まさかザンデの奴が、という疑念が僅かに浮かび、
ドーガはそれを振り払おうとする。

――いや、ザンデも愚かではない。それにプライドの高い奴じゃしな。
魔女が決めたルールで動こうなどとは思いもせんじゃろうな。
そういえばウネはどうしておるかのう。
43ギルダーを追って 3/4:2005/04/24(日) 20:56:47 ID:342Vmo1W
緊張のせいであろうか、三時間ほどでフィンは目を覚まし、
二人は再び移動することにした。
夜の闇の中、慎重に山中を移動してゆく。
負傷しているギルダーが人が集まりそうな場所に近づくとは思えない。
そう判断したドーガは東に広がる山地へと向かうことにした。

明け方近くなって、
きわめて強力な、しかしドーガにとって未知の魔法の波動を感知する。
いや、立ち上る光さえも見ることができた。

「ドーガさん、今の光、何かな」
「わしにもわからん。どうも別体系の魔法らしい」

足を止め会話を交わす二人の足元で突然大地が鳴動し、
頭上でアルティミシアの声が響き渡る。
そして、フィンにとって聞きたくなかった名前が告げられた。


「そんな…キーファ…メルビン…アルカートまで…」
この大陸のどこかでの仲間の死。
フィンが打ちひしがれているのは誰の目にも明らかだった。
重苦しい雰囲気が場を支配する。
44ギルダーを追って 4/4:2005/04/24(日) 20:58:45 ID:342Vmo1W
「フィンよ…」
ドーガにはそれに続く言葉が見つからない。
目の前の青年にとってどれほどのかけがえの無い仲間を失ったのか。
いかなる慰めも取り繕いにしかならない。それがわかっているから。
「すまぬ…うまい言葉が見つからん。
 ただ…まことの敵が誰なのか、それだけは見失わずにいてほしいんじゃ」
ようやく、それだけの言葉を紡いだ。

少し間をおいて、ドーガは話を切り出す。
「さらに東方の洞窟に次の世界への旅の扉があるようじゃ。
 時間はちと厳しいが、わしのヘイストでなんとかなるじゃろう。
 …ともかく、自分が命を失っては何にもならんよ。生きている者は先を目指さねばならん」
そうですね、何とか答えた声は小さく、沈んだまま。
それでもフィンはドーガと共にいざないの洞窟を目指すことにした。
まだアイラやフライヤは生きているという希望を抱いて。

二人とも何の会話もなく、ただ、ひたすらに駆けて行く。
…希望はすでに打ち砕かれていることを知るすべなどなかった。

【フィン(ヘイストで加速中) 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:ドーガと共にいざないの洞窟へ 基本行動方針:仲間を探す】
【ドーガ(軽傷、ヘイストで加速中) 所持品:マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:いざないの洞窟へ急ぐ 第二行動方針:フィンの仲間とギルダーを探す 
 第三行動方針:ギルダーを止める】
【現在位置:いざないの洞窟近くの祠あたり】
45少しの間だけ 1/4:2005/04/26(火) 09:51:29 ID:kuPCn6UL
【草木も眠るナントカ頃】ふわぁぁぁ……仮眠終了ー。三時間も寝れば十分だよね。眠いけど。
 さーて、次はどこへ行こうかな。お城はなんだかものすごい事になってるし、後回しにしてもいいかなぁ……?

【その後で】何となく海に行ってみたら、砂浜で死体を見つけた。
 毒矢を打ち込まれたみたいな感じだけど、良く見ると矢じゃなくて針が突き立ってる。
 吹き矢……にしては、随分深く突き刺さってるんだよね。新手の武器なのかなあ?
 とりあえずご冥福を祈って、ついでにアイテムをお借りしとこう。なむなむ。

【今度は山の方に行ってみよう】と思ったら、また死体を見つけた。なむなむ。
 穴だらけだけど、何をどうしたらこんな風になるんだか……やっぱり、僕の知らない武器があるんだろうな。
 防御力と逃げ足には自信があるけど、あまり油断するのも良くないみたい。用心して行こうっと。

【疲れてきたので】また休憩。ついでに、一度手持ちのアイテムをきちんと確認することにした。
さっきの人から手に入れた分もあるし、僕の支給品も良く確認してなかったしね。

・良くわからない謎のキカイ。説明書を読んで、使い方は何となくわかったんだけど……でも、レーザーって何?
・剣。間違っても口で振り回せるサイズじゃない。しかも切れ味悪そうだし……
・ナゾの薬。10個ある。説明書によるとエリクサーというもので、HPとMPを回復するらしい。
・メモ。難しすぎて何が書いてあるのか読めない。もう少し簡単な言葉だったらナントカ読めるんだけどなー。
・首輪二個。なんでこんなものが森の中に落ちていたのか、正直考えたくない。ガクブル
・青い剣。説明書曰く、ワッカって人が弟に贈る予定だった剣らしい。……誰?
・タンバリン。叩くとなんだかやる気がでてくるような気がする。
・カードの束。ケースに『Squall=Leonhart』って書いてある。だから誰?

 ……と、まぁ、色々といいたいことはあるんだけどね。
 僕が真っ先に思ったことはね。

 エリクサーで、ピエ―ルさんのこと治療できたじゃん。

 ……うわあああん、ピエールさんごめんなさーい! どーかどーか、放送で呼ばれませんように!
46少しの間だけ 2/4:2005/04/26(火) 09:53:28 ID:kuPCn6UL
【色々回ったけど】ご主人は見つからない。やっぱり、お城にいるのかなぁ。
 ……でも確か、隕石落っこちたり、光の柱が立ち上ったり、爆発が延々続いてたりしてたよね。
 はぁ。あまり行きたくないなー。あんなのに巻き込まれたら、僕でも死ぬよ?
 でも、これもご主人に会うためだからガンバレ僕。ファイトだ僕。

【そういうわけで】夜明け近くになっちゃったけど、城下町に来てみた。
 なんか建物の中に結界みたいなのが張られていたので、中を覗いてみた。
 カメみたいなのとネコっぽい人と、カタギには見えない怖そうなお兄さんの姿が見えた。
 でも、何故かは知らないけど、ピリピリするような殺気が漂っている……
 特に、額に傷のあるお兄さんなんて話し掛けただけで切りかかってきそうな予感。むしろ悪寒。
 ・……えーと、かような柄の悪い方とお優しいご主人が一緒にいるなどとは到底考えられませんので、
 ここは己の身の安全を確保するのが最良の策だと判断します。……さようならっ!

【とりあえずダッシュで逃げて】瓦礫の下を掻い潜って走り抜けた。
 半分液体生物の僕なら、この程度の隙間でもへっちゃらで通り抜けられるもんねー。
 ……って、アレ? なんだろ、この黒い玉。妙な魔力を感じるけど……とりあえず持っていこうかな。

【そしてお城へ】……入ってみたけど……なんだか酷い有様だね。
 壁や天上が崩れて、通路が殆ど塞がってるし。
 普通のニンゲンじゃあ奥半分には入れないんじゃないの? 僕は通れるからいいけどさ。
 っと、あんな所に階段発見。地下に続いてるみたいだね。
 下は牢屋……みたいだけど、奇妙な風の流れを感じる。どっか、別の場所に続いてるのかな? 降りてみよ……

【地震、放送】






 レックス……さま?
47少しの間だけ 3/4:2005/04/26(火) 09:55:03 ID:kuPCn6UL
【              】







 ……レックスさま。

 元の世界に帰れたら、湖に泳ぎに行こうよ。それから、スラリンやミニモンとボール遊びしようよ。
 それから、コロプリやプチマジと一緒に呪文のお勉強するでしょ。
 それから、タバサ様と一緒におやつにするでしょ。それから、ゲレゲレさんとかけっこして、
 それから、……それ……から……

 ………
 
 ぼく、どうしたらいいんだろう。
 泣いた方がいいような気がするんだけど、涙が出てこない。
 何でだろう。おかしいね。
 泣きたいぐらい悲しいはずなのに、ちっとも涙が出てこないんだ。

 頭の中でレックス様と一緒にやりたいことがぐるぐる回ってて、でも胸の奥は空っぽで、スースーするんだ。
 レックス様はもういないんだってわかってるけど、なんだか、目の前にひょっこり出てくるような気がするんだ。
 ……信じられないんだ。嘘だよーって、誰かが言ってくれそうな気がするんだ。

 泣きもしないなんて、僕って、薄情者だね……
 ……レックス様。
48少しの間だけ 4/4:2005/04/26(火) 12:12:50 ID:BZbMJZEG
【しばらく歩いたら、何故かわからないけど】旅の扉が目の前にある。
 この中に入れってことなのかな……多分、そうだよね。
 放送、良く聞いてなかった。

 会いたいな。ご主人。どこにいるんだろう。
 ビアンカ様。やっぱり無理をしてでも追っかけた方が良かったかな。
 タバサ様。元気でいるといいけど……
 ヘンリーさん。挨拶ぐらいしとけばよかったな。
 ピエールさん。ホント、ごめんなさい。次に会った時はエリクサー全部あげます。
 デールさん……は、怖いからいいや。
 
 レックス様。
 きっと、この世界のどこかにいるんだよね。探しに行けば会えるかもしれないよね。
 でも……前に進まないといけないから、僕、先に行くね。
 だけど、全部終わったら、必ず、ご主人と一緒に迎えに来るから。
 だから……それまで、ちょっとの間だけ……

 さようなら。

【はぐりん
 所持品:エリクサー×10、ブロードソード、レーザーウエポン、首輪×2、研究メモ
 フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、黒マテリア
 行動方針:仲間との合流(リュカを最優先、戦闘はできるだけ避ける)】
【現在地:海底通路の旅の扉から新フィールドへ】
49名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/04/30(土) 15:12:27 ID:+NYK55qG
黄金週間対策保守
50名もないその剣は 1/4:2005/04/30(土) 16:16:13 ID:NOFpes4m
フリオニールは、悲鳴にも似た絶叫を張り上げつづけた。
その姿に、レオンハルトが慌てて駆け寄る。
「おい…おい!フリオニール!」
肩を掴んで揺さぶり、そう何度か呼びかける。
「落ちつけ!俺がいるぞ!」
続けていると、ただ叫びつづけていた声が次第に小さくなり、やがて疲れたような喘声に変わった。
「…少し…」
暫くして、フリオニール。「…少し、時間をくれ…」
「お前、何も分かってないな」
そんな彼に、昔からの友人は冷たく返す。
「時間はないんだぞ」
わざと突き放すように、そう言い捨てた。

「とりあえず、昨日よりはマシになってきてはいるな」
ギルガメッシュに歩み寄りながら、レオンハルトは言う。
「ちょっと冷た過ぎやしねえか?」
「なに、変に気を使うよりはこの方がいいのさ」
短く話すと、二人はうつむいて立ち尽くしている彼を見やる。
本当ならあれほどのショックから立ち直るのは相当な時間がかかるだろうが、
一日でまともに話せるまで回復しただけでも大した物だ。
暫くして、レオンハルトが再び口を開いた。
「それに時間が無いのは本当だ。あと2時間しかない。
 今はとにかくあんたの仲間の所へ急ごう」
ギルガメッシュは「そうだな」と言って再び歩き出し、レオンハルトもそれに倣った。フリオニールも少し後からついてきた。
51名もないその剣は 2/4:2005/04/30(土) 16:17:30 ID:NOFpes4m

それからほどなくして、二つほどの人影が遠くに見えた。
ギルガメッシュが「おーい!」と声を上げながら両手を大きく振ると、彼等はすぐに駆け寄って来た。
一人はどうやら女性のようで、もう一人は恐らく魔物の類だ。
「どこで何してたんだよ!?心配させやがって!」
「そうだぜ!一晩も何してたんだよ!?」
彼等が口々にギルガメッシュに問い詰める。
実際、レオンハルト達と出会ってここまで戻ってくる途中で一度睡眠をとっていたのだが、
「すぐに戻る」と言った手前、そんな事情で弁解しても逆効果だった。
「チッ…まあいいや。それで後ろの二人は?」
魔物の方の不機嫌な声に、ギルガメッシュが答える。
「ああ、俺が飛んでった所にいたんだ。ゲームを抜けるために協力してくれる」
「レオンハルトだ。それにこっちはフリオニール」
少し早めに、レオンハルトは2人にそう挨拶した。
「おう、よろしくな。あたいはサリィだ」
「わるぼうワル」
そうして一通り名乗り会った後、サリィが「お、そうだった」と思い出すように荷物の中を探り出した。

「ギルガメッシュ、アレがとうとう出来たぜ!」
「お、マジか!見せてくれよ!」
「アレ」がなんなのかレオンハルトには分からなかったが、ギルガメッシュは何やら嬉しそうな様子だ。
フリオニールと並んで首をかしげていると、サリィが背負った荷物の中から、
一本の剣が取り出された。
52名もないその剣は 3/4:2005/04/30(土) 16:20:53 ID:NOFpes4m

ギルガメッシュが剣を受け取り、鞘から引き抜く。
「おお…」
思わず、驚嘆の声が漏れる。
装飾こそなかったものの、刃を一目見ただけでも、それがどれほど強力な剣かがわかる。
まるでそこにあるだけで、力が辺りに放たれているようだった。
「あたいの作った中でも、こいつは傑作だぜ」
誇らしげに、サリィ。
「名前はわからねえし、決めてもいないんだけどよ…」
「…ラグナロク」
剣を眺めながら、ギルガメッシュがふと呟く。
「え?」すこし訝るサリィに、彼は続ける。
「いや…俺の知り合いにさ、エンキドウって奴がいるんだよ。
 そいつの話だとな、伝説の剣のエクスカリバーってやつよりもっと強い幻の剣があるって言うんだよ。
 それがラグナロク」
こいつはその名前にぴったりだぜ、と締めくくりながら、彼はラグナロクを満足げに鞘に収めた。

「さて、と」
わるぼうが荷物を抱えなおしながら言う。
「時間もあんまり無い事だし、さっき魔女が言ってた”タビノトビラ”ってのを探そうぜ。
 ここから一番近いのは多分村だろうけど」
「村はちょっと危ないんじゃないか?夕べも何回か戦闘があったみたいだし」
同じように荷物を整理しながら、サリィ。
「俺もそう思うな。場合によってはマーダーに待ち伏せされる危険がある。
 …それよりは、南の森のほうを探してみる方が安全だと思う」
地図を持って位置を確認しつつ、レオンハルトも口を挟む。
「少し遠いけど、急がば回って言うしな」
頷きながら、ギルガメッシュが賛同した。
「ま、反対はしないワル」
最初に話を切り出したわるぼうもそう言う。
「それじゃ決まりだな。おいフリオニール、行くぞ!」
広げていた地図を畳み、レオンハルトはフリオニールに声をかけてから歩き出した。
53名もないその剣は 4/4:2005/04/30(土) 16:22:05 ID:NOFpes4m


【レオンハルト(負傷、大体は回復) 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:旅の扉を探す 第二行動方針:ゲームの消滅】
【フリオニール(精神不安定) 所持品:銅の剣
 第一行動方針:レオンハルト達についていく】
【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル 種子島銃 ラグナロク
 第一行動方針:旅の扉を探す】
【わるぼう 所持品:ビームライフル (後何かを所持)
 第一行動方針:旅の扉を探す、ギルガメッシュが戻るのを待つ】
【サリィ 所持品:鍛冶セット 光の鎧(装備不可)
 第一行動方針:旅の扉を探す】
【現在位置:レーベ北の平原→移動中】
54この後どうするか -クジャ- 1/3:2005/05/01(日) 06:35:36 ID:4Zzc3yPA
アリアハンでのジタン達との戦闘から離れたクジャは、アリアハンの北にある橋近くの森で身を休めていた。
朝を告げる日の光と共に激しい地鳴り。
そして、光る朝の空に魔女の姿が映し出された。
参加者に絶望を告げる二度目の魔女の報告。
その中には、先ほどクジャが葬ったレックスとキーファの名も含まれたいた。
だが、そんなことはクジャにとってはどうでもいいことだった。
それよりも重要だったのはその後
今いるこの大陸があと二時間で消滅し、次の大陸に向かうためには旅の扉をくぐらねばならないということだ。
一晩休んでそれなりに体力、魔力共に回復したものの。
できれば暫くは戦闘は避けたい ―もちろん楽に殺せそうな相手がいれば殺すが
少なくともこの大陸を去るまでは。

「さて、どうしようかなぁ」
先ほどの放送で名が挙がらなかったということは、セフィロスはまだ生きているはず
探してみるのもいいだろうか?
55この後どうするか -クジャ- 2/3:2005/05/01(日) 06:36:10 ID:4Zzc3yPA
だが、もとより彼とは信頼でつながれた仲間などという間柄ではない。
山ほどいるウジ虫どもを効率よく減らすための、ただの協力者。
いつ互いに後ろから切りかかられるかわからない関係。
もちろん、互いにその状況を楽しんでいたが。
今すぐ会うのはあまり得策とはいえない。
彼の状態がどうあるのかはわからないが、仮に彼が万全であったなら
弱っている今の状況では、流石の自分でも勝つのは難しいだろう
となると一人で旅の扉に向かうしかないか。
「まあ、彼なら離れていようとちゃんとウジ虫どもを減らしてくれるだろうしね」
軽い笑みを浮かべ、ザックから地図を取り出し広げる。

今が自分がいる場所から二時間以内に間に合いそうなのは…
アリアハンと西部砂漠の二箇所くらいのものか。
アリアハンにはまだジタン達が残っている可能性がある。
すでに移動している可能性も高いができれば避けるべきだろう。
「となると砂漠か…砂で汚れるのは気に食わないけど、まあ、仕方ないね」
軽く呟き、クジャは砂漠に向けて歩き始めた。
56この後どうするか -クジャ- 3/3:2005/05/01(日) 06:36:54 ID:4Zzc3yPA
このとき彼はひとつミスを犯していた。
ナルシストで自分が汚れることを嫌う彼の思考には
砂の中に身を潜め、敵を待ち伏せるなどという発想が欠けていた
彼は知るはずも無い、砂に潜む緑の騎士がいることを

【クジャ(HP 2/5 負傷、MP消費) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾
 第一行動方針:砂漠の旅の扉に向かう(できれば戦闘は避ける) 第二行動方針:皆殺し 最終行動方針:最後まで生き残る】
【現在地:アリアハン北の橋近くの森→移動中】
57哀れな屍を 1/4:2005/05/01(日) 17:50:46 ID:f9qpV3qQ
アルガスが井戸に蓋をし、アイテムを探し始めてどれくらいの時間が経っただろうか。
彼はそろそろアイテム探しに飽きと疲労を感じ始めていた。

瓦礫が多い故に一向に見つからないまともなアイテム。
瓦礫の色がる街の中、何の収穫も無いままだった。
だが、そんな彼の前に姿を現したモノがあった。

「おいおい……これも銀髪野郎の仕業か?」

モノ。それは、少年の屍。
生きている間は「レックス」と呼ばれていたモノがそこにある。
不思議と腐ってはいないが、土にまみれ、喉を血で濡らしたその姿が痛々しい。
どこからか吹き飛ばされたのだろうか。

「嫌になるぜ、本当にな」

そう呟くと、彼はそれを蹴り飛ばした。
何の抵抗もしない体は予想以上に吹っ飛ぶ。

―――と、アルガスはふと何かを思いついた。
彼は旅の扉の事をよく知らない。
一度くぐってはいるが、本当に次の世界へと運ばれるのかという不安がずっとあったのだ。
だがこの少年の屍を使えば良い。屍を中にいれ、異常がなかったら自分も入れば良い。
要は屍を使って「テスト」試みる事にしたのだった。

とにかく善は急げだ。
彼は急いで、レックスの屍を持って井戸へと近づいていった。
58哀れな屍を 2/4:2005/05/01(日) 17:52:21 ID:f9qpV3qQ

そして、井戸の蓋を開けた。青い光が少し眩しい。
一見するとどこかに連れて行ってくれそうだが……。
よくよく考えれば先程も三人の人間が扉へと入って行った。
だがあの魔女の考えることだ。何かの要素や手違いで、参加者を身の危険に陥らせる事があるかもしれない。

まぁとにかく今は「テスト」だ。
アルガスは、井戸の中に屍を放り込んだ。

「……ふむ」

結果は……成功なのだろうか。
青い光が飛び込んだ者の光を包み、どこかへと運ぶ仕組みの様だ。
あの最初の魔女のいた部屋のときの何の変わりは無い。ならば大丈夫だろう。
そして彼はまた…嫌々ではあるがアイテム収集を再会しようとした。

が、ふと遠目で見てしまった。
あの銀髪の悪魔を。黒服の死神を。

「あの野郎……あの野郎……ッ!」

アリアハンの入り口に立つセフィロスを見て、アルガスは恐怖した。
あれこそが自分自身が甘ちゃん共に言った「危険人物」だ。
ぐずぐずしていては殺される。

「仕方ない、中止だ中止!」

アルガスはすぐに井戸へと飛び込んだ。
勿論井戸への蓋はきちんと忘れずに……。
59哀れな屍を 3/4:2005/05/01(日) 17:54:18 ID:f9qpV3qQ


セフィロスは、アリアハン全体を見渡していた。
アルガスの行動には気づいてはいなかった。
それは彼が武器防具屋を中心にて見渡していたからだった。

「………」

自分が死闘を演じた場所を、彼は黙って見ていた。
あの時、禍々しい剣を持った奇妙な男と戦った場所だ。
嫌な感じがする。「あの剣」の斬撃跡を見ると手が震えているのに気づく。
セフィロスは察していた。あの男の強さがあの武器によるものだということをだ。
何せあれで戦う前の男には殺気というものが殆ど感じられなかった。
だがあの剣で戦いだした瞬間に、殺気…それどころか覇気まで感じた。

おそらく今、自分は恐怖している。
あの男の持つあの剣の姿に恐怖している。

「どうしたセフィロス……不甲斐無い……恥を知れ」

自分に言い聞かせるように呟くと、彼はクジャの姿を探し始めた。
まずは気持ちを落ち着かせねば。そのためにもあの男は必要だ。
最後にあの男を殺すために自分は生きねばならないのだ、という事を再認識するためだ。

だが、彼の姿も気配も見つからない。
もう次の世界とやらに向かったのか。または別の場所で潜伏しているか……。

迷っていては仕方が無い、ではまずは扉だ。
扉がどの場所にあるのかだけでも把握することにしよう。
60哀れな屍を 3/4:2005/05/01(日) 17:56:07 ID:f9qpV3qQ


【アルガス(視覚聴覚は通常状態へ)
 所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、インパスの指輪、他2人分の支給品、武器ではない。
 第一行動方針:新フィールドへ
 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る
【現在位置:アリアハン城下町から新フィールドへ】

【セフィロス(HP3/5程度) 所持品:村正 ふういんのマテリア
 第一行動方針:アリアハンにある旅の扉を探す
 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【現在地:アリアハン城下町】


アルガスの「テスト」によって、
浮遊大陸のどこかにレックスの遺体が移動しました。
61哀れな屍を ?/4:2005/05/01(日) 17:58:21 ID:f9qpV3qQ
>>60のタイトルである「哀れな屍を 3/4」はナンバリングミスです。
>>60のタイトルを「哀れな屍を 4/4」へと各々で訂正してください。

申し訳ないです。
62騎士二人 1/3:2005/05/01(日) 18:06:14 ID:ewl7DKY5
放送で知らされた旅の扉があるという森の中を歩く。
少し前、アグリアス達がここから新フィールドへ旅立ったことなど知らず、
ウィーグラフはレーベ南の森中央の旅の扉まで近づいていた。


―今度は、何者でござるかな?
旅の扉近くに潜み、現れた男の様子を見るライアン。
男はまだ旅の扉を見つけられないらしく、淡々と辺りを探している。
―ひとり、でござるな。
あまり好ましくない想像がライアンの頭をよぎる。
いまだ一人でいるということは戦いに乗っているのかもしれない。
しかし、仲間を失って一人という可能性も考えられなくも無い。
自分のようにたまたま誰にも会えなかったのかもしれないじゃないか。

そこまででライアンはふるふると頭を振り、パッと立ち上がる。
―証拠も無く疑うのは良くないでござるな。やはりそれがしは行動あるのみ!


突然後方の茂みが音を立て、
ウィーグラフはプレデターエッジを構えつつ素早く振り向く。
いつの間にその場所にいたのだろうか?
そこに立つは、一振りのレイピアを手にした戦士が一人。

「そこの方、旅の扉をお探しでござるか?」
全身から発せられる雰囲気からしておそらくは歴戦の勇士であろう。
正面からやりあうには危険が伴う。今はこういう相手との戦闘は避けるべき。
そう判断し、ウィーグラフは剣を収めて友好を装う。
「ああ…見つから無くてな。少しだけ困っている」
「さようでござるか。旅の扉ならこちらですぞ」
そういって旅の扉へとウィーグラフを案内するライアン。
63騎士二人 2/3:2005/05/01(日) 18:11:19 ID:ewl7DKY5
緑の間に光の渦が見えてきた。ライアンは振り返り後ろの男に声を掛ける。
「あれが旅の扉ですぞ。ところで―拙者はバトランドの戦士、ライアンと申す者。
 貴方の名前を教えていただけませぬか」
「ウィーグラフ。ウィーグラフ・フォルズだ。
 神殿騎士をやっている。質問して悪いが、ライアン。
 お前は次の世界へも行かず何をしているんだ?ボランティアという状況でもなかろう」
「…アルティミシアを倒すために信頼のおける仲間を探しているのでござる。
 ここなら必ず誰かに会うことができると思いましてな」
――幸せな男だ。この期に及んで信頼だと?
「ウィーグラフ殿。もしよろしければ拙者と一緒に行動して下さらぬか」
――そしてわたしを勧誘するか。だがこの手合いは仲間にしても枷になるだけだ。
「すまないが、わたしは自分の目的のために行動している。
 今は誰の助力も必要としていない」
「その…目的とは何でござるか?」
「仇討ち、だ。ラムザ・ベオルブとアグリアス・オークス、こいつらを追っている。
 不倶戴天、というやつでな」

その言葉に明らかにライアンの視線に鋭さが増した。
「かつて妹を殺されてな。一度は敗れ去ったわたしだが…
 この世界で再び憎き相手に出会ったというわけだ」
「――そやつらが悪ならば、拙者も―」
――悪ならば斬る、か。あくまで正義を欲する。唾棄すべき相手だな。
ライアンの言葉をウィーグラフは強い口調でさえぎる。
「言ったろう、助力など不要と。そしてライアン、わたしはかつての世界で
 この為に悪魔にさえ魂を売った男だ。それはお前の言う悪ではないのかッ!?」
言い放ち、プレデターエッジを取り出しライアンへと向ける。
その動きに反応してライアンも間合いを若干離して武器を構える。

そのままお互いに対峙したまま沈黙。先にウィーグラフがそれを破った。
「これは奴等とわたしの間の問題でな。止めるなら剣で止めるがいい。
 だが邪魔をするならばわたしは誰であっても容赦はしない!」
明らかに落胆、そして困惑が見てとれる。もう仲間に誘われることも無いだろう。
64騎士二人 3/3:2005/05/01(日) 18:12:11 ID:ewl7DKY5
「先に行かせてもらう。生きて再び会えるとよいな」
そう言い残すと、ウィーグラフは光の渦へと飛び込んだ。


旅の扉に消えた男を見送ったライアンの心中は複雑だった。
ウィーグラフという男とラムザ、アグリアスという人物の関係。
今しがたウィーグラフは自分が悪だとさえ言い切ったが、
妹の仇討ちという動機は自分のような武辺者にもわからなくはない。
それでも、人を殺すと宣言していることには変わりないが。

―戦ってでも止めるべきでござったか。
事情がはっきりわからないせいもある。
彼を悪=敵と割り切ることのできないもやもやが心に残された。それでも―
―次に会うときは…それがしが止める。

ライアンはさらに待ち続ける。

【ウィーグラフ  所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ
 第一行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先) 第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない】
【現在位置:新フィールドへ】

【ライアン 所持品:レイピア 命のリング
 第一行動方針:扉前で待機し、仲間を探す&マーダーを減らす 
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在位置:レーベ南の森中央】
65父二人 1/2:2005/05/01(日) 21:17:19 ID:9JmwvXLr
爆発音を聞きつけ、そこに向かったパパスとオルテガだったが。
駆けつけた時にはすでに戦闘は終わっており。
そこに残っていたのは、金髪の女性の死体と切り落とされたのであろう腕が一本。
その腕にはリフレクトリングがはめられたいてのだが、二人はそれに気づくことはできなかった。
死体を弔い、その後二人は東へ向かった。
幸か不幸か、誰にも会うことなく森を抜けた頃には、空は明らみ夜が明けていた。

そこに二度目となる大陸を揺らすような大きな揺れ。
そして放送が始まった。

二人は互いの息子の名が無かった事に安堵し。
また、大量の死者が出たことに嘆き憤怒した。
だが、パパスは知らない、知る由も無い。
その中には自分の孫の名も含まれていた事を。

「舞台を変えるなどと、まったくあの魔女は何をたくらんでいるのか…」
ぼやくオルテガを横に、パパスは地図を取り出し現在地と旅の扉の出現位置を確認する。
「ここからなら東部山脈がすぐ近くにありますな」
「しかし、あの山脈はなかなか広いうえ、越えるのにもなかなか時間がかかる
 2時間しかない以上、急いだほうがいいかもしれませんな」
ウム、とパパスが頷き、二人は東部山脈に向かって歩き始めた。
66父二人 2/2:2005/05/01(日) 21:19:18 ID:9JmwvXLr

土地勘のあるオルテガの案内で東部山脈に向かった二人は、拍子抜けするほどあっさり旅の扉までたどり着けた。
「どうしますか、パパス殿、まだ時間はあるようですがすぐにでも次の大陸に向かいますかな?」
「ふむ…そうですな…ここでギリギリまで待っていれば誰か来るかもしれません
 ともすればどちらかの息子に出会えることも」
「しかし、このゲームに乗った人間が来る可能性もありますぞ」
「そのときは、私とオルテガ殿の二人でとめればいいだけの事でしょう」
「確かに、そのとおりでしたな」
そう言い二人は頷きあい、旅の扉近くで待機することにした

【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:ギリギリまで誰か来るのを待つ 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:ギリギリまで誰か来るのを待つ 第二行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:東部山脈旅の扉前】
67父二人 1/2:2005/05/02(月) 02:11:28 ID:W4SdOWYU
>>65の4行目
>その腕にはリフレクトリングがはめられたいてのだが、二人はそれに気づくことはできなかった。
の行を無効で、カットしてください。

お手数かけて申し訳ないです。
68動かざること山の如し 1/2:2005/05/02(月) 03:33:00 ID:W4SdOWYU
このゲームが始まって、多くのものが無念とともに命を落とした
この大陸を駆け回り愛するものを探すものがいた
自らを狙う敵から逃げんと、あるいは相手の息の根を止めんと駆け回るものがいた
だが、このゲームが始まって、いまだに開始位置から一歩も動かないものがいた

何時の間に眠ってしまっていたのか。
地を揺らす大きな地鳴りでブオーンは目を覚ます。

朝空に響く魔女の声。
その中にかつて自分を倒したものの名が含まれていた。
「そうか…あのガキ死んだのか…」
自分を倒したものすら殺される世界。
やっぱり動かなくて正解だったな、などと思っていると魔女が新たに続ける。
『これより二時間を『変革』の時とする。
御主等は新たなる舞台にて殺戮を続行してもらう。』
その知らせにブオーンはため息をつく。
できることなら、このままじっと動かず最後までやり過ごせないかと思っていたからだ。
自分の巨体では身を隠して進むこともままならない。
もし移動中に自分より強い敵に出会ったらと思うと…
ブオーンの瞳に弱気の光が宿る。
69動かざること山の如し 2/2:2005/05/02(月) 03:34:07 ID:W4SdOWYU
ブオーンはあたりを見渡す。
そもそもここはどこら辺なんだろう。
そういえば地図の確認どころか、いまだにザックすら空けていない。
そう思い、再度周りを見渡し誰もいないことを確認すると、ブオーンはザックに手をかけ器用に爪先で空けてゆく。
「…何だコリャ?」
中から出てきたのはハート型の器のような物と。
包まったじゅうたんのような物。
じゅうたんについていた説明書を読む。
『魔法のじゅうたん:これに乗れば浅瀬くらいならスイスイ越えていけるぞ
 丸めてしまえば持ち運びも簡単!』
とはいえ、あまりにも自分のサイズと見比べ、このじゅうたんは小さすぎる。
とても乗れるとはとても思えない、そう諦めるブオーンだったが。
「…いや、試す前から諦める事も無いよなぁ」
そう思い直し、魔法のじゅうたんを広げその上に乗る。
しかし、というか案の定魔法のじゅうたんはブオーンの重さに耐え切れず地についた。
だが、地面をこすりながらも魔法のじゅうたんはくじけなかった。
地面をこすりながらもブオーンを乗せ、ゆっくりながら前に進む。
それは傍から見ればそれは山が動いているように見えただろう。

地図を広げ最も近い旅の扉を目指すブオーンと魔法のじゅうたん
その瞳には、先ほどまでの弱気な光ではなく、確かに強い、くじけぬこころが宿っていた

【ブオーン 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
 第一行動方針:旅の扉に向かう】
【現在位置:レーベ南西の山岳地帯→ゆっくりと移動中】
70Out of Curiosity 1/3:2005/05/02(月) 20:07:10 ID:sjbAQX/S
まずい。
セフィロスの思考はこれだけであった。

先程から旅の扉を探していたのだが、一向に見つからない。
彼はまさか井戸の中に扉があるとは思わず、ずっとうろうろとアリアハンを歩いていたのだ。

先程奇妙な本を見つけ、袋の中にしまってはあるが今現在自分が欲しいのはそれではない。
先程奇妙な杖を見つけ、袋の中にしまってはあるが今現在自分が欲しいのはそれではない。
先程奇妙な盾を見つけ、袋の中にしまってはあるが今現在自分が欲しいのはそれではない。

自分が欲しいのは、旅の扉の場所の情報だ。
それに黒マテリアも見つかっていない。あれは非常に良いものなのだが。
とにかく紛失したものは仕方が無いし、これ以上アリアハンにいるのも無駄だ。

と、唐突に何者かの気配を感じた。二人分だ。
今自分がいる場所はボロボロの酒場の様な場所。
そして気配を感じたのは近くの入り口……かつてクジャと共に自分が歩いた場所か。

足音が近づいてくる。恐らくその2人の人間はこの建物に入ってくるだろう。
そうと決まればまずは身を隠すことにした。
いざとなれば奇襲も可能だし、今の状況では無闇に戦うのも軽率だという部分もあるからだ。
そしてセフィロスは、カウンターの影に身を潜めた。
71Out of Curiosity 2/3:2005/05/02(月) 20:08:20 ID:sjbAQX/S


一方2人の人間――エッジとユフィも何者かの気配に気づいていた。
そして2人はその気配の元を調べるために建物に近づいていったのだ。

………窓からは何も見えない。
せっかくアリアハンにたどり着いたというのに、この奇妙な状況。
嫌な予感がするし、不快だ。

何かしっくり来ない2人は、ルイーダの酒場の扉を開けた。
中は何かの爆発に巻き込まれたのかボロボロだ。

だが、気配は消えなかった。
それは相手が疲弊でもしているからなのだろうか。それともただの一般人か。
どういった要因なのかがわからない以上危険ではあるのだが、2人は接触を試みた。
勿論警戒は解かず、各々戦闘態勢に入ったままだったが。

「そこにいるのはわかっている。出て来い。そちらが危害を加えないならこちらも危害を加えない」

エッジはあえて冷たく、冷静にそう言った。
その瞬間、何か黒い影が見えた。上空に飛び上がる、黒い影が。
その影は天井ギリギリを跳び、そして出口側に着地する。

最初に見えたのは美しい銀髪。
そして次に見えたのは、その手に握られた刀。
間違いない、相手はやる気だ。

エッジは確信し、フランベルジェを構えた。
ユフィも風魔手裏剣を手にしていた。
72Out of Curiosity 3/3:2005/05/02(月) 20:09:26 ID:sjbAQX/S

こうして3人は出会った。
入り口を陣取るセフィロスと、それを睨むエッジとユフィ。
一触即発の空気が流れる。虫の声も聞こえそうなほどの静寂が辺りを包む。

そして、セフィロスの物かエッジの物かわからない斬撃が起こった。


【セフィロス(HP3/5程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 オーガシールド いかづちの杖
 第一行動方針:2人の人間(エッジ&ユフィ)との戦闘
 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】

【エッジ 所持品:風魔手裏剣(10) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン
 第一行動方針:1人の人間(セフィロス)との戦闘 第二行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【ユフィ(傷回復/右腕喪失) 所持品:風魔手裏剣(20) プリンセスリング フォースアーマー
 行動方針:同上】

【現在位置:アリアハンの街(ルイーダの酒場室内)】
73悪い夢のような 1/8:2005/05/02(月) 22:07:28 ID:YoooE8Cb
昨日から、怖気を奮うような光景を何度も目の当たりにしてきた。
理解を超えた情景など、見飽きたつもりだった。

だが、さすがに眼前で起きた出来事は。
今まで見てきたどんな事柄よりも、カインの精神力をごっそりと奪った。
――今までとは別の意味で。

地面をこすりながらゆっくりと動く、馬車ごと乗れそうな大きさのカーペット。
砂埃にまみれてノロノロと進んでいく姿には哀愁さえ感じられる。
その上に乗っているのは、苔むした小さな山。
いや、良く見ると手足があるようだからこれは巨大な生き物なのか。
どちらにしてもシュールな光景であることには変わらない。

まず、なぜ絨毯が動くのかがわからない。
次に、こんな巨大な生物がここにいる理由がわからない。
仮にこの生物が参加者なのだとすれば、こんなものを参加させる魔女の意図がわからない。
それから、この生物が絨毯に乗る理由がわからない。――どう考えても歩くか走るかする方が早いだろうに。

どこから何を言えばいいのかわからず、自分が幻影を見ているのだと願って、カインは隣を見た。
しかし、やはりと言うべきか。フライヤも頭を抱えて首を振っている。
どうやらこれは幻や悪夢ではないらしい。だとすると現実か。
『地面を引き摺って移動する絨毯に乗る巨大生物』。ああ、魔女は一体何を考えているんだ?
二人が頭痛を感じている間に、巨大生物は木々を薙ぎ倒しながら山脈の向こうに姿を消した。
……といっても、体の大部分が見えなくなっただけで、頭はしっかりと見えている。
多分旅の扉に入るまで、あの生物の『姿が見えなくなる』ことはないのだろう。
74悪い夢のような 2/8:2005/05/02(月) 22:11:38 ID:YoooE8Cb
「世の中は広いモノじゃの……」
フライヤの呟きに、カインはうなずく。
うなずいただけで、コメントを返す気にはなれなかった。余計に疲れそうな気がしたからだ。
「全く……スミスが早く戻ってきてくれるといいんじゃが」
ため息をついて、フライヤは空を仰いだ。

スミスは今、旅の扉を探すために単身で上空を飛んでいる。
本当はスミスに乗って三人で移動できれば良かったのだが……「二人も乗せられない」と言われて断念した。
さりとて、一人だけ置いていくわけにはいかない。
カインはフライヤを見逃すつもりはなかったし、フライヤも――純粋な善意から――カインを一人にはしておきたくなかった。
結局、身軽なスミス一人が斥候に赴く形になったのだ。

「……そういえばスミスの奴、随分遅いな。もう一時間近く経つぞ?」
カインは苛立ち紛れに天空を仰ぐ。
すると、どこからともなく聞き慣れた翼の音が響いてきた。
「おお、戻ってきたようじゃな」
フライヤは空を見上げ、青い飛竜に声をかけた。
「大分時間がかかったようじゃが……どうじゃ?」
「バッチリさ!」
スミスは笑って応えた。

――人間の言葉を喋れるということだけは、フライヤにも伝えておいた。
『言葉を話せるということを隠す必要などないだろうし、下手に隠して後でバレると厄介なことになりかねない』というカインの判断だ
それ以前にスミスとしても、いちいちカインを通して会話をするのは面倒くさかった……という事情があるのだが、それはさておき。
75悪い夢のような 3/8:2005/05/02(月) 22:13:28 ID:YoooE8Cb
「自分でもびっくりするぐらいに上手く行ったよ」
スミスはそう言って胸を張る。だが、フライヤは首を傾げた。
「うまく……行った?」
スミスはしまった、と言わんばかりに、慌てて口を塞ぐ。
「それはどうい……」
「スミス。お前、旅の扉を見つけてきたのではないのか?」
問い詰めようとするフライヤを遮り、カインが話し掛ける。
スミスは一瞬ぽかんとした表情を浮かべ、ややあって、引きつったように笑った。
「ごめん、忘れてた」

「………」「………」「………」

ため息をつき、カインは踵を返す。
「行くか、フライヤ。全力で探せばなんとか時間内に見つかるだろう」
「そうじゃな」
フライヤも肩を落としながら地面を蹴った。
二人の竜騎士は跳躍を繰り返し、常人にはあるまじきスピードで斜面を駆け上っていく。
(そんなぁ、酷いよー! 僕だって遊んでたわけじゃないんだよ! 聞いてよカインー!)
テレパシーで必死に呼び止めるが、カインの足は止まらない。
それどころかますます速度を上げている。焼け石に水どころか、火に油を注いでしまったらしい。
魔女の僕と名乗る魔竜も、こうなっては形無しである。
「待ってよ、僕が悪かったよー! カイン、フライヤー!」
スミスは情けない声で一声鳴くと、慌てて二人の後を追った。
76悪い夢のように 4/8:2005/05/02(月) 22:17:34 ID:YoooE8Cb
「いい子ね、大人しくて」
レナは、そう言って飛竜の頭を撫でた。

ギルバートの埋葬を終えた彼女とエリアは、身を隠すために山脈へ行く事を提案した。
そして例の放送を聞き、そのまま旅の扉を探すために山の中をうろついていたのだが――
先ほど二人は、信じられないものを見かけてしまったのだ。
『絨毯に乗って動く山』。
こんな言葉で説明したところで、殆どの人は「頭、大丈夫?」と言ってくるだろう。
だが、二人が見たものはそう表現するしかない代物だったのだ。
当然のごとくエリアは怯えてしまった。
腰の抜けかけた彼女を木陰に隠し、レナは一人で『動く山』の後を追った。
しかし、数百メートルも行かないうちに、地面の上で休んでいた飛竜を見かけ――今に至ったという次第である。

レナは飛竜が好きだった。
タイクーンの飛竜は家族同然だったし、クルルの飛竜とも仲は良い。
その二匹とはまた別の飛竜といえ、こんな異国の地で、絶滅寸前と言われている飛竜に巡り会えたことが嬉しかったのだ。
だから山を追いかけることも忘れて、青い飛竜を撫でている。

飛竜――スミスの方も、気持ちよさそうにノドを鳴らした。
その表情は恍惚の色に染まり、カインやフライヤのことなど忘れ去ってしまっているかのようだ。

――だが、誤解しないでほしい。
この行動には理由があるのだ。
スミスにとって、カインに協力するよりも重要な理由が。
……決して元人間の男として美しい女性には弱いとか、柔らかな胸が目の前にあって以下略とかそういうことではない。断じて。
77悪い夢のように 5/8:2005/05/02(月) 22:21:58 ID:YoooE8Cb
(そろそろ頃合かな……)
ひとしきり至福の一時を過ごしたスミスは、突然身体を震わせると、ゆっくりと顔を上げてレナを見つめた。
彼女の心の中はとうの昔に探り終わっている。
『仲間を殺されて、仇を逃がした』――スミスの持つ読心能力では、そこまでしかわからない。
だがそれとは別に、スミスは彼女の事を知っている。
殺された人物――ギルバート・クリス・フォン・ミューアを陥れた男と、彼は共に行動しているのだから。

(レナ……)

虚ろな視線を向けながら思念を送り込むと、レナは驚いたように身を竦ませた。
続けて、スミスは語りかける。
(僕だよ……レナ、忘れたの?)
声と違って、口調以外を真似する必要がないのが楽だ。
弱りきった途切れ途切れの思念で、曖昧なことを言っていれば、後は勝手に向こうが解釈する。
「……ギルバート?」
その問いかけに、スミスは茫洋とした表情を作り、機械じみた動きでうなずいてみせた。
焦点をわざと合わせず、しかし瞳だけはしっかりとレナに向ける。
(レナ。会いたかった。……ああ、寒いんだ、体が冷たくて、痛いんだ)
レナの顔は面白いくらいに真っ青だ。
信じられない。けれど、信じたい。そんな色が露骨に表れている。
だから言ってやった。
(寒いんだ。胸が痛いんだ……心臓の辺りが冷たくて、痛いんだ)
ギルバートはアーヴァインという男に刺殺された。スミスはカインからそう聞いている。
それも心臓を一突きという、中々に鮮やかな手並みだったらしい。
もちろん、カインだって死体を見たからこそ語れたわけで、知らなければ語れるはずもない。
殺された当人以外は。
つまり――
78悪い夢のように 6/8:2005/05/02(月) 22:25:25 ID:YoooE8Cb
「ギル……バート」

小道具に使えるということだ。
偽りを真実に見せかけるための。

「あなたなの? 本当に……」
レナはふらふらと後ずさりし、ぺたんと座り込んだ。
スミスは心の中で嘲笑する。
聞いてくるということは、信じているということだ。こんな臭い芝居を!
(レナ……痛いよ。あいつに刺された傷が痛むんだ。
 どうして僕の仇を取ってくれないの? レナ、レナぁ……)
うろたえる少女を見下しながら、スミスは苦しみに嘆く亡霊の真似を続けた。
レナは震える声で答える。
「ギルバート……お願い、聞いて。
 私は仇を討ちたかった。貴方の仇を取ってあげたかった。その気持ちは嘘じゃないの。
 だけど、仇を討ったところで貴方は返ってこない。嘆く人が増えるだけだからって、ソロ君が……」
ソロ? 聞かない名前だ。いや、宿屋にいた連中の一人にそんな名前の奴がいたとか言っていたような気もするが。
ともかく、そいつが一枚噛んでいるのか――スミスは考えを巡らせるが、決して顔には出さない。
出さないまま、無防備になった心に探りを入れる。
そうして、ソロとレナの間に起きた出来事をわずかながら知った彼は――彼女にこう語りかけた。
(ひどいよ、レナ……どうしてあいつを逃がしたの? なんであいつと仲良くしてるの?
 ねぇ、レナ、痛いよぉ……僕の仇を取ってよ、この胸の痛みを消してよ……レナぁ)
こう言ったところで、レナはソロとの約束を盾に拒むだろう。
スミスの予想通り、レナは首を横に振る。
「ダメよ。私や貴方が何と言ったって、ソロ君はあの男を……アーヴァインを庇おうとする。
 傷つくのはソロ君だけで、きっとあの男は逃げ切ってしまうわ……」
わかっている。わかっているから、スミスは空々しくも問い掛ける。
(……アーヴァイン?)
「貴方を殺した男よ。茶髪の、背の高い……にやけた、最低の男」
憎悪もあらわに言い捨てるレナに、スミスは言った。
(違う)
「……え?」
79悪い夢のように 7/8:2005/05/02(月) 22:34:20 ID:YoooE8Cb
(僕を刺したのは、緑髪の男だ)

一瞬の間。驚愕する事すら忘れて、レナは無表情に立ち竦んでいた。
スミスはさらに畳み掛ける。
(話していたんだ……君が言う、茶色の髪の男と。でも、急に胸が痛んで……後ろを向いたら……
 ああ、笑っていたんだよ、あの男は。緑髪の男が、僕を見て笑っていたんだ。
 真っ赤な剣を持って、笑ってた……ああ、痛いよ、痛いよ……レナぁ……レナ……
 お願い……あいつを殺してよ……僕を、助けて。レナ、レナ……レ、ナ……)
最後はわざと弱々しく告げた。
それから、目をパチパチとしばたいて、夢から覚めたかのようにキョロキョロと辺りを見回してみせる。
「……ギルバート?」
虚ろにレナが呟いた。
残念ながら、演技はもう終わりだ。これ以上彼女に付き合う理由はない。
スミスは一声だけ鳴いて、翼をはためかせて舞い上がる。

「ギルバート! ギルバート!」
残されたレナは叫ぶ。叫び続ける。居もしない亡霊に向かって。
叫んで、叫んで、息が切れた頃、声を聞きつけたエリアが木々の向こうからふらふらと歩いてきた。
「レナさん、どうしたんですか!? レナさん……! ………!!」

遠くなっていく二人の声を背に、スミスは笑った。
レナは思惑通りにソロとかいう男を殺してくれるだろうか?
アーヴァインという人間はまだ使い出がありそうだから殺さないで欲しいものだが。
まぁ、彼らを殺す事が出来なくとも別に構わない。
スミスの狙いは別にある。

自分は騙されていたのかもしれない。裏切られたのかもしれない――
そう思わせることが、真の狙い。
彼女の心を疑惑と不信で満たして、誰も信じられなくなるよう仕向ける。
そうして育った『不信』は、やがて周囲に伝染し、殺し合いを加速させていくだろう。
80悪い夢のような/悪い夢のように 8/8:2005/05/02(月) 22:35:35 ID:YoooE8Cb
「おお、戻ってきたようじゃな」

ほくそ笑むスミスの耳に、フライヤの脳天気な声が届いた。
「時間がかかっていたようじゃが……どうじゃ?」
スミスは今一度邪悪に唇の端を歪め、それとは裏腹な明るい声で答えた。

「バッチリさ! 自分でもびっくりするぐらいに上手く行ったよ」

【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
 第一行動方針:旅の扉を探す 第二行動方針:カインと仲間を探す】
【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
 第一行動方針:フライヤについていき、攻撃の効かない原因を探る
 最終行動方針:フライヤを裏切り、殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー)
 所持品:無し 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在位置:レーベ南西の山岳地帯】

【レナ 所持品:エクスカリバー
 第一行動方針:不明/旅の扉を探す 基本行動方針:エリアを守る】
【エリア(睡眠中 所持品:妖精の笛、占い後の花
 第一行動方針:サックスとギルダーを探す】
【現在位置:レーベ南西の山岳地帯(カイン達とは離れた場所)】
81忍を放てば 1/3:2005/05/04(水) 00:32:16 ID:jY5t0cIJ
先手を取ったのはエッジだった。
風のような速さで一瞬で間合いを詰め。
そのまま一直線にセフィロスに向け斬撃を放つ。
それをユフィが後ろから風魔手裏剣を投げそれを援護。
セフィロスは風魔手裏剣をかわし、斬撃を村正で軽くいなす。
エッジは弾かれた刃を返し、攻撃の手を休めない。
降りかかる刃の雨をセフィロスは顔色一つ変えずにすべて受けきり、時折放たれるユフィの援護も難なくかわす。

目の前のこいつ、間違いなく強え。
強さが空気を伝ってビリビリと伝わってきやがる。
攻め続けるしかねえ。
後手に回って防戦になったら、後は反撃の暇も与えられないで、負ける。
だから攻めの手を緩めるわけにはいかねえ。
反撃を許さないほど、攻めて攻めて攻め続けるしかねえ。
…だが、このままじゃそのうち攻め疲れて負けるぞ!
どうするか…どうする。

…やばい
目の前にいるのはセフィロスだ。
やばい、すんごくやばい。
片腕も欠けて、マテリアも無いこの状況でセフィロスなんかの相手できるわけないよぉ!
とは言え、簡単に見逃してくれる相手でもないしなぁ…
ここは隙を見て逃げるしかないよね、うん。
82忍を放てば 2/3:2005/05/04(水) 00:33:05 ID:jY5t0cIJ
エッジの攻撃を受け止めながらセフィロスは思考する。
目の前の二人。
女には見覚えがある。
クラウドの仲間で名はユフィだっただろうか。
たしかこの女は忍びの者だったはず。
見れば今自分を攻撃している男も、服装からして同業者だろうか?
ならば、自分よりも探索能力や調べごとは得意なはず…

エッジの斬撃を大きく弾き、そこにできた隙に蹴りを放つ。
「グッ!!」
後ろにいたユフィの方向にエッジの体が中を舞う。
エッジは空中で体勢を立て直し、両の足で着地する。
ユフィがエッジ向かって駆け寄る。
「エッジ! 大丈夫!?」
「チッ、強え…」
「おい、貴様等」
怯む二人に向け、セフィロスが口を開く。
「今回は見逃しておいてやる、行け」
二人は一瞬セフィロスの言葉が理解できなかった。
目の前の男どう見てもゲームに乗っており、みすみす獲物を見逃すとも思えないが。
「ハッ、どういうつもりだテメエ」
痛むわき腹を抑えつつ吼えるエッジを
「二度は言わん、行け」
セフィロスは冷たくあしらう。
「油断させといて後ろから ズバァ…って落ちじゃないよね」
二人は相手の出かたを気にしながら、じりじりと出口に近づいてゆき。
相手に動く気が無いのを確認しつつ、半壊した酒場を後にした。
83忍を放てば 3/3:2005/05/04(水) 00:34:06 ID:jY5t0cIJ
これでいい。
もう時間もあまり残ってはいない。
ここでやつらを皆殺しにして時間を食うよりも。
詮索能力の高いであろう奴等に、扉の位置を探させたほうが賢いはずだ。
そう思いセフィロスは酒場の二階に上り、崩れた壁から走りさる二人を確認し町全体を見渡した。

ルイーダの酒場から駆け出した二人はアリアハンの街を走る。
「ゲッ、こっち見てるぜ、あいつ」
「でも、なんだかわからないけどラッキーだったね」
「ああ、さっさとあんな危ねぇ野郎がいる町なんておさらばしようぜ」
「うん」
二人の忍者は旅の扉を探すため街を駆けた。

セフィロス(HP3/5程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 オーガシールド いかづちの杖
 第一行動方針:エッジとユフィが旅の扉を見つけるのを待つ
 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】

【エッジ 所持品:風魔手裏剣(10) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン
 第一行動方針:旅の扉を探す
 第二行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【ユフィ(傷回復/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(10) プリンセスリング フォースアーマー
 行動方針:同上】

【現在位置:アリアハンの街】
84妄想ご都合解釈1/3:2005/05/04(水) 05:01:04 ID:KwOzD7Jc
忘れさせたりなんかしない。
私はいつまでも消えないであなたの心の中にいるから。
死んでも、あなたの傍にいるから。
忘れさせなんてしない。
死んでも、死んでモ、死ンデモ、ズットアナタノソバニ…

来ないで、お願い、もう来ないで。
私が悪かったの、でも仕方なかったのよ。
私はクラウドと一緒にいたかった、生きてクラウドに会いたかった、それだけなの、それだけなのよ。

オカシイヨ、ドウカシテル。
アナタハヒトゴロシ。クラウドモアナタガコロシタ。

違う。クラウドを殺したのは私じゃない。
私はクラウドを殺してなんかいない。

アナタモアナタガコロスノ。アナタガイキルカギリアナタハワタシヲコロスノ。
ヒトゴロシ、ヒトゴロシ、ヒヒトゴロヒヒトトトゴゴロロシシトトゴゴロロロロシシシ…

嫌ァァァアアアア!!助けて、助けて…
……もし、この川に飛び込めば、もう来ないでくれるかしら?私が死ねば、もう追ってこないでくれるかしら?

       ザバン!

温かい…。クラウド?この温もりはクラウドなの?私を許してくれるの?こんな…、私を…
85妄想ご都合解釈2/3:2005/05/04(水) 05:02:48 ID:KwOzD7Jc
…全く、人の上にいきなり飛び込んでくるんだからなぁ、おったまげたぜ。
もし俺じゃなかったら、そのまま一緒に沈んでいたかもな。
ま、俺だって相当痛かったのは事実だけどよ。
あやうく溺れかけたしな。いや、この急流で人を抱えて下流までたどり着けたこと自体奇跡かもな。
しかしまあ、息もあるようだ、良かった良かった。
おっ、目を覚ましたか。アリーナといい、彼女といい、最近の女の子は目覚めが早いよなぁ。

まだ何が起こったのか分かってねぇみたいだな。
「俺は何があったかは知らない。
 けどよ、あんたのその命は沢山の人と支えあって、助けあって、そうやって今までつながってきたはずだ。
 それをここで一方的に断っちまうなんて、わがままだと思わないか?自殺なんてするもんじゃないぜ。
 生きるんだ。俺たちはここで死んでいいような存在じゃない」

我ながらいいこと言うぜ。そう、俺たちはここで死んじゃいけない。
あの魔女を倒して、生きて帰らなければならない。だからこその、助け合いの精神。
俺だって、ミネアさんのおかげで今ここにこうして立ってるんだ。
そのミネアさんと約束したんだ。俺の仲間も、ミネアさんの仲間も、このゲームに巻き込まれてしまった人達も、みんな守るんだと。
その第一歩だ。約束は、守ってるぜ。

おいおい、目がうつろだな。大丈夫か?
「ここからだと西の砂漠がいいな。旅の扉があるはずだ。
 言ってること、分かるよな?俺は城の方に用があるから行くけれど、こっちは危険だ。アンタは西に行くんだ。
 くれぐれも、もう一回死のうなんて、変な気は起こさないでくれよ」
86妄想ご都合解釈3/4:2005/05/04(水) 05:04:18 ID:KwOzD7Jc
…ここは?天国?少なくとも地獄には見えないけれど。
「……」
誰?何?何て言っているの?
「…だ……えあ……つなが…」
もっと大きな声で言ってよ。よく聞こえないじゃない。
「…わがまま…と思わない……自殺なんてする…んじゃない…」
私はまだ生きていたの?誰が助けてくれたの?クラウド?クラウドが助けてくれたの?
「生きるんだ。…はここで死んでいい……存在じゃない」

…ごめん。私、どうかしてた。
クラウドだって、私を生き残らせてくれようとして死んじゃったんだよね。きっと。
だから、私がさっき死のうとしたとき、助けてくれたんだよね。
「……こっちは危険だ。アンタは西に行くんだ。くれぐれも、もう一回死のうなんて、変な気は起こさないでくれよ」
うん、もう大丈夫。クラウドに助けてもらった命、もう無駄にしない。


うん、ちゃんと川の方じゃなくて、西の方に向かってるみたいだな。
しっかり前を向いている。もう大丈夫だろう。さ、俺も早く行かないとな。


エアリスだって、許してくれていたんだよね。
なのに、私が勝手に思いこんでしまって……本当にゴメン。
私、生き残るから。みんなの分まで、生き残るから。

コ ロ シ テ デ モ  イ キ ノ コ ル カ ラ
87妄想ご都合解釈4/4:2005/05/04(水) 05:45:02 ID:2HpfvHQy
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 第一行動方針:目に映るものを全て殺す 基本行動方針:他人を殺してでも生き延びる
 現在位置:アリアハン北の橋西の平原→西部砂漠へ】

【ハッサン(HP 7/20程度) 所持品:E神秘の鎧(半壊) E奇跡の剣 爆発の指輪
                 いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:アリアハンへ行く 第二行動方針:オリジナルアリーナと仲間を探す
 最終行動方針:仲間を募り、脱出
 現在位置:アリアハン北の橋東の平原】
88殺人者達 1/3:2005/05/05(木) 06:01:54 ID:BqB1BEiS
焼ける砂を身に被り、静かにピエールは待つ。
見つめる対人レーダーの光が、何者かの接近を知らせていた。
静かに、ロングバレルRを反応のあった方向に向け構える。
レーダーの反応は近き、その姿をロングバレルR越しの視界に捕らえた。
魔物の本能ゆえか、その視界に捕らえたものを瞬時に理解した。
―自分ではアレには勝てない。
否、だからこそやるのだ。
生き残るのが目的ではない、ああ言う輩こそリュカ様の脅威、それを取り払う事こそ我が使命。
―もっとも、あの方はそんな事など望まないだろうが。
それでもやるのだ、そんな人だからこそやるのだ。
変わらぬ決意を思い直し、ピエールはロングバレルRの引き金を引いた。

足元を汚す砂を気にしつつ、クジャは砂漠を進む。
しばらく進んだところで青い渦がクジャの視界に入った。
瞬間、刺すような殺意と共に左のほうで何かが光った。
銃声とほぼ同時にクジャは横に跳ぶ。
そして、銃弾はクジャの左腕を掠めた。
「あの渦を囮に横から狙撃といった所かな、でもまあ、残念だったね」
狙撃のあった方向を見つめ、どこか得意げに語り、クジャは笑う。
不意打ちに失敗したピエールは砂の中から姿を現す。
「おや魔物だったとはね、まったく醜いね」
そういいながら、戦闘中とは思えないほど自然に、クジャがピエールに向かって歩く。
それをロングバレルRで狙撃するも、全て最小限の動きでかわされる。
そしてクジャが数メートルに迫った頃、ロングバレルRはカチ、カチと終わりを告げる音を鳴らした。
「弾切れかい?」
クジャは見下すような、寒気の起こる笑顔を向ける。
89殺人者達 2/3:2005/05/05(木) 06:02:32 ID:BqB1BEiS
ピエールはロングバレルRを投げ捨て、呪文を紡ぐ
「イオ」
その魔法はいつかと同じく周囲の砂を巻き上げる。
ピエールは対人レーダを頼りにウインチェスターを取り出しにクジャを狙撃した。
否、しようとした。
スッ 構えたとウインチェスターに、砂埃の中から伸びた腕が優しくかかる。
そして、砂埃は晴れてゆき、ピエールの視界を、きれいな銀髪が覆った。
「砂を巻き上げた程度で、この僕の目くらましになるとでも思ったかい?
 いったい誰を相手にしていると思っているんだい?
 まったく…服が汚れてしまったじゃないか、蛆虫は蛆虫らしく無駄な足掻きは止めなよ」
そういってクジャはピエールに向け手のひらを広げた。

「さあ、死ね」
クジャの腕が輝き魔法を紡ぐ。
―ここまでか、リャカ様…申し訳ありません
そう思い、ピエールは死を覚悟した。
だが、ピーエルを貫くはずだった魔法は完成されることは無かった。
砂漠に乾いた音が響く。
同時に、クジャの体が大きく空を舞う。
数メートル飛ばされた体は、旅の扉の目の前に投げ出された。
ピエールは驚き、銃声のあった方向を見つめる。
そこにいたのは長い黒髪の若い女が一人。
その風貌は、とてもこのゲームに乗るような人間には見えなかった。
だが、その目を見た瞬間、ピエールの背筋は凍った。
「フフッ…クラウド…私、死なないよ、必ず生き残るから…」
ボソボソと呟きながら女はピエールに銃口を向ける。
そして何の躊躇いも無く引き金を引いた。
ピエールはその銃弾をかわし、ウインチェスターで応戦した。
90殺人者達 3/3:2005/05/05(木) 06:03:03 ID:BqB1BEiS
激しい銃撃戦を繰り広げるその横で
「…許さない」
ユラリと、血の滲むわき腹を抑えながらクジャが立ち上がった。
その雰囲気は、先ほどのまでのどこか余裕のあるような雰囲気ではない。
どこか鬼のような、殺意だけで人を殺せるような、そんな殺意をまとっていた。
「許さない…絶対に許さない! 蹂躙されるだけの虫けらの分際で、この僕をッ!!」
叫ぶクジャの腕が光る。
「さあ、絶望の叫びを上げながら、死ね!」
フレアが完成すると同時にクジャは旅の扉に飛びこんだ。
残されたフレアは砂を巻き上げ、辺り一面を飲み込んだ。

【クジャ(HP 1/10 負傷、MP消費) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾
 第一行動方針:新フィールドへ  第二行動方針:皆殺し 最終行動方針:最後まで生き残る】
【現在地:新フィールドへ】

【ピエール(HP3/5程度) (MP1/2程度)
 所持品:鋼鉄の剣、青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
     ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー
 第一行動方針:砂に紛れ潜伏し、参加者を襲う  基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×4)、エアナイフ
 第一行動方針:目に映るものを全て殺す 基本行動方針:他人を殺してでも生き延びる 】
【現在位置:西部砂漠の旅の扉近く】

フレアがどうなったかは次の方お任せします
91名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/05(木) 16:50:28 ID:rmJYq7VI
>>89の15行目

>―ここまでか、リャカ様…申し訳ありません

>―ここまでか、リュカ様…申し訳ありません

同じく>>89の17行目

>だが、ピーエルを貫くはずだった魔法は完成されることは無かった。

>だが、ピエールを貫くはずだった魔法は完成されることは無かった。

お手数申し訳ありませんが
上記の文に修正お願いします


92裏切り 1/6:2005/05/05(木) 18:57:52 ID:7sXwjjUH
岩山の連なる山脈を、二つの影が人にあるまじき速さで下って行く。
影は山を抜けて平野に出、文字通り飛ぶような勢いで東へと一直線に進んで行く。
「確か魔女の話ではこの近くの扉は…」
「レーべの村とその南、つまり正面にある森の中だったな」
先に口を開いたフライヤに、カインがそう答える。
そして着地し、再び跳躍した時、目の前に広がるその森の中央に青い光が見えた。
その光は、参加者全員が集められた最初の部屋で見たものと、同じ淡い光だった。
「あの光が旅の扉のようだな・・・早めに見つかってよかった」
ふう、と安心したようにカインがため息をつく。
その時、フライヤが鋭く叫んだ。
「待てカイン、着地地点に人の姿が!」
「何!?」
慌てて下を見ると、確かに5人ほど、今まさに森に入っていこうとしている5つの人影が見えた。

「時間はどれぐらい残ってるんだ?」
集団の先頭を歩いているギルガメッシュが、誰にともなく問う。
彼らは待ち伏せを警戒してレーべの村を避けるように大きく迂回し、敢えて森にある扉を目指していたのだった。
「距離や歩くペースを考えると、あと一時間を切ってるだろうな」
彼と並んで先頭を歩き、地図と前方とを交互に見比べながら、レオンハルト。
「少し急がないと」
後ろから声が聞こえる。
「もしかして間に合わないんじゃねえか?」
「多分大丈夫だろう。この森はあまり広くないし、すぐに見つか…ん?」
レオンハルトが声の主であるサリィに返答を返そうとした時、
上空から二つほどの何かが、彼らめがけて一直線に落ちて、いや飛んできた。

トン、という、高さと勢いの割にはそれほど重くない落下音が響く。
流石に一度地面に足をつけただけでは勢いを殺しきれず、二つの影は5人の頭上を飛び越える。
そして今度は充分に速度を落とし、軽やかに大地に降り立った。
93裏切り 2/6:2005/05/05(木) 19:01:52 ID:7sXwjjUH
「なんだおめえらは!」
ギルガメッシュが威嚇し、ラグナロクに手をかける。
レオンハルトはすでに剣を構え、わるぼうもビームライフルの狙いをつけている。
だが。
「よしてくれ。俺達に敵意は無い」
蒼色の服装と紅色の外見の2人の内、蒼い方の片割れが言った。
「そうとも。だから武器を下ろしては貰えぬか」
紅い方も言うと、腰に差してあったアイスソードを抜き払い、足下に置く。
蒼い方も持っていたランスオブカインを地面に突き立てると、支給品袋も同じように足下に置く。
「…名前は?」
2人の行動に、レオンハルトが口を開く。ただし構えは解かない。
「…カイン・ハイウィンド。彼女はフライヤ・クレセント。竜騎…危ない!」
カインがそう名乗ろうとした時、新たな影が上空から飛来して来た。

2人が降り立った時とは比べ物にならない、荒荒しい着地の足音が辺りを震わす。
人よりも一回り大きいそれは、茂っていた草を激しく薙ぎ払いながら暫く滑り、止まった。
「やっと追いついた!全く!2人とも速すぎるよ!」
舞う土埃からぬっと顔を出した竜は、開口一番にそう文句を吐き出す。
「何を言っておる。急いだのはもともとお前のせいであろうが」
当惑する5人を挟んでフライヤがそう応えると、「おっと」と加える。
「すまん。驚かせたようじゃな。そやつは飛竜のスミス。我らの仲間故に安心されたい」
「何度も脅かしやがって。それよりあんたら、ゲームには乗ってないんだな?」
多少呆れたような目をしながら、ギルガメッシュが問いかける。
「もちろん」と即答するフライヤに少し遅れ、カインも「ああ」と答える。
二人の返答を聞き、目に敵意の光がないことを確認すると、「オーケーだ」とギルガメッシュは剣から手を放した。
レオンハルトとわるぼうも各々の武器を下ろすと、「それなら話は早い。一緒に行かないか?」また問う。
カインとフライヤは顔を見合わせた。
フライヤにとっては願ってもない事だし、カインもそれに同調せざるを得なかった。
二人は揃って「わかった」と頷いた。

こうして7人と1匹は、そろって森の中へと足を踏み入れた。
94裏切り 3/6:2005/05/05(木) 19:05:27 ID:7sXwjjUH
竜騎士達と飛竜がおおよその位置を把握していたおかげで、
それからあまり時間がたたず、容易に旅の扉を見つける事が出来た。
フリオニールは手頃な石に腰掛け、扉の近くにいた男――話の流れを聞く限り、名をライアンというらしい――とレオンハルトが、何やら親しげに話し込んでいるのを見ていた。
どうもライアンはゲームには乗っておらず、この扉の前で信頼できそうな仲間を待っていたらしい。
しかしフリオニールには、そんなことは今はどうでもよかった。
ある考えに神経を集中させていたから。
そして話がまとまり、全員で扉の中へと入ろうとした時、彼は立ちあがって「なあ」と口を開いた。
「一つ言っておきたい事があるんだ」
「ん?なんだ?」
一番近くにいたサリィが訝しげに振り返り、そう少し間の抜けた問いを返す。そんな彼女に、フリオニールは静かに呟いた。
「――フレアー16」と。

時は少し前に遡る。
森の中を固まって移動し、旅の扉を目指している最中の事だった。
(ねえ)
と、脳裏に突然、誰かの言葉が響いたのだ。
それまでただ回りの動きにあわせていただけのフリオニールが、困惑したように辺りを見まわすと、
(君の後ろだよ。後ろ。君の後ろにいるドラゴンだ)
と、また声が響く。見ると、森にはいる時に加わってきた飛竜がこちらに視線を送っている。
スミスは少し歩く速度を速め、フリオニールのすぐ傍へ顔を近づけた。
(あんたの心の中は見せてもらった)
暫くして、そう切り出される。
(あんたはどうも大切な人を失ったせいで壊れかけてる。そうだろ?)
その声に彼は心底驚いた。飛竜の方を見やると、心の内を全て見透かしているような目でこちらを見ている。
(でも…その人がまた戻ってくるとしたら、あんたはなんでもするかい?)
フリオニールの全身がピクリと震える。
(ああ、答えなくていいよ。その反応だけで充分だ)
「…俺に、何を、させる気だ」
例えようも無く甘いその言葉に、半ば混乱しつつもそれだけ問い返した。

スミスはその返答に、にやりとほくそ笑むと、さらに続けた。
95裏切り 4/7:2005/05/05(木) 19:07:36 ID:7sXwjjUH
(僕の望みは一つだけ。このゲームを成功させたいんだ。そのためにあんたも協力して欲しい。)
「…人殺しを…?」
(思ったよりも察しが早いね。そうとも。君さえその気になれば僕も協力するし、カインもそうさ)
横を並んでを歩いている竜騎士を顎でしゃくると、カインもこちらを見、小さく頷いた。
また暫くして、「…いや…」と、やっとのことで口を開く。
「戻ってくるなんて…そんなこと、ありえないし、そもそもマーダーになれだなんて、出来るわけが…」
(このゲームに死んだはずの参加者がどれぐらいいると思ってる?アルティミシア様は偉大だ。
 死人を一人か二人蘇生するなんてわけないよ。
 それにあんたはそのためならマーダーにだってなれるだろうね)
(あんたはそうするべきなんだ。しなくちゃいけないんだ。
 …それにあんた、口では出来ないって言ってるけど心では…もう、決めてるんだろ?)
「………」
畳みかけるような誘惑にフリオニールは答えず、ただ黙っていた。その時は。


ギルガメッシュは一瞬、目の前で何が起こったかわからなかった。
暫くして、フリオニールが突然放った魔法でサリィが木っ端微塵に吹き飛ばされた事、
そして当のフリオニールが剣を手に、こちらに肉薄してきている事をやっと悟った。
不意をつかれた者と、ついた者。
どちらが速く動けるかは火を見るよりも明らかだ。
フリオニールはギルガメッシュに殆どなにもさせない内に、彼の腹に剣を突き刺して蹴り飛ばし、
代わりに腰に差されていたラグナロクを素早く抜き取った。
腹に銅の剣を突き刺されたままのギルガメッシュは、フリオニールの蹴りに何の抵抗も無く弾き飛ばされ、
一人旅の扉の光の中へと埋没していった。
96裏切り 5/7:2005/05/05(木) 19:09:03 ID:7sXwjjUH
その場にいた全員が、金縛りにでもあったかのように呆然とその光景を眺めていた。
フリオニールはそんな彼らを一瞥すると背を向け、旅の扉の方へ歩き出す。
「ま、待て!フリオニール!」
はっとしたようにレオンハルトが飛びかかり、彼の肩を掴む。
フリオニールは煩わしそうに、肩越しに彼の方を見たが、その表情にレオンハルトは言葉を失った。
何故ならその時の彼の顔は、
昔から見なれている屈託の無い笑顔でも、
フィン城で一度別れたときの決意に満ちた表情でも、
また昨夜からの、死人のような物でもなく、
狂気と恍惚が入り混じった、邪悪な表情をしていたからだ。
しかしそう驚いている時間は、そうはなかった。
フリオニールの片腕は、既に青い光のなかに入っていたから。
次の瞬間には、フリオニールと、また彼に触れていたレオンハルトも新たな世界へと運ばれて行ってしまったから。

「一体何が…」
一瞬の出来事に呆気に取られていたライアンだったが、それ以上の言葉を口にする事が出来なかった。
スミスの長大な尾が鞭のように動いて彼を薙ぎ飛ばしたからだ。
混乱していた所へ尻尾の一撃をまともに受けて吹き飛ばされた挙句に木にぶつかり、ライアンは気を失ってしまった。
さらにスミスは、一度ふわりと少し上空に飛翔すると、
――同じように呆気に取られていたフライヤを、真上から踏み潰した。
「…て、てめえ!なにしやがるんだ!」
わるぼうが叫び、突然仲間を攻撃した龍にビームライフルの狙いをつける。
が、その引き金が引かれることはなかった。
撃つ前に、彼の息の根は止めらたから。
いつのまにかジャンプしていたカインが、その脳天を槍で貫いたのだった。
97裏切り 6/7:2005/05/05(木) 19:10:05 ID:7sXwjjUH
「…あれ?」
暫くして、スミスが訝しげに声を上げる。
「おっかしいなあ。こいつ潰せないよ?」
カインが目をやると、巨竜の下敷きにされているにも関わらず、
フライヤがのしかかっているスミスの足から逃れようと足掻いていた。
そしてその手にはめられた指輪が、こうこうと紅い光を放っている。
カインはそれを見るとにやりと笑い、「それはな、スミス」と歩み寄り、
「この指輪があるからだ」
フライヤの指から、えふえふを奪い取った。

瞬間、フライヤの体が深く地面にめり込む。
「ぐわぁ!」という苦しげな呻きに重なり、全身の骨が砕ける音、それに持っていた剣が二つに折れる音が響く。
「…何故じゃ…カイン…」
満足げに指輪を身につけるカインを、フライヤは恨めしげに睨みつける。
「お主ら…いつからこんなことを…」
「いつから?ハッ、笑わせないでよ。最初からに決まってるじゃないか」
愚直な竜騎士をそう嘲ると、スミスは一旦足を離し、フライヤの体を強く蹴りつけた。
ほぼ何の抵抗も無い体は高々と宙を舞い、木に激突した。
「それに、この事を最初に提案したのはカインだよ。
 もっとも、あの銀髪君を実際にけしかけたのは僕だけどね」
「けしかけた…?」
「ああそうとも。僕は人の心を覗いたり話しかけたりできるからね。それをカインが利用したってワケ」
「あいつの目を見た瞬間、いけると思ったぜ」
そう言って竜騎士と竜とが同時に笑い出した。
「さて、口が過ぎたようだがこれさえ手に入ればお前に用は無い」
カインが冷たく言い放つ。
「そこで惨めに野垂れ死んでしまえ。スミス、いくぞ」
裏切り者は飛竜とともに彼女に背を向け、旅の扉の中へと歩き去った。
98裏切り 7/7:2005/05/05(木) 19:12:41 ID:7sXwjjUH
【レオンハルト(負傷、大体は回復) 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:フリオニールを止める 第二行動方針:ゲームの消滅】
【フリオニール 所持品:銅の剣
 行動方針:マーダーとなり、ゲームに生き残る】

【ギルガメッシュ(負傷) 所持品:厚底サンダル 種子島銃 ラグナロク
 行動方針:不明】

【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5)
 第一行動方針:新フィールドへ
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー)
 所持品:無し 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】

【現在位置:新フィールドへ】

【フライヤ(瀕死、全身骨折) 所持品:アイスソード(破損)】
【ライアン(重傷、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
【行動方針:不明】
【現在位置:レーベ南の森中央】

【サリィ わるぼう 死亡】

・レオンハルト&フリオニール、ギルガメッシュ、カイン&スミスはそれぞれ別々のタイミングで新フィールドへワープしました。
・サリィとわるぼうの所持アイテムはその場に放置されています。
99名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/05(木) 19:31:51 ID:7sXwjjUH
【レオンハルト(負傷、大体は回復) 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:フリオニールを止める 第二行動方針:ゲームの消滅】
【フリオニール 所持品:ラグナロク
 行動方針:マーダーとなり、ゲームに生き残る】

【ギルガメッシュ(負傷) 所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣
 行動方針:不明】

【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5)
 第一行動方針:新フィールドへ
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー)
 所持品:無し 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】

【現在位置:新フィールドへ】

【フライヤ(瀕死、全身骨折) 所持品:アイスソード(破損)】
【ライアン(重傷、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
【行動方針:不明】
【現在位置:レーベ南の森中央】

【サリィ わるぼう 死亡】

・レオンハルト&フリオニール、ギルガメッシュ、カイン&スミスはそれぞれ別々のタイミングで新フィールドへワープしました。
・サリィとわるぼうの所持アイテムはその場に放置されています。
・銅の剣はギルガメッシュの腹に刺されたままです。
100Lex Aeterna 1/2:2005/05/06(金) 21:14:29 ID:pXjRTA8j
何が起きたのだ、何が起きたというのか。
私は死んではいないのか、何故なのだ。

思い出せ、思い出すんだ。
先程あの男の爆発で私は吹き飛ばされたはずだ。
今の私では確実に死んでいた……はずだ。
しかし何故生きている!
あの女と共に爆風によって散ったであろうに!

……そうか。
あの男は怒りに満ちていた。
正常な判断ができずに私ではなく女のほうを重点的に狙ったのだろう。
そうとしか思えない、そうではないと説明が出来ない。
私が今の爆発で殆どダメージを受けずに、吹き飛ばされてはいるがここに立っている理由はそれしかない!

砂の霧が晴れた。ほら、あの女は見えない。
吹き飛ばされたのだろう、辺りには私しかいないではないか。


私はまた幸運に生かされたのだ。
呪われているのかと思う程の幸運で、確かに。ここに。


時間が無い。
おそらくこの幸運の後にはとんでもない不運が待っているだろう。
そんな予感がするのだ。だから今、私はすぐに進まなければならない。

大人数の人間の群れ、鋼の馬車、そしてあの男と横槍を入れた女。
ここまでの参加者に出会って生きている私だ。やらなければならない事はそこまで大きいものなのだ。
そうだ、故に次の世界でも殺せ!リュカ様の為に!踏みしめ歩くのだ!
ビアンカ様もタバサ様もはぐりん殿もヘンリー殿もデール殿もブオーンとやらもマスタードラゴンすらも!!
101Lex Aeterna 2/2:2005/05/06(金) 21:15:57 ID:pXjRTA8j






そうでなければ、この幸運は何故私に取り憑いているのだ。




さぁ、青い光へと進め!呪われた幸運が、私の体を絡み取り、消し去る前に!



【ピエール(HP2/5程度) (MP1/2程度)
 所持品:鋼鉄の剣、青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
     ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー
 第一行動方針:新フィールドへ 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
102追加:2005/05/06(金) 21:17:41 ID:pXjRTA8j
【現在位置:西部砂漠の旅の扉近くから新フィールドへ】

申し訳ないです。
103Dancing Mad 1/2:2005/05/06(金) 22:07:02 ID:2fxI70ta
蛇のようにうねりをみせる山脈地帯。
ケフカが旅の扉まで辿り着くのは簡単であった。
なぜなら、旅の扉の青い光が遠くからでも確認できたからである。

そして辿り着いた後、ケフカは旅の扉の前で、紙切れを一枚ずつ旅の扉へと投げ込んでゆく。
何とも不気味な光景だろうか、笑いながら紙切れを投げ込む姿はこの世のものとは思えなかった。
地獄絵巻の悪魔のように歪み、鬼の邪悪な笑みを浮かべている。
まるで狂っているかのように。


一枚目―――

これでレオの命もお終いだ、ゆかい、ゆかい、ハーッハッハヒャッヒャヒャ!

二枚目―――

…さてと、今でもレオ将軍はお元気でしょうか。ぼくちんはとても貴方を殺したいほど元気です。

三枚目―――

…あなたの友人セリス将軍は元気でしょうか?そういえばもうお亡くなりですねぇ。

四枚目―――

……しかし、このゲームというのは本当に面白いですね、ヒャッヒャッヒャ!! ツマラン!

五枚目―――

大体、あの魔女はなにが一体したいんでしょうか。ぼくちんにまでこんな首輪つけやがって。
104Dancing Mad 2/3:2005/05/06(金) 22:07:54 ID:2fxI70ta
六枚目―――

ちくしょう。あの魔女め、えらそうな顔しやがって……それにこんなこと一日で飽きちゃうだろ

七枚目―――

ぼくちんは三闘神の力をもっているんだからな!!神だ、神!

八枚目―――

そうだ、ぼくちんが一番偉いんだからな!!このゲームも参加者も主催者もみ〜んなハカイだ破壊ッ!!

九枚目―――

そうすると、ぼくちんは……まず魔女に会う必要があるな……つまり……

十枚目―――

…そうだな、このぼくちんが…このゲームの脱出に乗ってみるのも面白いかもしれないですねえ。
で、参加者と魔女と戦って、魔女と参加者が弱っているきたときに、ぼくちんが両方に止めを下す。
これだ!なんとも面白いじゃないか!!
愚かな希望というものが絶望にと変わってゆく光景はどんなに楽しいものだろうか。
ぼくちんを受け入れない世の中を全て壊し、そしてぼくちんは神として降臨する
な〜〜んてすばらいしんでしょう。

105Dancing Mad 3/3:2005/05/06(金) 22:08:48 ID:2fxI70ta
おやおや、残り一枚になりましたか。
さてと、残りはこの紙だけですね。レオ将軍の写真が入ったこのページですね。
お別れです、レオ将軍。


ケフカはレオ将軍のページを旅の扉へと投げ込んだ。
そして体を狂気で纏わせながらケフカも旅の扉へと身を投げる。
この世のものとは思えない形相で。
狂ったように、壊れたように。


そして、旅の扉には禍々しい空気だけが、
残った。


【ケフカ 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 紙切れ10枚+破りとったレオのページ
 第一行動方針:できるだけ多くの人にデマを流す 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】

【現在位置:新フィールドへ】
106生まれ出たソレは 1/2:2005/05/07(土) 02:10:04 ID:JVcheSL1
確かに彼女の頭上に現れた小さな太陽は。
術者の手を離れ制御を失った。
方向を変え明後日の方向へそれた太陽は。
大きく砂を巻き上げあたり一面を飲み込んだ。

直撃は避けられた、だが、その破壊の被害は逃れることはできなかった。
大きく積もった砂の山が、ゆっくりと崩れてゆく。
その中から何かが立ち上がる。
片腕を失い、全身を焼かれながら。
だが、それでも、確かにソレは生きていた。

もはや痛みなどという感覚は無い。
もはや苦痛などという感情も無い。
あるのはただ、生への渇望のみ。
生き残る。
何をしても。
誰を殺しても。
その始まりはなんだったか。
大切な人への誓いだった気がする。
大切な人への償いだった気もする。
今はもう、そんなことすら思い出せない。
107生まれ出たソレは 2/2:2005/05/07(土) 02:10:59 ID:JVcheSL1
感情をなくしたはずのソレは。
血に濡れ焼け焦げた口元で笑う。
その瞳は前を見ながら、どこも見ていなかった。
ユラリとふらつくような足取りで青く光る扉に向かう。

燃えるように焼ける砂。
落ちてくる太陽の中で。

何かが生まれた

【ティファ(HP1/10程度) (右腕喪失/全身火傷/感情喪失) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×4)、エアナイフ
 第一行動方針:目に映るものを全て殺す 基本行動方針:生き延びる 】
【現在地:新フィールドへ】
108ケフカのカモ二匹 1/2:2005/05/08(日) 01:26:06 ID:G49M5GYA
「あの魔術師は…行ってしまったようですな」
「そうですな。しかし仲間を失うとは可哀想に。私も息子が参加しておりますから
 他人事ではないのかもしれませぬが…」
後姿とはいえ、旅の扉の前で肩を震わせていたケフカの姿を思い出し、
本気で同情するオルテガ。
「私もですよ、オルテガ殿。しかし我々にも距離を置いて近寄るななどと要求するとは。
 何があったか知らないがずいぶんと人間不信に陥っているようだな」
「全く。戦う気は感じられないですからゲームに乗ってはいないのでしょうが、
 あんな状態では不安ですな。一人は危ない」
「ええ…そうですな…」


再び旅の扉の前に戻り、待機する二人。
オルテガは来訪者を探し遠くへと視線を向けている。
パパスはケフカが消えた旅の扉をちらりと眺め、先ほど見た姿を思い出す。

飛び込む直前、ほんの一瞬だけ振り返った彼の表情は、笑っていた。
それもぞっとするような冷たい笑い。

―あれは私の見間違いだったのだろうか。オルテガ殿は何も言わないが…


「パパス殿!誰か来るようですぞ!!」
オルテガが大きな声でパパスに呼びかける。

―とにかく、今はあの魔術師は敵ではないだろう。
とりあえず考えをそこに落ち着かせて、パパスは来訪者に備える。
109ケフカのカモ二匹 2/2:2005/05/08(日) 01:27:03 ID:G49M5GYA
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:ギリギリまで誰か来るのを待つ 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:ギリギリまで誰か来るのを待つ 第二行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:東部山脈旅の扉前】

【アリーナ 所持品:プロテクトリング
 行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【現在位置:東部山脈旅の扉近く】
110名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/11(水) 16:20:35 ID:g8N/TYyN
保守
111名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/11(水) 18:55:47 ID:WQ2PV/ii
ho
112ベアトリクス強襲 1/3:2005/05/11(水) 19:50:34 ID:WzFnHDNL
―?…ああ、なんじゃ。人の声か…。
「さっきの爆発音といい一体何があったんだい?酷い有様だねぇ?」
「爆発音の割りに燃えたという感じがしないあたり、おそらくフレアだな」
わずかに意識をつないでいたフライヤの耳に誰かの声が聞こえる。
「こっちのモンスターは既に事切れている」
「この男はまだ息があるね。よーし、ちょっと待っとき。今回復してやるからね。
 ザンデ、辺りの警戒を頼むよ!」
体はもうほとんど動かない。視界も霞の中。
人とものの判別もつかないが、誰かがやってきたようだ。
―伝えなければ。危険な連中、カインやスミスのことを―

「ウネ、あそこにも誰かいるようだ。わしが見てこよう」
仲間に声を掛けて、背の高い影が動き近づいてくるのがわかる。
フライヤは最後の力を使って顔を上げ、
「む?こっちもまだ息があるのか」
目の前の影に向けて喉の奥から声を絞り出した。
「竜騎士カイン…飛竜…スミス……剣士……フリオニール…」
「無理はやめろ。すぐにウネが回復してくれる」
「わしらを……裏切って。………気をつけ……じゃ」
伝えるべきことは伝えた。限界に達し、フライヤの意識はそこで途切れた。


「向こうにも生きている奴がいる。これはどうやら仲間に裏切られたらしい。
 裏切り者の名はカイン、スミス、フリオニール。
 …無理をしてでもどうしても伝えたかったようだ」
「あいよ、裏切りとはえぐい話さね。しかしこっちも結構なダメージだよ。
 杖が持つといいけどねぇ」
ライアンを回復しながら、ウネは不安げに手にしている杖を見る。
少しヒビの入った癒しの杖は頼りなさ気に光を放っていた。
113ベアトリクス強襲 2/3:2005/05/11(水) 19:51:36 ID:KogUVP0O
側に立って青い光を湛える旅の扉を眺めていたザンデは、
森の一角に何か妙な気配が現れたのを見逃さなかった。

―禍々しい、血の気配。…こちらへ来るか。
「ウネ、気をつけろ!敵が来る!!」
警告の叫び。気配は木々の間を一直線に素早く向かって来る。
ザンデが現れた女の姿を確認し身構えたその時、同時に強力な衝撃波がザンデを襲う。
ベアトリクス必殺の『ショック』。
「何だって、敵かい?まったく――」
振り向いたウネの傍らをザンデへ向けられたショックの余波が通り過ぎていった。

―ぬう…重い!
ザンデの心に己への過信が無かったとは言えないが、この場合はショックの力を褒めるべきであろう。
放たれた一撃の予想外の威力に押され、ザンデは後ろにあった旅の扉に飲み込まれる。
衝撃波の余韻が消えゆく中、現れたベアトリクスは消えた獲物を探している。
今のその隻眼には何の感情も感じられない。
「ザンデ?ちいっ、転送かい?嫌なとこを襲われたもんだよ。
 それにしてもあの女、イカれちまってんのかねぇ、っとぉ!」
ザンデの代わりにこちらを認識し、疾風の如く斬りかかってきたベアトリクス。
とっさに手にしている癒しの杖で受ける。何とか受け止めることはできた、
が。本来戦闘用でない癒しの杖はアルテマソードとの衝突に耐え切れず、
嫌な音を立てて限界を知らせていた。
114ベアトリクス強襲 3/3:2005/05/11(水) 19:52:37 ID:KogUVP0O
「こいつ…エアロ!」
このままでは押し切られる、というところでウネは
杖から片手を離し鍔迫り合いの至近距離からエアロを炸裂させた。
あまりの近さにまともに受けたベアトリクスだけでなく使い手のウネも後方へ吹っ飛び、
騎士と魔導士は一旦間合いをあけて対峙する。

「怪我人がいるってのに厄介なもんだ。やるしかないのかねぇ。やれやれ…
 仕方ない…いくよ!『夢見る魔導士』ウネが相手さね!」

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する
【現在位置:新フィールドへ】

【ウネ 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:ベアトリクスを何とかして、ライアンを守る 
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する】
【現在位置:レーベ南の森中央】

【ベアトリクス(呪いによる精神支配・暴走) 所持品:血のエンゲージリング 君主の聖衣 アルテマソード
 第一行動方針:目の前の相手を殺す 基本行動方針:参加者を見つけたら殺す】
【現在位置:レーベ南の森中央】

【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶) 所持品:アイスソード(破損)】
【ライアン(重傷、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
【行動方針:不明】
【現在位置:レーベ南の森中央】
115復讐の炎は消えず 1/7:2005/05/14(土) 23:19:41 ID:Ubljr6OD
焼け焦げた地面と木々。飛び散った血痕。突き立ったままの矢。穿たれた弾痕。
あまりの惨状に、オレは思わず呟いた。
「なんつーか……この村って、前からこんな感じだったんッスか?」
「んなわけないだろ」
ロックが答える。その声にはやはり元気が感じられない。
それがこの光景のせいなのか、セリスという人のことを引き摺っているせいなのかはわからないが……
「長居は無用みたいッスね」
オレはそう言って、旅の扉を探して歩き出した。

「あれ、ロックさん?」
大きな家の前を通り過ぎようとしたとき、誰かがロックを呼び止める。
振り向くと、見覚えのない妙な二人組が立っていた。
片方は、全体的に田舎っぽい雰囲気を漂わせた、少々目つきの悪い緑髪。
もう片方はいかにも外見に気を使っていそうなタイプの、背の高い茶髪。
どちらも、年齢はオレと同じぐらいだろうか。
「ソロ、知り合い?」
オレとロックが何かを言う前に、茶髪が口を開いた。
「ああ、昨日の昼にお世話になった人だよ。食事の時、ヘンリーさんが少し話してただろ」
ソロと呼ばれた緑髪が答えるが、茶髪は「そうなの?」と首を傾げている。
「……あ、そうか。何て言えばいいかなぁ。
 えーと、とりあえず悪い人じゃないから、その辺りは心配しなくて大丈夫だよ。 
 ね、ロックさん」
「そんなことはどうでもいいだろ」
微妙なところで同意を求めてきたソロに対して、ロックは突き放すように切り捨てた。
「オレのことなんかどうだっていいんだよ。
それよりお前、金髪の女を見なかったか? セリスって名前の、ロングヘアーの若い女だ」
……まだ言ってる。
呆れ帰るオレを余所に、ソロが話し掛ける。
「セリス、って……その人、放送で呼ばれたんじゃ」
「ああ、そうだ。だが、見かけていたなら教えてほしいんだ」
「……ロックさん、何があったんです? フリオニールの姿も無いし……」
「それを言うならお前だってヘンリーはどうしたんだよ」
116復讐の炎は消えず 2/7:2005/05/14(土) 23:22:24 ID:Ubljr6OD
だんだん、オレの知らない話になってきた。
ロックとソロが熱心に話しこみ、その傍らでオレと茶髪のヤツが取り残されてる格好だ。
「なんか、ついていけないッスね」
手持ち無沙汰になったオレは、茶髪に声をかけた。
そいつは数秒ほどぼんやりとしていたが、話し掛けられているのが自分だと気付いたか、はっと顔を上げる。
「え? あ、ああ、そうだね」
「………」
何だか知らないが、こいつもどこか挙動不信だ。
ロックよりはマシだけど、そわそわしているというか、不安が滲み出ているというか、落ち着きがないというか……
いや、それ以上に気になるのはこいつの顔だ。
最初は見覚えがないと思ったものの、やはりどこかで見かけたような気がする。
どこでだろう? 思い出せないが、単なる既視感という奴にしては引っ掛かる。

「あんたさ、前にどっかで会わなかったか?」
オレがそう尋ねた瞬間、茶髪が息を呑んだ。
見開かれた目には、驚愕というより恐怖に近い色が宿っている。
そう、その表情だ。どこで見た? あれは、確か……
「あー! そっか」
思い出した。――こいつ、一番最初に名前呼ばれて出て行った奴だ。
「あんた、確か……アー……アーヴィンとかいう人ッスよね?
 ティアマトだったっけ、でっかい竜に、アイウエオ順がどうとか尋ねてた」
「え?」
アーヴィンはしばしの間、ぽかんとオレを見つめた。
そして、いきなりぺたんと地面に座り込んだ。
「ど、どうしたんッスか?」
「……ごめん。何でもない」
右手で口を押さえ、地面に目を落としながらアーヴィンは言う。
「また、迷惑をかけたんだと思ったんだ」
「迷惑?」
ちょっと待て。どこをどうやったらそういう話になるんだ?
ソロとの噛みあってない会話といい、やっぱり何かおかしい。
そんなオレの疑惑に答えるかのように、アーヴィンが口を開いた。
117復讐の炎は消えず 3/7:2005/05/14(土) 23:26:19 ID:Ubljr6OD
「わからないんだ……昨日、自分が何をしていたか、全然覚えてないんだ。
 ヘンリーさんやソロが教えてくれたけど、それでも思い出せない。
 でも、間違いないんだ。全部僕がやったんだ。それだけはわかるんだ。
 僕がギルバートさんを……たくさんの人を、ころ――」

――その言葉を最後まで聞くことはできなかった。
突然、視界を埋め尽くすほどの激しい砂煙が舞い上がったのだ。
風や何かのせいとも思えない。
「これは? ……まさか、アーヴァイン!」
黄土色の紗幕の向こうで、ソロの声が響く。
困惑するオレの耳に、甲高い女の子の声が届く。
「イオラ!」
叫びとともに、身を焦がすような熱風が巻き起こった。
一瞬遅れて、衝撃が砂塵もろともオレらの身体を吹き飛ばし、地面に叩きつける。
「う……くそっ!」
オレは地面を転がりながら、その弾みを利用して身を起こした。
薄れていく煙に、二つの小さな人影が霞む。
「久しぶりだな、アーヴァイン」
そう言ったのは子供だった。家の戸口の前に立つ、赤髪の少女と医者のような服装の少年。
二人とも並々ならぬ敵意を込めて、アーヴィン……もといアーヴァインを睨みつけている。
「そいつらがティナのヤツの代わりか?
 仲間を集めて、俺やバーバラを仕留めに舞い戻ってきたってのか?」
「……ティナ?」ロックが小さな声で呟く。
その言葉が聞こえたのかどうか、少年は喉を鳴らすように笑った。
間違っても子供のする笑い方じゃない。
シーモアのそれに似た、暗い憎悪と復讐心を秘めた、そんな笑いだ。
「ご苦労なこった。――だが、誰がテメエなんかに殺されてやるかよ。
 死ぬのはお前だ、アーヴァイン!」
少年がラケットを振りかぶった。
圧縮された空気が、全力でシュートされたブリッツボールのようにアーヴァインに向かって走る。
だが、寸前で弾け飛んだ。
アーヴァインを庇って飛び出したソロの、白銀の盾に防がれて。
118復讐の炎は消えず 4/7:2005/05/14(土) 23:30:25 ID:Ubljr6OD
「止めるんだ」
どこか哀しげな声でソロは言う。
「彼にはもう、戦う意思はない。
 僕もロックさん達も、人を傷つけようなどとは思っていない」
「………」
二人は意外にも静かに聞いている。
オレは、地面に座り込んだままのアーヴァインに目をやった。
かすかに身を震わせ頭を抱え込むその姿は、嘘偽りや演技だとは思えない。
「アーヴァインは罪を犯したのかもしれない。
 けれど、彼にだって友達や仲間がいる。彼が死んで悲しむ人もいる。
 ……君たちだって、これ以上悲しむ人を増やしたいわけじゃないだろう?」
「それで? だから、許してやれっていうつもり?」
「見逃してやってほしいんだ。
 許せないのかもしれないけど、だからといって命まで奪う必要はないはずだ」
「……なるほどね」
少年が笑った。くすくすと。
「イクサス?」
バーバラというらしい少女が、相方に振り向く。
少年――イクサスは、静かに言った。

「ふざけるなよ」

イクサスの姿が掻き消えた。
一拍遅れて、大きな金属音と共にソロの身体が吹き飛んだ。
「ソロ!!」
アーヴァインが叫ぶ。
目にも止まらぬスピードの体当たり、それをまともに喰らったソロは、それでもよろよろと立ち上がる。
「ちっ、やっぱり上手く使いこなせないな」
靴に着けられた装置をいじりながら、イクサスが呟いた。
その視線は、最初からアーヴァインにのみ注がれている。
「こいつの知り合いなんて、どうせこいつと同類だろ。
 そんな奴らが何人悲しんだって、知ったこっちゃないね」
119復讐の炎は消えず 5/7:2005/05/14(土) 23:35:09 ID:Ubljr6OD
「……ロックさん。それに、そこの君。
 僕がこの子達の相手をしますから、アーヴァインと一緒に道具屋に行ってくれませんか。
 ヘンリーさんと僕の仲間が待ってるんです」
ソロが言った。オレはロックとアーヴァインを見た。
ロックは……動かない。アーヴァインは……
「何言ってるんだよ、ソロ。
 あんたこそ、早くみんな連れて逃げろよ」
そう言って、両手を上げて子供たちの前へ進み出た。
「アーヴァイン?!」
「悪いのは僕一人、だろ? あんたまで恨みを買う必要はないさ。
 ――そういうわけで、僕は君たちに投降するよ。
 そのかわり、他の人は見逃してやってくれないかな。僕以外は誰も、何も、悪い事なんかしてないんだからさ」
緊迫した雰囲気にはそぐわない、軽い口調だった。
しかし、決して嘘や冗談で言っているわけではないということは、オレにもわかった。
……だが。
「そんなこと言ったって、もう騙されないよーだ!」
バーバラが両手をかざす。
「ベギラゴン!」
閃光にも似た巨大な炎の壁が、駆け寄ろうとしたソロの行く手を遮るように走る。
そのまま炎はロック達を取り囲み、ついでにオレらの退路をも断ち切った。
そして。
「悪い事なんかしてないだと? 貴様と一緒にいるだけで同罪なんだよ!
 貴様も、そいつも、そいつも、そいつも!
 ティナやマッシュやスコールやギルダーと同じ、どいつもこいつも同じ、裏切り者の人殺しだ!」
イクサスがまたもやラケットを撃った。今度は何かボールのようなものを乗せて。
オレの目の前で、アーヴァインは右足を後ろに下げ――突然、左腕を振りかぶる。
そのまま下がっていれば難なく避けられたはずのボールは、アーヴァインの腕に当たってはじけた。

「……バカが」
120復讐の炎は消えず 6/7:2005/05/14(土) 23:38:20 ID:Ubljr6OD
イクサスが嫌な笑いを浮かべる。
その意味を示すかのように、アーヴァインが急に激しく咳き込んだ。
「ゲホッ、ゴホッ……ぐ、うぁ……ゲホッ、ゲホッ、がはっ」
普通の咳じゃない。喉を掻き毟って、苦しげに口をぱくぱくと動かしている。
そして良く見れば、白っぽい粉のようなものが周囲に舞っている。
(――まさか、毒?)
そんな考えが脳裏を過ぎると同時に、冷徹な声が響いた。
「死ねよ、お前も」
ラケットがまたもや宙を切ろうとする。
あの毒薬の弾は入っていない――が、まともに喰らえば真後ろに吹き飛ばされて、炎に焼かれて一貫の終わりだ。
オレは横に避けようとした。
「させないよ、ベギラマ!」
けれども、バーバラの唱えた魔法が、逃げ場を塞ぐように炎の壁を作り出す。
まずい――!!

オレがそう思った時、急に、身体が浮き上がった。
真後ろでも、横でもない。
真上に高く、高く飛び上がり、炎の輪を抜けて地面の上に着地する。
そんな力が残っているとも思えないのに、アーヴァインがオレの腕を掴んで飛んだのだ。
「ごめ、ん……巻き込んで……」
ぜひぜひと苦しげに喉を鳴らしながら呟く。
「早く、逃げろ……」
その身体がぐらりと傾いだ。
オレは慌てて支えたが、アーヴァインは既に気を失っていた。

「……」

オレは後ろを振り向く。道の向こうに、青い光がかすかに見える。
道具屋はどこだかわからない。探している暇なんてなさそうだ。

「……事情はさっぱりわかんねーけど……オレ、恩知らずにはなりたくないッスよ」
121復讐の炎は消えず 7/7:2005/05/14(土) 23:41:53 ID:Ubljr6OD
オレはアーヴァインの身体を担ぎ上げた。そして、真っ直ぐ光に向かって走り出す。
「君?!」「ティーダ!?」――炎の向こうから、ソロとロックの声が。
「待ちなさい!」――バーバラの叫びが。
「逃がすか、このヤロウ!」――イクサスの怒号が響く。
けれどオレには届かなかった。
それを耳にした時は、もう、青く輝くゴールに身体ごと飛び込んでいたから。


【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕 首輪×1
 第一行動方針:仲間になってくれる人を探す/アーヴァインを助ける(?)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アーヴァイン(気絶+毒、HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP〜1日目深夜までの行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:? 第二行動方針:罪を償うために行動する】
【現在位置:レーベの扉から新フィールドへ】

【イクサス(軽度の人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:アーヴァインを追う、もしくはソロ達を殺す
 第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:イクサス達を傷つけずに退ける/ヘンリー達と合流し、旅の扉へ移動
第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:?】
122↑修正:2005/05/14(土) 23:44:53 ID:Ubljr6OD
【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕 首輪×1
 第一行動方針:仲間になってくれる人を探す/アーヴァインを助ける(ただし、人殺しだとわかったら……?)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アーヴァイン(気絶+毒、HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP〜1日目深夜までの行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:? 第二行動方針:罪を償うために行動する】
【現在位置:レーベの扉から新フィールドへ】


【イクサス(軽度の人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:アーヴァインを追う、もしくはソロ達を殺す
 第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:イクサス達を傷つけずに退ける/ヘンリー達と合流し、旅の扉へ移動
第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:?】
【現在地(四人共通):レーベの村、バーバラ達がいた家の正面付近】
123その目を見れば 1/4:2005/05/15(日) 02:45:58 ID:jfZX/+ZC
「…待て、誰かいるみたいだ」
岩山を行く者が二人。
その一人、スコールは前方からの話声に気づき片手を広げ前を行くマッシュを制した。
二人は岩陰に身を隠しその様子を伺う。
目の前には話をしているのは、少女と男二人。
男のほうは歴戦の戦士という雰囲気が遠めからでも見て取れる屈強な男だ。
隠れたその場から小さいながら話し声が届いてきた。
二人はそれに静かに耳を傾けた。

「そういうわけだから腕輪を着けてなくて、手袋つけてるのが偽者だから」
「うむ、了解した」
「じゃあ、おじさん達の子供にあったらおじさん達の事伝えておくから、おじさん達も私の仲間に出会ったらよろしくね」
元気よく少女は手を振りながら駆け出し青い光に包まれ消えた。
男達はそれを見送り、旅の扉近くに待機した。

「…どうする?」
「どうするもこうするも、扉を抜けるには行くしかないだろ?」
そう少し肩をすくめスコールは言う。
「だな、じゃあ堂々と行くか」
マッシュがそう相槌を打つと、二人は扉に向けて歩き始めた。
124その目を見れば 2/4:2005/05/15(日) 02:46:55 ID:jfZX/+ZC
アリーナを見送り、旅の扉で待機していた二人は、近づく人の気配に気づく。
隠れる風でもない二人の人影を視界に捕らえ、二人は静かに武器を構えた。
「先に聞こう、君達はこのゲームに乗っているのか」
「…いや、乗っていない」
「そうか」
そういい男達はあっさりと武器をしまう。
「いいのか、そんな簡単に信用しても?」
「かまわん、目を見れば大体はわかる」
「うむ、問いかけは念の為だ」
それは長年の鍛錬と経験の賜物か
歴戦の勇者である二人は、目を見ればその人の人間性くらいは大体わかる。
先ほどの少女も、その目を見れば、殺人者の目ではないことはすぐにわかった。
あれは何か強い意志を持った、何かを行おうとする目だ。
たとえその目的が何であれ。
あの真っ直ぐな眼差しの成すそれは、間違いではないのだろう。

だが、その前の道化師は例外だった。
流石の二人も目を見ただけでは彼という人間を理解できなかった。
まるで純粋無垢な子供の様な、だが、なにか底の無い闇のような。
どこか不安を掻き立てる、そんな目。
だが、とりあえず我々に敵意が無い事だけはわかった。
聞けば仲間を無くしたと言う。
ならば、あの違和感はその動揺から生まれたものだったのだろう。
そう信じた。

なぜなら、この二人の性根にあるものは正義。
人間を疑うよりも信じる、それは性分。
だからパパスの性分はあの違和感に蓋をした。
最後に見えた、彼の冷たい笑みに。
125その目を見れば 3/4:2005/05/15(日) 02:48:28 ID:jfZX/+ZC
「…で、あんた達はここで何をしてるんだ、早くしないともうすぐこの大陸ごと消えてしまうぞ」
思考しているパパスの横で彼らは話を始めていた。
「うむ、人を探していてな、私の息子で名をアルスという、もう一人はそちらのパパス殿の息子でリュカ殿という名だ」
「あいにくだが、その名に心当たりは無いな」
「そうか、そういえばまだ名も名乗っていなかったな、申し送れたが私はオルテガという」
彼らはオルテガに続き自己紹介を済ませ情報を交換した。
オルテガたちは先ほど伝えられたアリーナ2のことを。
スコールたちはティファに関しての経緯、そしてアーヴァインのことを。
「…あいつは昔、俺の仲間だったが、今は完全にゲームに乗ってる、もし見つけたら…殺してやってくれ」
そう静かに、吐き出すように俯きながらスコールは言った。
「命を奪うだけが解決ではない」
パパスの言葉にスコールは顔を上げた。
「切り捨てねばならない悪は確かに存在する、だか彼は君の仲間だったのだろう? ならば真の悪などではないはずだ
 …確かに人殺しなどという行為は許されるものではない、だからこそ、生きて何かを償うべきなのだ
 もし彼が悔い改め後悔し、その罪を償うというのなら、その道を示し、導いてやるのが真の仲間というものだと私は思う」
「…キレイ事だな」
「そうかも知れん」
「もしあいつが悔い改めもせず、人殺しに染まっていたなら…?」
「そのときは容赦なく切り捨てよう」
「ああ…たのむ」
スコールは祈るように目を閉じた。

「そろそろ俺たちは行くけど、あんた達はどうするんだ」
「まだ20分ほど余裕はあるはずだ、もう少し誰かが来るのを待とうと思う」
「どうだ、君達もよければ私達と行動するかい?」
そう言うオルテガの提案に。
「いや、俺はアーヴァインを探そうと思う、殺すにせよ何にせよ出来るだけ早く会っておきたい」
「ふむ…そうか」
「マッシュはどうする、この人たちについていくか?」
「いや、お前に付き合うよ、俺もあいつには借りがあるしな、色々と」
「…そうか」
126その目を見れば 4/4:2005/05/15(日) 02:50:53 ID:jfZX/+ZC
「二人も気をつけてな」
「はい、パパスさんとオルテガさんもお気をつけて」
そうマッシュは片手を挙げ、二人は青い光にに消えていった。

【アリーナ 所持品:プロテクトリング
 行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3)
            ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
            アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:アーヴァインを探す 第二行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:新フィールドへ】

【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:ギリギリまで誰か来るのを待つ 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:ギリギリまで誰か来るのを待つ 第二行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:東部山脈旅の扉前】
127姉と、弟と 1/4:2005/05/16(月) 22:28:28 ID:pLr0/X4c
「ふぅ…」
ようやく目的の村に辿り着き、ファリスは思わずため息をついてしまった。
何故こんなに時間がかかったのかというと、それは全て、あの森でこの少年を拾ってしまったからだった。

いまだ深夜にもならぬ夜の森で。
壮年の男二人組みと別れてから、ファリスは北にあるレーベの村を目指した。
人の集まりやすい集落なら、或いは捜し求める二人に会えるのではないかという期待からである。
そんな時、茂みの向こうに何者かの気配を感じた。
殺気は感じられない。
けれど十分に警戒しつつ茂みを掻き分ける。
そして見つけたのは、傷つき、うずくまっている、怯えきった少年であった。

ファリスは振り返る。
後ろには、黙々とついてくるテリーがいる。
目が合うと、テリーは顔を綻ばせ「どうしたんだ?」と尋ねてきた。
彼の姿は少年というには少々年齢が上なのだが、森で見つけた彼には「怯えた少年」という言葉が一番しっくりしていた。

テリーは左腕を失っていた。
けれど、右手には大層立派な剣が握られていた。
それでも突然現れたファリスにその剣を振るおうとはせず、焦点の定まらぬ瞳で彼女を見つめる。
或いは、彼女の向こうにある姉を。
テリーは左腕をファリスに向かって伸ばした。
けれど彼の左腕はその途中からを失っている。
腕はファリスに届かない。
姉にも届かない。
テリーは気を失った。
128姉と、弟と 2/4:2005/05/16(月) 22:30:10 ID:pLr0/X4c
まさか捨て置くわけにもいかず、ファリスは効きの悪い回復魔法をかけつつ彼の目覚めるのを待った。
それでも一時間が経ち、二時間が経つと、流石にこんなことをしている場合ではないという考えの比重が重きを成してくる。
致命的な傷はもう塞がっている。
どこか安全な、少なくとも見つかりにくい木の影にでも隠してこの場を去ろうと決めて立ち上がる。
しかし、まるで図ったかのように彼のうわごとが耳についてしまった。
「…さん。……ねえ、さ…ん……」
姉さんと、彼は呼ぶ。
彼にも姉がいたのかと思うと、レナと重ならないことはない。
レナに初めて姉さんと呼ばれたときは、あのタイクーン城の夜は、とても驚いて、戸惑ったけれど、とても嬉しかった。
結局ファリスは、その場を離れることをどうしても躊躇ってしまうのだった。

彼が目覚めたのは夜明け直前。
初めは自分と姉を混同してしまい、混乱していたようだが、どうにかわかってもらえた。
そう、ファリスは考えた。
テリーは同行を申し出てきた。
彼の意図はわからないが、妙に懐かれているように感じるのは気のせいだろうか。
まるで犬か猫を拾ったようだと、自嘲気味なってしまう。
無碍にすることもないだろうと、ファリスはその旨を承諾した。

そしてあの放送。
幸いレナとバッツの名前は呼ばれなかった。
胸をなでおろしテリーを見ると、またあの、出会ったときの焦点の定まらぬ目をしている。
それだけで良くわかった。
テリーの姉の名が呼ばれたのだと。
129姉と、弟と 3/4:2005/05/16(月) 22:31:39 ID:pLr0/X4c
(姉さん?どうして姉さんの名前が呼ばれるの?)
(だって、姉さんはここにいるじゃないか)
(…ミレーユ、それが姉さんの名前……違う!!)
(それはあの偽者の名前だ。姉さんの名前は…「ファリス」)
(そうだよ。姉さんはファリスなんだから、ファリスが姉さんなんだ)
(ミレーユなんか、知らない!!!)

「テリー、大丈夫か?」
「…ああ。心配いらない。…大丈夫だ」
それからしばらく様子を見ても、テリーの様子は至って普通に戻っていた。
ただ、ファリスはもう刺激はするまいと、テリーの姉について尋ねることはやめようと、そう誓った。

二人はレーベを目指す。
純粋に旅の扉を目指すなら、この森を探すべきなのだが、やはり村に集まる可能性は捨てきれない。
森を出て、平原を歩んで、ファリスは自分の探す二人のことを話して聞かせた。

(レナ?ファリスの妹?)
(俺は、レナなんて知らない…)
(でも、俺が知らなくても、仕方ないのかな)
(ファリスも、生き別れて育って、やっと再会できたって言ってるし)
(そうだ。俺の知らない妹がいるのか)
(レナって言うのか。可愛い子なのかな。綺麗な子かな)
(早く会いたいな。俺が、絶対に守る。この剣にかけて)
130姉と、弟と 4/4:2005/05/16(月) 22:32:45 ID:pLr0/X4c
二人はレーベに着いた。
そこに探す人物がいないことも、今まさに復讐という戦いが繰り広げられていることも知らないままに。


【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【現在位置:レーベ入り口】
131たどり着いたそこは 1/3:2005/05/17(火) 20:01:17 ID:2OjyXnry
「な、なんじゃあ、こりゃあ!?」
アリアハンにたどり着いたハッサンが叫んだ。
夢で見たエルフの呼び声に応え、アリアハンに駆けつけたハッサンだったが。
彼が目にしたのは半壊したアリアハンだった。
大きな城の城壁は崩れ、もはやどこに入り口があったかすらわからない有様。
城下町は焼け焦げ見る影も無く、巨大なクレーターが町の中心にポカッリとできていた。
「まるで、隕石でも落ちてきたみたいな跡だな」
適当に呟くハッサンだったが、あながち外れてはいない。

どうやら戦闘はすでに終わった後の様だ。
とは言えまだ誰かいるかもしれない。
ひょっとしたら怪我をして動けずにいるのかもしれない。
ならば探し出し助けねばならない。
そういう結論に達した。
思いついたら即行動、ハッサンの行動は早い。
「おーい! ロザリーさん! 誰か! いないのか!?」
大声を上げ半壊したアリアハンの町を歩く。
その後ろから。
「動くな」
冷たい声と同時に、口をふさがれ、首元にヒヤリと冷たい感触が触れた。

ハッサンは悔やんだ。
しまった、怪我人がいるかも、ということにばかりに頭がいって、
マーダーがいる可能性のことをぜんぜん考えていなかった、と。
ひとつのことを考えれば他のことが考えられない。
その一直線な性格は、彼の長所であるし短所でもある。
今回はそれが裏目にでた。
そして死んだ。
132たどり着いたそこは 2/3:2005/05/17(火) 20:01:51 ID:2OjyXnry
と、思っているが、なかなかとどめは刺されない。
それどころか気づけば、なんかその体勢のままズルズル引きずられてる。
そして半壊した道具屋の影にまで連れて行かれた。

あ、人影の無いところにつれてきたってことはここで殺されるのか、でもこの町下から人影無いよな
とか何とか、また思っているが、されどとどめは刺されない。

「大声で叫んでじゃねえよ、死にてえのか」
放り投げるように乱暴にハッサンは開放された。
尻餅をついたハッサンの頭の中は?マークでいっぱいだ。
「あそこにはあぶねえ野郎がいるから、近づかないほうがいい、じゃあな」
酒場の方向を指差すと、その場を離れようとする忍者風の男。
「ま、待ってくれ!」
「だから、大声だすんじゃねえ!」
思わず引き止めたら、大声で注意された。
「ス、スマン、どうやら助けられちまったみたいだな、あんがとよ
 ところで、戦闘があったみたいだけど、いったいどうなったんだ?」
「さあな、俺たちが来たときにはすでにこの有様だったぜ」
「そうか…ところで、なんで俺のこと助けてくれたんだ? もし俺がゲームに乗ってたらどうするつもりだったんだ?」
「あんな隙だらけで馬鹿みたいに大声で叫んでるやつが、ゲームに乗ってるわけねぇだろ
 ったく、出口が見つからなくて、こっちも忙しいってのに手間かけさすんじゃねえよ」
あきれたような口調で忍者が言う。
ハッサンが言葉に詰まっていると、空から片腕の無い女忍者が現れた。
「エッジ、扉みつけたよ」
「おう、わかったすぐ行く、じゃあな」
別れの挨拶も早々に、二人の忍者は風のように掻き消えた。
そして二人と別れたハッサンは思う。
出口の場所くらい聞いときゃよかったな、と。
133たどり着いたそこは 3/3:2005/05/17(火) 20:02:33 ID:2OjyXnry
気配が一つ増えて二つ減った。
減った位置はここから大体町の反対側といったところか。
目を閉じ、静かに精神を研ぎ澄まし、セフィロスは町全体の動きを見ていた。
おおよその位置がわかれば十分だろう。
セフィロスは2階から飛び降り気配の消えた方向に向けて歩き始めた。

【エッジ 所持品:風魔手裏剣(10) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン 】
【ユフィ(傷回復/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(10) プリンセスリング フォースアーマー 】
【第一行動方針:新フィールドへ
 第二行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:新フィールドへ】

【ハッサン(HP 2/5程度)
 所持品:E神秘の鎧(半壊) E奇跡の剣 爆発の指輪 いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:怪我人と旅の扉を探す 第二行動方針:オリジナルアリーナと仲間を探す
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】

【セフィロス(HP3/5程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 オーガシールド いかづちの杖
 第一行動方針:気配の途切れた場所に向かう
 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】

【現在位置:アリアハンの街】

134AeroBlaster 1/5:2005/05/18(水) 19:30:03 ID:wjMOwO72
ザンデをも吹き飛ばした技を持つ相手に対し出し惜しみも小細工も不要。
そう考えたウネは即座に持てる最大の呪文、トルネドの詠唱に入る。
耳鳴りの音が次第に大きくなり気圧の急激な変化を知らせる。
ベアトリクスの前で空気が渦を為し始め、現れた旋風が瞬く間に天へと伸び、その勢いを増す。
渦の発生に反応して大きく飛びのくベアトリクス。
すぐに竜巻は天を衝き、ゆっくりとその身をうねらせていた。

(トルネドは外れちまったか。ま、そんな簡単にはいかないもんだね)
発達した白い障壁が二人の間を裂き、お互いの姿が見えなくなる。
「さーて、どう来る?接近か、それとも魔法かい?」
両手に魔力を集中して、魔法反射の魔法、リフレクを準備する。
二人の間では白くうねる風速100mの牙が無作為に暴れまわっている。
竜巻に触れた森の木々が破片と化す。巻き上げられる砂や石。
転がっていたわるぼうの死体が渦へ呑みこまれ、空へと消えていく。
近寄ってくるにしろ渦を突っ切ることはできない以上左右から回るしかない。
ならば姿を見てから対処することも可能と判断してのリフレクである。


(…おかしいね?もしや逃げたんじゃないかねぇ)
防御の準備をしたウネであるが、竜巻の向こうからは何の動きも無い。
徐々に竜巻はその勢いを弱め、渦が見る間に痩せ細ってゆく。
細くなった渦の向こうで、ベアトリクスはただ、何もせずに立っていた。
光の無いうつろな瞳と目が合う。
刹那、スイッチが入ったかのように強力な魔力を感じる。
一瞬の間をおいて白い光が残った風を貫いてウネへと襲い掛かった。
135AeroBlaster 2/5:2005/05/18(水) 19:33:10 ID:agCdGbeJ
「こいつは…もしやホーリー?できるのは剣だけじゃないってか?なんて奴だい!」
ともかく両手をかざし己に重ねて反射の防御膜、リフレクを張るウネ。
魔力を受けて青く光る防御膜が特有の音ともにホーリーの光を弾き返す。
再び竜巻へと向かった光が形を崩しつつあった渦を消し飛ばした。

跳ね返されたホーリーの光が目の前に迫る中、
離れた間合いからベアトリクスが選んだ選択肢は『ショック』。
自身を包むホーリーの炸裂の間から渾身の衝撃波が大気を切り裂き、ウネへと向かう。

(こいつ…どこかおかしいんじゃないかい?普通は身を守るもんだろう)
そう思いつつショックに対し追撃に用いるはずだったエアロガを防御へと転用することを考えるウネ。
「まったくゴツい技だね?でもねっ!」
詠唱の完成と同時に前面の大気が乱れ、不規則に突風、乱気流が舞う。
「衝撃だって空気を伝う波さ!風と一緒さね!」
エアロガにより生み出された乱流がショックとぶつかり、相殺され消えてゆく。
それでも衝撃波は乱流を抜けるが、その威力はかなり減衰していた。
「はっ!年寄りにはきついねぇ」
口でそう言いながらもいくらか弱まった衝撃波をウネは悠々と受けてのけた。
136AeroBlaster 3/5:2005/05/18(水) 19:35:40 ID:mgBNJlc2
呪いの支配下にあるその目は虚ろにしてただ獲物を映している。
―ただ、血を、破壊を望む―
トルネド、そしてショックで破壊され開けた空間になお立っている相手を瞳に映し、
ベアトリクスはホーリーの発射ともに切り込んでいく。

(リフレクを見ておいてなお魔法だって!?)
「まったく!命は大事にしなよ!」
準備しておいたリフレクを完成させ、再びホーリーを弾き返すとともに
ベアトリクスの斬撃を両腕で受ける。裂けた傷から人のものではない血が零れ落ちた。
肉を切らせて骨を絶つ。人ならざる身を持つゆえに可能な戦法。
しかし、受け止めた一撃はウネの予想以上のものであった。
電撃がウネの身体を走り抜ける。雷鳴剣。

(今度は属性剣だって?こいつ、なんでもアリかい!?)

予想外の電撃を受けその場にひざをつくウネ。
見上げた視線の先には二度目のホーリーをその身に受けながら立ち尽くすベアトリクス。
ホーリーの光が消えてゆき、あの、何も無い、戦慄しか覚えない瞳が再びウネを捉える。
今受けたダメージなど気にする様子も無い。
―命あるものを、壊せ―
無言のまま、ただ命じられるままにその剣が振り上げられ、なぎ払われる。

(最初といい、さっきといい、今といい、こいつもしかして―)
剣に触れることもできない、そう考えたウネは腕の振りに合わせるようにエアロを唱え、
横から来る剣に気流を下から上へアッパーのように叩きつける。
空気で剣を弾いた格好になり、その隙にウネは体勢を立て直すと、バックステップして―
消えた。
137AeroBlaster 4/5:2005/05/18(水) 19:43:45 ID:wjMOwO72
目の前で獲物を見失ったベアトリクスの虚ろな目があたりを探している。
殺戮しか考えられない思考故に、目標を失った今は呆然と立つのみである。

「…ほんと、しんどいねぇ。イヤになるよ、まったく。
 何かに取り憑かれるなり操られるなりしてるんだね。相手を視認しないと動こうとしない」
どこからか、ウネの小さな小さな声が聞こえた。
同時にベアトリクスの足元に旋風が生まれ、その身体を回転の中心として上昇を始める。
あっという間に白く見える風の壁が立ち上り、風速が力を増してゆく。
そして、トルネドの渦はベアトリクスの身体を遥か上空へと吹き飛ばした。


「はあ…やれやれだよ。ザンデとも離れちまうし、今日は厄日かねぇ?
 …歳を取ると愚痴っぽくなってやだね。ミニマム!」
誰もいなくなった空間に愚痴をこぼしながらウネが現れる。
空へと開けた空間でただ平然と天を衝いている竜巻を見あげ、今吹き飛ばした女のことを考える。
女を助けるべきであろうか、彼女も被害者なのではないか?
ふとそう考えたウネであったが、あの虚ろな瞳を思い出す。
(正気を失ったままってのは哀れだけど。甘いことは言ってられないし、ね)


傷ついた両腕で苦労しながらライアンを背負うと、ウネは旅の扉へ向かう。
最後に一度だけ空にまだ渦を巻くトルネドの残滓を見上げ、
新たなるフィールドへと歩みを進めた。

【ウネ(HP 1/2程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:ライアンの治療
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する
【ライアン(重傷、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
 行動方針:不明】
【現在位置:新フィールドへ】
138AeroBlaster 5/5:2005/05/18(水) 19:46:06 ID:WVslcPEV
全身に響く、鈍い嫌な音と共にベアトリクスは地面へと叩きつけられる。
皮肉にも死を前にした瀕死のダメージがようやく、自らの意思を呼び戻す。

―そうか、私は死ぬのだな。このダメージだ、助かるまい。
 …指輪を身につけたあの時から私は私でなくなった。
 身体の自由が失われ、それからの記憶は飛び飛びの断片しか無い。
 この有様は、呪いに打ち克てなかった私への当然の報いなのだろうな。
 …ガーネット様、申し訳ありません。私は、ここまでのようです。
 ジタン、ビビ、フライヤ、サラマンダー、エーコ。
 みんな、ガーネット様を頼みます……―――

長く正気を失っていたベアトリクスには今までの放送も聞こえてはいなかった。
閉じたまぶたの裏に愛すべき主君、ガーネットの姿を思い浮かべる。
今もどこかで無事にいてくれているだろうか。私がいなくて大丈夫だろうか。

ただ時が無常に過ぎてゆく。

【ベアトリクス(呪いによる精神支配・暴走・瀕死) 所持品:血のエンゲージリング 君主の聖衣 アルテマソード
 第一行動方針:死を待つ】
【現在位置:レーベ南の森中央】

【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶) 所持品:アイスソード(破損)】
【行動方針:不明】
【現在位置:レーベ南の森中央】
139名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/20(金) 01:13:00 ID:qpzP2zHF
保守
140ケフカを探して 1/3:2005/05/21(土) 04:01:28 ID:JdQqRJdA
「クソッ! 見つからん!」
パパス等との戦闘を離れ、レオは一晩中森を駆けずり回っていた。
しかし、今だその目的は果たされない。

放送に名を呼ばれてはいないということは、まだあの男は生きている。
いや、あの男の事だ、おそらく人々を惑わし、誑かし、陥れ、上手く生き遂せる事だろう。
そんなことを許すわけにはいかない。
あの男だけは、野放しにしておくことはできない。
この手で息の根を止めねばならないだろう。

そう強い決意と共に森を駆け回るレオだったが。
崩壊までの時間は残り僅かと迫っていた。
もちろんそういうことも考えながら移動していたが、少し熱くなりすぎていたようだ。
思いのほか時間がない、おそらく到着はギリギリになるだろう。
これで扉探しに手間取ればアウトだ。
一刻も早く奴を探し出したいところだが、今は仕方あるまい。
レオはいったん目的を切り替え、扉探しに集中することにした。
141ケフカを探して 2/3:2005/05/21(土) 04:01:50 ID:JdQqRJdA
「クソッ! 見つからん!」
数十分前と同じ台詞をレオが叫ぶ。
旅の扉を探すが、森の中ゆえ当然木々も多く視界も狭い。
その上、扉がどういうものなのかすら解らない。
このままでは大陸諸共ゲームオーバーだ。
いや、一度は死んだ身、それはいい。
だがあの男、ケフカをこのままにしておくわけには決していかない。
これ以上あの男の犠牲者を増やさぬうちに息の根を止めねば。
それまでは死ねぬ!

立ちふさがる木の枝を意に介さずレオは走る。
そして走る木々の隙間、遠くに青白い光がかすかに見えた気がした。
「あれか!」
レオは確信しその方向向けて一直線に駆け抜けた。
「む…あれは人か?」
走る途中、遠くに見える光の横に赤い人影と白の人影が倒れているのが見えた。
遠目に見ても二人が危険な状態にあるのがわかる。
「助けねば…!」
レオは人影の方向に向けて走る軌道を修正した。
142ケフカを探して 3/3:2005/05/21(土) 04:02:11 ID:JdQqRJdA
【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
 第一行動方針:怪我人を助ける 第二行動方針:ケフカ殺害 基本行動方針:ゲームに乗らない】
【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶) 所持品:アイスソード(破損)】
【行動方針:不明】
【ベアトリクス(呪いによる精神支配・暴走・瀕死) 所持品:血のエンゲージリング 君主の聖衣 アルテマソード
 第一行動方針:死を待つ】
【現在位置:レーベ南の森中央】
143名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/24(火) 16:51:21 ID:F82MzyPD
三日経ったので保守
144新しい主人 1/4:2005/05/25(水) 18:58:47 ID:foGwUQ86
「………」
放送後、明らかにドルバの様子がおかしい。
何とか旅の扉があるという塔の最上階まではやってきたが、ここまでに全く口を聞いてくれない。
元々寡黙ではあったが、話しかけても答えようとしてくれないのである。
もちろん、原因は分かりきっているのだ。放送で呼ばれた中に、知り合いがいたのに間違いない。
モンスターと喜びも悲しみも共有できる関係を築いてこそ、そのモンスターのマスターとなれるはず。
でも、どうすればいいのかがよく分からない。自分だって、まだ気持ちの整理はできていないんだから。
せめて、悲しさを和らげることはしてあげたい。確か袋にあれがあったはず…。

ルカはザックから霜降り肉を取りだし、ドルバに差し出した。
「ほら、食べなよ」
ドルバは顔を上げるが、またすぐにうつむいた。
「全部忘れろっていうことじゃないさ。これ1つで忘れられるほどの関係じゃないってのも分かる。
 でも、少しでもつらさを紛らわせることができたらいいなと思ったんだ」
もう一度ドルバは顔を上げる。
「食べなよ」
霜降り肉を差し出すルカの顔が、どことなくキーファに重なった。
145新しい主人 2/4:2005/05/25(水) 18:59:50 ID:foGwUQ86
ギードによれば、ルカもここで妹を亡くしたそうだ。
まだ子供だ、落ち込んでいてなんらおかしくはない。
なのに、その素振りも見せず、我を気遣ってくれている。
イザも、ギードも、仲間や知り合いを失っているはずだ。だが、心配をかけるようなことはしていない。
それに比べて、我はどうだ?協力するといいながら、事あるごとに塞ぎ込み、迷惑をかける始末。
確かにりゅうおう様は尊敬すべき主君であった。キーファは自分が初めて仕えたいと思った人間だった。
だが、そちらばかりに固執して、そばにいる者に迷惑をかけるのはあまりにも愚かだ。

りゅうおう様なら、キーファなら、どう仰せられただろうか?
『人間、しかもその子供に情けをかけられるとは、竜族の恥曝しめが…
 我が同胞であり続けたいと思うならば、世界の覇者たる竜族に相応しき器を身につけるよう、己を磨き、出直すのだ!』
『ドルバ、お前はこのキャラバンでガードモンスターをやってきたんだぜ。
 きっと、元の世界までみんなを無事に連れて行けるよな?』
…聞こえるはずがないのに、そう聞こえたような気がした。

「ルカ、もう大丈夫だ、済まなかった」
「食べなよ」
「いや、もう我は」
「食べなよ」

支給されてから丸一日ほど経っているのだろうが、
色も匂いもつやも、鮮度さえ落ちていないように見える。
美味い。確か、初めて食べたステーキがこのような味だったか?
「お〜い!」
湖の方から声が聞こえる。ギード達が戻ってきたのだろう。
146新しい主人 3/4:2005/05/25(水) 19:01:08 ID:foGwUQ86
「久しぶりだね、テリー!何だ?その魔物は?見たことないけど」
「俺もここで初めてあったんだ。種族は分からないけれど、名前はトンヌラだ。
 そっちもカッコイイの連れてるじゃんか」
「ドルバっていうんだ。♂だったよな?」
突然、トンヌラがじたばたと騒ぎ出す。
「そうか、あれが欲しいのか。なあ、ルカ。その霜降り肉、分けてやってくれないか?」
「いいよ、な?ドルバ?」
トンヌラは同意を得る前に霜降り肉に飛びつき、包丁で上手く切り分ける。
ドルバがその横で少し残念そうな顔をしたのは気のせいだろう。

「これで3匹揃ったね」
「やはりワシも入っておるのじゃな」
「みんなで力を合わせれば、あいつだって倒せるかもしれない…。みんな、悪者をやっつけて絶対に帰るぞ!」
「? っおー!!」

「ところでギード、イザはどうした?」
ドルバが尋ねる。放送で呼ばれていないので、不安そうな感じはあまりない。
「彼は、向こうで別の人と行動しておるぞい。少しでも仲間を増やすそうじゃ」
「もしかして、怪我して動けないのかと思ったけど、仲間がいるなら、安心だね」
ルカが安心したように言う。
「ところで、これだよな。旅の扉は。そろそろ行くことにしないか?」

さっさと旅の扉に入ってしまおうとするテリーをドルバが引き留める。
「待って欲しい。もう少しだけ、ここに一人でいさせてはもらえないだろうか。
 竜王様、マチュア、キーファ、そして多くの者が眠るこの地に別れを言いたい。
 大丈夫だ、時間までには戻る」
「テリー、少し待っておやり。ドルバよ、好きにするがええよ」
「感謝する」
147新しい主人 4/4:2005/05/25(水) 19:02:39 ID:foGwUQ86
先ほどまでの不甲斐ない我とはここで決別するのだ。
竜王様に仕えていたとき、毎日が充実していた。
だが、竜王様の復活をただ待ち続けていたとき、ただひたすらに退屈であった。
キャラバンに入ったとき、改めて非常に有意義な時間を過ごせた。
では、ここでの一時は、一体どのようなものになるのだろうか?

いつの間にか、全員そばに来ていた。ある者は一点を見つめ、ある者は目を閉じて十字を切っている。
我が見ているのに気付いたようだ。
「終わった?じゃ、行こう。次の世界へ」

【ギード 所持品:首輪、不明
 第一行動方針: 第二行動方針:首輪の研究】
【テリー(DQM)(精神不安定回復気味) 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖
 第一行動方針:ルカ達と合流 第二行動方針:わたぼう、わるぼうを探す】
【ルカ 所持品:ほしふりのオーブ 行動方針:同上】
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ 行動方針:テリー達についていく】
【ドルバ 所持品:不明 行動方針:同上】
【以上、ナジミの塔の旅の扉から次フィールドへ 最終行動方針:ゲームを脱出する】
148マシンガン・トーク:2005/05/26(木) 18:14:14 ID:7EzNvLjB
「あれあれ、穏やかじゃないなぁ」
ラムザは目の前で自分に剣を突きつけている少年に余裕といった風に呟いた。

「待てよ!テリー!いきなりそれは無いだろ!」
傍らのファリスの静止にもテリーは耳を貸す様子は無い。
(姉さんの敵は全員殺す…)

やっとレーべの村に到着し、ファリス、テリーの姿を認め、
仲間に入れてもらえるものか、背後から近付いて
「やぁ」
と声を掛けようとした時、テリー“背後からの敵”に抜刀したのだ。

しかしラムザは動じている様子ではない。
ジャンプでその気になれば直ぐにでも逃げられる事を考慮に入れ、
頭の中では神々しいような速度で目の前の二人を説得する話術をシミュレートしていた。

「何者だ…」
そう尋ねたテリーにラムザは紡いでいた言葉の群れを一気に解放する。

「僕はラムザ・べオルブ。敵意は無い。
僕は〜(ry
この村で〜(ry
君も(ry
それなら(ry
s(ry
149マシンガン・トーク:2005/05/26(木) 18:14:37 ID:7EzNvLjB
ラムザはアグリアスや自分がゲームから抜けようとしている事やそのために仲間を探している事を
優雅な比喩表現、洒脱、詩的表現、心理学の応用、それらを駆使し二人に長々と語った。
いつしかテリーは剣を下ろし、ラムザに対する警戒を解いていた。
しかしラムザのトークは止まらない

「このゲームは(ry
然るに(ry
量子学的見解を述べると(ry
更に…」

「もういい!もういいよ、アンタに敵意が無いのはよく解った」
放っておけば永遠に語り続けるのではないかと思わせるようなラムザの口上を
業を煮やしたファリスが打ち切った。
よく考えたら自分たちはかなり無防備だ。

「まぁ、そういう事だから、僕は君達と行動を共にするよ」
「はいはい、俺はファリス、こいつはテリー。まぁ、宜しく」
(それにしてもよく喋る男だ)

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:二人と共に行動する 第二行動方針:旅の扉を探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在位置:レーベ入り口】
150あぼーん:あぼーん
あぼーん
151あぼーん:あぼーん
あぼーん
152あぼーん:あぼーん
あぼーん
153この暗い空の下で:2005/05/27(金) 00:49:59 ID:weinnZeI
ひとまず次のフィールドへ移動するためレーベ南部の森を歩くリュックとわたぼう。
後ろを歩いていたわたぼうが立ち止まる。
何事か、と振り向いたリュックは、空を見上げるわたぼうの姿を眼にした。
「わたぼう、どしたん?」
リュックが声をかけ、わたぼうと同じように空を見上げる。
雲一つない、澄み切った青い空。
「空、きれいだな、と思って…」
「ほんとだねえ」
しかし突如、空を見上げていたリュックの眉がひそめられる。
ー綺麗な、空…?
目を閉じ、もう一度目を開けた視線の先では、今度は空がどす黒く染まって見えた。
この島で行われている殺し合いの結果生じた、生者のものとも、死者のものとも知れない負の感情。
怨嗟、無念、後悔、苦痛、恐怖、狂気ーそんなものが渦巻いて、綺麗なはずの空を暗くしている。
しかし、そのことをわたぼうには告げない。わざわざ刺激する必要はない。
代わりに口にした言葉は。
「こんないい天気の日にはピクニックがしたいよね」
それを聞いてわたぼうが吹き出す。
「いいね。どこ行こうねえ」
「ミヘン街道とかビサイド島とかナギ平原とかがいいかな。後は…ザナルカンド?」
「全部僕が知らない場所じゃないかよ〜」
そんな冗談を交わして、笑い合う。
再び歩き出しながら、リュックは思う。
―――この暗い空の下でも、笑えるんだね、あたしたち。
だったら、まだ希望はあるはずだ。
154この暗い空の下で:2005/05/27(金) 00:51:12 ID:weinnZeI
やがて木々の隙間から旅の扉の青白い光が見えてきた。
そして二人が旅の扉に到着して見たものは瀕死で倒れている二人の人物・・・フライヤとベアトリクスと
リュックたちとほとんど同時に到着したレオであった。



【リュック(パラディン) 
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣 ドレスフィア(パラディン)
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:次のステージへ移動
 第二行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】

【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
 第一行動方針:怪我人を助ける 第二行動方針:ケフカ殺害 基本行動方針:ゲームに乗らない】

【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶)
 所持品:アイスソード(破損)
 行動方針:不明】
【ベアトリクス(呪いによる精神支配・暴走・瀕死)
 所持品:血のエンゲージリング 君主の聖衣 アルテマソード
 第一行動方針:死を待つ】
【現在位置:レーベ南の森中央】
155あぼーん:あぼーん
あぼーん
156あぼーん:あぼーん
あぼーん
157あぼーん:あぼーん
あぼーん
158あぼーん:あぼーん
あぼーん
159あぼーん:あぼーん
あぼーん
160あぼーん:あぼーん
あぼーん
161あぼーん:あぼーん
あぼーん
162名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/27(金) 23:03:35 ID:3evBeJ66
このスレは面白いな。
もういい!もういいよ、アンタに敵意が無いのはよく解った
163名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/27(金) 23:44:39 ID:0yZJFrtL
>>162
君はいいにおいがする。
164あぼーん:あぼーん
あぼーん
165レーベの村 1/3:2005/05/28(土) 01:26:52 ID:ttoRj+fo
「…遅いな」
腕を組み壁にもたれかかっていたピサロが呟いた。
アーヴァインが記憶を失い、その説明の際
すぐ近くにギルバートの死体があることを知ったアーヴァインが、それを弔いたいというので、
ソロを護衛兼見張りに付けることを条件に行かせたのだが、少し帰りが遅い。
「そうか? 墓を作って時間がかかってるんだろ」
たしかにそうかもしれない。
だがこんな状況だ、もしもを考えて行動するほうがいいだろう。
「少し様子を見てくる」
そう言うとピサロは壁を離れ出口に向けて歩き始めた。
「ちょ…おい、ちょっと待てよ」
「なんだ」
「一人じゃ危ないだろ、あんた怪我も治りきってないんだし…俺も行くよ」
そういって道具屋のカウンターに座っていたヘンリーは腰を上げた。
「この程度の怪我ならどうと言うことはない、私一人で十分だ、それに女子供だけをほおっておく訳にはいくまい」
後ろでこちらを見つめていたターニアとビビを目で指しピサロは言う
「…わかった、気をつけろよ」
「言われるまでもない」
くるりと背を向けピサロは道具屋を後にした。
166レーベの村 2/3:2005/05/28(土) 01:27:20 ID:ttoRj+fo
「クソ! クソッ!! クソッ!! クソッッッ!!」
歯をギリギリと鳴らし、子供のように地団駄を踏みイクサスが唸る。
「逃した…逃した逃した逃した!!
 リチャードのマリベルのエーコのラグナさんの仇だったのにぃ!
 逃した! 逃した逃した逃したぁぁ!!」
叫びを上げ、地面を蹴り、更に暴れ狂う。
それは、行動を共にしているバーバラの目にすら異常に映った。
「お前が…お前らが邪魔するからだ!」
叫びイクサスはラケットを振る。
その狂気の矛先はソロへと向かい。
唸りを上げた空気の塊は最強の盾に阻まれ拡散した。
「あんな奴の味方をする奴は敵だ、邪魔する奴も敵だ、みんな敵だ! 死んじまえ!」
暴れ狂うイクサスは横にいるバーバラにすらかまわず、むちゃくちゃにラケットを振り回した。

「火だ、燃えてるぞ!」
よくしゃべる男が仲間に加わり、扉を探そうと村に入ると。
まず目に入ったのは火、村の中心近くが今まさにゴウゴウと燃えているのだ。
「火がついてるということは戦闘中の可能性が高いね、そしてその中に火の魔法の使える誰かがいるという可能性が高い
 魔法使いがいるということはこの戦いは(ry」
「黙れ、姉さん下がってて、ちょっと俺が行ってくるから」
そういうと同時に雷鳴の剣を抜きテリーは炎に向けて駆け出した。
「っておい、待て! クソッ! おい、おまえもしゃべってないで追いかけるぞ!」
「それで天地学的な計算によると…って、おいおい、置いていかないでくれよ」
二人もテリーを追って燃え盛る炎に向けて駆け出した。
167レーベの村 3/4:2005/05/28(土) 01:30:04 ID:ttoRj+fo
【イクサス(軽度の人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:アーヴァインを追う、もしくはソロ達を殺す
 第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:イクサス達を傷つけずに退ける/ヘンリー達と合流し、旅の扉へ移動
第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:?】

【現在地:レーベの村、バーバラ達がいた家の正面付近】

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:二人と共に行動する 第二行動方針:旅の扉を探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:レーベ入り口→炎に向けて移動中】
168レーベの村 4/4:2005/05/28(土) 01:30:39 ID:ttoRj+fo
【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:アイテム探し/ソロ達を探す 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【現在地:レーベの村移動中】

【ヘンリー(6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
 第一行動方針:アイテム探し/ソロ達を待つ 第二行動方針:デールを止める(話が通じなければ殺す)】
【ターニア 所持品:微笑みの杖
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ 所持品:スパス
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:仲間を探す】
【現在地:レーベの村・道具屋】
169あぼーん:あぼーん
あぼーん
170あぼーん:あぼーん
あぼーん
171あぼーん:あぼーん
あぼーん
172あぼーん:あぼーん
あぼーん
173Removing danger 1/3:2005/05/29(日) 03:27:52 ID:eA4/gFJF
(さて、どうしたものかね)
ラムザ=ベオルブは思考する。
無駄に多弁になってしまうのは話術士の副作用のようなものだ。
本来の彼はあのような性格ではない。
それとは別の冷静なラムザ=ベオルブが現状を分析する。

まずは今行動をともにしているこの姉弟。
どうも言動がチグハグというか、どこか会話がかみ合っていないところがある。
弟の目つきもどこか危ない、訳ありなのは見て取れる。
この弟、姉を異常なまでに溺愛している、姉の言うことには逆らわないようだ。
その分、姉の脅威、危険に対しては敏感だ、姉の敵に対しては容赦はしないだろう。
今のところ姉に敵意は見られない、ならばとりあえずこの二人と行動しても危険はないだろう。
何より仲間はほしいし、こんなゲームだ、初対面の者同士疑い出したらきりがない。
信じるに足るかどうかはまだわからないが、信じるしかないだろう。
174Removing danger 2/3:2005/05/29(日) 03:28:16 ID:eA4/gFJF
さて、今の今、この状況だが
先ほど話術士ラムザ=ベオルブが(ほぼ適当に)喋っていた内容。
あながち外れてはいないだろう。
現在戦闘は行われていて、その中に魔法使いがいる。
ならば、バカ正直に突っ込んでゆくのは危険だ。
敵がこちらに気づけば、遠くから魔法で攻撃される恐れがある。
とはいえ先を行くテリーをほおって置くわけにもいかない。
「ファリス、僕は上から行く、援護してくれ
 けどさっきも行ったようにおそらく魔法使いがいると思う気をつけて」
「なに? おい、ちょっと!」
ファリスの返事も待たず一方的に捲くし立ててラムザは空高くジャンプした。
「ああクソッ! といつもこいつも!」
頭をかきむしり愚痴をこぼしながらもファリスは駆け出した。

いち早く炎へと近づいたテリーが雷鳴の剣を振りかざす。
天からいがづちが降り注ぎ、燃え盛る炎を吹き飛ばし道を作った。
道を潜りテリーが見た光景は
倒れこむ赤髪の少女、暴れ狂う少年
そして逃げ回るだけの男、大声で説得している少年
その中の暴れ狂う男をテリーは見つめる。
姉さんの危険になりそうなのはあいつだ、あいつが一番危険だ。
そう判断したテリーはイクサスめがけ切りかかった。
175Removing danger 3/3:2005/05/29(日) 03:28:37 ID:eA4/gFJF
【イクサス(人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:ソロ達を殺す
 第二行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す/生き残る】

【バーバラ(気絶) 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:? 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:イクサス達を傷つけずに退ける/ヘンリー達と合流し、旅の扉へ移動
第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:?】

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】

【現在地:レーベの村、バーバラ達がいた家の正面付近】

【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【現在位置:レーベ入り口→炎に向けて移動中】

【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:二人と共に行動する 第二行動方針:旅の扉を探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:レーベ上空】
176炎1/4:2005/05/29(日) 13:57:16 ID:a5vGkoFT
テリーの刃が後わずかでイクサスの体を両断する距離に迫った瞬間
「おまえもかぁ!」
暴れ狂うイクサスが自分に迫るテリーに気付き、ラケットを蹴れめがけ振り下ろした。
しかし反応がいささか遅すぎた。テリーの剣はイクサスの服に触れた…

(とった…)
テリーはそう確信した。自分に打ち下ろされようとしているラケットを
永遠の距離に引き離そうとイクサスを切り裂くかに見えた瞬間
(バーバラ!?)
倒れている赤髪の少女が彼の目に入った。
その僅かなテリーの動揺はテリーにとって致命的な、
彼を襲うイクサスには絶好のタイムラグを作り出した。

(しまった!)
自分に振り下ろされた衝撃にテリーは気付いた。
「おまえも人殺しの仲間なんだな!」
そうテリーに吼えたイクサス。だが彼の胴体はテリーの剣によって
確実に負傷を負っていた。ラケットを振り下ろしたからその
程度でテリーの刃を止める事が出来たものの、
もしテリーに動揺が生じなければ彼の胴体は両断されていただろう。
177炎2/4:2005/05/29(日) 13:57:58 ID:a5vGkoFT
ふら付きながらもなんとかテリーはイクサスと距離をとり
剣を構えなおした。頭からは出血しているがその程度の負傷では彼の
殺気は僅かにも萎える事は無い。バーバラの事は後回しだ。
イクサスもイクサスで殺意をむき出しにした目でテリーを睨みつける。
彼も腹から後など気にしていない様子だ。
敵意に満ち溢れた空間の中でソロは虚しく叫ぶ。
「止めろ…止めてくれ、これ以上殺さないでくれ!」

テリーがイクサスに向け跳躍した。イクサスもラケットを
再び振り下ろそうとそれを振りかぶったが冷静さを欠いていた為か
いささか振りかぶりが大きすぎた。時間にして一秒にも満たない
差であったが、テリーにとってその時間はイクサスの胴体を
切り裂くのに十分な時間であるように思えた。
(次こそとったな…)

しかし彼の確信は再び裏切られる事になる。

ジャンプによって上空に舞い上がったラムザが一瞬の滞空を終え、
重力により加速しながら攻撃態勢に入っていた。
上空から下の状況を解析する。
(テリーはどうあってもあのラケットを持った子を殺すつもりみたいだな
…しかしさっきからの動きを見てたらただ錯乱してるようにも思えるし)
説得する価値あり。そうラムザは判断した。
178炎3/4:2005/05/29(日) 13:58:25 ID:a5vGkoFT

テリーの雷鳴の剣がイクサスに触れるか触れないかの際、
ラムザはイクサスの頚動脈をブレイブブレイドの柄で突き
彼を失神させ、テリーの剣と崩れ落ちるイクサスの間に
自分の剣を捻じ込んだ。ジャンプによる加速を全く無駄にすることなく、
それらの動作を一挙動でやってのけたのだ。

「貴様…「テリー、時間をくれ」
どけ!お前も殺すぞ!とラムザを恫喝しようとする前に
ラムザは先ほどまでの軽口では想像できないほど威圧に満ちた声で
テリーに静かにそう告げた。イヴァリースでの数多くの敵との思想の
ぶつけ合いによって練磨された彼の人格に話術士としての能力で
エッセンスを加えてやれば、それは年端もいかないテリー
をたじろがせるのに十分だった。
「皆、一先ずここから出ようよ」
そうラムザはその場に居合わせた全員に告げた。

ファリスが炎の中に入れずに手を拱いている頃、ラムザが
少年を担いで炎を飛び越えてきた。それに次いで
一閃の雷鳴が炎をなぎ払い、赤髪の少女を片手で器用に
担いでいるテリー、緑髪の少年、頭にバンダナを巻いた男が
出てきて、
「ファリス、ちょっと彼等を見ててくれ」
とラムザは言い残し、少年を担いだまま近くの民家に入っていった。
「ラムザ、そいつをどうするんだ?」と鋭く問うテリーに
「ん?話せば解るはずだよ」と彼は短く答えたが、その声には
先ほどの威圧感はなく、それは柔和な青年のものだった。
179炎4/4:2005/05/29(日) 14:00:57 ID:a5vGkoFT
【バーバラ(気絶) 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:? 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:ヘンリー達と合流し、旅の扉へ移動
第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】

【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:?】

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】


【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:よく解らないけど皆を見る 第二行動方針:旅の扉を探す】
【現在位置:レーベの村】


【イクサス(人間不信、気絶、負傷)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:? 】

【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:イクサスを説得する 第二行動方針:旅の扉を探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:レーベの村の民家へ】
180名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/29(日) 14:04:17 ID:a5vGkoFT
誤字訂正です。
>>176の三行目
ラケットを蹴れめがけ→ラケットを彼めがけ
181名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/29(日) 16:11:13 ID:LpwgJX7O
>>176-180は無効です。
182あぼーん:あぼーん
あぼーん
183あぼーん:あぼーん
あぼーん
184あぼーん:あぼーん
あぼーん
185あぼーん:あぼーん
あぼーん
186あぼーん:あぼーん
あぼーん
187Helpless 1/2:2005/05/29(日) 23:27:59 ID:UP9fKu+4
「大丈夫か!?返事をするのだ!!」

レオは、倒れている2人にそう呼びかけていた。
先程見つけた人影、それは間違いなく瀕死の重傷を負った参加者だった。
既に2人とも意識が無い。できれば両方を救ってやりたい。
だが、

「私の力では……くそッ!」

そう、どうすることも出来ない。回復の手立てが一切見つからないのだ。
自分の至急品に回復アイテムなどは存在しない。
このままこの2人は死を待つのか……。

「む?」

その時、彼は気が付いた。2人分の支給品袋があったのだ。
そしてその隣には、謎の生物が死んでいた。恐らく参加者だったのだろう。
しかしそれには目もくれず、支給品袋を拝借して中身を全てぶちまけた。

だがその中身は散々なものであった。
一つの袋からは鍛冶セットらしき物と鎧、
もう一つの袋からは奇妙な銃と……そしてスタングレネードと呼ばれる手榴弾がいくつか。
そしておまけのように、ポトリと果物ナイフが出てきたのだった。

要するに人を癒すことのできるアイテムが無かったのだ。
レオは途方にくれた。もう無理だ、絶対に救えはしないのだと悟ってしまった。
その時だった。呻き声の様な、そしてとても弱々しくか細い声が聞こえた。

その声が、ベアトリクスの物だと気づくのに、そう時間は不必要だった。
188Helpless 2/2:2005/05/29(日) 23:29:32 ID:UP9fKu+4
「誰か……る…ので……すか……」
「あ…ああ、そうだ!案ずるな、お前は助かる!」
「……それは…嘘…でしょ……う?」

意識を取り戻したベアトリクスも悟っていた。
自分の死はすぐそこだ。指輪にまた意識を乗っ取られる間もない。

「誰だか…知ら……い、が…助けるなら……そこの…もうひ……りを…助け……」
「莫迦を言うな!2人とも助かるのだぞ!」
「私は……手遅…で…から……もう…良い…の……す」
「莫迦を言うなと言っている!」
「そこ……の…人を、次の…界で………す…て…あげ……」

レオの言葉への返事は、それっきり無かった。
彼女はそのまま息をすることは無かった。

「くそおおおおおおおおおお!!!!!!」

レオは叫んだ、力の限り叫んだ。
そしてそのままフライヤを担ぎ、ベアトリクスの支給品袋を奪い取るように手にし、悔しさを胸に秘め、扉を潜っていった。

【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改 ビームライフル スタングレネード×6
        果物ナイフ 君主の聖衣 アルテマソード 
 第一行動方針:新フィールドへ 第二行動方針:ケフカ殺害 基本行動方針:ゲームに乗らない】

【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶)
 所持品:アイスソード(破損)
 行動方針:意識不明の最中新フィールドへ】

【ベアトリクス 死亡】
【残り 81名】
189Helpless 3/2:2005/05/29(日) 23:34:41 ID:UP9fKu+4
【現在位置:レーベ南の森中央の旅の扉から新フィールドへ】

忘れてた_| ̄|○
190Helpless(改訂版) 1/4:2005/05/30(月) 00:03:43 ID:UP9fKu+4
「大丈夫か!?返事をするのだ!!」

レオは、リュック達にも気づかず倒れている2人にそう呼びかけていた。
先程見つけた人影、それは間違いなく瀕死の重傷を負った参加者だった。
既に2人とも意識が無い。できれば両方を救ってやりたい。
だが、

「私の力では……くそッ!」

そう、どうすることも出来ない。回復の手立てが一切見つからないのだ。
自分の至急品に回復アイテムなどは存在しない。
このままこの2人は死を待つのか……。

「む?」

その時、彼は気が付いた。2人分の支給品袋があったのだ。
そしてその隣には、謎の生物が死んでいた。恐らく参加者だったのだろう。
しかしそれには目もくれず、支給品袋を拝借して中身を全てぶちまけた。

だがその中身は散々なものであった。
一つの袋からは鍛冶セットらしき物と鎧、
もう一つの袋からは奇妙な銃と……そしてスタングレネードと呼ばれる手榴弾がいくつか。
そしておまけのように、ポトリと果物ナイフが出てきたのだった。

要するに人を癒すことのできるアイテムが無かったのだ。
レオは途方にくれた。もう無理だ、絶対に救えはしないのだと悟ってしまった。
その時だった。呻き声の様な、そしてとても弱々しくか細い声が聞こえた。

その声が、ベアトリクスの物だと気づくのに、レオには時間は不必要だった。
191Helpless(改訂版) 2/4:2005/05/30(月) 00:05:17 ID:J4s0aM11
「誰か……る…ので……すか……」
「あ…ああ、そうだ!案ずるな、お前は助かる!」
「……それは…嘘…でしょ……う?」

意識を取り戻したベアトリクスも悟っていた。
自分の死はすぐそこだ。指輪にまた意識を乗っ取られる間もない。

「誰だか知ら……い、が…助けるなら……そこの…もうひ……りを…助け……」
「莫迦を言うな!2人とも助かるのだぞ!」
「私は……手遅…で…から……もう…良い…の……す」
「莫迦を言うなと言っている!」
「そこ……の…人を、次の…界で………す…て…あげ……」

レオの言葉への返事は、それっきり無かった。
彼女はそのまま息をすることは無かった。

「くそおおおおおおおおおお!!!!!!」

レオは叫んだ、力の限り叫んだ。
そしてそのままフライヤを担ぎ、ベアトリクスの支給品袋を奪い取るように手にし、悔しさを胸に秘め、扉を潜っていった。


それを静かに、リュックとわたぼうが見ていた。
木々の陰に身を隠しながら、見ていた。
192Helpless(改訂版) 3/4:2005/05/30(月) 00:06:34 ID:J4s0aM11

「……誰か…死んじゃったんだねぇ」

リュックが、哀しさを言葉に乗せた。

先程見た風景。
それは2人の重傷を負った人間の目の前に、戦士風の男が居た、というものだった。
その男がもしや2人を殺したのかと思い、警戒して隠れていたのだ。
だが真実は違っていたようだ。男は瀕死の人間を助けようとしていた。
そしてリュック達は男を見誤ったばかりか、話しかけるタイミングを失ってしまった。
そのような失敗を続けながら、彼女らはそこに居た。

「どうしよう、あの人の代わりに…埋葬してあげよっか……」
「それがいいかもね」

先程人を担いでいった男の代わりに。
そう思い、せめてこの女性を埋葬しようと、リュック達は遺体の近くに穴を掘り出した。

「こうしてると…誰か良い人が来るかもしれないしねっ」
193Helpless(改訂版) 4/4:2005/05/30(月) 00:08:37 ID:J4s0aM11


【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改 ビームライフル スタングレネード×6
        果物ナイフ 君主の聖衣 アルテマソード 
 第一行動方針:新フィールドへ 第二行動方針:ケフカ殺害 基本行動方針:ゲームに乗らない】
【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶)
 所持品:アイスソード(破損)
 行動方針:意識不明の最中新フィールドへ】

【現在位置:レーベ南の森中央の旅の扉から新フィールドへ】


【リュック(パラディン) 
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣 ドレスフィア(パラディン)
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:ベアトリクスを埋葬した後、次のステージへ移動
 第二行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】

【現在位置:レーベ南の森中央】


【ベアトリクス 死亡】
【残り 81名】
194名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/30(月) 00:16:31 ID:J4s0aM11
>>193のレオの所持品に「鍛冶セット」 「光の鎧」を追加してください。
色々とすみません……。
195とても大切なこと 1/4:2005/05/30(月) 01:48:10 ID:tlkMOFDa
女性のためにお墓を作っていると
すぐ近くに一人と一匹の死体を発見した
「…わるぼう」
わたぼうは自分によく似たモンスターに近づいて、そう呟いて泣いた。
「…リュック、この二人もお墓作ってあげよう」
ポロポロと涙を流しながそう言った。
「うん…そうだね」
わたぼうとこのモンスターがどういう関係だったのかはわからない。
邪推はできるがそんなことをしても仕方がない。
自分には一緒に弔ってあげることしかできないのだ。
「ごめんね、もう時間もあんまりないのに」
「わたぼうが謝ることじゃないよ」
もう残り時間はあまりない、二人で三人分の墓を作るとなると正直微妙なところだった。
それでも彼女達をそのままにしておくことなんてできなかった。
それは無意味なことかもしれないが
とても大切なことに思えた。
196とても大切なこと 2/4:2005/05/30(月) 01:48:40 ID:tlkMOFDa
「レナさん大丈夫ですか?」
飛竜と分かれてからレナの様子がおかしい。
時折何か思いつめるような、悩んでいるような顔を見せる
「うんん、大丈夫なんでもないわ…」
その返事にも覇気が無い。
エリアは心配するが自分にはどうしようもない。
なにに悩んでいるのかわからないが、話せるようになればいつか話してくれるだろう。
そう思い先に進んだ。

先を進むエリアの視界に青い光が見えた。
「レナさん、見つかりましたよ」
その言葉にもレナは『…そう』と生返事を返すばかりだった・
ある程度近づいてゆくと、そのすぐ近くで一人と一匹が穴をほっているのが見えた。
エリアはその二人がなにをしているのか、すぐに理解できた。
なぜなら自分達もレーベの村で同じことをしてきたばかりなのだから。
エリアはその二人に近づいてゆき
「手伝いましょう」
そういって二人の隣で穴をほり始めた。
二人は穴をほるのに夢中でエリアの接近に驚いたが、一言
「ありがとう」といい、作業を再会した。

考え事をしていたレナが気づくと、エリアが二人に近づいていっていた。
レナはエリアが警戒もせず近づいてゆくことに驚いたが。
その二人に害がなさそうなことがわかると自分も作業に加わった。
197とても大切なこと 3/4:2005/05/30(月) 01:50:55 ID:tlkMOFDa
四人は無言で墓を作り、静かに手を合わせた。
しばらく手を合わせているとリュックが口を開いた
「手伝ってくれたありがとね、あたしはリュックカモメ団の一員だよ、よろしくね」
そう元気にいって手をさし出した。
「私はエリア=ベネットです、よろしくねリュックさん」
「レナです、よろしく」
そういいながら二人は交互にリュックの手を握り返した。
「ぼくはわたぼうっていうんだ、よろしくね」
「ふふ…よろしくねわたぼう」
そう笑いエリアはわたぼうの頭をなでた。

三人と一匹は色々と情報を交換し合った。
そして話し合いの結果、行動を共にすることにしなった。
「よし、それじゃ、しゅっぱーつ」
元気にリュックが声をあげ、三人と一匹は扉を潜った。
198とても大切なこと 4/4:2005/05/30(月) 02:03:10 ID:cMJqIIm9
【リュック(パラディン) 
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣 ドレスフィア(パラディン)
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:新フィールドへ
 第二行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【レナ 所持品:エクスカリバー
 第一行動方針:新フィールドへ 基本行動方針:エリアを守る】
【エリア(睡眠中 所持品:妖精の笛、占い後の花
 第一行動方針:サックスとギルダーを探す】
【現在位置:新フィールドへ】
199名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/30(月) 02:03:48 ID:cMJqIIm9
>>197下から3行目
>そして話し合いの結果、行動を共にすることにしなった。

そして話し合いの結果、行動を共にすることになった。
にお手数ですが修正してください
200199:2005/05/30(月) 16:40:30 ID:z4hsUAsE
まだ続きが書かれてなかったようですね。よかった。

またお手数ですが>>195-198を無効にして下さい。
たびたびの我侭、申し訳ありません
201旅の扉と彼の記憶 1/2:2005/05/30(月) 19:47:57 ID:Zl8WfyiV

放送からどれほどが経過した頃だろうか。
いざないの洞窟の前の旅の扉に、フィンとドーガは辿り着いていた。

青い渦を見つめるフィンに、ドーガは何も言わない。
フィンは青い渦を凝視していて、そんな彼に声を掛けるのに気が引けたからである。
そして、フィンが口を開いた。

「…親友に、キーファという人がいるんです」
「ふむ」
…確か放送で名を呼ばれた者ではないか。
「…彼は、ある国の王子でした。でも、そんなことに縛られようとしない、自由な心を持った人でした。
 …ある日、彼と不思議な遺跡を探検しました。まるで自分たちの住んでいる世界で無いような、神秘的な遺跡でした」

フィンの目は、今も旅の扉に向けられている。
でも心は今、その遺跡を、キーファと共に探検しているのだろう。

「…その遺跡の一番奥に、謎の神殿があって、そこには、これと同じ青い渦…旅の扉があったんです。
 彼と僕は、それが僕たちをどこに連れて行くかとドキドキしながらそれに飛び込みました」
「ふむ…それで、何処へ繋がっていたのじゃ?」
「…僕が彼とよく探検した、見慣れた洞窟でした。半分がっかりした様な、でも半分ほっとした様な…そんな気分でした」

フィンは、顔を少し上げた。
「あの時のような気分は、忘れることが出来ません。何度旅の扉を潜っても、何度新しい世界へ行っても。
 彼との思い出の一つ一つが、しっかり心に刻まれているんです。あの時飛び込んだ、この青い渦と共に」
少しだけ、フィンは笑って見せた。
202旅の扉と彼の記憶 2/2:2005/05/30(月) 19:49:35 ID:Zl8WfyiV
「…うむ、忘れてはならぬぞ」
ドーガは、ゆっくりと、しかし力強く言った。
「きっと彼の…キーファの魂は、またフィンと共に探検したいと願っている筈じゃ」
「…はい」
「フィンが生きている限り、彼もまたフィンと共に在る」
フィンは、また旅の扉を見つめた。
「…行きましょうか。新しい世界へ」
「…うむ。時間も限られておるしな」
二人は、互いの目を一度見ると、同時に旅の扉に飛び込んだ。



【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:次フィールドへ 基本行動方針:仲間を探す】
【ドーガ(軽傷) 所持品:マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:次フィールドへ 第二行動方針:フィンの仲間とギルダーを探す 
 第三行動方針:ギルダーを止める】
【現在位置:次フィールドへ】
203覚醒と決意、再会と邂逅 1/7:2005/05/30(月) 23:07:44 ID:l0oN5jtF
打ち出される空気の玉を、ラケットを振るう少年を、
それを阻もうとする天空の盾を、少年を止めようとするソロを――
壁のように広がる炎や盾に弾かれた衝撃の余波を避けながら、ロックは虚ろに見つめていた。

避け続ける。その行動に意思が関わっているのかどうか、ロック自身にもわからない。
意思が命じずとも身体は勝手に動くものだ。
かつて感情を無くした青年が、剣士相手にそうしていたように。
何を避けようとも、戦おうとも、生きたいという思考すらなくとも、長きに渡る戦闘経験が身体を突き動かす。
あるいは経験などという込み入った物ではなく、もっと純粋にして単純な、生物としての本能なのかもしれない。
あらゆる生命が持つ欲望、己の意思とは別に存在する強烈な衝動。
無意識の領域よりもさらに奥底に刻み込まれた命令に従い、身体は勝手に動く。

『ロック=コール! おまえは狂ってるぜ!』

ああ、その通りだ。
自分は狂っている。
セリスの死を受け入れられずに彼女を蘇らせたいと思い、その死体を捜しに来た。
ティナやマッシュを人殺しだという少年の言葉を受け入れられずに考えることを止めている。
だからティーダやソロの仲間を助けられなかったし、
今も少年やソロをただ見つめるだけで、向こうから走ってくる剣士の姿に気付いていながら口に出せない。
そうやって自分は仲間を失うのだ。
何もできず、その過程も理由も知らないままに。
セリスもティナもシャドウも、
エドガーもマッシュもリルムもゴゴもフリオニールもレオンハルトもギルガメッシュもソロもヘンリーもティーダも
みんなみんな自分が何もできないまま、自分にはわからないまま死んでいく……

(死んでいく……何もできないまま……)
204覚醒と決意、再会と邂逅 2/7:2005/05/30(月) 23:10:20 ID:l0oN5jtF
雷光が雨のように降り注ぎ、少年の手がうろたえたように止まる。
片腕を無くした剣士が、戸惑う少年に向かって駆けてくる。
少年と一緒にいた少女は、間近に落ちた雷によって気を失っていた。
ソロは体勢を立て直せていない。
立て直したところで、今さら剣士を止めることはできないだろう。
ただでさえ疲弊しているのに、距離が有り過ぎる。間に合わない。
そして自分は、ただ見ている。
何もできないまま……ずっとこうして、見ているだけなのか。
人が死ぬのをこうして見ているだけなのか。

(――違う)

『でもあんた、そんなことじゃ何も変わらない。ただの誤魔化しッスね』

(何もできないんじゃない……
 誤魔化して、目を背けて……俺が、俺自身が、何もしようとしていないだけだ!)


ソロが顔を上げたのと、イクサスがテリーの姿を捉えたのは、ほぼ同時だった。
天賦の才と姉への妄執が培った剣の冴えは、万全の状態のソロですら避けることは難しいだろう。
ましてや――復讐心と、医術に関する知識以外は普通の子供と変わりないイクサスでは。
「くっそぉおおお!!!」
避けきれるはずもないと悟り、がむしゃらにラケットを振り下ろす。
その弾みで、金色に輝くオーブが懐から零れ落ちた。
ほんの一瞬、テリーの視線がそちらに逸れる。
しかし、剣の速度は変わらない。
イクサスの小さな胴体めがけて、白刃は横薙ぎに走り――甲高い音を立てて弾かれた。

かつて、テリー自身が携えていた剣によって。

双眸に意思の光を宿した、トレジャーハンターによって。
205覚醒と決意、再会と邂逅 3/7:2005/05/30(月) 23:13:08 ID:l0oN5jtF
「邪魔をするつもりか?」
テリーの問いに、ロックはどこかシニカルな表情で答える。
突き飛ばされたイクサスは、呆然と二人の姿を見つめていた。
「子供を殺すなんて、見てて気分のイイもんじゃないしな。
 それに……こいつに聞きたい事があるんだよ」
そこにはもう、ただ逃げ惑っていただけの青年の面影は無い。
妄執に突き動かされるだけの、狂った男の姿は無い。

(セリス……決めたぜ、オレは。
 もう現実から眼を逸らしたりしない。全部この眼で確かめてやる。
 お前やティナが死んだ、死ななくてはならなかった、その理由を……その意味を……!
 生きて生きて生き抜いて、絶対に確かめてやる!)

「うぉおおおおっ!!」
気合と共に、剣を一気に押し返す。
しかし相手もさるもの、ロックの力を利用するかのように飛び退き、間合いを取った。
テリーは舌打ちしながら、構えを取り直し言い放つ。
「子供だろうが何だろうが、ファリスを傷つける奴は全員敵だ! 生かしておけるか!」
そして、イクサスもよろよろと立ち上がり、再びロックを睨みつける。
「人殺し風情が……勝手なこと言ってるんじゃねえ!」
イクサスの殺意、テリーの敵意。
二つはぶつかり合い、一気に弾け――
206覚醒と決意、再会と邂逅 4/7:2005/05/30(月) 23:17:13 ID:l0oN5jtF
けれどテリーの剣も、イクサスのラケットも振り下ろされることはなかった。
「二人とも、そこまでだ」
上空から降ってきた男が、イクサスの腕を捕らえ、羽交い絞めにする。
「な、なんだよ貴様! 放せ、くそっ、この野郎!」
さらに勢いを弱めた炎の向こうから、若い男――のような女が飛び込んできた。
「テリー、止めろ!」
「これ以上戦うのはお互いに得策とは(ry
 少なくとも僕とファリスには戦う気はないし(ry
 戦闘を続行させればそちらのお嬢さんも危険な目に(ry」
女はたった一言で、男は呆れるほどの弁舌を駆使して、なおも戦おうとする二人を諌めようとする。

「くそっ、放せ、放せよ!」
「そういうわけには(中略)君は興奮のあまり一種のトランス状態に陥って(ry
 心理学的見地からすれば(ry つまり鎮静作用のある(ry」
(……誰だありゃ? つーか何言ってるんだ、あいつは?)
「ロックさん。大丈夫ですか?」
予想外の展開に困惑していたロックに、ソロが声をかける。
「あ、ああ、オレは平気だけど……お前は?」
「僕は大した事はありませんよ。この盾が有りますからね。
 ただ……この子が……」
ソロが自分の腕に、正確に言えば腕に抱えた少女に視線を落とした。
雷撃をまともに喰らったか、あるいはイクサスの攻撃に巻き込まれたか。
少女――バーバラはソロの胸にもたれかかり、ぐったりと眼を閉じている。
207覚醒と決意、再会と邂逅 5/7:2005/05/30(月) 23:21:53 ID:l0oN5jtF
「大丈夫か、その子?」
ソロたちの姿を見たファリスが声をかけてきた。
「ええ。呼吸はしっかりしていますから、
 気を失っているだけだと思うんですけど……」
ソロの返事に、ファリスは胸を撫で下ろす。
「良かった……いや、さすがに死なれたら後味悪すぎるからさ。
 テリー、お前も少しは手加減してやれよな。相手は子供なんだからな?」
「わかったよ、ファリス。今度から気をつける」
異常なまでに素直に頭を下げるテリー。
昨日の血に餓えた剣士としての彼を知るロックにしてみれば、不気味といっていい光景だ。
けれどソロに視線をやると、平然とした様子でやり取りを聞いていた。
少し首を傾げている程度で、驚く素振りすら見せずに聞いているのだ。
――それはソロ自身がアーヴァインの豹変を目の当たりにしているからなのだが、ロックには知る由も無い。
ともかくロックは開きかけた口を閉じ、二人の奇妙なやり取りを、ソロと同じように静かに見つめた。

つまり、隙だらけだったのだ。

「マヌーサ!」
突然、紫色の霧が辺り一帯に立ち込めた。
驚く一同の耳に、あどけなさを残した少女の声が響く。
「イクサス! 今のうちだよ、早く逃げよっ!」
その言葉に反応し、イクサスは狼狽するラムザの腕を一気に振り払った。
そしてソロの身体を突き飛ばし、バーバラは紫の霧の中へ消えていく。
ラムザとロックが慌てて二人を捕まえようとするが、霧に映し出された幻影に惑わされ、伸ばした腕は呆気なく宙を切る。
そんな彼らをからかうかのように、バーバラの罵声が飛んできた。
「ばーかカーバ、マヌケのおたんこなーす!
 人殺しの仲間なんかファルシオンに蹴られて狭間の世界に飛ばされて死んじゃえーだ!」
「なんだと、このクソガキ!」
「テリー!」
激昂して剣を抜こうとするテリーを抑えようと、ファリスが彼の名前を呼ぶ。
その時、不意に足音が止まった。
208覚醒と決意、再会と邂逅 6/7:2005/05/30(月) 23:25:31 ID:l0oN5jtF
「……テリー?」
かすかな困惑が、霧の彼方でざわめく。

けれど、それはほんの一瞬の事だった。
「もたもたするな、バーバラ! 置いていくぞ!」
「えっ! ちょ、ちょっと待ってよ!」
イクサスの声に、再び足音が響き――やがて、二人の気配は消えた。

術者を失い、薄れ行く魔法の霧。
イクサス達と入れ替わるかのように、その向こうに一つの人影が滲む。
身構えるロック達だったが、シルエットに気付いたソロが制止した。

「無様だな、ソロ」
アーヴァインの姿がないことに気付いたか、ピサロは冷たい瞳でソロを見つめる。
「……心配して見に来たんですか? 意外と気配り屋だったんですね、知りませんでしたよ」
「貴様がいつまで経っても戻らんからだ。タイムリミットがあるのを忘れたか」
皮肉を軽くいなしながら、ピサロはこの奇妙なメンツをぐるりと見回す。
その眼が、ファリスに向けられた途端、止まった。
「なんだよ?」
警戒心を顕にする男勝りな女の顔。それが、昨夜焚き火の傍で剣を握りしめていた女性の表情と重なる。
「……レナの姉か?」
ぽつりと呟かれたその言葉に、ファリスは眉を跳ね上げ、ピサロを見つめた。
209名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/30(月) 23:26:45 ID:WEDSsPUU
うんこ
210覚醒と決意、再会と邂逅 7/7:2005/05/30(月) 23:27:14 ID:l0oN5jtF
【イクサス(人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:ギルダー・アーヴァイン・スコール・マッシュを殺す
 第二行動方針:アーヴァインの仲間であるソロ達を殺す/生き残る】
【バーバラ(気絶) 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:レーベの扉から新フィールドへ】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:状況説明/ヘンリー達と合流し、旅の扉へ移動
第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:事情を聞く 基本行動方針:ロザリーを捜す】

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:二人と共に行動する 第二行動方針:旅の扉を探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在地:レーベの村、バーバラ達がいた家の正面付近】
211あぼーん:あぼーん
あぼーん
212あぼーん:あぼーん
あぼーん
213あぼーん:あぼーん
あぼーん
214焔色のサラマンダー:2005/05/31(火) 01:21:57 ID:d9Ti5JlY
岬の洞窟から駆け出したサラマンダーは、森の木の上に身を潜め静かに待っていた。
追撃が来ることを予想し、森で待ち伏せていたが当てが外れたようだ。
だが、うかつに動き回るよりも、一箇所に身を隠し待ち伏せしたほうがいいと考え。
その後も参加者が通るのをそこで辛抱強く待ち続けた。
しかし、幸か不幸か参加者がサラマンダーのテリトリーに来ることはなかった。

こういう殺し合いのサバイバルならば自分の殺し屋である領域だ。
人を殺すことに躊躇いなどはない。
だが、気がかりはジタン達だ。
あいつ等が勝手にくたばるのならば知ったことではない。
だが、流石に顔なじみを自分の手で殺すのは少しためらわれた。
「フッ…焔色のサラマンダーも甘くなったものだ」
そう一人呟き、待ち伏せていた木の上から降りる。
もう残り時間も少ない、もう参加者がここを通ることはないだろう。
「ここから一番近いのは砂漠か」
広げた地図をしまい、サラマンダーは砂漠に向けて歩き出した

そして何事もなく砂漠にたどり着く。
そこに見られる戦闘の後、それを横目に見ながら。
サラマンダーの体は青い光に包まれた。

【サラマンダー 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち
215焔色のサラマンダー:2005/05/31(火) 01:22:53 ID:d9Ti5JlY
【サラマンダー 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【現在位置:新フィールドへ】
216名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/31(火) 09:20:35 ID:GPo7TpaQ
>>210
一部修正です

【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
217名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/31(火) 12:39:00 ID:wmC5nncs
>200の宣言は無効であり
>>195-198は有効です。詳細は雑談スレにて
218激動の村 1/5:2005/05/31(火) 18:07:57 ID:EBzpJiGZ
「レナを知ってるのか、どこにいるんだ!?」
ファリスはすごい剣幕でピサロに問いかける。
「…ここではなんだ、待たせてる奴等もいるのでな、場所を移すぞ」
それを軽く流し、ピサロは道具屋に向かって歩き始めた。
「待てよ、おい!」
それを追うファリス、ソロたちもそれを追いかけた。

「お、帰ってきたみたいだぜ」
道具屋の外に立っていたヘンリーは大きく手を振る。
道具屋の中にいたビビとターニアも顔を出しそれを迎えた。
219激動の村 2/5:2005/05/31(火) 18:08:30 ID:EBzpJiGZ
「なんか随分と増えたな…ところでアーヴァインは…?」
ヘンリーは目を細め真剣な目で問いかける。
「大丈夫、生きてます、ちょっとした事情で先に次の世界に行ってしまっただけです」
「…そうか」
それを聞いてヘンリーは胸をなでおろす。
「それで、あいつ等は?」
ヘンリーの指差す先。
ピサロに問い掛かるファリス、それを近くで見守るテリーの姿があった。

「それでレナはどこだ、この村にいるのか?」
「ここにはいない、一時期行動をともにしていたが、ある事情で離れた、ここにはいない」
「じゃあ、どこにいる」
「おそらくは南の森の扉に向かったのだろう」
それを聞き、ファリスは歩き出す。
「どこへ行く」
「決まってるレナのところだ」
「止めておけ、もうやつ等も扉についている頃だろう、今頃行っても遅い
 それに、もう時間がない、途中で爆死するのがオチだ」
ピサロは興味なさげな仕草であきれたように言う。
立ち止まりファリスは舌打ちをする、そして踵を返し引き返してきた。
220激動の村 3/5:2005/05/31(火) 18:09:02 ID:EBzpJiGZ
「それでこれから君たちはどうするんだい、よければ僕達と一緒に…」
「ダメだ」
ソロの言葉をテリーがさえぎる。
「こんな危ない奴とファリスを一緒にいさせるなんてできない」
そう言って、雷鳴の剣の先をピサロに向ける。

デュランという魔王の配下だった自分にはわかる。
こいつは魔族だ、しかもとびっきりの魔王。
「行こう、姉さん」
「ちょっと…!」
そういって強引にファリスの手を引き、テリーは旅の扉に向かって歩きだした。
止めることもできず呆然と見送るソロたち。
「…おい、貴様」
「なんだい?」
ピサロがじっとその光景を見つめていたラムザに声をかける。
「貴様はどうするんだ、奴等についていかないのか?」
「う〜ん、そうだな…」
聞かれてラムザは考えるようなポーズをとる。
「…うん、彼等についていくことにするよ、あの二人なんだか危なかっしいし
 それに悪い人達じゃなさそうだしね、少し愛情表現が行き過ぎてる気もするけど
 兄弟愛っていうのは、大切だしね…」
そう、少し寂しそうにラムザは言う。
話術士というのは少し口が軽くなってしまうようだ、余計なことまで話してしまう。
「じゃ、僕は彼らを追いかけるよ」
そういって、ラムザは駆け出した。
221激動の村 4/5:2005/05/31(火) 18:25:45 ID:GPo7TpaQ
「…ほとんど何も聞けなかったな」
そう言ってピサロは大きく息を吐く。
「仕方ないですよ、それより僕たちも行こう、すぐそことはいえ、なにがあるとも限らないし」
「ああ、わかった」
そしてソロたちも旅の扉に向かった。

何事もなくたどり着いたソロたちが青い光に包まれる。
空間がゆがみソロたちの姿が消えてゆく。
そして、たくさんの人々を飲み込んだ激動の村に、ついに人がいなくなった。
222激動の村 5/5:2005/05/31(火) 18:26:32 ID:GPo7TpaQ
【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:次のフィールドへ
 第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:次のフィールドへ 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ヘンリー(6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
 第一行動方針:ピサロ達についていく 第二行動方針:デールを止める(話が通じなければ殺す)】
【ターニア 所持品:微笑みの杖
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ 所持品:スパス
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:仲間を探す】

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:二人と共に行動する 第二行動方針:旅の扉を探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在地:次のフィールドへ】
223名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/05/31(火) 22:29:02 ID:EBzpJiGZ
>>218-222は無効です。
申し訳ありません
224誰もいなくなった村 1/4:2005/05/31(火) 23:39:42 ID:EBzpJiGZ
「……レナの姉か?」
隣でその言葉を聞いていたソロは、ファリスの顔を見つめ、
「ああ、そういえば」と間の抜けた声を上げる。
「あんた等、レナとあったのか? もしかして今一緒に行動してるとか?」
期待を込めた瞳がピサロを見つめる。
「いや、一時的に行動を共にしていただけだ。今は別だ」
「そう、か…」
その言葉に、ファリスは残念そうに目を伏せた。
「ファリス、レナって言うのは俺たちの妹のレナのことか?」
そこに、後ろでその話を聞いていたテリーが声をかけた。
「違う、オレの妹のレナだ」
「ハハッ、なに言ってるんだよファリス、ファリスの妹ということは、俺の妹って事だろ?」
楽しそうに笑うテリー、その顔に邪気も偽りもない。
まったくの本気でそう言っているのだ。
ソロはその顔を見つめる、そしてその顔には見覚えがあった。
目の前の男は間違いなく、ゲーム開始、間もない頃に剣を交えた男だ。
しかしその顔に、あの頃感じた邪気は無い。
きっと、この男も大切な家族を、この姉を探していたのだろう。
大切な人を探すその焦りが、あのような行為に彼を走らせていたのだろう。
ソロはそう結論付けた。
225誰もいなくなった村 2/4:2005/05/31(火) 23:40:01 ID:EBzpJiGZ
「はぁ…もういいよ、で、レナがどこに行ったかわからないか?」
「おそらくは、南の森だろう。
 追いかけるのなら止めておけ、もう時間がない。途中で爆死するのがオチだ」
「そうか…やっと見つけた、手がかりだったんだがな…」
口惜しそうにファリスはうなだれる。
「落ち込むなよファリス、レナも俺が必ず見つけ出すから。
 なんてたって俺のかわいい妹だからな」
「だから違うって」
先ほどから、二人のやり取りを見ていたピサロは疑問を浮かべる。
この二人、先ほどから言動がかみ合っていない。
特に弟のほうに違和感を感じる。
「おい、お前…」
そう言って一歩、ファリスの後ろに立っていたテリーに近づく。
するとテリーは、すごい勢いでファリスとピサロの間に入り込んだ。
「…ファリスに近づくな、魔族ごときが」
嫌悪と殺意を込めたその言葉を聴いた途端、ピサロの目つきが変わる。
「……ほう… わかるのか?」
ピサロは冷たい笑みを浮かべる。
「ピサロ!」
「…フン、わかっている。ただ、こういう人間は嫌いなだけだ」
そう言ってピサロは、クルリと踵を返し道具屋の方向に歩いていった。
226誰もいなくなった村 3/4:2005/05/31(火) 23:40:22 ID:EBzpJiGZ
「ごめん、ボクはピサロを追うけど、君たちはどうするんだい」
「失せろ、魔族なんかとファリスを一緒に行動させれる訳無いだろ」
「…はぁ、スマン、そういうことだ」
そう言ってファリスは少し頭を下げた。
「ラムザ、おまえはどうするんだ、むこうに付いて行ってもいいんだぜ」
ファリスは珍しく静かにしていたラムザに問いかける。
「ボク? そうだな、君たちについていくよ。
 なんだか君たち危なっかしいし、それにボクは君たちのことは嫌いじゃないしね」
そういってラムザは笑う。
ラムザはこの二人に、行きすぎではあると思うが、強い兄弟の絆を見ていた。
それはかって、自分が失ってしまったかもしれない物。
「じゃ、そう言うことで、ボク達は行くよ」
「うん、気をつけて」
ソロとロックは三人を見送る。
三人は青い光に包まれ、歪む様に消え去った。

三人を見送ったソロとロックは、道具屋に戻った。
すでに先に戻ったピサロが、大方の事情は話し終えていたようだ。
そして、合流した六人は扉に向かう。
そして、扉に触れた六人の体は、先ほどの三人と同様にアリアハン大陸から消え去った。

様々な人々の命、憎悪生み出し、飲み込んでいったレーベの村。
その場所に、ついに誰もいなくなった。
227誰もいなくなった村 4/4:2005/05/31(火) 23:46:04 ID:O/mGPXrE
【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:次のフィールドへ
 第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:次のフィールドへ 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ヘンリー(6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
 第一行動方針:ピサロ達についていく 第二行動方針:デールを止める(話が通じなければ殺す)】
【ターニア 所持品:微笑みの杖
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ 所持品:スパス
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:仲間を探す】

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品: アダマンアーマー ブレイブブレイド
 第一行動方針:二人と共に行動する 第二行動方針:旅の扉を探す
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在地:次のフィールドへ】
228名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/01(水) 00:48:38 ID:+YPxQsuw
ピサロにすげー違和感。
229いざないの泉にて 1/2:2005/06/01(水) 04:37:05 ID:jRgsLMag
放送より1時間45分ほど――
いざないの洞窟、その前で青い水をたたえる泉。

前の二人が扉に消えてから、泉のそばは風と木のざわめきだけが流れている。
静かで穏やかな調和を崩さないままにそこへ近づく人影が1つ。
盲目となった賢者、クリムト。
その足元の水の中に明らかに異質な流れが渦巻いているのを感じていた。

光を失ってより、ゆっくり、ゆっくりと大地を踏みしめ東へ向かった。
その道中、残された四感に加えて次第に気配、とでもいうようなものを
より鋭敏に感じ取れるようになっていくのがわかる。
耳に入る音、肌に触れる空気、土や緑の香り。それらを己の中の知識とかけあわせてゆく。
堅固たる大地、流れる風、命の息吹。姿を見るのではなく形を『感じとる』力。
それはもって生まれた才能の故だろうか、それともたゆまぬ鍛錬と克己の精神の結晶か。

つい先程より後方にある気配は、三度会う血の香りをまとった少女。
どうやら私の後を追ってきたらしい。
彼女のような存在もまた全てと等しく私に与えられている試練、課題なのだろう。
我が未熟な力でどこまでやれるだろうか?
わずかの間背後に意識を向ける。

これより先に続く世界にも険しい困難が待つのは間違いない。
「では、行くか」
簡潔にこの世界に別れを告げ、賢者は静かに次世界へと歩みを進める。

【クリムト(失明) 所持品:力の杖
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:新フィールドへ】
230いざないの泉にて 2/2:2005/06/01(水) 04:38:17 ID:jRgsLMag

「なーーによあいつ!とっくに気付いてたくせにっ!!」

ぼろぼろの身体が悲鳴を上げている。
強靭な意志力でここまで歩いて来たアリーナが、あの嫌味な背中に追いついたのはついさっきである。
すぐにでも叩き殺したいところであったが肉体的にも、そして時間的にも限界は近い。
とりあえず移動を優先して身体を引きずっていく。

旅の扉が放つ青い光に包まれて、
わかってるくせにこちらを気にしないあの賢しげなムカツク奴は行ってしまった。
自分を見下ろしたあのなんともいえない表情をした顔がちらついている。
思い出すだけで心がささくれていくのがわかる。追い払うように大声を出した。
「ほんっっとに!覚えてなさい!後悔させてやるから!!」
はあ、大声出しただけでも疲れる。これも全部あいつのせい!

ようやく泉のふちにたどりつくと、崩れるように座り込む。
とりあえず水、と旅の扉のせいでやたら青い水面に手を伸ばし、一休み。
「よしっ。絶対に生き残ってやるから!」
決意も新たに、いくらか元気も湧いてくる。身体の痛みだって、今は感じられない!
おもいっきり地面を蹴って、アリーナも旅の扉へ飛び込んでいった。

【アリーナ2(分身) (HP 1/6程度) 所持品:E皆伝の証 E悪魔の尻尾
 第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】

【現在位置:新フィールドへ】
231勇者の素質:2005/06/01(水) 11:49:49 ID:iFd2D2X6
「ふむ…そろそろ時間ですかな」
空に浮かぶ太陽の位置を見てパパスが言った。
「結局、互いに息子には会えずじまいでしたな」
「なぁに、アレはそう簡単にくたばるような奴ではでないですし、パパス殿の息子も必ず生きている」
「ウム、そうですな」
そう、アルスはそう簡単に死ぬような器ではない。
近所の婦人に抱かれ、その胸に顔を埋めるのが好きな、少し将来が心配になる息子だったが。
アルスは自分よりも、誰よりも勇者としての素質がある。そう確信していた。
幼くても理不尽を許さず、やさしさを持っていたアルス。
魔法と剣の才能の片鱗も見えた。
そして、神龍の力により蘇り見た。
大きく育ったアルスは、間違いなく立派な勇者に育っていた。
…まあ、少しスケベではあるが。

「行きましょうパパス殿、生きていれば必ず会えますとも」
その言葉にパパスはうなずき、二人は旅の扉に向かっていった。

【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:新フィールドへ 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:新フィールドへ 第二行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:新フィールドへ】
232あぼーん:あぼーん
あぼーん
233あぼーん:あぼーん
あぼーん
234あぼーん:あぼーん
あぼーん
235孤独で、一人で 1/3:2005/06/02(木) 23:15:45 ID:su/eXaqx
ボクはここにいる。独りでここにいる。

大好きなご主人さま。
頼りになるあのヒト。
優しい友達のみんな。
ボクが知っているヒトは、誰も居ない。

袋から出してくれたおじいさん。
おじいさんを襲った怖いヒト。
どっちも、もう居ない。

おっかないマジョの姿はもう見えない。
青い空には雲が静かに流れるだけで、何もない。

誰もいない。

助けてくれるヒトも、誰もいない。
236孤独で、一人で 2/3:2005/06/02(木) 23:18:35 ID:su/eXaqx
――思い出す。
あのおじいさんに、袋から出してもらった時のこと。
頭を撫でてもらったこと。
少しの間だけど、森の中を一緒に歩いたこと。
独りじゃなかった時のこと。

でも、あの怖いヒトが襲ってきて……
おじいさんはボクにこう言ったんだ。
「お主の飼い主も、お主を探しているはずでござるよ」って。
だから、「行け」って。ボクを待ってくれるヒトのために、行けって。

ボクは独りで逃げたんだ。
おじいさんのことは心配だったけど、ご主人さまに会う前にやられるわけには行かなかったから。
ご主人さまもボクの事探してるはずだから。待っているはずだから。
もう、がむしゃらに走って走って走り続けた。
山の中に逃げて、ご主人さまを探しながら歩いて。お腹がすいて、それでも歩いて、疲れて、それでも歩いて……

そうしてボクは、今、ここにいる。

足はガクガクで動かない。
お腹はペコペコで動けない。
『旅の扉』ってのに入らなきゃいけないらしいのに、もう一歩も歩けない。
眠くてたまらなくて、でも……寝たら間違いなくこのまま死んじゃうよ。
歩かなきゃいけないのに、体が重くて動かない。

ああ、ご主人さま……今、どうしているんだろう。

眠すぎて頭がぼうっとする。
体が落ちて、浮き上がるような感じがして、セカイが真っ青に染まっていく……
……もう、ボク、ダメなのかな。

ご主人さま、会いたいよ……独りぼっちはいやだよう……
237孤独で、一人で 3/3:2005/06/02(木) 23:26:09 ID:su/eXaqx
(いやー、間に合ってよかった! 絨毯でも何でも試してみるもんだな!)
旅の扉を潜りぬけながら、ブオーンは思う。
もしも絨毯に口がきけたら、砂埃にまみれた自分の苦労を少しは労えと叫んだだろうが……
残念ながら絨毯が喋れるはずもないし、ブオーンの思考は自分の身を守る方法を考えるだけで精一杯だ。
(さーて。次の世界でも今日の手で誤魔化せるかな。
 しかし山の中じゃないと使えないよなぁ。
 町のど真ん中に落ちたりしたらどうしよう?)
殺されるのは嫌だ。
その思い自体は以前と何ら変わらないが――
挫けぬ心に秘められた魔力のせいか、昨日とは違う考えがブオーンの心に湧き出してきていた。
(いっそ、頑張って戦ってみるか?
 いつかみたいに三人がかりで来られたら勝ち目は薄いかもしれないけど、二対一までなら結構戦えそうな気がするぞ。
 それに上手くビビらせてやれば、他の奴らも無理に襲ってこようとはしなくなるかもしれないし)
逆に人目を集める、集団で叩かれることになるという可能性もあるのだが……
しかし誰しもテンションが上がってくると、自分の案の欠点に頭が回らなくなるものである。
(よし。これでいこう。変なところに落っこちて敵に襲われたら、俺様の強さにビビらせて追い払う!)
うっし、ガンバルゾー! と、青い光の中で気合をいれる。
そんな無駄に元気いっぱいのブオーンだが。

自分の頭の上でぶっ倒れている犬の存在には、まだ、気付いていない。


【ブオーン 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん、アンジェロ(リノアの飼い犬、メルビンの支給品)
 第一行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:砂漠の旅の扉からワープ】
238>>235修正:2005/06/03(金) 12:27:36 ID:0hJ8bjrm
私はここにいる。独りでここにいる。

頼りになるあの人。
親切で優しい友達のみんな。
そして、誰よりも大切な――『彼女』。

私が知っている人は、誰も居ない。

袋から出してくれたお爺さん。
お爺さんを襲った、人ではない存在。
どちらも、もう居ない。

あの恐ろしい魔女の姿はもう見えない。
青い空には雲が静かに流れるだけで、何もない。

誰もいない。

助けてくれる人も、誰もいない。
239>>236修正 ご迷惑をおかけしました:2005/06/03(金) 12:41:11 ID:0hJ8bjrm
――思い出す。
あのお爺さんに、袋から出してもらった時のことを。
頭を撫でてもらったことを。 少しの間だけど、森の中を一緒に歩いたことを。
……独りになる前のことを。

あの悪魔が襲ってきた時、お爺さんは私にこう言ったのだ。
「お主の飼い主も、お主を探しているはずでござるよ」って。
だから、「行け」と。私を待つ人のために、行けと。

結局、私は独りで逃げ出した。
お爺さんのことは心配だったけれど、彼女に会う前にやられるわけには行かなかった。
彼女も私の事を探してるはずだから。どこかで、待っているはずだから。
私は走った。
お爺さんの無事を祈りつつ、走って走って走り続けた。
そうして山に逃げ込み、夜になって、今度は彼女の姿を捜し求めて歩いた。
空腹を感じながら、それでも歩いて、溜まっていく疲労をおしながら、それでも歩いて……

そうして私は、今、ここにいる。
酷使した足は棒のように動かない。
激しい空腹感が警鐘を鳴らしているが、餌を探す気力もない。
『旅の扉』に入らなくてはいけないらしいが、一歩を踏み出す余力はない。
どうしようもない眠気が、麻薬のように頭を痺れさせていく。

彼女は今、どうしているのだろう。

眠さのせいか、感覚が鈍い。
時折揺れる大地も、異常なスピードで流れていく雲も、どこか遠い出来事のようだ。
体が落ちて、浮き上がるような感覚。世界が青一色に染まっていく……
……もう、私はダメなのかもしれない。

ああ、会いたい。誰より大切な彼女に。
リノアに、会いたい……
240そして、戦いは続く 1/3:2005/06/04(土) 00:49:40 ID:HQwVKifM
廃墟と化したアリアハンの街、街だからあって当然だがその一角に井戸がある。
街を歩き回っていて目に入ったそれが気になって近づいたハッサン。
「井戸?そういやあ…もしやここが旅の扉かよ!?」
覗き込んでみた井戸の底は水面の反射だけでなく
確かに何だか光っている気がしないでもない。
かつて自分たちが冒険した世界では井戸が二つの世界をつないでいたこともあった。
だからスムーズに連想することができたが、これはちょっとわかりにくいだろう。

すでに時間も無く、ここでは今のところ誰にも会っていない。
この時点でアリアハン大陸に残っている人数自体がごくわずかなのだが
ハッサンが知るわけもない。
もう皆次の世界へと向かったのだろうか。自分も向かうべきだろうか?
そんなハッサンの背後にゆっくりと近づく殺意。


おおよその位置をつかんで来てみればぼろぼろの鎧を着た大男がいる。
その男の視線が、セフィロスの探し物の位置を教えていた。

―その井戸か。それにしてもこの男は何をしている。
 ククク…こんな時間まで待ち合わせか?そいつは死んでいるのではないのか?

セフィロスは極力気配を消したままで背を向けたままの男に近づく。
少しずつ二人の間の距離が詰まってゆく。もう少し。まだ遠い。
村正を持つ手に少しずつ力が込められていく。
やがて間合いに到達し、疾風のごとく突きかかるセフィロスの凶刃。
だが。
241そして、戦いは続く 2/3:2005/06/04(土) 00:53:41 ID:HQwVKifM
「甘いぜ!あんたが思っている以上にあんたの殺気は強いみたいだぜ!」
大男は振り返ると同時に手にある奇跡の剣で突きを払いのける。
その動きに続くハッサンの斬撃をかわしてセフィロスは井戸の近くへと飛び退った。

「ようやく誰かいたと思ったらこんな奴かよ。…ん、まてよ?
 おい。まさかあんたがロザリーさんを襲い街をぶっ壊したのか?」

氷のような印象を受ける銀髪の黒コートは僅かに間をおいて言い放つ。
「クク……さあな。何人か殺したが他人の名前など気にしていない」
「んだとぉ!?あんた…人を殺したなんて、軽く言いやがって!
 あんたみたいに人を殺してまわることこそ魔女の思うつぼだろ!?わかんねぇのか!?」

沸騰して何かわめき散らす男の言葉を聞き流しつつ相手の観察、状況確認を行う。
目の前の男は見たところかなり戦闘経験のあるパワー型の戦士、または格闘家のようだ。
今の反応からして雑魚ではないが、体力もいくらかは回復したことであるし
1対1でまともに戦って私が負ける要素は無い。
しかし。
最も気がかりな時間はもうすでにほとんど残されていないはずだ。
いくらかでも手間取ってタイムオーバー、では話にならない。
ここは移動を最優先すべき局面だ。


「とにかく、あんたは放っちゃおけねえ。聞いてるのか!?」
「…残念だがお前の相手をする時間は無い」
話の間に魔力を集めていたセフィロスの左手がハッサンに向けられる。
同時にハッサンの周囲の空気が急速にその温度を下げ始め、
魔法による青い氷がハッサンを包みこんでいく。フリーズ。
そのまま振り向きもせずに井戸へと飛び込むべくセフィロスはふちに足を掛ける。
242そして、戦いは続く 3/3:2005/06/04(土) 00:54:55 ID:HQwVKifM
突然にその背後で起こる、意図しない鈍い爆発の音と衝撃。
振り返るとそこにはフリーズの氷を割って立ち上る火柱が。廃墟から砂煙が舞い上がる。
ハッサンは自爆…ではなく判断良くレンジャーの大技、ひばしらでフリーズを相殺したのだ。

セフィロスが状況を確認し次の行動を考えるより早く、炎と砂煙を突き破って
ハッサンの巨体が飛び出し、その勢いのままセフィロスへと体当たりを敢行する。

「なんだと!?」
「生憎ちょっと爆発やら爆風なんかで鍛えられちまってな!逃がさねぇぜ!!」

しっかりと村正を持つセフィロスの腕をつかむハッサン。
もつれ合いながら二人は井戸の底へと落ちてゆく。
そのまま二人は同時に次の世界へと旅立っていった。

【ハッサン(HP 3/10程度)
 所持品:E神秘の鎧(半壊) E奇跡の剣 爆発の指輪 いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:セフィロスを倒す 
 第二行動方針:オリジナルアリーナと仲間を探す
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【セフィロス(HP1/2程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 オーガシールド いかづちの杖
 第一行動方針:ハッサンを倒す
 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】

【現在位置:新フィールドへ】
243アリアハン大陸消滅:2005/06/04(土) 02:50:42 ID:Op8P+CN+
最初に空が壊れた。
続いては海。
飲み込まれるように、吸い込まれるようにそれは消えてゆく。

大陸は端から崩れて行く。
その破片は、闇ですら、ましてや光ですらない空間に飲み込まれる。
そして崩壊は大陸の中心まで迫り、完全にすべてを飲み込んだ。

多くの魂をそこに留め、アリアハン大陸は消滅した。

【アリアハン大陸 消滅】
244年頃の女の子 1/3:2005/06/04(土) 04:14:01 ID:9SjwTkm9
「…何時の間に、地図が書き換わってる」
浮遊大陸に降り立ち、真っ先にリュカは地図を広げた。
「これも魔女の仕業…かな」
小さくリノアが呟く。
こんな細かな出来事に、改めて魔女の恐ろしさを知らされる。
知らぬ間に書き換えられた地図を見つめ、三人は声を失う。

「で、これからどうすんだい、リュカさんよ」
その雰囲気を打ち破るように。片腕を広げ、少しおどけた風にジタンは言う。
「そうだね、まずは現在地の把握かな、自分がどこにいるのかわからなければ動きようが無いからね」
幼い頃から父に引き連れられ、町から町を渡り歩く日々。
旅馴れたリュカの存在は、このサバイバルでは非常に頼りになる存在だった。

「う〜ん、太陽や木々の位置からして、向こうが北だな…。
 北に森、南に山脈となると…ここかここだな。東も山脈か…となるとこっちか」
リュカは地図を広げ、周りを見渡しぶつぶつ呟きながらマークをつけてゆく。

「ここがどこらへんかわかった?」
退屈そうにその様子を見ていたリノアが声をかけた。
「うん、多分この村と村の間の、この辺りかな」
そう言ってリュカは地図の一点を指差した。
周辺を警戒していたジタンも、後ろを振り返り話に加わる。
「村か、目的は人探しだからな、行ってみるのもいいんじゃないか?」
「うん、そうだね、ビアンカやタバサもそこに向かう可能性も高い。
 でも、そういう場所にはああいう奴等も多くあつまる、危険も高いよ」
冷静に、少し冷たい目をしながらリュカが言った。
「わかってるよそんなこと。でも、だからこそ早めに見つけなきゃ、だろ」
「うん、大丈夫。理解してるよ」
リュカはそう言って、僅かに笑みを浮かべた。
245年頃の女の子 2/3:2005/06/04(土) 04:14:54 ID:9SjwTkm9
「ところでさ、リュカさんの奥さんってどんな人?」
唐突に、明るい声でリノアが切り出した。
「きれいな人? かわいい人? どうやって知り合ったの?」
同年代の少女達と変わらず、リノアもそういう話題には興味心身のようだ。
男どもはその勢いに押され、思わずたじろいてしまう。
「う、う〜ん、そうだな…。ビアンカとは幼馴染で…」
「幼馴染と結婚したの? ロマンチックだねぇ」
目を輝かせリュカを見つめるリノア。質問攻めは続く。

どうして年頃の女の子はこう言う話題が好きなのか。
そういえば、幼い頃ビアンカも、父に向かって同じようなことを聞いていた気がする。
最近では娘のタバサもそう言うことには敏感だ。
そんなことを思い出し、リュカは少しだけ笑った。

その中で、家族の話題で盛り上がる中。
リノアがレックスの話題に触れないよう、思い出さないように心がけて話していることに気づいた。
それは無意識か意識してのことか、それはわからないが。
その心にリュカは少しだけ感謝した。

「…そろそろ勘弁してくれないかな」
「え〜、もっと聞かせてよ」
疲れきったように言うリュカに、リノアが不満をたれる。
「おいおい、そんな話をしてる場合じゃないだろ。
 こんなことをしてる間に、探し人が危ない目にあってるかもしれないんだぜ?」
先ほどまでリュカと同じく、年頃の女の子の勢いに押されていたジタンが口を開く。
「そうだね、二人とも無事でいてくれるといいんだけど、できれば一緒にいてくれれば助かるし、
 誰か強い人が守ってくれていればもっといい。まあ、そう美味くはいかないんだろうけどね」
そう呟くリュカだったが。
妻と娘は行動を共にし、それを世界を救った賢者が守っている事など知る由もない。
246年頃の女の子 3/3:2005/06/04(土) 04:34:43 ID:9SjwTkm9
「それにピエールとはぐりんも心配だな、特にはぐりんは臆病だから、きっと怯えてる。…それに」
そう言って、唐突にリュカの言葉が止まる。
「それに、なんだよ?」
「…いや、なんでもない」
リュカの頭に浮かぶのは、参加者名簿にあった、死んだはずの父の姿。
ある筈のない父の存在。
これが本当ならば、是が非でも会いたい。
だが、今は存在の疑わしい父よりも、娘と妻を捜すのが先決だ。

「それで、どうするんだ。北の村か、南の村か」
「そうだな…」
そう言ってリュカは、地図を見ながら考え込むような顔をした。

【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【ジタン 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【リノア 所持品:賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 基本行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【第一行動方針(共通):北か南の村へ向かう
 第二行動方針(共通):リュカの仲間を探す】

【現在地:ウルの村、カズスの村の間の草原】
247喜劇 1/2:2005/06/04(土) 07:06:56 ID:AGpbsRRK
ただ静けさが支配する誰もいない森。
その静けさを打ち破るように、不意に上空の空間がゆがむ。
ゆがみの中から、銀色の美しい青年が現れた。
青年はその場に着地すると、わき腹を押さえひざまづいた。

アリアハンを離れる直前。
魔物との戦闘中に現れた女。
誰も、自分でも、人を殺そうとするのならば心が動く。
殺意、怯え、恐怖、怒り。
その感情は読みやすい、その気配をもとに攻撃を避けることなど、自分には造作ないこと。
だが、あの女にはそれがなかった。
自然に、殺気も何も発せず弾丸を放ったのだ。
まるで、当たり前の日常の作業のように。
横合いから完全に不意を突かれた。

その傷は深い。
怒りに任せ、自分の状態も考えず撃ってしまったフレアも、負担になっている。
血が溢れるわき腹に回復魔法をかけるが効果が薄い。
何とか血は止まったが、この傷は流石にまずい。
このままでは死んでしまう。
死ぬ?
248喜劇 2/2:2005/06/04(土) 07:07:15 ID:AGpbsRRK
「フ、フフフ……」
唐突にクジャは笑う。
「ク、ククク……アハ……アハハハハハハ!! 死ぬだって…この僕が!?」
傷口を押さえていた手を離し、両手を大きく広げ、空を見上げ叫ぶ。
勢いよく広げたその手からはベットリ付いた血が飛び散り、キラキラと宙に舞い輝いた。
その様は舞台の上で唄う役者の様。
「ハハハハハ… バカげた話だ。僕が死ぬなんて。
 ガイアに戦乱をもたらしたこの僕が、完全な魂を手に入れたはずのこの僕が!
 訳の分からぬまま蘇り、また死ぬというのか? また失うというのか? この魂を!
 アハハハハハハハハ! まるで喜劇だ! 哀れな人形をあざ笑う喜劇だ…。
 これを笑わずしてなにを笑う! 魔女もガーランドもさぞ満足だろうよ!
 ククククク…ハハハ…ハハハハハハハハハハ!!」
壊れたように笑い続け、その笑い声は虚しく森に吸い込まれる。
そして、電池の切れたかのように、唐突にその笑いは止まる。
両手を広げたまま、糸の切れた人形のようにバタリと後ろに倒れこんだ。

倒れこみ、木々に囲まれ見上げるその光景は、いつかの記憶を思い出させた。
すべてを失ったあの時。生きるという意味がわかった気がした。
だけど、今はもう、その気持ちを思い出すことができない。
「…ああ、ジタン…僕は今、とてつもなく君に会いたいよ…。セフィロス、君でもいいかな…」
そう呟き、クジャはゆっくりと立ち上がる。
この二人なら、なにか答えをだしてくれる、そんな気がする。おそらくその答えは、対極の答えなのだろう。
そして、森を後にしたクジャは、北に見える村に向け歩き始めた。
そこに彼の望む再会は待っているのだろうか?
それは、まだ誰もわからない。

【クジャ(HP 1/5 負傷、MP消費) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾
 第一行動方針:ジタンかセフィロスに会う、会ってどうするかは不明 最終行動方針:最後まで生き残る】
【現在地:ウル南の森→ウルの村 移動中】
249邂逅直前にて彼の考察を 1/2:2005/06/04(土) 10:48:07 ID:ehvTP1NK
簡素な魔法を数回窓の外へ撃ちながら、「成程」とギルダーは呟いた。

ここは浮遊大陸の西にあるサスーン城。
その東の棟にあるサラの寝室に、彼はいた。
別にやましい心でそこに来た訳ではない。
偶然そこに降り立っただけだ(それもどうかと思うが)。

話はそれたが、とにかくギルダーは満足気だった。
何故かというと、それは彼の得意分野に関係していた。

彼は魔法が使える。そしてその魔法には詠唱が必要だ。
そして唱えるのは人間だ。
人間というものは回りの雰囲気に飲み込まれやすい。
故に不安が重なると、本来の力を発揮できない状況に陥りやすい。

だがここは浮遊大陸。ギルダーの故郷だ。
舞台がそこに選ばれてしまったのに腹が立つが、有難くもある。
地の利などといった、自分に対する有利な状況が生まれたということだ。
そうして彼は精神的に余裕が出来たのだ。

「セージの詠唱が早すぎると思っていたのは……やはり気のせいか」

精神的に余裕が出来たことによって、彼の魔法のキレは確実に良くなっていた。
セージと戦った時のようにヘマをすることは少なくなるだろうし、自分も詠唱を気持ち程度ではあるが早く紡ぐ事が出来た。
セージ自身、以前の殺し合いの地が自分の世界だと話していた。
彼も地の利等の有利な条件が揃ったことで、不安がなくなっていたのだろう。
だからあの様な強敵と化していたのだろう。あのように落ち着いて素早い詠唱が出来たのだろう。
250邂逅直前にて彼の考察を 2/2:2005/06/04(土) 10:49:52 ID:ehvTP1NK

「逆に言えば……あいつは今少し危険ということか」

ならば今ここに来た彼はどうなるのだろうか。流石に余裕ぶる暇は無いだろう。
あの2人の女性を護れるのだろうか。
まぁ簡単に死ぬような事は無いだろう、そう信じたい。

そして、問題はまだある。
それは自身の世界の住人のことだ。

この世界の人間は、ギルダー以外に8人もいる。
その中にこのゲームに……かつての自分のように乗っている人間が出てくると、危ない。
くどい様だが地の利などの有利な条件を持っている。精神的にも余裕が生まれた頃か……。

と、唐突に彼の耳が音を感知した。
足音が聞こえる。更に言うと確実にこちらの部屋に向かっている。
何人いるのかは、無駄に音が壁に反響している所為でわからない。どうするか。

とりあえず、不確定要素が多すぎる。
彼はもしもの事を思い、ライトブリンガーに手をかけながら、その音が近づくのを待った。


【ギルダー 所持品:ライトブリンガー 手榴弾×2 ミスリルボウ
 第一行動方針:こちらに近づく者を待つ
 第二行動方針:サックスとエリアを探し、ビアンカ達と再会
 基本行動方針:自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
【現在位置:サスーン城東棟 サラの寝室】
251即ち誘われる事よ 1/3:2005/06/04(土) 12:16:15 ID:uFkg9FWJ
「何ッ!?」
「む?」

2人の人間が浮遊大陸に着地した。その2人の名はゴゴとアグリアス。
彼らはアリアハンの旅の扉からここ浮遊大陸に飛ばされたのだが……。
「まさか空中に飛ぶとは思ってはいなかったな……」
「そうだな、アグリアスよ。ところでマティウスの姿が無いようだが……」
そう、真相はアグリアスの言うとおりである。
そしてきょろきょろと辺りを見回し、マティウスを探していると―――

「ウボァー」

と、悲鳴(と言うべきなのかわからん声)が聞こえてきた。
後ろからだ、後ろの湖からだ。バシャーンという音もした。
これはもう間違いなく……。
「マティウーッス!!」
「ぐっ…服が重い……っ!浮かぬっ!」
「ほら、手を貸してやる!掴まれッ!」
予感的中。
マティウスは見事に湖の方へと投げ出されて溺れていた。
岸から手を伸ばし助けるアグリアス。幸運にも相手が岸辺だったのですぐに助けることが出来た。
マティウス自慢のいくつかの装飾品は沈んでしまったが。

「くっくっく、だがこれは死守したぞ……」
「流石だな…」
だがマティウスは必死に「これ」を濡らさない様にしていた。
努力のかいあってかそれはどこも濡れてはいない、乾いたままの状態だ。
そして、予想は出来ているだろうが、気になるマティウスの「これ」とは……。
252即ち誘われる事よ 2/3:2005/06/04(土) 12:17:44 ID:uFkg9FWJ

「どうだ、なかなか似合うだろう?」
そう、「これ」とは勿論あのタークスのスーツ入りの支給品袋の事だ。
盛大に濡れてしまった服を捨て、体を乾かし、マティウスは遂にそのスーツに袖を通したのだ。
「………」
「………」
だが、2人は無言だった。
コメントのし様が無いのだろう、黙っている。
それを見てマティウスも黙った。

「で……私たちが出た場所はどうやら南側のようだな…」
「何故判る?」
「見ろ、地図が変わっている。恐らくアグリアス、お前の地図も書き換わっていることだろう」
「な……ッ!」
「これもあの魔女の力といったところか。ふっ、ますます面白いことになった」
沈黙が耐えられなかったのか、すぐに話題を変えるマティウス。だがこれは実際大切な話だ。
そして改めて、書き換わった地図を眺めた。と、突然にマティウスはある一点の方角を見た。
「どうした?」
「地図によると、あちらの方角に城があるらしい」
「城…サスーン城、とかいう奴か?」
「ああ、そうだ。無性に気になってな……」

それはマティウスの体を流れる皇帝の血なのだろうか。
それとも自身にもわからぬ感覚が起こしたものか。
そんな事は誰にもわからないのだが。
「ならば私はマティウスに賛成だ。私にも興味が沸いてきた」
「そうか、ならば後はゴゴの意見を聞きたい所ではあるが……」
そして2人は先程から押し黙っていたゴゴを見る。
するとゴゴは静かに言った。

「私は今マティウスの真似をしている。マティウスが是と言うならば、真似をしている私も是と言うのみだ」
253即ち誘われる事よ 3/3:2005/06/04(土) 12:19:37 ID:uFkg9FWJ



そして3人は、今森を歩いている。
あの大きな城を目指すために。
そこに何があるのか等、まったく予想はつかないが。

【マティウス 所持品:ブラッドソード 男性用スーツ(タークスの制服)
 第一行動方針:サスーン城へ行く
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】

【ゴゴ 所持品:ミラクルシューズ ソードブレーカー
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】

【アグリアス 所持品:クロスクレイモア、ビームウィップ
 第一行動方針:マティウスに同行する 最終行動方針:魔女討伐に乗る】

【現在位置:サスーン城北東の森(小規模な森の方です)】

※マティウスはタークスの制服を着用しています
254即ち誘われる事よ 訂正:2005/06/04(土) 13:11:12 ID:uFkg9FWJ
マティウスの
「で……私たちが出た場所はどうやら南側のようだな…」



「で……我々が出た場所はどうやら湖の南側のようだな…」

に変更してください。
申し訳ないです。
255死そのもの 1/4:2005/06/04(土) 13:26:58 ID:By1lGeRY
ドシャ

上空のゆがみから放り出され、着地もままならない体は投げ出される。
地面にうつ伏せたソレは、生まれたて赤子のように震えながら。
何度も、崩れては立ち上がることを繰り返す。
ソレにとって、そんなことは苦痛でも何でもない。
そんな感情も感傷もない。
ただ立つ必要があるから立つ。
崩れるからまた立つ、それだけのこと。

何度それを繰り返しただろうか。
何度目かの繰り返しの果てソレは立ち上がった。
そして、それに達成を感じるでもなく、ソレは歩き始めた。

ふらふらと、今にも崩れそうな歩みでそれは歩く。
そして、しばらく進んだ頃。おぼろげな瞳が獲物を捕らえた。
瞬間。
これまでの怠慢な動きからは、信じられないほどの速さでソレは駆け出した。
その動きはもはや、人の動きではない、獣ですらない。
ただ向かい獲物へと突き進む。
256死そのもの 2/4:2005/06/04(土) 13:28:59 ID:By1lGeRY
回復のできる者を捜さんと、森を駆け回っていたレオ。
その後ろから、突然の銃声が聞こえた。
同時に伝わる衝撃、レオは地面に倒れこんだ。
背負っていた女性が盾となったのか、弾丸はレオの体まで届くことはなかった。

「クッ、はっ、大丈夫か!?」
起き上がったレオは、すぐに自分の盾となってしまった女性の所に駆けつける。
「クソッ…死んでる」
もともと重症だったその体は、今の衝撃で完全に終わりを告げた。
歯を食いしばり、狙撃のあった方向をにらみつける。
だが、狙撃者の姿は木々に紛れ、確認することはできない。

真後ろで木の葉の揺れる音がした。
とっさに後ろを振り返る。
そしてそこには、何かがいた。
木々の間をすり抜けながら、銃を構えこちらを狙っている。

逃げねば。そう脳が命令する前に、レオの体は反応する。
幾多の戦場を戦い抜いてきた経験が、思考よりも早く体を動かす。
弾丸をかわしながら、果物ナイフを投げつける。
ナイフは拳銃に当たり、その手元から弾かれた。
着地したレオは体勢を立て直し、ザックから吹雪の剣を取り出した。
それと同時に、敵もこちらに向かい近づいてくる。
その動きは人の動きではなかった、ましてや獣でもない。
それは地を這うように、跳ねるように、木々を蹴り近づいてくる。
予測不可能なその動きは、レオをしても捕らえきれない。
懐に飛び込んできたソレは、ナイフでレオの胸元を切り裂く。
切り裂かれた胸元を気にせず、レオは反撃のため刃を振り上げる。
だが、レオが振り上げた刃を振り下ろした頃には、敵は間合いを離れ遠く距離をとった後だった。
257死そのもの 3/4:2005/06/04(土) 13:30:12 ID:By1lGeRY
そしてまた、先ほどの再現のように、敵が間合いが詰める。
だが、今回の攻撃はレオには届くことはなかった。
ボロリと、腐り落ちるように飛び回る左足が崩れた。
それは必然であろう。極限まで傷ついたボロボロの体が、これほど激しい動きに耐え切れるはずもない。
片足を失い、バランスを失った体は崩れる。
倒れこみ、まるで陸に上がった魚のようにバタバタともがく。
その姿を見たレオは、すでに戦闘能力はないものと判断し、一瞬、戦闘の緊張を解いてしまった。

その瞬間、残った片腕と片足、全身を跳ねさせソレは跳んだ。
不意を突かれたレオは、それを避けることができない。
レオにしがみついたソレは、頚動脈目掛け歯を突きたてた。
歯が肉に食い込み、血が吹き出す。
レオは引き剥がそうともがくが、その力は異常だ、とても片足、片腕とは思えない。
必死にザックからビームライフルを取り出し、しがみつくソレめがけ引き金を引いた。
撃たれたソレは、腹部を貫かれ大きく宙を舞い地面に落ちた。
そして、ピクリとも動かなくなった。

息を切らし冷や汗を流し、レオはその場にひざを着く。
そして、首に食い込み抜け落ちた歯を引き抜いた。
幾多の戦場を潜ってきたレオですら、これほどの恐怖を覚えたのは初めてだった。
魔物とも、ましてや人間と戦っている気がしなかった。
まるで、死そのものと戦っているようだった。
何なのだコレは、コレは人間なのか? 人間だったのか?
このゲームの生み出す狂気、死者の怨念がこの化け物を作り出したのだろうか。
ならばそれは、なんと恐ろしいことか。
ならば、誰ともわからぬこの人間も、このゲームの被害者なのだろうか。
ならば、先ほど死んでしまった女性と共に手厚く葬ってやろう。
そう思いレオは二つの死体のある方向を見つめる。

そこに死体はひとつしかなかった。
258死そのもの 4/4:2005/06/04(土) 13:32:05 ID:By1lGeRY
そして銃声が響いた。
銃声のほうを見てみると。
そこには、地面をはいずりながら、こちらに銃口を向ける何かがいた。
「…ガハッ」
口元から血がこぼれた、そうしてやっと自分が撃たれたことに気づく。
体から力が抜ける、地面にひれ伏し地をなめる。
もう体は動くこととはないだろう。
見開いた目は動かすこともできず、自分の命を奪った者を見つめる。

同じように這いずりながら地をなめる、その口元は、

笑っていた。

【ティファ(HP一桁程度) (右腕喪失/左足喪失/全身火傷/感情喪失) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×4)、エアナイフ
 第一行動方針:目に映るものを全て殺す 基本行動方針:生き延びる 】
【現在地:カズス北西の森南部】

【フライヤ 死亡】
【レオ 死亡】
【残り 79名】
259ニアミス:2005/06/04(土) 13:44:28 ID:vZNMOXPd
「どけどけー邪魔だ邪魔だー!ひき殺されてぇのか、バカ野郎この野郎オメー!!」

背後からの罵声とクラクションに驚いてティーダは振り返る。
軽トラが猛スピードでこちらに突進しようとしていた。
運転席と助手席、そして荷台に誰か居るのが見える。
気絶したアーヴァインを抱えたまま慌ててその場から横っ飛びすると、ティーダ達の体のすぐ前を軽トラが走りぬけていった。
タイヤが地面を巻き上げ、跳ね上がった土がティーダの全身にかかる。
ティーダはあっけに取られて、その軽トラを見送った。
荷台の上には何人かが振り落とされないように必死へばりついている。

何だよ、あれはー!?何であんなのが走ってんの??
この世界の車?それとも誰か支給品が軽トラだったとか?
それにしても乱暴な運転だなぁ。もー、誰だよー!!

さっき軽トラが通り過ぎるときに一瞬見えた荷台居た1人の横顔…
ティーダはある人物に思いあたった。
「いや、そんな…まさかね…」

浮かび上がった答えを頭の中で否定すると、
気を取り直してアーヴァインを担ぎなおし再び森の出口を目指した。
260ニアミス:2005/06/04(土) 13:45:49 ID:vZNMOXPd
【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕 首輪×1
 第一行動方針:とりあえず森から出る
 第二行動方針:仲間になってくれる人を探す/アーヴァインを助ける(ただし、人殺しだとわかったら……?)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アーヴァイン(気絶+毒、HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP〜1日目深夜までの行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:? 第二行動方針:罪を償うために行動する】


【フルート 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣】
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート】
【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ 
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト】
【サックス 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り】

【第一行動方針(五人共通):開けた場所まで出る(軽トラ搭乗中)
 第二行動方針(五人共通):なるべく仲間を集める
 最終行動方針(五人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】

【ユウナ(ジョブ:白魔道士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子
【プサン 所持品:軽トラック、錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:軽トラ搭乗中 第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける 最終行動方針:ゲーム脱出】

【現在位置:ウル南部の森】
261砂漠の攻防 1/3:2005/06/04(土) 17:43:06 ID:8uOx3qFi
照りつける太陽、その恩恵をを最も受けた砂漠。
何もなく、ただ砂ばかりの広がるその空間。
その上空から、二人の男がもつれ合いながら現れた。
そして、二人は着地もできず砂漠に落ちた。

「…まったく無茶をする」
銀髪の男は砂を払いながら立ち上がり、髪を掻き上げ、目の前の男見つめる。
「ゲホッ! ゲホッ!」
砂が口にでも入ったのだろうか、少し離れた場所で男は激しく咽こんでいた。
男は視線に気づくと、その目を睨み返し、立ち上がり剣を構える。
「まあいい、タイムリミットもなくなったことだ、遊んでやろう」
セフィロスは村正を構えハッサンを睨む。
その殺気は射殺すように鋭く。
その殺気だけでハッサンの動きは封じられた。
「なっ…」
そして気づく、目の前の男の規格外さに。
自分が何に喧嘩を売ってしまったのかに。

「…どうした、動けないのか?」
嘲笑うようにセフィロスが言った。
目の前の大男は俯き、プルプルと震えている。
セフィロスはそれを見て落胆する。この程度なのかと。

「それがどうしたぁぁ!!」
唐突に俯いてた男が叫んだ。
「こっちゃあ大魔王とも戦ってるんでぇ! お前みたいな奴にビビってられっかよ!
 ミネアさんとの約束もあるんだ、こんな所でくたばってられるか!」
大声で叫び、ハッサンはセフィロスに向かい斬りかかった。
262砂漠の攻防 2/3:2005/06/04(土) 17:45:58 ID:8uOx3qFi
襲い掛かるハッサン。
その攻撃は岩を砕く砕石機の様に重く、激しい。
だがその攻撃もセフィロスは涼しい顔で受け流す。
そして、振り下ろされた攻撃を大きく弾き、セフィロスは胸元めがけ激しく切りかかった。
その攻撃は、ボロボロだった神秘の鎧を打ち砕き、ハッサンの胸を引き裂いた。
「ガハッ…」
血反吐を吐き、ハッサンは膝をつく。

「…終わりだ」
冷たくそれを見下ろし、ハッサンの首下に刃を向ける。
「へっ…そうはいかねぇ」
そう言って笑うハッサンの指には、いつの間に装着したのか、怪しげな光を放つ指輪がはめられていた。
「…お前も道連れだ」

砂漠の砂を巻き上げ大きな爆発が起こる。
「…へへ、やった、ぜ」
ふらふらになりながらもハッサンは立ち上がる。
死を覚悟し選んだ苦汁の選択だったが、何とか生き永らえている。
ハッサンは知らなかったが、爆発の指輪は術者の命を奪うことはない。

あの男はどうなった?
あの距離だ、いくらなんでも回避は不可能。
まともにあの爆発を受けたのならば跡形もなく吹き飛んでもおかしくはない。

「あれ? とっと」
バランスを取れずふらつく体。
流石にまずい、神秘の鎧が壊れた今、回復する手段を見つけなければ。
263砂漠の攻防 3/3:2005/06/04(土) 17:46:45 ID:8uOx3qFi
そう思い、歩き出したハッサンの体に、グチャリと、おかしな音が響いた。
「…アレ?」
ふと下を見つめると、自分の腹から剣が生えている。
可笑しな光景だ。ハッサンは笑う。
だが、その笑いは引き裂かれ、強制的に終了させられた。


「…ふう、これはもう使えんな」
そう言って焼け焦げた巨大な盾を投げ捨てる。

あの近距離での大爆発。
セフィロスは咄嗟にザックの中からオーガシールドを取り出し、その影に身を潜めたのだ。
近距離で爆発を受け止めたその盾は使い物にならなくなってしまったが、それはいい。
元より自分は盾を多用する戦闘スタイルではない。
道具は効率的に扱うべきなのだ。
そう思いながら、セフィロスはハッサンのザックを回収し、北へと向かって歩き始めた。

【セフィロス(HP1/2程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 爆発の指輪
     いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:北に向かう
 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【現在位置:カズス西の砂漠】

【ハッサン 死亡】
【残り 78名】
264自信喪失 1/2:2005/06/04(土) 18:08:04 ID:FWwxMfE5
「ぐ……ごほっ、ごほっ、…」
綺麗な、黄緑色の草の上にギルガメッシュの赤い体液がぽたぽたと落ちていく。
腹に突き刺さっていた銅剣を、強引に抜き出したせいで余計に体力が失われる。
痛い。シャレにならないくらい痛い。
だが、そんなことよりも、

「ちくしょう…サリィ…」
ギルガメッシュは地面をたたいた。
口は悪いけれど、自分が絶望していたときに励ましてくれたサリィ。
一緒にいた時間はそれほど長くはないけれど、仲間だった。
――正直、まだ、サリィが死んだのだとあまり実感できていない。
それは、『あの出来事』があまりにも唐突で一瞬のことだったからかもしれないし、
…それとも自分は、どこかで自分たちだけは死ぬはずがないと過信していたのかもしれない。
フリオニールの精神状態のことも、どこか楽観視していたように思える。
『なんとかなる』と。

けれども、それはどれもこれも間違いだった。
現に、サリィは殺された。フリオニールに、あっさりと木っ端微塵にされた。

(ちくしょう…俺は……人任せばっかりで…)
クルルの死を聞いて、サリィに励まされたときはしっかりしないと、と思ったのに。
結局、ゲームを脱出するなんていいながら自分はなに一つしていないし、
サリィが一晩かけて、自分のために鍛えなおしてくれたラグナロクまで、フリオニールに奪われた。
…けれども、はたして自分にフリオニールを責める資格があるんだろうか…?
……
265自信喪失 2/2:2005/06/04(土) 18:09:15 ID:FWwxMfE5
これからどうするか。するべきこと、しなくちゃいけないことはたくさん浮かんでくる。
わるぼうを、レオンハルトを、ライアン、カイン、フライヤ、スミス……それにバッツをレナをファリスを探す。
フリオニールを止める。マーダーを止める。ゲームをぶち壊す策を考える。協力者を探す。
けれども、そのどれもが今の自分では成し遂げられないことのようにさえ思える。

「はぁ……会わせる顔がないっつーのは、このことだな…バッツ……」

独り言を言いながら。ギルガメッシュは痛む傷口を押さえながら、ふらふらと立ち上がる。
…ひとまず傷の治療だ。これからのことは、そのあとで考えよう…。
そう思い、遠目で確認できる村へと向かうことにした。

【ギルガメッシュ(HP1/3程度・無気力状態) 所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣
 第一行動方針:カナーンへ向かい、傷の治療】
【現在位置:ジェノラ山ふもとの平原】
266サス―ン城にて 1/3:2005/06/04(土) 23:01:34 ID:RPx+c1YI

「何故だフリオニール!どうしてあんなことを…」
どこか大きい城の正面、剣を構えて向き合う二人のうち、一人がそう叫ぶ。
「どうして?どうしてか」
もう一人がオウム返しに言うと、構えの姿勢のまま声を上げて笑った。
「簡単な事だレオンハルト。マリアを返してもらうんだよ」
フリオニールのその言葉に、レオンハルトは反射的に「…何?」と問う事しか出来なかった。
「だから、本当に簡単な話だ。まず、他の参加者を全て殺す。」
「そして俺が最後の一人になった時に、あの魔女にマリアを返してもらう。単純明快だ」
「安心しろ。その時はお前も、ついでにミンウもリチャードも返してもらうから。あ、マティウスだけは別な」
惚けたような目でレオンハルトの混乱しきった顔を眺めながら、彼は一気にまくしたてた。

「そんな…そんな馬鹿馬鹿しいことを、本気で…?」
数歩、殴られでもしたように後ずさりながら、レオンハルト。
そんな彼に、フリオニールはまたしても叫んだ。
「馬鹿馬鹿しい!馬鹿馬鹿しいと来たか!!」
ラグナロクを片手でクルクルと回転させ、狂ったような笑い声を上げた後で、続けた。
「確かに今の俺は馬鹿かもな。
 どうもこのゲームが始まってから、俺は狂っちまったかもな。
 あのスミスとか言う飛竜に、いいように騙されて利用されてるだけなのかも…」
そこでフリオニールはふっと言葉を切ってうつむき、前日までのあの虚ろな光が眼に宿ったように見えた。
しかし、「だが」と顔を上げた瞬間、彼の目はまた狂気に満ちたものへと戻った。
「残念ながら俺は本気だ。俺を支えてる物と言ったらこれだけだからな」
「支えて…?」
「ああそうだ。
 スミスにこの話を持ちかけられた時、俺はそれまでずっとあった迷いが晴れるような気がした。
 それがただの嘘であれ、罠であれ、俺の頭にかかってた靄を晴らしてくれた事だけは確かだ。
 あいつの誘いのおかげで、俺はやっと目が覚めた」

そうしてまたも笑うフリオニールに、レオンハルトはもう我慢ならなかった。
267サス―ン城にて 1/3:2005/06/04(土) 23:04:04 ID:RPx+c1YI
気がついたときにはすでにフリオニールに肉薄し、満身の力が込もった剣を一閃させていた。
が、その一撃は名剣ラグナロクによって阻まれる。
「目を覚ませフリオニール!逃げてるだけじゃないか! お前は都合良く逃げてるだけじゃないか!!」
刃を交えて押し合いながら、レオンハルトが怒鳴る。
「そんなことは百も承知だ、兄弟!」
フリオニールも怒鳴り返すと、彼は素早く身を翻して一回転する。
力の生き場を失い、前につんのめるレオンハルトの背を、剣の柄で強打した。
が、レオンハルトもその一撃で地面に倒れこまず、手をつき、大きく倒立前転するかたちで体勢を立て直す。
暫く二人は黙って睨み合ったが、再び、同時に剣を構えた。

それから10分程、彼らはまったく互角の戦いを繰り広げた。
否、フリオニールが押していた。
レオンハルトとフリオニール。この二人は実力としては同等だが、
武器の性能の違いから差が生じた。
サリィが手がけた傑作、ラグナロクはレオンハルトのロングソードとは比べ物にならないほど強力だったし、
彼もその威力に強気になり、それに比例して攻撃により力が入っていったのだ。
このままでは不利だ。そう思ったレオンハルトは、一度バックステップで距離を保った。
その時だった。
すかさず肉薄しようとするフリオニールとレオンハルトの間に、一発の銃弾が打ちこまれた。
「!?」
二人は一瞬戦うことを忘れ、聞き慣れない轟音――銃声――に注意を向ける。
しかし次の瞬間、ふたたび銃声が辺りに響き、本格的な弾幕攻撃が彼らを襲った。
「ちっ!」
フリオニールは反射的に城壁の影に隠れ、レオンハルトも目についた木の陰に隠れる。
どうやら、城のどこかから、誰かが飛び道具で狙っているらしい。
「邪魔が入ったな…しかたがない、レオンハルト、お前は後回しだ!」
攻撃が一旦止んだ時、そう叫ぶ声が聞こえたと思うと、目の端にフリオニールが城の外へと駆けているのが見えた。
「待て!」
後を追おうとしても、先ほどの攻撃がまた繰り出され、身動きが取れない。
どうやら襲撃者は、自分の方に狙いを絞ったらしい。
「待て、待ってくれフリオニール!逃げるな!フリオニ―ル!!」
叫び声も空しく、彼の姿はすぐに見えなくなった。
268サス―ン城にて 3/3:2005/06/04(土) 23:05:36 ID:RPx+c1YI

「チッ」
サス―ン上の一室の窓に身を乗り出し、デールは舌打ちした。
逃げて行った方は城壁が邪魔になっていて、もうマシンガンで狙撃する事は出来ない。
代わりに木の陰に隠れた方に狙いが絞られたが、いかんせん弾があまり残っていない。
城の内装を見る限り、ここはアリアハンと文明のレベルは大差ないようだし、
それはもう一日、この中の弾薬が補給できない事を意味する。
「まあいい。ジワジワと嬲って壊してやるまでだ…」
デールは独り呟くと、標的が隠れている木に狙いを付け直した。



【レオンハルト(負傷、大体は回復)
 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:攻撃から身を隠す 第ニ行動方針:フリオニールを止める 
 最終行動方針:ゲームの消滅】
【現在地:サス―ン城正面、木の陰】

【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/4)、アラームピアス(対人)、
 ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
 第一行動方針:レオンハルトを殺す 第二行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在位置:サスーン城内のどこか】

【フリオニール 所持品:ラグナロク
 第一行動方針:サス―ン城から離れる 最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:サス―ン城から南へ移動中】
269訂正:2005/06/04(土) 23:09:35 ID:RPx+c1YI
>>268

×それはもう一日、この中の弾薬が補給できない事を意味する。
○それはもう一日、この銃の弾薬が補給できない事を意味する。
270>>263砂漠の攻防 修正1 :2005/06/04(土) 23:41:32 ID:4Pu2WTLN
そう思い、歩き出したハッサンの体に、グチャリと、おかしな音が響いた。
「…アレ?」
ふと下を見つめると、自分の腹から剣が生えている。
可笑しな光景だ。ハッサンは笑う。
そして、その刃は引き抜かれ、ハッサンの腹から火花のように血が噴出した。

「…ふう、これはもう使えんな」
そう言って焼け焦げた巨大な盾を投げ捨てる。

あの近距離での大爆発。
セフィロスは咄嗟にザックの中からオーガシールドを取り出し、その影に身を潜めたのだ。
近距離で爆発を受け止めたその盾は使い物にならなくなってしまったが、それはいい。
元より自分は盾を多用する戦闘スタイルではない。
道具は効率的に扱うべきなのだ。
そう思いながら、セフィロスはハッサンのザックを回収するためハッサンに近づく。
「…何だ、生きていたのか、しぶとい奴だ」
男に近づき屈みこむと、僅かながらに息があるのがわかった。見た目どおり生命力は高いようだ。
「まあいい、そこで死を待つがいい」
わざわざ止めを刺すまでもないと、セフィロスはザックを剥ぎ取り、北へと向かって歩き始めた。

死ねない。
まだ自分は何も果たしていない。
イザ達も見つけてはいないし、アリーナと言う女の事も、まだ誰にも伝えていない。
それに、こんなことでは、自分のために命を賭けたミネアに申し訳が立たない。

ハッサンは砂漠を這う。
歯を食いしばりながらも、少しずつ砂の上を進んだ。
常人ならすでに死んでいるほどの傷。
血と共に、意識と命が流れてゆく感覚がした。
そして、その意識が限界を迎えそうになった時、霞む瞳がおぼろげな人影を見つけた。
271砂漠の攻防 修正2:2005/06/04(土) 23:42:06 ID:4Pu2WTLN
【セフィロス(HP1/2程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:北に向かう
 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】

【ハッサン(HP 一桁程度)(瀕死)
 所持品:E爆発の指輪(呪)
 第一行動方針:生きる、又は誰かに意志を継ぐ。
 第二行動方針:オリジナルアリーナと仲間を探す
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】

【現在位置:カズス西の砂漠】
272偶然の賜物 1/4:2005/06/05(日) 00:55:46 ID:eAOBFlak
遂にセージ達は、無事にここ浮遊大陸へと辿り着くことができた。
アリアハンでは何回かの死闘を演じ、そうして辿り着いた新たな地。
幸運にも平和そうなカズスの街に降り立った彼らは喜ぶべきであった。
だが。

「なんでビアンカさんがいない!?くそっ!」
「多分旅の扉の中ではぐれたんじゃ……」
「けど、今までにそんな報告があったと思うかい?」
「無い……よね」

だが、そこにビアンカの姿が無かった。
どうやら浮遊大陸へと到着する前にどこか別の場所へ飛ばされたらしい。
明らかに不安を隠せない表情のタバサ。そして余裕を奪われたセージ。
2人は必死にビアンカを探し、街を右往左往していた。

「結局見つからなかったか……この街にいないって事は…完全に遠くに飛ばされたようだねぇ……」
「どうしよう…ねぇ、どうしようお兄さん!」
「大丈夫、絶対見つける!……でも、どこに目星をつければ……」

そう言いながらセージは地図を睨んでいた。
と、急に動きを止めるセージ。どうやら、目星がついたらしい。

「どうしたの…?」
「見てみなよ、ここに城がある」
「お城…本当。ここから北西ね。それがどうしたの?そこに行くの?」
「ああ、大きい建造物には人が集まる。もしかしたらビアンカさんも行くかもしれない」
「お母さんがどう考えて行動するかがわからないけど……でも、もしかしたら……」
「ああ、そういう事さ。それにもしも入り組んだ城なら潜伏しやすい部分もある」

そこまで言うと、セージは地図を片付け街を出ようと歩き出した。
そしてそれをタバサも追う。
273偶然の賜物 2/4:2005/06/05(日) 00:58:01 ID:eAOBFlak

「あ、お兄さん」
「何?」
「これ、さっき民家にお邪魔した時に失敬してきたの。私とお兄さんの分」
「失敬してきたって…こんなナイフを?あはは、抜け目ないなぁ……」

そう言いながら支給品袋にナイフをしまい込む2人。
だがまともな武器が無い2人には有難い代物だった。

「まぁとにかく…冷静に行動だ。さぁ、また歩くよ」
「大丈夫。それでお母さんに会えるかもしれないなら……!」

そして2人はまずは北方向へ歩き出す。
奇しくも、またこのゲームの始まりの時のように、2人の旅が始まった。


―――――そして一方、ここはサスーン城。
そこになんと、本当にビアンカはいた。
だがこれはセージの勘が当たったわけではない。偶然彼女が城に飛ばされただけなのだ。

「ここは…どうやら城のようね……」

辺りを警戒しながら通路を歩くビアンカ。
そしてすぐに部屋を見つけた。だが警戒を解くのも忘れない。

ふと、その部屋に何者かの気配があることに気が付いた。
敵か味方かわからない。そしてリスクは高い。

ビアンカは覚悟を決めた。
掌に魔力を集中させる。警戒も一層強める。
そして、部屋へと素早く侵入した。
274偶然の賜物 3/4:2005/06/05(日) 00:59:59 ID:eAOBFlak

「何者だ!」

そして、そのビアンカの動きに敏感に気が付いた気配の主が問う。
ビアンカはそのまま問いに答えようとしたが。

「…………貴女は……」
「も、もしかして……」

相手の姿を確認し、気づいてしまった。
そう、その相手は間違いなく、

「ギルダー!?」

そう、ギルダーだった。


「成程……一人別の場所に飛ばされてしまったのか……」
「ええ、セージさんとタバサと一緒に扉に入ったのに…おかしな話なのよね」
「しかしまた…貴女と行動を別にしてすぐに再会するとは思わなかったな」

数分後、ビアンカから事情を聞いた彼はそう言うと溜息をついた。
正直これからどうすればいいのかが思い浮かばない。
一人で行動するのであれば、多少リスクが高くても覚悟さえあればどうにでもなる。
だがこうして同行する人間がいると話がは別だ。

「ビアンカさん、とりあえずこうなってしまっては仕方が無い。少しこの部屋で潜伏しよう」
「ええ、わかったわ。実はかなり不安だし……ね」

そしてギルダーは、静かにこれからの方針を考え始めた。
275偶然の賜物 4/4:2005/06/05(日) 01:01:19 ID:eAOBFlak


【セージ 所持品:ハリセン ナイフ
 第一行動方針:サスーン城へ行く 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 ナイフ 
 第一行動方針:セージと共に行動する 基本行動方針:同上】

【現在位置:カズスの街付近→北へ】

【ギルダー 所持品:ライトブリンガー 手榴弾×2 ミスリルボウ
 第一行動方針:ビアンカと共に潜伏 第二行動方針:サックス、エリアとの再会
 基本行動方針:自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
【ビアンカ 所持品:ファイアビュート 雷の指輪
 第一行動方針:ギルダーと共に潜伏 基本行動方針:家族を探す】

【現在位置:サスーン城東棟 サラの寝室】
276死せし魔物と魔物使い 1/7:2005/06/05(日) 02:07:41 ID:+ZZ/30zq
(このゲームに死んだはずの参加者がどれぐらいいると思ってる?アルティミシア様は偉大だ。
 死人を一人か二人蘇生するなんてわけないよ)

それは先程、銀髪の剣士をけしかけたとき、自分が言ったセリフ。

青い渦の中で、何故そんなことを反芻しているのか、スミスには分からなかった。
足が草生い茂る地面についた後も、その言葉に、彼は捕らわれ続けていた。
「ねえ、カインは優勝狙ってるんだよね。優勝したら、アルティミシア様何かお願い叶えてくれるかもしれないよ。
 それこそ、死んだ誰かを生きかえすことだってさ」
突然振られた話題に、カインは足を止め、眉をひそめる。
「あの銀髪に言ったことか? でたらめかと思っていたが、魔女は優勝者の願いを叶える気があるのか?」
「さぁねぇ。アルティミシア様の御心なんて、僕が推し量れるわけないじゃないか。もしも、の話だよ」
仮定の話など、今はやって意味あるとも思えないが、ついカインは考えてしまう。
初めに浮かんだのはローザの顔。次いでセシル。
どちらか一方しか生きかえせないのなら、あの世でよろしくやっている二人に恨まれることだろう。
もし二人共を生きかえすのなら、それはそれで、自分が道化にしかなりえない。
カインは、自嘲気味に笑った。
「蘇らせたい奴なんかいないな。別に願いを叶えてくれると言うなら…、いや、今はまだ、そんなことに頭を使う余裕はないな」
取らぬ狸のなんとやらになっては目も当てられないだろう。
「そういうお前はどうなんだ。蘇らせたい奴はいないのか?」
ほとんど話の流れの惰性で、カインは問い返す。
「え、僕? 僕は…」


(マチュア!!!)
277死せし魔物と魔物使い 2/7:2005/06/05(日) 02:08:25 ID:+ZZ/30zq
誰かが、何処かで叫んだ。カインには聞こえていない。


(マチュアを、生きかえすことができる?
 でもその為には、優勝しなきゃいけない。誰かを、殺さなきゃいけない。いやだ!! 僕は、殺したくない。
 やめてくれ。もう、殺したくないんだ。誰かが死んで、誰かが悲しむ。僕は…)

(五月蝿いなぁ)

スミスは、ようやくその声が、思念が、誰のものであるか理解した。
そしてそれにもっと強い思念を送り込む。

(今さら出てきて何のようだ? お前は死んだんだ。おとなしく消えてろよ)

思念は、ぷっつりと途絶えた。

「見くびらないでよ、カイン。僕はアルティミシア様の忠実な僕だよ。自分の願いなんかあるはずないじゃないか」
ならばこの間は何だったのかと、カインは気になったがあえて問うことはなかった。
それはその双眸が、新たな獲物を捕らえたから。
男と、子供、少女だ。
まるでピクニックをしている親子、或いは兄弟のようではないか。
「無駄話はこれまでだ。行くぞスミス」
「よーっし、頑張るぞ!!」
もしもの時の為の警戒も怠らず、一人と一匹は歩を進めた。
278死せし魔物と魔物使い 3/7:2005/06/05(日) 02:09:10 ID:+ZZ/30zq
「つまり動物の言葉が分かるというわけじゃなく、何を考えているのかを感じ取れるってこと?」
「う〜ん、そうかもしれない」
落ち着くためにはまず話を、ということで振った話題は、タバサの動物との会話能力についてであった。
実は、セージは随分この能力に興味をそそられていたのだ。
昔ダーマ神殿で噂に聞いた、失われし職業「魔物使い」
タバサは彼女の父親からその力を受け継いでいるそうだ。
彼女の仲間に魔物がいることは昨日の昼中に聞いてはいたが、そのときは物好きな魔物がいるものだという風に思っていた。
確かにその魔物たちは全体から見ればごく少数なのだが、彼女や彼女の父親、そして死んでしまった彼女の兄は、
魔物たちを引きつける魅力と、魔物たちを理解することのできる心とを持ち合わせているのだろう。
それが「魔物使い」の能力なのだろう。

「魔物の心を開かせるなんて、大したもんだねぇ」
「お兄さん、それ、ちょっと違うよ」
「え?」
「魔物さんたち、本当はまっすぐに心をぶつけたいの。でも、いつもはそれができないの。
 お父さん、魔王の呪縛だって言ってた。それを浄化するのがエルヘブンの力なんだって」
「エルヘブン?」
「うん、お父さんの母方の里なの。不思議な力を持った一族が暮らしてる」
「ふうん、魔王の呪縛ねぇ。そう言えばゾーマを倒した後、野生の魔物たちが急に大人しくなってたな」
「魔物さんたち、戦いが好きな子もいるけど、平和でいたい、仲良くした言って思ってる子も、たくさんいるんだよ」

そんな話をしながら、セージはちゃんと彼らに近づく二つの気配を察していた。
タバサを後ろに下がらせて、気配に向かってナイフを構えた。
279死せし魔物と魔物使い 4/7:2005/06/05(日) 02:18:45 ID:+ZZ/30zq
「初めに言っておく。我々に戦う意思はないが、お前達がそうでないのなら…」
カインはランスオブカインを構えたまま切り出した。
その瞳は真剣で、悪意を微塵も感じさせず、少し余裕を失っていたセージには、彼の秘める思考を読み取ることはできなかった。
「こちらも同じく、戦う意思はない。構えを解いてもらえないかなぁ。レディにあまり物騒なものを見せるべきではないだろう?」
それでようやくカインはランスオブカインを下ろした。
緊張していた空気が一気に緩む。

「僕はセージ。彼女はタバサだよ」
「ああ。俺はカインでこいつはスミスという」
「よろしく、かっこいいお兄さん」

和気藹々と、お互いに名乗り、情報を求め合う。
セージはビアンカとリュカや仲間の魔物たちを探していることを伝え、カインはエッジを探しているのだと言っておいた。

「黒髪には、会わなかったな。魔物にも、こいつ以外を見てはいない。
 金髪の女性にも、この世界に着いたのがさっきだからな、流石に会ってはいない」
「そうか、すまないね。僕たちも余り動いていないから、その忍者風の男の人には会っていないよ」

次いでセージは、一応ヘンリーとデールについて尋ねた。
そこにきてカインは、そっと心の中で考える。表情には一切出さずに。
その二人については心当たりがあるのだ。だがその情報を、どの程度の精度でもって伝えるべきか…。
それをスミスに尋ねようと視線を移したときだった。

「泣いているの?」

少女の、高く可愛らしい声が、少し憂いを含んで、草原に響いた。
280死せし魔物と魔物使い 5/7:2005/06/05(日) 02:19:42 ID:+ZZ/30zq
タバサはじっとスミスを見つめている。
周囲の誰もに、タバサがスミスに話しかけているようにしか映らない。
けれどスミスが泣いているわけでもない。
タバサを除く全員が首をかしげ、それは当のスミスも同じだった。
「えっと、お嬢さん。どうしたの? 僕、泣いてないよ?」
けれどタバサの耳には、否、心には、別の、すすり泣く声が聞こえている。

(優しいね、お嬢さん。でも僕に構わないで。早く僕から逃げて。僕が君を殺す前に。死んじゃ駄目なんだ。マチュアみたいに)

「マチュア、さん?」

タバサの言葉に、スミスの目が細められた。

(死んでしまった。守れなかった。会うこともできずに。だから僕は死んだんだ。僕は死んだ。なのに僕は殺し続けてる…)

(失せろ!!)

別の声が、泣いていた者の声をさえぎり、もうそれっきり、その声は聞こえなくなった。

「お嬢さん?」

スミスはおどけた調子でタバサを覗き込んだ。
けれどタバサはまだ、その向こうにいた誰かを探していた。
281死せし魔物と魔物使い 6/7:2005/06/05(日) 02:20:27 ID:+ZZ/30zq
「タバサ、どうしたの?」
セージも、スミスに倣って覗き込む。
タバサはようやく視線をセージに移し、なんでもない、と首を横に振った。
あの声の聞こえ方は知っている。
野生の魔物と戦うとき、戦いたくないと言いながら、死をものともせず戦わされている魔物の声と同じ。
魔王の呪縛を受けている。この場合は魔女の呪縛というべきか。
そのことをセージに伝えようか迷った揚句、タバサは口を噤んでしまった。
何もかもセージに頼りきりになっては迷惑になる。
ただでさえ、今は少し余裕を失っているところなのだ。
あの魔物を開放できるのは、エルヘブンの血を持つ自分なのだから。

一方スミスは。
隙をうかがって念を送るあの死人をうざく思いながら、結局は何もできないのだと高をくくっていた。
それよりも問題は、その思念を読み取るあの少女。
(ねぇ、カイン)
タバサに気づかれぬよう、そっと相方に念を送る。
(あの子、できるだけ早急に殺してくれない? ちょっと邪魔なんだよね)
カインは、やはり気づかれぬようそっと、首を縦に動かした。
282死せし魔物と魔物使い 7/7:2005/06/05(日) 02:26:27 ID:+ZZ/30zq
「その緑髪、名簿を見る限りデールという名前の奴だが、かなり危険な奴だ」
「そうなの?」
「自分の義姉を殺し、村を一つ焼いた。そこで休息を取っていた人間を燻り出すためにな。俺も命からがら逃れた。
 見た目に強敵だとは思わなかったし、実際確かに実力者ではないのだと思うが、あのキレ具合は異常だ。
 殺すことに躊躇いがないなんてものじゃない。楽しんでいるわけでもない。それが当然のことのように殺す。
 そういう奴相手に戦ったことはあるか?」
「いや、…ないね」
カインはここでため息を一つついた。
「このゲームは思った以上に人を狂わす。知り合いだからと言って油断はできない。だが信頼できる仲間必要だ」
「願ってもないことだね。一緒に行動してくれるかい?」
「俺の仲間探しも手伝ってくれるのならな」

こうして、胸に様々な思いを秘めたパーティーが一組、誕生した。
彼らは城を目指し、森へと進む。

【セージ 所持品:ハリセン ナイフ
 第一行動方針:サスーン城へ行く 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 ナイフ 
 第一行動方針:スミスの呪縛を解く 基本行動方針:同上】
【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5)
 第一行動方針:隙を見てタバサを殺す
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】

【現在位置:カズズの街北の草原からサスーン城方面の森へ】
283天使 1/3:2005/06/05(日) 02:27:03 ID:DPMpupLI
「いたい、いたい、いったーい!!」
空中で放り出されたケフカは、着地に失敗して足を挫いていた。
ケフカは魔女に愚痴をこぼしながら、周りを見渡した。

一面の砂。
黄土色の鏡に日光が反射される、静寂とした砂の空間。
ケフカの体に太陽がじりじりと照りつける。
そして、その静寂を破るように数十m先で爆発が起こった。

「なんだか戦っていますね。触らぬ神に祟り無しとも言いますし…いや間違えました、ぼくちんが神でしたねえ。
 とりあえず、様子を見ることにしましょうか」
見ると、長身の銀髪の男がモヒカンの男を殺そうとしているみたいであった。
先ほどの爆風をかわし、今まさに止めを刺そうとしていた。
「こうやってぼくちんが何もしない間にも、みんな殺しあっているみたいですねえ。
 この分だとかなりレオしょうぐんのことも期待できそうです」
銀髪の男はモヒカン男を串刺しにし、何か語りかけると踵を返してその場を去ってゆく。
そしてモヒカン男は砂漠を這いずっていた。
どうやら、モヒカン男はまだしぶとく生きているようであった。

問題はここでどうするか、だ。
ほうっておいてもあの男は死ぬだろう。
彼が死んだってどうってことはないが、ゲームを破壊しぼくちんが君臨をするためには誰か魔女を倒すために先導する人間が必要だ。
見たところあの男、頭は単純そうではあるが、彼と行動することになればぼくちんが裏で動けなくなる。
これは賭けだ。危険ではあるが、この賭けに乗るのは面白そうでもある。
もし彼を助けるなら、重要になってくるのは彼を使ってどれほど多くの人間の信頼を得れるか、だ。
しかし、遠くで考えていても埒があかない。とりあえず、近づくだけ近づいてみようか。

284天使 2/3:2005/06/05(日) 02:27:58 ID:DPMpupLI
砂漠を歩きながらケフカは思う。
なぜ私は以前、いや今も天使に憧れているのか。

以前の世界は私を受け入れようとはしなかった。
全ての価値観が私を否定していた。
そして、私自身も私を否定していた。
役立たずな元の私が、私を責め続けた。
人を殺すのに残虐も正々堂々もあろうか。
毒で殺そうが火であぶろうが串刺しにしようが全ては同じだ。
あの腐ったレオは元の私に重なる。気持ち悪い。
私はおかしくはない。私は間違ってはいない。
だが、間違っていると、レオは責める。だから、殺した。
でも、私は狂っていることを自覚している。
心のどこかでは誰よりも自覚している。
そんなこと分かっている。
ただ狂わずにはいられない。
そうでないと何もかもがおかしくなりそうだ。
そんな自分を対比させて、私は完全な存在に憧れたのだろうか。


ケフカはハッサンの目の前に立ったとき、とりとめもない考えを中断した。
この男、意識はもう失ったのだろう。
大量の赤が砂漠を染めていた。

「さてと、どうしましょうか。大した物は持ってないようですねえ。
 このまま、絶望の死を遂げるのを見るというのもまた面白いですねえ」

ケフカは続ける。
「しかし、助けてみるというのも面白いかもしれません。
 そして最終的に比べ物にならない絶望を与えてみましょうか。アーヒャヒャヒャヒャ!!
 さて回復魔法というのは苦手ですが―ホレっ。さてと、後はこいつが目覚めるのを待ちましょう」
285天使 3/3:2005/06/05(日) 02:29:17 ID:DPMpupLI
目覚めたら、何を言おうか。
金髪の男が危険だと言おうか。
このゲームを『破壊』したいと言おうか。
前の世界では軍人として人を殺したが、改心したとでも言おうか。
ガストラ皇帝のように、いやもっと簡単に、この男なら欺くことが出来るだろう。

「クックック、楽しくなってきましたねえ。
 ただ、なんてここは暑いんだっ。ぼくちんは暑いのは嫌いなんだからな!」


【ケフカ 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール
 第一行動方針:ハッサンを手玉に取る 第二行動方針:できるだけ多くの人にデマを流す 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【ハッサン(HP 1/10程度)(気絶)
 所持品:E爆発の指輪(呪)
 第一行動方針:生きる、又は誰かに意志を継ぐ。
 第二行動方針:オリジナルアリーナと仲間を探す
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】

【現在位置:カズス西の砂漠】
286負の思考 1/2:2005/06/05(日) 05:22:11 ID:hcRcujqO
しまった、と思ったときにはもう遅かった。
肉体は光に飲まれ、青い異次元空間に引きずり込まれた。
ここで自分がいなくなってしまったらどうなる?
戦いの場に残るのは丸腰の女性と負傷した男、それだけでピンピンしたあの切れ者の魔物を出し抜くのは困難極まりない。
だからこそ、何としてでも相手を黙らせるべきだった、あの魔物とあの二人という状況だけは絶対作らせてはいけなかった。

だが、自分は敵の罠にはまり、戦いの場から追放されてしまった。
いくら戻ろうともがいても、青い空と砂の衣は自分から遠ざかるだけ。
そして世界がぶれたかと思うと、自分は建物の中に立っていた。

急いで辺りを見回す。
もしかすると、まだ戻れるかもしれないからだ。
だが、周りの空間自体には何ら違和感はない。もう戻れない。もがいてもどうにもならない。
続いて、壁を背に、辺りを警戒する。人はいない。

そばにあった椅子に腰を下ろす。
先ほどの戦闘、自分は最良と思われる行動を取った。
それでも対応できなかったのは、まだ自分が相手より未熟であることのあらわれに他ならないのだろう。

…こんなになってしまったのは、自分のせいなのか?
できもしないのに、守ってやりたいなどと大口を叩いて、リーダーぶっていた自分へのしっぺ返しなのか?
そんなはずない。馬鹿なことを考えるものだと思う。
けれど。けれどもしあの時、素直にアリアハンに向かっていたら?
もし寄り道をせずに、一直線に旅の扉まで向かっていったなら?
過ぎたことを悔やんでも仕方がない。が、一旦沈んだ気分は容赦なく今までの出来事を負の方向を以て想起させる。
287負の思考 2/2:2005/06/05(日) 05:30:15 ID:hcRcujqO
…怖い。今までの比でなく次の放送が怖い。
最初の放送でエアリスが呼ばれた。
次の放送でクラウドが呼ばれた。
そしてこれから行われる放送で、デッシュとランドが呼ばれるのだろう。
彼らだけか?本当に呼ばれるのは彼らだけなのか?
自分と行動を共にした人間すべてが呼ばれるのではないか。
シンシアとエドガーはきっと生きている、だが一方で不安がつきまとう。直接姿が見えないのもあるのかもしれないが。

憂鬱の連鎖とでも言うのか、とにかく気分が重くなる。
水を飲んで、気分を落ち着けようとしたところ、
ふと、机の上に開いてあった本に目が留まった。
周りに積まれている本はすべて機械工学に関するものだ、
これもその類だろうか、何か役に立たないか、気を紛らわせないかと思い、ぱらぱらと目を通してみた。

『○月×日 オーエンの塔の動力炉の調子は非常に良好だ。これなら、千年は動き続けるだろう。ようやく、解放されそうだ…』
『○月×日 サリーナの家に居候することになった。今までのように、女の子に気軽に声をかけられなくなるのがちょっと残念だが…』
『○月×日 シドの飛空艇の組み立てを手伝う。このデッシュの集中力にかかればあっという間に終わる作業だ…』

この本の内容は、日常だった。
つい先ほどまで行動を共にしていた人物の日常だった。
この殺し合いによって、大きく狂わされてしまったもの。
こんなところにあるのは、自分への当てつけなのか?守りきってくれなかった自分を非難しているのか?

…ダメだ、ここにいたらますます気分が重くなる。
とにかく、まず場所を移動しよう。

【ザックス(HP9/10程度、ちょっと憂鬱) 所持品:バスターソード スネークソード 毛布
 第一行動方針:気分を落ち着けられるよう場所移動 最終行動方針:ゲームの脱出】
【現在位置:カナーンの町、サリーナ宅】
288人と焦りと不愉快と 1/3:2005/06/05(日) 08:42:59 ID:b54MT4ws
カイン達4人が森を進んでいた。静かに、ただ静かに進んでいた。
そして、セージとタバサが何度目かの地図のチェックをしている時に、カインは気づかれぬようにスミスに話しかけた。
「とりあえずお前の気持ちは汲み取ってやる…隙あらば殺してやる」
(ああ、本当に頼むよ。うざったくて堪らない)
「……だが、それはもう少し待ってくれないか?」
(…………はい?なんでだよ、言ってる事が違うじゃないか!)
念を送り、返事をするスミス。だがそれは納得のいっていない返事だ。
当然だ。早く殺して欲しいのにそれを待てという。どういう事か。

(どういう事?まさかしばらく利用する為に猶予を与えるとか?)
「それもある…だが、俺たちはこの世界をまだ良く知らない。城に到着してここの事をよく調べてからでも良いだろう」
(成程…迂闊過ぎるのは危険だしね。でも城に着いた途端離れ離れにって事は……)
「当然その可能性は考慮している。まだあいつらには明確な敵意を見せてはいない。
 逃げられても支障は無いだろう。それに敢えて逃がして泳がせるのもありだろう……」
ここまで話すと、「あいつら」…セージ達が確認を終えたと言った。
「話はここまでだ……焦りすぎるな。身を滅ぼすからな。俺達はほんの少し前に人を裏切ったばかりだ」
(肝に銘じておくよ……不愉快ではあるけどね)



「不愉快だ!」
アルガスはそう叫び、不貞腐れた様に青空を見上げた。

そうだ、あの時銀髪の男がこなければもう少し焦らずに行動できたものを。
出来る限り早くアイテムを収集するなどの行動を起こしたかったのだが。
「くそっ……まぁいい、焦りすぎても良いことは無い。肝に銘じるんだ…こういう事だ」

彼がいるのはジェノラ山の山頂。そう、焦って次のことを考えずに安易に扉に潜り込んだ割に、場所が最悪なのだ。
「こんな山に登る酔狂な人間もいないだろうし…くそっ、他の人間とコンタクトが取れないのも不安だ……」
そう、他の人間との交換交渉すらも出来ない。下へ降りるのが億劫。その気持ちを込めて、また彼は叫んだ。
「不愉快だ!!」
289人と焦りと不愉快と 2/3:2005/06/05(日) 08:45:26 ID:b54MT4ws



「全く…不愉快だ」

サラマンダーはがむしゃらに、だが闇雲に疾走していた。
それは新たな獲物を探すためにだった。だが、それよりもまずは出口を探す。
ここは他と隔絶された鉱山らしい。人気がしない。人がいる気がしない。
だが万一人に会い、それが自分よりも強い人間だったとしたら退避することも考えなければならない。
しかしここは鉱山。一つ間違えば袋小路となるだろう。
早くこの鉱山から出たい彼は、内心焦りを感じていた。

そして暫く疾走し、彼はようやく理解した。
彼は、確実に鉱山内で迷っていた。
それは彼の焦りがもたらした結果なのだが、それがまた彼にとっては不愉快であった。

「どこだ……!」
未だ見つからぬ出口。露呈する余裕の無さ。疾走したことで生まれた疲労。
それらがサラマンダーを蝕んでいく。
そう、それらは全て一つの焦りから生まれたものだ。


そう、アルガスにしろサラマンダーにしろ、あの竜騎士の言う通りだ。
焦りは、身を滅ぼす。
290人と焦りと不愉快と 3/3:2005/06/05(日) 08:46:59 ID:b54MT4ws
【セージ 所持品:ハリセン ナイフ
 第一行動方針:サスーン城へ行く 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 ナイフ 
 第一行動方針:スミスの呪縛を解く 基本行動方針:同上】
【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5)
 第一行動方針:焦らず時を待ち、好条件が揃ったところで隙を見てタバサを殺す
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】

【現在位置:カズズの街北の草原からサスーン城方面の森へ】


【アルガス(視覚聴覚は通常状態へ)
 所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、インパスの指輪、他2人分の支給品、武器ではない。
 第一行動方針:これからどうするか考える
 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る

【現在位置:ジェノラ山 山頂】


【サラマンダー(疲労) 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
 第一行動方針:鉱山の外に出る(道に迷っています)
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】

【現在位置:ミスリル鉱山内部(階層不明)】
291素晴らしい力 1/5:2005/06/05(日) 12:57:26 ID:57GqAYed
「…なんだアレは?」
ハッサンとの戦いを終え砂漠を後にしたセフィロスの視界に、妙なものが映った。
人とも獣ともつかない何かが、ものすごいスピードで、こちらに近づいてくる。

「フン…まあいい」
セフィロスは村正を構える。
アレが何であれ、自分には関係はない。
来るというのなら切り捨てるまでだ。

低空を全身のバネを使って飛び回る。
奇妙な動きだが、捉えきれないほどではない。

セフィロスはタイミングを合わせ、村正を振り下ろす。
しかし、ソレは唐突に軌道を変え、斬撃をかわした。
そして、振り下ろした攻撃の隙を狙って、ソレは飛び込んできた。
口に咥えたナイフで、正確に首を狙う。

その攻撃を、セフィロスは左腕の甲で受けとめる。
すぐに刃を引き抜き、ソレは距離をとる。
貫かれた左腕から血が噴出す。

だが、そんなことはたいした問題ではない。
この程度の傷、ジェノバ細胞がすぐに修復するはずだ。
問題はそんなことではない。
近づいてきたソレは、片腕と片足が剥がれ落ち、とても戦える状態とは思えない。
こんな奴が自分と渡り合うなど、ありえない話だ。
「…なんだ貴様は、なんなんだ?」
292素晴らしい力 2/5:2005/06/05(日) 12:58:20 ID:57GqAYed
セフィロスは気づかない。目の前のソレが、ティファであるということに。
もっとも、ティファである面影など何一つ残っていないソレを、
ティファであると言い当てることは、幼馴染であるクラウドでも無理だろう。

再度駆けてくる敵にめがけ、刃を振り下ろす。
だが、先ほどと同じように、刃は空を切る。
そして、咥えられたナイフは、セフィロスの左足を貫いた。

「…なるほど」
思いのほか速く、反応もいい。
捕らえるのは困難なようだ。
だが、攻撃はワンパターンなヒットアンドウェイのみ。
どうやら、考える頭はないようだ。
この程度なら、いくらでもやりようはある。

そして、敵はセフィロスの予想通り、同じように突撃してくる。
予定調和のように、セフィロスは刃を振り下ろし、敵はそれをかわす。
そして隙の出来た、がら空きの左胸めがけ刃が放たれる。
セフィロスはそう来るのがわかっていたような動きで、そのナイフを右手で掴んだ。
口に加えたナイフをつかまれ、敵の動きが一瞬止まる。
もちろんそれを見逃すセフィロスではない。
左腕に持ち替えた村正で、その体を真っ二つに引き裂いた。
293素晴らしい力 3/5:2005/06/05(日) 13:00:03 ID:57GqAYed
…なんだったのだ、コレは。
その生き物は、セフィロスの理解を超えていた。

名簿にこのような人物はいない。
つまり、参加者の成れの果てということだ。
しかし、人間がこのような姿になれるとは思えない。
ましてやこの崩れた体で、自分とまともに渡り合うなど…
そして、セフィロスの思考は、ある答えに行き着いた。
「…なるほど、これがこのゲームの目的か」

死に行く者の怨念、人が死する際に発するエネルギー。
ライフストリームの循環に帰るであろうそれを。
一箇所の密閉された空間で発生させ、集め、留める。

そして、それを生き残った参加者に植え付ける。
もしくはそのエネルギー自体が目的か。

殺し合いの生き残りだ、器としてはうってつけだろう。
壊れかけた器、事故のように生まれたであろうコレですらこれほどの力だ。
自らを器として、参加者すべての怨念、魂を飲み込めば。
いったいどれほどの力を得れるのだろうか?

「…素晴らしい」
それはなんと素晴らしい力だろうか。
コレは簡単に壊れて、飲み込まれてしまったようだが。
自分の精神は、高々100人ちょっとの怨念に飲み込まれるほど脆くはない。
その程度、やすやすと跳ね返せる自信があった。
294素晴らしい力 4/5:2005/06/05(日) 13:06:10 ID:57GqAYed
さて、そうなると、こんなくだらないゲームは早々に終わらせる必要がでてきた。
セフィロスは思考する。
そして、いい作戦を思いついた。
そうだ、あれを使おう。

黒マテリアだ。

クラウド程度では、あのような小さなメテオしか呼ぶことはできなかったが。
自分ならば、かって呼んだような、巨大なメテオを呼ぶことができる。
そうすれば、大陸諸共、参加者全員を抹殺することが可能だ。

たとえそれに自分も巻き込まれ、バラバラになろうとも、ジェノバ細胞はリユニオンする。
ひとつの意思の下に集い再生を果たす。
そうなれば勝者は私だ。
そうすれば素晴らしい力が手に入る。
戦いを楽しむのもいいが、今は手に入る力に興味は向いている。

だが、あの黒マテリアはアリアハン大陸と共に消え去ってしまった可能性が高い。
クラウドと共に瓦礫に埋もれたアレを、回収している者がいるのだろうか?

「まあ、探してみるのもいいだろう」
そう呟き、セフィロスは歩き始めた。

全ては彼の推測に過ぎない。

だが、セフィロスには妙な確信があった。
この大陸に黒マテリアは存在する。
ゲームに勝ち残れば、素晴らしい力を得れる。
そして、生き残るのは自分であると。
295素晴らしい力 5/5:2005/06/05(日) 13:08:13 ID:57GqAYed
【セフィロス(HP2/5程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:黒マテリアを探す
 基本行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘
 最終行動方針:生き残り力を得る】
【現在地:カズス北西の森西の草原】

【ティファ 死亡】
【残り 78名】
296命運の紙 1/5:2005/06/05(日) 15:31:58 ID:JIOKNXlC
そこに落ちていたのは、一枚の紙片。
「あれ、何だろ、これ?」
少女は残された左腕で摘み上げる。
どうやら参加者リストと同じ紙質のようだ。手触りに覚えがある。
しかし、表には赤黒い染みがわずかに滲んでいるだけ。
と、すると――ひょっとして、こっちが本当の『表』か?
ひっくり返してみると、予想通り、染みと同じ色のインクで文字が書いてあった。
だが……全く読めない。
        
『ロ 山 ,,ヽ ∈ ≠
 ニ ,,ヽ ヽノ。 ,\ ≠』

(何これ? なんて書いてあるの?)
気になってきちんと読んでみようと思った彼女だったが――ふと、その文字が血で書かれていることに気付いた。
(うわー……コレ、もしかして結構ヤバイ?)
読めない記号と血文字の言葉。
狂気じみた組み合わせが、悪寒と恐怖を呼び起こさせる。

「おい、何やってんだ? マジメに探せよ」
「あ、ごめーん」
少女はしかめっ面をする相方の青年に軽く笑いかけた。その影で、こっそり紙を丸めて捨てる。
青年は少女の挙動に気付かないまま、彼女に詰め寄った。
「わかってんだろーな。でかい剣だぞ、剣。マテリア穴ってのがついた」
「もー、何度も言われなくたってわかってるってば」
「ホントか? ……まぁ、それはいいか。
 それよりもだ。いいか、俺たちは旅の扉を探すのに結構手間取っちまってるんだぜ。
 早く探さないと、今ごろずっと遠くに逃げられて……」
「旅の扉ってランダムワープさせられるみたいだし、どこにいるかもわからないのに、遠くも逃げるも何もないと思うけど」
「う、うるせえな! とにかく、しっかり探せってんだ!」
「はーい、はいはい」
少女は肩を竦めながらも、青年に続いて町の奥を探し始めた。
297命運の紙 2/5:2005/06/05(日) 15:35:41 ID:JIOKNXlC
暴走軽トラとの遭遇から数十分後。
森の外に出て、山脈に沿って歩いていたティーダは、やがて開けた平野に辿り付いた。
地形と地図を確認し、それほど遠くない場所に村があることに気付き、そちらに向かって歩き出そうとした時――

「僕に、構うな」
――いつの間に気を取り戻したのだろうか?
茶色の髪の青年は、薄目を開けてティーダを見つめていた。
ティーダは歩きながら答える。
「構うなったって……放っておけないッスよ」
そうだ。放っておけるわけがない。
彼のような状態の人間を一人にして捨て置くなど、間接的な殺人に近い行為だ。
それに彼のせいで襲撃されたといえ、一応は庇ってもらったのだから、そのことに対する引け目もある。
だが。
「僕が、人殺しでもか?」
その一言に、ティーダの足は止まった。

もちろん、ティーダだって全く考えていなかったわけではない。
何も覚えていないという彼の奇妙な態度。彼を人殺しだという子供達、イクサスとバーバラ。
そして二人を説得しようとしたソロの台詞と、アーヴァイン自身が言い出した申し出。
導き出される答えは最初から一つしかなかった。
それでもティーダは否定した。いや、正確に言えば否定したかった。
「そんなことがあるわけない」と。
「人殺しと一緒に行動する奴なんているわけないじゃないか、人殺しが自分を庇うわけないじゃないか」――と。

けれど、アーヴァインは言葉を続ける。
呂律は回っておらず、咳のせいで途切れ途切れではあったが、聞き取れないほどではなかった。
そしてはっきりとした筋道は、彼の喋っている内容が病人の妄想や戯言などではないことを証明していた。
298命運の紙 3/5:2005/06/05(日) 15:39:41 ID:JIOKNXlC
「……」

ティーダは何も言わずに再び歩き出した。
肩に、アーヴァインの身体を担いだままで。
そんな彼に、アーヴァインは必死で語り掛けようとする。
「おい、バカ、置いてけって……人の話、聞けよ……
 僕なんか、連れてても……ゲホッ、ゴホッ。
 あんたまで、狙われ……、………」
だが、その声は急に途切れた。
無理して喋り続けたせいで体力を消耗したのだろう。意識を失った身体は、ずっしりと重くのしかかる。

ティーダは思う。
――どうすればいいのだろうか、と。

彼の言う通り、こんな男など捨て置いて、仲間を探しに行くべきではないのか。
彼と一緒にいればいるほど、自分の身にも危険が及ぶ可能性は高くなる。
例えアーヴァインをここで見捨てたところで、誰も自分を責めはしないだろう。
本人もそれを望んでいるのだし、彼は殺人者なのだから。

けれど……一人になるのは、やはり、怖い。
それに見捨てたことで彼が死ぬようなことになれば、誰よりも自分が自分を許せなくなりそうだ。
結論を出せぬまま、重い足取りでティーダは歩き続け――
やがて、村の入り口に辿り付いた。

そして、彼は見た。
男と、片腕のない少女の後姿を。

見つけてしまった。
少女が放り捨てた、一枚の紙片を。

読んでしまった。
そこに書かれた言葉を。
299命運の紙 4/5:2005/06/05(日) 15:42:46 ID:JIOKNXlC

 『キ ン パ ツ ニ
   キ ヲ ツ ケ ロ』


「――――ッ!!」

息ができなくなった。
心臓を鷲づかみにされた気分だった。

なぜなら、自分は金髪だから。

少女はこれに目を通して、丸めて捨てていたから。

丸めて捨てたということは、彼女が誰かに宛てて書いたものではないということだから。

それはすなわち、この紙が無差別にばら撒かれたものだという事を示唆していたから。

アーヴァインを見捨てて逃げるどころじゃない。
彼と一緒にいれば狙われるとか、そういうレベルの話じゃない。
誰が、どこに、どうやって、全部で何枚ばら撒かれているのかも分からない紙片。
これを読んだ者は、間違いなく自分を信用しようとはしなくなるだろう。
例外はユウナとリュック……それにターニアとロックとソロぐらいか。
それにしたって、彼らとすぐに再会できるとは限らない。
自分の味方になってくれるのは、下手をすれば、この元殺人者の青年だけかもしれない。

恐怖と絶望に打ちひしがれながら、ティーダは二人組みに気取られぬよう、休める場所を探した。
そして宿屋があることに気付き、そっと扉を開けて中に入った。
道具屋や酒場を兼ねていたのだろうか。
カウンターは二つあり、片方には薬品類の入った箱が、片方には酒ビンらしきものの並べられた戸棚が置かれている。
ちょうどいい。これで外に出ずともアーヴァインの手当てができそうだ。
300命運の紙 5/5:2005/06/05(日) 15:50:21 ID:JIOKNXlC
二階のベッドにアーヴァインを横わらせた後、ティーダは薬品類を漁り、毒消しらしきものを探し出した。
そして何とかアーヴァインを起こし、その薬を飲ませる。
「放ってくれ」とか「マズイ」とか「ニガイ」とか、散々文句を言ってきたが、それでも全部飲み込ませることには成功した。

効き目があるかはわからない。
それ以前に、それが本当に毒消しだったのかすらわからない。
ただ、苦しげに歪んでいた表情が少しだけ和らいできた……ような気はする。
ともかくティーダにできることはやったのだ。後は祈るしかない。

「……死ぬなよ。頼むから」

口から零れたその言葉は、果たして、人が死ぬのを見たくないからなのか。
それとも、単純に一人になることが怖いだけなのか。
彼自身にも――わからなかった。


【エッジ 所持品:風魔手裏剣(10) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン 】
【ユフィ(傷回復/右腕喪失)
 所持品:風魔手裏剣(10) プリンセスリング フォースアーマー 】
【第一行動方針:アポカリプスを持っている人物を探す
 第二行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズスの村・外を歩いている】

【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕 首輪×1  ケフカのメモ
 第一行動方針:アーヴァインを助けて彼に仲間になってもらう
 第二行動方針:自分を信用してくれる人物か、ユウナ・リュック・ターニア・ロック・ソロを探す。
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アーヴァイン(気絶、HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP〜1日目深夜までの行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:? 第二行動方針:罪を償うために行動する】
【現在位置:カズスの村・宿屋の2階】
301血の涙 1/2:2005/06/05(日) 23:21:50 ID:57GqAYed
「…レックス、さ…ま」
その死体を見つけたピエールは、その場に立ち尽くした。

何故アリアハンで亡くなられたはずのレックス様の死体がここにある?
これは全て殺そうとした私への、天からの当てつけなのだろうか?
とめどない考えがピエールを襲う。

いや、考えるな。
リュカ様のため、レックス様も殺す覚悟をしたではないか。
何を戸惑うことがある。
目の前にはただ、誰かに殺されたレックス様の死体があるだけの話。
この程度のことは乗り越えねばならない。

その考えとは裏腹に、死体を見つめるその体は動かない。
彼がもし泣けたのならば、その瞳は涙をこぼしていただろう。

「…レックス様」
死体に近づき、その頬に触れる。
冷たく固まったその頬は何の反応も返さない。
ピエールはその死体を見つめる。
どれほどの時間、そうしていただろう。
ピエールは迷いを振り切るように首を振ると。
ザックから鋼鉄の剣を取り出し。

それを死体に突き刺した。
302血の涙 2/2:2005/06/05(日) 23:23:57 ID:57GqAYed
感傷は捨てろ。
こんな感情は邪魔だ。
私には感情などいらぬ。

全てはリュカ様のため。
そのためなら私は、修羅の道を突き進もう。

鋼鉄の剣をレックスの死体に突き刺したまま、ピエールは歩き始めた。
硬直を始めた死体から僅かながらに飛び散った血液は、ピエールの目元に張り付き。
それは、流れ落ちる涙のように見えた。

【ピエール(HP2/5程度) (MP1/2程度) (感情封印)
 所持品:青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
 ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー
 第一行動方針:南に見える町に向かう 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:カナーン北の草地】
303生きるという意味 1/3:2005/06/06(月) 01:34:34 ID:Mar614Y7
レーベの村を発ったソロたち。
旅の扉から放り出され、その場に着地しあたりを見渡すと。
どうやらそこは、どこかの村の入り口の辺りのようだ。

ふとソロが横を見ると、何かを見つけたビビが、怯えるように震えていた。
「どうしたんだい? ビビ」
そう聞かれたビビは、何も言わず村の入り口を指差した。
ビビが指差した方向を見つめると、こちらに向かってくる人影が見える。
そして、ビビがポツリと呟いた。
「…クジャ」

「…やあ、ジタンと一緒にいた黒魔道士か…」
近づいてきたクジャは、少し残念そうに呟く。
「君でもいい…教えてくれ、生きると言う意味を」
ふらふらと酔っ払ったような足取りで、クジャはビビに近づく。
「限られた命に何の意味があるというんだい?
 自分のいない世界にどんな価値が?
 代用品として生まれ、命に制限をかけられた僕に何の価値がある?
 君も同じはずだ、戦うために生まれた、制限の生。
 そこにいったい何の価値がある。
 教えておくれよ、生きると言う意味を!」
クジャは叫ぶように問いかける。

ビビの瞳には、なぜか彼がとても弱弱しく映った。
戸惑うように、ビビは深く帽子をかぶりなおす。
「…そんなこと、僕にもわからないけど、
 たとえ限られた命だって、生まれ方が間違っていたって、ボクはいいと思うんだ。
 短くったって、いろんな人たちと出会ったりして、友達になって…
 たとえボクが死んでも、そこで出会った人たちとの思い出やつながりは残るんだ。
 それが多分、ボクの生きる意味、なんだと思う…」
小さな声で自信なさげに、それでもはっきりとビビは言った。
304生きるという意味 2/3:2005/06/06(月) 01:36:42 ID:Mar614Y7
その言葉を聞いたクジャは、うずくまるように顔を覆い、ビビを見つめる。
「…わからない、僕には理解できないよ…」
クジャが手を突き出し、空から落雷が降り注ぐ。
それはビビの目の前を掠め、ビビは衝撃で吹き飛ばれる。
「わからない…わからないんだ!」
近くで動向を見守っていたソロたちが、ビビのもとに駆けつける。
そしてただ一人、ピサロがクジャへと向かい疾走した。

クジャはそれを迎え撃つが、重症のためかかその動きは鈍い。
それでも並みの戦士よりは早かろう、だが今は相手が悪い。
敵は自分と互角に近い力を持つ者。この差は決定的だ。
ピサロは一瞬でクジャの懐にもぐりこみ、スプラッシャーで胸元を貫いた。

血が溢れる。
死ぬ…。
このボクが?
そんなことはありえないし考えられない。
たとえ一度死んでいようと、そんなことは関係ない。
僕は死にたくない。
自分のいない世界など考えられない。

クジャは走った。
ただ死から逃れるために走った。
ピサロは逃走するクジャを見つめ、深追いはせずソロたちのもとへと戻って行った。
305生きるという意味 3/3:2005/06/06(月) 01:39:25 ID:Mar614Y7
どこをどう走っただろう。
傷も気にせず、ただ死から逃れるために全力で走った。
草原を走ったかもしれない。森を抜けたのかもしれない。
誰かとすれ違ったかもしれない。
そんなことは全て関係がない。死が追いかけてくる、だから逃げる。

そして体力の限界がきたころ、目の前に人影が見えた。
彼はその人影を確認し、ふらつきながら近づいてゆく。
「やあ…探したよ、君に…会いたかったんだ」
たどり着いた先、ついに彼は望んだ再会を果たした。

【クジャ(HP 1/10 瀕死、MP消費) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾
 第一行動方針:出会った人物と話す どちらとであったかは不明 最終行動方針:最後まで生き残る】
【現在地:?】

【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ
 第一行動方針:町を調べる
 第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
 第一行動方針:町を調べる 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ヘンリー(6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可)
 第一行動方針:ピサロ達についていく 第二行動方針:デールを止める(話が通じなければ殺す)】
【ターニア 所持品:微笑みの杖
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ 所持品:スパス
 第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:仲間を探す】
【現在地:ウルの村入り口】
306confusion and sniper 1/3:2005/06/06(月) 09:08:23 ID:vqZsKR9v
「…!! レックス!!」
その死体を見つけたとたん。
テリーが叫び、その死体に駆け寄っていく。
「どうして…どうしてレックスがここにいるの? ちゃんとお墓つくったのに!
 それに、こんな剣なんて刺さってなかった!!」
泣き叫ぶようにテリーが喚く。
「落ち着くのじゃテリー」
完全に冷静さを失ったテリーにギードが声をかける。
「どうして! どうして…」
その声はテリー耳に届かず、テリーはレックスの死体にしがみ付いて泣いた。
トンヌラはテリーを見て一緒に泣いた、ルカは涙を堪えて泣かなかった。
それの光景をギードとドルパは心配そうに見つめていた。

南の村に向け歩き始めたピエールの耳に、後ろから子供の叫び声が聞こえた。
その声を聞いたピエールは、高く生えた草に身を隠しながら踵を返した。

来た道をたどり、レックスの死体のあった場所に戻って見ると。
そこにはレックスやタバサと同年代ほどの子供が二人、モンスターが三匹いた。

今の私に子供だろうと同胞だろうと関係がない。
全ては排除すべき障害物。

誰を狙うか。
カメやドラゴンは一撃で倒せないかもしれない。
もう一匹と子供はカメが邪魔で狙いがつけられない。
となると、レックスの死体に泣きついている少年しかいない。
完全に意識が死体に向いている、周りに障害物も無い。絶好の条件。
307confusion and sniper 2/3:2005/06/06(月) 09:10:31 ID:vqZsKR9v
草原の草に身を隠しながら、ピエールはテリーにウインチェスタの狙いを定める。
そして、十分に狙いを定めて引き金を引いた。

しかし、少年の頭を狙った銃弾は狙いをはずれ、少年の肩に命中した。
「…チッ」
やはりこの銃では、遠距離狙撃様のロングバレルのようにはいかないか。
ピエールは舌を打つ。

「テリー!」
吹き飛ばされたテリーを見てルカが声を上げた。
「…ううぅ」
転がったテリーは右肩を抑えうずくまる。
「大丈夫テリー!? ギードはテリーの治療、ドルパは撃った奴をやつっけろ」
「わかった、ルカとトンヌラはワシの影に」
「うん、わかった、作戦はいのち大事に!」

残った少年が子供とは思えぬほど冷静で的確な指示を出す。
ドラゴンが狙撃のあった方向、つまりこちらに向かって走ってくる。
こうなっては隠れても仕方あるまい。

ピエールは身を表し青龍偃月刀を構えた。
その姿を確認したドルバはピエールに向かい襲い掛かった。
308confusion and sniper 3/3:2005/06/06(月) 09:12:47 ID:vqZsKR9v
【ピエール(HP2/5程度) (MP1/2程度) (感情封印)
 所持品:青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
 ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー
 第一行動方針:ドルパを迎え撃つ 第二行動方針:ここにいる奴等を全員殺す
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

【ギード 所持品:首輪、不明
 第一行動方針:テリーの治療 第二行動方針:首輪の研究】
【テリー(DQM)(精神不安定回復気味、右肩負傷) 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖
 第一行動方針:治療を受ける 第二行動方針:わたぼう、わるぼうを探す】
【ルカ 所持品:ほしふりのオーブ 行動方針:テリーの治療】
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ 行動方針:テリー達についていく】
【ドルバ 所持品:不明 行動方針:ピエールを倒す】

【現在位置:カナーン北の草地】
309名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/06(月) 18:54:39 ID:9U0noccY
申し訳ありませんが

>>307
>「大丈夫テリー!? ギードはテリーの治療、ドルパは撃った奴をやつっけろ」

「大丈夫テリー!? ギードはテリーの治療、ドルパは撃った奴をやっつけろ」
に修正お願いします。
310偽りの風の導き 1/3:2005/06/06(月) 19:36:19 ID:9ABJ3G0g

「馬鹿な…あれは、風のクリスタル、か…?」

旅の扉をくぐり抜け、一人転送された先でザンデを迎えたもの。
それは、中央の台座の上で静かに光を放つクリスタル。

かつて、クリスタルの力を用いて世界を崩壊させようとした男がいた。
その男の目的は復讐。
男に「人間としての生命」などというちっぽけなものしか与えなかった己の師、
そしてその師が愛した世界への復讐。
だが男は光の戦士達との戦いに倒れ、ついにその悪しき野望は打ち砕かれる。

暫くの間その場で昔のことを思い出していたザンデ。
風のクリスタルがあるということはここは浮遊大陸、祭壇の洞窟なのか?
再度見上げたクリスタル、確かに光を放つそれにザンデは違和感を覚える。
改めて観察してみればその光は単に鉱物的で冷たく、
クリスタル本来の神秘的で暖かな光とは全く異なるしろものである。

「ファファファ……魔女め。この偽りの光はなんのためだ?なんのつもりだ?
 私をあざ笑っているとでも言うのか」

このクリスタルから答えがあるはずも無い。
自分を倒した光の戦士達はこの場所で風のクリスタルから力を受け取り、旅を始めた。
ならば同じ場面、私はこの偽りの光を否定して魔女への叛意を明らかにしよう。

「偽りの世界、偽りの時間、偽りの生命。偽りこそが魔女の力であるならば、私は…」

かざした手から魔力が走り、青く輝いて浮いているクリスタルを中心として爆発が発生する。
部屋中に衝撃が満ち、ザンデの放ったフレアに耐え切れずそのイミテーションは粉々に四散した。

「それを打ち砕き奥に潜む本質を暴いてくれよう!」
311偽りの風の導き 2/3:2005/06/06(月) 19:37:02 ID:9ABJ3G0g
祭壇の洞窟、奥深く。
「いてて…落とし穴におっこっちまった……まいったな…」
ぶつけた箇所をさすりながら立ち上がる青年、バッツ。
普段の彼であれば落とし穴ぐらい華麗に回避して見せたのだろうが、
不運にも彼が送られてきたすぐ足元に落とし穴が口を開けていた。

「おいバッツ、大丈夫かよ?」
今しがたバッツが落ちてきた道から身軽に床へと降り立ち、ローグはバッツを気遣う。
「なんだよ、ローグまで落ちてくること無かったのに」
「なに言ってんだ。おまえだけ置いていけるか」
「はは、ありがとう、ローグ。…戻るのは無理そうだし、出口、探すか」


それから二人は洞窟の中を探索して歩く。
岩の仕掛け、いい感じの泉、出口は見つからないがとにかく先へ進む。
そんな二人を突如、耳を劈く爆発音が襲った。

「何なんだ、今の爆発音は!?」
「まいったな。とんでもないところに来ちまったみたいだ」
「とにかく下の部屋だ!行ってみようぜ!」

音がした方向へ向かい、見つけた階段を足音を立てないよう気をつけて下りる。
下り階段の先、物陰から覗き込んで見た光景は床じゅうに散りばめられた水晶の破片と、
空っぽの祭壇に向かい合っている全身から威圧感を放つ一人の男。

振り向いたその男と二人の目が、合った。
312偽りの風の導き 3/3:2005/06/06(月) 19:37:49 ID:XXjqJUVV

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する】

【バッツ 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:目の前の男(ザンデ)とコンタクトを取る
 基本行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 所持品:銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:目の前の男(ザンデ)とコンタクトを取る
 最終行動方針:首輪を外す方法を探す】

【現在位置:祭壇の洞窟最奥部、風の祭壇】
313助ける理由 1/3:2005/06/06(月) 20:36:35 ID:9U0noccY
「…やあ、ジタン…会いたかったよ…」
「クジャ…!」
クジャの姿を確認した三人は、とっさに武器を構える。
特に我が子の仇を目の前にしたリュカは、冷静さこそ失ってはいないものの。
先ほどまでの穏やかな雰囲気は完全に消え。殺気を持ってデスペナルティをクジャに向けていた。

だが、そんなことは気にならないといった風に、クジャは話を始めた。
「教えてくれ…ジタン。
 キミは、生きる価値のない人間なんていないと僕に言ったね。
 なら、僕の生きる価値とは何なんだ?
 いったい僕に、なにが残っているというんだい?
 今もまさに…死を迎えようとしている。
 僕は、死にたくない、自分のいない世界なんて考えられない。
 そこにどんな価値があるというんだい?
 僕の価値は? 生きる意味は?
 僕は、どうしたらいい!?」
弱々しく、泣き叫ぶように問いかけるその様に、三人は動揺を隠せない。
見れば、その姿は血まみれで、今にも倒れてしまいそうなほどふらついていた。

「…クジャ」
「…教えて、くれ…ジタン…」
そして、自分の言いたいことを言い終わると。
クジャはその場に倒れこみ、意識を失った。

それまでその光景を黙って見つめていたリュカが、
デスペナルティを片手に、意識を失ったクジャに近づいてゆく。
314助ける理由 2/3:2005/06/06(月) 20:38:41 ID:9U0noccY
「ま、待ってくれ!」
ジタンは歩み寄るリュカの行く手に入り込んだ。
「…どいてくれ」
静かに、だが強い意志と怒りを込めてリュカはジタンを睨み付ける。
その瞳にいつもの優しげな光は無い。
「…たのむ、助けてやってくれとは言わない。せめて、見逃してやってくれないか…」
ジタンは膝をつき、頭を地につけ、リュカに願う。
「たのむ! たしかに、こいつは許されないことをした、許せないのはわかる。
 けど…でも…こいつは…こいつはさ、俺の…兄貴なんだよ…」
いつの間にか、ジタンの目からは涙がこぼれていた。

何故自分がこんな事をしているの分からない。
何故自分が泣いているのかも理解できない。
自分もついさっきまで、クジャを許すことなんて出来なかった。
だけど、力なく倒れるクジャを見て、どうしようもない気持ちになってしまった。

そうだ、人を助けたい気持ちに理由なんていらない。
ましてや彼は、自分の兄なのだから。

「……頼む」
もう一度地面に頭を擦り付け、懇願する。

だけど、リュカがそれでもクジャを殺すというのなら。
自分に彼を止める権利はないのだろう。

リュカは何も言わず、じっとジタンを見つめた後。
ジタンの横を素通りし、クジャのもとへと近づいていった。
唇をかみ締め、顔を上げ振り向いたジタンが見たものは。
リュカの手から放たれる、優しい癒しの光だった。
315助ける理由 3/3:2005/06/06(月) 20:40:51 ID:9U0noccY
「…これで多分、死ぬことはないと思う」
自分の息子の仇を助けるのは、どれほどの苦痛だったのだろうか。
リュカの噛み締めた唇からは、血が流れていた。

「…すまない、ありがとう」
ジタンは深く頭を下げる。

「…僕は、彼のことを、決して許すことはできない。
 彼と共に行動するなんてできないし、もし君が彼と共に行動すると言うのならここでお別れだ。
 そして、次に彼にであったら、彼を殺すと思う。
 もしその時君が、彼と一緒にいるのならば、君に対しても容赦はしない」
それだけ言って、リュカはその場から立ち去った。
その後をリノアが慌てて追いかけていく。

残されたジタンは、立ち去るその後姿に、もう一度感謝の言葉を呟いた。

【クジャ(HP 1/4 負傷、気絶、MP消費) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾
 第一行動方針:? 最終行動方針:最後まで生き残る】
【ジタン 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス
 第一行動方針:クジャが起きるのを待つ
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】

【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【リノア 所持品:賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 基本行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【第一行動方針(共通):リュカの仲間を探す】

【現在地:ウルの村、カズスの村の間の草原】
316名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/06(月) 20:41:46 ID:VGMPYnTg
>310-312、無効でお願いします。
317偽りの風の導き 1/3:2005/06/06(月) 20:45:50 ID:VGMPYnTg

「馬鹿な…あれは、風のクリスタル、か…?」

旅の扉をくぐり抜け、一人転送された先でザンデを迎えたもの。
それは、中央の台座の上で静かに光を放つクリスタル。

かつて、クリスタルの力を用いて世界を崩壊させようとした男がいた。
その男の目的は復讐。
男に「人間としての生命」などというちっぽけなものしか与えなかった己の師、
そしてその師が愛した世界への復讐。
だが男は光の戦士達との戦いに倒れ、ついにその悪しき野望は打ち砕かれる。

暫くの間ザンデはその場で昔のことを思い出していた。
風のクリスタルがあるということはここは浮遊大陸、祭壇の洞窟なのか?
再度見上げたクリスタル、確かに光を放つそれにザンデは違和感を覚える。
改めて観察してみればその光は単に鉱物的で冷たく、
クリスタル本来の神秘的で暖かな光とは全く異なるしろものである。

「ファファファ……魔女め。この偽りの光はなんのためだ?なんのつもりだ?
 私をあざ笑っているとでも言うのか」

本物ではないこのクリスタルから答えがあるはずも無い。
自分を倒した光の戦士達はこの場所で風のクリスタルから力を受け取り、旅を始めた。
ならば同じ場面、私はこの偽りの光を否定して魔女への叛意を明らかにしよう。

「偽りの世界、偽りの時間、偽りの生命。偽りこそが魔女の力であるならば、私は…」

かざした手から魔力が走り、青く輝いて浮いているクリスタルを中心として爆発が発生する。
部屋中に衝撃が満ち、ザンデの放ったフレアに耐え切れずそのイミテーションは粉々に四散した。

「それを打ち砕き奥に潜む本質を暴いてくれよう!」
318偽りの風の導き 2/3:2005/06/06(月) 20:48:23 ID:VGMPYnTg

祭壇の洞窟、その奥深く。
「いてて…落とし穴におっこっちまった……まいったな…」
ぶつけた箇所をさすりながら立ち上がる青年、バッツ。
普段の彼であれば落とし穴ぐらい華麗に回避して見せたのだろうが、
今回は不運にも転送されたすぐ足元に落とし穴が口を開いて待っていた。

「おいバッツ、大丈夫かよ?」
今しがたバッツが落ちてきた道から身軽に床へと降り立ち、ローグはバッツを気遣う。
「なんだよ、ローグまで落ちてくること無かったのに」
「なに言ってんだ。おまえだけ置いていけるか」
「はは、ありがとう、ローグ。…戻るのは無理そうだし、出口、探すか」

それから二人は洞窟の中を出口を求めて探索して歩く。
この洞窟がどれくらいの広さであり、地図にあるどちらの洞窟なのかもわからない。
岩の仕掛け、いい感じの泉、未だ出口は見つからない。
だがとにかく先へ進む。
そんな二人を突如、耳を劈く爆発音が襲った。

「何なんだ、今の爆発音は!?」
「まいったな。とんでもないところに来ちまったみたいだ」
「とにかく上の階だ!行ってみようぜ!」

通路は自分たちが来た方向と音がした方向しかない。
慎重に進み、見つけた階段を足音を立てないよう気をつけて上る。
階段に身を潜めて、覗き込んで見た光景は床じゅうに散りばめられた水晶の破片と、
空っぽの祭壇に向かい合っている全身から威圧感を放つ一人の男。

振り向いたその男と二人の目が、合った。
319偽りの風の導き 3/3:2005/06/06(月) 20:48:51 ID:VGMPYnTg

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する】

【バッツ 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:目の前の男(ザンデ)とコンタクトを取る
 基本行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 所持品:銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:目の前の男(ザンデ)とコンタクトを取る
 最終行動方針:首輪を外す方法を探す】

【現在位置:祭壇の洞窟 クリスタルの間】
320自由意志1/3 :2005/06/06(月) 22:09:26 ID:HnOdBPZd
この世界に飛ばされてから数十分、シンシアとエドガーは黙っていた。
とりあえず隠れて少し様子をみようと、手近な木陰に身を潜めているということもあるのだが。
――デッシュとランドが死んだ、目の前で殺された。
その事実が二人の、特にシンシアの心を打ちのめしていた。
この殺戮ゲームが始まってから自分を支えてくれていたザックスがこの場にいないのも要因の一つだった。

「行くか」
急に発せられた声に、シンシアはビックリする。エドガーが立ち上がり、荷物を手に取る。シンシアも慌てて立ち上がった。
「行くんですね」
「ああ。…とりあえず、もう一度仲間を探すしかない。ところでシンシア」
「はい?」
「本当に、行くか?」
「え?」
エドガーの言葉が意外なものであったため、シンシアはろくな反応ができなかった。ポカンと口を開けたまま、エドガーを見る。
「デッシュがいない今もう一度首輪を解析しようとすると道具もそうだが人も必要になる。…正直、勝算があるわけじゃない。
 しかし私はやる。勝算があるとは言い切れないってことは、死ぬかもしれない」
『死』という直接的な言葉はシンシアをどきりとさせた。
321自由意志2/3 :2005/06/06(月) 22:12:47 ID:HnOdBPZd
「で、でも」
「一緒に行動しているとはいえ、私の考えで君を危険なことに巻き込みたくない。
 おそらくザックスも私の立場ならそう言うだろう。だからここで君の意志を問いたい。
 私は今言った。道具と仲間が必要だと。道具は―…まあ、その辺の民家で探すことにする。仲間を今から探す」
エドガーの言いたいことが、何となくだがシンシアには理解できた。
一個人を尊重するとでも言いたいのだろう。エドガーらしい考えではあった。
「そうですか…」
シンシアはうなだれた。自分は必要とされていないのか、と思った。
ここで行くか否か聞かれるということを「どっちでもいい」とシンシアは受け止めた。
エドガーは自分が一緒でなくても、一緒でも、結局どちらでもいいのだと。
いや、こういうことを改めて聞かれるってことは足手まといになってるからだろう、と
どこまでも後ろ向きな考えに陥ってしまった。
「…ンシア?」
「え、あ、ハイ!」
慌てて返事をする。きっと何回も呼ばれていたのだろう。
「仲間を今から探すんだが―…まずは身近な君からだ。もし良ければ、これからも私と一緒に来てくれ」
「え…?」
「さっき言っただろ。聞いてなかったのか? 仲間を探すって。君の意志を問いたいとも言っただろう」
エドガーはやれやれといった感じで言った。
「エドガーさん…」
瞬間、視界がぼやけてきた。
「君は信頼できる女性だ。巻き込んでしまうかもしれないが、
こんな馬鹿げたことをやめさせるために、協力して欲しい」
エドガーの言葉も、今のシンシアにはぼやけてしか聞こえていなかった。
322自由意志3/3 :2005/06/06(月) 22:14:41 ID:HnOdBPZd
―ああ、私は必要とされているんだ。
この殺人ゲームの中で、残った良心に。
私は、いらない人間じゃない。
私は、今、生きている。
泣いてる? 嬉しいから? 信頼できるって、エドガーさんに言われたから?
泣いている…なんで?
―そうか・・・生きているから!

嬉しさのあまり、シンシアの思考はいろんな方向へ飛んでいた。

しかしその思考を、銃声が遮断した。
「ここから近いぞ?!」
エドガーの緊張した声が、今度はやけにはっきりと聞こえた。


【エドガー(右手喪失) 所持品:天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン 
【シンシア 所持品:万能薬 煙幕×1(ザックその他基本アイテムなし)
 第一行動方針:仲間を捜す 第二行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【現在地:カズス北西の森】
323決闘の… 1/2:2005/06/07(火) 01:33:30 ID:57kCJkc6
「どうだ、左腕は動くか?」
「ああ、問題ねえ」
そう言ってシドは治療を受けた左肩を、グルグルとまわし健在を示す。
「あいつは…いないみたいだな」
アルスは周りを見渡し安全の確認する。
どうやら、アリアハンを離れる直前に襲いかかってきた。
あのけんじゅうという武器を使う男は近くにはいないようだ。

「ケッ、ご苦労なこった、地図が書き換わってやがる」
地図を広げたシドがぼやく。
「周りは岩山で遠くに海が見えるな、ということはここの大陸の真ん中辺りか」
アルスは地図を確認し、周りの風景と見比べ現在地を推測した。

「で、どうするよ」
「とりあえず町に向かうのが基本だろうね、ここからだとちょうど同じくらいの距離に村が二つある」
「どっちにいくか…だな」
アルスは頷き、シドもそれに答える。
「当然」
「向かうのは」

「東だろ」「南かな」
同時に二人は声を上げた。

「……本当に、意見が合わねえな…お前とは」
「…そうだねシド、ボクもそろそろ決着とつけなければ、と思っていたところだよ…」
二人は無言で睨み合い、互いに距離をとり構えを取る。

『…じゃんけん…ホイ!』
二人は声を合わせ、同時に掌を出した。
324決闘の… 2/2:2005/06/07(火) 01:35:46 ID:57kCJkc6
【アルス 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
 第一行動方針:南の村に向かう(カヌーンの村)第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【シド(左肩軽症) 所持品:ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) ロープ
 第一行動方針:東の村に向かう(カズスの村) 第一行動方針:同上 最終行動方針:ゲームの破壊】
【共通行動方針:じゃんけんに勝ったほうに従う】
【現在位置:カズス西、カナーン北の岩山の曲がり角】
【備考:食料多】
325目つきの悪い金髪の男 1/3:2005/06/09(木) 01:28:15 ID:acWEoYYr
「なんだろう、これ」
浮遊大陸に降り立ったイザは、足下に何か紙切れを見つけた。
「なんですか、その紙?」
それに気づいたロザリーがイザに声をかける。
「いや、そこに落ちてたんですけど」
「なにが書いてあるんですか?」
「まだボクも読んでないんだけど、えぇっと…」

『キンパツニキヲツケロ』

そこには、明らかに血で書かれたであろう文字が書かれていた。
「……金髪」
「金髪…」
二人は呟き、同じ方向を見つめた。

「あん? 何だよ」
二人が見つめるそこには、目つきの悪い金髪の男、サイファーが視線に気づきこちらを見つめ返していた。

「あんだよ、じっと見やがって…。ん、なんだその紙」
「いや、なんでもない」
イザは慌てて首を振った。
「貸せ」
そう言ってサイファーはイザの手から紙を奪う。

「『キンパツニキヲツケロ』…なんだコリャ。っておい、何で離れる」
「なんでもないさ、うん。なんでもない」
「そうですわ、ホホホ」
そう言いながらもロザリーとイザはサイファーから距離をとる。
326目つきの悪い金髪の男 2/3:2005/06/09(木) 01:30:30 ID:acWEoYYr
「…お前等な…俺の事な訳がねえだろうが!」
大声をあげサイファーが怒りを露にする。
「冗談だって、冗談」
「そうですわ、ホホホ」
そう笑いながら、二人はサイファーのもとに戻っていった。

「…全く」
頭を押さえ、サイファーはため息をついた。
「けど、まじめな話、それが誰かが死ぬ間際にばら撒いたものだったら、危ないかも知れない」
「なにがだよ?」
突然の真面目なイザの言葉に、思わずサイファーは聞き返す。

「これを見た誰かがサイファーを見て、犯人と思って襲い掛かってくるかもしれないだろ?」
「…たしかにな、これだけ情報が曖昧だと犯人が特定出来ないからな」
「特にサイファーは疑われやすいと思うし」
「何でだよ?」
「目つきが悪い」
サイファーはイザの頭を殴った。

「余計なお世話だ!」
大声で怒鳴りサイファーは、紙切れをザックに放り込み海岸沿いを歩き始めた。
「だから、誤解を受けやすいって事だよ。気をつけなよ本当に」
頭を摩りつつ、先を行くサイファーの背中に声をかける。
「わってるよ、んなことは」
「それに、本物の犯人の金髪にも気をつけないと」
「ああ、わってるよ」
先を行くサイファーその後を追って、イザとロザリーも海岸沿いを歩き始めた。
327目つきの悪い金髪の男 3/3:2005/06/09(木) 01:33:00 ID:acWEoYYr
【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【サイファー(右足軽傷) 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 基本行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【第一行動方針(共通):セフィロスとクジャを倒す 第二行動方針(共通):ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーン北西の海岸沿い】
328罪の重さ 1/4:2005/06/10(金) 01:34:46 ID:JRuecRcq
「子供相手に不意打ちなど、恥を知れ!」
ドルバは咆えながら、ピエールに向かい噛みかかる。

「全ては我が主人のため」
その牙をピエールは刃で受け、ピエールはドルパから距離をとる。

「主人だと? 己が命惜しさに配下にこのような事をさせる主人など、高が知れておる!」
ドルバの口から吐き出された炎がピエールを襲う。

「黙れ! 我が主人を愚弄するな! 全ては私の独断に過ぎん!」
その炎を真正面から切り払い、ピーエルはドルバに向かう。

「己が配下のこのような行動を許す時点で同じこと!」
「黙れ!!」
そして、再度激しくぶつかり合う2匹のモンスター。

その光景のすぐ横で、ギードはテリーの治療を行っていた。
「どうギード、テリーは大丈夫?」
「心配入らん、肩を掠めただけじゃ。命に別状はない」
その言葉に、ルカとトンヌラは胸を撫で下ろした。

「ギード、テリーと二人を連れてこの場から離れろ!」
突然、ピエールを相手にしていたドルバが咆えた。
「な、なにいってるんだよドルバを置いていけるわけ無いだろ!」

「こやつは遠距離を攻撃できる武器を持ている、その上魔法などにお前らまで巻き込まれる可能性も有る」
ピエールの攻撃をしのぎながら、ドルバはルカ達に向けて話を続ける。
「僕たちなら大丈夫だよ!」
「馬鹿者! 怪我をしているテリーはどうするのだ!」
ドルバの大声にルカの動きが止まる。
329罪の重さ 2/4:2005/06/10(金) 01:36:49 ID:JRuecRcq
「…わかった、ワシが責任をもって皆を安全な場所までつれてゆこう…」
「ギード!?」
「任せたぞ、ギード」
ピエールと戦うその姿を、ルカは心配そうに見つめる。

「ルカよ、心配せずともいい。こいつを倒して、すぐに追いつく!」
目の前で剣を振るうピエールを見つめながら、ドルバはそう言う。

「絶対だよ、ドルバ、絶対に死ぬな。マスターからの命令だ!」
「了解した、新しい主よ!」

ギードの体を盾にしながら、ルカたちはその場から離れていった。
その様子を横目で見ながら、ドルバは安心したように息を吐いた。

その時点でドルバは悟っていた。
自分では目の前のモンスターに勝てないだろうと。

技量にそれほど差があるわけではない。
決定的な違いは道具と覚悟。
子供相手に容赦なく撃ち抜くこいつと自分では、殺すということの覚悟が違った。
実戦の、殺し合いにおいてそれは何よりも重要なものだ。

「イオ」
ピエールが至近距離で魔法を放つ。
近距離で起こった爆発にドルバの視界は奪われた。
だが、接近した距離での魔法はピエールすらも飲み込んでいた。

目くらまし一つに自らも巻き込む。
この覚悟こそが決定的な差を分ける。
視界の無いドルバに向けて、ピエールは何発もの銃弾を撃ち込んだ。
330罪の重さ 3/4:2005/06/10(金) 01:38:54 ID:JRuecRcq
「我が主人を愚弄した罪、その身で贖え」
倒れこむドルバにピエールは刃を向ける。
「…私はいい主にめぐり合えた。貴様などとは違う!」
叫ぶドルバの頭目掛け、無情の刃が振り下ろされた。


怪我人とカメと子供だ。そう遠くまでは行けないだろう。
そう思いピエールは対人レーダーを見つめる。
ピエールの予想通り、彼等はまだ対人レーダーの範囲内にいた。

すぐに追いつける距離だと判断したピエールは、ドルバのザックに目を移した。
ザックを拾い、その中身を漁る。
そしてその中身を見つめる動きが止まった。

天はそこまで自分に罪を思い知らせたいというのか。

それは在りし日の剣。
懐かしき記憶を呼び起こす。
苦しくも楽しい冒険の日々。

目の前にはその剣の主が冷たく横たわる。
その剣は重く、それは自分の罪の重さの様に思えた。
これが私の罪。私の現実。

ならば私はこの罪を振るい続けよう。

ピエールは手に取った剣をザックにしまわず。
その剣を片手に、反応のあった方向に向けて駆け出した
331罪の重さ 4/4:2005/06/10(金) 01:41:59 ID:JRuecRcq
【ピエール(HP1/5程度) (MP1/2程度) (感情封印)
 所持品:青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
 ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー 天空の剣
 第一行動方針:ルカたちに追いつき殺す 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

【ギード 所持品:首輪、不明
 第一行動方針:ルカたちを守る 第二行動方針:首輪の研究】
【テリー(DQM)(精神不安定回復気味、右肩負傷、気絶) 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖
 第一行動方針:治療を受ける 第二行動方針:わたぼう、わるぼうを探す】
【ルカ 所持品:ほしふりのオーブ 行動方針:テリーの治療】
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ 行動方針:テリー達についていく】

【現在位置:カナーン北の草地】

【ドルバ 死亡】
【残り 77名】
332我が主:2005/06/10(金) 02:52:23 ID:JRuecRcq
>>330>>331
「我が主人を愚弄した罪、その身で贖え」
倒れこむドルバにピエールは刃を向ける。
「…私はいい主にめぐり合えた。貴様などとは違う!」
叫ぶドルバの頭目掛け、無情の刃が振り下ろされた。


怪我人とカメと子供だ。そう遠くまでは行けないだろう。
そう思いピエールは対人レーダーを見つめる。
ピエールの予想通り、彼等はまだ対人レーダーの範囲内にいた。

それを確認したピエールはドルバのザックを剥ぎ取り、反応のあった方向に向けて駆け出した。

【ピエール(HP1/5程度) (MP1/2程度) (感情封印)
 所持品:青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
 ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー ドルバのザック
 第一行動方針:ルカたちに追いつき殺す 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

【ギード 所持品:首輪、不明
 第一行動方針:ルカたちを守る 第二行動方針:首輪の研究】
【テリー(DQM)(精神不安定回復気味、右肩負傷、気絶) 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖
 第一行動方針:治療を受ける 第二行動方針:わたぼう、わるぼうを探す】
【ルカ 所持品:ほしふりのオーブ 行動方針:テリーの治療】
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ 行動方針:テリー達についていく】

【現在位置:カナーン北の草地】

【ドルバ 死亡】
【残り 77名】
タイトルも修正お願いします。
333Cautious about Meeting again 1/3:2005/06/11(土) 20:05:15 ID:mfv5DvRT
前方に人影を見つけたサイファーは、片腕を広げイザ達の動きを制した。
「俺が行って見てくる。イザはここでロザリーを守ってな」
そう言ってサイファーは破邪の剣をザックから取り出だす。
「…お気をつけて」
その言葉に片手で答え、人影のほうに向かって歩いていった。

ある程度近づいてゆくと、向こうもこちらに気づいたのか武器を構えこちらを振り向く。
その振り向いた男の顔を見て、サイファーは忌々しそうに呟いた。
「…チッ、お前かよ」

「サイファーか…」
それは自分と同じ傷を持つ、自分にこの傷をつけた男。
もっとも、先に手を出したのはサイファーだが。
幾度も全力でぶつかり合ったこの二人が、再会を懐かしむわけもなく。
互いに警戒を緩めることもなく、その場で武器を構え睨みあっていた。

サイファーは、スコールの後ろの男の髪を見つめた。
「…お前らまさか、このゲームに乗ってなんかいねえだろうな?」
鋭い眼光を更に凄め、サイファーはスコール達を睨む。
「…乗っていない、そう言うお前はどうなんだ?」
「ケッ、乗るかよ。こんなクソゲーム」
暫く二人は互いに無言で睨み合い、警戒しながらもゆっくりと剣を下ろした。

「…アーヴァインを探してる、何か知らないか」
「アーヴァイン? いや、知らねえな。
 あいつなんかよりも、リノアの奴を探してやれ、お前に会いたがってたぜ」
「会ったのか? リノアに」
「ああ、今は別だがな」
「そうか。…アーヴァインがゲームに乗った、すでに何人か殺してる」
「…本当か? へぇ…あのアマちゃんがねぇ…」
何とも言えない表情をしながら、サイファーはそう呟いた。
334Cautious about Meeting again 2/3:2005/06/11(土) 20:07:19 ID:mfv5DvRT
「俺達もセフィロスとクジャって奴らを探してる。
 両方完全にゲームに乗ってる上にバカみたいに強え、気をつけな」
「そうか」
「後…。ほらよ」
サイファーはザックから紙切れをだし、スコールに渡す。
「…?『キンパツニキヲツケロ』…金髪、お前のことか?」
「違うに決まってんだろうが!」
怒鳴るサイファーに、スコールは冗談だといわんばかりに肩をすくめる。
「ったく…どいつもこいつもよぉ」
サイファーは頭を掻きむしる。
「お前の連れも金髪みたいだからな、せいぜい勘違いした野郎に襲われねえように気をつけな」
「リノアのことといい、さっきから随分と優しいじゃないか」
「ケッ、オレ様はもともと優しいんだよ」
そう吐き捨て、サイファーは踵を返す。
「じゃあな、せいぜい死なねえようにするこった」
「…お前もな」
それだけの簡単な別れの挨拶を交わし、サイファーはイザ達の所に戻って行った。

その様子を遠くから見ていたいたのか、イザが戻ってきたサイファーに声をかけた。
「サイファーの知り合いだったのか? 強そうな人だったし協力してもらえばよかったのに」
その言葉に、サイファーは眉間にしわを寄せる。
「はあぁ? 誰が? 俺がか? あんな空かした野郎に頭下げろってか?」
「サイファーさん…怖いです」
「ケッ、あの野郎はいいんだよ。他だ他、行くぞ」
ぶっきらぼうにそう言い捨て、サイファーは先を歩き始めた。
335Cautious about Meeting again 3/3:2005/06/11(土) 20:09:21 ID:mfv5DvRT
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:アーヴァインを探す 第二行動方針:ゲームを止める】

【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【サイファー(右足軽傷) 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 基本行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【第一行動方針(共通):セフィロスとクジャを倒す 第二行動方針(共通):ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーン北西の海岸沿い】
336名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/11(土) 23:22:12 ID:XHVHCy+5
保守
337償い方 1/3:2005/06/12(日) 00:50:54 ID:mh3KrByB
「よう、目が覚めたか? クジャ」
「…ジタン?」
目を覚ましたクジャは、寝転びながら不思議そうな目でジタンを見上げた。
「ここは天国かい? いや地獄か…。それとももう一度蘇ったのかな?」
「おいおい、助かったんだよ」
その言葉に、ジタンは呆れたように肩をすくめた。
「ハハ…わかっているよ。…バカだな、またボクを助けたんだね…」
「言ったろ、誰かを助けるのに理由はいらないってね」
少し冗談めかしてそういって、ジタンは少しだけ笑った。
その顔を見てクジャは目を瞑って、優しげに少し笑った。

「ああ…なんだか、ひどく穏やかな気分だよ…」
目を瞑りながら言うその言葉に、ジタンは そうか、とだけ相槌を打った。

暫くそうして目を瞑ったいたクジャは、ゆっくりと目を開いた。
「…もう行くんだジタン、ボクなんかと一緒にいてもろくな事は無い」
「なに言ってんだよ、怪我人をほっておけるかよ」
「いいんだジタン、ボクはたくさんの許されないことをした。
 ボクを恨んでる奴等も多い、一緒にいれば君も狙われることになるんだよ?」
その言葉を聞いても。ジタンの態度はかわらない。
「バカ、そんな事お前を助けた時点で理解してるよ。
 それに、お前を助けてくれた人も、お前のことを恨んでいた。
 それでも、歯を食いしばりながらお前のことを助けてくれたんだ。
 確かにお前は許されないかもしれない、けど、少しでも償うことは出来るはずだ」
ジタンは諭すようにクジャに言った。

「……償い」
「そう、死んじまった人や、残された人に必死に頭下げるのでもいい。
 自分に出来る何かを、誰かのためにするのでもいい。償い方なんて沢山あるんだ」
338償い方 2/3:2005/06/12(日) 00:52:55 ID:mh3KrByB
導くようなジタンの言葉。
その言葉に、脳裏に浮かぶのは一人の男の事。

始めて彼を見たとき、自分と彼が似た存在だと感じた。
だがそれは、自分の思い上がりだったようだ。
彼ならば、自分のように迷いなどはしないのだろうから。

これからも彼は、何の迷いも無く殺し続けるのだろう。
己の道を迷いも後悔もしないのだろう。

「…ジタン、見つけたかもしれない。僕に出来ること、これは多分…僕にしかできないことだ」
「…? なんだよそれ」
ジタンが一歩、仰向けに倒れたままのクジャに近づく。
クジャは素早くその腕を取り、同時にジタンの足を払った。
ジタンの体は大きく浮かび地面に転がった。

「ッで! いきなり何しやがんだ、クジャ!」
起き上がりクジャのほうを睨みつけると、そこにクジャの姿は無かった。
「クジャ! ッ、あのバカッ!」
ジタンはクジャを探して走り出した。

彼を止める。
それが自分のしたことの償いになるかどうかはわからない。
だが、自分が作ってしまったような犠牲者は減らすことは出来るだろう。
彼を、セフィロスを殺す。

その誓いを胸に、クジャはセフィロスを探して浮遊大陸を駆けた。
339償い方 3/3:2005/06/12(日) 00:54:58 ID:mh3KrByB
【クジャ(HP 1/4 負傷、MP消費) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾
 第一行動方針:セフィロスを殺す 最終行動方針:最後まで生き残る】

【ジタン 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス
 第一行動方針:クジャを追いかける
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】

【現在地:ウルの村、カズスの村の間の草原】
340紅と赤、そして朱 1/7:2005/06/12(日) 05:32:29 ID:FIoLAqSR
ビアンカをサラの寝室に招きいれ、ギルダーはドアを閉める。
水でも出そうとベッドの脇の水差しに近づこうとしたところで
ギルダーはビアンカが硬直していることに気がついた。
「どうしたんだ? ビアンカさん」
声をかけるとビアンカは腕を組んで三白眼でこちらを見つめてきた。
ギルダーは少し気圧される。
「ギルダー、あなた私を誘っているのかしら? それとも襲うつもり?
 私これでも人妻なんですけど」
意味がわからないながらもビアンカの雰囲気にたじたじとなる。
何だ? 自分は何か気に障ることをしたのか?
人妻を誘うとか襲うとか穏やかな言葉ではない。
自分はただ、彼女と共に潜伏しようとサラの寝室に招きいれ……寝室?
当然部屋にはベッドがある。王族の部屋だけあってかなり大きいベッドだ。
自分は男で彼女は当然ながら女。それがこの密室で何時間も過ごす?
柄にもなくギルダーは顔を朱に染めた。
「い、いや、違うんだビアンカさん。これは決してやましい気持ちで招き入れたのではなく、
 こ、ここは知り合いの部屋なんだ! サラと言って美しいこの国の姫なのだが、
 他の部屋よりも幾分か落ち着く場所だから……い、いや、もちろん貴女も魅力的なのだが……」
何を言っているのだ自分は、支離滅裂じゃないか。落ち着け、冷静になるんだ。
こんな情けない姿は自分には相応しくない。
深呼吸をして再び言い訳を紡ごうとした口が止まる。
ビアンカを見ると、口を押さえてクスクスと笑っていたのだ。
「な、か、からかっていたのか」
「クスクスクス、いいえ。
 でも慌てる貴方を見ているとやはり年相応の少年だと思って」
「フンッ」
ギルダーはばつが悪そうに顔を背け窓の外に視線を向ける。
「あら、拗ねさせちゃったかしら?」
そういってビアンカはベッドの上に座る。
それを帽子の鍔で視線を隠しながら横目で見るギルダー。
美しい、と思った。まるで一枚の絵画がそこにあるようだと。
341紅と赤、そして朱 2/7:2005/06/12(日) 05:33:32 ID:FIoLAqSR
ふと悲しい顔をしたサラが脳裏に浮かぶ。
まるで叱られているような気分になった。
『スマン、サラ。俺の気持ちは変わらないから』
今、頬に朱が射していることは許して欲しい。
それに自分が彼女とどうこうなることはあり得ない。
彼女には夫がいるし、何より自分は人を殺している。何人も。
彼女の配下だったという、あの純朴そうな兵士も。
『そうだ。そして……おまえとももう、合わせる顔なんて無くなってしまった……
 ならばせめて、彼女たちやサックスが無事に帰れる為に力を尽くすさ。
 さようなら、サラ』
目を伏せる。
ふと、窓の外……眼下に見える石畳を一人の少女が歩いているのに気がついた。
満身創痍で今にも倒れそうだ。
「あれは?」
「どうしたの、ギルダー?」
ギルダーの様子に気付いたビアンカが尋ねる。
倒れた。眼下の少女はそのままピクリとも動かなくなる。
「城下で少女が倒れている。かなり危険な状態のようだ」
「大変、急いで助けないと!」
言うが早いか身を翻すビアンカ。
「いや、待ってくれビアンカさん!
 俺が行く。あなたはここで治療の準備を頼む」
そういうとビアンカは素直に従った。
力があり、回復呪文を使えるギルダーのほうが適任と判断してくれたようだ。
「ええ、わかったわ。お願いね、ギルダー」
頷き、ギルダーは部屋を駆け出していった。

サラの寝室にてベッドに寝かされた少女にケアルラをかけているギルダー。
ビアンカは少女とギルダーの汗を拭きながら雑に徹している。
342紅と赤、そして朱 3/7:2005/06/12(日) 05:34:38 ID:FIoLAqSR
「どう、様子は」
「胸筋の打撲傷が一番酷い。動くことすら困難だったはずだ。
 疲労もかなり激しいようだ。だが内臓や骨に異常は見られない。
 これならば何とか俺の術でも、そう時間も掛からずに完治させられるだろう。
 後は食事と睡眠をよくとれば問題ない」
「そう、良かった……」
見ず知らずの少女にも娘と変わらぬ慈愛を向けるビアンカにギルダーは笑う。
『本当に優しい人だ、旦那が羨ましいな』
一息つき、椅子に座る。
「終わったの?」
「ああ、一番大きな打撲傷はこれで大丈夫だ。疲労も大分解消されたはず。
 後は全身の小さな擦過傷だが、これは後でもいいだろう。
 少し連唱したからかな、俺も疲れた」
そういって水を飲む。
「う、う……」
その時、少女が目を覚ました。
傍にいるビアンカとギルダーを見てギョッとする。
「誰!?」
身を起こし、後ずさる。
しかしビアンカは優しく微笑み、水の入ったグラスを差し出す。
「大丈夫よ。私達はあなたに危害を加える気はないわ。
 さあ、疲れているのでしょう。どうぞ」
少女はしばらくビアンカを見つめていたが、パッとグラスを取ると
一気に水を飲み干した。
ブハァッ、と親父くさい息を吐き出す。
その時に気付いたようだ。自分の胸に手をやる。
「こっちの赤帽子の彼。ギルダーがあなたを治療したのよ。
 彼にも感謝なさいね。私の名前はビアンカ。
 あなたのお名前は?」
「私は、アリーナ」
まだこちらへの警戒は解いていないようだが、少女は素直に答える。
343紅と赤、そして朱 4/7:2005/06/12(日) 06:19:41 ID:FIoLAqSR
「そう、アリーナ。良かったら事情を聞かせてもらえるかしら?
 あなたがこのゲームが始まってどう行動していたのか。
 その傷は一体誰にやられてしまったものなのか。
 もちろん、私たちのことも話すわ」
そしてアリーナの瞳を見つめる。
アリーナもまた、ビアンカの瞳を見つめる。
しばらく見詰め合って、根負けしたようにアリーナが溜息をついた。
「わかったわ。お姉さん信用できそうだし。
 でもそっちのことを先に話してほしいな」
「ええ、分かったわ。じゃあこちらから話すわね」
そうしてビアンカはギルダーの犯した殺人のことは上手く伏せて、
事情を話し始めた。

「そう、ビアンカとそっちの無愛想な人も両方とも呪文使いなんだ……」
アリーナの眼がわずかに細められる。
「無愛想で悪かったな」
自分では相手を威圧するだけだと分かっていたので今まで沈黙して
ビアンカに全て任せていたが、流石に気分悪そうにギルダーは声を出す。
「あら、呪文使いはお嫌い?」
「ううん、そんなことないよ。ただ小さい頃からブライに呪文を教育されてきたから。
 厳しかったのに結局使うこと出来なかったし、呪文は嫌いかな……。
 さて、今度はこっちが話す番だったね。」
その時、グゥゥゥ〜と腹の虫が部屋に響き渡った。
「でもその前に何か食べ物が欲しいな」
ビアンカは苦笑して、ザックから食べ物を取り出そうとする。
「いや、待ってくれ。何も残り少ない食料をここで消費することはない。
 幸いここは知った場所だ、厨房に行けば何かあるだろう。
 俺が取ってくるよ」
ギルダーは立ち上がり、ドアに向かう。
344紅と赤、そして朱 5/7:2005/06/12(日) 06:20:44 ID:FIoLAqSR
「そう、じゃあお願いするわね。
 その間にアリーナは身体を拭きましょうか」
ビアンカは用意していた湯桶に手拭いを浸し、絞り上げる。
そしてギルダーは扉を――――――閉めた。

コツコツと足音を響かせてギルダーはサラの寝室へと向かう。
参加者に多くの食料が渡るのを防ぐためか、厨房にはろくな物が残っていなかったが
一応、1日分に足る食料は確保できた。拳大のパンが6つに布にくるまれた10枚の干し肉。
3人でなら充分だろう。ギルダーは何とはなしに気分が良かった。
心なしか足も弾んでいるような気がする。
『俺は、人を救うことができたのかな』
ゲームに乗り、多くの人を殺してしまった自分。
ここで一人救ったところで償いになどなりはしないだろう。
だが、自分には人を救う力がある。自分にはまだ価値がある。
『殺してしまった者達が俺を許してくれるまで、俺は救い続ける。
 ビアンカさんも、アリーナとか言うあの娘も、セージもタバサも、
 サックスやエリア、デッシュだって俺が救ってやる。
 ドーガ、ウネ。ついでだ、ザンデだって救ってやろうじゃないか。
 そうだ、そうしたら俺は――』

サラに会えるかもしれない。

希望が沸いてくる。今なら自分は何でもできるだろう。
自分たちをこのような場所に放り込んだ主催者を倒し、必ず元の世界に還ってやる。
「ハハッ」
思わず笑声を漏らし、足早にサラの部屋へと急ぐ。
そして、気付いてしまった。
自分が向かっている方向から流れてくる臭気を。
嗅ぎなれた臭い……血の臭いだ。
どくん、と心臓が跳ねる。
手に持っていた食料を投げ出し、駆け出す。
345紅と赤、そして朱 6/7:2005/06/12(日) 06:21:47 ID:FIoLAqSR
到着するが早いか乱暴にドアを開け、部屋の中に駆け込んだ。

紅。

最初はそれしか目に付かなかった。
一瞬の後理解する。部屋が鮮血で染め上げられているのだと。
ベッドの上を見る。
ビアンカがそこに……在った。
違う。それはビアンカではない。そのはずはない。
そこには首から上だけしかない。
長く美しい金髪……朱に染まり、乱れている。
深く透き通るような蒼い瞳……うつろに光を失くしている。
ビアンカの面影はそこまでだ。
口がだらしなく開き、そこから血が滴っている。歯は全て砕かれていた。
顎も割られているようだ。中には舌を引きちぎられた痕も見える。
喉は縦に引き裂かれていた。
身体は……ベッドの脇に倒れていた。
ギルダーはその全てのことを理解する。
しかしビアンカの死を理解するのには後数瞬の時を要した。
一歩、近づく。そしてまた一歩近づく。
近づくたびに両の眼から涙が溢れ出てくる。
ゆっくりとビアンカの無惨な首に両手を差し出し、持ち上げた。
抱きしめる。そこで何かが……切れた。

「うぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

慟哭。
自分はまた間違ってしまったのか。これは俺が犯した罪の報いなのか。
しかしこれはあんまりではないか。何故俺に直接、罰を下さないのか。
この美しかった女性を死なせてしまった。
これではもう、自分が何をしようと償いきれるはずもない。
『俺は、サラに会いたかっただけなのに……』
346紅と赤、そして朱 7/7:2005/06/12(日) 07:16:34 ID:FIoLAqSR
ドサッ
その時、自分の背に何かが覆い被さってきた。
振り向こうとする前に首に腕を絡められて極められる。
その瞬間視界の端に写ったのは自分が救ったあの少女――アリーナだった。
「お、俺には……クハッ、まだ……価値が……」
「ないよ、そんなの」
ゴキンッ
湿った音を鳴り響かせて、ギルダーは頚椎を砕かれ……死んだ。
彼の瞳に最期に写ったものはスカートの下から黒い尻尾を覗かせて甲高く哄笑する悪魔の姿だった。

紅く染まった部屋で赤い衣に身を纏った男はその瞳を朱に染めて……

【アリーナ2(分身) (HP 4/5程度)
 所持品:E皆伝の証 E悪魔の尻尾 ライトブリンガー 手榴弾×2 ミスリルボウ
     ファイアビュート 雷の指輪
 第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】
【現在位置:サスーン城東棟 サラの寝室】

【ギルダー 死亡】
【ビアンカ 死亡】
【残り75名】
3471人でいること 1/7:2005/06/12(日) 15:53:41 ID:gt7EAhif
12時頃だったと思う。
といっても、別に時計を見たわけでも太陽の位置を確かめたわけでもないので
もしかしたらまだ11時だったのかもしれないし、あるいは13時をとっくに過ぎていたのかもしれない。
ともかく――アーヴァインが目覚めたのは、それぐらいの時間帯になってからだ。
なおも突き放すような態度を取る彼に、ティーダは例のメモを見せ、今までの事を全て話した。
ミレーユのこと、ターニアとエアリスのこと、ティファのこと、茶色の髪の少女のこと。
……ターニアの名が出た時、アーヴァインの顔色が少しだけ変わったのだが――
ティーダは気付かず、ただひたすらに自分が経験したことを話し続けた。
そして。
「昔のあんたがどんな奴で、どんなことをしたのか、俺は知らないッスよ……
 でも、今のあんたは悪い奴には見えないしさ……だから、一緒に居てほしいんだ。
 あの悪魔みたいな奴から、助けてほしいんだ」
そこまで言って、ティーダは顔を伏せた。

数分ばかりの沈黙の後、小さなため息がこぼれる。
「……わかったよ」
承諾の返事に、ティーダは表情を輝かせながら面を上げた。
その鼻先に、いきなり指が突きつけられる。
「ただし、条件がある」
底の見えない冷たい瞳をティーダに向けたまま、アーヴァインは静かな声で告げ始めた。

「何があってもバトルには介入するな。誰かが傷ついていても絶対に助けるな。
 例え知り合いや仲間や恋人が襲われていて、死にそうになっていてもだ。
 それが出来ない奴とは一緒にいる気なんてない」

あまりにも冷酷な条件に、ティーダは思わず息を呑む。
「どういう……ことッスか?」
「バトルに介入すればそれだけ敵が増えるだろ。
 それに、助けようとした相手が殺し合いに乗っていないなんて言い切れるのか?」
ソロだって変に仏心なんか出すから、僕に一杯食わされかけたんだぜ――
さらりと言いのける彼に、ティーダは改めて思い知らされた。
彼が――単に記憶を無くしたというだけの――人殺しなのだということを。
3481人でいること 2/7:2005/06/12(日) 15:58:55 ID:gt7EAhif
「僕らは神様じゃないんだ。甘い事言ってたって生き延びられやしないんだよ。
 命が惜しいなら他人なんか見捨てろ。自分の事だけを考えろ。誰も助けるな。
 その程度のことが守れないならここでお別れだ。アマちゃんに付き合って死ぬのはゴメンだからな」

どこまでも冷酷にアーヴァインは言い放つ。
ティーダは唇を噛みしめ、手を固く握り締めた。
一人になるのは怖い。死ぬのも、確かに怖い。
しかし、しかし、しかし……!

「出来ないに決まってるだろ、そんなの!」

真っ向からアーヴァインを見据え、ティーダは叫ぶ。
「俺、決めたんだ。ユウナやリュックと一緒にスピラに帰るって!
 ターニアを、兄貴と一緒に元の世界に返してやるんだって!」
そうだ。だからこそ、エアリスの首輪を持ってきたのだ。
謝りながら、遺体の首を切り落としたのだ。

「一人でいるのは怖いッスよ。今でもそれは変わらない。
 だけど……みんなを見捨てて生き延びるなんて絶対嫌だ!
 そんな真似するぐらいなら、俺は一人でも戦ってやる!」
凍てつく氷のような群青の瞳と。真夏の海を思わせるコバルトブルーの瞳が、一瞬だけ交錯し――
「それがあんたの答えか」
先に目を逸らしたアーヴァインが、無感情に呟いた。
「ああ」
ティーダは短く、しかしはっきりと答える。
アーヴァインは口の端を歪めると、ゆっくりベッドから降りた。
そして自分のザックを拾い上げると、木製のドアを押し、廊下へと姿を消した。


取り残されたティーダは、しばらくその場に立ち尽くしていた。
そうして数分が過ぎ、やがて、空っぽになったベッドに目を移した。
3491人でいること 3/7:2005/06/12(日) 16:01:15 ID:gt7EAhif
一人。
また、一人。
その事実やこの先の事を思うと、心細いことは否めない。
けれど――自分の判断は間違っていないはずだ。
そう思いながら、ベッドの上に腰を下ろす。

――仲間を見捨ててまで生きようとして、何の意味がある?

自分が生きたいと思うのは、ただ死ぬのが怖いからじゃない。

仲間達と、大切な人と、『一緒に生きたい』からだ。

「ユウナ……俺、間違っちゃいないッスよね」
ティーダは力なく呟いて、天井を見上げ――
ため息の音が聞こえた。



(――『聞こえた』?)


「あぁ、もう……そう思うならさぁ、引きこもってないでさっさと外出ろよな」
通路の方から、呆れたような男の声が響く。
ティーダは振り向き――そして見た。
出て行ったはずのアーヴァインが、扉のドアノブに手をかけて立っているのを。

「こんな狭っ苦しいウサギ小屋の中で膝抱えてたって、どうにもならないっての。
 さっきの勢いはどーしたんだよ?」
先ほどまでの、冷徹で剣呑な雰囲気は微塵もない。
代わりにひどく穏やかな……例えるなら、世話を焼かせる友人と接する時のような。
そんな軽い苦笑を浮かべていた。
3501人でいること 4/7:2005/06/12(日) 16:05:14 ID:gt7EAhif
「あんた……どうして」
ティーダの言葉を遮るように、アーヴァインは一気にまくし立てた。
「そりゃねえ、本当はとっとと出て行くつもりだったんだよ。
 あんだけのタンカ切れたんだし、きっと一人でも大丈夫だと思ってさー。
 なのに、何分経っても外に出てこないし〜。
 気になって様子を見てみれば、膝抱えて『ゆうなぁ、オレ間違っちゃいないッスよねぇ』って……情けないの〜」

彼はやれやれと肩を竦め、ティーダに歩み寄る。
「ほら、立った立った」。そう言ってティーダの腕を軽く掴むと、そのまま後ろに数歩下がって引っ張った。
困惑と、かすかな疑念を瞳に滲ませ、ティーダはアーヴァインを見つめる。
一体、この青年は何を考えているのか――
そんなティーダの思考を読み取ったかのように、アーヴァインは悪戯っぽく微笑んだ。

「決めたんだろ? みんなと一緒に帰るんだって。
 そんで僕に言っただろ、一人でも戦うって。
 そういうこと言える奴が悪い奴なわけないじゃん。
 僕じゃなくたって誰だってわかるよ。金髪だろうが何だろうが、あんたが信用に値する人間だってことはさ」
アーヴァインはベッドに座って、言葉を続ける。
「命狙われて一人が怖いってのはわかるけど、あんただったら仲間なんてすぐ作れるよ。
 だいたい、覚悟も、勇気も、ちゃーんと持ってるじゃんか。
 恐怖に負けて迂闊な判断をしちゃダメだって」
僕なんかを頼ったって、こんな所に隠れてたって、いいことなんか一つも無いんだからさ、と笑う。

それで、ようやくわかった。こうやってはっきり言われるまで気付かなかったというのも鈍い話だけれど――
やっとわかった。彼が何を言いたくて、こういう真似をしたのか。

「ありがとな」
ドアノブに手をかけ、ティーダは呟く。
振り向きはしなかった。
アーヴァインがどんな表情をしているか、予想がついたから。
「気をつけてね〜」
やけに明るい別れの言葉を背に、ティーダは扉を開けたまま、階段を下りていった。
3511人でいること 5/7:2005/06/12(日) 16:08:51 ID:gt7EAhif
足音がすっかり聞こえなくなったことを確認してから、アーヴァインはベッドに体を投げ出す。
そして強張った微笑を浮かべたまま、ゆっくりと息を吐いた。
「辛いなぁ……やっぱ」

確かに、ティーダの傍にいて守ってやるという選択肢もあった。
竜騎士の靴の機動力とG.F.ディアボロスの能力があれば、敵に見つかっても簡単に逃げられるだろう。
『あんこく』を使えば素手でもある程度は戦えるし、相手の武器を『ぶんどる』という手も打てる。
――全部、自分の体が、こんな状態でさえなければの話だ。

足は動く。歩く事もできる。多分走ることもできるだろう。早歩き並みのスピードで、数十mぐらいなら。
手も動く。ドアノブ程度なら掴めるし、回せた。
しかしそこまでだ。それ以上は指が動かない。握りこぶしすらも作れない。
全身に鈍い痺れが絡みつき、立って歩いて話をするだけでもひどく消耗してしまう。
そんな状態で、一体誰を守れるというのだ?
誰も守れやしない。自分の身すらも、守れない。

けれど――
「はぁ……僕も、そろそろ行こうかな」
呟いて、アーヴァインは身を起こした。
身体がどうだろうと、やらなくてはいけないことがある。
自分と同じような選択をしてしまった人を止めるためにも、脱出方法を探さなくてはいけない。
ソロ達にだって、もっときちんと礼を言わなくてはいけない。
何より、レナに、エリアに、イクサスに、バーバラに。誰より、スコールに謝らなくてはいけない。

「……」

開きっぱなしの扉を潜り、階段を慎重に下りていく。
足は比較的意に沿って動いてくれるのだが、それでも鉛のように重たい。
一歩、一歩、踏みしめるように降りていき……
「――!!」
残り数段まで降りた時、突然、足がもつれた。
手すりを掴もうにも間に合わず、身体が宙に投げ出される――
3521人でいること 6/7:2005/06/12(日) 16:11:35 ID:gt7EAhif
「うわっと!」
――が、何故か急に止まった。
「あぶねぇなー、もう……こんな事だろうと思ったッスよ」

「……あんた、どうして」
その台詞が、目の前にいる青年が呟いたものと同じだったことに気付いたかどうか。
呆然とするアーヴァインに、ティーダは軽く笑って答える。
「さっきあんた俺の手掴んだだろ?
 そん時、なーんか力入ってなかったっつーか、妙に弱々しかったからさ。
 気になってちょっと様子見てたんだけど……正解だったみたいッスね」
「余計なお世話だよ」
口を尖らせ、アーヴァインはティーダの手を振り払おうとする。
しかし、ティーダは離そうとしない。

「変な意地張るなっつーの。
 俺よりあんたの方がよっぽどヤバイだろ?
 記憶ないです、何も覚えてません、恨み買ってて狙われてます、身体フラフラです、じゃあさ」
「……」
「それに俺、言ったはずッスよ。
 みんなを見捨てて生き延びるなんて嫌だって。
 みんな、ッスよ。み・ん・な。その中には当然、あんたも含まれるわけ」
「絶対こじつけだろ、それ」
ティーダの台詞に、アーヴァインは笑いながら言った。
だからティーダも、もう一度笑った。

そうしてしばらく二人で笑いあい――
3531人でいること、2人でいること 7/7:2005/06/12(日) 16:15:18 ID:gt7EAhif
やがて、アーヴァインが切り出した。

「で、どうするんだよ? どっか当てでもあるのか?」
「いいや。ここも俺が住んでた世界とは全然違うッスからね。宛てもへったくれもないッスよ」
ティーダの返事に、アーヴァインは顎に手を当てて考え込む素振りをみせる。
「……じゃあ、とりあえずタンスのある家でも探そうか」
「なんで?」
首を傾げるティーダに、アーヴァインは意地の悪そうな微笑を浮かべる。

「あんたの服装、絶対目立つからさ。
 黄色に黒の標識カラーで、ズボンの裾の長さも違うって、もう格好の標的だよねー。
 赤いヘルメット被って森の中歩くのと同じくらい目立つって」
「コートに変な靴だって十分目立ってるっつーの!
 自分の事棚に上げるなよな!」
アーヴァインの台詞に抗議するティーダ。
けれど……口調とは裏腹に、その表情は笑顔のままだった。


【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕 首輪×1  ケフカのメモ
 第一行動方針:着替え探し(?) /ユウナ・リュック・ターニア・ロック・ソロを探す
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アーヴァイン(身体能力低下、HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP〜1日目深夜の行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:着替え探し(?)/ゲーム脱出方法を探す 基本行動方針:罪を償うために行動する】
【現在位置:カズスの村・宿屋→移動】
354名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/12(日) 17:36:11 ID:e9M2tRsv
347-353を無効にします
ご迷惑おかけしました
355オニゴッコ 1/4:2005/06/12(日) 22:52:54 ID:S//twKGX
「ち……っ!」
「逃げるな男!出来るだけ奇麗に壊してやる!」

レオンハルトはデールの猛攻に手を焼いていた。
彼は木陰から隙を突いて逃亡し、デールを撒こうと考えていた。
だがあの時は幸い弾切れの不安もあったデールが引き金を引くことを躊躇い、助かった。
しかしどうやら危険な賭けに負けてしまったらしい。今は肝心のデールに追いかけられている。

「本当は戦っても良いんだが……!」

だが、今の彼には少々難しい問題だ。
何せ今の彼はフリオニールの事で必死になり、集中力も散漫になっている。
そして「殺す気満々の人間」と「無闇に人を殺す事を躊躇う人間」が戦っても、当然後者が不利だ。
そしてこれも当然だが、自分は後者の方だ。

だがそうこうしている内に、城の出入り口にたどり着くことが出来た。
このまま外に出れば、撒ける可能性も高くなる。
そう考えながら彼は外へと飛び出した。
そしてその刹那に彼は、依然後ろから追いかけてくるデールを見た。

デールは笑っていた。
笑っていたのだ、静かに。
そして彼は引鉄を引いた。マシンガンの引鉄を、引いた。


辺りに、銃声が広がった。
356オニゴッコ 2/4:2005/06/12(日) 22:57:03 ID:S//twKGX


「もう〜、なんなんだってば〜」

サラの寝室の棟にある部屋で、アリーナは休息を取っていた。
そして新たな銃声に不平を漏らし、そしてそのまま休息に入った。
あのギルダーと名乗った男に回復してもらってはいたものの、まだ完治には至っていないのだ。
とにかく今からは先の事も考えて、スタミナを温存しなければならない。
故にこうして休息を取り、体力を少しでも取り戻そうと考えているのだが……。

「だから聞いたら疲れるような音出して欲しくないんだけどな〜」

だからこそ、先程から聞こえる発砲音が耳障りだ。
どうせならあの音を頼りに持ち主を探し、消してしまおうかとも考えたが……それは止めた。
そんな事で体力を消費させても仕方が無いだろう。

「ま、暫く潜伏と行きますか!運良く人がここに来ても殺せば良いだけだし」

そう言うと、本格的にそう決めたようで、辺りを警戒する事にした。
そうだ。血塗れの自分が血塗れの部屋の近くにいれば、自分が隠し通せるはずも無い。
それに赤い血の足跡も廊下に付いてしまっている。
だから、人を見つけた瞬間殺さなければならない。先程の様な芝居をしてはならない、する必要がない。

こうして彼女は、糸に掛かる蝶を待つ蜘蛛の如く…静かに待っていた。
そして一言、先程から気になっていた事をポツリと漏らした。

「あの音……なんなんだろ」
357オニゴッコ 3/4:2005/06/12(日) 22:59:00 ID:S//twKGX


「なんなんだ、だって?そう訊いたのか?」
「ああ……そんな物見た事が無い!なんなんだ!」

レオンハルトは呻きながら、デールの問いに答えた。
デールの撃った数発の鉛玉。それがレオンハルトの右肩を貫通していた。
だがレオンハルトには何が起こったのかが理解できない。
大きな音とともに右肩に怪我を負った、それだけなのだ。
そしてレオンハルトは、デールに武器の事を訊いたのだ。答えてくれるとは思わないが。

「まぁ、知らなくても良いことだ。もうすぐ死ぬんだろう?」

デールはそう言った後、アポカリプスを構えた。
だがレオンハルトは諦めなかった。
右肩を抑えながら、森の中を南西へと走り出したのだ。

「……おや、痛めつけてやったはずなのに」

まだ走るのか、と逆に感心するデール。
だがそう悠長なことも言ってはいられない。

レオンハルトを追う為に、彼もまた森を走り出した。
358オニゴッコ 4/4:2005/06/12(日) 23:00:39 ID:S//twKGX


【レオンハルト(右肩負傷)
 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:デールから逃げるために南西へ走る
 第ニ行動方針:フリオニールを止める 
 最終行動方針:ゲームの消滅】

【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/4)、アラームピアス(対人)、
 ひそひ草、アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
 第一行動方針:レオンハルトを殺す為追いかける
 第二行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】

【現在地:サスーン城 近くの森】


【アリーナ2(分身) (HP 4/5程度)
 所持品:E皆伝の証 E悪魔の尻尾 ライトブリンガー 手榴弾×2 ミスリルボウ
     ファイアビュート 雷の指輪
 第一行動方針:満身創痍になるまで休息/殺すべき他の参加者を待つ
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】

【現在位置:サスーン城東棟 小部屋】
359オニゴッコ 訂正:2005/06/12(日) 23:05:43 ID:S//twKGX
アリーナ2のステータスを修正します。


【アリーナ2(分身) (HP 4/5程度)
 所持品:E皆伝の証 E悪魔の尻尾 ライトブリンガー 手榴弾×2 ミスリルボウ
     ファイアビュート 雷の指輪
 第一行動方針:体力が回復するまで休息/殺すべき他の参加者を待つ
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】

【現在位置:サスーン城東棟 小部屋】
360全ての流れ 1/2:2005/06/12(日) 23:57:15 ID:KFBksZGq
旅の扉から吐き出され、浮遊大陸に降り立った賢者クリムト。

視力を失った彼に、新しい大地を見ることはかなわない。
彼はその場で、全てを感じるように静かに手を広げた。

「ふむ…水の匂い」
僅かに香る水の香り。
どうやら近くに川か湖があるようだ。

「風も、強い…」
吹き降ろすような強い風。
近くに山があるのだろう。

目の見えない自分には、地図の確認は出来ない。
町や村の位置はおろか現在地の把握すらできない。
だが、それはたいした問題では無い。

全ては流れ。
風の流れ。
自然の流れ。
気の流れ。
人の流れ。

視覚を失って改めて強く感じる。
全ての流れ、その流れを読み取れば何も恐れるものなどは無い。
流れを辿り、流される方向を決めれば。
自ずと望む方向に向かうことだろう。
361全ての流れ 2/2:2005/06/12(日) 23:59:20 ID:KFBksZGq
そしてまた全ての流れを辿る。

この大地の流れ。
暗く沈み、憎しみと死に満ちた淀んだ流れ。

人の流れ。
大陸に点在し何かを求め激しい流れ。

この流れを正しき方向に導くのが、私の使命なのだろう。

近くに人の流れを感じる。
そこに向かってみるとしよう。

その流れが悪しき者か良き者かを見極め。
良き者なら共に向かい。
悪しき者なら流れを正す。

そして彼は、目の見えぬ者とは思えぬほど確かな足取りで歩き始めた。

【クリムト(失明) 所持品:力の杖
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北東】
362二人より一人、一人より二人 1/8:2005/06/13(月) 18:17:08 ID:Voc4t9yJ
12時頃だったと思う。
といっても、別に時計を見たわけでも太陽の位置を確かめたわけでもないので
もしかしたらまだ11時だったのかもしれないし、あるいは13時をとっくに過ぎていたのかもしれない。
ともかく――アーヴァインが目覚めたのは、それぐらいの時間帯になってからだ。
なおも突き放すような態度を取る彼に、ティーダは例のメモを見せ、今までの事を全て話した。
ミレーユのこと、ターニアとエアリスのこと、ティファのこと、茶色の髪の少女のこと。
ターニアの名が出た時、アーヴァインの顔色が少しだけ変わったのだが――
ティーダは気付かず、ただひたすらに自分が経験したことを話し続けた。
そして。
「昔のあんたがどんな奴で、どんなことをしたのか、俺は知らないッスよ……
 でも、今のあんたは悪い奴には見えないしさ……だから、一緒に居てほしいんだ。
 あの悪魔みたいな奴から、助けてほしいんだ」
そこまで言って、ティーダは顔を伏せた。

数分ばかりの沈黙の後、小さなため息がこぼれた。
「……わかったよ」
承諾の返事に、ティーダは表情を輝かせながら面を上げる。
その鼻先に、いきなり指が突きつけられた。
「ただし、条件がある」
底の見えない冷たい瞳をティーダに向けて、アーヴァインは静かな声で切り出した。

「何があってもバトルには介入するな。誰かが傷ついていても絶対に助けるな。
 例え知り合いや仲間や恋人が襲われていて、死にそうになっていてもだ。
 それが出来ない奴とは一緒にいる気なんてない。僕の身まで危うくなる」

あまりにも冷酷な条件に、ティーダは思わず息を呑む。
「どういう……ことッスか?」
「バトルに介入すればそれだけ敵が増えるだろ。
 それに、助けようとした相手が殺し合いに乗っていないなんて言い切れるのか?」
ソロだって変に仏心なんか出すから、僕に一杯食わされかけたんだぜ――
さらりと言いのける彼に、ティーダは改めて思い知らされた。
彼が――単に記憶を無くしたというだけの――人殺しなのだということを。
363二人より一人、一人より二人 2/8:2005/06/13(月) 18:20:28 ID:Voc4t9yJ
「僕らは神様じゃないんだぜ。甘い事言ってたって生き延びられやしないんだよ。
 命を惜しいと思うなら他人なんか見捨てろ。自分の事だけを考えろ。誰も助けるな。
 その程度のことすら出来ないってならお別れだね。アマちゃんに付き合って死ぬのはゴメンだからな」
どこまでも冷酷にアーヴァインは言い放つ。
ティーダは唇を噛みしめ、手を固く握り締めた。
一人になるのは怖い。死ぬのも、確かに怖い。しかし、しかし、しかし……!

「出来ないに決まってるだろ、そんなの!」

真っ向からアーヴァインを見据え、ティーダは叫ぶ。
「俺、決めたんだ。ユウナやリュックと一緒にスピラに帰るって!
 ターニアを、アニキと一緒に元の世界に返してやるんだって!」
だからこそ――エアリスの首輪を持ってきたのだ。
「一人でいるのは怖いッスよ。今でもそれは変わらない。
 だけど……みんなを見捨てて生き延びるなんて絶対嫌だ!
 そんな真似するぐらいなら、俺は一人でも戦ってやる!」
凍てつく氷のような群青の瞳と。真夏の海を思わせるコバルトブルーの瞳が、一瞬だけ交錯し――
「それがあんたの答えか」
先に目を逸らしたアーヴァインが、無感情に呟いた。
「ああ」
ティーダは短く、しかしはっきりと答える。
そして自分のザックを拾い上げると、勢い良く扉を開けて出て行った。


残されたアーヴァインは、やけに緩慢な動作でベッドの上に座り直した。
指をわずかに動かしたり、足を上下に動かしてはため息をつく。
「……これで良かったんだよな」
天井を見上げて、ぽつりと呟く。
その目には、先ほどまでの冷酷さなど微塵も残っていなかった。
364二人より一人、一人より二人 3/8:2005/06/13(月) 18:25:36 ID:Voc4t9yJ
空は青く、太陽は高い。
昼間であるにもかかわらず――昼間だからなのかもしれないが、相変わらず町には人気がなかった。
忍者のような格好の二人組の姿も見えない。建物の中に入ったのか、目の届かない場所にいるだけか……
ともかく、不気味なまでに静かな町を、ティーダは一人で歩く。

また、一人。
ティーダにしてみればその事実は心細くもあったけれど、同時にこれで良かったのだと思った。
「全く……あんな奴、助けなきゃ良かったっつーの!」
苛立ちをぶつけるかのように、空に向かって言い放つ。
自分の事しか考えるな、他人は見捨てろだなどと、平気で言える人間を……
車に轢かれかけながら、森や平野を駈けずり回って、重たい身体を担いで家の中に運び込んだりして。
バカみたいだ。一回や二回助けられたといって、何を期待していたのか。

(――?)
……ちょっと待て。少し、不自然だ。
アマちゃんに付き合って死ぬのはゴメンだと言うなら、何故自分を助けた?
何故、自分の命を取引に使うような真似をした?

(……まさか、アイツ……俺のこと焚き付けるために、わざと?)
有り得る。十分有り得る。というより、そう考えた方が自然だ。
ここに連れてくる前にも散々訴えていた。自分のような人間を連れていても、ティーダ自身の身が危うくなるだけだと。
――だからこそ、アーヴァインはあえて悪役を演じたのではないのか。
ティーダの身を案じて、一人で行動する強さをもう一度呼び起こさせるために……

ティーダは足を止め、宿屋を振り返った。
壁の向こうにいるはずのアーヴァインを睨みつける。
宿屋に戻ろうとは思わかった。
ただ、小さな声で「バカヤロウ」――とだけ呟いて、踵を返した。


――そう。本当に、戻る気はなかったのだ。
――視界の端に、その人影が映るまでは。
365二人より一人、一人より二人 4/8:2005/06/13(月) 18:34:24 ID:Voc4t9yJ
扉を開け、階段を慎重に下りていく。
「辛いなぁ……やっぱ」
鉛のように重たい身体に、アーヴァインは口の端を歪めた。
毒のせいか、解毒剤の副作用か。身体が鉛のように重たい。
関節は錆びた蝶番のように軋み、鈍い痺れがあらゆる筋肉に纏わりついている。
それでも、足はそれなりに動くからいい。
歩けるのだから、多少であれば走ることもできるだろう。
問題なのは手の方だ。ドアノブは確かに掴めたし回せたが、それ以上は指が動きそうにない。
グーチョキパーのうちパーしか作れないし、これでは剣を持つのも難しいし、ましてやトリガーなど引けるわけがない。
もっとも、銃も剣も持っていない上、手に入れるアテもないから、その辺は心配するだけ無駄なのだが。

「あーあ。一緒に行った方がラクできたかな〜」
呟いてはみたが、即座に頭の中で否定する。『これで良かったのだ』と。
それはもちろんこの身体のせいもあるし、ティーダの身を心配しているというのもあるが――
(あんなメモがあるんじゃねぇ……)
結局は、その一言に尽きる。
ばら撒かれているであろう例のメモを読んで金髪の人物を疑う人間の数と、『殺人者アーヴァイン』を探している人間の数。
どちらが多いかと聞かれれば――メモの枚数にもよるが――やはり前者だろう。
それに髪の色だけではない。日焼けした浅黒い肌といい、服装といい、ティーダの風貌は目立ちすぎる。

自分にしてみれば、ティーダは人目を集めてしまう、悪い意味での目印。
ティーダにしてみれば、自分は要らぬ嫌疑をかけるだけのお荷物。
一緒にいてメリットがないわけでもないが、現状ではデメリットの方が大きいだろう。
それに、レーベでは罪悪感とその場の勢いに押されて行動してしまったが――
時間が経ち、感情が落ち着いてくるにつれて、別の思考が浮かび上がってきた。

殺し合いが続く限り、結局最後はみんな死んでしまうのだ。
ならば、敵討ちに殺されるのも、殺人者と相討ちになるのも、誰かを守って死ぬ事すらも無意味ではないのか。
ソロ達に救われた命。一発きりの銃弾。
それが使って自分がすべきなのは、もっと意味のある……それでいて殺した人への償いになる事……

そんなことを考えながら最後の段に足を降ろそうとしたその時――突然、大きな音が響いた。
366二人より一人、一人より二人 5/8:2005/06/13(月) 18:40:36 ID:Voc4t9yJ
「――っ!!」
驚いた拍子に足がもつれ、身体が宙に投げ出される。
痺れた手では受身を取る事も叶わない。全身を強かに床へ打ちつけてしまう。
だが、アーヴァインの受難はそれだけでは済まなかった。
「何やってるんスかアーヴィン!! 早く立つッスよ! つーか走れ!!」
「へ?」
聞き覚えのある声とともに、いきなり襟首と片腕を掴まれる。
「お、ちょ、あんたどうして、てか、ま、待ってよ、僕、身体動かないんだってば〜!」
必死の抗議も呆気なく無視され、立ち上がることもできないまま、階段の上へと引き摺られる。
「痛、待てって、痛いってマジで! あいた、止め、痛たたた、止めて! 痛いって!」
段差の部分に胴体や手足をこすられ、頭を打ち……そうやって二階の部屋に連れてこられたところで、ようやく解放された。
「何するんだよ、あんた! 出て行ったんじゃ「しっ!」
猛然と噛み付くアーヴァインの口を抑え、ティーダはそっと廊下に首を出す。
耳をそばだてながらきょろきょろと周囲を確認し、やがて、ほっと息を吐いた。
「……どうしたんだ、一体?」
只ならぬ様子にアーヴァインが声をかける。ティーダは答えなかったが、あらぬ場所から返ってきた。
二つの小さな足音と、聞き覚えのある――そして最も聞きたくなかった幼い声が、階下の方で響いてきたのだ。

『……に…・・なのか?』
『間違い…・・いよ……ちゃーんと見たんだもん。アイツと一緒……金髪が……ってくの』
『見間違いじゃ……だろうな』
『あのね、イクサス……いいかげん信用してよね。あたしのこと』

「……」「……」
二人は顔を見合わせ、素早く部屋の奥に移動する。
そしてお互いの肩を掴み、囁くように怒鳴りあった。
(ナニやってるんだよアンタはっ! 一番厄介な奴にいきなり見つかってどーするんだよ!)
(仕方ないじゃないッスか! あいつらが向こうから歩いてきたんだっつーの!)
二人が言い争っている間にも、足音はどんどん近づいて来る。
この部屋は宿屋の一番奥になっているが、声の主――イクサスとバーバラが辿り付くのは時間の問題だろう。
(マズイッスよ、マジで。どうする、戦って追っ払うッスか?)
(子供とはいえ一人で敵う相手じゃないだろ? ここから逃げる、あんたにも手伝ってもらうからな)
367二人より一人、一人より二人 6/8:2005/06/13(月) 18:55:42 ID:Voc4t9yJ
「どうやら、オレら以外に誰かいる事だけは間違いないみたいだな」
二階から聞こえた物音に、イクサスはにやりと笑う。
「だから絶対ここにアイツがいるんだってば」
バーバラは少し拗ねたように口を尖らせた。
けれどそれは束の間のことで、急に真顔に戻り、イクサスに問い掛ける。
「ねぇ、イクサス……本当に、アイツと一緒にいた奴まで殺すつもりな「当然だろ」
言い終わる前に帰ってきた答えに、バーバラは表情を曇らせた。
それを見たイクサスは、冷たい瞳でバーバラを見上げる。
「別にお前に手伝えとは言ってねえよ。
 ただ、オレの邪魔はするな。すれば殺す。お前だろうと、誰だろうとな。
 それが嫌ならさっさと消えろ。オレは一人でもやってやるからな」
「………でも」
何かを言おうと、バーバラが口を開きかけた時。
二階から、先ほどよりも遥かに激しい音が響き渡った。

アーヴァインとティーダは、ありったけの魔法や技を必死で壁にぶつけていた。
見た目は頑丈そうな石造りとはいえ、壁自体の厚みはそれほどではないし、そもそも硬度の高い石材ではない。
魔法による急激な温度変化で脆くし、その後で一箇所に集中して衝撃を与える。
そして――
「これで……どうだっ!」
わずかにヒビの入った壁に、ティーダはふきとばしの杖を叩きつけ、その力を解放させた。

――そして――

「……っのヤロウ!」
大急ぎで階段を駆け上ったイクサス達が見たのは、埃の舞う広い部屋と、崩された壁から覗く広い青空だった。
イクサスは苛立たしげに壁の破片を蹴り飛ばし、開いた穴に向かって走る。
「待って、イクサス! 危ないよ!」
バーバラの制止も間に合わず、イクサスは渇いた地面へと飛び降りていた。
たかだか一階分の高さだ。着地さえ失敗しなければ怪我もないだろう。
実際、イクサスは平気な様子で走って行ってしまっている。
バーバラは小さくため息をつき、急いで彼の後を追った。
368二人より一人、一人より二人 7/8:2005/06/13(月) 19:02:07 ID:Voc4t9yJ
「上手くいって良かったね〜……」
イクサス達が出て行った後。宿屋の二階の部屋で、アーヴァインが呟いた。
外に出てから戻ってきたわけではない。種を明かせば事は単純。壁を壊した後、ベッドの下にずっと隠れていただけである。
アーヴァインと同じようにベッドの下から這いずり出してきたティーダは、外に視線を向けながら言った。
「なぁ、アーヴィン……さっきオレに言った条件ってヤツ、あれ全部ウソだろ」
「あ、バレた?」
「そこまでマヌケじゃねっつーの。言ってる事とやってる事、全然違うしさ」
「へー。その割には、最初は思いっきり騙されてたみたいだけど」
「……言うなっつーの」
口を尖らせるティーダに、アーヴァインは吹きだす。
「笑うなっつーの!」と怒った後で、ティーダはアーヴァインの方に向き直った。
「あのさ、アーヴィン……やっぱ、俺たち一緒に居た方がよくないッスか?
 そんな身体じゃ大変だろうし、俺もアーヴィンがいた方が心強いしさ」
アーヴァインは答えなかった。黙ったまま、目を閉じていた。
けれど――やがて、ゆっくりと口を開いた。
「そうだな……タンスのある家に寄ってくれるならいいよ」
「はぁ?」
謎の返事に呆気に取られるティーダ。
そんな彼に、アーヴァインは意地の悪い微笑を浮かべてみせる。

「あんたの服装、絶対目立つから。
 黄色に黒の標識カラーで、ズボンの裾の長さも違うって、もう格好の標的だよねー。
 赤いヘルメット被って森の中歩くのと同じくらい目立つって」
「コートに変な靴だって十分目立ってるっつーの!
 自分の事棚に上げるなよな!」

二人は一瞬睨み合い――同時に吹き出した。
もし、この場に誰かがいたら……きっと、二人を旧来の友人同士だと思ったことだろう。
369二人より一人、一人より二人 8/8:2005/06/13(月) 19:03:31 ID:Voc4t9yJ
【イクサス(人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:アーヴァインを探して殺す/ギルダー・スコール・マッシュを殺す
 第二行動方針:アーヴァインの仲間であるソロ達を殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口近辺を移動中】

【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔3〕 首輪×1  ケフカのメモ
 第一行動方針:着替え探し(?)
 第二行動方針:ユウナ・リュック・ターニア・ロック・ソロを探す
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アーヴァイン(身体能力低下、HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP〜1日目深夜の行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:着替え探し(?) 第二行動方針:罪を償うために行動する/ゲーム脱出方法を探す】
【現在位置:カズスの村・宿屋2階→移動】
370前門の娘後門の修羅 1/6:2005/06/15(水) 04:01:27 ID:2Guz8aw9
 サスーン城へと到着し、扉を開けたマティウス達。
 殺気などは無いものの、微かに香る血の臭いに戦慄した。
「……これは」
「誰かが戦っているか、戦った跡か。どちらにせよ、危険な事に変わりはないが」
 マティウスは意見を求めようと二人を一瞥する。
 が、二人共全く表情を変える事はなかった。
「城へ行くと決めたなら行けばいいだけの事だ。
 どちらにせよ、ここには安全な場所など皆無だからな」
「物真似をしている以上、マティウスの意見に私も賛成する」
 魔女と対立するのなら――安全などという物を追う意味などない。
 追ったところで意味もなかろう。最終的に死ぬか魔女を倒すかしなければこの円環の世界は終わらないのだから。
 しかしそれでも、思考の内に魔女と会う為には参加者が減ってから動くべきではという物が少なからずあったのも事実だった。
 どちらかを選択しなければならない。
 危険を承知で臭いの元へと駆けるか、惹かれるままに来たこの城から一旦退くか。
 それぞれメリットもデメリットもある。
 もしこのまま進んだ場合、戦いの勝者が潜んでいる可能性がある。
 勝者が襲われて反撃したのかそれとも進んで襲ったのかはすぐには分からないから、対応を遅らせて死を招く事も有り得る。
 敗者の遺留品のような物が残っている可能性もある。しかし大抵は勝者が持ち去るだろう、これは望み薄だ。
 それを加味して考えれば、その勝者を倒す・もしくは仲間に迎える場合一挙に最低二人分のアイテムを手にする事になる。
 どちらにもならなくとも、勝者の行動方針も大体は把握出来るだろう。
 好戦的であった場合は殺せばいい。最終的に被害者を減らせるのだから、仲間が増える可能性も増える。
 ハイリスクハイリターンだ。
 逆に引き返す場合、結局誰が戦い誰が勝利したのかがわからない。
 誰が好戦的で、誰が非好戦的なのかという情報は非常に重要だ。
 それだけでも分かれば対策も立つというものなのだがそれが手に入らない。
 但し今しばらくの安全は買えるだろう。少なくとも今回の戦いの勝者に遭遇する可能性は減る。
 このまま魔女討伐を目指すなら、人数が減るのは極力避けたい。
 百人以上居た参加者を前に笑っていられるような相手だ。力の程は計り知れない。
371前門の娘後門の修羅 2/6:2005/06/15(水) 04:03:02 ID:2Guz8aw9
 しかし元皇帝といういわゆる頂点に居た男にとって、このような問題など悩む必要はないことだった。

「ふ……これしきの危険を乗り越えられんようでは、魔女討伐など不可能だな」
「まずは臭いの元からか」
「そうだな……」
 三人は城の中をゆっくり進んでいく。
 次第に濃くなる血の臭いの中を。
 廊下に散らばった食料。異常があった証。
 そして恐らく臭いの元であると思われる部屋――サラの寝室へとたどり着いた。
 そこで見た物は、ソレは本当に人間であったのだろうかと問いかけたくなる程の『残骸』であった。
 部屋全てが血で装飾された中にぽつんと在るこの光景は、ただ普通に相手を殺しただけでは到底出来るものではなかった。
 純粋な殺意だけだ、この部屋というキャンバスに描かれた感情は。 
「二人共、警戒しろ」
「分かっている……! こんな物を見せられて警戒するなという方が無理だ!」
 人間なら――余程恨みを持った相手ならともかく、ただ対立しただけの相手を殺した後に更に痛めつけるなどという馬鹿な真似はしない。
 ましてやベッドの上に転がっていた残骸とは別の『残骸』が、部屋の隅に転がっていたのを見れば余計にその異常さは分かる。
 四肢は引き千切られ、首も当然のように切り離された挙句、何か重い物でも落とされたように頭蓋骨はひしゃげていた。
 片方の目玉がなかったが、恐らく飛び出した後踏みつけられたのだろう。その残骸の手前に少し白さが混じっていた。
 更に警戒する理由たりえたのが、血がほとんど乾いていなかった事だ。
「あまり大声を出すな」
「分かっているが……」
 これはとても、『人間』に出来る芸当ではない。
 アグリアスはそう言いたかったし、マティウスもそれは感じていた。
「あまり信じたくはないが、これを実行した者はまず人間だ」
「そう……だな」
 これだけの血がこびり付いた部屋から全くの返り血も無しに出る事は不可能だ。
 当然、外に足跡は残っていた。革靴の足跡だ。だが消そうとした跡は全く無い。
 足跡を残した所で、窓からでも出ればいいだけの話だが――人の気配はそこから確かにある。
「そこまで気が回らなかったのか……?」
「獲物が来るのを待っているのかもしれんな。あまりに不用意過ぎる。余程の強者かただの愚者か」
372前門の娘後門の修羅 3/6:2005/06/15(水) 04:04:11 ID:2Guz8aw9
「獲物、か」
 アグリアスは考える。
 きっと第二の世界に来るまでに、一般人はほとんど淘汰されてしまっただろう。
 ここで倒れた彼等もまた別の世界の英雄であったのかもしれない。
 マティウスもゴゴも、深く聞いてはいないがそれなりに場数を踏んでいるのは間違いない。
 しかしそういった人間達の中でここまで無残な殺しが成立するということがどれだけ恐ろしい事か。
 どれだけ強大な相手が待ち受けているのか。
 ……いや、考えまい。
 自分の内に芽生えた恐怖が増長する前に振り払う。
 私は帰らねばならない。剣は鞘に。在るべき場所へ。
 ならば、障害は払わねばならない。
 そしてたとえ私が獲物であり死ぬ運命であったとしても、騎士として在り死ぬべきだ。
「人影を見つけたら躊躇いなく攻撃する。無くとも油断はするな、警戒は続ける」
『分かっている』
 マティウスと、マティウスの物真似をしたゴゴが同時に返事をする。
 これから血を流す事になるだろうというのに、笑いがこみ上げてきた。
 いや、こういう死の宴の最中だからこそこういう感覚を大事にしたい。
 戦いが終わったら思いっきり笑ってやる。
「では、いくぞ」
 クロスクレイモアを強く握り締め、いつでも聖剣技が出せるように集中する。
 マティウスとゴゴは低く構え、すぐに飛び出せるようにしている。
 準備が出来たのを改めて確認し、アグリアスが左手でゆっくりと扉を開けた。
 刹那――窓から差し込む柔らかい光の中をこちらに向かう一つの球状の物体と、人の影が見えた。

「クゥゥゥウッ!!」
「あぐぁぁぁあああっ!?」
 数秒後、痛みを押し殺す声と我慢出来ずに捻り出される声。
 声の主は、アグリアスとアリーナだった。
373前門の娘後門の修羅 4/6:2005/06/15(水) 04:22:31 ID:2Guz8aw9
 あれだけ騒いでいたのだから当然だが、アリーナは三人が来た事に気付いていた。
 扉が開いた瞬間手榴弾を投げつけたのだが、マティウスとゴゴの攻撃がアリーナが思っていたよりずっと早かった。
 その為偶然ではあったが爆発の範囲から逃れることが出来た。
 対してアグリアスだが、扉を開けた位置からアリーナを視認した後、すぐ聖剣技を放ってしまった。
 おかげでアリーナにもかなりのダメージを負わせたものの、手榴弾の破片が多数アグリアスの右脇腹と右足を貫いた。
 アリーナにとって致命的であったのは手榴弾の強さ・仕組みを根本的に理解していなかった事と、
 近距離戦を挑んできた二人の予想以上の強さであった。
 手榴弾に関してアリーナは『ピンを外した後衝撃を与えると爆発する』と解釈していたが、実際は完全に時限制だった。
 アリーナはその勘違いの為に思い切り投げてしまい、隣側の廊下に転がっていった。
 勿論アリーナも手榴弾を投げてそれから反撃しなかったわけではない。
 持ち前の力と連続攻撃で確かにダメージは与えた。
「がぁっ……く、なっ……なんなのよ、その男……っ!」
「俺は物真似師ゴゴ、今まで物真似をして生きて来た」
 ゴゴが咄嗟に、皆伝の証つきの連続攻撃を真似てみせたのである。
 威力はアリーナの比ではないにせよ、十分過ぎる程アリーナの邪魔をした。
 そして後はマティウスの剣と、アグリアスの技の餌食となったわけである。
「物真似っ……そんな下らないのに私がっ……やられるわk」
 アリーナは全ての言葉を紡げぬまま、マティウスの剣に伏した。
「敗者は黙れ。アグリアス、大丈夫か?」
 実際三対一という状況でなければ負けていただろう、そう思える。
 誰か一人でも欠けていたらおそらく『残骸』になっていた。
 一番ダメージを受けたアグリアスは扉の前で震える片手で剣を構え、身体を柱で支えて何とか立っていられる状態だ。
「……ああ、何とか大丈夫だ……すまないが回復してもらえるか」
『分かっている』
「ぷ……くく、はは……あはははは!」
 満身創痍でも、激痛が体中を走っても笑うのをやめる気にはならなかった。
 それほどおかしくて、心地よかった。
374前門の娘後門の修羅 4/6:2005/06/15(水) 04:23:18 ID:ehsoNl8v
 あれだけ騒いでいたのだから当然だが、アリーナは三人が来た事に気付いていた。
 扉が開いた瞬間手榴弾を投げつけたのだが、マティウスとゴゴの攻撃がアリーナが思っていたよりずっと早かった。
 その為偶然ではあったが爆発の範囲から逃れることが出来た。
 対してアグリアスだが、扉を開けた位置からアリーナを視認した後、すぐ聖剣技を放ってしまった。
 おかげでアリーナにもかなりのダメージを負わせたものの、手榴弾の破片が多数アグリアスの右脇腹と右足を貫いた。
 アリーナにとって致命的であったのは手榴弾の強さ・仕組みを根本的に理解していなかった事と、
 近距離戦を挑んできた二人の予想以上の強さであった。
 手榴弾に関してアリーナは『ピンを外した後衝撃を与えると爆発する』と解釈していたが、実際は完全に時限制だった。
 アリーナはその勘違いの為に思い切り投げてしまい、隣側の廊下に転がっていった。
 勿論アリーナも手榴弾を投げてそれから反撃しなかったわけではない。
 持ち前の力と連続攻撃で確かにダメージは与えた。
「がぁっ……く、なっ……なんなのよ、その男……っ!」
「俺は物真似師ゴゴ、今まで物真似をして生きて来た」
 ゴゴが咄嗟に、皆伝の証つきの連続攻撃を真似てみせたのである。
 威力はアリーナの比ではないにせよ、十分過ぎる程アリーナの邪魔をした。
 そして後はマティウスの剣と、アグリアスの技の餌食となったわけである。
「物真似っ……そんな下らないのに私がっ……やられるわk」
 アリーナは全ての言葉を紡げぬまま、マティウスの剣に伏した。
「敗者は黙れ。アグリアス、大丈夫か?」
 実際三対一という状況でなければ負けていただろう、そう思える。
 誰か一人でも欠けていたらおそらく『残骸』になっていた。
 一番ダメージを受けたアグリアスは扉の前で震える片手で剣を構え、身体を柱で支えて何とか立っていられる状態だ。
「……ああ、何とか大丈夫だ……すまないが回復してもらえるか」
『分かっている』
「ぷ……くく、はは……あはははは!」
 満身創痍でも、激痛が体中を走っても笑うのをやめる気にはならなかった。
 それほどおかしくて、心地よかった。
375前門の娘後門の修羅 5/6:2005/06/15(水) 04:24:10 ID:2Guz8aw9
 ゴゴに抱えられ、ベッドへと寝かされたアグリアスはゴゴの物真似治療を受けながらずっと笑っていた。
 マティウスはアリーナの装備を奪い、二人へと渡すと治療を始めた。
 更なる来客にも気付いてはいたが、相手が誰であれ出来る限り回復する時間が欲しい事、
 こちらに敵対の意思がなくとも今出て行くと誤解を招くだけであると判断し何も言わなかった。

「あ……あぁ……」
 笑いの中に、微かに響いた声。
 隣の、あの残骸の部屋から聞こえた声。
 マティウスも気付いていた、更なる来客。
「おかぁ……さっ……! うあああぁぁぁぁあああああっ……!」
 一人の少女――タバサが膝をついて泣いていた。
 爆発音に驚いて走ってきてみれば、タバサとセージの二人はその手前の部屋で最悪の物を見つけた。
 別れたばかりの仲間と、母の変わり果てた姿だった。
 セージは怒りをこらえ切れず壁に拳を叩きつけた。
(こんなの……子供にゃ残酷過ぎるだろう、魔女さんよ……!!)
 そして問題はもう一つ。
 先程から笑い声の響いていた部屋。爆発音のした部屋。
 廊下の所々を焼き焦がす鉄の破片、三人以上の声。
 マーダーである可能性は非常に高い。
 そうでなかったとしても、恐らくタバサはそうは思わないだろう。
 実際セージ自身でさえ、信じられるかといえば疑わしい。
「腹は立つが、退いた方がいいのか? それとも……」

(まだ……っ、死ねない……アタシは……死なない!)
 即死でもおかしくない傷を負ったにも関わらず、アリーナはまだ息をしていた。
 いや、正しくは息を吹き返したというべきだが。
 生への執着か、はたまた怨恨の賜物か。
 装備は既に全て剥ぎ取られていたし、思考も遅くなってはいたがそれでも諦めてはいなかった。
(コイツら油断してる……いつなら殺せる? 絶対許さないんだから!)
 静かにか細い息を更に潜めるようにして、好機を待つ。
376前門の娘後門の修羅 6/6:2005/06/15(水) 04:26:18 ID:2Guz8aw9
【マティウス (HP4/5程度) 所持品:ブラッドソード 男性用スーツ(タークスの制服) 皆伝の証
 第一行動方針:ある程度アグリアスの回復をした後、隣の部屋の相手とコンタクトを取る
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】

【ゴゴ  (HP2/3程度)所持品:ミラクルシューズ、ソードブレーカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】

【アグリアス (HP1/4程度・右足重傷)所持品:クロスクレイモア、ライトブリンガー、ビームウィップ、ファイアビュート、雷の指輪
 第一行動方針:回復に専念する
 基本行動方針:マティウスに同行する 最終行動方針:魔女討伐に乗る】


【アリーナ2(分身) (HP 1桁)
 所持品:E悪魔の尻尾
 第一行動方針:目の前の三人を殺すor逃げ切り回復を図る
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】


【セージ 所持品:ハリセン ナイフ
 第一行動方針:??? 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 ナイフ 
 第一行動方針:???
 第二行動方針:スミスの呪縛を解く 基本行動方針:同上】
377もうひとつの世界 1/4:2005/06/15(水) 05:23:47 ID:wy3p72Co

ジェノラ山中腹、山頂へと続く山道の途中。
その道をひたすら上へ向かうウネとその背中でまだ目を覚まさないままのライアン。


二人が降りたったのはこの山のふもと。
まずは何よりも優先すべきはこのけが人の治療である、と判断したが
癒しの杖が破壊されてしまった以上自分の回復魔法しか手段がない。
本当は回復なんて柄じゃないんだけどね、なんて独り言はさておき、
もてるだけの努力を尽くし終わったのがちょっと前のこと。
外傷はほぼ塞がっているがまだ意識は戻らない。後はこの男の体力次第だろう。

ウネが書き換わっている地図に気がついたのは一息入れている最中。
見覚えあるその地形は、浮遊大陸の一角・サスーン地方である。
とにかく魔女の用意した舞台である、ここが本当の浮遊大陸であるかどうかはわからない。
わからないが、この舞台がウネの頭に一つの思い付きを生んだ。
378もうひとつの世界 2/4:2005/06/15(水) 05:26:11 ID:wy3p72Co

「あーー、また行き止まりぃ!?どうしてこの山って迷路みたいなつくりになってるの?」
ジェノラ山中、ふもとを目指して山道を走り回る少女。
全ての行き止まりを制覇する勢いで進むのはアリーナであった。
「なんで下りてる方に向かって間違いなのよ、もう!」
この上に登れないかと岩壁を眺めてため息一つ、大人しく引き返す。
「じゃあこっちが当たりね。…ってあれ」
ずぅっと向こうまで続く岩の壁の間の回廊。指差したその奥にはこちらへやって来る人影があった。
思わず身を隠して様子をうかがう。こっちに気が付かったのか向こうは淡々と変化無く歩いてくる。
近づくにつれてそれが一人ではなく二人で、しかも背負われている方には見覚えがあることに気付いた。

「ライアンじゃない!!」
思わず大声、相手の足が止まる。やばっ、警戒させちゃった。
「あっ、待って!あたしは戦う気無いからっ。ただ、その人が知ってる人だったから…」
慌てて岩陰から飛び出して懸命に呼びかけるアリーナ。
微妙な緊張感が流れるいくらかの時間を置いて、相手のおばあちゃんは答えてくれた。
379もうひとつの世界 3/4:2005/06/15(水) 05:27:56 ID:wy3p72Co
自分で声上げて言い訳しに飛び出してくる殺人鬼がいるかねぇ?
中にはそんなのもいるのかもしれないが目の前の相手はそんな風にゃ見えない。
眠ったままの男の知り合いとも言うし。
そっと自分にプロテスをかけてから、ウネは会話に応じる。
「こちらも敵意は無いよ。あたしはウネ、ノアの弟子の魔道師さ。あんたは?」
「あたしはサントハイムのアリーナ!」
「アリーナ、ね。この男とは知り合いかい?」
「うん!ライアンはあたしの仲間だけど…ねえ!ライアンどうしたの!?」
「さあ、原因なんてわからないね。あたしは倒れていたのを助けただけだよ」
少しくらいは疑われるかと思ったが、有難いことに目の前の少女はもっと単純だった。
「うーん、そっか。あたしの仲間を助けてくれてありがとう、ウネさん。
 ね、どうして山を登ってきたの?」
天然かね?ずいぶん簡単に信用されたみたいだけど。ともかく手間かからないでよかったけどね。
「見てのとおり、怪我人を抱えてね。人の来ない安全な場所と思って山頂をめざしてたのさ。それに…」
「それに?」
「あたしにもちょっと試してみたいことがあってねぇ。そのときは無防備になるから
 どうしても安全な場所が欲しかったんだよ」
戦いに乗っていないなら同行して欲しい、それは言葉にしなかったが、
目の前で軽く考え込む少女の反応に期待する。

「ねえ、それって時間かかる?」
「いや、確かめるだけさ。時間はかけるつもりはないよ」
「うーん…じゃあ、あたしがついててあげる!山頂まで行って、それ試してる間」
それはウネにとって嬉しい提案。
「あたしも探してる相手がいるからずっと、って訳にはいかないけどね」
本音は同行して欲しかったがそこまでは望めない。でもそれで、十分だ。
「ありがとう、アリーナ。恩に着るよ」

こうして一つ増えた二つの人影が山道を登ってゆく。山頂の先客など考えもせずに。
380もうひとつの世界 4/4:2005/06/15(水) 05:54:35 ID:wy3p72Co


「ところでさ、ウネさんは何をするつもりなの?」
「なぁに、ちょいと夢の中へ、ね」
「?」

【ウネ(HP 1/2程度、MP大幅消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:山頂へ向かい、眠る
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する
【ライアン(外傷は回復、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
 行動方針:不明】
【アリーナ 所持品:プロテクトリング
 第一行動方針:山頂へ向かい、ウネとライアンを守る
 第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【現在位置:ジェノラ山 山頂へと続く道】
381こうして…… 1/4:2005/06/15(水) 06:47:50 ID:CkCnh2QJ
アリーナとマティウス達の戦闘が終わった頃。
カインとスミスはこの国の歴史本らしいものを延々と漁っていた。
「でもカイン、セージって奴らはよかったの?」
「この国の歴史をよく調べることの方が先決だと言っただろう。
 それに……今は殺しや裏切り等の大きな動きは見せたくは無いからな」

カインたちの行動はこうだった。
この城に来た時、爆発音に気が付いたセージとタバサが城に走って行ってしまったのだ。
そしてカインが止める間もなかったので、微かではあるが離れ離れになってしまった。
だが所詮は城の中、探せばすぐに見つかる。だが、カインはそうはしなかった。

「あいつらは駄目だ。言っていたことと違い、俺たちよりもかなり自分の…いや、あの子どもの事を優先している」
「使えないって事?まぁ確かに僕も奴らを見てもうざったいだけだったけどさ」
「あの子どもとも離れられたんだから、お前には丁度良いだろう?
 それに今…恐らく戦闘が続いているか終わっている。無駄な混乱は避けたい、あいつらは置いて逃げるぞ」
「OK!じゃあさっさと行っちゃおうか」


こうして、カインとスミスは城から逃げるようにして去っていった。
いや、実際には逃げたのだが。
そして彼らは南東の街、カズスに向かいだした。


これがどの様な運命を運ぶのかは、まだ誰にもわからない。
382こうして…… 2/4:2005/06/15(水) 06:49:21 ID:CkCnh2QJ


そして城内部。

タバサは怒りを抑えられず、隣の部屋へと飛び出していた。
少し遅れてセージも姿を現す。
それに驚く4人。

そしてタバサは辺りを見回した。
満身創痍の女性が2人、そして割と元気そうな2人。
元気そうなのは違う。そしてベッドに寝かされている方は違う。
そして最後に、アリーナを見た。

か細い息をしている彼女は、そう……。
血に、塗れていた。

「お前かぁああああああああああああああああああ!!」

まるで別人のように叫んだタバサは、右手を突き出した。
そして魔力を収束させる。そう、そして放たれた魔法は冷気呪文。

「ヒャド!!」

……そしてそのまま、氷の矢がアリーナの体を貫いた。
はずだったが……だが、それは避けられていた。

アリーナはふらふらになりながらも、それを避けていた。
生への執着心に救われたのだ。

「何…っ!?とどめをさせなかったのか!?」
虫の息のはずのアリーナの動きに驚くマティウス。そしてアリーナはマティウスの元へと走り……。
383こうして…… 3/4:2005/06/15(水) 06:51:43 ID:CkCnh2QJ
そのまま、擦れ違って逃げていった。
数秒後、ようやく逃げられたのだと理解した全員。
タバサはそのまま逃がしてたまるかと、追いかけようとするが……セージに静止させられていた。

「なんでよお兄さん!あの女の人が…あの女の人が絶対……っ!」
「それはそうだろうけど、深追いは禁物だよ。それに冷静さを欠いてる今は危ない」
「でも……っ!いや、そうよね……ごめんなさい…ごめんな…さい……」
タバサはそう言うと、セージの胸で泣き崩れてしまった。
それを見守るセージ。何も言わずにタバサを見る3人。

そしてマティウスは、話を切り出した。

「誤解が無かったのは有難い。
 我々には敵意は無い……少し休んでいけ。その少女のためにもだ」
「………わかった。信じるよ」
「それでいい」

マティウスは、それ以上は何も言えず、静かに壁にもたれかかった。



そして一方アリーナは、城から脱出しようとしていた。
確実に出口に向かっている。あのギルダー達に運ばれたから道は覚えている。
そして確かにすぐに出口が見えた。そして城から出る。

その時、彼女の目には、(恐らくだが)南東に向かって歩いている2人組が映った。
騎士の様な人間と竜。何か話をしている。

だが彼女にはどうでもいい。
イラだっている彼女には、関係はない。
彼女は北東の森へと急ぐために、2人を無視して疾走した。
384名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/15(水) 07:38:57 ID:1Add3vMp
【マティウス (HP4/5程度) 所持品:ブラッドソード 男性用スーツ(タークスの制服) 皆伝の証
 第一行動方針:アグリアスの回復をし、自分達も休む
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ  (HP2/3程度)所持品:ミラクルシューズ、ソードブレーカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【アグリアス (HP1/4程度・右足重傷)所持品:クロスクレイモア、ライトブリンガー、ビームウィップ、ファイアビュート、雷の指輪
 第一行動方針:回復に専念する
 基本行動方針:マティウスに同行する 最終行動方針:魔女討伐に乗る】
【セージ 所持品:ハリセン ナイフ
 第一行動方針:マティウス達と一緒に休む 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 ナイフ 
 第一行動方針:泣く 第二行動方針:マティウス達と休む 基本行動方針:同上】
【現在位置:サスーン城東棟の一室(サラの寝室の隣)】

【アリーナ2(分身) (HP 1桁)
 所持品:E悪魔の尻尾
 第一行動方針:北東の森へ行き、休息を取る
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】
【現在位置:サスーン城から北東へ】

【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界の歴史書数冊
 第一行動方針:カズスの街に行く
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在位置:サスーン城から南東へ】
385名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/15(水) 16:54:40 ID:sm/OTCd8
>>381-384の「こうして……」を無効と致します。
詳細は裏方雑談スレを参照してください。

失礼致しました。
386こうして……(改訂版) 1/6 ◆Sqwcp.IzSE :2005/06/15(水) 21:43:14 ID:BgJOb9py
アリーナとマティウス達の戦闘が終わった頃。
カインとスミスはこの国の歴史本らしいものを延々と漁っていた。
「でもカイン、セージって奴らはよかったの?」
「この国の歴史をよく調べることの方が先決だと言っただろう。
 それに……今は殺しや裏切り等の大きな動きは見せたくは無いからな」

カインたちの行動はこうだった。
この城に来た時、爆発音に気が付いたセージとタバサが城に橋って消えてしまったのだが、
本人が止める間もなかったので、微かではあるが離れ離れになってしまった。
だが所詮は城の中、探せばすぐに見つかる。だが、カインはそうはしなかった。

「あいつらは駄目だ。言っていたことと違い、俺たちよりもかなり自分の…いや、あの子どもの事を優先している」
「使えないって事?まぁ確かに僕も奴らを見てもうざったいだけだったけどさ」
「あの子どもとも離れられたんだから、お前には丁度良いだろう?
 それに今…恐らく戦闘が続いているか終わっている。無駄な混乱は避けたい、あいつらは置いて逃げるぞ」
「OK!じゃあさっさと行っちゃおうか」


こうして、カインとスミスは城から逃げるようにして去っていった。
いや、実際には逃げたのだが。
そして立ち止まり、スミスと共に辺りを見回す。

何も無い。何もかもが、無い。
森はある、空もある、大地もある。
だが何かが足りない。

そう、人の生気が無い。
殺し合いの地だ、当然だろう…と、カインは心の中で呟く。

そしてまた、風を感じながら辺りを見回した。
そうだ、焦ることは無いのだ。
387こうして……(改訂版) 2/6 ◆Sqwcp.IzSE :2005/06/15(水) 21:45:25 ID:BgJOb9py


そして城内部。

「あの部屋での惨劇」を見たタバサは怒りを抑えられず、隣の部屋へと飛び出していた。
少し遅れてセージも姿を現すと、マティウス達は少し予想外だったと言うような表情をしていた。

タバサは辺りを見回した。犯人と思しき者を探しているのだ。
ここにいるのは満身創痍の女性が2人、そして割と元気そうな男性が2人。
元気そうなの男性は違う、血がついていない。あれほどまでの大量な血に塗れた部屋で、血がつかない方がおかしい。
ならばやはり満身創痍の2人の女性だろう。血みどろで、明らかに外見は「それ」だ。

だがわからない。
もう何がなんだかわからない。
そうだ、あの血みどろの2人のどちらかとは決まったわけでもない。
あの2人がそうなのか、それとも全員か。それともある1人を除いて全員なのか。
わからない、わからない、わからないわからないわからないわからないわからないわからない――――

怒りと悲しみとで冷静さを欠いていたタバサには、答えを見つけることが出来なかった。
そして彼女は思考を止め、右手を翳し――――魔力を、渦巻かせた。
そのままその魔力で冷気を形作ろうとしていた。
だが。

「ラリホー」

それに気づいたセージが、後ろからこの呪文を唱えた。
"ラリホー"それは対象を眠らせる呪文。それをセージはタバサにかけたのだ。

「……ぁ…………」
タバサは言葉にならない言葉を上げると、そのまま夢の世界へと堕ちて行った。
388こうして……(改訂版) 3/6 ◆Sqwcp.IzSE :2005/06/15(水) 21:48:59 ID:BgJOb9py

「さて」

そしてセージはタバサを抱きかかえると、先程の彼女と同じように……右手を翳した。
それは完全な敵意による行動。それは戦いに精通していない一般人でもわかるあからさまなものだった。
そのまま、セージは問う。

「あんな事をした悪い人は誰かな?正直に言えば、手を下げて見逃してあげるかもね♪…可能性低いけど」

彼は笑顔を作りそう言うが、その笑顔は笑顔であって笑顔ではない。
笑顔には種類があるものだ、と改めて実感させられる。これは最早怒りそのものだ。

マティウスは、このままでは拙いと思っていた。
最早これは誤解の境地をいとも簡単に凌駕してしまっている。
何か下手なことをすれば、相手は恐らく容赦はしないだろう。
自分やゴゴ、そして怪我を負ってはいるがアグリアスの実力なら力ずくでも突破できるかもしれない。
だが、自分たちは脅されている立場にある。それにあらぬ誤解をこれ以上は受けたくは無い。

マティウスが次の一手を考えている最中、後ろに人影があった。
だがマティウス達はそれに気づかない。執念で立ち上がったアリーナの姿に気づいていない。
しかし彼はそのアリーナの立ち上がった姿にすぐ気がつくことになる。何故なら……。

「やっぱり馬鹿ばっかりね……っ!」

……何故ならアリーナがそう叫び、セージに真っ直ぐ襲い掛かったから。
まさか彼女が立ち上がるとは思っていなかったセージは、彼女の拳を腹部に喰らってしまった。
タバサを落としはしなかったが、その場に崩れ落ちる。
そしてそのままアリーナは、咄嗟にマティウスの支給品袋を奪い……逃げた。
389こうして……(改訂版) 4/6 ◆Sqwcp.IzSE :2005/06/15(水) 21:53:13 ID:BgJOb9py
走っていくアリーナを止められる人間は居なかった。
咄嗟の彼女の行動に体が着いて行かなかったのだ。
このまま逃げ切れば、勝てる。
だがそれは難しいことだ。恐ろしい精神力で立ち上がり、走ってはいたがもう体力は限界だ。
そして重傷を負いながらもここまで動いた彼女の奇跡は、遂に終わりを告げた。

彼女は、意識を手放した。
たどり着いた城の出入り口で。カイン達の、目の前で。当然カイン達は驚いた。

「……この女、何者だ?」
「気絶しているね。どうする?正直邪魔だと思うけど」
「………拾って手当てでもしてやろう。利用価値があるかもしれない」
「うわ、正気?」

だがカインはそう言うと、アリーナを背中で担いだ。
そして、ただただ静かに歩き出した。


そしてまた話は城内部に戻る。
セージはゴゴのケアルでの治療を受けていた。
単なる腹部への衝撃、更には瀕死の重傷者の攻撃だったのでたいしたことではないのだが。
だがやはり、元魔法使いの優男には辛いものがあった。
そして同時に、セージはマティウスと言い争いをしていた。

「本当に、本当に本当だね?」
「ああ、本当だ。本当にあの人間は知らない」
「………まぁ、君たちがあの女の仲間だったら何らかのアクションは取るだろうしね…」
確かに目の前のスーツ男は武器を奪われ、ベッドに寝ている女騎士と思われる人はあの女にやられたものと見て良いだろう。
それにあの奇妙な男は……よくわからないが、こちらに不利益になるような行動は一切取っていない。
そして何より、今は逸れてしまってここにはいないカイン達の様に……目に濁りが無い。信じて、いいのかもしれない。
390こうして……(改訂版) 5/6 ◆Sqwcp.IzSE :2005/06/15(水) 21:57:33 ID:BgJOb9py
セージは、信じてみることにした。
良い人間と同じ目を持つのなら、それは良い人間に間違いないのだ。
そして彼らを信じた証として、敢えて言う事にした。

「あの隣のさ…あれ、男の方はアリアハンっていう昨日いた世界で出会った人と……女の人の方は、この子の…タバサの母親なんだ」
「………そうか」

そこまで言うと2人の間に沈黙という流れが生まれる。
だがその流れを遮る様に、ゴゴが治療を終えた。セージは静かに礼をする。
マティウスはそれを見ると、廊下に顔を出した。
視線の先には、あの部屋がある。

そしてまた視線を戻すと、セージはいつの間にか赤い帽子を被っていた。
それを見たマティウスが帽子について尋ねようとしたが、それより早くセージが話し始めた。
「これさ、この部屋にタバサが突撃する前に…ちゃんと拾ってみたんだよね。ギルダーの形見だしねぇ」
「ああ、転がっていたな……その帽子は。赤くて綺麗じゃないか」
「そうだね。彼によく似合ってたよ」

そして一呼吸置いた後、セージは座り込んでマティウスに話しかけた。
「紹介が遅れたね。僕はセージ、そしてさっきも言ったけど……この子はタバサだ」
「私はマティウス。そしてあの男がゴゴで女がアグリアスだ」
「よし、そうか。じゃあマティウス……ちょっといいかな?」
「一体何だ?急に……」

またもマティウスの問いに答えるよりも早く、セージは帽子を目深に被っていた。
それは元の持ち主がよくしていた事だ。ただ違うのは、抱かれ眠っているタバサの体に、涙が落ちた事。

「ごめんね…ごめん……。ちょっと疲れただろうから……さ、少しで良い…幸せな夢を見ててくれ……タバサ……」

震えるセージの声が、静寂に響いた。
そして涙と先程の発言の意味が判ったマティウスは、ただ何も言わずアグリアスの治療に専念していた。
391こうして……(改訂版) 6/6 ◆Sqwcp.IzSE :2005/06/15(水) 21:59:23 ID:BgJOb9py

【マティウス (HP4/5程度) 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)
 第一行動方針:アグリアスの回復をし、自分達も休む
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ  (HP2/3程度)所持品:ミラクルシューズ、ソードブレーカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【アグリアス (HP1/4程度・右足重傷)所持品:クロスクレイモア、ライトブリンガー、ビームウィップ、ファイアビュート、雷の指輪
 第一行動方針:回復に専念する
 基本行動方針:マティウスに同行する 最終行動方針:魔女討伐に乗る】
【セージ 所持品:ハリセン ナイフ ギルダーの形見の帽子
 第一行動方針:泣く 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【タバサ 所持品:ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 ナイフ 
 第一行動方針:ラリホーで睡眠中 基本行動方針:同上】
【現在位置:サスーン城東棟の一室(サラの寝室の隣)】

【アリーナ2(分身) (瀕死)
 所持品:E:悪魔の尻尾 マティウスの支給品袋
 第一行動方針:気絶中
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】
【カイン(HP 5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界(FF3)の歴史書数冊
 第一行動方針:アリーナを背負ってどこかへ(行き先不明)
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在位置:サスーン城からどこかへ(行き先不明)】
392一瞬 1/3 ◆7m.CTF/Sgs :2005/06/16(木) 05:00:46 ID:pJuLId2l
旅の扉を抜けてウィーグラフは草原に降り立った。

前の世界では、ほとんど他の参加者と遭遇しなかった。
赤い髪の大男に、アグリアス・オークス。そしてライアンという騎士…。
百を越える参加者のなか、自分が遭遇したのはたった三人。
それでも時間が経つに連れ、参加者は確実に死んでいる。
どれほどの人数がこのゲームに乗っているか知る由も無いが
ゲームは滞りなく進行している。誰かが誰かを殺しながら。

自分の関与しないところでラムザ・ベオルブが殺されるかもしれない。
ウィーグラフに新たな想念が生まれた。それは焦り。
急がなくては。他の誰かの手ではなく自らの手であの男を殺す為にも…。
ウィーグラフは人が多く集まるであろう町を目指す事にした。
地図を広げ、現在地を確認する。

はぐりんは逃げていた。
セフィロスがティファを切り捨てる場面を目撃したのだ。
リュカ様…、こわいよう…。
はぐりんは一心不乱で逃げていた。
参加者中最速の逃げ足を誇るはぐりんを止められるものなどない。

それは偶然に偶然が重なって起こった。
はぐりんが全速力で逃げていた事。
たまたまウィーグラフがそこにいた事。
また新たな旅の扉が出現した事。
393一瞬 2/3 ◆7m.CTF/Sgs :2005/06/16(木) 05:01:38 ID:pJuLId2l
『金髪に気をつけろ』
目の前に突然現れた旅の扉から、そう書かれた紙が出現した。
はぐりんのスピードを持ってすら回避できない程の至近距離。
何が起こったか分からぬまま、はぐりんの視界は暗闇に閉ざされてしまった。

ウィーグラフはすぐ近くにに出現した旅の扉を、注意深く見守っていた。
何者が出てくるか分からない。そう、ラムザが出てくるかも分からないのだ。
暗闇の弓矢を旅の扉に向けて構えた。
とりあえず攻撃する。仮に自分とは無関係の他人であっても仕方ない。
それほどウィーグラフは獲物が奪われる事を焦っていたのだ。

一瞬。

ウィーグラフの放った矢は銀色の物体…、はぐりんを貫いた。

一瞬の暗闇。その一瞬に放たれた矢。

はぐりんは主人や仲間の事を考える暇すらなく絶命した。
ウィーグラフは命中するはずのない奇跡とも言える攻撃に成功したのである。
「首輪がある…。こいつも参加者か」
はぐりんのザックを回収し、荷物の確認もしないままウィーグラフは歩き出す。
394一瞬 3/3 ◆7m.CTF/Sgs :2005/06/16(木) 05:03:07 ID:pJuLId2l
彼は知らなかった。
たった今殺したモンスターが、どれほど自分を成長させたのかを。

ウィーグラフのレベルがかなり上がった!


【ウィーグラフ(急成長) 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×10、ブロードソード、レーザーウエポン、
 首輪×2、研究メモ、フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、黒マテリア
 第一行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先) 第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない】
【現在地:カズス北西の森西の草原→カズスに移動中】

【はぐりん死亡】

・ウィーグラフ本人は気付いてませんが、はぐりんを倒した事により遥かに強くなりました。
・ケフカの紙にウィーグラフは気付かないまま放置しました。
395知っている複製1/2:2005/06/17(金) 22:06:44 ID:5DRI/QHj
この身体の持ち主である女性が体内で歌っている。
彼女が責めているのか狂っているのか判らなかった。だが弱っているのは確かだ。
それを潰し、黙らせることもできたが、特に理由がなかったので捨て置いた。

(魔女 が 見つけた 宝物)

圧縮された時間は、他次元への「穴」を露わにした。
まして 世界を、大きな運命を動かすような強い力があった時代は魔女を強く引きつけた。
他を虫けらとけなし、自己の存在に固執する魔女だからこそ強い力に惹かれた。
世界を覗くことはできたが、接触という不自然は魔女にすらかなわなかった。

(魔女 は とどかぬ宝石を 自らの 魔法でつくりだし

 ぴったりの 宝石箱を つくっていれた)
396知っている複製2/2:2005/06/17(金) 22:07:58 ID:5DRI/QHj
魔女は疑似世界を創ることを思いついた。
「異次元に創る世界故魔女の世界で影響させる事は叶わないが、貴重な研究材料とはなろう。」
それに強い者への興味も魔女の手を動かした
強い力や意志を持つ者、美しい者、奇妙な者…
ひとつひとつ創っては宝石箱にしまい込んだ。

(逃げないように 首輪を つけて)

だがあるべき場所に無く、別の場所にあるというだけでそれは瞬く間に違う物に変質する。
感知するまもなく。
予想外の力は魔女を楽しませたが、同時に恐怖も与えた。

(自分 そっくりの 番人に 守させて)

すでに私を創った魔女はいない。遠い時間を何度も輪廻している。魂を凝固させて、他の者のように散ることはなかった。
たしかに永遠の時間を手にしただろう。だがその存在に何の意味があるのか。存在して、なにをしたかったのか。
先導される家畜のようにぐるぐると封鎖された時間を回る魔女。私が俯瞰する皮肉。

だが、私は違う。

愚かな主人を失い、私は割れる宝石を見る。

血を流せ。私のために。望みのために。


397殺人依頼 1/3:2005/06/18(土) 02:22:46 ID:Kb98/JKb
このゲームの開始から、対した手合いにも会えず。
新大陸に降り立ったかと思えば、数時間も同じ場所をグルグルと歩きまわされる。
サラマンダーのイライラは頂点に達していた。
「全く…隠し扉とは…」
何とか隠し扉を見つけたサラマンダーは、苛つきながらそう呟く。
この洞窟に何もないのは、嫌と言うほど理解した。
サラマンダーは足早に出口へと向かった。

「お前もあいつの仲間か!?」
ミスリルの炭鉱を抜け出ると、唐突に横から怒鳴り声が聞こえた。
チラリと声の聞こえた方向を見つめると、そこには武器を構えた子供が二人。
それを見たサラマンダーは、軽く肩を落とし息を吐く。
ガキが二人。とても楽しめる相手ではない。
「…あいつと言うのが誰だか知らんが、俺に仲間などいない」
興味なさげに、それだけを言い放つ。
しかし、目の前の二人は警戒を解かず、武器を構えたままこちらを睨み続けている。
仕方なしに、サラマンダーは睨みつけるその瞳を見つめ返す。

男のほうの殺気はいい、ガキとは思えない程の『本物』だ。
育てばそれなりの手合いになるかも知れん。
だが、今はただのガキだ、興味がわかない。
「やると言うのなら止めておけ。ガキを殺す趣味はない。だが、やると言うのなら手加減は出来んぞ」
そう言ってサラマンダーは、気だるげに下げた両腕を頭上に構える。
その大きさと威圧感、直接向けられる本気の殺意に二人は思わず怯む。

「ねえ…イクサス」
バーバラは心細げにイクサスの袖を引き、逃亡を促す。
「…チッ」
イクサスは舌打ちをし、武器をしまうと踵を返し歩き始めた。
398殺人依頼 2/3:2005/06/18(土) 02:24:47 ID:Kb98/JKb
「おい、お前ら」
立ち去るその背中を、引き止めるようにサラマンダーが声をかけた。
「…なんだよ」
「そのあいつとやらは強いのか?」
「そんなこと聞いてどうする」
「強いのかと聞いている」
有無を言わせぬ威圧感を含んだその言葉に、イクサスは何かを思い出すように忌々しそうに歯を食い縛る。
「知るかあんな奴のこと! あいつはリチャードをマリベルをエーコを…ラグナさんを殺したんだ!」
正確には、エーコとラグナを殺したのはギルターだったが、そんなことはもはや、イクサスには関係がなかった。
「ほお…四人殺しか…」
サラマンダーはかみ締めるようにそう呟き、少しだけ口を歪ませる。

「いいだろう、その男の特徴を教えろ」
「は?」
イクサスが間の抜けた声を上げる。
「俺は殺し屋だ、俺が代わりにそいつを殺してやる。ちょうど退屈でイライラしていたところだ」
「…本当か?」
突然の申し出をしてきた大男に、イクサスは疑いの目を向ける。
「俺は下らん嘘はつかん」
全く変わらぬ調子で言い放つ、その感情は伺えない。

この言葉を信用してもいいのだろうか?
イクサスは考えこむ。
この言葉がたとえ嘘だったとしても、特に自分に損はないだろう。
もし本当ならば労をせずあの男を殺せる。
悪い話ではない。
少なくとも自分に損はないはずだ。
399殺人依頼 3/3:2005/06/18(土) 02:26:50 ID:Kb98/JKb
「…本当に本当だろうな?」
「くどい」
「…わかった」
イクサスは少しだけ躊躇う様な素振りを見せると、アーヴァインの特徴、そしてまだこの村にいるであろう事を伝えた。
後は、何人か仲間がいるかもしれないと言うことも付け足しておいた。
「…そうか」
本当に理解したのか疑いたくなるほど簡単にそれだけを言い、大男は踵を返し歩き始めた。

「おい、おっさん」
イクサスは立ち去るその背中に声をかけた。
「…なんだ」
足を止め、振り返らずにその声にこたえる。
「あんた名前は…?」
「…俺に名などない」
素っ気ない返事の後、赤髪の大男は少し考えるような仕草をしてこう言った。
「ただ、こう呼ばれた事もある。サラマンダー、焔色のサラマンダーと」

【サラマンダー(疲労) 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
 第一行動方針:アーヴァインを探して殺す
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】

【イクサス(人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:アーヴァインを探して殺す/ギルダー・スコール・マッシュを殺す
 第二行動方針:アーヴァインの仲間であるソロ達を殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口】
400償いを 1/8:2005/06/18(土) 19:05:37 ID:+u3ku8xz
ジタンはどうやら、こちらを見失ったようだった。
あれからかなりの距離を走っていたが、自分を追って来たりする気配は無い。
クジャはあれから西へ西へと走りつづけ、眼前に森が広がり出した頃、一旦立ち止まって休んだ。
「…意気込んではみたものの」
荒い呼吸を整えながら、独り呟いてみる。
「セフィロス…一体どこにいるのだろう?」
セフィロスを止める。
そう意を決してジタンを出し抜き、ここまで走ってみたものの、彼を見つける手がかりも手段も、何も無い。
「しかしまあ、たださまよってるだけでも、何もしないよりはマシだよね」
言い聞かせるように言うと、今度は歩き始めた。

そして、それは森に入って暫くした後の事だった。
突然、首に何か冷たい物が押しつけられたのだ。
「動くな」と言う、聞きなれたあの声とともに。
「…ああ、お前か。会いたかったぞ」
そう続ける声の主に、クジャはゆっくりと振りかえる。
そしてそこには、紛れも無いセフィロスが立っていた。

これは運命が味方したのか?最後の最後で僕にチャンスをくれたのか?
まさかこんなにも早く、探していた人間と鉢合わせするとは。
「僕もさ、セフィロス」と応えながら、クジャはふとそんなことを考える。
…が、その時のセフィロスの姿は、クジャの目から見ても恐ろしい物だった。
端正な顔の右半分は返り血のせいで赤い仮面を被ったかのような状態だったし、
銀の髪は同じく返り血でべっとりと固まり、手にする刀は銀の刃を血が汚すと言うより、
真っ赤な刀身の所々から銀色の鈍い光が漏れているといったほうが正しかった。

昨日自分とわかれた後に、彼がどれほどの人を殺したのかは手に取るようにわかった。

「セフィロス、一つ聞いて良いかい?」
彼が刀を鞘に戻した時、クジャはそう口を開いた。
「…なんだ?」
血の匂いのする手袋をはめなおしながら、目も合わせずにセフィロスが問い返す。
401償いを 2/8:2005/06/18(土) 19:06:45 ID:+u3ku8xz
「…もう、これ以上誰かを殺すのはやめにしないかい?」

そんな彼に、クジャははっきりと問う。
一瞬、セフィロスの動きが止まった。
そしてこちらを見た。
その視線は、「何を馬鹿な」と言葉も無く語っていた。
「…何を言っている。止める筈が無いだろう」
当然のようにセフィロスは言うと、続ける。
「どうした?お前ともあろう者が。臆病風にでも吹かれたか?」
クジャの回りをゆっくり歩きながら、問い返してくる。
「…ちょっと、昔の知り合いと会ってね。彼と話をして考えが変わった」
「腑抜けめ」
クジャの答えに、セフィロスはそう吐き捨てた。

「それで?」
腕を組んで木に寄りかかり、今やこちらを敵意と殺気に満ちた眼で睨みながら、セフィロスが再び問う。
「私が殺しを続けると言うなら、お前は私を一体どうする気だ?」
クジャはため息をついた。
…やはり、この男は戦ってでも止めなければならないらしい。
「決まってるさ、セフィロス。
 …力ずくでも、君を止めるよ」
言うとクジャは、右手に持っていたブラスターガンを構えた。

「オレを失望させたな、クジャ」
村正を鞘から抜き、セフィロスも言う。
黒マテリアを探し、その過程でクジャとともに邪魔な参加者を潰そうと考えていたが、
誰にこんな甘っちょろい考えでも吹き込まれたのか、どうやら無理らしい。
「この対価は死で払ってもらおうか」
「いいとも、セフィロス」
クジャはこちらを睨みながら、こう言った。
「でも、僕もただでは死なないよ。君も一緒だ」
402償いを 3/8:2005/06/18(土) 19:07:57 ID:+u3ku8xz
こうして、戦いは始まった。
先に攻撃を仕掛けたのはクジャだ。
彼は神経針が装填されたブラスターガンの引き金を引き、セフィロスはそれを刀で叩き落す。
次の瞬間、二人は同時に後ろへ跳び退いた。
セフィロスは背後にあった木を両足で蹴りつけ、その反動でクジャに肉薄し、
クジャは真後ろに着地し、左手に炎を宿して迎撃の構えを見せる。
そして、激突。
クジャの放ったフレアはまたも刀で弾かれたが、
その衝撃はセフィロスの跳躍の勢いを殺して彼は縦に一回転してその場に着地し、
術者のクジャもクジャで、近距離での爆発のせいで後ろに跳ね飛ばされた。

しかし、これしきの事で隙を見せるクジャではない。
空中で体勢を整えて2本の足で危なげなく着地し、ふたたびブラスターガンを撃ちまくる。
セフィロスは今度は刀で受け止めず、代わりに横に大きく飛び退いてこれをかわす。
クジャは追い討ちをかけようとなおも撃ちつづけるが、生い茂る木が遮蔽物となってその攻撃は当たらない。
セフィロスは真上の木の上に跳び乗り、村正を大上段に構えてクジャに上から襲いかかる。
クジャは咄嗟に右に跳んで斬撃を回避する。
次の瞬間、彼の背後にあった大木が真っ二つに切り裂かれた。
それまでクジャが立っていた地点に着地したセフィロスは、
今度は刀を持っていない左手をクジャのほうに突きつける。
そしてその手は、紅く燃えていた。

「シェル!!」
セフィロスが放ったフレアを、クジャは魔法の障壁を生み出して無力化する。
が、その隙に、セフィロスは接近戦の間合いまで詰め寄ってきた。
403償いを 4/8:2005/06/18(土) 19:10:21 ID:+u3ku8xz
まずい。
次々と繰り出される斬撃をかわしながら、クジャは頭の片隅で呟いた。
この展開はどうしても避けたかった。
なぜなら、セフィロスは近距離での戦いを最も得意とするからだ。
破壊の剣でも持ってこない限り、本職の武器である刀を持ったセフィロスに接近戦で勝てる者はいない。
魔法主体の戦いを得意とする自分ならなおさらだ。
事実、接近戦に持ちこまれた後のクジャは防戦一方だった。
ほとんど一方的に繰り出される攻撃をかろうじてかわしてばかりだ。

それならと、クジャは自分からさらにセフィロスに肉薄する。
懐に飛び込めば、逆に刀に斬られる心配は無い。
そして、セフィロスが彼を間合いに入れる為にバックステップする前に、
クジャは左手に宿したホーリーの光を、彼の腹に至近距離で放った。

強烈な衝撃を受けて、セフィロスは後ろの木にそのまま吹き飛ばされる。
クジャも次の魔法の詠唱に入り、一気に追い討ちをかける。
といってもそれはフレアやホーリーのようなものではない。
今のクジャに使える中で最強の魔法、フレアスターだ。
セフィロスも周囲に鮮やかなオレンジ色の炎が出現するのを見て逃げ出そうとしたが、
体を強打し、その動きは遅々としたものだった。
次の瞬間、彼を中心に円を描くようにして、次々と爆発が起こった。

「………」
フレアスターを放った体勢のまま、クジャは微動だにしないでその場に立っていた。
手応えからして、ほとんど直撃だっただろう。
さらに範囲をかなり狭め、その分威力を高めたので、いくらセフィロスでも生きてはいないように思えた。
「…やった、か?」
呟いて構えを解き、彼がいた辺りの地点に近づく。
そこはフレアスターによって薙ぎ払われ、倒された木によって埋め尽くされていた。

そしてその木の内の一本に足をかけたのが、そもそもの命取りとなった。
404償いを 5/8:2005/06/18(土) 19:12:50 ID:+u3ku8xz
突然だ。
突然足下の木が派手に舞いあがったかと思いえば、次の瞬間には黒い影と、
紅い閃きが目に入った。
クジャは咄嗟に左に跳び、致命傷を回避する。
しかしその代償はあまりにも大きいものだった。

グチュリ。
嫌な擬音が、左から聞こえた。
いや、正確に言えば、自分の右腕から。
もっと正確に言えば、自分の右腕があったところから。
クジャの女性のように白く華奢な右腕が、肩から斬り飛ばされて宙を舞っていた。

「―――うあああぁぁぁあああぁぁっっっ!!!!」
あまりの苦痛に、絶叫を絞り出すクジャ。
着地したその場に倒れこむ彼の耳に、何か重いものが地面にぶつかる音が響いた。
それは、セフィロスが嘆きの盾を、怒りに任せて足下に叩きつける音だった。
フレアスターの炎に呑みこまれる直前、丁度ハッサンとの戦いのときと同じように、
盾を取り出してその身を守ったのだった。

とは言っても、あの時ほど上手くいったわけではない。
自慢の銀髪は先が黒く焼け焦げ、黒いコートも所々裂けていてボロボロだ。
そして、彼の顔はその怒りによって燃えているかのような凄まじい形相だった。
その怒りの表情を浮かべながら、セフィロスが刀を手にこちらに向かってくるのを、
クジャは痛みと出血でぼやけがちな視界に捕らえていた。

「…あああぁぁあ!!」
また叫んで必死の思いで立ち上がり、残った左腕にフレアの炎を宿す。
…が、その左腕も、彼に向けた瞬間手首から切り落とされた。
「―――!!!」
今度は声を上げる間もなく、クジャは蹴飛ばされ、背後の木にぶつかった。
405償いを 6/8:2005/06/18(土) 19:15:04 ID:+u3ku8xz
「お前には」
辛うじて木に寄りかかるクジャの体を横に斬り裂きながら、セフィロス。
「本当に」
次は縦に。
「がっかりさせられた」
今度は斜めに。
「…こんなところで、私を裏切ろうとはな」

ああ、結局、ダメだったか…
セフィロスにメッタ斬りにされながら、クジャは妙に冷静な頭の中で呟く。
死が近い。
結局、自分にセフィロスを止める事は出来なかった。
見い出した償いを果たせず、死のうとしている。
自分の屍さえも乗り越え、セフィロスはどこまで殺人者の道を歩みつづけるのだろう。
自らの最後を迎えるまでか?それとも最後の一人となるまで?
どちらにせよこの二つ以外に、彼の道に終わりをもたらすものはなさそうだ。
ジタンは自分が死んだのを知って、どう思うだろうか?
少なくとも自分には、この犬死にを「死んで詫びる」などと言うのは、あまりに都合が良過ぎる気がする。

「さてと」
かれこれ十数回は斬りつけ、クジャがもう半ば意識を失った頃に、
セフィロスはようやく彼の首に刃を向ける。
「そろそろ逝ってもらうか」
言って、彼は大きく村正を構え、振り下ろした。
が、その刃はクジャではなく空を斬った。
406償いを 7/8:2005/06/18(土) 19:17:23 ID:+u3ku8xz
ドンッ、という、それまでとは違う痛みと振動に、クジャは瞑っていた目を開く。
と、すぐ目の前にジタンがいた。
首をはねられる寸前、彼がクジャを助け出し、森の外まで連れ出したのだった。
「やあ…すまないね、ジタン」
やっとのことで、それだけ言ってみる。
すると、彼は悲しみと、少々の怒りを込めて言った。
「何が…なにがすまないだよ!死に急ぐなってあれだけ言ったろ!」
「ハハ…手厳しいね。僕だってなにも死ぬつもりは無かったさ」
ケホッと小さく吐血しながら、続ける。
「僕だって…君の言う通り償おうとはしたさ。その結果が…カハッ、これだけどね。
 僕だけにできると大口叩いといて…このザマとはね…」
「…?」
「彼は…セフィロスは僕ですら止められない…
 ジタン…早く逃げるんだ。でないと、君、まで、死、死ぬ事に、なるから」

途切れ途切れにそこまでクジャが言うと、ジタンはやっと彼の行動の真意を悟った。
そういえば、森でクジャを斬り刻んでいた男。
あれは、サイファーに顔写真を見せてもらったあの凶悪なマーダー、セフィロスに間違い無い。
「馬鹿野郎…」
「そうとも。僕が…僕がバカだった、のさ。僕は…また、気付くのが…遅すぎた。
 もう逃げろ…じきに、彼が来るだろう…」
クジャは消え入るような声で言い終えると、ゆっくりと目を閉じた。
そして、それに気付いたジタンがなにか言葉を発する前に、彼は死んだ。

当のセフィロスが森のなかから荒荒しく現れたのは、それから間もなくの事だった。
彼は息絶えたクジャを見、そしてジタンを認めると、刀を構えてその場に立ち止まった。
「…さっきはよくも邪魔してくれたな。誰だお前は?」
訝しげに言うセフィロスに、それまでうつむいていたジタンは立ちあがり、はっきりと答えた。
「俺はジタン。ジタン・トライバルだ。
 兄貴の仇をとらせてもらおうか、セフィロスさんよ」

彼は腹の鞘から短剣を抜き払い、無謀にすら思える戦いの準備を整えた。
407償いを 8/8:2005/06/18(土) 19:20:03 ID:+u3ku8xz
【ジタン 
 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス
 第一行動方針:セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】

【セフィロス(HP 1/6程度)
 所持品:村正 ふういんマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 グリンガムの鞭 ブラスターガン 毒針弾 神経弾   
 第一行動方針:ジタンを殺す
 基本行動方針:黒マテリアを探す
 最終行動方針:生き残り力を得る】

【クジャ 死亡】

【現在地 カズス北西の森、最南端】
408名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/18(土) 23:36:50 ID:lnWZwk0a
保守
409名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/18(土) 23:46:53 ID:vY3KIZdH
410終わりの始まり 1/6:2005/06/19(日) 17:07:37 ID:U9qciSdM
図らずもはぐりんを倒し、多大な力を手に入れたウィーグラフは進む。
その足が森に差し掛かった瞬間、目の前で凄まじいばかりの光と爆音が響いた。
何事かと驚くウィーグラフを余所に、続いて空から幾十もの星が降り注いだ。
余りにも凄まじい閃光は、ウィーグラフの理解を超えており、
それが戦闘に使用された魔法だと気づくのに、暫くの時間を要した。

この先で戦闘が行われている、おそらくは私の理解を超える連中の戦い。
魂を売り渡し得た魔人の力すら、人の身で退けるあの男。
ともすれば戦闘の渦中にいるのは我が仇かもしれない。

そう考えたウィーグラフは、足早に戦闘の行われている場所へと向かった。

目の前に人影を確認したウィーグラフは、立ち並ぶ木々の陰に身を隠し戦闘の様子を伺う。
そこで戦闘を行っていたのは、半身を血にまみれた銀髪の男と尻尾の生えた金髪の男。
そのすぐ側に派手な格好をした銀髪の男が倒れているのも見える。
ボロボロに切り裂かれたその様子から、おそらく既に息はないだろう。
ウィーグラフはその場に仇の姿がない事を確認すると、不満とも安心ともとれるため息をついた。

ウィーグラフは戦闘に目を移す。
尻尾の生えた男は、素早く機敏な動きで敵を翻弄しながら、隙をうかがいヒットアンドウェイを繰り返している。
それを受ける血まみれの男、その血には返り血も含まれているのだろうが、その半分近くは彼自身のものだろう。
遠くからでもその男の消耗は激しさは見て取れた。
それでも、その男の技量は凄まじい。
素早く動く男とは対照的にその場から動かず、迫り来る攻撃を受けながら反撃の刃を返す。

仇がこの場にいないことを確認した時点で、すぐにでもこの場を去るべきなのだろうが。
彼はこの戦闘に目を奪われてしまった。
念のためブロードソードを構え、ウィーグラフはその戦闘を傍観した。
411終わりの始まり 2/6:2005/06/19(日) 17:09:39 ID:U9qciSdM
さて、どうしたものか。
素早く動き回るジタンを横目に、セフィロスは思考をめぐらす。
アリアハンからの幾たびにも及ぶ戦闘に加え、先のクジャとの戦闘。
流石に消耗が激しい。
目の前の男も雑魚ではない、このままでは少し分が悪いだろう。
最低限、回復手段が必要だ。
ジェノバ細胞の自己治癒力があるが、これは時間がかかりすぎる上に微々たるものだ、頼りにするには弱い。
戦闘を行いながら自らを回復する。そんな都合のいい物が存在しないだろうか?

セフィロスは一通り目を通した攻略本の中身を思い出す。
そして、一つのアイテムに思い至った。
そういえば、手に入れたアイテムの中に、そんな物があったはずだ。

飛び掛ってきたジタンの攻撃を、刃で受け全力で弾き返す。
重量の軽いジタンの体は吹き飛ばされ、軽々と宙を舞う。
ジタンは空中でクルリと回転し、両の足で地面に着地する。
その間にセフィロスは村正をザックにしまい、代わりにおかしな形をした剣を取り出した。
その行動の真意が掴めず、ジタンは僅かに戸惑い状況をうかがう。

セフィロスは軽くその剣を振ってみる。
愛刀正宗に良く似た形状の村正と違い、西洋剣のフォルムであるこの剣は少し扱い辛い。
この剣では先ほどからすばしっこく動き回るあの男に、攻撃を当てるのは難しいだろう。
それは戦闘を続けて十分に理解した。
――ならば。

セフィロスを中心に竜巻が巻き起こった。
それは、セフィロスが生み出したトルネドの魔法。
竜巻は壁となり、セフィロスとジタンの間を分かち視界を奪う。
412終わりの始まり 3/6:2005/06/19(日) 17:11:45 ID:U9qciSdM
激しく吹き回る竜巻の中、セフィロスはジタンがいた方向とは違う、明後日の方向に駆け出した。
セフィロスは気づいていた、先ほどからこの戦闘を見つめる傍観者の存在に。
物陰から隙をうかがうハイエナか、それとも何も知らぬただの見学者か。
そんなことはどちらでもいい。そこに存在するのならば、私の糧となって貰おう。
セフィロスは風の壁を破り、傍観者に向かって切りかかった。

突然竜巻が巻き起こり視界を奪われたかと思うと、その風の壁を破って血塗れた銀髪の男が飛び出してきた。
完全に不意を突かれたウィーグラフは、その攻撃に反応できない。
放たれた斬撃に、攻撃を行ったセフィロスはおろか、ウィーグラフ自身も完全に死を確信した。
しかし、ウィーグラフの体はその攻撃に反応した。
咄嗟に後方に体をそらし、その刃を紙一重でかわしきる。
それはウィーグラフですら予想外の超反応。
確実な死を持っていたはずのその刃は、彼のザックを掠めるにとどまった。

ウィーグラフは確実な死を避けきった己に呆然とし、反応が遅れる。
その隙を逃さずセフィロスはそのザックを回収した。

「盗賊の証!」
竜巻も晴れはじめた後方からの声。
同時に、二人の目の前に突然宝箱が出現した。
その中から光が飛び出し、二人に向かい襲い掛かる。。
セフィロスは素早くその光をかわす。
ウィーグラフも同じくそれをかわすが、その回避行動も彼の意思ではなく、それを超えた本能による回避だった。
自分の身に起きた急成長に、ウィーグラフは戸惑いその場に立ち尽くした。

攻撃をかわしたセフィロスは、再度ジタンと対峙する。
後方に引けば逃げられただろうが、彼の中に撤退はあれど逃走はない。
戦闘を始めた以上、その終焉はどちらかの死しかない。
413終わりの始まり 4/6:2005/06/19(日) 17:13:47 ID:U9qciSdM
セフィロスは片腕に奇跡の剣を、もう片腕に先ほど回収したザックを持ち、ジタンを警戒しながら横目でザックの中身を確認する。
この剣での回復はままならなかったが、思わぬ収穫を得た。
この中に回復アイテムがあるかもしれない。
その中にあったのはエリクサー、そして…

「…ククク」
唐突にセフィロスは笑う。
「ククク…黒マテリア…」
笑いながらザックから拳大の黒い球体を取り出した。

完全にその球体に意識が向いているのか。
今のセフィロスは隙だらけに見えた。
そう思ったジタンは釘バットを片手に、セフィロスに向かい殴りかかる

しかし、走り寄るその視界は、空中にばら撒かれた沢山のカードのようなものに遮られた。
完全に標的を見失ったジタンに、死角から放たれた強烈な前蹴りが命中した。
吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がり地面に伏す。

「大人しく見ていろ、面白いものを見せてやる」
それを一瞥し、セフィロスは己の手の内に全魔力を集中した。

セフィロスがマテリアを発動させるのに、媒介など必要ない。
ジェノバ細胞がセフィロス自身を最も適した媒体に変化させる。

そして、黒マテリアが怪しい輝きを放ち始めた。

空に浮かんでいるはずの浮遊大陸が大きく揺れた。
それは魔女のせいなどでは無い。
その場にいたジタンやウィーグラフはおろか、参加者全員が一様に空を見上げた。
414終わりの始まり 5/6:2005/06/19(日) 17:15:58 ID:U9qciSdM
セフィロスは発動したメテオを見上げる。
セトラの民であるあの女が死んだ今。
唯一メテオを破壊しうる可能性のあるホリーを発動できる者はいない。
この大陸に白マテリアの発動方法を知るものは、古代種の知識を得た自分しかいないのだから。
たとえ発動できたとして、あのメテオを破壊できるほどのホーリーを呼ぶことは叶わないだろう。
つまり、あのメテオを止めることは、もはや誰にもできない。

「…ククク…ハハハハハ!」
セフィロスは笑う、彼には珍しい高笑い。
それは勝利を確信した者の笑いだった。

「…テメエ、あんなもんが落ちてきたら、どうなるかわかってるのか!?」
痛むわき腹を押さえ、立ち上がりながらジタンは咆える。
「…? どうなるだと? 決まっている、全ては死滅し私は勝者となるのだ」
笑いを止め、平然と答えるその答えに、一切の迷いはない。
「勝者? こんなゲームに勝ち残ってなんになるってんだよ」
「なに、確かにこのゲームはくだらない遊戯だが、得るものもある。
 このゲームに勝ち残り、私は神となるなのだ」
迫り来るメテオを背に、セフィロスは両腕を広げ唄う。
その様は翼を広げた神の如く。
「神だと…お前はそんな下らない事のために皆を…クジャを殺したのかよ!?」
「そうだ、他者など己の糧に過ぎん。そんなものを殺すのに理由など必要ないだろう」
「違う…」
俯き、歯を食い縛るジタンの体が、輝き光を帯びる。
「許せねえ…お前だけは絶対に許せねえ!」
輝きを帯びた青い瞳がセフィロスを射抜く。
「…ハハ、楽しませてくれるじゃないか」
その姿を見てセフィロスは笑った。
415終わりの始まり 6/6:2005/06/19(日) 17:18:00 ID:U9qciSdM
【ジタン(HP 4/5程度)(トランス)
  所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7) グラディウス
 第一行動方針:セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】

【セフィロス(HP 1/6程度、魔力0)
 所持品:村正 ふういんマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 グリンガムの鞭   
 暗闇の弓矢 プレデターエッジ エリクサー×10 レーザーウエポン ブラスターガン 毒針弾 神経弾
 首輪×2 研究メモ フラタニティ 不思議なタンバリン 黒マテリア
 第一行動方針:ここにいる奴等を皆殺しにする
 最終行動方針:生き残り力を得る】

【ウィーグラフ(急成長) 所持品:ブロードソード
 第一行動方針:不明
 第二行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先) 第三行動方針:生き延びる、手段は選ばない】

【現在地 カズス北西の森、最南端】

【メテオ発動】
416希望 1/2:2005/06/19(日) 17:28:23 ID:U9qciSdM
「アレを知っているのか、シド?」
「…ああ、知ってるぜ、嫌ってほどにな…!」
空に浮かぶメテオを見て、忌々しそうにシドは言い放つ。

「アレはオレ様の世界をブッ壊そうとした、セフィロスってクソッたれが呼びやがったメテオだ」
「…それは、その世界ではどうなったんだ?」
「オレ様達が…いや、エアリスって嬢ちゃんがぶっ壊しくれた、命懸けてな…」
そう言ってシドは目を伏せる。本来は気を使う場面なのだろうが、今はそれどころではない。
「…どうやってアレを破壊したんだ?」
「ホーリー…白マテリアだ」
「白マテリア…? それを使えばアレを破壊できるのか?」
「いや…無理だ、アレを使えるのは嬢ちゃんだけらしいからな、その譲ちゃんも…」
目を伏せ、万策尽きたといった風に、座り込み地面を殴る。

「……諦めるな」
座り込んだシドを見てアルスが言う。
「可能性が有るというのなら諦めるな、絶望するのは全部やりつくした後でも遅くはない」
そう言い、シドの腕をつかみ立ち上がらせる。
「探そう、白マテリアを」
「…このゲームにそれがあるかどうかすら判らないんだぜ?」
その問いにアルスは答えない。
「…シド、メテオが何時ごろ落ちてくるかわかるか?」
「…アリャ馬鹿でかい分、動きが遅せえ。多分それなりに時間はあると思うが…」
「そうか…なら急ごう」
そう言って、アルスは歩き出した。

「チッ、そうだな、簡単に諦めるなんてオレ様らしくねぇもんな!」
頭をかきむしり、シドはアルスを追って歩き始めた。
417希望 2/2:2005/06/19(日) 17:30:24 ID:U9qciSdM
【アルス 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
 第一行動方針:白マテリア及び発動方法を探す 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【シド(左肩負傷) 所持品:ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) ロープ
 第一行動方針:同上 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:カナーンの村に向かい移動中】
418名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/19(日) 18:48:04 ID:U9qciSdM
>>410->>417は無効でお願いします。

多大なご迷惑をかけまして、申し訳ないです。
419飛行物体≒畏怖 1/8:2005/06/19(日) 20:04:52 ID:Vkw4f9a5
急ブレーキの音が聞こえた。
それはあの軽トラからだった。
そして登場していた人間たちが、その音を合図にしたかのようにぞろぞろと降りる。

ここはカズスの街の入り口。
時間をかけて走った先に、この街の入り口が見え…そして止まったのだ。
そして早速全員が街に入ろうとする。が、それをフルートが止めた。

「あの〜中にどんな人がいるのかも分かりませんし、一度偵察してみてはどうですか?」

珍しくフルートは、的確なことを言った。
確かにこんな大人数では目立ってしまう。もしも殺人者がいたら即行で目をつけられるだろう。
状況が状況だけに、この案には反対する理由は無かった。

「じゃあ言いだしっぺですし〜、私が行きましょうか?」
全員が案に賛成した瞬間、フルートはこんな事を口にした。
その瞬間場が凍りつく。当然だ、彼女だったら絶対見当違いな場所に進んで道に迷うのが落ちだ。
そしてそれを代表して代弁するように、ロランが前に出た。

「じゃあ僕も行くよ。1人くらい増えても何も心配はないだろうし」
ロランがそう言ってフルートの手を引こうとすると、サックスが待ったをかけた。
「待ってください!フルートさんが行くなら僕も行きます」

ロランはその彼のあからさまな態度に、心底微笑ましい…と苦笑した。
そしてやはり少しでも少人数であった方が楽だという事をやんわりと伝えようとしたが、
「どうやら…というか地図を見ると確実にここは……僕たちが住んでた世界なんです。地の利は必要でしょ?」
先手を打たれてそう言われてしまった。しかもその言葉には嘘偽りもなさそうだ。

「じゃあ、3人で仲良くいきましょう〜」

そう言って、フルートは何故か運転席に乗っていた。
420飛行物体≒畏怖 2/8:2005/06/19(日) 20:06:35 ID:Vkw4f9a5


いや、いやいやいやいやいやいやいやいや!?
ほぼ全員が心の中で、彼女の奇行にツッコミを入れた。
先程まで偵察がどうとか言っていたのに何故目立つ車で移動しようとするのか。
というかフルートさん君車運転できるのできないのできないでしょ本当に何考えて―――――

混乱するロラン。どこからツッコむべきなのだろうか。
サックスはサックスで何故か納得して助手席に座っている。

「だって、誰がいるかも分からないんですよ?これの方が安全ですよ〜。
 大丈夫ですよ〜、ゼルさんの真似をすれば良いだけですし。きっと私にも出来ます!」

頭が痛い。ロランは心底そう思いまた苦笑する。
だがこのフルート節はちょっと止められる自身が無い。
彼は観念して荷台に乗った。そして他の全員を見ると、全員が全員苦笑して手を振っている。

「気をつけろよ?」
「気をつけてくださいね?」

いくつかのその問いに、ロランは片手を上げて答えた。
「じゃあ、行ってきます……」

そしてフルートはエンジンを吹かし、

「では、出発進行で〜す」

そう言って、思いっきりアクセルを踏んだ。
421飛行物体≒畏怖 3/8:2005/06/19(日) 20:08:19 ID:Vkw4f9a5



そして、制御できなくなった車は偶然にも鉱山の入り口方面へと向かい、
そして、そこの近くの民家の壁にぶつかり、
そして、大きな音を立てて幸運にも炎上せず、


そして、止まった。


サックスは失神ギリギリだったが何とか助手席から降り、
ロランもふらふらになりながら何とか荷台の上から降り、
フルートは「失敗失敗」と少しだけ教訓しながら降りた。

目の前には男が一人、少女が一人、少年が一人。
非常に気まずい状態だ。

しばらく睨み合いが続いた。
張り詰める空気。

サラマンダーも、唐突なこの状況に手を出せないでいた。
だが、確実に構えは取る。
ロラン達もそのサラマンダーの殺気に気づいていた。
だが隣の少年と少女の存在が解せない。

「おい……俺はゲームに乗っている。逃がすつもりは無いが、逃げるなら今のうちかもしれないぞ」
サラマンダーが、唐突にそう話しかけた。
「そうか。でも君達がゲームに乗っているとわかった以上は……君たちを倒さないと」
ロランがそう答え、ガイアの剣を構えた。それに続くようにサックスも草薙の剣を構えた。
バーバラはイクサスにここから離れるよう説得している。だが、イクサスは動かない。
422飛行物体≒畏怖 4/8:2005/06/19(日) 20:10:09 ID:Vkw4f9a5

サックスは、その瞬間この状況を理解した。
少女はこのゲームには乗っていない。男はこちらを殺す気マンマン、そして少年は……きわどい。
だが邪魔をする者を全て排除するような、そういう冷たい目を持っている。こちらの出方によっては…敵になるか。
こういう不確定要素が多い時は、できるだけ冷静に事を運びたい。
だが、今の自分にはそれが出来そうに無い。彼のかつての友ならそれができただろうに。

「はぁ…ギルダーだったら……こういう状況はどうやって打破するんだろ」

サックスは、溜息をつきながら…確かにそう呟いた。
そしてそれを聞いたイクサスが、躊躇いも無くサックスに向かってラケットを振った。

風の塊がサックスを襲う。
そして近くにあった道具屋の壁に叩きつけられる。

「サーックス!」
「余所見をしていて良いのか?」
「な……ッ!!」

それを呆然と見ていたロランも、サラマンダーの斬撃に襲われた。
間一髪避けはしたが、傍で爆発が起こり顔を青くする。
フルートはその唐突な暴力を見て、腰が砕け目に涙すら浮かべていた。
バーバラの方はというと、できるだけ離れ余計な戦いをしないよう心がけている。

「ギルダー!?ギルダーだったら…今そう言ったか!?言っただろ!!
 ふざけるな!あれか!?ギルダーの仲間なのかお前は!!人殺しの仲間なのか!?」
イクサスが怒り狂って叫び、サックスを罵る。
サックスには、彼の言っている言葉の意味が分からなかった。
「人殺しの仲間……?」
「とぼけるな!ギルダーは俺の仲間を殺したんだぞ!2人も、2人もだ!!」
「嘘だ……あいつは……っ!!」
423飛行物体≒畏怖 5/8:2005/06/19(日) 20:11:32 ID:Vkw4f9a5


覚悟はしていたつもりだった。
だがこの少年は嘘を言っているわけではないだろう。彼自身に嘘を言う余裕などなさそうに思える。
もしそれが本当だとしたら……自分はどうすれば…………。

サックスは立ち上がれなかった。
戦意を全て失い、座り込んでしまう。
ロランもその話にショックを受け、どうすれば判らなくなってしまった。
目の前の男を倒さねばいけないのはわかる……だが動けない。

「おいどうした!立てよ!お前も俺を殺したいんだろ!?
 なんせ殺人者の仲間だ!!俺の首を狙ってるんだろ!?来いよ!人殺し!人殺し!!」

イクサスの罵声が響く。ロランとサックスは動かない。
だが、その時……。

「うるせええぇえぇぇぇえぇぇええぇえぇぇぇぇえぇぇえぇえぇぇえええぇえぇえ!!!!」

それよりも大きな怒号が、辺りを支配した。
声の主は…そう、フルート。「あの人格のフルート」だ。

「さっきから聞いてりゃ!ぁあ!?こっちが何も言わなかったら調子乗りやがって!!
 これだから餓鬼は嫌いなんだよ!!殺してやろうか!?いや、そんな質問じみた事は言わねぇやらねぇ企まねぇ!!」

辺りの雰囲気が一気に変わった。
ここにいる全員が、フルートに気圧されている。

「いいか餓鬼!人に喧嘩を売ったら自分も死ぬことを考えておくのが基本だ!!判ってるよなぁ!!
 剣を取れば戦いだ!!魔力を溜めれば戦いだ!!人のモン盗めば戦いだ!!命の賭け合いだ!!
 だからよぉ……今からあたしがてめぇをぶっ殺しても!!なんッッッッッッの文句もねぇよなぁ!!!!」
424名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/19(日) 20:13:24 ID:Vkw4f9a5


イクサスはそう言われ、気圧され、先程のサックスのように動けなくなっていた。
そして目の前の彼女の言葉を聞きながら、彼は目を疑うことになる。


なぜなら最後の怒号の直後、
フルートが両腕で意図も簡単に、

「あの鉄の塊」を


, , ,, , , , ,, , , , , ,
軽トラを真上に持ち上げたのだ。



「フルート……さん?」

サックスが「信じられない」という言葉を形容した目でフルートを見る。
だがその目はすぐに、羨望の眼差しへと変わっていた。
一方ロランが彼女の姿を見るのは2度目だ。本人はまたあの人格を見ても多少は驚きはしないと思っていた。
だが、目の前の光景には驚かない方が異常だと思う。

「な……なんだっ、お前は!」

イクサスが幾分小さくなった声を搾り出して言う。
だがそんな震えた声にフルートは興味を持たない。

「あたしの仲間をなんの意味も無く……体だけじゃねぇ!心まで傷つけやがったのが許せねぇ!!
 だからこれが!あたしから渡すてめぇへの引導だ!!神の裁きみたいに小奇麗じゃねぇが喜んで受け取れ糞餓鬼!!!!」
425飛行物体≒畏怖 7/8:2005/06/19(日) 20:15:00 ID:Vkw4f9a5


そして軽トラは、奇麗な放物線を描いて宙を待った。
それをじっと見つめるイクサス。諦めにも似た感情が身を襲う。
だがそれをみたサラマンダーが急いでイクサスの手を引き、軽トラの着地地点から退避した。

そして先程イクサスがいた位置に、軽トラが着地した。
そのショックで軽トラは形が崩れ、そして爆破を起こし、炎上した。


「な……何が起こりやがった!?」
「爆発音ね…しかもなんか凄い!」
「まずいんじゃないですか?行った方が!」

一方の街の入り口前では、その軽トラの爆破音を聞いて仲間たちが動き出した。
恐ろしい人間がいたのかもしれない、そう思い全員が走っていった。


そしてまた舞台は「恐ろしい人間」がいる場所に戻る。

軽トラの焔が辺りの気温をぐっと上げ続けている最中、フルートはサラマンダーに怒号を上げていた。
そう……アリアハンにいた時に、彼女たちは彼の静かな襲撃を受けていたのだ。

「これがてめぇへの一方的な思いだろうが何だろうが関係ねぇ!!あン時の借りを返してやるよ!!」
「あン時の……ああ、そうか」

サラマンダーは彼女の言葉を理解した。
そして動けないイクサスを離れたところに避難させ、剣を構えた。

そしてサックスもロランも同じく剣を構えていた。どうやら一応は立ち直ったらしい。
いつかのレーベの景色を小さくしたかのような焔が、彼らを見守っていた。
426飛行物体≒畏怖 8/8:2005/06/19(日) 20:16:03 ID:Vkw4f9a5
【フルート 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣】
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート】
【サックス 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り】
【第一行動方針(三人共通):サラマンダーを倒す
 第二行動方針(三人共通):なるべく仲間を集める
 最終行動方針(三人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】

【サラマンダー(疲労) 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
 第一行動方針:目の前の敵を殺す 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【イクサス(人間不信 軽いショック?)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:避難? 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す/ギルダー・スコール・マッシュを殺す
 基本行動方針:アーヴァインの仲間であるソロ達を殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:避難 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口】

【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ】 
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト】
【ユウナ(ジョブ:白魔道士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】
【プサン 所持品:軽トラック、錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:ゼル達と共に行動する 第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける 最終行動方針:ゲーム脱出】

【第一行動方針(四人共通):フルート達の元へ向かう
 第二行動方針(四人共通):なるべく仲間を集める
 最終行動方針(四人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村入り口】
427飛行物体≒畏怖 (訂正):2005/06/19(日) 21:35:59 ID:5/a0B0vu
プサンの所持品から「軽トラック」を削除します。

失礼しました。
428銀の別れ 1/3:2005/06/20(月) 02:06:14 ID:Tnz1fqZ2
ジダンと別れて、リュカたちはは西へ西へと歩み続けていた。
目の前に森が広がろうと、その速度は落ちることはない。
付き従うリノアに歩調をあわせることさえ忘れて。
少しでも、息子を殺した仇敵から距離を離したかった。
自分が助けた、あの男から。

あまりに感情が高ぶっていて、リュカは地図を見ることさえ疎かにしていた。
だからぱっと視界が開けたとき、森を抜けたということに気づくのに、
森の中で広がった瞳孔が適当な大きさに縮むまで、待たなくてはならなかった。

草原には、今は誰もいなかった。

銀髪の剣士も、神殿騎士も。

ただそこにあったのは…。


銀色に輝く、モノ。


それが何なのか、リュカは知っている。
あるいは知っているような気がする。
自分が知っているモノと、今そこにあるモノは、同じである可能性がある。
けれどその可能性を、出来れば否定してほしい。

リュカは恐る恐る、ソレに近づいた。
429銀の別れ 2/3:2005/06/20(月) 02:07:10 ID:Tnz1fqZ2
銀色に輝く、液体のような、固体のようなモノ。
優しく触れれば柔らかに、激しく叩けば硬く固まる。
命の灯火を失っていても、その性質は変わらない。

そう、命を失っている。
深く矢が刺さったままに。

「うぅ…、ぁあぁ……」

嗚咽。
彼の名を呼ぶことも出来ずその場にうずくまる。
悲しみと憤り。
助けられなかった。

また。

また。

また。

叫んでしまえばどれほど楽か。
感情に身を委ねればどれほど楽か。
だがそんなことは出来ない。
身に危険を呼ぶわけにはいかない。
まだ、大切な人々は、確かに生きているはずだから。
430銀の別れ 3/3:2005/06/20(月) 02:08:02 ID:Tnz1fqZ2
ソレは照らされる太陽の熱のためか、あるいは大地に茂る草々の生命力に吸われているためか、少しずつ体積を減らしている。
もともとの小さな身体は、日没までには跡形もなく消え去っているかもしれない。

リュカはそこに土を盛る。
ソレがもし消えてしまっても、自分になら、彼がどこに眠っているのかが分かるように。


これからどうしよう。
もしここでソレを見つけることがなかったら、そのままこの草原を、やはり西へ西へと歩んでいたに違いない。
リュカはようやく地図を見た。
そしてまた、ようやくリノアと目をあわせ、言葉を掛けた。
東には、つまり自分が歩んできた道の方向に村がある。
北西に森を進めば城がある。
このまま西へ行き、山脈を回って東に行けば、大きな山と村がある。

どこでもいい。
どこに行けば会えるのかだけを考えて、行く先はリノアに決めてもらった。
リュカたちは北西に進路を取る。

はぐりんに、一度だけ振り返り、別れを告げて。
431名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 02:10:19 ID:CiQR41tc
おやすみ
432名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 02:11:20 ID:CiQR41tc
ごめん、誤爆
433銀の別れ:2005/06/20(月) 02:11:29 ID:Tnz1fqZ2
【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【リノア 所持品:賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 基本行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【第一行動方針(共通):北西の城(サスーン城)に向かう】


【現在地:西の森西の草原→サスーン城へ】
434名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 03:04:31 ID:QXIQ+5cA
リノアはリュカの落ち込みように冷や汗を画いた、なんとなく殺気の様な物まで感じる。
このままでは最悪、リュカに殺されてしまうかもしれない。
(それは駄目!私はスコールに会うんだもん!!)
リノアはひとつの決心をした、そしてリュカに「私ちょっとトイレに行ってきます」と言うと
校則で画けた。賢者の杖ですれ違う人を撲殺していく。
「リュカさん!私あなたのためにこんなに殺しました」
リュカ「ご苦労だったね」
そして色々たくさん死んだ

【サックス・フルート・リルム・サラマンダー・イクサス・レナ・ファリス・ギルガメッシュ・フリオニール・ソロ・ヘンリー・ロック・バッツ・ローグ・サンデ・ウネ・アリーナ 死亡】
【残り50人】
435名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 03:32:31 ID:CiQR41tc
>>434は無効です
436名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 06:25:44 ID:ApyU8/q/
リュカがマーダーになったらなったで新鮮だがな。
そしたら今度はピエールが命をかけて止めそうだ。
437名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 06:26:20 ID:ApyU8/q/
ごめん感想スレと間違えた。
438名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 19:25:05 ID:Gt8xb1Vn
以前いたアリアハンから時と場所変わって浮遊大陸。
風の鳴る大地という言葉が真っ先に浮かぶ。

「やけに静かだと思ったらあいつがいないわけか」
ファリスは遠景を見ながらつぶやいた。
傍らのテリーもそれにうなずく。
あいつというのは勿論ラムザで、旅の扉から出てきたとき既に彼の姿はなかった。

「扉のなかで無理やり喋りだすからこういうことになるんだよ全く。
 移動中はちょっとしたことで時空芯のズレが起こりやすいっていうのに」
「そうなのか……?オレも知らなかった」
テリーは目を丸くしてファリスの顔をのぞきこむ。
「な、なんだよ」
煙たがるファリスにテリーは笑いかけた。
「姉さんも冗談がうまくなったなぁ。それを教えてくれたのは姉さんじゃないか」
テリーはにこやかにファリスの肩をぽんと払う。
もう何か家庭での会話だ。
とても殺伐とした殺し合いの舞台でのやりとりとは思えなかった。
「このままずっとこの調子でいくのか……」
戦闘局面と今現在のギャップがありすぎて、レナたちを見つける前に疲れてしまいそうだ。
ファリスは命のやりとりとは別に重たいものを背負ったような気がしてならない。


テリーはそんなことはお構いなしに明るい声を出す。
「ところで地図を見ると町や城があるみたいだけど、とりあえず一番近いところへ行こうな。
 となるとここだ」
テリーが指差した場所はカナーンの村だ。
439名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 19:25:46 ID:Gt8xb1Vn
「ああ、そこだな」
ファリスは間延びした口調で答える。
地図をほんの一瞬みただけで、大して確認もしなかった。
それほど気が抜ける。
テリーは地図をたたむと前を向いた。
「よし、行こうか」
その声は弾んでいた。
ラムザがいなくなって、二人だけになれたのが嬉しいのかもしれない。
ファリスはそう思うと余計安息できなくなった。

【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:カナーンへ】
 現在位置:浮遊大陸最南端(岩山付近)
440名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/20(月) 19:27:03 ID:Gt8xb1Vn
タイトル入れ忘れ。
「うらおもて浮遊大陸」
とでもしておいてください
441はぐれた者達 1/3:2005/06/22(水) 23:17:42 ID:l3C+HR0X
「それでボクの妹の名前はアルマって言って…って、あれ?」
旅の扉からベラベラと喋りながら、一人の男が現れた。
その男こそ騎士の名門ベオルブ家の末弟、ラムザ=ベオルブである。

ラムザはあたりを見渡す。
周りは岩に囲まれ、すぐ近くに外の景色が見える。
どうやらどこかの洞窟の入り口近くのようだ。
それはいいとして、一緒に旅の扉を潜ったはずのテリーとファリスの姿が見当たらない。
いったいどうしたことか?
ラムザは原因を思い出してみる。

『お前に兄弟はいないのか?』
旅の扉を潜る直前、珍しくテリーのほうから話しかけてきた。
そこは悲しき職業病か、思わず反射的に思い切り喋りまくってしまった。
そのまま喋り続けていると、最初に潜った時とは違う空間の歪みを感じた。
どうやらそれが原因のようだ、旅の扉と言うのはそれほどデリケートなものなのだろう。

しかし喋りすぎが原因とは…
このジョブになってから説得などで一時的に仲間は増えたが、何か違う気がしてきた。
(ジョブ変えようかな…)
なんだかこのままこのジョブを続けていたら、自分が自分じゃなくなってしまいそうだ。
そう思いながら、ラムザはトボトボと洞窟の出口へと向かった。

洞窟を抜け、目の前に広がるのは輝く一面の湖。
湖の中心には小島がポツンと浮かぶのみで、橋のようなものは見えない。
左右を見渡しても、高い山脈が見えるばかりで、とても越えれそうにない。
どうやらここは、他から遮断された場所のようだ。
考えようによっては安全な場所なのかもしれないが。
「はぐれたテリー達が心配だな…。結局アグリアスさんとも合流できてないし…」
この状況がテリーの意図したものだったのか、そうでないのか。
それはテリー本人にしかわからないが、少なくともラムザはテリーを微塵も疑ってはいなかた。
442はぐれた者達 2/3:2005/06/22(水) 23:19:44 ID:l3C+HR0X
「一気には渡れないかも知れないけど、あの小島までなら届くかな…」
そういいラムザは、力を込め大地を蹴り、空高く宙を舞った。
その体は、大きな放物線を描きながら小島の頂上へと着地する。

「ん?」
着地したすぐ近くに、ぐったりと倒れこむ存在に気づいた。
『大丈夫かい?』
ラムザは近づいてゆき、屈みこみ視線を合わせ話しかける。
『…あなたは…?』
『僕はラムザ=ベオルブ。さあ、これをお食べ』
そう言って、ザックからパンを取り出し分け与える。
『ああ…ありがとう、あなたは、私の言葉が解るのね?』
そう言う彼女の姿は、人ではなく犬。
ラムザは話術士のアビリティである『まじゅう語』の効果によって彼女の言葉が理解できた。
『うん、だから安心して。きみの名前は?』
『私はアンジェロ、ありがとうラムザ』
パンを食べ終わり、ふらつきながらアンジェロは立ち上がる。
『どうしてアンジェロは、こんな山の上にいるんだい?』
『…わからないの。お爺さんに助けられて、いろんな所を彷徨って、
 結局気づいたときにはここで力尽きてしまったの…。会いたい…リノアに会いたいわ』
『リノアって言うのは、きみのご主人様かい?』
『ええ、大切な友達よ』
『…よし、それじゃあボクと行こう。ボクもはぐれた仲間を探してるところだからね』
『本当に?』
『ああ、一人でいるより、そのほうがいいだろう?』
『ええ、ありがとうラムザ』
『よそ、まずは向こう岸に渡ろう。僕の背中に乗って』
そういいラムザは背を向け、アンジェロがその背に乗る。

(当分はこのジョブのままかな…)
アンジェロを背負い、対岸の岸を見つめながらラムザは一人ごちた。
443はぐれた者達 3/3:2005/06/22(水) 23:21:46 ID:l3C+HR0X
(なんか頭の上が騒がしいな…。どうしようかな思い切った話しかけてみようかな…)
頭上の二人の知らぬところで、水辺の小島に扮したブオーンは苦悩していた。

【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ
 第一行動方針:仲間を集める(テリー、ファリス、アグリアス、リノア優先)
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:ブオーンの頭の上】

【ブオーン 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
 第一行動方針:話しかけようか考え中 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の泉の真ん中】
444Wrath again 1/7:2005/06/23(木) 01:18:01 ID:RaijJpqj
唸る拳、放たれる斬撃、人を護り続ける盾。
そしてそれらを打ち倒すために起こる拳と、もう一つ……突風。

それら全てがカズスの街を支配していた。

「ッッらああぁぁあぁああぁぁぁあああぁぁぁあぁ!!」

相変わらずフルートは拳をサラマンダーに叩き込もうとする。
だがそれはイクサスの風に邪魔され、成功させることは出来ない。
また同じようにサラマンダーも、フルートに上手く攻撃をすることが出来ない。サックスの盾に塞がれ、思うように動けないのだ。
また、イクサスもラケットの突風で援護をするのだが、ロランの攻撃が自分に向かってくるが故に集中出来ない。
そしてロランも、その風によってイクサスへの攻撃が思うように出来ない。
そういう泥沼の状況だった。
しかしロランは、先程から言いたかったことをフルートに話す事にした。

「さっきはありがとう。僕たちを仲間だと言ってくれて」
「……言ったか?ンな事。覚えてねーよ、あたしは。いいから戦え!」
「そうか……覚えてない、か」

でも、否定はしないんだ。そうくすりと微笑んで思う。
嬉しかった。あの人格の彼女が自分たちを「仲間」だと言ってくれたあの瞬間が嬉しかった。
だからサックスとともに、絶対にフルートを護って戦いを無事に終わらせよう、そう思っていた。

だが。

フルートが、急に膝をついた。
そして唐突に息を切らし、苦しみ始めたのだ。肩で息をし、汗も沢山吹き出ている。

ロランとサックスは、ようやくそれを見て、彼女の力の秘密に気付く事となった。
そう、あの彼女の「限界を超えた力」の裏に。脳が彼女に許可を出した「全力」のデメリットに。
445Wrath again 2/7:2005/06/23(木) 01:19:45 ID:RaijJpqj
そして心配そうに、サックスがフルートへ近づこうとしたその刹那――――

「隙だらけだ!」

イクサスの放った風の塊が、フルートの身を襲った。
そして吹き飛ばされた彼女の体は、宙を舞いそのまま後方にある民家の壁へと叩きつけられた。

「かは……っ!…ぁぅ…ぐ……」

言葉にならない叫びにも似た声を上げると、フルートはそのまま前に倒れた。
ロランはそれを見て、あの光景を思い出した。

そう、あのアリアハンの彼女の痛々しい姿。
今にも倒れそうに青白い顔をしていた、彼女の姿。

「ははっ!ははは!ははははは!!どうだ見たか!正義は勝つんだよ!!」

浮かれ、体で喜びを表すイクサス。
それを見て唇を噛み締めるサックス。そこからは血が滲んでいた。
そしてロランは、今度はサラマンダーとの一進一退の攻防を続けている。暇は無いが、振り返ってしまいたい。

だがサックスとロランの心配を余所に、フルートはすぐに立ち上がった。
しかし足取りは覚束ない。今にも倒れそうだ。攻撃を喰らった分があるとは言え、ここまでの反動なのか。
だが良く考えてみれば彼女は、竜の腕を吹き飛ばし、数十分も疾走し、そして先程は鉄の塊を持ち上げているのだ。
ここまで反動が無いとおかしい。否、これ以上の反動があったとしても何の違和感も無く自然だ。

「くっそ…あの餓鬼……あぐ……ッ!」

そう、そしてやはり彼女は痛みに耐えていた。
壊れそうな体を、未だ怒りに任せて動かそうとする。
446Wrath again 3/7:2005/06/23(木) 01:21:55 ID:RaijJpqj

「フルートさん……!動かないでください!危険すぎます」
「うるせぇ!」

駆け寄るサックスに怒りを込めて叫び、彼女は自分自身に向けて回復呪文を使い出した。
しかしこのゲームの状況下では、たとえベホマといえども彼女の体を完全に回復させるには至らない。
だが彼女は呪文を1回唱えただけで、すぐに中断させて歩き出した。

「そら治った治った!…もう、大丈夫だ……ッ」
「嘘でしょう!?良いから大人しくしてください!!」
「うるせぇ!あたしはあの餓鬼をぶっ飛ばすんだよ!!」

そう言ってフルートは痛む体に鞭を打ち、イクサスの元へと走っていく。
それを見てイクサスは、彼女を煽る様に走り出した。その先にあるのは、鉱山。
イクサスが鉱山に入ったのを見て、フルートは更に急いで追いかける。
しかしサラマンダーはそれが気に入らなかった。ロランから目標を変え、フルートに狙いを定める。

だが、それを一つの盾がその攻撃を止めた。
それはサックスの持つ水鏡の盾だった。

「ロランさん、任せました!僕はフルートさんを追います!!」
「わかった!!」

そうしている内に鉱山へと入っていったフルートを追いかけるため、
サラマンダーから急いで距離を取り、そして自分も鉱山へ走り出すサックス。

それを見てロランは微笑み、サラマンダーに問う。

「任されて、1対1になってしまった。折角だしこのまま僕の相手になってもいいんじゃないか?」

サラマンダーの答えは、意外に早く返ってきた。「無言でロランに剣を構える姿」が、答えの代わりだった。
447Wrath again 4/7:2005/06/23(木) 01:23:48 ID:RaijJpqj


一方サックスが鉱山に入ると………フルートは先程のように倒れていた。
しかもこれまた先程のように壁沿いに。
そして砂埃が全てフルートの倒れている場所に集中している。それを見てサックスは確信した。

そう。あの子どもが、またも彼女を傷つけた。

過去の映像がフラッシュバックする。
家族を殺した魔物。妹を見殺しにした自分。護れなかった自分。

今の映像が脳を支配する。
仲間を襲った敵。フルートに牙を剥いた敵。護れなかった自分。

それが重なり、サックスに怒りが芽生えた瞬間。
その瞬間にイクサスが姿を現した。どうやら息を潜めて待っていたらしい。

「よぉ、人殺し」
「やぁ、人殺し」

彼らの皮肉に満ちた挨拶が重なり合った。
そしてその刹那イクサスがまたも風を起こした。今度の目標は、サックス。

だが今度はサックスはそれを避け、そして急いでフルートに近づいた。
彼女の生死を確認する。意識を失ってはいるみたいだが、息はしている。
そして急いでフルートの体を背負い、彼はすぐに鉱山の奥へと走っていった
それを見て、イクサスはラケットを構えながら彼らを追い始めた。

「大切な人を護るためにナイトになった……そうだろサックス!絶対護るんだ……絶対!」

そう言いながら、彼はイクサスを奥へ奥へと誘い込むために走る。走り続ける。
448Wrath again 5/7:2005/06/23(木) 01:26:15 ID:RaijJpqj

そしてサックスは、奥にある小部屋の一つに身を潜めた。
苦しそうに息をするフルートに「少しだけ…待っていてください」と告げ、イクサスの到着を待つ。

そして、目当ての人物は現れた。目当ての人物――イクサスはサックスを殺すためにラケットを握り、明らかに怒りを抱いている。
だがそれも気にせず、サックスは突然イクサスに肉薄した。それを見てイクサスは焦りを感じる。
そうだ、さっきまで自分の攻撃を容易く受けるか、盾で人を護りながらこそこそ動く事しか出来なかった(様に見えた)彼が、突然大胆な行動に出たのだ。

そしてそのまま、サックスはイクサスの右肩に向けて斬撃を放った。
イクサスは避けられなかった。彼の斬撃を喰らった右肩が激しく損傷する。

「ぐ……痛い…痛いっ!くそぉ!ぐぅぅぅぅうぅぅ!!」

痛みを感じるがままに叫ぶイクサス。それを見てサックスは怒りを込め、叫ぶ。

「これが、僕の仲間を…フルートさんを……そして、ギルダーを傷付けた罰だ!」

そう叫ぶサックスの目は確かに、魔王を倒した光の戦士の……正義に満ちた目だった。
そしてその目でイクサスを睨む。睨み続ける。
そうしていると、またもラケットから風が巻き起こった。
今度こそサックスは吹き飛ばされてしまったが、手負いの人間の攻撃の所為か威力が些か低い。

サックスは立ち上がると、またイクサスへと走る。
多少のフェイントも入れ攪乱する様に近づき……そして見事に、草薙の剣の刃をイクサスの首に突きつけた。

「………ッ!あああああああああああッ!!」

しかしそれにも関わらず……恐怖心に侵されたイクサスは左腕で支給品袋を掴み、それをサックスの肩へとぶつけた。
だが当然そんな攻撃が効果的なはずも無い。叩いた拍子にバラバラと支給品が落ちていくだけだった。
449Wrath again 6/7:2005/06/23(木) 01:30:38 ID:RaijJpqj
「効かない。そんな下らない事、効かない」

サックスはそう言って、落ちた支給品のいくつかに目を通す。
見ると薬の様なものがいくつか落ちている。フルートに飲ませれば……容態はどうなるだろうか。
頭にそんな考えが浮かんだが、それはやめた。不確定要素が多すぎる。

「僕が怪我した時、一生懸命傷を癒そうと頑張ってくれた彼女を傷付けるのは許さない。
 僕の事を信じて一緒に行動してくれたあの大切な仲間を傷付けるのは許さない。
 そして……僕の兄弟の様な、僕の最高の親友の名を人を傷付ける口実に使う君を許さない!!」

サックスの剣を握る力が強くなる。
そして逆に、イクサスのラケットを握る力は皆無に等しかった。
だがイクサスは未だに怒りを持ち続け、サックスに叫ぶ。

「煩い……煩い煩い煩い!俺は!俺は裁くんだ!!お前が何を言おうが……俺は仲間を殺した人殺しを―――――」
「そうか。じゃあ、さよなら」

イクサスの首に突きつけられた刃は一度は退いた。
そして次の瞬間には彼の左胸を一直線に貫き……彼の最期の言葉と、息の根を止めた。

「…痛……っ……サックス……お前……」

そして、フルートが目覚めた。どうやらあの人格のままのようだ。
随分と苦しそうだが……命に別状はなさそうだ。

「すみません……気分が悪くなりそうなので、別の小部屋に移動しましょう。そこで、話します」

薬の様な物以外を拾い集めながらそう言うサックスに、フルートは何も言わなかった。
そしてまた文句を言ったにもかかわらず背中に乗せられ、別の小部屋へと移動していった。

そしてそこには……サックス達とは形こそ違えど、正義を愛していたのかもしれない少年の遺体が残されていた。
450Wrath again 7/7:2005/06/23(木) 01:32:45 ID:RaijJpqj


一方、サラマンダーはイクサスの身を案じていた。
バーバラは目の届く範囲で避難している。大丈夫だろう。だがあの少年は……果たして感情的なあの性格が災いしていないだろうか。

まぁ、まずはこの目の前の男を片付けなければならない。

そしてサラマンダーは、ロランを静かに見据えた。

【サックス
 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
 第一行動方針:別の小部屋で休憩 第二行動方針:なるべく仲間を集める
 最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【フルート(重傷) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
 第一行動方針:同上 第二行動方針:同上 最終行動方針:同上】

【現在地:ミスリル鉱山内部・1F小部屋】

【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート
 第一行動方針:サラマンダーを倒す
 最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【サラマンダー(疲労) 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
 第一行動方針:ロランを殺す 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:避難 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する

【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口】

【イクサス 死亡】
【残り 72名】
451名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/06/23(木) 01:40:24 ID:RaijJpqj
>>449
イクサスの首に突きつけられた刃は一度は退いた。

イクサスの首に突きつけられた刃は一度退き、
に変更してください…細かいけど。
452名前が無い@ただの名無しのようだ