キモ姉&キモウト小説を書こう!part32

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1名無しさん@ピンキー
ここは、キモ姉&キモウトの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○キモ姉&キモウトの小説やネタやプロットは大歓迎です。
愛しいお兄ちゃん又は弟くんに欲情してしまったキモ姉又はキモウトによる
尋常ではない独占欲から・・ライバルの泥棒猫を抹殺するまでの

お兄ちゃん、どいてそいつ殺せない!! とハードなネタまで・・。

主にキモ姉&キモウトの常識外の行動を扱うSSスレです。

■関連サイト

キモ姉&キモウトの小説を書こう第二保管庫@ ウィキ
http://www7.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/1.html

キモ姉&キモウト小説まとめサイト
http://matomeya.web.fc2.com/

■前スレ
キモ姉&キモウト小説を書こう!part31
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1280491548/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。

SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー!荒らしに構う人も荒らしです!!
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・スレは作品を評価する場ではありません
2名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 09:15:21 ID:ymAgYhzd
>>1お疲れ様です
3名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 09:54:11 ID:T/nJk0Bm
>>1
4名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 12:49:21 ID:87uBRdNS
>>1
5『きっと、壊れてる』第6話:2010/09/18(土) 12:52:12 ID:T/nJk0Bm
こんにちは。
『きっと、壊れてる』第6話投下します。 注:キモウト以外とのエロあり
6『きっと、壊れてる』第6話(1/8):2010/09/18(土) 12:52:45 ID:T/nJk0Bm
北鎌倉駅で電車を降り、円覚寺を回って鶴岡八幡宮まで来た。
休日にも関わらず、人はまばらだった。これも大銀杏が倒れてしまったせいか。
神奈川県の天然記念物にも指定されていた樹齢800年〜1000年ともいわれる大銀杏は、
先日の台風による強風で倒壊してしまい、新芽を残し、その長い役目を終えていた。

浩介と美佐は、大銀杏が立っていた場所を見上げ、二人並んでいた。

「あんなに太くて大きい樹だったのに、こんな簡単に折れちゃうんだね。台風ってすごい」
ノースリーブにジーンズと、動きやすい格好の美佐が、隣に立つ浩介を見上げ心底不思議そうな顔をした。
「同感。でもケガ人が出なくて本当に良かったよな」
「ん〜本当に。あっ浩介、あっちに茶店みたいなのがある!少し休んで行こうよ!」
「あぁ」

浩介は昨日の深夜、美佐に遊びの誘いを受けるメールを返信していた。
当初は動物園に行く予定だったが、美佐が「やっぱり海の近くに行きたい」と提案し、行先は鎌倉になった。

二人は赤い鳥居を潜り、八幡の階段を下って土産屋や飲食店が並ぶ路へと歩いた。
通りには様々な店が並んでいて、眺めながら歩くだけでも楽しい気持ちにさせてくれる場所だった。

その中の一つである、『小島屋』と書かれた看板を掲げた茶店で二人は休むことにした。
店の外にあるテラスのような席に通され、恰幅の良い中年の女性が注文を取りに来た。
美佐は小島屋の名物であるらしいあんみつを、浩介は抹茶味のアイスクリームを注文した。

「ここのあんみつ、おいしいんだって〜!ホラ!みんな食べてる!あぁ〜楽しみ」
美佐は辺りを見渡すと、心底楽しみにしていそうな表情を見せた。
「なんだ、最初から狙って店に入ったのか」
「細かい事気にしなさんな。あぁ早く来ないかな〜・・あっ来た!!」

売れ筋の商品だからか、美佐の頼んだあんみつは3分も経たずに運ばれてきた。
待ってました、と言わんばかりに目を輝かせ、あんみつを携帯のカメラで撮っている美佐に、浩介は呆れながらも可愛らしいと感じた。

心地良い程度の風がテラスを吹き抜ける。
浩介は美佐があんみつに夢中になっている間、少しだけ目を閉じ風を体全体で感じた。
すぐ近くに由比ヶ浜海岸があるためか、潮の香りが風に乗って漂ってきたような気がした。

人間は海へ来ると落ち着くという話があるが、この風を1日中受けていると、本当にそう思った。
茜への執着心、依存心、実の妹に欲情する汚れた本能。
すべて洗い流してくれそうな気がした。

「ねぇ、浩介」
美佐が、白玉をヒョイッと口の中に含んだ。
いつの間にか浩介の前には抹茶のアイスが運ばれて来ており、美佐は既にあんみつを食べ始めていた。
「ん?」
「私さ、てっきり今日は断られると思ってたんだけど・・どうして? あっ、あんみつ少し食べる?」
「いや、いい。・・・そうだな、いつまでも逃げていたら、前に進めないからかな」
「逃げてたら前に進めない?」
「そう、進めない」
確認のつもりだったのか、そう聞くと美佐は優しく微笑んだ。
「なるほど、じゃあ今日で白黒ハッキリするわけですな?」
「・・・あぁ、ハッキリさせようか」
浩介がそう言うと、美佐は満足したように頷き、あんみつのあんこをスプーンですくい取り口の中に入れた。
「あっ!!じゃあ舞台は夕暮れの砂浜で!」
「ハハッなんだそれ」

浩介は、もう自分の出す答えが美佐にバレてしまっている事に気付いた。

7『きっと、壊れてる』第6話(2/8):2010/09/18(土) 12:53:16 ID:T/nJk0Bm
空が赤く霞む中、その赤霞の中を気持ち良さそうに飛んでいるトンビがなぜだか神々しく見えた。
右方に目を向けると、江の島が見える。山が夕日に照らされていて、無骨な美しがそこにはあった。
波がすぐそこで、一定のリズムで奏でるBGMが心地よかった。

チュッ・・チュッ・・・

「ぶはっ・・・変わらないね、浩介」
「何が?」
「キスする時、目を閉じないクセ」
美佐は浩介の頬を愛しそうに撫でた。
「変かな?」
「普通・・ではないよね。でも変わってないのが逆に嬉しい」
そう言うと、美佐はニコリと笑い、軽くキスをしてから浩介の腕の中に再び収まった。

「確認だけど・・・本当に良かったのか?」
「・・・うん、いいよ。今日からは私だけの物だけど」

顔を浩介の胸に埋めたまま、美佐は答えた。
表情は見えない。
本当は嫌悪感を抱えて、無理しているのかもしれない。
時間が経って、美佐が冷静に物事を判断できるようになれば、やはり美佐は浩介を捨てるのかもしれない。
それでも美佐が、例え一瞬でも自分の過去を受け入れてくれた事が、浩介は嬉しかった。

浩介は美佐に、茜との今までの関係をすべて打ち明けていた。

美佐と再び歩き始めるなら、すべてを話すのが筋、と浩介は結論を出した。
それに加え、浩介と茜の関係を第三者が知る事で、『事実』となる。
その『事実』と認める事が、自分を愛してくれた茜への贖罪に少しでもなれば、とも考えていた。
ただ、茜にもこの先、共に歩む人物が見つかるだろう。
浩介は、自分が美佐に話す事で茜の将来に傷がこれ以上つかないように、
自分勝手な願いである事は承知で、『誰にも言わないでくれ』と頼み込んでから、美佐に打ち明けたのだった。

いつ頃から関係を持ったのか、その時はどんな心境だったのか、美佐に質問されるがまま浩介は答えた。
そして、美佐と昔付き合っていた期間も茜と関係を持っていた事を正直に告白した。

流石に最初は驚いた表情を見せていた美佐だったが、次第にいつもの表情に戻っていった。
全てを話し終えた浩介を抱きしめ、頭を撫で、「よく話してくれたね」と美佐は言った。
全てを知った上で、浩介を抱きしめる美佐の体温を感じて、浩介は美佐を教会の銅像かなにかのように崇高に感じた。
浩介は、何も答える事はできなかったが、美佐が離すまで、そのまま身を委ねるように抱かれたままでいた。

自問自答を繰り返し、出口なんて最初から存在しない闇の中を、必死に脱出しようとしていた。

自分の弱さは知っている。
自分がどこか壊れている事も自覚している。
自分の判断の誤りで、茜と美佐の気持ちや人生を台無しにしてしまった事は、どう謝っても許される事ではないと思っている。

それでも、人の温もりを感じて生きたかった。

「あっ人に見られてる」
いつの間にか顔を上げていた美佐が、浩介の顔の横から遠くの方を覗いていた。
「そりゃ、こんな所で男女が抱き合っていれば、好奇心で見ちゃうだろ」
「恥ずかしい?」
「少し・・いや、かなり」
「ハハハッ、昔は人前でなんかイチャつかなかったもんね?じゃあそろそろいこっか?」

「どこに?」と聞こうとした浩介だったが、今の二人にはこのまま帰宅という選択肢はあり得ない、と思い無言で美佐の手を取った。

二人は絡む指と指の間から、この気持ちが溢れてしまわないように、しっかりとお互いの手を握った。
8『きっと、壊れてる』第6話(3/8):2010/09/18(土) 12:54:16 ID:T/nJk0Bm
横浜駅で電車を降り、繁華街へと来た。周りには夏休みの学生だろうか、若い人達で溢れかえっていた。
なぜだか、みんな顔が輝いて見える。
自分は学生時代あんなに良い顔ができていただろうか、と浩介は思った。
「なんか・・社会人になって一気に歳取った気がするね」
美佐も同じような事を感じていたのだろうか、浩介は笑いながら返答した。
「みんな若いよな。『おっさん』とか言われても反論できないかも」
「うんうん、わかる。 じゃあ若くない私達は大人のカップルが行く場所に向かおうか」
「・・・前から思ってたんだけど、よくそういう事をストレートに言えるよな。いや、悪いわけじゃないんだけど」
「『恥ずかしくないのか?』って?」
「あぁ」
「別に〜。女だって性欲あるし。自分がシたい時に我慢するなんて馬鹿みたいじゃない?
それでわざとらしくサイン出すとか合理的じゃないよ」

偏見だけど実に理系っぽい考え方だな、と浩介は思った。

「もちろん、彼氏もしくはそれに準ずる者にしか言えないけどね」
「そこら辺の人に言ってたら、痴女の部類だぞ、それ」
「ハハハッ確かに。で?だめ?」
答えはわかっているクセに、と浩介は言いたくなったが、美佐は美佐なりに気を使っているのだろうと思った。
「いや、いいよ。俺もそのつもりだったし。行こうか」
「へへへっやった〜。あっ3時間の所ね!散々焦らしたんだからいっぱいヤらせろよ〜」

今まで以上に密着した二人は、ホテル街へと消えた。

エレーベーターを降りて、フロントで手渡されたキーに書いてある部屋の前まで着いた。
靴を脱ぎ、部屋に入る。あまり特徴のない普通の一室だ。
浩介と美佐は適当に荷物を置くと、ベッドの横に置いてある茶色のソファーに座った。
ソファーの前にある小さなテーブルの上には、ガラスの灰皿とホテルの名前が入ったライターが備え付けられていた。
浩介は、そのライターを手に取り、タバコに火を付けた。白い煙が部屋の上へと昇る。
浩介はなぜだか緊張していた。
「あ・・とりあえずテレビでも見るか?」
その緊張を紛らわそうとテレビをつけようとしたが、リモコンを持った手を美佐の手が包み込んだ。
「緊張しているの?」
「・・してる・・・美佐はしてないのか?」
「めちゃくちゃしてるよ。なんでだろうね」
浩介と美佐は、初めて付き合った時のような自分達に呆れ、そして目を合わせ笑い合った。

そしていつの間にか、抱き合いキスをしていた。
部屋に入ったばかりだというのに二人は既に夢中だった。
ソファーの上で、体をねじり、夢中でお互いの唇を貪った。
「・・ん〜・・チュッ、こうすけぇ・・舌をべっと出して」
「ん?・・べっ」
言われたまま舌を出すと、美佐がその舌を食すかのように吸いつく。
「はむっ・・ジュル・・ジュル・・ん、おいしぃ」
美佐は挑発的なセリフを吐き、浩介に馬乗りになるような形で、圧し掛かった。
ソファーに仰向けになった浩介の上に、美佐が上から被さる様な形で、二人は絡み合う。
「おい、俺落ちそうなんだけど」
「我慢して・・・ぴちゃ・・・」
「・・・う・・く・・ベッドに・・・行こう」
「だーめ、時間が勿体ない・・はむっ・・ん・・ちゅ・・」
3秒とかからない移動距離を勿体ない、と言いきった美佐はさらに激しく浩介の唇を吸った。
張り裂けそうなほど膨らんだ浩介の股間を、左手で擦りながら美佐は妖しい笑みをこぼす。
「苦しいの?」
「い・・色んな意味で」
美佐が落ちないように両手しっかりと支えていなければならず、浩介は身動きが取れない状態だった。
「しょうがいなぁ浩介は。じゃあベッド行こう?連れてって」
「はいはい。姫、掴まって」
美佐が浩介の首に両手を巻きつけ、浩介が美佐の身体を抱えながら持ち上げる。
軽口を叩いている二人だったが、欲情は既に臨界点を超えていた。
先程、ベッドに行くまでの時間が勿体ない、と言った美佐の気持ちが、浩介には理解できた。
9『きっと、壊れてる』第6話(4/8):2010/09/18(土) 12:54:58 ID:T/nJk0Bm
ベッドの上に美佐を降ろし、服を脱がす。
ノースリーブを捲ると、小さすぎず、大きすぎない美佐の胸の谷間が見えた。
ピンクの下地に、黒いアクセントが入った下着に包まれた美佐の乳房に、浩介は自分でも驚くほどの欲情に駆られた。
4年前、数えきれないほど触れた美佐の身体、あの頃と決定的に違うのは、浩介の心情だった。
下着を焦るように剥ぎ取り、その綺麗な形をした美佐の乳房に食らいつく。
その乳房は柔らかくも張りがあり、先端に付いたピンク色をした乳首は、その周りを舐めてほしいかのように直立していた。
「・・んっ・・・こう・・すけ・・シャワー・・浴びないの?」
乳首を舌で溶かすように舐める。
「なんで・・こんなに気持ち良いんだろ・・」
目を瞑った美佐が呟いたが、浩介はそれを無視して今度は口を蹂躙した。
「あむ・・・ずちゅ・・びちゃ・」
浩介は美佐の口を貪るのに、わざと大きく音をたてた。
「じゅる・・はぁ・・はぁ・・じゅる・・浩介・・シャワーは・・後でいい・・よね?・・・びちゃ」
二人はアイコンタクトで意思疎通を行うと、より激しく、官能的にお互いの耳や口を犯した。

右手を美佐のジーンズへ伸ばし、ボタンを一つずつ丁寧に外す。

ブラジャーとお揃いの装飾が浩介の目に入ってくる。
美佐に腰を浮かせてもらい、ジーンズを脱がした。
右手で、肉付きが良い白い太ももの内側を指先で撫でると、美佐は『ヒャウ!』という声を出した。
何年経っても弱い部分は変わらないものだな、と浩介は思った。
焦らすように、美佐の陰部の周りを愛撫し続ける。
まだ陰部には触れない。
浩介は美佐が『触ってほしい』と言ってくるまで、触れないつもりだった。
美佐は焦らされると盛り上がっていくタイプで、浩介も必死になって自分に懇願してくる美佐に対し、ある種の征服感を覚えていた。

「・・ヒウッ・・・イジワルされてる・・・・そろそろ・・コウスケェ・・・」

縋る様な顔で浩介を見つめ強請る美佐を確認し、浩介は自分の人差し指を舐めよく滑るように濡らす。
そして、美佐の秘部にそれをそっと押し当てた。

そこは、貯水池になったようにおびただしい程、湿っていた。
押し当てた指を少し動かしただけで、ピチャと卑猥な擬音を立てて美佐の身体がピクッと反応する。
香りがする。美佐の愛液から発せられる媚薬のような香り。
シャワーを浴びていないためか、少しだけ酸味がかったその香りは、不快感はせず、むしろ浩介の欲情を一層に駆り立てた。

左手で優しく美佐の頭を撫でながら、右手は痛くならない程度に激しく、美佐のクリトリスを刺激し続けた。
「アンッ・・フゥ・・フゥ・・」
両腕を浩介の首に回し、美佐は目をトロンとさせ、吐息と媚声を浩介の耳へと届けた。
反応で相手へ自分の快楽点を伝えるという行為をよく理解している二人は、
その行為を美佐が背中を仰け反らせるまで続けた。

1度イった美佐は吐息が荒く、その興奮を耳から伝染されたかのように浩介の男性器はいきり立っていた。
「・・すごい・・久しぶりに見たけど・・こんなに・・だったっけ?」
「自分ではよくわからないよ」
そう言いながら、浩介は美佐の身体を自分の方に引き寄せた。
後は、浩介が腰を深く落とし、美佐の中に入っていくだけだ。
「・・・コウスケェ」
「ん?」
「チューして」
「あぁ」
浩介は、甘えた声を出す美佐の唇に躊躇なく唇を押し付けた。
「ぷはぁ・・・あと・・注文付けていい?」
「まだ何かあるのか?」
「耳貸して」
「うん?」
美佐はいたずらな笑みを浮かべ浩介の耳元で囁いた。
「・・・4年振りに・・繋がるんだね・・今日は・・めちゃくちゃにして?」

美佐の一言を聞いた浩介は、有無を言わさずその剛直を美佐に突き刺した。
10『きっと、壊れてる』第6話(5/8):2010/09/18(土) 12:55:29 ID:T/nJk0Bm
・・・
・・


「ねぇ、こうちゅけ〜」
美佐はそう言いながら浩介の腕を取ると、自分の頭の下に敷き、ピタッと体を密着させた。
懐かしい体勢。
浩介の左腕を枕にし、美佐が横向きに抱きしめ、足を絡める。
時間は経っても二人の習慣は変わっていなかった。
「なんだよ、その呼び方」
「甘えてるだけだから気にしないで?いくつになっても女は少女よ?」
「ハハッなんだそれ。『男はいつまで経っても少年』なら聞いた事あるけど」

「腰、大丈夫?」
「・・・多分」
「あはは、いっぱい頑張ったもんね?いい子いい子」
美佐はそう言うと手を伸ばし、浩介の頭を撫でた。
「・・・ねぇ・・・私、どうだった?」
「何が?」
「4年前と比べて。・・・いい女になった?」
「美佐は昔からいい女だけど・・・予想以上にいい女だった。俺には勿体ない」
「やーだー!!何口説いてるの〜!事が終わった後で!」
美佐は浩介の胸を掌でバシバシと叩いた。
「い、いたっ、痛いからやめろって!」
浩介は自分の胸を叩く手を掴むと、美佐を睨んだ。
「へへへっ、ごめんね?ちょっと興奮しちゃって」
「・・・でもさっき言った事は本心だ」

本当に浩介はそう思っていた。
世間一般的に、実の妹と関係を持っていた男など、相手にされなくて当然だと思っていた。
それを受け入れてくれた美佐には、文句の付けようがなかった。

「『浩介には勿体ない』?」
「あぁ」
浩介がそう言うと、美佐は浩介のおでこに人差し指を押し当てた。
美佐が浩介に説教する時のクセだった。
「くだらないなぁ」
「は?」
「くだらないよ浩介」
「何がだよ?」

「あのね、自分の価値なんて自分で決める事じゃないの。私が選んだんだからそれでいいじゃん」
「それはそうだけど」

「今浩介が言っているのは『私はこんなに努力しました!けど誰も認めてくれましぇ〜ん!』ってのと同じだよ?」
「『努力したかどうか、認めるか否かは相手が決める事』だろ?」
浩介には美佐が言いたい事など最初からわかっていた。
それでも、『自分には勿体ない』と思ったのだから仕方ないだろう、と呟いた。

「うむ、わかっていればよろしい。あぁ久しぶりの幸せぇ・・」
そう言うと、美佐は再び浩介の胸に手を置き、しがみ付く様に浩介の体を抱いた。

浩介は肘から先の左腕で、美佐の頭を撫でた。

「時間ギリギリまでどうぞ、お姫様」

そして、心の中で美佐に感謝をした。
11『きっと、壊れてる』第6話(6/8):2010/09/18(土) 12:56:01 ID:T/nJk0Bm
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人は誰ひとりとて、自ら進みて悪事を行う者なし

かの有名なソクラテスの言葉だ。
悪事とは人が人であるための手段だと私は思っている。

理由がなければ、行動に移す発想がないし。

発想がなければ欲はないという事になる。

欲がなければ、生きている意味があまりない。

私はただ、大事な人と一緒に暮らしたかった。
それだけで良かった。

多くは望まなかった。
私は望める立場にはいないから。

何でもない日常で。
何でもない会話をして。

たまにはケンカもするし。
私だって嫉妬する。

それが私の幸せだった。

けれど、壊された。
いとも簡単に壊された。

私はただのオブジェにしか過ぎなかった。
自分の存在に懐疑心を持つ事など初めてだった。

その懐疑心はとても厳しい先生で。
私に休む事を許さない。

世の中に不必要な物なんてない。
私の大切な人の言葉だ。

真意はよくわからないけど。
あの人が言うなら、きっとそうなんだろう。

その言葉はまるでシャボン玉のように私の心の中をフワフワ彷徨っている。

公園で遊んでいる子供達がいた。

一生懸命シャボン玉を風に乗せて。

空に浮いているシャボン玉はとても綺麗だったけど。

私の中にあるシャボン玉は。

何かにぶつかって。

今にも弾けそうだった。

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12『きっと、壊れてる』第6話(7/8):2010/09/18(土) 12:56:50 ID:T/nJk0Bm
時刻は夜の11時前になっていた。
美佐に「今日は泊まっていきたい」と強請られたが、明日の午後、浩介に資格試験の予定が入ったため、帰宅する事にした。
ホテルを出た浩介と美佐は、駅まで腕を組み寄り添って歩いた。
今までは茜だけに許していた腕。
その腕はもう茜の物ではなく、美佐の物なのだと浩介自身が決めていた。

自宅のドアの前まで着くと、浩介はカバンにしまってある家の鍵を取り出そうとした。
しかし、少しの違和感があった。
ドアの内側から微かに話し声がしたような気がしたからだ。

こんな時間に誰だろうか、茜にはこんなに遅くまで夢中になってお喋りするような、親しい友人はいないはずだ、と浩介は思った。
何かの緊急事態なのではないかと考え、すぐに鍵を開け、玄関のドアを開いた。

「あら、帰ってきたみたい」
パタパタとスリッパの足音がして、廊下からリビングへと続くドアが開かれた。
「お帰りなさい」
出迎えてくれた茜の表情に異常はない。むしろの声のトーンからして機嫌が良さそうだ。
自分の足元を見る。女性物のサンダルが綺麗に並べられて置いてあった。茜の靴ではない。
「ただいま、お客さんか?」
「えぇ、きっと驚くわ」
「?」
浩介は一体誰が来たんだ、と不思議に思い、茜に質問しようとして思いとどまった。
茜の表情が何かに感付いた物になっていたからだ。
おそらく先程ホテルで風呂に入ってきたのがバレたのだろう。
しかし、二人はもうその事を弁解する事も、問い詰める事もできなかった。必要もなかった。
浩介は気付かないフリをして、廊下側のリビングのドアを開けた。

椅子にこちらに背を向けて一人の女性が座っていた。
テーブルの上には、クッキーなどの洋菓子とお茶が2人分置かれている。
どうやら、茜と二人で話しこんでいたようだ。

その女性は、白いブラウスに長めの黒のスカートを履いている。後ろ姿だけでも雰囲気から美人であることがわかった。
『・・・茜?』
浩介は一瞬そう感じた。
髪型や服装、そして何より身に纏う雰囲気が茜と酷似していたのだ。
しかし、茜は浩介の後ろに付従うように立ち、浩介がリビングへ入るのを待っている。

戸惑っている浩介の気配を感じたのか、その女性はこちらを振り返り、浩介の姿を見ると、立ちあがった。
そして小走りに近寄り、浩介の胸へと勢い良く飛び込んだ。
一瞬、見えた顔、やはり茜だった。
そして浩介の脳裏にはもう答えが出かかっていた。
茜と容姿や雰囲気が似る可能性がある、そして浩介の知っている人物と言えば、この世で一人しかいなかった。
浩介は自分の腕の中にいる女性の肩を押し返し、その女性の輪郭、瞳、鼻、口元、余す事無くまっすぐに見た。

「・・・楓?」
もうこの名前を呼ばなくなってからどれくらいだろうか。

「久しぶりだね、お兄ちゃん」

楓と呼ばれた女性は、花のようにニコリと笑い、浩介を兄と呼んだ。
浩介は、その表情だけは、例え何年会っていなくとも、忘れる事はなかった。

浩介と茜が実家を出てから、一度も会っていない。
会わす顔がない。

村上家の次女、村上楓だった。

・・・
・・
13『きっと、壊れてる』第6話(8/8):2010/09/18(土) 12:57:48 ID:T/nJk0Bm
浩介と茜と楓。
数年ぶりに揃った村上家の兄妹がテーブルを囲み、談笑していた。

浩介は、楓と再び会えた事が本当に嬉しかった。ヘタをすれば一生会えない可能性もあると考えていたからだ。
しかし、驚きを隠せない事もあった。
楓の容貌が茜と瓜二つだった。

いや、おそらく昔から似てはいたのだが、気付かなかったのだ。

茜と楓は6歳離れている事もあり、よく見れば楓の方がまだ幼い顔をしているが、
髪型や服装を一緒にされると、二人の兄である浩介でさえ、遠目から見ただけでは判別できる自信がなかった。

「しかし、大きくなったな楓。髪も伸ばしたのか?茜によく似てきたな」
「・・・うん!似合う?あっ『似合わない』って言ったら怒るから」
「ハハハッ、あぁよく似合っている、でも性格はあまり変わっていなさそうだ」
楓は茜とは真逆の性格だった。
よく喋り、よく怒り、よく泣き、よく笑う。感情を包み隠さず表現できるところが、茜とは違った。
小学生の頃など、女の子と言うよりもヤンチャな男の子のようだった楓は、浩介や茜、両親にいたずらをして、よく叱られていた。
だが、おとなしい性格の人間が多い村上家では、楓はある種、太陽のような存在だった。
当時の浩介もゲームや漫画の話ができる楓と会話する事に、茜との会話とはまた違った楽しさを感じていた。

「そういえば、お兄ちゃん」
「何?」
「楓が何でいきなり訪ねてきたのか聞かないの?」
楓は心底不思議がっている表情を浩介に向けた。
「??あぁ・・つい嬉しくてそんな事気にしてなかったな。泊まっていくんだろ?明日でいいよ」
「そう?なら明日話すね。そんな事より・・お兄ちゃんすごい笑顔」
「そりゃ、妹と再会したんだ。嬉しいに決まってるさ」
「フフッ兄さんと楓は仲良かったものねぇ」
茜が微笑みながら、二人を見つめた。
「そうかなぁ?なんだかんだいって、お兄ちゃんはおねーちゃんに構ってばっかだった気がする」
「そうか?まぁ、とりあえず今日は遅いから、話は明日にしよう」
壁に掛けてある時計を見ると、既に時計の針は夜中の1時を回っていた。
「うん、あっ楓どこで寝ればいい?」
「私のベッド使っていいわよ。隣に布団敷くから」
「ベッド使っちゃっていいの?」
「えぇ、私は布団でも寝れるから大丈夫」
「やったー!おねーちゃん好き〜!」
「フフッ、懐かしいわねそのセリフも」
「はははっ」

自分の部屋に戻る途中、浩介は心の中が暖かくなっていくのを感じていた。
自分がずっと望んでいたのは、きっと先程の風景なのだと。

茜も自然な笑顔で楓と会話を楽しんでいた。
家族とは、こんなにも幸せな気持ちになれるものなのだ。
俺と茜との関係も順調に健全な兄妹に回復していると思う。
自分の根底にある茜への異性としての愛を封じ込めれば、
ここまでうまくいく物なのだと、言葉に言い表せない程の感激を浩介は胸に秘めた。

浩介は自分の部屋に戻り、カーテンを少しだけずらして、空を見上げた。
東京の空は排気ガスで汚れてしまっていて、数える程の星しか見えない。

目を閉じる。

この先もずっと、この幸せが続きますように。

浩介は自分の瞳に映る満点の星空へと祈った。

第7話へ続く
14『きっと、壊れてる』第6話:2010/09/18(土) 12:59:23 ID:T/nJk0Bm
以上です。
前スレで感想をくれた方々、ありがとうございました。モチベーション上がるわぁ
15名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 17:03:49 ID:qQThS1c+
やべーっすね。マジでおもしろいっすよ!
しかも楓という新キャラも出てきてこれからどんな展開になるのやら

GJ!!
16名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 17:08:00 ID:qQThS1c+
GJ!

本当におもしれーな。オレらの感想なんかでモチベーョンあがるならこれからもマジで応援するわ
17名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 17:19:38 ID:qQThS1c+
>>16
すまない。携帯からの操作なのでミスって二回載せてしまった。ただ「きっと、壊れてる」を応援する気持ちは本気です

本当に申し訳ない
18名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 18:59:42 ID:WWVwTw8n
ぐっじょ
この妹もキモウトなのか・・・?
19名無しさん@ピンキー:2010/09/18(土) 22:52:12 ID:+OiVX14X
GJ!

ますます展開が読めなくなってきた。
20名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 03:21:24 ID:JO2J9nO4
グッジョブっす
21名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 10:19:08 ID:1NdMxnF0
兄(or弟)に近づく女性を暴行するシーンがあるSSを探しているのですが、
「崩の綾」以外にありますか?
あったら教えてください。
22名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 19:40:55 ID:eIHOREmc
保管庫に行けばいくらでも在ると思うけど……
比較的古い作品の方がそう言うシーンは多いかな?
23名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 19:48:00 ID:WOF3jFft
現実世界でただの痴情のもつれで人殺すことはあっても
姉or妹が嫉妬のあまり兄or弟本人かその恋人を殺すっていう事件を聞いたことがない

実際にそういう事件は今までにあったのかな
24名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 21:22:29 ID:4e1kmEfL
無いんだろうなー...
25名無しさん@ピンキー:2010/09/19(日) 23:28:22 ID:2WjC5jVw
色んな意味でレアパターンだからなあ

まず恋人より姉妹の方が優位だから嫉妬しないし嫉妬しても殺さず遠ざけることができる
殺しても残される兄弟を想えば正直に供述しないし多分大々的には報道されない
26名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 00:06:25 ID:q0vFzqwk
テス
27名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 01:04:18 ID:6+swOSFH
テスタロッサ
28名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 01:24:29 ID:Xl+8DQYR
が、キモウトだったら、
29名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 01:51:36 ID:afzfQ7nM
レナード涙目
30名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 06:49:20 ID:v5UdIU+w
>>27-29
ああ、フルメタのドジっ娘艦長のほうか……
でもその場合に一番涙目なのは、女と逃げた兄を追うために、ノーギャラで付き合わされる、デ・ダナンの面々だと思う。

……今ふと、『共振』を連発して、兄との精神融合を誘発しようとする妹の図が思い浮かんだ。
(フルメタ知らない人には解らないネタでゴメンなさい)
31名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 07:16:18 ID:ZmfFPf4p
それやられたら、兄は逃げるよな。地の果てまでも。それか妹を殺すしか選択肢がない。
32名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 11:20:55 ID:YkwFYjii
wiki更新乙
33名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 12:22:12 ID:sB65I6I3
投下しようとしたら、消しちゃいましたよ、っと
34名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 20:52:17 ID:sB65I6I3
整理中に練習用に書いてた超短編があったのだが、貼ればいい?
35名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 21:29:05 ID:6+swOSFH
ここ2、3日、投下もないし貼ったら良いと思うよ
36名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 22:05:08 ID:sB65I6I3
話が終わってすらなかったので無理やり終わらせましたw
では、駄文投下失礼します
37名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 22:07:19 ID:sB65I6I3
 今年の夏は今までで一番暑いらしい。携帯で天気予報を見てみるとなんと驚きの34℃。
「うげー見なけりゃよかった……」
34℃の中3km程の急な坂道を二人乗りって俺もしかして死ぬんじゃないのか。
「ねえ、兄さん?」
背後から何か声が聞こえた気もするが、そんなのは無視だ。
「兄さん、無視するというのなら自転車の後輪に傘を突き刺し……」
妹が言い終わるより早く俺は返事をしていた。
「何だよ?」すると、妹は沙羅はおかしなことを言い出した。
「やっぱりやめませんか?」何言ってんだこいつ。
「何でだよ、お前が最初におばあちゃんの家に行きたいとか言い出したんだろ?」
すると、沙羅はすごく常識的なことを言い出した。
「こんなに暑いのに、自転車でそれも二人乗りで40kmも離れた家に向かうなんて無謀じゃないですか?」
やばい、自分が抑えられなくなってきた。
「それにあんまりこういうこと言いたくないんですが……兄さんって体力ないですよね(笑)」
俺のリミッターがものすごい音を立てて吹っ飛んだ。
「この野郎、俺は何度も行くことは不可能だって言ったじゃねーか、それを言うに事欠いて、俺の体力がないだと?こんな日に二人乗りで40km(そのうちの約半分は坂)なんて、全盛期のQちゃんでも無理だ!!」
沙羅よ確かにお前がかわいくて勉強もできて料理もうまいのは俺も認める。だが何で俺にだけこんな無茶をさせる?おっと、ヤバイな足がふらついてきた。ドシャ、薄れ行く意識の中、飲み物をまったく飲んでいなかった自分のアホさ加減を呪った。

---------------------------------------------------------------------------


 「......ぇぐ、兄さん、兄さん」
泣いているのか......沙羅?そう言おうとしたが思うように声がでない。
「ぐすっ、兄さん、早く起きてくれないと今日の夕飯は抜きですからね」
くそ、これ以上、沙羅を泣かせられるか。
「そいつは……困るなぁ」
頼むから泣き止んでくれよ、俺はお前の泣き顔なんて見たくないんだ。
「う....ひっ、ぐ兄....さん?兄さん兄さん兄さん」
ぐっふ、重いぞ妹よ。
「ぐすっ……ふぇぇ兄さんよかった、もう起きないかと思ったんだから」
「心配かけたな沙羅、とりあえず重いからどいてくれ」
沙羅が運んでくれたのかいつのまにか俺はなかなか涼しい木陰にいた。
「兄さんが倒れてからは水を飲ませるのも大変だったんですからね(本当は口移しで飲ませることができたから少しうれしかったけど)」
「それはすまなかったな......水?オマエハミズヲモッテイタノカ?」
「ええ、ホラ」
そういって見せてくれたバックには1ℓタイプのペットボトルが三本入っていた。
「オマエハオレガミズヲモッテイナイトトシッテテクレナカッタノカ?」
落ち着け俺、またもやリミッターが吹っ飛びそうになった。
「だって、兄さんが苦しんでる表情が私は好きですもの」
ブチッ..........もう疲れたからいいや
「帰ろうか?」
「はい、そうですね」


---------------------------------------------------------------------------
 これが俺の日常である。周りからよく言われることは「よく死んでないね」、である。

駄文失礼しましたwww
38名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 23:12:01 ID:6+swOSFH
サデ妹?
39名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 23:16:01 ID:6+swOSFH
ゴメン、間違った

サド妹かな?

発想は良いと思うけど、もうちょっとキモ成文が欲しかったかな……

良かったよー
40名無しさん@ピンキー:2010/09/20(月) 23:57:58 ID:sB65I6I3
本当は続かせる予定だったけど、挫折してお蔵入りにしてしまったのですよ
41名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 02:57:07 ID:6AjvWg4a
保管庫の頻繁な更新お疲れ様です


転生恋生マダー
42名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 15:25:24 ID:tNOyq8x9
>管理人からの御知らせ
>現在、ここの要望板にてイラスト投稿用の画像掲示板を置いて欲しいとの要望が出ています。
>ご意見ご要望のある方は書き込みをお願いします。

掲示板見たら管理人のやりたくねー感が漂っててワロタ
実際忙しい見たいだしな
43名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 15:33:42 ID:FJUwf5Ye
作者がイラストを描くならいいんじゃね?
外野が描くと、有り難迷惑って言葉知らないんだな、って感じ
44名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 15:42:44 ID:DsW3SFzO
ぶっちゃけいらねーと思う
45名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 17:28:02 ID:LLxcijJ/
外野が描いて作者様のイメージ崩れて
駄作になるのはいやだしね。
46名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 18:43:52 ID:uLlPbqA8
ヤンデレスレで見たな
このキャラは私の中ではこういう事になっています、的な事を
47名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 18:53:37 ID:fJlV07Sh
感想スレにでも適当なろだに上げたの貼ってくれればいいと思うよ
あと、保管庫の人もわざわざやってくれてるんだし「やりたくねー感」とか言っちゃだめだと思う
48名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 18:58:36 ID:FJUwf5Ye
いや、だから外野が描くのは荒れる元だと…
49名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 20:31:36 ID:1oAYxuGJ
ヤンデレスレとかでも作者以外の絵が有るけど
現時点では特段問題無いようだけど・・・
50名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 20:34:56 ID:DtjH5kNO
まあ描くのは自由なんだが…ここに持ってきても歓迎はされないよな

個人で管理する分にはこのスレに告知とかしに来なければ
感想スレにひっそりと貼ってくぐらいはいいんじゃないかなあと思わないでもない
51名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 21:13:47 ID:hZNuJyDr
作者さんが描写内で容姿とかに書いていたら描くのもありだとは思うけど
あってもなくとも困らないよね
52名無しさん@ピンキー:2010/09/21(火) 21:22:24 ID:3F/2PBN3
書く側の者ですが、>>50さんも仰っている通りここに貼ったり、告知したりは勘弁
私も読み手もそれぞれイメージがあると思うので
感想スレなら問題ありません
53転生恋生 ◆.mKflUwGZk :2010/09/21(火) 23:52:38 ID:A4VAs7Q2
だいぶ間隔が空いてしまいましたが、投下します。5レス消費します。
54転生恋生 第二十二幕(1/5) ◆.mKflUwGZk :2010/09/21(火) 23:54:23 ID:A4VAs7Q2
「んっ……あぁっっ!!」
 姉貴が悶えている。そして俺の目の前には、縮れ毛がしとどに濡れながら、肌色の上で三角形のように固まっている光景がある。
 俺の口の中に広がっていくのは酸っぱくも苦い、ねばついた液体だ。
「たろーちゃんっっ……!!」
 俺たち二人は裸になって、豆電球ひとつの明かりの下で絡み合っていた。
 姉貴は俗に言うM字開脚で、俺は姉貴の股間に顔を埋めて舐め回している。
 専門用語でクンニリングスというやつだ。
 場所は姉貴の部屋で、今は夜の10時。おふくろは病み上がりということもあって、最近はこの時間に就寝している。
「気持ちいい……よぅ……んっ!」
 俺は約束どおり、姉貴に性的奉仕をさせられた。せめて自分の部屋は汚したくないと思って、姉貴の部屋でやることにした。
 陰毛が舌にまとわりつくのは不快極まりない。時々指で払いのけながら、俺は姉貴の秘唇を割って、赤いクレバスに舌を這わせる。
 突起の部分は皮がめくれて、毒々しいほど赤く腫れ上がって隆起していた。そこを重点的に舐めると、姉貴はよがりまくった。
「んぁぁっっ!」
 予想外に低い呻き声をあげて、姉貴は背をのけぞらせた。イッたのだとわかった。
 ……既に3回目だ。いい加減、顎が疲れた。
「はぁはぁ……」
 姉貴もさすがに呼吸が乱れて、容易に戻らない。もう、これくらいで勘弁してくれるかな。
「もう、今日はいいだろ?」
 俺はシーツがぐちょぐちょになってしまったベッドから降りて、トランクスを穿こうとした。
 その手を姉貴がつかむ。
「だめよ……。たろーちゃんはまだイッてないじゃない」
「俺はいいよ。姉貴が満足すればいいだろ」
「そんな風にして、どうするつもり? そのままじゃ眠れないでしょう?」
 姉貴の唇が淫らな笑みを形作る。視線の先には、勃起している俺のペニスがある。
 くそぅ……どうして、俺は興奮しちまっているんだ。
 嫌々しているはずなのに! 実の姉相手に、どうして!
55転生恋生 第二十二幕(2/5) ◆.mKflUwGZk :2010/09/21(火) 23:55:31 ID:A4VAs7Q2
「今度は、私がたろーちゃんを気持ちよくしてあげる」
 俺は姉貴に促されるまま、ベッドの縁に腰掛ける。姉貴が俺の前に跪くように陣取った。
「もう、汗でぬるぬるになっちゃった」
 俺の肉棒が姉貴の乳房でサンドイッチされた。そのまま姉貴は手で乳房を上下運動させる。
 言葉どおり、汗で濡れている姉貴の乳房は俺自身を挟み込んだまま、スムーズにしごきあげる。
「……っく!」
 思わず声が漏れてしまった。
「気持ちいいのね。うれしい」
 姉貴は張り切って動きを加速する。俺は懸命に声を押し殺した。
 姉貴に感じさせられるなんて! 認めたくない! 俺は姉貴なんかに……!
 ……気持ちいい! たまらない! 柔らかい摩擦運動で、俺のモノがとろけてしまいそうだ。
 どうして……姉貴に感じさせられているんだ、俺は。
 ついこの間まで、全く反応しないでいたのに。
「そろそろね。飲んであげる」
 先端部に新しい感覚が加わった。熱くて湿った小さい空間に、俺の先端部が誘い込まれた。
 もう何度か経験している、姉貴のフェラチオだ。舌のざらざらした部分が、俺の一番敏感な部分をこすり上げる。
 腰の奥から、熱いものが突き上げてきた。
「くぁぁっっ……!!」
 暗い部屋のはずなのに、目の前がホワイトアウトして、俺は姉貴の口の中に激しく射精した。
 膣に挿入されただけでは必ずしも気持ちいいとは限らない女と違って、男が射精すれば一定の快感は約束されている。
 本来なら女よりも恵まれた特権と思えるのが、今はたまらなく苦痛だった。
 なにせ、どんなに強がっても、姉貴が俺をイかせたという事実は隠しようがないからだ。
 現に、姉貴は喉を鳴らして俺の精液を飲み込みながら、満足げな笑みを浮かべている。
「激しかったね。たろーちゃん」
 俺は自分が情けなくて、泣きたくなった。姉貴に弄ばれている自分が、男として、いや人として最低のクズとしか思えない。
 そんな俺の気も知らず、姉貴はティッシュで後始末をした。硬くなくなった俺のモノを押し揉んで、残り汁を出して拭き取る。
 いつもは自分でしているのを人にしてもらうだけで恥ずかしく、そして快く感じる自分に嫌悪感を覚えた。
「もう……休ませてくれ」
「うふふ。お疲れ様」
 そそくさと服を着て部屋を出る俺の背中に、姉貴は絶望的な一言を投げかけた。
「明日もね」
 
56転生恋生 第二十二幕(3/5) ◆.mKflUwGZk :2010/09/21(火) 23:56:24 ID:A4VAs7Q2
「桃川君、最近顔色がすぐれないわね」
 金曜日の朝、猿島が無表情に気遣ってくれた。
「ちょっと疲れているんだ」
 俺は自嘲気味に答えた。この一週間、毎晩俺は姉貴の慰み者にされている。
 毎日のように自家発電している男子高校生だったら、毎日射精しているという点では俺と変わらないのかもしれない。
 だけど、姉貴の相手をするというのは、想像以上に体力を消耗させられた。なにせ、姉貴の性欲ときたら半端ない上に、体力が有り余っている。
 何かスポーツでもやらせるよう仕向けるか。もっとも、俺も無理やりつき合わされるのは目に見えているが。
 そして、精神的疲労も笑えない域に達している。
 男としてのプライドを蹂躙される形で禁忌を犯しているという事実の重みが、日に日に俺の心にのしかかる。
 それより何より許せないのは、俺自身が姉貴に性感を開発されているということだった。
 勃起していても姉貴に咥えられただけで萎えたのは昔の話。今の俺は、姉貴に愛撫されただけで勃起してしまう。
 こんなこと、絶対に誰にも知られるわけにいかない。知られたら、俺は二度と家の外に出られない。
 つまりは、誰にも相談できないということを意味する。
 誰にも助けを求められない状況が、これほど苦しいとは思わなかった。
 唯一の救いは、まだ本番だけはやっていないということだ。


「センパーイ! ごはん食べよう!」
 俺に残されたもう一つの希望は、昼休みに会いにきてくれる司だった。
 ふたりでそそくさと校舎裏の指定席へ行き、弁当を食べ、残った時間は人目を警戒しながら、司と抱き合う。
 胸の大きさとかウェストのくびれとか、スタイルなんてものは愛情の前には些細なことだ。俺はつくづく実感していた。
 司は幼児体型で、胸はないに等しいし、寸胴といっていい。女らしい体つきという点で、姉貴には遠く及ばない。
 唯一対抗できるのは引き締まった太ももだろうが、それでも俺は司の体を抱き締め、撫で回すことで慰められた。
 もちろん、キスも数え切れないくらいに重ねている。司の小さい唇を割って、舌を絡み合わせるのが、たまらなく気持ちよかった。
「ねえ、ご主人様」
 司が俺の腕の中で甘えた声を出す。
「今度の日曜日だけど……大丈夫だよね」
「ああ」
 忘れようもない。その日は俺と司の記念すべき日になる。そのためにぎりぎりのところで、俺は童貞を守っている。
 といっても、司にだって姉貴とのことは話していない。話せるはずもない。
57転生恋生 第二十二幕(4/5) ◆.mKflUwGZk :2010/09/21(火) 23:57:22 ID:A4VAs7Q2
「体調には気をつけてね」
「それはむしろ、司の方だろ? ほら、その女の子には……アレがあるし」
「大丈夫! この間来たばかりだから!」
 ……こういう即物的なところは直してほしいな。ドン引きする。
「ああ、そうだ。ゴムを買わないといけないな」
 お互い高校生だし、間違いがあってはいけない。避妊具の用意は男のたしなみだ。
 でも、どこで売っているんだろう? コンビニにあるのかな? 女性店員だと買いづらいな。
「別にいらないよ」
 おいおい、それは無謀だろう。安全日だから、とか言う気か?
「違うよ。ピルを持っているの」
 ピル? 
「飲むと妊娠しなくなる薬」
 そんな便利なものがあるのか。
「女の子には常識だよ」
 常識で司に負けたのか。なんか悔しいな。
「だから、安心して生でヤろうね。やっぱり初めては、余計なものをつけずに、直にご主人様がほしいから」
 反射的に、司を抱き締めてしまった。なんていじらしいことを言うんだ。
 ……でも、副作用とかないだろうな。一生子供が埋めなくなるとかいうのは困る。
「大丈夫だって。外国では日用品らしいから。性病とかは防げないけど、ボクはバージンだし、ご主人様もチェリーだから問題ないでしょ」
 だから、そういう即物的な物言いはやめてくれ。
「えへへ……。素敵な思い出にしようね」
 そういや、値段は高くないのか? 俺も半額出すべきじゃないだろうか。
「男がそんなつまらないこと気にしちゃダメだよー。だいたい、もらいものだから気にしなくていいの!」
 もらいもの?
「知り合いのお姉さんからもらったの」
 ……女の子同士のネットワークって凄いな。


 そんなこんなで土曜日の夜になった。いよいよ、明日決行だ。
「んぁぁぁっっ!!」
「ぅぅぉぉっ!!」
 姉貴の部屋のベッドの上で、姉貴と俺は裸で重なり合いながら同時に果てた。
 今回は正常位素股だ。「本当に入れてもいいのよ」なんて誘われても、俺は乗らなかった。俺の初挿入は司にやると決めている。  
 それにしても長い一週間だった。希望と絶望が交叉するってやつだ。
58転生恋生 第二十二幕(5/5) ◆.mKflUwGZk :2010/09/21(火) 23:58:20 ID:A4VAs7Q2
「ねぇ、たろーちゃん。明日デートしようよ」
 ……今、何て言った?
「今年の水着を買いたいの。たろーちゃんに選んでもらうから」
 ちょっと、待て。明日は大事な用事が……。
「たろーちゃんの好きなデザインにするわ。脱がしたくなるようなの選んでね」
 司との約束が……。
「個人的には紐パンみたいなのがいいな。すぐにヤれるもんね」
「待てよ! 勝手に決めるなよ!」
 俺は思わず叫んでしまった。姉貴はきょとんとする。
「どうしたの?」
「俺にも用事があるんだよ。友達と遊びに行く約束をしているんだ」
 とっさだったが、男友達と一緒に出かけることを装った。司はもちろんのこと、他の女と逢引するなんて、姉貴が許すわけがない。
 だが、姉貴の反応は俺の想像を超えていた。
「キャンセルして。明日は私と一緒に過ごすんだから」
「そんな……!」
 姉貴の目が細くなった。機嫌が悪くなる兆候だとわかって内心びびったが、俺も引き下がるわけにはいかない。
「姉貴だって、友達付き合いは大切にしろって……」
「私が最優先よ。今のたろーちゃんに、私より大切なものなんてないんだから」
 にべもない断言口調に、俺は二の句が告げない。
「……っ!」
 股間に痛みを感じて、俺は呼吸が止まった。姉貴が俺のナニをひっつかんだんだ。
「たろーちゃんのオチンチンは私を満足させるためにあるの。休んでいる暇なんてないのよ」
「痛い……」
「あらあら、ごめんね」
 姉貴は手を放してくれた。
「私も病みつきになっちゃったみたい。たろーちゃんだって、男同士でつまらないことして時間を潰すより、私と気持ちいいことする方がいいに決まっているわ」
 俺は絶望した。姉貴が、今までに見たこともない濁った目をしていたからだ。まるで、以前テレビ番組で見た、薬物中毒者の目に似ていた。
 俺を苦しめている禁忌は、姉貴にとっては至上の快楽なんだ。麻薬なんて言葉では表現しきれないくらいの。
 そして俺自身にも絶望するしかなかった。姉貴に握られて、痛みを感じたはずの俺自身が硬さを取り戻していたからだ。
「あら……うふふ……」
 目ざとく気づいた姉貴が俺の股間に顔を近づける。
「もう1回出さないといけないわね」
 俺は無抵抗で、姉貴のフェラチオを受け入れた。俺の目の端から涙が一筋こぼれたことを、一心不乱にしゃぶっている姉貴は知る由もない。
   
59転生恋生 ◆.mKflUwGZk :2010/09/22(水) 00:00:02 ID:A4VAs7Q2
投下終了です。PCを替えたので、どうも使いづらいです。
60名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 00:30:05 ID:7NN9fdde
久しぶりだな!
良かったわ
先が気になるが、今日も一日何とかやってける気力が沸いた
61名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 01:42:07 ID:bcIA72wS
イイ!
心は拒否してるのに体が求めてるってやつですね
太郎は何も落ち度がないのにどんどん泥沼にハマっていくっていう状況が素晴らしいっすね
62名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 02:18:27 ID:0PBpmDeY
GJ
誰か助けてあげて下さい・・・
63名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 02:27:13 ID:O7LLEaZh
でも、俺はこのまま姉貴に突っ走って欲しいな……
64名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 02:40:36 ID:YkRhNfVD
GJ
しかしこの1週間姉に搾られまくったのに本番大丈夫なのか
65転生恋生 ◆.mKflUwGZk :2010/09/22(水) 07:19:42 ID:xC8x0lsh
一生子供が埋めなくなるとかいうのは困る。
→一生子供が生めなくなるとかいうのは困る。

訂正します。
66名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 16:30:10 ID:xJH/DK+F
67名無しさん@ピンキー:2010/09/22(水) 16:34:37 ID:8+6LL5Nx
>>59
実際にキモ姉妹とやりまくってる作品って結構珍しいので楽しみにしてます
68代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2010/09/22(水) 23:59:17 ID:Pd5LZ842
避難所の作品を代理投下

143 : チョ・ゲバラ 2010/09/21(火) 22:51:05 ID:4/uKqcvU

規制が解けないのでこちらに投下いたします。
「うわッ!」
 奇妙な夢に悩まされていた俺――乃木涼介は、軽い悲鳴と共にベットから跳ね起きた。
「はぁはぁ……はぁ……、夢か……」
 部屋は真っ暗。まだ深夜だろう。パジャマの中はしっとりと汗で濡れていて少し気持ち
悪かった。
「そうだよな……そんな馬鹿なことあるわけないよな……」
 本当におかしな夢だった。
 こともあろうに、実の妹と主従関係を結んでしまうというトンデモナイ夢を見てしまっ
たのだ。俺がご主人様で妹の真帆奈が奴隷。もうなんと言っていいのやら。いくらなんで
もアホすぎるわな。ハハハ……。いやいや、兄としてこんな夢を見てしまって本当に情け
ないよ。でも、もの凄くリアリティーのある夢だったような気がするんだけどな……。
「う〜……。どうしたの、お兄ちゃん……?」
「あっ、ごめんな。起こしちゃったか? いやー、なんか変な夢見ちゃってさ」
「怖い夢だったの……?」
「うーん、怖いと言えばある意味一番怖い夢だったのかもしれないな」
「だいじょーぶだよ。お兄ちゃんのそばには、ずーっと真帆奈がついててあげるからね。
来て、お兄ちゃん。真帆奈がぎゅーってしてあげる」
「そっか、ありがとな。でも大丈夫だよ。たんなる夢の話だからな」
「だめだよー。怖い思いをしたお兄ちゃんを慰めるのは妹の努めなんだから、ちゃんとぎ
ゅーってしないとだめなの」
「つーか、本当はお前が単に甘えたいだけなんじゃないのか?」
「エヘヘ……ばれたか。でもでもお兄ちゃんを慰めてあげたいのはほんとだよ。それでお
兄ちゃんも真帆奈も幸せになれるんだから一石二鳥だよ。だからぎゅーってしないとだめ
なの」
「まったく、しょうがない奴だな。ちょっとだけだぞ」
「やったー。だからお兄ちゃん好き〜」
 真帆奈は俺の首に両腕を回し、ぎゅーっと身体を密着させてきた。
「こらっ、そんなにくっついたら寝られないよ」
「このくらいでは真帆奈のお兄ちゃんへの愛情はまったく表せないのだ。うにゃ〜、お兄
ちゃ〜ん……お兄ちゃ〜ん……だい好きだよ〜……」
「いつまで経ってもお前は甘えん坊だな。さぁ明日は学校だしもう寝よう。起こして悪か
ったな」
「そんなことはどうでもいいんだよ。お兄ちゃんだったら真帆奈はなにされても許しちゃ
うんだからね」
「大げさな奴だな」
「大げさじゃないよ。真帆奈は本気なんだよ。だからお兄ちゃんも真帆奈に遠慮なんかし
たらだめなんだからね」
「はいはい、わかったわかった。じゃぁおやすみ」
「うん。…………ねー、お兄ちゃ〜ん」
「んー?」
「おやすみなさいのキスは?」
「馬鹿なこと言ってないでさっさと寝なさい」
「うー、いつもはブチューってしてくれるのに……」
「そんなことした覚えないよ。全部お前の妄想だから。つーか、もうホントに寝ようよ。
明日起きられないぞ」
「うー、わかった……。おやすみなさい、お兄ちゃん。だい好きだよ」
「はいはい、おやすみ……」
 明日というか今日は、早く起きて弁当を作らないといけないからな。さっさと寝ること
にしよう……。
「――って、おいッ!!」
 俺は勢いよく布団から跳ね起き電気を付けた。
「なんでお前が俺のベットで寝てるんだよ!?」
「くー……」
「こらっ、寝るな! 起きろッ!」
 隣でもう熟睡状態に入ろうとしている妹を起こす。
「な、なんなのお兄ちゃん? 寝ろとか寝るなとか、真帆奈はいったいどうすればいいの
かわかんないよ?」
「なんでお前がここで寝てるのかって聞いてるんだよ!」
 寝ぼけていたせいで、無駄に長いノリツッコミをしてしまったじゃないか。
「なんでって……? お兄ちゃんはもう真帆奈のご主人様になったんだから、一緒に寝る
のなんて当たり前じゃない」
 俺の実の妹――乃木真帆奈は、こんなの初歩の初歩だよ、と呟きながら再び船を漕ぎ始
めている。
 つーか、あの夢は現実だったのか。どおりで生々しい夢だって思ったよ。 
 実はここだけの話だが、俺は妹との真帆奈と主従関係を結んでいる。
 いや、正確には結ばされたと言った方が正しいだろう。
 内容も分からない書類に軽々しくサインをしてしまい、それが奴隷契約書なるものだっ
たのだからさぁ大変。ダルマ蔵相で有名な高橋是清も若い頃に騙されて奴隷契約書にサイ
ンをしてしまい、誰も知る人がいない海外で相当な苦労をしたらしいのだが、俺の場合は
少し違う。
 騙されてサインをした俺の方がご主人様で、騙した真帆奈が奴隷というなんとも奇妙な
契約だったのだ。
 世にも不思議な話があったもんだろ。
「兄と妹が一緒に寝るのは当たり前のことじゃないの。わかったらさっさと自分の部屋に
戻りなさい」
「えー、なんでなんでー? 妹だからだめだって、そんなの人種差別なんだよ。だいたい
真帆奈はお兄ちゃんの妹である前に忠実な下僕なんだから、いつなんどきでもお兄ちゃん
の近くにいなくちゃいけないのだ」
 かなり眠いらしく、真帆奈は目をゴシゴシさせながら持論を力説する。
 その姿をよく見たら、お腹のあたりがスケスケになったらフリフリのキャミソールにタ
ップパンツという、ちょっとというかかなりエッチないでたちだった。
「ちょっ、なんなのそのパジャマは!」
「お兄ちゃんのために通販で買ったんだよ。可愛いでしょう。エヘヘ…‥」
 どうだー、とばかりにベットの上で自分の姿を兄に見せつけてくる真帆奈さん。
 確かに、まぁなんというか……その、よく似合ってはいた。
 新雪のような白い柔肌、愛らしく整った眉目、小柄で華奢な体格、そして、シーツの上
に扇のように拡がった黒絹のような長い髪。
 実の兄である俺が言うのもなんなのだが、こいつは相当な美少女なのだ。
「今なら出血大サービスで、先着一名様にもれなく真帆奈を独り占めだよ、お兄ちゃん」
 早く早く、と両手を広げて兄を誘惑する真帆奈。
 ヒョイッ、ポイッ、バタン。
「うにゃー!」
 真夜中にこれ以上無為な時間を費やさないためにも、とっとと実力行使に出た。 
「うー! なんでこんな酷いことするの! たとえお兄ちゃんでも、こんな人道に反する
行為は許されないんだよ!」
 扉の向こうで真帆奈が騒ぐ。
 去れ!
「はっ!! わ、わかったよ、お兄ちゃん! これは放置プレイなんだね? 放置プレイ
の一環なんだね!?」
「真夜中にわけのわからないことを叫ぶと近所迷惑ですから! もういいからさっさと自
分の部屋に戻って寝る!」
「こんなのないよー! 詐欺だよー! インチキだよー!」
 暫くの間、真帆奈はギャーギャーと喚きながらドアノブをガチャガチャやっていたが、
すぐに俺の断固たる意志を悟ったらしく、
「うー! お兄ちゃんのバカーッ!」
 と、捨て台詞を残して自分の巣に逃げ帰った。
 真夜中に余計な体力を使ったせいですっかり目が冴えてしまった。
 時間を確認してみると深夜二時過ぎ。
 俺はしみじみと嘆息してから、自分のベットに潜り込んだ。ベットの中には、まだ真帆
奈の甘い体臭の香りが残っていた。


『俺の妹がこんなにとびっきりに変態なわけがない2』


 欠伸を噛み殺しながら駅のホームで電車を待っていた。
 周囲を見渡すと、経済新聞を読んでいるサラリーマンや、携帯電話を見ながら忙しなく
指を動かしている女子高生などがまばらにいた。この時間帯は、ちょうど人が少ない穴場
時間なのだ。次の電車あたりから一気に人が増え始める。だから俺は早めに家を出るよう
にしているのだ。少し早起きしてでも快適な通学ライフを送りたいからな。しかし、そん
な小市民のささやかな計画の邪魔をしようとする人物が我が家に約一名存在する。もちろ
ん妹の真帆奈のことだ。昨晩に引き続いてまた早朝からごねやがった。
 真帆奈曰く、
「お兄ちゃんは、ご主人様としての自覚をもっと持たなくっちゃだめだよ!」
 だそうだ。
 朝起こしに行くと夜中に部屋から追い出された鬱憤が溜まっていたらしく、真帆奈はか
なりご機嫌ななめだった。その他にも、「一人で寝るのは寂しかった……」とか「これな
ら下僕としての責務が果たせないよ……」などとグチグチ言っていたが、真面目に相手を
するほど暇を持て余しているわけではないので、「まだ話は終わってないんだよーっ!」
と憤る真帆奈を振り切って家を出てきた。
 で、俺の哀れな携帯電話に先程から執拗に愚痴メールが入ってくるというわけだ。
 噂をすれば再び携帯電話がブルルと振動した。
 メールを確認する。
『今日学校に穿いていくパンツのことなんだけど、お兄ちゃんは青と白の縞々とピンクの
ハート柄のどっちがいいと思う?』
『どっちでもいいよ! そんなことでいちいちメールしてこないでよ!』
 と、すぐさま返信した。
『お兄ちゃんが真帆奈のお話をちゃんと聞かないで学校へ行っちゃうのが悪いんだよ。ど
っちがいいのか早く決めて』
 兄はそこまで妹の面倒を見ないといけないものなのだろうか? つーか、家で洗濯して
いるのは俺なわけで、真帆奈がどのパンツのことを言っているのかある程度わかってしま
うのがなんだかもの凄く嫌だった。
「まもなく二番線に電車が参ります。危険ですからホームの内側までお下がりください。
二番線に電車が――」
 ホームに独特の口調のアナウンスが聞こえてくる。
『縞々にでもしときなさい』
 と、メールを送信してから携帯電話の電源を切った。
 電車に乗る時はいつもそうするようにしている。こういうことは、一人一人のマナーが
大切なのだ。
 スピードを落としてホームへと侵入してきた電車がゆっくりと停車し、俺の目の前でド
アが開いた。
 べつに深い意味はないのだが、俺はいつも先頭車両に乗ることにしている。それで電車
に揺られながら本を読むのがちょっとしたマイブーム。車内に入りいつもの指定席に座ろ
うと歩を進めると、そこで意外な人物に遭遇した。
 緩やかにエアウェーブした長い黒髪、造形美の頂点を極めた秀麗な顔立ち、スーパーモ
デルのような抜群のプロポーション。そして、眼鏡属性。
 高千穂学園が誇る不動のナンバー1アイドル、東郷綾香その人だった。
 頭脳明晰、運動神経抜群という文武両道の才女で、これでオマケに俺のようなクラスの
モブキャラにでも優しく接してくれるマザーテレサのような博愛精神の持ち主なのだから
始末に負えない。人間なにか一つくらいは欠点があるものだが、彼女からそれを見つける
ことは不可能であった。
 さて、俺はどうするべきだろうか。どうやら東郷さんは本を読むのに熱中していて、こ
ちらにはまったく気付いてないようだ。やはりクラスメイトとしては、挨拶くらいはして
おかないといけないよな。……やばい、緊張してきた。ちょっと落ち着けって俺。なんで
こんなにドキドキする必要があるのだ。ちょこっと行ってちょこっと挨拶するだけじゃな
いか。よ、よしっ……まずは深呼吸をしてから、自然にさりげなく行こうじゃないか。
「と、東郷さん、おおお、おはよう!」
 うわっ! 完璧に声が裏返った。最悪だ……。
「……乃木くん?」
 不審者から声を掛けられたのかと思ったのか、東郷さんは一瞬だけ怪訝な表情をして目
をパチクリとさせていたが、すぐに俺だと気付きニッコリと微笑んで、
「おはよう、乃木くん」
 と、挨拶を返してくれた。
 それだけで俺の体温は、二、三度ほど急上昇してしまう。
「え、えっと、奇遇だね。東郷さんもこの電車だったんだ?」
「いつもはもっと遅い電車なんだけどね。私、今日は日直だから早く家を出てきたのよ」
 なるほど。どおりで今まで一度も会わなかったわけだ。日直グッジョブ。
「乃木くんは、いつもこんなに早いの?」
「うん。電車混むのいやだからね。やっぱり朝は座って学校に行きたいし」
「そうなのよね。この時間って本当に人が少ないのよね。吃驚しちゃった。これならいつ
も早起きすればいいんだけど、私は朝が苦手で……」
 どうやら東郷さんにも意外な弱点があったようだ。
 身近に似たような人がいるから一気に親近感が湧いてくるな。
「うちの妹と同じだね」
「乃木くんの妹さん?」
「そっ。うちの妹も朝が苦手でね、俺が起こさないと絶対に自分では起きないんだから。
休みの日なんかは、お腹が空くまでずっと寝っぱなしだよ。ホント、冬眠中のクマみたい
な奴なんだから」
「ふふっ、そんなこと言ったら妹さんが可哀想よ」
 東郷さんは、クスクスと楽しそうに笑っている。
「ところで乃木くん」
「なに?」
「席も空いてるんだし座ったらどうかしら」
「えっと……横に座っていいの?」
「どうぞ」
 ニッコリ。
 朝からそんな笑顔を見せられたら惚れてまうやろーっっ!!
「じゃぁ、お言葉に甘えて失礼します……」
 俺は失礼がないように、一人分ほどの空間を開けて東郷さんの隣の席に座った。
 同時に静かに電車が発車する。
 車両の窓から長閑な田園風景が走馬灯のように流れていくのが見えた。電車は並走する
乗用車を追い越しながら徐々に加速していき、一路都心へと向かうのだ。
「乃木くんの妹さんって、きっと可愛いいんでしょうね」
「可愛い? そ、そんなことないよ。普通だよ普通」
「でも、乃木くんに似てるんでしょう」
 俺にはあんまりというか、全然似てないような気がするな。あいつは完全に母親似で、
俺はどちらかというと父親似だからな。つーか、俺に似てたら可愛いのか?
「まぁ、あいつは外見よりも中身の方に問題があるからね。最近なにを考えてるのかよく
わかんないし……」
 鬼畜系エロゲーの趣味があったりとか、奴隷契約書にサインをさせられたりとか、夜中
にベットに忍び込んできたりとか、ここ最近は兄の理解の範疇を軽く突破している。
「妹さんはお幾つなの?」
「十三歳だよ。来月で十四歳になるね」
「その年頃の女の子って、凄く多感で繊細な時期なのよ。私がその時の頃を思い出すわ。
乃木くんも色々戸惑うことがあるかもしれないけど、できるだけ優しく接してあげて欲し
いな」
 あれでも繊細というものなのだろうか? かなり図太いようにも思えるのだが。まぁ、
うちの妹は特質系の能力者だから、一般論はまったく当て嵌らないような気がする。まし
てや東郷さんと比べるなんて恐れ多すぎるっつーか。
「色々気は使ってるよ。なんせ今は俺しか保護者がいないからね」
「ご両親はいないの?」
「うん。親父が転勤になったから母親も一緒について行ったんだよ」
「そうなんだ」
 東郷さんは、得心いったように静かに頷いた。
「それだとなにかと大変ね。ご飯とかは妹さんが作ってるのかしら?」
「いや、俺が作ってるよ」
「乃木くん、料理できるんだ」
「まぁ人並みにはできるよ。その他の掃除や洗濯も全部俺がやってる。真帆奈はなーんも
できないからね」
「そっか、偉いんだね」
 東郷さんに褒められた。
 なんだか背中のあたりが無性にムズムズしてくるな。
「べ、べつに偉いとかじゃなくて、俺しかやる人間がいないから仕方なくやってるだけだ
よ。真帆奈も少しは料理くらいできるようになってくれればいいんだけどね。あいつの将
来が心配だよ」
「ふふっ。乃木くんって、妹さんのことが本当に好きなのね」
 やや揶揄する口調で東郷さんが言った。
「えっ!? そんな……や、藪から棒になに言ってるのさ。こっちは毎日、苦労させられ
てるんだから」
「だって妹さんの話しをしている時の乃木くんって、凄く嬉しそうな顔をしてるんですも
の」
 マジデ!? 
 俺はそんな恥ずかしい顔をして、真帆奈のことをペラペラと話してたのか。
「変なこと言わないでよ、東郷さん。そ、そんなこと全然ないんだからね!」
「ふふっ、ごめんなさいね」
 東郷さん、クスクスと楽しそうに笑っている。
 やべ、マジで可愛いな。クソッ。
「でも、嬉しそうな顔をしてるのは本当のことよ。乃木くんの妹さんが羨ましわ。私は一
人っ子だから兄弟とかに憧れちゃうな」


 まったく。誰でもかれでも俺のことをシスコン扱いするんだから。俺はシスコンじゃな
いっつーの。とにかくこの話題はちょっとマズイな。早急に会話を逸らさなければならな
いぞ。
「と、東郷さんは兄弟いないんだ」
「そうよ。だから乃木くんみたいな優しいお兄さんが欲しかったわ」
 あうっ、強烈なカウンターが入った。
「もうっ、あんまりからかうのはやめてよ」
「からかっているつもりは全然ないわよ。全部本当のことですもの。ふふっ」
 つーか、たった今気付いたんだけど、俺と東郷さんって結構雰囲気よくね。周りから見
たら絶対にいいよね。もしかするとフラグ立ってるんじゃないかな。
 さっきから対面の男子高校生らしき人物が、しきりにこちらをチラチラと見ている。き
っと内心では、そんな美人と朝からイチャイチャしやがって、と歯ぎしりの一つでもして
いることだろうよ。もしも立場が逆だったら、俺だってそう思うはずだから間違いない。
なんだか軽い優越感が湧いてくるな。
 とはいえ、これ以上真帆奈の話をするのはよろしくない。なにかいい話題はないものだ
ろうか。……あっ、そうだ。
「そういえば東郷さん、さっき小説読んでたけどなに読んでたの?」
「えっ、さっきの小説……えっと……」
 妙な反応だな。
 もしかして聞いたらまずかったのかな。
「いや、べつに言いたくないんだったら無理して言わなくてもいいんだけど」
「そんなことないのよ。実はこれなんだけど……」
 東郷さんは、鞄の中にしまっていた先程の小説を渡してくれた。
 小説にはカバーがしてあったので、中を開いて確認してみるとあら吃驚。
 なんとライトノベルだった。
『烙印の紋章』
 中世ヨーロッパ風のファンタジーで、主人公の若い奴隷剣闘士が魔法によってその国の
王子と瓜二つに整形され、クーデターを企む貴族達に利用される。が、主人公は頭が切れ、
オマケに戦争の天賦の才まで持っていたため、逆に貴族たちを利用し本物の王子として成
り上がっていくというお話だ。
 俺もゴゾゴゾと自分の鞄をあさり、一冊の本を取り出して東郷さんに見せた。
「ジャーン!」
「あっ!」
 まったく同じ本――『烙印の紋章』の新刊なのだ。
 俺と東郷さんは、奇しくも同じ本を読んでいたわけだ。
 そして俺達は、顔を見合わせて一緒に吹き出してしまった。
「東郷さんがこういう本を読んでるなんて意外だね」
 巷ではあまり話題になってないかもしれないが、かなり面白い作品なのだ。ただ東郷さ
んなら、てっきりお固い純文学なんかを読んでいるのかと思ってたよ。
「乃木くんも読んでたんだね。よかった。子供っぽいって笑われちゃうかもしれないと思
ったから――あっ、べ、べつに乃木くんが子供っぽいってことじゃないのよ」
 失礼なことを言ってしまったと思ったらしく、東郷さんは慌てて訂正する。
「わかってるから大丈夫だよ。だいたい俺は読んでなかったとしても人の趣味を笑ったり
はしないよ。小説なんて面白ければなに読んだっていいんだから」
「……そうよね。ありがとう、乃木くん」
「い、いいんだよべつに」
 メガネの奥の彼女の瞳は優しく澄み切っており、見詰められてしまうとかなり恥ずかし
かった。
「東郷さんは、他にどんな本を読むの?」
「私、本が好きだから、あまりジャンルにこだわらないで読むのよ。最近読んだのは、ジ
ェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』とか、塩野七生の『わが友マキアヴェ
ッリ』とか、『ラブクラフト全集』とか、『ゼロの使い魔』とかかしら」
 本当にこだわりがないようだ。
 本人にそのつもりはないのだろうが、みごとに最後でオチている。
 一度、東郷さんの家の本棚を見てみたいな。もの凄く混沌のような気がする。
「俺も『ゼロの使い魔』だけは読んでるよ。あれ面白いよね」
 デルフも生き返ったしな。
 つーか、最初の本は聞いたことすらないよ。
「でもそんなに色々読んでるのって凄いね。もしかして自分でも小説とか書いたりする人
だったりして」
「えええっ!!」
 吃驚した。
 なにげなく聞いただけなのに、東郷さんの驚き方はハンパなかった。車内の人達も不審
な目でこちらを見ている。まるで俺がおかしなことでもしたかのように……。
「あっ、ごめんなさい……」
「えっと……なにかあったの?」
「な、なんでもないのよ。気にしないで。急に大きな声を出してごめんなさいね」
 東郷さんがなぜあんなに驚いたのか少し気になったが、そんなことよりも恥ずかしそう
に頬を染めている彼女が可愛すぎてもうそれどころではなかった。
「い、いや、なにも気にしてないから。ハハハ……」
 そういえば、東郷さんとこんなに会話をするのなんてあの日以来だな。それ以降は、ほ
とんど挨拶くらいしかしたことなかったからな。このまま電車が環状線になって永遠に回
り続けてくれればいいのに、と思わずにはいられない。
 が、もちろんそんなことが起こるはずもなく、無常にも電車は数分の遅れもなく目的の
駅へと到着するのだった。


『今日のお弁当も美味しいよー。お兄ちゃんの愛情がいっぱいだよー』
 昼休みになると早速、真帆奈からメールが来た。
 添付されていたファイルを開けると、麗ちゃんと一緒に弁当を食べている画像だった。
 とうとう恐れていた真帆奈のメール病が再発してしまった。
 このメールで本日もう二十通目だ。
 以前にあんまりしつこくメールをしてくると着信拒否にするぞ、と忠告してから少しは
減っていたのだが、先日の一件でどうやら箍が外れてしまったらしい。緊急時に備えて本
当に着信拒否にするわけにもいかず、また無視して返信しなければもの凄い勢いで拗ねる
ので後々めんどくさいのだ。
「なんだ。また愛しの真帆奈ちゃんからラブメールか?」
 サンドイッチを齧りながら悪友の黒木貴史が言った。
 まるでメールの内容を知っているかのような口振りだった。
「アホか。そんなんじゃねーよ」
「じゃぁ誰からのメールなんだよ?」
「……」
「ほら見ろ。やっぱり真帆奈ちゃんからじゃねーか」
「だ、だから、ラブメールとかそういうんじゃないって言ってるんだよ」
「だったらメールを見せろよ」
「それは断固として断る!」
 とても人に読ませることができる内容ではないので、俺は激しく拒否した。
「お前は我々の聖天使、真帆奈ちゃんを独り占めする気か! なんと罪深い男だ! お前
なんかメギドの雷に撃たれてショック死してしまえ!」
 我々ってどこのどいつらのことだよ。もしかして真帆奈関係でおかしな団体でも作りや
がったのか。この男も色々と正体不明なところがあるからな。
 実は先日、こいつと一緒に聖地巡礼に行った時にこんなことがあった。

「やぁ藤井くん。しばらく」
「これはこれは黒木閣下ではございませんか! いらっしゃるのならば一言ご連絡下され
れば、こちらからお迎えに参上つかまつりましたのに!」
「いやいや、気にしないでいいから」
「すぐにVIPルームをご用意いたしますので、暫くお待ちいただけますでしょうか」
「いや、今日はちょっと友人と買い物に来ただけだから、楽にしいて構わないよ」
「そうでございましたか。どうぞごゆっくりお楽しみ下さいませ。それで、こちらの方は
同志の一員でございますでしょうか……?」
「ああ、彼は将来の幹部候補だ」
「そうでございましたか! 乃木様でいらっしゃいますか。わたくしコミックと○のあな
秋葉原店の店長をやっております藤井と申します。マイスターには日頃からそれはもう大
変お世話になっております。むさ苦しいところではございますが、どうかごゆるりとお寛
ぎ下さいませ。もしなにかございましたら、この不肖藤井めに遠慮なくお申し付け下さい。
ラトゥ、プライ、ヴェルヘル……」
 と、だいたいこんな感じだった。
 普段あんまり聞かない単語やあやしげな呪文まで飛び出す始末で、「いいかげんにし
ろ!」と喉仏辺りまでツッコミが出かかっていたのだが、あえて我慢した。ろくでもない
人間を。つーか、勝手に俺を同志とやらの一員にするのだけは金輪際やめてもらいたい。
 で、またメールが来た。
 ややうんざりしながら確認すると、当然ながら真帆奈からだった。
『学校だとお兄ちゃんに会えなくて寂しいよー。早くお兄ちゃんに会いたいよー。学校が
終わったら寄り道しないで、一刻も早く真帆奈とお兄ちゃんの愛の巣に帰ってきてね』
 そんないかがわしい巣を作った覚えは一切ない。
 黒木の冷たい視線が身体に染みる。
「と、ところで黒木よ。お前はゴールデンウィークの予定は決まっているのか?」
「ああ、旅行に行くことになっている」
「へー、どこに行くんだよ」
「熱海だ」
 なるほど。
 彼女と仲良く熱海旅行イベントというわけだ。
「なんだったらお前も一緒に来るか? ダブルデートということでもべつに構わんぞ。も
ちろん泊まる部屋は別々になるがな」
「いや、遠慮しとくよ。邪魔しちゃ悪いからな。二人っきりで仲良く行ってくれ」
 ぐっと涙を堪えながら俺は言った。
「そうか、気を使わせて悪いな」
「いや、いいんだよ。俺もその時は旅行に行くかもしれんからな」
 そろそろ五月会の行き先をちゃんと決めないといけないよな。週末に色々あったからす
っかり忘れてたよ。ちなみに五月会の説明を簡単にしておくと、うちの近所の五月生まれ
のみんなで一緒に遊びに行く会のことだ。今年は暫定的に温泉に行くと決定している。果
たして今からでも宿は取れるのだろうか?
 で、またまたメールだ。
『言い忘れてたけど、今日はお兄ちゃんのだい好きな縞々にしたからね♡』
 添付ファイルを開けるとさぁ大変。
 たくし上げたスカートから丸見えになった、真帆奈の縞々パンティー画像だった。
「ブーーッ」
 お茶吹いた。
「お前はなにをやってるんだ?」
「ゴホッ、ゴホッ、す、すまん……」
 女の子がこんないやらしいメールを送ってきて! もうっ、ダメなんだからね! 家に
帰ったら絶対に説教してやるんだから!
 と思ってたら、今度は麗ちゃんからメールだった。
『おにーさんは縞々が好きだったんですね。それならそうともっと早く言ってくれればよ
かったのに。私も幾つか持ってますから、今度、ドッキリ縞々画像を送っちゃいます
ね』
 麗ちゃん、頼むから真帆奈が馬鹿なことしてたらすぐに止めてよ!
「お前はいいご身分だな」
「だ、だから、そんなんじゃねーってばよ!」
 俺の悲痛な叫び声が教室に木霊した。
78代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2010/09/23(木) 00:06:27 ID:+iXOWgTo
153 : チョ・ゲバラ 2010/09/21(火) 23:07:27 ID:4/uKqcvU

続きます。
いつになったら規制解けるのかな……
後、どなたか転載よろしくお願いします。
79代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2010/09/23(木) 00:06:55 ID:+iXOWgTo
155 : チョ・ゲバラ 2010/09/22(水) 18:13:40 ID:Qe3/MfB6

すいません。あまりにも読みにくかったのでもう一度貼ります…

現在、三カ月以上に渡って規制が続いており、今後も規制が解除され
る見込みはない模様です。一時はこちらの避難所で連載を継続しよう
と考えましたが、やはり永遠と転載をお願いするのは心苦しく、また
色々と不都合を感じるところもあり、誠に勝手ながらこちらでの連載
は、これで終了させて頂くことにいたしました。このような結果にな
りまして慚愧に耐えません。以上のことにより、昨日投下いたしまし
た作品の方は、本スレの方に転載しないようよろしくお願いします。
重ね重ねお詫びいたします。なお、こちらでの連載は終了いたしまし
ても、他所の方で連載は引き続き継続いたしますので、御指導、ご声援
のほどを頂ければ幸いと存じます。もし規制が解除されましたら、また
新たな作品を投下してみたいと思っております。
80代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2010/09/23(木) 00:07:15 ID:+iXOWgTo
以上で投下終了です。
81代理投下 ◆j3gvf0a2hI :2010/09/23(木) 00:09:29 ID:+iXOWgTo
ぐあ、申し訳ないあとがききちんと読んでませんでした。
転載申し訳ありません。
82名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 02:42:22 ID:FcGkYYBw
乙!
83きっと、壊れてる第7話:2010/09/23(木) 02:47:25 ID:MTlO7pBY
こんばんは。
きっと、壊れてる第7話投下します。 注意:キモウト以外とのエロあり
84きっと、壊れてる第7話(1/8):2010/09/23(木) 02:48:07 ID:MTlO7pBY
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また、夢を見ていた。

茜となぜか将棋を指しているシーンだ。
目に映る茜の姿はおそらく中学校2,3年ぐらいだろうか。
しかし、中学生とは言っても今現在の茜の姿にかなり近付いてきている。
綺麗な黒髪は、この頃はまだ肩ぐらいまでしかないが、背は既に現在とほぼ同じぐらいまでになっていた。

『老けている』という表現ではなく、『大人びている』という表現の方が適切なその姿は、
同級生の中でもかなり目立ったのではないだろうか。

なぜ、将棋を指しているのか思い出した。
部活にも入らず、友達と寄り道して遊ぶわけでもなく、
授業が終わると学校からまっすぐ帰るだけの茜に、少しでも気分転換になれば、と俺の方から誘ったのだ。

この頃には既にお互い読書に夢中になっており、気分転換なら読書の話をするのが一番手っ取り早かったのだが、
俺自身が、たまには全然違う事を話題にしたいと思い、将棋を指すという発想に至ったのだと記憶している。

今思えば、年頃の女の子が将棋を指して楽しめるのかどうかが疑問だが、
盤上を見つめるその真剣な眼差しは、夢の中で見てもとても美しかった。

「はい、お兄ちゃんの番」
桂馬の駒を、次に俺が移動しようと思っていた場所に置き、茜が告げた。
俺の攻め手を封じると同時に、その気になれば次手で動かして俺の銀将も取得できる絶好の位置だ。

思えば、まだこの頃、俺への呼びかけは『お兄ちゃん』だった。
『兄さん』となったのが、確か茜が16歳の誕生日を過ぎてからだったので、これより1,2年後だ。

「う〜ん、そこに置くかぁ・・・じゃあこれで王手だ!」
このままでは負けてしまうと思った俺は、飛車の駒を茜の王将の平行マスに置いた。

「・・お兄ちゃん、攻めたい気持ちはわかるけど、ここは守らないと駄目。
守り切ればまだお兄ちゃんにチャンスはあるから。見て?王手と言っても、こうすれば私は簡単に守れるし、逃げられるよ。」
茜は実際に駒を動かして解説してくれた。
「・・・」
俺は将棋などの頭を使うゲームでは、恥ずかしい話、茜にほとんど負けてばかりだった。

惨敗した俺が、飽きたようにソファへボスッと音を立て寄りかかると、
茜は俺を見つめながら注意するように口を開いた。

「お兄ちゃん、前にも言ったけど、私は別に塞ぎ込んでいるわけじゃないの」
「ん?」
「学校でも別に孤立しているわけじゃないの。友達もいるから大丈夫。ただ、少し集団行動が苦手だから家にいる時間が多いだけ」
どうやら茜はすべてお見通しだったようだ。

「そうか、なら安心だよ」
「うん。それと・・ありがとう。でも将棋で勝ちたくなったらいつでも言ってね?相手してあげる」
少し悪戯な顔をして、将棋盤と駒を方しはじめる茜を見た俺は、満足したように足を前に投げ出し、『腹が減ったな』と呟いた。

「二人とも、そろそろご飯よ。どちらか楓を起こしてきてくれる?」
台所で晩御飯を作っていた母親が、リビングにいる俺達に声を掛けた。
現実の世界ではもう随分と見ていない、母さんの姿が懐かしい。

楓は小学校が終わり帰宅した後、疲れて自分の部屋で眠ってしまっていた。
自分の部屋と言っても、我が家はそこまで広い家に住んでいるわけでもなく、茜と楓の共同部屋だ。
「わかった、じゃあ俺は母さんを手伝うから、茜は楓を頼む」
「うん」
二手に分かれ、俺は夕飯の準備を手伝った。帰りが遅い父さんを除いた全員分の箸や茶碗を並べた。
85きっと、壊れてる第7話(2/8):2010/09/23(木) 02:48:53 ID:MTlO7pBY
「ん〜眠い」
「遅くまで漫画を読んでいるからよ。今日は早く寝なさい」
数分後、まるで母娘のように茜が楓の手を引き、リビングへと戻ってきた。
楓はその小さい手で目を擦りながら、だらしなく欠伸をしている。
Tシャツにキュロットスカートを穿いている。どうやら、帰ってから着替えずにそのまま眠ってしまったようだ。

「ふわぁ・・・おねーちゃんも読む?おもしろいよ」
楓は海賊を志す少年が仲間たちと冒険を繰り広げる漫画を好み、よく読んでいた。
昨夜も夢中になって、寝るのが遅くなったようだ。

「私はいいよ。漫画って、絵もセリフも見ないといけないから、疲れるの」
そういえば、茜が漫画を読んでいる姿をほとんど見た事がない。そういう理由だったのか。
「へんなの〜」
さっきまで寝ていたのが嘘のような顔を見せた楓が、茜の腕に抱きつく。
「ちょっと、歩きにくいから離れて楓」
「おねーちゃん良い匂いするから好き〜」
楓はさらに茜の体にギュッと抱きつくと、自分の顔を擦り寄せた。
「もう、変な所触らないの」
注意しながらも、茜は楓の頭を撫で、『少し髪が伸びたわね』と独り言をこぼしている。
よく茜が楓の髪を結ったりしてあげているのを、俺は見かける事があった。
二人とももう少し成長すれば、一緒に服などを買いに行く事もあるだろう、と姉妹の仲の良さに少し微笑ましくもなった。
「はははっ、仲が良いなぁ茜と楓は」
「本当はね、お兄ちゃんに一番くっつきたいけど、恥ずかしくてできないのよ、ね?楓」
「おっ、おねーちゃん!」
「フフフッごめんなさい。さぁご飯を食べましょう」

そういえば、昔はよく俺の背中や膝の上に乗っかってきていた楓が、
最近あまり近付いてこないような気がしていたが、そう言う事か。
小学生といえど、女の子はもう異性に照れる年頃だという事か。

茜が桜ぐらいの頃はどうだったか・・ベタベタまではいかないが、俺の服や腕を掴んで離さなかった気がする。
すっかり立派な長女へと成長した茜から考えると意外だった。

「?? おにーちゃん、誰かと遊んでたの?」
夕食中、ソファの近くにある小さいガラスのテーブルの上に、半分片された将棋盤を見て、楓が不思議そうな声を上げた。

「ん〜?・・あぁ、さっき茜と将棋指してたんだよ」
「おねーちゃんと!?なんで楓も起こしてくれなかったの!?」

一瞬で楽しい夕食の時間が止まった。
楓の突然の剣幕に、俺は唖然とした。

「なんでって・・せっかく寝てるのに起こすのは可哀想だろう?それに楓は将棋わからないじゃないか」
仲間外れにでもされたと思ったのだろうか、俺は必死に楓をなだめようとした。
確かに、前に茜と二人で近所のコンビニに行った時、家に帰ると残っていた楓が拗ねていた事はあった。
その時は、特に気にもしていなかったのだが。
食事中に怒鳴る程、嫌なものなのか。

「前に楓を仲間外れにはしないって約束したのに!嘘つきっ!」
やはりそういう理由のようだ。
「楓!!いい加減にしなさいよ!!」
「グスッ・・うえーーーーん!!」
母さんに怒鳴られ、泣きだした楓に俺は気の効いた事が言えなかった。

母さんの得意料理である、さわらの西京漬けを丁寧に箸で一口サイズに小分けし、口へ運ぶ。
重たい空気の中、茜だけは何事もなかったかのように、黙々と食事を続けていた。
86『きっと、壊れてる』第7話(3/8):2010/09/23(木) 02:50:44 ID:MTlO7pBY
楓が泣き疲れて眠ってしまった夜10時頃、俺は風呂に入ろうと思い、脱衣所へと向かった。
ドアを開けると、そこには上下水色のパジャマを着て、洗面台で歯を磨いている茜の姿があった。

「少し待っててね、すぐ終わるから」
鏡越しにこちらにそう言うと、茜は歯磨きを続行した。
「いや、ゆっくりでいいよ」
俺は別に茜がいる前で服を脱いでも構わないのだが、以前茜に注意された事があった。
思春期の女の子だ。いくら兄とはいえ男の裸を見たくないのだろう。
俺は茜が歯を磨き終わるまで、その場でおとなしく待つ事にした。

「はい、お待たせ」
茜は黄色の歯ブラシをコップに入れ、元の場所に戻すと、こちらを振り向いた。

「なぁ」
「??何?」
「楓はさっき、なんであんなに怒ってたんだ?」
深い意味はなく、素朴な疑問だった。
俺には楓が『仲間外れにされた』と感じた理由が、よくわからなかったからだ。

「??仲間外れにされたからじゃないの?そう言ってたじゃない」
茜はそう言うと、まだ俺との話が続くと思ったのか、鏡の前に戻り髪を梳かし始めた。
「でも、そんな事言ってたらキリないじゃん。学校の友達と遊ぶのにも、楓を連れて行かなきゃいけなくなる」
楓は確かに大事な妹だが、正直そこまで面倒を見ないといけないと思うと、息が詰まった。

「それは大丈夫。・・・多分、私の時だけだから」
「えっ?」
茜が言った言葉に、俺は少なからず動揺した。
茜と俺が何かする時にだけ、楓は仲間外れにされたくない、という事か。
茜と楓は意外に仲が悪いのだろうか。いや、そんな風には見えない。

俺が考えていた事を読み取ってくれたのか、茜が言葉を続けた。
「楓は私の事慕ってくれてる。でもそれは姉として」
「姉と妹の関係以外に何があるんだ?」
「フフッ、お兄ちゃんはそんな事考えなくてもいいの、女の子には色々あるのよ」

そう言うと、茜はもう会話は終わった、と言わんばかりに櫛を洗面台の所定の位置に戻し、脱衣所から出て行った。
俺には茜の言っている事がよくわからなかった。
茜に同じ俺の妹としてヤキモチを焼いているという事だろうか・・・。
シャワーを浴びている間、ずっとその事を考えていた。

結果、やはり先程の考えが一番有力だと思った。
楓はまだ10歳。多感な時期だ。出来るだけ気遣ってやろう。俺はそう思った。

体を拭き、パジャマ替わりのTシャツとハーフパンツを穿いた俺が、脱衣所のドアを開けると、
さっきまで眠ったはずの楓が俯きながら廊下に立っていた。
「ん?どうした?楓」
俺が声を掛けると、楓は顔を上げて今にも泣きそうな顔で俺に近付き、口を開いた。
「・・・さい」
「?」
「ごめんなさい、お兄ちゃん。ワガママ言って」
楓は俺の目をしっかりと見つめ、確かにそう言った。
俺にも経験があるから理解できるが、自分に非があるとわかっていても、中々こういう風に素直には謝ることができない。
俺は楓のその素直さに、心が温かくなった。
「楓は素直で偉いな。茜と母さんにもちゃんと謝れたのか?」
俺がそう言うと、楓はコクッと頷いた。
「そっか。じゃあ今日は遅いからもう寝よう」
俺はそう言いながら、楓の頭を撫でると、部屋まで送っていた。

夜はまだ少し冷える、春の日の思い出だった。
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87『きっと、壊れてる』第7話(4/8):2010/09/23(木) 02:51:30 ID:MTlO7pBY
・・・
・・


「こうすけぇ、起きてよ〜」

体が揺すられている。
匂いが違う。ここは・・・。

浩介は目を開け、体を起こした。
目の前に美佐の顔があった。どうやら仰向けに寝ていた浩介に馬乗りになっているらしい。
美佐も起きてからさほど経っていないのか、寝る時の格好である薄いピンクのタンクトップに、水色の短パン姿だった。
周囲を見渡すと、カーテンの間から光が差し込んでいるのが目に入った。
自分と美佐がいるのがセミダブルのベッド、部屋の隅には化粧台とテレビを置いている組み立て式の台。
学生時代からほとんど変わっていない、同年代の女性と比べると、かなり殺風景な美佐の部屋だった。

そういえば、昨日は週末という事もあり美佐と飲んでいたが、
飲み過ぎてしまい、近くにある美佐の家にそのまま泊めてもらったのだ、と浩介は思い出した。
目の前にある美佐の顔に焦点を合わすと、ヤレヤレといった顔で美佐が口を開いた。

「やっと、起きた。薄情者、女の部屋に上がり込んでおいて、ソッコー寝やがって」
浩介の胸を軽く叩くと、美佐は浩介の首に腕を回し、チュッと唇にキスをした。

「悪い」
「許さない」
美佐は少しも怒っていなさそうな顔でそう言うと、生理現象でそびえ立っていた浩介の股間に手を伸ばし、掴んだ。
「何?これ」
「何って・・朝だからしょうがないだろ」
「おもしろ〜い」
美佐は、浩介の上に乗り、向かい合っている体勢にも関わらず、
パンツを剥ぎ取り、器用にむき出しの男性器を掴んだ手を上下に動かした。
「美佐、朝から・・」
「別にそんな法律ないでしょ?」
澄ました顔で、浩介を見下ろす美佐を見て、浩介は自分が興奮していくのを感じた。征服されている感覚がなぜか嬉しかった。
人間の普段は死んでいる心理の側面を、心理学用語で『シャドウ』と言う事を、ふと浩介は思い出した。
美佐にならそういう側面を見せても構わない、浩介はそう思った。

「おっスイッチ入った顔になったな、じゃあサービス」
美佐はそう言うと、浩介の上から降り、浩介の顔の方に自分の尻を向けると、男性器を口に含んだ。

生温かい美佐の口の中で、意思をもっているかのように浩介の物はさらに大きく、そして固くなった。
「・・・ちゅっ・・くちゅ・・なんか・・・先っちょ濡れてる」
「恥ずかしいから実況しないでくれよ」
「ずちゅ・・ずちゅ・・そう言われると・・したくなっちゃな・・すごい・・固い・・」
美佐は右手で男性器の位置を固定し、頭を上下に動かして浩介の快感を高めていく。

「れろれろっ・・・ちゅっ・・ちゅっ・・はむっ」
5分程経っただろうか、舌を使い、掃除をするように亀頭回りを舐め取る美佐に浩介は視覚的にも、感覚的にも興奮した。
「美佐、ごめんもうイくかも」
「ん〜?・・ちゅっ・・くちゅ・・もうイっちゃうの?可愛い」
美佐は完全に攻めを楽しんでいた。
その妖艶な笑みは、浩介の肉欲を加速させる。

「いいよ?・・ぐちゅ・・のん・・であげるから・ずちゅ・・いっぱい出して?・・・んんんんーーー!!!!!」
最後に可憐な少女のような笑みを見せた美佐の口の中に、浩介は大量の精を解き放った。

先程まで見ていた夢を、浩介はもう思い出せなかった。
88『きっと、壊れてる』第7話(5/8):2010/09/23(木) 02:52:34 ID:MTlO7pBY
ベッドの中で二人、昼過ぎまでまどろんでいた。
「今何時だ?」
「ちょうど12時。お昼ご飯、食べるでしょう?」
「食べる。丼物が食べたい」
「食べるね〜お兄さん。わかった、ちょっと待ってて」
そう言いながら、美佐はベッドから出ると、キッチンへと向かった。
美佐の残り香が浩介の鼻にフワッと入ってくる。

良い匂いだった。
茜の香りが高原のような爽やかで、心が落ち着く香りなら、
美佐のそれは花畑のような華やかで楽しくなる香りだった。

キッチンへ立つ美佐の後ろ姿をボーっと見ていた時、浩介は重要な事を思い出した。

今日から楓が浩介達の家へ居候する。

浩介の脳裏に、先日の楓との会話が甦ってきた。

*************************************************************************
「夏休みが終わるまで居候させてほしい」
これが楓が俺達の家を訪ねてきた理由だった。

楓は今高校3年、受験生だ。
予備校に通っていて、その予備校が来週から夏期講習に入る。
その予備校は実家より俺らの家からの方が距離的に近い。
追い込みの時期だから、できるだけ移動の時間を減らしたい。
以上が俺達が住む家に、居候させてほしい理由だった。
両親の許可も既に取ってあるらしい。

別に他人でもあるまいし、泊まらせるのはまったく構わなかったが、俺には疑問がいくつかあった。

まず、楓は俺達が家を出た理由を知っているのか、という点だ。
俺は少なくとも教えていない。
荷物をまとめる俺を不思議そうな顔で見る楓に、理由など言えるはずがなかった。

当時は黙っていたものの、楓がある程度成長した時に、俺達の住所と家を出た理由を両親が伝えたのだろうか。
少なくとも、住所は教えてもらっていなければ、ここを訪問してきた説明がつかない。
そうすると楓は知っている、という結論になるが、わざわざ『予備校に近くなる』程度の理由で、
禁忌を犯した兄と姉の元へ居候しようとするだろうか。可能性は低いだろう。

すると、やはり楓は『何も知らない』のか。
だが何も知らない楓に、両親があんな形で家を出た俺達を頼らせるワケがないと思った。
それに、正月も盆も帰らない兄と姉に、何も違和感を覚えないのは不自然だ。

楓は何事もなかったかのように、昔のまま俺達に接している。
正直、わからない事だらけだった。
楓に直接聞くわけにもいかず、俺はとりあえず居候を許可した。
ただ、『両親に確認を取ってから』、『絶対に夏休みの間だけ』、最後に『週に1日は実家へ戻ること』という条件を付けた。
最後の条件は、茜だけではなく、楓さえも両親の元から奪い去るわけにはいかないと思ったからだ。

両親への確認は茜に取ってもらう事にした。
本当は茜との関係が健全になった今、俺が直接出向くべきなのかもしれない。
正直に言うと、もう少しだけ時間が欲しかった。

茜は、普段から定期的に母さんと連絡を取り合っているようだし、特に嫌な顔もせず引き受けてくれた。
その情報は、母さんから父さんへと必ず伝わるだろう。

もう少しだけ、待っていてください。
俺は心の中で両親にそう語りかけた。
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89『きっと、壊れてる』第7話(6/8):2010/09/23(木) 02:53:10 ID:MTlO7pBY
「はい、牛丼一丁お待ちっ!」
約20分後、どこで買ってきたのか、専門のチェーン店のような容器に入った牛丼が、浩介の前に出された。
「すごいな、本格的だ。・・・・うん、おいしい」
「でしょー?」
「お世辞じゃなくて本当においしいよ。美佐昔は料理あまり得意じゃなかったよな?」
「うん、練習したの。外食ばかりだと栄養も偏るし、お金も掛るからね。といっても、まだレパートリーは少ないんだ」

嬉しそうに自分の得意な料理について話す美佐を見て、皆成長し前に進んでいるんだな、と浩介は思った。
そして、10代の頃から家事全般を高水準でこなしていた茜に対して、今まで以上に感謝をして、
これからは少しでも茜が楽になるように家事を手伝おうと、心に決めたのだった。

「そういえば、茜ちゃんは料理上手なんでしょ?」
「あぁ、俺が家事をほとんどしないからな。家の中の事はアイツに任せっきりだ」
「ちょっとは手伝いなさいよねぇ。仕事は?何してんだっけ?」
「フリーのライターだよ」
「おー、かっこいいねぇ。バリバリ働いてるの?」
「いや、本人としては餓死しない程度に稼げれば満足だそうだ。今は無理に仕事入れなくても、俺がいるしなぁ」
「なるほどぉ・・とすると、時間は比較的自由に使える、か・・」
美佐は一瞬何かを考え込むような顔をした。
「美佐?」
「ん〜?いやね、普通の仕事してる人はさ、毎朝早く起きて仕事行って夜に帰るじゃない?
私としては『拘束時間長すぎじゃない?』って思うわけさぁ」
「確かに、出かける準備の時間とか移動時間含めると長いよなぁ」
「でしょ?税金も勤労もない国に生まれたかったわぁ」

以前付き合っていた頃も、真面目な話をしてお互いを高め合い、笑い合い、そして愛し合った。
そして4年の時を経て、再び美佐と同じように過ごしている。
浩介は他愛もない話をして美佐と過ごす時間が最高に楽しかった。

『運命』浩介は脳裏に浮かんだその言葉に、我ながらロマンチストだなと苦笑いした。
そして、次に浮かんだのは・・茜だった。
『宿命』茜と自分の関係を例えるなら、この言葉が一番ふさわしいと浩介は思った。

もし生まれ変わる事があるのなら、約束する。
その時こそ一緒になろう。

浩介は相手のいない約束をして、かけがえないこの時間、『運命』の大切さを噛み締めた。

美佐と会話しながら、ゆっくりと牛丼を食べ終わった浩介は、ふと携帯電話を手に取った。
メールが1件届いている。
茜からだった。
普段同じ家に住んでいる事もあり、あまり茜とメールしない浩介は、何かあったのかとメール本文を開いた。

内容は今日から楓が住むのに必要な物をいくつか買っていいか、という内容だった。
いつもは特別高い買い物をする以外、こんな連絡はしてこない。
なんで今日に限って、と思った浩介だったが、件名を見てその答えがわかった。

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From:茜
Sub :今美佐さんの家?

楓が今日からしばらく泊まるけど、生活用品買ってもいいわよね?
-----------------------------------------------------------

そういえば昨日は、先に寝てて構わないという連絡はいれたが、いつ帰るかは言っていなかったと浩介は思い出した。
連絡もなく、家にも帰っていない事を心配しているのだろう。
浩介はすぐに美佐の家にいる事ともうすぐ帰る旨を返信した。
引け目を感じる事もなく、素直に美佐と一緒にいる事を茜に伝える事が出来た。
『茜は大事な妹』もう少しでそう言い切れる気がした。
90『きっと、壊れてる』第7話(7/8):2010/09/23(木) 02:53:40 ID:MTlO7pBY
その日は水曜日だった。
1週間の内で一番疲れる日は?と聞かれたら、かなりの人数がこの水曜日を挙げるのではないだろうか。
明日も明後日も仕事、または学校。
当日を含めて、3日間我慢すればいいのだから、先が見えている。
けれどすぐに終わりが訪れるわけでもない状況が、今の巧の心境に酷似していた。

巧は黒髪の美女と初めて会った場所で、あの日と同じように隅田川が悠々と流れているのを見つめていた。
昨夜、雨が降ったためか、川の色が普段より黒く感じる。
川沿いのテラスにあるベンチに座っている巧は、先程自動販売機で買った缶コーラを自分の隣に置いた。

「時間ぴったりだね」
「・・・」

巧の前には、黒髪の美女が立っていた。服装もこの前と同じ、シンプルな黒いワンピースだ。
時刻は午後3時。巧の言う通り、約束通りの時間だった。

「この間は御苦労様」
黒髪の美女は川の方を向いたまま、ななめ後ろにいる巧には目もくれず、言葉を発した。

「本当に苦労したよ。あの人・・・なんか掴み所がないし」
巧は美佐と対面した時の事を思い出した。
昼行燈という表現が正しいのかはわからないが、飄々とした人物である事は確かだった。
そして、最後に一瞬だけ見せた冷徹な目。
巧の中で警笛が鳴っていた。
できれば、玉置美佐とはもう二度と関わり合いたくないと思っていた。

「そう、会話はしたの?」
「したよ・・完全に見下されてたけどな。もっと言えば好戦的だったよ」
「好戦的?」
「あぁ」
「そう、あの人・・・意外に優しいのね」
「優しい?」
「優しいじゃない。あの人は『もう二度と首突っ込むな』って警告してくれたのよ?理解できなかった?」
「・・・」
「・・・まぁいいわ」
黒髪の美女はそう言うと、立っているのに疲れたのか、巧と同じベンチに腰を掛けた。
巧との間には、もう一人ぐらい座れそうなスペースが空いていた。

「あぁ・・そういえば、電話でも話したけど念のためもう一度言っておく。『相手が悪かったね』だって」
「・・・」
「あの人はなんかヤバい気がする。普通じゃない。いや・・根拠はないけどそんな気がする」
「あなたに言われなくてもそんな事わかってるわ」
黒髪の美女は少しだけ不愉快そうな声を出した。

「なぁ」
「何?」
「そろそろ教えてくれないか?名前。何て呼べばいいんだよ」
「名前?別に好きなように呼んだらいいわ」
黒髪の美女は興味がないように、そう言い捨てると、長い髪をかき上げた。
「好きなようにって・・・」
「別に呼称なんて何でもいいのよ。判別できれば」
「・・・わかった」

「後もう一つ聞いてもいいか?」
「・・・」
「『村上浩介』って誰なんだ?・・・えーっと・・あんた、とはどういう関係なんだ?」
「・・・あなた、本当にわかってないのね」
「え?」
黒髪の美女はため息をつきながら、この日初めて巧と目を合わせた。
91『きっと、壊れてる』第7話(8/8):2010/09/23(木) 02:54:45 ID:MTlO7pBY
「お使いをするだけならともかく、事情を知るという事はあなたも関係者になるのよ?
何かあった時、知らなかったでは済まされない。玉置美佐はそういう警告をしてくれたのよ」
「・・・」
「後1度お使いをしてくれれば、1日だけデートでも何でもしてあげる。それで満足しなさい。
そして私とあなたの関係は終わり、その方があなたの為にもいいわ」
黒髪の美女はまくしたてる様に、喋った。
しかし巧は気付いていた。黒髪の美女は焦っている。
言っている事と、頼んでいる事が確実に矛盾していた。

「・・・とりあえず後1回のお使いって?」
巧は先程から気になっていた事は一旦忘れ、黒髪の美女が言う最後のお使いの内容を聞いてみる事にした。

「これをまた、玉置美佐に届けてほしいの」
黒髪の美女は口が開いたままのバッグを肩から降ろすと、中からA3サイズの茶色い封筒を取り出した。
受け取ってみると、手にかかる重さと封筒の薄さから、紙類しか入っていない事がわかった。
正直、中身より黒髪の美女が発した言葉の方に巧は気を引かれた。
「え・・・またあの人に?」
「えぇ、これで駄目なら違う手を考えるから。あなたはどちらにせよ最後だから安心して?」

巧は、なんでそこまで『村上浩介』と『玉置美佐』の邪魔がしたいんだ?、と言いかけたが、思いとどまった。
また小言を言われるのは目に見えていたし、これ以上は不味いと思ったからだ。

「それで、実際に行動に移す日はまだ待ってほしいの」
「しばらく様子を見るって事か?」
「そう、内心もう嫌になっているかもしれないし、私もリスクのある事はできるだけ避けたいから」
「・・・わかった。腹を決めたら連絡してくれ。それまでこれは預かっておく」
「えぇ、よろしくね」
「・・・」
「どうしたの?もう行っていいわよ」
「・・・あぁ、じゃあな」
巧はそう言うと、ベンチから立ち上がり、早歩きでその場を去った。

これ以上は本当に不味いと思ったからだ。
これ以上あの場所にいて、黒髪の美女に小馬鹿にされるような事があったら、
本気で襲いかかってしまいそうな衝動に駆られたからだ。
ここが、外で良かった。
巧は本気でそう思った。

あの生意気な女を自分に服従させ、凌辱したい。
あの小さな口に自分の男性器を咥えさせ、嗚咽を漏らさせたい。
半泣きのあの女の後ろから突っ込んで、激しく突きたい。

巧の中に、自分でも嫌悪するほどの下衆な発想が蠢いていた。

彼女は最後のお使いが終われば、1日オレに付き合うと約束した。
『体も許す』とは一言も言っていないが、こちらも『健全なデートです』等とは一言も言っていない。
正直に言えば、彼女があそこまで高圧的でなければ、ここまで付き合う事はなかった。
きっと前回のお使いすら投げ出して、いつものオレの、つまらない日常に戻っていた。

ここで彼女に言われっぱなしで終わってしまったら、オレの人生は一生つまらなくなる。そんな気がした。
男の意地か、小さいプライド。
どちらにするかはオレ次第だ。

おそらく、オレの頭はイカれてる。
・・・でもきっとあの女を一度は手に入れる。そう決めたんだ。

巧は黒髪の美女の方を一度も振り返らずに、歩き続けた。
少しだけ視界に入った川はやはり黒ずんでいて、しばらくは何色にも染まらない鈍行な輝きを放っていた。

第8話へ続く
92『きっと、壊れてる』第7話:2010/09/23(木) 02:55:46 ID:MTlO7pBY
以上です。ありがとうございました。ではでは。
93名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 03:31:24 ID:Ov/JsSpX
巧に死亡フラグ立ちすぎでワラ太
GJ
94名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 11:09:53 ID:cca+Vl+t
これから波乱がありそうな話でしたね。毎回楽しませてもらってます
GJ!
95名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 14:32:59 ID:MGGuF5+Q
>>92
寝取られは勘弁
96名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 15:54:37 ID:XOsLkA2i
>>92
同上
97名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 16:58:44 ID:8rPraZlU
まだ読んでないから流れは知らないけど誰かが騒ぎ立てるから注意書きしたほうが無難だな
98名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 19:37:56 ID:M9WUKW3A
ヤンデレに寝とられを入れるのはヤンデレを理解してない証拠
とっとと寝とられスレに行け
99名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 19:58:45 ID:lfAmRoGm
嫌なら見るな
100名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 20:07:12 ID:fq1x0/sm
NTRとかイラネ
101名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 20:08:05 ID:oKy9Q3Xd
作者さんは気にせず連載してほしい。
102名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 20:16:51 ID:gqYDneri
NTRあるなら注意書きして欲しいかな
注意書きしてくれれば問題ないです
某スレみたいに注意書き無いせいで荒れるのは勘弁
103名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 20:18:50 ID:NPFzTvVo
寝取られ展開はあり得ないだろ
お前ら脅え過ぎ
104名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 20:46:49 ID:MTlO7pBY
作者です
反応を確認しに来てみると、予想外のスレ内空気になっていて驚きました
ネタバレ的な発言になってしまうので控えていましたが、作中実際に寝盗られる描写は今後も一切ありません
登場人物の壊れた行動理念を表現したいがために、あのような描写を投下してしまいました
私の不注意のせいで、皆さんにいらぬご心配をおかけして申し訳ありませんでした

以後も、引き続き投下する予定です。もしよろしければ、また読んでやって下さい。では
105名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 20:52:28 ID:vgu5aHhi
続き楽しみにしてます
106名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 21:20:40 ID:X2c6NeLN
いいよ、いいよー作者さん
GJ
107名無しさん@ピンキー:2010/09/23(木) 23:52:32 ID:T3iYAeGj
>>104
GJです。NTR展開はなさそうって思ったけどなぁ…。感じ方は人それぞれか。
108名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 02:14:55 ID:7jiUFGE3
自分の嫌いなものは全否定したがるバカが
さも自分が多数派みたいな態度で騒いでるだけ
気にしなくていいだろ
109名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 02:19:30 ID:tb5kvPT+
エロパロ板というか、ピンクの粘着キチガイ率の高さって凄いよなー
全体的に粘着気質な奴も多いし。エロは人を狂わせるのかね
110名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 02:33:47 ID:nlQS2ZUI
でもキモウトの足は舐めたい
111名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 02:48:32 ID:ilZv3QvX
全年齢板より人が少ないから荒らしやすいだけだと思わないでもない

てかこのスレだと男は普通に姉妹や泥棒猫間で寝たり寝なかったりするんだがそれはいいのか
112名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 02:55:10 ID:jA5IF5dq
>>104
投下楽しみにます!
113名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 06:52:40 ID:vIa86Lq4
>>104
ありがとうございます。今後も楽しみにさせていただきます。
114名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 13:19:45 ID:euFPTd0W
まぁやっぱり何人も言ってるようにNTRとヤンデレは駄目だと思う。荒らしとかじゃなくて、真剣にな

本当に「お兄ちゃんより気持ちいい」みたいなNTR書いたら、その時めちゃくちゃ叩いてやったらいいし、それを荒らしとは思わないが
ただ、まだそういう描写があったわけでもないのに騒ぐなとは思うわな。草郎は止めろ
115名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 13:49:37 ID:d60Hp7ap
注意書けばいいよ
読みたくない人は読まなきゃいい話だし
というか無駄に嫌嫌言ってるのはヤンデレスレでやたら掘り返して叩いてた奴じゃないのか
116名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 14:15:29 ID:X8N1k47X
ヤンデレとは共通項もけっこうあるから
禁止すると今までに投稿されたものの大部分もひっかりそう
117名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 14:39:29 ID:WQ2WmMGS
118名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 15:02:28 ID:HiRj2VUS
ヤンデレでNTR展開とかありえないものを心配してどうする
119名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 15:11:15 ID:exEmd4xo
NTR駄目って言うならキモ姉キモウト主人公以外が登場するSSも禁止にしようぜ
120名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 15:49:33 ID:ilZv3QvX
>>110
お前は舐められる側だと何度言えば
121名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 16:30:05 ID:/5IqaiJK
姉や妹が他の男に寝取られるのは
キモ姉・キモウトという属性からしておかしいっちゃおかしいけど
(弟や兄一筋だからキモ姉妹なわけで)
姉妹の視点で弟や兄が泥棒猫に寝取られる話は有りだと思うし
もともと弟や兄の恋人だった女キャラが他の男に寝取られるってのも展開次第で有りと思う

ただしNTRは基本、鬱展開で読者を選ぶから
注意書きがあったほうがよさげかも
122名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 16:40:21 ID:GU5t9r3q
難しい…こちらの考えていない展開にまで、どう注意書きをすれば良いんだろう?
123名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 16:53:35 ID:3eBTRRPm
だよな
今回の作者だって自分ではNTR展開なんて考えてなかったっぽいし
匂わす表現にも逐一注意書きするのか?
124名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 17:18:52 ID:0nPMNmQM
姉妹視点で兄弟が泥棒猫に寝取られるってのは、
ふつうの兄や弟にとっちゃハッピーエンドだかr

おや、誰か来たようだ
125名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 17:49:49 ID:b7WCClU6
>>124…雉も鳴かずば打たれまいに…

もっとも姉妹側の思いを兄弟が知らない場合、気をつけようがないというか
防御不能だよな。まして兄弟の恋人からしたら、もう天災としか言いようがない。
126名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 18:12:27 ID:euFPTd0W
つか、まだ描写されたわけでもないのにNTRとか騒ぐなよとは思うんだが、
注意書きさえしてりゃNTRでもOKみたいな流れもどうかと思う
ヤンデレとNTRは水と油だし、そこをOKにしたら絶対荒れる。嫌なら読まなきゃいいって言うのもわかるが、ちらほらレス見てたらやっぱりNTR嫌いは多いんだから
127名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 18:35:06 ID:b7WCClU6
>>126
NTRの是非自体にはあまり関心無いのですが、そこに至る前にクレームが出ちゃうのは困りますよね。
姉妹がに寄ってくる兄弟以外の男という名の「五月蠅い虫」をキャラクターとして出すことすら禁じられるか、
あるいは「こいつは○○です」とネタバレ全開の注意書きをしなければならないとなると…
128名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 18:39:29 ID:htw8cS8w
寝とり連呼して騒いでるのってヤンデレスレの荒らしだろ
自分の意見が話題にしてもらえたので味を占めたな
129名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 19:23:01 ID:IdYYYRzZ
まー何にせよ作者が本来想定していた筋書きが周りの五月蝿い声によって歪めざるを得なくなるのは良くない
それがNTR一直線だとしても
130名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 19:28:55 ID:W6MErjK9
文句があったらそっとNGしろ
記憶から消せ

無価値なものに割くべき記憶領域はない
131名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 20:03:15 ID:ZhuBDjpm
そろそろ三つの鎖がクル予感!
132名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 20:14:07 ID:nE+ENI66
幸さん...流石に死なんと思うが、
どうなのか、楽しみです!!
133名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 22:29:06 ID:hlOYLarl
キモ姉最高
134名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 23:42:01 ID:u8ROOha6
>>114
96だけどあってからじゃ遅いから今のうちに言ってるの



男が犯しそうな雰囲気だったから念のためにレスした
NTRがあったら俺を含め文句言う奴や不快に思う奴がいる、でもなければ文句言う奴はいない
だったら入れないでほしい
NTRの専用スレはあるし、わざわざ揉めるようなのを入れなくてもいいじゃない

でもNTRがないようで安心した

135名無しさん@ピンキー:2010/09/24(金) 23:45:00 ID:81gWYa0w
>>134
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
136名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 00:15:03 ID:OW9JKP/h
>>134
まだ95,96は「この後の展開としてNTRは勘弁してくれよ〜?」と言う風に聞こえるが
98は明らかに荒らしだろ
見てて気分悪くなったわ
137名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 00:21:07 ID:R+5nyzfV
つまりこのスレでは、キモ姉妹に言い寄る男が返り討ちに遭うとか
謀略に乗せられて銀座通りで裸踊りを踊るハメになるとかの
お話を書くのは禁止なんですね?
男が出てきた時点で警告が入ってしまいますから。
138名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 00:34:24 ID:OFaGKRpN
>>137
受け手の感じ方・受け取り方次第としか言いようがないかな
あとは多少荒されてもスルー、叩かれても耐えれる作者のメンタルを期待するしかない

後者はよくわからんけど前者は個人的には欲しい描写だなぁ
139名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 00:44:19 ID:HATaol8D
お兄ちゃんがキモウト以外と付き合ったらNTRなの?
話を盛り上げる過程だとしても?

だとしたら書き溜めしてたSSがボツになりかねないんだが・・・
教えてエロい人
140名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 00:51:18 ID:OW9JKP/h
>>139
誰もそんな事言ってないぞw
141名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 01:22:59 ID:FiivI4mj
読み返してないのでうろ覚えなのですが、『きっと、壊れてる』は茜目線の物事の描写や心理の描写を極力避けていて、茜の行動や心理は浩介なり美佐なり巧なり作者なりを通過してでしか読み手にわからないようになってるんですよね。
そういった形式の話のなかで、ほぼ浩介と同等の濃さでされている巧目線での行動や心理の描写が、茜にかなり危険な好意を抱いているのがよくわかるもので、しかもそれに対する茜の反応と思惑がわからないから、不安に感じるのだと思います。
(そういった理由で、巧目線の部分を読んでいる感覚が、寝取られものを読んでいるときのものと似てしまうのかもしれません)
こういった問題(と呼べるのかどうかはわかりませんが)は起こらない方がいいのですが、しかしこれも作者さんの話の組み立て方が上手な証拠だと思います。
それなので話の旨味を「寝取られ」だと一種の思考停止で勘違い判断せずに落ちついて読むのが一番だと思います。
142名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 01:26:35 ID:HATaol8D
>>140
ごめん、今日になって久しぶりにスレを見たからまだ92氏のSSを読んでなくて、>>134の「男が犯し〜」っていうのを主人公指してるもんだと勘違いした
半年ROMります
143名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 01:31:10 ID:IEd262kT
てすと
144キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:34:07 ID:IEd262kT
話の方ができたので載せていきたいと思います。
今回も途中で規制がかかった場合は保管庫の方を使い続けていきたいと思います。

作中 エロあり
145キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:35:39 ID:IEd262kT
(一人side)

「兄さんお出かけですか?」
「あぁそうだよ」
「どこにいくんですか?」
「えぇっとまぁ散歩みたいなもんだよ」
「そうですか、車に気をつけてくださいね。あ、すぐ帰ってきますよね?」
「たぶん大丈夫だと思うよ。」
「ならいいです。行ってらっしゃい兄さん。」
「ん、行ってくる〜。」

バタンッ!!

こんな風に外に出たはいいものの身体からは汗がダラダラ出ている。
暑い……これじゃ麻奈ちゃん見つける前に俺が干からびるぞ……。
携帯とかほとんど使わないからアドレスも聞いてないし…というか持ってきてないな…これじゃ探すのにも一苦労だ。
あたりを見回しても住宅が並んでいるだけでこの暑さの中で外に出ているのは俺ひとりだけだった。

とりあえず日陰でも探して休まないと死にそうだ……。

「あちぃ……それにセミさんも頑張りすぎだろ…。お前達死んでいいころじゃないのか……?」

時間は12時を過ぎた頃。
空から照りつける太陽が燦々としており身体から水を奪っていく。
アスファルトから映える陽炎は頭の中のようにゆらゆらとしている。
意識もなんだか朦朧としてきた。
少し先に人がいるようだけどかすんで見えない。

「あ!!!一人くん!!!!こっちです〜!!!!こっち〜〜〜!!!!」
スタタッ

どうやら天使が迎えに来たのかもしれない。そうだ、桜のこと頼むように言っておかないと……。

「天使さん、妹のこと頼みます…。」
「何言ってるですか!!!私ですよ!!麻奈です!!!」
「麻奈ちゃん…?!麻奈ちゃんって天使だったの……?」
「ふざけたこと言ってないで早く家にきてください!!!水ならいくらでも出しますから!!」
「うおっ!?麻奈ちゃん引っ張らないで!!!痛い!!痛いって!!!」

半ば強引に麻奈ちゃんに連れていかれた。意外と力が強い。怒らせたら怖いタイプなのかな?

「はいお茶です!!!それにしても体力ないですね〜もっとガツーンとしないと女の子を守れませんよ!!?」
「お茶ありがと、なんだか最近体の調子が悪くてさ、まだ学校に慣れてないのかもしれないからね。」
「そうなんですか〜。なら一回ゆっくりしてからケーキづくりの練習にしましょうか?」
「いや大丈夫、お茶飲み終わるころにはよくなってるから。」
「なら大丈夫そうですね!私は先にある程度用意しておきますから終わるまで待っていてください!」

ひとりだけになってしまった。
改めて麻奈ちゃんの部屋を見ると俺と桜の部屋とは真逆の可愛い部屋にみえる。
一言でいうとぬいぐるみだらけだ。あちこちにネズミさんやらクマさんのぬいぐるみがある。
というか初めて女の子の部屋に入った。今さらだけど恥ずかしいな。
146キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:36:55 ID:IEd262kT
(麻奈side)

一人くんと二人きりです!!!この前みたいに桜に邪魔されないから仲良くなれるチャンスです!!!!
これはデートなんじゃないですか!!!?しかも最初から家でデートだなんて/////
よし!!!今日は頑張るです!!!一人くんとケーキを食べたりしてイチャイチャするですよ!!!
卵よし!!砂糖よし!!薄力粉よし!!!その他よし!!準備バッチシです!!!

「一人くん〜!!準備できましたよ〜!!!」
「早いね、もう準備できたの?」
「そりゃ楽しみにしていたんですから〜!!それに早く作りたいかな〜って思ったからです!」
「ありがと麻奈ちゃん。」
ナデナデ
「っ〜〜〜〜!!!!な、何するんですか!!!?」
「うわぁ!!そんなに驚かないでよ!?この前もそうだったけど。」
「いきなり頭ナデナデされたらだれだってびっくりしますよ!!??」
「そういうものなの?!桜はいつも嬉しそうだけど…?」
「桜は普通じゃありません〜〜〜!!!それにいつもナデナデってどういうことですか!!?」
「桜に感謝するときとか、なんとなく気分でやってるけど?」
「むむむ、兄妹で変なのですか……これだと太刀打ち出来ないです。」
「ま、まぁそんな細かい意味はないから安心していいよ。」
「そうなんですか?」
「うん、そう。」
「そうですか、ならいいです!早速ケーキですよ!!!」

(数時間後)

「どうですか〜?これが手作りケーキの破壊力ですよ!!」
「これは……美味い!!麻奈ちゃん美味いよこれ!!!」
「当たり前ですよ〜!!はい、あ〜んです!!」
「麻奈ちゃん!!?」
「あ〜んです!」
「あ、あ〜ん。モグモグ」
「どうです?美味しいですよね!?」
「お、美味しいよ…麻奈ちゃん強引な性格なのか……。」
「強引じゃないです!!!桜がやっているんですから私もやるのですよ!!」

なんかおかしい気がするけど気にしちゃだめだ。
147キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:38:00 ID:IEd262kT
(数時間後)

「今日はほんとありがとね麻奈ちゃん。」
ナデナデ
「っ〜〜〜〜〜!!!恥ずかしいですよ!!。」
「ホント動物みたいでかわいいな〜。」
「動物じゃないです!!!人ですよ!!!!…それにかわいいだなんて……。」
「麻奈ちゃんは十分可愛いよ。あ、そうだ!そういえば麻奈ちゃんはいつ桜と仲良くなったの?」
「な、なんでですか!?」
「いつ桜と仲良くなっていたのかな〜って。」
「そ〜ですね、多分高校の初めのころですよ。」
「何がきっかけで?」
「お話してたらです。性格があっていたんだと思いますよ?」
「ふ〜ん意外だな〜。」
「意外とは何ですか!!!私は桜とすっごく仲良しなんですよ!!?」
「お…おお、じゃあ桜が欲しがりそうな物ってわかる?」
「そうですね〜〜一人くんが渡せば何でもいいと思いますよ。」
「俺が?」
「一人くんが桜のことを考えて選んだってことに意味があるんです。女の子はそういうものなのですよ!!」
「そうか、そうなのかもね。ありがと麻奈ちゃん。」
「いえいえです。あ、桜の分のケーキはもって帰らなくていいですか?」
「ケーキは誕生日のドッキリにしようと思っているんだ。だからまだ遠慮しておくよ。」
「そうなのですか〜!一人くん優しいお兄さんですね!!!私もこんなお兄さんが欲しいです!!!」
「は、恥ずかしいな〜。そうだ、麻奈ちゃんも誕生日教えてくれたら一緒にパーティーしようね。それに妹ならいくらでも大歓迎だよ。」
「はぅ……冗談なのに!!一人くんはもしかしてシスコンさんなのですか!!?」
「…シ…シス。」
「一人くん?」
「ぁ……ぁあ…。」
「一人くん!!!どうかしたのですか!!?」
「ぬわぁあ!な、なに麻奈ちゃん!?」
「なにボケっとしてるんですか!!!!」
「いや、なんでもないよ……ちょっとボケっとしてただけ…。」
「顔色悪いですけど本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、心配かけてごめんね。」
「本当に桜と一人くんは似ていますね〜!!不思議なところもそっくりです!!」
「そうなのかな。あ、麻奈ちゃん今日はもう帰るね。」
「あ、もう少しゆっくりしていってもいいんですよ?」
「いや、よしておくよ。桜がご飯作っていると思うから。」
「そうなのですか…少し寂しいですね。」
「ごめんね麻奈ちゃん…それと今日はありがとね。」
「一人くんが頑張っているのを応援するくらいお安いなのです!!玄関までですけど送りますね。」

「それじゃ麻奈ちゃんまたね。」
「バイバイで〜す!!」
バタンッ

うぅ…一人くん行っちゃったよ…でも今日は楽しかったです!!
それにしても一人くんが急に黙り込んだのは何か理由があったのかな。
それとも一人くんなにか昔にあったのかな…。
148キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:39:09 ID:IEd262kT
(一人side)

ケーキ美味しかったな〜。ある程度覚えたし紙にまとめたから一回練習すれば大丈夫か。

日も傾きだした。
辺りは夕日が影を作り、暖かさの中にどこか静けさを感じさせている。
行くときもそうであったように道には人の気配は感じられず、まるで世界に一人だけいるかのような錯覚が起きる。
やはり今日も体調が悪いのだろう。昼の時といい、ボケっとしていたときのことも。
それでも明日だけは意地でも…。

「明日は桜と買い物か……久しぶりだな。」

帰り道の寂しさを紛らわすためにひとり呟いた。
返事が返ってくるわけでもなく、声は闇の中に消えていった。

もうすこしで家につくはずだ。
そうしたら家に桜もいるはずだしこの寂しさは消えるだろうと頭に思い浮かべながら歩いていた。
道をよく見ると懐かしさがわいてくる。
しかしどこか変わっている。どこか違っていた。
だからこそ今を大切にしていこう思った。
学校に再び行けるようにもなったし、麻奈ちゃんや紗耶ちゃんとも仲良くなった。
少しずつだがこうして昔のように人と関わりを持てるようになった。

___桜のおかげだな

だからこそ俺がしっかり者にならないとな。

あともうすこしだ、早く歩くか。

(桜side)

兄さん……遅いです。
どこにいるんですか…早く帰ってきてください…。
はぁはぁ……兄さん!兄さん!!兄さん!!!

兄さん、散歩じゃないんですか…!?
もしかして事故に巻き込まれたとか……いやです!そんなの絶対にありえません!!
連絡も取れません…心配です…兄さん…。

兄さんのベットに入って慰める。
私は兄さんがいなくて心配なのになにをやっているんでしょうか…。
股間はおもらしをしたみたいに濡れてしまっています…。
でも兄さんの匂いがします…。
今はこの快楽に溺れても…。

「兄さん…ハァハァ…クンクン…クチュクチュ…っ!ハァハァ…兄さんのが入ってくるよ…ぁ!にいさん!!にいさん!!
にいさんごめんなさい…えっちで汚い妹でごめんなさい!…ハァハァ…でもにいさんじゃないとだめなんです!!!
いいですにいさん!!もっとわたしを犯してください!!ずっとにいさんといられるからだにしてください!!
クチュ…あぁ!!兄さん気持ちいいです!!ひゃ!にいさん痛い!!!いたいよ!!
だめ!!もうだめです!!イク!イッちゃいます!!!兄さぁあああああん!!!」

ハァハァ……兄さん……汚い子ですみません……。
でも…兄さんしかいないんです…。
兄さんがいないと私……。

149キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:40:55 ID:IEd262kT
ピンポーン!!

兄さん!?兄さんなんですか!!?は、早く兄さんを兄さんを!!!!

私は急いで着替えて玄関を開けました。
ですがそこにいたのは……。

ガチャ
「兄さん!!?」

「……コホン…すみません。こちらに紅瀬一人さんはいますか?」
「あっ……。」
「すみません、紅瀬一人さんはいますか?」
「は、はい…私の兄ですが今は出かけていますのでよろしければ中で待っていただけますか?」
「お心遣い感謝します。」
「いえ、どうぞお入りください。」

兄さん、誰ですかこの人は…私は兄さんのことは何でも知っているはずです…。
くやしいですが綺麗な人です。歳は兄さんと同じくらいかもしれません。
私の小さな胸よりもずっと膨らみが大きい胸です。それに振る舞いの一つ一つがとても優雅です。
一番気になるのは髪の色がブロンドで眼の色も私とは違う青色。日本人のそれとはかけ離れた容姿。

「あのすみません、兄さんとはどんな関係で?」
「今日はそのことについて話に来たので一人が来てからでいいでしょうか?」

兄さんを呼び捨てで呼んだなんて……何者なんですか兄さん。
許しません…絶対に許しません…。

(一人side)

ふぅ…もう目の前だ。
昼よりかは日差しもなかったから倒れることはなかったしスムーズにいけたな。
ありゃ…鍵持ってくるの忘れてたな。まぁ桜がいるだろうから大丈夫か。

鍵を探してポケットの中に入れていた手でそのままインターホンを押す。
家の中からスタタッと桜の歩く音が聞こえてきた。

ガチャ
「兄さんお帰りなさい。」
「ただいま、桜。」
「兄さん今お客さんが来ています。兄さんに会いに来たようです。」
「そう、随分珍しいね。それじゃ先に居間に行ってるよ。」
「はい、わかりました。私はお茶を用意しておきますね。」

居間に入るとそこにいたのは金髪の女性だった。俺にこんな知り合いがいたかと思考を張り巡らしたが全く覚えがなかった。

「会いたかったぞ一人!!」
ガバッ!!

いきなり抱きつかれた、自分でもなにが起こっているのかわからなかった。
「一人!!一人!!!あぁ〜本当に嬉しいよ!君に会えてよかった!!」
「ちょ、いきなり抱きつかないでください!!!」
「あ、あぁすまない…つい嬉しくて…。」
「で、改めてお訊きしますがどちら様ですか?」
「え…?なにを言ってるんだ一人…私を忘れたとでも言うのか…?」
「すみません本当に覚えてないです。」
「嘘だ!昔から好きだったじゃないか!!ずっと、ずっと!!君は憶えていないのか!!?」
150キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:42:17 ID:IEd262kT
肩を掴まれた。彼女の頬には涙が垂れている。どうやら本当に俺の知り合いらしい。

「落ち着いてください!話なら十分聞きます。私も思い出すかもしれません。」
「落ち着いていられるか!!!君のためにここまで来たというのに!!!なんてバカバカしいんだ!!」

顔がものすごく近い、彼女の顔は怒気にみちていたが声にはどこか涙が混じったように聞こえた。

「一人っ!!なんで!!なんでだ!!!ぐすっ…私はずっと君に逢いたくてしかたがなかったのに…。それなのに!!君ってやつは!!」
「落ち着いて!!! ってちょっtうわぁああああ!」

彼女を落ち着かせるために彼女の手を抑えたが力が強く彼女に押し倒されてしまった。
そして運が悪く、ちょうどそこで桜がお茶を持ってきてしまった。

「兄さんお茶持ってきまし……な、何やっているんですか…兄さん。」

あぁやばい完全に誤解されてる……。このままじゃ今日は一緒の部屋じゃ寝れないな…はは…。

「兄さん?お客さまと戯れるのは後にして下さい。それにまだちゃんと自己紹介していないようですし早くしましょう?」
「あ、あぁそうだな…。すいませんどいてくれますか?」
「妹さんも来たようだしそうしようか、一人さっきは取り乱してすまなかった……このとおりだ。」

彼女は立ち上がると俺に目をあわせて申し訳なさそうに謝った。
育ちの良さを感じさせる謝り方だ。どこかの社長娘とかなのかもしれない。

「お名前を教えていただけないでしょうか?」
桜が切り出した。桜の顔はどこか好奇心にあふれた表情だった。彼女に興味があるのだろうか。

「改めて名乗ろう、私の名前は伊吹瀬里朱だ。どうだ?一人思い出してくれたか?」
「せ、せりす…?」

「そうだ、お前の彼女にして許嫁の瀬里朱だ。」

理解できなかった、そう言うしかない。
隣座っている桜の見ると表情は読み取れなくなっていた。ただ、黒い何かが見えた気がした。
151キモウトとひきこもり兄W:2010/09/25(土) 01:48:26 ID:IEd262kT
今回はここまでです。
今回は !や? が多くなり読み辛いかと思いますが楽しんでいただけたら僥倖です。
あと今までのを個人的に保管しているので加筆したのをサイトで配布するかもしれません。

その際は本人確認のためここにリンクの載せるやも知れないので事前に意図を説明しておきます。

それでは
152名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 04:54:10 ID:0/eKs90l
>>137
意味がわからない
誰もそんなこと言ってない
話がややこしくなるから無理矢理屁理屈こねないでくれ
153名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 05:53:03 ID:yWT6E5n3
>>151
エロありGJ。
154名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 06:53:18 ID:o9a7QXQD
乙でした
どうして俺には金髪碧眼の許嫁がいないのだろう

……なんてレスを書きかけで寝落ちしてたら
朝から妹が洗面所で髪の脱色始めて
薬品臭くてたまらんのだが
155名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 17:18:11 ID:o+xKE10q
その臭いを嗅いだ時点で既に奴の術中にある
随分時間も経ってるし、もう・・・
156名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:14:25 ID:QybLr5FH
職人さんGJ、次回以降の妹の活躍が楽しみです

そして>>154にはそろそろ金髪碧眼の許嫁ができた頃かな?おめでとう!
157名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:37:35 ID:jAnzJA/s
金髪なら青よか緑の瞳の方がいいな
158名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:39:51 ID:c1VFkqat
それはお前のイメージってだけで
159名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 18:56:37 ID:W/lwNXWV
かわいければそれでいい
160名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:27:36 ID:OW9JKP/h
>>151GJ
俺も便乗して、試作コメディを投下。
注意:パロネタあり。エロなし。
161河童の苦悩(1/6):2010/09/25(土) 19:29:16 ID:OW9JKP/h
やあ、みんな!俺の名前は明神河童(ミョウジンカッパ)。
自他共に認めるイケメン(池で泳いでいそうな顔面)だ。
今日は息抜きとして、みんなに俺のイケメン振りを伝えられればと思っている。

あれは、いつだったか。
雨で川が増水して近所の野良猫が流されているところを発見した俺が、
猫を華麗にスルーして、クラスのマドンナである珠代ちゃんに告り、そのまま勢いで抱きつこうとした時の話だ・・・。

「一億年と五千年前からあっいっしってっる〜!!」
どこかで聞いた事のある歌を歌いながら、
勢い良くバタンッと俺の部屋のドアを開けて侵入してくる奴がいた。
とりあえず、心の中でツッコんでおこう。歌のチョイスが古いんだよ。
「オイ!邪魔すんなよ!これから俺の武勇伝をみんなに聞かせようと思ってたのに!」
「何言ってんのお兄ちゃん、珠代先輩にビンタされた時の話なら、それお兄ちゃんの武勇伝じゃないから。珠代先輩の武勇伝だから」
「うるせぇ!珠代ちゃんはツンデレなんだよ!猫だって後で助けようと思ったんだ!」
「結局、お兄ちゃんの同級生の出来松さんだっけ?川に飛び込んで助けたんだよね〜。もう珠代先輩メロメロ」
「ふんっだ。本物のイケメンは嫌いだ。で?お前何しに来たんだよ?」
「いやだな〜愛するお兄ちゃんに会いに来たに決まってるじゃない!!」
あぁ・・・キモい。

コホンっ紹介が遅れてすまんね。
このだいぶネジが外れていそうな女は俺の妹、明神木野子(ミョウジンキノコ)だ。
「アッチョンブリケ」とは言わない。それはピノコだ。
肩ぐらいまである茶髪がビッチっぽいが、彼氏はできた事がない。理由はすぐに話そう。

何?名前がおかしい?
しらねぇよ!休日の昼間っから寝室でイチャついてるアホ夫婦(両親)に言えよ!
俺の名前なんてアレだぞ?
母さんがカナヅチだから、溺れた時助けてくれるようにって名付けられたんだぞ?
なんで生まれたての子供頼りなんだよ!親父!てめーが助けろよ!!

ハァハァ・・。まぁそれはひとまず置いておこう。
木野子は俺の一学年下。つまり高校一年になるわけだが、
頭にどういう衝撃を与えればこうなるのか、俺の事が大好きらしい。LIKEではなくLOVEだ。
黙っていればソコソコな容姿なのに非常に勿体ない。

古くは幼稚園の時にお遊戯で、俺と手を繋いで踊っていた女の子を積み木で殴り、
最近では学校の文化祭、『未成年の主張』とかいう古臭いイベントで、
「お兄ちゃん〜〜〜〜!!愛してる〜〜〜〜!!手出したメス豚は・・・ブっ殺すから〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
と叫んだ何処へ出しても恥ずかしくない、真性のキチ○イだ。

そのせいで、せっかくイケメンに生まれた俺まで年齢=彼女なしというこの状況。
「どうしてくれんだよ!」
「何が?それよりお兄ちゃん!遊ぼうよ〜。ツイスターゲームしよ!」
「やらねぇよ!どこに兄妹二人でツイスターゲームやる奴がいるんだよ!」
「じゃあバッファローゲームは?」
「バッファローゲーム??聞いた事ねぇなぁ。どんなゲームよ?」
「じゃあ一度やってみようよ!う〜んとね〜まずお兄ちゃんが頭に指でツノをつくるの」
「こうか?」
頭の横で人差し指を伸ばして角っぽくみせる。

「そうそう!それで〜下を向いて木野子めがけて突進してくるの!」
何かオカシイと思いながらも言われた通り、角を突きだしたまま、木野子に向かって小走りしてみる。
ムニュン
「?」
この感触は・・・。木野子の胸だった。
162名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:29:30 ID:c1VFkqat
wiki見たら画像掲示板とか出てたけど要らんだろ
こういうアホが増長するだけで作者の迷惑

196 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/09/17(金) 05:53:17 ID:PMZHWs3C
こんなナルシストのオナニー野郎にキャラクターデザイン(笑)で粘着される方がよっぽど作者のモチベ削れると思うが

124 名前: Nice@名無し 2010/09/06(月) 23:23:55 ID:QsctEw6w0
ヤンデレ家族フィナーレおめでとうございます
ttp://freedeai.saloon.jp/up/src/up1925.jpg
ttp://freedeai.saloon.jp/up/src/up1926.jpg

完結記念に作者様にご感想を。
ヤンデレ家族と傍観者の兄のテーマに帰結した楽しめる作品でした。
予想していたシナリオに近いものだったので、余計にそう感じるのかもしれません。
(ラストのシーンがやっぱりジミー君が一人プラモで作ってるっていう予想が大当たりでした。)
傍観者が主人公であること、ヤンデレ家族が物語りの軸になること、
魅力的なキャラクターがどんどん出てきてもそこはぶれていなかったのが素敵でした。
連載中IFの話を読む限り、(物語の)人々は過去がどうあれ今の現実と日常・人付き合いを大事にすべき・・・
という暗喩が含まれていると思っていましたが。

キャラクターデザイン面で言えば、
ジミー・ロマンス:90年代ギャルゲー主人公タイプ(東鳩1タイプ)
弟:2000年代ギャルゲー主人公タイプ(東鳩2タイプ)
妹:可愛い普通の妹
葉月さん:物語のエンジン役?美人
などなど勝手に憶測してました。
キャラクター重視の後日談とかあれば読みたい位どのキャラも良かったです。

最後に完結お疲れ様・おめでとうございます。
163河童の苦悩(2/6):2010/09/25(土) 19:30:06 ID:OW9JKP/h
「バッファローーーー!!やったね!お兄ちゃん!見事乳首にクリーンヒットだよ!」
「くだらね〜〜〜〜〜!!」
何この下賤な遊び!考えた奴馬鹿じゃないの!?
「いや〜お兄ちゃんさすがだね!木野子の乳首に命中率100%!!ちなみに惜しいと『ニア・バッファロー』って言うらしいよ」
「知るか!!妹の胸触っちゃったじゃねぇか!!どうしてくれる!!」
「いやだなぁ!毎晩どさくさに紛れて、触ってるじゃない!」
「嘘をつくな!嘘を!俺がいつ触った!?」
「寝てる時」
「何?」
「だ〜か〜ら〜寝てる時だって。毎晩、木野子がお兄ちゃんのベットに潜り込んでるもの」
「何〜〜〜〜!!!聞いてねぇぞ!そんなの!・・・いや待て、嘘だろ?それ。もし本当に潜り込んでたら、お前は朝まできっといるはずだ!!」
「うん。そうしたいのは山々なんだけどねぇ〜。朝立ちしてるの見たら我慢できなくなっちゃうから」←頬を赤らめながら言ってる
「そこかよ!俺が怒るから、とかそんな理由じゃなくて!?・・いやそんな事はどうでもいい。じゃあ本当に毎晩俺のベットに潜り込んでいるのか?」
「うん」
ガーン。神様、いや河童大明神様。俺はモテないばかりについに実の妹に手を出してしまったようです。
「まぁまぁドンマイお兄ちゃん!大丈夫よ。お兄ちゃんの好きなエロ小説なんか、毎晩兄妹でヤってるじゃない。うらやましいなぁ」
「はい仮にも女子高生がヤッてるとか言わな・・ん?・・・お、お前!!なぜそれを!?」
「この前、部屋漁った」
実は河童は二次元妹萌えな男だった!!

「ふざけんなよ!!なんで勝手に人の部屋漁るの!?」
「まぁまぁ、それはいいじゃない。それよりお兄ちゃん!あんな妹駄目よ!暗いし、何より貧乳っぽいじゃん!」
「お前はなんっっっにもわかってない!そこがいいんだよ!あの子は俺の理想の妹なんだよ!!
うるさくて、馬鹿で、チビのくせに胸だけは立派な現実の妹よりな!」
ちなみにこいつの胸はDカップで、いまだ成長中らしい。
・・・いや・・・なんで知ってるの?って言われても、サイズ上がる度に無理やり報告してくるんだもん、そりゃ覚えるよ。
「ははは、現実みなよ〜お兄ちゃん」
「うるさい!うるさい!もう出てけ!二度と入ってくんじゃねーぞ!」
「あっ待って、せっかく新しく買ったブルマで誘惑しようとした・・」
「バタン!!」
フー。木野子を追い出し、ドアを締めてやっと静かになったぜ。
ちなみに、あの木野子(アホ)が最後に言っていたのは、俺がブルマ好きという根も葉もない噂をどこからか聞きつけてきたからだ。
別に嫌いではないが、『ナイスブルマ!』と叫ぶほどファンでもない。
一体どこから、そんな噂が出始めたのか。

そういえば昔、俺達が今通っている高校に異常なほどブルマが好きな校長がいたらしい。
そいつはブル魔王と恐れられ、時代の流れでブルマが廃止される折には、
国会議員に立候補して法律でブルマ着用を義務付けようとしたらしい。
立候補者締切日まで体育教師総動員で監禁し、陰謀を食い止めたその事件は、
ブル魔王の伝説として代々語り継がれていく事に・・はならない。
その後、ブルマ泥棒で逮捕されるから。学校のタブーになりました★

ブル魔王よ・・今は一体どこで何をしているのか・・・。
「バタンッ」
人が感傷に浸っている時に誰かが俺の部屋のドアを勢いよく開ける。
何やら凛々しい顔をした老人が立っていた。
誰だ・・コイツは・・俺の拳法かなんかの才能を見込み、迎えに来た仙人かなんかか・・・?
それとも、何かの力に覚醒しようとしている俺を止めにきた暗殺者かなんかか・・・?

「河童よ。ワシのコレクションNO:298ミキちゃんのブルマ見なかったか?」
・・・ブル魔王ここにいた。はい、祖父でした。

「ふざけんなよ!!なんでせっかく伏線にしようとしたのにすぐ出てくるんだよ!!」
「ワシのマキちゃんのブルマ知らんか?」
「知らねえよ!!ミキちゃんだろ!?ボケきてんならその悪趣味やめやがれ!!」
「孫が冷たい・・」
泣きそうな顔をしながらトボトボと引き返すブル魔王。
残念ながら、ちっとも悪いとは思ってないぜ!!
あいつのせいで俺のあだ名はしばらく『ブルマ三世』だったんだぞ!!
確かに大泥棒の孫だけど・・ってやかましいわ!!
164河童の苦悩(3/6):2010/09/25(土) 19:31:07 ID:OW9JKP/h
もうやだこの家族。
ん?そういえば、今日はめずらしく木野子(アホ)は一回で引き返したな。
普段は、追い返しても追い返しても粘り強く部屋に入ろうとするんだが・・。
どうも胸騒ぎがして、俺の部屋がある2階から階段を下り、様子を見に居間へ行ってみた。

いた!テレビを観てやがる。
しかも近っ!ソファーに座らず、テレビの前に正座して30cmぐらいの距離で凝視してるよ。目悪くなるぞ。
何をそんなに熱心に観てるんだ!?

「今日は最近巷で噂のアイドルグループ、MKI24の皆さんに密着取材しま〜す!」
元気な声で、はしゃいでいるように魅せる女子アナウンサー。あいつらも大変だな・・・。
で?そのMKI24とやらが木野子は好きなのかな。パッと見、普通のアイドルグループに見えるが。
再度テレビを盗み観る。

左端の髪をツインテールにしている小柄な女の子がインタビューに答えるところだった。
「わたし〜、今日はお兄ちゃんのパンツ穿いてるんですよ〜もう幸せで死にそう!!キャ〜!!」

!!!!!!!!!

それに負けじと、左から2番目のポニーテールで長身の女の子が前に出る。
「わたしなんか〜!今朝、兄さんの眼球舐めてきゃった〜!!ホント美味しかった〜〜!!キャ〜!!」

!!!!!!!!!

な、何この子たち・・・。
放送していいの?これ。ツインテールとポニーテールって純真の証じゃないの・・?

プロ根性か、女子アナは何事もなかったかのように爽やかな笑顔で、リポートを進める。
「ははは、ご覧のようにM(マジで)K(キモい)I(妹)24(人のグループ)の皆さんは、日々自分のお兄さんへの愛を演技や歌で表現しているわけです。」

「嘘こけ、普通に行動で表現してるじゃんか・・・」 ←思わず声に出したツッコミ

放送席の男性アナが一言。
「すごいですねぇ」
「本当に皆さん、お兄さんへの愛で溢れていますよね!以上!MKI24の皆さんでした〜!!」
再び放送席。
「いや〜アイドルの世界も変わりましたねぇ。」
男性アナの隣にいる女子アナが、付け足す。
「ちなみに年に1度のファン投票で見事第1位に輝いた妹さんには、NASAプレゼンツ『お兄ちゃんと行く!1週間の宇宙旅行』が贈与されるそうです。」
「ほほう、それはすごい。大好きなお兄ちゃんと二人っきり、宇宙で1週間彷徨うわけですな、はっはっは」
「そうですね、さらに現在メンバーの追加募集をしていて、15歳以上のお兄ちゃんを愛する女の子なら誰でも良いそうです。宛先はこちら」

テロップが流れた瞬間、今まで微動だにしなかった木野子(アホ)がついに動き出した!!

バババババババッ

は、早い!!手の動きが見えない!!なんだあのメモを取るスピードは!?
「命に関わるため、応募にはお兄さんの同意書が必要なのでお忘れなく。では皆さん、よい週末を〜!!」
放送事故レベルの事を爽やかに締めやがったアナ達が手を振っている間に、俺は自分の部屋へと猛ダッシュで帰った。

あぁ・・・どうしてこうなった・・・・。
なんだあの企画!!てかNASAって、あのNASA!?何やってんのNASA!?ヒマなの!?
ていうかあの子達アイドルなの!?
お兄ちゃん宇宙に拉致したいだけじゃん!夢も希望もないよ!!
人間は大地を離れては生きてはいけないのよ!?
それにファンいるの!?誰が応援すんだよ!!
165154(洗脳済):2010/09/25(土) 19:31:25 ID:o9a7QXQD
金髪碧眼ノ妹ハ最高デス
金髪碧眼ノ妹ハ私ノ嫁デス
金髪碧眼ノ妹ハ下ノ毛モ金髪オイシイデス
166河童の苦悩(4/6):2010/09/25(土) 19:32:19 ID:OW9JKP/h
ハァハァ・・・落ち着け俺。
少なくとも参加には『お兄ちゃんの同意書』が必要だと言っていた。
俺はサインする気はない。大丈夫。大丈夫だ・・・。

「お・に・い・ちゃ・ん(はぁと)」
「うわぁぁぁぁ!!」
「きゃあ!何よ?どうしたの?そんな声出して」
いつ間にか木野子が俺の部屋のドアから顔だけをチョコンと出していた。
怖い・・生首みたいだ・・。

「い、いや何でもない・・ど、どうした?」
「うん、お兄ちゃん」
部屋に入りドアを閉めた後、茶髪を軽くかき上げて妙な色気を出してくる木野子。コイツ・・まさか・・。
「あ、ああ」
ヤバイ、変な汗出てきた。

「宿題教えて!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!嫌だ!それだけはkんあばえし・・・・何?」
「だ〜か〜ら〜宿題教えて?数学得意でしょ?」
「あっああ」
何だよ・・ビックリさせおって・・。
寿命が二万年縮まったわ!!流石の吾輩もビビったぜ。
ここで断ると、しつこく居座りそうだからなぁ・・・。仕方あるまい。
「どれだよ?」
「これ〜」
部屋の隅に畳んで置いてあった、ちゃぶ台ぐらいの大きさのテーブルを部屋の中央に広げて、木野子と挟んで向かい合う。
木野子は持参してきた通学カバンから、教科書を取り出すと、付箋を付けてあったページを開いた。

ていうか、なんでこの子はシャツを第2ボタンまで開けてるの?
谷間がチラチラ見えるんだが・・・まぁいいや、シカトで。

木野子が見せてきたのは、特別難しくもない問題だった。
「何がわからないんだ?」
「わからないところがわからない」
出たよ・・・一番厄介なタイプだな。少しお説教してやる。
「いいか?お前は確かにアホの子だが、授業をキチンと聞いていれば解けない問題じゃないぞ??」
「授業??いいよ〜寝たいもん」
「寝るな寝るな!お前は何をしに学校にいっとるんだ!」
まさか、『お兄ちゃんと登下校するため(特大はぁと)』とか言わないだろうな・・。
さすがにそれ言ったら、アホの王様だぞ・・・。

「お兄ちゃんと登下校するため(特大はぁと)」

うん、どうやら我が家は魔王と王様が同居しているようだ。
とりあえず誰か衛兵を呼んでくれないか?

まさか・・ここまでとは・・。しかも一字一句間違えてねーよ!! すごいな俺!!
しかし、こんなのでも妹は妹。宇宙に1週間拉致監禁は免れそうだし、イケメンな上に超優しい俺が、しょうがねーから面倒みてやっか。
「しゃーねーなー、教えてやるからここに座れ」
向かい合っていると少し教えにくいので、若干左に移動し右側にスペースを作った。そこへ、木野子(キング)を呼ぶ。
「は〜い」
クククッ笑っていられるのも今のうちだわさ。
みっちりしごいて、ヒーヒー言わせてやるぜ!!!
・・・
・・

あれから3時間が経過した。
今も木野子は、俺が数字だけイジった、比較的難しい教科書の問題を必死に解いている。
「できた〜!!」
「ほう??我に見せてみよ」
167河童の苦悩(5/6):2010/09/25(土) 19:32:58 ID:OW9JKP/h
・・・ふむ・・・正解だ。過程の数式も申し分ない。
「OKだ。後は自分でテスト前に少し勉強すれば、必ず良い点数取れるぞ」
「やった〜!!ありがとねお兄ちゃん!!」
「お前こそ、3時間も集中力がもつとは正直意外だったぞ。頑張ったな」
「へへへ〜お兄ちゃんに褒められた」
照れるように微笑む木野子。
いつもこう素直で健全ならかわいい妹なんだが・・。
まぁ、休みの日が潰れてしまったが、教えて良かったな。

「ねぇお兄ちゃん!!この勢いでさ!現国も教えてよ!」
「現国?」
「うん、文章は教科書と同じでいいけど、問題は昔みたいにお兄ちゃんがオリジナルの作ってくれると嬉しいなぁ」
そういえば、そんな事もあったな。かなり前の話だが。
「え〜お兄ちゃんさすがに疲れちゃったなぁ。面倒だな〜」
「いいじゃん!前に作ってくれたの友達に見せたら、『お兄さんの字綺麗でカッコイイね!』って言ってたよ!」
「ま、まじか!?」
「うん」
「そ・・その友達は、無口キャラで黒髪ロングで貧乳か??できればちょっとエッチな子がいいんだけど!!」
「そんな気はしない事もないかもしれない」
何とも曖昧な答えだが、俺は1%の可能性でもあれば理想を追い求めるぜ!!!
「よぉ〜し、お兄ちゃん頑張っちゃおうかなぁ」←腕まくりしてる
「キャ〜!頑張って!お兄ちゃん」
そう言いながら、なぜか木野子はあぐらをかいていた俺の上へ向かい合って座る。
腕を俺の首に回し、足も俺の腰に回してガッチリとホールドされた。
マズい・・この体勢は非常にマズいんだ・・。

しかし・・コイツの身体柔らかい・・。
しかもなんか甘い良い匂いする・・。
「こっこら!何してんだ!」
「へへへ〜、現国の前に、かー君分補給〜」
「かー君言うな!」
「いいじゃ〜ん、二人っきりの時ぐらい〜」
オレの胸へ顔を擦り寄せて、気持ち良さそうにしている木野子。
本当にマズイぞ!!!

「・・・オイ、昨日しらねー女と喋ってただろ?」
しっしまった!遅かった・・・。
発動しやがった。
実は木野子は俺にくっ付くと心の内をすべてさらけ出してしまう、という恐ろしい病気にかかっている。
今回は声が非常にドス黒い気がする。
クソッ今回はかなりダークサイドな感情が溜まっていたようだ。

「お前、何度言ったらわかんの?私以外の女と喋ったら駄目だって、言ったよなぁ?」
「ヒイィィ、ごめんなさい。あれは宿題の範囲がわからなくて委員長に聞いてただけなんですぅぅ・・」
ここでの最善策は、ひたすら謝る事だ。
謝って、謝って、木野子様の怒りを鎮めるんだ!そうすれば比較的いつもの木野子に戻る。
けっ決して立場が弱いわけじゃないんだからっ!

「後よぉ、珠代だっけ?あのブスにまだ付きまとってんのか?」
「たっ珠代ちゃんはブスなんかじゃ!!」
「あぁっっ!?」
「・・・ない・・・ような・・ははははははっ」
「お前今度約束破ったら、どうなるかわかってんだろうなぁ?」
「どっ・・・どうなるんでしょう?」

「あれをこうしてボンッっだ」
!!!!!!
168河童の苦悩(6/6):2010/09/25(土) 19:33:33 ID:OW9JKP/h
「そっ!!それだけはやめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「だろう?そうされたくなかったら、おとなしくしておくんだなぁ」
「はいっ、以後気をつけますっ!!」
「よおし、いい子だ。で?」
「で?、と申しますと?」
クソッ中々ダークサイドが静まらない・・。余程溜まってたんだな。

「そろそろ、ヤらせろや?お前も童貞捨てたいだろう?ホレホレ」
俺に抱きついたままの木野子がお尻を左右に振って俺の股間を刺激し始めた。
「いっいや〜〜〜!」
「嫌で済めば世の中、性犯罪なんてねーんだよ!!おら、誠意みせろや誠・・・・・・」
!!
木野子の動きが止まった。
危なかった。やっとか・・・。
「・・・あれ?木野子何してたんだろ?わぁ!!!かー君だ!!やだぁ木野子に抱きついて何してんの〜!?」
「おっお前が最初に抱きついたんだろーが!」
「そうだっけ?まぁいいや、かー君分ほきゅうぅぅぅぅ〜〜〜!!」
ギュッと女の力とは思えない力で俺に抱きつく木野子。

マズい・・柔らかさと良い匂いでクラクラしてきた・・・。
おっぱいが俺のおっぱいの上でムニッと形を変えて、誘惑してくる。

賢いみんなはもう気付いたよね?
状況まったく変わってないんだよねっ!

しかし・・なんだこの柔らかさは・・天使のほっぺのようだ。
えへへ・・・触っちゃおうかなぁ・・・・。
だってさぁ、考えてもみてよ?
俺、男じゃん?
木野子、女じゃん?
なんの問題もないじゃ〜ん!!
・・・いや・・・・イカンイカン!!
兄の尊厳をこんなアホの子で失ってはならない!! 私・・負けない!!!!

「俺の上に座るな!てか、なんだこの格好!!」
「いいじゃ〜ん!減るもんじゃないし〜」
「しかも普通後ろ向きに座るだろ!なんで向かい合ってんだよ!お前もう勉強する気ねーだろ!」
「いいじゃ〜ん!木野子が発情するだけだし〜」
「よくねぇ!大体お前は・・・」
「木野子の事を褒めまくって、スイッチ入れたのは旦那ですぜ??ヒヒヒッ」
「うわっキモ!ちょ・・変なとこ触るな!あ!!あぁ〜〜」
・・・・
・・・
・・
その日やっとの事で、木野子(アホキング)を引き離した時には既に夜中の11時だった。
ギリギリ貞操は死守しました。

こんな感じで毎日が過ぎていく。
キモチ悪い事に変わりはないが、なんだかんで可愛い妹だ。
いつまでも、こうしてバカやれる日々が続けば・・
「お兄ちゃん〜!!」
「邪魔すんなよ!!人が締めてる時に!!」
「今、珠代先輩から電話かかってきて『ごめんなさいあなたとは付き合えません』だって!」
「いまさらかよ!!知ってるよ!!ビンタされた時点で気付くよ!!」
「ハハハッ残念だったね」
「笑うな笑うな!!ていうか、お前キモウトだろ!?こういう時は『あの泥棒猫!』とか言いながら、包丁持って駆けだすんじゃないの?」
「え〜初登場なのに、そこまでできないよ〜。それにそんな事したら、すぐお巡りさんに捕まっちゃうじゃん」
「意外にそこは冷静なんだ!!」

需要があれば続くかもしれない。
169名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:33:53 ID:OW9JKP/h
以上、駄文失礼。
170名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:36:08 ID:o9a7QXQD
書き込みかぶったスマソ
アホの子かわいいので続けて下さい
171名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:42:05 ID:c1VFkqat
被ってしまったごめんなさい
172名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 19:47:17 ID:OW9JKP/h
>>170,171
いいってことよ。気にすんな
173名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:20:30 ID:zO1v85EQ
>>171絵の話は保管庫BBSでやれゴミクズ
174名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:35:05 ID:X3zrXXTs
歓迎だ
大いに需要あるでよ
175名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:36:45 ID:8MKiFeYb
>>171
蒸し返す上に被るとかひどいっすねw
176名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 20:58:21 ID:uEOmjl2e
>>173
下手糞絵師さん必死っすねw
177名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:05:00 ID:v53mQLrz
絵を書きたい奴はHPにでもうpすればいいんじゃねーの?
キャラクターデザイン(>>162)とか痛い事するなら特に
178名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:10:49 ID:zO1v85EQ
>>176よく読めよチンカス
スレチだからよそでやれって言ってるだけなんだが
馬鹿はこんな事も解らないのか
切ないね
179名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:14:07 ID:2ZVIrWxQ
>>169
やばい、ダークサイド相当面白かった
続き期待しています
180名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:15:33 ID:v53mQLrz
>>178
脊髄反射しちゃうお前もな
スレチって言いたいならスルーしろ
181名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 21:38:54 ID:/QoJMqeB
182名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 23:12:54 ID:yeqp+ujE
      ____ うん キモすぎ
     /____\  _____
    / |  ─ 、− 、!          \
    !___|─|(●)(●)|-────- 、   ヽ
    (    `‐ァ(_, )、|(●), 、(●)  \  i  <このスレキモいね
     入  `トェェェイノ ,,ノ(、_, )ヽ、─  i  |      
    /ヽ-、` ┬〒ィ´  `-=ニ=- ' 二  |  !      
    | (/`v二)| ヽ   `ニニ´     |  /    
    ヽ_入 _ ノ   \ ____)  / /
    |───┤  ○ ━━6━◯━━ヽ
    |____|    \|/ _____\   ヽ
     |  |  |       ! ヽ__ノ !    |     
      |__||__|      >、 ___ ノ     ノ-o   
    __|__||__|_     (___.ヘ ___/
183名無しさん@ピンキー:2010/09/25(土) 23:50:53 ID:beKGhue1
ss
184名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 00:03:38 ID:LXtRKjk1
衛兵読んでも王様には逆らえないと思うんだ
185名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 04:07:19 ID:Ht9wvmfY
面白かったよ GJ
186名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 18:41:26 ID:+YsEnYuq
>>168
需要ならここにあるぜ。
187名無しさん@ピンキー:2010/09/26(日) 20:18:54 ID:JuMgwytw
投下ないかな
188名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 00:22:35 ID:YBOO8xMq
俺の愛する未来のあなたへと三つの鎖の投下がしばらくない・・・
作者さん待ってます
189幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:31:16 ID:UAuQBQvZ
今晩は。
ちょっとお呼びの者では無いかもしれませんが、
表題につきまして投下いたします。
190幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:32:38 ID:UAuQBQvZ
******************************************

暫らく俺を物欲しそうに見つめた後、雪風はいたずらがドッキリが成功した時のようにくすっと笑った。
「さあ、選手宣誓はこれでおしまい。
 私、こういう息の詰まる展開って苦手なの、そろそろいつもの私達に戻ろっか?
 兄さん、今日の晩御飯は私が作るんだけど何が良い、今日の雪風は頑張っちゃうよ〜?」
その言葉と共に彼女はいつもの俺が知っている雪風に戻った。
「そうだな、ハンバーグじゃダメかな?」
おれも、いつも雪風にそうしているように答えた。
「分かったわ、兄さんの大好きな和風ハンバーグね。」
「俺は和風が好きなのか?」
「ええ、大根おろしがた〜くさん載っているポン酢風味のソースが兄さんの好物よ。
 兄さんにとって何がおいしくて、何が嫌いかなんて顔をちょっと見れば分かるわ。
 ふふ、勿論分かるのは料理だけじゃないよ?」
そう言って、ふふん、と得意げに胸を張る。
「それじゃあ、兄さんは先に帰ってて。
 私は買い物をしてから帰るわ」
雪風は少し早足で歩き出した。
夕日で伸びた影の背丈くらいに俺達の距離が開く。
ぴたっと、歩みを止めて、くるりと雪風が振り向く。
「そうそう兄さん、兄さんは一つだけ勘違いしているよ。
 私はね、兄さんのことが欲しいし、それに愛してるの。
 でも、私は兄さんの事が嫌いでもあるんだよ。
 そうやって私の心を読める癖に、私の事を理解してくれない。
 私の欲しいものは何でもくれるのに、一番欲しいものはくれない。
 本当に、兄さんって一体何なのかな?」
そう言って、雪風はまた歩き出す。
夕日が影になって雪風の表情は見えなかった、どんな表情だったのかはだから分からない。
191幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:35:27 ID:UAuQBQvZ
雪風が立ち去った後も俺はそこから動く事だ出来ず、立ち止まって夕暮れの雲をぼんやりと見ていた。
「俺は、お前の知ってる通りの俺だよ」
細長い巻き雲が青と紫がかった赤に塗り分けられている。
「理解していないだと?
 理解していないのは雪風だってそうじゃないか」
誰に対してでもなく呟く。
俺にとってシルフは大切な妹だ。
都合の良い玩具だなんて思った事は絶対にない。
昔、初めてシルフを見たときは本当に悲しかった。
他人から拒絶され続けて、誰も信じられないって顔をしてたんだ。
そのシルフが俺や雪風と一緒に生活する中で少しずつ明るくなってくれて、それが嬉しかった。
そして、もっと笑って欲しい、もう暗い顔なんてして欲しくないなって思った。
その気持ちに雪風の言うような卑怯な嘘なんて全く無い。
確かにシルフがいつも俺の事で悩んでいるのも知っていた、でも俺も悩んでいた。
悩んで、それでもシルフが踏み出さないのなら、今のままで良いって俺は決めたんだ。
そして、シルフがその先を口にするまではずっと気付いてない振りを続けていようって。
雪風もきっと俺の考えを理解してくれているんだと当たり前の様に思っていた。
だから、雪風にあんな事を言われるなんて思ってもみなかった。
それにいつもならあんなにきつい言い方は絶対にしない。
俺の弱い所をちゃんと汲み取って、もっと優しく嗜めてくれる筈なのに。
……自分勝手な言い分なのは分かっているけど。
192幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:35:55 ID:UAuQBQvZ
俺はずっと雪風とは何でも通じ合っているんだって思ってその事を疑った事さえ無かった。
なんせ、いつもあいつは俺の事なら何でも理解してくれて、俺のする事なら何でも笑ってくれていたから。
それは雪風が俺に合わせていてくれただけ、だったんだよな。
俺の事が異性として好きだから俺の我侭を聞いていた、か。
じゃあ今までずっと本当の気持ちを言えず、本当は望んでない事にも笑っていたのか?
それなら、あいつも辛かったんだっていうのは分かる。
分かるよ、だけどな……
「だからって、あんな言い方はないだろ。
 二人のことを大切に思っていたし、そう付き合ってきたんだ。
 ったく、雪風だってそうだよ、あいつだって俺の事を何でも分かってくれるのに、
 一番大事な事を理解してくれないじゃないか」
そうぼやく自分がとても惨めで、情けなく感じられる。
何とか隠そうとしていたが、本当は雪風の言葉は一つ一つが辛くてしょうがなかった。
さっき雪風から突き放された時は、まるで母親から見捨てられた子供のような泣きたい気持になっていた。
193幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:38:51 ID:UAuQBQvZ
俺にとっては雪風もシルフも特別な存在なんだ。
決して見捨てたりなんてしない、俺はそんな薄情な奴じゃない。
はっきりと言える、雪風もシルフの事も大好きだって。
けど、それでも雪風が言うなら、俺のしていた事は間違っているのか?
そんな訳は無い、雪風が間違っているんだ。
もし雪風の言うとおりなら俺はただの馬鹿じゃないか、絶対に違う。
でも、俺の事もシルフの事も一番知っている雪風が言うなら……。

帰路の間ずっと考えていたが何をどうすればいいのか分からなかった。
とりあえず、玄関まで迎えに来てくれたシルフをぎゅうっと抱きしめてみた。
それはシルフがして欲しいとずっと思っていたけど言えなかったことだって、俺は知っていた。
それに今の俺にとってどうしても必要な事でもあって。
顔を真っ赤にして固まるシルフは暖かくて、とても良い抱き心地だった。
何だかほっとして、気持ちが落ち着いた。

ただ、一つ問題が増えてしまった。
一部始終をご覧になって、俺の真後ろでニコニコと笑ってらっしゃる妹様にどう弁解するば良いのだろう?
194幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:39:13 ID:UAuQBQvZ
******************************************

さっき姉さんから電話があった、もうすぐお兄ちゃんが帰って来るって。
電話越しにそう私へ伝える姉さんはとても楽しそうだった。
それを聞いてから玄関で待ち続けてる。
今まで、何をやってもお兄ちゃんは喜んでくれなかったけど、きっと今度は大丈夫。
だってお父さんだって喜んでくれたんだもの。
もう本当のお父さんやお母さんの事は殆ど覚えていないけど、それでも覚えている事がある。
お父さんが駅に着いたからお迎えしてあげようねって、お母さんが言って一緒に玄関で待ってて。
それでお父さんがドアを開けると、お帰りって言いながら抱きつく。
その時のお父さんの嬉しそうな顔はまだちゃんと覚えている。
それはお兄ちゃんに出会う前の私の、少ししかない楽しい思い出の一つ。
だから絶対に大丈夫。
大丈夫、なのに不安になってしまうのはどうしてかな?
195幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:41:38 ID:UAuQBQvZ
「ただいま、ってシルフ!?」
「お帰り、お兄ちゃん」
「あ、ああ。
 ……雪風に言われたのか、ここで待ってろって?」
そう確認するお兄ちゃんの顔はとても怖かった。
自分の体が縮こまるのが分かる。
どうしよう、私はまたお兄ちゃんを困らせるような事をしたのかな?
「え、あ、ううん、違うの。
 昔、お父さんにこうやってあげたら、凄く喜んでくれてたのを思い出したから。
 だから、お兄ちゃんも嬉しいかなって、思って……」
「どれぐらい、ここで待っていたんだ?」
「多分、30分ぐらい、だと思う」
恐る恐る、怯えながら答える。
私がが質問に答えるとお兄ちゃんは安心したように表情を緩めた。
「そうだったのか。
 ごめんな、そんなに待たせちまって。
 それに、こんな問い詰めるような聞き方をしちゃったのも、ごめん」
「大丈夫、お兄ちゃんは悪くないわ。
 それよりどうしたの?
 お兄ちゃん、すごく辛そうな顔してる」
「ん、辛そうな顔をしているのか?
 そうだな、ちょっとだけだが、ほんの少しだけ辛い事があったんだ」
そう答えるお兄ちゃんはちょっとなんて軽い事には見えない位とても悲しそうで、それが嫌だった。
私が好きなのは笑っているお兄ちゃんだから。
「ねえ、私に何か出来る事は本当にないの?
 私なんかじゃ役に立てないかも知れないけど……。
 それでも、お兄ちゃんの為なら私は何でもするよ」
もうこの言葉を何回言ったかなって心の中で苦笑する。
お兄ちゃんは一度だって私にお願いをしてくれた事なんて無いけど、それでもいつも言わずにはいられない。
「本当に何でも良いのか?」
「うん、私はお兄ちゃんに喜んでもらいたいの。
 私はお兄ちゃんの、恋人、だから」
例え、お兄ちゃんにとっては押し付けられただけでも。
それでも、私は恋人なんだから。
196幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:42:22 ID:UAuQBQvZ
「ありがとうな。
 じゃあ一つだけ、シルフにお願いしてもいいかな?
 少しだけ目を閉じててくれないか?」
「え、目を閉じる?」
驚いて、思わず聞き返してしまった。
お兄ちゃんが私にお願いするなんて本当は期待してなかったし、
それに、目を瞑るって言う事はどういう意味なのかも分からなかったから。
「嫌なら良いんだけど」
「嫌なんかじゃない、ちょっと待って。
 ……これで良い?」
慌てて目を閉じると、すぐにとても暖かいもので体を抱きとめられた。
「お兄ちゃん!?」
「悪い、もう一つお願いができた。
 暫らくこうさせててくれ。
 はは、シルフってすごく暖かいんだな、ずっと忘れてたよ」
その言葉と共に私を抱きしめる力が強まる。
これってお兄ちゃんの腕、だよね?
じゃあ私は今お兄ちゃんにぎゅって抱きしめられてて、あ、う、ぁ。
そこまで考えて、もう頭が働かない。
胸がどきどきと鳴り続けて頭がぼおっとする、体が熱い。
お兄ちゃんが私の体をゆっくりと放す。
目を開くと、そこにはお兄ちゃんが間違いなく立っていた。
たぶん実際には10分くらいだったと思うけど、私には何時間にも感じられた。
体がふらっとする。
私は足に力を入れて、そのまま地面にへたり込んでしまいそうになるのを我慢する。
「ありがとう。
 お陰で楽になれたよ」
「あ、え、う、うん。
 私、その、お兄ちゃん、に抱っこされて?」
体にはまだお兄ちゃんの感触が残ってて、それが暖かくて、心地よくて、嬉しくて。
うぅ、自分でも何を言っているのか分からない。
197幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:42:51 ID:UAuQBQvZ
気付いたら私は部屋に駆け戻っていた。
そして、扉を閉めて、今度こそ床にそのままへたり込む。
まだ胸はこんなに鳴り続けている、息も荒い。
こんなの知らなかった。
お兄ちゃんに抱きしめられるって、あんなに気持ち良いんだ。
お兄ちゃんの体って、硬くて柔らかくて、それにあんなに暖かいなんて、知らなかった。
198幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:44:54 ID:UAuQBQvZ
******************************************

お兄ちゃんに抱きしめられた後、やっと気持ちが落ち着いた時にはもう2時過ぎだった。
水が欲しいと思って居間の方へ向かうと、こんなに遅いのにまだ明かりが点いている。
それに話し声も聞こえる。
お兄ちゃん達がまだ起きてるのかな?

部屋の中をこっそり覗くとお兄ちゃんが漬物石を抱きながら、足つぼ健康器の上で小刻みに震えつつ正座をしていた。
そんなお兄ちゃんの向かいで姉さんもやっぱり正座をしている、座布団の上にだけど。
「あははは、兄さん。
 私は確かにシルフちゃんを思い遣ってねって言ったよ?
 でも、セクハラしろなんて誰が言ったのかな〜?
 だ・れ・が?」
「いや、その、あれは合意の上であって、だな」
「あら、今更言訳をするつもりなの?」
「いや、言訳ではなくて、状況の確認を」
「あははは、兄さんは何か勘違いをしてないかな〜?
 私は今、兄さんを裁いてるんじゃなくて、罰してるんだよ?
 もうとっくに兄さんは有罪なんだからね」
「……はい」
しょんぼり、とうなだれるお兄ちゃん。

良く分からないけど姉さんにいじめられているのは確かだったので、お兄ちゃんを助けようと部屋に入った。
けれど、中に居たお兄ちゃんに見つめられた途端に、抱きしめられた時の感触が蘇った。
また頭がぼうっとして、体が火照る。
それで、恥ずかしくなった私はその場から逃げてしまった。
「うふふ、兄さん、今夜は寝かさないからね〜?」
そうお兄ちゃんに告げる冷え切った声が背中から聞こえた。
ううぅ、見捨ててごめんなさい、お兄ちゃん。

部屋に戻って頭から布団を被ったのに、私は朝まで全然眠る事ができなかった。
199幸せな2人の話 6:2010/09/27(月) 01:50:40 ID:UAuQBQvZ
以上です、ありがとうございました。
魔法少女すーぱーシルフというパラレルのネタを思いつきましたので、
もし、そういう物が大丈夫なようでしたら近くに番外編として一回書かせて頂きたく思います。
また来週もよろしくお願いいたします。
200名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 02:06:38 ID:WGLueRao
GJ
みんないい子で幸せになってくる
201名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 02:18:10 ID:eeIoHldD
GJ〜
照れるキモウトっていいよね!
202名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 02:21:15 ID:3bXMEPAE
戦闘妖精がきたか
203名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 06:17:19 ID:rHYUsS6c
誰かwiki更新頼む
204名無しさん@ピンキー:2010/09/27(月) 20:11:14 ID:DIV8YqB7
>>203
言いだしっぺの法則って知って居るか
205名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 00:04:42 ID:xYTgj7jn
うむ、久しぶりにきたが連載中の作品も良作揃いじゃないか。
206名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 13:23:42 ID:mYTTybvW
キモ姉妹が法律を作ったら

新訂刑法一条 不当交際罪


人の兄または弟を不当な手段で略取した者は死刑または終身刑に処す

未遂は罰する


兄または弟が犯した場合は重洗脳刑または廃人刑に処す

未遂は罰する

とか作りそうで怖い…
207名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 18:59:30 ID:/pgci4UK
つまり『おとなになったらおよめさんにしてあげる』とか
幼少期の約束が映像なんかに残ってれば正当な交際と認めてもらえるわけですね?
208名無しさん@ピンキー:2010/09/28(火) 19:54:45 ID:RcQSNpna
私には夢がある。
いつの日か、泥棒猫の死体が積み上がる小高い丘で、
かつての兄達と、かねてより兄に所有されたかった妹達が、
兄妹愛を超えた性愛というベッドで夜を共にできる日がくるという夢が。

みたいなスピーチしてノーベル妹賞を受賞するマーチンルーサーキモウト
209名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 00:14:35 ID:4NGS3+W2
いや、さすがにそれはノーベルさんにあやまr
おっと誰だこんな時間に
210名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 05:44:00 ID:0Zlge5YA
>>208

なぜか固有結界の使い手で再生されたせ

I am the bone of my brother

体は兄で出来ている……
211名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 11:47:47 ID:uRA9kCp7
>>210
その英文を「私は兄の骨です」と読んだら、アダムが肋骨の内の一本からイブを作ったという神話を連想してしまった。そういやあれも兄妹だったっけ?
212名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 12:02:21 ID:BJ4Sw44Y
ならばリリスは泥棒猫か
213名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 12:24:34 ID:AbL71jGG
>>206
わかっているさ 愛する者を

自分を捨てても 守るんだ〜
214名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 14:49:18 ID:4NGS3+W2
Q:愛ってなんだ?
A:ためらわないことさ……
215名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 17:24:19 ID:F78/5k4S
刑の内容が気になるな

重洗脳刑になったら姉妹のことしか考えられなくなるとかか

重があるなら軽もあるのかとか
216名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 20:34:17 ID:dwShjjyD
>>212
旧約聖書にはリリスという存在は明確に記述されてなかったらしい。
リリスというアダム最初の妻が定義されたのは中世の話だとか。



「つまり! 泥棒猫なんて存在そのものが後付けの二次創作!
お兄ちゃんは同じ血と肉で構成された妹と結ばれるのが神話の時代からの真理なのよ!」
「お前は何を言ってるんだ」
217名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 20:46:47 ID:reoLcGwb
>>216
それは逆だ。旧約聖書が編纂された際に抹殺されたリリスの存在が
中世の研究者によって再発見されたんだ。
……つまり、聖書の編纂にはイブの圧力が…
218名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 20:53:54 ID:quvjyTx4
神話で近親相姦なんて普通ですよねー

でも自分の兄弟しか愛さなかった女神っているんだろうか
219名無しさん@ピンキー:2010/09/29(水) 20:57:24 ID:reoLcGwb
>>218
ギリシャ神話の女神ヘラなんてどう?
220名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 11:40:51 ID:UnphnPEo
「お兄ちゃん! 突然ですが問題です!」
「は?」
「口に毛の生えた棒を出し入れして、最後に白い液体を吐き出すのってなーんだ?」
「ちょ、おま、それって」
「ヒント! 私は今朝お兄ちゃんが寝ている間にシちゃいました!」
「おいいいいいい!?」
「さあ、答えは!」
「お前……まさかとは思うけど……フェ、フェラt」
「ぶっぶー時間切れ! 答えは『歯磨き』でしたー!」
「……え? あ、ああ〜そうか……」
「ん〜? ちなみにお兄ちゃんはなんて答えようとしてたのかな? かな?」
「な、何でもないっ! ちょ、トイレ行くからっ!」
「こらー! 逃げるなお兄ちゃ〜ん!」


inトイレ
「俺のチ○コから歯磨き粉の匂い……だと……」
221名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 15:02:22 ID:5C0g+yRF
つまり兄のチンコに歯磨き粉を塗って歯磨きしたと。変な病気になりそうw
222名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 16:53:42 ID:s/4TP2MB
その質問、妹だとかわいらしいけど姉だとうざいことこの上ないなあ

ウザ姉ってキモ姉と同カテゴリーでいいんだろうか
223名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 16:59:21 ID:e0JWRkeV
妨害3分で終わり吹いた
224名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 17:00:01 ID:e0JWRkeV
誤爆です。失礼・・・
225名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 18:09:35 ID:H+EUadpJ
○月×日
彼女が俺の家に遊びに来た。殺気立った妹が邪魔をしようと襲いかかってきたが3分で鎮圧完了
折角の時間を無駄に使わせないでいただきたい
226名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 18:46:16 ID:RPrtM//t
兄は妹を制圧できる。
妹は泥棒猫を××できる。
泥棒猫は何もできない。

素晴らしい3すくみじゃないか!
227名無しさん@ピンキー:2010/09/30(木) 23:10:53 ID:yW0hrxAx
三竦みになってないw
228名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 04:13:09 ID:/wrVMC5R
泥棒猫は兄を言いなりにできるからやっぱり三すくみなんじゃない?
229名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 07:59:26 ID:Onp1DbwS
妹がいる以上、それは不可能だな
230名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 12:50:43 ID:0Hmen/Su
しかしある種の妹はそれができない場合もあるんじゃないか
231名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 16:56:21 ID:kA5rtCcz
>>229を見てなんとなく、
妹「兄さんがいる限り、私は何度で蘇る!トウァ!」
という電波を受信した。
232名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 17:17:16 ID:5gzBHfg8
泥棒猫は兄を誘惑できる、かな
233名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 19:11:37 ID:OpRrpLeu
毎回泥棒猫に撃退されるキモウト
234名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 19:41:16 ID:g4WZ9uhO
次やったらこのことをお兄さんにばらすわよと脅されるキモウト
235名無しさん@ピンキー:2010/10/01(金) 20:38:18 ID:Onp1DbwS
泥棒猫に弱みを握られ脅されている、ということを兄にチクる妹
236幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:13:56 ID:TrkRZWJm
今晩は。
表題について投下いたします。
237幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:16:11 ID:TrkRZWJm
あの日、家に帰ってきたお兄ちゃんに、ぎゅうって抱きしめられた。
私は混乱した。
訳が分からなくて、暖かくて、お兄ちゃんの匂いがして、嬉し過ぎて。
あの時、私には何を考えて、思えば良いのか分からなかった。
今になると全部夢だったんのじゃないかとも思う、でもあの時のお兄ちゃんは間違いなく本物。
あの日からお兄ちゃんは変わった。
お兄ちゃんはいつも私の側に居てくれた。
けれど、お兄ちゃんはどこか一定のところまでしか私の側に来てくれない。
私はお兄ちゃんにもっと近くに居て欲しいのに、そんな事を思う瞬間があった。
多分それがお兄ちゃんの家族に対する間合いだったのだと思う。
私はその距離を縮めたいといつも思っていたのに、踏み出す勇気が無くていつもお兄ちゃんに近づけなかった。
だから、お兄ちゃんが近いのに遠かった。
でもあの日からのお兄ちゃんと私の距離はとても近い。
それは比喩だけではなく、実際の意味でもそう。
この前、ちょっとだけ私は勇気を出した。
勇気を出して、座っていたお兄ちゃんの横に座って擦り付けるようにお兄ちゃんにくっついた。
それから、お兄ちゃんにこうして居たいってお願いした。
そうしたらお兄ちゃんは笑いながら私にそっと寄り添うようにして体を預けててくれた。
その時のお兄ちゃんの重さが心地よかった。
そうやって、少しずつ勇気を出してお兄ちゃんに私は触れるようになった。
その度にお兄ちゃんが近付いていく気がして、嬉しくなる。
238幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:17:54 ID:TrkRZWJm
私とお兄ちゃんは一緒にテレビを見ている。
私はお兄ちゃんの前に座っていてお兄ちゃんの手が私の前に回されている。
お兄ちゃんと体がくっついている背中が少し暑い。
でも、それが暖かくてとても気持ちいい。
テレビに写る雄のライオンがごろごろと喉を鳴らして寝転がっていた、かわいい。
私はちょっとだけライオンに対抗してお兄ちゃんの胸に頭を擦り付けてみる、ごろごろ。
お兄ちゃんは笑いながら私の頭を撫でてくれた。
「姉さん、どうしてさっきから私の事を見ているの?」
「べぇっつにぃ〜。
 シルフちゃんはいつもお姉ちゃんが抱きついても嫌がるのに、
 兄さんだと嬉しそうに頭をすりすりするんだな〜って思っただけだよ〜?」
向かいに座っている姉さんはそっぽを向いたまま、拗ねた様子で私に言った。
「す、すりすりなんてしてないよ」
思わず声が裏返る。
「ふ〜ん、それに最近のシルフちゃんって何だかお兄ちゃんにべたべただよね〜?」
今度はジト目で睨みつけられる。
「こ、恋人だから、変じゃないの」
「はいはい、そこまでそこまで。
 ったく、シルフをからかうんじゃないぞ」
「あ〜、兄さんまで敵に回るんだ。
 いいよ、いいよ、私はベットの上で一人寂しく慰めるもん。
 シルフちゃ〜ん、シルフちゃ〜んって切なく喘ぎながら」
それだけは本当に止めて欲しい。
「やめんか、年頃の娘さんが喘ぐとか言うな」
「くすくす、勿論冗談だよ。
 私はシルフちゃんじゃなくていつも……」
姉さんがくすり、と笑って私の方に顔を向ける、でもその視線は私ではなくもっと上に向けられている。
私を抱いているお兄ちゃんの腕の力が強まった気がした。
「ふふ、それもただの冗談、だよ。
 さ、邪魔者はお風呂にでも入りますか〜。
 い〜い? 二人もいつまでもそうしてないでちゃんとお風呂に入らなきゃダメなんだからね?」
そう注意してから、姉さんは部屋から出て行った。
その後で、お兄ちゃんがほっと溜息を吐いた。
「ったく、雪風の奴。
 シルフも偶には雪風にやり返してやっても良いんだぞ?」
「うん、頑張る」
そう答えながら、私はまたお兄ちゃんに体を預けた。
こうやっているととても安心できる。
「なあ、シルフ」
「何、お兄ちゃん?」
私は体をずらしてお兄ちゃんの方を向いた。
お兄ちゃんはなんだか考え事をしているような様子だった。
「明日は暇か?」
「え、うん」
「それだったら、明日デートしないか?」
239幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:18:44 ID:TrkRZWJm
お兄ちゃんの言っている言葉の意味が分かるのに分からなかった。
デート、ってあの恋人同士がするお出かけの事だと思う。
でも私はお兄ちゃんに片思いしてるだけで、ずっと恋人になれなくて。
あれ、でも今は期間限定で恋人だから、ええっと……。
「嫌だったら別に良いんだ。
 なんていうかな、俺達も一応、恋人同士って事なんだしな。
 偶にはそれらしい事とかしてみないかな、と思うんだが」
今までお兄ちゃんが自分から恋人なんて言ってくれることは無かった。
じゃあ、お兄ちゃんも今は私の事を恋人って思ってくれている事なのかな。
お兄ちゃんの恋人、そう考えるだけで心臓が鳴って、息が乱れる。
「嫌じゃない!!
 する、私もお兄ちゃんとデート、したい」
胸の高鳴りを抑えて、必死に言葉を返した。
「なら、例えば行きたい所とかあるか?」
「ライオン、私、ライオンが見たい」
とっさに画面を見て答える。
ライオンがわふっ、って大きなあくびをしていた。
何だか馬鹿にされた気分。
「ライオンかぁ。
 くす、お前は本当に動物が好きだな」
兄さんがわしゃわしゃと私の頭を撫でる、顔が火照る。
「じゃあ、しっかりと探さないとな、ライオンのたくさん居る動物園」
「うん、楽しみにしてる」
立ち上がる前に、お兄ちゃんがぎゅっと力を込めて私を抱いてくれた。
それは、きっと家族にする物とは違う抱擁。
体中が暖かくて、ふわふわとした。

ぼんやりとした頭で考える。
やっぱりお兄ちゃんは変わったと思う。
私はお兄ちゃんの妹になってから今日まで幸せだった。
けれど、今日の幸せが明日も続いてくれるだろうかといつも不安だった。
でも、きっと明日の私は今日の私よりももっと幸せになれる、そう信じられる。
そんな嬉しい事があるなんて、私は思っていなかった。
240幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:19:35 ID:TrkRZWJm
**************************************

私は一人で廃墟に居た、壁が丸い建物でドーム上の天井には骨組みしか残っていない。
天井がかつてあった所からたくさんの星が覗いている。
ここは今日の朝お兄ちゃんが秘密の場所だよと言って連れてきてくれた所だ。
その時に元々は小さな劇場だったと教えてもらった。
そこを教えてもらったのがとても嬉しかった。
嬉しかったから姉さんに言った、すると姉さんはとても怒って私にとても嫌な事を言った。
その嫌な事を言うのを何回お願いしても止めてくれなかった。
だから私は姉さんを叩いた、それをお兄ちゃんに見られた。
きっと今までと一緒だと思った、誰かを叩くと追い出される、いつもの事だ。
でも、今は嫌だった。
折角お兄ちゃんに出会えたのに。
お兄ちゃんは何処にも居なくならないって約束してくれたのに。
だから逃げた。
けれど逃げたところで行く当てもなく、結局ここに居る。
誰かの足音がする、お兄ちゃんがいた。
私はまた逃げようとして薄いガラス張りのドアを開けようとした。
でも、古びた金具が壊れてそれが私の方へ倒れてくる。
きっとガラスが砕けて私はずたずたになる、もう、それでもいいやと思って目を閉じた。
じゃりじゃりとガラスの降る音、でも私は痛くなかった。
代わりに、お兄ちゃんの呻き声が聞こえた。
私はお兄ちゃんに押しのけられていて、お兄ちゃんの背中がずたずたになっていた。
訳が分からなかった、どうして私なんか守ったのって聞いた。
お兄ちゃんは呻きながら笑った。
だってシルフは家族だから一緒にいないと駄目だろうって笑った。
私は泣いた、泣きながらお兄ちゃんを抱きしめた。
私はやっと居場所を見つけ直せた。
私はここに居て良いんだ。

夢を見た、決して楽しい夢ではないけど私にとって大切な夢。
「私は、ここに居て良い。
 だって、お兄ちゃんが言ってくれたんだもの」
そう呟いた。
241幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:20:45 ID:TrkRZWJm
**************************************

今日は朝からずっと騒がしかった。
姉さんがお兄ちゃん好みの服装を選ぶといって私を着せ替え人形にして。
その後はずっと姉さんにお化粧を手伝ってもらって。
鞄に入れてた凍った麦茶を取り上げられて。
それから麦茶と入れ替わりに昨日コンビニで買ってきたというものをこっそり入れようとした姉さんを追い出して。
……あれ? 姉さんのほうが張り切っているような気がするのだけど。

そんなごたごたが一段落してからやっと私達は出発できた。
今、私とお兄ちゃんは動物園のライオンのスペースに来ている。
立派なたてがみのライオンが大きなあくびをする。
暑さのせいなのか、とてもやる気がなさそうにずっとごろごろしている、やっぱりかわいい。
「お兄ちゃん!! ほら、あくびしてる!!」
「あ、ああ。そうだな、オスのライオンって基本的に暇そうだよな……」
「? お兄ちゃん、どうしたの?」
今日のお兄ちゃんはなんとなくぼおっとしているような気がする。
「いや、本当にシルフはライオンが好きなんだなって思ってな。
 好きか、ライオン?」
「うん、大好き!!
 ふわふわしてて、大きくて、ごろごろしててかわいいから。
 あの子なんか家で飼いたいなって思う」
そう言って、私は隅っこの日陰でごろごろしている少し毛の白い子を指差した。
居間であの子がやっぱりごろごろしながらあくびをする所を想像する、すごく良い。
「ああ、そうだな、そりゃ無理だな……、
 ありゃアンゴラライオンといって輸入こそ禁止されていないがワシントン条約で取引が規制されているな。
 さらに、輸入した後に特定動物飼育の許可を都道府県知事から取らなくちゃならない。
 許可を取るためには施設規模、施設管理、動物管理の要件を満たす必要があって、基本的には動物園クラスの施設でなければ無理だ。
 ついでにあのライオンが一日に6kgの生肉を食べるとして、月のえさ代が大体60万円だな。
 何より一番の問題は、居間でごろごろされると掃除の邪魔になって雪風がライオンさんにブチ切れる可能性が……、」
お兄ちゃんがライオンをぼんやりと見ながら、教科書を読み上げるようにぼんやりと喋る。
「お兄ちゃん……、姉さんが許してくれない事ぐらい私にだって分かるよ。
 でも私、お兄ちゃんって夢が無いと思う」
「え、あ、そうだよな、分かって言ってるんだよな。
 ごめんなシルフ、夢を台無しにするようなこと言っちまって」
私の言葉にはっとしたようにこちらを向いて、お兄ちゃんが謝った。
今日のお兄ちゃんはちょっと変だと思う。
242幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:21:07 ID:TrkRZWJm
「えっと、ううん、私こそごめんね、お兄ちゃん。 
 私、ずっとライオンを見てたから退屈だったでしょ?」
「いや、動物ってのは何をするか分からないから俺も見てて結構楽しいぞ。
 それに、今日はデートなんだからシルフが楽しんでくれて何よりだよ」
そう言ってお兄ちゃんが笑う。
その笑顔とデートって言葉に顔が熱くなる。
「そうだな、ライオンは飼えないとしてもあれはどうだ?」
兄さんは近くにあった露店に向かって歩く、私も付いていく。
そして一番大きいライオンのぬいぐるみをひょこっと持ち上げる。
たてがみがふわふわしてて、顔が寛いだ顔をしてて、すごくかわいい。
「まあ、シルフぐらいの歳でぬいぐるみってのは無いかな?」
「そんな事無い、欲しい」
「そうか、なら」
そう言ってお兄ちゃんが店員さんにお金を手渡してぬいぐるみを受け取る。
そして、ライオンの入った大きな袋を私に手渡してくれた。
「ほれ、大切にしてくれよ?」
「うん!! 大事にする、ベッドに置いて一緒に寝る!! 
 ねえ、お兄ちゃん……」
「ん、なんだ?」
「ありがとう!!」
とても嬉しかったのでつい大きな声で言ってしまった。
お兄ちゃんはそんな私をびっくりした様子で見ていた。
「……?
 どうしたの?」
「いや、どうもしてないぞ?
 それよりも喜んでくれて嬉しいよ、本当に」
そしてお兄ちゃんが何かを誤魔化す様に笑った。
うん、やっぱり今日のお兄ちゃんは変だ。
243幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:21:32 ID:TrkRZWJm
*************************************************

動物園を出た後に私達は雑貨店を巡って、映画を見て、食事をした。
もちろん、ライオンさんも一緒。
私にとって間違いなく人生最高の一日だった。
いや、ひょっとしたら生涯最高の一日なのかもしれない。
きっと、お兄ちゃんとのたった三ヶ月の関係はそのまま終わってしまうのだから。
こんなにお兄ちゃんに近づけたのにまた私達は仲の良い兄妹に戻らないといけないのかな?
そんな事を思ってしまうと、こんなに楽しいのに気持ちが沈んでくる。
嫌だな、そんなの。
「シルフは今日のデート、楽しかったか?」
帰りの列車の中でお兄ちゃんが私に尋ねた。
夕日に染まる車内はガラガラで私達しか居ない。
「うん、凄く楽しかった」
「じゃあ、どうしてそんなに寂しそうな顔をしてるんだ?」
「うん、あと少ししたらもうお兄ちゃんの恋人じゃなくなっちゃうのかな、って思って……」
「それが寂しかったのか?」
「うん」
それから私達は黙って椅子に座っていた。
列車は私達が出会った時に住んでいた街の手前まで差し掛かる。
次は×××駅と懐かしい駅名が告げられる、その車内放送が流れた時にお兄ちゃんが言った。
「ここで一緒に降りてくれないか?
 どうしてもシルフと行きたい所があるんだ」
本当は、そこに行かないで終わりにするつもりだったんだけど、と付け足して。
いつもからは想像もつかないくらいにお兄ちゃんの顔は固かった。
「うん、私はお兄ちゃんとならどこにでも行くよ」
ぎゅっ、とお兄ちゃんが無言で私の手を握る。
そして私達は手を繋いだまま駅のホームへ降りた。
お兄ちゃんの手は柔らくて暖かかった。
244幸せな2人の話 7:2010/10/01(金) 21:23:17 ID:TrkRZWJm
以上です。
分量的には一応もう終盤に入っているのかなと思います。
最後まで読んでいただければ嬉しく感じます。
次回もよろしくお願い致します。
245名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 02:08:11 ID:Q8olzIQe
>>244
乙! もう終盤…だと!?
もう少しだけほんわかとした話を読みたかっただけに惜しいな
雪風の企みにwktkしつつ次回も楽しみにしております
246名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 04:26:29 ID:ZIfomV0q
GJ
シルフには幸せになってほしい、本当に
247『きっと、壊れてる』第8話:2010/10/02(土) 17:55:51 ID:SZbvIUdd
こんばんは。日が落ちるのが早くなってきましたね。
『きっと、壊れてる』第8話投下します。
注意:エロなし
248『きっと、壊れてる』第8話(1/8):2010/10/02(土) 17:56:58 ID:SZbvIUdd
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独白。
そういう言い方をすれば、まだ聞こえは良い。
実際に私は心の中で一人で喋っているし、今の所この胸中を誰かに打ち明ける気はない。
兄さんの所有権をめぐり、侃侃諤諤の議論ができれば、どんなに楽になれることだろうか。

玉置美佐。
兄さんの恋人。
4,5年前だったか、前にも一度兄さんにちょっかいを出してきた事があった。
その時は怪文書1枚でおとなしく引き下がった。
しかし、どういう因果か、兄さんと再会し再び付き合う様になった女。

あの人はどう思っているのかは知る由もないけど、私はある程度玉置美佐を認めている。
普通の女だったら、妹と如何わしい関係を持っている可能性がある男など、
二度と関わりたくない、と思うのが正常な思考回路だろう。

それにも関わらず、玉置美佐は今一度兄さんとの関係を築き、共に人生を歩んで行こうとしているらしい。
賞賛に値すると私は考えている。

玉置美佐は、兄さんの優しさや愛らしさ、儚さをしっかりと理解しているのだ。

いわば私達は同志。
もし、私に息子ができたら、ああいう物事の奥を見通せる女性にこそ、お嫁に来てほしいと思う。

しかし残念な事に、私はこのまま兄さんを渡すつもりは更々ない。
やっとここまで来たのだ。
鏡花水月な兄さんの存在が欲しくて。
我慢して、我慢して、やっとここまで辿り着いたのだ。

あのヘラヘラした男の報告で、玉置美佐も今度は本気である事がわかった。
悲しいかな、私は玉置美佐に正式に兄さんとの別れを打診しなければならないようだ。
道端で拾ったあの男を使って。
なるべく証拠が残る様な事はしたくなかったのだが、仕方ない。

が、今はまだその時ではないと私は判断した。
私にはもう少し時間が必要だからだ。

機が熟した時、私と玉置美佐の聖戦を始めよう。

・・・あの人はもう枯れた。
きっと、動かない。
邪魔は入らない、玉置美佐と十分に雌雄を決する事にしよう。

・・・世の中には、残念ながら不必要な物があるのだ。

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249『きっと、壊れてる』第8話(2/8):2010/10/02(土) 17:57:34 ID:SZbvIUdd
「お茶を頂けますか?・・・どうも」
茜はCAから温かいお茶を受け取り一口読むと、各座席に付与されているイヤホンを耳に着け、
持参した文庫本に目を通し始めた。
日本史上、最大の熊害(ゆうがい)である三毛別羆事件を題材とした『熊嵐』というドキュメンタリー小説だった。
横目でそれを見た浩介は、なんでこのタイミングで、と思ったが、
茜に話しかけると、浩介の肩にもたれ掛かって眠っている楓を起こしてしまいそうなので、見なかった事にした。

「・・すぴぃ」
楓は気持ち良さそうに眠っている。
昨夜も遅くまで勉強していたのだろうか、夜型なのは相変わらずのようだ。
浩介は楓に掛かっている毛布を掛け直すと、自分の座席のすぐ右側にある窓の外へ目を移した。
綿飴のような白く大きい雲が眼下に広がっている。
そのフワフワとしていそうな形状は、大人になった今でも「あそこで寝てみたい」と思わせるには十分だった。

朝の8時。
茜と楓、そして浩介は飛行機に搭乗し、空の旅を楽しんでいた。

「兄妹3人、再会を祝してどこかへ出掛けよう」

楓が1週間と少し前の夕食時に提案した事だった。
8月も中旬に入り、浩介は来週から土,日を合わせて9日間のお盆休みを取る事になっていた。
茜も急ぎの仕事はないらしく、楓も予備校の夏期講習の休みが4日間あるらしい。

急な話だった。
浩介は迷ったので、「予約が取れたら連れていくよ」と言った。
まずホテルの予約がこんなに急に取れないだろうと思っていたからだ。
しかし、最近の不景気で旅行者が少ないのか、ホテルと飛行機の搭乗券のパックが余っていたらしく、
あっさりと予約が取れてしまったのだ。
夏のボーナスが削られるのは痛かったが、約束した事を撤回するわけにもいかず、
茜と楓を引き連れて、2泊3日の北海道旅行へ出掛ける事になった。

先日浩介が美佐に、旅行に行く事と、『楓』というもう一人の妹がいて、現在家に居候している旨を伝えると、
「そんな設定聞いてない」と、美佐はもう一人の妹の存在に目を丸くして驚いた。
そして、「私も一緒に付いて行く!」と言い出し、同僚に休みを入れ替えてもらえるように連絡していたが、
代わりは見つからなかったようだ。
「1日2回、朝と夜に必ず定時連絡をするように!」
そう捨てゼリフを吐き、悔しそうな表情を見せた美佐を思い出た浩介は、誰にも気付かれないように苦笑いをした。

飛行機の中というのは、快適なようで、する事があまりない。
眠気がない浩介は、茜のように本を持ってくれば良かった、と後悔した。

浩介は楓を挟んで通路側の座席に座っている茜を見た。
本を読んでいる茜の長いまつ毛がピクリピクリと早いリズムで動いている。
浩介は笑いを堪えた。
滅多に見せる事はないが、昔から変わらない。
何かを楽しみにしている時に見せる、浩介だけが知っている茜のクセだった。

茜と二人で暮らしていた時は、旅行など行かなかった事を、浩介は思い出した。
学生の頃は慣れない生活に加え、勉学や生活費を捻出する為のアルバイトがあった。
社会人になってからも、日々情報技術のスキルアップを求め、休日も自宅で勉強する事が多かった浩介は、
こうして家事を仕切ってくれている茜に還元する事など無かったのだ。

茜への慰安旅行としても行く事にして良かった。
浩介は再度、窓の外に目をやった。

そして、近いうちに今度は両親も含め、家族全員を旅行に連れて行こう。

どこまで続いているのかわからない青い空を眺め、浩介はそう心に決めた。
250『きっと、壊れてる』第8話(3/8):2010/10/02(土) 17:58:09 ID:SZbvIUdd
9時半過ぎ、新千歳空港に着いた浩介達はまずレンタカーを借りる事にした。
北海道は広く、効率よく各所を回るためには車が必須の為だ。
シルバーのセダン車を選んだ。
ペーパードライバーの浩介はできれば運転は避けたかったが、
他に運転免許を持っている人間がいないため、我慢して運転席に乗り込んだ。

3人を乗せた車は、北海道の長い道を走る事になる。

とりあえず、3人無事に東京へ帰れる事が最優先。

気合を入れた浩介は、アクセルペダルを踏んだ。

・・・
・・


「えーっと・・初日何処行くんだっけ?」

旅行ガイドブックを片手に助手席に乗り込んだ楓が、運転席の浩介と、後部座席に座っている茜を交互に見た。
「初日は旭山動物園に行って、旭川のホテル」
浩介を運転に集中させたかったのか、茜がいち早く口を開いた。
旭山動物園は茜が希望した場所だ。動物好きな茜らしい、と浩介は思った。
「2日目は?」
「旭川から富良野に行ってラベンダー畑、夜には札幌よ。最終日は小樽に行って夕方には新千歳まで戻ってくるわ」
「さすがおねーちゃん!暗記してるの?」
「暗記っていうか、みんなで決めたじゃない」
「とりあえず、いくら丼は絶対食べたいな」
「昨日はジンギスカンって言ってなかった?」
「うん!ジンギスカンも絶対食べる」
「蟹は?」
「もちろん!!えへへ、楓はおいしい物食べられればそれでいいや」
「もう、滅多に来れないんだからちゃんと観光もするのよ?」
「はーい」
「はははっ楓は昔から食いしん坊だったもんなぁ」
二人の話を聞いていた浩介は、思わず笑った。
「失礼だなぁ。楓はよく食べるけど、スタイル最高に良いよ?ボン・キュッ・ボンってやつ?」
「へぇ・・・」
浩介は「見た目は細いのにそうなのか?」と言いかけたが、後部座席に座っている人の事を考え、軽く流す事にした。
茜は女性としては背も高く、スレンダーでスタイルは良いと言えるのだが、やはり比較的一つ目のボンの部分が小さいからだ。

「・・・懐かしい言葉ね。最近聞かないわ」
「・・・ははは、そうだな。でも函館も行きたかったなぁ」
やはり少し不機嫌そうな茜に気を使い、浩介は話題を変える事にした。
函館は日程的に回りきる事ができなさそうだったので、断念した場所だった。
「あっ楓、オルゴール館は行きたかったなぁ」
「あぁ確かに雰囲気良さそうだなあそこは」
「でしょ?オルゴールの奏でる音色がちょ〜ロマンティック!!あっこの前友達がね・・・」
茜は今時の女子高生らしい言葉遣いで、オルゴールの音色の良さからいつの間にか友達の恋愛話を熱弁した。
茜と容姿がそっくりなため、とても違和感があるな、と浩介は思った。
そして、美佐と楓を会わせたらとてつもなく五月蠅くなりそうだ、と苦笑いした。

「あ〜なんか話してたら本当に行きたくなってきちゃった。どうしても無理なんだっけ?函館」
「う〜ん・・ちょっと無理だなぁ。削るとしたら今日のあさひや・・」

「動物園は駄目よ?」

「・・・また今度な」
「・・・うん」
茜の一言で、気持ちが盛り上がっていた浩介と楓は、一瞬で黙らざるを得なくなった。
本気で怒りそうな茜の気配を、しばらく離れていてもしっかりと覚えていた楓に感謝をしつつ、浩介は運転に集中した。
251『きっと、壊れてる』第8話(4/8):2010/10/02(土) 17:58:54 ID:SZbvIUdd
旭山動物園は行動展示と言われる、動物の生活や習性を来園者に見せる展示方法をいち早く取り入れ、有名になった動物園だ。
近年では北海道の代表的な観光地として、海外からも数多くの観光客が訪れているらしい。
浩介達は受付で入園チケットを購入し、園内に入った。

近年、北海道といえど夏場は30度を超える日もめずらしくなく、この日は最高気温32度の予報だった。
ふと、浩介は楓の格好が目に入った。
いかにも夏らしいTシャツにホットパンツ姿の楓は、健康的な美を振り撒いていて、
可愛らしいとは思った浩介だったが、ここは楓の貞操観念の欠落を危惧して、
注意しておかなければいけないと思っていたところだった。

「しかし・・・楓、その格好もう少しなんとかならなかったのか?」
「え?変?」
「茜、足出し過ぎじゃないのか?これ」
浩介は茜に同意を求めようと話を振った。
「兄さん、今の若い子はこれが普通よ」
そう言った茜は、どこかのお嬢様のようなゆったりとした白いワンピースに、黒い日傘を差している。
茜は昔から、ゆったり目のロングワンピースのような服を好み、色も地味な物が多い。
茜と楓で比較すると、どうしても浩介には楓の格好が、露出し過ぎているように感じてしまっていた。
「そうだよ。お兄ちゃんオヤジくさい」
「オヤ・・・」
女性陣に反論され、浩介は何も言い返せなった。
もう自分の世代と考え方が違うのだ、そう割り切る事にした。

「ねぇ、どこから回るの?」
3人は、動物の絵が描かれている入口近くの園内地図の前まで来た。

「白熊よ」

茜は地図をチラッと見ると、スタスタと浩介と楓を置き去りにするかのような勢いで、歩き始めた。
どうやら、最初から回る順番は決めていて、場所を確認したかっただけらしい。
茜の歩くスピードに唖然とした浩介は、隣でヤレヤレといった表情で立っていた楓に向けて口を開いた。
「・・・なぁ、アイツはここまで動物好きだったのか?」
「えぇ!?やだお兄ちゃん、知らなかったの!? 昔なんて週末になると、しょっちゅう一人で動物園行ってたんだから」
「一人で!?」
博物館や美術館、それに映画館やカラオケは、一人で行く人間の存在を知っていたが、
動物園は聞いた事がないな、と浩介は思った。

「うん。あぁお兄ちゃん週末も部活でいつも遅かったから、知らなくても無理ないかも。お姉ちゃん夕飯までには帰ってくるし」
「そうだったのか」
「それでね、帰りにはブサイクな動物のぬいぐるみ買ってくるの、必ず」
「なるほど、その為にバイトしてたんだな」
楓の話を聞いた浩介は、茜が高校の頃コンビニで週に1度か2度アルバイトしていた事を思い出した。
そして、『いつもどこで買ってくるんだ』と思っていた茜の部屋に置いてある、
ぬいぐるみ達の出身地がようやく判明した事に、不思議な達成感を感じた。

「言われてみればそうかもね。お姉ちゃん、自分の物は極力自分で買ってたみたいだから」
「でも当時は焦ったよ、茜が接客業やるって言い出すから」
「確かに。でも高校生のバイトって接客業ぐらいしかないしねぇ。ちゃんとできてたのかな」
「一度心配で見に行った事があるんだけど、一応形にはなってたぞ。営業スマイルはなかったけど」
浩介はコンビニのレジを無表情でこなしている茜の姿を思い出し、楓に気付かれないように微笑んだ。

「・・・」
浩介は楓が何か思いつめた顔をしている事に気付いた。
「楓?」
「・・ん?あぁちょっと思い出しちゃって!昔の事」
楓はそう言うと、浩介の腕に突然手を絡ませてきた。
フワッと楓の香りが浩介の無防備な鼻に届く。
茜と同じ香り。
浩介はその懐かしい香りに、嫌気が差した。
もう自分の心は決まっているのに、この香りを嗅ぐと決意が弱まる気がしたからだった。
252『きっと、壊れてる』第8話(5/8):2010/10/02(土) 17:59:28 ID:SZbvIUdd
「お、おい・・・どうした?」
「なんとなく・・もうこれからは素直に甘える事が出来なくなるかもしれないから」
「??・・・別に大人になろうが、一緒に住んでなかろうが楓は俺の妹だろ?」
「それはそうだけどね。女の子には色々あるのよ。おねーちゃんにもよく言われない?」
「そういえば、何回か言われた事があるな。・・・とりあえず恥ずかしいから離してくれよ」
「やだ〜」
楓は腕を組んだまま、浩介を引きずるように歩きだした。
「おいっ楓」
浩介が楓を説得しようとすると、注意された反抗期の中学生のような顔をした楓が浩介に振り返った。

「いいじゃん、兄妹なんだし」
「兄妹だから恥ずかしいんだよ」

浩介の本心、それは『茜に見られたくない』だった。
もう普通の兄妹を築こうとしている最中なのに、「それはおかしい」と諭されるかもしれない。
それでも浩介は、美佐と腕を組んでいる姿すらも、できれば見せたくなかった。
まだ完全にフッきれていないのだな、と浩介はお腹の中がまだ消化し切れていないような気分になった。

「だめ〜。白熊の所に着いたら解放してあげるから!」
しかし、浩介の意向は無視するかのように、楓は腕を離さなかった。
そこまで、浩介と腕を組みたいのだろうか、楓の顔は真剣だ。

不意にある想像が浩介の頭の中を走った。
急に二人の兄妹がいなくなり、これまでの数年間楓は寂しかったのかもしれない。
そう考えると、ここで断るのも不毛に終わりそうな気がしてくる。楓はおそらく甘えたいだけだ。

浩介は抵抗する力を弱めると、楓の頭を撫でた。
「えっ!?何?」
「・・・何でも。じゃあ熊の所までな」

浩介の急な心変わりに驚いたのか、楓は真面目な顔を崩さず、何かを考えている。
こうして真剣な顔をしていると、本当に茜とソックリだ、と浩介は思った。
浩介は楓を見ながら、後ろを振り向きもしないで、白熊の所へ急いで歩いている人物の事を考えた。
「・・うん!!じゃあ白熊までね!!」
楓は最後には嬉しそうな表情を見せ、浩介の腕に改めて抱きついた。
意外に力が強く、抱き枕にでもするかのように、きつく浩介の腕を抱いている。

車中で楓が言っていた事は本当かもしれないと浩介は思った。
浩介の腕に当たる女性特有の柔らかさは、茜や美佐よりも確実に勝っていた。

何くだらない事を考えているだ俺は。

浩介は雑念を振り払うかのように、歩きだした。
遠く前方を歩く茜を見る。様子は変わっていない。

周りを見渡す。やはり家族連れが多く、皆楽しそうに園内を歩いている。
自分達3人も、傍から見ればただの仲の良い家族に見えているだろうか、と浩介は思った。

そうでなくてはいけない。

浩介は密着して隣で楽しそうに歩く楓を見た。何も欲情は湧かない。
それは茜の異質さの再確認だった。

もう終わった事だ。考えるのはやめよう。

浩介は歩く速度を速めた。
茜に気付かれてしまったとしても、何も困る事などない、それが普通なんだ。

途中で楓に文句を言われるまで、浩介は、歩幅を大きくして歩いた。
結局、白熊のエリアに着くまで、茜がこちらを振り返る事はなかった。
253『きっと、壊れてる』第8話(6/8):2010/10/02(土) 17:59:57 ID:SZbvIUdd
夕方になり、予約していた宿に到着した。
航空会社が経営している、市内でも比較的大きいホテルだ。
3人はフロントで受付を済ますと、エレベーターに乗り込んだ。
途中一緒に乗っていた中年の男性が降り、エレベーターの中が浩介達だけになると、
楓がガラス張りになっている後面に走った。
おそらく外が見渡せるようにガラス張りに設計されたのだろう。旭川の街並みが夕日と重なって美しく映っていた。

「すごいよ、おねーちゃん!見て!ちょ〜綺麗!!」
「高い所は苦手」
楓が茜の手を引っ張ろうとすると、茜は逃げるように浩介の陰に隠れた。

「そうなのか?茜、高所恐怖症だったんだな」
浩介は意外そうに後ろを少し振り返り、茜の顔を見た。
割と真剣な顔をして、隠れている茜は本当に高い所が苦手なようだ。

「だって・・・落ちたらどうするのよ」
仕方ないじゃない、といった顔で口を尖らせる茜を見て、浩介は茜の数少ない弱点を発見した気がして微笑ましくなった。

「おねーちゃん、たまにボケるよねぇ」
「でも子供の頃は平気だったよな?」
これは間違いないだろうと浩介は思った。
遊園地で、高い所に上るアトラクションに乗っていたのを覚えていたからだ。

「そうね、鳥に憧れた時期もあったわ」

茜は旅行を満喫して気分が良いのか、めずらしく冗談を織り交ぜ、浩介の問いかけに答えた。

廊下を渡り自分達の部屋に入ると、値段の割に広々とした光景が目に入った。
シングルベッドが3つ並んでいる。
浩介の本音では、また茜を意識してしまうかもしれない自分が恐ろしく、できれば別々の部屋が良かった。
しかし楓がもし『何も知らなかった』場合、なぜ兄妹なのに別室にするのか、と不振に思いそうなので同室にしたのだ。

「楓は窓側〜」
楓は入り口から一番遠いベッドまで小走りで駆け寄り、体を投げ出し大の字に寝転んだ。
「茜は?」
「私はどちらでもいいけど・・お金を出した人が真ん中に寝れば?」
そう言うと、茜は一番手前のベッドに腰掛け、荷物を整理し始めた。

茜の機嫌は特に悪くはなさそうだった。
昼間、楓と腕を組んで後ろを歩いていた時、いつ茜が振り向き、その視線が腕に向くのか、
浩介は実質脅えていたが、結局茜は白熊に夢中で気付かなかったようだ。

「ねぇお風呂行こうよ。汗かいちゃった」
いつの間にか起き上がっていた楓は入浴の支度をしていた。
旅行用のシャンプーやトリートメントが入っている小さなポーチを取り出し、同意を求めるかのように茜を見た。
「そうね、夕食までまだ少しあるし。兄さんはどうする?」
「俺はもう少ししたら行くよ。どうせ風呂は男の方が早いしな」
浩介は携帯電話を取り出すと、メールの作成画面を開いた。
美佐に連絡を取るためだった。

「そう、じゃあ楓、先に頂いてましょう」
「ねぇ、おねーちゃん。なんでお風呂も『頂く』って言うの?」
「ご馳走だからよ」
姉妹は他愛もない話をしながら、部屋を出ていった。
浩介はベッドに寝転がり、メールの文を考える。

う〜ん、なんて書けばいいんだ。美佐はまだ仕事中だろうし・・。

浩介は普段あまり使わないメールの文章に悪戦苦闘したが、結局『お土産は何がいい?』という一文を送信する事にした。
3分と待たず帰ってきたメールの文章は『スイカ熊が欲しい』という、浩介には理解できない謎の文章だった。
254『きっと、壊れてる』第8話(7/8):2010/10/02(土) 18:00:46 ID:SZbvIUdd
茜と楓が風呂に行ってから約1時間後、浩介は窓の外の旭川の街並みを眺めていた。
茜と楓が部屋を出てから10分後、浩介も大浴場に向かった。
部屋のキーの事もあり、あまり長湯はしているつもりはなかったが、
久しぶりに広い風呂に直面した浩介は、普段よりはゆっくり浸かったつもりだった。
それでも茜達よりかは出てくるのが早かったようで、安心していたところだ。

コンッコンッ

控えめなドアを叩く音に気付き、浩介がドアを開けると、そこには茜がいた。
まだ遠目から見ると楓との判別は付けにくかったが、この距離なら間違える事はない。

「遅かったな、あれ?茜だけか?」
少し身を乗り出して廊下を見ても、楓の姿はなかった。

「えぇ、ゲームをやってから戻るって」

茜は湯上り姿で、顔には赤みがさしており、濡れた髪からは普段よりも強く茜の香りがする。
スレンダーの身体に浴衣もよく映えていて、浩介は直視できずに目を背けた。
「ゲーム?」
「ほら、大浴場の近くに小さいゲームセンターみたいなのがあったじゃない」
「子供か・・あいつは」
楓は少し幼いような気がする。高校3年ならもう少し背伸びしようとしていてもいいのでは、と浩介は少し心配になった。

「フフッ体は成長したのにね」
茜はそう言いながら微笑むと、部屋の中に入り、自分のベッドに腰掛けた。
姉としては放っておいても大丈夫だと考えているのか、
確かにそこまで深刻な話でもないか、と浩介は深く考えない事にした。

「しかし・・良い所だな北海道は。食べ物もうまいし、なにより空気が綺麗だ」
浩介は窓の外を見ながら、ガラス越しに茜に語りかけた。
空は、そろそろ夜の帳が下りそうだった。

「えぇ、良い所。欲を言えば飛行機は避けたかったのだけど」
「??高所恐怖症は飛行機も怖いものなのか?」
素朴な疑問。
飛行機嫌いな人は聞いた事があったが、高所恐怖症とは結びつくものなのか、浩介にはよくわからなかった。
「えぇ、そうね。とても怖いわ」
「そっか、悪かったな。でも行く前に言ってくれれば良かったのに」
「ううん、気にしないで。今回は楓が主役だから」
「あぁ、そうだな」

・・・
・・

10分程度経っただろうか、茜と二人で静かな時間を過ごした。
最近は楓が居候しているので、久しぶりの静寂。
浩介にとって、長年変わらないこの茜と二人きりの静かな時間は、とても居心地が良かった。

ふと、浩介は文庫本を読んでいる茜に視線を移した。
透明なビンに入った白い液体を飲もうとしている。

「牛乳?」
「えぇ、さっき買ったのよ。お風呂出た所にあったでしょ?売店」
茜はそう言うと、コクコクと喉を鳴らし、ビンの約3分の1程の牛乳を飲み干した。
「なんでまた」
浩介は茜が牛乳を飲んでいる姿など見るのは、小学校の時以来だった。
嫌いなわけではないだろうが、買ってまで飲む物でもない。

「・・・もう少し、グラマラスになろうかと思って」
「?」
255『きっと、壊れてる』第8話(8/8):2010/10/02(土) 18:01:18 ID:SZbvIUdd
「兄さんは、大きい方が好きみたいだから」

浩介は、自分の見通しの甘さに愕然とするしかなかった。
車中でこの話が出た時は、何も反応をしなかった自信があるし、実際に心の中でも何とも思っていなかった。
茜は、動物園で浩介が一瞬だけ見せた、隙ある心理状態の事を皮肉っていた。

気付いていた。
自分の後ろで楓と浩介が腕を組んで歩いていた事を。
しかし、それだけなら、歩く茜の前にガラスなどの反射する物があれば確認する事も不可能ではない。

浩介が一番驚いた事。それは茜の洞察力と注意力。
気付いていた。
浩介が、一瞬だけ楓と茜の身体を比較し、男性特有の感情を出した事を。

茜はベッドから立ちあがり、浩介の目の前まで来た。
浩介の頬に掌をそっと添えると、何かを確認するように浩介の目をじっと見つめた。

「フフッ冗談よ。そんなに脅えた顔しないで?」
そして、愛おしそうにゆっくりと頬を撫で、この世の物とは思えないほど美麗な微笑みを浮かべた。
浩介は何も言えず、ただ立ち竦んでいただけだった。

・・・
・・

茜はしばらく浩介の頬を撫でると、「牛乳だけで成果が上がるなら苦労しないわ」と呟き、寝る準備に戻っていった。
楓が部屋に戻ってきた後も、浩介は茫然としていた。
無理もないかもしれない。
浩介は考えてもみていなかった事だ。
しかし、茜の言動、なにより先程の目や仕草を加味すると、疑わざるを得なかった。

茜はまだ浩介を一人の男として認識している。

二人が兄妹に戻った日から、まだひと月経つか経たないかだ。
茜も割り切れていないだけだろうか。浩介はその可能性は低いと思った。
先程の目、茜の切れ長で作り物のように壮麗な目。
それは深く深く黒かった。
絶対的な自信。
それがあの目には宿っていた。

ベッドの中で浩介はふと、この間行った鎌倉での出来事を思い出した。

美佐もだった。
美佐もあの時、浩介の頬を愛おしそうに撫で、微笑みを浮かべていた。
茜も昔からやっている動作だ。

二人とも、同じ仕草で同じように微笑み、同じように浩介を愛でる。

根拠はない。
ただ、浩介は『宿命』と『運命』の存在を信じた。

第9話へ続く
256『きっと、壊れてる』第8話:2010/10/02(土) 18:02:11 ID:SZbvIUdd
以上です。ありがとうございました。
257名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 18:55:23 ID:8gfOeqmR
GJ!
規制続きで全く書き込めなかったよ
258名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 19:05:29 ID:DFBqiCt3
>>256
GJ
さて茜はどうでるか…
259名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 19:51:21 ID:ZIfomV0q
GJ
260名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 23:29:06 ID:Mt+EhlZy
>>256
GJです
ただ今のところ楓が普通なのがちょっと残念です。これからに期待というコトで次話が楽しみです
261名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 23:50:48 ID:nl2z2TlL
>>256
GJ
おれには嵐の前の静けさにしか感じないぜ
262名無しさん@ピンキー:2010/10/02(土) 23:59:43 ID:x7MgKw5y
きっと壊れてるキター!
>>256GJ!
楓と茜が今後どうするのか楽しみ
263名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 08:15:06 ID:XpN/OW5p
264名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 17:25:53 ID:pjqdDjkh
いしてるよ、お兄ちゃん!
265名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 18:23:38 ID:eW8LkS2O
ああ、あのブス?○したよ♪
いいことした後は気分がいいなあ
うん、待っててねお兄ちゃん
え?聞こえないよお兄ちゃん
お兄ちゃん、捕まえた♪くすくす

キモウト五十音表「あ」の段
266名無しさん@ピンキー:2010/10/03(日) 20:26:37 ID:hwSVEXEQ
>>265
続きに期待
267名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 03:42:17 ID:HTTlQzTG
265じゃないけど

かまってほしいの、よその女より
きっと願いをかなえてみせる
くるしい胸の内は秘密なの
けっこんできなくても事実婚
こんなわたしでごめんねお兄ちゃん
268名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 03:57:33 ID:Q6JO3z9y
>>267
IDが放課後ティータイムwww
そういや憂もキモウトの範疇にはいるのかな?
269名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 09:10:41 ID:DTWv2LWS
IDが放課後ティータイムwww
そういや憂もキモウトの範疇にはいるのかな?
270名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 13:45:12 ID:HTTlQzTG
およ本当だ
憂は、攻撃性を発揮することはないが、
毎晩おねえちゃんを想って幸せな気持ちになったりすごく悲しくなったり。
悶々として一睡もできないことがあっても、それを唯には一切悟らせない子だと思う。
271名無しさん@ピンキー:2010/10/04(月) 21:50:33 ID:+fbkAjxo
三番煎じ。長めの保守と思ってくれ。

さらってしまおう、あの牝豚から
しね! 兄さんは私のものだ!
すごい! 兄さんとするの、一人でするよりずっといい!
せっくすしよう。二人で濃い血の赤ちゃん、いっぱい作ろう。






そんな……。嘘、嘘でしょう? 目を開けて兄さん!
272名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 00:23:56 ID:mAH4iBiS
たりないの、もう妹ってだけじゃ
ちは水よりも濃いのよ? だから私と引き合うのは当然よね。
つきあってる子がいる? いいえ、もういないわ。
てんごくよ、今頃はね。
ともだちもいっぱいいるからきっと寂しくないよ、あははははは
273名無しさん@ピンキー:2010/10/05(火) 23:17:10 ID:RgTq9g7x
兄「何してるんだ妹!やめろ!!」
妹「兄さんは私を嫁」
  ぬぷぷ……
兄「ね、姉さんっ!助けてくれ!!」
姉「NO。妹ちゃん、次は私の番ね」
274名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 00:57:28 ID:TXC63d+Q
>妹「兄さんは私を嫁」

意味わからないが「言葉」でなく「心」で理解できたッ!
275名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 01:26:13 ID:yvAF/CBj
投下いきます
276キモガールズトーク:2010/10/06(水) 01:27:23 ID:yvAF/CBj
「好きな人とかいないの?」
 暗闇の中、ドアの隙間から漏れる光を眺めていたら、突然、質問された。
 私が寝返りをうつと、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた友人の顔が、私に迫る。
 仮に、彼女の名前をAさんとしておこう。
「ねえ、いないの?」
 Aさんは、ずりずりとこちらに体を寄せて、再度問う。
 その小さい体で、布団ごと移動してくるなんて、無駄なところで器用な娘だ。
「私も気になるな。匡子(きょうこ)のそういう話は、聞いたことがないから」
 今度は、足元から私の名前を呼ぶ声がする。
 仮に、Bさんと呼ぶことにしよう。
 Aさんと同じように、Bさんもにやけた顔で私に這いよる。
 ちょっと二人とも、なんか怖いんだけど。
 思わず後ずさる私の足を、Bさんの長い手が捕まえた。
 そのまま、四つの布団の真ん中まで引きずられる。
 ちょっと、やめて、と制止する私の声を無視して、ケラケラと笑うBさん。
「先生が来てしまいますよ」
 それを止めたのは、浴衣の乱れ一つなく寝ていたはずの、Cさんだった。
 どうやら、私達の声で目を覚ましてしまったらしい。
 ごめんね、と口々に謝る私達に、「お気になさらず」とあくまで上品に微笑むCさん。
「私も気になります。匡子さんの好きな方のこと」
 Cさんまでも、こんな事を言い出す始末だ。
 明日は、丸一日、自由行動で名所を巡るのだから、早く寝た方が良いんじゃないの、
と言っても、三人の友人は、一向に諦める気配を見せない。
「いいじゃん、なんなら協力するし」
「水臭いな、友達だろう?」
「ドキドキしますね」
 私だけが置いてけぼりだ。
 確かに、このテの話は、修学旅行の夜の定番である。
 しかし、困ったことに、現在、私には特に意中の人がいるわけでもなく、
もっと言えば、生まれてこの方、恋愛というものをしたことがない。
 正直に白状すると、三人は、信じられない、という顔をした。
「ちょっと気になる、でもいいんだよ? 何となく目で追ってる、とか」
 Aさんの問いにも、首を左右に振ることしかできない。
「まさか、女に興味がある、とか言わないよな?」
 勢いよく首を振って、Bさんの疑いを晴らす。
「匡子さん、どんなに頑張っても、二次元には行けないんですよ?」
 Cさんから、とんでもない言葉が飛び出した。
277キモガールズトーク:2010/10/06(水) 01:29:44 ID:yvAF/CBj
 改めて考えてみても、私の頭には「気になる男性」が、浮かばない。
 今度は、私が三人に質問してみることにした。
 あなた達は、今、好きな人はいないの。
 あはは、ふふん、うふふ、と三者三様の忍び笑いが返ってくる。
 まずは、Aさんが語りだした。
 それは、私にとって想像を絶するものであり、彼女のことをよく知らないうちに、
その話を聞いていたら、私は間違いなく友人にはならなかったであろう、
と思わせる内容だった。
 なんと、Aさんの好きな人は、彼女のお兄さんだという。
 全てを聞いていたら、夜が明けてしまう。
 Aさんの話を三十分ほど聞いて、そう判断した私は、特に印象に残っている
エピソードを聞かせてもらうことにした。

 Aさんのお兄さんは、つい先日、誕生日を迎え、世間一般で言うところの成人となった。
 Aさんとは四つ違いで、妹を非常に可愛がってくれる兄なのだそうだ。
 ご両親が苦笑気味に、あの子は、いわゆる「しすこん」ね、と言うくらいだから、
本当に溺愛しているのだろう。
 当然、Aさんもお兄さんが大好きで、彼女は、自分たちは、ずっとこのまま、
仲良しでいられると思っていた。
 しかし、その未来予想図は、唐突に切り刻まれた。
「会ってほしい人がいるんだ」
 ある晩、家族団らんの席で、お兄さんは言いだした。
 ご両親が驚いたのは勿論だが、何よりも、衝撃を受けたのは、Aさんだった。
 付き合っている女性がいる。
 その人との結婚を考えている。
 相手も同意してくれている。
 お兄さんが口を開くたびに飛び出してくる、信じられない、信じたくない言葉の数々。
 Aさんは、突然、猛烈な吐き気に襲われ、胃の中の夕食を全て床にぶちまけた後、
気を失ってしまった。
 過度のストレスが原因だった。
 それから、Aさんは部屋にこもり、たとえ、それが大好きなお兄さんであっても、
部屋にいれようとはしなかった。
 一週間後、Aさんは部屋から顔を出した。
 葛藤につぐ葛藤を乗り越え、久しぶりに目に入れた外界は何もかもが輝いて見えた、という。
 気持ちは、もう決まっていた。

「それで、私はお兄ちゃんをレイプしたの」
 耳がおかしくなったのか、頭がおかしくなったのか、どちらを疑うべきか迷った。
278キモガールズトーク:2010/10/06(水) 01:31:52 ID:yvAF/CBj
 もう一度、いい?
 私が聞くと、Aさんは顔を真っ赤にして、こう言った。
「だからね、お兄ちゃんの手足を縛り上げて、大好きだよ、って言いながら
おちんちんを口で綺麗にしてあげた後、もうびしょびしょだった私の」
 すいません、もう勘弁してください。
 誠心誠意、土下座して、話を打ち切らせてもらった。
 ただ、一つだけ気になった私は、最後にこう質問した。
 お兄さんは、その後、彼女とどうなったの、と。
 Aさんは、きょとんとして、首を傾げる。
 だから、お付き合いしていた女の人とは、結局別れたの?
 言葉を変えて、もう一度質問してみたが、Aさんは困り顔だ。
「彼女なんて、いなかったよ?」
 だから、訳が分からない。
「お兄ちゃんに彼女なんて、最初からいなかったんだよ」
 いつも快活なAさんから、表情という表情が消えた。
 これ以上追求すれば、私の存在もなかったことにされそうなので、話題を変えることにした。
 次に語りだしたのは、Bさんである。
 Bさんとの付き合いは、それなりに長い。
 だから、私も彼女に歳の離れた弟さんがいることは知っていた。
 でも、流石にこれは予想外だった。

 Bさんの弟は、小学生。
 顔立ちは実に可愛らしく、ひねくれたところのない、素直な少年だ。
 目上の人間には、敬意を忘れず、女性には優しい。
 ご両親の熱心な躾の賜物であろう。
 このようなルックスと性格を持ち合わせているのだから、人気者にならないはずがない。
 男女問わず、彼は人気者だ。
 そんな弟さんも、年相応に甘えん坊で、夜になると、姉であるBさんの布団に潜り込んでくる。
 姉としては、庇護欲を大いにそそられるのも仕方のないことだ。
 ソトでしっかりしている分、ウチでは甘やかしてあげよう、とBさんは考えていた。
 ところが、だ。
 ある日、Bさんは見てしまった。
 弟さんとしっかり手を繋いで歩く、上級生の女の子の姿を。
 嬉しそうに、腕にすがりつき、「お姉ちゃん」と甘える弟さんの顔を。
 Bさんは、逃げるようにその場を立ち去った。
 どうやってたどり着いたのかも分からない。
 気がつくとBさんは、自分の部屋の布団にくるまっていた。
 顔中がベタベタで、喉はちくちくと痛みを訴える。
 泣き疲れて眠ってしまったのだ。
279キモガールズトーク:2010/10/06(水) 01:34:31 ID:yvAF/CBj
 涙と共に、嫉妬や屈辱感は、すっかり抜け落ちてしまったようで、Bさんの心中は、
台風一過の青空のように、晴れ渡っていた。
 隣を見ると、いつものように弟さんの寝顔がある。
 もう真夜中で、家の中は静まり返っていた。

「それで、私は弟をレイプしたんだ」
 どうしてこうなった。
 頼むから、結果に至る理由をきちんと述べてほしい。
「だから、寝ている弟を起こして、唇を奪ったあと、全身を舐めてあげて、
耳元で、お前はもう、姉ちゃんのモノなんだからな、他の女を見ちゃいけないんだよ、
と囁きながら、皮を被ったままのあの子のぺニスを、私の」
 少しだけ我慢してみたけど、やっぱり無理です、勘弁してください。
 深々と土下座をする。
「大体、あの子の姉なんか私以外に務まるものか」
 当時を思いだしたのか、憤懣やる方ない、といった表情で、Bさんは口を開く。
「私が、拳骨を数発くれてやっただけで逃げだす女に、弟を守れるものか」
 帰り道にばったり会ったので、つい、やってしまった、とBさんは言った。
 完全に通り魔だ。
 この狭い部屋に暴行犯が二人もいる。
 しかも、片方は殺人犯の可能性もある。
 AさんはBさんと更に深い話を始めているし、Cさんはにこやかに相づちを打っている。
「さあ、次はCの番だぞ」
 Bさんの言葉に、Cさんは、笑顔を浮かべて、
「実は、私も匡子さんと同じで想い人はいないんです」
と答えた。
 良かった、やっぱりCさんは、まともだった。
 私は胸をなで下ろすと、じっくり探していきましょうよ、とCさんに語りかける。
 そうですね、とCさんは応え、「私には、手間のかかる家族がいますから。
そちらの世話だけで手一杯です」と、ふざけた調子で言った。
 おそらく、双子の弟さんのことであろう。
 彼もCさん同様、顔立ちから仕草まで何もかもが上品だ。
 もしかしたら、家では、そうではないのだろうか。
 Cさんが、いつもより、少しだけ姉の顔で、双子の弟を叱る姿を想像すると、
ついつい頬が緩んでしまう。
「あの子ときたら……いつも、いつも、いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも
いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも」
 頬が緩んだままの状態で固まった。
280キモガールズトーク:2010/10/06(水) 01:35:54 ID:yvAF/CBj
「他の女の子にばっかり優しくして。ねぇね、と呼んでもくれないし、部屋には
勝手に鍵をつけるし、最近は、専属のガードマンまで雇って、私を遠ざけるし、
挙げ句の果てに、私」
 Cさん、寝ましょう。
 明日は朝が早いですから。
 知らない。私は何も知らない。
 Cさんの目がくわっと見開いて、瞳孔が収縮仕切っているのも、その手が掴んだ枕が、
綿飴のようにブチブチちぎれていくのも。
 実は担任の村井先生が、Cさんの弟と恋仲という極秘情報も、私は知らない。
 知らないのだ。

 AさんとBさんのノロケ話とCさんの呪詛の声に包まれながら、私は、ただひたすらに
夜が明けるのを願う。
 もうおうちかえりたい。
 家に帰って、いつものように、兄さんに抱っこされてのんびりしたい。
 時刻は二時。
 夜明けは、まだ遠い。


 終
281名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 01:37:14 ID:yvAF/CBj
投下終了
暇つぶしになれば幸いです
282名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 01:48:39 ID:RdpxikxJ
乙乙。一瞬本物の良識派かと思ったが我々の期待を裏切らないオチで安心した。
283名無しさん@ピンキー:2010/10/06(水) 11:29:49 ID:pMf0itFV
GJっす
とりあえず…村井先生逃げてーーー!!!
284名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:21:13 ID:RApIfUo/
そいえばここの住人はタクティクスオウガのリメイクは買うのだろうか
良いキモ姉がいるんだが
285名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:28:58 ID:Ywifa0FI
>>284
姉には興味が無いからなぁ・・・

妹なら速買いなんだが
286名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 00:34:16 ID:bFyom4XQ
巷では嫌われてるようだがどんな姉か覚えてない
287名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 03:03:09 ID:qdVe4RFm
>>284
kwsk



久しぶりに使ったぞ。
288名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 11:52:07 ID:7IzmRlT5
カチュアっていうと修羅場統合SSの山本くんとお姉さん思い出すな。
289名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 12:20:05 ID:ZUK+Vk1k
>>287
少数民族の英雄と掲げられた弟を戦いから離れて欲しいとひたすら願う健気な姉さんだよ
弟と一緒にいたくてゲリラ活動に参加するし、独占欲のあまり弟を一刺ししようとする素敵な姉さんだよ
個人的にはブレンパワードの伊佐美姉弟を思い出す

>>284
僕は姉さんを愛している!
オリジナルスタッフ再集結で出来たタクティクスオウガが待ち遠しいよ
290名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 19:33:15 ID:d0szGU6j
291名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 22:50:24 ID:oAb7Ad2m
今後も更新きそうなのって、三つの鎖、転生恋生、幸せな2人の話、きっと、壊れてる
ぐらいかな。
292名無しさん@ピンキー:2010/10/07(木) 23:43:29 ID:BgsFFZx8
桔梗の剣ェ……
293名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 00:13:43 ID:aJ7ypXwP
ちんまい姉に「姉さんはいい嫁になるんだろうなァ」と無責任なこと言ったらどうなるの
294名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 00:50:44 ID:u0hnVJJC
当たり前じゃないの。
でもなるんじゃないわ、するのよ。あなたがね。

と、当然のようにさらりとお答えに
295名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 00:51:12 ID:1DCHzDbr
>>289
ブレンパワードの姉さんって最初はちょっとブラコンな姉かと思ったけど弟がフラグを折ったばかりに…
296幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:38:59 ID:OGZSO7HA
今晩は。
表題について投下いたします。
297幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:39:32 ID:OGZSO7HA
みんみんと蝉がどこかで甲高く鳴いている。
太陽に蒸し返された草の匂いが充満する。
そんな原っぱしかない坂をだらだらとどこかへ延びる小道を二人の子供が歩いていた。
黒い髪の少年がはぁはぁ、と息を切らしながら歩く。
その少し後ろを白い少女が静かに後をついて歩く。
「はぁはぁ、シルフ〜、疲れてないか〜」
「うん、大丈夫」
少女が静かに答える。
少年は、俺も元気だぞ〜、と息も絶え絶えに少女に言って足を高く挙げながら歩く。
一休みしたかったのだが、妹の手前で情けない所は見せられないと強がる。
そんな少年の様子を少女はいつもの様に無表情なまま見ていた。
でも、別につまらなかった訳じゃ無かった。
こうやって少年と一緒に居る事が少女にとっては何よりも嬉しい事だった。
少年はいつも、少女を楽しませてくれたし、ほっとする気持ちにさせてくれた。
でも、それでもいつも無表情だった、泣きも笑いもしない。
少女は知っていた、そうしている事が正解なんだと。
昔、笑えば何様のつもりなんだと怒られたから。
昔、泣けば邪魔なだけなのに煩い奴だと怒られたから。
黙ってても白くて陰気臭い子供だと影口を言われるけど、その方がましだった。
298幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:39:55 ID:OGZSO7HA
道が途切れていた。
その先には、白いドーム状の建物がある。
少女の腕を握って少年が元気良く駆け出した。
重厚な扉を小さな腕に力を入れて開く。
ドームの中は小さな劇場の跡地だった。
もう椅子はないけど、ドームの真ん中には丸い舞台。
舞台の周りには、小道具だっただろう物や布が規則正しく置かれている。
天井はもうなくなっていて、そこから舞台の上へ光が差し込む。
そこから上を見上げれば、青い空と入道雲が覗いている。
建物の中はまるで別世界のような不思議な場所に見えた。
「きれい……」
「だろ、夜になるとたくさん星だって見られるんだぞ。
 ここは、俺と雪風だけしか知らない秘密の場所なんだ」
少年が得意げに胸を張る。
「でも、私に教えちゃったよ?」
少女には分からなかった、どうして大事な事なら自分なんかに教えるのか。
自分みたいに要らない子供なんかに。
「良いんだよ、シルフは俺の妹なんだから。
 大事な人には大事な秘密を教えて良いんだ!!」
「大事……」
その言葉に少女の胸が温かくなった。
「だから、これからは俺と雪風と、シルフだけの三人だからな。
 絶対に誰にも言うなよ」
そう言って少年が人差し指を立てて、しー、というジェスチャーをする。
「うん、私と姉さんと、それからお兄ちゃんの三人だけの秘密」
少女も人差し指を立てて少年の真似をした、笑いながら。
299幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:40:16 ID:OGZSO7HA
************************************************

手を握ったまま私達は歩き続けた。
町を抜けて坂を上る、そして道路の横に伸びる小道を抜ける。
私にはお兄ちゃんが何処に行きたいのかもう分かっていた。
だって、その先にあるのはあそこしかないのだから。
そこは未だに人に知られていないのだろう、白い劇場はあの頃と何も変わっていなかった。
「ここに来るのも10年ぶりか。
 ここで遊んでいるのがばれて叱られてからずっと来ていなかったからな」
懐かしそうにお兄ちゃんが言い、扉に開き、私たちは中に入る。
「うん」
ここは私にとって複雑な場所だ。
お兄ちゃんと一緒に初めて笑えた場所。
お兄ちゃんにきっと捨てられると思って泣いた場所。
お兄ちゃんの側に居ても良いって泣いた場所。
「どうして、ここに来たの?」
でも、お兄ちゃんはその質問には答えてくれなかった。
手を握ったままお兄ちゃんが私のほうを振り向く。
「シルフは可愛いな」
「え! あ、あ、うあ、あの、か、可愛くなんかないよ、白くて暗くて気持ち悪くて、
 幽霊みたいだって、皆きっと思ってる、私、可愛くなんか、無い」
「そういうことを言うやつは見る目が無いか、妬んでるかだ。
 白い髪も肌もお前の名前通りまるで妖精みたいで、
 さっきの笑っているところなんかは「お兄ちゃん!!」
「どうしてなの、今日のお兄ちゃんはやっぱり変だよ!?」
その質問にもお兄ちゃんは答えてくれない。
その代わり私に質問をする。
「今日は、楽しかったか?」
さっきここに来る前にされた質問をお兄ちゃんがもう一度繰り返す。
私にはその理由が分からなかった。
「え、う、うん、凄く楽しかったよ」
「そうか……」
お兄ちゃんは何か難しそうな顔をしていた。
300幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:40:48 ID:OGZSO7HA
「……シルフは俺が変だって言ってただろ?
 ずっとお前の事を見てたんだ。
 ほら、いつものシルフってあんまり笑わないからさ。
 今日みたいに笑うのが凄く珍しかったんだ。
 いや違うな、懐かしかった、なのかな?」
「私、笑ってたの?」
「ああ、とても楽しそうに笑ってたよ、凄く綺麗だった。
 俺が最後に見たのがいつだったか思い出せないくらいにね」
その言葉が私に不安を呼び覚ます。
忘れてた、お兄ちゃんは明るい子の方が好きだったんだ。
「やっぱり、……いつも笑っている方が良いの?」
「そんな事はないよ、シルフはシルフのままで良い」
ぽんぽんと私の頭にお兄ちゃんの手が優しく触れる。
でもな、と言ってお兄ちゃんが乾いた声で笑う。
「お前もちゃんと今日みたいに笑ってくれるんだって思ったら、
 今まで俺は何をしていたのかなって考えちゃってさ」
気恥ずかしそうに視線を逸らした。
ぽつりと、お兄ちゃんが言葉をこぼすように尋ねる。
「シルフは、恋人として、男性として俺なんかの事が好きだっていう事で良いのか?」
心臓にずきりとした痛み。
それは一番お兄ちゃんに聞かれたくないとても怖い質問だった。
「うん」
それでも、勇気を振り絞って答える。
ここで言わないときっと取り返しがつかなくなるから。
お兄ちゃんは私の言葉を聞いて、真剣な面持ちになった。
「実は、俺はお前の気持ちにずっと前から気付いていたんだ。
 でも、お前がそういうことを俺に伝えないなら、今のままで良いんだろうって思っていた。
 それでシルフの事をちゃんと大事にしている事になるんだって、自分に言訳をしてな。
 だから、俺は今までずっとシルフのお兄ちゃんとしての距離を保ち続けていた」
「そうだったの……」
後悔した。
やっぱりお兄ちゃんに言わなくちゃいけなかったんだ、私の気持ちを。
姉さんの言う事は正しかったんだ。
301幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:41:13 ID:OGZSO7HA
「けど、この前雪風に言われたんだ。
 それは俺がただ自分に都合の良いように振舞っているだけだって。
 初めは否定したよ、でも考えていくうちに分からなくなってしまったよ。
 雪風と俺のどっちの考えが正しいのかをな。
 でも、今日のシルフを見てはっきりと分かったよ。
 間違っていたのは、俺だ」
「お兄ちゃん?」
「それに俺自身の事も良く分かった。
 俺はシルフのお兄ちゃんとして寂しそうなお前に接するよりも、
 幸せそうな顔や今日みたいな嬉しそうな顔を見ているほうがずっと心地良い。
 そうだな、俺も幸せな気持ちになれたよ。
 俺はきっとシルフが、、、」
そこから先を言おうとしたお兄ちゃんは慌てて口を閉じた。
その代わりに、どうして今更、と小さく呟いたんだと思う。
ははは、と乾いた声で寂しそうにまたお兄ちゃんが笑顔で笑う。
でも、それは私の好きなお兄ちゃんの笑顔なんかじゃない。
それから、その曖昧な笑みのままお兄ちゃんが溜息を漏らした。
「ったく、結局あんな変な気の回し方は俺もシルフも望む事じゃなかったんだな。
 こんなのが本当の幸せの訳がないって、そりゃそうだよ。
 そうだな、俺はずっと前から間違っていた、本当に雪風の言うとおりだったんだ」
「そんな事、ないよ」
そう、お兄ちゃんは間違ってなんていない、私に勇気が足りなかっただけ。
そんなのはお兄ちゃんが背負わなければいけないような事じゃない。
「シルフはいつも俺の言う事に賛成してくれるよな。
 でも、それはお前の本心じゃないだろ?」
「全部、私の本当の気持ちだよ」
「シルフ、本当の事を話すんだ」
お兄ちゃんの命令調の言葉に体が凍りつく、怖くて嘘がつけなくなる。
「……ごめんなさい、本当はお兄ちゃんと違う事を考えていた時もあると思う。
 でも怖かったから、嘘をついていたの。
 その、そういう訳じゃないけど、お兄ちゃんと違う事を言ったら、
 お兄ちゃんが、私の事を、要らなくなるかもって。
 そしたら、お兄ちゃんの側に居られなくなるかもって思っちゃって、
 私は、お兄ちゃんと居たかったから、だから」
声が震えて、その続きが出てこない。
続きを言おうと苦悶していると、お兄ちゃんが頭を優しく撫でてくれた。
とても悲しそうな顔をしていた。
302幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:41:42 ID:OGZSO7HA
「泣くくらいに辛かったんだよな?」
「……うん」
「ごめんな、シルフ。
 今までお前をずっと苦しめた、そして傷つけた。
 そういう風に怯えてるお前の事なんて振り返らなかったんだ。
 まあ呆れただろ。
 無神経で、いい加減で、自分勝手。
 お前の好きだったお兄ちゃんはそんなもんだ。
 だから、もうシルフは俺に付き合わなくていい」
「それは、どういう事?」
「ここに来たのはそういうことだよ。
 悪いが、俺じゃシルフの良いお兄ちゃんにも大事な恋人にもなれないって事さ。
 だからもう、あの時の優しいお兄ちゃんの背中なんて追いかけるのは止めよう。
 そんなのは何処にも居なかったんだ。
 それで、シルフが自由になってしまうのが一番良い。
 こんな恋人ごっこもこれでおしまいだ、俺にはシルフの恋人である資格なんて無いよ。
 ま、お兄ちゃんでいる資格も今更無いだろうけどな」
さ、帰ろう、とお兄ちゃんが私にだって分かるくらい無理に明るい作り笑いをしながら手を伸ばす。
その手を握って、お兄ちゃんと私はただの形だけの兄妹になってしまおう。
そういう意味の握手をお兄ちゃんはきっと私に今望んでいる。
でも、そこには私の望む居場所なんて無い、そんなのは嫌だ。
私はそんなお兄ちゃんのお願いなんて、絶対に聞かない。
だから、その手を取らずに叩いた。
叩かれたお兄ちゃんは驚いて固まっていた。
「……私はそんなの嫌だよ。
 お兄ちゃんはさっきまで何を聞いてたの?」
お兄ちゃんを叩くなんてこれが初めてだった、手じゃなくて胸がすごく痛い。
「だってさ、シルフも迷惑だろ、俺みたいなのがいたら?」
その言葉が頭に来た。
やっぱりお兄ちゃんは鈍い、信じられないくらいに鈍感だよ!!!
303幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:43:49 ID:OGZSO7HA
「勝手に私の気持ちを決め付けないでよ!!
 私はお兄ちゃんの側に居たいの!!
 お兄ちゃんが居ないのに、どうしたら笑えるの!?
 お兄ちゃんが、無神経、いい加減、自分勝手、そんなの全部知ってる!!
 私はあの日から、ずっとお兄ちゃんの妹だったんだよ!?
 それで良いの!!
 お兄ちゃんに完璧である事なんて私は全然望んでない!!
 私は、無神経で、自分勝手で、いい加減だけど、それでも優しい今のお兄ちゃんと居たい!!
 お兄ちゃんはお兄ちゃんで良い!!」
今までずっと言えなかった気持ちが胸から溢れ出してきて、それが苦しすぎて、私は叫んだ。 
「お兄ちゃんはお兄ちゃんのままでいい!!
 私がいるから、お兄ちゃんを否定する人なんて私が皆否定するから!!」
だからずっと私と居てよ、そう叫んだ。
「お兄ちゃんが居なくなっちゃうなんて、そんなの嫌だよ」
お兄ちゃんはただ茫然としていた。
それから、ふっと目が覚めたようにお兄ちゃんの目に色が戻ってきた。
「俺も、シルフの側に居て良いんだな?」
「だから良い悪いじゃない、私は兄さんに側に居て欲しいって言ってるの!!
 それに姉さんだっているんだよ、なのに、どうしてそうやって一人で悩もうとするの!?」
「そうだよな、シルフも、そして雪風も俺にいるんだ。
 俺は一人で悩む必要なんてないんだよな」
「うん!!」
「本当は、雪風に言われてからずっと怖かったんだ。
 俺は間違っているって、頭では分かっちまってたから。
 それでもシルフは許してくれるんだな?
 俺も、俺のままで本当に良いんだよな?
 ありがとう、それから今までごめんな、シルフ。
 ごめんなさい、あんなに事を酷い事をして、本当にごめんなさい」
お兄ちゃんが自分の手を顔に当てる、嗚咽が聞こえる。
私はお兄ちゃんの頭をそっと私の胸で抱きとめた。
私の中で泣くお兄ちゃんの体はいつもよりずっと小さく感じた。
お兄ちゃんが私の両手で抱きとめられるほど小さい、それがとても嬉しかった。
304幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:44:30 ID:OGZSO7HA
**********************************************

いつまでも、私はお兄ちゃんを抱き締め続けている。
このまま、ずっとこの時間だけが続けば良いのに。
丸い空を見上げるとたくさんの星が煌々と燃えていて、綺麗だった。
「もう大丈夫だよ」
お兄ちゃんが顔を上げる。
「ありがとう、シルフ、やっと楽になれたよ」
「ううん、お兄ちゃんの事が分かって、私も嬉しかった」
「それから、もう一つ、頼む」
「うん、何でも言って、お兄ちゃん」
「……俺にはお前の本当の気持ちで答えて欲しい事がもう一つある」
私から体を離して、お兄ちゃんが私に向き合う。
その顔には不安と緊張が入り乱れていた。
そんなお兄ちゃんなんて見た事が無かった。
「シルフ」
「は、はい」
お兄ちゃんがゆっくりと噛み砕くように言葉を発する。
「俺と結婚して下さい。
 馬鹿だけど、やっと俺は分かりました。
 シルフの事がずっと好きでした、これからもずっと愛し続けます。
 そして、ずっと一緒に居たい、俺にはシルフが必要なんです。
 だから、俺と結婚して下さい」

お兄ちゃんのあまりに真剣過ぎる姿に思わず笑ってしまいそうになった。
だって、余りにもその言葉のせいで私は幸せになりすぎたのだから。
だって、それは私がいつも願うだけしか出来なかった、都合の良い夢そのものだから。
だって、いままでも、これからも私の気持ちは一つだけなんだから。
だって、私はずっとお兄ちゃんの側に居るのだから。
だって、お兄ちゃんが例え望まなくてもずっとそうするのだから。

私は、私の本当の気持ちをお兄ちゃんに答えた。
答える私は笑っていた、きっと今まで笑えなかった分も一緒に。
でもおかしいよね、涙も一緒に流れているんだよ?
おもしろいよね?
私、泣きながら笑っているんだ!!
私は泣きながらお兄ちゃんと抱き合う。
お兄ちゃんも私を力強く抱き締めてくれる。
そして、何度も何度も私の名前を呼ぶ、愛してるって私に言ってくれる。
あれ、お兄ちゃんも泣きながら笑ってるの?
そうなんだ、私と一緒なんだね。
お兄ちゃんがこんなに泣き虫なんだって、知らなかったよ。
305幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:45:02 ID:OGZSO7HA
私は幸せだ。
本当は幸せなんかじゃない、そんな言葉では表せないもっと大きすぎる何かだ。
でも私にはそんなのを何て言えば良いのかなんて全然分からない!!
だから、私は幸せなんだ!!
306幸せな2人の話 8:2010/10/08(金) 21:49:50 ID:OGZSO7HA
以上です。
色々書き足しながらで不安でしたが、何とか中盤も終わりそうです。
これも読んでくれる方がいればこそです、ありがとうございます。
結構、コメント等がヒントになったりもしました。
区切りが良いので次回は、書きあがれば番外編を投下させて頂きたく思います。
次回もよろしくお願いいたします。
307名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 22:03:31 ID:U1YTghiN
いいねぇ…これからの雪風の行動が楽しみだ
308名無しさん@ピンキー:2010/10/08(金) 22:31:52 ID:RkmUTtJG
GJ
おっしゃああああああ!!!!
キモウトは幸せになるべき存在だよね
309名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 01:01:51 ID:qj9Ol6cb
雪風のこれからが楽しみすぎるぅうううううう!!!!!
GJ!!
310名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 08:08:33 ID:pnxvHbRl
どうしてお前らは素直にシルフちゃんおめでとうって言えないんだよ!
職人さんGJ!!このままシルフちゃんEND一直線ですね!


あれ?雪風ちゃんなんで包丁持ってr
311名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 10:36:58 ID:FFXs3M9s
雪風的にもこれで良いんじゃねーの
312名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 20:40:47 ID:UIrXEl0z
戦闘妖精ェ…
メイヴが黙っていないぞ
313名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 00:43:50 ID:qciwFyxr
雪風ってみるとトレインボットを思い出す。
314名無しさん@ピンキー:2010/10/10(日) 00:56:23 ID:CvWmuhyz
雪風はスーパーシルフから後にメイヴに乗り換えるからお姉ちゃん用済み。
315名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 20:32:47 ID:DFRmnkMO
誰かいませんかー?
316名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 20:41:30 ID:rgnmOsdV
>>315
兄(あの声は妹…!何でこの場所が分かったんだ!?)
317名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 20:49:09 ID:pYMVQ0+g
丸2日以上何もないなんて…。まさかゴルゴムの…
妹「そんなわけないでしょ。私がやっつけたんだから」

そっかあ…。そりゃ安心……えっ?
リアルに職人さんが来ないのは寂しいものですね。
318名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 20:51:18 ID:DFRmnkMO
生き残りはこれだけか・・・
319名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 21:29:28 ID:vm5fIm+6
この時期忙しいからね
320名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 21:41:05 ID:RLQKz7tg
この前、三つの鎖のHPが更新されているのをお手製RSSリーダーが教えてくれた
更新されたHPを見たら、過去ログだったorz
321名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 21:47:08 ID:pWvUjNyu
おいおいぬか喜びさせんなよ
322名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 22:18:11 ID:aUgkG4lo
疲れたのでキモウトに膝枕をお願いしたらどうなるの
323名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 22:48:32 ID:xTA/n6tQ
キモ姉が乳枕で対抗します
324名無しさん@ピンキー:2010/10/12(火) 22:49:02 ID:wtEuvODX
膝枕で寝てしまったら、それが最後。
目覚めたらスカートの中に顔が潜り込んでいました。
鼻面に妹のおぱんつ、その布地の感触。
布一枚むこうは神秘の花園、しかし臭いはなく、石けんの香りがします。
兄にイタズラしてもらうときのエチケットですね。

「やっ……だめらよぉ、お兄ひゃん……!」

びっくりして顔を上げようにも、妹が全力で上から頭を押さえ込んでて動けません。
じたばたすればするほど、頭上で妹が変な声を出します。

「あっ、はげっし……うん……」

なんかおぱんつがだんだん湿り気を帯びてきました。
あああどうする、と思っていると背後でどさっと何かを落とした音が。

「な、何……してるの……」
「……あらこんばんは、お兄ちゃんのお友達さん。
 見ての通り、お兄ちゃんの恥ずかしい性癖を処理してるんです、けどっ…。
 その袋はお夕飯ですか? んっ、わざわざありがとう、ございます。
 でもお兄ちゃんはまだ満足してないので、少し待って……うんっ……」
「っ……変態……へんたいっ!」
「ええそうです。おわかりになったなら、どうぞお帰りください」
「うわあああん! みんなに言いふらしてやる、変態兄妹!」

こうなるんだ
325名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 04:21:27 ID:EerMsU56
>>295
ブレンパワードの長台詞が姉さん風に改変されたのがあったのを思い出してこのスレ向けに改変してみた

姉 「馬鹿か!お前は!世間の目があるからって弟の事を我慢するほど、私は良く出来ちゃいないんだ!
親父達が何と言おうと私は弟の子を乗せる為のスペースを用意して生まれたんだ、それは何故だか分かるか、ええ?
私が自分の進化の歴史の中で学んだ事だよな。弟の肉体と精神と性感、それに生殖だけは弟のものを利用するつもりだからだ、他人の子供は面倒だもんな!
しかし、弟の体の自由は私のものにした。フッ、弟って奴はデレの使い方を知らない照れ屋な弟だからだろう?
だから私は、私に必要な精子だけを摂取して、私の育てた卵子と受精させて既成事実を作るつもりだ!それが私達だ!
けどそういう私達が何故か姉と弟という二つに分かれて生まれた。しかも雄と雌との関係で。もっと根源的に、磁石とか、SとかMとかぐらいはっきりと求め合う習性をもっている、何故か!?
一つで完全無欠に永遠であるものなどこの世の中にはない。だからこうやってぐちゃぐちゃにここを濡らして生まれてきたんなら、弟だってそうだろう!?
自分の股にあるモノで突いて探している穴があるんだろう!?オマ○コとかアナルとかさ!
オーガニックで官能的な愛は1つのものでしかないのに!弟、おまえは!あの程度の女に唆されて・・・うっ・・・馬鹿野郎!」
326名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 13:08:22 ID:5FNlBCxx
妹「長文乙。今のうちに兄さんはもらってイきますね」
327名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 22:16:07 ID:Sjb8gQAC
>>326
妹「他人の子供が面倒だからお兄ちゃんを選んだの? サイテー! さっすがに人生の一時期だけとはいえお兄ちゃんのお姉ちゃんじゃなかった人は言うことが違うわね!」
328名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 22:29:33 ID:67MLGDea
なかなか投下来ないな
気長に待つか
329名無しさん@ピンキー:2010/10/13(水) 23:12:14 ID:phIev3rZ
今週末にはきっとくるさ
330名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 00:20:09 ID:l2P3Njzj
20レス以上使う場合は避難場でいいですか?
331名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 00:22:26 ID:9492J7Ct
大作ktkr
332名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 00:25:58 ID:UavoP8AN
よっしゃー
333名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 01:23:24 ID:La2VNUW9
こっちでもいいんじゃね?
334名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 03:21:54 ID:Kuy5pp0N
キモ姉物書いたのでとりあえず投下します。
弟もキモイので嫌な人はスルーして下さい。
初めてなので読みにくいかもしれませんが、ご容赦を。
エロ有りです。
335狂依存 1:2010/10/14(木) 03:23:21 ID:Kuy5pp0N
「もう行くけど、何かあったらすぐ私達に連絡するのよ。」
「わかってるって。大丈夫。大輝の面倒はちゃんと私が見るから。」
「そう……じゃあ、お願いね。」
「うん、気をつけてね。」

「ふふふ……」
両親が海外赴任してこれで弟と二人きり。
もう誰にも邪魔されることもなく、自由に出来るわ。
待っててね、大輝。
お姉ちゃんがあなたを必ず幸せにしてみせるから……

「はぁ……今日から麻由お姉ちゃんと二人きりか……」
色々大変だろうけど、二人で協力してやってくしかないか。
まあ、麻由お姉ちゃんはしっかりしてるから、大丈夫だろう。多分。
「そう言えば、子供の頃も麻由お姉ちゃんと一日だけ二人きりで過ごした事あったけな。」
もう何年前の事だったけか。
あの時は確か……
−数年前−
某小学校体育館
ダン、ダン、ダン
「パス回せ!パス!」
ダン、ダン!
「!」
「よおし!ナイスカット!」
ダン、ダン!
「ふん!」
ピィっ!
「おおし、ナイッシュ!」
ピィィィ!!
「ふーん、ふふーん♪今日は絶好調。」
「……大輝先輩、今日は随分と機嫌が良いですね。何か良い事あったんですか?」
「え、わかる?ふふふ、ちょっとね♪」
これが喜ばずにいられるかってんだ!
何せ今日は……
お父さんとお母さんが泊りがけで親戚の結婚式に行っていない。
つまり、今夜は麻由お姉ちゃんと二人で甘い夜を……
「へ、へへへ、でへへへへ……」
「おいっ!三船!さっさとコートに戻らんかい!」
「はーい♪」
おっと今は試合に集中しないとな。
ちゃっちゃと終わらせて早く帰らなければ。
待っててね麻由お姉ちゃん。

同じ頃 某中学校のグランド
コーン。
「行ったよー。」
「ふんっ!」
シュっ!
「アウトー!」
「ナイスキャッチ、麻由」
「あ、うん。」
「はぁ……」
「どうしたの?さっきから浮かない顔してるけど?」
「あ、ううん!何でもないよ。ほら、声出して!」
今日は一日お父さんとお母さんが結婚式に行くとかで、いない。
つまり……
今夜はあの馬鹿と二人きり……
あああああ、想像しただけで胃が痛くなる。帰りたくねえ……
カキーン
336狂依存 2:2010/10/14(木) 03:24:29 ID:Kuy5pp0N
「お疲れ様でしたー。」
「はぁ、今日は快勝だったな。」
「ああ。三船、帰りにどっか……」
「ごめん!今日用事あるから!それじゃ!」
ピューーーー!
「あ、おい!」
「な、なんだあ?」
「またいつもの病気だろ……」

「ふふふーん、まだかな?まだかな?」
そろそろ愛するマイハニーが帰ってくる時間だ。
へへへ…麻由お姉ちゃんと二人きり……
きっとお母さん達が将来の予行演習の為に今日という日を用意してくれたんだね!
ありがとう!お父さん、お母さん!
ピンポーン
ガチャっ
おお!!帰ってきた!
ドタドタドタドタ!
「……(ニコニコ)」
「……ただいま。」
「おかえり!麻由!ちょっと遅かった……」
ドカっ!ベシっ!ドンっ!
「何、私の事呼び捨てしてんだよ、ああ?」
「だって、将来はそう呼び合う仲になるんだし……ぐぅええええ!!」
ギシギシ
「それ以上ふざけた事言うと、本気で頭踏み潰すわよ。」
「イタイイタイイタイ!もう…麻由お姉ちゃんったら、恥ずかしがる事な……ぎええええええええっっ!!!」
もう、麻由お姉ちゃんはツンデレさんだな。
「ったく……ちゃんと風呂掃除やったんだろうんな?」
「うん!ついでに洗濯もやっといたよ!」
「は?頼んでないんだけど。」
「麻由お姉ちゃんの下着もちゃんと洗っておいたからね。今僕の部屋のベランダの干してあるよ。」
ああ、麻由お姉ちゃんの下着は何度見ても可愛いよなあ。
愛する嫁の下着を洗うのは旦那として最高の幸せだよ、うん。
「……な、な、な………」
「何やってんだこの大馬鹿やろおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!」
バキっ!ドスっ!グサっ!ボキっ!
「痛いよっ!ちょっ!死ぬ……」
「死ねっ!死ねえっっ!!お前なんか死んでしまえええええっっっ!!!!!」
もうウチの嫁は本当に照れ屋さんだな。
いずれお互いの全てを曝け出す関係になるんだから、下着くらいで恥ずかしがる事ないのに。
「ねえ、麻由お姉ちゃん。今日の夕飯は何にするの?」
「何か出前でも取うと思ってるけど。」
「ええええええ?麻由お姉ちゃんが作ってくれるんじゃないの?」
折角、妻の手作り料理を独り占めできると思ったのに……
「はあ?嫌よ面倒くさい。今日も部活で疲れてるんだし、明日だって朝練あって早いんだから。」
「えええ?でもでも、僕もミニバスの練習試合で疲れてるし、こういう時は奥さんの愛のこもった手料理で英気を養って……」
「ピザでいいわね。」
「ああん、待ってよ。何でもいいから麻由お姉ちゃんが作ってえ。」
く、簡単に諦める訳には……
せっかく掴んだチャンスなんだ!
麻由お姉ちゃんとラブラブな夜を過ごすという、掴んだチャンスを……
「ええと、何にしようかな……」
「麻由お姉ちゃん、そんな面倒くさがってちゃダメだよ。将来は僕のご飯を毎日作らなきゃいけないんだからね!」
「お前、私を将来あんたの家政婦にでもする気か?ええ?」
「う、うぎぎぎぎ……首絞めないで……、い、息が……」
愛する妻を家政婦なんてとんでもない!
でも、悪くないかも……
「ったく!ええと、これとコーラ二本でいいか。」
う、流石に今のは言い過ぎたか……
337狂依存 3:2010/10/14(木) 03:25:06 ID:Kuy5pp0N
「ごめんね、麻由お姉ちゃん。やっぱり家事はちゃんと分担……」
べしっ!!
「あ、もしもし……」

「………」
「ぷ、ははは……」
「うー……」
結局ピザにしちゃったし……
おかしいなあ。こんな筈ではなかったんだが……
(妄想)
「はい、大輝、あ〜〜ん。」
「あ〜〜ん。」
パク
「えへへ、美味しい?」
「うん!」
「えへへ、大輝の為に一生懸命作ったんだよ。あ、ほら、これも食べて。」
「うん。えへへ…麻由お姉ちゃんの作ったものなら、何でも美味しいよ。」
「もう、大輝たら。今日は二人きりなんだから、『麻由』って呼んでって言ってるのに。」
「え……じゃ、じゃあ麻由……」
う、何か恥ずかしいな……
「なあに?あ・な・た。あ、ご飯粒ついてるよ。」
ちゅっ

なーんて、展開になるんじゃなかったのか?ええ、おい?
それなのに、麻由お姉ちゃんったらさっきからテレビ観て黙々と食べてるだけだし……
そうだ……
「えへへ、麻由お姉ちゃん。はい、あーん。」
僕が麻由お姉ちゃんに食べさせてあげれば良いんだ。
チャンスは自分で作らないとね、うん。
「麻由お姉ちゃん!あーん。」
「ぷ、あははははっっ!」
むぅ、手強いな。
ここまでツン成分が強いとは、ちと予想外だったよ。
まだまだ嫁の理解が足りなかった様だね。
「ごちそうさまっと。ちゃんと残さず食べなさいよ。」
そうだ。
「麻由お姉ちゃん。」
あーん……
えへへ、麻由お姉ちゃんが食べさせてくれないと、食べきれないよ。
「………」
おお!ピザを手に取って、僕の口に入れようとしてる。
何だかんだ言って麻由お姉ちゃんも、こうやってラブラブな雰囲気で食事をしたかったんだね。
さあ、こい!
「あーん……ん!ふごおおおお!!」
ちょっ、押し込まないで……
「美味しい?そう、それは良かったわねっと。」
ゴンっ!
「ったく汚いわね。食べたらちゃんと片付けときなさいよ。」
「むきゅう……」

「なーんて、感じだったか……」
ああああ、子供の頃の話とは言え何という馬鹿な事を。
恥ずかしすぎる!
「何とか麻由お姉ちゃんに出来るだけ迷惑かけないようにしないとね。」
もうあんな馬鹿な事やろうとは思わんけど。
338狂依存 4:2010/10/14(木) 03:25:57 ID:Kuy5pp0N
ピンポーン
「おかえり、大輝。」
「ただいま。麻由お姉ちゃん。」
「今日は早かったんだね。」
「そりゃあね。もう部活も引退しちゃったし。」
最後の大会は、県大会一回戦負けでしたけどね……
「へへ、鞄持ってあげるね。」
何だか新婚さんみたいなやりとりだな。
「ありがとう。あの、何か手伝う事ないかな?」
「ありがと。でも別に何もないよ。家事とかは全部私に任せていいから、大輝はゆっくりしてて。」
「え?でも……」
それは流石に悪い気が……
「いいから、いいから。お母さんに大輝の面倒任されてんだし。さ、ご飯の支度しないと。今日は大輝の好きな物作ってあげるからね。」
「あ、ちょっと……」
やけに機嫌が良いな。どうしたんだろう?

「大輝。ご飯出来たよー。」
「あ、うん。」
って随分豪勢な食事だな。
本当に僕の好きな物ばっかだし……
「えへへ……大輝の為に張り切って作ったんだよ。」
「あ、ありがとう、麻由お姉ちゃん。」
何だろう……この複雑な感情は。
麻由お姉ちゃんが僕の為にこんなに頑張って豪華な食事を作ってくれたんだから、本当なら凄く嬉しい筈なのに、何故か素直に喜べない。
「じゃあ、いただきまーす。はぐ……」
「ど、どう?」
「うん!とっても美味しいよ!」
「そう?良かったああ。」
麻由お姉ちゃん、本当に嬉しそうだな。
つか、いつの間にこんなに料理上手くなったんだろう。
「へへ、あ、これも食べて。良く出来てると思うから。」
「どれどれ……うん!美味しいよ。」
「良かった!まだまだ、たくさんあるからどんどん食べてね。」
「うん。」
こんなに嬉しそうにして……
これは頑張って残さず食べないといかんな。
「……大輝。」
「ん?」
「あーん。」
「な、何?」
「私が食べさてあげる。ほら、あーんして。」
ええええええええええええ?何それ?
「で、でも、何か恥ずかしいし……」
「二人きりなんだから、恥ずかしがる事なんて何もないでしょ。はい、あーん。」
ど、どうする?
とりあえず一回だけ……
「あ、あーん……」
パク
「へへへ、どう?」
「う、うん。美味しいよ。」
「本当?じゃあもう一回。あーん。」
「あ、ありがとう!もう充分だから。ほら、早く食べちゃおう。」
「あん、もう……何回でもやってあげるのに……」
これ以上はちょっと恥ずかしくて無理っす。
339狂依存 5:2010/10/14(木) 03:27:03 ID:Kuy5pp0N
「ごちそうさま。とっても美味しかったよ。」
「ありがとう。あ、何か食べたいものがあったら遠慮なく言ってね。これから毎日大輝のご飯作ってあげるから。」
「え?毎日?流石に悪いよ。頑張って僕も何か作るようにするから。」
「もう、家事とかは全部私に任せて良いって言ってるでしょう。遠慮なんかしないでこき使って良いからね。」
「あ、あの、麻由お姉ちゃん。家事はやっぱりちゃんと分担してろう。麻由お姉ちゃんだって大学とか色々あるんだし……」
「ありがとう。大輝はやっぱり優しいね。でも大丈夫。私が何とか全部やっちゃうから。大学ももうあんまり授業ないし、バイトの数も減らして家事の時間取れるようにしてあるから。」
いや、それでもなあ。
何か気が引けるというか……
「それに、大輝は受験でしょ?家事なんかに時間取られて勉強の時間削るような事があったら絶対にダメだよ。」
「それはそうだけど……」
「だから、私が大輝の面倒全部見てあげるからね。」
「わかった。でも、何かあったらいつでも言ってね。手伝える事があれば何でもするから。」
「うん。ありがとう。」
何故だろう。
この麻由お姉ちゃんの笑顔が何故か少し怖く思えてきた。
こんなに僕の事を思って尽くそうとしてくれてるのに……

「ふぅ……もうこんな時間か。」
少し休憩するかな。
麻由お姉ちゃんが僕の為に、家事を全部やってくれるとまで言ってくれてるんだから、受験勉強も頑張らないと。
「でも、何でだろうなあ……」
あそこまでしようとする何て、やっぱり変だよなあ。
嬉しくない事はないんだけど……
「まあ、大変そうだったら、手伝えばいいか。」
いくらなんでも無理があるだろうから、すぐにそういう時が来るだろう、うん。
「ちょっと喉が渇いたな……」
麦茶でも飲んでくるか。
「あ、大輝。何処行くの?」
部屋を出たらすぐ麻由お姉ちゃんとバッタリ会った。
「ああ、ちょっと喉が渇いてから、麦茶でも飲もうかなって。」
「じゃあ、私が持ってくるよ。部屋で待ってて。」
「え?あ、ちょっと……」
行っちゃった……
別にそんな事までしてくれなくても良いのに。
「はい、どうぞ。」
「ありがとう。」
持ってきてくれた麦茶を一気に飲み干す。
「他に何かして欲しい事ないかな?お腹が空いたって言うなら、何か夜食でも作ってあげるし、欲しい物があるっていうなら、今からでもコンビニ行って買ってきてあげるから。」
「別に無いって。夕飯あれだけ食べたんだから、お腹も空いてないし。」
「そう……あ、何かわからない事とかあるかな?私が教えてあげるよ。」
「あ、うん。今の所大丈夫かな……」
麻由お姉ちゃんがやたらと体を近づけて、そう尋ねてきた。
何だか、凄く嫌な予感がする……
「遠慮なんかしないで……本当に何でもしてあげるから……」
「ちょっ…別に遠慮なんか……」
麻由お姉ちゃんは体を密着させ、さすってくる。
うっ…ちょっと色々ヤバイ状況な気が……
「ど、どうしたの?今日は何か変だよ?」
「別に変じゃないでしょ。大輝の面倒は全部私が見るって言ったじゃない。だから、大輝がして欲しい事は何でもしてあげるわ。」
ぎゅっ
う!後ろから抱きついて、胸を背中に押し当ててきた。
「ねえ……本当に何か私にして欲しい事はない?」
むにむに
「う……本当に無いから!だから、そんなにくっ付かないで……」
「そう……」
そう言うと一旦僕から離れる。
でも、また体を近づけてきた。
どうしよう?
何とか麻由お姉ちゃんを部屋から出さないと。
340狂依存 6:2010/10/14(木) 03:33:41 ID:Kuy5pp0N
「あ、あの今日はもう遅いから、寝ようと思うんだ。だから、もう良いよ。」
「………」
「あっ、これ片付けてくるね。じゃあ……」
ガシっ
「な、何……?」
「大輝……」
「え……?」
がばっ!
麻由お姉ちゃんはいきなり僕を押し倒してきた。
ちょっ……一体何を……
「大輝……好きよ。愛してるわ……」
「ええ?ちょっと、いきなりどうしたの!?」
あ、愛してるって……
まさか……
「どうしたも何も、言葉通りの意味よ。私は大輝の事が好きなの。弟してはもちろんだけど、それ以上に一人の男性として……」
ちゅっ、ちゅっ……
頬にキスして、そう告白してきた。
す、好きって……僕の事を?
麻由お姉ちゃんが?
信じられない……
「えと……本気?」
「もちろんよ。だから私と付き合って。そしたら死ぬまで大輝の傍にいて、あなたに尽くしてあげる。本当よ。何でも言う事聞いてあげるし、どんな事でもするわ。」
そ、そんな事急に言われても……
麻由「これでも、まだ信じられない……?」
そう言うと麻由お姉ちゃんは自ら胸元をはだけて、乳房を露にする。
「(これが、麻由お姉ちゃんのおっぱい……)」
大きくて、適度に張りがあって、乳首の大きさも丁度良くて、均整の取れた本当に美しい形をしている。
今までエッチな本や、DVDで見てきたこれ程の物は見たことがない。
「(って!そうじゃないだろ!)」
実の姉が弟にこんな事してくるなんて……
「大輝……昔はあなたにあんなに酷い事しちゃって本当にごめんね。だから、今更あなたの事が好きだって、言われてもすぐには信じてくれないかもしれない。でも今は本気なの。本当にあなたの事愛してるのよ。」
「麻由お姉ちゃん……」
あんなに酷い事って……
どう考えても、麻由お姉ちゃんは何も悪くない。
僕が無神経に麻由お姉ちゃんにベタベタくっ付いたり、変な事言って怒らせていたのだから、むしろ謝らなければいけないのはこっちの方だ。
第一、麻由お姉ちゃんに怒った事なんて一度もないし、実際に少しも恨んだ事もない。
麻由お姉ちゃんを嫌いになった事なんて一瞬だってないよ。
なのに、何で謝るの?
「あの……子供の頃の事だったら、謝らなければいけないのは僕の方だよ。本当にごめんね……許してくれなんて言わないけど本当に悪かったと思ってるから……」
「大輝……ありがとう。やっぱり優しいのね。」
「う、うん……だから……」
「だから、今度は大輝のして欲しい事何でもしてあげる。あの時のお返しにどんな事だってしてあげるよ。大輝は優しいからそう言ってくれるんだろうけど、私はその優しさに甘えたりしないから……」
えええええええ?何でそうなるの?
「大輝……愛してるわ……だから、私の事抱いて……あなたも私の事愛して……」
「麻由お姉ちゃん……」
どうしよう?
麻由お姉ちゃん本気みたいだぞ……
麻由お姉ちゃんの事は大好きだ。
それは生まれた時から今まですっと変らない。
子供の頃は好き過ぎて色々迷惑をかけてしまったぐらいだ。
だから、もう二度とあんな事して迷惑かけたりしないって固く誓った。
ちゃんと家族として姉弟として接していこうって……
でも形はどうあれ、麻由お姉ちゃんの事が好きな気持ちは昔と変らない。
でも、やっぱり実の姉弟で大切な家族でもあるし……
「(どうする……?)」
341狂依存 7:2010/10/14(木) 03:37:39 ID:Kuy5pp0N
そうだよな……
気持ちは本当に嬉しいけど、やっぱり姉弟で家族でそういう関係になるのはよくないよね。
だから……
「あ、あの……麻由お姉ちゃん……僕も麻由お姉ちゃんの事は大好きだよ……でもそれは、その、姉弟してというか家族としてというか……」
「………」
「だから、麻由お姉ちゃんの事、今では一人の女性としてとかそういう目では見れないんだ。だから……」
「ごめんなさい。」
「………」
言っちゃた……
やっぱり怒ってるかな……?
うう、これからちょっと気まずくなるかも……
「そう……」
麻由お姉ちゃん……
「姉弟だから、何なの?」
「え?」
何を言ってるんだ?
「私達は姉弟とか家族である前に、年頃の男と女よ。だから愛し合うことに何の問題もないはずよ。」
ええ!?
「いや、だから、それは……」
むにゅっ
「ほら、お姉ちゃんのおっぱいどう?柔らかくて気持ちいい?このおっぱい、大輝の好きにしていいのよ。ほらほら……」
むにむに
うっ!
麻由お姉ちゃんが僕の手を胸に押し付け、揉んでくる。
柔らかくて気持ちいい……
「ふふふ……もっと間近で見せてあげるね……」
「ちょっと、麻由お姉ちゃん……」
そう言うと体を倒して、僕の顔に胸をうずませる。
「う……」
麻由「どう?気持ちいい?ふふふ……しゃぶってもいいのよ……私のおっぱい好きなようにしていいから……」
うう……これは、ヤバイ……
このまま本当に、麻由お姉ちゃんと……
いやっ!駄目だ!
このまま、流されて関係を持ったら取り返しのつかない事になる気がする。
早く止めさせないと……
「麻由お姉ちゃん。もう、いいから。本当に止めて……」
「あら。本当は凄く気持ちいいんでしょ?だって……」
ずるっ……
「大輝のおちん○んはこんなに勃ってるじゃない……」
「そ、それは……!」
僕のズボンとパンツを下ろして、肉棒を露にする。
そりゃあ、あんな事されたら誰だって反応しちゃうよ……
「わかったでしょ?私達は男と女なの。姉のおっぱいでもこんなに興奮して欲情してるじゃない。姉弟だろうが何だろうが私達は愛し合えるのよ。」
「そ、それでも……」
はち切れそうな欲情を懸命に抑え、何とか耐える。
麻由お姉ちゃんの事は大好きだけど、今の麻由お姉ちゃんは何か変だ。
このまま流されたら大変な事になる……
「まだ素直になれないの?仕方ないわね……」
麻由お姉ちゃんは、スカートとショーツを脱ぎ、下半身を露にすると股間に肉棒を押し付けてきた。
「何を……」
「これで、気持ちよくしてあげるね。ん……」
「ちょっ……やめっ……!」
麻由お姉ちゃんは、肉棒を性器に押し付け、擦り始めた。
これって素股ってやつだよな……
「ん……んく……ふふ…どう?んっ……」
「どうって言われても……」
正直に言えば凄く気持ちいい。
肉棒が麻由お姉ちゃんの柔らかい肌と肉唇に擦れて、今までに経験したことの無い快楽に襲われる。
342狂依存 8 :2010/10/14(木) 03:40:23 ID:Kuy5pp0N
「こんなにおちん○んビクビクさせて……気持ちいいんでしょ?お姉ちゃんのおま○こに入れたいんでしょ?」
入れたい。
でも、ダメだ。
それをやったら引き返せなくなる。
「ん……んふ……さあ、入れて下さいって言いなさい。それとも自分で入れる?好きなのを選んでいいわよ……」
「ダメだよ……早くどいて…」
襲い来る快楽をぐっとこらえて、拒否する。
そうしてる間にも麻由お姉ちゃんは太腿に肉棒を擦りつけ、肉棒にさらに刺激を与える。
「そう……ならこのままイキなさい。」
「ふんっ!……ん!んく……んっ……!」
麻由お姉ちゃんは肉棒を擦り付けるスピードを一気に速め、僕をイカせようとする。
姉がもたらす魔の快楽に、肉棒は一気に爆発寸前に陥る。
「んっ!んふ……ん…気持ちいい?入れて欲しい?ん……だったら私を押し倒して自分で入れなさい。私の気持ちはもう決まってる。後はあなたが決めるのよ。」
あくまでも最後の一線を超えるかは、僕自身に決めさせるという事か。
「早く、どいてよ……僕達は姉弟なんだから……」
理性を振り絞って拒否する。
ここで折れる訳にはいかない……
「んっ……んく……うんっ……ふふ……私も気持ちよくなってきたわ……ん…」
僕の言う事をまるで聞こえていないかのように無視し、あくまで素股を続けてくる。
どうしてそこまでして……
「ん……んふっ……んっ…さあ、出して……大輝の精液、お姉ちゃんにいっぱいかけてえ……」
もう肉棒は爆発寸前だ。
このままだとイっちゃう……
「んっ……うんっ……さあ、早く出しなさい……んっ……」
麻由お姉ちゃんはますます擦り付けるスピードを上げてイカせようとする。
クリトリスに肉棒が擦れ合う時の感触がとても気持ち良い……
「……ん、んく……ん、ほら……ほらっ!ん……ふふふ……」
「(う……出る……)」
どぴゅっっっ!どぴゅるるるっっっ!!!
遂に絶頂に達し、麻由お姉ちゃんの体に精液が思いっきりかけられる。
ああ……麻由お姉ちゃんを汚しちゃった……
「ん……ふふふ……これが大輝の精液なのね……ふふ……ん、んちゅっ……」
麻由お姉ちゃんは嬉しそうに体に付着した精液を眺め、指で拭い舐める。
こんな事して、そんなに嬉しいの?
「あの……ゴメンね…その、汚しちゃって……」
「ふふふ……本当に嬉しいわ……私で気持ちよくなってくれて。出来れば私のおま○この中で気持ちよくなてなって欲しかったけど……」
また、僕の言ったことを無視して……
どうして聞こえない振りをするの?
「もう、いいよね?早くどいてくれよ!」
そういうと、ようやく麻由お姉ちゃんは僕から離れた。
「大輝……どうして私があなたのおち○ちんを私の中に入れなかったのかわかる?」
「あの態勢なら入れようと思えばすぐ入れられたわ。でも大輝の意思を無視して入れたら只の強姦と変らない。だから、最後はあなたに決めて欲しかったのよ。」
「麻由お姉ちゃん……」
あくまで僕の意思を尊重するという事だろうか?
「それに……私の処女とファーストキスは大輝の意思で奪って欲しいの。キスは頬にはしたけど口にはしてないでしょ。」
そういえばそうだったな……
「だから、私の初めてのキスと処女を欲しかったら、いつでも奪いに来て。寝こみを襲ってくれても構わないわ。生理中でも遠慮なんかしなくていい。欲望の赴くままに私を犯して。楽しみに待っているから……」
麻由お姉ちゃん……
「それじゃあお休みなさい。ふふふ……」
バタン

……
343名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 03:41:37 ID:Kuy5pp0N
とりあえず以上です。
続きは、いつになるかわかりませんが
344名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 09:01:40 ID:S86ALPwT
>>343
GJじゃないか・・・
初めての投下らしいけどしっかり堪能させていただきました
345名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 16:52:52 ID:lI1MJ+JP
346名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 16:56:56 ID:zceh2rLp
これはいいキモ姉GJ!

しかしお姉ちゃんの数年間にナニがあったのか…
347名無しさん@ピンキー:2010/10/14(木) 19:46:06 ID:rtkhrODs
GJ
しかしなんという劇的ビフォーアフター
弟を軽く上回るとは
348名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 00:42:11 ID:py/jgT3f
お姉ちゃん別人じゃねーか
くそっ、家の姉とは大違いだぜ
349名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 11:04:48 ID:0zEdSTQn
GJ
弟の成長?がこれから姉のキモさを際立ててる
350名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 18:52:34 ID:W1oVMg0S
351名無しさん@ピンキー:2010/10/15(金) 22:39:22 ID:W1oVMg0S
352三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:49:56 ID:mebDjS4t
三つの鎖 28 後編です
※以下注意
流血あり
エロ無し

投下します
353三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:50:55 ID:mebDjS4t
 膝をつき苦しそうに私を見上げるお兄さん。わき腹を押さえる手から手が流れ床にこぼれる。
 「何でですか。何で私を捨てるのですか」
 私の声は震えていた。
 「私を捨てるのでしたら、何で私と付き合ったのですか」
 視界がにじむ。
 お兄さんと過ごした日々が脳裏に浮かぶ。
 学校でお昼ご飯を食べた。私はお料理が下手で作れるのがカレーしかないけど、お兄さんは私のカレーのお弁当を食べてくれた。おいしいって言ってくれた。
 放課後、二人で帰った。恥ずかしそうに私の手を握るお兄さんが可愛かった。嬉しかった。
 帰り道、よく寄り道した。ソフトクリームを買って、公園で他愛もない事を話した。
 二人でスーパーで買い物した。いつも一人で食材を買っていたから、楽しかった。
 私の部屋で抱いてくれた。優しく、時に激しく抱いてくれた。
 家でお兄さんがお料理してくれた。いつもカレーばかりの私を心配して、栄養のあるご飯を作ってくれた。洗濯してくれた。お掃除してくれた。
 お兄さんは時々意地悪だった。困る私を楽しそうに見つめた。でも、それも嬉しかった。
 幸せだった。お父さんもお母さんも滅多に帰って来ない家でも、お兄さんがいてくれるだけで温かかった。
 お兄さんが帰っても、寂しくなかった。例え傍にいなくても、お兄さんは私の事を想ってくれていると知っていたから。
 そんな日々は、もう帰って来ない。
 「私、お兄さんの事を好きです。愛しています。お兄さんが望むなら何でもします。お兄さんの好みの女の子になります。それなのに、私を捨てるんですね」
 お兄さんはきっと髪の長い女の子が好きだから、伸ばした。まだ肩に届くぐらいだけど、お兄さんがほめてくれるのが嬉しかった。
 分かっていた。お兄さん好みの女の子になるのは無理だって。
 ハル先輩や、梓みたいな女の子になるのは無理だって。
 涙がとめどなく溢れ頬を伝い足元に落ちる。
 荒い息をつきながらお兄さんは立ち上がった。
 こんな状況なのに、信じられないぐらい落ち着いた眼差しで私を見つめる。
 その眼差しに、胸が痛くなる。
 やっぱり、私はお兄さんに恋している。
 だからこそ我慢できない。
 私とお兄さんが、他人になるのが。
 お兄さんの傍に、私以外の女の人がいるのが。
 「お兄さん。好きです。愛しています」
 私は包丁を持ったままお兄さんに向って走った。
 包丁がお兄さんに突き刺さる寸前、お兄さんの右手が包丁の刃を握り締める。その手は血まみれだった。
 お兄さんは傷口を押さえていた手で包丁を押さえていた。
 「夏美ちゃん」
 お兄さんの声はこんな状況でも落ち着いていた。さっきみたいに苦しそうな息遣いはもう聞こえてこない。
 私はお兄さんの手を振りほどこうとしたけど、万力のようにお兄さんの手は動かない。包丁の刃を掴むお兄さんの手から、血が滴り落ちる。
 「これを受け取って欲しい」
 お兄さんはあいている手をポケットに入れ、何かを取り出し私に差し出した。
 小さな白い箱。お兄さんは器用に片手で箱を開けた。
 蓋が開き、箱の中が露わになる。
 そこには二つの指輪が入っていた。
 シンプルな銀の指輪。小さいサイズと大きいサイズが一つずつ。
 私は呆然とお兄さんを見上げた。
 お兄さんは真剣な表情で私を見下ろした。
 「夏美ちゃん。僕と結婚してほしい」
 お兄さんの言っていることが分からなかった。
 言葉は聞こえるのに、意味が理解できない。
 「僕なりに考えた。夏美ちゃんがどうすれば僕を信じてくれるか。僕は馬鹿だから、これ以外の方法を思いつかなかった」
 お兄さんは淡々と言葉を紡ぐ。
 でも、その裏で必死になっているのが分かる。
 「残りの僕の人生を、全て夏美ちゃんに捧げる。一生傍にいる」
 私の目の前に箱が差し出される。
 白い箱の中で、銀色の指輪が鈍い光を放っている。
 包丁から血が床に落ちる。お兄さんは包丁の刃を握っているから手が切れているはずなのに、その痛みを感じさせない真剣な表情で私を見つめる。
 「好きだ。愛している。誰よりも夏美ちゃんを愛している。今は頼りない僕だけど、必ず夏美ちゃんを幸せにできる男になる」
 お兄さんは息を吸い込んで口を開いた。
 「だから、僕の傍にいて」
 私、馬鹿だ。
 本当に馬鹿だ。
 何でだろう。何でお兄さんを疑ったりしたのだろう。
 お兄さんはそんな人じゃないのに。
354三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:51:50 ID:mebDjS4t
 誠実で、優しい人なのに。
 包丁を握り締める手が震える。
 「受け取って欲しい」
 包丁を柄を握り締める両手を離して、指輪の入った白い箱を受け取ろうとした。
 手が箱に触れる直前で私は固まった。
 私の手は、血で真っ赤だった。
 お兄さんの血でべとべとだった。
 白い箱を私に差し出すお兄さんの手に血はついていないのに。
 お兄さんの手から包丁が落ちる。血だまりの中に落ちて、乾いた音を立てる。
 「あ、ああ、わ、わたし」
 私、なんて事を。
 涙でにじむ視界でもはっきり分かる。
 両手が、お兄さんの血で真っ赤なのが。
 この手じゃ、指輪を受け取れない。
 「左手を出して」
 お兄さんはそう言って箱を私の机の上に置いた。
 そのまま箱を持っていた手で小さいサイズの指輪を取り出す。
 私は言われるままに震える左手を差し出した。
 お兄さんは、私の左手の薬指に指輪をはめた。
 血に濡れた私の手で、銀の指輪が鈍い光を放つ。
 「これで夏美ちゃんは僕のものだ」
 お兄さんはもう一つの指輪を取り出し、私の手に握らせた。
 「僕に指輪をはめて欲しい」
 私は震える手でお兄さんの左手の薬指に指輪をはめる。
 血についていなかったお兄さんの左手が、指輪とともに血で濡れる。
 それでも、指輪は鈍い光を放っていた。
 「これで僕は夏美ちゃんのものだ」
 そう言って、お兄さんは私の両手を握りしめた。
 私の手はお兄さんの血で濡れているのに、握ってくれた。
 血まみれの私の手を握るお兄さん。
 「愛している」
 真剣な表情。綺麗な瞳が私を見つめる。
 その眼差しに、醜い感情が全て融けていく。
 私はお兄さんに抱きついた。
 「ごめんなさい。私、どうかしていました」
 「よかった」
 お兄さんは安心したように微笑んだ。真っ青な顔色。
 今、この瞬間も血が流れて床に落ちる。
 「お、お兄さん、その、救急車を」
 「慌てなくても大丈夫。出血はひどいけど、たいした怪我じゃない」
 お兄さんがそう言った時、外で何かを叩く音が聞こえた。
 『幸一君!!いるのか!?』
 聞き覚えのある男の人の声。
 続いてドアが開く音と共に複数の足音が近づいてくる。
 部屋の扉が開きスーツの男女が入ってきた。
 見覚えのある二人。学校でお世話になった刑事さん。
 二人は部屋を見て表情を変える。淀みない動きで素早く銃を抜き、私につきつける。
 「幸一くんから離れろ」
 抑揚のない声で男の人が告げる。
 お兄さんは立ち上がり、拳銃から庇うように私の前に立った。
 「やめてください。夏美ちゃんは関係ありません」
 視線を交わす刑事さん。素早く拳銃を懐にしまう。
 「すまない。幸一君。怪我は大丈夫かい」
 男の人がお兄さんの傷口を確認する。
 「出血は派手ですが、たいした事ありません」
 男の人はお兄さんの言葉には答えずに部屋を見回した。次に私の手を見つめる。血に濡れた私の手を。
 女の人も私を見つめる。犯人を見つめる刑事の目。
 「西原。中村さんを署にお連れしろ。私は幸一君を病院に連れていく」
 「分かりました。中村さん。申し訳ないけど、署まで来てくれる。何があったか聞かせてちょうだい」
 お兄さんは西原さんに向き合った。
355三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:52:50 ID:mebDjS4t
 「岡田さん。夏美ちゃんを署に連れていく必要はありません」
 お兄さんが私に視線を向ける。その瞳が伝える。何も言わないでと。
 男の人、岡田さんは無表情にお兄さんを見つめた。
 「詳しい話は治療の後に聞く」
 「僕が誤って怪我をしただけです。彼女は関係ありません」
 女の人、西原さんがお兄さんの手を掴んだ。
 「幸一君。何があったかを聞くだけよ。任意同行じゃないし、尋問するわけでもないわ」
 お兄さんは首を横に振った。
 岡田さんは無表情にお兄さんを睨んだ。
 「幸一君。もしやましい点が無いなら、中村さんからお話を伺うのに不都合は無いはずだ。それなのにそこまで拒否するのは、何かあったのかと勘繰ってしまう。不幸な勘違いをなくすためにも、中村さんを落ち着ける場所にお連れして話を伺うのは必要だ」
 お兄さんは落ち着いた態度で岡田さんの方を振り向いた。
 「夏美ちゃんは僕の不注意で怪我をした僕を必死に応急処置してくれただけです」
 「幸一君」
 西原さんが困ったようにお兄さんに声をかける。
 「僕は今日、夏美ちゃんに求婚しました」
 思わず顔を合わせる刑事さん二人。
 「夏美ちゃんは承諾してくれました。僕の婚約者は、誤って包丁で怪我した僕を応急処置してくれた。それだけです。ですから夏美ちゃんを署に連れていく必要はありません」
 「あー、幸一君」
 岡田さんが困ったようにお兄さんを見る。
 「出血が多すぎるようだ。早く病院に行こう」
 「…別に幻覚を見た訳じゃないです」
 西原さんは私を見つめた。
 「村田さん。幸一くんの話した事は本当なの」
 私が答える前にお兄さんが口を開いた。
 「本当です。証拠に、僕も夏美ちゃんも婚約指輪をつけました」
 刑事さん二人の視線が私とお兄さんの左手に集まる。
 「僕の怪我は、僕の不注意です。夏美ちゃんは関係ありません」
 傷口を押さえ、額に汗を浮かべても、お兄さんの声は微塵も震えていなかった。
 刑事さん二人は顔を合わせ、やあって岡田さんは口を開いた。
 「…分かった。怪我をしたなら婚約者の付き添いがあった方が安心するだろう。中村さん。幸一君に付き添ってもらえますか」
 「は、はい」
 ふらつくお兄さんを私は支えた。

 病院の待合室で、私はお兄さんの治療が終わるのを待っていた。
 私は、なんて事をしてしまったのだろう。
 お兄さんを、刺した。
 この手で、刺した。
 私の手に、お兄さんを刺した時の感触が今でも残っている。
 「中村さん」
 顔をあげると、岡田さんと西原さんがいた。
 「幸一君の怪我は大した事ないです。数針縫う程度だから安心してください」
 私はほっとした。
 「いくつかおたずねしたい事があります。あ、いえ、包丁が刺さった状況じゃないです。あれは幸一君の言うとおり、幸一君の不注意が原因です。伺いたいのは、幸一君がプロポーズしたのは本当かどうかです」
 「本当です」
 私は正直に答えた。
 「では中村さんが承諾したのも本当ですか」
 今更になって何があったかを理解した。
 お兄さんは、私にプロポーズしてくれたんだ。
 結婚してって言ってくれたんだ。
 私は、それを受けたんだ。
 嬉しさと恥ずかしさに頬が熱くなる。
 「…はい。受け入れました」
 顔を合わせる刑事さん二人。
 困ったような表情を浮かべる岡田さんに、西原さんは軽く咳払いした。そして西原さんはにっこりと笑った。
 「婚約、おめでとうございます」
 「…ありがとうございます」
 何だか不思議な感覚。他の人からの祝福が、何だかくすぐったい。
 複雑そうな表情をしている岡田さん。西原さんが岡田さんのわき腹を肘でつつくと、慌てたように口を開いた。
 「あ、いえ、婚約おめでとうございます」
 「ありがとうございます」
356三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:53:33 ID:mebDjS4t
 そんな事を話していると、見覚えのある男の人が近づいてきた。
 お兄さんのお父さん。片手に紙袋を持っている。
 「岡田君。息子はどうだ?」
 あくまでも冷静な声で尋ねるおじさん。
 「大した事ありません。数針縫う程度です」
 「そうか。息子が迷惑をかけた」
 そう言って頭を下げるおじさん。
 「中村さんも、息子が迷惑をおかけしました」
 「え、あ、その」
 何て言えばいいのだろう。その、私が刺したわけだし。
 「お父さん。夏美ちゃんが困っているよ」
 聞き覚えのある声。
 「お兄さん!!」
 兄さんがゆっくりとした足取りで近づいてきた。
 私はお兄さんにそっと抱きついた。
 「その、大丈夫ですか」
 「大丈夫」
 そう言ってお兄さんは微笑んだ。力強い笑顔。
 「幸一。怪我はどうだ」
 「大丈夫」
 会話する親子。
 「迷惑をかけた人にちゃんと挨拶をしなさい」
 お兄さんは岡田さんと西原さんにも頭を下げた。
 「ご迷惑をおかけしてすいませんでした」
 顔を見合わせる二人。やあって西原さんは口を開いた。
 「幸一君。それよりもお父上にご報告することがあるんじゃないかしら」
 微かに眉をひそめるおじさん。
 「お父さん。紹介するよ」
 「中村さんとは既に知り合いだ」
 「改めて紹介するよ。僕の婚約者の中村夏美さん」
 沈黙するおじさん。黙ってお兄さんを睨みつけるように見ている。
 お兄さんはその視線を平然と受け止めている。
 「え、えっと、その、ご紹介にあずかりました中村夏美です」
 「今日、結婚を申し込んだ。事後報告でごめん」
 お兄さんの言葉におじさんは天井を仰いだ。
 「幸一。本気か」
 「本気だ」
 「まだ高校生というのを理解しているか」
 「正式な結婚は就職してからにする」
 おじさんはお兄さんの顔をまっすぐに見た。
 「事件の被害者だから、同情で結婚するのか」
 慌てたように顔を合わせる岡田さんと西原さん。
 「もしそうなら、婚約を許すわけにはいけない」
 「違う」
 お兄さんは否定した。力強い言葉。
 「夏美ちゃんとずっと一緒にいたいと思ったから、プロポーズした。同情とかは一切無い」
 にらみ合う親子。
 しばらくして、おじさんは私の方を向いた。
 「中村さん」
 「は、はい」
 私はすごく緊張していた。
 おじさんの表情は無表情だけど、痛いぐらいに真剣な気持ちが伝わってくる。
 「ご存知の通り、息子は単純で世間知らずで考えの浅い男です。この年で結婚を申し込む時点でそれを証明しています。こんな馬鹿息子ですが、よろしくお願いします」
 「いえ。それは違います」
 自然と言葉が出た。
 「幸一さんは優しくて思慮深い人です。結婚を申し込んでくれたのも、私の事を考えての事です」
 私を無表情に見下ろすおじさん。
 「私は、幸一さんがプロポーズしてくれたのを嬉しく、誇りに思います」
 おじさんは微かにほほ笑んだ。お兄さんの面影が、確かにあった。
 「息子をよろしくお願いします」
357三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:54:50 ID:mebDjS4t
 おじさんはそう言ってお兄さんの方を向いた。
 「幸一にはもったいない女性だ」
 お兄さんは頬を染めてそっぽを向いた。そして視線だけを私に向ける。
 「夏美ちゃん」
 「はい」
 「もう一回言って欲しい」
 「えっと、何をですか」
 恥ずかしそうにうつむくお兄さん。その姿が、何だか妙に可愛い。
 「その、もう一回、名前を呼んで欲しい」
 「名前、ですか?」
 「初めてだ」
 「?」
 「初めて、夏美ちゃんが僕の名前を言ってくれた」
 そう言えば、お兄さんの下の名前を口にしたのは初めてかもしれない。
 顔が熱くなる。
 「い、言いますね」
 「うん」
 「こ、ここ、幸一、さん」
 「うん」
 嬉しそうに頷くお兄さん。
 うわっ。すごく恥ずかしい。ただ単に名前を口にしただけなのに。
 「こ、幸一さん」
 「うん」
 「幸一さん」
 「うん」
 西原さんは咳払いした。
 「とりあえず出ませんか。中村さんも着替えないといけませんし」
 そう言えば、私の上着は血が結構ついている。
 お兄さんの上着も血がついている。
 西原さんが落ち着いた様子で口を開いた。
 「加原さん。とりあえず、中村さんを家に送ってから幸一君を家に送ります。二人ともこの格好だと表を歩けませんし」
 おじさんは手にある紙袋をお兄さんに渡した。
 「着替えが入っている。中村さんの家の掃除を手伝ってから帰る様に。西原。手間をかけてすまないが、二人を中村さんのお住まいまで頼む」
 「分かりました」
 「岡田君はどうする?私は今から署に戻るが」
 「僕も加原さんと一緒に帰ります」
 挨拶もそこそこに岡田さんとおじさんは去っていった。
 「行くわよ」
 歩く西原さんに私とお兄さんはついて行った。

 西原さんは車でマンションまで送ってくれた。
 「ありがとうございます」
 「どういたしまして」
 お礼を言う私とお兄さんに、西原さんは微笑んだ。
 「夏美ちゃん。しっかりと旦那の手綱を握っていないと駄目よ。男って単純だからね。すぐに落ち込むし、弱気になるから」
 そう言って西原さんは左手を掲げた。その薬指には指輪が鈍い光を放っている。
 「お互い頑張ろうね」
 西原さんは笑いながら去っていった。
 二人きり。何だか気恥ずかしい。
 「行こう」
 そう言ってお兄さんは私の手を握ってくれた。
 大きくて温かい手。二人で並んでマンションの階段を上る。
 私の部屋は凄惨な状況だった。
 床に赤黒い汚れ。お兄さんの血。
 私が、お兄さんを刺したから。
 心臓の動悸が激しくなる。寒くないのに体が震える。
 私、なんて事を。
 「夏美ちゃん」
 お兄さんは私の手をしっかりと握ってくれた。
 「気にしないで。夏美ちゃんは悪くない」
358三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:55:21 ID:mebDjS4t
 「で、でも」
 お兄さんは私を抱きしめた。
 温かくて逞しいお兄さんの腕の中。お兄さんの心臓の鼓動を微かに感じる。
 「夏美ちゃんは疲れていただけだ。悪い夢を見ていただけ」
 お兄さんの落ち着いた声が、私の心にしみこむ。
 「リビングに行こう」
 そう言ってお兄さんは私の手を引いて部屋を出た。

 ふと眼を覚ますと、私はリビングのソファーで寝ていた。
 電気の消えたリビング。体を起こすと、タオルケットをかけられていることに気がついた。
 病院から帰ってきて、リビングでお兄さんにもたれかかっていて。
 そこから記憶が無い。いつの間にか寝てしまったようだ。お兄さんはどこにいったのだろう。
 外はもう暗い。何時だろう。
 リビングの電気をつける。既に遅い時間。
 「夏美ちゃん?起きた?」
 お兄さんがリビングに入ってきた。
 「ごめんなさい。寝てしまったみたいで」
 「気にしないで。夏美ちゃんの寝顔、可愛かった」
 そう言ってほほ笑むお兄さん。
 お兄さんに寝顔を見られたんだ。恥ずかしさに頬が熱くなる。
 「ご飯作ったけど、お腹すいてる?」
 正直、あまりすいていない。お兄さんを刺した後で、食事をとる気にはなれなかった。
 「気が向いたら食べて」
 私の表情から察したのか、お兄さんはそう言ってくれた。
 「いえ、いただきます」
 「いいの?」
 「少しでも食べないと、体が持たないです」
 考えたら、今日は何も食べていない。
 「分かった。ちょっと待ってね」
 そう言ってお兄さんはキッチンに消えた。
 私は顔を洗おうとお風呂場に入った。鏡を見ると、服に血がついていない。気がつけばお兄さんを刺した時とは別の服になっている。
 お兄さん、着替えさせてくれたんだ。
 私は顔を洗って自分の部屋の前に立った。深呼吸して部屋に入り明かりをつける。
 明るくなった部屋に、赤黒い染みは無かった。
 私は呆然と立ち尽くした。どうなっているのだろう。
 寝ている間にお兄さんがお掃除してくれたのだろうか。
 リビングに戻ると、おいしそうなカレーの匂いが漂ってくる。
 「夏美ちゃん。できたよ」
 「ありがとうございます。あの、もしかして私を着替えさせてくれましたか?」
 お兄さんは申し訳なさそうな顔をした。
 「うん。勝手に着替えさせてごめん」
 「いえ、ありがとうございます。あと、私の部屋をお掃除してくれましたか?」
 お兄さんは黙って頷いた。
 恥ずかしさと申し訳なさにお兄さんを直視できない。
 怪我をしているお兄さんにお掃除までさせて。私、何をしているのだろう。
 「その、本当にすいません」
 頭に温かい感触。
 お兄さんが私の頭をそっとなでる。
 「気にしないで」
 そう言ってお兄さんは微笑んだ。
 「さ。冷める前にどうぞ」
 おいしそうなカレー。お兄さんがカレーを作ってくれたのは、お父さんのお葬式以来だ。
 私は椅子に座り手を合わせた。
 「いただきます」
 私はスプーンを手に一口食べた。おいしい。
 「どう?」
 「おいしいです」
 私の一言に嬉しそうに微笑むお兄さん。その笑顔に頬が熱くなる。
 誤魔化すようにカレーをもう一口食べようとして、背筋が寒くなった。
 スプーンを通して伝わる感触。多分、牛肉の角切り。
359三つの鎖 28 後編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/15(金) 23:56:26 ID:mebDjS4t
 その感触が、お兄さんを刺した時の感触と同じだった。
 かちかちと音がする。握ったスプーンが震え、お皿とぶつかっている。
 「夏美ちゃん?」
 心配そうに私を見るお兄さん。
 私、お兄さんを。
 この手で、刺して。
 たくさん血が流れて。
 鋭い頭痛。歪む視界。込み上げる吐き気。
 「夏美ちゃん!!」
 お兄さんの声が、遠い。
 気がつけば私は椅子から転げ落ちて床にうずくまっていた。
 耐えがたい頭痛と吐き気。食べたばかりのカレーと胃液が込み上げてくる。耐えきれずに私はもどした。
 せっかくお兄さんが作ってくれたのに。
 乱れる思考の中で、明確な言葉になったのはそれだけ。
 気がつけば私はお兄さんに抱きかかえられていた。
 「夏美ちゃん!?しっかりして!!」
 吐しゃ物に汚れるのにも関わらず、お兄さんは私を抱きかかえてくれた。
 「あ、だめ、です」
 私はお兄さんの両肩を押そうとした。手に力が入らない。
 「だめ、です。よごれ、ます」
 悪いのは私なのに、お兄さんが汚れるなんて耐えられない。
 それなのにお兄さんは私を抱きしめる。
 お兄さんの温かい腕に抱かれ、徐々に意識がはっきりしてくる。それと共に、微かに嗚咽が聞こえてくる。
 「おにい、さん?」
 お兄さんの顔が見えないからよく分からないけど、お兄さんは泣いていた。
 「…ごめん」
 何でお兄さんが謝るのか、分からない。
 悪いのは私なのに。
 お兄さんを刺したのは、私なのに。
 私はお兄さんの背中に腕をまわして抱きしめた。お兄さんはびくりと震えた。
 「お兄さんは、悪くないです」
 私の言葉に、お兄さんは何も答えない。
 ただ、静かに泣きながら私を抱きしめるだけ。


投下終わりです。
読んでくださった方に感謝いたします。
ありがとうございました。
HPで登場人物の人気投票を行っていますので、よろしければご協力お願いいたします。
ttp://threechain.x.fc2.com/index.html
360名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 00:24:01 ID:LX0Ts3XF
( *`ω´)
361名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 00:32:51 ID:QXdvwR3w
GJ!
幸一に死亡フラグが立ちました
362名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 00:40:29 ID:y4ck0maH
GJ
幸一死にますね、これは
363名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 01:42:35 ID:hURGnWym
乙…幸一 good luck………
364名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 02:31:21 ID:zNcPoRYb
乙〜
なんか一気に追悼ムードでわろた
365名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 03:50:12 ID:IAyZqOPt
366名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 04:00:30 ID:HTFUNDEC
もう幸一死なないと事態は沈静化しないような気がする
367名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 07:38:10 ID:UyfqDr8k
なんであのタイミングで警察が介入したのか気づかないくらい
二人がいまだに冷静になってないのね

GJ
368名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 09:24:57 ID:avL1uu+U
これからまた嵐がくるぞ〜

GJ!
369 ◆wBXWEIFqSA :2010/10/16(土) 15:06:46 ID:w73DEH/4
>>342の続き投下します。
一応トリップ付けときます。
前回より短いですが、今回もエロ有りです。

370狂依存 9:2010/10/16(土) 15:07:45 ID:w73DEH/4
「はあぁ〜……」
まだ現実感が無い……
麻由お姉ちゃんがあんな事するなんて……
どうしてこんな事になったんだろう?
昔はあんなんじゃなかったのに。
これから、あの麻由お姉ちゃんと二人でずっと一緒に過ごさなきゃいけないなんて……
「本当にどうしよう……」
お父さん達は数年は海外に滞在する予定だ。
もちろんお盆や正月には一時的に帰ってくると言ってるが、いても一週間ぐらいだという。
「何とか説得して諦めさせるしかないか。」
麻由お姉ちゃんならきっとわかってくれるだろう。
それに初めては僕に奪ってくれという事は、僕の方が自重すれば一線を超えることはないという事か。
なら、僕が我慢すればいずれ諦めてくれるよね。
「大丈夫、大丈夫だよな……」
必死にそう言い聞かせながら、眠りについた。

「大輝、起きなさい!大輝!」
「う……ん…」
「起きろっつてんだろ!」
ドスっ!
うおっ!
鞄か何かで思いっきり叩かれて、目を覚ます。
「うーん……なーに?」
時間は……ってまだ6時半じゃん…
「うー、こんな早くにどうしたの……」
「どうしたの?じゃないわよ。今日はお母さん達いないのよ。」
だからって何でこんな早くに。
「私はこれから朝練に行かないといけないからもう出るけど、あんたも時間になったら朝御飯用意してあるから、それ食ってちゃんと玄関の鍵閉めて出るのよ。」
「うん……」
「お母さん達は夕方頃には帰ってくるって言うから、学校から帰ったらそれまでちゃんと留守番してること。いいわね?」
「じゃあ、もう行くから。鍵ちゃんと閉めときなさいよ。」
「う、うん……」
もう麻由お姉ちゃんったら、相変わらず乱暴なんだから……
これも照れ隠しか愛の裏返しなんだろうけど、夫を起こすときはやっぱりお早うのキスぐらいはして欲しいよね。
「もう一眠りっと……ん?」
そういえば麻由お姉ちゃん、朝御飯用意してあるって言ってたな。
「私はこれから朝練に行かないといけないから、もう出るけどあんたも時間になったら朝御飯用意してあるから、それ食ってちゃんと玄関の鍵閉めて出るのよ。」
うん、確かに言った。
朝御飯用意してあるから。朝御飯用意してあるから……
「こうしちゃおれん!!」
ああ……麻由お姉ちゃんったら、朝練があるっていうのに、僕の為にこんなに朝早くから起きて朝御飯作って用意してくれたんだね!
僕の為に、ここまでしてくれるなんて……
昨日は作るの面倒くさいとか何とか言ってたけど、やっぱり僕達は愛し合ってるんだね。
「さっさと着替えて食べなければ!」
何作ってくれたのかな〜。
麻由お姉ちゃんの手作りなら何だって美味しく頂いちゃうよ。
「ではいただきまーす!」

……
………
えーと……朝御飯って……
「………」
コーンフレークと牛乳。
371狂依存 10:2010/10/16(土) 15:08:46 ID:w73DEH/4
「大輝、起きて。大輝。」
「う……」
「大輝……」
ちゅ……
「!?」
な、何だ?今の?
「ふふふ……起きた?おはよう、大輝。」
「ま、麻由お姉ちゃん。今何を?」
ほっぺに何か柔らかい感触が……
まさか?
「決まってるじゃない。おはようのキスよ。愛する人を起こすにはこれが一番の目覚ましでしょ。」
いや、目覚ましって言われても……
「もしかして、嫌だった?」
「え!い、いや、そんな事はないけど……」
嫌って事はないんだけど、何か違うというか……
「あの……起こしてくれたのはありがたいんだけど、まだちょっと早いというか……」
まだいつも起きる時間より20分ぐらい早い。
もうちょっと寝ていたかったんだけど……
「あっ。もしかして、何か手伝って欲しい事か何かあった?だったら……」
「あ、ううん、違うの。ちょっとやりたい事があって。ごめんね、大輝はまだ寝てていいから。」
??何を言ってるんだ?
「やりたい事って?」
「大輝のおち○ちんを大人しくしてあげようと思って……ね。」
「へ?」

ずるっ
「ちょっ!何を?」
「ふふふ……朝からこんなに勃起しちゃって……昨日の事を思い出して勃起しちゃったのかしら。待っててね。お姉ちゃんが今、気持ちよくして、落ち着かせてあげるから……」
「えええ?ちょっと止めて……」
麻由お姉ちゃんはズボンを引き摺り下ろして、僕の肉棒を露にすると、指で擦り始めた。
「大丈夫よ……大輝は何もしなくていいわ……お姉ちゃんに全部任せて。」
「麻由お姉ちゃん、あの、これは……」
これは単なる生理現象なんだけど……
いや、知っててやってるのか。
「じゃあ、いくわよ……」
「う……」
麻由お姉ちゃんは胸元をはだけて、おっぱいを露出すると肉棒に挟みこんだ。
「うん……ん、ん……どう?気持ちいい?」
麻由お姉ちゃんの豊満な乳房に挟まれた肉棒が優しく擦れ合い、未知の快楽を引き起こす。
本当に気持ちいい……
「麻由お姉ちゃん、お願いだから止めて……」
「そう、気持ち良いのね。じゃあもっとやってあげる。んっ、うん……」
ちょっ、無視しないで。ん……
「ふふ……こんなにビクビクさせて感じちゃって……本当に可愛い……」
麻由お姉ちゃんはうっとりした表情をしながら、おっぱいに挟まった肉棒を優しく乳肉に優しく押し付け、擦れさす。
その姿が妙に色っぽくて、ますます興奮してしまう。
372狂依存 11:2010/10/16(土) 15:09:44 ID:w73DEH/4
「ん……んく…ふん……どう?気持ち良い?ふふふ……我慢できなくなったらいつでも私を押し倒して、犯していいわよ……」
「んっ……そんな事……」
それが狙いだったか……
「……ん、うん……さあ、早く犯して。自分のおっぱいに弟のち○ぽ挟んで喜んでいるような、この淫乱な姉のおま○こをあなたのち○ぽで思いっきり犯してえ……」
僕を淫猥な言葉で挑発しながら、おっぱいを動かすスピードを速め肉棒を更に刺激する。
この異常な快楽に、もう絶頂寸前にまで追い詰められた。
「(ここまできたら、早いとこ出して終わらせた方がいいな……)」
「もう……まだ意地を張るのね……ん、んちゅっ……」
「んっ……!」
「ん、んちゅっ、ちゅっ、むちゅっ……ちゅるっ……ぢゅるっ……」
うう、今度は肉棒を舐め始めてきた。
「むちゅっ……はん…うちゅ、ちゅっ…んちゅっ、ぢゅる……ほら……早くぅ……んちゅっ、ちゅるっ……」
大きくて柔らかい乳房が挟まれる感触と、舌と唇で優しく舐められる感触とで今まで体験した事のない強烈な快楽が襲い掛かる。
「(うう……これは、本当に辛い……)」
あまりの強烈な快楽の前に理性は今すぐにでも吹き飛びそうになる。
でもこらえないと……
「むふ……ん、んちゅ……ん……ちゅっ……ぢゅる……」
明らかに誘うような色っぽい目線で僕を見つめながら、パイズリの速度を緩め、焦らしてくる。
その挑発的な目線に誘われないよう、目を瞑って何とかやりすごそうとする。
「(早く……イカせて)」
「ん、んちゅ……ほら、早くこのち○ぽを私のおま○こにぶち込んでえ……ん、むちゅ……ちゅっ……」
「麻由お姉ちゃん、早く支度して家を出ないと遅刻しちゃうから。だから……ね?もう……」

ここまできたら早く出してすっきりさせないと、授業にも集中できなくなる。
だから、早く……!
「ん、んちゅ、ちゅる……しょうがないわね……ちゅる、んちゅっ、ちゅるっ……ぢゅる……ぶちゅっ…ぢゅるっ、んちゅ…」
そう懇願するとかなり不満そうな声を漏らしながらも、麻由お姉ちゃんはフェラと乳房を動かす勢いを加速させる。
ああ、やっとイカせてくれるのか……
「ん、んく、んちゅっ、ぢゅるっ、むちゅっ……ぢゅる…ちゅる、んちゅ、はむ……ん、んちゅ、ぢゅるっ……」
先端を口に咥え、口の中で舌を絶妙に動かしながら、刺激する。
麻由お姉ちゃんの舌の柔らかくて、ヌルっとした感触がチロチロと先端に触れ合い、途方も無い快感をもたらす。
更に麻由お姉ちゃんの乳房が陰茎を全て包み込み、あらゆる方面から押し込んで凄まじい快感を肉棒に与えている。

「ん……んちゅっ、ちゅる、ぢゅるっ、ん……んちゅ、ちゅるっ、むちゅっ……はむっ、んっ、んちゅっ、ちゅるっ……」
「(うう、気持ちよすぎるよ……)」
既に先走り液がかなり出ており、麻由お姉ちゃんはそれを丁寧に舐め取っている。
というか、麻由お姉ちゃん上手すぎないか?
「ん、んちゅっ、ちゅる、ぶちゅっ、ほら、早く飲ませなさい、はむ…んちゅ、ちゅる、ぢゅるっ……んちゅっ……」
「(もう出る……)」
「ん、んちゅっ、ん……むちゅっ、ちゅるっ、んちゅ、ちゅっ……ちゅるっ、ぢゅるっ、んちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、むちゅ、ぢゅるっ、ちゅる……」
びゅくっっ!!びゅくるるるるっっっっ!!!
「はむ……ん、んく……ん……んん………」
びゅくっっ!びゅくびゅくるっっっ!!!
麻由お姉ちゃんの口の中で、思いっきり射精する。
そして、口の中にぶちまけられたザーメンを麻由お姉ちゃんはしっかりと棹を咥えながら、飲み干している。
「ん……んく……んん……ちゅるっ、ぢゅるっ、んちゅっ……ぷはぁ……ふふふ……ご馳走様……」
麻由お姉ちゃんは満面の笑みで、そう答えた。
その顔がまた無性に色っぽくて、更なる興奮を誘う。
373狂依存 12:2010/10/16(土) 15:10:54 ID:w73DEH/4
「ありがとう、大輝。本当に美味しかったわよ。」
そうなのか?そんなに美味しいものでもないって聞いたけど……
「気持ちよかった?」
「う、うん……」
これは正直に答えるしかないか……
「またして欲しくなったらいつでも言ってね。と言っても、大輝が私を犯してくれるまで、私の方からどんどんやっちゃうけど……」
「麻由お姉ちゃんの方からって……もうこんな事は止めてよ。こんな事しても何にもならないよ。」
「何言ってるの?あなただって絶頂したじゃない。お姉ちゃんにパイズリされて、気持ちよかったんでしょ?私とセックスしたいって少しは思ったんでしょ?」
「そ、それは……」
「姉弟だからって何も遠慮する事はないわ。欲望の赴くままに、私を思いっきり犯していいのよ。私にエッチな事されて射精したって事は、私達は愛し合えるって事の証なのよ。」
「………」
でも、それでも……

「そう……なら大輝が素直になれるまで、これから毎日こういう事をやるわ。覚悟しておいてね。」
「毎日って……!冗談は止めてくれよ!」
こんな事毎日やられたら頭がおかしくなるよ!
「ふふふ……お姉ちゃんの誘惑に何処まで耐えられるかしら?あの様子だとそう長くはもたないだろうから、早く素直になった方が良いと思うけどね。」
「お姉ちゃんが、あなたの中にある下らない理性を全部ぶっ壊してあげる。そして、私を見たらすぐに犯しちゃう様な飢えた狼にしてあげるわ。うふふ……想像しただけでゾクゾクしてきちゃう……」
「………」
悪魔の様な宣告を受け、ただ呆然とするしかなかった。
「さあ、そろそろ朝食にしましょう。もう用意してあるわ。着替えたらすぐ下に降りてきなさい。」
「……うん。」
生返事をしたが、まだ動くことが出来ない。
本当にどうすれば……
「何をボーっとしてるの?ああ、お姉ちゃんに着替えさせて欲しいのね。今やってあげるから……」
「い、いいよ!」
そう言って手を伸ばし始めた、麻由お姉ちゃんの手を慌てて払いのけ着替え始める。
「もう、遠慮しなくていいのに……」
麻由お姉ちゃんは残念そうな顔をして呟いた。
幼稚園児じゃないんだから、そんな事させられないよ!

374 ◆wBXWEIFqSA :2010/10/16(土) 15:12:35 ID:w73DEH/4
以上です。
ちなみにこの姉弟の年齢は、姉21、弟18ぐらいです
375名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 17:00:19 ID:oQxCUu55
>>374
実用的でございましたGJ
二人とも3歳ほど下で再生してた

>>362
今回のが幸一が死ねる最後のチャンスだった気もする
多分あいつ死に損なうごとに雁字搦めになっていくんだぜ…
376名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 19:12:17 ID:IAyZqOPt
377名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 20:42:33 ID:X7US1Dr8
年齢=彼女いない歴の俺がキモ姉に耳掃除を頼んだらどうなるのっと
378魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:10:40 ID:5h3AEk/k
こんばんは。
表題について、投下いたします。
379魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:11:05 ID:5h3AEk/k
※この話は「幸せな二人の話」の番外編です。
 なお、番外編中の出来事・事実は全て本編には影響のない事、申し添えます。
380魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:11:31 ID:5h3AEk/k

魔法。

空を飛ぶ魔法、恋を叶える魔法、悪い人をやっつける魔法。
魔法が使えたら、それは誰もが一度は夢見る事。
けれどもいつかは分かる、そんな都合の良い魔法なんて存在しない事を。
空を飛びたいのならパイロットに、恋を叶えたければ告白を、悪い人をやっつけたければ自衛官になろう。
そうやって、みんな自分の力で夢を実現しようとする。
魔法っていうのはその切欠に過ぎない、本当の魔法は自分の力、だから。



だから、今更魔法少女になんて誘われてもすごく迷惑だ。



381魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:11:51 ID:5h3AEk/k
”要は、私のお母さんは魔法少女で、私にも素質があるから後を継げっていう事?”
《はい、人間の黒い心、誰かを×したい、誰かが居なくなれば良いのに。
 そういう気持ちに形を与える悪の勢力と戦う、お母様は立派な魔法少女でした》
”そして、あなたはお母さんのマスコットっていう事?”
《はい、HALと書いて、アルと呼んでください。
 フランス語ですので先頭のHは読みません》
”かなり身の程知らずの事を言っているような気がするんだけど。
 大体、マスコットって普通動物じゃないの?
 猫とか、フェレットとか……”
目の前にあるそれは、動物どころかただの黒い直方体にしか見えない。
《それはもう昔の話です。
 今時は生体マスコットなんて、非常食位にしかなりませんね。
 現在の魔法戦は戦略、戦術、戦闘の直結を要求されるシビアな戦いです。
 だから、多数の情報を瞬時に処理できる人工知能でなければバックアップは不可能です。
 私もこのボディは端末でして、本体は木星にあるんですよ》
”じゃあ、これは魔法で木星から会話しているの?”
《いえ、ワームホールを利用した量子通信です。
 あと、シルフさんとは脳波の読み込みですね》
”……魔法じゃないんだ。
 それに、マスコットだったら何で魔法を使わずに郵送で来たの?”
《空軍のレーダーよりは税関を誤魔化す方が安上がりで簡単だったからです》
”……”
《言いたい事は分かりますが、その方が正確で効率が良いんです》
”もう、どうでも良い”
はぁ、どうして私はこんな話を真に受けているんだろう?
《それは真実を伝える魔法を使わせて頂いておりまして》
ばつが悪そうに、自称マスコットが答える。
そんな都合の悪い所を埋めるような魔法の使い方ってどうなのだろう?
”いくら何でも手抜き過ぎだと思わないの?”
《そうなのですが、その、あまり本筋に外れた所に時間を裂けませんので……》
”分かったわ、もうそういう事にして良いから”
私は投げ遣りになりながら答えた。
《すいません、本当にすいません》
アルがその黒い表面にorzをする光のモーションを浮かび上がらせる。
むしろ馬鹿にされているような気がする。
382魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:12:15 ID:5h3AEk/k
今日は朝からそんな調子でずっと騒がしかった。
お兄ちゃんとのデートに胸を弾ませていた私の元に一つの小包が届いたのが発端。
送り出し人は私のお母さんの名前。
不審に思いながらも開けてみると、突然こう言われた。
魔法少女になりませんか? って。
もちろん、すぐに断った。
何度も、何度も断った。
そんなごたごたが一段落してからやっと私達は出発できた。
今、私とお兄ちゃんは動物園のライオンのスペースに来ている。
でも、全然ライオンさんの事を楽しめていられない。
《あ、見てください、シルフさん!!
 ほら、あくびしてますよ、やっぱりかわいいですねー》
それというのも全部これの所為だ。
「シルフ、退屈だったか……?」
お兄ちゃんが不安そうに私に聞いてくる。
「そ、そんな事全然無いの、すごく嬉しい!!
 あ、ほら、あの子なんか家で飼いたいなって思う」
するとお兄ちゃんは笑いながら、近くにあった露店に向かって歩く。
「そうだな、ライオンは飼えないとしてもこれはどうだ?
 って、あれ、シルフ?
 シルフ、どこ行った!?」
383魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:13:10 ID:5h3AEk/k
**************************************

最悪の気分。
せっかくお兄ちゃんとのデートだというのに、私はお兄ちゃんを不愉快にさせてばっかりいる。
もし、これでお兄ちゃんに嫌われてしまったら……。
そんなの、絶対に嫌だ。
本当に最悪。
もっと悪い事にその胡散臭い自称マスコットの言う敵が今この場に出現してしまったようだ。
出来る事ならば、お兄ちゃんの手を引っ張ってすぐに動物園から出て行きたかった。
でも、敵はお兄ちゃんのすぐ近くで今のままならお兄ちゃんも危険だとアルは言う。
だから、お兄ちゃんを守る為に、私は渋々、とても不本意だけど、嫌々、魔法少女として、
今回だけは仕方なく、二度とやる気はないけど、必要最低限度だけ、戦う事にした。
《では、確認します。
 魔法少女の基本任務は偵察です。
 出来るだけ多くの情報を収集し、敵の危険度が低ければそのまま排除。
 敵の危険度が少しでも高ければ我々の本隊から応援を要請後、撤退します。
 基本的には帰還する事が絶対条件の安全なお仕事です》
”あれが、危険度の高い敵……?”
私の目線の先には等身大のぬいぐるみが暴れていた。
その周りで、観光客が楽しそうに写真を撮っている。
どう見ても動物園のアトラクションにしか見えない。
《はい》
”分かったら、早くして”
本当に馬鹿らしくなってきた。
もう何でもいいから早く終わらせてお兄ちゃんの所に戻ろう。
それから、いっぱい甘えたい。
《では、変身しましょう、コールサインは「すーぱーシルフ」です》
もう、いちいち指摘するのも面倒臭い。
はぁ、と私は一度溜息を吐きだした。
384魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:14:23 ID:5h3AEk/k
「すーぱーシルフ、インゲージ!!」
一瞬で私の体が光に包まれ、魔法少女としての服装が体を包む。
長々と変身のシーンを入れられるのかと思っていたので、それは良かったんだけど。
だけど、その変身後が……。
”アル!! どういう事なの!?”
《はい、スーツの種類はいくつかあるのですが、
 今回は緊急だったのでお母様が愛用されていた物を用意しました。
 まずかったでしょうか?》
魔法少女の格好は私からみればまずい所だらけだ。
青と白で塗り分けられた、スクール水着のような形のボディースーツにニーソックス、グローブ。
むしろ、どこにまずくない要素があるのか教えて欲しい。
そして、何よりもまずいのは……
”これじゃあ、顔が丸見えじゃない!?”
こんな魔法痴女としか言えない物を着ているのをお兄ちゃんに見られたらと思うと泣きたくなる。
《大丈夫です、魔法的なジャミングが掛けられいますので、今のシルフさんはシルフさんとは認識されません。
 だれが見ても魔法少女すーぱーシルフとしか認識できないんです。
 あ、それから、カメラに写ってもジャミングでぼやけますから安心ですよ》 
そんな事を言われても、はっきり言って気休めにしかならない。
私が気にしているのはお兄ちゃんにこんな恥ずかしい恰好を見られたくないっていう事なのに。
”それに、お母さんが本当にこれを着ていたの?”
《ええ、最初から最後まで》
”私を産んでからもしていたって事は、お母さんって30過ぎまで魔法少女をしてたんだよね?”
《でもお母様は綺麗な人でしたからね、10代と言っても全然違和感がありませんでしたよ》
”そういう問題じゃないんだけど?”
《因みに、お父様の方はそのパートナーとしてフルフェイスのマスクに黒マントで、》
無言でアルを地面に叩き付けた。
私の中で何か大切なものが壊れた音がする。
385魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:16:20 ID:5h3AEk/k
《何をするんですか!? 
 私は精密機械なんですよ!?》
アルは抗議をしながら私の肩辺りにまた戻ってくる、傷一つ付かずに。
いっそ壊れてくれれば良かったのにって本気で思う。
”はぁ、それで私はあのぬいぐるみを倒せばいいの?”
私はその抗議を無視して、構える。
色々と言いたい事はあるけど、もうどうでもいいから戦って早くお兄ちゃんの所に戻りたい。
《止めてください、まだアクティベーションが済んでいません!!》
”アクティベーション?”
《はい、変身はあくまでスーツを着るまでなんです。
 ですから、防御力は上がっても、肉体強化付加や攻撃魔法はまだ使えません。
 アクティベーションを行うことでこれらの機能は解禁されます。
 つまり車で言うなら鍵を回すようなものです》
”何でもいいから早くして”
《了解です、いまから読み上げる呪文を復唱してください》
”いいから早く”
アルの背面に光り輝く文字が浮かぶ。
《解除コード:Petite et accipietis,pulsate et aperietur vobis》
”え、今、何を言ったの?”
黒い表面には気まずそうな汗の模様が浮かんでいる。
《ラテン語です……》
”日本語の呪文はないの?”
《私はお母様のマスコットだったように本来は欧州向けでして、申し訳ありません》
汗の模様が更に増えた。
《だ、大丈夫ですよ。
 ほ、ほら、私の後についてきて下さい。
 レッツ・リピート!!》
そう言って、Petite et〜、と流暢すぎる発音でアルが呪文を繰り返す。
「ペティ、てぇ、え……、えっとその後に何?」
《……》
”……”
なんだか、小学校で居残り学習をさせられているような気まずさが漂う。
「わ、私は無理だけど、お兄ちゃんはちゃんと読めるんだよ!?」
気まずさに耐えかねて、私は良く分からない言い訳を口走ってしまった。
ぬいぐるみ達も呪文が唱えられないのは想定外だったようで、先に手を出して良いものなのかと悩んでいる。
空気が重い。
386魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:17:57 ID:5h3AEk/k
「……」
私は一番近くでまごついている猫のぬいぐるみにつかつかと歩み寄った。
足を開いてしっかりと腰を落とす。
左腕を弓を引くように真っ直ぐ後ろへ引く。
そして、そのまま一気に首を手刀で打ち抜いた。
ぶち、という鈍い音とともにその首が千切れ、傷口からどす黒い何かをばら撒きながら床に落ち、ごろごろと転がる。
うん、大丈夫。
《あの、シルフさん、ふつう彼らって攻撃魔法じゃないと打ち抜けないのですが……》
”出来るのだから問題ないでしょ?”
《問題無いといえば無いのですが、魔法少女としてのイメージの問題はあるわけでして……》
”大丈夫、お兄ちゃんはそういう事気にしないからっ!!”
私の隣に近づいた熊のぬいぐるみの首をハイキックで飛ばす、首無しの体がぐにゃりと崩れる。
のこり8体の影も首を締め折ったり、胴体を蹴りで貫通したりして順次片づけた。
「後は、あなたで終わりね」
残りの一体を睨み付ける。
けれど、その最後のもふもふとした犬のぬいぐるみは何か様子がおかしかった。
膝をついて、まるで嘔吐をするように体を震わせる。
そして、背中が裂けて、どす黒い何かが這い出す。

《コード99999 甲種支援・要請》
機械らしい、全く抑揚のない声をアルが発した。

その先には刀を持った少女の形をした影が立っていた。
387魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:18:48 ID:5h3AEk/k
**************************************

上下左右、死角となりうるあらゆる方向から刀が飛び交う。
まるで同時に何本もの刀で切りつけられているかのように感じるほど速い。
それを直観と反射神経で避け、弾く、考えてから動く余裕なんて無い。
《シルフさん、危険すぎます!!
 本隊の出撃を要請しました、撤退してください!!》
”その本隊はいつ来るの?”
《10分後です》
”10分もこんな奴を放置したら、
 そうしたら、ここにいるお兄ちゃんが危ない”
《けれど、このままでは!!》
”大丈夫!!”
何とか少女の影の腹を蹴飛ばして間合いを取り直す。
周りを見る余裕ができた。
お兄ちゃんは? 駄目、見つからない。
《お兄さんは先に避難したのかもしれませんよ?》
”煩い、黙って!!
 お兄ちゃんは絶対にそんな事しない!!”
私は必死に探すのにお兄ちゃんが見つからない。
そのかわり、とても嫌なものはたくさん視界に入った。
私を見る周りの目。
珍しい見世物を見るような好奇の目。
なぜ、早く倒さないのかという蔑みと不満の籠った目。
それから、好色な目。
どれも昔、お兄ちゃんと出会う前から慣れ親しんでいた、吐き気のするような視線。
だから、みんな嫌いだ。
私はなんでこんな事をしているんだろう?
今日はお兄ちゃんとデートをする日だったのに、あんなにずっと楽しみにしていたのに。
早く、お兄ちゃんを見つけてもうこんな所帰りたい。
388魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:20:58 ID:5h3AEk/k
「もう良いでしょ?
 そろそろ決めよう、私も帰りたいから」
影はそれに応えるように刀を納め居合の形をとる。
そして、私と影は一気に間合いを詰める。
私は焦りすぎていた。
間合いに僅かに入らない位置で勝負を賭けてしまった。
腕が伸びきってしまったまま、目の前に刀が迫る。
無理やり体勢を崩して避ける。
熱い痛みが走る、傷は無い、代わりに切られた右足に黒い線が浮かぶ。
そのままバランスを失って倒れてしまった。
足が動かない。
負けた、と私には分かった。
一方勝利を確信した影はゆっくりと刀を大上段に振りかぶる。
嫌だ、こんな所で死にたくなんてない。
死ぬのが怖かった。
死んだら、お兄ちゃんと会えなくなるから。
どうして、私はお兄ちゃんとやっとデートができるんだよ。
なのに、なんで私は死ななきゃいけないの?
まだ、お兄ちゃんとしたい事がいっぱいあるのに……。
389魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:22:05 ID:5h3AEk/k
影が刀を振り下ろす。
刀が振り下ろされ左腕がぽろりと落ちた、影の左腕が。
「すごいな、この刀、本当に化け物でも切れるのか。
 いつも雌豚なら神でも切れるとは沙紀が自慢してたけど」
「お、お兄ちゃん、どうして!?」
「ん、いや、俺は君のお兄ちゃんではないよ?
 御空寺 陽、普通の学生だ。
 ただ、ちょっと怖〜い幼馴染みから親友を守る為に、剣の腕に覚えがあるがな」
お兄ちゃんが庇う様にして、私に背を向ける。
赤い、禍々しい刀を両手で持ち、刃先を影に向ける。
片腕の影は刀を担ぐようにして、構える。
「君はよく頑張ったんだ。
 だから胸を張って、逃げてくれ」
そう言い残して、お兄ちゃんが影と切り合う。
そして、お兄ちゃんが袈裟に切られて、地面に倒れた。
390魔法少女すーぱーシルフ(上):2010/10/16(土) 21:24:54 ID:5h3AEk/k
以上です。
ありがとうございました。
一応、シルフの初デートの時に馬鹿なパラレル展開の分岐があったらというつもりです。
ただ、自分でもこれを書いてどうするつもりだったのか良く分かりません、申し訳ありません。
次回もよろしくお願いいたします。
391名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 21:56:22 ID:bYSLXPdc
悪い人をやっつけるのは警察だと思います。
自衛官の場合は、大切な人を守りたいなら……が適切かと。

とはいえGJです。
本編の執筆も頑張って下さい。
392名無しさん@ピンキー:2010/10/16(土) 23:32:37 ID:IAyZqOPt
393名無しさん@ピンキー:2010/10/17(日) 18:53:27 ID:4JqgRL8e
394名無しさん@ピンキー:2010/10/18(月) 12:36:47 ID:yp3v6RP1
395名無しさん@ピンキー:2010/10/18(月) 20:58:00 ID:3S6Xtq74
5体バラバラにされても弟の元に戻ってくる不死者な姉っていたっけ?
396名無しさん@ピンキー:2010/10/18(月) 21:45:09 ID:FQCfapun
ストームブリンガー擬姉(妹)化と申したか
397名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 08:27:20 ID:rNyreTJa
キモウト派だったのに「カンキン●ュウ」ていうキモ姉同人を読んだらすっかりキモ姉の魅力に・・・
やっぱキモ姉といえばおっぱい枕ですよね!
398名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 12:32:12 ID:RWV4Holb
>>397
キモいけど何かほのぼのしてるんだよなあれw
犯人達もいい味出してるし
399名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 22:15:17 ID:6riWNUmW
400名無しさん@ピンキー:2010/10/19(火) 23:21:51 ID:XbJIl+pZ
401名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 00:02:54 ID:hlgV7MA/
あれ? wikiって作品ごとの閲覧者数とか、わからんのか
402名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 00:13:37 ID:fgSrBt6x
そういうのあればいいのにな
人気のないやつにスレを荒れさせずわからせることができるし、人気の作品にはやる気を出してもらえる
403名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 00:14:41 ID:ihQWKf3c
>>402みたいなのがいるから閲覧数とか無くて正解だよね
404名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 00:23:51 ID:Td1dPmsc
キモウト&キモ姉がいるのにプロポーズとか、死亡フラグ過ぎでワロタ

兄or弟「俺、この戦争が終わったらプロポーズするんだ」
姉&妹「……」
405名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 05:27:46 ID:EFyhAbfz
妹→兄→姉→弟→妹→……

というドロドロなキモ家族
406名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 12:57:44 ID:KUZJ59AL
tp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/0306/299598.htm

社会人 兄

学生  キモウト

恋人未満 泥棒猫


で、美味しいネタが出来上がるよね?
407名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 18:16:46 ID:my0Lw1zi
>>406
なんていうか泥棒猫のお題に妹が自演で答えまくってるように見えるわ
「あなたはさっさと別れるべき」って回答が複数あるのも納得できる
408名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 18:43:57 ID:cmpjF6Or
409名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 19:01:31 ID:rtot+sWb
お兄ちゃんコントロールの作者、このスレ見てんじゃねーか?と読む度に思ってしまう
410魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:02:54 ID:BRhPIVxv
今晩は。
表題について投下いたします。
411魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:04:09 ID:BRhPIVxv
倒れたお兄ちゃんは、体勢を直して片膝を付いた。
切られた部分のシャツが裂かれ、太く黒い線が肩から腰まで延びる。
「ったく、格好付けるもんじゃないな、死ぬほど痛い」
私の方へ首だけ向けながら、苦々しげにお兄ちゃんが呟く。
「逃げて、お兄ちゃん!!
 どうして、なんでこんな事してるの!?」
《シルフさん、落ち着いてください。
 お兄さんにはシルフさんだって分かりません。
 それよりも我々の本隊が来ます、今のうちに逃げて下さい!!》
”うるさい!!”
「本当は俺の大事な子を探してたんだ。
 だけど、君を見ていたらその子にそっくりでさ」
お兄ちゃんはまた影を見据える、だからお兄ちゃんの顔はもう見えない。
「見た目の話じゃない。
 そうやって、無理をしてでも誰かの為に戦おうとするところとか。
 なのに、皆に理解されないでいるところとか。
 寂しそうなところ、健気なところ」
しっかりと刃先を地面に立てる。
「あと、自分を大切にしてくれないところとかが、悲しくって。
 それで、君が危ないのを見たら体が自然に動いちまったよ」
刀を杖の様にして立ち上がる。
「君は、シルフと同じで幸せにならなきゃ駄目だ。
 だから、こんな所で死ぬ必要なんて無い、逃げろ」
「お兄ちゃん、もう止めて!!」
影が刀の切先をすうっとお兄ちゃんへ向ける。
「さてと、じゃあもう一回行ってみようかぁ〜?」
お兄ちゃんも刀を影に向けて構えなおす。
けれど、体がぐらりと揺れてその場に崩れ落ちる。
412魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:04:37 ID:BRhPIVxv
「毒……か…?……まず…体……が…」
「嘘、お兄ちゃん!?」
倒れたお兄ちゃんを必死で抱き留める、体が冷たい。
「君は……逃げ…ろ」
「嫌だ、お兄ちゃんを置いてなんて、絶対に嫌!!」
けれど、お兄ちゃんの目は虚ろになり、その間にも体はどんどん冷たくなって行く。
「お願いだから、お兄ちゃんと最後まで居させて!!」
「逃…げ……」
お兄ちゃんの声が途切れた。
静かに影が刀を振り上げる。
どうやら、私たちの会話が終わるのを待っていてくれたようだ。
「……結構、優しいのね」
当然、影は答えない。
私はお兄ちゃんの体を強く抱き締める。
「いいわ、早くして。
 私はもう戦う気なんてないもの」
「何を…言って…る……良いから……逃げ……て」
お兄ちゃんが最後の力を振り絞って必死に私へ語りかける。
でも、嫌だ。
《シルフさん!!
 せめて、あなただけでも逃げてください。
 お兄さんの思いを無駄にする気ですか!?》
「ば……か…、逃げ…」
影が振り上げた刀を正中に戻し、突きの体制になる。
二人の胸を同時に貫く、そういう影なりの気遣いなんだと思う。
もう一度、力を入れてお兄ちゃんを抱き締める。
間違っても離したりしないように。
うん、大丈夫。
私かお兄ちゃんのどちらかが犠牲になれば、片方は逃げられるかも知れない。
でも、私はお兄ちゃんの居ない世界で生きたくないし、お兄ちゃんの居ない世界にも行きたくない。
大丈夫、怖くなんてない。
大丈夫、お兄ちゃんが一緒だから。

……これで最後なんだからちゃんと言わないと。

413魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:05:09 ID:BRhPIVxv
「お兄ちゃん、ずっと言えなかったけど、わた《あの〜、すいません、お兄さん》
私のずっと言えなかった言葉は場違いに暢気な通信で台無しにされた。
《忘れてましたけど、お兄さんはラテン語少し読めるんでしたよね。
 お忙しいところ申し訳ありませんが、ちょっとこれを読んでいただけませんか?
 あ、頭の中で読んでいただければ結構ですよ、読み取りますから》
そう言いながら、虚ろなお兄ちゃんの目の前に文字を投影する。
”いや、あのさ、俺達これから死ぬんだけど?
 ていうか、今、その子が何か大切な事を言おうとしてなかったっけ!?”
《まま、良いから、良いから、冥途の土産だとでも思ってください》
もし、右足が動いたら、
もし、お兄ちゃんを抱き締めていなかったら、
この空気の読めないポンコツを壊れるまで踏み躙ってやりたかった。
”まあ、そこまで言うなら……。
 Petite et accipietis,pulsate et aperietur vobis
 (求めよ、さらば与えられん、叩け、さらば扉は開かれる)”
《はい、ありがとうございました、ゆっくり休んでくださいねー》
”お、おう、じゃ、気を取り直してもう一度逝くぞ。
 よしっ、……ごめんな…シルフ……雪風…もう……無理…だ”
そんな気の抜けた会話の後、お兄ちゃんの体からゆっくりと力の抜けた。
きっと私の腕の中でお兄ちゃんは最期を迎えた。
414魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:10:08 ID:BRhPIVxv
《コード認証、すーぱーシルフ、FCSオールグリーン》
アルの黒く艶の無いボディから機械音声が響く。
その途端、私の体は強い光に包まれた。
体の中に力が流れ込む。
その膨大な力が背中から発散され、光が巨大な翼の形を作り出す。
《認証成功、これが本当の魔法少女すーぱーシルフの性能です。
 最大出力140,000kg、最高速度マッハ3の超高機動型魔法少女です。
 超高速追尾弾頭・グリーン、電磁連装砲・グリーン、etc……、オール・グリーン
 さー、行きますよー、ここからが高機動型の……》
アルが言い切るよりも早く、私は翼の莫大な推力で飛翔し影を鷲掴みにして、そのまま壁に打ち付けた。
《あの、シルフさん、高機動格闘戦用兵器が……》
誰かがが何かを言っているけど、聞く必要なんて無い。
「……あなたの事はそんなに嫌いじゃないと思う。
 お兄ちゃんと一緒に終わらせようとしてくれて。
 それに、私とお兄ちゃんの話を待っていてくれた事も……」
ごめんね、すぐ行くから。
でも、もうちょっとだけ、待ってて。
《シルフさん?》
壁に埋まった影に拳を突き立てる。
ゴン、と鈍い音がする、まるで金属の様にそれは堅かった。
手に血が滲む、まるで腕が根元から砕けたみたいに痛い。
けれど、今の私にはその痛みがとても嬉しかった。
お兄ちゃんが受けた痛みを少しでも感じたかったから。
「……だから、先に言っておくわ、さようならって。
 私…もう……考える事……できない…から」
415魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:10:55 ID:BRhPIVxv
*****************************************

初めは金属を叩くような鈍い音だった。
けれど、何回か殴っている内にぐちゅりという音がした。
それからは殴ると、ぐちゃ、ぐちゃという水気のある音がするようになった
すぐに、外皮に相当するだろう部分が破けた。
そして、破けた影の腹の中から、丸い何かや、細長い何かをずる、ずる、と何度も引きずり出す。
もう影はとっくに機能を停止しており、生き物であれば絶命と言える状態である。
それでも、魔法少女は淡々と影の残骸をただひたすら解体する。
周囲には本国から来た援軍が展開していたが、彼女を遮ろうとは試みもしない。
無言でそれを眺めるだけだった。


「あ、あのさ、魔法少女さん。
 その、いくら憎いからって、あの。
 もうそろそろ、そいつを許してやってくれないかな?」


やや引き気味なその言葉で彼女は正気に戻り、ぼろ布の様になった影の残骸を捨てる。
そして、声を出すよりも、涙を流すよりも早く、声の主に抱きついてた。
「お兄ちゃん!! お兄ちゃん!!」
少女が青年を抱き締める、嘘じゃない事を確かめるように。
「ちょ…、息が……でき…ん」
ただ、ちょっと、かなり力が強すぎる。
《シルフさん、落ち着いてください!!
 せっかくさっきの魔法発動で回復したのにお兄さん死んじゃいますよ!?》
「ご、ごめんなさい!!」
魔法少女が慌てて手を離す。
ごほごほ、と青年が首を抑えて咳き込む。
《それから申し訳ありませんが、撤退です》
”え、でももう少し……”
《ですが、お兄さんと接触のし過ぎです。
 このままではお兄さんのジャミングが解けて、
 魔法少女の正体がシルフさんだと……》
「アル、今すぐ帰ろう!!」
「あ、待ってくれ、魔法少女さん!!」
その言葉に魔法少女が振り向く。
「君の名前、教えてくれ」
「私は……、魔法少女すーぱーシルフ。
 さ、さようなら!!」
咄嗟にそう答えて、少女は光の翼で空へ飛翔した。
「すーぱー、シルフ」
一人の、青年の呟きだけが広場には残された。
416魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:12:16 ID:BRhPIVxv
「おい、陽、無事だったか!?」
「よう、圭。
 沙紀は大丈夫か?」
「うーん、大丈夫」
疲れた様子の少女が答える。
「しかし、お前らもデートとはね。
 まさかここで会うとは思わなかったよ。
 あ、そうだ、さっきは勝手に桜花を借りて悪かったな」
そう言って少女に赤く禍々しい刀を渡す。
「しかし、貧血か?
 いつもあれだけ鍛えてるのに、珍しいな」
「うーん、何だか、体からどろっとしたものが出たような気がして、立眩みしちゃった。
 でも、今は妙にすっきりしているんだよねー。
 確か、けー君が売店の雌豚と仲良く手を握っているのを見てたら、急に……」
晴れ晴れとしていた沙紀の目がまた、急にどろりとどす黒く濁った。
「……ところで、けーくん、さっきは売店の雌豚と何をしていたのかなー?」
ソフトクリームを受け取った以外に何があるんだ、と二人の青年は思った。
”Nマチ、セーフハウス・ハリー、2300、ゴウリュウ”
陽と呼ばれた青年が視線を送る。
”コピー・ザット、バディ”
そして、けー君と呼ばれた青年は直後、脱兎の如く駆け出した。
「うふふふ、かくれんぼだネー。
 イイヨー、100秒待ッテカラオ仕置キシテアゲルカラネー」
417魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:13:05 ID:BRhPIVxv
***************************************

夕ご飯が終わった後、いつもと同じように私たちはお茶を飲んでいた。
珍しく、テレビが点けられている。
画面には荒れる魔法少女、動物園で大暴走とテロップが出ている。
そして、ぼやけた人型がぬいぐるみの首を蹴り千切る姿が写っていた。
《プロパガンダ戦です》
忌々しそうに、アルが言う。
《奴らが憑代に可愛らしいぬいぐるみを使うのはこういう為です。
 こうやって、世論を反魔法少女に持っていって、排斥運動を行うのが奴らの手口です。
 そのせいで魔法少女側は妙にファンシーな攻撃や光線の使用等、
映像の残虐性を薄める為の対抗策を取る事を強いられます。
 お蔭で強力な魔法兵器の殆どは、使用される事もなく備品倉庫にお蔵入りです。
 他にも、魔法少女が輪姦される、触手に襲われる等の事実無根のコンテンツをねつ造して、
 魔法少女の志願者数にダメージを与えるような事もしばしばです》
私は今日何度目か分からない頭痛に悩まされた。
そんな嫌がらせの様なプロパガンダ戦の何処に魔法を使う必要があるのだろう?
もう飽きるまで勝手にやっていて欲しい、私と関係のない所で。
「ふうん、じゃあ兄さんはこんなの嘘で本当は妖精さんみたいな子だって言うの?」
姉さんが不機嫌そうに指差す。
今日のお茶の時間はもう一つ、いつもと違う事がある。
お兄ちゃんが今日あった出来事を話し続けている事だ。
主にすーぱーシルフについて。
「さっきから言ってるだろ。
 妖精なんてそんな程度の物じゃないんだ。
 神々しく美しくて、純真無垢で、あれは間違いなく天使だ。
 まるで神様の作った芸術品だよ」
その喋りようは、いつも冷静なお兄ちゃんには有り得ないぐらいに饒舌。
これって、どういう事なの?
《すーぱーシルフはお兄さんの目からは全くの他人として映るんですよ。
 ですから、あれは客観的に見たシルフさんへのお兄さんの感想ですね》
アルが私の頭の中に割り込んでくる。
”客観的?”
《ええ、家族としての関係を抜いてシルフさんを見た場合です。
 つまり、お兄さんにとってのシルフさんは、この世の物とは思えない位美しくて、
 神々しくて、純真無垢で健気で、お兄さんにとっての天使そのもの。
 いえ、神様の芸術品、シルフさんマジ天使、とさっきから何回もうんざりするほど言っている訳です。
 恐らく、吊り橋効果もあるとは思いますが》
418魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:14:16 ID:BRhPIVxv
「ん? どうしたんだシルフ?
 顔が真っ赤だぞ、風邪か?」
「何、でも、ないの……」
「ふ〜ん、そんなに可愛かったんだその子?」
姉さんが笑いながら、兄さんに尋ねる。
ただ、その笑顔を見ると、私の本能的な部分が震えた。
そんな姉さんの様子も気にならない位にお兄ちゃんは夢中で話していた。
「違うんだ、可愛いなんてレベルじゃない。
 あれを表す言葉なんてそもそも無謀、いや愚かだ、な、シルフ?」
「わ、私は見れなかったから、分からないよ」
「そうか、それは残念だったな。
 あの子を見れないなんて人生の損失だったよ。
 本当に天使が居るっていうのを……」
そう言って、お兄ちゃんがまたすーぱーシルフの事を褒め続ける。
その言葉を聞く度に、私の体が熱くなり続ける。
ついでに、姉さんの笑顔がその度に黒くなっていく。
「私、お風呂に入ってくるね!!!」
とうとう私は耐えられなくなって、居間から逃げ出した。
419魔法少女すーぱーシルフ(中):2010/10/20(水) 21:15:16 ID:BRhPIVxv
以上です、ありがとうございました。
一つ訂正があります。
「最大出力 → 最大推力」
失礼しました。
420名無しさん@ピンキー:2010/10/20(水) 23:05:42 ID:cmpjF6Or
421名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 07:37:42 ID:5TJk0J5h
ソーナイスだね

GJです
422名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 12:23:37 ID:i4FrkAfq
本編も楽しみにしてます
423名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 20:07:05 ID:f7FAzKYR
424『きっと、壊れてる』第9話:2010/10/21(木) 21:40:45 ID:v8AocJEJ
こんばんは。
『きっと、壊れてる』第9話、投下します。
注意:申し訳ありませんが今回もエロなしです
425『きっと、壊れてる』第9話(1/9):2010/10/21(木) 21:41:12 ID:v8AocJEJ
「あ〜しらきたくま君だ〜!!」

東京、夜の繁華街。
巧は特に用事もないクセに、ふらふらと出歩いていた自分を精一杯呪った。
よりにもよって、今現在一番遭遇したくない人物にバッタリ会ってしまったからだ。

「名前、違います」
巧は玉置美佐にそう言うと、そのまま通り過ぎてしまえばよかった、と思った。
何がそんなにおもしろいのか、美佐は満面の笑顔を見せながら巧に近付いてくる。
蜘蛛の糸に絡まった蝶の気持ちが今なら理解できる。

「そうだっけ? まぁなんでもいいじゃない。それよりも今ヒマ?」
「いえ、忙しいです」
無表情でそう答えると、巧は足早にその場所から去ろうとした。
雨が上がったばかりで、そこら中に汚い水たまりができていたが、
履いてきた新品のスニーカーが汚れようと、知った事ではない。

「よかったぁ〜ヒマなのね? ついてきなさい。お姉さんがお酒奢ってあげるから」

美佐は巧の歩こうとした方角に先回りすると、どこか小生意気な顔をして道を塞いだ。
今まで人を殴った事などないが、この女は殴っても許されるのではないか。
巧は道行く人に一人ずつアンケートを取りたい気分になった。

「いえ、今ちょっと待ち合わせしてるんで」
冗談ではない。
ただでさえ関わりたくない相手なのに、近い内に、また得体の知れない物を届ける予定がある巧は、
できるだけ接点など持ちたくなかった。

「じゃあ、その待ち合わせ相手も連れてきなさい。どうせ男の子でしょ? こんな美人と飲めるんだから万々歳じゃない」
「……すいません、嘘です」
「うん、知ってる。大丈夫だって〜。すぐ解放してあげるから! さっ行こう行こう」
これ以上抵抗しても無駄だと判断した巧は、「すぐに開放する」という美佐の言葉を信じて、ついて行く事にした。
何か悪い霊でも取り憑いているのか、首を傾げながら巧は歩いた。

5分程歩くと、美佐と巧は料理全品均一料金が売りのチェーン居酒屋に入った。

「あ〜気持ち良い〜」
美佐は店員から受け取ったおしぼりで首の周りを拭くと、「とりあえず生2つ」と注文した。

「……おしぼりで手以外を拭く女性、初めて見ました。」
「は〜? 別にいいじゃん、汗でベタついてるし。ギャップ萌えってやつ? あのカワユイ美佐たんがこんなオヤジ臭い事を! みたいな」
「とりあえず、あなたがお酒を飲みたいだけって事は理解しました」
「そーゆー事。で〜? 君は? 一人でフラフラと何してたわけ? あっ好きな物頼んでいいよ?」
「腹減ってないんで、けっこうです。……さっきは散歩してただけです」
箸でお通しの芋の煮付けを一つ掴み、口の中に放り込んだ。
素朴な味という表現が一番適切だろうか、下手に弄られていない芋の甘みが巧の好みだった。

店員の声が店内に響き渡る回数が増えてきた。
居酒屋の中は、美佐と巧が席に着いた直後から急に混み合い始め、入場待ちをしている人もそれなりに出始めたようだ。

入る前にもう少しだけ粘れば、帰る言い訳ができたのに。
巧は目の前にいる美佐を一瞥すると、深いため息を吐き、二つ目の芋を取った。

「一人で散歩? 私も嫌いじゃないけど、客観的に見ると少し寂しいね。君は彼女とかいないの?」

ありきたりな質問。
恋人がいるなら、あんなお使いをするわけがないだろう、と巧は言いたくなった。
426『きっと、壊れてる』第9話(2/9):2010/10/21(木) 21:41:45 ID:v8AocJEJ
「いないですよ」
「なんで〜? おっ!! もうビール来た!! ハイ乾杯、お疲れ〜!」
ジョッキを店員から受け取った美佐は、それを巧の前に置かれたもう一つのジョッキに強く押し当てた。

「そんなに強く当てるとこぼれますよ。……なんで? と言われても。モテないからだと思いますけど」
「ノンノンノン」
「ん? 何ですか?」
美佐はビールで喉を潤しながら、左手の人差し指を左右に振った。

「ぷはぁ〜! 私はね、『なんでモテないのか』と聞いているのさ。つまり自己分析は出来ているのかって事」
「オレは……あまり社交的ではないですが、顔はブサイクだとは思ってないし……正直よくわかりません」
美佐に言われ、自分に恋人がいない理由を考えて見ると、特にこれといった理由はないように思えた。
自分のような人間は他にはいるはずだ、オレだけが特別ではない。
巧は頭の中で整理すると、美佐にそう伝えた。

「ほほ〜」
ニヤリと口元を緩めると、美佐は通りがかった店員にいくつか料理を注文した。
「居酒屋の刺身ってボッタクリよね〜、こんなんで600円とか取るんだもん」
左手の親指と人差し指で輪っかを作り、刺身の量を表現している美佐を見て、巧はある事に気付いた。

おそらく、この人のリアクションがいちいち大きいのはワザと……いや、無意識だろうけど、天然の物じゃない。
オレにも経験があるから理解できる。
自分の話や仕草で、相手の性格や接し方、心理状態を図っているんだ。

なぜか、人間が怖いから。
怖くて恐ろしくて。
でも、一人で生きて行くのは寂しいから、境界線を乗り越えないように調査する。
相手の、キャパシティから自分が溢れないように。

自分と玉置美佐は違う人種。
今まで、そう弁別していた巧はなぜだか、少しだけ微笑ましい気持ちになった。

「そんでね、さっきの話だけど、確かに君はモテなさそうなオーラが出てる。シュワシュワ〜って」
湯気を表現しているつもりなのか、美佐は人を小馬鹿にしたような顔で、ジェスチャーをした。

「そんなにモテないわけでもないですよ。ただ『付き合いたい』と思える人と出会っていないだけです」
美佐が自分と同人種、巧はそう考えるとなぜか今までより強気に、ハッキリと喋る事ができた。
おそらく、自分と目の前にいる人間が同価値だと思えたからだった。
よくニュースで見る、小さい子供や老人ばかりを狙った犯罪は、おそらく自分より弱いと確信しているからこそ、
ああいった凶行に走る事ができるのだろう、と巧は思った。
はっきり言ってテレビ越しに聞いていても、虫唾が走る。
ただ、そういった犯罪者達と自分は、さほど変わりない精神を持っているのかもしれなかった。

「ほう? どうでもいい女は寄ってくるけど、目当ての人には振り向いてもらえない感じ?」
「そんなところです」
「あ〜あるねぇ! でもね、それって世の中が正常に回っているって事なんだよ?
男と女なんて、結局同レベルの人間同士がくっつくんだから」

「あなたは、オレにケンカ売ってるんですか?」
「うん! この前のお返し」
「そんなに明るく言われても」
「でもね、けっこうスッキリしたから。もういいや。これで水に流してあげる」

美佐は心底スッキリした顔を見せた。
427『きっと、壊れてる』第9話(3/9):2010/10/21(木) 21:42:17 ID:v8AocJEJ
「そうですか。じゃあ用も済んだ事ですし、オレはこれで」
美佐を覆う霧が、少しだけ晴れたからと言って、敵と慣れ合うほど巧はお人好しではなかった。
黒髪の美女から預かっている、封筒。
十中八九、あの中には美佐の気分を揺さぶる何かが入っているはずだった。
自分が美佐に、また悪意を届ける事になる事を思うと、巧は少しだけ心が痛んだ。

「ちょっとちょっと! まだこれからが本番なのに!」
席を立ち上がった巧の服を、テーブルを挟んだ向かい側から掴んだ美佐は、焦った様な顔をしていた。

「ちょっと! 引っ張らないでくださいよ!! 服が伸びる! わっ、わかりました!! 帰りませんから離してください!!」
どうやら、美佐は巧に報復をする事が目的で誘ってわけではなさそうだ。
しかし、赤の他人である自分に他に何の用があるのか、巧は不思議だった。

「なんです? 仕事の愚痴とか言われてもオレにはわかりませんよ?」

「そんなもん、同僚にすればいいだけの話じゃん。今日はね、恋愛の愚痴」

やはりこの女は異常だ。
恋愛の邪魔をしている男に恋愛の愚痴をこぼしてどうする。

「……やっぱり帰ります」
「なんでよっ! せっかくだから聞きなさいよ! ビール飲んだでしょ!」
「あっ! ちょ、本当に! 伸びる! 服が伸びる!! わかりましたよ!!」
「……ったく、最近の若い子は礼儀を知らないわね」

強引に巧を席に戻すと、美佐はいつの間にか取り出していた煙草に火を付け、気だるそうに煙を吐いた。
お前だけには言われたくない、と言いたかったが、話が進まないので巧は流す事にした。

「……煙草、吸うんですね。医療系の人ってみんな吸わないのかと思ってました」

「たまにね。嫌な事あった時だけ。……あぁ、別に君は関係ないから気にしないでも大丈夫」
「そうですか。で、その恋の愚痴とやらは友達にでも話した方がいいんじゃないですか?」

「それがさぁ! こういう時、女は面倒でね〜。女の友達って、急な誘いだと断る奴多いのよ。
自分がヒマ人だと思われるのが嫌みたい。くだらないプライドよね〜」
美佐はヤレヤレといった表情で、右手に持った煙草を灰皿に置き、枝豆の実を取り出して口の中に入れた。

「あなたの人望がないだけじゃないですか?」
「おっ!? 言う様になったね〜青年。……そうかもね、私少し変わってるらしいし」
「……すいません」

美佐をからかう目的で軽口を叩いたつもりだったが、予想しなかった寂しそうな微笑みに、巧は戸惑いを隠せなかった。
まだ2回しか会っていない人物だが、こういう負の感情を露わにする事はないと思っていた。
「いいよ……でね! 仕方ないから一人で立ち飲み屋でも行くかな〜っと思ってたら、丁度いい生贄を見つけたってわけさぁ!」

「生贄……ですか、まぁいいですよ。どうせヒマですし、聞きます」
人の心は不思議な物だ、と巧は思った。
ついさっきまで、帰りたくて仕方なかったのにも拘わらず、今は玉置美佐の話を聞いてみてもいいか、という気分になっていた。
玉置美佐が少しだけ見せた弱さに共感したからだろうか。よくわからなかった。
ただ、恋の話なら『村上浩介』についての情報も得られる事が出来るはず。
『村上浩介』と黒髪の美女との関係、彼女が自分を使って嫌がらせをしている理由。
真実に近付ける絶好のチャンスだった。

「おっ!! 良い子だね〜!? デザート食べる? 私は今一つ食べて、最後の方にもう一回食べるけど」
「いえ、それよりも腹が減っていて。肉系の物頼んでいいですか?」
巧がそう言うと、美佐は少しだけ驚いた表情をして、母親のような笑顔で頷いた。
428『きっと、壊れてる』第9話(4/9):2010/10/21(木) 21:42:51 ID:v8AocJEJ
「おい少年!! 聞いてるの!! クソッ! 寝てんじゃねーよ!!」
「少年って歳でもないし……寝てませんよぉ……あんまり頭揺らさないで……」

2時間後、酒に弱い巧はテーブルに頭を突っ伏し、うな垂れていた。
自分を揺すり、お構いなしに喋り続ける美佐に、情けない声で返事をする事が仕事になっていた。

「普通さぁ!! 復縁してまもない彼女を置いて、女と旅行とか行く!? 私には日程決めた後の事後報告で!!」
思考が半分停止しているので、情報はツギハギだが、要するに『村上浩介』が今現在、女性と旅行に行っているらしい。

「はははっそりゃアレっすね、浮気性ってやつっすね」
5分前後の休憩で、少しだけ気分が良くなった巧は顔を上げ、美佐を顔を見た。
酒に強いのか、美佐は顔つきもしっかりしており、あまり酔ってもいなさそうだ。

「はぁん!? 浮気とは限らないじゃない! 私の男、馬鹿にしてんの!?」
同調してほしいのかと思い賛同した巧だったが、もう何も言わずに聞き役だけに徹しようと思った。

「でも、女と旅行なら十中八九浮気なのでは?」
「……事情が少し複雑でね。そうね一番近い表現だと……もう関係は切れている『元彼女』と旅行に行ってる感じ」

「全然わかんないですよ。今の彼女置いて、なんでモトカノと旅行に行くんですか」
黒髪の美女は、『村上浩介』の元彼女という事だろうか。
もしそうならば、玉置美佐に嫌がらせをしている事について、納得まではいかないが理解はできる。
だが、それだと『村上浩介』の行動がよくわからない。
黒髪の美女と旅行に行きたいならば、行けば良い。ただ、なぜ現彼女である玉置美佐に、馬鹿正直に報告する必要があるのか。

考えても、答えは出なかった。
ただ、巧が一つだけ確信した事は、村上浩介は包容力のある男性、という事だった。
巧が突っ伏している間、美佐は延々と一人で喋り続けた。
お酒が入っているからか、それも一般人と少しだけずれた感覚の話。
『個性的』よりも、『変人』という表現の方が適切なその演説は、巧が途中疲れて反応を示さなかった間も続けられていた。

オレにはこんな女無理だ……。
巧は心から『村上浩介』に敬意を表した。

「うるさいわねぇ、それで納得しなさいな。とにかく!! 帰ってきたらたっぷりと説教してやる。慰謝料付きでね!!」
「それでフラれたりしたら、おもしろいですね、ハハハッ」
「何がおもしれーんだよ? おらぁ!!!」
「ちょっと! 頭振らないで! 本当にマズい! アーーーー!! 本当に……ウプッ」

トイレに駆け込む巧を見た美佐は、少しだけ落ち着きを取り戻し、
先程注文した抹茶パフェを口に入れ、これからの事を考えていた。

ていうか……まったく興味はないけど、異性と二人で飲みに来るのはマズかったかな。
ボカしてあるとはいえ、浩介達の事喋っちゃたし……。
後で、もう一回頭振っておくか。

でも浩介も浩介だ。
妹でも茜ちゃんはモトカノみたいなもんでしょうが。
それに加えて、楓とかいう小娘……じゃなかった、新しい妹……って言い方もおかしいか。
とりあえず、得体が知れないからUMAでいいや。

もし、茜ちゃんが浩介を取り戻そうとして、UMAを自在に使える立場にあったとしたら。
あぁ、考えてみれば……今トイレでマーライオンになってる子の雇い主もいるのか。
さらに、可能性は極小だけど『4年前の怪文書の犯人』すら別人で、
私と浩介が復縁した事を知っていたとしたら……最悪の場合、4対1。
さすがに、うっとおしいなぁ。
これは先手を打っておいたほうがいいかも。
こんな所で油売ってる場合じゃなかったわ〜。

美佐は自分に気合を入れる様に力強く頷くと、店員の呼び出しボタンを押し、会計を済ました。
429『きっと、壊れてる』第9話(5/9):2010/10/21(木) 21:43:25 ID:v8AocJEJ
コンッコンッ

「う……スイマセン、もうちょっと待って下さい」
男子トイレの便器にしがみつき、胃の中から逆流してくる物を必死に吐き出そうとしていた巧は、
擦れるような声を出した。

「マーライオン君、私。大丈夫?」
「!? ちょっとここ男子トイ……げほぉ!」
「お〜盛大だねぇ、きっと綺麗な虹が掛かるよ。悪いけど、急用が出来たから私帰るね。話、聞いてくれてありがとう」
「別に……不本意ですけどオレも良い気分転換に……ゴホッ! ゴホッ!」
「ハハハッ、会計はしておいたから、気を付けて帰るのよ? じゃね〜」

軽やかな口調で別れを告げ、美佐は出て行った。
バタンとトイレの入口ドアが閉まる音がして、遠くから聞こえる喧騒と巧の息遣いしか聞こえない状況に戻った。
こんな状態でどうやって、気を付けて帰るんだよ、と巧は思ったが、なぜか怒りの感情は湧き上がってこなかった。

玉置美佐は掴み所がない。
ただ、黒髪の美女とは違い、対等な対場で巧と接してくれているような気がした。
自分と同じ位置に立ち、同じ目線でぶつかってきてくれる、それが例えノーガードの毒舌だったとしても。
それが巧にとっては嬉しかった。

居酒屋を出て、駅で言うと3つ離れた自宅のある街まで、夜道を歩く。
頬に当たって酒で溜まった熱を冷ましてくれる風が、心地良い。

『村上浩介』という男。

年齢は玉置美佐と同じ25歳。
玉置美佐とは4年前も交際していた。
現在、旅行に行っている。

ハッキリ言って、何の役にも立たない情報だった。
おそらく玉置美佐が、情報統制していたのだろう。

本当に可笑しな女だ。

巧は、居酒屋での美佐との会話を思い出していると、自然に笑みがこぼれた。
久しぶりに『会話』をして、体の中にある溜まっていた物を吐きだしたからなのか、
巧は自分の身体が、少し透明になった気がした。


…………北海道富良野、午後1時。

浩介達は青空のもと、紫色に輝く大地を目の前にしていた。
日本一のラベンダー畑は、言葉を失うほど美しく、デジタルカメラを構えるのも忘れ、3人は美景を瞼に焼きつけていた。

空は快晴。
遠方には山が連なっていて、青く光っているように見える。
視線を下ろすと、サッカーコートが3つ入るぐらいの敷地に、縦20メートル程の列が横に50列程。
柵で囲まれているそれを1ブロックとし、全体では10ブロックの花畑がその色彩を披露していた。

「すごい……本当に綺麗……」
口元を両手で押さえた楓は、まさに感無量といった目を花畑に向けている。

「兄さん、ラベンダーではないけど、あっちも綺麗よ」
茜に言われ、顔の向きを90度右へ向けると、赤、黄、白、オレンジなどの色とりどりの、画が浩介の前に広がった。

「綺麗だな」
その言葉以外に適した言葉はなかった。
「本当に自分が住んでいる場所と同じ国なのか」と疑いたくなるほど、浩介は花が放つ甘美な香りに酔いしれていた。
430『きっと、壊れてる』第9話(6/9):2010/10/21(木) 21:43:51 ID:v8AocJEJ
「そうね、でもね花畑は勝手に出来上がるわけじゃないわ。除草したり、刈り取りをしたり、
管理者たちの努力があってこそ、この美しさがあるのよね」
「そうだな。すごいよ。俺も定年したらやろうかな」
「フフッ、ぶきっちょな兄さんじゃ、花ごと刈ってしまいそうね」

茜はラベンダーに負けないくらいの可憐な微笑みを見せると、ゆっくりと歩き始めた。

浩介は昨夜の事を思い出した。
茜の目。一人の女としての瞳。
本人に聞くべきなのか、浩介は迷っていた。
仮に聞くとしても、なんと言えばよいのか。

「まだ俺の事を愛し続けるつもりか?」とでも言うのか。

浩介は、自分の対応力のなさにほとほと呆れ果て、『とりあえず茜の様子見』という結論を出さざるを得なかった。

いつの間にか、花畑を挟んで向かい側まで歩いていた茜の姿を目で追いかけていた。

柵に囲まれた花畑を、眩しそうに見つめる茜の横顔が印象的で、周りにいる他の観光客など浩介の目には入らなかった。
ラベンダー畑と茜。
その情景は、どんな名画よりも浩介の心に世界の美しさを印象付けた。

…………。
……。

「きゃ〜! 超かわい〜!!」
花畑を満喫した浩介達は、ファームの入口近くにある土産屋に立ち寄っていた。
材木で立てた小屋のような建物から、素朴さが滲み出ていて雰囲気の良い店舗だ。

楓は、ラベンダーで作られたらしい透明石けんを手に取ると、甘えるような顔で浩介を見た。
言葉を発さなくても楓の言いたい事はわかる。
こういう時、喜怒哀楽がはっきりしていると便利なものだ、と浩介は思った。

「いいよ、買ってやる」

「やった! でもね、ボディソープも欲しいから、やっぱり入浴セット一式が良い! お願い! おにいちゃ〜ん!」

最初からそれが目的だったのか、楓は上の棚に陳列されていた石鹸、ボディソープ、ハンドソープなどがセットになった商品を指差した。
安い物で許可を取り、後付けで本来の目的を果たそうとする行動は、倫理上あまり好ましくないと浩介は思ったが、
腕を取り、さらに甘える声で纏わりつく楓に、頷く事しかできなかった。
ただでさえ、美人の女性二人を連れて歩く浩介は目立っていたからだ。
おそらく浩介が恥ずかしがり、ヤケになるのを計算した上でのオネダリだった。

「兄さん、私はこれ」

振り返ると、それまで一人黙って何かを熱心に見ていた茜が後ろに立っていた。
手に持ったぬいぐるみのような物を浩介の胸の前に突き出すと、茜は「よろしくね」と言わんばかりに頷いた。

受け取った物を見る。
『ラベンダー色』とでも言うのか、薄い紫の体色をした小さい熊のぬいぐるみだった。
雌なのだろうか、頭に付けられた一房のラベンダーの装飾が、間抜けな顔をより一層引き立てる。

「……これ? ……これが欲しいのか?」
「うわぁ……お姉ちゃんの趣味、相変わらず」

そんな浩介達の文句にも顔色一つ変えず、茜は黙ったまま目で浩介の答えを待った。
431『きっと、壊れてる』第9話(7/9):2010/10/21(木) 21:44:27 ID:v8AocJEJ
『熊嵐』読んだ後でよく熊のぬいぐるみ買う気になるな。
俺が楓のワガママを断れないと察して、便乗しただろう?

言いたい事は山ほどあったが、茜の真剣な表情に押され、結局浩介は妹達の甘えを受け入れた。

後になって気付いた事だが、茜がせがんだ熊のぬいぐるみは、値段が比較的手頃だった。
おそらく浩介のお財布状況を知っていたのだろう。

浩介は、人に気付かれない、偽善的ではない優しさを持った茜が、とても誇らしかった。

それでも。茜が物を強請るなんて、いつ以来か。
浩介は温かい気持ちが胸から溢れそうだった。

札幌のホテルの一室。
街から少しだけ離れたこの宿の外は、散歩するのにも注意が必要なほど完全なる闇だった。
時計の針は深夜の2時を指し、大勢の人間が一つ屋根の下に宿泊しているのにも拘わらず、
辺りは何の音もしない。

近頃、真夜中に急に目が覚める事が多い。
先日受けた健康診断では、特に異常は見当たらなかったので、体の問題ではなさそうだ。
浩介はベランダ側のベッドの中で「フゥ」と溜め息をつくと、何の変哲もない天井を見つめていた。

明日には東京へ帰る。
そして1週間もしない内に、また日々の生活に戻るかと思うと、
このまま瞼を閉じて、すぐに二度寝してしまうのはもったいないような気がした。

少しだけ顔を横に向けると、入口に一番近いベッドに茜の後ろ姿が見えた。
こちらに背を向け、規則正しく肩が上下している。
思えば、ついこの間まで一緒に寝ていた相手だ。
浩介は恥ずかしくり、そして罪悪感が湧いた。
すぐに目線を自分と茜の間で眠っている楓に向けると、浩介は思わず仰け反りそうになった。

妖しい目。

普段とは何かが違う楓の瞳がこちらを凝視していた。
シーツに包まり、浩介の方を向いて寝そべっている。
いつから起きていたのか、浩介と目が合うと楓はクスリと笑い、小声で声を掛けてきた。

「こんな時間にどうしたの? 眠れないの?」

「驚かすなよ。心臓止まるかと思った」
昼間とは違い、全て下している楓の黒く長い髪は、
日本人形を思わせ、暗闇の中では美しくも不気味な何かのように思えた。

「俺はさっき急に目が覚めたんだ」
「ん? 聞こえないよ」
「さっき、目が覚めたんだ」
「あぁ、『さっき目が覚めた』ね。……ねぇお兄ちゃん、そっち行ってもいい?」
楓は浩介の返事を待たず、自分にかかっていたシーツを剥がすと、
小動物のように素早く浩介のベッドの中に潜り込んできた。

「おっ、おい! 何やってんだ!」
「ヘヘヘッ久しぶりだね、お兄ちゃんとこうやって話すの。温いなぁ」
楓の顔が目の前にある。
こうしてマジマジと見ると、普段は細か過ぎて気付かない茜の顔との違いを発見する事が出来る。

「いいから、戻れ。もう子供じゃないんだから」
432『きっと、壊れてる』第9話(8/9):2010/10/21(木) 21:44:56 ID:v8AocJEJ
浩介はそう言いながらも、多分素直には従わないだろう、と思った。
楓の行動には振り回されてばかりだからか、ある種あきらめのような気持ちもある事は事実だ。

「少しだけ。眠くなったら、戻るから」

その内飽きて、自分のベッドへと帰るだろう。
浩介はそう思い、もう肯定も否定もしなかった。
吐息がかかるほど楓の顔が近くにあった。
それに、子供時代とは決定的に違う場所、白い胸元が少しだけはだけた浴衣から、垣間見えた。
目のやり場に困った浩介は、顔を再び先ほど眺めていた天井に向けた。

「久しぶりだね、お兄ちゃんとこうやってお話しするの」
浩介の方を向いたまま、楓は身を擦り寄せた。

昔、楓が夜に怖い夢を見ると、浩介の部屋まで駆けて来て、ベッドに潜り込む事があったのを思い出した。
同じ部屋に茜が居るじゃないか、と浩介が聞くと、「おねーちゃんは女の子だからオバケを退治できない」と真剣な表情で、
言い張っていたのを憶えている。
そうやって、浩介は半泣きになりながらも部屋まで駆けてくる楓を、自分のベッドへと迎え入れ一緒に寝ていたのだ。

当時の事を思い出し、浩介は苦笑いを浮かべた。
そしてチラリと目を配り、茜の定期的に上下している肩を確認した後、胸をなでおろした。

「ありがとね、お兄ちゃん」

先程から浩介がまったく返事をしていないのにも拘わらず、楓は一人ボソリと呟いた。
そして楓はシーツの上位置を上げると、浩介と楓の頭を覆うように被せ、密閉した空間を作った。
浩介の視界には真っ白なシーツが広がり、横を見ればシーツの白以外は、楓の顔しかない状態になった。

秘密基地のように、境界を張った空間。
おそらく、多少声のボリュームを上げても外に漏れないからだろう。
茜への配慮だ。

「満足したなら、自分のベッドへ帰ろうな」
「あははっ、違うよ。この旅行の事」
「楽しかったか?いや、まだ後1日あるけどな」
「うん、もちろん楽しかったよ。お姉ちゃんもすごくハシャいでいたみたい。本当に来れて良かった」

確かに茜は近年稀に見る上機嫌だったように思う。
昨夜の事だけは気がかりだが、全体として見ればやはりこの旅行は正解だった。

「また、その内連れて行ってやるよ。今度は函館行こうな」

優しい目をして、そう語りかける浩介の声に楓はゆっくりと頷いた。
しかし、次に楓の口から出た言葉は、浩介の予想に反したものだった。

「ありがとうお兄ちゃん……でもね、もう終わりなんだ」

「終わり? 何が?」
「こうして兄妹3人、昔のままの関係で、昔のように仲良くするのが」
楓の瞳は真実を語るものだった。

「え? なんでだ? まさか結婚でもするのか!?」
「相手は誰だ!」と、続けて言おうとした浩介は楓の様子がおかしい事に気付き、軽口を叩くのをやめた。
浩介は冗談で言ったつもりだったが、楓は少しだけ微笑んだだけで、すぐに真剣な表情に戻っていたからだ。

「ううん、違う。でも……もう実家へ帰れなくなるって所は同じかな」
「はぁ? 意味がわからない。楓、ちゃんと説明してくれよ」
話をぼやかす楓に少しだけ焦れた浩介は、問い詰める様に楓の目を見た。
433『きっと、壊れてる』第9話(9/9):2010/10/21(木) 21:45:31 ID:v8AocJEJ
深く黒い瞳。
……どこかで、見た事がある。
浩介は気付かないフリをした。

「お兄ちゃんはさ、お姉ちゃんの事好き? 愛している? それとも今の彼女の方が良い?」

心の傷口を塞いだ絆創膏を、不意に一気に剥がされたような感覚だった。
楓の表情に変化はない。
黒い瞳は瞬きもする事なく、浩介の瞳まで取り込まれてしまいそうな気がした。

「っ……楓……俺達が家を出た理由を知っていたのか?」
浩介はおそるおそる楓の口元に視線を向けた。
「何の事?」と言ってくれるのを、祈る様な気持ちで歯軋りをした。

「知ってるよ」

どこから漏れたのか。やはり両親か。
仕方ない。自分はそれだけの事をしたのだ。
実の妹に忌み嫌われ、一生を過ごそう。しかし、それでも茜だけはなんとか救わなくてはいけない。
浩介が「茜は何も悪くないんだ」と言いかけた、その時だった。

「私も同じだから」

「『私』……? 『同じ』?」

「きっと私達兄妹は、生まれた時から壊れているのね、兄さん」

それは低く、冷たい、凍えてしまいそうな声だった。

そして、気付いた時にはもう遅かった。
すぐそこにあった楓の柔らかそうな唇は、浩介の唇と繋がり、中の唾液を啜るように音を立てていた。

「ちゅ……ぴちゃ……。はぁ……兄さん、あなたを迎えに来たの。フフッ……私の可愛い兄さん」
浩介の頬を左手で撫でると、楓は妖しく笑った。

「あ……かえで……」

頭の中が混乱して、どうしていいかわからなった。
浩介は被さっていたシーツを力任せに取り除くと、火事でも起きたかのようにベッドから抜け出した。

「どうして……楓……」

薄暗い部屋の中、浩介は助けを求める様に茜を探した。
デパートで迷子になった子供のように、不安が溢れた。
茜を視界に捉えるまでの1秒と掛からない時間が、やけに長く感じた。

茜は、こちらに背を向けたまま、微動だにしなかった。

第10話へ続く
434『きっと、壊れてる』第9話:2010/10/21(木) 21:46:44 ID:v8AocJEJ
以上です。ありがとうございました。
435名無しさん@ピンキー:2010/10/21(木) 22:21:05 ID:qSvEa3QS
>>434
うおー
続きが気になる
投下乙!
436名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 01:00:44 ID:9aGjuXwb
>>434
乙です
キモウトターン来たなーw
437名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 01:32:10 ID:CKlRJN+8
一杯盛られたかな
438名無しさん@ピンキー:2010/10/22(金) 09:07:31 ID:RxedwbTV
>>434
GJ!!
一体誰が勝つんだww
439魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:08:05 ID:U63JI2Ma
今晩は。
表題のとおり、投下をいたします。
440魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:08:26 ID:U63JI2Ma
お風呂から上がった後、私は自分のベッドに座って体を冷ましていた。
多分、この火照りはお湯の所為だけじゃないと思う。
《ところで、痛みは大丈夫ですか?》
”うん、かなり引いた”
後で聞いたけど、影に傷つけられても命には別条ないそうだ。
ただ痛みは本物だし、一時的に生命力も奪われる。
だから、傷つけられれば辛い事には変わり無い。
”ねぇ、お兄ちゃんの体にもまだ残っているのかな……?”
《恐らくは……》
こんこん、とノックの音が聞こえた、お兄ちゃんだ。
「うん、入って」
「今日は悪かったな、折角のデートを台無しにしてしまって」
「ううん、お兄ちゃんは全然悪くないの」
「その、お詫びにはならないかもしれないけど、これ」
そう言って、お兄ちゃんが大きな袋を私に手渡す。
中にはとても大きなライオンのぬいぐるみが入っていた。
たてがみがふわふわしてて、顔が寛いだ顔をしてて、すごくかわいい。
「かわいい」
「そうか、気に入ってくれたか?」
「うん!! 
 この子、大事にする、ベッドに置いて一緒に寝る!! 
 ねえ、お兄ちゃん……」
「ん、なんだ?」
「ありがとう!!」
とても嬉しかったのでつい大きな声で言ってしまった。
お兄ちゃんはそんな私をぼおっとした様子で見ていた。
「……?
 どうしたの?」
「いや、どうもしてないぞ?
 それよりも喜んでくれて嬉しいよ、本当に」
お兄ちゃんが何かを誤魔化すように笑顔を作る。
441魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:09:39 ID:U63JI2Ma
「それから、ちょっとごめんな」
「え、お兄ちゃん!?」
お兄ちゃんが私の足を掴んだ。
「お前、やっぱり怪我してたのか」
お兄ちゃんがポケットから薬と包帯を取り出す。
それから、私の足に丁寧にそれを巻いてくれる。
「さっきから、少し痛みを我慢するような顔をしていたから気になってたんだ。
 昔から変わらないよな、そうやって心配させないように無理するところ」
お兄ちゃん、気付いてたんだ。
「ごめんなさい」
「いや、良いんだ。
 きっと、今日、あの変なのが暴れてた時に誰かを助けようとしてたんだろ?
 お前がそういう心の優しい子で俺は嬉しいんだからさ」
でも、とお兄ちゃんが言う。
「でも、危ない事はもう絶対にしないでくれよ。
 シルフはもっと自分を大切にしてくれ、頼む。
 もしシルフが傷ついたら、俺は辛すぎて耐えられないよ」
「……お兄ちゃんこそ、危ない事、絶対にしないでね」
「ん、俺か、ほら、俺はへたれだから大丈夫だ。
 今日だってシルフを見つけたら、さっさと逃げるつもりだったんだからさ」
そう言ってお兄ちゃんは、あっはっはと声を立てて笑った。
私は知っている、お兄ちゃんが嘘を付いてるのを。
今日、お兄ちゃんは自分の命を捨ててでも私を守ろうとしてくれた。
お兄ちゃんが守ってくれた時、とっても嬉しかった。
でも、あんなの全然嬉しくなんて、ない。
442魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:10:05 ID:U63JI2Ma
”アル、私……”
《了解です、コールサイン・すーぱーシルフは本日2200付で廃番とします》
”意外とすんなり辞めさせてくれるんだね?”
《我々も人々の幸せの為に戦う組織ですから》
”そう”
《ところで、こちらをどうぞ。
 短い間でしたが働き分の褒章が出ますので、選んでください》
突然、私の前に分厚い装丁の施された魔導書のような物が現れる。
《協力者に送られるギフトカタログです》
”カタログ?”
《ええ、ミッションクリア時や倒した敵毎に与えられるポイントでそのカタログの品と交換できるんです。
 因みにシルフさんの場合は甲種偵察任務、Gクラス10機、Aクラス1機撃墜で2万と5100Pです。》
”……結婚式の引き出物みたい”
《よく言われるのですが、最近はこういう方が喜ばれるみたいで……》
魔法の癖に、何でこんなに世俗的なんだろう?
私は頭を抑えながら魔導書?を開いてみた。
フライパンセット5P、石鹸詰め合わせ1P、等々。
”何だか内容も引き出物みたい……”
《そちらは低ポイント用ですからね。
 高ポイントになると魔法を使用する権利なんてものもありますよ》
”魔法、例えばだけど、その、好きな人と結ばれる魔法みたいなのは、無いの?”
《はい、一応あるのですが、256頁です》
私は慌ててそのページを見る、あった、意中の人と赤い糸を結ぶ魔法。
26000Pだから、ちょっと足りないけど。
《ただ、その魔法は色々と使用に条件がありまして、実際には使いづらいんです》
”条件?”
《ええ、それは魅了の禁呪を相手に掛けるのですが、
 相手にとっては無理やり誰かを好きにさせられるという事で、人権問題になるんです。
 だから、使用には相手に現在恋人等が居ない事、使用者が相手を純粋に想っている事、等要件が煩雑なんです》
”それって、もう殆ど両想いじゃないと使えないっていう事?”
《平たく言えばそうなります。
 ですので、実質的にこの魔法の意味がないかと。
 一応、これでも治安維持任務に特別の功績のあった人への褒章で特例中の特例なんです。
 我々の世界では違法に禁呪を使用した場合は終身刑以上の刑罰が確定しますから》
”私は、その、別に……”
《あ、大丈夫ですよ。
 ちょっと要件をチェックしてみますね》
アルが演算を開始する。
443魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:23:26 ID:U63JI2Ma
《残念ですが、1件だけ足りていません。
 お兄さんからの好意が要件水準を満たしていません、あと一歩なんですが》
”え、でもお兄ちゃんは私に好きって言ってくれた事が何回もあるよ?”
《それなのですが、お二人が義理とは言え兄妹なので家族としての”好き”と判断せざるを得ないものでして。
 例えば、彼女にしたいとか、付き合いたいのようなもっと直接的なものでないと……》
”そうなんだ……”
《申し訳ありません、お力になれず》
”いいの、やっぱり魔法になんて頼らないで私がしないといけない事だから”
「どうしたんだ、シルフ。
 そんな落ち込んだような顔をして?」
お兄ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「ううん、何でもないの」
そんな私の頭をお兄ちゃんがわしゃわしゃと優しく撫でてくれる。
それが心地良くて思わず目を細めた。
お兄ちゃんが私の髪の毛先をそっと摘まむ。
「そういえば、シルフみたいな綺麗な髪だったな。
 今日のあのすーぱーシルフって子にまた会えたりするのかな?」
ふと、お兄ちゃんが思い出したようにそう呟いた。
「やっぱり、気になるの?」
そう尋ねると、お兄ちゃんはしまったという様子をしてから、気まずそうな顔になった。
「いや、その実はな、……雪風には言わないでくれよ。
 何でか知らないんだが、あの子に会ってから、どうもあの子の事が頭から離れないんだ。
 まあ今日は色々とあったからな、疲れているんだろう。
 いや、別に一目惚れだとか、そういう意味では全然ないんだ。
 俺は誰よりもシルフの恋人でいたいからな、……それが俺の本当の気持ちだ」
お兄ちゃんの言った最後の部分は、よく聞こえてなかった。
”すーぱーシルフに一目惚れ⇒好き ∧ すーぱーシルフ=私”
私の頭の中ではこの図式がぐるぐると回っていたから。
突然、ぽんっ、と頭の上の電球が灯った。
私の頭の中で一つのアイディアが生まれた。
「ねえ、お兄ちゃんはもしもあの子が恋人になったら嬉しいって少しは思う?」
《あの、シルフさん、それはいくらなんでも強引過ぎるかと……。
 それから、お兄さんの言葉の最後の部分聞いてらっしゃいましたか?》
”黙って、大事な所なの!!”
「え、いきなり何を言い出すんだよ!?」
「いいから、早く答えて!!」
「真面目にか?」
「正直に答えて。
 そうしてくれなかったら、お兄ちゃんでも許せないかも知れないから……」
私がそう念を押すと、お兄ちゃんは覚悟を決めた顔をして答えた。
444幸せな2人の話 8:2010/10/23(土) 02:25:11 ID:U63JI2Ma
「……嬉しいよ」
”アル!?”
《……可です》
「いや、確かに嬉しいけど、それはあんな子が恋人になったら男は誰でも嬉しいだろうって事で。
 別に特別にあの子を探して告白しようとか、そういう意味じゃないから勘違いをしないでくれ。
 って、すいません、シルフさん?
 あの、何でガッツポーズをとっていらっしゃるのですか?」
「お兄ちゃん」
「は、はい!!
 何でしょうか!?」
「私、頑張る」
「えっと、何を?」
「頑張る」
「そうか、が、頑張れ。
 ただ、さっきも言ったけど危ない事はしないでくれよ?」
「大丈夫、危なくなんてないから」
うん、大丈夫。
今度からは最高速で接近してそのまま首を落として、抵抗する間も与えずにぐちゃぐちゃに潰せば、安全。
危なくなんてないから、お兄ちゃんとの約束は破っていない、大丈夫。
《え〜と、では、契約続行という事で宜しいでしょうか?》
”うん、あと900P分頑張る”
《そうですか、それは何よりです。
 では、暫らくですがよろしくお願いします、シルフさん》
”うん、お願い”
そこで、アルの表面に車輪の回るような光の模様が浮き上がる。
”緊急事態のサイン?”
《ええ、どうやらそのようです。
 ……ただ、情報どおりなら今までに例のない位の脅威です。
 本国の大隊クラスでないと恐らくは対応不可と推測されます。
 ですので偵察のみで結構です、決して今日の様な無茶はしないで下さい》
445魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:26:35 ID:U63JI2Ma
”うん、分かった。
 もう今日みたいな事は絶対しない”
私は目を閉じて心に念じる。
”すーぱーシルフ、インゲージ!!”
けれど、何も起こらなかった。
”あれ、どうしたんだろう、変身できないの?”
《ちょっと待っていてください、確認します。
 先程の戦闘時にお兄さんがアクティベートの呪文を唱えましたよね?
 そのせいで、すーぱーシルフは複座型として登録されたみたいなんです》
”複座型?”
《ええ、つまり格闘戦はシルフさんがして、お兄さんが呪文を唱えるという事です。
 そして、変身の起動権もお兄さんに譲渡されているようですね。
 それから複座型の都合上、現地での変身が必須なんです》
”じゃあ、お兄ちゃんと一緒に現場へ行かないといけないって事?”
《はい、ご理解頂けますでしょうか?》
”大丈夫、お兄ちゃんは私がお願いすれば、ちゃんと一緒に来てくれるから”
《そうですか、それなら良いのですが。
 あと蛇足ですが、シルフさんの変身前後の記憶はお兄さんから抜けますけど、
 そこに居たという事までは忘れませんので注意し下さい、つまり、あの》
緊急事態だというのに、なぜかアルは歯切れが悪い。
”それより早く行こう。
 場所は何処なの?
 お兄ちゃんにお願いしないと”
《その、大変申し上げにくいのですが、N町のラブホテル街の中心部です》
”え、それって……”
《つまり、お兄さんとご一緒にそちらの方に出向いていただかないと……》
顔が一気に熱くなった。
お風呂から出た時よりも、ずっと熱い。
「ど、どうしたんだシルフ!?
 顔が真っ赤になっているぞ、やっぱり病気か!?」
「な、なんでもないの。
 お、お兄ちゃんが、私と、私とラ、ラブ……。
「え、ラブ?」
「ち、違うの、何でもないの!!」
「そ、そうか」
446魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:27:10 ID:U63JI2Ma


同時刻、N町ラブホテル街


一人の少女がホテル街をゆらゆらと歩く。
瞳はどろり、とこの世のものではないような濁り。
その手には血の様に真っ赤な刀が握られている。
「ふふ、けーくんたら照れ屋さんなんだから。
 ホテルに逃げたっていう事はそういう事だよねー。
 でも、ちゃーんとさっきのお仕置きは受けてもらわないと、ふふふ」
けー君どーこー、とかくれんぼを楽しむ鬼のように声を掛ける。
本当はもう沙紀は彼が何処にいるのか本能で大体は分かっている。
「その前にちょっと出てきてくれないかなー?」
けれど、すぐに会いには行けなくなった、やる事が出来たから。
路地裏の暗がりを切り裂くかのような鋭い目で睨み付ける。
”くすくす、よくわかったね”
ゆらりと少年ぐらいの大きさの人影が路地裏に浮かぶ。
一つ普通の人影と違うのは闇を切り取ったように真っ黒な点だ。
「ええ、うちは居合い道場だけど、昔からそういう類も代々相手にしてきたの。
 それに今日の騒ぎもあなたの仕業ね、やられたわ。
 でも、今はこの桜花があるからあなたじゃ相手にはならない」
そう言って、すうっと赤い刀を向ける。 
”ははは、君が強いのはよく分かるよ、だから話し合いをしようじゃないか?”
「話し合い、物の怪なんかが何を話せるって言うの?」
”ふふ、僕らは分かり合えるさ。
 僕は、まあ闇の魔法使いっていう奴さ、末永くよろしくね。
 さっき君の負の感情を取り込んだときに実に素晴らしかった。
 だから君と組みたい、その代わりに君の願いを好きなだけ叶えてあげよう。
 僕は最上級の存在、何でも出来るんだ。
 そうだねお近付きに一つ叶えよう、言ってごらん?”
447魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:27:29 ID:U63JI2Ma
「そうなんだー。
 実はね、今けー君を惑わしてる雌豚を探しているんだー。
 でも、もう面倒だからけー君に関わる雌豚を全部始末してしまいたいの、デキルヨネ?」
”いいね、いいね、実に僕好みの願い事だ。
 一体何人を消せば良いのかな、10人?、20人?”
「そうだねー、概算でざっと33億人かナー?」
”いやいや、ちょっと待って、それ人類の半分だよね!?”
「うん、けー君はとーーーーっても素敵な男の子だもん。
 けー君を見て好きにならない女なんて、この地球に私の友達の2人しか知らないヨ?
 だから、それ以外の雌豚を綺麗にしちゃいたいなー、ナンテ」
”いや、僕はそこまでしたくなんてないから!!
 人類種の天敵になんて流石になりたくないよ!?”
そう言って逃げようとする黒い影の首を沙紀の腕が掴む
「逃がさないヨー」
”え、どうして僕を素手で掴めるの!?
 ありえないから、僕は精神生命体だよ!?”
「いちいち、煩いなー。
 出来ナイッテ言ウナラ、私ガスルカラチカラダケ貸シテヨ?」
そう言って深々と赤く、禍々しい刀を影の胸に突き立てる。
”うわ、ドス黒くて赤い何かが侵食して来る!?
 ちょっと待って、僕が取り込まれてるよ!?
 助けて、これ本当に洒落にならないから、誰かー!!” 
448魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:28:08 ID:U63JI2Ma
*********************************************

・次回予告

「けーくーん、どーこー?
 二度と外せない首輪を付けてあげるから出て来ようねー?
 ふふ、早く出てこないと……、まずは一億人ぐらいサクッと逝っちゃうよ」
《新たなる敵、謎の魔法狂戦士しんかー沙紀》
”……誰だか分からないけど、よく知ってる人のような気がする”

「あはははは、もう、私の計画台無しだよ〜。
 シルフちゃんはへたれで役に立たないし。
 どうでも良いから早く撃たれて、消えてくれないかな〜?」
《マスター、警告、フレンドリー・ファイヤです。
 彼女は敵ではありません、友軍です》
「あはははは、そんなの知らないわ。
 雪風の敵はすーぱーシルフとか言う泥棒猫だけだよ〜」
《敵か味方か、第2の魔法少女めいぶ雪風》
”……明らかに私の方が狙われている気がするんだけど”

「行くな圭、行ったら死ぬんだぞ!!」
「だが、俺が行けば皆も、お前だって助かる」
「一人の命の上にある、一億人の命なんて!!」
「もう良いんだ陽、さ、離してくれ」
「ふざけるな、俺はお前の手を絶対に離さない!!」
「陽……」
《二人の絆は魔法だって、運命だって乗り越えて見せる》
”……キャスト不足だからって、新林さんをヒロインポジションにするの?”

「次回、魔法少女すーぱーシルフ第2話『キモウトとかが舞う迷惑な空』」


449魔法少女すーぱーシルフ(下):2010/10/23(土) 02:29:36 ID:U63JI2Ma
以上です。
ありがとうございました。
次回からはまた本編に戻りますので、
よろしくお願いいたします。
また、次回予告は冗談ですので続きは考えておりません。
失礼いたします。
450名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 03:46:01 ID:/oRq5xij
GJ!!
本編も期待してるZE!!
451名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 18:52:29 ID:TKWLTO69
452名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 21:37:08 ID:X1OAFaLR
453名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 23:24:07 ID:5qkBJOdd
シルフみたいな妹もとい嫁が欲しい
454名無しさん@ピンキー:2010/10/24(日) 23:30:56 ID:bSwjV3qX
おい、今>>453の後ろで妹さんが何か……あ、いや
なんでもないです見間違いでした

ご結婚おめでとうございます
455名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 12:36:25 ID:/jKTmSpG
俺の妹がこんなにキモいわけがない
456名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 23:17:25 ID:UTQp8/c+
だが、しかし……俺は黒猫派だ
457名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 23:19:24 ID:wDm1nOnU
兄さんと呼んでくれる赤の他人な偽妹でも良し
458名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 23:25:08 ID:UTQp8/c+
459名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 23:26:21 ID:UTQp8/c+
>>457
そこに気がつくとは……やはり天才か……
460名無しさん@ピンキー:2010/10/25(月) 23:38:24 ID:irQnq/rR
本気で「お兄ちゃんのお嫁さん」を狙う義妹に釣られて
実妹がキモへの扉を開いてしまう…
461名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 14:52:28 ID:0Db6CEcc
実妹「血の繋がりに勝てるとでも?」



血と書いてふとキモ妹が事故にあって兄から輸血して貰ったらどういう反応するんだろうか
462名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 15:54:12 ID:ECU/0OpB
キモ姉キモウトが事故るとか確率低すぎワロス

むしろ兄弟が事故ってキモ姉妹が輸血する場合のが
463名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 18:23:28 ID:m9DsG8a2
464名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 20:39:53 ID:kwMhz1x5
>>461
実妹「ちょっと事故ってくる!」
465名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 20:40:14 ID:YFafYESH
>>461
義妹「家族と他人を使い分けられる強みを思い知れ!」
466名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 21:31:35 ID:8zI1Sg8X
骨髄移植すると文字通り全く同じ血が流れることになるよ
467名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 21:33:17 ID:YFafYESH
そして骨髄移植のドナーは、兄弟姉妹が最適
468名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 21:54:29 ID:H0dpJeV2
従妹「すべて兼ね備えたイトコこそ至高」
469名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 22:52:52 ID:m9DsG8a2
470名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:00:54 ID:YFafYESH
実妹と義妹が兄を取り合う話…考えれば考えるほど実妹が不利すぎる…

義妹「甘いぞ。私は養女だから兄さんのお嫁さんになれるのを忘れたか!」
親  「義妹が兄と結婚?…嫁姑問題とか親戚づきあい問題は発生しようがない嫁か。悪くないな…実妹?論外だ」
友人「実妹。こう言っちゃなんだけど、これは勝負にならないよ。義妹は兄さんと結婚できるけど、あんたはできない。この時点で戦わずしてあんたの負けだ」

そして当の兄は
「いや…妹にプロポーズされた兄ってのは、どういう反応をしたらいいんだ? 血縁はない? そういう問題じゃなくて…」
471名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:03:07 ID:ri6Eq/Wk
結婚がアドバンテージ?嗤わせてくれるわッ!
472名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:05:08 ID:S0bnbynA
突然出来た義妹を猫可愛がりする兄と
素直になれない実妹…萌えます
473名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:15:22 ID:awoxdk2s
でもさ結婚できるが離婚もある。しかし実妹なら離婚ないし一生妹でいれて子供も産めるしよくね? 所詮は義理の妹じゃあねえ
474名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:42:12 ID:1XJzw8Kw
>子供も産めるし
待て
475名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:46:36 ID:i3Po+f8g
えっ何もおかしくないでしょ?
476名無しさん@ピンキー:2010/10/26(火) 23:53:27 ID:lNEoABui
俺は>>468も支持したい
477名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 00:16:28 ID:+Mn78ECS
>>473
義妹は何かの事情で子供が産めなくて、実妹が
「あたしを見てよ! あたしはちゃんとした女だよ!お兄ちゃんの赤ちゃんだって産めるんだよ!!」
とか叫ぶというパターンが唐突に浮かんだ。
478名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 14:18:16 ID:tBp1otO7
>何かの事情
初潮が来てないんだな
479名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 14:39:01 ID:C/DtiJ1b
そしてその兄にもついに彼女ができる!
480名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 16:00:49 ID:UuktZRZQ
481名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 19:49:19 ID:+Mn78ECS
>>478
それってつまり…「私はやりたい放題よ」ってことですな。
子供? そんな先のことはどうでもよい。というか必要なら養子で万事解決
何しろ自分が養子なんだから、血縁にこだわる理由もないし。
482名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 21:12:52 ID:edu/WNww
ここまでみゃー姉なし
483三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/27(水) 21:51:10 ID:TckWV/As
三つの鎖 29 前編です。
※以下注意
エロ無し
血のつながらない自称姉あり

投下します
484三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/27(水) 21:52:20 ID:TckWV/As
三つの鎖 29

 今日の朝、私は幸せだった。
 幸一くんとのデート。何を着るかを考え、お化粧し、履いて行く靴を選ぶ。
 待ち合わせ場所に行くのも足取りが軽かった。
 幸一くんは誠実な男の子だ。にもかかわらず、夏美ちゃんという恋人がいるのに私と遊びに行く事を了承した。
 本来なら絶対にあり得ない。夏美ちゃんをほったらかしにして、他の女の子と遊びに行くなんて、幸一くんは絶対にしない。
 でも今回は私の誘いに幸一くんは応じてくれた。
 嬉しかった。例え幸一君が追い詰められていたとしても、私といる事を選んでくれた。
 隣町のショッピングモールで私は幸一くんと遊んだ。幸一くんの手を握り、腕を組んでも幸一くんは困ったように笑うだけで嫌がらなかった。
 楽しかった。幸せだった。嬉しかった。
 夏美ちゃんに勝ったと思った。幸一くんがあるお店に入るまでは。
 幸一くんが入っていったのは、シルバーアクセサリーを扱うお店だった。私のしている指輪を幸一くんが購入したお店。
 「夏美ちゃんにプロポーズしたいから、指輪選びに付き合って欲しい」
 最初、幸一くんの言っていることが分からなかった。
 「まだ高校生だし、ちゃんとした指輪は買えないけど、何かいいのをプレゼントしたい」
 誰が、誰に、何のために、何をプレゼントするの?
 どういう意味?
 私を選んでくれたんじゃないの?
 コウイチクンハナニヲイッテイルノ?
 視界が歪む。まっすぐ立っているはずなのに、足元が定まらない。
 私の考えをよそに、幸一くんは真剣な表情で指輪を見ている。
 その横顔に胸が締め付けられる。
 私と一緒にいるのに、私の事を考えていない。
 幸一くんが考えているのは夏美ちゃんの事。
 私じゃない。
 私じゃ、ない。
 気がつけば幸一くんはすでに指輪を購入していた。
 サイズの違う2つのシンプルな銀の指輪。
 私は拳を握りしめた。私の左手の指輪の感触。
 指輪をケースに入れる幸一くんの横顔。
 真剣な決意を秘めた表情。
 二人でバスに乗り、私達の街に戻る。
 バス停で降り、幸一くんは私を見た。
 「今日はありがとう。春子のおかげで気持ちが楽になった」
 そう言ってほほ笑む幸一くん。
 「今から夏美ちゃんの家に行ってくる。成功しても失敗しても後で報告する。それじゃあ」
 そう言って幸一くんは私に背を向けた。
 「待って」
 私は思わず幸一くんを引きとめた。
 振り向く幸一くん。私を見つめる誠実な瞳。
 「何で幸一くんは夏美ちゃんのためにそこまでするの?」
 握りしめた拳が微かに震える。
 「幸一くん、何も悪くないのに夏美ちゃんにひどい事をされたんでしょ?」
 幸一くんの瞳の色が微かに揺れる。
 「知ってるの?」
 全て知っている。リアルタイムで盗聴していた。
 夏美ちゃんが幸一くんに言った事は、全て聞いた。
 「うんうん。でも、幸一くん、泣いてたじゃない。お姉ちゃん、分かったよ。夏美ちゃんと何かあったって」
 幸一くんの表情が微かに陰る。
 夏美ちゃんがした事は、幸一くんを傷つける事だった。一人で泣くぐらい、幸一くんは傷ついていた。
 昔からそう。どれだけ悲しくても寂しくても、幸一くんは人前では絶対に泣かない。私の前でも泣こうとしない。悲しくて寂しくてどうしようもない時は、誰もいないところで幸一くんは一人で泣いている。
 「最近の夏美ちゃん、様子がおかしいよ。学校でも教師に目をつけられているし。噂、聞いたでしょ?」
 唇をかみしめる幸一くん。
 「夏美ちゃんは悪くない」
 「そうかもしれないよ。でもね、夏美ちゃんの評判が悪いのは本当だよ。お姉ちゃんね、心配なの。幸一くんの身に何か起きそうな気がするの」
 私は幸一くんの手を握った。
 大きくてごつごつした手。でも、温かかい手。
 「しばらく夏美ちゃんと距離を置いた方がいいよ。梓ちゃんの事もあるでしょ」
 幸一くんの瞳の色が微かに揺れる。
485三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/27(水) 21:54:19 ID:TckWV/As
 「プロポーズなんてしてどうするの。幸一くん、まだ高校生だよ。そんな事してなんになるの。考え直して。今は梓ちゃんの事を解決するのが先決だよ」
 うつむく幸一くん。
 「お姉ちゃん、協力するから。きっと梓ちゃんと仲直りできるよ。そうすれば誰にもはばかることなく夏美ちゃんと付き合える。だから考え直して」
 もし幸一くんが夏美ちゃんにプロポーズしたら、夏美ちゃんはきっと受け入れる。
 そうしたら、幸一くんは完全に夏美ちゃんのものになっちゃう。
 そんなの絶対にいや。
 「春子」
 幸一くんは私を見下ろした。
 その真剣な表情に胸が痛くなる。
 考えているのは夏美ちゃんの事。
 私じゃない。
 私じゃ、ない。
 「馬鹿な事をしているって自分でも分かっている。でも、僕にはそれぐらいしか思いつかないんだ」
 大人びて落ち着いた表情。その表情に顔が熱くなる。
 それと同時に胸が苦しくなる。
 「僕の気持ちを伝えたい。好きだって。愛しているって。夏美ちゃんと一生いたいって。一生傍にいて欲しいって」
 幸一くんの一言一言が私の胸に突き刺さる。
 全て私の望み。
 それなのに、幸一くんが望むのは私じゃない。
 「だからプロポーズしようと思う。夏美ちゃんに知って欲しい。それぐらい好きだって事を」
 幸一くんはそっと私の手をほどいた。
 「馬鹿な弟でごめん。姉さん。行ってくるよ」
 そう言って幸一くんは笑った。
 落ち着いた大人の笑顔。
 私に背を向けて歩く幸一くん。その後ろ姿が徐々に小さくなる。
 幸一くんが、私の手の届かない場所に行ってしまう。
 気がつけば私は走り出していた。
 「幸一くん!!」
 振り向いた幸一くんに私は抱きついた。幸一くんの背中に腕をまわし、思い切り抱き締める。
 この腕をほどいたら、幸一くんは私の手の届かない場所に行ってしまう。
 「いやっ!!行っちゃいやっ!!」
 私の声は震えていた。
 「お願い!!行かないで!!夏美ちゃんのものにならないで!!」
 目頭が熱い。涙で視界がにじむ。
 「好きなの!!幸一くんが好き!!愛している!!」
 涙の雫が頬を伝う。
 幸一くんの胸に額を押し付けたまま、私は喋り続けた。
 「ずっと好きだったの!!小さい時からずっと幸一くんを好きだったの!!お願いだから私を見て!!」
 私は顔をあげた。幸一くんの顔が近い。
 戸惑ったように、悲しそうに私を見下ろす幸一くん。
 胸が締め付けられるほど澄んだ瞳が私を見つめる。
 幸一くんの瞳が雄弁に語る。
 一人の女として愛しているのは私じゃないって。
 「何でなの!?何で夏美ちゃんなの!?何で私じゃないの!?私の方が幸一くんの傍にいた!!ずっと見ていた!!ずっと好きだった!!それなのに何で夏美ちゃんなの!?何で私じゃないの!?」
 涙がとめどなく溢れる。頬を伝い、足元に落ちる。
 幸一くんはそっと私の涙をぬぐってくれた。
 「私の何がいけないの!?夏美ちゃんみたいに髪の毛が短い方がいいの!?小さい方がいいの!?お料理ができない方がいいの!?年下の方がいいの!?」
 幸一くんが悲しそうに私を見下ろす。
 その視線が堪らなくつらい。
 「幸一くんが望む女の子になる!!幸一くんが望むならなんだってする!!だからお願い!!行かないで!!夏美ちゃんのものにならないで!!傍にいて!!傍にいさせて!!」
 そっと私の肩を押す幸一くん。
 悲しそうに私を見つめる澄んだ瞳。
 「ごめん」
 申し訳なさそうに、本当に申し訳なさそうに答える幸一くん。
 「本当にごめん。姉さんの気持ちには応えられない」
 「姉さんって言わないで!!」
 幸一くんは驚いたように私を見た。
 「私が幸一くんのお姉ちゃんだから駄目なの!?お姉ちゃんだから恋人にしてくれないの!?」
 私はずっと幸一くんのお姉ちゃんだった。お姉ちゃんとして傍にいた。それが嬉しかった。
 でも、今はそれが足かせになっている。
486三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/27(水) 21:55:34 ID:TckWV/As
 「私ね、幸一くんの事が好きだった。幸一くんが望む私になろうって思ってた。覚えてる?最初に会った日。私ね、今でも覚えているよ」
 公園で梓ちゃんと一緒にいる幸一くん。梓ちゃんは幸一くんにべったり甘えていた。
 幸一くんは寂しそうだった。甘えたい年頃なのに、甘えられるご両親はいつもお仕事。
 だから傍にいてあげようと思った。幸一くんが甘えられる存在になろうと思った。
 私の方が一日だけ早く生まれたから、幸一くんのお姉ちゃんになろうって思った。だから私は幸一くんのお姉ちゃんだった。
 それが幸一くんのためだから。幸一くんの望みだから。
 「私ね、幸一くんのためにお姉ちゃんでいたんだよ。幸一くんが望むからお姉ちゃんでいたんだよ」
 幸一くんを抱きしめる手が震える。
 「それなのに、夏美ちゃんを選ぶの。お姉ちゃんとしての私が必要なくなったから、私はもういらないの。幸一くんはお姉ちゃんとしての私を必要としてくれたのに、女の子としての私は必要としてくれないの」
 涙が足元にぽたりぽたりと落ちる。
 「こんな事になるなら、幸一くんのお姉ちゃんになるんじゃなかった」
 私は顔をあげられなかった。幸一くんの顔を見られなかった。
 「春子には言葉に尽くせないほど感謝している。ずっと僕の傍にいてくれた。ずっと僕を助けてくれた。梓に嫌われていた日々、春子の存在にどれだけ支えられたか、春子でも分からないと思う」
 落ち着いた声で話す幸一くん。
 「春子のためなら何でもしてもいいと思っていた。でも、それだけは駄目だ。僕の恋人は、夏美ちゃんだから」
 幸一くんの言葉が胸に突き刺さる。
 涙がとめどなく溢れ、地面に落ちる。
 「春子の気持ちは嬉しい。でも、応えられない」
 嬉しくなくてもいい。感謝してくれなくてもいい。
 憎んでもいい。嫌われてもいい。
 恋人じゃなくてもいい。都合のいい女でもいい。
 お姉ちゃんでも、そうでなくてもいい。
 だから、私を幸一くんの傍にいさせて。
 そう言おうとして、言えなかった。
 幸一くんは泣いていた。
 顔をぐちゃぐちゃにして、私を見下ろしていた。
 涙は頬を伝い、地面に落ちる。
 「ごめん。本当にごめん」
 幸一くんは泣いていた。
 本当に悲しそうに泣いていた。
 私の気持ちに応えられなくて。傷つけて。
 その事で、本当に泣いていた。
 嬉しくない。嬉しくないよ。
 涙なんかいらない。
 ただ、私の傍にいてくれたらいい。
 それなのに、私は何も言えなかった。
 悲しそうに泣く幸一くんに、何も言えなかった。
 だって、幸一くんは何も悪くない。
 幸一くんは自分の気持ちに嘘をつかなかった。私の言う事に適当に合わせることもできるのに、しなかった。あくまでも誠実に、真剣に私の気持ちに応えた。
 その結果が、拒絶。
 でも、幸一くんは何も悪くない。幸一くんは私の気持ちに誠実に真剣に応えただけ。
 例えその結果が拒絶でも、それは幸一くんが真剣に考えた結果。
 幸一くんは悪くない。
 悪いのは、私。
 「ごめん。僕、もう行くよ」
 幸一くんはそう言って私の顔を見た。
 大人びて、落ち着いた男の人の表情。
 そっと私の涙をぬぐい、私にハンカチを握らせ、幸一くんは私に背を向けた。
 だんだんと小さくなっていく幸一くんの背中。
 幸一くんは振り返らなかった。
 私は追えなかった。

 私は失意のままに家に戻った。
 その後、夏美ちゃんの家をずっと盗聴していた。
 警察に連絡したのは私だ。
 非通知設定で、ボイスチェンジャーを使用した。
 夏美ちゃんを必死に庇う幸一くん。
 もし警察が夏美ちゃんを連れていけば、真実は全て明らかになる。
 夏美ちゃんが幸一くんを殺そうとした事も。
 警察は尋問のプロだ。素人の夏美ちゃんは簡単に真実を話してしまうだろう。
487三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7 :2010/10/27(水) 21:58:10 ID:TckWV/As
 幸一くんはそれを分かっているから、必死に庇う。
 夏美ちゃんにあれだけ酷い事をされ、刺されても、幸一くんは夏美ちゃんと別れない。
 ただ単に夏美ちゃんにお父さんに頼まれたからだけじゃない。
 幸一くんは、心の底から夏美ちゃんに惚れている。
 それが悔しい。悲しい。
 私は幸一くんのお姉ちゃんだった。
 手間のかかる弟は、どこに出しても恥ずかしくない立派な男の子になった。
 でも、幸一くんが選んだ女の子は夏美ちゃん。
 私じゃない。
 姉としての私の期待に応えてくれても、女の子としての私の気持ちには応えてくれない。
 弟として幸一くんは私の期待に応えてくれた。けど、男の子としては私の気持ちに応えてくれない。
 幸一くんはやってきた警察の人と夏美ちゃんと一緒に部屋を出ていった。
 しばらくして、幸一くんと夏美ちゃんは帰ってきた。
 音だけだから良く分からないけど、幸一くんは夏美ちゃんの部屋をお掃除しているみたいだった。
 きっと、夏美ちゃんが幸一くんを刺した痕跡を全て消すつもりなんだ。
 ぼんやりとそんな事を考えていると、がたんという大きな音が聞こえた。
 いえ、もしかしたら小さい音なのかもしれない。盗聴器のすぐそばで発生した音は大きく聞こえる。
 『春子。聞こえている?』
 スピーカーから聞こえた幸一くんの声に、心臓が止まるかと思った。
 『警察に連絡したのは匿名だったらしい。僕が刺された状況を知るためには、この家の状況をどこかで知るしかない。盗撮か盗聴。そう思って調べたら、これがあった。多分、盗聴器だ』
 淡々とした幸一くんの声。
 『盗聴器を仕掛ける人の心当たりは春子しかいない。救急車に連絡してくれたのは感謝している。聞いていたと思うけど、夏美ちゃんにプロポーズした』
 幸一くんの言葉が胸に突き刺さる。
 『夏美ちゃんは承諾してくれた。もちろん、結婚は当分先になる』
 そうだ。幸一くんは夏美ちゃんにプロポーズして、夏美ちゃんはそれを断らなかった。
 幸一くんは、夏美ちゃんのものになってしまった。
 「やめて」
 私の気持ちが言葉となって溢れ出す。
 「お願い。そんな事言わないで。夏美ちゃんのものにならないで。お姉ちゃんね、幸一くんの事が好きなの。愛しているの。だから、そんな事言わないで」
 幸一くんに言葉は届かないのは分かっている。幸一くんの音声はこっちに届くけど、私の音声は幸一くんに届かない。
 それでも、言葉は止まらない。
 「お願い!!夏美ちゃんのものにならないで!!お姉ちゃんを見て!!私を愛して!!」
 目頭が熱い。頬を涙が伝う。
 『春子には感謝している。ありがとう』
 「ねえ!!幸一くん!!」
 『また会った時に報告する。それじゃあ』
 「幸一くん!!」
 音声は途切れた。モニターには、盗聴器からの信号が途絶した事を示す表示が映るだけ。

 気がつけば随分と時間が過ぎていた。既に夜遅い。
 いつの間にこんなに時間がたったのだろう。
 遠くでシロの吠える音が聞こえる。
 窓から見下ろすと、幸一くんが歩いていた。
 見るからに悲壮な表情。
 夏美ちゃんにプロポーズして、受け入れられたとは思えない思いつめた瞳。
 そういえば幸一くんは梓ちゃんに報告したのだろうか。
 まだに違いない。もし報告していたら、幸一くんも夏美ちゃんも無傷のはずがない。
 幸一くんは加原の家に入って消えた。
 私は急いで盗聴のためのツールを再起動した。


投下終わりです。読んでくださった方に感謝いたします。
ありがとうございました。
HPで登場人物の人気投票を行っていますので、よろしければご協力お願いします。
ttp://threechain.x.fc2.com/index.html
488名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 22:57:47 ID:Aes13hLz
GJです

うーむ、まあ自業自得だわな>春子
これまでの行為が行為だけに、哀れみの念も湧かないというのが正直な感想
さて次回は流血ありになってしまうのか…?
489名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 23:05:42 ID:RVtbDzWH
春子まだやるのか....
梓が謎すぎる。
490名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 23:14:54 ID:FCvu5oEq
乙!春子に関しては「策士、策に溺れる」の一言かな… 次回流血必至か……good lack
491名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 23:37:33 ID:c8aHCDwC
こりゃあ血を見るなw
作者さんGJ
492名無しさん@ピンキー:2010/10/27(水) 23:51:35 ID:uVOkxrSG
いやしかし正しいキモ姉の姿だろ?俺は応援している。
493名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 00:44:46 ID:C604v2/e
春子はキモ姉としてはよくやったって感じですね。
これから梓に知られた時どうなるか、春子がまた強攻策にでるのかに注目ですね

Good Job!
494名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 00:46:57 ID:zcGRfLm2
ある意味死刑台に向かう気分だな、幸一は

ともかく投下ありがとうございます
次も首長くして待ってます
495名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 06:21:03 ID:nY8EIF+z
GJ
春子も絶対あきらめないと信じてる
梓が何するか本当に怖い・・・
496名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 17:46:29 ID:b0zRRkDO
497名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 18:14:08 ID:tqkgob0p
春子みたいな姉を嫁にしたい
498名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 21:36:55 ID:xm5Dj2Az
ホントにいいキモ姉だな春子はGJ
499名無しさん@ピンキー:2010/10/28(木) 23:54:14 ID:YF2X2b5m
まさにコレ!こういうの探してました。
http://www.pororichannel.com/omizu.html
500名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 00:22:34 ID:/44qEKDU
GJ
る意味当然だけど、幸一の春子の信用してなさにはワロタ
501 ◆wBXWEIFqSA :2010/10/29(金) 03:20:11 ID:c2Sj2Nz/
>>373の続きを投下します。
今回もエロ有りです。
502狂依存 13:2010/10/29(金) 03:20:53 ID:c2Sj2Nz/
「はぁ……」
本当にどうしよう。
どうしてこんな事になったんだろう?
どうすれば諦めてくれるんだろう?
考えても思いつかない。
家を出るか?
いや、行く当てなんかある訳ない。
友達の家に泊まりこむと言ったって、何日もお世話になる訳にはいかないし、それでは何の解決にもならない。
誰かに相談すると言ってもこんな事誰にも相談出来ない。
第一実の姉に迫られて困ってます、なんて誰に相談すれば解決するんだ?
両親にも友達にも相談出来るような事じゃないしなあ。
彼女を作れば諦めて……いや、あの様子では難しいだろうな。
そもそもウチは男子校だから、異性との出会いなんて皆無だし、元々特に親しい女子もいない。
「(つか、そんな理由で彼女作るなんて、相手にも失礼だよな……)」
やっぱり、自分で説得するしかないか……
「では、この例文の訳を……三船。」
「はい。」
そうだ、今は授業に集中しよう。大事な時期なんだしな。

キーンコーンカーンコーン
「はぁ……もう終わりか。」
授業が終わるのがこんなに憂鬱なのは初めてかもしれない。
「よう、大輝。一緒に帰ろうぜ。」
「あ、ああ……」
いつも一緒に帰ってる友人達と下校する。
何とか話を合わせていつもの様に振舞ったが、その間もずっと麻由お姉ちゃんの事が離れなかった。
もしかしたら、こんな日常ももうすぐ終わってしまうかもしれない。
そんな予感さえしてきてしまった。

「大輝。お風呂沸いたから、先に入っちゃっていいわよ。」
「あ、うん。」
夕飯も食べ終わり、部屋でテレビを見てくつろいでいた所、麻由お姉ちゃんがそう告げてきた。
昨日あんな事言っていたけど、今の所何もしてこないな……
朝も普通に起こしてきたし。
まあ、今日は気分が乗らない日なのかな。
こういう平凡な日々がずっと続くと良いんだけど……

「はあ……」
頭を洗い終わり、思わず溜め息をつく。
これからの事を考えると溜め息しかでない。
毎日あんな事されたら、本当に何をしてしまうかわからない。
麻由お姉ちゃんはどうしてあんな風になっちゃたんだろう?
ずっと考えているが、検討がつかない。
「どうしてなんだ……?」
何か些細な事が原因かもしれない。
必死に記憶を辿ってみる。

503狂依存 14:2010/10/29(金) 03:21:35 ID:c2Sj2Nz/
「ねえ、お母さん。もうお風呂入っても良い?」
「ん?ああ、今お姉ちゃんが入っているから、もうちょっと待ってて。」
「わかった。じゃあ、すぐ入っちゃうね。」
「うん。」
「………え?」
ふふふ、麻由お姉ちゃんと一緒にお風呂っと。
僕達は夫婦になるんだから、一緒にお風呂に入って裸同士の付き合いをするのは当然だよね。
うん、一分の隙もない正論だ。
「ここ何年か一緒に入ってなかったからなあ。」
最後に入ったのいつだったっけ?
最近は恥ずかしがって一緒に入ってくれないけど、そろそろ一緒にお風呂に入ることぐらいには慣れてもらわないとね。
後何年かしたら、もっとエッチな事する関係になるんだから……
ガラっ
「麻由お姉ちゃん、僕がお背中流してあげるよ!」
「………!」
おっ丁度体を洗っている所だったか。
麻由お姉ちゃん、中学生になってから本当にスタイル良くなったよなあ。
テレビや雑誌で見るどのモデルよりも、麻由お姉ちゃんが一番可愛いよ。
「えへへ、僕も体洗うの手伝ってあげるよ。ええと……」
「………いい加減にしろおおおおっっっっ!!!!」
スコーン
うおっ!洗面器が顔面にモロに……
「ああん、何するの、麻由お姉ちゃん。」
「それはこっちの台詞だ!一体何度言えばわかるのよ!!入ってくるんじゃないって言ってるでしょうがっ!!」
もう、素直じゃないんだから……
「麻由お姉ちゃん、僕たち大人になったらもっと凄い事するんだからこのぐらいで恥ずかしがってちゃ……ぐはっ……」
「いいから出てけっっ!!」
バンっっ!!
「大輝っ!あんた、また何やってるのよっ!」
「ええ?何で姉弟でお風呂に入っちゃいけないの?それに僕達は将来夫婦になるんだし……」
「いつまでも、馬鹿な事言ってるんじゃないの!あんたももうお姉ちゃんと一緒に風呂に入る年じゃないって言っているでしょうが!」
「お母さん!私が出るまでその変質者縛っといて!!もう我慢の限界よ!!」
うーん、相変わらず麻由お姉ちゃんはガードが固いな。
僕は精通まだだから、間違いが起こる事はないのに……
いや早いとこ精通済まして、間違いを起こしたいんだけどね。
「大輝!こっちに来なさい!」
「ちょっ!パンツぐらい履かせて……」
今日の所はこれで退散しとくけど、近い内に一緒にお風呂でエッチな事しようね、麻由お姉ちゃん。

「……あれ?何だこの記憶は?」
おかしいな?こんな事あったけ?
きっと宇宙人とかに植え付けられた、偽の記憶か何かだよな、うん。
「はははは、そうだよな。こんな馬鹿な弟いる訳………」

……
504狂依存 15:2010/10/29(金) 03:23:11 ID:c2Sj2Nz/
ヒイイイィィィィィっっっ!!似たような記憶が、まだまだたくさん溢れ出てくるっ!
あの後しばらく麻由お姉ちゃんが風呂に入ってる間、手錠かけられてたんだっけか!
「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ……」
もうそれしか言葉が出ないです。
ひでえ!酷いなんてもんじゃねえ!
いくら麻由お姉ちゃんの事が好きで好きでしょうがなかったからって、何故あんな事を……
つか、嫁とか夫婦とか何を根拠にそんな事言ってたんだ?
別に結婚の約束もした覚えもないし……
正直、子供の頃の事は変な熱に浮かされていたとしか説明のしようがない。
ああ、麻由お姉ちゃんは何年も僕が今味わっていた様な苦しみを味わっていたんだね……
だったら、今の麻由お姉ちゃんを怒る資格は僕には無いのかもしれない。
「もしかして、あの時の仕返しをされてるのかも……」
いや、だったら男女の関係をあそこまで必死になって迫ってくるのは変だよな。
あんな事されたら、冗談でも好意なんか持つ訳ないし……
うーん、わからない。
とにかく、今この状況をどうするか考えないと
ただでさえ麻由お姉ちゃんは弟の目から見ても美人でスタイルも良いのに、これ以上迫られたら……
何とか説得して止めさせないと。
大丈夫。話せばきっとわかってくれるよ……

ガラっ
「っ!?」
「大輝♪一緒に入ろう。お姉ちゃんが体洗ってあげる。」
「ええ!?ちょっと駄目だよ!」
バスタオルも巻かないで、堂々と入ってくるなんて……
でも麻由お姉ちゃんの裸……
本当に綺麗だな……
「ふふ……何じろじろ見てるのよ。お姉ちゃんの裸そんなに見たい?いいわよ、好きなだけじっくり見て……」
「い、いいから早く出てよ!出ないなら僕が出るから!」
「そんな事言って……本当はお姉ちゃんとエッチな事したいんでしょ。」
ふに
うっ!
後ろから抱き着いて、背中に胸を押し付けてくる。
ああ……おっぱいが直に背中に当たって気持ちいい……
ふにふに
「ふふふ……ほら、もう大輝のち○ぽこんなに大きくなって……やっぱり私に欲情してるんじゃない。実のお姉ちゃんなのに……」
だからこんな事されたら、誰だって反応するの!
「その元気なおち○ちん、私のおま○こに入れてほしいなあ……」
「うっ……!」
麻由お姉ちゃんは手でち○ぽをコキながら、耳元で甘く囁いてくる。
これは悪魔の囁きそのものだ。
「ほら……ちゅっ、ちゅっ……早くぅ……ちゅっ……」
「麻由お姉ちゃん、もう止めよう。お願いだから……ね? 」
「……ちゅっ、ちゅっ……うん?何か言った?……ん、んちゅっ……」
僕の言ってる事を完全に無視して胸を押し当てながら耳元や頬にキスし、手で肉棒をさすってくる。
「ちょっと、いい加減に……」
「こんなに勃起させちゃって……口じゃ拒否しても体は嘘を付けないみたいね。」
そんな、悪役みたいな台詞言わないでよ。
「ふふふ……さあ私がお背中流してあげるね。」
そう言うとボディソープを自分の体中にかけ、泡立たせていく。
やっぱり、そう来るか……
「さあ、行くわよ……ん、んっ……」
麻由お姉ちゃんは僕の背中にたっぷりと泡立たせたおっぱいを押し付け、優しく擦ってくる。
擦れ合う感触が本当に気持ち良い……
柔らかい乳房と乳首を使い背中を丁寧に万遍なく洗い、手を使って僕の胸の辺りをゆっくりとさする。
「(う……乳首を指で……)」
505狂依存 16:2010/10/29(金) 03:23:57 ID:c2Sj2Nz/
「どう?気持ち良い?ふふふ……こんなにおち○ちん勃起させて……変な我慢したら体に良くないわよ……」
肉棒を指でくりくりと弄り、耳元で囁く。
本当に何が何でも僕に襲って欲しいのか……
「ん……んっ……ほらっ…んっ……早くぅ……お姉ちゃんを犯してえ……んっ……」
もう無理にでも突き飛ばして……いや、麻由お姉ちゃんに怪我させちゃ悪いし……
でも、止めてって言っても聞かないし……とにかく今は耐えるしかないか……
「んっ……ん……もう、背中はこのぐらいでいいわね。大輝、こっち向いて。」
「え?」
麻由お姉ちゃんの方を向くと、またボディーソープを体にかけ泡立たせる。そして……
「んしょっと。ふふ……」
「ちょっとっ!何……」
今度は真正面に向かい合ったまま、乳房を僕の胸に押し付けてきた。
うう……この態勢はやばすぎるだろ……
「はあ……んっ……大輝の胸もこんなに逞しくなって…んっ……んっ…」
「お姉ちゃん、この胸で思いっきり抱かれたいな……んっ……んちゅっ……」
僕の胸をおっぱいで擦りながら、顔にキスしてくる。
その快楽は豊満な乳房がもたらす快楽と連動して凄まじい物であった。
「ん、んく……ちゅっ…大輝……愛してるわっ…ちゅっ……お姉ちゃんはあなただけがいればいい……ん……ちゅっ…」
「麻由お姉ちゃん……僕だけがいればいいなんて悲しい事言わないでよ……」
もし本気で言ってるのだとしたら寒気がしてくる。
どうしてだ。何でそこまで……
「あん……大輝のおち○ちん、少し萎えちゃったね……また勃たせないと……」
「ん……んっ……お姉ちゃんの手でまた元気にしてあげる。……んっ……」

う、また手でコキ始めてきた……
泡でヌルヌルと滑りやすなった柔らかくてしなやかな指が、陰茎を優しくさすり、肉棒を徐々に膨張させる。
「うふふ……また大きくなった……ねえ?これ、お姉ちゃんのおま○こに入れて欲しい?」
僕のち○ぽを軽く握りながら尋ねてきた。
「…(ぶんぶん)」
目を瞑り爆発しそうな欲情を必死に抑えながら、首を振る。
もう、早くイカせて……
「『僕のおち○ぽを麻由お姉ちゃんのおま○この中に入れて下さい』ってちゃんと言ったら入れてあげる。言わなきゃ入れてあげない。入れたかったら、自分で入れるのね。」
うう……この言葉責めは本当にきつい……
耳元で囁かれる麻由お姉ちゃんの言葉一つ一つが、理性をどんどん破壊していく様な感じだ。
むにゅっ。
「ほら……この逞しい肉棒で……んっ…エッチなお姉ちゃんのおま○こを早く犯してえ……ん、ほら……」
太股でち○ぽを軽く弄りながら、おっぱいを僕の胸に押し付けて擦り、耳元で挑発していく。
麻由お姉ちゃんは言葉責めと軽い愛撫で焦らしながら、僕の理性を徐々に破壊して襲わせるつもりみたいだ。
どうやらこのままイカせるつもりは無いようだな。
「はやくぅ……んっ、お姉ちゃんの処女膜ぶち破ってえ……あっ、うん……」
「(このままじゃ埒があかないな……)」

「あん……ん、んちゅっ……ちゅ、お姉ちゃんのおま○こ……ちゅっ…いつでも大輝のおち○ちん……ん、ちゅっ…受け入れる用意出来てるわよ……ちゅっ、ちろ……」
「麻由お姉ちゃん、ごめん!」
「きゃっ!」
僕は麻由お姉ちゃんを抱きしめると、そのまま肉棒を麻由お姉ちゃんの体に押し付け、強引に肉棒を擦る。
このまま、一線を超えるよりはまだマシな筈……
「あんっ!ちょっと……やんっ!あっ……」
流石に驚いたのか、ちょっと悲鳴を上げ、苦しそうな表情をしている。
「(ごめんね、ごめんね……)」
心の中で何度もそう呟きながら、姉の体を押し付け無理矢理絶頂させようとする。
麻由お姉ちゃんの体をこんな風に使うなんて……
もしかしたら嫌われちゃうかもしれない。
そんな恐怖感を覚えながらも無我夢中で行為に没頭する。
「あんっ!ちょっ、あん……やっ……あっ、あんっ!」
先ほどの余裕に満ちた表情から一転して苦しそうな顔をして、喘いでいる。
506狂依存 17:2010/10/29(金) 03:24:58 ID:c2Sj2Nz/
本当にごめん……
麻由お姉ちゃんのお腹のあたりでバンバン押し付けられた肉棒は、柔肌の心地よい感触の刺激によって徐々に爆発寸前になっていく。
「(うう……出る…)」
「あんっ!はっ!やんっ、あん、は……」
どぴゅっっ!!どぴゅるるるっっっ!!
そのまま、絶頂に達し射精する。
焦らされていたせいか、かなりの量だ。
「(一滴も残らず出し切れよ……)」
どぴゅっっ!!びゅくるるるっっっっ!!!びゅくるる……
ようやく収まり、少し安堵する。
吐き出された精液は主に麻由お姉ちゃんの胸の辺りにかかったようだ。
他にも方法はあったかもしれないけど、何とかこの場は凌いだかな……
とにかく麻由お姉ちゃんの思い通りにはならなかった。
「はぁ…はぁ…ごめん……」
「はぁっ、はぁ……もう……どうせなら、私のおま○こに入れちゃえば良かったのに……」
流石に呆れた表情をしているな。
「さ、早く洗い流して出よう。」
シャワーを出して、二人の体をざっと洗い流す。
流し終わったら、湯船にもつからず、ずっと不満そうな顔した麻由お姉ちゃんを残してすぐにお風呂から出た。
「(あんな顔させちゃって……)」
本当に悪い事をしちゃったな……
例えあんな風になっても、大好きな姉にあんな顔させてしまったのはやはり後味が悪い。
嫌われてなければいいけど……
そう思いながら自室へと篭った。

うう……さっきのは傍から見たら凄くかっこ悪かったかもしれん……
でも、あの場ではあれしか思いつかなかった。
強引に突き飛ばして、麻由お姉ちゃんに怪我させる訳にはいかないし。
そうだよ、あんなに綺麗な体に傷を付ける様な事あってはいけない。
大好きな麻由お姉ちゃんの体に……
でも麻由お姉ちゃん、本当に綺麗だったな……
あの綺麗な体を本当に僕の物にしていいのかな……
麻由お姉ちゃんの体……
欲しい。
嫌、駄目だ。
でも欲しい。それにあの体を他の男に渡したくない。
駄目だ、駄目だ!実の姉なんだぞ!
でも生まれた時からずっと大好きだった。
それに本人だって好きにして良いって言ってるじゃないか。
でも……
いや一回だけなら
一回だけでもあの体を思いっきり犯してみるのも……
お姉ちゃんと麻由お姉ちゃんとセックス……
きっと凄く気持ち良いんだろうな……
いつ襲っても良いって言ってたな。
なら、今からでも……
大輝「って!何考えてんだよ!」
駄目だ、駄目だ!
今の麻由お姉ちゃんとは絶対に一線を超えちゃいけない。
超えたら、取り返しがつかないことになる。そんな気がしてならない。
「落ち着け……落ち着け……」
何とか気を静めないと……
そうだ、学校の課題が結構出てるんだった!
それをやらないと。
そう言い聞かせて机に向かった。
507狂依存 18:2010/10/29(金) 03:25:58 ID:c2Sj2Nz/
ふぅ……もうすぐ終わるな。
気を紛らわせる為、ひたすら課題に集中した所、思ったより早く終わりそうになった。
大気「(課題が終わったら、次は何をしよう……)」
とにかく何でもいいから、何かに没頭して麻由お姉ちゃんの事をしばらく忘れたい。
ゲームでもやるかな……

コンコン
「!!はい。」
「大輝、飲み物持って来たよ。」
「あ、ありがとう。」
良かった……嫌われてはいないみたいだな。
「ふふふ……頑張ってるみたいね。」
「あの……さっきは、本当にごめんね。痛くなかった?」
「別に謝らなくてもいいわ。言ったでしょ?大輝のして欲しい事は何でもしてあげるって。むしろ初めて大輝から私で気持ち良くなってくれて嬉しいぐらいよ。」
いや、気持ち良くなる為とかそんなじゃなかったんだけどな。
「ふふふ、でもあんなにおち○ぽを私のお腹でぎゅうぎゅうして……ちょっとお腹が痛いかなあ……」
うっ……やっぱり。
「ご、ごめん!本当にごめんね!大丈夫?まだ痛むかな?痣とか出来てない?だったら、何か湿布でも……」
「もう、謝らないで良いって言ってるでしょ。大丈夫よ。それに私、大輝が喜んでくれるならどんなに苦しい事や痛い事だって、喜んで受け入れてあげる。」
でも、痛い思いをさせちゃったのは悪いし……
「本当にごめんね。もう二度とあんな事はしないから……」
今度やられたら、また別の方法を考えないと。
「もう、そんな顔しないで……我慢できなくなったらいつでも私の体自由に使ってくれて良いのよ。私をあなた専用の性欲処理の肉便器にしてくれて良いんだから。」
「肉便器だなんて、冗談でもそういう事は言わないでくれよ……」
大好きな姉がそんな卑猥な言葉を平気で使うのは、良い気分がしない。
「冗談なんかじゃないわ。むしろ私をそうやって使ってくれて喜んでくれるなら私も本当に嬉しいんだから。だから、ね……」
ちゅっ。
「いつでも私を犯しに来てね……待ってるから……」
頬にキスした後、僕を抱きしめ耳元でそう囁く。
この囁きは本当に色々とヤバイ。
「じゃあ、勉強の邪魔したら悪いからもう行くね……お休みなさい。」
バタン

「………」
今日の所はこれで終わりか……
でも、本当に何であんな風になってしまったのだろう。
原因を何とか突き止めないと。
でないと近い内に本当に麻由お姉ちゃんと……
そう考えながら再び机に向かった。
508狂依存 19:2010/10/29(金) 03:26:40 ID:c2Sj2Nz/
バタン
「ふ……ふふふふ……上手くいったわ。」
これでもう、あの子は少なくとも今日みたいに私を犯す前に私の体の一部を使って強引にイクような真似はしない。
だって、大輝は私の痛がるような事は絶対にしない優しい子だもん。
ちょっと痛がっただけで、あんなにオロオロして謝って……本当に私の事を大事に思ってくれているのね。
「あの子の優しさを利用するようで悪いけど……」
でもこれは私たちが結ばれて愛し合う為に必要な事。
二人の幸せの為に必要な事なのよ。
それに……
「もう少し、もう少しね……」
お姉ちゃんにはわかるわ。
あの子が本気で私とセックスしたいと思い始めてるって……
さっきあの子を抱いた時、直感的に確信したもの。
「お姉ちゃんはあなたの事何でもわかっちゃうのよ……」
あの子はもうすぐ私を愛してくれる。
もうすぐあの子と結ばれる……
フフフ……今日にでも襲われて処女を奪われちゃうかしら。

「あん、想像しただけで……ふふ、もう……」
あそこに手を伸ばし、軽く自慰を始める。
「あんっ……んふ…楽しみだわ……ん……」
大輝は本当に優しい子。
今も昔も私の事を一番愛して、一番大事にしてくれるのはあの子だった。
今日だって、私に怪我させない為に突き飛ばしたりして強引に追い出そうとしなかったし、さっきもちょっと痛がっただけであんなに済まなそうな顔をして謝って……
「あんっ……んっ……それに引きかえ、昔の私は……んっ、あんっ……」
昔の私は、あの子がちょっとでも私に触れようとしただけですぐ暴力振るったり、暴言を吐いたりして傷つけたり、本気で見下して馬鹿にしていた。
姉を名乗る資格すらない、本当に酷いお姉ちゃんだった。
弟の事なんか少しも考えず、自分の事しか考えてなかった生きてる価値もない醜いゴミクズ以下の女だったわ……
本当にごめんね。でも……
「でも、今の私は違うのよ……」
今はあの子の事を一番に愛して、あの子の幸せを一番に願うお姉ちゃんに……女になったから……
あの子の為に身も心も何もかも全てを捧げる事のできる麻由お姉ちゃんになったから。
「あんっ……はん、あふ、だから……あっ、んふっ……ふんっ……」
だから、もう安心して。
あなたを傷つける麻由お姉ちゃんはもういないわ。
二人で結ばれて永遠に幸せになりましょう。
「だから……あん、はふっ、早くぅ……あんっ!私を犯しにきてえ……はんっ!」
今すぐにでも私の部屋のドアを蹴破って、私を獣みたいに犯して貪り尽くして!
「ふっ、ふふふ……あはははっ……あっははははははっっ!あっはっはははは……」

509 ◆wBXWEIFqSA :2010/10/29(金) 03:27:48 ID:c2Sj2Nz/
今回は以上です。
510名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 11:53:16 ID:vDO6rKGv
>>509
GJ!

好きだって言いまくって、相手が落ちた時には本人は正気に返ってるなんて、
ここではあまり見ないパターンですね
頑張って下さい
511名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 19:24:53 ID:sPvDg0dx
GJ
待ちわびてたぞ
512名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 20:41:33 ID:CjWsRCKS
ぉぉ、キモ姉分が満たされていくGJ…!
513名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 22:14:04 ID:+MiY5pwD
ホント、お姉ちゃんに何があったんだろう・・・
514名無しさん@ピンキー:2010/10/29(金) 23:17:29 ID:fVfzp7PD
515名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 00:01:46 ID:hyh+LeOh
                         イ´ : : : : : : : `丶、
                     /: : : : :}: : : : : : : : : : : : :\
                    /: : :/ : /| {: : : : : :\ : ヽ : : ヽ
                      /: : :/ : /  |: | \ : : : :/>:ハ: : : :!
                   i: : : |i / 、八{  \:</: :./| : : i|
                   | i: : |/ 斗=ミ-ヘ 、_ 斗=ミく/| : : i|
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                   |八: |}' 弋/(ソ     弋/(ソ / : ;イ:|
                    (,小 "::::::    '    "::::::厶イ人|
                    __ノ: j人             / : 八: :\
                  ` ー'7r| ̄ ̄|    ⌒     / : /::::: :ト、_>
                       /: 」   |:>; .__.. イ/ : /:::::::: :|
                   /:/)/⌒Y|_;_;}   r'/ : 厶-=ミ::|
                  /:r',ニフ| 保 |:|∠  ー// : //  `ヽ
                 /: :〈'´/)|  ||:レー、/ / : /´     }
                 / : : : ∧ ,イ:| 守|:| o / / : /       /l
                 / : :/ /{ハ. |::|   |:|_,∠__/ : /      /:│
             : : / : :/ ヽrh|::l . .|:匸} / : /| /     /):│
            /: : /: : :.厂 ̄ノノ厶jヘ、|」く\| : :ト∨    / } :│
              /: : /: : : :{ア/{〈 `ー   `}\| : :|/____    l: : |
          i : :/ : : : / ´  \ー__,,ノi:i:i人:〔_      ̄\i: :│
          | :/{: : : /     /  〈 (i_i:」シ  \/ ̄ ̄ ̄∧ 〕.:│
          ∨人_ハ|     /   \       丶、  / ̄リ: :
516幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:33:00 ID:c6XKT+pu
こんばんは。
表題について、投下いたします。
517幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:33:21 ID:c6XKT+pu
お兄ちゃんと私は、母さんに私達の思いを伝えるって約束をした。
だからといって何かが変わったわけではないと思う。
お兄ちゃんのご飯を作って、居間の掃除や洗濯物を干す。
夜になると私はお兄ちゃんに抱っこされながらテレビを見ている。
最近はライオン(ぬいぐるみ)のトラも一緒だ。
そんな私達を姉さんがにこにこと見守る。
その、偶に姉さんに隠れてこっそりキスとかもするけど……。
ほとんど変わっていない、でも私の心は今までとは別。
今まで私は家事や食事を作るのはお兄ちゃんに必要とされたいからという思いがあった。
だから、お兄ちゃんに見放されるような事をしないようにしないと、という恐さと焦りがあった。
でも今は違う、お兄ちゃんはそんな事を望んでいないんだって信じられる。
そして、私は大好きなお兄ちゃんを喜ばせられる事をしようって考えられるようになった。
今こうやって夕飯を作っている時だってそうだ。
もう私は昔みたいにお兄ちゃんが突然帰ってこなかったらなんて不安に思ってはいない。
お兄ちゃんが早く帰ってきてくれて、私のご飯を褒めてくれないかなって思っている。
好きな人のために何かを出来る、それが私にはたまらなく嬉しい。
518幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:33:44 ID:c6XKT+pu
ただ、一つだけ気になるとすれば姉さんにまだ私たちの約束を教えていない事。
その事を言ったら、じっと考え込んだ後にお兄ちゃんから話すのでまだ黙っていて欲しいと私に告げた。
いつものお兄ちゃんと姉さんの事を考えるとちょっと変な気がする。
でも、お兄ちゃんがそう言うのだから、きっと理由があるのだと思う。
そういえば、姉さんは今の私達の関係をどう思っているのだろう?
姉さんは、私がお兄ちゃんの事をどう思っているのかな。
私がお兄ちゃんを取っちゃって怒ったりしてないよね?
怒って私からお兄ちゃんを取り上げたりなんて、昔みたいに……。
馬鹿馬鹿しい、姉さんがそんな事する訳がないじゃない。
だって家族なんだもの。
何考えているんだろう、私?
優しい姉さんがいて、大好きな兄さんと一緒。
これよりも私の望む事なんて無いはずなのに。
こうやって一人で居ると、ちょっとだけ不安になった。
うん、お兄ちゃんが帰ってきたらいっぱい抱き締めて貰おう。
そうすれば、きっとこんな気持ち直ぐに忘れられるから。
519幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:34:10 ID:c6XKT+pu
*******************************************

「はい、じゃあ最後にこれね」
雪風が楽しそうに手提げの紙袋を渡す。
「おい、もうそろそろ限界なんだが」
「あはは、兄さんならあと4袋ぐらいはいけるよ〜?」
楽しそうに雪風が答える。
毎年夏の終わり頃になると母さんから妹手当てという謎のお小遣いがシルフと雪風には振り込まれる。
何でも、女の子は良い物を着て何ぼなんだから、しっかり着飾りなさいという趣旨だそうだ。
で、これを使って秋冬物を調達するのが御空路姉妹の伝統行事だ。
過保護すぎる気もしないではないけど、まあ不在中の家のあれそれを全部やらせてる負い目もあるのかもな。
(……ところで、毎年この季節になると「サービス料(妹)*2」という名目で俺の貯金が引き落とされているのは何故だ?)
ただシルフは雪風に色々と服を試着させられるのを嫌がっていつも来ない。
代わりに雪風がシルフの分も選んでおいてくれる、その服がちゃんとシルフに似合うのだから目利きは大したものだ。
けど、シルフの服を選びながらサイズ表記を見て悔しそうに歯軋りするのは家族として止めて欲しいとも思っている、うん、怖くて言えないけど。
まあそんな訳で、この時はいつも雪風と荷物持ちの俺の二人きりになっている。
520幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:34:31 ID:c6XKT+pu
買い物を終えて、二人並んで道を歩いていると雪風が俺に尋ねた。
「ねえ兄さん、周りから見ると私達は何に見えるかしら?」
なんともベタな質問をしてくれるな、と内心呆れ返りながら答える。
「デート帰りの恋人」
その答えが気に入らなかったらしく雪風が拗ねた様子で抗議する。
「むぅ、兄さんは女心を分かってるけど、全然分かってないよ。
 そこはわざと鈍感を気取って兄妹じゃないかな〜って言うところだよ?」
「それじゃ、そのまんまだろうが!!」
「だから、そこで私がただの兄妹はこんな事出来ないよって言いながら、
 兄さんにキスをするんじゃない、分かってないな〜」
「いや、分かってないのはお前のTPOだからな!?
 ここは公道だからな、市区町村道だからな、パブリック・ストリート・イン・ジャパンだからな!?」
本当に大事な事なので3回言った。
「話は変わるけど、その櫛は止めておいた方が良いわ」
俺の絡み辛いボケを無視し、雪風がごちゃごちゃとした手提げ袋の中から小さな紙袋をすっと取り出す。
「ん、見られてたのか?」
紙袋の中身はさっきの買い物の時、便所(大)と元気よく言い残して抜けた後に全力疾走で買ってきた和櫛だ。
因みに食事中だったので、その後、笑顔の雪風からデート時のマナーについて2時間近いお説教を頂戴した。
521幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:34:54 ID:c6XKT+pu
いいえ、でも大体分かるわ。
 普段の兄さんが私におおっぴらにお手洗いへ、なんて言わないでしょ?
 そういう所の気配りは忘れない人だわ。
 なのに、そんな事を言うのは絶対に私について来て欲しくないって事。
 じゃあ、兄さんが見られたくないものって言えば、秘密のプレゼント位だよね。
 そしてプレゼントの中身は買い物中に自分が使わないのにやけに見ていた櫛に違いないわ」 
「大当たりだよ、大した名推理だ」 
「ふふ、ありがとう。
 でも残念だけどその櫛をシルフちゃんにあげても困らせるだけだよ。
 あの子は髪を梳いたりしないもの、自分の姿を鏡で見るのが嫌いだから。
 それで、いつも手櫛で誤魔化してるの」
「へぇ、そうだったのか。
 その割にはいつも整ってないか、あいつの髪?」
「ええ、あの子のってすごくしなやかだからね。
 同じ女の子としては羨ましいわ」
「雪風の髪だって、全くシルフに見劣りなんてしてないぞ。
 凄く綺麗だ、見慣れてる俺だって、思わずこうやって見ていると見惚れちまう」
そう褒めると雪風は顔を俺から逸らして、嬉しそうに髪を摘んだ。
「ふふ、それでも私にはブラシッシングが少なくとも必要ね」
「知ってるよ、ついでに今使ってるブラシだと毛が引っ掛かるし、纏りがいまいちだっていつもぼやいてるのもな。
 つげの和櫛ってのは良いもんだ、ブラシなんかよりも遥かに目が細かい。
 だから、ちょっと試してみてくれないか?」
「あれ?」
俺は雪風の前に櫛を差し出す。
一方の雪風は間が抜けた顔をする。
「え〜と、じゃあこれは私への?」
暫らくの間きょとんとしていた雪風が、はっと思いついたように言った。
「そうだよ、ま、粗品みたいなもんだと思ってくれ」
「あらあら、豪華な粗品だね……」
雪風が髪を優しく持って、櫛をニ三度梳く。
それから満足そうに頷いた。
「うん、良い感じだよ。
 綺麗に梳けるし、髪も引っかからない。
 ふふ、うれしいわ、兄さんは私の欲しいものをちゃんと分かってくれるんだね」
「でも一番大切なものはくれないのに、か?」
「くす、この前の事をまだ根に持っているのかしら?
 ふふ、兄さんは怖いな〜」
「別に根に持ってたりなんていないよ。
 俺が間違ってたのが分かったから。
 その、この前はごめん、俺が間違っていたよ。
 なのにあんなに酷い事を雪風に言っちゃって、それを謝りたいと思っていたんだ」
雪風は俺の謝罪を聞いて、手元に視線を落とした。
そして、くるくると指で櫛を玩ぶ。
522幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:35:19 ID:c6XKT+pu
「じゃあ、これはお詫びの粗品かしら?
 だったら私は要らないよ、こんなの。
 こんな物じゃ誤魔化されてあげないわ」
さっきまでの上機嫌が嘘のように表情の無い顔をして、ぽいっと俺に向かって櫛を紙くずのように放り投げる。
俺はそれを慌ててキャッチする。
「やめてくれ、落ちたら割れるところだったじゃないか。
 結構高かったんだぞ、これ。
 安心しろって、これはそんな下心のある品じゃないよ」
「だったら、それは何なのかな?」
雪風が警戒心を露にしながら聞き返す。
「プレゼントだよ、別に特別な意味なんて無い。
 大切な人には贈り物をするっていうのが相場だろ? 
 まあ、いらないって言うなら」
そう言って手提げに戻そうとする俺の手を雪風がさっと掴む。
そして、俺の手元から櫛を奪い取ると大切そうに両手で持った。
「だ〜め。
 兄さんからのプレゼントだって言うならちゃ〜んと頂くわ。
 ありがとう、兄さん、嬉しいよ。
 くす、誰からの入れ知恵かしら、圭さんかな?」
「……それは内緒だ」
昼に学食のテレビで見た倦怠期の中年夫婦特集とは流石に言えない。
ありがとう、み○さん。
「ねぇ、それならこの前のお詫びには何をしてくれるのかな?
 この櫛よりももっと良いものだよね、ひょっとして兄さんを貰えるのかしら?」
雪風がこの前のような物欲しそうな目で俺を見つめる。
「え?」 
「あはは、冗談だよ。
 本当に、兄さんって本当に一緒に居ると心地良いわ。
 だめだよ〜、も〜、そういう顔をされると余計に兄さんが欲しくなっちゃうじゃない」
「"欲しい"か?」
「そう"欲しい"だよ」
雪風は当たり前のように言った。
523幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:35:41 ID:c6XKT+pu
俺にはその雪風の言う欲しいっていう感覚が良く分からない。
今の俺にはシルフが居るし、あいつの事を考えるとそれだけでも幸せになれる気がする。
けれど、その感覚は雪風の言う、欲しいという思いとは何かズレがあるように感じる。
「欲しいって言うのは、愛してるっていう事とどう違うんだ?
「くす、それを私が教えると思うの?
 そんな事をしたら、唯でさえ不利なのにもっと不利になっちゃうわ」
「……そうだった、俺達は賭けをしているんだったな。
 じゃあ答えないままで別に良いんだ、悪かった」
「ああもう、兄さんったら素直なんだから、少しは食い下がってくれないと面白くないじゃない。
 ふふふ、でも良いよ、プレゼントのお返しに特別に教えてあげるわ。
 そうねぇ、どういう風に言えば良いのかな〜?」
人差し指を顎に当てて、意地悪っぽく俺を見つめながら雪風が悩む。
「そうね、例えば兄さん。
 シルフちゃんに兄さん以外に好きな人が出来たら、兄さんならどうする?」
おい、いきなり何を言いやがりますか、この妹は。
「いきなり最高に嫌な事を言ってくれるな?」
「あはは、そんな予想通りの嫌そうな顔をしないでよ。
 だから例えばの話だよ、例えばの。
 そういう時、兄さんならどうするの?」
「そうだな、もしもそいつがシルフで遊ぶ積りだったら、×す。
 何処で誰と何をしてようと引きずり出して、バラバラにしてやる」
俺の答えを聞いて雪風の笑顔がぎこちなくなっていた。
というよりも若干引き気味だった。
「兄さん、真顔でそんな事を言われると流石に物騒すぎるよ……。
 はぁ、兄さんってば本気なんだから、頭が痛いわ」
「大丈夫だ、むしろシルフは喜ぶ」
「ええ、良く分かってるわ。
 兄さんがそういう事を言えば、絶対シルフちゃんは嬉しそうに顔を真っ赤にするわ。
 ええ、ええ、お似合いね、……このバカップル。
 そうね、じゃあ、本当にその人がシルフちゃんを大切に思う人だったら?」
「そうだな……、まあ、またシルフのお兄ちゃんに戻るって所かな?
 多分、3回くらいはそいつを全力で殴らせて頂くが」
因みにその3回は……
「顔面に一つ、みぞおちに一つ、最後に股間に蹴りを一つ、だね?」
雪風がびしっ、と人差し指を上にあげながら言い当てる。
524幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:36:09 ID:c6XKT+pu
「だから何で言わなくても分かるんだよ」
「ふふ、秘密だよ〜。
 じゃあ、それはどうしてかな?
 兄さんの言うとおりにしたら大好きなシルフちゃんと別れちゃうんだよ?」
「シルフの悲しい顔なんて見たくないからだよ。
 例えそれが俺に向けられていなくても、シルフには笑っていて欲しいんだ」
「ふふ、正解、模範的な解答ね」
「悪かったな、俺は優等生なんだよ、通信簿見りゃ分かるだろ。
 で、この不愉快な問題がさっきの違いとどう関係あるんだ?」
「それが愛しているって事じゃないかな?
 今兄さんが言ったみたいにその人の事が大好きで、
 自分の幸せよりもその人の幸せを優先したいって本気で思える事、私はそう思うよ」
「じゃあ、お前の欲しいって言うのは何なんだ?」
「愛してる、の逆かな? 多分。
 好きな人を不幸にしてでも、自分の物にしたいって事だよ。
 兄さんがどんなにシルフちゃんのことが好きでも、何かしたい事があっても、
 それでも、私から離れるのならそんなのは許さないっていう気持ちが私には有るの」
「許さないか、まるで物か動物扱いだな」
「ふふ、本当に兄さんったら酷い扱われ方だよね。
 でも仕方ないかな、本当にそう思っているんだもの。
 兄さんが私の手元に残ればそれで良いわ。
 大事な事は最後にどんな形でも兄さんが私の物になっている事、
 その時に兄さんが私を憎んでいても構わない。
 私以外の何かや誰かを愛していても気にしない。
 例え、私の隣で兄さんが絶望していても泣いていても、私は兄さんが居る事だけで満たされる」
人差し指の先を唇に軽く触れさせながら、雪風は蠱惑的な笑みを浮かべる。
「ふふ、むしろ私はそういう兄さんを力ずくで捻じ伏せたいのかも。
 捻じ伏せて抜け殻になった兄さんなら私から離れたりなんて絶対に出来ないんだもの」
「それは、好きな人に想いが二度と届かなくなるって事だぞ。
 そんな事をしたら雪風が一番辛くなるんじゃないのか?」
「うん、兄さんみたいな優しい人にはそうだよ。
 私はそうじゃないっていうだけの事、多分だけどね」
多分、ともう一度雪風が繰り返す、優しい顔だった。
それから少し困ったような顔をして暫らくの間、俺を見つめた。
「……でも、私は兄さんが好きでもあるから、
 兄さんが自分から私の物になってくれるのが最高なんだけどな〜」
雪風が甘え声を出して、右腕に体ごと抱きつく。
そして、俺の顔を見上げる。
525幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:36:35 ID:c6XKT+pu
「だからねぇ、兄さん。
 雪風の物になってよ〜?
 そしたら、私は兄さんの為に何でもしてあげられるよ。
 兄さんの事だってシルフちゃんよりも私の方が分かるし、気持ち良いよ。
 初めは物足りないかもしれないけどすぐに私以外何も要らないって分かるようになるわ。
 だから、ね、雪風の物になろ?」
そう言って楽しそうに誘う雪風は期待に溢れていた。
「ごめんな、雪風。
 それはできないよ」
「そう、残念だわ」
「本当にごめんな、こんな中途半端な言い方しか出来なくて」
ぱっ、と俺の腕から体を離して笑う。
「ふふ、良いの、私だって分かってたけど言ってみただけだよ。
 けど残念ね、雰囲気に流されてくれないかな〜、ってちょっとだけ期待してたんだけど。
 ふふ、欲しいな〜♪、兄さんが欲しいな〜♪、兄さんと失楽園したいな〜♪、な〜な〜な〜♪」
雪風があさっての空を見上げながら色々と危ない事を歌う。
ブロック塀の上で寝ていた猫が釣られて、な〜♪、と鳴く。
ご近所に聞かれたら明日から外に出られないのは必至だ。
「止めんか、ご近所の噂になっちまったらどうする気だ?」
「ふふ、そうしたら二人だけで愛の逃避行だね」
雪風が悪びれずに答える。
「ったく、何だか今日はやけに機嫌が良いんだな」
「くすくす、そうだね。
 今の私は複雑な気分かな、今日も兄さんに振られちゃったもの。
 でも、大好きな人から贈り物を貰うと誰だって不機嫌にはなれなくなるわ。
 特にそれが自分にぴったりの物だったりするとね」
「そういうものなのか?」
「そういうものなの!!
 女心は複雑なんだよ〜」
「だろうな、俺みたいな単純馬鹿には難しすぎるよ」
それを聞いて、雪風が笑った。
526幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:36:59 ID:c6XKT+pu
ふふ、そうそう、ところで兄さん?
 さっき私が言ったみたいにシルフちゃんが兄さん以外を選ぶなんて有り得ないから心配しないでね?」
「別に本気で信じちゃいないさ」
「くす、あの子は兄さんしか見てないから。
 あの子は兄さんの中に居て、兄さんを通してでしか外の世界を受け入れられないわ。
 だから、兄さんの居ない世界も兄さん以外が居る世界も初めからあの子には有り得ないの」
「もしそうだとしたら、随分と不健康な世界だな。
 でも、あいつはお前の事も間違いなく信頼しているよ」
「それは兄さんが信頼している本当の妹だからだよ。
 もし、私がそうじゃなかったらあの子は私の事なんて相手にもしないわ」
「そんな事は無いよ。
 雪風はシルフの大切な姉さんだ」
「ふふ、兄さんが言うなら少しだけ信じてみようかな。
 それから分かってると思うけど、今日言った事は全部シルフちゃんに言わないで。
 特に、二人で失楽園だなんて絶対に言っちゃ駄目だからね。
 本気で切れたあの子って容赦が無いのはよく知ってるでしょ?」
雪風が真剣な顔で念を押す。
「バラバラなんて甘いものじゃなくて、
 ぐっちゃぐちゃに潰されて中身をずるずる引き出されちゃうわ」
俺はその物騒な言い方に呆れてしまった。
「あのな、お前の中のシルフってエイリアンか何かかよ?」
「くす、内緒だよ〜」
「……ま、何にせよ言うべきじゃないのは確かだな。
 うん、こんなきな臭い話は俺達、二人だけの秘密だ」
「うん、私達だけの秘密だね」
二人だけの秘密、という言葉に雪風が嬉しそうな反応を見せる。
527幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:38:07 ID:c6XKT+pu
「さあ帰りましょう。
 今頃はシルフちゃんが玄関でうろうろしながら待ってるわよ?
 いきなり飛び掛られて頭を打ったりするかもね」
「っぷ、おいおい、何だよそれ?
 それじゃあ、ご主人様を待ってる飼い犬みたいじゃないか。
 ったく、シルフに怒られるぞ、くっくっく」
そう言いって俺は笑う、雪風もつられてあははは、と楽しそうに笑う。
あの日、シルフに告白をしてから全てが楽しい。
何でだろう、義妹で婚約者のシルフの閉じ切った心や血の繋がった雪風との歪んだ関係、物騒で重い話をこんなに引きずっているじゃないか。
なのに、俺はシルフの事が大好きで、雪風とは何も変わらずにこうやって笑い合えている。
「なあ、雪風。
 俺達はこれからもこうやって、いつまでも笑っていられるんじゃないか?」
「あははは、兄さんはやっぱり楽天家だね。
 兄さんは、色んな事を甘く見過ぎだよ?
 でも、そんな兄さんと居るのが私には楽しいわ」
「ははは、ありがとよ」
「くす、愛しているわ、兄さん」
雪風が手にした櫛を胸元でぎゅっと握りながら言った。
それはとても自然で何気ない一言だった。
「えっ」
何気無い一言の筈なのに、どきりとした。
528幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:39:18 ID:c6XKT+pu
「くす、言い直してあげたりなんてしないわ。
 さ、早く帰ろう」
雪風がまた俺の腕を掴んで体を寄せる。
暖かくて柔らかい感触が俺へ伝う、何だか心がそわそわとする。
その時、捨てられた子犬のような悲しい目で俺を見つめるシルフの顔が浮かんだ。
いや、違うぞ、シルフ。
別にこれは浮気とかじゃなくてだな、そう、ただの家族のスキンシップだ。
決して、いやらしい気持ちなんて微塵も無いからな。
いや、そもそも雪風とは兄妹だか。、
って、シルフともただのスキンシップなの、だと?
だから、そういう意味じゃ無くって、何ていうかだな。
頭の中で苦しい言訳を繰り返している俺を見つめながら雪風がくすくす笑い、人差し指を口元に持ってくる。
これもナイショだよ、というジェスチャーの積りなんだろう。
そうだよ、完全にお前の想像どおりだよ、ああ、くそ、と心の中で毒づく。

家に帰ってみるとシルフが落ち着き無くうろうろしいた。
そして、扉を開けた途端に嬉しそうに俺へ抱き付く。
その拍子に俺は後ろに盛大にこけて、雪風の予想と寸分違わず頭を打つ。
シルフがおろおろしながら、俺の頭を撫でる。
雪風があははは、と笑いながらそんな俺達を母親のような目で眺めていた。
529幸せな2人の話 9:2010/10/30(土) 00:40:33 ID:c6XKT+pu
以上です。
ありがとうございました。
実の所、大筋は出来ているのですが、
細かい展開についてどうしようか少し悩んでいます。

また次回もよろしくお願いいたします。
530名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 01:05:58 ID:CiZ/SmrD
GJ
雪風さん邪魔しないであげて・・・
531名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 01:15:48 ID:luQyGp1k
雪風の今後が楽しみでしかたない
532名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 15:43:56 ID:lDqgt1s8
>>529
GJです。雪風カワイイ
しかし、幸せな2人の話の作者さんは速筆ですなぁ。尊敬します
533名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 19:51:23 ID:alwjGZ09
534名無しさん@ピンキー:2010/10/30(土) 20:55:26 ID:plszCoCK
13kmや
535名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 06:55:03 ID:koqGq7bd
13キモ?

シルフちゃんかわいいよう
536 ◆F2m7zMMHISUy :2010/10/31(日) 16:28:37 ID:CCsla9Lu
ハロウィンらしいので短いのを一つ投下します
細かいことは気にしないでください
537ハロウィンもの  ◆F2m7zMMHISUy :2010/10/31(日) 16:30:49 ID:CCsla9Lu
ピンポーン…
チャイムを押してしばらく経つと私の目の前の扉が開いた。
そして玄関から女の人の顔が見えた瞬間私達は叫んだ。

「「トリックオアトリート!」」

そう、今日はハロウィンの日である。だから私たち兄妹はこうして近所にある女子大生が住むアパートまで来ているのだ。
一瞬驚いたような顔をした女はすぐに状況を把握したようで、ちょっと待っててねと言うと部屋の奥へと戻っていった。
「はーい!おかしだよー」
戻ってきた女が私にコンビニで売られているようなチョコのお菓子を一個手渡し、すぐにお兄ちゃんの方を向くとこんなことを言い出した、
「ごめんね、お菓子これだけしかなくってー」
すると、なんということか!さっきまでどんなお菓子がもらえるのかとわくわくしていたお兄ちゃんの顔はみるみる曇っていった。
このクソ女はお兄ちゃんをこんなに悲しませやがって!メラ食らわして一生人に見せられないような顔にするぞ
私がそう思っていると女はさっきの申し訳なさそうな声音から一転、猫なで声でこうものたまった、
「だ、か、ら、お姉さんの体中に好きなだけいたずらして〜」
そうして上着に手をかけた女は――
「アギダイン」
火だるまになっていた。
突然焼き豚になった女を見てオロオロするお兄ちゃん、かわいい。
「お姉さんが火に…それに、杖から…なんか…火の粉みたいのが今…」
やっぱり見られてたか、こういうところだけは鋭いお兄ちゃん。
「凄い手品でしょ!今日の私は魔女だからちょっと凝ってみたんだー」
そういってにっこりとお兄ちゃんに微笑む私。
「じゃあ次はお隣さんだね!」
お兄ちゃんはまだ焼き豚が気になっていたようだが、誰よりも信頼する妹の言葉を信じないはずもなく、
「そうだね!次に行こうか!」
今度こそは貰えるだろうと、期待に胸を膨らませた満面の笑みで返してくれた。
538ハロウィンもの  ◆F2m7zMMHISUy :2010/10/31(日) 16:31:24 ID:CCsla9Lu
そうして魔法使いの格好をした私たち二人は隣の部屋の前まで移動し、チャイムを鳴らした。

結果から言うとここでもまったく同じことをされた。だからお隣さんも炎の魔法で焼き豚さんにしてあげた。
お兄ちゃんを悲しませた上に色目を使ってくるんだ、当然の報いだよね!

さらに付け加えると、アパートの一階に住む女全員が同じ手を使ってきた。
そいつらもあらゆる炎の魔法を使って処分した。

私たちはアパートから少し離れると、私は今にも泣き出しそうなお兄ちゃんに言った、
「今日はもうおうちに帰ろ…」
首だけで返事をするお兄ちゃん。
まだ2階が残っているが部屋を回っていく元気はお兄ちゃんからは完全になくなってしまっていた。


昨日の夜、「今年は近くに女子大生のアパートが出来たからたくさんもらえるぞ」
「女の人は甘いものが好きだからきっといつもは食べられないようなおいしいお菓子を持ってるはずだよ!」
「それにあそこのお姉さんたちいつもぼくたちにやさしくしてくれるし」
と、楽しそうにしていたお兄ちゃんは見る影もない。


お兄ちゃんが踵を返して家に帰る道を向いたのを見計らって、
「メラゾーマ」
アパートごと燃やした。
お兄ちゃんを悲しませ、誑かそうとする女はまとめて処分しなきゃ…

539ハロウィンもの  ◆F2m7zMMHISUy :2010/10/31(日) 16:32:25 ID:CCsla9Lu
「お兄ちゃん、これあげる」
帰り道、そういってお兄ちゃんにさっき貰ったお菓子を手渡した。
間接的にもあの女達からもらったようなものをお兄ちゃんの口には入れたくはなかったけど、
私はお兄ちゃんの良きパートナーだ、今度ばかりは大目に見よう。
「え、でも…」
そういって遠慮しようとする優しいお兄ちゃん。
でも、こんな悲しそうな顔をするお兄ちゃんを放ってはおけない私は一つ提案した。
「じゃあこうしよ!お兄ちゃんが私にトリックオアトリートって言うの!」
すると、すぐさまぱあっ!っと私の大好きな笑顔がお兄ちゃんの顔に広がると、今日一番の元気な声でお兄ちゃんは言った、

「トリックオアトリート!!」

っっっっ〜!!はうっ!だめだっ!これはまずい…!
今の私はなんと醜いのだろう!よりにもよってあの女達と同じことをしようという考えが頭の中に浮かんだ。
だめよ、私はお兄ちゃんの良きパートナー、あんなやつらとは違うのよ!
私はいつもの、いえ、いつも以上の笑顔をお兄ちゃんに向けて言ってお菓子を半分手渡した。
540 ◆F2m7zMMHISUy :2010/10/31(日) 16:33:02 ID:CCsla9Lu
投下終了
541名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 19:53:28 ID:soQqIs8i
542名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 20:45:51 ID:y8+EpF3s
>>540
ほのぼのしていていいじゃないか・・・
やっぱりハロウィンは「悪戯」ってフレーズが最高だと思うの
543名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 22:04:56 ID:soQqIs8i
544名無しさん@ピンキー:2010/10/31(日) 23:45:06 ID:gA3yrxTL
>>543
逆・解
545名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 03:23:05 ID:/3DP2MjW
>>544
もし卍解に次が在ったら、出てきそうだな……
546名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 22:25:10 ID:sEb+NdnJ
547『きっと、壊れてる』第10話:2010/11/01(月) 23:01:45 ID:l/rCM2FK
こんばんは
『きっと、壊れてる』第10話投下します
548『きっと、壊れてる』第10話(1/8):2010/11/01(月) 23:02:21 ID:l/rCM2FK
もう何度目だ。
昔の夢。
俺や茜、楓がまだ仲の良い普通の兄妹だった頃の夢。

啓示などとは思いたくもない。
今の状況になった理由を、俺の精神が昔に求めているのか。

楓はいつからだ。
いつから術策を弄していた。
いつから俺の事を男として見ていた。
わからない。

茜はどうだ。
わからない。

俺は何も知らなかった。
ただ一丁前に兄貴面をしていただけで、
彼女達の奥底に眠る、葛藤や欲望など知ろうともしなかった。

いや、それが正常だ。
まさか実の妹が自分に異性を感じているなどとは夢にも思わないのが普通だ。
ここは実世界に見えて、実は隔離された違う世界なのか。
血の繋がった人間同士、ごく当たり前に求愛する世の中なのか。
もしそうならば、どちらでも良い。
壊れてくれないか。
もう俺は疲れてきた。

「あ〜、暑いな〜」
時刻は昼頃か、高校も夏休みに入り部活の練習も休みだった土曜日。
浩介はリブングのソファで、扇風機に当たりながら、だらけていた。
クーラーが夏場だというのに故障してしまい、昨夜は茜以外の家族全員、
全力疾走した後のように疲労した表情を浮かべていた。
家には浩介と茜の二人。
茜はキッチンで料理本を見ながら、お菓子か何かを作っている。
料理については単純に趣味だったのか、いずれ浩介との二人だけの生活が訪れる、と確信した上での予行練習だったのかはわからない。

「もう、兄さんだらしがないよ。夏休みの宿題は終わったの?」
キッチンのカウンターから、呆れた顔で注意してきた茜は黒髪を後ろに一つで束ねていた。
高校1年生とは思えぬ、凛として大人びた美貌。
『大和撫子』という言葉がピッタリのその容姿は、一学年上の浩介のクラスでも話題に上がっていた。
しかし、浩介は茜の浮いた話などは聞いた事がなかった。
おそらく、あの一見冷たそうな無表情と、流行り物等には興味がなく、
友達とは学校内でしか関わらないという一匹狼な性格が災いしているのだろう、と浩介は考えていた。

「まだ8月中旬だから大丈夫だよ。後、『宿題』って言うと小学生みたいだな」
「『もう』8月中旬です。兄さんは来年受験でしょ? そろそろ、そっちの勉強もした方が良いよ」
母親のような小言を洩らした茜は、冷蔵庫を開け何かを詰めている。
おそらくクッキーだろう。
昨夜、作るような事を言っていた事を浩介は思い出した。

「腹が減っててやる気が出ないなぁ」
浩介は甘えるような声を出した。
この頃、既に茜は夕飯の支度を母親と分業するほど、料理の腕を上げていた。
休日など、朝食から夕食まですべて茜が作る事も珍しい事ではなかった。
茜の作る料理の方が、細やかな味付けがされているのが特徴だった。

「じゃあお腹が一杯になれば、宿題するのね?」
「うん」
「フフッ、本当かしら。冷やし中華で良い?」
仕方がない子、とでも言いたげなその微笑みに、浩介は頷きで返事をして再びソファーに寝転がった。
549『きっと、壊れてる』第10話(2/8):2010/11/01(月) 23:02:49 ID:l/rCM2FK
茜が作った冷やし中華を食べ、お茶を飲みながら他愛もない話をしていた。
点けたままのテレビは、芸能人のどうでもいい恋愛話を熱心に解説している。

「そういえば、楓は? 父さん母さんも見てないなぁ。あれ? 今日って日曜だよな?」
長い休みで怠惰な生活をしていた浩介は、曜日の感覚がずれているのではないかと不安になった。
そして、2週間後にはまた朝早く起き学校に行く事を思うと少しだけ憂鬱になった。

「3人でデパートだって。日本橋だから、そう遅くはならないと思うけど」
黒猫の絵が描いてあるマグカップでお茶を啜ると、茜は浩介と目を合わせて返事をした。
「この暑い中、元気だなぁ。茜は付いて行かなかったのか? うまい物食わせてもらえたかもよ?」
「……私も暑いの苦手だから。それに、どこかの寝ぼすけさんが起きた時、食べる物がないと困るでしょう?」
どうやら茜は浩介の朝食を作る為に残ったようだ。
「別に適当に食うからいいのに」と言おうとした浩介だったが、
その言葉は茜の好意を踏みにじる事に気付き、思い止まった。

「悪いな。……じゃあさ! 俺らもどこか行かないか? 茜、最近外に出てないだろう?」
「どうしたの? 急に。宿題は?」
瞳が少しだけ揺れているのを浩介は確認した。
表情は変わらなかったが、茜は驚いているようだ。

「課題は帰ったらやるからさ。久しぶりに家族と出掛けたくなったんだ。どこか行きたい所ないのか? 」
前回茜と出掛けたのは、いつだったか。
思い出せないと言う事は、それほど間が空いているのだろうと浩介は思った。
村上家に『妹と定期的に出掛けなければならない』という、約束や決まりなど当然ない。
ただ、浩介はインドア派の茜に外の世界も存分に楽しんでほしいと思っていた。
それだけだった。

「……うん、本をね、買いたいの。裁縫の本。神保町まで行けば大きな本屋があるから。そこまで付き合ってくれる?」
「裁縫? 所帯染みてるなぁ」
「あら? 何時、どういう生活環境になるかはわからないのだから、学んでおいて損はないでしょう?」
「まぁな、じゃあ支度してくる」
「うん」
普通高校1年にもなればファッション誌等に興味を持ちそうなものだが、と浩介は思ったが、
茜が変わっているのは今に始まった事ではないので、それ以上追及する事はなかった。

部屋に戻り、着て行く服を選んでいると、浩介はある事に気付いた。
妹と、茜と出掛けるという事だけで、こんなにも心が躍るのはなぜか。

興奮する様なテーマパークに行くわけでもない。
何か、報酬があるわけでもない。
むしろ世間では、この年で兄妹と出掛ける事は、恥ずかしい事に分類されるらしい。

熟考しても答えは出なかった。
選んだ服が、浩介が持っている服の中で、一番高価でお気に入りの物だった事が唯一の真実だった。

15分後、二人は家を出て、照りつける太陽などお構いなしに、明るい道を歩いた。
道中、人混みではぐれてしまいそうだから、と茜は恥ずかしがる素振りも見せず、浩介の腕を取った。
その手は人混みを抜けてもしばらく離される事はなく、二人が兄妹だという事を見抜けた人間もおそらくいない。

浩介と茜が腕を組んで歩いたのは、この日が初めてだった。
550『きっと、壊れてる』第10話(3/8):2010/11/01(月) 23:03:14 ID:l/rCM2FK
「お兄ちゃん達、どこかに出掛けたの?」

夕食時、楓が発した言葉だ。
なぜ気付いたのか。

両親と楓が両手一杯の荷物を抱え、玄関のドアを開けるまでに、浩介達は帰宅していた。
靴も出掛ける前と同じように揃え、出掛ける際に着た服も洗濯カゴには出していない。
茜は家に居る時でも余所行きのような格好をしているので、着替える必要性はなかった。

楓は不服そうな顔をしていた。
好物であるはずのエビフライをかじり、ご飯を口に入れる。
その一連の動作にも不機嫌さが滲み出ていた。

「あ……あぁ、参考書を買おうと思ったんだけど、俺には全部一緒に見えちゃってな。
茜に見立ててもらう為に一緒に本屋に行ったんだよ。楓とも一緒に出掛けたかったんだけど、居なかったから……」
以前、自分と茜が二人で将棋を指していた時の事を思い出した浩介は、楓を刺激しないように慎重に回答した。
少しだけ嘘を混ぜて。
茜を連れていったのは仕方なかった、楓が在宅していれば当然連れて行ったという意味合いを乗せる為だった。

「ふーん……楓がついて行っても、お兄ちゃんの勉強の事なんてわからないよ」
楓はそう言って興味が薄れたようにそっぽを向くと、再びテレビの方を向いた。

少し言い訳が苦しかったか。
浩介は自分の言い訳の採点を求めるように、向かいの左方を見る。
茜は我関せずと言った表情で食事を続けていた。

あの将棋の事件以来、浩介なりに気を配り、楓が癇癪を起さないように努めてきたつもりだった。
茜だけ居れば済む用事も、楓の前で茜に話しかけ、楓にも意見を求めるかのように振舞ってきた。
今回は自分のご飯の支度の為に、出掛けず居残ってくれた茜へのお礼。
客観的に見ても浩介に非はなかったが、楓の機嫌を損ね、場の雰囲気を崩す事は避けたかった。

Tシャツの背中に滲む汗が心地悪いが、ひとまず難を逃れた事に浩介は安堵した。

「浩介も来年受験だな。もう進路は決めているのか?」
ビールを飲み、少し顔に赤みが差している父親が口を開いた。
めずらしく家族と夕食を取れてたためか、機嫌が良さそうだ。
「うん、大体は。学費も安いし、文系の学部に行こうと思う」
「文系? 就職は大丈夫か?」
「多分……としか言い様がないけど」
理系だと年間の授業料は100万をゆうに超える。
3人兄妹全員を大学まで通わせる事を想定すると、浩介は理系学部を受験する事にどうしても気が引けてしまっていた。

「まぁ私達は元気に巣立って行ってくれれば文句ないわよ。ねぇ? お父さん」
まだ自分は食事中であるにも関わらず、茶飲みに急須でお茶を入れ、
旦那に差し出した母親は、慈愛が溢れんばかりの笑顔を見せた。

「大学4年になったら公務員試験も試しに受けてみたらどうだ? 安定しているし、
ボーナスと退職金はすごいぞ。警察や消防は親としては複雑だがな」
「あぁ、考えておく」
まだ先の話を、楽しそうに話す父親を見た浩介は、息子として愛されている事を実感した。

特別お金を持っているわけでもない。
特別優秀な人間がいるわけでもない。

家庭の為に必死で働く父。
家族を一番に考え、家事を仕切る母。
おとなし過ぎるのが欠点だが、頭も良く、母の手伝いどころか家事の一端を担っている茜。
わがままだが、その太陽のような笑顔で家族全員を幸せな気分にしてくれる楓。

浩介はこの家族が好きだった。世界中で自分が一番幸せだと信じて疑わなかった。
551『きっと、壊れてる』第10話(4/8):2010/11/01(月) 23:03:52 ID:l/rCM2FK
時計の針を見ると、22時を指していた。
机で夏休みの課題をこなしていた浩介は、自分の隣の部屋、茜と桜の部屋から聞こえる微かな声に気付いた。

「楓、それは駄目よ」
「いーじゃん! これがいい!!」
何か揉めているようなその声は、一旦気にしてしまうと耳から離れる事はなく、浩介の耳はその音を嗅ぎ続けた。
「他にも一杯あるじゃない。それは駄目」
「なんで? 楓はこれがいいのに!」
楓はともかく、茜がこちらまで聞こえる声を出すのは珍しい。
普段、姉妹喧嘩などまったくしない二人がなぜ揉めているのか気になった浩介は、
机のスタンドライトの灯りを消し、部屋を出た。

「どうしたんだ?」
ノックをしてから姉妹部屋のドアを開けると、何かを両手でしっかりと抱きしめるパジャマ姿の楓と、
両手を膝の上に置き、椅子に座った茜が向かい合っていた。

「兄さん」
「ケンカか? 珍しいな。茜はともかく、楓の声は響くから少しボリューム抑えろよ。後、窓も閉めろ」
浩介は、カーテンすら開いたままの窓に視線をやった。
「えぇ……でも困っちゃって……」
「だって、これがいーんだもん!!」
楓の抱きかかえている物をよく見ると、ぬいぐるみだった。
締まりのない顔をした犬のぬいぐるみが、力強く抱きしめる楓の腕の中で少しだけ変形していた。

「ぬいぐるみの取り合いか?」
「取り合い……なのかな。貸してほしいと言うから、仕舞っていたのを出したのだけど」
そう言った茜の横には、大きい透明のカラーボックスが置いてあり、
その中には所狭しと動物のぬいぐるみ達が詰め込まれていた。

「その中から選んだぬいぐるみじゃないのか?」
「えぇ、一番大事だから机の上に飾ってあった子なの」
そういえば茜の机の上には、今楓が抱きしめているぬいぐるみが飾ってあった気がする。
要するにまた楓のワガママか、と浩介は小さく溜息をついた。

「楓、茜がそれは嫌だって言ってるんだから返してあげろよ」
「やだやだ!」
首を振って、自分の気持ちを表現する楓はいつも以上に頑固そうだった。
もう10歳になるというのに、楓は同年代に比べて精神的に幼い気がする。
ただ、一番歳が近い茜でも6歳の違い。
我が家の家族構成では、末っ子の楓を甘やかしてしまうのは、
ある程度仕方ないのかもしれない、と浩介は2度目の溜息をついた。

「楓、それ以外ならどれでもいいから。気にいったのがあったら、あげるし」
「これがいーの!」
「楓はもう10歳のお姉さんだろ? あんまりワガママ言わないでくれよ」
浩介は完全に茜の味方だった。
普段自己主張というものをしない茜がここまで拒否するという事は、余程大事な物なのだろう。
その対象がたとえ玩具だとしても、茜の価値観を否定する事はしたくなかった。

「お願い楓、それは大事な物なの。今度お揃いのやつ買ってきてあげるから」
「やだー!」
「楓! いい加減にしろよ!」

──楓の体が硬直した。
浩介は自分でも驚くほどの大声で、怒鳴ってしまった。
それは、普段楓の面倒をよく見ている茜がこれだけ懇願しているにも拘わらず、
我儘を言い続ける楓の我儘が、悪念に感じたからだった。

それにこのような傍若無人な気質では、この先周りが成長するにつれて、
楓だけ浮いてしまうのではないか、という兄としての心配も込められていた。
552『きっと、壊れてる』第10話(5/8):2010/11/01(月) 23:04:21 ID:l/rCM2FK
目を真っ赤にした楓が、浩介を睨んだ。
その表情は小学生とは思えない、一人の女の嫉妬心が溢れているように映った。

「……ヒック……ヒック……お兄ちゃんは……」
しゃっくりを挟んで、ゆっくりと確実に言葉を紡ぐ。

「いつも……ヒック……おねーちゃんの……ヒック……味方なんだ……」
「泣いても駄目なものは駄目だ楓。それを茜に返して、もう遅いからさっさと寝ろ」
「いつも楓だけ仲間外れにするし! もういいよ!」
楓は抱いていたぬいぐるみを茜の方へと投げた。

そして──この時は運が悪かったとしか言いようがない。
窓が開いていた。
比較的、大きい窓が。
茜の後方へと放物線を描いたぬいぐるみは、開けっ放しにしていた窓をすり抜け、闇の中へ消えた。

「なっ……」
慌てて窓から顔を出し、落ちた場所を確かめる。
道路の中心に投げ出されたように転がる犬のぬいぐるみは、捨てられたとでも思ったのか、虚ろな目をしている気がした。

浩介は、呆然とする茜と楓には目もくれず、すぐさま家を飛び出し、廊下を駆けてエレベーターのボタンを押した。
村上家はマンションの6階にあり、おそらく階段を使うよりもエレベーターを待った方が早いはずだ。
無傷でいてくれ。
浩介は、名も知れぬぬいぐるみのために祈った。
このマンションは車の通りが激しい大通りに面している。
茜達の部屋の窓は、その大通りに繋がる細道に面していた。
細道といえど、近道をしようとするトラックやタクシーがひっきりなしに通る道路のため、
急がなければ轢かれてしまうのが目に見えていた。
乗り込んだエレベーターの降下する速度が、いつもより遅い気がする。
メーカーの名前を睨み、行き場のない苛立ちをぶつけた。
『1』という階ランプが点灯し、扉が開いた。
サンダルをペタペタと鳴らして速やかにぬいぐるみが落ちた細道に出ると、
さっきまで中央に転がっていたはずのぬいぐるみが、向かって右側のガードレールの下でうずくまっているのが見えた。

駆け寄って拾い上げる。
トラックにでも轢かれたのか、首が取れかけていて中から白い綿が少し飛び出していた。
タイヤに押し潰されたのだろう、鼻も少し変形している。
その変わり果てた姿は、ぬいぐるみといえど目を背けたくなるものだった。

「兄さん」
背中の方から聞こえるその声は、雑踏の中で消え入る様な声。
浩介の後を追って来たのか、背後に茜が立っていた。

振り向きたくない。
まだ俺の体が壁になり、このボロボロのぬいぐるみは茜には見えていない。
なんとかならないか。

頭をどれだけ回転させても、状況を打破できる策などなかった。
「こっちを向いて」
横から覗きこめば、すぐにぬいぐるみを視界に捉える事ができる距離だった。
おそらく、茜はぬいぐるみが無事ではない事に気付いていた。
浩介はゆっくりと振り向き、手の中のぬいぐるみを茜の胸の前へと差し出した。
受け取ったぬいぐるみを両手で抱え、顔の高さまで持ち上げた茜は、無表情のままだ。
胸を締め付けられるような気分になった浩介は、茜から視線を逸らした。

「壊さないで」
茜は無表情のまま、一言そう発した。
それが、誰に言った言葉なのか、浩介にはわからない。

ボロボロになったぬいぐるみに視線を戻すと、浩介はそれが昔遊園地で自分が買ってあげた物だと今更気付いた──。
553『きっと、壊れてる』第10話(6/8):2010/11/01(月) 23:04:44 ID:l/rCM2FK
「兄さん、そろそろ起きないと。チェックアウトの時間を過ぎてしまうわ」
体を揺すられ、頭が徐々に覚醒していく。
目を開けると、夢の中とさほど変わりない茜の顔が間近にあった。
「ん……」
「ほら起きて? もう、旅行に来ても変わらないんだから」
「起きるよ。ちょっと準備してただけだ」
上半身を一気に持ち上げ、目を凝らす。
部屋の中は何の変哲もないホテルの一室だ。
茜や楓のベッドの上には、綺麗に畳まれた浴衣が中央に置いてある。
「何の準備かしら? とりあえず、おはよう」
茜の黒い瞳がカーテンの隙間から差す光に反射して、キラキラと輝いているように浩介には映った。
「おはよう……楓は?」
「先に朝ご飯食べてお土産屋で買い物してるって。私達は寄ってるヒマないけど……」
「あぁそれは構わないよ。……何か楓に変わったところあったか?」
昨夜の事を思い出した浩介は、聞かずにはいられなかった。
なぜ、楓はあんな変貌を遂げたのか。自分の中の天真爛漫な楓は偽りの姿なのか。
考えれば考えるほど、浩介の脳裏には気が重くなる事柄だけが積もった。

「変わったところ? 別にないわ。お肉ばっか食べてやるって張り切ってたぐらい」
楓はあくまで、茜の前では純真無垢な妹を演じるつもりなのだろうか。
逆に、昨夜自分に見せた姿が虚偽の姿なのか。
浩介には判断がつかなかった。

「そっか、じゃあいいんだ。……なぁ、茜」
「何?」
「昔の夢を見ていたんだ。ほら……ぬいぐるみが窓から落ちたやつ」
「ぬいぐるみ……あぁ、あれね」
茜は一瞬で思い出したようだ。それほど印象深い出来事だったのだろう。

「あれって、どうなったんだっけ?」
「どうもこうも……楓が父さん母さんにみっちりお説教受けて終わりよ?」
「ぬいぐるみは?」
「自分で直した。丁度あの日の昼間、裁縫の本を買っていたじゃない」
「そういえばそうだったな。楓とはあの後しばらく冷戦だったのか?」
「ううん、次の日だったかな。泣いて謝って来たわよ? あの子に悪気がなかったのは
わかってたし、冷戦なんてするはずないわ。……というか兄さんも次の日の夕飯、一緒に食べていたじゃない」
「言われてみれば、そうかも」
茜に言われ、次の日の夕飯時に茜と楓が何事もなかったかのように会話していた事を浩介は思い出した。

「でも……優しいお姉ちゃんだな、茜は」
普通、自分の大事にしていた物を壊されたら、相手が謝って来たとしても中々許せるものではない。
おそらく自分が茜の立場だったら、1週間は口を利かないだろう。
茜の慈愛に浩介は感心した。
「……そうでもないけどね。さぁ、私達も朝ご飯に行きましょう。バイキング式らしいから」

ふとした違和感。
話を打ち切った茜は気のせいだろうか、どこか悲しげな顔をしていた。
554『きっと、壊れてる』第10話(7/8):2010/11/01(月) 23:05:08 ID:l/rCM2FK
夜の空は、誰もここには存在しないように静まりかえっていた。
まだ20時なのに子供はおろか、大人まで座席で寝息を立てている。
前方のCAは、まるで幼稚園の教諭のように優しい笑みで乗客たちを見渡していた。

先程、雲の中を通った時は墜落するのではないかというほど、機体が揺れた。
落ちても構わない。
浩介は心からそう思った。

往路と同じく、浩介が窓側、楓がその隣、茜が通路側に座っていた。
最初は文庫を読んでいたがさすがに疲れていたのか、茜は他の乗客と同じように眠っている。
浩介は誰にも気付かれていない事を確認すると、自分の股間を弄っている手を掴んだ。

「いい加減にしろよ」
「あら、手じゃ満足できない? 流石に口でするのは……ここでは恥ずかしいわ」
悪びれる事もなく、楓は爬虫類のように感情のない瞳で浩介を見上げた。

茜が寝息を立てた後の事だった。
CAに毛布を借りると、楓はそれを広げ、浩介と自分の下半身にかけた。
肌触りの良い毛布が温かい。
楓は単純に眠気が襲ってきただけ、クッション代わりに浩介の肩を借りるつもりだけだと、思っていた。
公共の場所で昨夜のような行動など起こすはずがない、という固定観念が浩介を油断させた。

楓は妖しい笑みを浮かべ、浩介のズボンのファスナーを開けた。

10分程の間。楓は浩介を玩具にしていた。
「だからっ……やめろ! 茜が起きたらどうするんだ」
注意しても手の動きを止めない楓に、浩介は自分が出来る一番鋭い目で楓を睨みつけた。
大声を出せば、周りが気付く。
おそらく楓はその事も計算していた。
「フフッ、可愛い。姉さんが起きてなかったら続けてていいって事?」
「違う。いいからその手を離せ。俺が大人しく注意している間にやめるんだ」
「別にいいのよ? 大声で叱っても。私は兄さんとそういう関係なんだ、ってアピールできるもの。隣で寝ている人にもね」
楓は浩介の耳元でそう囁くと、チラリと隣で寝息を立てている茜を一瞥した。

「……楓、どうしてだ? 何がお前を変えた?」
「変えた? それは違うわ兄さん。私は何も変わっていない。昔からね」
男性器を掴む力が僅かに強まる。
先走った透明な液体が、男性器の先端から僅かに出ている気がした。
「でも、兄さんに私を叱る権利なんてないわよね? 自分だって姉さんと散々イイ事したんでしょ?
私が寂しく実家に取り残されて、父さんと母さんの前で『明るくて素直な楓』を演じている時も」
「やめてくれ……頼む」
「それは、今の行動の事を指しているの? それとも過去をほじくりかえす事?」
「両方だ」

目を瞑って、楓の手を覆う様に自分の手を被せる。
これ以上動かさないように。
そうすると、楓は指先だけで、亀頭の周りをペットボトルの蓋を開けるかのように弄り始めた。
「観念した方がいいわ、兄さん。私も興奮してきてしまったもの。
あっでもね、私はまだ処女よ? 嬉しいでしょ? ねぇ、姉さんのを奪った時ってどんな気分だったの?」
吐息が浩介の耳をくすぐる。
浩介は何も答えず、ジッと耐えた。
力任せに楓を抑えつける事は可能だが、拒絶すると楓は何をするかわからない雰囲気を醸し出しているからだった。

「やだぁ、ビクビクしてきた。気持ち良いの? イく時はイくって大きな声で言ってね?」
「ふ……ざけるな」
「そういえば、私の体も触っていいのよ? 胸は姉さんよりも2カップ上だから、揉み応えがあると思うわ」
「だからっ! ふ……ざける……なよ」

姿勢を正し、自分の体を浩介の方へ寄せた楓は不敵に微笑む。
その姿は、浩介の中の楓の面影など微塵も感じさせなかった。
555『きっと、壊れてる』第10話(8/8):2010/11/01(月) 23:05:32 ID:l/rCM2FK
「……触らないの? そうね、胸を触っていたら、さすがに他の人にバレてしまうものね」
「何か……俺に恨みでもあるのか?」
「心外ね。私は兄さんが喜ぶと思ってしてあげてるのに。じゃあ足はどう?
ほら、動物園でなんだかんだ文句言ってたけど、兄さんも生足好きでしょ? 触っていいんだよ?」

毛布を少しだけ捲り、楓の細く白い生足が浩介の視界に飛び込んできた。
肌色の足に、粉雪を振りかけたようなその白く輝く足は、薄暗い機内にいる事でより一層の色香を出していた。
浩介は、楓が初日と同じホットパンツを今日も穿いていた理由を、今理解した。
「頼む。やめてくれ。もう十分だろ? ……本当に……やめてくれ……」
破裂しそうな浩介の男性器は、もう限界が近かった。
「イくの? 兄さん? 私の手に出したい? いいよ。出して」

耳に息を吹きかけられ、限界まで粘った浩介がついに果ててしまうと思ったその時。
楓の手の動きが止まった。
「……楓?」
横を見ると、浩介の肩にもたれかかり目を瞑っている。
何かと思い顔を上げ、通路側に目をやると、CAが不思議そうな顔をして立っていた。
「お客様、もしよろしければもう1枚毛布をご用意しましょうか?」

浩介と楓が二人で1枚の毛布を使っている事に気がついたらしい。
楓は狸寝入りを決め込んでいた。
「いえ、もう時間もそんなにないし、大丈夫です」
お手本のようなお辞儀をすると、CAは疑う様子もなく前方へと消えて行った。

「フフッ。ドキドキしちゃった。ごめんね? 寸止めして」
すぐに目を開けた楓が胸を浩介の腕に押し付けた。
手は股間を掴んだままだ。
「もういいから。離してくれ。じきに羽田に着く」

腕時計を見ると、22時20分。
到着予定が22時30分のため、そろそろ乗客も起きだし、降りる支度を始める頃だ。
さすがに楓ももう満足しただろう、そう思っていた。

「駄目よ、出しなさい。出したら兄さんの精液、トイレで舐めてきてあげるね」

浩介は、言葉にならなかった。
自分の中の楓が偽りだった事。
あの絵に描いたような家族団欒、3人兄妹の仲すら壊れていた事。
茜だけではなく、楓すら自分が汚してしまった事。
美佐を裏切ってしまった事。
そして……茜を裏切ってしまった事。

目からは涙が溢れそうだった。
横目で茜を見る。
昨夜と同じように、茜は眠っている。
その横顔は女神が舞い降りたかのように、美しい造形だった。

もう自分の周りの人間は、すべて壊れてしまっていた事に絶望する。
どうすれば、普通の幸せを手に入れ、穏やかに暮らす事が出来たのか。
この状況を茜が知ったなら、どんな言葉で自分を導いてくれるのか。
考えても、行動しても、空回りばかりだった。

女神を汚してしまう事に耐えきれず、浩介は視線を逸らす。
そして、楓の手の中に白く濁った自身を受け止めさせた。

第11話に続く
556『きっと、壊れてる』第10話:2010/11/01(月) 23:06:18 ID:l/rCM2FK
以上です。いつも読んでくださってありがとうございます。では。
557名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 23:16:04 ID:1QnTGaZo
GJ!
楓の性格が茜と似てきている様な・・・w
続きも早く読みたいです
558名無しさん@ピンキー:2010/11/01(月) 23:31:20 ID:UsEdtZIi
GJ!
リアルタイムで遭遇できた
ほったらかしにされてたらこういうことしちゃうよね・・・
559名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 00:10:48 ID:vHzrNMUp
GJ
ちょっと興奮してしまったよ…
560名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 00:39:33 ID:r9SW9v9b
投下乙

浩介どうするんだ…

次回も期待
561名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 01:37:56 ID:VbXV8Skx
GJ

浩介にとってはこの状況はつらいね。でも不思議なことにどのキャラクターも応援したくなっちゃうんだよね
562名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 02:50:58 ID:1J7n2BMl
家帰ってからどうなるか楽しみ
563名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 04:17:59 ID:2sZUa0ik


すっげー続きが気になる……

なんだろ、茜が素直なほど茜に頑張って欲しいと思うわー
564名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 16:56:07 ID:MAc+rQhA
565名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 19:35:58 ID:BMDe3kwg
GJ!
楓が可愛い過ぎて生きるのが辛い
これから楓のストーリーも掘り下げそうな感じだし
楽しみです
566名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 21:10:00 ID:MAc+rQhA
567名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 22:23:32 ID:LmoCdC9X
携帯からですいません
某海外ドラマ見てたら思いついたキモウトがあるんだが、投下してもいいかな
568名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 22:50:55 ID:sZy57UgY
そういうスレなのでは
569名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 23:12:32 ID:LmoCdC9X
まったくだ

内容的にはグロ有り、エロ無し、パロディやや有りです
ちと長めかもしれません。
では投下させていただきます
570テグスダー:2010/11/02(火) 23:17:55 ID:LmoCdC9X
第一話 

 私は萌花。手楠田 萌花(てぐすだ もえか)。
15歳の高校一年生。周囲の評価は『文武両道』『才色兼備彼女(サイカノ)』『俺orアタシの為に毎朝味噌汁を作って欲しい!』
 などなど、かなりの高評価を頂いてい…

…エプロンをつけて、と。

 あ、すみません。ええと、そんな非の打ち所のない美JKと太鼓判を押されている私ではあるが、人である以上、当然他者には言えない秘密が…

あぁ、ここもシートを敷いた方がいいかな。

 …秘密がある。まずひとつ目は……私は、兄を愛しているということだ。それも家族としてではなく、異性として。
 人前では兄さんに迷惑や心労をかけない様、『仲の良い兄妹だね』と言われる程度に自身を抑えているが、実際のところは、そんなものではない。

 例えば、兄さんの事を考えていただけで大会が終わっていた事もある。
 私は幼い頃、兄さんと共に空手を習っていた。
ただ単に兄さんと一緒にいたいが為に始めただけなのだが、どうも私は才覚があったらしく、幾度も大会で優勝し、神童ともてはやされた。
 因みに、兄さんは人並みの…いや違う!兄さんは私など軽々と凌駕する天才だ。
ただ、優しすぎるのだ。
 だからわざと負けて、抱えきれないほどの華束を相手に持たせていただけなのだ。華キューピットなのだ。
 そして、凡人共がその圧倒的な才能の前にひれ伏し、空手への情熱を失う事を危惧し、自ら空手を捨てたのだ。

 あぁ、本当に、なんてお優しい兄さん…兄さんの優しさの前では、マザーテ●サもテロリスト同然です…
 あ、勿論私も兄さんと共に空手を辞めた。周囲も鬱陶しかったし。

 と、そんな過去もあって、つい先月、空手部の助っ人として大会に無理やり出場させられたのだが、前のり遠征のため大会前日に家を出て、気付いたら家に居た。
トロフィー片手に。
 あの時どこでどう戦ったのかは、未だに何一つ思い出せない。
ただひたすらに、私の帰りを待っていてくださる兄さんの事を考えていた気がする。
 後日、大会の事を空手部員に尋ねると

「え?萌花も何だかんだで結構楽しんでたじゃん。ね、もういっそ空手部入ろうよ!」
「…萌花なら、熊爪装備のファイティングコンピューターも片手だね。…いや〜、にしてもほんと萌花のブラジリアンキックは軽く光速を(以下略)」

571テグスダー:2010/11/02(火) 23:25:41 ID:LmoCdC9X

 と言われたが、実際はブラジリアンキックどころか、指先一つ動かした記憶も無い。そもそも私の中では外出していない。
 そんな状態でもぼろを出さずにすんだのは、おかしな兄妹だと噂を立てられ兄さんに迷惑をかけない様、普段からきつく戒めている私だからこその芸当だろう。
 自分で自分をほめちぎりたい。

 そしてもうひとつの秘密なのだが、これは……本来なら兄さんに隠し事など唾棄すべき事なのだが、たとえ兄さんといえども
(兄さんへの愛はいつか必ず告げるから隠し事には入らない)打ち明けることが出来ない。


 実は私は、世間一般で言うところの、シリアルキラーだ。つまり殺人鬼だ。

…インパクトのセーフティを解除。

 そうカテゴライズされるのは甚だ不本意なのだが…
何故なら、何の罪もない善良な人々を無作為に殺す!
 なんて罪深い真似は、私には恐ろしくてとても出来ないからだ。
 そして私には亡き父と約束した、殺しの掟(ルール)があるからだ。

 選別のルール。私が手をかける人間は、《兄さんを貶めようとする愚者》と《兄さんに近づこうとした泥棒猫》この2種類のみ、ということ。
ようは殺されて然るべき咎人だけだ。
 さしずめ私は《兄さんを守護する戦乙女》という訳だ。

 …まあ、世間の常識という名の戯言の前では、戦乙女から快楽殺人鬼へと超大幅ランクダウンされてしまうのだろうが。全く腹立たしい。
 獲物を始末する際に快楽を感じてしまうのも、正義執行の悦びと、兄さんを護れたことへの達成感という訳だから、仕方がない事なのにな。

ええっと、ナイフナイフ〜……あった。良し、準備完了。

「…これで良し、っと。お待たせしました、先輩」
 儀式の準備を終え、作業台に横たわる様にして縛り付けられた少女を見下ろす。

 これが今回の獲物、藤樟 杏奈(どうくす あんな)。
 兄さんのクラスメイトにして、生徒会書記。
穏やかな性格と、小柄で控えめな体躯、高校生にしてはあどけなさが残る、可愛らしい顔立ちが男子に人気の2年生だ。
 まあ、今は全身縛られているうえに、その整った顔は涙と鼻水でデコレートされている為、見る影もないのだが。

「お、お願い…や、止めて…」
「大丈夫ですよ。優しくしますから。…大人しくしていてくれれば、ね…?」
 そう優しく告げると、彼女の白磁のような頬を手にしたナイフで薄く横に切りつける。頬に走った線から赤い液体が零れ落ちた。
572テグスダー:2010/11/02(火) 23:37:27 ID:LmoCdC9X

「い、痛いっ!!痛いよおっ!!いやぁ!!!!」
 彼女は悪霊にとりつかれたかの如く頭を振り乱し、声が涸れることも構わず叫び声を上げる。

 なるほどなー。これは男子に人気な訳だ。彼女の魅力はその被虐性。
声音、仕草、容姿、彼女の全てが動物の持つ嗜虐心を刺激する。
これはなかなかにそそる獲物だ。
「お、お願いします…もう、お家に帰、してぇ…」
 幼子のように、ポロポロと涙を零し懇願する獲物の頭を優しく撫で、目元から零れ落ちる涙を舌で嘗めとる。
「ひゃん!い、いや、いやっ!!やめてぇ!!もう嫌ぁ!!!!」
「ほら、あんまり暴れないで下さい先輩。…痛くしちゃいますよ?」
「うっ、ひっ!…い、いやだぁ!!もう嫌だよおぉ!!!」
 まるで小動物そのものだ。軽く脅しをかけるだけで、期待通りのリアクションをくれる。
たまらないな。早く殺したい。

「いくら叫んでも無駄ですよ、先輩。ここには誰も来ませんから」
 そう、今私達がいるのは、その機能をより交通の便の良い土地へと移転したためにゴーストタウンと化した、元鉄工団地の最奥にある、港に隣接した一棟の廃工場。
 昔は港から、製品を各地に大量に輸送していたらしいが、今や夢の跡地と化している。
 加えてこの場に至るまでの道筋は複雑で、廃墟にたむろしたがる珍走団の類ですら、最奥まで訪れる事は無い。
 本当に都合が良い。裏手が廃港というのも、さらに都合が良い。もう殺そうか?

「ね、お願、い…もう、やめて…誰に、も、言わな、いから…」
「誰にも言わないだなんて…嘘はよくありませんよ」
 辺りを見回すと、廃油の溜まったドラム缶の縁に、黒ずんだ雑巾が掛けられていた。
手にとってみると、すえた臭いが鼻をついて思わず顔をしかめる。
 …手袋ごしでも気持ちが悪い。
「これでいいよね」

 雑巾を手に獲物のもとへと、恐怖を煽り、かみしめる様にゆっくりと歩み寄る。
傷つき動けぬ獲物を追い詰める獅子も、この高揚感を感じるのだろうか。

 よし、殺ろう。もう《アレ》を済ませて、殺ろう。

「ヒッ!いぁ、オエェ、モゴォ!!」
 首を振り逃れようとする獲物の頭を押さえつけ、薄い唇に縁取られた愛らしい口に、雑巾をねじ込んでいく。
「気持ち悪いかもしれませんが、嘔吐しないほうが身のためですよ。吐瀉物を再度飲み込みたくは無いでしょう?」

573テグスダー:2010/11/02(火) 23:43:42 ID:LmoCdC9X
 やんわりと忠告しつつ、ジャージのポケットから未使用のタンポンを取り出すと、獲物の頬を流れる赤蜜を丁寧にそれに染み込ませていく。
 すると忽ち、無垢な純白が赤黒く穢されていく。恍惚の一瞬。
「家に着いたら、他のお友達(コレクション)に会わせてあげますからね。仲良くするんですよ?」
 たっぷりと獲物の蜜の染み込んだタンポンを手に独りごちる。
 これは兄さんを護ったという証。私の誇り。
戦利品をピルケースに入れ、ポケットにしまい込む。
 ああ…早く防腐処理を施して宝石箱に並べたい。

「さて、と」

 儀式もいよいよクライマックス。蝋燭の灯りが大きく揺らめき、私の影を醜く歪める。…体が熱い。
 意識が朦朧とするような、それでいて、1km先の針の落下音が聞こえそうなほどに全神経が研ぎ澄まされるような。
不思議な感覚が私を包む。

「ムー、ムグー!!」
「名残惜しいのですが、早く帰って兄さんの為に朝食を用意しなければならないので、そろそろ逝ってもらいますね?
ああ、冥土のギフトに先輩の今後について簡単に御説明しますね。
いいですか、まずあなたを細かく解体して、三つの袋に小分けします。
それから、廃港に隠匿してあるモーターボートで沖へと出て、殺害の証拠一式と共に海中へ投棄。
勿論、袋が浮上しないよう細工を施しますから、あなたの恥ずかしい姿は誰の目にも永劫―
晒されることはありませんのでどうか御安心を…」
「ムグ!!フグゥー、フゴー!!!」
 最後通告を言い渡された獲物は、その命を燃やし尽くすかの様な抵抗を見せる。
しかしいくら暴れようとも、動かせるのはその小さな頭とチョークの様なか細い指先のみ。
 悲哀を誘うなぁあ、ぁあ〜堪らないぃ。

「あははっ、ごめんなさい。何をおっしゃりたいのか、あいにくとブタ語はわかりません。…では、籐楠先輩…」
「ンゴッ!!!フゴオォォォ!!!!!」
「兄さんに近づいた己を呪いながら、地獄に落ちて下さいね」


 ―そして、獲物の首筋にゆっくりとインパクトを―


「―おやすみなさい―」

574テグスダー:2010/11/02(火) 23:50:58 ID:LmoCdC9X

 ※※※※※※※※※※

「おはようございます」
「おはよう。朝から頑張るねえ、お嬢ちゃん」

 明け方の住宅街をジャージで駆ける私の姿は、中年の新聞配達員の目には、早朝マラソンに勤しむ運動部系美少女と映った様だ。
 この男に限らず、今の私の姿を見て、人一人を解体してきた帰り道だとは誰が思うだろうか。
 普段と異なる行動を怪しまれない様、日頃から朝に晩にマラソンを欠かすこともなければ、それは尚更だろう。
 徹夜の疲れはまるで無い。獲物を仕留めた充足感と、兄さんをこの手で護ったという誇らしさが、私に活力を与えてくれる。

「もうすぐ帰りますからね、兄さん」

 兄さんへと続くカーブを曲がりながら私は、今日の朝食は兄さんの好きなポークサンドにしよう、と決めたのだった。

575名無しさん@ピンキー:2010/11/02(火) 23:58:29 ID:LmoCdC9X
以上で投下終了です

読み専門でしたが、血迷って投下しました。なにぶん初心者なものでお見苦しいと思います

駄文失礼しました
576名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 02:55:42 ID:gcGXonMZ
GJ!
だが、ポークサンドというのがなんとも・・・・・・、雌豚サンドなんて想像してしまった。
577名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 08:36:12 ID:MD0t1Nk1
578名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 13:34:37 ID:qmuQKRsg
ポークサンドかあ……。
うちのお兄ちゃんは肉なら鶏肉が好きだからなあ。
そうだ! あのお兄ちゃんの幼なじみとかいう糞女、
三歩あるけば今日の授業内容を全部忘れちゃうところとか、
チャンスが何度あっても告白できないところとか(そのおかげで未だ幼なじみなんだけどねw)
チキンそのものじゃない!
うふふ、待っててねお兄ちゃん。今日はお兄ちゃんの大好きな唐揚げだよ!
あんな雌鳥に負ける気しないんだから!
579名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 16:30:27 ID:OyCbRJoj
aa
580名無しさん@ピンキー:2010/11/03(水) 23:19:03 ID:MD0t1Nk1
581名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 00:27:54 ID:FqSXreVL
>>580
もうやめてくれ…
逆・解
582名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 01:45:54 ID:iztzdisF
何これ?コント?
583名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 01:47:31 ID:9Qm65bE3
オイ!Yスレが荒らしに襲われて潰滅寸前だ!次はこのスレって荒らし共が言ってるから今の内スルースキルを身につけとけョ
584名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 02:21:56 ID:S90ApEDw
585名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 02:39:55 ID:iztzdisF
586名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 03:08:46 ID:zImfdN12
587名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 03:27:28 ID:KIGnk66W
588名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 03:52:35 ID:zJ14lats
キモハウス
589名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 10:10:11 ID:KVUzHTsh
発情豚がお兄ちゃんの血となり肉となるなんてキモウト的には許せない筈と思ったり

「……おい! また味噌汁にお前の長い髪が入ってたぞ!」
「ごめーん、お兄ちゃん。謝るから許して、てへっ♪」
(髪の毛自体はお兄ちゃんの口に入らなくても、ダシはちゃんと飲んでもらえてるものね♪)
590名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 11:03:01 ID:SeN7KHFz
>>588
不思議のダンジョンで「キモハウスだ!」となる訳か
部屋いっぱいのキモ姉妹達…


・キモウト(幼)
お兄ちゃん(主人公)が大好きなので攻撃してこない。
女性がいると嫉妬して優先的に狙うがポカポカと攻撃する姿が可愛らしい。

・キモウト(小)
道具を使う事を覚えたがお兄さんを愛しているので攻撃してこない。
女性がいると嫉妬して倍速移動、二回攻撃で優先的に狙われる。

・キモウト(大)
飛び道具を使う事を覚えたが兄と添いとげたいので攻撃してこない。
女性がいると嫉妬して三倍移動、三回攻撃で優先的に狙われる。

・キモウト(病)
兄が自分の物にならないと悟ったキモウト。
兄を殺して一生自分の物にしてやろうと兄にも攻撃してくる。
飛び道具、三倍移動、三回攻撃で攻撃してくる。
591名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 15:49:45 ID:0XZyXWXm
歩いたらトラバサミにかかって身代わりの杖振ったのに効果無い助けて
592名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 18:49:26 ID:/Ej/5yoN
593名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 21:19:11 ID:FaCVHcTP
>>591
ドロボー猫ー! 状態だからあらゆる特殊効果がキャンセルされるのさー多分。
対処方法は殺られる前に犯ることです多分。
594名無しさん@ピンキー:2010/11/04(木) 23:27:46 ID:PIQ/RgSG
このスレって過去ログって保管してる?
595 ◆m10.xSWAbY :2010/11/05(金) 02:11:20 ID:MZnzDzOC
三つの鎖の個人サイトにあるぜよ!(b^ー°)
596名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 03:04:43 ID:qtteI2tx
597名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 03:05:05 ID:qtteI2tx
>>595
トンクス
598名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 05:18:16 ID:j4pcydiq
こちらを転載します

165 :キモウトとひきこもり兄X [] :2010/11/03(水) 11:54:03 ID:hRsAW5Cw (1/7)
なぜか本スレに載せれないのでこちらのほうで続きを載せていきたいと思います。
599キモウトとひきこもり兄X:2010/11/05(金) 05:19:15 ID:j4pcydiq
陽の光も消え、辺りは家々の光が輝いている。
昼の暑さが感じられないほど肌寒くなり秋の訪れを現しているようだ。
耳を澄ませば虫たちの声もどこからか聞こえている。
しかし彼にとってはその声は聞こえるはずもなく、声は相手を探し、むなしく響くだけであった。

(一人side)

「とすると俺と伊吹s」
「瀬里朱と呼んでくれ一人。」
「は、はい。じゃあ瀬里s」
「一人!!『はい』なんて言うな…頼む……他人みたいに言わないでくれ…悲しくなってくるじゃないか……。」
彼女が再び泣きそうになる。
拒絶されているように感じているのだろうか。俺も悪いことをした気持ちになってきた。

「ごめん…瀬里朱。」
「いいんだ一人。昔のことだ…憶えてないのも無理はない…。」

「すみません伊吹さん、兄さんとは許嫁といいましたけど本当に母さんたちが決めていたんですか?」
桜が俺の代わりに話を進めてくれた。桜も桜なりに俺の許嫁が出てきたなんてことになったから気になるんだろうか。

「そうだ、私と一人が離れ離れになる前からだからな。」
「でもそれって昔のことですから冗談だったんじゃないですか?」
「それはない。」
「……。」
桜が不機嫌そうな顔になる。ここまで表情をだしているのは珍しいことだ。
普段なら人形に喜怒哀楽の少しを足したくらいしかだしていないから見分けは付きにくいはずだが
ここまでわかりやすいと桜がどれだけ俺を心配しているのかわかったような気がした。

「いくら伊吹さんが兄さんのことを好きだったとしても兄さんにだって拒否権あるはずです。」
「そうだな、確かにそうだ。だが一人は必ず私のことを好きなってくれる。」
「そうですか…。」
600キモウトとひきこもり兄X:2010/11/05(金) 05:19:44 ID:j4pcydiq
(桜side)

兄さん、あの女殺していいですか?
私もう耐えられないです。私と兄さんの世界を壊そうとする奴は殺せばいいんです。

えっ?兄さんは私がそんなことをしたら私のこと嫌いになるんですか…?

イヤです。兄さんに嫌われてしまうのなら殺さなくていいです。あの女は生かしておきます。
いい子だなんて……恥ずかしいです兄さん。嬉しい…兄さんにほめられた。大好きです兄さん。
そうでした、兄さんは暴力は嫌いでしたね。兄さんのことを分かっていなくてすみません。今は反省しないといけません。
兄さんのことを誰よりも知っていて、誰よりも愛しているんです。なのに私が熱くなってはいけません。
あんなのに構っているより兄さんとお話をすることのほうがとっても大事です。

「桜〜。お〜い桜〜。聞いてるのか〜?」
「……はっはい!?兄さん呼びましたか!?」
「話している途中なんだからボーっとしちゃだめだぞ桜。」
「すみません…兄さん。」
またやってしまいました…。兄さんごめんなさい。許してください。兄さんが折角私に声をかけてくれたのに……。
なんて愚かなんでしょうか私は…許されるなら今この場で兄さんに千の言葉をもって謝りたいです。
ですがそんなことをしてしまったら兄さんは戸惑に違いありません。兄さんを困らせてしまっては意味がありません。

「瀬里朱、話を続けてくれないか。」
兄さんは話を聞きたがっているのでしょうか?
あんなやつの話なんか気にしなくていいのに。

「わかった。私の両親と一人達の両親が仲が良かったというのはさっき話したな? それから何度も連絡を取り合っているうちに
結婚の話ができてきたんだ。実際私と一人は仲が良かったからな。そして今に至るわけなんだ。こっちも連絡がとれなくなって不安になっていたが
まさかご両親が亡くなっているとは思わなかったんだ。分かってくれたか一人?」 

「なんとなくわかったよ。でもはっきり言うよ、今は瀬里朱のことを何も知らないし、好きでもないんだ。だから結婚の話のことは今は答えられない。」
嬉しい…兄さんは私がいるからあんなやつはいらないと言ってくれました。
兄さん、好きです。好きです。好きです。
ずっと一緒です。ずっとずっとです。

「そうか…そうだな。だが今は答えられなくともいずれ君の口から『好きだ』と言わせてみせよう。一人、今日はありがとう、私は帰ることにするぞ。」
「桜、すまないけど玄関まで送ってくれないか? 俺はやることがあるからさ。瀬里朱、見送れなくてごめんな。」
兄さんはそう言うと共同の部屋に入って荷物を片付けた後、作業部屋に行ってしまいました。
それにしてもあの女も諦めが悪いです。兄さんは私を選んだというのに。

「伊吹さん、玄関までですけど送りますね。」

「ありがとう桜ちゃん。桜ちゃんからお兄さんを奪うようなことを言ってしまってこちらも反省している。」
「別にいいです伊吹さん。それではさようなら、夜道気をつけてください。」
「気にしなくとも大丈夫だ。それではさようなら。」
ガチャ!バタンッ
601キモウトとひきこもり兄X:2010/11/05(金) 05:20:07 ID:j4pcydiq
やっと邪魔者が消えました兄さん。これで二人だけの世界に戻ります。兄さん、愛しい兄さん。やっと二人きりです。
今日はどこに行っていたのか聞かないと。それに兄さんにちゃんと携帯電話を持たせるように言っておかないといけません。
私は兄さんのペットです。ご主人様を心配になるのは当たり前です。
兄さんがいないと私は餌をもらえない犬そのものです。ひたすらご主人様を待って鳴いているしかないのです。

それなのに今日は兄さんの嫌いな汚いことをしていたなんて反省しないといけません。
ましてや兄さんのベッドでしていただなんて……。
兄さんはそういうのが嫌いで二次元とかいうものにいってしまったのですから私がしっかりしないといけないんです。
兄さんは人間の汚い部分が大嫌いです。昔からずっと、ずっとです。
だからあんなに人と付き合うのが苦手なんです。弱みを見せたらいつか自分に火が来ると思っているんです。
兄さんの思っていることはあっています。
兄さんは私という汚い妹のせいで人生を滅茶苦茶にされ、人を信じるのが怖くなってしまったのですから。

兄さんの嫌いなことをしているのはダメなことです。兄さんの喜ぶことをしないといけないんです。
兄さんの幸せが私の幸せなんです。
他のやつは兄さんを幸せになんかできません。
兄さんのことが誰よりも好きな私にしかできないんです。
だから今のうちに精々楽しんでおくといいのです。


「桜〜ちょっとこっち来てくれないか〜?」
兄さんの声が遠くから聞こえました。多分作業部屋で身動きがとれなくなったのかもしれません。
こういうときは私が助けにいかないといけないので兄さんの身体に触れるチャンスです。
「はい兄さん今すぐ行きます。」

スタタッと小走りで作業部屋に行くと兄さんが何かを作っているようでした。
兄さんは昔からプラモデルや模型が上手なのでときどきこの作業部屋で作っていることがあるのです。

「兄さん何か用ですか?」
「あぁ桜そこの工具とってくれないか?今手が離せないんだ」
「はいわかりました兄さん。」

私は兄さんの視線の先にあった工具をとって手渡しました。

はぁ…兄さんの顔が近いです。兄さん…好きです。
兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん
私を見てください。私だけを見てください。私を奪ってください。私を殺してください。
私を犯してください。私を愛してください。私を殴ってください。私を…
602キモウトとひきこもり兄X:2010/11/05(金) 05:20:30 ID:j4pcydiq
「よし!一段落ついたな。桜ちょっとそこどいてくれないか?桜〜?
 桜〜。お〜い。またボケっとしてるのか〜?ここだと危ないぞ〜。」

気がついたら兄さんが私の肩に手をのせていました。
兄さんの目からは私にたいする慈愛のようなものが見えました。
私は何時まで経っても兄さんの重荷でしかないのでしょうか……。
そんなはずないです。私は兄さんの役に立っています。絶対に。

「あぁすみません兄さん。ちょっと考え事で……。」
今日二度目です…。私としたことが情けないです…。でも兄さんが大好きだからなんです。

「すみません兄さん…。」
「いいよ桜、でもここだと危ないからな。それに疲れているんじゃないのか?」

兄さんは肩にかけてた手を伸ばして私のおでこに触れました。
兄さんに触れられた喜びが身体を駆け巡る。

「ありゃ…熱出ているんじゃないか?」
兄さんはそう言うとすぐに部屋を出て体温計を持ってくると私に差し出しました。
「桜、測ってみて。それとベットで休んでたほうがいいぞ。」
「はい、わかりました。」
私は兄さんに言われたとおり部屋に戻り、ベットに入って体温を測ることにしました。


しばらくすると兄さんが飲み物と薬を持ってきてくれました。

「桜、何度かわかるか?」
「37.4度です…。」
「まだ低いほうだけどゆっくりしておかないとな…明日はじっくり休んでおこうな?」
「で、ですけど兄さん、明日はお買い物の約束が……。」
「桜のほうがずっと大事だよ。大切で大好きな、唯一の家族なんだから心配させられる側の気持ちにもなってくれ。」
「はい…。」

兄さんに大好きと言われました…涙が出そうです…。

「桜、苦しかったらすぐ言うんだぞ。今日はそばにいてやるからな。」
「はい兄さん。あ、あのできれば一緒に…寝てもいいですか…?」
「桜はいつもは無口なのに風邪をひくと随分甘えん坊になるんだなぁ〜。可愛いこと言ってくれるじゃないか。」
「一緒に寝てもいいんですか…?」
「明日買い物に行けないぶん、治るまで一緒にいるよ。」

思考が速くなる。兄さんのことでいっぱいになる。
嬉しい。嬉しい。嬉しすぎます。
兄さんは私のことが好きなんです。そうに決まっています。
だから兄さんは私と結ばれるべきなんです。
そうです、そうに違いないです。
邪魔な奴はもういない。
兄さんは私がいれば十分です。
私も兄さんがいなきゃおかしくなりそうですから兄さんと私が結ばれるのは当たり前のことです。

「兄さん迷惑かけてごめんなさい…。」
「大丈夫だよ桜。迷惑なんかじゃないからね。桜、早いかもしれないけどもう寝ようね。」
「はいわかりました兄さん。」

そう言って私は瞳を閉じました。
でも寝れそうにないです。兄さんが頭を撫でてくれます。
それだけでも興奮して眠れません。
ですが兄さんに心配をかけてしまうのは良くないです。だから寝なきゃいけません。
603キモウトとひきこもり兄X:2010/11/05(金) 05:20:54 ID:j4pcydiq
数時間後

やはり起きてしまいました…。身体を起こしてあたりを見回しますが真っ暗で何も見えないです。
それでも兄さんの温かさは感じれます。

はぁ…兄さんの寝顔がこんなに近いなんて……。

あぁそうでした、兄さんに携帯のことを言っていませんでした。
でも大丈夫かもしれません。兄さんは私のことが大好きですから他の女とくっつくことなんてありえないです。

兄さんに近づいて兄さんの温かさを感じます。
兄さんはどこか窮屈そうな表情でしたが今日は兄さんに甘えたいです。
明日はもっと兄さんといつもはできないことをするんです。

兄さんの唇を指でなぞると兄さんはもぞもぞとしました。可愛い、食べてしまいたい。
キスは今はできないですが、抱きつくことならできます。

私は兄さんにもっと近づいて抱きつくような状態で寝ることにしました。

あぁ…兄さん大好きです。
だからこそ兄さんに、私を選んでくれた兄さんに尽くしたい。
兄さんにされることなら何でも嬉しいです。

「兄さん、おやすみなさい。」


(瀬里朱side)

日本に戻ってくるのは何年ぶりだろうか……。
君と別れてからも少しは日本にいたが君との思い出のないことはどうでもいい。

君にまたあえて良かった。今日は心からそう思った。
君との思い出は私にとってとても大事なものだ。それはこれからも変わらないだろう。

アルバムをめくる。そこには小さい頃の私と君がいる。
昔の君はこんなに笑っていたのに、どうして今の君は笑っていなかったんだ。
君に何かあったのか心配だ。私が君を守れなかったせいなのか?
でも大丈夫だ。ここにいる限り私が君を守る。君の敵は私が殺す。

君はいつも私を引っ張ってくれていたな。
奇異な目で見られ、虐められていた私を守ってくれた。
その頃からずっと君を想い続けているよ。今度は私が君を守る番だ。

「一人……。」

愛しい君の名前。君が好きだ。
私にはお金も権力も知恵もある。君が好きなものは何だって買ってあげられる。
もちろん私も君に相応しい人になれるように頑張ったんだ。
だから君は私と生涯を共にするんだ。そうだろう一人?

私しかいないこの家は君との家にしてもいい。
嫌なら世界中どこにでも作っていい。どんな豪邸でも君のためなら惜しまない。
君さえいれば私はいい。
だが私以外の女を作ったら君でも許さない。君を殺してでも一緒にいよう。

「おやすみ一人。愛しているよ。」

アルバムを閉じ、ベットの明かりを消した。
604名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 05:21:44 ID:j4pcydiq
転載終わり

171 :キモウトとひきこもり兄X [] :2010/11/03(水) 12:03:22 ID:hRsAW5Cw (7/7)
これで今回は終わりです
書くのが良くて月一ペースと遅いので何かと迷惑かもしれませんが
最後まで書いていきたいのでよろしくお願いします
605名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 18:32:21 ID:lQlT458+
転載乙!

投稿GJ!
次回にも期待!
606名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 19:28:22 ID:qkbO1Oew
よし来た
これからの展開に期待できるな
607名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 20:55:20 ID:k3GH3Yv5
天才ありがとう!
608幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 21:57:29 ID:d75ZZSrY
今晩は。
表題について投下いたします。
609名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 21:58:03 ID:d75ZZSrY

お兄ちゃんと約束をしてから2週間が経った。
そして、来月の終わりに私とお兄ちゃんは二人で、私達の約束を母さんに伝える。


今日も3人で夕飯を食べて、後片付けをして、いつもの様にお茶を3人分淹れてから居間に入る。
お兄ちゃんはまだ居ないみたいで、姉さんが鼻歌を歌いながら上機嫌で髪を梳いていた。
その度にさらさらと姉さんのビロードのような黒髪が揺れる。
「あら、どうしたの〜?」
姉さんがのほほんとした様子で私に問いかける。
「気にしないで、姉さんの髪ってきれいだなって思っただけ」
私はお茶を姉さんの前に差し出す。
「くす、ありがとう」
姉さんの手元を何気なく覗くと、見たことのない小さな櫛が握られていた。
「あれ、いつものブラシじゃないの?」
「ふっふっふ〜、良い所に気付いたね〜」
姉さんはひらひらと私の目の前で櫛を揺らす。
「兄さんが私にちょっと前にプレゼントしてくれたんだよ。
 いつもありがとうって、良いでしょ〜?」
私はその細かな細工のされた、綺麗な櫛を見つめていた。
手で削り出されたのが良く分かる丁寧な造りの歯で、まるで姉さんの髪の為に作られたみたいだった。
「も〜、ダメだよ。
 そんなに羨ましそうな目をしてもあげないんだから」
姉さんが櫛を両手で握って、冗談っぽく笑う。
610幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 21:58:24 ID:d75ZZSrY
「ううん、いらないわ」
別に櫛が羨ましかった訳じゃない、私には姉さんみたいな髪は無いもの。
ただ、一つだけ気になった事があった。
「それは、お兄ちゃんが選んでくれたの?」
「そうだよ。
 いきなり渡されたから、初めは何なのか分からなくて困っちゃったわ。
 でも、こうして使ってみると本当に私に必要だった物そのものね。
 くすくす、兄さんは本当に雪風の事を良く分かってくれるんだよ」
姉さんがとても嬉しそうに言う。
お兄ちゃんを一番知っているのは姉さん。
姉さんの事を誰よりも分かっているのはお兄ちゃん。
それは私達が恋人になってからも変わらない。
お兄ちゃんと姉さんは昔から何をするのも、好きなものも、嫌いなものも、全部一緒だった。
別に二人で示し合わせている訳じゃないのに。
お兄ちゃんが何かを選べば、姉さんも当然それを選んでいる。
それが二人にとっての当たり前。
私はずっとそんな二人を見ていた。
「くす、シルフちゃんだって兄さんから素敵なプレゼントを貰っているじゃない。
 いいな〜、私にも分けてくれないかな〜?」
姉さんが物欲しげにトラ達を目で物色する。
「駄目、あげない」
私は部屋の隅に寝かせておいたトラ、タロ、ジロを姉さんから遠ざける。
みんなお兄ちゃんから貰った大切な子達だ。
「うふふ、いいな〜。
 ふわふわのトラちゃんかな〜?
 それとも、もこもこのタロちゃんかな〜?
 やっぱり、もふもふのジロちゃんかな〜?
 みんな枕みたいにふかふかだな〜」
……話は変わるけど、最近トラ達が明らかに平たくなっきている。
あと、姉さんぐらいの長い髪の毛が付いていたり。
611幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 21:58:48 ID:d75ZZSrY
「別に姉さんが羨ましがる事じゃないわ。
 みんなお兄ちゃんじゃなくて、お兄ちゃん言われて私が選んだの。
 姉さんみたいに、お兄ちゃんが選んでくれたものじゃないから」
「ふふ、だから最近兄さんがシルフちゃんの事を私に聞いてくるんだ」
「私の事を?」
「そうだよ、すごく真剣な顔でお姉ちゃんに相談するの。
 シルフちゃんの好きな事とか、不安に思っている事とか。
 もちろん、シルフちゃんが喜ぶプレゼントの事もね」
くすくす、と姉さんが楽しそうに思い出し笑いをした。
「可笑しいよね、もう兄さんの方がシルフちゃんの事を良く知ってるのに。
 でも、兄さんってそういう所は昔から純真なままだから、何だか安心するわ。
 くす、それにしても、そんなに兄さんに想われるなんて、お姉ちゃんちょっと妬いちゃうかも?」
「別に姉さんが羨ましがる事なんかじゃないよ
 だって、姉さんもお兄ちゃんもお互いの事で悩む必要なんて無いじゃない」
姉さんは何も言わなくてもお兄ちゃんのことなら何でも知っている、きっとお兄ちゃん以上に。
お兄ちゃんはそんな姉さんの事を理解して、信頼している。
「姉さんとお兄ちゃんは、そんな事しなくても何でも分かりあってる」
私もお兄ちゃんと一緒に居ればそうなれるって思っていた。
でも、結局私にはお兄ちゃんが何を考えているかなんていつまでも経っても分からなかった。
今も、分からない。
あの時、どうしてお兄ちゃんは泣いていたのかも、好きと言ってくれた時のお兄ちゃんの気持ちだって。
姉さんなら当たり前の様に分かるんだろうなって思う。
612幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 21:59:27 ID:d75ZZSrY
「う〜ん、逆に分かり合い過ぎちゃうのも難しいんだよね。
 お互いの事が気になって、悩んだりする楽しみが無いわ。
 それは便利だけど、残念でもある事かな?
 だから、シルフちゃんと兄さんみたいな初々しさが新鮮なんだって思うの」
「……姉さん達ってまるで夫婦みたいだものね」
そう思うのは私だけじゃない。
二人は学生結婚をしているから苗字が同じなんだ、って噂を本気で信じている人だって結構居る。
それぐらいに姉さんたちの距離は自然で、何者よりも親密。
「くす、シルフちゃんはやっぱり心配性だね。
 大丈夫、兄さんの恋人はシルフちゃん、それは絶対だよ。
 お姉ちゃんはシルフちゃんの次、だから安心して大丈夫」
そう言って、姉さんが朗らかに笑った。
「大丈夫だよ、兄さんは一途な人だのも」
「この前は、お兄ちゃんは薄情だって言ってなかった?」
「くすくす、言ったじゃない、冗談だよって」
……ずるいと思う。
自分だけはお兄ちゃんから見放されないって知っているのだから。
だから、あんな意地悪な冗談が言える。
「姉さんの意地悪」
「ふふ、そうだよ〜。
 雪風お姉ちゃんはと〜ってもいじわるなんだよ〜」
にやにやと姉さんがわざとらしい表情を作る。
613幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 21:59:58 ID:d75ZZSrY
でも、姉さんの事が嫌いじゃない。
姉さんはとっても優しくて私の事も家族だって思ってくれる大切な人。
それでも、やっぱりずるいって、少しだけ思ってしまう。
だって、姉さんはお兄ちゃんはずっと一緒に居られるから。
私みたいに、いつかお兄ちゃんとただの他人になってしまうなんて事に怯えた事なんて無いのだから。
それは血が繋がっているからじゃない、心が繋がっているからだと私は知っている。
だから、姉さんには私の気持ちが分かって貰えないって思う時がある。
「やっぱり、姉さんは意地悪」
姉さんは答えないで、ただ柔らかい笑顔を浮かべるだけ。
「くす、じゃあそろそろ邪魔者は退散しましょうか〜」
そう言って姉さんがぱたぱたと部屋から出る、そして入れ替わりにお兄ちゃんが入ってきた。
私はそっと立ち上がって、お兄ちゃんに向かう。
お兄ちゃんは何も言わないで、優しく私を抱き締めてくれる。
これが、いつの間にか私たちの習慣になっていた。
「私は、お兄ちゃんの恋人だよね?」
「ああ、恋人だよ」
こっそりとお兄ちゃんの向こうに視線を向ける。
ちょっとだけ姉さんに意地悪仕返してみた。
姉さんがお兄ちゃんの背後の扉からそっと私達を覗き込んでいたのが見えたから。
でも、私の視線に気づいた姉さんは、ぐっじょぶ!!、と言うように親指を立ててた。
私みたいな見苦しい嫉妬の気持ちなんて欠片も見せない。
やっぱり、姉さんには勝てないって思う。


……ところで姉さん?
なんで左手にジロを持ってるの?
あれ? 
タロも居ないんだけど……。
614幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 22:00:24 ID:d75ZZSrY
*************************************

ぺたぺたと絵の具を塗りつける。
うん、もうちょっとやっても大丈夫かな?
ちらりと横目で隣の椅子を見る。
雪風は絵を描かずに、俺の隣で一人チェス板を弄くっている。
まだ、俺はシルフとの約束の事を伝えていない。
あの日の雪風の事を考えるとそれを言う事に不安が有った。
いや、いつまでも黙っているわけには行かないか。
「なあ、雪風。
 俺、シルフとの結婚を本気で考えているんだ」
覚悟を決めて雪風に打ち明ける。
「うん、兄さんはちゃんとシルフちゃんに向き合えたんだね」
雪風は俺のほうを振り返り、嬉しそうな笑顔を見せる。
「おめでとう」
「……怒ったり、反対したりしないのか?」
「あら、シルフちゃんの長年の想いが兄さんに伝わって、
 兄さんはシルフちゃんへの想いにちゃんと応えられたじゃない。
 きっと二人にとって一番幸せになれる答えだよ。
 なのに、どうして私が反対すると思うの?」
雪風は不思議そうに答えた。
いつも通りの雪風に思わずほっとした。
ひょっとしたら沙紀の様に虚ろな目でナイフを握って詰め寄ってくるのではないかと恐れていたのが恥ずかしい。
その時に、ふとあのゲームの話を思い出した。
誰も傷つけず、なのに俺を閉じ込めるという今思えば禅問答の様な奇妙なゲームだ。
「じゃあ、お前の最後のゲームっていうのは、もう終わりでいいっていう事だよな?」
俺は一人しかいないから、その俺とシルフが結ばれるという事は雪風にとっては負けを意味するはずだ。
すると、雪風はおかしそうに口元を手で押さえた。
「くすくす、ううん、私のゲームはちゃんとまだ続いているから安心して。
 何て言えば兄さんに分かるかな? 
 私が今しているのはチェスじゃなくてポーカーなの。
 それも配られるカードを拾うだけ、交換もドロップも無い。
 そうね、ベットだけはいくらでも出来るわ、引き返せなくなるまでね」
「続いているか……、それで役は揃ったのか?」
「う〜ん、例えるなら4枚カードを開いてワンペアも無いって所かしら」
ちょっと困ったように雪風が返事を返す。

615幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 22:00:43 ID:d75ZZSrY
4枚まで開いて役がない、ならそれは5枚目に何が来ても結果は同じだ。
それは雪風にとっての敗北宣言なんじゃないのか?
「別に、例えゲームに負けても何も変わらないからな。
 もし雪風さえ望んでくれるなら、俺はお前にもずっと側に居て欲しい」
「ふふ、兄さんは優しいね。
 でも、やっぱり私の事を分かっていないんじゃないかな?
 何回も言ったと思うよ? 
 私の望んでいる事はそんな事じゃないって。
 私が望んでいるのは……」
そうだね、と言って雪風が椅子から立ち上がって俺を見下ろす。
「ねえ、兄さん。
 シルフちゃんがしてた事、私もするよ?」
「え、お、おい!?」
雪風が俺に抱きつく。
咄嗟に下を向いて胸元の雪風を見ようとした時、唇と唇が触れ合った。
ほんの数秒だったと思う、なのにそれがとても長く感じた。
「ふふ、シルフちゃんったら、お姉ちゃんが気付いてないとでも思ったのかな?
 ね、兄さん?
 雪風が兄さんの側に居るっていうのは例えばこういうことだよ」
雪風が笑いながら距離を開けた。
頬が高潮している、その朱色が白い肌に映えて綺麗だった。
「くすくす、シルフちゃんがさっきの私達をみたら何て思うかな〜?
 あの子が私に色んなコンプレックスを持っている事、恋人なら勿論知っているよね。
 じゃあこの事をシルフちゃんに知られたい? 知られたくない?
 くすくす、なら黙っててあげるから雪風のお願いを一つだけ、聞いて?」
「雪風、お前は!?」
「ふふ、冗談よ、兄さん。
 私はこういう風に兄さんを扱いたい、それが私の幸せだから。
 私が生まれてから、そしてこれからも、ずっと抱き続ける唯一つの願い」
くすり、と笑って確かめるように俺の顔を見つめる。
616幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 22:03:36 ID:d75ZZSrY
「兄さんはそれでも私を側に置いてくれる?
 本当に私を捨てないの?
 それに、私の願いを叶えることが兄さんにできる?」
「俺には、お前の願いをそのまま叶えることはできないよ。
 でも、それでも俺は雪風に側に居て欲しい。
 そして、俺は雪風もシルフも幸せになれる答えを出して見せるよ」
「いつも自信満々で、自分勝手、兄さんらしいね。
 ふふ、期待しないで待っているわ。
 でも急いだ方がいいよ、くす。
 早くしないと兄さんは雪風のモノだよ〜?」
言っている事の剣呑さとは裏腹に、雪風は楽しそうだった。
そして、その笑顔には温かみが篭っていた。
はぁ、ったく、清純な顔して物騒な事を毎度毎度言いやがって。
ま、それでも雪風は雪風だな。
「雪風、ありがとう」
だから、ちゃんと言っておかないといけない事がある。
「え、ありがとう?」
雪風は虚を突かれたように俺を見つめる。 
「あ、ええ、どういたしまして。
 あのさ、兄さん、それはどういう意味のありがとうなの?」
「色々な意味が混じってて、自分でも良く分からないんだ。
 ただ、やっぱり俺には雪風が居てくれて本当に良かったって思う。
 何て言うのかな?
 今まで、ずっと俺の為に頑張ってくれて、今も俺の事を一番に考えてくれて。
 それなのに俺は一度もちゃんとお礼を言った事がなかったのを思い出したんだ」
「あら、別にそんなの構わないわ。
 私はお礼なんて要求した事ないもの」
「ははは、そう言えばそうだったな。
 でも、俺が自分に対して疑問を持つことができたのも、
 こうやってシルフとの関係を変える切欠を作れたのも、
 今ここで描きたい物ができた時に絵を描く事ができるのも、みんな雪風が居てくれたからだ。
 きっと、雪風は俺自身以上に俺の事を分かってくれている。
 それだけじゃない、シルフにとっても最高の姉でいてくれる」
そう、どんな思いを秘めていても、雪風は俺にとって大切な存在だ。
今の俺ならば確信をもってそう言い切れる。
「だから、ありがとう」
もう一度、雪風に言った。
617幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 22:04:26 ID:d75ZZSrY
「ああそう、どういたしまして」
如何にも体裁だけ繕ったように、儀礼的な返事が帰ってくる。
雪風はもう笑っていなかった。
いや、多分怒っているといった方が正しい。
何が雪風の気に障ったのだろう?
俺にはそれが分からなかった。
雪風は喋らず、黙って扉に向かう。
「雪風?」
「じゃあ私、先に帰るね。
 ……兄さんは今、幸せなの?」
「あ、ああ、幸せだ。
 でも、それはシルフと居るからだけじゃない。
 お前もここに居てくれるからだよ」
「そう、じゃあその幸せをたくさん楽しんで。
 それは私も望む事だから」
ドアを出る時に雪風が思い出したように言った。
「そうそう、さっき言ったとおり私のカードはまだ役なしだよ。
 但し手札はスペードの10、J、K、Aだけど。
 くすくす、兄さんは運に左右されるゲームが嫌いだから、カードはやらないんだよね?
 私は大好きなんだ、私でも兄さんに勝てる可能性が有るから。
 あのね、10、J、Q、K、Aが同じマークで揃うと」
雪風が振り向いて、指を一本ずつ曲げる。
最後に小指だけが残った。
「絶対に勝てる最高の役が出来るんだよ。
 私が狙っているのはね、初めからそれだけ。
 だから、カードを全部開けないと勝敗は私にも分からない。
 勝負は最後の一枚で全部が決まる、そういうお話なの。
 最後の一枚にQは有るかな、きっと無いよね、無いに決まっている。
 そんなに都合のいい奇跡なんて在る訳が無いに決まっているよね?」
618幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 22:04:47 ID:d75ZZSrY
「それは……」
48枚の内からたった1枚を引かなければいけない賭け。
そんな賭けは俺から見れば負けの先延ばしに見える。
雪風が最後の一本をゆっくりと折り曲げる。
「それでも、勝ってみせるわ。
 絶対に勝って私は兄さんを手に入れる。
 やっぱり、兄さんは私のモノじゃないと、許せない」
けれど、雪風にはそれは勝ちに近づく過程に過ぎないというのだろうか?
雪風の表情には暗い決意が宿っていた。
「なあ、さっきも言ったが俺は雪風の願いに応えることはできない。
 だが、それは雪風の想いを否定する訳じゃない。
 俺は雪風も幸せになれる道を探している、それがどんな形でも構わない。
 例え周りから見れば道を外すような形であっても」
「ふうん、そうなんだ。
 でも、兄さんに私の幸せが理解できるのかな? 本当に」
619幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 22:05:10 ID:d75ZZSrY
雪風は出て行った。
そして、入れ替わりに先生が入ってきた。
「ん、珍しいね。今日は雪風君と一緒に帰らないのかい?」
「え、ええ、そうなんです。
 もうちょっと描いていたい気分なんです」
「ほう、なるほど確かに一段と良く描けているよ」
その後で、軽く首を捻った。
「うん?
 ところで、これは誰の模写かな、私も初めて見る絵だね?」
「いや、これは俺のオリジナルです。
 ちょっとこの前、書きたいなって思うものができて。」
先生は何も答えなかった。
じっと俺の絵を見ている。
何かこの絵にまずい事でもあったのだろうか?
「……そうだね。 
 その手前の女の子はそんなに背景との明暗をはっきりさせない方がいいと思うよ」
そう言って先生が隣の席に着いた。
620幸せな2人の話 10:2010/11/05(金) 22:06:27 ID:d75ZZSrY
以上です。
ありがとうございました。
また次回もよろしくお願いいたします。
621名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 23:13:06 ID:g+y8LFEG
いつもご苦労様です
次回期待してます
622名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 23:17:00 ID:j4pcydiq
GJ
雪風がほんと分からん
623名無しさん@ピンキー:2010/11/05(金) 23:46:21 ID:pL6FDD2p
GJ!続き楽しみにしてます。

最後の女の子の絵の件が不気味ですね…
624 ◆wBXWEIFqSA :2010/11/06(土) 03:10:06 ID:xuKm5et9
>>508の続きを投下します
今回は少し長いですがエロ無しです。
流血はありませんが、暴行シーンなど不快に思われる展開はあるので嫌な人はスルーして下さい。
625狂依存 20:2010/11/06(土) 03:10:47 ID:xuKm5et9
翌日
「ただいま……」
と言っても誰もいないんだけどね。
麻由お姉ちゃんは今日は帰りが遅くなるとか言ってた。
「夕飯はっと……」
作ってあったか。
意地でも僕には家事をやらせないつもりなのだろうか。
何が麻由お姉ちゃんをそこまでさせるのだろう。
「ちょうどいい機会か……」
自室に篭り、ベッドで横になって色々考える。
何故麻由お姉ちゃんがあんな風になってしまったのか。
生まれた時からずっと大好きだった。
物心つく前から、お父さんやお母さんの言う事は聞かなくても、麻由お姉ちゃんの言う事だけはちゃんと聞いていたと、両親は言っていた。
生まれながらのお姉ちゃんっ子だったそうだ。
本当に小さい頃、幼稚園ぐらいの時はとても仲が良かった。
何処へ行くのもいつも一緒で、本当に良く面倒を見てくれた。
そんなお姉ちゃんが大好きで、いつしか本気で結婚したいと思い始めて、麻由お姉ちゃんは僕のお嫁さんになるとか言い出し始めた。
でも、僕が小学生になる前後から段々構ってくれなくなって、僕に対する態度も冷たくなった。
人目も憚らずベタベタくっついて来た僕に嫌気がさして来たのだろう。
今考えれば当然の事だ。
だけど、それでも全然嫌いになれなくて、麻由お姉ちゃんにベタベタするのを止める気にはなれなかった。
むしろ、邪険にされればされるほど、どんどん過激になって来た気もする。
いつからだったろう?
麻由お姉ちゃんに変な事しなくなったのは……

フフフ……
もうすぐ、麻由お姉ちゃんの15歳の誕生日。
今年もちゃんと麻由お姉ちゃんのプレゼント買ってあげるからね。
「夫が妻の誕生日を祝うのは当然だよね。」
これを機に一気に嫁との距離を縮めておかないと。
今年は何買ってあげようかな。
「去年は確かストラップをあげたんだっけ。」

「麻由お姉ちゃん、お誕生日おめでとう!ハイ、これプレゼント。」
「……ありがとう……」
ムスっとした表情でお礼を言い、プレゼントを受け取る。
もう、素直じゃないんだから。
「えへへ、受け取ってくれて嬉しいよ。」
もっと喜んでくれて欲しかったけど、今はこれでいいや。
「用はそれだけ?」
「え?あ、うん……」
うーん、もっと甘々な展開を期待してたんだが……
「そう。なら、とっとと出てって。私やる事あるから。」
「麻由お姉ちゃん、良かったら今夜は夫婦二人で一緒に甘い夜を……」
「いいから、出てけつってんだろうが!」
バンっ!
「もう、照れる事ないのに……」
まだまだ、素直になれないんだね。
まあ、まだ慌てる様な時期じゃないか。
じっくり行こう。うん。
626狂依存 21:2010/11/06(土) 03:11:33 ID:xuKm5et9
って感じだったか。
あれから、夫婦仲は一向に進展してない気もするから、今年は何とかしないとね。
「麻由お姉ちゃん……」
「あっはははは!うっそ、それマジ?超受けるじゃん。」
リビングで友達と携帯電話で話をしているみたいだな。
「それで、どうなったの?うん……」
むう、麻由お姉ちゃん僕が去年あげたストラップ全然使ってくれてないなあ。
その前の年にあげた、ブローチも使ってくれてる様子がないし……
うーん、麻由お姉ちゃんのお気に召さなかった様だな。
嫁が喜ぶものをちゃんと理解出来ない様では、僕もまだまだ修行が足りないみたいだ。
今年はちゃんと、麻由お姉ちゃんが喜ぶものをちゃんとあげないとね。
「あ、そう。うん、じゃあね。」
ようやく通話を終え、リビングから出てくる。
「麻由お姉ちゃん、もうすぐ誕生日だよね。何か欲しい物ないかな?」
「ああ、別にないわよ。」
うーん、去年も同じ事言ってたな。
「でもでも、今年はちゃんと麻由お姉ちゃんが欲しい物あげたいし。あっ去年あげたストラップどうしたのかな?やっぱり気にいらなかった?」
「さあ、どうだったかしらね……」
この表情見る限り、気に入らなかったみたいだな……
今年はどうしよう?
「ねえ、麻由お姉ちゃん。今年は二人で楽しく過ごせると良いね。」
出来れば、姉弟の一線を超えて夫婦の契りを……
「ふん。」
ドンっ!
「あん!もう……」
僕の肩にわざとぶつかって、部屋に行ってしまった。
相変わらずのツンデレさんだなあ。
でもこれは、麻由お姉ちゃんの頑なな心を開かす事の出来ない僕がいけないんだよね。
うん、頑張らなければ。

「麻由お姉ちゃんが喜びそうなものはっと……」
翌日、近所のデパートの小物売り場に出向き、プレゼントを探す。
あれなんか……いや、高すぎるな。
お小遣いに限りがあるから、あんまり高い物は買えないしなあ。
本人に聞いてもわからない以上、自分で考えるしかない。
ストラップはダメ、ブローチもダメ、その前の年にあげたぬいぐるみもダメとなると……
「うーん、難しいな……」
とりあえず、今日の所はこのくらいにして明日は……ミニバスの練習があるから、明後日出直すか。
誕生日は3日後だからまだ少し時間はあるしね。

「はあ〜、今日の練習はきつかったな……」
やたらと走り込みやらされて、足が痛い。
さっさと帰って、部屋でゴロゴロしようっと……ん?
あれは……
麻由お姉ちゃんではないか。
むむ?何やら知らない男と歩いてるぞ。
くっ、いくら麻由お姉ちゃんが世界一可愛いからって人の嫁に手を出そうとするとはけしからん!
こんな悪い虫は排除してやらねば。
「という訳で後をつけます。」
「へえ、あいつがねえ。」
「そうなんだよ。マジで受けるだろ。」
むむ……何やら悪い雰囲気ではなさそうだぞ。
万が一に備えて最低でも奴の顔を覚えておかねば……
くそ!暗くてよく見えねえな!
「じゃあ、私こっちだから。」
「あ、あのさ……」
627狂依存 22:2010/11/06(土) 03:14:26 ID:xuKm5et9
「ん?何?」
「その……えと……これ、読んでくれるかな……」
「……」
「じゃ、じゃあ!返事はいつでもいいからな!」

……
あの手紙は……いや、言うまでもないか。
麻由お姉ちゃんやっぱりモテるんだなあ、当たり前だけど。
「って、関心してる場合じゃねえ。」
今僕の前を駆けていったが、ちらっと見た限りでは背も高くて、中々のイケメンだった気がする。
くっそお、あれはウチの嫁なんだぞ!
まだ素直になっていないとは言え、僕と将来を約束した仲なんだ。
※そんな約束していません。
何とか断ってくれれば良いんだが……

「ただいまー。」
麻由お姉ちゃんより、少し遅れて家につく。
むう、誕生日プレゼントの前に課題が出来てしまったな。
何とかしないと。
「あ、麻由お姉ちゃん……」
ちょうど部屋の前でばったり、会った。
「何?」
「えっと……その…」
「用がないなら、もう行くわよ。これから塾に行かないといけないんだから。」
「あ、ちょっと……」
行っちゃった。
見た限りいつも通りみたいだが……
やっぱり、ああいうのには慣れているんだろうなあ。
流石は僕の嫁だ。
っと感心してる場合ではないな。これはチャンスだ。
麻由お姉ちゃんの部屋にこっそり入って、あの手紙をどうしてるか確かめねば。
「おじゃましまーす。」
ええと、あの手紙は……机の上にはないな。
確か鞄の中に入れたと思ったから、鞄に入ってるのかな。
学校指定の通学鞄だから、別に覗いても大丈夫だよね。
「うんと……」
ないな……
となると引き出しかな。
流石に気が引けるな……
「うーん、もしかしたら制服のポケットの中にでも……おわ!」
何か足で蹴飛ばしちまった……ってゴミ箱か。
すぐに元に……ん?
何か紙をビリビリに破って丸めたような、ゴミが一つ……むむ?
「(これは……?)」
すぐに丸めたゴミを、開くと……
「これは、封筒みたいだな……」
って、まさか?
あの時もらった手紙か?
こんなすぐにビリビリにしなくてもいい気がするが……
まさかイタズラか何かだったとか?
いや、これ封も切ってないみたいだし……
「麻由お姉ちゃん……」
麻由お姉ちゃんの浮気は断じて許さんが、流石に読みもしないで破るのはどうかと……
まさか、いつもこんな事してるのか?
「……」
破いて丸めてあった手紙を広げて、中身を確認する。
………
やっぱり、ラブレターみたいだな。
さっきまで憎くて仕方なかったが、流石に少し可哀想だ。
何か複雑な感情を抱きながら、手紙をゴミ箱に戻し部屋を後にした。
628狂依存 23
「麻由お姉ちゃん……」
あの後しばらく考え込んでいた。
一応あいつだって精一杯勇気を出して、あの手紙を渡したんだろうから一通り目を通すぐらいはしてやれば良いのに。
それなのに、あんなにしちゃって……
「……まさか、僕があげた誕生日プレゼントなんかも……?」
去年あげたストラップも一昨年あげたブローチも全然使ってないし、その前の年にあげたぬいぐるみも部屋にはないし……
「ただいまー。」
「あ、おかえり。」
おっ、帰ってきたか。
「はあ、今日は宿題やたらと出ちまったな……」
「ねえ、麻由お姉ちゃん。」
「ん?」
ちょっと言っといた方がいいかもしれないな。
「あの……えと…今日ミニバスの練習の帰りに偶然見たんだけど、男と一緒にいたよね?あれって……」
「ああ……去年同じクラスだった奴よ。それが何か?」
「えっと……その時、その人に何か手紙の様なものを渡されたのを見た気がするんだけど、あれってまさか……?」
「………」
「ほ、ほら!僕は麻由お姉ちゃんの夫となるんだから、変な虫が付かないか見守る義務があるもんね!うん!」
とりあえずこれでごまかせるか……?
「それが、あんたに何の関係があるのよ?」
「あるよ!大有りだよ!自分の嫁がラブレターなんか貰ったりなんかしたら心中穏やかではないよ!うん!」
「いや、もしかしたら何かのイタズラかもしれないし、変なものが仕込んであるかもしれないから、ちゃんと中身を確認したほうが良いよ!うん。」
く、苦しいかな……?
「あんたに何でそんな事指図されないといけないのよ。バッカじゃないの。」
一応心配してるんだけどなあ。
「だから…その、手紙を貰ったらすぐ捨てたりしないでちゃんと読んで、どんなものか確認しておいた方が良いと思ったり、何だったりすると思うんだ……」
って、やばっ……!
いや、いいか。勝手に入ったのは悪いけどはっきり言っとこう。
「そういう事か……人の部屋を勝手に!」
ガシっ!
「ご、ごめんなさい!遂……」
胸倉を掴んで、僕を睨み付けてる目が本当に怖い……
これは本気で
麻由「あんたが、私の部屋にしょっちゅう勝手に入ってるのは知ってるわ。でも今まで、部屋が荒らされたり、私の物を勝手に持ち出したりしなかったから、見逃しといてやった。一々追求するのも面倒くさいからね。」
「………」
「だけどなあ、人の部屋勝手に荒らしてプライバシー侵害した挙句、私が貰った物の事で何でアンタに説教されなきゃいけねえんだよ?ああ!?ごらぁ!!」
バシっ!ドカっ!ドンっ!
「ごめん!その事は本当に謝るし、もう二度としないから!イタっ!」
バチっ!ドスっ!ドンっ!
「てめえの謝罪なんか、今更信じるわけねえだろ!あんたのせいで私がどれだけ恥じかいたと思ってんの!もう我慢の限界だ!」
怒鳴りながら、容赦なく殴打や蹴りを加えてくる。
こんなに怒った麻由お姉ちゃん久しぶりかも……
ドカッ!ゴンっ!
「う……ごめんなさい!ぐえっ……」
「はぁ……はぁ……ふんっ!」
ドスっ!
度重なる殴打で虫の息になって倒れていた僕を思いっきり蹴り上げ、ようやく終わる。
「しばらく、あんたなんか顔も見たくないわ。さっさと出てって。」
「あ、あのね、麻由お姉ちゃん。麻由お姉ちゃんはあの人の事どう思ってるのかな?もしかして何か嫌な事されたりしたの?」
「私があいつの事をどう思おうが、何の関係もねえだろ。ああ!!?」
ドスっ!
またおもいっきり蹴りを加える。
うう……ちょっと骨折れちゃうかも……
「別にあいつの事なんか、何とも思っちゃいないし、付き合う気もないわよ。ったく、お前に限らず、男ってのはちょいと良い顔すりゃ、調子に乗りやがって。」