1 :
諸葛亮スラリソ ◆5VrxCs/8kA :
+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
<ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。
+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。
+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
・10-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
・ただし、スペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
・その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。
+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・ …を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス
DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレシア王子)、パウロ(サマルトリア王子)、ムース(ムーンブルク王女)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(男勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(男勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、ビアンカ、はぐりん、ピエール、
マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ
■生存者リスト
FF1 0/4名:(全滅)
FF2 3/6名:フリオニール、マティウス、レオンハルト
FF3 5/8名:サックス、ドーガ、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 2/7名:カイン、エッジ
FF5 4/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード
FF6 7/12名:ゴゴ、リルム、マッシュ、エドガー、ロック、ケフカ、トンベリ
FF7 3/10名:ザックス、セフィロス、ユフィ
FF8 4/6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー
FF9 3/8名:ジタン、ビビ、サラマンダー
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 3/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、
DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 0/3名:(全滅)
DQ3 4/6名:オルテガ、アルス、セージ、フルート
DQ4 5(+1)/9(+1):ソロ、ピサロ、アリーナ、ライアン、ロザリー、(アリーナ2)
DQ5 8/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、デール、タバサ、ピエール、プサン
DQ6 5/11名:テリー、イザ、クリムト、ハッサン、ターニア
DQ7 1/5名:フィン
DQM 3/5名:わたぼう、ルカ、テリー
DQCH 1/4名:スミス
FF 37/78名 DQ 27(+1)/61(+1)名
計 64(+1)/139(+1)名
■現在までの死亡者状況
ゲーム開始前(1人)
「マリア(FF2)」
アリアハン朝〜日没(31人)
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」
「マリベル」
アリアハン夜〜夜明け(20人)
「アレフ」「ゴルベーザ」 「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」
「ラグナ」「エーコ」「マリア(DQ5)」「ギルバート」 「パイン」
「ハイン」「セリス」「クラウド」「レックス」「キーファ」
「パウロ」「アルカート」「ケット・シー」「リディア」「ミネア」
アリアハン朝〜終了(6人)
「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」
「ベアトリクス」
浮遊大陸朝〜 (17人)
「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」
「ギルダー」「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」
「アグリアス」「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」
「シド」「ファリス」
「ウネさん、向こうに誰かいるみたい」
「ほう、こんなところで先客かい?読み違えたねぇ」
地獄耳の巻物が切れた聴覚はもどかしいほどに不便だ。
アリアハンではかなり離れた位置の音だって拾うことができたというのに、
今はちょっと向こうで何か会話しているのも聞き取ることができない。
さっき確認した相手の姿は婆さんに女、それに背負われているオッサン。
はっきりと断定できないことが苛立たしいが、こいつらはおそらく殺人者ではない。
それは、まず第一に足手まといになる怪我人を連れている。甘い奴等ってことだ。
そういう発想を誘う偽装ってこともありえるが、こんな僻地でやることじゃない。
次に怪我人以外の数が二人ってこと。
人間てのは怖いもんで、死体なんかに執着する奴もいる。
だが、そういう変態連中はもともと数はいないし、そうは徒党を組まないものだ。
以上二点よりこいつらは襲撃されて逃げてきたパーティってとこだろう。
もっともこの近辺で襲撃されたってんなら俺にとっても楽しい話じゃないが。
とにかく、連中は先ほどからこちらに近づいて来ずに何か相談している。
よほど察しがいいのか、それともアイテムか?
どうやら見つかってはいないまでも自分の存在は感づかれているようだ。
意を決してアルガスは姿を投げ出した。
「おいお前ら、こっちには戦う気は無い。俺の名はアルガスだ」
大声で呼びかけつつ、相手が視認できる範囲へと飛び出す。
突然の動きにやや面食らったようだが、婆さんと視線を交わして女が声を返してきた。
「こっちも戦う気は無いわ。あたしはアリーナ、こっちがウネさんで、後ろがライアン。
よろしくね、アルガス。
でもあなた、こんなところで何をやってるの」
「こっちは運悪くここに落とされたってだけだ。お前らこそ何の目的でこんな僻地に来たんだ?」
続けて喋ろうとしたアリーナを制して、婆さんが代わりに答える。
「この男の治療と…ちょいとした目的があってね。まさか人がいるとは思わなんだ」
「半分は答えになってないな。その目的を言えってんだよ」
「言ってもどうせ信じもせんと思うがねぇ」
「あ、ウネさん、あたしも詳しく知りたいな。夢の中とか言ってたけど」
「…仕方ないねぇ。あたしゃ本来の仕事は『夢の世界の管理人』でね。
今まですっかり忘れておったのだが人がいるならばそこに夢の世界は存在するはず。
だから一眠りしてちょっと様子を確かめてこようと思っているのさ」
「『夢の世界』!?」
「『夢の世界』、だぁ?」
単純に驚くアリーナ、怪訝そうな表情で固まるアルガス、それぞれの反応を示す。
二人を見回してウネがカラカラと笑い声を上げた。
「アッハッハ、信じられないだろう?
ま、ともかくこれがあたしの目的だよ。わかったかい」
「あー、わかった。そういうことにしといてやる。
それで、そんなことをして一体何の役に立つんだ?是非教えて欲しいもんだね」
怪訝そうな表情のまま、硬直の解けたアルガスが尋ねる。
「まあ役に立たんことはないね。
人の夢にゃ干渉しないのが夢の世界の大原則だが夢であたしを呼ぶなら話は別さ。
その時夢の世界にあたしがいれば、そこであたしと話すことができる。
つまり離れていても連絡ができるって事さ」
「へえーっ、すごーいっ!」
「連絡か。確かに情報は力になるが」
「ま、それで少しでも安全に眠れる場所を求めてここに来たってわけだよ。
これで納得してくれるかい?」
「まあ俄かには信じられないが…とりあえずは納得しておいてやるよ」
「あっ、そうだ!あたしからも伝えておきたいことがあるの。
実は、あたしとおんなじ顔、姿をした子がいて、戦いに乗ってるわ」
「同じ顔?なんだそりゃ、お前の双子の姉妹か?」
「あー、説明すると長くなるんだけど。
あたしのアイテムが分裂の壷ってヤツで、入れたものを増やすアイテムだったの。
それであたしを増やそうとしたのよ。…ほら、自分がもう一人いたら便利じゃない?
でも、できたのは簡単に人の目を抉っちゃうような残酷な偽者の自分だった。
あたしはあの子を止めなきゃいけないんだ」
「はん、余計なことをしてくれたものだな。で?おまえと見分ける方法は?」
「…あたしはこの通り手袋をはずしてるけど偽者は着けたままのはずよ。
あとはこの腕輪ね。手袋をしてて、腕輪を着けていないのが偽者のあたしよ。
それで見分けられるわ」
交渉以前の問題でこいつらは自分らの情報を無償提供してくれるお人よしだ。
だが自分の敵に回るでなし、危険人物の情報提供くらい恩を売っておいても損は無いだろう。
こっちとしても無差別に人を殺して回る連中にはほどほどの所で退場してもらいたい。
そいつらを仕留めたり傷を負わせたりしてくれるだけでも儲け物というもんだ。
「なるほどな。他に危険なやつの情報は無いのか?そうか、ないか。
じゃあ俺からもいくらか危険人物の情報を教えてやろう。
まずは銀髪野郎、刀を使うセフィロスってのと銃と魔法を使うクジャって奴がいる。
まあ銀髪を見たらなるべく逃げた方がいいな。はっきり言って並の強さじゃない。
それから緑髪のデールって奴だ。見た目は貴族っぽいがすっかり狂っちまってやがる。
いろんな意味であぶねぇ奴だな。
あとは、赤魔道士…名前は、ああそうだ、ギルダーか」
「ギルダーじゃと!?」
「知り合いか、婆さん」
「む、まあ…な。それよりも…」
「ああ、確かにそいつは人を殺してるぜ。相手はガキとおっさんだったか。
見た感じ弱った振りをして油断させての騙し討ちという感じだったな」
「信じられんな…」
「ふん、俺は嘘は言っていないぞ。
あんたが知らないだけで本当はそういう奴だったんじゃないか?
普段善人ぶっていてもいざ非常事態になりゃ本性を曝け出す、
それが現実の人間ってやつだ」
「むう……しかしまさか」
なんだか空気の悪くなった会話をいったんそこで打ち切り、
ライアンを眠らせている岩陰へと移動するウネとアリーナ。
小声でアリーナに耳打ちする。
「さてアリーナ、わしはちょっと一眠りするが…その前にじゃ。
あのアルガスという奴、確かに戦う気はなさそうだが微妙に信用が置けん。
ちらりと見たがあやつは一人で複数のザックを持っておる。
死体漁りなどで拾ったのかもしれんが、油断せん方がいい」
「あ、油断させて後ろから〜って事?うん、怪しい動きには気をつけておくわ」
「ああ。じゃあちょっと行ってくるよ。………ZZZZ」
横になって数秒も経たぬうちにあっという間に眠りの世界へ。今はもう起きそうにも無い。
同行している二人はこのとおりだし、なんだか手持ち無沙汰だ。
あんまり好感の持てる相手じゃないけれどアルガスと話でもしてようかな。
同時に監視にもなるし、うん、そうしよっか?
気になったのは分裂の壷の話。
人間を入れるなんてバカなことを考える奴はそういないだろうが、
全体で考えればその壷自体が魔女の仕掛けた罠に見える。
だいたい、どんなものでも二つに増やすなんてうまい話があるだろうか?
魔力での創造なんてのは並大抵の魔法ではないはずだ。
不良品を渡しておいて使うと酷いことになるって寸法の罠だったんじゃないのか。
だとすると、他にも用途の良くわからないアイテムには魔女の罠が含まれている可能性がありえる、
ということになる。
俺の持ち物の中じゃ説明書の無いこの灰と指輪だ。特にこの指輪は危なそうだ。
呪われてゲームオーバーじゃお話にもならない。
正午の空の真ん中にはむかつくくらいに明るく太陽が輝いている。
そろそろ行動すべきか、それともここでやり過ごすべきか。
寝転がりながらアルガスは思考に時間を費やしていた。
【アルガス
所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、インパスの指輪
マシンガン用予備弾倉×5、猫耳&しっぽアクセ、タークスのスーツ(女性用)
デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3、変化の杖
第一行動方針:自分のこれからの行動について考える
最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る
【ウネ(HP 1/2程度、MP大幅消費、睡眠) 所持品:癒しの杖(破損)
第一行動方針:夢の世界へ
基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する
【ライアン(外傷は回復、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
行動方針:不明】
【アリーナ 所持品:プロテクトリング
第一行動方針:アルガスを監視しつつウネとライアンを守る
第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【現在位置:ジェノラ山山頂】
16 :
かえる 1/2:2005/08/08(月) 03:45:24 ID:pjke89Ex
ピエールは町から必死に離れようとしていた。
魔法の玉による爆発で、あの子供らは町には近寄らなかった。
しかし、あれだけ大きい爆発にも関わらず、やって来る者があれほど多いとは想定外だった。
大きな戦いでも、やり過ごそうと考える参加者は少ないようだ。
あの時、レーダーには少なくとも5つは反応があったようだった。
このレーダーは強い魔力がまき散らされると、狂ってしまうらしい。
首輪の魔力を感知しているからだろうか。
とにかく、魔法の玉の爆発に影響を受け、しばらく変になったのは確かだった。
辺りを見回す。人の姿は見えない。追手もいない。
撒けたようだが、いつ来るかは分からない、少なくとも状態が回復するまでは戦闘は避けたい。
開けた土地では、視角の方が感知範囲が広いのだが、とりあえず対人レーダーを見る。反応が一つ。
急いで身構えるが、そこにあったのはレックスの死体。その首輪が反応しているのだ。
鋼鉄の剣も刺さったままだ。スネークソードは攻撃力はあるが、実戦では扱いづらい。
ピエールは、レックスに刺さった鋼鉄の剣を回収した。
だが、魔力、体力、生命力はほとんど無い。これから戦うとして、勝てるだろうか。正直、厳しいところだ。
そこへ、ふと妙案が思いついた。
人が死んでも、短時間であれば魔力は残る。使い手の魔力が高ければ、それだけ長い間、魔力は残る。
奇跡の剣やプリンセスローブといった魔法のアイテムはその典型的な例だ。何百年経っても、その魔力は衰えない。
レックスは強力な呪文を使えるが、まだ魔法に長けているとまでは言えないため、さほど魔力が残ってはいないだろう。
死んだ時間帯によっては、すでに全く失われてしまった可能性もある。だが、自分としては少しでも魔力を補充できればいいのだ。
「レックス様、申し訳ありません…。マホトラ!」
17 :
かえる 2/2:2005/08/08(月) 03:50:23 ID:pjke89Ex
死者への冒涜、主君への不敬と考える者もいよう。
だが、何人も殺しておきながら、犬死にすることの方が殺した相手にとってのよほどの冒涜。
今さら後戻りはできないのだ。ならばすべてを最大限に利用する。
レックスの遺体にわずかに残っている魔力を自分の魔力に還元し、生命力を回復させる。
数分後、残っていたすべての魔力を吸い終わり、ピエールは休息していた。
傷は魔法である程度塞がっているものの、体力までは回復できない。
朝からずっと動きっぱなしだった。放送のころまでは休息をとりたいものだ。
休んでいると、どうしてもレックスの死体が目に付く。
レックスやタバサとは、生まれたときからの付き合いだ。成長を直に見てきた。
付き合っていた期間は、実の親であるリュカやビアンカよりも断然長い。
封印したはずの感情だが、レックスを見ると、どうしても情が現れてしまう。
…埋めてしまおう。埋めてしまう方がいい。もう見えなくするのがいい。
レックスの名前は2回目の放送で呼ばれた。ここにあるということは、誰かが墓から掘り出して、旅の扉に投げ入れたということだ。
何の意味があるのかは分からないが、そういう参加者がいる。
この先、何度も死体が投げ込まれ、そのたびに会うのではこれはたまらない。
墓標はいらない。ただ土に還すだけだ。そうすれば、もう地上には現れまい。
…そして、これで二度と会うこともないのだろう。死んでも、レックスのいる天国には自分は行けまい。
自分はそういう選択をしたのだ。後悔はしていない。
余計なことを考えている暇も惜しい。夜に向けて、休むことに専念しよう。
「……リュカ様」 「レックス様……」
【ピエール(HP2/5程度) (MP1/5程度) (感情封印)(弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、そろそろ回復)
所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード、鋼鉄の剣
毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]
第一行動方針:休息 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:カナーン北の草地】
推測時刻:正午前後
南方より閃光、次いで爆音。
南へと続く小さな谷の向こうにあるのは確かカズスという村だったか。
今の大爆発は戦闘状態とかそういう次元ではない。
小隊規模の部隊でさえ一瞬で消し飛ばすような破壊、そういう爆発。
情報を整理。
カズスで戦闘の結果、自爆か暴発かともかく大爆発が発生。
翻って自分の位置はその村の北の入り口に当たる峡谷部を抑えている。
つまり、村から逃れる人間がここを通過する可能性は高い。
もう一つのルートが砂漠越えになる以上その確率は100%近いはず。
よって、しばらくの間この峡谷に身を潜めて様子を窺うこととする。
この状況で村へ向かうなど賢い選択ではないだろう。
推測時刻:爆発から程なく‐数分といったところか
村の方より忍者のような格好の男と片腕の無い女。
さすがに距離があるためか、向こうに気づかれることは無い。
しかし、この位置と時間の感じから爆発時に村の中にはいなかったと推測される。
どうであれ自分には関係ないことだ。
二人組みは北西、森の方へと向かった。
推測時刻:爆発よりやや間をおいて‐一時間くらいは経ったろう
再び村の方から、今度は6人組。
遠目でははっきりと判断はできないが、先頭を行くモンク風の金髪の男、
同じく金髪の子供、踊り子とも何か違う奇妙ないでたちの女、
どこかの酒場の主人のような男、白魔道士、賊のようないでたちの顔を隠した男。
変わったパーティではあるが、村での生き残りであろうか。
だが、不自然だ。だいたい怪我などを負っている様子がほとんど見られない。
というかあの規模の爆発を伴う戦闘で6人もの人間が無傷で生き残っていることがおかしい。
何があったというのだ?
と、思考するうちに6人は北へと向かい、この場を離れた。
推測時刻:6人組通過の直後
北西方向に飛行物体。モンスターか?
先ほど6人組が消えた位置あたりへと舞い降りたようだ。
推測時刻:飛行物体目撃より少しして‐10分程だろう
先ほどの飛行物体の正体は空を飛ぶドラゴン、そしてそれに乗った竜騎士。
念のためさらに岩陰に低く身を伏せる。
空中からなど予想もしていなかった。どうやら見つからなかったようだが。
ドラゴンと竜騎士はそのまま南、村の方角へと向かった。
6人組と接触して自分で村の様子を確認しに行くのであろう。
推測時刻:日の傾きからして午後2時あたりか
北西方向より二人組みの男。
一人はまた違ったモンク風の筋骨隆々の男、もう一人は大剣を手にした剣士だろうか。
先ほど飛行チームが向かったカズス方面へとそのまま向かっていった。
村での生存者は難を逃れた二人組みとあの6人組だけであり、
村の周辺で爆発に反応し、村に向かうという判断を下したのはあの飛行チームだけらしい。
もちろん自分のように気づいたが向かわなかった者もいるだろう。
最後の二人は時間が経ちすぎて判断しかねる。
思うに要所での待ち伏せという作戦は効率が良いが、
狙う相手が来てくれなければ無意味だ。
爆発を餌にラムザがかかってくれれば良かったのだがどうもそうはいかないらしい。
この周辺にはいないのかもしれない。
周囲に人の気配の無いことを確認し、ウィーグラフは立ち上がる。
そして、当面の予定としてウル方面へと向かうことを決め、歩き出した。
所要時間は警戒しつつ、索敵しつつ3時間といったところ。
夕刻には村付近へたどり着くだろう。
【ウィーグラフ (MP消費)
所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×10、ブロードソード、レーザーウエポン、
首輪×2、研究メモ、フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾
第一行動方針:ラムザを探す
第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない
基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【現在地 カズス北の峡谷→ウル方面へ】
サスーン城の場内に足を踏み入れた途端、アルスは足を止めた。
「レオンハルト、気配を消せ」
「既にやっている。……誰かいるな」
そう、城の中には彼らのほかに先客がいるようであった。
アルスの感じた気配は複数。
「どうする? 接触するか?」
レオンハルトの言葉にアルスはしばし考え込み、首を横に振った。
「いや、相手が何者かわからない以上、今は不用意に接触するべきじゃない。
もしも好戦的な相手だった場合、怪我をしている君を庇いながら戦うのは
少々厳しい物がある。相手は複数のようだから尚更だ」
アルスはシドを失ったことから、このようなことには慎重になっていた。
しかしその言葉はレオンハルトの自尊心を著しく傷つけたようだ。
「言ってくれるではないか、小僧。
俺は貴様に気遣われるほど柔な人生は送ってきてはいないぞ」
「冷静になれ、レオンハルト。僕たちには敗北は許されない。
確実に相手を倒さなければこれからの犠牲者を防ぐことにはならないんだ。
もう、逃げるのも逃げられるのも僕は嫌だ。
その為には、今の君は足手纏いでしかないんだ」
レオンハルトは歯を強く噛みながらアルスを睨む。
「だが僕は君の強さは信頼している。君が万全となった時が僕たちの動くときだ」
アルスもその射抜くような視線から目を逸らさずにきっぱりと言い放つ。
しばし睨みあい……レオンハルトはフッと息をついた。
「フン、忌々しいが貴様が正論だな。
それでどうするつもりだ。この城を出て他の拠点に向かうか?」
「嫌、それは効率的じゃない。幸いにも僕たちの存在はまだ相手に気取られていないようだ。
彼らは東の塔に陣取っているようだから僕らは西棟に潜伏しよう。地下でもあれば最適だ。
そこで傷と疲れを癒し、その後に先客たちと接触してみようか」
「わかった」
そして二人は歩き出す。
アルスは一つだけ間違いを犯していた。
彼は自分達が気配を消した後も相手の気配が動かないので気取られていないと判断したが
実はたった一人にだけはその存在に気付かれてしまっていたのだ。
その人物とは、マティウス。
かつてのパラメキア皇帝であり、レオンハルトとは浅からぬ因縁を持つ人物である。
彼は戦士として他の追随を許さぬ力量を誇っており、その為の感覚も常人より遥かに鋭敏であった。
デールの急襲が起こった後だったため、更なる襲撃を警戒していたせいもある。
城の空気に僅かに伝わる流れ。石畳を打つ足音の僅かな振動。
押さえ込まれていても僅かに漏れ出る生命の波動。そんなものをマティウス感じ取っていた。
マティウスが感じた気配は城に入ると明らかに進路を変え、西棟に移動している。
こちらの存在に気付いた上で接触を避けたようであった。
(ならばすぐさま警戒する必要もない、か?)
相手がこちらとの接触を避けたということは、非好戦的な輩か負傷しているかであろう。
アグリアスを失った自分達や、更に立て続けに悲劇に見舞われているタバサたちのことを考えると
自分から接触を試みてみる気にはなれない。藪から蛇を突付きだす恐れがあるからだ。
(相手が動きだすまで皆にこのことは伏せておくか。いらぬ心労をかけてしまうからな。
放送後になっても動かないようであれば接触を試みてもいいかも知れん。
その頃には我々の状況も落ち着いているであろう)
そう考えていたマティウスだが、不意にその二人の気配が消えてしまい戸惑う。
「ぬ?」
(こちらから遠ざかっていたようだがまさか、城から出たのか?
随分と行動が早いがそれならば気にすることもあるまい)
「どうした、マティウス?」
「いや、何でもない。気のせいだったようだ」
ゴゴの問いに気もなく答える。
マティウスは消えた気配に興味をなくすと、今後のことを考え始めた。
リュカとエドガーががサスーン城を訪れるのはもう間もなくである。
アルスたちは西棟を探索し、二階で隠し通路を見つけるとこれ幸いと地下へと向かった。
隠し通路が見つかったのは偶然の賜物である。通常では一瞥して発見されることはないであろう。
そして二人が地下に向かい、たどり着いた先には泉の湧き出ている石造りの部屋があった。
マティウスが二人の気配を感じ取れなくなったのは単純に二人が地下に入ったため
距離が離れた上に、気配を伝える空気や振動が伝わらなくなったためであった。
「理想的だ、ここに陣取ろう。
レオンハルト、肩を出してくれ。治療を始める」
レオンハルトはアルスの言葉に自嘲すると、おとなしく上着を肌蹴た。
「どうした?」
「いや、弟のような年齢の小僧に主導権を握られているかと思うと自分が可笑しくてな」
「気に障ったか?」
「いいや……不思議と嫌な気分になるようなことはない。
貴様が本音を隠さずに物を言う性格だったせいかもな」
フリオニールのことが頭に思い浮かぶ。
(俺は……良い兄ではなかった。良き友にもなれなかった。
ならばせめて命に代えてもお前のすることを止めなくては、な)
『だから、本当に簡単な話だ。まず、他の参加者を全て殺す』
『そして俺が最後の一人になった時に、あの魔女にマリアを返してもらう。単純明快だ』
(フリオニール、お前を必ずその闇の思考から解放してやる。
かつての俺のようにはさせん。必ず、お前を救ってやる)
それはアルスの意志とは反する想いだろう。
アルスとの契約はこの殺人ゲームに乗った者を殺してでも止めること。
しかしフリオニールに関してはレオンハルトは殺すつもりはなかった。
(結局俺は、この男をも裏切ることとなるか。
一度魔道に身を堕とした者は、いつまでも魔道からは逃れられぬということか。
ククク、いかにも俺に相応しい人生ではないか)
「良し、傷は塞がった。後は休息を取ろう」
アルスの声にレオンハルトは思考の淵から意識を現実に戻した。
「レオンハルト、君は睡眠を取ってくれ。僕が見張りとなろう。
放送前には起こす。そして放送を聴いて状況を確認した後に行動に移ろう」
「何? だが今お前は魔力を消耗したばかりだ。
お前が先に休息を取るべきだろう」
「いや、それほど消耗はしていない。君の肩はすでに魔術で大方回復していたからな。
それに僕の方も起きている、というだけで休息は取る。心配するな」
それにアリアハンではろくに行動しなかったからな、とアルスは笑う。
一方、レオンハルトのほうは動き詰めだ。確かに疲労もかなり溜まっていた。
「では、その言葉に甘えるとしようか」
フリオニールは強い。あの強力な剣とも相まって、疲労状態を押して勝てる相手ではないだろう。
説得をするにしても、まず動きを止めねば話にもなるまい。
アルスのいうとおり、万全の体勢となる必要がある。
レオンハルトは壁を背にして腰を下ろす。
そしてふと見るとアルスはザックから何冊かの本を取り出していた。
気になったので尋ねてみることにする。
「アルス、それはなんだ?」
「ああ、これは暇を潰そうと思ってね。これから読もうとしていたんだ。
先ほど話したシドの……形見さ」
それを聞いてレオンハルトに複雑な思いが去来する。
フリオニールが殺したというアルスと行動を共にしていた男。
心に何かがずっしりと圧し掛かるのを感じ、レオンハルトはそれ以上聞くのを止めた。
その時、ふと本の表紙が目に入る。
【女僧侶の妖しい肉体治療〜真夜中は別の顔〜】
そんな文字が扇情的な絵と共に並んでいる。
亡き友の形見という物に抱いていた幻想を完膚なきまでに打ち砕かれた気がして
レオンハルトは目を閉じた。……全てを忘れることにする。
『うふふ、これはどうかしらサックス? 気持ち良い?』
『ああ、駄目です……こんなこと、許されることでは……』
『まだそんなことを言っているのね、じゃあこれでどう?』
「うーん、相手役のサックスというキャラの個性が弱いなぁ。
これでもう少し積極的か、逆に気弱だったらヒロインに喰われる事もないだろうに
どっちつかずで損をしている」
小声でアルスが官能小説に駄目出ししている。
……レオンハルトは聞こえない振りをした。
「それにしてもこの二重人格という設定にそこはかとなく既視感を感じるな。
アリアハンにあった本だし、もしかして彼女をモチーフに……」
……レオンハルトは溜息を吐き、ゆっくりと身体を起こした。
拳に息を吐きかける。
(とりあえず黙らせるか)
【レオンハルト(MP消費)
所持品:消え去り草 ロングソード
第一行動方針:サスーン城で潜伏
第ニ行動方針:フリオニールを止める
最終行動方針:ゲームの消滅】
【アルス(MP3/5程度)
所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
第一行動方針:サスーン城で潜伏し、放送後にフリオニールを追う
第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【現在位置:サスーン城 地下の泉】
【マティウス(MP1/2程度)
所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)
基本行動方針:アルティミシアを止める
最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
所持品:ミラクルシューズ、ソードブレーカー、手榴弾、ミスリルボウ
第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:サスーン城 東塔】
27 :
毒1/3:2005/08/14(日) 01:32:08 ID:4h1OGJbX
「ここどこですか?」
フルートは薄暗いミスリル鉱山にいた。
どうやら今までの出来事をすっかり忘れているようだ・・・・どこまでも末恐ろしい。
そんなフルートも怪我や疲労までは忘れることはできなかったようだ。
過度の疲労からくる眠気に、フルートはそのまま身を任せようと思ったが
サックスの倒れている姿が目に入った。
それも、ひどくやばそうだった。
「どうしたんですか?」
「ハァ・・・・・ハァ・・・・もど・・・ったの・・・・・かぁ・・・・」
フルートは一瞬顔をかしげる。
「戻る??・・・アッ!!そんな事言ってる場合じゃない。今すぐ治療しますね!!」
「すまない・・・」
フルートは彼に近寄り、急いでホイミとキアリーをかけた。
(あれ?)
フルートは違和感を感じた。
それは、回復力の違いである。
いくらなんでも魔女の規制でも、ここまで効果が出ないのは始めてである。
しかし、それは当然である。
飛竜草の毒の解毒は望めない。
人間の数倍もあるドラゴン、飛竜、その種族を全滅にまでいたらしめた猛毒である。
飛竜でさえ死に至る猛毒、まして人間が助かるはずもない。
フルートのキアリーは解毒は望めなかったが一命は取り留めた。
それから、応急処置のかいもあって話せるまでに回復した。
サックスは今までの一連の流れとここに至った経緯を話した。
無論、暴走状態のフルートは綺麗に補正までして話した。
28 :
毒2/3:2005/08/14(日) 01:37:25 ID:4h1OGJbX
「どうやら、汗は引いたようだ。
戦えるとは行かないが足手まといにはならないぐらいにはついていけそうだ。」
勿論、嘘である。彼の体内は確実に毒に蝕まれている。
「本当にしっかりしてくださいよ。
サックスさんみたいな戦士に守ってくれないと私たち僧侶はだめなんですから・・
私はあくまでサポート役です。縁の下の力持ちって奴ですよ。」
「ハハ・・・・・そうだな(縁の下にいたら確実に支えるよりもぶちやぶる気がする)」
何気ない会話をしながら本題に入る。
「とりあえずこの洞窟から抜け出ぁす。。。。ゴホ!ゴホ!グファ・・・・・・・・・」
彼は遂に吐血した。
「ハハ・・・・・・ハ・・・・!!大丈夫だ。心配するな・・・・」
フルートの違和感は疑問へと変わり、
それが核心になるまで、時間はあまりかからなかった。
気を取り直して、彼は言い直す。
「とりあえずこの洞窟から抜け出す方法を考えなきゃ」
「それはわかるんですけど、サックスさんも私も休息が必要ですし。。。。。。」
フルートは言い難そうに口ごもる。
「どうしたんだ?」
サックスが聞き返した時、フルートにとっては限界だった。
フルートは必死に涙を抑えながら言う。
「サックスさんの体のぉ毒はぁ完全にはぁ中和できてないんです.....。
ただ。。。ただぁ・・・・一時的に治まっているっていうかぁ・・・
今は・・・・・・・大丈夫っていぅかぁ・・」
フルートは最後まで言わずに泣き出してしまった。
サックスも言いたいことはわかっている。
でも、
今は脅えている時ではない。
自分の死を気にしている余裕なんてない。
このまま二人とも死ぬわけにはいかない。
死ぬのは俺一人でいい、フルートを助けたい。
29 :
毒3/3:2005/08/14(日) 01:40:56 ID:4h1OGJbX
でも、
今は脅えている時ではない。
自分の死を気にしている余裕なんてない。
このまま二人とも死ぬわけにはいかない。
死ぬのは俺一人でいい、フルートを助けたい。
「自分の体の事は自分がよくわかっている。(もって明日の早朝くらいか?)
それに、あの赤ヒゲが解毒剤を持っているかもしれない。(可能性は低いが・・・)
さっきも話したが、ゼル達とは今は決別状態だ。
誰も助けに来ない。(だから俺が助けるしかない)」
フルートはただ返事だけしている。
「この世界がなくなる前に出ればいい・・・・
なぁ〜に、たかが一日でぽっくりいきはしないさ!」
その言葉とともにまたフルートは泣き始める。
(冗談だったのに・・・・・・・・・)
それから、ずっと意識を失うまでフルートは看病してくれていた。
30 :
毒4/4:2005/08/14(日) 01:41:49 ID:4h1OGJbX
気がついたら眠ってしまったらしい。
どれくらい眠ったのだろう?
外の光が一切入らないこの洞窟に時間なんてものは関係ないようだ。
最初に目に飛び込んできたのは丸い穴だった。
鉱山の小部屋に閉じ込められていたはず。
その原因は小部屋の入り口が落石による岩でふさがっていた。
が、今は岩でふさがって壁となっていたはずの場所がぽっかりと穴があいていた。
それはとうてい人が開けたとは思えないほど馬鹿でかかった。
まぁ心当たりはあるが・・・・・・・・・
その心当たりは今はこの部屋にはいないようだ・・・・・・・
「いったいどこへ?」
俺の解毒のために赤ひげを追ってなきゃいいが・・・・・・・
【サックス (HP1/2、重度の毒状態(今は普通) )
所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
第一行動方針:フルートを探す 第二行動方針:解毒
最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【現在地:ミスリル鉱山内部・1F小部屋】
【フルート(HP1/2) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
第一行動方針:??? 第二行動方針:仲間を集める。 最終行動方針:ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
スミスと共にカインがカズスの様子を見に行ってからしばらくが経った。
エッジは休息を取りながらも考える。果たしてこのままでもいいのかと。
「ユフィはどう思う?」
「うーん、やっぱりこのまま待ち合わせ時間までじっとしてるってのは暇だねぇ。
忍者といったらやっぱり諜報活動! あたしはカインを追ってカズスに行きたいね」
「だよな、でも危険も増えるぜ? あいつらは空飛べるから逃げやすいけどよ」
そんなエッジの懸念にもユフィは拳を振るって力説する。
「そんなん承知だよ。それに逃げることなら忍者だって専売特許じゃん。
敵に会うリスクもあるけど知り合いに会える可能性もあるし。
って、もう二人しかいないけどさ……シドとティファ。会えるなら会いたいよ」
寂しそうに俯くユフィを見てエッジもまた複雑な思いがよぎる。
(そうだよな、俺はカインと合流できたけどコイツにはまだ仲間がいるんだよな)
「よし」
決断してエッジは立ち上がる。
「行くか。カズスの周辺を索敵すんのは無意味なことじゃねえしな。
オメーは片腕ないんだから危なくなったら無理せずに逃げろよ。
俺がサポートしてやっから」
それを聞いてユフィも喜色満面で立ち上がる。
「うん! おっけー!!
アはは、エッジいい奴だねー」
「バカ、おめーのためじゃねーよ。行くぞ!」
そして二人は駆け出していく。その先に何が待つのかを知らず……。
サラマンダーはカズスを離れると、身を隠し、気配を殺しながら北上していた。
既に心は決まっている。参加者を見つけ次第殺す。
なるべく1対1の状況が理想だが、相手が複数でも構わない。
自らが感じている飢えを満たしてくれるのならば。
強者と戦う。自らを湧かせてくれるものと戦う。
待ち伏せなどはもう止めだ。自らが動き、獲物を探す。
その思いだけを胸に彼は走る。
そうしてカズス北の峡谷から最も近くの森と平野の境で一人の参加者を発見した。
広刃の大剣を背負い、服装から騎士だと想像できる。
サラマンダーはニヤリと笑みを浮かべると、飛竜草のカプセルボールを取り出した。
ただ投げるだけではない。彼の編み出したマカロフ投法にて騎士に向かって投げつける。
風を唸らせ、螺旋を描いてその騎士――ウィーグラフにボールが迫る。
もしスピードガンで計測していればその速度は時速100マイルを超えていたに違いない。
命中を確信したサラマンダーはその場を飛び出し、追い討ちをかけようとウィーグラフへと駆け出す。
するとボールが当たる寸前ウィーグラフは振り向き、飛来するボールを剣の腹で受け止めた!
「何!?」
流石にサラマンダーは驚いて、急ブレーキをかける。
剣の腹で弾かれたボールは破裂し毒粉を撒き散らすが、ウィーグラフは剣を盾にして
毒粉の飛散範囲から高速で離脱する。そして剣を手放し、拳を振り上げた。
「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風、地裂斬! 」
大地を伝う衝撃波が毒粉を全て吹き飛ばし、毒の効果がなくなるほどに空気中に拡散させた。
ウィーグラフは再び剣を取り、唖然とこちらを見つめているサラマンダーへと剣を向けた。
「何者だ? 我が仇敵以外に好んで剣を向けることはせんが、
邪魔をするというなら遠慮なく切り捨てさせてもらう」
それを聞いたサラマンダーは低く笑い出した。
「くっくっく、やるじゃねえか。流石に今のは俺も驚いたぜ。
こいつは存分に楽しめそうだ。さぁ、殺し合いをしようじゃねえか」
姿勢を低くして、戦闘態勢をとる。
赤い髪が獅子のように広がり、揺れる。
それを見てウィーグラフは思い出した。
「そうか、貴様。あのアグリアスと交戦していた者だな」
一瞬意味を図りかねたサラマンダーはその言葉について考える。
自分は目の前の騎士を知らない。しかしどうやら向こうは自分を知っているようだ。
アグリアスと交戦していた……アグリアス。
「久しぶりだな、アグリアス・オークスよ」
「貴様は……ッ!」
「私の目的はラムザ一人と言いたいが……
奴に組した者を見逃すわけにもいかぬし、ここで朽ちる気もない。
死んでいった仲間たちのためにも、我が妹ミルウーダのためにも、な」
「ウィーグラフッ!」
記憶が甦る。このゲームとやらに巻き込まれて一番最初に交戦した女騎士。
あの時は突然、矢で奇襲され暗闇状態にされたためその奇襲者の姿を見ていないが……。
「そうか、貴様がウィーグラフか。戦う理由が一つ増えたな。
あの時の借り、返させてもらおうか……」
サラマンダーの全身から殺意が溢れ出す。
それを平然と受け止めてウィーグラフもまた殺意を解放した。
「良かろう、このウィーグラフの剣。
とくとその目に焼き付けて死んでいけ」
そして二人は同時に地を蹴った。
フリオニールはアルスのギガデインによって大ダメージを受け、カズスへと逃走していた。
どういったつもりか追撃はない。
そのことに安堵しながらも彼は一刻も早く落ち着ける場所で潜伏しようと走っていた。
回復魔法を自身にかけながら走っていたので傷の方は幾分か回復している。
魔力を大分消費してしまったが、いつ敵と遭遇するかわからないこの状況では
温存などと言っている余裕はなかった。
カズスへと近づき、森を抜けようとしたところで殺意の衝突と感じて彼は立ち止まる。
(チ、こんな時に……)
気配を殺し、木々の隙間から殺意の根源を覗き見る。
森を抜けたすぐの場所で二人の男が交戦していた。
一人は騎士風の金髪の男。一人は格闘を主軸とした燃えるような赤髪の男。
互いに相当の実力を持っているようだ。
今、外に出れば確実に自分の存在は気付かれるだろう。
今の自分の状態で彼らのうち一人にでも勝てるとは正直思わなかった。
二人は様々な技を互いに繰り出している。
その結果、どうやら優勢なのは騎士のようだった。
剣と拳というリーチの差もさることながら、実力においても騎士が一枚上手のようだ。
(このままでは然程痛手も負わずに騎士のほうが勝つな。
あの騎士……俺が万全の状態でも互角に持っていけるかどうか、どちらにしてもかなりの実力者だ)
フリオニールは考える。
赤髪がまだ五体満足な今のうちに加勢して騎士を倒すか?
それとも赤髪が倒されるのを待って騎士をやり過ごすか?
前者は却下。
加勢しても今の自分の状態で倒せるとは限らないし、
例え倒せたとしてもその後、赤髪がこちらに牙を向けば劣勢に陥るかも知れない。
ならば後者か。
フリオニールが結論を出そうとしたその時、彼はこちらに迫る二つの気配を感じた。
気配を、音を殺しながらフリオニールは木を登り、枝葉の中に身を潜める。
そこに現れたのはエッジとユフィ、二人の忍者だった。
『おいユフィ止まれ!』
小声でエッジはユフィへと呼びかける。
ユフィも前方から感じられる戦闘の音に気付いたようだ。
言われるまでもなく、気配を殺す。
『どうしよう、エッジ〜。戦闘の現場に直撃しちゃったよ』
『当然、止める。そんでもってゲームに乗ってる奴は倒すし、
乗ってない奴は仲間にできるかも知れねえからな』
『でも……』
チラリと交戦している二人をみやる。
『メチャクチャ強いよ、あの二人。あたしらで何とかできんの?』
『う……』
ユフィの指摘にエッジは言葉に詰まった。
相手を倒すというだけなら不意を討てば何とかなるかもしれない。
気配を殺すことにかけては自信があったし、飛び道具も忍術もある。
しかし戦闘を止めるということなら、まず正面に出て説得する必要があるだろう。
そしてもし聞き入れられなかった場合、正面からあの二人を相手取らなければならなくなる可能性もある。
しかもユフィは片腕だ。はっきりいって逃げるのさえ困難な状況に陥る危険性がある。
『そうだ!』
エッジは名案を思いつき、ザックからあるアイテムを取り出す。
そのアイテムとは……三脚付大型マシンガン。
『うわーお、とんでもない武器持ってるねぇ』
『あん? これ知ってんのか?』
『うん、あたしらの世界じゃ割とメジャーな武器だし。
誰でも持ってるって訳じゃないけどね』
『そうか、とにかくここからコイツを使ってあいつらを牽制する。
そんであいつらの正面に出て説得するんだ。
その役は俺がやるからオメーはここでコイツを頼むぜ』
エッジは相手の正面に出る危険な役目を買って出たつもりだったが、それはすぐに頓挫した。
ユフィは手を上げる。右腕は肩から存在していない。
『あはは、気持ちは嬉しいけど片手じゃコレ扱うのは無理だって』
それを見てエッジは頭を抱えた。
『あ〜、いきなり計画破綻かよ……どうすりゃいいんだ』
『心配ないよ、あたしがあいつらの前に出るから』
それを聞いてエッジはガバッと顔を上げる。
『駄目だ! そんな危険な真似はさせられねえ!』
エッジは却下するが、ユフィの目は決意に溢れていた。
『エッジ、そろそろあたしの力も信用してよ。
そりゃドジっていきなり片腕失くしちゃった間抜けな忍者だけどさ、あたしも結構やるんだよ?
大丈夫、エッジがいてくれるしマリアさんみたいなことにはならないよ』
ユフィはエッジの核心を突き、黙らせる。
そう、エッジはマリアのことから仲間を危険な状況に置くことに強い忌避感を感じるようになっていた。
仲間を、リディアを護ることができなかったこともある。
本当は今回の探索にユフィを連れてきたくはなかった。
元の場所に潜伏させておきたかったが、マリアのことが思い出され
どうしても一人にさせておくことが出来なかったのだ。
『大丈夫』
ユフィは繰り返す。
『あたしはあのクラウドのスカウトから7回も逃げおおせた女だよ?
もしもの時はあいつらからくらい楽勝で逃げ出して見せるって。だーいじょうぶ!
それにたまには信用してくれないとあたしもエッジを信用できなくなっちゃうよ』
その言葉が決め手となった。
エッジは決意し、マシンガンを手に取る。
『俺が全力であいつらを牽制する。雲行きが怪しくなったらすぐに離脱しろよ。
信用、するぜ』
『ま〜かせて!』
そうしてユフィは戦闘の真正面へと飛び出していった。
サラマンダーは劣勢に陥っていた。
騎士との実力差を感じ取った彼は魔力を消費して攻撃力を増加させることで
なんとか均衡を保っていたが、その魔力が尽きかけてきているのだ。
このままでは遠からず自分は敗北する。
(そいつは面白くねえな……)
起死回生を狙って放ったグラビデ拳、秘孔拳も回避され手立てがない。
距離をとれれば、カプセルボールで逆転も狙えるのだがそうさせてくれるほど
相手は甘くはなかった。ウィーグラフが剣を構え、力を溜めている。
その技に自分はもう対応できないだろう。次の瞬間訪れるのは、死。
(だが充分に強い相手と戦って死ぬんだ。何の不満がある?)
違う。サラマンダーの心の中に苛立ちが広がっていく。
(奴は強い。だが何故だか心が湧かねえ……あの時ほど俺は)
あの時……あの時の戦いの相手は、ジタン。
(ジタン、何故だ? 目の前の奴とジタンと何の違いがある?)
迷いが広がる。だが、その迷いに答えが出せないまま自分の時間は止まる。
永遠に。
(駄目だ!)
サラマンダーは目前に迫る死を否定する。
その答えを出すまで自分は生き延びなくてはならない。
だがその思いも虚しく、ウィーグラフの聖剣技が発動した。
「命脈は無常にして惜しむるべからず… 葬る! 不動無明剣!」
死の刃がサラマンダーへと迫り……寸前で止まった。
ウィーグラフは斬撃を途中で止めると、バックステップでサラマンダーから距離をとる。
その一瞬後、サラマンダーの目の前に風魔手裏剣が突き立った。
「待ちなさ〜い!」
少女特有の甲高い声がして、二人は一斉にその方向を見る。
(奴は強い。だが何故だか心が湧かねえ……あの時ほど俺は)
あの時……あの時の戦いの相手は、ジタン。
(ジタン、何故だ? 目の前の奴とジタンと何の違いがある?)
迷いが広がる。だが、その迷いに答えが出せないまま自分の時間は止まる。
永遠に。
(駄目だ!)
サラマンダーは目前に迫る死を否定する。
その答えを出すまで自分は生き延びなくてはならない。
だがその思いも虚しく、ウィーグラフの聖剣技が発動した。
「命脈は無常にして惜しむるべからず… 葬る! 不動無明剣!」
死の刃がサラマンダーへと迫り……寸前で止まった。
ウィーグラフは斬撃を途中で止めると、バックステップでサラマンダーから距離をとる。
その一瞬後、サラマンダーの目の前に風魔手裏剣が突き立った。
「待ちなさ〜い!」
少女特有の甲高い声がして、二人は一斉にその方向を見る。
森を背にして一人の少女が仁王立ちでこちらを見据えていた。
「大の男が二人して何やってんの! こんなんじゃあの魔女の思う壺でしょー!
恥を知りなさい、恥を!」
一方的に言い募るユフィに憤慨するウィーグラフ。
「何も知らぬ小娘がほざくな! 邪魔をするというのなら貴様も……」
ウィーグラフの殺意がユフィへと向けられたその時、ユフィが左腕を上げる。
そして。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
森の奥からマシンガンの銃弾が放たれ、ウィーグラフとサラマンダーの中間に着弾する。
その威力は地面をあらかたこそぎ取り、土煙をたなびかせた。
ユフィが腕を下ろすと同時に斉射は止む。
ウィーグラフは戦慄していた。
(な、何だ今の攻撃は。魔法ではない……いや、魔法なのか?
あの小娘は先ほどカズスから離れていた娘だ。となればもう一人忍者装束の男がいたはず。
今、攻撃してきたのはその男か? それにしても……)
彼は全く未知の攻撃を目の当たりにして戸惑う。
それはサラマンダーも同じだった。
(こいつぁ、大砲と同じ火薬を使った武器か? いや俺が知ってる大砲とは違いすぎる。
どうやら一度は死を逃れたみたいだが、また覚悟しなきゃならんようだな)
ユフィもまた戦慄していた。
(エッジ、近い、近いよ。あたしにまで当たるとこだったじゃん!)
それはエッジも同じだった。
(あ、危ねえ……コイツは反動がハンパねぇ。ユフィに任せなくて良かったぜ。
アイツに任せてたら今頃俺は敵ごと蜂の巣になってたに違いねぇ)
それぞれの思惑が交錯し、膠着状態におちいる。
それを破ったのは気を取り直したユフィだった。
「い、今の見たでしょ? おじさんたちに勝ち目はないよ! だ、だから動かないでね?
さっき何も知らぬ小娘とか言ってたけどさ、そんなおじさんたちの事情なんて
あたしが知るわけないじゃん! だからさ、教えてよ!
場合によっては力になれるかもよ?」
ウィーグラフは答えない。サラマンダーもまた答えない。
沈黙を護りながら彼らは考える。どうすればいいのか。
再び場は膠着していた。
フリオニールは木の上から傍観しながら考えていた。
あの男忍者が使っている武器は、デールという男が使っていた武器と酷似している。
しかもその場から動かせないデメリットはあるものの、大型な分威力はこちらのほうが上の様だ。
薄く、笑う。
(一時はどうなることかと思ったが、どうやら運はこちらに向いてきたようだ。
この膠着状態。俺が打破してやるとするか)
フリオニールは極力音を殺しながら木を降りはじめた。
エッジは集中する。ウィーグラフとサラマンダーの二人の動きに。
もしユフィを攻撃しようとしたら躊躇なく弾丸を撃ち込むつもりだった。
ユフィを護る。それはこの作戦を決行したときに彼が誓ったことだ。
全神経をユフィを護ることに注ぎ、そして……そのために彼自身に迫る危機を見逃した。
「いい武器だな」
いきなり背後から声をかけられ、エッジは振り向く……ことができなかった。
ドシュ!
鈍い音と共にエッジの胸から剣が生える。
「がっ、ゴボォ!」
喉から熱い血が込み上げ、吐血する。
「やれやれ、剣が血で汚れてしまった。仕方ない、洗浄代としてこの武器を貰おうか」
ずるり、と音をさせてラグナロクをエッジの胸から引き抜く。
その圧迫感から解放された瞬間、エッジは叫んだ。
「ユフィーーーーーーーッ! 逃げろぉぉぉぉっーーーーー!!!」
その叫びを最後にエッジの喉は込み上げてきた血で詰まり、気管を塞ぐ。
「ち!」
まさか叫ぶ余裕があったとは知らず、フリオニールは舌打ちする。
―― ユフィ、カインすまねぇ……後は頼んだぜ
リディア、今、そっちに…… ――
ドカッ
ラグナロクによって頭蓋を割られ、エッジは絶命した。
「ち、少し予定が狂ったな。まぁいい、くたばれ」
フリオニールはマシンガンを手に取ると、エッジの見様見真似で引鉄を引いた。
「ユフィーーーーーーーッ! 逃げろぉぉぉぉっーーーーー!!!」
「エッジ!?」
エッジの断末魔を聞いてユフィは森へと振り向く。
返事はない。
森へと駆け込もうとしたその時、轟音と共に銃弾がばら撒かれた。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
ユフィは咄嗟に身を伏せる。
その為、ユフィは右肩を掠らせるだけですんだ。
しかしウィーグラフとサラマンダーはそれだけでは済まなかった。
サラマンダーはエッジの叫びが聞こえた瞬間、逃走に入っていた。
しかし右肩に被弾し、左大腿の肉を銃弾がこそぎとっていった。
「ぐぉっ!」
しかし彼は減速せず、そのまま山の中へと逃げ込んでいった。
ウィーグラフは射界の真っ只中にいたため、なすすべなく蜂の巣となった。
血煙を舞い散らせ、その場に崩れ落ちる。
命中率の低さのため即死こそ免れたものの、このままでは死を待つだけである。
その場に動かなくなった物がなくなったことを確認し、フリオニールは射撃を止めた。
「ふ、ふははははははははははは!」
マシンガンの威力に酔いしれ、高笑いを上げる。
この素晴らしい力があればマティウスもあのアルスという小僧も物の数ではない。
ふと見るとウィーグラフが虫の息ながらも何かをザックから取り出している。
「フン、死に切れなかったか。情けだ、介錯してやるとするか」
マシンガンをザックに仕舞うとラグナロクを手に、ウィーグラフへと近づく。
ウィーグラフはザックから取り出していたのは何かの小瓶だった。
震える手で小瓶の蓋を開け、一気にあおる。
「何?」
見ると、ウィーグラフの傷が急速に癒されていく。古い皮膚が剥がれ、新しい皮膚が再生される。
「エリクサーか!」
フリオニールは駆け出すが、時既に遅く完全に復活したウィーグラフは飛び上がり、
プレデターエッジでラグナロクの一撃を受け止める。
ガキィンッ
剣の威力はフリオニールが上。しかし膂力はウィーグラフが上。
その力は互角。両者は互いに弾き飛ばされ、距離が開いた。
もとより、ダメージが抜け切れていないフリオニールはバランスを崩し、
ウィーグラフはその隙を逃さずに逃走した。
相手の未知の武器と、復活したばかりの自分の身体を警戒したのだ。
フリオニールが体勢を整えたときには既に南東の方角へと走り去っていた。
もうマシンガンでも魔法でも届かないだろう。
二人共に完全に逃げられたことを知ったフリオニールは歯噛みする。
「ち、結局殺せたのは二人だけか。まぁいい」
フリオニールはエッジとユフィのザックを回収しようと森へと戻る。
しかしそこにはユフィの死体がない。
「何? 生きていたのか?」
訝しみ、エッジの死体の場所まで戻るとそこには死体に手を置いて涙するユフィの姿があった。
フリオニールの姿を認め、キッと睨みつける。
「殺したな……エッジを、殺したな!」
フリオニールは笑う。
殺し損ねていたのは驚いたが、相手は片腕の少女。どうすることもできまい。
「ああ殺したよ。あの武器が欲しかったんでね。
寂しいのなら君も彼の元へ送ってやろう。何、礼はいらないさ」
ラグナロクを振りかぶり、ユフィへと襲い掛かる。
しかしユフィは持ち前の身軽さでそれを回避し、木の枝へと飛び移った。
「ほう、思ったより身軽だな」
余裕の表情でフリオニールはユフィを見上げる。
ユフィの手にはエッジの持っていたフランベルジュが握られていた。
「怒った……ちょー怒ったよ! もー怒髪天ってやつ!!」
「怒ったなら、どうする?」
「こうすんのよ! リミットブレイク!!」
ユフィの怒りが赤いオーラとなってその身を包む。
フランベルジュを頭上に掲げ、彼女は静かに言葉を紡ぐ。
「大地よ 海よ 空よ そしてこの世に生きている全てのみんな!
あたしにほんのちょっとずつだけ元気を分けてちょうだい!! 」
フランベルジュを中心に収束していく力にフリオニールは戦慄する。
(な、何だこの力は? 何かわからんがとにかくマズイ!)
彼は足元に置いてあった「盾」を手に取り、近くの木に身を隠す。
「無駄よ! そんなほっそい木なんか木っ端微塵こ!
いっけぇええええええ! 森羅! 万! 象!!」
フランベルジュを核として極大にまで収束した気塊が怒涛の奔流となってフリオニールへと襲い掛かる!
それは万物の気を武器に集めて放出するユフィの最強リミット技「森羅万象」。
ユフィの言葉どおりにその威力は木々をなぎ倒し、地面を抉り取り、炸裂した。
後に残ったのは真っ黒に焼け焦げた破壊痕。
ユフィは肩で息をしながら、それを見つめている。
すると、ボコリ、と地面が盛り上がり、その中からフリオニールが立ち上がった。
「嘘!? なんで?」
驚愕するユフィを尻目にフリオニールは自身を護った「盾」をその場に放り捨てる。
それはすでに炭と化したエッジの死体だった。
「え、エッジ……」
ユフィは呆然とそれを見守っていた。
フリオニールはユフィに背を向けて駆け出す。
(ち、流石にダメージを受けすぎた!
戦利品は手に入れた。この場はこれで満足して引くしかあるまい)
彼が目指すのはカズス。すでに廃墟となっているのも知らず彼はカズスへと駆けていく。
ユフィはエッジへと近づき、その頬を撫でる。
「ごめんね、仇は……討つから」
決意の表情で立ち上がり、ユフィはカズスの方向を見つめる。
フリオニールはカズスへと逃げていった。
カズスにはカインとスミスがいるはずだ。彼らと協力して今度こそフリオニールを討つ!
手には不慣れな剣。彼女が知る、剣を得意としていた人物は……。
「クラウド、力を貸してよ」
そして彼女もまたカズスへと走り出した。
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー
ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
【第一行動方針:フリオニールをカインと協力して討つ
第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北の峡谷→カズスの村へ】
【フリオニール(HP1/3程度 MP1/2)
所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
第一行動方針:カズスの村へと走って移動する
第二行動方針:日没時にカズスの村でカインと合流する
最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:カズス北の峡谷→カズスの村へ】
【サラマンダー(右肩被弾、左大腿負傷、MP1/5)
所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣(天空の剣) 紫の小ビン(飛竜草の液体)、
カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×1、各種解毒剤
第一行動方針:一旦潜伏して傷を癒す 第二行動方針アーヴァインを探して殺す
基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【現在地:カズス北の峡谷→移動】
【ウィーグラフ (MP消費)
所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×9、ブロードソード、レーザーウエポン、
首輪×2、研究メモ、フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾
第一行動方針:この場から逃げる
第二行動方針:ラムザを探す
第三行動方針:生き延びる、手段は選ばない
基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【現在地 カズス北の峡谷→南東へ】
【エッジ 死亡】
【残り63名】
ユフィの戦い 3/13 訂正
> カズスへと近づき、森を抜けようとしたところで殺意の衝突と感じて彼は立ち止まる。
→ 衝突を感じて彼は立ち止まる。
ユフィの戦い 9/13 訂正
> その場に動かなくなった物がなくなったことを確認し、フリオニールは射撃を止めた。
→ その場に動く物がなくなったことを確認し、フリオニールは射撃を止めた。
ユフィの戦い 10/13 訂正
> ウィーグラフはザックから取り出していたのは何かの小瓶だった。
→ ウィーグラフが (ry
ユフィの戦い 13/13 状態表訂正
【ウィーグラフ 】
所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×9、ブロードソード、レーザーウエポン、
首輪×2、研究メモ、フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾
第一行動方針:この場から逃げる
第二行動方針:ラムザを探す
第三行動方針:生き延びる、手段は選ばない
基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【現在地 カズス北の峡谷→南東へ】
『俺が全力であいつらを牽制する。雲行きが怪しくなったらすぐに離脱しろよ。
信用、するぜ』
『ま〜かせて!』
そうしてユフィは戦闘の真正面へと飛び出していった。
サラマンダーは劣勢に陥っていた。
騎士との実力差を感じ取った彼は魔力を消費して攻撃力を増加させることで
なんとか均衡を保っていたが、その魔力が尽きかけてきているのだ。
このままでは遠からず自分は敗北する。
(そいつは面白くねえな……)
起死回生を狙って放ったグラビデ拳、秘孔拳も回避され手立てがない。
距離をとれれば、カプセルボールで逆転も狙えるのだがそうさせてくれるほど
相手は甘くはなかった。ウィーグラフが剣を構え、力を溜めている。
その技に自分はもう対応できないだろう。次の瞬間訪れるのは、死。
(だが充分に強い相手と戦って死ぬんだ。何の不満がある?)
違う。サラマンダーの心の中に苛立ちが広がっていく。
(奴は強い。だが何故だか心が湧かねえ……あの時ほど俺は)
あの時……あの時の戦いの相手は、ジタン。
(ジタン、何故だ? 目の前の奴とジタンと何の違いがある?)
迷いが広がる。だが、その迷いに答えが出せないまま自分の時間は止まる。
永遠に。
(駄目だ!)
サラマンダーは目前に迫る死を否定する。
その答えを出すまで自分は生き延びなくてはならない。
だがその思いも虚しく、ウィーグラフの聖剣技が発動した。
「命脈は無常にして惜しむるべからず… 葬る! 不動無明剣!」
死の刃がサラマンダーへと迫り……寸前で止まった。
ウィーグラフは斬撃を途中で止めると、バックステップでサラマンダーから距離をとる。
その一瞬後、サラマンダーの目の前に風魔手裏剣が突き立った。
「待ちなさ〜い!」
少女特有の甲高い声がして、二人は一斉にその方向を見る。
49 :
ユフィの決意:2005/08/16(火) 01:26:04 ID:+fezhC+S
「許さない!」
エッジを殺されたユフィは怒っていた。
急いで走ると、前の方に倒れてるフリオニールが見えた。ユフィを怒りをくらって倒れたのだ
その怒りの力がユフィに信じられないほどの力を与えたのだった
ユフィは倒れているフリオニールを刺した。フリオニールは血を吐いた。
「痛いでしょ!?私とエッジに誤りなさい!!」
「ごめん・・、だが君も道連れだ!!」
それがフリオニールが最後の負け犬の通吠えで、そして二度と動くことはなかった。
「やったー!エッジ!仇はとったよ!」
ユフィは調子に乗った・・・そして暴走、空高く舞い上がった
その姿は紙がみしい天使のようだ。
「男共ゆ!私に服従するのよ!!」
そして紙がみしい前に現れる色々なたくさんの男逹・・・・いや女まで
それはユフィに魅了された奴隷逹。
ユフィは決意した・・・・この力でアルティミーシアを奴隷にする、そのためには・・・・
【ユフィ:行動方針アルティミーシアを奴隷にする】
【フリオニール:死亡】
※浮遊大陸にいる人間はユフィの奴隷になった
sage忘れました
感想ほしい・・・
>>53 感動した。
グッドジョブ!!!!!!11
異形なるモンスターが我々の言葉を話せるとするならそれは良いことであろうか。
否、話せば分かるなど所詮幻想に過ぎない。
少なくとも今回、ブオーンの会話経験は全員にマイナスに働いた。
それは、記憶の底、心の底に。
つぼに封じられる前、気ままに生きるブオーンの元へ
討伐の目的でやってきた人間達は、皆自分の力で返り討ちにしてやった。
降りかかる火の粉を払っただけだし、相手だって力及ばなかったのだから文句は無いだろう。
しかし、あの妙に饒舌な男、ルドルフ。自分を言葉巧みに誘い出して罠に掛け、封印した男。
あの卑怯者だけは到底許せることはできない。
その経験はブオーンの心のうちに力ではなく、言葉で挑んでくる
人間への不信を植え付けていた。
沈黙、静寂、緊張、過ぎ行く時間…
よりこちらに注視している赤いローブの老人をそれとなく覗き見る。
そういえばこいつは普通の人間と違う感じがするな。
あ、でも俺様を倒したあいつらもなんか変な感じだったっけか。
きっとそういう変な種類の人間もいるんだろう。
そんなことを考えていたブオーンの耳に突如声が届く。
その老人、ドーガが沈黙を破って投げかけた言葉。
「巨大なるモンスターよ、わたしの話を解することはできるだろうか」
ぴくり。
不意に話しかけられ、ブオーンは思わず身体を動かして反応してしまった。
それを肯定の意思表示と取った老人は話を続ける。
「ふむ、おぬしも参加者…なのであろう。こちらには理由無く敵対する意思は無い」
今度はブオーンは不動のまま。
「知恵ある巨大なモンスターよ、我らには争う理由はない。
そしておぬしも争う気がないのであれば、仲間は多いほうが良い、共に行動せぬか?
できるならば共に来てくれはしまいか?」
ブオーンの本音は、誰かと協力するつもりなど無いし、積極的に動くつもりも無い。
自分の力の無さ故に敗れ去るのは構わないがともかく積極的に動くつもりは無いのだ。
だが、その短い呼びかけはブオーンの心の奥、嫌な思い出を呼び返す。
ドーガは純粋に協力と同行を仰ぐつもりの会話だったが、
同じような形で手ひどい裏切りを受けた者はそれを真っ直ぐ受け取ることはできなかった。
疑念が浮かぶ。こいつらは俺様を罠にかけようとしているのでは?
俺様は大人しくしていたのだから敵でないなら通り過ぎてしまえばいいじゃないか。
そうだ。こいつら、俺様に恐れをなしてルドルフと同じことを。
遭遇が偶然だったのだからそんなことはありえないというのは簡単に分かるはずだが、
そんな余裕さえも今は無かった。心を満たすむかつきは抑えようもなかった。
「そうやってまた俺様を騙すつもりだな!何度も引っかかるか!
ええいっ、俺様を倒したければ実力で来いっ。小細工するな、人間め!」
突然に力強い低い声が辺りに響き渡り、
同時に突如湖面から巨大な塊が跳ね上って、大きな日陰を形作る。
それが何か、フィンとドーガが理解したときには空中で方向を変えたそれは
猛烈な勢いと共にこちらへ向け振り下ろされていた。
そして、水面の爆ぜる音と共に氷のテーブルが砕け飛ぶ。
同行者を気遣う猶予すらなくドーガはただ間一髪で直撃を避け、水中へと逃れていた。
一分ほどの間を置いて浮上した水面には
何事も無かったかのように静かにたたずむ巨体、幾つもの浮氷塊。
そしてそのどこにもフィンの姿を見つけることはできなかった。
今の一撃から逃れることができず直撃して湖へ沈んでしまったのか。
人間ではない自分ならともかく、いかに水に慣れていようと人間は水中では5分程度が限界だ。
今最も優先すべきは救助であろう。
だが、その行動は再び振り下ろされる大鎚のような腕により妨げられる。
知恵ある存在と見たが自分の判断ミスだったのか?そんな後悔もそこそこに、
着地すると半分以上水に沈みこんでしまう頼りない氷の塊を足場にして、
巨獣の一撃を今回もなんとか回避する。
向こうはどうしてもやるつもりらしく、簡単に逃してくれそうにはない。
ともかく水中への脱出の隙を作るべく魔力を集中、
火炎の魔法、ファイガを巨体へ向けて放ち、水面へ飛び出していく。
だが、かち合うように放たれたブオーンの今までと全く異なる攻撃‐いなずまが、
まさに水面へたどり着いたドーガを捉えた。
轟音を上げ空中から水面へ向かう光条は自身を導く獲物を求めてドーガへと向かう。
予想外の雷撃のショックが身体の自由を奪い、それ以上の行動を暫く阻害する。
受けた炎の痛みでさらに冷静さを失ったブオーンの一撃を浴びるには十分な隙。
ドーガの身体は腕の振り上げと共にきらめく氷片を伴って宙へと舞い上げられる。
長く感じられる滞空時間。
スローモーションでいまやその凶暴性をドーガへと向けた怪物の腕が迫ってくる。
バレーのスパイクのような一撃を受けるまでの刹那、僅かな間でそれでもドーガは
自身にとって最後となるかもしれない反撃の機を狙っていた。
ただ一点、この怪物の目へと狙いをつけた氷の刃。
飛び込むまではできたフィンの身体に、しかし砕け散った氷塊が襲い掛かる。
そこで意識は途絶え、ぶつかった氷塊に押されるように身体は水中へと沈んでいく。
再び現実を映すことのできた目に遠い光の揺らめきが飛び込む。
どうやら意識を失っていたのはほんの短い間だったらしい。
手、足…は動く。どこか背中の方が痛いがたいしたことはない。
幼いころから水に慣れ親しんできたフィンにとって一度自由を取り戻してしまえば
水中は怖いものではなかった。水面へ向かい上昇を始める。
空気との境界までもう少し、というところで水面全体が輝く。
それはブオーンが呼んだいなずまの光。次いで水が鈍い衝撃を伝える。
急ぎ水面を飛び出し浮上したフィンが見たものは、
立ち上がったモンスターの巨躯が繰り出す一撃と、見覚えある氷の魔法の交差。
赤いローブが不自然に空中にあった気がした。
そしてやや離れた位置で起こる隕石の着水のごとき水面の爆発。
―え、ドーガ…さん?
起こったことをただ眺めているしかできなかった。
心の奥底では目前でドーガがやられたという事実を理解しているが、
それは思考へフィードバックされない。
だが、初撃で氷塊と共に吹き飛んだのであろう、浮いているドーガのものであった
ザックを見つけた時に、堰を切ったように悲痛が心を染めた。
主を失ったザックを回収してただ悲嘆に沈むフィンを、
小さな、しかし荒々しい咆哮が現実へ呼び戻す。
水上に残されているのは左目を押さえ身体を震わせている巨大なモンスター。
そして、その痛み、苛立ちが水面へとぶつけられ、
細かい水しぶきがフィンにまで跳ねかかる。
見上げたモンスターの表情は、まさに凶暴な野獣としてのそれだった。
自分の周りにはもう誰もいない。恐怖が、思考を支配してゆく。
何も考えられなかった。
息を吸い込み、身体を水面下へと沈めて背後、ずっと遠くにある岸までフィンは逃げた。
必死に手足を動かし、どれくらいの時間泳いでいただろうか。
湖の南側の岸にたどり着く。
水際から森まで一目散に駆け、それから、呼吸を整えて恐る恐る湖の方を振り返った。
何かあったのか?と言わんばかりに穏やかさを取り戻し美しくきらめく水面、
そして初めて見たときと同じように湖上にまるで島のようにたたずむモンスター。
何もできなかった。
それが目の前で起こっても、自分は何もできなかったのだ。
樹に背中を預けてもたれかかり、呆然とただ湖に目を向ける。
全てを無力感が包んでいた。
左目が熱く焼け付いたように痛い。
赤いローブの人間が最後に放った氷がブオーンの目を傷つけていた。
苛立ちと不信の結果ぶつかった相手の実力は予想以上に手ごわいもの。
何とか勝ったとはいえ残されたものは火傷と光の戻らない左目。
短絡思考で暴れてしまったが、それは正しいことだったのだろうか。
力でぶつかった結果の傷は肯定するしかないものだが、どこか後悔が後から後から湧きあがっていた。
今はただ、自分を落ち着かせるように湖上に再びうずくまる。
―だから誰かと関わるなんてゴメンだったんだ。今度はばれないようにしないと…
暗い水底にあっても異形の身体はいまだ生命を失わない。
強烈な打撃に生命力のほとんどを奪われてはいたがそれは少しずつ水中を移動していた。
それからしばらくの後、湖の北岸に暗赤色のローブを着た人影が姿を表す。
それはよろよろと湖岸を数歩歩き、力尽きたようにその場に倒れる。
激しく咳き込んだ老人の口から人ならぬ紫色の血が零れ落ちる。
どれほどの間水の中にいたのだろう。
すでに自分にはほとんど生命力が残されていないことが身をもって理解できる。
ギルダーを止める、という意思は今も揺るぐことは無い。
だが、加えて再び目前の湖上で島を装っているあの巨獣も退けねばならぬだろう。
生命は消えかけだが未だ残る大きな魔力、この力を以って。
水底へと消えたフィンのためにも。
再び戦うために身体の回復を望み、静かにドーガは瞑想に入る。
【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
第一行動方針:今はただ呆然とするのみ
基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:湖南岸】
【ドーガ(瀕死) 所持品:なし
第一行動方針:ブオーンを倒す為、回復を図る 第二行動方針:ギルダーを止める】
【現在位置:湖北岸】
【ブオーン(左目失明、一部火傷) 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
第一行動方針:後悔&反省 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の湖の真ん中】
「カイン?どうしたの?」
カインを背に乗せたまま低空飛行を続けていたスミスだが、ふいにカインの異変に気付き顔を上げた。
「いや……。もしかしたら、俺は酷いヘマをしたのかもしれない」
「え?」
「いや、気にするな。思い違いだ」
――実際は、思い違いであってほしいと思っただけだったが。
カインにはひとつ、気がかりなことがあったのだった。
(…このままではまずい……
だが…今はそれを口に出す時ではない)
それは、もちろん自分の名誉を守る為でもある。
だが、それ以上にスミスにも余計な心配をかけさせる訳にはいかないという気持ちがあった。
(フッ、俺も堕ちた物だな)
しかし、カインの余裕はそこまでだった。大きくバランスを崩しよろけてしまう。
「カイン!?カイン!!
……!!!!」
スミスはようやく気付いたのだった。背のカインが――
「……何で…何でもっと早く言わないのさ…!」
「くっ……ローザ…セシル!」
そう、カインは便意を催したのだ。
あせってズボンを下ろそうとするが鎧なので間に合わない!
――いい臭いですとも!
「スミス……すまん…俺はここまでのようだ…」
それが彼の最後の言葉だった…。
【カイン:張り付いたウンコで皮膚呼吸ができなくなって死亡】
【スミス:いい臭いに巻き込まれて死亡】
ホシュ
不意に、意識が取り戻された。
「…うっ…」
全身を走る鈍痛に、思わず呻く。
どうしてこんな事になったのか思い出そうとするが、頭がやけに惚けていてうまく物事を考えられない。
やっとの事で目が開けられた。
しかしどうも焦点が合わず、視界はぼやけている。
「…おお、やっと目え覚めたか」
その時、疲れきった声が聞こえた。
声のした方を向くと、そこには今にも倒れそうな様子のフルートがいた。
うう、と再び呻きながら、先程まで気を失っていた青年、サックスは重々しく起き上がった。
「…本当に…すい、ケホッ!すいません、僕が、力不足だったばっかりに」
「だから、今謝ったって、しょうがねえだろ。それに、ありゃお前のせいじゃねえよ」
フルートから大体の事情を聞いてから、サックスはひっきりなしに謝りつづけている。
彼女の話によると、自分はあの火のような髪をした暗殺者との戦いの後、すぐに意識を失ってしまった。
その間に暗殺者は逃げ去り、鉱山の出口は完全に塞がれ、毒に蝕まれた自分をフルートがずっと治療していたらしい。
つまり、状況があらゆる面で絶望的になったということだ。
まず、2人とも満身創痍だ。自分の体の毒はあまり治療できていないという話だし、フルートに到っては目も当てられない。
次にここから移動することも出来ない。岩に塞がれた道を何とかしない限り出る事はかなわず、翌朝には首輪がボン、だ。
叫びでもして助けを求めるのは、このゲームの性質からして愚考としか言えない。
とどめに彼らには仲間がいない。ゼル達さえいてくれたら脱出の方法を見出せたかもしれないが、
残念ながら今はそうもいかない。よって、外からの助けは期待できない。
まさに八方塞がりだった。
八方塞がりどころか、破滅だ。
「…サックス」
「はい?」
少し間の抜けた返答を返した途端、フルートが何かを投げてよこした。
うわっと声を上げて受け取ると、それは彼女の支給品袋だった。
「…フルートさん?」
その真意をはかりかねて、彼はフルートの方を見やる。
と、女僧侶は地面を殴りつけるようにして手を突っ張り、苦しげに立ち上がるところだった。
そしてそのまま思い足取りで小部屋の出口があった場所まで歩き。
道を塞いでいる大岩と、向かい合った。
…まさか。
瞬間、サックスの脳裏に浮かんだ予感を裏付けるように、フルートの右腕が音を立てて軋む。
「フルートさん!やめ…」
「――らああああああああっっっ!!!!」
フルートも、一挙一動が実に辛そうなサックスを見つつ、思考を巡らせていた。
彼女は自身の状態について、あることを悟っていた。
もう長くない。
サックスと暗殺者が戦っているとき、自分は加勢はおろか立つ事すら出来なかった。
さらに、彼の治療のために呪文をしこたま使ったことが、すでに限界を超えた体に追い討ちをかけてしまった。
これはもう休んだり治療したりすればどうにかなるような物ではないし、
あと一度でも全力を出したら今度こそ取り返しがつかないだろう。
しかし、どの道ここでじっとしていれば死ぬしかない。
…なら。
それなら。
掌底一発。
サックスが止める間もなく放たれたその一撃で岩石は吹き飛ばされ、更に道を塞いでいた岩石を巻きこみながら、
鉱山の出口まで一気に押しやられた。
もちろん、フルートの方もただでは済まない。
ビキビキビキビキビキビキィ!!
耳障りな音を立てながら、右腕の肘から先の骨が完全に粉砕する。
激痛に顔を歪める暇はなかった。
かろうじて保っていた均衡を崩され、支えを失った、決して小さくはない岩が2人めがけて落下して来たからだ。
残った左拳で殴りつけ、弾き飛ばした。
その際、フルートの左手の肉が削ぎ取られて鮮血が噴出し、半ば砕けた骨が露出した。
壁にめり込む岩。
幸い、それ以上の崩壊はなかった。
鉱山からの出口が開かれた。
だが。
文字通り力尽きたフルートが、ゆっくりとその場に倒れこむ。
その身体が地面に叩きつけられる前に、サックスが手を伸ばして受け止める。
その肩は、彼女がこれまで発揮してきた力からは想像も出来ないほど小さく、頼りなかった。
「おい…サックス…道、開けたぞ」
「何言ってるんですか!こんな無茶して!!」
弱弱しく呟くフルートに、サックスはかすれ気味の声で怒鳴る。
そんな彼に、彼女は言った。
「…どうせここにいたら助からねえんだ。それならお前だけでも…てな」
「そんな…」
愕然とするサックス。フルートは続ける。
「…いいってこった。どの道あたしはもう限界だった」
サックスも、それは認めざるを得なかった。
度重なる戦いで限度を超えた力を使い過ぎ、
比較的余裕のあった魔力まで彼のために大きく削ってしまった彼女には、
もう自分の命を維持する力すら残されていないのだった。
「そうだ…サックス、もし仲間に会ったら…言っといてくれねえか…
アルスに、セージに…ローグってんだけどよ…
あた…あたし の ことは…早 いとこ … 忘れてといて くれって…」
彼女は伝えるよう言った。
「忘れろ」と。
それは残される仲間を気遣っての事なのか、それとももっと別の意思なのか。わからなかった。
重苦しい空気の中、「…あ、お前は違うからな」と女格闘家は再び口を開いた。
「お前…あたしは、お前の、命の恩人…なんだからな。 一生…忘れんなよ」
言って彼女は笑った。笑ってなどいられない状態なのに。
「…ええ、忘れません。絶対に」
サックスも笑い返した。笑い返すしかなかった。
「絶対か?」
「絶対です」
「そうか…ならいい…」
フルートの声が明らかに小さく、弱くなった。
目を、閉じる。
「…にしても…疲れたな…」
それが彼女の、最後の言葉となった。
「フルートさん…」
サックスは再び動くことのない身体をそっと横たえると、彼女の分の支給品を自分の支給品袋に入れ、立ち上がった。
「ありがとう…」
謝りは、しなかった。
そしてサックスは、結構な時間をかけてミスリル鉱山から脱出し、ふたたび青く晴れ渡った空の下に出た。
空はどこまでも青かった。忌々しいほどに蒼かった。
村は廃墟と化していた。
サックスはその惨状に暫く驚き、これからどうするか少し考えた後、まず村を調べる事にした。
しかし最初の一歩を踏み出した時、強い眩暈が彼を襲った。
危うく転びそうになり、膝を突く。
脚が丸一日走りつづけたように痛い。剣を何十本も束にして背負ったかのように身体が重い。
それもそうだ。
サックスをここまで追い詰めたイクサスの毒は、飛竜草の威力に彼独自の工夫が加えられ、
ただ食べてしまうよりも数倍はダメージを与える仕組みになっていた。
その威力は、例えフルートが献身的に治療してくれても、完治するものではなかった。
だが、それがどうした。
サックスは独り呟き、跳ね除けるように立ちあがる。
そして、歩き出した。傍から見れば、今にも倒れそうな危なっかしい歩調だった。
それでも、彼はしっかりと大地を蹴って歩いていた。
――フルートさんは命と引き換えに僕を助けてくれた。その間、僕は何をしていた?――
自問した。そして自答する。
――ただ悩んでいただけだ――
それがサックスには悔しかった。悔しくてしかたがなかった。
かつて彼は家族を護る事が出来なかった。そして今、またも仲間を死なせてしまった。
何も出来なかった。
だが、悔いるのはもうやめにしてしまおうと、思う。
悩むのもだ。それよりは前を向いて歩きつづけよう。
そう決めた。
後悔するのは全てが終わった後でいい。
何もかもが終結した後で、好きなだけ頭を抱えて悩めばいい。
だから今は歩きつづけよう。アルティミシアを倒し、この狂気に満ちたゲームが終わるその瞬間まで。
決意を胸に、サックスは着実に歩きつづけた。
だが、彼の決意は意外と早く挫かれるかもしれない。
カインとスミスがカズスの村の上空に飛来し、なおかつサックスの存在にも気付いていたからだ。
【サックス (負傷、毒状態)
所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
第一行動方針:村を調べて回る 第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地;カズスの村、ミスリル鉱山入り口近く】
【カイン(HP5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界(FF3)の歴史書数冊
第一行動方針:サックスを上空から監視、可能ならば殺す
第二行動方針:カズスの村でフリオニールと合流し、罠を張る
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地;カズスの村上空】
だが、彼の決意は意外と早く挫かれるかもしれない。
カインとスミスがカズスの村の上空に飛来し、なおかつサックスの存在にも気付いていたからだ。
【サックス (負傷、毒状態)
所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
第一行動方針:村を調べて回る 第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地;カズスの村、ミスリル鉱山入り口近く】
【カイン(HP5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界(FF3)の歴史書数冊
第一行動方針:サックスを上空から監視、可能ならば殺す
第二行動方針:カズスの村でフリオニールと合流し、罠を張る
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地;カズスの村上空】
【フルート 死亡】
bFF25n60!殺すなボケ
下手糞のくせに!
77 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/08/23(火) 01:41:56 ID:AtMz2V5X
bFF25n60は他スレに援護を頼みに逝くようなへたれ
お前が氏ね
ID:AtMz2V5Xのレスは全て無効
以下スルー
79 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/08/23(火) 01:50:14 ID:AtMz2V5X
FFDQの本スレに書き込んでる馬鹿。
スルーが一番だとわかっててもげんなりする。
無効訂正に書き込まなきゃいかんのもげんなり。
ごめん、誰か代わりにやって。
どうやら黒髪の追跡者は、ようじゅつしの杖の効果で遠くへ飛ばされたらしい。
さらなる追跡者も現れず、ピエールは緊張の糸を多少緩める。
と、それまで気力で抑え続けていた体の重さが、一気にぶり返してきた。
体の一部であるはずの騎士さえ鉛のように重く、ついに支えきれずにバランスを崩す。
(おのれ…、こんなところで…)
身体を引きずりそれでも進もうとするが、もうどの方角へ進んでいるかもわからない。
それも、進むといっても何センチかずつといった具合だ。
(行かねばならぬのだ、私は…)
安全な場所で休息を取る為か。
主のために一人でも多くの命を奪う為か。
不意に、レーダーがヒトの存在を告げる。
反応はひとつだが、この状況では危険極まりない。
精神を集中させて金縛りから脱出しようとするが、怪我と疲労があいまって、なかなかうまくいかない。
もはや逃れることは不可能か。
ピエールは最悪の場合も覚悟して、どうやら遠距離から攻撃を仕掛けようとはしない、そのヒトの近づくのを待った。
少しずつ、距離が詰められる。
殺気を感じないのは幸いなことだ。
目だけを、レーダーの反応のある方向へ向ける。
男だ。目に包帯を巻いている。盲ているのか?
もしかして、こちらの存在に気づいていないのか?
ピエールは知らない。
クリムトはじっと、ずっと、ピエールを”見つめて”いた。
そしてついに、二つの光の点は重なるように一致した。
クリムトは足を止め、ピエールに顔を向ける。
別にピエールを見るためというわけではなく、一応の礼儀のようなものだ。
その行動と、そしてクリムトの言葉によって、ピエールは自分の存在が気づかれていないはずはなく、
むしろ自分という存在を理由に、彼がここに足を運んだのだということを理解した。
クリムトは言った。
「貴方が、村の悪意の根源か?」
誰か、大切な者を探そうとしている者の気配が過ぎてなお、クリムトは村へと向かい続けていた。
そのときはもうすでに村のすぐ近くまで来ており、そして村の中にある死の気配さえ、感じ取れていた。
だがその直後空気が、いや、世界を構成する流れそのものが、一つの存在をクリムトに知らしめた。
殺意を持つものの気配。
自分をこの村に引き寄せたそれが、いま村を離れ北へ向かっている。
その光景を目で見ているより遥かに鮮明に感じ取り、クリムトは気配を追って北を目指した。
存在を鮮明に掴み取った感覚は一瞬の後には去っていたが、気配の位置だけは明確に分かっている。
その気配が、あるときからほとんど動かなくなっていたことも。
そしてようやく、クリムトはピエールの前に足を止めた。
「貴方が、村の悪意の根源か?」
ピエールは慎重に相手を観察する。
金縛りはようやく少しずつ改善されていた。
そっとスネークソードに手を伸ばす。
けれど…。
「やめなさい。これ以上罪を重ねるつもりですか?」
視力を失った者に、どうやってこの微妙な動きを察知するすべがあったかは知らないが、
知られてしまった以上ピエールは堂々とスネークソードを構えた。
使い慣れない武器だ。
激しい戦闘になれば曲線を描く刃が自らさえ傷つける可能性もある。
だが、盲目の男を斬りつけるくらいは出来るはずだ。
「罪を重ねることに躊躇いはない」
吐き捨ているように言い放ち、杖一本の男に襲い掛かる。
クリムトは後退して杖を使って一撃を受け止めるのではなく、杖を捨て、前進して剣を持つピエールの腕を押さえた。
「自分が行っていることが赦されざることと知ってなお、改めようとはしないのですか?」
「赦されるつもりなど毛頭ないのだ。私はただ、成すべきことを成すだけ……っ!!」
クリムトがピエールを押さえられるのも、まだピエールの身体に金縛りの痺れが残っていたためだ。
時間が経てば、この痺れは治まる。
その時間を稼ぐために、ピエールは今出せる全開の力で押さえられた腕を動かそうと努めた。
しかし、時間が経てばもう一つの可能性も高くなる。
今度のそれは、あまりに短い周期で訪れた。
体が、一気に何倍もの重さを持つように感じられる。
意思の伝達速度が極端に落ち、重力に引き寄せられるように崩れる。
そのさなか、スネークソードは地面に先に落ちた。
ピエールも倒れ掛かるが、クリムトはその彼を抱きとめた。
「力を抜いて。抗えば、それだけ痺れは長く続きます」
ピエールは言われた通り力を抜く。
というより、体力の限界がついに来てしまったのだ。
クリムトはピエールを地面に横たえて、そして、回復呪文を唱えだした。
暖かな光が、ピエールを包み込んだ。
幾らのか時が経った。
ピエールは地面に横たえられ、なお回復魔法をかけられ続けていた。
スネークソードは手の届く位置に放置されたまま。
クリムトは杖を脇に置いている。
この痺れが完全に取れれば、瞬く間も与えずピエールはクリムトを両断できる自信があった。
だが、何故。
「何の真似だ。私はお前に襲い掛かったのだぞ?」
クリムトは回復の光を弱めることなく、答える。
「遠くにいても、貴方の放つ殺意は空気を伝わって感じ取ることが出来ました。
初めは、その悪意を打ち払おうと、こちらへ向かったのです」
「私は決して止まりはしない」
「はい。それは貴方に直に接して実感しています。しかし、貴方と接してもう一つ感じ取ったことがあります」
「……」
「貴方からは、私が思っていたほどの悪意を、邪気と言ってもいい、それを感じ取れません。
殺意は肌を刺す痛みのように伝わってくるのに、思いは驚くほど純粋なのです」
「…だから助ける?」
「はい。貴方は”悪”ではない」
男の言葉は、スライムナイトには馬鹿げたことにしか聞こえない。
自分は人を殺し、これからも殺し続ける。
今自分を好意で助けようとしているこの男さえ、殺してしまうことに何のためらいも生まれはしない。
「だが、それでも何故かは分からない。
貴方は悪ではなく、自分の行っていることの罪を知りながら、なお罪を犯し続けようとしている」
「…それを知ってどうする?」
「私なりに、貴方を救う方法を考えます」
ピエールは低く、笑った。
馬鹿馬鹿しいと、心底思ったのだ。
けれど一瞬先に、あるデジャヴを見た。
差しのべられる手と、深い瞳。
穏やかな笑み、暖かい、眼差し。
初めて、あの方と会ったとき。
傷つけたのは自分、勝利したのは彼。
赦したのも、彼。
思わず顔を背ける。
目の前の男はあの方とはまるで違う。
深い瞳も、澄んだ、温かい眼差しも持ちはしない。
何をためらうことがある?
”目を見れば、その命の本質が見える”
あの方は言った。
この男の目は、どこにあるというのだ?
「どこを見た?」
「…え?」
「どこを見て、私が悪でないと判断したのだ?」
男は微笑む。
「貴方の命を、拝見させて頂きました」
「私はどこを見ればいいのだ? お前には目がない」
「命を、見てください」
ピエールは目を閉じる。
この男は、このゲームには異質な存在だ。
狂気がない、敵意がない、殺気がない、怯えがない。
この男は、たとえどのような状況に陥ろうと、誰も殺しはしないだろう。
まっすぐに、顔を付き合わせる。
互いに互いは見えていない、けれど本質は見えている。
「私は、最後の二人になる為に戦い、殺し続ける。
お前は、最後の二人になったとき、どうする?」
「生き残る道を探します。二人共に」
「そんな道がなかったら…」
今はっきりと、この魔物の本質が見える。
最も大切なものを助けたい、ただそれだけを魔物は願っている。
罪を犯すこともいとわずに。
もはや、そのような願いを持つ者を、魔物とは呼べはしない。
ただ、この者は騎士であるだけだ。
「…もし、私が志半ばに倒れ、もしお前と、あの方が生き残っていたら…」
そんな状況に、ならせるつもりはないのだけれど…。
「死んでくれ。決して時を経たせることなく、決してあの方と出会うことなく」
時が経てば、あの方は自らの命を犠牲にしかねない。
出会ってしまえば、あの方はその死にさえ嘆き悲しむ。
「それが、貴方がここで、私を生かす条件ですか?」
ピエールは答えない。
頷くこともない。
けれど思いは、確実にクリムトに伝わっていた。
「罪を、悔い改めるつもりはないのですか?」
無駄と知りつつクリムトは言う。
「罪を犯すものが私一人なら、罪を償うのも私一人だ。全ての罪を、私一人が受け止めればいい。
そして悔い改め、償うのは、全てが終わった後だ。私が、地獄に落ちた後」
「貴方は決して救われることがない」
「お前が私の言った条件を飲んでくれるのなら、私の心は救われる。
一度は闇の傀儡となった身だ。私には、こんな方法しかできないのだ」
「…今は、貴方の治療のことだけ考えます」
答えをのばすことが正しいことだとは思わない。
だが悪意なく人を殺し、罪さえ受け止めようとするこの騎士をどうすれば救えるのか、
その答えをクリムトが出すには、時間が必要だった。
【ピエール(HP2/5程度) (MP一桁) (感情封印)
(弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、時間経過で回復)
所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]
第一行動方針:クリムトの治療を受ける。
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【クリムト(失明) 所持品:力の杖
第一行動方針:ピエールの治療
基本行動方針:誰も殺さない。
最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北の山脈の麓】
テリーとギードとトンヌラは、ピエールが逃走した後、しばしその場でとどまっていた。
本当はカナーンの町へ行きたかったのだが、ピエールがそこへ向かった上、
あれほどの大爆発を見せられては断念せざるを得ない。
それに、レックス達を埋葬してあげたかったのもその場にとどまった原因の一つ。
彼らの痛々しい死体を野ざらしにしておくことに耐えられなかった。
「すまんな。怪我をしておるのに、無理をさせて」
「気にしないでよ。マスターとして、友達として、仲間をこのまま放っておくことはできないよ」
ケアルラで傷は塞いでいるが、痛みは完全には取れていないはずだ。
「魔力を回復する薬があれば、特効薬を作れるのじゃが…」
だが、ギードのいた世界とは違い、この世界では魔力を回復する薬は容易には手に入らない。
したがって、体を休めるのが一番の治療法となるだろう。
鋼鉄の剣はそれほど深く刺さってはいないのか、テリーの力でも容易に抜ける。
それなりの重さがあるものなので、今のテリーに使いこなすことはできないだろうが、一応ザックに入れておくことにした。
今回は墓標は作らない。墓荒らしに被害を受けないようにするためだ。
いや、ドルバが一種の墓標となっていると言えるかもしれない。
ドルバは体が大きく、どうしても埋葬ができなかったので、目を閉じさせ、体を整えておいた。
その姿は、まるで墓守。竜族が主の命を受け、宝や墓を守るのは書物でもよく見かける。
彼の場合は、死後も主の命を忠実に守り続けている、そんなふうにも見える。
すなわち、竜族に相応しきよう己の器を高め続けるという、それである。
おそらくこのフィールドは崩れ落ち、そうでなくても、いつかはりゅうおうのように灰になってしまうだろう。
しかしそれでも、彼はこの墓を守り続けるのだろう。
ふと、ギードはまわりに鱗が落ちていることに気付いた。
スライムナイトと交戦したときに、銃弾か斬撃か、それとも爆発かで剥がれ落ちてしまったものだろう。
「テリーや」
ギードがテリーにドルバの鱗を手渡す。その数は二枚。
「ルカくんに会ったら、渡してやらんとな」
「うん…」
テリーは二枚の鱗をポケットに入れる。
「トンヌラよ、これはお主の分じゃ」
トンヌラは鱗を頭に貼り付けてみる。少したくましくなったような、気分が落ち着いたような、そんな気がした。
ジェノラ山は人が来ないだろうが、亀が怪我人を連れて山登りするのはあまりにもきつい。
風の強いこのステージだ。山頂は風が吹きすさんでいるかもしれない。強風は気付かないうちに体力を奪い去ってしまうものだ。
ルカを探すのも含め、パルメニ盆地内に行くことにした。
カズスという村にも、宿屋や道具屋が存在しているはずだ。
そこなら、ルカやわたぼう、わるぼうにあえるだろうか。
【ギード 所持品:首輪
第一行動方針:ルカとの合流 第二行動方針:首輪の研究】
【テリー(DQM)(右肩負傷、若干回復)
所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×2、鋼鉄の剣
行動方針:ルカ、わたぼう、わるぼうを探す】
【トンヌラ(トンベリ)(まだ少し精神不安定状態)
所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ、りゅうのうろこ
行動方針:テリー達についていく??】
現在位置:カナーン北西の山沿い】
生まれたばかりの命は祝福される。
サスーン城から……いや、クリムトと再会した時から、神なんてクソッタレのド畜生としか思っていないが。
少なくとも幸運は、自分を愛してくれているらしい。
易々と手に入った護衛を見やりながら、アリーナ2は唇の端を吊り上げる。
片腕で、頭もイカれているとはいえ、姉とやらに対する執着心は凄まじい。
命を賭けて、どころか、命を捨ててでも自分を守り抜いてくれるだろう。
さて、この手駒をどう使うべきか。
目障りな城の連中を仕留めるのに使うか。あくまでも生きた盾として傍に置いておくか。
その前に実力を確かめておかなくては話にならないが。
そんな算段をするアリーナ2に、前を往くテリーが振り返る。
「ファリス、どうしたんだ? 早く行こうよ」
……姉に成りすます。それはいい。
問題は、自分と『本物の姉』との名前の違いをどう誤魔化すかだった。
本音を言えば、呼び名なんかファリスだろうがミレーユだろうが構わない。
だが、ご丁寧にも写真つきの参加者名簿がある以上、そんなことも言っていられないだろう。
この顔がある限り、自分はアリーナだ。甘いことしか言わないサントハイムの王女サマだ。
澄ました顔の勇者サマと仲が良い、吐き気がするような偽善者だ。
その事実を利用してこそいるが、内心では不愉快だとしか思っていない。
お人よしの脳筋姫と一緒くたの扱いをされて、面白いはずがない。
「名簿にはアリーナっていう偽名で乗ってて、みんなもそう呼んでるの。
でも、二人きりの時なら、テリーが呼びたいように呼んでいいからね」
……そう言ってしまったのも、その辺の不満が根底にあったのかもしれない。
そして、テリーが何を考えて偽りの姉の名を選んだのかは、アリーナ2の知ったことではなかった。
テリーと姉が引き離された理由も、探りを入れてみようとは思っていない。
とどのつまり、どうだって良かったのだ。テリーの考えや事情など。
重要なのはどうやって利用してやるか。そこだけで。
――シンプルな思考の仕方は、アリーナ譲りと言えるのだろうか。
欠けた心が宿る瞳は、果てしなく冷酷に、少年の姿を映していた。
行く手に見える、樹木の形をした消し炭と抉られた大地。
ラムザは周囲を警戒しながら、その一つに手を触れる。
温かみは、もう、感じられない。
「戦闘があったとしても大分前、か。
状況からして雷撃魔法みたいだけど、範囲も威力も桁違いだな。
さっき言ってた雄叫びみたいな音って、これのことかな?」
そう言って、ラムザは足元のアンジェロに目をやった。
『雷の音とは違うと思ったけど……』
不安げに身を摺り寄せつつも、アンジェロは首を傾げる。
「まぁ、音の件はいいや。
とにかく、並みの術者にできる芸当でない事だけは確かだよ。
気をつけて行動した方が良さそうだ」
『そうね。私の知り合いでも、ここまでできるのは本気になったリノアしかいないもの』
「……リノアって、君の飼い主の女の子だよね?
そうは見えなかったけど、名の知れた魔道士か何かなのかい?」
『有名なのはお父様とお母様の方よ。それに、リノアは魔道士じゃなくて魔女よ』
魔女。その異名を持つ存在の禍々しい姿が、ラムザの脳裏を過ぎる。
「あのさ……まさかとは思うけど、その子は巨大な竜を従えていたりしないだろうね?」
『違うわ。彼女を守ってるのはスコールよ。
あとは森のフクロウの仲間達と、Seedの人達かしら』
『スコール』『森のフクロウ』『シードの人達』。
それらの単語からラムザが想像できるものは、字面通りの光景でしかない。
「話……通じるといいなぁ」
どこか根本的な部分を勘違いしたラムザは、引きつった笑いを浮かべながら、力なく肩を落とした。
「さて、どうしよう。ここじゃあちょっと見晴らしが良すぎるかな」
『そうね、もう少し身を隠せる場所が良いと思うわ。
ゆっくりお昼ゴハンも食べたいし』
「あれ、もうそんな時間だっけ」
『そんな時間どころか、とっくに過ぎてるわよ。ほら』
言われるまで気づかなかったが、確かに太陽は大分傾いてきている。
詳しい時間はわからないが、午後三時過ぎといったところだろうか。
「少し山へ入って、そこで食事にしようか」
もちろん、食事中に探している相手とすれ違いになってしまう可能性も否定できないが、
こんな場所で食事を取るリスクを考えれば、数%に満たない確率を気にする余裕はないだろう。
万が一とはいえ、パンを咥えたまま死ぬようなことになってはご先祖様や仲間達に顔向けできない。
『山って、あっちの?』
「そうだけど、なんで?」
ラムザの問いに、アンジェロは俯きながら答える。
『何となくだけど……嫌な予感がするの』
「動物のカンってやつかい?
まぁ、本格的に山登りするわけじゃないし、深入りしなければ大丈夫だよ」
ラムザはそう言って、山の麓へと歩き出す。
それでもアンジェロは何かを言おうとしていたが、やがて諦めたように首を振り、彼の後を追った。
アリーナ2の後を追って山道を下りながら、テリーは思う。
――城の人間を皆殺しにしてでも、ミレーユを取り戻す――
その誓いを忘れてしまったのは、いつのことだったろうかと。
『姉』は今、テリーの傍にいる。
けれど、彼の心は満たされていない。
姉が遠くに行ってしまうような喪失感。手を伸ばしてもすり抜けそうな虚無感。
必要とされないのではないのかという寂しさ。
――もしかしたら、それは、心のどこかが真実に目を向けていたせいかもしれない。
けれど、テリー自身は自分の無力さのせいだと思っている。
姉のことを忘れ、引き換えとばかりに手にした強さ。
姉を守るために力を求め、確かに身に付けたはずなのに、守るどころか何の役にも立てていない。
そんな不甲斐なさと、姉を失う恐怖に、心が屈してしまっているのだと。
強くなりたい、今度こそ姉を守りたいと思いながら、テリーは歩く。
その姿を見かけた青年がいたことは――果たして不運だったのか、幸運だったのか。
「テリー!」
行く手の方から声が上がる。
視線を向ければ、岩の陰から飛び出した、特徴的な前髪のハネ。
そして見覚えのある、精悍なのか平和そうなのかわからない顔。
「……ラムザ?」
「やっぱりテリーか! 良かった、無事みたいで。
もうビックリしたよ、気づいたら君達とはぐれて一人になっちゃってたしさ。
湖の島でアンジェロ――あ、この犬ね。女の子なんだって――見つけて、一緒にここまで歩いてきたんだ。
いやもう疲れちゃったよ。誰も見つからないしさ」
再会早々に、ラムザは呆れるほどのスピードで自分の行動を説明し始める。
アリーナ2はおろか、レーベの件で多少は慣れたはずのテリーでさえ、口を挟む隙を見出せない。
心なしか、アンジェロも呆れているように見える。
そんな二人と一匹の反応を気に止めもせず、ラムザは言葉を続けた。
「だからね、向こうの方で休憩しがてら食事をしてたんだ。
そうしたらアンジェロが君の声を聞きつけてくれたんだよ。
ねぇ、君がここにいるってことは、ファリスも近くにいるんだろ?」
ラムザは事もなげに言った。同時に、アリーナ2が身を固くする。
それに気づかず、テリーは苦笑しながら答える。
「何言ってるんだよ。ファリスならここにいるじゃないか」
「……は?」
間抜けた声を上げながら、ラムザは目をぱちくりさせた。
テリーが指し示したのは、栗色の髪に赤目の少女。
どう見てもテリーと同い年、下手をすれば年下かもしれない。
当然のことながら、紫髪に緑眼のファリスとは似ても似つかない。
そして、混乱するラムザに追い討ちをかけるように、少女が叫ぶ。
「テリー、騙されないで! そいつはあたしを襲ったモンスターが化けてるのよ!」
「はぁ!?」
わけがわからない。一縷の望みと助けを求めて、ラムザはテリーに目をやった。
だが……
「なるほどな。ラムザの格好で俺たちを謀ろうというわけか!」
あろうことか、テリーは雷鳴の剣を抜き放ち、ラムザに迫る。
「ま、待て、僕は本物だッ! 話を聞いてくれテリー!」
「問答無用!」
鋭い刀身が稲妻のように疾る。
ラムザはジャンプでその一撃を交しながら、全力で情報を整理し始めた。
わかっていることは以下の三点。
『理由はわからないが、テリーはあの少女をファリスと思い込んでいる』
『少女の方は、僕に対して明確な敵意と悪意を持っている』
『本物のファリスはテリーと同行していない』
そこから導き出される仮説は二つ。
一つは、少女が幻影の魔法か何かでテリーを騙し、操っている場合。
その場合、ファリスは少女に殺されたと考えるべきだろう。
もう一つは、テリー自身が何らかの理由で精神を病み、ファリスと少女を取り違えている場合。
この場合、ファリスもテリーの実の姉ではないという可能性が生まれるわけだが……
レーベでのかみ合っていない会話からして、真実であるとするなら後者か。
岩の上に着地し、再び宙へと飛び上がる。同時に、テリーの斬撃が虚空を切った。
大きな弧を描く刃の軌跡に、ラムザは思わず悪寒を覚える。
一秒でも遅れていれば、そしてジャンプをつけていなかったら、今ごろ胴体を真っ二つにされていただろう。
(どうにかして、テリーを正気に返せないか?)
パラノイア――俗に言う妄想病患者への説得は困難を極めるが、それ自体は不可能ではない。
自分の話術を持ってすれば、何とか上手くやれる自信はある。
だが、問題はテリーが聞く耳を持ってくれないという事だ。
卓越した話術でも、聞いてくれなければ文字通りお話にならない。
(あるいは、少女に手を引いてもらうよう頼むか……)
そんなことも考えたが、アリーナの表情を見た瞬間、その気は失せた。
何せ戦いを見ながら、唇の端を吊り上げて笑っていたのだ。
その邪悪さたるや、主催者の魔女とも引けを取るまい。
しかも一対一ならともかく、戦況は彼女に圧倒的有利。
果たして説得で手を引かせることができるか?
答えはNO。最低でも対等の状態に持ち込まなければ、この手合いは話し合いには応じない。
(下手に逃げれば、あの剣の魔法を使ってくるだろうし……)
雷鳴の剣の威力はレーベで見ている。
広範囲に降り注ぐ雷撃の雨は、避けることも防ぐ事も厳しいと思えた。
まして、戦線を離脱するならばアンジェロを連れて行かなくてはならない。
(……アンジェロ? そうだ、アンジェロはッ!?)
ラムザは慌てて視線を巡らせる。あの利発な犬の姿はどこにもない。
いち早く戦場から逃げてくれたのだろうか、と考えた瞬間――
吼え声と共に、短い悲鳴が上がった。
茶色の弾丸に直撃されて、テリーの身体が宙を舞う。
『大丈夫、ラムザ!?』
「アンジェロ!?」
テリーを蹴飛ばし、華麗に着地する。
魔女のペットという肩書に相応しい雄姿を見せつけながら、アンジェロは吼えた。
『貴方たち! これ以上ラムザに手を出すというなら、私が相手になるわ!』
当然、言葉自体はラムザ以外には通じないのだが、ニュアンスは伝わったようだ。
「ふざけるな、畜生の分際で!」
苛立ったテリーが雷鳴の剣を振り上げる。
美しい刀身に雷光が漲り、雷雲が渦を巻く。
だが――その魔力が解き放たれる事はなかった。
――アリーナ2がテリーをけしかけたのは、彼の利用価値を試すという目的があったからだ。
かつての仲間と姉の言葉、どちらを信用するのか。
姉を信じるとして、果たして仲間に牙を向く事ができるのか。
そういったメンタル的な面では、まだ合格ラインと言えたかもしれない。
しかし。
「つっかえなーい。こんな奴ら仕留めるのに何分掛かってるの?」
強烈なブローが、無防備なテリーの背中を捉える。
悲鳴を上げる間さえ置かずに、ハイキックが雷鳴の剣を弾く。
回し蹴りが鈍い音と共に左足に食い込み、四撃目を――入れかけたところで、腕を止め、後ろに飛び退いた。
突進をかわされたアンジェロは、けれどアリーナ2の追撃を受ける事無く、踵を返して彼女と相対する。
唸り声を上げるアンジェロと、険しい視線を注ぐラムザから間合いを取り、アリーナ2は肩を竦めた。
「もう、腕一本無くしてる時点で気付くべきだったわね。
こんな足手まとい、もういらないわ」
「ね……え、さん?」
地に伏し、鮮血を口から零し、テリーが顔を上げる。
捨てられた子犬のように、必死で縋るものを求めるように、アリーナ2に視線を注ぐ。
けれどアリーナ2は、鼻で笑い飛ばした。
「バーカ。あたしと、犬にも劣る雑魚が、血の一滴でも繋がってるわけないじゃない。
自惚れないでよね、このキチガイ男。
そのまま死んでよ。邪魔だし、目障りだから」
そして、テリーは見た。
スカートの中から覗く尖った尾を。悪魔のような笑顔を。
どこまでも冷たい、蔑むような赤い瞳を――
「テリー! わかったろう、そいつは君の姉さんなんかじゃない!」
ラムザが叫ぶ。
「思い出せ! 君の瞳と同じ色の髪を持つ、あの勇ましい女性の事を!
緑色の瞳を持つ、優しい女性の事をッ!
妹を、君を、家族を思いやる気持ちを持った――君の姉さんの姿をッ!」
その言葉に紫色の瞳が揺れた。
魔王が滅び、失われた記憶に気づいた時に、本来の色を取り戻した瞳が。
「そんなこと思い出す必要なんかないわよ!
どうせみんな、ここでくたばるんだからね!」
真紅の風がラムザに迫る。
アリーナ2の拳が唸りを上げ、走る。
神速の四連撃に一度でも捉えられれば、後は避けることもできぬままサンドバックと化すだろう。
けれど。
「くたばりはしないさ。こんなところで」
ジャンプを身に付けているラムザの逃げ場は、前後左右だけではない
山の中という場所は、確実に彼の味方をする。
斜面や岩、高低差のある地形。そして生い茂る木の葉の陰。
着地点を見定めることさえ容易ではないのに、まして、空を駆ける相手を拳で捉えられるだろうか。
「一つ『予言しておこう』。死ぬとしたら、僕ではなく『君の方』だ」
「なんですって?」
眉を潜めるアリーナ2を見据え、ラムザは静かに言い放つ。
「予言しておこう。君が夜明けの光を見ることは無い。
『死神の鎌は、朝が訪れる前に君の魂を刈り取る』」
不吉さに満ちた、悪寒さえ感じさせる、死の宣告。
だが、アリーナ2は当然のごとく間に受けず、ラムザに殴りかかった。
「はいはい、わかったわ。
わかったから、大人しくあたしに殺されなさいよ!」
――彼女は気づかなかった。
テリーの服の裾を噛み、必死で引き摺っていくアンジェロに。
ラムザも気づかなかった。
テリーが、アンジェロに抗うように、雷鳴の剣へと手を伸ばしていたことに。
片腕は、とうの昔にない。
片足は有り得ない個所で、有り得ない方向に曲がっている。
純白に輝いていた背中の偽翼は、砂と渇いた血で汚れ、見る影もない。
どこが壊れてしまったのか、涙は止まることを知らない。
精神も肉体も悲鳴を上げているはずなのに、どこにそんな力が残っていたのか。
逃げようとするアンジェロとは反対に、前へと這いずり――その束を掴む。
テリーが手にした強さの象徴とも言うべき、その剣を。
「――うおあぁあああああああああああああああああああああっ!!」
絶叫と共に、剣から魔力が迸る。
全員の視界を紫電が駆ける。
降り注ぐ光の雨は、アリーナ2を、ラムザを、アンジェロを、テリー自身をも飲み込んで――
――どれほどの時が立っただろう?
汚れた翼がはためいて、テリーの身体が浮き上がる。
焦点の合わない虚ろな瞳が、地面に倒れたラムザとアリーナ2を捉える。
けれどそれは数瞬のことで、テリーは二人に背を向けると、ゆっくりと空を飛び始めた。
「レ、ナ………」
ラムザの言葉でも、ファリスの顔を思い出させることはできなかった。
思い出せるはずがないのだ。
テリー自身が殺めてしまった姉の顔を、壊れた心が思い出させてくれるはずもない。
だからテリーは会ったこともない『妹』を求める。
彼女ならば、姉の顔を覚えているだろうから。
彼女ならば、偽者や魔物に惑わされることもなく、本物の姉を見つけ出してくれるだろうから。
「レナ……一緒に、姉さんを探そう……」
テリーは呟く。切ないまでの願いを込めて。
「暮らそう、三人で……もう一度、静かに……」
祈るように、呟く。
「誰にも邪魔させないから・……邪魔な奴は、俺が、みんな片付けるから……
だから、一緒に……今、迎えに行くから・……」
――その瞳に宿った感情は、果たして何と呼ぶべきなのか。
左腕を無くした天使は、折れた左足をだらりとぶら下げ、作り物の翼を広げて。
壊れた誓いと家族の幻影だけを胸に、一人、宙を駆けた。
身体が痺れて動かない。
浮いては沈み、沈んでは浮く不安定な意識に、手首の神経がかすかな違和感を訴える。
『……、殺し……ない。僕も……リーを追い……ないと……』
男の声。
犬を連れた剣士の声だと気づくには、数秒の時間を要した。
『絆を……い……る心を利用して……踏み……った罰だ……』
声はやけに遠かったが、薄目を開けてみると、男は直ぐそこに立っていた。
足元には何故か蔓草が落ちている。
おそらくは、両手首を縛った残りなのだろう。
こんなもので縛ったって、本気を出せばすぐに引き千切れるのに。
『死が訪れる、……時まで……自分の罪を、悔いろ……』
下らない、とアリーナ2は笑う。
自分は祝福された命だ。死が訪れるはずなどない。
現にラムザでさえ、止めを刺してはいないではないか。
生きていると言う事が、幸運に愛されているということの最大の証明。
死神だろうと魔王だろうと魔女だろうと、自分から命を奪い去るなどできるはずもないのだ。
犬の吼え声。
遠ざかっていくラムザ達の足音を聞きながら、アリーナ2の意識は再び闇に落ちる。
その寸前、彼女は一つの思いを胸に刻んだ。
(上等じゃない、あのバッタ男!
夜明けまでに死ぬっていうなら、それまでに皆殺しにしてやる!
キチガイ男も、犬ッコロも、絶ッ対に仕留めてやるからっ……!!)
ラムザが告げた死の予言と、アリーナ2が抱いた殺戮の誓い。
果たして成就するのはどちらが先か――
知る者は、まだ、いない。
【アリーナ2(分身) (HP2/5程度、死の宣告(夜明けに発動)、気絶)
所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 万能薬
第一行動方針:夜明けまでに皆殺し(ラムザ、テリー最優先。アリーナは殺さない?)
最終行動方針:勝利する】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯】
【テリー(DQ6)(HP1/3程度、左腕喪失、左足骨折、低空飛行中)
所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
第一行動方針:レナを見つけ出し、彼女と一緒に姉を探す
基本行動方針:自分の行動を邪魔する者、レナの敵になりうる者を皆殺しにする】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯→移動】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ
第一行動方針:テリーを追い、保護する
第二行動方針:仲間を集める(ファリス、アグリアス、リノア優先)
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯→移動】
>>98 ジャンプを身に付けているラムザの逃げ場は、前後左右だけではない
山の中という場所は確実にラムザの味方をする。
斜面や岩、高低差のある地形。そして生い茂る木の葉の陰。
着地点を見定めることさえ容易ではないのに、まして、空を駆ける相手を拳で捉えられるだろうか。
「それに死ぬとしたら、僕ではなく君の方だね」
「どうして? 何か必殺技でも隠し持ってるっていうの?」
余裕の笑みを浮かべるアリーナ2を見据え、ラムザは笑い返しながら言い放つ。
「決まってるだろう。強い人ってのは、他者を庇うだけの余裕を有しているものさ。
人の力を頼りにして、あまつさえ簡単に使い捨てるなんて、実力の無い『雑魚』だけが取る行動だよ。
君は自分が強いとでも思ってるようだけど、とんだお笑い種だね。
井の中の蛙大海を知らず。君は井戸の中でいきがってるカエルと同レベルだよ」
プツン、と音が聞こえたような気がした。
「あたしが、雑魚……?」
アリーナ2は拳を止め、真紅の瞳をラムザに注ぐ。
背筋が凍りそうなほどの殺気を、しかし彼は平然と受け流しながら、言葉を続けた。
「おっと失礼。
カエルは自力で生きるし、他者を庇うこともするから……それができない存在はカエルより下だね。
今度カエルに会ったら謝っておかないとね。同じ扱いをするなんて悪い事をしたよ。
……ああ、まだそこにいたの、君?
尻尾巻いて逃げたと思ったんだけど、やっぱり雑魚は頭も悪いんだね」
にっこりと笑うラムザに、真紅の風が迫る。
その一撃を避けられたのは、奇跡か、ラムザの実力の賜物か。
だが、怒りで我を忘れたアリーナ2は、ラムザが考えた以上のスピードを持って地面を駆けた。
(しまった、挑発しすぎたか?)
ラムザが舌打ちする。その視界に映るのは、着地点に先回りし、地面を蹴るアリーナ2の姿。
(早い! ……つかまるかッ!?)
>>98 ――アリーナ2は気付かなかった。
ラムザが何故、悪口を並べたてて、彼女の気を引こうとしたのか。
彼は、気付いていたのだ。
テリーの服の裾を噛み、必死で引き摺ろうとするアンジェロの姿に。
だが、ラムザも見逃していた。
テリーが、アンジェロに抗うように、雷鳴の剣へと手を伸ばしていたことだけは。
片腕は、とうの昔にない。
片足は有り得ない個所で、有り得ない方向に曲がっている。
純白に輝いていた背中の偽翼は、砂と渇いた血で汚れ、見る影もない。
どこが壊れてしまったのか、涙は止まることを知らない。
精神も肉体も悲鳴を上げているはずなのに、どこにそんな力が残っていたのか。
逃げようとするアンジェロとは反対に、前へと這いずり――その束を掴む。
テリーが手にした強さの象徴とも言うべき、その剣を。
「――うおあぁあああああああああああああああああああああっ!!」
絶叫と共に、剣から魔力が迸る。
全員の視界を紫電が駆ける。
降り注ぐ光の雨は、アリーナ2を、ラムザを、アンジェロを、テリー自身をも飲み込んで――
>>100 浮いては沈み、沈んでは浮く、不安定な意識。
忌々しい声をどこか遠くで聞きながら、アリーナ2は必死で覚醒しようと抗い続ける。
けれど、全身を走る激痛がそれを許さない。
『……大丈夫だよ。思ったより軽症で済んだ』
闇の向こうで喋っている、言いたい放題に言ってくれた、クソッタレの男。
雷が与えた重い痺れさえなければ、その舌を引き千切って犬に食わせていただろうに。
『テリーが操ったのかな。どうも、彼女に集中して落ちたとしか思えないんだけど』
そう。天から降り注いだ雷撃の大半は、アリーナ2の身体を打ちのめした。
――実の所、それは「あらゆる魔法をかわすことができず、必ず効果が発揮されるようになる」という
『悪魔の尻尾』の呪いがもたらしたもので、テリーが意図したわけではないのだが。
少なくともラムザと――ラムザの考えを聞いたアリーナ2は、テリーの仕業だと信じた。
『まぁいい、早くテリーを追おう。
混乱してるみたいだし、僕らで保護してあげないと……』
ワン、という犬の吼え声がして、足音が二つ遠ざかっていく。
二人が止めを刺さなかったのは、ピクリとも動かない彼女を死んだと勘違いしたためか。
それとも、テリーを追い駆けるため、あえて無視しただけなのか。
アリーナ2にはどうでもいいことだ。
ただ、この身体が自由を取り戻したら、自分が『雑魚』ではないことを証明してやろうと思い。
最低でもあの二人だけは、この手で腸を抉り出して、散々苦しませた末に殺してやると……
そんな殺戮の誓いを胸に刻んでから、彼女は押し寄せた闇に意識を委ねた。
>>101 【アリーナ2(分身) (HP1/5程度、気絶、全身麻痺(時間経過で回復))
所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 万能薬
第一行動方針:皆殺し(ラムザ、テリーが最優先。アリーナは殺さない?)
最終行動方針:勝利して、自分の力を証明する】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯】
【テリー(DQ6)(HP1/3程度、左腕喪失、左足骨折、飛行中)
所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
第一行動方針:レナを探し、姉を見つけ出す
基本行動方針:自分の行動を邪魔する者、レナの敵になりうる者を皆殺しにする】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯→移動】
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)
所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ
第一行動方針:テリーを追い、保護する
第二行動方針:仲間を集める(ファリス、アグリアス、リノア優先)
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯→移動】
不意に、意識が取り戻された。
「…うっ…」
全身を走る鈍痛に、思わず呻く。
どうしてこんな事になったのか思い出そうとするが、頭がやけに惚けていてうまく物事を考えられない。
やっとの事で目が開けられた。
しかしどうも焦点が合わず、視界はぼやけている。
「…おお、やっと目え覚めたか」
その時、疲れきった声が聞こえた。
声のした方を向くと、そこには今にも倒れそうな様子のフルートがいた。
うう、と再び呻きながら、先程まで気を失っていた青年、サックスは重々しく起き上がった。
「…本当に…すい、ケホッ!すいません、僕が、力不足だったばっかりに」
「だから、今謝ったって、しょうがねえだろ。それに、ありゃお前のせいじゃねえよ」
フルートから大体の事情を聞いてから、サックスはひっきりなしに謝りつづけている。
彼女の話によると、自分はあの火のような髪をした暗殺者との戦いの後、すぐに意識を失ってしまった。
その間に暗殺者は逃げ去り、鉱山の出口は完全に塞がれ、毒に蝕まれた自分をフルートがずっと治療していたらしい。
つまり、状況があらゆる面で絶望的になったということだ。
まず、2人とも満身創痍だ。自分の体の毒は完全に治療できていないという話だし、フルートに到っては目も当てられない。
次にここから移動することも出来ない。岩に塞がれた道を何とかしない限り出る事はかなわず、翌朝には首輪がボン、だ。
叫びでもして助けを求めるのは、このゲームの性質からして愚考としか言えない。
とどめに彼らには仲間がいない。ゼル達さえいてくれたら脱出の方法を見出せたかもしれないが、
残念ながら今はそうもいかない。よって、外からの助けは期待できない。
まさに八方塞がりだった。
八方塞がりどころか、破滅だ。
「…サックス」
「はい?」
少し間の抜けた返答を返した途端、フルートが何かを投げてよこした。
うわっと声を上げて受け取ると、それは彼女の支給品袋だった。
「…フルートさん?」
その真意をはかりかねて、彼はフルートの方を見やる。
と、女僧侶は壁に手をついてなんとか立ちあがり、何かの呪文を早口に詠唱し始めた所だった。
…まさか。
サックスの脳裏に浮かんだ予感を裏付けるように、フルートの体が一瞬だけ紅く光る。
「フルートさん!やめ…」
「………メガンテ」
フルートも、一挙一動が実に辛そうなサックスを見つつ、思考を巡らせていた。
彼女は自身の状態について、あることを悟っていた。
もう長くない。
サックスと暗殺者が戦っているとき、自分は加勢はおろか立つ事すら出来なかった。
さらに、彼の治療のために呪文をしこたま使ったことが、すでに限界を超えた体に追い討ちをかけてしまった。
これはもう休んだり治療したりすればどうにかなるような物ではないし、
あと一度でも全力を出したら今度こそ取り返しがつかないだろう。
しかし、どの道ここでじっとしていれば死ぬしかない。
…なら。
それなら。
ありえない事が起こった。
道を塞いでいた大岩が、焔に包まれたのだ。
といっても、それはただの炎、つまりファイアなどで呼び出されるそれとは、明らかに違った。
血のように紅いのだ。
サックスが目を白黒させている間にも、大岩を焼く焔はその勢いを増して行く。
メガンテ。
対象とされたものは、いかなる物であっても一撃で灼き尽くされる最強の呪文。
同時に、圧倒的な威力と引き換えに術者の命まで奪ってしまう最悪の呪文でもある。
次の瞬間、焔は不気味なほど紅い輝きを放ち、やがて目を開けていられなくなった。
サックスが閉じていた目を瞬き、開いた時には、道を塞いでいた岩石は影も形も無く、代わりに外からの陽光と空気が小部屋の中に流れてきていた。
解けて無くなりでもしたのか、はたまた蒸発してしまったのか、サックスにはわからなかったが、
一つだけはっきりしていたのは、岩が完全に消滅したということだけだ。
鉱山からの出口が開かれた。
だが。
文字通り力尽きたフルートが、ゆっくりとその場に倒れこむ。
その身体が地面に叩きつけられる前に、サックスが手を伸ばして受け止める。
その肩は、彼女がこれまで発揮してきた力からは想像も出来ないほど小さく、頼りなかった。
「おい…サックス…道、開けたぞ」
「何言ってるんですか!こんな無茶して!!」
弱弱しく呟くフルートに、サックスはかすれ気味の声で怒鳴る。
そんな彼に、彼女は言った。
「…どうせここにいたら助からねえんだ。それならお前だけでも…てな」
「そんな…」
愕然とするサックス。フルートは続ける。
「…いいってこった。どの道あたしはもう限界だった」
サックスも、それは認めざるを得なかった。
度重なる戦いで限度を超えた力を使い過ぎ、
比較的余裕のあった魔力まで彼のために大きく削ってしまった彼女には、
もう自分の命を維持する力すら残されていない事ぐらい、彼でもわかった。
「そうだ…サックス、もし仲間に会ったら…言っといてくれねえか…
アルスに、セージに…ローグってんだけどよ…
あた…あたし の ことは…早 いとこ … 忘れてといて くれって…」
彼女は伝えるよう言った。
「忘れろ」と。
それは残される仲間を気遣っての事なのか、それとももっと別の意思なのか。わからなかった。
重苦しい空気の中、「…あ、お前は違うからな」と女僧侶は再び口を開いた。
「お前…あたしは、お前の、命の恩人…なんだからな。 一生…忘れんなよ」
言って彼女は笑った。笑ってなどいられない状態なのに。
「…ええ、忘れません。絶対に」
サックスも笑い返した。笑い返すしかなかった。
「絶対か?」
「絶対です」
「そうか…ならいい…」
フルートの声が明らかに小さく、弱くなった。
目を、閉じる。
「…にしても…疲れたな…」
それが彼女の、最後の言葉となった。
「フルートさん…」
サックスは再び動くことのない身体をそっと横たえると、彼女の分の支給品を自分の支給品袋に入れ、立ち上がった。
「ありがとう…」
謝りは、しなかった。
そしてサックスは、結構な時間をかけてミスリル鉱山から脱出し、ふたたび青く晴れ渡った空の下に出た。
岩を消滅させてしまうほどの焔に包まれた筈なのだが、途中で何度か寄りかかった壁は不思議と冷たいままだった。
空はどこまでも青かった。忌々しいほどに蒼かった。
村は廃墟と化していた。
サックスはその惨状に暫く驚き、これからどうするか少し考えた後、まず村を調べる事にした。ロランの事が気にかかったからだ。
暗殺者の言った事は事実かどうか、彼の亡骸を探して確かめようと考えた。
が、村に向かって最初の一歩を踏み出した時、少し眩暈がした。
次に頭痛が走り、立ち止まる。
疲労にも似た重圧が絶えず身体を苛む。
それもそうだ。
サックスを追い詰めたイクサスの毒は、飛竜草の威力に彼独自の工夫が加えられ、
ただ食べてしまうよりも数倍は効率よくダメージを与える仕組みになっていた。
その威力は、例えフルートが献身的に治療してくれても、完全に除去できるものではなかった。
だが、それがどうした。
サックスは独り呟き、跳ね除けるように頭を振る。
フルートのおかげで、意識を失うほどだった体は毒を受けた時と比べれば随分軽い。
体が異様に熱くて重いのを我慢すれば歩けるし、走れるし、もう少し無理をすれば戦う事だって出来る。
のしかかる苦痛を振り払い、サックスは歩き出した。傍から見れば、決して安定した歩き方とは言えない。
しかし、彼はしっかりと大地を蹴って歩いていた。
――フルートさんは命と引き換えに僕を助けてくれた。その間、僕は何をしていた?――
自問した。そして自答する。
――ただ悩んでいただけだ――
それがサックスには悔しかった。悔しくてしかたがなかった。
かつて彼は家族を護る事が出来なかった。そして今、またも仲間を死なせてしまった。
何も出来なかった。
だが、悔いるのはもうやめにしてしまおうと、思う。
悩むのもだ。それよりは前を向いて歩きつづけよう。
そう決めた。
後悔するのは全てが終わった後でいい。
何もかもが終結した後で、好きなだけ頭を抱えて悩めばいい。
だから今は歩きつづけよう。アルティミシアを倒し、この狂気に満ちたゲームが終わるその瞬間まで。
決意を胸に、サックスは着実に歩きつづけた。
だが、彼の決意は意外と早く挫かれるかもしれない。
カインとスミスがカズスの村の上空に飛来し、なおかつサックスの存在にも気付いていたからだ。
【サックス (負傷、軽度の毒状態)
所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
第一行動方針:村を調べて回る 第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地;カズスの村、ミスリル鉱山入り口近く】
【カイン(HP5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界(FF3)の歴史書数冊
第一行動方針:サックスを上空から監視、可能ならば殺す
第二行動方針:カズスの村でフリオニールと合流し、罠を張る
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地;カズスの村上空】
どうやら黒髪の追跡者は、ようじゅつしの杖の効果で遠くへ飛ばされたらしい。
さらなる追跡者も現れず、ピエールは緊張の糸を多少緩める。
と、それまで気力で抑え続けていた体の重さが、一気にぶり返してきた。
体の一部であるはずの騎士さえ鉛のように重く、ついに支えきれずにバランスを崩す。
(おのれ…、こんなところで…)
身体を引きずりそれでも進もうとするが、もうどの方角へ進んでいるかもわからない。
それも、進むといっても何センチかずつといった具合だ。
(行かねばならぬのだ、私は…)
安全な場所で休息を取る為か。
主のために一人でも多くの命を奪う為か。
不意に、レーダーがヒトの存在を告げる。
反応はひとつだが、この状況では危険極まりない。
精神を集中させて金縛りから脱出しようとするが、怪我と疲労があいまって、なかなかうまくいかない。
もはや逃れることは不可能か。
ピエールは最悪の場合も覚悟して、どうやら遠距離から攻撃を仕掛けようとはしない、そのヒトの近づくのを待った。
少しずつ、距離が詰められる。
殺気を感じないのは幸いなことだ。
目だけを、レーダーの反応のある方向へ向ける。
男だ。目に包帯を巻いている。盲ているのか?
もしかして、こちらの存在に気づいていないのか?
ピエールは知らない。
クリムトはじっと、ずっと、ピエールを”見つめて”いた。
そしてついに、二つの光の点は重なるように一致した。
クリムトは足を止め、ピエールに顔を向ける。
別にピエールを見るためというわけではなく、一応の礼儀のようなものだ。
その行動と、そしてクリムトの言葉によって、ピエールは自分の存在が気づかれていないはずはなく、
むしろ自分という存在を理由に、彼がここに足を運んだのだということを理解した。
クリムトは言った。
「そなたが、村の悪意の根源か?」
誰か、大切な者を探そうとしている者の気配が過ぎてなお、クリムトは村へと向かい続けていた。
そのときはもうすでに村のすぐ近くまで来ており、そして村の中にある死の気配さえ、感じ取れていた。
だがその直後空気が、いや、世界を構成する流れそのものが、一つの存在をクリムトに知らしめた。
殺意を持つものの気配。
自分をこの村に引き寄せたそれが、いま村を離れ北へ向かっている。
その光景を目で見ているより遥かに鮮明に感じ取り、クリムトは気配を追って北を目指した。
存在を鮮明に掴み取った感覚は一瞬の後には去っていたが、気配の位置だけは明確に分かっている。
その気配が、あるときからほとんど動かなくなっていたことも。
そしてようやく、クリムトはピエールの前に足を止めた。
「そなたが、村の悪意の根源か?」
ピエールは慎重に相手を観察する。
金縛りはようやく少しずつ改善されていた。
そっとスネークソードに手を伸ばす。
けれど…。
「やめるのだ。これ以上罪を重ねてはいかん」
視力を失った者に、どうやってこの微妙な動きを察知するすべがあったかは知らないが、
知られてしまった以上ピエールは堂々とスネークソードを構えた。
使い慣れない武器だ。
激しい戦闘になれば曲線を描く刃が自らさえ傷つける可能性もある。
だが、盲目の男を斬りつけるくらいは出来るはずだ。
「罪を重ねることに躊躇いはない」
吐き捨ているように言い放ち、杖一本の男に襲い掛かる。
クリムトは後退して杖を使って一撃を受け止めるのではなく、杖を捨て、前進して剣を持つピエールの腕を押さえた。
「己が行っていることが赦されざることと知ってなお、改めようとせぬのか?」
「赦されるつもりなど毛頭ないのだ。私はただ、成すべきことを成すだけ……っ!!」
クリムトがピエールを押さえられるのも、まだピエールの身体に金縛りの痺れが残っていたためだ。
時間が経てば、この痺れは治まる。
その時間を稼ぐために、ピエールは今出せる全開の力で押さえられた腕を動かそうと努めた。
しかし、時間が経てばもう一つの可能性も高くなる。
今度のそれは、あまりに短い周期で訪れた。
体が、一気に何倍もの重さを持つように感じられる。
意思の伝達速度が極端に落ち、重力に引き寄せられるように崩れる。
そのさなか、スネークソードは地面に先に落ちた。
ピエールも倒れ掛かるが、クリムトはその彼を抱きとめた。
「力を抜くのだ。抗えば、それだけ痺れは長く続く」
ピエールは言われた通り力を抜く。
というより、体力の限界がついに来てしまったのだ。
クリムトはピエールを地面に横たえて、そして、回復呪文を唱えだした。
暖かな光が、ピエールを包み込んだ。
幾らかの時が経った。
ピエールは地面に横たえられ、なお回復魔法をかけられ続けていた。
スネークソードは手の届く位置に放置されたまま。
クリムトは杖を脇に置いている。
この痺れが完全に取れれば、瞬く間も与えずピエールはクリムトを両断できる自信があった。
だが、何故。
「何の真似だ。私はお前に襲い掛かったのだぞ?」
クリムトは回復の光を弱めることなく、答える。
「遠くにいても、そなたの放つ殺意は空気を伝わって感じ取ることが出来た。
初めは、その悪意を打ち払おうと、こちらへ向かったのじゃ」
「私は決して止まりはしない」
「うむ。それはそなたに直に接して実感した。だが、そなたと接してもう一つ感じ取ったことがある」
「……」
「そなたからは、私が思っていたほどの悪意を、邪気と言ってもいい、それを感じ取れん。
殺意は肌を刺す痛みのように伝わってくるのに、思いは驚くほど純粋なのだ」
「…だから助ける?」
「うむ。そなたは”悪”ではない」
男の言葉は、スライムナイトには馬鹿げたことにしか聞こえない。
自分は人を殺し、これからも殺し続ける。
今自分を好意で助けようとしているこの男さえ、殺してしまうことに何のためらいも生まれはしない。
「だが、それでも何故かは分からぬ。
そなたは悪ではなく、自分の行っていることの罪を知りながら、なお罪を犯し続けようとしている」
「…それを知ってどうする?」
「私なりに、そなたを救う方法を考よう」
ピエールは低く、笑った。
馬鹿馬鹿しいと、心底思ったのだ。
けれど一瞬先に、あるデジャヴを見た。
差しのべられる手と、深い瞳。
穏やかな笑み、暖かい、眼差し。
初めて、あの方と会ったとき。
傷つけたのは自分、勝利したのは彼。
赦したのも、彼。
思わず顔を背ける。
目の前の男はあの方とはまるで違う。
深い瞳も、澄んだ、温かい眼差しも持ちはしない。
何をためらうことがある?
”目を見れば、その命の本質が見える”
あの方は言った。
この男の目は、どこにあるというのだ?
「どこを見た?」
「…何?」
「どこを見て、私が悪でないと判断したのだ?」
男は微笑む。
「そなたの、命を」
「私はどこを見ればいいのだ? お前には目がない」
「命を、見るとよい」
ピエールは目を閉じる。
この男は、このゲームには異質な存在だ。
狂気がない、敵意がない、殺気がない、怯えがない。
この男は、たとえどのような状況に陥ろうと、誰も殺しはしないだろう。
まっすぐに、顔を付き合わせる。
互いに互いは見えていない、けれど本質は見えている。
「私は、最後の二人になる為に戦い、殺し続ける。
お前は、最後の二人になったとき、どうする?」
「生き残る道を探す。二人共に」
「そんな道がなかったら…」
今はっきりと、この魔物の本質が見える。
最も大切なものを助けたい、ただそれだけを魔物は願っている。
罪を犯すこともいとわずに。
もはや、そのような願いを持つ者を、魔物とは呼べはしない。
ただ、この者は騎士であるだけだ。
「…もし、私が志半ばに倒れ、もしお前と、あの方が生き残っていたら…」
そんな状況に、ならせるつもりはないのだけれど…。
「死んでくれ。決して時を経たせることなく、決してあの方と出会うことなく」
時が経てば、あの方は自らの命を犠牲にしかねない。
出会ってしまえば、あの方はその死にさえ嘆き悲しむ。
「それが、そなたがここで、私を生かす条件か?」
ピエールは答えない。
頷くこともない。
けれど思いは、確実にクリムトに伝わっていた。
「罪を、悔い改めるつもりはないのか?」
無駄と知りつつクリムトは言う。
「罪を犯すものが私一人なら、罪を償うのも私一人だ。全ての罪を、私一人が受け止めればいい。
そして悔い改め、償うのは、全てが終わった後だ。私が、地獄に落ちた後」
「そなたは決して救われることがない」
「お前が私の言った条件を飲んでくれるのなら、私の心は救われる。
一度は闇の傀儡となった身だ。私には、こんな方法しかできないのだ」
「…今は、そなたの治療のことだけ考えよう」
答えをのばすことが正しいことだとは思わない。
だが悪意なく人を殺し、罪さえ受け止めようとするこの騎士をどうすれば救えるのか、
その答えをクリムトが出すには、時間が必要だった。
【ピエール(HP2/5程度) (MP一桁) (感情封印)
(弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、時間経過で回復)
所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]
第一行動方針:クリムトの治療を受ける。
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【クリムト(失明) 所持品:力の杖
第一行動方針:ピエールの治療
基本行動方針:誰も殺さない。
最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北の山脈の麓】
>>111 だが、彼の決意は意外と早く挫かれるかもしれない。
カインとスミスがカズスの村の上空に飛来し、なおかつサックスの存在にも気付いていたからだ。
【サックス (負傷、軽度の毒状態)
所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
第一行動方針:村を調べて回る 第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地;カズスの村、ミスリル鉱山入り口近く】
【カイン(HP5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界(FF3)の歴史書数冊
第一行動方針:サックスを上空から監視、可能ならば殺す
第二行動方針:カズスの村でフリオニールと合流し、罠を張る
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地;カズスの村上空】
【フルート 死亡】
「レビテト!」
ルカとケフカの体が浮き上がる。
「うわ、すごいや! 初めて見る魔法だよ」
「ヒャヒャヒャ、ぼくちんにかかれば、これくらい朝飯前だ」
とにかく、これで砂に足を取られるのは防げる。移動するには足を動かす必要があるけれど。
が、ここで足にまとわりつく不快感。地面に気を取られなくなると、どうにもこっちが目立ってくる。
「ほれ、靴の砂!」
「???」
ガストラ帝國の兵士なら、これに条件反射的に反応するのだが、部下でもないルカに言っても仕方がない。
「まったく、気が利きませんねぇ。なんだって、ぼくちんがこんなことを…。
このトサカ頭が起きたら、徹底的に仕込んで、召使いにしてやりましょうかね。
でも、ぼくちんの言うことを理解できる頭を持っているんでしょうかねぇ?」
愚痴をこぼしながら、自分の靴に入った砂を掻き出すケフカ。
「ところで、この雲は一つしか出せないのですか? ぼくちん、歩くのはもう疲れたんですけど」
「残念だけど、一つだけしか無理だよ。それに、この雲はまっすぐにしか飛ばないから、はぐれたら困るでしょ」
「ま〜ったく! それならとっとと起きて、自分で歩いてもらいたいもんだ!」
「ケフカさん、まさか自分が乗る気なの?」
大人なのに、という言葉は飲み込んでおく。
「ぼくちんは疲れたんだ! さっきからずぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと歩いてるんだぞ!
それにしても暑いですねぇ。暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い…アッツーイ!!
うっきゃー! コイツ、このぼくちんに回復魔法をかけてもらっておきながら、まだ起きないなんてシンジラレナーイ!
子供、お前の方がずっと優秀だ! ここまで足を引っ張るやつは、捨ててしまいましょうかね!」
ケフカが大げさな演技をする。その滑稽さに笑い出すルカ。ちなみに、半分本心である。
「…ん? ここは?」
すると、笑い声やら大声やらで、タイミング良くハッサンが目覚めた。
「捨てようと言った途端にお目覚めですか! ちくしょう、どこまでぼくちんをコケにすれば気が済むんだ!」
ケフカが地団駄を踏み始める。
ハッサンにはどうにも状況が飲み込めない。しょうがないので、ルカが自己紹介を始める。
「あ、やっと起きたんだね。俺はモンスターマスターのルカ。こっちはピエロのケフカさん。
おじさんが倒れていたのを助けてくれた人だよ」
ピエロと聞いて、強引に目の前の状況を納得したのか、ハッサンも自己紹介を始める。
「おう、アンタらが助けてくれたんだな。俺はハッサンだ。でも、おじさんは無いだろ。俺はまだ若いぞ」
「ヒャヒャヒャ、トサカ頭は、オジサンだと相場は決まっているんですよ!」
レオを意識している。ちなみに、彼はモヒカンが好きではない。理由はレオがモヒカンだから。
「さ、早くぼくちんと雲に乗る順番を代わるのだ」
今にもハッサンを蹴り落とさんが勢いで迫るケフカ。だが。
「待ってくれ、この指輪に震動を加えると爆発するから、下手に歩くわけにはいかないんだ。…くれぐれも試さないでくれよ」
念は押しておく。ここで爆発したら本当にシャレにならない。
ちなみに、ルカが仲間がシャナクの巻物を持っていて、それで呪いは解けるだろうということは伝えておいた。
さて、上記のいかにも精神年齢が低く見えるケフカの行動だが、これにも理由がある。多分。
ルカはまだ幾分感情に流されやすいところもあるものの、鋭い洞察力も備えている。
そして、ケフカはその格好と言葉遣いのため、警戒されているのを感じ取った。
警戒されたままでは信頼など築けるはずもなく、ふとしたことで真意が読まれてしまうかもしれない。
そこで、自分はこういうふうなおどけたピエロなんだと誤認させ、警戒を完全に取り去ってしまおうということである。
ケフカにとって、真面目な態度よりもこっちの方が演じやすいのもあるが。
そのうち、ハッサンもこんなときでも明るく振る舞える立派な人間と認識してくれるはずだ。
目はまともに合わせない。目は口ほどにものを言うからである。
この方法は、子供には効果があるものだ。警戒心を取り去るのは成功している。
それに加えて、わざとふざけていた人間がまともな言葉を言うと、結構説得力がある、そうだ。
遊び人こそが賢者になれるのもそのあたりが関係していたりするのかもしれない。
「ところで、この砂漠は広いのか?」
「いや、広くはないと思うけど、同じところをまわってるみたいで、抜けられないんだよ」
「ああ、そういうことなら、俺に任せてくれよ」
そう言って、ハッサンは目を閉じる。
「この男はまた寝るつもりですか? ぼくちんはさっきから歩きっぱなしだというのに…。
ぼくちんをここまで馬鹿にするなんて、チックショー! 蹴り落としてやる!」
本当に蹴り落とさんが勢いである。限界でも近いのだろうか?
「待ちなよ。ハッさんには砂漠を抜ける考えがあるんだよ。だよね?」
「ああ、そうだ。だからちょっとの間だけでいい、集中させてくれないか」
鷹の目。盗賊を一度は極めたハッサンにも、このスキルは使える。
もっとも、盗賊が本職であるローグに比べると、色々な面で少し劣ってしまう。
ちなみに、鳥目になるから、鍛えてないと夜は使いにくかったりもする。
ハッサンの眼差しが、タカのように大空を駆け抜ける。
ルカのすごーいコールとケフカの変人コールが凄まじい。
東。廃墟だ。村があったようだが、おそらく大規模な戦闘があったのだろう。人は見当たらない。いないのだろうか?
だが、村を廃墟にした張本人がまだ潜んでいる可能性もある。油断はできない。
北は森が深く、よく分からない。
北西。谷を誰かが駆けてきている。あれは、もしかしてテリーだろうか。
だが、テリーはデュランの配下として参加していたはず。
デュランは死んだため、その状態は解けたのかもしれないが、そうではない可能性も高い。
自分一人ならいいが、ルカとケフカも連れていって大丈夫だろうか。
もし、テリーが元の状態に戻っているなら心強い味方となるのだが。
ルカの仲間と合流する場合、この方向に進む必要がある。
見たままのことを伝え、相談する。
そして、一同は砂漠を抜けるために進み始めた。
【ルカ(浮) 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 、風のローブ
第一行動方針:砂漠を抜けて安全なところへ
第二行動方針:ギードたちと合流する】
【ケフカ(浮、MP消費) 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール
第一行動方針:砂漠を抜けて安全なところへ
第二行動方針:ハッサンやルカを手玉に取り多くの人にデマを流す、何を言おうか考え中
最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【ハッサン(HP 1/5程度)
所持品:E爆発の指輪(呪)
第一行動方針:砂漠を抜けて安全なところへ。
第二行動方針:オリジナルアリーナと自分やルカの仲間を探す、特にシャナクの巻物で呪いを解きたい
最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【現在地:カズス西の砂漠→移動】
山の上の平和な村、ライフコッド。
今日は一年に一度の村のお祭り。
今年は私が神の使いの役をやるの。
精霊のかんむりをかぶって、きれいな衣装で着飾って……
そばにはお兄ちゃんがいて、向こうにランドがいて。
お兄ちゃんの仲間のハッサンさんやミレーユさん、バーバラさんにテリーさん、
みんなお祭りを見に来てくれてる。
もうすぐ私の出番、神の使いの行進が始まる―――
夢を、平和な日々の夢を、見ていた。
「ねぇ、アルガス」
「あっおい、ちょっと待て、来るな!」
「?…ああ、アイテムの整理やってたの?随分たくさんあるのね」
こういうことはよくトルネコがやっていたっけ。既に名前を呼ばれた仲間のことを思い出すが、
気を取り直して広げられたアイテムの一つに手をのばした。
「おいおまえ、人のアイテムに勝手に触るんじゃねぇ!」
「別に盗るつもりはないんだしいいじゃない。きれいな宝石のついた指輪ね」
聞こえるように舌打ちをし、アルガスが不機嫌そうにアリーナの手から指輪をひったくる。
「触るなといったろうが。欲しけりゃ相応のものと取引だ」
「何よ、愛想悪いわね。…でもさ、アルガス。
こんなたくさんのアイテムどうしたの?ザックも、えーと、6つあるし…」
ウネの言葉を思い出したのは言い終わった後だった。
「エリア」
前を行く見知った女性の後ろ姿に声をかける。だが、反応はない。
「ねえ、エリア」
追いかけて肩に手をかけた。だが、触れた手の感触がおかしい。
改めて見直せばエリアはその姿を石に変えていた。
「え?」
確認するかのようにもう伸ばしたもう一方の手の先で、その像は砕け散る。絶句する。
はっとあたりを見回せば荒涼たる砂漠、そこにぽつりぽつりと人が立っていた。
―あれはバッツ?向こうはギルバート?それに…ファリス姉さん?
バッツと、目が合う。その瞬間、人だと思ったものは石像へ姿を変じていた。
そして、バッツの姿をした像もまた何もしていないのに目の前で砕ける。
―何が…?どうして…
踏み出そうとした足は意思に反して動かなかった。
恐る恐る足元を見れば、石に変わり行く自分の身体が―――
夢を、悪い夢を、見ていた。
「拾ったんだよ。言っとくが俺は断じて人は殺しちゃいないからな」
疑惑の気配を感じ取ったアルガスが先手を取る。
しかし、一度浮かんだ疑惑はそう簡単に拭えそうにない。
「上手いこと行く訳ないとかおもってんだろ?だが俺は嘘なんか言ってない。
まあ無理に信じることなんかないぜ。おまえの信用なんか希う物でも無いしな」
「何よその態度!疑ったのはこっちだけどそういう態度良くないって思わないの?
そんなのじゃ誰も信じてくれなくなるわよ!
「おー怖い、すげえ剣幕。怖い怖い。
案外残酷な分身の方がおまえの本性かもな。隠された願望って奴?
殺しすぎて戦場でしか生きられなくなった奴を俺は何人も見てきたぜ。
ははっ、そうだ。おまえもその同類じゃねえの?」
「なっ…そんなわけないでしょう!!そんなわけ………」
街角へ消えてゆく女性をひたすらに追いかける。
必死に走って角を曲がると、またその女性は先の角を曲がってゆく。
「待て、待ってくれ!レナ!」
息が切れる。足が痛い。疲労はもう限界に近い。
「待ってくれよ!話を、話を聞いてくれ!!」
必死に走る。しかし、追いつくことはできない。
街は次第に夕闇を深め、夜の帳が辺りを覆ってゆく。
止まったら二度と走れなさそうな足を引きずるように、
ただ、ひたすらに追いつけない影を追いつづける―――
夢を、押し潰されそうな夢を、見ていた。
口喧嘩の相手は急に勢いが無くなり、小さくなってしまった。
どうも随分と気にしているらしい。
小さな勝利に気分を良くしながら黙々とアイテムの整理を続ける。
ふと青い、箱状の機械が目についた。そうだ。
「ま、さっきは言い過ぎた。ところでおまえの凶悪な妹さんは寸分違わずそっくりなのか?」
「あ、ええ。鏡を見てるみたいだったわ」
「そうか。この箱は、光景を写し取って保存できるんだと。おまえの姿を保存していいか」
「…いいわよ。でも変わってるわね。魔法のアイテムなの?」
首尾よく殺人者の情報ゲット。映像つきなら価値も上がるってもんだ。
「そんなこと俺に聞くな。俺はアイテム士じゃねぇんだ、わかるかよ。
じゃあその辺に立ってくれ」
説明書を見ながら被写体を確認し、ボタンを押す。
小さな音。広がる光――
―ここは…?
「ハッさん」
―なんだぁ、どこかから声…いまのは確かに。
「ミネアさんか?じゃあオレはやっぱり…ぐあっ」
良く見れば体中に傷だらけ。そして腹には致命傷だろう、ひときわ大きな傷が。
「ミネアさん、すまねぇ。約束守れなかったぜ…」
「うふふ、ハッさん」
暖かな光がハッサンの身体を取り巻く。これは、回復の光。
傷がふさがってゆく。痛みが振り払われていく。
「オレに、もう一度チャンスをくれるのか。ありがとう、ミネアさん」
「いいえ、どういたしまして。…頑張ってくださいね、ハッさん」
「おう!!…む、人の声?向こうが出口か。じゃあ、見ててくれ、ミネアさん。
うおおぉぉ!いくぜぇっ!」
夢を、ちょっと都合のいい夢を、見ていた。
風に頬をなでられ、目を醒ます。久しぶりに開いた目に日光が眩しい。
どれくらい眠っていたのだろう。大体ここはどこなのか。
ゆっくりと記憶を手繰る。
旅の扉の前で大きなパーティに会って、裏切りに遭って、叩きつけられて…
それからどうなったのだろうか。記憶は途切れている。時間はそろそろ夕方か。
誰が自分を助けてくれたのか。
引き寄せられるように声のする方へ向かう。聞き覚えのある声、アリーナ殿、か?
瞬間、異変。岩の向こうから閃光が広がる。
反射的にレイピアを手に取り飛び出した。
アリーナと、何かを手にした見知らぬ男が同時に視界に入る。
「おぬし!拙者の仲間に何を!」
近づく気配を感じ、即座に草むらへと身を隠す。
現れたのは数人。モヒカンの大男。自分に向けて説教したあの男だ。
目に包帯を巻いた男。目を抉ってやったのに厚かましく生き延びている奴。
カッコつけた黒服の男。わけわかんない格好した赤い奴。大剣を構えた金髪の女。
口数の多い生意気な男。片腕もない足手まといの癖に反抗した剣士。
もう考えることもなく、身体が動いていた。
不意打ちで一気に背後へ回り込み、モヒカンの胴を貫手で鎧ごと貫き通す。
声を上げる間もなく崩れ落ちるモヒカンから手を抜き去り、すばやく反転。
脚を一閃させて盲目の首を飛ばす。踵を振り下ろし黒服の頭を潰す。
正面から赤い奴の胸を貫く。巻き込まれて倒れた女の顔を踏み潰す。
触れざまに口数の多い男の首を捩り折る。剣士の片腕をもぎ、頭から地面へたたきつける。
累々たる死体。だが、私の背後でゆらりとそれらが起き上がる。
―上等じゃない、そんなに何度も死にたいなんてね?
夢を、血腥い修羅道の夢を、見ていた。
ヤバイ、と思った。
デジカメが放った予想外の閃光に竦み、はっとした時には気絶していた男が出現。
何を勘違いしたのか、手にしたレイピアの鋭い先端が一切無駄なく自分へ迫る。
素早い動きを感覚だけがスローでそれを捉える。かわせない。対応すらできない。
死ぬかと思った一瞬はさらに信じられない光景を網膜に焼き付け、穏やかに過ぎ去っていった。
「ちょっとライアン、落ち着いて」
閃光の一撃を繰り出す戦士の腕を横からアリーナが掴み、アルガスは危機を逃れた。
「アリーナ殿!?しかし、こやつは…」
なんだ、こいつ等。
見るのがやっとの攻撃を繰り出す戦士。それを反応して止めた女。
少女の哀しいくらい平和な夢を。
乾き行く世界の悪い夢を。
けして追いつけない不条理に挑みつづける男の夢を。
新たに現れた、どこまでも残虐で血腥い夢を。
目が覚めたのだろう、消えていったちょっとご都合な夢を。
夢を、観ていた。
「うん、大丈夫、慣れ親しんだ夢の世界だね。しかし……」
荒んでいる。夢の荒みは心の荒み、傷跡。
一体どれほどの心がこの世界で苦しんでいるのだろうか。
何とかしなければ。
決意を新たにしてウネは現実へと夢の世界から抜け出る。
「アルガスは性格と口は悪いけど敵じゃないわ。別に攻撃されてたんじゃないの。勘違いしないで」
どういうレベルなんだ?
「しかし、ぬう…。そうですな、アリーナ殿を信じましょう。
ならば拙者は非礼を詫びねばなりますまい」
いることはわかっていたがこんな連中が殺しあっているのか?
「アルガス殿。拙者の勘違いでありました。どうか、どうかこの非礼、お許しくだされ」ちっ、勝手な事を言いやがる。
だが、こいつらは、まだ話のわかる連中、そして単純で扱いやすい連中だ。
そういう奴等は利用できる。下手に対立するのは得策じゃない。
「ちっ、わかった、もういいよ。但しこの貸しは絶対に返してもらうぜ」
「分かり申した。拙者にできることがあれば」
「ああ、忘れるなよ。それと…アリーナ、ほらよ」
「わぁっ……と、え、さっきの指輪?」
「一応命を助けられたからな。借りはさっさと返しておきたい。やるよ」
どうせ詳細の分からない道具だしな。
「ありがと、アルガス」
礼を言いながらすぐに利き腕でない方の指へとそれをはめるアリーナ。
「どうだ?何か変わったか」
「?んー…特に何も無いけど?何かあるの?」
―とちったか?だがただの指輪なら別に惜しくないか。
「別に。とにかくこれで貸し借りなしだ。わかったな」
「おや、ライアンも起きてたのかい?全員集合だね」
とりあえずの収拾がついたところに、三人に呼びかける声。
「ウネさん!起きたの?どうだった?」
「そう、やっぱりあいつ…」
自分にそっくりな姿が殺戮を行っている夢を見たという話にアリーナの顔が曇る。
「とにかく夢の世界自体は問題なく存在する。
人の精神までは縛れないのだから当然ちゃあ当然だね。となれば…
あたしは時間を決めて出来る限りその時間眠ることにするよ。
その時間に合わせてあたしを呼びながら眠れば夢の中であたしに連絡できるよ。
無理しなくていいけどね。さて…アリーナ」
「……あ、ごめんなさい。なに、ウネさん」
「付き合ってくれてありがとうよ。今度はあたしが付き合う番さ。分身を止めるんだろう?」
「でも、ウネさんだって探してる人がいるんでしょ」
「なに、探すってのは変わりないんだから構わないよ。ライアンと…アルガス、
あんたらはどうする?一緒に来るかい?」
「ウネ殿には助けて頂きましたし、アルガス殿には借りがござる。アルガス殿は…」
「そうだな…」
アルガスは考える。
これは僻地から移動する好機だろう。
今なら戦士と武闘家と老獪なばあさんが護衛についてくるわけだ。
それに、ライアンには貸しを返してもらわないとな。
「そうだ、うん。俺も一緒に行ってやろう。但し!勘違いするなよ。
俺はお前等の仲間になったつもりはない。やばくなったら一人で逃げさせてもらうぜ」
「まあいいじゃろう。それじゃ全員で移動だね。
ならまずは…カナーンの町へ向かうかねぇ。
…ま、今からじゃ到着は日が暮れた後になっちまうがね」
【アルガス
所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク
妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、
マシンガン用予備弾倉×5、猫耳&しっぽアクセ、タークスのスーツ(女性用)
デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3、変化の杖
第一行動方針:アリーナ達の移動に便乗する
最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る
【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
第一行動方針:アリーナについていく
基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する
【ライアン 所持品:レイピア 命のリング
第一行動方針:アリーナ達についていく
第二行動方針:アルガスに借りを返す】
【アリーナ 所持品:プロテクトリング、インパスの指輪
第一行動方針:アリーナ2を探して下山、カナーンへ
第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【現在位置:ジェノラ山山頂】
少女の哀しいくらい平和な夢を。
乾き行く世界の悪い夢を。
けして追いつけない不条理に挑みつづける男の夢を。
目が覚めたのだろう、消えていったちょっとご都合な夢を。
新たに現れた、どこまでも残虐で血腥い夢を。
夢を、観ていた。
「うん、大丈夫、慣れ親しんだ夢の世界だね。しかし……」
荒んでいる。夢の荒みは心の荒み、傷跡。
一体どれほどの心がこの世界で苦しんでいるのだろうか。
何とかしなければ。
決意を新たにしてウネは現実へと夢の世界から抜け出る。
「アルガスは性格と口は悪いけど敵じゃないわ。別に攻撃されてたんじゃないの。勘違いしないで」
どういうレベルなんだ?
「しかし、ぬう…。そうですな、アリーナ殿を信じましょう。
ならば拙者は非礼を詫びねばなりますまい」
いることはわかっていたがこんな連中が殺しあっているのか?
「アルガス殿。拙者の勘違いでありました。どうか、どうかこの非礼、お許しくだされ」
ちっ、勝手な事を言いやがる。
だが、こいつらは、まだ話のわかる連中、そして単純で扱いやすい連中だ。
そういう奴等は利用できる。下手に対立するのは得策じゃない。
「どうすんの?」
「あの男の事か?」
「監視するに値すんの?あれ。ボロボロだよ?殺しとけば?」
「それは早すぎる」
カインとスミスは上空でやりとりをしながら、サックスの動向を監視していた。
先程からサックスは延々と村を調べている。そして時々、自分の支給品をチェック。
だがそれ以外に何も行動を起こさないし、何も起こらない。
村から出るわけでも無し、瓦礫に隠れていた仲間が姿を現すわけでも無し。
「ぶっちゃけ飽きた〜。街も爆発とかなんとかでボロボロだし〜」
「………風が強くなってきたな」
「え?あ、そうだね」
「ゆっくりと少しだけ降下しろ。近くの森の樹の上に俺は降りる」
「なんで?……まぁいいけどさー」
スミスはカインの言うとおり少し降下する。
すると彼はスミスの上から飛び降りた。そして樹に着地する。
葉と葉の擦れ合う音がしたが、風が強く元からそう言った音が湧き上がっていた状況なので、違和感は無かった。
その証拠にサックスは何も気づいていないし、樹に対して何の興味を示すことも無かった。
(カイン、僕これからどうしたらいいわけ?このまま上空で待機?)
スミスはカインにテレパシーを送った。
カインはその問いを否定するように、首を横に振った。
(じゃあ何?また偵察?)
カインは首を縦に振った。肯定の合図だ。そしてそのままある方角を指差した。
その方角は、サスーン城だ。
(城とか周辺の偵察……か。人を見つけたらどうすんの?接触する?)
その問いには、否定。
(じゃあ自分が見つかったら?逃げる?殺しちゃ駄目?)
その問いには、肯定。
スミスはそのカインの返答を整理した。
様は、カインが樹の上で待機している間に自分がサスーン城やその周辺を偵察。
誰かを見つけても何もせず、誰かに見つかっても戦わずに逃走する。
至った結論をカインに再び問うと、カインは首を縦に振った。
(そっか、じゃあ行ってくるよ。良い情報、ゲットしないとね)
スミスは最後にそう言い残し、サスーン城のある方角へと飛んでいった。
カインが行動を起こすに当たって、いくつか不安な要素がある。
一つ、サスーン城とカズス間には大勢の人間がいること。
彼らが現在どの位置にいるのか、それが知りたいのが正直な感想だ。
サスーン城で見捨てたセージとタバサ。
森の中で出会ったリュカ、エドガー、シンシア。
カズス寄りの森で出会ったトサカ頭達。
そしてエッジとユフィもどこかにいるはずだ。
フリオニールもこちらに向かっているかもしれない。
更にはどこかにリュカが治療した女もいるだろう。
レオンハルトは何処かに消えたかもしれないが、周辺にいる可能性は捨てられない。
そしてカズスには騎士風の男と、まだ姿は見ていないがフルートという女。
多い。この中でもおそらくいくつかはカズスに向かおうという人間もいるはずだ。
実際フリオニールとはここで落ち合う約束をしている。まぁトサカ頭達は……戻っては来ないだろうが。
だがリュカにはカズスで待っているとも伝えた。恐らくあの3人が健在なら……。
更には彼の近くの城にはセージとタバサがいる。彼らともし再会したら、5人でこちらに来るかもしれない。
まぁ彼らは自分の事を信用しきっている。利用する事は出来るだろう。後はエッジ達もそうだ。
以上を整理して……。
一応自分を信頼しているおめでたい馬鹿共が大半を占めている。
怪しまれていることも無いはず……だが、安心は出来ない。
何かイレギュラー――例えば、レオンハルトと再会する等のアクション――が起こる可能性もある。
自分の裏切りを知っている、または自分と戦った事のある人間と彼らが出会った場合は拙い。
築き上げた信頼が無くなっていく。多くの人間を敵に回す事となる。
イレギュラーを生むも殺すも自分次第。余計な手出しは出来ないが……。
だが、目の前の男はどうだろう。多少強引に殺しても良いのではないだろうか。
見たところ他には誰もいない。殺すなら今しかない。
だが万が一の事もある。イレギュラーを生む事になってしまう可能性も捨てきれない。
しかし、このふらついた男がカズスでの行動に邪魔なのは確か。
ならばこうしよう。
暫く観察し、もし利用するに値する価値があると判断すれば生かして駒としよう。
だが価値がなければ、殺す。
多少強引なことになっても良い。殺すならこの状況が適当だ。
……まぁ、とりあえずは情報を手に入れなければならない。
故にスミスに偵察をしてもらい、その情報を元に策を練らなければならないのだ。
信頼という隠れ蓑を、最硬のシェルターへと進化させるために。
多少話がそれたが、もう一つ。
単純に現在の彼らがどういった状況なのか。
移動しているのならどの方角か。
待機するなら何処で独りか複数か。
戦闘しているなら有利不利はどちらに傾いているか。
人が死んでいるならそれはどんな人間か。
まぁ当然偵察なのだからこれくらいの情報は持ち帰るだろう。
人数だけが知りたいわけではない。サスーン城とカズスの間で誰が何をしているのかが知りたいだけなのだ。
これらの情報が揃えば、自分は一応対応策を打ち出すことが出来るようになるはずだ。
彼ら全員が自分たちを殺そうと戦いを挑んできたら、それはもう逃げるしかない。
だが必ずここカズスでは何かが起こる。自分はそう信じて疑わない。
というか、自分が何かを起こそうとしているのだ。何か起こらないはずは無い。
スミスがサスーン城まで辿り着き、往復してこちらに戻る。所要時間はいくらだろうか。
竜は人間とは違う。恐らく思いの他早く遂行するだろう。
早ければ日没直後。多く見積もってもフリオニールとの再会に合わせての到着辺りか。
だがこれも何かイレギュラーが無ければの話だ。まぁスミスは上空を飛んでいるだけ。ヘマはしないだろう。
さて、村にはこの男が一人。女はいない。
引き続き、男の監視を続けることにしよう。
カインの思案から暫く経った後、まだサックスはゆっくりと村を探索していた。
家だったものが軒並み崩れて崩壊している。樹も薙ぎ倒されている。
いくつか無事な樹もあるようだが、そんなものはどうでもいい。
一つ、爆心地であろう場所から一番離れていた家を見つけた。
それでも、その家は見るも無残だった。崩壊し、モノが散乱している。
焼け焦げた柱がなんとか耐え、家を形作っているだけのようにも思えた。
「何が……あったんだよ……」
その家を視界から外し、ついそう呟いてしまった。
そしてサックスは、何かを感じ水鏡の盾を虚空に構えた。その刹那、衝撃が走る。
危なかった、と心中で漏らすも今は余裕は無い。
反射的に尋ねるだけで精一杯だった。
「あなたは……一体!?」
完璧、のはずだった。
相手はふらふらで、怪我も負っている。
奇襲攻撃など簡単に成立し、殺せたはずだった。
カインは、サックスの動向を監視している間に早くも結論を出してしまった。
しばらく見ていたがサックスには利用価値は無い。生かしておいても何の意味も無い、そう結論付けたのだ。
ずっと見ていても、村の中をふらふらうろうろ。体に鞭を打って歩いているだけ。
やはり殺してしまおう。疲弊した参加者を葬るだけなら容易い。
そう思い、天空へと飛び立ち、槍を構え、肉薄した。
しかしサックスは、思いのほか神経を研ぎ澄ましていた。
決意は固く、強い。ここで死ぬわけにはいかないと、彼の体は叫んでいた。
故にサックスはカインの奇襲に気づき、盾を構え、見事な防御を展開させたのだった。
驚くカインに、サックスは問う。
「あなたは……一体!?」
鋭い眼光でサックスは言葉を続ける。
そしてカインも同じように答えを返す。
「でも、急に襲い掛かってくる人に訊いても意味は無いかもしれませんね」
「そう言うことだ。お前は死ぬ、だから訊いても意味は無いだろうな」
「あなたが殺し合いに乗っているのなら、戦います。僕は死ぬわけにはいかない!」
「ああ、そうか。せいぜい吠えておく事だな」
会話はあっけなく終わってしまった。だが、唐突に戦いは始まった。
カインの槍がサックスを狙う。しかしそれをサックスは盾で受け流し、一撃を叩き込もうとする。
だが途端に眩暈が彼を襲った。片膝をつき、必死に呼吸を整える。
その隙を突いてカインは一歩下がる。直後、一気に脚力を最大限に引き出し突撃した。
ランスオブカインは、見事に彼の左肩を襲撃した。サックスは痛みに耐えかね悲痛な表情を浮かべる。
だがそれでも草薙の剣がカインを襲う。見ればサックスは、右腕一本でも戦っていた。
その様子にカインは微笑する。明らかにこちらが有利だということを悟ったのだ。
しあかし、カインはいくつかの誤算に気がついていなかった。
まず一つ。それは、サックスの決意の強さ。
必死に生きようとする彼の剣筋は、流石は光の戦士。類まれなるものだった。
そしてもう一つ、サックスは自信の器を理解し、保身に勤めていたこと。
自分は今戦っても勝ち目は無い。そう悟ったのも速かった。
そして最後にもう一つ。
えふえふは、アリアハンで既にその力を失っていた。
草薙の剣がカインを襲った。それを余裕の表情で槍を使い受け止めるカイン。
しかしそれはサックスの全身全霊の攻撃だった。
元々強力な力を持つ草薙の剣の力も相まって、剣圧がカインを後方へ倒れさせた。
そしてサックスは入口の方角へと走り、支給品袋から急いであるアイテムを取り出した。
それは、ある竜騎士の忘れ形見。
加速装置を装着したサックスは、左肩を抑えながら静かに言った。
「ごめんなさい、僕は……あなたには勝てない。でも僕は生きたいから、だから逃げます……さようなら」
そして彼は森の中へ、西へと駆けていった。一陣の風が吹くカズスで、カインは独り取り残された。
そんなカインは自問自答を繰り返していた。
つけていれば絶対に死ぬ事は無い「えふえふ」を装備している自分が、なぜ押し負けたのか。
……もしかするとこれは「ダメージ」を無くすだけのもので「衝撃」は無くすことが出来ない物なのかもしれない。
そうだ、恐らくそう言う能力なのだ。そうだと思わないとつじつまが合わない。
だが、えふえふに関してはこう片付けられることだとしても、彼にとって拙いことはまだまだ沢山ある。
自分と戦ったサックスが逃げた。
恐らく、彼の証言に嘘がないと他の参加者が悟れば……今までの信頼は崩れる。
それにあの「キンパツニキヲツケロ」というふざけたメッセージもより自分を追い詰める要素になり得る事も確か。
彼を追うか。だがここには日没後に落ち合う約束をした人間が沢山いる。
深追いし、村から離れ、わざわざ怪しまれるような事をしていると拙い。妙な疑惑が増えるだけだ。
だがこのままでは恐らく……杞憂だと信じたいのが本音だが、可能性は大いに高い。
……ならば日没までに奴を仕留めれば良い。
奴が情報をばら撒く前にしとめ、日没までにこの村に戻る。
スミスには「人を見つけても接触するな」と言ってしまったし、自分に頼るしかない。
太陽を見る。日没まではあと2〜3時間と言ったところか。
もしも日没まで仕留められなければ……その時には諦めることとしよう。
いくつかの不安材料を抱えながらでも、カズスにて自分は行動を起こす。
カインは跳躍し、森の中にいるであろうサックスを追い始めた。
あまりにも厳しいタイムリミットが、カインを襲う事となった。
【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り 加速装置 ドラゴンオーブ シルバートレイ ねこの手ラケット 拡声器
スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣
第一行動方針:西へと逃走する 第二行動方針:なるべく仲間を集める
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村から西の方角(森の中)】
【カイン(HP5/6程度) 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5) この世界(FF3)の歴史書数冊
第一行動方針:サックスを追い、殺す
第二行動方針:サックスを早めに殺し、日没までにカズスに戻る
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在地:カズスの村→西の方角へ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
第一行動方針:サスーン城の方角へと飛翔し偵察 終了次第カズスへと戻る
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:カズスの村→サスーン方面へ】
スミスの偵察内容
「サスーン城周辺とカズスの間にいる人間の状況を調査。
参加者との接触はせず、隠密行動を心がけて調査する」
カインは日没までにサックスを殺せないと悟った場合、諦めてカズスに戻ります。
保守
ユフィは寝ているセフィロスの心臓にナイフを突き立てた
【セフィロス死亡】
145 :
ユフィ:2005/09/05(月) 17:20:27 ID:MkTv/4+O
フリオニールを追い掛けていたユフィだが
どうやら見失ってしまったらしいことに気付いた。
「困ったなあ」
しかし、怪我をしたフリオニールが逃げる場所はおそらく町だろう。
裏をかかれるかもしれなかったが、ユフィにはそこまで頭が回らないのであった。
ユフィはカズス町に向かうことにした。そこに何が待つか知らずに…。
【ユフィ 行動方針:町へ】
現在地:カズス南西】
何故…
149 :
希望:2005/09/05(月) 17:43:21 ID:MkTv/4+O
追い掛けながらユフィはだんだん元気になっていた。
前はエッジが死んだショックで気分が沈んでいたが、何時までもクヨクヨしてはいけない。
エッジもここにいたらそう言うだろう。
ユフィの気持ちが前を向いた瞬間だった。
【ユフィ 行動方針:追い掛ける】
ザックスの顔を不意の水が襲った。
それが刺激となって、ザックスは意識を取り戻していた。
ここはどこだ?
目を開けると、太陽の光が目に入る。昼の高い日差しが眩しい。
ザックスは再び目を閉じた。
今までのことを思い出そうとする。
頭がクラクラする。
モンスターにまたがった騎士との市街戦。一刀の元に切断される首。
気を失う前の事実をぼんやりと、そして次第にはっきりと思い出した。
あれからどれだけの時間が経ったんだ?
そして俺は何をしていたんだ?
――思い出せない。
確かあのモンスター騎士の妙な攻撃を受け、口が使えなり呼吸もままならなくなった。
そして酸欠で気が遠くなり地面に膝を付いた所までは覚えている。
なんで俺は生きている?あの状況で気を失った俺はまさに『うほ、いい獲物』状態だ。
他の参加者がらみれば「殺らないか?」と言っているようにさえ見えただろう、それが何故――
・・・ちくしょう頭が痛い。
再び目を開けて、ザックスは首を左右に傾けた。
土の上に寝転んでいるのは分かる。最後に首を上げ、背後を見る。
「!?」
飛び起きる。まだ飛び起きるだけの体力はあるようだ。
「気がついたか?」
とっさに身構えたザックスの視線の先には顔の半分をひげ面で覆われ体格の良い壮年の男が居た。
「しかし、丈夫な体のようだな。倒れたそなたをここに運んでから半刻ほどしか経っておらぬ」
「・・・・・・」
「しかしまだ無理はしないほうがいい。酸欠に加えて決して浅くはない傷を負っていたのだからな」
「・・・・・・」
「私の名はオルテガだ。名簿で確認させてもらったがそなたの名はザックスというそうだな?」
「・・・・・・」
ザックスの警戒を無視して、勝手に語り出す男。
そう、男は勇者アルスの父親であり『アリアハンの勇士』こと、オルテガであった。
「む・・・やはり口が使えぬようだな」
オルテガは警戒しているとはいえあまりにも口を開かないザックスをみて合点がいったような顔をした。
「口で呼吸していなかったことに加えて、人工呼吸も受け付けなかったからもしやと思ったが・・・」
そういうとオルテガはそこらで拾ったような木の棒をザックスに投げてよこした。
ザックスは胡乱気に睨み返すとオルテガは地面を指差した。
どうやら木の棒で地面に文字を書き、筆談しろと言いたいらしい。
「さて・・・、まずはお互いの状況交換と整理といこうか。いいかね?」
言いながらオルテガはその場に座り込むとザックスにも座るように目で促していた。
【ザックス(HP1/4程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
所持品:バスターソード
第一行動方針:オルテガと情報交換
最終行動方針:ゲームの脱出】
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
第一行動方針:状況を整理、ザックスと情報交換
第二行動方針:アルスを探す
最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:カナーンの村南部の平原】
153 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/06(火) 21:21:28 ID:YKigfQfl
hage
154 :
ユフィの心臓:2005/09/07(水) 03:18:08 ID:FDMpWqMr
「あいつ〜!何であんなに早いのよ!!」
ユフィは悔しそうに飛び跳ねた。あの男を見失った。
「あいつも疲れてるはずなのに〜!」
実はフリオニールより森羅万橡を使ったユフィのほうが疲れてるのだった。
「だけど……カインなら飛べるから上からも探せるわよね!
やっぱり早くカインと合流しなくちゃだめね。
一人で戦うのも嫌だから、元々そんなつもりなかったけど。
でも頭では判ってても悔しいから追い掛けた。
でも、やっぱそれじゃ駄目なのよね。
エッジ少しわかったわ。
カインなら信用できるもん!
それに多分すごく強いから!
カインならフリオニールなんかすぐ吊り上げちゃうんだから!
やった!待っててねエッジ」
しかし彼女は気付かなかった。かなり前から見える二つの点に。
これが彼女の運命を帰るとはこの時誰も知らなかった。
【ユフイ(疲労/右腕喪失)
所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル
波動の杖 フランベルジェ】
【第一行動方針:
第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北の峡谷→カズスの村へ】
保守
『まぁいい、早くテリーを追おう。
混乱してるみたいだし、僕らで保護してあげないと……』
ラムザはアンジェロにそう促して移動しようとしたが、
肝心のテリーがどちらの方向にいったのか分からない。
「ねえ、君の鼻でテリーの居場所を探せないかい?」
『駄目だわ。さっきの落雷の影響であたり一面に木や地面が焦げる臭いが充満しているの。
しばらく待つか、もう少しここから離れないと……』
「そうか……あんまり長居はしたくないんだけど」
悩むラムザ。ふと視界の端に青いものが移る。
目をやるとそれはテリーの被っていた青いニット帽だった。
駆け寄って帽子を拾う。
「こっちの方向かな? どっちみち手掛かりはこれしかないんだ。
行こうアンジェロ。テリーの臭いがしたら教えてくれよ」
わん、というアンジェロの返事を聞いてラムザは青い帽子を被ると北西の方角へと駆けていった。
その金色の髪は帽子で隠され、テリーと背格好も似通ったその姿は
遠目に見ればテリーと誤認されたかもしれない。
一方のテリーと言えば、実は南の方角へと木々の合間を縫って飛んでいた。
一度は北のほうへ飛んだのだが、天使の翼の制御がままならずに墜落し、その時に帽子を落としたのだ。
テリーは再び起き上がると、朦朧とした意識でただ姉を求めて今度は逆の方向へと飛んだ。
時折、木に引っ掛かりながらも低空で飛ぶ。
「姉さん……レナ……どこにいるんだい」
ただ、それだけを思考に登らせ、ただ一心にテリーは飛ぶ。
その先に待っていたのは……。
「む?」
ピエールの治療を続けていたクリムトは近づいてくる気配を感じて身構えた。
この気配は感じたことがある。これは……テリー?
「どうした」
訝しそうに尋ねるピエール。
かなしばりの効果を受けてから大分時間も経過し、彼はようやくその影響からも解放されていた。
クリムトの回復呪文のおかげで体力もなんとか戦闘が可能な域までには戻っている。
身を起こし、スネークソードを手に取った。
「何者かが近づいている。恐らくは私の知り合い……だが」
何か妙だ。自分の知っているテリーは刃のような強く鋭い意志を持つ青年だった。
しかし近づいてくる気配から感じられる波動はとても弱弱しく、ひどく混乱している。
それに気配に時折混じる何かしこりのように小さく感じられる邪悪な波動。
(テリーは以前、デュランの配下であった時期があったという。
これはそれに関連しているのだろうか?)
ピエールも対人レーダーを取り出し、眺める。
確かに北の方角、山の上から何かが近づいてきていた。
その速度は速くはない……が、遅くもない。
一定のスピードでこちらに向かってきている。
(? 山中でこのような移動が可能なのか?
まるで地形を気にしていないかのような動きだ)
警戒を強め、剣を握り締める。
ピエールの殺意に気付いたクリムトは手をかざしてそれを止める。
「剣をさげよ。テリーは敵とはならぬ。
もしも敵となったとしても私が説得しよう」
「……断る。例え敵とならずとも私は斬る。
邪魔立てをするならばあなたから斬るまでだ」
互いの間に緊張が走る。
「ならば力づくでも止めねばならぬ」
クリムトからまるで巨石を背負わされるかのような威圧感を受け、ピエールは戦慄する。
(やはり……ただものではない)
今魔力を消耗し、完調とは言い難いこの状態で正面から相手取るのは危険だ。
ピエールは剣を下ろす。すると威圧感はまるで嘘だったかのように消え去った。
「一度だけだ。治癒の礼として一度だけあなたの言うとおりにしよう。
だがその後は私が望むままに動く」
「良かろう。ならば今から現れる者を決して殺してはならぬ」
「承知した」
頷くピエールを見てクリムトは思う。本当なら今後一切の殺生を禁じたかった。
しかしそれを相手が承服するはずもなく、余計に話がこじれるだけだ。
そんな状態でテリーを向かえ、戦闘にでもなろうものなら
また回復したピエールを殺戮へと奔らせかねない。
それを考えると先の提案が妥協のしどころであると判断した。
その後のことは自分が彼を命を張って食い止め、救う方法を模索する以外あるまい。
そしてテリーがやってきた。
空を飛んできたことに驚いたクリムトだが、その満身創痍の状態を悟ると慌てて声をかけた。
「テリーよ! 私だ、クリムトだ!」
その声に反応し、テリーはクリムトの居る場所へと降りてきた。
接地すると同時にそこに崩れ落ちる。
クリムトはそれを抱きとめ、回復呪文をかける。
「あんたは誰だ……俺を知っているのか?」
「絶望の町でおぬし等に救ってもらったクリムトだ。覚えていないのか?」
「絶望……? わからない、いや、そんなことはどうでもいい。
アンタ、俺の姉さんを知らないか? レナという女性でもいい」
「……あまり無理に喋るでない……」
思った以上に混乱しているようだ。それに直に触れると余計によくわかる。
テリーから感じる黒い波動。それはクリムトもよく知る魔王の力に酷似した力。
恐らくは自分が彼と出会う前、デュランの配下であった頃から呼び出されたのだろう。
であれば彼が自分を知らないことにも納得がいく。
テリーにとって自分は未来に出会う人物なのだ。
そして……姉を探しているという。レナという人物はわからないがミレーユは既にこの世にない。
それを今伝えるべきか。クリムトは悩み、今しばらく黙することに決めた。
「話は後としよう。今はお主の治療を優先する」
ピエールはテリーを見て些か驚いていた。
あの青年とは何度か対峙している。いずれのときも自分は窮地に追い込まれていた。
そして彼が姉と呼ぶ女性。
最初の時の金髪の女性を彼は姉と呼んでいた。彼女は自分が殺害している。
数刻前にカナーンで対峙したときはまた別の女性を姉と呼んでいた。
彼女はテリーがその手で殺害したはずだ。
そして今また、姉を探しているという。そこから導き出される結論は。
(錯乱したか……憐れな)
僅かな憐憫と共にピエールはテリーを見る。だがそれで感情が揺らぐことはない。
何のためらいもなく彼はテリーを切り裂くことが出来る。
しかしそれはクリムトとの約定で禁じられている……が、これは逆に好機だ。
クリムトによって彼の動きは牽制されていたが、彼がテリーの治療に集中することで
こちらに対する警戒が薄くなっている。
今ならばここを容易に去ることが出来るだろう。
そう考え、ピエールが踵を返そうとしたその時、テリーがピエールを見た。
「お前……姉さんを殺した、いや姉さんは死んでない、これは何かの間違いだ」
テリーは混乱し、クリムトを振りほどく。
「テリー、どうした! おとなしくせよ!」
蜂蜜色をした髪の綺麗な女性。喉元を剣で貫かれ、鮮血が飛び散る。
薄紅色をした髪の男装の麗人。突如として自分の前に現れ、首が飛ぶ。
その向こうにいたのは目の前の……。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
テリーは雷鳴の剣を構え天へと翳す。
空気が乾き、パチパチと静電気が走った。
「これは!? ピエールよ、伏せよ!」
クリムトは咄嗟にマジックバリアを張り、雷撃に備えるが
離れた場所に居たピエールまではカバーしきれない。
クリムトの警告にピエールはすぐさま身を伏せ、ザックから何かを取り出した。
落雷が、落ちる。
クリムトはバリアのおかげでその威力を軽減することができたが、
至近に居たため吹き飛ばされて木に激突した。
「ぐはあっ」
強く背中を打ちつけ、息が詰まる。
それに加えて軽減したとはいえ雷撃のダメージもこの老体には深刻だった。
全身が痺れ、動くこともままならない。
テリーの方を見やると彼は剣を杖にして身体を支え、呼吸を荒げていた。
ブツブツと何かを呟いている。
すぐに第二撃が来ることはないと判断し、次にピエールの姿を探す。
防御する手段のない彼はまともに電撃を受けたはず。死にはしないまでもかなりの重傷だろう。
すると少し離れた場所に真紅の絨毯が敷かれていた。
いや、絨毯ではない……マントだ。まるで王者が纏うかのような荘厳な装飾が施されている。
そのマントは不自然に盛り上がっていて……マントを肌蹴、そこから現れたのはピエールだった。
ダメージは負っているが行動に支障はないらしい。
(リュカ様が護ってくださった。これは天命だ)
ピエールは雷鳴の剣の効果を一度見て知っていた。
そこで瞬時に呪文を軽減する王者のマントを取り出し、傘のように頭上に広げたのだ。
結果マントは盾の役割を果たし、ピエールは軽傷ですんだ。
彼はスネークソードを手にするとテリーへと向かって駆ける。
その意図を察したクリムトは全力を振り絞って叫んだ。
「待て、ピエールよ! 踏みとどまれい!!」
しかしピエールは止まらず、テリーへと肉薄する。
ピエールの接近に気付いたテリーは剣を振るが、斬撃とも呼べぬその攻撃は容易に回避されてしまう。
支えを失い、倒れいくテリーの背後に回ったピエールは天使の翼を掴み取った。
「約定は守ろう」
そのままテリーを蹴飛ばして、ザックと天使の翼を剥ぎ取った。
テリーは倒れ、そのまま気絶する。
ピエールはその傍に落ちている雷鳴の剣を拾い上げた。
「ぐ、ピエールよ……」
「さらばだ。次にあうときは躊躇わずに殺す」
クリムトの呼びかけに無感情に応じ、ピエールは山の中へと消えていった。
後に残されたのは動けぬクリムトと気絶したテリー。
「無力なり」
クリムトはそう呟き、自身に回復呪文をかける。
まず自分が動けるようにならなければテリーを救うことは叶わない。
どのくらい時間が経っただろう。
すでに日は翳り始めている。
ようやく動けるようになったクリムトはテリーを背負い、杖を突いて歩き始めた。
回復呪文をテリーへとかけながらゆっくりとカナーンの村へと向かう。
彼は目が見えないため、そこに村があることは知らない。
だがいくつかの命がそこにあることは感じ取れた。悪意ももう、感じない。
自分ひとりではできることに限界がある。
テリーの治療もそうだし、ピエールも止めなければならない。
クリムトは仲間を求めて歩く。自分にできることはいくつもない。
だができることを一つずつ確実に果たさなければならない。
「魔女よ、クリムトは挫けぬぞ」
そう呟き、彼はゆっくりと、ゆっくりと歩く。強く地を踏み締めて。
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)
所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ テリーの帽子
第一行動方針:テリーを追い、保護する
第二行動方針:仲間を集める(ファリス、アグリアス、リノア優先)
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯→北西の砂漠方面】
【ピエール(HP4/5程度) (MP一桁) (感情封印)
所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]
雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
第一行動方針:ひとまず山中に身を隠す
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【現在位置:カナーン北の山脈の麓→山中へ】
【テリー(DQ6)(HP1/4程度、左腕喪失、左足骨折、気絶)
所持品:なし
第一行動方針:レナを探し、姉を見つけ出す
基本行動方針:自分の行動を邪魔する者、レナの敵になりうる者を皆殺しにする】
【クリムト(失明、HP2/3、MP消費) 所持品:力の杖
第一行動方針:テリーを背負い、カナーンへ向かう
基本行動方針:誰も殺さない。
最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北の山脈の麓→カナーンへ】
『まぁいい、早くテリーを追おう。
混乱してるみたいだし、僕らで保護してあげないと……』
ラムザはアンジェロにそう促して移動しようとしたが、
肝心のテリーがどちらの方向にいったのか分からない。
「ねえ、君の鼻でテリーの居場所を探せないかい?」
『駄目だわ。さっきの落雷の影響であたり一面に木や地面が焦げる臭いが充満しているの。
しばらく待つか、もう少しここから離れないと……』
「そうか……あんまり長居はしたくないんだけど」
悩むラムザ。ふと視界の端に青いものが移る。
目をやるとそれはテリーの被っていた青いニット帽だった。
駆け寄って帽子を拾う。
「こっちの方向かな? どっちみち手掛かりはこれしかないんだ。
行こうアンジェロ。テリーの臭いがしたら教えてくれよ」
わん、というアンジェロの返事を聞いてラムザは青い帽子を被ると東の方角へと駆けていった。
その金色の髪は帽子で隠され、テリーと背格好も似通ったその姿は
遠目に見ればテリーと誤認されたかもしれない。
一方のテリーと言えば、実は南の方角へと木々の合間を縫って飛んでいた。
一度は東のほうへ飛んだのだが、天使の翼の制御がままならずに墜落し、その時に帽子を落としたのだ。
テリーは再び起き上がると、朦朧とした意識でただ姉を求めて今度は別の方向へと飛んだ。
時折、木に引っ掛かりながらも低空で飛ぶ。
「姉さん……レナ……どこにいるんだい」
ただ、それだけを思考に登らせ、ただ一心にテリーは飛ぶ。
その先に待っていたのは……。
「む?」
ピエールの治療を続けていたクリムトは近づいてくる気配を感じて身構えた。
この気配は感じたことがある。これは……テリー?
「どうした」
頷くピエールを見てクリムトは思う。本当なら今後一切の殺生を禁じたかった。
しかしそれを相手が承服するはずもなく、余計に話がこじれるだけだ。
そんな状態でテリーを向かえ、戦闘にでもなろうものなら
また回復したピエールを殺戮へと奔らせかねない。
それを考えると先の提案が妥協のしどころであると判断した。
その後のことは自分が彼を命を張って食い止め、救う方法を模索する以外あるまい。
そしてテリーがやってきた。
空を飛んできたことに驚いたクリムトだが、その満身創痍の状態を悟ると慌てて声をかけた。
「テリーよ! 私だ、クリムトだ!」
その声に反応し、テリーはクリムトの居る場所へと降りてきた。
接地すると同時にそこに崩れ落ちる。
クリムトはそれを抱きとめ、回復呪文をかける。
「あんたは誰だ……俺を知っているのか?」
「牢獄の町でおぬし等に救ってもらったクリムトだ。覚えていないのか?」
「牢獄……? わからない、いや、そんなことはどうでもいい。
アンタ、俺の姉さんを知らないか? レナという女でもいい」
「……あまり無理に喋るでない……」
思った以上に混乱しているようだ。それに直に触れると余計によくわかる。
テリーから感じる黒い波動。それはクリムトもよく知る魔王の力に酷似した力。
恐らくは自分が彼と出会う前、デュランの配下であった頃から呼び出されたのだろう。
であれば彼が自分を知らないことにも納得がいく。
テリーにとって自分は未来に出会う人物なのだ。
そして……姉を探しているという。レナという人物はわからないがミレーユは既にこの世にない。
それを今伝えるべきか。クリムトは悩み、今しばらく黙することに決めた。
「話は後としよう。今はお主の治療を優先する」
ピエールはテリーを見て些か驚いていた。
あの青年とは何度か対峙している。いずれのときも自分は窮地に追い込まれていた。
そして彼が姉と呼ぶ女性。
最初の時の金髪の女性を彼は姉と呼んでいた。彼女は自分が殺害している。
数刻前にカナーンで対峙したときはまた別の女性を姉と呼んでいた。
彼女はテリーがその手で殺害したはずだ。
そして今また、姉を探しているという。そこから導き出される結論は。
テリーの治療もそうだし、ピエールも止めなければならない。
クリムトは仲間を求めて歩く。自分にできることはいくつもない。
だができることを一つずつ確実に果たさなければならない。
「魔女よ、クリムトは挫けぬぞ」
そう呟き、彼はゆっくりと、ゆっくりと歩く。強く地を踏み締めて。
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)
所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ テリーの帽子
第一行動方針:テリーを追い、保護する
第二行動方針:仲間を集める(ファリス、アグリアス、リノア優先)
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯→東の砂漠方面】
【ピエール(HP3/4程度) (MP一桁) (感情封印)
所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]
雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
第一行動方針:ひとまず山中に身を隠す
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【現在位置:カナーン北の山脈の麓→山中へ】
【テリー(DQ6)(HP1/4程度、左腕喪失、左足骨折、気絶)
所持品:なし
第一行動方針:レナを探し、姉を見つけ出す
基本行動方針:自分の行動を邪魔する者、レナの敵になりうる者を皆殺しにする】
【クリムト(失明、HP2/3、MP消費) 所持品:力の杖
第一行動方針:テリーを背負い、カナーンへ向かう
基本行動方針:誰も殺さない。
最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北の山脈の麓→カナーンへ】
166 :
ユフィの混乱:2005/09/12(月) 23:04:17 ID:o9PI04fG
ユフィは、カズスへと向かっていた。
エッジを殺した人を追い掛けて、走った。
そこで一人の人を見つけた。
驚いたユフィはフリオニールだと思って遅いかかった。
実はそれはサックスは追い掛けてたカインだった。
フリオニールとカインを見間違うほどの重症だったなんて
「いやー!!」
そして背後から来る影に気図かないユフィ…
【ユフイ(疲労/右腕喪失)
所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
【第一行動方針:
第二行動方針か:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う
第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北の峡谷→カズスの村へ】
【カイン死亡】
保守!
保守
サックスとカインの追いかけっこは続く。
森であった風景が砂漠へと変化したころ。状況はカインに有利になってきた。
それは、サックスの体力が残りわずかであったから、そして足場が砂であるため、スピードが出しにくいからだ。
このままではカインがサックスに追いつくのは時間の問題。
サックスはラケットを振ってみるが、負傷した体で走りながら撃っても当たるはずもなく、カインの周りの砂を巻き上げるにとどまった。
何かないかと考え、袋を見ると、何やらラッパのような機械がある。拡声器。
もし近くに人がいれば、助かるかもしれない。
「助けて下さい!!!」
彼は渾身の力を込め、叫んだ。
ルカ達は、テリーが見えたということで、北西方向に向かっていた。
ハッサンはどうせ自力では動けないため、タカの目を使って周りの偵察を続けていた。
ちょうど西の方向で、雷が落ちた。あれは雷鳴の剣による落雷ではないだろうか。
ますますテリーのいる可能性は高まった。そのとき、
「ねえ、何か聞こえなかった?」
「悪い、聞こえなかった。どうもこの技を使っていると音を聞き取りづらくなるんだ」
「ヒャッヒャッヒャ、確かに聞こえましたねぇ。誰かがオタスケーって言ってましたよ」
「どっちの方向だ?」
「東の方でしたねぇ。行くんですか? …北西に行くって自分で言っておいて、反対に向かうなんて、何て自分勝手なんだ!」
ケフカの愚痴は基本的に無視することにしている。まともに反応していると、身が持たないからだ。
東の方向へと視点を移動させた。剣士風の男が、騎士風の男に追われている。それもかなり近くだ。
何故か速さはあるらしいのだが、よろよろとしている。危なっかしい走り方だ。
もう一度だけ西を見る。距離があるので、何が起こっているのかは分からないが、静かだ。
もう限界だった。加速装置のおかげで速さだけはまだ維持できているが、足が保たない。
イクサス、サラマンダーと戦闘の連続だったのだ。おまけに毒をくらっている。このまま走り続けるのが無理なのは明らか。
ついに足がもつれて転んでしまった。
「そろそろ年貢の納めどきだな」
「くっ…」
実はまだ方法はあるのだ。チョコボのいかりを使えば、相手を倒して切り抜けることが出来る。
ただ、チョコボの怒りは湯気を発するチョコボの像だ。目立ちすぎる。引きつけ、油断させないとかわされてしまうだろう。
サックスはカインに気付かれないよう、そっとザックに手を滑り込ませる。
カインが槍を振り上げた。相手はすでに勝利の笑みを浮かべている。この一瞬、完全に油断している!
(今だ!)
パン! パン!
「「なっ!?」」
どこからともなく銃声が響く。
そしてその直後、カインは槍を持っていた手に衝撃を感じ、思わず槍を手放してしまった。
サックスは想定外の展開に、アイテムを使わずに終わってしまった。
(当たっちゃった…)
(おいおい、気を付けてくれよ…)
銃を撃ったのはルカ。彼は牽制のつもりで、カインから少し離れた位置を狙って撃ったのだが、
初めて扱うために狙いが大きく逸れて、カインの持っていた槍の先に弾が当たってしまったのだ。
だが、これはこれで好都合。
「二人ともそこを動かないで。変な行動を取ったら、当てるよ」
ルカはウィンチェスターを構える。
もちろん実は当たる可能性は無きに等しいが、カインもサックスも動けなくなってしまった。
マズすぎる。一人でも逃がせばカズスでの計画は不成功に終わるかもしれないというのに、目撃者が四人に増えた。
しかも、道化師風の男は実力が未知数、他はかなりの使い手のようだ。
どうする? このまま戦いを挑むか? それとも逃げるか? どちらにしても大幅に不利になる。
「待て。俺がゲームに乗っていると考えているなら、それは誤解だ。
確かに俺はこの男を殺そうとした。だが、それはこいつが殺人者だからだ」
ゼルという男から聞いた。仲間のフリをして、隙を見て怪我をさせたり、子供を一人刺し殺したそうだな」
剣士がサックスだという証拠はどこにもなかったし、フルートと組んでいる程度にしか聞いていないが、賭けには勝ったようだ。
剣士の目が見開かれる。間違いない。こいつがサックスだろう。
「仲間を装う殺人者はタチが悪い。ヘタに関係を持つとここぞというときに裏切られる。
そうして殺されたやつを俺は何人か知っている。再びそんなことが起こらないよう、すぐ殺しておく必要があったわけだ」
嘘はついていない。確かに裏切られた人間は何人も知っている。自分が裏切ったのだが。
「違う!」
サックスは否定する。かなり焦っているようだ。
「もう一人仲間がいるはずだ。フルートはどこにいる?」
「誤解だ! 僕もフルートさんもゲームに乗ってはいない!」
相手は必死に否定している。思った以上にうまくいった。
自分は窮地から脱せたうえに、他の3人は少なくとも自分を疑うことはあるまい。
逆に、話の転び方次第では、相手を殺すことすら正当化できる。
相手に話をさせる隙を与えぬよう、まくし立てる。
「強情な男だな。否定するのは構わないが、俺を含めて少なくとも八人はこの事実を知っている。
いい加減認めたらどうだ?」
他の三人はどちらを信じればいいのかが分からないようだ。
ゼルから伝え聞いたことをそのまま、相手に伝える。
決定打となったようだ。よほどショックが大きかったのか。
この様子だと、フルートに利用されていたのだろう。気の毒だが、自分には関係のないことだ。
「さあ、もういいだろう。ラクにしてやる」
再び槍を取ろうとした。しかし。
「ちょっと待ってよ。サックスさんの話も聞かずに片づけるのはちょっと早すぎるよ。誤解かもしれないでしょ」
子供が制止する。お人好しどもだ。まあ、サックスの今の表情は、殺人者のそれとはかけ離れすぎているかもしれない。
「フッ、甘いな少年。ここは戦場だ。その甘さが命取りになるぞ」
「でも、サックスさんも嘘を付いているようには見えない。話を聞いてもいいと思う」
ここで有無を言わさず殺しても、こっちが怪しまれるだけだ。適当に喋らせておいても大丈夫だろう。
それに、こいつらはあとあと利用できそうだ。
サックスが話し始める。その話では、フルートがかなり美化されているように感じたが、それはまあいい。
フルートは特殊な性格の人物で、決してマーダーではないということ。
サックスはフルートを守るために仕方なく子供を殺したのだということ。
ゼル達にはすべてのことが誤解されて伝わっていること。
そしてフルートは、自分を助けるために犠牲になったということ。
以上四つが聞き取れた。そこまで誤解が大きくなるかと疑問にも思うが、この状況だ。あり得なくはない。
どちらにしろ、利用させてもらうに越したことはあるまい。
「どうにも信じにくい話だが、まあいい。そういうことにしておいてやろう。
だが、俺はお前を信用したわけではないのでな。武器になるようなものは預からせてもらう」
サックスは支給品を差し出す。当然、この状況では断れまい。
こうして、まんまと相手の持ち物を奪うことが出来た。
惜しむらくは、独り占めできなかったことだが、それは仕方のないことだろう。
サックスは、ケフカが簡単に治療した。
だが、あまり魔力を消費しないようしているのもあって、完全には回復していない。
このまま自然に死ぬことはないだろう、という程度だ。
簡単に自己紹介を済ませ、カインが話しかける。
「日没時に村で仲間と待ち合わせをしていてな。どうだ、あなたたちも来ないか?」
ハッサンが答える。
「行きたいのはやまやまなんだが、先に会っておきたいやつがいるんだ。
テリーといって、俺のもとの仲間なんだが、ちょっとややこしくてよ。
もしかしたら敵になるかもしれないし、殺さないといけないかもしれない。
ルカとケフカと…サックスか、みんなを連れて先に村に行ってくれないか?」
テリーという名前を聞いたが、ルカは同名の人間だと思ったのだろう。別の疑問を投げかける。
「ねえ、ハッさん、その雲はまっすぐにしか飛べないよ。どうするつもり?」
「追い風を起こすんだ。これである程度は調整できるだろ」
まあ移動手段は何とかなるか。だが、別に不安要素はあった。
「…ねえハッさん、ここはカインさんとケフカさんに行ってもらおうよ。
ハッさんは怪我してるし、さっき起きたばかりでしょ。もしものことがあったら大変だよ。
カインさんは強そうだし、ケフカさんは色々出来るから、何かあってもうまく対処できると思う。
二人がいいって言ってくれたら、の話だけどさ」
カインがサックスを疑っている可能性があると考えたこと、サックスの怪我が治っていないことなども
パーティー分けの要因にあるが、それは伏せておいた。
「日没までに戻れるなら、俺は構わないが」
「私もいいですよ」
カインが、そして珍しくケフカがまともに返事を返した。
相変わらず考えていることの真意は読みとれないが、彼なりにつき動かされるものでもあったのか。
さすがに彼らの好意は断り切れず、ハッサンは承諾した。
「悪いな。移動していなければ、テリーは今、西の山岳地帯の麓あたりにいると思う。
青い帽子をかぶった銀髪の男だ。雷を使う可能性がある。目がまだ赤かったら注意してくれ。
それから、アンタの仲間には俺から言っておくよ。名前は?
「フリオニール、エッジ、リュカ、スミスだ」
「分かった。その人達を見つけたら、伝えておくよ。じゃあ、よろしく頼む」
【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【ルカ(浮) 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 、風のローブ、シルバートレイ
行動方針:ギードたちと合流する】
【ハッサン(HP 1/5程度)
所持品:E爆発の指輪(呪) 、ねこの手ラケット、チョコボの怒り、拡声器
行動方針:オリジナルアリーナと自分やルカの仲間を探す、特にシャナクの巻物で呪いを解きたい
最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【共通第一行動方針:カズスで休む】
【ケフカ(浮、MP消費) 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【カイン(HP5/6程度) 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置
草薙の剣、ドラゴンオーブ
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【共通第一行動方針:西(テリー、アリーナ2,ラムザの戦場跡)へ行き、テリーと接触】
【現在地:カズスの村から西の砂漠】
177 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/16(金) 05:07:51 ID:gajxWEyp
良スレあげ
ウィーグラフは山を登っていた。
カズスの北方にてフリオニールのマシンガンの洗礼を受け、
南東へと背走した彼はそれから廃墟となったカズスを迂回し西へ。
そして人目につく平野や砂漠を避け、カナーンへと向けて山岳地帯へと入ったのだ。
本来移動する場所ではなかったのだろう。
アリアハン大陸と違い、山道などはなく鬱蒼と木々が生い茂るばかりである。
(くっ、これならば平野を回りこんだほうが良かったか?
いや、仇敵以外の者と関われば碌なことにはならない。
元よりこの広大な大陸で偶然ラムザと出会うなどという幸運も期待してはおらぬ。
奴は必ず仲間を求めるはず。ならば人の集まる拠点を虱潰しにするまでよ)
だが日が落ちるまでに山を越えられるだろうか?
それだけがウィーグラフの懸念であった。道がない以上、夜の山は危険だ。
ゲームの性質上、野獣などが放されている可能性は低いが
茂みに隠された急傾斜などに足を取られ転落すれば救助など求められぬこの場では致命的だ。
崖や亀裂などに道を遮られ、コンパスはあれども遭難の危険性もある。
なんとか日が昇っているうちに山を越えたいものだ、
とそんな事を考えながらウィーグラフは黙々と山を登っていた。
そうしてしばらくすると少し開けた場所に出た。
何があったのかいくつかの木がなぎ倒され、焼け焦げている。
範囲はそう広くなく、局所的に稲妻が落ちたかのようだ。
(恐らくは……その通りなのだろうな)
つまりはここで戦闘がおき、誰かが雷の魔法を使ったのだろう。
そしてその破壊痕の中心に倒れている一人の少女を見つけた。
死体か、と思って近づいてみると僅かに息をしている。
あちこちに火傷を負っているが、致命的なほどではないようだ。
時々呻き声を挙げ自身の生存を周囲に伝えるが、それを受け取れるのは現在ウィーグラフしかいない。
そしてウィーグラフには少女を助けるつもりは更々なかった。
(敗者に価値はない。どこの世界でも普遍の法則よな。
私には目的がある。余計な荷物を負っている余裕などないのだ……すまないな)
心の中で形だけ詫び、その場を後にしようとする ―― その時。
「うう、ラ……ラムザ……」
足が……止まる。
ウィーグラフは振り返り、少女を抱き起こした。
「おい、今何と言った? おい!」
「ぐっ、うう……」
当然だが気絶している少女は呻くだけで答えはない。
ウィーグラフは舌打ちすると、ザックから小瓶を一つ取り出した。
霊薬エリクサー。至高の回復薬である。
(あまり使いたくはないのだが……やっと奴の情報を手に入れる機会が訪れたのだ。
これを逃すわけにはいかん)
蓋を取り、少女の口に中の液体を垂らす。
しかし少女はすぐに咳き込み、液体を吐き出してしまった。
「吐くんじゃない。ちゃんと飲み込むんだ」
まだ数滴しか垂らしてないとはいえ、貴重な薬を吐き出され思わず声を荒げる。
どうやらダメージが深く、喉が受け付けないようだ。
しばし黙考し、舌打ちする。
(ち、仕方ない)
ウィーグラフは小瓶を煽り、エリクサーを口に含むと少女に口付けた。
口移しで強引に少女の口腔内へ霊薬を流し込んでいく。
「む……う……」
苦しそうに、でも確実にコクン、コクン、と液体を嚥下する少女。
少女の身体が熱を持ってきたことを感じ、ウィーグラフは唇を離す。
全身の火傷跡が消えていき、少女の顔に血色が戻る。
そして少女……アリーナは目を覚ました。
いや、途中から目を覚ましていたらしい。ギロリ、とウィーグラフを睨みつける。
「目を覚ましたか」
だがウィーグラフのその問いかけにもアリーナは答えない。
「う、く……あ」
否、答えられない。
全身のダメージは消えても全身麻痺はエリクサーでは癒せなかったのだ。
だが、それに気付かずウィーグラフは尚も問いかける。
「おい、話せるか?」
「あ、あたしの……ザックに、く、薬が……」
アリーナはやっとのことでそれだけを言葉にする。
ウィーグラフはアリーナの身体を横に向け、マントの下に背負われていたザックから黒い丸薬を取り出した。
「こいつか?」
アリーナは返事の変わりに口を開き、舌を伸ばす。
ウィーグラフも黙って丸薬をアリーナの口の中に押し込んだ。
ゴクン、と喉を鳴らし飲み込む。目を閉じて全身の制御を取り戻そうとする。
幸いにもこの万能薬は即効性ですぐに全身の麻痺が取り除かれたのが分かった。
そして目を見開くと、どん、とウィーグラフを突き飛ばして跳ね起きる。
「な、何をする!?」
危険を感じ、ウィーグラフはアリーナとの距離を取る。
アリーナは黙してウィーグラフ目掛けて殺意を走らせる。
ウィーグラフはこの状況に戸惑っていた。
「ま、待て! 私には戦う意志はない!」
なんと愚かなことを口走るのだ、と自分で思う。
迷わずに疾走してくる相手。その目を見れば彼女自身がゲームに乗っているのは明らかだ。
こちらの意志に関係なく相手はウィーグラフの命を奪いに来ている。
彼は広刃剣プレデターエッジを横に構え、少女の跳び蹴りを受け止めた。
あまりの蹴りの鋭さに刃を合わせることが出来なかったのだ。
しかし彼女の攻撃はそれだけでは終わらない。
身体を捻って逆足の浴びせ蹴りが彼の首筋に襲い掛かる。
咄嗟に身体を屈めることでウィーグラフはその蹴りに空を切らせる。
すると彼女は地面に手を突いて着地すると、そのまま逆立ちの状態で更に廻し蹴りを叩き込んできた。
ウィーグラフはそれもまた屈んだ状態から起き上がり、スウェーバックで回避する。
またもや空を切った彼女の足が地面についたかと思うと、そのまま高速で回転して身体を屈め
無防備になったウィーグラフの足元へ目掛けて水面蹴りを放ってきた。
それは彼の向こう脛を正確に狙っており、アリーナは笑みを浮かべる。
しかしそれにもまたウィーグラフは反応した。
スウェーバックの状態から高速で身体を仰け反らせて、そのままバック転したのだ。
広刃剣を右手に持ったまま左手で着地し、後ろへと飛び退く。
結果、最後の水面蹴りも空を切り、両者は再び間合いを空けて対峙する。
アリーナは衝撃を隠しきれないようで、ウィーグラフの顔を驚きと共に見つめた。
身に着けている皆伝の証の効果で、相手が一度行動する間に4連続で攻撃できる自分。
その4連続の彼女の高速乱れ蹴りを全て完全に回避したのだ。驚愕しないわけがなかった。
「何者よ……」
思わず呟く。
しかしそれに答えるほどウィーグラフは慈悲深くはなかった。
今度は自らが明確な殺意の塊となってアリーナへと斬りかかる。
その鋭さはアリーナの記憶の中で、マティウスやピサロ、ソロ達に匹敵すると判断した。
斬撃の軌道を完全に見切ることは出来ない。
彼女はカウンターをとる事を諦め、斬撃の射程範囲から高速で逃れる。
しかしウィーグラフの踏み込みはそのアリーナの回避速度を上回った。
それは彼女の予測よりも一瞬だけ早く、一歩分だけ深い。
一瞬で間合いをゼロにされた彼女に向かってプレデターエッジが迫り ――切り裂く。
真っ二つに切り裂かれ虚空を舞う……アリーナのマント。
肝心のアリーナはその場に倒れ付し、無様に横に転がりながらウィーグラフとの距離を取る。
一瞬でも彼女が自分から転ぶのを躊躇していればマントの運命はそのまま彼女のものだっただろう。
ウィーグラフはひらひらと宙を舞うマントが視界を遮り、追撃が叶わなかった。
お互い体制を整え、距離を取って対峙する。
(ふん、か弱い少女かと思えばとんだじゃじゃ馬だな。
殺しはしないがもう一度、動けなくなるほどに斬り伏せる必要があるか)
(あいつ……強い、私よりも。……負ける? 私が? また?)
考える。自分は今までに3度敗北した。
一度目は油断だった。実力では上回っていたのに、相手を侮って敗北した。
二度目は戦術を誤った。複数を相手に受けに回ってしまった。あの黒服も強かったが。
三度目は挑発に乗って我を忘れ、周囲の警戒を怠った。テリーを見切るのも早すぎた。
もう自分に負けは許されない。
アリーナは考える。三度も敗北すれば嫌でも学習する。
(力だけじゃ、生き延びられない)
ならばどうする? どうすればこの場を切り抜けられる?
(考えろ、考えろ、考えろ、リュカの時のように)
思考が高速で活性化する。自分が生き延びるための方策を模索する。
そして、アリーナは気を抜くと両手を挙げてその場に座り込んだ。
「?」
「降参、よ。私の負け、好きにすればいいわ。
私の身体が目当てなんでしょ? 」
それを聞いてウィーグラフは激怒する。
「私を愚弄するか!」
「でもあなた、気絶してる私の唇奪ったじゃない」
「貴様がそうやって立っていられるのは誰のおかげだ?
貴様が薬を受け付けんから、無理に飲ませてやったのだ!」
やはり、と思う。
思い返せば自分はあの雷で手酷いダメージを負っていた。
目覚めたとき、痺れしか残っていなかったのは彼が助けてくれたからなのだ。
(なら、私を助けた理由がある。その理由が解消されないうちは殺されることはない、か)
「そういうことなら私が悪かったわね。ごめんなさい。
襲われるかと思って必死だったの」
(フン、白々しい。貴様がこのゲームに乗っていることは一目瞭然だ)
だが突然襲い掛かってきた理由については納得した。
マーダーであるうえ、そういう誤解が上乗せされれば仕方ないかと思う。
ウィーグラフは警戒は解かないままに剣を下ろした。
「小娘」
「アリーナよ」
「ではアリーナ。貴様はうわ言でラムザの名を言っていた。
ラムザと出会ったな? 奴はどこにいる!?」
問い詰めてくるウィーグラフを見てアリーナは考える。
ラムザ。最も新しい憎悪の対象。そしてそれは向こうも同じのようだ。
どうみても仲間という雰囲気ではない。
教えても構わないが、自分はラムザの行く先を知らない。
だがなんとかこの状況を上手く立ち回らなければならない。
「ええ、知っているわ。ラムザの行く先もね」
ハッタリである。よく考えれば自分の示した先にラムザが居なくても一向に構わないのだ。
こっちの方向に向かったことは確かだが途中で何かあって方向転換したのかも知れない、で通る。
それよりもこの騎士の強さは利用できる。
もともとテリーを取り込んだのは、ピサロやあの黒服のような強者との戦いの為の手駒とする為であった。
実用には耐えないと判断して捨ててしまったが。今思えば惜しいことをした。
あの剣の効果を知っていれば考えも変わっていただろう。
だが今更仕方がない。その代わりに何とかこの騎士を取り込んでみようか。
「本当か! どこだ!」
「ちょっと落ち着いてよ。事情くらい聞かせてくれない?
ラムザってあんたの何なの?」
「妹ミルウーダの仇だ! ラムザとその仲間アグリアスをこの手で殺さぬうちは死んでも死に切れぬ!
嫌、そんなことはどうでもいい。さっさと奴の居場所を吐け!」
妹ミルウーダ、このあたりが鍵か。そしてアグリアス。
この名前には危機覚えがある。あの忌々しいサスーン城で。
『それ以上喋るな。アグリアス、大丈夫か?』
そうだ、あの黒服と一緒にいた女騎士の名前だ。
どうやら向こうの仇は同時にこちらの仇でもあるらしい。
「分かった。教えるわ、だけど条件があるの」
「条件だと? 貴様、そんなものを出せる立場だと思っているのか」
ウィーグラフは下ろしていた剣を再び構え、殺意を乗せる。
アリーナはその威圧感に少し怯むが、何とか平静を装った。
「待って、私を助けてくれた礼としてラムザの行く先は教えるわ。
条件のほうはアグリアスの居場所を教える代わりにってことよ。
それにあなたにも悪い話じゃないと思うけど?」
「何、アグリアスだと!?」
(ラムザだけでなくアグリアスの情報までも!
なんだ? 何か上手く行き過ぎている気がする……だが)
「条件、とはなんだ」
「私と同行して。私もそいつらには怨み心頭なのよ。
さっきの戦いで分かってもらえたと思うけど、お役に立つわよ?」
「彼奴らは私自身の手で冥府へと送る。加勢は必要ない」
「そうかしら? アグリアスには手練の仲間がいるわよ?
とても強い長身で黒服の男に赤い貫頭衣を纏った物真似なんて奇妙な技を使う男。
それにラムザまで加わる可能性があるわ」
ウィーグラフは沈黙する。
その二人には覚えがある。もう少しでアグリアスに止めをさせるかと言うときに邪魔をした二人だ。
長身の男に関しては服装は違うが着替えたのであろう。
確かに侮れない。しかもラムザは単体での戦闘よりも集団戦闘に長けている。
奴が指揮を執れば、たった五人の集団も一個師団に匹敵する戦力を持つのだ。
(この提案……乗るか)
しかし……この女の性は凶だ。この女は参加者の全てを殺すつもりだろう。
同行するということは自分はそれを容認するということだ。
つまり、ゲームに乗るということ。今まであやふやだった決断を迫られている。
鬼女という言葉が浮かぶ。血を好み啜る鬼。いつ後ろから刺されるかもわからない。
そこまで考えて自嘲する。鬼がどうした。
自分もまた復讐鬼。かつては悪魔に魂を売り渡した立派な鬼だ。
そして復讐を果たした後もここで朽ちる気はない。
ふと、何故かジタンの顔が脳裏をよぎった。だが、ウィーグラフはそれを振り払う。
「わかった。その条件飲んでやる。
だが私の指示には従ってもらうぞ」
「OK、交渉成立ね。あ、言い忘れてたけどリュカとエドガーってのも
そのアグリアスの居場所に向かってたから、もしかしたら大勢を相手にする羽目になるわよ?」
「構わん、もうそんな話はどうでもいい。さっさと居場所を言え」
「いや、その話詳しく教えてもらおうか」
突然第三者の声が割り込んできて、アリーナとウィーグラフはその方向を見やる。
そこにはオートボウガンを構えたスライムに乗った騎士……ピエールが居た。
「魔物?」
「そちらの女性、今リュカ様の名前を出したな。その居場所を教えてもらいたい」
(リュカ「様」? そういえばアイツ魔物使いだっていってたっけ。
てことはコイツはリュカの仲間モンスター。
ドラゴンライダーのスライム版だからスライムライダーとでもいうのかしら? でも……)
「あなた……殺してるわね、何人も」
そう、ピエールの放つ殺意、臭気、雰囲気がそれを克明にアリーナに知らせていた。
(コイツはリュカ様といった。リュカへの忠誠は捨ててない。
なのに殺人を犯してるってことは……リュカの為ね。
リュカを生き延びさせて最期に自殺する、てところかしら、なら……)
取り込めるかも、と思ったところでウィーグラフが飛び出した。
向かってくるウィーグラフに向かってピエールはオートボウガンを放つ。
高速で飛来する矢を全て叩き落してウィーグラフはピエールへと迫る。
アリーナにも矢弾は降り注いだが、彼女はその矢の全てを掴み取った。
「何!?」
その二人の常識外れの反応速度に驚愕するピエール。
だがそれも一瞬、手に入れたばかりの雷鳴の剣でウィーグラフのプレデターエッジを受け止める。
膂力でも体重でも劣るピエールは弾き飛ばされる前に自分から飛び、力を受け流す。
(あの剣?)
アリーナはその剣に見覚えがあることに気付いた。
そしてピエールは距離が開くとすぐに杖を取り出し振る。
その光弾の標的はアリーナ。
しかし決して速くはないその光弾をアリーナは簡単に回避する。
だがその光弾が着弾したその場所にピエールが現れた。飛びつきの杖の効果だ。
「え?」
驚き、動きが止まる。その隙を逃さず振り下ろされた剣を咄嗟に白刃取りで受け止めた。
身を捻り剣を奪い取るが、ピエールはすぐに手を離し別の剣を手にしていた。
アリーナが奪い取ったのはスネークソード。そしてピエールの手に握られているのは雷鳴の剣。
(殺られる!?)
「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風、地裂斬! 」
ウィーグラフの放つ地を這う衝撃波がアリーナを窮地から救った。
ピエールは衝撃波を回避するために後方へと飛びずさる。
そして今度は別の杖を取り出し、ウィーグラフへと放った。
その光弾をウィーグラフは切り払うが、嫌な予感が背筋を走り剣を手放す。
するとプレデターエッジはウィーグラフの前から消え失せ、ピエールの前に出現していた。
こちらは引き寄せの杖の効果である。
「瞬間移動だと!?」
先ほどアリーナの傍に移動したことといい、実に奇妙な技だとウィーグラフは警戒する。
ピエールはプレデターエッジを蹴り飛ばし、遠くへやると雷鳴の剣を振りかざした。
周囲の空気が乾燥し、帯電、静電気を放ち始める。
(まずい、あれって!)
アリーナは雷撃を阻止しようとピエールに向かって駆け出すが明らかに遅い。
しかし一瞬早くウィーグラフがレーザーウェポンを取り出し、リボン状にしてピエールを打った。
弾き飛ばされ、ピエールは雷鳴の剣とザックを一つ取り落とす。
雷鳴の剣はすぐに起き上がったピエールが再び手にしたが、ザックはアリーナが拾い上げた。
ウィーグラフは使い慣れぬレーザーウェポンを仕舞うと、青い片刃剣、フラタニティを取り出し駆ける。
ピエールも再び雷鳴の剣を使おうと振りかざす。
そして……アリーナがウィーグラフを背後から羽交い絞めにした。
「な、何!? 貴様ァッ!!!」
「ちょ、ちょーと、ストップ! あんた、私達は降参するわ!
だからその物騒な剣を下ろして! 質問にも答えるから!」
それを聞いてピエールも動きを止める。
だがウィーグラフは納得がいかず激昂する。
「貴様何のつもりだ!」
「落ち着いてよ、あの剣は雷を操るのよ?
ここの焼け跡見たでしょ? あんたアレ防げるの?」
「む……」
「だったら下手に危険を冒すよりも上手く切り抜けましょうよ。
とりあえず私に任せてくれない?」
「ちっ」
ウィーグラフは一つ舌打ちすると一歩後ろへと下がる。
そしてアリーナはピエールと正面から向き合った。
「あなた、テリーを殺したわね?」
ピエールは沈黙をまもる。実際は殺してはいないが答える必要を認めなかった。
「そう、やっぱりね。アイツは私の手で引導を渡したかったんだけど、とりあえず礼を言っておくわ」
「戯言はいい。私が必要とするのはリュカ様の居場所だ」
そう、今のピエールはリュカの居場所を求めていた。
主のために殺人を犯してからは、完遂するまで会うことはしないと思っていたが事情が変わった。
先刻、テリーと対峙した際にピエールの命を救った王者のマント。
これがあればリュカの生存率は大幅に向上するだろう。何としてもリュカに渡さねばならない。
自分が他の参加者を殺し尽くしても、肝心のリュカが死ねば全ては無意味となるのだから。
最初は会えれば渡すという思考だった。しかしここに来てリュカの居場所を知る者と出会ってしまった
王者のマントに救われたときも思ったがこれは天命なのかもしれないと思うほどの偶然だ。
アリーナは肩を竦める。
「OK、OK、判ってるわ。それで教えた後のことなんだけど、あなた、私達をどうするつもり?」
「…………」
「必要なくなれば殺す。当然よね、でもさ……それって簡単だと思う?
さっきの戦いでわかったでしょう? 私も、そして彼も強いわ。
あなた強力な武器を持ってるけど、それの弱点も私は知ってる。」
ハッタリ第二段である。ピエールに動揺は見られないが、確実に迷いは与えたはずだ。
そう、状況は2対1。不利なのはピエールのほうなのだ。
「あなた、私達の仲間にならない?」
「何?」
この提案には流石のピエールも動揺を隠せなかった。
ウィーグラフも驚愕する。
「正気か小娘!」
アリーナはそれを黙殺して話を続ける。
「私達は全員ゲームに乗っている。それがこんな場所で潰し合いしても益はないわ。
このゲームには異常な強さを持つ連中がごろごろいるわ。まだ人数もたくさん残ってる。
だったら協力して事に当たり、最後に雌雄を決したほうが効率がいい。
そうは思わないかしら? どう?」
「……考えている」
アリーナはピエールを観察する。噴出すような殺意が弱まってきている。
(もう一押しといったところね)
小声でウィーグラフに話しかける。
『ねぇ、私を治した薬まだ持ってるでしょ? あれ出して』
『な、何故知っている?』
『あんな強力な薬、数に余裕がなきゃ他人に使うわけないでしょ?
しかも不確定な情報を聞き出すためになんて、よっぽど余裕がない限りは使わない』
『ぐ、確かにそうだが……奴が回復すればこちらに牙をむくかもしれんのだぞ?』
『大丈夫、人質がいるわ。リュカっていうね。
私とあんたが逃げに徹すればアイツを撒くことは可能だし、それは奴もわかってる。
そして私たちを逃せば私たちにリュカが殺されるかもしれない。
だから絶対にアイツはここで私たちを始末するか、リュカを殺せない状況に持っていきたい筈なのよ。
それに成功すれば強力な戦力になるわよ』
(今アイツが考えているのは私たちをこの場で確実に殺せるか否か。
そしてそれは難しい。そこでもっと美味しい条件が別の選択肢に加われば……転ぶはず)
仕方なくウィーグラフはザックからエリクサーを取り出す。
「魔物よ。貴様が我らと同行するというのならこのエリクサーをくれてやっても良い。
これは体力と魔力を完全に回復させる希少な薬だ」
チラリ、とピエールはウィーグラフの持つ小瓶に視線をやる。
「私たちを信用する必要はないわ。どうせいつかは訣別するのよ。
だったらそれまで私たちを利用すればいい。私たちもあなたを利用する」
そのアリーナの言葉を区切りに、しばらくお互いに沈黙が続き――
ついにピエールは口を開いた。
「確認することが一つ。条件が一つ」
内心ほくそえみながらアリーナは答える。
「何かしら?」
「リュカ様とは何時であった? 負傷はされてないのか?」
「私が出会ったのはお昼頃かしらね。結構な怪我をしていたわよ。
命には別状なさそうだけど、誰かに襲われたら危険でしょうね」
「!」
それでピエールの腹は決まったようだ。
「今後、リュカ様と出会っても一切手を出すな。その前に私を相手にしてもらおう。
これが条件だ。飲めないならば私は敵となる」
「ええ、分かったわ。アンタもそれでいいでしょ?」
ウィーグラフも了承する。
「ウィーグラフ、だ。そちらがそんな条件を出すなら私も条件がある。
ラムザ・ベオルブという者には手を出すな。奴は私が殺す。
もし手を出せばいつでも私の剣は貴様らへの脅威となるぞ」
アリーナは得心したように頷く。
「なるほど、人質交換ってわけね」
「ふん、貴様にはそのような者はおるまい」
「いいえ」
そのアリーナの意外な答えにウィーグラフは少し驚く。
「このゲームには私がもう1人参加している。
私と同じ容姿、同じアリーナの名前を持った参加者。
彼女には決して手を出さないで」
「どういうことだ?」
「説明するのが面倒だわ。双子の姉妹とでも思ってちょうだい。
大きな変わりはないから」
疑問は残ったがウィーグラフは追求しないことにする。
もとより関係のないことだ。
彼はプレデターエッジを拾うとエリクサーをピエールへと投げ渡した。
ピエールはすぐさま煽り、回復する。
これでお互いに人質を出し合ったことで裏切ることは難しくなった。
「それよりこれで同盟は成立ね」
「ならばリュカ様の居場所を教えてもらおうか」
「ラムザとアグリアスもな」
意気込んで問いかけてくる二人にアリーナはにっこりと笑いかける。
「場所はサスーン城よ。あの場所にアグリアスとその他二人の仲間がいるわ。
アグリアスには怪我を負わせたから、まだそこに留まっていると思うわ
そしてリュカとその連れエドガーも城に向かっていた。今頃はもう到着しているんじゃないかしら?
ラムザはここから北のほうへ向かった。確実ではないけれど城へ行く可能性は結構高いんじゃない?」
ラムザのくだりだけは大嘘である。彼女はラムザが去った方向を見ていない。
だがその嘘を見破る方法は皆無である。
アリーナの証言に二人は頷く。
「ならば急ごう、もう日暮れも近い。夜の山は危険だからな」
「承知」
「OK! 行きましょう」
そして三者三様の思惑を胸に駆け出す。
(ラムザよ、アグリアスよ、とうとう尻尾を掴んだぞ!
待っていろ、すぐに冥府魔道へと叩き落してやる)
(リュカ様、どうぞご無事で……! このピエール、一命を賭してお救いします!)
(これであのバカ強い黒服に対抗できるわね。怨みを晴らしてあげるわ)
そしてアリーナは改めて思う。やはり力だけでは生き延びられないのだ。
考えろ、考えろ、どうすれば一番いいのか。
どうすれば生き延びられるのか。何度敗北してもいい、最後に生き残っていればそれが勝利だ。
考えろ、思考しろ、神経を研ぎ澄ませ。
こうして……悪意の螺旋は再び大陸の中心、サスーンへと向かう。
【ウィーグラフ 】
所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×7、ブロードソード、レーザーウエポン、
フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 首輪×2、研究メモ、
第一行動方針:ラムザを探す
第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない
基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【ピエール(HP MAX MP MAX) (感情封印) 】
所持品:雷鳴の剣、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
王者のマント ひきよせの杖[2]とびつきの杖[1]ようじゅつしの杖[0]
死者の指輪、毛布 聖なるナイフ 魔封じの杖
第一行動方針:リュカを探し、王者のマントを渡す
基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【アリーナ2(分身) (HP MAX) 】
所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
最終行動方針:勝利する】
【共通第一行動方針:サスーン城へ向かう
共通第二行動方針:利用できるうちは同盟を護る】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯→サスーン城へ】
空の一端を掠めていく青い影にも気付かずに、フリオニールは走る。
彼方に見える緑、その向こうにあるはずの村――カズスを目指して。
度重ねた戦闘のせいか、走った距離のせいだろうか。
息は上がり、足は鉛のように重い。
だが、疲労や痛覚をごまかすためか、高揚した神経は無意味な全能感を脳に吹き込み続けている。
どこまでも走れそうな感覚、しかし限界が近いことを訴える筋肉。
その二つを取り持とうとするかのように、心は繰り返し、繰り返し一つのフレーズを流し続ける。
(俺は、野ばらだ……誰にも摘まれない……手折らせない……フィンの野ばらだ……)
フィン王国の紋章、反乱軍の合言葉たる野ばら。
可憐な花を咲かせながらも、決して屈さず、媚びず、みだりに摘もうとする者の指を鋭い棘で貫く。
強大な帝国に対抗する者達の象徴としては、これ以上相応しいものもないだろう。
かつて反乱軍の戦士であった時、フリオニールは思った。
自分は野ばらの棘でありたいと。
フィンという花を手折ろうとした皇帝に、一矢報いる棘でありたいと。
今、殺人者となったフリオニールは思う。
自分は野ばらでありたいと。
今一度小さな花を咲かせるために、誰にも摘まれぬ強き野ばらでありたいと。
ユフィは未だ追ってきているのだろうか。
振り向いても見当たらないが、フリオニールがカズスに向かっていることは彼女にもわかっているはずだ。
それでも……いや、だからこそ、一分でも一秒でも早くカズスに行き、身を休める必要がある。
枯れた野ばらが二度と花を咲かせないように、死んでしまえば、全ての努力が水泡に帰すのだから。
(それだけは避けなければならない……何としてもだ!)
フリオニールは走り続ける。
マリアが蘇る時まで、手折られるわけにはいかない――その想いが駆り立てるままに。
――サックスとカインの追跡劇が幕を開けてから、数十分後。
村とも呼べない瓦礫の群れの真っ只中で、スコールとマッシュは立ち尽くしていた。
「ひどいな、こりゃ……一体全体、何をどうやったらこうなるってんだ?」
マッシュが、足元の石を蹴り飛ばす。
溶けかけの飴玉を思わせていたそれは、地面に落ちると同時に脆く砕けた。
周囲を見回せば、つつくだけで崩れそうな壁ばかり。
建物全体としてみれば、つつくまでもない状態だ。
「被害状況からして、何かが爆発したようだな。
高レベルのG.F.を召喚したか、ごく小型の核爆弾でも使ったか……そうでなければ、俺の知らない魔法か」
村を囲む木々や、残された家の痕を調べていたスコールが、冷静に分析してみせる。
二人とも、不思議と怖気づいてはいない。
元々の性格もあるが、今に限っては、破壊の規模が大きすぎて現実味を感じられずにいるという要素が強かった。
「なぁ、あっち行ってみようぜ、スコール」
そう言って、マッシュが大きく抉れた地面を指さす。
そちらが爆心地であることは、木や建物の倒壊状況を見るまでもなく明白だ。
「危険だぞ」
どこかおざなりなスコールの言葉に、マッシュは足を進めながら言い返す。
「虎子を得るには、虎穴に入らなきゃならないだろ」
スコールも後を追う。いつも通りの仏頂面ではあるが、心なしか唇の端が釣り上がっているようにも見える。
「虎子ならいいがな……魔女が出てくるかもしれないぞ」
「アルティミシアか? 脱出の手間が省けるってもんだ、願ったり叶ったりさ」
声を上げて笑うマッシュに、スコールは呆れたように首を横に振った。
「二人きりでも戦う気かよ、あんた」
「当然。お前だってそうだろ」
言われて、スコールは目を閉じた。
「確かにな……どんな状況だろうと、俺は戦う事を選ぶだろう。
そうすることで別の悲劇が幕を開けるとしても……奴を倒すことが、俺の義務だからな」
(義務?)
わずかに自嘲の色を帯びた呟きの意味を聞きあぐね、マッシュは問い返すつもりで口を開く。
――けれど、そこから紡がれたのは、全く別の言葉だった。
切り取ったように残された地面、その上に、ぽつんと横たわった『もの』に気がついたがために。
「あれ、人じゃないか?」
視線の先にあるのは、手折られた花を思わせる、赤い色彩。
スコールはマッシュに答えることなく、そしてマッシュもスコールの返事を待たず、ソレに向かって走り出した。
二人の視界の中央に、次第にはっきりと見えてくる。
吹き飛ばされた炭の欠片、千切れた腕、わずかに生前の面影を残す頭部。
半ば溶けて、中身が剥き出しになった首輪。
目を覆いたくなるような惨劇の中にあって、荒野に咲いた野ばらのように存在する赤髪の少女。
けれども胸に生えた剣が、赤黒い血が、白蝋を思わせる肌が、彼女が既に息絶えていることを示している――
一枚の絵画にも似た悪夢が、そこにはあった。
「相討ちになったのか……」
壊れた首輪を拾い上げながら、マッシュは呟く。
残されたパーツからでは、それが元は若い人間だったということしかわからない。
一方、スコールは少女の遺体に歩み寄ると、突き刺さったままの剣を力任せに引き抜いた。
それから、そっと彼女の首筋に触れ、感触を確かめる。
「……硬直の度合いからして、事があったのは正午前後だな。
あんたが『光った』とか騒いでた、ちょうどその時かもしれない」
スコールの言葉を聞いているのかいないのか、マッシュは苛立ったようにばりばりと髪を掻く。
「やってらんねえな、まったく。
どっちもまだ若いのに、こんな形で命を散らせるなんてよ」
舌打ちするマッシュを横目に、スコールは少女の持っていたザックを調べる。
中から出てきたのは、さほど大きくない袋と、一振りのナイフだった。
「これは……ティファのナイフ?」
スコールの言葉に、けれどマッシュは首を横に振る。
「いや、似ているけど違うぜ。
あいつのナイフはロックの奴が使ってたのと同じだったからな、良く覚えてるんだ」
「そうか? ……あんたがそういうならそうなんだろうな」
口ぶりとは裏腹に、あまり納得していないような表情で、スコールは自分のザックに仕舞いかける。
――その時、二人の耳に女の声が届いた。
『待って……そのナイフを、見せて……』
「……ティナ?」
マッシュが慌てて魔石を取り出す。
ティファを回復して以来、淡い明滅を繰り返すのみだった魔石が、煌々と輝いている。
『見せて……私に…・・』
今にも消えてしまいそうなほど儚く、けれど、紛れもないティナの声が響いた。
スコールは一瞬悩む素振りを見せたが、ひとまずナイフを魔石の前に翳す。
「これで見えるか?」
肯定するように、緑の光が瞬いた。
「心当たりがあるのか?」
マッシュの問いに、ティナの声が答える。
『ええ。間違いないわ……
これ……最初に殺した女の子の……彼が持っていったはずのナイフよ……』
それだけを言い残すと、力尽きたのか、ティナの声はぱったりと止んだ。
弱い光を湛える魔石の前で、スコールとマッシュは顔を見合わせる。
ティナの言う『彼』。それが誰なのかは、訊くまでもない。
「スコール。他に、あいつの持ち物らしいのが入ってたか?」
「いいや、こっちの袋には変な草が入ってるだけだ。ボウガンも大剣もない」
首を横に振るスコールに、マッシュは顔をしかめる。
それから、苦々しい声で問い掛けた。
「……どういうことだと思う?」
「何とも言えないな。判断材料が少なすぎる。
ただ、あいつを殺して荷物を奪った可能性は低いだろう。
他の武器が入っていないんだからな」
スコールは顎に手を当て、視線を地面に落とす。
「どこかで接触して取引でもしたか、上手いこと盗んで逃げ切ったか……
あるいは……ティファみたいに、誰かを殺すために利用しようと渡したのか」
スコールは口を噤み、少女に視線を移す。
マッシュも痛々しげな目を亡骸に注ぐ。
そうして沈黙が降り、しばしの時が過ぎた。
――やがて、ふと、何かに気付いたようにスコールがマッシュを見やる。
「どうするんだ、それ?」
その視線は、マッシュの手に握られた首輪に注がれている。
溶けて穴が空いた外殻の中から、焦げた基盤や配線がはみ出た、壊れた首輪。
「あ? あ、ああ……つい拾っちまったけど、こんなモン持ってても仕方ねーよな」
そう言って、マッシュは放り捨てようと振り上げ――唐突にその手を止める。
「待てよ……これ、機械なのか?
……もしかして、兄貴なら調べられるか?」
「アニキ?」
「ああ。俺の国は、元々機械技術が盛んな国でさ。
俺はそっち方面には興味がないけど、兄貴はかなり熱を入れてるんだ。
……そうだよ。機械なら、兄貴に任せればきっと何とかしてくれるぜ」
マッシュは目を輝かせる。
――が、それは一瞬のことだった。
「そんな壊れてるのに、解析なんかできるのか?」
スコールの指摘に、マッシュは壊れた首輪を見やり、沈んだようにため息をつく。
「……すまん、無理に決まってるな。
ここまで壊れてるんじゃ、いくら兄貴だってどうしようも……」
がっくりと肩を落とすマッシュに、スコールは冷淡に声を掛けた。
「だから、壊れていない首輪があるだろ?」
そう言って、踵を返し歩き出す。
眉をひそめるマッシュの前で、スコールはガイアの剣を大きく振りかぶり――
風を切る鋭い音。
次いで、鈍く重い音。
目を瞬かせる間もなく、鋭い一閃が走った。
数十秒後、スコールは『壊れていない首輪』をマッシュに手渡した。
それから剣とナイフだけをザックに仕舞い、すたすたと歩き出す。
数メートルほど歩いたところで、立ち竦んでいるマッシュを振り返り、声を掛けた。
「行こう。この町にあいつはいない。
これから来るとしても、この状況では、足を踏み入れたり留まったりする確率は低い。
他の拠点を探した方が、あいつにも、あんたの兄貴とやらにも出会える可能性が上がるだろう」
そう言って歩くスコールの後姿と、転がる赤い髪を交互に見やり、マッシュは何かを言いかける。
だが、声にすることはついにできなかった。
そんなマッシュの代わりに、スコールが口を開く。
「なぁ……ラグナやマリベルの言葉を覚えてるか?」
マッシュは一瞬戸惑ったが、すぐに首を縦に振った。
スコールは振り返らなかったが、彼の答えがわかったかのように、言葉を続けた。
「俺には義務がある。
仲間として皆の遺志を継ぐ義務……班長としてバカな班員を止める義務。
何より……俺自身が作ってしまった物語を終わらせる義務がある」
――その時、スコールはどんな表情をしていたのだろう?
マッシュには見えなかったし、声色から想像することもできない。
ただ、硬く、硬く握られた拳が、彼の思いの一端を物語っていた。
「正しいかどうかなんて、どうでもいい。
果たさなければならないことがある、だから成し遂げなくてはいけない。
……少なくとも俺には、奇麗事や甘い事を言っている余裕なんか無い」
それ以上、スコールは何も喋らなかった。
マッシュはしばらく渡された首輪を握り締めていたが、やがて、彼を追って歩き出した。
肩で息をしながら、フリオニールは足を進める。
己の希望を咲かせるために――薙がれて倒れた木陰を縫い、その先にある村へと。
死者の遺志を胸に、スコールとマッシュは歩く。
成すべき事を成し遂げるために――かつての仲間を探しに、見知らぬ地へと。
手折られぬ野ばらでありたいと願う者。
その棘は、この先誰を傷つけるのか。
あらゆる魔力を打ち破る剣、その凍てつく波動に触れた首輪。
それは、魔女の手を貫く野ばらの棘となるのだろうか。
運命は、未だ結末を教えてくれない。
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:他の拠点に移動し、アーヴァインかエドガーを探す
第二行動方針:ゲームを止める】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口付近→村の入り口へ】
【フリオニール(HP1/3程度 MP1/2)
所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
第一行動方針:カズスの村へと走って移動する
第二行動方針:日没時にカズスの村でカインと合流する
最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【現在地:カズスの村・周囲の森→村の中へ】
*ひそひ草、及び様々な種類の草が入った袋(説明書付き・残り1/4)はバーバラの死体の傍に放置。
このケフカという道化師、一体何を考えているのだろうか?
顔のペイントで表情が読みとりにくいし、さきほどから踊っているように見えるが、意味があるのか無いのか分からない。
話しかけてみても、はぐらかされるばかりだ。あまり好んで関わりたい人間ではない。
そう思っていたが、周りがよく見渡せる場所に出たとき、ケフカの方から話しかけてきた。
「ヒャヒャヒャ、やっと二人になれましたね」
俺は武器を構えた。いきなり襲ってくるとは思えないが、こいつが襲ってきても別段不思議でもない。
「おやおや、武器なんか構えられたら困りますよ。別に戦おうってわけじゃない。
あのガ…あのガタイのいい男とルカくんとがいるとどうにも話しづらくてね。他人に聞かれたら困りますし。
実はお前に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと、だと?」
仲間に秘密にしておきたいような頼みだ。ロクなものではあるまいが。
「ヒャヒャヒャ、そうですよ。戦うのが好きなお前にね。殺すのを、と言った方がいいかな?」
俺が殺人者だと見抜かれたのか? いや、そんな素振りは見せていないはずだ。
「何故そう思った?」
「おや、違いましたか? 顔に書いてありますよ」
スミスにも心が丸見えだと言われたが…こいつも心が読めるのか?
そんなやつが何人もいたら、たまったものではない。
演技力には自信はある方なのだが。
「真面目に答えろ」
「つれないねぇ。なに、簡単なことですよ。
お前、あの剣士を殺そうとした瞬間に笑っていたし、
僕らが来た後でさえ、随分焦ってあの剣士を殺そうとしていたじゃないですか。
他の二人は銃とやらの使い方の方に気を取られていましたけどね。
僕の配下の兵士にも、お前のようなやつは何人もいましたよ。
普段はおとなしいが、戦いの場では敵を殺すことを心の底から楽しみにしているようなヤツがね」
確かに、サックスを殺そうと焦っていたかもしれないし、追いつめたあの瞬間には油断して笑みを浮かべたかもしれない。
だが、いかに洞察力が優れていようと、それだけで分かるものだろうか? もしかすると。
「お前も、その手の人間なのか?」
これを聞いて、ケフカは一瞬顔をしかめた後、高笑いを始めた。
肯定しているのか、それとも馬鹿げたことだと考えて、俺を嘲って笑っているのかは分からない。
ただ、今一連の発言には後悔した。即座に否定しなかったということは、相手の言ったことを認めたと同義。
ケフカの目をにらみ返すが、受け流されただけだ。
「まあ、一番おっきな理由は、僕のカンなんですけれどね」
コホン、と咳払いをして、ケフカが話を続ける。
「話がそれましたね。殺してほしいヤツがいるんですよ。
レオといってね。頭がカタくて、しつこくて、不細工で、愚劣な男だ。お互いに死んでほしくてたまらない」
まるで親友のことを話しているような口ぶりだ。だが、目に憎悪の色がありありと浮かんでいるのが分かった。
「ただの私怨か?」
ゲームに乗っているとバレないように人を殺すには、それなりの理由や口実が必要だ。
レオとやらがどんな男なのかは知らないが、場合によっては周りの人間に殺人者に認定されかねない。
「なに、大義ならあるさ。あいつを生かしたまま帰すと、帝国の発展が遅れることになるからね。
お前も騎士団長なんてやっているような身分なら、分かるだろ?
生真面目な忠臣とかいう輩どもは、ときに邪魔になるんですよ」
「お前の世界のことなど、俺や、他の参加者の知ったことではない。
それに、お前は知らないかもしれないが、金髪に気を付けろとかいうふざけたメモが出回っている。
生真面目な忠臣、ということは、人望もそれなりにあるのだろう。そんなやつを殺せば、俺が不利になるのは明らかだ」
またもケフカはヒャヒャヒャと高笑いを始める。
「何が可笑しい」
「失敬失敬。お前もそのメモを読んでいたんですね。…読んでいなかったらラクだったんですけどね」
こいつ、俺をその気を付けるべき金髪に仕立て上げるつもりだったのか? 予想以上に食えないやつだ。
「なに、大丈夫ですよ。レオのやつも金髪だ。それに、お前はとっさに言い訳を考えるのは得意じゃないのかい?」
大丈夫ではないのではないか、それは…。窮地に陥ったら自分で何とかしろということなのか…。
どこからともなく、紙が飛んでくる。そういえば、このステージは風が強いな…。
ケフカが足下に落ちたそれを拾い上げ、さらに笑う。
「ヒャーッヒャッヒャッヒャ!! ほら、それに、こんなものもあるよ。できれば、僕以外に拾ってほしかったんだけどねぇ」
そこには、血で囲まれ、キヲツケロと書かれた顔写真が握られていた。
確かに、この写真なら十分な理由になりうるが。
「まあ、他にも死んでほしいやつは沢山いますけどね。
マッシュのパンチは痛かったですしねぇ。エドガーはいつもうるさくて邪魔でしたしねぇ。リルムは生意気でしたしねぇ。
…あいつら、僕を馬鹿にしやがって。ちくしょう。
…おっと、関係ない話をして悪かったですね。ヒャッヒャッヒャ!」
続きがないところをみると、ただの愚痴か。ギャップの激しいやつだ。それとも、これも演技なのだろうか?
「殺すに値する口実があるのは分かった。
だが、俺がそれを引き受けることに、どんなメリットがある? もし俺が断ると言ったらどうするつもりだ?」
「そうですねぇ」
ケフカは考え込んでいたかと思うと、またも突然に笑い出した。
「よし、引き受けてくれるなら、お前が殺し大好き人間だってことを僕やお前の仲間に黙っておいてあげましょう。
バレたら、色々と都合が悪いでしょ? 仲間は多い方がいいですしねぇ。
そうそう、ここで殺そうとしたって無駄だよ。あのモヒカンは、遠くのことが見えるらしいですしね。
きっと今も僕たちのことを心配して見てるだろうさ。動けないだろうけどねぇ。
ここで戦ってもどうせ僕が勝つだろうけどねぇ」
まあいい、どうせゲームに勝つには他の参加者を殺さねばならないのだ。
別にここでの口約束が大した意味を持つわけでもないだろう。
それに、この写真は案外役に立つかもしれない。
「いいだろう。レオを見つけたら、必ず殺すことにしよう」
相手の俺に対する認識は、悪人殺しを楽しんでいる偽善者、という程度のはず。(十分危険なやつのようにも思えるが)
まだ出し抜く余地はあるだろう。
手を組むには、こいつは少々厄介だ。スミスが戻ってから考えるべきだろう。
テリーという男、仲間なのに状況によっては殺さないといけない、とハッサンは言っていた。
すなわち、戦闘狂か、または精神不安定なやつだということだ。
そういうやつをスミスに紹介したら、泣いて喜ぶだろう。
砂漠をそろそろ抜ける。向こうで一瞬青が動いた気がする。
テリーは確か青い帽子をかぶっていたのだったな…。
【ケフカ(浮、MP消費) 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【カイン(HP5/6程度) 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置
草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【共通第一行動方針:西(テリー、アリーナ2,ラムザの戦場跡)へ行き、テリーと接触】
【現在地:カズスの村から西の砂漠】
203 :
制裁 1/2:2005/09/20(火) 23:55:11 ID:dyYjAD+L
ロックたちがローグの埋葬に行った後ソロはピサロに話しかけた。
「なあピサロ」
「なんだ」
「このゲームから脱する方法を考えてみたんだけどさ」
そう言ってロックに話したことと同じ話をする。
天空の剣の効果があれば首輪の魔力を消せるかもしれない。
それを聞いてピサロは小馬鹿にするように笑った。
「貴様、私の力を忘れたのか。凍てつく波動など造作もないことよ」
ソロは驚いた後小躍りした。
「そうか、何か忘れていると思ったらお前、凍てつく波動使えたんだっけ!
早速試してみよう、僕が実験台になる!」
「よし、ならばいくぞ」
ピサロはソロに手を翳し、念じ始める。すると。
ピーピーピー
「なんだ?」
「ピサロ、首輪が!」
ピピピピピピピピピピピピピーーーーーーーーーーボンッ
ピサロの首輪から電子音が鳴り響き、爆発した。
小規模ながらもその威力はピサロの首を切断し、空へと飛ばす。
「ピサローーーーッ、うわああああああああああああああーーーーーーー!!!!」
鮮血が飛び散る。
204 :
制裁 2/2:2005/09/20(火) 23:56:11 ID:dyYjAD+L
「くくくくく、そう易々と首輪の解除などさせるものか」
盗聴によって事態を知ったアルティミシアが首輪を作動させたのであった。
「さあ、小細工は無駄だ。みな殺しあえ、アハハハハッハハハハハハッハハ」
魔女の哄笑が城内に木霊する。
【ソロ(魔力ほぼ枯渇 体力消耗) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
第一行動方針:絶叫 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ピサロ死亡】
【残り61名】
「これは一体」
フリオニールは廃墟になった町に着いた、唖然とした。
そして同じように廃墟になった故郷のことを思い出してしみじみした、
そのときだった
「追い付いたわよ!」
「!!」
フリオニールは集中力をなくしたせいでユフィの追撃に築かなかっ
た。
「くらえ!エッジの固き!」
一直線に新羅万像を放つ。
「ぐぎゃあ!」
無様な負け犬の声を聞いてユフィはしみじみ勝利を確信した。
そしてあるひとつのことを思い付いた。
「お前確かマシンガンを持ってたわよね。それで拷問してあげるワ」
フ「謝るから許して」
ユ「ダメ〜!」
ユフィはフリオニールにマシンガンを向けると引金を引いた
悲鳴と内蔵が飛び散った
「やった!固はとったよエッジ!ユフィは最強だからさからうのが間違ってる」
「ユフィ!!!何をしてる!」叫んだのはカインだった。
カインはフリオニールの悲鳴を聞いて戻ってきたのだ!
※実はカインは地獄耳です
しかしユフィは動じなかった。
「私が最強なのよ。
カインは邪魔なので死ぬ」
そして引金を引いた。
カインは目を見開きよけた。さすがカインだとしみじみ思った。カインは強い。
「俺に勝つだなんて10年早い!!」だが遅かっ
た。
「ぐぼばあ!」
結局カインも負け犬だった。
いやユフィの前ではみんなが負け犬……恐ろしい
「アタシは最強だからさからうのが間違ってる」
ユフィは狂いつつあった
【ユフィ(発狂)】
【フリオニール死亡】
【カインハイウインドー死亡】
209 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/21(水) 20:46:40 ID:lgw4JMNF
hoshu
無効と有効の基準が分からないから投下できんorz
>210
くたばれ
|ヽ ̄ン、
_/`´__ヽ
|从´∀`) ̄
ソノ斤川ヽ
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎
それはいつだったのか。まだ日は高かったと思う。
何事もなかったかのように静まり返った湖から、フィンは目を逸らした。
もう、見ていたくなかった。
湖を。あの魔物を。
ドーガさんが沈む湖を。ドーガさんを殺したあの魔物を。
ふらふらと、森の中へと進んでいく。
虚ろな目を、ただ前へと向けていく。
「アイラを、探さなきゃ…。ギルダーを、止めなきゃ」
まだ生きているはずの仲間を、守らなきゃいけない。
死んでしまった人の遺志を、継がなきゃいけない。
目的を持たなければ、迫り続ける無力感に押しつぶされ、きっと一歩も進めなくなる。
フィンはただ、歩き続けた。
時を忘れ、どれほど歩いているのか、どちらに向かって歩いているのかも分からずに。
森を、抜けた。
日は、傾いていた。
けれどフィンにはそれが分からない。
空を見上げ、時間を確認することさえ忘れている。
歩かなきゃ、歩かなきゃ、歩かなきゃ…。
今、彼の頭の中にあるのは、只それだけ。
しかし彼は、不意に止まった。
自分でも何故止まったのかわからずに、フィンは自分の足を見る。
何も変わったことなどない。
もう一度、足を踏み出そうと試みる。
そして、フィンはその場に崩れ落ちた。
只前へ進むこと以外は、何も考えていなかった。
自分があの湖に落ちてから、びしょ濡れのまま動き続けたということも。
進んでいた森は多分に湿気を含み、決して服が乾くはずがないということも。
船乗りの息子として、その結果がどうなるかなど百も承知であるはずなのに。
そんな当然なことの配慮さえ、考えていなかった。
頭が痛い。体が熱い。
先へ、前へ行かなきゃ行けないのに。
アイラを、ギルダーを探さなきゃいけないのに……。
ドサッという人の倒れた音。
その音のすぐ南の森から、今度はミシミシという木が軋む音がする。
フィンは、その音に気づかない。
完全に意識を失っていた。
(さ〜て、どうしようかなぁ〜)
木々の間に隠れ、スミスはこの行き倒れの処遇について考えてみた。
カインからは誰かを見つけても何もするなと言われている。
だから、上空でこの男を見つけたときはそのまま無視しようとしたのだ。
が、男はこっちが何もしないのに倒れてしまった。
勝手に倒れて意識もないのなら、自分の存在に気づくこともないだろう。
なら、もう少し近づいて何があったのか調査することも、偵察の内に含まれているのではないだろうか。
幸いこの周辺には誰もいなさそうだし。
そう結論付けて、とりあえずスミスは地上に降りたのだった。
(外傷は、たいしてないな。北の方に見えた湖で溺れでもしたのかな)
もちろんこのまま放っておくというのも選択肢の一つだ。
この男が重症で死にかけであるなら、迷わずそうしただろう。
だが、どうやら身体を濡らして発熱しているとはいえ、このまま死んでしまう確率は低いだろう。
ならいっそ弱っている今のうちに止めを刺しておいてもいいかもしれない。
ただこれは流石に偵察の範囲外になる。
とりあえず、男が目を覚まさぬうちに何があったかを調べておくというのが順当だろう。
男に近づきその心を読む。
潜在的に何を考えているか読むだけなので、相手が覚醒していようが気を失っていようが関係ない。
いや、気を失っている状態ならむしろ警戒していない分入り込むことがたやすい。
まずは何を考えているのか。
これは最も表立っているため簡単に流れ込んでくる。
(…アイラ、ギルダー…。探して…、止めなきゃ……)
(ふ〜ん。仲間を探してるのか。止めなきゃって、何かあったのかな?)
そういえば、ギルダーという名前には聞き覚えがある。
あのタバサ達が一時的に行動を共にしてたという奴だ。
元マーダーだったらしいが、つまりこの男はギルダーがマーダーだった頃に接触して、それを止めたいと思っているのだろう。
何かに使えるかもしれないと思いつつ、その情報を頭の隅に寄せる。
今度はもう少し奥に、最近あったことの記憶を探ってみる。
(湖。島。いや、魔物、巨大な。氷塊。水。輝く水面。赤い、ローブ…)
生々しい記憶。それに伴う深い嘆き、後悔。
心に傷を負っている。前の大陸で会ったあの女みたいに。
…使える…。
スミスは囁く。それは悪魔の囁き。
言葉は意味を成し、毒をつくり、染み込んでゆく。
(ねぇ、知ってる? 魔物使いがいるんだよ。
そいつはね、自分では手を汚さず、手下の魔物を使ってもう何人も殺しているんだ。
偽善者面に騙されちゃいけないよ。あのリュカと、タバサには…。
女の子だからって、油断しちゃいけないよ。だって彼女、ギルダーの仲間なんだもの…)
木々の擦れる音に、フィンは目を覚ます。
音は、強い風が吹いたからだろう。そこには自分が一人、倒れているだけだった。
頭に手をやる。熱があるのは確実だ。
さっきまで熱かった身体が氷のように冷たい。
「何やってるんだ…」
少しとはいえ日のあたる場所で睡眠をとった所為か、頭はがんがんと痛いが先程より思考は回ってきた。
このまま野垂れ死んでは、それこそ自分は何も出来ない愚か者じゃないか。
キーファ、メルビン、アルカート、それにドーガさんに申し訳が立たない。
今は、自分の身体を休めることが肝心だろう。
仲間を探すためにも、亡き人の遺志を継ぐためにも。
ザックから地図と磁石を取り出す。
ここからならサスーンが近い。
フィンの目は、今度は決意に強く輝いていた。
地図をザックにしまうとき、ふと参加者名簿を手に取る。
ぱらぱらとページをめくり、二人の人物を探し当てる。
タバサと、リュカ。
夢で言われたことを反芻する。
何故知っているはずのない人の名前が夢に出てきたかは分からない。
名簿の二人は、とても悪人のようには見えないけれど。
けれど、もし、本当に…。
フィンは、歩き始めた。
ゆっくりと、決して無理にならないように。
サスーンに二人がいることなど知るよしもなく。
その様子を、スミスは凍てついた眼差しで見つめた。
フィンを見送った後、彼は北へと翼をはためかせた。
巨大な魔物のことは、実際に行って調べたほうがいいだろう。
219 :
悪魔の囁き:2005/09/22(木) 03:17:24 ID:FikBfZsB
【フィン(風邪) 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
第一行動方針:サスーンへ向かい身体を休める。
第二行動方針:ギルダーを探し、止める。
基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:湖の南の平原→サスーン城】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
第一行動方針:湖へ行き、巨大な魔物(ブオーン)を調べる。
第ニ行動方針:サスーン方面の偵察 終了次第カズスへと戻る
行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:湖の南の平原上空→湖】
ウルは、浮遊大陸を、そこにいる人物を繋いでいる過酷な定めとは無関係に、
静かだった。
10人もの数がその静寂の中で身を休めている。
今その村へとたどり着く、魔王の姿があった。
静かだ。
村の西側の入り口。ザンデはそんな感想を漏らしながら、歩みを止める。
本物の静寂の中、静けさを装う気配の存在に気付いたため。
「見張りか。ファファファ……そこにいるのだろう?出て来たらどうだ」
言いながらゆっくりと抱えていたレナの身体を静かに地面へ下ろす。
返事は素早かった。
「レナッ!?」
物陰から重装備に身を固めた少女が飛び出し、レナの元へと駆け寄る。
「レナ…良かった、気を失ってるだけか」
横たわるレナの生存を確認し、直立不動でそれをじっと凝視しているザンデを見上げる。
「あのさ、レナと…いや、レナは……うー、レナは一体どうしたのっ?」
「錯乱していたところを拾っただけだ。ただそれだけのこと」
「えーと、でもさ、レナを助けてくれたんだよね?あたしはリュック、あんたは?」
「ザンデだ。ノアの弟子、といってもわかるまい。だが、まずは」
わたぼうの連絡を受け急いでこちらへ向かっていたロックが見たものは、
威圧するようにリュックを見下ろす男の姿、
そして瞬時にリュックを捉える二つの魔力の直方体の像――
魔力が導いた像が消えるまで、ロックは身動きできなかった。
しかし、直ぐに思考を取り戻す。
ロックの視線にゆっくりとこっちを振り向いたその男と目が合う。体が躍動する。
「リュック!大丈夫か!?おい、なにしやがる!」
クリスタルソードを手に、持ち前のスピードで一気に間を詰めてゆく。
「ちょっとロック、やめてよ!あたしはなんともないよ!」
リュックの制止は耳に入らない。
けれども他に選択肢が思いつく状況であったかは別にしても
結果は未知の相手に対して無警戒が過ぎたと言えるものであった。
西日に照らされて長く伸びたザンデの影に切り込んでいくロックの影が触れた瞬間。
「シェイド」
短く影縛りの魔法が唱えられ、盗賊はその動きを止める。あたりは一転して静の情景へ。
「私は不毛な争いに来たわけではない、話をしに来たのだ。落ち着いて欲しいものだな。
最もその状態では口を開くこともままならないか。さて、貴様はこの女の知り合いか」
麻痺して動けないロックを一瞥し、足元のリュックに話し掛ける。
「あ、うん。レナとは前の世界から一緒だった」
「から、か。ずいぶんと酷い状態だった。何があった」
「…それは、えーと……」
リュックの表情が判りやすく暗くなる。詮索する興味はそれで失せた。
「まあ特に私には関係ないことだな。それよりも貴様の仲間はこの男だけか」
「え、あ、ごめん。いや、他にもいるよ。向こうの宿屋でみんな休んでるんだ。
話があるって?えーと、さっきわたぼうにみんなに知らせに行ってもらったから……ほら」
向こうに、わたぼうと報告を聞いて駆けつけたソロとピサロの姿が現れる。
「ごめーん、わたぼう、こっちは大丈夫。他の皆も呼んできてくれない?って、ええっ!?」
リュックの横で、動けないロックをライブラが襲っていた。
事情を説明しもう一度わたぼうに他のみんなを呼びに行ってもらっている間、
ライブラと分析癖についてザンデは四人に一応説明はしたが、それは別の話。
とりあえず目を覚まさないレナを宿屋とは別の建物―防具屋に運び込む。
この際、ロックの主張により彼女の持ち物は全てリュックの管理下に移された。
宿屋で眠り続ける人のためにビビとわたぼうについていてもらい、
残りは村の真ん中、宿屋と防具屋を一望できる広場に集まる。
そして、彼らの会談が始まった。
(屋内に何人残っているかは分からぬが、たいした人数が集まっているものだ)
集まった者の顔を見回しながらザンデはにやりと笑う。
ライブラで確かめるまでも無く目の前の銀髪の男と
眼光の鋭い方の緑色の髪の男には強力な力を感じていたからである。
それに私が求めているものとは異なるが、
もう一人の緑髪の方にも異質な力を感じる。こっちは分析してみたい、と思うが。
他にもレナと呼ばれた女と仲間だったという重装の女、
疑った目でこちらを見ている盗賊、
先ほどから連絡の役を負っている私にとって未知なる力あるモンスター、
それに宿屋の入り口からちらりとこちらを覗き見ていた黒魔道士の子供。
協力者として引き込めるなら能力も人数も望んだ以上だ。
しかし、監視をくぐりつつ説明と説得が出来るだろうか。
このような道楽を考え実行しているような奴等だ、目的は未だ不明だが、
自分で楽しみを壊すような真似はしまい。おそらくそう妨害には出てこないはず。
しかしルールを覆すような行動が可能となれば黙ってはいないだろう。
全ては、賭けるに足る可能性を得てから一気にやってしまわねばならない。
「さて……では、話しても良いかね?私はザンデ、ノアの弟子だ」
各人の紹介がそれに応える。それから、ザンデはペースを崩すことなく淡々と話始めた。
「まず単刀直入に私の目的を伝えておこう。私はこの世界からの脱出を考えている」
ゆっくりと5人を見回す。
「そのために私は高い魔力と、旅の扉についての情報を求めている。
だから協力しろ、というわけだ。以上だ」
簡潔すぎる、そしてあまりに一方的。賛同を得られるはずも無く、誰の反応もない。
「それだけか?たったそれだけであんたの事を信用して協力しろってか?」
ロックが、最初に口を開いた。
「ほう、一体どのあたりに疑問があるのか」
「はっきり言って信用が無い。あんたがやりたいことも見えないし、素性もわからない。
そもそも交渉の態度じゃないだろ、それ。大体ライブラだって何のつもりだか」
一息に文句が口をつく。最後の方はシェイドとライブラの恨みか。
「ファファファ……今は向こうも様子見といったところだろうな」
「はぁ?何の話だよ」
疑問の色を含んで全員の視線がザンデへ集まっていた。
「わからぬか?監視だ。程度はわからぬがこの世界には当然に監視の網があるだろう。
そのような状況で危険な話を我が頭脳から外に出す愚行など犯さぬ。
積極的に動く事は無いようだが明確な反抗を見過ごすはずはあるまい。
脱出の意思を口にしただけで既に目をつけられていると考えても問題はない」
反射的に自分の首輪へ手を伸ばすロック。言葉は出ない。
「それに素性、というがこの世界に集められた者どもは大抵お互いに見知らぬもの同士であろう。
貴様らの関係は知らぬがそういった者がまとまるのは利害や目的の一致のためだ。
その点で見て私に協力することが貴様らの利害に反するか?」
ロックがそれに答えるより早く、ピサロが威圧感のある声が横から割り込んだ。
「貴様の謳う目的はほぼ全員の利益だ。しかし、ロックの言うことも尤もだろう」
声のほうを向いたザンデとピサロの眼光が空中でぶつかり合う。
「貴様自身かなりの使い手のようだが、さらに魔力を手に入れて一体何をするつもりだ?
口では脱出を唱えていてもその確証はどこにもない。
全員に打ち勝てるだけの魔力を手に入れ勝者となる、と考えていない確証がな」
場の雰囲気はやや険悪な方向へと傾きかけているようだった。
フォローを入れようかとソロが口を開くのを制する様に大きな笑い声が上がる。
「ファファファ……今この場にいる私以外がどういったもので結びついているかはわからぬ。
信頼を重んじるというのであるならば今すぐに私にそれを示す手段などありはしまい。
つまり、交渉は物別れのようだな」
「待ってください、ザンデさん」
唐突に打ち切りを宣言した相手にソロが待ったをかける。
「引き止めるか?そうだな…貴様らとの話し合いは時間の無駄だ。私は自らの求めるものを探すのみ。
だが、一つだけ頼みたいことがある。レナとやらを預かってもらえぬだろうか。
やはり怪我人を負っていては動きに支障があるのでな」
「お前なっ、自分の言いたいことだけいいやがって…」
「うん、わかったよ」
食って掛からんばかりのロックを無視してリュックがそれを受ける。
「そうだな。起きたら聞きたいこともある。あいつには辛いかもしれねぇけどよ」
微妙な表情のまま、ヘンリーがそれに同意する。
「うん…でもっ、もともとあたし達の仲間なんだし。
そりゃ、不安も心配もあるけど落ち着いて話してみないとわからないことだってあるだろうし。
でもとにかく連れてきてくれてありがとね、ザンデさん」
「気にするほどのことでもない。
明朝には私はこの村の北の洞窟にいるはずだ。協力する気になったなら来てもいい。
さて、私は先に行くことにしよう」
踵を返し歩き出そうとするザンデを、再び後ろからさっきと同じ声が引きとめた。
「いえ、まだです。待ってください、ザンデさん」
「まだ何か言いたい事でもあるのか?」
「確かにあなたは信用できない。それはピサロの言うとおりだ。
だけどこれから信用することはできます。だから、僕はあなたを見定めたい。
ザンデさん、今は誰とも敵対するつもりは無いのでしょう」
「向こうが仕掛けてこなければな。私の目的は定まっている。それは敵を増やすことではない」
「なら、僕も一緒に行きます」
「おい、ソロ!?」
「いや、心配は要りません。ヘンリーさん。ところでザンデさん、
さっき明朝には北の洞窟にいるといいましたが、どこへ向かうつもりなんです?」
「カズスとサスーンへ向かい同様に目的のものと協力者を探すつもりだ。
真夜中までにはサスーンへたどり着きそこから折り返す予定にしている。
洞窟で一応待ち合わせの約束があるのでな」
「なるほど。…ピサロ、それにみんな。僕が戻るまでターニア達を守ってやってくれませんか?」
「いや、ソロよ。それは受け入れ難いな」
さっきからやり取りをじっと見ていたピサロが立ち上がり、口を開く。
「目的のため、動きたいのはお前だけではない。はっきり言って明朝までの時間拘束は痛い。
それに、お前も万全ではないだろう。それでは不安が残る」
言葉を切り、いったん辺りを見回す。
「つまりは…だ。その見極めの役、私が引き受けよう。
そろそろ動きたいと考えていたところだ。理由としてはちょうどいい」
視線をザンデで止め、睨みつけたまま言葉を続ける。
「ザンデ。貴様を信頼したわけではない。そこの男、ソロを信用したのだ。
それに私も自らの目的のために行動する。貴様を仲間と思って同行するわけではない」
「ファファファ……私の邪魔さえせぬなら誰なりと勝手についてくればいい。
私はもう発たせてもらおう」
そのまま背を向けるとザンデはもう歩き出していた。
「おい、勝手に決めんなよ」
「怪我人はおとなしく安静にしていることだ。後は…レナだ、気をつけて見ておけ」
「…ピサロ、それじゃあ僕の代わりを頼む。みんなは僕が守るから」
「お前も無理は避けてゆっくり休め」
「おい待てって!」
ヘンリーとロックが何かわめいているが聞き入れもせず、ピサロはザンデの後を追って歩き出す。
入るは一人、出るは二人。二人の魔王が目指す次の目的地は――カズス。
「ったくよ。何様だよあいつ。勝手に決めやがって、行っちまいやがった」
「まあヘンリーさん、落ち着いて」
「俺だって元気なら何とかしたい相手がいるってんだよ…?おい、ロック?」
目の端に動くものを感知して振り返るヘンリー。だがそこには既に誰もいなくて。
「おいローックッ!どこ行くんだよーっ!」
村の出口へ向け駆け出しているロックの姿があった。
「ソロ、ヘンリー、リュック、悪い。でも俺も行かせてもらうぜ!
あいつらだけじゃ信用ならねぇからよ、俺もいろいろと見極めたい!」
「お前なぁっ!!」
「それじゃ、またなっ!お互い無事でいようぜ!!」
言い残し、反転。それから小さくなった二つの人影を追いダッシュで走り去った。
「全くよ、どいつもこいつも…勝手だぜ」
「ええ、でもヘンリーさん、このゲームが始まってもう二日目の夕方です。
僕の仲間も含めてたくさん死んでしまったし、動かなきゃって焦る気持ちも分かります」
「だからって怪我人も放っては置けねぇしなぁ。くそっ、こんなゲームが…」
「……ああーーっ、そーーだっ!!」
「ーーーっ、何だよリュック、大声出して」
「ごめんごめん。あー、ピサロさんもロックももう行っちゃったよね…
みんなに伝えなきゃいけないことがあったんだけどなぁ」
「大事なことならいまさら思い出すなよな」
「だって色々あって大変だったじゃない。みんな疲れて休んでたしさ」
「それで、大事なことって、なんですか?」
「ああ、えーとね、アリーナって子の………」
【ソロ(魔力ほぼ枯渇 体力消耗) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
第一行動方針:休息 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ヘンリー(手に軽症)
所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP3/4) キラーボウ グレートソード
第一行動方針:休息 基本行動方針:デールを止める(話が通じなければ殺す)】
【リュック(パラディン)
所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
ドレスフィア(パラディン)、チキンナイフ、薬草や毒消し草一式
第一行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村 外(中心の広場)】
【ビビ 所持品:スパス 毒蛾のナイフ
第一行動方針:休息 基本行動方針:仲間を探す】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
第一行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【エリア(瀕死からは回復 体力消耗 怪我回復) 所持品:妖精の笛、占い後の花
第一行動方針:睡眠中】
【バッツ(左足負傷・睡眠中)
所持品:ライオンハート、ローグの支給品(銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか))
第一行動方針:眠って頭の整理中 基本行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ターニア(心労過多) 所持品:微笑みの杖
第一行動方針:睡眠中 基本行動方針:イザを探す】
【現在地:ウルの村 宿屋内部】
【レナ(気絶) 所持品:なし
第一行動方針:不明】
【現在地:ウルの村 防具屋内部】
【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
第一行動方針:仲間、あるいはアイテムを求め、カズスの村へ
基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ
第一行動方針:ザンデに同行し相手を見極める 基本行動方針:ロザリーを捜す】
【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
第一行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視
基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【現在地:ウルの村→カズスの村へ】
ピサロとザンデとロックは歩いていた
するとユフィが現れてピサロとザンデを倒した
ロックは強いユフィにメロメロになった
「ユフィは俺が守る」
「ロックったら…」もじもじ
ロックはそのままユフィの体をむさぼった。
「ああん…ロックう」
二人がどこに向かうかは誰も知らない。
【ロック 行動方針ユフィを守る
【ユフィ 行動方針ロックに守られる
【ピサロ死亡】
【ザンデ死亡】
231 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 20:30:51 ID:/jwiRwHE
補間
保守
保守
234 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/28(水) 20:17:07 ID:L6/wSRqu
ほ
何この自由参加型とか言った一部の奴だけのオナニースレ。