【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part12【改蔵】
3get
大草さんのやきうどんが食べたいです
大草さんが食べたいです
じゃ奈美ちゃんはもらっていきますね
では私は霧ちゃんを
楓はいただいきます
クラスの女子は全員先生のお手つきなんで無理でーす
じゃあ知恵先生で
じゃ絶倫先生だな
>>12 いや、倫ちゃんも望坊ちゃまが担任のクラスの生徒だから
じゃあ、ことのんも先生のお手付きなのか…
15 :
絶望の器:2007/12/03(月) 02:46:49 ID:1qYltdt2
霧も出てくるのか
確かにどういう展開になるのか分からないw
しかしそれが良い 続きが楽しみだ
薄暗い明かりの元、千里が望の腕に抱かれている。
「ぐすぐす…」
「うわ何で泣くんですか木津さん!?すいません、痛かったんですか?」
「だって…だって先生最近抱いてくれなかったし、それどころか私のこと避けてるみたいで…
先生に嫌われちゃったのかと、ずっとずっと心配で…」
「…すいません、迷ってたんです…なかなか決心がつかなくて…」
「先生…?」
「ですが、もう迷いません決めました、木津さん。」
ぎゅうっと望は千里を抱きしめた。
「え…それって…本当ですか、嬉しい!」
「ええ、一周して気が付きました、やっぱり木津さんが一番です。」
「………一周…?」
望が何やらプロポーズの言葉を続けているが、魚目状態の千里の耳には届いていないようだ。
「ふふふ…一周ですか…先生が立派なだんなさまになるためにはきっちりした躾が必要なようね…」
「あれ?…あの木津さん…なんですかそのスコップは…?」
千里が一糸纏わぬ姿でスコップを水平に構える。
その姿は月明かりに照らされ、この世のものとは思えないほど美しく輝いていた。
埋。
新スレを埋めてどうするww
育ってダーリンで冬馬がうららに色々されるようなのない?
>>15 ああ…なんかいい、本当に好きだなぁ…このSS。
淡々としていながら、徐々に高まっていく感じが堪らなく好きです。
キャラの雰囲気も皆、大好き。
てか、好きばっかり言っててすんません。
こんな素敵なスレがあったのですね
眼福です
作家の方々ありがとうございます
ocn...とうとう全鯖永久規制来たか...運営すごいことするな。
dionもまだ全鯖規制続いてるしasahiやeonetも食らってるらしいし
これは職人さん減りそうだ...。
25 :
真昼:2007/12/04(火) 17:06:15 ID:DCnWG7Gr
全スレも微妙に埋まってないというのに、新スレを土足で踏み荒らさせていただきます。
今週の楓があまりに可愛かったので、愛情が妙な方向に暴走した結果、捏造設定の嵐に。
原作設定ぶち壊し、エロなしです。メインは楓、カエレ、望の三名になります。
無駄に長くなりましたので、2〜3回に分けた投下となりそうです。よろしければお付き合いくださいませ。
ゴトン、ゴトン、ゴトン―――
規則的に身体が上下に揺れる。風の鳴る音が窓越しに耳を打つ。
平日の昼間だからだろう。人の少ない電車内で、望は一人の少女と向かい合って座っていた。
「あの……、私、どこへ連れてかれるんですか?」
さっきから俯いたまま顔を上げない少女に、おずおずと話しかける。けれど少女は、頑なに顔を上げようとしない。
「……あの……、木村、カエレさん?」
名を呼ぶと、ピクリと細い肩を震わせる少女――木村カエレ。
彼女はゆっくりとした動作で、長い金髪に埋もれた顔を上げる。
その表情は、いつもの彼女からは想像出来ないほど儚げだった。望はハッとして、もしやと思いつつ問う。
「もしかして、今は……楓さん、なのですか?」
カエレ――いや、楓はゆっくりと頷くと、眉をハの字にして目を伏せた。
「…突然このようなマネをして申し訳ありません…。ひどく、驚かれたでしょう?」
「い、いえ、確かに驚きましたが……」
滅多に顔を合わせる事のない、彼女の中に眠るもう一つの人格の発露に慌てつつも、
本当に申し訳無さそうに謝られて、望は咄嗟に手をパタパタと振りフォローする。
「何か理由があるのでしょう?
話してくれませんか。これから、私をどこに連れて行こうとしているのか」
楓の緊張を解すような優しい声色で問いかける。
伏せていた目を上げた彼女は、その瞳に決意の色を宿していた。
◇ ◆ ◇ ◆
紅葉の美しい中庭で、望はベンチに座りぼんやりと秋の空を見ていた。
昼休みの僅かな休息を、独りでセンチメンタルに過ごしていると―――
「せ、先生」
「ん?」
気の抜けた返事を返しつつ、空から視線を下ろす。そこには心なしか頬の赤いカエレが立っていた。
「木村さん。どうしました?」
スカートを押さえてモジモジと視線を逸らしながら立っている彼女の様子に、怪訝な顔をしながらも立ち上がる望。
思えば、もうこの時既に彼女の人格は入れ替わっていたのだろう。そもそも気付かなかったのがおかしい。
「あ、あの…その」
紅潮する頬をそっと掌で覆いながら、上目遣いに望を見つめる彼女であったが、
「――!」
ふいに、彼の背後から突き刺さる視線に身体を硬直させる。
そこには、いつも望に付き纏っている少女の姿があった。彼は気付いていないらしく、キョトンとした顔で楓を見ている。
「木村さん?」
訝しげに首を傾げる望。その背後で、まといは鋭い視線を楓に向けた。
近寄るな。
彼女の目は明らかにそう告げていたが、逆にそれが楓の対抗心を燃やす事となる。
今の彼女には、譲れない目的があったのだ。
「――先生!!」
まといの視線を撥ね退けるように大声で愛しい人を呼びながら、その細い腕を掴む楓。
「え、な、なんです?」
ぎょっとしながら目を白黒させる望。その背後で、まといの目が更に険しくなった。
まといの身体が動く、その前に。
楓は望を引き寄せると――その身体を勢いよく抱え上げた。
ちなみにお姫様抱っこである。
突然の事にぎょっとするまといの隙を突いて、彼女は全速力で駆け出した。
「は、え、えええぇぇえええッ!?」
何故いきなりこんな展開になっているのかちっとも分からない望は、困惑の中で悲鳴を上げた。
正直楓自身、自分が今何をしているのか分かっていなかった。
ただ愛しい人を是が日でもあの場から引き剥がしたい。その一心で、彼女は大和撫子の謙虚さを捨て去った。
「今は何も聞かず、どうか私についてきて下さいましッ!」
「いや、いやいや、ついて行くも何も連れ去られてますから!
ちょ、ま……だ、誰かーーーッ!!人攫いですーーーーッ!!」
◇ ◆ ◇ ◆
そんなこんなで突然連れ去られ、駅に着くとそのまま電車に押し込まれ―――
あれよあれよという間に、今に至る。
楓は今更になって、なんて大胆な事をしたのかと、羞恥心と罪悪感に襲われていた。
だがもう後戻りは出来ない。彼女はぎゅっと膝の上の両手を握り締めて、真っ直ぐに望の目を見つめた。
「先生に、どうしても見せたいものがあるのです」
「見せたいもの、ですか」
「とても大切なものなのです。それは、ここから少し遠い所にあります」
「どのくらい遠いのですか?」
窓の外に視線を移し、過ぎ去っていく景色を瞳に映す望。
「隣町です。電車で30分程でしょうか…。
――ついたら、そこで、とても大切な話をしたいのです」
たどたどしい口調ではあったが、彼女の必死な想いだけは伝わってきた。
望はやれやれと溜息を吐きながらも、ゆっくりと頷く。
「仕方ありませんね。まぁ、ここまで来てしまったのですから、貴女の気の済むまで付き合いますよ」
学校を早退してしまった事は気がかりだったが、今ままでにも似たような事は多々あったのだ。今更その程度の事で騒いだりはしない。
「あ、ありがとうございますッ」
楓はその返事にホッとして、そっと胸を撫で下ろした。
望が連れてこられた先は、小規模な墓地だった。
所々に紅葉の木が植えられている。目に鮮やかな落葉の舞う中を、二人は歩いていた。
まさかこんな所に連れてこられるとは思っていなかった望は、内心混乱しながらも、無言で歩く楓の隣を歩く。
彼女の歩は、ある一つの墓石の前で止まった。
「これが――貴方に見せたかったものです」
そう言って、楓は墓に向き直る。望もそれに習い、その墓に向き直った。
木村家。そう大きく掘られたその墓石の脇に、ここに眠る故人の名が記された石がある。
「これが、ですか……?」
リアクションに困って、視線を彷徨わせながら聞き返す。
そんな彼を尻目に、楓は故人の記された墓石へと歩み寄った。
「来て下さい、先生」
そこに屈み込み、肩越しに振り返って手招きをする楓。望は墓石に一礼してから、彼女の隣に同じように屈み込む。
彼女の、今は亡き家族の名が記されているはずのそこに、
「―――え……?」
あってはならない名前を見つけて、望は小さく声を上げた。
木村 楓。
隣に居る彼女の名が、そこには記されていた。
「どっ……、同名のご家族がいらっしゃったのですか?」
一瞬唖然としたものの、すぐに思い直して聞き返す。そう考えるのが自然だろう。
だが彼女はもの悲しげに目を伏せて、ゆっくりと左右に首を振った。
楓はすっくと立ち上がると、悲しげな瞳のまま微笑んで見せた。
少し、強い風がふく。彼女は長い金髪を風に遊ばせながら、望を見下ろして言った。
「私は――もうこの世に居ないのです。
そう言ったら先生は、信じてくれますか?」
風に煽られる彼女の姿が、とても儚く見えた。
「な、何を言って……」
何を言えばいいのか、わからない。これは彼女なりの冗談なのだと、そう思いたかった。
けれど、微笑む楓の表情は、冗談を言うには似つかわしくない程悲しげだ。
「今から、とても大切な話をします。
私はこれを伝える為に、貴方をここに連れてきました」
立ち上がれないままでいる望に向き直り、楓はそっと胸に手を当てる。
一度、深く息を吸ってから、瞳を閉じて話し出す。
「木村カエレと、木村楓にまつわる、昔話です」
◇ ◆ ◇ ◆
木村カエレは、不器用な少女であった。
外国の文化に染まった彼女は、日本に帰国すると、その文化と思想の違いに戸惑った。
いつからか周囲は彼女を異物扱いし、かつての友人達は彼女から離れていく。
そんな中で、ある一人の少女だけは、彼女の傍に居続けた。
木村楓。
偶然同じ苗字、そして名前の五感が似ている事もあり、楓はなんとなくカエレのことが気になった。
恐々と話しかけてみると、不器用ながらに優しげな人柄が窺えた。楓は、カエレの友達になることに決めた。
二人の性格は正反対で、淑やかな楓と、やや不躾なカエレで、丁度良いバランスが取れるようになった。
不躾と言えどそれは表面的なもので、カエレは本来他人の事を考えすぎる所がある。
だが彼女は、そんな繊細な自分を「弱い」と嫌った。
そんな自分の弱さを悟られぬよう、つい無神経とも取れる態度を取ってしまうカエレ。
友人の不器用さを心配しつつも、楓は彼女のそんな所が好きだった。
楓のおかげか、徐々に日本に慣れ始めたカエレ。
だがそんなある日、カエレの心を絶望の底に貶める出来事が起きる。
いつも一緒に登校する楓とカエレだったが、その日カエレは寝坊して、偶然一人での登校となった。
少し遅れて学校に着くが、先に来ている筈の親友の姿はない。
不信に思うカエレのもとに、教師からの知らせが届く。
今朝、楓が交通事故にあった。
呆然と、信じられない思いで病院へ赴くカエレ。
だが、そこに待っていたのは見紛う事のない親友の――動かぬ身体。
体中に包帯やガーゼを纏った楓は、もう二度と、彼女に微笑む事はない。
青白い顔で横たわる彼女の姿は、カエレの心を打ち砕くのに十分過ぎた。
どうしてあの朝に限って、自分は寝坊なんてしたのだろう。
いつものように、一緒に登校していれば、何かが出来たはずだ。
何も出来なかったとしても――最悪でも、一緒に逝くことくらい出来たはずだ。
慣れない環境の中での唯一の支えを失った彼女は、独りきりで塞ぎこんだ。
そんな痛々しい友人の姿に、楓は魂をこの世に繋ぎとめられた。
自分が居なくなった所為で、カエレの心は酷く傷ついている。
独り部屋に蹲るカエレの姿があまりに痛々しく、楓はそんな親友の姿を見ている事しか出来なかった。
葛藤の末、限界に達したカエレは自ら死を選ぼうとする。
自室の窓から飛び立とうとする親友の身体に、触れられぬと知りつつも、楓は必死で縋りついた。
その時。
楓の魂が、カエレの中に溶け込んだ。
ふっと自分の中に降り立った暖かなものに、カエレは飛び降りるのを思いとどまる。
鏡を見た。
そこには、泣きながら微笑む自分の顔があるだけだった。
けれどその微笑みは、紛れもなく親友のそれだという事が、彼女には分かった。
ああ、この胸の中にある、もう一つの暖かい存在は彼女なのか。
カエレはそれを理解すると、泣きじゃくりながら鏡に縋りついた。
鏡は冷たい感触を掌に返すだけだったが、その向こうには、穏やかにカエレを見守る楓の姿がある。
二人は別離の果て、誰よりも身近にその存在を感じる間柄となった。
だがそれは、周囲の人々からすれば、カエレの心の病が悪化したようにしか見えなかった。
故人となった親友が自分の中に居る。そんな事を、誰が信じるというのだろう。
幼い二人は、楓の存在を信じてもらおうと必死になった。
時には楓、時にはカエレとなり、死に物狂いで訴えかけた。
だが彼女らが必死になればなるほど、カエレの心の病は悪化していると捉えられる。
多重人格障害。そう診断されたカエレは、外国で専門的なカウンセリングを受ける事となる。
そこでカエレは、もはや洗脳とも言えるカウンセリングを受ける。
今自分の中に居る「楓」という存在は、自らの弱さが作り出した、親友の偽者である。
そう大人達から言われ続け――カエレは否定し続けた。
この暖かな存在は、紛れもなく親友の魂なのだと。
だが、長い長い月日をかけて、「楓」がただの別人格でしかないと、心に深く刻み込まれ―――
長い洗脳の末、彼女は、「楓」が自らの弱さが作り出した別人格である事を、認めざるを得なかった。
◆ ◇ ◆ ◇
「それから彼女は、私の事を嫌うようになりました。
友人の死を乗り越えられない自分への嫌悪を、私に向けるようになったんです。
自分の弱さを、何よりも嫌う彼女でしたから………」
カエレの心が悲鳴を上げる時、楓は彼女を想うあまり、表に顔を出す。
けれどそれは逃げでしかない事を、カエレは十分に自覚していた。
だからこそ楓が顔を出す際には、苦しげに身悶えて楓の存在を否定する。
二人はお互いを想い合っているにも関わらず、お互いを傷つけ合っている。
そんなのは悲しいと、楓は強くスカートの裾を握り締めた。
「―――昔話は、これで終わりです。
先生は……先生も、私を偽者だと思いますか?」
楓は深く俯いて、強く瞳を閉じた。
信じてもらえないかもしれない。
全て、カエレの作り出した妄想だと取られるかもしれない。
そうならない為にわざわざ自分の墓にまで連れてきたのだが、
だからと言って、今、目の前に居る楓が本物である事の証明にはならない。その事は、痛いほど理解していた。
あるいは全て信じてもらえたとしても、幽霊など恐ろしいと逃げられるかもしれない。
もしもそうなら、いっそ信じてもらえないほうがマシだった。
愛しい人が恐怖に染まった目で自分を見るだなんて、きっと耐えられないだろうから。
――望が立ち上がる気配がする。楓は恐々と顔を上げて、望の様子を窺った。
望は戸惑うように目を泳がせていた。だが、そこに恐怖の色はない。
「……正直、あっさりとは信じられません……」
彼は心の内を正直に口にした。オブラートに包む事はせず、感じた事をそのまま口にする。
「ですが、貴女がわざわざここまでして嘘を吐く理由も思い当たりません。
だから――その……、信じてみようかと、思います」
戸惑いながらも、自分の思いを正面から受け止めてくれた。
――ああ、やはり、この人は他の大人達とは違うのだ。
自分達の理解できないモノを頭ごなしに否定して、無かった事にしようと躍起になる大人達とは、違う。
楓は魂のみの存在となって初めて、自らを肯定してくれる他人に出会う事が出来た。
正直、楓の心は限界に来ていた。
大切に想う友人には嫌悪され、誰一人として自分の存在を信じてくれない。
そんな中、所謂幽霊という存在である自分が、恋をしてしまった。
それが罪深い事と知りながらも、出会った時から一目で恋に堕ちてしまったのだ。
けれどそんな彼の周りには、彼を想う人々が寄り固まっている。
特にあの、まといという名の少女には、露骨に敵意すら向けられた。
そもそも、生者に死者である自分が、勝てる筈もなかったのだ。
失意の最中、彼女の脳裏に過ぎった、一番選んではいけない選択肢。
もう一度、死んでみましょうか。
今度は、大切な友人を連れて。
そもそもカエレを独り遺して逝く事が未練だったのだ。
ならば彼女を連れて逝けばいい。彼女だって、一度はそれを望んだのだ。
弱った楓の心は、そんなあまりに絶望的な選択肢を選んでしまった。
だが、それを止めてくれたのもまた、望だった。
やはり彼は特別なのだ。
きっと今度も、自分を正しい方向へ導いてくれる。きっと、力になってくれる。
「あぁ……、やっぱり先生は、私にとって特別な人です……ッ」
感極まった楓の瞳に、見る見るうちに涙が浮かぶ。
はらはらと落涙しながらも、心から安らいだ笑顔を浮かべる楓。
その表情があまりにも美しく――望は彼女を心配するより先に、思わずその笑顔に見惚れてしまった。
呆けたようにその涙に見惚れていた望だったが、すぐにハッと我に返り、慌てて懐からハンカチを取り出す。
「大丈夫、ですか?」
おずおずと、今なお彼女の頬を濡らし続ける涙をハンカチで拭う。
その優しい感触に、楓は波打つ心が穏やかになっていくのを感じていた。
そのまま瞳を閉じて、彼が頬から手を離すまで、しばらくその優しい感触に浸る。
「――はい……、申し訳ありません。みっともないところをお見せしました」
「いいえ、いいのですよ。……寂しかったのでしょう?」
離れていく柔らかな布の感触。染み渡る優しい言葉。
思わずまた瞳に涙が浮かぶのを、楓はぎゅっと目を閉じて堪える。
次に目を開けた時には、もう心はすっかり落ち着いていた。
「もう、話せそうですか」
「えぇ。大丈夫です、ご心配お掛けしました」
そっと赤くなった目尻を拭いつつ、楓はもう一度唇を開く。
「それで、この話をしたのは――」
「私に頼みたい事があるから、ですか」
「はい」
そう、わざわざこうして身の上話をしたのは、何も望が想い人であるからというだけではない。
「カエレと、仲直りがしたいのです」
「仲直り?」
小首を傾げる望。楓はコクリと頷いた。
「私を自分の別人格だと思い込んでから、彼女は私の事を嫌悪し続けています。
そんなのは――彼女にとっても、私にとっても不幸な事です。
けれどもう、私の訴えは……、彼女に届きません」
どんなに言葉を連ねても、それは全て自分自身の言い訳に過ぎないと、カエレは思ってしまう。
楓一人の力では、彼女の心を開く事などできなくなっていた。
まず、楓が「本物」である事を、カエレに認識させなくてはならない。
「そのために、先生の協力が必要です」
「は、はぁ…協力は惜しみませんが、私に出来る事なんてあるんでしょうか」
困ったように顎に手を当てる望に、楓はずいっと身を寄せて、
「先生の身体を、私に貸して下さい!」
真剣な眼差しで、そう力強く言った。
「へ?」
唖然と目を瞬かせる望。言われた事の意味が、よく理解できないでいた。
「そ、それは、どういう…?」
困惑する望に、楓は人差し指を立てて説明する。
別の身体に憑依した状態で、カエレと再会を果たす。
そうすればカエレもさすがに、楓が自分の別人格であるとは思わくなるはずだ。
その案に、なるほどと頷く望。だが、
「――で、その、憑依する別の身体、というのが…?」
っぴ、と人差し指を望に向けて、
「はい。先生です」
楓は笑顔で頷いた。
「あ、あのいやでもその…ッ、何故私なのですか?
貴女は女性ですし、男の私に乗り移るのは、何かと抵抗があるのでは……」
「いいえ、先生でないと駄目なんですッ」
しどろもどろになる望。だが、楓はブンブンと首を左右に振って、力強く言い放つ。
「こんな事を頼める人、先生以外にいらっしゃいませんッ。それに……」
さっきまでの勢いはどこへやら、突然言葉に詰まってしまう楓。
「……それに?」
先を促すように問いかけると、彼女はポッと頬を染めて俯いてしまった。
「――こ、これ以上はその、言えません」
頬に両手を当てて上目遣いに望を見ると、彼はただ不思議そうに首を傾げていた。
しばらくじっと楓の赤い顔を見つめていた望だったが、覚悟を決めたように瞳を閉じて、
「わかりました。力になると言いましたからね。
こんな身体でよろしければ、どうぞ使ってやって下さい」
幽霊にとりつかれる、なんて経験は普通そうない筈だが、以前望は一度だけそれを経験していた。
得体の知れないモノが自分の中に入ってくるあの感触には、言葉では言い表せない恐怖がある。
けれど、身体を貸し与える相手が目の前の少女というのであれば、それほどの抵抗感はない。
恐怖がないといえば嘘になる。だが、そんな粗末な感情より、楓の親友を想う気持ちの方が大切だと思った。
「あ、ありがとうございますッ!」
楓は思い切り身体を二つに折り曲げて礼をした。勢いよく金髪が揺れる。
「それで、私はどうすればいいんですか?」
「はい。先生はそのまま、じっとしていて下さい」
言われた通り、緊張で身体を固くしながら立ち尽くす。鼓動がやけに大きく耳に響いた。
身体を起こした楓は、少し何か思案するように沈黙する。
――楓は、自分がカエレに憑依した時の事を思い出していた。
あの時は親友の自殺を止めようと必死で、彼女の身体に縋りついた。
……身体に触れればいいのだろうか。
そう思い、目前に固い表情で立ち尽くす望に手を伸ばす。
思わず身を引きそうになるのを堪えながら、迫る指先をじっと見据える望。
彼の鼻先に触れる直前、その指先はピタリと動きを止めた。
「―――先生、目を……閉じていただけますか?」
「え? あ、はい。こうですか?」
静かに目を閉じる望。
触れる直前だった手が再び動き、そっと望の頬に触れる。もう片方の手も同様に。
やや冷たい少女の掌の感触。そのすぐ後に、
「――……失礼します」
微かな呟きと、鼻先に近づく体温。そして。
唇に柔らかな感触を感じた瞬間、望の意識は深く沈んでいった。
33 :
真昼:2007/12/04(火) 17:25:06 ID:DCnWG7Gr
一区切りです。次の投下で書き切れると思いますが、
何分行き当たりばったりな奴なんで、また無駄に長くなってしまったらすみません。
>>33 文中に織り込まれている、カエレ・楓への愛が切々と伝わってくる。
・・・なんて素敵なんだ、あなたは。
本気じゃないと作れない話だなぁ・・・・・・ そう、ひしひしと感じて。
続き待ってます。
真昼さんは規制にかかってはないのですね。
・・・430氏は・・・巻き込まれてるでしょうか・・・多分。
こんな時間にネット喫茶にいる私も(ry
ま あれだ
早く続きを・・・
36 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/04(火) 23:11:45 ID:f8E3qJ9g
これは素晴らしい新発想。
不躾で悪いのですが、気が向いたらこの発想を使って百合板にも足を運んでみてください。
とにかくGJ
>>33 真昼さんGJです!続き楽しみにしてます!
>>34 とーもーだーちー!
はい、思いきり巻き込まれてます。携帯でぽちぽち打ってます。
もうね、ocnどれだけ嫌われてるのかと…解除なして、あなた…。
まぁ、ポジティブに考えれば、ROM生活もまた、楽しからずや…orz
真昼さん、あなたという人は…
不安定な状態に投下の救いをありがとう
うーん、続きが気になるんだぜ・・・
楓って人格ポータビリティの回で先生の中に入ってなかったっけ
それ以前の話という事でここはひとつ…。
そのタイトルの元ネタはやるドラかwww懐かしいwww
ドアノブが照れてる
書きたいけどいいネタが出てこない…誰かお題を〜
レシピ通り奥さん対非難訓練指導員
千里とのきっちりとしたお付き合い
49 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/07(金) 04:10:33 ID:UKrQDoQu
マジパロも読みたい気分。
ふっかふか
やってみるわ
保管庫で改蔵や南国とか絶望先生以外のパロが読めないのは何故?
携帯だと読めない物なのか?
読めるだろ
>>53何故かアダルトサイトの広告ページが出てくるんだ
過疎過疎過疎過疎過疎まくって〜♪
やはり規制の影響かね…寂しい事だ…。
どうでも良いが、前スレの埋め千里AAに素でびびった。
〜私、脱いでも凄いんです〜 ‥凄すぎて絶望した!非エロ、小ネタです。
私なんて生きていてもしょうがない人間なんです。恥の多い生涯を送ってきました。
あの、先生。ここは基本的に生徒たちの相談室なので‥
まあ‥‥ 話は聞きますが。
で、今日は何で死にたくなったんですか?
私の心が汚れているから、アニメもまっすぐ見れないんです。
今年はガンダムに興じてみようと、がっちりタイプを応援する事に決めたのですが、
「画像」 (
ttp://upload.jpn.ph/img/u04511.jpg 消えてるかも)
毛にしか見えないんです!あの中のナドレ!!
あれは装甲に接続されるコードだと思いますが。
私の心が、私の目が汚れているから、天使の神経さえも薄汚い毛に見えてしまうのです。
メールでハゲハゲ言われる私があの装甲を纏っていると思うとせつなくて刹那苦手‥
毛を被っているから?
増毛したらムックっぽい、前作の主人公とコンビでガチャピンムックかってに捏造先生‥
とまでは言いますまい。
なんだか話したら少し心が晴れました。
それが言いたかっただけなのでは?
一方そのころ
ふがー!こんなヴァーチェは認めないー!
ガチムチ以外に擁(いだ)かれるなんて先生じゃない!
59 :
305:2007/12/09(日) 01:46:23 ID:VGv8mQbn
や、書きこめた。
柔らか銀行は今のところ大丈夫そうですねw
お疲れ様です。305です。
なんかとっても規制の仕業・・・? 強制過疎なんて・・・
奈美で短編作ってきました。
やはりエロ無し、ですのでスルーを推奨で。
では、よろしくお願いします。
規則正しい呼気のリズム。それに合わせるように交互に跳ね上げる踵。
スパイクを効かせてアスファルトの表面を蹴りながら、軽快な足取りで住宅街の路地を走ってい
た。
「・・・よーし! あと一周したら終わりにしよっ!」
暮れなずむ空、屋根の隙間に見える夕日をチラリと目の端で捉え、奈美は一人つぶやいた。
片手でパーカのポケットからハンドタオルを取り出し、首筋に滲んだ汗を拭き取る。
ちらほらと家路につく背広姿や、買い物袋を下げた姿とすれ違いながら、奈美は商店街の方向へ
と走って行く。
ふと眉を軽く寄せ耳を澄ます。後ろから次第に近づいてくる足音が聞こえてきた。
その足音も走っているようだったが、どう聞いても靴の立てている音ではない。
興味をそそられた奈美が振り返ろうとするより先に、追い付いてきた足音の主が奈美の真横に並
んだ。
「あれ!? 先生!」
「おや日塔さん。感心ですね、まだ運動を続けていたのですか。・・・ああ、今日が三日目でし
たね?」
先生の物言いに、奈美の顔が引きつり不機嫌そうな声を出す。
「どうせ三日坊主とか言う気ですよね!?」 (ちゃらちゃらちゃら)
「まあ、運動の秋なんて、それが普通ですから。」
「普通って言うなあ!!」
むくれた表情で文句を叫んだ奈美だったが、ふと先生の格好が普段の着物姿である事に気が付き
首をかしげた。
袖や袴が風になびき、いかにも走りにくそうな雪駄が軽い足音を立てている。
「先生もジョギング? 動きにくくない?」 (ちゃらちゃらちゃら)
「はは、何を言っているのですか。そんな訳ないでしょう。」
じゃあ何で走っているの、と言いたげに眉をしかめる。 (ちゃらちゃらちゃら)
「よく分からないけど・・・ 先生さっきからうるさいです!」
「何の言いがかりですか!?」
「いくら普段はチャラチャラしてるからって、音まで立てなくてもいいのに!」
嫌そうな顔で告げる奈美に、先生はさらに嫌そうに顔をしかめてみせる。
「どこぞの普通さんみたいに、そんなアピールなんてしません!」
一瞬、苦い顔になり、反論しようと口を開きかけた奈美だったが、
「・・・あれ? じゃ何の音?」 (ちゃらちゃらちゃら)
よく耳をかたむけると、音は自分達の後方から聞こえ、心なしか僅かずつ近寄って来ているよう
にも思える。
走りながら、チラリと首だけを向けて振り返る奈美。
「ひっ!?」
短く悲鳴を上げた。無意識に足に力が篭り走る速度を早めてしまう。
「何で犬が追いかけて来てるんですかぁ!?」
後ろで音を立てていたのは、一匹の大きな土佐犬だった。
引き千切ったかのような不自然に千切れた太い鎖を引きずり、口の端からは泡混じりのよだれを
垂らし、目を輝かせながら二人の跡を追って駆けている。
「いやー・・・ ヘイの向こうに見事に熟れた実を下げている柿の木を見付けたものでして。―
――ちょっと竹ざおで突付いてみたら、なぜか怒られて犬をけしかけられましてね・・・」
「当たり前だぁ!! ・・・っていうか、犯罪!」
すました顔で説明する先生に、やや裏返った声で叫ぶ奈美。
「ちょっと一周して童心に返っていただけですが。」
「それ、一周してないだろ!?」
二人が言い合いをしている間も、後ろの犬はじりじりと間を詰めてきている。
「先生! 追い付かれちゃうよぉ!」
走りながらちょっと涙目になって叫ぶ奈美に、先生は額に汗を滲ませながら困った顔で口を開く。
「確か、犬は逃げるモノを追いかける習性があるとかで・・・・・・そうすると走っている限り
は、追われてしまいますね。」
「ええ!? じゃあ逃げない方がいいって事ですかあ!?」
「・・・止まってみますか?」
一瞬考えた奈美だったが、後方から迫る犬が低い唸り声を上げ、
「いやです!!」
「じゃ、走って。」
「あああ! なんでいつも私まで巻き込むかな!?」
人通りの少なくなってきた路地を右へ左へ折れながら逃げていた二人だったが、幾度目かの角を
曲がった所で強制的にその足を止める事となった。
「ええ! 行き止まりですよ!?」
曲がった路地の先は三方を壁に囲まれ、逃げ道など何も無い空間となっていた。
中身が空の青いポリバケツが数個転がり、ここを餌場にしているのか数羽でたむろっていたカラ
スが空へと逃げてゆく。
壁は何の足がかりも無くすぐに登れるような高さではない。それに、二人の人間が登っている暇
などないだろう。
「せんせえ・・・・・・どうしよう・・・・?」
じりじりと近寄ってくる犬の姿に涙声になりながら奈美は先生の顔を見上げる。
焦った顔で犬の濁った目を睨みつけていた先生だったが、ハッと何かを閃いた表情を浮かべ、お
もむろに自分の履いている雪駄を片方掴み、犬の後方に向けて放り投げた。
「ほら、取ってきなさーい!」
先生の声と共に放物線を描きながら放られた雪駄に反応し、犬は自分の頭上を越えていったそれ
を求めて勢いよく踵を返して突進してゆく。
「今です!!」
「あ、待ってよお!」
嬉しそうに雪駄を齧っている犬の横をすり抜けて一目散に駆け出した先生に続き、少し遅れて奈
美も後を追い全速で追いかけていった。
「・・・こ・・・ここまでくれば・・・さすがに・・・・・・」
「・・・先・・・生。息切れ・・・て、ますよ・・・」
夢中で走って辿り着いた河川敷は見渡す限り人の姿すらなく、しつこく後を追ってきた犬の姿も
何処かへ消えていた。
奈美は大きく息をつきながら枯草が混じりはじめた土手に腰を下ろす。
火照った顔に川面から吹き付ける風があたり、奈美は気持ちよさそうに目を細める。
遠くに見える橋の上を行き交う車のライトが時折チラチラとした瞬きを見せていた。
パーカのポケットからハンドタオルを取り出すして顔の汗を軽く拭い、隣に腰を下ろした先生に
差し出す。
「どうぞ。風邪ひいちゃいますから、汗拭いて。」
「ああ、どうも・・・って、これ、今使った物ですよね?」
先生は指で摘まむようにしてタオルを受け取る。奈美は顔をしかめた。
「汚いものみたいにつまむなぁ! 裏返して使えばいいじゃないですか!」
先生は少し意地悪そうな笑みを浮かべ、そのタオルで汗を拭った。
川沿いに並んで伸びたススキが、さわさわと枯れた葉音を立てている。
汗を拭きながら、先生はどこかすがすがしい口調で話しかけてきた。
「いや、いい運動をしましたねえ。」
「爽やかに言うな! しなくてもいい運動だぁ・・・!」
奈美は文句を言いながらもその顔には笑みが浮かんでいる。―――どさり、と音を立てて土手に
仰向けに寝転んだ。
ほとんど日が落ちた空には、時々小さな光を放つ星が姿を現わし始めていた。
「どうも。・・・日塔さん、香水などを使われているのでしょうか?」
タオルを手渡しながら問いかける先生に、奈美は小首をかしげた。
「使ってないけど・・・何で?」
「いや、タオルから良い香りがしましてね。そうなのかな、と。」
奈美は、がばっと起き上がり、手に取ったタオルを鼻の近くに持ってくる。
「そ・・・そうですか? あれー・・・? 自分じゃわかんないのかなー?」
柔らかな生地を鼻と口に押し当てて息を吸っているが、特に何の匂いも感じないのか、奈美はし
きりに首をかしげている。
「うーん・・・ しないなー」
「まあ、嘘ですから。」
「・・・さらっとウソつくなぁ!!」
伸ばした足の踵でドンドンと地面を叩きながら、奈美は顔をしかめて叫んだ。
先生は澄ました顔で視線をそらし、おもむろに立ち上がって服についた枯れ草の端などを払い落
とした。
「さて。もう、ほとぼりも冷めたでしょうし、帰りますか。」
「いいですけどね、別に・・・・・・」
何か言いたそうな顔でブツブツと呟きながら立ちあがり、奈美は先生の足元に気がついた。
「あー・・・先生、片足だけ履物無しで走ってたなぁ・・・ 怪我してない?」
奈美に言われて、先生は足袋を付けただけの片足を抱えて、足の裏を確認してみる。
「さすがにちょっと擦り切れていますが・・・ まあ、大丈夫でしょう。」
「危ないと思うけど。何が落ちてるかわかんないし・・・ ―――あ! よし!」
奈美は軽く手を叩き、先生の前に回りこむと背中を見せてしゃがみこんだ。
両手を背中に回して少し首を捻って後ろを見る奈美の姿に先生は眉を寄せた。
「・・・何ですか?」
「私、おぶってあげますよ! はい! どうぞー。」
「えええ!? そんな、普通に格好悪いではないですか!」
「普通って言うなあ!!」
ぶすっとした表情で奈美は後ろ手に先生を招く。
「かっこ悪いのはいまさらだろ! いいから! 私こう見えて結構体力ありますよ?」
奈美に促され、先生はしぶしぶといった感じで肩に腕を回す。
「なるほど・・・意外と肩幅ありますね。・・・・・・骨太ですか?」
「余計な事言うなぁ! まったく・・・!」
先生の足に手を回し、抱え込むと奈美はゆっくりと立ちあがった。
その両肩を手で掴みながら、先生は不安気な表情になる。
奈美の表情が変わった。低い唸り声を出しながら一歩踏み出し――――踏み出したところで、べ
ちゃっ と潰れてしまった。
「大丈夫ですか?」
「先生・・・痩せてるのに意外と重いー・・・」
やれやれといった顔で先生は苦笑を浮かべながら体を離し、まだ土手に突っ伏したままの奈美の
頭をポンと叩いた。
「なにするんですかぁ・・・?」
「まあ、発想は悪くありませんよ。」
そう言って微笑んでみせた。
「・・・何だか、私の方が迷惑かけてるみたいじゃないですかぁ。」
背中で揺られながら奈美が少し不満そうな声を上げた。
先生は何も答えずに小さく笑ってみせる。
その足には奈美のジョギングシューズを履いており、雪駄は帯に挟みこんであった。
奈美の目の前に先生の横顔があった。
息をするたびにその髪が僅かに揺れるのが妙に気恥ずかしく、奈美は顔をそらして住宅地の方を
眺めつづけている。
「日塔さん――――良い香りがしますね。」
「え?」
思わず奈美は顔を上げた。
「ほら・・・何処かのお宅が今夜はカレーのようですよ。」
「あ・・・そうですか。」
ふう、と息を軽くついて奈美は再び顔を落とした。
力の抜けた顔でゆっくりと進む景色を眺めていたが、やがてあることに気が付く。
(カレーの匂いなんてしないじゃない・・・)
奈美の口元がほころび、ほんのりと顔が赤くなった。肩に回した腕に力を込め体を押し当てるよ
うにしてさらに密着させた。
先生は変わらぬ様子で歩いている。
「・・・今度、カレー作ってあげますよ。」
「おや? 恩着せ予告ですか?」
奈美の顔に苦笑が浮かぶ。
「・・・・・・口が曲がるくらい辛くしますからね。」
「はは、カレーが辛いのなら普通ですね。」
「普通って言うなあ!」
小さく叫ぶ奈美に笑いを浮かべ、先生は土手の横にある小道に入った。
奈美は訝しげな顔で口を開く。
「先生? そっち道が違う。遠回りだよ?」
「また、あの犬に逢わないとは限りませんから。・・・まあ、町の外側を一周する事になります
が、急がば回れと言いますしね。」
奈美はクスリと笑った。何も言わずに背中に頬を寄せて目を閉じる。
「じゃ、もう一周しちゃいますか。」
「運動不足でしたからねぇ。ちょうどいいですよ。」
先生の声を半ば聞き流しながら、奈美はぼんやりと胸の内に広がる考えに入りこんでいた。
(先生のスタート地点・・・どうなんだろ? 聞いたって教えてくれないよなぁ・・・・)
奈美は心の中で溜め息をついた。
(・・・私はやっぱり――――もう通りすぎた後なのかな・・・いや、それ以前に、通るのかなぁ・・・・)
一人考えに耽る奈美の耳に、先生の言葉が入ってくる。
「まあ、二周目に入るとしますか。」
奈美は一瞬驚いた表情を浮かべ―――少しはにかんだ笑顔で「うん」とうなずいた。
「明日は、普通に筋肉痛でしょうねぇ。」
「普通って言うなぁ・・・!」
言い返しながらも言葉には出さずに、ありがとうと胸の中で呟いた。
この背中をもう少し暖めていられる事が今はとても嬉しい。
この場所に自分の温もりを残したい。
残り香のように、なればいいな、と。
そう願い、もう一度、そっと目を閉じて頬を寄せた。
64 :
305:2007/12/09(日) 01:56:46 ID:VGv8mQbn
おそまつでした。
こんな時間でも、ネット喫茶は結構混んでる・・・
難民キャンプ・・・ じゃないかw
読んで下さった方ありがとうございます。
ではまた。
普通に良い。
ネット喫茶は空調が悪いらしいから風邪とか結核とか貰うなよ!
>>305 おお、何と雰囲気の柔らかい素敵なお話。普通に感動した。
ネカフェからホントにご苦労様です。
クリスマスも近いし、フランク・キャプラの素晴らしき哉、人生
パロディみたいなのを書こうと思ってるが上手く行かないぜ。
絶望した先生、見習い天使はカフカという設定なのだが…。
もうあきらめた。徹夜でなにやってんだ俺は。
誰かクリスマススペシャルっぽいの書いてくれんかな。ディケンズの
クリスマスキャロルみたいなのもいいなあ。
やっぱり奇跡がおきないとね。クリスマスくらいは。
>>67 クソワロタ とりあえずお前が前スレを読んでないことは分かった
週末投下宣言した人マダー?
>>68 > 430氏に土下座しな。
同意。氏ね>67
以後430氏の素晴らしい作品を汚すだけだからクリスマスネタ関係のSS投下するの禁止ね
>>72 てめえも黙ってろ、いつものクソ荒らしが。
>67
まあ、とりあえず書いてみるといいよ
せっかく考えたのだし
>>72 > クリスマスネタ関係のSS投下するの禁止ね
何勝手にルール作ってんの?何様?
荒らし様だろ
角煮で相手されなくなったからってこっち来るなよ
携帯からぽちぽちと失礼します…。
>>64 雨ニモマケズ 規制ニモマケズ…305さん、あなたは素晴らしい!
私も今週あたり、ウィル○ム加入してきます…。
そして!いつも心暖まるお話をありがとうございます!
おんぶネタ、いいなぁ…しつこいけど、ホントに305さんの先生大好きです。
>>67 素晴らしき哉、人生の絶望パロ!!!めっちゃ読みたいです!
うわぁ、それを思い付いたあなたはすごい!マジ読みたい。
あきらめるなんて言わずにどうか…!
そして、真昼さんの続きと、173氏の新作もひそかに楽しみにしていたりする…。
こんな状態になって投下する奴はいないだろ。
アニメが始まって投下量が増えた頃は面白かったんだけ
どな。量だけじゃなくていろいろな傾向の作品が投下され
て一種混沌としていた雰囲気が良かった。
いろんな人の妄想を覗かせてもらうというか、共有できる
感覚が楽しくて。
アニメ2期が始まるとまた変わるかな?
80 :
真昼:2007/12/09(日) 19:26:10 ID:i09HJke1
非常に申し訳ないんですがこんな状態で投下する輩がここに一匹。
ダブルキャストの続きを投下させていただきます。
思いの他長くなってしまい完結には至らず…長々お付き合いさせて申し訳ない。
4レス程消費させていただきます。
――沈んだ意識が、ふっと浮上する。
気が付けば目前に、見慣れた担任教師の顔があった。
(……は?)
唖然として、困惑の声を出そうとする。だが、唇が何かに塞がれていてそれはかなわない。
覚醒したばかりのぼんやりとした思考は、唇を塞ぐモノが何なのか理解するのに、たっぷり1分ほどの時間を要した。
「………」
目の前の男と、キスをしている。それに気が付いた瞬間、
「―――っぎいぃやああぁああぁあぁぁぁあッ!!?」
とてもうら若き乙女とは思えぬ豪快な悲鳴を上げて、カエレは思い切り望の身体を突き飛ばしていた。
「きゃあッ!」
望は甲高い悲鳴を上げながら、なす術もなくその場に尻餅をつく。
「うううううう訴えてやる!何がなんだかわからないけど訴えてやるぅううぅぅぅッ!!」
錯乱して髪を振り乱し、絶叫するカエレ。
「……って、きゃあ?」
だが、突き飛ばした望の口から漏れた、彼に似つかわしくない悲鳴に違和感を感じて、一先ず頭を振り回すのを止めた。
「痛たた……」
弱々しい声を上げながら、ぶつけた尻を擦りつつ起き上がる望。
「あぁ良かった…成功したみたいです」
立ち上がると、望は自分の身体を物珍しげに見下ろした。まるで新しい服を見せびらかす少女のように、その場でクルリと一回転してみせる。
「どうですか? 私、ちゃんと先生に見えてますか?」
そう問いかける声色は、紛れも無く聞きなれた担任教師のモノだ。
だが、不思議と妙に甲高いというか、少女のような初々しさを漂わせている。
男の声にはあまりにミスマッチな喋り方で、唐突に意味不明な事を問い質してくる。明らかに様子がおかしい。
カエレは唇を奪われたショックよりも、オカシイを通り越して不気味な望への恐怖が上回り、身震いした。
自分の身体を抱きながら、ズリズリと後ずさる。
「き、、気持ち悪いわよ、先生……。
っていうか、ココはどこ!? 何で私、こんな所に連れてこられてるのよ!」
周囲を見回し、自分が今居る場所が墓地と分かると、カエレはまた混乱がぶり返したようで声を荒げた。
「落ち着いて、落ち着いて下さい」
「落ち着けるわけないでしょう!? 気が付いたらいきなり、ふぁ、ふぁふぁファーストキッスを奪われてて、
挙句その場所が墓地!!? シャークだとしても笑えないわよ!!」
「……鮫がどうかしましたか?」
ジョークと言いたかったらしい。間違えるほうが難しそうだ。
「しかもキッスの相手はよりによって先生だし、何か妙に態度が気色悪くなってるし!」
「あ、あ…そ、そうですよね。私は今、男性ですものね。こんな風に振舞ったら駄目ですよね。
……でも、そんな……気色悪いだなんて……」
と、言われた傍からしなりと身体をくねらせて、よよよ…と泣き崩れる望。
「そーれーがー! 気持ち悪いってのよ!」
「あぁ、申し訳ありません…ッ」
ダン!と足を苛立たしげに踏み鳴らし、頭上から罵声を浴びせると、望は怯えたように身を竦める。
慌てたようにその場に正座し、畏まった態度で揃えた両手を膝の前に置き、頭を下げた。
――ふと、カエレはその仕草に懐かしさを覚える。
だがそれは、遠い昔に失くしたモノの筈だ。
こんな男に彼女の影を重ねるなんて、自分も等々焼きが回ったか。
「あの、お怒りは静まりましたか?」
突然押し黙ったカエレを、恐々と上目遣いで見上げる望。
その様子が本当に彼女ソックリで、余計にカエレの癇に障った。
「先生がその気持ち悪い態度を治さない限りは、静まるものも静まらないわよッ!」
「あの、私は、先生ではございません」
「―――はぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。何を言っているのだろう、この男は。
望は潤んだ瞳でカエレを見上げて、そっと両手を伸ばして来た。
普通ならば身を引いて、その手から逃れようとしただろう。
だが、何故だかその時、カエレにはその手を避ける事が出来なかった。
この手は避けてはならない。避ける必要はない。
だってその手は、いつだって自分の心を守ってくれた、彼女の―――
ふわり、と、彼の着物の袖が身体を包む感触。
背中に回された腕に、ほんの少しだけ力が込められた。
膝を立てて身体を伸ばし、ともすれば縋りつくように、カエレを抱きしめる望。
耳元に感じる暖かな呼吸が、くすぐったかった。
「…私です…、楓です。
――また、こうして貴女に触れられるなんて、思わなかった」
耳元で囁かれた言葉は、みっともないほどに震えている。
カエレは自然と、自分にしがみ付く望に合わせるように中腰になる。
望――楓は、カエレの首筋に顔を埋めて、彼女の温かな体温に酔いしれる。
首筋に濡れた感触を感じて、カエレは彼――彼女が泣いている事を知った。
「何、泣いて……」
何を泣いているのか。そう問おうとする自分の声が、彼女のそれよりも震えている事に気付く。
自分もまた泣いているのだと、その時になってようやく気が付いた。
自分でも何故泣いているのかわからない。頬を流れる涙の温かさに、呆然とするカエレ。
――しばらく二人は、泣きながら身を寄せ合っていた。
先に我に返ったのはカエレだった。ハッと目を見開いたかと思うと、その顔は見る見るうちに朱に染まる。
「ふ……、ふ、ふざけないでッ!」
叫びながら、温かな身体を引き剥がす。途端、秋の風をやけに冷たく感じた。
恐ろしいモノを見るような目を楓に向けて、じりじりと後ずさるカエレ。
そんな彼女の反応を、覚悟していたとはいえいざ目の当たりにすると、酷く心が軋む。
地に膝を付いたまま、楓は泣きそうな瞳でカエレを見つめていた。
「い、意味がわからない……、先生だって楓のことは知ってるはずでしょ!?」
「はい……先生は、私のことを全部知っています。知った上で、協力してくれると言ってくれました」
楓はようやく身体を起こし、自らの身体を抱いて震えているカエレに歩み寄る。
「全部…?」
呆然と呟きながら、カエレの瞳が泳ぐ。その視線は、木村と記された墓石に吸い寄せられた。
ようやくここが誰の墓なのか気付いたカエレは、驚愕と悲しみの入り混じった瞳で、木村の二文字を凝視している。
カエレはずっと、親友の墓参りに行けないでいた。
彼女の死を乗り越えるため、無理をして赴こうとした事もあった。
だが、その度に自分の中のもう一つの心が、優しく諭すのだ。
――悲しいのなら、無理をして行かなくてもいいのですよ。
だって私は、ずっと貴女の傍に居るのだから―――と。
もちろんカエレはその声に反発した。けれど、いざ行こうと踏み出した足は、どうしても二歩目を踏み出せない。
それが楓の意思なのか、自分が臆病な所為なのか、彼女にはわからなかった。
だが、今こうして自分は、数年ぶりに親友の墓を前にしている。
もちろんここまで来た記憶はない。という事は、人格が楓に切り替わっている時に、来させられたのだ。
「――ッ、なんで……なんで今になって連れて来たのよ、楓……」
「貴女と、仲直りがしたいからです」
「先生には聞いてないわ!」
弱々しい呟きに楓が答える。けれどカエレは、そんな彼女の言葉を跳ね除けるように叫び、ギリ…と奥歯を噛んだ。
苦しげなカエレの視線を真っ向から浴びながら、楓は、ただただ優しい口調で、そっと問いかける。
「カエレ……。今、貴女の中に、私は居ますか?」
――その言葉に、気付かないフリをしていた、心の空白を意識させられた。
「―――………」
暴れ狂う心臓を押さえるように、服の胸元を握り締めるカエレ。
その顔は、とても昔――楓の亡骸を前にした、あの時を思わせる。自分が直面している現実を、受け入れられないでいる時の顔だ。
「カエレ、寂しくなんてないですよ。
だって私は、今もこうして貴女の傍に居るじゃないですか」
楓の足が、一歩前に出る。砂利の擦れる音にハッと我に返ったカエレは、ぶんぶんと激しく首を左右に振った。
「嘘…ッ!」
「私、本物です。本当の、貴女の親友の楓なんです」
「来るなッ!」
ゆっくりとした足取りで、そっと両手を広げてカエレに歩み寄る。
彼女はそんな楓を言葉で拒絶しながらも、その場を動けないでいた。
逃げ出したいのか、それとも――親友との再会を喜んでいるのか。
それを認めたいのか、認めたくないのか。もう、カエレは自分の本心がまったくわからなくなっていた。
本当に心が二分しそうになる。頭が割れるように痛い。
いや、本当はわかっている。きっと、認めているのだ、認めていたのだ。とっくの昔に。
けれど周囲の人々は、そんな彼女を異常だと言った。
本当は……そんな人々の声など気にせずに、自分さえ彼女の存在を信じ続けていれば良かったのだ。
――だが彼女は、死して尚自分を想い続けた親友よりも、万人の声を優先した。
人々の、自分を異常者として見る目が怖かったのだ。
それからはずっと、自分を騙し続けていた。楓に自分の嫌なモノ全てを押し付け、それでも尚縋っていた。
そんな無様な自分を見て見ぬフリが出来たのは、楓がただの別人格、つまりは自分自信であるという、言い訳があったからだ。
だがこうして、楓が本物であるという証拠を突きつけられてしまったら、その言い訳は成り立たなくなってしまう。
今まで楓に向けた罵詈雑言は、自分自身へではなく―――紛れもなく、親友へ向けたもの、という事になってしまう。
その罪悪感と自己嫌悪に、カエレは耐えられる自信がなかった。
自らの思考に逃げ込んでいた意識だったが、間近に感じる他人の息遣いに、一気に現実に引き戻される。
気が付けば、呼吸が顔に触れるほど間近に、望の顔があった。
見慣れた担任教師の顔。だが、そこに浮かぶ儚げな表情は、紛れもなく彼女のものだった。
薄い唇が小さく開き、震える声で言葉を紡ぐ。
「信じて下さい……楓です、私。楓なんです。
私が泣いてる時は、ずっとうんざりした顔で、それでも一緒に居てくれた貴女が大好きな、楓です」
泣きそうなのを必死に我慢しているのがわかった。
懸命に堪えているが、見る見るうちに瞳に涙が浮かび、声はみっともなく裏返ってしまう。
「今でも、これからもずっと、貴女の事が……大好きな……」
僅かに広げた両手は、拒絶される事を恐れてか、静かに下ろされた。
咳き込むような短い息が、カエレの頬を撫でる。耐えかねたように俯いて、小さく肩を震わせはじめる楓。
ひとつ、ふたつ。温かい雫が、二人の足元に染みを描いた。
消え入りそうな、言葉にならない小さな声が、カエレの鼓膜の奥に響くように届く。
『信じて下さい』
―――もうこれ以上、言い逃れなど不可能だった。
「……か」
カエレの唇が、震えながらも、ゆっくりとその名前を紡ぐ。
「か、え……で」
掠れた声で、親友の名を呼んだ。
楓はその声に答える様に顔を上げた。頬にいくつも涙を伝わせながらも、その表情は瞬く間に希望に染まっていく。
「――は、はいッ。そうです、楓ですッ」
「……楓…、本当に……」
認めた。自分が虐げてきたモノは、あんなにも優しかった親友であると、認めた。
数年越しの再会への歓喜。罪悪感。自己嫌悪。様々な感情が渦巻く中で、カエレは咄嗟に彼女に抱きつこうと身を乗り出す。
けれどそれを、喜びより遥かに強い罪悪感が制止した。こんな自分が、また彼女を求めて良い筈がない。
彼女に触れようとした掌は、冷たい風だけを掴む。
ガクン、と、膝から力が抜ける。地面に倒れる彼女の後を追うように、長い金髪が靡く。
「カエレ…ッ」
固く冷たい砂利の上にカエレの身体が触れる直前、寸でのところで、楓の腕がそれを抱きとめていた。
そのまま、もつれ合うように座り込む二人。
再び温かな両腕に包まれながら、空を思わせる青い瞳に楓の姿を映し、カエレは泣いた。
声を上げる事なく、ただ自分を心配そうに見下ろす親友の顔を見つめながら、涙を流す。
「泣かないで、泣かないで下さい」
喜びの涙ならば良かった。だが、その涙が苦しみから流すものという事が、楓にはわかってしまった。
「――私、酷いこと、してきたね」
「いいんです、いいんですよ。………寂しかったんでしょう?」
望が優しく自分に言ってくれた言葉を、今また彼女は口にしていた。
いくら大事な親友が傍にいるとはいえ、それ以外の人間に淘汰されるなんて、寂しすぎる。
だから彼女は、心を痛めながらも他人に合わせる事を選んだ。
その為には、楓は「幽霊」ではなく「別人格」である必要があった。
それだけのことだ。彼女に罪などない。ただ、寂しかっただけなのだ。
自分と同じように。
「……許してくれる?」
「許すも何も、怒ってなんていません。
ただ、また貴女と仲良くなりたかった……、それだけです」
カエレの右手が、おずおずと上げられる。楓はそれをしっかりと掴んだ。
「また、仲良くしてくれますか?」
――カエレは答える代わりに、繋いだ掌に力を込めた。
そして、自分から楓の胸に縋りつく。声を出せば、みっともなく泣きじゃくってしまいそうだった。
親友の身体を、冷たい風から守るように抱きしめ返す楓。
カエレは薄い胸に顔を埋めながら、額を擦りつける様にして、小さく頷いた。
『信じて下さい』
数年越しの訴えは、ようやく彼女の心に届いた。
85 :
真昼:2007/12/09(日) 19:36:36 ID:i09HJke1
切りの悪い所でぶった切って申し訳ありません。
多分、きっと、できれば次くらいには終了でき…たらいいなと思います。
タイトルの元ネタ知ってる人が居てちょっくらビックリ。
86 :
42:2007/12/09(日) 22:13:45 ID:83O8ydZU
うわ、真昼さん来てたー!
カエレ….・°(>_<) °・.
真昼さんにはあらゆるところで泣かされているような気がする。
そして先生はどこへ…?ううう、続きが気になります…!
>>85う〜むやはり真昼さんは凄い叙情的でありながら叙事的でもあるとはカエレと楓がどうなるか展開読めないです!
真昼さんの超良SSの後ですいませんが
絶望日本書紀天岩戸編を投下させていただきます
天照大御神の配役は皆さんの予想通りですが
他の配役のせいで前回とは違うカオスとなりましたがよろしくお願いします
「ふぅイザナミはわかってくれた様ですね。」
二度と会うことはない永遠の別れ、
それでもなお二人が産み育てた愛するこの国を守り育てると。
「・・しかし恐くて変な汗かいてしまいましたよ、水浴びでもしますか。」
イザナギは最初の頃の様に服を脱ぎ捨て海でジャブジャブと禊ぎを行いました、
汚れを落とすそのおごそかな行為においても多くの神々が産まれていきました。
「う〜ん特に顔を洗うと気分がさっぱりしますねえ」
右目を洗うと太陽神であり天地全てを照らすアマテラスオオミカミが産まれ、
左目を洗うと月と夜を司る闇夜の神であるツクヨミノミコトが産まれ、
鼻をすすぐと海と嵐を司る荒ぶる神スサノオノミコトが産まれました、
この三柱はただ漠然と産まれた八百万の神と国を纏め支配する三貴神と呼ばれる神の中の神でもあるのです。
「これでこの国は安心ですねえ、良い老後が過ごせそうですよ。」
ぴろりぱらぴろ♪
「ん?神話なのにメールとは、一体誰でしょうか?」
『オレだよオレ、老け込んでるんじゃねーよハゲ』
「ス、スサノオ!?日本書紀で携帯はやめてください!!」
『うるせー!神だから人知を超えてんだよ!!』
スサノオはとても気性が荒くイザナギに任せられた海をロクに納めもせず事あるごとに他の神々へ毒舌メールを送り、
父や兄弟を困らせてばかりいたのです。
『てかなんで俺鼻をすすいで産まれてんだよ!
俺はオメーのハナクソかよふざけんな!!
おふくろに会わせろや!!!』
「神話とはそうゆうシュールな物ですしイザナミは貴方のおふくろではありません!
貴方は、私が、鼻をすすいで産まれたんです!!!!」
『そんなわけわかんねー出生秘話受け入れられるか!!俺は黄泉にいるおふくろに会いてえんだ!!』
母を猟奇に変えた恐ろしい黄泉の国に我が子が興味を持つこの事態に父イザナギは血相を変えて益々声を荒げました。
「ダメ絶対!黄泉に行ってはいけません!!イザナミに会ってはいけませ〜ん!!!」
『おまえよりはマシだハゲ!!短小!!
とにかく俺は会いに行くぜ!!!
・・・・・てかオマエもう出番ねえぞ(爆)』
「 な ん で す っ て !?
絶望した!
我が子に罵倒されて出番が終わる創造神に絶望した!!」
スサノオは散々罵倒したイザナギの屋敷から出るとそのまま黄泉の国へ悠々と向かっていきました、
しかし普段弱気な父親があんな剣幕で恐ろしいと叫んだ国です、
荒ぶる凄まじい神と言えど流石のスサノオも不安になってきました。
『取り敢えず高天原に寄り道して姉貴に挨拶でもすっか。』
そうしてスサノオは高天原の入口にある小川にまでたどり着きました、
すると対岸から勇ましい武人姿をしていながらも何処かあどけない顔立ちをした神が現れました、
『ケッ!姉貴ショタコン過ぎてとうとう男装にまで手を染めやがったか(笑)』
そう写し出された液晶ディスプレイを見たその神アマテラスは顔を赤らめながら叫びました。
「ち、ちがうよ!
私は最初男神だったのが太陽を奉る巫女と同一視されて女神になったんだし連載当初私を男の子と間違えた読者さんもいたけどそんなんじゃないよお!!」
『必死だなオイ(笑)』
「そんな事よりスサノオ何しに来たの?高天原を乗っ取りに来たの!?」
剣を握り乱暴な弟を威嚇しようとしますが涙目なのでまったく恐くありません、
スサノオは鼻で笑いながら指を高速で動かし、
来た理由が載った液晶をぐいっと見せつけました
『ちげーよw黄泉にいるおふくろに会いに行く途中でな、
寄り道して挨拶しにきただけだっつの。』
「え、そうなの?じゃあ身の潔白を証明してよ。」
『あぁあれやるのかよ』
そう文字を打っているとアマテラスはまが玉の輪をスサノオに投げ渡したのでスサノオは自らの十拳剣をアマテラスの足元に投げ渡しました。
「えいっ!」
アマテラスは剣を三つに割ると三柱の女神を生み、スサノオはまが玉から五柱の男神を生みました。
『へへへ俺は五柱も生んだぜw。』
「その五柱の材料のまが玉は元はあたしのだよ、
てか一度に五人もかわいい息子産まれちゃったあうふふ。
スサノオの剣からは心優しい女神が三柱も産まれたんだし、高天原入って良いよ。」
『へへへちょろいぜ!』
川をひょいと乗り越えスサノオは意気揚々と高天原に入っていきました、しかし・・・・・
「あっスサノオ、高天原は携帯圏外だよ。」
ガーーーーーーン!!!
アマテラスの言った事は本当でした、
神々が住まう天界たる高天原に携帯のアンテナなどある訳はなく、スサノオは唯一のコミニケーション手段を失ってしまいまったのです。
スサノオは本来の黄泉にいる母に会いに行くとゆう目的を忘れるほど慌てふためき、
おろおろとアンテナが立つ場所を探し廻りましたがバリ1どころか表示はずっと圏外のまま、
長い時間コミニケーション手段を奪われついに・・・・・
「うガp議*Ζモモギレ蛾ドススレ・am@魔!!」
「ひっ!スサノオ様が聞いた事もない言葉を!?」
「黄泉の底から響くような声だ!?」
スサノオの顔は渇ききった大地の様にひび割れ、シャイだった口には肉食獣の様な牙が生え大きくぱっちりした眼は白黒反転しおぞましい醜鬼の目付きとなり。
口から発するは文字化けしたこの世で一切聞いた事のない様な声、
いやむしろ音は高天原中に響き渡り作物は枯れ、八百万の神々に吐き気、頭痛、悪寒をもたらしました、そこで神々は彼が入る事を許可した最高神に苦情を言いにきました
「アマテラス様!貴女の弟君が高天原に混乱と破壊をもたらしてます!」
「スサノオが!?彼にも何か理由があったはずよ、」
彼の剣からは心優しい女神が生まれたし自分にかわいい息子をもたらしてくれた、
しかし神々の鬼気迫る顔に押され取り敢えず様子を見に行く事にしました
「璽$∝/ヅψэθК≦>ガ!!」
「こわっ!」
神々の苦情は本当でした心が清いと証明したはずの弟がこの世の者とは思えぬ姿で秩序を乱してるではありませんか。
するとアマテラスの侍女のワカノヒルメが頭を抱え初めました、
「なんなのこの内臓をえぐる様な声は!?
不安定になる!不安定になる!不安定になるぅ!!」
ワカノヒルメはスサノオの文字化けに耐え切れずとうとう断末魔を叫びながら泡吹いて普通に倒れてしまいました。
「ひいぃいぃいぃ!!!!!!」
息子は母親に似て娘は父親に似ると言われてます、
イザナミは厳密には実母ではありませんがスサノオは黄泉での彼女と同じく恐ろしい姿へ変貌し、それを見たアマテラスは実父のイザナギと同じく怯えて逃げだし、
洞穴に入ると岩戸で扉を締めて引きこもってしまいました。
しかし彼女は太陽神、光り輝くその不思議な力で高天原は繁栄を保っていたのですが岩戸に引きこもった事により光が照らなくなり高天原も地上の葦原の中つ国も闇に包まれてしまいました。
「アマテラス様岩戸開けて出て来て下さ〜い!」
「コミケ始まる前に世界が終わっちゃいますよ〜!!」
「開けないでよ!」
神々は数柱がかりでなんとか岩戸をこじあけようとしますがアマテラスの意志の様に岩戸は硬く重く閉まったまま、
神々が困り果てる中何故かほくそ笑む神がいました。
「フフフ太陽神である姉さんの蔭に隠れまさに日蔭者だった僕が目立つチャンスだ!」
アマテラスの弟にしてスサノオの兄ツクヨミです、彼はここぞとばかりに毛が薄い頭を突き出しました。
「みなさん落ち着いてください!太陽神たる姉さんが引きこもり闇夜包まれた世界を、
月の神たる僕の光りで照らしてあげますから!」
「やだっ誰もいないのに声が聞こえた!?」
「気持ち悪いね、」
ツクヨミを奉る神社は割とありますし天皇ともいくらか関わったりしてます、
しかし八百万の中で最も高い人気と知名度を持つ姉と弟に挟まれ彼は三貴神の中で最も影の薄い存在になってしまいました。
「そんな!ひどい!!」
神々は三貴神の一人でもいるかいないかよくわからないツクヨミではなく八百万中最も頭の良いオモイカネガミに相談する事に決めました。
「やだなあ皆さん、高天原の神々ともあろう方々がそんな辛気臭い顔しちゃって♪」
オモイカネガミはイザナギ、イザナミが生んだ子ではなく最初に誕生した文化レベルの高い神の直系であるため自身も高い文化レベルを誇っていました。
神々の真剣な頼みにオモイカネは荒ぶるスサノオに怯まず近づいていきます、
「魔那レ゛合[κ○∠@†Ж↑■マカクカガagp!!」
「これは、あの時のイザナミちゃんと同じ、
えいっ!!」
ガツゥン!
「今殴った!?あなた知恵の神様なのに石でブン殴らなかった!?」
「やだなあこれが石なわけないじゃないですかぁ、これは塞の神と言って悪い物を抑え守ってくれるありがたい石なんですよ♪」
「石って言ってるじゃん!!」
「それよりも問題なのはアマテラスちゃんよ。」
オモイカネいわく引きこもりは周囲が出そうとすればする程心を閉ざし余計引きこもってしまう物、
童話の北風と太陽みたく自分から出てくる様にするべきだと。
「でもどうやって?」
「天岩戸の前でドンチャン騒ぎをするのです!
鶏を鳴かせ楽器を鳴らしアメノウズメに舞わせアマテラスちゃんが岩戸の隙間から覗こうとしたとこをアメノタヂカラオにこじ開けさせるのです!」
「コノアジノ開キノ様ニ開イテミセマース!!」
アメノタヂカラオは八百万一の力自慢、
横にいるオモイカネが子どもに見える程の巨体に太い手足に彫りの深い顔、
人々に相撲をもたらしたとされる屈強な彼なら岩戸を開けてくれそうですしかし・・・
「ちょっと!日本の国技をもたらした神の役が何でこの人なのよ!?」
「相撲は日本人力士より外人力士が活躍してるのでむしろこの方が正しいのです!」
こうして神々はオモイカネの指示に従い家畜の神はまだ元気な鶏を集めて鳴かせ、
鍛治の神は楽器や鏡を作り、
他の神々は酒や食べ物を携えて天岩戸前に集いて最高神引きこもり脱却の宴が始まったのです。
「今カラ、ウズメ踊ルヨ♪」
鶏と楽器も鳴らされるとそのリズムに乗りウズメの舞踏が始まりました、高い運動神経と褐色の肌が際立たせる愛くるしさに女神たちからの黄色い歓声が響きましたが
男神たちは一部を除き冷ややかです、
何故なら半裸で踊っているものの彼女の胸は平たく色気がないからです、しかし一人の男神がある事に気づきました。
「てか下はなにも穿いてないんじゃ?」
軽やかに踊るたびに服がめくれ毛も生え揃わぬ陰部があらわになってる事に気付いた男神たち不自然な前屈みになりながら大歓声を送りました
「さわがしいな・・」
先程まで神々は出てくる様に泣き付いていたというのに今聞こえるのは笑い声や歓声と言った楽しげな声ばかり、
自分が引きこもり世界は闇に包まれてるはずなのに・・・・・
アマテラスは岩戸の中から歓声の中心にいるウズメに聞いてみる事にしました。
「ねえ、私が引きこもってるのになんで皆楽しそうなの?」
「貴女よりモ立派ナ神ガ現れたからだヨ」
自分よりも立派な神とは誰だろう?
もしやかわいい男子の神かもと期待しながらアマテラスは岩戸を少し開けて覗き込みました、
そこには鏡が置いてあり自分の姿が写ってますがそうとは気付いていません。
「最近は男の子でも髪を私位伸ばしてるんだあ」
「今ダ、天岩戸開キナサーイ!!」
アマテラスが鏡に見とれている隙にタヂカラオは太い指を岩戸につっこみ自慢の怪力で神々が束になっても開けられなかった岩戸をグググとこじ開けていきます、
そして彼女の手を引き外に出すとアマテラスの体は山吹色の輝きを放ち、
その名の通り天から世界を照らして再び不思議な力で暖かい繁栄の活力を分け与えていきました。
アマテラスが引きこもり脱却した後
まどろみと鈍痛で頭がぼやける中
石で殴られ気を失っていたスサノオが目を覚ましました、
寝ぼけ眼を開くと雲一つない快晴の青空の下でうらめしそうな顔をした神々が自分を取り囲んでいたのです。
「出て来たから良いものをよくもアマテラス様を引きこもらせて!」
「なんとか言ったらどうなんですかスサノオ様!!」
神々は一斉に世界を滅ぼしかけたスサノオを責めはじめましたが携帯メールでしか意志を伝えれないスサノオは言葉を発する事が出来ません。
「大丈夫よメールや言葉じゃなくても伝える手段は沢山ありますよ、
目を見れば相手が何を言いたいかわかるもんです。」
オモイカネは先程自分が後頭部を殴り青ざめてるスサノオの目をじーっと見つめだしました、
「やーねえ
『正気を失った私を止めてくれただけでなく、
引きこもった姉さんを出してくれるなんて
オモイカネ様は凄いです!
尊敬します!
流石機○戦艦ナデシコや蛮○引力で電子頭脳になるだけありますね』だなんて照れるなあ♪」
自分が思ってる事とまったく違う妄言にスサノオは頭を激しく横に振りました。
「じゃあ次は私の目を見て私の考えてる事わかる?」
おそるおそるスサノオはオモイカネの大きな目を見つめてみました、
濁りなく黒真珠の様に奥深いその瞳の果てに浮かんだその言葉は・・・・
「ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ 」
『!?』
こうしてスサノオは圏外の高天原からアンテナが立っている地上の出雲に追放されましたとさ。
はい十弐レスもお付き合いいただきありがとうございました
前回千里ちゃんがまた出るのかと質問してくださった方がいますが
国生み編〜因幡の白うさぎ編まで基本一人一役を通してるので出ません
芽留は今後も出ますが
ヤマタノオロチ編は様子を見ながら投下させていただきます
正直読んでるうちに誰が誰だかわかんなくなった
日本書紀ってこういう話だったのか!?あなたのSSでポロロッカしそうw
面白いから期待してるぜ!
途中で誰か分かったけど正直ごっちゃになりそうだ
でも続きには期待している
てか
>連載当初私を男の子と間違えた読者さんもいたけどそんなんじゃないよお
マジか?
3話の霧か
あれは間違えるだろw
106 :
追記A:2007/12/11(火) 11:03:49 ID:BlV02iYp
>>102読み返すと確かにわかりづらかったですね
取り敢えず名前が出てないその他八百万の神役は藤吉さんと他の2のへ生徒ということで
>>103なんとありがたいお言葉、ありがとうございます
スサノオとツクヨミとオモイカネあたりが特にオリジナル要素入ってますがあらすじはこういう感じです
>>104-105そうです最初は言葉使いが粗暴で名前も中性的なので2ちゃんの書き込みでも美少年だと書いた人がいました
107 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/11(火) 12:58:31 ID:6YJVUkJX
明日は番外編の発売日ですね
よし子先生かわいいよよし子先生
番外編は先生がどSになったりは…しないだろうな
なみ並にはいつもSじゃないか先生は。
料理されていた佐藤年男さんは人間なのか神なのか疑問だw
(本筋に関係ないが)
112 :
430:2007/12/12(水) 20:11:04 ID:7/H9YXls
こんばんは、とうとう、ウィ○コム契約してしまいました。
これで規制も出張もバッチ来いですよ。
嬉しさの余り、職場の会議室からこっそり投下。
ホントにスチャラカだなぁ…途中で誰か入ってきたらどうしよう。
エッジで初投下なので、とりあえず短めのものでチャレンジ。
千里28歳のお話です。…エロなしです、すいません。
一応、以前書いた「さぼてんの花」や「ありかなしか」の続き、
にはなってますが、別にそちらを読まなくても大丈夫かと。
「はぁー、今日も残業しちゃった…。」
千里はやれやれとため息を吐きながら自宅マンションのドアを開けた。
「…というより、もう、これが定時かな。」
一人笑いをして壁の時計に目をやると、とうに日付は変わっている。
「全く、今日中にドキュメント上げろなんて、無茶言ってくれるわよね…。」
ぶつぶついいながら、千里は脱いだスーツをハンガーにかけた。
千里は、今、外資系のコンサル会社でシニアマネージャーを務めていた。
28歳という千里の年齢を考えれば大抜擢である。
しかし、当然、それに呼応するように仕事は増えていく。
最近では、日付が変わる前に千里が帰宅できることは、ほとんどなかった。
軽くシャワーを浴び、楽な部屋着に着替えると、
千里はブランデーグラスを片手に、ソファに背を預けて息をついた。
部屋の電気を消したまま、そこから、ぼんやりと窓の外を眺める。
都心の高層マンション。
夜景が美しいという評判につられ、高い家賃にも関わらず引っ越した。
「うーん、あんまり意味なかったかなぁ…。」
千里は、窓の外の、既に照明を落とした観覧車を見ながら呟いた。
それでも、都会の灯はまだ明るく、星の海のように千里の前に広がっている。
千里は、自分が、その無数の星の1つであることを強く感じた。
息を吐いて、グラスに少しだけ注いだブランデーを口に含む。
ふと、高校生の頃、風呂上りに麦茶で似たようなことをしていたのを思い出した。
クスリ、と千里の口から笑いがこぼれる。
「あの頃は、背伸びばっかりしてたなぁ…。」
今の自分が嫌で、何か別のものになりたくて必死だったあの頃。
大人の真似をすれば、今の自分から抜け出せるような気がしていた。
「でも、楽しかったな…あの頃は。」
ふいに自分の口からついて出た言葉に、千里は自分で驚いた。
「やだ、何で、こんな年寄りみたいなこと…。」
思わず、背筋を伸ばしてソファの上に座りなおした。
「はぁー、今日も残業しちゃった…。」
千里はやれやれとため息を吐きながら自宅マンションのドアを開けた。
「…というより、もう、これが定時かな。」
一人笑いをして壁の時計に目をやると、とうに日付は変わっている。
「全く、今日中にドキュメント上げろなんて、無茶言ってくれるわよね…。」
ぶつぶついいながら、千里は脱いだスーツをハンガーにかけた。
千里は、今、外資系のコンサル会社でシニアマネージャーを務めていた。
28歳という千里の年齢を考えれば大抜擢である。
しかし、当然、それに呼応するように仕事は増えていく。
最近では、日付が変わる前に千里が帰宅できることは、ほとんどなかった。
軽くシャワーを浴び、楽な部屋着に着替えると、
千里はブランデーグラスを片手に、ソファに背を預けて息をついた。
部屋の電気を消したまま、そこから、ぼんやりと窓の外を眺める。
都心の高層マンション。
夜景が美しいという評判につられ、高い家賃にも関わらず引っ越した。
「うーん、あんまり意味なかったかなぁ…。」
千里は、窓の外の、既に照明を落とした観覧車を見ながら呟いた。
それでも、都会の灯はまだ明るく、星の海のように千里の前に広がっている。
千里は、自分が、その無数の星の1つであることを強く感じた。
息を吐いて、グラスに少しだけ注いだブランデーを口に含む。
ふと、高校生の頃、風呂上りに麦茶で似たようなことをしていたのを思い出した。
クスリ、と千里の口から笑いがこぼれる。
「あの頃は、背伸びばっかりしてたなぁ…。」
今の自分が嫌で、何か別のものになりたくて必死だったあの頃。
大人の真似をすれば、今の自分から抜け出せるような気がしていた。
「でも、楽しかったな…あの頃は。」
ふいに自分の口からついて出た言葉に、千里は自分で驚いた。
「やだ、何で、こんな年寄りみたいなこと…。」
思わず、背筋を伸ばしてソファの上に座りなおした。
「疲れてるのかな…。」
千里は、呟きながら目線を窓際の植木鉢にやって、目を見開いた。
この部屋に入居したときに買ったサボテンに小さな蕾がついていた。
千里は、窓際に歩み寄り、植木鉢を手にとって呟いた。
「花が…咲くんだ…。」
しばらくサボテンを見つめるうちに、目の前がだんだんぼやけて来た。
息がつまり、千里は思わず胸を押さえた。
―――ねえ、木津さん…。
この、サボテンね、めったに花はつけないですけど…花が咲くと、
それは美しいんですよ…。
―――我慢して、一生懸命生きているものは、皆、美しいんです。
それは、人間も、一緒なんですよ。
高校時代の担任の言葉が、鮮やかに脳裏に蘇る。
それと同時に、穏やかに微笑む彼の笑顔も。
それは、千里が今まで忘れていた…いや、忘れようとしていたものだった。
高校時代の担任、糸色望に、千里は会って間もない頃から惹かれていた。
望は、千里の隠された弱い部分を、初めて見つけてくれた大人でもあった。
高校生活の間、様々な出来事を通して2人の間には少しずつ特別な想いが育まれ、
そしていつしか、互いの存在を「恋人」と呼び合う関係になっていた。
―――なんで、こんなこと…ずっと忘れてたのに…。
いや、それは嘘だった。
忘れたことなんかない。
忘れた振りをしていただけだった。
この部屋に入居して、一番はじめにサボテンを買ったのも、
きっと、初めて望に優しい言葉をかけてもらったあのときのことが、
どこか頭にあったからに違いないのだ。
―――先生とは、もう、終わったのに…自分で、そう決めたのに。
結局、2人の関係は、長くは続かなかった。
実家に帰って跡を継ぐから一緒に来て欲しい、という望に
千里が首を横に振ったのだ。
当時、千里は社会人になったばかりだった。
自分の将来に対する夢と希望が、胸に満ち溢れているときだった。
社会で、自分の可能性を試すのが楽しくてならない、そんなときに、
全てを捨てて望について行く、と、千里は思い切れなかったのだ。
―――…しかた、ありませんね…あなたには輝かしい未来があります。
それを束縛する権利は、私にはありません。
悩みぬいた挙句の千里の答えを聞いて、
望は、どこかが痛むような笑顔で千里を見た。
そのときの望の顔と声は、今も千里の胸に焼き付いている。
千里とは別の選択をした女性もいた。
彼女は、高校のときと同じ一途さで、望を蔵井沢まで追いかけて行った。
その後しばらくして、千里は風の便りに、2人が結婚したと聞いた。
今は子供にも恵まれ、幸せに暮らしているらしい。
―――あのとき、先生に付いていかなかったこと…後悔してる…?
千里はサボテンに問いかけた。
あの時望に付いて行ったら、自分にはどんな人生が待っていたのだろう。
望の隣で微笑んでいるのは、まといではなく自分だったのかもしれない。
千里はしばらくサボテンを眺めていたが、頭を振った。
そんなことを考えても意味はない。
今の自分の生活に、不満があるわけではなかった。
どんどん大きなプロジェクトを任されるようになっている。
顧客の信頼も得られるようになって来た。
千里は、自分の力で築き上げて行く人生に、確かな充実感を感じていた。
―――これが、私の選んだ道なんだから…。
それでも時に、こんな疲れた夜には、ふと、心をよぎることある。
―――望と共に歩むことができたかもしれない、もう1つの人生が―――。
千里は、サボテンの蕾をそっとなでた。
―――先生、私、今も、一生懸命生きてます。
先生と同じ花は咲かせることはできなかったけど…。
でも、美しい花を咲かせるために、ここで、頑張ってます…。
微笑みながら、サボテンをなで続ける千里の頬の上を、
一粒の涙が、窓の外の光に煌きながら零れ落ちていった―――。
118 :
430:2007/12/12(水) 20:18:34 ID:7/H9YXls
無事、投下完了しました!ドキドキした!
それと、妙に暗いSSを投下してスイマセン。
でも、幸せの形というのは人それぞれだと思うですよ…。
しかし、やはりエッジでの投下は時間はかかりますね…長編は辛いかなぁ…。
うーん、規制解除されるといいなぁ…。
その話、もう終わった。
なんか既視感があるなあ。
似たようなSSなかったっけ?
>>120 851氏の千里28歳、かも。
>>118 しんみりと読ませてもらいました。
千里、先生を忘れられないまま生きて行くのか…
切ない。でも、リセットできないんだろうな… と、なんだか感情移入してしまう(ry
職場で投下… ご用心をw
産業スパイとかと間違われぬようにw
大草さんとぬかどこかき混ぜたいです
千里ちゃんはこういうのが変に似合うから困る・・・
124 :
430:2007/12/13(木) 00:24:38 ID:6gsn+Gtg
>>120 >>121 うわぁ、ホントだ……851さんごめんなさい…!
意識して書いたわけではなかったのですが、
こちらのSSは、以前読ませていただいているので、
その内容が何となく頭に残っていたのかも…です。
以後、気をつけます…orz
>>430 色んな話を投下してくださってるんだから、そういう事もありますがな。
お気になさらず、と作者でもない自分が言うのもなんですが。
自由に投下できない状況で頑張ってくれてありがたい。またの投下を心よりお待ちしとります。
あのジョーバエピソードの影響か、千里の未来はせつな系になっちゃう傾向があるんですかね?
明るい未来も見てみたい。
あの未来はどうみても先生に振られたあとの人生だな。
先生と一緒になって幸せな28歳像をみてみたい
千里の話で盛り上がってるとこ悪いけど、先生はやっぱ可符香と一緒がいいや。
そんなサブヒロイン好きの立場がなくなること言わないでくだしあ
むしろメインヒロインは千里ちゃん。たとえ宇宙人からミンチにされたとしてもこれだけは譲れない
普通の変な子こそ主人公ですよ。
別にサブヒロインだろうが関係ない
俺は先生と霧ちゃんのやりとりが好きなんだ
>>130はすぐにそういうこと言わない方がいいと思うぜ
信者がうざいからアンチもうざくなんだよ
金子みすずも言ってます
「みんな違ってみんな良い」と
つまり望がヒロインで良いと言う事ですね。
そもそもこの作品にヒーローいないし。
嫌だなあ、誰だ?かっこいい!のヒーローさんガイルじゃないですか。
ジョジョの?
パーティの後、寝てる先生の元にきよ彦が現れて、そこになぜかみんな居るってのは
みんな宿直室で一緒に寝てたって事になるのか、いやらしい
このクラスの女子は全員 先生のお手付きなんで
どうも今年はハロウィン、クリスマスとも不発だった気がする。
ってここはエロパロすれか。
ハロウィンは先生の部屋であんな格好しちゃう霧ちゃん見れただけで満足でさぁ
きよ彦も飛び入り参加するクリスマス乱交パーティーのSSキボンヌ
「突然ですが、先生、2のへ組の担任を辞めようと思います」
「本当に突然ですね」
「普通の反応ですね」
「普通って言うなぁ!」
「先生!せめて三学期の終わりまできっちり担任してください!
大体、元総理じゃあるまいしどーしてこんな変なタイミングで辞任なんですか!」
「先生、エロパロ板にいて思ったのです。このままでは自分の教師人生が
強制終了してしまうと!そもそも私は皆さんの担任になってからごくごく普通の
担任教師として教え子と接しているつもりなのに、ここに書かれるSSときたら!」
********** 開 始 **********
「……ん……せんせ……あぅ」
「本当に白くて……綺麗な肌ですね。すべすべしていて、先生の好みですよ……」
「あっ!んぅ……せん……せ…ぃっ」
「いつも人の後ろに立つ貴女ですけど……後ろからされるというのも、新鮮でしょう?」
「やああん!せっ、先生、そこ違っ……あああっ!」
「おや、普通を嫌がる貴女ですから、こちらの方がお気に召すかと思ったのですが」
「んっ、先生、駄目ですよ、外でなんて……きっちり中で、いってっ、もらいますから、ねっ……」
『おいおい、こんなもんでいっちまうのかよ早漏w こんなもんで女を満足させようなんて
千年早っつーの、童貞でももうちょい粘るぜw』
「誰が胸だけで出していいって言ったの?勝手に自分だけ満足しない、訴えるよ」
「嫌だなぁ、逆レイプなんてあるわけないじゃないですか。これは女性が主導権を握った
女性メインの性行為ですよ」
********** 終 了 **********
「絶望した!男女の営みでも受けにされてしまう自分の属性に絶望した!!」
「あー……まあ確かに先生は攻受で言ったら、受けですよねー」
「意味ありげにじっくり見つめないで下さい!
……とにかく、何時の間にやら貴女たち教え子との間に
いろいろな関係が捏造されているのです!
これがしかるべき機関に発覚すれば私はその場で免職!野良教師!
それどころか未成年にわいせつな行為をした罪で有罪ですよ!」
「首、吊ッテモラエルヨ」
「そ、そこまで大罪にはならないと思いますが……ということで、こういった数々の
捏造フラグを全て消去するため、私はこの教室を離れようと!」
「嫌だなぁ、捏造フラグなんてあるわけないじゃないですか」
「はい?」
「先生、エロパロ板は全て妄想の産物なんです。妄想の力は素晴らしいんですよ」
「も、妄想の力?」
「そうです。妄想さえあれば日常生活のありとあらゆるものがエロになるのです」
・女の子に咥えられたフランクフルト
・女の子の口の周りについた生クリーム
・「力抜いて……力入れてると余計痛むよ……」(注射針)
・「……生でいいよ?」(最初の一杯)
・「私、経験なくて……ちょっと怖いけど、頑張るから……」(献血初挑戦)
・「あなたと合体したい……」(お茶の間を凍りつかせるパチンコCM)
「ですから、エロパロ板に妄想さえあれば、先生が野良教師になっても
全く問題なくSSは生産されるのです。全ては妄想の賜物なんですよ」
「な ん で す っ て !
それじゃあ私が今更何をしても逮捕フラグは消えないということですか!
と言いますか捏造とどこが違うんですか!」
「……先生、ばれなきゃ逮捕なんてされないんです。きっちり、最期まで
隠し通せばいいんですよ」
「あ、あの、隠し通すも何も事実無根ですよ?」
「真実の愛に教師も生徒も関係ないと思います。刑法も民法も私と先生を
引き裂くなんてできません」
「まあ、確かに貴女は刑法でも民法でも離れてくれないような気はしますが……」
「大丈夫だよ、せんせ。刑務所でずっと引きこもるのも楽しいかもよ?」
「いやいやいや、刑務所って非常に規則正しい労働生活ですよ、って……」
「刑務所かあ……囚人同士ってジャンルもいいかも。そういうの実際あるって聞くし」
「貴女はどこまで開拓するつもりなんですか!……いえあの、そうではなくて」
「先生、もし有罪になっちゃっても、ちゃんと帰りを待っててあげますから!」
「……普通のシナリオですね」
「普通って言うなぁ!」
「いえ、だからそうではなくてですね……
皆さん、どうして私にどんどん迫ってくるんです……?」
「捏造だの妄想だの、人聞きが悪いじゃない。訴えるよ」
「そういうの、いらいらするんです。きっちり事実にしてください!」
『良かったなオイ。オメーなんかを相手にしてやるって言ってんだ。
ありがたく思って泣いて喜びな』
「先生、今こそ私と真実の愛を育みましょう!」
「先生!攻められてるところスケッチさせてください!」
「え、えっと、こういうのってやっぱりまずはキスからですよね!」
「え、ちょ、まっ―――――――!!」
「いやだなぁ、オチなんてあるわけないじゃないですか。
これは神様を待つ間の、ほんの妄想ですよ」
146 :
430:2007/12/15(土) 13:21:39 ID:FYRuFuHv
>>145 うまい!こういう原作風味の小話大好きです!
えーと、神でなくてスイマセン…。
先般、マルかぶり気味のSSを投下してしまい反省しきりだったので、
今回は、これならかぶらないだろう!という組み合わせで書いてみました。
命兄と智恵先生です…でも命兄×智恵先生ではない。
なお、SM風味となっておりますが、
SMは当然のことながら全くの素人なので嘘ばっかりだと思います。
そこら辺は生暖かくスルーライフでお願いいたします。
「ああ、疲れた…。」
命は、注射針を注射器から外しながら、やれやれと肩を揉みほぐした。
今日は弟の高校で予防接種があり、命は、校医として来校していたのだ。
そんな命に、
「本当に、お疲れ様でした。で、申し訳ないんですが、
私、子供の迎えの時間がありますので、これで失礼します。」
助手を務めていた丸顔の保健医は、そう言うと、とっとと保健室を後にした。
「はあ…。」
保健室に残された命が、仕方なく1人、医療器具を片付けていると
保健室と隣の部屋をつなぐドアが開いた。
「あら、糸色先生、まだいらしたんですか。」
姿を現したのは、スクールカウンセラーの新井智恵であった。
「新井先生?へぇ、保健室は、中でSC室とつながってるんですね。」
「ええ、カウンセリング中に気分が悪くなる生徒もいるので…。
私、彼女から保健室の戸締りを頼まれてたんですが、先生、
もしよろしかったら、こちらの部屋でお茶でもいかがですか?」
智恵は、保健室の入口を施錠しながら、命に微笑みかけた。
こんな美人の誘いを断る手はない。
命は、二つ返事で誘いに応じた。
10分後。
命は、SC室で智恵と向かい合ってお茶を飲んでいた。
命は、お茶を一口飲むと、智恵に尋ねた。
「どうです、うちの愚弟は皆さんにご迷惑をかけてませんか?」
智恵は、その質問に苦笑した。
「そうですね、糸色先生は…。」
といいかけて、あら、と口を押さえる。
「先生も、糸色先生ですものね、紛らわしいわ。」
命は笑うと、すかさず自分を売り込んだ。
「私のことは、命、と呼んでください。
弟のことは、アホでも馬鹿でもお好きなように。」
智恵はコロコロと笑った。
「分かりました、それでは先生のことは命先生と呼ばせていただきます。
私のことも、下の名前で呼んでくださいな。皆、そうしてますから。」
―――いい女だなぁ。
命は、智恵の笑顔を見ながら思った。
今まで、それなりに色々な女性と遊んできてはいるものの、
ここまでの美人にはそうそうお目にかかったことはない。
色っぽい体つきと真面目そうな風情とのギャップも、男心を誘う。
―――望の奴、こんな美人と一緒に働いてるのか。
命は、弟をうらやましく思った。
「で、弟が何か?」
話を戻すと、智恵は頬に手を当てた。
「いえ、迷惑というほどではないんですけれど…。」
命は、智恵から、望が毎朝SC室に相談にくるという話を聞いて眉を上げた。
―――なるほど。望の奴、この先生に惚れてるのか。
そういえば、と、弟は昔から年上の女性が好きだったのを思い出す。
―――あいつは、マザコンだからなぁ…。
「すいません、あの馬鹿ときたら、とんでもないご面倒を…。」
渋面を作って謝ると、智恵は、いいんですよと笑って手を振った。
「それに、何だか、糸色先生ってどこか放っておけないところがあって。」
命はそれを聞いて、内心、またか、と舌打をした。
昔から、そうだった。
命も望も同じような顔つき、背格好で、年頃も近く、条件は変わりない。
むしろ、医者である命の方が、世間的には好条件のはずなのに、
こと、女性に関しては、命は弟に連戦連敗していた。
命が目をつけた女性達は、皆、必ずと言っていいほど、
いつの間にか手取り足取り弟の世話を焼いているのである。
―――だって、望君って何となく放っておけないんですもの。
命の抗議に、彼女達は異口同音にそう答えるのだ。
しかも、望自身は、それを全く自覚していないところが余計に腹が立つ。
―――この先生も、いままでの娘たちと一緒か…。
命は、弟に対する対抗心がむくむくと湧いてくるのを感じた。
命は、つと智恵から目をそらすと、ため息をついて見せた。
「智恵先生は、お優しいんですね…。」
タイミングを見計らって、顔を上げる。
「知恵先生。私にも悩みがあるんです…聞いていただけますか?」
「え…?」
「先生、初めてあなたを見たときから、私は、胸が苦しいんです…。」
「…。」
「あなたを見ていると、何故か、全身の疼きが止まりません…。
…あなたのその優しさは、私には向けていただけないんでしょうか?」
陳腐極まりない、品のない口説き文句であることは百も承知だ。
しかし、智恵も小娘ではない、命の言っている意味は分かるだろう。
あとは、目力で勝負である。
切なそうな表情を瞳に浮かべ、一心に智恵を見つめた。
目を合わせてしまえば、大抵こっちのものだった。
智恵はため息をつくと言った。
「…私に、どうしろと?」
「あなたに…この疼きを癒して欲しい…。」
智恵は立ち上がった。
「…分かりましたわ、命先生。
でも、治療は、私なりの方法でやらせていただいてよろしい?」
命は、心の中で、弟に向かってガッツポーズをして見せた。
しかし、表情はあくまでも誠実に
「もちろんです。あなたの嫌がることは一切しませんよ。」
と微笑んだ。
ところが。
次の瞬間、智恵の態度がガラリと変わった。
「じゃあ、まず、そこに跪いてちょうだい。」
「…は?」
命は、先ほどの笑顔で固まったまま、智恵を見返す。
「私の方法に従うんでしょう、さあ、早く跪きなさい!」
命の背中に冷や汗がつたった。
―――こ、これは。
自分は決してM 属性の人間ではない。
むしろどちらかといえばSだと思う。
―――しかし…。
目の前で腕を組む美しい女性。
これを、みすみす逃すのも惜しい話である。
弟に対する対抗心もある。
命は、目を瞑り、何事も経験だ! と思い切ると智恵の前に跪いた。
智恵が、命の前に立ちはだかり、つと手を命の顎にかけ上を向かせる。
智恵の目は異様に輝いており、命は、思わず体を引いた。
「怖がってるのね…ふふふ。」
智恵が楽しそうに笑う。
「大丈夫よ。初めての人には、優しくしてあげるから…。」
―――そ、その方向で、お願いします…。
命は言葉も出なかった。
「体が、疼いて困るんでしょう…?」
智恵は、唇が触れ合わんばかりのところまで顔を近づけると囁いた。
「ちゃんと、どこが疼くのか説明してご覧なさい?」
そう囁きながら、指先で、命の喉元をすっと撫で上げる。
命の背中を快感がぞわぞわと這い登った。
「さあ、どこが疼くの?」
「え、その…。」
さすがに、命が口ごもる。
しかし、智恵にじっと見つめられ、小さな声で答えた。
「か、下半身が…。」
智恵は、口の端をあげた。
「下半身、だけじゃ分からないでしょう?…ここ?」
喉をなでていた手が命の腿に伸び、そこをさわさわと撫でた。
「う…。」
「さあ、答えてご覧なさい…。」
智恵は、命の耳元で囁くと、そっと命の耳たぶを甘噛みした。
その手は膝から足の付け根の間を微妙な動きで行き来している。
その妖しげな感覚に、すでに、命の下半身は完全に張り詰めていた。
しかし、智恵は、わざとそこには手を触れようとしない。
「きちんと、疼く場所の名前を言ってご覧なさい…?」
「…。」
改めて、その名を口にしようとすると、何だか恥ずかしい。
ためらう命に、智恵の声が一オクターブ低くなった。
「…言わないと、これでおしまいよ。」
「…っ!」
命は、顔を羞恥に赤く染めながら、不承不承その器官の名を口にした。
「よくできました。」
智恵は、嬉しそうに微笑むと
「いい子には、ご褒美をあげないとね。…ちょっと待っててちょうだい。」
そういうと、ついたての後ろに回った。
しばらくして出てきた智恵の姿に、命は息を飲んだ。
黒いボンデージファッションに身を包んだ智恵は、まさに「女王様」であった。
智恵は命に近づくと、命のシャツのボタンをゆっくりと外していった。
「どうしたの…黙り込んで。」
固まったまま、気が付くと、命はすっかり服を脱がされていた。
「ふふふ…なかなかいいものを持ってるじゃない。」
智恵が命を見下ろす。
「こんなきれいな顔をして、いけない子ね…。」
智恵は妖艶に笑うと、命の頬をすっと撫でた。
命の背中に再び快い痺れが走った。
しかし次の瞬間、命は、智恵がロープを取り出すのを見て焦った。
―――いくらなんでも、ロープは…。望じゃあるまいし。
「あ、あの、智恵先生、ロープはちょっと…なにぶん初心者なので。」
情けないと思いつつ、口調が哀願調になる。
智恵は眉を上げると、ため息をついた。
「しかたないわね。じゃあ、特別に今回は別のものを使ってあげる。」
智恵は保健室とつながるドアの向こうに姿を消すと、
伸縮性の包帯を手に戻ってきた。
包帯で両手を後ろ手に固定される。
包帯の柔らかい感触にほっとしていると、後ろから首に包帯を回された。
「―――え??」
智恵は、淡々と、反対側の手首に包帯の端を結び付けている。
これでは、腕を伸ばしたら首が絞まってしまう。
―――窒息プレイか…確か、事故事例も多かったはず。
……下手すれば、酸素不足で多量の脳細胞が死滅して、
取り返しの付かないことに…。
なまじ知識があるだけに、窒息状態よって生じる様々な症例が頭に浮かぶ。
「ち、智恵先生、これは危険では…?」
自分は、弟と違い、自殺未遂の趣味はない。
「大丈夫、加減は分かってますから。」
凄絶な笑みを浮かべる智恵に、命の背筋に、先ほどとは異なる戦慄が走った。
「さあ、いきましょうか。」
智恵は、どこから取り出したのか、いつのまにか長いムチを持っていた。
「ちょ、待って…!」
命の制止を聞かず、智恵は、勢いよくムチを振り下ろした。
バシっと大きな音がSC室に響き渡る。
ムチ自体は、派手な音の割に、意外にも痛くなかった。
しかし、背中を打たれるその感覚に、思わず腕が伸びる。
腕から回された包帯が首を圧迫した。
―――く、苦しい…!
一瞬、意識が朦朧となる。
慌てて腕を緩めるが、そこに再びムチが振ってくる。
―――た、助けてくれ…!
しかし、そのうちに不思議な快感が命の中で湧き上がって来た。
触られてもいないのに、下半身が爆発しそうになる。
「あら、命先生、才能あるみたい。」
智恵の笑いを含んだ呟きに、命はぶんぶんと首を振った。
―――ちがう、私はMではない…!
智恵は、ムチを振るう手を止めると、命の前にしゃがみこんだ。
「だって、先生…ほら、こんなに。」
張り詰めた命自身の先端から、透明の雫がにじみ出ている。
智恵は、それを、ゆっくりと先端に塗り広げた。
「く…っ、ふ…。」
思わず、命の口から喘ぎが漏れる。
「ふふふ、いけない子ね。」
智恵は楽しそうに命自身を弄り始めた。
「う、ぐぅ…!」
智恵の指が敏感な部分を触れるたびに体が跳ね、腕が伸びて気道が圧迫される。
―――息が、できない…!
しかし、喘いでいるうちに、再び意識が朦朧としてきて、
それに伴い、快感が苦しさを上回るようになってきた。
「先生…そんなに腕を伸ばしては、駄目よ。」
智恵が囁くが、体は言うことをきかない。
遠のく意識に頭のどこかで警鐘が鳴っているのを感じたが、命はもはや、
このまま快感の波にさらわれてしまってもいいような気分になっていた。
智恵は、眉をひそめるとはさみを取り上げ、命の首にかかる包帯を切った。
「かはっ!」
命は前に倒れこみ、激しく咳き込んだ。
「まったく、先生ったら、ご自分で危険だっておっしゃったのに。」
命は、床に倒れたまま涙目で智恵を見上げる。
智恵は、たった今切り離した包帯の切れ端を持って立っていた。
「この子が、元気すぎるのがいけないのかしらね。」
そう言うと、包帯を、まだ元気を保っている命自身の根本に巻き始めた。
「聞き分けのないこの子に、しばらく大人しくなってもらいましょうか。」
「ちょ、智恵先、げほっ!」
命は慌てて抗議しようとするが、再び咳き込んでしまった。
抵抗しようにも、両腕は未だ後ろに拘束されたままだ。
智恵は、難なく包帯を命自身の根本にきつめに巻きつけると、結び目を作った。
「さて、と。」
智恵はにこやかに微笑むと、ゆっくりと命自身を口に含んだ。
「――――!!!」
美しい女性が、自ら、口を使ってくれている。
本来であれば、非常に喜ばしいシチュエーションであるはずである。
しかし、命の脳裏にはそのような考えはひと筋も浮かばなかった。
智恵の舌遣いは巧みで、命自身の敏感な部分を隅から隅までを嬲りつくす。
「くっ、はぁ、はっ…!」
命は、体をそらせて息を吐いた。
既に、自身は張り詰めきっていたが、包帯で根本を押さえつけられているため
欲望を解放することができない。
限界を超えて与えられる快感は、苦痛にも等しかった。
「智恵先生…もう…!」
命は叫んだ。
智恵は顔を上げると、涙目で懇願する命を、楽しそうにじっくりと観察した。
「いいお顔…。」
とその唇にキスをしたが、その間も、今度は手を使って命自身を撫でさすっている。
「智恵先生、お願いです、お願いですから…!」
命はほとんど泣いていた。
智恵は口を尖らせると、
「しかたないわね…初心者ですものね。」
そう言って、包帯を解き始めた。
「さあ、いらっしゃい…。」
智恵の細く白い指が命を促す。
命は、脳髄が全て吸い取られていくかのような感覚を味わいながら、
その指の動きに促されるままに、果てた。
全てを放出しつくして、ぐったりと床に横たわっている命に、智恵が声をかけた。
「命先生?体の疼きは治まりました?」
「は、はい、十二分に…。」
それどころか、立ち上がる気力さえない。
「それは良かったですわ。」
智恵は晴れやかに笑った。
「ところで、命先生。」
「はい?」
「言うのを忘れてましたけど、私の治療、部外者は有料なんです。」
命はそれを聞いて、この期に及んで金の話か?と、やや興ざめした。
しかし、次の智恵の言葉で、自分の考えが甘かったと思い知る。
「…お代は、体で支払っていただくことになっています。」
「―――!!!」
満面の笑みで保健室へのドアを開け、ベッドを指し示す智恵に、命は青ざめた。
2時間後。
智恵の満足そうな笑みに送られてSC室を出た命が、
すっかり暗くなった校内を足を引きずるように歩いていると、
偶然、弟に行き会った。
「命兄さん!?まだ、学校にいたんですか?」
望が驚いたように声をかけた。
「…ずいぶん、智恵先生のところに長居してたんですね…。」
恨めしげに見上げてくる弟の顔を、命は憔悴し切った顔で見下ろした。
「…望。」
「…なんですか。」
弟のふくれ面に向かい、命は心の底から言った。
「あの女は、やめとけ。あれと一緒にいたら、長生きできないぞ。」
…まあ、死にたいなら手っ取り早いかもしれないが、と口の中で呟く。
望の顔色が変わった。
「な、どういう意味ですか、兄さん!いったい智恵先生と何があったんですか!?」
しかし、命は望の問いに答えるのももう面倒だった。
ぐい、と望を押しのけると、腰をさすりながら出口に向かった。
「―――絶望した!校医とスクールカウンセラーの爛れた関係に、絶望した!」
弟の叫び声を背中で聞きながら、命は心の中で呟いた。
―――絶望したいのは、こっちの方だよ…。
そして、よろよろと校門を出て行ったのだった。
157 :
430:2007/12/15(土) 13:35:16 ID:FYRuFuHv
うーん、やはりエロは難しいですね…。
だいぶ命兄さんのキャラが変わってしまったような…ま、いいか。
この後は、弟編に続いたりします…こちらは、純愛エロの予定。
ていうか、今気がつきましたが、前回のSS、二重投稿してるじゃないですか…!
本当に何から何まで…大変申し訳ありませんでした…orz
>>157智恵先生と命先生という組合せでも斬新なのに途中からSMになるだなんて!
智恵先生の治療なら俺も才能開花しそうだ乙でした
>>157 『不承不承その器官の名を口にした。』で、もだえてしまったw
すごく命先生にふさわしいと思ったり・・・・・私が変なだけかw
しかし、筆が速いなぁ・・・・・・すごい。
週末なのに投下はないのか
>>161 すまん自分は土曜日も仕事があるんで週末=日曜のイメージだった
特に他意はないんだ許してくれ
自分がやっておいてなんだが430氏ってこういうめぐり合わせ多いのなw
163 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/17(月) 01:59:03 ID:5Fn9nyZu
>>160 _.. -―――- .._ ヽ /
, '" `丶. i /
/ \ | だ /
./ ヽ | っ /_
,' ∧ `、 | た /
| / \ |\ |\ | | ら /
| | \_\| \ !_,ハ. | / /
| | \| | | / お /
.| |<〇> <〇>l | ` ̄''‐┐ 前 /
! |\| --‐' ト|┼H ||/ | | / が 〈
| | l│| ! | | / 書 \
/ | ,.,.,.^ ^、、、 | | / け \
_/ ! lエエエエl ! \ / よ | ̄ ̄
/´7 \ |ェェェェェ| / ヽ ̄`\  ̄/ ! |
 ̄|/| /^x, ,x''^! \ | ̄` \ / |
|,/ l ´'l┼┼┼l'` | ヽ! / |
\ / / !
お行儀の悪いおねだりより感想一つ言う方が良い
エロパロ書こうなんて病的な奴は、勿論原作だって読んでいる筈なんだけど、
何故かアニメをみたときの方がインスピレーションが涌く気がするんだ。
動いているのを見たり、声を聞いたりすると書きたくなるのは不思議なんだけど。
だからアニメ2期が始まるとまた怒涛の投下ラッシュが始まるんだろうな。
「ケーキ、ケーキ買ってくださーい」
「おや日塔さん、今日もアルバイトですか」
「そうですよ、クリスマス前が稼ぎ時で勝負時ですから」
「なるほど、洋菓子店のバイトとしては至って普通ですね」
「普通って言うなぁ!」
「あーいらいらする!何でサンタなのにミニスカートなのよ!
サンタのコスプレなら長ズボンにブーツにして白髭と袋もつけなさい!」
「いやいや、ミニスカサンタは1つの確立されたジャンルですから
これで正解だと思いますが……」
「でも、私には分かるわその気持ち。中途半端な、安っぽい、部分部分で
手抜きの見られるコスプレって一番苛立つのよ。
キャラに対する愛が感じられないから」
「貴女も急に生き生きと語り出しましたね」
「まぁ、街角で見かけるとクリスマスだなーって感じはしますし、
可愛いからいいんじゃないですか?うちの夫もミニスカサンタは好きですし」
「そうですか?私はむしろクリスマスが近づくのを嫌でも意識させられて
どんどんネガティブになりますけれどもね」
『ミニスカサンタで何も感じねーとか、男として終わってんなハゲ』
「嫌だなぁ、先生が終わってるわけないじゃないですか」
「そ、そうですよ!まだかろうじて現役ですから!」
「人の趣味は千差万別なんです。たまたま先生の下半身がミニスカサンタに
反応できなかったからって落ち込むことないじゃないですか」
「落ち込んでませんし前向きに際どい表現はカットして下さい!」
「先生、以前言っていたじゃないですか。今は物も情報も溢れた世の中だって。
今やどんな趣味の人にもステキな反応ポイントは用意されているのです!」
・セーラー服姿の智恵先生
・ツンデレ、ヤンデレ、クーデレ、天然
・性別年齢不明ヒロイン
・人気アニメのコスプレAV
・「お兄ちゃん」という声だけが100種類以上入ったボイスCD
「ですから落ち込む必要なんてないんですよ、先生の絶望的な下半身も
ばっちり反応させてくれるポイントも必ずあるはずです!」
「貴女は人を絆したいのか貶めたいのかどっちなんですか!」
「なるほど、可符香さんの言うことにも一理あるわね……それじゃあ
先生がどういうポイントなら反応してくれるのか、今すぐきっちりさせましょうか」
「……はい?」
「何事もきっちりした委員長タイプの教え子が自分にだけ見せる乱れた姿……先生のツボに
それはもう、きっちり、はまるはずですけど?」
「金髪碧眼のブレザー美少女とネクタイプレイ……
これで反応できなかったら訴訟モノよね」
『無口なつるぺたには反応しねーよw とか思ってんだろ?
面白れぇ、是非ともそのつるぺたで反応してもらおうじゃねーか』
「しっぽプレイも、案外はまると面白いんですよ。それにネクタイプレイにも
包帯でなら対抗できますし……」
「先生の嗜好に合うのはいつも先生の三歩後ろをついていく私ですよね、
中途半端に乱れた和服とか、先生好きそうですもの!」
「やっぱりセオリー通りにセーラー服で放課後教室でっていうのが
一番に決まってると思います!そうですよね先生!」
「私はいつも通り、先生をスケッチできればいいですよ。
見られるのがイイっていうパターンもあるかも知れないですしねー」
「結局このパターンですかあぁ!
絶望した!毎回集団逆レイプになる作者のワンパターンっぷりに絶望した!!」
「嫌だなぁ、集団逆レイプなんてあるわけないじゃないですか。
これは先生に一足早い、私たちからのクリスマスプレゼントですよ」
168 :
10-478:2007/12/18(火) 02:58:39 ID:+Un4hiLX
集団逆レイプを全裸で期待してます。
投下させていただきます。大草さんメインでエロなしです。
169 :
10-478:2007/12/18(火) 02:59:16 ID:+Un4hiLX
朝、この時期は寒くて凍えそう。今朝はいつも以上に寒いみたい。だけど暖房なんてかけられない。家にはお金が無い。そう。借金も遂に大台を突破してしまった。考えるだけで寝込んでしまいそう。
冷えきった部屋では暖かい布団は名残惜しいけど、なるべく一気に着替えてしまおう。
着替え終わって朝ご飯を作ろうと思ったら、不意に後ろから抱きつかれた。
あの人は最近いつもこう。私が布団を抜けると寒くなるからって布団に戻るように言う。
「あ…おはよう。…ダメだよ。遅刻しちゃうでしょ。」
いつもこうやって抱きしめられるだけでドキドキして、だけどあの人はすぐに離れてしまうからその先を期待してしまう私が恥ずかしい。
でも今日はいつもと違う。今日はずっと私の肩に手を回して軽く寄りかかってる。自分の心臓の鼓動が早くなっていくのがわかる。
「ね、ねぇ…ダメだよ…え?」
170 :
10-478:2007/12/18(火) 03:00:03 ID:+Un4hiLX
ボソッと呟かれた言葉に私は硬直してしまった。
『仕事辞めた』って…目の前がぐるぐる回る。倒れそうになるのを何とかこらえて、あの人を引きはがす。
「辞めたって…どうするの?私のバイトだけじゃとてもじゃないけど今月乗り切れないよ?多分平気って…いつもそんなこと言って借金抱えて…もう私にはわからないよ!」
思わずそのまま家を飛び出してしまった。もういい。きっと他の人の所にでも行くんだ。私なんてきっと遊びなんだ。
あ、お弁当忘れちゃったなぁ…。ご飯…炊いてあるから平気だよね。…って何であの人の心配してるの?あの人なんか…私の事なんてちっとも心配してないんだろうな…
171 :
10-478:2007/12/18(火) 03:00:30 ID:+Un4hiLX
4限の終了のチャイムが鳴る。お昼どうしよう…朝から何も食べてないから頭がぼーっとする。
「アレ?麻菜実ご飯食べナイのカ?」
私がぼーっと座っているとマリアちゃんが話しかけてきた。相変わらず冬なのに夏服を着ている。でも、寒がっている様子はちっとも無くて元気いっぱい。
「今日はちょっと忘れちゃったの。だから今日は抜きかな。」
言い終えた時ふと、後ろに気配を感じた。振り向くとそこには腕を組んだ木津さんが立っている。彼女の目は魚目になっている。
…私は何か彼女のポリシーに反する事をしてしまった?嫌な汗が流れてくるのがわかる。彼女の暴走はよくある事だけど、慣れる事は出来そうにない。
「ちょっと…どうしたの?」
木津さんの不穏な様子にいち早く気付いた藤吉さんが木津さんの耳元で囁く。
「晴美には関係ないわ。それより…あなた。」
藤吉さんを軽くあしらい、私の方へ一歩詰め寄る。クラスの皆も木津さんの様子に気付いたらしく、固唾をのんで見守っている人もいれば、教室から逃げ出そうとしている人も、もう涙目になっている人もいる。
教室が静まり返り、異様な緊張に包まれているのがわかる。
172 :
10-478:2007/12/18(火) 03:00:58 ID:+Un4hiLX
「大草さん!」
「はっ、はい!」
沈黙を破り厳しい口調で私の名前を呼ぶ。その語気は有無を言わせない迫力を感じる。
「ダメじゃない…」
「えっと…」
「御飯を抜かしちゃ!」
「え?」
「人間は1日に、朝、昼、夜と食事をとらなきゃ行けないわ!昼御飯を抜かす事なんて許されません!」
あ…なんだ。そういうことね。木津さんにとっては御飯を抜かすことは許せないことなんだ。そう思ったらなんだか緊張が抜けてふにゃっとしてしまった。
皆も大事にならそうだと思ったのか、また雑談を始めている。
「ありがとう。木津さん。でも今日お弁当持って来てないから、食べれないの。」
「それは問題ないわ。私のを半分あげるわ。」
「それなら私のもあげるよ。」
木津さんと、大事にならないで人一倍ほっとしているように見える藤吉さんがお弁当を分けてくれると言ってくれた。
せっかくの好意なんだからもらわないと悪いよね。というよりお腹が空いて、断るなんてとんでもないとしか思えない。
「う〜ん…じゃあもらうね。ありがとう。ごめんね二人とも。」
「マリアも!」
「えっと、マリアちゃん…嬉しいけどもう十分もらえたから…ね?」
さすがにマリアちゃんから貰うわけにはいかない。この子はきっと私より厳しい生活をしているはずだから。
でも、マリアちゃんはあの子の机からお菓子を掴むとその掴んだ拳を私の前に突き出した。
173 :
10-478:2007/12/18(火) 03:01:19 ID:+Un4hiLX
「イイからヤル。マリアノいた村ではミンナ家族を大事にしたネ。困ってルのいたらミンナ助ける。
クラスの人ミンナ優しい。ダカラクラスのミンナ家族と同じ。麻菜実もワタシの家族。だからヤル。」
私はこの目の前の幼い少女の言葉を聞いて今朝の自分を恥ずかしいと思った。私は辞めた理由も聞かないであの人を責めてしまった。あの人はきっと慰めて欲しかったんだと思えてきた。口下手なんだから…
マリアちゃんは拳を前に突き出したままこっちをじっと見つめている。私はその小さな手をそっと両手で包んで、見つめ返した。
「ありがとう…マリアちゃんは優しいね。」
「困っタ時はお互いサマネ!」
かわいいなぁ…にぱーっと笑うマリアちゃんの顔を見ると自然と顔がほころんじゃう。思わず頭を撫でてしまった。
「エヘへー」
くすぐったそうに笑うマリアちゃん。こんな子が欲しいなぁ、なんて思ってしまう。最近ご無沙汰だな、なんて考えてしまって思わず顔が赤くなってしまった。
「顔赤いゾ?風邪カ?」
「あら、それは心配ね。」
「だ、大丈夫!なんでもないから!」
このクラスの人たちは皆優しい人ばかり。しようもない事を考えているだけの私の事を心配してくれる。今日はなんだかとても救われた気持ちがする。
帰ったらあの人に謝らなくちゃ。
174 :
10-478:2007/12/18(火) 03:02:02 ID:+Un4hiLX
すっかり暗くなっちゃった。きっとお腹を空かしてるんだろうな。私がいないと家じゃ何もしないんだから。ドアに鍵を差し込む。…なんだか少し緊張する。
「ただいまぁ。ごめんね遅くなって。バイトが延びちゃって…」
あの人はいつも通りTVを寝転んで見ている。気のなさそうな返事が返ってくる。
どうしようかな…どうやって切り出そうか悩んでしまう。いざこうして言おうと思うとなかなか難しくて、変に緊張してる。
「お腹空いたでしょ?今から作るからね。」
晩ご飯の後で話そう、それでもいいよね。そんなことを考えてるとあの人が話しかけて来た。相変わらず背中をこっちに向けてるけど。
「どうしたの?・・・・・・ううん。いいの…私こそごめんね。・・・うん、うん。」
今日は人に助けられてばっかり。なんだかとっても暖かい。私はきっと幸せなんだな。甘えたくなってあの人の背中に抱きつく。
「ねぇ、あなた…うん。平気だよ。また見つければいいんだから・・・こうしてると暖かいね。」
あの人が私の方を振り返った。私はその目に見つめられるだけで熱に冒されたようになってしまう。私は目を閉じてあの人に身を委ねる。でも口だけはお決まりの台詞を呟いてしまう。
「御飯遅れちゃうよ…ん…ぁ……もう…」
175 :
10-478:2007/12/18(火) 03:11:50 ID:+Un4hiLX
これにて終わりです。
自虐の詩を意識して書こうと思ったんですが、む・・・脱線した!筋書き通りかけない自分に絶望した!
しかし遅筆でイヤになってしまう。
今後の参考のために罵倒の言葉など送ってやってください
よ ろ こ び ま す
あとOCN解除らしいですね。神の帰還を期待。
>10-478
自虐の詩か...たしかにぴったりかもしれんな。
一周したくなる気持ちもわかるような。
きれいにまとめられていて、よかったです。
177 :
器:2007/12/18(火) 16:08:57 ID:V3jlTwYh
>>167,
>>175,
>>177 GJ!
逆レイプやほのぼのって大好きだ
最新刊読んだけど、最近いつも望の行く先に現れる倫や奈美の方がまといよりもよっぽどストーカーに思えてきた
OCN解除で、前スレで投下予告していた173氏が現れるのではと裸になっているのは俺だけか
当然のごとく街中で生徒の前に現れる先生の方がやばい
>>175大草さんなんて健気な・・優しい千里ちゃんも良いですし
貧乏繋がりでマ太郎とのやりとりが特によかったです
>>177期待しています頑張って下さい
前回天岩戸編でごっちゃになった方がいたので八岐大蛇編の前に今までの配役を書いときます↓
〜国生み編〜
イザナギノミコト
糸色望
イザナミノミコト
木津千里
蛭子
ことのん
カグツチ
三珠真夜
〜天岩戸編〜
天照大御神
小森霧
スサノオノミコト
音無芽留
ワカノヒルメ
日塔奈美
ツクヨミノミコト
臼井影郎
オモイカネガミ
風浦可符香
タヂカラオ
ペリーさん
アメノウズメ
関内マリア太郎
アメノコヤネ
藤吉晴美
その他八百万の神々
2のへのモブ生徒
スサノオを芽留にしたので八岐大蛇編はかなりハジけた話になりました御了承下さい
高天原を追放されたにも関わらずスサノオはゴキゲンでした、
何故なら地上の出雲の国はアンテナがバリ3と電波状況が絶好調だったからです。
圏外だった高天原での欝憤を晴らすかの如くめるめると懲りずに毒舌メールを送ったり、
ネット掲示板を荒らしたりと久しぶりのモバイルライフを満喫しており。
電池残量がなくなる毎に服の裏地に縫いつけた電池と交換し
十秒以上眼を開けれるドライアイになるほど携帯を使っていましたが沢山あった電池も底をついてしまいました。
ガーーーン!!
やりすぎたと青ざめ頭を垂れると、
出雲の国を流れる斐伊川が視界に入りました、
そして川をよく見ると箸が岸に流れついていました。
『ほお上流に誰か住んでるな、
充電させてもらうか。』
斐伊川の上流へ上流へとスサノオは神々の中ではかなり小柄な体で上っていきます、
すると山の中にひっそりと佇む高床式の住居を見つけましたが中から何故かすすり泣く声が聞こえるではありませんか。
「うっうっううう・・・」
電池の残量が残り少ないものの声を出したくはないスサノオは質問を書いた液晶をぐいっと泣いてる老夫婦に近づけました。
『オマエら何が悲しくて泣いてんだよ、
架空請求でもされたのか?』
辛辣な質問に気がついた老夫婦のうちの夫アシナヅチは単眼鏡ににじんだ涙を拭きながら答えました、
「いいえ違います、越からヤマタノオロチと言う恐ろしい・・」
するとアシナヅチが喋ってる途中なのに眼鏡をかけた幼い娘のクシナダヒメと黒くゆるやかな曲線の髪が美しい妻テナヅチが泣き叫び始めました。
「何で男の僕がクシナダヒメなんだよ!!おかしいだろ!!」
「ええい童は黙っておれ!私こそまだ十代なのに何故こんな老婆の役なのじゃ!!」
「僕の叔母だから母役でも老婆役でもいいだろ!!」
「私をその呼び方で呼ぶなぁーーーッ!!」
「まあまあお二方落ち着いて下さいオロチについて説明して・・」
「おまえは本当に爺だから良いではないか!!」
しびれをきらしたスサノオは青筋を立てながら液晶を再び向けました、
『うるせーだまれ!!話が進まねえだろ!カス!でヤマタノオロチって何なんだよ!?』
「お見苦しいとこを申し訳ありません、
ヤマタノオロチというのはそれはそれは恐ろしい怪物なのです。」
「私達夫婦には八人の娘がいましたが、
ヤマタノオロチは
「それは水兵さんが着る服よ!」だの
「それは死体の髪形よ!」だの
「それは今夜どう?のサインです!」だのと言い掛かりをつけて次々と娘達を訴え、
残ったクシナダヒメも告訴しに来る時期になったのです。」
『なんだよそれウザイなw』
「ウザいのですが
ヤマタノオロチは八つの人格と八つの谷、八つの峰にわたるほど日本人離れした体格の大蛇で、
眼は青ざめた様に真っ青ですし、
血がただれた様に真っ赤な布を穿いてる恐ろしい化け物なのですよ。」
語るだけで怯え震えるアシナヅチを前にスサノオは自信ありげに微笑みます、
『その化け物、退治してやっても良いぜ、
携帯を充電させてくれればな。』
突然液晶に浮かんだ予期せぬ言葉にアシナヅチもテナヅチもクシナダヒメも一瞬固まりました。
「おまえの様な子どもがあのオロチを退治じゃと?」
「そーだよオマエみたいなガキに出来るのかよ?」
『おめーには言われたくねえよ!
俺はガキじゃねえ三貴神の一人で荒らし・・じゃなく嵐と海を司るスサノオノミコトだ。』
「ええぇえーーーッ!?」
アシナヅチ達は驚きを隠せませんでした、
スサノオと言えば八百万中知らぬ者はいない一柱です。
毒舌メールや文字化けで神々を苦しめ高天原の秩序を乱し最高神アマテラスをひきこもらせた恐怖の魔神。
震え上がる程に厳つい大男に違いないと思っていたのに、
目の前にいる彼は夢にも思わぬ程小さくて幼くあどけない姿、
しかも携帯メールでしか意志疎通出来ないだなんて。
「でも世界を滅ぼしかける程のお方ならあのオロチも倒せそうですね、
わかりましたウチで充電して下さい。」
その言葉を聞くとスサノオはすぐに充電器を携帯につけてコンセントをガシっと差し込みました。そして充電中の電池マークが点灯する携帯でなにやら
めるめると文字を打ち初めました、
『うむ助かったぜ、しかしオロチを倒すにはおまえらの協力がいる、
とびきり強い酒を八樽造り外に置け。』
「えっオロチと酒宴でもする気ですか?
何故ですか!?」
『まあそんなとこだ、急げ!おまえらは酒の神の子だからすぐ造れるだろ、早く!!』
「はっはい!わかりました!」
アシナヅチとテナヅチはよくわからないまま急いで酒を用意し始めました。
アシナヅチとテナヅチが腑に落ちない顔でいそいそと酒を用意し、
外に置いて行く様を充電器で充電したままの携帯を片手にスサノオは眺めているとまだ未成年で酒造りに参加出来ないクシナダヒメが喋りかけてきました。
「子どもは酒飲んじゃいけないんだぞ。」
『だからオメーが言うな!
それよりおまえの姉貴は髪形やら服装やらくだらねー理由で訴えられたそうだがおまえは何で訴えられるんだ?』
「あぁ僕の一つ上の姉さんを訴え終わったオロチが
「末娘のあんたクシナダ姫っていうの、変な名前。」
って言ったんで思わず
「おまえが言うなよエセドラゴン」
と言い返すと
「この!訴えてやる!!」って」
『やっぱりくだらねーじゃねえかw』
「そう・・そんなくだらない理由で獄中生活だなんて・・僕やだよ・・」
『・・そんな事はさせねえ、俺がオロチをブッ潰してやる。』
「スサノオ・・・・」
――恋が始まるには、
ほんの少しの希望があれば充分です。
その一方酒の用意が出来た途端ドドドドと凄まじい地響きが起こりだしました、
不動のはずの大地を揺るがし
日本最古にして最大最強の怪物が襲来したのです。
「私をこんな化け物にキャスティングするだなんて訴えてやる!!」
「大和の神話に出れたのですからここは和を持ってよしとしましょう。」
「めんどくせーみんな殺っちまおうぜ!」
「この様な怪物に配役すると言う事は女性蔑視に繋がるゆゆしき問題です」
ヤマタノオロチの八つの人格から発する御叫びは遠い山々まで響き渡り、その日本人離れした巨体は木々を薙ぎ倒していきます。
鳥や獣や達は訴えられてはたまらないと逃げ出しました、
同類の蛇でさえも。
その恐ろしさに太陽は西の大地へ逃げ込み
代わりに出た月にいつもの美しさは失せ
星たちは輝く事さえやめてしまった、
誰がこの邪龍を止められようか?
アシナヅチ宅を眼にするとオロチは再び恐ろしい声で叫びだしました。
「さあクシナダヒメを出しなさい、
出さないと告訴するわよ!!」
家の中で震えるクシナダヒメ達は理不尽な慟哭に益々震える怯えました、
すると
ぴろりぱらぴろ♪
「やっと法廷に出る気になった様ね、
ん?クシナダヒメのアドレスじゃないわ!?」
『俺はスサノオってモンだ、おまえのアドレスはクシナダヒメに聞いたんでな。』
オロチが再びアシナヅチ宅を見下ろすと、
クシナダヒメよりやや大きいものの随分小柄な人影があり、
携帯のディスプレイに照らされて顔がぼうっと光って見えました。
「あんたがスサノオ?
強そうな名前の割に随分かわいい見た目なのね。」
『おまえに比べれば誰だってな』
「この!訴えてやる!!」
『まあ待て、おまえも裁判続きで大変だろう。
酒でも飲んで一息つけよ。』
「酒で私を買収する気なの!?」
しかし大酒飲みをうわばみ(大蛇)に例える様にオロチは酒が大好きです、一度意識するて爽やかながら鮮烈な酒の匂いが離れません。
「まあちょっと位なら告訴するのに支障は出ないわね、どれどれ・・・・」
軽い気持ちでオロチは樽に入った酒をゴクゴクと飲み始めました、
まさにうわばみ。
「ぷはぁ〜このお酒鮮烈な味で香りも良いわね、
・・・・・ん?」
よく見るとスサノオもまけじと何かを飲んでいました。
「フフフ、あんた子どものくせにオロチの私と飲み比べようっての?
良い度胸じゃない。」
そう言うとオロチはこの生意気なスサノオを圧倒してやろうとペースを上げて飲み続けました。
「うぅ・・ん、ヒック」
どれほど飲んだでしょうか流石のオロチも酔いが回り顔も赤くなってきました、
しかしスサノオの方は何故か最初とまったくかわらぬ様子で飲んでいます。
何故ならオロチが飲んでいるのはアルコール度数が50以上の火がつく様な強い酒であるのに対し、スサノオが飲んでいるのはただの清涼飲料水だからです。
「・・おか・・しい・・まるでジュースでも・・飲んでるかの様に・・グイグイと・・」
『もう終わりかよ?』
「うるさい!和を持ってみんな飲み尽くすのが義務・・!!」
オロチは今八つのどの人格かもわからぬ程酔ってもなおガブガブと飲み続け、
八樽目にまでなるとうまく言葉を発する事さえできなる程泥酔してきました。
『この瞬間を待っていたぜ!
今日はパンツ見せんなよ誰も化け物のパンツなんて見たくねえからな。』
『大和撫子と言っても外人のオタクどもには結構嫌われてたぜ!』
『内戦地帯だから攻撃的とかキャラが安易過ぎるんだよ』
『ジェンダーフリーとか言ってもどうせおまえも訴えるしか能がないんだろ(゚ ∀゚ )』
スサノオはオロチの八つの人格に応じた八種類の毒舌を容赦なく発していきます、
しかしオロチは泥酔し訴える事も言い返す事もままならずに毒舌を受け続けついに・・・・
「ぼえぇ―――っ!!!」
ヒドイ断末魔を上げ血の様に真っ赤な布をひるがえしながら息絶えてしまいました。
「やった!あのオロチを倒したあ♪」
「まさか本当に倒してくれるとはのう!」
クシナダヒメ達は長年自分達を苦しめてきたヤマタノオロチが倒され抑圧されていた喜びに満ちあふれていました、
しかし倒した当人のスサノオは何故か冷静です。
何故ならもしオロチに仲間がいて訴えられでもしたら自分は殺人・・いや殺蛇犯として判決を受け獄中生活を受けなければならないからです。
『そうなる前に根絶やしにしてやる!』
そうしてスサノオは携帯カメラのライトで道を照らしオロチが通った跡をたどっていきました。
長く長く続く蛇の道をたどっていくと大きな洞窟にまでたどりつきました、
クシナダヒメの名前が載った書きかけの告訴状もありここがオロチの住家に間違いない様です。
『仲間はいねえみたいだな・・』
告訴状をのかしゴソゴソと漁っていると札束が大量に出てきました、
おそらくクシナダヒメの姉たちから絞り取った慰謝料でしょう、
そうして告訴状やら札束やら大量の紙を退かしていくと剣が出てきました、
『そういや姉貴は女なのに帯剣したり俺の剣から女神生んだりと剣好きだったな、
この前のおわびにこれでもくれてやるか。』
スサノオがアマテラスに献上するこの剣こそ草薙の剣、
天皇家に伝わる三種の神器の一つです。
SMAPのいいひとではありません、
こうして剣と両手に抱えきれない程の札束をみやげにスサノオはクシナダヒメ達の元に凱旋してきました。
『服役してるおまえの姉貴達を保釈する位になら足りるだろうよ、』
「うわあスサノオ何から何までありがとう、
僕最初女役とか嫌だと思ってたけどスサノオの妻にならなりたいよ。」
するとそれを聞いたアシナヅチとテナヅチは喜び勇みます、
「おぉオロチを倒しただけでなく娘達も保釈出来てそのうえ婿になってくださるだなんて!!」
「これはなんともめでたいのう♪」
こうして保釈された姉達も加わり盛大な挙式が行われました、
高天原に住む天津神に対し大地に住む国津神たちの新たなスタートでもあるのですから。
挙式が終わるとスサノオとクシナダヒメ夫妻は新たな新居を造る場所を出雲国で探しました、
『なんかここアンテナがずっとバリ3ですがすがしいな。』
「じゃあここにしよう」
そのためこの地は須賀と呼ばれ様になりました、妻もめとり、
須賀須賀しい宮も建ち、
最初出雲に来た時以上にご機嫌なスサノオは和歌を詠む事にしました。
『アンテナ立ち、出雲八重垣妻ごめ八重垣造りて八重垣を』
大草さんの湯豆腐食べたいです
194 :
追記:2007/12/18(火) 23:03:39 ID:Zhv/zqWY
最後まで読んでくれた方スルーされた方ありがとうございます
タイトルが八岐大蛇で話ではヤマタノオロチなのは読みやすいかなと勝手に思ったからで深い意味はありません
白うさぎ編と外伝を投下予定ですお付き合いいただきありがとうございます
やっぱり急ににぎわってきたね
よかったよかった
乙です!
うん、やっぱいいわ〜
スサノオ芽留が意外と合ってるし、カエレがオロチもマッチしてますね。八つの人格辺りはツボでしたw
次も期待してます!
197 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/19(水) 20:40:19 ID:25ieiTtS
いろんな絶望スレに出没してるけど何なんだ?
「今回は何のパターンなんですか……」
「先生、いきなりローテンションですね」
「
>>143-145でも
>>166-167でもテンプレートのように集団で襲われていたら
底なしにローテンションになるのも当然です!
女性に迫られて状況関係なく嬉しいのは高校性までですよ!」
「誤字なようでいて正解のような誤字ですね」
「どーせ今回も最終的には2のへの皆さんで逆レイプしに来るんでしょう!
絶望した!8行目でオチの分かるSSに絶望した!!」
「嫌だなぁ、そんな分かりやすいオチなんかあるわけないじゃないですか。
先生、ちゃんと周りを見て下さいよ」
「……そう言えば、今日は風浦さんしかいませんね」
「そうですよ、分かりやすく言えば、私と先生の二人っきりなんです」
「ふたりっきり……」
「エロパロ板で男女が二人っきりでSSに登場したら、しなきゃいけないことは
1つしかないじゃないですか」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待って下さい!幾ら何でも!」
「なんですか先生、あれだけ集団逆レイプされておいて
今更うろたえる事ないと思いますけど」
「あれは肝心のシーンはぼかしてますからいいんです……
あ、なるほど。そういう事ですね」
「何がです?」
「また今回もラストでぼかして有耶無耶にお終いにするんですね。
原作でもラストではいくらでも猟奇オチにできますからね、言うなればSSのこれは
エロオチとでも言ったところですか」
「嫌だなぁ、有耶無耶にするわけないじゃないですか」
「……はい?」
「エロパロ板なんですよ先生、ちゃんとやるべきことはやらないと、野良主人公に
なっちゃいますよ。次スレから『さよなら改蔵先生』になっちゃいますよ」
「楽しそうに言ったって100パーセントないですよそんな展開!」
「まぁ、それは冗談ですけど」
「……こ、この展開も冗談ですよね?」
「そんなわけないじゃないですか」
言って、可符香はにっこりと微笑む。一瞬その邪気のない笑顔に
見入った望だったが、すぐにはっと気付いて叫び声をあげた。
「ちょっと待って下さい!地の文があるじゃないですか!」
「そうですよ、今回は保守代わりの小ネタじゃなくてちゃんとしたSSですから」
あっさり応えると腰をかがめ、呆然と床に座り込んでいる望の耳元に唇を寄せ、
「違うんですよ、いつもとは」
悪戯っぽく囁いたその口調は、少しだけ熱っぽかった。
200 :
望×可:2007/12/20(木) 05:02:32 ID:1vuPCgO+
ほっそりとした可符香の指が自分の着物の襟にかかり、
望は慌ててその手を押えつけた。
「ちょ、だから待って下さいよ!いきなりこういった展開はいけません!」
「どうしてですか?」
「どうしてって、貴女はまだ高校生で、あまつさえ私は教師でしょう!」
必死に反論するも、至近距離からきょとんとした瞳で
見上げられて思わず鼓動が早くなる。
「嫌だなぁ、学園モノでは至極普通の人物関係と展開ですよ」
「学園モノの定義を特殊なものにしないで下さい!」
あやまれ!学園漫画の作者にあやまれ!等と続きかけた制止の言葉は、
可符香の言葉に遮られた。
「私は、先生が先生だから好きなんですよ」
「……は?」
「先生は」
望が押えつけたままの可符香の手から、すっと力が抜けた。
「糸色先生は、私のことが、好きですか?」
時に電波と表現されるほど、いつもポジティブな少女から発されたまさかの疑問系。
――嫌だなぁ、先生が私のこと、嫌いなわけがないじゃないですか――
彼女ならきっと、そういう言い方をするだろうと考えるような台詞とは
まるで正反対の言葉に、思わず望は可符香の顔を覗き込む。
その視線は望の目を微妙に外していて、その笑顔は微妙に震えていて――
気がついたら、抱き締めていた。
「……先生?」
耳元で聞こえた可符香の声に、ふと我にかえる。
勢いで抱き締めてしまったは良いものの、いや良くない、
いややってしまったものはこの際仕方ないとして、この後一体どうすればいいのか。
いやいやどうすればいいかってやっちゃえばいいじゃんとか
そういう問題ではなくて。嗚呼これでは実の妹になんたるチキン呼ばわりされても
仕方がない。絶望した!その場の勢いだけで教え子を抱き締める
後先考えない自分に絶望した!!
冷や汗すらかきながら苦悩する望の頭に、先ほどと同じ問い掛けが聞こえてきた。
「先生は、私のことが好きですか?」
「風浦さん……」
201 :
望×可:2007/12/20(木) 05:09:42 ID:SUrjPPlv
ここで『嫌いです』とでも言えば、いやそこまで厳しい言い方ではなくとも
『好きというわけではありません』とでも言えば、この一連の流れは
スルーできるのだろうか。そんなことを考える。
自分から抱き締めておいて酷い話だとは思うが。
だが。
「好き――かも、知れません」
望の口から出たのは、スルーライフからは程遠い、肯定的な言葉だった。
一瞬の逡巡の中、脳裏に浮かんだのは初めて彼女に会ったときのこと。
――いけません!命を粗末にしてはいけません!!――
首吊りを目の当たりにして、恐怖に逃げ出すことも、
第三者を呼んでその場を任せることもせず、文字通り体当たりで
自分を助けようとした少女(最も、そのせいでより死にかけたのだが)。
――嗚呼、何と真っ直ぐな女(ひと)なのでせう――
息苦しさと、多分それ以外の何かで頬を染めながら、望はぼんやりとそう思ったのだ。
そう、それ以外の何かをもし、恋心と呼ぶことができるのならば。
興味とか、羨望とか、憧れとか、そんなものがもし混ざり合えば
恋心となるのならば。
確かに私は、貴女が好きかも知れません。
「……本当ですか?」
可符香がぽつりと呟く。
彼女を抱き締めている腕をわずかに緩め、望は照れくささに
そっぽを向きながらごにょごにょと続けた。
「え、ええまぁ……ですが、好きかもといった曖昧な程度で……」
「なーんだ」
「へ?」
唐突にトーンの戻った可符香の声に疑問を持つより早く――
するりと両肩から着物の襟が落とされた。
「お互いに好きなら、何の問題もないじゃないですかぁ」
見上げてくるのは、にっこり満面のポジティブ笑顔。
「ひ、ひょっとしてさっきまでの色々な態度は全部、お芝居ですか?」
さぁっと血の気が引くのを感じながら尋ねれば、
「そんなことありませんよ、先生が私のこと嫌いだったら
さすがの私もしょんぼらします」
そんなことを言いながら、くすりと笑う可符香。
床に座り込んだ自分。その両足の間に立ち膝の少女。
その少女はたった今、自分に好きと言って、自分も好きかもと言ったばかりで。
「いろいろな意味で逃げ場のなさに絶望しました……」
「嫌だなぁ、逃げる必要なんてないじゃないですか」
「教師と生徒なんですよ?」
「教師と生徒でも、ですよ」
何の迷いもなくそう言い切る可符香に、思わず苦笑して。
もう一度、彼女の華奢な体を抱き締めた。
***** 続きます *****
>>201 まさかの超展開に気持ち悪い笑みが止まらない、どうしてくれるこの野郎GJ。
続きが楽しみで仕方ないので、責任持って無理せず自分のペースでキッチリと
完結させるように。全裸で待ってる。
ここと百合以外に絶望スレってあるの?
絶望先生スレならいっぱいあるな。
自分も超期待
>201
同じく超期待
オレは別に期待してない。
>>201 先生×可符香、大好きだ〜!
続きを超期待!でもゆっくり待ちます!
携帯でこんなに完成度の高いSS書けるなんてすごいなぁ…。
原作のキャラ壊さずにお話作れるって尊敬します。
他キャラを当て馬にしないのは好感が持てるな
カエレ・楓SSの続きも期待しながら待ってるんだが・・・
214 :
真昼:2007/12/21(金) 16:07:41 ID:bAygGqqa
お待たせしたようで申し訳ありません。いや、何か狙ったようなタイミングですが
決してそんなではないですから!筆が、本当にもう、遅くて遅くて…。
ダブルキャスト、これにて完結です。5レスほど失礼します。
――しばらくカエレは、楓の胸に顔を埋めて、声を押し殺して泣いていた。
ようやく落ち着いたのか、緩慢な動作で埋めていた顔を上げるカエレ。
その顔は、何だか気まずげだった。
我に返ってみれば、いくら中身は女性の楓とはいえ、身体は間違いなく男である担任教師のモノなのだ。
恥じらいも無く男性の胸で泣いていた事を自覚すると、途端に羞恥心が込み上げる。
「落ち着きましたか?」
そんなカエレの内心を知ってか知らずか、楓は柔らかな笑みを湛えてカエレの顔を覗き込む。
いつも大人気ない表情を浮かべる事の多い望の顔に、今は楓が憑依した事により、穏やかな笑みが浮かんでいる。
それが妙に似合っていて、カエレの胸は訳も無く高鳴った。
「へ、平気ッ!」
自分の感情に動揺して、思わず声が裏返る。カエレは慌てて楓の身体を押し退けて、そそくさと立ち上がった。
楓も袴についた汚れを掃いながら立ち上がる。
生きている頃、楓はカエレより若干背が低かった。だが今は望の身体を借りている為、彼女を見下ろす形になる。
今更だがその事に新鮮さを覚えて、楓は自分が今、愛しき人の身体に居る事を再確認した。
そっと、男性にしては薄い胸を両手で押さえてみる。
鼓動が掌に伝わる。
温かい。
―――生きている。
初めて親友の身体を借りた時と同じ感動が、静かに心を震わせた。
「どうしたの?」
「……色んなことが、嬉しくなったんです」
キョトンとしているカエレを、幸せそうに目を細めながら見つめる楓。
今までは鏡越しにしか見られなかった彼女の姿。それが今、こうして確かに目の前にある。
そしてその瞳にはもう、楓に対する悲しい感情はない。
戸惑いながらも、確かに親愛を湛えた優しい瞳で、楓の事を見つめている。
「私、凄く幸せです」
少しだけ瞳に涙を浮かべて、楓は花の様に笑って見せた。
その笑顔があまりに綺麗で、カエレは咄嗟に視線を逸らしてしまう。
表情そのものは、懐かしい「楓」という親友のそれだ。
けれど、それを浮かべている顔の持ち主が問題なのだ。
拭えない違和感。だがどうした事か、カエレの鼓動はさっきから速くなっていくばかりだ。
「……ね、ねぇ。今までのお詫びに、何かさせてよ。もっとアンタが幸せになるようなことがしたいの」
気まずいのか恥ずかしいのか、不器用な笑顔を浮かべながら、若干早口で言い放つカエレ。
楓は気にしていないとしても、何かの形での償いを、カエレは求めていた。
「そんなこと――あ――」
首を左右に振ろうとして――彼女はハッとしたように動きを止めた。
「何? 何かあるのね?」
その反応を見逃さず、カエレはここぞと食いついて、楓に迫る。
顔を突然寄せられて驚いたのか、楓は少し顎を引きつつ、おずおずと頷いた。
薄っすらと頬を染めつつ、ごにょごにょと口の中で何かを呟く楓。
その小さな声を拾おうと、カエレは小さく動く唇にそっと耳を寄せる。
「―――あの―――」
―――耳に届いた彼女の頼みは、二つ返事で頷けるものではなかった。
カエレは目を点にしつつ、楓の顔を見上げる。
「……は?」
「ですから、あの――」
もう一度、同じ言葉を繰り返された。今度は先ほどより大きな声で。
「先生の事――好きになっていただきたいんです。カエレにも」
―――見る見るうちに、カエレの頬が朱に染まる。
「な、何でよ! べ、別にアンタの趣味にケチ付ける気はさらさらないけど、何で私が!?」
ズザザッ、と飛び退り、楓から距離を取りながら叫ぶカエレ。
そのリアクションが以外だったのか、楓は心底不思議そうな声を上げた。
「え? 嫌なんですか?」
「当たり前よッ!!」
「えぇぇッ!?」
思わぬ即答に、楓は涙目で自分の顔を指差しながら、
「どうしてです!? 格好良いじゃないですか、素敵じゃないですか、今の私!」
「あぁぁ、自画自賛――じゃないのはわかるんだけど、何か腹立つ!」
楓は愛しの先生を褒めるつもりで言ったのだろうが、自分を指して賛美の言葉を並べる姿は、自画自賛にしか見えない。
「そもそも、そんな事したら、私がアンタの恋敵になっちゃうでしょ!?」
「なりません。カエレは特別です。
それに、これからも貴女と一緒に居続ける上で、これは必要な事なんです」
楓はこれからも、カエレと身体を共有するつもりでいた。
「え…アンタ、私の身体に帰るつもりなの?
てっきりそのまま、先生と一緒に居るものと思ってたけど」
楓が望に好意を寄せている事は知っている。
何があったか知らないが、こうして楓は大好きな先生の身体の中に居るのだ。
好きな人と共に居られるならば、きっと楓はそうしたいだろう、と思っていた。
今まで共にあった親友が離れるのは寂しいが、会えなくなるというわけでもない。
だが、楓は顔を真っ赤にして、ブンブンと首を左右に振った。
「そ、そんな恥ずかしい事できませんッ!
と……殿方の、それも先生の身体に居続けるなんて、そんな……」
――寝る時、風呂に入る時、その他諸々の生理現象など。
色々な望の姿を想像してしまって、楓は思わず頬に手を当てて身悶えた。
同性、それも馴染みの親友ならば気にならなかったが、相手が異性、それも片想いの相手となると話は違ってくる。
カエレは身悶える楓――の入った望の姿に若干引きつつも、彼女が何を恥ずかしがっているのか察して納得した。
カエレとて、これからも楓と居られるというのならば願ったり叶ったりだ。
「その、ですから……身体を共有するにあたって、カエレにも先生を好いてもらわないと困るんです。
カエレが嫌いな相手と、その……こ、恋人になんてなれませんもの」
――もう既に、好きでもない相手とキスをさせられているのだが。
カエレは内心の呟きを口には出さなかった。
言ってしばえば、楓はまたその事を思い出して身悶えるだろう。男のそんな姿はなるたけ見たくない。
―――その後しばらく、楓は望の良い所を並べ立てた。
けれど言えば言うほど逆効果で、カエレは頑なに首を横に振り続ける。
しばらく言い合って、ようやく楓は諦めたのか、深い溜息を吐きながら肩を落とした。
「そうですか……、そんなに、嫌なんですね」
その様子に、カエレの良心が小さく痛む。
いくら彼女の希望が耐えかねるものとはいえ、自分から彼女の望みを叶えると言ったのだ。
このまま拒否するだけというのも忍びない。
それに、断るという事は、彼女に「望と恋人になるな」と言っている事に等しい。
難しい顔で押し黙るカエレ。
――そもそも、楓は望のどこに惚れこんでいるのだろう。
「……仕方ない、ですね」
考え込んでいる間に、いつの間にか両肩を楓に掴まれていた。
訝しげに楓を見上げると、真剣な眼差しで見返される。
「でも私、諦めません。カエレにはこれからじっくりと、先生の魅力に気付かせてあげます」
「み、妙に強気ね……」
「はい。恋には多少強気にいかないと勝てないって、わかりましたから」
楓の脳裏に、少し意地悪な笑みで振り返るまといの姿が過ぎる。
彼女にも他の女子にも、ずっと大和撫子の謙虚さを優先させたままでは、とても勝てない。
「これからじっくり、時間を掛けて、絶対カエレを懐柔してみせます!」
間近でじっと瞳を覗き込まれ、カエレは目を逸らさないまでも、思わず顎を引いてしまう。
―――楓はそのまま、鼻が触れんばかりに顔を近づけてきた。
「ちょ、ちょっと…?」
「先生の唇って、とっても柔らかいんですよ。
懐柔作戦その1、です」
彼女が何をしようとしているのか気付いた頃には、時すでに遅し。
「――ちょ、ま――」
――戸惑う声を飲み込むように。
柔らかな感触が、カエレの唇を覆った。
―――沈んだ意識が、ふっと浮上する。
気が付けば目前に、見慣れた生徒の顔があった。
(………ん?)
戸惑いが浮かぶより先に。
「―――っぎいぃやああぁああぁあぁぁぁあッ!!?」
めりぃッ!
すぐさま顔を離したカエレの鉄拳が、顔面にめり込んでいた。
「っォぶほ!!」
堪らず仰け反り、強打した顔を抑えて悶絶する望。
ぼんやりとした意識は、痛みで完全に覚醒した。
―――そうだ。自分は、彼女に身体を貸し与えて……。
それから先の事は覚えていない。何か柔らかいモノに触れた瞬間、意識が沈んでいったのだ。
あれからどうなったのか、わからない。
何がどうして、自分が殴られなければならないのかもわからない。
「な、なんで私が殴られないといけないんですかぁッ!」
じんじんと痛む顔面を押さえたまま、悲鳴じみた抗議の声を上げる。
「うううう、うるさいうるさいッ!」
カエレは顔を真っ赤にして後ずさる。眉を吊り上げて、怒っているようだった。
その様子を見る限り、今彼女の身体の主導権を握っているのはカエレの方のようである。
―――まさか、彼女とカエレの和解は失敗してしまったのだろうか。
嫌な想像をしてしまって、望は恐る恐る口を開く。
「―――か、楓さんとは、どうなりましたか?」
カエレはハッとして、そっと自分の胸に手を当てた。
―――とても馴染みのある、もう一つの存在を感じる。
「……楓は、ここに居るわよ」
「仲直りは……?」
心配そうに問う望。ついさっき自分に殴られたというのに、今はもうこっちの心配をしている。
その姿勢には、少しだけ好感が持てた。
「か、楓が世話になったわね。
―――仲直りは、できたわよ。……先生のおかげで」
最後の台詞は、望が聞き取れないほどに小さな声で囁かれた。
仲直りが出来たという事がわかると、望はほっと胸を撫で下ろし、安堵の息を吐く。
「あぁ、良かった。身体を貸して、わけもわからず殴られて、
その上何の役にも立たなかったなんて目も当てられませんからね」
「わ、悪かったわよッ!」
確かに、キスをしたのは望の意思ではなく楓の意思だ。彼を殴るのはお門違いである。
だが、つい反射的に拳が飛んでしまったのだ。
―――心の端で、楓が少しだけ悪戯っぽく笑ったような気がした。
「それで、結局どうなりましたか?」
「ど、どうって……」
「いえ、一応協力したんですから、事の次第を教えていただけないかと。
とくに殴られた理由とか」
……殴った事を根の持っているようだ。
さっき少しでも好感を持ってしまった事を後悔しつつ、カエレは半眼で見つめてくる望の視線から逃れるように背を向けた。
「と、トップシークレット!!
これ以上追求するようなら、ちょ、著作権侵害で訴えるよ!」
「……いえ、多分著作権には引っかかってないと思いますが」
どうやら随分と混乱しているようである。
おずおずと突っ込むも、彼女は望の言葉など聞こえていないように装って、ズンズンと大股で歩き出す。
「あ、ちょっとッ、どこへ?」
「帰る」
「ま、待って下さいッ。私も……」
小走りに走りよってくる気配がするが、カエレは振り返らずに歩き続ける。
―――墓地を出るまで、一言もお互いに口を開かなかった。
カエレは胸に渦巻く気恥ずかしさから。望は、不機嫌なカエレの機嫌を損ねないように。
「……結局」
「はい?」
駅に向う道すがら、沈黙を破ったのはカエレの方だった。
彼女は赤い顔を見られないように、思い切り顔を逸らしながら、
「結局、何も変らないわよ。
楓はずっと私と一緒に居て、私は――ずっと、先生の事なんて気に食わないままなんだから」
その言葉は、望に向けてというより、自らの中の親友に向けての言葉だった。
だが、望は少しだけ考えるように間を置いて、答える。
「―――変らなく、ないじゃないですか。
貴女と楓さんは、仲直りできたみたいですし……それに」
―――秋の風が、赤く色づいた楓を運んでくる。
一片の葉は、望の頬を撫でて、遠く遠くへ運ばれていく。
舞う葉を無意識に目で追っていたカエレは、結果、望と思い切り目を合わせてしまう。
「出来れば私のことも、気に食わないままでいてほしくは、ないですね」
そんな事を言いながら、柔らかな眼差しが、静かにカエレを見つめていた。
それは楓が憑依していた時に浮かべていた優しい表情と、少し似ている。
似ているが、それは確かに糸色望本人の顔だ。彼の心の底から滲み出る、柔らかく、温かな。
「………」
ほんの少しだけ、楓が彼に惹かれている理由が、分かった気がした。
「木村さん?」
望の声に、ようやく自分が立ち止まっていた事に気が付いたカエレは、ハッとして赤い顔を伏せた。
望もまた立ち止まって、不思議そうにカエレの顔を覗き込む。
「木村さん、気分でも優れないのですか?」
「―――か」
ぎゅっと、スカートの端を握る。
「か?」
「カエレ、よ」
短く答えると、カエレは望を半ば突き飛ばすように駆け出した。
「え、え? ちょ、待って下さいよ!」
よたよたとふらつきながらも、置いていかれては困ると、急ぎ足でカエレを追いかける望。
だがカエレは立ち止まらない。このまま駅まで、走り続けるつもりでいた。
「だから、カエレよ! カ・エ・レ!
木村じゃあ、どっちの事かわからないでしょ!」
走りながら、振り返りもせず叫び返す。
「――そ、そうですね…ッ、それじゃあ――。
カエレさん、待って下さいッ!」
弾む呼吸をぬうように、少し擦れた声で名を呼ぶが、カエレは一向に立ち止まらない。
むしろさっきよりもスピードを速めて、みるみる望とカエレの距離はひらいていく。
「えぇぇぇッ!? ちょ、何で足を速めるんですか!」
駅への道は覚えているが、このまま彼女に振り切られるのも、何だか負けた気がして嫌だった。
必死で追いすがろうとしている望の気配を肩越しに感じながら、
―――カエレは無意識に、口元に堪えきれない笑みを浮かべていた。
『――ね? 先生、素敵でしょう――』
「全ッッ然!!」
高く、遠い空に吼えるように、親友の問い掛けに即答した。
笑顔のままで。
◆ ◇ ◆ ◇
大切な親友。
愛しい先生。
その両方を手放そうとしない自分は、大和撫子とは呼べない、貪欲な人間なのだろう。
それは本来、恥ずべき事だ。けれど――この幸せを、今更手放せない。
手放す必要もないと、今ならば思える。
認められない好意に心を震わせる親友の様子を、微笑ましく思いながら、
楓はそっと、柔らかな笑みで呟く。
―――和をもって、良しとしましょう―――
◇ ◆ ◇ ◆
220 :
真昼:2007/12/21(金) 16:18:19 ID:bAygGqqa
終わりです。長々と引っ張っちゃってすみませんでした。もし次の機会をいただければ、
エロスとかエロスとか、あとエロスとか。書ければいいなぁ、などと言ってみたり。
キターーーーー!
エロスとかエロスとかエロスとか期待してますよ!
GJ!
エロスとかエロスとかあとエロスとか今後に期待
昨日は可符香がイタズラの度が過ぎてみんなの反感買って詰め寄られてそれは好きな人に意地悪したくなるってアレだよみたいな妄想をしながら眠りに就きましたおやすみ
そんなけしからん妄想をする悪い子が寝る時間じゃありません!
>>220GJ
エロスか...期待しています。
いや、いつも期待していますけど、特に。
こんばんは430です。二日酔いで本日の忘年会はウーロン茶でしたorz
真昼さん来てたーーー!
カエレと呼べと言うカエレが可愛いったら…。
真昼さんのSSは、ホントに読後感がいいですね。
エロスとかエロスとかエロスとかエロスとか、期待してます。
そして、王道の先生×可符香を
>>201さんに期待して、
私の方は、前回に引き続きニッチ狙いです。
一応、
>>147−
>>156の続きで、望×智恵を…。
ダラダラと長いのとキャラ崩壊はお約束。
―――昔から、人を、愛したことなどない―――
私は、何故か、幼い頃から人の心を読む術に長けていた。
ほんの些細な表情やしぐさから、その人の考えていることを読み取り、先回りする。
人は皆、私の想定どおりの行動しかしない。
余りにも分かりきった人間という退屈な生き物に、愛情を抱けるはずもなかった。
スクールカウンセラーという仕事を選んだのも、特技を生かそうというだけのこと。
誠実そうな顔をして生徒達の悩みの相談に乗りながらも、心の中はいつも冷めていた。
しかし、この高校に赴任して、私は、初めて自分が心を読めない人間に出会った。
担任クラスを持つ教師でありながら、いつも、人生に絶望してばかりいる青年。
三歳児かと思うような稚気を見せたかと思うと、
次の瞬間、私でもはっとするほどにシニカルで辛らつな意見を言い放つ。
大人かと思えば子供。
子供かと思えば大人。
生徒達に対しても、面倒見がいいのか悪いのか、その行動はちぐはぐで
私は、全く掴めない彼の心の動きに戸惑った。
彼は毎朝、私に、思いも寄らぬ人生の絶望を告げに来る。
―――面倒な人…。
そう思いながらも、私は、彼がSC室に来るのを拒むことはなかった。
―――しかし、今朝の彼は、いつもとは少し様子が違っていた。
私の前の椅子に座ったまま、床を見つめて口を開こうとしない。
理由はだいたい予想がついていた。
先日の、私と彼の兄との間の、ちょっとした過激なお遊び。
それを、彼の兄から聞きでもしたのだろう。
―――ばかばかしい。
私は、ため息をついた。
確かに、私は、彼の兄と関係を持った。
けれど、だからといって、私が彼に対して何をはばかることもない。
私も命先生も互いに独身同士であり、責められるいわれもない。
あの出来事は、私にとって単なる娯楽以上の何の意味も持たなかった。
私は、面倒になって、投げやりにいつものフレーズを口にした。
「で?今日は何に絶望したんです?」
ところが、彼は、私の問いに不思議そうに顔を上げた。
「絶望…。私は、絶望してるんでしょうか…?」
またしても、私の予測できない反応。
私は、戸惑いながら問い返した。
「私に聞かれても…。今日は絶望してないんですか?」
すると、彼は、途方にくれた子供のような顔で考え込んだ。
私達の間に、沈黙が落ちる。
しかたなく、私は、口を開いた。
「私と命先生とのことを気にされているのでしたら…。」
私の言葉に、彼の両手が、ぎゅっと袴を握り締めるのが見えた。
「あれは、単なるスキンシップです。特別なことではありません。」
彼は、顔を上げようとしない。
「先生が、気にされるようなことではないんです。」
言いながら、私はイライラが募ってくるの感じた。
何故、私はこんなことを彼に説明しなければならないのだろう。
何故、私はこんなにも必死になっているのだろう。
私は、思わず、皮肉な口調で言い放った。
「なんだったら、先生も、私と寝てみます?」
ガタン!
彼が立ち上がった。
私を見下ろす彼の表情に、私は言葉を失った。
彼は、ひどく傷ついたような顔をしていた。
私が何も言えないでいると、彼は踵を返し、無言で部屋を出て行った。
私は、遠ざかる足音を聞きながら、しばらくそのまま椅子に座り込んでいた。
―――私は、今、彼に何をしたんだろう…。
自分の感情のままに、不用意な発言をするなんて。
カウンセラーが聞いてあきれる。
カウンセリングどころか、事態を悪化させてしまったようだ。
いまだかつて、こんなミスはなかったというのに。
いったい、私は、どうしてしまったんだろう。
頭痛がする。
アスピリンを取り出そうと引き出しを開けたが、
目に入ったものに、ふと、手が止まった。
アスピリンの瓶の横にあったのは、手編みの小さな靴下。
今年の4月1日に、私が妊娠したというデマ(出所は私だが)が流れたとき、
生徒達でさえ、それなりの品物を買い整えて贈ってきたというのに、
彼が持ってきたのは、この、手編みの靴下だった。
―――心をこめて編みました。
何となく赤い目をしながら、照れくさそうに笑った彼の顔が目に浮かぶ。
他のプレゼントは全て送り返したのだけれど、これだけは手元においてあった。
「手作りのものを、返すわけにもいかないし、ね…。」
私は、丁寧に編みこまれた、細かい編み目を手でなぞりながら呟いた。
ふいに頭痛がひどくなってきたような気がして、
私はアスピリンを取り出すと、乱暴に口に放り込んだ。
翌朝、彼は、SC室に来なかった。
それが、昨日の出来事のせいなのか、他に用事があったせいなのか分からない。
でも、もし、彼がこのまま二度とSC室を訪れなかったら…。
ふいに胸がしめつけられ、私は、そんな自分の心の動きに驚いた。
―――毎朝、彼の口から聞かされた思いも寄らない絶望の数々。
面倒だと思いながらも、彼が、嬉しそうにSC室を後にするときは
いつも、どこか心が満たされているのを感じていた。
あれは、きっと、カウンセリングがうまくいったことへの自己満足。
単に、それだけのこと。
そのはずなのに、何故私は、それがなくなるかもしれないという予感に、
こんなにも怯えているんだろうか…。
SC室でぼんやりと考え込んでいると、窓の外から歓声が聞こえてきた。
見下ろすと、窓の下、彼のクラスの生徒達がサッカーをしていた。
彼は、相変わらず、生徒達に囲まれてそこにいた。
1人の生徒に頭にボールをぶつけられ、「死んだらどーする!」と叫んでいる。
余りにいつもどおりの彼の姿に、私は思わずくすりと笑った。
と、彼が、突然こちらを見上げた。
彼と、目が合った、ような気がした。
ガターーーーーン!
椅子が音を立ててひっくり返る。
私が、体を引いて立ち上がったからだ。
心臓が止まるかと思った。
―――なんなの、これは。
こんな感情、今まで経験したことがない。
混乱の余り叫び出しそうだった。
と、そのとき
「何か派手な音がしたけど…。」
怪訝な顔で、命先生がSC室のドアから顔を覗かせた。
「あら、命先生。」
私は、慌てて、倒れた椅子を起こすと体勢を整えた。
「今日は何か?」
「いや、ちょっと学校に用事があったんで、寄ってみただけで…。」
「…また、お誘いですか?」
妖しく笑って見せると、命先生は苦笑して手を振った。
「いやいや、さすがにもう懲りた。私も長生きしたいし。」
「ま、なんて失礼な。」
感情を伴わない軽口の応酬が心地よい。
命先生は、基本的に私と同類の人間だと分かっていた。
上辺はにこやかに接しながらも、決して相手のテリトリーに踏み込まず、
そして、自分のテリトリーにも立ち入らせない。
本来、私が理想とする人間関係はこうあるべきだったはずなのに。
再び、外から歓声が上がった。
視線を窓の外にやると、そこには、生徒達に文句を言っている彼の姿。
―――さっき、目が合ったと思ったのは、錯覚だったのかしら…。
しばらくの間、命先生がそこにいるのを忘れていた。
はっと気づくと、命先生が私のことをじっと見ている。
慌てて「お茶でもいかがですか?」と声をかけた。
命先生は、私の言葉に答えずに、私の顔をまじまじと見ていた。
「もしかして…また、私はあいつに負けたのかなぁ…。」
命先生の不可解な呟きに、私は眉を上げた。
「ま、あいつも今回の件ではかなり落ち込んでたみたいだからな…。
ここは、ひとつ兄として祝福してやるとするか。」
ぶつぶつ独り言を言うと、命先生は私を見てにやりと笑った。
「智恵先生、うちの不肖の弟を、末永くよろしく頼みます。
ただ、あいつは私よりも体力がないんで、あっちの方はお手柔らかに。」
「え…。」
私は、命先生を呆然と見返した。
次の瞬間、顔が真っ赤になったのが分かった。
命先生は、再び私の顔をまじまじと眺めると、
「へぇ…いいもん見させてもらったなぁ…。それじゃ、また。」
楽しそうに笑うと、後ろ手を振って出て行った。
―――なんてこと。
私は、へなへなと椅子に座り込んだ。
命先生の言葉で、自分の中に浮かび上がった感情の名に、私は首を振った。
―――そんなこと、あるはずがない。
あるはずがない、なのに、何故、私はこんなにも混乱しているのだろう。
まがりなりにもカウンセラーの資格を持つ人間が、情けない。
彼を毎朝楽しみに待っていた、この感情は、
カウンセラーとしての自己満足、それだけのはずなのに―――。
机に突っ伏していると、再びSC室のドアが開いた。
命先生が帰ってきたかと思って顔を上げた私は、思わず手を口に当てた。
―――そこには、思い詰めた顔をした彼が、立っていた。
私は、言葉もなく彼を見つめていた。
「今、下で、兄さんと会って…。」
彼は、そう言うと下を向いて唇を噛んだ。
私が黙っていると、彼は顔を上げた。
「私は…兄さんとあなたとの間に口出しする、何の権利もありません。
でも、兄さんがあなたに会いに来ていると知ったら…やはり…。」
もどかしげに手を振り回す。
「うまく言えないんです!私は…。」
私は、次の瞬間、ほとんど何も考えずに行動していた。
無言で立ち上がり、彼に歩み寄ると、彼を見上げた。
そして、彼の頬に手を伸ばし、ゆっくりと口付けた。
彼は、目を見開いて、私の口付けを受けていた。
ようやく唇を離すと、ぼんやりと私を見返す。
「あの…智恵先生?」
「はい?」
「今のは…その、ええと…?」
「…。」
私は、答えなかった。
―――自分でも、今の行動に、答えを与えることができなかった。
しばらく、私達の間に沈黙が落ちた。
私を見つめる彼の目の色が、ふいに深みを増した。
「智恵先生…!」
いきなり、彼が、私を抱きしめてきた。
そして、私の唇に彼の唇を強く押し付けてくる。
私も、ためらうことなく彼の背中に手を回すと、彼の口付けに答えた。
そうしてみて、初めて分かった。
私は、彼とずっとこうしたかったのだ。
彼と唇を合わせ―――そして、全てを重ね合わせたかった。
私達は、お互いの体を抱きしめながら、激しく舌を絡ませ合った。
徐々に、もどかしい気持ちが我慢できなくなり、私は彼の袴の帯に手をかけた。
彼は、驚いたように一瞬体を離したが、目を細めると、
いきなり私を床に押し倒した。
そのまま、彼の手が私のブラウスのボタンにかかり、私は、彼の袴の帯をほどく。
ふと、自分の余裕のなさにおかしくなった。
いい大人が、床の上でなんて―――まるで、思春期の少年少女のようだ。
くすくすと笑い出した私を、彼が心配そうに覗き込んだ。
私は、何でもない、と首を振ると、彼に再び口付けた。
着物を脱いだ彼の体は、思ったよりもしっかりとしていた。
その腕に力強く抱きすくめられて、頭に霞がかかったようになる。
私は、夢中で、彼の肌を唇でまさぐった。
今まで、性の快楽はさんざん味わってきたつもりだったけれど、
こんなにも逸る気持ちで誰かと体を重ねたことはなかった。
彼の息遣いが荒くなる。
私も、絶え間ない彼の手の動きに、既に息を切らしていた。
いつもなら、主導権を握るのは常に私。
相手の男を、焦らしに焦らした挙句、先に果てさせる。
そうして手にした圧倒的な支配力で、男達の上に君臨するのが心地よかった。
でも、今は、彼の愛撫に、ただ声を上げるだけ。
彼を焦らすことなんて思いも寄らなかった。
―――私は、知らなかった。
人に抱かれるということが、こんなにも心震えるものだということを。
そして、感情がこんなにも感覚に影響を及ぼすということを。
彼の指が私の中に入ってきた。
「…っ!ぁぁっ!!」
思わず、大きな声が出てしまう。
彼が、顔を上げて私を嬉しそうに見た。
顔が熱い。
「…聞かせて下さい、もっと…!」
彼は、私を強く抱きしめると、さらに指を奥に進めた。
「だ、だめ、はぁ…っ、あ、ぁぁぁぁああ!!」
目の前に火花が散って、私は大声を上げた。
相手より先に、自分が昇り詰めてしまうなんて、初めてのことだった。
胸を波打たせて、彼を見上げる私に、彼は荒々しく口付けると、
「いいですか…?」
と、尋ねると、私の中に入ってきた。
「ん、くぅ、ぁああ!!」
心も、体も、全てが彼でいっぱいになる。
私は、また、大きな声を上げた。
「ああ……智恵…!」
彼が、私の名を、うわごとのように呟いた。
そのかすれた声が耳朶を掠めた瞬間、体の奥に痺れが走った。
「はぁ、はっ、ぁあっ!」
体中の、どこを触れられても気持ちが良くて気が狂いそうになる。
人の手が、体が、こんなにも快感をもたらすものだなんて。
本当に、私は、人について、何も分かっていなかった―――。
私は、目を開けて、彼の顔を見上げた。
彼は、目をほとんど閉じて、頬を紅潮させている。
その額には、汗が伝っていた。
―――この顔を、いつまでも覚えていよう。
初めて、体を交わした瞬間の、彼の顔を。
訳も無く涙が出てきて、私は、手を伸ばすと彼を抱きしめた。
彼は、一瞬驚いたように動きを止め、すぐに強く抱きしめ返してきた。
「智恵…愛してます…愛してます!!」
―――その言葉に返す答えを、私は持っているのだろうか…。
もう何も考えられなかった。
ただ、最後の瞬間に、
気が遠くなるような幸福感に包まれたことだけを、覚えている―――。
ふと我に返ると、私は彼の腕の中だった。
彼が私の髪をそっとなでている。
なんだか、くすぐったい気持ちが溢れてきた。
顔を上げると、彼が、面映そうに目を伏せた。
「あの、すいませんでした…どうにも、夢中になってしまって。」
私は、首を振ると彼の胸に頭を寄せた。
「全然…私も、同じだったもの。」
そのまま、うっとりと目をつぶっていると、
「あの、智恵先生…。」
彼が、おずおずと声をかけてきた。
「…これきり、てことは…ない、ですよね。」
―――この期に及んで、この人は…。
私は、くすりと笑うと彼を見上げた。
「先生ご自身は、どうされたいんですか?」
「…。」
彼は、しばらく黙っていたが、やがて息を大きく吸うと言った。
「…私は、あなたを、兄さんにも、他の誰かにも渡したくはありません。」
―――命先生には、先ほど丁重にお断りされたばっかりだけど…。
彼の言葉に、私は、心の中でこっそりと呟く。
彼が起き上がり、私の手を取った。
「私だけの、智恵先生になってくれますか?」
「…。」
私を見下ろす彼の目は、不安げに揺れている。
―――人を、心から愛したことなどなかった。
愛情なんて、自分の人生にはいらないものだと思っていた。
けれど…。
私は、彼の目を見た。
―――私は、この人を、愛している…?
今まで経験したことのない感情が、私の中に生まれていた。
それを、愛と名付けてよいのか、今はまだ分からないけれど―――。
私は、彼に向かって微笑むと、はっきりと答えた。
「ええ―――喜んで。」
238 :
430:2007/12/22(土) 01:15:13 ID:BYjlcBKt
お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
なーんか、メロドラマチックになってますね…恥ずかし…。
以下、おまけ小ネタ…って、考えてみたら、自分で「おまけ」って言うな!
自分で言うなら、「おまけ」じゃなくて、「蛇足」でしょう!
というわけで、以下、蛇足小ネタで糸色医院での命先生と看護師の会話。
239 :
蛇足小ネタ:2007/12/22(土) 01:16:19 ID:BYjlcBKt
「弟さん、あの美人のSCの先生とお付き合いしてるんですね。
この間、お2人で腕を組んで歩いてるのお見かけしましたよ。」
看護師の言葉に、診療室に座っていた命は面白くなさそうな顔で頷いた。
「全くなぁ…結局こうなるとは。」
看護師は、そんな命を、少し口を尖らせて見下ろした。
「そんな顔して…。先生、もしかして、やきもち焼いてます?」
命は驚いた。
「やきもち!?…私が!?」
冗談じゃない、と命は思った。
良い女だとは思ったし、体の関係も結んだが、彼女に対して恋愛感情はない。
そもそも命は、いまだかつて、女性に特別な気持ちを持った記憶はなかった。
―――しかし。
最近の、幸せそうな弟の姿が脳裏に浮かぶ。
「…人を好きになる、っていうのは、どういう気持ちなんだろうな…。」
ぼんやりと呟いた命に、看護婦は目を丸くした。
「えええ、何を言ってるんですか。好きは好き、じゃないですか。
その人を思うと心がほんわか温かくなったり、とか…
そういう気持ちになったこと、ありません?」
「ほんわか…?」
命は、きょとんとした顔で看護師を見上げた。
看護師は急に赤くなり、
「あ、わ、私、そういえば、掃除の途中だったんです!」と診療室を出て行った。
「なんだ、今のは…。」
命は、首をかしげて看護師の出て行ったドアを見ていたが、
「ほんわかした気持ちねぇ…。」
と呟いた。
―――あの子は、それこそ何だかいつもほんわかしてる感じだけどな…。
命は、明るい顔で動き回る看護師の姿を思い浮かべ、くすくすと笑った。
そんな自分が、最近の弟と同じ顔をしていることに、命は全く気づいていなかった。
GJ!糸色兄弟のヒロインぶりがたまらないw
ついに豊作の時期がキターーーーーーー!!!!!
世にも珍しい望×智恵先生だね……、なにがいいたいのかというと
/j^i
./ ;!
/ /__,,..
/ `(_t_,__〕
/ '(_t_,__〕 GoodJob!!!
/ {_i_,__〕
/ ノ {_i__〉
/ _,..-'"
/
>>201の続き
まるで猫のように、望の胸に頬を摺り寄せる可符香。
その仕草が何とも愛らしくて、本当に小動物を愛でるような気持ちで髪を撫でてやる。
と、可符香の指がシャツの第一ボタンにかかった。
「あ、あの、風浦さん」
「何ですか?」
一応律儀に手を止めて聞き返してくる。何となく気恥ずかしくて
目線を合わせられないまま、こほんと咳払いなどしてから切り出した。
「えーと、ですね……せめて先生、リードくらいはさせてもらいたいなぁ、などと
男として思うわけなんですけれども……」
ああ、とあっけらかんと頷くと、可符香はあっさりと手を下ろした。
「そうですね、それじゃお任せします。先生男女ともにそこそこ経験豊富でしたもんね」
「倫の言ったことは信じないで結構です!」
また1つ恨み節が増えてしまった、そんなことを考えながらも
気を取り直してそっと胸元のリボンに手を伸ばす。
しゅる、と微かな衣擦れの音とともに解けたそれを床に落として
改めて少女のセーラー服に手をかけ――
そこで、ふと望の手が止まる。
「……先生」
数秒間の沈黙の後、固まったままの望に可符香が首を傾げながら声をかけた。
「ひょっとして、セーラー服の脱がせ方、知らなかったりします?」
「……ぇ、ぇぇ、実は……」
「ぷっ」
思わず噴出す可符香に、軽く絶望しながら顔を真っ赤にして反論する。
「し、仕方ないじゃないですか!制服脱がせるのなんて初めてなんですから!」
「あはは、そうなんですかぁ?ちょっと意外ですね」
「意外って……貴女は私をどういう風に見てるんですか」
どよんど、と背景に大きく文字を背負った望を見て
可符香はくすくす笑いながらも自分の横腹を手で示して見せた。
「あのですね、ここにチャックがついてるんですよ」
言いながら白い指先がゆっくりとチャックを上げる。思わず興味津々に
覗き込んでしまった望に向かって、にっこり微笑みながら可符香は両手を差し出した。
「はい、じゃあ先生が脱がせて下さい」
――その愛らしい笑顔と、それにそぐわない台詞に
ぞくぞくとした感覚が体を通り抜けた。
244 :
望×可:2007/12/22(土) 19:43:33 ID:R41ZKKgL
ゆっくりとセーラー服を脱がせ、次いでスカートもホックを外して床に落とす。
シンプルな白い下着が可符香の愛らしさと華奢さを
際立たせているようで、望は思わず息を呑んだ。
教え子の、それも好意を自覚したばかりの少女の下着姿に
己の分身に熱が集まっていくのをはっきりと感じさせられる。
「先生は、もうちょっと大人っぽい体系の方が好きですか?」
じっと下着姿を凝視されたのが気になったのか、悪戯っぽく尋ねる可符香。
慌てて手を振って否定する。
「い、いいえ、別にそんなことは……」
「いいですよ、別に。胸とかもっと大きい方が好みでも」
言いながら望の手を取り、下着越しに自分の胸へと触れさせる。
「先生が、頑張って大きくしてくれればいいんですから」
「がっ!」
頑張るって何をだ。ナニを。
いや頑張らなくても別に胸が大きいとか小さいとかで女性を選んだ覚えはないんですが。
そもそも何時誰が言ったんですか。胸が大きい方が好みだとか。また倫か。
いろいろな思いが一瞬で頭の中を駆け巡るが、目の前の小悪魔的な表情に
それらの考えはあっさりとかき消された。
「頑張って下さいね、先生」
「……そうですね」
ゆっくりと下着の上から包み込むように胸を揉むと
可符香はくすぐったそうにわずかに身じろぎした。
「……ん……」
手にすっぽりと収まってしまうような、慎ましやかな胸。
撫で擦るようにそっと手を動かす。
「先生……なんか、くすぐったいですよ」
「そうですか?」
くすくすと笑うどこか楽しそうな声に、望は手を一度胸から離すと
そっと両手を可符香の背に回し、ぷつり、と下着のホックを外してしまった。
「あ、下着の外し方は分かるんですね」
「……何だか、随分余裕ですね」
熱の他に少しだけ挑戦心のようなものが湧き上がってきて
そのまま可符香の体を押し倒そうとし――
ふと、体を離す。
「先生?」
「あ、いえ、ちょっと待って下さいね」
訝しげに声をかけてくるのに応えながら手早く上の着物を脱いでしまうと
床に広げる。その上に改めて可符香を横たえながら
「あまり上等なものではありませんが、何もないよりはマシだと思いますので……」
と言うと、可符香は自分に覆いかぶさる望を真っ直ぐに見上げながら言った。
「先生、優しいですね」
245 :
望×可:2007/12/22(土) 19:48:39 ID:5nG9LTOM
「私は、優しい人間なんかではありませんよ……」
自嘲のような呟きが、ぽつりと望の口から漏れた。
できるだけ人と関わりたくない、人と関わって傷つけられたくない。
そんな思いから個人的に鎖国し、自分のプライベートな部分に
他人が踏み込むのを出来る限り避けてきた。
しかし、それでもどうしても人と関わらなければいけない場面は出来てしまう。
だから、そんな場面で自分は優しく振る舞うのだ。
他ならぬ自分を守るために。
上辺だけでも優しくしておけば、傷つけられたり
絶望させられたりすることもないだろう――
『優しい人』と思われていれば、自分のかわいそぶりにも
素直に同情してくれるだろう――
「そんな優しさは、偽善と言うのです……私は、心の弱い大人ですから……」
何の迷いも無く私を助けようとした貴女の、真っ直ぐなそれとは、違うのです――
「いいじゃないですか、偽善でも」
にっこりと可符香が笑った。
「しない善よりする偽善なんですよ、先生。それに」
そっと、望の頬に手が触れる。自分の下で真っ直ぐにこちらを見上げる瞳。
「言ったじゃないですか。私は先生が――そういう先生が、好きなんですよ」
望の目が、僅かに見開かれた。
「いつも絶望してばっかりで、すぐに心が折れて、そのくせ
大人気なく色んなことに首を突っ込んで引っ掻き回して大騒ぎして、
また絶望して――偽善って分かっても、優しくするのをやめられなくて。
そんな糸色先生で、いいじゃないですか」
「……それ、慰めてくれてるんですか?」
「勿論です。すごく頑張って先生を励ましてみました」
自信満々に言い切る可符香。望は小さくため息をついて
頬に置かれたままの小さな手にそっと自分の手を重ねる。
「……ありがとうございます、だいぶ元気が出ました」
「どういたしまして」
お互いにくすくすと笑って――そのまま、ゆっくりと顔を近付ける。
貴女にそこまで好かれるのなら……そうですね、
こんな私でも、いいのかも知れません。
そんなことを考えながら、目を閉じる。
そっと、二人の唇が重なった。
柔らかく、温かな口付け。
その温もりに酔いしれるように、何度も角度を変えて口付ける。
と、ぺろりと軽く唇を舐められて、背中にぞくりとした感覚が走った。
思わず目を開くと超至近距離で自分を見つめる、きらきらと悪戯に輝く丸い瞳。
――挑戦されてるんですかね、これは。
246 :
望×可:2007/12/22(土) 19:55:35 ID:LHI3OMw/
ふと気付いてみれば、リードを申し出たものの先程からずっと
可符香にペースを握られっぱなしのような気もする。
さすがに最後まで主導権を握られっぱなし、ということはないだろうが
望にも男としてのプライドというものがあった。
そっと舌先で可符香の唇をノックするように突付くと
小さく開いた口腔へと舌を差込み、彼女のそれと絡ませる。
「……ん……」
小さな、甘えるような鼻にかかった声が耳に届いた。
ほっそりとした白い腕が
きゅ、と望の体を抱き締める。
その仕草の1つ1つに己が昂ぶって行くのを感じながら、望はそっと
覆うものの無い可符香の胸に手を伸ばした。
「ふっ……ぅん」
やわやわと揉みしだくと、自分が塞いだままの唇からくぐもった声があがる。
背中に回された少女の手がぎゅ、とシャツを握り締めた感覚に気をよくして
望は最後に強く可符香の舌を吸い上げるとその唇を解放した。
「はぁっ……先生……っ」
大きく息をついてこちらを見上げる、愛くるしい少女。
――嗚呼、そんな目で見つめないで下さい――
全身をざわざわと駆け巡る衝動、己の中でどんどん大きくなっていく欲望。
それらが支配するままにシャツも袴も脱ぎ捨て、今すぐにこの華奢な体を求めたい。
既に先程から己の分身は持て余すほどの熱を帯び、望の理性を急かし続けている。
だが、望は敢えて可符香を――自分自身を――焦らす様にゆっくり体をずらすと
ほんのり色づいた胸の先端を口に含んだ。
ふぁ、という声が頭上から聞こえてきて、その甘い響きが一層欲望を大きくする。
自分の欲求だけを満たそうとするのは嫌だった。
自分を好きだと言ってくれた、他の誰でもない、風浦可符香という少女と
『二人で』感じあいたいと思った。
それも、偽善だろうが。教え子を傷つけた、そんな声から自分を守りたいだけだろうが。
自分の中で冷ややかな声がする。
だが。
(偽善でも、いい)
愛撫を止めないまま、望は己に答える。
そんな糸色先生で、いいじゃないですか。
そういう先生が、好きなんですよ。
――他でもない、この少女がそう言ってくれたのだ。
*****ごめんなさい、まだ終わらない*****
>>246 エロスの間に挟まれる会話に、なんかこう、じんわりきた。
まぁなんだ、とにかく、ひたすらツボだと言っておこう。
248 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/22(土) 20:18:35 ID:Ws0jKKUx
アニメ11話の続きで手術室から出てきた命の表情を見てみんな先生は死んだものと思って泣き崩れたら可符香とか普通とか智恵先生とかの未フラグ組が実は好きでしたみたいなこと言い始めたあたりで実は大丈夫みたいな
その後回復してクラスに戻るとどこか不自然な雰囲気が漂ってて智恵先生のところに相談しに行ったらこっちもなんだか上の空でなにがなんだか分からないけど絶望した!みたいな妄想してたら1日が終わってて絶望したおやすみ
キター
250 :
305:2007/12/22(土) 23:26:21 ID:2qsPHDJH
お疲れ様です。305です。
もし柔銀行が焼かれたら、携帯+USBケーブルで投下するか、
いっそ根性入れてダイヤルアップで・・・(ry
とか考えてるうちに、あれ?規制終わってる、みたいなw ザ・皮算用w
職人さんで大賑わいで、こんな幸せったらもう!
エロ無しですが、私も書いてきましたので投下させてください。
奈美・短編・エロ無し・クリスマスネタ です。
では、お願いします。
靴音も高らかに廊下を走る影が一つ。
宿直室のドアの前にたどり着き、息を整える間も惜しみながら勢い良くドアを開ける。
「メリー・・・!!」
ドアを開けると同時に部屋の中に向かい、奈美は陽気に声を張り上げた。
「・・・クリスマ―――・・・ス?」
まだ荒い息をつきながら笑顔で部屋に入ってきた奈美の動きが固まった。
すぐ目の前には帰り支度をした晴美が、赤い顔をして寝息を立てている千里に肩を貸して靴を履こうとし
ている。
「あ・・・あれ? クリスマス会・・・・・・」
「もう終わったよ?」
サンタ服を身に付けて小さな袋を担いだ姿で小首をかしげた奈美に晴美が告げる。
その後ろには、コタツで横になり気持ちよさそうに寝ている霧と交の姿があり、向かい側には先生が足先
をコタツに入れてこちらに視線を送っていた。
「え・・・・・・えええええーっ!?」
「いや、だって奈美ちゃんバイトって聞いてたし。」
一気に力が抜けたのかその場に奈美はへたり込んでしまった。
千里に肩を貸しながらその横を通り抜け、「お先に〜」と言い残して晴美の姿は廊下へと消えていった。
しばしの沈黙の後、何とか立ち直ったのか奈美はのろのろと体を起こす。
「せっかくサンタ服のまま来たのに・・・・・・」
「空気読んで下さい。」
「クリスマスに空気読めって言われた!?」
先生は、上半身をコタツ布団から出して熟睡している交に毛布をかけながら、すました顔をしている。
一つ溜め息を落として奈美は靴を脱いで畳の上にあがった。
「先生、何か料理残ってないの・・・?」
「ああ・・・残念ですが・・・・・・何もないようですねぇ・・・」
コタツの上、オードブルが盛ってあったらしい大皿に目をやり、先生は残念そうな声で答えた。
「そんなあ・・・・・・」
「では、これをどうぞ。」
先生が指に軽く挟んで奈美に差し出した物。
これがもし、花の一輪などであったら様になる仕草だろうが、その緑色の物体を見て奈美は口をへの字
に曲げる。
「パセリじゃないですかぁ!!」
「お嫌いですか? クリスマスカラーですよ。」
「色の問題じゃないっ!!」
奈美の叫びに一つ肩をすくめてみせると、先生は、ひょいと手を翻して口元に運び、少し乾きかけたパセ
リをしゃくしゃくと食べてしまった。
奈美はさらに深い溜め息をつき、おもむろに、担いできた袋の中から自分の物と思われるコートやらマフ
ラーやらを取り出して着替えはじめた。
「あーあ・・・ 着て来たイミ、無いじゃないかぁ・・・・・・」
不機嫌そうにぼやきながら手早く衣装を脱ぐと、コートを羽織ってマフラーを身につけた。
最後に帽子を袋に放りこみ口を軽くしばる。
「帰ろ・・・・・・バイト先にサンタ服返さなくちゃいけないし・・・・・・」
「では、よいお年を。」
「それ、気が早くない?!」
苦笑した奈美に先生は少し悪戯っぽく笑いながら一礼をしてみせ、コタツの上を片付けはじめた。
そこで会話は途切れ、急に静かになった室内には、音量を落としたテレビから流れるバラエティ番組の
笑い声だけがはっきりと聞こえてくる。
奈美は入り口近くに立ったまま、所存無げに室内を見まわしていた。
その視線の先に部屋の端に置かれたもみの木が映り込む。
煌びやかなモールや、雪を模した白い綿で飾り付けられたそれは天井に届くくらいの高さがあり、その一
番上には金色の星が取りつけられている。
「・・・? 帰らないんですか?」
「いや・・・まあ・・・。そのツリーどこから持って来たのかなぁ・・・、と思って。」
奈美に指をさされ、先生もツリーの方を振りかえった。
「ああ、これは商店街に飾るツリーの余りをお借りしましてね。結構立派でしょう? ・・・そういえば他にも
色々お借りしましたよ。」
部屋の隅に固められた荷物に目をやって答えた先生に、奈美は良い事でも思い付いたような表情を浮
かべて口を開く。
「あ! じゃあ、ついでに返してきてあげますよ! ほら、私もバイト先に行くし、先生このままじゃ狭くて
寝る場所にも困るんじゃない?」
先生は、ちょっと得意気とも言える表情を浮かべる奈美を振り返り、
「おや、それは助かりますね。では、お言葉に甘えて―――」
いそいそと部屋の隅に押しやられている物を手に取り、奈美へと手渡してゆく。
「まず、このビンゴゲームと、百人一首ツイスターと・・・あと、ワイングラス、シャンパングラス、大皿、取り
皿・・・・・・鍋もお願いしましょうかね。」
紙袋やビニール袋に入れられた物を次々と手渡され、あっという間に奈美の両手は塞がり、先生は鍋を
逆さにして奈美の頭に被せた。
引きつった顔をする奈美を置いたまま、先生は部屋の中を見回し、
「・・・あとは、ツリーですかね。」
「そんなに持てるかぁ!!」
抱えた荷物の重さにふらつきながら奈美は絶叫した。
「普通、手伝うとか言うだろ!?」
続けざまに口をついて出た自分の叫びに、ハッ、と気が付いたように奈美は目を見開いた。
正面にある先生の顔が面白い物を見つけたかのように微笑む。
「普通、手伝いましょうか?」
「普通って言うなぁ!!」
クリスマスの商店街もこの時刻になるとすでに閉まっている店も多く、ツリーやリースも所々片付けられて
いるようだった。
気の早い店ではすでに門松を飾っている所まである。
―――結局、ツリーだけを後日に残し、奈美と先生は半々に荷物を持ち分けて商店街へと届ける事とな
ったのだった。
「ありがとうございましたー」
「よいお年をねー」
この時期になるとどこでも聞ける挨拶が交わされ、食器などを返しに来た肉屋の裏口を閉めると、奈美
は外で待っていた先生の元へと駆け寄る。
「ほらほら! 貰っちゃった、これ!」
奈美は嬉しそうに両手に一本ずつ握ったチキンを先生に見せびらかす。
少々冷めているのか湯気が出るような温かみは感じられないが、スパイスの香ばしい香りが鼻をくすぐる。
先生に一本を渡すと、奈美は早速そのチキンにかぶりついた。
「行儀が悪いですよ、歩きながらは。」
「だってお腹空いたし。」
「・・・ああ、そうでしたね。しかし・・・あなた、残り物が目当てだったのですね?」
「ん・・・・・・まあ・・・それもあったかも。」
奈美は口の回りにソースをつけながらチキンを頬張りつづける。
その食べっぷりを驚いたように見ていた先生だったが、奈美には見えないように少し笑い、食べ終わる
のを待ってから自分のチキンを差し出した。
「私はお腹一杯でして。―――どうぞ。」
「あ、いいの? じゃ、いただきまーす!」
嬉しそうに受け取って二本目のチキンにかぶりついた奈美を見て、先生は感心したようにうなずいてみ
せる。
「・・・相当に飢えていたのですねぇ・・・・・・」
「なんかビミョーに嫌な表現だな!?」
程なくして食べ終わり、奈美はガラを近くにあったゴミ箱に捨てると、口の回りについたソースを指で拭った。
「いや、女の子にあるまじき食べっぷりでしたね・・・ 惚れ惚れしましたよ。」
先生の言葉に奈美はやや顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
道行く人の姿はもうほとんど無く、たまにすれ違うのはカップルらしき男女二人連れくらい。
腕をくんだり、手を繋いだり、楽しそうな笑顔を浮かべて寄り添いながら通りすぎてゆく。
そんな光景を眺めているうちに、どことなく場違いな感じを受けて、手を拭ったハンカチをしまいながら隣
を歩く先生を横目で見上げた。
すぐ隣とはいえ、常に相手との間に人一人分の距離を確保して歩く先生。
こんな閑散とした場所でなければ、連れ立って歩いているようには見えない時もある。
少し楽しい気持ちに水を差された気分になり、奈美は無言で目を伏せた。
「・・・日塔さん? どうされました?」
「ん・・・・・・ なんでもない。」
急に黙ってしまった奈美を気遣うような先生の声にも、ついそっけない返事が出てしまっていた。
不思議そうに首をかしげて再び前を向いてしまう先生を見て、無意識に溜め息をつきそうになった自分
に気が付き、慌てて小さく首を振ってごまかした。
―――ふと、何かを用事でも思い出したように足を止めた。伏していた顔を上げて先生を見る。
「ね! 先生。ちょっと寄り道しませんか?」
「寄り道・・・・・・ですか? どこへ?」
奈美は軽く笑顔を作って見せ、路地を曲がって手招きした。
「今年のは、まだちゃんと見ていなかったんですよ! ツリー!」
やや広い造りの路地が交差する場所。
真ん中に植込みが作られ、その中心に一際巨大なもみの木のツリーがそびえていた。
ここの装飾はまだそのままにされており、電飾の明かりも灯ったまま枝葉の隙間からチラチラと光の点
滅を覗かせている。
ぼうっとした顔でその姿を見上げていた奈美だったが、いつのまにか隣にいた先生の姿が見えない事に
気が付いた。
――ピ・・・・・・ゴトン。
さがそうとするより先に背後から聞こえた音を察し、振りかえらずに気が付いていないフリをする。
隣へと先生が戻ってきた気配がした。チラッと横目で盗み見ると、カンコーヒーのプルトップに指をかけて
開けようとする先生の姿があり・・・・・・ 奈美は思わず勢い良く振り向いた。
「自分だけ!?」
「・・・はい?」
コーヒーを口に運びながらきょとんとした顔をする先生を見て、奈美は肩を落としツリーの方へと視線を
戻して、
「熱っ!?」
出し抜けにその頬に熱い物が触れ、思わず当たった方の片目を閉じて顔をしかめる。
目を開けると、やはりそこには悪戯っぽく笑った先生の顔があった。
「どうぞ。」
「え・・・あ・・・ ありがとう・・・」
少々バツが悪そうにそっと受け取った缶を、奈美はもう一度、ゆっくりと自分の頬に当ててみる。
冷えた肌にはヤケドしそうな鉄の感触だったが、うなじや耳に交互にあてていると少しずつほぐれるよう
に温もりが伝わってくる。
先生はコーヒーの缶を傾けながら、隣でツリーを見上げていた。
「ようやく、今年のクリスマスも終わりますね・・・」
「・・・ああ。やっぱりまだ嫌なんですか? クリスマス。」
「この日こそ、私は日陰者でいたいのですがね・・・・・・」
疲れた顔を作って見せる先生に、奈美は肩をすくめた。
「・・・でも、あと・・・・・・ 1回ですよね。このツリーを見れるのって。」
「どう言う意味でしょう?」
言葉の意味を捉えきれずに、先生は問い返してきた。
ひとり言に近いそれでは言葉が足りなかった事に気が付き、奈美は慌てて付け足すように口を開く。
「あ・・・その・・・ 私たちがこの次に見れるのは、って事です。来年で3年生ですから、まあ、最後かなっ
て思って。」
少し寂しそうな顔をして答えた奈美に、先生は優しく微笑んでみせる。
「大丈夫です。何回でも見に来ましょう。・・・ね?」
「――え!? え・・・それってどういう・・・・・・?」
思わず先生の顔を見つめ、鼓動が早くなってきた奈美に先生は笑顔のまま小さくうなずき、
「・・・あなたなら、また来年も2年生ができますから。大丈夫!」
「笑顔で言うなぁ!!」
苦い顔で叫んだ奈美に、先生はさらに微笑みを重ねその肩に手を置く。
「大丈夫! あなたはやれば出来る子ですから。」
「ひどいです! それ!」
ほんのりとした期待が膨らみかけた心に、いきなり冷水へと突き落とされたような衝撃を感じ、奈美は脱
力した表情で肩を落とした。
先生はコーヒーを飲み終えたがゴミ箱は見当たらず、取り敢えず外套のポケットへ入れたようだった。
ふと、奈美は手に持ったままだった缶に視線を落とし、眉をしかめた。
「ええ!? コーヒーかと思ったら、何でおしるこ!?」
しかめ面で先生を見上げる。
「ああ、疲れた時には甘い物が一番ですよ。・・・まぁ、お疲れ様と言う事です。」
すました顔で他所の方を向いたままの答えに、奈美は一瞬だけ考え―――その表情を、苦笑から微笑
へと変えた。
一旦顔を伏せ心を決めたように真剣な眼差しとなる。
呼吸を整えるように息を深く吸い込んだ。
「先生! ちょっと持ってて!」
突然、缶を先生に押し付けると、不思議そうな顔をしている先生の前でくるくると自分の襟首からマフラー
をほどきはじめた。
外したマフラーは二つ折りにしてあり、折り目を広げ全部を伸ばすと、ほぼ倍の長さとなった。
「・・・何ですか、そのやたら長いマフラーは?」
訝しげに尋ねる先生には答えずに、奈美はニヤリと笑うと「それっ」と言う掛け声とともに先生の首にマフ
ラーを巻きつけ始めた。
先生は驚いてそのマフラーを片手で掴み、首をかしげて編み目を見ている。
「これは・・・・・・手編みですか?」
「へへ〜 クリスマスプレゼントですよ! ・・・ちょっと居眠りしながら編んでたら長くなっちゃったけど。」
照れ隠しのような笑いを浮かべ、ぐるぐると幾重にも先生の首に巻きつける。
毛糸の塊を首回り一帯に巻きつけられ戸惑っていた先生だったが、やがて再びマフラーを見つめ、
「・・・ちょっと編み目が乱雑なようですね。」
「細かい事はいいでしょう! とにかく、あげる!!」
少し口を尖らせ、楽しそうに笑う奈美。
くしゅん!
犬の散歩につかうリードのようにマフラーの端を持ってはしゃいでいた奈美が、一つくしゃみを落とした。
ちょっと赤くなった鼻の頭を寒そうに両手で多い、先生の目の前から真横へと移動する。
不思議そうに先生は首を傾げる。その首に巻いた長すぎるマフラーの端を、ぐいっ、と引っ張り寄せて、
そのまま自分の首へと巻き付けてしまった。
「ちょっと貸して下さいね。」
「あなたね・・・・・・」
先生は一瞬苦笑を浮かべたが特に抵抗もせず、二人はマフラーの両側を互いの首に結びつけた奇妙な
格好で佇んでいる。
ややあって、先生の手がごそりと動き、まだ熱いおしるこの缶を奈美の前へと差し出した。
預けたままだった事を思い出し、受け取ろうとした奈美はその缶の胴にいつの間にか太い紐のような物
が巻きつけられていた事に気がついた。
「あれ? 何だこれ?」
不思議そうにつぶやいてその紐を外そうとすると、先生が横手から遠慮がちに手を伸ばして端をつまん
だ。
「・・・まあ、ケチな奴と思われたくありませんし、私からのお返しですよ。・・・一応、手編みですので不恰
好ではありますが。」
「てあみ・・・ って? あ―――これ、ミサンガ・・・・・・かな?」
細かい物を見るにはやや乏しい明かりを頼りに確かめると、それは確かに白い紐状の物で編み込まれ
たブレスレットのような輪に見えた。
「願いが叶うようにと心を込めて編みましたよ。・・・・・・木目糸で。」
「もく・・・!?」
顔が緩みかけた奈美だったが、とたんに眉間にシワを寄せた。
溜め息をつきながら無意識に傍観の笑みを浮かべ、とにかく「ありがとう」と言おうと口を開きかける。
しかし、それよりも早く先生の手が奈美の空いている片手をそっと掴み目線の高さまで持ち上げると、反
対の手でミサンガを持ちゆっくりと5本の指をくぐらせ手首へと導く。
(わ、わ、わ――!?)
煌びやかな飾りと電飾が銀色に瞬くツリーの前。向かい合って自分の手を取る先生。どこか憂いを帯び
た印象のいつもの表情。
まるで指輪でも渡すかのような仕草でそっと自分の手に触れている。
あまりに突然訪れた映画のワンシーンのような光景が脳裏にちらつき、奈美は頭から湯気が出そうなほ
どに顔を火照らせる。
思わず、缶を持っている事も忘れて自分の手を重ね合わせようとした時、
――ぶち
妙にはっきりと聞こえたその音に二人の動きが凍り付いた。
ぎぎぎっ・・・と、ぎこちなく首を動かして手首に視線が集まる。
白いミサンガは、ちょうど手首に収まった所で見事に切れてただの紐となっていた。
「・・・・・・何か、切れてしまいましたね。」
「仕込んだろ!? 不自然だってば!!」
つぶやきを遮り、絶叫に近い声が上がる。
いつもの事と言えばいつもの事なのだが、思わぬショックに奈美の目に涙が滲み出る。
ガクリと肩の力が抜け、疲労感が全身を漂う。
「・・・願いなんて叶わない物ですねぇ・・・・・・」
しれっとした顔で夜空などを見上げて独白するかのように呟いた先生の言葉。
背負った暗雲が見えるほどに消沈していた奈美だったが、ふと、何かに気が付いたように目をまたたいて顔を上げる。
脱力感はもう消えていた。かわりに暖かいものが胸を満たすような高揚感が湧き上がってきた。
口元に笑みが浮かぶ。
切れたミサンガを手に取ると、一旦、先生に見せびらかすように目の前で振って見せて、そっとポケット
へとしまいこんだ。
「クリスマスだもんね。願いは叶いますよ。」
「・・・はい?」
「願いなら、もう叶ったから。だから切れたんですよ・・・!」
少し照れたような笑顔を浮かべて自分を見上げる奈美をしばらく見つめ、先生は小さく肩をすくめて僅かに微笑んでみせる。
「それは何よりです・・・」
再びツリーの方へと向き直る先生に、奈美は持ったままだったおしるこの缶をかかげてみせる。
「メリークリスマース! ・・・なーんてね。」
悪戯っぽく笑い缶のフタを開けた。硬い音が響く。
辺りに甘い香りが立ち込めた。
火傷しそうな舌触りの甘いあずきの粒を少しずつ口に含む。喉を通る熱い感覚は体をほぐしながら全身
に心地よく染み渡って行った。
「さて、そろそろ帰りますよ。」
そう言って歩き出そうとした先生だったが、張り詰めたマフラーに、グイ、と喉を絞められて、思わず顔を
しかめて立ち止まる。
「日塔さん?」
奈美はすました顔でその視線はツリーを見上げていた。
「駄目ですよ・・・・・・まだ、飲み終わってませんからね。」
「・・・・・・?」
「歩きながらは行儀が悪いですよね?」
先生の顔に一瞬驚いたような表情が浮かび、それはすぐに微笑へと変わり、また元通りの隣の位置に並
んで立った。
「まあ・・・・・・良い事です。」
苦笑混じりのその言葉に奈美は嬉しそうにちょっと笑って、缶を口元へと運び、中身を一口含もうとし、
・・・一瞬考え、飲むフリだけをしてみせた。
「・・・おそらく来年も見に来ている気がしますねぇ。」
「いいじゃないですか。年一回の事だし。」
嬉しそうに笑顔になった奈美に、先生はニヤリと笑い、
「・・・普通に、来年も同じ事を言っているかもしれませんね。」
「普通って言うなぁ!! ・・・って、留年させる気満々って事!?」
奈美は少し膨れっ面をして見せる。
先生はこちらを見ているのかいないのか、ただ静かに微笑みながらツリーを見上げていた。
「――ねえ先生」
「何か?」
先生がこちらに顔を向ける。
奈美は無言でそっとマフラーに手を触れ、その中に隠すように、自分の赤くなった頬をうずめた。
「・・・ありがと」
編みこんだ毛糸から漏れださないように、誰にも聞こえない声でぽつりと言って、瞳を笑みの形に細めた。
先生は小首を傾げて奈美を見ていたが、またツリーへと視線を戻し、自分もマフラーに頬をうずめてみせる。
奈美は瞳を閉じてみた。
手を触れたマフラーを優しく握りしめ、もう一度、声には出さずにその持ち主を呼んでみる。
もちろん返事はない。
何も言わずに同じマフラーで巻かれて隣に立っているだけ。
それだけの事なのに、つい、気持ちがこぼれてしまいそうなくらいに胸の中が満たされている。
頬を包むこのマフラーのように、柔らかな温もりに包まれているようだった。
257 :
305:2007/12/22(土) 23:41:13 ID:2qsPHDJH
おそまつでした。
最近事あるごとに思い出される擬音、
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜
一度で憶えてしまったこのインパクトの強さは何だろうw
・・・まあそんな日々です。
では、また。
>257 乙
普通に上手すぎて悶え死んだ。違和感ねえ。
会話の運びが絶妙でした。
規制解除のせいか豊作だなあ
千里と先生ネタで書いてはみましたが結構な電波です。
それでもいいって方は読んであげてください。
「先生大変です!千里がぁ!」
宿直室の扉が勢いよく開かれて、そこに現れたのは藤吉さんだった。
「…なんですか今回は?」
「千里が先生に気に入られようとして、胸を大きくしようとして…」
「私、巨乳好きなんて言いましたっけ…?」
「とにかく!あーもう、来てください!」
ぐいと手を引かれ、現場へと連れて行かれる。
貧相な胸は木津さんのコンプレックスの一つだ、充分に暴走の要因になりうるだろう。
以前、見栄でBカップのブラを付けていることを指摘したときは、頭蓋に穴を開けられそうになった。
さあ今回はどうなるやら、バストアップ体操とか健康的なものならいいのだが…
例えば、他の生徒の胸を小さくすれば相対的に千里の胸は大きいことになる。
…なんて血の臭いのする結論はご勘弁願いたい。
さて、そうこう考えているうちにどうやら目的地に着いたようだ。
そこには藤吉さんの他に、風浦さんも居た。
二人がじっと見つめる先に今回の騒動の元凶、木津さんの姿があった。
「…なんですかあれは?パースが盛大に狂ったんですか?」
「違います、見たまんまです。ああなっちゃったんです。」
巫女装束のような服装の彼女が、長く艶やかな髪をなびかせながら夕焼けに赤く照らされている。
幻想的な光景だった、ビルより大きい彼女の身長も含めて実に幻想的だった。
「あの格好からもわかるように、千里は豊胸を願って祈りを捧げていたんです。ですが…」
「努力の方向性が間違ってますよ…んまあ…巨乳は巨乳ですね…」
「先生、千里ちゃんを助けてあげてください。」
「いやそう言われても私にあんなのどうしようも…時間が経てば治るんじゃないですかね?」
「ダメですよ、あんまり対応が遅れると自衛隊が動き出してしまいます。」
「…でも、あんなのどうするんですか。」
「大丈夫、先生なら出来ます。ほら聞いてください。」
『うなぁぁぁぁ…』
「あの寂しそうな鳴き声、千里ちゃんは愛を求めています!そうつまり先生を…」
「お願いします!先生ならきっと。」
「…」
彼女たちのクラスを受け持って2年余り、これほど頼られる事があっただろうか。
自分の内から燃え上がるような使命感が溢れてきた。
「わかりました、先生に任せなさい!」
ぬあーと雄たけびを上げ、気だるげに手ごろなビルにもたれかかる木津さんの足元へと駆け寄った。
それに気づいた彼女の双眸が私をとらえる、結構見慣れたものだがこのサイズの魚目は怖すぎる。
「木津さん!元に戻ってください、そんな風に無理にバストを大きくなんかしなくてもあなた…」
「せんせーい、言い忘れましたけど千里ちゃんちょっと理性失ってるみたいなんで気をつけてくださーい。」
「んな!?そういうことは早く言っにゃあぁー!」
「ああ、先生がさらわれた。」
「さすが総受け。」
ぬがしと大きな手に掴まれた私は高く高く、木津さんの顔と同じ高さまで持ち上げられた。
「いやぁー!」
「大丈夫ですよせんせーい、心なしか千里ちゃんの目が穏やかになりましたー。」
「え、本当で…か、片方だけ魚目で余計怖いんですがぁ!」
「その調子、その調子ですよー。」
「あきらめるなー。」
「勝手な事を!ていうかこの後どうすれば良いんですかー!?」
「やだなあ、キスに決まってるじゃないですか、愛の証の定番ですよ。」
「がんばれー。」
「ええい、やってやります!」
木津さんが、鼻先に持ち上げた私をまじまじと不思議そうに見ていた。
腕も足もその大きな指に塞がれ身動きが取れなかったが、首と体を伸ばして距離を縮めていく。
「失礼します…」
そして、ちゅっと鼻の頭に軽くキスをした。
『うな…』
すぅと彼女の瞳が穏やかなものになっていく。
「すごい、効いてる!」
「さすが私たちの先生です!」
『せん…せ…い?』
「千里が喋った!」
「木津さん…」
掴んだ手が離され、代わりに水をすくうような形にした両手のひらに乗せられた。
「素敵…」
「意外と良いかも…」
しばし見つめあう、そうしていると何故かありえないサイズの彼女に対し愛しさがこみ上げてきた。
もし…もしこのまま戻らないとしても私は…
「よし、これなら。」
「あ、千里ちゃんの様子が…」
『うっなっ♪』
「っいやぁぁー!?」
突如びりびりびりと服を引き裂かれた。
「大変、先生の貞操が!」
「さすが総受け。」
ひん剥いた私を木津さんは愛しそうに見つめ、その大きな口で私自身を、私全体を咥え込んだ。
「摂食交配だ。」
「食われてたまるかぁ!」
なんとか唇を割り、顔だけは出す事が出来た。
「先生大丈夫ですよー、それはただのディープキスですよー。」
「あ、愛が深すぎまふぅぅ…ひゃぁ!」
木津さんの口の中で、私以上に大きな舌がにゅるにゅると体全体に絡み付いてくる。
まさに全身を溶かすような愛撫に絶棒も大きく膨れ上がり、今にも爆発しそうだ。
「晴美ちゃん、これってえっちシーンなのかな?」
「ピーキー過ぎて私もわかんない…」
「ああ…き、もちいいけど…ありえないサイズの巨女に犯されるのは嫌だぁー!」
だが抵抗むなしく木津さんの口内に精を吐き出してしまう。
そして訪れた強烈な虚脱感にがくりと頭を垂れ、眼鏡が外れた。
ビル以上の高さから落下した眼鏡は、地面に激突し粉々に砕け散った。
「先生!先生!」
「…んん…木津さん?」
「ごめんなさい、ごめんなさい先生。」
「…良かった、元に戻れたんですね。」
涙を流す彼女をぎゅっと抱きしめた。
「愛の力ですねえ。」
「お疲れ様でした先生。」
藤吉さんが私の着替えを差し出した、取って来てくれたようだ。
服を失った自分にかけられた2つのコートは彼女たちの物だろう。
「よいしょっ…とと。」
ふらつく私を木津さんが支えてくれた。
申し訳なさそうにする彼女の肩に手を回し、言う。
「木津さん、送ってもらえませんか?」
辺りはすっかり暗くなっていた。その中を支えられてよたよたと歩く。
「今日はさすがに疲れましたよ。」
「ごめんなさい、私のせいで…」
「ふふ…ちょっとこっち向いてください。」
「はい。っん…」
「…まともなキスが出来ませんでしたからね。」
そう言って微笑みかけた。
冗談のつもりだったんですが、書いてるうちにこれもアリかなと…
良作ラッシュに電波を紛れ込ませてすいません。
>>266 千里の登場シーンが大日本人ぽくて良かった。いやどーでもいい話の本編か?
いずれにしてもGJ!
さすが総受けwwww
こういうのもアリww
神々の豊作・・・一時の勢いが戻ったみたいで嬉しい
このままアニメ2期まで突っ走れ!
良い勢いだなー。
規制で書けなかった人達はイロイロ溜まってたんだろう、きっと。
イロイロ溜まった僕の妄想を誰か具現化してください(>_<)
でも実はこの週末に投下してくれた職人さんたちは規制中も投下してくれていたという。
家のPCなんだけど「規制中」と打ったら「寄生虫」と出てきた。
いったいどんな文を打っていたのかうちのかーちゃん。
クリスマスなのに家にいるかわいそうな僕のためにクリスマスSSを誰か落としてはくれまいか
今日誕生日なんでどうか臼井×あびるを…
ここから臼井くんと
>>275を祝うスレになります。
誕生日おめでとう!
やだ、臼井君が見えてかわいそう。
昔の臼井は変態発言の時だけ気にされてたのに最近は逆だな
279 :
10-478:2007/12/25(火) 00:01:59 ID:lbvhk76T
やだ誰もいないのに声がする・・・
先日は取り乱してすみませんでした。どうかしてたんです。
何のことかよくわからないという人はスルーしてください。
クリスマスなのにずっと引きこもってました。
ということで投下します。
藤吉さんと先生です。エロなしです。キャラがだいぶぶれています。
280 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:02:56 ID:lbvhk76T
床に座り込んで読書というのは先生感心しません。」
頭上から声がして、読んでいた本をひょいと取り上げられた。見上げると渋い表情の担任の顔があった。
「あ、先生。」
「珍しいですね。あなたが読書なんて。漫画しか読まないものと思ってましたよ。」
「失礼ですね。私だって小説ぐらい読みますよ。ボー……ライトノベルですけど。」
−−−−BL小説ですけど−−−そう言おうとしたが慌てて口をつぐんで言い直した。その動作が望には挙動不審に見えたらしく、訝しむ様な目を向けていたが、すぐに興味は晴美から取り上げた本に移っていった。
「そんな藤吉さんはこんなところで何を熱心に読んでいたんですかと…へえ…夏目漱石の『こころ』ですか。」
表紙をしばし眺めてから望は晴美の前に本を差し出した。
「読むなら机で読んでくださいね。もうすぐ閉館ですけど。」
「あれ?ホントですか?」
晴美が窓の外を見ると日はすっかり落ち、窓に自分と望の姿がぼんやりと映るのが見えた。
「ホントだ。じゃあ帰ろうかな。…あの先生。」
「なんでしょう?」
「…いえ、何でもないです。また明日。」
「?…ええ、また明日。」
軽くお辞儀をしてそう言うと晴美は本を棚に戻し、出口の方へ消えていった。
281 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:03:29 ID:UNvFPeAL
次の日望はまた図書室に向かっていた。というよりは彼にとってこれは日課になっている。夕日に染められた廊下を渡り図書室に入ると、見慣れた姿を見つけた。
逆光でよく見えないが、望のクラスの生徒だった。
「今日はちゃんと机で読んでいますね。」
「あ、先生。今日も来てるんですか?」
「それはこっちのセリフです。私はこれが日課ですから。持っていた本が全て燃えてしまったので…」
「ああ…そんなことありましたね…」
そういい終えた後、望は天を仰ぎまぶたを閉じた。
望の脳裏に苦い記憶が浮かんでくる。四方に広がり、燃え盛る炎が次々に彼の蔵書に燃え移っていく…その先の記憶は曖昧でよく思い出せない。いや、思い出したくないだけかもしれない。
次に頭に浮かんでくるのは消し炭の様に焼け落ちた自宅。望の手元には負債と『人間失格』だけが残った。不幸な人生を送って来たと自負する彼にとっても、最も不幸な出来事の一つだった。
「嫌な事を思い出した…死にたくなってきました…」
すっかり青ざめた表情になった望はそう呟くと、袖口からロープを取り出した。
「そんなところにロープを!?」
「備えあれば憂いなしですよ藤吉さん。」
「そんなことに備えても…まぁまぁ、先生。いいじゃないですか。別に本が読めなくなったわけじゃないんですから。」
晴美が呆れように望を諭す。彼女から言わせれば『まーた始まった。』なのだろう。証拠に彼女は椅子から少しも腰を浮かせていない。全くの平静を保っている。
282 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:04:14 ID:UNvFPeAL
一方で望は周りがちっとも騒いでくれていない事に気付いた。どうやら望のかわいそぶりは学校中に広まって、最早相手をしてくれる生徒はいないようだ。
今から首を括ろうというのに。望は憤慨した。
「少しぐらい心配してくれたっていいじゃないですか…!絶望した!他人への関心が薄い現代社会に絶望した!!」
望は図書室の中心で絶望を叫んだ。しかし返ってくるのは沈黙と、時々冷たい眼差し。その視線も一瞬で途切れ、皆何事もなかったかの様に思い思いの事をし始める。
こうなると普段は心地いい図書室の静けさが身に刺さる様に痛い。望は居心地悪そうに周りをきょろきょろ見渡している。
「先生。私は少しは心配してましたよ?」
「少し、ですか…まぁ、別にいいですけど…最近の若い人は冷たいですね。」
「先生、なんだかおじさんみたいな事言ってますよ。」
「私はまだ20代ですから!って10代のあなたに言っても空しいだけですね…」
望は引っ込みがつかずに閉口していたが、それを見かねた晴美のフォローで仕方なく、といった感じを演出しながらロープをしまった。
283 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:04:49 ID:UNvFPeAL
すみませんね。」
望は小さく感謝の言葉を呟いた。
「ん〜?」
「いえ、何でもありませんよ。それより今日も『こころ』ですか?」
「そうですね。今日もです。意外と面白いですよ。おいしい要素も多いですしね。」
「はぁ…?おいしい要素?」
「聞きたいですか?例えば、先生と『私』とか、先生とKとか…」
「いや!もういいです!何となく流れがわかりましたから!文学作品にまで食指が伸びるなんて…!絶望した!!」
晴美の目が異様な輝きを帯び出したから嫌な予感はしていたが、まさかその通りだとは…望は軽い目眩を覚え、頭を抱えた。望は絞り出す様に晴美へ頭にある嫌な疑惑を投げかけた。
「初めからこういう事が目的だったのですか…?」
「さっきのは冗談ですよ!そんなに本気でショック受けないでください!…ちょっと考えたりはしましたけど。」
「そうですか…でも考えたりはしたんですね。はぁ……人の趣味にとやかく言うつもりはありませんけど。そうすると何で読む気になったのですか?」
「えと…それはですね〜あの…」
そこまで言うと晴美は言葉を濁してしまった。言いにくい事なのだろうか。望には内容を推し量る事が出来なかった。
「言いにくいなら言わなくても結構ですよ。」
「え…いや、私としては聞いてもらいたいんですけど…いいですか?」
「私に迷惑のかからない範囲でならどうぞ。」
「これから相談しようっていうのに何でそういう事言うかな…。もう…とりあえずここを出ましょう。いいですか?」
晴美は苦笑いを浮かべながら尋ねた。望は同意して教室の外を出る事にした。
284 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:06:03 ID:UNvFPeAL
暖房のかかっている教室と廊下の冷え込み具合の差に望は思わず身震いした。外は闇の帳が降り、静寂が校庭を包んでいる。冬は増々深まるばかりだ。
「うぅ寒っ!」
晴美も同じ様に身震いをして身体をさすっている。
「歩きながらでもいいでしょうか?」
「そうですね。その方が寒くなさそうです。」
二人はしばらく黙ったまま歩いていた。歩幅の異なる足音が静かな廊下に響く。晴美の顔には緊張の色が見え、望は思い詰めている感じを受けた。望にもそれが移ったのか何故か望も緊張を感じた。やがて望が緊迫した空気を払拭するために話を切り出した。
「それで相談というのは?」
「あ、そうでしたね…」
晴美は悩んでいる様に首を左右に傾げていたが、すぐに決心した様に一回ゆっくりと頷いた。
「…先生は私が漫画好きなのを知ってますよね?」
「それはもちろん存じています。授業中に読むくらいですからね。」
「う…やっぱバレてました?」
「隠す気がまったくないじゃないですか。机の上でこれ見よがしに広げているんですから。実際高校の授業なんてそんなものです。国語なんて特にそうですよ。大半が私の話を聞いてません。」
すこし寂しげに話す担任の姿に晴美は罪悪感を少なからず感じた。
「なんかすいません…」
「いいですよ、別に。困るのはあなた達ですから。それで?」
「えっとそれで、私もう高2じゃないですか?」
「二留してますけどね。」
「…先生。その設定は自分の首を絞めますよ……とにかく、そろそろ将来というものについて考えなきゃ行けないな〜と思ったわけですよ。」
「ほお、それはいい心がけですね。」
「それで…ええと、あくまで選択肢の一つに過ぎないんですけど…」
285 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:06:26 ID:UNvFPeAL
晴美は再び逡巡した。まともに取り合ってもらえるか?それが胸中にあった。その不安は決して取り除けるものではなかったが、熱意、覚悟がそれを上まわった。晴美は深く息を吸い込むとまくしたてる様に言葉を吐き出した。
「わ、私は漫画描きになりたいんです!そうです!ずっと前、子供の頃からぼんやりと頭にはあって、最近、将来の事考えてみたら他の仕事してる自分なんて想像できないし、多分ずっと独り身だし、いえ、殿方には毎日求愛されているんですけどね?
それでOLだと世間の目がうるさいですし、何より年取ってずっとOLっていうのも…局っていうんですか?…って話ずれましたね。
それで行動に移してみようと思って、とりあえず書いてみた話を出版社に、結構無理矢理に持っていったんですけど…」
堰を切った様に話していた晴美が突然動きを止めた。俯いた顔は紅潮しているのがわかるが表情は読めない。その勢いに圧倒され、思わず仰け反っていた望がおそるおそる続きを尋ねる。
「…いったんですけど…?」
「…まな………な…い……し」
晴美の反応は鈍く静かにポツポツと呟くばかりだった。しかし望にはそれが嵐の前の静けさの様に不気味に感じられた。そして嵐は訪れた。
286 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:06:56 ID:UNvFPeAL
「やまなし、おちなし、いみなし…やおい漫画とかいうなぁあ!!そういうつもりで描いたんじゃない!真面目にやったのよぉ!?」
「ヒィッ!?ふ、藤吉さん落ち着いて!?話、話聞きますから!!」
「ハッ?あ…すみませんちょっと思い出してしまって。」
…すぐに落ち着いてくれてよかった。望は心から思った。今の晴美は暴走した千里に匹敵するぐらい鬼気迫る形相をしていたからだ。それも予想だにしない人物のため余計に心臓に悪い。
「いやぁ、それにしても結構真面目に考えてるんですね…でもこういう悩み事は知恵先生に相談した方がいいのではないでしょうか…?」
望にはどう転んでもこの後面倒な事になるとしか思えなかった。
ただ、教え子がジャンルは違うといえども、かつて自分が目指していた物書きを志望しているという事に興味を覚えた。
「いえ、先生に言ったらなんだか迷いは無くなりました。口に出すと変わりますね。」
「だからって私に言ってもしょうがないでしょう?」
「何言ってるんですか!先生は担任だし、小説だって書いていたんでしょう?ほら、あの石ころってやつ…」
「え…?なんでそれを?」
「なんでって風浦さんがクラスの皆に配ってましたよ。ひょっとして知らないんですか?」
「そんなの初耳ですよ!あぁ…また人生に恥がふえた…!」
うなだれる望に晴美が耳元で囁く
「結構評判いいですよ?」
「そう…ですかね?」
「ホントですよ?だから先生に指南してもらおうと思って。今まで妄想だけで漫画を描いていたからやっぱそれだけじゃダメですよね〜。そこで!文学青年の先生にお願いしたいんですけど…」
「う…しかし………まぁ、あまり期待しないでくださいね?」
「じゃあいいんですね!?ありがと先生!」
その言葉を聞いた晴美はパァっと目を輝かせて微笑んだ。その顔を見た望は何故だか気恥ずかしくなって目を背けてしまった。
「いいですか!?期待しないでくださいよ?期待しないでください!私に教えられる事なんて一握りしかありませんから!」
「またまた〜謙遜しちゃって!」
晴美は嬉しくて仕方ないといった感じで浮かれている。その様子を見ると望はその期待に満ちた眼差しに胃が痛む様な、またくすぐったい感覚を感じた。
「じゃあ先生。明日も図書室来ますよね?今日は遅いので明日また図書室で!」
そういうと晴美は答えも聞かずにそのまま俊足を生かしあっという間に廊下の曲がり角へ消えていった。駆ける足音だけが残響の様に響いている。
「行ってしまいました…返事も聞かないで。随分浮かれてましたねぇ。藁をもすがるというのはこういう事ですかね。…悪い気はしませんけど。どうですかね…」
その言葉とは対照に望の表情は喜色を帯びていた。
287 :
また図書室で:2007/12/25(火) 00:12:25 ID:UNvFPeAL
なんかクリスマス関係なくてすみません!
なんかニヤニヤできないようなSSですみません!
気が向いたら続きを書くと思います。
275さんおめでとう。
絶望した!誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを一緒にされてきたであろう275に絶望した!!
_______
:/ ̄| : : ./ / # ;,; ヽ
:. | ::| /⌒ ;;# ,;.;::⌒ : ::::\ :
| ::|: / -==、 ' ( ●) ..:::::|
>>275の誕生日を祝うために
,― \ | ::::::⌒(__人__)⌒ :::::.::::| : クリスマス始末してきたぜ・・・
| ___) ::|: ! #;;:.. l/ニニ| .::::::/ みんな安心してお祝いしろよ・・・・・
| ___) ::| ヽ.;;;//;;.;`ー‐'ォ ..;;#:::/
| ___) ::| .>;;;;::.. ..;,.;-\
ヽ__)_/ : / \ ハァハァ....
>>287 ちょっと前から藤吉SS読みたいと思ってたので感動した!
存分にニヤニヤした。
次作も期待してまってる(*´Д`)//ア//ア
>>287 藤吉さんと先生ですって?
インドア組が部屋でゴロゴロしながらちょいちょい触れ合ってゆっくり燃え上がるですって?
続き期待させてもらいます。
この時間なのに普通にIEで開けたら人大杉でびびった
慌てて専ブラに変更したけど学生さんの方が多いのかね
それにしてもこのスレって藤吉さん好きが多いのね
いや自分も好きだけど
先生とフラグ立ってないからここでメインヒロインとして書かれるのが少ないのが残念だ
スペック高すぎて先生落ちるからきっと最後まで立たないけどね
292 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 16:03:31 ID:2EwfuZyR
エロパロ板空爆につき保守
浮上
294 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 19:45:48 ID:FysUw1z9
浮上
保守
296 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/26(水) 21:30:09 ID:FysUw1z9
浮上
先生×カフカの続きマダ〜(>_<)
298 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/27(木) 00:45:32 ID:lgs4OxT7
倫ちゃんは確実にお兄ちゃんっ子
クリスマスムードも抜けて因幡の白兎編はまだ書いてる途中なので絶望日本書紀の小ネタを投下します
天岩戸やヤマタノオロチに比べるとかなりマイナーな原典を元にしてるうえことのんがまた出ますので御了承下さい
(白兎編はキャラ被りなしで投下します)
スサノオが出雲で目覚ましい活躍した一方、
高天原では長く顔にもかかる黒髪に太陽の形をした冠を被った彼の姉アマテラスと、
夜の神なため生活が不規則になり頭皮が満月の様にハゲてきた兄ツクヨミが何やら話合っていました。
「僕はどうしてこうも影が薄いんだろ・・」
「可哀相にツクヨミ・・
でも声はするけど何処?」
「僕はここ!目の前にいるじゃないかあ―――ッ!!!!!!」
ツクヨミの悲しい絶叫に一柱の太っちょのいかにも保食神といった女神ウケモチが気付いて話し掛けてきました。
「あらやだ、アマテラス様とツクヨミ様じゃない、これはおもてなししなくちゃ♪」
するとなんという事でしょうかウケヒモチは口から飯を出し、海を向くと魚、山を向くと獣を吐き出しました、
これにはツクヨミも驚きを隠せません。
「どうぞめしあがれ。」
「何言ってんだブス!!そんな物食える訳ないだろ!!」
「ネットアイドルの好意を無視するなんてファンが黙ってないよ!!」
「知るか!このブス!!」
少ない髪を振り乱し怒るツクヨミは剣を抜きウケヒモチに振り降ろしました。
「プギャー!!」
すると息絶えたウケモチの体から穀物が生まれました、
しかしアマテラスは震え怯えながらツクヨミに言いました。
「ひどいよ!何も斬る事ないじゃない!!」
「だって口から食べ物吐き出されて驚いてつい・・・・・」
ツクヨミはなんとか言い訳しようとしますが目の前でウケモチを斬られて動揺するアマテラスに通じる訳がなく
彼女は逃げ出しました。
「いや〜!!ツクヨミ近寄らないでよ!!!!!!」
「待って〜姉さ〜ん!!!そして僕はどうしてこんな時だけ存在感出るんだーーーッ!?」
――この日以来、太陽は1日の半分を引きこもる様になり、
月と顔をあわせる事はなくなったとさ。
毎回楽しみにしています!速く俺の愛ちゃんの神々しい姿を見たい…
もしかして今俺たちが食べてる穀物やら魚はウケモチによって
生まれたのか?なんかいやだな…
>>246の続き
一応今回の投下で完結ですよ
「あ、あっ……うぁあん」
口内で硬さを増した突起を強く吸い上げ、舌先で突付き、押し潰すように舐めまわす。
その度にほっそりとした体が悶え、甘い鳴き声が上がる。
理性をじりじりと侵食されるような妄想を抱きながら
望はそっと片手を下半身へと伸ばした。
「あっ……先生っ……」
下着越しに軽く撫で上げると、可符香の体が跳ね上がった。
そこは布越しでも分かるほど潤っていて、望の腰から背中にかけてを
ぞくぞくと期待が這い上がる。
早く、早く、ここに挿れたい――。
一瞬陥落しそうになった理性を必死に励ましながら、ことさらゆっくり下着を脱がせると
一糸まとわぬ姿になった可符香にそっと口付ける。
「……綺麗ですね」
「……何だか、その言葉も月並じゃないですか?」
息を荒げながらもこちらをからかってくる少女の鎖骨近くに唇を落とし、吸い上げると
心地よさそうなくすぐったそうな声。うっすら赤く残った痕を指でなぞりながら
ふと、花びらのようだと思った。
ひらひらと踊るように舞い散っていた、桃色ガブリエルの花びら。
自分と彼女を巡りあわせたと言っても過言ではない桜。
その花びらが、今は彼女の体に散っている。
304 :
望×可:2007/12/27(木) 05:36:47 ID:NZnt6Q/a
「風浦さん」
「はい?」
唐突に名前を呼ばれて、きょとんと返事をする可符香。
その下肢へ再び望の手が伸びる。
「風浦さん」
「ふあぁっ、あ、あぁっ」
ゆっくりと入り口をなぞるように指を動かし
快楽に仰け反る白い首筋に噛み付くように口付ける。
「風浦、さん」
「あああ――っ」
一枚増えた真っ赤な花びらをちろりと舌で舐めながら
指を可符香の中へと潜り込ませると、艶やかな悲鳴が上がった。
歓喜の蜜を零して望の指を受け入れるそこをかき回すようにしながら
無我夢中といった様子ですがりついてくる体をきつく抱き締める。
「はぁっ、先生っ、もう、おかしくなっちゃ――あああぁっ」
――おかしくなっているのは、私の方です。
「――風浦、さん」
「ぅあ、あ、あああぁぁ――っ!」
一際甘く甲高い鳴き声と共に可符香の体が一瞬電流でも流れたように
大きく震え、ぐったりと脱力した。
目を閉じて荒い呼吸を繰り返す少女の顔に張り付いた髪を
優しく手で払ってやると、望は可符香から体を離し
普段ならありえない乱雑さで自分の衣服を脱ぎ捨てていく。
シャツのボタンを一つ一つ外すのももどかしく
そこまで焦っている自分に我ながら呆れてしまう。
だが、もう待てなかった。
待ちたくなかった。
「せん、せい」
全ての衣服を脱いだ望に、可符香が未だ絶頂の余韻が残った
潤んだ目を微かに開いて呼びかけてくる。
「……何です?」
再びその体に覆いかぶさりながら尋ねると、可符香はにっこりと微笑みながら言った。
「大好きです」
『好き――かも、知れません』
「ええ……私も、貴女が好きですよ、風浦さん」
その想いに応えるように、深く深く口付ける。
今まで必死に熱を押さえ込んでいた理性が、ぷつりと切れる音を聞いたような気がした。
305 :
望×可:2007/12/27(木) 05:41:23 ID:bb0b9P9j
***********************************
「糸色先生」
背後からかかったご機嫌な声に、職員室の机で事務仕事をしていた望は
ぎくりと一瞬体を硬直させた。
「あ、は、はい、何でしょう」
おたおたしながら椅子ごと振り向けば、そこには相変わらずの
ポジティブ少女がにこにこしながら立っている。
「これ、昨日提出し忘れたノートです。一日遅れましたけど大丈夫ですよね」
そう言いながらノートを差し出す可符香。慌てて手を伸ばしてそれを受け取る。
「え、ええそうですね。課題がきちんとできていて
普段の授業内容もそれなりに書かれていれば、まぁ……」
答えながらも望は思いっきり視線を外して可符香と目を合わせようとしない。
理由は1つ。
可符香の首筋にぺたりとこれ見よがしに貼られた絆創膏である。
事が終わり、冷静さを取り戻してから考えてみれば
どう制服を着こなそうと表からばっちり見える場所に
桜の、なんて可愛いものではないほど鮮やかに紅く色づいた花びら。
翌日、絆創膏が気になったらしい2のへの友人たちに「虫に刺されちゃった」と
笑顔で説明している可符香を見て、衝動的にその場で首を吊ろうとして
騒ぎを起こしてしまったものの、望と絆創膏を結びつけて考える者は
いなかったらしく、今のところ平和である。望の心情以外は。
鎖骨の方はともかく、首筋の方は結構きつく吸ってたと思うんですよね……多分。
当分消えませんよねぇ……かなりくっきり残ったはずですし。
何をやってるんですか我ながら。途中から完全に暴走してましたよね、多分って
つくぐらいですからもうその辺から既にうろ覚えですもんね。
いくら興奮したとは言え、もうちょっとこう、やりようってもんが……。
「先生、何やってるんですか」
「い、いえいえいえいえいえ!何でもございません!」
いつの間にか抱えていた頭から手を離し、慌てて顔を上げれば――
にっこり笑顔の可符香とばっちり目が合う。
306 :
望×可:2007/12/27(木) 05:47:04 ID:HWWNWXKc
「あ――」
思わず赤くなってしまう頬を隠すように顔を背ければ
くすくすと笑い声が聞こえてくる。
「ひょっとして先生、激しくし過ぎたとか反省してるんですか?」
「ぶっ!」
小声で悪戯っぽく囁かれた言葉に噴出して慌てて周囲を見回すが
幸い自分達の近くには誰もいないし、少し離れたところにいる教師達も
こちらの会話に気を配っている様子は無い。
「ふ、風浦さん、こういうところでその話題は……」
「嫌だなぁ」
望の声を遮るようにして、身軽に距離を詰めてくる少女。
「風浦さん、だなんて、他人行儀じゃないですかぁ」
後ずさろうにも、こちらは椅子に座ったままの身。何もできないまま可符香が近付いて、
「可符香、って呼んでくれていいんですよ、先生」
耳元で小悪魔の囁きが聞こえる。
真っ赤になったまま固まってしまった望から素早く離れると、可符香はいつも通りの調子で
「それじゃ、ノートの採点よろしくお願いします、失礼しました」
と言ってぱたぱたと軽い足音を響かせながら職員室から出て行ってしまった。
為すすべも無くそれを見送って、はあぁ〜と深い深いため息をついて、
机の上にごん、と音を立てて頭を乗せる。
――可符香、だなんて、
「呼べるわけ、ないでしょうが……」
仮にも自分は教師で、彼女は高校生で、しかも自分の教え子なのに。
木村さん、藤吉さん、木津さん、久藤君、常月さん、音無さん、加賀さん、可符香。
うん、浮く。どう頑張っても浮く。浮きすぎる。無理に決まっている。
嗚呼、それだというのに。
可符香、可符香、可符香、可符香、可符香。
頭の中から貴女の名前が離れなくて、今すぐ声に出して
貴女の名前を呼びたいと思うのは、どうしたものでしょう?
「絶望した……どう頑張っても私に勝ち目のない勝負に絶望した……」
お決まりの台詞を呟きながら、何故か幸せそうな笑顔が
浮かんでいることに望が気付くのは、まだまだ当分先の話。
絶望した!エロくなると別人になる糸 色望に絶望した!!
アニメOPでまといと縄プレイとかしてたのはどこの誰なんだぜ。
というわけで何とか完結です。
携帯からの投下で改行とかかなり変な感じになってて申し訳ない。
あとこんだけひっぱって本番は結局ぼかして本当にごめんなさい。
自分はやっぱりアホっぽい小ネタ書いてる方が気楽だわw
期待しててくれた人たちありがとうございました、ごめんなさい。
ではノシ
>>307 言葉にならん興奮やらアレやらソレやらが襲ってきて困った。
求めていたモノ以上のモノと遭遇してしまった気分だ…ゴッジョブ。
小ネタにも笑わせてもらってますが、また気が向いたら地の分ありのブツを
投下して下され。狂喜乱舞するから。全裸で。
>>307 わぁぁぁあ!!今日からPC触れないから、今年最後に、と思って覗いたら、
望×可の続き来てたーーー!!!なんという幸運!
ううう、良すぎてGJ以外の言葉が出てこない…っ!
この先生と可符香、大好きです…!
小ネタも好きですが、地の文ありもすごい好き…来年も投下よろしくです〜。
理性が飛んじゃう先生、最高です
ただただGJとしか言えない自分に絶望した
山田優みたくない加賀さんと沖縄行きたいです
振り回されてこその可符香×先生だと再認識
小ネタもいいけど地の文つきのもまたやって頂きたい
先生を翻弄する可符香がいい!
翻弄されるしかない事を悟っている先生がいい!
・・・そして、そんな自分に幸せを感じてしまう先生にニヤリとしてしまったw
なんか、ありがとうって言いたい気分w GJ!
えっと、始めまして。
投下はおろか、2ch(であってますでしょうか)への書き込みも初めてなのですが、そんな私が一本、長めのを投下させていただいてもいいでしょうか。
許可をいただけるのであれば、なにか投下に際した注意点などを教えていただければ、ありがたいのですが、よろしいでしょうか。
とりあえず改行をしてくれ。このままじゃ読みにくい
sage入れてるところ自分である程度はできる人間じゃないのか?
それなら大丈夫だと思うぜ
適度なところで改行。連投規制があるから30秒くらいは間隔あける。
自分で読み返して句読点の位置と改行の位置だけ確認すればおk
適当に上の方のSSに習えばいいんじゃないかな
>315
期待。自分もこの間初めて投下した。
失敗しても大丈夫だと思うのでがんばれ。
なんか、肯定のほうが多い感じ……。ありがたい事です、どうもありがとうございます。
現在、改行か。と、無駄にダメ暗号化された書き溜めた量を見て思っております。
なので、投下は明日以降になると思うのですが、どうぞ、ご容赦ください。
どうでもいいですが、元ネタwikiが復活してますね。設定拾うのに楽だから、ありがたい事です。
>>322 ということは長編と言うことか
これはwktkがとまらないんだぜ
いちいち背中押してやらないと投下できない奴もどうかと思うぞ。
一回ぐらいはお約束で、「どうぞ」とか書いてやってもいいが、何スレも使うなよ。
>>324 何スレも使う挨拶はもはや個人スレ化だよな、困るぜ。
2chに初めて書き込む前に半年ROMってたのなら大丈夫だろ
「あのー、風浦さん?」
「どうしたんですか先生、今回は小ネタですから気楽に構えていいんですよ?」
「いやそんなこと言われましても。
とりあえずどうして私は縛られて転がされてるんだか説明してください」
「地の文がないので台詞による分かりやすい状況説明、ありがとうございます」
「どういたしまして。それはそうと説明してください」
「嫌だなぁ、簡単なことじゃないですか。先生、来年からアニメ2期が始まるんですよ。
それに備えて1期を頭から見直すのは当然じゃないですか」
「……それで、OPに影響されてこうなったわけですか」
「展開として軸がぶれていませんね」
「ぶれまくりです!むしろぶれまくって震えてます!!
大体OPに影響されるなら縛られるのは貴女の方でしょーが!!」
「進行の方向性ですよ。『最初はああしてるはずだったんだけど、気がついたらこうしてた』
っていうことは世の中にはいっぱいあるじゃないですか」
・テスト勉強してたはずがいつの間にか部屋の掃除
・デートしてたはずがいつの間にか壷を購入
・学園格闘漫画だったはずがいつの間にか異世界ファンタジーバトル漫画
・サラリーマンしてたはずがいつの間にか公園で1人ブランコ
・まともな恋愛SS書いてたはずがいつの間にか小ネタ書き
「大抵ろくでもない方向に進んでますよねこれ」
「それに、私が縛られたところでそれ以上お話が進みそうにないじゃないですかぁ。
先生が大騒ぎしながら縄をほどいてお終いですよね?」
「……それは確かにそうだと思いますが」
「それこそOPみたいにプレイに移行するんでしたら、それで立派にSSになりますけど」
「あれは原作でいうカバーの折り返し部分ですから!
シャフトさんのプロとしての遊び心ですから!」
「ですよね、なので、やっぱり先生には縛られてもらうのが妥当だと思います」
「何が『なので』で『やっぱり』で『妥当』なんですか!
もう経緯は分かりましたからとにかくこの縄を解いて下さい!」
「嫌だなぁ、まだ経緯が分かっただけじゃないですか。これからが本番ですよ」
「は?」
「せっかく縛ったんですからこれはこれで楽しまないともったいないですよ。
SSで先生が頑張って下さった分、小ネタでは私が頑張りますから」
「頑張りが間違った方向に向いてますー!!
絶望した!恋人にすら逆レイプされる小ネタの定番オチに絶望した!!」
「嫌だなぁ、逆レイプなんてあるわけないじゃないですか。
これは愛ゆえの奉仕活動の一種ですよ」
SSを書いてる最中に先生の攻め分を補給しようとしてアニメOPを見ていたらこうなった。
勢いだけで書いた。今では反省している。
とりあえず糸 色望に一瞬でも攻め属性を持たせたシャフトは偉大。
アニメ2期がんばれ。超がんばれ。
確かに四の五の言うよりも先に、さっさと形にして投下してしまったほうが
早かったですね。申し訳ありません。
というわけで、一通り出来たので投下させていただきます。
まとい中心、エロ無しです。あと、あんまり長編でなくてすいません。
329 :
399MHz:2007/12/28(金) 21:55:29 ID:QAmkFaF0
私、ダメなんです。
恋をすると、相手の事が一日中気になって。
だんだん冷気が忍び寄ってくる。
授業の用意をして教室に向かう廊下も肌寒く、燦々と日が照っている今日のような日は、
なるべく日向にいたい季節になってきた。
始業前特有のざわめきの中には、ちらほらとマスクも見受けられる。
そろそろ、風邪も流行ってくる時期だ。誰かが閉め損ねたのだろう、
僅かに開いた窓から入ってくる隙間風に乗って、はらりと一枚、紅葉が廊下に舞い込んできた。
「もうそんな時期ですか」
糸色望は紅葉を拾い上げ、その茎を持ってくるくると遊ぶと、何とはなしに呟いた。
閉め忘れた窓を改めて開けると紅葉を外に放し、校庭の木々を眺める。
秋がだんだんと夏に取って代わろうとしているように、葉の色もまたその季節用に変わろうとしていた。
「秋深き、隣は何をする人ぞ」
窓に手を付いたまま外を見ていた望の耳に、俳聖の句が聞こえてきた。
同時に望の開けた窓とは別に、もう一枚窓が開く音がして、足元をひやりと冷えた空気が流れていった。
「先生は、何をしていらっしゃいますか?」
「……それ、死の床に臥す直前に読んだ句だって言われてるの、ご存知ですか?」
「はい。秋が深まって町の隅にいると、隣人は物音一つたてずひっそりと暮らしている。って句ですよね」
「っていうか、やっぱりいたんですね」
「いますよ、ずっと」
望の隣、枠を一枚隔てて開いた窓の前に、やはり望と同じように外を眺める格好で常月まといが立っていた。
すらすらと答えたまといに密かに感心しつつ、物静かに、というのは、
いつの間にか背後にいる貴女にいかにも相応しいですね。という言葉は飲み込んでおく。
それが余計な一言とも思わないが、背後にいながら饒舌に喋る彼女も見たくない。
330 :
399MHz:2007/12/28(金) 21:56:23 ID:QAmkFaF0
「秋ですねぇ」
代わりに、と言うわけでもないが、再び窓の外に向き直ると、望はとりあえず呟いた。
「はい、秋ですね。っていうか、先生?」
「はい?」
湿気が下がり、肌に絡みつくような熱気も抜けた心地よい風が、まといの言葉につられたかのように
窓から一陣、吹き込んでくる。
望が返事をすると、まといはいつもと変わらぬ様子で、何の遠慮も無く真っ直ぐ望を見つめてきた。
歩幅にして六歩分。
その距離に、何となく違和感を覚える。
いつもは二歩後ろにいるのに。
隣の窓を開けたため、と考える事もできたが、まといの性格ならば望と同じ窓から外を見るだろう。
常より開いたその距離に違和感を覚えると同時、まといの眼差しが急に弱々しくなった気がした。
「もうホームルーム、始まりますよ」
そのまといの一言に望はふっ、と我に返ると、反射的に手近な教室を覗き込み中の時計を確認した。
しかし、ほぼそれと同時に、一日の始まりを知らせる鐘の音が校舎全体に響き渡った。
「わわっ!」
その音に窓を急いで閉めると、望は急ぎ2のへ組に向かって駆け出した。
徐々に教室に入り始める生徒達の間を縫いながら後ろを振り返ると、
いつもと変わらぬ調子でまといが黙ってついてくる。
その姿に、先ほどふと気にかかったまといの様子は、まだ実感できるほどではないが
弱り始めた日差しのせいかなにだろう、と何となく納得する。
弱々しいまといなど想像も付かない。望は教室への道を更に急いだ。
そんな望の後ろで、いつもより四歩離れて後を追うまといは、彼の耳に届かないように気をつけながら、
一つだけ小さく小さく咳をした。
331 :
399MHz:2007/12/28(金) 21:57:47 ID:QAmkFaF0
結局、始業から三分ほど遅れて望が教室に入った以外、何の滞りも無く一日が始まった。
そういった時間に神経質な木津千里でさえ遅刻をいつもの事と割り切ってしまったのか、
何を気にした様子すら無かった事が、少々望の教師としてのプライドを傷付け、
思わず教卓の脇のロープに彼の手が伸びたとか伸びなかったとかは、また別の話。
幸い、軽いプリントの配布や、大草麻菜実と久藤准、木野国也からの読書強化週間のお知らせ、
季節の変わり目だから風邪に気を付けてとかの軽い用事以外の事は無かったので、授業は遅れることなく始められた。
気候の割りに暖かい日差しが、外から差し込んでくる。
窓が締め切られているおかげで対流の無い教室内の空気は次第に暖かくなっていき、
程よく過ごしやすい温度になってきた。
望が教科書を片手に、黒板の前を行き来する。
その内容の大半を生徒に箇所を指定して読ませるものの、時折挟む望のムダにいい声は
生徒の睡眠導入に一役買っている気はあった。
そんないつも通りの、とはいえ他の教師に対する緊張感とはまた別の種の緊張感を孕んだ授業。
つまりまたいつ何時、望が無茶苦茶を言い出すのか、と警戒する空気の中で、
しかし珍しくまともに授業は進んでいった。
「……であった。あの夜のことを、今思い出しても、変にだるい」
「はい。日塔さん、そこまでで結構です」
ポツリポツリと沈没し始めた生徒達の中で、少々くぐもった日塔奈美の声が流れる。
朝、望が散見した生徒達と同じように、しかしこのへ組では唯一マスクを付けた奈美は、朗読を終えると席に座った。
332 :
399MHz:2007/12/28(金) 21:58:43 ID:QAmkFaF0
「ご苦労様です。それはそうと、風邪ですか?」
「そうなんです。急に温度が下がったから、油断しちゃって」
マスクの下でわずかに鼻をすすりながら、奈美は少し肩を落とした。
マスクの通気性と相まって若干息苦しいのか、あまり調子は良くなさそうではある。
「毎年言われているような気もしますが、今年の風邪は特に感染力が強くて性質が悪いらしいですからね。
気をつけてくださいね」
「主に先生に感染させない方向に、ですか?」
小首を傾げながら、奈美が訊ねてくる。思わぬ返答に、望の肩が少しコケた。
「きちんと気をつけて治してください、ですよ。どんな疑い方してんですか」
「いえ。先生が素直に心配するのが、ちょっと気味悪くて」
「……貴女がどんなイメージでもって私を見ているのか、今、はっきりと覚えましたからね」
墓まで持って行ってやる。と、望は懐から取り出したノートにその旨を書き取る。
そんな望の様子に、珍しくしてやったり、と目元を歪める奈美を横目に捉えると、
望は思い出したように彼女に向き直った。
「な、なんですか」
今までとっていた行動が行動だけに、望の動きに警戒を抱いたのか、奈美が思わず身構える。
「しかし、日塔さんらしくありませんね」
「何がですか」
馬鹿は風邪をひかない、とでも言いたいのか、といった思惑を含ませ望を睨んで、奈美が言う。
流石にそこまでの失礼はしませんよ、との視線が伝わったのかどうかはわからないが、
とりあえず望は書き終えたノートを閉じて懐にしまった。
「感染力が強い風邪なのだし、誰かが発病した後にそれを移されるのが日塔さんのパターンじゃないのか、
と思ったのですが」
333 :
399MHz:2007/12/28(金) 21:59:37 ID:QAmkFaF0
「遠回しに、普通って言ったな!?」
ガタンッ、と奈美は勢いよく椅子から立ち上がり、机に両手を突いて望に食って掛かる。
が、そんな奈美の勢いに反して、望は掌を奈美に向けて落ち着く事を促すようにひらひらと振ると、
しれっとした様子で言葉を次いだ。
「いえ。ですから、クラスで一番先に風邪の被害にあっているので、普通ではないですね。と言っているんです。
普通、と言った覚えはありませんよ」
「あ、れ。え、ホントだ……? ん、普通って言って……あれ?」
望の言葉に勢いを殺がれ、奈美は立ったままくるくると首を傾げだした。
その様子に望は機嫌を直したように頷き、指を口元に当てて意地の悪い形にニヤリと口角を上げた。
「先生。奈美ちゃんいじめてないで、授業を続けてください」
流石にそんなやり取りに呆れたように、千里が手を上げて言う。
「ううぅ。何かやっぱり釈然としないなぁ……」
「奈美ちゃんも、先生にいちいち噛み付いたって、時間と体力と酸素の浪費だから」
その傍らでブツブツと呟く奈美に、軽くフォローも入れつつきちんと座るように促すと、
千里は授業を再開するように言った。
「すみませんね。性分でしょうか、負けっぱなしが悔しいもので」
奈美は未だに納得できかねる表情ではあるものの、それ以外の生徒達は、いつもの事、と至極落ち着いた様子である。
依然として恨めしそうに望を睨む奈美、そしてちらほらと沈んでいる数名の生徒以外は、
皆、各々の机の上に置いた教科書に視線を落としている。
そんな教室内を見渡しつつ望は教卓に戻ると、次に誰を当てようか、と軽く視線を巡らせた。
「それじゃあ、日塔さんが読んだ続きから、えっと、誰にしましょ……常月さん?」
突然、望は少々頓狂な声を上げると、教卓の下を覗き込むように身を屈めた。
まといが授業中に潜んでいる場所やその他諸々の理由から、望が彼女を授業中の受け答えに指名する機会は少ない。
少ないどころか、今までほとんどそんな事は無かった。
一体、どんな心境の変化か。その疑問がへ組の面々に伝播したように、彼らの視線は一様に教卓に注がれた。
だが、その疑問の焦点である教師は、屈んだままで教卓の陰から出てこない。
「先生?」
334 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:00:39 ID:QAmkFaF0
ほんの僅か、ざわめき始めた生徒達の声を代表するかのように、千里が望に呼びかける。
「日塔さん。やっぱり貴女、普通みたいです」
しかし、姿を見せないままの望から返ってきたのは、さっきの話を引っ張る全く関連性の無さそうな言葉だった。
「一番目じゃ、なかったみたいですよ」
「だから普通って! ……え?」
関連性の無さそうな。
しかし先ほど望が奈美を、珍しく普通ではない、と言った源はどこだったか。
意味を汲んだ瞬間、何人かの生徒達が座っていた椅子を蹴り上げて教室の前方に駆け寄る。
望が顔を出さない時間、その直前に呼んだ名前。それが意味するのはいったいなにか。
そして生徒達は教卓の影を覗き込み、屈んだままの望の声がほんの少し揺れていた理由を知った。
「どなたか、先に保健室に連絡を入れておいていただけますか」
荒く肩を上下させ、頬を朱に染めて苦しそうに目を閉じたまといと、
その彼女を抱きとめて顔面を蒼白にした望が、そこにいた。
335 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:01:21 ID:QAmkFaF0
「きっちり、三十九度」
真っ白いベッドの傍らに立って、千里は手に持った体温計の温度を読み上げる。
「ですが、先生。このきっちりは、素直に喜べません」
そして、口惜しそうにそれをほんの少し握ると、パイプ椅子に腰掛けた望にその体温計を手渡した。
望は力なく受け取ると、千里の言葉を反芻するようにそれを眺めた。
「私も、流石にこんな風になるまで気付かないのは、ちょっとどうかと思います」
千里と望とはベッドをはさんで逆側で、氷枕を用意してやった後、
まといの顔を心配そうに覗き込んでいた風浦可符香は両の眉をハの字にして望を見た。
彼女がこうもはっきりと他人の批判に回るのは、ひどく珍しい。
「……返す言葉もありません」
うな垂れたまま、望は答える。全く、返す言葉は見当たらなかった。
保健室に二脚あるベッドの片方を、千里と可符香、そしてまといの枕元でパイプ椅子に座った望の三人が囲んでいる。
ベッドに横たわり氷枕に頭を乗せたまといは若干楽そうにはなったものの、
目を覚まさないまま赤い頬で荒い息継ぎをしていた。
保健室は静かだった。急に冷え込んだせいだろう、早めに出されたストーブに火が入っている。
湿気を増やす為にその上に乗せられた薬缶が、シュンシュンと規則的に湯気を吐き出している音だけが
保健室に流れていた。緩い日差しが差し込んでくる窓から一望できる校庭からも、
どのクラスの体育の授業も入っていないのか誰の姿も見えず、何の音も聞こえてこなかった。
まといが倒れた後の、へ組の対応は素早かった。
生徒達は望に授業をとっとと放棄させると保健室への連絡を迅速に為し、
望を筆頭とする保健室行きのメンバーを実質的に委員長の立場にある千里、状況に動じない可符香に選び、
まといの家への連絡は教室に残った生徒達で自主的に引き受けた。
まといの荷物も女生徒達が大体をまとめ、既に保健室に持ってきてある。
望がする事を、まといを保健室に運び様子を見る事くらいに絞ってくれた一連の動きは、
全く驚くべき行動力であると言わざるを得ない。
336 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:02:33 ID:QAmkFaF0
千里と可符香の所見では風邪という事だった。
二人は当然医師ではないが、何故かこういった面で、特にこの二人の言う事には説得力がある。
まといの症状は間違いなく風邪によるもので、なにか他の良からぬ病、と言う可能性は著しく低いだろう。
が、原因がなんであろうと、まといは倒れたのだ。望の目の前で。
「一番近くにいたんですから。先生、気付いてあげなきゃダメじゃないですか」
可符香の言葉に、望は今朝のまといの様子を思い出す。もとい、ずっと引っかかってはいたのだ。
何度も気付く機会はあったはずだった。
いつもより四歩離れた距離、弱々しい眼差し、頬もいくらか赤かったような気もするし、小さな咳も聞こえた覚えがある。
具合が悪かった。そんな簡単な事、何度も、何度も気付けたはずなのだ。
望は、眠ったままのまといに何となく手を伸ばした。
切りそろえられた前髪が、汗を含んで額に張り付いている。
それらをどかして触れた額はやはりとても熱く、どかした髪の毛の束は望のそれとは違い、
とても柔らかい質感を持っていた。
額からこぼれた髪の毛は、いつかの職員室でまといが望に言った言葉を思い出させた。
俯き気味に、彼女は言ったのだ。私、ダメなんです。と。
相手が何をしていようと。そして、自分がどうであろうと。
それはまとい自らして、ダメ、と言ってしまえるほどの、ひたすら一途な一点集中主義。
望は今更ながらに、その意味を理解した気がした。
「先生、まといちゃんが」
可符香の声に顔を上げると、まといがうっすらと目を開けていた。
337 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:03:20 ID:QAmkFaF0
「先生……?」
ゆるりと視線を周りに巡らせ、ぼぅ、とした声音で望に呼びかける。
常日頃の一本芯が通ったような物言いとは違い、消え入りそうな、か弱い声音だった。
考えに耽ったまま額に手を乗せていたせいで起こしてしまったか、と思い手を引っ込めかけるが、
布団の中からゆっくりと出てきたまといの手が、額に乗った望の手に重なった。
「先生の手、冷たい……」
どこと無く夢心地でいるように、まといは呟く。 望の手の上に置かれた掌も、大分熱を持っていた。
弱々しく望の手を握るその温度に流石に引っ込めるわけにもいかなくなり、
少し角度をずらして掌全体をまといの額に当ててやる。
何となく困った顔でもしたのか、そんな望の様子を見てまといは目を細めた。
ついでに、ベッドの向かい側の可符香の目も何となく細まった。
「ニヤニヤと笑っているんだったら、氷嚢でも用意してあげてください」
思わず頬が上気するのを感じ、望は若干ぶっきらぼうに可符香に言った。
可符香はニヤリと笑いつつも、はーい、と元気よく返事をすると保健室の棚を漁り始めた。
どうにも、遊ばれている気がしてならない。
「先生、それで……?」
額の望の手を弱く握ったまま、まといは再び弱々しい視線を保健室の中に彷徨わせる。
当たり前と言えば当たり前だが、状況が飲み込めていないらしい。
「授業中に倒れたんですよ。覚えていませんか?」
「悪いのは、全部先生だから気にする必要は無いけどね」
望の後ろに立つ千里が、合いの手を入れてくる。何となく、口調と背に突き刺さる視線が刺々しい。
が、頭上を通り抜けていくまといに向けられる雰囲気は至極柔らかいものだった。
流石、というべきか、きっちりとした区別である。
338 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:04:17 ID:QAmkFaF0
「ですが、困った事にお家に連絡が付かないんですよ」
背中に注がれる刺々しい視線に、身をよじって居心地を直して何とか望は続ける。
氷嚢を持って戻ってきた可符香が、その後を次いだ。
「何度かけても留守電でね。どなたもいらっしゃらないみたい」
「うん。今日は、マ……母、友達と出掛けるって。父は仕事だし」
あらら、と相槌を打ち、可符香は氷嚢を持ったままパイプ椅子をベッドの横に引き寄せるとそれに腰掛けた。
氷袋をかける金具まで持ってきたというのに、それを使う姿勢をまるで見せない。
「ちょいと、風浦さん?」
「はい、なんでしょ」
「氷嚢は、病人の額に乗せるものでしょうに。貴女が持つものではありませんよ」
望は明らかに不可解な行動をとる可符香に訊ねるが、可符香は小首を傾げて望を見る。
きょとんとした目には、何を言っているのだろう、といった質の、
寧ろこちらの常識を問うような大きな疑問符が宿って見えた。
「だって、先生」
そう一言だけ言い可符香はベッド脇の小さな台に氷の入った袋と金具を置くと、
まといに向き直ってしれっと問い掛ける。
「まといちゃんは、氷嚢なんかより先生の手の方がいいよね?」
熱を帯びた頬をもう少しだけ赤くすると、まといは小さく頷いた。
いつもと違う弱々しい雰囲気に、思わず保護欲が刺激されるとても可愛らしい仕草である。あるのだが。
339 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:05:07 ID:QAmkFaF0
同時に、望の背後から流れる空気が更にドス黒さを増す。
ざわざわと髪の毛が擦れ合うような音と共に、望の周りにあった空気の湿度が一気に増し、
肩に圧し掛かってくるような気すらした。
振り向かずとも、望を見ているであろう一対の目が乱暴な光を宿していることがわかる。
そしてそれに対応するかのようにまといに注がれる雰囲気は、
輝きを内包するかのような更に柔和なものに変わった。
心なしかそこには白い羽が舞い、コーラスまで聞こえてくる。
まといの位置から見れば、後光が射しているかのようにも見えるのではないだろうか。
互いの雰囲気を差っ引くと0になるかと思われる、完全なる半々。
恐るべしきっちりっぷり、と言わざるを得ない。
「いいから! 私の手より氷のほうが冷たいに決まっているでしょう!」
このままでは、周りの大気に絞め殺されかねない。
命惜しさに急いで手を引っ込めると、可符香とまといから異口同音に、ちぇー、と残念そうな呟きが漏れる。
冗談ではない、流石に痛い目に会うとわかればそれは回避しておきたい。
「ともかく、ですね」
ゴホン、と、わざとらしく咳払いをして、望は場に一拍を置く。
依然として背後からの雰囲気は痛覚を刺激するものではあるが、
それがいくらか弱まった事にも、小さく胸をなでおろした。
「さっき木津さんに測ってもらったら、熱が三十九度もあります。
なので、どなたか家族の方に連絡を入れた後に帰宅、という流れをとりたいのですが、
お母様がいつごろお帰りになるかはご存知ですか」
340 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:06:04 ID:QAmkFaF0
望が話す間にもまといは小さな咳を何度か繰り返し、その度に布団の端を引き寄せ、
周りに風邪を移すまいとするように口元を覆っている。
大きく咳き込み喉を痛める事に比べたら、意図的にでも押さえ込んだほうが後々の為ではあるのだが
やはり辛いのだろう。きつく瞼を結んでいる。
「先生……」
「どうしました?」
咳が何とか収まった後に未だに荒い息使いのまま、まといは咳のせいで目じりに涙が滲んだ瞳で望を見ると
弱い声音で呼びかけた。
望は懐からハンカチを取り出すと、まといにそれを手渡す。
ハンカチを受け取り目元を拭うと、まといはそれを口元に当て、
いつぞやと同じように頬を赤く染めてもじもじと呟いた。
「そんな、お義母様だなんて……」
「そこに食いつくな。質問に答えてください」
「それがタイミングの悪い事に、母は父の出張で羽根が伸ばせるって言って、泊まりの旅行に。
少なくとも日が変わるまでは帰れないと思います」
「……それは、割と困りましたね」
望の存外冷静な言葉に少し悔しそうな顔をした後、まといはあっさりと整理困難な状況を差し出してきた。
ハンカチを返してもらい、懐にしまった後で周囲を窺うと、流石の可符香も少し難しい顔をしている。
どこから探してきたのか、いつの間にか一杯に満たした水差しとコップを持ってきた千里も、
それらをベッド脇の台に置いて引きずってきた椅子で可符香の横に座ると、口元に手を当てて考え込んでしまった。
うーん、と一同の唸り声が保健室を満たす。
状況の渦中であるまといも、布団の中で顎に手を当てる。
が、その苦しげな咳は否応無く耳に絡みついた。
341 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:07:26 ID:QAmkFaF0
「やっぱり、先生が付いててあげるのがいいと思います」
長い思案の後、可符香が言う。
問題は二つ。まといが三十九度の高熱を出している事。
かといって、このまま帰宅させるわけにも行かない事。
或いは今すぐ医療機関に向かわせるにしても、状況が状況なので望の随伴があるのが望ましいだろう。
「……そうですね。それが一番よさそうですし、そうしましょう」
一度、見逃してしまった負い目もある。望も、その提案に頷く。
「ダメです」
が、そこに一つ反論の声が上がった。
「授業は、ちゃんとしないとダメですよ」
「……常月さん。心配しないでも、授業は自習にしてありますから」
「尚更いけません。珍しく先生がまともに授業してたのに、自習なんて。私が我慢すればいいだけの話ですから」
まといは依然として苦しげな呼吸を繰り返しつつも、しっかりと望の方を向く。
熱にゆれる視線は焦点を結んではいないが、それでもその眼で望を見つめると、はっきりと言い切った。
「わりと言いますね……」
「事実ですよ」
視線に、そしてその台詞に何となく気圧される。
暫し、無言のまま見つめ合う。見つめるというよりも、睨むといった方が正しい表現かもしれない。
そう思えるほど、まといの眼差しは強固で、曲がりそうも無い芯の強さを持っていた。
「これくらい、大丈夫ですから。私のことは気にしないでください」
額に汗が浮かび、頬は赤い。喉の奥からは、微かにぜいぜいと苦しそうな音も聞こえてくる。
それでもまといの意志は固く、動かせそうには見えない。
342 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:08:05 ID:QAmkFaF0
「……わかりました」
「ちょっと、先生!? まといちゃんも!」
「性格はある程度、把握しているつもりです。こうなったら彼女、てこでも動かないでしょう」
溜め息を一つ吐いて、望は目を伏せた。その言葉に、千里が思わず声を上げる。
「てか、授業のことを言われた以上、情けない話ですが私としては反論する術を持たないんですがね。
常月さんの言うとおり、まともに授業してないのは事実ですし」
諦め混じりに言うと、まといはこくりと頷きそれを肯定した。
望はそれにもう一度溜め息をつくと、椅子から立ち上がる。
ベッドの対面で肩を怒らせる千里に、望自身、情けない表情を浮かべているであろうとわかる顔を向け、言う。
「放課後になったら、私が兄さんの医院に連れて行きます。それでいいですか?」
「……まといちゃんは、いいの? って、自分で言ってんだからいいのか……」
困ったように眉をゆがめた千里は、まといの顔を覗き込み望と同じようにげんなりと溜め息をつく。
「先生。女性に我慢させるのは、どうかと思いますよ」
「……本当に、厄介な生徒さんばかりで」
「そこは、先生が普段まともに授業してないから、余計な心配をかけることになるんじゃないですか」
可符香の言葉に完全に諦めきった調子で言うと、千里も同じように肩を落としていた。
これに関しては何を言っても望自身の非でしかないため、反論するのも面倒で何となくまといの額に触れる。
汗こそ未だに引いていないものの、氷嚢のお陰か、先ほどより大分冷たくなっていた。
343 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:08:49 ID:QAmkFaF0
「ちょっと休めば、平気ですから」
軽く触れられたのがくすぐったかったのか、首をすくめるその仕草に思わず苦笑いが浮かぶ。
そして望と同じく椅子から立ち上がった可符香の目も、再び悪戯っぽい形に細まった。
「ちょっと、妬けますねぇ」
「何を言ってるんですか」
その視線と台詞に、再びわざとらしい咳払いを一つして手を引っこめる。
座っていたパイプ椅子を片付ける。千里と可符香はまといに軽く手を振り、保健室から出た。
望もそれに続き保健室の引き戸に手をかけると、もう一度振り返ってまといを見る。
「では、私達は教室に戻ります。で、放課後になったら私と一緒に兄さんの所に行く、ということでよろしいですね?」
「それは、私が先生のお兄様にご挨拶に伺う、っていう意味で」
「その辺りから少し離れて。てか、ちゃんと会話をして頂けますか?」
しかし、にこりと微笑むまといにそれ以上の反論も出来ない。
結局、望は苦笑いを浮かべるだけに留めると、保健室の扉を静かに閉じた。
引き戸が閉じる直前、その隙間から見えたまといの姿に後ろ髪を引かれるような思いを感じながら、
望は廊下を歩き出した。
344 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:09:57 ID:QAmkFaF0
教室の扉を開けるとその音が広がったかのように一瞬、教室内がざわついた。
そして、二番目に携帯電話が飛んできた。
「痛っ!?」
可符香は、きれいに望の額に当たったそれを床に落ちる前に空中で掴むと、その画面に表示された文章を読み上げた。
「『テメェ、ちゃんと携帯に出ろ。こっちが何通メール送ったと思ってやがんだ、
このハゲ。メガネ。袴。糸色。』ですって」
どうやら、音無芽留の携帯電話であるらしい。
教室内に芽留の姿を探すと、メールの文面以外ではあまりそういった感情の露出の多くない彼女が、
珍しく鼻息荒く肩を上下させ、携帯電話を投げた姿勢のまま望を睨みつけていた。
服装はおろか、人の苗字すら罵詈雑言に転換させたあたり、相当に腹を立てているのは疑いない。
授業からそのまま保健室に行ったせいで電源を切ったままだったのを思い出した望は、
懐から携帯電話を取り出すと電源を入れた。
程なくアンテナが立つと自動的にメールの受信画面が表示され、
それなりに長い時間が経過した後で三十通を上回る新着メールが受信された。
文面を見てみると、いずれもまといの容態を心配する内容であり、
一番早いものは望達が保健室に向かってから三分と経たないうちに送信されている。
芽留のメールに混じって、他の生徒からのメールも何通か入っていた。
その着信メロディに口火を切られたかのように、幾人かの生徒達が保健室から帰った三人の周りに集まり始める。
皆が口々にまといの容態を心配する姿に、いいクラスだ、と望は何となく思った。
痛む額を撫でつつ、とりあえず望は生徒達に席に座るように促し、教室が落ち着くのを待つと教卓の前に立った。
345 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:10:34 ID:QAmkFaF0
「先生。それで、まといちゃんは」
教室が静まるや、藤吉晴美が口を開いた。
普段の彼女とは異なり、いつでも何かを探すように好奇の視線を発している目が、今は不安に歪んでいる。
持ち前の運動神経のせいか、真っ先にまといの元に駆け寄ってきたのも彼女だったような覚えがある。
「とりあえず、目は覚ましました。熱は高いのですが、意識ははっきりしています」
それが、何よりもまず聴きたい言葉だったのだろう。
ひとまず安心したのか、ほっとしたように晴美の肩が下がる。
晴美だけでなく、教室内の張り詰めた空気の何割かが消えていったかのように、緊張感が抜けていくのがわかった。
「でも、先生」
しかしその脱力を留めるように、一拍も置かず小節あびるが手を上げる。
力が幾分か抜けた教室内で、しかし彼女の目にはまだいくらかの警戒の色が残っていた。
呟くように小さいが、とてもよく通る声であびるは続ける。
「まといちゃんの熱が高いなら、先生がここにいるのはおかしくないですか。
結局、あの後も何度か電話してみたんですけど、ご両親はご在宅じゃなかったし」
流石に鋭い。
常に熱を帯びる事のない、あびる自身の体から一歩引いた辺りから物事を見ているような
もの静かな瞳が、望をじっと見据える。
射抜くような鋭い類ではない、全身を真綿で押さえつけられるような、
身動きを取りにくくする拘束具じみた視線である。
口調こそ静かなものの、まといの具合を確認できたためか彼女からも芽留と同様の感情の高ぶりが感じられた。
346 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:11:12 ID:QAmkFaF0
「いえ、それは」
言葉が詰まる。思った以上に、生徒達からの風当たりが強かった。
こちらを圧迫してくるあびるの視線と同質のものが、教室のあちこちから望に注がれる。
思わず目が泳ぎ、背筋に寒気が走り冷や汗も出てきたような気がする。
正直に事を話すにしても、これでは話し辛いことこの上ない。
共に保健室から帰ってきた千里、そして可符香へと自然に視線が泳ぐが、
千里は呆れ顔で肩を落とし、可符香は望の視線を真正面から受けても、可愛らしくにっこりと笑うだけだった。
薄情者め。望は胸中で呟いた。
「先生」
「……それが、サボるな。と、言われましてですね」
心の声を聞き取ったが如く一切の起伏を感じさせないあびるの声に、仕方がなく白状する。
「それ、どういう事です」
「普段、滅多に授業をしないんだから、珍しくまともにやっている時くらい真面目にやれ。と、常月さんに」
「先生は、それを了承したんですか」
「彼女の方が我慢する、と言って下さいまして」
「なんだ。結局、言い負かされたんじゃないですか」
「はっきり言わないでください。先生、打たれ弱いんですよ」
心底呆れきったようなあびるの溜め息混じりの言葉に、がっくりと肩が落ちた。
いよいよ本気で、教卓の横にかけてあるロープに手が伸びる。
「まぁ。それはそれで、良かったじゃないですか」
そんな望の手の動きなどいつもの事、と晴美が望を宥めるように言い、奈美もそれに続いた。
「そうですよ。まといちゃん、それだけ言えるんなら割と安心ですね」
「だよね。意外ともう、いつも通りに教卓の下とかにいたりなんかして」
朗らかな晴美と奈美の笑い声は、次第に教室全体に伝播していく。すっかり、緊張も解けていったようだ。
347 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:11:52 ID:QAmkFaF0
が、それとは対照的に望のロープに伸びた手がぴたりと止まった。
望自身の顔から筋肉の緊張が抜け、たちまち無表情になっていくのがわかった。
何となく、保健室でのやり取りがへ組の生徒相手にしては素直すぎたような、強いては食い違っていた印象はあった。
例えば、旅行の直前の不安のような。
前日から準備を整えていたのに、朝、部屋を出る時に後ろを振り返ったら、
何かを忘れ物があるんじゃないかと一瞬だけよぎる、そんな感覚。
保健室を出る時、後ろ髪を引かれる感覚があった。
まだ自分はそこを出て行ってはいけないのだ、と言うような、
そこに何かを置き忘れているような。
その正体が見えた気がした。
「……」
望はゆっくりと教卓の下を覗き込む。彼女の定位置。常に望の最も近くにいる、まといの潜む場所。
「やだ、先生。心配しすぎですよ」
望の動きに気付いた生徒達の声に応じるように、望は大きく息を吐き出す。肩がげんなりと重くなる感じがした。
「なぜ、いるのですか」
「……え」
「というか、どうやっているのですか」
「えぇぇーっ!?」
思惑とは真逆の望の声に、生徒達から悲鳴に似た声が上がる。
「私達って、確実にあなたより先に保健室を出ましたよね」
「気にしないでください」
「投げた質問を、きちんと投げ返してくださいますか」
教卓の下には、いつもと変わらないようにまといがいた。
違うのは、彼女の顔が赤く、息が荒い事。
生徒達の反応を見る限り、誰もまといが教室に入ってくるのを見ていないのだろう。
望にしても、廊下で追い抜かれた覚えはない。
どう考えても忽然と姿を現した以外に説明することは出来ず、全く不可思議この上なかった。
348 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:12:34 ID:QAmkFaF0
「あー。そういえば、先生が資格云々って騒いでいた時に、まといちゃんが忍術とかの本を持っているの、見ましたよ」
「あ。私も、読唇術とかの本読んでるの見たー」
「そういう技術って、ハウツー本で身に付くモンなんですか?」
「知りませんよ。愛じゃないですか、先生への」
のろのろと晴美と奈美が手を上げる。望と同じく、疲れがどっと襲ってきた顔だった。
そして望としては、まといが我慢って言っていたのは体調の方面でか。
と、何となく納得してしまう。
まといらしいと言えば、まといらしい。
ちょっと考えれば、それがたとえ三十九度の高熱であろうとも、
風邪ごときが彼女の行動を束縛できるわけも無いのはわかりそうなことであった。
望は再び教卓の下を覗き込む。その視線に答えるように、まといはにこりと笑う。
「さ、先生。私の事は気にしないで、授業、授業」
「いえ、あのですね。常月さん」
それでも流石に、体調が悪いのに何をしているのか、と叱りつけたい気持ちは幾分か沸いてきていた。
が、それを何とか飲み込むと、軽い頭痛を感じる頭を左右に振りながら
望は教卓の下のまといに手を伸ばす。
もう一度、保健室に連れて行かなければならない。
まといに伸ばした望の手。しかし、まといは望の思惑とは違う動きをとった。
彼女の細い指は望の手ではなく、袖の端を控えめに、しかししっかりと握った。
彼女の顔は、教卓の暗がりに半分隠れている。
いつの間にかそこから笑みは消え、熱に浮かされた不安げな眼が揺れながら、
ただその手を離されることだけを恐れて望を見ていた。
349 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:13:14 ID:QAmkFaF0
「……お願い、先生」
揺れる瞳は、やがて望から視線を外すと、ついには伏せてしまった。
辛うじて搾り出した、まといの声。握られた袖から伝わる僅かな震えに、望は少なくない驚きを覚えた。
なんとも、まといらしくない台詞である。
そんな事を聞くまでも無く、勝手にいるのが普段の彼女だろう。
それに反して、今、望の目の前にいる少女のなんと弱々しい事か。
体調を崩している時は、何かと不安になりやすい。
まだ明るいうちに一人で寝転がる天井は、はっきり見えるだけにとても高い。
咳をしても、それは温度を持たない壁に反響して、自分の耳にしか聞こえない。
辛いのに、でも治るとわかっているのに、自分しかいない部屋は何故かとても寂しい。
ただでさえ、普段が姦しいクラスにいる。
しかも両親は帰ってこない事がわかっているまといの寂しさは、尚更かも知れない。
まだ高校生なのだ、と今更ながらに思い出す。
床に臥す前の句なんて、冗談ではない。こんな時くらい、守ってやらなければならないのだ。
しかし、このままでは授業にならないどころか、何よりもまといの体によくない。
やはり自分が付いていてやるのがいいか、との考えが一瞬、望の頭をよぎるが、
まとい自身はそれを望まなかった。
だからといって、今のまといの目を見てしまった以上、彼女を一人にするわけにはいかない。
どちらが正解なわけでもない。望は、軽く首を捻った。
「ダブルバインドですね」
「いや、貴女が言わないように」
こんな時に、感情の機微を読み取る勘はいらない。弱く笑うまといに、望は苦笑いを浮かべつつ、言う。
350 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:13:46 ID:QAmkFaF0
「先生。それで、どうするんですか」
千里も、過程は違えど望と同じような結論に達しているらしい。
何をどうしろ、と言わずに、ただ困ったように聞いてきた。
望は一旦まといから視線を外すと、ゆっくり息を吐きながら背筋をぐ、と正した。
要はまといに、こちらが何をしているかを伝えてやればいい。ならば、と、一つ思いついた事がある。
すんなりとそんな考えが浮かぶ辺り、どこか毒されたのかも知れない、と思わず笑いが口の端に浮かぶが、
不思議とあまり悪い気はしていない。彼女を怒りたい気持ちも、既に無くなりかけていた。
「常月さん」
「はい」
そうして、教卓の下のまといに呼びかける。
「いいですか、今回だけですからね」
「……はい?」
珍しく困ったような顔を見せたまといに笑い返してやると、望は顔を上げ、可符香に呼びかけた。
「風浦さん」
望の声を予め察していたかのように、可符香は顔を上げる。
すぐにでも動ける準備が整っているように、柔らかい笑いでもって彼女は淀みなく立ち上がった。
「至急、用意していただきたいものがあるのですが」
「何なりと。お安い御用ですよ」
そして、望の言葉に可符香は僅かな逡巡すらなくコクリと頷いた。
351 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:14:22 ID:QAmkFaF0
寒い。
一番初めに感じたのは、それだった。
外気に冷やされたベッドの白いシーツは、氷のように冷たかった。
全身を支配する悪寒から少しでも逃れようと、柔らかい手触りを持つ氷の中で固く身を縮める。
薬缶が湯気を吐き出すだけの保健室はたった一人で過ごすには、薬臭くて白くて広くて、そして寒かった。
だから望の近くにいたいと、いつも以上にそう思ったのだ。
一人でベッドに寝るまといの手の中から、断続的にノイズが漏れる。
あまり小さくない、スピーカーの付いた灰色の箱がその音源。
ラジオでもない、ましてや携帯電話でもないその機械が、望の出した折衷案だった。
盗聴器。
あの後、望の注文を聞いた可符香はそれから三分もしないうちに、
違法ゾーンに両足をたっぷり突っ込んだその機械を持って、教室に帰ってきた。
どこから調達したのかは誰も聞かないまま、へ組の面々はまといを保健室に送り届け、
ベッドに入ったまといにそれを置いていった。
ずっと両手で包むように持っていたそれは、今ではほんのりと暖かい。
温度の無い保健室で唯一、それだけが熱を持っているように感じられた。
『……あ……あー。あー、テス、テス。……よし、多分これで繋がったと思いますよ』
途切れ途切れに続いていた雑音がブツッと一際大きな音を立てると、
可符香の声と共に教室の喧騒がスピーカーから流れ出した。
それからあまり間を置かずに、まといの携帯電話がメールの着信を告げる。
352 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:15:07 ID:QAmkFaF0
『オイ。設置、終わったらしいぞ。ちゃんと聞こえてるか』
芽留からのメールだった。
やはり言葉遣いは悪いものの、何となくいつもに比べていくらかそれが柔らかいように感じる。
思わずクスリと笑いが漏れるとほぼ同時、再び携帯電話が鳴り始めた。
電話の着信。
「……先生」
意識とは関係なしに、呟きが漏れる。一度、携帯電話を握り締めると、そっと通話ボタンを押した。
『もしもし』
盗聴器と携帯電話、両方のスピーカーから望の声が聞こえてくる。
いつもと変わらない声の筈なのに、その響きはまといの喉を詰まらせた。
我儘は自覚していた。授業をしろ、などと自分では言っておいて行動は全くの逆だった。
そして、こんな面倒まで強いてしまった。
体の節々が痛み、喉の疼きが急にまといを苛みだす。
自分はこんなに弱かったのか、と携帯電話を耳に当てたまま、布団の中で更に身を縮めた。
声が出せない。
それほど大袈裟な事ではない。大袈裟な事であるわけがない。
そう自分に言い聞かせるが、辛くて、情けなくて、力いっぱい瞼を閉じた。
携帯電話のディスプレイに表示される通話時間だけが増え、何の応答も出来ないまま沈黙が続く。
353 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:15:44 ID:QAmkFaF0
『先生。それで、盗聴器はちゃんと聞こえてるみたいなんですか?』
が、その沈黙簡単に破って、まといの耳に千里の声が聞こえた。
携帯電話でないほうのスピーカーから。盗聴器が拾う教室内の音が千里の声を皮切りに、にわかに騒がしくなった。
『まといちゃん、ちゃんと聞こえてるー?』
『ちゃんと寝て、早く治さないとダメだよ』
『早く元気に、ね』
『お大事にナー』
『てゆーか、先生が携帯貸してくださいよ。コンセントに話しかけて、私達バカみたいじゃないですか』
可符香の声、奈美の声、あびるの声、無邪気なマ太郎の声に、呆れたような晴美の声。
それまで固唾を呑んで見守っていたのか、鳴りを潜めていた盗聴器が突然騒ぎ出し、まといは思わず面食らった。
その後も、相変わらず高飛車ではあるものの心配はしてくれているらしい木村カエレの声、
まといが勝手に倒れたのに何故か謝る加賀愛の声、
柔らかい調子の麻菜実の声、
恐らく芽留か三珠真夜、或いはその両方が携帯電話か何かで通話口を叩いたような
カンカンといった硬い音がガヤガヤと聞こえ出した。
だから盗聴器はどうなんだ。お大事にね。ちゃんと聞こえてるのか。早く元気に。
携帯電話と盗聴器の両方から、へ組が聞こえてくる。
本当に姦しくて、うるさいクラス。
自分を含めて教師の言う事なんて、聞きやしない。
そのやかましさに釣られて出てきた笑いを、必死に押し殺す。本当に、酷いクラスだ。
354 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:16:34 ID:QAmkFaF0
『ちょっと皆さん、静かにしてくださーい! こっちが聞こえないじゃないですか!』
やんややんや、となお一層の盛り上がりを予感させるざわめきに、望が堪らず叫ぶ。
その声に対して、条件反射にも近しい早さで方々から不満の声が上がったのが聞こえた。
電話の向こうで、望が更にいきり立つ様が目に浮かぶ。
それが更にクラスを煽るというのに。まといはその光景に思わず頬を緩めた。
喉のつかえも、いつの間にか消えていた。
「先生、ごめんなさい。……それと、ありがとう」
一つ、嘘をつきました。
本当は授業に行って欲しいなんて、ちっとも思っていませんでした。
病院に連れて行かれたら先生はそのうち学校に戻ってしまうから、少しでも距離を縮めておきたかっただけなんです。
でも、とても嬉しかったです。
誰に言われたんだとしても、傍にいてくれる、と言ってくれた事。
自分に声を届ける為に、こんな機械まで使う事を考えてくれた事。
そんな思いを全部まとめて、まといはゆっくりと呟いた。
『……常月さん』
「はい」
『あまり褒められると、先生、どこまでも付け上がりますよ』
きちんと伝わっているのかどうか。曖昧な望の返事に、思わずクスリと笑いがこぼれた。
355 :
399MHz:2007/12/28(金) 22:17:27 ID:QAmkFaF0
『それでは、くれぐれも大人しくしていて下さいね。また抜け出してきては、駄目ですよ』
「はい、わかりました」
『で、放課後、一緒に兄さんの所に行きますから。いいですね』
「それは、私が命先生に、糸色の姓を頂くお許しを伺いにって形で」
『ですから、そっちでなくてですね……』
望の声をもう少しだけ聞きたくて、悪戯っぽく笑う。
電話の向こうでは、きっと望は肩をコケさせているに違いない。そして、二人して示し合わせたように笑い出す。
きっと、伝わってる。ベッドの中で硬くなっていた身体が、柔らかく伸びていく。
『それじゃ、少し眠るといいです。もう無茶しないで……それと、あまり心配させないで下さいね』
「はい。本当に、ありがとうございます」
そして、通話が途切れる。けれど、スピーカーからは変わらず教室の喧騒が伝わってきていた。
『せんせー、イチャこいてるー』
『やー、不潔ー。熱々ー』
『静かに! 静かにして下さーい! 席について、授業をしますよー!』
まといはクスクスと笑うとベッドの中で体の位置を直し、大事そうに盗聴器を両手で包み込んだ。
保健室の中は、薬臭くて白くて広くて、とても明るい。
ストーブに乗せられた薬缶からは、相変わらずシュンシュンと湯気が上がっている。
柔和な暖気に、瞼がゆるりと落ちてくる。
目を閉じても、耳にはきゃあきゃあとした声が聞こえてくる。
眠気を誘うベッドの中のポカポカとした暖かさは、まといの体温が上がっているせいだけではないだろう。
保健室には、声が満ちている。胸元に盗聴器を抱き寄せ大事そうに抱え込むと、それは暖かい温もりを持っていた。
そこから聞こえるのは、まだ暫くは収まりそうに無い、まといが、そして皆がいる、うるさくて騒がしい2年へ組の声。
そして、大好きな大好きな望の声を運んでくる399MHzの周波数帯に包まれて、
まといの意識はやがて柔らかく眠りの中へと落ちていった。
以上です。お付き合いありがとうございました。少しでもお楽しみいただけたのなら幸いです。
キャラクターを原作どおりにするのって難しいですね。
続きのおまけも、完成しだい投下させていただきます。それでは失礼しました。
>>キャラクターを原作どおりにするのって難しいですね
同意。自分はそれができなくていつも困っている。
丁寧に作られている印象を受けた。ちょうどいいシリアスさ。バランスがいいな。
>>327 見ててニヤニヤしてしまう。自然なやり取りが素敵過ぎる。
キャラを掴むのが上手いなぁ、と、いつも見てて思います。
>>356 情景描写が凄く良い。なんてか、文章に漂う優しい雰囲気が素敵。
これからもちょくちょく投下してくれると嬉しいです。
キャラ感は結構人それぞれだし、自分は見てて違和感なかったんで、自信持って大丈夫かと。
>>356 率直な感想ですが、しっとりした感じが漂っていていいなと思いました。
話の緩急も、文章が落ち着いた口調で伝えてくれるような。
なぜだか、夢二のような大正浪漫を感じてしまいましたw
・・・まあ私が変なだけだと思うw また読ませてもらえるの待ってます。
ぼーっとしているうちに、今年も終わりで、新年はすぐにアニメ2期がスタートか。
怒涛の投下ラッシュを期待。
時期的に大掃除ネタでやってみました。千里と先生でエロはなしです。
362 :
大掃除:2007/12/30(日) 02:08:17 ID:tXH0pOWT
割烹着をかけたお掃除スタイルで千里が向かう先は、彼女の担任教師、糸色望の暮らす宿直室だ。
この時期になると千里は親しい間柄の知人の家を回り、大掃除を強行している。
それが年末恒例行事、きっちりさんの大掃除。
本日向かう所は、千里が自分の家以上に力を入れて掃除をする所だ。
なにせ愛する男の住む部屋なのだから。
新築時以上に綺麗にしてしまおうと意気込んで千里は宿直室の扉を開けた。
「おはようございます。さあ、きっちりキレイ…に…」
「…んぅ?…おはようございます…」
望はコタツに入って寝転びながら、寝ぼけ眼で酒を飲んでいた。
「何してるんですか先生…」
「らにってお酒を…いいららいですか、冬休みなんれすから。」
ちびちびと飲みながら言う。
「もう…弱いくせに昼間から…」
「かたいこと言ららいでくださいよー………ぐう。」
寝てしまった。
千里はふぅとため息をついて、仕方ないなと呟いた。
363 :
大掃除:2007/12/30(日) 02:09:05 ID:tXH0pOWT
暇があれば、たいてい2のへの生徒は望の下に集まる。または望が来てしまう。
だが大掃除なんてことをわざわざ人の家にまでしに来るのは千里くらいなものだ。
だから今日は掃除とはいえ望と二人っきりで過ごせる、なんて思っていたのだが。
「寝ちゃったかぁ…」
とりあえずコタツに入ったままの望は邪魔だったので、布団で巻いて隅に置いておく事にした。
千里がぱたぱたと動き回り、部屋を片付けていく。
クリスマスパーティーのゴミが少々残っていたが、宿直室にはこれといって大きな汚れはなかった。
少し前に千里の手によって全焼してしまったのだから。
「本の帯…要らない。捨てっ。」
「ビンの蓋…捨てっ。」
「くつひも…なんでひもだけ?捨てっ。」
てきぱきと掃除を続けていくと、また今年もポロポロと出てくる要るのか要らないのか微妙なものたち。
それらが千里のジャッジによって続々と捨てられていく。
364 :
大掃除:2007/12/30(日) 02:10:05 ID:tXH0pOWT
「女子大生の写真………捨てっ。」
「ストーカー…」
「!?」
「座敷童…」
「ひっ!?」
私怨でジャッジに偏りが出る事があったが、千里の大掃除は順調に進んでいった。
だがそんな彼女でも捨てるべきか迷うものがいくつかあった。
本来ならそういうものも全て捨てたいものだが、後で望に泣きつかれても困る。
というわけでその判断は望本人にしてもらうことにした。
望の審査を待つちょろちょろとした小物のなかに混じって霧とまといの姿もあった。
二人は仲良く一つのゴミ袋から顔だけ出して気を失っている。
千里は望を具にした巻き寿司のような布団をころころと転がすように広げ、望を出した。
365 :
大掃除:2007/12/30(日) 02:11:12 ID:tXH0pOWT
「先生、先生。ちょっとだけ起きてください。」
「…ふぁい?」
千里に揺さぶられて目を開き、望は上半身を起こして布団の上であぐらをかいた。
「これ。この中で残すもの教えてください。」
「…残すもの?」
かく、と望は首を右に傾けた。
「ええ、大事なものです。残りは捨てちゃいますよ。」
「…大事なもの…?」
右側に徐々に傾いていき、そのまま倒れた望は再び寝転んでしまった。
「……っ…」
「え?何て言いました?」
聞き取れないほど小さな声で囁いた望に千里が顔を近づけた。
「…これ。」
「え?」
千里の背中に手を回して引き寄せ、千里の首筋に望の唇が触れる。
「っ…んっ…」
「だからこれです…らいじなの…」
そのまま引き倒した千里の上から胸に顔を埋めて、その小さな胸を横からむにむにと揉んだ。
366 :
大掃除:2007/12/30(日) 02:12:08 ID:tXH0pOWT
「せ、せんせっ…こんな昼間っからぁ…」
「んー…そうですかぁ?」
望が顔を上げて、目の前で顔を真っ赤にしている千里に微笑みかけた。
「…」
無言で千里の瞳を覗き込む望の顔が、息がかかるほどに千里の近くにあった。
じっと見つめる望を前に、千里もまた言葉を失い硬直してしまった。
そのまま望の手がゆっくりと千里のスカートに侵入し、下着越しに彼女の秘部を擦りあげた。
「やぁっ…せんっ…せい…」
望の瞳に自分の本心も見透かされているような気がして、形ばかりの抵抗すら出来ない。
千里は目を瞑り、シーツを掴んで望にされるがままにその身を任せた。
「っ………………あれ、先生?」
だが、そこで望の動きは止まっていた。再び眠りについてしまったようだ。
「…バカ。」
ポク、と千里が望の頭を叩いた。
「はぁ…まったくもう…」
自分に覆いかぶさる望をどかして布団を掛けなおした。
ぎろりと望の顔を睨んだが、望の寝顔に千里の顔が思わずほころぶ。
「…ふぅ…疲れちゃった…私も寝よ。」
割烹着を脱いで、もそもそと望の胸元に入りこみ、千里もまた眠りについた。
なんか布団に巻かれたりゴミ袋で縛られたりして頭だけ出てるのって萌える。
霧とまといへのフォローとかじゃなくて本気で。
三珠ちゃんでも何か書いてみたいけど難しいですよね、あの子。
正直萌えた
そろそろ部屋の掃除しないと
寝る前に藤吉さんが糸色望をコミケに連れてって、夜藤吉さんが先生に女装+猫ミミさせて
セクースする妄想がきた
「今年もあとわずかですわね、お兄様」
「そうですね」
「……」
「交は?」
「お年玉を貰いに実家へ帰りましたわ」
「そうですか……」
「……」
「……倫」
「いかがなさいました?」
「狭いから詰めてください」
「イヤですわ。我慢なさって」
「お前はスペース取りすぎです。ここからは見えませんが全身入ってるでしょう」
「お兄様こそ。見えないのは肩まで潜ってるからではなくて?」
「私は家主だから良いのです。少し出なさい」
「それは無理ですわ。もう私、ぬっくぬくにされてしまったので」
「手段を選びませんよ」
「どうぞご勝手に」
「後悔しますよ?」
かちかちかち。
「お兄様暑い」
「へぇ、暑いですか?私はそうは思いません」
「コタツ熱い」
「知りませんよー」
「あ、つ、い」
「だったらコタツから出たらいかがですか?」
「むぅぅ……。……それには及びませんわ」
バサッ。
「うわっ!ん、これって……倫!?」
「なんだ、暑いなら脱げば良かったんじゃない。
あら、お兄様?汗ばんでますわよ?早く諦めたらいいのに」
「そこまで勝負するところじゃ……いいでしょう。受けて立ちます」
バサッ。
「これで対等です」
「お兄様の裸なんて誰も望んでいませんわ」
フワッ。
「私に関しては知りませんけど」
「!!……下着なんて、脱いでも暑さには大差ないと思いますが」
「いいえ、着てても大差ないなら脱いだって良いでしょう?」
「な、ならば私だって……」
ガララララ。
「先生いますかー?」
「「!!」」
「先生ー、おじゃましまーす」
「ずっとチャイム鳴らしてるのに気付いてくれないんだから。」
「一緒に初日の出見に行きましょうよぉ」
「せんせー……あ、いたいた。寒いからって、二人してカタツムリですかぁ?」
(倫、近い!っていうか狭、痛い!)
(我慢してお兄様!……っやだ!こんな時に!)
(ふ、不可抗力です!)
「あれ、何か言いました?」
「「なにも」」
>>370ぬっくぬくの倫とコタツの中で裸だなんて!萌えました
しかし正月早々生徒達に近親相姦の疑いかけられそうですな(笑)
あと今年ももう終わりなので絶望日本書紀の完結編因幡の白兎を投下させていただきます
因幡の白兎は実は古事紀の話で日本書紀にはなかったのですが
予告してしまったのと既に配役決まったので投下させていただきます
そのため今までで一番長い話になりましたすいません!すいません!
オオクニヌシ
出雲大社の祭神であり、アマテラスが天にいる天津神の王であるなら、
オオクニヌシは地上にいる国津神の王なのです。
しかし彼も最初はオオナムジという加害妄想しがちの気弱な神でした。
「あぁ早く行かなければお兄様達にご迷惑をかけてしまう!!」
オオナムジの八十柱の兄達は絶世の美女ヤガミヒメにプロポーズに行ってるのですが、
オオナムジは末弟で加害妄想が強くておどおどしてる癖に一番モテるため兄達の荷物持ちをさせられていました。
いそがなくては迷惑をかけてしまうとはいえ八十人分の荷物、
重くて重くて歩くのが精一杯。
なんとか進もうと前を向くと海岸に赤い物が落ちていました、
ユッケ?いいえよく見ると皮を剥がされたうえにひび割れて血を流してぐったりしているうさぎです。
驚いたオオナムジは荷物を放り出してうさぎに駆け寄りました、
「ひい!うさぎさんどうしたんですか!?」
瀕死のうさぎは力を振り絞りなんとか口を開き
事の顛末を語り始めました。
「・・・実は私因幡に住んでるんですけど健康食品を売りにこの壱岐島まで来たんです。」
白うさぎは因幡でうっかりマルチ商法にダマされ大量に買わされた洗剤や食品を売りに壱岐島にまで来ていたのですが、
島の者が誰も買ってくれず渋々帰る事にしました。
しかし船は全部出払っており戻ってくるまで待っていると売上報告に間に合いません、
「早く他の場所に売りに行かなくては沢山売ってる人に申し訳がたちません!、
でも海にはワニザメがいて泳げな・・
ん?ワニザメかあ・・」
白うさぎに名案が浮かびました、ワニザメ達利用するのです。
「ワニザメさんワニザメさん、貴方達は沢山仲間がいるのね、
でも私が今まで売ったお客の数ほどではないわ。」
すると眼鏡をかけており太っていて硬派そうなワニザメのリーダーが答えました。
「僕達は声優のサイン会の帰りで沢山いるんだぞ、そんな事はない。」
「じゃあここから因幡まで一列に並んで下さい、どっちが多いか私が上に乗って数えますから。」
上に乗って数えらるという一見屈辱的な要求ですがオタクで童貞ばかりのワニザメ達は
人妻である白うさぎの色気に惑わされ一列に並ぶ事にしました。
「八、九、十、十一・・」
「どうだ僕達は沢山いるだろう?」
「私が売ったのはこんなモンじゃないです、二十、二十一、二十二、二十三・・・」
ワニザメ達はダマされてるとは知らず素直に並び橋になっている、
終わり位になると白うさぎは調子に乗って本当の事を言ってしました。
「ワニザメさん橋になってくれてありがとう。
実は私、商法をまだ一つも売れてないんです。」
それを聞いて怒ったワニザメ達は一列に並ぶのを辞めて白うさぎを取り囲み始めました。
「僕等を弄んだな!」
「ワニザメをなめるな!」
「逸脱するのは三次元だけにしとけ!!」
「ひいっ!ダマしてすいません、お詫びに洗剤とか健康食品とか無料で差し上げます!良い物ですから!」
「いやいやそんなのよりもっと良い物持ってるじゃないか。
おまえの萌えるやわらかい毛皮だよ!!」
「ひいぃいいいーーーッ!!!!!!」
白うさぎは無残にも毛皮を剥がされ海岸に放置されてしまいました。
すると向こうから八十神達がやってきたのです、
「全身の皮を剥がされこれはひどい、
緊急オペをせねば!」
「この秘伝の薬を飲み海水に漬かり潮風に当たりなさい、すぐ癒えるぞ。」
白兎は心身ともに弱り切っているためすんなり信じて怪しげな丸薬を飲み潮につかる事にしました。
しかし・・・・・
「いぃいいい!!痛い痛い痛い!!!!!」
文字通り「傷口に塩」状態なうえに八十神が自己完結して作った丸薬の相乗効果で痛みはさらに増し
潮風に当たると渇いてヒビ割れ、
あまりの痛みでとうとう気を失ってしまいました。
「てへっ、俺達ドジっ子だなあ、
アハハハハハハハハハ。」
八十神達は自分達のうっかりぶりに大笑いしながら白兎を放置してヤガミヒメの元に向かったのです。
「そうだったんですか!?お兄様達がした事は私がした様なもの!
すいません!すいません!すいません!」
オオナムジは自分がした事でないのに再び深い加害妄想に陥り謝り続けました、
しかし白兎は息も絶え絶えで今にも死にそうです加害妄想を一時中断して正しい治療法を教える事にします。
「すいませんまず真水で体を洗いこの蒲の穂を体に巻きつけます、マルチ商法は消費者センターに行って・・・」
するとオオナムジの正しい治療法のかいあって
白兎の傷は癒え毛が生えて白く美しい姿に戻っていきました。
「治療していただいただけでなくマルチ商法への対処法も教えていただいてありがとうございます、
ヤガミヒメの心は八十神でなく貴方が射止めるでしょう。」
「えぇ!?どうして私の様な迷惑ばかりかける者が!?」
「他の会員から聞いたのですがヤガミヒメは絶世の美女であると同時に絶世のファッションセンスを持っているんです、
貴方なら彼女の眼鏡にかなうはずですよ。」
嬉しい知らせではありますがどうして自分の様な者がヤガミヒメの眼鏡にかなうのだろうと疑問を抱きながら出雲に到着しました、
すると八十神達がヤガミヒメに猛アプローチをかけてる最中でした。
「君達の情熱はわかるけどこの服を着こなせるかい?」
ヤガミヒメが見せ付けたその服は一見センスが悪く見える程奇抜で八十神達でそれを着こなせる者は皆無でした、
それでもヤガミヒメは八十神中誰か似合わないかと見渡すと一番後ろに大きな荷物を抱えてようやく到着したオオナムジが目に入りました。
「そこの袋担いでる君、君ならこの毛ガニTシャツ似合いそうだね」
「そっそんな上級者服、
私には着こなせません!」
自分達が必死にプロポーズしていたのに最後にノコノコやってきてヤガミヒメの心を射止め、
しかも彼女の要求を拒否したオオナムジに八十神達は殺意がふつふつと湧いてきました。
そこである一計を案じオオナムジを山麓に連れてきたのです。
「オオナムジよ俺達は狩りをしていてまるで焼けた岩の様に熱い大猪を追い込むからおまえが下で捕まえてくれ。」
「大猪!?私には無理です!!」
「そうか捕まえてくれるかあははははははははは」
八十神は勝手に自己完結すると丘に登っていきました、
「あぁ恐いですけど捕まえなくては兄様達にご迷惑をかけてしまう!!」
するとドドドドと低い地響きをたてて山の上から赤く大きな物が迫ってきました、
「ひいぃ!本当に焼けた岩の様!捕まえなくてはあああつううううーーーッ!!!!!!!!!!!!」
オオナムジは健気にも大猪に見せかけた焼けた岩を捕まえようとして下敷きになってしまいました。
「絶命した!間違いなく絶命した!」
八十神は憎い憎い弟を始末できたと喜びながら去っていくと
入れ代わる様に末息子の断末魔を聞き付けた母神がやってきました。
「大変!オオナムジが!」
普段冷静な母神も驚きを隠せず
高天原の団地に住み宇宙の真理を知る程文化レベルの高い神産巣日神に頼んでオオナムジを生き返らせてもらいました、
「あぁ生き返らせる手間をかけさせてすいません!」
「それよりオオナムジ、貴方はこのままではまた兄達に殺されてしまうわ、スサノオ様の屋敷に匿ってもらいなさい。」
その名前を聞いてオオナムジは青ざめました、
スサノオと言えば世界を滅ぼしかけたり、
あのヤマタノオロチを倒した恐ろしい神だからです。
「しかも最近は黄泉の国に住んでるというあの!?」
「一度死んだのに死者の国を怖がる必要ないわ、早く匿ってもらいなさい。」
母神の意外と恐い眼に押されオオナムジは黄泉の国にいくことにしました。
出雲で須賀須賀しい宮を立てた後スサノオは念願のイザナミとの対面を果たし、
黄泉にも宮を建てていました。
そのためイザナギが来た頃とうってかわり
照明もありアンテナも立ってる快適な国になっていたのです。
「でも恐いです!スサノオ様のご迷惑になってしまうだなんて!」
しかし加害妄想に陥る彼を眼を輝かせながら見ている女神がいました、
スサノオの娘スセリ姫です。
「髪を尻尾の様に束ねてるだなんて素敵な人!」
「ひぃ!すいません
貴女はスセリビメですか?」
突然聞こる嬉々とした声その主は女神の中では大柄な体に包帯が痛々しく巻きつけられていました、
もしや父にDVを受けているのでしょうか?
数々の逸話を聞くかぎり有り得ます。
やはり恐ろしい方だとオオナムジは震えていると突然眼の前に携帯の液晶画面が突き付けられました
『おまえだなヘタレのオオナムジは』
「あら父さん」
「えっ!?この方が!?」
オオナムジは驚愕しました数々の凄まじい伝説を持つスサノオ、きっとゴツい大男に違いないて思っていたのに
まさかこんな娘や自分よりずっと小さくあどけない姿だったなんて!
『おまえのヘタレっぷりは聞いてるぜ、匿ってやるよ。』
「えっこの素敵な尻尾の方が家に泊まってくれるの!うれしいわ♪」
スセリビメはこの神に一目惚れした様です、
しかし周りに容赦なく毒舌を浴びせるスサノオにとって周りに迷惑をかけない様に怯えてばかりいるこのオオナムジを認めたくなんかありません。そこで加虐してやろうとある部屋に招待しました
『この部屋に泊まれよ、ちょっと蛇が出るがな。』
「蛇ですかあ・・恐いですけどせっかく匿ってもらったのにわがまま言う訳にはいかないし・・・」
おそるおそる部屋の戸を開けるとそこには・・・
「ひいやああああーーーッ!!!!!!」
「ちょっと出る」なんてレベルではありませんでした、
部屋の床一面足の踏み場がない程びっしり蛇がうごめいていたのです。
あまりの光景に腰を抜かし涙を浮かべているとスセリビメがクスクスと笑いながら優しく話し掛けました、
「実はこの蛇はみんな私のペットなの、頭以外全部尻尾のかわいい子達よ♪」
するとスセリビメは包帯をといてオオナムジに手渡したのです
「この子達は皆調教していてこの布を振ったらよってこないわよ、」
「わざわざすいません
ありがとうございます!」
こうしてオオナムジは蛇を布で避け安心してこの部屋で一泊する事が出来ました。
次の日は蜂が沢山いる部屋を案内されましたが尻尾のある蜂もやはり調教されていて布で払って安眠する事が出来たのです、
『スセリビメめあんな奴を助けやがって
こうなったら手助け出来ない事をしてやるぜ。』
スサノオはオオナムジとスセリビメを野原に連れてくるとかぶら矢をピュウっと茂みの中に射り言いました。
『おいヘタレ、かぶら矢を早く取ってこい!』
「は、はい!ただいま取ってまいります!」
スセリビメは草を掻き分け矢を探しに行ったオオナムジの尻尾の様な後髪に見とれていると何やらコゲ臭い匂いがしてきました、
ふと下を見るとなんと!放火属性がないはずの父がまるでカグツチの様に草に着火してるではありませんか!
枯れ草ばかりもあって火は一気に燃え広がりました。
「いやぁあああ!!父さんなんて事を!!!!!!」
『テラ燃エス!
まるでくま○りになった気分だぜ(`∀´)』
一方辺りを炎に包まれたオオナムジは慌てふためきながら再び加害妄想に陥ってしまったのです
「あぁ!ここで焼け死んだらせっかく生き返らせてくれた母様とかぶら矢を取って来る様に言ったスサノオ様にご迷惑がかかってしまう!」
自分の命に関わる自体でも迷惑をかけないよう気にし頭を抱えうつ向くと突然足元にねずみが現れこう言いました。
「内は広がっていて避難出来る、
外は狭くて火を防げる、さあ早くここを踏み抜くんだ。」
オオナムジはねずみの言う通りの場所を踏み抜くと大きな穴に落ち、
火に焼かれるのを防ぐ事が出来ました、
そうして上の熱が引いてきたのでふと見上げると先ほどのねずみがスサノオのかぶら矢を口にくわえて持って来てくれたではありませんか。
「君が探していたのはコレかい?」
「はいそれです!私ごときの命を助けてくれたばかりかかぶら矢まで持って来てくれるなんて、
何故憂いばかりの私にそこまでしてくれるんですか!?」
「憂いか、でも人の横に憂いと書いて優しいとも優れてると読める、
君は憂いがある故の可能性を秘めているからね。」
そう言うと不思議なねずみは去っていきました、自分は変わった動物に関わる事が多いなと思いながらオオナムジはかぶら矢を手にスサノオ宅に戻りました、
すると黄泉は死者の国なのに葬式を開いてるではありませんか。
オオナムジは泣いているスセリビメに聞いてみました
「あの・・誰の葬式なんですか?」
「うっうっオオナムジ様のです・・父さんが火をつけたせいで焼かれてしまって・・・・」
「私焼け死んだんですか・・・・・いえ死んでませんよ、
私は生きてかぶら矢を取ってきましたよ。」
「えっオオナムジ様!?」
先ほどまでの哀しみが一変し愛しい神が生きて戻って来た奇跡に大喜びしスセリビメは頬を赤らめ喜びました、
すると再びオオナムジの眼の前に携帯ディスプレイが突き付けられました。
『しぶとい奴だな!今日はダルイ疲れた、
寝る前に俺の髪をとけ』
「気がきかなくてすいません!」
スサノオの髪を櫛でといでいくと余程疲れたのか彼はそのまま寝てしまいました。
「調度良いわ、父さんが寝てる間に一緒に駆け落ちしましょう起きたらまた酷い事されるわよ。」
「えぇ!?そんなご迷惑かけてしまいます!」
「一緒なら平気よ、剣や弓や携帯も奪い
追って来れない様に髪を柱に結んどきましょう。」
この前の母神と同じ様な口調と目付きで話すスセリビメに押され
オオナムジはおそるおそるスサノオの髪を柱に結び付けました。
「これでどうですか?」
「アリアリアリ♪」
二人は剣や弓や携帯等スサノオの武器を持つとすぐさま外に出ました、
しばらくすると頭の妙な感触に違和感を感じたのかスサノオは起きてしまったのです。
髪を柱に縛られ剣や弓どころか携帯さえ取られている事に気付くと怒りがこみあげてきました。
しかし以前電池の残量がなくなった時の経験を生かし服の裏地に電池ではなく携帯を大量に仕込んでいたため文字化けは免れました、
それでも怒り沸騰です
早速オオナムジが持っているであろう自分の携帯にメールする事にしました
めるめるめるめる
『コ ロ ス』
しかし送信ボタンを押そうとした時、
指が止まりました。
奴には姉の様な繁栄を維持する不思議な力も自分の様な行動力もない、
常に周りに迷惑がかからない様にイライラするほど怯えるだけなのに何故娘は惚れたのだろう?
もしやあのヘタレには自分達とは別の可能性があるのか。
そう思ったスサノオは憎しみの文を消し、
全く別の文を送信しました。
『おまえが俺から奪った武器でおまえを殺した兄達をブチのめし
娘を妃にし王になれ
誰よりも加害妄想を抱くおまえなら誰よりも周囲に迷惑をかけない様に気にするこの日本の人間どもを心から理解し守れるはずだ、
これからは大いなる国の主と名乗れ、
バカヤロウ。』
あの恐ろしいスサノオが自分をここまで認めてくれるだなんて!
逃避行中突然来たそのメールにオオナムジは驚きを隠せませんでした。
その後オオナムジはオオクニヌシと名を変え
新たな国津神の王となった事は広く知れ渡りました、
八十神達はもはや自分達の手出し出来なくなった末弟に逆らうまでもなく屈服し、
祝いにヤガミヒメがやってきました。
「オオクニヌシになった今ならこのデリシャスTシャツが似合うと思うよ。」
「あら残念ね、オオクニヌシ様のファッションは私が決めてるのよ。」
「!?」
スセリビメを見たヤガミヒメは驚きました、
彼女は傷を癒すためだけの包帯を新たなスタイルとして着こなし
動物の尻尾をアクセントに用いて鮮烈な印象を与えていました。
そのセンスにヤガミヒメは自信を失い去ってしまいました、
一方オオクニヌシは新たな悩みを抱えていたのです、
「あぁ王になったら今度は恩着せがましくなってしまった!!」
「オオクニヌシ様はまさに大地の最高神でいらっしゃいますよ!
どうか私達を、
日本を末永くお守り下さい。」
人間達の熱烈な崇拝にオオクニヌシは戸惑いのあまり言いました、
「あ、あ、あなた達のために守ってるんじゃないんだからね!」
――こうして日本人にとって神様は身近な存在になりましたとさ。
絶望日本書紀 完
おそまつでした、
この話はツンデレラの影響で書いただけに
この話も加賀さんのツンデレでシメさせていただきました
皆様のご支援感謝しています
おかげでことのん以外キャラかぶりなしで書けました
キャラ配役はこちらです↓
〜八岐大蛇編〜
スサノオノミコト
音無芽留
アシナヅチ
時田
テナヅチ
糸色倫
クシイナダヒメ
糸色交
ヤマタノオロチ
木村カエレ
〜因幡の白兎編〜
オオナムジ改め大国主命加賀愛
白うさぎ
大草麻菜実
ワニザメ
万世橋渡とオタク達
八十神
糸色命と糸色景
ヤガミヒメ
木野国也
母神
新井智恵
神産巣日神
団地の奥さん
スセリビメ
小節あびる
ねずみ
久藤准
人間達
ピアス地蔵
ここまで読んでくださった方々本当にありがとうございます
>>387 乙!
スサノオは俺の嫁
次回作はどんなのにする予定?
>>388三作連続で神話的な話だったので
エロパロらしく普通にヤる話を予定しています
八十神の「絶命した!」に声あげてワロタw
望×可落とします。
・
>>306の後日談
・
>>327はパラレル
・地の文だらけ
・エロ無し
以上を前提にしてもらえると助かります
391 :
望×可:2007/12/31(月) 00:47:53 ID:f9ta743O
19時41分。
懐から取り出した懐中時計で時間を確認して、望は小さくため息をついた。
目の前には期末試験の答案が採点済みのものと未採点のものに分かれて山を作っている。
(これでやっと、半分ってところでしょうかね)
眼鏡を外し、目頭を指で揉みながら考える。
期末試験も無事終了し、今日は2のへ組の生徒達が交と遊びに
宿直室を訪れることになっていた。
自分も職員会議と期末試験の採点がが終わったら合流すると約束していたのだが、
思ったよりも会議が長引いてしまい、やっと採点を始められたのはもうすっかり
窓の外が暗くなってから。
もっとも、職員会議が予定より長引いたのは留年を繰り返している問題学級・2のへ組に
ついていろいろと話し合われたせいでもあるので望としては何も言えない。
――今年は進級できそうなんですか、って、そんなこと言われましてもねぇ……。
眼鏡を掛けなおし、盛大に赤い×印が飛び交っている答案を見て、またため息。
まぁ、確かに自分がしょっちゅう騒ぎをおこして教室を引っ掻き回すせいで
授業が遅れ気味なことは否定はしない。だが、真面目に授業をやったところで
生徒達がそれを真面目に聞くとは限らないのだ。授業中にネーム書きをしている少女やら
趣味の読書に没頭している少年やらが脳裏をよぎって
ふっと苦笑しながら1つ大きく伸びをする。
だだっ広い職員室の中には現在、望1人だった。
他の教師は皆期末試験の答案は自宅に持ち帰って採点するらしい。
が、望がそれをやろうとすると答案を持ち帰る先は勿論宿直室となるわけで。
交や霧がいるところで生徒達の答案を広げるのはさすがに気が引けるし、集中できない。
しかも、今頃は生徒達が持ち込んだお菓子だのカードゲームだので
ミニパーティー会場と化しているはずだ。
(まあどのみち、この分だと採点が終わるころには
皆さんには帰宅してもらわなければいけませんね)
霧はともかく――いや、本来なら彼女も問題なのだが――他の生徒達があまり
夜遅くまで校内に残っているのは問題だし、下校するにも危険な時間となる。
約束を破るのは若干心苦しいものがあるが、まぁ仕方が無い。
とにかく早く採点を終わらせようと、未採点の答案に目を移し――
そこで望の動きが、ふと止まる。
風浦 可符香(P.N.)
答案の名前欄に丁寧な字で書かれた、1人の生徒の名前。
『先生、大好きです』
何の前触れもなく、急に思い出す、真っ直ぐな愛の告白。
望の表情が、曇る。
392 :
望×可:2007/12/31(月) 00:53:37 ID:8ejKEGOu
風浦可符香は、自分にとって特別な生徒だと、少なくとも望はそう思っていた。
数週間前、望と彼女はお互いの好意を伝え合い、体を重ねた。
そこまでは良い。いや、社会的に問題だとかどうとか、そういうのはこの際置いといて。
ここ数日でやっと『淫乱教師、教え子中学生に猥褻行為』だの
『女子更衣室を盗撮で現役講師逮捕』だのというニュースが流れても挙動不審にならずに
落ち着いて行動できるようになった、それもまぁ、良いことだと思う。
廊下でふとすれ違う時や、授業中に目があった時、可符香がこちらに向けてくれる
にっこり笑顔が、ただのポジティブ笑顔とは違うものになった――それも
きっと自惚れではないと思える。
問題は、自分がそれに対して何も応えられていないことなのだ。
未だデートもしていないし、あれ以来口付けもしていない。
彼女の体に指一本触れていない。
それどころか、改めて好意を伝えてすらも、いない。
――赤ペンを机の上に置く。
彼女ぐらいの年頃ならば、曲がりなりにも恋人となった男性にいろいろと
求めるものもあるでしょうに。
いや、確かに時折キラーパスに近いものは感じますけど、それに表立って応えるわけにも
いかないんですけれども、あまりに余所余所しくなってませんかね、最近の私。
せめて2人でプライベートで会う時間を作るぐらいしないと、風浦さんだって
寂しがるかも知れませんし、そうでなくたってある意味体から始まった
お付き合いなんですから、ちゃんとフォローしてあげないと不安だって――
違う。
口の中だけで小さく呟く。
寂しくなっているのは、私だ。
不安になっているのも、私だ。
それをいかにも彼女のためのように言い訳するなど、相変わらず偽善者ですね、私は。
両手で頭を抱える。
だって、そうじゃないですか。あれっきり何もしてあげられてないなんて、まるで――
(ヤリ逃げじゃ、ないですか……)
頭の中に浮かんだ表現に、望は苦虫を噛み潰したような表情になった。
そういうつもりで彼女を抱いたわけでは、決して無い。いい加減な気持ちや
アリアリと流されるような気持ちもこれっぽっちも無かったと断言できる。
だが、そういう評価が下っても仕方がない行動しか取れていないということも、
情けないことに事実だった。
393 :
望×可:2007/12/31(月) 01:00:00 ID:LmVZRo4x
情けない、本当に、情けない――
「絶望した!」
「何にですか?」
「うぉわあぁあ!?」
決め台詞に間髪入れずに入った合いの手に、驚きの声を上げながら立ち上がる。
どこかで『主人公、かっこ悪い!』と高らかに笑う妹の声が
聞こえたような気がするが、振り向いた先に立っていたのは――
「風浦、さん……あ、貴女、何時の間に!?」
「嫌だなぁ、今普通に職員室の入り口から入ってきたじゃないですか」
言いながら望の隣の席の椅子を勝手に持ち出して腰掛ける可符香。
ひょいと答案を覗き込んで「あ、私のですね」などとあっけらかんと言っていたりする。
「まだ未返却どころか、未採点の答案を見るのは感心しませんよ。
他の皆さんの答案もあるわけですから」
慌てて注意すると、はいと素直な返事の後でまだ立ったままの望を
下から興味深そうに見上げてくる。
「それで、先生何に絶望してたんですか?うちのクラスの平均点ですか?」
「いえ、そういうわけでは……って、貴女もさりげなく絶望的な発言をしてくれますね」
確かにそちらもなかなかに絶望的であるが、あの会議の後ではある意味笑えない。
だからと言って素直に『貴女とのことで悩んでました』とも言えない。
大したことではありませんよ、などとごにょごにょ呟きながら椅子に腰掛け、
さりげなく机の上の答案を可符香から遠ざけながら話しかける。
「それで、何か――」
御用ですか、と言いかけた望の手元に、そっとビニール袋に入った煎餅が数枚置かれた。
「差し入れです。先生が来る頃には多分何もなくなっちゃってますから」
「ああ……ありがとうございます」
にっこりと微笑む少女に、ほんの少しだけ望の頬に朱が差した。
嬉しさと照れ臭さを誤魔化すように無意味に赤ペンを弄びながら呟く。
「何だか、申し訳ないですね。これだけのためにわざわざ」
「嫌だなぁ、気にしないで下さい。お煎餅渡すためだけに来たんじゃないんですから」
ににこにこ笑いながら答えると、可符香はくるりと椅子ごと望に向き直った。
「先生が、私に会えなくて寂しがってるんじゃないかと思いまして」
――頬の朱が、一気に広がったような気がした。
「あれ、ひょっとして正解ですかぁ?」
くすくす笑いながら悪戯っぽく尋ねてくる目の前の少女から慌てて
顔を背けて、着物の袖で顔を隠す。
「な、何をおっしゃるんですか」
「じゃあ、袖どけて下さい。顔見せて下さい」
「拒否します、断固拒否します!」
「白状しましょうよぉ先生、カツ丼ありますよ」
「あれって自腹なんですよ!そもそもこの場にあるわけないでしょーが!」
「顔、見せて下さい。先生」
394 :
望×可:2007/12/31(月) 01:04:20 ID:bGocr8Qy
可符香の手が、そっと着物の袖を握る。
「せっかく先生に会いに来たんですから」
ゆっくりと、望は袖を下ろした。
何時の間にか立ち上がっていた可符香が、一歩、二歩、望に近付く。
そのまま、すがりつくように椅子に座ったままの望の肩口に顔を埋める。
――そう、ですよね。
そっと、その華奢な体に腕を回して抱き締める。
――私が寂しくなっているのに、貴女が寂しくないわけ、ないじゃないですか。
「顔、見てないじゃないですか」
「いいんです、心の目で見てるんですから」
心の目ですか、と苦笑して、宥めるようにそっと頭を撫でてやる。
少しの間、穏やかな時間が流れる。
「……風浦さん」
「なん、ですか?」
会いに来てくれて、ありがとうございました。
寂しい思いをさせて、申し訳ありません。
言いたいことは山ほどあるのだが、とりあえず望の口から出た言葉は――
「冬休みになったら、何処かへ遊びに行きましょうか」
「遊びに、ですか?」
「ええ、年の瀬で色々と忙しいでしょうが、一日位なら時間を作れると思いますし」
そう言うと、ゆっくりと可符香が体を離し、望の顔を覗き込みながら
ぴっと人差し指を立ててみせる。
「先生、質問があります」
「ええ、何でしょう」
まず、と前置きをしながら小さく首を傾げて、少女が言った。
「それって、私と先生と2人でっていう意味ですか?」
「……さすがに私もそこまで野暮ではありませんよ」
「遊びに行くって、何処へですか?」
「何処でもいいですよ。時期が時期ですからどこも混んでいると思いますけどね」
望の返答にふむふむと頷いていた可符香が、続いてぴっともう一本指を立てた。
これでVサイン。
瞳に、悪戯っぽい輝きが灯る。
ポジティブ笑顔が、どこか小悪魔的なものに一瞬で変化した。
395 :
望×可:2007/12/31(月) 01:09:38 ID:PggWXXY5
「それって、お泊りですか?」
お泊り。
「なななな、何を言い出すんですか貴女は!」
再び顔を真っ赤にしながら叫ぶ望にくるりと背を向けて、くすくすと笑う。
「私、もう戻りますね。お手洗に行くって言って出て来たので、
あんまり遅いと何か言われちゃうかも知れませんし」
そう言うと、顔だけで望を振り返る。心なしか彼女の頬も
少しだけ赤くなっているように見えた。
「先生、採点頑張って下さいね。それと」
――楽しみにしてます。
ぱたぱたと、弾むように軽い足音が遠ざかっていく。
頬の熱を持て余したように大きく息をつき、ずれてもいない眼鏡を直す。
「全く、何がお泊りですか……」
動揺を隠すようにぶつぶつと呟きながら机に向き直り、再び答案を広げた。
大体、すぐにああやって人で遊ぶのが彼女の悪い癖です。
まあ、そういうところも可愛い部分ではあるんですが……それにしたって
お泊りだなんて、女子高生が軽々しく男性に対して使う言葉ではないでしょうが。
意味が分からなくて使っているわけではないでしょうに。
いくらそういう関係になったとは言え、幾ら何でも当然のように
一晩一緒に過ごすと言うのは……。
……一晩……ずっと……一緒に……。
「――絶望した!誘惑に負けそうな意思の弱さに絶望した!!」
職員室から聞こえてきた叫び声に、廊下を歩いていた可符香はくすくすと笑い出し――
「嫌だなぁ。せっかくの初デートの日に、帰してあげるわけないじゃないですか」
そんなどこまでも楽しそうな呟きを、こっそりと漏らした。
何よりも、エロ無しでごめんなさい。
もし次作書くとしたら入れたいんだけど……先生がどうしても
寸前でへたれる件をどうにかしたい。
エロパロ板のみんな、良いお年を。
>>396 もう、なんて言うか、妄想や煩悩が全壊で漏れ出す先生がすごく萌えるんですけどw
誘惑するツボを知り尽くした顔で平然と突きまくるような可符香の言動が、もう、何とも言えないw
すごかった。
>>396 貴方のせいで良い年にならざるをえない。ハァハァGJ。
自分の理想の望×カフカだコレ。否応なしに口元緩みっぱなしですよえぇ。
来年も全裸で投下をお待ちしております。良いお年を!
>>396 GJ!!!! ツボすぎて再び転がり回ってます
この感動を上手く表現できないのがもどかしいが、
あなたの書く望カフは2人とも可愛すぎて理想的
次作も期待してます
400 :
305:2007/12/31(月) 02:34:22 ID:9cphwHZl
お疲れ様です。
投下ラッシュのさなか、私も投下させてください。
風邪ひいて寝ているときに走馬灯のように駆け抜けた妄想ですがw
奈美+短編+微エロ・・・かな? 一応エロ無しです。
では、お願いします。
時計の針は、もう昼を回った時刻を指していた。
もぞもぞと動きながら手を布団から出して額に当ててみる。
「んん・・・・・・・・・クスリが効いたかな? だいぶ楽になってきたような。」
だるそうにゆっくりと半身を起こして、枕元のお盆に置いてある体温計を手で掴んだ。
「・・・しかし、ヒマだな〜 学校終わったら、誰か見舞いにでも来てくれないかな・・・・・・」
ひとり言を呟きながら体温計を口にくわえる。
何気なく窓の外に目をやり────
ぶっ!
奈美は口から勢いよく体温計を吹き出してしまった。
飛び出したそれは畳の上を滑り、窓のすぐ下まで転がって止まる。
「・・・せ、先生!?」
「ほほう・・・ 不登校で、病人の振りまでしているとは、手が込んでいますね・・・・・・」
カラカラと窓を開けながら話しかけ、先生は手を伸ばして畳の上にj転がっている体温計を拾い上げる。
「平熱ではないですか!? やはり仮病だったとは、まさしく普通!」
「ふつうって言うなあぁ!!」
少し潰れた声で叫んだ奈美をよそに、先生は窓枠に足をかけて身軽に部屋に飛び込むと窓をしめた。
「何なんですか一体!? 授業は!?」
「ははは、ズル休みされたいけない生徒さんを家庭訪問に来たのですよ。」
体温計をおちょくるように左右に振って見せながらそう宣言すると、奈美の顔が引きつった。
「だれがズル休みだあ!! 今、計ろうとした所なのに、熱なんか分かる訳ないだろ!?」
聞こえているはずだろうが全く耳を傾ける様子も無く、先生は奈美の枕元に腰を下ろした。
首に括っていた風呂敷を解いて、なにやら中身を取り出してゆく。
「まあ、話を合わせてあげる事も教師のつとめ。見舞いらしき事をしに来ましたよ。どうせ、暇を持て余し
ていたのでは無いのですか?」
相変わらず引きつり顔のまま、奈美は溜め息をついて、
「まあ、そうだけどさぁ・・・・・・ 今日、うちの親も帰ってくるのが遅いし、誰か見舞いにきてくれないかな
ー・・・・・・って思ってたとこ。」
「ああ、不登校が再発、という事にしてありますから。見舞いは来ないかと。」
「は!? なにするんですかぁ!?」
口を曲げて苦情の声を上げた奈美だが、先生は笑って流し、風呂敷の中から取り出したタッパ−を奈美
の前へと差し出した。
奈美は首をかしげてそれを見つめる。
「なんです? これ?」
「私からの差し入れですよ。・・・・・・あ、ちょっとレンジをお借りしますね。失礼して。」
さっと立ちあがり、奈美の返事も待たずに先生は部屋から出ていってしまった。
(・・・何だかんだ言って優しいじゃない。・・・もしかして手作り? 何かな?)
やがて遠くの方でチ−ンと音がして、先生の戻ってくる足音が聞こえてきた。
だが、気配が近づくにつれ、奈美の顔色が変わってくる。
漂うこの異臭は、間違い無く廊下の先から近づいてくる物だった。
「・・・何、この、古い天ぷら油を焼いたような臭いは・・・・・・?」
やがて、先生が部屋の中へと戻ってきた。
再び、奈美の枕元へ腰を下ろすと、おもむろにタッパ−のフタを開ける。
「うっ・・・・・・!?」
湯気と共に広がる何とも言えない油ぎったそのカオリに奈美は顔をそむけた。
「ちょ・・・何ですかコレ!?」
「ウナギの稚魚を、秘伝のタレとオリーブオイルでとじた物ですよ。糸色家では、代々伝わる風邪の特効
薬だった気がします。」
「気がしますって!? ・・・なんか、目にしみるよコレ!!」
「まあ、召し上がれ。」
慌てる奈美をよそに、先生はレンゲでその異臭漂う物体を一すくいして奈美へと差し出した。
間近で見るその煮崩れた茄子のようにドロリとした塊と、嗅いでいるだけでお腹が一杯になりそうな異臭
に奈美は仰け反り気味に後ずさりする。
「い・・・・・・私、ちょっと、これは・・・・・・」
レンゲを差し出している先生の顔があからさまに悲しそうに沈みこんだ。
「・・・そうですか。・・・丹精こめて作ってきたのですが・・・・・・」
その一言に奈美の顔が引きつる。涙を滲ませた目を閉じてレンゲをくわえた。
その物体は、つるりと口に入り、数回咀嚼して息を止めて飲みこむ。
「どうですか?」
「・・・すっ・・・ごく・・・くどい・・・! 胃にもたれそう・・・!」
奈美の感想に先生はにっこりと微笑む。
「さあ。どんどんやって下さい。全部食べないと効き目がありませんから。」
「いや、もういいって! ちょっと、まっ───っぐ!?」
餌をもらうヒナ鳥よろしく、口を開いたスキに次々と差しこまれるレンゲに奈美は目を白黒させている。
喉ごしだけは良いので、つるっと入ってしまい、気が付くといつのまにかタッパ−はカラになっていた。
「うう・・・・・・なんか、嫌な汗が出てきた。」
「体が温まった証拠ですよ。景兄さんが開発された秘伝の薬の効果です。」
奈美の動きが止まり、その頬を汗がひとすじ伝う。
「・・・今・・・何て?」
「ああっと! もう一つ持って来たものがありましてね・・・・・・」
「聞けよ! 人の話!」
涙目で訴える奈美に構うことなく、先生は再び風呂敷の中をごそごそと探り、得意げな顔でそれを取り出
した。
「まあデザート替わりになるかと思いまして・・・・・・桃缶を持ってきてあげましたよ。」
ゴトッ、と重い音を立てて取り出した桃の缶詰を三個程、奈美の目の前へと積み上げた。
奈美はもう抗議を諦めたのか、疲れた顔でその縦に積まれた缶詰を眺める。
「・・・なんで桃缶なんですか?」
「風邪っぴきには桃缶と、太古の昔より決まっているではありませんか。」
「そうなんですかぁ? ・・・・・・まあ、さっきのクドいヤツの口直しにはちょうどいいかも。」
疲労したような表情の中に、ようやく奈美は少し笑みを浮かべた。
「ではさっそく開け・・・・・・ あああっ!?」
「え!? どうしたの?」
突然叫び声を上げて、大げさに髪を掻きむしった先生に奈美は驚いた声を上げた。
先生は頭を抱えうずくまるようにしていたが、突然、ひょいっと顔を上げて無表情に告げる。
「缶切りを忘れてきました。」
「いつの時代の桃缶だぁ!! って言うか、嫌がらせだろ!? 嫌がらせにきたんだろ!?」
泣きそうな顔で叫んで、奈美は疲れたのか横になって布団を被ってしまった。
「・・・おや、ふて寝してしまうとは普通ですね。」
「ふつうって言うなあ!! もう! ・・・缶切りならキッチンにありますよ!」
「ははは。では、ちょっとお借りするとしましょうかね。」
しれっとした顔で笑いながら、先生はいそいそと桃缶を抱えて部屋を出ていった。
「・・・あ〜もう。喉イタイし・・・疲れた・・・。」
奈美は布団から仰向けに頭だけ出して、ふう、と息をついた。
「何か・・・暑いな・・・・・・ もしかして、あの変な料理のせいか?」
段々と額に噴き出してきた汗を、パジャマのそでで軽く拭う。
「暑っ・・・・・・ ん・・・よっと!」
寝たまま足を伸ばし布団を跳ね除けて毛布一枚に包まった状態で、奈美はようやく落ち着いたかのよう
に目を閉じ、やがて静かに寝息を立て始めた。
「やれやれ・・・・・・よく考えれば、缶切りを使うなど子供の頃以来でした・・・ すっかり手間取ってしまい
ましたねぇ・・・」
ぶつぶつ呟きながら勝手に使わせてもらった小鉢を木の盆に乗せ、ドアを開け奈美の部屋へと入った。
「はい。お待たせしまし・・・・・・」
部屋へと一歩を踏み入れ、横になっている奈美の方を向いた先生の動きが瞬時に凍り付く。
よほど暑かったのだろう。布団どころか毛布まで跳ね除け深い寝息を繰り返している。
それだけならば良いのだろうが、寝ながら脱ぎ捨ててしまったらしきパジャマのズボンは足元に丸められ
た状態で、かろうじて片足の足先だけが通されていた。
少し大きめのだぶついたパジャマのおかげで、その裾に隠れギリギリ下着までは見えてはいないが、無
造作に投げ出された奈美の白い脚が少し動いただけで、それは簡単にはだけてしまうだろう。
「ひ・・・日塔さ・・・・・・!」
当の奈美は口を半開き状態で熟睡し、起きるような気配は見せない。
そして、下手に起こしては状況を悪化させると刹那に判断し、先生は出しかけた言葉を飲みこんだ。
機械のようにぎこちない動作で傍らの勉強机の上へとお盆を置き、音を立てないようにじりじりと移動し
て跳ね除けられた毛布を掴んだ。
そっと広げ、足先からゆっくりと被せてゆく。
奈美がいつ身じろぎでもしてむき出しになってしまわないか冷や汗をかきながら───自然と視線が張
りのある腿の部分を見る事となってしまい、先生は目の焦点を合わせないようにして毛布をかけてゆく。
──腰の所まで毛布で覆ったところで、毛布の感触が不快だったのだろうか奈美が一つ身じろぎをした。
一瞬先生の顔に緊張が走ったが、何とか間に合った事に胸を撫で下ろして、ズレてしまわないように足
先で端を踏んで全体を整える。
「んん・・・・・・」
奈美は小さな声を出してもぞもぞと片手を動かしながら、上着の裾から手を入れてお腹の辺りを軽く掻い
た。
その奈美の姿に、先生は思わず吹き出しそうになるが口を押さえて懸命にこらえる。
「・・・オヤジですか・・・! あなたは・・・」
くぐもった小声で言い、笑っていた先生だったが、次の瞬間、一気に顔が青ざめる事となった。
やはり、汗ばんでいて不快なのだろう。パジャマの中で体をこするようにしていた手を、無造作にグイと胸
元まで移動させてしまったのだ。
当然パジャマが裾からめくれ上がり、その肌が露わとなった。
声にならない悲鳴を上げ、先生は僅かに後ずさる。
奈美の手は自分の胸の膨らみに当たって止まりはしたが、下着を着けていないままの、その丸みの部分
が下半分を裾から覗かせてしまい、ここからでも形の良さが分かる。
あとほんの少し、また奈美が身じろぎすれば、その柔らかそうな膨らみが隠されている部分まで全て露出
してしまう可能性は極めて高い。
その光景に釘付けとなっていた先生の中で、極限状態に達した何かが音を立てて切れた。
「だあああっ!!」
突然大声を上げると共に傍に跳ね除けてあった布団を一気に持ち上げ、叩き付けるように奈美に被せた。
「うぉ、ぶっ・・・!?」
さすがに飛び起きた奈美は顔だけを端から出した状態で目の前に立つ先生に気が付く。
「何するんですかぁ!?」
「あなた、普通に私を苦しめるのですか!!」
「何の話だあ!?」
訳の分からないといった顔のまま起き上がろうとした奈美の両肩あたりを反射的に先生は突き飛ばすよ
うに突いて布団に押しつけた。
奈美は枕でちょっと後頭部を打ち、痛そうに顔をしかめる。
「何なんですか!?」
「ご自分の格好を見て御覧なさい! ハレンチな!」
一瞬、キョトンとした奈美だったが、がばっと布団をめくって中を覗き込むとその顔が見る見る赤く染まっ
てゆく。
「ち・・・・・・チカン!? 犯罪です!!」
「だれが痴漢ですか!!」
「ひとが寝てる隙に何てことするんですかぁ・・・・・・!」
半べそをかきながら布団を引っ張り顔を隠す奈美に、先生は困ったように少し眉を寄せた。
「いや、私は何もしていませんから! あなたが無意識にやったのでしょう、普通に。」
「ふつうっていうなあ!」
涙目で叫ばれて、先生は一つ溜め息をつく。
「―――以前、私に見られても何とも思わない、とか失礼な事を言っておきながら何ですか・・・」
「だからって、こっそり見られるのは嫌ですよお!」
少し落ち着きを取り戻してきた先生は、しゃがんでパジャマのズボンを拾い上げ、差し出した。
「・・・では、堂々となら良いと?」
差し出されたズボンを、のろのろと片手を伸ばして受け取りながら、奈美は少し首をかしげ、
「それも嫌かな・・・」
「何なんですか一体。」
再び溜め息をつく先生の前で、奈美は布団の中でごそごそとズボンを履いているようだった。
「と・・・とにかく! 誰にも言わないで下さいよ!?」
「こんな事、人に言えるわけが無いでしょう? 日塔さんに露出癖があるなんて。」
「そんなもん、あるかあ!!」
こめかみに血管を浮かび上がらせ、切れた奈美は立ち上がりざまに先生の襟首に勢いよく掴みかかる。
―――が、とたんに眩暈をおこしたようすで頭をぐらつかせ、糸が切れた人形のように力のない動きで先
生の方へと相手を巻き込みながら倒れこんだ。
「痛ったー・・・」
鈍い音がした。―――先生の顎に頭突きを喰らわせるような格好で二人はもつれて倒れている。
ひたいをさすりながら頭を起こすと、すぐ目の前に、奈美の一撃をもらって伸びているのか目を閉じた状
態の先生の顔があった。
自分の全身を相手の体に預ける形で、二人は奈美が押さえ込むような姿で密着し、重なりあっている。
微かな吐息も感じられるほど間近にある先生の顔。
体の面積のほとんど触れ合わせた相手から伝わってくる体温。
奈美の頭の中が真っ白になってゆく。
熱に浮かされたような表情で瞳を潤ませながら、先生の唇に触れようとして自分の顔を近付けて行く。
胸は早鐘の様に打ち続け、二人の唇が触れ合う、―――その寸前で、突然先生が目を見開いた。
「・・・・・・・・・!」
お互いに相手の瞳に映った自分の姿が見えるほどの近距離で、その動きが止まった。
先生の顔から見る見る血の気が引いてゆく。
「・・・ぜ・・・絶望した!! 普通だと思っていた子がこんなにも積極的だった事に絶望した!!」
「ち・・・ちが・・・・・・これは、事故・・・!」
どうやら喉の腫れがひどくなってきたらしく、奈美の口からでた声はひどく擦れている。
満足に声が出ないらしい奈美を見て、先生はいつもの表情に戻り小首をかしげながらそっとその額に手
のひらを当ててみる。
その目が驚きで見開かれた。
「何ですか!? すごい熱です! まるで風邪でもひいているみたいではありませんか!?」
「・・・まだ、いうか・・・・・・」
苦しげに呟いて、ふと、奈美は先生が少し困ったような顔で自分に送っている視線の先をたどる。
そこは自分の胸元。
広がった作りのパジャマの襟がはだけ、先生に圧し掛かって押しつぶした感じになったその膨らみは、く
っきりと深い谷間を作っていた。
顔を真っ赤にして、先生の顔面を向こうへ押しやるように手のひらを乗せる。
「みるなあ・・・・・・! 言われなくても、どきます・・・!」
奈美は体を起こそうとしたが、力が全く入らないのか、ガクリとバランスを崩して真横に転がってしまった。
「うー・・・・・・」
「しかたがないですねぇ・・・」
転がったまま唸っている奈美を見かねたのか、先生はその背中と脚に手をまわして体を持ち上げた。
「重っ!!」
はっきりと大きな声で叫ばれ、奈美は何か言いたそうな顔で先生を睨む。
どさっ
やや、乱暴ともとれる音を立てて奈美の体を布団の上へと横たえ、毛布を掛けて布団を被せる。
特に文句を言うわけでも無く、荒い息をついたまま目を閉じて、その顔は熱を帯びているせいで朱に染ま
っている。
しばらくすると、呼吸が落ち着くとともに眠りについたのか、荒い息は静かな寝息へと変わっていった。
「眠ってしまったようですね・・・」
ぽつりとした呟きにも反応は無く、先生はやれやれといった風に肩をほぐす様な仕草をして、騒ぎでズレ
てしまったメガネを直した。
布団を掛けなおしてやり、寝ている奈美の横にそっと腰を下ろしその寝顔を眺めている。
額にうっすらと汗を滲ませ、眉毛は力無くハの字に垂れて、唇を少し開いて不規則な寝息を立てていた。
苦笑とも微笑ともとれる笑みを浮かべ、先生は頬の辺りを指で軽く掻く。
「弱っている日塔さんは可愛らしいのですがねぇ・・・・・・」
ボソリと小声で呟いた。―――ふと、熱で赤くなっている奈美の頬がさらに赤みを増したように見えた。
先生はそれに気がつかなかったのだろうか、音を立てないように静かに腰を上げて立ちあがる。
そろりそろりと窓の方へ向かい、窓枠に手を掛けた時、
「絶望・・・・・・」
背中側から聞こえた声に思わず振り向くが、奈美はそこで相変わらず寝息を立てているだけだった。
「普通の寝言ですかね・・・・・・?」
誰にとも無く問いかけるような言葉に、奈美の顔が一瞬だけ引きつったように見えた。
先生は顎に手をやり、首をかしげてしばし考えをめぐらせる。
「・・・そういえば、まだ桃を食べていませんでしたね。・・・日塔さんは寝てしまいましたし、私が頂いてしま
いましょうか。」
返事は無く、奈美の口元が微かに微笑んだ形を見せたようだった。
(ん・・・・・・あ・・・ああ、寝ちゃってたんだな・・・あ・・・ ええ!?)
眠りから覚め、目を開けようとした奈美はそのまま動けなくなってしまった。
(こ・・・この感触って・・・もしかして・・・)
自分の体は横を向いているのだが、本来なら何も無いはずの両腕の間に、何やら大きな物体が存在し
ている感触がある。
奈美はそれを抱きかかえるようにして眠っているらしかった。
そして自分の肩に乗せられた物は、体を包むように背中へと回された腕だろうか。
(おちつけ・・・・・・! おちつけ・・・・・・)
目を開ける事も体を動かす事も出来ずに、奈美はただ困惑し、頭の中でその言葉を繰り返し唱えつづけ
ていた。
(・・・うん、大丈夫。・・・変態! とか言っちゃえばいいんだ。・・・よし!)
心を決め、おそるおそる薄く目を開けてゆく。
日は沈み、照明をつけていない部屋の中は薄暗く、すぐには窓の輪郭くらいしか判別できない。
自分の隣には、確かに、ひとかかえ程もある大きさの物が横たわっている。
(・・・で・・・でも。・・・もうちょっとだけ! あと少しだけ。)
奈美は硬直した腕に力を込め、それをしっかりと抱きしめようとして、
「・・・へ?」
思わず声を上げてしまった。
想像した以上に柔らかい感触と、その表面のふわふわした手触りは人の服や肌などでは無い。
薄暗闇の中、少しづつ暗さに慣れてきた目に飛び込んできたもの。それは、
「ぬいぐるみかよ・・・!」
子供くらいの大きさをした皇帝ペンギンの縫いぐるみ。それを抱き枕のように抱えていたのだった。
「ふう・・・ 何だか私、ばかみたいじゃないかぁ・・・・・・」
安堵感からか力が抜け、肩にかかっていた縫いぐるみの前ヒレをどけて、あらためてその姿を確認する。
幾何学模様にもみえるデッサンのペンギンの顔を見て、奈美は少し吹き出してしまった。
気がつくと、いつのまにか熱もひいているようで、体も楽になったように感じられる。
「・・・風邪っぴきも、たまにはいいかもね。」
つぶやいて、縫いぐるみをギュッと抱きしめる。
「・・・もう少し寝るか。」
奈美はペンギンに軽く口付けをして、目を閉じる。
そんな自分に照れるように頬を赤くして、微笑を浮かべた顔を布団の中へと埋めた。
407 :
305:2007/12/31(月) 02:48:47 ID:9cphwHZl
おそまつでした。
皆さんも、風邪やN-ウィルスなどには本当にお気をつけて!
では、また。
良いお年を!
年の最後に神が光臨するとは!
なんという投下の嵐…とても良いものを読ませてもらいました!GJ!
410 :
あにいもうと。:2007/12/31(月) 19:30:42 ID:5rHvcIVB
「これは……いったい」
望宅のこじんまりとしたコタツに、明らかに身の丈以上の料理がずらりと並んでいた。
「あら、おかえりなさいませお兄様」
立ち上る匂いの元、台所には着物に割烹着姿の妹・倫。
予期しない登場に望は慌てるも、よくよく考えればいつものこと。この見返り姿もなんだか随分見慣れた気がする。
「これは何事ですか? 倫」
「何事って、おせち料理以外の何物でもありませんけど?」
「いや、そんなことはわかってます。なぜ」
なぜ私の家でやるんですか。望がそう言おうとするよりも早く、倫はくすりと笑みを見せて。
「だって、お兄様はしっかりしていませんから」
◇
別に正月なんていいじゃないですか。どうせまた絶望の一年が始まるだけです。
だから明けたところで何もめでたくないんですって。今年もロクな年じゃありませんでしたし。
「お兄様、表情が硬いですよ。美味しくないですか?」
「あぁいや、そんなことはないですが」
思うことが顔に出ていたようで、望は慌てて取り繕う。どこか癪であるけれど、倫の手料理は美味しいと言わざるを得ない。
「おせち料理は腕を揮いましたから、明日を楽しみになさってください」
「……おせち、ねぇ」
めでたくもないのに色とりどりの華やかな料理の数々。
「何もそこまでして祝わなくてもいいじゃないですか。明けても何もめでたくないというのに」
やれやれといった顔つきの望に、倫は目を丸くしていた。が、それもすぐに笑みへと変わり。
「お兄様、おせち料理は祝いの意味だけではありませんよ?」
「え?」
「年明けの三が日に女が料理をしなくてもすむように、という意図もあるんです」
今度は望が目を丸くする。言われてみれば成程、道理であると。
「だから、お兄様」
それは変わらぬままの笑みのはず。しかし、望の背中には何かがぞくりと粟立った。
「――年明けは、私のお相手をしてくださいね?」
411 :
名無しさん@ピンキー:2007/12/31(月) 19:34:33 ID:5rHvcIVB
やっとこのスレに投下できた・゚・(ノД`)・゚・。
だがなんの予告もなしにやってしまった。今では反省している。
皆様よいお年を。
来年も絶望しよう!!
なんというラッシュ(*´∀`)
オナってダーリン
職人の方々のおかげで幸せな大晦日です
おせち吹いたwwwwwwwwwww
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
今年はソフトでリリカルなSSを書くのを目標にしたいと思います。
そんな訳で、クリスマスに投下しそこねたネタですが望×奈美ものの短いのを一つ出します。ソフトなので本番はないです。どうぞご了承を……
「日塔さん……それじゃ歩けないでしょう。さあ」
「先生……」
望に対抗意識を燃やしたはいいものの、意図した結果が得られない上にあちこち怪我をしてしてしまった奈美。
皮肉にも、そんな奈美に手を差し伸べたのは当の望本人だった。
「いえ、いいです。……痛っ」
「ほらほら…足の裏に何かトゲが刺さってるし、そっちの足首はくじいてるみたいですよ。
それじゃあ歩けませんから。……はい」
「でもぉ……恥ずかしいですよぉ」
「暗いから大丈夫ですって。さあ」
「はぁ……」
こうして奈美は望に背負われた。
「ちょっと宿直室に寄っていきましょう。消毒してから絆創膏を貼らないと。それから湿布も……」
☆
「さ、どうぞ」
宿直室に戻った望は、奈美を背中からゆっくり下ろし、腹這いにさせた。
ストーブをつけると程なく部屋の中が暖かくなった。
ポットにはもうお湯が沸いているようだった。
こたつの上にあったメモを一瞥し懐にしまうと、望は救急箱を持ち出してきた。
そして奈美の足の裏のトゲを抜き、消毒してから絆創膏をぺたぺた貼った。
その後四つん這いにさせると、もう片方の足首には湿布をぺとりと貼った。
「ひゃっ」
「冷たいですか? まあ我慢して……あれ?」
望は、自分の目の前に突き出された奈美の魅力的な尻に目を遣った。
「そこ破れてるじゃないですか」
すぐに丸いヒップを覆うジャージに歯形が付いていることに気がついた。
「……失礼」
「ちょ、ちょっとぉ!」
奈美に構わずジャージを膝まで下ろすと、案の定ピンクのぱんつも破れている。
そしてその奥にある白い肌にも歯形が付き、所々血がうっすら滲んでいるのが見え隠れしている。
望は眉を顰めた。
「これはいけませんね」
望はもじもじしている奈美のぱんつも膝まで下ろすと、お湯で湿らせたタオルで傷口を優しく拭いた。
「先生……は、恥ずかしいですよぅ……」
「バイキンが入ったら大変ですから、こちらも消毒してあげますね」
「はぁ、でもぉ……ひゃうっ!」
奈美の言葉が突如中断された。望が傷口を舐め始めたのだ。
「せ、先生……あん……」
――ちろちろっ……ちろちろっ……
望は犬のつけた歯形の跡に沿って優しく舌先を這わせた。
そして傷穴から毒を吸い出すように、ちゅっちゅっと小さな音を立てながら奈美のヒップに甘くキスをした。
「あ……ん……んっ……」
奈美はくすぐったさがやがて微細な心地よさに、そして柔らかな快感に変わっていくのを自覚した。
背筋が一度ぴくっと震えた。
思わず小さな喘ぎ声が漏れてしまうのをどうしようも出来なかった。
――相変わらず可愛いお尻ですね……
ここで望が次の行動を起こした。
「軸ぶれ」モードに突入したと言ってもいいかもしれない。
傷口を舐めながら、指で奈美のあそこをイタズラし始めたのだ。
「あん! 先生、や……ダメですよぉ」
「しーっ! 大きな声を出すと誰か来ちゃいますよ」
「そ、そんなぁ……んうぅ……」
奈美の浅瀬で指を蠢かしていると、やがて微かにぴちゃ、ちゅく、と水音がしてきた。
これに気を良くした望は、もう片方の手をサンタコスの下に差し入れ、ブラをずらすと柔らかな胸を揉み始めた。
「あん、あぅ……先生……せ、それ……」
奈美はたまらず弱音を吐いた。
一度に三カ所を攻められ、逃げ場のない奈美は、ただ望の手指に連れられて絶頂への階段を徐々に登っていくしかなかった。
望は、奈美の抵抗がほとんどないのをよいことに、久しぶりとなる奈美の若い肢体を堪能した。
☆
望が奈美にのし掛かってきた。
――え? こ、このままされちゃうのかな?
奈美は快感に痺れた頭でぼんやりそう思った。
だが、望はますます両手指の動きを激しくしながら、突然奈美の項にきつく接吻した。
「ひゃうううん!」
奈美は思わず甘い声で鳴いた。
いつの間にか、奈美の中に望の中指が差し入れられ、親指で敏感なところを優しく転がされていた。
――くりくり。……くりくりっ……
「あん、あん!……ふぁ……んうぅ……やぁん」
奈美の乳首がきゅうっと摘まれ、くにくにっと揉み込まれた。
たまらず奈美は望の中指をきつく締め上げた。
「先生、せんせ……あぁ……もう、も……いやあああん!」
髪の毛をかき分けてきた望の暖かい唇で耳に接吻されながら、下の突起を指の腹で優しく押しつぶされると、奈美はついに四つん這いのまま高みに達してしまった。
「はあぁ……あぅ……」
望に全身を抱きすくめられた格好になっているのを幸せだと感じながら、奈美はふっと気を失った。
☆
☆
「じゃあ、お家まで送りますよ」
「……はい……」
望の指技に陥落し力が抜け、奈美は相変わらず歩けないままである。
ジャージに穴が開いていては困るだろう、と望は自分のジーンズ――木野ほどではないが、未来度はかなりのものだ――を穿かせ、再び教え子を背負って家まで送ることにした。
奈美の家の近くまで来たとき、不意に望の背中で奈美が口を開いた。
「先生」
「ん?」
「私、そのぅ……凄いことされちゃいましたよね」
「……はあ……まあ」望は曖昧に相槌を打った。
「……普通の女子高生は、先生にあんなことされませんよね」
「……はあ……ま、まあ……」望は言いよどんだ。
「二人だけの秘密ということで、なんとか……特別ですよ、特別」
「……特別、かぁ」
奈美はしばらく考え込んでいたが、やがてにっこり微笑んだ。
「特別なら、まあ……いいかな…………あ、ここでいいです」
奈美は自宅の門の脇の塀に手をかけ、ゆっくり担任の背中から下りた。
「先生」
「ん?」
奈美が小声で言いにくそうに、だがはっきりと口にした。
「特別ついでに、そのう……もっと特別なことをしてください」
「ふうむ……では」
望は腰を屈めると、奈美の額と頬にちゅっちゅっと軽く接吻した。
奈美はびっくりしたような、幾分不満そうな複雑な表情になった。だが、
「ちゃんとしたのは、また今度……続きを、ね!?」
望に耳元で囁かれ、奈美の頬がバイトで着ていたサンタの衣装の色に染まった。
「はい……」
「じゃあ、おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
――私、特別な人になったんだよね……
帰って行く望の背中を眺めながらも、奈美の頭の中にこんな想いがぐるぐると渦巻いていた。
だが、今は冬の夜である。
「へぷしっ!……ぶるるっ」
くしゃみを一つして寒気で震え、ようやく我に返った奈美は、親に「特別なできごと」を気取られないよう、ゆっくりと家の中に入っていった。
「ただいまぁー」
☆
☆
宿直室のコタツの上にあったメモは霧からのものであった。
「お風呂に入ってます あとでまた来るね きり」
今晩奈美を宿直室に泊めることが出来なかったのも、最近霧が泊まり込むことが通例になっているからだった。
霧が長風呂の質なのが幸いして、奈美にイタズラしている時に霧が戻ってくる、というカタストロフィは免れることができたのだが……
奈美を送ってきた望を、果たして霧が宿直室の前で待ち受けていた。
風呂から上がり宿直室に直行した霧は、自分以外の女性がテリトリーに侵入したのを勘で察知したのだった。
その晩、霧はいつも以上に情熱的に燃え上がった。絶棒――いや、望の全身を甘く締め上げ、オシオキと言わんばかりに年上のイタズラッコのエキスを幾度となく搾り取った。
――[完]――
以上です。
WILLCOMの人がじわじわと増えてきていて、嬉しく思ってたりします……
>>422 先生になすがままな奈美にニヤつきながら読んでいる自分に気がついたw
元旦からこんな良いものが読めたなんて、幸せ過ぎるー!
なみ平かぢり虫になりたい
奈美ちゃんサンタコスで…ゴクリ
WILLCOMイーネ!
姫初め!姫初めを所望する!
************** 姫初めって ****************
「あ、ああ……先生……」
自分の腕の中に閉じ込めた少女の喘ぎ声に、望は僅かに目を細める。
正月に相応しい艶やかな晴れ着姿の可符香だったが、極彩色の帯は既に解かれて床に落ち
着物の襟も大きくはだけられて片方の肩が露になっている。
そんな可符香を後ろから抱きすくめるようにして胸元に手を入れ、直接胸を愛撫しながら
そっと耳元で囁く。
「和装の時に普通の下着を付けるのは感心しませんね。胸の形が綺麗に整いませんよ」
「んっ……はぁっ、あぁ……」
からかう様な口調に応える余裕もないのか、ただ
望の腕にしがみつくようにして震える可符香。
固く勃ち上がった先端をきゅ、とつまむと、一際甘い声と共にその体が跳ねた。
「まぁ、きちんと着こなされた晴れ着も綺麗ですけど……
今の乱れた姿もとても魅力的ですよ、風浦さん」
囁く声はどこまでも優しく。しかし少女を責める手は止まらぬままに。
「せ、せんせ……あっ……ん」
可符香の華奢な体が震え、悶えるたびに、腰紐だけでかろうじて形を留めている晴れ着が
少しずつ確実に乱れ、着物と襦袢の下の白い肌が姿を現してくるのをじっくりと楽しむ。
だが。
「せん、せぃ……もぉ……」
必死でこちらを振り向くようにして、快楽に赤く染まった顔で可符香が囁いてくる。
「――仕方、ないですねぇ」
ゆっくりと胸元から手を引き抜くと、そっと可符香の体を横たえた。
「ぁ……先生、晴れ着、汚れちゃいますよ」
「ええ、そうですね」
言いながら、膝くらいまではだけた晴れ着の裾から手を入れてゆっくり内股をなで上げる。
「ひゃっ……あぁ……」
「貴女が我慢が出来ないようだと、染みくらい出来てしまうかもしれません、ね?」
「ふあぁ、あぁん!」
からかうように囁き、下着の中にそっと指をしのばせる。望を求めて蜜を溢れさせるそこを
優しくかき回すように指を動かし、可符香のあげる甘い悲鳴を楽しむ。
「あ、あぁっ……先生、いとしきせんせいっ……」
きつく目を閉じてうわ言のように自分の名前を呼ぶ少女の首筋をそっと舐め上げ、
その呼び声も喘ぎ声も全て手に入れようとするように小さな唇に口付けた。
************** こんなのですよね ****************
「――みたいなのが所望されてるみたいですよ、先生」
「新年早々何て捏造フラグを立ててくれるんですか貴女は!」
「嫌だなあ、需要に応えた適切な供給ですよ」
「結局妄想で、しかも寸止めじゃないですか!応えたことになってません!」
「別に妄想にも寸止めにもしなくていいじゃないですか。しないんですか?姫初め」
「な、ああああ貴女はまたそういう発言をして私で遊ぶつもりですね!
大体、貴女一人で晴れ着を着付けられるんですか!?」
「先生が着せてくれればいいんですよ」
「……女物の着物の着付けなんてできませんよ」
「そうなんですか?」
「見よう見まねでそれらしくはできるかもしれませんが、
元通りにちゃんと着せるのは無理ですね。帯の結びなんかも知りませんし」
「そうですか、残念です。それじゃ晴れ着での姫初めは来年までお預けですね。
今年一年で私が着付けをマスターしますから安心してください」
「来年はするつもりなんですか」
「したくないんですか?晴れ着ですよぉ、乱れた着物で姫初めですよぉ」
「……………」
「考えるってことは先生も興味があるってことですよね。
それでは今年の目標が1つ増えたところで、先生とちゃんと姫初めできるように
一度帰って洋服に着替えてきます。待っていてくださいね、先生」
「んなっ、ちょ、風浦さ……!
……ぜ、絶望した……わりと真剣に検討してしまった自分に絶望した……」
こうですか!わかりません!
あけましておめでとうございます。今年も絶望しよう!
>>428 新年早々アヘアヘしてしまったじゃないかGJ!
情景が浮かぶようでいやらしくもほほえましい。
430 :
代用の季節:2008/01/03(木) 15:17:04 ID:3m6njUfV
奈美「あー、この人年賀状出してなかった・・・余った年賀状も無いし、返事はメールでいっか」
望「今、代用しましたね!!」
奈美「何ですか新年早々!!」
望「世の中、本物を使わず代用品で済ます人が増えています!
身近な例だと、今年私に来た年賀状の内、半数以上はメールでした!
誰 と は 言 い ま せ ん が ね !
こっちはあんなに凝った物を手書きで毎年送っているというのに!」
奈美「メールで済ましたこと根に持たないで下さいよ、気持ち悪いなあ・・・」
望「この様に、使われなくなった本物は衰退し、やがては代用品が本物の座につくでしょう
あなた達には、代用で済ます大人にはなって欲しくない!よって、課外学習で代用溢れる世の惨状を学んでもらいます!」
奈美「って、気が付いたらみんないるし」
可符香「奈美ちゃんあけましておめでとう」
あびる「今年もよろしく」
431 :
代用の季節:2008/01/03(木) 15:23:07 ID:3m6njUfV
望「早速ですが、あれをご覧なさい!」
奈美「あれ?万世橋君?」
万世橋「惚れってレベルじゃねーぞ!」
望「恋人の代用に二次元をつかっています。しかも、二次元で初詣の代用まで済ませています」
奈美「・・・・・・」
望「次はあれです」
千里「あれ?誰かと思えば晴海じゃない。」
藤吉「あなあなふむふむ」
千里「まーたあんな有害図書読んでる。」
望「本物は絶対にそんなことしてくれないので、創作物で代用です!」
芽留『こんなのばっかじゃねーかキモハゲ』
望「ここなんか、代用のいい例の宝庫です」
奈美「デパート?」
望「例えばこの牛肉コロッケ!
牛肉の代用に豚肉や鶏肉を使っています!」
奈美「・・・・・・」
望「それからここいらの高級お菓子!
1月11日の代用に12月11月の日付を使っています」
あびる「それはもはや偽装だから!」
店員「代用代用とおっしゃいますが、その代用が発覚したメーカーの代用に別のメーカーにしてみても、
そこもまた代用していたことが発覚したりするんです。
絶望した!代用すら代用してる偽の国日本に絶望した!」
望「それ、私のセリフ・・・でもあなた方が言うと重さが違います」
432 :
代用の季節:2008/01/03(木) 15:27:41 ID:3m6njUfV
大草「あら、先生」
望「大草さん・・・新年早々、買い物ご苦労様です」
可符香「いったい何買ったの?・・・なすびにニンジン?」
大草「なにか?」
望「・・・いえ・・・別に」
可符香「大草さん、旦那さんは買い物とか料理手伝ってくれないの?」
大草「ええ、ここのところ彼が相手してくれなくて寂しくて・・・だから買い物に」
望「・・・だ、旦那のだい・・・い、いえ、何でもないです・・・」
可符香「ところで大草さん、なすびとにんじん、どっちが好き?」
大草「んー、にんじんかな・・・固くて太いから・・・彼より。」
望「彼より・・・って・・・やっぱり代用・・・」
可符香「じゃあ、旦那さんの代用に先生使ったら?」
望「ちょ、何に使う気ですかあ!」
大草「あはは、先生のじゃ代わりにならないからいらないわよ」
可符香「あら残念」
望「私の、何が、何の代わりにならないんですか!
絶望した!代用にすらなれず新年早々絶望したあ!」
マ太郎「ナスって、大草ツッコムのか?」
大草「カエレちゃんみたいな乱暴な使い方はしないわよ」
カエレ「使ってないわよ!!訴えてやる!!」
終了?
いろんなジャンルのラッシュで嬉しい…が
凌辱ものは人気ないのか少ないきがす
大好物なのに…
>>434 専用スレに行ってください
もしくは自分で書いたら?
436 :
◆n6w50rPfKw :2008/01/03(木) 23:00:41 ID:kUKf39Qx BE:522117465-2BP(333)
こんばんは。姫始めネタ、私もいきます。
智恵×望、霧×望。
最近のマガジン連載分が元になっています。
437 :
めくりあい 1:2008/01/03(木) 23:02:13 ID:kUKf39Qx BE:626540494-2BP(333)
EXILEにはまった望は、すぐに元の和風の生活が恋しくなり、一週間もせずに学校の宿直室に舞い戻ってきた。
霧が暖かく出迎えてくれたのが望は嬉しかった。
もちろん霧も望が戻ってきてくれて嬉しかったのだが、口には出せなかった。
ただ、前より少しだけ甘えてみた。ちょっとだけベタベタしてみた。
☆
正月の夕方である。
宿直室はストーブのおかげでポカポカと暖かい。
正月だというのに千里たちに連れ出された望が、這々の体で戻ってきた。
望がいない間に交も倫に連れられてどこかに行ってしまい、霧と二人きりである。
望はようやく分厚い新聞に目を通している。
霧はもう訪問客もないと踏んだのか、ノーブラでぱんつだけのほぼ全裸の上に毛布を纏っている。
夕食前の気怠い雰囲気の中、望は新聞をめくりながら、先日聞きかじったことを霧に喋っていた。
「……でですね、うちの高校が実は服装が自由化されているんですって」
「ふーん、そうだったんだ」
霧も初耳だったようで、感心しながら相槌を打つ。
「で、先生はそれ誰から聞いたの?」
「智恵先生からですよ。雑談してるときに」
「ふーん」
平静を装っていたが、霧の心中は穏やかではない。
たとえ先生であっても、自分の前で他の女性の名前を口にして欲しくなかった。
心の隅がちりちりと痛んだ。
その思いを振り払うかのように、霧は望に声を掛けた。
「お茶、入れ換えるね」
「ん……ありがとうございます」
望は新聞に目を落としたままで答えた。
コタツに湯呑みを置くと、霧はそっと望の背中に覆い被さり、徐々に胸を押しつけていった。
望はもちろん感触に気付いたが、無言のままである。
霧はあくまで望の視界を邪魔しないようにしながら、手を望の胸元にそっと差し入れる。
指先が乳首に達すると、小刻みにいじってみる。
ーーくりくり。くりくり……
「ちょっと」
望が口を開いた。戸惑ったような、だが穏やかな口調だ。
「くすぐったいですよ」
「……」
今度は霧が無言のまま、指を望の下腹部へじりじりと這わせていく。
胸をさらにぎにゅうっと押しつける。
きっとその柔らかなモノが押しつけられる感触が、望の背を通じて彼の脳にときめきを伝えているはずだ。
あと少しで霧の細い指先が絶棒を捉えようとした時、望のケータイが鳴った。
「おや? 誰からでしょう」
438 :
めくりあい 2:2008/01/03(木) 23:03:45 ID:kUKf39Qx BE:174039252-2BP(333)
望は不審そうにケータイを取り出したが、画面の発信者の名を見ると、慌てて出た。
「はい、糸色です」
心持ち、声が上擦っているように聞こえた。
「……ええ……はい。すぐ伺います」
ケータイを置くと、望が霧に声を掛けた。
「ちょっと出かけてきますね」
「誰からだったの?」
「それが、智恵先生なんですよ」
望が答えた。どことなくウキウキしているようだ。
「ふーん?」
「至急見てもらいたいものがあるからって……」
「先生、楽しそう」
「へ?」
望は一瞬虚を突かれたが、慌てて否定した。
「何を言ってるんですか。
きっと新年早々カウンセラーの仕事用のファイルを見せられて、面倒な仕事をいただくんですよ」
「そうかなぁ……先生、ハンカチを」
霧は望にアイロンのぴしっとかかったハンカチを渡した。
望もそれを素直に受け取った。
「ちょっと遅くなるけど、晩ご飯はここで食べますから」
そう言い残すと望は出かけた。
霧がその背中を寂しそうな目で見送った。
☆
望は智恵の部屋の前までやって来た。
呼び鈴を押すと、すぐに中から応答があった。
「糸色先生。どうぞお入り下さい」
「失礼します……って!」
女性の部屋はいつ訪れても緊張するものだが、今回はまた違った。
智恵がセーラー服を着ていたのだ。
「ち、智恵先生……そのお姿は」
「さっき昔のものを整理してたら、偶然出てきちゃって」
望のマントをクローゼットに仕舞いに行き、またこちらへ戻ってきた智恵の全身を、望は改めて眺めた。
短めの青いスカートから充実した太腿が艶めかしい姿を存分に現している。
そして、望も味わったことのある豊かな胸がセーラー服をこんもりと悩ましく盛り上げ、白い腹がちらちらと見え隠れしている。
赤いリボンが、智恵の呼吸・動作に合わせてかすかに揺れているのがエロティックだ。
「サイズ、おかしくないかしら」
「いえ、全然……よくお似合いですよ。それよりも」
望は感心しきった様子でつい軽口を叩いた。
439 :
めくりあい 3:2008/01/03(木) 23:05:18 ID:kUKf39Qx BE:417694638-2BP(333)
「高校生の時からそんなナイスバディだったんですか」
「まぁ、サイズは変わってなかったみたい……お茶入れますね」
「あ、どうぞお構いなく」
リビングで座って待っていると、智恵が台所からカップを持ってきた。
望の横に立ち、テーブルにカップを置こうとして腰を屈めた。
所在なさげな望が見るとはなしに見ていると、目の横に智恵の尻が来た。
くびれた腰の下で丸い良い形をした脂ののったヒップが、スカートの下で全存在を主張している。
そして、あのはちきれんばかりの太腿が、触って欲しいと訴えかけて……
無意識のうちに手が伸び、太腿と尻をさっと撫で上げた。
次の瞬間にはスカートをめくっていた。
白い布がちらっと目に入った。
「あ」
「……あら」
智恵は一瞬動きを止めたが、何事もなかったかのようにカップを置き終えた。
望は指に残る智恵の肌とスカートの感触に、そしてまくり上げた後に見えたモノの残像に心を奪われていたが、ようやく自分がしでかしたことの重大さに後から気付いた。
「あ……ど、どうもすみま」
「糸色先生。ちょっと立ってみて」
「は、はぁ」
「さ、早く立って」
訳が分からないまま立った。
すると、智恵が腕組みをし、正面から望をあの吸い込まれるような瞳で見つめてきた。
「先生……最近、ご無沙汰だったんですか」
「は……そのぅ」
腕組みのせいでさらに悩ましく盛り上がった胸を見つつも、望は返答に詰まった。
智恵は腕組みをしたままゆっくりと望の横へ回り、やがて後ろへと向かっていく。
望は喉がカラカラに渇いた。
「ちょっとおいたが過ぎますねえ。そんな先生は」
ここまで言うと、智恵は望の袴をいきなりめくり上げた。
「あっ」
望は狼狽した。
が、智恵は構わずにぐいぐいと袴の裾を持ち上げていく。
おあばらの浮き出た望の上半身、両手、そして顔まですっぽり包み込んでしまうと、頭の上で大きく結び目を作った。
茶巾寿司の出来上がりである。
茶巾の下からはシャツがだらしなく垂れていて、その下には生白い脚が生えている。
ソックスはウールの上等なものだ。
今日は祝日なので楽をしたいのか、褌ではなく白のブリーフである。
「ちょっとお仕置きをしないといけませんね」
視界を奪われて動けないでいる望の腰を抱え、智恵が誘導し始めた。
罪人はよたよたと歩くしかなかった。
☆
440 :
めくりあい 4:2008/01/03(木) 23:07:34 ID:kUKf39Qx BE:139231924-2BP(333)
☆
どこかの部屋に入った。
と、智恵が望を抱き抱えたまま脚をかけてきた。
ゆっくり背中から倒された。
ーーぽふっ
背中と頭を柔らかい感触が迎えた。
入ったのは寝室で、智恵のベッドに押し倒されたのだった。
智恵がそのまま望の顔に腰を下ろしてきた。
「も、もがー」
茶巾になった袴の下で望が呻いた。
だが智恵は構わずに、望のシャツの下のボタンを外すと、臍に触れた。
「ふふっ……お仕置きされる覚悟はよくて?」
智恵はすうっと指を滑らせ、ブリーフの盛り上がりにさわさわっと指を這わせると、すっと絶棒を取り出した。
「もがー」
望が何やら自分の尻の下で叫んでいるのを気持ちよく感じながら、すうっとかがみ込むと、智恵の手の中で縮こまっているそれに、
「ふーーっ」
と甘い息を吹きかけた。
咎人の腰が思わず浮いたところを逃さずブリーフに手をかけ、ずいっと膝までずり下げた。
ぷるんっと絶棒がまろび出た。
智恵はそれを愛おしそうに撫で回した。
すると、絶棒がむくむくっと頭をもたげ始め、見る間に威容を誇った。
ーーあら……こんなに逞しかったかしら……
☆
望は焦っていた。
何とか手だけでも自由に……と思うが、少し動くたびに智恵が両膝で袴越しに望の肘を押さえ込み、結果として望は抵抗らしい抵抗が出来ないままであった。
ーーうう……
智恵が艶やかな唇を被せてきた。
「む、むごー!」
たまらず絶棒が反り返り、鰓が膨張した。と、その鰓へ智恵が歯を当ててきた。
ーーち、智恵先生!?
望が戸惑う間もなく、智恵は歯をゆっくり滑らせ始めた。
歯で優しく亀頭を擦り上げるのだった。
噛まれるかも、という一抹の恐怖感と、これまで体験したことのない硬質の妖しい摩擦感覚に攻め立てられ、望は未知のテクニックに翻弄された。
ーー先生! そんなテクニックを!
まさに「オトナのオシオキ」と言ってよかった。
思わず歓喜の叫び声を上げてしまった。
441 :
めくりあい 5:2008/01/03(木) 23:09:46 ID:kUKf39Qx BE:435098055-2BP(333)
「ああ……うわあああ!」
おそらくは多量に滲み出たはずの我慢汁をすべて舌先で舐め取ると、今度は唇でくびれを強く挟み、一番感じるところをはむっはむっと甘噛みした。
「はぐぅん!」
望は強い快感に良い声で鳴いた。
智恵はさらに弱点を正確に唇で挟み付けたまま、すうっと奥まで飲み込むと、舌先を回転させはじめ、先ほど挟んだ部分を存分に刺激した。
あまりの快感に望が体を動かすと、智恵はヒップと膝で望の頭を容赦なく締め上げた。
かと思うと、幹に舌全体をねっとり絡めてきたりもした。
ーーこ、このままではすぐにイかされてしまいます!
早くも腰の奥に熱いモノが生まれ、望は必死になった。
肘は動かせないものの、指先が何とか袴の布切れに触れることが出来た。
徐々に指先で袴をたぐっているうち、元々大ざっぱで緩やかに結んであった結び目がはらりと解けた。
光が射し込んできたのを励みに、さらに指でかき分けていくと、不意に目の前に恐らくは白いものが広がった。
白いぱんつに覆われた智恵の丸い豊かなヒップだった。
ーーい、今だ!
望は首をもたげると、目の前一杯にに広がる楽天地に顔を埋めた。そして薄布の上から舌で舐め回した。
「あんっ!」
智恵の締め付けが一瞬緩んだ。
そこを逃さず手を伸ばし、ようやく死のトラップから脱出した。
ここで躊躇するとまた押さえつけられる。
望は今を限りとばかりに攻めまくることにした。
先ほどは無意識のうちにめくった青いミニスカートを、今度は意志を持ってがばっとめくり上げる。
そして、ぱんつまで容赦なくずり下げると、間を置かず腰をがっちり抱え込む。
智恵にむしゃぶりつき、自分の知っているあらゆる舌使いを駆使していく。
「あん……あ」
果たして、智恵が甘い声を漏らし始めた。
あれほど的確に望を追い込んでいった攻めが急になおざりになった。
時折思い出したように絶棒に舌を這わせてみるものの、明らかに気迫が欠けていた。
ともすれば絶棒から口を離しそうになった。
望はいつものように丁寧にスリットや襞を舌先でなぞらない。
あたり一帯をぞろりと大きく強く舐め上げると、もっぱら敏感な芽に攻撃を集中することにした。
周りを存分に舐め回す。
明らかに固くなって熱を帯びたその周囲を舌先で確かめるかのように、さらにゆっくり舐め回す。
「ああんっ! あぅ」
智恵の声が高くなる。
どこかに智恵のスポットがあるのだ。
これまでの経験で、望にはその見当がついていた。
舌先で覆いを剥きながらさらに何周か舐める。
そうしておいて、そのスポットに焦点を当て、幾度となく舌先で弾いた。
「はぅん! やん、あぁ……ん!」
智恵はたまらず腰を浮かせようとする。
442 :
めくりあい 6:2008/01/03(木) 23:11:27 ID:kUKf39Qx BE:104423832-2BP(333)
だが、今度は望が腰を抱え込んで逃がさない。
さらに舌先をレロレロレロッと往復させる。
「あ……ダメ」
智恵が泣き言を言うのを久し振りに耳にした。
もちろん望は耳を貸すつもりはない。
代わりに、赤いルビーに吸いついた。
――ちゅうううっ!
「いやああああああん! それはだめ、ダメなの」
いつになく智恵が弱音を吐く。ひょっとしたら望の前では初めてかもしれない。
望はさらに吸ってみることにした。
――ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。……ちゅううううううううっ!
「あぁん、いや、いやっ……ひゃあううううううううううん!」
智恵は一瞬身を強ばらせると、急に力が抜け望に体を預けてきた。
望の舌技で早くも達してしまったのだった。
降参の印の恥蜜がつつーっと望の顔に垂れてきた。
☆
智恵の下から抜け出すと、望は荒い息をついている智恵の尻を上げさせ、後ろから覆い被さった。
「智恵先生……いきます……よっ! むぅ……むんっ!」
「ああ…………うっ!……あ……はぁんっ!」
望はいきなり情熱的な腰遣いで智恵を喘がせた。
先に智恵によって暴発寸前にまで追い込まれているので、じっくり攻めずに短期決戦を選んだのだった。
腰を打ち付けながら、手をセーラー服の下に回した。
ブラをずらし、豊かな手に余るバストを下からすくい上げると、たぷたぷたぷっと存分に揉み込んでいく。
「あン……はぁン! それ、それいい……」
「どうするといいんですか?」
「もっと……もっと揉んでぇ」
智恵が具体的にリクエストすることなど滅多にない。
いつもは奴隷である望を冷徹に観察し、その場に応じた的確な攻め・責めを行うのが女王様である智恵の役割だったはずだ。
それが今日は、出だしこそ彼女のペースだったのに、今はすっかり望のなすがままになっていた。
日頃の智恵らしからぬことではあった。
望はフィニッシュが近づいた腰を存分に打ち付けながら、丸いバストに指を食い込ませるように激しく揉み立てた。
「ああああん……いい……それいい……いいのぉ」
「ち、智恵先生……そろそろ」
「待って。私も一緒に。いっしょに……あう、あんっ」
望はラストスパートをかけながら激しくバストを握りしめ、目の前にあった智恵の項にきつく接吻した。
「ひゃあう! はああああああああん!」
「う、私も……う、うぅ、うぐっ!」
望は智恵の豊かなバストを握りしめ、唇を智恵の項に押し当てながら奥深くに何度も放出した。
そんな絶棒を智恵の中が蜜を絡ませながらきつく締め上げ、智恵も今年初めての高みに達していった。
☆
443 :
めくりあい 7:2008/01/03(木) 23:12:45 ID:kUKf39Qx BE:939811469-2BP(333)
☆
「はぁ……」
茶を飲みながら、智恵がため息をついた。
「どうしたんです?」
「こんなにイカされちゃうなんて、私女王様失格かなぁ」
「そんなことないですよ。……あ、でも」
望が付け加えた。
「今度は私がご主人様で智恵先生が奴隷ってのはどうでしょ…あたっ」
望の軽薄な申し出に対し、智恵は望の手を抓った。
「それはないから。先生はずーーっと私のド・レ・イ」
「そんなぁ」
「まぁ……私の方から言うことじゃないんですけど」
「はぁ」
智恵は思わぬことを口にした。
「私、先生と体の相性が合うみたいなの。だから」
ここで智恵が望に顔を寄せ、顎に手を遣りついっと上を向かせて望の顔を覗き込んできた。
望は智恵の深い瞳から逃れられなくなった。
「今後先生は私の奴隷兼オモチャ。
私がしたいときにさっと来て、私を満足させてちょうだい。
たとえ先生が誰かと結婚していてもずっとよ」
「はぁ……まぁ」
望は冷や汗をかいた。
懐からハンカチを出して額などを拭った。
そのハンカチを見た智恵は一瞬瞬きをした。
が、素知らぬ風に望の手を取って自分のクローゼットに案内した。
「実はね、セーラー服だけでなくて、こんなのまで出てきたの」
そう言いながら、智恵はスクール水着、体操服に赤いブルマ、新体操のレオタードなどを次々と披露した。
「次の時はどれがいいかなぁ」
そう耳元で囁かれ、望の理性は消え入りそうになった。
「ははははい、あのぉ……そのぉ」
智恵のスクール水着姿、智恵の赤ブルマ、智恵のレオタード……あれこれ想像し、望は思わず喉がぐびりと鳴った。
「ふふっ……今日はもうお帰りなさい。また今度ね」
「ええっ!? ま、まだ出来ますよ」
「誰かさんが待ってるんでしょ? 宿直室で」
「はうぅ……」
ずばりと指摘され、望の顔色が赤く、そして青く変わった。
☆
444 :
めくりあい 8:2008/01/03(木) 23:15:59 ID:kUKf39Qx BE:208846962-2BP(333)
☆
「ただいまぁ」
「お帰りなさい。晩ご飯、まだ暖かいよ」
「ありがとう、いただきます」
DSが頼りだった霧の料理もめきめき上達し、幼妻としての貫禄を日々身につけつつあった。
今日智恵が望を宿直室に帰らせたのも、びしっと折り目のついたハンカチを目にし、家庭的な女性の存在を察知したからである。
もちろん、智恵も望を諦めるはずがない。
それどころか、ありとあらゆる大人の手練手管を使って彼をゲットするべく活動することを心に誓った位なのだ。
望のマントにほのかな香りを察知した霧は、智恵先生の決意を勘で察知した。
無意識のうちにぎゅっとマントを握りしめたあと、何事もなかったかのように仕舞った。
遅めの食事を二人っきりでとった後、やはり二人っきりで風呂に入った。
智恵に出し足りなかった望は霧に迫ろうとしたが、
「だめぇ……あ・と・で」
と優しく拒まれ、じらされてしまった。
霧は望の背中や前を洗いながらじっと観察していたが、目立った傷や跡がないのを見て、ようやく少しは安心したようだった。
いつもより力を込め、シャボンの泡も多めにして絶棒を納得できるまで洗った。
☆
いよいよ本来の姫初めの晩である。
宿直室には布団が二組ぴっちり並べられている。
去年は地獄のカルタ大会で散々な目に遭ったが、今年は霧と二人っきりでしっぽりと姫初めができる。
一回智恵の中に放出してしまったが、まだまだ硬度は保っている筈だ。
霧にはバレないだろう……
それに先ほど風呂でいつもより丁寧に絶棒を霧に洗われ、臨戦体制は整っているはずだ。
そんなことを布団の上で思っていると、霧が真っ白な下着と真っ白なシースルーのネグリジェで登場した。
「おお……綺麗ですよ」
「へへっ……そうかなぁ」
霧ははにかみながら望の前へ来た。
そして三つ指をついた。
「ふつつか者ですが、今年もどうぞよろしくお願いします」
望も慌てて礼を返した。
「こちらこそ、よろしく」
そして二人で望の布団に入った。
望は全裸である。霧は、布団に滑り込む前に望がネグリジェを脱がせたので上下の下着だけだ。
望が腕枕をしてやると、霧が恥ずかしそうに寄り添ってきた。
彼女の体温が直に触れる。
そんな彼女がいとおしく思える。
ゆっくりと、だがしっかり抱きしめながら霧に静かに接吻する。
「……ん……ンっ……」
445 :
めくりあい 9:2008/01/03(木) 23:17:22 ID:kUKf39Qx BE:104424023-2BP(333)
何度か唇の位置を変えながら、情熱的な接吻を続ける。
ブラの上から霧の胸をやわやわと揉む。
「あん……う……」
ブラを外し、さらに優しくリズミカルに揉む。
霧の掠れがちな喘ぎを聞くうちに、絶棒がむくむくと大きくなってくる。
それを察知した霧が、接吻を続けたまま、指でさっと位置を調節し、自分の太腿に挟んでしまう。
望は思わず唇を離した。
「ちょ、ちょっと」
「えへへっ」
霧はいたずらっぽく笑うと、かかとを擦り合わせる。
それによって太腿の間に挟まれている絶棒にも素敵な刺激が加わる。
「あ、あうっ」
「うふふ……気持ちいい?」
「こ、小森さん……」
ーーすりすりっ。
「ひゃあっ」
「気持ち、いい?」
「はは、はい。気持ちいいですよ。とっても」
「うふっ、嬉しい……じゃあ、もっとしてあげるね」
ーーすりすりっ。すりすりっ。
「はうぅ……」
「もっとよ。もっと気持ちよくなってね」
それを挟み込んだまま、霧は望にぎゅうっと抱きついた。
そして、身を離し、するりと布団に潜った。
いつの間にか
望の膝の上に跨り、刺激で涙があふれている絶棒を白く大きな胸で挟み込んだ。
「ああっ! こ、小森さん……く……」
ーーにぎゅっ、にぎゅっ……
霧が徐々に力を加えていく。
左右でタイミングをわざとずらしたり、上下に捻るような回転を与えたりして絶棒に絶え間ない刺激を与える。
新たな刺激が加わるたびに、望はつい喘いでしまう。
霧は、自分の力で自分が好きな人ーー年上で担任教師で、自分を自宅の部屋という牢獄から連れ出してくれた恩人ーーを喘がせていることに満足していた。
ーーこのまま私で気持ちよくなってもらうんだから。他の人には渡さないから……
「せんせい……気持ちいい?」
「こ、小森さん……うぁ……き、すごく気持ち、いいです」
「うふ……うれしい。……もっと、もっと気持ちよくしたげるね」
霧は、自分の胸の間から頭をのぞかせている望のシンボルに優しく口づけをした。
そしてそのまま唇を被せていき、舌先でちろちろと頭をくすぐった。
望はとうに限界を超えていた。
腰の奥の熱い固まりが、もう絶棒の根本に集結しつつあった。
支援
447 :
めくりあい 10:2008/01/04(金) 00:24:10 ID:ShcTEbEv BE:208847726-2BP(333)
「こ、小森さん、もう、もう! もうダメです」
「……いいよ。このまま出して☆」
霧の女神のような言葉を耳にして、望はこのまま教え子の口内にぶちまけてしまったらどんなに気持ちいいだろうか、と夢想した。
だが、年の始めはーーすでに智恵の中にたっぷり注いでいるが、ちゃんとした姫始めではーー自分の精は女体の中に注ぎ込みたかった。
「うう……先生、やっぱり最初は小森さんの中でイきたいです……」
「そう? ……じゃあ」
霧がようやく絶棒を解放してくれた。
そして、ゆっくり望の上から降りると、望の隣に静かに横たわった。
発射を間近に控え時折ひくついている絶棒に一瞬目を遣り、望に微笑みかけた。
「いいよ……来て☆」
天使のような、聖母のような微笑みに吸い込まれ、望はたまらなくなった。
最後の一枚をもどかしそうに抜き取り、教え子の脚を大きく開くと、ずいっと中に進んでいった。
「はうぅん!」
一瞬、霧が白い喉を仰け反らせた。
☆
霧の中はしびれるほど暖かかった。
そうして絶棒を優しく包み込んでくれた。
望はえっちを覚え立ての少年のように、ひたすら腰を動かした。
その情熱的なシャフトで霧も次第に高ぶっていく。
小さめの甘い喘ぎが絶えず漏れるようになった。
「あん、あン……あっ、んぅ、はぅン……」
腰を繰り出しながら、望は先に絶棒をあやしてくれた霧の胸に挨拶をした。
手に余るバストをむにむにっと丁寧に揉み込み、指の腹で乳首を掠める。
たまにはくにくにっと乳首を摘んで、すぐにちゅうっと吸い上げてみる。
「ひゃあん……くぅう……」
霧は甘く叫ぶと、望の頭を抱え込んだ。
そして自分から激しく接吻を求めた。
望もそれに応えながら、霧をしっかと抱きしめ、いっそう激しく腰を打ちつけた。
ーー小森さん、もう、もうイきます! いいですか?
そう目で問いかけると、霧も目で応え、にっこり微笑んだ。
ーーいいわ。来て、せんせい……お願い、お願い!
二人は口づけを交わしたまま固く抱擁し合い、同時に絶頂へ駆け上がっていった。
望が霧の最奥を突き上げて絶流を噴射すると、霧も絶棒に蜜を絡ませながら激しく絞り上げ、一瞬硬直した。
そして望が最後まで流し込むと、霧も安心したかのように脱力した。
☆
股関やばい支援
449 :
めくりあい 11/E:2008/01/04(金) 00:25:54 ID:ShcTEbEv BE:835387968-2BP(333)
☆
望は不意に目が覚めた。
今、望は霧と二人っきりで夜を明かそうとしている。
霧は自分の腕枕で幸せそうに寝息を立てている。
彼女の体温と、が直に伝わってくる。
甘いミルクのような香りもほのかに感じられる。
さすがにこの時間だからか、新年なのにあたりは静かで、外は物音一つしない。
自分に寄り添って、安心しきった様子で眠っている美少女と、これからどれだけ共に過ごすことができるのだろう……
ふとこんなことを思った望は、改めて今のこの満ち足りた瞬間ができるだけ長く続くことを祈った。
ーーさて、もう一眠りしますか……
空いている手を霧の胸に添え、その柔らかさを確かめながら、望は再び目を閉じた。
――[完]――
おおお!そろそろ霧ちゃんSS来ないかなと思ってたトコだぜGJ!!
451 :
◆n6w50rPfKw :2008/01/04(金) 00:32:20 ID:ShcTEbEv BE:730964467-2BP(333)
以上です。
>>446,
>>448 支援ありがとうございます。
WILLCOMのprin規制中で忘れかけたp2で苦しみながらカキコしてましたが、おかげで何とか最後まで書き込めました。
GJ!新年早々萌え尽きそうです!
453 :
430:2008/01/04(金) 14:24:14 ID:G8qbDLVy
三が日も終わってしまいましたが、あけましておめでとうございます。
年末年始で100レス以上も進んでた…!
大盛況ですね、狂喜乱舞です。
休みボケでリハビリ中にて、申し訳ありませんがエロなしアホ話を…。
以前、ツンデレラを読んで大爆笑し、いつかは自分も、
絶望先生で世界名作劇場パロを書いてみたい、と思っておりました。
というわけで白雪姫でパロってみました。
でも、何だかすっごいカオスな内容なので、
お暇で、かつ心の広い方だけ…お願いします。
えー、それでは『絶望的白雪姫』、今回は新年特別版として、
オンエアとオフエアの同時放送でお届けします。
はじまりはじまり〜。
あるところに、それは美しい姫がお生まれになりました。
その姫は雪のように色白だったため、白雪姫と名づけられました。
「ちょっと待ってください、久藤君!!」
「いきなり何ですか、先生。」
「何で私が白雪姫の役なんですか!!
絶望先生は女キャラの方が多いというのに!!!」
「…仕方ないじゃないですか、先生が一番色白だったんだから。」
「絶望した!色が白いだけで性別を無視した配役に絶望した!!」
「はいはい、お約束の絶望も言ったし、話を進めますよ、いいですか。
先生のせいで行数使っちゃったから場面飛ばしますからね。」
「…。」
新しいお妃は、見た目は美しかったのですが、その実は魔女でした。
「さあ、鏡よ鏡、きっちり答えてもらうわよ。世界で一番美しいのは…。」
「ちょ、ちょっと待ってください!!!」
「今度は何なんですか、先生!!」
「そうですよ、先生、人のセリフに割り込まないで下さい。
最後まできっちり言えなくてイライラします!!」
「だって、木津さんが魔女の役って、危険すぎるじゃないですか!
私がきっちり殺される猟奇オチになるのが目に見えてます!!」
「んー、それも面白そうですけどね…ま、話を進めてみましょうよ。」
「ちょっと久藤君、面白そうって、他人事だと思って…」
「はい、それでは、また場面飛ばしますよ〜。」
白雪姫を殺すようお妃の命を受けた猟師は、白雪姫を森に連れ出しました。
「うなー!私の出番は!!」
「木津さんには、後で見せ場があるから。先生、セリフお願いします。」
(後で見せ場って、ど、どんな見せ場なんですかー!?)
「恋愛道とは、死ぬことと見つけたり!
猟師さん、私を殺そうとするなんて、ディープラブですね!」
白雪姫の言葉を聞いて、猟師は、自分が白雪姫を愛していることに気が付きました。
「私、好きになるとダメなんです…!」
猟師は猟銃を投げ捨てると、白雪姫の背後にぴったりと寄り添いました。
「こ、これはこれで、なかなか重いものですね…。」
白雪姫は猟師を背後にはりつけたまま、森をさ迷い歩いていましたが、
やがて、目の前に小さな気持ちの良さそうな小屋が現れました。
「これは助かりました…!」
白雪姫は小屋に不法侵入した上に無銭飲食を果たすと、
さらに人のベッドに勝手に横になって寝息を立て始めました。
「なんですか、その悪意に満ちたナレーションは!?」
「…よく考えると、白雪姫ってけっこういいタマよね…。」
「小節さん、あなたまで!!絶望し…。」
「はい、次、小人さんたち出番ですよ〜。」
「…。」
小屋に帰ってきた小人達は、食い散らかされたテーブルに驚きました。
と、奥の部屋に引き篭もっていた小人が顔を覗かせました。
「あのね、お客さんが来て、今、ベッドで寝てるよ?」
「何やってるのよ、そんなの、訴えてやりなさいよ!!」
「だって…。」
小人達はベッドを覗き込みました。
すると、そこに眠っていたのは雪のように白いお姫様。
「わーイ、お姫様、キレイダネ。」
「うっわー、女体化だ♪」
「ちょ、藤吉さん、不穏当な発言はやめてください!!!
このスレではそういった趣旨の発言は絶対に厳禁ですよ!!」
「でもぉ、先生、一人称が『俺は』→『僕は』→『私は』って
変わるのって、そういうフラグじゃないんですかー?」
「それ、違うでしょう!先生、武力介入とかしてませんから!!」
…えー、まあ、なんだかんだで、
白雪姫は7人の小人達と楽しく暮らすことになりました。
さて、ここはお城の中。
お妃は鏡に向かって尋ねます。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
「すいません、すいません!」
「何でいきなり謝るのよ!きっちり答えなさい!」
「ああ、こんな答えしかできなくてすいません!
世界で一番美しいのは、森で7人の小人と暮らす白雪姫です!!」
「うなー!?白雪姫は猟師が殺したはずなのに!?」
泣きボクロのある鏡に、お妃の魚目が映り込みました。
「ひいいいいぃぃぃ!!ああ、私がこんな答えを言ったばかりに、
白雪姫が大変な目に…すいません!」
お妃は決心しました。
猟師が当てにならないのなら、自分できっちり殺るしかありません。
お妃は、物売りの格好に着替えると、ある果物を持って城を出ました。
「へ?ある果物…?林檎じゃないの?」
『林檎じゃ普通過ぎるだろ、常考!』
「普通っていうなぁ…って、何!?このニラの腐ったみたいな臭い!!」
その頃、白雪姫は小人の1人と一緒に造花作りに励んでいました。
「すみません、お姫様にこんなこと…なにぶん大所帯なので生活が苦しくて…。」
「そんな、私こそお世話になっているのですから、これくらい当然です。
どうぞ、あなたは、ご自分の用事をしてきてください。」
白雪姫に促され、ポニーテールの小人が小屋から出て行くと、
それまで木の影に隠れていたお妃が、姿を現しました。
小屋の中で造花作りに熱中していた白雪姫ですが、
ふと不穏な気配に顔を上げました。
「…なんか嫌な予感がしますよ…なんですかこの臭いは。
私の中の人が、この臭いは危険だと叫んでいます!!!」
立ち上がった白雪姫の前に、お妃が立ちはだかりました。
白雪姫は、お妃の手の中の物を見て息を飲みました。
お妃は、その手に、何と、ドリアンを捧げ持っていたのでした。
お妃が、低い声で叫びました。
「ドリアンフィールド、解・除!!」
「わーーー!!逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…
だめです、我慢できませーーーん!!」
「……このネタ、分かる人いるんですか?」
「…まあ、中の人つながりってことで…。」
白雪姫は、その強烈な臭いに、とうとう息が絶えてしまいました。
7人の小人は、小屋に帰って倒れている白雪姫を見て嘆き悲しみました。
そして、せめて盛大なお葬式をいとなむことに決めたのでした。
その頃、お城では。
念願の白雪姫抹殺を果たして大喜びのはずのお妃でしたが
何故だか、元気がありません。
鏡が、お妃の具合を案じて声をかけました。
「あ、あの、お妃様、何だかお顔の色がすぐれないような…。」
お妃様は、鏡に向かって寂しげに微笑みました。
「…本当はね、誰が一番きれいかなんて、どうでも良かったの…。
私は、白雪姫のことが大好きだった…なのに、
あの子は魔女の私を怖がって、いつも逃げてばかり。
避けられているうちに…愛情は憎しみに変わっていったのよ。」
「そ、そんな背景があったなんて…原作通りから随分逸れてるようですが。」
鏡は、意外なお妃の告白にオロオロとするばかり。
お妃はそんな鏡に力なく首を振った。
「でも、あの子がいなくなったと思ったら…何だか気が抜けちゃった。」
「お妃様…。」
一方、こちらは森の小人たち。
白雪姫の亡骸をガラスの棺に入れて運びます。
そこに、隣国の王子様が通りかかりました。
「やだなぁ、みんなそんな顔をして、どうしたんですかぁ?」
「…って、王子様役はあなたですか!何か嫌な予感がしますよ!!」
「先生、まだ生き返るのは早いですよ!!」
7人の小人たちは口々に王子様に事情を説明しました。
すると、王子様は朗らかに笑いました。
「何言ってるんですか。白雪姫はまだ死んだばかりじゃないですか。
どうせ、クーリングオフされて戻ってきますよぉ。」
と同時に、白雪姫がむくりと起き上がりました。
「絶望した!!神様にさえクーリングオフされる自分に絶望した!!」
「ほら、ね?」
「…あ、あれ?てことは、キスシーンは無しなんですね。」
「あれぇ、先生、私とキスしたいならそう言ってくださいよ。」
「今、キ ス し た い と か 申 し た か?」
「言ってません!先生、そんなこと言ってませんから!!
お願いですからスコップしまってください!猟奇落ちはいやぁぁあ!!」
「木津さーん、まだ、お話は終わってないよ。配置について。」
生き返った白雪姫と、それを囲んで喜ぶ小人たちに、王子が声をかけました。
「さて、それじゃ、お妃様に会いにお城に行きましょうか!」
お城では、お妃が、塔の上からぞろぞろを城門をくぐる一行を見下ろしていました。
その表情には、何故か薄笑いが浮かんでいます。
「お、お妃様、差し出がましくてすいません、でも、逃げなくていいんですか?」
お妃は、相変わらずオロオロしている鏡に手を振りました。
「いいわ…何だかもう疲れちゃった。
これできっちり全てを終わりにできるなら、構わないわ。」
「…そんな。」
一行は、塔を登り、とうとうお妃に相対しました。
王子の後ろには、目つきの悪い小人が、鉄の靴を持って従っています。
王子が指を鳴らすと、小人は、鉄の靴を床に置いて着火マンで炙りはじめました。
「さーて、お妃様、この靴にぴったり足があうかな?」
王子は楽しそうに、真っ赤に焼けた靴を指差しました。
「ん?微妙にシンデレラと交じってないかぁ?」
『どうせ原作崩壊なんだから、それくらい些細なことだろ。』
白雪姫は焦りました。
「あの、王子、それはいくらなんでも残酷すぎるのでは。」
王子は白雪姫を振り返ると、極上の笑みを浮かべました。
「本来、すべからく童話のオチというのは残酷なものなんですよ。
赤い靴なんか両足切り落とされちゃうんですから。」
そう言うと、王子は王妃に向かって両手を広げました。
「さあ、お妃様!これを履いて、死ぬまで踊り狂うのですよ!!」
お妃は、そんな王子の言葉に抵抗するそぶりも見せず、前に進み出ると、
その足を、ジュウジュウいっている靴の上に差し出しました。
一部始終を見ていた鏡は焦りました。
お妃様の本当の心を誰も知らずに、こんなことになってしまうなんて。
「ま、待って…。」
「待ってください!」
しかし、鏡の遠慮がちな制止の声にかぶせるように、白雪姫の大声が響きました。
お妃が、ビクリと足を宙に浮かせたまま静止しました。
小人達も、鏡も、目を丸くして白雪姫を見つめています。
ただ1人、王子だけが、ニコニコと白雪姫とお妃を見比べていました。
白雪姫は、ずいっと前に進み出ると、お妃の目を真っ直ぐに見つめました。
お妃は、その迫力に気圧されたように一歩後ろに下がります。
「王妃様…私は、ずっと、考えていたのです。
本当に私を殺そうと思ったら、あの時に、ドリアンを私に食べさせていたはず…。
そうしたら、私はきっとあの世から戻って来れなかったでしょう。」
お妃は、白雪姫から目をそらしました。
そこに、白雪姫の静かな問いが投げかけられました。
「どうして、私に止めを刺さなかったんですか?」
お妃は、相変わらず白雪姫から顔をそらせていましたが、
その瞳には涙が溜まっていました。
「…王妃様…。」
白雪姫が、そっとお妃の手を取りました。
お妃が、驚いたように顔を上げました。
「…私は、あなたを誤解していたようですね。
あなたが、本当は心優しい方だということが分かりました。
今まで、魔女だということだけで逃げていてすいません。
…これからは、私達、仲良く一緒に暮らせないでしょうか?」
「…!」
お妃は目を見張ると、次の瞬間、顔をくしゃりと歪めました。
「ごめんなさい…白雪姫。今まで意地悪ばかりして。」
お妃の頬を、涙が転がり落ちていきました。
白雪姫は、にっこり笑うと白い指先でその涙を拭ってあげました。
王子様は、そんな2人に歩み寄ると、2人の手をとりました。
「これからは、親子仲良く暮らしていけますね?」
「…あなたは、そのために、わざと…ありがとう、王子様。」
「あれぇ?こんな話だったっけ?
白雪姫は、王子様と幸せになるんじゃなかったっけ?」
『…普通はな。』
「だーかーらー、普通っていうなあああああ!」
「やだなぁ、もちろん、これから幸せになるんですよ?」
「へ?それってどういう…。」
「だって、国から追放されて小汚い小人達しか味方のいない小娘より、
強力な魔女のバックアップのある一国の王女の方が、
結婚相手としては理想的じゃないですかぁ。」
「・・・・・。」
え、えーと、というわけで、
その後、白雪姫と王子は、めでたく結婚し、お妃と共に3人、
いつまでも仲むつまじく幸せに暮らした、ということです。
「さっすが久藤君、いい話でしたねぇ、ね、先生?」
「そーですかぁあああ!?」
以上、『絶望的白雪姫』をお届けいたしました。
おしまい。
461 :
430:2008/01/04(金) 14:34:20 ID:G8qbDLVy
中の人ネタが多くてすいません、そして結局、オチてないような…orz
とりあえず、千里を不幸にしたくないがために話が捻じ曲がりました。
…よく考えたら、先生より霧ちゃんの方が白かったかなぁ。
今度はエロを書くべく精進してから戻って来たいと思います。
そして!今晩からアニメ2期開始ですね!
楽しみでwktkが止まりません。
>>461 赤い靴ネタで吹いたww 「死ぬまで踊り狂うのですよ!」
…今晩から見れる地域ウラヤマシスorz
ちょっと聞きたいんだけど、自HPでオリssとか掲載してる職人さんっているのかな?
なんか、それらしきHPを見つけたもんで気になって。
>>451 エロGJ久々に股間にきた
霧SSずっと待ってたんだ、、もっとやってくれ
>>462 そりゃいるだろうよ、ここで特定するのはやめておけよ
>>461 童話台無しwww
テレ玉は明後日からだから困る
>462
けっこうあると思う。いや、よくわからんが。
個人のHPで、望とまといの凄まじい切れ味のssを見かけたな。
二期楽しみだ
466 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/05(土) 14:53:55 ID:1IMBgOhb
何時から?
ググレカス
いよいよ二期ですね。楽しみです。この勢いで、三期まで、とか期待できませんかね。
で、待って、どころか覚えて下さっている方自体いらっしゃるかどうか分かりませんが、
以前落とした399MHzのおまけ的な続編を投下させて頂きます。
何でかわかりませんが、パソコンの方が書き込み規制を食らってたので、携帯電話から。
相変わらず、エロ無しですいません。
夢うつつにチャイムの音を聞く。
それを皮切りに、枕元に置いた盗聴器から聞こえてくる声が浮き足立ってきた。
その声に意識を釣り上げられるように、まといはゆるりと目を覚ました。
日がすっかり昇りきっている。盗聴器からの声だけではなく、校舎全体が何となく騒がしくなってきた。
どうやら午前の授業が終わり、昼休みに入ったらしい。
少し寝たお陰か身体は大分楽になったものの、まだかなり熱っぽい。
首だけを回して校庭に臨んだ窓に目をやると、雀が二羽、飛んできて窓のすぐ近くに止まった。
番なのか肩を並べてはいるものの、日向を取り合って押し合いながら保健室の中を眺めている。
そんな具合に忙しなく首を傾げる二羽を見ると、何となく微笑ましい気分になった。
相変わらず、ストーブの上に乗った薬缶からは湯気が立ち上っている。
保健室の中の湿気が増えているせいだろう、喉の具合は悪くない。が、昼休みを意識すると、否応無く喉の渇きを覚えた。
すっかり中身が融けてしまった氷嚢を除けて体を起こすと、
千里が置いていってくれた水差しとコップに手を伸ばし、そして止めた。
「あれ?」
水差しの中には水が満ち、その表面には結露した水滴が浮かんでいた。
確か、教室から送り返された後に一口飲んだ記憶がある。
それに、眠ってからそれなりの時間は経っている筈なので、結露するほど中の水が冷たいのも少し不思議だ。
そうすると、未だに勢いよく湯気を吐き出している薬缶にも疑問の余地がつく。
そろそろ、空焚きというほどではないにせよ、もっと勢いが弱まってもよさそうなものではある。
が、疑問はすぐに解決した。見回すと、黒い艶やかな長髪がベッドカーテンの隙間を横切った。
へ組の中で、あんなに長い髪を持っている生徒は多くない。昼休みだから、と様子を見に来てくれたらしい。
お礼を言わなければ、とカーテンの向こうに声をかけるべく口を開いたと同時にカーテンが開き、
そしてまといは反射的に言葉を飲み込んだ。
全く予想だにしていなかった人物が、そこにいた。
「あ……起きたんだ」
小森霧。
2のへ組在籍の不下校少女が、この時期らしい厚手ではあるが
可愛らしいカエデ柄のブランケットをマントのように羽織り、その手に氷嚢を持って立っていた。
千里と同じか或いはそれ以上に長い髪、そして端麗な容姿と、
抜けるように白い、と評するに相応しい肌の色をしたその少女とまといは、望を巡って何度かぶつかっている。
思わぬタイミングでのライバルの出現に、まといは思わず身構えた。
「なんっ……――っ」
後手に回った。
反射的にそう思ったまといは、目の前で氷嚢をぶら下げている少女を問い質そうとするが言葉は出ず、
代わりに大きく咳き込んだ。
風邪で痛んだ喉を、急な空気の流入で刺激してしまったらしい。
霧は、彼女のイメージには合わない機敏な動きで氷嚢を水差しの近くに置くと、
素早く手をまといの背中に当てて、顔を少し覗き込みながら撫でさする。
背中に当たる手は優しく、その眼差しも間違いなくまといの具合を心配しているものであったが、
まといは咳が収まらないうちに少し鋭い視線を霧に投げかけた。
「何で?」
最も想定外の人物。
誰がここに来ようと、なんてことを考える以前にその想像の外にあった人物である。
恐らく、犬猿の仲、と言うほど悪い仲でもないとは思うが、昼休みに、
しかも誰もいない保健室に率先して世話をしに来る間柄でも決してない。
「皆から、まといちゃんの具合が悪い。って聞いたから」
霧は、しかし短く答えると、別段まといの刺々しい視線に動じる事も無く、丁寧に背中を撫で続ける。
やがてまといの咳が収まるとゆっくりと立ち上がり、
氷嚢を新しいものに架け替え中身が水だけになった方を持って再びカーテンの向こうに消えていった。
「……それで、先生に言われて来た。とか?」
まとい自身、あまり良い言い方ではないと思う。が、どうしても理由が思いつかない。
「ん、別に。ただ、自分で」
カーテン越しに、霧の感情の読みにくい声と、氷嚢の後始末をするくぐもった音が聞こえた。
そんな短いやり取りだけで、ぱたりと会話が止まる。
まといはただ首を捻るが、その疑問に答えられる霧はカーテンの向こうに消えたままだ。
まといは何となく手持ち無沙汰になって、手遊びがてら自分にかかっている布団のしわを伸ばした。
思えば霧が足してくれたのだろう、未だに元気よく薬缶から吹き出る湯気から窓へと視線を移す。
さっき飛んできた雀達は、相変わらず微妙な距離感を保ったまま日向を取り合っている。
盗聴器から流れてくる喧騒だけが、沈黙を補完していた。
「それ」
「え?」
やがて氷嚢の片付けも終わったのか、カーテンの向こうからなにやらごそごそと聞こえてきた。
何か鞄のようなものをまさぐっているような音をさせながら、霧が唐突に沈黙を破る。
「それ、へ組の?」
盗聴器の事を聞いているのだと分かるまで、数テンポを要した。
まといがそれに気付き枕元に置いてある灰色の機械を手に取ると、カーテンの向こうから霧が姿を見せた。
手には、ブランケットと同じカエデ柄の巾着を持っている。
「あ、うん。教室のコンセントに、盗聴器を取り付けてもらって」
「そうなんだ」
霧は軽く頷くとベッドの脇にパイプ椅子を寄せ、巾着を膝の上に置いて座った。
「良かった」
「え?」
そして、霧がポツリと呟く。
その言葉の意味が分からずに聞き返すまといに、霧はにこりと笑いかけた。
「うん。良かった、って」
まといが、霧に笑顔を向けられた覚えはない。ひょっとしたら初めてかも知れない。
あんまりに不可解なその事実と、日頃とは異なる毒のない展開にしどろもどろになりながら、
まといは改めて聞きなおした。
「……そうじゃなくて、何でここにいるの、って」
「うん。寂しいかな、って思ったの」
「……え?」
「保健室に一人でいるって、それで先生も教室だって聞いたから。
何となく、寂しいかなって、そういうの。だから、安心した。寂しくは、なかったみたいだから」
盗聴器へ向いた視線と、その言葉にまといは気付く。不下校のひきこもり少女。
思えば、教室にも彼女が姿を見せる事は滅多にない。
「でも具合は、まだ悪いんでしょ?」
盗聴器のスピーカーから流れる声を聞きながら、にこにこと霧は笑う。
ああ、そうか。ひきこもりだから。
学校の、既に専用と化した部屋に日がな一日こもっている彼女は、確かにまといの現状に近しい。
面白い話ではある。霧だからこその、まといへの心配。
そしてよりによって彼女が、まといにとっての最大の恋敵である霧が、まといの親身になれるという事。
「だからね、今日は休戦」
そう言って、霧はにこりと笑う。
何の屈託もないその笑顔を受けて、まといは霧の顔から視線を逸らした。
別に、負い目や嫉妬を感じたではない。
「いつもそれ位、物分りがよければ良いのに」
視線を逸らしたまま、まといは霧に聞こえるトーンで呟く。
霧もその言葉に、多少むっとした調子で言い返してきた。
「まといちゃんこそ、いつもそれ位、しおらしかったら良いのに」
そしてまといは再び霧に視線を戻すと、お互い鼻先まで顔を近づけしばし睨み合う。
「……ふふっ」
「……あははっ」
そして、同時に笑い出した。別に、負い目や嫉妬を感じたからではない。ただ、何となく気恥ずかしかった。
「まといちゃんも、お弁当?」
「うん、鞄の中に入ってる」
霧は膝の上の巾着を一度ベッド横の台に載せると、まといの鞄を取ってきた。
「ありがと」
今日は休戦。何となく、お互い悪戯っぽく笑い合う。ライバルの底が初めて見えたようで、少し面白かった。
そんな風に二人が笑いあう保健室に、にわかに廊下から慌しい足音が聞こえてきた。
「酷いっ! 酷すぎますっ!」
そして騒がしく開いた扉から、望のめそめそとした声が飛び込んできた。
「え、先生?」
「あぁ、常月さん、起きていたんですか。……丁度良いです、それならちょっと聞いて下さいよっ!」
カーテン越しにまといの声を聞くや、望が声を荒立てる。突然の闖入者にまといと霧は顔を見合わせる。
「昼休みになったので、昼食を食べようと思ったのです。
それで職員室に戻って食べるか、そのままへ組で食べてしまうか、と思案していたら、
急に教室内の視線の温度が下がり始めて、保健室に行かないのか、そんなの人として信じられない、
それでも教師か、一緒に食べてあげる以外の選択肢が浮かぶのか、この薄情者、絶望、
と教室内のあらゆる所から、私への非難の声が……。
ああっ、止めて下さいっ! KYとか若者の言葉で私を貶すのは止めて下さいぃっ!」
いつも通りの望の騒ぎぶり。こっちが珍しく仲良くしているのに、望のなんと変わらない事か。
「せんせ、いいからこっちにおいでよ」
「……おや?」
クスクスとお互い声を殺して笑いあった後、どうやら扉に頭を擦り付けて騒ぎ立てているらしい望に、霧が声をかける。
意外な声に不意を突かれたらしく、望はぴたりと声を平静に戻すと、カーテンの中を覗き込んできた。
「小森さんもいらしてたんですか。……何だか、珍しい組み合わせですね」
望は手に渋い矢絣柄の巾着を持ち、一通り騒いである程度気が済んだのか、
引きずってきたパイプ椅子に何事もなかったように座る。
「……なにかありました?」
そんな望にまといと霧、二人が同時に笑いながら視線を向ける。
常とは明らかに違う、その雰囲気に眉根を寄せて望が尋ねた。
「いえ。別に、なんにも?」
しかし、異口同音にそう答える声に更に首を捻る事になる。しばらく思案した後に、まあいいか、と呟く。
「何となく、顔色が良くなりましたね」
「そうでしょうか」
そしてまといの顔を一瞥すると弁当の入った巾着を椅子の上に置き、
体温計を手近な引き出しから探し出して、軽く振りながら持ってきた。
「それでも一応、熱は測っておきましょうか」
ガラス管の中のアルコールの位置を確かめ、まといにそれを差し出す。
しかし、それをまといが受け取ろうとしたのを見計らったように、
灰色の箱のスピーカーから可符香と晴美の声が流れ出した。
『でもさ、先生ってば、ひょっとして保健室に行ってもあんまり気を利かせてないと思わない?』
『あ、有り得るねー。形式通りに体温計差し出して何の工夫もなく、熱測って、とか言ってるよ。絶対』
その声に、びしっ、と音を立てて望が固まる。
スピーカーから流れ出した二人の声は、そんな望に追い討ちをかけるように、一層楽しそうに続けた。
『そこは違うよね。体温計なんて野暮なものじゃなくて、ベッドに軽く腰掛けてさ、
こう優しく額に手を当てて、まだ少し熱いですね。とか』
『きゃー。流石にセオリーだけど、奈美ちゃんってばわかってるー』
どうやら奈美まで加わったらしい。固まった望の手に、更にヒビが入る音が響く。
一度は体温計を受け取ろうと手を出したまといも、その手を早々に引っ込めて、
スピーカーから流れ出る会話に熱心に耳を傾けている。
『それって、あれカ? 手とかまどろっこしいカラ、額と額を当てて、
あれ、どんどん熱くなっていくナ。とか言ったりするヤツカ?』
『んまっ。マ太郎ってば、おっとなー。そんなのどこで覚えたの?』
『捨ててあった漫画に、書いてあったヨ!』
そしてまといの目がほんの少しきらりと輝くと、望をしっかりと捉えた。
『でも、絶対、そんなのやってないよね』
『だよね、先生ってばKYだから』
『だよね。KYだー』
『先生、KY!』
『KY! KY!』
「止めて下さい! だから、KYとか言うの止めて下さい!
ってか、こっちから声が届かないの良いことにわざとコンセントの近くで話してるだろ、絶対!」
周波数の向こうで始まったKYの合唱に、望は頭を振ってスピーカーに叫び出す。
しかしそんな望の手を、がっしと掴み、まといは強い調子で言い切った。
「先生、額でお願いします」
「貴女もあっさりのせられない! 体温計をどうぞ!」
「嫌です! 是非! 絶対に、額でお願いします!」
「却下です! 体温計! 小森さんも、見てないで止めてくれませんか!
てか、もうすっかり元気じゃないですか!」
「額! 額でっ!」
突如、騒がしくなった彼らの間を、霧はあたふたとしながらも、しかし嬉しそうに慌てていた。
望の手を離さないまといを止め、彼女と同じように望にしがみつく。
スピーカーからは依然として生徒達の好き勝手な言葉が一方的に送り込まれ、
およそ保健室には似つかわしくない騒動が、ぎゃあぎゃあと加熱し始めていた。
そんな保健室の中を、日向を半々に譲り合って仲良く肩を並べた二羽の雀が覗き込んでいた。
彼らは互いに顔を見合わせ呆れたように首を捻ると、さっ、とその翼を広げて窓辺を離れた。
彼らが舞い上がった空には、雲一つ無い。
天頂に昇りきって無責任に陽光を降り注がせる太陽は、空の真ん中に鎮座ましましている。
季節が変わっても燦燦と光を降り注がせるその恒星は、まるで地上の喧騒とは無縁に、ただ呑気に燃え盛っていた。
朝の寒気など嘘のような、晴れ晴れとした陽気。
午後に差し掛かったばかりの一日は、まだまだ暖かくなりそうだった。
以上で完結です。お付き合いありがとうございます。少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
あと、非常に勝手な話ではあるのですが、当方、HPを持ちますので、これらは保管庫に入れない方向で
お願いしてよろしいでしょうか。わがままを言って申し訳ありません。
あと、真冬ど真ん中なのに、秋くらいの話を投下してすいません。
二期が始まるのに、こんなのを投下してすいません。
キャラクターが原作通りでなくてすいません。
そして、年始の挨拶が最後になってしまってすいません。あけましておめでとうございます。今年が良い年でありますように。
>>476 綺麗な文章で綴られる優しい話。超GJ。エロも大好物ですがこういうのも個人的に好きだー。
別に冬でも真夏のビーチ話を投下してくれたってかまいませんぜ。
けど保管庫は駄目っていう旨は、本編投下前に言ってくれた方が
保管庫の方も助かるんじゃないかと。いや、詳しい事はわからなのですが。
ともあれ、気が向いたらまたの投下をお待ちしとります。
ああ…なんて心温まる話なのでせう。
エロパロったって、こういう話も読める方がいいと思うのは我が侭でしょうか。
なんか、ほかほかしてきました、ありがとう!
そして、ボケて勘違いしてたけど、今日こそアニメスタートなんですよね。わお。
書生に扮したZTBUがHJYSに曲がり角で追突
↓
「実は私同人誌を描いてるんです」「私も昔書いてました」
などの会話を経てコミケ会場へ
↓
有りもしない恥ずかしい穴を探られ「本で見たのとは違うなあ」と罵られる
アニメ見れた人達が羨ましいが、これでまた職人さんが増えてくれると嬉しいな。
アニメ関連の話や上のリクエストに沿ってなくて申し訳ない。
原作の121話を読んで想いついた話を一つ。
482 :
@:2008/01/06(日) 04:25:45 ID:lIC2tCHG
『親指姫始め』
ひたひたひた。
元日から一夜明けた1月2日。小走りで宿直室ヘ向かう影が1つ。
大正時代の女学生を思わせる袴姿の少女。2年へ組出席番号26、常月まといである。
恋愛対象にして担任教師の糸色望に常時付き纏っているまといであるが、さすがにお年玉という臨時
収入の稼ぎ時には家に留まらねばならず、やむなく元日だけは離れていたのだ。
超恋愛体質のまといにとって、一時でも望から離れるのは耐え難いことであった。ましてや、離れてい
る間は恋敵が望を独占する可能性が極めて高い。走るには不向きな服装であっても、まといが小走り
になるのも無理はなかった。
ようやく宿直室の入り口に到達すると、そのまま室内に侵入したくなる気持ちを抑え、かすかに乱れた
呼吸を整える。焦燥感に駆られて小走りで来た事を、恋敵には悟られたくなかったのだ。
483 :
A:2008/01/06(日) 04:29:13 ID:lIC2tCHG
呼吸を整え終わると、まといは扉に耳を寄せて中の様子を窺い始めた。
漏れ聞こえてきたのは望の声。そして予想通り、恋敵の1人小森霧の声であった。
霧は学校に引き篭もる不下校生徒である。望が宿直室での仮住まいを始めてから、家事の名目で宿
直室に入り浸る生活を送っている。望に好意を寄せており、かつ半同棲状態という霧の存在が気に掛
かるのは当然であるが、望がその生活を受け入れている状況が、更にまといを不安定な気分にさせ
ていた。
望「それでは小森さん、よろしいですか?」
霧「は、はいっ!・・よ、よろしくお願いします」
普段はマイペースな霧の声が緊張感から震えている。その緊張感が伝染したためか、まといはその
場から動けなくなってしまった。
望「最初は痛いかもしれません。その時は遠慮なく言ってくださいね」
霧「うん。でも・・・」
望「でも?」
霧「先生に触られたり、見られるのは少し恥ずかしいよ・・・」
484 :
B:2008/01/06(日) 04:32:49 ID:lIC2tCHG
(痛い?触る?見られる?恥ずかしい?まさか、それって・・)
まといの脳内に、初体験、姫始め、という単語が浮かび上がる。
望「はは・・、さすがに触らないことには始まりませんよ。ただ、毛布がないと不安でしょうから、脱ぐの
は下だけで構いません」
霧「うん。ありがとう先生・・」
授業中とは異なる、優しく包み込むような望の声。
そして望の気遣いによって緊張感から開放され、ところどころに喜色を滲ませる霧の声。
まといの脳内に、望と恥ずかしげに下半身を現す霧の姿が形成され始める。
望「それではいきます。・・おや、小森さんのはとても柔らかいですね」
霧「先生、口に出されるとすごく恥ずかしいよ・・。んっ!あっ!ん・・・」
微かに聞こえる衣擦れの音と霧の喘ぎ声が、その形成速度を加速させる。
485 :
C:2008/01/06(日) 04:35:52 ID:lIC2tCHG
望「大丈夫ですか、小森さん?痛くはありませんか?」
霧「うん・・。少し痛いけど、大丈夫だよ」
望「そうですか。なら、続けますね」
霧「うん、先生・・。んっ!」
再び聞こえる霧の喘ぎ声が、まといの脳内に絡み合う2人の姿を完成させる。
霧「先生・・、少し気持ち良くなってきたよ・・」
望「それは良かった。では、もう少し続けますね」
まといを拘束していた緊張感はいつの間にか解けていた。
そのことに気付くと同時に、涙腺の栓が緩み始めていた。
霧に先を越されたことよりも、望が自らの意思で霧を選んだことが悔しかったのだ。
かといって、このまま引き下がるまといではなかった。
−霧が選ばれたとしても、自分ならそこに割り込める−
超恋愛体質ならではの根拠なき自信が、宿直室への突入を決意させた。
486 :
D:2008/01/06(日) 04:39:23 ID:lIC2tCHG
そして突入体勢に入った瞬間、中から予想外の人物の声が聞こえてきた。
交「へー、小森の姉ちゃん、すげぇ気持ちよさそうだな」
霧「うん。初めてだったけど、すごく気持ちいいよ・・、んっ!」
(えっ、交くんもいるの!?そ、そんな幼児の前で・・)
糸色交は望の5歳になる甥であり、訳あって一緒に暮らしている。
霧とは姉弟のように仲が良いはずだが、それでもこの濡場に同席させることは、まといの理解力を超
えていた。
交「ノゾム。じゃあ、次はオレにもしてくれよ」
望「交にはまだ早いと思いますが・・、まぁ お正月くらい大人扱いしてもよいでしょうかね」
(えぇっ!!ちょ、ちょっと先生、まさか男の子にまで!?)
望が男子、しかも幼児かつ甥に手を出す。それはまといにすら割り込み不可能な領域である。
未然に阻止せねばと思うより先に、まといは宿直室に突入していた。
487 :
E:2008/01/06(日) 04:45:04 ID:lIC2tCHG
目の前には裸で絡み合う男女の姿・・・はなかった。
霧「んっ!ぁ・・・・・・・・」
望「おや、常月さん。血相を変えてどうかされましたか?」
交「あっ、まとい姉ちゃんだ。あけましておめでとー」
座椅子に寄り掛かり、やや恍惚とした表情で足を望に向けている霧。その手に靴下が握られている点
以外、毛布に運動着という普段どおりの装い。
霧の対面に腰を下ろし、その足裏に両手の親指を添えている望。書生服姿はこちらも普段どおりの装
い。ついでにコタツには交の姿。
どう見ても、青年が少女に足ツボマッサージを施し、それを幼児が興味津々に眺めている図である。
妄想に脳内を占拠されていたまといは、ここに到ってようやく状況を把握した。
−望は男の子に手を出してはいない−
−霧に先を越されたわけではない−
−望はまだ自分以外の女性を選んだわけではない−
安堵による脱力が、緩み始めていたまといの涙腺を一気に開放した。
488 :
F:2008/01/06(日) 04:47:43 ID:lIC2tCHG
望「つ、常月さん!?何があったんですか!?まさか正月早々厄介事とか?絶望した!三が日でも
休息できない世の中に絶望した!」
この後、涙に動揺する望に付け入り、まといは三が日に限り宿直室に居座れる権利を獲得する。
そして霧との暗闘や共闘が始まるのだが、それはまた別の話。オンエアされない話である。多分。
―終わり―
489 :
真昼:2008/01/06(日) 18:42:27 ID:8S7eeRLG
>>488 足ツボマッサージも、それはそれでエロスなシチュエーションだとか思ってしまった…、GJです。
アニメが始まりましたが、それとはまったく関係ない話を投下させていただきたく思います。
エロスの予定ですが、今回の投下では性的描写はあるものの本番シーン的なものはありません。
いい歳して思春期(?)真っ盛りな望×可符香、です。6レスほど失礼します。
◇ ◆ ◇ ◆
交る。混じる。雑じる。
グチュグチュと、粘膜と粘膜を擦り合わせて。
グロテスクな器官を結合させて、理性を、思考を麻痺させて。
女の喉の奥から、擦れた音が漏れる。それに答えるように、無心で最奥を貫いた。
子を成すという本来の目的を外れ、ただ忘れる為だけに行われる行為。
なんて、不毛なのだろう。なんて、醜いのだろう
――なんて――
―――なんで、こんなことをしているのだろう―――
◆ ◇ ◆ ◇
目を覚ますと、冬にも関わらず大量の寝汗を掻いていた。
「………」
はぁ、と。心底疲れたような溜息が漏れる。
隣で眠っている交を起こさぬように、静かに布団を抜け出そうと身を捩った。
――ぬるりとした、寝汗とは違う感触を下半身に感じて、望は眉間に皺を寄せる。
(……いい歳をして、夢精とは……)
うんざりと心の中で吐き捨てて、のろのろと寝床を抜け出した。
あまりの情けなさに死にたくなりながらも、洗面所で脱いだ下着を洗う。
刺すように冷たい水の感触に、まだ少し寝ぼけていた頭がハッキリした。
夢を見ていた。猥らで、とても不毛な夢。
それはずっと昔の経験を、自らの妄想で捻じ曲げた淫夢。
望とて性欲がないわけではない。このところ処理を怠っていたし、色々と溜まっていたのだろう。
だが、こうして欲を吐き出した後にあるのは、清々しさとは程遠い気だるさと、嫌悪感。
「……あぁ、もう……」
肩を落として二度目の溜息を吐きながら、力任せに下着を絞った。
年明けの浮かれた雰囲気も、少しずつ納まりを見せ始めていた。
冬の夕暮れに沈む街を、ぼんやりと眺めながら歩く。
いつものように教師としての責務を全う――しているようなしていないような、そんな一日を終えて、
いつものように小森に夕飯の買出しを頼まれて、行きつけのスーパーで買物をした。
スーパーでは偶然、大草麻奈美と出くわした。
「最近は野菜が高いですよね」
そんな主婦じみた会話を数回交わして別れ、頼まれた物は全て買って。
後は宿直室に帰るだけである。身を切るような寒さに、切にこたつが恋しくなる。
午後5時をまわると、もう周囲は薄っすらと暗くなり始めていた。
首をすくめながら歩く。帰り道、公園に差し掛かったところで―――
「あ、先生。こんにちわー」
聞き慣れた女生徒の間延びした声が、望の足を止めさせた。
「その声は、風浦さん?」
顔を上げて視界を巡らせると、通り過ぎようとした小さな公園の中に、声の主を見つけた。
入り口の近くに設置されたブランコに腰掛けた可符香は、ヒラヒラと望に手を振っている。
「お買物の帰りですか?」
可符香は白い息を吐きながら、小さく首を傾げて見せた。
長いマフラーに隠れた口元は、きっといつものように半月の形を描いているのだろう。
「ええ。……貴女は何を?」
問いながら、彼女の元まで歩み寄る。近寄ると、寒さで可符香の鼻が少し赤くなっているのがわかった。
「散歩です。今はその帰りで、ちょっと休憩中」
「こんな寒い中、ですか」
望は可符香の全身に視線を走らせた。
大きめのコートに身を包み、マフラーで口元を覆い、手はもこもことした手袋で守られている。
だが、スカートから覗く足は真っ白になっていて、見ているこっちが寒いくらいだ。
「はい。でも、そんなに寒くないですよ。先生が寒がりなだけじゃないんですか?」
なんて言いながら微笑む可符香。この様子を見る限り、本当に寒くないのかもしれない。
けれどよくよく注意して見れば、絶え間なく足をブラつかせているのは、膝の震えを誤魔化す為だというのがわかった。
……まぁ、彼女の妙な行動には慣れっこだし、人の趣味をとやかく言うつもりはない。
――言うつもりはない、が、ちょっと世話を焼くくらいは良いだろう。
望は自分の首に巻いていた長いマフラーを解いた。二つに折ると、丁度膝掛けくらいの大きさになる。
真っ白な彼女の膝にそれを乗せると、可符香は少し意外そうな表情で望を見上げた。
「あら、意外とフェミニストなんですね」
「……普通に『ありがとう』と言えないんですか、貴女は」
僅かに苦い表情を作りながら、隣のブランコに腰掛ける。
ふと、どこぞの恩着せ少女の事を思い出して苦笑した。これでは、彼女とそう変らない。
「じゃあ、ありがとうございます」
「じゃあ、とか言わないで下さい。もやっとします」
可符香の口から漏れた余計な接続詞に、更に表情を苦々しいものにしながらも、
これが彼女なりの照れ隠しに違いない、と、自分に言い聞かせておいた。
膝に掛けられた、さっきまで望の巻いていたマフラーを見つめる可符香。
と。せっかくの膝掛けを彼女は取り払い、代わりに両肩を覆うように羽織る。
その様子をキョトンと見守っていると、可符香はすぅっと目を細めて見せた。
「先生、何か音が聞こえませんか?」
――カシャン。
小さく鎖を鳴らしながら立ち上がる可符香。純粋無垢をよそおった悪戯っぽい瞳が、望を映す。
「音?」
彼女の瞳に過ぎる邪な色に気付かず、小首を傾げて聞き返す。
「えぇ。何だか、女性の声みたいな」
言われて耳を済ませてみれば、
―――ァ……あ、ん……ぅ、アァ―――
細い風の音に雑じり、小さく、苦しげな女性の声が聞こえた気がした。
その声がどこからするのか、よくよく耳を澄ませて、出所を探る。
望はゆっくりと、公園の隅に設置された公衆トイレに視線を移した。
可符香も望の視線を追うように、そこを見る。声は、中から聞こえるようだ。
望は急いたように立ち上がり――公園の出口へ向かった。
「見に行かないんですか」
「……お腹の調子でも悪いんでしょう。邪魔してはいけませんよ」
意外そうな可符香の声を背中に受けながら、何食わぬ顔で歩み去ろうとするのだが、
するんぱし。
「だったら尚の事、ほうってはおけませんよね」
着物の袖を掴まれて、足を止められてしまった。
露骨に嫌そうな顔で振り返る望とは裏腹に、可符香の瞳は悪戯っぽく笑みの形を描いている。
「人助けですよ、先生」
「可符香さん、貴女――」
うんざりと、溜息を吐くように思わず言ってしまいそうになった言葉を、寸での所で飲み込んだ。
――貴女、あの中で、何が行われてるのか、知ってるんでしょう?
きっと彼女は、それを自分に見せ付けてからかうつもりだ。
けれど証拠はない。それに、言ってしまえば逆に彼女に問い返されるだろう。
どうしたものかと思案していると、可符香は有無を言わさず望を公衆トイレに引きずっていく。
「ま、待って下さいってば!
公園のトイレは色々とまずいフラグのスポットとして有名なんですよッ!?」
「大丈夫、どこにもつなぎを着た良い男なんていませんから。
それに、例えいらっしゃったとしても、良い経験になるじゃないですかぁ」
「誰の事を言ってるんですか! それに、そんなテクニックは要りませーん!」
何とか言い訳を並べて退散しようとするも、よくわからない会話の流れで有耶無耶になってしまう。
結局、トイレの前まで来てしまった。声はもう、大分ハッキリと聞き取れてしまう。
――…は、あぅ……ん、ぁあ…!……――
女の声に混じって、男の荒い息遣い。
「大分苦しそうです」
可符香はここにきて、まだ何も気付いていない風をよそおっている。
そのまま何食わぬ顔で、トイレの中に入っていった。
裾を握られたままだったので、望も引きずられる形で中に入る事になる。
見たくない。帰りたい。
けれど、何が行われているのか確認しない事には、可符香は帰してくれないのだろう。
望は小さく溜息を吐いて、もう無駄な足掻きはせず、諦める事にした。
二人とも、打ち合わせでもしたかのように息を潜めて、隅に隠れながら、
女子トイレと男子トイレを交互に見て、声のする、男子トイレの方をそっと覗き込む。
――予想通りというか、なんというか。そこには、絡み合う男女の姿があった。
双方着衣を乱れさせ、荒い息遣いで、無心に互いを弄りあっている。
個室内ですればいいものを、スリルでも求めたのか、二人はわざわざ個室の外で行為を行っていた。
壁に手を付いて、男に尻を突き出して、肉の棒に穿たれながら身悶える女。
その女に覆いかぶさり、捲り上げた服から覗く乳房を揉みしだきながら、猿のように腰を振る男。
随分と熱中しているようで、二人は望と可符香の存在に気付くどころか、ただただ盛り上がっていくばかりだった。
(……やっぱり……)
苦々しく胸中で呟く。
そもそも夏ならともかく、この寒い中、わざわざ何故外でしようなどと思ったのだろう。
いや、冬だからこそ互いの体温を求めたのか。
年明けで、気分が浮かれていたのもあるかもしれない。秘め始め、といったところだろうか。
だがどっちにしろ、もう少し周囲に気を配っていただきたいものである。
「……わー」
小さな小さな声が、可符香の唇から漏れた。
その声は、とても淫猥な行為を覗いているとは思えないほど気の抜けたものだった。
「良かったです。体調が悪いんじゃないみたいですよ。むしろ絶好調のようです」
「……それは良かったですね……」
このごに及んでまだそんな事を言っているのか。
望はもう、力なく項垂れるしかなかった。
――男女の行為はまだ続いている。というか、どうやら2回戦目に入ったようだ。
絡む。混じる。ねっとりと、ただただ深く繋がる二人。
その表情に知性など欠片もなく、無心で快感を貪りあう。
そこに人間らしさなど見当たらない。これでは猿と変らないではないか。
暑苦しい息遣いが、こちらまで漂ってくるようだ。
男の出したモノの臭いだろうか、生臭い空気が喉にへばり付くようで、望は思わず呼吸を止めた。
薄汚れたタイルに、どちらのものともつかぬ体液が染みを作っていく。
粘ついた音が、結合された性器の間から絶え間なく鳴っている。
――吐き気がした。見ているこっちの理性まで剥ぎ取っていくような光景に。
気分が悪い。もう、見ていたくない。だが、確かに不快だと感じているのにも関わらず、
望の下半身は、交尾の臭いにあてられたかのように、反応を見せていた。
「……ぅ――ッ!」
それに気付いた瞬間、望は気配を消す事も忘れて踵を返した。
その急な動きに驚いたのか、可符香は握っていた望の着物の裾を放してしまう。
「あ、先生っ」
背後で呼び止める小さな声が聞こえたが、望は立ち止まらない。
トイレを飛び出し、そのまま公園を出ても、しばらく彼の足は止まらなかった。
――走っている間も、脳裏からずっと、淫猥な光景が離れない。
さっき見た光景が、今朝見た淫夢と混ざり合う。
もはやそれは性交とは呼べない程の、ただただグロテスクな男女の融合だった。
冷めた意識が言う。何を今更、そんな幼い嫌悪感に振り回されているのかと。
若い頃は、散々自分だってああいう事をしてきた。むしろ率先して行っていたと言っていい。
誘ってくる女は片っ端から抱いた。柔らかな身体にむしゃぶりついて、食い荒らすように犯した。
けれど、どんなに行為に没頭しても、嫌悪感を拭えなかった。
「交尾は汚い」なんて、そんな綺麗事を、いい歳になっても捨てきれないでいる。
そんな自分の幼さを嫌うように、他人の身体を求めた。自分は大人なんだと言い聞かせるように。
酷い時期は男女問わず交わった。けれど、抱いても抱かれても、結局不快感は拭えなかった。
――いつからか、性的なこと全てに虚しさを覚えた。結局、この嫌悪感から逃れる術はないのか、と。
それがわかると、とたんに諦めと虚脱感がこの身を支配した。
女の誘いも断るようになり、性的なこと全てから遠ざかるようになった。
性欲処理なんて独りで出来るのだし、わざわざ苦しみながらまぐわう必要もない。
幼くてもいい。自分は――やはり、性交が怖いのだ。
なのに。
あんな間近で行為を見せ付けられて。
「――……ぁ、が……ッ」
せり上がってくる嘔吐感が、望の足を止めていた。
身体をくの字に折り、咄嗟に両手で口元を覆う。そのまま、ズルズルとその場にへたり込んだ。
喉元までせり上がった胃の中のモノを必死で飲み下す。ツン、と、鼻と目の奥に痛みが走った。
――震える望の背に、そっと小さな掌が触れた。
瞳に涙を溜めて振り返ると、そこには、いつの間に追いついてきたのか、可符香の姿があった。
少し申し訳無さそうな表情で、望の背中を擦っている。
その掌の感触に、少しずつだが落ち着きを取り戻し、望は深く深呼吸をした。
「……ありがとう、ございます……」
まだ僅かに弱々しい声音だが、話せるようになっただけでも大分回復しているのだろう。
「……はい」
答えながら微笑を浮かべる可符香。だが、その笑みはいつもの人形じみたものではない。
罪悪感からだろうか。少し気弱そうな笑みが珍しくて、望は意外そうに眉を上げた。
「そんな顔しないで下さいよ」
確かに度の過ぎた悪戯ではあった。さっきまで、可符香への不満が胸中を渦巻いていた。
けれどこうもしおらしく凹まれては、こっちの調子が狂ってしまう。
「うん……はい、ごめんなさい」
しょんぼら、と肩を落とす可符香。望は立ち上がりながら、困ったように視線を彷徨わせた。
――以前この表情を浮かべた時は完全に演技だったが、今回ばかりは、可符香も本気で反省していた。
軽い冗談のつもりだったのだ。彼女の予定では、あの後赤い顔で慌てる望をからかう予定だった。
彼が性的なことが苦手というのは知っていた。だからこその悪戯だったのだが…。
まさかここまで嫌がるなんて思わなかった。
笑えるオチがないと、それは悪戯でも冗談でもなく、ただの嫌がらせになってしまう。
最初から嫌がらせのつもりで仕掛けたことならいざ知らず、
面白おかしく落とそうと画策していたというのに、こんなオチでは気分が悪い。
悪戯が失敗したこと。人の心を掴むのを得意としていた自分が、望の心を読み違えたこと。
そして思った以上に望を傷つけたこと。その全てが、可符香を落ち込ませていた。
「ま、まぁ悪ノリが過ぎたということで。今度から気をつけてもらえれば、と」
取り繕うように手を振りながらフォローすると、可符香は少しだけ笑みを柔らかくした。
「―――先生。まだ顔色悪いから、うちで休んでいってください。
ほら、申し合わせたかのように、私のお家のまん前です」
すぐ隣に建つ一戸建てを指差しながら提案する可符香。
そこでようやく、自分が闇雲に走り回っていたことを知った。
周囲を見渡すと、あまり見慣れない風景が広がっている。
無我夢中だった所為で、学校側とは別の方向へ全力疾走してしまっていたようだ。
「うぅん……、お気持ちは嬉しいのですが、夕飯の買物を―――」
と。そこで、自分が手ぶらだということに気付いた。
ハッとして自分の両手を見るが、そこに確かにあったはずの買物袋はない。
公園に置き忘れたのか、と、青ざめる望の目の前に、
「はい、先生コレ、忘れ物」
すっと差し出されたのは、失くしたはずの買物袋だった。
「公園に置いたままだったんですよ」
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
慌てて頭を下げる望に、可符香はニッコリと笑い返して、
「それじゃ、入りましょうか」
望に買物袋を手渡すと、何食わぬ顔で玄関の扉を開けた。
「あ、ちょ、私は―――」
「ん?」
肩越しに振り向く可符香。望がついてくると、信じて疑わない様子だ。
そのあまりに迷いない態度に、断り辛くなってしまう。
きっと彼女も、望を気遣って申し出てくれたのだろうし、それを無下にするのも躊躇われた。
それに、と。改めて周囲を見渡す。
街灯の明かりはあるものの、夜の帳の下りようとしている見慣れぬ町並みの中、真っ直ぐ帰宅できる自信がなかった。
出来れば可符香に道を教えてもらいたいのだが、誘いを断った上に送ってくれ、というのは相当気が引ける。
「どうしたんですか? 先生」
「……いえ。その……」
しばし考えた末、
「―――お、お邪魔します」
結局望は、ペコリと頭を下げた。
小森と交には、遅くなると電話を入れておこう。
二人には在り合せのもので夕食をとって貰うことになるが、仕方がない。
可符香は頭を下げる望に、満足気に頷いて、
「はい。いらっしゃいませ、糸色先生」
誘うように、玄関の扉を大きく開いた。
496 :
真昼:2008/01/06(日) 18:51:51 ID:8S7eeRLG
ぶった切らせていただきやす。
今度は朝チュンオチになどならぬよう頑張りたい、などと無謀な事をのたまってみる。
あまりエロティックなものは期待なさらぬようお願いいたします、と予防線を張っておきます。
アニメ効果で、色んな作品が投下されるようになってくれたら嬉しいなぁ。
真昼さん来てた! しかも望カフ!
相変わらず引き込まれるなあ
続き楽しみにしてます
真昼が雪とはまた違ったシチュの望×可かぁ…楽しみだ〜!
アニメEDの景先生に心臓打ちぬかれて、保管庫で景先生SS探してみたけど、
意外とないもんだな…自分で妄想するしかないのか。
真昼さんの先生はよく吐くな
吐いてないヨ。吐きそうになっただけヨ。
>>498 絶景×ユカを書ききることができれば魂のステージが上がるよ
それって絶景が妄想しながらオナニーしてるだけじゃね?
壁に穴をあけてそこに(ry
そんなサービスが、昔、新宿は歌舞伎町にあったような
霧→絶望←まとい
この絶望トライアングルが堪らなく好き。
景「気持ちよくしてくれよ、ゆか」
景はブリッジをしてゆかにチンコを擦り付け勝手にイった
>>498 少し前に絶景×可符香(しかも未完)なら書いたことある。可符香は絶景が苦手みたいだし
でも他の人の絶望×可符香を読んで筆が止まった
いくら絶望エロでも愛のある話がいいですよね
絶望した!全鯖で規制されるウィルコムに絶望した!!
そして望×可キター!wktkしながら待ってます。
こちらも一本望×可落としたいのですが
・今更アニメ一期12話のワンシーンから思いついたネタ
・今までの話と繋がりなし
・暗い、特に先生が
以上が前提となります、ご注意下さい。
「ふぁっ……あぁ……ああぁっ――」
その白い肌が、あまりに柔らかくて滑らかだから
「あぁ、んっ、はぁ……せん、せぃ……」
その甘い声が、あまりに愛しげに自分を呼ぶから
「せんせい、もぅ、や、ああぁぁっ――」
その体の熱が、あまりに心地よくて離れがたいから
だから――
「……風浦、さん……」
貴女の全てを、持っていきたいと、そう思った――
目覚めは、深い水の中から浮かび上がるような、そんな感覚に似ていた。うっすらと目を開け、眼鏡がないせいで
ぼやけたままの視界で、昨夜己の腕にかき抱いたまま眠ってしまった少女の姿を探す。
「先生、起きちゃいました?」
声は、自分から少し離れたところから聞こえた。
「まだ夜中ですよ、ゆっくり眠ってていいですよ」
布団のぎりぎり端でうつ伏せになっている可符香が、そう話しかけてくる。眠ってしまった時と
同じように裸のままで、窓から射し込む月明かりで何かを読んでいるようだった。
「……夜中、ですか」
呟きながら、寝返りをうって可符香の方へと体を向ける。少女は再び手元の本へと視線を落としながら
「そうですよ。ちゃんと寝ないと明日大変ですよ。先生、もう徹夜が辛い年でしょう?」
「……まあ、そうなんですけどね」
呻きながら僅かに体を少女に寄せる。明かりもつけずに一体何を読んでいるのかが気になった。
枕元を手探りして眼鏡を探しながら目を凝らすと、その本が非常に見慣れたものだと気付く。
「ちょちょちょちょ、貴女何を読んでいるんですかあぁ!!」
「ああ、これですか」
思わず布団を跳ね除け上半身を起こしながら叫べば、悪びれも無くあっけらかんとした返事。
その手の中から半ばひったくるようにしてその本を奪い取る。
心中簿。通称『ですのうと』。
「お手洗に行こうと思ったんですよ、そうしたらこの暗さでしょう?先生の鞄につまづいちゃって。
それで飛び出ちゃったものを戻さなきゃなって思ったら、こんなものが」
「こんなものがじゃありません!何を熟読してるんですか!!」
恥ずかしい。確かに今まで恥の多い生涯を送ってきたが、これはその中でもトップクラスに恥ずかしい。
勝手に荷物を漁られた怒りよりも恥ずかしさが勝って大声をあげるが、可符香は少しばかり小首を傾げて
両手を胸の前で組み、どこか夢見るような声で応える。
「だって、名前からして何だか読んだら神様が見えそうじゃないですか」
「その神は見えないほうが幸せなんです!!」
大体、この少女にそんなもの見えたら危ない、色んな意味で。ある意味本気で『新世界の神』になりかねない。
いや、むしろ神そのものになって後ろでいろいろ手を回すほうが似合ってそうだ。
林檎片手に空を飛びつつ『人間って面白いですね!』などとのたまう可符香を一瞬で想像してしまって
あまりの似合いっぷりに軽く絶望しながらため息をつく。
…あれ…、支援でよかですか…?
512 :
199:2008/01/08(火) 10:45:06 ID:aZKhfqUI
何故か書き込めなくなってしまったのですよorz
書き込み完了の画面は出るんですが…また改めて投下します
513 :
199:2008/01/08(火) 10:45:55 ID:/XCGuEpc
何故か書き込めなくなってしまったのですよorz
書き込み完了の画面は出るんですが…また改めて投下します
待ってます
>>510から
と。
「それ、私の名前が書いてありませんでしたね」
何気ない風を装って呟かれた可符香の言葉に、望は動きを止めた。
胸の前で組まれた両手も夢見るようなポジティブな声音もそのままに、
表情だけは逆光でよく見えず。
「私の名前、ちゃんと書いて下さい。『死んだらどーする』なんて言うくらいですから
あんまり心配じゃないですけど、もし先生が来世へと旅立つときが来るんだったら――」
――その時は私、一緒がいいです。
よく見えないのに、その瞳が真っ直ぐにこちらを見つめていることだけは
何故かはっきりと分かった。
究極ノ愛……ソレハ心中スルコトデス!
いつか自分が言った言葉が、耳鳴りのように頭に響く。
その残響を追い出すようにかぶりを振って、俯いた。少女の視線から逃れるように。
「先生?」
不思議そうにこちらに声をかけてくる可符香に、喉の奥から無理矢理
搾り出すような、弱々しい声で応える。
「……入れませんよ、風浦さんの名前なんて……」
「どうしてですかぁ?」
尋ねてくる声は相変わらず明るくて、どこまでも自分と異なると思い知らされる。
俯けば、嫌でも視界に入ってくる、自分の手に抱えられた心中簿。
――嗚呼。
ゆるゆると、望は可符香に顔を向けた。
「……太宰治は、知っていますか?」
「はい。この間授業でやったじゃないですか。『斜陽』を書いた人ですよね?」
望自身が行った現国の授業を思い出しながら答える可符香。
「彼は、その生涯でたびたび自殺未遂騒動を起こしています。それから……心中、未遂も」
答えを聞いているのかいないのか、うつろな目で少女の顔を見つめながら
望はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「共に海へと身を投げた女性は、死にました――彼1人が、助かったのです」
話しながら、望の脳裏にはある光景がくっきりと描かれていた。
初冬の冷たく、暗い海。
真っ直ぐな笑顔のまま、何も臆することなく自分の手を握り締める少女。
『先生、ずっと一緒ですよ』
そんな無邪気な約束すら、彼女は口にするかも知れない。どんな結末も疑うことなく。
2人はそのまま、地を蹴って黒々とした水面にその体を踊らせ――
――自分は、兄の病院で静かに目を覚まし、そして、出会うのだ。
「私は――私は、貴女を――」
微笑をたたえたまま冷たくなった、愛する少女と。
「嫌だなぁ、私が先生を残して死んじゃうわけないじゃないですか」
朗らかに笑うと、可符香は膝で望ににじりよった。立ち膝になって
腕を伸ばし、望の頭をそっと胸元に抱き寄せる。
「先生が心配しなくても、神様は全部見ていらっしゃいますよ。私がこんなに
先生を好きなことも、先生が私を好きでいてくれてることも。それなのに私達を引き裂くようなこと、
神様がするわけないじゃないですか」
神様、ですか。そうぽつりと呟いた無感動な声に、はいと明るい声が返って来る。
「来世でも、そのまた来世でも、ずうっと私と先生は一緒ですよ。間違いありません」
風浦さん、と、口の中だけで呟く。うつろな目のまま、可符香に抱き寄せられたままで。
――貴女は、未だ神様なんて信じているのですか。
そんなもの、この世のどこにいると言うのです。絶望だらけのこの世の、一体どこに。
いいでしょう、百歩譲って、神様とやらの存在を認めてあげようじゃありませんか。
神様が、どこまでも真っ直ぐな貴女と、どこまでもひねくれた私を、一緒に連れて行くと
お思いですか?貴女には貴女の、私には私の相応しい場所があの世にも来世にも
用意されるに決まっているじゃありませんか。どう転んだって、私と貴女が
ずうっと一緒にだなんて――不可能なんですよ、風浦さん。
それでも。
「先生」
向けられた微笑が、あまりに優しいものだったから。
「ずっと」
抱き寄せられた体が、あまりに暖かだったから。
「一緒ですよ」
囁かれた言葉が、あまりに切実だったから――
貴女の全てを、持って逝きたいと――
泣きたくなるほどに、そう、思った。
517 :
199:2008/01/08(火) 14:58:38 ID:fLlpaP8n
やっと書き込めた…!
ご迷惑おかけしました。
望×可は悲恋も似合ってしまうと思う自分もう末期。
518 :
sage:2008/01/08(火) 17:02:17 ID:fhY1EWzW
>>517 やっと見れて嬉しい。
二人の間に漂う空気すら感じられるようだ…なんといいますか、大好きだー。
ハッピーエンドスキーですが、やはりこの二人には悲恋も似合ってしまいますな。だがそれもいい。
いつものほのぼのもいいがこういうのもいいなGJ!
真昼さんといい199氏といい望×可SSはレベル高い気ガス
ネガティブとポジティブはベクトルが真逆だから、巧く並べると二人が向かい合う。
そういえばアニメで可符香=杏ちゃんが公式認定されてたな
ホームルームで過去の不登校体験を語らせられちゃう顛末をもっと描いて欲しかった。
投下させていただきます。可符香のみで、エロなしですが…
可符香=杏の設定です。
はっ、はっ、はっ
真夜中、可符香は汗だくになって目覚めた。外はよく晴れているが、少し空気が湿っている。
何で今さら、こんな夢…
薄暗い部屋で、組み敷かれている自分。薄ら笑いを浮かべる男たち。かつて味わった誰にも言えない、忘れたはずの過去。
違う。私は風浦可符香。赤木杏じゃない! 心の中で何度も唱えながら、乱れた布団を整え、再び眠りに付こうと目を閉じた。
うっ!?
目を閉じても豊かな空想力が災いして、先刻の悪夢が頭から離れない。男たちに押さえつけられて、もてあそばれている自分の姿がありありと浮かび上がる。
いやっ!離してっ、ああっ!!ん、んぁあ!嫌ぁ…
己の記憶との戦いを頭の中で繰り広げる。
違う違う違う!これは夢!私は、杏じゃ、なくて、…可符…
…うっ?!うぇっ、げぇっ
体が芯からきりきりと痛み、同時に激しい吐気が彼女を襲った。涙目になり両手で口を押さえながら、何とかベッドを抜け出し、ふらつきながら洗面所に辿り着いた。
蛇口から水をドバドバと流しながら、耐え切れずに何度も嘔吐を繰り返した。数分後、なんとか吐気が治まり顔を上げると、鏡に写った真っ青な自分の顔に気付いた。
こんなこと、もうずっと無かったのにな…
朦朧とした意識の中、流れ続ける水を止めることもできず、可符香は鏡に背を向けてその場に崩れ落ちた。
洗面所から居間が見える。テーブルの上に置かれた写真立ての中では、「赤木杏」とその両親が笑っていた。
…お母さん…お父さん…
ふっ、と笑みがこぼれた。幼い頃の数少ない両親との楽しい思い出。唯一の両親との写真。「赤木杏」は、先刻の悪夢を払拭してくれるような、とても幸せな顔をしている。
じわり、と可符香の顔が再び歪んだ。何が哀しいのか自分でも分からない。悪夢がただ怖かっただけなのか。一人が寂しいからなのか。それとも…
絶望した!私は本当に死のうとしていたんです!
今朝出合った、妙な新任教師への怒りなのか…
…絶望したなんて、軽々しく言わないでよ…
もはや立ちあがる気力もなく可符香はその虚ろな目で写真立てを見つめ続けていた
第一話の夜、のつもりです。可符香のダークサイドを描きたかったんですが…
どうも失礼しました
せめて題名か(1/○)(2/○)くらいはしろよ…
この板、60行まで書けるから纏めた方が読みやすいよ。
どなたかあびるを…
誰だよ2期が始まったら傑作投下の嵐とかいってた奴は?
改行スレ番消費野郎だけじゃねーか。
だったらお前が書けよ!(AAry
ちょっと待て、最近このスレの住民、とんがりすぎじゃないか?
自分としては
>>523のSSすごい楽しみだし続き読みたいのに、
あんな言い方されちゃ続き落しにくいじゃないか
>>523 というわけで、続きを待っているのでよろしく頼みますです
でも批判防止にもある程度まとめて投下してくれるといいかも
最近望×カフカばっかしで食傷ぎm(ry
だったらおm(ry
(´・ω・`)つ旦旦旦旦
なんだか殺伐としてきたみたいなのでお茶を置いときますね。
のんびり神が光臨するのを待ちましょ。
「絶望先生」と打とうとして「Z]を打ち損ねたら「悦棒先生」となって吹いた
悦棒先生w
これは流行る
「あああっ」
あびるの肉壁に熱い悦棒がめりめりと侵入した。
543 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/10(木) 22:13:51 ID:9Bovl5Uy
悦んでる=上向いてる
ってことかw
まだだッ!
悦棒かわいいよ悦棒
股を開きなさーい!
先生と千里と藤吉さんの3人で書いてみました。
先生が結構かわいそうな目にあっちゃう話。
548 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:01:11 ID:F/KKiZ/M
「先生、千里の抜けてるところ見つけてキタヨ!」
放課後、特にやる事もなく本を読んでいた望のもとに、ビデオカメラを持ったマリアが現れた。
「抜けてるところ?…ああ、抜き打ち検査ですか。」
「そうダヨ、ハイ先生!」
望がにこにこ笑顔のマリアからカメラを受け取る。
「どうもありがとうございます…あれ?あなた木津さんに言われて動いてたんじゃないですか?何で私に?」
「検査なんだから本人に渡したらダメジャナイカ。」
「なるほど…というかですね、もう終わったんですよその話。」
「エ?そうだったノカ…」
マリアががくりとうなだれた。
「ああ落ち込まないでくださいよ…まあこれは個人的に見させてもらいます。ところでコレは木津さんの?」
「そうダヨ、千里に借りたんダヨ。」
「うん、じゃあコレは私が返しておきますね。」
望がカメラをちゃぶ台の上に置いて、よいしょと立ち上がり冷蔵庫を探りだす。
ほどなくお目当てのものを見つけた望がそれを持ってマリアの元に戻ってきた。
「どうぞ、お疲れ様でした。」
「オ?」
望の差し出した3つのプリンが入った袋がマリアの瞳にキラキラと映った。
よだれを垂らしそうなほどに期待に満ちた顔でマリアが望に尋ねる。
「もらっていいのカ?」
「ええ、もちろん。」
「先生アリガトー。」
がばっと望に抱きついたマリアの頭をなでると、マリアはくすぐったそうに笑った。
549 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:02:14 ID:F/KKiZ/M
「バイバイセンセー。」
「ええ、さようなら。」
大きく手を振って、満面の笑みを浮かべながらマリアは帰っていった。
「…さて…と。」
マリアの持ってきたビデオカメラ、千里の抜けてるところとやらが写っているらしいが…
「なんでしょうっかねー♪」
抜き打ち検査の発端となった千里の間抜け顔、プール帰りにアイスを食べる千里。
その顔があまりに見事で、いじりたくなって…結果刺されるわ、学校は燃えるわ、と大変だったが。
また千里のあんな抜けた顔が拝めるのか、と望は期待で胸を膨らませる。
万全の体制で迎えようとお茶とようかんを用意した。
ずっと一口茶を飲み喉を潤す。さあ準備は万端だ、意気込んで望が再生ボタンを押す。
「ぽちっ。」
電子音を立てて画面に映ったのは、ベッドに横向きで寝転び本を読んでいる千里だった。
確かに気を抜いてはいるだろうが、これといって指摘する程でもない。
うん?と首をかしげながらようかんを口にする。
「期待はずれ…ですかね?…っていやこれ、木津さんの私室じゃないんですか!?」
いくらなんでも女性の私室を覗くというのは気が引ける。
せっかく持ってきてくれたマリアには悪いがこれ以上はやめておこう、と停止ボタンに手を伸ばした。
だが、カメラに映った光景に目を奪われ、その指が止まる。
千里がスカートの中に手をやったかと思うと下着を脱ぎ捨てた。
そして再びスカートに手を入れる。
望の位置からはっきり確認できるわけではないが、その中で指を動かしているようだ。
550 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:03:11 ID:F/KKiZ/M
「………はっ!いや、まずいんじゃないですかこれはぁ!?」
思考が飛んでいた。我に帰り、すぐさまバッと身を引いて周囲を見回す。
こんなところを誰かに見られたら終わりだ。
宿直室内を、窓の外を、扉の向こうをすばやくチェック、普段はなおざりなまとい探しも行う。
「居ない居ない…居ないですよね?居ないって言ってください…じゃない、言わないで…」
どうやら誰も、まといも今は離れていたようだ。
運が良いのか、そもそもこの状況の時点で悪いのか。
とにかく惨劇の幕開けにはならずに済んだようだ。
どっと疲れが押し寄せた望は、自分があることを忘れているのに気づいた。
まだカメラは再生したままで停止していない。
真っ先にそれをすべきであったのに、完全に混乱していた。
急ぎカメラの元へ向かうと、そこに映る千里は先ほどより息遣いを荒くしていた。
早く止めなければ、と望が手を伸ばしたとき、千里がころりと転がった。
千里のスカートの中がカメラの前に晒される。
画面に映ったのはひくついた千里の秘部と自らを慰める彼女の指。
その光景を前に、くちゅくちゅという水音が望の頭に響いた気がした。
もはや他の何かであるかもなどと誤魔化すことも出来ない。
551 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:04:15 ID:F/KKiZ/M
千里の…うなにーだ。
「お…お茶を…」
ぐるぐると視界と頭が回り、わけのわからない行動に出る望。
ずずっと茶をすすって、ほっと一息…いや何をやっているのだ自分は、と問題のカメラに向き直る。
「……っ…!だめだめだめだめ!」
このまま見ていたいなんて誘惑に負けそうになる自分を振り払い、ぐっと目を瞑り停止ボタンを押そうとする。
『…先生…』
「ッハイ!?すいませんすいませんごめんなさいすいません!」
突然千里に呼ばれ、その場でひたすら土下座する。
『せん…せい…』
再び呼ばれて気づく、その声はカメラからであったようだ。
ばくばくと鳴り響く心臓を押さえ、今度こそ停止した。
「………っはぁ…まずいものを見てしまいました…」
教え子である千里が、自分を想って自慰をしているところを見てしまうなんて…
明日から千里と普通に接する事なんて出来るだろうか、意識してしまうのは避けられないだろう。
その前にこのビデオカメラは千里のものだった。彼女に返さなければいけない。
もちろんこんなものを残したまま返すことなんて出来ない。
機械に弱いので少し不安だが、これだけは確実に消してから渡さないと。
「それにしても木津さんがまさかあんな…」
「知ったな…」
ぞくっと背筋に冷たいものが走った。
背後から聞こえた声の主を確かめなければいけないのに体が恐怖で動かない。
ごとりと何か重いものが転がる音が聞こえ、さらに体が強張る。
そして、夕暮れの校舎にうなぁぁーと獣のような雄たけびが響いた。
552 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:05:09 ID:F/KKiZ/M
-お名前は?-
「…糸色望です…」
-ご職業は?-
「…高校で教師をやっております…」
-ご趣味は?-
「読書です…」
-違うでしょ、女子高生の盗撮でしょう?-
「違います!誤解です…誤解なんですよぉ…ぐすっ…」
「あーもう、カット。泣かないでくださいよ先生、ほら笑って。」
「笑えるわけないでしょうこんな状況で…」
宿直室で千里に襲われ、気を失った望が目覚めた場所は彼の担任する女生徒の私室だった。
その場所で恐怖の魚眼カメラマンが先ほどのビデオカメラで望を撮影している。
「身から出た錆でしょう。先生が悪いんじゃないですか。」
「だから誤解なんです…私は盗撮なんてしてません。知ってるでしょうそのカメラ、それは関内さんが…」
「…まあそれは私からマ太郎にきっちり言ってきます。」
「ええ、ええ。ですから…」
「ですがっ!」
声を張り上げる千里にびくっと望の体が震え、硬直する。
「…見たでしょう先生…見たじゃないですか私の…それも結構長い間…」
「それは…その…すいません。本当に…本当にごめんなさい…」
うつむく千里を前に、望の罪悪感が掻きたてられる。
確かにそれは望の落ち度だった。すぐさま切るべきだったのだ。
馬鹿な事をしているうちに結局は千里のプライベートを、最も恥ずかしい所を目に焼き付けてしまった。
553 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:06:08 ID:F/KKiZ/M
「でも…ちゃんと許してあげますよ、先生。」
「…あ…ああそれは非常にありがたい事なんですが…」
「コレが終わったらね。」
「だから許してください!お願いですから!」
瞳に涙を浮かべながら、千里は小さく笑って告げる。
コレ…といいながら掲げてみせたのは件の千里のビデオカメラ。
つまり、望にもカメラの前で自慰をしてもらって、この一件はおあいこにしましょう、というわけだ。
「だめ。」
「うああー、ひどすぎるぅぅ!」
ここ数年で最大クラスに絶望的な状況に大粒の涙をこぼして泣き喚く望。
「ううう…ぐすん…ていうか!なんで藤吉さんまで居るんですか!?」
「晴美の家だからですよ。」
「だからなんで藤吉さんまで…関係ないでしょう今回の話に彼女は。」
千里の横に居るのは、その親友の藤吉晴美だった。なぜか頭を抱えてうずくまっている。
「関係ありますよ、晴美にも。」
「…どうして…?」
「あれは晴美にとってもまずいんですよ。特に先生に見られるのは。」
望にはわけがわからなかった、なぜ千里しか映っていないのに晴美にも関係あるのか。
554 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:07:11 ID:F/KKiZ/M
「…私、本読んでたでしょう?」
「ええ。」
「あれは晴美が作った本なんですよ。」
「あの…同人誌ですか…でも私、知ってますよそんなこと。なんで今さら?」
「あれはね…私が晴美に描いてもらった先生と私の本なんですよ…」
「…………はい?」
「いやぁあ!」
晴美が叫んだ、いつもは大人しい彼女なだけにこういう反応をされると望も驚いてしまう。
「うぅぅぅ…生モノ描いたのが本人にバレた…うあああ…」
「……つまりはその…あなたは私と千里さんの…そういう本を描いた…と?」
「あああ…ていうか千里…先生にバレてなかったんじゃない、私コレじゃバラされ損よ…」
「落ち着いて晴美。確かにバレてなかったわ。でもね、もしかしたらバレてたかもしれない。
だからここできっちり終わらせていた方がずっと先生にバレてないか心配し続けるより良いでしょう?」
「確かにそれは…そうかも…」
「さ、晴美。一緒に先生の弱みを握りましょう。」
「…うん、わかった。」
「わかっちゃうんですか…」
千里に対する数少ない抑止力である晴美の助けも受けられないようだ。
(ていうかこの状況…)
友人に自分と想い人との情事を描いてもらった千里。
教師と友人の情事をネタにした漫画を描いてしまった晴美。
そして、担任をする女生徒二人の前で自慰を強要されている望。
(3人とも…ヨゴレじゃないですか…絶望した…)
555 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:08:11 ID:F/KKiZ/M
逃げられないと観念した望は仕方なく衣服を脱いでいく。
鎖骨に、首筋に、腰に、好奇の目がちくちくと突き刺さる。
羞恥心で頬を染める望もそれを見つめる千里と晴美も落ち着かない。
ついに全て脱ぎ払い一糸まとわぬ姿となった望の局部が晒された。
少しだけぴょこりと首を上げるそれを前にし、二人の少女は息をのんだ。
「あのコレは…興奮してるからとかじゃなくて身の危険とかを感じると種を保存しようとする本能がその…」
「……え?あ、はい…うん。」
何を言えばいいか思いつかず、沈黙が続く。
だがしばらくすると全裸で視線を浴び続ける事に耐えられなくなった望が口を開いた。
「…やらなきゃ…だめなんですよね?」
「…っん!はい…もちろん…です。」
ごくっと唾を飲み込み、望が自身の性器に手をかける。
握り締めた肉棒を千里がまわすカメラの前で前後にしごきはじめた。
股間に少女たちの視線が集まっているのを感じる。
恥ずかしい、なんてものじゃない。まるで脳が沸騰したような感覚だ。
「っあ…おっきくなってきた…」
「…うん。」
息を荒げる望を見る二人も、興奮を覚え頬が上気する。
口内に溜まった唾を飲み込むと、今度は逆に口の中がカラカラに乾く。
「あんなに強くして大丈夫なんだ…あ…透明の出てきた…先生きもち…いいのかな?」
「…ん。」
経験というより知識の差か、赤面しながらも望の変化を口にする晴美と対照的に千里の口数は減っていく。
消極的になってしまった千里に変わって、今は晴美がカメラ役だ。
556 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:09:11 ID:F/KKiZ/M
「っは…はっ…あっ……………あの…」
ごしごしと肉棒をしごいていた手を止め、望が口を開く。
「っはイ!?なんです…か?」
突然話しかけられ、緊張して千里の声が裏返った。
「…すいません、イけません…」
「…ああ…うん…」
何もなしに自慰だけしろと言われても辛い、というのは彼女たちにもわかる。
何よりこの状況、極度の緊張が射精を阻害しているというのもありうる。
また望自身がそれだけは避けたいと思っているからこう言っているのかもしれない。
「えっと…その…晴美。」
「え?何?」
ぽそぽそと二人で望に聞こえないように話し合う。
「あのね…もう先生許してあげようと思うんだけどね…その…」
「…たぶん考えてる事一緒だと思うけど…私…先生がイっちゃうとこ…見たい…」
「……うん…でも先生無理って言ってるし…どうしよ…?」
「…先生に見られるくらいだったら平気だけど…目の前でオカズにされるとかは私もちょっと…」
「あの天井の木目…女の子に見えないこともないんじゃない?」
「いや無理でしょそれじゃ…」
二人の密談に運命を左右されている望は神に仏にと祈りを捧げていた。
557 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:10:14 ID:F/KKiZ/M
「…よし…千里、カメラお願いね。」
「え?」
再びカメラを千里の手に渡し、晴美が望の元に近づき望の右側に座る。
「…あの藤吉さん…近いです…今は離れて…」
「先生。お手伝い…します。」
「な、ちょ…ちょっと…」
晴美が透明な液体でぬらぬらとテカっている望の性器を右手で包んだ。
にゅるっとした液体の感触と望の脈動を感じ、晴美の背にゾクゾクと電流が走る。
「…えっと…こう…かな…?」
先ほどの望の見よう見まねで肉棒を前後にしごく。
「っ…はぁっ…はぁっ…」
「せんせいきもちいい?」
晴美の問いかけに望がこくこくと頷いた。
手ごたえを感じた晴美が動きを激しくすると、その分望も息を荒げていった。
その光景に飲まれ、目を回しながら千里はカメラで二人を撮り続けている。
はじめは望の股間を見ながら行為に及んでいた晴美だが、次第にその視線は望の顔へと向いていった。
望もまたその視線に気づき、晴美の顔を見つめた。
荒い呼吸を繰り返すお互いの顔を見つめあって、二人はますます昂っていった。
指の動きはそのままに、晴美が少しずつ体を望に寄せていく。
互いの息がかかるほど近づいたとき、晴美が望にキスをした。
柔らかい唇の感触に二人のの理性が溶けてしまう。
望がゆっくりと手をスカートの中へ潜り込ませてヒップを撫で、舌を晴美の口内へ侵入させた。
晴美も抵抗はしなかった。むしろ自身の舌を望のそれと絡ませて迎え入れた。
幾度か唾液を交換し合っていると望の動きが一瞬止まった。
だが、手は晴美が痛みを感じるほどに強く、彼女のヒップを鷲掴みにしていた。
次の瞬間、望は晴美の指の中で果て、びゅるびゅると勢いよく精液を吐き出した。
558 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:11:18 ID:F/KKiZ/M
ゆっくりと晴美が唇を離すと唾液が名残惜しそうに糸を引いた。
視線を未だ彼女が握り続けている望の性器のほうへやると、晴美の指と床が白く汚されていた。
(イっちゃったんだ先生…見れなかったな…でも…)
その瞬間小さく震えた望の体、寸前に大きく膨張したときの感触、ただ見る以上に望の絶頂を感じる事が出来た。
(うん…満足。)
にこっと望に微笑みかけると、迷うような表情を見せたが望も照れくさそうに微笑み返した。
「きもちよかった?」
「ええ。」
と、答えると同時に晴美は望に抱きつき、再びキスをする。
少し戸惑ったようだが、望もまだ昂ぶりは収まっていない。ぎゅっと抱きしめて晴美に応えた。
「……………あっ…晴美ずるい!」
晴美が望の元へ行ってからの一連の光景に目を奪われ、放心状態で撮影だけを続けていた千里が我に返った。
このままでは望を晴美に取られてしまうかもしれない。
焦燥感に駆られ、千里はカメラを置いて晴美の反対側から望に抱きついた。
「…木津さん?」
「私…だって…」
千里が望の首に手を回して唇を重ねると、望も千里の背中に手を回した。
拒絶されなかった事が嬉しくて、千里が先ほどの晴美と望を思い出しながらおずおずと舌を伸ばした。
絡まりあう舌に死んでしまいそうなほどの幸福を感じて、千里の頭の中が真っ白になっていく。
そんな夢心地の千里を現実に戻したのもまた望だった。
千里が下腹部にもそもそとくすぐったいような違和感を感じ、びくっと唇を離してしまった。
ちらりと下を見ると、スカートの中に望のむき出しの性器が入り込んでいた。
こびりついたままの精液を下着に擦り付けるように、望の肉棒が千里の秘部にぐりぐりと押し付けられている。
「…え…?あぅ…あ…」
「先に仕掛けてきたのは…あなた達…ですからね。」
望が千里と晴海を見ながらちょっとずるい事をいうと、二人の少女は赤面しながら小さく頷いた。
559 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:12:32 ID:F/KKiZ/M
並んでベッドにぺたりと座り込む千里と晴美。どちらも下着すらつけて居ない。
望に見られるくらいなら平気、などという彼女達だがさすがに肌を触れ合うとなると別の話だ。
不安そうにしている二人の様子がなんだかおかしくて望が笑みをこぼした。
「きれいですよ、二人とも。」
右手で晴美を左手で千里を抱き寄せ首筋にキスをした。
2対1、さらに二人とも経験ナシのようだ。
さて、どうしようかなと望が考えていると、千里がちらちらと晴美の方を見ていることに気が付いた。
(慣れてないから落ち着かない…じゃないですね……なるほど。)
千里の視線の向かう先は晴美の大きな胸、そしてもう一つ、自身の小さな胸。
普段から小さい胸を気にしている千里だが、どうやら晴美との差に不安を感じているようだ。
つい漏れそうになった笑いを押し殺し、そういうことならと望は晴美に近寄った。
「大きいですねぇ、藤吉さんの。」
「んっ…気に入ってくれました?」
「ええ。」
その重さを確かめるように、両の乳房を手のひらで持ち上げた。
そのまま乳首を口に含みころころと舌で転がしながら晴美を押し倒し、もう片方にも手をやって揉みしだいた。
「あっ…それ…きもちいい…」
たっぷり晴美の胸を愛撫した望がちらっと千里の方を向くと、千里が複雑な表情で自分の胸を見ていた。
ちょっと意地悪しすぎたかな、と千里のフォローに向かおうとした望にへたりと横たわった晴美が声をかけた。
「先生…いい趣味してます。」
にやにやしながらそう言った晴美の視線の先には千里が居る。
(ああ…見てたんですね、あなたも。)
560 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:13:27 ID:F/KKiZ/M
「木津さん。」
声をかけながら、望がふにゅふにゅと千里の胸を揉んだ。
「ひゃっ!?せんせ…」
「冗談ですよ。ごめんなさい意地悪して。」
謝りながらキスをした。
「木津さんみたいな胸も、先生大好きですよ。」
ちゅっちゅと千里の乳房に口づけをした。下の方から少しずつ中心に向かうように唇を這わせていく。
その中心に辿り着いた望の舌にグリグリと桜色の乳首を押し込まれ、千里が甘い声を上げた。
乳首への攻めを続けながら望が千里の下腹部に手を伸ばし、湿り気を帯びていた千里の中に指を挿入した。
不安からぴくっと身を震わせた千里の耳元で望が大丈夫、と囁いた。
その言葉を信じて、千里は奥へ奥へと侵入してくる望に身を任せた。
自分の中で優しく動く望の指に千里は不安と同時に安心感を感じていた。
少しずつその動きが激しくなり、くちゅくちゅという水音が頭に響く。
「…ふぁ…あっ…あぅ……っん!」
快感が頂点に達し、ぐったりと脱力した千里を望がベッドに横たわらせた。
「さ、藤吉さん。あなたも木津さんの横に寝転んでください。」
「…先生、欲張りですね。」
「頑張り屋さんと言ってくださいよ。」
561 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:14:12 ID:F/KKiZ/M
言われたとおり並んで寝転ぶ千里と晴美の蜜壷に望が指を挿入した。
右手で晴美を左手で千里をとろけさせていく。
「…あぁぁ…きもちいいよぉ…せんせえ……千里は…?」
「おかしく…なっちゃい…そ……ぁっ!」
快感に震える千里が不意に晴美の手をぎゅっと握った。
それに反応して、晴美が千里の顔を見た。真っ赤な顔をして快感の声を洩らしている。
(可愛い顔しちゃって…)
晴美が手を握り返して、千里の元へ身を寄せた。
「千里…」
「っ…はっ…?…んっ…」
晴美が千里の唇を奪った。そのまま舌を絡めあい、お互いを抱きしめる。
抱き合う二人の乳首が擦れあって新たな快感を生んでいた。
さらに高く高く、二人は快感の波に飲まれていった。
「…じゃ、先生も頑張っちゃいましょうかね。」
望は器用に両手同時に、中指で蜜壷内を刺激しながら残りの指で陰核をつまみクリクリといじくった。
「っっせんせい…それダメ…っ!」
「や……イっちゃうぅ…」
望の愛撫に屈服し二人がさらに大量の蜜をこぼした。
はぁはぁと荒い息遣いで絶頂の余韻に浸り抱き合う少女達に思わず望も生唾を飲み込んだ。
562 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:15:13 ID:F/KKiZ/M
「えーっと、そろそろ私も…いいですか…」
その発言に、晴美が千里の顔を見て微笑んだ。
「先生、千里からもらってあげて。」
「大丈夫ですか木津さん?」
「っ!だ…いじょうぶです。」
「あとでちゃんと私もお願いしますよー。」
晴美がぺたりと千里の後ろに座り、千里を後ろから抱いた。
「さ、先生。」
「…」
その瞬間が少しずつ近づいてくる。
望が千里の前に座り、そそり立つ先端を千里の秘部に狙いを定めた。
「大丈夫、しっかり濡れてますから。」
指よりずっと太く長いそれが、ずぷずぷと千里の中に入ってくる。
「いたくない?」
「ちょっと…でもなんとか…」
望の肉棒がすっかり千里の中に飲み込まれたところで動きを止めて、千里が落ち着くのを待った。
晴美が痛みを紛らわそうと千里の胸を後ろから揉んでいた。
ただ、その表情はひどく嬉しそうだった、やりたかっただけなのかもしれない。
563 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:16:15 ID:F/KKiZ/M
「動いていいですよ…」
「うん。じゃあ…」
ゆっくり前後に動くと千里の柔壁が吸い付くように望を包み込んで刺激した。
激しく腰を動かしたい衝動に駆られるが、千里のことを考え、あくまでゆっくり、ゆっくりと。
「あぅ…ん……あぁぁ……」
「気持ちいい?」
「んっ…うん……うなぁ…」
気持ちいいときもそう言うんだ?と晴美は小さく笑った。
そんな千里の様子を見て望が動きを激しくした。
同時に、晴美も千里の下腹部に手を伸ばし、硬くなった芽を指の腹で弄んだ。
ぐちゅぐちゅと二人の結合部からこぼれる水音が大きくなっていくような感覚を覚える千里。
実際にそうなのか、それとも自分が興奮しているからそう思うだけなのか。
だんだん何も考えられなくなり、千里はただただ望と晴美に与えられる快感に身を委ねていった。
目を瞑って悶える千里のスイートスポットを望が突いたとき、千里の体が大きく跳ねた。
絶頂に至り千里の中が収縮する。
それに促され望も千里の体内に精液を吐き出した。
「…っあ……先生…の?…あったかい…」
「ふふ…良かったね…千里。」
晴美が余韻にぷるぷると震える千里の首筋にキスをした。
564 :
抜き打ち追試:2008/01/12(土) 15:17:22 ID:F/KKiZ/M
「うわあこれは見事に…」
「映ってますね…狙ったの、千里?」
「そんなわけないでしょ。」
既に衣服を着ているが、千里と晴美は服に望のニオイがこびり付いているせいかまだ少しドキドキしている。
行為を終えた3人が並んで見つめる先にあるのは千里のビデオカメラ。
千里は無造作に置いただけなのだが、一連のまぐわいが綺麗にカメラに収められていた。
しばらく黙って見ていたが、そこに映る自分の痴態に耐え切れなくなった千里が頭を抱えた。
「うああ何やってるの私…先生と結ばれるときはもっとロマンチックにって…こんな勢い任せ…」
「まあまあ、千里も気持ちよかったんでしょ。ほらほら見て、このやらしー顔。」
「…………あああぁ…」
「あなただって人のこと言えませんけどね。」
「……直視できない…」
落ち込む二人の頭を撫でる望は実に幸せそうだ。
「でもこれ、一番まずいのはどう考えても先生ですよね。気を抜いてるどころか完全に不祥事じゃない。」
「やめてください…秘密ですよ、秘密ですからね。」
「どうしようかなー?」
「…ああもう!」
からかうように望を見つめる晴美に少し乱暴なキスをした。
その答えに満足したのか、晴美は望に嬉しそうに抱きついた。
その様子を千里が不満そうにじっと見ていた。その事に望も気づいている。
「わかってますって。」
そう優しく囁きながら、望が千里を抱き寄せて優しくキスをした。
565 :
オマケ:2008/01/12(土) 15:18:35 ID:F/KKiZ/M
起 「さあ今日もきっちりお掃除しなきゃ。」
承 「おや、感心ですね木津さん。」
「あ、先生。」
転 「そんな木津さんにご褒美です。」
結 ちゅっ
起 「せ、先生…どうして?」
承 「すいません、驚かせてしまって…」
転 「木津さん、あなたが好きです。」
結 結
「4コマなんですか。」
「千里向けですから。」
モノにもよるけどヨゴレって結構好き。
ヨゴレ萌え?
GJ! オマケに吹いたw
568 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/12(土) 18:52:40 ID:YiHpzsP4
うなにー吹いたwwww
うなにー・・・。あたらしいなw
面白いけど百合要素はちょっと勘弁して欲しい・・・
君がッ泣くまでッ殴るのをッ止めないッッッ!
>>570 ちょっとでも百合要素入ってたら百合スレ行けとでも?
こっちだってノーマル要素入ってるやつに来てほしくないんだが
自分の好みで文句つけてんじゃないよ
たしかにこの程度で駄目ってのは、ただの好みの問題っぽいなあ。
まあ「百合っぽい表現が含まれているから嫌いならスルー」と事前の注意があってもよかったかなとも思うが、
「先生と千里と藤吉さんの3人で書いてみました」って書いてあるんだから多少の百合要素くらいあると予想つきそうなもんだしな。
過剰反応してるようにしか見えない
ぐぐぐぐぐっじょぶ
576 :
566:2008/01/13(日) 14:49:20 ID:oBvOvl10
>>570 作者百合好きでもありますが、今回は百合というよりただの3P描写の範疇のつもりだったんで
前書きに百合要素だとかは書いてませんでした、次があったらちゃんと書いときます。
何だかお気を使わせてすまんですね。って自分
>>570ではありませんが。
と言うわけで、職人さん達が戻ってらっしゃるのをお待ちしております。
>>572 わけのわからん怒り方すんなよ
第一百合スレと違ってノーマルは行く場がないんだ
これくらいで百合だから向こう行けってどんだけ
こっち(百合スレ)だってノーマル(カップリング)要素
入ってるやつに来てほしくないんだが
ってことじゃネーノ?
蒸し返すなって
注意書きつけてもらって嫌な人はスルー、それでいいだろ
こういう不毛な論争が職人さんたちを遠ざけるんだよ
真昼氏の続きまだー
真昼もういい
罵り合って互いの意見を押し付けあう暇があるのなら
職人を褒め称えたいと考えるわけでして。
ID:F/KKiZ/M GJー!!!!!!!!!
ぜひまた投下してくだされー!!藤吉好きなので嬉しかった。
普段ホモ同人でエロに関わってるだけあってやっぱ余裕あんのな。
藤好と先生での話を希望と乞食してみる。
585 :
名無しさん@ピンキー:2008/01/13(日) 21:58:16 ID:86LPD9E9
>>580 藤吉が男のアレを見慣れてるかんじがリアルだったなw
アニメのカエレネタ、どなたか書いてくださらんかのう
お前はこのスレから出て行け
真昼氏以外はイラネ
スルー力検定試験か
懐かしいな…
589 :
585:2008/01/14(月) 10:39:33 ID:2uc6pr6y
1話2話を見た限りでは、みんなのインスピレーションを刺激するにはまだまだだ。
>>589 とりあえずsageような?
E-mail欄に[sage]と打ち込む。
これだけだから;
>>584 まったく何もない名無しのが気楽だから黙ってようかと思ったんだけど
保管庫の9スレ目にあるのが自分の。もうあれでネタ切れです。
藤吉さんサブだとよく動いてくれるんだけどメインヒロインだとやりにくいんでたぶん応えられません。
フラグ立ってないし、オタクだから、基本観察者だから。
593 :
430:2008/01/14(月) 16:31:45 ID:kRGb/+CG
>>592 あの話大好きでした〜特に前半のほのぼの会話が。
藤吉さんが望まれているところに申し訳ないですが、
またしても捏造チックな望×智恵先生の続きです。
一応、
>>228−
>>239からの流れにはなっておりますが、
別に続けて読まなくても大丈夫かと…。
相変わらず、無駄に長いです。
「ふう、これでひと通り終わったかしら…。」
私は1人、SC室で、出来上がった資料を整えると息をついた。
時計を見上げると、既にかなり遅い時間になってしまっていた。
そのとき、ドアが開き、彼が顔を覗かせた。
「智恵先生。お仕事終わりましたか?」
「ええ、もうほとんど…。」
「あとで、私の部屋にいらっしゃいませんか?
実家からワインを何本か持って帰ったんですよ。」
はにかみながら微笑む青年は、2年へ組の担任教師。
彼は現在、この学校の宿直室に住み暮らしており、その代わりに
学校内の見回り、戸締りなど用務員のような仕事も引き受けていた。
そして、彼は、目下のところ私の恋人でもある。
「ええ…そうね…。寄らせていただくわ。」
私は、あいまいに微笑んだ。
彼が嬉しそうな顔を引っ込めると、
私は、小さくため息をついて、手早く残り仕事を片付けた。
帰り支度を整えて階下に降り、
宿直室のドアをノックすると、彼の声が返ってきた。
「ああ、どうぞ、お入り下さい智恵先生。」
「おじゃまします、糸色先生。」
付き合うようになって日が浅いせいか、彼は私のことを律儀に智恵先生と呼ぶ。
そのため、私もつい、彼のことを糸色先生と呼んでしまう。
「交君は?」
「あいつは、今日は倫の家ですよ。あ、ワイン、これでいいですか?」
私は、狭い部屋のちゃぶ台の上に目をやって、絶句した。
ちゃぶ台の上に抜栓して置いてあるのは、なんとDRCのモンラッシェ。
そういえば、彼は良家のお坊ちゃまだったのだ…。
しかし、その横にあるのは、まるで学食に置いてあるようなコップだった。
「先生…いくらなんでも、このワインに、このコップって…。」
「え?ああ、今、ここにはそれしかないんですよ。」
彼は、全く意に介さないように、ワインをコップに注ぐと、私に差し出した。
私は、思わず苦笑してそれを受け取った。
「乾杯。」
ゴッ、と鈍い音をさせてコップを合わせると、口にワインを含んだ。
樽のきいたシャルドネの、馥郁たる香りが口の中に広がる。
安っぽいコップで飲む、途方もなく高価なワイン。
このアンバランスさは、まるで彼を象徴しているようだった。
子供のような無邪気さと、ガラスのような繊細さを併せ持つこの人に、
私はここのところ、振り回されっぱなしだった。
「うん…これで飲んでも、十分に、おいしいですよ。」
彼は私を見て、にっこりと、満面の笑みを見せた。
その笑顔に、突然、きゅ、と胸がつかまれるような気がした。
鼻の奥が、つんと痛くなる。
―――ああ、まただ。
最近、彼の表情の1つ1つに感情が揺さぶられる。
理由もなく、泣きたくなる。
こんなことは今までになかったことだ。
彼のちょっとした表情や些細な言動で、
幸福の絶頂に上るかと思えば、次の瞬間、不安でたまらなくなる。
経験したことのない感情の乱高下に、私は、ほとほと疲れていた。
そのまま2人で、彼が用意したチーズとともにワインを飲んでいたが、
しばらくすると、彼がコップを置き、私を熱い目で見た。
「…智恵。」
その低い声に、私の体の芯に電流が流れた。
彼が私を呼び捨てにするのは、体を合わせるときだけだった。
そのときだけは、彼は、はにかみやの青年から、猛々しい雄になる。
これも、私が翻弄されている彼のアンバランスの1つだった。
口付けは、ワインの香りがした。
彼の舌が私の口内で動き、酔いが回った体に快い痺れが走る。
私は、彼の眼鏡をそっと外した。
彼が、唇を合わせたまま私を畳に押し倒した。
その手は、忙しなく私のブラウスのボタンを外していく。
前から思っていたけれど、彼は、女性の服を脱がすことに慣れている。
人のことは言えないけれど、彼の過去に、ちり、と胸が焼けた。
ふいに悔しくなって、起き上がると彼の着物の襟に手をかけた。
彼は、悪戯そうな顔で私の両手をとると、再び私を押し倒した。
「駄目ですよ…私の方が先です。」
そう言いながら、彼が両手で私の胸を柔らかく挟んだ。
彼は、私の胸にこうやって顔を埋めるのが好きだった。
胸元を強く吸われて
「ん…っ。」
思わず、吐息が漏れた。
彼が唇を離したところに、紅い跡が残る。
「ああ…智恵…。」
彼が、私の胸を指と唇で味わい始めた。
与えられる刺激に、息が上がる。
ところが、しばらくして、
「…なんで、声、出さないんですか…?」
彼が顔を上げると、不満そうに尋ねた。
「…。」
最近、いつも、私は声を出すのを必死に抑えていた。
声を上げてしまうのは、何だか彼に負けているみたいで悔しかった。
これ以上、彼に翻弄されている自分を自覚したくなかった。
私が横を向いて黙り込んでいると、
「そういう強情を張っていると、こうですよ。」
彼が、私の敏感な部分に指を押し当てた。
「…っ!!ぁあっ!!」
思わず、声が漏れてしまう。
「ほら…もう、こんなになってるのに…どうしてそんなに我を張るんですか。」
そう言いながら、彼は、指をさらに奥に進めた。
彼の長い指が、私の中で微妙に動く。
「やぁ…ん…。」
もどかしい思いに、たまらず体をくねらせると、
彼がにこりと笑って指を強く私の中にこすりつけた。
「んん…あ、そこ、あああっ!」
私は、体をのけぞらせて叫んだ。
彼は私に口付けると囁いた。
「良い声ですよ…。」
悔しい、けど、いつも結局こうなってしまう。
「んっ…はぁ…あ、だめ、ぁあ…っ!」
今日も、私は、そのまま彼の指の動きに促され、先に昇り詰めてしまった。
息を切らしていると、「智恵…」と彼が小さく呟いて、私の中に入ってきた。
「…ぁっ。」
昇り詰めて敏感になったところを突かれ、快感に自分の内部が収縮するのが分かる。
「いいですよ…智恵、すごく、いい…。」
彼の、興奮に掠れた声に、耳朶が痺れる。
それでも、必死に声をかみ殺していると、彼がふと動きを止めた。
「そんなに声を出したくないんだったら、…やめますか?」
そういいながらも、指を私と彼がつながっている部分に伸ばし、蠢かす。
激しい快感がつま先から頭の先までを駆け抜けた。
「あ、ぁぁぁぁあああ!」
もう、私は完全に壊されていた。
「いや、お願い、やめないで、もっと…!」
恥も外聞もなく、彼にねだるのを止められない。
彼が熱の篭った目で私を見つめた。
その視線に、背中に快い刺激が走る。
「そう、そういう智恵の方が、素直で好きですよ…。」
そう言うと、彼はぐい、と強く私を抉った。
「――――!!!」
声にならない歓喜の悲鳴が漏れる。
私は、彼に翻弄され続け、
どこまでも底のない世界へと落ち込んでいった。
翌朝。
「…せい、智恵先生!」
私は、SC室の椅子の上で飛び上がった。
机の上からカルテがバサバサと落ちる。
「…どうしたんですか?智恵先生らしくない。」
目の前にいる少女が、慌ててカルテを拾い集める私を不審そうに眺めた。
「え、ええ、ごめんなさい…ちょっと頭痛がして…。」
私は必死にごまかした。
最近、彼と身体を重ねた翌日は、大抵こんな状態だった。
あのときの、彼の表情、彼の仕草が何度も目の前をちらついて離れない。
結果、仕事が手に付かなくなってしまうのだ。
少女は、首を傾げたまま私に尋ねた。
「大丈夫ですか…?私、出直したほうがいいですか?」
私は、髪を額の真中で分けている几帳面そうな少女に向かって微笑んで見せた。
「大丈夫よ、木津さん。話してちょうだい。」
そう言いつつも、私は憂鬱な気分が湧き上がってくるのを感じていた。
彼女の相談内容は想像できた。
彼女は以前から、担任教師に特別な思いを抱いている。
彼女だけではない。
彼のクラスには、他にも彼を追いかけている女生徒は多数いて、
その子達が入れ替わり立ち代わり、私のところに悩み相談に来る。
彼女達を脅威に感じているわけではない。
ただ、最近は、彼女達の相談を聞いているうちに、いつのまにか
私自身が、記憶の中の彼の一挙手一投足を追っていて、
カウンセリングがおろそかになってしまうことが多いのだ。
―――いけない…私はカウンセラーなのに…。
結局、木津さんの話は半分も頭に残らなかった。
まあ、彼女自身は、胸の中のもやもやを吐き出したかっただけのようで、
案外、すっきりした顔で帰っていったのだけれど…。
私は、彼女が帰った後、しばらく両手の中に頭を埋めていた。
―――このままじゃ、私は、ダメになってしまう。
今の私は、全てが彼中心に回ってしまっている。
生活も、仕事も、何もかも。
こんなにも他人に属してしまったことはなかった。
私が、私ではなくなってしまったかのような感覚。
それは、ものすごい恐怖だった。
この間から、ずっと考えていたことを、今、また思い返す。
これ以上、彼と付き合っていたら、私は、自分が保てなくなってしまう。
自分が自分のままでいるためには…。
―――彼と、離れるしかない―――
私は、決心した。
「別れてください。」
「え…?」
別れを告げたときの彼の顔を、私は二度と忘れることはできないだろう。
「ど…し、て…。」
言葉を詰まらせながら尋ねる彼から、私は顔をそむけた。
「縁がなかったと思って…あきらめてください…。」
「智恵先生…!?」
私は、その場から逃げるように彼に背中を向けて立ち去った。
翌日、彼は学校を休んだらしい。
少し心配だったが、その次の日から、彼は普通に学校に来るようになった。
でも、あの日以来、彼が私と言葉を交わすことはなくなった。
彼は、職員室で私と会っても、私がその場にいないかのように振舞う。
私自身、彼と顔を合わせるのは辛かったので、その方が都合が良かった。
もちろん、胸の痛みは感じるが、それは、十分予想していたことだ。
痛みは、時が癒してくれる。
そして、やがて私には、以前のような、退屈だけど平穏な生活が戻ってくる。
自分自身を取り戻せる。
―――――はずだった。
なのに。
私は、いつまでたっても、不安定なままだった。
何かが、おかしい。私が考えていたのとは違う要因が交じっている。
―――何でかしら…きちんと考えて、分析しないと…。
そう思いつつ、今日も私は、ぼんやりと部屋で頬杖をついていた。
と、コンコンとドアがノックされた。
入ってきた人の顔を見て、一瞬私は、彼かと思って息を飲んだ。
しかし、それは、彼の兄の命先生だった。
「命先生…?」
「ちょっと、話したいことがあってね…。」
命先生は、かつてない、冷ややかな空気を身にまとっていた。
私は、もしかしてこれが本来の彼の姿なのかもしれない、とふと思った。
命先生は、つかつかと机を回りこみ、私の横に来ると、私を見下ろした。
「君は、望に、いったい、何をしたんだ。」
「…え…何って…。」
「奴が、最近飯を食ってないのを知ってるかい?」
「…!」
そういえば、最近、すこしやせたみたいだとは思っていた。
しかし、なるべく顔を合わせないようにしていたから…気が付かなかった。
「おかげでこっちは、毎日、嫌がる奴にブドウ糖注射を打つはめだ。」
「…。」
黙っていると、命先生が私の両腕を強い力でつかんで立ち上がらせた。
私は、思わず「痛っ!」と声を上げた。
命先生が、私に顔を寄せ、低い声で囁くように言った。
「君と私とは、似てるんだよ…同じ人種だ。
だから、私に対しては、君が何をしようが、それはかまわない。」
命先生の目が一段と冷ややかさを増すと、ぐい、と私を壁に押し付けた。
「だが、弟は違う。奴は、未熟者なんでね、私みたいに器用じゃないんだ。
……遊び相手だったら、他の奴を選んでくれないか。」
―――遊ぶだなんて…。
私は、声もなく必死に首を振るだけだった。
―――そんなんじゃない…そんなつもりなんか、ない。
遊べるくらいだったら、別れたりはしなかった。
むしろ、そんな気軽な関係だったら…いつまでも一緒にいられたのに。
―――こんな、思いはしないですんだのに。
私の目に涙が盛り上がってきた。
命先生は、私の顔を見て、びっくりしたように私の腕を離した。
私は、その場にしゃがみこみ、両手で腕を抱えうずくまった。
胸がつぶれそうに痛い。
私は、今まで認めたくなくて目をつぶっていたことを認めた。
本当は、もう、とうに分かっていたのだ。
―――私は、取り返しのつかない過ちを犯してしまった。
自分が保てないからと言って別れたはずだったのに、
彼と別れた後に残った私は、ただの抜け殻だった。
保つべき自分なんて、もはや、どこにもなかった。
―――私は、いったい、今まで何を学んで生きてきたんだろう。
彼と出会ってからというもの、私は、何一つ正しいことをしていない気がする。
うずくまってすすり泣く私を、命先生は、黙って見下ろしていたが、
やがて、盛大にため息をついた。
「まったく、なんてことだ。
君は…もしかして、望以上に、不器用なのかもしれないな…。」
私は、涙に濡れた顔を上げた。
命先生は、あきれたような顔で私を見ると、頭をかいた。
「やーれやれ…本当に、いい大人が2人揃って何をやってるんだか…。
仕方ないな、今回だけは、私が一肌脱いでやるか…。」
毎晩、奴に注射するのもいい加減面倒だしな、と先生は呟いた。
「君は、本心は、望と別れたいと思ってないんだろう?」
私は、命先生から目をそらせると、小さく頷いた。
「だったら、望にそう言って、やり直せばいいだけの話じゃないか。」
こんな簡単なことがあるか、と命先生は腰に手を当てた。
「そんな…私のしたことは、許してもらえるようなことでは…。」
命先生の目がすっと細められた。
「だったら、許してもらえるまで、謝るんだ。
土下座でも何でもして、謝ればいいじゃないか。」
「…。」
「君が謝るのが苦手なのは分かる…私もそうだからな。
しかし…君が、本当に望のことを想っているのであれば…。」
「…。」
「頭でいろいろ考える前に、自分の気持ちを伝えてみろ。」
―――まだ、やり直せる…?
命先生の言葉に、私の胸に、小さな希望の灯がともった。
「さ、どうぞ…散らかってるけどね。」
私は、糸色医院の、命先生の診療室に通された。
「あいつは、最近、毎晩この時間にうちの医院に来ることになってる。
それだけは、ほとんど脅して納得させたからな。」
私はハンカチを握りしめて、命先生の顔を見た。
命先生は、私の顔を見返して、小さく笑った。
「そんな顔をするな。君らしくない。」
と、診療室の外から、医院の扉が開く音がした。
「…来たみたいだな。とりあえず、そこの影にでも隠れててくれ。」
私は、命先生に言われたとおりに、ついたての後ろに回りこんだ。
「よしよし、今日もよく来たな。私はちょっと用事があるから、
先に診療室で待っててくれ。」
「用事…?この時間に私が来ることは分かってるはずでしょうに。」
表で、不機嫌そうに命先生と話す彼の声が聞こえる。
ガチャリと音がして、彼が部屋に入ってきた。
後ろ手にドアを閉め、ため息をつくと患者用の椅子に腰掛ける。
心臓がどきどきする。
彼は、私と話をしてくるだろうか…。
「糸色先生…。」
私は、意を決して、ついたての後ろから歩み出た。
「―――!!」
私を見た彼の表情が、たちまちのうちに硬化する。
その彼の表情を見ただけで、私は、自分の中の勇気が挫けるのを感じた。
「智恵…。」
彼の声は、ほとんど囁きのようだった。
次の瞬間、彼は、踵を返し、私に背中を向けた。
そして、診療室のドアノブに手を伸ばす。
―――ああ、やっぱり…。
分かっていたこととは言え、絶望感に目の前が暗くなった。
しかし、ドアは、開かなかった。
「!?」
彼が、焦ったようにガチャガチャとドアノブを回す。
小さく舌打ちをすると、バンバンとドアを叩き始めた。
「兄さん!いったい何のつもりですか!!ドアを開けてください!」
外から、のんびりとした命先生の声が聞こえてきた。
「しばらくしたら開けてやるから、それまでは、そこにいろ。
―――お前ら、もっと話し合いが必要だ。」
「―――!!」
バ ン !!
彼は、苛立たしげに、両手の拳で診療室のドアを思い切り叩いた。
その音に、私は思わず身体をすくめた。
彼は、しばらくドアに両拳を当てたままの姿勢で静止していたが、
やがて、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「そこまで言うんだったら、話をしましょうか…。
もっとも、私とあなたの間に、これ以上話すことがあるとは思えませんが。」
彼の目は、さっきの命先生よりもさらに冷たい色をしていた。
―――この人に、こんなに冷たい目ができるなんて知らなかった。
私の記憶にある彼は、いつも、優しい目で微笑んでいたはずなのに。
「…ごめん、なさい。」
私は、彼に頭を下げた。
彼は、私から目をそらせた。
「別に、謝ってなんかもらわなくても、いいですよ…。
私は、もう、あなたに振り回されるのはこりごりです。
―――いったい、私を何だと思ってるんですか。」
視線と同じように、冷たい言葉。私は、唇を噛んだ。
やはり、許してもらおうなんて考えは、どだい甘かったんだ。
いったい、どうすれば良いのだろう…。
そのとき、命先生の言葉が胸に蘇った。
―――頭でいろいろ考える前に、自分の気持ちを伝えてみろ―――
そうだ…せめて、自分の気持ちを…彼にきちんと伝えよう。
そして、それを、彼が受け入れてくれなければ…仕方のないことだ。
私は、息を吸い込んだ。
「いと…、……望。」
彼の肩がぴくりと動いた。
「私、あなたを……愛してる。」
彼が、顔をこちらに向けて私を見た。
その目には、先ほどと違って、小さなためらいが見えた。
「今まで、こんな感情、誰にも感じたことなんか、なかった。
…だから、分からなかったし、怖かったの…この感情が。
何よりも、こんなにも他人に囚われてしまっている自分が、怖かった。」
彼の目が揺れていた。
「このままじゃ、自分が自分でなくなってしまうような気がして…。
だから、あなたと離れようと思った…あなたの気持ちなんか何も考えずに。」
私は自嘲気味に笑った。
「でも、離れたからって、どうにもなるものじゃないのね…。
―――私が、馬鹿だったの…。ごめんなさい。」
離れたからといって、この感情を止めることはできなかった。
あなたは、もう私の一部になってしまっていた。
―――あなたなしでは、私は、もはや、存在することさえできない…。
彼は、何も言わなかった。
私は、ため息をつくと、小さく笑った。
仕方ない。
命先生はああ言ったけれど、取り返しのつかないことだってあるのだ。
私は、彼に向かって微笑んだ。
「…聞いてくれて、ありがとう。これで、すっきりしたわ。」
そういうと、彼の横をすり抜けてドアに向かった。
命先生を呼ぶためにドアをノックしようと手を上げると、
横から、その手をつかまれた。
驚いて振り向くと、彼が、真剣な目で私を見ていた。
「…望?」
彼は、しばらくそのまま私を見つめていたが、ゆっくりと息を押し出した。
「智恵…あなたは…私が今まで会った中で、一番の大馬鹿者ですね…。」
「…。」
「馬鹿なだけじゃなく、薄情で、自分勝手で…ひどい人です。」
私は、うなだれた。
と、彼が私を引き寄せ、その胸に抱きしめた。
「なのに…どうして、私はこんなにもあなたが好きなんでしょう…!」
「―――!!」
私は、何が起きたか理解できないまま、固まっていた。
彼は体を離すと、私の頬に手を添えて、私を仰向かせた。
「ホントに……私も大概、馬鹿ですけどね…。」
そう言うと、彼は、まだ呆然としている私に、口付けた。
久しぶりに受ける彼からの口付けは、
かさかさに乾いていた私の心を、一気に潤すようだった。
彼の口付けはだんだんと深くなり、私を抱きしめる手にも力が篭る。
ようやく彼が唇を離したときは、私も彼も息を切らしていた。
お互い、熱のこもった目で相手の顔を見つめる。
次の瞬間、私達は、診療室のベッドの上に転がっていた。
もどかしげに相手の服を脱がせていく。
外にいる命先生のことなど、そのときは全く頭になかった。
彼の体を見て、私は、彼が随分やせてしまったことに愕然とした。
自分が彼に対して与えた仕打ちに、胸がずきりと痛む。
と、彼が私を抱きしめながら呟いた。
「智恵…やせましたね…。」
え、と自分の体を見下ろした。
そういえば、自分では気がつかなかったけれど、最近、余り食欲がなかった。
「どうやら、私達は一緒にいないと、栄養的にもよろしくないようですよ。」
彼が、くすりと笑うと私を見て、柔らかく口付けてきた。
その余りの甘さに、おいしい…と、思わず心の中で頷いていた。
彼が、私の下肢に手を伸ばしてきた。
いつものように、私の胸に顔を埋めたりする余裕もないらしい。
私自身も、一刻も早く彼を体で感じたくて、おかしくなりそうだった。
彼の指が、私の中を掻き分けてくる。
くちゅ、という水音が響き、私は思わず声を上げた。
「ぁあ、ああっ!」
彼が、驚いたように指を止めると、嬉しそうに微笑んだ。
「今日は、また、随分素直なんですね…。」
私は、彼を潤んだ目で見上げた。
「もう、これからは意地を張ったりしない…素直になることに決めたの。」
彼は、目を瞬くと、くすくすと笑い出した。
「…それはどうですかね…きっと、これからも私達、意地を張り合って、
たくさん喧嘩するような気がするんですけど。」
「それはそうかもしれないけど…でも、すぐに仲直りするわ。」
私は、彼の目を覗き込んだ。
彼は、私を愛おしそうに見下ろすと、頷いた。
「そうですね…愛してますよ、智恵。」
「私も…望。」
「あなたの声をもっと聞きたいのはやまやまですが…兄さんがいますからね。」
そう言うと、彼は私の口を唇で塞いだ。
そして、私達は、唇を合わせたまま、体を重ねた。
「ん…っ、あぁ、んん…!」
「く…ぁあ…!」
お互いの唇の隙間から、堪え切れない声が漏れる。
彼が私の中ではちきれんばかりになっているのが感じられる。
そして、私の体がそれに歓喜しているのも。
気が狂いそうな程に互いを求め合い、むさぼり合って、
私達は最後、同時に昇り詰めた。
全てが終わった跡、私は、久しぶりの彼の腕の中で
幸福でとろけそうな気分を味わいながら、うとうとしていた。
「ねえ、智恵…。」
そのとき、彼が、ふと口を開いた。
「あなたが、今までの自分でいられないという、さっきの話…。
その代わりに、新しいあなたを見つければいいんじゃないですか?
どんなあなただろうと、それは、あなたに違いないんですから。」
私は、思わず彼を見上げた。
彼は、明るい目をして私に微笑みかけていた。
「…なんだか、糸色先生じゃないみたい…。」
私が呟くと、彼は照れたように笑った。
「あなたを失わないためだったら、私だって前向きになります。
私だって、少しずつですが、変わってきているんですよ。」
「…!」
―――ああ、そうか…。
人が出会い、愛し合って、お互いを生まれ変わらせていく。
人を愛すると言うのは、つまりは、そういうことなのだ。
そして、それは、なんとも素晴らしいことではないか。
―――私は、いったい、何を恐れていたんだろう…。
私は、嬉しくなって、彼の胸に顔を埋めた。
彼の匂いに包まれ、私は、確実に自分が変わっていっているのを感じていた。
* * * * * * * *
その頃、医院の待合室では。
「…まったく、あいつら…人の診療室で何やってるんだか…。
これじゃ、いつまでたっても帰れないじゃないか…。」
ベンチに座り、医院の鍵を指で回しながら、ぼやいている命がいた。
609 :
430:2008/01/14(月) 16:45:47 ID:kRGb/+CG
相変わらず、メロドラマで…orz
カラッとした明るいエロを書けるようになりたいなぁ。
冒頭のエロシーン、霧とまといはどこにいたんだって自己突っ込み。
お相手が智恵先生だと、生徒達の出番が少なくて、ちょっと寂しいです。
以下は、例によって蛇足小ネタです。
長い上に、こんなもんまでくっつけて、容量がギリギリになってしまいました。
大変申し訳ない。
610 :
蛇足小ネタ:2008/01/14(月) 16:46:27 ID:kRGb/+CG
翌朝の糸色医院。
看護師が明るい顔で命に挨拶をした。
「おはようございます、先生。」
対する命は、余り覇気がなかった。
「ああ…おはよう。」
「先生どうしたんですか、なんか目が赤いですけど…。」
「いや、ちょっとした寝不足で…。」
(結局、あいつら明け方まで帰りゃしないんだから)
「あらまぁ…。」
と言いつつ、手早く診療室の掃除を始めた看護師は、突然、動きを止めた。
「ん?どうした?」
看護師は、この上なく不機嫌な顔で診察室のベッドを睨んでいた。
「先生…なんで、ベッドのシーツが外れてるんですか…。」
「え、ああ、これは…。」
「私、昨日、きれいに整えて帰りましたよ…。」
「だから、これは…。」
「しかもベッドの横に、レースのついた、ハンカチが落ちてます。」
「あ?なんだ、彼女、忘れていったのか?」
「…先生!!」
「は、はい?」
「不潔です!!先生、聖なる職場で…最低ですーーー!!」
「え?えええええーーー!?」
誤解がとけるまで、命はしばらく、看護師に口をきいてもらえなかったらしい。
612 :
305:2008/01/14(月) 21:55:50 ID:HdO9rJlp
命先生がイイ!
人の事は良く見えるのに、自分の事はまるで見えてない、それがいいです。
お疲れ様です。305です。
えーと、大草さんで一つ作ってきましたので、投下させて下さい。
エロ無し・短編・ちょっと雰囲気暗い です。 8kくらいなので丁度埋まるかも。
>>611さんスレ立て感謝です。
では、よろしくです。
待ち合わせの場所にはその姿は見つけられなかった。
来られなくなったのだろうか? 不安な考えが一瞬だけ頭をよぎり、だがすぐに別の可能性を思い出した。
彼女のトレードマークとも言える、まとめた短いポニーテール。
今日だけはそれを目印にする事はできないのだった。
苦笑を浮かべながら、駅前の雑踏の中にその姿をもう一度捜す。
程無くして見付けた彼女は、公演予定のポスターが並ぶ掲示板に背を預けるように立っていた。
長い耳当てを垂らしたウインターニットを目深に被り、下ろした髪は襟首を隠すように帽子の裾からこぼれ
出している。
灰色のマフラーで口元を覆い、誰とも視線を合わすまいとするかのように、目を伏せじっと佇んでいた。
うっかりと、いつものように名前を呼ぼうと口を開きかけ、慌てて出かけた声を飲みこむ。
何事も無かったように装ってゆっくりとその前に進み出た。
すると、気配に気がついた彼女が少し顔を上げる。
だれだろう?
そんな考えを携えた表情で、数秒の間こちらを凝視していたその瞳にすぐに輝くような光が宿る。
彼女は少しはにかんだ表情で肩をすくめてみせた。
―――どなたですか? ・・・と、顔に出ていましたよ。
そう言いたげに困った表情を作って見せ、人差し指で眼鏡のズレを直そうとして、今日は眼鏡をかけてい
ない事を思い出し、あ、と口を丸くして照れ笑いを浮かべた。
コンタクトのおかげで視界は普段と変わらないためか、つい癖がでてしまう。
不自然にならない程度に整えた髪型と、落ち着いた色合いのランチコートとジーンズ姿。これではすぐに
は誰なのか分からなくても無理はない。
互いに相手の顔を見つめ、お互い様だったということに気がついて二人は吹き出して笑った。
ごく自然に手を取り合い、ゆっくりと歩きながら距離を縮め、手を繋いだまま腕を絡めた。
変装と呼ぶには少々お粗末な二人の姿は、知り合いにでも会ったらすぐに気がつかれてしまう程だろう。
そして気分転換だと誤魔化すには簡単ではない姿。
――もう少し分かりにくい格好にするべきでしたかね?
冗談で言おうとして、すぐに口をつぐんだ。
まだ戻る事も出来ると。・・・自分たちの姿は、互いにそんな事を教え合っているように感じられる。
すべての言動に意味を感じて考えに落ちてしまう自分を叱咤するように、彼女には分からないように軽く頬
を叩き、そこで考える事をやめて、絡めた指に少し強く力を込めた。
――分かっていますよ、分かっています。
強く握り返してくる細い指を感じながら、何度も胸の内で繰り返した。
暗くなってくる空。それに反して灯り出す公園の街灯。
海を臨めるこの場所は、週末には寄り添う恋人同士で一杯になる。
自分たちも見た目はそんなカップルの一組。・・・すくなくともそう見えているだろう。
何度も確認するように周囲を盗み見て歩く。
街灯の照らす光からは逃れるように暗がりを選び、身を隠すようにして明かりをさけ、お互いの顔も見ず
に、どこか逃げ場がないかと探しているかのようだった。
_
公園の外れ、切れかけて時折点滅する薄暗い街灯の下に二人は寄り添い、しばし見つめあう。
その体が小刻みに震えているのは寒さのせいだけではないだろう。
ずっと触れたくてたまらなかったその頬を包み込むように両手で触れる。
まだ幼さのある丸い瞳は時折ゾクリとするほどの大人びた光を宿す時があることを、自分は知っている。
少し尻下がりのはっきりとした愛らしい眉を撫でると、まるでそれが合図だとでも言うように彼女は目を閉
じた。
躊躇する必要など無いはずなのに、いつもこの時間を待ち侘びて過ごしていたというのに、なぜだかため
らいが生まれて心が止まってしまう。
空白の時間が流れ、やがて寂しそうな微笑みを浮かべた彼女が目を開く。
すこしだけ泣きそうな表情を浮かべて、すぐに肩に両手を回して背伸びをし二人の顔の距離を縮めた。
そして唇を重ね合う。
その瞬間に一瞬だけ戸惑いを見せた彼女の心の中には何がよぎったのだろうか。
熱っぽい口付けを受けながら目を閉じ、あえて心は鈍く、そこに感じた痛みは忘れようとした。
まるで隠れようとするかのように深く被った帽子に手を触れ、ゆっくりと取り去ろうとすると、少し怯えた表
情を浮かべて一瞬だけ周囲をうかがうように視線を泳がせた。
――大丈夫ですよ。そう笑いかけ、弾力のあるニットを脱がせると収めていた髪が、夜風の中へと広がり
その頬へと絡み付いた。
髪を撫でるように手櫛を通しながら軽く振れるだけの口付けを落とす。
背中を抱き寄せ、再び長く唇を触れ合わせた。
二人で逢う時、時間も場所も限られていると言うのに、ほとんど言葉を交わした事はない。
長い抱擁とキスを繰り返して短い時間はあっという間に過ぎていく。
この欠陥だらけの関係はいつもここまでで止まり、先へは進もうとはしないまま、ただ時間だけが過ぎ去っ
ていく。
「私・・・・・・遅くなっても、大丈夫ですから・・・」
自分の胸に顔をうずめた彼女がぽつりと言葉に出した。
何気ない口調に一瞬思考が遅れ、胸の中へと強く響きわたる。
愛しそうに抱え込んだ彼女の頭に頬を付け、ゆっくりと首を横に振ってみせた。
夜が来る前、夜が深くなる前までの時間だけ。そう決めていた事は二人ともよく承知している。
日の無い時間は想像以上に特別だから。そう、互いに言い聞かせていた。
昼の光の下では言えなかった事も、聞けなかった事も、心の中を曝け出し受け入れてしまう。
狂ってしまう、と。この人と共に過ごす夜は、自分を狂わせてしまう、と。
そして夜は必ず終わってしまう。
きっと、そこに在った物を抱えて元の場所に戻るなんて事は、もう出来ない。
――もし、今日で、世界が滅びてしまうとしたら。
独白するようなその呟きを耳にして、彼女は顔を上げた。
いつも見せる困ったような笑顔は、今は泣いているようにしか見えない。
次の言葉を促すようなその視線に、目を閉じ、少し乱暴に首を振る。その場しのぎの言葉を吐くくらいなら
、何も言わないほうがいい。そう思い、唇を噛み締める。
「わたしも、同じ事を考えていました・・・・・・」
小首をかしげて、自分を見上げながら少女のように笑ってみせる。瞳からこぼれそうになっている雫が点
滅する街灯の光を受けて瞬いた。
「ずっとこの時間が繰り返せばいいのにって・・・・・・ 明日なんか来なければいいのに・・・ って。」
耐え兼ねたようにうつむいた彼女の瞳から落ちた雫が、石畳の上に小さく染みて広がる。
「そんな――夢みたいな事・・・・・・ 子供みたいに・・・・・・何度も・・・・・・」
答える言葉など何も見つからず、ただ、自分の服を握りしめ、震わせているその肩をそっと抱き寄せた。
_
目の前には海が望める公園。
街灯の光に寄せられるように集まり、二人だけの語らいをしている恋人たち。
その間を寄り添って歩く自分たちも、単なる恋人達の一組にすぎないのだろう。――この場所なら。
「だれもが・・・・・・ずっとこの幸せな時が続くようにと、そう信じて・・・願って、いますよね・・・」
不意にそう呟いて立ち止まり、こちらを見上げる。・・・何とか笑おうとしているような辛そうな表情だった。
「・・・わたしは ・・・私達は、何を願えばいいのでしょう?」
じっと自分を見つめる瞳は吸い込まれるほどに透き通っていた。
「どう願えばいいのでしょう・・・・・・ 何を・・・祈れば・・・・・・」
唇が震え、瞳の中に影が差してゆく。
「・・・・・・何に祈れば・・・・・祝福されるのでしょう・・・ わたし・・・祈れません・・・・・・自分たちの幸せな
んて・・・・・・!」
肩に乗せた重しに潰されるように崩れて行く体を受け止め、これまでに無いほどに強く抱きしめた。
唇をきつく結んで漏れそうになる嗚咽を必死で耐えている。その耳元を覆うように自分の手の平を添え、
そっと口を近づけ微かな声で囁くような声を出した。
「――好きですよ、麻菜実。・・・待ち遠しくて、姿を想う度いつも恋しくて、気が狂いそうになる程・・・ 好き
です。」
驚きと、戸惑いと、嬉しさと、悲しさと。次々と変わって見せた表情に、彼女の中を通りすぎた強い感情の
波を感じ取れた。
夢中でその唇を奪うと、その喉の奥から一度だけ低い嗚咽を漏らし、彼女は重ねた唇を外して相手の耳
に振れるほどの間近に口を寄せた。
途切れ途切れにしか聞き取れないほど微かな、震えた声を漏らす。
「好き・・・大好き・・・・・・ いつか、ダメになってしまっても・・・・・・ 終わってしまっても・・・・・・ 逢えなくな
っても、好きだから・・・ 望・・・」
人目をはばかるように、かすれるような細い声で言ってくれた彼女の体を優しく抱きしめ、空を仰いだ。
――ひとつだけ祈れる事があるとしたら。
この想いが実らないように・・・・・・と。 それだけなのでしょうか・・・
自分のその考えに、苦笑いさえ浮かべる余裕もなかった。今はただ胸が痛い。耳に残った彼女の言葉が
首筋に痺れるような疼きを残していた。
――幸せくらい、祈らせて下さい。・・・せめて、彼女の分だけでも・・・・・・
時間はこのまま過ぎ去り、また、待ち遠しい1週間の日々が始まる。
とても幸せで、とても苦しい毎日が、また繰り返すのだろう。