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尋常ではない独占欲から・・ライバルの泥棒猫を抹殺するまでの
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容量オーバーになりそうなのに気づかず投稿してしまいました。すみません。
続きを投下します。
3 :
狂依存 23:2010/11/06(土) 03:25:12 ID:xuKm5et9
「麻由お姉ちゃん、何か嫌な事されたりした訳でもないんなら、付き合う気がなくても、ちゃんと手紙を読んであげるくらいはしよう。ね?そうしないと相手も可哀想だと思うんだ……」
もしあの手紙読んで気持ちが揺れ動いたら、それはそれでまずいけど……
「だから何で、てめえにそんな事説教されなきゃいけねえんだよ。あんたの事だけでもこっちは頭が痛いのに、手紙で呼び出されたり、頼んでもいねえのに物あげようとしたり、一々面倒な事持ち込まれてこっちはうんざりなんだよ!」
「男なんか呼んでもいねえのに、どんどん言い寄ってきやがって。たまに女子から告白される事もあるけど、どちらにしろ本当勘弁して欲しいわ。まあ、あんた程しつこい馬鹿はいないけどね。ったく、いらねえプレゼントなんて捨てるのも面倒くさい。」
そんな言い方って……
まるで自分に好意を持ってる人たちをゴミ扱いしてるみたいじゃないか……
「そんな捨てるのは、良くないよ……もしかして僕があげた物も……?」
「当たり前じゃない。弟だからって特別扱いしてもらえるとでも思った?あんなもん貰った次の日にポイしてやったわよ。使えねえもんばっかり寄越しやがって。」
「……!」
全然使ってくれないので、もしかしたらと思ったが、流石にショックだった。
そりゃあ、僕がちゃんと喜んでくれるものをあげなかったのが悪いんだけど……
「だったら、最初からいらないって言ってくれればいいのに……」
思わず呟いた。
「はあ?受け取ってやっただけでも感謝しなさいよ。受け取った以上は私の物なんだから、私がどうしようが勝手。あんたが処分する手間が省けて良かったじゃない。」
「用は済んだ?じゃあもう出てって。」
「……」
「出てけっつてんだろ!」
バタンっ!
強引に部屋を追い出され、しばらく呆然とする。
「麻由お姉ちゃん……」
長い間、姉に抱いていた幻想が一気に崩れていくような感覚だった。
まさか、平然とあんな事をするような人だったとは……
そう言えば以前小耳に挟んだ事を思い出した。
麻由お姉ちゃんは勉強も運動も出来るし、可愛いので憧れてる人も多いが、それを周囲に威張り散らす様な態度をよく取っているので、あまり良く思ってない人も結構いるとかいう噂を。
「まさかと思ったけど……」
あの態度を見る限り、本当の様な気がしてきた。
僕にだけああいう態度を取ってるならともかく、他の人にまであんな態度を取ってるのだとしたら流石にまずいよなあ。
「麻由お姉ちゃん……」
姉に対してこんなにも不安を覚えたのは初めてであった。
「でも、誕生日プレゼントはちゃんと用意しないとね。」
翌日、今度は一昨日とは違うデパートに行き、麻由お姉ちゃんの誕生日プレゼントを探す。
今度こそ喜んでくれるプレゼントを買わないとな。
「うーん……何がいいだろう?」
何かアクセサリーがいいかな?
うーん……でもまた捨てられるとアレだしな。
「食べる物とかいいかも……」
麻由お姉ちゃんはチョコレートが好きだから、チョコケーキでも買ってあげようかな。
でもケーキだと誕生日のプレゼントって感じはしないな。
「じゃあ何に……ん?」
これは……
「可愛いなあ……」
それは、二匹の小鳥が向かいあってたガラスの置物だった。
そういえば、麻由お姉ちゃん昔インコを飼いたがっていたな。
親が反対して出来なかったけど、いつか絶対に飼うとか言ってた。
この小鳥は恋人同士なんだろうか。
値段もギリギリ足りるしこれにしようかな。
「僕たちも将来こんな風に……」
……なれるよな?うん。
今まで麻由お姉ちゃんと将来結ばれることを信じて疑わなかったが、初めてこの時本当に麻由お姉ちゃんに嫌われてるんじゃないかという不安に襲われてきた。
「やっぱり、怒っていたんだよな……」
ようやく自分が麻由お姉ちゃんにしていた事に気づき始めた。
まるで麻由お姉ちゃんをからかってるみたいにベタベタ付きまとって、変な事言って怒らせて……
僕は今まで何てことを…
これでは、嫌われて当然かもしれない。
もしかしたら、麻由お姉ちゃんがああいう性格になったのも。僕のせいなのかも。
「今までの事をちゃんと謝らないと……」
謝って許してくれるかどうかわからないけど、とにかくそうしたかった。
そして、本当の意味で麻由お姉ちゃんと仲良くなりたい。
そう思いながら、ガラスの置物を持ってレジに向かった。
4 :
狂依存 25:2010/11/06(土) 03:26:13 ID:xuKm5et9
「ただいまー。」
「(来た。)」
コンコン
次の日の夜、プレゼントを渡すため、帰宅した麻由お姉ちゃんが着替え終わった頃を見計らって、部屋に行く。
「麻由お姉ちゃん、ちょっと良い?」
「……何?。」
あからさまに不機嫌そうな顔をして、呟く。
「あ、ごめんね……そんなに時間取らないから。」
「麻由お姉ちゃん、誕生日おめでとう。あの、これ……」
「プレゼントとか迷惑って言わなかった?」
「あ、あの、いらなかったら捨ててもいいよ。でも受け取ってくれると嬉しいな。それと今まで、その……」
ガシャーン
バタンっ
「え?」
今まで本当にごめんなさい。
そう言おうとした瞬間に、ガラスの置物が砕け散る音がした。
麻由お姉ちゃんが受け取った瞬間に廊下の壁に投げつけ、割ってしまい、そのまま部屋のドアを閉めてしまった。
「………」
しばらく呆然として、動くことが出来なかった。
……そうか、そうだよな。
何年もあんな事してたら、完全に嫌われても仕方ないよね。
「しょうがないよね……」
そう呟き、飛び散ったガラスを片付け始めた。
それからだ。
麻由お姉ちゃんに付きまとったりしなくなったのは。
あれからしばらく、ほとんど会話も無い状態が続いた。
まともに話しかける勇気すらなかった。
でもどうしても謝りたかったので、ある日意を決して麻由お姉ちゃんの部屋に行った。
コンコン
「はい。」
「麻由お姉ちゃん……あの、その……」
「……何?」
「あの、今までいっぱい迷惑かけてごめんなさい。この前、プレゼント渡す時に言おうと思ったけど、言えなかったから……」
「あっ……」
麻由お姉ちゃんが今にも泣きそうなぐらい済まなそう顔をしている。
その顔を見ただけでもう十分だった。
「だから、もう二度と変な事しないから、その……えと…そ、それだけだから。じゃ、じゃあね。」
「あ、ちょっと……」
そう言ってすぐ部屋を出て、自分の部屋に篭る。
これでやりたい事は全部やった。
もう迷惑かけたりしないからね。
5 :
狂依存 26:2010/11/06(土) 03:28:18 ID:xuKm5et9
それから、何日かした後……
コンコン
「はい。」
「あ、あの……」
「ん?どうしたの?」
何か気まずそうな顔をしているけど。
「……えと……その……」
どうしたんだろう?
ガバっ
「え……?」
「ごめん…」
麻由お姉ちゃん……
僕に抱きついて、泣きながら謝る。
「ごめんなさい……この前は本当にごめんなさい……」
「あ、あの……」
麻由お姉ちゃんはひたすら、ごめんなさいを繰り返す。
「ごめん……ごめん……」
「も、もういいから。」
「僕の方こそ、今までごめんね。僕がずっと怒らせるような事してたんだから、麻由お姉ちゃんは何も悪くないよ。」
それが正直な気持ちだった。
今までした事を考えれば、あのぐらいされても仕方ない。
とにかく嫌われてなくて良かった……
「ごめん……ごめん……」
「ほ、ほら!もういいから。あの事はもう忘れよう。ね?」
うわ言の様に謝罪を繰り返す姉を慌てて引き離す。
もう、これで十分だから……
「……本当にごめんね……」
最後にそう言って、俯きながら部屋を出た。
「……引きずらないといいんだけどな。」
あの事は早く忘れて、早く元に戻って欲しい。
それだけが気がかりだった。
「ん……」
寝ちゃったのか……
「目が覚めた?」
え?
「ま、麻由お姉ちゃん!?」
目を覚ましたら、麻由お姉ちゃんが僕を見上げていた。
あれ、この態勢って……
「へへ。寝顔が可愛かったから、膝枕しちゃった。あ……迷惑だったかな?」
「ううん!そんな事はないけど……」
麻由お姉ちゃんの膝枕。
柔らかくて本当に気持ち良い……
「あ、あの、もう……」
ガバ
「え?」
「ごめんね……酷いお姉ちゃんだったよね……本当にごめんね……」
麻由お姉ちゃん……
僕の顔を抱いて、泣きながら謝る
「あのね……あのプレゼントを壊した後も、私しばらく平然としていたの……信じられないでしょう?でも、どうせ大輝の事だからまたすぐ馬鹿やってくるんだろうなって思ってた……」
ガシャーン!
バンっ
「……ふん。」
もういい加減にして欲しいわ。
毎度、毎度私に媚売るような真似しやがって。
「これで、しばらくは大人しくなるかな。」
どうせ、あいつの事だからすぐ馬鹿やらかすんだろうけど。
「さ、塾の課題やっちゃおう。」
こんなに課題出さなくてもいいのに。
6 :
狂依存 27:2010/11/06(土) 03:29:25 ID:xuKm5et9
「ふぅ……」
ようやく終わった。
ちょっとトイレっと。。
「……」
部屋を出て、大輝の部屋の扉を何となく見つめる。
「やっぱり、ちょっとやり過ぎたかしら……」
いきなり、壊す事はなかったかも……
ぎぃ……
「あっ。」
ちょうど、部屋から出てきた大輝とばったり目があった。
「……」
今まで見た事もないような済まなそうな顔をして、すぐにどっかに行ってしまった。
あいつがあんな顔したのはいつ以来だろう?
いつも私の前ではニコニコしてたのに……
「………」
あの顔を見てじわじわと罪悪感が湧き出てくる。
ちょっとどころではない。
普通に考えれば許されない様な事を平気でしてしまった。
「私……」
少なくともあいつはあいつなりに、私の事を思ってやってたのに……
それなのに、とんでもない事を。
それから何日も大輝は私に話しかけてこなかった。
たまに目が合っても少し挨拶する程度だった。
あんなに落ち込んだ顔をして……
日に日に自分が今までした事への罪悪感が高まっていき、押しつぶされそうになってきた。
キーンコーンカーンコーン
「あ、あのさ……この間の手紙の返事、そろそろ、いいかな?」
「え?ああ……その…」
「ごめんなさい……」
「あ……そうか……うん、悪かったな。じゃあ……」
元々付き合う気はなかったが、それ以上に読まずに捨ててしまった事への謝罪も込めていいた。
結局言い出せなかったけど。
本当にごめんなさい。
心の中でそう何度も呟いた。
その日の夜
コンコン
「はい。」
「麻由お姉ちゃん……あの、その……」
久しぶりに大輝が私の部屋に入って話かけてきた。
何だろう?やけに申し訳なさそうな顔をしてるけど……
「……何?」
「あの、今までいっぱい迷惑かけてごめんなさい。この前、プレゼント渡す時に言おうと思ったけど、言えなかったから……」
「あっ……」
そう言えばプレゼント渡そうとした時、何か言おうとしてた気がする。
まさか……
「だから、もう二度と変な事しないから、その……えと…そ、それだけだから。じゃ、じゃあね。」
「あ、ちょっと……」
バタン
そう言うとすぐ出てしまった
「私、何て事を………」
確かに良く思い出してみると、あの時の大輝は笑顔の中にも何か申し訳ない事をした様な表情をしていた。
7 :
狂依存 28:2010/11/06(土) 03:30:26 ID:xuKm5et9
あれは私に媚を売るとかそういうのでは全然なくて、今までの事を謝ってちゃんと仲良くしようって気でいたのか……
それなのに……
「うぅっ……うっ……」
涙が止まらなかった。
あの子の優しさに。それ以上に自分の愚かさ、醜さがどうしようもなく悔しかった。
「うっ…うっ、ごめん……ごめん…」
あのガラスの置物、思い出してみれば凄く可愛かった。
私が以前インコを飼いたいと両親に駄々をこねた事を思い出して買ってくれたのかも。
そう思ったら無性にあれが欲しくなってきた。
「なのに……何で……」
でも、もうあれは手に入らない。
例えあの子がまた同じものを買って私にくれても、それはあの時の物とは別の物だ。
去年貰ったストラップもその前の年のブローチもその前のぬいぐるみもその前の玩具の指輪も皆捨ててしまった。
全部二度と私の元には戻ってこない。
「ああっ……う……わああああんっ…んん……ごめんなさい……」
もう、戻らない時を悔いてずっと泣き叫んだ。
本当にごめんなさい……
それから数日後。
ようやく謝罪する決心がつき、あの子の部屋に行く。
コンコン
「はい。」
「あ、あの……」
「ん?どうしたの?」
きょとんとした表情をして、私を見つめる。
もう怒ってないのだろうか?
「……えと……その……」
いや、そんな問題じゃない。
ガバっ
「え……?」
「ごめん…」
大輝に抱きついて、泣きながら謝る。
「ごめんなさい……この前は本当にごめんなさい……」
「あ、あの……」
ひたすら、ごめんなさいを繰り返す。
それしか言葉が出なかった。
「ごめん……ごめん……」
「も、もういいから。」
「僕の方こそ、今までごめんね。僕がずっと怒らせるような事してたんだから、麻由お姉ちゃんは何も悪くないよ。」
どうして、そんなに優しくしてくれるの?
あんなに酷い事したのに……
「ごめん……ごめん……」
もう、二度とあんな事はしない。
もう二度とあなたを悲しませるような事しないから。
そしてあなたの為に何でもしてあげるから。
「ほ、ほら!もういいから。あの事はもう忘れよう。ね?」
「……本当にごめんね……」
本当に優しいのね。
でもその優しさに甘えたりしないから。
私もちゃんと変わるから。
大輝の事をちゃんと愛してあげられるお姉ちゃんになるから。
そう固く心に誓った。
「あの時からよ。私が大輝の為に何でもしてあげようって思ったの。あなたが望むならどんな事でもしてあげようって思った。」
「麻由お姉ちゃん……」
「本当に何でもしてあげるつもりだったのよ。お風呂に一緒に入りたいっていうなら、入ってあげたし、ご飯を作って欲しいって言うなら作ってあげたし、エッチな事したいって言うならやってあげた……」
「でも、あれから大輝変わっちゃたよね……私に全然甘えなくなったし、昔みたいに私に好意を前面に出すような事もしなくなった。」
「あの、それは……」
もう麻由お姉ちゃんには絶対に迷惑をかけない。
そう思ったから、付きまとったりしなくなったのに。
8 :
狂依存 29:2010/11/06(土) 03:34:27 ID:xuKm5et9
まさか……そんな事で……
「あ、あの……あの時の事はもう全然気にしてないから……本当だよ。」
「ありがとう……でも私あの時誓ったのよ。もう大輝を傷つける様な真似は絶対にしないって……変わらなきゃいけないって……」
あれから二人の関係は変わった。
僕は麻由お姉ちゃんにやたらと付きまとったり、変な事言ったりはしなくなったし、麻由お姉ちゃんも優しくなった。
時々僕に甘えて抱きついてくる事もあった。
ようやく、本当の意味で仲良くなれたと思ったのに……
「麻由お姉ちゃん……ありがとう。その気持ちだけで充分だよ。だから……」
「だから、これからの人生は全部あなたに身も心も何もかも全部捧げるわ。。あなたの事を一番愛して、幸せにしてあげられる麻由お姉ちゃんになったから……」
いや、だからって何でそこまでしようとするの?
「あの……あの時の事は本当にもう、怒ってないよ。いや、最初から怒ってないからね。だから、もう忘れよう。ね?」
「ありがとう……でもそれじゃ、駄目なの。その優しさに甘えて私が変わらなきゃ、またあなたの事傷つけちゃう。だから、二度と繰り返さない為に私が変わらなきゃ駄目なの。」
ああ、何でそうなるのかな……
「あの……甘えて良いんだよ。麻由お姉ちゃんだったらいくらでも甘やかしてあげるし、同じことやっても絶対に嫌いになったりしないから。」
本当だ。
麻由お姉ちゃんにだったら、何をされたって絶対に恨んだりしない。
「優しいのね……でも、本当は怒ってたんでしょ?当然よね。私は大輝の誕生日にプレゼントなんかあげたことないのに、私にはプレゼントあげていて……それなのに、私……」
「いや、だから……」
怒ってないと何度言えば……
「あれから私に甘えなくなっちゃたし、私の誕生日に何もあげなくなっちゃったもんね……」
「……!!」
そうだった……!
あれから、もう迷惑だろうと思い、麻由お姉ちゃんの誕生日に何もあげなくなってしまったんだった……
「あ、あの、それはね……えと…」
「当然よね。人から貰った物を平気で壊したり、捨てたりする様な人にプレゼントなんかあげられる訳ないわよね……」
「でもね、次の年の誕生日に何もくれなかったのショックだったの……本当に勝手な話よね。あんな事しておいて、簡単に許せるはずないのに……」
何も言えなかった。
次の年の誕生日も何かあげようかどうか、迷ってはいた。
でも何をプレゼントしていいのかわからず、無理にあげても迷惑だと勝手に思い込んでそのまま放置してしまった。
そして、それがずっと続いた。
そうだよ……
これじゃ、まだ完全に許してないと思われても仕方ないじゃないか……
「ご。ごめんね!本当にごめん!怒っていた訳じゃないんだけど……その……」
「謝らないで。大輝は何も悪くないでしょ。私の勝手な我侭だったんだから……」
「で、でも……その年の僕の誕生日にはちゃんと僕にプレゼントくれたのに……」
あの年。僕が中一の時の誕生日に麻由お姉ちゃんは部活で使うスポーツタオルをプレゼントしてくれた。
初めて貰った誕生日プレゼントだったので、本当に嬉しかった。
それから、毎年僕の誕生日にはケーキやお菓子を作ったりしてくれていた。
なのに、何で……
「だから、あの時のお詫びに私はこれからの人生全てをあなたに捧げてあげる。ううん、それ以上にあなたの事を愛しているの。愛しているのよ。」
「ごめん……本当にごめん……」
何も言い訳が出来ない。
まだ許してないのか?
本当に怒ってないのか?
心の何処かでまだ恨んでいるのか?
許していたのなら、何でプレゼントをあげようとしなかったんだ?
全然怒っていないのなら、また壊されたって、捨てられたって怖がることなんかなかった筈なのに。
「思う存分甘えて欲しかった。子供の時のような無垢な笑顔をまた私に向けて欲しかった。でもあれ以来全然向けてくれなくなった。優しくしてくれたけど、それは他の人に向けていた優しさと同じだった。」
「もう私の事を特別な目で見てないんだなあって……そう思うと寂しくて。だから、もう一度私の事を愛して欲しいって気持ちがどんどん強くなった……」
「麻由お姉ちゃん……」
そんな……知らない間に、そんな寂しい思いをさせていたなんて……
思い起こしてみれば、あれ以来麻由お姉ちゃんに対して何処か遠慮がちに接していた。
迷惑かけない様に、甘えない様にと思いながら。
そして何か用がある時以外は僕から話しかける事もあまりなくなり、そういう接し方がいつしか当たり前になってきて何とも思わなくなっていた。
それが麻由お姉ちゃんをこんなに傷つけていたなんて……
今回は以上です
謝ってスレを跨っての投稿になってしまい、申しわけございません。
GJ
久しぶりに良い作品に出会えた
弟が姉に対してよかれと思って離れてたことが
逆に姉を傷つけていたとはね
本当に良い作品だよ
GJ!
麻由お姉ちゃんの変わりっぷりがよくわかった
GJ!
そうか、麻由お姉ちゃんは厨二病だったのか
だが『自業自得』と言いたくなったのは気のせいか?w
次回からの展開がwktk過ぎて止まりません!!
これは期待せざるを得ないな
GJ!姉にたいして自業自得と思ってしまった
GJ!投下ありがとうございます
姉は好意を向けられて当然だって驕っていたのかな
冷たくされたから構ってほしくて、というのもちょっとわがままではあるような気も
こんばんは。『きっと、壊れてる』第11話投下します。
その前に一つ訂正が。
前話の中で、
「まだ20時なのに子供はおろか、大人まで座席で寝息を立てている。」
という箇所がありましたが、正しくは
「まだ22時なのに子供はおろか、大人まで座席で寝息を立てている。」
でした。申し訳ありませんでした。
成績はそこそこだけど、スポーツ万能で人を許せる優しさを持った兄。
私が我儘を言っても、大抵の事は苦笑いしながらいつも頭を撫で、甘えさせてくれた兄さん。
同年代の異性にはないその包容力で、いつも私を守ってくれていた兄さん。
好きで、好きで、好きで、大好きで、誰にも渡したくなかった。
運動と感情表現が苦手だけど、成績優秀で人に厳しくできる優しさをもった姉。
私が我儘を言うと、優しくも凛とした態度で諭してくれた姉さん。
家族の中で一番私の事を考えていてくれて、いつも私の道標になってくれていた姉さん。
好きで、好きで、好きで、大好きで、私は姉さんのようになりたかった。
もし、家族を1枚のパズルにしたら、きっと二人はお互いの足りない部分を埋めて、綺麗な風景を描くでしょう。
私がはまるスペースはきっと、そこにはない。
二人が家を出てから、父さんと母さんは塞ぎこんでしまった。
父さんは口数が極端に少なくなり、母さんは地域のボランティア活動に尽力する事で寂しさを埋めていた。
傍から見ていても痛々しいその姿。
お兄ちゃんは?
お姉ちゃんは?
いくら聞いても、少し遠い所で暮らす事になった、という答えしか返ってこなかった。
結局私は兄さんと姉さんがいなくなった理由がわからなかった。
ただ、今は父さんと母さんを励まそう、そう思った。
私は村上家の太陽。
昔、兄さんに言われた事がある。
地上や海を満遍なく照らし、生きる力を与える存在。
兄さん知っていた?
私、本当は引っ込み思案で、心の中は暗い事ばかり考えていたの。
ある日突然父さんや母さんが死んじゃったらどうしよう、とか。
兄さんや姉さんに無視されたらどうしよう、とか。
それでもね、私が笑うとみんな笑ってくれたから。
楓は明るいね、一緒にいると楽しくなるね、って褒めてくれたから。
私は太陽の真似をしたまま生きて行こうと思った。
そして兄さん達が出て行った理由も知らず、私は父さんと母さんを照らし続けた。
学校で嫌な事があった日も。
成績が落ちて落ち込んでいる時も。
インフルエンザで寝込んでしまった時も。
私が笑えば、父さんと母さんも少しだけ元気になってくれたから。
そして太陽を求めて、いつか兄さんと姉さんも帰ってきてくれると信じていたから。
私は頑張った。いつか、家族全員また笑いながら過ごしたい。
その願いを夜空に願って。
それから2年か3年経った頃か。
父さんと母さんも大分落ち着きを取り戻し、
我が家は元から私1人っ子だったように、3人の夕食でも違和感が無くなっていた。
私は兄さんと姉さんも通った中学校に進学し、平凡な毎日。
この対外用の性格も功をなして、私の周りには人が一杯集まり、
人間として何不自由ない生活を送っていた。
しかし……微かな違和感。何かが足りない。
理屈では説明できない体中を流れる血液が、否応なしに欲するその感覚。
そんなある日、私は真実を知った──。
最近お母さんが毎月末、時間は18時頃か。
誰かと定期的に連絡を取り合っている事に気付いた。
お母さんは几帳面なので、決まって18時少し前に夕飯の準備を始める。
しかし、取りかかっている最中に電話がかかってくるので、その日だけ夕飯の時間が30分程ずれるのだ。
勧誘電話等の可能性も考えたけど、お母さんがそういった電話をまともに取り合っている所を見た事がないので、
おそらく違うだろう。
そして不可解な行動。
楓がお腹をすかせ、部屋からキッチンまで催促しにいくと、お母さんは慌てる様に小声になり、すぐさま電話を切る。
そしてなぜか上機嫌な態度で、楓に夕食が遅れた事を詫びるのだ。
つまり、電話の相手がお母さんにとって大事な人物で、声を聞くと安心する、または気持ちが晴れる相手である事。
そして、楓に聞かれては困る相手だと言う事が推測できる。
該当する人物としては、不倫相手か……楓にとっても大事な人物である事しか考えられなかった。
けど、本人に「電話の相手は誰か」と聞いたところで、はぐらかされるに決まっている。
幸い、我が家の電話は未だにアナログ式のコードレスホンだ
お母さんは、キッチンにある子機を使って応対する。
楓の手は、いつの間にかパソコンのWeb検索サイトで『コードレス電話 傍受 子機』というキーワードを打ち込んでいた。
同時に自分の子供にはパソコンはできるだけ与えたくない、と心の底から思った。
次の月末、学校からなるべく早く帰るようにした。
部屋着に着替え、リビングでお母さんと簡単に会話をして、「課題が多いから夕飯まで集中する」と自室に籠る。
そして自室のドアを少しだけ開けて、耳を澄まし、電話の呼び出し音を待った。
プルルルルルッ。
15分程待っただろうか、聞き取りやすい電子音が私の耳に届いた。
先日、秋葉原の無線機器専門店で購入した受信機を机の引き出しから取り出す。
周波数は大体800から900MHz帯らしい。
正直、楓は専門的な事などまったくわからない。
駄目元で「コードレス電話を傍受したい」と店員さんに伝えたら、
ニヤリと笑い、細かい設定をしてから売ってくれたので非常に助かった。
こういう時、その種に精通した人間は役に立つものだ。
その店員さんの話では、もしデジタルコードレスホンや携帯電話での会話なら、盗聴は難しかったらしい。
言われて始めて気付いた。
お母さんは携帯電話を所持している。
なぜ電話の相手は、わざわざ家の電話にコールしてくるのかな。
楓にはわからなかった。
「プルルルルル……プツッ……はい、村上です」
お母さんの声。
傍受成功の喜びも忘れ、受信機から聞こえる音に集中した。
「……もしもし、私」
楓の予想は的中した。
懐かしくも、耳が記憶しているその透き通った声。
電話の相手はお姉ちゃんだった。
「茜、どう? 何か困った事はない? 仕事も始めたんでしょ?」
「うん、ライターをやっているの。全然お仕事もらえないし大変だけど、充実してる」
「浩介は? 大学で遊んでばかりいない?」
「生活費があるからね、そんな暇ないよ。講義が終わればすぐバイト。
私には隠してるけど、お友達からの遊びの誘いも断っているみたい」
お姉ちゃんとお兄ちゃんは、やはりどこかで一緒に暮らしているらしい。
しかもお金に苦労してまで。なぜだろう。
楓は心理の奥底に閉じ込めていた懸念が外へと飛び出さないように、両手で必死に胸を押さえつけた。
「……茜、やっぱりまだこっちにいた方がいいんじゃないの?
金銭的に余裕が出来て、それでも気持ちが変わらなかったら、浩介と二人で住めばいいじゃない」
気持ちとはなんだろう。
金銭的に苦しい状況を選択してでも、お兄ちゃんと暮らす理由は何?
答えろ。
いや、答えるな。
いや、答えろ。
答えるな。
楓の中で会議をしている兵隊さん達が、次々に殺し合いをして争っている。
この戦いの賞品は、楓の人生。
この受信機を今すぐハンマーで壊して、何も聞いてない、何もなかった事にすれば、
明るい楓の人格と、平凡だけどそれなりの人生が手に入る。
お姉ちゃんも『大好きなお姉ちゃん』のまま、お兄ちゃんは『初恋の人』。
ちょっと甘酸っぱい思い出。
例え、二度と会う事はできなくても、二人はいつまでも素敵な私の宝物。
「ううん、私は一生兄さんを愛すもの。気持ちは変わらないわ。それに、今もちっとも辛くない。幸せよ」
胸の中心を鋭利なナイフで切り裂かれたように、内側から何かモクモクとした物が飛び出た。
なんだろうこれ、そのモクモクは楓の周りを1周してから、口から内臓めがけて我先へと入り込んでくる。
何か封じ込めていた球体が割れ目から外側へ裏返しになって、再び球体になる感覚。
なぜか気分が晴れて行く。
お兄ちゃんとお姉ちゃんは愛し合っていた。
愛なんて子供が使う言葉じゃない!って怒られちゃいそうだけど、
あの二人にはお似合いの言葉。
わかってた。
二人が出て行くあの日まで、二人の一番近くにいたのは楓だもん。
そんな事はわかってたよ。
でも、楓は我儘だから、お兄ちゃんがお姉ちゃんに独り占めされちゃうのが怖かった。
信じたくなかった。
楓もお兄ちゃんが大好きで、一生傍にいたくて、誰にも渡したくなくて。
それでも、家族だから、兄妹は一生一緒にはいられないってわかってた。
いずれお兄ちゃんにも彼女が出来て、結婚して、お兄ちゃんの子供に「おばさん」とか言われて。
楓にも恋人が出来て、「初恋の相手はお兄ちゃん」って言ってヤキモチを焼かせたりして。
そんな普通の人生で我慢しようって。
それが運命だって。
そのうち、熱も冷めるって。
楓が我慢すれば、家族の関係を壊さずに当分の間はお兄ちゃんと一緒にいられるって。
そう思ってたのに。
……なんで壊すの?
夕食後、お母さんが何かを嬉しそうに話していたが、内容はまるで覚えていない。
部屋の隅にある、全身鏡に視線を移す。
笑わない顔……いや、本当の自分はこういう表情をしているのだと気付く。
皮肉にも、その顔はお姉ちゃんにそっくりだった。
自分の中で色々な事を整理する。
私の中で絶対的な意思。
お姉ちゃんが楓の気持ちも知らずに、お兄ちゃんを奪った事が許せない。
大好きなお姉ちゃんだからこそ許せない。
楓がどれだけ寂しさを我慢して、どれだけ無理をして両親を支えてきたと思っているのだ。
その間も、お姉ちゃんはお兄ちゃんと二人きり、映画のような駆け落ちでもしたつもりなのか。
その綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしてやろうか?
楓はお姉ちゃんへの一番有効な復讐の方法を考え、そして感謝した。
その方法を実行する事は楓にとっても、唯一無二の念願だったからだ。
お兄ちゃんを奪う事。
しかし、一つ問題がある。
現時点では、とてもお姉ちゃんに敵う気がしない。
女としての器が違いすぎる。
堅牢な城は、無鉄砲に突っ込み、力任せに叩いても崩れないのだ。
今は目的のための準備をする期間だ。
さっそく計画を練る事にする。
手始めに、もう誰に媚びを売る必要はない、私はこの甘ったるい喋り方を変える事にした。
自分の呼び方を『楓』から『私』へ。
今思えば、馬鹿な女にありがちな喋り方だ。よく恥ずかしげもなく使っていた、と我ながら呆れた。
周りの人間への呼称も改める。壁を隔てて会話をすれば、自分が私に好かれていないという事が理解できるだろう。
薄っぺらい知り合いが増え過ぎて鬱陶しかったところだ。丁度良い。
次に、勉学に励む。
年老いた頭の悪い女ほど見苦しい物はない。
肉体が衰えるのは仕方ない。しかし、教養と知識が兼ね備えてあれば、大分マシになるのではないか。
近所に住む頭の悪そうな中年男や主婦を思い浮かべる。
寒気がした。
私は、『人の噂』と『他人の不幸』しか楽しみがない人間には絶対になりたくない。
それにきっと、おに……兄さんは、理知的な女の方が好きなはずだから。
10代の内に必死で脳の鍛錬を行うのが正しい選択のはずだ。
最後に、私は髪を伸ばす事に決めた。
理由は特にない……と言いたいところだが、絶対的な理由があった。
私は姉さんが好きだった。
姉さんの髪がとても綺麗で、良い匂いがして、体に巻きつけて眠りたいほどだった。
それは甘い果実のような香りで、シャンプー等の人口的な匂いと、
姉さんの生まれ持った体臭が合わさった天分の匂い。
匂いはおそらく真似できないが、形だけでも姉さんに近づいてみたかった。
専門学校に行って新卒で職を得たとしても、私が20歳になる頃か。
姉さんに対抗できるほどの女になるのは、最低6年は時間が必要だ。
頭の成熟、身体の成長、安定した生活。兄さんを迎えに行くにはこれらが不可欠。
暗く、長い長い穴ぐらをもがき続けなければ光を見る事はできない。
これは忍耐力も鍛えられる。
私は無表情で冗談を言うと、再度全身を映す鏡を見た。
戦う女の顔だ、意外にも美しい。
私は自画自賛の笑みを溢すと、引き出しにしまっていた兄さんの写真を取り出し、日課である口づけをした──。
人生とは思い通りにはいかないものである。
だから面白いのだ、と声を張り上げる人間も多いが、
思い通りにいかない事が続くのも癪に障る。
姉さんに勝てる自信が付いてから、兄さんを迎えに行く。
こんなにも単純で明確な目標を設定しているのにも関わらず、我慢が出来なかった。
兄さんを遠目でもいいからこの目で見たかった。
真実を知ったあの日から、まだ2カ月しか経っていないのに、
私は兄さん達が住む街を、もう何杯目かもわからないカフェラテを飲みながら眺めていた。
昨日の姉さんと母さんの電話を思いだす。
「どう? 変わった事ない?」
「うん、特にない。ごめんね、月に1度は父さんや母さんの声が聞きたくなっちゃうから」
「……帰って来いとは言わないけど、遊びに来るぐらいすればいいのに」
「そうなんだけどね。兄さんがまだ苦しんでいるから。私だけ息抜きするわけにはいかないわ」
「浩介は電話すらしたくないって?」
「ううん。ただ何を話していいのかわからないのよ。母さんだって、兄さんにずっと無言でいられても困るでしょう?」
「そうね。あの子の事だから、無言か……ひたすら謝り続けるでしょうね」
「フフッ、多分ね。だから、もう少し時間をください」
「わかった。体に気を付けるのよ」
「うん……あっ……母さん」
「何?」
「今更思いだしたんだけど、私引っ越しをする時、持って行くのを忘れてしまった本があって……
送ってくれないかな? 着払いでいいから」
「うん、わかった」
「住所は墨田区の──」
「あれ? 変わってないじゃない。知ってるわよ。前に緊急時に備えて聞いたから」
「そうだったかしら。じゃあ、よろしくね。またね」
私はこの時、受信機を片すのも忘れ、小躍りをした。
まさかこんなにも簡単に兄さん達が住んでいる場所を把握できるとは思っていなかったからだ。
しかも、実家からそう遠くない場所ではないか。
意外にも大胆な兄さん達に、私は畏怖の念すら抱いた。
信号が変わると、向かいの歩道からたくさんの人がこちらに向かって歩いてくる。
今日は土曜、腕時計は午後7時を指している。
私は駅前ビルの2階にある喫茶店でカウンター席に腰掛けていた。
この席は駅前の横断歩道全体を見渡せて、歩く人物の顔も認識できる。
朝の10時頃この席に座り、かれこれもう9時間か。
先程まで店員の突き刺すような視線が痛かったが、シフトが入れ替わったようで少し安堵した。
こういう時、携帯電話を持っていないと不便な物だ。
家に居る時に友人からのどうでもいい連絡等が来るのが嫌で今まで持っていなかったが、
今度母さんに打診してみるか。
無理なら、兄さんを個別に呼び出せる方法を考えなければ。
昼過ぎにシビレを切らし、兄さん達の家に直接乗り込もうかと思ったが、
もし、姉さんに会ってしまったらどんな顔をしていいかわからないし、
私自身どんな行動に出るかもわからない。
まだ勝負の時ではない、今日は兄さんを一目見て帰ろうと心に決めた。
兄さんは今日ずっと家なのかもしれない。
そんな疑念を抱き、そろそろ帰宅しようとしていたその時。
私の瞳がまるで吸い寄せられたかのように、横断歩道で信号待ちをしている一人の男性を捉えた。
兄さん。
私は『一目見たら帰る』という自分との約束も吐き捨て、伝票を持って会計のレジまで走っていた。
商店街に続く比較的大きな通り、すぐに兄さんの背中を見つける事が出来た。
私がいつも飛び乗っていた背中。見間違う筈がない。
本当にこのまま小走りに走って飛び乗ろうかと思っていた矢先、兄さんの隣に不可解な人間を見つけた。
いや、最初から居たのに私が気付かなかったのだろう。
女。
髪は茶髪。背は私と同じぐらい。細過ぎず、太過ぎずな体型。
姉さんではない。
誰だコイツは。
二人は私に見せつけるかのように、自然に手を繋ぎ、楽しそうに歩いている。
恋人だろうか、可能性は高いだろう。兄さんの事だ、遊びで女とデートする度胸はないはず。
姉さんは知っているのか。
知らないはずがない、姉さんは兄さんの事なら、全てと言っても過言ではない程知りつくしている。
私は、姉さんがなぜ他の女と会っている兄さんを許しているのか理解できなかった。
すぐに一定の距離を取り、二人の後をつけた。
会話を聞きたいが、そこまで近づくのにはためらいがある。
私が判断を下せない内に、いつの間にか二人は立ち止まっていた。
周りを見渡し、住所を確認する。昨日、姉さんが洩らした住所の辺りだ。
二人の前にあるマンションがそうか。
どうやら女は兄さんを送ってきただけらしい。
二人が別れを惜しむように手を振り、兄さんがマンションの中へと消えていった。
私は……女の方を再び尾行する事にした。
兄さんを一目見るという目標はとりあえず達した。
家には姉さんが居るだろう。今深入りするのは得策ではない。
それよりも、この女だ。
なんなんだ、この女は。
今、私のすぐ横を小さく鼻歌を歌いながら通り過ぎたその女は、満面の笑みで世の幸せを独り占めしているように見えた。
私はその女の15m後ろを定位置に、日が落ちた街を歩き始めた──。
30分後、女は電車で2駅離れた駅で降り、駅近くの比較的綺麗なアパートに入っていった。
兄さんと比較的近くに住んでいるところを見ると、大学で知り合ったのだろうか。
しかしこのアパートを見るに、親からの仕送りが多いのだろうか。大層恵まれた家の娘の様だ。
私もまだ世間知らずの部類に入るとは思うが、この女もおそらくその部類だろう。
何不自由なく教育を受け、何も考えず男に寄生しようとする。
私は気楽に生きている女が嫌いだった。
女がオートロックを開けた瞬間、何食わぬ顔で一緒に敷地内に入る。
私はただの女子中学生。怪しまれる可能性も低いと判断しての行動だ。
脇にあった階段を上るフリをして、女が郵便受けを確認しているところを階段の陰から盗み見た。
エレベーターで女が上がって行ったのを確認し、私は郵便受けに駆け寄る。
上から2番目で、一番右のポスト。
表札は出ていなかった。
一人暮らし用のアパートなら、そう珍しい事ではない。
私は鞄から、念のために昨日PCで作っておいた『村上兄弟は男女の仲』と印字されている怪文書を1枚取り出し、
郵便受けの中に入れた。
本当は、兄さんと姉さんが住む家の近所にバラ撒こうかと思っていたのだけど、
よく考えれば、近所にバレようとも違う場所に引越せば良いだけの話だ。
兄さんと姉さんに金銭的負担を掛けるだけで、結局実家にはまだ戻ろうとしないだろう。それでは意味がない。
兄さんと姉さんは今は支え木のように寄り添っている。
とりあえず、私が比較的自由に社会の中を動けるようになるまで、兄さんを姉さんに貸しておく事にした。
それについては認める、忌々しいが仕方ない。
けれど、他の女は別。絶対に許さない。
私はそうして女のデパートを出ると、駅までの道を上機嫌に歩いた。
ヒロインを陰で支えるヒーローのように、私の心には妙な満足感が漂っていた。
次の月末。
いつも通りの時間に電話が鳴る。
私に盗聴されているとも知らず、わざわざ私が家に居る時間帯にかけてくる姉さん、呑気なものだ。
この日の会話の内容は私が期待していた以上の物ものだった。
「仕事には慣れた?」
「うん、だいぶ。兄さんのバイト代も合わせれば、それなりに余裕も出てきそう」
「頑張り過ぎてない? 辛かったらいつ帰ってきてもいいのよ?」
「大丈夫だよ。私の気持ちは変わらないから。ただ……」
「ただ?」
「やっぱり、兄さんは今の状況を良く思ってないみたい。私に『普通の恋愛をしろ』っていつも言ってる」
「そりゃそうよ〜。浩介が正しいわ、そこは」
「私もわかってはいるんだけどね。気持ち的な問題はどうにもならないよ。それに……」
「それに?」
「兄さんが無理して、『普通の恋愛』を私に教えてくれようとしてる」
「どういう事?」
「最近別れてしまったんだけどね。この前まで兄さん、彼女がいたの」
「あら……そう。なんか……複雑ね。親としては喜ぶべきなんだろうけど。茜を放っておく浩介を見るのも嫌だわ」
「フフッ。兄さんはね、私──」
まだ姉さんと母さんの会話が続いているのにもかかわらず、私は受信機を止め、喜びに浸った。
兄さんはあの女と別れたようだ。
自分の思惑通りに事が運ぶというのは、なんと気持ちが良いのだろう。
そう、これは私と姉さんとの戦い。
部外者はそこら辺の男にでも股を開いていればいいの。
……しかし、兄さんも兄さんだ。
姉さんの口ぶりからすると、必死に普通の世界へ帰ろうとしているようだ。
普通の世界で我慢しようとしていた私の前で姉さんに堕ち、今更『普通の世界が良い』なんて虫が良過ぎる。
あなたはひとまず姉さんに飼われていればいいの。
私が身体的にも成長し、親の庇護から離れた立場になったら、迎えに行くから。
それからは何事もなく、平穏な毎日だった。
1月に1回だった姉さんの電話は、3,4ヵ月に1回までに減少した。
仕事が忙しくなり、それほど話題もないという意味なのだろう。
兄さんも就職し、周りは男だらけの職場らしい。
ここ数カ月、兄さんに会いたくて堪らない衝動に何度か襲われた。
でもそれは駄目。
まだ二人が家を出てから、そこまで時間が経っていない。兄さんの私への認識はただの妹だ。
兄さんの中で私の記憶が薄れた頃に、成長した姿で現れる事に意味があるのだ。
きっと、そうだ。
しかし、我慢するにもガス抜きと言うタスクが必要だ。
私は新しい日課の準備を始めた。
時刻は23時。自室の電気を消して、ベッドに潜り込む。
でも格好は寝着ではない。学校指定の紺色のセーラー服だ。
部屋に親が突然入って来る可能性を考えて、シーツを頭まですっぽりと被った。
そして兄さんのイメージを頭に描く。
兄さんはそろそろ21歳になる頃か。
私の記憶の中の兄さんと、この前少しだけ見れた兄さんのイメージを混ぜ合わせ、ベッドの中で抱き合っている妄想をした。
私のセーラー服のリボンを、兄さんの手がイヤらしく解く。
今回は、『意地悪な兄さんの大きく逞しい手で私の右手を掴まれ、無理やり自分の手で自分のの股間を弄らされている』という設定だ。
右手に力を入れて、スカートの中に手を入れる。
「ンッ」
下着越しに指先が当たっただけで、私の体は敏感に跳ねた。
買ったばかりの白い下着を、痛まない程度に横へずらし、
兄さんに掴まれた右手の中指でクリトリスをつついた。
「〜〜ッ!」
言葉にならない刺激。
私は兄さんに命じられるがままに、自分の秘部をクチャクチャと音を立て、掻き回す。
「ピチャッ……ピチャッ……嫌だよぉ……恥ずかしいよ」
兄さんは意地悪そうな顔をして、さらに激しく私の右手を動かした。
「ぐちゅ……ぴちゃ…クチュ…クチュ……」
堪らない快感が私の全身を駆け抜けた。
自らの手で秘部を弄らされる羞恥心と、犯されているという妄想の上限定の被凌辱感。
現実世界では見る事がない兄さんの意地悪そうな表情が、私を快感の奈落へと突き落としてくる。
「はぁ……はぁ……お兄ちゃん……もう……許して」
涙目で許しを請う私を見て、兄さんは余計に意地悪そうな表情を浮かべた。
左右の膝を両手でそれぞれ掴まれ、大きく広げられる。
「っ! やだぁ! 恥ずかしいよぉ!」
女の口は本当に気持ちと紐付けられていない事が多い。
私はかつてないほど濡れていた。
足を広げたまま、再び右手で秘部を弄る。
左手はいつの間にかセーラーの中に侵入していて、
同級生の中では比較的成長している私の乳房を激しく揉んでいた。
「痛いッ! もっと優しくしてよぉ」
どうやら私が文句を言うと、今日の兄さんは逆に興奮するようだ。
血走った瞳が私を捉え、右手と左手はさらに激しく各部を刺激した。
「ひゃあぁぁぁぁ! もうイっちゃう! やめてぇ!」
シーツの中で私の喘ぐ声が響く。
クライマックスは、兄さんがお風呂に入っていない体で、私を犯すシーン。
「イく! ホントにイく! あっ! あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!」
しばらくすると、シーツを捲り寝る準備を始める。
終わった後、そのまま寝るわけにはいかないのがこの日課の欠点だ。
しかし……今日の設定は最高ランクだった。
レギュラー入りね。
私はいつか本物の兄さんと添い遂げられるのを夢見て、
窓の外で光る月に祈った。
第12話へ続く
以上です。ありがとうございました。
乙です
GJです!
あと老婆心ながら
>>22の下から二行目、「女のデパート」ではなく「女のアパート」ではないでしょうか
失礼しました。
>>27 仰る通りです。
×デパート○アパート
失礼しました。
GJ!
楓過去編来ましたな
これからどのような展開になるのか
気になります
GJ
オナニーの設定キモイな…
33 :
キモウト淫語:2010/11/08(月) 18:17:24 ID:VtRso2am
おっっっにいちゃ〜ん♪
えへへ〜♪ お兄ちゃん捕まえた〜♪
ねえお兄ちゃん、どこ行こうとしてたの? 約束したよね?今日はボクと遊んでくれるって?
本屋さん? ふ〜ん。そっかぁ♪ てっきりフラれた女のところに行こうとしてるのかと思っちゃったよ〜♪
そうだよね〜♪ お兄ちゃんの彼女のくせに、キスの一つもさせてくれない女になんて、未練がある分けないよね〜♪
ところでお兄ちゃん、何を買うつもりだったの? マンガ? 参考書? まさかエッチな本なわけないよね〜?
だってお兄ちゃんのおちんぽは、ボクが毎日ヌいてあげてるんだから
お口でちゅぱちゅぱしたり、おっぱいですりすりしたり、おまんこでずぽずぽしたり、お尻でぐちゅぐちゅしてるんだもん。今更本の中だけにいるようなメス豚なんか必要ないよね?
ぁっ…え?あ、うん。ちょっと…えへへ〜♪
ん〜ん、何でもないよ〜。ただ、今朝お兄ちゃんに膣内射精(ナカダシ)されたおちんちん汁がこぼれそうになっちゃっただけ〜♪
今朝のお兄ちゃんもすごかったなぁ〜♪ おまんこに入れる前に、お口で2回もチンポミルク出してあげたのに、全然軟らかくならないんだもん
その後ボクを四つん這いにして、後ろからぐちゃぐちゃと…その後も乗ったり乗らされたりひっくり返されたり、2時間ずっと犯しっぱなしだったよね?
え? 何回イッたか? う〜ん、覚えてないなぁ…8回目までは覚えてたんだけど…
もう! しょうがないでしょ! 向かい合ってするとキモチイイんだもん! キスだけでイキそうになるのに、オチンポも入れられればイッちゃうよ! 膣内射精されれば気絶しちゃうよ!
お兄ちゃんこそ何回射精したの? 全身精液まみれだし、子宮は重いし、お尻はずきずきするし…ボク壊れちゃうかと思ったんだよ?…まぁ嬉しかったけど
あ、ううん! 謝る必要なんてないよ! 嬉しかったのは本当だから♪
それにしてもまぁ、すっかりクセになっちゃったよね。お兄ちゃんとの『おまんこ遊び』♪
最初は、あのメス犬からお兄ちゃんを取り返せればいいと思ってたのに、今じゃ毎朝毎晩、お兄ちゃんと『おまんこ遊び』しないと調子が狂っちゃうんだもん
ホントはね、学校でもしたいんだよ? 授業中に二人で抜け出して、人気のない教室とか、保健室とか体育倉庫とかで、お兄ちゃんがボクに夢中になってくれるまで遊ぶつもりだったの
でも、まさかたった1回でボクのものになってくれるとは思わなかったよ。当然だよね。だってあの泥棒猫は、お兄ちゃんを誑かすことしか頭になかったんだから。
純情で、優しくて、汚い世界なんて何も知らないお兄ちゃんを陥れようとしてたんだよ? 許せないよ!
そのくせ許したのは手を繋ぐまで。2週間も付き合ったら、普通エッチまで行っちゃうでしょ? ボク、あれでも焦ってたんだからね?
『お兄ちゃんが汚されたらどうしよう』、『お兄ちゃんが傷ついたらどうしよう』、『お兄ちゃんがボロボロになってあの女に捨てられたらどうしよう』って、そればっかり考えてたんだから
でもよかった♪ そうなる前にお兄ちゃんを助け出せて。あの売女の毒牙にかかる前に、お兄ちゃんを救い出せて、本当によかった…
ご、ごめんねお兄ちゃん。なんか、思い出したら涙が…ぁっ♪
ううん、いいの。こうしてまたボクのところに帰ってきてくれたんだから…♪
…お兄ちゃん。当たってるよ? もう!ムード台無し!
でもしょうがないよね。毎日へとへとになるまで、二人で遊んでるんだもん。たま〜に遊びに夢中になって徹夜しちゃうけどw
え? …ここでしたいの? でもここ玄関…きゃん♪
もう、出かけるんじゃなかったの? くすっ♪ はいはい、しょうがない子でちゅね〜♪
じゃあお兄ちゃん、遊ぼっか。二人で、二人だけで。ずっとず〜っと…永遠に♪
お兄ちゃん♪ だ〜い好き♪
以上、リハビリがてら保守
>>33 兄はあうあうあー、妹がレイプ目で脳内再生された
>>33 GJ兄調教完了ですね。
ふと思いついたんだがキモ姉妹の誘惑に負けて
ヤってる最中についつい好きとか愛してるとかつぶやいてしまったら
どうなるんだろ?吸盤みたく引っ付いて離れなくなるんじゃないかな
DQNカップルじゃあるまいし、流石に2週間でエッチはないだろ妹よ
>>36 多分
嬉しさのあまり気絶
↓
再起動
↓
キモウト(キモ姉)から超ブラコンにランクダウン
↓
浄解完了!
ってとこじゃね?
まあベタベタされるであろうことは否定しないけどさw
>>36 そりゃ翌日から幸せいっぱいの事実婚夫婦の始まりだろ
通学中にイチャイチャしてて、友達から「ブラコンも大概にしときなさい」ってたしなめられても、
今までみたいに落ち込んだりムキになって言い返したりせず、余裕の笑顔でそっと腕を組んだりとか。
なんかみたいなそれ。
「朝からブラコン全開ね」
「ブラコンじゃないですよ。夫婦です」
「あらあら、とうとう夫婦になっちゃったの? まあブラコンもほどほどにね」「はい」ニコッ
あなたに、突然12人のキモウトができました。
そんなフレーズが頭にわいてきた。
戦わなければ生き残れない!
???「腑抜けたか兄者!」
俺妹の桐乃に、兄貴のパンツくんかくんか疑惑が出た事について
このスレのキモウトは大体クンカーだろ
>>40 兄と結ばれたキモウトはただのブラコンだろjk
キモウト「逃げるお兄ちゃんは私のお兄ちゃんだ!
逃げないお兄ちゃんは私を受け入れたお兄ちゃんだ!
ホントキモウトスレは天国だぜフゥハハハハハー!」
>>40 天然、またはあらゆる常識がキモ姉妹達によって歪められている男というのが思いついた
・外を歩く時は手を握るか腕を組む
・下着の洗濯は姉または妹がするので直接渡す
・風呂は一緒に入り、お互いに体を洗いあう
・寝るときは同じ布団
・キスは挨拶。家の中では会う度にする
・自慰禁止。性欲発散したい時は姉または妹に頼む
・Hは好きな時に好きなだけしてもよい
・したいプレイがあれば何でも要求してもよい
・他の女性との恋愛は厳禁
姉ならともかく妹に常識を歪められる兄なんてめちゃくちゃ情けないだろw
ギモウトと夫婦になりたい
49 :
1/2:2010/11/10(水) 22:51:01 ID:dMswfPIQ
>>46 ・外を歩く時は手を握るか腕を組む
姉「二人とも、準備はいい?」
弟「うん、大丈夫だよ?」
妹「私も」
姉「じゃあ出発しましょうか…とその前に。弟君、はい」
弟「うん」<姉と手を繋ぐ
妹「お兄ちゃん、私も〜」
弟「はいはい」<妹と手を繋ぐ
3人「じゃあ行ってきま〜す!」
・下着の洗濯は姉または妹がするので直接渡す
弟「お姉ちゃん、これからお風呂に入るから、洗濯物もって来たよ?」
姉「お風呂!?…ああ、今日は妹ちゃんと一緒に入る日だったわね…」
妹『お兄ちゃん、はやく〜!』<風呂場から
弟「わかってるよ!…じゃあお姉ちゃん、お願いね?」<風呂場へ
姉「はぁ〜い…ハァハァ,オトウトクンノ ヌギタテ パンツ,アセマミレノ シャツ…」
・風呂は一緒に入り、お互いに体を洗いあう
妹「あんっ♪…お兄ちゃん、そこは…そこはらめぇ!」
弟「どうして?いつも洗ってあげてるじゃないか?」
妹「だって、今日体育があったから汚れてる…ふぅん♪」
弟「だからキレイにしてあげてるんだよ?ほら、おっぱいも」
妹「ひゃぁぁぁぁぁん♪」
・寝るときは同じ布団
姉「じゃあ電気消すわよ?」カチカチッ
弟「うん、お休みなさい」
妹「おやすみ〜」
弟「…お姉ちゃん、変なとこ触らないでくれる?」
姉「私は何もしてないわよ〜?」
弟「嘘だ」
妹「お姉ちゃん、またお兄ちゃんにちょっかい出してるの?」
姉「だって〜、弟君可愛いんだも〜ん」
妹「まあ、気持ちは解るけどね」
弟「妹もチン○握らないで!」
・キスは挨拶。家の中では会う度にする
姉「おはよう弟君〜♪ちゅっ♪」
妹「おはようお兄ちゃん♪ちゅっ♪」
弟「おはよう二人とも。んっ、んっ」
弟「お姉ちゃん、ちょっといい?」
姉「あら弟君、どうしたの?ちゅっ♪」
弟「んっ。お姉ちゃん、勉強教えて欲しいんだけど…」
姉「勿論いいわよ?さ、いらっしゃい」
妹「お姉ちゃん、お兄ちゃんがそっちに…あ、いた!ちゅっ♪」
弟「んっ。妹も来たの?」
姉「あら妹ちゃん、いらっしゃい」
50 :
2/2:2010/11/10(水) 22:51:24 ID:dMswfPIQ
・自慰禁止。性欲発散したい時は姉または妹に頼む
弟「妹、ちょっといいかな?」
妹「どうしたの?お兄ちゃん。ちゅっ♪」
弟「んっ。えっと、その…ちょっとヌいて欲しいんだけど…」
妹「ぬく?…あっ、そういうこと…////」
弟「頼んでいいかな?」
妹「勿論!お兄ちゃんの気の済むまでヌキヌキしてあげる♪」
・Hは好きな時に好きなだけしてもよい
姉「今日のお風呂は私の番〜♪」
弟「変な歌だね、お姉ちゃん」
姉「ほっといて!はい弟君、どこか痒いところはない〜?」
弟「う、うん。痒いところはないんだけど…」
姉「どうしたの?…あら」
弟「ここ、こんなになっちゃった…」
姉「////」
弟「…………」
姉「…ねえ、弟君…エッチ…シたい?」
弟「…うん…」
姉「…じゃあ、シちゃおっか?」
弟「…いいの?」
姉「勿論!弟君のおち○ち○、お姉ちゃんのおま○こで気持ちよくして、あ・げ・る♪」
・したいプレイがあれば何でも要求してもよい
姉「え?ダブルパイズリ?」
弟「うん…」
姉「えっと…私は別にいいけど…」
妹「私もいいよ?ちょうどお兄ちゃんと遊ぼうと思ってたところだから」
弟「いいの?」
妹「うん!」
姉「じゃ、シましょうか?3人でとっても気持ちいい遊びを♪」
弟「お姉ちゃん…妹…」
妹「でもお姉ちゃん?こ〜んなエッチなお兄ちゃんにはオシオキが必要だよね♪」
弟「え?」
姉「そうね♪二人のおっぱいを独り占めしたいだなんていう弟君は、腰が抜けるまで搾り取っちゃおっか♪」
妹「賛成〜♪」
弟「ちょ、お姉ちゃん?妹?あ…ああ…アッー!」
・他の女性との恋愛は厳禁
弟「ハァ…ハァ…」
姉「んっ♪…また出たぁ…」
妹「これで5発目だね〜♪」
弟「二人とも…もう許して…」
妹「ダメだよお兄ちゃん。あたし達に内緒で女の子と付き合った罰なんだから」
弟「付き合ってなんかないよ…ただちょっと買いものに…ひぐぅ!」
姉「弟君、覚えておいて?女の子と二人っきりで買い物したり、映画みたり、ご飯食べたりするのはれっきとした浮気なのよ?」
弟「だからそれは…あぁっ!」
妹「んっ♪はぁっ♪お兄ちゃんおち○ぽが、あたしの子宮をツンツンしてる〜♪」
姉「ふふっ♪ダァメ♪弟君には私と妹ちゃんの二人がいればいいの。他の女なんて必要ないの。弟君は私達のもの。私達姉妹のもの。ちゃ〜んと覚えておいてね?でないと、またしちゃうわよ?オ・シ・オ・キ♪」
弟「アッー!」
長くなったがこんな感じ?
こんばんは。
>>8の続きを投下します。今回はエロ有りです。
53 :
狂依存 30:2010/11/11(木) 01:36:21 ID:IIFhLtgW
「ごめん……ごめん……」
それしか言葉が出なかった。
酷すぎる弟だ。
何が大好きな姉だ。
もう迷惑をかけない様になったと勝手に思っていたが、それは単に麻由お姉ちゃんの事を避けていただけだった。
麻由お姉ちゃんの事を何年も気にもかけずに蔑ろにしていたじゃないか。
今年の誕生日なんか……
「ただいま。」
今日の部活はきつかったなあ。
でも最後の大会も近いから、頑張らないとな。
「おお、おかえり。」
「あれ、どうしたの?今日はやけに豪華な食事だけど。」
珍しくお父さんが台所で食事の準備を手伝っていた。
「何ってお前、今日はあの日だろ。お父さんはもうすぐ海外出張でしばらく家を開けるから、今年は盛大に祝ってやろうと思ってな。」
あの日?
「えっと……あの日って?」
何かおめでたいことでもあったっけ?
「おいおい、今日は麻由の誕生日だろ。まさか忘れてたのか?」
「え……ああ!そうだったか!うん、そう言えば今日だったね。」
「………!!」
大会の事で頭がいっぱいですっかり忘れていたわ……
「自分の姉の誕生日忘れるなんて、随分と薄情な弟になったもんだね。ねえ、麻由?」
「え……う、うん……」
お母さんが呆れた顔をしながら、いつの間にか僕の後ろにいた麻由お姉ちゃんに尋ねた。
麻由お姉ちゃんも複雑な表情をしながら苦笑いして頷く。
「ほら、あんたもさっさと着替えて手伝いなさい。」
「はーい。」
「………」
あの時見せた麻由お姉ちゃんの顔。
今思い出してみると、本当に悲しそうな顔をしていた。
でも、そんな事全然気にもしないで呑気に誕生パーティーを祝っていた。
プレゼントをあげるなんて、もう考えてもいなかった。
「あ、あ……」
最低だ……
上辺では大好きだって思っていながら、誕生日まで忘れて平然としていたなんて……
あの時から一体、麻由お姉ちゃんに何をしてきたというのだ。
麻由お姉ちゃんの気持ちなんか何も考えず、向き合うこともせずにひたすら甘えていただけだったじゃないか……
「ごめんなさい……ごめん……」
本当に酷い事をしていた。
自覚も何もなしに何年も苦しめていたんだね……
「そんな顔しないで。良いのよ。全部私が悪いんだから。あなたは何もしてくれなくていい。私があなたの喜ぶ事全部やってあげるから……」
スルっ……
54 :
狂依存 31:2010/11/11(木) 01:37:00 ID:IIFhLtgW
「……?」
「さあ、お姉ちゃんに好きなだけ甘えて。今の私ならあなたを一番愛してあげられる。一番幸せにしてあげられる。」
そう言うと、服を全て脱ぎベッドに横になって僕に抱きつく。
「何を……?」
「決まってるじゃない。これから大輝とセックスするのよ。そして夫婦になって永遠に幸せになるの。ほら、大輝も脱いで。」
「え?でも……」
自分からはセックスしないって、言わなかったっけ?
「ええ、私の方からはしないわ。でも私にはわかるの。大輝は今夜私を愛してくれる。私達はここで結ばれるのよ。」
「な……」
随分と勝手な言い分に少しムっとくる。
「ほら、早く脱ぎなさい。脱がないなら、お姉ちゃんが脱がせてあげるね……」
「ちょっと、やめて……」
強引にTシャツと短パンに手をかけ脱がそうとしたので流石に少し抵抗する。
「ほら脱いで……一緒に気持ちよくなろう……遅かれ早かれ私達は結ばれる運命にあるのだからここで意地なんか張る必要は何処にもないわ。」
「あの!今までの事は本当に謝るよ。ううん、謝るだけじゃ駄目だよね。何をすれば許してくれるかな?」
「………」
「えと!麻由お姉ちゃんの誕生日プレゼントあげてなかったよね!今までごめんね。ちょっと遅いけど今年は欲しい物何でもあげるよ。何か欲しい物はあるかな?何でも言って。」
誕生日はもう一ヶ月以上前に過ぎているけど……
「そうね……大輝の子供が欲しいわ。」
「なっ!?」
「本当よ。今一番欲しい物は大輝の子供。二人の愛の結晶が欲しいわ。今から作れば、ちょうど来年の誕生日の頃には産めるわね。フフフ……女の子が良いな。」
「ちょっとふざけないで……」
「あら?本気よ。何でもくれるって言ったわよね。だから大輝の子供を頂戴。早く子作りしてよ。」
もう頭が痛くなってきた。
「……何を言っても私の気持ちは変えられないわよ。変える気もないけどね……ちゅっ、ちゅっ……」
耳元でそう囁き、頬にキスをする。
何か香水をつけてるのか、甘い香りがしてくる。
「ふふふ……ほら、私のおっぱいしゃぶって……」
そう言うと僕の顔におっぱいをうずませ、押し付けてくる。
「(うう……大きくて柔らかくて本当に心地良い……)」
「ほうら……お姉ちゃんの気持ち良いおっぱいでちゅよ……」
ふにふに。
柔らかい乳房の感触と甘い香水の香りと麻由お姉ちゃんの囁きが、途方も無い快感を呼び起こす。
今すぐにでもこの豊満なおっぱいを貪り、犯しつくしたい。
「う……お願いだから……もう止めよう、ね?」
「ふふふ……喜んでくれて嬉しいわ。好きなだけ味わって良いのよ……」
僕のお願いも無視して、更におっぱいを顔にうずませてくる。
「ちよっと!どうして僕の言う事を無視するの?止めてって言ってるじゃないか。」
「だって、本当は気持ち良いんでしょ。お姉ちゃんのおっぱいを貪りたいって思ってるんでしょ?だったら止める理由なんて無いわよね。」
う……本当の事だけどさ……
「それに、大輝のおち○ちんは……」
ずるっ。
「え?」
「こんなに元気になってるじゃない……ふふ、嬉しいわ……」
短パンを引き摺り下ろして、既にいきり立った肉棒を露にし、嬉しそうに呟く。
もう、何を言っても駄目なんだろうか……
「あ、あのね。これは、その……」
「ねえ、早く正直になりましょう……私の全てを好きにしていいんだから……ちゅっ、ちゅっ……」
甘美な囁きをしながら、キスをし僕の理性を次々に破壊していく。
もう、限界かも……
「麻由お姉ちゃん。お願いだから……」
「そう……もっと気持ちよくして欲しいのね。」
そう言うと立ち上がり、脱いであったショートパンツのポケットの中から何か取り出す。
「これ、何だかわかる?」
何だろう?
55 :
狂依存 32:2010/11/11(木) 01:37:47 ID:IIFhLtgW
「ふふふ……ローションよ。これで大輝をもっと気持ちよくしてあげるね。」
微笑みながらローションの容器の蓋を開け、上半身に塗りたぐる。
「ちょっと!止めて……」
「大丈夫よ。ベッドが汚れても私が洗ってあげるから。さ、シャツを脱ぎなさい。」
いや、そういう問題じゃないでしょ!
「ほら、脱ぎなさい!でないとこのままやるわよ。」
珍しく怒鳴りながら、強引にシャツを引っ張る。
「ちょっ!わかったから……」
そう言われて仕方なく脱ぐ。
麻由「ああん……ごめんなさい、怒鳴ったりして。お詫びに全力であなたにご奉仕して気持ち良くしてあげるわ……ん……」
ローションをたっぷり塗った、胸を僕の胸板に押し付け擦り始まる。
このヌルヌルとした感触はこの前お風呂でやったのとは、また違った物であった。
「あんっ、ん……怒鳴ってごめんね……うんっ…こんな酷いお姉ちゃんには……んっ…この肉棒で処女膜をぶち破るお仕置きをすべきよ……んっ…」
何か変な事を言って僕をまた挑発する。
そんなに襲って欲しいのかよ……
「あんっ……ヌルヌルしてて良いわ……ん……んあ、うん……」
この柔らかい肌とローションのヌルヌルした肌に触れる時の感覚があまりにも心地よくてうっとりとしてしまう。
だんだんと思考も奪われてきてしまうような感じだ。
「あん……んっ……フフフ…またおち○ちんをおっぱいで気持ちよくしてあげるね……んっ……」
肉棒を乳房で挟み、パイズリを始める。
ただでさえ、この豊満な乳房が肉棒にもたらす快感は凄まじい物があるのに、ローションで塗りたぐられていつも以上の魔の快感に襲われる。
「あん……んふ、ん……あんっ、こんなにビクビクしちゃって……うん……我慢しないで早く犯しちゃいなさいよ……ん…」
もう気持ち良すぎて、本当に頭がどうにかなりそうだ。
このままイってしまえば……
「うん……ん…うんっ、あん……このぐらいでいいわね。」
「ん?」
早くもパイズリを止めると、僕の顔に顔を近づける。
「フフフ……あのままイカせると思った?そんな訳ないじゃない……ちゅっ、ん……れろ……」
今度は僕の顔にキスしたり、軽く舐めたりして焦らしてくる。
「ん……んちゅっ、ちゅっ……ん…ちゅる……」
僕の顔のあちこちにキスしまくってるが、それでも口にはしてこない。
あくまでも口付けだけは僕にやらせようというつもりのようだ。
「うん……んちゅ…お姉ちゃんにキスして欲しい?『麻由お姉ちゃんとキスがしたいです。』ってはっきり言わないとしてあげなあい。ちゅっ…」
「ねえ……もう止めよう。僕はこんな関係望んでないんだよ……」
理性を振り絞って懸命に拒否する。
姉への贖罪意識と強烈な誘惑の前に力が抜けて抵抗する気力を奪われ、もう口で拒否するのが精一杯だった。
「んちゅっ……ちゅっ、ほら……お姉ちゃんの唇と処女を早く奪いなさいよ……ちゅ……」
……もう駄目だ。
麻由お姉ちゃんとキスしたい。セックスしたい。
一杯気持ち良くなって、麻由お姉ちゃんを僕だけの女にしたい。
それで頭がいっぱいになってきた。
「ん……んく…」
「んちゅ……ちゅっ……あん…」
その感情を必死で抑えて、麻由お姉ちゃんを振りほどき背を向ける。
でもすぐに抱きついてきて背中に胸を押し当て、耳元にキスをしてくる。
柔らかい乳房が背中に当たる感触が本当にたまらなく気持ち良い。
「ん……ちゅっ……ねえ、大輝……お姉ちゃんを犯す前に最後に言っておきたい事はないかしら?」
……?
「このまま姉弟の一線を超えて結ばれる前に、弟として何か私に言いたい事はない?話ぐらいは聞いてやるわよ……ちゅっ……」
「あのね、麻由お姉ちゃん……僕と麻由お姉ちゃんは小さい頃は本当に仲が良かったよね。僕たちいつも一緒に遊んでいたよね。」
「そうね、懐かしいわね。」
「僕がアイスを落としちゃったら自分のを分けてくれたり、おぶってくれって頼んだらおんぶしてくれたり、本当に良く面倒見てくれて、大好きだったんだよ。」
「それで?」
「僕、またあの頃みたいな仲の良い姉弟になりたいな……あの時みたいに本当の意味で仲が良い姉弟になりたい……」
「嫌よ。」
「え……?」
あっさりと拒否してしまった。
56 :
狂依存 33:2010/11/11(木) 01:38:51 ID:IIFhLtgW
「私は大輝と姉弟じゃなくて、男と女として愛し合いたいの。ただの仲の良い姉弟じゃずっと一緒にいられないじゃない。そんなの、論外よ。」
「どうして……?あの頃、僕の事嫌いだったの?」
「もちろん好きだったわ。可愛い弟だと思ってた。でも、それだけよ。今の私とは全然違う。今の私はあなたに全てを捧げる覚悟があるぐらい愛しているのよ。」
そんな……
姉弟であることを捨てるのに何の未練もないかのごとく、平気で言い放つなんて。
何かが一気に崩れ落ちてしまった様な感覚に襲われた。
「それだけかしら?じゃあ、続けるわよ……んっ……ちゅっ……」
まさか、あれからこんなに変わってしまっていたなんて……
これもみんな僕が悪いのだろうか。
だとしたら、何て取り返しのつかない事をしてしまったのだろう。
「あん……おち○ちん、萎えちゃった。しっかり、立たせなきゃ……」
後ろから手を回して肉棒を握り優しく擦り始める。
ローションでヌルヌルと塗れた手に優しく刺激され、萎えかかった肉棒はまた勃起し始めた。
もう、何も考えられなくなった。
「ふふふ……ほら、早くぅ……おま○こ犯してえ……お姉ちゃんとキスしてえ……ちゅっ……んちゅっ…」
「でも……姉弟だし……」
「違うわ……男と女よ。」
「……!」
そう耳元で囁かれた時、頭の中で何かがはじけた。
「ん……あんっ……早くぅ……んっ!んちゅ……んんっ、ん、ぶちゅっ……」
姉の方を振り向きすぐに口を塞いで、初めてのキスをる。
とにかく無我夢中で麻由お姉ちゃんを抱きしめながら唇を重ね合わせ、貪り尽くす。
「んく……ん、んちゅっ……んん!むちゅっ……ん、ちゅっ、ちゅっ、ぶちゅっ……んん……」
最初は僕に身を任せていた麻由お姉ちゃんだが、すぐに唇を押し付け始め、負けじと僕の唇を貪る。
「ん、んちゅっ……ぶちゅ……ちゅっ、んちゅ……ちゅ、ぶちゅっ……ん、んっ……んふ……」
お互いに唇を乱暴に押し付け合い、舌を絡ませる。
長い間飢えた獣がようやく餌にありつけたみたいに。
海外では家族と挨拶代わりにキスしたりするみたいだが、姉弟でこんなディープなキスはしないだろう。
もう、姉弟の一線なんてここで超えてしまった。
「んちゅっ、ちゅ……ん、んん……ん、んちゅっ、ん、んふっ、ちゅる……ん、ぶちゅ……ん、んん……」
麻由お姉ちゃんは一向にキスを止めようとしない。
僕が止めなければ、永遠にやるつもりなのだろうか。
「ん、んちゅっ、ぶちゅっ……ちゅっ、ちゅっ……ん、んん……ぷはぁ……」
まだまだ、続けたかったが何とか強引に引き離し、ようやく行為を終える。
頭がとろけてしまうぐらい、気持ち良かった。
「はぁ、はぁ……本当に良かったわ……ひゃん!あん、もう……」
キスを終えたら今度はおっぱいに顔をうずめ、揉みしだく。
本当に大きくて、柔らかくて心地良いおっぱいだ。
「あん!やん……もっとお……は、あっ!いやん!あっ、あっ、あああん!」
赤ん坊みたいに乳首に吸い付くと、麻由お姉ちゃんも喘ぎ声を激しくしてくる。
ここが少し弱いのだろうか?
「はん!いや、そんな、強く……あっ!はっ、はああぁぁっっ!!」
右の乳首を吸ったら、今度は左の乳首を吸う。
とにかく麻由お姉ちゃんのおっぱいをひたすら味わい尽くしたかった。
「はんっ、あっ、あっ……いやん!はふ……いいわよ……あん!もっと……もっと、味わってえ……あっ、あっああぁぁっっ!!」
吸ったり、舐めたり、軽く噛んだりと好きなように味わう。
本当に大きくて柔らかくて極上のおっぱいだ。
でもそろそろ、最後の一線を超えたくなった。
「はんっ、いやんっ。はふ……あん……」
胸を十分に味わった後、既にいきり立った肉棒を麻由お姉ちゃんの膣穴に近づける。
もうどうなってもいい。
目の前にいるこの女を思いっきり犯してしまいたい。
「さあ、早く来て……」
57 :
狂依存 34:2010/11/11(木) 01:39:37 ID:IIFhLtgW
「行くよ……」
膣穴に肉棒を当て、そのまま思いっきり押し込もうとする。
でも、膜に遮られ中々入らない。
「はん……!んっ……んく……」
少し苦しそうな表情をしたので一瞬ためらったが、もうこの欲情は止められそうに無い。
そのまま強引に押し込む。
「はんっ……!やっ……はっ!あっ!あんっ……はっああああぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!」
遂に完全に挿入し終わり、最後の一線も超えてしまった。
股間から純潔の証である血が流れ出ている。
まさかと思ったが、本当に初めてだったんだな……
「はあんっ……!あっ、んくっ……んっ…はぁ……はぁ……」
流石に痛いのか、悲鳴を上げ、かなり苦しそうな表情をしている。
大丈夫かな……
「ん……ほら……早く動いて……遠慮なんかしなくていいから……」
痛みに耐えてるような表情をしながらも怪しく微笑んで腰を動かし、催促する。
もう、気なんか使う必要は無いな。
「ああん……はっ!ああぁんっ!はっ、あんっ、はふっ……あっ、あん!」
初めてなのでどうすればいいのかわからず、ひたすら腰を振る。
その度に麻由お姉ちゃんは、喘ぎ声を上げ体を震わせる。
麻由「はんっ、あん!いいわ……ん、んあ!もっと……もっと激しく……ん!あんっ、滅茶苦茶に犯してえ……はんっ!あん……」
麻由お姉ちゃんも腰を振り、更に中に入ってる肉棒をぎゅっと締め付けてくる。
肉棒がヌルヌルとした柔らかい膣壁に擦れ合う感触が今まで経験した事ない、凄まじい快楽を呼び起こす。
「(これがセックス……麻由お姉ちゃんとのセックス……)」
どんどん、気持ちが高ぶっていき更に腰を動かすスピードを速める。
「はふっ!あん!はっ、やん、あっ!はんっ、あっ、あんっ、んっ、ああっ!大輝……大輝……はっ、あんっ!ん……んちゅっ、むちゅ……」
体を倒して麻由お姉ちゃんと再び唇を重ねる。
お互いがむしゃらに腰を振りながら、唇を吸い付き合い、求め合う。
「はふ……んちゅっ、ん……むちゅっ、ん……んん!んちゅっ……ちゅっ、ちゅっ、んちゅっ……ちゅっ、むちゅ……はぁっ!あんっ!そこ……」
キスを終えたら、今度はまた胸に顔をうずめて揉みしだく。
二人は繋がったままお互いの欲望を好きなだけ満たしあう
この大きなおっぱいは、何度味わっても心地良い。
「麻由お姉ちゃん、麻由お姉ちゃん……」
「はふん!あん!やっ……あん!いい……いいわよ…あん!はふ、あんっ、はっ!あっ、あっ!あ、あっああん!」
麻由お姉ちゃんは更に肉棒を締め付け、腰を振り乱れ狂う。
その様子を見てるだけで、どんどん興奮してしまう。
そろそろ、イッてしまいそうだ。
「はん!あん……やんっ!はっ……あんっ!いいわよ……好きな時に、ん!あっ、あん!好きな時にイって……あっ、あん!」
なら、そうさせてもらおう。
「はんっ……あっ!あっ、ああああんっっ!!あっ、あん、やっ、ん!はあぁんっ!」
一気にスパートをかけ、達しようとする。
とにかく早く絶頂に達して、この女のま○こに思いっきりぶちまけてやりたい。
「あっ!ああん!はっ、やんっ、もう、イク……あっ!はんっ!ああっ!あんっ、はっ!やんっ!」
麻由お姉ちゃんも腰を振るスピードを更に上げ、肉棒を締め付けてくる。
もう、麻由お姉ちゃんもいつ絶頂に達してもおかしくないようだ。
「あんっ!いや……あっ!あん!イクっ……あんっ!イっちゃう!あん、はっ、やんっ!はっ……あんっ!」
「(う……もう……)」
もう肉棒は爆発寸前だ。
このまま一気に……
「はんっ!あっ……あっ!やん……イクっ!あ……イクっ!あんっ、あ、はんっ、イク……イクっ!」
「あんっ、はっ……やんっ、あっ、あ……あっああああああああぁぁぁぁぁんっっっっ!!!!」
「(出、出る……)」
びゅくっ!どぴゅるるるるるっっっっ!!!!どぴゅるるるっっ!!
「あん……はっ、あっ、ん、あっ、はああぁぁぁん……」
麻由お姉ちゃんとほぼ同時に達し、溜まりに溜まった精液を一気に中に吐き出す。
まだまだ止まりそうに無い。
びゅくっ!びゅくるるるっっ!!びゅく……
「はあん……大輝の精液……あん、いっぱい出てる……あんっ…」
58 :
狂依存 35:2010/11/11(木) 01:41:07 ID:IIFhLtgW
「はぁ……はぁ……」
ようやく射精が止まり、そのままぐったりとする。
とうとうやってしまった……
この後どうな……ん!
「んっ……むちゅっ……んちゅっ、ちゅっ、んちゅ……ん……ぶちゅ……」
麻由お姉ちゃんは僕に余韻に浸る間も与えず、すかさずキスをしてくる。
「んん……んちゅっ、ん……ちゅっ、ちゅっ、むちゅ、ん……はぁ……ふふふ、とても良かったわよ。今までの人生で一番幸せな一時だったわ。ん、んちゅ……」
ちょっ、少し休ませて……
「ん……麻由お姉ちゃん、もう……んっ……」
「ちゅっ……んちゅ……ん……ふふ、何がもうよ。また大きくなっちゃって……何度でもしてあげるから……ん……」
ひたすらキスをしながら、腰を振りまたおねだりしてくる。
この女は、もう姉でも何でもない。
ただの発情した雌だ。
「ん、んちゅ……ちゅっ……ほらあ……ん……やんっ!」
引っくり返して四つん這いにし、アソコを広げる。
もうこの発情しきったま○こをぶっ壊してしまい気分だ。
「ああん……そんなにじっくり見ちゃって……あん、あ……」
「そんなに欲しかったら、いくらでも入れてあげるよ。その代わりもう二度と僕の姉を名乗らないでくれ。弟にこんな事をされて喜ぶお姉ちゃんなんていないんだから。」
いきなりの宣告に流石の麻由お姉ちゃんも驚いた表情をする。
自分でもこんな酷い事を口にするなんて、信じられない。
「大輝……」
お願いだから、拒否して。
いや、せめて姉であることは否定しないでくれ。
そしたら、まだ引き返せるから……
「ふふふ、もちろんいいわよ……これから私は姉ではなくて、あなたの女になるわ。そしたら、いくらでも愛してくれるんでしょ。私もあなたを男として死ぬまで愛し続けるから……」
「だから早く、私のおま○こに、ち○ぽをぶち込んでえ……早く私を気持ちよくさせてえ……」
「……!!」
何の躊躇いもなく即答し、一気に絶望的な気分になる。
姉であることもあっさり否定しちゃうなんて……
「ほらあ、どうしたの?……早くぅ……私のま○こ犯してえ……あなたしか愛せない女にしてえ……」
「そこまで言うなら、くれてやるよ……」
「あん……来てえ……あっ!あああぁぁぁぁんっっっ!!あ、やんっ!」
バックから乱暴に挿入して、すぐに腰を振る。
もう完全に切れてしまった。
こんな女どうにでもなってしまえ。
「ああんっ!あっ……すごっ……はっ!あっ、ああんっ!はんっ、んあっ!」
もう何もかも壊してしまいたい気持ちだ。
とにかく欲望を満たす為に犯しまくる。
59 :
狂依存 36:2010/11/11(木) 01:42:02 ID:IIFhLtgW
「やっ!ああん!はっ……いいわ……あんっ!お姉ちゃんもっと犯して……あっ!はん!」
「姉を名乗るなって言っただろ。」
パン!パン!パン!
お尻を思いっきり叩く。
麻由おねえちゃんに手を上げたのは生まれた初めてだ。
こんな形でやる事になるなんて……
「あん!ごめんなさい……やん!あっ、はんっ……あっ、あ……!はあぁん!!」
何で謝るの?
本当なら僕が謝らなきゃいけないのに。
「はんっ!あっ……またイク……イっちゃうっ!あっ……やんっ!はっ、んあ!」
こんな事されて嬉しいのか?
僕のせいでこんな女になってしまったのか?
「あん!イク……イクイク!はあっ!あっ!あああああぁぁぁぁんっっっ!!!」
びゅくっ!!びゅくるるるるっっっ!!!
再び同時に果て、思いっきり中にぶちまける。
妊娠とかそんなものも頭になかった。
「はあああぁぁぁぁんっ………いいわ……大輝の精液一杯もっと私の中に……あんっ。」
「ふふふ……まだまだよ。今まで焦らされた分もっと、もっと愛し合うんだから……ん、んちゅ……ちゅっ……」
射精を終えて肉棒を抜いた後また抱きついてキスをし、また体を求めてくる。
もう、麻由お姉ちゃんは僕の事を完全に弟として見ていなかった。
「ん……むちゅ、ん…ちゅっ、ちゅう……んちゅっ……あんっ……」
「あ、ああんっ!はんっ……あっ、あんっ!やっ……はっ、ああぁぁっっ!!」
この後何度も何度も時間を忘れて獣の様にセックスに耽っていた。
姉弟ではなく、ただのオスとメスとしてひたすら体を求めあった。
…
……
あれから、どれくらい時が流れたのだろう。
「……ん。」
麻由お姉ちゃんは……?
ベッドから起き上がり、麻由お姉ちゃんを探し始める。
今日だけで何度も麻由お姉ちゃんと体を重ね合わせている。
なのに、まだ足りない……
とにかく麻由お姉ちゃんの体が欲しい。
じゃあああ
どうやら浴室でシャワーを浴びているようだ。
ガラ
「……きゃあっ。あん……またやるの……?」
何の断りもなく浴室に入り、襲い掛かって胸を揉む。
少し驚いた様だが何の抵抗もせず、受け入れている。
「ふふふ……もう、甘えん坊さんなんだから……ん……ちゅっ……んん……」
あれ以来すっかり麻由お姉ちゃんの体の虜になってしまい、姿を見る度に体を求めるようになってしまった。
でも、麻由お姉ちゃんはどんな時でもどんなプレイでも一切拒否せず、喜んで僕とセックスしてくれる。
それだけじゃなくて、僕の言う事を何でも事を聞いて、ひたすら甘やかしてくれる。
家事は全部やってくれるし、お腹が空いたと言えば何か作って食べさせてくれるし、何かが欲しいと言えば何でも買ってくれるし、小遣いをくれと言えばお金をくれるし、宿題をやってくれと頼めばやってくれる……
僕の望みを全て叶えてあげる事に喜びを感じている様だった。
「んん……んちゅ……ん、ちゅっ……あん……さっきからおっぱいばかり責めて……おま○こも弄ってえ……イタっ……あああぁぁぁぁんっっ!!」
思いっきり乳首を抓って、そのおねだりを拒否する。
あんたの体に何をしようが、勝手だろ。
「イタっ!あん…!もう……あっ!はああぁぁぁんっっ!!」
つね終わったら、すかさず麻由お姉ちゃんのま○こにち○ぽをぶち込む。
とにかく犯してしまいたい。
「あんっ!いきなり……はっ!ああんっ!やっ、あ……あっああんっ!!」
「いいわっ!あんっ……もっと……!あんっ!はっ……やあんっ!」
60 :
狂依存 37:2010/11/11(木) 01:42:45 ID:IIFhLtgW
この女何なんだろう?
何でも言う事聞いて、僕を甘やかしてくれる。
どうして、僕にここまでしてくれるんだろう?
何故家にいるんだろう?
「はんっ!あっ……!はんっ……イクっ……またイっちゃう!あっ、はんっ!!」
どうでもいいか……
何だかよくわからないけど僕のしたい事を全部やってくれるみたいだから、好きに使ってやろう。
「あんっ!イク……はんっ、あ、イクっ!イッちゃうううっ!!はっあああぁぁぁぁんっっっ!!!!」
今日何度目かの射精をこの女のま○この中でする。
妊娠したって知るもんか。
「あっ、ああぁぁぁんっ………はぁっ、はぁっ……ふふふ……こんなに一杯出しちゃって……」
「……」
ごめん。
やっぱり、この女呼ばわりしちゃ駄目だ。
どんなになっても大好きな麻由お姉ちゃんを物みたいに扱うなんて駄目だよね……
抓ったりしてごめんね……
「(何でこんな事に……)」
「ふふ……もう終わり?ん……んちゅっ……んん…ちゅっ……ん……」
「嬉しいわ……私でこんなに気持ちよくなってくれて……もっと私をあなたの好きなように使って……物みたいに扱ってもいいのよ。何でもしてあげるから……んっ、んちゅっ……」
抱きついてキスを繰り返し、また求めてくる。
こんな関係、子供の時ですら望んでいない……
「ん……麻由お姉ちゃん……」
「違うでしょ。」
「『麻由お姉ちゃん』じゃなくて『麻由』でしょ。私はあなたの姉じゃなくて、あなたの女なんだから……」
違う。
「違わないわ。」
「麻由お姉ちゃんは死んじゃってもう二度と戻ってこないの。可哀想な大輝……でも安心して。代わりに私が、その悲しさを埋めてあげる。あなたのお姉ちゃんがしてあげなかった事、みんなやってあげる。」
死んでなんかいない。ここにいる。
馬鹿な事を言わないでくれ。
「だから、もうあんな酷いお姉ちゃんの事は忘れなさい……ん……ちゅっ……ん…」
「さあ、体洗ってあげるね……」
体にボディーソープをかけ、泡立たせて僕の体に直接擦り始める。
「ん……んん…ん……」
「………」
「あんっ!また……?ふふふ……」
さっき射精したしたばかりだというのに、また麻由お姉ちゃんを押し倒して体を貪る。
本当はこんな事しちゃいけないのはわかってる。
でも、体が言う事を聞かない。
麻由お姉ちゃんを見ると欲しくて欲しくて、体が疼いてどうしようもない。
「あんっ!またおっぱいばっかり……ふふ……そんなに貪っちゃって……」
どんなに抱いても満足できず、また体を求めてしまう。
いや抱けば抱くほど、この体を更に求める様になってしまっている。
麻由お姉ちゃんも全然拒否しないで受け入れるから、止めることが出来ない。
「はふ……やんっ……ふふふ……パイズリしてあげるね……」
「ん……んちゅっ……ちゅるっ……んちゅ、ちゅっ……」
姉がもたらす魔の快楽にすっかり取り込まれ、抜け出せなくなってしまっている。
このまま一生、離れる事を許さないように。
麻由お姉ちゃん……
ごめんなさい……
僕のせいだよね……
「ん、んちゅっ……んっ……ちゅっ……もうこんなに元気に……ちゅっ……んちゅっ……」
「ちゅる……んちゅっ……んちゅ、ちゅるっ……んん……」
今までちゃんと向き合ってこなかった罰なんだよね。
本当にごめんなさい……
「んちゅっ……んく……はむ……ちゅっ……んちゅ……んっんんっっ!!」
「んんっ……ちゅっ……ふふ……さあ……今度は私の方から入れてあげるからね……ん……んん…!あああぁぁんっっ……」
「あああんっっ!!はんっ……!やんっ、あっ、はっ、あああんっ!!はっ、あん……!いいわ……はん!」
でも……
それでもずっと大好きだからね…
以上です。
一応これで終わりですが、後日談みたいな形で続きを書くかもしれません。
ありがとうございました。
一番槍GJ!
麻由姉ちゃんエロいよ麻由姉ちゃん
二人の爛れきってる性活ぶりがよく表現されていますた
実に(´д`)ハァハァ
GJ
なるほど弟は誘惑に負けてしまったが
性格が破綻してないから葛藤があるわけか
いつまでもつかわからないけど…
キモ姉妹は本当にかわいそうだな
相思相愛になるにはただのブラコンにならねばならないのか
GJ!
後日談も期待!
また間が開いてしまいましたが、投下します。7レス消費します。
奇跡が起きた。いや、よく考えれば奇跡ではなく必然なんだが、俺には奇跡としか思えなかった。
神様が、哀れな俺に救いの手を差し伸べてくれた。そう思いたい。
日曜日の朝、姉貴は明らかに体調が悪く、とても外出できない状態になっていた。
理由は生理だ。考えてみると、ちょうど猿島と最初にデートしてから約1ヶ月だった。
「うー……。動けない……」
姉貴は今のソファで横になったまま、一歩も動こうとしない。
俺は努めて表情を変えずに、「今日は無理だな。おとなしくしてろ」と言って、昼過ぎにこっそり玄関を出た。
司とメールで打ち合わせたとおり、駅の改札で待ち合わせた。
俺が到着するのとほとんど同時に、司が姿を見せた。ピンクのキャミソールに白いショートパンツというラフな格好だ。肩からポシェットを提げている。
「えへへ……。じゃあ、案内するね」
司は俺の左腕にしがみつくように腕を絡めてきた。司の胸では大した感触じゃないけど、俺は鼓動が早くなるのを感じた。
もうすぐ司を丸裸にして、欲望の限りをぶつけることができると思うと、股間が膨らむのを押さえきれない。
それでも、一応デートなんだから、いきなりホテルへ直行というのは余裕がなさすぎやしないだろうか。
がつがつした男は嫌われるって言うしな。
「なあ、司」
「なに?」
「その……どこかでお茶するとか、そういうのしなくていいのか?」
司は不思議そうな顔をして俺を見上げた。
「どうして? さっさと行くとこ行こうよ」
「いいのか?」
「ご主人様だって、ボクとエッチしたいでしょ?」
直球だな、おい! けど、願ってもない。
「わかった。目的地に行こう。……って、どこへ行くんだ?」
司が逢引に都合のいい場所を知っているということだったが。
「電車で行くの。任せて! 落ち着ける場所だから」
電車の中では、ふたりでくっついたままで、何も喋らなかった。
俺は心臓が狂ったように踊り始めて、全く言葉が出なくなっていたし、司もいつものお喋りはどこへやら、ただ俺にすがりついていた。
傍から見ると静寂バカップルに見えたかもしれないが、全く気にならなかった。
電車で4駅進んだところで、司が降りるよう促した。目的地が近いことを悟って、俺の鼓動がギアを上げたが、更にバスに乗ると聞かされてやや落ち着く。
そしてバスで7つ目の停留所まで来たところで降りた。「ここからはすぐだよ」と言われて、また心臓が踊りだす。
15分ほど歩いてたどり着いたのは、大きな洋館だった。見るからに金持ちオーラの漂う門がそびえている。
「ここだよ」
司の言葉は、俺にとって待ち望んでいた言葉だったが、それ以上に驚きをもたらした。
ひょっとして、この豪邸が司の家なのか? 雉野先輩なみのお嬢様だったのか?
「……おまえの家か?」
「違うよ」
あっけらかんと司は答えた。
「ボクの知り合いの家だよ。でも、離れを自由に使っていいって言われてるの」
そう言って門を開ける。鍵はかかっていなかった。
「おいおい、他人様の家かよ」
これはさすがにためらわれる。だいたい、知り合いに場所を提供する相手の心理も理解しがたい。
やっぱり、ホテルに行くべきだったんじゃないか?
「ほら、さっさと入って! 時間の無駄だよ」
「でも……」
ぐずぐずしていた俺の背中を司が無理やり押して門をくぐらせた。本気で抵抗できないあたり、俺も欲望に正直だ。
司は俺の手を引いて、勝手知ったる我が家とでもいうように、広大な庭の片隅に立つ平屋建ての一軒家へ誘った。
これが離れか。普通に一戸建て住宅として売れそうだな。
玄関で靴を脱いで中へ入ると、和風の造りだった。外観から想像するよりもわりとスペースがあって、部屋も複数ある。
廊下を奥へ進んで襖を開けると、8畳敷きの和室の真ん中にダブルベッドが置かれていた。
「……っ!!」
ベッドを目の前にして、さすがに俺も引き返せなくなった。司の肩をつかんで、俺に向き直させる。
「司……」
「ちょっと待って。支度するから」
司はやんわりと俺の手を外すと、ポシェットから小さな紙の箱を取り出した。
「ほら、ここを読んで」
言われるままに箱を手にとってみると、「経口避妊薬」と書いてある。先日言っていた薬らしい。
効能書きはやたら細かいので、ざっとしか読まなかったが、ナマでヤっても妊娠しなくなる薬だということは理解できた。
「見ててね」
司は中から錠剤を取り出すと、俺の目の前で飲み込んで見せた。
「これで、生でヤっても大丈夫だよ。だから、心配しないで、思いっきり楽しもうね」
俺は反射的に司を抱きしめていた。なんて細やかな気配りだ。
もう止まらない。俺に好意を寄せてくれる、目の前にいる女の子に俺の欲望をぶちまけずにはいられない。
「あ……」
司はちょっと慌てたようだった。
「ねえ、シャワー浴びなくていいの? 汗臭いかも……」
「そんなの気にしない」
俺は司をベッドの上に押し倒した。
「きゃっ!」
司がかわいい悲鳴をあげる。俺の手に震えが伝わってきた。やっぱり緊張しているらしい。
それは俺も同じだ。口の中がカラカラに乾いている。
俺は司の上に覆いかぶさって、そのまま唇を重ねた。ひんやりとした感触を味わう。
湿った音を立てながら、俺たちは舌を絡み合わせた。
「ん……」
司の震えが収まるのを確認してから、俺は唇を離して、司の体をキャミソールの上から撫で回す。
昂ぶりは鎮まらないのに、俺は不思議と冷静だった。次に何をしたらいいか、なんとなくわかる。
キャミソールの裾をめくって、司の腹を撫でてみた。
「ふぅんっ……!」
司がびくりと体を震わせて、切なげな吐息を漏らした。
そのまま指先で円を描くように、司の腹を撫で続ける。
「はぁ……ん……」
司の目がとろんとしてきた。キャミソールの生地の下で、俺の指は上へ上へと進んでいき、突起に触れる。
「……ブラジャーはつけていないのか?」
「キャミソールがブラになってるの」
確かに、指で生地の裏側から触ってみると、胸に当たる部分が硬い素材になっていて、ブラジャーも兼ねているらしい。
どのみち、司のほぼぺったんこな胸だと無意味だけどな。
でも、俺の掌はかすかな膨らみを感じている。左右の掌で包み込むように司の胸を刺激するうちに、乳首が固くなるのがはっきりとわかった。
「気持ちいいか?」
「言わせないでよ……ばかぁ……」
息を荒くして目を潤ませる司に、俺は嗜虐心をそそられた。
「脱がしてほしいって言えよ」
「ご主人様が脱がしたいんでしょ……」
「言え。命令だ」
俺はこれまでにないほど高圧的な態度になった。直感的に、司が支配されたがっているとわかったからだ。
「……ご主人様ぁ、脱がしてください」
司は素直におねだりした。俺はその言葉を聞くと同時に、一気にキャミソールの裾をめくり、司にバンザイをさせながら脱がした。
初めて目にする司の裸は、まるっきり子供だったが、俺は感動した。
自分が好きな女の子の裸は、それだけで美しくて、いやらしいものなんだ。
次は当然下半身だろう。俺はもう、司に断ることなく、ショートパンツのファスナーを下ろして、脱がせた。
司も協力的に腰を浮かせて、脱がせやすくしてくれた。
「……さすがに下は穿いているんだな」
「あたりまえだよ……」
幼児パンツみたいなのを予想しないでもなかったが、さすがにそんなことはなかった。清潔感のある、ピンクのショーツだった。
真ん中に染みができている。指で触れると、とろとろに湿っていた。もう濡れていたんだ。
上半身とは逆に、下半身は引き締まった太腿がセクシーで、大人の女の脚だった。
「ひぁっ……!」
ショーツの上から指でなぞると、司は弓なりに背を反らした。
俺の指が溝に沈んでいく。粘液まみれになりながら内壁をなぞると、司は嫌々をするように首を左右に振った。
「痛くないか?」
デリケートな部分だそうだから、やっぱり気になる。
「大丈夫……気持ちいい……」
その言葉を聞いて安心したので、指を上へ滑らせると、突起に触れた。
「んぁうっ……!」
司が一瞬、激しく震えた。どうやら、クリトリスに触れたらしい。
「もう……脱がせて……」
俺も脱がしたかったから、希望通りショーツを引き下ろしてやった。
あれ? 毛がない……? まさか、体が大人になっていないのか?
ちょっと慌てたが、よく見ると薄い陰毛がまばらに生えている。落ち着け、俺。司はちゃんと生理があるって言っていたじゃないか。
「うぅ……。ご主人様も脱いでよ……」
言われて初めて、俺は自分が服を着たままなのに気づいた。
もどかしさを振り切るため、俺はTシャツを素早く脱ぎ捨て、ジーンズもトランクスごと脱いだ。
びきびきに勃起したペニスが顔を出す。
「うわぁ……そういう形なんだ……」
司がまじまじと見つめるので、ちょっと気恥ずかしい。
「おまえ、この前見ただろ」
体育倉庫の中でヌいてもらったのが随分昔のように思える。
「だって、暗かったからよく見えなかったんだもん。匂いと味は覚えているけど」
俺の方はもう限界だった。とにかく司の中に入れたくて仕方がない。
「司、入れるぞ」
「うん……」
そう言いながらも、司は脚を閉じている。
「脚、開けよ」
「恥ずかしい……」
司は両手で顔を覆いながらも、おずおずと内股で脚を開く。俺は司の両膝の間に体を割り込ませた。
先端が司のアソコに触れた。……そうだ、陰唇っていうんだっけ。
俺の切っ先が司の「唇」を割って、中に入っていく。すぐに抵抗を受けた。
膜か? いや違う。両側から挟みこむような圧力だ。単純に、司の膣がきついんだ。
「司、大丈夫か?」
「うん。まだ入り口だし……」
もう少し力を抜くように言ってから、俺は司の腰をつかんで、体ごと前進した。
まるで咬みつくように圧力をかけてくる司の膣の抵抗をはねのけながら押し入っていくと、今度は明らかな障害物にぶつかった。
「痛い……っ!」
司が両手でシーツをつかむ。歯を食いしばっている様子を見るに、本当に痛いらしい。気持ちよさはふっとんだようだ。
慣れている男なら、ここで愛撫を加える余裕があるんだろうが、あいにく俺も切羽つまっていた。
締めつけが強すぎて、俺の方も気持ちよさより痛さの方が上回っているのに、俺の体は退却命令を受け付けない状態だ。前進あるのみ!
「んぁ……っ!」
司が悲鳴のような吐息を漏らした。何かがカチリとはまったような感覚に陥った。行き止まりまで達したんだ。
これ以上先へ進めなくなって、俺は司を見直す余裕を取り戻した。
痛みに耐えている司が健気で、たまらなく愛しい。
その気持ちを伝えるために、俺はキスをする。唇に、首筋に、乳首に。
「ご主人様ぁ……」
かすかな嗚咽を漏らしながら、司が俺の首に両腕を絡めてしがみつく。
俺はいつの間にか、腰を前後にグラインドさせている。司の中は相変わらずきついけど、液が湧き出して、前後運動できる状態になった。
火照った肉棒が強い締めつけを受けながら、摩擦熱も加わってどんどん熱くなる。
その熱が俺の脳を焦げつかす。
体の奥から、マグマが噴き上げてくるのを感じたときには、もう押さえ切れなかった。
「うぉぉっっ……!!!」
俺は生まれて初めて、女の体の中に射精した。
終わってからも、たっぷり5分は体をくっつけていたと思う。
体を離してみて、シーツに赤い染みができているのにぎょっとした。知識でわかっていても、やっぱり実際に目で見るとショックを受ける。
深い血の色が、司の感じた痛みを表しているように思えた。
「司、痛かったか?」
「うん……。覚悟していたけど、凄く痛かった」
疲れたような口調から、快感は苦痛で打ち消されていたことがわかった。なんだか申し訳なくなってきた。
「でも、ボクはとっても幸せな気分。……ご主人様はきもちよかった?」
「ああ……。最初は締めつけがきつくて痛かったけど、最後は頭の中がはじける感じがした。すげー気持ちよかった」
「よかった。ご主人様が喜んでくれて」
力ない微笑みに、俺は司を抱きしめてやった。
「次は司も気持ちよくしてやりたい。頑張るよ」
「えへへ……ありがとう」
とはいえ、すぐに2回戦突入というのは無理だった。思った以上に、俺も疲れていた。
自家発電と違うのは、腰が痛いということだ。それだけ激しく動いたんだな。
司の方も、やつれている。女は男から精力を吸い取って元気になるのかと思っていたが、女もセックスで疲れるんだな。
その上、血の匂いが漂っていて、けっこうきついものがある。気分的にも、戦闘続行は困難だった。
「ねぇ……シャワー浴びたいな」
事実上の終結宣言だった。司の方から切り出してくれたので、俺は男のプライドを守れた。
一緒に入ることにして、俺たちは裸のまま浴室に向かった。脱衣場にはバスタオルが用意されていた。
中はというと、湯の沸いたバスタブがある。
「俺が洗ってやるよ」
ひととおりシャワーをふたりで浴びてから、俺は備え付けのボディソープで泡立てたスポンジで、司の体を洗ってやった。
血がこびりついていた部分は、特に念入りに洗う。司はくすぐったそうにしていたが、いつの間にか元気を取り戻したらしい。
「じゃあ、今度はボクが洗ってあげる」
いつものノリで司が俺に抱きつく。体で洗うつもりのようだ。
俺を洗い椅子に座らせ、司は俺の腕や脚を又で挟んでこすりつける。背中は胸を押しつけて洗ったが、正直大した感触じゃなかった。
それでも、司の肌と触れ合うのがうれしい。
「最後はコレだね」
司は泡まみれの両掌で俺のサオを包み込み、揉み始めた。見る見るうちに大きく固くなっていく。
血の匂いが消えたことと、シチュエーションが変わったことで、俺も司もムラムラきたわけだ。
「こんなのが入ったんだ……。人体って不思議だね」
「俺も、司が壊れやしないかって、ちょっと不安になった」
そんなやりとりをするうちに、俺は完全復活した。
「えへへ……これはヤるしかないよね」
司はシャワーで泡を洗い流してから、俺の上にまたがるような体勢になって、上から体を合わせてくる。
今度もきつかったが、初回よりはスムーズにいった。
「ふぁ……。気持ちいい?」
「ああ……。司は?」
「もう痛くない。気持ちいいかはよくわかんないけど……なんかほっとする」
司は俺の方に手をついて体重を支えると、ゆっくり体を浮かし、ある程度までいってから勢いよく体を沈める。
「うぉ……」
この動きは俺の脊髄を直接くすぐるような快感を与えてくれた。俺も司の尻に手を回して、司の体重を支える手伝いをする。
「ふぅ……んっ……」
司は上下の運動をゆっくり繰り返す。俺は司の乳首に吸いついた。
エレベーターのような運動がゆっくりと繰り返され、俺の快感が増幅されていき、あっけなく達してしまった。
こらえるだけの気力が湧かなかったあたり、やはり疲れていたらしい。
「やっぱり、2回目だと量が減るんだね」
「そんなこと、見なくてもわかるのか?」
「わかるよ。ご主人様はボクの中に入ってるんだから」
微笑む司が、ちょっとだけ俺よりお姉さんに見えた。なんか悔しい。
この次こそ、司を気持ちよくさせてやらないといけない。明らかに、絶頂に達していないからな。
それとも、愛撫だけだったらエクスタシーに達していたのか? そっちの方は確かに感じているのがわかったもんな。
セックスは奥が深いや。繰り返さないとうまくならないのは、どんなことでも同じなんだろうな。
これから何度でも、司と経験していこう。
その後ふたりでバスタブに浸かった。言葉を交わすことなく、ひたすら体をくっつけあった。
これ以上はさすがにヤる気にならなかったが、お互いの体の感触が伝わってくるだけで満ち足りた気分になった。
バスタオルで体を拭いてから服を着なおして、そのまま離れを出た。
司はポシェットから替えの下着を出していたが、こういう用意をしてきたあたりに、女の子なんだなと感心した。
それにしても、汚れたシーツなんかをそのままにして大丈夫だろうか? 怒られないかな。
「大丈夫だよ。ここの人は全部承知しているから」
司が太鼓判を押してくれたが、ちょっと非常識なことをしていないだろうか。俺たちも、屋敷の持ち主も。
それでも、今の俺は司で頭がいっぱいだ。面倒なことは後から考えよう。
「司、好きだ」
「うれしい」
そんなことを小声で囁きあいながら、俺たちはバスと電車を行きとは逆に乗り継いで、家路についた。
最初の待ち合わせ場所に戻ったときは、とても別れがつらくなった。
俺がこの童顔幼児体型の女の子に夢中になるなんて、4月の出会いのときは露ほども予感しなかった。
人生って、わかんないもんだな。
また機会を作ることを約束して、司と分かれた。
幸せな世界が広がっていく気がした。だけど、我が家が近づくにつれて、重苦しい不吉な雲が俺の胸の中に広がっていった。
姉貴をどうにかしない限り、姉貴の圧倒的暴力による支配から逃れない限り、俺と司の幸福な未来はないからだ。
投下終了です。
今更ですが、猿・雉・犬を姉妹キャラにするという設定でもよかったですね。
キタキタキタキター!!
GJっす!!
正直勃起しました!!
GJ!
童貞卒業きた!
GJ!
これからどうなることやら
貧乳に用はない
早く雉先輩とモチャモチャしなさいっ(▼皿▼)
姉貴の反応が怖い…
エロGJ!しかし…
あ〜あ、童貞持ってかれちゃった
このまま家来3匹(人?)に奪われちゃったら姉ちゃん心底報われないぞ…
前世のこともあるし、どうしても姉ちゃんを応援してしまう
何とか逆転して欲しいところw
卒業おめでとう
>>61 その後が気になる・・・
ともかく投下GJ!
投下乙!
確実に姉は勘付くだろうな…
ドラゴンファンタジー来ないかな〜(≧∇≦)かな〜
ウナギ帝国って何ぞwwwやたらスタミナつきそうな国だなwww
そんな所に入った覚えは無いんだがな(`ε´)
姉の巻き返しに期待せざるを得ないな
今晩は。
表題について投下いたします。
かちゃかちゃ、ぶくぶく。
私と姉さんは二人でお皿を洗っていた。
お兄ちゃんは夕食に帰ってこなかった。
さっき電話があった、先生の指導が終わらないから先に食べていてくれって。
あれ、お兄ちゃんってそんなに絵に熱心だったっけ?
そういえば、いつもどんな物を書いていたのだろう?
姉さんに聞けば全部分かると思う。
でも、姉さんにお兄ちゃんの事を聞くのが何となく躊躇われる。
私だって恋人なのに……。
「ねえ、シルフちゃん?」
声を掛けあぐねている私に姉さんが声を掛けた。
「さっき兄さんから教えてもらったんだけど、
シルフちゃんは兄さんと結婚するって約束をしたんだよね?」
姉さんが洗い物の手を休める。
「うん」
私は姉さんに顔を向けられなかったから、お皿を洗うふりをしながら答えた。
「どこで、兄さんは何て言ってたのか教えてくれるかな?」
「昔、私が家出をした劇場で、
私が必要だって、愛しているって言ってくれた」
「ふふ、良い場所で、良い告白。
あの兄さんにしては合格かな?
良かったわ、ずっとシルフちゃんが大事にしてた想いが叶ったんだね」
「うん。私の気持ち、叶ったよ」
「本当に良かったわ。
兄さんは鈍感だけど優しい人だから、
シルフちゃんを幸せにしてくれるはずだよ」
「ありがとう、姉さん」
「ふふ、姉さんもとっても嬉しいな。
でも、ちょっとだけ寂しいかもね。
これで私も兄さんにとって要らない女の子になるもの」
姉さんがポツリと呟いた。
私のお皿を洗う手が止る、慌てて姉さんへ振り向く。
要らない、私が一番よく聞いた、一番嫌いな言葉。
「姉さん、今、要らないって……?」
「うん、もう雪風お姉ちゃんは要らないね、って言ったんだよ」
姉さんは当たり前のように言った。
「要らなくなんて無い。
姉さんはお兄ちゃんに絶対に必要な人だもの」
「ありがとう、シルフちゃんは優しい子だね。
でも、兄さんにはもうシルフちゃんが居るでしょ?」
「私が居ても、姉さんはお兄ちゃんにとっては大事な人だよ」
「ん〜、どうかな〜、兄さんってね不器用だから大切な物って幾つも持てないの。
多分、本当は一つ何かを大事にするのでやっとなんじゃないかな?
その大事な何かを見つけたら、後は何も目に入らない。
他の物はみんなどうでも良い何か、それが兄さんなんだよ」
「そんな事無いよ。
昔からお兄ちゃんは皆に優しかったよ」
「そうだね、どんな人にだって優しかったね。
でも、誰にだって優しいって言うのは、
誰も特別じゃないっていう事だと思わないかな?
ずっと兄さんはそうだったわ。
それに、これからもそうであり続けるって本当は少し期待してた」
優しいけれど、寂しそうな目で姉さんは私を見つめる。
「でも、兄さんはシルフちゃんに夢中なんだよ?
シルフちゃんだけを特別に思って、シルフちゃんだけの為に努力する。
そうね、今の兄さんはシルフちゃんだけを愛しているわ。
お姉ちゃんのお墨付きだよ?」
くすり、と姉さんが笑う。
その様子はまるで自分自身を馬鹿にしているように見えた。
「くす、そういう兄さんを見ていると嫌でも分かっちゃうのよ。
私の兄さんは遠くなっちゃたんだなって。
もう、雪風よりも大切なものができちゃったんだな、って」
「だったら、どうして私なんかをお兄ちゃんの恋人にさせようとしたの?」
そう、もしもあの時姉さんが背中を押してくれなかったら、
私たちはずっと兄妹のままだった筈なのに。
「ふふ、私にとって兄さんも、シルフちゃんも大切な存在だから。
その大切な二人が両想いになれるって分かったからだよ。
それに、いつか知らない誰かに兄さんを取られるよりは、
シルフちゃんと結ばれた方がずっと良いって思ったの。
でも、こういうのって覚悟していた以上に辛いんだね」
姉さんが苦笑した。
けれど、いつものふわふわとした暖かさは無い。
ただ寂しさを誤魔化すだけだっていうのが分かる、そういう笑いだ。
「姉さんは、お兄ちゃんの事をどう思っているの?
それにお兄ちゃんの事で、……怒ってるの?」
姉さんの顔が強張る。
じっと私の顔を見つめる、ううん、睨み付けているんだと思う。
「シルフちゃん、お願いだから覚えておいてね。
私はどんな形でも兄さんと一緒にいたいと思っているわ。
例え、唯の妹としてであっても」
そう告げる姉さんの目には明らかな敵意が込められている。
「……シルフちゃんの質問は私の大事な物を壊すかもしれないよ?
それでも、どうしても聞きたいのかな?」
いくら私にだって、その意味は分かる。
私の居場所を奪うな、という警告。
「ううん、聞きたくないわ。
私が知る必要なんて無いよね。
忘れて、姉さん」
「うん、忘れようね。
それから、怒ってなんていないから安心して良いよ。
だって、大好きな兄さんの為だから」
姉さんはいつもの優しい顔に戻る。
そんな姉さんを見て胸が抉られるような思いがした。
姉さんはお兄ちゃんに対して私と同じ想いを抱いている。
だから、私が幸せになったら姉さんは幸せになれない。
ううん、例え私がいなくても姉さんの願いは叶わない。
それはとても辛い事だと思う。
そんな辛い中で姉さんはいつも今みたいに明るく笑ってて、
私やお兄ちゃんを見守っていてくれた。
でも、私は自分の事しか考える事しか出来なくて、
姉さんのそんな気持ちになんて全然気付いていなかった。
「……ごめんなさい」
「どうしてシルフちゃんが謝るの?」
「私は、私だけ幸せになって、
姉さんの気持ちなんて考えた事も無かったのに」
姉さんがそっと私の頬に右手を当ててくれた。
「そんなの、シルフちゃんが気に病む事じゃないわ。
シルフちゃんはずっと辛くて、寂しい思いをしてきたんだよね。
何度も何度も傷ついて、落ち着けるただ一つの場所をやっと見つけられたんだよ。
そんなシルフちゃんがどうして謝らないといけないのかな?
もし、シルフちゃんが幸せになるのがいけない、
なんて言う人が居たらお姉ちゃんは許さないわ。
だから、絶対にそんな事考えちゃ駄目だよ?」
姉さんの真剣な目線が私に向けられる。
「ごめんなさい」
「もう〜、だから謝っちゃだめだよ〜」
姉さんが手を離し、その手を自分の口元に移し、困ったようにくすくすと笑った。
私は思う、やっぱり姉さんは優しい人だって。
私なんかじゃ、違う、例えどんな人だって足元にすら及ばない。
なのに血が繋がっているから、
ただそれだけの理由でお兄ちゃんとは結ばれない。
もし、姉さんが私と同じ養子だったら、お兄ちゃんはそれでも私を選んでくれたのかな?
そんな事はありえない。
もし姉さんの血が繋がってなかったら絶対にお兄ちゃんは姉さんを選ぶ。
そして、私と居るよりももっと幸せになれる。
その光景は簡単に浮かぶ。
悲しいけど、私とお兄ちゃんが愛し合う姿なんかよりもずっと自然。
私みたいな要らない子が居る場所なんて絶対に無い。
だから、入り込む余地も無い私が幸せな二人の姿を見ながら、
唯の家族として無理に笑っている自分の姿も簡単に想像できる。
きっと、寂しさと、悲しさと、醜い嫉妬で胸をいっぱいにしながら。
今の姉さんよりももっと下手な笑顔で。
「でも、一つだけ教えて欲しいんだけど良いかな?」
今の私が姉さんの為にできる事ならどんな事でもしたい。
だから、どんな事でも正直に答えよう。
「うん、言って」
私は力を込めて応えた。
「兄さんは、どうしてシルフちゃんだけを愛しているの?」
か細い声で姉さんはそう言った。
「え?」
頭が真っ白になった。
それは全く予想外の質問だったから。
姉さんの言っている事の意味が分かるのに、意味が分からない。
どうして、今までお兄ちゃんに愛されるのが嬉しすぎて、
そんな単純な事をずっと忘れていた。
「あ、え、どうして?、え?」
「ごめんね、別にシルフちゃんを困らせたいわけじゃないんだよ……。
ただ、私は誰よりも兄さんを知っていて、
誰よりも兄さんに尽くせるって思ってきたの。
さっきはあんな風に格好を付けて言ったけど、
どうしてシルフちゃんじゃないと駄目なのかな?
どうして兄さんは私の事が要らないのかなって、本当は分からなくて……。
要らなくなっちゃたら、私は兄さんの側に居られなくなっちゃうの?」
姉さんが不安を振り払おうとするように喋る。
口調だけは軽くしようとするから、余計に悲しげになる。
嫌だ、こんな姉さんなんて見たくない。
「お姉ちゃんは見捨てられるのかな?
あはは、本当にただの妹になっちゃうのかな?」
「違うわ、お兄ちゃんはそんな人じゃないよ」
「うん、シルフちゃんにとってはそんな人じゃないけど……」
「お兄ちゃんはそんなひどい事、姉さんにだって、絶対にしない」
「ふふ、そうだよね。
シルフちゃんの兄さんはそんな人じゃないよね」
姉さんは何かを諦めたように一瞬、儚げな表情になった。
「……それでも私は兄さんの側にずっと居たいな。
邪魔かもしれないけど、兄さんとシルフちゃんの側に居てもいいかな?
居るだけで良いの、それ以上は何も望まないから」
姉さんが縋るような目で私を見つめる。
全然姿は違うのに、その寂しい目が、声が、
まるで過去の私自身が語りかけているように錯覚する。
「ね、姉さんは要らなくなんて無い。
私にも、……お兄ちゃんにだって必要な、大切な人だよ。
だから、ずっとお兄ちゃんの側に居て、お願い」
それは姉さんを思い遣る気持ちだけから出た訳じゃない。
姉さんを見捨てる、そんな事をするお兄ちゃんを考えるのが怖かった。
だって、姉さんを捨てられるなら……、
「ありがとう、シルフちゃんは本当に良い子だね。
お姉ちゃん、大好きだよ」
姉さんは泣きそうな顔で笑っていた。
私は洗いかけのお皿を急いで水で濯いで、台所を逃げるように去った。
もう姉さんの側に居るのに耐えられなかった。
部屋の扉を慌てて閉める。
ばさっ、と大きく音を立てて私はベッドに倒れこんだ。
さっき姉さんと話してから、気分が悪い。
「姉さんが、要らない」
そんなはずは無い、姉さんは私より綺麗だ、
私より料理が上手い、私よりも頭だっていい。
そして、誰よりもお兄ちゃんの事を知っている。
でも、その姉さんが言ったんだ、姉さんはもうお兄ちゃんには必要ないって。
姉さんが必要ないなら、どうして私なんかがお兄ちゃんに必要なの?
私なんかを愛してくれるの?
分からない、姉さんも分からないって言っていた。
お兄ちゃんは私に何を望んでいるのか分からない。
じゃあ、私もいつか分からないままにお兄ちゃんに見捨てられる時が来るの?
姉さんみたいに?
もしも、あくまでもしもの話。
お兄ちゃんにとって私が要らなくなってしまったら、私よりも大切なものが出来たら。
私を見捨てたら。
違う、お兄ちゃんは絶対にそんな事しない!!
けれど、もし私がお兄ちゃんにとって一番大事な存在でなくなってしまったら?。
その姿が嫌なのに頭の中に湧き上がる。
泣きそうな笑顔を作る私の姿がさっきの姉さんと重なった。
でも、私は、姉さんじゃない。
姉さんみたいにお兄ちゃんのことが分からない。
だから、必要なくなったら、もう妹としてだって居られなくなる。
あの何回も体験した大切な人がいなくなる感覚が虫のように体を這いずる。
その度にぞくりとする。
そんなの嫌だ、こんなにお兄ちゃんの近くに居られるのに。
またお兄ちゃんが遠ざかるなんて、そんなの嫌だ。
お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん。
心の中でお兄ちゃんを呼ぶ声が止まらない。
帰ってきたお兄ちゃんがいつもみたいにぎゅってしてくれる。
そうしたらもう怖くなんてないんだ。
私はただその事だけを考え続ける。
早くお兄ちゃんに帰ってきて欲しい。
ベッドの上で丸まりながら、私はそれだけを願っていた。
それなのに、お兄ちゃんはいつまでも帰ってきてくれなかった。
以上です。
ありがとうございました。
次回も楽しんでいただければ幸いです。
95 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/12(金) 22:46:05 ID:DdAMrxKA
ほんっといい作品!!
ラストがどう展開するのかめっちゃ気になる!!
作者様グッジョブ!
>>83今気づいた、正直スマンカッタ(;ω;)コバク
幸せな〜GJだお!(≧∇≦)
投下乙!
これも雪風の策略なのか?
次回も期待!
まとめサイトで転生恋生を読んできたー
わんことの初体験無事に済ませられてホッとしたw
わんこ可愛いよわんこ
99 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 16:22:50 ID:PvXARcja
解
100 :
名無しさん@ピンキー:2010/11/15(月) 18:28:43 ID:Q6ueQE/0
決
亀レスだがGJ!
姉ちゃんともHして欲しい
後某スレで拾った個人的に受けたのでコピペ
うちの妹は昔、目の前で脱いだパンツを俺にかぶせて
「変態仮面、ぎゃはは〜」
とかやりやがったので
「きったねぇ何しやがる」とぶっ飛ばしたことがある。
よく嫁に行けたもんだ。
てか、パンツだぞ?
臭いし、マジで腹立って殴ちゃった。 下品な妹で屁をこく時はわざと俺の顔の前にケツを突き出してするし
足の臭い嗅がせたりもされたな。
仕返しに口開いて寝てると口に七味とうがらし攻撃とかやった。
ボクっ娘はタローという馬鹿が書く妹だから認めない
書くな
などと、意味不明の供述を繰り返しており
三つの鎖 29 後編です
※以下注意
血のつながらない自称姉あり
投下します
兄さんが病院に運ばれたとお父さんから連絡が来た時、心臓が止まるかと思った。
すぐにでも病院に行きたかったけど、お父さんは待つように言った。
たいした怪我じゃないと聞いてほっとした。
それなのに兄さんはなかなか帰って来ない。
一体何があったのだろう。今日は柔道の練習は無い。
それ以外で兄さんが病院に運ばれるほどの怪我をする事などあるのだろうか。
私は不思議に思いながらも待ち続けた。
昨日から兄さんの様子はおかしかった。
夜遅くに帰って来た兄さんからは微かに女の残り香が漂っていた。
血液が沸騰するかと思った。
他の女と寝たのかと思うと、気が狂うかと思った。
私は兄さんにキスするつもりだった。キスさせるつもりだった。
でも、できなかった。
兄さんがあまりに悲壮な表情をしていたから。
それでいて、前に進もうとする決意に溢れていたから。
現実を受け止め、その中で最善を尽くそうとしていた。
私とは違っていた。
胸が痛んだ。
私といても、兄さんは悲しそうにするだけ。
兄さんが自分の部屋に戻った後、自分の部屋で私はぼんやりとしていた。
最近、兄さんは家にあまりいない。
いても私に話しかける事はほとんど無い。
話しかけるのはいつも私。
たまに兄さんから私に話しかけても、話す内容はいつも自首してほしいとばかり。
少し前まで兄さんは極力家にいてくれた。夏美の家に行っても、夜には帰ってきてくれた。晩ご飯を一緒に食べてくれた。
家の中では兄さんは傍にいてくれた。傍にいさせてくれた。
朝は二人で並んで学校に行く。
夏美や春子も一緒だけど、お昼も一緒に食べる。
放課後は一緒にいられないけど、兄さんは晩ご飯の時間には帰って来てくれる。
お風呂に入った後、兄さんは私の髪を梳いてくれた。
時々だけど、兄さんに甘えた。
ささやかだけど嬉しくてくすぐったい日々。
もう、そんな日は存在しない。
朝、兄さんは私と目を合わせようとしない。
学校に行く時の微妙に遠い距離。
お昼はいつも夏美と食べる兄さん。
一緒にいようとしても、兄さんは私に席を外すように言う。
放課後もそう。兄さんの傍にいるのは夏美。
最近は帰ってくる時間がどんどん遅くなっている。
帰ってきても、私に構わずにすぐに部屋に戻る。
最後に兄さんが髪を梳いてくれたのはいつだろう。
自分でも分かっている。兄さんは悪くない。
ささやかな幸せな日々を壊したのは私。
あのささやかな幸せで満足していれば、こんな事にはならなかった。
兄さんの傍に夏美がいるのを我慢していれば、今でも兄さんの傍にいられた。
でも、それだけじゃ満足できなくなってきた。
もっと兄さんの傍にいたい。傍にいて欲しい。兄さんに触れたい。触れられたい。
でも、私は耐えた。我慢した。
それが兄さんの望みだから。そして、我慢しないとこのささやかな幸せも失われるから。
どこかで分かっていた。いずれこのささやかな幸せも失われる事を。
兄さんの恋人は夏美。いずれ兄さんは家を出て、私以外の誰かと結婚する。そうなれば私は傍にいられなくなる。
それが分かっていても、私は耐えられなかった。
兄さんは私の傍にいてくれないで夏美を追った。
結局、兄さんは私の傍にいてくれなかった。私から距離を置くようになった。
離れていく兄さんを私は追った。無理やりにでも傍にいようとした。
兄さんにキスした。兄さんにキスさせた。
キスしている最中は幸せだった。嬉しかった。
でも、そんな幸せは幻だって自分でも分かっている。
兄さんはますます私と距離を置くようになった。
今日もそう。朝ごはんを食べた後、兄さんは部屋に引きこもって出てこなかった。お昼前に兄さんは出ていった。
私はそんな兄さんを見る事しかできなかった。言葉を交わす機会すらも無かった。
そして兄さんは夜になっても帰って来ない。
もう晩ご飯の準備はできている。
兄さんの好きな季節のお魚のお刺身。ちょっと奮発していいお魚を買った。
私なりの意思表示。兄さんと仲直りしたい。
以前みたいに仲の良い兄妹に戻りたい。
兄さんが完全に夏美のものになるまでまだ時間はある。
その残された時間だけでも、兄さんの傍にいたい。傍にいて欲しい。
兄さん、早く帰って来ないかな。
何かの気配に私は目を覚ました。
いつの間にか寝てしまったのだろう。ソファーの上で私は体を起こした。
「起きた?」
兄さんの声。私は声を方を振り向いた。
そこには兄さんがいた。タオルケットを手に私を見下ろしていた。
「兄さん!!」
私は兄さんに抱きつこうとして、ぎりぎりで自制した。
兄さんは病院に行って来たんだ。怪我をしている。
「あの、兄さん」
「なに?」
不思議そうに聞き返す兄さん。
「その、体は大丈夫」
兄さんは意外そうな顔をした。すぐにほほ笑んで私を見る。
「大丈夫。心配掛けてごめん」
兄さんは手に包帯を巻いていた。
私は兄さんに抱きついた。背中に腕を回し、そっと抱きつく。
兄さんの逞しい胸板。兄さんの心臓の鼓動が聞こえる。
よかった。兄さんは生きている。
私の傍にいる。
「梓?」
困惑したような兄さんの声。
「何で泣いているの?」
兄さんの指が私の目元をぬぐう。気がつけば私は泣いていた。
「ひっく、だって、ぐすっ、だってっ…!!」
涙がとめどなく溢れる。
「だって、兄さんが無事で、嬉しくて、安心して…!!」
兄さんが病院に運ばれたと聞いて不安だった。
兄さんが私の傍からいなくなりそうで怖かった。
兄さんに二度と会えないかもしれないと思って、恐ろしかった。
でも、兄さんは無事でいてくれた。この家に帰ってきてくれた。
そして今は私の傍にいてくれている。
泣きじゃくる私を兄さんはそっと抱きしめてくれた。
「ごめん。心配掛けて」
優しい兄さんの声。
涙はとめどなく溢れる。そんな私を兄さんは優しく抱きしめてくれた。
服越しに伝わる兄さんの体温。その温かさに、心が落ち着く。
「…もう大丈夫」
私の言葉に兄さんは抱きしめた腕を離した。私も抱きつく腕を離し、兄さんから一歩離れた。
兄さんの温もりが消える。それが少し悲しい。
「突然泣くからびっくりしたよ」
からかうような兄さんの言葉に、胸が張り裂けそうになる。
分かっていない。
私の気持ちを何も分かっていない。
視界がにじむ。目頭が熱くなる。
「え?あ、あずさ?」
慌てたような兄さんの声が、どこか遠い。
「梓?一体どうしたの?」
兄さんはハンカチを片手に私の目元をそっと拭う。私は再び泣いていた。
「兄さんのばかっ!!」
私は兄さんの胸に顔を押し付け、胸を叩いた。兄さんは困惑したように立ち尽くすだけ。
「ばかっ!!ばかっ!!私がどれだけ心配したと思っているのよ!!」
涙がとめどなく溢れ頬を濡らす。
「…兄さんがいなくなるかと思って、本当に怖かった…」
私の素直な気持ちが言葉となって溢れる。
言葉と共に気持ちがはっきりとした形となって胸に溢れる。
好き。私は兄さんが好き。
愛している。
私は顔をあげた。兄さんは申し訳なさそうに私を見下ろしていた。
兄さんの手が私の髪をそっと撫でる。
「無神経な事を言ってごめん」
「…分かってくれたなら、いいわ」
兄さんに髪を撫でられるのが気恥ずかしくて、私は一歩離れた。
「結局、何があったの?突然病院に運ばれて」
「ちょっと料理で切ってね」
兄さんは曖昧に笑った。
料理で切った。どこで?夏美の家?
兄さんの料理の腕前は優れている。料理で病院に運ばれるほどの怪我をするなんて事があるのだろうか。手に包帯を巻いているけど、そんなにひどい怪我なのだろうか。
黙っている兄さん。これ以上、話すつもりは無いようだ。
そう言えば、兄さんは晩ご飯を食べたのだろうか。
せっかく作ったのだから、兄さんに食べて欲しい。
「兄さん。晩ご飯は食べた?」
「いや、食べていない」
「待ってて。すぐに用意するから」
私はキッチンに走った。
「あずさー。走ると危ないよ」
「大丈夫よ」
兄さんの注意を聞き流してエプロンをつける。
味噌汁を温め、ご飯を盛りつけ、冷蔵庫にあるお刺身を取り出す。
準備はすぐにできた。できた料理をリビングの食卓に運ぶ。
私と兄さんの二人分の夕食。
「兄さん。できたわ」
兄さんは食卓の上を見て意外そうな顔をした。
「まだ食べてなかったのか?」
「うん。兄さんと一緒に食べたいと思って」
そんな事を言いながら私と兄さんは席についた。
「いただきます」
「いただきます」
箸を手に、夕食が始まる。
無言で食べる兄さんと私。兄さんがお刺身を口にするたびに、微かに頬が緩むのに私は気がついた。
「兄さん。お刺身、どう?」
「おいしい」
兄さんは即答してもう一切れ口にした。
頬が熱くなる。嬉しい。
兄さんは何も言わずに黙々と食べる。
もっと兄さんと会話したい。声を聞きたい。
でも、何を話せばいいのだろう。分からない。
いつの間にこんなに兄さんと話せなくなってしまったのだろう。
話のネタ。何かないのかしら。
そんな事を考えているうちに兄さんは夕食を食べ終えてしまった。
「ごちそうさま」
このままだと兄さんが部屋に戻ってしまう。
「に、兄さん!!」
思わず兄さんを呼ぶ私。自分でも信じられないぐらい声が上ずっている。
「何?」
兄さんはそんな私を訝しげに見つめた。
呼び止めて、何を話せばいいの。
私は必死に考えた。
唐突に思いつくアイディア。
私はお刺身を一切れ箸でつまみ、兄さんの口元に持っていった。
「あ、あーん」
目を丸くする兄さん。
頬が熱い。
「そ、その、私、もうお腹いっぱいだから、兄さんに食べて欲しくて」
しどろもどろになって話す私を兄さんは呆然と見つめた。
「と、とにかく!!口を開けて!!」
気圧されたかのように兄さんは口を開いた。私はお刺身の切れ端をそっと食べさせた。
無言で咀嚼する兄さん。
「ど、どう?」
兄さんは飲み込んでから口を開いた。
「…醤油がついていないから、味が良く分からない」
しまった。醤油をつけるのを忘れていた。
「…でも、おいしい」
兄さんは照れたようにそっぽを向いて言った。
照れている兄さんが可愛い。もっと見たい。
「に、兄さん。もう一口いらない?」
「もういい」
兄さんはそっぽを向いたまま。
「こっちを向いて。食べさせてあげるから」
兄さんは私をちらりと見て、箸を手にした。
次の瞬間、私のお刺身がお皿の上から次々に消えていく。
驚く私を横目に、兄さんはお刺身を次々と口にした。
口いっぱいにお刺身をふくみ、もぐもぐと食べる兄さん。お行儀が悪い。
「な、何でよ!!私が食べさせてあげるって言ったじゃない!!」
そんなに私に食べさせられるのが嫌なの。
兄さんは何も言わない。無言で咀嚼している。どれだけ一度に食べているのよ。やがて飲み込み、口を開いた。
「それぐらい自分で食べられる」
「…兄さんの意地悪」
なんだか少し腹が立った。
むくれている私に兄さんは微笑んだ。
「おいしかったよ。ごちそうさま」
「待って。食後のお茶をいれるから」
私は残りのご飯を急いで食べる。
「いや。僕がいれるよ。梓はゆっくり食べて」
そう言って兄さんは食器をまとめて席を立った。兄さんの後ろ姿がキッチンに消えていく。
私は眉をひそめた。兄さんの歩き方が微かにぎこちない。お腹を庇うような歩き方。
料理で切ったって言っていたけど、包帯を巻いた手以外に目に見える範囲で切り傷も治療の痕跡も見えなかった。まさか、お腹を切ったの?
ますます意味が分からない。料理でお腹を切る事なんて無い。普通は手や腕、または包丁を落として足。
いったい何があったのだろう。
そんな事を考えていると、兄さんがキッチンから出てきた。私は慌てて残りのご飯を口にした。急いで噛んで、嚥下する。
「行儀が悪いよ」
そう言って兄さんは笑った。食卓にアイスティーを置いてくれた。
この家にはいつもアイスティーがある。兄さんの手作り。食後やお風呂の後に、兄さんはいつもアイスティーをいれてくれた。
それはもう過去の話だった。最近、私と兄さんはいつもぎこちない。食事中も食後も。
食後に兄さんがお茶をいれてくれたのは久しぶりだ。
兄さんは自分のコップを持ってリビングのソファーに座った。私も食器をキッチンに持っていってからコップを手に兄さんの隣に座った。
アイスティーを一口飲む。相変わらずおいしい。
横目に兄さんを見る。湯気ののぼる緑茶を口にする兄さん。どこか思いつめた瞳。
その真剣な表情に頬が熱くなる。
やっぱり、私は兄さんが好きだ。兄さんにどうしようもないぐらい恋している。
いつも不思議に思う。血を分けた兄と妹なのに、兄さんと私は何でこんなに違うのだろう。兄さんはまともで常識人なのに、私は兄さんの結ばれる事を望む異常な女。
何でこんなに違ってしまったのだろう。
兄さんの横顔。兄さんは前を向いている。私を見て欲しい。
「兄さん」
「何?」
首を横に向ける兄さん。その表情が微かに陰る。
痛みを我慢するような表情。
「兄さん?どうしたの?」
「…何でもない」
少しだけ辛そうな声。私はすぐにピンと来た。
今日、切ったところが痛むんだ。
首を横に向けると痛むという事は、首から腰回りのどこかを怪我したのだろう。首筋は何も切ったところが見えないから、肩かわき腹。でもシャツの下の肩に包帯しているようには見えないし、血のにじみもない。
つまり、わき腹。
私は兄さんのわき腹をそっと撫でた。微かに顔をしかめる兄さん。
「あ、ご、ごめん。痛かった?」
「うんうん。別に」
言葉短く答える兄さん。私の推測は正解のようだ。
ますます意味が分からない。何で料理をしてわき腹を切るのだろう。
病院に運ばれるぐらいだから、それなりに深く切ったはず。いったい何があったのだろう。
そんな事を考えていると、兄さんは私から離れてソファーに座った。私と兄さんに距離ができる。
私は無言で兄さんの近くに座りなおした。兄さんは再び距離を取ろうとした。
「待って兄さん。何で私から距離を置こうとするの」
なんだか少し腹が立って来た。
兄さんは居心地悪そうに目線を逸らした。
「その、何て言うか」
「何なの?はっきり言って」
「…梓に痛めつけられた時の事を思い出して」
言いにくそうな兄さん。
気まずい沈黙。兄さんは何も言わない。
確かに、私は兄さんにひどい事をした。
ずっと騙していた。罪悪感で兄さんを従わせていた。
兄さんに怪我をさせた。脅した。無理やりキスした。キスさせた。
でも、私の本当の望みはそんな事じゃない。
私が兄さんに近づけば近づくほど、兄さんは私から離れる。
ただ、私は兄さんから近づいてほしいだけ。
「兄さん。聞いてほしいの」
私は顔をあげた。兄さんも私の顔を見た。
愛しい兄さん。私の愛する人。
「私、兄さんを愛している」
「梓。僕は」
「お願い。最後まで聞いて。最後まで言わせて」
兄さんは黙ってうなずいた。
「自分でも分かっている。私は異常だって。おかしいって。でも、自分でもどうしようもないの。兄さんが好きなの」
兄さんは黙って聞いてくれた。何も言わないでくれた。
「私、兄さんが欲しい。手に入れたい。支配したい。傍に置きたい。そのためなら何だってする」
兄さんの瞳の色が微かに揺れる。
「でも、でも私が一番望むのはそんな事じゃない」
私は兄さんの顔を見た。兄さんは視線を逸らさなかった。
「兄さんに傍にいてほしい」
胸が熱い。素直な気持ちが言葉となって溢れてくる。
「兄さんに触れてほしい。髪を梳いてほしい。抱きしめてほしい。キスしてほしい」
痛ましそうに私を見つめる兄さん。その瞳に浮かぶのは深い憐憫と、ほんの僅かだけど確かに存在する嫌悪と恐怖。その眼差しに胸が苦しくなる。
そんな風に兄さんに見られたくない。
私が兄さんに最も望む事。
「兄さんに、優しくしてほしい」
私はうつむいた。兄さんがどんな顔をしているのか、怖くて見られなかった。
「お願い。私を怖がらないで。私から離れないで。兄さんに優しくされないのは、私、耐えられない」
自分でも馬鹿な事を言っていると思う。
私がしている事は、兄さんが脅え恐怖するに十分な事。
それなのに、怖がらないでという。優しくしてほしいと言う。
でも、この矛盾する気持ちはどちらも本当の気持ち。
兄さんを欲しいという気持ちも、兄さんに優しくされたいと言う気持ちも、どちらも確かに存在する。
「梓」
うつむく私に兄さんは口を開いた。
「僕は梓を大切に思っている。優しくしたいと思っている。でも、それはあくまでも家族としてだ」
兄さんの言葉が胸に突き刺さる。
でも、それでも、優しくしてほしい。
「だったら、私に優しくして。妹としてでいい。妹としてでいいから、私に優しくして」
私は兄さんに抱きついた。兄さんの背中に腕をまわし、そっと抱きしめる。
逞しい兄さんの体。温かい。微かに兄さんの鼓動を感じる。
兄さんは動かない。私に抱きつかれるまま。
胸が、痛い。
それが兄さんの優しさなの。
抱きしめてすらしてくれないの。
「梓。聞いてほしい」
兄さんは私の肩をそっと押した。私は顔をあげて兄さんを見上げた。
真剣な瞳。その眼差しに胸が苦しいほど高鳴る。
嫌というほど思い知らされる。
兄さんに、苦しいほど恋している。
「今日、夏美ちゃんと会ってきた」
胸の苦しさが、別の種類に代わる。
切なさにも似た苦しさが、醜い感情に変わっていく。
自分でも抑えのきかない衝動めいた強烈な負の感情。
私から兄さんを奪った、あの女。
夏美のせいで、兄さんは私から離れていった。家にいなくなった。優しくしてくれなくなった。
今もそう。家にいるのに、私の傍にいるのに、夏美の事を私に話す。
許せない。
「この家で夏美の話をしないで」
自分でも信じられない固い声。
兄さんは首を横に振った。
「梓に報告しないといけない」
報告。夏美に関する報告。
いったい何?兄さんだって私が夏美の話題を嫌がるのは分かっている。それなのに報告しないといけないこと。
今回の兄さんの怪我に夏美が関わっている?
分からない。まさか夏美が兄さんを刺したとでもいうの。
兄さんが夏美と別れる?
これもない。考えるだけでも気が狂いそうになるけど、兄さんが夏美にべた惚れなのは認めないわけにはいかない。
「落ち着いて聞いてほしい」
兄さんはそう言って私の両肩に手を置いた。
その左手の薬指で、銀の指輪が鈍い光を放っていた。
シンプルな銀の指輪。地味なようで落ち着いたデザイン。
今まで兄さんは自分用のアクセサリーの類を購入した事は無い。
という事は、夏美がプレゼントしたの?
それ以外考えられない。
それなのに、嫌な予感がする。
「梓?」
訝しげに私を覗き込む兄さん。
私は黙って首を横に振った。
兄さん無言で私を見下ろしていたけど、しばらくして口を開いた。
「今日、夏美ちゃんにプロポーズした」
私は耳を疑った。兄さんの言っていることが理解できなかった。
「ごめん。もう一回言ってくれる?」
「今日、夏美ちゃんにプロポーズした」
さっき聞いた言葉と同じ事を言う兄さん。私の聞き間違いではないみたい。
「プロポーズって、結婚を申し込んだって言う事?」
「そうだ」
意味が分からない。
兄さんはまだ16歳だから法的に結婚はできない。
それなのに結婚を申し込んだ?
兄さんらしかぬ行動。兄さんは責任感のある男の人だ。例えどれだけ好きな人がいても、結婚を申し込むなら、常識的な形で行うはず。
少なくとも、高校生でプロポーズするなんて非常識な事はするはずない。
何がどうなっているのか、意味が分からない。
「夏美ちゃんは承諾してくれた。今は高校生だから婚約という形だけど、父さんも認めてくれた」
淡々と語る兄さん。
兄さんは本気だ。
本気で、夏美にプロポーズしている。
結婚。
一生涯、ずっと傍にいるということ。
私が望んでやまないこと。
「何でそんな事を私に言うの?」
私の声は震えていた。
「何で私にそんな残酷な事を言うの?」
兄さんが口にした事は、家に出ていって私以外の女の傍に一生いるっていう事。
そんなに私を嫌いなの。
傍にいたくないって思っているの。
「今すぐこの家を出ていくわけじゃない。最低でも就職してからだ」
兄さんは何も分かっていない。
今すぐ出ていかないから、何だっていうの。
そんなの、死刑囚と同じ。
死刑の日はまだ先だから、安心しろって言っているのと同じ。
兄さんは悲しそうに私を見下ろした。
「今すぐじゃなくていい。でも、いつか」
兄さんはそこでいったん止めた。
しばらくして、兄さんは口を開いた。
「いつか、祝福してほしい」
兄さんと夏美が結婚するのを。
兄さんと夏美が添い遂げるのを。
兄さんと夏美がずっと一緒にいるのを。
認めろって言うの。祝福しろって言うの。
「ふざけないで!!」
湧き上がる激情のままに私は叫んでいた。
「何が祝福よ!!私にとっては呪いと同じよ!!」
あまりの感情の高ぶりに目頭が熱くなる。
「兄さんが他の女の物になるのを認めろって言うの!?嫌よ!!そんなのは絶対にいや!!」
「兄弟や姉妹が結婚するのは、祝福されてしかるべきだ」
兄さんは悲しそうに私を見下ろした。
「梓。僕たちは兄妹だ。梓は僕にとって大切な妹だ。愛する妹だ」
次に兄さんが言う言葉を、私は理解していた。
やめて。
聞きたくない。
そんな残酷な事、聞きたくない。
それなのに、兄さんはまっすぐに私を見つめる。
「でも、僕が好きな女性は、梓じゃない」
兄さんが好きな女。
夏美。
許せない。
絶対に許せない。
「破棄して」
私の口から出た声は、自分の声とは思えないほど固かった。
「夏美との婚約を破棄して」
兄さんは黙って首を横に振った。
私は兄さんに足をかけて倒した。
受け身をとるも微かに顔をゆがめる兄さん。怪我が痛むのだろう。
私は兄さんが起きられないようにのしかかった。両膝で兄さんの両腕を押さえこむ。
「兄さん。もう一度言うわ」
兄さんのお腹に体重をかける。怪我が痛むのか、微かに眉をひそめる兄さん。
それなのに、まっすぐに私を見上げる。
それが私を苛立たせる。
「夏美との婚約を、破棄して」
「断る」
兄さんは即答した。考える素振りすらも無かった。
「どうしても夏美との婚約を破棄してくれないの」
黙って頷く兄さん。
私は両手で兄さんの頬を挟んだ。
「兄さんが私の言う事を聞いてくれないなら、兄さんをレイプする」
黙って私を見上げる兄さん。
その落ち着きぶりが私を苛立たせる。
「私が妊娠するまで毎日兄さんを犯す」
兄さんは黙って私を見上げる。何の動揺もない。
「兄さんと私の子供を、夏美に突き付けてやる!!私と兄さんの子供って言ってやる!!」
何も言わずに私を見上げる兄さん。
その瞳に浮かぶのは、哀れみの感情だけ。
それが私を苛立たせる。
「兄さん、まさか脅しだと思っているの?」
私は本気だ。
兄さんが従わないのなら、本当に兄さんをレイプする。
はじめては兄さんから奪って欲しいという気持ちはある。
でも、兄さんがあくまでも私を拒絶するなら、私から奪う。
何も言わずに黙っている兄さん。
「何か言ってよ」
「梓の望む通りにはならない」
静かに答える兄さん。
「僕は梓を女性として愛する事は出来ない」
兄さんの言葉が胸に突き刺さる。
強烈な感情が胸に湧き上がる。
胸が、痛い。
視界がにじむ。
「何でなの!?何で私を愛してくれないの!?」
私の言葉に兄さんは何も答えない。
「ずっと兄さんを好きだった!!誰よりも兄さんを愛している!!兄さんが望むなら何だってする!!何だってされていい!!それなのに何でなの!?何で私を好きになってくれないの!?何で私を愛してくれないの!?」
兄さんは何も言わない。悲しそうに私を見上げるだけ。
「お願い!!私を好きになって!!私を愛して!!私の傍にいて!!他の女の物にならないで!!」
涙があふれ頬を伝い、兄さんの頬に落ちる。
「…私に…優しくして…お願い…」
兄さんは何も言わない。
黙って私を見上げるだけ。
悲しそうに、哀れみの感情を浮かべ、私を見上げるだけ。
「以前、梓が尋ねた質問を覚えている?」
以前、私が尋ねた質問。
「もし私が兄さんの妹じゃなかったら、兄さんは私の恋人になってくれた?」
頷く兄さん。
この質問に、兄さんは分からないと答えた。
私と兄妹でないなんて想像もつかないと。
「今なら別の答えがある」
淡々と言葉を紡ぐ兄さん。
「もし梓が妹じゃなくても、梓を女性として好きにはならなかった。恋人になりたいとは思わなかった」
兄さんの言葉が胸に突き刺さる。
「もし夏美ちゃんが血のつながった妹でも、きっと好きになっていた」
「〜〜!!」
淡々と語る兄さん。
頭が真っ白になって何も言葉が浮かばない。
兄さんは私を悲しげに見上げるだけ。
私と夏美の、何がそこまで違うの。
同じ年齢で、同じ学校で、同じクラス。
私の方が夏美よりも兄さんの傍にいた。
私の方が夏美よりも兄さんを知っている。
私の方が夏美よりも兄さんを愛している。
それなのに、何でなの。
何でここまで違うの。
気がつけば兄さんは私の傍に立っていた。私は膝をついたまま呆然としていた。
私はのろのろと顔をあげた。
兄さんの左手で銀の指輪が鈍い光を放っていた。
「梓の気持ちは嬉しい。でも、応えられない」
そう言って兄さんは私の頬をそっと触れた。
兄さんに触れられた場所が温かい。
でも、兄さんはすぐに手を離した。温もりが消える。
「おやすみ」
そう言って兄さんは私の前から去っていった。
私は何も言えなかった。
兄さんの部屋に入る。
明かりの消えた部屋の中を足音を殺して進む。
兄さんは静かに寝ていた。
私は立ち尽くした。
静かに眠る兄さんの寝顔。私に気がつく気配はない。
兄さんを殺せば、楽になる。
少なくとも、兄さんの心が誰の方を向いているかを悩む必要は無くなる。
でも、私にはできない。
私に兄さんを殺すなんて、できない。
兄さんの寝顔に手を伸ばす。兄さんの頬にそっと触れる。
こんなに近くにいて、触れていても、兄さんの心のいちばん傍にいるのは私じゃない。
兄さんの左手で銀の指輪が鈍い光を放っている。
私は寝ている兄さんの頬にそっと口づけした。
兄さんは何も気がつかない。静かに寝息を立てているだけ。
投下終わりです。
読んでくださった方に感謝します。ありがとうございました。
HPで登場人物の人気投票を行っていますので、よろしければご協力お願いします。
ttp://threechain.x.fc2.com/index.html
>>113 GJ!
夏美に引き続き、ついに梓も「向こう側」にいっちゃったのか……
ピンチの幸一を助けにくるのは、やっぱり春子なんだろうか?
次回を楽しみにしています!
GJ
血縁関係なしに拒否は攻略不可能か…
人殺しちゃったし梓はもう
>>113梓はやはり何処まで行ってもキモウト・・・
幸一・・・・・南無阿弥陀仏チーーーン
ご愁傷様でした
GJ
梓・・・お前もまた孤独・・・
梓はどの手段をとっても幸一を得たと実感できる結果を出せないか
婚約したことで幸一は心折れる選択肢を自ら廃したってことになるな
結末がどんどん二極化に向かってるよ…
次も首とか髭とか髪とか色々長くして待ってますねー
GJ
あずにゃん……
逆に、幸一が夏美にそこまで固執する理由がない気がするが……
あそこまで言われると梓かわいそうだな……
GJ
幸一が梓をはっきり振り過ぎワロタwww
ワロタ・・・
春子を応援する自分からしても梓が不憫でしょうがない
なんとかならないんかなぁ…
>>「兄さんが私の言う事を聞いてくれないなら、兄さんをレイプする」
>>「私が妊娠するまで毎日兄さんを犯す」
>>「兄さんと私の子供を、夏美に突き付けてやる!!私と兄さんの子供って言ってやる!!」
>>「もし梓が妹じゃなくても、梓を女性として好きにはならなかった。恋人になりたいとは思わなかった」
>>「もし夏美ちゃんが血のつながった妹でも、きっと好きになっていた」
いや、これは梓の自業自得だろ
好きな相手によくこんな恐ろしい事言えるな
だがそれがいい
梓はキモウトなのでそれで良い…
それと前回か前々回か忘れたが春子も梓が早く暴走してくれないと自分が保たない
と発言してたので次回仕掛けるのは必定!幸一死亡フラグがまた一段と強く成った
実は梓無実、夏美犯人というどんでんがえしが……
お前達そろそろ予想は自重しようぜ
桔梗の剣……
未来のあなたへ……
いつまでも待ってます……
>>128 `¨ − 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ
r / ヽ ヽ _Lj
、 /´ \ \ \_j/ヽ
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
 ̄ー┴'^´
もういっそ幸一が死んだ方が被害が少ない気がしてきたw
今晩は。
表題について投下いたします
「やだ」
白い髪の少女は手を父の手を離さない。
「ごめんな、シルフだけ仲間外れにしちゃって。
でも、どうしてもお父さんとお母さんは行かないといけないんだ。
シルフは良い子だから、ちゃんとお父さん達を待っていてくれるよな?
切欠は絶縁状態の母の実家からの招待だった。
子供が産まれ、家庭を維持している事を知って、関係の軟化の兆しが見えていた。
これを切欠に母は再び実家と復縁できるかも知れない。
けれど、まだ子供の彼女をその複雑な場所に連れて行くべきではないと二人は考えていた。
「ごめんね、シルフちゃん。
明後日の夜には帰ってくるから、お願い」
「ちゃんとかえってきてくれる?」
「ああ、絶対に一分一秒だって遅れやしないよ」
「それに、いっぱいお土産だって持ってきてあげるわよ」
誰よりも優しい父と母に育てられた少女は、だから素直な子だった。
だから、約束は絶対に守られると信じていた。
「ほんとうにかえってきてくれるの?」
「もちろん、『約束だよ』」
「わかったわ、わたし、まってる」
少女は名残惜しそうにそっと手を離した。
父は優しく彼女の頭を撫でて、そして母と出て行った。
離した手は二度とつながる事は無かった。
少女は何度も何度も後悔をする、手を離したことを。
「やっぱり、だめ、いかないで」
手を伸ばそうとした所で、目が覚めた。
何の夢だったっけ、何かとても怖い夢だった気がするんだけど。
お兄ちゃんと私は寄り添いあって座っている。
隣からすうすうというお兄ちゃんの静かな寝息が聞こえて、私の耳に心地良い。
今朝、お兄ちゃんが帰ってきたのはもう日が昇るような時間だった。
扉の開く音に反応して、私は気付いたら玄関に走っていた。
多分、今にも泣きそうな顔をしていたと思う。
疲れた顔をしたお兄ちゃんが私を見るなり、頭を下げた。
そして、心配させたお詫びに何でもしてくれるって約束してくれた。
私はお兄ちゃんにお願いした。
今日は私が安心できるまでずっと私の側に居てほしいって。
それからずっと私たちはこうやって二人で寄り添っていた。
だから、今日は私もお兄ちゃんも学校には行っていない。
私もお兄ちゃんも殆ど寝ていなかったから、
いつの間にかそのまま眠ってしまったみたいだった。
「大丈夫、お兄ちゃんは、私の側に居る」
そっと、お兄ちゃんの額に触ったつもりだった。
「ん、誰?
ああ、シルフだよな?」
お兄ちゃんが欠伸をしながら眠そうな眼を開く。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いや、ちょうど目が覚めたところだよ。
ええっと、今何時くらいだ?」
横目で時計を見る。
時計の短針は真右を向いていた。
「3時だよ」
「そうか」
それから私たちは隣り合わせのまま静かに座っていた。
深い青空に高く雲が浮かぶ。
そんな窓の外を二人でぼんやりと眺めていた。
「なあ、シルフ」
しばらくしてからお兄ちゃんが私に声を掛ける。
「本当にこれだけで良いのか?
ずっとこうしてるだけだと飽きちゃうだろ、
何だったら、今からでも何処かに行かないか?」
私は兄ちゃんの隣から前に動いて、
そのままお兄ちゃんへ背中を預ける。
ぽふ、っと軽い音がした。
「ううん、私はこうしていたいの。
今日はずっとこうしていたいから、そうさせて」
私の体を抱き留めてくれてるお兄ちゃんに言った。
「やっぱり、昨日の事で怒ってるのか?
本当にごめん。
あの時はどうしても先生が帰してくれなかったんだ」
「うん、分かってる。
怒ってなんていないわ。
でも、今日はずっとこうさせていて、お兄ちゃん」
あの日、お兄ちゃんは先生と一晩中絵筆を握っていたそうだ。
先生の恐ろしい位の気迫に押されて、描き続けてたら終電を逃してしまったらしい。
お兄ちゃんが言っているのだから間違いない。
でも、そういえば、最近お兄ちゃんは前よりも絵を描く事が多くなっている気がする。
時間を潰す程度にしか描いていないって、姉さんが言っていた筈なのに。
「お兄ちゃんは、絵を描くのって楽しい?」
「んー、そうだな、最近になって本当に楽しくなった」
何気ない会話のはずなのに、胸がちくり、と痛んだ。
「最近?」
「そう、つい最近だな、こんなに楽しくなったのは。
前に先生から俺には描きたい物が無いって言われたんだ。
その時には、意味が分からなかったんだけどさ。
今になると分かるよ。
自分が感動したものを自分の手で作り出せるのって、本当に楽しいんだ」
その声が段々と熱っぽくなっているのが分かる。
お兄ちゃんが私以外の事を嬉しそうに話すのが、理由も無いのに嫌だった。
「そうだ、シルフも同好会員なんだから、一緒に描いてみないか?
描き方とか、全部教えるよ」
「私は不器用だから、いい」
お兄ちゃんと絵を描くのは楽しいと思う。
きっと私が変な絵を描いて困ってて、お兄ちゃんが苦笑いをしながら頑張って無理に誉めてくれる。
それから、姉さんがそんな私達を見てくすくすと笑っている。
それは、すごく楽しい筈。
でも、もしお兄ちゃんが私や姉さんの方へ脇目も振らずに自分のキャンバスを見つめていたら?
お兄ちゃんが私と居る時よりも楽しそうに絵を描いていたら……。
そんな訳ないのに、最近はそんな事ばかり考えてしまう。
ちょっとでもお兄ちゃんが私以外の事に興味を持っている素振りを見ると落ち着かなくなる。
どうしたんだろう、私?
何にも怖い事なんて無い筈なのに。
私は、お兄ちゃんの恋人で、お兄ちゃんは誰よりも私の事を愛してくれている。
私はお兄ちゃんにとって何よりも大切な存在なんだ。
姉さんが言ってくれたのだから間違いない、姉さんが言ったのだから。
でも、それでも不安になる。
「ねえ、お兄ちゃんは私の事、好き?」
何でこんな事を聞くのか自分でも分からない。
でも聞かずにいられなかった。
「ああ、誰よりも好きだよ」
お兄ちゃんが、迷い無くはっきりと答える。
その声には自身が満ちていた。
それが、私には嬉しくて、怖かった。
「それは、……姉さんよりも?」
だから、小さな声でそう尋ねてしまった。
それを聞いたお兄ちゃんは、くすくすって姉さんみたいに笑う。
「どうして笑うの?」
いくらお兄ちゃんだからって少し怒りたくなった。
私はこんなに真剣なのに。
「ははは、いや悪い悪い。
悪気が有る訳じゃないよ。
ただ、シルフがそうやって雪風に対抗意識を持つのが珍しくってな」
「そんな訳ないよ、私じゃ姉さんになんて勝てないもの」
そうだ、私なんかが姉さんに勝てる訳がない。
ううん、違う、勝って良い筈なんてなかったのに。
「シルフはシルフ、雪風は雪風。
どっちが勝っているなんて俺は思ったことなんてないよ」
そこでまたお兄ちゃんはくすりと笑った。
「どうしたの?」
「最近のシルフは変わってくれたよ。
今までと違って自分のしたい事や、気持ちを俺に言ってくれるようになったな」
「え、ご、ごめんなさい!!」
確かに最近の私は我儘だと思う。
今まで我慢できた筈の事をお兄ちゃんに言わないと気が済まなくなっている。
今日だってこんな子供じみた事を言うなんて、冷静に考えるとどうかしている。
なのに、お兄ちゃんにとって迷惑だって分かっているのに、それが抑えられない。
「いや、それで良いんだって。
昔みたいに、自分の感情を抑え込もうとしていたシルフの方がいけないんだ。
だから、もっとシルフは俺に色んな我儘を言ってくれよ」
どうしてお兄ちゃんがそんな事を言うのか分からなかった。
けれど、お兄ちゃんは私の我儘を望んでいる。
なら、私はちゃんと我儘を言わないといけないんだ。
「分かった、それなら私は我儘な事を言うわ。
だから、お兄ちゃんに真剣に答えて欲しいの。
お兄ちゃんは姉さんより……私の方が、……好きなの?」
「えっと、それは雪風にやきもちを焼いてるのかな?」
お兄ちゃんが少し照れているのが声つきで分かる。
「やきもちなんかじゃないよ……」
私は俯く。
その先を言う勇気が出なかった。
少しの間、お兄ちゃんは何か私の分からない事で悩んでいるのか、じっと黙った。
もうお兄ちゃんは少しも笑っていなかった。
「雪風には絶対に言わないでくれ。
俺は、二人とも大切だって思っている。
シルフも雪風も大事だ、妹としてな。
でもシルフは俺にとって恋人っていう意味でも大事な人だ。
本当にな、だから、雪風よりも好きだ。
いや違うな、愛しているんだって事になる。
俺が愛しているのは絶対にシルフだけだ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
胸の中が暖かいのに、ざらつく、そんな今まで感じたことのない感覚に戸惑う。
お兄ちゃんは絶対に私に嘘なんて言わない。
姉さんより私の方が愛されている。
それはお兄ちゃんにとって私が一番大切だっていう意味。
嬉しいけれども、同じぐらい怖い事だった。
だってあんなにお兄ちゃんにとって大切だった筈の姉さんより、
私なんかが大切なのなら、きっと私よりも大切なものだってできてしまう。
そう、姉さんを捨てる事なんかよりずっと簡単だもの。
怖かった。
怖かったから、私を抱き締めるお兄ちゃんの腕を握った。
頭をお兄ちゃんの胸に強く押し付ける。
「やっぱり、今日はずっとこうしていたい」
「分かったよ、くす、シルフは甘えん坊なんだな」
「うん、とっても甘えん坊だよ」
お兄ちゃんの鼓動が感じれられる。
お兄ちゃんはやっぱり私と居るんだって安心できる。
それはとても幸せな事。
一度失ってしまったら、もう二度と取り戻せない大事な幸せだ。
だから、いつまでもこの幸せが続いてほしい。
お願いだから、誰も邪魔なんてしないで。
そう目をつぶって祈った。
ぎしり。
ほんの僅かに床の軋みを感じた。
咄嗟にその方向に目線を走らせる。
お兄ちゃんは私の方を見ていたから気付いていない。
でも私は見てしまったから、帰宅した姉さんが静かに半開きの扉の前で踵を返すのを。
きっと、姉さんは今の会話を聞いていた。
頭が痛くて、寒気がする。
その感覚がとても懐かしく思えて、嫌だった。
以上です。
ありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。
よっしゃリアルタイム遭遇! そして職人さんGJ
さて姉さんがどう出るか……いまんとこシルフにキモ化の兆候は見れないから姉がキモ化するのか!?
GJ
雪風の精神攻撃がうまく決まってるな
こんばんわ。
後日談と言うか、
>>60の続きを投下します。
エロ有りです。
144 :
狂依存 38:2010/11/21(日) 02:36:14 ID:tRiqURcy
「ねえ、麻由お姉ちゃん。」
「……何?」
「麻由お姉ちゃんってどんな男がタイプなのかな?」
リビングのソファーで寝転びながら雑誌を読んでいる、麻由お姉ちゃんに尋ねる。
将来より良き夫婦生活を送るためにも、嫁の理想に近づかなければね。
「そうね、馬鹿は嫌い。あんたみたいな。」
「僕はこの前のテストで100点取ったから馬鹿じゃないよ。だから、将来は僕のお嫁さんに……」
「小学のテストなんて、誰でも100点取れるんだっつうの!そういう事言ってるから馬鹿なんだよ。」
むう、相変わらず素直になれないツンデレお姉ちゃんだなあ。
「じゃあ、中学生になったら頑張って学年で一番になってみせるよ。そしたら僕のお嫁さんに……」
「嫌に決まってるでしょ、バッカじゃないの。何やったって嫌なものは嫌。いいから、さっさとあっち行け。」
うう……中々手強いな。
「……えい!」
「きゃっ!」
うつ伏せになっている麻由お姉ちゃんに後ろから抱きつき、頬ずりする。
麻由お姉ちゃんの背中、暖かくて気持ち良いな……
「な……!いきなり何しやがんだっ!このゴキブリ野郎っっ!!」
麻由お姉ちゃんが怒鳴ったら、すぐに離れて自室に逃げる。
「待ちなさい!もう許さねえっ!!マジで殺してやる!!」
鬼の様に怒った顔をして、僕を追いかけてくる。
もう、麻由お姉ちゃんは照れ屋さんだなあ。
でも何とかして麻由お姉ちゃんを素直にして、早く僕の彼女にしないと。
それが僕たちの一番の幸せなんだから……
「捕まえたぞ!!今日と言う今日はただじゃおかないからねっ!」
「もう麻由お姉ちゃん、本当は嬉しいくせに……ぐはっ…!」
ドスっ!バキっ!!ドカっ!!ゴキっ!
「ちょっ……痛いよ、止め……ぐえええええええっっっ!」
バキっ!!ドスっっ!!
「……う」
「ん、んちゅっ……ちゅっ……ちゅるっ……」
何だ……?
「んっ……ちゅるっ、んく……ちゅっ……ちゅるっ……」
ああ……またか。
「んちゅっ……ちゅ…ん、おはよう、んちゅ……」
あれから麻由お姉ちゃんは毎朝僕にフェラをして起こしてくれる。
何度やめてくれと言っても全然聞かない。
「……ん、ふふ……本当は気持ち良い癖に……ん、ちゅっ、んちゅ……」
「さあ、おっぱいで挟んであげるね……んっ……んんっ!」
「あ、あの、麻由お姉ちゃん。今朝昔の夢を見たんだ。僕がまだ小学生の頃の……」
「そう……まだお姉ちゃんの事が忘れられないのね。可哀想に……あなたは優しいからあんな酷くて醜いお姉ちゃんの事も未だに気にかけちゃうのね……」
……どうしてだ。
何でそこまでして姉である事を否定するの?
「麻由お姉ちゃん、ごめんなさい……あの時言った事は……『姉を名乗るな』って言ったのは取り消すから、だから、お願い……」
何故あの時あんな事を言ってしまったのだろう?
ああ言えば、麻由お姉ちゃんが元に戻ってくれるとでも思ったのだろうか?
145 :
狂依存 39:2010/11/21(日) 02:36:53 ID:tRiqURcy
「ん……んあ!んちゅっ、ちゅるっ……ちゅっ!あっ……いいわ……あんっ!」
……いつもこれだ。
他の事は何でも言う事を聞いてくれるけど、この事に関しては一向に聞く耳を持ってくれない。
「ねえ、聞いてよ……僕の言う事は何でも聞くんじゃなかったの?」
「んちゅ、あんっ……こんなに大きく……ちゅるっ、はっ……ちゅっ、むちゅっ!」
「安心してあなた……あなたに散々暴力振るって苦しめたお姉ちゃんの事は私が忘れさせてあげるから……んっ、あん……んちゅっ……」
「だから、それは麻由お姉ちゃんが悪いわけじゃないって言ってるでしょ……んっ!」
僕の言ってる事を無視し、乳房を動かすスピードと舌使いを速め、一気にイカせようとする。
「いい加減にしてくれ!僕はこんな関係望んでいないって言ってるだろ!」
麻由お姉ちゃんを強引に引き離し、止めさせる。
もう我慢の限界だ。
これ以上好き勝手される訳にはいかない。
「……もう着替えて仕度するから早く出てって。」
「……」
麻由お姉ちゃんはあからさまに不機嫌な顔をしつつも、黙って部屋を出る。
ちょっと言いすぎちゃったかな……
怒鳴ったりしてごめん。
でもたまには強く言わないと駄目だよね。
着替えたらすぐ下に降りて簡単に朝食を済ませて学校に行く。
もう夏休みに入っているが、夏期講習があるので学校に行かなくてはいけない。
講習が終わったら真っ直ぐ家には帰らず、図書館で閉館ギリギリまで勉強している。
受験という事もあるが、何より麻由お姉ちゃんと接する時間を少しでも減らしたかった。
家で麻由お姉ちゃんを見るとどうしても欲情が抑えられなくなってしまう。
特に今は夏なのでやたらと露出の多い服装をしてるから、なおさらだ。
「でも、いつまでも続かないよな……」
とにかく早く何とかしなければ。
最近は家にいる時間を極力減らして避けているせいか、だいぶ落ち着いてきているから、きっと何とかなるはず。
家に居る時もここ何日か夜も別々に寝るようにしているし、できるだけ僕の部屋に入れないようにしている。
おかげで麻由お姉ちゃんはこの所不機嫌そうな顔をしている事が多いが、仕方がない。
こんな関係をずっと続けていたら、お互いの為にならないのは明らかなのだから。
まずはこの依存状態から脱却しないと。
その為には今朝みたいにはっきりと断らないと駄目だ。
僕がしっかりしてればきっと麻由お姉ちゃんも元に戻ってくれるよね。
「……」
家事を終え、しばらく部屋の鏡の前で考え込む。
あの子は最近帰りが遅い。
明らかに私を避けている。
おまけにここ何日か、私を見てもあまり抱いてくれなくなってしまった。
どうして?
「まだお姉ちゃんの事が忘れられないのね……」
大輝の事をいつも足蹴にしていた最低のクズ女の事がまだ……
早く忘れさせて私だけを見るようになってくれないとあの子が不幸になってしまう。
あんな女の事にいつまでも囚われたままにしておく訳にはいかない。
「どうにかして忘れさせないと……ん?そう言えば……」
今頃になって気が付いた。
「あのお姉ちゃんと同じ髪型じゃない……」
迂闊だった。
小さい頃からの習慣でずっとあの女と同じツインテールにしていた。
これではあの子が私を見てお姉ちゃんを忘れられないのも無理ないわね……
いや、私の中にまだあの女の亡霊が住み着いていたという事か
そう思うと無性にこの髪型が忌々しく思えてきた。
「こんなガキっぽい髪型、早く変えないと。」
そして早くあの女の亡霊を排除しなければ。
待っててね。
もうすぐあのお姉ちゃんの事忘れさせてあげるから。
146 :
狂依存 40:2010/11/21(日) 02:37:27 ID:tRiqURcy
ピンポーン
「おかえり。」
「ただいま。って、え?」
「ん?どうしたの?」
「い、いや……髪切ったんだ。」
一瞬誰だかわからなかった……
ずっと同じ髪型だったのに、どうしたんだろう?
「えへへ……どう似合う?」
「う、うん。よく似合ってるよ。」
今まで髪は少し長めで両側で結っていたのに、肩にかかるか、かからないか位の長さにばっさりと切ってあった。
今までより少し大人っぽくなった感じがする。
「ふふふ……それだけ?」
麻由お姉ちゃんが近づいて僕に尋ねた。
「え、その……うん、綺麗だよ。」
思わず本音を呟いてしまった。
「本当?嬉しいわ。ん……んふっ、ちゅっ……」
麻由お姉ちゃんが嬉しそうに抱きついてキスしてきた。
姉の新しい魅力に魅了され、何の抵抗も出来ずにしばらく姉のされるがままにキスに耽っていた。
「ん、んちゅっ……ん、んん……ちゅっ……はぁ……」
「あの、麻由お姉ちゃん。今朝はごめんね……折角起こしてくれたのに怒鳴ったりして。」
今朝の事は謝るつもりはなかったのだが、思わず謝ってしまった。
今の麻由お姉ちゃんに嫌われたくない。
急にそんな思いが出てきて……
「ふふふ……良いのよ。私も悪かったわ。ごめんね、勝手な事しちゃって。ん……」
麻由お姉ちゃんも謝罪したあと、また軽くキスをする。
「さ、ご飯の仕度しないと……あん!」
思わず後ろから麻由お姉ちゃんに抱き着いて、おっぱいを揉みしだいた。
しばらく落ち着いてきたのに、また無性に欲しくなってきてしまった。
ただ髪型を変えただけなのに…
「やんっ、もう……んっ、んん……ふふ……そんなに気に入ってくれて本当に嬉しいわ……やんっ!」
「ご、ごめん……」
やっぱり駄目だ。
折角、最近落ち着いてきたのにこれじゃ逆戻りになっちゃう。
「もう、どうしたの?遠慮なんかしないで、好きにして良いっていつも言ってるでしょ。……ん、んふ……」
抱きついて胸を押し当てながらキスを繰り返し、おねだりしてくる。
「麻由お姉ちゃん……」
本当に綺麗だ。
ずっと綺麗だと思ってたけど、今までとはまた別人みたいだ。
「んちゅっ……ん、んふ……ほら……早くぅ……お姉ちゃんのおま○こ、いつでも準備できてるんだから……」
何だか頭がボーっとして何も考えられなくなってきた。
とにかく抱いて気持ち良くなりたい。
リビングのソファーに押し倒して服をひんむき、ひたすら体を貪る。
「あんっ!やっ、そこっ……あああぁぁん……はふっ……」
麻由お姉ちゃんのおっぱいを揉んだりアソコを指でいじくりまわしたりして好きな様に味わう。
これだけ麻由お姉ちゃんの体を味わったのはしばらくぶりだ。
「ああん!はっ……やん!あっ、いや……はん!もっとお……あんっ!」
もうま○こはぐちょぐちょに濡れている。
膣穴に指をかけさらに乱暴にいじくりまわす。
「あっ!あああっ!は、やんっ、はふっ!あんっ、は、ああんっ!はっ、やんっ!あ……んあっ!」
麻由お姉ちゃんもかなり感じているのか、思う存分喘ぎ声をあげて乱れ狂う。
147 :
狂依存 41:2010/11/21(日) 02:37:57 ID:tRiqURcy
そろそろ。入れたくなってきたな……
指を抜き、ぐちゃぐちゃに濡れたおま○こに肉棒を当てる。
「あん、早く頂戴……ん!はあああぁぁぁん……!」
「あんっ、はっ!やんっ……あっ!はあん!あ、あん!もっと……はっ!あああぁんっ!!」
一気に挿入し、ひたすら腰を動かす。
やっぱり麻由お姉ちゃんのおま○この中は気持ちいい……
この柔らかい肉ヒダがぎゅうぎゅうに締め付けられる感覚が本当にたまらない。
こんな気持ち良い事どうして無理に我慢してたんだろう。
「あんっ!いいわ……はんっ、や……あんっ!もっと一緒に……あんっ!一緒に気持ち良く……あんっ!」
「麻由お姉ちゃん、そろそろ……」
「はんっ!いいわよ……いつでも来て……あんっ!は、はあんっ!あっ……」
姉が乱れ狂う姿にますます興奮し一気に絶頂寸前に陥る。
腰を動かすスピードを速め、麻由お姉ちゃんも対抗して肉棒の締め付けをきつくしてきた。
「あんっ!はっ……あんっ、や……はふっ!あんっ、やっ!イク……イッちゃう……はっ!やん……」
「はんっ!やっ……はんっ!あっ!は、イク……はっ、や……はああああぁぁぁぁぁんんっっ!!」
びゅくっっ!!びゅくるるるるるっっっ!!!
ほぼ同時に絶頂に達し、一気に中に精液をぶちまける。
こんなに思いっきりセックスしたのはしばらくなかったな……
「はあああぁぁ……はぁ、はぁ……ん……んちゅ……」
射精が終わったら倒れこんで麻由お姉ちゃんと唇を交わし余韻を味わう。
間近で見ていると本当に綺麗だ。
前の髪型も好きだけど、今のはもっと好きかも……
「ん……麻由お姉ちゃん、今朝は本当にごめんね……ん……」
「んちゅ……ちゅっ、いいのよ……私の方こそごめんね……一方的にお姉ちゃんを忘れなさいなんて言って……ん……」
お互い抱き合いキスしながら、今朝の事を改めて謝る。
「でも、あなたの事はもう弟としては見れないの。一人の男性として愛しているしそういう目で見てるから………」
「そんな……」
「でも、私を女として愛してくれるというなら、あなたのお姉ちゃんになってあげてもいいわ……姉として女として愛してくれるというなら……」
「本当?これからもお姉ちゃんって呼んでも良い?」
ようやく姉である事を否定しなくなった。
これだけでも嬉しい。
「ええ、もちろんよ……ただ一つお願いがあるんだけど、いいかな?あ、別に嫌だったらいいわよ。断っても別に何もしないから。」
「うん!何でも言って。」
「私の事……一日一回は『麻由』って呼んでくれる?」
「う、うん。それぐらいだったら良いよ……」
ちょっと恥ずかしい気もするけど、まあいいか。
「本当?じゃあ、早速呼んでみて。」
「うん……麻由……」
う、やっぱりちょっと変な感じがするな……
「……ありがとう。ん、んん……」
麻由お姉ちゃんは本当に嬉しそうな顔をして抱きついてキスをする。
やっぱり僕も麻由お姉ちゃんの事……
「ん、んちゅっ……ん……さ、夕飯の仕度しないと。」
「ねえ、麻由お姉ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど……」
「ん?何?」
「えっと……その……」
「え……?ふふふ、もちろん良いわよ。」
あっさりと僕のお願いを了承し、麻由お姉ちゃんも早速着替える。
「どう……似合う?」
「うん……本当に似合ってるよ。」
僕のお願い、それは……
今日一日裸エプロンで過ごしてくれと。
実はこの姿を見るのは初めてではないが、僕の方からお願いしたのは初めてだった。
148 :
狂依存 42:2010/11/21(日) 02:38:34 ID:tRiqURcy
「もう……じゃ、夕飯の準備するからね。」
台所に向かい、夕飯の支度をする。
嬉しそうにしながら、台所で鼻歌を歌いながら裸エプロンで夕飯を作る麻由お姉ちゃん。
花柄の可愛いエプロンの下は一糸纏わぬ生まれたままの状態。
その姿が本当にいやらしくて、更なる欲情を誘う。
「麻由お姉ちゃん……」
「ん?どうしたの?……きゃん♪」
たまらず抱きついてお尻や胸を触りまくる。
麻由お姉ちゃんも一切抵抗せず、嬉しそうに僕の好きな様に触らせる。
「あん……夕飯が遅くなっちゃう。」
「今は麻由お姉ちゃんを食べたいな。」
「うふふ……あなたったら……いいわよ。たっぷり召し上がって。」
遠慮なく押し倒して、エプロン越しに胸やアソコをいじ繰り回す。
「あんっ……そこ、もっと……はっ!や……」
胸に顔を押し当て、思う存分おっぱいを味わう。
こんなに綺麗で優しいお姉ちゃんをどうして避けようとしていたんだろう?
僕の事をここまで第一に考えてくれる人は、この世で麻由お姉ちゃん以外いないのに。
「麻由お姉ちゃん……今まで本当にごめんね。姉を名乗るななんて酷い事言ったり、何年も冷たく接していたりして……」
「もう、いいのよ。今はこんなに私の事を愛してくれて、それだけで本当に幸せよ。これからはお姉ちゃんに好きなだけ甘えて、好きなだけエッチな事してね。何でもしてあげるから……」
「麻由お姉ちゃん……ありがとう。大好き。ん……」
感激の余り抱きついてキスをする。
もうこのお姉ちゃんから一生、離れたくない。
ずっとこの人に甘えていたい……
「ん……んふっ、ちゅ。ちゅっ、ちゅっ……んちゅっ、ちゅ……れろっ……」
麻由お姉ちゃんの口の中に舌を入れる。
麻由お姉ちゃんもすぐに舌を絡ませて、僕の行為を受け入れる。
「ちゅるっ、ん、んふっ……んむっ、じゅるっ、ん、んちゅっ……」
もう愛しくて、愛しくてたまらない。
その一心でお互い舌を絡ませあいながら、唇を押し付け合い、キスに没頭する。
「んちゅ、ん……むちゅっ、ちゅる、れろ……んちゅっ、んふ、んん……はぁっ……」
「ねえ、もう入れてもいい……?」
これだけで、もう肉棒は興奮しきってしまった。
早く中で気持ち良くなりたい。
「ええ……早く入れて。私のおま○こ、好きなだけ犯して……」
「ん……ああぁぁぁっっ!!あっ、はんっ!やっ……あっ、いいわ……はんっ……」
麻由お姉ちゃんを四つん這いにして、おま○こに肉棒をぶち込み、思い思いに腰を動かす。
何度やっても本当に気持ち良い。
「あんっ、はっ!やんっ……あ、はふっ……あっ、やん……もっと……あっ!ああん!」
麻由お姉ちゃんも腰を振り、僕のち○ぽを締め付け、喘ぎ声を挙げる。
二人ともさっきやったばかりだというのに、激しく腰を振り乱れ狂っている。
「あんっ!はふ、あ……はああっ!あん、やっ……んあっ!はっ、ああんっ!」
もう、意地を張る必要はないか……
麻由お姉ちゃんに好きなだけ甘えてやろう。
こんなに僕を愛してくれるのは麻由お姉ちゃんしかいないんだから……
「あんっ、はあぁんっ!はっ、やんっ……イク、またイっちゃう……はっ、あああぁぁんっ!」
もうそろそろイキそうだ。
今度は体にかけてやるか。
「はんっ、あふっ、あっ、はんっ……あっ、は……あんっ、あ、はああああぁぁぁっっ!!!」
どぴゅっ!!どぴゅるるるるっっ!!!
肉棒を抜いて、麻由お姉ちゃんの背中に思いっきりぶっかける。
大量のザーメンが背中を白濁色に汚していく。
「(さっき出したばかりだってのに、もうこんなに……)」
「あん……背中にいっぱいかかってるう……はぁ…はぁ……」
麻由お姉ちゃんはそのまま倒れこみ、余韻に浸っている。
149 :
狂依存 43:2010/11/21(日) 02:39:34 ID:tRiqURcy
「麻由お姉ちゃん、寝ていないで早く夕飯作って。」
あれだけ激しく動いたせいか、急にお腹が空いてきた。
「はぁ…はぁ……わかったわ。今作るから……」
僕が命令するとヨロヨロしながらも、すぐに立ち上がり夕飯の準備を再開し始める。
どうやら今日はカレーみたいだ。
野菜を切るとき包丁で手を切ったりしなければいいけど……
「待っててね。今日は私をいっぱい愛してくれたお礼に腕によりをかけて作るから……」
「うん、楽しみにしてるよ。」
これで良いんだよね。
麻由お姉ちゃんも僕に甘えてくれる事を望んでいるんだし。
「ねえ、麻由お姉ちゃん。」
「なあに?」
「その……ご飯食べたら、一緒にお風呂に入ろう。いいよね?」
「ええ。ふふ……すっかり甘えん坊さんになっちゃって。お姉ちゃん、本当に嬉しいわ。はい、あーん。」
麻由お姉ちゃんは本当に嬉しそうな顔をして、僕にカレーを食べさせる。
いつもは向かい側の席に座って食べてるのだが今日は隣の席に座って、体を密着させながら食べてる。
恋人同士がベンチで隣同士に座ってお弁当を食べてるみたいな感じで。
「ふふ……美味しい?」
「うん、麻由お姉ちゃんの作った物なら何でも美味しいよ。」
「そう……はい、あーん。」
今日のカレーは特に美味しく感じた。
本当に僕の為に一生懸命愛を込めて作ってくれたんだね。
「あ、私が飲ませてあげるよ。」
ジュースを飲もうと手にコップを取ろうとしたら、麻由お姉ちゃんがコップを先に取りジュースを入れ始めた。
「え?でも……」
流石にそれは赤ちゃんみたいでみっともない気が……
「ふふふ……口移しで飲ませてあげるね。ん……」
ジュースを口に含み、僕の口に移して飲ませる。
「ん、んん……」
「もっと飲む?……ん、ちゅっ……」
「ん……美味しい?」
「うん。」
「ふふ、じゃあ、もっとやってあげるね。」
またジュースを口に含み、口移しで僕に飲ませる。
「ん……んちゅ……はぁ……ふふ……ねえ、今晩はお姉ちゃんと一緒に寝てくれる?」
「え……うん!今まで避けるような事しててごめんね。」
「もう……謝らなくていいって言ってるでしょ。私にいっぱい甘えてくれればそれで良いんだから。はい、あーん。」
こんな感じで、夕飯はほとんど麻由お姉ちゃんに食べさせてもらった。
夕飯を食べ終わったら、一緒にお風呂に入って体を洗ってもらい、その後は麻由お姉ちゃんと一緒に寝てひたすら体を重ね合わせた。
これが麻由お姉ちゃんの幸せなんだよね?
だったら、こうやって麻由お姉ちゃんにずっと甘える事が今まで辛い思いをさせた事への一番の償いなのかもしれない。
150 :
狂依存 44:2010/11/21(日) 02:40:22 ID:tRiqURcy
「はあっ!あんっ、イッちゃう……あっ!はふっ……あっ!やああんっっ!!」
「麻由お姉ちゃん、また出すよ……」
「ええ……早く出してぇ……お姉ちゃんのえっちな子宮に精液一杯ぶち込んでえ!」
そうおねだりすると大輝は腰を動かすスピードを速める。
また、お姉ちゃんをイカせてくれるのね……
お風呂から出た後、私の部屋のベッドで何時間も私達は愛し合ってる。
もうどれだけ中に出されたかわからない。
「あああんっ!あっ……ダメ!イッちゃう……あんっ!はっ……あっ!ああああぁぁぁぁんっっっ!!」
お互い今日何度目かの絶頂を迎え、大輝はそのまま中に思いっきり射精する。
一滴残らず受け取ってあげるからね……
「はあああああぁぁぁんっ……もっとお……あんっ、はぁっ……はぁっ……」
ドサっ
射精が終わった後大輝はぐったりと倒れこんだ。
「はぁ……はぁ……ん…」
寝ちゃったか。
ふふふ……こんなに中に出しちゃって。
妊娠しちゃうかもしれないわ。
「むしろ早く子供が欲しいわ……」
そうすればずっとこの子と一緒に居られるんだし。
「ふふ……本当に可愛い寝顔。」
軽く頬にキスをして思わず呟く。
今日は本当に幸せな日だった。
今までの人生で一番幸せな日だったかもしれない。
お風呂から出たらすぐ、私の部屋のベッドに押し倒して、野獣の様に私を犯してくれた。
麻由お姉ちゃん大好きって、何度も言いながら。
こんなにも私を愛して、甘えてくれて……
髪型を変えただけでここまで変わるとは少し予想外だった。
本当、今までよくあんなガキっぽい髪型して平然としていたものだわ。
「あんたのセンスって本当に最低よね……」
机に立てかけてあった、昔の私の写真に話しかける。
中学二年ぐらいの頃の写真だったかしら。
「この頃の私に今の光景を見せてあげたいわ……」
きっとショック死するでしょうね。
アンタが嫌っていた弟は私の男になったんだから。
昔の事を思い出すと本当に腹が立つ。
いつも大輝の事を邪険に扱って、すぐに暴力振るったり、見下して馬鹿にしていて……
あんなに好意を抱いてくれていたのに、本当に許せない。
もし今の私が過去に戻ってあの頃の私に会ったら、間違いなく殺している。
その位昔の自分が憎くて、憎くて仕方がない。
だから今、私たちが愛し合っている所をたっぷりと見せ付けてやるんだ。
昔の麻由お姉ちゃんに。
もう二度とこの頃に戻ることはないから安心して。
だから……
「だから、これからも今日みたいにいっぱい甘えてね。」
抱きしめながら眠りにつく。
この日々が永遠に続く事を願って。
今回は以上です。
ありがとうございました。
乙です。
今回はということは、まだまだつづくのですか?
GJ!最高にイカレたキモ姉だったよ!
こんばんは
『きっと、壊れてる』第12話を投下します。
若干のショタ表現があります。苦手な方はスルーしてください
兄さんを迎えに行こうと誓ったあの日から、4年の歳月が過ぎた。
私は高校の3年となり、進路の決断を迫られていた。結論から言うと、まだ決めかねている。
当初は兄さんとの将来を見据え、医療系の専門学校にでも進学して手に職を得ようと思っていたが、
ここ数年は大学で遺伝学を学び、将来的には研究職に就きたいと思う様になっていたからだった。
「プルルルルッ」
電話の鳴り響く音が私のいる自室まで聞こえてくる。
なんてことのない音だが、私は時間が気になった。ちょうど18時。
月末に姉さんが掛けてくる時間と同じだ。
しかし今日は6月のまだ中旬で月末ではない。もし姉さんだとしたら何かあったのか。
私は念のため、ここ数年使用して愛着すら湧いてきた電波受信機を机の引き出しから取り出した。
「もしもし村上です」
「母さん? 私」
「茜? 久しぶりね。どうしたの?」
「特に用事はないんだけど、なんとなく」
特に何か起こったわけではなさそうだ。どうでも良い世間話でもするつもりなのか。
そのわりにはここ数年、月末になっても掛かってこない事の方が多い。
姉さんも今の生活に慣れ、特に話す事はないが惰性で続けているだけなのかもしれない。
このまま何の情報も得られない状態が続くのなら、そろそろ盗聴をやめるか。
そう思った私は、欠伸をしながら内容を確認した。
「浩介は元気? そろそろ一段階出世する頃じゃない?」
「どうなんだろ。兄さんは家で仕事の話をあまりしないから」
「システムエンジニアって何をするの? IT業界って残業ばかりなんでしょう?」
「仕事の内容は私もよくわからないわ。残業は兄さんの部署は比較的少ないみたい」
「そうなの? まぁ元気でいるなら母さんも安心だけど」
「でも……つい最近、帰りがすごく遅い日があったの」
「残業あまりないんじゃないの?」
「えぇ。それに仕事や飲み会で遅くなる時は必ず連絡してくれるから、心配してしまったわ」
「結局なんだったのよ?」
「……兄さんが昔付き合っていた女性。玉置美佐さんと言うのだけど、偶然再会して飲んできたみたい」
「……それで? 茜は慰めてほしいの? 言っておきますけど、母さんは浩介の方が正しいと思うからね?」
「フフッ、わかってるわ。ただ、とても兄さんが楽しそうな顔をしていたから、私も嬉しくなっちゃって」
「……茜」
「じゃあ、兄さんそろそろ帰ってくると思うから、切るね。またね」
虫を踏み潰してしまった時のような不快感は久しぶりだった。『たまきみさ』というのか、あの女は。
姉さんの喋り方だと、ただ懐かしさに身を寄せお酒を飲んだだけの様な言い方だが、
実の妹と恋仲にあるという疑惑を持ち別れた女が、数年振りに再会したからといって仲良く酒を飲むわけがない。
かといって兄さんから誘うとは到底思えない。『たまきみさ』が誘ったのだ。また兄さんにちょっかいを出すつもりだ。
しかし、姉さんが何を考えているのかがわからない。
他の女と飲んできた兄さんを見て、自分も嬉しくなった? 勝者の余裕のつもりか、馬鹿が。
想定外の動きをするあの女の不気味さがわからない程、幸せ呆けしてしまったのか、それとも何かもう手を打ってあるのか。
後者だとしても、今回の事を母さんに話す理由はどこにもないので、おそらく前者である可能性の方が高いだろう。
時が来たのだろうか。姉さんから、兄さんを返してもらうその時が。
本来なら、私が就職するまで預けているつもりだった。
社会人になれば、誰に寄りかかっているわけでもないので、何を言われようが私の思い通りにできる。
姉さんに対抗するには、自立した女にならなければいけない。
そう思っていのだが、この数年で姉さんの兄さんに対する支配力が、ここまで落ちているとは思ってもみなかった。
久しぶりに自室の隅にある全身鏡を見た。
派手過ぎない程度に女性らしさを押し出した胸。
スラリと伸びた細長い脚。
髪を下ろすと姉さんにそっくりなこの顔。
……この私なら絶対に兄さんを取り戻す事ができる。
明日は平日か。学校をサボるのはあまり気が進まないが、とても勉強する気分ではない。
私は参考書にマークを付けるため購入した赤い蛍光ペンで、
メモ用紙にあの女の名前を書き殴ると、明日出掛ける準備を始めた。
視線を北東に向けると、白い骨で組み立てられた高い塔が見えた。
現在建設の真っ只中で、2011年には完成するスカイツリーだ。
個人的に東京タワーは少し気障な外見が気に食わない。
あのスカイツリーのように、私も逞しく堂々と地に根を張り生きて行きたいと思った。
隅田川沿いのテラスを私は一人ゆっくりと歩く。
近所に住んでいるわけでもない私にとっては、特別な用事でもない限り訪れる事のない場所。
こうして歩くと、水は多く道も広い。景観が良い場所が多くて悪くない街だ。
ただ、隅田川の濁った色が私の心情を表しているようで、少し腹が立った。
勢いでこの街に来たは良いもの、私の中ではまだ考えがまとまっていなかった。
『たまきみさ』を兄さんの周りから追っ払うのが最優先。
しかし、そのまま兄さんを迎えに行くには、それを達成しただけでは終わらないのがやっかいなのだ。
姉さんをどうにかしなければならないのだから。
正直まだ高校を出てもないのに、兄さんを連れて駆け落ちするのは無理かもしれない。
生活基盤がない上に、兄さんにも仕事がある。
そう易々とは私と一緒にどこかで暮らそうという気にはならないだろう。
仮に成功したとしても、私は大学を諦めなければならなくなり最悪の場合、兄さんに養ってもらうという失態を犯す事になる。
時期早々なのではないか、私の中で少しずつ疑問の声が上がり始めた。
……どうすれば、私と兄さんが最高の形で幸せを掴む事ができるのか。
現時点で一番簡単且つ私にとって得なのは、『たまきみさ』を闇討ちでもして亡き者にする事。
中途半端に追い払っただけでは、二度手間になる事を学んだ。
あの女に1ミリの可能性も残さない、それが今回の絶対的な目標だ。
それさえ達成できれば、兄さんが就職した業界は女性が少ないらしいので、当分変な虫は湧かない。
そして、またしばらく姉さんに兄さんを預け、私は自分磨きを続ける。
それが一番最善なのはまず間違いないだろう。
しかし……大学に行ったとするとさらに4年か、さすがに気が遠くなる。
今すぐにでも、この手で兄さんを奪い返し、抱きしめ抱きしめられたいと願っているのに。
『たまきみさ』と姉さんを一度に排せる良い方法はないものか。
後一つ問題がある。闇討ち、そんな事をどうやって成功させるのかという事だ。
ここは現実世界。
漫画や小説ではあるまいし、殺人など犯したらあっという間に警察の捜査が私を嗅ぎつける。
それに……私はあまり暴力が好きじゃない。
頭と言葉を使えない低俗な人間の行いだと思っているから。
懐かしい記憶が甦る、あれはいつだったか。
私がまだ活発な振りをしている頃、学校でからかわれていた友達を庇い、同級生の男子を蹴った事があった。
家に帰り、その事を自慢げに話す私に母さんや兄さんは苦笑いをしていただけだったが、
唯一姉さんだけは、部屋で私と二人っきりになった時、静かにこう言ったのだ。
「楓、暴力は駄目よ。敵を作るし、社会的なリスクが高過ぎるわ」
「『しゃかいてきなりすく』ってなぁに?」
「そうね……他のお友達から楓はすぐブッたり蹴ったりする、って思われてたらどうする?」
「楓は悪い男子を蹴っただけだよ!? なんでみんながそんな事思うの?」
「理由なんて関係ないの。この世界では偉い人が決めたルールに従って、みんな生きているの。
そのルールの中では、どんな理由であれ暴力を振るった人は悪い人になってしまうのよ」
「じゃあ、楓もいつか嫌われちゃうって事?」
「楓は頭が良いわね。そう、暴力で問題を解決していたら、いつか自分が悪者になって、
他のお友達から嫌われてしまうわよ?」
「やだよ〜。そんなの」
「そうね。嫌よね? じゃあこれからは暴力を振るうのはやめなさい。楓には一杯お友達がいるじゃない。
みんなでその意地悪する子に『やめて』ってお願いすれば、その子もわかってくれるわよ」
「じゃあ! じゃあ! それでもその男子が意地悪やめてくれなかったら、どうするの?」
「……その時は、また教えてあげる」
あの時、姉さんが最後に一瞬だけ見せた顔。
それはカミーユ・コローが描いた肖像画の女性のように得体の知れない魅力を持ち、私の目を釘付けにした。
質問の明確な答えを求めていたわけではないが、姉さんが普段見せない感情の片鱗を見せた事。
それが当時の私は不安で仕方なかったのを憶えている。
私の横を赤ん坊を抱いた女性が通り過ぎる。散歩だろうか。
赤ん坊の小さな体をしっかりと抱えるその女性は、顔から幸福が滲み出ていた。
羨ましい。
私にもああやって兄さんの子を生み、兄さんの伴侶として堂々と街を闊歩できる日々が訪れるのだろうか。
……『訪れる』?
違う。
自ら向かわなければ、その道は私には遠すぎて見えない。
そうだ、兄さんを迎えに行くと決めたあの日から今まで、
誰に打ち明ける事もなく、誰を頼るわけでもなく、自分一人で歩いて来たではないか。
兄さんは、放っておいても私を迎えに来てくれる白馬の王子様ではない。
私がどうにかして『たまきみさ』と姉さんを駆除しなければならないのだ。
しかし……どうする……。何の後ろ盾もない、いち高校生の私に何ができる……。
「あ、あの」
背後から耳に侵入してくるどこかの男の声。
今すれ違った人間か。
明らかに違うとわかるが、念のため兄さんかどうか振り返って確認する。
やはり違う。
「もしかして、モデルさんか何かかな?」
しかし、本当にどうするか。
とりあえず『たまきみさ』に間接的な嫌がらせを行うのが一番手軽でリスクが少ないが、何をネタにするか。
兄さんと姉さんの性行為の写真でも撮って送ろうか。
……いやあまり好ましくないか。
盗撮するにしても隠しカメラか隠しビデオを兄さん達の家に設置しなければならない。
あの二人が家に友人や知り合いをしょっちゅう呼ぶとは考え辛いので、
カメラを発見された場合、私の仕業だとバレる可能性が高い。
それに……そんな物、私も見たくない。
「今ヒマなの?」
先程から雑音が五月蠅い。
ナンパのつもりか、なぜこういう男は無視されても一人で喋り続けるのか理解できない。
お前らについて行くような女は、顔からして馬鹿さ加減が滲み出ているのだから、そっちを狙えば良いのに。
第三者を巻き込む事を恥と知ってほし……第三者か。
私の頭で松明に火を灯したように、アイデアが浮かび出る。
手紙が入っているのと、人間が直接忠告しに来るのとでは不気味さが違うと容易に想像できる。
ましてや、『たまきみさ』は兄さんと同年代だろうから、20代の女だ。
知らない若い男が自分を訪ね、私生活を知っているとすれば、かなりの恐怖を抱くに違いない。
「オレさ、T大に通ってるんだけど今度サークルで映画を撮ることになってさぁ、
君みたいな子探してたんだ。よかったら撮らせてくないか?」
あからさまな嘘に私は鼻で笑いそうになった。
男の方に振り返り、表情を見る。
意外に嘘をついた事が少ないのだろう。目は泳ぎ、緊張した様子だ。
その男はいかにも遊び呆けている大学生といった容貌だった。
高校の同じクラスにも数人いる。
こういう外見ばかり気にしている中身のない男が。
「映画?」
私は興味がある振りをする事にした。
この辺に大学はないはず。
平日の昼間からこんな所にいるこの男は、この周辺に住んでいる可能性が高い。
『たまきみさ』の家から近過ぎず遠過ぎず、ヒマを持て余している若い男。
条件にはぴったりだ。
唯一の懸念は、『たまきみさ』が引っ越しをしていないか、という点だが、
そこは祈るしかない。
私が興味を持った振りをして色々質問すると、
男は嬉しそうにペラペラとつじつまの合わない事を、一生懸命それらしく聞こえる様に喋った。
サークルの映画なのに部外者の私が主演を張ってどうする。
小学生でも浮かぶ疑問を私は胸にしまった。
この男の本音を代弁すれば、要するに理由を付けて私とお近づきになりたいのだろう。
私としてはこの男を使う事に決めたので、返事はもう決まっているのだが、
こんな奴の言われるがまま承諾するのも癪に障る。
「なら、その相手役を私が決めていいのなら協力するわ」
私は条件を出した。
映画のヒロインは私。その相手も私が決める、と。
別にこの条件はどうでも良い。
この男がどこまで私をモノにしたいのか、忠誠心を量るだけのつもりだからだ。
「えっ!マジで!?やった!」
く、くくく、ははははははははははっ。
こんなに心の中で笑ったのは久しぶりだった。
男のなんとも嬉しそうな顔。
まるで、クリスマスプレゼントを貰う子供のようだ。
これだけののめり込み具合なら、条件次第では相当な事を注文しても素直に従うだろう。
こんな男でも使い道があるものだ。
先程から私の中にある黒過ぎる画策が現実味を帯びてきた。
もし、この男が私をモノにしようと誘いをかけてきたら、ひとまず受けてしまう。
ただし、『私の依頼を全て終えた後で、その誘いを受ける』と伝える事。
それさえ守れば、端的に言ってセックスの約束をしても良い。
なぜなら……相手をするのは私ではないからだ。
ふと、私は姉さんが昔よく言っていた言葉を思い出し、他人の意見を聞きたくなった。
「あなた、世の中に不必要な物って存在すると思う?」
「えっ!? 不必要な物?」
「そう、存在自体が邪魔な物」
「さぁ? あるんじゃないかな? ゴミくずとか、犯罪者とか」
やはり、馬鹿とはいえ一般社会に紛れている人間としては妥当な意見だ。
記憶を辿り、姉さんの顔と声を思い出す。
「良い? 楓。世の中にはね、不必要……要らない人や物なんてないの」
「なんでー? 楓は要らない物いっぱいあるよ? やぶけちゃった上履きとか」
「なんでも。いずれ楓にもわかる時が来るわ。だから人や物は大事にね」
そう言いながら私の頭を撫でる姉さんは、どこかの聖母のようだった。
しかし、今この時まで私は納得しておらず、この男とほとんど同意見だった。
精神異常者に付きまとわれ、殺された被害者の遺族を前にしても、
姉さんは死刑が確定した被疑者を庇い、同じ事が言えるのだろうか。
私のPC周りに蔓延る膨大な量の埃を、姉さんは「必要よ」と言って掻き集めるのだろうか。
そんな事はない。世の中不必要な物ばかりだ、と。
「あなたの言う事も一理あるわね、姉さん」
私は男の連絡先を聞くと、少し前までの憂鬱な気分が嘘だったかのように、上機嫌で帰路に着いた。
数日後、姉と母の電話で『たまきみさ』の勤め先が判明した。
私立N病院。あの女はどうやら薬剤師らしい。
有益な情報だが、あの女の情報が揃えば揃うほど不安になってくるのはなぜか。
理屈でなく本能、ありがちな言葉だが私の中でその感情が消えないのだ。
念のため、昨日学校帰りに今まで地道に貯金してきた20万円を引き出した。
身辺調査。たかが恋敵に異常かもしれない。
だが、念には念を。何も出なければそれで良い。私が安心できるのだから。
ところで……『たまきみさ』の情報は当然兄さんから聞いているのだろうが、
駆け落ち同然の自分に、他の女の話をする兄さんを姉さんはどう思っているのだろうか。
もし私が今の姉さんの立場なら、兄さんが他の女の話をする事は許さない。
街はおろか、テレビの画面ですら他の女に色目を使う事を許さない。
自慰行為で他の女の事を考えながら無駄に射精する事も許さない。
今の内から少しずつ、兄さんが約束を破った時の罰を考えておかなければ。
夜の日課の妄想ではもう数えきれない程試しているが、一度現実の兄さんにも口枷や首輪を着けてみたかったのだ。
邪な野望も程々にして、私はあの男に連絡をして『たまきみさ』への言付けを頼んだ。
そして、頼んだ人物を聞かれたら私の容貌を素直に答えて良いと付け加えた。
『たまきみさ』と姉さんが実際に会った事があるのかは不明だが、
容姿が判明したところで、ほぼ100%『村上楓』が容疑をかけられる事はないだろう。
渋っていた男だったが、最終的には承諾した。
交換条件の私とのデートとやらが魅力的で仕方ないのか。
この男の考えが手に取るようにわかる。当日お酒でも大量に飲ませて、私に下劣な事をしようとしている。
「単純な人間は生きるのも楽そうね」
独り言を呟くと、私の関心はすぐに今回頼んだ言付けで『たまきみさ』がどう反応するか、という所に移った。
まずは、けん制の意味合いが強い今回の言付けだが、恐怖という名の潜在意識は確実に植え付けられるはずだ。
いや、そうでなくては困る。
出来れば、これで引いてくれる事を切に願う。
時計を見た。そろそろ日課の時間。
今日は、何かを苛めたい気分だ。
昔考えた事がある。
もし、私と兄さんの歳が逆だったら、どういう会話をするのだろう、と。
ヤンチャな面影を残した兄さんを嗜める私。
笑顔で擦り寄ってくる小さい兄さんの頭を優しく撫でる私。
膣が疼く。今日の設定は「お姉ちゃんの為に頑張る弟」に決めた。
「楓お姉ちゃん! 今日は僕テストで100点取ったんだよ!」
ランドセルを背負って、私の腰に抱きつく兄さん。
記憶を辿り、兄さんを小学校高学年の頃の顔と体型に戻した。
本当はもう少し幼くしたかったのだが、当時の私が幼すぎてその頃の兄さんを記憶していないから仕方ない。
兄さんのセリフが設定の歳のわりに幼いのは、妥協する事にした。
場所は……そうね、実家にしておこう。その方がイメージしやすい。
兄さんと呼ぶのは少し気恥ずかしく、私は纏わりつく兄さんの頭を撫でながら愛称を考えた。
「浩ちゃんは偉いわね。女の子にモテるでしょ?」
「そういうのまだわかんないよ。でも楓お姉ちゃんは好きだよ」
眩しい笑顔を私だけのために向ける兄さん。
この真っ白なキャンパスを私色に染められる事に悦びを感じた。
「本当? でも言葉だけじゃ信用できないな」
「ホントだよ! 楓お姉ちゃんは僕が守るよ!」
一瞬、男の表情に変化する幼き兄さんの顔。
この純粋な兄さんが妄想の中を飛び出し、今現在ベッドの中で淫らに陰唇を指でなぞる私を見たらどのように思うか。
「浩ちゃんは優しいんだね。じゃあさ、私が気持ちよくなる事を一緒に手伝ってくれる?」
「うん! 何を手伝えばいいの?」
子犬のような目で、私の指示を待つ兄さん。
それだけで、愛液が溢れベッドが湿っている気がする。
「じゃあ私のここを優しく指でなぞってくれる? 力を入れちゃ駄目だよ?」
私は下半身に身に着けていたスカートとショーツを脱ぎ、横にあった椅子に座った。
「ここって?」
不思議そうな顔をして、されど本能なのか。
私の性器をまじまじと食い入るように見つめる兄さん。
「ここ」
私は小さい兄さんの指を右手で握ると、自らの陰唇に導いた。
「ひゃぁぁぁぁぁぁ!」
「だ、大丈夫!? お姉ちゃん」
少し大げさに声を上げてみると、予想通り兄さんは私を本気で心配した表情を見せてくれた。
「大丈夫よ。今の声ね、お姉ちゃんが喜んでいるって事なの。
痛い時は痛いって言うから、浩ちゃんは何も心配せずに今したみたいに、グチャグチャにかき混ぜてみて?」
「う、うん」
「……ピチャ……ピチャ……」
「アンッ! そこぉっ! もっと早く動かして!」
私の膣で、ぎこちない動きをする兄さんの指。
だが、そのぎこちなさが兄さんのキャンパスに、初めて筆を入れている事を実感できて興奮する。
「……グチュッ! グチュゥッ!」
「アアアアアァァァン!」
「お、お姉ちゃん」
「はぁあぁぁぁん! ……どうしたの?」
「僕、少し腕が疲れてきたよ」
「駄目よ? お姉ちゃんのお手伝いしてくれるんでしょ? そんな事言う浩ちゃんは嫌いになっちゃうかも」
「や、やだ! 頑張るから嫌いにならないで!」
私がそう言うと、兄さんは必死になって今までよりも早く、腕と指を動かし始めた。
なんて素直で愛らしい生物なのだろう。
私の性器もヒクヒクと意思を持ち始めたかのように、震えている。
そろそろ、イきそうだ。
ラストはどうしようか。
「あんっ! あんっ! ……ねぇ、浩ちゃん」
「なあに?」
「もうそろそろ終わりしようと思うんだけど、最後に浩ちゃんにお願いがあるんだ」
「そのお願いを僕が聞いたら、お姉ちゃんはもっと気持ち良くなるの?」
「えぇ、そうよ。浩ちゃんの事ももっと好きになる」
「じゃあやるよ! 何をすればいいの?」
「指はそのままでね、その指が入っている所のちょっと上、小さい突起物のような物があるでしょう?」
「……うん、なんか小さくて腫れてるみたいのがある!」
「そこをベロでペロペロしてくれる?」
私が指示すると、兄さんはそのまだ誰にも汚されていない可愛らしい舌で、私の陰核を舐めまわした。
「ひゃあぁん! そう、上手ね、指も休んでは駄目よ? 舌も指も私の為に動かして! それでねっ! 浩ちゃん!」
「ピチャ、ペロペロ……ピチャ……なに? 楓お姉ちゃん?」
「ヤンッ!……ああぁぁぁぁ! 『愛してる』って言いながらやって?」
兄さんは言われた通り指も舌も休まず、私を淫落へと導き、そして少し恥ずかしそうにしながら、その言葉を紡いだ。
「楓お姉ちゃん! 愛してるよ!」
「ヒッ……ヒャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
「……ふぅ、暑い」
しばらくの間放心状態だった私は、ベッドから降りふと目に入った時計の針を見た。
日課を開始してから1時間が経過していた。
今日の設定は悪くなったが、レギュラーローテーション入りさせるには少し変化球過ぎるか。
私は自分より年下の兄さんとの行為を、もう一度だけ脳裏に焼き付けると、
再びベッドのシーツに包まり、芋虫のように丸くなった。
男に言付けを頼んでから、もうすぐ1ヶ月になろうとしていた。
まだ結果がどうなったかは聞いていない。
大学に、できれば推薦で入学したかったため期末テストの勉強を優先し、そんな暇がなかったのだ。
しかしそのせいで私は、自分の耳を引き千切りそうになるという人生初の経験をしていた。
「私達ね。普通の兄弟に戻る事にしたの」
受信機から聞こえる姉さんの透き通った声。
母さんの声も聞こえてはいるが、1秒後には記憶から泡が弾ける様に消えている。
「そう、私は兄さんの幸せが一番だから、身を引く事にしました。
ほら、この間話した玉置美佐さんともう一度お付き合いでもするんじゃないかしら?」
不味い、受信機を叩きつけてしまいたい衝動に駆られる。
もう少しだけ我慢しよう。
「えぇ。私も会った事があるけど、明るくてとても感じの良い人。あの人になら、兄さんを任せられるわ」
ハッ……ハッ……何が「兄さんの幸せが一番」だ!
お前が……ハッ……ハッ……一番兄さんを苦しめて……ハッ……ハッ……きたクセに!
「うん、じゃあまた落ち着いたら連絡する。兄さんもそっちに顔出したがっているから。うん、じゃあね」
……ガンッ、ガンッ、ガシャーン!
「ハァッ……ハァッ……」
私は受信機を釘打ち用のハンマーで壊した。
この数年間の情報と、私を不快にさせてくれたお礼として、精一杯の力を込めて。
でもありがとう、姉さん。これで、すべての決心がついた。
やはり今が時なのね。
まず、兄さん達の家に潜入する。今は丁度夏休み。理由はいくらでも思いつく。
そしてあの男に連絡を。
逃げてはいないと思うが、本当に『たまきみさ』に言付けを伝えたのか。
しっかりと伝えていたなら、その忠誠心はまだ使い道がある。
そして兄さんを私なしでは生きられないようにする。
少しだけ時間は掛かると思うが、できない事はない。必ずやってみせる。
そして、『たまきみさ』……待っていてね。
私はあなたのとても大切な思い出を握っているの。
恨むなら探偵業なんかを認めているこの国と、自分の運命を恨んでね。
部屋の隅にある鏡を見た。
我ながら良い顔をしている。何事にももう動じることはない。
4年前に誓った決意と、今日腹をくくった私の魂が見事に1つとなったのだ。
ヘタをすれば、もう実家へは戻れない。
リスクは承知の上だ。
世の人間は口を揃えてこう言うだろう。
実の兄を愛する欠陥人間だ、壊れている、と。
私から言わせれば、それは世間一般の主観であり、
道徳的な決めつけと、僅かな医学的根拠しかない欠陥理論だ。
私は断言する。
近親者への異性愛を認めないこの世界こそがおかしい。
姉さんの顔を思い浮かべる。
もう枯れてしまったみたいだけど、あなたは間違っていなかったから、胸を張りなさい。
そして、大人しくご飯でも作ってて?
私が証明してあげるから。
この世界こそがきっと、壊れているのだと──。
第13話へ続く
以上です。ありがとうございました。
GJ!
相変わらず楓の妄想がひどいw
>>157 訂正
時期早々×
時期尚早○
でした。大変失礼しました
>>163 前回に引き続き楓がキモいw
一方、茜からは大物臭がする。
これからどうなっていくのか楽しみにしてます。
>>163 GJ
茜と楓はどっちがヒロインなんだろ
全然展開が読めん
GJ
楓が男使ってたのか
茜は普通の妹だったということでおk?
普通な奴はいねえ
>>163 GJ
楓の妄想がやばい
かわいい
茜にも楓にも頑張って欲しい
>>163 GJです
もう素晴らしいの一言ですね。今回の話をみると茜って良識的なんだななんて思っちゃいますね。それだけ楓がキモいってことですかね(笑)
次の話が待ち遠しいです
茜がんばれマジでがんばれ!
『経験』のある・なしの違いを見せてやれ!!
玉置美佐さん?は……その……
ご愁傷様です……
みさたんに頑張ってほしいGJ
保管庫読んでて気が付いた、悪質長男がもう3ヶ月きてない…
今晩は。
表題について、投下いたします。
「シルフちゃんの調子は?」
「もう熱も下がっているし、今日一日休めば大丈夫だと思う」
「そう、良かった〜」
雪風が心から安心したという様子で、ほっ、と溜息を吐いた。
「ごめんね。
本当は私も手伝わないといけなかったのに、全部任せちゃって」
「いや、雪風は全然悪くないよ」
雪風はシルフの看病を全くしていない。
だが、それは雪風が冷淡だからじゃない。
シルフが雪風の手は患わせたくないと俺に訴えたからだ。
あの時の必死な様子は自分の気持ちを殆ど出そうとしない筈のシルフからは想像が出来なかった。
そういう意味では、シルフが気持ちを出してくれるのは悪くは無いんだが。
因みに実際には雪風はシルフに顔を出さなかっただけで、
食事や着替え等の準備を嫌な顔一つせずになってくれた。
本当に我が妹ながら良くできた奴だとお世辞抜きに思う。
「気を悪くしないでくれよ。
その、別にシルフにだって悪気があって雪風の看病を断ったわけじゃないんだ
ただ、何ていうんだろうな、そのタイミングが悪いっていうか、何ていうか」
シルフが嫌がっているのは昨日の質問と繋がっているのだと思う。
”お兄ちゃんは、姉さんより私が好きなの?”
恐らく、あの言葉がシルフの気持ちの全てなんだろう。
シルフは雪風に自分が劣っていると誤解している。
だから、俺の前で雪風に面倒を掛けるような様子を見られたくないのだろう。
ただそれを雪風に言うのは、どうなのだろうか?
「大丈夫だよ、あの子の事は良く分かるもの」
俺が苦し紛れの言訳を考えていると、
雪風はやれやれというような様子で腕を腰に当てた。
「シルフちゃんは私に兄さんを取られちゃうの怖いんじゃないかな?
もう、そんな事ないよ、って何回言っても信じてくれないんだから」
雪風は困ったような、呆れたような調子で言った。
「分かるのか?」
「分かるよ〜、シルフちゃんの事なんてお姉ちゃんはお見通しなんだよ。
ふふ、シルフちゃんは昔からそういう子だったよね。
本当はいっぱい言いたい事があるのにいつも抱えきれなくなるまで黙ってて、
それでどうにもならなくなるとすぐ力に頼って解決しようとする。
私たちがちゃんとそういう隠してる気持ちをあの子から汲み出してあげないと、
すぐに心のバランスを崩してしまうよね?」
「まあ、そうだな」
「実はちょっと面倒臭い子な所があるって事かな?」
「まあ、確かに傍から見れば、結構面倒臭い奴なのかも……」
そこまで言いかけて、慌てて背後を振り返る。
「くす、そんなに焦らなくても大丈夫だよ。
シルフちゃんはしっかり兄さんの約束通り寝ているわ」
「え、あ、そうだよな」
俺の慌てぶりをを見て、くすくすと雪風が小さく笑う。
「くすくす、兄さんってば心配性過ぎるよ〜。
シルフちゃんの事になるといつもそうなんだから。
ふふ、兄さんが本気でそんな事考えているなんて誰も思わないわ。
兄さんだってそういう面倒臭い所もあるシルフちゃんが好きなんでしょ?」
「ったく、そういう冗談は勘弁してくれ。
でも、雪風の言う通りだと思うよ。
シルフにそういう部分があるのも、俺の好きなアイツを作る要素の一つだ。
確かに好ましい事じゃないけど、俺たちがちゃんと支えてやれば良いだけだろ?」
「そうだね、ふふ、羨ましいなぁ〜。
シルフちゃんにはそうやって受け入れてくれる兄さんが居て。
ねえ、兄さん。
でも、もし本当にシルフちゃんがめんどくさくなってきたら……」
雪風が俺に擦り寄り、ぴったりと体を付ける。
上目遣いで俺の顔を覗き込む雪風の瞳は熱っぽかった。
「いつでも、私が居るよ?
別にシルフちゃんを見捨てろなんて言わないわ。
でも、シルフちゃんといつも一緒だと、
少し煩わしいなって思う事が出てくるよね。
そういうのを発散する為に私を使ってみないかな?」
俺は答えられなかった。
雪風が言っているのは、自分を都合の良い何かとして扱えって事か?
いや、そもそもこれは本気で言っているのか?
それとも、雪風流の駆け引きなのか?
頭の中でいくつもの疑問が浮かんでは沈む。
そんな俺の様子をじっと暫く眺めた後で雪風は楽しげにまた笑う。
「それも、冗談、なんだよな?」
雪風は俺から少しだけ離れてこちらを向き、
自分の体を抱き留めるように腕を交わす。
「ふふ、そう、これもいつもの冗談、だよ?
くす、雪風はそんな安い女の子じゃないんだから。
例え、相手が兄さんであってもね?」
「冗談か、そうだよな。
冗談に決まっているよな」
「そう、ただの冗談だよ。
くす、意地悪したお詫びに、少しアドバイスをあげるよ。
結局、シルフちゃんの不安って兄さんがシルフちゃんの事を好きだ、
っていうのを信じきれないからだよね?」
「そうなんだろうけど、じゃあどうやって伝えればいいんだ?」
「簡単だよ。
兄さんがほかの人にはしないような事を、
シルフちゃんの為”だけ”に何かをしてあげれば良いんじゃないかな?
例えば、兄さんが今やっているあれとかこれとか」
そう言って、雪風がジェスチャーをする。
「本当に、雪風は俺のする事は何でも分かるんだな」
「くす、そうだよ〜。
だって、私は大好きな兄さんの妹だもの。
大丈夫、きっと上手くいくよ」
「ありがとうな、雪風にそう言われると自身が持てるよ」
その時、ピンポ〜ンと呼び鈴が鳴った。
「あれ、郵便屋さんかな?」
そう言いながら雪風が玄関へ歩き、扉を開ける。
そこには、目を真っ赤にして泣き腫らす和装の少女が居た。
****************************************
「やめて、姉さん。
どうしてそんなことを言うの?
わたしたち、家族だよ」
白い少女は今にも泣きそうだった。
「あはははは、シルフは家族のつもりなんだ?
違うでしょ、シルフは私の家族なんかじゃないよ」
「でもお兄ちゃんは、わたしのことを家族って言ってくれた……」
黒い髪の少女がその言葉を聞いて、憎しみの視線を向ける。
「お兄ちゃん?
シルフのお兄ちゃんっていったい誰なの?
兄さんの妹は雪風だけだよ?
シルフはただの要らない子でしょ」
あはははは、という意地悪でとても楽しそうな笑い声。
その笑い声を止めて欲しいのに、そんな酷い事を言わないで欲しいのに、何回お願いしても止めてくれない。
だから、白い少女は今までやってきた様に彼女の頬を殴った。
殴られた時、彼女はにたりと笑っていた。
その笑顔の先には、彼女と同じ黒い髪の少年が居て、
……夢、だよね。
だってあれはもうずっと昔の私だもの。
あの時の姉さんはとても怖かった。
でも、あの後、お兄ちゃんと私と仲直りした。
もう怖い姉さんなんていない。
今ここに居るのは優しい姉さんと大好きなお兄ちゃんだけ。
「……お兄ちゃん?」
でも、少しだけ怖くなった。
だからベッドの横に座っているお兄ちゃんに声を掛けた。
「ん、どうした?」
「なんでもない」
「そうか」
お兄ちゃんが私の頭を撫でてくれる。
大丈夫、お兄ちゃんはここに居る。
「そうだな、大分熱も下がってきているみたいだ」
「そう」
「うん、この調子なら今日中に良くなるよ、きっと」
「ねえ、お兄ちゃん。
姉さんはまだ帰ってきてないの?」
私がそう聞くとお兄ちゃんの顔が曇った。
「ああ、下手をしたら徹夜になりそうだって言ってた」
私は寝ていたから気付かなかったけど、
朝早くに神田さんが新林さんに裏切られたと言って泣きながら家に来たらしい。
新林さんの浮気?がまた発覚したのだそうだ。
私達には良くある事だから別にもう驚かないけど。
きっと今頃は本筋から逸れて新林さんがどれだけ素敵な男性かを姉さんに滔滔と語っている頃だと思う。
今はロケットで言うなら発射の為に燃料を注入している段階。
そして、次の日の朝には虚ろな顔をしながら新林さんを探しさ迷う。
一方の姉さんはぐったりとした様子で玄関に倒れこんで私とお兄ちゃんが布団まで運ぶ、それがよくある日常。
拉致同然にいつもの喫茶店に連れ去られていっただろう時の姉さんの、
またぁ?という引き攣った笑顔が頭に浮かぶ。
「まあ、雪風には悪いが、今日は俺達だけだ。
と言っても、シルフもこんな調子だしな」
そう言ってお兄ちゃんがまた頭を撫でてくれる。
それが私には堪らなく嬉しい。
「ごめんね、お兄ちゃん」
「いいんだよ、偶にはこういう事でもしておかないと、
いつシルフに愛想尽かされて見捨てられるか分からないからな」
見捨てる、その言葉に胸が苦しくなる。
「私は何処にも行かないよ」
私は絶対に何処にも行かない。
ずっとお兄ちゃんの側に居る。
「ねえ、お兄ちゃん?」
でも、お兄ちゃんは分からない。
お兄ちゃんは私を見捨てる事だってできるから。
「どうした?」
どうして私が好きなの、って聞こうとしてもそれ以上言えなかった。
もしもお兄ちゃんの期待している事が私には出来ない事だったら、私でなくても出来る事だったら。
そのどっちの答えでも、きっと私は耐えられなくなる。
「……なんでもない」
「くす、今日のシルフはなんでもないんだな。
遠慮しないで言ってみろよ?
こういう時は甘えてくれる位の方が嬉しいのが男心なんだぞ」
「……うん、あのね。
もうちょっと頭を撫でていて欲しいの」
お兄ちゃんは黙って私の髪を指で梳いてくれた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「くす、なんだ?」
お兄ちゃんが優しく笑う。
私の大好きな顔。
「昔の事、覚えてる?」
「昔?」
「うん、ずっと昔、私が家出した時の事」
「ああ、あの時か」
「私、姉さんを叩いたから、もうここに居られないって思ったんだよ。
ずっとそうだったの。
気付いたら誰からも嫌われて、憎まれて。
この人は信頼できるかもって期待して、見捨てられる。
そんな事を何回も繰り返して。
だから、お兄ちゃんもそうなんだってあの時は思ってたの。
でも、お兄ちゃんは迎えに来てくれた」
あの時に、初めて私は誰かを信じる事が出来るようになった。
やっと自分の居場所を見つけられた。
「それに今までもずっと私の側に居て、私の事を守ってくれた。
私、お兄ちゃんが居なかったら自分を保てなかった」
今の私が私でいられるのは、全部お兄ちゃんが居てくれたから。
だから、私はずっと幸せでいられた。
それなのに私はまだお兄ちゃんに言えていない事がある。
私は、卑怯者だって思う。
うん、今度こそちゃんと言わないと、駄目。
「お兄ちゃんと居られて本当に良かった。
お兄ちゃん、私、その、だから」
愛してる、ただそう一言言えば良いのに口が動いてくれない。
今まで、私は自分の気持ちをちゃんと言えたことが無かった。
拒絶されるのがずっと怖かったから。
でも、動いて。
今言わないとお兄ちゃんにそのまま届かなくなるかもしれない。
お兄ちゃんに早く言わないと、私の気持ちをお兄ちゃんに……。
いきなり、ぺち、とお兄ちゃんにでこピンをされた。
それも目が覚めるくらいに強く。
「……痛いよ、お兄ちゃん」
ちょっと涙目になった。
「ったく、これじゃまるでこの前一緒に見た映画の最後みたいだろ?
ほら、今際の際で、これで私は幸せです、とか言い出すやつ。
本当に詰まらない映画だったよな」
お兄ちゃんの言っているのは4回目のデートで見に行った時の事だと思う。
実話を捏造し、脚色し、無理やり美化した超低予算大作!!っていう酷いふれこみ。
公開初日なのにそんなに人が入ってなかった。
ちょっと変な映画だったからかな?
―――奴隷制度のある現代社会。
兄と妹、二人だけしかいない家族。
心臓病の妹、お金さえあれば救われる命なのに。
妹の為、知り合いの幼女(どうして幼女なの?)に自身を売ろうとする兄。
一度売り渡されれば二度と妹には会えなくなる。
その兄を買い戻した妹、けれどそのお金は心臓以外の臓器を全部売ったもの。
今の妹の体の中はもう空っぽ。
だから妹はその場で倒れ、そして助け起こそうとする兄に最期のお願いをする。
もう二度と離れないで一緒に居てください、そう言ってナイフを兄に刺そうとする。
でも、もう目が霞んで何も見えない、くすくす、本当に残念ですね?って寂しそうに笑う妹。
兄はその手を優しく取って、自分の胸にナイフを突き刺し妹をそのまま抱きしめる。
これでずうっと一緒だよって笑う兄、これでずうっと私は寂しくないですねって目に涙を浮かべて笑う妹。
二人は静かに息絶える、お互いを抱き合いながら。
そんなお話だった。
「変な話だったけど、でも、私は好きだったよ?」
兄と妹っていう関係が少しお兄ちゃんと私に思えてしまって、ただの映画に思えなかった。
それに、例えどんなに悲しい形でも、最後は二人がずっと一緒に居られるっていうのが印象に残った。
それが、私にはとても羨ましかったから。
「そうか、くす、シルフは好きだったのか?」
そう言ったお兄ちゃんは何故か嬉しそうだった。
「でも、俺はああいう綺麗なだけのバッドエンドなんて嫌いだよ。
あんなの、見ている観客は感動したで済むだろうけど、本人達は誰も報われてないぞ。
実際は皆が悲しくなるだけだ、そんなの幸せな筈無いだろ?」
「ううん、それでも最期まで一緒に居られるなら、きっと幸せ」
きっと、私がヒロインでもあの最期を望んだと思う。
お兄ちゃんは少し悲しそうに見える笑顔でまた私の額に手を置いてくれた。
「生きてれば、あの二人にだってもっと良い幸せがあったさ、きっとな。
ごめんな、シルフの様子があの映画のヒロインそっくりだったから、つい意地悪したくなっちまったよ」
「でも、私はお兄ちゃんに言いたい事があるんだよ」
「それは今じゃないと駄目なのか?」
「ううん、今じゃなくても大丈夫、だと思う」
でも、本当は早く言いたい。
早く言わないと、って誰かが叫んでいるような気がする。
「それなら、俺はシルフの気持ちが落ち着くまでいつまでだって待つよ。
あんな映画と違って俺はいつだってここに居るんだからさ」
「本当?
お兄ちゃんは何処にも行かない?」
「当たり前だろ、お前を置いて何処に行くんだよ?」
「約束してくれる?」
「何言ってるんだよ、昔したじゃないか?」
「え?」
「おいおい、シルフが言ったのに忘れちゃったのか?」
お兄ちゃんが呆れ気味に言った。
「ご、ごめんなさい」
必死に記憶を蘇らそうとする。
なのに、焦れば焦るほど思い出せない。
何時、何処、どうして、思い出せない。
「そんなに気にするなって。
そうやって何でも深刻に受け止めると体に毒だぞ。
忘れたのなら、何度でもやり直せば良いだけだろ?」
そんな私を見てお兄ちゃんが不安そうに言った。
「やり直せるの?」
そう確かめる私の声は怯えている。
「当たり前だろ、シルフの為なら何回でも約束するよ」
とても暖かい声が耳に心地よかった。
そのお蔭で気持ちが落ち着いてくる。
「お兄ちゃんは私を置いて居なくなったりしない?」
私はお兄ちゃんの右手を握った。
「ああ、絶対にシルフの側に居るよ。
約束する」
お兄ちゃんが力を込めて私の手を握り返す。
それから、優しく笑った。
それに釣られて私も笑顔になった。
約束してくれた、何処にも行かないって。
その一言で私の体は軽くなった気がする。
大丈夫、私はもう独りになんてならないんだ。
くす、安心したら、お腹が空いちゃった。
そうだ、起きたらお兄ちゃんにご飯を作ってあげないと。
お兄ちゃん、何を作ったら喜んでくれるかな?
……オムレツなんてどうかな?
姉さんに教えてもらったオムレツを作って、お兄ちゃんを驚かせてみたいな。
うん、早く治らないかな。
「お休み、お兄ちゃん」
「ああ、お休み」
私はお兄ちゃんの暖かい手を握ったまま、目を閉じた。
以上です、ありがとうございました。
映画の部分については、以前こちらに投下しました話の没案を再利用しました。
書いてから、これではキモウトではないのでは、と思い没にしたものです。
次回もよろしくお願いいたします。
失礼します。
良かった!!
これからどうなるか見当つかないからなお、面白い。
続き楽しみに待ってます!
どっかで見覚えのある映画だなw
あれの作者さんだったのか
テス
192 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/01(水) 10:37:57 ID:xC/6hrUK
俺達極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧_∧ ∧_∧ age
(・∀・∩)(∩・∀・) age
(つ 丿 ( ⊂) age
( ヽノ ヽ/ ) age
し(_) (_)J
雪風マジ良妻
誰もいない?
常駐してるから誰もいないということはまずない
あっちが荒れてるから
作者さんが警戒してしまって投稿を控えてるんでしょ
警戒って言われてもなあ
やっぱり荒れてると嫌なもんなのかね
俺は作品さえ読めればどうでもいいんだけど
作者さんの人数が少ないだけだと思う
極悪長男はまだかね?
今晩は。
表題について投下いたします。
「どうして、シルフはいつも悲しそうなの?」
黒い髪の少年が白い少女に問いかける。
その顔は寂しそうだった。
「だって、みんな好きな人がいなくなるの。
嫌な人しか残らない」
「じゃあ、ぼくも嫌な人なの?」
「ううん、お兄ちゃんは嫌いじゃない。
だから、きっと居なくなる」
それが少女にとっては悲しかった。
きっとこの人も自分の側からいなくなるって思ったから。
こんなに大好きな人なのに、そんなの嫌だ。
「ぼくは居なくならないよ、シルフのお兄ちゃんだもの」
泣目になった少女の頭を撫でながら少年が言った。
「居なくならないの?
お兄ちゃんは、本当に居なくならないの?」
「うん」
「約束してくれる?」
「いいよ、ぼくは絶対にシルフの側を離れない」
少女はとても嬉しかった。
だから飛付いて、そのまま少年を抱きしめた。
「本当だ、お兄ちゃんはここに、居る」
「いるよ、絶対にシルフの側に」
少年は嬉しそうに笑っていた。
少女は涙を浮かべながら抱きしめた。
悲しかったからじゃなくて嬉しかったから。
******************************************
「……お兄ちゃん?」
眼が覚めたときには外は暗くなっていた。
時計を見る、もう夜の8時。
起き上がってみる、ちょっと体が重いけど熱も下がっている。
部屋にはお兄ちゃんが居なかった。
しぃんとした部屋、それがとても嫌に思える。
お兄ちゃん、どこに居るのかな?
お兄ちゃん?
あ、そうだ、お兄ちゃんに早くご飯を作ってあげないと。
お兄ちゃんはご飯は作れないから、きっとお腹が空いてる筈だもの。
私は居間へ向かって歩く。
その方向から卵の焼けるおいしそうな匂いがする。
あれ、変だよね?
姉さんはまだ帰っていていないのに。
「ん、熱はもう引いたのか?」
「え、うん、もう大丈夫」
そこには黄色のエプロンをしてオムレツの載ったお皿を持つお兄ちゃんが居た。
「それじゃあ、これを食べてくれないか?
ちょうど持って行こうと思ったところなんだ」
とん、とお皿を私の前に置く。
「あれ、兄さんは料理できないんじゃなかったの?」
「ほらちょっと前に雪風に怒られただろ、朝飯ぐらいまともに作ったらどうだってさ。
流石に何もしないままだと、また雪風に怒られちまうからな。
それからこっそり練習したんだよ、圭の所で飯とか作ったりしたんだ。
ただ、雪風にはどうもバレてたみたいなんだけどな。
ったく、本当にあいつは何処で情報を仕入れてくるんだか。
まあいいだろそんな事、それより熱いうちに食ってくれよ。
最近はやっとまともになってきたんだ」
兄さんが照れ臭そうに笑いながら私にフォークを渡す。
お兄ちゃんが私の為に作ってくれた料理。
どきどきしながらオムレツを口に運んだ。
「どうだ?」
兄さんが落ち着かない様子でそわそわと聞いてくる。
「……とってもおいしい」
ぱあ、と兄さんの顔が明るくなる。
それとは対照的に私の気持ちは暗くなった。
だって、それは私が作るより、
ううん、姉さんが作るよりも遥かにおいしかったのだから。
卵料理は焼き方が難しいのに、その火加減が完璧。
こんなにおいしいオムレツが作れるならきっと、
すぐにお兄ちゃんはおいしい料理を何でも作れるようになる。
お兄ちゃんは私のご飯なんて食べてくれなくなってしまう。
そうしたら私はお兄ちゃんの為にご飯が作れなくなる、嫌だ。
「まあ、今はそんなに難しいものは作れないけど、これからは俺も時々は夕飯を作るよ」
嫌だ、私はそんな事をお兄ちゃんにして欲しくなんてない。
「大丈夫、私が作るから」
「いいんだよ、シルフはそんなに気を使わなくても。
俺にだって料理が出来るようになれば便利だぞ。
そうしたら、シルフだって毎日三食作る必要も……」
「いいから!!
お兄ちゃんは何もしないで!!
全部私が作る!!」
私の叫ぶ声が壁で反響する。
お兄ちゃんは困惑していた。
私は急いで最後の一切れを口に入れる。
「ごめんなさい、大きな声を立てちゃって。
でも、お兄ちゃんのご飯は私が作るの。
だから、お兄ちゃんは何も作らないで、お願いだから」
「シルフ?」
「歩いたら調子が悪くなっちゃった。
ごめんなさい、今日はもう寝かせて」
私は部屋を出た。
姉さんが言っていた、もうお兄ちゃんには必要ないって。
違う、お兄ちゃんはそんな事なんてしない。
信じてる、私はお兄ちゃんを信じてる。
これは違うの。
体が震えるのは、まだ風邪が治ってないからなのだから。
だから早く治さないと。
**************************************
「……塩と砂糖を間違えたとか?」
よく分からなかった、何で俺も食事を作るって言った時にあんなに怒っていたのだろう?
実は美味しくなかったのを我慢していたのか?
皿に残っていた卵の欠片を摘んでみる、うん旨い、よな。
何十回もシルフの為に練習したんだ、まずくなんてないよな?
じゃあどうしてシルフはあんなに怒っていたんだ?
雪風だって上手くいくと保証してくれたはずなのに。
「兄さん、居るの!?」
ばたばたという足音と共に雪風が新聞片手に慌しく部屋に入ってきた。
「あれ、思ったより早かったな?」
「そんなことどうでも良いからこれ見て!!」
そう言って新聞を突き出す。
雪風が見せた新聞には×××賞の入賞作が載っていた。
名前ぐらいは知っている、確か若手画家の登竜門とか言われているやつか?
「で、それがどうしたんだ?」
「兄さん、いい?
しっかりと落ち着いてここを良く見て。」
落ち着いていない様子の雪風が入選作品一覧を指差す。
そこには俺の名前と、廃墟で星を見つめるシルフの絵が小さく載っていた。
絵の中のシルフは遠い昔を思い出すように丸い空を眺めている。
それは俺が息を呑むほど綺麗だと思った光景で、
そして、初めて自分の手でそれを残して置きたいと必死で描きあげた絵だ。
「凄いよ!!
兄さん、兄さんの才能が認められたんだよ!!」
雪風は興奮した声で俺に話しかける。
けれど、俺には何が何だか分からない。
なんで俺が新聞に載るような賞を貰っているんだ。
それにこの絵は描き上げてから誰にも見せていない。
シルフにだってまだ見せずにしまっていたはずだ。
「あれ、どうしたの?
あんまり嬉しそうじゃないね?」
「どうしたの、じゃないだろ。
何で俺が賞なんて貰ってるんだ?
大体どうして、この絵が応募されているんだよ?」
「先生がね、応募したの。
兄さんの才能が評価されるチャンスだからどうしてもって。
本当は兄さんが今描いている方を出したかったみたいなんだけど、
まだ出来てないからこっちにしたんだよ」
「ちょっと待て、どうして雪風がそのことを知ってるんだよ?」
そうだ、大体、あれを描いていたことを先生は知らないはず。
知ってるのは俺いつも一緒に居たと雪風だけなんだ。
「お前が持ち出したのか?」
「うん、先生が探しても見つからなかったから、私が場所を教えてあげたの」
「どうしてだ!?」
「え、え〜っと」
小さく体を震わせてから雪風は困ったような顔をして曖昧に笑った。
その笑い方が責任逃れをしているように見えて不愉快になった。
まるで、どうして怒られているのか分からないという様に。
けれど、雪風なら俺の気持ちはちゃんと分かるはずだ。
この絵はシルフだけに見せたかったのに。
これは知らない誰かに見せるために描いたわけじゃないんだぞ。
雪風だって知ってただろ、どうしてこんな勝手なことをしたんだ?
俺の邪魔がしたいのか!?」
「い、痛いよ、兄さん」
思わず雪風の両肩を掴んだ腕には思っていた以上に力が籠っていた。
苦しげに呻く雪風の言葉に我に返って手を離した。
「あ、ご、ごめん」
雪風は俺に掴まれた右の方の肩に手を当てて何回か摩った。
それから、自分を落ち着かせるように、一息入れて喋り出す。
「お願いだから私の言うことを聞いて欲しいの、兄さん。
ごめんなさい。
私も分かってたわ、これはシルフちゃんに見せたいんだって。
だから、きっと兄さんは嫌がると思って、ダメって初めは先生に言ったんだよ。
でも、先生の話を聞いて、きっと兄さんの為になるって思ったから」
「俺の為に?」
「そうだよ。
兄さんは今までと違って、絵を描く事が好きになれたからね、
いつか、兄さんはもっと上手くなりたいって思うようになるわ。
その時の為にこうやって人から評価を受けることが可能性を拡げるからって。
……全部、先生の受け売りだけどね」
雪風はそう付け加えて表情を和らげる。
「確かに俺は絵を描くのが楽しいって思うよ。
けど、どれはあくまで趣味の範囲の事だ」
「でも、いつかきっと趣味以上になると思うよ。
私は兄さんの側に居るから分かるわ。
自分では気付いてないかもしれないけど、
今の兄さんは絵を描いてる時に本当に楽しそうなんだよ。
あんな風に何かに熱中している兄さんなんて今まで見た事が無いもの。
兄さんって昔から何でも出来たのに、それが兄さんにとっての当たり前で、
何をやってても楽しそうじゃなかったじゃない」
「雪風はそう思っていたのか?」
「うん、だからいつも不安だったわ。
何でも出来るから、そのうち何にも興味が持てなくなるんじゃないかって思えて。
それに、母さんだって同じ心配をしていたんだよ」
「母さんもか……」
あのいつも能天気な母さんが心配していた、か。
「うん、それから私も凄く不安だったんだよ」
雪風がもう一度繰り返す。
けれど、口調は諭すような穏やかさで、そこに咎める意図は無いのが分かった
その雪風の姿を見て疑問に思う。
さっきまで何で俺はあんなに感情的だったんだろう。
雪風が俺にマイナスとなるようなことなんてするはずがないのに。
ただ、それでも雪風には一つ言っておかないと。
「確かに、雪風が俺のことを思ってこうやってくれたのは分かったよ。
けど、俺にとっては絵を描くよりもシルフが喜んでくれる方がずっと……」
雪風はその言葉にむっ、という様に顔を強張らせた。
そして、反則、とでもいうかの様に俺の前に人差し指を向ける。
「兄さん、そんな風にシルフちゃんを理由にして、
自分の可能性を閉じようとするのはシルフちゃんにだって失礼じゃないかな?
今言ってることって、シルフちゃんが兄さんの重荷だって言ってるようなものだよ。
そんな扱いをされてシルフちゃんは本当に嬉しいの?」
「あ……」
言葉を詰まらせた。
今、俺は知らず知らずにシルフを傷付けるだろうことを言ったんだ。
俺の表情を見て取った雪風はまた優しく微笑む。
そして、それ以上責めようとはしなかった。
「兄さんの言うとおりシルフちゃんの事は大事だよ。
でも、兄さんが自分のやりたい事を見つけるのはそれと相反する事じゃないわ。
だから、真剣に考えてみて欲しいな、兄さんは絵を描く事も大好きなんだって事も」
それから、ちょっとだけ気落ちをした笑顔になる。
「ふふ、それにシルフちゃん以外の人のこともね。
兄さんは知ってるでしょ、私も絵が大好きなんだよ。
本当の事を言うと、それを評価されたいって思っているわ。
だから、私はずっと前から真剣に書いていた絵を出したの。
でも、当選どころか相手にもされなかったみたいね、ほら」
雪風が新聞を俺の前に突きつける。
当然のように彼女の名前はそこに無かった。
「これが雪風みたいな普通の人の結果。
私だけじゃなくて数えきれないくらいの人が応募してて、
その中で兄さんの絵は選ばれて、評価されたの。
兄さんは自分では分かってないだろうけど凄い人なんだよ。
自分が好きなことがあって、それを実現できる力を持っている。
それがどれだけ素晴らしいことか、私はもっと真剣に考えて欲しいな?」
「ごめん」
俺は雪風に、俯くようにして頭を下げた。
謝罪の為というよりも恥ずかしくて雪風に顔を見せられなかったからだ。
雪風は俺のことを良く知っていたから、
俺の為に俺自身でも気付かなかった最良の選択をしてくれていたんだ。
それなのに、俺の視野はとても狭くなっていて、
その上、シルフと上手くいかなかったイライラを雪風にぶつけてしまった。
でも、雪風は怒らずに、優しく俺に分からせてくれた。
これではまるで自分自身が我慢の出来ない子供のように見える。
「ごめん、雪風」
「くす、良いよ。
許してあげるわ」
それから、そっと俺の手を掴んで雪風の頭の上に載せる。
「でもね、女の子に触れる時はもっと優しくないとダメだからね?
ふふ、シルフちゃんを撫でる時みたいにしてくれると嬉しいな」
「こういう風にか?」
シルフにいつもしているように雪風の頭を撫でる。
雪風の黒髪はしっとりとしていて、
一枚の上等な布のような触り心地だった。
「ん、すごく気持ち良いよ、兄さん」
雪風が気持ち良さそうに目を細める。
「俺もだ、撫でてて気持ち良い髪だよ」
「ふふ、シルフちゃんとどっちが良いかな?」
シルフの髪は細くてしなやかで、
毛並みの良い犬を思わせる位に良いさわり心地だ。
けれど、それでも雪風には敵わないだろう。
「シルフも良い撫で心地だけど、雪風の方が良いと俺は思うよ」
それを聞いた雪風は、くすくすと嬉しそうに笑った。
以上です。
ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
これは知らない誰かに見せるために描いたわけじゃないんだぞ。
↓
「これはこれは知らない誰かに見せるために描いたわけじゃないんだぞ。
申し訳ありません括弧が抜けていました、失礼します。
これは知らない誰かに見せるために描いたわけじゃないんだぞ。
↓
「これは知らない誰かに見せるために描いたわけじゃないんだぞ。
度々で申し訳ありません。
雪風マジ良妻
オモロー
GJ
このままじゃシルフちゃん爆発しちゃう
保管庫にある作品とまとめて読んだが面白いな
主人公が色々と危ない橋を渡ってるw
それ以上にキモ姉妹が危ない橋渡ってるんだけどな
妹なら俺の横に寝てるけど?
人肌恋しい季節だねお姉ちゃん
220 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/06(月) 00:16:46 ID:Z+Tk3/1p
俺達極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧_∧ ∧_∧ age
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(つ 丿 ( ⊂) age
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妹に管理されたい
姉妹の世話を焼いてるつもりが裏で完全管理されてるようなのがいい
いいね、裏表なさそうで実は
すごい腹黒いとか
こんばんわ。
>>150の続き投下します
エロ有りです。
225 :
狂依存 45:2010/12/07(火) 03:57:12 ID:QLsR7I1V
「ふぅ……」
麻由お姉ちゃんが掃除を終え、一息つく。
「後は……きゃっ!」
「えへへ……」
「ふふ……本当に甘えん坊さんなんだから。あん……」
掃除を終えたの見てすぐ抱きつく。
もう朝から何度もやっているが、まだ足りない。
「あっ、そこっ……ああぁぁんっ……」
胸を揉みしだきながら、顔を舐め回す。
麻由お姉ちゃんの胸は本当に何度味わっても飽きない。
「ああんっ、もうおっぱいばかり……やんっ……」
「あんっ、でもごめんね。今日はもうすぐ大学の友達が家に来ることになってるから……そろそろ……ね?」
そう言えば、そんな事言ってたな。
確かレポートの資料借りに来るとか何とか。
「そっか……じゃあ仕方ないね。」
「本当にごめんね。……ちゅっ」
謝って軽くキスをし、体から離れる。
もっとエッチしたかったけど残念だな。
ピンポーン。
「はーい。」
「お邪魔しまーす。」
それから程なくして、麻由お姉ちゃんの友達が家に来た。
麻由お姉ちゃんが出迎え、家にあげる。
ちょっと挨拶ぐらいしておこうかな。
「あっ。」
「えっと……弟さんでしたよね?」
「あ、はい。どうも。」
ちょうどリビングから出る所で鉢合わせになった。
実は以前にも家に来た事があって顔を合わせた事がある。
確か沙耶さんって名前だったかな。
その時も今みたいに軽く挨拶しただけだった。
「ほら、大輝。ボーっとしてないで、早く飲み物でも持って来なさい。」
「え?あ、うん……」
麻由お姉ちゃんが本当に久しぶりに僕に命令してきた。
まるで姉が弟をこき使うみたいな感じで。
「(いや、姉なんだよな……)」
今更この事実を再認識させられる。
どんな関係になろうと僕たちは「姉弟」以外の何者でもない。
周囲もそうとしか見ていない。
「姉弟か……」
それに今の麻由お姉ちゃんの態度。
何処にでもいる普通のお姉ちゃんのような、振る舞いだった。
流石に付き合ってるとは紹介出来なかったのだろう。
今みたいな感じでずっと接してくれてたら、どうなってただろう……
悶々としながら冷蔵庫からジュースを出して、部屋に持っていく用意をした。
226 :
狂依存 46:2010/12/07(火) 03:57:41 ID:QLsR7I1V
コンコン
「はい。」
「あ、どうぞ……」
ジュースを部屋に持って来て、テーブルに置く。
「あ、ありがとう。」
「いえ。その……ごゆっくり。」
バタン
「麻由ちゃんの弟さん、結構良い男だよね。何か優しそうだし。」
「え……?そうかな?普通だと思うけど。」
「そうだって。流石麻由ちゃんの弟さんだよね。あんまり似てないけど。結構モテるんじゃないの?」
「ど、どうだったかな?良くわからないけど。」
少なくとも女子にモテていたという話は聞いたことはない。
それに今は男子校に通ってるから、尚更浮いた話も無い。
だから、私も安心はしていたのだけど。
「付き合ってる人とかいるのかな?」
「え?」
どうする?
私は私と付き合ってるって言っちゃってもいいと思ってるけど、あの子がどう思うか……
「うん、いるみたい……」
「そっか……ちょっと残念。」
「え?」
「あ、ううん!何でも無い。」
まさか、沙耶の奴……
まあ、いいわ。
仮にあの子に気があったとしても、この様子なら今ので諦めてくれるだろう。
大輝も興味なさそうな感じだったし。
「(でも一応大輝が居るときに家に上げるのは、しばらく控えた方が良いわね。)」
悪い虫が付かないように私が守ってあげないと。
「それにしても急に髪切っちゃって、どうしたの?」
「え?ああ、うん、いつまでもあの髪型じゃちょっと子供っぽいかなあって思って。就活も近いし。」
「ん〜〜本当?男とか出来たんじゃないの?」
「ち、違うってば……」
当たっているけど……
でも、今はまだ言わない方が良い。
私達は一応戸籍上は姉弟だし、あの子の事も考えたら周りの目も少しは気にしないといけない。
「(本当、面倒だわ。)」
堂々と私と大輝は愛し合ってると言いたいのに、それが出来ないなんて。
「それよりさあ、この前バイト先で面白い事あったんだけど……」
「あ、うん……」
沙耶が別の話題を振り、この後は他愛も無いお喋りを続け、特に何事もなく過ぎていった。
「じゃあ、今日はありがとう。お邪魔しました。」
「うん、またね。」
バタンっ
「大輝、もうあの子帰ったよ。」
「あ、うん。」
沙耶さんが帰ってすぐ、麻由お姉ちゃんは部屋に入ってきてそう伝えた。
「ねえ、大輝……」
「ん?……んっ!」
「んちゅっ……ちゅっ、んふっ……んんっ……ちゅっ、ん、んちゅっ……はぁっ……!さっきは本当にごめんね……」
急に抱きついてキスし、謝ってきた。
227 :
狂依存 47:2010/12/07(火) 03:58:22 ID:QLsR7I1V
「さっきはって?」
いや大体想像は付くけど。
「沙耶が来た時、偉そうに飲み物持って来いなんて命令しちゃって……本当にどうかしてたわ、私。愛する夫にそんな事言うなんて……」
愛する夫って……
「別に怒ってないから、だから謝らなくてもいいよ。」
むしろ少し嬉しかった。
あんな普通の姉みたいに振舞ってくれたのは本当に久しぶりだった。
少しは弟として見てくれてたんだなあって思って。
「いいえ、本当に悪い事をしてしまったわ。あなたの為に何でもするって言ったのにあんな事言っちゃって……ごめんなさい……ちゅっ…ぺろ……」
「ちょっと……!何を?」
麻由お姉ちゃんは土下座して僕の足を舐め始めた。
「ん……本当にごめんなさい……れろっ、れろっ……ちゅっ……何でもするから、許してえ……ちゅっ……」
「も。もういいから!ね?」
そんなみっともない格好見せないで欲しい。
「ん……本当?私の事許してくれる?」
「うん、許すから。だから、もうそんな事しないで。」
「ありがとう……お詫びに何でもしてあげるね。」
いや、お詫びも何もいつも何でもしてくれてるじゃない。
「何して欲しい?何でも言って。」
「うん、じゃあパイズリしてくれるかな?」
とにかく何かやらせないと引き下がりそうにないので、適当に頼んだ。
それに麻由お姉ちゃんのおっぱい気持ち良いし……
「うん……じゃあ、やってあげるね。……んっ」
上着とブラを脱いで乳房を露にして肉棒を挟み、優しく擦り始める。
毎日の様にやってもらってるけど、やっぱり気持ち良い。
「んんっ……んっ。ちゅっ、ちゅ……ん……んふっ……どう?」
「うん、気持ち良いよ……」
「そう……良かったわ……ちゅっ、ちゅるっ……」
麻由お姉ちゃんの柔らかい乳房が擦れ合う感触が狂おしい程の快楽を肉棒に引き起こす。
本当に何度やってもらっても溜まらない。
「(でも、お姉ちゃんにこんな事やってもらうなんて……)」
少なくとも普通じゃないよな。
僕たちは姉弟なのに……
お姉ちゃん……麻由お姉ちゃん……
「……ん、んふ……ん、ちゅっ、ちゅぷっ…ちゅっ……」
亀頭を柔らかい舌で舐め回し、徐々にち○ぽを膨張させる。
「(う……気持ちよすぎるよ……)」
姉の柔らかい乳房に優しく圧迫された感覚と絶妙な舌使いとで早くも肉棒は爆発寸前だ。
「んっ……んちゅっ、ちゅるっ、ちゅ……ん、あん……」
「いいわよ……好きな時に出して……ん、んく……ちゅる……ちゅっ……」
麻由お姉ちゃんがおっぱいを擦るスピードを速め、絶頂に導く。
そして、口に咥えてしゃぶり始めた。
もう我慢の限界……
「(う、で、出る……)」
どぴゅっ!!どぴゅるるるるっっっ!!!
「んっ……!んん………」
麻由お姉ちゃんの口の中で達し思いっきり射精する。
「ん、んんっ……ん……ふふ……ごちそうさま。」
口の中で吐き出されたザーメンを、一滴残らず飲み干しお礼を言った。
何度やってもらっても本当に気持ち良い……
228 :
狂依存 48:2010/12/07(火) 03:59:09 ID:QLsR7I1V
「ねえ、他に何かして欲しい事はない?お姉ちゃんお詫びに何でもしてあげるわよ。」
「いや、もういいから。だから……」
「そう。でも、私本当に悪い事をしちゃったわ。物を扱うみたいにコキ使ったりして……最低のお姉ちゃんよね……」
「いや、別にもう気にしてないから。これからも何かして欲しい事があったら、何でも言っていいよ。」
「お姉ちゃんの事、殴ってもいいのよ。そのぐらい許されない事しちゃったんだから……この罪は一生かけても償えない位の重さだわ……」
「え?あの……」
というか、一体何を言ってるんだ?
あの位の事で何でそんなに大げさな……
「だから、一生あなたにご奉仕して何不自由ない生活をさせてあげる。気持ち良い事一杯させてあげるから……んく……」
そう言うと麻由お姉ちゃんは僕のち○ぽをまた咥え、しゃぶり始める。
「んちゅっ……ちゅるっ……ん、んちゅ、じゅるっ……ちゅ、じゅるっ……んん……」
麻由お姉ちゃんの舌に刺激されて再び肉棒が膨張し始めてきた。
「ん、んちゅっ、じゅるっ、ちゅっ、じゅるっ、ちゅ……さあ、入れてあげるからね……ん……」
「ん、んあああっっ!!あんっ!はっ……ああんっ!!」
自分から入れて腰を振ってくる。
膣壁にぎゅうぎゅう締め付けられ、擦れ合う感触が肉棒に更なる快楽を与える。
「あんっ!はあっ……ああんっ!はっ、いいわ……あんっ!もっと……もっと気持ちよくしてあげるからね……うあっ……!」
姉の悩ましい嬌声で段々欲情が増してきて、こちらもその気になってきた。
腕でがっちりと麻由お姉ちゃんを抱き、僕も腰を振り始めた。
「はああんっっ!!いやっ……あんっ!そんな……やっ……ああっっ、あっ!ああああんんっっ!!」
僕が腰を振り始めると、麻由お姉ちゃんも更に体を震わせ、喘ぎ声をあげながら激しく乱れ狂った。
そして更に膣壁がち○ぽを締め付け、絶頂へと導こうとする。
こうなったら、お互いもう何も考えられない。
ただ快楽を貪るだけだ。
「はんっ、ああっ……あふっ!はんっ!いやっ……あ、あっ!はんっ……!いあっ、やんっ、はっ!あっ、はっ、あああっっ!!」
「あっ、はんっ……いいわ……もっと、もっと突いてえっ!……あっ!……はんっ!……はんっ!やっ!」
その言葉で肉棒は早くも絶頂寸前に陥り、腰を振るスピードを加速させる。
先端を子宮にガンガン当てる度に、麻由お姉ちゃんは体をビクビク震わせている。
「麻由お姉ちゃん……もう……」
「ええ……いいわよ、あんっ!来て……お姉ちゃんのおま○こにいっぱい出してえ……あっ!やんっ!!」
「あんっ!あっ……はふっ!あん、やっ……イクっ!あんっ、イっちゃうっ……はんっ、あっ!はっ……はああああぁぁぁぁっっっ!!!!」
どぴゅっ!どぴゅるるるるるるっっっっ!!!
一気に絶頂に達し、精液を子宮に叩き込む。
麻由お姉ちゃんもぎゅうぎゅうに締め付けて、一滴も残らず受け止める。
「はあああぁぁぁん……あっ、はふっ……あん……はぁっ……はぁっ……」
しばらく二人で繋がったまま余韻を味わう。
麻由お姉ちゃんの中は本当に気持ち良い……
「どう?気持ちよかった?」
「うん、最高だったよ。」
「そう……ふふ、もっとしてあげるからね……」
そう言うと再び腰を振って押し付け始める。
「いや、もう……」
「遠慮なんかしないで……今日はあなたに酷い事しちゃったから、もっと、もっと気持ち良い事いっぱいしてあげる。ん……」
「あの……今日はもう疲れたから、そろそろ……」
これ以上続けてやられるとちょっときつい……
「ふふふ……そんな事言っちゃって……ほら、お姉ちゃんのおっぱいしゃぶって……」
う……
麻由お姉ちゃんが今度は僕の顔におっぱいを押し付け始めて来た。
「ほら……いっぱい味わっていいのよ……遠慮なんかしないで……」
乳房を顔にぐいぐい押し付けて、また僕を挑発していく。
柔らかくて大きな乳肉が顔に擦れ合う感じが、再び欲情をかき立てる。
「(う……気持ちよすぎるよ……)」
229 :
狂依存 49:2010/12/07(火) 03:59:53 ID:QLsR7I1V
「あんっ……また大きくなっちゃって……またいっぱい出してあげるからね……ひゃんっ!」
遂に我慢できなくなり、麻由お姉ちゃんのおっぱいに抱きつき、乳首に思いっきり吸い付く。
もう好きにやってやろう
「ひゃあっ!ああああんっ……いいわよ、やんっ、そこっ!はああっっ……」
ピンポーン
「!?」
その気になりかけた途端、家の呼び鈴が鳴った。
誰か来たみたいだ。
「ほら、麻由お姉ちゃん。誰か来たみたいだし、そろそろ……」
「このまま無視して続けましょう……折角いい所なんだし……」
「ダメだよ。ちゃんと出ないと。ほら、早くどいて……」
「あんっ……もう……」
麻由お姉ちゃんは渋々と僕から離れて、身なりを整える。
ちょっと助かったかも……
「あの、僕が出るよ。」
「いいわよ、私が行くから。そこで待ってて。」
ピンポーン
「はーい。」
再び呼び鈴が鳴り、麻由お姉ちゃんが急いで玄関に向かう。
「はい。」
「あら麻由ちゃん、こんにちは。しばらくぶり。弟さんと二人きりの生活はどう?ちゃんと元気にやってる?」
「あ、はい。何とかやってます。」
「そう、良かったわ。」
この声は隣の家の山内のおばさんの声だ。
僕も様子を伺いに下に降りる。
「あの、これ肉じゃが作ったんだけど、良かったらどうかしら?」
「あっ、そんな。わざわざどうもすみません。」
「いいえ。何か困ったことがあったら、いつでも言って頂戴。出来る事なら何でもするから。」
「はい、ありがとうございます。」
「それにしても、その髪型良く似合ってるわねえ。ますます綺麗になっちゃって。本当羨ましいわ。」
「いえ、そんな……」
「まあ色々大変だろうけど、大輝君と一緒に姉弟仲良くやるのよ。」
「あ、はい。」
「それじゃあね。」
バタンっ
「……」
姉弟仲良くか……
そうだよね。
僕達は「姉弟」なんだよな……
麻由お姉ちゃんとこんな関係になってるけど、これは普通の関係じゃない。
「(本当にこれでいいのかな……?)」
もし、今の関係が周囲にバレたらどうなるだろう?
少なくとも普通のカップルみたいに素直に祝福される事はない。
強引にでも引き離されちゃうかもしれないんだよな……
「麻由お姉ちゃん……」
「ん?何?」
「え?」
「今、私の事呼ばなかった?」
「え?あ、いや、別に……」
聞こえていたのか……
230 :
狂依存 50:2010/12/07(火) 04:00:43 ID:QLsR7I1V
「そう……隣の山内さんから肉じゃがを頂いたから、早速今日の夕飯に食べちゃおうと思うんだけど、それでいい?」
「うん、いいよ。」
「そう、じゃあ今日の夕飯はこれにしちゃうね。」
「うん。あの、麻由お姉ちゃん……」
「ん?ふふ、そっか……待っててね、今行くから。」
そう言うと、麻由お姉ちゃんが来て、また胸元をはだけだした。
「さあ、続きをしましょう……」
「えと、麻由お姉ちゃん、そうじゃなくてね、その……」
「さあ、私のおっぱい、好きにしていいからね……」
むに。
麻由お姉ちゃんが僕の手を胸に手を当てて、揉み始める。
大きくて柔らかくて気持ち良い……
「ほら……もっと、いっぱいしてあげるから……」
「あ、あの!今日はもう疲れたから、もういいや!お腹が空いたから、夕飯の準備してくれるかな?」
「そう……わかったわ。でもしたくなったら、いつでも来てね。」
そう言うと身なりを整え、すぐに台所へ向かう。
ごめん。
やっぱり、今の関係を続けていいのかわからなくなってきちゃったよ。
姉弟はもちろん、恋人や夫婦だって、今みたいな関係は普通じゃない。
第一、親とか周囲の人達に何て説明すれば良いんだ・
バレたら、唯では済まない。
少なくとも誰も祝福はしてくれないだろうし、異常者みたいに扱われちゃうかも……
麻由お姉ちゃんは、どう考えてるんだろう?
「(一体どうすれば……)」
一度は麻由お姉ちゃんを受け入れた筈だったのに、また迷いが出てきてしまった。
本当にごめんね。でも……
こんな関係続けていたら、お互いの為にならないし……
「(麻由お姉ちゃん……)」
麻由お姉ちゃんの事をぼんやりと考える。
「……う」
でも思い浮かぶのは、麻由お姉ちゃんの体の事ばかり……
弟の目から見ても、僕にはもったいないくらい綺麗でスタイルも良くて……
麻由お姉ちゃんの事は好きだけど……
でも、欲しい。抱きたい。
また体が火照って来てしまった。
「(でも、やっぱり……)」
「いいわよ……」
「……!?」
「したくなったら、いつでもしていいのよ……私はあなただけの物なんだから……」
「え、ちょっと……」
「ん、んふっ……ちゅっ、むちゅぅ……ん、んちゅっ、ちゅっ、んん……」
僕が困惑している間に抱いてキスをしてきた。
というか、いつの間に部屋に……
「ん、んちゅっ、むふっ……ん、んちゅっ、ん、んふっ……はぁっ……」
「ちょっと、どうしたの?いきなり……」
「いきなりも何も、私とセックスしたいんでしょ。だから来たのよ。さあ……また楽しみましょう。」
「いや、あの……」
図星だから、何も言えない。
というか、何でそんな事わかるんだ?
「大丈夫よ。夕飯の準備ならもう済ませたし。お姉ちゃんはねえ、あなたの考えてることは何でもわかっちゃうの。お姉ちゃんとエッチな事したいなあって思ってるとかね。」
「麻由お姉ちゃん。あの、やっぱり今みたいな関係は……んっ……!」
「むちゅっ、んふっ、ちゅっ、んんっ……ちゅっ、ぶちゅっ……むふっ……んんっ……」
231 :
狂依存 51:2010/12/07(火) 04:01:29 ID:QLsR7I1V
僕が何か言おうとすると、それを塞ぐように唇を押し付け、またキスを始める。
舌を出し入れしたりして、存分に貪るように激しく押し付けてくる。
頭がとろけるみたいに気持ち良い……
「ん、んちゅうっ、んふっ……ちゅっ……んちゅっ……はぁっ……」
「……あの、今日はもう……」
「いいのよ、何も考えなくて……あなたは好きな時に私を犯して、好きな様に使ってくれればいいの。それが私の一番の幸せなんだから……」
そんなのが幸せだなんて、おかしい。
姉弟でも恋人でもそんなのは普通じゃない。
「でも、僕達は……」
「余計な事は、考えないで良いのよ……周りがどう思おうが関係ない。あなたがしたい事好きにしていいんだから……」
耳元でそう挑発めいた事を囁く
何か香水でもかけているのか、頭がボーっとするような心地よい匂いがしする。
「さあ、始めましょう。ふふふ、こんなに大きくしちゃって……待ってて今、口で気持ち良くしてあげるから……」
「麻由お姉ちゃん、待って……」
「ん、んく……んちゅっ……ちゅるっ、じゅるっ……ん、んふぅっ、ちゅっ、じゅるっ……ちゅるっ……」
僕の制止も聞かずに、麻由お姉ちゃんは肉棒を口に咥えて、しゃぶり始めた。
口の中の粘液と舌で、肉棒が絡み合う時の快楽でまた膨れ上がってきた。
何度もしてもらってるけど、本当に気持ち良い……
「ん、ちゅっ……むちゅっ、じゅるっ、じゅっ、ちゅっ……ちゅっ、れろ、んちゅっ……んふっ、ん……」
亀頭や竿の部分を巧みに舐めまわしたり、キスしたりしてどんどん刺激を当てる。
その快楽で、段々何も考えられなくなってきた……
「んっ……べろっ、ん、んちゅっ……好きな時に出していいからね……ん、んちゅっ、れろっ、ちゅっ……」
「麻由お姉ちゃん、あの……」
「ちゅっ、じゅるっ……じゅっ、じゅるっ、ちゅっ、ちゅる……じゅるっ、ちゅる、んん……んちゅっ、ちゅっ……」
僕が快楽に流されようとするのを躊躇うとそれを許さないかの様に、口の中でち○ぽをしゃぶるスピードを速めて、更なる快楽を与える。
「ん、んちゅっ……ちゅっ……じゅる、ちゅっ……気持ち良いんでしょう?何も考えないでいいんだから……私を好きな様に襲って……んっ……ちゅっ……」
「さあ、またおっぱいで挟んで上げるからね……ん、んふっ……ん……」
また乳房で僕の肉棒を挟みこみ、パイズリを始める。
大きくて柔らかい乳肉にまた優しく包み込まれ、もう爆発寸前になってる。
「麻由お姉ちゃん、あの……僕たちは姉弟なんだよね……?」
「ん、んく……ん……そうみたいね。」
みたいねって……
「ちょっとふざけないで、真面目に……」
「姉弟とかそんなのはもう関係ないわ。現に私達は愛し合ってるんだから。ん、んくっ……ちゅっ、んちゅっ……」
「関係ないって、お姉ちゃんでいてあげてもいいって言ったじゃないか。」
「ん、ちゅっ……ええ、女として愛してくれるなら、なってあげても良いって言ったわね。それで?ん、んん……」
姉だから何だと言わんばかりに、ひたすらパイズリを続ける。
「えと、麻由お姉ちゃんの事は好きだよ。女性としても姉としても。だけど、今みたいな関係はちょっとどうかと思うんだ……」
「……ん、んく……ちゅぅ、ちゅっ、じゅるっ……ちゅっ、ちゅっ……」
麻由お姉ちゃんは僕がそう言うと、乳房を擦るスピードを更に速めて、亀頭も舌で積極的に舐めてきた。
その姉がもたらす快感で、理性がどんどん失われていく。
「……あの、麻由お姉ちゃんは本当に今の関係が良いと思ってるの?」
「ん、ちゅるっ……ええ、とっても幸せよ。当然じゃない……愛する人に尽くす事は女として最高の喜びなんだから……ん、んちゅっ……」
「そ、そう……」
やっぱり駄目か……
「ん、ちゅっ……さあ、早く出してえ……ん、んちゅっ……ちゅっ、ちゅるっ……」
麻由お姉ちゃんがスパートをかけて一気にイカせようとする。
「(もう限界……)」
「ん、んちゅっ……ちゅるっ……じゅるっ、ん、むちゅっ……ちゅっ、んちゅっ……」
びゅくっっ!!!びゅくるるるるっっっ!!!
「はむ……ん、んん……ん……」
口の中で今日何度目かの射精をする。
麻由お姉ちゃんはがっちりと肉棒を咥えて、一滴も残らず飲み干そうとしている。
「ん、んん……ん……はぁっ……ふふ、何度飲んでも美味しいわ……」
232 :
狂依存 52:2010/12/07(火) 04:02:55 ID:QLsR7I1V
「麻由お姉ちゃん、ちょっと話があるんだけどいいかな……」
「まだまだ、し足りないのね。いいわよ。満足するまで好きなだけやってあげるから……」
「そうじゃなくてさ。僕たちの今後について、その色々と考えないといけない事があるんじゃないかと思って。」
「……」
麻由お姉ちゃんは黙って僕に抱きつき、胸を押し付けて腰を振ってくる。
まだまだ、離すつもりはないようだ。
「えとさ……お父さんとかお母さんには、僕たちの事何て話せばいいのかな?いつまでも黙ってる訳にもいかないよね。」
「……」
「そ、それにもし、僕の関係が他の人にバレたら色々とまずい事になると思うんだ。その、やっぱり姉弟である訳だし……」
「大丈夫よ。」
「え?」
「ふふふ……そんな事心配してたんだ。そんなの全部お姉ちゃんに任せていいわ。だから、あなたは何も考えず、好きな様に私を抱いて犯してくれていいのよ。」
全部任せて良いって……
「でも、大事な事だし、ちゃんと話し合ってどうするか考えないと……」
「心配しないで、お姉ちゃんに全部任せて。悪いようには絶対にしないから……だから、あなたは今までみたいに、私に何でもしていいのよ。」
「でも……」
「……お姉ちゃんの事、そんなに信用できない?」
「ええ!?いや、そんな事全然無いけど……」
そう言われると、ちょっと弱いな……
「ふふふ……だったら安心して、私に任せて。あなたが心配してる事は全部私お姉ちゃんが何とかしちゃうから……」
「う、うん……」
本当にそれで良いのだろうか?
少し嫌な予感もするけど……
「さあ、続きをしましょう。それともご飯にする?」
「えっと……」
「わかったわ。続きをしましょう。まだまだこんなに元気なんだし……」
「え?あの……」
答えあぐねていると、麻由お姉ちゃんは僕のち○ぽを太股でさすって刺激してきた。
「ん、ん……さあ、おっぱいも触って……」
僕の手を自分の胸に当てて、どんどん挑発してくる。
さっき出したばかりなのに、また欲情してきちゃったよ……
「ん……あんっ……そうよ……もっといっぱいお姉ちゃんのおっぱい弄って……あなたの気が済むまで私を犯してえ……あんっ……!」
抑えきれなくなって、麻由お姉ちゃんのおっぱいを揉みしだき、押し倒す。
そして、自分の肉棒を膣穴に当て一気に中に入れる。
「ん……はあああああんんんっっっ!!!あっ、やんっ!はっ……あっ、ああぁぁんっっ!!」
「あっ!はふっ、あんっ……いいわよ、もっと……もっといっぱい突いてえ……!はっ!あっ……はっああんっ!」
麻由お姉ちゃんが妖しく乱れ狂う姿を見て、何も考えられなくなり、がむしゃらに腰を動かす。
麻由お姉ちゃんの中でぎゅうぎゅうに締め付けられた肉棒はそれがもたらす快楽でどんどん膨張し、また爆発寸前になる。
もう、今はこの快楽を楽しもう……
「あんっ!はっ!やあんっ!そうよ……お姉ちゃんと一緒に、好きなだけ……あっ!あん!気持ち良い事しましょう……はっ…あっ、あんっ!」
「あんっ……はっ!やっ……イっちゃう、また……あんっ!イっちゃうっ!あっ、はんっ!やんっっ!」
233 :
狂依存 53:2010/12/07(火) 04:03:38 ID:QLsR7I1V
先の事は今はどうでもいい。
とにかく、絶頂に達することだけを考えて一気にスパートをかける。
「はんっ……やあっ!イクっ……また、あんっ!はあっ……あっ……はんっ、やっ!あっ、あああぁぁぁぁっっっ!!」
どぴゅっ!!どぴゅるるるっっっ!!!
「はあああぁぁぁんんっっ……あっ、あんっ……また中にいっぱい……」
また麻由お姉ちゃんの中で達し、思いっきり精液を流し込んだ。
さっき出したばかりなのに、こんなに……
「はぁっ…はぁ……また私の中でこんなに出しちゃって……本当に嬉しいわ……」
そのままぐったりと倒れこみ、麻由お姉ちゃんと抱き合う。
本当にこのまま麻由お姉ちゃんに全てを任せていいのかな……
「はぁ……はぁ……ふふふ、いいのよ……あなたの面倒は全部お姉ちゃんが見てあげるから……」
「うん……」
「さあ、夕飯にしましょう……」
「あの、もう少し……」
もう少し抱いていたい。
この心の何処かにある不安な気持ちをやわらげる為に。
「いいわよ……もっと、お姉ちゃんに甘えてね……」
こうして、しばらく二人で抱き合ったまま余韻に浸った。
本当に大丈夫なんだよね……
じゃああああ
「今日もいっぱいあの子に愛してもらったわ……」
あの子が寝静まった後、浴室でシャワーを浴び、体を洗う。
あの子がいつ起きて、私を抱いてもいいように体は綺麗にしておかないと。
特に今は暑い時期だから、念入りに汗は流さないといけない。
「それにしても、可哀想な子……」
まだ、私たちが姉弟である事を気にしていたなんて……
折角私だけの物になったと思ったのに。
「確かにこのままじゃいけないわね……」
親とか世間体を気にすることなく、早く私の事だけを考えるようにしてあげないといけない。
もっと、もっと私を愛してくれる様になってもらわないと。
そして時期が来たら、親や友達に打ち明ける。
きっと反対されて家を追い出され、この場にいられなくなるだろうから。
そしたら誰にも知らない所で夫婦として暮らしましょう……
まだあの子がそこまでの覚悟が出来ていないみたいだから、まだ表向きは姉として振舞ってあげるけど。
「もうちょっと待っててね……」
周囲の目なんか気にせず、私を見たら抱くことしか考えられなくなるぐらい、気持ちよくしてあげるからね。
私なしでは生きられない体にしてあげる。
これが、私たちの一番の幸せなのだから……
以上です。
ありがとうございました。
235 :
名無しさん@ピンキー:2010/12/07(火) 08:36:01 ID:ggHdlJSR
おはよう。
あいかわらずすごいなあ。
たまげたなあ。GJ!
羨ましいなあ全く
今日もいい姉っぷりだったぜ
GJ!エロい姉だなw
次も期待!
>>234GJ
坂本龍馬暗殺の真相“新設”
実はお龍と結婚した龍馬に激怒した土佐の乙女姉さんの犯行だった!?
所で特定の作品の事では無く一般論的な物語のエンド部分の質問なんだが・・・
@やっぱり最後はキモ姉妹に結ばれて欲しいな
A義理のキモ姉妹なら結ばれても良いかな
Bキモ姉妹が結ばれる事にこだわり無し!
Cやっぱ‥近親相姦はアカンよ〜
D私は泥棒猫の味方です
EハーレムEND最高
Fキモ姉妹には悲劇がよく似合う
G決着は曖昧にした方が良い
みんなはどれ派?
相変わらずエロいGJ!
3
>>239 Hやはりキモウトには勝てない
逃亡先で捕まり監禁、拷問、洗脳され妹のことしか考えられない廃人にされる
シリアスなら7 ギャグなら5
白い少女は一人で星を見上げていた。
「あれはこと座、その上にはくちょう座、下にわし座。
あれはさそり座、まっ赤な星がある」
少女は一人で星座を数えていた。
全て昨日、少年に本で教えてもらった。
今まで全然星座を知らなかったけれど、少女は必死で覚えようとした。
今夜、ここで三人で一緒に星を見る為に。
きっと少年が一つ一つ覚えた星を指差して教えてくれる。
それから、一緒におやつも食べる。
だから、今夜ここに来るのがとても楽しみだった。
「つまらない」
少女は呟いた。
けれど、それは誰も聞いていない。
彼女は一人だったから。
「……嫌」
今までは一人で居ると誰の目にも触れないから好きだった。
でも、少年たちと暮らすようになって一人で居るのが嫌になった。
「お兄ちゃん?」
ここに居ない大事な人を呼ぶけれども、やはり返事は無い。
「あれはいて座、となりにへびつかい座……」
しばらくしてから少女はまた星座を数えだした。
寂しさを紛らわしかったから。
「しっかし、先生も強引だよな〜。
勝手に人の絵を賞なんかに出してくれやがって」
その声で私は目を覚ました。
お兄ちゃんの膝に座ったまま、うとうと眠っていたようだ。
壁に立て掛けてある絵に目を向けた。
あの廃墟で独り佇む私の絵、まるでさっき見た夢のように見える。
でも、絵の中の私は、子供の私じゃなくて今の私。
「とは言え、お蔭様で少し賞金が貰えたのはありがたいか。
シルフ、何か欲しいものないか?」
とっても綺麗な絵だと思う。
青いような夜空に、白い少女がくっきりと浮かび上がっている、でも。
「お〜い、シ〜ル〜フ〜?」
お兄ちゃんがぽんぽんと私の頭を叩く。
「え、あ、ごめんなさい、お兄ちゃん」
「おいおい、最近ぼんやりしてる事が多いぞ。
ま、それもシルフらしいのかな?」
「うん、気をつける」
「くす、そっちの方がシルフらしくて可愛いよ。
その絵、気に入ってくれたか?」
「うん、とっても綺麗だと思うよ。」
すると、お兄ちゃんが少し残念そうに笑った。
「気に入ってはくれない、ってところかな?」
「ううん、私も好きだよ。
だってお兄ちゃんが描いてくれたんだもの」
本当はお兄ちゃんには悪いけど、この絵は好きじゃない。
そこにはお兄ちゃんが居ない。
まるで私だけあの時の廃墟に取り残されて、そのまま成長したように見える。
それでは私が本物の幽霊みたいだ。
きっとあの絵の中の私は幸せじゃない、だから好きになれない。
「いいんだよ、無理しなくても」
お兄ちゃんが慰めるような優しい口調で言う。
「ううん、好きだよ……」
きっと私の気持ちをお兄ちゃんに悟られた。
お兄ちゃんはそんな答えは求めてなんていない。
求めていない答えなんて言ってはいけないのに。
「私はこの絵が本当に好きだよ」
必死にお兄ちゃんにそう訴えた。
すると、お兄ちゃんは黙って私の頭を撫でてくれた後、立ち上がった。
「え、お兄ちゃん、何処に行くの?」
「ああ、ちょっと大学にな」
「今日は日曜日だけど?」
「夕飯までには戻ってくるよ。
ちょっとだけ絵を描きたくてさ。
そうだな、別に賞を貰ったからとかじゃなくて、
どうしても描きたい物が前からあったんだ。
きっとその絵ならシルフも気に入ってくれると思う」
お兄ちゃんが照れくさそうに笑う。
「うん、楽しみにしてるね」
本当はお兄ちゃんの手を掴んで引き止めたかった。
絵なんてもう描かないでずっと私と居て、って言いたかった。
******************************************
お兄ちゃんはまだ帰ってきていない。
今、お兄ちゃんは何処で何をしているのだろう?
きっと、学校で、絵を描いている。
私をここに置いてきぼりにして。
違う、そんな訳ない。
お兄ちゃんは私の為にって言っていたのだから。
絵なんかより、私の方が大切に決まっている。
でも最近、お兄ちゃんが分からないって思う事が増えた。
お兄ちゃんの事を知れば知るほど、
お兄ちゃんが分からなくなる、そんな気がする。
決してお兄ちゃんが私を蔑ろにしている訳じゃない。
全く逆、いつもとても大切にしてくれる。
でも、私には何かが不安だ。
大切にしてもらえれば、それだけ嫌な予感がする。
だけど、いつかお父さんやお母さん達みたいに居なくなっちゃいそうで、怖い。
だから姉さんに相談する事にした。
姉さんならお兄ちゃんの事は何でも分かるから……。
お兄ちゃんの大事な妹だから。
「珍しいね、シルフちゃんからお姉ちゃんに相談だなんて」
姉さんが私にお茶を淹れてくれた。
「姉さん、私、姉さんに聞いて欲しいの……」
「良いよ、雪風お姉ちゃんに全部話して」
優しい姉さんの表情に心がほっとする。
その姉さんの優しさに勇気付けられて、
私は今まであった事を全部、姉さんに伝える事が出来た。
お兄ちゃんが私が作るよりおいしいご飯を作ってくれた事。
一緒に居てくれるってずっと昔にした約束を覚えてくれていた事。
それから、あの絵が嫌いな事。
私はお兄ちゃんに私の為の絵なんて描いて欲しくない事。
なのに、最近のお兄ちゃんは暇さえあれば私の為っていう絵ばかり描いている事。
そんな事よりももっと私と一緒に居て欲しいって事。
「ふうん、そうだったんだ。
それでシルフちゃん、お姉ちゃんはどうすれば良いのかな?」
姉さんが微笑みながら、柔らかい声で私に問う。
「分からない、でも姉さんに聞いて欲しかったの。
姉さんなら本当の兄妹だから、お兄ちゃんの事、何でも分かるから」
「ねえ、シルフちゃん?」
いつものように姉さんの声は暖かい。
それが不安な今の私にはとても心強く感じられる。
「うん、姉さん」
お願いだから、助けて。
「あのさ、シルフちゃんって、
他人の気持ちが分からないんだね、
ってよく嫌われないかなぁ〜?」
時間が止まった。
姉さんはいつもみたいに優しく笑っている。
ただ、いつもと違う事を言っただけ。
たったそれだけなのに、私は動けない。
「え、ね、姉さん?」
姉さんは私の戸惑いを無視するかのように淡々と続ける。
「シルフちゃんってみんなに嫌われるのが、
外見のせいだっていつも私達に言っているよね?
そんな事無いわ、シルフちゃんは妖精みたいにとっても可愛いよ。
お姉ちゃんだって本当は嫉妬するくらいだもの。
シルフちゃんみたいに可愛かったらきっと兄さんも私に夢中になってくれるのに、
って何回考えたか数えきれない位なんだよ。
なのにシルフちゃんは見た目が不気味だから人から嫌われてるって言うの?
違うよね、本当は今みたいに人の気持ちを大事に出来ないからだよね?
だから、シルフちゃんは嫌われるんだよ」
嫌われる、姉さんにそうはっきり言われて胸がずきりと痛む。
別に他の人にならいくらでも嫌われていい。
ただ、お兄ちゃんと姉さんだけには絶対、嫌だ。
なのに姉さんがそんな事を言うなんて、どうして……?
「ふふ、シルフちゃんの言っている事ってね。
お姉ちゃんにはこう聞こえるんだよ?
私だけの為に兄さんが料理を覚えてくれて、
私だけの為に兄さんが絵を描いてくれて、
私だけの為にずっと一緒にいてくれるって、
そんな約束を兄さんが守ってくれて幸せなんだ〜。
でも幸せすぎて不安になるから、
もっと幸せになりたいから、姉さんは私の為に何かしてくれないのって。
お姉ちゃんならお兄ちゃんの本当の兄妹なんだから、
お兄ちゃんの大事なシルフちゃんを当然幸せにしてくれるんでしょ、って。
シルフちゃんはそう言いたいのかな?」
「ち、違うの、私は……」
「いいな〜、シルフちゃんはそうやって駄々を捏ねて泣き付くだけで、
兄さんが可愛がってくれるんだもんね〜」
ただ怖かっただけなのに。
姉さんならきっと助けてくれるって思っていたのに。
「シルフちゃん、お姉ちゃんが前言った事、覚えてるかな。
お姉ちゃんね〜、もう兄さんから見捨てられちゃったんだよ?」
姉さんの笑顔は私には冷たく、暗いものに見えた。
「兄さんは、雪風よりシルフちゃんの方が大事なんだって〜。
それは覚えているよね?
この前、シルフちゃんがちゃ〜んと聞いてくれたんだもの」
姉さんの追及に胸の鼓動が止まりそうになる。
やっぱり、姉さんは見ていたんだ……。
「でも、姉、さんは見捨てられてなんて……」
「うるさいなぁ」
とても煩わしそうに姉さんが言った。
その言葉に全身がびくりと固まる。
「一つシルフちゃんに教えてあげるね。
そうやって無神経なことをべらべら喋られると
いくらお姉ちゃんだからって段々苛々してくるの。
分からないわけないよね?」
私は姉さんの問い掛けに声が出せなかった。
「どうしたの?
何か言ってくれないと、お姉ちゃんは分からないよ?」
「……ごめんなさい」
それだけしか言えない私を睨み付けて、
はぁー、と姉さんが深いため息を吐いた。
「あのさ、もう私も我慢し切れないなから、
今からシルフちゃんに酷い事を言うけど許してね。
良いよね、今までずっと我慢してきたんだし……」
251 :
幸せな2人の話 15:2010/12/10(金) 23:16:47 ID:AuzlL4T4
ヒトノ気持チナンテ何モ分カラナイシルフチャンハ、
絶対ニ兄サンニ嫌ワレルヨ。
ダカラ、早ク兄サンニ見捨テラレレバ良イイノニネ。
要ラナイワタシミタイニ。
姉さんはそう吐き捨てた。
その時の姉さんの目はいつか見た夢の中の女の子と同じだった。
******************************************
姉さんと話をしてからどれくらいが経ったのだろう。
姉さんはとっくに部屋を出て行った。
お茶は冷たくなってて、外はもう暗くなり始めている。
でも私はずっとここから動けていない。
私は姉さんに嫌われたの?
姉さんは私よりも何でもできるのにいい加減で。
いつも能天気で。
良く私に抱きついてきて。
暑苦しくて。
とってもおせっかいで。
でも誰よりも優しい人で……。
私は、そんな姉さんに嫌われたのかな?
姉さんに言われた、私は嫌われるって。
どうして?
どうしてだろう、どうして私は嫌われるの?
気が付くと涙が止まらなくなっていた。
動けない位に、独りぼっちなのが怖くて堪らなかった。
その時にお兄ちゃんがやっと帰ってきてくれた。
だから、私はお兄ちゃんに抱きついて泣いた。
お兄ちゃんは困惑しながら、私を優しく撫でてくれた。
どうして泣いているのかを聞こうとしてくれた。
でも私は言えなかった。
きっと、姉さんに嫌われたって知られたら、
お兄ちゃんにも嫌われてしまうから。
そんなの嫌だ、絶対に嫌だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
そんなの、嫌。
お兄ちゃんに嫌われるのだけは嫌だよぅ……。
今晩は、投下の宣言を忘れていました。
以上で今回は終了です、ありがとうございました。
一応、話の結末までは書き上がりました。
次回もよろしくお願いいたします。
GJ!
遂に仕掛けてきたかww
これからの雪風の同行が気になるな
GJ!
展開が読めない・・・
続きも全裸で待ってます
GJ!
こいつは凄いぜェッ!!
投下乙!
これはシルフが暴走しそうなヨカン!
面白かった
雪風はいいかんじにキモいな!
シルフちゃんがこのまま天使なのかキモ化するのか、楽しみにしてます!!
メ欄を演出に使うとは……職人さんマジ職人
雪風を産む機械にしたい
ところでリアル妹が居るこのスレ住人なんだけど、妹がもし彼氏連れて来たらどう反応したら良いか今から考えてる……
変なのだったらブチ切れて良いだろうか……
>>262 まあ若いうちの恋人ならやーやー言う必要はないんじゃない?
このスレで描かれるお兄ちゃん的にはとりあえず自分の妹がキモウトじゃなかったことに安堵する、が正解。
まぁ実際妹が彼氏とイチャイチャしてるのはいい気分じゃないよね|( ̄3 ̄)|
265 :
262:2010/12/14(火) 13:14:09 ID:KdCqk/es
>>264 うん、多分ねー、妹が彼氏とイチャついてるのを実際見たら、それだけで結構動揺しそう。
なんか嫉妬というか、妹も女なのかーみたいな複雑な感情が想像しただけでヤバイ……
ちゃんとした対応出来るかものっそい不安だぜ
>>263 やっぱあれか?お兄ちゃんは理解してるよ、みたいな寛容な感じを示さなきゃいけないのか?
でも、相手がチャラかったりしたら自分がブチ切れそうで怖い
多分、娘を嫁にやる親ってこんな気持ち……
住人が餌をあげるからつけあがるんだよ
スレチだから消えとけ
自意識過剰の自分語りもキモい
>>266まあまあ・・・
兄を嫉妬させたいキモウトか妹を排除したいキモ姉の策略レスなんだよ
三次は惨事というじゃないか
違いのわかる紳士は云々
三つの鎖 30 前編です。
※以下注意
エロ無し
血のつながらない自称姉あり
投下します。
三つの鎖 30
兄さんと夏美。
手を取り合う二人。
その二人の左手の薬指で、銀色の指輪が鈍い光を放っていた。
私はその光景をただ眺める事しかできない。
誰かが私を呼ぶ。
「梓。起きて」
誰かが私を揺さぶる。
私は目を開けた。
兄さんが心配そうに私を見下ろしていた。
「そろそろ起きないと遅刻するよ」
私は上半身を起こした。
全身が汗でべとついている。体が重い。寝た気がしない。
のろのろと顔をあげる私に兄さんはペットボトルを渡してくれた。
既に蓋は開いている。少しぬるめのスポーツドリンク。私は一気に飲んだ。
時計を見ると、もう既に遅い時間。
「お父さんとお母さんは?」
「もうご飯を食べて出勤したよ。ご飯を食べてないの、梓だけだよ」
「…何で起こしてくれなかったの」
いつもはもっと早くに起こしてくれるのに。
「京子さんが起こしに行ってくれたんだけど、疲れているみたいだからもう少し寝させてあげてって」
それだけで私は理解した。
きっと、兄さんは夏美にプロポーズした事をお母さんに報告したのだろう。それで気を遣ってお母さんが起こしに来てくれたけど、疲れている私を見てもう少し寝させてくれたのだろう。
「梓?」
訝しげに私を見つめる兄さん。
兄さんの左手で、銀色の指輪が鈍い光を放っている。
微かに、頭痛がした。
「何でもないわ。先にシャワーを浴びる」
「分かった」
そう言って兄さんは部屋から出ていった。
兄さんは変わらない。
例え夏美にプロポーズしても、私への接し方を変えたりはしない。
あくまでも妹として私を扱う。
それが、辛い。
微妙な距離のまま学校までの道を歩く。
友達でも兄妹でも恋人でもない、微妙な距離。
もっと兄さんに近づきたい。それなのに、できない。
どれだけ兄さんの近くにいても、兄さんに触れていても、兄さんの心に一番近いのは私じゃない。
兄さんにとって私は何なのだろう。
ただの妹でしかないのだろうか。
これだけ愛しているのに。
女としては見てくれないのだろうか。
気がつけば、既に学校の靴箱についていた。
ここで兄さんとお別れ。
「梓。それじゃあ」
そう言って兄さんは去っていった。
兄さんの大きな背中が、徐々に小さくなっていく。
追いたくても、追えない。
だって、兄さんを追っても、追いつけない。
どれだけ傍にいても、兄さんの心にいるのは私じゃない。
私は教室に入った。もう既に半分近く席は埋まっている。
その中に夏美がいた。椅子に座って、静かに自習していた。
落ち着いた静謐な瞳が教科書の文字を追っている。
その左手の薬指に、銀の指輪が鈍い光を放っていた。
私は立ち尽くすしかなかった。
「梓?どうしたの?」
後ろから私を呼ぶ声に私は我に返った。
どれぐらい立ち尽くしていたのだろう。振り向くと、美奈子が怪訝そうに私を見ていた。
「おはよー。どうしたの?入り口でぼんやりして」
「何でもないわ」
私は自分の席に座った。
夏美が私の方を見る。
「梓。おはよう」
微笑む夏美。
女の私から見ても魅力にあふれる明るい笑顔。
幸せそうな、女の笑顔。
「なつみー。おはよう!」
美奈子がうるさいぐらい元気に夏美に挨拶する。
「あれれ?その指輪…?もしかして加原先輩から?」
不思議そうに夏美の左手を見る美奈子。
普段は鈍いくせに、何でこういう時は鋭いのだろう。
「ええと、うん」
少し気まずそうに頷く夏美。その一方で目を輝かせる美奈子。
「田中先輩の言うとおりだったんだ。見せて見せてー。うわー。何か地味だけど、これはこれでいいかも」
困ったように眉をひそめる美奈子。言っている事は完璧にけなしているけど、美奈子に悪気は全く無い。
「村田先輩ってこういうのが好きなんだ。もっと可愛らしいのが趣味だと思ってた」
「え?ハル先輩?」
不思議そうな顔をする夏美。
「加原先輩と村田先輩が買い物しているのを見たから、きっと村田先輩がアドバイスしたのだと思うけど」
きょとんと見返す美奈子。
あの春子が、兄さんのプロポーズのための指輪選びを手伝った?
ありえない。
「ていうか、この学校そういうのうるさいから、外しておいた方がいいよ。先生に見つかると没収されるよ」
「え?そうなの?」
慌てて指輪をはずしポケットにしまう夏美。
それと同時にチャイムが鳴る。
自分の席に戻る夏美と美奈子。
私も自分の席に戻った。
指輪が放つ鈍い光が頭から離れない。
お昼休みのチャイムが教室に響く。一気に騒がしくなる教室。
教室の喧騒がどこか遠くに感じる。
鞄の中にはお弁当がある。兄さんが作ってくれたお弁当。
私はお弁当を手にした。
ちゃんと中身はあるのに、軽く感じる。
「なつみー。加原先輩の教室に行かない?」
美奈子の声が遠くに感じる。
「うーん。お兄さん、今日はハル先輩と食べるって言ってたから、私はいいよ」
「そう?あずさー。一緒に行かない?」
私は顔をのろのろと上げた。美奈子が笑顔で私を見ていた。
「田中先輩のお昼ご飯をチェックしに行こうよ」
「…約束しているの?」
私の問いにきょとんとした顔をする美奈子。
「してないよ。でもきっと大丈夫」
どこからその自信は来るのだろう。
「私はいい」
「そう?じゃあ私行ってくるね」
美奈子はお弁当を持って教室を出ていった。
「夏美」
私の呼び声に夏美は振り向いた。
「さっき、兄さんが春子と一緒に食べるって言ったわね」
「うん」
「何で?」
夏美は少し黙った後、ポケットから指輪を取り出した。
鈍い光が私を貫く。
「お兄さんからこの指輪の事は聞いた?」
「…ええ」
「お兄さん、ハル先輩に報告するって言ってた」
そうなんだ。
春子にはまだ報告していなかったんだ。
「夏美。一緒にお弁当を食べない」
「うん」
「色々お話聞きたいし、屋上に行かない?」
「うん」
私の言葉に即答する夏美。
屋上は人が来る事がほとんどない。夏は強い日差しで暑く、冬は強い風で寒い。人に聞かれたくないお話をするにはちょうどいい場所。
痛めつけるのにも都合がいい。
「行きましょう」
私と夏美は立ち上がった。
屋上の強い日差しの中、私と夏美は黙々とお弁当を食べていた。
痛めつける事はいつでもできる。まずはお弁当を片づけてから、話を聞けばいい。
「日焼けしちゃうけど、いいの?」
確かにこれだけ強い日差しだと、日焼けするかもしれない。
でも、別に兄さんは白い肌が好きというわけではない。だったら日焼けしても構わない。
夏美も平然としている。多分、日焼けに対してあまり関心が無いのだろう。
ほとんど喋らずにお弁当を食べたせいか、思ったより早く食べ終えた。
「夏美。兄さんがプロポーズしたのは本当なの?」
「うん」
落ち着いた表情で答える夏美。
胸が、痛い。
「夏美はそれを受け入れたんだ」
「…うん」
微かに頬を染めて夏美は答えた。
幸せそうな女の顔。
自分でも信じられないぐらい黒い感情が湧き上がる。
許せない。絶対に。
「何で断らなかったの」
私はゆっくりと夏美の胸ぐらに手を伸ばした。
「私が兄さんを好きな事、知っているでしょ?」
夏美の胸ぐらを掴む。いつでも投げられるように重心を軽く落とす。
「私から兄さんを奪うつもりなら、容赦しない」
夏美は落ち着いた表情で私の顔を見る。
「私、お兄さんに恋してる」
突然の言葉に私は戸惑った。
「何を言ってるの」
「でもね、愛してはいなかった」
夏美の言葉に怒りよりも戸惑いが生まれる。
「お兄さんの事を知りたかった。お兄さんに私の事を知って欲しかった。お兄さんを手に入れたかった。でもね、それだけだった」
「さっきから何を言っているの。好きならば当然じゃない。好きな人の事を知りたいし、好きな人に自分の事を知って欲しい。好きな人を手に入れたい。何がおかしいの」
悲しそうに首を振る夏美。
「愛ってそれだけじゃないよ。私ね、その事をお兄さんから教わった」
夏美は私の顔をまっすぐに見た。
背筋が寒くなるほど澄んだ瞳が私をとらえる。
「私、お兄さんを愛したい」
さっきから夏美は何を言っているの。
愛するって何なの。
好きと何が違うの。
「夏美の言っている事が理解できないわ。夏美の言う愛って何なの?」
「私、お兄さんに幸せになって欲しい」
「私だってそう思ってる。兄さんに幸せになって欲しいと思ってるわ」
「もし私と一緒にいない方がお兄さんが幸せになれるなら、私はそれでもいい」
夏美の言葉が理解できなかった。
「もしお私と一緒にいない方がお兄さんが幸せになれるなら、私はお兄さんから離れる」
静かな声で淡々と喋る夏美。
「愛するって、そういう事だと思う」
「何を綺麗事を言っているの。自己犠牲が愛だとでも言うの」
「違うよ」
夏美は悲しそうに首を振った。
「相手の幸せを願い、行動することが愛だと私は思う。自己犠牲と愛は違う。私はお兄さんのために自分を犠牲にしたいとは思わない。だって、そんな事をすればお兄さんは悲しむから」
夏美の左手の薬指で、銀の指輪が鈍い光を放っていた。
一瞬で感情が沸騰する。
夏美の悲鳴が聞こえる。
気がつけば、夏美は私の足元で苦しそうにもがいていた。
「けほっ…がはっ…」
苦しそうに咳をする夏美を見ていると、少しだけど気分が良くなった気がした。
「何が愛するよ。そのためには兄さんと別れても構わない?何よそれ。私に対する当てつけなの?」
夏美は苦しそうにもがくだけで何も言わない。いえ、言えない。
もがく夏美の左腕を踏みつける。
私は夏美の左手の薬指から指輪を抜き取った。
「ねぇ。どうなの?自分を犠牲にするのが愛じゃないって言ったわよね?だったらこの指輪を取り返せるの?」
夏美は苦しそうに立ち上がった。荒い息をつき、肩を上下さしている。
「それとも何もしないの?兄さんが夏美にプロポーズした証の指輪を奪われても指をくわえて見ているの?」
夏美の澄んだ瞳が私を見つめる。
「一つ言っておくけど、もし夏美がこの指輪を取り返そうとするなら、夏美を徹底的に痛めつけるわ」
夏美は息を整えて私を見つめた。
綺麗な瞳。その瞳が哀れみの感情を湛えている。
「…何なの。何なのよ」
「その指輪は確かに大切なもの。お兄さんが私に付けてくれた大切な指輪。でも、本当に大切なのは指輪なんかじゃない」
指輪、なんかですって?
「何なのよ。その言い方は」
指輪すらも貰えなかった私は何なの?
そこまで私を哀れむの?
「本当に大切なものは、お兄さんからもうもらった」
夏美は私を見つめた。澄んだ瞳が私を射抜く。
「欲しいと言うなら、その指輪をあげてもいい。お兄さんだって分かってくれる」
私は夏美の手を取って投げ飛ばした。
大けがをさせないよう、背中から叩き落す。それでも受け身をとれない夏美には相当の衝撃と痛みだろう。
悲鳴もあげずに地面を這いつくばる夏美。
その背中を私は踏みつけた。
「偉そうなこと言わないで」
私は肩を上下させて息をついた。
怒りが私から体力を奪っていた。
私は手を開いた。銀の指輪が鈍い光を放っている。
夏美がそこまで言うなら、この指輪は奪ってやる。
私が付けて、兄さんに見せつけてやる。
夏美は指輪を取り返そうともしなかったと言ってやる。
銀の指輪を左手の薬指に近付ける。
指輪ははまらなかった。
微かに指輪の方が小さくて、指を通らない。
顔から血の気が引くのが自分でも分かった。
ただ単にサイズが小さかっただけ。それだけ。
それだけなのに、兄さんに拒絶された気がした。
手が震える。指輪がこぼれ落ちる。
小さな音を立てて指輪が屋上に落ちる。
指輪は転がって夏美の足元に転がっていった。
まるで自ら夏美のもとに戻っていったかのように。
夏美は落ち着いた仕草で指輪を拾った。
気がつけば私は膝をついていた。顔をあげると、夏美が私を見下ろしていた。
「何でなの」
夏美は何も言わない。
「何で夏美なの。私の方が兄さんの傍にいた。兄さんをずっと好きだった。それなのに何で私じゃないの」
夏美は何も言わない。
「夏美だってそうよ。何で兄さんなの。他に男なんてどこにでもいるじゃない。よりによって何で私の兄さんなの。私の兄さんは、兄さんだけなのに。何で私から兄さんを奪うの」
兄さんの言葉が脳裏によみがえる。
(もし梓が妹じゃなくても、梓を女性として好きにはならなかった。恋人になりたいとは思わなかった)
血のつながりだけが障害だと思っていた。血のつながった兄妹だから兄さんは私を愛してくれないと思っていた。
(もし夏美ちゃんが血のつながった妹でも、きっと好きになっていた)
でも、違った。
私にとって、兄さんとの血縁は多くの物をもたらし、多くの物を奪った。
兄さんの妹だから知り合えた。傍にいられた。
兄さんの妹だから、女として見てくれない。
そう思っていた。
でも、実際は違った。
少なくとも、兄さんはそう言った。
私は、兄さんにとっていったい何なの。
ただの妹なの。
もし妹でなくても、女として見てくれない。
夏美は例え兄さんと血がつながっていても、女として見られる。
何なの。何でなの。
それとも、夏美の言っていた愛のせいなの。
夏美は愛があるから、兄さんに愛してもらえるの。
私は愛が無いから、兄さんに愛してもらえないの。
分からない。何も分からない。
夏美は何も言わない。
何も言わずに私の傍にいるだけ。
黙って私の言葉を聞いているだけ。
お昼休みのチャイムが鳴り、教室は一気に騒がしくなった。
さて、今日は誰と食べよか。
久しぶりに幸一と食べよか。
「こーいち。昼飯食べにいかへん」
幸一は困ったような顔をした。
「どないしたん。夏美ちゃんと食べるんか?」
「その」
幸一の視線の先を見ると、村田がおった。
ぼんやりと椅子に座っていた。
「春子に用事があって」
微かに胸が痛んだ。
でも、それだけやった。
「おーけーおーけー。またの機会に頼むわ」
「誘ってくれてありがとう」
俺は昼飯の菓子パンを持って教室を出た。
今日の村田と幸一の様子はおかしかった。
いや、幸一に関しては普通になった。いつも通りの落ち着きを見せている。今までが悩んでいるように見えたから、むしろいつも通りに戻ったと言っていい。
問題は村田。明らかに様子がおかしい。
授業中もぼんやりとしている。話しかけても上の空。
ショッピングモールで見かけた時はあれだけ楽しそうで幸せそうだったのに、見る影もない。
想像はつく。多分、幸一に振られたんやろう。
傍にいたいと思っても、できなかった。
失恋の辛さは俺もよく知っている。
しばらくはそっとした方がええ。
「田中先輩!」
そんな事を考えながら歩いていると、聞き覚えのある声が俺を呼ぶ。
美奈子ちゃんや。
元気いっぱい俺の方に走ってくる。
ついこの前の事が脳裏に浮かぶ。
俺の事を励ましてくれた後輩。
「こんにちは。この前はありがとうな」
「お昼食べましょう!!」
愛かわらず人の話を聞かへん子やな。
でも、今は一人でいたい。
村田のあの様子を見た後に、楽しく食事をとる気にはなれへん。
「あー、できれば一人でいたい気分やねんけど」
「大丈夫ですよ!」
いや、美奈子ちゃんは大丈夫かもしれへんけど、俺は大丈夫やないねん。
「ところで梓のお兄ちゃんはどこですか?」
「あー。村田と食うって言ってた」
「…そうですか」
明らかにテンションが下がった美奈子ちゃん。
やっぱり、夏美ちゃん関連で心配してるんやろう。
変な子やけど、根はいい子や。
「大丈夫や。幸一が夏美ちゃん一筋なんは知ってるやろ?」
「そうですけど…」
心配そうな美奈子ちゃん。
次の瞬間、悲鳴じみた声が響いた。
「それ以上言わないで!!」
女の子の声が廊下に響く。
知っている声。
村田の声。
騒がしかった廊下が急に静かになる。
教室から村田が出てきて、早歩きで廊下を歩く。俺の方に歩いてくる。
村田は泣いていた。
悲しそうに、辛そうに、涙をぽろぽろとこぼしていた。
いつもの笑顔は無く、涙でぐちゃぐちゃの顔があった。
「村田」
俺は思わず声をかけた。
一瞥もせず村田は去っていく。
その肩を、思わず掴んでいた。
「どないしたん」
「触らないで!!」
乱暴に俺の手を払いのけ、村田は去っていった。
俺は呆然とするしかなかった。
「あの、田中先輩」
美奈子ちゃんが心配そうに俺を見上げる。
「大丈夫や」
俺の声は嫌になるぐらい震えていた。
村田が泣いていた。
それだけで胸が張り裂けそうになる。
分かっている。俺にできる事は、何も無い。
村田が必要としているのは、俺やない。
胸が痛い。
涙が出そうになる。
泣いてしまう。そう思った瞬間、手が温かくて柔らかい感触に包まれる。
美奈子ちゃんが俺の手を握っていた。
小さな子供みたいな手が、俺の手をそっと包む。
柔らかくて温かい感触に、心が落ち着いていく。
ただ単に手を握られているだけなのに、信じられないほど安心してしまう。
美奈子ちゃんは何も言わない。心配そうに俺を見上げている。
「大丈夫や」
俺は美奈子ちゃんの手をそっと振りほどいた。
「…ありがとう」
美奈子ちゃんが俺の手を握ってくれなかったら、きっと泣いていた。
不思議そうに俺を見上げる美奈子ちゃん。
俺は自分の教室を覗いた。
幸一はすぐに分かった。幸一は身長が高いから、目立つ。
明らかに意気消沈している背中が目に焼きつく。
「美奈子ちゃん。幸一も飯に誘ってええ?」
「もちろんです」
幸一に近づき、背中をそっと叩く。
振り向く幸一。落ち込んだ表情。
「幸一。一緒に飯食いに行こうや。美奈子ちゃんもおるで」
少し迷った様子を見せてから、幸一は頷いた。
「中庭にしよか」
中庭はこの暑い季節でも風が気持ちいい。人は多いけど、座る場所はたくさんあるから話をするにも都合がええ。
俺達三人は教室を出た。
GJ!
梓そろそろ限界か、しかも再び春子も暗黒面に落ちそうだし
やっぱり三つの鎖はおもしろいな…
夏美はもう悟りを開いてるな
>>278乙
キモ姉やキモウトには挫折が
よく似合う・・・
春子と梓はこれから修羅の道を逝くのか?
幸せに成りそうなのは耕平と美奈子位かな
うわぁぁ、なんかもうヒヤヒヤするぜ
二人のキモ姉妹にはこの言葉を贈ろう
ケンシロウ「愛深き故に………」
これもう30話なんだ
愛の心にて悪しき空間を絶つんですね
…と思って読んでみたら絶つどころか滅多切りだった件について
梓春ざまぁと言うべきか幸一攻めすぎと言うべきか
三つの鎖GJ!!
春子カワイソス…ってかこのままだと幸一君死んじゃう!!
ってか春子のターンが回ったとき夏美ちゃん死んじゃう!!
梓が自傷行為始めそうな気がする…
義妹でしたエンドすらへし折られたキモウトって珍しいよな……
このスレに投下されてるような小説を沢山読めるサイトどこかないかな
梓がシンで
夏美がケンシロウにみえた
はじめまして、こんばんわ
投下させていただきます
・エロなし
・続きます
お目障りな場合は、トリか題名をNGにしてください
#0−1
ゆっくりと、視界が開けて行く。淡い光。
目を覚ました、彼の事を考えてなのか、節約のためなのか、部屋の照明は落とされて、カーテンの閉じられた窓から射す光が仄かに室内を照らしている。
目覚めたばかりの彼、御鏡朝陽(みかがみ あさひ)の視界いっぱいに天井が広がっていた。
所々がくすんだ白い天井。見慣れない天井だな、と思う間もなく、目を反らした。
起きぬけの彼にとってはくすんだ白い天井さえも眩しく感じられた。目を反らすだけでは足らず、首をひねり、顔を横向けに。勿論、光の漏れる窓ではない方向を。
――何故だろう。
首をひねる。たったそれだけの動作が、妙に鈍かった。ばきばき、と首から不穏な音さえ聞こえてくる。
まるで、寿命が近づいて、処理が重くなってしまったPCのような、そんな感覚。
自分の身体は、もう年老いてしまったのだろうか。朝陽は、こちらも処理の重い頭で状況を掴もうとする。あの日から、どれくらいが経ったのだろう。
「――?」
あれ?そう朝陽は呟いたつもりだった。しかし、喉がへばりついてしまっていて、どうにもうまく声が出せない。結局、ひゅう、と細い息が漏れただけであった。
しかし、そんな異変もいまの朝陽にとっては、優先順位が後であった。
そんなことよりも。
朝陽は、先の自分の思考に疑問をもった。
あの日っていつだ?自分の身体は、年老いているのか?じゃあ、自分は一体何歳なのだ?
朝陽の中に、ふつふつと疑問がわいてくる。それは、濁った泉に浮かぶ泡のように、弾ける事なく、次から次へと。
ここはどこだ。どうして、僕はここで寝ているのか。僕の身体はなぜ動かないのか。
僕?一人称が僕という事は、性別は男なのか?それとも、女なのか?一人称が僕である女というのも存在しないわけではない。
そもそも。
ズキンと頭に鋭い痛みがはしった。朝陽は、反射的に頭を抑えようとして、けれど腕は持ちあがらなかった。
そもそも、僕は、誰なのだ?
通常ならば、おかしな疑問だ。けれど自分という輪郭がぼやけて、掴めない。まるで雲をつかもうとしているかのような。
朝陽は、自分を探して記憶を探っていく。言葉をはじめとした知識はある。どうやら、記憶が全くないわけではないようだ。
けれど、思い出がひとつもない。
思い出の欠片を探して、更にさらに奥へ。不意に、朝陽の中で何かが過った。
――ゾクリ、とした。
黒く澱んだ塊のような感情。それは後悔や悲しみ、憎悪、罪悪感や無力感、そんな昏い感情を濃縮し凝らせたような。
恐怖に、体が震えそうになった。自分の意志では、上手く体を動かせないというのに。
怖いのに、朝陽の思考は止まらない。一歩一歩、確実に近づいていく。
ソレは暗闇の中、目を光らせてじっとこちらを見ている。
やがて、すぐ傍にたどり着いた。
朝陽の思考は、ゆるゆるとソレへと手を伸ばし――
――触れた。
「……っぁぁあああああ―――!?」
瞬間、泉一面を漂っていた泡が、計ったかのように一斉に弾けて行く。
原因は分からないのに、ただ昏い感情だけが朝陽を急き立てて。
朝陽は、無我夢中にへばりついた喉を乱暴に引き剥がしながら、叫んでいた。
その声は、まるで産声の様に白く、暗い部屋に響き渡った。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
叫びながら、朝陽はその言葉をまるで呪詛の様に、心の中で呟いていた。
ああ、どうして。
どうして目を覚ましてしまったのだろう。
ひときわ強い後悔の念が朝陽の胸をぎゅうと締め付ける。
つ、と朝陽の瞳から涙が伝う。
その涙が一体何に齎されるものかも分からないまま、朝陽は、一人涙を流し続けた。
#0−2
陽の昇らない毎日は、ゾッとするほど退屈で、色あせたものだった。
彼女の陽が沈んで既に1年が経とうとしていた。
彼女は、表面上はいつもと変わらぬ凛とした様を見せながら、心の中を巧みに覆い隠してこの1年を過ごしてきた。
もしこの世に他人の心の中が覗ける超人がいて、彼女の心の中を覗いたならば恐怖に怯え、眠れぬ日々を過ごす事になっただろう。
そして、人を超えた力をもって生まれてきた事を心から後悔する事になる。そのくらい、彼女の心中は澱み、蠢いていた。
2年前は、特に気にする理由もなかった何気ない日常の何もかもが、彼女をイラつかせた。
彼がいなくなった事を蔭ながら、けれど聡い彼女にはありありと分かるくらい喜んでいる親族。昔からそうだったが、最近、何かにかけて纏わりついてくる弟。
それら取るに足らなかったはずの事柄が、あの子が居なくなった途端に彼女の気に障るだけのモノになり果てた。
「ああ――」
そして今夜も、鬱陶しい弟を適当な理由でかわし一人部屋に篭り、月を見上げ嘆いている。
あの子がまさかこんな事になってしまうなんて。
全ての元凶は、あの女だった。思い出すだけで、ぎりり、と歯軋りが鳴る。あの女が忌々しくてたまらない。いや、あの女だけではない。
あれほど目にかけてやっていたのに、裏切られた。今より少し幼かったとはいえ、のうのうと信じ切っていた自分が忌々しいのだった。
それでも、何とかあの女に裁きを与えたまでは良かった。しかし、そこで想定外の失敗が生じた。
素性も知れない野蛮な屑共に任せたせいで、あの子にまで被害が及んでしまった。ぎゅう、と彼女は拳を握りしめた。あの屑共。怨嗟の言葉を呟く。
あの屑共には、ありとあらゆる苦痛と絶望を味あわせたのちに処分したけれど、それでも気持ちがおさまる事はなく、思い出すたびに腸が煮えくりかえる思いだ。
「ああ、朝陽」
彼女は、月を見上げたまま愛しい弟の名を呼ぶ。
あと数時間後には月は沈み、朝の陽が世界を照らすだろう。しかし、その陽は彼女の世界を照らす事はない。
そんな彼女をあざ笑うかのように、でっぷり肥った月が夜空を漂っていた。
彼女は、何を思ったのか、知らず、その月に向かって手を伸ばそうとして――
「夜空様」
――闖入者の声に、はっと我にかえる。
彼女の部屋、障子の戸の向こう、正座する男が頭を下げているシルエットが映っていた。彼女の事を夜空様とよんだその影の主は、彼女の家の使用人であった。
……こんな夜更けに訪問してくるなんて、少し配慮に欠けるわね。彼女は、形のいい眉をひそめた。
「何か用?」
底冷えするような、低い声で答えた。
例え自ら望んでの思考ではなかったとはいえ、思考を無遠慮に邪魔され、彼女、御鏡夜空(よぞら)の機嫌は一気に急降下していた。
これで下らない用事だったならば、この男の未来は暗く閉ざされることになるだろう。
夜空の八つ当たりの感は否めないが、彼女はこの家における法に近い存在、仕方ないと諦めるほかはない。
彼女の声の異質を感じ取ったのか、男の身体が一度小さく震えあがった。
「ご、御報告が……」
声も幾分か、震えている。しかし、そんな事は気にも留めず、
「それは、こんな夜分に、女性の部屋に押し掛けて来てまで、話すこと?」
むしろ、態と威圧するかのように、一つ一つ言葉を区切って聞き返した。
障子の前に座る男は、まるで断頭台に座っているかの気分であろう。彼女は、障子越しとはいえ男の気持ちが手に取るように分かった。
「あ、朝陽様の事でございます……」
そして、この報告が果して夜空にとって良いものなのか否か、男には判別がつかない、その事が一層恐怖を駆り立てていた。
御鏡夜空が弟の一人、御鏡朝陽に可愛がっていた事は、御鏡に仕える者たちの間では周知の事実である。
更にその中でもごく一部が、それが並々ならぬ執着である事を知っている。男は、その中の一人だった。障子の向こう、夜空が蠢いた音に微かに体を震わせる。
「話しなさい」
ぴしゃりと凛とした声が、静かな夜に響く。は、と男は声を震わせた後、
「朝陽様が、今日、目を覚まされたとの事です」
「……何ですって?」
それは、夜空がこの二年間で最も待ち望んでいた言葉だった。しかしそれ故に、疑心の様なものが彼女のなかに芽吹く。
「朝陽様が、今日の正午ごろに目を覚まされたと、医師の方から報告がありました」
「……正午?私の方には、今の今まで、何の報告もなかったのだけれど?」
朝陽が目を覚ました事実が今の今まで、自分に届いていないと言うのはおかしな話だった。
朝陽の入院する病院は、御鏡の息のかかった病院で、普通ならば、いの一番に医師から直接報告が来るはずではないか。
それともまさか、またあの糞爺の介入があったのだろうか。ありえない話ではなかった。あの老害ならばやりかねない。
「実は、その……し、少々、問題がありまして……」
男の更に縮こまった声が夜空の不安を更に煽ってくれる。
この先を聞きたくない、耳をふさいでしまいたい。そんな気持ちに駆られてしまう。そんな気持ちとは裏腹、実際は耳を澄まし、神経をとがらせている。
「そ、その……医師の話によると、朝陽様は、どうやら記憶を失ってしまわれているご様子で……」
「――記憶を?」
夜空は思わず怪訝な声を漏らした。その声に何を感じ取ったのか、ひ、と男の息遣いが聞こえた。
「そ、ど、どうやら今までの、思い出全てを失われているようで……」
勉強したことや、一般常識などの知識は忘れていらっしゃらないようなのですが、そう男は続けているが、既に夜空には聞こえていなかった。
記憶を失った。あの子が?
「それは、記憶喪失という事かしら?」
「え、えと、そうですね。一言で述べるならば」
ピントの何処かずれた夜空の問いに、男は戸惑いの色を見せる。
夜空は、そう、記憶喪失。と小さく呟いた。
記憶喪失。テレビや漫画などを殆ど見ない夜空にとっては、あまり耳慣れない言葉であるが、その症状くらいは分かる。
朝陽が記憶を失った。それは、話を聞く限り、今までの事全てを忘れているという事。
夜空と朝陽が今まで過ごした、彼女にとっては一つとして無駄なものなどない十何年もの日々を、全て。全て。全て。
一緒の布団で眠った事も、笑いあった事も、喧嘩をした事も、鍛錬しあった事も。何もかも、全て。
「そん……」
呆然とつぶやこうとして、はたと気付いた。全て忘れた?
がばっと、夜空は立ち上がった。二三歩大股に進むと、障子の前に立つ。頼りない壁を挟み、頭を下げていた男が、気配と物音に身を固くした。
「それは」
夜空の声は抑揚がなく、やけに平坦に響いた。
「それは、朝陽が生まれてこれまで出会った人間の顔も、名前も、まるっと忘れてしまったという事でいいの?」
「は、そう言う事になります。残念ながら、夜空様の事も――」
「――あの女の事も忘れた、そう言う事?」
「……」
「どうなの?」
「今のところ、れ、例外はないと言う事を聞いております」
「そう」
そう。そう。何度か呟いて、夜空は、ふらふらと数歩後ずさりした。
自らの、長い髪をかきあげて視線をさまよわせる。視線が、月を捉える。銀の月。何を思い、彼女を見下ろしているのか。夜空と月の視線が交錯する。
意識せず、夜空は口元をゆがめていた。何か、大きな感情がこみ上げてくる。
遠くから獣の遠吠えが聞こえる。ぐおお、ぐおお。喝采があがる。
夜空は、この時ばかりは感情に流されるまま表出する。
――くつくつ。
男は、笑い声を聞いた。
何か、地獄の底から這い上がってくるような、怖気の走る、そんな笑い声。大の男を逃げだしたい気持ちに駆らせ、けれど、その場に磔にする、そんな。
「ふ、ふふふふふ。そう、そう、そう。全て、あの女の事も……それは、それは」
笑い声の主は、当然夜空である。形の良い唇を下弦の三日月に歪め、いとも嬉しそうに。
「あの女、死んでも尚、無様な事ね。ふふふ、滑稽だわ。ねえ、そう思うでしょ?」
「……は」
「これは僥倖。不幸中の幸い、というのは、ふふふ、こういう事を言うのかな。考えうる最高の結末。ねえ、そう思わない?」
「……は……」
僥倖。弟が記憶喪失になった事をそう呼び、笑う夜空の気持ちを計りかね、男は曖昧な答えを返す。
夜空は、男の態度を気にした風もなく、笑い続けている。
「これはいいわ、最高よ。あの女のことも、かつての想いも全て忘れて、なかった事にして。
これからは、私と全部一から創り上げていくの。あの忌々しい女は、もういないのだから」
まっさらな朝陽。あの女は居ない。夜空と朝陽二人の間の障害は消え去ったのだ。朝陽の中の記憶ごと。
あの屑共も結果的には役立った事になる。
処分するのはやめにして、海外に奴隷として売り払うくらいですませてやればよかったかしら。ああ、でもそちらの方が苦痛かな。
そんな事を考えて、けれど、直ぐに彼女の思考は朝陽の事で埋め尽くされる。
漸く、彼女の世界を朝陽が照らす。けれど、浮かれ過ぎるのも良くない。今度は、二度と同じ過ちを繰り返さないようにしなければ。慎重に、確実に。
この機会を失えば、もう二度とこんな奇蹟は訪れないだろうから。
「朝陽、待っていてね、直ぐにお姉ちゃんと幸せになれるから」
漆黒の大海に浮かぶ満月に向かって、夜空は声を弾ませた。
――もう二度と、月のためになど泣いてやらない。今度こそ、唯一、望むものをこの手に。
#1−1
桜の花びら、桃色の花弁がいくつも風に舞っている。ゆらゆら、ゆらゆら。
木製のベンチに腰掛けて、ポカンと口をあけたアホ面でその様を眺める朝陽の身体も、自然と花びらの動きに合わせて揺れていた。ゆらゆら、ゆらゆら。
傍から見れば、まんま変人に変わりない朝陽の行動ではあるが、朝陽の周りには見事なほど人の姿がない。
朝陽が電車を何本か乗りつぎ降り立った小ぢんまりとした駅は、駅員の姿のない無人駅だった。
この駅で数人の乗客が乗り降りしていたが、その場に止まる者はおらず、朝陽はこうして一人ぼんやりとまちぼうけをくらっていた。
朝陽が確認したところによると、この駅には多くて1時間に2本しか電車が通らないので、朝陽の奇行を見知らぬ他人に見られる事はないだろう。
無人駅の周りに朝陽の気をひくものは満開の桜くらいで、花を愛でるような繊細な感性の持ち主ではない朝陽だったが、他にする事もなく体を揺らす。
時間を持て余しながらも朝陽がこの場所を動こうとしないのには理由があり、それは、彼がここで待ち合わせをしている最中だからである。
長閑な田舎町。鶯の鳴き声が時折響いている。朝陽の足元には可愛らしい花をつけた草が、涼やかな風に揺られている。
朝陽の数十メートル先には車道があるが、殆ど車が通る事はない。
駅前には民家が建ち、見たところ商店の一つもない。
自動販売機はあるようだが、もとより朝陽は一文無しである、ジュースの一本も買う事が出来ない。
めざめてからこっち、都会にある病院で過ごした朝陽にとって何から何まで新鮮なこの町。
この町が、彼、御鏡朝陽の生地なのだという。この、思い出のない町が。
朝陽は、何か心の琴線に引っ掛かるようなものはないか、何処かで見たような景色はないか、と辺りを見回す。
けれど、そこには病院のTVでみたような、どこにでもある田舎町がひろがっているのみだった。
ゆらゆらと揺らし続けていた体を漸く停止し、朝陽は、はふ、と溜息にも近い吐息をひとつ。
その吐息に疲れの成分が多分に含まれている事を実感し、朝陽は、自分が予想以上に疲労している事を知った。
リハビリを終えたばかりの朝陽にとって、電車による旅はそれなりの負担であったようだ。
今まで疲労をあまり感じていなかったのは、朝陽の中にある緊張や不安が感覚を鈍らせていたのだろう。
朝陽は、これからこの町で暮らさないといけない。
ここは朝陽が生まれ、育った場所、故郷とも言うべき場所なのに、朝陽は、まるで自分が一人見知らぬ街に放り出されてしまったかのように感じた。
朝陽の生家である御鏡家の使いを名乗る男が現れたのは、朝陽が病院で目を覚ました3日後の事だった。
1年眠り続け、突然目を覚ましたと言う事で、検査やら何やらで忙しい朝陽の病室に現れたその男は、朝陽の疑問に答えてくれた。
曰く、自分は名家と呼ばれる家の出らしい事。この入院している病院は、御鏡家の息のかかった医者がいる事。
しかし、何故朝陽がこの病院に入院し、あげく記憶を失ってしまったのか、その原因を教えてくれる事はなく、把握していないの一点張りだった。
そして、1年間はこの病院でリハビリと、入院で遅れた分の勉強をするように言付けられたのだった。
何でも、御鏡家の当主の命令らしいが、どのみちリハビリなしではまともに動けない状態だった朝陽は、血を吐くようなリハビリと猛勉強の毎日を過ごすしかなかった。
正に地獄だった、と朝陽は思う。
起きている時間は、リハビリか勉強か。
錆びついた体に鞭打ち少々無理めなリハビリをこなしつつ、御鏡家が送って来た家庭教師のもとで、一日10時間程の勉強を毎日休むことなく続けさせられた。
まさに起きている時間は、リハビリか勉強家の2択しか朝陽には用意されていなかった。
その辛さたるやリハビリで病院内を歩き回る途中で、休憩室にあるTVをちらりと窺う事が朝陽の楽しみだったくらいである。
病院で患者に苦行を強いる様な事許されていいのかと朝陽は思ったが、そう言えばこの病院は御鏡家の息がかかっているとか言っていたな、とすぐに諦めた。
そして地獄の様な長い1年が経った頃、再び御鏡家から使者が現れ、御鏡の家で暮らすように通達を受けたのだった。
一方的な通達と言えばそうであったが、朝陽に断るすべなどなかった。
記憶もなく、先立つものもない朝陽が、この先天涯孤独で生きていけるはずもなく、その顔も知らない家族にすがる他なかったのだ。
ちなみに、朝陽が入院している間、朝陽の家族を名乗る者の見舞いはなかった。
自分は嫌われているのではないか、と朝陽は思っている。自分がこれから御鏡家で暮らす事を歓迎しているものなど居ないのではないか、と。
以前の自分が家族に対し何をしでかしたのか知らないが、一年ぶりに目覚めた家族のもとに見舞いに来る人間が一人も居ないというのはあんまりだと思う。
その事を考えると、これからの生活への不安で胃がキリキリしてくるので、朝陽は出来るだけ考えないようにしているのだが。
「ま、なんとかなるだろ」
不安はある。むしろ、いっそ清々しいくらいに不安しかないのだが、そう思って切り替えないとやっていけない。
大体、もう目を覚まさないだろうとさえ言われるような大事を経験したのだ、故郷でぼっちになるくらいなんて事はないだろう?
そんな事を自らに言い聞かせている朝陽の眼前に、一台の車が止まった。
「おいおい……」
朝陽は、思わず呟いた。朝陽の前に滑るように現れたその車は、黒塗りで妙に車体が長く、所謂ベンツと呼ばれるものだった。
こんな田舎町で、まさかこんな代物を見る事になるとは思っていなかった朝陽は、目を丸くした。
春の麗らかな日射しを受けて、漆黒の車体がきらりと目にまぶしい。
まさか毎日洗車してるんじゃないだろうな。朝陽は、ふとそんな事を考えた。
車のドアが開き、まず運転手が降りてきた。黒のスーツを着た几帳面そうな、初老の男。
彼は車のドアを閉めると、呆然と成り行きを見守るしかない朝陽に向かってぺこりとお辞儀をする。
慌てて朝陽も座ったままお辞儀をしかえすが、まだ事態を把握しきれていないせいか男を上目遣いでとらえたまま、しげしげと男を観察する。
そんなあまり行儀の良いとは言えない朝陽の行為を咎める事もなく、男はさっさと反対側の後部座席の方へと回り、ゆっくりとドアを開いた。
スッと車の中から足が伸びてくる。
一目で女性の足だと分かるくらいの細さのけれど、どこかふっくらとした足。黒いストッキングに覆われてはいたが、何だか朝陽は恥ずかしい気持ちになってしまう。
――果して車の中から降りてきた人物は矢張り女性で、とてつもなく美しい人だった。
その女性は、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
その所作は洗練されていて、ベンツから降りてきたという事実を省いても彼女が生粋のお嬢様と呼ばれる存在である事が窺えた。
春の日向で煌めく艶やかな黒髪はすっと腰のあたりまで伸び、ベンツの漆黒に勝るとも劣らない。
透き通るような白い肌は何処か儚げな印象を抱かせ、朝陽は思わず日傘をさしに駆けつけてやりたい気分になった。勿論、日傘なんて持っていないけれど。
身長も女性にしては高い方で、恐らく朝陽よりは小さいが、あまり差異はないように見えた。
といってもモデルの様にスレンダーという訳でもなく、適度に肉付きが良く、女性的なふっくらとしたラインを描いている。
年の頃は、朝陽とあまり変わらないようで、何処か見知らぬ学校の制服を着ていた。学校帰りなのだろうか?
そして、なにより朝陽の視線を集めたのが、その胸である。
体の凹凸があまり目立たない制服を来ても尚、ぐいと衣服を持ち上げるその胸は、余り女性と接しなれていない思春期真っ盛りの朝陽にとって、目に毒であった。
かああ、と顔が熱くなっている事を自覚し、何とかごまかそうと服をパタパタさせてみる。熱いなあ〜とかそんな感じで。
「あー、熱いなぁ〜」
言葉に出して、更に誤魔化し強化を図る。顔をそむけ太陽を睨むふりをするものの、矢張り視線はちらちらと胸元に。
そんな朝陽に女性は、くすりと笑みを漏らした。
「あ……」
足元に咲いている、小さく、可憐な花の様な微笑み。その笑みに思わず朝陽は、見惚れてしまう。
さっきまで胸が気になって仕方なかったのに、彼女の笑みに釘づけにされた。
「久しぶりだね、朝陽」
不条理だ。これだけ容姿と生まれる家に恵まれて、その声さえも美しいなんて。
そのぷっくりとした紅唇から、だみ声が聞こえてくるとは思っていないが、もう少し分かりやすい欠点があっても良いんじゃないだろうか。
目の前の少女は完璧すぎて、まるで現実感がないようにさえ朝陽には感じられた。
「……て、え、俺?」
数秒遅れて朝陽の脳が、彼女の言葉を噛み砕き嚥下した。
何か別の朝陽を探すように、きょろきょろとあたりを見渡す。
まだ朝陽と言う名前に慣れ切っていない事もあるにはあるが、彼女の口から零れると自分の名前が自分の名前でないかのように感じたのだ。
しかし周りに「あさひ」はなく、空を見上げても今は昼である。
第一、人でないものに久しぶりね、なんて話しかけるわけがないのだが、それくらい朝陽は混乱していた。
「そう。私が呼んだのは、御鏡朝陽、貴方」
フルネームで呼ばれ、さすがに朝陽も自分が話しかけられている事を理解する。
この少女、やけに親しげである。朝陽とはどうやら初対面ではなさそう、である。
しかし、こんな美人と知り合いだった記憶はない。といっても朝陽の記憶は1年分しかないのだが。
という事は、記憶を失う前の知り合い、という事になる。
もしかしたら、朝陽が記憶を失っている事を知らないのかもしれない。
「……あ、えと」
どう切り出そうか、と困惑気味に顔を曇らせる朝陽であったが、直ぐにその表情は驚きに塗りつぶされることになる。
少女がいきなり抱きついてきたのである。
「ちょ、え、え!?」
何でやねん、である。TVで何度か耳にしただけの関西弁を朝陽は、心の中で力いっぱい叫んでいた。
唐突に現れた謎の美少女が、これまた唐突に抱きついてきた。
無意識なのか、はたまた意識的になのかは分からないが、少女のわがままボディが朝陽に押し付けられている。
ふにょん、という間の抜けた効果音が朝陽の中で再生された。
脳がしびれるような甘い香り。それは麻酔の様に、朝陽をからめとる。
こんな熱烈な抱擁、もしかしてこの少女は記憶を失う前の恋人だったりするのだろうか。だったら、かなり羨ましい。
自分の事ではあるが、基本的に記憶を失う前の朝陽と今の自分とを別人として考えている朝陽は、過去の自分に嫉妬してしまう。
朝陽が長い眠りについたのが二年前、ということはその時からすでにこんな美少女を侍らせていたという事になる。
そりゃあ、記憶を失うほどの事件に巻き込まれるわけである。自分はきっと人生における殆どの運を使いきっているに違いないのだ。
不意に、朝陽の心の中に邪な考えが過る。抱きつかれている少女の腰に、自分も手をまわしてみようか。
彼女の柔らかそうな体を、ぎゅうと抱きしめてみたい。そんな気持ちに駆られたのだ。
朝陽は、そろそろと腕を持ちあげてみる。触れるだけで壊れそうなその体に触れようとして――
「っく、ひっ……くぅ」
――朝陽の胸の中で、少女は嗚咽を漏らしていた。
何とか堪えようとしているのか、体を縮こまらせて、それでも朝陽を抱く腕の力は一層強く。
そ、と窺うと、少女の瞳に大粒の涙が溢れては零れていた。
朝陽は、急に申し訳ない気持ちになる。彼女は朝陽との再会に涙を流して喜んでくれているのに、当の自分は邪な気持ちに流されそうになっていた。
自分があさましい人間の様に思えた朝陽は、さまよっていた両手を少女の方において、グイと押し離した。
「きゃっ」
驚いたようにまだ涙の浮かぶ眼で朝陽を見上げてくる少女と正対し、
「一つ、言っておかないといけない事があるんです」
少女との距離を計りかねる朝陽は、無難なところで敬語を使って話す事にする。
彼女の立ち居振る舞いや雰囲気などから見ても、少なくとも自分より年下の様には見えないという理由もあった。
少女は泣き顔を朝陽にみられるのが恥ずかしいのか、顔をそむけささっと手の甲で涙をぬぐった。
それから朝陽を再び見上げ、
「なあに?」
と、首を傾げた。この少女、大人っぽく洗練された所作の傍ら、時折子供っぽい行動をとる事もあるようだ。
朝陽は、少しばかり見とれそうになる自分を叱咤するように首を数度軽く横に振り、すぅ、と一度大きく息を吸い、
「実は、俺、記憶喪失なんです。だから、貴女が一体誰なのか、覚えていなくて……」
「……」
「あの、本当にすみませんっ!」
朝陽は、がばっと頭を下げて、誠意を示す。
記憶がない事だけでなく、さっきまで邪な気持ちになっていた事もこっそりと含めた謝罪。
暫くそのままの体勢でいると、くすくすと上品な笑い声が朝陽の頭上から降って来た。
え、と朝陽が顔を上げると、やはり少女が笑っていた。
「え、えと……」
少女のこの反応を予想していなかった朝陽は狼狽え、誤魔化すように頭をかいた。
「あ、ごめんね。いきなり大袈裟に謝りだすんだもん、おかしくって」
「は、はぁ……」
「ごめんね、うん、そうだよね、朝陽は覚えていないんだよね」
そう言って笑う少女がまるで朝陽が覚えていない事を喜んでいるように、朝陽には見えた。
どうやら少女は朝陽が記憶喪失である事を知っているようだ。
まあ、良く考えてみれば朝陽とある程度近しい関係ならば、朝陽の容体について知らされていてもおかしくはない。
そして、知っていて、朝陽の見舞いに現れた事がない、という事は恋人という線は薄いかもしれない。
少しだけがっかりとしてしまう朝陽である。
――というか、涙を流すくらい再会を喜んでくれるなら、見舞いに来ればよかったのに。それとも、あの涙はまた別の理由があるのか?
そんな風に思わず邪推してしまう。それくらい、病院での1年は寂しいものだったのだ。
そんな朝陽の不満や訝しみが表情に出ていたのか、
「ごめんね、お見舞いに直ぐに駆けつけたかったんだけど、ちょっと事情があっていけなかったの。でも、本当に良かった。朝陽が目覚めてくれて、本当に……」
そこでまた少女の瞳にジワリと涙が浮かんだ。
ずるい、と朝陽は心の中で呟いた。涙なんて見せられたら、此方が完全に悪役だ。
すっかり朝陽は狼狽し、何とか場の雰囲気を誤魔化せないかと話題を探す。
「そ、それで、一体貴女は……」
慌てたせいか、少々詰問じみた聞き方になってしまったが、それは朝陽が少女と出会ってからこっち、ずっと気にかかっていた事ではあった。
「あ、そうだった。自己紹介がまだ済んでなかったね。ごめんなさい、いきなり馴れ馴れしくして。困っちゃったよね?」
「いえ……」
いい匂いがして、とても柔らかかったです、なんて言えない朝陽は言葉を濁した。
不意に抱きつかれた時の感触と香りを思い出して、かあ、と朝陽は顔を赤くした。
その理由に気付いたのか、少女は少し悪戯っぽい笑みを浮かべ、朝陽は更に羞恥を濃くする。
少女はくすくすと笑った後で、表情を引き締めて見せてから、
「はじめまして、私は貴方の姉、御鏡夜空です。ふふ、はじめましてってちょっと変な感じ」
「あね……」
「そう、姉さんでもお姉ちゃんでも、どう呼んでくれても良いよ」
恋人でなかったのは残念ではあるが、少女、夜空は朝陽の姉、という事らしい。
朝陽は、彼女を改めて観察するも、矢張り最初の頃と受ける印象は変わりない。言葉は悪いが、見知らぬ人間である。正直、いきなり姉と言われてもピンとこない。
彼女が言う様にお姉ちゃんだとか姉さんだとか呼ぶのは、少々むず痒い。
「あ、あの、以前の俺はどう呼んでいたんですか?」
「え?以前の?」
「はい、記憶を失う前の俺です」
「……何で?」
朝陽の意図を計ろうとするように夜空が顔を覗きこんできた。
彼女の整った容貌に見つめられどぎまぎしながらも、朝陽は自分の中にある考えを言葉にしようとする。
「俺は、自分を以前の俺とは別の人間だと思っているんです。
そりゃ、顔とか体とか外見は全く同じだし、以前の俺を知っている人からしたら違いはないように見えるのかもしれないけど、中身はどうしても違うから。それに……」
「それに?」
それに。色々と言い訳を言ってみても、結局は怖いのだ。
もし、記憶が戻ったら今の俺はどうなってしまうのかとか、以前の俺を知っている人からしたら今の俺なんて邪魔者以外の何物でもないのではないか、とか。
我ながらベタな悩みだな、と朝陽は思う。小説や漫画なんかの記憶喪失モノで記憶を失った人間の殆どがぶち当たる悩みで、自分もご多分にもれず、らしい。
そして、それ以上に恐ろしい事がある。それは、朝陽の心の奥に眠る、深い喪失感と罪悪感。凝り澱んだそれは、暗い絶望の色をしている。
それは朝陽が失くした記憶の残滓であるようだが、万一それに触れてしまえば絶望に飲み込まれてしまいそうで恐ろしいのだ。
朝陽はぶるりと小刻みに体を震わせた。
「いえ、何でもないです」
そう言う朝陽の顔は蒼白で、とても何でもないようには見えないが夜空は、そう、と呟くだけで特に追及しては来なかった。
「……そらねえ」
「え?」
「朝陽は私の事、空ねえって呼んでたよ」
「そら、ねえ……」
反芻するように呟いてみた。少し子供っぽい様な印象の呼び方。それを今の俺が呼ぶのは、以前の朝陽とは別人云々関係なく、難しそうだった。
それに、何処かで聞いた事があるような、とか懐かしい感じがする様な事はなかった。これは、始めから期待してはいなかったけれど。
ふむ、と朝陽は前置きの後、
「じゃあ、普通に姉さん、でいいですか?」
「姉さん……ふふっ、何だか朝陽にそう呼ばれるなんて新鮮かも」
そう言って夜空が笑った。
朝陽が敢えて夜空さんではなく、姉さんと呼ぶ事にした理由。それはきっと、心のどこかで繋がりを欲していたからかもしれない。
見舞いには来てくれなかったけれど、自分の帰還を涙をもって喜んでくれた人。
それは記憶をなくし、夜の色濃い大海に放りだされたような気持ちになっていた朝陽が、漸く実感することのできた繋がりだった。
姉さん、と呼ぶことで自分は一人じゃないんだと、そう思えるような気がしたのだ。
#1−2
その後、朝陽は夜空に押し込められるようにベンツに乗りこんだ。今は、これから朝陽の住む家となる場所へ向かって移動中である。
最初の方こそ緊張でドキドキだった朝陽だったが、今では好奇心の方が勝り座り心地の良いシートをぽふぽふ叩いてみたり、車の中の様子を窺ってみたりと忙しない。
夜空は、そんな子供っぽい朝陽を柔らかい微笑みと共に暫く見守っていたが、
「ねえ、この景色に見覚えがあったりしない?」
聞かれて朝陽は、流れる景色を車の窓から眺めてみて、
「いや、ないかな」
「そっか」
夜空は朝陽の答えに素っ気なく呟いた。彼女も最初から期待なんてしていなかったのだろう。
ちなみに敬語ではよそよそしいから嫌だと夜空に駄々をこねられて、朝陽は砕けた口調で会話する事にした。
朝陽も余り敬語には慣れていないので、ありがたい申し出ではあった。
「でも、いいところだね」
「ふふ、自然だけが取り柄の何もない所よ。でも、そうね、」
半ばお世辞としての朝陽の言葉に夜空は苦笑し、窓の外に目を向けた。
その視界に映るのは、この町に対する思い入れのない朝陽とはまた違った景色なのだろうか。
「私は、この何もない町が嫌いじゃない。お気に入りの場所だっていっぱいあるの」
「お気に入りの場所……」
お気に入りの場所。朝陽は、口の中で数度そんな言葉を転がしてみる。お気に入りの場所、か。
もし、見つけることが出来たならば、その時は、朝陽はこの町の一員になれる様な気がした。
「朝陽にも見つかるといいわね」
そんな朝陽の想いを知ってか知らずか、夜空が朝陽の瞳を見据えて。
見つけられるだろうか。記憶のない、真っ白な自分に。この、初めての故郷で。
不安は尽きない。夜空に聞いたところによれば、自分の家族はあと二人、弟と祖父がいるらしい。
両親は、朝陽がまだ小さい頃に事故で共に帰らぬ人となったというが、当然その事に朝陽が感じる事はなかった。ああ、そっか。そのくらい。
その二人について、夜空は答えにくそうに言葉を濁すばかりで詳しい事は聞けなかった。
自分は家族から嫌われている、そんな朝陽の疑惑がいよいよ現実感を持ってくる。
胃がいがいがする、なんつって。そんなくだらない親父ギャグを心で呟いて、楽観的に考えようと務める。
まあ、なるようになるだろ。先の事は分からない。けれど、逃げる過去もない朝陽は、ただ愚直なまでに前へ進むしかない。
それに、ついさっきまで何もなかった朝陽だが、今はそうじゃないと思える。
ちらと横目で隣に座る人を窺う。自分の姉。御鏡夜空。
再び窓の外を眺めているその人の横顔は、美しく、まだまだ見慣れていない朝陽はどうしても見とれてしまう。
――姉さん。
朝陽は、心の中でそう呟いてみる。
きれいなひと。彼女が自分の姉だと言う。
見舞いには来てくれなかったけれど、自分のために涙を流してくれた。
その涙が演技かもしれないという可能性を、朝陽は全く考慮に入れていない。
今のところ、朝陽には彼女以外に縋るものはなく、そんな彼女を疑っていたらこの先どうしようもないだろう。
それに、それにだ。
「ん、どうかした?」
じっと横顔を見つめる朝陽の視線を感じ取ったのか、夜空が首をわずかに傾げた。
い、いや、何でも、と、どもりながら朝陽は夜空から目をそらす。
くすくすと上品な笑い声が、隣から聞こえてきて、朝陽はさらに顔を赤くする。
きっと、この人なら。この温かい笑顔の持ち主であるこの人なら、無条件に信用しても大丈夫。そんな気がするのだ。
「でけー」
これが目的地、御鏡家を見て朝陽の感想だった。
駅から車で約5分。見えてきた住宅地を抜けて、山の方へ入り込み更に5分。
山を切り開いた所にそれは鎮座ましましていた。
家、というよりは、邸宅、いや屋敷という方がしっくりくるだろう。
純和風で、その家構えには歴史の香りがする。築10年程度はくだらないだろう。
この玄関先に来る前にも厳かな感じの門があったし、庭を含めて敷地はどのくらいになるのだろうか。
これが、自分の生まれ育った家だというのだ。
気圧され立ち止まった朝陽の手を取る者がいた。勿論、夜空である。
「わっ」
夜空はいちいち驚いて顔を赤くする朝陽をくすりと笑ってから、
「ほら、行こう」
「あ、ああ」
朝陽は夜空に手をひかれ歩き出す。
彼女の手は柔らかく、温かい。そんな事を意識して、朝陽はもうどうしようもないくらいドキドキしてしまう。
異性に対する耐性をそろそろ付けないと、これから苦労しそうだと朝陽は思うのだが、如何せん経験不足はどうしようもない。
ちなみに朝陽が通う事になる高校は共学らしく、正直喫緊の課題じゃないかと、朝陽の不安の種、その一つとなっている。
「おかえりなさいませ」
――門扉をくぐった途端に、複数の、けれどぴたりと揃った声がかけられた。
朝陽はびくっと体を震わせるも、何とかひっ、と声を上げるのまでは堪える事に成功した。
声の主たちは朝陽の両側に並び、頭を下げていた。
家政婦というやつだろうか、着物を着た女性たちである。
まあ、これだけでかい家だし、と妙に納得してしまう朝陽である。メイド服じゃないのがちょっと残念だな、とも。
そのうち、一人の妙齢の女性が、すすと音もなく進み出てきて、
「お荷物をお預かりします」
と、朝陽の荷物を取り上げてしまった。
荷物、といっても中には何も入っていないのだけれど、女性に荷物させるのはどうかと思った朝陽だったが、時すでに遅く、荷物はその女性の手である。
仕方なく、朝陽は、
「あ、どうも……」
とぎこちなく頭を下げた。
女性はそのことに反応をすることもなく、朝陽と夜空の手元にちら、と視線をよこした。
その視線に気づき、朝陽が夜空の手を放そうと試みるも、思いのほかがっしりと握られていて外れてくれない。
長い間眠っていた朝陽の体力や筋力は人並み以下まで落ち切っていて、それは一年のリハビリ程度では戻るものではなかった。
自分が女の子の力にも勝てないことと、人前で異性と手をつないでいることに羞恥を覚える朝陽に家政婦たちの視線が集まる。
それは、朝陽の気のせいだったろうか。先ほどまで無表情に近かった彼女たちが僅かに顔を曇らせたように見えたのは。
確認しようにも次の瞬間には再び元の表情に戻っていて、
「……長旅お疲れでしょう、お部屋にご案内させていただきます」
朝陽の荷物を持った女性がそう言って朝陽を先導しようとするが、
「ちょっと待って」
と、夜空がさえぎってしまった。
「夜空様?」
「ちょっと、やりたいことがあるの。少しだけ下がっていなさい」
「……はい」
朝陽に対するものとは違う、冷たさを含む凛とした声音。
朝陽はさっきまでの印象とは正反対のそれに、つい夜空の顔をまじまじと見つめてしまう。
夜空は掴んでいた朝陽の手を、両手で包みこむようにして彼女の胸元へと引き寄せた。
ふにょんとした柔らかな感触にぎょっとする朝陽だったが、夜空はやはり柔らかく、そして温かな笑みを浮かべ。
「おかえりなさい、朝陽」
その笑みと言葉に、朝陽はつんとこみ上げる何かを感じた。
この時ばかりは、朝陽の中に周囲の目や、異性との接触を恥ずかしがる気持ちはなくなっていた。
そして、おそらく彼女が待っているであろう言葉を、
「ただいま、姉さん」
その時、自分の声は果たして震えずに言えていただろうか。
あまり自信のない、朝陽であった。
以上です。
失礼しました。
面白かった
おもしろかったー。
この先に期待
GJ!
名作の予感…
伏線はりまくりんぐでこの先の展開が気になるな
乙です。
また楽しみが増えてしまった。
胃がいがいがするなんつってのところが水島ヒロに見えたのは内緒w
大作来たな
転生恋生 第二十四幕の代理投下しますね
目が覚めると、股間が湿っていて不快感があった。夢精していたからだ。
夢の中で、俺は司との初体験をリプレイしていた。そのせいだろう。
それでも月曜日だから学校がある。のんびりしてはいられない。
ウェットティッシュで拭いてから、下着を替え、身支度をして1階のキッチンに降りた。
後から来た姉貴は、2日目ということもあってか、だるそうだった。この分だと、今日も無事に過ごせそうだ。
相変わらず登校中は姉貴が無理やり腕を絡めてきたが、俺はさして気にならなかった。
道行く途中ですれ違う男子高校生が、ことごとく子供に見える。今日の俺は全てにおいて余裕たっぷりで冷静だ。
女を知ることが、これほど男としての自信をつけさせてくれることだとは思わなかった。
もちろん、腕力で姉貴に勝てるわけがないから、隠し通さないといけないのは変わらない。
それでも、俺は何となく、この先も姉貴をうまく出し抜けるような気がしてきた。
校門のところで姉貴と別れて自分の教室へ向かう。既に何人か来ていて、俺の隣の席では猿島が文庫本を読んでいた。
「おはよう」
「おはよう」
俺の挨拶に顔を向けた猿島は、ちょっと文庫本に視線を戻しかけてから、もう一度俺の方を見た。
「何か、いいことでもあったの?」
「どうして?」
「なんだか、今日の桃川君はいつもより堂々としているわ」
「まあ、ちょっとな」
詳しく説明するわけにもいかないから、適当にあしらった。猿島もそれ以上は追及してこなかった。
午前中はずっと、ちらちらと横目で猿島を見ていた。
凄く無表情で澄ましているけど、こいつにもアレがついているんだよなぁ。
あのときはどんな声を出すんだろう。
そういや、司にクンニをしてやらなかったな。とにかく挿れることしか頭が回らなかった。
血なまぐさかったのもあるけど、次はちゃんとしてやろう。
早く司に会いたいな。
……そんなことばかり考えていたから、授業の内容がまるで頭に入らなかった。
そして待ち遠しかった昼休みになる。
「センパーイ」
俺が弁当を抱えて教室を出ようとしたときには、既に司が来ていた。
いつにもまして、犬が尻尾を振るようにポニーテールが揺れている。
「畜生……あんなロリ彼女と弁当食ってみてぇ……」
「あーん、とかやってるんだろうな……うらやましすぎる……」
「死ね! リア充がッッ!」
背後で田中山の呪詛の声が聴こえたが、全然気にならない。
悪いな。俺はお前らに決定的な差をつけちまったぜ。
司といつもの場所へ行く。そそくさと弁当を食い終えて、俺は司を抱き寄せた。
「体は大丈夫か?」
「んーとね、なんかオマタに挟まってる感じがして、変なの」
油断するとガニ股になりそうなのを、懸命にこらえてるということだった。
「まだ、痛いのか?」
「それはないけど、あのときのことを思い出すと、ちょっと痛いような気がする」
幻肢痛みたいなものか。女は色々と大変だな。
懸命に痛みを耐えていた、昨日の司の健気な様子が脳裏に蘇ってくる。
俺は司の尻を撫で回した。ちょっとでも痛みが和らぐんじゃないかと思って。
「ご主人様ぁ……」
司が甘えた声を出しながら、俺の胸に頬擦りする。
たまらなく愛しいのと同時に、欲情が湧いてきた。股間に血が集まるのがわかる。
休み時間はあと15分くらいか。5分もあれば十分だけど、問題は場所だな。
「あん……」
司の吐息が甘くなったような気がする。俺に尻を撫で回されているうちに感じてきたらしい。
「なあ、ちょっと人気のないところに行かないか?」
「んー、もう時間がないかなぁ。ボク、次は体育だから着替えないと」
「すぐに済ませればいいだろ」
「すぐに済ませたらつまんない」
そう言って、司は俺から離れた。息の乱れもおさまっている。
「今日はおあずけ。もう行くね」
いともあっさり言い捨てて、司は走り去ってしまった。俺は生殺し状態で放り出された。
もやもやというか、ムラムラしたやり場のない気持ちを抱えたまま、俺も教室へ戻るしかなかった。
放課後、教室を出ようとしたところで、校内放送の呼び出しがかかった。
「美化委員長と同副委員長は至急、体育科準備室へ来てください」
美化委員会の副委員長っていったら、俺だよな。何だろう?
体育科準備室へ行ってみると、既に雉野先輩が来ていた。そうだ、委員長はこの人だった。
相変わらず、制服を着ていてもはっきりとわかる巨乳の持ち主だ。
「ふたりともわざわざ呼びつけてすまないわね。ちょっと仕事を頼みたいの」
顧問の草葉先生は俺たちふたりを連れて部屋を出て行くと、校舎の片隅の、普段使われていない部屋へ入った。
そこは色々なガラクタがしまわれていた。
「ここは空き部屋だから、倉庫代わりに不要不急の物をしまってあるんだけど、ここにある物の目録を作ってほしいの」
これはまた面倒なことを頼まれたな。
「俺たちふたりだけですか?」
「そうよ。狭いところへ大勢集めてもかえって効率が悪いしね」
「今日中ですか?」
「今週中よ。だから、終わるまでは毎日来てちょうだい。鍵は預けておくわね」
雉野先輩が部屋の鍵を受け取った。
「ほな、やっときますわ」
これといって嫌がるそぶりも見せず、雉野先輩は草葉先生の頼みを引き受けた。受験生なんだから、こんな余計な仕事を引き受けなくてもいいのに。
ともあれ、俺と雉野先輩は荷物の目録作りに取り掛かった。俺が箱の中身を確認し、雉野先輩がノートに書きとめていく。
5箱ほど片付けたところで、雉野先輩が「やーめた」とのたもうた。
「どうしたんですか?」
「どうせ1日で終わるわけあらへんし、今日はもうやめにしよ」
草葉先生も今週中と言っていた。ほどほどのところでやめておいてもいいか。明日以降へ積み残してしまうけど。
帰ろうと鞄に手を伸ばすと、雉野先輩が俺に抱きついてきた。
「たろくん、あたしといやらしいことしよか」
直球だな。
「やめてください」
「何で?」
「何でって……。学校ですよ?」
「だから燃えるんやないの」
何を言ってるんだ、この人は。
競技場での手コキが脳裏に浮かんだ。あんな公共空間でコトに及ぶ人だから、学校くらい何とも思わないのかもしれない。
でも、はっきり言わないといけないな。俺は司と恋人同士になったんだから、浮気はいけない。
「俺は司と付き合っているんです」
「知ってるで」
雉野先輩はあっさりと答えた。
「あたしと司ちゃんは仲ええし」
それなら、なおさら友達の彼氏に手を出したらいかんだろうに。
「司ちゃんも、あたしなら気にせえへんよ」
そんなわけあるか。
「俺、もう帰りますから……っっ!?」
いきなり先輩が俺の頭をつかんで、自分の胸に押しつけた。制服越しでも伝わる圧倒的な重量感を持った柔らかさが俺の頭を包み込む。
「あたしのおっぱいで遊びたない?」
一瞬で俺の頭に血が上った。続いて股間にも血が集まっていく。昼休み、司にお預けを食わされて、行き場をなくした欲望があっという間に再結集してしまった。
「んふふ……」
雉野先輩は楽しげに笑うと、素早くブラウスの前のボタンを外した。はちきれんばかりの双乳が紫色のブラに包まれている。
「触ってもええで」
反射的に手を出しかけたが、俺はかろうじて踏みとどまった。これは浮気だ。許されることじゃない。
今すぐ、この部屋を出るんだ。走って廊下に出てしまえば、雉野先輩だって服を着なおさない限り追ってこられない。
「ほら、遠慮せんとき」
それなのに、俺の脚は動かなかった。司にはない感触を楽しみたいという欲望が、俺の脚に粘りついて、重石になってしまっている。
我に返ってみると、俺は手を伸ばして、雉野先輩の胸を揉んでいた。
(ダメだ! 離さなきゃ!)
理性ではそう思っているのに、俺の掌は雉野先輩の胸に吸い付いて離れようとしない。
そのまま、誘われるように俺は雉野先輩の胸の中に顔を埋めた。甘い匂いが俺の鼻孔に入ってくる。
むせ返るような香りに、俺はもう抵抗する気もしなくなった。
「吸ってみる?」
雉野先輩がブラを上へずらした。桃色の突起が顔を出したので、俺は迷わず唇に含んだ。
「ん……ぁああ……」
雉野先輩の口から、気だるげな吐息が漏れる。俺は夢中になって、舌先で突起をこねくり回す。
「ええわぁ……」
雉野先輩の手が俺の頭を撫でる。その手はそのまま肩から胸、腹へと滑っていき、俺の股間を撫でた。
すっかり硬直しているのを確認した雉野先輩は、細い指先を器用に操って俺のファスナーを手探りで下ろし、中から俺のエモノを引っ張り出した。
「たろくんも気持ちようなってな……」
そう言ってゆっくりとしごく。昼休みに焦らされていた分を取り戻すように、俺はたちまち昂ぶった。
「先輩、すぐに出ちゃいそうです……っ」
「そう? 我慢せんでもええよ」
優しい雉野先輩は、屈みこんで俺の股間に顔を寄せると、射出口に軽くキスした。
美しい顔で、俺のグロテスクな肉棒にキスしている。それだけでたまらなくも、申し訳ない気持ちになる。
「汚いですよ……」
「たろくんのやもん、汚くなんかあらへん」
司と同じような言葉が雉野先輩の口から出た。そうか、雉野先輩も俺が汚していいんだ。
「じゃあ、口でしてください」
「そのつもりや……」
雉野先輩は嬉しそうに笑うと、ぱっくりと俺を咥えこんだ。
「んちゅ……んちゅ……」
舌の動きは、意外とおとなしい。司の方が大胆だった。雉野先輩はいつもアダルトな雰囲気なのに、案外不慣れなのか。
それでも、媚びたような上目遣いの雉野先輩に見つめられるだけで、興奮してくる。目で殺すってやつか。
何分間そうしていたのか、実際は1分もなかったのかもしれないが、じわじわと熱いものがせりあがってきて、突然弾けた。
「うぉぅっっ!!」
俺は雉野先輩の頭をつかんで、激しく腰を振るわせた。雉野先輩はむせながらも、全部飲み干してくれた。
一人で家に帰る道すがら、冷静さを取り戻した俺は後悔しきりだった。
「また、明日」
雉野先輩はそんなことを言っていたような気がするが、はっきりとは覚えていない。
司を裏切ってしまった。昨日の今日で。俺は最低野郎だ。あんなに一途に俺のことを好きでいてくれる司がいるのに。
家に帰って、姉貴と顔を合わせても、上の空だった。夕食に何を食べたかも覚えていない。
自己嫌悪に駆られている俺の部屋に、姉貴が前触れもなくやってきた。
「たろーちゃん、私、もう大丈夫だから」
何が大丈夫なのかと聞き返そうとしたが、らんらんと輝く目を見て悟った。
体調が元に戻ったのか。だから、日課どおり俺を弄びたいわけだ。
裏切るもへったくれもない。俺は内心で自嘲と諦念の笑いを浮かべるしかなかった。
いくら俺が司一筋でいようとしても、姉貴の支配には逆らえないんだ。司以外の女に触れないなんてことは不可能だ。
それならいっそ、俺が主導権を握ってやろうか。姉貴に服を脱がされながら、俺はそんなことを考えた。
姉貴が俺を慰み者にするなら、俺も姉貴をセックスの練習台にしてやろう。
姉貴で試したテクニックで司を悦ばせてやれば、せめてもの罪滅ぼしと、姉貴へのしっぺ返しになるんじゃないか。
俺を全裸にしてから、いそいそと服を脱ぐ姉貴を見ながら、俺はハラを固めることにした。
「きゃっ!」
いつもとは逆に、俺がベッドの上に姉貴を押し倒したので、姉貴は驚いたようだった。
俺は姉貴の膝を内側からつかむと、無理やり広げさせた。
「ちょっと……たろーちゃん?」
姉貴は困惑気味だったが、抵抗しなかったので、俺はそのままじっくり姉貴の秘所を観察することにした。
今までは見たくもないものを押しつけられていたから、あえて意識の外に追いやっていたが、司のを見たことで、他の人のと比べてみたくなった。
司のは一瞬生えていないのかと見まごうくらい毛が薄くてまばらだったが、姉貴は毛が密集している。ただ、面積は小さい。手入れでもしているのか?
「あん……たろーちゃんに見られるの、恥ずかしくて感じちゃう……」
じっくり眺めていると、秘唇がひとりでにぱっくりと開いて、中から液体が溢れ出してきた。なるほど、感じるとこうなるのか。
俺は人差し指をクレバスに沈めてみた。
「あぅ……」
姉貴の吐息は無視する方向で、俺は指を動かす。中に突っ込むより、周辺のビラビラを撫でる方が反応がいい。
空いている方の手で腹を撫でると、姉貴は背を反り返らせた。乳房を揉むと、張りがあった。乳首がはっきりわかるほどに立っている。
既にぐしょぐしょになっている秘唇の上端にある突起をつまんでみた。愛液で濡れているので、滑らかにこね回すことができる。
「んぁぁぁっっ!!」
姉貴が激しく腰を震わせた。だらしなく口を開いて、ひっくり返った蛙のような姿勢で達してしまった。
……とりあえず、今やったような攻め方を、次の機会に司にも試してみよう。
それはそれとして、俺自身も収まりがつかなくなっている。姉貴のことは何とも思わないが、溜まったものは出してしまわないと、今夜は寝つけそうにない。
俺は姉貴に馬乗りになると、左右の乳房をつかんで、俺の肉棒を挟ませた。姉貴の意思とは無関係に、俺の手で両側から摩擦運動を起こさせる。
「あん……たろーちゃん、私がやってあげるのに……」
姉貴の手を借りることなく、俺は一心不乱に姉貴の乳房で自分のサオをしごいて、そのままイッた。
「んぐっ!」
白濁液が姉貴の胸から顎にかけてぶちまけられた。
「ふぁ……もったいない……」
姉貴が指ですくいとって、口に運ぶ。俺はもう気が済んだから、姉貴に自分の部屋へ戻るように言った。
「えー、ダメだよ。まだ、私がちゃんとしてあげてないじゃない」
不満を抱えたままの姉貴を追い出すだけの腕力はないので、もう1ラウンド付き合うしかない。
せめてこちらからリクエストを出すことにする。
「じゃあ、姉貴がパイズリしてくれよ」
「今日のたろーちゃんは積極的で嬉しいわ」
姉貴は従順に、ベッドの端に腰かけた俺の前にしゃがみこんだ。
俺は出したばかりだから萎えているんだが、姉貴はまず口に含んで、舌で裏筋を刺激する。
「ん……」
すぐに俺の性感がうずき出した。条件反射で、姉貴のフェラチオに反応してしまう自分の体が呪わしい。
ある程度硬さを取り戻すと、姉貴は乳房で挟み込んで上下運動を始めた。
……うまいな。胸のボリュームは雉野先輩に譲るが、感触は姉貴の方がいい。ジャストフィットで吸いつくような感じだ。
体の相性がいいのか? 血がつながった相手の方が気持ちいいっていうのは本当なのか?
「うふふ……気持ちいいんだね」
姉貴は上気した顔で、ゆさゆさと乳房を揺すっている。
体がどんどん熱くなるのとは逆に、俺はどこか冷めていた。
こんなにテクニックのある姉貴が、男性経験を持たないはずはない。そんな確信が深まっていく。
やっぱり、姉貴には昔、男がいたんだ。俺だけを愛しているなんて、嘘だ。
雉野先輩や司と何があったかは、もうわからなくてもいい。今は俺のことを欲望のはけ口にしているだけとわかれば十分だ。
それなら俺も姉貴を「使って」やる。
「……そろそろ出そうだ。飲めよ」
「うん。そのつもり」
限界が近いのを悟った姉貴は、顔の位置をずらして、口の中に俺の先端部を収めた。
それから間もなく、俺は姉貴の口の中に2発目を放出した。1発目よりも奥から搾り出すような感覚の射精だった。
ようやく満足できた姉貴が自分の部屋へ戻ってからも、俺はしばらく全裸でベッドに仰向けになって、天井を眺めていた。
司に姉貴とのことを知られるわけにはいかない。だけど、知られずに済んだとしても、裏切り行為であることに変わりはない。
それなら、バレないように注意して、雉野先輩とも関係を続けてしまおうか。司にはできないパイズリを楽しめるしな。
そんなことを考えている自分は、人間として壊れ始めているんだという考えが頭のどこかに浮かんでいたが、今夜は肉体的に疲れたから、もう寝よう。
以上です。
作者様、投下代理様GJ!
たろーちゃんマジパねえっす
GJ!
たろーちゃんがずいぶん下衆い方向に進化してるな。
いいぞもっとやれ。GJ
おお、グッドラッシュじゃないか
これで今日も一日働けるわ
ふたなりのキモ姉キモウトが欲しい
今晩は。
表題について投下いたします。
この前、シルフは俺に縋りついて泣いていた。
俺の前であんな風に泣いているシルフを見たのはもう覚えていないくらいに昔の事だ。
あいつは、いつもじっと我慢している性格で、
泣く時だって誰にも見られないようにしてこっそりと泣くんだ。
だから、ああやって泣いたのはシルフだけでは耐えられないような辛いことがあったはずだ。
必死に声を押し殺して咽び泣く姿に小さな頃のシルフを思い出した。
ただ一つだけ昔と違うのは、多分、いや、間違いなく俺が原因だということ。
その理由も俺には分からなかった。
そして、聞く事もできなかった。
万が一、誰かからの嫌がらせをまた受けているのかも知れないと思って色々と調べたが何もなかった。
……シルフのことを聞くたびに、あいつの悪口を聞かされるのが辛かった
やっぱり、シルフに直接聞かないと分からないのだろうか?
もし俺が強制すればシルフは何でも答えてくれるだろう。
けれど、そうするのは俺がシルフを信じていないと言うようなものだ。
それはもっとシルフを傷付けるだろう。
ったく、どうしてこう上手くいかないのだろう。
鬱々とした気持ちで歩いていたところで、ぐぅ〜、と腹の中から暢気な音が響く。
それを聞いて声を出して笑いたくなった。
「やれやれ、本当に現金だよ、こんな時でも体は平常運転なんだな」
まあ、何にせよ食わないと始まらないか。
「あれ、陽じゃないか、おーい」
校門の前で圭が手を振っている。
「あーきーらーくーん」
もちろん、その隣には沙紀も一緒だ。
「おう、お前らも飯か?」
「うん、そうだよ。
これから"あどみらるごろー"でお昼にする予定なの。
陽君もまだでしょ、偶には3人でご飯にしようよ?」
いつか圭は沙紀に一年の半分以上は命を脅かされているといった事がある。
言い換えれば、半年未満は平和という事だ。
そして、そんな時の沙紀は見た目どおりの快活な少女だ。
別にいつも濁った瞳のわけじゃない。
いつもこうなら微笑ましいカップルなんだがなぁ。
楽しそうに腕を組む二人を見て、
そんな事を考えながら俺達はあどみらるごろーへ向かった。
あどみらるごろーは大学の近くにあるレストランで小洒落た船舶風の内装が評判だ。
名前の緩さとは裏腹にそこそこ高級な店なのだがランチタイムには割安の洋食を提供しており、
昼ならなんとか学生でも手が届く良心的な店だ。
俺たちは三人で一番奥の丸テーブルに座った。
俺の目の前で圭と沙紀は楽しそうにこの後の予定について話している。
そして時々、ちゃっかり皿の上の料理を取り換え合っていたりもな。
その動作もとても自然で、こうして見ていると本当にお似合いの二人だ。
俺もシルフとこんな風に出来たら良いんだが、
あいつも変な所で恥ずかしがり屋だからなあ。
こんな事をしたらきっと顔を真っ赤にするだろうし、難しいもんだ。
「……なあ、陽。
お前、何だか楽しそうじゃないか?」
圭が不思議そうに尋ねてきた。
「ん、楽しい?
いや、むしろ最近は困ってる事ばかりで頭が痛い位だよ」
「そうかなー、でも、私も今の陽君の方が、
去年再会した時よりもずっと幸せそうに見えるよ。
だって、陽君、今、少しだけ笑っていたよ。
ね、圭君?」
「そうそう、お前がそうな風に笑うなんて、驚いたよ」
「そうかな、俺は人並みに笑っていると思うんだが」
「うーん、陽君を良く知らない人にはそう見えると思うけど、
私達から見るといつも上手に笑っている演技をしてるように見えてたかな、ね?」
沙紀はそう言って圭に同意を求めるように顔を向けた。
「そうそう、お前って口では面白いって言ってて、
顔もそれらしく笑っているけど目の奥は笑ってないって言うのかな?
頭じゃ理解していても感情は湧いていないんじゃないかって、
怪しく思えるような所があったんだ。
けど、今は本当に楽しそうな顔をしているよな」
「そんな事を言われったって、俺には分からないぞ?」
「違うよー、凄く変わってるんだよ。
うん、当ててみようか」
そうして、びしっと音が出る位にしっかりと俺を指差す沙紀、行儀が悪いぞ。
「万年氷河期の陽君にも、なんと春が来ましたー!!
とかかな?」
陽君に限ってそんな事無いよねー、と沙紀が笑う、圭も笑った。
どれだけ失礼なんだ、この幼馴染ども。
「え、ひょっとして本当にそうなの?」
けれど、図星を付かれて上手く返しが出ない俺を見て段々と真顔に戻ってきた。
「「本当、なの(か)?」」
二人が声を揃えて尋ねる。
「まあ、そういう事、だな」
「なん…だと…?」
「誰!?
誰が陽君みたいな鋼鉄の朴念仁を捕まえられたの!?」
沙紀が信じられないという様子で俺に聞いてくる。
一方の圭は神に祈るような表情だった。
こいつら、二人揃って本当に失礼な奴らだな。
「ひょっとして、……シルフちゃん、とか、かな?」
「その恋人って、……シルフちゃん、だよな?」
二人の声が、シルフ、の所で見事に重なる。
「ああそうだよ、シルフだよ、シルフ。
シルフが俺の恋人だよ」
二人とも俺の答えを聞いて、時間が止まったように黙り込んでしまった。
「何だ、何か文句でもあるか?」
少し間をおいてから、二人ほっとしたように息を吐いた。
「そっかー。
やっぱり、あの子か。
それなら良いの」
「良いってどういう意味だ?」
「うん、私達はあの子が報われないんじゃないかなって心配していたの。
もし、そうなったら、あの子、心が壊れちゃいそうだったから。
だから、想いが通じて本当に良かったって思うわ」
「私"達"?
おい、圭、お前もなのか?」
圭は、何言ってるんだこの馬鹿は、という呆れ顔をしていた。
「当たり前だろ、どうすれば気付けないんだ?
シルフちゃんは毎日毎日お前に会うためだけに美術室に通って、
合宿の時だっていつもお前の側から離れようとしなかったじゃねえか。
どうせ家の中でもそんな風なんだろ?
それで気付かない奴なんていたら、そいつは狸の置物かなんかだ。
だって言うのに、お前は知らん振りを決め込むしな。
甲斐甲斐しいシルフちゃんがいじましくて、見てて辛かったよ。
シルフちゃんの気持ちに、勘の良いお前が気付いて無いはず無かっただろ?」
「それに私の場合は雪風からも色々聞いていたわ。
正直な事を言うとね、もし本当にあの子が報われなくなったら……。
例えば、あの子以外の名前なんて出したら、今この場で斬ろうと思っていたの。
私は圭君に纏わり付く雌豚以外の大概のものなら許してあげる事にしているわ。
でも、人の気持ちを踏みにじる事、
それだけは新藤 沙紀として絶対に許せない事だね。
だから、シルフちゃんを最後まで大切にしてあげないと許さないヨ?」
おい、お前はまだ入籍していないだろ?
何で新藤姓なんだよ?
なんていう的確な修正は入る余地が無い。
沙紀が鋭い視線で俺を睨み付けたからな。
よく見れば彼女の右腕は刀の柄に掛かっていたようだ。
その瞳は一点の濁りも無い、けれど恐い。
所謂、射抜くような視線という奴だ。
今の沙紀に比べれば瞳の濁った沙紀の怖さなんて、ただのツンデレみたいなもんだ。
もしふざけて学部のアイドルさんの名前でも出した日には、
……冗談抜きで背筋が冷たくなった。
「ああ、俺は絶対にシルフを幸せにする」
「そうね、大丈夫だよね。
今の陽君なら私が言わなくてもシルフちゃんを本当に幸せに出来るわ。
私と、それに圭君が保証するよ」
「それにお前達には雪風だっているしな」
何も知らない圭はそう俺を励ます。
雪風か、今はその雪風に頼り切る訳にはいかないんだがな。
「残念だけど、それは無理かな。
だって、雪風はずっと報われていなかったもう一人の可哀想な女の子だから」
その言葉に圭は不思議そうに首を捻った。
「ねえ陽君、雪風の事はどうするの、それもとっても大事な事だよ?
もちろん、女の子としてね」
沙紀が真剣な表情で俺を見つめる。
「……そこまで分かるのか。
凄いな、雪風に言われるまで俺はずっと気付けなかったぞ。
それとも、雪風が沙紀には言っていたのか?」
「別に雪風がそういうことを私に言った事はないよ。
でも、ほら、私は雪風と仲良しだし、
どこか私と通じるところがあの子にはあるから、色々とね。
それに、少し離れているから分かる事ってあるの。
雪風みたいに陽君の足りない所を補って、
陽君を全部知ろうとするのって、兄妹のあり方じゃないもの。
恋人、ううん、それよりも夫婦に近いのかもね」
「言われてみればそうかも知れないな。
結局、俺は鈍感だったって事か」
「ううん、それは気にしすぎる事じゃないわ。
普通は兄妹でそういう感情ってなかなか湧かないもの。
それどころか本当の夫婦だってそこまでは行かないと思うよ?
でも陽君にとっての雪風はずうっと、
そうだったから気付けなくても仕方ないわ」
「俺と雪風は、普通の兄妹じゃなかったのか……」
「うん、はっきりと言えばそうなるかな。。
だから、大事な事だと思うの。
血が繋がっているから、で切り捨てるのは簡単だよ。
でも、そんな事は陽君も雪風も、
それにあの子だってきっと望んでいないでしょ?
もちろん、そんなのは私も決して認めない」
「……実はな、シルフと付き合う前の頃に雪風に言われたんだ。
俺に尽くしてきたのは、全部俺が欲しいから、縛り付けたいからだって」
自然と言葉が口から出てきた。
この事を誰かに話すのはこれが初めてだった。
「そうなんだ。
それで圭君は雪風をどうするつもりなの?」
「俺には、まだ分からないんだ。
どうして雪風みたいに良い子が、俺なんかをそこまで欲しいのか。
それに、俺が欲しいって言うのもどういうことなのかも。
俺の勝手な思い込みなのかも知れないけど、
雪風が本当にそんな事を望んでいるなんてやっぱり思えない。
俺の知っている雪風はいつも俺に寄り添ってくれて、誰よりも近い、
まるで自分の半身のような存在なんだ。
それで、いつだって俺の心が折れそうなときは支えてくれて、
俺に笑いかけてくれて、俺が間違ったことをしたときだって優しく正してくれる。
俺が今の俺なのは雪風のお蔭だってはっきり言えるよ。
だから、俺から全てを奪って自分の物にしたいなんて信じられない。
大体、そんな事しなくたって雪風がちょっと手を離していれば、
絵への興味も、シルフへの想いも、俺はどんな物だって持っていなかったはずだ。
なのに、じゃあ本当の雪風は何なのかと言われると分からなくなるんだ。
だから雪風の想いにどう応えれば良いのかも分からなくって」
雪風をどう思っているのか、それをしっかりと口に出すのは初めてだった。
だが、一度口を開くとまるで壊れた堰のように雪風への思いが溢れ出だしてくる。
そして、溢れる言葉が積もるたびに、俺にとっての雪風という存在の重さが増していく。
その信じられないような重みに俺自身が驚かされる。
「そうなんだな」「そうなんだね」
二人は静かに俺の言葉の先を促す。
「それだけじゃない、本当はシルフの事だって良く分かっていないし。
この前、家に帰ったら俺にシルフが泣きついていたんだ。
どれだけ聞いても言ってくれなくて、結局なんで泣いているのか分からなくって。
結局、俺はシルフが泣き疲れて眠るまでずうっと頭を撫でているだけで。
……情けないよな、本当は恋人として、家族としてもっとする事があるはずなのに。
そういう事を考えていると、俺は本当に二人に相応しいのかなって不安になる時があるよ。
二人が本当に望んでくれるなら俺はどんな事でもしたいって思っているのに、
どうしてもそれが何なのか思い付かないんだ」
二人はあれだけ俺の事を思っていてくれるのに、
俺は未だに二人ににちゃんと応えられ切れていないんじゃないかと思う。
それが恥ずかしくて堪らなかった、目線を二人から逸らす。
「いや、そんなの情けなくなんて無いだろ。
陽は間違ってなんていないよ。
他の人の気持ちはどんなに思い遣っても分からないものなんだからさ。
だから、そうやって大事な人の事をずっと考え続けることが大切なんだ」
恥ずかしさでいたたまれない俺に対して圭が言った。
その声は強く、目が覚めるほどにはっきりとしていた。
「やっぱり、お前は変わったな。
ちょっと前までの陽だったら、間違い無くこんな事では悩まなかっただろ?
だから、シルフちゃんと雪風に感謝して絶対に二人から離れるんじゃないぞ」
「圭君の言うとおりだよ、陽君は間違ってなんかいない。
そうやって二人の事をずっと考え続けて、
二人にとって最高の答えを陽君が自分で見つけるの。
それが、今までずっと二人を困らせていた鈍感な陽君の義務だと私は思うわ。
でも大丈夫だよ、圭君は自由に答えを出して良いんだからね?」
「ああ、分かった。
二人の事をずっと考え続ける、そして答えを見つけてみせる」
そう返事をした時には、俺の胸が軽くなっているのを感じた。
少し遅れて、沙紀が照れくさそうに上品な調子で笑う。
「うふふ、良かったわ、陽君がちゃんと悩んでくれて。
これで、雪風を気持ち悪いって拒絶したり、
はっきりと『雪風は何があっても俺の妹だ、俺は迷わず受け入れる』とか、
『俺はシルフを誰よりも理解しているんだ』なんてふざけた答えをいつまでも出すようだったら、
陽君の右手右足無くなってたよ?」
沙紀は左手で刀を縦に振るジェスチャーをしている。
右手はまだ柄に掛かったままだ。
「いや今、圭の自由だよって言ったじゃん!?」
突っ込みを入れたのは俺じゃない、圭だ。
沙紀に瞳を覗きこまれた今の俺にはそんな余裕なんて到底無い。
「うん、陽君は自由に決めて良いんだよ」
沙紀はそこで目を瞑り、えっへんと胸を張るようにして話を続けた。
「ところで、こういうジョークは知ってるかなー?
昔々、ある独裁者が言いました。
わが国には言論の自由も表現の自由もある、
その後の身体の自由までは保障しかねるがって、くす」
そう屈託の無い笑顔で言って、
今度こそ沙紀は右手を柄から離しティーカップを取った。
その動作に体の力ががくりと抜けた、
どうやら沙紀の気迫に中てられていたらしい。
うん、沙紀や圭が俺達の事を思い遣ってくれていたのは嬉しいよ。
嬉しいけどさ、たった1時間ちょっとで2回も、
死神さんとこんにちは、をするのってどうなのさ?
ここはソマリアとかじゃないよな、法治国家日本だよな?
「ねえ、さっき陽君は二人の為ならどんな事でもしたいのに、って悩んでいたでしょ。
そういうのを何ていうのか知ってる?」
気が抜けて、深呼吸をしている俺に沙紀が問いかける。
「随分と漠然としているな。
そうだな、優柔不断って所か?」
「ううん、全然違うよー。
それはね、二人を愛してるって言うの。
愛するっていうのはね、その人の為に思い悩む事なんだよ。
私も圭君と一緒に居るとそうだから分かるの。
もちろん、シルフちゃんも雪風も同じ気持ち。
そして、その想いが幸せに繋がるかは全部、陽君に掛かっていると思うの」
沙紀は敢えて口には出さないが、
恐らくはもう俺の選ばないといけない道を知っているのだと思う。
愛している、ならその先の答えは一つだけしかないのだろうから。
「分かっているよ。
沙紀、それに圭、ありがとうな」
そう俺は返した、きっと自然に溢れ出た笑顔で。
「良い笑顔だね。
ふふ、ちょっと陽君に惚れちゃったかも
もし、この世界に圭君がいなかったらだけどね」
「そりゃ残念だな」
「うん、残念でしたー。
圭君は今の陽君の1兆倍は素敵なんだよ。
……ところでけー君?」
沙紀の瞳が一瞬で放射性物質と重金属と有機物で汚染された長江のヘドロのようにどろりと濁った。
「なんで『陽君に惚れちゃった』の所で0.000014秒、目が輝いたのかな?
なんで『圭君がいなかったら』の所で0.000011秒だけ、残念そうな目をしたのかな?
圭君って奥さんが他の人に取られると嬉しくなるような最低の変態さんなのかなー?
うふふふ、ごめんねー、陽君。
ちょっとこれから二人でオハナシしなくちゃ駄目みたい」
俺は無言で立ち上がった。
その時に、一瞬だけ圭と目が合った。
―――分かってくれ、俺は沙紀の事は大好きだ、愛してる。
でもさ、ほんの一瞬だけこれで痛みから解放されるって思ったら、
体が勝手に反応しちゃったんだよ!?
ほんの一刹那の出来心なんだ、頼む、助けてくれ!!
生まれたばかりの小鹿のような目で俺にそう訴えていた。
圭、お前ってやつはどうしてこう……。
とは言え、圭の言う事は尤もではある。
世の中には仕方が無い事は勿論あるし、今までの圭の待遇を見れば同情の余地は十分あるだろう。
いつもだったらせめて脱出ルートの確保ぐらいは手伝ってやるだろうさ。
だが、今日の俺は敢えて言わせて貰いたい。
「圭、一回地獄を見て来い」
俺はそれだけ言い残して圭を見捨てた。
見捨てられ、絶望に染まった圭の目が俺の背中に焼きついた。
だが、後ろを振り向くなんぞ断固として無い。
以上です。
ありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。
なんか止まってるけどGJ!!
GJ!
次回も期待!
連続で投稿してすみません。機会が今くらいしかないもので。
予告通りの最終回です。
これまでのあらすじ。
ある所に麗華、玲と言うの見た目麗しい姉妹がいました。彼女らは同じ人に恋をしていました。それが怜二です。
しかしある日、姉妹は彼が本当の兄弟である事が判明します。すでに少なくない年月の付き合いのせいで、姉妹は彼の事が諦められません。
一方で怜二はそんな二人の気持ちを知りながら、隙を与えず、逆に意地悪をします。
これが、自称紳士の怜二と姉妹姫の日常でした。
しかしある日、怜二は幼馴染の氷柱の強襲に遭い、望んでもいない性行為を強要されます。
果たして怜二の運命は?麗華と玲の取る行動は?
「ぬ・・・?」
意識を取り戻した時、まず認識したのは何度も見た天井。
自分はベットも上。暗い夜。
「ん・・・夢・・・?」
今までの事は全部、夢?
殴られた感触はもう無い。
疲れにまどろむ意識は、しかし何の前触れもなく現実に戻る。
ここは自分の部屋ではなかった。
彼は、怜二は幼馴染の部屋にいた。
(うわー僕の部屋だと思っちゃったよ)
何度も遊びに来た場所だ。
ある日幼馴染がアダルトな行為を覚えて、怜二を襲ったその時から、彼は自発的に来なくなかった。
「あ、起きた?」
振り返ると出入り口に氷柱が立っていた。シャワーを浴びたのだろう。
清涼な見た目がより一層引き立てられている。
「なんだ、僕はまた気絶したのか」
「うんうん。先に眠られてちょっと寂しかった。・・まだ足りないからもう一回しょ?」
「もう一回って言って、またもう一回って言うんだ。永遠に終わらないじゃないか」
彼の皮肉に、氷柱は幸せそうな笑みを浮かべた。
「そうしよう?そうしよう?結婚してよ?ずっとずっと一緒にいようよ・・・」
「余計な事を言ってしまった・・・・」
再び雌が発情したらしい。いきなり生まれたままの姿になり、のらりくらりと近づいてゆく。
窓から漏れる月光が反射して、濡れた瞳がギラついた。
怜二は逃げる参段を立てたが、マッパで屋根の上を歩く羽目になる結論に至ったので、観念する事にした。
ピンポーン
チャイムが鳴ったのはそんな時だった。
「ん?君の親が来たのかな?」
「知ってる癖に。親が居なくなる時に怜二を持って帰ったのに」
ピンポーンピンポーン
「・・・僕は心当たりが一つある」
「?」
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
氷柱の家で怜二が玄関まで出迎えようとしている。
逆立ちで歩きながら、器用に下着とズボンを履いている。
「ん?普通に着なよ」
「ギャグを挟もうかと」
「揺れる象さん見てて、体が火照っちゃった」
「ごめん、自制する」
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「はーいどちら様ー?」
インターホンの受話器に向かって氷柱は呑気に答えた。
玄関の向こうから聞こえたのは、知らない女性の声だ。
『貴方が氷柱さんですね?メールをありがとうございます。私、怜二の家の者で、麗華と言います』
「へぇ、初めまして。氷柱です」
『そちらに弟がいるのですよね?回収に来ました』
氷柱は心の中で悪態を付いた。
「・・・メールで伝えましたけど、怜二は・・」
「僕なら今玄関へ行くからー」
いつの間に背後に立っていた怜二が麗華にそう言った。
間も無く歩き出す怜二に、氷柱は慌てて受話器をきちんと戻してから追いすがった。
「何で何で!?何で帰っちゃうの!?ヤダヤダ!!ずっと居てよ!!」
「ええい、やかましい。僕は君がどうも苦手なんだ。ペースを乱されるし、すぐ殴るし」
今まさに殴りかからんとした氷柱の腕が止まる。
「そっか。私が悪かったんだ。ごめんね?ごめんね?ごめんね?ごめんね?ごめんね?謝るからずっと傍にいて?行かないで?あの姉を追い返して」
「日頃の行いが悪い、と言えばそこまでだね。まずは悪い所から直すか」
いよいよ玄関の扉の前に立った時に、氷柱は続きを急かした。
「どうしたらいい?」
「うむ、まずはボケとツッコミを覚えよう!麗華も玲も上手だよ。正に華麗な麗華さ・・」
「聞こえているんですけど?」
扉から冷やかな声がした。
場の空気が止まる中、怜二は一つ咳祓いして、
「・・・これがホントの人の口に戸は立てられぬ」
「学んでる場合!?」
「おお、これがボケとツッコミ」
「氷柱さん、つられないで!それから怜二、早く帰りますよ?」
「はいはーい。覗き窓に見えますのは、麗華と、あ、玲もいたんだ。いやぁ、愛されてシスコン冥利につきるってね。ところでさ・・・」
怜二の声のトーンが少し落ちた。
「今、刃物を隠さなかった?」
ドアの向こう側で挙動不審が垣間見えた。怜二の背後でも氷柱は眉を潜めた。
「あ、ごめん、今のハッタリ。でもさっきの反応て図星だった?あーどうしよう?」
ここで珍しく、玲が発言した。
「兄さん・・・扉を開けて?そこの女・・・殺せない・・・」
まさに爆弾発言だった。氷柱はくっくっくと笑いを堪え切れず、麗華は頭を抑えて悩んだ。
やがて溜息をつくと、開き直って包丁を覗き窓に向かって突き出した。
怜二のげんなりとした声。氷柱は彼を押し退け、彼女らと対峙しようとして、しかし退かせられなった。
「怜二?どいてよ。あいつら、私と怜二を引き裂こうとしている。殺さなきゃ」
「そう言う訳にはいかん。僕はシスコンだし、君は幼馴染だ。この戦いを止める義務がある」
「姉の言う事を聞きなさい、怜二。その女は私達の大切な大事な貴方を犯した」
「し、しかし・・・」
扉一枚挟んで女3人が声だけで殺気蠢く環境を維持している状況。
怜二は怯む事無く言ってやった。
「最終回でバトルものを入れたら収集が付かなくなるのは常識だぞ?」
「「今の今まで何を心配してたの!?」」
「やかましい、かしましい。君らの戦意を削ぐには寒いギャグが一番なのだよ。と言う訳で鬱展開など許さん。決着が付くまでボケ倒してみせる!」
「それこそグダグダに終わりそうな事なんですけど!?」
「・・・兄さん、私達が何故来たか・・・忘れてない?」
「む・・・」
以下、「」の前に発言者を表示します。
怜二「もちろんさ、可愛い妹よ。・・御免、忘れた」
麗華「光の速さの前言撤回!」
玲「はぁ・・・。・・・そこの女をどうにかしにきたのに・・・」
怜二「まあ・・・すぐ僕を犯そうとするのは、流石に目に余る所なんだよね」
氷柱「ぶー。私達が永遠に結ばれる為の儀式だよ。だよだよ?」
怜二「そもそも氷柱に性知識を教えたのは誰だ!?」
氷柱「怜二が忘れるなんて意外。100丁目の百合絵ちゃんだよ」
麗華「なるほど、本当に余計な事をしたのはその人ですね。・・・100丁目!?そんな住所が存在するの!?」
怜二「電話で文句を言っちゃおう。ぴぽパぽ、プルルルル、ガチャ。もしもし百合絵?怜二だよ、久し振り。
今氷柱の家にいるのさ。・・・何?ここから近いコンビニに居るの?じゃあ今から合わない?ガチャ」
麗華「こんな最終回のドサクサで新キャラ!?」
百合絵「私、参上!」
麗華「早っ!」
百合絵とは、いかにもツンデレキャラのテンプレートに当てはまりそうなツインテールだった。
怜二はドア越しに話しかけた。
怜二「よう来なさった」
百合絵「私の方が年上よ、無礼者!・・て言うか、もしかして修羅場?私の知らないこの二人と氷柱がいがみ合っているとか?」
怜二「さすがone of the 幼馴染。氷柱の性格をよくわかっている。さて、取り分け頼みがあるんだけど・・・」
百合絵「?」
怜二「名前通りのレズっ娘よ。氷柱が発情したから相手してやって」
氷柱「え?」
怜二「そもそも君がレズを望んで氷柱に教えたせいだ」
百合絵「そう言う事なら、OK!」
怜二が素早くドアの鍵を開けて、百合絵が滑る様に入っていった。入れ替わりで怜二が玄関の外に出て、合鍵でしっかり錠を掛ける。
こんな会話が中から漏れて聞こえた。
「ちょっと待って・・!私は怜二だけに体を許しているのに・・・」
「ふふふ・・良いではないか、良いではないかー」
「ら、らめぇえええ・・・」
唖然と口が塞がらない麗華といつも通りの涼しい顔の玲に、振り返えった怜二は笑顔で言った。
「さ、帰ろうか!」
玲はポツリと呟くしかなかった。
「・・・まさかの・・・レズオチ・・・・・・・・」
すっかり暗くなった夜道を抜けて、無事我が家に到着した姉弟妹は、顔が朝日の様に晴れやかだった。
「来てくれて嬉しかったよ。僕は氷柱だけが苦手だから、生きた心地がしないんだよねー」
「へぇ。怜二に弱点が?いつもは、えっと?『僕は不死身で紳士で完璧』って広言してますよね」
「ははは。でも弱点ではないさ今日だって切り抜けて来たんだ。どう?やっぱり無敵でしょう?」
「・・果たしてそれは本当でしょうか?」
「うん?」
麗華と怜二が顔を見合せた瞬間、
ドカッ!
「ぐっ!」
彼の腹に拳が食い込んだ。追い打ちに玲が足を払い、怜二は崩れた。
麗華が小さく笑うと彼に馬乗りし、一方で玲は怜二の頭を押さ付けた。
そして殴る。
殴られた。
殴る。
殴られた。
殴る。
殴られた。
殴る。
殴られた。
殴る。
殴られた。
殴る。
殴られた。
やがて紳士は、静かになった。
「・・・・な・・・で?」
いつもの覇気が無い、力無い呻くような声が聞こえた。
彼の目前で、玲が可愛らしく頬を染め、麗華が華の様な、綺麗な笑顔で答える。
「玲の盗聴器に氷柱さんの独り言が入ってました。打撲音が偶に雑音でしたが、
拾えるだけの音声でも何が言いたかったか、わかりました。怜二、貴方、暴力が弱点だったのですね」
盗聴器?ああ、あったねそんなの。でも僕は気付いてた。なんで外さなかったんだっけ?
「ほら、貴方が悪戯の為にわざと付けっ放しにした盗聴器。あら、まだ襟に付いていた」
怜二は目を閉じて思い返した。盗聴器でどう遊ぼうか考えた帰り道。
その時の氷柱の奇襲攻撃。あの瞬間から盗聴器の事など、頭から離れていたんだろう。
(・・・・いつもの悪戯が仇になった、か・・・・)
次に目を開けた時には姉弟妹でベットの上だった。
玲は首を傾げて、麗華は笑顔で、怜二を抑えつけて見下ろしていた。
姉妹揃って彼の服の下を弄りながら言う。
「さて、怜二?私はもう我慢出来ませんが、何か一言あればどうぞ」
「兄さん・・・3文字以内で」
虚ろな目で紳士は見つめ返す。しかし彼は負けじと笑う。
負けじと笑いながら、敗北を認めた。
「うん・・・好きにしていいよ」
「3文字以上」
麗華が顔を殴った。以後、怜二は何も話さなくなる。
あとはただ食われるだけ。
ワーウルフのごとく、満月の下で、二人の姉妹姫は野獣と化して彼を貪り尽くす。
こうして彼は、禁忌の壁を突破されてしまったのだった。
その学園には二人の姉妹姫がいる。
姉の名は麗華。高等部三年生。
伸ばした髪は地毛でありながら赤みがかっていて、ちょっとした癖っ毛でもある。美人、聡明、学力も申し分ないうえに、それをひけらかす事をしない奥ゆかしさ。
それはまるで異国の王女様。
妹の名は玲。高等部一年生。
姉とは対照的に凛と引き締まる表情。完全に黒いストレートな髪をポニーテールにして纏めてある。無表情ではあるが、運動神経は並みの者とはケタ外れである。所属は空手部、剣道部。
例えるなら戦国時代のやんごとなき身分の姫。
姉は名の通りの麗しさで近づくのも躊躇わせ、妹もまた鉄の仮面が他を寄せ付けない。
二人して誰の愛の告白も受け付けない、高根の花。
しかしそんな二人と仲が良い男子がただ一人居た。
赤の他人。学年が違えば接点も無し。強いて言えば苗字が同じだけ。
しかしそれは過去の話。その正体は、二人の兄弟であった。
彼の名は怜二。
自称、完璧で不死身で紳士。
客観的評価は、
校門では姉妹姫の登場に、場が熱くなった。
「おはようございます、麗華様、玲ちゃん」
「あら、おはよう」
「・・・ん」
一人の女子学生の挨拶に姉妹姫が答える。
玲は無口なので大抵御喋りするのは麗華の方。
世間話を始めるが、そこに駆け寄る男の影が一人分。真っ赤な薔薇束を捧げて、
「麗華様、今度こそお付き合い願えますか!?」
大きな声で誠意ある感じな告白を。
彼は王子と言う名で男子一のイケメン。
が、その姿はバニーガールのそれだった。
「「「貴様ぁ麗華様と玲様の眼を汚したなあああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」」」
電光石火で王子はリンチの渦に飲み込まれた。
電光石火で王子はリンチの渦に飲み込まれた。
姉妹姫は呆れ、後ろを振り向いて、男兄弟の怜二の姿を確認した。
苦笑いの女子集団に囲まれ、「変なものを見せるなよ」とリンチ・・・否、指で突かれている。
中心にいる彼は爆笑している。
彼こそ王子にコスプレさせて麗華にけしかけた張本人だ。
怜二は、お調子者で辛辣で、悪質なのだ。
麗華が彼を呼び付け、怜二は素直にやってきた。
「いい加減になさい。もはや告白が日常の一部になっています」
「えー?面白いのに?」
「私が面倒なのです」
それから口を耳に近づけて、色っぽい声を小声で伝える。
「罰として昼休みは付き合ってもらいます。学校でスるシチュエーションもいいかもしれませんよ?」
麗華は玲に振り向くと、一つウィンク。眼で合図されて玲は両手を合わせて指を鳴らすと、
裏拳で怜二の腹を狙い、
ガンッ
と音がして、玲が手を押されて泣きそうになった。
「うん?」
麗華も呆然。怜二が自分でシャツも捲り上げるが、今では見慣れた肌が覗くだけ。鉄を仕込んだ様子もない。
試しに麗華が叩いて見ると、金属の感触が返って来た。
「痛っ。え?何これ?」
見上げて見ると、怜二のなんとも意地悪そうな顔。姉妹に向かって踏ん反り返る。
「実はあの日の禁忌の夜の翌日、不思議な事が起こったのさ。なんと、自在に体を固くする技を天より授かった!」
ピキ―――――――――ン!と反射光が輝く!
「何そのファンタジー路線!?」
「その技の名は、『かたくなる』!!」
「そのまんま・・・じゃなくて何でポケットに入る怪物の技名みたいなの!?」
「くっくっく・・これでまた一つ、僕は弱点を克服したぞ」
自信満々に言い切る怜二に麗華も玲も不満そうな顔になった。
「・・・そんなに私達を拒みますか?」
「君達の為に言っている。なんだかんだ言って近親相姦は危険なんだ。
ばれたら、君達の沽券に関わるぞ。僕は長男として、君達を守らねばならない」
丁度その時携帯電話が鳴る。怜二のもので、氷柱からの着信である。
「ピッ!ヘィもしもし?」
『痛いよー怜二ー』
「あっはっは!携帯いじれるくらいなら、もう両拳は大丈夫そうだねぇ」
なんと玲二は氷柱まで攻略した模様。
「心配せずとも、僕は幼馴染の付き合いは大事にするよ?放課後にでも電話しようか?
話題はマイブームのラーメン」
『ほとんど昨日まで餃子じゃなかった!?後、私はラーメンより欲しいものがあるよ。欲しいのはザー』
ぶつんっ
涼しい顔で携帯電話をしまう。
顔を上げると、不満そうな麗華と玲の顔。
周りを見渡すと姉妹姫と兄弟である怜二を嫉妬する男女の視線。
「れ〜〜〜い〜〜〜じ〜〜〜」
どこからか聞こえるリンチに遭ったようなゾンビの声は無視しよう。
「ふふふ。妬むな妬むな不満そうな顔もするな。そんな顔しても仕方無いだろう?何故なら・・・」
彼は笑う。
周りが息を飲む。
怜二は両手それぞれに、麗華の手と玲の手を繋いだからだ。
姉妹姫も不意を突かれた。
ついさっきまで鉄の体だった手は、確かに人の柔かさと温もりがあった。
「僕は、不死身で、紳士で、完璧なのさ!」
END
後書き
最終話だけ随分遅くて御迷惑掛けました。
期待していない方も最後まで御付き合いしてもらい、光栄です。
キモ姉&キモウトの小説なのに、タイトル通りの意地悪な性格の怜二が目立っているのは仕様です。
言い訳すると、「だって主人公じゃないか」、です。
ライトノベルファンである自分は、そろそろ草食系男子に飽きて来た頃でして、
ヒロインを食う様な主人公が見たくて、怜二を作ってしまいました。
しかし次回作を作る機会もあれば、また個性的な長男で行きます。今度は終わりまできちんと考えてから。
有り難うございました。
久々投下GJです!
怜二侮れないなw麗華さん玲ちゃん可愛い
次回作も期待してます。
ヨスガノソラの穹がガチでストライクなキモウトだった……
穹良かったね…
穹は最高のキモウトだわ。あんなキモウトはそうそうお目にかかれないよ
読後感良いな
完結GJです>悪質
今晩は。
17話目を投下します。
「御空路ならもうとっくに辞めましたよ」
部活動帰りの私は、喫茶店で綺麗な黒髪の女性と話をしている。
名前は知らない。
本人は、ただの素敵な先輩さんだよ〜、と名乗っている。
確かに素敵な人だとは思うが、
自分でそれを言うのはどうなのだろうか?
そして、その先輩さんの目的はあの御空路らしい。
あんな奴の事をわざわざ知ろうとするなんて変な人だ。
「さあ、理由なんてよく分かりません。
辞めるちょっと前くらいから、いつもは陰気くさい奴なのに、
気味の悪い位に幸せそうな顔をしていましたね。
それで本人が言うには、ここに居る必要がないから辞めるんだそうです。
辞める時も見ててうんざりするほど幸せいっぱい、っていう様子でした。
それから、辞めた後の事は全然知りませんし、知る気もありません」
あの時は大騒ぎだった。
別に御空路が辞める事は大歓迎だから、一向に構わない。
ただ、なんであいつがあんなに幸せそうなのかが全員にとって謎だった。
一番初めに出たのは、恋人が出来たのではという説なのだが、
まあ、御空路に限ってそれは無いだろう、という事で皆の意見が一致した。
当然だ、あいつに付き合う位なら壁でも恋人にした方がまだ良い。
少なくとも壁の側に居て不愉快になる事は無いのだから。
すると先輩さんは、元部長に酷い良いようだねとやんわりと注意する。
「ふん、誰も御空路の事を部長だなんて、
いえ、仲間だなんても思っていません。
部の運営上仕方がないから、みんな黙って従っていただけなんです」
御空路がどれだけ嫌われていたかは、
辞めた直後の部員の晴れ晴れとした表情が物語っている。
「私も、初めは同情していたんです。
御空路は見た目だけは良い奴そうだったから、
悪い奴にでも騙されているんじゃないかって」
例えば、アイツのよく言っていた、
お兄ちゃんとかいう人がそうじゃないかと私は勝手に思っていた。
「でも、関わりだしてすぐに嫌われる理由が分かりました。
私たちの事に全く無関心なんです。
御空路と話したことがありますか?」
先輩さんは、いいえ、と答える。
「御空路と話しているとまるでテレビと話してるみたいなんですよ。
全くこっちの言う事に興味を持ってなくて、
御空路はそれを無視して勝手な都合をべらべらと喋っているだけで、
ええ、だから、話していると本当にイライラするんです」
何を言っても、御空路は、そう、と答えるだけだった。
そして二言目には、お兄ちゃんが、それだけ。
そんな奴の何を好きになれっていうのか本人に聞いてみたいものだ。
「直接の暴力を振われた事ですか?
言われてみると確かに無いですし、そういう話も聞いた事が無いです。
まあ、睨み付けとか寸止めなんかで脅されたり、
練習中にかなり強く痛めつけられる事とかはありましたけど。
ええ、そうです、お兄さん絡みになると本当に怖かったですね。
だから、お兄さんの話は御空路の前では絶対に禁句でした」
……武道を学ぶ人間として言えなかったが、
御空路が嫌われた理由には彼女が圧倒的な才能の持ち主だったからという事もある。
そして、それを自分が好き勝手にやる為だけに利用するのだから嫌われて当然だ。
思わず右手を強く握る。
直後、右腕全体に鈍痛が走って、小さく声を出してしまった。
それに驚いた先輩さんが、大丈夫かな、心配そうに声を掛ける。
「ああ、この腕ですか?
折られたんですよ、いえ、喧嘩ではありません。
御空路と本気でやり合って五体満足の人なんていませんから。
これは練習試合中の事故です。
あいつが間違えて、折れるまで腕を極めやがってくれました」
私は不愉快な事を思い出して、顔を歪めた。
「……辞める直前だったんですけど、あの時期の態度は最悪でした。
それまでの御空路は、多少は周りと合わせようとする格好くらいは見せていたんです」
もっとも、お兄ちゃんとやらに迷惑を掛けない為だけだったのが見え見えだったが。
「けど、あの頃からは練習でも作業みたいに私達を手早く痛めつけて、それでお終いです。
だから、私も頭に来て御空路に何を考えているか聞いたんです。
そしたら何て言ったと思いますか?」
さあ、と困ったように先輩さんが笑う。
同性の私から見ても綺麗に思える朗らかな笑い方だった。
「嬉しそうに『早くお兄ちゃんに会いたいから』ですよ」
その時の御空路の顔は無邪気で、本心からそう思っているのが見て取れた。
そして、これを聞いた時に流石の私も御空路を見限った。
「そうですね、この腕を折った時も、
『ごめんなさい、お兄ちゃんの事を考えててぼうっとしていたの』
特に表情も変えずに、ただそれだけ言ってお終いでしたね」
お蔭で、私は合気道の方の大会に出る事が出来なかった。
私にはそれは特別な意味があった。
自分が昔から通っていた道場のたった一人の代表として出る大切な大会だった。
道場の顔として期待され、私もそれに泥を塗らない様に必死に練習を毎日していた。
それを私は御空路の不注意で棒に振った。
しかも、あいつのいい加減な、なんちゃって四教でだ。
あの時は悔しさと、自分への情けなさで一晩中泣いた。
もっとも、私はその事を御空路には言った事は無い。
どうせ言ったところで、そう、と気の無い返事を返されるだけに決まっている。
私は左手のスプーンでコーヒーをかき混ぜる。
カップの縁にスプーンが当たる度にガチャガチャと乱暴な音が立つ。
「まあ、こんな所ですね、御空路の話なんて。
他に何か聞きたい事はありますか?」
すると目の前の女性は妙な事を聞いた。
御空路の事を尋ねた人が他にいなかったか、と。
「えっと、確か一人、男の人がいました」
思い出してみると何となくだが、
あの人も目の前にいる先輩さんと雰囲気が似ていたような気がする。
「そうですね、名前は教えてくれませんでしたが、
その人も感じの良い、落ち着いた人でしたよ」
私が質問に答えると先輩さんは上品に微笑みながら私に礼を言った。
この人の笑い方には、ぱぁっ、と咲く夏のひまわりの様な明るさがある。
この先輩さんは、まるで御空路と正反対のような素敵な人だと思う。
どうしてこんな人があんな奴と繋がりがあるのか良く分からない。
そんな事を思っていると先輩さんが時計を見ながら、
あっ、と小さく驚きの声を上げた。
それから、もうすぐ兄さんと約束があるの、と言って慌てて席を立つ。
兄さんか、取り敢えずこの先輩さんは兄妹仲が良いようだ。
そういえば、御空路の言っていたお兄ちゃんってどんな人のだろう?
実は私は直接会った事が無いからどんな人かは分からないが、気の毒な人なのは確実だ。
あんな奴に気持ち悪い位に付きまとわれるのだ。
そんな毎日なんて想像するだけで気が滅入ってくる。
私は見た事のないお兄ちゃんに同情したくなった。
カラン、カランとドアベルが鳴る。
先輩さんが扉を開けた時に吹き込んだ風で机に載っていた紙が飛んだ。
私は風に舞ったその細長い紙を中空で掴む。
その表面には『コーヒー 380円、チョコイチゴパフェ(特製)1890円』
とギザギザした文字で刻んであった。
……ところであの人、自分の分の支払いも残してってないか?
以上です、ありがとうございました。
今回は幕間のような積りです。
次回もよろしくお願いします。
GJ!
どうなるんかなー
wktkして続き待ってる
>>360GJ
所で職人さんに質問
改行って4〜5行で良いんだよね?
6行だと弾かれるんでしょう?
それと…と・どちらが良いのかな?
>>362 改行についてはよくわかりません。
演出としての空白改行とか、あまり使わないんで。
やるにしても、不必要に開けすぎると、携帯組が読むのしんどいから注意。
…と・に関しては、普通に…がオススメ。
・だと文字数(容量)無駄に食うし、何より行の先頭に持ってくると……
まとめサイトとかで・が数行分並んでいるおかしな表記は、これが原因だったと思う。
あと、…を使うなら、なるべく二文字一組で。右みたいな感じ……
あまり参考にならなかったかな……
作品の製作と投下を、ゆっくり心待ちにしています。
thanksでした。
妹に催眠術をかけられて許嫁と誤認して結婚したい
あらゆる証拠をでっちあげて許嫁に偽装するキモウトこえ〜
お兄ちゃんこわい
お兄ちゃんこわい
次は、お兄ちゃんの赤ちゃんがこわい
さてそろそろクリスマス小ネタ待機のために全裸になるか
全裸待機完了
暖房つけろよ、風邪ひくぞ
今晩は。
全くクリスマスと関係なくて恐縮ですが、
表題について投下をいたします。
黒い駒を摘んで、白い駒にぶつける、ころんと駒が倒れる。
今日も雪風はチェスを弄っていた。
別に独りで模擬戦をしている訳でもない、ただぼんやりと駒をぶつけ合っているだけだ。
そういえば、雪風はもう最近は絵を描いて居ないんじゃないかな。
前はあんなに楽しそうだったのに、どうしたのだろうか?
「兄さん、最近シルフちゃんの様子が変だけど、何かあったの?」
描かないのかと聞こうとしたが、先に言葉を発したのは雪風だった。
「雪風も気付いていたんだな」
「もう、兄さんみたいに鈍い人が気付けるのに、
雪風お姉ちゃんが気付いてないって思ったの?」
呆れたように雪風はため息を吐いた。
「何だかまるで昔私たちが初めて会った時みたいに、
不安そうにしている時があるのが気になってて……」
「そうだよな、俺が気付いてて雪風が気付かない事はないか。
その、この前、なんて言うか、シルフがとても辛そうだったんだ。
ただ、どんなに聞いても何が辛いのか教えてくれなくて。
俺も考えたんだが原因も分からなくってな、もし雪風に思い当たる事があればって思うんだが?」
一応、これでもシルフの恋人の積りなんだが、本当に情けないよなぁ。
「そうだったんだ。
そうなんだよね〜、私にもどうして、ていう話はしてくれないの」
雪風は困り顔で笑った後で真顔に戻り、今度は俺の顔をじぃっと眺める。
「う〜ん、こういう言い方って悪いのかもしれないけど、
ひょっとしたら兄さんが気付かないうちにシルフちゃんを傷つけたんじゃないかな?」
「……雪風の言う通りかもしれないな」
「いい、あの子の事はちゃんと大切にしてあげないと駄目だよ。
前も言ったけどシルフちゃんはちょっとだけ不安定っていうか、
上手に感情を処理できない所があるから。
それを助けてあげられるのは兄さん一人だけなんだからね?」
そう言って、念を押すように俺の目を見つめる。
なんだか、俺の方が弟で雪風が姉みたいだな。
雪風お姉ちゃん、ああ、それも良いのかも知れないな。
「くす」
「む、兄さん、何がおかしいの?」
「いやいや、こっちの話さ。
ところで、お前はシルフの事をどう思っているんだ?」
「えっと、良く分からないわ。
それはどういう意味なのかな?」
「そのままの意味だよ。
シルフを一人の人として、家族としてどう思っているのか知りたいんだ」
「難しいよね、何ていうのかな、私はシルフちゃんの事が大好きだよ。
それに、私はあの子の本当のお姉ちゃんだって思ってる。
けれど、全部が好きって言うわけじゃないの。
ただ一つだけ言えるのはあの子は私にとってとても大切な存在、それだけは確かかな?」
「それは、お前にとっての俺みたいに、か?」
雪風は曖昧に笑うだけで答えてくれなかった。
その曖昧な笑みのまま話す。
「シルフちゃんは変わったよ。
昔のシルフちゃんはただ兄さんの側に居ればそれで良いっていう消極的な子だった。
今は違うの、ただ側に居るだけでは嫌で、
もっとその中に入って行きたいって思っている、兄さんの中だけに。
あの子が自分から何かを求めようってするのは大きな変化だと思わない?」
「そうだな」
「そう、でもそれはとても内側に向いているわ。
シルフちゃんはただ兄さんのより深い所に居たい、
それ以外のことなんて何も考えていない。
そういう意味では、より悪化してしまったと言えるかも知れないね。
兄さんはどう思う?
シルフちゃんは結局狭い殻に閉じこもったままだよ。
もっと広い世界への扉を開いてあげるべきじゃないかしら?」
雪風が何処と無く皮肉めいた口調で言った。
俺は少し目を瞑り、頭の中で考えを纏める。
「俺はそう思わない。
シルフはシルフのままで良い、と俺は思うよ。
確かに多くの人と触れ合って色々な事を経験する。
それは人として正しい事だ。
けど、シルフがそれをしようとしたらきっとあいつは磨耗する。
あいつは弱いんだからな。
周りと歩調を合わせようとして、無理をして、
それでも周りから見放されて寂しい思いをして……」
頭の中に初めて出会った時のシルフが浮かぶ。
あの時の思いをもう一度シルフが味わう必要なんて、絶対に無い。
「それは一般的には正しい選択だが、そんなシルフは幸せじゃない。
誰もが正しい解答なんて選ぶ必要は無いんだ。
キザったらしく言うなら、鳥籠の鳥は森には住めないって訳さ。
俺はそんなことで苦しむシルフなんて絶対に見たく無い。
だから、シルフは俺と雪風しか居ない狭い世界を求めても良いんだ。
それはきっと色々と間違っていると言われるだろうが、
俺はそれで良いし、シルフにとってもそれが幸せだ」
俺の答えは雪風にとっては全くの予想外だったようだ。
雪風は驚いたように目を見開いて、
何かを調べるようにまじまじと俺の顔を覗き込む。
「ああ、その、まあ、正直可愛いシルフちゃんを独り占めしたいな〜、
っていう個人的な事情もあるがな、ははは」
「……兄さんもこの3ヶ月で変わったね、
今までみたいに模範的な解答を言わなくなったわ」
「そうだな、色々と真剣に考える事が多くなってな」
「そうだね」
「それに変わったのはお前もだと思うぞ。
何ていうか、ちょっと2人で居ると雰囲気が変わるって言うか。
そうだな、いつものアホっぽいオーラの濃度が減るって言うか……」
「あらあら、うふふふ、兄さん、ちょっと雪風と本音でお話しよっか〜」
雪風がひまわりの様に明るい笑顔と声で応える。
ただし、沙紀を髣髴させるようなどす黒い殺気を纏ってらっしゃるが。
「いえ、お兄様としては、その、けなしてる訳ではなくてだな」
「ふふ、冗談よ、ただの冗談。
確かに兄さんから見れば私は変わったかもね。
でも、私から見れば私は何も変わっていないわ。
変わったのは兄さんの見方なんじゃないかな?」
「そうなのかもな」
そう、結果として俺が本当の雪風からずっと目を逸らしていたのだから。
「そうだ、いつかの質問をもう一度させて、
私も今の兄さんならなんて答えるか知りたくなったんだ。
ねぇ、私は今すぐにでも兄さんをその椅子に縛り付けて、
そのまま犯したくて、嬲りたくて堪らないの。
それでも、私を兄さんの側に置いてくれるの?」
あれ、前より酷くなってないか?
違う違う、俺が言わないといけないのはそんな事じゃないよな。
「ああ、分かったよ、答えさせてくれ」
「うん、お願い」
雪風は何かの期待に満ちた目で俺を見つめる。
こっそりと息を飲んでいるのも分かる。
「そうだな、あの時みたいに居てくれて構わないなんて曖昧な言葉じゃない。
俺は雪風に側に居て欲しい。
雪風は俺にとってとても大切な存在なんだ」
「う〜ん、居てほしい、か。
惜しいかなぁ、もう一歩だよね〜」
雪風は嬉しいそうな気配を残しながらも、残念そうに笑った。
俺の自分勝手な言葉で雪風の望むものとは勿論違う。
兄である俺を自分だけの物にして縛り付けたい。
それは紛れも無い雪風の本音なのだろう。
俺はそれを否定しない。
だが、それには応えられない。
俺は雪風の願いだけを叶える訳にはいかない。
それでも、俺は、俺の答えを雪風に示したい。
その答えは……、
「雪風、ちょっとこれを見て欲しいんだが、良いか?」
俺は今描き上げたばかりの絵を指差す。
「えっと、どういう事かな?」
必要なものは全て完成しており、
あとは絵の具さえ乾いてくれれば完成だ。
「絵、だよね?
うん、綺麗な絵だと思うよ。
この前賞を貰った時よりもずっと上手になっているね」
どうやらそれが予想外の事だったようで雪風はきょとん、としている。
「綺麗な、か……」
こういうところは雪風とシルフは血が繋がって無くても姉妹なんだなと思う。
それが何となく嬉しく思う。
ただ、一つ悲しい事もある。
この絵では所詮、雪風には届いてくれないのだろうか?
「ところで、兄さんがシルフちゃんに見せたいって言ってたのはこの絵の事なの?」
「ああ、なんだか最近はシルフが怯えているように見えてな。
何に怯えているのかぼんやりとは分かるんだ。
でもそれをシルフを安心させてやれるような言葉にできない。
何ていうんだか、たくさん言いたい事が有るのにどうしても上手く言えなくてな。
それでな、じゃあ絵に描いてみれば伝わるんじゃないかって思ったんだ」
「あら、実利一辺倒の兄さんにしてはロマンチックな話ね、くすくす。
こんなに素敵な絵を描いてもらったらシルフちゃんは喜ぶよ?」
「違うんだ、これはシルフの為だけじゃない、雪風にも見て欲しいんだ。
これが、俺の2人への答えなんだ」
雪風の眉が小さく動く。
ちらりと絵をもう一度見た後に雪風はくすり、と笑った。
「ふうん、そうだね。
本当に、色も、構図も、主題も、全部がとっても綺麗な絵だね。
くすくす、もしも私が綺麗な物語の登場人物だったら、
兄さんの答えは100点満点だよ。
でもね、私は兄さんの妹の雪風なの。
そして私が欲しいのは私にとっての最高の結末」
「雪風?」
雪風が下を向いて悔しそうに俯く。
「兄さんがこれを描いてる時に、まさかって思ったんだ……。
……まさか、ずっと期待させておいて、
こんなものを最後に私に押し付ける気だったの?
私がこんな答えで喜ぶって本気で思っていたの?」
「雪風は、認めてくれないのか?」
「認めろって、ふざけないでよ!?
私の望む答えは誰が見てもハッピーエンドなこんな綺麗な物じゃない!!
非道いじゃない、やっぱり兄さんは私の事を全然分かってくれないの!?
何なの、こんな誤魔化しで私が満足できるって本気で思っているの!?」
雪風が怒りと悲しみの混じった声で叫ぶ。
涙の籠った赤い目で俺を睨んだ。
その目は強く、ユルセナイ、と俺を責めている。
「違う、俺は!!」
扉がガタリと開いた。
先生、それに沙紀と圭が入ってくる。
「……邪魔しちまったかな、一応2時にここでって話だったけど?」
圭が気まずそうに言う。
「いや、俺が呼んだんだからな、ありがとう。
……雪風、俺とシルフの3人で今夜、大事な話をしないか?」
「大事な?
くすくす、いいよ、兄さん。
いくらでも話し合いましょう。
兄さんが望むのなら、私は何でもしてあげられるわ」
そう言って笑う。
雪風はもう俺の絵を一瞥すらしなかった。
「先約があるところ悪いんだけど。
陽くんと、それから雪風くんはちょっと私の居室に来てくれるかな?
大事な話があるんだ」
先生が俺たちの話に割り込んだ。
*********************************************
玄関の扉に手を掛ける。
ドアノブを回そうとする手が無意識に鈍るのが分かる。
姉さんに悲しい事を言われてからも、私の毎日は何も変わっていない。
姉さんはいつもの様に私に接してくれる。
少なくとも、お兄ちゃんの前では……。
それ以外の時は、私は姉さんと会うのをできるだけ避けるようになった。
姉さんから私に何かを言おうとする事も無い。
だから、姉さんが本当は何を思っているのかは分からない。
多分姉さんは私の事を……。
でも、大丈夫、私にはお兄ちゃんが居るから。
お兄ちゃんは絶対に私の側から居なくならないし、
嫌いになったりなんてならない。
今日だってお兄ちゃんは私を抱き締めてくれる。
明日だって、明後日だって、いつまでお兄ちゃんは私と居てくれる。
お兄ちゃんはそう約束してくれた。
だから大丈夫、お兄ちゃんが居れば姉さんなんて、必要ない。
私はお兄ちゃん以外に、何もいらない。
お兄ちゃんさえ私の側に居てくれれば、幸せなのだから。
ばたり、と玄関を開ける。
今はもう、ただいま、と言わなくなった。
今日もお兄ちゃんはまだ帰っていないのかな?
ご飯の準備をしようと台所に入ると姉さんが鼻歌を歌いながら夕飯を作っていた。
「……? 今日は私の順番だよ?」
それに、いつもの夕飯にしては豪華すぎるんじゃないかと思うくらい、
姉さんは力を入れて料理をしている。
私に気付いた姉さんが、私の方を振り向く。
そして、興奮した様子でこう言った。
シルフちゃん、凄いのよ!!
兄さんがフランスに留学するの!!
プロの画家になれるんだよ!!
そう、言った。
以上です、ありがとうございました。
一応、今夜は短編が有るかもしれないと様子を見ていました。
もし、作られた方がいらっしゃったのでしたら、
気にせずにこれの直後に投下して頂いて結構です。
次回もよろしくお願いいたします、失礼しました。
おお、最高のプレゼントです!
留学を雪風が喜んでいるのはどういう思惑があるんだろう
雪風みたいな妹と二人っきりでクリスマスを過ごしたい
うぉおおおおおおお激しく乙!
こんばんは。『きっと、壊れてる』第13話投下します。
注意:エロなし
浅草浅草寺は、年間約3000万人もの参詣者が訪れる都内最古の寺院だ。
少し背伸びをして、正面玄関の雷門を抜けた先に視線を向ける。
仲見世商店街には数々の土産物屋が並び、江戸時代から変わらぬ下町情緒溢れる賑わいを見せていた。
空も青く輝き、休日の人々の心を太陽が温かく照らしている。
浩介は読んでいた文庫をバッグの中へ仕舞うと、
人混みの中からこちらに向かって歩いてくる人物に視線を向けた。
「おまたせ」
「あぁ、早かったな」
浩介の左腕に身につけた腕時計は約束の13時より10分前を指していた。
1週間と少し会っていないだけなのに、浩介は美佐と顔を合わせる事に懐かしさを感じた。
今日の美佐は緩めのトップスにめずらしくスカートを穿いている。
その太股は北海道で見た楓の太股に比べ肉付きが良く、
シャンパンのような女の色気で存分に浩介を酔わせた。
「ここが有名な雷門ですねっ? わぁ〜すごいっ! ねぇ見て? 鳩がいっぱい! 蹴散らしたくなるよね〜」
美佐は雷門の屋根瓦の上で休んでいる鳩を指差し、どこかわざとらしい笑顔を浩介に向けた。
「……怒ってるのか?」
「ううん、 全然! それよりホラ! あそこの人力車のお兄さん見てよ! すっごい嘘臭い笑顔! きゃはは〜 」
「……怒ってるんだな」
「当たり前だろ」
美佐は一瞬にして不機嫌そうな顔を見せると、浩介の腕を引っ張り仲見世通りへと歩いた。
雷門の下を通り過ぎる時、横目で見た金剛力士像よりも浩介には今の美佐の方が力強く感じた。
仲見世通りを抜け、宝蔵門を避け横道に入る。
比較的人が少ない宝蔵門の左手にある五重塔付近まで二人は歩いた。
「で? 言い訳はあるの?」
美佐は腕を組みながら顎を少し上げ、浩介を睨みつけた。
美佐と背後にある五重塔が、皮肉にもポストカードのように綺麗な構図だ。
それなりに怒っている時の顔を見せる美佐に、浩介は自分で情けなくなるほど恐縮していた。
美佐がこんな表情を見せるのは、4年前浩介がデートの約束を寝過ごして反故にしてしまった時以来だった。
「言い訳って……」
「彼女を置き去りにして、他の女と旅行に行ってイチャイチャしてた事に関して」
浩介が言葉を誤魔化さないように、美佐は明確な質問をした。
「イチャイチャって、おい」
「言っておきますけど、『妹だから』って言い分は通用しなくてよ?」
「その……確かに俺が軽率だった。悪かった」
「本当に反省してんの? 誠意見せて頂戴」
「……あぁ、ほらこれ。北海道のお土産」
浩介は肩から掛けていたショルダーバッグから、北海道で買ってきた美佐への土産を取り出した。
売店の名前が入った紙袋、中にはメールで頼まれたスイカ熊なる小さいぬいぐるみが入っている。
可愛くデフォルメされた熊という点は他の従来のぬいぐるみと同じだったが、
熊の体模様が緑色と黒色の縞模様、スイカの皮の模様になっているのがこの商品の特徴だった。
最近若い女性の間で流行っているとテレビのニュースで見た事を思い出し、
美佐も普通の女性と同じ感性を持つ事があるのだ、と浩介は少し驚いていた。
「きゃあぁ〜! これこれ! 超かわいい〜!」
美佐はそれを無言で受け取ると、おもむろに紙袋から中身を取り出し、目を輝かせた。
「これが?」
「なんか文句あんの?」
「いや……」
「ホントかわい〜」
赤ん坊を愛でるような声でぬいぐるみを入っていた袋に戻し、美佐はその袋を浩介の胸の前に突き出した。
「でも今貰っても荷物になるから、帰りに渡して」
少なくとも今日中は我儘を許そう、浩介は覚悟を決めてぬいぐるみをバッグへと戻した。
浅草寺境内を簡単に散策し、二人は徒歩で建設中のスカイツリーまで向かっていた。
目で見る分には道のりはさほどない印象を浩介は持ったが、
実際に歩いてみると、かなりの距離がある。
それがスカイツリーの大きさを物語っていた。
人の少ない裏路地を、眼前に迫ったスカイツリーを目指し腕を組みながら歩く。
雲一つない青い空を背景に、その目標は清潔さを持った白く凛とした姿を浩介の眼一杯に披露していた。
「ねぇ、浩介は東京タワーとスカイツリーどっちが好き?」
かなりの距離を歩いているにもかかわらず、美佐は涼しい顔をして浩介の顔を見上げた。
「さぁ? どうせなら高い方が良いな。スカイツリーで」
浩介がそう答えると美佐は何か不服なのだろうか。
歯に何か挟まったような表情をした。
「わかってないなぁ。いい? 東京タワーはね、私達の生まれる前から東京の電波を統治してきたの。
小さい頃の浩介が鼻水垂らしてヒーロー物のテレビを観る事ができたのは、彼のおかげなんだよ? ……多分。
それを、まだ完成もしていないヒヨっ子の方が良いなんて失礼しちゃう。ミーちゃんハーちゃんだわ」
「そこまで深く考えないといけないのか? そういえば美佐は小さい頃何観てた?」
「私? テレビはあまり観なかったかも。チャンネルも少なかったしね」
「チャンネルが少ない?……あれ? 美佐って出身東京じゃなかったのか?」
よく考えると、美佐の過去の話をあまり聞いた事がない。
出身はどこか。どんな学生時代を過ごしたのか。
自分はあまり人の過去を詮索するタイプではないが、まったくと言っていいほど知らないのは不自然だ、と浩介は思った。
以前付き合っていた頃に、そのような話はしなかったのだろうか。
「あっ。その顔は気付いたね? 私の過去がベールに包まれている事を」
観客が不思議がるのを面白がっているマジシャンのような顔をした美佐が、浩介の頬を指で突いた。
「あぁ、今はまだ復縁したばかりだし仕方ないけど、昔付き合ってた頃も俺は何も聞かなかったか?
我ながらドライ過ぎる気がするんだけど」
「大丈夫、あの頃の浩介はさりげなくちゃんと聞いてたよ。大げさに言うとどんな人生を歩んできたのか。
でも私がうまくかわしてたからね、あきらめちゃったんじゃない?」
記憶にない。
そこまで自分も気にかける事はなかった、という事か。
大雑把な自分の性格に浩介は一つ溜め息をついた。
「そっか……じゃあ……今、聞いていいか?」
常識を持った人間なら、罵倒され侮蔑されても文句は言えない近親相姦という過去を持った自分を、
何も言わず受け入れ、抱きしめてくれた鎌倉でのシーンを思い出す。
浩介にとってはその思い出はセピア色などではなく、空の色からトンビが飛ぶ姿、波の音まで鮮明に記憶している。
その一生忘れる事のない人生のピースを与えてくれた美佐に何か抱えている過去があるならば、
自分が癒し、しがらみを取り払ってあげたい、浩介は右手の拳を強く握り締めた。
「まだだめぇ〜。浮気癖が治ったらね?」
「言えない理由でもあるのか? いや、変な事を疑っているわけではないんだけど」
「う〜ん。一つだけ、話すのにはまだ勇気がいるエピソードがあるかな。
でもね、浩介はきっと受け入れてくれると思う。だから私はあまり気にしていないんだ」
「じゃあ他のは?」
「なんか謎のままの方がかっこ良いじゃん」
「確かに。ヒーローは謎を抱えているもんだ」
浩介がそう言うと、さっきまでの不機嫌が嘘だったように、人懐っこい笑顔を見せた美佐は、
抱いている浩介の腕をより一層強く締め付けた。
浩介には何が美佐をこんなに上機嫌にさせたのか、自分の発言を振り返ってみたものの、一向に答えは見つからず、
気付けばスカイツリーを鑑賞しに来た人々の波に紛れていた。
「ねぇ、浩介」
「ん? もう時間か?」
ベッドの脇にある灯りを付けると、まだ1時間ほど時間が余っている。
一糸纏わぬ姿の美佐は、浩介の左腕の中でいつものように足を絡め浩介の胸板を枕にしていた。
「違う、あのさ……ちょっと真面目な話」
声に真剣さを感じた浩介が顔を窺うと、美佐はめずらしく神妙な面持ちをしていた。
睫毛をパタパタと閉開している。緊張している様子だった。
「何? さっきの続きか?」
「違う」
「悩みか?」
「はぁ……あのねぇ、私がウジウジ悩み事抱えて、彼氏に相談する様なお淑やかな性格だと思う?」
「いや。でも俺の知らない美佐もいるんだろ? きっと。別に変な意味ではないけど、恋人なんてお互い知らない事ばかりだよな」
先程の事といい自分は美佐をどこまで知っているのか。
美佐の中では自分はどの程度の存在なのか。
答えのない海を泳ぐのが好きな自分に、浩介は苦笑いをした。
「……じゃあ、恋人やめようか?」
「えっ?」
「結婚しようよ。私と」
ラブホテルの一室で二人の時は止まり、浩介は無音が響き渡るという珍しい体験をした。
「俺と……か?」
「あんた双子で毎回入れ替わってんの? それともコピーロボットかなんか?」
「いや、違うけど……」
美佐の提案は、復縁を果たしてからというもの、浩介も常々考えていた事だった。
年齢的には少し早いかもしれないが、周囲で異端のレッテルを貼られる程、若いわけでもない。
この先、美佐以上に惹かれ、自分の過去も現在も受け入れてくれる女性が現れるとも考えられない。
「そうだな……俺も美佐と一緒に生きて行きたいと思っている。ただ……」
「あ〜皆まで言うな。わかってる、わかってる。茜ちゃんの事が気掛かりなんでしょ?」
「……あぁ」
現在は楓の方に悩まされている、という事を浩介は美佐に告げるべきかどうか迷っていた。
楓はまだ若い。
先日の飛行機内での事も、精神的に不安定で性に興味があって仕方なかったのだ、と自分に言い聞かせ、
誰にも話さずに墓場まで持っていく事も可能だった。
自分の行動の過ちに気付き、後悔してくれればそれでいし。
「私もあの子の事は何かと心配だからね。浩介の気持ちはわかる。
だからとりあえず口約束でいいの。返事はイエスって事でいいよね? 断ったら鼻水を顔に付けてやる」
「もちろん。本当は俺の方から言うべきなのかもしれないけど」
指輪がいる、式は挙げるのか、新居はどうする。
様々な事が頭を駆け抜ける。
散々妹の体と人生を弄んでおきながら自分だけ先に幸福を掴むつもりか、と心の声が脳裏に響いた浩介は、
頭を左右に振り払い、これで正しいのだと信じる事しかできなかった。
「へぇ……意外。てっきり『茜に良い人が見つかるまでは〜』とか自己満足でしかないセリフが聞けると思ったのに」
「……もう俺がしてきた事は取り返しがつかない。一生恨まれても構わないんだ。
なら、茜と俺はもう終わったんだって示してやる事が俺にできる精一杯だと思う」
「ぷっ、結局自己満足には変わりなかったね!」
美佐は吹き出し、堪えるように浩介の胸の上で小刻みに震えた。
「そうだ、自己満足だ。もうどんな行動を取っても自己満足で自分勝手な最低野郎である事に違いないさ、俺は」
「そして、自己満足で自分勝手な最低野郎のオナニーショ……失礼、自己満足ショーに私は付き合わされるわけね」
「そうだな。でも美佐はそれをわかってて、結婚してくれるんだろ?」
「モチのロン。どうせ浩介がどんな贖罪したって、茜ちゃんの為になる事なんて一つもないんだから、
浩介の好きに生きた方が得だと思うよ? 私はおもしろそうだから、そのお手伝い。嬉しいでしょ? こんな物好きな女、中々いないよ」
「はははっ、そうだな」
二人はベッドの中で再び抱きしめ合い、笑いあった。
幸せの定義などわからない。浩介にとって、自分と茜と楓。
そして気付いた時には、美佐が笑ってくれる事が浩介の人生の目標になっていた。
太陽の光が自分の体力を奪っている事を感じる。
蝉が鳴いているのは、この暑さで削られていく自分の命を嘆き悲しむ別れの詩なのではないだろうか、と考えると、
今自分が立っているこの隅田川のテラスも、どこか有名な演劇団が観客を沸かせる素敵な舞台になっているような気がした。
「遅かったわね、私をあまり待たせないで。あなたと違って忙しいの」
楓は暗い表情をして自分の真横で立ち止まった巧を睨みつけると、左手で長く美しい髪をかき上げた。
遅いと言っても自分が急に呼び出した上に、5分程しか約束の時間は過ぎていない。
しかし、巧の忠誠心を高く見積もっていた楓にとって、その5分間に不安を掻き立てる何かを感じていた。
「……あぁ、悪い」
声も聞き取り辛い程に小さい巧に、楓は心の中で舌打ちをして巧の顔を真正面から凝視した。
「何? 体調でも悪いわけ? 」
「……いや、大丈夫」
「ならハッキリと喋ってよ。今日呼び出したのは他でもない、あなたが玉置美佐に引導を渡す日が近いわ。
その事についての最終確認。しっかりとしてもらわないと困るのだけど」
「あの……その事……なん……だけどさ……やっぱ、やらないとダメかな」
下を俯きながらボソボソと喋る巧を見た楓は、わざと大きくため息をついた。
そのような心境になった経緯はわからないが、一番重要な仕事を任せられる男の表情ではない。
しかし、今さらこの男を解放した所で楓にメリットはなく、どうにか巧のやる気を取り戻す方法しか取れないのが現実だった。
「そんな事言わないで。どうかしたの? あなたにここで降りられると、私も困るわ。あなた意外に頼れる人がいないのよ」
我ながら、芝居臭いセリフだと思った。
だが、それを見抜いていても、男という生き物は惚れた女の手前騙されてしまうのが性だ、という事も楓は理解していた。
「……俺達のやっている事が最低に思えてきたんだ」
「最低?」
「あぁ、あの人は……ただ純粋に村上浩介って人に恋をしているだけだと思う。それを邪魔している俺らはなんなんだろうっって」
「それを承知で引き受けたんじゃないの? 今更そんな事言われてもね。それに、あの女のやっている事は泥棒よ」
「泥棒?」
「そう、村上浩介は恋人が居たの。色々な事情があって、その事を公にできない二人に目を付けて、
あの女はその女性から村上浩介を奪ったのよ? 多分、人の物を奪う事でしか自分の価値を認識できない人種よ、彼女は。それこそ最低じゃない?」
「それ、本当か?」
「嘘言ってどうするのよ。あなただから言うけど……私はその女性の妹。
悔しいの、許せないの、笑顔で姉さんの幸せを奪ったあの女が。姉さんは今も彼を失った事に心を痛めながら抜け殻のように生きているわ。
見ているこっちが病んでしまうような悲しそうな表情。あなた経験した事ある? 大好きな家族が人が変わった様に無表情になって
笑わなくなってしまったり、天気の良い休日でも家に閉じこもって1日中何か考え事をしているのを遠目から眺める、そんな経験した事あるの?」
自分にあるすべての演技力を尽くし、楓は姉を想う妹を演じた。
アカデミー賞を受賞した女優とでも張り合えるぐらいの迫力を出せた自分に驚きながらも、
これは演技ではない、自分の当時の思い『そのもの』なのだと気付いた。
「……ごめん」
「いいわ、私も言い過ぎた。ごめんなさい、あなたとは短い付き合いだけど、つい自分の内面をさらけ出してしまうの。
私だって、こんなやり方できればしたくなかった。でも……表立って抗議してしまったら姉さんに気付かれてしまう。
そうしたら姉さんはもっと傷ついてしまうもの。姉さんが好きになった人と、あの汚い女が幸せに暮らす事だけは許せなかったの」
「……そうだよな、そんな人が幸せになっていいはずなんて……ないよな」
巧の声に自信のような物が戻ってきているのを楓は感じた。
おそらく良心が痛んでいただけで、楓へ尽くしたいという気持ちは変わっていなかったのだろう。
手駒を失いかけた楓は安堵するように、手で涙を拭くふりをして薄く笑った。
ここで、巧を失っていたら自分が玉置美佐と対峙しなくてはならない。
もし、今まで茜と美佐が接触した事がなかったとすれば、『茜』だと偽って会う事も可能かもしれないが、
顔を覚えられ、浩介達の家に乗り込まれでもしたら面倒になる事は確実で、
美佐を城門の中には入れず、矢や大砲で追い払うのが現時点で楓のできる最良の方法だった。
「わかった。これまでの話通り、俺に任せてくれ。」
「ありがとう。じゃあ、詳細を言うわね。とりあえず、私とあなたがこうして対面で会うのは、決着が着くまでこれが最後」
日差しが今まで以上に強くなったため、楓はお気に入りの黒い日傘を差した。
実家に置いたままになっていた、茜のお下がりだった。
「無駄な不安要素は消しておく、という事か?」
「えぇ、ここはけっこう気に入った場所だから使っていたけど意外に目立つのよ、橋の上からでも見通せるから」
巧は300m程離れている橋に視線を向けた。
確かに歩いている人の性別は判別が可能であり、服装も含めれば十分個人が特定できるレベルだ。
「そうだな、それがいいかもしれない。連絡は電話で?」
「そう、これまで通り私から連絡するわ。安心して? すべてが終わった後でも音信不通になったりはしないから」
「あぁ、信じるよ」
「それで、次に私があなたの携帯を鳴らす時は、別に出なくても良いわ」
「察して、玉置美佐に例の物を届けろって事か?」
先程までの表情とは打って変わって巧の顔に生気が戻っていた。
自分の行動に正義感を覚えたのか、むしろ誇らしそうなその真剣な眼差しに、楓は頼もしささえ感じ始めていた。
「理解が早くて助かるわ。やはりあなたは私が選んだ人ね」
「……次に俺の携帯電話の画面に公衆電話と表示されたら、俺は玉置美佐に例の物を届ける。それでいいんだろ?」
「そう、頼むわね。あれを確実に渡してくれさえすれば、玉置美佐は逃げたくなるはず。
もしくは、仮にあなたが言う様に玉置美佐が村上浩介に本気だったとしたら、暴露されるのが怖くて自分から身を引くはず」
「そっか。……じゃあ、俺行くな」
靴紐を結び直し、巧は腰掛けていたベンチから立ち上がった。
「えぇ、気を付けて。……あっ、今日話した内容は……」
「わかってるよ。誰にも言わない。二人だけの秘密だ」
巧はそう言うと、自分の言ったセリフで恥ずかしくなったのか、少し俯きながらテラスの階段へと歩き始めた。
そして3歩か4歩進んだ場所で立ち止まり、まだ川の方を眺めていた楓の方を振り向いた。
「なぁ!」
「何?」
まだ何か伝え忘れていた事があっただろうか、楓に心当たりはない。
自分で振り向いたにもかかわらず、巧は照れ臭そうにしていた。
普段なら不快に思う他人の行動も、なぜか今日は感じない事を疑問に思った楓は、
動揺を悟られないように日傘で自分の顔を隠した。
「一つ約束してくれないか? 俺が終わりにしてやるから…… もうこういうのはナシにするって」
「こういうの?」
「だから……嫌がらせとか、どんな理由があってもだ。負の感情が君の人生になってしまっては駄目だ」
「……まるで、ドラマの主人公みたいな事を言うのね」
なるほど、確かに現実世界で人に発するには恥ずかしい言葉だ、と楓は納得した。
「君の……いや、なんでもない」
「何よ? 言いなさいよ」
「本当は……嘘なんだろ? お姉さんの話。いや、俺がそう感じただけだから、真実だったらごめん」
今自分はどんな表情をしているのか、想像するだけで寒気がする。
日傘で顔を隠していて良かった、と楓は思った。
「ふざけないで。全部真実よ。……でも、なんでそう思ったのか聞いてあげる」
「俺さ……ウチの両親昔から仲が悪くて、小さい頃から人の顔色ばかり窺って生きてきたんだ。
『お母さんは今機嫌が悪いから良い子にしていよう』とか、『お父さんは今機嫌が良いからおもちゃを強請ってみよう』とか。
だから、なんとなく人の感情が表情や声から読み取れる気がするんだ。いや〜大学でもさぁ、みんなの本音って言うの?
本当は俺の事なんて友達と思っていない、ってのをヒシヒシと感じちゃったりして、それで今あまり通っていなかったり……。
……だから……なんていうか、君のさっきの言葉、本当にお姉さんの事を想っているというのが伝わってこなかった。
でも、君がそう言うのなら騙されよう、素直に従おうって思ってたんだけど、それも違う気がするんだ」
そう言うと、巧は申し訳なさそうに苦笑いをした。
だが楓の目の位置にある日傘の表面をしっかりと見据えているのが、日傘越しでも楓は感じ取る事が出来た。
「……そう、じゃあ仮に、あなたの言う通り嘘だったらどうするの? いえ、あなたは嘘だと思っているんでしょ?
どうするつもりなの?」
「君の言う通りにするよ。ただ、さっき俺が言った事も守ってもらう。もうこういうのはナシだ」
「それで?」
「えっ? それだけだけど」
「あなたのメリットについて聞いているの。私の人生をあなたの言う立派な人生に矯正したとして、あなたは何を得るの?
……ふふっ、自分で言っていて笑ってしまうわ。本当にドラマみたいなセリフね、お互い」
「……正直に言う。本当は……俺、君の事を性的な目でしか見ていなかった」
「でしょうね。ナンパで誠実な恋愛を求めているのもおかしな話だわ。それを承知で私もあなたに頼み事をしたのだからお互い様よ」
「そうだな。それで、つい最近まで君の事を……その……無理やり襲ってしまおうと思ってた」
「報酬の私とのデートとやらで、という事よね?」
「あぁ」
「まぁ、想像できる範囲ね。あなた普段はモジモジしてるくせに、潜在的にはサドなのね」
「すまなかった」
「別にまだ何もされていないし、謝られる筋合いはないわ」
「……」
「それで? 自分の手の内を私に暴露してしまい、その望みも叶えられる可能性が無くなったあなたは、
私のお使いをこなして、その後の私をあなたの言う立派な人生にする事で、何を得るの?」
巧の答えを真剣に聞きたくなった楓は、日傘を折りたたみ巧の顔を真正面から睨みつけた。
「わからない。けど、俺が言ってる事は間違えていないと思う」
「……埒があかないわね。とりあえず、今は打ち合わせ通り動いてもらう。
私の言った事が真実であれ虚偽であれ、どちらにせよあなたは動いてくれるのでしょう?」
「あぁ、そういう事になるな」
「なら、話は早いはず。その後の私の生き方について熱く語るのは、事が終わってからにして頂戴」
「わかった。……じゃあ行くわ」
蝉の声は相変わらず鳴り響き、川は太陽を反射してキラキラと輝いていた。
今度こそ一度も振り返らずに、テラスから去ろうとしている巧の背中を睨みつけたままの楓は、
小さく舌打ちをした。
他人に素の感情を表に出す事など久しい楓は、不思議な敗北感に包まれ、
巧の姿が見えなくなってからも、しばらく階段を睨み続けた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
美佐と夕食を取り、浩介が自宅に着いたのは午後9時頃だった。
夕食中だったようだ。
茜はホワイトシチューをスプーンですくい一口味わうと、浩介のお茶を入れようと立ち上がった。
「いいよ、食事中だろ? 自分で入れる」
「そう、じゃあお願い」
茜はいつも通り、外着と判別がつかないような小奇麗な格好だったが、
コンタクトではなく眼鏡をかけている。
今日は休日という事もあり、一歩も外へ出なかったようだ。
「今日は? 家でずっと仕事?」
最近替えたばかりである食事テーブルの向かいに浩介は座り、
茜がシチューを飲み込むのを見計らって、声を掛けた。
「えぇ、とは言っても15時ぐらいまでだけど。それ以降はのんびりとしていただけ」
「茜は本当にインドアだな。たまには外出た方が良いぞ」
白く細い茜の腕を見て、猛暑日に外出でもしたらパタリと倒れてしまうのではないか、と浩介は少し冗談めいた不安を感じた。
「ふふふっ、大丈夫。これでも中学、高校と皆勤賞だったんだから」
そういえば、茜が学校を休んでいるのをあまり見た記憶がない。
二人で家を出た時は、茜は卒業を控えた高校3年生だったか。
毎朝セーラー服姿で自分を起こしてくれたのだ、と浩介は思い出した。
「楓は予備校の友達とご飯食べるから遅くなるって」
「そうか……そういえば、さ」
「何?」
「茜と楓って今寝室一緒だよな?」
「他に部屋があれば別々にするけど? それとも兄さんが私と寝る?」
声の質と表情で浩介は判別した。
これは本気ではない、冗談だ。
「ははっ、茜は寝相が酷いから遠慮しておくよ。それよりも……楓って、茜と一緒の時は自分の事を何て呼んでるんだ?」
今夜の茜との会話。
浩介には目的が2つあった。
1つは楓の事をさりげなく聞き出し、一連の真意を掴む事だった。
あの深夜のホテルでの行動と、飛行機内での行動。
常軌を逸した行動をした2人目の妹に、これ以上道を踏み外させるわけにはいかなかった。
「自分の事? 『かえで』だけど? どうかしたの?」
「いや、大したことじゃないんだけど」
どうやら、楓は茜の前では浩介の認識である『元気が良い妹』のようだ。
浩介と二人きりの時だけ見せる楓は、所謂『大人の女』を演じているだけなのだろうか。
背伸びしたがるのは10代の内はよくある事だ、それだけなら気にはしない。
「なんか最近様子がおかしいとか、そういうのはないか?」
「特にはないと思うけど。楓がどうかしたの?」
少し踏み入りし過ぎたか、浩介は2つ目の目的を今ここで茜に打ち明けてしまおうと思った。
「えぇっと……あのさ、今度の週末……美佐がウチに遊びに来たいって言ってるんだけど……」
夕食中、美佐が言い出した事だ。
浩介と茜が関係を断ってから1カ月以上が過ぎたのだから、
茜も気持ちの整理が付いているだろう、というのが美佐の理屈だった。
浩介は先日のホテルでの茜の目を思い出した。
何事にも動じない、世界をすべて見渡しているかのような瞳。
その記憶が浩介の勘違いでなければ、まだ茜は自分の事を想っている、と結論付けられる。
しかし、茜は楓とは違い、何の行動も起こさない。
むしろ美佐と付き合っている自分を陰でしっかりと支えてくれている印象を浩介は持っている。
ホテルでの茜がどうかしていた、と自分の都合の良いように信じる事にした。
最低な事は理解している。だが、もうそんな事を言っていては誰も前に進めないのだ、と浩介は握り拳に力を込めた。
「美佐さん?」
「あぁ、だから、楓の……ほら、言葉遣いとか! あいつら初対面だろ? 一応お客さんだし、失礼のないようにしようと思って」
浩介は茜の顔を恐る恐る見た。
思ったほど強張ってはいないが、やはり複雑そうな表情だ。
「……そう、なら大丈夫じゃないかしら。あの子はもう、ある程度大人よ。お客様に失礼な事なんてしないと思う」
「そ、そうか。ならいいんだ。じゃあ……茜も日曜日は家に……いる……だろ? よろしく頼む」
「えぇ、わかったわ。じゃあ、週末は美佐さんに以前褒めてもらったカニクリームコロッケでも作ろうかしら」
「あぁ、喜ぶよ。きっと」
浩介は安堵し、茜に感謝した。
気付けば茜にはいつも感謝している。
日々の生活の事。自分の一方的な別れ話を受け入れてくれた事。今回の事。
茜はクリームシチューを平らげたのか、いつの間にかコーヒーを飲んでいた。
小さく柔らかそうな唇でコーヒーを少し啜った茜は、ゆっくりと浩介の目を見た。
「兄さん」
「ん? 何?」
「兄さんは何も心配しなくていいのよ」
「えっ? あ、あぁ」
茜は微笑んでいた。
優しい香りがした。
浩介にはその言葉が、週末の事を指しているのか、楓の事を指しているのか、どちらかわからなかった。
第14話へ続く
以上です。ありがとうございました。
グッジョブ
巧クン良い奴だなw
GJ!
wktkが止まらない
茜さんKOEEEEEEE
イイネ! 巧かっこいいし、ここで全てを終わらすのは早いな
楓に真人間化フラグが立ったのか?これは……
それにしても茜さんの正妻の余裕っぷりが怖い
wktk
美佐がボロクソレイプ肉奴隷にされてた過去きぼんぬ
住人どもの発狂展開見たいわ
ああ、クリスマスの悶々を自分で処理しきれなかった人ですね、わかります
うるせー(`ε´)こちとらヤり終わった後も終電終わったとかほざいてウチに居座ろうとするクソ女送ってきた所なんじゃい!
尋常じゃなくウザかったわ( ̄∀ ̄)
釣り針がデカ過ぎてびっくりするわ
投下乙
こりゃ確実に楓は茜に勝てないな…器が違いすぎる
美佐はまあかませくらいか?
GJ
それぞれのendが読みたいのは俺だけじゃないはずだ
つり…ばり……?
そんなつもりは無いんですが(^_^;)
DTには刺激が強すぎたかな
>>404 ヤンデレスレにもお前居たけどさ、何がしたいんだ?
>>405 ヤンデレスレではもう相手にされなくなったから、こっちにきてんだろ?
かまってやれよ
>>407 んな粗大ゴミ押し付けんな
持って帰らせるのもアレだからちゃんと業者呼んで引きとってもらえ
面倒くさい彼女より妹とベタベタしてるほうがマシ
茜さん健気だな。
このスレのヒロインとは思えない白さだ
おい、
>>409の隣の部屋でガタッて音がしたんだが、大丈夫か?
公衆便女美佐たんの過去編まだですか?o(`▽´)o
相変わらず更新が早いね
さすがだ
こんばんは
>>233の続きを投下します。エロ有りです。
415 :
狂依存 54:2010/12/28(火) 01:41:56 ID:VclwEsfa
プルルルル
「はい、三船です。あ、お母さん。……うん、元気でやってるよ。そっちはどう?」
「うん……うん、いるよ。あ、今変わるね。大輝、お母さんから。」
「あ、うん。」
お母さんからの電話もしばらくぶりだな。
家の親は少しアバウトな性格だから、あまり向こうから連絡はしてこない。
「もしもし。」
「あ、大輝。どう?お姉ちゃんと仲良くやってる?」
「うん、まあね……」
仲良くやりすぎてるというか何というか……
やっぱり、言えないよな。
「お父さんは仕事?……そっか。うん……」
「……」
「え?大丈夫だって。……うん。……!?」
すっ……
麻由お姉ちゃんが急に僕に抱きついて、股間を触ってきた。
ちょっ……今電話中なのに。
「ちゅっ……はむ……」
う……!
今度は首筋の辺りや頬を舐めてきた。
「(麻由お姉ちゃん、ちょっと止めて……)
「ん、れろ……」
「大輝?聞いてるの?」
「ああ!うん、聞いてるよ、うん!」
つか、早く電話終わってくれ……
「本当?ったく、あんたの事が一番心配なんだから、ちゃんとしなさいよね。」
「わかってるって。だから……」
だから、もう止めてくれ……
「ん、ちゅっ……んん……」
麻由お姉ちゃんはそんな事はおかまいなしに、キスしたりする。
「そう……じゃあ、麻由に変わってくれる。」
「うん……ほら、麻由お姉ちゃん。」
助かった……
「……もしもし。うん……」
一体、何のつもりだったんだ?
「うん、わかった。じゃあね。」
がちゃっ。
「ちょっと、麻由お姉ちゃん。何でこんな……んっ!」
「んんっ……ちゅっ、むちゅっ……ん、んふぅ……」
問い詰めようとしたら、それを阻止するかの如く、キスをしてきた。
「むふっ……ん、んちゅっ……ん、んん……はぁっ……」
「麻由お姉ちゃん……」
「ごめんね。お姉ちゃん、我慢できなくなっちゃって……だから、早くしましょう。」
「麻由お姉ちゃん、だからって電話してる最中にあんな事しちゃ駄目だよ。もうやらないでね。」
「ごめんなさい……お詫びに今日はいっぱい、ご奉仕してあげるから。だから、こんないけないお姉ちゃんにいっぱいお仕置きして……」
「そうじゃなくて、バレたらどうする気だったの?もしそうなったら……」
どうなるんだろう?
やっぱり、勘当とかされちゃうのかな……
416 :
狂依存 55:2010/12/28(火) 01:42:32 ID:VclwEsfa
「バレたら、バレたでお姉ちゃんが全部何とかするから大丈夫よ。だから、今は二人で楽しみましょう。ん、んんっ……」
「でも、姉弟でこんな事してるなんてバレたら、やっぱり、まずいし……そうなったらどうするか、ちゃんと二人で考えた方がいいと思うんだ……」
「大丈夫だって言ってるでしょ。私の言うことが聞けないの……?」
「え?そんなつもりじゃ……」
麻由お姉ちゃんが僕を睨み付ける様な目で見て、少し怒気を込めて言った。
こんなに怒った麻由お姉ちゃん久しぶりに見たかも……
「ごめんなさい、脅す様な口調で言っちゃって。でも、本当に私に任せて良いから。」
「うん……」
「さあ、続きをしましょう……ん、んふっ……」
再び抱きついてキスをし、結局流されるまま麻由お姉ちゃんと抱き合った。
だけど、まだ不安感を拭う事は出来なかった。
本当にどうするつもりなんだろうか……?
「あれ?シャーペンの芯がもう無いな。」
部屋で勉強している最中にシャーペンの芯が切れてしまった。
どうしよう?
「って、買ってくるしかないか。」
すぐに近くの文房具屋に向かい、シャーペンの芯を買いに行く。
今、麻由お姉ちゃんは出かけて家に居ない。
いたら、自分が行くとか言い出しそうだな。
「ありがとうございました。」
文具屋でシャーペンの芯を買い、そのまま店を後にする。
「後、何か必要なものは……」
特に無いな。
麻由お姉ちゃんが必要な物は全部揃えちゃってるし、他に買いたい物も無い。
さっさと帰るか……
「待て、待てー。」
「あはははは!」
近所の公園まで通りかかった時、ふと目をやると小学生ぐらいの男の子と女の子が追いかけっこをして遊んでいた。
女の子の方が少し背が高いから、姉弟みたいだな。
「えへへ……捕まえた!今度はたっくんが鬼だからね。」
「あん、待ってよ!お姉ちゃん。」
二人とも本当に楽しそうに、仲良く遊んでる。
「(麻由お姉ちゃん……)」
僕達も本当に小さい頃はあんな感じだった。
麻由お姉ちゃんと何処に行くにも、どんな時でも一緒で……
「ほら、大輝!こっち、こっち!」
「待ってよ、麻由お姉ちゃん……あっ!」
どさっ
「う……うわああああんっ!」
「あーあ。ほら、男の子なんだから、ちょっと転んだぐらいで泣かないの!」
「う……でも、痛くて歩けないし……」
「もう……ほら、お姉ちゃんが途中までおぶってあげるから……」
「麻由お姉ちゃん……ありがとう。」
「んしょっ……」
「えへへ……」
麻由お姉ちゃんの背中。
暖かくて気持ちいい……
スリスリ
「こら。何すんのよ。」
ポカ
「もう、すぐ調子に乗るんだから……」
「えへへ……麻由お姉ちゃん。大好き。」
「はいはい。」
417 :
狂依存 56:2010/12/28(火) 01:43:23 ID:VclwEsfa
公園で遊んでいる姉弟を見て、昔の事を思い出す。
この記憶は、もう10何年も前の事か。
こんな時もあったんだよな……
あの時は本当に仲の良い普通の姉弟だったと思う。
ちょっとお姉ちゃんっ子過ぎたかも知れないけど……
「麻由お姉ちゃん……」
もう、あんな関係にはなれないのだろうか……
出来れば、あの頃に戻りたい。
あの姉弟みたいな、普通の仲の良い姉弟になりたい。
そう思いながら、公園を後にして家路に着いた。
「思ったより、早く着いたわね。」
バイトが終わり、早々に家路に着く。
早く帰って、ご飯の仕度をしてあげないと……
「それに……」
私も早くあの子とセックスしたいし。
今朝は少し寝坊してしまったのでする暇がなかった。
本当に悪い事しちゃったわ……
ごめんね。
まだまだ、駄目な奥さんみたい。
その分いっぱいご奉仕してあげるからね。
「行くよー。あっ……」
公園の前を通りかかった時、目の前にゴムボールが飛び込んできた。
「すみませーん。」
「ん……ハイ。」
すぐにボールを拾い、やってきた女の子に渡す。
「ありがとう、お姉ちゃん。」
「……もう、何やってんの!今度はちゃんと投げてね。」
「ごめんなさい、お姉ちゃん。」
「行くよ……」
どうやら、姉弟で遊んでるようだ。
ちょうど、私と大輝ぐらいの年齢差だろうか。
「……」
可愛くて仲の良い姉弟ね……
弟もお姉ちゃんに良くなついているし。
フフ。
私も早くあんな子供が欲しいわ。
出来れば今すぐにでも。
あの子となら、きっと幸せな家庭を築けるわ。
「ただいま。」
僕が家に着いて間もなく、麻由お姉ちゃんも帰ってきた。
「おかえり。」
「ねえ、今日の晩御飯は何が良い?唐揚げにでもしようと思ってるんだけど、何か他に食べたい物はある?」
「ううん、別に。」
「わかったわ。あ、そうだ……」
「……ん?……っ!んんっ……」
「んちゅっ……ん、んふっ……ちゅっ……」
急に麻由お姉ちゃんが抱きつきキスをしてきた。
まあ、いつもの事だから特に驚くことも無いけど……
「ん、んふっ……ちゅっ、んちゅっ、ん、んんっ……!ん、んちゅっ、ちゅ、ちゅるっ、ん、むふっ……ん、んんっ!」
どさっ!
いつも以上に激しく唇を押し付け、その勢いで僕を押し倒す。
「ん、んっ……はぁっ……さあ、早くしましょう。お姉ちゃん、朝から焦らされて、もう我慢できないわ……」
「ちょっと、待って……」
今日はやたらと積極的だな……
418 :
狂依存 57:2010/12/28(火) 01:43:58 ID:VclwEsfa
「さあ、早くぅ……ん、んちゅっ、れろっ、ちろ・・・」
んっ……!
上着を脱いで胸元を晒けだし、首筋や頬を舐めまわしておねだりをする。
「ね、ねえ、麻由お姉ちゃん……ちょっと話が……んっ……!」
「ほら……お姉ちゃんのおっぱい、たくさん味わってえ……」
顔に胸を押し付け、乳首を口でしゃぶらせようとする。
「あの、話を……」
「どうしたのよ……いつもみたいにしゃぶってえ……ほら……」
全く話を聞こうともせず、ひたすらおっぱいを顔に押し付ける。
「もう……じゃあ、私の方から行くわよ。」
そう言うと、僕の下半身を露にし、ち○ぽを手で軽く握ってさすって来た。
「ん、お姉ちゃんの手でもっと勃起させてあげるからね……」
麻由お姉ちゃんのキスやおっぱいの感触で、既にかなり勃起していた肉棒を巧みに柔らかい手で擦り更に膨張させる。
「ほら……大きくなってきた……ちゅっ、ちゅ……」
手で擦りながら、先端に軽くキスをし、どんどん快楽を与える。
「麻由お姉ちゃん、あの……やっぱり……」
やっぱり、何だ?
今まで散々僕だって麻由お姉ちゃんとのセックスを楽しんできたのに、今更止めてくれなんて言う資格があるのか?
でも……
「やっぱり、その……姉弟でさ、こんな事するのは良くないよ……」
「ふふっ……こんなに大きくなっちゃって……ちゅっ……」
「ごめんね、勝手な事言って……でも、姉弟でこんな事しても幸せになれないと思うんだ。お父さんとかお母さんも悲しむと思うし……」
「ん、んちゅっ、ちろっ……んっ……」
「それに、僕もやっぱり普通の仲の良い姉弟になりたいんだ……小さい頃みたいに。」
あの公園で遊んでいた姉弟みたいに……
「だから、その……もう止めよう、ね?」
「それじゃあ、そろそろ入れるわよ……」
「ちょっと、聞いてるの?」
「ん……?聞いてないわよ。」
「な……!?」
「そんな話、今更聞くに値しないわ。こんなに勃起させちゃって……今、お姉ちゃんが気持ちよくしてあげるからね……」
「勝手な話だってのはわかっているよ。でも、少しぐらい聞いてくれても……」
「口で何と言おうとあなたの体と心は私を欲しがってるじゃない。本心で望んでいない事なんて、聞いても仕方がないわ。じゃあ、行くわよっ……」
「ま、待って……」
「ん、んんっ……あっ、はああぁぁんっっ!あんっ……」
僕の制止も聞かず、おま○こに肉棒を入れる。
「はあんっ!さあ、動くわよ……はっ!あんっ、やっ……あっ、はっ、ああぁぁんっ!」
麻由お姉ちゃんはいつも以上にガンガン腰を押し付けて、ヨガリ狂う。
肉棒がきつく締め付けられ、膣壁で激しく擦れ合う感触がとてつもない快楽をもたらし、更に膨張させる。
「はんっ!あんっ……はっ、やんっ……あっ、あっ、かはっ、はあっ……いいわよ……あんっ!はっ……!」
「ね、ねえ、麻由お姉ちゃん。もうこんな関係は終わりにしよう……ね?」
「うるさいわよ……ん、んふっ、んちゅっ、んんっ……!」
僕がなおも拒否すると、麻由お姉ちゃんは体を押し倒し、思いっきり僕の口をキスして塞ぎ黙らせる。
「ん、んちゅっ……ん、んくっ、ちゅっ……むちゅっ……ちゅっ、んちゅっ……んんっ……ん、れろっ……」
舌を入れて、口の中をこれでもかというくらい、ぐちょぐちょに掻き回す
「ん、んちゅっ……ん、んんっ……!はぁっ……」
「ちょっと麻由お姉ちゃん、話を……」
「まだ言うの……ん、んふっ……んっ、んんっ……!」
またキスで僕の口を塞ぎ、肉棒を締め付け、腰を激しく揺り動かしてきた。
「ん、んんっ……ちゅっ、ぶちゅっ……ん、むふっ、んんっ……ん、んん!」
「ん、んふっ……ほら、早く私の中で出しなさい……ん、んん……あっ、はんっ!」
麻由お姉ちゃんは再び体を起こして、僕の上で腰を激しく押し付け乱れ狂う。
膣口で更に締め付けられ、更に快楽を増し、必死で快楽に耐える。
でも、もう限界……
419 :
狂依存 58:2010/12/28(火) 01:44:45 ID:VclwEsfa
「はあっ……あっ、はんっ、あっ……奥に当たって……はっ、ああっ!いいっ……!」
麻由お姉ちゃんが腰を振るたびに、ぶつかり合う音が木霊し、喘ぎ声も激しくなる。
「はあっ、あんっ……イっちゃう……!あっ、もう……イっちゃう!あっ、はっ……あっ、はっ…あっ、あんっ!!」
「麻由お姉ちゃん、もう……」
もう、止めてくれ……
「いいわよ……出してぇ、私の子宮にいっぱいぶちまけてえっ……あっ、はんっ……」
「はっ……!イクっ……イクっ……はっ、はああああぁぁぁぁっっ!!!」
びゅくっ!びゅくるるるるっっ!!びゅくっ!
思いっきり締め付けられた膣の中で一気に射精し、中にぶちまける。
今日初めての射精だからか、中々止まらない。
「はあっ……ふぁっ、ああんっ、いっぱい出てるう……はっ、あんっ……」
「ふふっ……またこんなに出しちゃって……そろそろ、妊娠しちゃうかもしれないわ……」
「麻由お姉ちゃん、冗談は止めてくれよ……」
でも今まで散々中で出しちゃったし、もし本当に出来ちゃったら……
「う……」
想像しただけで、眩暈がしてきた。
実の姉弟で子供なんか作ったら、大変な事になる。
両親や周囲の人達に何て説明すれば良いんだ?
ましてや二人とも学生なのに……
「ねえ、子供は何人が良い?大輝が望むのなら何人でも産んであげるよ。いらないっていうなら、産まないけど。」
「本当に子供なんか出来たら、大変な事になっちゃうじゃないか。だから、もう……」
「大丈夫よ。私が全部何とかしてあげるから。心配しないで。」
何とかしてあげるって……
「大丈夫な訳無いじゃないか。まだ学生なのにどうやって育てるの?出来たら僕達、今みたいな関係を続けられなくなっちゃうよ。」
「そう、欲しくないのね……残念だわ。」
「いや、欲しくないって言うか……とにかく今は駄目だよ。僕だって今出来ても育てていく自信はないし、子供だって不幸になっちゃう。だから、しばらく自重しよう。ね?」
「自重しようって?」
「だ、だから……エッチな事とか……」
ちょっと残念だけど、今ならまだ取り返しはつくはず……
「……」
「わかったよね?じゃ、じゃあ夕飯にしよう。僕も手伝うから……」
「また心にも無い事言っちゃって……」
「えっ?……んっ!」
「ん、んふっ……ん、んちゅっ……ちゅっ……ん、んっちゅぅ……」
起き上がろうとしたら、急に押し倒されて唇を押し付けられる。
「ん……むふっ、んっ……んちゅっ……ちゅっ、んちゅっ……ん、んくっ!ん、んんっ……ん、んふっ……!」
これでもかと言うぐらい、唇を強引に押し付け、舌を絡めてくる。
それは明らかに怒りの込もった行為だった。
「ん、んんっ……ん、んちゅっ……ぷはぁっ……」
「ま、麻由お姉ちゃん……」
「何も心配しなくていいのよ。あなたはしたい時にセックスして、私をこき使ってくれていいの。子供がどうとか気にしないで良いんだから……」
「気にしないでいいって……!ふざけた事言わないでくれ。そんな訳には……」
「お姉ちゃん、あなたに昔いっぱい酷い事しちゃったでしょ。だからその償いにこれからの人生は全てあなたに捧げるって決めたの。だから私の体は好きに使って言いの。何度も言ってるでしょ。」
「だから、それは、もう気にしないで良いって……」
「今日ね……そこの公園で男の子と女の子が遊んでるの見たの。とっても可愛い子達だったわ。」
「え?」
急に何を……
「男の子がお姉ちゃんって言ってから、姉弟みたいだったわ。ちょうど私と大輝と同じくらいの年齢差だったわね……」
それって、あの時の……
麻由お姉ちゃんも見てたのか。
420 :
狂依存 59:2010/12/28(火) 01:45:19 ID:VclwEsfa
「それ見てねえ、思ったの。私もあんな可愛い子達を産んであなたと暖かい家庭を築きたいってね……」
「え……?」
「だから、子作りしましょう。私とあなたで幸せな家庭を築くの。きっと出来るわ。お金の事なんか心配しなくていい。私が働いて何とでもするから……」
「ちょっと、麻由お姉ちゃん……」
何か今日はいつにも増しておかしい。
「でもあれだけ中で出しているのに出来ないなんて、もしかしたら、妊娠しにくい体質なのかもしれないわね……」
「本当にごめんなさい。こんな体で。でも、やっぱり欲しいから……だから……」
「だから、出来るまでずっと中で出してもらうわ。そうすれば、いずれ出きる筈だから……」
「ちょっと、本当に冗談は止めてくれよ。今、子供なんか出来たら、大変な事になるってわかるでしょ?僕達の人生だって滅茶苦茶になっちゃうよ。」
「大丈夫よ……お姉ちゃんが守ってあげるから。お金も周囲の事も皆、私が何とかしてみせるから。だから……」
「麻由お姉ちゃん!もう、今日はいいから夕飯の仕度してよ!ね?」
こうなると、とにかく何か命令するまで引き下がらないので、強引に引き離し夕飯を作るように命じる。
「あん……まだまだし足りないんだけど……そこまで言うなら仕方ないわ。じゃあ早く作っちゃうから、食べたら続きをしましょう。」
「あ、あと……今日は、その……体調があまり良くないから、部屋で休むね。出来れば一人で静かに休みたいな……だから……」
「……」
「お願い。今日一日休めばすぐ良くなると思うから。僕の言う事なら何でも聞いてくれるんだよね?」
「……わかったわ。でもしたくなったら、いつでも来てね。」
「ありがとう……」
何とかお願いを聞いてくれて安堵する。
いつも、僕の言う事を無視して始めちゃうからな……
「じゃあ、夕飯の準備しちゃうから。何かあったらすぐ呼ぶのよ。」
「うん。」
「はあ……」
部屋に戻ってベッドに倒れこむ。
僕の子供が欲しいなんて……
いや、前から言ってたけど、今日はやたらとこだわってたな。
「麻由お姉ちゃんが公園で見た姉弟って……」
やっぱり、僕が今日見た姉弟と同じ子達かな?
あの姉弟を見て、僕は昔を思い出したけど、麻由お姉ちゃんはそうはならなかったのか。
麻由お姉ちゃん……
本当にもう、あんな普通の仲の良い姉弟になる気は無いの?
これから、どうすれば良いんだろう……
少なくとも今、子供何か出来たら大変な事になってしまう。
だから、ちゃんとやる時は避妊しないと……じゃなくてっ!
姉弟でこんな関係になってるってバレたら、ただでは済まない。
間違いを起こさないためにも、やっぱり今みたいな関係は……
でも、どうすれば?
口で言っても一向に止める気が無いし……
「でも、ああなったのは僕にも責任があるしな……」
僕が子供の頃に麻由お姉ちゃんの気持ちも考えず、ずっと怒らせるような事をしちゃったから。
だから、プレゼントを壊されたのも当然の報いだと思っている。
本当に気にしなくてもいいのに……
寝転がって考え込んでいる内に、段々意識が遠のいて眠くなってきた。
421 :
狂依存 60:2010/12/28(火) 01:46:01 ID:VclwEsfa
トントン
「ねえ、麻由お姉ちゃん。宿題でわから……」
「帰れ。」
「何で!?ただ、勉強教えて欲しいだけなのに!」
「あんた、いつも真面目にやらないじゃない。ドサクサ紛れに私の体を触ろうとしやがって。どうせそのつもりなんでしょ。」
ちっ!バレてたか。
「お願い、麻由お姉ちゃん。今日という今日は真面目にやるから……だから……」
「帰れって言っているだろ。何が真面目にやるよ。今更信用できるわけ無いでしょうが。」
「うっ、うう……麻由お姉ちゃん……今までの事は謝るから……もう、二度としないから……だから……」
「お前さあ、この前もそんな事言ってたよな。泣きながら『もう二度としません。許して』って。だからちゃんと見てやろうとしたのに、そしたらあんた何やった?」
この前?
はて、どんなだったか……
「ねえ、麻由お姉ちゃん。ここがわからないんだけど。」
「ん?何処?」
「この漢字がわからないんだけど……」
「ん、どれよ……?」
今だ。
「えいっ!」
ふに……
麻由お姉ちゃんが身を乗り出してきた所ですかさず胸を触る。
「えへへ、また大きくなったね。」
これは、本当に将来楽しみだ。
大きくなったらこのおっぱいも触り放題に……
「……」
おお、そう言えばそんな事があったけな。
あの後顔が変形するぐらい殴られたけど。
「全く……殺さなかっただけでも有難く思いなさないよね。もう、あんたみたいな悪い子には二度と勉強なんか見てあげません。だから、出てけ。」
「うう……反省してるから、だから……」
「いいから、出てけ。交渉の余地無し。人を馬鹿にするのもいい加減にして。」
「麻由お姉ちゃん!このままだと僕、成績不振で留年しちゃうかもしれないよ!」
「心配しなくても義務教育なんだから、出席してりゃ卒業できるわよ。」
「麻由お姉ちゃんが勉強見てくれないと、僕死んじゃうよおっ!」
「ああ、死ねよ。つか、今すぐ死ね。」
「僕が死んだら、麻由お姉ちゃん、未亡人になっちゃうよ!可哀想だよ!」
「そりゃ、気楽で良いわね。だから、早く死ね。」
うう……手強いな……
「麻由お姉ちゃん、真面目にやるから、勉強教えて、教えて、教えてえええっ!」
必死で床に転げまわって駄々をこねる。
見苦しくたって構うもんか。
「ああっ!もう、五月蝿いなっ!ほら、そこに座れっ!」
麻由お姉ちゃんが部屋にある、ちゃぶ台を指差してそこに僕を座らせる。
「いいか?そこから動くなよ。わからない問題があったら、その問題を鉛筆で指せ。間違っても私に近づいたり、触れたりするんじゃないわよ!」
「うう……わかったよ。」
向かい側に座られたんじゃ、麻由お姉ちゃんに触りにくいじゃないか。
しかも長い定規持ってるし。
触ろうとしたら、あれで叩く気みたいだね。
「ほら、じゃあとっとと始めなさい。」
422 :
狂依存 61:2010/12/28(火) 01:46:55 ID:VclwEsfa
カリカリ……
「ねえ、麻由お姉ちゃん。」
「あ?」
保健体育の宿題に取り掛かった時にふいに尋ねる。
「麻由お姉ちゃんは、野球とバスケとサッカー、どれが一番好き?」
「……は?何よいきなり?」
「将来の事だよ。僕達も野球チームが出来るぐらい子供が欲しいよね。麻由お姉ちゃんはソフトやってるし、僕はバスケだから、この二つのどっちかがいいかな?」
「でも、サッカーもいいかも。新しいことに挑戦するのもいいよね。バスケだと5人だから、ちょっと少ないしな……」
「そうだ!男女1チームずつ作れば良いんだ!これなら合計10人だし、野球やサッカーとも……」
「二度と私の前に姿を現すなっ!!」
バタンっ!!
「うう……辞書で思いっきり殴られたよ……」
何で怒っちゃったのかな…?
二人の将来に関わる大事な事なのに……
「そう言えば、先生は子供を産むのもお金がかかって凄く大変だって言ってたな。」
ちゃんと、産んで育てるのは大変な事だから計画的にやらないと駄目だって。
5人も10人も産んだら、お金もかかるし麻由お姉ちゃんの体も大変だよね。
「そっか……だから、怒っちゃったんだね。」
無責任な事言ってごめんね、麻由お姉ちゃん。
子供は3人までがいいね!
「……う。」
夢か……
何か変な夢を見てしまったな……
っていうか、昔の夢じゃん!
「あんな事あったけな……」
本当に恥ずかしすぎる……
何であんな事言っちゃたんだろう……
「目が覚めた?」
「え?」
「ふふ……晩御飯出来たわよ。」
「え?ああ、うん。」
いつの間に部屋に来てたのか。
っていうか、その格好……
「ん?どうしたの?」
「い、いや……」
また裸エプロンか……
「ふふ……晩御飯の前に私を食べちゃう?どっちでもいいけど……」
「い、いいよ。早く食べよう……う……!」
「ん、んふっ……んちゅっ……ちゅっ……こんなに大きくしちゃって……お姉ちゃん本当に嬉しいわ……」
「あの……麻由お姉ちゃん……」
「あん、興奮してきちゃった。早く子作りしましょう。何人でも産んじゃうから……」
「ね、ねえ!やっぱり良くないよ。姉弟でこんな……」
「……本当に酷いお姉ちゃんだったわよね。ちょっと触ろうとしたぐらいで、あんな暴力振るって……」
「え?」
急に何を……?
「また昔の夢見たんでしょ?あなたの事は何でもわかっちゃうのよ。何を考えているのかとか、どんな夢見てるのかとか……」
ちょっ……嘘でしょ?
「嘘じゃないわよ。ふふふ……愛の力って奴かもね。子供の頃の夢見てたんでしょ?」
「え……?えと……」
そう言えば、この前も僕が昔の夢を見てたことわかってたみたいだったな。
寝言でも聞いてたのかな?
423 :
狂依存 62:2010/12/28(火) 01:47:39 ID:VclwEsfa
「勉強を教えてくれって頼んでいるのに、碌に見もしなかった上に、将来の事まで真剣に話してくれていたのに逆ギレして暴力振るったり、死ねだなんて暴言吐いたり……」
「ちょっ!何言ってるの?麻由お姉ちゃんは全然悪くないでしょ。」
あんなふざけた事すれば、誰だって殴りたくなるよな……
「本当にごめんなさい……痛かったでしょう?本当に最低のお姉ちゃんだったわ……もう二度とあんな酷い事しないからね。」
「だ、だから!麻由お姉ちゃんは全然悪くないでしょ!悪いのは僕の方だよ。僕の方こそご……」
「ん、んん……ん、むちゅ……ん、んふっ……ちゅっ、ちゅるっ……んん……」
僕が謝ろうとするとそれを阻止するかの様に、キスをして口を塞ぐ。
そして、僕の手をおっぱいに押し当て無理矢理揉ませる。
「む……むふっ……はぁっ……だから、作りましょう。10人でも何人でも産んであげるから……」
「もう、止めてくれ!あの時は僕が全部悪かったんだから!だから……」
今まで感じた事のない様な恐怖を覚え、強引に引き離す。
妊娠なんかされたら、どうなる事か……
「いいえ、悪いのは私よ。屑みたいなお姉ちゃんでごめんなさい……お詫びに私の体好きにしていいからね……」
むにむに。
麻由お姉ちゃんが更に胸を揉みしだき、腰を振って誘ってくる。
「さあ、また気持ち良い事してあげるからね……」
「ちょっと、今日は体調が悪いから、もう……」
「あなたが、何を考えてるのかわかるって言ってるでしょ。ふふ……こんなに大きくしちゃって……おちん○んの体調が悪いのかしら?」
僕の肉棒を手で優しく擦り、更に刺激を与える。
「ん、んふっ……待っててね……お姉ちゃんがおち○ちんに溜まってる悪いものを全部出してあげるから。」
「ん、んふっ……ん、んん……ふふ……私の子宮の中に思いっきり出してもらうからね……」
僕に跨り、膣にち○ぽを当てて擦り当て素股を始めた。
柔らかい肉ヒダに擦れ合う時の快楽で、肉棒がどんどん勃起してくる。
う……またしたくなっちゃった……
「さあ、私のおま○この中で気持ち良くしてあげるからね……」
十分に勃起した肉棒を膣穴に当て入れようとする。
この態勢で入れられるとまずい……
「麻由お姉ちゃん、駄目……!」
「あんっ!」
慌てて、突き飛ばし強引に止めさせる。
「ご、ごめん……!大丈夫?」
ちょっと悪い事しちゃったかな……
「お腹空いちゃったし、晩御飯食べよう。ね?」
「私と子供作るの、そんなに嫌……?」
「あの……嫌というか……とにかく今は駄目!わかった?」
「わかったわ……」
「じゃあ、ご飯にしよう。」
そのまま台所に行き、晩御飯を食べる。
麻由お姉ちゃんはずっと不機嫌そうな顔をして、食べていた。
「麻由お姉ちゃん。これ、とっても美味しいよ。」
「そう……ありがとう。」
目も合わさず、そっけなく答える。
「ね、ねえ……そろそろ、機嫌直してよ……」
「別に怒ってる訳じゃないわよ。ちょっと残念だなって思ってるだけ。」
「そんなに焦らなくてもないじゃないか。これからの事は二人でじっくりと考えて行けばいいんだよ。ね?」
「わかったって、言ってるでしょ。あなたがそこまで言うなら、もう何も言わないわ。」
「う、うん……」
結局、今日はずっと機嫌が悪いままだった。
以上です。
ありがとうございました。
GJ!
麻由お姉ちゃんすごい攻めるなw
だがそれがいい
「まゆお姉ちゃん」て聞くとNHKの子供番組思い出すな
クソッ、何で家の姉は麻由姉ちゃんと大違いなんだ…
投下乙
確かにこれは弟も悪いな…
GJ!
次回の姉の行動に期待
フラクタルってss見てみたが、良作だった。
綾シリーズを彷彿とさせた。
続きが読みたい。
保管庫行くと、いかに未完の作品が多いかわかる
完結させてくれる作者さん達に感謝
今晩は。
表題について投下します。
今回は便宜上、19、20に分けています。
「留学、画家、え、どういう事?」
「これを見て。」
姉さんが嬉々としながら側にあった紙を私に手渡す。
これは、学校の交換留学届と、先生の推薦状?
「実はね、私達の学校の交換留学先にフランスの学校があって、
兄さんがそこへ留学する事になったの。
でもね、ふふ、その近くに先生と一緒に学んだ人のアトリエがあって、本命はそっち。
その人もね、この前の絵を見て兄さんの事をとても気に入ったんだって。
だから、学校なんて行かずに一年間そこで学ぶんだって話なんだよ」
「フランス……」
フランスって、外国だよね?
じゃあ、お兄ちゃんがここから出て行くの?
私を見捨てるの?
そんな訳は無い。
だって一緒に居てくれるって言ってくれたもの。
「こんなの、嘘……だよ、有り得ないよ」
「あれ、シルフちゃんはお姉ちゃんが嘘をついてるって思うの?」
「だって、お兄ちゃんは言ってたんだよ。
私と結婚してくれるって、ずっと一緒に居てくれるって!!」
「ふふ、そうだったよね〜。
確かに、兄さんは先生の前でずっと悩んでいたわ。
でも、最後に兄さんは留学を選ぶんだって、はっきり私達に言ったんだよ。
くす、どうしてかな〜?」
「そんなの、知らない」
「それはね〜。
シルフちゃんが見捨てられちゃったからじゃないかな〜?」
姉さんはとても楽しそうに言った。
さあ、と体中が冷え切る。
「そんな事、絶対にお兄ちゃんはしない!!
するはず無い!!」
私は即座に否定した。
「ふうん、それならシルフちゃんは兄さんを信じればいいんじゃないかな?
どうしてそんな風に怒鳴るのかなぁ〜?
お姉ちゃん、不思議だなぁ〜?」
「どうしてそんな事を言うの、姉さんだって本当は嫌なんでしょ?
一緒にお兄ちゃんを説得しようよ、留学なんて止めて一緒に居てって。
その方が絶対に良いよ!!」
「シルフちゃん、確かに兄さんがいないのは凄く寂しいけど、それでも一年間離れるだけだよ。
兄さんを信じているんだから、一年くらい大丈夫なはずだってお姉ちゃんは思うの。
当然、お姉ちゃんは兄さんを信じているから大丈夫だよ。
それに、ちょっとシルフちゃんは我侭すぎると思わないかなぁ?」
「だって!!」
「だって、何?
シルフちゃんは兄さんが折角見つけた夢を潰してまで、一緒に居て欲しいって言ってるんだよね?
ただ、兄さんと離れていると不安になるから、それだけの理由で?
兄さんに好きって言われたのに信じられないんだ?」
「私はお兄ちゃんを信じてるけど、それでも、こんなの嫌だよ」
「だ〜か〜ら〜、それを我侭って言うんじゃないかな?」
姉さんがうんざりした様子で言った。
「私はね、ずっと兄さんと一緒だから分かるよ。
兄さんって何でもやればできる癖に、いつも面倒くさがって中途半端にしちゃうの。
その兄さんがこんなに何か一つに打ち込もうとするなんて初めてなんだよ?
それをシルフちゃんは止めて欲しいんだ?
そうなんだよね?
はっきり言って今のシルフちゃんは兄さんにとって邪魔なだけじゃないのかな?」
「私が、邪魔……?」
「うん、それ以外にどう言えばいいのか分かるならお姉ちゃんに教えて欲しいな〜?」
「私はお兄ちゃんの邪魔なんかじゃ……」
姉さんは言い返そうとする私に、
黙れ、というように苛立たしげに目を向ける。
「ふぅん、まだ喋ろうとするの?
シルフちゃんってやっぱり厚かましい子なんだね。
ああ、もう、兄さんは内緒にしてって言ってたんだけど……。
あのさ、シルフちゃんが今まで誰かを傷付けても、
誰にも訴えられたり、学校からペナルティを受けたりしなかったよね。
どうしてか分かる?」
「え?」
私は姉さんが何を言いたいのか分からなかった。
けれど、姉さんはその私の態度が気に入らないみたいで、
苛々とした様子で腰に手を当てた。
そして、軽蔑の視線を私に向ける。
「ああ、やっぱり考えたこともなかったんだ……。
あのさ、兄さんがいつも必死に頭を下げて、償ってきたからなんだよ。
その度にシルフちゃんが言われた以上に罵られて、馬鹿にされてね。
もちろん、兄さんの評判だって地に落ちて行ったわ。
兄さんは何にも悪い事なんてしていないのに、
あの御空路 シルフの兄なんだって、それだけでのせいでね。
兄さんの今までって、そんな風にずっとシルフちゃんの後始末ばっかり。
それなのに、シルフちゃんは兄さんに縋ってばっかり。
どれだけ兄さんがシルフちゃんの為に時間を使って、神経をすり減らしてきたか分かる?
シルフちゃんのせいで兄さんは自分の事を構う暇なんてなかったんだよ。
その兄さんがやっと自分の夢を見つけられて、チャンスを掴んだの。
そんな兄さんをどうしてシルフちゃんが責められるの?
邪魔する権利がシルフちゃんのどこにあるって言えるの?」
「でも、私は……」
「何、兄さんを邪魔する権利があるって言う気?」
「……無い、けど」
その、けど、の先に私は何を言えばいいのかも分からない。
姉さんはくすくすと私を見ながら笑う、とても楽しそうだった。
「くすくす、そうだよね、ある訳なんて無いよね〜。
あ、そうだ。
もう一つ、ついでに教えて欲しい事があるんだけど良いかな?
前に聞いたよね、どうしてシルフちゃんなんかが兄さんに必要なの、って。
くすくす、ねえ、今ここでお姉ちゃんに教えてよ?」
「分からない」
「そうなんだ、くすくす。
それじゃあ、お姉ちゃんが一緒に確認してあげるね。
シルフちゃんは兄さんみたいに上手に絵が描ける?」
「できない」
「シルフちゃんは兄さんの気持ちが分かる?」
「分からない」
「兄さんっていつも笑っている明るい子が好みなんだよ。
シルフちゃんってそんな子だっけ?」
「違う」
「シルフちゃんの作るご飯で兄さんは本当に満足してる?」
「してない」
「ふふ、じゃあ兄さんの為にしてあげてる家事ってシルフちゃんじゃなきゃ駄目な事?」
「私じゃなくてもいい」
「シルフちゃんは兄さんを虜にできるくらいに可愛い?」
「可愛くない」
「私とシルフちゃん、どっちが兄さんにとって大切な妹だと思う?」
「……姉さん」
「そういえば、シルフちゃんって兄さんに好きって言えたんだ?」
「まだ、ちゃんと言ってない……」
「じゃあ、もう一度聞くね。
シルフちゃんの為に何でもしてくれた兄さんに、
兄さんの為にシルフちゃんだけができる事って何なのかな?」
「……ない」
喉の奥からかすれ声を搾り出して答える。
「くす、じゃあこれで最後の質問だよ。
シルフちゃんは兄さんにとって要る子、要らない子?」
「私は……要らない……子…なの?」
「くすくす、違うわ。
あはは、シルフちゃんは頭の悪い子だね〜。
どうして要らない子程度で済むって思えるのかな?
どう考えても、兄さんにとって居ない方が良い子だよね?」
姉さんがぽんぽんと私の頭を撫でる。
やめて欲しい、私は姉さんにこんな酷い事されたくない。
「やっぱり、シルフちゃんは、
兄さんに見捨てられたんじゃないのかな〜?
ふふ、これで私達お揃いだね。
お揃いの、要らない姉妹だよ。
くすくす、もう私達は兄さんの側に居られなくなるね〜」
姉さんが満足そうな顔で言った。
「けど、シルフちゃんは、兄さんの”居ちゃいけない”子だよ」
「っ、うるさい!! 黙れ!!」
どん、という重い音が鳴る。
「何が居ちゃいけないの、何がお揃いなの、ふざけないでよ!!
自分だけは絶対にお兄ちゃんの側に居られるって知ってくる癖に!!」
「あ……ぐ…」
「どうして姉さんは本当の妹っていうだけで何でも分かるの!?
分かるだけで私にそんな態度が取れるっていうの!?」
「……ぐ……う…あ……」
「ふざけるな!!
私にはお兄ちゃんの事なんて何も分からない!!
それなのに、姉さんに私の何が分かる!?
そんなに何が面白いんだ!?
にやにや笑ってないで、言え!!」
そこまで言った時、弱々しく私の手を握る何かの感触に気付いた。
目の前の姉さんは苦しげに呻いていて、
私は右手で姉さんの胸元を掴んで持ち上げて、
満足に息もできないくらい強く壁に押し付けている。
やっと、気が付いた。
今、私は家族を、姉さんを、傷付けようとしている……。
その途端に、さっきまであれだけ昇っていたはずの血の気が一瞬で引いた。
私の腕から力が抜けて、解放された姉さんの体が崩れそうになる。
慌てて手を貸そうとした私の腕を姉さんは弾き飛ばした。
はあ、はあ、という荒い呼吸の音が聞こえる。
姉さんはよろめきながらも自分の足で立った。
「あ、あの、ねえ、さん……?」
姉さんの表情は前髪のせいで見えなかった。
ただ黙って私の横を通り過ぎようとする。
そして、私とすれ違いざまに私へ吐き捨てた。
「いったいなぁ、……怖かった、本当に死ぬかと思ったわ。
こういう事を家族の姉さんにだってシルフはできるんだ?
本当に、人を傷つけるぐらいしかできることが無いんだね。
そんな子の何を私に分かれっていうの?
前から思っていたんだけどさ、アンタって馬鹿なんじゃない?」
それから、私を見下すような声で言った。
「そんなに兄さんが居なくなるのが嫌なら、
今私にしたみたいに大事な兄さんにも暴力を振るえば?
できるよね、そんなのアンタには簡単な事じゃない?
腕でも折っちゃえば絵だって描けないよ?
この前私にやろうとしたみたいに喉を潰す?
それとも、今みたいに壁に叩き付けて、息も出来ない位に締め上げる!?」
姉さんはもう、私の方を見ようともしなかった。
「……はぁ、嫌になっちゃった、本当に馬鹿みたい。
なんでこんな奴の家族なんてやってるんだろう……?
いい、今からお姉ちゃん、外に出てくるからもう付いて来ないでね」
シルフなんかとは二度と一緒に居たくないから、
最後にそう付け加えてから姉さんはふらふらと部屋から出て行った。
体から力が抜けて、壁に寄りかかるようにしてしゃがみこむ。
これで、全部おしまいになっちゃった。
くすくす、ははは、あははは。
どうしたんだろう、面白くなんて無いのに自然に笑いが零れてきちゃう。
あははは、姉さんは私を本当に嫌いになっちゃった。
もう家族としてだって見てくれない。
お兄ちゃんも私を置いて、私より大切な絵の為に外国へ行っちゃう。
もう私はお兄ちゃんの側には居られなくなる。
これで、私は独りだ。
最悪。
私は居場所を失って、お兄ちゃんにも姉さんにも見捨てられる。
ううん、大丈夫、だってあの頃の私に戻るだけだもの。
これからは独りでご飯を食べて、独りで眠って、独りで……。
うん、なにも変わってない。
あの時のとても辛かった私に戻るだけだよね。
ふふ、でもおかしいな、たった何日か前までは私は幸せだったんだよ?
優しい姉さんが居て、大好きなお兄ちゃんが恋人で。
結婚しようって約束までしてくれて……
まるで夢のようだって思っていた、あはは、なんだ本当に夢だったんだ。
そうだよね、夢ならいつか覚めちゃうんだから、これで良いんだよね。
だって、夢の中だけでも私はずっと幸せでいられたんだから。
別にもう戻れなくたって仕方ないよね。
あはははははは
あれ、さっきまはあんなに笑えたのにもう声が出ないの?
やっぱり涙、流れてる、よね……。
だってこんな終わり方、嫌だもの。
私は、こんなの嫌。
もう一度あの時に戻れって言うの?
また、薄暗い廃墟の中で泣き続けなきゃいけないの?
今度は誰ももう来てくれないのに。
嫌だよ、そんな事出来ないよ。
大好きな人と一緒に居られるのって、抱きしめられるのって、それだけであんなに幸せなんだよ。
そんな事分かっちゃったら、どうしてまた独りになれるの?
嫌だ、私はもう独りになんて絶対になりたくない……。
私はお兄ちゃんと一緒に居たい。
お兄ちゃんと幸せになりたい。
その為なら、お兄ちゃんの重荷になったって良い。
私が幸せになれるのならもう他の事なんてどうなっても構わない。
その為なら、どんな事だってするのに、どうして?
「どうして? どんな事だって?
ふふ、馬鹿らしい、私にできる事なんて無いのに」
姉さんが言っていた事は本当。
そう、私にできることなんて何もない。
お兄ちゃんは何でもできるのに。
私にできる事なんて、もう人を傷つける事だけ。
だから、姉さんにも嫌われた。
そんな妹、お兄ちゃんには要らない。
でも、そんなの、嫌だ。
私はお兄ちゃんと居たい、私を見捨てるなんて絶対に嘘だ。
どんな形でもいい、私はお兄ちゃんの中に居場所が欲しい。
どんな?
ああ、そうだ一つだけある。
さっき姉さんにやったみたいにすれば良いんだ。
私にしかできない最低な、本当に最低なのやり方。
そうだよね、お兄ちゃんが何でもできるなら、私が要らないのなら。
「じゃあ、お兄ちゃんが何にもできなくなっちゃえばいいんだ。
もう、それで良いや、あはははははは」
私は姉さんの真似をして無理に楽しそうな声で笑った。
今度は笑い声も、涙みたいに止まらなくなった。
あははははははははは
以上で19話目を終了します。
引き続き20話目を投下いたします。
乙
ばたり、どたどた。
この大きめの足音は間違いなくお兄ちゃんだ。
どきどきと心臓が高鳴る。
どたどた、がらり。
お兄ちゃんが慌てて居間に入ってくる。
私はそっと立ち上がってお兄ちゃんに近寄る。
「お帰り」
気付かれないようにいつもの様に近づく。
お兄ちゃんがいつもの様に笑って、
私を抱き留めようといつもの様に手を拡げてくれた。
私はいつもの様にお兄ちゃんに近づく。
けれど、いつもと違って、兄さんの喉元を指でつまんで力を入れて、
「シルフ、聞いてく『ぐ、ちゅ……』
私はお兄ちゃんの言うその先をきっと知っていた。
私の指先にとても嫌な感触が残った。
私は指を離す、何が起きたのかも分からないままお兄ちゃんが首を押さえる。
「安心して、喉を潰しただけだから、死んだりはしないよ」
その言葉に驚いた表情でこちらを見る。
大丈夫、お兄ちゃんは私を要らないなんて絶対に"言わ"ない。
お兄ちゃんを抱いて、恐くない様にできるだけ優しい声を作る。
姉さんみたいに上手くは出来ないけど。
「あ、あのね、私、姉さんから聞いたんだ。
お兄ちゃんが絵の為に留学するんだって」
ひゅー、ひゅーという音が壊れた喉から抜ける。
お兄ちゃんが声の出ない声で何かを言おうとしている音。
「大丈夫だよ。
別に私は怒っていたりなんてしていないの。
お兄ちゃんは何も悪くないんだから、恐がらないで」
お兄ちゃんの体をぎゅうって強く抱きしめる。
いつもお兄ちゃんには抱っこされっぱなしだった。
本当はこうやってみたかった、お兄ちゃんの体の感触がとても暖かくてうれしい。
お兄ちゃんがここに居るんだって、とても心が落ち着く。
「大丈夫だから、お兄ちゃんは何も喋らなくて良いよ。
だって、お兄ちゃんの気持ちは私にもよく分かるもの。
姉さんが教えてくれたの、私はいつもお兄ちゃんにとって邪魔だったんだって。
だから、お兄ちゃんは今までずっと自分の夢になるものを持ってなかったんだよね?
でも、お兄ちゃんは今になってやっと自分の夢を見つけ出せた。
その事は私もお兄ちゃんの妹として、恋人として、とても嬉しいの」
どうして、こんな簡単なことに気付かなかっのだろう?
私が抱き締めておけば、お兄ちゃんは何処にも行かないし、行けないのに。
「だから、その夢を叶えるのは何も悪い事なんて無いよ。
お兄ちゃんには、夢も、能力も、才能も全部ある。
きっとお兄ちゃんなら何処にでも行けるし、何でもできるって私は思うの。
それに、お兄ちゃんにとって必要な人は私なんかじゃないっていう事も」
ひゅー、ひゅー、ひゅー、さっきよりも強く聞こえた。
お兄ちゃんが必死に声を出そうとするたびに漏れる苦しそうな音、かわいそう。
「でも、私にはお兄ちゃんだけしか居ないから。
私を大切にしてくれる人も、家族になってくれる人も、
愛してくれる人も、私の生きる意味になってくれる人も、夢も。
全部、絶対にお兄ちゃんじゃないと私は駄目なの。
だから、お兄ちゃんに要らないって言われちゃったら、
もう私はどこにも居られなくなる。
私はそんなの嫌なの、だから……」
そっと、右手を握る。
あったかい、お兄ちゃんの手。
この手ならきっとどんな事だってできる。
でも、もうそんな必要なんてないから、要らない。
「だから、お兄ちゃんが私を必要としてくれるようにするんだ」
ただ骨を真ん中で折るだけでは駄目、それではいつか元に戻ってしまう。
「これはただの私の我侭だから。
人を傷付けないって約束を破ってごめんなさい。
でも、あの頃に戻るって思ったら、もう耐えられなくなっちゃったの。
その為だったら約束を破ったって、
例え大好きなお兄ちゃんだって傷つけても構わないって、
私、本気で思っちゃってるんだ。
あはは、ごめんなさい……。
ごめんなさい、本当にお兄ちゃんは何も悪くないの」
顔をお兄ちゃんから背ける。
今お兄ちゃんの顔を見ちゃったら決心が鈍りそうだったから。
指先を掴み、手を捻る。
「あのね、ずうっとお兄ちゃんに言いたかった事があるんだよ」
……顔を隠すなんて卑怯な事はいけないんだ。
これは私が自分で決めた事だもの、ちゃんと向き合わないと。
そして、私は全てを背負おう。
「今まで怖くてどうしても言えなかったの。
でも、今の私ならちゃんと言えるよ。
だから聞いて、お願いだから」
勇気を振り絞ってお兄ちゃんを見据える。
「私、お兄ちゃんと出会えてからとても幸せだったよ。
ありがとう、私はお兄ちゃんの事を愛してる。
これからも絶対にお兄ちゃんを離さない。
だから、ずっとシルフと一緒にいようね」
二度と治りませんように、
壊れてしまいますように、
お兄ちゃんがどこにも行けなくなりますように、
そう祈りながら力を入れる。
指と腕の中から物が壊れる時にする音がした。
空気が震える、音の無い叫び声が聞こえたんだと思う。
その声を聞いて、私はきっと笑っていた。
以上です、ありがとうございました。
初めは年内に終える予定でしたが終わりませんでした。
皆さん良いお年を、来年もよろしくお願いいたします。
ついに病んだ!怖い!
GJです
GJ!
保管庫更新速すぎwwww
GJ
雪風許さない・・・
んんー!許るさーん!
もうやだこの姉妹…
あ、もちろん作者さんGJって意味ですよ!
投下乙
ついにシルフやっちゃったな
雪風がこれからどう動くか
雪風みたいな狡猾な妹が欲しい
というか、キモウトって基本IQ高めだよな
ライバルたちを蹴落とし、かつ兄に禁断の愛を認めさせるには
並み程度の力では足りないということなんだろうが…
肉食系キモウトと草食系キモウト
簡単に人を殺すキモウトやヤンデレはわりと受けてるけど
リスクとリターンが明らかに見合ってない
バレないように人を殺すのに知恵を絞るなら
他の方法で除いた方が遥かに楽で安全だ
バレることで愛の対象と一緒にいられなくおそれもあるのに
ヒロインや作者の中で殺す方が目的になってる
知者タイプじゃなく狂気先行タイプならわかるんだけどね
457 :
武田赤音 ◆WrAMu0Q/KQ :2010/12/31(金) 02:28:17 ID:A40BJ3sW
奈良原大先生の作品をパクった奴がいると聞き、馳せ参じました。
>>455 キレやすくてワルぶっててお兄ちゃんとはケンカ友達みたいな間柄だけど本当はお兄ちゃん大好き過ぎて下着や古着を盗んでクンカしちゃうような子と、普段は優しくて小動物的だけどお兄ちゃんに近づくクソ猫は暴漢達に襲わせてにこにこしちゃうような子か
じゃあ姉は?
ねえたんは今年も忙しいんだろうなぁ
キモ姉&キモウトのスレのはずなのになんで姉の支持率低いんだろうなぁ…
っていうか、なぜみんなキモウト支持者ばっかなの?
>>461 そりゃ妹に洗脳された連中ばかりだからだろうに
時代は未だ妹優勢よ
今年は姉モノ不作だったな 来年こそは……
姉妹が出ている作品だとどうなるんだ?
幸せな二人の話とか、三つの鎖とか。
基本血つながってる方優先でしょ。梓とか雪風とか(雪風はつながってたっけ?)
個人的には血つながってないキモ姉キモウトはあくまでヤンデレって認識してるから
幼馴染をぶち殺す姉
短編に出てくる色々残念な姉とか好きだけど最近は長編が多いからなあ
いや、続き物書ける人が集まってるのは良いことなんだけど
ヤンデレの方は小ネタもちょいちょい投下されるんだけどね
職人数が違うのだろうか
なんだかんだいって去年最も多く見たスレはここだろう。
今年も素敵なキモ姉とキモウトに出会えますように。
いつの間にか作者ページに綾が再掲載されてた
綾と言えば同時期になくなったフラクタルがみたくて仕方がないな、作者一緒だったか覚えてないけど
弓張月と白愛も見たいです…
明けましておめでとうございます。
『きっと、壊れてる』第14話を投下します。
幸福を得る唯一の方法は、幸福を人生の目的としないことである。
19世紀を哲学者であると同時に経済学者としても生きたジョン・スチュアート・ミルの言葉。
彼は、私たちの精神的、道徳的な機能・能力は脳や筋肉と同じ、使わなければ衰えてしまうと考えている。
権力者や世論によって、いつも「これはできる。あれはできない」と言われていたら、
人々は自らの心や心の中に持っている判断する力を行使できない。
よって、本当に人間らしくあるためには、個人は彼、彼女自身が自由に考え、
話せる状態、すなわち自由が必要なのである、と植民地思想が幅を利かせていた19世紀の英国で説いた、
勇気と信念を併せ持った人物だ。
彼の中の『自由論』という著書の中で提案している『危害の原理』という考え方が私は好きだった。
人は自らの行為が他者に危害を加えない限り自由であるべきだ、という原理で、
極論を言えば売春や非合法の薬を使用する行為は他人に危害を与えない限り、悪ではないという事だ。
この現代日本でもその考え方は少なからず蔓延り、煌びやかな看板が眩しい時刻にネオン街へ行けば
嫌というほどその実情を垣間見る事が出来るだろう。
世論が私を認めない。
ならば私が世論を認めない。
と強がるのは簡単だが、局地的に物事を考えるのは趣味ではない。
革新的政治姿勢を取るわけではないが、私の頭を振り絞り考えた上でのこの結論。
孔子の言葉を借りて心の中で唱えよう。
速やかならんを欲するなかれ、小利を見るなかれ。
速やかならんを欲すればすなわち達せず、小利を見ればすなわち大事成らず。
指の腹を押し当てると、エレベーターの5という数字が淡いオレンジ色の光を放った。
普段は何も感じない、何も考えていないこの四角く狭い空間が、
浩介にとっては舞台か何かの裏手にある、出演者用の登場口のように思えた。
現在、茜は美佐をもてなす準備。
楓も日曜日は休講らしく、茜の手伝いをしているはずだ。
何事もなく終われば良い、浩介はこのエレベーターが何かよからぬ未来へと繋がっていない事を願っていた。
「わぁ〜、なんかドキドキしてきた。」
エレベーターを降り、浩介と茜、夏限定で居候している楓が住む部屋の前へと、二人は立っていた。
横に立つ美佐の全身を見下ろすと、白いフリル付きシフォンブラウスと、タイトな黒パンツが清潔感を演出している。
それなりに服装にも気を使っているようだが、めずらしく緊張した面持ちを見せている事が浩介は気に掛かった。
その緊張は、何に対しての緊張なのだと心の隅で問いかけ、浩介は自宅の鍵を取り出しドアノブに差し込んだ。
「ちょっ、ちょっとタンマ!」
左手で鍵を持った浩介の腕を掴み、美佐は照れ臭そうに笑っていた。
1週間前、強引に今回の企画を浩介に約束させた強気な瞳は、そこには欠片すら見当たらなかった。
「あのさ、確認なんだけど、今日って茜ちゃんと楓ちゃん、二人共いるんだよね?」
「あぁ、そうだよ。それが?」
「浩介は私の味方だよね?」
「はぁ?」
「誓って。何があっても私の味方だって」
いつになく真剣な表情だった。
こんな顔は菓子缶などに付いているエアクッションを潰している時ぐらいにしか見せない。
「よくわからないけど、わかった。俺は美佐の味方だよ」
「よし! じゃあ行こうか! あぁ〜緊張するなぁ……」
玄関のドアを開けると、リビングの方からパタパタとスリッパの音が聞こえてくる。
廊下とリビングを結ぶこげ茶色をしたドアが開き、髪を後ろに束ねエプロン姿の茜が現れ、二人を出迎えた。
「いらっしゃい、美佐さん」
茜の表情や声に動揺や緊張は感じられず、純粋に兄の恋人を家へ迎え入れる出来の良い妹だ。
浩介の心配事の1つだった。
結果だけ見れば、男を取られた相手を自宅で持て成せと言われたのにも拘わらず、
茜は少し複雑そうな顔をしただけで、文句の一つも言わなかった。
いつも茜に甘えてしまっている事に対して、浩介は一生足を向けて眠れないような気がした。
「きゃ〜! 茜ちゃん久しぶり! ガバっとな」
玄関の寸前まで歩いてきた茜を、美佐は引き寄せ、そして両腕を大きく広げ茜の細い体を抱きしめた。
匂い、美佐は茜の匂いを自分の鼻で記憶していた。
この先、この匂いを浩介から嗅ぎ取る事がないよう願いながら、
美佐は夢中で茜の首元から頭の側面までを嗅ぎ舐めた。
「っ! 美佐さん、苦しいわ」
茜が本気で苦しそうな声を上げると、美佐は最後の一吸いと言わんばかりにキツく茜を抱きしめ、その手を離した。
「いやぁ、ごめんごめん。いい女見ると抱きつきたくなっちゃって」
「変わらないですね、美佐さん」
浩介は、家族以外に微笑を浮かべる茜を初めて目にした。
何か健闘を称え合っているつもりなのか、懐かしんでいるだけなのか、
それは茜にしかわからなかった。
「茜ちゃん少しふっくらした? いや、それでも細いけど」
「さぁ? 私も肉が付きやすい年齢になったんでしょう」
そう言うと、美佐と浩介が家に上がるのを待っているのか、
茜は道を空けるように廊下の隅に体をずらした。
「何それ!? 嫌味? 年上の私に対する嫌味!?」
「美佐、とりあえず中へ入ろう。狭い」
「は〜い」
ヒールの高い白く爽やかなサンダルを玄関に揃え、家に上がった美佐の後ろ姿を横目に、
浩介は茜へ目で『ありがとう』と伝えた。
意外にもあっさりと再会を果たした二人。
色々な感情を押し殺し、丁重に美佐を迎え入れようとしてくれている茜への感謝の意だった。
茜は浩介と目が合うと、意思を理解できたのか、先程と同じように微笑んでいた。
食卓に美佐を座らせると、茜は「楓を呼んでくる」と一言言い残し、その場を去った。
テーブルには、以前茜が厳選して買ってきたと豪語していた白く丸い皿に、
まだ揚げたてであろうカニクリームコロッケと、レタスやトマトといった色彩豊かなサラダが盛り付けられていた。
浩介がフォークでその中心を二つに割ると、中から湯気に混じりトロリとした白いクリームが姿を披露し、浩介の食欲を誘った。
「ちょっと! まだみんな揃ってないでしょ! 勝手に食べない。私だって食べたいんだから」
「あぁ、ごめん。いつもの癖で」
「お行儀が悪いでちゅね〜こうちゅけ君」
「……緊張してたんじゃなかったのか?」
口を尖らせ、小馬鹿にするような顔をする美佐。
いつも浩介が腹を立てない絶妙なラインを引き、からかう。
「なぁ、多分美佐が今日ここに来た目的の事なんだけど、やっぱ普通男の俺が言うべきなんじゃないのか?」
「ここの世帯主って実質茜ちゃんでしょ? なら私が言うべき事だから」
すべてが見透かされているようで浩介は居心地が悪くなり、フォークを置いて両手を膝の上に落とした。
「ごめんなさい、お待たせしてしまって。……ほら、挨拶は?」
リビングへ二人が顔を出したのは、それから3分後の事だった。
恥ずかしがっているのか、茜の影に重なるように楓が隠れている。
昔から内弁慶だったような気はするが、相変わらずのようだ。
楓が茜の娘のように見えた浩介は苦笑いをした。
「初めまして。村上楓と言います。兄と姉がいつもお世話になってます」
茜の陰から半歩横に出て、美佐にお辞儀をした楓は育ちの良いどこかの令嬢のようだった。
普段、楓が好んでよく着ている露出の多い服装ではなく、白いブラウスに黒いロングスカート。
おそらく茜の服を借りているのだろう、浩介はどこかで見た事のあるその清楚な服に魅入られた。
「まぁ、ご丁寧にどうもって……はぁ!? 茜ちゃんって双子だったの?」
「いや」
「いいえ」
ほぼ同時に答えた浩介と茜の回答も聞こえていないのか、美佐は座っていた椅子から立ち上がり楓の正面まで駆け寄った。
目を丸くして楓を凝視する美佐は、未知の生物を研究心で観察する学者のようだった。
「うそぉ……似てるなぁ……髪型が同じだから余計に、かな? 楓ちゃん、いくつ?」
「18です」
「18!? う〜ん、茜ちゃんが若いのか、楓ちゃんが大人っぽいのか、よくわからなくなってきた」
無理もない、実の兄である自分でも最初は戸惑ったのだ、と浩介は正面に向き直り、
フォークで突き刺したカニクリームコロッケを口の中に入れた。
「昔からこんなに似てたの?」
「いえ、この子は私と違って活発だったから。髪ももっと短かったし、日焼けもしていたし、偶に親戚の人に言われるぐらいでしたね」
美佐の問いに茜は微笑みながら答えた。
自分の事より楓の話題の方が楽しいのか、姉妹愛を感じさせる口調だった。
「ん〜。確かに見慣れてくるとパーツが微妙に違うかも。いや、どっちも美人だけどね? 私には劣るけど」
「ふふっ、そうね。美佐さんが家族だったら、美人三姉妹だったのにね」
女性というのはこういう会話が好きなのだろうか。
背後で繰り広げられる褒め合いに呆れた浩介は、カニクリームコロッケをレタスで包み、ソースを付けた。
口の中に入れると、先程までとはまた違った味が口の中に広がってくる。
調味料や、一緒に口の中へ入れる食材で味は変わるものなのだ、と浩介はなぜか幸せな気持ちになった。
「へぇ、美佐さんって薬剤師なんですね。なんか素敵」
「そうよ、素敵なの。私を目標にしてもよろしくてよ?」
「やだぁ〜。おもしろいっ!」
食後のコーヒーを一口、ふっくらとした唇から啜ると、楓とその真向かいに座っている美佐は笑い声を上げた。
女性特有の集団形成本能なのか、始めは口数の少なかった楓も徐々に自ら美佐に話しかけるようになり、
僅か1時間足らずで、二人の間にあった壁が崩れているように見える。
僅かに微笑んでいるように見える茜も、女同士の会話を楽しめているようだった。
「美佐さんって、前もお兄ちゃんと付き合っていたんですよね?」
楓にそのような話をした事があったか。
楓は茜と寝室が一緒なので、茜が気を利かして事前情報を教えておいてくれたのかもしれない。
「うん、4年か5年前だったかな。図書館でナンパしちゃった。この家にも一度来た事あるの。ね? 茜ちゃん」
「懐かしいですね。初対面なのにお尻を触られた時は驚いたわ」
当時を思い出し、浩介は苦笑いをした。
美佐のセクハラの事ではなく、当時の自分はどういう心境で茜に美佐を会わせたのか。
逆の立場になって考えてみると、胸をハンマーで殴られたような痛みが襲った。
「美佐さんの家とこの家って近かったんですね。今も同じ所に住んでいるんですか?」
「うん、家賃がそれなりに安くて住みやすいからね」
「じゃあ、私今度遊びに行っちゃおうかなぁ」
「あぁ、ごめん。私、近い内引越すから」
「え?」
「そろそろ、場も和んだし、いいかな。今日はね、報告があってこの家に来たの」
美佐は浩介の顔を確認するように視線を向けると、小さく頷いた。
浩介もすぐに視線で返事をした。俺は美佐の味方だ、と。
特に取り決めた訳ではない。
だが、美佐が家に来ると言い出した時点で、目的はわかっていた。
戸惑い、悩み、それでもそうした方が良いと思ったからこその、茜に無理を言って催した今日の食事会だった。
「報告?」
めずらしく茜がオウム返しで質問すると、美佐は背筋を伸ばし、膝の上に手を置き、真直ぐと茜の方を向いた。
男が相手の父親に面し、重要な話をする時の姿勢。
相手の一番近しい人間への挨拶だった。
「私と浩介、結婚する事にしました」
美佐が一言、そう言い放つと楓は自分では気付いていないのか、みるみる酷い形相に変化していった。
ただ、美佐に気付かれる心配はない。
美佐はただ茜の方を見つめ、微動だにしない。
まるでこの世界で二人しか存在しないかのように、外界の音や色は二人には視界に入っていなかった。
茜の一喜一憂を逃さず捉えようとしているのか、目を見開いて瞬き一つしない美佐に、
その場にいる全員、身動きできない程の息苦しさを感じている。
気付けば浩介も未だ無表情を貫き通している茜の瞳に釘付けになっていた。
「……う」
何分経ったのかはわからない。
茜の口元が動いた。
「そう、おめでとう。美佐さん、兄さん」
美佐の目から視線を反らさず、茜ははっきりした口調で祝辞を述べた。
動揺している様子はない。
おそらく美佐が訪問すると聞いた時点で、茜は覚悟していたのかもしれない。
1週間前に一瞬だけ見せた複雑そうな表情が、茜の気持ち全てをあの場で表現していたのか、と浩介は気付いた。
テーブルの下に隠すように持った携帯を弄っている楓を不審に思いながらも、
浩介はこれでやっとすべてが終わる、と言葉では言い表せない感情を込めて、茜に「ありがとう」と一言返した。
「変態、こんな状況でここをこんなにして」
浩介が毎日寝ているベッドへ腰掛けた美佐が向かいに立つ浩介の下着を剥がすと、
肉棒と称するに相応しい男性器が姿を現した。
「なんか、いつもより大きくない?」
「やっぱ、やめないか? いつ帰ってくるかもわからないのに」
茜と楓がケーキのスポンジを買い忘れたと言って買い物に出てから、既に10分程経っている。
デザートでさえ、わざわざ自分で作ろうと準備していたのが茜らしい。
茜がいつも利用しているスーパーはここから徒歩5分程度なので、
買い物の時間を計算しても、二人の時間は限られていた。
「そのシチュエーションが興奮するんでしょ? でも……何事もなかったね」
「そうだな。茜は俺の為を思ってくれているんだと思う」
「まぁそういう事にしておきましょう。楓ちゃんとも顔合わせできたし、今日は、まぁ合格点かな」
「あぁ」
楓の形相を思い出した浩介は、少しだけ不安な気持ちが滲み出てきた。
今は納得できなくとも、時間が解決してくれるだろうか、効果的な対策は思いつかなかった。
「俺らが落ち着いたら、俺は茜の相手を探すぞ。高学歴で高収入でイケメンで頼りがいのある男じゃないと許さない」
「ハイハイ、ウザがられるのがオチだから……って、わっ! 変な液出てるっ!」
「仕方ないじゃん」
美佐は人差し指で浩介の肉棒先端から溢れている汁を掬うと、舌で味わう様に自分の口に含んだ
「ん。おいちぃ……わけはない。けど、特別不味いってわけでもない。あんま味しない」
「いいよ実況しなくて」
「あっ! いつの間にかおっぱい触ってやがる。シワになるからあんまり強く揉まないでよ?」
ブラウスのボタンを外すと、中から黄色い下着に包まれた形の良い胸の谷間が目に飛び込んでくる。
静かに指の腹でその谷間も輪郭をなぞると、小さく美佐の肩が震えた。
それが火を付けたように、ボタンを外す手を早めた浩介は美佐をベッドに押し倒した。
「やっぱ変態なんだ。浩介は」
「そうかもしれない」
身に着けていた衣服をすべて剥ぎ取り、柔らかい体を抱きしめた。
腕を回され抱きしめられると、自分の存在が受け入れられているかのような感覚に陥る。
浩介は夢中で美佐の首筋からわき腹にかけて、舌を這わすと、目で合図を送った。
「ちょっと節操無いけど仕方ないね。いいよ? きて……んにゅうっ!」
普段より大きいと称された肉棒を美佐の中に入れた。
温かいという一言で表現するには、物足りない。
二人の世界を繋ぎ、一心同体にする。
そんな制御機能を持っているように思えた美佐の膣目掛け、浩介は一心不乱に腰を動かし、音を立てて突いた。
「いやぁっ! 激しいっ! ん〜〜!」
嬌声を上げる美佐の体が、激しく揺れる。
緩急を付けず、最初から最高の回転率で腰を動かす浩介は自分でも獣染みていると感じた。
「気持ち良いよ、美佐」
「その……ヤンッ……冷静さが、ムカつ……ンニャアアァァァ! ……ヤァァァァン」
顔を腕で隠し、首を振りながら喘ぐ美佐に、浩介は腰により一層の激しさを加えた。
「やばい……なんで!……もうイくかも!」
不本意なのか、顔隠したままの美佐は体中に電気を流されているように震えている。
その姿を見れば見るほど、男性器に血が集まってくるのが感じられた。
「なぁ美佐、今日は飲んでくれないか」
「アンッ! アンッ! アンッ! いいよぉ! ン……ンアァァァァァl」
痙攣を起こし全身の力が抜けた美佐の膣から抜いた肉棒を、
今度は口の中に突っ込んだ。
目が虚ろになっていた美佐を凌辱しているような気がして、不思議な高揚感に包まれる。
浩介は、頭では美佐が苦しがっているのを理解していながらも、口の中に挿入した肉棒を掴んだ手を緩めなかった。
「……ンンンィィ! ゴホッ……ゴホッ……ゴホッ…………まられれる」
笑っていた。
半ば強制的に口の中に決して美味しくはない粘着した液体をぶちまけられようとも。
口元から白い液体から少し垂れしながらも、美佐は笑っていた。
罪悪感と高揚感に板挟みに遭った浩介は、どうしてよいかわからず、美佐をただ抱き締めた。
「でも、見られてももうあまり困らないよね?」
口から溢れ出した精液を舐め取り小さく呟いた美佐の言葉は、妙に浩介の頭に残った。
日付が変わった後、シャワーを浴び、自室にあるPCでネットサーフィンをしている時だった。
コンコンと夜でなければ気付かない程の小さいノックに気付いた浩介は、「どうぞ」と一言ドア越しにいる人物に声を掛けた。
その人物は音もなくドアを開けると、1歩2歩とPCの方を向いたままの浩介の背後まで近付き、そして耳元で囁いた。
「結婚なんて、できると思っているの?」
急な言葉に振り返った浩介は、パジャマとはとても言い難い、シースルーのネグリジェを着た楓の姿を目の当たりにした。
薄い紫色をしたネグリジャから透けている楓の乳首は、既に浩介が食らい付く準備が整っているかのように突き出ている。
「なんだよ? 急に……お前、その格好どうしたんだ?」
薄く笑っている。
しかし、その微笑みは昼間茜が見せた暖かい感情は感じられず、浩介に底知れぬ負の感情を持っている事がわかった。
「このまま、あの人と結婚をして、幸せな家庭とやらを築くつもりなの?」
ボソボソと喋る楓は、そのまま両手を大きく広げ、浩介を背中から覆い被さるようにしがみ付いた。
「駄目よ。許さない。逃がさない。私はどうするの?」
「俺はこれが正しい事だと思う。いや、俺が正しいとか、正しくないとかじゃなくて、そうしたいんだ」
背中からしがみ付かれたままの浩介は、首をできるだけ後ろにひねった。
表情が見えない。
飛行機内での行動はやはり一時の気紛れや悪戯心ではなかったのか。
既に浩介の胸を愛おしそうに撫でる楓の手がそれを物語っていた。
「ねぇ、兄さん」
色香のある鼻にかかったような声を出しながら、楓の手は浩介の膝と太股を撫でた。
「あの人、おもしろい過去があるのよ」
「おもしろい過去?」
この間、スカイツリーを見に行く時に言っていた「言うのには勇気がいる」という過去の事だろうか。
今更、美佐にどんな過去があろうとも大した事ではない。
自分が受け入れ二人で乗り越えれば良いのだ。
「そう、知りたい? きっと兄さんは嫌悪感を抱くと思うわ」
「いいよ、本人から聞くから。それよりも離れて……昔の楓に戻ってくれよ」
記憶を辿り、眩しい程の笑顔を見せる楓が浩介の脳裏に浮かぶ。
こんな状況になってしまったのは自分のせいなのだ、と一生自責に苦めば、楓はまた心からの笑顔を見せてくれるのか。
「……昔の私……か。兄さんはね、なんか勘違いしてると思うの」
「勘違い?」
手が浩介の股間にまで伸びてきた。
小動物でも愛でるかのように、優しく丁寧に付近を擦ると、楓は言葉を続けた。
「私、元々の性格は暗いのよ。けど、私まで大人しかったらウチの家族、静かすぎるでしょ?」
「……なんだよ、それ。無理して笑ってたって事か?」
楓が茜のような性格だったと仮定し、想像する。
父は寡黙で冷静、母も稀に憤慨する事があるが基本的には大人しい。
茜は父の血を一番受け継いでいるのか、あの通りの性格。
そして俺は喋る相手に合わせる事はできるが、自ら話を盛り上げるタイプではない。
家族全員の顔を思い浮かべると、誰が会話の主導権を握るわけでもない。
楓の言う事は事実だった。
「まぁ無理してとまでは言わないけど、気を使っていたのは本当よ」
「なんでだ、なんで言ってくれなかった」
「それはね……」
下半身を弄っていた両手を離し、首に腕を巻きつける。
傍から見れば愛を育む恋人のような体勢。
顔を浩介の肩に乗せ、頬に軽くキスをしてから楓は小さく囁いた。
「兄さんが喜んでくれたから……おにーちゃん、私、お兄ちゃんが好きで好きで、仕方ないの」
腕に込められた力が、楓の想いを浩介に伝えていた。
良い匂いがする。
茜や美佐とは違う、純粋さや狡猾さ、すべて含めた楓の人格を色付ける不思議で心地良い匂い。
何から間違えていたのか。
茜と家を出た時から。
茜と初めて体を重ねた時から。
茜に恋をした時から。
それとも自分達が生まれた時には既に、壊れていたのだろうか。
楓の表情は見たくなった。
浩介は前を向いたまま楓の頭を優しく撫でた。
「ごめん、楓の事を女性としては見れない。俺は美佐と結婚するよ」
楓の黒髪を手で梳かしながら、楓を拒絶する言葉を吐いた。
また、卑怯な事をしてしまっているのだろうか。
それとも楓の体を突き飛ばし、「気色悪い」とでも言うのが拒絶する側の正しい対応なのか。
楓は微動だにしない。
二人の周りだけ時間が止まった様に沈黙が続いた。
「……知っているのよ、私。本当は兄さん、あの人の事なんてどうでもいいと思っている事」
「ふざけるなよ? なんの根拠があるんだよ」
「姉さんの事を、今でも愛しているのでしょう? だけど、兄弟だから。
世間の枠の中では決して姉さんを幸せにできないから、身を引く事にした。違う?」
「……違うよ。俺が美佐に心変わりしただけだ。茜は大事な妹である事に変わりはないけど、もう女性として見てはいない」
心の中を力任せに誤魔化した。
ドロドロした粘着物が、胃の中に所狭しと張り付いているような気がする。
歯を食い縛り、体の中で浩介は叫び、そして再度口を開いた。
「だから楓、快く俺と美佐を送り出してくれないか? お前に寂しい思いをさせた事は申し訳ないと思っている。
謝れと言うのなら、何度でも、何時までも謝るよ。だから……」
「馬鹿らしい。兄さんやっぱり何か勘違いをしているわ。私はね、過去は振り返らない主義なの」
故意なのか。楓はクスクスと体を震わせ、笑みを浮かべた。
手は再び浩介の股間へと伸び、愛撫を始めた。
「今の状況になってしまった事は仕方ないわ。こんな私だからこそ、兄さんと姉さんが家を出た気持ちはわかるし、
引き留められなかった父さんと母さんの立場や気持ちも理解できる。だからこそ……」
耳に息を吹きかけた楓は、また浩介の頬に唇を押し付けた。
「努力して、兄さん好みの女になって、迎えに来たの。二人でどこかへ逃げましょう? 誰も知らない土地で、夫婦として生きるの。
二人とも職探しからになってしまうけど、支え合えばきっと大丈夫。奥さん若くて綺麗ですね、って言われるよ? きっと。
エッチだって好きなだけさせてあげる。姉さんにはできなかった事だって、私にはしてもいいの」
少し感情が高ぶっているのか、楓はまくしたてるように浩介との将来の情景を次々と口にした。
「楓、ありがとう。兄としてではなく、一人の男としてそこまで想ってくれて素直に嬉しいよ。
だけど、お前の気持ちには答えられない。俺は美佐と生きるんだ」
「……そんなにあの人が良いの? 私達と違って血が繋がっていないから?」
「違うよ。美佐の素直な生き方や、明るさに俺は救われたんだ」
楓の動きが止まった。
楓の腕から徐々に力が抜け、浩介の身柄は解放された。
後ろを振り向いた浩介の視線に映ったのは、唇を噛み、握り拳を血が出てしまいそうな程強く握る、
敗北感と悪意が同時に湧き上がっているような一人の女だった。
「あの人は……いえ、近い内に兄さんも思い知る事になるわ。兄さんにとっての幸せは、私と一緒になる事だって」
捨て台詞を吐き、浩介の自室を出ていく楓の後ろ姿は、まだ幼い子供が拗ねている姿と被った。
カーテンを少し開け、鈍い光を放つ月を見上げる。
これで正しいんだよな。
夜空に問いかける浩介の脳裏に浮かんだのは、
視線の先の月ではなく、将来を誓った美佐でもなく、隣の部屋で寝ているはずの茜だった。
第15話へ続く
以上です。ありがとうございました。
投下お疲れ様です
今回も面白かった。典型的キモウトの楓より終始平静な茜が不気味すぎてwktkが止まらない
伏線のように見せかけて実は本当にいい人でしたパターンか、はたまた漁夫の利を企んでいるのか、茜の真意が非常に気になる
GJ
楓の小物っぷりが萌える
面白いなあ
GJ!
>>480 GJです
毎話山場を作ってあって上手いなぁ…
茜と楓が外では常人を装おってるのが、個人的に好き。リアリティあって
あと13KBか
1話分にはちと少ないかな
Web漫画の2428が良い具合にキモウト化してきたw
>>487 ちらっと見てきたが、兄貴の髪型が面白すぎるw
一話から既に兄に心を許してる感じだなw
あと11kb……
埋めネタでもかければいいが、そんなん思いつかない
短くかつ面白く更にエロくもかける人ってすげーな
〜自称冒険家の放蕩親父から3年ぶりに電話があった。
「おう、光太郎か久しぶりだなぁ。」
「親父か…
今何処にいるんだ?」
「アマゾンにいるんだが…」
「アマゾンねぇ。」
「所で明日お前の異母妹が来日するから空港まで迎えに行ってくれ。」
「い、い、異母妹ーー!!
12年も帰って来ないと思ったら、どこで何やってんだーー!!」
「いや……アマゾネスの集落で女王に気に入られてな。それで娘が‥お前にとっては妹だが‥どうしても兄に会いたいって。」
「はあーーー!?」
「明日の3時の便だ。名前はサラ。見た目は…まあ、サラはお前の写真を肌身はなさず持ってるからサラの方がお前を見つけるだろう。よろしく頼むよ。」
「おい!待て!クソ親父ーー!!」
プッ!ツーツー
切りやがった。アマゾン?妹?駄目だ頭が混乱している。しかしずっと一人っ子だった俺に妹がいたとは…
****
翌日仕方がないので空港に迎えに行った。か細いお嬢様系の妹なら大歓迎だが。一応“妹のサラようこそ日本へ。兄光太郎”とゆうプラカードを掲げてはいる。
期待と不安が入り混じって立ったまま貧乏揺すりなどしていると、到着ゲートからどよめきが起こる。有名人でも来たのかな?と好奇心でどよめきの方に視線をやると……
そこには、身長2メートル超。髪はロングのドレッドヘアー。褐色の肌で一応美人だが‥どう見てもバスケットの選手か女子プロレスラー。一応サインでも、もらうかと近寄って見ると‥
「あっ!コウ兄!」
自分の2倍は有る猛女は俺を発見すると豪快に突進して来る。
蛇に睨まれたカエルでは無いが頭の中は「#☆〇&α」わけの分からない記号が飛び回って身体が石化してしまった。
万能薬、いや、金の針はどこだっけ…
「あいたかったよーー!!」
「お、お前が‥さ、サラか?」
「うん♪」
猛女…もとい妹のサラは万力のような馬鹿力で俺を締め上げる。せ、背骨がお、折れるぅうーー!! 手を離してもらった時俺は失神寸前だった。
その後…帰りのタクシーがつかまらず俺がイライラしていると、サラが道路にいきなり飛び出して70キロ位で走行中のタクシーを片手で止めて運転手が気絶してしまったり。規格外のパワーを思い知らされた。
****
家になんとか辿り着き色々事情を聞いてみるとサラは何とまだ中学生だとのこと。後滞在日数とか聞いておかないと‥
「お前今回は何時まで日本にいるんだ?」
「うーーん。一応コウ兄が大学を卒業するまでかな?」
「えーー!!」
「?……」
「コウ兄が大学を卒業したら一緒にアマゾンに行き、わたしコウ兄と結婚するんだ!」
「け、結婚て…俺達一応兄妹なんだし……」
「いや?」
不安そうな表情で傍らに有ったリンゴをサラが握りしめるとリンゴは見事に砕け散った。
「い、嫌じゃないですう。」
「良かった。」
殺されたくなかったし想わずイエスの返事をした俺。サラは満面の表情で俺に抱きついた。
「コウ兄、早速だけど一緒にお風呂にはいろ♪」
何を想ったのか妹のサラはいきなり服を脱ぎ捨て推定1メートル超のバストが露わになる。
「さ、さささ、サラ?」
「ああ…コウ兄も早く脱いで!」
サラは面倒だとばかりに俺の服を引っ剥がすと俺をヒョイと持ち上げお姫様抱っこで風呂場へ。
「コウ兄のたくましい…」
「……」
「コウ兄…わたしヴァージンなんで優しくしてね♪」
「……コクリ」
肝心なときに反応してしまうマイサン…終わっな俺の人生。
おわり
すんませんチョット足りなかったようで…
GJ!
長編も良いけど、こういうサクサクっと読めるものもやっぱり良いわぁ
>>487 キモウトっていうか、兄と妹がバカップルすぎるんだけど
長身キモウトももろちんありです。
ドレッドヘアーの妹って
エルメェスしかイメージが浮かばなかった
遅ればせながら乙です
主人公を大体160cmとして二倍なら……3mオーバーだと?
頭脳戦ではなく物理的に攻めて来るのも格別よの
2倍なのは体積じゃね
「お、お、おねえちゃん…」
「カイくん…なかないで…」
「だ、だって。うぇ‥ひっく、うぇえ…おねえちゃん…しんじゃいやだ…」
「カイくん…わたしのこと好き?」
「あたりまえだよ!ぼくのしょうらいのおよめさんはおねえちゃんなんだーー!!」
号泣してすがりつく僕の頭をおねえちゃんの手がゆっくりと撫でる。この優しい手を失いたくない。
「ありがとう。カイくん…よく聞いて。
わたしは必ずもどってくるから。
そのときは…おねえちゃん‥を…およめさんに…もらって……ね。」
「うん!ぜったいやくそくする。
だから…だから…」
「ご臨終です。」
僕の姉さんが逝った。享年七歳。もう十六年も前の話だ。
****
「ふーーう。白昼夢か‥」
僕は今大学四年だが、今のご時世優秀でも無い自分はご多分に漏れず就職が決まって無く、幼い頃姉とよくあそんだ公園で途方に暮れていたというわけだ。
こういうとき彼女でもいれば、気も紛れるんだろうが…生憎と彼女どころか女性とつきあった経験すらない。
「しかも二十歳を過ぎて、いまだに童貞で…くそっ!いっそのこと景気づけに風俗にでも行ってくるかな。アハハ」
自嘲的な乾いた笑いしか出てこない。
「あんた!ばかぁああーー!?」
罵声と共に、いきなり頭をコツンと叩かれる感触。我に返ってみると目の前に小学校低学年くらいの長い黒髪の美少女。
それにしても可愛い。色白でぱっちりとした眼に紅い小さい唇。まるで人形か少女漫画から抜け出してきたような現実離れした可愛さだ。
「お嬢ちゃん何処の子かな?」
「自分の姉にお嬢ちゃんはないでしょ!」
「ごめんね…今は遊んであげる気にならなくてさ。」
就職浪人が決まっており、美少女とはいえ、とても子供と遊ぶ気になれない心境である。
「ーーったく。せっかく霊界から虫がつかないようにコントロールしてたのに。今更風俗なんかに行かれたりしたら、たまったもんじゃないわよ。」
「(もしかして知恵遅れの子かな?)」
「な、なによ!その眼は…
まあ、いいわ。帰るわよカイくん。」
「カイくんって…ま、まま、まさか…お姉‥ちゃん?」
僕のことをカイくんと呼ぶのは姉しかいないが…我ながら途方もないことを。お姉ちゃんはもう十六年前に亡くなったはずだ。
「ふぅ。やっと気づいたのね。ただまだ半信半疑のようだけど‥‥‥カイくん輪廻って言葉知ってる?」
「輪廻。生まれ変わりのこと?」
「正解よ。」
「じゃ、じゃあ。本当に…お姉ちゃん。」
「ただいまカイくん。」
「お、おかえり。お姉ちゃん‥‥‥」
僕は懐かしさのあまり自分の半分くらいの少女…もとい姉を強く抱きしめていた。昔と変わらない優しい手で僕の頭を撫でる。間違いなくお姉ちゃんだ。
姉は死後キモアネノテンショウオオミノカミという長ったらしい名前の女神様に大層気にいられたらしく、前世と霊界の記憶を持って転生したらしい。
「さて。早く帰るよ。」
「はあ!帰るってどこに?」
「私達の家に決まってるじゃない。」
「えーー!!今の両親は?」
「あ‥わたしの今の親は織田夢聖ね。」
「織田夢聖って霊能者で臨済宗寺の?」
「生まれ変わる時ちゃんと両親を選んで転生したからね。当然輪廻も理解してるし、寺を継ぐ代わりに前世の実家に住んでいいってことになってるのよ。」
「いや、いや。ウチの両親が納得しないだろう。」
「カイくん。ウチの菩提寺は?」
「臨済宗寺だけど…」
「もう分かったでしょう。
今日からまた一緒よ。」
「‥‥‥」
ウチの家は臨済宗寺の一番大きい檀家で代々寺の後継者を預かる風習があるとのこと。なんという用意周到さだ。
でも、もう一つ問題が…
「あ‥お姉ちゃん。
小百合が…」
「小百合って赤ちゃんでしょう。」
「何言ってんだよ!もう高校生だよ!」
小百合というのは我が家の末の妹のことである。
「なに!キモウトにでも成ったの?」
「ち、違うよ。僕なんか全く無視されて…というか真正のレズでロリコンなんだよ!」
「知ってるわよ。
所であんたの幼馴染みの彩花はまだアイドルとつきあってるの?」
「な、なんで、そんなことまで‥‥‥」
「(ふふふ。勿論邪魔だからに決まってるじゃない。小百合はレズ化。彩花はアイドルが恋人。わたしとカイくんの間には誰も入れないわよ。)」
姉は不敵な笑みを浮かべている。なんか恐ろしくなってきた。
「お姉ちゃん。何を考えているんだよ!」
「うるさーーい!!
弟は黙って姉の言うことを聞いていればいいの!それ有史以来の世間の常識よ!」
「はあ…」
いくら前世が姉とはいえ、小学生に言い負かされる大学生って…
姉は強し……か。
****
自宅に到着した。一応お姉ちゃんのことは家族には内緒ということになっている。
何故ならば僕が精神病院に入院させられない為。だって普通なら誰もバカバカしくて信用しないだろう。十六年前に亡くなった長女が生まれ変わって蘇ったなんて。
そういえば帰る途中に芸能レポーターが沢山いたな。なにせ幼馴染みの彩花がつきあってるのが人気アイドルグループ風の大野聡だからな。どうでもいいことだが…
「ただいま。」
玄関のドアを開けると親父とお袋の靴がない。
どうやら妹の小百合しかいないようだ。
「なんだアニキか…」
居間の方まで行くと小百合は素っ気ない返事でこちらの方にめんどくさそうに顔を向ける。基本ガチレズの小百合は、男にはいつも無愛想だが。
「小百合。今日親父とお袋は?」
「寺。今日は帰りが遅いって。」
「そうか…その臨済宗寺の娘さんを連れてきたんだが…」
僕の言葉に小百合は、ん?とばかりに少女=お姉ちゃんの方に視線を移す。
案の定小百合の眼の色が変わった。
「きゃーー!!きゃーー!!
なに!この可愛い生き物。
きゃーー!!!」
レズ&ロリの小百合には今のお姉ちゃんはどストライクだ。ソファーからダイブしていきなり飛びつく。お姉ちゃんは勿論どん引きだが。
「私がこの子をもらったーー!!」
「離せ!この変態くそガキがーー!!」
「まあ、可愛い。照れてるのね。
私の部屋に行きましょう♪」
お姉ちゃんは大暴れしているが、いかんせ高校生と小学生では体格が違う。小百合にぎゅうぎゅうと抱き締められて動きを封じられている。愚妹は興奮して息づかいが荒くなって…
「はあはあ。先ずは可愛い唇ゲットだよ♪」
「くく…わたしのファーストキスはカイくん…って…決めてるのよ。」
「うふふ。男なんてくだらないわ。
私が女の良さを教えて・あ・げ・る♪」
「妹の分際で姉に逆らうとは森羅万象の理に反する行為だわーー!!」
「わけの分からないこと言って。
照れてるのね。」
小百合の顔がどんどんお姉ちゃんに迫ってくる。僕はこのキャットファイトに身体が固まってしまっていた。
後十センチ、五センチ。三センチ。
残りお姉ちゃんのファーストキスゲットまで二センチの所で小百合の動きがピタリと止まる。身体がゆらゆらとしたと想ったら、ドサリとその場に崩れ落ちた。
「さ、小百合どうした。」
僕が心配になって小百合に駆け寄ると、お姉ちゃんは額の汗を拭いながら僕を制す。
「大丈夫。死んじゃいないわ。
頸動脈締めて落としただけだから。」
「そう…」
「それに百合はスレチだからね。」
「はあ?」
「こちらの話し。
所でお姉ちゃん汗掻いちゃったから、カイくん一緒にお風呂にはいろ♪」
「嫌だよ。大学生にもなって恥ずかしい…」
「う…うう…せっかくカイくんの為に生まれ変わったのに…
カイくん…お姉ちゃんのことが嫌いになったのね…」
姉さんは両手で顔を覆い、俯いて肩を震わせている。オロオロしたヘタレな僕は、ただなだめるだけだ。
「何言ってんだよ。お姉ちゃんにまた再会できて嬉しいに決まってるじゃないか。」
「本当に…」
「本当だよ。」
「本当の本当?」
「ああ…」
「良い子ね。」
僕の頭を撫でるお姉ちゃんの顔は満面の笑顔だった。嘘泣きか‥どうやら姉に逆らうなどヘタレな僕には無理のようだ。
****
風呂場に姉と入る。何十年振りか。当時は子供で裸など気にならなかっが今は別だ。
なんせ僕は童貞で女性に免疫が無い。いくら小学生とはいえ、全裸の美少女が一緒では下半身がやばい。しかしお姉ちゃんには通用しないようだ。
「はい♪お姉ちゃんが綺麗にしてあげるからね。前を向いて。」
「いや…そ、それは…」
「サッサと前を向く!」
「……はい。」
お姉ちゃんは僕のそそり立つ肉棒を見て嬉しそうに笑う。
「うれしい‥お姉ちゃんの身体で興奮してるのね。」
お姉ちゃんの泡まみれの白い小さい手が僕の肉棒をニチャニチャと擦ると、もう快感の波に呑まれてしまう。
「お姉ちゃん…気持ちいい…ああ…」
「まあ、敏感なのね。
女の子みたいに声を出して♪」
「あ‥ああ…もう出ちゃうよ…」
僕の射精が近いことを悟ったのかお姉ちゃんは肉棒の根元をギュッと抑える。
「だーめ。先ずはマーキングをしないと…」
「ま、マーキング?」
「だってカイくんは、わたしをお嫁さんにするんでしょ?だったらカイくんもわたしのもの。」
「……」
快楽の虜に成っているヘタレ童貞に逆らうすべなど無い。お姉ちゃんは上から腰を下ろして僕の肉棒を自分の性器に挿入しょうとするが…
「あたっ!いたた…
今の身体では挿入は無理ね。
仕方ないわ。今回は仮のマーキングということで…」
流石に小学生の性器に僕の肉棒は挿入出来ないようで、お姉ちゃんは自分の性器を僕の肉棒に擦りつける。