嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫24を
SSスレのお約束
・指摘するなら誤字脱字
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
・荒らしはスルー
・職人さんが投下しづらい空気はやめよう
・指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
・過剰なクレクレは考え物
・作品に対する評価を書きたいなら、スレ上ではなくこちら(
ttp://yuukiremix.s33.xrea.com/chirashi/)へどうぞ
スレは作品を評価する場ではありません
7 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/07(木) 22:10:20 ID:kCb1MF2c
\\''| ''フ --、 七_ l__ゝ ー|ー l 丶丶
//⊥(_i (ノ _) (乂 ) __) 9 ヽ_ノ
,. -─- 、
,. -─- 、 l 感 l
l 感 l ヽ、 謝 ノ
ヽ、謝 ノ / \
____ / \ | |
/ \ | | ,、/> ̄ ̄ ̄´,. -─- 、
/ ヽ  ̄_| |_ ̄ / く l 感 l
l l __\/___ 厶- ''´ ヽ、謝 ノ
l
>>1 l | r‐───‐┐| ,、 / \
. ヽ、 , ' | |
>>1乙 || /└──┐ | |
ヽ、 様 / |│ |│ \┌──┘  ̄ ̄ ̄
. / \ 佝ニニニニニニ..」 ` ,. -─- 、
. /r────‐、ヽ/r r r r r r r r/ ____ l 感 l
│l スレ立て || r r r rュ r r / \ く ヽ、 謝 ノ
│| |│========" ヽヘ. \ / \
└─────‐┘ \ > |____|
>>1 乙。
ただ、
>>3の最後は、いらないような気がしないでもない。
>>1乙〜
まあイインジャネ?
実際住人が批評してったらきりないし
だれもそんなもん見たくないだろ
1乙
今回のスレッドタイトル良いねGJ
新スレ最初の投下作品はなにかなwktk
山本くんかな
2日投稿なしだな・・
ついに終焉がやってきましたよぉぉぉぉぉ!!
実は続きを妄想しながら投下を待っている時のwktk感も好きだったりする
+
+
∧_∧ +
+ (。0´∀`)
(0゚つと ) +
+ と__)__)
お前らそう焦るな
なんたって年末だぜ
みんな忙しいだろうからな、かく言う俺も…
まぁマターリ待ちましょうや
SS一話分書くのがどれだけ大変なのか一度書いてみればいい
連載になると夜遅くに仕事帰ってからSSを書き出すのはどれだけ重労働なんだよww
でも、私の場合は2時間ぐらいで40×40形式で4枚で一話分を書けるが
他の神々はどれだけ書けるのかちょっと知りたいです
22 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 21:02:20 ID:KJNNcctH
,.,.,.,.;.;.;.;ヽ.
ヽヽヽ、/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
;.;.;.;ヽヽヽヽヽヽ/ |、l/.l二 ┼‐、、
;/|;ヽヽヽヽヽ/. |ノ|、ノ | ノ こ
:.:.:.:.:|/:.\ヽヽ;|  ̄_
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\;.;.| ∠ ┼‐、ヾ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ| o__) ノ 、ノ
.:.:.,ヘ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、 ______
∨ |:.:.:.:.:.:.:.:.:/|:.:.:.:.:)ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
ヽ_::::::|:.:.:.:.:.:/ ,':.:.:.:.:.:.:.:.:,:./',:.:.:.:.:.
ー-、ヽ::|:.:./ ,':.:.:.:.:./´ ',:.:.:.:.
、-'、_,ヽゝ´:::::::.. '-‐'´_, -―‐'ヽ |/::::
ヽ._`、>}:::::ヽ二ニ="―-- 、 ヽ.::/
:::::::::::::::/ ::::< ̄`、ー-、ー―'/
:::::::::::, '.::::. :::::.. `ー-`ー''" 〉
::::::::::/ :::. ::::::: .:::::::〈
|::::::<_ノ_ ::, :: .:
|:::,ヘヽ、 ` > .: .:
|:/l',`ー‐、 .: .: .,'_
|{ (ミ=ミ、 ヽ. .: .: ,'_:::
|'、  ̄``‐、ゝ :: .: ,ヘ_i!_
`` :: / |!_,
_/´/`ー,::
23 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/08(金) 21:09:59 ID:/bXRLY3Y
トライデント氏が水澄の蒼い空を更新したら謹慎するらしい
いい機会だ。追放しようぜ
職人さん達、嵐行為に負けないで欲しい。気分が悪いかも知れないけど読者は職人さんが思ってるより
もっともっと沢山居るから。
とりあえず
>>24は少なくともトライデント氏よりいい職人と認めらてからそういうこと言おうな。
そんなにいやならココにくるなよ。
スレ住民はスルーできない
>>31 マッチポンプな可能性もある。
まぁ普通にスルーできてないんだと思うけど。
な、こうやって一度荒れれば免疫つくだろ
またバカが出ても次は1レス程度であしらえるはずさ
嵐は次にIDを変えて
「トライデントの誘い受けうざい」
「正直なところ俺もいなくなってくれてせいせいした」
とか書いてくるから、今度はちゃんとスルーするんだぞみんな。
そうやって引っ張るなよ
わざわざ相手を煽り立ててどうするの
//\⌒ヽペペペタタン
// /⌒)ノ ペペタタタン
∧∧_∧∧ \ ((∧∧_∧∧
((; ´ДД`)))' ))((・∀∀・ ;)) <みみみんなももちつつけけ
// ⌒ノノ ( ⌒ヽ⊂⊂⌒ヽ
.((OO ノ )) ̄ ̄ ̄()__ )))
))_)_)) (;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)(((_((
逆に考えるんだ
謹慎中に新たな神作品が作られると
保守代わりにネタプロットを。
◆jSNxKO6uRM氏のを見てこんな電波が流れてきた。
主人公、幼馴染み、義母、父(故)
主人公と幼馴染みは付き合っている。
義母は大学を卒業したばかりの若妻。父(故)と再婚したが
結婚してすぐに事故にあい死亡。
義母は資産家の父(故)との結婚を遺産目当てで近づいたと思われるのが嫌で相続権を全て拒否。
主人公もその義母に心打たれ自分を遺産を受け取らずに一緒に暮らす。
そのせいで、家庭は貧しいまま、以下女で一つで主人公を育てていく。
傍から見て異色な家族の二人には悪い噂が絶えず、買い物帰りに近所の主婦の陰口を聞く。
それに、激昂した主人公。義母の制止も省みず怒鳴りつける。
その後、彼は家族なのに君付けで呼ぶのはおかしいと呼び捨てにしてくれるように言う。
顔を真っ赤にさせて恥ずかしがる義母。
誰よりも彼女の苦しみを理解している主人公にやがて彼女は……
続きは各自の人たちにお任せで。
誰かこんなの書いてくれないかなあ……
適当に書いたんで文章がおかしいのは仕様です。
ツイスター、投下します。
批評は、ありがたく頂戴します。
過去形と現在形の混ぜ具合とか。
41 :
ツイスター:2006/12/08(金) 23:20:30 ID:EQ+libAh
太郎は山鹿家の門の前に人影を見つけると、自転車を乗り捨てた。
すでに体力をすっかり消耗してしまっている。自宅から山鹿家までそれこそ全力でペダルを踏んできたのだ。
だが門の前に立っているのが山鹿本人であることを街灯の明かりで確かめると、太郎は最後の力を振り絞ってつんのめりながら駆け寄った。
殴ってやろうと思っていた。山鹿の表情を間近で確認するまでは。
太郎は振り上げたこぶしを下ろすと、その場にへたりこんだ。疲労と安堵のためだ。
「嘘かよ」
「何で分かった?」
予想外のことだったのか。山鹿は少しばかり驚いているようだ。
「顔見りゃ分かるわい。伊達に腐れ縁が続いてるわけじゃない。ああ、俺は馬鹿か。電話のときに気づけよな」
山鹿はそれを聞くと、僅かにうれしそうな顔をした。太郎はそんな山鹿の顔を悔しそうに見上げた。
確かに、電話の段階で嘘だと気づいておくべきだったのだ。
内容が内容だっただけに我を失って冷静な判断ができなかったのだろう。それだけあせっていたのだ。
「なんでそんな嘘」
「兄の本能を煽ってやろうと思ってな。それに一発ぐらい殴られておくつもりだった。今回のことの元凶は結局俺にあるわけだからな。で、俺は一子ちゃんの代わりにお前を殴る。どうだ、青春映画みたいだろう」
「いまどき漫画でもねえよ、そんなベタな展開」
「まあ、後々殴りたくなってくるかもしれんがな」
山鹿はそういって表情を固くした。ずれてもいないめがねを直す。
「一子ちゃんがうちにいるのは本当だ。少し錯乱気味だったから休ませた。事情も聞いた」
それを聞いて、太郎も表情を固くした。相手は一人っ子のくせに妹命の山鹿だ。いいたいことは山ほどあるだろう。
「一子ちゃんを抱かなかったんだってな。なぜだ」
「なぜって。当たり前だ。一子は妹だ。俺はお前とは違う」
「そうか。じゃあなぜ次子を抱いたんだ」
太郎は返答を躊躇した。それは答えるべき言葉が分からなかったからではない。答えははっきりしている。
ただ、それを言ってしまったがためについ先ほど次子を傷つけてしまったのを思い出したのだ。
結局それを口にするしかなかった。
「次子は・・・本当の妹じゃない」
ひどく自分勝手なことをいっていると感じて自己嫌悪に陥る。
しかし、山鹿はそれを聞いて満足そうにうなずいた。太郎はそれを見上げた。
「そうだ。次子はお前の妹じゃない。お前の本当の妹は一子ちゃんしかいないんだからな。何度もいったように。あれは自称妹にすぎない」
山鹿のその言葉にどこか違和感を感じてしまうのは、次子に肩入れしすぎているからなのだろうか。
「だからだな、今の状況を客観的に見ればただの、恋人と妹との間の相克に過ぎないわけだ。ただ、その恋人は妹でもあろうとしているというのが特殊な点だな。で、どうする。お前はどっちを取るんだ。恋人か妹か」
「おい、それは」
「両方もってのはダメだ。何せ二人は絶対に相容れないからな。まあ、判断の材料をやろう」
山鹿は、まだ道端で座り込んだままの太郎に合わせて、自分も腰を下ろした。
42 :
ツイスター:2006/12/08(金) 23:22:54 ID:EQ+libAh
「一子ちゃんが次子に殺されかけたのは知ってるか。それでずっと脅されていたのは」
もちろん、太郎には知る由もないことだった。
「知らないか。まあ、当たり前だな。知って放置してたんなら、それこそぶん殴ってやろうと思ってたが」
「馬鹿な。次子がそんな」
「そんなことできないと思うのか?前に話したろう。次子が伊勢を殺したかもしれないと」
そう、確かに山鹿からそんな話を聞いたことがある。だがあの時山鹿は確証はないからと否定していたのではなかったか。
「そうだな。あのときはそういった。俺も甘かったんだ。結果、一子ちゃんにつらい思いをさせたのは俺も同罪だな。だが、一子ちゃんが直接次子から聞いたらしい。
伊勢を殺したのは自分だって。だから一子を殺すのも造作もないことなんだってな。おまけに俺が事故ったのも次子の仕業だそうだ。俺も人質にして一子ちゃんを脅してたんだよ」
山鹿はそこまで言って、ジャケットのポケットから丸めた神の束を取り出した。それを太郎に渡す。
「俺はここ暫く伊勢の事件について調べていた。うちの親父はそれなりの権力者だからな。いろいろとコネがあるんだ。警察関係には特に。それで得た情報だ。まあ、いろいろと書いてある。重要なのはそうだな。このあたりか」
山鹿は、太郎が手にしているレポートを覗くと、その中から一部を引っ張り出した。
そこには、伊勢の遺体を解剖して得られた知見が書いてあった。それによれば、伊勢の首は紛れもなく素手でねじ切られており、しかも体に残された痕跡から、それは伊勢とほぼ同じくらいの背格好の女の手によるものだという。
「前にもいったが、そんなことのできる人間はまず存在しない。それで捜査も混乱した。だからなんだ。現場に残った指紋が手がかりにならないのは。そんな人間を探し出して指紋を取るなんて、できっこないからな。そんな人間はいやしないんだから」
「指紋?残ってたのか」
「ああ、首をねじ切るとき頭の皮が剥がれたらしくてな、そこから飛び出た頭蓋骨についてたらしい」
その光景を想像して、太郎は吐き気をおぼえた。だが、山鹿はそんな太郎の様子にも話を止めはしなかった。
43 :
ツイスター:2006/12/08(金) 23:24:00 ID:EQ+libAh
「その指紋がこれ。で、これは今日ちょうどいいときに来た一子ちゃんの指紋だ」
山鹿はレポートにクリップで留めてあった二枚の黒っぽいフィルムを重ねた。ぴったりと一致する。
「勘違いしないとは思うが、一子ちゃんじゃないぞ。一子ちゃんと同じ指紋を持ってるやつがこの世にたった一人存在する。そいつが犯人だ」
最後まで聞く必要はない。結論は明らかだった。だが太郎は、信じがたい事実をこれまでもかと突きつけられて、言うべき言葉が見つからなかった。
「さあ、どうする。恋人か、妹か。ちなみにその恋人は、お前の妹を殺そうとしていて、実際に前の恋人を殺している。しかも、そいつは人間ですらなく、単なる妄想の産物、幻だ。化け物そのものの幻の恋人と、たった一人の実の妹、どっちを選ぶんだ」
山鹿は太郎に詰め寄った。ほとんど誘導尋問のようなものだった。
「次子に対する変な情は捨てろ。あれは妹じゃない。一子ちゃんじゃない。次子は抱けて、一子ちゃんは絶対に抱けないことの意味を考えろ。
それはお前にとって大事なのはどちらなのか、お前が欲しい相手じゃなくて、大事にしてやりたいのはどちらなのかを物語ってるんじゃないのか。
間違えば後で絶対に後悔するぞ。だが、今は悠長に考えてる暇はない。今決めろ。お前にこうして話したことで、きっと俺と一子ちゃんを始末しにやってくるぞ、次子は。今来るかも知れん。
そうなれば、俺はお前の答えいかんに関わらず戦う。俺と一子ちゃんを守るために」
山鹿の目は、この上ないほど真剣だった。こんな山鹿を見たのははじめてかもしれない。
そして、山鹿はこうと決めたら絶対にやり遂げる。それは長い付き合いでいやというほど思い知らされていた。
長い沈黙の後で、太郎はぽつりと呟いた。
「・・・一子を取る」
そうだ、こんな選択を突きつけられて、あえて次子を選ぶやつはいない。
これは正しい選択だ。確かにそのはずだ。
だが、次子に対して沸き起こる罪悪感を消すことはできない。これが山鹿のいう「変な情」なのだろうか。あるいはただの未練なのか。
「よし、じゃあ一子ちゃんに会わせる。その後でお前の家に行く」
山鹿はそういって立ち上がった。
しかし、結局一子には会えなかった。客間で寝ていたはずの一子の姿が消えていたからだ。
44 :
ツイスター:2006/12/08(金) 23:24:35 ID:EQ+libAh
太郎が到着するよりずいぶん前に、すでに山鹿の家を脱け出していた一子は、ひとつの思いだけを抱いて自宅に向かっていた。
不幸だったのは、自転車では通れない近道を一子が通っていたために、太郎と行き当たることがなかったことだ。そのときの一子にとってはそれは幸いなことだったのだが。
家に帰った一子は、庭の隅に置かれている小さなプレハブの倉庫に向かった。工具箱の横に立てかけてあった、一本の鉄の棒を取り出してくる。
冷たく重い感触のそれは、充分な破壊力、殺傷力を秘めていると思われた。黒光りしているバール。
一子はそれを背後に隠しながら、開きっぱなしのドアから玄関に入った。
まるっきり予想外のことに、だが好都合にも、獲物は目の前に突っ立っていた。馬鹿みたいに呆けて。
一子は、やっと自分に気がついたらしい間抜けな獲物に向かって、バールの先を振り回した。
ずぶりという気持ちのいい感触を伝えながら、それはこめかみに突き刺さった。驚愕に歪む顔。
突き刺さったそれを引き抜いて、今度は上段から振り下ろす。右の眼窩に突き刺さる。
後ろを向いて逃げようとするその背中に向けてまた振り下ろす。狙いが外れて、後頭部に突き刺さる。
今度こそ背中。それから足。転倒した体に、次々とバールを叩き込む。もう、狙いなどない。蜂の巣みたいに穴だらけにしてやろう。
ただいくつもの穴を体に穿たれながら、一滴の血も流れてこないのは奇妙だった。
しかし、一子にとってはそれは当然だ。なぜなら、相手は血も涙もないモンスターなのだから。血が流れないのが何よりの証拠だった。
もう、何十回、何百回鉄の棒を振り下ろしただろうか。体の原型は残っている。だが細かなパーツはめちゃくちゃだった。顔の判別がつかないほどに。
一子は、無意識の内に顔を狙っていた。自分と同じ顔はこの世に二つといらないとでもいうかのように。
疲労の極に達した腕が、バールの重さを支えられなくなった。からんという音を立てて、それが床に転がる。
一子もまた、床にへたり込んだ。
とうとうやった。人間の形をしたものを破壊するのは、誰だって躊躇する。だが、今の一子にとってはむしろそのことが苛立ちと破壊の衝動を誘うのだった。
罪悪感なんて感じる必要はない。これは人間ではなく、人形で、もういらなくなったから壊したのだ。
いや、これは呪いの人形だった。壊されて当然の。
何が消してやるだ。消されたのはお前の方じゃないか。
「あは、あはは」
一子は、乾いた笑い声をもらした。
「何がおかしいの?」
いつの間にか起き上がっていた次子が、ほとんど歯の残っていない口でそういった。
以上、第25話「バール剣法」でした。
山鹿「むう!あれは罵亜流。あれを使いこなせるものがいるとは」
太郎「知っているのか山鹿!」
>>39 やれないこともないが、ちと初期設定が複雑過ぎやしないかい?
一子がこの先生きのこるには
どうすればいい?
GJ!!!
ただ、修羅場と言うよりはスプラッタ&ホラーだけどwwww
>>45 めった打ちにしたのに立ち上がってきただと!?
これは一子、大ピンチです!
一子逃げてーーーー!!
>>45渇いた心に嫉妬分が染み渡る!GJ!
しかしやべぇ、一子マジやべぇ。
男を見せろよ、猿太郎。
殺伐とした気持ちが修羅場によって癒されるぜGJ!
次子の化け物っぷりを見て怪物姉を思いだしちまった・・・
なんか別の意味で修羅場だw
山鹿が女の子だったらこれ以上ないくらいの強敵な気がする……
何、顔見ただけで察することができるとかって。
57 :
39:2006/12/09(土) 00:05:48 ID:cdyPcusa
本当に適当に書いたんで設定とかに穴があります。
幼馴染みもそこまで、深い設定を練ってないんですorz
後は、スレ住人の方にでも煮るなり焼くなり好きにしてもらおうかという所存なんです。
>>45 なんだろう、太郎に腹が立ってしょうがない。
せめて、次子に救いの手が欲しい……まあ、あれだけやったから無理なんでしょうが……
むしろ其の残虐振りと化け物振りに俺は食人姫を連想するが
今日のきのこる先生のスレはここですか
いや、GJ。
ゴッドジャンプ。
>>57 遺産相続に関して揉めて親戚から口汚く罵られる義理母。
それを見て主人公は、義母さんは僕が守るんだ!と誓う。
暫くして幼馴染が虐められている場面を発見。
義母が虐められていたのを思い出し、主人公は果敢に立ち向かう。
それを切っ掛けに恋慕の情を抱き、主人公に思いを寄せていた幼馴染。
時は流れ、ついに勇気をだして告白することにする。
主人公にとってはタダの幼馴染程度か、義母のついでに守ってやる程度。
しかし幼馴染の必死な告白に流されて付き合うことを了承してしまう。
……な〜んてな。どっかで見たことあるって言うのは禁止。
>>58 いや怪物姉って眼球無くなったりしても生きてたじゃん
そうゆうところ似てるなーって
>>61 おまえさん、周囲から天然って言われた事無いか?
>>57 主人公と幼馴染みは同じクラスに所属する高校生。
んで、義母は二人の担任(年は24くらいか)。
もともと主人公は年上フェチだったこともあり、入学当時から女教師に密かな想いを寄せていた。ただ、付き合いというよりも見ているだけで満足するタイプで、特別な会話はしたがことない。それで充分だった。
ところがある日、その憧れの先生があろうことか自身の父親と結婚するという事態が発生。
父親と彼女の年令が20〜30離れていたことも手伝って、親戚からは「遺産目当て」と揶揄される。主人公も然り。
しかし、共同生活が始まってからは、彼女の献身さや大らかな性格が次々と見受けられ、次第に主人公は彼女との距離をもっと詰めたくなってしまう。
教師も主人公と同じ気持ちに。年中仕事で家にいない夫よりも主人公にひかれ始める。
そして日を追う毎に二人の距離感は曖昧になっていってしまい――
んで、ここで主人公のブレーキ役になるのが幼馴染み。
昔から主人公を恋慕していた彼女は、自分から離れていってしまうことを恐れ、“二重の禁忌”を説いて主人公との関係を発展させようとする。
……軽くプロット作ったら親父いらないことに気が付いた
>>63 父親には死んで義母が親戚からさらにバッシングを受けるという役割があるじゃないか
それが主人公と義母のタガを外す一つのきっかけになると
逆転ホームラン!
始めから「主人公と一緒に暮らせる」立場を得る、という目的の為に父親と結婚する教師
父と教師との結婚の知らせを聞いて内心複雑な主人公
結婚直後に謎の事故死をする父親
結婚早々に夫を亡くした義母を気にかける主人公
内心でほくそ笑む義母
焦る幼馴染み
離婚して遠くに暮らしてる実母と実姉はどうした
主人公を引き取りに来るんだろうか。
「引き取る」に「強奪する」ってフリガナがうってあるように見えるのは目の錯覚だな
連れ去っていく新幹線の中で、主人公の隣りの席を母と姉で無言の奪い合い。
一方ロシアは年上のおねーさん(義母の親友)を使った
>42
神の束→紙の束?
しかしGJ!
>>65 まんま、ナブコフのロリータの設定。男女逆転しただけ
義母が処女って設定にできる夢のような(ry
いいねそれ。
教師と生徒という関係は世間的にまずい
恋人関係は別れたら無くなってしまうが、母子関係なら切ることはできない。
いいよ これいいよw
/ / l \\ `ヽ ヽ \
. / l | | \ \ \ \ \
/ ' | | l { \ ヽ. \ \ ヽ
. l: / ││ ∧ { \ \ l ト、 \ ヽ \ !
. | | ││ l | '、 ヽ. \ ヾ │ \ヽ\ ヽ ∧ │\ |
/l | ││ l | ヽ \\ `ヽ、 :}l | l! \. l l l l ヽ|
. / ,| | ││ l | \ ヽ\ , \\ │l| l│_ ヽj | | | 嫉妬SSはまだか?
. / ハ.∧ l l ┼ー――\―\く \ヽ ̄ 「丁 ̄ j 「 小. | | |
/ / ∧ |ヽ lハ 代テ与丈7ヾ` \ Vヘ. jテ与丈厂ア /._j__ヽ l | |\
.:/ / ∧! l\ l ヽ \ ヽ`'==彡, ノ::::::::::::::::::、_ -∨ー=彡_ :::: ∧_/゙> /コ| ∧ \
/ / |ヽ| \{ \ \ \ ̄ ̄ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / >' / |/ \/ /!\ ヽ
. / /. │ l │ :l\ \ ニ=- ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /_/レイ ∨│ ヽ
/ / | │ !イ| \ ヽ \ ..::: ' ::::::::::::::::::::::::::::::: / ;,;,;. | | l │
〃 レヘ |/│ ハ ヽ .::::rzーr+ュ , ::::::::::::::: /l;,;,;,;,;,;,;,:, │ |\ | |
/ ヽ{ { l >l、 ::::::::::f⌒ヾ-::::::::::::; イ l|;,;,;,;,;,;,;,:, │ | ヽ │| /
/ヽ \ ヽ \ | `ヽ、 j___}__, < / l|;,;,;,;,;,;,;,:, │ | │ l`l/
∧\\ \ \ ヽ l\ /´ ̄  ̄ ̄ } /;,;,;,;,;,;,;,;,;.:│ l. /! | ∧
/ ハ \\ \ |‐-∨  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`} /;,;,;,;,;,;,;,;,;,;.;.ノノ//| |/ ∧
マターリ待て
目の前の状況を確認します。
見知らぬ女の子が一人。寝坊したせいで仕舞うのを忘れてた蒲団の上で、体にシーツを巻き付けてます。
一目で分かる、プロポーションの抜群さ。
特におっぱいは凄まじい。そこらのグラビアアイドルなんか目じゃないぐらい大きいのが見てとれます。
頭には、猫耳が付いてます。それがカチューシャ式の偽物でないのは、時折ピクピクと動くことから判別できます。
とても綺麗な金髪。座っているので定かではありませんが、かなりの長さです。
碧い色の猫目。陳腐な表現ですがお人形みたいです。
猫特有の長いヒゲと掌の肉球は見当たりません。一体どこへ行ってしまったのでしょうか。
以上が、ぱっと見た感じの特徴です。
ミャー子は、とても可愛い女の子に変身してしまいました。
ここで皆さんは一つ、疑問を持たれるかもしれません。
「どうしてその娘が飼い猫だと分かるんだ?違うかもしれないだろ?」
確かに、普通に考えたらおかしなことです。猫が人間になるなんて有り得ませんから。
例えば、僕が間違えて入っちゃった隣室はアンドロイド型猫耳娘の製造場所だったとか、これは夢だとか、そっちのほうがしっくりくるかもしれません。
でもね、何というか……分かるんですよ。
目の前の女の子には、猫だったころのミャー子の面影があるんです。
これは僕の勝手な憶測ですが、愛情を以て育てているペットが人間になったら、飼い主はきっと分かります。
今の心境は戸惑いです。
それは人間になったこと自体に対するものではなく、本当に可愛いことに対してです。
こちらをずっと見つめてるミャー子。そのあどけない表情に顔が熱くなるのが分かります。
「……シンタロー?」
直立不動の僕をミャー子が心配そうに見ています。少し考え込むのが長くなってしまったようです。見兼ねたように、彼女は立ち上がろうとしました。
「いけない!」
僕は慌てて彼女の元へ駆け寄り、再びその場に座らせました。あのまま立ち上がられていたら、シーツが落ちて生まれたままの姿になってしまいますから。
え?女の裸ごときで狼狽えるなんてヘタレですって?
よく言いますよホント……皆さんが僕の立場なら絶対同じことしますね。
「もう一度聞くけど、君の名前は?」
「ミャー子」
「僕の名前は?」
「シンタロー。オオクボシンタロー」
やはりという確信の後、不意にため息が出ました。
その様子を受けて、ミャー子の顔が一気に曇りました。
「ミャー子がヒトになった……いや?」
まるで悪戯がばれて父親の次の言葉をビクビクしながら待っている幼子みたいです。娘がいない、それどころか付き合ってる彼女もいない僕が思うのも変ですが。
おそらくミャー子は僕の様子から、
「なんで猫が人間になるんだよ?気味が悪い」
と解釈したようです。その証拠に今の不安そうな顔があります。
「嫌じゃないよ」
意外に臆病なところのある彼女を怖がらせないように、優しく頭を撫でながら囁くように言います。
ちょっと触れただけで、とても柔らかくてしなやかな髪だと分かりました。
「人間の姿だろうとネコの姿だろうと、ミャー子は僕にとって大切な存在だよ」
放たれた言葉を聞いた途端、ミャー子の顔から不安の色が一気に消え去りました。
代わりに、とびっきりの笑顔を向けてくれます。
そして間髪入れずに僕を抱擁します。
「シンタローだいすきっ!」
女の子特有の柔らかさと、さらにその豊満なおっぱいがシーツ一枚越しに押し付けられる感覚に酔いしれそうになります。
嗚呼ミャー子……長年飼ってる猫が人間の女の子(可愛くてナイスバディというおまけつき)になって、僕は何だか複雑な気分だよ……でもこの気持ち良さだけはガチ……
ずっとこうしてたいかも……
しかし、そのささやかな願いは儚くも
ぎゅるるるっっっ
腹の音によって潰えました。
「あ……はは……」
苦笑いをしながら腹を押さえるミャー子。不安が払拭されて気が緩んだのでしょう。
「晩ご飯にしようか……」
時計を見るともう6時を回ってました。
今日は図書当番で帰るのが遅くなったことですし、先にご飯にしようと思います。
どうして人間になったかは後ほど聞きましょう。
蒲団をどけ、折り畳み式のちゃぶ台を設置します。
その上に用意したのはオムライスと、乾燥タイプのキャットフードの上に乗っかった焼き秋刀魚。
つまり、人間のご飯とネコのご飯です。
でも、人間二人にそのメニューは変だってことは誰の目にも明白です。
たとえ人間の姿になっても、ミャー子はネコのご飯がいいと言いました。
シーツを巻き付けていたのは寒いからであって恥ずかしいからではないと分かったのは、「ご飯ですよ」の合図と共に生まれたままの姿で飛び上がるミャー子を見たからです。
全く恥じらう様子を見せなかったのは、元動物たる所以でしょう。
急に全裸になったものだから思わず目を反らしてしまいました。
やっぱり映像と実体とでは破壊力が全く違うんです。さっきの無駄な努力は何だったんでしょう……
とりあえず中学の時に愛用してた、今では窮屈で着れないジャージを着せることにしました。
裸に直にジャージという、ある種のフェチプレイだと思われるかもしれませんが仕方ありません。
今はこれで凌いでもらいましょう。
秋刀魚を骨ごとボリボリと、時々キャットフードをつまむ様は非常にシュールです。
普通の人間がこんな食生活をしているなら偏食甚だしいこと請け合いです。
目の前にいる娘が飼い猫のミャー子だということを改めて実感しました。
また、観察して気付いたことがあります。
まず、直接口で食べるのではなく、ちゃんと手を使って食べるということです。
さすがに箸やスプーンを使うことはないのですが、キャットフードを指で摘んで口に運ぶ様子は中々様になってます。
次に、語尾に「にゃ」とか「にゅ」とか付かないことです。
まあ当然と言えば当然ですか。 あれは人間の勝手な妄想ですから。
「どうしたシンタロー?ミャー子のかお、なにかついてるか?」
どうやらずっと見つめていたようです。キャットフードを摘む手を止めて首を傾げています。
「いや……ミャー子が可愛いから見てるだけだよ」
場を和ませる意図でキザっぽく言ってみました。
もし僕とミャー子がカップルでこんな台詞を街中でほざいたら白い目で見られること必至ですね。
ところで、ミャー子はなんで赤くなってるんでしょう?全裸はOKで冗談で言ったクサイ言葉はNGだというのでしょうか?
世間体は気にするのに、偽装結婚には躊躇ないのかw
食べ終わった食器を片したら、いつものようにテレビを付けます。
壁にもたれるとミャー子が膝に乗っかってくるのが習慣です。
ですが今は人間の姿。ミャー子にもそれが分かってるようで、僕の横に座るだけです……いえ、かなり密着してるんですがね。
「あの、ミャー子……もうちょっと離れてほしいかも……」
女の子座りで僕の腕を取り、体を擦り付けるミャー子。鼻をくっつけて匂いを嗅ぎまくってます……
「なんで?」
「いや、だからさ、あの……」
僕も男ですから、女の子に密着されたら弱ります。
それに、ミャー子は家族です。家族に欲情なんてしたくないです。
息子が若干反応しているのは、六日間も溜め込んでるからですよ、きっと。
そもそもミャー子がいつもオナニーの邪魔をするのに問題が……
気を紛らすためにテレビのチャンネルを回しました。
今の時間帯なら面白いバラエティー番組を放映してるはずですし、この煩悩もごまかせます。
しかし運の悪いことに、変えた先は新人グラビアアイドル特集の真っ最中でした。
僕と同い年ぐらいの女の子が水着姿で画面内を走り回ってます。勿論、豊満なそのおっぱいを暴れさせて。
さっきからおっぱいおっぱい言い過ぎだと思われてるかもしれません。
実は僕、おっぱいフェチなんですよ。だから目を離せません。抗うことはできません。
自然と、腕に感じる柔らかさが画面の娘のものに変換されてしまいます。
結果、紛らわせるつもりが逆効果となってしまい、あらぬ失言をしてしまいました。
「あの子すっごくイイ……」
その後待っていたのは、鋭い痛みです。
「いだっ!?」
ミャー子は僕の二の腕にかぶりついてきました。
「う゛ぅぅぅぅぅっ!!」
「痛いミャー子いたいっ!!!」
振りほどこうとすればするほど食い込んでいくのが分かります。
ジャージからはみ出した二本の尻尾がピンとV字型になっています。これは怒っている証拠なのです。
「ごめんゆるしておねがいっ!!」
何が悪いのかはわかりませんが、とりあえず謝ります。ようやく離してくれた時には噛んだ跡がしっかり残ってました。
「ミャー子!いきなり何するんだよ!」
「シンタロー!ミャー子がいるのに、またべつのメスのことばっかり!!」
「ミャー子!?」
「あんなのどこがいい!はこのなかのメス、さわれないのに!」
「何を言って……」
「ミャー子、シンタローすき!シンタローがほかのメス、きにするのいや!」
ミャー子は興奮気味に叫んでます。長い髪の何本かは逆立ち、体が強張ってるのが腕越しに伝わります。
どうやら、焼きもち焼きは相変わらずのようです。
猫は飼い主の愛情が他に向くのを嫌うと言いますが、彼女はそれが特に強いのでしょう。
これ以上五月蝿くされて近所から苦情が来ては困るので、僕はミャー子をなだることにしました。
「ごめんね、ミャー子」
そう言ってやり、耳の後ろを撫でてあげます。
「僕も好きだよ」
こうされるのが気持ち良いみたいで、耳をピクピクさせています。
しばらくそうしてやるうちに表情も和らぎ、すっかり機嫌が直ったようです。
「シンタロー……」
甘えた声で再び腕に擦り寄ります。
「ごめん、シンタロー」
さっき噛んだところに頬擦りしてきます。恥ずかしいやら心地良いやら、嗚呼、もうやめて……
しかしそれもつかの間、
「あっ!!!!」
ミャー子は突然思い出したように声を上げました。
「ど、どうしたミャー子!?」
「ミャー子、ヒトになった!」
「それは知ってるよ……」
何を今更と思っていると、とんでもないことを言ったのです。
「シンタロー、ミャー子と交尾する!」
「……は?」
「ミャー子、シンタローすき。シンタローも、ミャー子すき。」
「ちょ……」
「いつもシンタロー、まえあしでち〇ち〇しゅっしゅっ、さみしいやつ」
「おま……」
「ミャー子、ちちでかい。シンタロー、ちちでかいのすき。ミャー子のちちさわれ」
「やめ……」
やめろと言う間もなく、僕は両手を取られました。
直後、掌に感じたのは柔らかなもの。それぞれの指がそれにめり込んでいきます。ただ柔らかいだけではなく、指を跳ね返さんとする弾力もあります。
嗚呼、なんてことを……
僕はミャー子によって、ミャー子のおっぱいを触らされてしまったのです。
咄嗟に手を放したものの、感触がまだ残ってます。
「み、ミャー子!冗談でもしていいことと悪いことが……」
息子はちゃっかり反応してますが、ここは一つ叱ってやらなければならないと思いました。
しかしミャー子は目を逸らして、顔を赤くしてました。
「……ミャー子、きずものにされた。およめにいけない。せきにんとれ」
「どこでそんな言葉覚えたんだ!?お前猫だろ!!」
「はやくふくぬげ、ミャー子もぬぐから」
「下から脱ごうとするな!!少しは躊躇えよ!!!」
……こんな感じで夜は更けていきましたが……
前途……多難です……
(続く)
週一ペースで頑張ります……
割り込んじゃいました。すいません。
一子にバールで殴られてきます…
うちの猫も擬人化しないかなぁ・・・
>>85 Giftでググるべし
現在放送中のアニメの中では最も嫉妬ヤンデレテイストが利いてる作品
特に一人糸電話は空鍋に迫る迫力w
犬好きだが猫が欲しくなってきたぜGJ
>>85 Giftの霧乃
今週の放送ではついに
莉子は記憶を吸い取られておかしくなって
もう片方の愛しい彼を奪われた霧乃は莉子の記憶で勝手に妄想して狂ったし
両ヒロイン狂ってるよwww
>>81 なんでそんなにGJなの・・・・
さて、今から擬人化しそうな猫でも探してくるか
>>81 この後、幼馴染や姉や妹や従姉妹などの雌猫が出てくるんですね!
>まえあしでちんちんしゅっしゅっ、さみしいやつ
うるせー、悪かったよ (ノД`)
教えてくれた人ありがとう、早速Giftと一人糸電話でぐぐった
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガク
96 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/09(土) 19:56:15 ID:o9YR+Vun
,. -‐''~´ _,/ ) _,. -‐ミミ
| ̄ ̄ ̄`~/ヽヽ_ノ____,,,._-='_二-ヘミミ/
ヽ;;;;;;;;;;;;/,_ レ'<弋;;;ッ、 ヽ_,/,./i;;;;;;ラヽ .//|
`'''''/ `ヽY/ . ̄ ̄/| /ヽ `'―'''´‐ !/ |
/ ノ! !_ _;;;| | | |;';;; ,| |//./ 安心するんじゃ…
l´/´‐'''‐'-‐'''~ヽ' ̄ ヽ__i'''ヽ__ノ  ̄| | |/
.// (´`´ _,.ノ彡彡 ,`ヾ''´'´ミミ_ / //ミミ ポルナレフ
/ / '‐''~ )/''‐-----‐''~´|川 iミ/川ヽ
/ / j‐' _,. く :;;;,,,,,,,,,,,,,, /川 /|川
./ / '´ ノ彡〃川川ヽミ川,.-'´/lll/
/ / )) /ノ〃川川川ヽ,.-'´ |/
,.-''''~~~''-、 ノ~´ ヽ,,,,,,__/ /
ジョジョAA貼る奴マジうざくなってきた
ツイスター、投下します
99 :
ツイスター:2006/12/09(土) 20:29:48 ID:LPXI7lyM
驚愕に顔をゆがめたのは、今度は一子のほうだった。
それをおもしろそうな顔で見下ろしていた次子が、ゆらりと一歩一子に近づいた。
「ひっ!」
腰を床につけたまま、一子はあとずさった。
ここは玄関で、背後のドアは開いたままだ。だが、立ち上がって逃げ出すことができない。次子に背中を見せるのが怖い。
次子はしゃがみこむと、一子の目の前にぐしゃぐしゃに潰れた顔を近づけた。
「驚いた?こんなものでいくら叩いてもムダだよ。わたしは死なないし、すぐ直っちゃうから」
そういう次子の口の中は、すでに直りかけていた。さもなければしゃべることができないほど、ずたずたにしてやったはずなのだ。
「だからね、わたし一子ちゃんのしたことには別に怒ってないんだ。そりゃ痛かったけどね。怒ってるのはそのことじゃないんだ」
次子は一子の胸倉を掴むと、自分の顔をいっそう一子に近づけた。千切れかけた鼻が、一子の頬にへばりついた。
「気付いたんだ、わたし。やっぱり一子ちゃんは邪魔だなって。お兄ちゃん、わたしは妹じゃないなんていうんだよ。おかしいよね」
そういうと、次子は一子の胸倉を掴んだまま立ち上がった。一子もまた強制的に立ち上がる格好になった。
「だから、消えちゃってね、一子ちゃん。でも安心して。すぐには死なないように気をつけるから」
次子は一子の首をつかんで、ゆっくりと力を入れ始めた。
一子はそれを感じ、逃げ出そうと腕を掴んで離れようとするが同じくびくともしなかった。かつてと同じだ。
苦しい。涙がこぼれる。わずかに開いている気道から、すこしでも空気を入れようと必死で呼吸しようとする。
ひゅうひゅうとのどから風の音が聞こえる。呼吸に必死で、それ以上声を上げることもできない。
意識が遠のいてくる。まるで霞がかかったように頭がぼんやりしてきた。
そんな頭の片隅でいろいろな過去のことが思い出されてくる。普通は走馬灯のようだというが、一子はチャンネルが次々に変わるテレビのようだと思った。
多くは太郎との思い出だった。なんのかんのといって、最後に思い出されるのは太郎のことなのか。
一子は自分が思いのほかブラコンであったことに驚き、そんな自分にあきれた。太郎に対してそっけなく接していたのも、結局は意識していたことの裏返しだったのか。
やがて諦めて意識を手放そうとしたそのとき、首を絞めていた次子の手が離れた。
100 :
ツイスター:2006/12/09(土) 20:30:28 ID:LPXI7lyM
「一子!」
そのまま崩れ落ちようとする一子の体が受け止められる。
「おいっ!しっかりしてくれ!」
体を抱えられた一子が、うっすらと目を開けた。太郎だった。
「あに、き?」
太郎は一子の声を聞いて、深い安堵のため息を漏らした。
「大丈夫みたいだな」
太郎の背後から山鹿が覗き込んでいった。さきほど発砲したばかりの拳銃を持ちながら。
「お前、どっからそんなもん」
「親父のだ。念のために持ってきた。まあ、あまり役には立ちそうにないがな」
山鹿はそういうと、床に転がっていた次子の方を見るように促した。
ところどころ穴の開いた服を着た次子の顔は、いくらか直りかけているとはいえ、まだ正視に堪えるものではなかった。
太郎はそれを見て顔をしかめた。
そして頭にはたった今銃弾によってうがたれた、小さな、しかし深い穴があった。
次子が一子から手を離したのは、頭に銃弾を受けた衝撃で突き飛ばされたためだったのだ。
だが、次子はまるで何事もなかったようむくりと上半身を起こした。
太郎は短く、声のない悲鳴を上げた。
「どうしたの、お兄ちゃん。顔が青いよ」
一子がふらりと立ち上がった。山鹿がそれを見て、再び引き金を引いた。まるでモデルガンのような、軽い銃声が響いた。
やはり再び床に転がった次子が、また立ち上がった。それを見た山鹿が今度は二回引き金を引いた。
次子はさきほどよりも遠くに転がったが、やはりすぐさま立ち上がった。
「だめだよ、お兄ちゃん。一子ちゃんなんかに構っちゃ。妹はわたしなんだから。わたしがいるから、そんな子もういらないよね」
次子はそういいながら、ふらふらとした足取りで太郎と一子に近づいてきた。それなりのダメージは残っているようだった。
その眼中には太郎と一子しかいないのか、山鹿に目を向けることはない。
「ねえ、お兄ちゃん。いってやって、一子ちゃんに。自分の妹は次子しかいないって、一子ちゃんなんかもういらないんだって」
101 :
ツイスター:2006/12/09(土) 20:31:43 ID:LPXI7lyM
太郎はさっきから目を瞑ったままの一子の体を抱きしめた。
「俺の妹は一子だ。お前じゃない」
太郎はからからに乾いた口で、それだけをいった。自分の次子への感情がどうであろうと、それだけはいっておかなければならなかった。
次子はそれを聞くと、まるで能面のような無表情になった。そこで初めて、太郎の背後に立つ山鹿に目を向ける。
「お兄ちゃんに何かいったの?」
「ああ、何もかもな」
次子は再び太郎に目を落とした。
「信じるの?山鹿さんのいったこと」
「ああ」
次子は今度は自分の足元に目を落とした。それから顔をあげて、にっこりと微笑みながらいった。
「じゃあ、しょうがないね。山鹿さんにも消えてもらうから。そのあとでゆっくりお話しようね、お兄ちゃん。邪魔者のいないところで。ずっと二人きりになれるところに行こうね」
次子が足を一歩踏み出すと、太郎は一子を抱えたまま立ち上がり、後ろに引いた。
山鹿が二人を背中に隠すように一歩前に出て、次子と向かい合った。拳銃を向ける。
「どうするの、そんなもので。分かってるんでしょ、役に立たないって」
「それもそうだな」
山鹿はそういうと拳銃を廊下に向けて放り投げた。さすがに予想外のことだったのか、次子は思わずそれを目で追ってしまった。
次子の目が離れると、山鹿は上着のポケットから小さなペットボトルを取り出した。鉄粉のようなものが詰まっている。
山鹿はそれを自分の背後にいる太郎に見せると、次子に向かって放り投げた。
太郎は山鹿のやろうとしていることを察し、自分の目を瞑り、手で一子の目を押さえた。
昔、似たようなものを山鹿と一緒に作って、ひどい目にあったことを覚えていた。
理科室からマグネシウムを盗んでは、危険な花火遊びをしていたころだ。
ばしゅっと音がして、閉じた瞳の向こう側が明るくなった。
「あああーっ」
目を開けると、次子が自分の両目を押さえてのた打ち回っていた。
「おいっ、逃げるぞ!」
太郎はそれを見て思わず駆け寄ってやりたい衝動に駆られるが、山鹿に襟を引っ張られて正気に戻った。
一子を抱えたまま山鹿の後を追う。庭にはエンジンをかけたままのバイクが止めてある。
その後ろに、一子の体を山鹿と挟み込むような形でまたがるとほぼ同時に、バイクが走り出した。
102 :
ツイスター:2006/12/09(土) 20:32:17 ID:LPXI7lyM
「一子ちゃん落とすなよ!」
ヘルメットをつけないままの山鹿がそう叫んだ。闇夜の中を3人乗りのバイクが走る。
「一子?大丈夫か?」
「うん・・・」
山鹿の背中に押し付けられている一子は、くぐもった声でそういった。
「すまなかった」
「うん・・・」
めまぐるしい状況の変化に対応できていないのか、一子はぼんやりとそういうだけだった。
そんな一子の背中を抱きしめてやる。小さい肩だった。
「おい、簸川!後ろ見てみろ、ただしびびって落ちるなよ!」
山鹿の怒鳴り声に、太郎は後ろを振り返った。何もない。いや、一瞬だけ街頭の下に白い影が見え、それはすぐに闇の中に消えた。
それからまた街頭の下に現れては、闇の中に消える。次子だった。跳ぶようなフォームで走っている。
太郎はあまりのことに目を疑った。バイクは60キロは出ている。次子はそれに追いつこうとしているのだ。
ぞっとした。
「おい!山鹿!来てる来てる!」
「とばすぞ。しっかりつかまってろ」
山鹿はそういうと、さらに速度を上げた。次子の姿は確認できなくなる。
振り切ったようだった。だが、いつまた追いすがってくるのか、太郎は気が気でなかった。
「どこに逃げる気だ!」
「逃げない!」
山鹿はちらりと太郎の方を振り返っていった。
「今夜決着をつける!下手に逃げをうてば犠牲者が出るかもしれない!警察ではダメだ!俺たちで始末する!」
「始末って」
「もう引き返せないぞ、簸川!あれのことはもう諦めろ!つかまればきっとお前もただじゃすまない!俺たちは一蓮托生だ!」
そうだ、確かにもう引き返すことはできないだろう。あの次子の様子を見てしまえばそうとしか思えなかった。
それに太郎は、次子に対しておびえを抱いてしまっていた。もはやこれまでの関係に戻ることはできないだろう。
そんな太郎を次子がどうするのか分からない。一生監禁するぐらいのことはするかもしれない。
バイクはやがて町外れに出ると、ある廃墟の敷地の中に入った。放棄された病院。このあたりでは肝試しの名所だった。
山鹿はバイクを止めると、ライトをつけたままバイクから降りた。太郎もそれを追って、一子と共にバイクから降りた。
一子は少しぐったりとしているが、さきほどよりは意識ははっきりとしているようだった。太郎の正面に立った。
103 :
ツイスター:2006/12/09(土) 20:33:01 ID:LPXI7lyM
ぱあんっと高い音が響いた。一子が太郎の頬をひっぱたいたのだった。
「あんたなんか、あんたなんか」
それだけいうと一子はその場で泣き崩れた。これまで叩かれた中で、一番痛かった。
太郎は叩かれた頬を押さえることもなく、その場に立ち尽くして一子を見下ろしていた。かけるべき言葉も見つからない。
そんな二人に、山鹿が水を差した。
「二人の話は後にしよう。次子が来るぞ」
一子はそれを聞いて、先ほどのことを思い出したのか体をびくりと振るわせた。
「いったんは撒いたが、相手は非常識の塊だからな。たぶん、鼻もきくだろう」
「でも、どうするんだ」
次子の不死身ぶりは、さきほど見たとおりだ。拳銃で撃っても、バールで穴だらけにされても死なない次子をどう「始末」するというのか。
「持ってきた花火はあれだけじゃない。もっと派手なのがある」
山鹿はそういって、バイクのキャリーバッグから菓子折りくらいの大きさの箱を取り出した。
ずいぶんと重そうだ。
「お前と花火を作るのは止めてしまったが、あれからもこつこつ研究を続けててな。護身用に爆弾を作っていた。計算ではかなりの威力があるはずだ。人一人くらいは吹っ飛ばせる」
「ばくだん?」
「いずれ現れるであろう妹の身を守るためだ」
山鹿はめがねを抑えながらいった。
太郎は空いた口がふさがらない。それはさっきまで憤っていた一子も同じだった。
すっかり、毒気を抜かれてしまったようだった。そんな二人に構わず、山鹿は話を続けた。
104 :
ツイスター:2006/12/09(土) 20:33:47 ID:LPXI7lyM
「こいつを地面に埋めて地雷代わりに使う。遠隔操作で起爆できる。これがスイッチだ」
山鹿はバッグの中から、今度はラジコンのコントローラーを取り出した。
「次子が上に乗ったらスイッチを入れてどかん、というわけだ。問題は、そこに次子を誘導しなければならんということだな。それは俺と簸川でやる。いいな」
太郎は山鹿に向かって肯いた。いい加減、覚悟を決めるときだ。
「スイッチは一子ちゃんに入れてもらう。どこかに隠れていて、こっちで合図をしたらすぐに入れてくれ」
「へっ!?」
一子はまさか自分にそんな役割が振られるとは思っていなかったのか、素っ頓狂な声を上げた。
「大丈夫、簡単なことだ。合図を聞いて、スイッチを入れるだけ。一子ちゃんも自分の手で決着をつけたいと思わないか?」
一子はそういわれると、表情を引き締めて肯いた。そして、コントローラーを受け取る。
山鹿はスイッチの入れ方を一子に説明すると、建物の影に隠れるようにいった。一子はその支持に従う。
「じゃ、俺たちはこいつを埋めるとするか」
太郎と山鹿は、バイクに積んであった工具を使って穴を掘ると、そこに爆弾を埋めた。
廃墟の門から爆弾の埋め場所を結んだ延長線上で次子を待つことにする。まっすぐこちらに向かってくれば、きっと爆弾の上を通過するだろう。
山鹿は落ちていた鉄パイプを拾った。それを何度か素振りして使い勝手を確かめる。牽制用の武器にするつもりのようだ。
「これ、持ってろ」
山鹿はポケットから出したものを太郎に渡した。銀色のバタフライナイフだった。
「それは隠し持っておけ。いざというとき以外使うな。お前はあまり露骨に敵意を見せないほうがいい。どうしようもなくなったら降参しろ」
105 :
ツイスター:2006/12/09(土) 20:34:20 ID:LPXI7lyM
太郎はそれをじっと見ながらいった。
「どうしてここまでしてくれるんだ?」
「当たり前だろ。あれは俺が作ったんだ。責任は俺にある。お前はただ巻き込まれただけの被害者だ。伊勢が死んだのも俺のせいなんだからな。後でたっぷり俺を責めろ。お前と一子ちゃんにはその資格がある」
「それだけか?」
「他に何がある」
「一子のことが好きなのか?」
「知らなかったのか?俺は世界中の妹の味方だ。今は次子以外のな」
「そういう意味じゃない」
「なあ、簸川。昔、一緒に花火作って遊んだこと覚えてるか?」
山鹿はいきなり話題を変えた。
「忘れようとしても忘れられるか。お前のせいでむちゃくちゃ怒られただろうが。一子はやけどさせちまうし」
「なんであの後も俺と一緒に遊んでくれたんだ?もう俺と遊ぶなって、ご両親からもずいぶんいわれただろう?お前だって、一子ちゃんをやけどさせたって随分気に病んでた」
「・・・」
「俺がお前を助けるのも多分それと同じ理由だ」
「お前、結構恥ずかしい奴だな」
「モラリストぶっておいて、結局妹代わりの女と乳繰り合ってたお前の方が恥ずかしいぞ」
「うるせえ」
「やっと妹研のメンバーらしくなってくれて俺はうれしい」
「お前らと一緒にすんな」
二人の戯言もそこまでだった。
「追いついたよ、お兄ちゃん。鬼ごっこはもうおしまい?」
以上、第26話「3人と1人」でした。
これ、ほんとに修羅場スレのSSなのか?
別にコレくらいの寄り道は普通さ
それくらい他の作品読んでれば解かるだろ?
GJ!
山鹿が女じゃないのが悔やまれますね。
この事件が終わる時が物語の終わりになってしまう……。
>「いずれ現れるであろう妹の身を守るためだ」
ところどころに現れる山鹿のせりふが、普通にすごい。
俺たち凡人には及びもつかない領域だぜ!!
GJ!ビビりながら読ませてもらいました。
もう無理っぽいけど次子にも救いがほしいなぁ。
>>106GJ!!!
褒め言葉のつもりで言うんだが、テレ東の深夜アニメ見てる気分だ。
アマチュアでもこんなの書ける人いるんだな。
>>106 うおおおお、GJです!!
ここまでハイスピード投稿でなおかつ奥深いなんて・・・
あと山鹿女体かキボン!
猿太郎はあくまで金魚のフンだなあ
>>110 このままだとほんとにそんなノリ。
でもここが修羅場スレである以上、最後にもう一波乱あるはず
ここで次子説得のために逃げずに一人残るのかな・・・と思ったけど
やっぱり猿太郎だったな
九十九は何処にいってしまったんだぁぁぁ〜!
すいません
>>106 すばらしくGJです。完結までついていきます!
たしか流たんが主人公刺して終わってたな。
続きがきになるべ
正確には流んが突き刺さってたんだけどな。
アッー!
流んがペニパンつけて郁夫を責める姿を連想した
>106GJ!!!ある意味ものすごい修羅場ではあるかと。
次子の誤算は男の友情だったのかな
太郎と一子のために駆けずり回った山鹿と、
長年つるんだ山鹿への太郎の信頼を甘くみてたんだと思う
この事件が片付いたら平穏な日々を送って欲しい
例えば、今度は山鹿の元に突然「妹にしてください!」と言って家出少女が現れて、
それを聞き付けたクラスメートで以前山鹿に告白したものの、おまえは弟がいる「姉」だし
一ヶ月誕生日早いだろ、という理由で振られた女の子の嫉妬渦巻くような……
そんな平穏な日々であって欲しい。
いやはや下手な映画のクライマックスよりすごいですなぁ
萌え小説というより燃え小説って感じで、すごく…面白いです…
>>120 山鹿は血縁以外の妹は認めないと思う。
「妹以外とは付き合わない」という彼のポリシーも、きっと二親等の血族のことを指しているはず。
山鹿って金持ちなんだよな?
それなら父親の隠し子の妹がいてもおかしくないな
誰か一人くらい『ここ直して欲しい』ってないのか?
荒れる元になるからあえて言わないのか?
まあ俺はめんどくさいし、あっても気にしないし
有りすぎたら読み飛ばすから関係ないんだが
まとせサイトの不義理チョコ読んだすげーよかった
他にもあんなかんじの作品ある?
>>124 彼の中での妹の定義にもよるだろうけど、ただ山鹿はあの儀式の首謀者だからな……
造り上げた妹には抵抗がないのかどうか。
山鹿は超然としてるからなぁ……主人公になっても修羅場をさっさと解決してしまいそうだ
>>126 ツイスターは時々文中の一子と次子がごちゃごちゃになってるとこぐらいじゃないか
>>126 お前のレスの中に答えはあるよ
ツイスターも終盤か、作者さん自身の納得のいく形で終わらせてくれ
>>127 良い意味でない
作者さんそれぞれ持味がある
なんか太郎がやらないといけないような事まで山鹿がやってしまってる気がするなw
>一子がふらりと立ち上がった。山鹿がそれを見て、再び引き金を引いた。
一子死んじゃうy
山鹿が大人気ですね。
猿太郎の猿話の後は山鹿主役の血の繋がってない12人の妹達との壮絶な修羅場が・・
` ー- .__ ,. 7′ _ .. -┴‐- 、
/ /| _ -― ァ-‐  ̄ l
/ / ! ! / | | / _ .. -‐.、 | /
/ / / | |.! / /| { ,∠三三ミ. ヽ | / -
/ ! ! {_|| /{ /=! {‐  ̄ `ヽヽ } |/ / _
/ | | | /| { ヽ._j_ - } \、 `ハ/ 三三三
_../ | | ! .|/l | \ ー‐ ,ィー\、 ト.  ̄ `‐z 三
,. ‐, -/ l l | ! !|′ ` ̄ ヾ 逝jヽトl `>z
// イ | !| / ! ! ヽ\ ト| V| //
r' /| ⌒ヽ. | ||V | | ` ̄、 ヽ.| /' /イ __ ノ
/ | } } ! |! V | ! ヽ、{z_/≦三テ/..- 全力でオレンジ畑を耕すぞ!!
/ | ノ// }| V | l /^辷'ノ/´
/ / |rー '/ _/ ノー、 V|.| , <丶 / /
/ j /ヽ/ ハ-V!V{′ \\ r-- イ
く / / / Vト、 }`¨> .イ´ /
ヽ | / / / ハ-へ ___/z</ /
l | ′ { / >ミ_ /‐ イ  ̄
| | r__ュ __ / -‐_.. ‐ ´ j
では投下致します
第10話『壊れた家族の絆』
人間。その気になったら空だって飛べるさ!!
ついに終業式が終わった。
明日から夏休みで気分は重圧から解放されたので体は軽い。
最近の学園では気を休まる時間もなく授業も集中して受けられなかったのでこの長期的な休みはいい休養となることであろう。
夏休みの過ごし方を思考しながら忠生と一緒に帰っている最中であった。
この時、忠生の頼みなんかを聞いたおかげで俺はとんでもない騒動に巻き込まれるとは夢にも思わなかった。
俺の人生が変わるぐらいにな。
「月。俺の一生のお願いを聞いてくれ」
「全力で拒否したいです」
「だぁぁぁ。俺のコレクションを守るためにはお前の協力が必要不可欠なんだよ」
「コレクションって……。忠生コレクション?」
「そうだ。忠生コレクション。お前も何度かお世話になっただろう?」
その忠生コレクションとは忠生がどういう人脈を使って集めたかは知らないが、エロ本やエロビデオの事を指す。
男の性欲に純真な情熱を燃やしている忠生は、俺達の学園では知らない奴がいない程にその手の情報と知識には詳しく有名人であった。
変態度のおかげで女の子からモテなかったりするが、忠生コレクションがどういう訳か危機に陥っているようだ。
俺は真剣に忠生の話に耳を聞き入れることにした。
「今度さ、俺の家がリフォームすることになったんで。俺の部屋も改装するんだよ。
そこにはいろんな忠生コレクションが隠しているだろ?
だからさ、信用できる奴に俺の命の結晶である忠生コレクションを預かってもらっているんだ。
ただでさえ、あの膨大な量を短期間で親にバレないように隠すのは大仕事だ」
「わかった。忠生コレクションには俺が大人の階段を登るためにいろいろ役に立ったことだし。今回だけは忠生の味方でいてやるからな」
「さすがは心の友よ。俺はお前を信じていた」
「忠生コレクションはきっと死守するよ。この命に代えてもな」
そんな男の友情を再び確かめ合った後、俺達は忠生の家に向かった。
忠生の家に立ち寄った後、俺は果てしなく後悔を覚えていた。
今まで教科書を机の中に教科書を置いてあった物を鞄に詰めたおかげで荷物の重量は俺の細腕では辛く堪える。
更に忠生から預かったエロ本やエロビデオと言った類も大量に受け取ったので、
家までの帰路は夏の日差しに照らされて重い荷物を背負って歩くことになった。
水澄家に辿り着くと暑さのおかげで意識が朦朧としているが俺は何とか踏張って、ここから気合いを入れ直す必要があった。
水澄家に住んでいる虹葉姉や紗桜にバレないようにエロ本とエロビデオを上手く隠す必要があった。
女の勘というのは恐ろしいものだ。
水澄家敷地に持ち込むだけであの姉妹は敏感に察知する。
俺がかつてエロ本をこの家に持ち込む時は虹葉姉と紗桜の機嫌がなぜか少し悪かったような気がする。
まあ、その機嫌の悪い理由を姉妹たちが首を傾げて自分自身に疑問を抱いているようだったが、女の勘は激しく作用されていた証拠であろう。
ここでエロ本やエロビデオがバレるような事があれば全てが終わる。
今まで水澄家で築いてきた信頼と信用が全て失われるのだ。
姉妹から軽蔑の視線で随時見つめられることになる。
そう、この家を出る時まで。
ゆえにエロ本が見つかる=天草月の死に繋がる。
俺は息を呑んで戦場の舞台に旅立った。
「よし。隠し場所はこれでいいかな」
忠生コレクションの一部をベットの下に隠す。その作業を効率よくてきぱきと隠すと俺はようやく安堵の息を吐いた。
隠し場所としてはもっとも見つかりやすく定番な場所に隠しているわけだが。
いつ俺の部屋に虹葉姉と紗桜が訪れるかわからない。
隠している最中に部屋を訪れてもアウトなので、本格的に隠すのは姉妹たちが眠る深夜の時間帯に念入りに隠そう。
そこまでにこの膨大な量の忠生コレクションの隠し場所を今から考えねば。
とりあえず、今俺がやるべきことは。
お腹が空いた腹の音を黙らせることだな。
下のリビングに降りると虹葉姉と紗桜がテレビを見ていた。
昼は二人ともインスタントのカップ麺を食べたらしくテーブルに片付けずに置かれていた。
俺も昼は簡単に済ませるつもりだったので、買い溜めしてあるカップ麺にお湯を注ぐ。
この生活の憩いの場にやってきたにはちゃんとした理由がある。
虹葉姉と紗桜を監視すること。
女の勘らしきものを信じてはいないが。
一応、念のために。
何かの間違いで俺の部屋に訪れたら、女の勘で現在隠している忠生コレクションの居場所が簡単に突き止められる可能性は高い。
ただでさえ、ベットの下に隠しているとはいえ、部屋の違和感らしきものだけは隠せない。
無理矢理に押し込んで忠生コレクションを隠しているのでこの家に住んでいる家族なら気付くかもしれない。
だから、今日は誰も俺の部屋に入れさせはしない。
「ねぇ。月君。明日から夏休みだよね」
「う、うん。そうだな」
「夏休みになるまえに月君の部屋を掃除したいんだけど」
「はい?」
何を言っているんですか? 虹葉姉。
「普段からいろいろと迷惑をかけているから、お姉ちゃんが月君の部屋をピカピカに綺麗にしてあげるよ」
「いや、しなくていい」
「まさか。兄さん。女の子には見せられない物を隠しているんじゃないでしょうね」
「あはっはは……。そんなものをこの家に持ち込んでいるはずがないじゃないか」
しばしの沈黙が流れる。
お湯を注いだカップラーメンが出来上がっているはずの時間の数倍ぐらい流れていたような気がする。
二人とも微笑を浮かべて、目だけは笑ってはいなかった。
落ち着け。天草月。
虹葉姉も紗桜も女性の勘が疼いているだけであって、その発言の意図は俺が危惧するような意味ではない。
勘違いはするな。ここで思わず俺の口からぽつりと呟いてバレるようなことはあってはならない。
考えろ。考えるんだ。
発想を逆転させろ!!
部屋を掃除させるのを止めさせる方法を取らずに。
逆に虹葉姉と紗桜に掃除させるんだ。俺の部屋は普段から綺麗に清潔を保っているので部屋を掃除するとしてもすぐに終わる。
だったら、ここは拒まずに虹葉姉の意見を了承することで俺のエロ本持ち込み疑惑をなくしてしまえばいい。
やってやる。やってやるよ。
「そんなに疑うぐらいなら俺の部屋を存分に掃除してくれ」
「ようし。月君の了承を得たことだし。お掃除頑張るよ」
「絶対に兄さんのエロ本を探してあげますからね」
三人は含み笑いをしながら、階段を上って俺の部屋に向かった。
ああ。カップラーメン。食べてねえよ。
「うっ。私の部屋よりちゃんと綺麗に整っているよぉ。掃除のするところが全然ないよぉ」
よし。先に準備をいろいろとしていた俺の勝ちだ。
後は自然を装って虹葉姉と紗桜を追い出せばいい。
できる。俺ならきっとできるさ。
「それにしてもおかしいですね。兄さんの部屋は普段なら少しぐらい散らかっていると思うんですけど。
今日は不自然なことに散り一つも見当りません」
「今朝は起きた時に時間が余ったんで自分の部屋を掃除しただけだよ」
「本当にそうなのかな。兄さん」
疑わしい瞳で紗桜は兄である俺を見つめていた。
虹葉姉と違って紗桜は自分が納得できない事は常に疑うという悪い癖を持っている。
だが、それも計算の内だ。
「今日は終業式だったし。明日からの夏休みをだらけることなく、今朝方は掃除をしたんだよ。紗桜は兄の言葉を疑うのかな?」
「あぅっ!」
紗桜は俺の言葉に反論できずに唇を尖らせて拗ねた表情を浮かべていた。
普段の家事をやっている俺はきっちりと正確に行なっているからこれ以上疑う余地はない。
ふふっ。これで完全勝利だ。
と、思いきや。虹葉姉が穏やかな声でとんでもない事を言ってのけた。
「でも。月君は今朝方は私たちの部屋で一緒に寝ていたでしょう。
更に私たちの部屋は月君に起こしてもらえるから時計も合わせなかったから、
私たち今日は寝過ごして遅刻しそうになったんじゃなかったのかな? おかしくない?」
しまった。忘れてた。
紗桜と虹葉姉の頭を撫でている間に俺が真っ先に寝てしまうという失態を昨夜はやってしまい、
今朝は虹葉姉の言う通り見事に寝過ごしたんだったけ。
やばい。
適当に嘘を吐いた途端に一気に追い詰められそうになった。
ま……まずい。動揺するな。
物証は抑えられていないんだ。ここは言い訳でどうにか通る。
とにかくここは水澄家の居候、天草月としての自然な行動を取らなくては。
「ごめん。寝呆けていたようだ。さっき、部屋の掃除をしていたのは忘れていたよ」
「もう、月君の勘違いさん」
と、舌足らずの笑顔で俺は自分の失態を笑って誤魔化した。
虹葉姉も気にすることなく、一緒に釣られて笑ってくれている。だが、僅かな一場面で紗桜を見逃したのが敗因となった。
紗桜は俺のベットの下をしゃがみ込んで手を伸ばして何かを取った。
「お姉ちゃんあったよ。兄さんが隠したエロ本が!!」
「紗桜ちゃんお手柄ね。後でお姉ちゃんがご褒美ににゃにゃしてあげるから」
そう言って虹葉姉は隠してあった忠生コレクションを取り出す作業に没頭する。
俺は隠してあったエロ本を見つかった事に動揺して彼女達の行動を制止することができずに足が震えて動くこともままならない。
負けたのだ。女の勘というものに。
「さてと月君。この本は一体何のかな?」
「え、えっと……」
この部屋の空気は冷たく重圧に支配される。大量に物証である忠生コレクションを表に出されてゆく。
虹葉姉は冷たい微笑を浮かべながら、目は全く笑っていなかった。
「初めての姉妹丼。どんな料理なのかな月君?」
「姉妹が作ってくれる愛情たっぷりの料理なんじゃないのかな」
「姉妹イカセ4時間シリーズコレクション。何をイカせるんだろうね?」
「さあ? 何をいかせるのやら」
「憧れの義姉と義妹のコスプレショー。にゃんことわんこ。猫さんと犬さん可愛いよね?」
「うん。俺も犬と猫は大好きだよ」
威圧感と迫力は想像を絶する以上に俺を恐怖に陥れてゆく。
こ、殺されるかもしれん。
「姉妹恥辱・監禁された姉妹の行方は? ねぇ? 月君。どうしてさっきから姉妹モノばかりの本が見つかってくるのかな? かな?」
「まさか、お姉ちゃんと私をそんな風にいやらしい目で見ていたんだ。兄さん・・」
「うにゅ!」
「あうぅぅ!!」
「誤解だ。これは。そう、何かの陰謀なんだよ。俺が虹葉姉と紗桜をそんな目で見るはずないだろう」
「兄さん。思い切り動揺してますね」
「月君・・。酷いよ。私たちよりもこんないやらしい本に欲情していたなんて」
「俺は・・違う」
「月君!!」
「兄さん!!」
闇のオーラーを背負って虹葉姉と紗桜がこちらに迫ってくる。捕まえれば、俺の死は確実だ。
もう、俺は水澄家にいられることはできない。家族であった虹葉姉と紗桜の信頼と信用を裏切ってしまい、
二人はいやらしい視線で見たことになっている。姉妹にとっては俺は軽蔑される存在で近付いたら妊娠されるぐらいに拒絶されているはずだ。
だから、俺はこの家を出て行く。
小さな頃から一緒に暮らしていた虹葉姉と紗桜。
いつかは互いは離れ離れになることはわかっていた。
少なくても、姉妹の傍に離れるのはまず俺からだと自覚はしていたけど。こんな別れ方をするなんて全く想像できてなかった。
さようなら。虹葉姉。紗桜。
俺は行くよ。
自分の部屋の周囲を眺めてみた。退却をできる場所は姉妹たちの後ろにある窓だ。そこから下に降りて、水澄家を出る。
決意はできた。
人間。その気になったら、空も飛べるさ。
窓に向かって猛烈にダッシュする。虹葉姉と紗桜に体当たりして二人とも倒れるが俺は振り返ることなく窓を開けて、空を飛ぶ。
二階から地上に着地にすると足に強烈な重圧が襲ってきて、俺は思わず尻餅を着いた。
「うがぁ……!!」
強烈な痛みが襲ってきたが、俺は水澄家の庭から玄関まで夢中に痛めた足を動かした。
逃げてやる。二人に捕まってたまるか。俺は水澄家を出ていかなきゃいけない。気力を振り絞って最後の力で水澄家を出る。
「月君っっっ!!」
「兄さんっっっ!!」
虹葉姉と紗桜の悲鳴に近い声が聞こえた。
最後に二人の声を聞けたのは嬉しかった。
だから。
さようなら。
まあ、あれですよ。
母親にエロ本を発見されると机の上に置いてくれるが
姉妹たちに姉妹モノエロ本を発見されたら、
家出したくなる気持ちはきっとわかるはず?
しばし謹慎を致しますので
次の連載の再開はクリスマスを迎える辺りになると思います
その間にどこかのスレで短編で投稿でもしようかな
謹慎云々はいいんだけど
>その間にどこかのスレで短編で投稿でもしようかな
の文はどういう意図で書いてるのかな
>>142 もういいではないか
これ以上事を荒立てても百害あって一利なしだぞ?
えーと・・・これで終わりなの?
>>144文中にも書いてあるが、クリスマスまでしばし待たれよ、という事だそうで。
>>141 エロ本を察知する女の勘は凄まじい物があるからなw
クリスマスまでwktk状態で待ってますね
俺もエロ本を発見してくれるような姉妹がほしいよw
クリスマスあたりに投下とのことなので楽しみに待たせてもらいます
ただただGJ
どっちかと言うとエロ本を発見したぐらいで
窓から飛び降りる主人公もそうそういないかもしれないな
ヘタレとチキン野郎では大人しく説教と拷問を受けるのにねw
「博士、実験の方は……」
「ああ、順調だ……すこぶる順調だよ。これはいい結果が得られそうだ。」
「……女性の嫉妬心がどれだけの力を秘めているか、ですか。博士も変なものが好きですね。」
「僕はね、女性が嫉妬でも悶える姿が大好きなんだ。かといって、ソレを僕に向けられるのは困る。第三者として、対岸の火事を眺めるのが気持ちいいんだ。」
「だから自ら対岸に火を放った………大丈夫なんですか?彼女達の人権は…」
「なぁに、みんな僕が大金をはたいて買ったんだ。自分のモノをどう使おうが、勝手だろう。」
「それはそうですね……」
「ああ、君は、明日から休暇だっけか?」
「ええ、一週間ほど。実験の最中に申し訳ありませんが…」
「いや、気にしなくてもいいよ。こういうのはじっくりと一人で見ていたいんだ。旦那さんにも、よろしくと伝えておいてくれたまえ。」
「はい、わかりました。それでは失礼します。……くれぐれも、過労で倒れないように。」
「はは、そこまで間抜けじゃないさ。……ん、また『彼』が起きるか。ふむ、次はどんな結果に……」
チラシの裏
最後の一文がなければ良かったのに…
実に惜しい。パロディをやり通す意志力はあるのに、最後の一文を入れず済ませられなかったというのは本当に残念だ
今少しの忍耐を覚えるのは本人の為にも決して悪い事では無いだろう
『目が覚めるとそこは、見知らぬ世界だった。』
そんな書き出しの小説を読んだことがある。内容は、ある日目が覚めると、主人公の青年は全くの別世界に来てしまい、そこで初めて会った病弱な少女との恋愛物語…
最後は少女が病魔に負けて死んでしまい、そのショックに耐えられず自殺する。だが再び目覚めると、彼は現実世界に戻っていた。そしてそこで別世界の彼女と再会…
というオチだった気がする。悲劇が好きな日本人には珍しい、ハッピーエンドだった。まぁ、今問題なのは最後ではなく最初……目が覚めるとそこは、見知らぬ世界……
はは、まさが俺自身、そんな目に会うとは思ってもみなかったね……
・
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・
・
・
「ん……朝、か……あ?」
いつものように腕時計のアラームがなり、目が覚めたが、いきなり違和感だらけのものが目に飛び込んで来た。まずは天井。
四畳一間、トイレ共同風呂なしのオンぼろアパートとは違う、豪勢なシャンデリアが部屋を灯していた。部屋の中央に一つ、申し訳なさそうに、薄暗い光を放っている。電球が切れかかってるのか…始めにそう思った。
次に体を起こし、部屋を見回してみる。あらゆる点で、俺の部屋とは違っていた。
煎餅布団がスプリングベットに、ストーブが立派な暖炉。壁には高価なのだろうか……センスを理解できない絵画。なにより、テレビが置いてあるのが、大きな違いだった。
もとよりテレビが嫌いなため、部屋には置いてなかった。世間の情報は新聞で得られるし、あの作り物染みたバラエティやドラマが肌に会わなかった。
「……どこだよ、ここ。」
視界から得た情報で叩き出された結果は、これだ。まぁ、考える前にそう思ってたが。
昨日……確かバイト仲間に嫌々誘われて飲みに行き、酔ったまま帰った……そう、ちゃんと自分の部屋でシャワーを浴びて寝たはずだ。
ん?昨日?昨日は何月何日だ?今日もまた、何月何日?腕時計を見てみる
『2007・Dec・15』
この時計が間違ってなければ今はこの日付。昨日は………
「そうか、14日だ。」
バイト仲間がクリスマスまであと十日とか騒いでたな。じゃあやっぱりホテルにでもいるんだろうか。悩んでいても仕方ない。とりあえずここから出てさっさと帰ろう。
ドアを開けて外に出ると、そこは長い廊下だった。部屋を出てすぐ左には、また意味不明な絵画のある壁。右手の突き当たりには、階段が見える。
その廊下の壁には、俺が出て来た部屋と同じドアが、右に三つ、左に三つと、互いに向き合うように連なって俺のいた。
俺の居た部屋は、階段を正面に見て一番右手前のようだ。だが、ホテルというにはあまりに殺風景。部屋に窓がなかった辺り、ここは地下だろう。
だが、近所で地下に部屋のあるホテルなんて聞いたことがない。いったいここはどこなのか………まさか別世界?
「はん…まさかな。」
自分の考えにあきれてしまった。下らないことを考えてないで、早く帰ろう。日常にイレギュラーはいらない。
階段を上り、再びドアを開けると……
「うお……」
まるで映画のような、豪華なラウンジに出た。部屋にあったシャンデリアとは比べ物にならない大きさ。見るからに高そうなソファー、テーブル。大型のテレビ。
暖炉には火が焚いてあり、丁度良い温度が保たれていた。しかしまぁ、ここにも趣味の悪い絵が飾られている。
この絵画もホテルオーナーの趣味なんだろうか。ん……ホテル?いや、ここはホテルなんかじゃない。まるで、そう………金持ちの別荘だ。(あくまで自分のイメージだが)
だとしたら俺はなんでこんなところに?他の可能性……例えば監禁。だとしても、自由性が高過ぎる。手足を縛られているわけでも、狭い小屋にいるわけでもない。
どちらかといえば歓迎されてるようにも見える。それならば、少しぐらいくつろいでもいいだろう。どうせ今日はバイトも休みだ。
「ふう……」
ソファーに座り、タバコを吸いながら再度部屋を見渡す。さっき上って来た階段へのドアから右に数メートル開いたところに、また別のドアがある。
英語でキッチンとかかれているため、調理場だろう。また視線を右にずらすと、壁がおれて数メートル。奥へと通路があった。
なにかと思い、上半身を乗り出してみると、トイレだった。そして階段扉の向かいの壁には……外への玄関だろうか。これまた綺麗に装飾されている。
首を回して後ろを見ると、ワイングラスやアルコールが置いてある、カウンターバーとなっていた。
まとめると……時計の方位磁石からして、北に玄関。東にカウンターバー、南にさっき居た個室とキッチン、西にトイレだ。
そして中央にテーブルとソファーだ。テレビは階段扉とキッチンの間に掛かっている。
「へぇへぇ、金持ちの自慢か。」
タバコを一本吸い終わり、帰ろうと玄関に手を掛けた……が。
ガチャガチャ
「ん?開かない?」
鍵がかかっているのか、ノブがびくともしない。だが、見る限りこちら側に鍵は付いていない。鍵穴も見当たらない。
「まじかよ……」
今更だが、少し焦ってきた。それから蹴ったり体当たりしてみたが、まるで鉄の壁のように動じない。逆に自分の体の方が痛くなってきた。
「ぜぇ、ぜぇ……」
自分の体力不足が悔やまれる。そういえば地下に他の部屋もあたったが、あそこには俺以外の人もいるのだろうか。
確かめようと立ち上がり、階段扉へ向かおうとした時…
「あ?」
扉の前に一人の女が立っていた。整った顔に、綺麗な長い髪。ドレスのような服を着ていた。見るからに育ちがいいお嬢様、といった感じだが……
同じく見るからに、きつそうな性格だ。
「なによ、開かないの?」
高圧的に、人を見下すような声で問い掛けてくる。質問内容からすると、この部屋の主ではないらしい。
「みたいだな。」
あまり関わりたくないタイプなので、無難な返事をしておく。
「なによ、みたいだなって。男ならこじあけるぐらいのことしなさいよね!」
「………」
どうやら何をいっても文句が帰ってくるようだ。
「あー!もうっ!クリスマスパーティーの準備しなくちゃいけないってのに、なんでこんなことになるのよ!私を監禁するなんて……犯人を見つけたらパパにいって二度と日の目を見せられなくしてやるんだから……」
……ふぅ、疲れるやつだ
ツイスター、投下します
160 :
ツイスター:2006/12/10(日) 23:16:40 ID:gJwqC2Jj
バイクのライトをま正面から当てられてまぶしいのか、次子は顔の前に手をかざしながら太郎たちのほうへゆっくりと歩いてきた。
太郎と山鹿は不自然に視線が下がらないよう注意しながら次子を待っていた。タイミングを計りつつ、たが罠のことを悟られないように。
時間の流れが遅い。手のひらに汗がにじんできた。
近づいてくる次子の体は、もう元通りといってよかった。顔も、一子と同じそれを取り戻していた。
ただ、服だけはずたずたのままで、ほとんど裸に近かった。
やがて、次子の足が地面に引いてあるバッテン印を踏みかけた。
山鹿がつなぎっぱなしで持っていた携帯に向かっていう。
「一子ちゃん、押せ!」
太郎は耳を押さえた。
1秒、2秒。何も起きない。
次子の足が何事もなくバッテン印を通過した。
「おい、どうした?故障か?」
太郎が小声で山鹿に尋ねた。山鹿は一子と二三言葉を交わすと携帯をしまった。まだつないだままだ。
「いや、なんというか、ミスった。今気付いたんだが」
山鹿が珍しく狼狽の色を表に出した。
「地面の下に埋めたから起爆装置に電波が届かない」
山鹿のあまりといえばあまりな言葉に、太郎はあっけに取られた。冗談をいっているのかと思った。
「アンテナを地面の上に出すのを忘れていた。この土壇場でなんて間抜けな」
「ど、どうする」
山鹿はしばらく考えてから口を開いた。
「次子に対する切り札はあれしかない。だから掘り起こして使う。作戦はこうだ。まず二手に分かれる。一方が次子をひきつける。もう一方が爆弾を掘り起こす。
それから何とかして次子を爆弾のところに誘導して爆発させる。いいな。役割分担は向こうに決めてもらおう」
山鹿はそういうと、鉄パイプを肩に担ぎながら太郎からゆっくりと離れた。太郎もその反対側へと次子から目を離さないようにして動く。
二手に分かれた太郎と山鹿を前にして、次子は躊躇せず山鹿の方へ向かった。
「待っててね、お兄ちゃん。山鹿さんを消して、それから一子ちゃんも消して、その後でゆっくりこれからのこと話そうね」
「ま、そうなるだろうな」
山鹿は苦笑しながらいった。
161 :
ツイスター:2006/12/10(日) 23:17:20 ID:gJwqC2Jj
「一子ちゃんはどこ?」
「知るか」
山鹿は近づいてくる次子をにらみながら、鉄パイプを正眼に構えた。
「女の子に暴力振るうの?」
「お前はただの化け物だ」
「わたし、理想の妹なんでしょ?山鹿さん、そういうの欲しかったんじゃないの?」
「お前は誰の妹にもなれない。ただの妄想の産物で、幻で、悪夢みたいなものだ」
「ふうん。じゃあその妄想に殺される山鹿さんは何なの」
次子はそういうと山鹿に飛び掛った。文字通り、長さにして3メートルほどを跳躍して。
山鹿は半身を引いてそれを避けると、次子のうなじに鉄パイプを振り下ろした。
次子の体が地面に叩きつけられる。
「妹萌を舐めるなよ。日ごろから研鑽を積んでいる」
もちろん、ある日偶然に出会った妹を暴漢から救うためだ。
山鹿は次子から距離をとった。深追いはしないほうがいいと判断したようだ。
案の定、次子はほとんどダメージを感じさせない様子ですくと立ち上がった。
飛び掛ったのは軽率だったと考えたのだろう。今度は、ゆっくりと近づいて来る。
次子が足を地面から離した瞬間、山鹿は踏み込んで次子ののどを狙って突きを放った。
次子はそれを首をひねってかわすと、引かれるまえに鉄パイプを右手で握り締めた。
「くそっ」
引き抜こうとするが、まったく動かない。
162 :
ツイスター:2006/12/10(日) 23:17:53 ID:gJwqC2Jj
「だめだよ、山鹿さん。女の子をこんなもので叩いちゃ」
「じゃあ、これならいいのか?」
山鹿はそういうと自分から鉄パイプを離した。バランスを崩した次子の顔面に、ひじうちを食らわす。
ひじうちを食らってのけぞった次子は、しかし倒れない。山鹿の腕を掴んで体勢を立て直した。
「だめに決まってるでしょ」
次子はそういうと、掴んだ腕を振り回して山鹿の体を放り投げた。
5メートルは飛ばされたか、受身も取れないまま山鹿は地面に叩きつけられた。
「ごっ、はっ」
背中を強打した山鹿の息が一瞬止まった。次子は山鹿から奪った鉄パイプを投げ捨てると山鹿の体に近づいて行く。
山鹿はまだ地面に転がったままだ。
「おい!次子!!」
背後から声が聞こえて、次子は歩みを止めた。振り返ると、太郎がナイフを両手で構えていた。
「山鹿に近づくな。お前が欲しいのは俺なんだろう。だったらこっちに来い」
次子はそれを見て悲しそうな顔をした。そして方向を変えて、今度は太郎の方に向かって歩いてきた。
ひとまず山鹿から注意を反らせたことにほっとする。
太郎は次子の歩みに合わせて後退しながら、例の場所へと誘導しようとする。
歩きながら、次子がいう。
「それでどうするの?次子を刺すの?お兄ちゃん、わたしのことそんなに嫌いなの?あれは嘘なの?わたしが妹でよかったっていってくれたのは」
それはかつて太郎と一子と次子の3人でピクニックに行ったときの言葉だ。
よい天気で、池のそばで、きれいな公園で、本当にいい日だった。
確かに、感傷に流されていたのかもしれない。しかし、あのときは本気でそう思っていたのだ。次子に感謝していたのだ。
このまま3人でずっと兄妹の関係でいられたらどんなにか楽しいだろうと、そう思っていたのだ。
太郎はそのかつてと今とのあまりのギャップに、胸をかきむしりたくなるような思いに駆られた。
だが、もうあの日は帰ってこない。どこからおかしくなってしまったのだろう。自分が次子を抱いた夜からだろうか。
いや、あの日以前にすでに次子は伊勢を殺していたのだ。それなら、はじめからすべては狂っていたのだろうか。あの日々も、結局はすべてが幻にすぎなかったのだろうか。
「かわいそう、お兄ちゃん」
次子はそういうと一気に太郎の懐に飛び込み、ナイフを持っている腕を取った。
あまりの早業に太郎はまったく反応できない。
「こんなの持ってたら危ないよ。没収だね」
その体からはとても信じられないほどの握力で、太郎の腕を締め上げる。その痛みに、太郎はナイフを離してしまった。
すると、さきほど山鹿に対してしたように、次子は太郎の体を地面に向かって放った。地面に叩きつけられる。
「そこでじっとしててね、お兄ちゃん」
163 :
ツイスター:2006/12/10(日) 23:18:31 ID:gJwqC2Jj
そういった次子の体が、大きな音を立てながら横に向かって弾き飛ばされた。ぶつかってきたのは、山鹿のバイクだった。
バイクは次子の体を巻き込みながら、地面を滑ってゆき、やがてとまった。
バイクの下敷きになった次子は、それを蹴り飛ばした。ふらつきながら、立ち上がろうとしている。
衝突の寸前、バイクから飛び降りて地面に転がっていた山鹿が体勢を立て直し、突進した。
次子の腰にタックルをして、地面に引き倒した。
「このお!」
次子が山鹿に対して初めて怒りの表情をあらわにして、口を大きく開けて叫んだ。
山鹿はその口に持っていた例の「花火」を突っ込む。起爆装置のヒモを引き抜きながら手を離したとたん、くぐもった音をたてて次子の口の中でそれが爆発した。
完全に直っていた次子の口の中が、ふたたびずたずたにされた。舌も、歯も吹き飛んでいる。
真っ黒い穴だけが、顔の下にぽっかりと開いていた。
山鹿はそれを確認することもなく、急いで次子の体から離れようとした。
次子の体の真下には、太郎によって掘り起こされた爆弾があった。後はそこから離れて、一子に合図を送るだけだ。
だが、立ち上がって離れようとする山鹿の足が止められて、山鹿は転倒した。
倒れたままの次子に足首を掴まれていた。
もはや力の加減をする余裕もないのか、全力で掴まれた山鹿の足首がごきりと嫌な音をねじられた。
山鹿が悲鳴を上げた。
「くそっ!直ったばかりなんだぞ!」
「山鹿!」
太郎が駆け寄ろうとすると、山鹿が叫んだ。
「来るな!!」
太郎は思わず足を止めてしまった。山鹿の気迫に押されたのだ。
「一子ちゃんと仲良くやれよ」
山鹿はそういうと、足の痛みに堪えながら携帯を取り出した。
「押せ!」
164 :
ツイスター:2006/12/10(日) 23:19:06 ID:gJwqC2Jj
一子は建物の中に隠れていた。決して次子の目に触れないように。
もし見つかってしまえば、次子は一子を問答無用で狙いに来るだろうと思っていたからだ。
一子の方から太郎たちの様子を見ることはできなかった。ただ、山鹿からの合図だけを待っていたのだ。
合図があれば、躊躇せずスイッチを押せとだけ指示されていた。
そして一子は、その指示に素直に従った。それをいった山鹿が今どういう状況にあるのかも知らずに。
知っていれば、もちろん躊躇しただろう。
廃墟に爆音が響いた。
以上、第27話「決戦」でした。
山鹿「俺、この戦争が終わったら妹と田舎で暮らすんだ」
山鹿…お前は最高の兄だったぜ…
うう……いいやつがまた一人……
山鹿あぁぁあぁァァッ!初めはただの変態だと思っていたがおまいは真の漢だったよ。・゚・(ノД`)・゚・。
>>156 修羅場になるように作りだされた空間とは新しいジャンルでこれからの展開に期待
ウソだといってよッ!山鹿!!
山鹿に敬礼!
山鹿の魂が、妹の園に辿り着くことを祈る。
あとは妹研メンバーの自決か……
::::::::::/○::山鹿::::
○ゝ○ゝ○ゝ○ゝ <無茶しやがって・・・
uu uu uu uu
山鹿……信じないっ!信じないからねっ!
山鹿…戦線離脱は確かだろう…だが…死んだとは書いていない!!
よって信じる!!奴は生きていると!!
>>165 おまいら、まだ山鹿が死んだっていう直接的な描写は出てないんだぞ!!
だ、だからおおおおおおおおっちいっつくんんんんづううううあ!!
おまいらもちつけ
/\⌒ヽペタン
/ /⌒)ノ ペタン
∧_∧ \ (( ∧_∧
(; ´Д`))' ))(・∀・ ;)
/ ⌒ノ ( ⌒ヽ⊂⌒ヽ
.(O ノ ) ̄ ̄ ̄()__ )
)_)_) (;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(
投下しますよ
どうしてこんな、いや今は生きていたことを喜ぶべきだろうか。
「どうしたの、蒼」
「何で、生きてるんだ?」
「蒼は嬉しくないの?」
悲しそうな目をしてシャーサが見つめてくる。
嬉しくない訳がない、死んだと思っていた人が生きていたのだ。僕は思わずシャーサを
抱き締めた。これは擦り込みのようなものだ、もう何とも思っていない筈なのに懐かしく
思えてしまう。八百年以上の年月を通り越しても変わらない体温が、とても気持ち良い。
忘れようもない程に深く体に馴染んだ感触は、心を溶かしてゆく。
「嬉しい」
それに応えるようにシャーサも僕を強く抱き返してきた。細い腕が伝えてくる力は弱い
ものだが、精一杯力を込めてくる。離れたくない、離したくもない、一人になりたくない、
ずっと二人で居たい、こうして抱き合っているときによくシャーサが言っていた言葉だ。
今は言っていないけれど、その気持ちは痛い程に伝わってくる。
「でも本当に、どうやって生き残ったんだ?」
「ナナミには聞いてなかったみたいね」
ナナミに目で問掛けると、気不味そうに視線を反らされた。
「うふふ、蒼だから特別に教えてあげる。あのね、これ、機械の体なの。オリジナルには
悪いことをしちゃったけど、これも蒼の為だもの。それに、今は私が本物よ」
何を言っているのか、さっぱり分からない。本物が死んだとか、機械の体だとか、その
体が本物であるとか、思考の容量を軽く越えてしまっている。今僕の前に居るシャーサが
偽物ではないということは辛うじて理解することが出来たけれど、それ以上のことは全く
理解出来ない。まるで異国の言葉を聞いているようだ。詳しく訊こうと思ったが、視線で
制されて何も訊けなくなる。
「そんなことはどうでも良いじゃない。大切なのは、これからのことよ」
これからのこと?
「私は一度死んでしまったんですもの、これからは自由だわ。今はもう誰も私を束縛する
ことなんて出来ないわ、だから自由に蒼と愛し合うことが出来るの。一緒に暮らしましょ、
蒼が望むことなら何でもしてあげる。二人だけの世界が、すぐそこにあるのよ」
言いながら襟を下げ、白く細い首筋を見せ付けるように晒してきた。そこには罪人の証
である首輪が存在せず、この都市では不自然な自由を表している。相手が誰であろうと、
例えその相手が僕であろうと縛られることを何よりも嫌う彼女の性格を誇示するような、
そんな意思を分かりやすく表現していた。
「昔から望んでいたことがついに叶うのよ、嬉しくないの?」
「うれ、しい?」
僕はどう思っているんだろう、自分のことなのに分からない。過去の僕であったならば
手放しで喜び、何の疑いもなく着いていっただろう。愛する人と何の邪魔もなく二人きりで幸せに暮らしてゆく、それは
今のシャーサが言うように甘美で素晴らしいものだ。認められる筈のない恋愛をしていた
僕達だから尚のこと、そんな普通の人がするようなことを望んでいた。
今も僅かではあるが、それに心を惹かれている自分が居る。久し振りのシャーサの体温
が、甘く楽しかった時代の僕を呼び起こしているからだ。だが、簡単に肯定をすることが
出来ない自分が壁を作ってしまっているのだ。これを倒して乗り越えてしまったら、後は
楽だろう。だが、巌として通してくれはしないのだ。
「僕は、それに応えることが……」
出来ない。
迷った末に、その答えが出てきた。先程まで何とも思っていなかったから、などという
理由ではない。過去を切り捨てていたことなどは、上辺だけの理由にすぎない。ならば、
本当の理由は何だろう、自分の心に問掛けても答えは返ってこない。
だが、それで良いのか?
あんなに魅力的なのに、何を躊躇うことがあるのだろうか。あれだけ大切にしていて、
それ故に一度は諦めたものが再び手に入ろうとしている。それをまた諦めて良いのだろう
か、良い筈がない。普通に考えて、普通にそんな答えが出てくる筈だ。今の機会を逃して
しまったら、もう後戻りするなんてことは出来やしない。現実は、そんなに甘いものでは
ない。起きたことは、絶対に消すことが出来ないのだ。
例えば、シャーサが大統領を殺してしまったこと。
例えば、僕が罪人になったこと。
例えば、リサちゃんやサラさんが殺し合いをしたこと。
打ち消すことは出来ずに僕や皆の心にしっかりと残り、深い傷を付けている。
一生かけても消えないものは存在し、続いてゆく。不老になった僕に限って言うのなら、
それこそ永遠のものだ。見えないようにすることは可能だろう、辛く大変だろうが現実を
忘れて夢に酔ってしまえば良い。そちらを現実にしてしまえば、今度は過去のことが夢と
なり意識をしなくなる。シャーサの申し出は、そんな意味も持っている。
「青様」
突然のナナミの声に、誘惑に駆られそうになった心が引き戻された。
そして、どうして素直に答えを出すことが出来なかったのかも分かる。過去を切り捨て
ることで未来を切り開くのは可能だが、それが嫌なのだ。リーちゃんやユンちゃんが親に
捨てられたように、犠牲を生むことが嫌だからだ。かつて僕が要らないと言われて両親に
捨てられたように、残していくものの気持ちが痛い程に分かる。だからこそ、僕の周りの
皆には、絶対にそんなことをしてはいけないのだという強い意識がある。
「シャーサ、僕は」
「あら、もうこんな時間だわ。またね、蒼」
シャーサは僕の答えを聞くことなく唇を重ね、踵を返して去ってゆく。
呆然とした。
それも一瞬のことだが、気が付いたらシャーサの姿が見えなくなっていた。
いや、今はそんなことはどうでも良い。
過去を切り捨てることを拒否したことで、新しい疑問が沸いてきた。それは、今抱えて
いる問題の本質のようなものだ。僕は誰を選ぶのか、それが分かれば、きっと答えを出す
ことが出来る。過去を見て絶対に誰も後悔しない選択をして、やっと未来が見える。だが
それと同時に不甲斐ない気持ちが沸いてきた。
「情けないな」
こんな簡単なことに今まで気付かなかった自分が腹立たしい、皆を大切だと思い、見て
いたつもりだったが、それは勘違いだった。今まで見ていたようでいて、何も見えていな
かったのだ。馬鹿の中の馬鹿、本物の大馬鹿野郎だ。
「青様」
「ごめん、少し静かにしてくれ」
自分で言っておきながら、何て身勝手なんだろうと思う。僕がはっきりしないでいるの
が原因なのに、半ば八つ当たりのようにしてしまっている。それなのに言うことを聞いて
くれて、黙って静かに隣に居てくれるナナミの存在が嬉しかった。
ナナミの肩を抱き寄せ、髪を撫でる。黙っていてほしいという願いがどこまでその効力
を持っているかは分からないが、ただ無言で僕にされるがままになっている。本当の心は
分からない、感情を再び持ったことで感情が無かったときよりも余計に分からなくなった。
どこまで僕を信じてくれているのか、従ってくれるのか。
どう思っているのか。
そして、いつまで隣に立っていてくれるのか。
改めて思えば、いつも隣に居た筈のナナミが酷く遠く感じる。
「ナナミ、一人は寂しいな」
隣にナナミが居るのに、不思議な言葉だ。
「私は昔、いつもそう思っておりました」
数秒。
「それを打ち消してくれたのは青様です。それ程機会は多くありませんでしたが、その時
はとても嬉しいものでした。今、青様が寂しいと仰るのであれば、私が隣に居ます」
素直な言葉に、嬉しく思う。
僕はナナミを強く抱き締め、目を閉じた。
今回はこれで終わりです
分かりにくい時系列表(屋敷のお仲間編)
『青の使用人時代』
・青とシャーサが恋人として過ごす
・ナナミ(感情有)が青に惚れる
・シャーサが大統領と結婚
・初夜にシャーサが大統領殺害
・シャーサの親族の謀略やシャーサ父の願いにより、シャーサを守る為に罪を被る青
・青がSSランクの罪人認定を受け、不老化する
・シャーサ父の意向により、監獄都市内での補助役を選ぶことになる
・ナナミが立候補、青が辛い想いをしないようにと自らの感情回路を破壊する
・二人で監獄都市へ
・シャーサが青が居なくなったショックで寝込む
『八百余年』
・シャーサ、治療の為に不老化
・シャーサが計画を練り、大統領を殺害
・機械の体に意識をコピー
・いざ監獄都市へ
『青の監獄都市生活編』
・過去を引きずりながらの生活
・リサが隣の部屋に越してくる
・サラと出会う
・ナナミ(感情無)が双子を拾ってくる
・サラの勘違いにより、サラとセックス
・気不味い生活
・シャーサ(旧)がSSランクの罪人として登場、修羅場の後でサラとリサに殺される
・双子の言葉により、ナナミが再び感情回路を取り付ける
・シャーサ(新)の言葉により、ナナミが青のところへ
・殺し合い
・ナナミ(感情有)が納めるも、体が大破
・問題抱えた日常
・シャーサ(新)が青の前に登場
他の二人のもあるってのに、この量は何でしょうね?
>>150-188全員GJ!
しかし山鹿の死去(?)は凄い反響だな。
男性キャラでこれだけ人気が出た奴って初めてじゃない?
ロボさんGJです。
ナナミ派の俺としては嬉しい展開だ。
>>186 ユウキとか
189 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 01:19:46 ID:vDVM6tSr
ミスタープレイボーイの主人公、長嶋君もかなり人気だったなそういえば。
……って作者両方同じw
山鹿と次子がシンクロ率400%で混ざりあって復活・・・・ないか
>>187 ユウキは俺の嫁
というかむしろ婿でもいい
九十九もいいが、血塗れ竜外伝もまた来ないかなあ
未だ死亡判定は出て無い!!
死亡確認されるまでそのキャラは死んで無いんだ!!死んで無い。。。
山鹿ーーーー!
ここでこのスレの奴らの妄想により、理想の山鹿が誕生して登場↓
195 :
阿修羅:2006/12/11(月) 01:54:57 ID:b5XuxjwH
毎度のことですがおくれてすみません。
とりいそぎ、連絡など・・
前スレにて複数の方のアイディアをまとめる形で一つの作品が投稿されていますが、
作品掲載の際の作者様は暫定的に最終的にまとめた方のIDで掲載しています。
SSスレの約束事の表記につきまして、表現が微妙だった項目をはずさせていただきました。
数名の方よりご指摘がありました、サイト内のどこにもリンクの貼られていない
ttp://dorobouneko.web.fc2.com/SS/tabindex.html についてですが、これは作成中のもので最終形ではないため非公開にしておりました。
(意外に評判は悪くないようなので一応のこしてます)
カバーできていない作品(特に最近の投稿作品)も数多く在り、またジャンルワケの難しい作品も
多いため、かなり難航しています。
掲載作品が増え、どの作品から読めばいいのかわからない!という方へのちょっとした案内になればと
思うのですが。。。できれば住人の方のご助力をいただければとおもいます。。
長文失礼しました。
阿修羅氏おつかれさまです。
力になれるならなんでも!と言いたいところですが、なにをどうしらいいものか…
とりあえず、このスレを使って話し合うべきかな?
それともまとめサイトのBBSを使わせてもらった方が良いかな?
阿修羅さん、いつもながらまとめサイト更新ありがとうごさいます。これでいつでも新鮮な修羅場を楽しめます。
あと、降臨のタイミングが神すぎます。
確かに嫉妬スレ最強のバックアップだなと、思わず納得しちゃいましたよ。
198 :
阿修羅:2006/12/11(月) 02:46:35 ID:b5XuxjwH
>>196様
そうですね、スレ上よりはサイトBBSを利用したほうが
進行の妨げにならないかと思います。
「この作品はこのジャンルでどうでしょう?」とか
「こんなジャンルを追加してみてはどうだろう?」といった案などがありましたら、
どんどん出していただければとおもいます。
>>197様
エディタを起動して投稿用の本文を書き始めたときは
>>189様の投稿までだったんですよ・・・いや本当に!(必死
今更ながら、ツイスターの文字を見るたびに、
ケンタッキーのアレを思い出す。
……山鹿には妹に生まれ変わるフラグが立ったんだ、きっと。
阿修羅氏お疲れ様です。
ジャンルの追加についてはあまり増えすぎても大変だと思うので、
とりあえず現在ある作品を既存のジャンルで分けてみてから
『ちょっと違うもの』を新しいジャンルにするかどうか考えればよろしいかと思います。
何気に青の思考回路がものすごく刹那的なのが怖い…
阿修羅さんまいどお疲れ様です
12月から投稿は激減してますけどね・・
>>204 きっと作者さんたちも監禁されてzlぢjv;あOj;hvccv
ついに読み手まで…
阿修羅氏の登場タイミングの良さに脱帽、GJ過ぎるぜ
神々がいなくなったこのスレはかつてのような勢いは存在しなくなってますね
一々余計なこと言わず黙って待ってろ
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∩___∩ | | | J | | | し || | |
| ノ\ ,_ ヽ .| レ | | レ| || J |
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| ∪ ( _●_) ミ .| し J|
彡、 |∪| | .J レ
/ ∩ノ ⊃ ヽ
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l^丶
| '゙''"'''゙ y-―, あ ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう
ミ ´ ∀ ` ,:'
(丶 (丶 ミ いあ いあ
(( ミ ;': ハ,_,ハ ハ,_,ハ
;: ミ ';´∀`'; ';´∀`';, ,
`:; ,:' c c.ミ' c c.ミ
U"゙'''~"^'丶) u''゙"J u''゙"J
/^l
,―-y'"'~"゙´ | それ るるいえ うがふなぐる ふたぐん
ヽ ´ ∀ ` ゙':
ミ .,/) 、/) いあ いあ
゙, "' ´''ミ ハ,_,ハ ハ,_,ハ
(( ミ ;:' ,:' ´∀`'; ,:' ´∀`';
'; 彡 :: っ ,っ :: っ ,っ
(/~"゙''´~"U ι''"゙''u ι''"゙''u
まずは日本語の基本を思い出…さなくていいや。わかりやすいから
たしかに分かりやす過ぎてワロスw
>>209-210 クマーとか言いたくなる気持ちは分かるが、華麗にスルーしようぜ( ´∀`)σ)Д`)
相も変わらずスレ速度が超高速を保っているし心に余裕を
>>188 どこがほのぼの純愛なんだよw でも・・・・・・GJ!!
>>186 そういえばゆう君もある意味人気だったな、外道の方でだが|ω・`)
個人的には山本弟が好き、あの修羅場を作る技術は流石(*´д`*)
嫉妬スレ初心者なのだけど・・・
ユウキとはどの作品のキャラなんでしょう?orz
血塗れ
そしてこのSSスレの作品で「ゆうき」という名の主人公はかなり多い
あっはははは・・今日も投稿なしか
ついに嫉妬スレ伝説も終わった!!
221 :
睦月ちゃん:2006/12/11(月) 23:14:29 ID:aoLGrP80
神君は今はちょっと師走ちゃんに付き合ってあげてるだけだもん。
あんな疲れる女にいつまでもかかりっきりなわけないでしょ。
まとめサイトを見る限り、ほとんどきっちり分類されてるように見えるんだけれど…
分類されてないものってどれだろう?
>そしてこのSSスレの作品で「ゆうき」という名の主人公はかなり多い
きっと「修羅場に負けない男の子」と言う意味で付けられたんだろうなw
〉「おかえりなさいませ」
〉京之助が玄関を開けるやいなや、すぐに素女は上がりはなまで駆け寄ってきて、にこやかにそう言ったのである。それは帰り道の間
、京之助が必死で考えていた言い訳も、またそれをぶつぶつ呟いて暗記した努力も全て無駄になった瞬間でもあった。
〉あまりに自分の帰りが遅いため、素女は不機嫌そうに眉をつり上がらせているものだと京之助は思っていた。だからこそ、にこやか
な笑みを浮かべる素女はいささか拍子抜けで、少し呆気に取られてしまう。
〉「どうなさったのですか?そんな所に立って」
〉素女はクスクスと口を押さえて笑う。彼女の表情はあくまで明るく、やはり暗い陰がその顔に落ちる事はなかった。
〉「お早く中に入って下さいませ。戸を開けたままでは蚊が入ってしまいまする」
〉京之助は素女の声にハッとして、その声に促されるように家の中に入り、後ろの戸を閉めた。すると、彼女は何やら嬉しそうにニコ
リと頬を緩める。
〉「すぐにお夜食に致しますので、居間で待っていて下さいませ」
〉素女はそう言い残すと、小さく頭を下げ踵を返して台所へと駆けていった。
〉京之助はそのあまりにおかしな素女の様子に思惑の尻尾を引きずりつつも、すっかり古くなり一歩ごとに軋む廊下を通り過ぎ、居間
の中に入り込んだ。
〉居間には小さな燭台ふたつと行灯に火がともり、薄い赤色に照らされていた。中央には向かい合う形でふたつの食台が並べられ、そ
れらが四方に細い影を引いている。
〉京之助は上座の食台の前に座ると、そこから首を伸ばして台所の様子を伺った。素女は小さな背中を丸くして、忙しく台所を動き回
っていた。その台所の鍋から白い煙がふつふつと沸き上がり、食欲をそそるような甘い味噌の匂いが京之助の元まで漂ってくる。
〉素女の背中の様子を伺いつつ、京之助は自分の顎を弓手で撫で回し、考え事の尻尾を再び目の前に引っ張ってくる。
〉──やはり、素女の様子がおかしい。
〉素女は元来独占欲が異常に強い女である。誰よりも、何よりも京之助の行動を限定したがるし、京之助が親しげに他の女と話してい
るだけで不機嫌になったりもする。
〉その事を京之助はよく知っているし、当然今日もいつもの調子でいろいろと問いつめられる事を覚悟していた。だからこそ素女が京
之助に何も聞かず、ただ台所で黙々と料理している姿が京之助には不気味で仕方なかった。むしろ、いつもの通りに素女から色々言わ
れた方が気分がすっきりするような気さえする。
〉素女は何かを企んでいるのか、とも思うのだが、いくら考えてもその企みが何であるか分かるはずもなく、結局は思考の迷路に漠然
と迷いこむだけであった。
〉「もう少々待ち下さいませ。すぐに味噌汁も温まります」
〉思考の迷路でぐるぐる回っていた京之助に、素女が背中を向けたまま言う。
〉「あ、ああ、わかった。ところで、もう素女は夕食はすませたのか?」
〉「いえ、まだにございます」
〉「そ、そうか。さぞや腹もすいているだろうな。──待たせて悪かった」
〉淀みなく動いていた素女の体がピタリと止まる。
〉「いいえ、大丈夫にございまする。素女は貴方と二人で食べる夜食が何よりも楽しみです。ですから貴方を待つ時間など決して苦に
はなりませぬ」
〉素女は柔らかい口調でそう言うと、止まっていた食事の用意を再開する。
〉京之助はその素女の様子に益々首を傾げ、腕を組んだ。
〉「さぁ、料理が完成いたしました。今お運び致しますので、少しお待ち下さい」
〉しばらくすると素女はお盆にたくさんの料理を乗せて、よたよたと危なっかしい歩調でこちらに向かい歩いてきた。お盆にはめいっ
ぱいの料理が乗せられ、素女の細い腕が小刻に震えている。素女は顔を真っ赤にしながらも、精一杯の笑みを浮かべているが、それが
痩せ我慢であることは一目瞭然であった。
〉「お、おい。無理をするなよ」
〉「へ、平気にございまする。そ、それよりも今晩の料理は、素女が腕を振るった、ご馳走に、ございますので」
〉とてつもなく嫌な予感がした。
〉「あ、貴方の好物ばかりに、ございます、どうか」
〉不意に素女がキャッと小さな悲鳴を上げた、と思った瞬間に彼女の体が前に倒れこむかたちで宙を舞った。台所と居間を繋ぐかすか
な段差に足を取られたのである。
〉宙を舞っていた素女の体が大きな音を立ててが畳に叩き付けられ、その頭に味噌汁が派手にぶちまけられた。
〉「くぅ、あ、熱い」
〉「だ、大丈夫か、素女」
〉京之助は急いで素女の元に駆け寄ると、手拭いで頭の上を拭いてやる。味噌汁はそうとうな温度だったようで、手拭い越しでもかな
り熱かった。
〉「も、申し訳ございません。今すぐに変わりを用意いたしますゆえ」
〉素女は京之助の腕を掴み、立ち上がろうとする。それを京之助はたしなめて、
〉「素女よ。俺は大丈夫だから。、残った物で十分だ」
〉と、優しく語りかけ頭を撫でてやった。
〉「申し訳ございません、申し訳ございません」
〉素女はうつむいたまま呪文のように同じ言葉を繰り返す。
〉「別に素女が謝る必要はない。それより早く火傷を冷まさねば痕が残ってしまうぞ」
〉「申し訳ございません、申し訳、ござい、ませ、ん」
〉うつむいたままの彼女の声が、闇に吸い込まれるように小さくなっていく。
〉「さぁ、早く火傷を冷まそうな。立てるか?」
〉その問いに素女は何度も首を横に振る。
〉それからギュッと京之助の着物の裾を握りしめて、
〉「今日は、どこに、行っておられたのですか?」
〉「えっ?あ、ああ、今日は銀次郎、半十郎と三人で酒を飲みに行っておった」
〉この頃合いで今日の遅れた理由を聞いてくるとは想定外であったが、幸いにも何度も頭の中で模擬を行っていたため、淀みなく言葉
が繋がる。
〉「そうにございますか、銀次郎様が江戸から戻っておられたのですか」
〉「ああ、驚いたがな。昨日帰ってきたそうじゃ、何でも」
〉「嘘」
〉素女は京之助にその顔を見せることなく呟く。その声は蚊の鳴き声のように小さな声であったが、京之助の言葉を打ち消し二人の間
に静寂をもたらした。
〉「酒を飲みに行っていたと言うのは嘘にございますね」
〉その中で静かに空気を震わす素女の声。その声、言葉の内容に京之助の心の臓が一際大きく跳ねる。
〉「う、嘘ではない。疑うのなら明日にでも銀次郎に聞いてみるがいい」
〉「いえ、貴方は嘘を言っておられます。だって、貴方から酒の匂いはいたしません、貴方から匂うのは」
〉素女はゆっくりと顔を上げ、真っ直ぐ京之助の瞳を見据えて笑った。
〉見事な笑みだった。あまりに見事すぎて京之助は少し小便を漏らしてしまった。
〉「甘い、甘い女の匂いだけにございます」
素女の問いつめまで行きたかったんだけど、問いつめの部分が納得出来なくて無理だった。
納得出来るものが出来たら投下するけど、時間かかるかも。
アパートの玄関をくぐり郁乃は1号室と表記されたポストの中を覗く。何も入っていないのを確認して廊下を進む。
廊下を進んで一番奥の1号室――大場太郎と油性マジックで走り書きされたプレートをぶら下げた木製のドアをノックする。
コンコン
いつも通り返事が無いのを確認してドアノブを回す
ガチャリ――
鍵はかかっていない。これもいつも通り。
中に入ってドアを閉める。
カーテンが閉められているので薄暗いがそれなりに片付いているのはわかるし以外に広い印象がある。
TV、折りたたまれたちゃぶ台、ベッド、そして壁に吊り下げられた学ラン――
家具と呼べるものはそれだけしかないのだから広く見えるのは当たり前かもしれない。
郁乃はそっとベッドに歩み寄り、横向きに丸まって眠るこの部屋の主たる少年の寝顔を覗きこんだ。
まだあどけなさの残る寝顔は郁乃より幾分年下の印象がある。
「……あらあら、涎が」
ポケットからハンカチを取り出し口の周りを拭う。
上質なシルクのハンカチは太郎の安眠を妨げる事のない肌触りで役目を果たした。
「…ふふっ」
我が子の眠りを見守る母親もこの表情をするのであろうか。
「また一つ宝物が増えましたわ」
そう呟くと丁寧にたたみ直し壊れ物を扱うかのようにポケットにしまい込む。
寝返りのお陰で四方に跳ねた太郎の髪に指を通してみる。
自分の髪とは違う、ざっくりとした感触が指に伝わる。太郎は目を覚ます気配は無い。
さらに梳いてみる。もう一度、もう一度――………愛しげに何度も何度も。
ふと、枕の下にある何かが、郁乃の視界に入った。
「…?」
太郎が目を覚まさぬようにゆっくりと慎重に何かを引き抜く。
「…………」
雑誌である。本屋に行けば売っているしコンビニでも買える極普通の雑誌である。
際どい、殆ど紐といっても良い水着を着けた、郁乃とそう年も変わらないでろう綺麗な女性が
その豊満な胸をことさら強調するポーズで表紙を飾っているというだけの何の変哲もない雑誌。
昨夜市川の報告の中に太郎が学校の帰りに駅前の書店に立ち寄ったというくだりがあったのを思い出す。
ページをめくってみる。表紙の女性がどこかの砂浜で表紙そのままの水着で寝そべり。誘うような視線でこちらを見ている。
ページをめくる。殆ど用を成していなかった水着が透けている。なまじ裸になるよりも卑猥で扇情的な雰囲気をかもし出している。
ページを次々とめくるとそこには色々な衣装を着た女性が載っており、そのどれもが男性の劣情を刺激するのに不足の無いものばかりだった。
雑誌を閉じる。太郎は気持ち良さげに眠っている。夢をみているのだろうか?それはどんな夢で誰の夢を見ているのか。
郁乃は太郎の寝顔に息がかかるくらいに顔を近づけまじまじとその寝顔を見入る。
そのまなざしはどこまでも優しげで慈愛に満ちていた。
「かわいい寝顔ですわ」
蚊の鳴くような細い声でそう呟く
「誰の夢をみているのですか?わたくしですか?それともあの本の女性ですか?」
「もしかしてわたくしにあの女性のような水着を着せている夢なのですか?」
「ふふふ……わたくしあのような破廉恥な水着はもっていませんが太郎ちゃんが見たいというならば今日にでも市川に用意させますわ」
「太郎ちゃんも男の子ですもの…ああいうものに興味を持つ年頃…わたくしすっかり失念いたしておりましたわ…」
「でも太郎ちゃん?」
「確かにあの本の女性は綺麗な方ですがわたくしより胸は小さいように見受けられましたわ」
「腰周りもわたくしより幾分ふくよかですし、お尻もわたくしのほうがほんの少し大きいですわ」
子供を寝かしつけるように優しく語り掛ける
郁乃の言葉に嘘はない。確かに雑誌の女性はグラビアを飾るに不足の無いプロポーションではあるがそれでも郁乃にはわずかに及ばなかった。
顔に関しても好みにも拠るであろうがやはり軍配は郁乃に上がる
「太郎ちゃんが一番大好きなのはここ…」
制服のブラウスのボタンを外すとそこには純白の下着に包まれた、下着の白さにも負けない乳白色の小山があった
下着からはちきれんばかりに包まれた二つの小山の間の深い谷間に太郎の頭を抱きかかえる
「んぅ・・・」
少し息苦しいのか太郎はかすかな声をあげる
「ふふ…この部屋は少し寒いです」
「でもこうすればほら…暖かい」
胸に埋まった太郎の頭を郁乃の手が優しく撫で回す
「太郎ちゃんは甘えん坊で…以前はこうしてわたくしのおっぱいに自分から擦り寄って着てくれたのに」
「高校に入ってからは郁乃に遠慮しているようで…寂しいですわ…」
「それなのに…」
太郎を優しく撫でていた郁乃の腕が強張る。
「それなのにあんな…あんな端女の身体に興味を持つなんてっ……!」
床に放った雑誌を睨みつける。そこには太郎に向けていた春の陽気を宿したまなざしは微塵も無い
あるのは永久氷壁を閉じ込めた凍えるような視線と能面の如く表情を抹消した美しくも見る者の背筋を凍えさせる貌であった
「んぅぅ…」
太郎が苦しげな声を上げると郁乃ははっとしたように腕の力を抜いた。
「あらあら…ごめんなさいね太郎ちゃん…苦しかったですか?」
よしよしと赤子をあやすように太郎の頭を撫でる
「わたくしったら…悪いのは太郎ちゃんが年頃だということを失念していたこのわたくしなのに太郎ちゃんに当たるなんで…」
「でも一番悪いのは…」
放り出した雑誌に微笑む郁乃
しかしそれは太郎に向けるそれとは似て非なる微笑み
「そのような貧相な身体でわたくしの大事な太郎ちゃんを誑かそうとした貴女ですわね…」
早朝6時00分――
ボロい
他に表現のしようがない木造2階建てアパート(築不明家賃1万5千円)の入り口に明らかに場違いな黒塗りの高級車が停まっていた。
運転席から黒いスーツを違和感なく着こなした美女が降りて後部座席のドアを開けると、清潔感溢れる制服に身を包んだ美少女が降りてくる。
深窓の御令嬢という表現以外何物も当てはまらない少女と黒塗りの高級車+美人運転手
かたや国が定めた防災基準や耐震基準を鼻で笑うかのような木造アパート
シュールである
「ご苦労様、市川」
凛とした声で労いの言葉をかけるその姿は、自然と周りを傅かせるカリスマと年頃の少女特有の儚さを自然と融和させている。
「は、では駅前でお待ちしております」
「ありがとう。では行ってきますわ」
「行ってらっしゃいませ郁乃お嬢様」
市川と呼ばれた美女は深々とお辞儀をして郁乃を見送り、車を発進させた。
若宮郁乃
ちょっと失敗して一番最初の分が一番最後に来てしまいました
最後の分を最初だという風に脳内変換していただければ幸いです
大変失礼しました
続き書く気力が残ってたら挑戦してみます
GJ。頑張って最後まで書ききって頂きたいです。
投げっぱなしのまま放置された作品もかなり多いので
まとめサイト読んでるとその事で逆にストレス溜まりそう。。
>>234 GJ!この先の展開が楽しみです
雑誌にすら嫉妬。でもそれが修羅場スレの常識w
>>228 後半の素女の台詞を読んで良い意味でゾクゾクとした気分になった
問い詰めも期待していますね
>>234 雑誌にも嫉妬するお嬢様は素晴らしいですな(*´д`*)
味噌汁妻の甘ーい狂気お嬢の不法侵入オート嫉妬GJ!
>>228 ぬこがネズミを追い詰めるような緻密な尋問も好きですが、支離滅裂な狂気を前面に出した問い詰めも大好きです。
作者様が得心いく物が出来上がるまで、気長に待たせて頂きます。
朝6時30分
大場太郎
目が醒めると世界は真っ白に染まっていた
「ん…んん……?」
「あら、おはよう太郎ちゃん」
「ん……うぇ!?」
頭の上から振ってきた朝の挨拶に意識が一気に覚醒する
おきようとしたけど身動きがとれない
「郁姉ちゃん!?ちょ・・・動けない!?」」
「もう少しだけこうしていましょうね。いま市川に連絡してこちらに車をまわしてもらいましたから」
視界が乳白色に埋まり少し息苦しい
え…?乳白色?なんで?
……………頭を少し動かして見る
モゾリ
柔らかい「何か」が僕の頬と擦れる。さらに動かす。鼻が柔らかい「何か」に埋まり甘い匂いが鼻腔一杯に拡がった
「きゃっ」
甘い吐息が僕の前髪をくすぐる。こ、これは……僕は恐る恐る首を上に向けた。
見慣れた、いつもの、優しい笑顔の、郁姉ちゃんの顔が、そこにありました。
「くぁwせdrftgyふじこlp;」
「あんっ…太郎ちゃんだ〜めっ」
ギュッ……
慌てて離れようとする僕の身体を、郁姉ちゃんは抱き枕のように抱きしめる
頭のてっぺんから足のつま先まで温かくて柔らかい感触が拡がりました
「お迎えが来るまでおとなしくこうしていましょうね?」
若宮郁乃
ふふふっ…太郎ちゃんたら耳まで真っ赤になって…なんて愛らしいんでしょう
久しぶりに太郎ちゃんを全身に感じますわ
少し前まではこれは当たり前だったのに…
太郎ちゃんが一人暮らしになって、高校に入学してこの「当たり前」はわたくしの手元から奪われてしまいました
わたくしの胸の中ですやすやと眠る太郎ちゃん
頭を撫でると甘えたように私に擦り寄ってきた太郎ちゃん
寝ぼけてわたくしのおっぱいに赤ちゃんの様に吸い付いてきた太郎ちゃん
朝起きて最初に感じる確かな幸せがそこにありました
雷に怯えてわたくしにしがみついてきた太郎ちゃん
夜中におトイレに一人で行けなくて私を起こす太郎ちゃん
目が醒めてわたくしがいないことに気づいて泣いてしまった太郎ちゃん
私が、私の傍にいないとダメなはずの太郎ちゃん
誰もいない寒々しい部屋で一人で眠る寂しさはどんなに心細いものでしょう
太郎ちゃんが屋敷を出て一人暮らしをすると聞かされたとき、わたくしは自分の身体の一部を奪われたような錯覚に陥りました
しかもこんな他に誰も住む者のいない、廃屋同然のアパートだと知ったときは怒りを通り越して頭の中が真っ白になりました
何故?
何故わたくしの太郎ちゃんがこんな仕打ちを受けねばいけませんの?
太郎ちゃんが一体なにをしたというのでしょう
お父様もお母様もお姉様もわたくしも何度も説得しました
でも太郎ちゃんが考え直すことはありませんでした
「いままで屋敷に住まわせていただいてありがとうございました。この御恩は一生忘れません」
少し困ったような、それでいて寂しそうな顔でそう頭をさげた太郎ちゃんをみてわたくしは胸が締め付けられるような苦しみを味わいました
ありがとうだなんて言わないで!
御恩だなんて感じないで!
太郎ちゃんは怒らねばなりませんのよ?
何故自分がこのような場所に住まねばならないのだ
何故郁乃姉ちゃんと離れ離れにならなきゃいけないのだ
そのように抗議するのが太郎ちゃんの正当な権利なのですよ?
そしてその権利は当然わたくしにもありますわ
何故わたくしから太郎ちゃんを奪うのですか?
何故わたくしが太郎ちゃんと離れ離れにならければいけないのですか?
太郎ちゃんはわたくしのもの
わたくしは太郎ちゃんのもの
それは当たり前のことなのですよ太郎ちゃん?
太郎ちゃんは朝はわたくしの胸の中で目を醒まし
わたくしと一緒に朝御飯を食べて
市川の運手する車で一緒に登校して
お昼休みにはわたくしの作ったお弁当を二人で食べて
帰りも市川の運転で帰途に着き
夜は家族皆で楽しく夕食を囲み
お風呂でお互いの身体を洗いあって
そしてベッドでわたくしの胸に包まれて眠りにつく
そうでなければいけないのですわ
太郎ちゃんもそう思いますわよね?
でも太郎ちゃんは優しくて強い男の子だから耐えているのでしょう
本当はわたくしの胸に思う存分に甘えたいのをこらえてこのような境遇に甘んじているのでしょう
だから今もこうして私の胸の中で形ばかりの抵抗をしているのですわね
でもダメですわ
わたくしは太郎ちゃんのことは何でもお見通し
太郎ちゃんは本当は今すぐにでもわたくしのおっぱいに吸い付きたくてうずうずしているのでしょう?
ちゅうちゅうと音を立てて吸い付きたいのでしょう?
ふふふっ…そんなに真っ赤な顔をしてバレバレですことよ
でも太郎ちゃんは年頃の男の子だから意地っ張りになって自分からはできないのでしょう?
ですからわたくしからおっぱいを吸わせて上げますわ
さぁ太郎ちゃん
太郎ちゃんの大好きな「郁乃お姉ちゃん」のおっぱいはここですわ
市川が迎えに来るまで存分に甘えて、吸い付いて、ちゅうちゅうと音を立てて飲み干してくださいな
市川には内緒にしておいてあげますわ
ね?太郎ちゃん……
第二話終了
感想ありがとうございます
今回は修羅場っぽくないけど勘弁してください
気力が反響があったらまた書きますので
感想お待ちしております
トリップつけた方がいいですかね?
>>243 やべーやべー亜由美姉ちゃんばりのキモ姉っぷりに意識が飛んでたぜ・・・
そこはかとなくGJ!続きをまってますぜ!!
郁乃の独占欲と執着心に(*´Д`)ハァハァ
ぜひ続きを!酉もつけた方がいいかと
いやっほおおお!お姉ちゃん最高ー!
>>お父様もお母様もお姉様もわたくしも
雌猫*2フラグキタコレ!
それにしても職人さんも減ったよな
二人しかいないんじゃないの?
はあそうでやんすか
今までが多すぎた
そもそも週一で投下してくれりゃ早いほうだろ
社会人の人多いし。
いつもの人だ。スルーしろ。
ここの投下の早さはもともと異常だし、ちょっと前はそのなかでもありえない早さ。
他スレと相対的に考えるとお前らわがまますぎるw
投下がすくないときいちゃあ、投下せずにいられねえ。
ツイスター、投下します。
254 :
ツイスター:2006/12/12(火) 17:01:35 ID:9s8s0Gam
日常が戻った。太郎は学校へ行く。山鹿のいない学校に。
ひさしぶりに顔を出した妹研の活動はほとんど休止していた。
所詮連中は烏合の衆なのだ。山鹿という強力な統制者がなければ、霧散してしまうのも無理はなかった。
かつてのような狂気じみた熱気はすでになく、ときたま部員がぽつりぽつりと訪れては時間をつぶしてゆくだけだった。
今回の派手な事件は、どういうわけか警察沙汰にならずにすんでいた。
それはきっと、山鹿のいっていた権力とコネの力によるものだったのだろう。
しかし人の口に戸は立てられないらしい。どこからか漏れ出した噂が学校中に広まっていた。
山鹿は、手製の爆弾を誤って爆発させたらしいと。
学校の多くの連中が間抜けなやつだとせせら笑った。生徒会は妹研の取り潰しを検討し始めた。
山鹿は目立つ分、敵もそれなりにいるのだった。
太郎はそうした話を耳に入れるたびに悔しい思いをするのだが、本当のことを話すわけにもいかなかった。
せいぜい、生徒会に妹研の存続を掛け合うことぐらいしかできなかった。
ここに山鹿がいてくれれば。
太郎はここのところいつもそう思いながら、学校を出るのだ。
255 :
ツイスター:2006/12/12(火) 17:02:19 ID:9s8s0Gam
「よお」
病室のドアを開けると、ギブスで固められ包帯でぐるぐる巻きにされた右手を挙げて山鹿がいった。
右手だけではない。左手も、両足も、おまけに個々からは見えないが胸と腹も包帯で真っ白だった。
つまり、頭以外はほぼ全身が包帯で覆われていて、それこそミイラのようだった。
ベッドの横では、一子が椅子に腰掛けてりんごの皮をむいていた。
「はい、山鹿さん」
両手の使えない山鹿のために、一子が小さく切り分けたりんごを口に放り込んでやる。
山鹿はそれを食べると、太郎の方をにやりと笑った。
「うらやましいか?」
「馬鹿」
山鹿は死ななかった。山鹿はそれを覚悟していたらしいのだが。
いや、煙の中から山鹿を見つけ出し、その息を確認するまで太郎も死んだと思っていた。
爆弾が山鹿の想定していた通りの性能を発揮していたとすれば、死は免れなかったらしい。
しかし、実際にはその爆発力は想定を下回っていた。そのおかげで命を拾ったくせに、山鹿は悔しがっていた。
おまけに爆弾は次子の腹の下にあってそれが遮蔽物となり、山鹿はそこから足一本分とはいえ離れていた。
それがミイラ男になりながらも命を取り留めた理由だという。
とはいえ、それでも山鹿以外の人間であれば死んでいたのではないかと太郎は思わずにはいられない。
山鹿は次子を非常識のかたまりだと評したが、山鹿にしても充分非常識な存在であることには違いないのだ。
その次子の姿は、爆心地のどこにもなかった。肉片すら見つからなかった。
山鹿は命を失って消滅したのだろうといった。彼女の肉体は、いわば仮初のものなのだから。
それこそ、鬼の作った人造人間がそうなったように溶けてしまったのだろう。
一子はそれを聞くと、安堵のあまり泣き出してしまった。
だが、太郎は一子のように素直に喜べるわけではなかった。次子に対する同情の気持ちも消えなかった。
確かに次子のしたことは許されることではない。伊勢を殺し、そして一子と山鹿を殺しかけた。
その限りで、太郎にとっても次子は憎むべき相手のはずだ。伊勢のことを考えれば、簡単に許してしまえるはずがない。
だが次子のその暴走の原因が、太郎であったことも間違いないのだ。たとえそれが、次子の太郎への歪んだ愛情の故だったとしても。
太郎は考える。ひょっとすると、自分のやりようによってはこんな結末を迎えずに済ますことができたのではないかと。
次子が暴走しないように、うまく付き合うこともできたのではないかと。
分からない。
ただ、全ては最初から狂っていたのだと結論付けてしまうのは、あまりに悲しい気がした。
それは次子との思い出を全て否定してしまうことだ。
これは、あまりに感傷的な考えなのだろうか。次子にも、そして自分にも甘すぎる考えなのだろうか。
256 :
ツイスター:2006/12/12(火) 17:03:05 ID:9s8s0Gam
「ちょっと、あんた。お見舞いに来て辛気臭い顔しないでよ。縁起悪い」
一子が憎まれ口をきいた。太郎は苦笑する。
一子が太郎を呼ぶときは相変わらず、「兄貴」か「あんた」だ。相変わらずぞんざいだった。
だが、今はそれがありがたい。次子の最後の日からしばらく、一子は太郎にひとことも口をきいてくれなかった。
太郎が一子にしたことを思えば、それも無理はなかった。それでも山鹿の病室で顔を合わせているうちに、昔の調子を取り戻してきた。
ぞんざいであっても、冷淡ではない。どこか照れ隠しのようなものさえ感じられる。
一子とは徐々にうまくやっていければいい。一生、兄と妹をやっていくのだから。例えば、一子がお嫁にいったとしても。
一子の結婚相手が山鹿であればいいのにと、太郎はふと思った。
一子は毎日山鹿の病室に見舞いに来ていた。両手の使えない山鹿のために、こうしてりんごを切ってやったり、書見台に置かれた本のページをめくってやったりしていた。
一子はそれを、「命の恩人に対する恩返し」などといっていたが、太郎は山鹿に気があるのだろうと思っていた。
そうでなければ、これほどかいがいしく世話をしてやることはないだろう。
わざわざ、家政婦がやるというのを断ってまで。
一連のことで、一子が山鹿にほれる理由は十分にあるような気がした。
だが、山鹿はどうなのだろう。
ありがたく世話を受けているように見えるが、それで鼻の下を伸ばしている様子もなかった。
もちろん、自分の妹以外にでれでれする山鹿など想像することすら難しいのだが。
それでも時折、山鹿が一子のかいがいしさに困った表情を見せるのが、太郎には面白かった。
あの山鹿が他人の押しに負けるとは。
もしかすると、信条が揺らいでいるのかもしれない。それなら歓迎するのだが。
太郎はもちろん一子を応援したい。それは一子のためでもあるし、太郎のためでもあり、きっと山鹿のためでもある。
援軍を送ることにした。
「俺、屋上で空気吸ってくる」
「ふーん、もどって来なくていいからね」
一子の憎まれ口に、笑いながら返してやる。
「はいはい。たっぷり二人っきりの時間をすごしてくれ」
一子が顔を真っ赤にするのを尻目に、太郎は病室を出た。
屋上には誰もいなかった。ただ、大量の白いシーツが風にはためいているだけだ。
太郎はフェンスに背をもたれさせて、空を仰いだ。高い。
雲ひとつない、見事な秋晴れだった。それこそ、バスケットひとつもってピクニックにでも行きたくなるほどに。
257 :
ツイスター:2006/12/12(火) 17:04:30 ID:9s8s0Gam
「お兄ちゃん」
聞くはずのない声を聞いて、太郎は顔を上げた。
見るはずのない姿があった。次子だった。ただ、服を着ておらず、白い裸体をさらしていた。
さえぎるもののない陽光の下で、まるで輝いているようだった。
にこやかに微笑んでいる。
そんな場合ではないはずなのに、きれいだと、太郎は思ってしまった。
「お前、どうして」
たっぷり時間をおいて、それが幻聴でも幻覚でもないことを確かめて、太郎はやっとのことでそれだけをいった。
「どうして生きているのかって?それとも、どうしてここに来たのかって?」
次子は笑みを深くしていった。
「山鹿さんもいってたでしょ?わたしは妄想の産物なんだよ。幻なんだよ。この体は仮初のものなの。どんなことしたって、死ぬことはないんだよ。
まあ、あれでばらばらにされちゃったから直すまでずいぶん時間がかかっちゃったけど。山鹿さんもひどいことするよねー」
太郎はそれを聞いて、次子を消すことができるかもしれないひとつの方法を思いつく。誰だってためらいたくなるような方法なのだが。
「それからね、どうしてここに来たのかっていうと」
いつの間にか間近に来ていた次子が、太郎の顔を覗き込んだ。
「分かってるでしょ。もちろん、一子ちゃんと山鹿さんを消して、お兄ちゃんをわたしのものにするため」
次子はそういって、太郎の鼻の先をちょんと人差し指でつついた。
「どうしてもか?」
「うん」
「俺が頼んでもだめか?」
「うん。わたし分かっちゃったから。お兄ちゃん、結局わたしよりあの二人の方が大事なんだよ。そんなのだめ」
「おい、山鹿も入ってるのか?」
「うん。そうだよ。っていうか、あの人が一番邪魔かな」
「そうか」
太郎はそういうと、ポケットからバタフライナイフを取り出した。山鹿から手渡された、あのナイフだ。
次子はそれを見て、あの夜と同じように悲しそうな顔をした。
「わたし、そんなもので刺されたって何ともないよ。でも、お兄ちゃんにそんなことされるのはいや」
「刺すのはお前じゃなくってだな」
躊躇する。だが、覚悟を決めて、目を瞑り、息を吸って。
258 :
ツイスター:2006/12/12(火) 17:05:11 ID:9s8s0Gam
躊躇する。だが、覚悟を決めて、目を瞑り、息を吸って。
太郎は自分の腹を刺した。
まるでへそからやけ火箸を突っ込まれたような感覚に、太郎はうめき声をあげてうずくまることしかできない。
痛い、痛い、痛い。
とんでもない痛さだ。ここからさらに刃を動かすことなんてできそうにない。時代劇でやってる切腹なんて嘘だ、無茶だ。
次子は太郎のその狂気じみた行為を、目を丸くしてみていた。だが、屋上のコンクリートに滴り流れ出る血液を見て、正気に返った。
「ああああああああああ!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
しゃがみこんだ次子が太郎の体を揺らした。そのたびに激痛が走る。
「いっ、だっ、あっ」
太郎は声にならない叫びを上げた。それに気づいた次子が揺らすのを止める。
「ああっ!ごめんなさい、ごめんなさい」
次子は今度は太郎の背中を覆うように抱きしめた。
「どうして!何でこんなこと、次子分かんない」
太郎にだって、確証があったわけではなかった。むしろ、賭けのようなものだ。
次子が幻なら、その幻を見ている誰かが死んでしまえばどうなるのか。
そして、一子そのものの姿をしているこの幻の最終的な幻視者は誰なのか。そう考えただけだった。
だが、賭けには勝ったようだ。太郎を抱えている次子の手の先が透き通り始めた。
「あ、あれ」
次子が自分の目の前でその半透明になった手の先をふった。
そうして、この自分の状況と、太郎のしたことの間の因果関係に気づいた。
「どうして?なんで?死んでもいいくらい、次子のことが嫌いなの?」
太郎はそうじゃないといいたかったが、声が出ない。
確かに、次子をこのままにしては置けないという気持ちはある。
山鹿は、一子を守るために命を張った。自分も、一子と山鹿を守るために命を張らなければ、友達として対等ではいられないという気持ちがあった。
だがそれだけではない。
次子を不憫だという気持ちもあった。
山鹿は次子を、幻にすぎないといった。確かにそうなのだろう。
それでも、その一生は、感情は、喜びは、憎悪は、本当のものだとしか思えなかった。
そして、その中心には常に自分がいたのだ。
それはなりゆきで押し付けられたものかもしれない。無理やり参加させられた儀式で、偶然当たってしまったのだ。
だが、次子にとっては、それが唯一のものだった。
そして何より、自分は次子の想いに、たとえ中途半端であったとしても答えたのだ。
それが愛といわれるものなのかどうなのか分からない。
ただ、次子を一人で逝かせるのはかわいそうだ。それだけだった。
いや、つまるところはただの無理心中だな、太郎はそう思った。
もっと、いいやり方があったのかもしれないのに。
259 :
ツイスター:2006/12/12(火) 17:06:02 ID:9s8s0Gam
「すまない」
次子と、それから山鹿と一子にそういって、太郎はずるずると体勢を崩した。
自然と、次子に膝枕される格好になっていた。
朦朧とする意識の中で次子の顔を見上げた。次この両の目からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
次子の泣き顔を見たのは初めてかもしれない、太郎はそう思った。
太郎の記憶では、次子はいつも笑顔でいた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
次子はぼろぼろと涙をこぼしながら、謝っていた。
これが笑顔だったらいいのに、と太郎は思った。これが笑顔なら、あの日、ピクニックに出かけた日とまったく同じだったのに。
下は固いコンクリートだけれど、空は青いし、風も気持ちいい。
太郎はそう思いながら、目を閉じた。意識はもうほとんど残っていない。
ただ最後に、唇に何か温かいものが触れたのを感じただけだ。
「愛の奇跡かもね」
手術を終えて、どういうわけか命を取り留めて、一子に泣きながらさんざ罵倒された後、太郎は次子がそんなことをいっていたのを思い出した。
もう次子はいない。今度こそ消えてしまった。
だとすれば、次子は自分の命と引き換えに、太郎を救ったのか。
そんなことが可能なのだろうか。山鹿は何もいわない。ただ、首をかしげるだけだ。
あるいは、もしかすると、次子は消えてなどいないのではないか。
ただ自分の居場所がないことを悟って、絶望して、それでどこかへ行ってしまったのではないか。
病室の窓からこんな風に青い空が見える日には、ぼんやりとそんなことを考える。
結局、太郎は次子にたっぷりと未練を残しているのだ。毎晩のように次子の夢を見る。
それが愛なのかどうなのか、太郎には良くわからない。
ただひとついえるのは、次子にとってはあれこそが彼女なりの唯一の愛の形だったということだ。
それが他人から見てどれだけ狂ったものであっても。
本当に、こんな良い天気の日には、どこからかあの声が聞こえてくるような気がしてならないのだ。
「お兄ちゃん」と。
以上、ツイスター最終話「それから」でした。
ぬるいかもしれませんが、あるいは唐突かもしれませんが、とりあえず終わりです。
太郎のキャラクターがいびつになってしまったのが、心残りか。それから、山鹿を調子に乗って表に出しすぎた。
二つ目のお話でしたが、何とか終わらせられたのも皆様のご愛顧の賜物でしょう。
今度は、もっとほのぼのとしたのが書きたいかも。またいずれ。
涙ながらにGJ
だが…次子が報われる分岐ENDを期待してしまうのは間違いなのか!?
>>260 GJとお疲れ様…個人的には話としては面白かったけど修羅場として見ると?だったかなと
まぁ山鹿のキャラが立っちゃったから彼主人公で何かやるのもいいんじゃないかと思いまふ
お疲れ
山鹿うざかったッス
GJ。
山鹿は好きなキャラだけど、人によっては寝取られみたいで嫌なんだろうな。
話としては凄い面白かったけど、修羅場として見れば序盤で対抗馬の後輩が退場しちゃったのが痛いな。
次回作にも期待してるぜ。
>>264 伊勢殺しは最大瞬間風速のウケねらいでやってしまった。
今では後悔している。
面白かった
太郎飛び降りるかと思った
完結お疲れ様でした。
山鹿は好きなキャラだけどやっぱりサブキャラはもうちょっと控えめなやつのほうがよかったかも。
なんか太郎が空気になってた気がするw
話としてはとても面白かったので次回作には修羅場分を期待します
作者さんGJ
GJなんだぜ
>>作者さん、GJ!
チラ裏
あんだけ山鹿マンセーしといて、今更叩くってどうよ?
>>269 そこは、あれだよ
「死んだ男キャラだけが良い男キャラだ!」
>>260 あれ、俺なんで泣いてるんだろ・・・なんか心にポッカリと穴が開いたみたいだ
まさかここまで切ない話になるとは・・・
一子ルート希望!!
六歳のとき、父が再婚した。
俺に義姉ができたのは、そのときからである。
いつも母親の背中に隠れている、一つだけ年上の女の子。
めちゃくちゃ小さくて、なんだか可愛かった。
名前は七海。
「ちょっと内気なお姉ちゃんだけれど、仲良くしてあげてね、鋭太郎くん」
新しいお母さんが微笑んだ。
それから姉さんを笑わせるまで、ひどく大変だった記憶がおぼろげに残っている。
「お姉ちゃん、ほら見てみてっ。セミのお腹だよ」
「……、ぅ、う……」
「うわ、こいつおしっこしたっ! お姉ちゃん、パスっ」
「きゃあ――ぁあっ! お母さん、お母さん、エーくんがセミ投げたっ! ふえ、ぇ……っ」
全面的に自分が悪かったなあ。
どう接したらよいのか、わからなかったのだからしょうがない。いきなり義姉ができたら誰だって混乱するんだ。
とにかく、俺のアプローチの全てが姉さんを泣かせたり不愉快に陥らせたりしたので、とても仲良くとは言いがたい関係が二年続いた。
二年が経過して。
母が死んだ。
元々病弱だったのだという。入院して、そのまま、家には帰らなかった。
唐突なその現実に、悲しみさえ満足に懐けない小僧の俺だったが。
母さんに強く依存していた姉さんは、違った。
俺の何百倍も悲しんで、泣き喚いた。それが何日も続いた。
もう隠してくれる温かな背中はないのだ。
これで家族で唯一、自分だけ、血が繋がっていない……そんな孤独も、在った。
そんなこととは無関係に、俺は、姉さんに笑ってもらいたくて、言った。
「お母さん、死んじゃったから……だから代わりに、俺が、お姉ちゃんを守るから」
ふざけてセミを投げつけてくるような馬鹿が近付いてきたら追い払ってやろうと思ったし。
泣いていたら、自分が姉の前に立って、背中に隠してやろうと思った。
「ぅ、ぇぐ、……エーくん、でも、でもぉ、ぅ、ひ、く」
首をぶんぶんと振っていた。
たぶん、自分はお姉ちゃんなんだから、それは逆だろうと……悲しみながらも、姉さんはそれを意識してくれていたんだろう。
「いいんだよ」
だって。
「俺が、そうしたいんだ、うんっ」
数年が経った。
この春から高校生の俺、西尾鋭太郎。
その姉、西尾七海。
建築家である父は今海外で働いている。つまりこの一戸建て住宅には現在俺と姉さんしかいないわけで……。
い、いかん。変な妄想しかけた……っ。
「姉さん、おきて……朝だよ、姉さん……、ぅ」
眉間に皺がよった。
ここは姉の自室である。そこは多種多様なぬいぐるみが跋扈する、一種の異界だった……ごめん言い過ぎた。
ともあれ。耳を塞ぎながら、俺は朝の日課を開始する。
「な、なんでこんなにうるさいのに、起きないんだ、姉さん……っ」
それはずばり、目覚し時計を止めることだ。
一個ではない。
総数、二十四である。
その形状もぬいぐるみに劣らず、様々だった。
特にこの女の子のやつなんか珍しいよなあ。時間がきたら、「時間ですよぉ、ぅふふふふふ」という台詞と共に何故か片手に持っているフライパンを振り回すギミックなんて……ベルじゃなくて、どすっ、といういかにも痛そうな肉を殴る音を採用しているし。
「なんで起きてくれないんですか……ぁ、わかりましたよ、本当はあの女に起こしてもらいたいからでしょ……っ!」
「ひ、ひぃっ!」
しばらく観察してたらそんな台詞を吐き出した。
フライパンを振り回す間隔は狭まり、肉を殴る音が大きくなった。ついに笑い始めたので止めた。
「こ、こんなからくりまで用意してあったなんて……」
いつも真っ先に止めるから気付かなかった。
姉さん、こんなに趣味悪かったか……っ? というかどこで売ってるんだこれ。
「ま、まあ、時折見せるミステリアスな所も姉さんの魅力なんだが……ああ、素敵だ」
きっと俺が理解できないだけで、この目覚し時計も高尚なモノなんだよね。姉さん……。うっとり。
などと、俺がフライパン女の時計を微笑みながら眺めていると。
「エーくんっ!」
「ぉわあっ!」
背後から怒声。びっくりして持っていた時計を床に落としてしまう。
「ね、姉さん……お、おはよう、」
振り返った。
何故か怒っている姉さんが、ベッドで上半身だけ起こしたまま、俺を睨んでいる。
「ぁ、じゃあさっそく寝癖直そうか。時間もあんまりないし、えっと、くし、くしはどこかなぁ」
姉さん髪長いから大変だよね、ははは。
「その時計」
遮って、姉さんの綺麗な指先が、床に転がる奇妙な目覚し時計を示す。
「あ、ああ、ごめん、ちょっと好奇心がうずいてちょこっと触っちゃった……ごめん、駄目だったっ?」
「そうじゃなくて」
まっすぐ、俺を見て。
「なんか、見惚れてたから……、その」
途端、視線をそらして、もごもごと聞き取れない声をこぼす。
うん……っ? はっ! そうか、感想が聞きたいんだな。わたしが選んだこの時計、どうかなっ? そう聞きたいんだな、姉さん。
「ぁ、えっと……か、可愛いよね、これっ!」
拾い上げて、俺は言った。
びきっ。石化の擬音。
「可愛い……っ?」 (私よりも……っ?)
「ぅ、うんっ! こ、この、フライパンとか、その、家庭的で、なんかいいよね、惚れるよねっ!」 (言い過ぎるくらいに褒めれば姉さんの機嫌も直るはず……っ!)
「ほ、ほほ、惚れるっ!?」 (こ、この私を差し置いて、そんな時計風情に……っ!?)
「も、もも、もちろん、それくらい魅力的さっ!」 (正直最初に見たときはひいたけど……言えない)
ぐっと、親指など立ててみる。
あれ……っ?
ね、姉さん、なんで、こう、俯いてぷるぷる震えてるんでしょうか……っ?
「エーくん」
「は、はいっ!」
「それいらない。捨てて、今すぐ、窓から」
「えっ!? あの、その、誰かに当たったら大変だから、それは……っ」
「――いいから捨てろよ童貞」
「っ!?」
姉さんっ!? どこっ!? あの優しかった姉さんは……っ!? まあ……姉さんは日常的に俺にはよくわからない理由できれるんだけどな。
「お姉ちゃんの、命令……聞けないの、かなっ?」
「き、きき、きつつききき聞きますはい捨てますそれせぇ――いっ!」
そうして今朝、その時計を俺は新庄よろしくレーザービームで投げ捨てた。
その後。
寝癖を直しているときも、朝食のときも、姉さんは……不機嫌なままだった。
俺が悪いのか……っ?
わからない、誰か教えてくれ、姉さんには笑顔が一番似合ってるんだ……うっとり。
「ぁいてっ!」
後頭部に何かが激突した。
「ぃ、つぅ……ああっ! もう、朝っぱらからなんだよ、いったい……、ぃ……っ?」
地面に転がるそれを、少年は拾った。
同時、絶句した。
「時間ですよぉ、ぅふふふふふ」
目覚しらしきその時計は。
とても、似ていたのだ。
フライパンと、肉を、殴る、音。
「は、はは、よ、よくできてるなあこれ、はは、ははっ」
「――なにがよくできてるんですかっ?」
「っ!?」
その声が。
耳元で、聞こえる。
「ああっ! エ、エースケくん、それってまさか私の……っ!?」
「ぁ、いや、その、なんか空からいきなり飛んで来まして……というかアンタいつ俺の背後に――っ!?」
「縮地です」
「真面目に答えてくださいよっ!」
「恋する乙女はたいがいなんだってできるんです。そんなことよりもっ! も、もう……そんなモノを作らなくても、言ってくれれば私が毎朝起こしてあげるのに……ぇへへ」
「だから空から飛んできたって言ってるでしょうっ!?」
ずいっ。
「ちょっとエー兄っ! なによそれ、ちゃんと説明してくれるんでしょうねっ!?」
「ゆ、有華っ! お前いつ電柱の背後に……っ!?」
「縮地だよっ」
「だからてめえもちゃんと真面目に答え――っ」
「ずるいずるいっ! あたしのも作れっ! 作ってっ!」
「ぐ、げぇ……っ、く、首を、絞めるな、死ぬ、死ぬぅ……っ!」
「今時糸鋸で両手切断するヒロインのグッズなんて流行りませんよ、有華さん。――つまり私がヒロインですので消えてくださいさっさと」
ぶちっ。
「――フライパンの使い方もわからない痴呆よりはマシよ。お前こそ失せろ。光の速度で」
ぶちっ。
お互い、何かがきれた。
「殴り殺しますよこの害虫」
「上等だよ糞女、ほら、さっさと遺書書け。それぐらいは待ってやる」
「――それはこっちの台詞です。さっさと始末してエースケくんはいただきますから、ぁは、ははははははっ。ちょっと待っててくださいね、エースケくん」
「三分待ってねエー兄っ。ちょっと地面が汚れちゃうかもしれないけど……ふふ、ふ、エー兄は、あたしが、守るから」
「も、もう嫌だ……誰か助けてくれ……っ!」
そんなほのぼのと、幸福な光景が。
今日も、蒼穹の下、広がっている……。南無。
「ごめんね」
登校中、何故か姉さんは俺に謝った。
俺としては。
「は――っ?」
というすっとぼけた声でかえすしか、ない。
「ぇ、えっ!? なに、なんで姉さんが謝るのっ!?」
「な、なんでって、その……」
むしろ謝るべきは俺だろう。
原因はいまだ不明だが、俺の行動が姉さんを朝っぱらから不愉快にさせたのは事実なのだし。
「わたしがなんで怒ったのか、エーくん、さっぱりわからなかったでしょ」
「うん。まったく。これっぽっちも」
「……、……」
睨まれた。怖かった。
「ご、ごご、ごめんなさいっ」
「――エーくんがっ!」
普段小声である姉さんだったが、ここは怒鳴るように大きな声で。
「わ……たしに、おはようって、言わないで、あの時計、ずっと、見てたから……っ」
ふ。
ぇ……っ?
「そしたら、なんか、苛々して……っ」
「ぅ、うん」
姉さん、顔真っ赤だ。
「そ、それが……理由、だから、その……っ、つまりわたしは、エーくんの、こと――っ」
「うぉ――いっ! おはよう、エータっ!」
どがっ。
後頭部をはたかれる。
「ぃ、た……っ! ああ、なんだ、七恵か」
振り返ると、同じクラスの少女がいた。
「なんだとはなんだよぉ」
「朝っぱらから無駄に元気な女だ……今俺は姉さんと話しているんだ、すまん、君の相手をしている暇は残念ながらない、欠片も」
「エータは朝っぱらからよくそんなに口が回るね……」
すごいだろう。
「まあ聞いてよ、ここ来る途中でね、喧嘩見ちゃったっ! 喧嘩」
「それぐらいではしゃぐとは……おめでたいな君は」
「君って呼ぶなっ! 女同士だよ、しかもすごいの、平手じゃなくて拳ねっ!」
「えっ!? マジかっ! すごいなあ……っ」
「なんかあたしらと同じくらいの男の子が泣きながら止めようとしてたよ」
「へえ……あれかな、痴情のもつれ、とか」
「わかんないけど。なんか二人とも眼が嫌な感じに濁ってたし……、ぃ……っ」
そこまで快活に喋っていた七恵だったが、途端に会話を中断する。
「なんだ、どうかしたか」
「ぁ、いや、その……ぁ、あたし、先行くねっ、じゃあっ!」
そのまま。走り去った。
「なんなんだいったい……っ? あ、ごめん姉さん、なんの話だったっけ」
「……、……」
あ、あれっ?
また睨まれてるぞ、俺。
「――もう、いいっ。エーくんの馬鹿」
「え、ちょ、ちょっと待って、姉さん、姉さん待ってちょっと歩くの速過ぎる……っ!」
結局姉さんの機嫌は斜めのまま。
今日も、俺らの日常は、過ぎていく。
単発です。
もうすぐクリスマスなので、それをネタに書こうとしたんですけど、
肝心の自分のそういった経験が皆無なので断念しました。
ぅ、う……。
このスレにいる人達は実姉、実妹バッチコーイの人達だから一子が寝取られたみたいで嫌なんだろう。
おれも寝取られは男じゃなくて女の子にやってほしい。
ひとまとめにするなよ
おれはすきだぜ、こういうの
住人は主人公に感情移入して愉しむ。
>>278 |ω・`) GJ!俺も経験皆無だからこれでとっても楽しめるっす!
単発も好きなので投下期待してます
全部キモウトじゃなくてもいいじゃないか。
恋愛感情以外の嫉妬は新鮮だった。作者さんGJ!
しかし日々の楽しみがひとつ減ってしまった…。
叩いたつもりは全く無かったんだがそう取られたならスマン。
>>281の言うとおり主人公に感情移入してたからそう感じただけだったんだが。
ツイスター自体大好きだし話としてはとても面白かったからGJってことだった
>>278 泣くんじゃねぇッ!!
むしろ笑え!!
おまいさんにはこのスレと俺達がいるじゃないか。
まあ、主人公自体が一子を完全に妹としてしか見てない以上、
あれば自然な流れだと思うな。
てか、エー兄ktkr激しく萌えた。
何気にいたり先輩を感じたのはなぜ?
いたり先輩仕様の目覚まし時計がものすごく欲しいぜGJ!
◆zIIME6i97Iさんの作品はミスターもそうだけど
こういう現実では有り得ないような妄想で萌えるスレの中でも
何かリアリティーのようなものを感じる。
だから普通に読み物としての面白さがあるんだけど
その分、若干「非現実的な萌え」が足りなくなってしまうのかも。
でもこれが◆zIIME6i97Iさんの特徴でもあるし
他の作品には中々無いような要素だから
そういうのが持ち味の作家さんがいてもいいと思う。
人間では無い次子だけが太郎に対する異常な執着を持っていて
伊勢さんや一子はいたってノーマルって所に
◆zIIME6i97Iさん特有の作風を感じるし(このスレのSSの中では)
これで伊勢さんが次子並に太郎に執着したり
一子が太郎に女としての好意を持ったりヤっちゃったりしたら
◆zIIME6i97Iさんの作風とは違っちゃうように思う。
そういうのは違う作家さんのSSに求めればいいんじゃないかな?
なんか必死にツイスターの作者さんを援護してる人がいるけど、なにに対して援護してるのかわからん。
誰も彼を叩いてないと思うんだけど。
援護→擁護
トライデント氏の件があるから敏感になってんだよ
>>220 がなんか弁解中のミスターっぽくて好きだぜ
肯定的な感想を述べているだけで擁護とやらをしてる人もいないでしょ。
>>294 あなたのことを言ってるんじゃない? 擁護みたいにも取れるし
それに作者さんの作風、持ち味と決め付けるのも良くないよ、書き手は自由に世界を広げていいんだから
>>疾走の作者さん
GJです! できれば続きも…なんて贅沢を言ってみたり
エサビトも楽しみにしてますよ!
だからツイスターに対して「こうしてほしい」「このほうが良かった」っていう意見、感想に対して
「これで良かった」「こうだからこそ良かった」という意見、感想を述べているだけで
前者が叩きでないのと同じように、後者も擁護とやらではないでしょ。
そろそろウザイからだまれ。
空気が悪くなる。
だからおまえらはもう書き込むなって、心の中でGJ言ってろ
>278 エー兄ktkr!
毎日の登校が楽しくなりそうな光景だw
>260 山鹿生きててよかった……
極々個人的に伊勢の救済エンドが見たかったがどれだけ前から
分岐するのかと小一時間(ry
伊勢生存、一子参戦、ホラー展開少なめの次子エンドもみたい。
>>293 あの人は嫉妬SSスレから追放されたんじゃなかったけ?
パロネタで調子に乗りすぎてあちこちに批判を受けたと聞くぞ
日本語も書けない奴は出て行けとお前ら叩いていたじゃんww
304 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 23:43:02 ID:+C1NCeHG
修羅場がおもしろければそれでいいじゃないかおまいら。
さて、何事もなく修羅場は続いてゆく
永遠に続く殺意の連鎖
監禁し囁く恋慕の言葉
新しい念能力の名前みたいだ
お前らは素直に楽しめんのか?
今度はエー兄じゃなくてエー弟か…
とにかくGJ
スレが伸びてるから期待して開いたのにおまいらときたら・・・・
安西先生…僕もこんな風に嫉妬されてみたいです…
静かにしろい
この音が何度でも俺を生き返らせてくれる
もう俺には包丁しか見えねぇ
こんな泥棒猫に挟まれてどーする
修羅場こそが俺の生きる道なんだよ!
ここが一番住み心地の良い、修羅場心の宿な俺に
誰か、アニメ版GIFTの詳細を
そういうのはちゃんとエロゲーの方で聞こうぜ
若宮郁乃
ちゅっ……ちゅっ……
「太郎ちゃん……「郁乃お姉ちゃん」のおっぱいはおいしい?」
太郎ちゃんはこっくりとうなずいてわたくしのおっぱいを吸い立てています
ちゅうちゅうと音を立ててわたくしのおっぱいに一生懸命吸い付く姿にわたくしは得もいえぬ幸福を感じてしまいます
コクコクと喉を鳴らしてわたくしの母乳を飲み干していく太郎ちゃん
高校に上がった頃からわたくしの胸からは母乳が出るようになりました
これは若宮の女性の体質らしく最初は胸が張ってとても難儀したものですわ
「太郎ちゃん……あの本の「お姉ちゃん」は太郎ちゃんにこうしておっぱいを飲ませてあげることはできないのですわよ」
「あの本の「お姉ちゃん」はああして自分の恥ずかしい格好を大勢の人に見せるのがお仕事ですから太郎ちゃん一人のものにはならないのですわ」
「でも太郎ちゃんにはわたくしが、「郁乃お姉ちゃん」がいるのだからあっちの「お姉ちゃん」はいりませんわよね?」
わたくしのおっぱいを飲み干していく太郎ちゃんの頭を撫でながらわたくしは太郎ちゃんに優しく言い聞かせるのです
太郎ちゃんにこうしておっぱいを飲ませてあげられるのはわたくしだけ
太郎ちゃんをこうして甘えさせて上げられるのもわたくしだけ
太郎ちゃんのことを心から理解して上げられるのもわたくしだけ
太郎ちゃんが本当に必要としているのもわたくしだけ
太郎ちゃんも年頃ですもの…他所の女の人に興味がいくのも仕方が無いことですし、それは健全な男の子の証拠ですわ
でも他所の女は太郎ちゃんが優しいのにつけこんで自分の欲望を発散させようしているだけなのですわ
「太郎ちゃんはあの本の「お姉ちゃん」と「郁乃お姉ちゃん」のどっちのおっぱいがおいしいですか?」
私のおっぱいから顔をあげる太郎ちゃん。まぁ…そんな名残惜しそうな目をむけるなんて…
「あらあら…そんな顔をしなくても太郎ちゃんの満足するまでちゅうちゅうしてよろしいのですわよ。「郁乃お姉ちゃん」の
おっぱいは太郎ちゃんだけのものなのですからね」
太郎ちゃんの頭を優しく抱え込んで今度は逆のおっぱいを太郎ちゃんに含ませる
ちゅっ…ちゅっ…
ああ…太郎ちゃんが本当にわたくしの赤ちゃんなら良かったのに…
わたくしがおっぱいを与えなければ泣き出してしまう太郎ちゃん
わたくしがあやしてあげないとおねんねできない太郎ちゃん
わたくしの愛情がなければ生きていけない太郎ちゃん
ふふっ…いやですわわたくしったら
今もそうではありませんか
わたくしがいなければ太郎ちゃんはどこの馬の骨とも判らない女に誑かされて弄ばれた挙句に棄てられてしまうじゃありませんか
今日だってそうですわ
あんな誰の使い古しかもわからない女の写真が載った本を手に入れて劣情に悩まされた太郎ちゃん
可哀相にわたくしがいない寂しさをあんな汚らわしいモノで紛らわさなきゃいけないほど追い詰められていたなんて…
本当にごめんなさいね太郎ちゃん
あんなモノを太郎ちゃんが近づけてしまったのは太郎ちゃんが悪いんじゃありませんわ
悪いのは太郎ちゃんに寂しい思いをさせてしまったこのわたくしと…
ベッドの近くに放置されたモノに親の仇のような視線を向ける郁乃
あの物欲しげに盛りのついた女がいけないのですわ
後で市川に処分してもらいましょう
でも安心してくださいね太郎ちゃん
もう金輪際あんな汚らしい女を太郎ちゃんの視界には入れさせませんわ
自分の胸に吸い付く太郎をさらに強く抱きしめる
太郎ちゃんたらこんなに夢中になって…
やはり太郎ちゃんはまだまだ甘えさせてあげる人が必要なのですわ
太郎ちゃんの全てを受け入れて常に太郎ちゃんの傍にいてあげて太郎ちゃんの…―――
太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん
太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん
太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん
太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん太郎ちゃん
ふふっ
やはり太郎ちゃんにはわたくししかおりませんわ
そうですわよね
太郎ちゃん
第3話です
感想下さった方ありがとうございます
dion規制で丸1日書き込みできませんでした ・゚・(ノД`)・゚・
気力とネタがあったらまた投下します
(((((((゚д゚;)))))ガクガクブルブル
母性愛的な独占欲と嫉妬心は最高だぜヒャホーイヽ(゚∀゚)ノ!
Gj!
嫉妬ネタにもまだ新境地があったか・・・・・
母親ネタ苦手だけどこれはいい!!
母子ネタは余裕で守備範囲内だ
若返りママンの続きマダー?
忙しいって言ってたっけか
これはいい!
これは良い嫉妬ですねw実際に泥棒ヌコが近づいてきた時を想像すると激しくwktk
この子母親じゃなくね?
>高校に上がった頃からわたくしの胸からは母乳が出るようになりました
>これは若宮の女性の体質らしく最初は胸が張ってとても難儀したものですわ
>>328 確かにそうだが、いい嫉妬だ。GJ!
>>328 それはわかってる
思わず母子ネタも好きだとレスしてまっただけだよ
OKすまない。
嫉妬話にしては、お嬢様が今のところスタートダッシュしまくりだがこれからどうなるのか楽しみだ。
「ねえ、あの人とどういう関係なの?」
「部長と部員。」
「じゃあなんでこんな遅くまで一緒にいたの?」
「僕が部室で寝過ごしたから。本当は今日、部活は休みだったんだ。」
「じゃあなんであんなに仲がよかったの?」
「同じ部活なんだから、仲が悪いよりはいいだろ?」
あれから秋乃葉先輩と途中まで帰り、今に至る。先輩が居た間はずっとだまっていたが、二人きりになった途端、沙恵の質問責めが始まった。
だめだダメだ。ここで真面目に答えちゃうからブラコンが治らないんだ。少し 厳しく突き放してやらないと。
「そんなの……沙恵には関係ないだろ!僕が誰と仲良くなったって!」
「ひぅ!」
振り向きざまにそう叫んだ途端、沙恵はビクッと体を竦めて、まるで叱られた子犬のような目で僕を見つめてくる。
いつもならごめんて謝るところだけど、今そんなことしたら意味がなくなる。厳しくいかないと。
そう心に決め、何もいわずに振り返り、家へと向かって歩き出す。沙恵は何も言わず、ただひたすら後ろを歩いてついてきている。顔は見えないが、恐らく……
「……さい…」
「………」
「ごめ……さい…」
「…………」
「ごめんなさい……お兄ちゃん…」
声からして泣いているのだろう。僕の服の裾を掴んでいる。ぎゅうぎゅうと、皺がついてしまいそうなほど強く…
「ごめんなさい……きつく、いっちゃって……あやまる、から…ひぐ…あやまる、から……ねえ、お兄ちゃん…ひっく……こっち、むいて……」
「………」
僕はそれでも振り返ることもなく、ただもくもくと歩いた。いつもなら謝って仲良く帰るのだが、さすがに今日はだめだ。
そのまま無言で帰宅。沙恵はずっとうつむいたまま部屋へと戻った。このまま沙恵に嫌われてしまえば兄離れも楽になるだろう。
夕飯もいつもなら沙恵が作ってくれるのだが、さすがに今日はそうもいかないか。カップラーメンという質素な夕飯を済ませ、早々と風呂に入った。
なんだか疲れたので、部屋を真っ暗にしてベットで寝ていると、一階でガタガタと物音がした。風呂に入っているのだろう。ということは……
カチャ
そっと部屋の鍵を閉めた。これが他の人に言えない秘密………
そう、毎晩沙恵は風呂に入り終わると、僕の部屋にやって来て一緒に寝るのだ。さすがにそれはまずい。と思ったのはつい最近。
そんな僕の認識もまずいんだろうか。とにかく、殴られようが罵られようが構わない。沙恵が僕から離れるのはちょっと寂しいかもしれないが、これもお互いのためだ。
「ああー、もう考えるのやめ。こういうときは寝ちゃうのに限る。」
バサッと布団を頭からかぶり、枕に顔をうずめて寝ようとする………が、なんでか。こういう時に限って目が冴えてしまう。早く寝ないと……
ギシギシ
「っ!」
来た……沙恵が階段をのぼってくる足音だ。今まではなんとも感じなかったのに、なんでだろう。今日に限ってやたらと恐怖を感じる。
ガチャガチャ
沙恵がノブを回す。だが生憎、鍵がかかっているため開きはしない。
トントン
「お、お兄ちゃん?」
それを不思議に思ったのか、遠慮気味なノックとともに呼び掛けてくる。だけど返事はしちゃいけない。寝たフりをしないと。
トントン
トントン……
「お兄ちゃん……お兄ちゃん!?ねえ、開けて…よぉ……」
ガチャガチャガチャ!
ノブが壊れてしまうんじゃないかと思うほど、激しく回す。
「ねえ…お兄ちゃん……なんで、開けてくれないの?……いれてよ……一緒に、ねたいよ……お兄ちゃん……」
ドンドン!
声は弱まっているものの、未だノックの音は強いままだ。僕は戦慄を感じながらも、耳をふさいで完全に無視する。だが沙恵の責めはまだ続く。
「ねえっ!今日の帰りのことを怒ってるの!?あんな風にいつもしつこく聞くのが嫌だったの?……だったら、もうしないし……あやまるから…あやまるから……
お兄ちゃんが知らないところで知らない人と仲良くなるのは………すごい嫌だけど………お兄ちゃんがそれを問い詰められるのが嫌だって言うなら、もうしないよ………だか、ら……ねぇ…ねぇ…ねぇ!!
いつもみたいに……優しく……仲良く、しよおよぉ………私達、双子なんだから………ずっと、ずっと一緒なんだよ………」
トントン…トントン……
それからどれほどたったか。沙恵のドアをノックする音が子守歌のようになり、僕はゆっくりと、深い眠りに落ちていった。
・
・
・
・
・
・
・
「ん……う…」
真夜中……つい目覚めてしまった。というより、もよおしてしまったのだ。時計を見るともう四時近くだった。
余談だが、この辺りの時間帯で起きるのがとても勿体ないと思うのは僕だけだろうか。夜更かしはよくても早起きは許せない。そんな性格だからだろうか。
「ふぁ……はやくいってこよ…」
なんの躊躇も無く部屋のドアを開けた瞬間……僕の眠気は一気に吹き飛んだ…
「あぁ……お兄ちゃん……開けてくれたぁ………」
幻覚かと思った。ベットに潜る前が十時だったはず。そして今は四時……沙恵は……僕の部屋のドアの前で、体育座りをしていたのだ。
そしてドアを開けた僕の見て、その目の下にクマを作った顔で………
「お兄ちゃん…」
ほほ笑んだ………
「やっぱり、お兄ちゃんは優しいね。どんなに怒って喧嘩して、口を聞いてくれなくなっても、最後はこうやって私を心配してくれるんだもん……
そんなお兄ちゃんがね……私は……大好き。」
そう言って抱き付いてくる沙恵。その瞬間僕は思った……並大抵のことでは、沙恵を突き放せないと。
こりゃあ近年稀に見るキモウトだぜぇ…
この独占欲が爆発して((( ;゚Д゚)))ガクブル
起きたら部屋の前で体育座りしてるキモウトw
これはかなりの戦闘力ですね
私の戦闘力は五十三万です
投下します
夜、月明かりの下で巨大な長柄武器を振るう人影がひとつ。
それはギガンティスグレイブを振るうクリスの姿。
生死の淵を彷徨うほどの大怪我も完治し
振るう武器捌きは完全に以前の勢いを取り戻してるように――。
いや、ダメージの名残は見えないが、だがどこかその動きにいつもの冴えが無いように、
迷いがあるかのように見える。
振るう表情もどこか辛そうに、或いは苛だってる様にすら見える。
(クッ……! 何で……! 何で気持がこんなに波立つんだ!)
怪我も完治したので、壊れた武器の調達なども兼ねて一行は大きめの町にやってき、
そしてそのまま宿もその町で取った。
ちなみに宿の手配はクリスが行い部屋割りはセツナとリオが同じ部屋である。
そう。 晴れて恋人同士になった二人により親密になってほしいというクリスの配慮。
クリスが姉と呼び慕う女性――セツナ。
そして兄のように慕い、初恋の男性でもあるリオ。
クリスにとって誰よりも大好きで大切な二人が結ばれる。 身も心も。
二人が結ばれる事はクリスにとっては言ってみれば自分では叶えられぬ夢を託すようなもの。
そう。 クリスは自分の顔に残るあまりに大きな傷跡故に女である事を棄てようと……。
女としての夢――大好きなヒトと結ばれる幸せを夢見る事を諦めていた。
だから其の夢を託したのだ。 クリスが大好きな男性――リオを、
せめて大好きな姉と慕う女性が射止めてくれることを。
其の夢が叶い、そして今夜確硬たるものになる。
全ては自分の願いどおり。 だから胸のうちは幸せな気持で満たされて然るべき。
それなのに……。
(なんで! なんで! 何でこんなに気持が乱れるんだ……!!)
上段から打ち下ろされたギガンティスグレイブの矛先が地を揺さぶるような音を立て、
深々と地面にめり込む。
「苦しいよ……。 姉さん……。 リオにいさん……)
月の光に照らされ一筋の雫がクリスの瞳に、頬に光っていた。
<div align="center">+ + + +<div align="left">
「リオ……。 あぁ……っ。 んん……っ。 はっ、あぁ……ん」
リオの指が私の体に触れる度に、なぞる度に私の口から声が漏れる。
まるで女性のように繊細で綺麗なリオの掌と指先。
実際、武器を握り戦ってきてマメやタコで固くなった私の掌と比べると
どっちが女でどっちが男だか分からないほど。
そんな繊細で優しい指先が私の体に触れるたびに私は幸せに身を震わせ歓喜の声を上げる。
心を通わせ、躯を重ね、互いの温もりを交わす。 大好きな愛しきヒトと――。
夢にまで思い描いた幸せに満ち溢れた一時。
幾度となく想像し、そして時に一人自分で慰めた時もあった。
そして遂に念願叶って今こうして肌を重ねてる。 それは思い描いてた以上の幸せと快感だった。
リオの甘い囁きが、優しい指先が、心地良い匂いが、其の全てが私の胸を幸せで満たしてくれる。
私にとってリオが初めての男の子であるようにリオにとっても私が始めて抱く女。
だから最初どこかぎこちなく緊張してて――。
リオは私の裸に――初めて目の当たりにする女の躯に、手に触れる度にその感触にどぎまぎしてた。
だから時に気持ちが早って乱暴がちになりそうになったりするのも仕方ない事。
でもリオはそんな気持を抑えあくまでも優しく接してくれようとしてくれる。
それが……たまらなく嬉しかった。
リオに出会うまで私にとって男は嫌悪の対象でしかなかった。
生まれる前の私と私を身ごもった母を捨てた顔も知らない父親に当たる男。
かろうじて純潔こそ失わなかったが私を暴行しようとしたけだものの様な男。
その時私の危険を見捨てわが身可愛さに逃げた当時付き合っていた男。
今まで幾度となく男に裏切られ傷つけられてきた――。
でも、そんな過去の傷も苦い思い出も溶けていく。
リオの繊細な指先や、唇の感触。 それはとても優しくて。
その優しい感触に私の心は癒され満たされていった。
だから心の底から思える。
リオが私の初めてで――、リオに私の始めてを奉げる事が出来ることが本当に嬉しい。
まるで世界中の幸せをこの手に独り占めしてるような、そんな無上の幸福感に満たされてた。
やがてリオが堪えきれ無そうに切な気な声を洩らす。
「セツナ……」
暗がりでも分かる熱っぽい視線。
ああ、遂に私達は一つになるんだ。 遂に夢にまで見た瞬間が。
私は万感の思いと期待を込めて「来て――」と、そう言葉を紡ごうと――。
そう言おうと思ったのに言葉が出てこなかった。
「セツナ……?」
言葉を紡げずにいる私にリオが心配そうな視線を投げかけてた。
「あの……、無理しなくて良いのですよ? 女性にとってはとても覚悟のいる事だと聞きます。
だから……若し不安や恐れがあるのでしたら遠慮無く言ってください。 私なら……」
「ううん。 そうじゃないの。 リオ、私はあなたの事が誰よりも好き。 心の底から愛してる。
そんな大好きなあなたに抱かれる事は私にとってもそれはとても幸せな事」
そう。 紛れも無く今この瞬間は私にとって何よりも幸せなだった。
確かに恐れが全く無いと言えば嘘になる。
リオに出会うまで男嫌いできた私でも性に関する知識は一通りある。
だから初めての――破瓜に伴う痛みが尋常でない事も聞いている。 だけど――。
そう。 それでも未知なる痛みに対する恐れ以上に一つになれる事への喜びはもっと大きかった。
私の胸のうちは其の喜びで満たされ幸せで一杯だった。
それなのに、そんな胸一杯の幸せなのにどこか小さな違和感があった。
何だろうこの違和感。
幸せで一杯のはずなのに。 それなのにこの最高の状況で何故違和感を感じるのかしら。
まるで心と言う器に小さなひびが入っていて、そのひびから折角の幸福感が漏れている様な、
そんな違和感――。
一体この違和感の正体は……、いや分かっている。
そう。とっくに気が付いていた。 でもそれを口にしてしまえば引かれるかも、
変な女だと思われてしまうかも。
だけど――。 でもそれでも言わなければもっと後悔してしまうような気がする。
こんなこと言わない方が良いのだろう。 余計な事嘴って折角掴んだリオの心が、いや――。
信じよう。 きっとリオなら分かってくれる。 私のこの気持。
「ねぇ……、リオ。 聞いて欲しい事があるの」
私は意を決して口を開いた。
To be continued...
ついにセツナ派だったクリスが立ち上がる時が来たのか
>>336 これはとてもいいキモウトですね(*゚∀゚)=3ハァハァ
キ、キモウトイイ(*´Д`)ハァハァ
こ、これは…このフラグはまさか!?
…まじめなリオ君がどうでるかすごく楽しみだ。
自分にもこんなキモウトがいたらなあ、と思いつつ。
投下いきます。
ホテルにて、エルと智が一夜を共にした翌日。
目覚めて智がどこにもいないことを悟った時、エルは一気に恐慌状態に陥った。
狂ったように少年の名を叫びながら、荒らすように部屋中を駆けずりまわった。
カーテンを引き裂き、クローゼットを蝶番が外れるほど乱暴に開き、中の空間を探す。
浴室、ベッド下、ベランダと、広くない部屋のあらゆる場所を暴きまわる。
そんなことをしても智が見つかるはずないと分かっているのに、身体を動かさずにはいられなかった。
じっとしていたら、孤独で気がふれてしまいそうだったから。
愛する人の温もりというものを知ってしまった今、それなしで生きていくなど考えられない。
もしベット脇の電気スタンドに置かれたメモに気づかなかったら、本当に狂ってしまっていたかもしれない。
だから、暴れまわる拍子で落ちたメモに気づいたのは、本当に幸運だったと言えるだろう。
『一旦自宅に帰ります。すぐに戻ります。
一応、携帯電話の番号を書いておきます。 ○○○―△△△△―◇◇◇◇』
用件だけを伝えた、情緒も何もあったものではない短文のメモ。
それでもエルは、自分の中の恐怖が見る見る収まっていくのを感じた。
深呼吸して落ち着きを取り戻し、改めてメモを読んでみる。
急いで書いたのか、少々乱雑に書きなぐられた字。
急ぐ理由があるとすれば、『夜通し留守にしたことで家族を心配させた』といったところだろう。
周りを気遣おうとするところに智らしさが見受けられ、エルは微笑ましさを感じる。
(サトシくんらしいって・・・そういうのが分かるんだ、私。ふふ、何か嬉しいかも)
出逢って半日も経ってない相手なのに、まるでずっと連れ添ってきた相手のように感じる。
そう思えるだけのものを、智はエルに見せてくれた。
『泣かないで』
たった一言。音にさえならなかった小さな呟き。
今や、それがエルにとっての全てだ。
灰色だった自分の世界が色づき輝いているのをエルは感じる。
昨夜までは何も感じなかったホテルの部屋でさえ、新鮮な印象を与えてきた。
独りじゃないと、共に歩む人がいると思うだけで、景色というのはこうも変わるのかとしみじみ思う。
湧き上がる温かい気持ちを胸に、エルはもう一度メモに目を落とした。
(すぐ戻るってことだけど・・・いつ戻ってくるのかしら?)
時計を見ると、午前11時を回ったところだった。
取りあえず起きて顔を洗い、シャワーを浴び、着替え、性交の痕が激しいベッドシーツを取り替える。
そうこうしているうちに12時になった。智はまだ戻らない。
「・・・・・・・・・・・・」
何となく不安になってくる。
考えてみると、智の家の場所も、距離も、出て行った時間も分からない。情報があまりに無い。
智を疑うわけではないが、すぐ戻るの『すぐ』がどの程度の時間なのかも分からないのだ。
不意に思いつく。
もしかしたら、学校に行っているのかもしれない。
これまでの日常との決別の為に、色々とすることがあるのかもしれない。
智はエルの正体を知り、殺されかけ、それでも彼女を拒まず、あまつさえ戻ると言った。
その『戻る』が意味するのは、エルを受け入れるということ。つまり、人間としての生を捨てることだ。
きっと色々思うところがあるのだろう。
人間時代にいい思い出が全く無いエルには分からない感傷だが、智にとっては大切なことなのかもしれない。
(それでもサトシくんは・・・・・・私の元に戻ると言った・・・)
ならば信じよう。智を、そして彼を信じようとする自分自身を。
いつ智が来てもいいようにと明るい表情に切り替えると、エルはベッドに腰掛けてこの先訪れるであろう明るい未来に思いを馳せた。
・
・
・
・
―――現在、午後5時。カーテン越しに赤い日が射し、エルにとっては動きやすくなってきた時間。
学校のことにはあまり詳しくないが、もう終わっているはずの頃合いだ。
しかし、智はまだ現れない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
備え付けの電話に手が伸びるが、何とか自制した。
携帯番号を残したのはあくまで一応のこと。智は戻ると言ったのだ。
電話を掛けたら、彼のことを信じていないように取られるかもしれない。
そんなことを智が気にするはずないと分かっていても、長年の孤独に冒されすぎたエルの心は物怖じしてしまう。
「早く来てよ、サトシ・・・」
時間感覚の麻痺したここ数十年とは比べ物にならない、長い数時間が幕を開けた。
・
・
・
・
・
―――午後9時。夜の帳が完全に下りた、吸血鬼の時間。
智は未だ現れず、エルはベッドで膝を抱えていた。
(サトシくん・・・。ごめんね、もう限界だよ・・・)
もっと早くこうすればよかった。
そう思いながら、メモに書かれた数字をダイヤルしていく。
呼び出しコール、待つこと20回。
電話を持つ手が震えだした。
更に待つこと、計50回。
心臓が嫌なリズムで早鐘を打ち出した。
そして、100回まで数えたところで、エルの手から受話器が零れ落ちた。
「いやっ・・・」
智が来ない。連絡もつかない。
胸の温かさが、急激に寒さに侵されていく。
そこに浮かぶ、ほんの僅かな暗き疑心。
(また・・・裏切られたの?)
一瞬浮かんだ考えを、エルはすぐに打ち消す。だったらあんなメモを残す意味はない。
それに、智という人物を考えてもそうだ。真っ直ぐな性格で、吸血鬼の衝動を押さえ込む心の強さを持つ男。
そんな彼が、嘘をついたり約束を破ることをよしとするとは考え難い。
「出てよ・・・出てよっ・・・! 待ってるのに、私待ってるのにっ・・・!」
藁にも縋る思いで、エルは智の携帯へのコールを繰り返す。
幾度掛けても応えは無く、涙を流し、くじけそうな心を叱咤してまた電話を掛ける。
結局、泣き疲れたエルが受話器を手にしたまま意識を落とすまで、智が電話に出ることは無く。
最後にエルの脳裏に浮かんだのは、応えない少年への恨み言だった。
泣かないで。
そう、言ったくせに。
(私がこんなに泣いているのに・・・どうして泣き止ませにきてくれないの・・・?)
・
・
・
・
・
―――電話が繋がったのは、それから2日後のことだった。
「○○○―△△△△―◇◇◇◇・・・・・・○○○―△△△△―◇◇◇◇・・・」
ブツブツと呟くのは智の携帯番号。
何百回も掛け、もう出ないと分かっていて、でもそれ以外に縋るものがなくて。
今日もエルは電話を繰り返していた。
瞳は虚ろで何も見ていないが、指先が押す番号は智の携帯のものだ。
ボタンの位置を覚えるほどに、半ば惰性で繰り返される作業。
エルは自身の心を完全に麻痺させていた。智が出ないことへの絶望から心を守るために。
だから、呼び出し音が数回鳴ったところで突如途切れた時、彼女は事態を理解するのに数秒を要した。
コールが自分から途切れたことは一度も無い。電話を切るのはいつもエルからだ。
つまり、今の状況が意味するのは―――。
(繋がった・・・? ・・・繋がった! サトシ君に繋がったっ!!)
この先に彼がいる! 智がいる!
瞳が光を取り戻し、意識が急激に冴えてくる。
あまりに急すぎて、思わず眩暈を起こしてしまったほど。
泣いたのは勿論、こんな風に眩暈を起こすのさえ、エルにとっては数十年ぶりのことだ。
智と出逢ってからというもの、忘れていた感覚がどんどん蘇ってくる。
言いたいことがありすぎて纏まらない。
なじりたい。甘えたい。仕方ないなぁと、大人の余裕を見せるように笑いたい。
どれも本心だが、今言いたいことはどれも違う。最優先で言わなければならない言葉がある。
(会いたい、会いたいよ・・・! もう、片時だって離れたくない・・・!)
少しくらい放っておいても平気とか、思わないでほしい。
自分は、自分でも驚くほど弱かった。あなたが傍に居てくれないと、心さえ保てない。
もう、捨て去ることになる過去なんてどうでもいいでしょう? それより私を、未来を見て。
「サトッ・・・サトシくん!? 私よ、エルよ! ねえ、早く戻って来てっ。ずっと待ってるのよ・・・!」
勢い込んで口を開くも、声が掠れて言葉が途切れる。
もどかしげに唾を飲むと、エルは一気にまくし立てた。
返事はなく、沈黙が横たわる。
自分の勢いに気圧されたのだろうかと、今度は優しく少年の名を呼ぼうとして。
『誰ですか、あなた?』
知らない女の声が、返ってきた。
(えっ・・・あれ・・・?)
携帯電話に掛けたのに、どうして智以外の人間が出るのか。
予想外のことに混乱に陥りかけたが、すぐにありそうな答えが思い浮かんだ。
(きっと家族の人ね。どこかに携帯が放ってあったのを見つけてくれたんだわ)
母親にしては若すぎるし、きっと妹だろう。
今度、ゆっくりと家族の話などを聞いてみるのもいいかもしれない。
それより智だ。
連絡先として携帯番号を教えておきながら、肝心の携帯を持ち歩いてないとはどういう了見なのか。
(これは、普通に怒ってもいいところだよね。うん、怒っちゃおう)
真面目でお人よしな智のことだ、きっと必死になって謝ってくるだろう。
あんまり強く怒るのも可哀想だが、ある程度の誠意は見せてもらわないと、とエルは思う。
(一つ、何か私の言うことを聞いてくれたら許してあげるのもいいかもね。
ふふっ、何をしてもらおっかな・・・)
つい含み笑いが漏れそうになるが、受話器を持ったままなのを思い出して何とか堪える。
考えるのは後だ。家族なら彼の行方を知っているはず。これで智と連絡がつくのだ。
「すみません。私、サトシくんの知り合いなんですけど、連絡を取れないでしょうか?
エルって言えば分かりますから」
先の取り乱した様については強引にスルーすることにして、当たり障りの無い言葉で挨拶しなおす。
多少不審に思われたかもしれないが、智に繋がる何かが得られると期待して。
そしてその期待通り、答えは返ってきた。
だが―――。
『智ちゃんは出られません。すごく具合が悪いんです』
返ってきたのは冷たい拒絶。
そしてそれ以上に、聞き捨てならない言葉。
(サトシ・・・ちゃん? どうしてこんな呼び方? 妹さんじゃないの?
ううん、それよりっ・・・!)
「具合が悪いって・・・! サトシくん、重い病気か何かなの!?」
穏やかでない返答に取り繕った丁寧語が乱れるが、気にする余裕も無い。
食って掛かるような激しい口調になるが、電話の声は気圧されるどころか冷たさを増した様子で返してきた。
『ええ、そうです。悪い魔物を呼び寄せちゃう病気です。
あなたみたいに馴れ馴れしく呼ぶ人がいると、ずぅっと治らないんです。
・・・あなたのせいね、あの夜智ちゃんがおかしかったのは。
あの先輩だけでも厄介なのに、どうして・・・』
険のある返答と、吐き捨てるような独白。
電話の相手が何者かは分からないが、彼女にとってエルは不愉快な存在らしい。
そして、それはエルにとっても同じこと。
(同族嫌悪・・・ってやつかしら)
同じ想いを抱く者同士ゆえの嫌悪感。そう分かってしまうことが、殊更に彼女を苛立たせる。
ならば分からせてやろう。自分と智の絆は、ただの人間には入り込めないものなのだと。
その怒りと決意が、エルに僅かな隙を生んだ。
言葉を放つ寸前、電話の声が割り込んでくる。
その瞬間、勝負は決した。
『智ちゃんは私と居るよ。もう離れないって、もう私しか見ないって約束してくれたの。
昨日も今日も、一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで寝たんだから。
それに、私が寂しくて泣いちゃうと、ぎゅって抱きしめてくれて、私が気が付くまでずっとそうしてくれるの。
明日も明後日もその先も、ずっとそう。ずぅっとずぅーっとそうなの。
だって、私は―――』
自信と優越感に満ちた女の声。紡がれる信じられない言葉。
ありえないと思う心と、女の口調は嘘を言っているものでないという冷静な推測が互角にせめぎあう。
そこに一石を投じたのは、吸血鬼となって肥大化した鋭い直感。
身体の中の血が訴えてくる、正しい道筋。
第六感とも言うべきそれが賛同したのは後者―――エルにとって信じたくない方の意見だった。
(やめて・・・やめてよ・・・。
サトシくんは私の元に帰って来るのに、信じてるのに、否定しないでよっ・・・!)
大きく息を吸う音が聞こえた。女の声が、決定的な言葉を紡ごうとしている。
半ば本能的に、エルは感覚を塞いだ。
聞きたくないから聞かなかった。そして聞こえなかった。
だが、吸血鬼の直感ゆえか、ただ純粋に女の勘か。
『私は智ちゃんの―――――――――だから』
聞こえなくとも分かってしまった。認識してしまった。
だから彼女は自我をも手放す。
認めたくない言葉から逃れる、ただそれだけのために。
電話の女は優越感を滲ませた声で、憑かれたように同じ台詞を繰り返している。
だがその言葉を聞くべきエルの耳には、もはや雑音の羅列としてしか届かないのだった。
今回はここまで。放置中のエル・前編でした。うーん、長い割に出来も進展もいまいち・・・。
次回で15話分の放置を取り戻すまで、VS綸音はもうちょっとお待ちください。
読み返してみると、時間軸や視点が移動することが多い作品になってますね。
ロボさんの作品みたいに、誰の視点かを書くようにすればよかったです・・・。
まあ今更なので、最後までこのままでいこうと思います。
ちなみに、エルからの電話の描写が千早の監禁中に無かったのは、一重に私のミスです。申し訳ありません。
・・・てなわけで、電話シーン前後の智と千早の会話等については脳内補完でお願いします(ぇ
GJ!
エルの暴走ぶりがイイ
このときは勝ち誇ってたんだなぁ千早
三日天下だったけど
投下します
器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑す。
流と呼ばれる打刀が、心を持ち、人の形に変化できるようになったのはいつからか。
随分と昔のことのようでもあるし、つい最近とも思えてしまう。
流自身は、いつからの自分が自分なのかなんて、全く気にしていない。
憶えているのは、道場の風景。
弟子達が稽古を受け、強くなっていく様や。
師が自己を研鑽していく様を。
流は、長い間、眺めていた。
付喪神は、その本体に蓄積されし想念から意志を持つ。
染みついた想念は個体によってバラバラで、同じ道具でも全く別の心を持つこともざらである。
流の場合は、直接使われることがなく、ただずっと飾り付けられていたので。
――強くなりたい。
――強くしてやりたい。
道場で自他の技を磨き続ける者達の想念が、蓄積していた。
故に、流は“強くなりたい”という気持ちに共感しやすく、
そう思う者を“強くしてやりたい”と考える。
流に積み重ねられたのは百年余にも渡る、技の向上への試行錯誤。
一度も“刀として”使われたことがないのに、技術はこれ以上ないくらい詰め込まれている。
それは、とても歪なこと。
歪な有り様は、その魂をも歪めてしまう。
故に、流は付喪神としては“問題児”だった。
「――私に指図するな!」
「ふん、弱い奴の言うことなんか聞く気ないからね!」
「料理? 刀にそんなことやらせるな!」
何かあれば文句ばかり。
ずっと祭り上げられていたからか、自分は他の付喪神とは違う、特別なもの、と思い込んでいた。
ぎゃあぎゃあ喚く新参者は、他の付喪神には失笑の的であっただろう。
ただ、誰もそれを表立って非難しなかったのは、
――流が、こと武術においてのみ、かなりの腕前を誇っていたからだろう。
怪異の優れた妖怪なら兎も角、研修に来ているような成り立ての付喪神では流に対抗するのは難しい。
郁夫の両親――浦辺家の当代も、知人の道場から預かった奉納刀なので強く当たれず。
結果、まるで餓鬼大将のように、流はふんぞり返っていた。
郁夫と出会ったのは、そんなとき。
分家へ修業に出ていたため、流が来てからの数ヶ月は顔を合わせていなかった。
そのころの郁夫はまだ小学生で、あどけなさも多分に残っていた。
郁夫が家に帰ってきて、最初に目にしたのは、意味もなく強がってる流だった。
両親から状況を聞いていたため、郁夫はそれほど驚くこともなく。
とりあえず顔合わせを済ませ、その場は収まろうとしたのだが。
流の尊大な態度に少しばかり苛立った郁夫は。
修行を終えたばかりで、少なからず気が強くなっていたので。
――お前、チワワみたいだな。
――きゃんきゃん吠えて、疲れないのか?
などと、真っ正面から挑発していた。
そして。
郁夫は半殺しにされた。
退魔の術を学んでいたとはいえ、郁夫は当時小学生である。
単純な取っ組み合いでは、流の方が圧倒的に強かった。
しかも当時の流は、精一杯お山の大将を気取っていて、手加減する心の余裕など皆無だった。
郁夫は全身の骨を砕かれて。
最後の最後で、
瞳術を、使ってしまった。
命すら危ぶまれていた状況だったので、全力で。
浦辺の家に伝わる秘奥を、変化し始めたばかりの幼い付喪神に、叩き込んでいた。
郁夫自身が未熟だったこともあり。
また、こんな子どもが、と流は完全に油断していた。
結果、加減など皆無な眼力に晒され、流は半ば消滅しかけた。
最終的には。
郁夫も流も生死の境を彷徨う、研修制度始まって以来の大惨事となってしまった。
そして、再び顔を合わせたときから。
流の態度は、変化し始めていた。
回復に努めていた間は、自分を消しかけた童に対して恨み辛みを抱いていたが。
再び顔を合わせて、郁夫の瞳を見た瞬間。
流は、今までの流では、いられなくなっていた。
その瞳に消されかけた、という恐怖と。
瞳そのものの、吸い込まれそうな深さに。
どきどきした。
以後、まともに顔を合わせることができず。
会うたびに顔を真っ赤にして、そっぽを向いて会話していた。
郁夫本人に「もう瞳術はかけねーよ。悪かったって」と言われることも多々あったが。
慣れるまで、流は郁夫と顔を合わせることすら困難だった。
そんな状態だから当然、前のように強がるのも難しくなり。
いつしか流は、浦辺家の中で適応していった。
それと同時に。
郁夫に対して、暖かい気持ちも覚えていった。
「――べ、別に手伝わないとは言ってないでしょ!」
「いや、でもお前の今日の仕事は洗濯だろ? 無理に付き合わせる気はないって」
「わ、私だってお菓子作りに興味あるのよ! わ、悪い!?」
「……おはよう、ございます」
「!? ……変なもん食ったのか?」
「私が敬語使って何が悪いのよ! これでも、その、研修生なんだから……」
「そっか。流は偉いなあ。頭を撫でてやろう」
「い、いらないわよ! ……あ、え、行っちゃうの……?」
「剣を教えて欲しい?」
「ああ。流って達人並みなんだろ? よければ教えてくれよ」
「わ、私としては……その……構いませんが」
「よっし! 手加減抜きで頼むぜ! 会った頃みたいに半殺しは勘弁だけど」
「…………それを、言わないでください」
後にして思えば。
きっと、初めて瞳術をかけられた瞬間。
あのときから、流は郁夫の瞳に惚れていた。
自分は郁夫の物なのだと、強く思うようになっていた。
それから五年かけて培われた関係は。
きっと、軽いものではなく。
両者にとって、とても大事なものなのだと、流は信じていた。
――そう。5年前からずっと、郁夫のことを想っていた。
その想いは、他の付喪神に負ける気など欠片もなく。
付喪神だけでなく、人間相手だって負けない自信が、あった。
郁夫のためなら何でもできる。
道理や禁忌など知ったことか。
何よりも勝るのは、5年前に見せられた、あの瞳。
あれを独占できるのであれば、他に何を捨てても構わない。
郁夫に剣術を教える時間は、流にとっては至福の時だった。
しかし、指導には少なからず遠慮が入ってしまい、思い切って技を伝えられない。
本当は郁夫と心置きなく訓練をしたかった。
自分の全てを郁夫に伝え、これ以上ないくらい強くしてあげたかった。
しかし、最初に半殺しにしてしまった記憶が邪魔をして、今ひとつ指導に熱が入らない。
あれさえなければ、きっと郁夫と自分はこれ以上ないくらい仲良くなれていたはず。
そう思うたび、過去の自分をへし折ってしまいたくなる。
でも、そんなことは、時間が解決してくれるはずだった。
ゆっくりと、ゆっくりと、拗れたものを解していき、
並ぶ者がいないくらいの、理想の相棒同士になっていたはず。
なのに。
最近になって、五月蠅い虫が現れた。
包丁の付喪神、茅女。
無駄に長生きし、怪異だけ突出している付喪神。
確かにその能力は特別だが、そんなものに、自分と郁夫の関係は揺るがない。
そう、流は信じていた。
――年増が醜く擦り寄ろうとも、郁夫様は歯牙にもかけないはず。
あんな輩は、郁夫の道具には相応しくない。
はずなのに。
何故か郁夫は彼女を気にかけている。
殺されかけたにもかかわらず、そのお人好しさには呆れ返る。
初めのうちは、心配していなかった。
あんな包丁、研修生として気遣っているだけで、それ以上の筈がないと。
しかし、茅女が浦辺家に溶け込んでいくにつれ、その自信は、確かなものではなくなっていった。
――私は、ひょっとしたら、要らないのかもしれない。
冷静になって考えてみれば。
自分も茅女と同じように、最初会ったときに酷いことをしているのだ。
それを棚に上げて、何の根拠もない確信を必死に抱きしめて。
徐々に大きくなっていく不安に、耐えていた。
実際、茅女の持つ技術は、流ほどではないものの、教える分に不足はない。
それに何より、茅女は、強い。
教わる者の心理として、何より強い者に教わる方が心強いに違いない。
考えれば考えるほど。
凍り付いてしまいそうな恐怖に連日晒されて。
それでも、郁夫の一番を諦めきれなくて。
郁夫がどう思っているのか、知りたかった。
やっぱり自分を一番と思ってくれているのか。
それとも、包丁に負けたなまくら刀なんて不要と思っているのか。
後者の筈がないと何度自分に言い聞かせても。
弱虫の心はそれに頷かず、ただひたすら、震えて怯えるばかりだった。
だから。
郁夫は絶対に自分を見捨てない、という確信が欲しかった。
郁夫にとって自分は大事な物なのだという、証拠が欲しかった。
そこで思い出したのが、茅女の言葉。
初めて浦辺家に訪れて、とんでもない事件を起こした際に。
茅女は、黒間橘音の体を操りながら、こう言っていた。
『操ってみるとわかるものでな、この娘、この家――とくにヌシに忠誠を誓ってるようでの』
――操ってみると、わかる。
確かに、持ち手と自身の意志を直接繋ぐのだから、相手の考えていることも丸分かりになるだろう。
このまま悶々とし続けるより。
郁夫が何を望んでいるかを知った方がいいのかもしれない。
武器として一番が無理なら、他の一番を目指せばいい。
確かに刀として郁夫の側にずっといるのは、とろけそうなくらい魅力的だが。
それ以外で一番になるのも――悪くない。
そう。
たとえば、
許されるのなら、
人として、郁夫の一番を目指すのも。
どうするかは、郁夫の心次第だった。
道具として流を一番に思ってくれているのなら、それで良し。
でなければ、他の道を探ればいい。
大事なのは、郁夫とずっと一緒にいること。
刀の器に収まりきれないくらいの、溢れる想い。
それを受け止めてもらうのが、一番重要なのだから。
だから、確かめてみることにした。
邪魔の入らないよう、誰も来なさそうな場所に郁夫を連れ込んで。
郁夫の心を、確かめようと、した。
そして、郁夫の体を操って、心と心を繋げようとした。
瞬間。
付喪神として、持ち手を直接操るのが初めてだった流は。
見様見真似――というよりは、完全な手探り状態で。
郁夫と自分の心と心を、ダイレクトに、繋げてしまった。
結果、流の溢れんばかりの郁夫への想いが。
抑えつけられていた濁流の如く、郁夫に向かって流れ込んだ。
己が武器であることすら放棄させてしまう、膨大な流の想い。
精神制御の訓練を受けていた郁夫でも、悪意ではなく、純粋な好意の波なんて初めてだったので。
それは、耐えきれるレベルを明らかに逸脱していたため。
郁夫は、発狂した。
手に持つ流を滅茶苦茶に振り回し、
心が繋がっているため手放すこともできず、
兎に角楽になりたかった郁夫は、
躊躇無く、流の刀身を、己の胸に、突き立てようとした。
咄嗟に、郁夫の手元を操って、急所を外すことができたのは、奇跡以外の何物でもなかった。
それでも、突き刺す行動そのものを止めるのは難しく。
ずぶり、と。
流の刀身が、郁夫の胸に沈んでいった。
切先が胸の皮膚と筋肉を切り裂き。
肋骨の合間をすり抜けて。
奇跡的に、動脈や肺臓は傷つけず。
そのまま、半ばまで押し込められた。
隙間から鮮血が溢れ、下手に動かせば傷口が開いてしまう状況。
引き抜くだけでも、大惨事になりかねない。
また、上手く郁夫の体を操作することもできないので、流は動くことすらままならなかった。
冷たい刃先が、郁夫の肉に埋もれていた。
刀身に絡みつく血潮からは、郁夫の“命”が直接伝わってくる。
初めて味わう感触だった。
刺さってから、どれだけ時間が経ったのだろうか。
どうやってこの場所を察知したのか、茅女が小屋に訪れていた。
不思議なことに、その表情は怯えに染まっており、いつもの強気ななりは完全に隠れていた。
顔は青ざめ、ぶるぶると震えながら、郁夫と流を呆然と見つめていた。
しかし、流はその様子に訝しむことはなかった。
それどころではなかったのだ。
正直、茅女のことなど、この瞬間、流にとってはどうでもいいことだった。
郁夫の体を操っていたときより。
刀身を郁夫に埋め込んでいる今の方が。
明らかに、郁夫と、“繋がって”いた。
心と心が繋がるというより。
もはや、一方的な蹂躙だった。
裡より犯し、全てを飲み込む。
郁夫の方は、押し寄せる濁流に耐えきれず、完全に意識を途絶えさせていた。
故に、流の強姦はいつまでも続けられてしまった。
その快感は、幼い付喪神に耐えられるものではなく。
流は、初めて人を刺した感触に、陶酔していた。
とても、気持ちよかった。
流さん 昔ツンデレ 今デレデレ
いくおんにどばーっと流しちゃったのは、
はじめてゴムを付けずにやったところ、予想外の気持ちよさに暴発しちゃったような、
そんなイメージは如何でしょうか。
>>355 GJ!
エルの純情っぷりに萌えました!
奪還がんばれ!
私立清真館学園
中高一貫で良家の子女を集めた生粋のお嬢様学園
当然の事ながら世間ではお金持ち学校という認識であり、実情もそれに準ずる
「あら若宮さん。おはようございます」
「おはようございます、最上さん」
「きょうは随分とご機嫌がよろしいようですね?」
「あら、そう見えますか?」
「ええ、鏡をご覧になりますか?とても良い笑顔ですことよ」
「まぁ最上さんたら」
「ところで若宮さん、今夜のご予定は?」
「今夜ですか?……特に何も予定はありませんわ」
太郎ちゃんに夕食をご馳走するという予定が入っておりますわ
今日は金曜日。明日は学校もお休みですし……まぁわたくしったらはしたないですわ
「なら今夜家の屋敷で夜会を催す事になっておりますの。是非若宮さんをご招待させていただきたいですわ」
「夜会…ですか?」
「ええ、是非ともお出でくださいな。確か太郎さん…と仰いましたわね。その方もご一緒に」
招待状を差し出す最上令子を前に郁乃は少し黙考する
夜会ですか…
ドレスで着飾ったわたくしをタキシードに身を包んだ太郎ちゃんが、スマートにエスコートしてくれて、そしてわたくしの手の甲に―――………
予定変更ですわっ
「まぁそれは光栄ですわ。喜んでお邪魔させて頂きますわ」
「あら……ふふっ」
「……?最上さんどうなさいましたの?急に含み笑いなんて」
「あら失礼。若宮さんのご機嫌の理由に心当たりが付いたもので……太郎さんでしたか」
バレバレですわっ……コホン、まぁわたくしとしたことが
「いやですわ最上さんったら」
「あらごめんあそばせ。でも夜会に若宮さんも来て頂けるので少し安心してしまいましたの」
「あら、では他にも誰かご招待したのですか?」
「ええ…………藤野真紀さんも」
その名前を口にした最上さんは柳眉を寄せてしまいましたわ
藤野真紀さん
高等部からこちらにいらっしゃった方で中学からのエスカレーターが大半の清真では珍しい方ですの
お家が確か…金融関係でしたかしら?そちらの方でここ数年大きくなった会社らしいですわ
同じように高等部から途中編入された方々のグループとよくご一緒にいるところをおみかけます
あのグループの方々はお見かけする度に身の回りの物が違いますのでとても目立つ方々ですわ
それも海外のブランドを好むご様子でよく新作が云々と会話に華を咲かせていますのよ
でもあの方々が好むブランド物とやらはわたくしが見る限りでは何がそんなに良いのか少しわかりにくいですわ
わたくしの家や最上さんのお家の御用仕立てで用意してもらう物に比べるとどうにも、その、お手軽な物に見えてしまって……
「いくら父の会社の新しい取引先とはいえ…憂鬱ですわ……」
「最上さん?」
「あらいやだわたくしったら……こんなことを若宮さんに…失礼ですわね」
「いいえお気になさらず」
「ふふっ…ありがとう若宮さん。では夜会は20時からですのでもし宜しければ少し早めにお出でくださいな。お茶でもご馳走しますわ」
「まぁありがとうございます。ではお言葉に甘えてご相伴させてもらいますわ」
「勿論、太郎さんもご一緒にどうぞ」
最上さんが悪戯っぽい笑いを浮かべていますわ
「もうっ最上さん意地悪ですわ」
「ふふっ楽しみにお待ちしております」
「おかえりなさいませお嬢様」
「ただいま市川。太郎ちゃんをお迎えにいきますわ」
「かしこまりました」
校門前で待機していた市川に促されて車に乗り込みました。18時までまだ時間はありますわね
「市川。今朝頼んでおいた件は?」
「万事滞りなく」
「さすが市川ですわ」
「光栄です」
「今夜最上さんに夜会に招待されましたので太郎ちゃんの服を用意するついでにいきますわ」
「かしこまりました」
今朝太郎ちゃんの部屋にあったあの本
思い出すのも腹が立ちますが、太郎ちゃんがああいうのも興味があるということを教えてくれた事だけは感謝ですわ
あの破廉恥な水着
あんな女が着ても太郎ちゃんが興味を持つぐらいですからわたくしが着たら太郎ちゃんきっと喜んでくれますわ
あの水着を着けたわたくしをみたら太郎ちゃんどんな顔をするかしら……
恥ずかしがって俯いてしますかもしれませんわね
でも太郎ちゃんはその内我慢できなくなってわたくしに子犬の様に擦り寄ってきてそして……
いやですわわたくしったら
また胸の奥がが疼いてきちゃいましたわ
きっと太郎ちゃんも今頃わたくしのおっぱいが恋しくなっている頃ですわ
まっててくださいね太郎ちゃん
すぐにお迎えにいきますからね
そしたらまたわたくしのおっぱいに存分に甘えさせてあげますわ
今度は太郎ちゃんが夢の中でわたくしに着せたあの破廉恥な水着を現実のわたくしが着て差し上げますわ
あの破廉恥な水着をきたわたくしのおっぱいにわき目も振らずに吸い付いてコクコクと喉をならす太郎ちゃん
想像しただけでも愛らしすぎますわ
市川、もっとスピードを上げてもかまいませんことよ?
ワンクッション置いてフラグ立て?
このお話は郁乃の思い込みと勘違いがコンセプトですので
雌猫の皆様は引き立て役程度で終わってしまうかも知れません
もしそれは赦せんという方がいらっしゃいましたらスルーしていただければ幸いです
感想をくれた皆様ありがとうございます
>>355 VS綸音編を正座してお待ちしていますGJ!!
>>366 ちょっと骨董品屋で九十九神が憑いてそうな刀探してきます
たまらない…
なんだこの修羅場コンボは
俺の体力十割持っていかれたぜ
す、すごいラッシュ…
九十九の流はいいなぁ。刺し殺されることこそ修羅場の醍醐味だと思うけど、
その刺し殺す道具自体に意志があるとか、たまらん。
>>348 俺の妹はキモウトじゃないけど魔性の女だ。
いつか彼氏に殺されちゃうんじゃないかと兄ちゃんとしては心配になるww
自分の苗字が出てきて一瞬ドキッとしたぜw
ヤッベェいきなりの神ラッシュ
エルさんの病み具合
童貞?を捨てた流
素晴らしいキモ姉さま
最高だ!
赤い不法侵入者のオッサンが修羅場プレゼントしてくれねえかなぁ
>>394 対象が気絶してんのに快感覚えてるから誰でもいいっぽいけど、
結局刺し殺されそうなのは主人公一人なので問題ないと思うなww
橘音さんが油揚げを掻っ攫って行きそうな予感がしてきた
ボクっ子なキモウトに薬漬けにされて
美人な吸血鬼に異常なほど依存されつつ
レズ気味なパーティーに揉みくちゃにされて
独占欲剥き出しの刀の妖怪に精神を乗っ取られながら
巨乳なキモ姉のオッパイで窒息したい。
GJ過ぎてなんか幸せすら感じる。
それにしても嫉妬や修羅場で幸せか…。
今日もまた自分が変態だということを明確に認識したよ。
皆が言ってるがあえて言おう、何だこの神ラッシュwww
>>344 この展開はもしやっ!!!
>>355 エルもいいけど千早の活躍?を久しぶりに見れてうれしかったりw
VS綸音編も楽しみにしてます。
>>366 流タソはツンデレだったのか!!
これはダークサイド一直線ですねw
>>371 勘違いして自ら病んでいくわけですね。
たまらん
対抗意識がバリバリなのが露骨過ぎて笑えるw
こいつらこれしか楽しみが無いのか?
おおぉぉぉおお・・・
なんたるゴッドジャブ!GJ!!
神々の投下ラッシュキタ━━(゚∀゚)━━!!
全ての神に感謝&GJを!
特にエル派兼流派の俺はもう(*´Д`)ハァハァ
対抗意識(笑)
対抗呪文(青)(青)
毎日が楽しみで仕方ないべw
神の怒り(2)(白)(白)
「この泥棒猫!彼を賭けて勝負しなさいよ!」
「いいわよ。ただし、負けたら二度と彼には近づかないで」
修羅場デュアルが始まった。
「わたしが先行ね」
「どうぞ」
「じゃあ、いくわよ。山セット、ブラックロータスを生贄にして緑3マナ、2マナ使ってチャネルで19ライフ払って19マナ、山タップで1マナ、あわせて21マナで火の玉、プレイヤーに」
「・・・」
「もらっていくわね、彼」
「がっくり」
「デュアル」ってなんやねん。「デュエル」や。
修羅場デュアル
= 修羅場×2?
むしろ黒の1ターンキルのほうが字面的にどろどろしてていいな
沼セット
タップして暗黒の儀式、暗黒の儀式、暗黒の儀式
心の剥離で後輩の下僕を墓地へ
死体のダンスで墓地の後輩の下僕を召喚、ライフを19支払います
そして邪悪な力を後輩の下僕に付けて攻撃
「もらっていくわね、彼」
「がっくり」
「んふふ、今夜は彼と巡るめく一夜を凄さなきゃ♪」
「あははははは、ほんと馬鹿、お馬鹿さんねぇ…私を甘く見ないでよ!
手札から<対抗呪文>ゲームから取り除いて、ピッチスペルで<誤った指図>!!」
「そ、そんな!まさか!」
「あなたの<火の玉>は自分で食らいなさい」
「いやぁぁあああぁあああぁぁぁあああああ!!!!」
※一応解説:
※MTGの勝利条件のひとつが相手プレイヤーのライフ(初期20)を0にすることであり、
※先行の雌豚は自分のライフを19点削ってマナを生み出し相手に20点のダメージを
※与えようとするも、マナ以外の特殊な方法で撃てる対象変更魔法(マホカンタ?)を
※使われ20点のダメージは自分が食らうことになりましたとさ。
以下チラシの裏
ゲーム系の修羅場SSって需要あるかな?
ネトゲ内で惚れられゲームキャラで修羅場、そしてリアルで忍び寄るあの子の足音。
…って、S県月宮じゃん。orz
そして運ばれてくるアコラリアット
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.|i .|;:;:;:ト;:;:;:;:;:;:;:i:| ┐ \ \/';:/;:;:;:;:;:;:i;:;:::| .ii
|i .|;:;:;:小;:;:;:;:;:;:;:i;:;::|_,,...,┐ \ :/;::/;:;:;:;:;:/:|;:;:;::| .ii
ノ'´ |:ハ;:;:;:;:;:;:;:;:i :|`ヽ, ┐ \,;:;:;:;:;;:/;:/\;::| ii
. / |:| .ヽ,;:;:;:;:;:;:;i:|= =`=、 ┐ \;:/;::/ \ .ii
なるほど
修羅場ブリッツとか
修羅場グゥレイトとかもでてきそうだな
MTG分からんから遊戯王で。
鮮血の鋸女神 桂言葉 闇
☆☆☆☆☆☆☆☆
〔ヤンデレ族・効果〕攻3500守1000
このカードが召喚された瞬間にフィールド上に西園寺世界と
名のつくモンスターがいた場合、そのカードは破壊される。
このカードがフィールド上にある限り、西園寺世界と名のつく
モンスターは召喚された瞬間破壊される。伊藤誠と名のつく
モンスターは攻撃できない。
妹「ねえ、カニバリズムって究極の表現愛だと思わない?」
兄「んーっ! んんんんー!」
流ツンツンだったのかw
郁夫のやんちゃっぷりに萌えた
まとめサイト更新してたのな
鬼ごっことか読み返してようやく意味分かった・・・
>>366 おおぉぉぉっ!やっと来てくだされましたか!
またひどい・・もとい 上手い処でとめますな。
続きを果てしなく待っとります。
刺し殺しそうになっておいて「とても、気持ちよかった」と陶酔に耽ってる流さんテラモエス
この経験で流も成長し対郁夫用の黒光りする刀が生えるようになって
今後夜な夜な郁夫君を挿してればいいと思うよ(゚∀゚)
l:.:.:.ヽ:.:.:.:.:|:.|:.|:.:.:/! ̄/ ̄| ̄ヽ:.|十ト、:.:.:./:.:./:.:.:.:.:|:.:.:.
|:.l:.:.:.:.ヽ:.:.|:.!:.!:.:.l:.| /―-!、 i| |:.l:.:.:.:../:.:./:.:.:.l:.:.|:.:.:.
VV:.:.:.:.:.ヽ!:|:.:|:.:.!:.l/才示云ャx.|! !/:.:.:./:.:./:.:.:.:/|:.:!⌒ヽ
|! V:.:.:.:.ト、:.:.:.|:.:| l !::::::/ /| //:.:/:.:./:.:.:.:/:.:|:リ-‐
ヽ V:.:.:| \:.:.l/ l::七 //:.:.ハ_/__:.:/.斗! ヽ_
ヽ:| ノ、| ∠ ̄´ /;イ ナ¬、`ン<| ノ
/ )-、 \ 、 !/|//\/:l ´./ もしもし? もしもし? もしもし?
/ ̄/ / l ', i___ |7:.:.:.:.:.:.:.:.|イ:.:.:.: もしもし? もしもし? もしもし?
/⌒| {{ | V ', r ' //!.:.:.:.:.:.::.|:.!:.|:.:.:.:.
/{ {! l! | V ', ヽ /' !:.:.:.:.:.:.:.|、!:.|:.:.:.:.
| | リ ノ ! \| V__. --―、 !:.:.:.:.:.:./!ヘ:.|:.:.:.:.
リ | / l:.:.:|:.:.::.:/ V .!.:.:.:.:./| l:.|ヽ:.:.
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/ '/ ___ 、 、 ヽ //ヽ
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,' // / ,'´ i l ! . | ! , r '´ l::〈 /::::ノ
i /.,' / l i l __tハ l ! .| t T¬ ト l、 ! ト、 !:::l /:; '
l./ .l ,'! l ,レ'T´ ll! !.l, l li. |', ト, _!_l `! lヾ':.l::::!l::::l
l,' l ! ! ! l', l ,ゝェ 、',|',l',. ! !.l >' ,r 、 ヽ,,'l l::ヾ:!:::|.l::::! あははっははははは
! l ! ', . l ' / /.n.',` .'|',| '! l 0 l '' ! .l;:::l::ー':;'::/ よくも寝取りましたね
', !. l '., ',::''::.ヽニ.ノ, .: ::... ミニ'r l. ! ll::::ト:ヾー'
', ! ! ヽ':;:::.` ̄ ..::. ,' . l. !l::::! ';::':,
', l l ';`::::.. .::::::' ,' l !.';:::', ':;:::':,
'.,! ! ';::::::::...:::::::::r--ァ ..;' .l l! l ';:::', l';::::',
. ! l lヽ:::::::::::::::::ー.′ ..::;:;' l .l! ! ';:::':!,';::::',
! l !. ! ` 、::::::::::: ...::;:::'::/ ! ,'!. / ヽ::::':,!::::!
! l .l .l ! `ヽ:、:;::::':::::::/ ! ,','./ l ヽ:::';:::l
l l! ', . ト、. ト、',、 !:::::::::::/ , / ./// ト、、 .l! !:::ト'
こんな夢を今朝方見てしまった恐いww
羨ましい淫夢だNE!!( ^ω^)
>>403 今朝、見ようと試みたけど、俺には無理だったorz
おまいらそんなに刺されたいか
変態どもめ
むしろ漏れは絞殺希望
一生飼い殺されたい漏れは少数派ですか
いたり先輩に飼われたいぜ…
>>409 殺されるのも好きです、でも監禁のほうがもーっと好きです
俺は雪桜さんに飼われたい
あの人なら監禁されても生きていけそうだしww
監禁最高
初めから無事だってのが分かってるのなら面白くないんじゃね?
ならば殺せばいい。ただそれだけのこと。
監禁するほど愛してほしい。
独占欲剥き出しで愛してほしい。
お互いに依存し合いたい
そして最後は一緒に死にたい。
\\ 一 万 年 と 二 千 年 前 か ら 愛 し て る //
\\ 八 千 年 過 ぎ た 頃 か ら も っ と 恋 し く な っ た //
\\ 一 億 と 二 千 年 後 も 愛 し て る //
\\ 君 を 知 っ た そ の 日 か ら 僕 の 地 獄 に 音 楽 は 絶 え な い//
_ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩. _ _∩.
( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡 ( ゚∀゚)彡
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し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J. し ⌒J
そうか、アクセリオンは俺らの聖歌なのかもしれない。
で、投稿ラッシュの後はしばらく投下はなしか・・
まあ、作品一つ投下するのに執筆する時間は2-3時間ぐらいかかるからな
本当に神達にはご苦労様です
女の子と手錠でつながれてみたい
あなたと私が離れないために運命の鎖を具現化してみたの・・・みたいな
誰か書いてくれくれ〜
あんまり過激なのは苦手な俺は明らかに少数派
携帯チェックとか知らない場所で邪魔者排除とか通勤通学ストーカーとか
二人で両側から引っ張られて気絶とか食事に睡眠薬混入とか、ほのぼの路線もいいでよ
俺も殺し合いみたいなのよりも、言い争いくらいの方が好きだな。
血塗れ竜とかもどちらかと言えば最初の言い争ってる辺りの方が好きだし。
まあ、どっちも好きなんだけどなw
まあ、殺し合うまでの過程でどういう萌えさがあるってことだよ
監禁だとか殺し合いだとか、そんなシチュエーションはおまけであって
俺が好きなのは、そんなシチュエーションにしてしまうような嫉妬成分の方
あくまで修羅場は副産物だと思ってるよ
翻弄される主人公萌えの俺様はドン低の競争率のもとうはうはだよ諸君
お前等
語り合うのもいいが
その嫉妬分やエネルギーを使ってSS書いてみたらどうだい?
縛られている主人公がヒロインに襲われるような展開とか好きだな
ヒロインはデレデレで読むこっちの方が恥ずかしいみたいな
書いてw
別に主人公を拉致して、ヒロインと無人島に住む展開でもいいよ
どちらにしろ、飢えている虎に捕食されるのがオチ
監禁ネタは一番好きだな
だんだん洗脳されていく主人公・・・・ハァハァ
嫉妬とストーカーっ子(*´Д`)ハァハァ
さいきん絵師様来ないね
朝、起きたら台所に人が倒れていた。
最近見慣れつつある肩口から垂らした色素の薄い三つ編みお下げ、ピンク色の少し少女趣味かと思われるパジャマの上にカーディガンを羽織っている。
母だった。
「・・・こんな所で寝てると風邪引きますよ?起きて下さい、笹揺(さゆり)さん」
「・・・んぅ」
彼女はとても朝が弱い。常軌を逸して弱い。少なくとも、僕が登校するまでに彼女の姿を目にすることは殆ど無い。
寝坊をしたことのない僕にとっては信じられないことだけど、朝は本当に身体が重くて起きられないんだよ〜、とは彼女の弁である。
「・・・ああ、成る程」
彼女の手元にお玉が転がっていた。コンロに架けられた鍋には調理中と思わしきみそ汁が入っている。
どうやら朝食の準備中に力尽きたようだ。最後の力でコンロの火を消すことには成功したらしい。
「がんばりましたね。えらいえらい」
頭を撫でてやると、笹揺さんはにへー、と笑顔になった。半分くらいは起きているのかも知れない。
僕としては別に構わないのだけれど、彼女は僕にお弁当を持たせてあげられないことにとても心を痛めていた。
なんでも、「子供にお弁当も持たせてあげられないなんてお母さん失格だよね・・・うぅ」との事らしい。
「よ、っと」
笹揺さんを起こすことは早々に諦め、そっと抱き上げて寝室へと運ぶ。成人女性にしては少し軽いかもしれない。・・・いつも不思議に思うのだけれど、彼女の香りは何故か僕の心を落ち着かせる。
これが血縁というものだろうか、などと僕はぼんやりと考えた。
「ん?」
彼女を無事寝室へと送り届け、彼女の制作中の朝食を作り始めた僕はテーブルの上に見慣れないものを発見した。
丁度両手に乗るぐらいの大きさの直方体。チェック模様の巾着袋に包まれている。
「これは・・・お弁当、かな?」
下に折られたメモ用紙が挟まっている。
『くーくんへ おかあさんがんばったよ だけどもうだめみたいです あとはおねがいします だいすきだよ』
最後の方に行くにつれて字が揺れ始め、最後に至っては解読不可能だった。付け加えられたブーメランのようなものはハートマークだろう、多分。
「・・・ふふ」
知らず笑みがこぼれる。
僕は、多分、現時点では笹揺さんを母として認識していない。そして見ず知らずと言ってもいい人間と二人っきりで暮らすことは、僕にとって煩わしい事でしかなかった。
しかし、今では心地よいと感じ始めている。笹揺さんと一緒にいるときにしばしば感じられる得も言われぬ温かな感情。我ながら単純なことだ、と思う。
単に餌付けされているだけ、という可能性も否定できないけれど。
「よーっす!くー!」
交差点の向こうで千切れんばかりに手を振る都に向かって手を振り返す。僕らの付き合いは長い。僕の住居が祖父母の家から寮、そして今の家へと変わる度に合流地点こそ変わったものの、僕の登校風景の中に彼女がいることは十年以上も変わっていない。
彼女の歩くテンポは一定ではない。何かを見つける度に速くなったり、遅くなったり。ちょろちょろと動き回るたびにそれを追いかけるように翻るポニーテールを眺めるのが僕の小さな朝の楽しみだ。
彼女と一緒に歩くのは結構コツがいる。彼女とつかず離れず一緒に歩けるのは、僕の密かな自慢、なのだけれど。
今日は、珍しくゆっくりとした歩調で僕のとなりを歩いている。そして、何だか凄い視線を感じる。落ち着かない。
「ん〜?」
「・・・」
「んー・・・?」
「・・・」
「くー・・・最近、何か、あった?」
どきり、とした。彼女が僕の生活パターンの急変に対して疑問を持っている事は予想の範疇だった。だから、彼女からこういった疑問が投げかけられるであろう事だって、当然予想していた。
僕を動揺させたのは、彼女の質問の内容ではなく、そこに込められた不可解な感情だった。
悪意ではない。でも、一語一語を切りながらはっきりとした口調で僕を詰問する彼女に、僕は形容しがたい不安を感じた。
・・・こんなことは本来明かすべき事ではない。分かっていたのに、分かってはいたけれど、僕はこれ以上彼女に隠し通す事は不可能だと悟った。そして、同時に今の彼女に嘘を吐く事を怖いと思った。
「・・・うん。あった。色々あったよ。昼食の時、全部話すよ。それでいいかな?」
部分的になら、明かしても、いい・・・と、思う。
―――この時の判断が正しかったのか、それとも間違っていたのか。後に僕は何度も思い悩む事になる。ただ、そんな事はこの時の僕には知る由もない訳で。
私のくーに対する感情を説明することはとても難しい。部員のみんなは私が彼に恋愛感情を持っていると思っているらしい。それはもちろんそうなのだけれど、私の場合それには庇護欲とか独占欲とか、そういった感情がついて回る。
私は彼に依存している。どうしようもなく。けど、その一方で彼はどうにも危なっかしい所があって、私は彼から目を離すことが出来ない。
とんでもなく器用で何でも出来る癖におかしな所で不器用な幼馴染みを私は放っておけない。彼には私がいないと駄目だと思っている。いや、そう思いたい。
・・・つまるところ、私はくーの恋人であり、親友であり、姉であり妹であり―――母でありたいと思っているのかもしれない。
我ながらなんて欲張りな、と思う。要するに私はくーの全部が欲しいのだ。こんな醜くて汚らしくてグチャグチャの想い、打ち明けられる筈もない。
それでも、私は学校でくーと離れることは殆ど無かったし、くーに思いを寄せる生徒から彼を紹介して欲しい、と頼まれたことも何度もあるけど全て断った。
くーの下駄箱やら机に押し込まれていたラブレターを処分したことも一度や二度ではない。
どこぞの馬の骨になどくーを渡すものか。
くーは、わたしのだ。
約束通り、昼休みに教室でくーの向かいの席の椅子を借りて腰を下ろしたとき、私は信じられないものを見た。
―――巾着袋から取り出された、お弁当箱。私が知る限り、くーはお父さんの実家を出てからお弁当を学校に持ってきたことはない。寮住まいの時は自分で作ることもあったようだけど、それでもおにぎりとかサンドウィッチとか、簡単なものしか作らなかった。
誰だ。
くーは嬉しそうに―――こうやって感情を表に出すくーは凄く珍しい―――弁当箱を取り出し、机の上に広げ始めた。
誰の弁当だ。昨日くーになれなれしく話しかけていた上級生か。先週くーに教科書借りに来た隣のクラスの生徒か。それとも―――
「・・・ミヤ?」
「―――え?何?」
「いや、なんかぼーっとしてるみたいだから・・・どうかした?」
「んにゃ、なんでもー。そういえば、くーは今日おべんとなんだ。めずらしいね?」
表面上はいつも通りに取り繕う。声だって震えなかった自信がある。自慢ではないが、私の猫かぶりは誰にも看破されたことがない。
「うん。それも含めて、今から話すよ・・・」
私は、くーの広げた見るからに『愛情籠もってます』的な臭いで噎せ返りそうな弁当を、今すぐぶちまけたくなる欲求を堪えながら、話の先を促した。
「今、お母さんと一緒に暮らしてるんだ」
「―――――え?」
一瞬、くーが何を言っているのか二重の意味で分からなかった。くーのお母さんは、くーが小さいときに、事故で亡くなっていると聞いていること。
そしてそれ以前に、くーの口から出た“オカアサン”という単語自体が認識出来なかった。
「事故の後からずっと眠ってたらしくてね、お爺さんとお婆さんも回復の望みが殆ど無いから、僕が成人するまでは話さないつもりだったんだって・・・」
オカアサン。くーの保護者。くーの母親。当然のようにくーを愛し、くーに愛される人。
「でも、こないだ目を覚ましてね。色々あって、今一緒に暮らしてるんだ」
―――祝福するべきだ。くーは小さい頃から両親がいなかった。私には今でも世間一般の家庭と同様に両親がいる。なら、くーには救いがあって然るべきだ。
「ふーん・・・そいじゃ、もしかしてくーが部活辞めるとか言ってたのも、それ?」
「うん、十年以上寝てただけあって危なっかしくてね・・・今は少しでも一緒にいてあげたいんだ」
言いながら、私が見たことも無いような表情で弁当を見るくー。ザワザワする。嫌だ。止めて欲しい。そんな目をしないで欲しい。
「そっかー、良かったね、くー」
「良いことばかりじゃないよ。ろくに知らない人と突然二人で暮らすことになったんだから」
そう言いながらも、その声には僅かながら親愛の情が込められている。私以外に向けられたことのないソレが、他の人に向けられている―――
「・・・あのさ、くー」
「何?」
「ボクもそのくーのオカアサンに会ってみたいかなー。ダメかな?」
忙しさにかまけて随分間が開いてしまいました。一人でも覚えていて、読んでくれる人がいますように。
次は今年中が目標です。どうしようもない遅筆ですがどうか見捨てられませんように。
GJ!都の内心の黒くてドロドロした感情と独占欲がいい味を出していてとてもイイ!
ママンには夢とロマンがあるぜ(*゚∀゚)=3ハァハァ
ママン可愛い!
続きを年内に読める可能性が高いとは!
GJ!!
うおおおお、第2回が!!
都のドロドッロ具合が最高だ
都黒すぎ。俺は苦手
主人公への愛情があるならば腹黒だろうが邪悪だろうが何でも構わん
むしろGJ
序盤のほのぼのとした雰囲気は好き。
けど都みたいな女性はそれ以上に好きです。
第3回も楽しみにしております。
ドス黒いミヤが大好きです
独占欲っていいよね(*´ー`*)
447 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 13:17:09 ID:xGXCIm0J
その後、発情気味のミャー子を何とかなだめるのに成功し、ひとっ風呂浴びたところでまた問題が発生しました。
既におねむのミャー子は引き直した蒲団に、何と僕ごとダイブしたのです。
しかも僕の腕にまるで抱き枕のようにしがみつき、一瞬で夢の世界へ旅立ちました。
それは流石にまずいと思いました。
ですが予備の蒲団もないし、ましてミャー子を押し出すなんて外道なことをできるはずもなかったので、そのまま寝ることになってしまいました。
横を見れば満足そうに寝息を立てている可愛い顔があります。
体つきとは対照的に、その顔立ちにはまだ幼さが垣間見えます。
腕には女性を意識させる感触があります。
ずっと発散させていないこともあり、心拍数が上昇し、股間に血液が集中するのを感じました。
その感覚が嫌でした。
前にも言いましたが、ミャー子は家族です。
僕は長年連れ飼ってるこの猫を愛してます。ですがそれは飼い主として、家族としての愛です。
正直なところ、このシチュエーションは美味しいです。
猫が人間になり、性の対象として扱えるんですから。
ですがもし一線を越えてしまったら、もう今まで通りに接することはできなくなると思います。
それは嫌です。
地方から出てきて独り暮らしをしている者には、せっかくできた家族をなくしたくありませんから。
今一番腹立たしいのは男の生理現象です。
心では彼女を家族として認識してるのに、体では性の対象としてしまってるところです。
憧れのおっぱいをまともに触ったのは初めてだからでしょうか、余韻が収まりそうにありません。
男の性(さが)を超越して、どんな誘惑にも負けない屈強な精神力が欲しいです。
ですがこの高二男子にはまだ備わっていないので、精神と肉体との意地と意地の張り合いが勃発しました。
嗚呼、眠れない……
いっそこの場で発射してしまいますか……いやいや、それじゃあミャー子をオカズにしたことになるし……
じゃあトイレに……いやいや、それじゃあミャー子を起こしてしまう。気持ち良さそうに眠ってるのに可哀相だ……
こんな感じの葛藤がずっと続きました。結果、寝不足です。
ただいま昼休みの真っ最中。
授業中に睡眠をとってしまったのは不覚ですが、そんなことは久々に食べたサービス定食の美味さによって半ばどうでもよくなっていました。
他人が作ったものを食べるのもたまにはいいものです。それに、うちの学食は下手な料理屋よりも満足させてくれますから。
ミャー子はもう昼ご飯を食べたでしょうか。
いつもは外に出て獲物を捕まえてる彼女ですが、人間の姿になった今ではそんなことをされるのはちょっと困ります。
だから今日は部屋で大人しくしてとお願いしたんですが……少し不安に思えてきました。
(家に電話を入れておこうか……いや、果たして出るものか……)
ちゃんと餌の在りかは伝えてあるし、賢いミャー子のことだから僕の言い付けを守ってくれてるはずなんですけど……
(やっぱり電話しとこうか……いやでも……)
などと優柔不断な考えをしていると、携帯電話が急に振動を始めました。
(まさかミャー子!?)
と、有り得ないこと思いながら開くとメールが一通。やはりというか当たり前というか、送り主はミャー子ではありません。
『from 社 響子
件名: 久しぶり
本文: 例の場所で待ってるからすぐ来てね。』
その名前を見るなり、ほんの一ヶ月前の出来事がフラッシュバックされました。
続いて、鼓動が速くなり、股間が疼くのを感じました。
僕のオナ禁(半強制的)を知ってるかのようなタイミングでの呼び出しに、戸惑いと少なからずの期待感を抱いてる自分がいます。
やっぱり、男の性なんて邪魔なだけです。
頭に浮かんだ女性に対して性衝動を抱いてしまうのですから。
ところで、僕はアドレス登録する際に相手の名前をフルネームで入力するこだわりを持ってます。
だから断っておきますが、送り主は恋人でもなければ上級生でも下級生でもありません。
家庭科の先生です。
家庭科実習室。
調理実習の時以外はお料理クラブのメンバーが使うだけの、利用頻度の低い特別教室。
本棟から離れているせいか、非常に静かです。そこに漂うのはコーヒーの良い香り。中々上等な豆のようです。
「はい、ブルーマウンテンよ。砂糖はいくつ?」
「いえ、お構いなく……自分でやりますので……」
角砂糖を一つ、出されたコーヒーの中へ入れます。
水分を吸って急速に姿を崩す前にスプーンで砕きます。カップの先にぶつかる金属音がいやに響きます。
閉鎖空間に、若くて綺麗な女性教諭と二人っきりだからでしょうか。
僕は自身の緊張感を紛らわせるために、そんな行為に没頭せざるを得ません。
「ふふっ。何をそんなに慌ててるの?予鈴まで時間はたっぷりあるわ」
僕の様子がおかしいのか、先生は微笑みを浮かべます。
「えと……それじゃあ、頂きます」
僕はいたたまれなくなり、液体を食道に通していきました。味を確かめる余裕もありません。
そもそも教師が校内で生徒にお茶を出すなんて普通はありえません。それを疑問に思えないほど緊張してました。
いえ、緊張というよりは恥ずかしさです。
飲み干すまでの一部始終を見られてるのが分かりますが、僕から目を合わすことができません。
だって向かい合って座ってるのは、僕の童貞を奪った相手ですから。
僕から何を話すでもなくただ俯き、先生も僕の仕草を眺めるだけ。そんな時間を10分ほど費やしたところで変化が起きました。
僕の身体に、です。
全身が火照り、鼓動が速くなり落ち着かなくなってきました。
そんな体調の急変に戸惑う間もなく、傍目にも分かるぐらい股間が怒張していきました。
一体どうしたというのでしょうか。
いくら一週間発散してないからとはいえ、こんな状態は初めてです。
「どうしたの大窪君、顔が赤いわよ?」
心配そうに声をかけてくる先生。
「い、いえ、何でも……」
興奮状態に陥ってるのを悟られたくない僕は、ただひたすらに平静を保つのに努めようと思いました。
深呼吸をしたり、心の中でお経を唱えたりしました。ですが全くと言って良いほど効果はなく、逆にますます落ち着かなくなっていきました。
次第に思考が単純なものになっていきます。
つまり、早く射精したい、セックスしたい、そんなことばかりです。
「あの、先生、トイレに行っ、てきて、いいですか……」
僕はたまらずそう言ってました。どうしようもなく息が荒げ、これ以上我慢できそうになかったからです。
「どうしたの?身体の調子が悪いの?」
僕の尋常でない様子を見かねたのか、席を立ちこちらに寄ってきます。そして、そのまま僕と目線が同じになるように腰を曲げました。
「せ、先生?」
「顔が赤いわね、大丈夫?」
目線を少し下に移せば白くて豊かな膨らみ、それと対称的な真っ黒な布地が見えました。
さらに何とも言い難い、女性特有のいい匂いを感じました。
それらのせいで、僕の理性は限界近くまで来ていました。早くこの場を離れなければ、間違いを犯してしまう。
そう思い席を立とうとしたところで、
「これ、何だか分かる?」
目の前に差し出されたのは、先端にスポイトのような物が付いた小瓶。
「いわゆる媚薬よ。軽目のものらしいけど、慎太郎君には効果覿面みたい」
先生は淫靡な笑みを浮かべていました。
……僕は阿呆です。
こんなのすぐに考えれば分かるはずなのに。
出されたコーヒーの中には興奮剤が入っていて、それは先生がやったこと。
「卑怯、です、よ……」
「慎太郎君が奥手すぎるのが悪いのよ」
もう、限界でした。
僕はズボンを脱がされ、再び椅子に座らされました。
興奮剤と一週間溜め込んでいたおかげで股間はこれ以上ないというほど膨れ上がってます。
「飛び散ると後処理が大変だから被せるわよ?」
そう言ってピンクのゴムを根元まで被せました。そして間もなく、先生のしなやかな手が僕のものを握りました。
ゆっくり、ゆっくり。
絶妙な力加減で上下動します。
それと同時に快感が押し寄せてきました。コンドーム越しとは言え、他人に触られるのと自分でするのとでは段違いです。
次第に手を動かす速度が上がります。
「手コキって好き。相手が気持ち良くなっていくのを冷静に観察できるから。征服欲が満たされていくわ」
その通りで、息がかなり荒くなっている僕とは正反対に、落ち着いた様子で行為を続けてます。
手を激しく動してるのを除けば、普段の先生と変わりありません。
それが逆に、僕をさらなる興奮へ導きました。
僕と先生の温度差、この非日常さ加減が肉体の快感と合間って、さらに血液が集まるのを感じました。
「あら……また大きくなったわね。そんなに気持ち良いの?」
先生の視線が僕の顔に移りました。表情の変化を読み取るようにじっと見上げてます。
僕が快感で顔を歪める度に指使いを微妙に修正していき、右手の指一本一本が的確に弱い所を刺激していきました。
「うっ……くっ……」
自分の意志とは無関係に声が出てしまいます。押し殺そうとしても、慣れない快感のせいで叶いません。
恥ずかしくて、気持ち良くて、死にそうです。僕はいたたまれなくなり、先生から目を逸らしました。
「駄目よ」
すぐに返ってきたのは、さっきまでと違うきつい口調。そして、快感が途絶えました。
「えっ……」
さっきまであんなに動かしてたのに、あんなに気持ち良くしてくれてたのに。
先生が、手を離しました。どうして、止めるんですか?
「ちゃんと私を見なさい」
こんな生殺しみたいなことをされて、まともな思考なんてできませんでした。
早く気持ち良くしてほしい、早く射精したい。その一心でした。
僕は再び先生を見ました。するとまた、握ってくれました。
「いい子ね。続けてあげるわ」
さっきよりも速く、強く扱かれてます。
先生に情けない顔を見つめられてます。
恥ずかしいです。
でも、恥ずかしいからこんなに興奮してるんだと思います。
おのずから身体を曲げ、先生の胸元に手を伸ばしてました。
少し窮屈な体制ですがそのままブラジャーの間に指を擦り込ませました。
「んっ……」
乳首に当たったせいで先生は静かな嬌声を発しました。
「そうよ……素直になりなさい」
言う通り、先生のおっぱいを遠慮なく揉みしだきました。
大きくて柔らかいので、夢中になって揉みました。
間もなく乳首が勃起していくのが分かりました。そこに触れる度、先生の色っぽい声が醸し出されます。
生のおっぱいがこんなに気持ち良いなんて知りませんでした。
今まで雑誌や映像で見るだけだったので。
きっとミャー子のおっぱいは、もっと揉みごたえがあるんでしょう。
…………?
何でここでミャー子の名前が出てくるんでしょうか?
変です。
ミャー子は家族なのに。
家族との情事を妄想するなんて、そんなの変態のすることです。
きっと薬のせいで馬鹿なことを考えてしまってるんだと思います。
射精感が込み上げてきました。もう限界のようです。
「そろそろイきそうなのね。いいわよ、いっぱい出しなさい」
先生にも分かったようです。
扱く速度が急速に上がり、睾丸を揉んでる左手の動きも複雑になりました。それを受けて、いよいよ我慢出来なくなりました。
数秒して。
頭の中に直接響いてくるような快感と共に、僕は一週間分の精液を放出しました。
「あぁっ……すごくいっぱい出てる……何日溜めてたの?」
徐々に手の速度を落とし、全部搾り出そうとしてくれます。
イッたからと止めるのではなく、出し尽くすまで快感を与えてくれます。
何も考えられません。ただ気持ち良いんです。
「イってる時の慎太郎君、すごく可愛いわ」
今の僕の顔には力が入ってないので、情けない感じになってるに違いません。
でもいいんです。ここには先生しかいなくて、僕は先生にされたんですから。
「慎太郎君って案外薄情なのね。一度セックスした相手を意図的に避けるなんて」
換気のために窓を開けながら、背中越しに喋る先生。
12月の冷たい風が、さっきまで情事の行われてた空間に流れ込んできます。
「……違います」
「どこが違うの?」
「理解できなかったんです……ろくに喋ったことのない人間と、その……」
「セックスしたのが?」
僕は肯定の意味で頭を縦に振りました。
「誤解しないでね。慎太郎君だったからしたのよ」
「だからって……先生だって初めてだったのに……」
「そんなこと気にしてるの?23の女にバージンなんて何の意味も持たないわ。男には分からないと思うけど」
「でも……」
言い返そうとする僕の唇に、先生の人差し指が当たりました。
「もう一度、前に言ったことを繰り返すけど……
慎太郎君が望むなら、どんなことだってしてあげるわ。私の仲間は……慎太郎君だけなんだから」
「……そんな、悲しいこと言わないで下さい……」
先生は気付いてないかもしれませんが、その目は、とても寂しそうでした。
(続く)
相変わらず週一ペースですがご容赦下さい……
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そして先生の匂いをプンプンさせながら帰ると・・・・・・(・∀・)
>>453 GJですよ〜。
なんか今までのここのSSと違って、雰囲気がしっとりしてますな〜、いい感じです。
こっち見んニャー
ミャー子の瞳孔が猫科動物の如く拡大した
慎太郎のちんちんからメスの匂いがする・・・
消毒しなきゃ!
こんなこと妄想した僕はいま妻しぼりやってます
まおちゃんとミキティ見てたらさ
まおちゃんが出てくるまでは、一人だけちやほやされてた銀盤の姫が
新しくやってきた小娘に居場所を奪われる
その上、男まで取られていたら嫉妬スレにぴったりじゃないかw
って、電波を受信したから発信した
さあ、書くんだ
個人的には、まおちゃんに監禁されてビールマンスピン足コキされる展開きぼんぬ
まおちゃんはミヒティの元彼に雇われた人物に襲われてひざを怪我してしまった。
まとめサイトのSSを読んでいて気がついたことがある
SSの登場人物の性別を逆転させると鬼畜度が格段にアップする
馬鹿だな〜男がやったら屑なんだよ。
乙女がやるから許されるのだよw
監禁、ストーカーは乙女の特権w
監禁、ストーカー以外になんか新しい手法とかないの?
男がやってるのを俺たちが読んだらただのNTRじゃないか
男の嫉妬は見苦しい
女の嫉妬は美しい
○ 女の嫉妬は美しい
↓
◎ 美女・美少女の嫉妬は美しい
男が女がというより、やっぱ顔かな。
女だってイケメンに「お前には俺だけを愛していて欲しいんだ…ここで一生養ってやるからな…」
って言われるのは結構魅力的なことかもしれないよ。
憑依とか
男だってイケメンに「お前には俺だけを愛していて欲しいんだ…ここで一生養ってやるからな…」
って言われるのは結構魅力的なことかもしれないよ。
アッー!
>>475 いやいや、ユウキは俺が。
どっちかが性転換する薬とかで女になればそれでOK。
性転換する必要がどこにあるんだ?
ユウキはアマツに後ろを開発されてたんだぜ
性転換する必要がどこにあるんだ?
アマツのおかげでユウキは後ろも開発済なんだぜ
なんかミスった……orz
アマツに斬り殺されて来る
>>477 正式に結婚して縛るのと、見せつけるために決まってるじゃないか。
対象の束縛と、相手への挑発は修羅場を作る常套手段だろ?
ユウキは男子監房でも物語が成立しそうだ。女子監房担当でよかったな。
イグリード「男の嫉妬はみっともないぜ」
ストーム・イーグリード「猛禽の嫉妬はみっともないぜ」
ソニック・オストリーグ「隊長・・・空を・・・飛びたいです」
君と出会った奇跡が この胸にあふれてる
きっと今は自由に空も飛べるはず
夢を濡らした涙が 海原へ流れたら
ずっと そばで笑っていて欲しい
^ω^
しかし、つくづく思うなあ。
俺は修羅場とは無縁な人間なんだ、と。
>>486 そんな人生、これからも生きていて楽しいですか?
逆に考えるんだ。
三角形の頂角点の位置に居ないので修羅場が起こらないのなら、
三角形の底角点の位置に自ら赴いて修羅場を起こすんだ。
まず登場人物が俺しかいないです\(^0^)/
>>489 左手「右手!貴女邪魔なのよ!」
右手「僻むのはやめてくださらない?左手…」
左手「貴女さえ…貴方さえ居なければ、マスターは私をもっと使ってくださるのに!!!」
右手「そうよ。右利きのご主人様は鉛筆を持つのも箸を持つのも、オナニーも、わ・た・し、でするの」
左手「マスターを誑かす雌豚め…こ、殺してやるぅぅぅッッッ!!」
こうですか?わかりません!
親にみられたら、まず間違いなく泣かれるな……。
まとめにそんな感じのSSあったよなぁ
>>488 そうは言っても、そもそもそこまで一人の人間に執着することも難しいだろう。
執着するのも執着されるのも難しい。だからこそのドリームだな。
本スレにも便器でそんなネタあったなー
相手の好意をふくらませるようにリアクションしてれば結構うまくいくけどな
ただ持続は無理だな・・・・
リアルで嫉妬とかいってもせいぜい他の女と話してたら「ふーん、仲いいんだねぇ…」とかジト目で見られて言われる位だよなぁ
マテ!!
それは本当にリアルの女なのか!?
俺の脳内で暮らすくらいにはリアル
本当に小さな頃の話だけど近所に少し年上のお姉さん(つっても小学生)がいて、時々遊んで貰っていた
でもしばらくしたら保育所の同世代の子供と遊ぶのがほとんどになった
そうしたらある日お姉さんが俺を自転車の後ろの台に括り付けて、そのままどこかへ行方不明になったらしい
何せ幼すぎたのでそのことへの記憶は全く無いんだが、保育所職員だけじゃなくて
警察官まで捜索に加わってたんだと後で親や友人の親に笑い話で聞かされた
そんな俺の名前もユウキだったりする
18歳になった瞬間、○月○日0:00
真夜中の玄関に突然響くノックの音
いぶかしみつつも開けると、久しぶりに会うお姉さん。
すっかり大人の女の人になったお姉さん、なんだか目元がうるうるしてるお姉さん
でもあまり突然なので呆然として、じっと見つめ合ってからおもむろに
「待ってたわ……さ、これ」
ずいっ、とお姉さんが差し出したるは婚姻届
「あとは○○ちゃんの名前と印鑑だけ……お義母さんたちは承諾済み。さあ」
という妄想だけで俺は当分生きていけます
>497
> 小桜セレナはどうもストーカー気質があるらしく、男性のあらゆる交友関係を断ち切ろうとしてたらしい。
> 女性の髪をつかみ、蹴り上げたというのだ。女性は全治一週間の怪我を負ったという。
小桜セレナが男をめぐりすったもんだの末、傷害事件で逮捕されたと報道された。
小桜セレナとは昨年春にCSで放送された通販番組に出た際、ネットを中心にブレイクした人物。
http://f.hatena.ne.jp/images/fotolife/k/kuma6663/20050626/20050626162506.jpg 暴行を受けた女性によると事件は18日の早朝、小桜セレナが交際していた男性宅を訪れたときだった。
彼が買い物に出かけると小桜セレナが窓を突き破ってきたという。そして泥酔した様子の小桜セレナは
女性の髪をつかみ、蹴り上げたというのだ。女性は全治一週間の怪我を負ったという。
女性によるとこの男性とは単なる友人で以前から小桜セレナについて相談を受けていたという。
小桜セレナはどうもストーカー気質があるらしく、男性のあらゆる交友関係を断ち切ろうとしてたらしい。
そして今回相談に乗った女性にこのような被害が及んだようだ。
運が良ければ(?)、リアルでもこういう女に付きまとってもらえる。
>500
何でか英語の時間に習った、
has gone と has been の違いとか思い出した。
しかし、SS投稿は全くなくなったよ
一気に神が離れてしまった感じがする
雑談モード中で投下しにくいんだろうよ
よう、久しぶりだな。
また「このスレも終わりだ」って言いに来たのか?
中学のときに付き合ってた先輩は嫉妬深かったな。
自分と仲の良い女の後輩に俺を監視させたり
そいつにクラス委員長やらせて席替えしても俺の隣はその女しかならないようにしたりした。
俺が女友達と話しただけでつねられた。
いま考えるとそのせいで嫉妬好きになったのかもw
席が隣になったあまり男と話しないタイプの子と仲良くなってからうまい具合に放置したりと変な距離の取りかたしてたら微妙に嫉妬された
当時は別に意識してやってたわけじゃないんだけど思えばその頃から嫉妬好きの片鱗が(ry
そんな
>>497の実話
ようするに大人しくて地味な女の子ほど嫉妬深いというわけか?
>>512 それは見事な嫉妬フラグですね
そろそろお家のほうに来ているかもしれませんよ?
「
>>512くん、いてもたっても居られなくて着ちゃった、
ずっと好きだったんだけど恥ずかしくて言い出せなかったの
512くんも私のこと好きだったの気づいてたんだけどね、ごめんね
もうお互いの気持ちも分かり合ったし、一緒に住んでもいいよね
私、そのために家引き払って着ちゃったから心配することないよ」
的な展開に期待
さらに幼馴染の女の子とか義理の姉とか現れて激しいバトルとか・・・
とりあえず上のような台詞を可愛い女の子に一度でいいから言われてみたい・・・
もう俺、普通じゃないのかな・・・
ちくしょうちくしょう
お前らの自慢話なんてききたかないやい
俺はSSが読みたいんだい
>507
何の漫画?
「おはよう、お兄ちゃん。今日もいい天気だよ。」
「はい、お兄ちゃん。朝ご飯はお兄ちゃんの大好きなキノコのお味噌汁だよ。これを知ってるのって私だけだよね。」
「はい、お兄ちゃん。制服とハンカチ、アイロンかけておいたよ。朝早くからやったんだ。褒めて褒めて。」
「ほら、お兄ちゃん。学校遅刻しちゃうよ。もう、私がいないとなんにもできないんだから。だめだなぁ。」
「お兄ちゃん!そんなにふらふらと歩いちゃダメでしょ!周りの人に迷惑かかっちゃうじゃない。もう、私が腕繋いでてあげるから。」
「はい、お兄ちゃん。お弁当作っておいたよ。ちゃんと卵焼き甘くしておいたよ。全部食べてね。」
・
・
・
・
・
・
「はぁ………」
時はすぎて昼休み。朝からお兄ちゃんと何回呼ばれただろう。一生分のお兄ちゃんを聞いた気がする。
幸い、お昼休みは……
「ごめんね!お兄ちゃん!委員会があってどうしても一緒に食べられないの。寂しいかもしれなけど、頑張って食べてね!」
とのこと。授業の休み時間、たった十分の間でも教室に顔を出していたため、やっと休息を得た。
「おうおう、相変わらず兄妹で仲がいいなぁ。」
「え?…あはは……ま、まぁね、仲が悪いよりはいいよ……」
クラスの友達が冗談まじりにからかってくるが、こっちとしては冗談ではいられない。
「一緒に寝てるぐらい仲がいいしね。」
「ははは!そりゃ本当に仲がいいなぁ!」
ほら、信じてもらえないさ。まぁ、信じられてもそれはそれで問題だけど。
「さて、一応食べてみるか………」
開けてみると、それなりに普通の弁当だった。確かに僕の好物しかはいっていない、見事なメニューだ。
「んぐ……んむ…んむ……おいしいな…」
ご飯も白米じゃなくチャーハンにしている辺り、本当に力が入っている。でもこんな豪華な弁当、三日坊主で終わるだろうな。
「ん……うむ……ぐ?」
チャーハンを食べていると、なにやら口に違和感を感じた。米や、豚肉とは違う何か……
「んん!?」
ゆっくりとソレを手繰り寄せてみると、現れたのは髪の毛だった。
「まったく……さ、沙恵のやつ、気をつけてくれよなぁ………」
それから注意してみたところ、計五本の髪の毛が出てきたのだ……
「はぁぁぁぁぁ〜〜〜………」
時は経って放課後。まだ再開されてない部活の部室で、おもいっきり溜め息をついていた。沙恵はというと……
「ごめんね!お兄ちゃん!まだ委員会がまとまらなくて……放課後も残らなくちゃいけないの!
もうっ、お兄ちゃんとせっかく一緒に帰れると思ったのに……寂しいかもしれないけど、先に帰ってね。ご飯は遅くなるかもしれないけどちゃんと作るから!」
とのこと。
運がいい。グダグダにひき延びた委員会に感謝したい。今は一秒でも沙恵と離れていたい。でもどうせ家では一緒になるんだから付け焼き刃だろうけど。
「はぁぁぁぁぁ〜〜〜……」
再度溜め息。でてくるのは溜め息だけで、沙恵を兄離れさせる案はちっとも浮かばない。どうしよ………
「あ、か、海斗君!?」
「へ?あ、部長……どうも……すみません、部活無いのにたむろっちゃって。」
「いえいえ、私としては……うれし……」
「はぁぁぁぁぁ〜〜〜………」
「……あははぁ、なんだかお悩みのようですね。」
「ええ、まぁ……」
「よければ、相談にのりますよ?」
「んぅ〜………」
どうしようか。確かに誰かに相談したい気持ちではある。けど、それを聞いて引かれる可能性もある。でも、女性の先輩なら大丈夫かな……
「実はですね。」
大丈夫だよね。
「僕の妹の沙恵が………」
・
・
・
・
・
・
・
・
「……というわけなんですよ。」
ついに打ち明けてしまった。誰かに言ったのはこれが初めてだ。先輩は話を聞いてる間、顔色を変えずに真剣な顔をしていた。
その真剣なまなざしに、僕のほうが恥ずかしくて目を逸らしてしまった。
「うん……そうかぁ……」
そう頷くと、なんだか悩むようにうつむいてしまった。まいったなぁ。自分のことで誰かが悩むっていうのは苦手なんだよなぁ。
「あ、いやぁ、聞いてもらうだけで有り難いんで…」
「私に、いい考えがあるよ!」
「へ?…う……」
いきなりグイッとアップになり先輩の顔にびっくりしてしまった。
「うん、こ、ここっ、恋人を作ればいいんだよ!そうすれば遠慮したりして、どんどん兄離れしていくよ!」
「えぇー…恋人……ですか…。そういうのはできそうにないですからねぇ。」
まだまだ白い先輩でした
>>521 GJ!!!
沙恵たんがどんどんキモウト化していく様が楽しい!
ところで食べ物に髪の毛っていうと某虎妹を思い出さずにはいられないぜ。
>>516 COMIC快楽天ビーストVol.15の一番頭にのってるえろまんが
GJ!
髪の毛は明らかに故意だな。
ちなみに俺なら髪の毛ごと食う。
このチャーハンを作ったのは誰だぁ!
結局、真犯人がさっぱりとわからん
あんなキモウトがいたらクラスメイトからあの妹さんはどうしたの?
と聞かれてもおかしくないような
主人公は薬漬けで洗脳されていても、周囲の設定に無理がありそうな
脳内補完くらいしてあげれ
この妹は最初から居たんだから問題ないんでは?
むしろこの後に周囲が疑問に思われなかったかが不思議かも
>ちゃんと卵焼き甘くしておいたよ。
最近になって塩っぱい卵焼きがイレギュラーだって知ってショック
やはりキモウトは最高すぎるぜGJ!
思わずデュエルセイヴァーを起動して再プレイしちまったぜ
俺も家の卵焼きは卵に醤油を入れて焼いただけのしょっぱい卵焼き
甘い卵焼きを食べると未だに違和感を感じる
だし巻き卵のことじゃないの?
卵焼きって言いかたすると甘い方がメジャーかもしれんが。
玉号焼きはねぎとしょうゆ入りにきまっとろうが。
俺は妹より姉が良いんだ!
山本君のお姉さんカンバーック!
>>529 あの女のニオイがするよっ!お兄ちゃん!
あれは(キモウト||ヤンデレ)だろう
キモアネは人類の至宝。
は、と息を吐き呼吸を整える。普段のように落ち着いてやれば何の問題も無い、自分に
そう言い聞かせて息を吸い、再び吐き出す。もう何度繰り返しただろうか、思い出しても
数えきれない程に長い時間が経っていた。窓の外を見ればもう明るくなり始め、綺麗な紫
に空が染まっていた。図鑑でしか見たことがないけれど、大昔に存在した紫陽花という花
の色によく似ているその色は、見ていると心が安らいでくる。
今日も、乗り越えることが出来た。
口には出さないけれど、言葉を思い浮かべるだけでも実感が沸いてくる。
今回は大丈夫だろうかと思い、剣を手に取った。
「ウィスタム・ラサヤ・ライット・ナタサヤ――」
歌を口ずさみながら、軽く剣を振るう。ここまではいつも通り、普通にしていることが
出来る。ホテルの中なので派手に踊ることは出来ないけれども、身をコンパクトに縮めて
回転しながら空間を薙いでゆく。
「ララ―」
来た。
鼓動が高く跳ね上がり、思考が白く塗り潰されてゆく。腹の底から殺戮衝動や破壊衝動
が沸き上がり、それ以外は何も考えられなくなってくる。目標はナナミさんやサラさん、
そしてあの忌々しい女、片っ端からぶち殺したくなってくる。青さんを、あたしの大切な
人を奪わないでほしい。もしそんなことをしようものなら、八つ裂き程度では済まさない。
粉微塵に砕き、擦り潰し、更には豚の餌にまでしてやろう。
いけない。
そこまで考えたところで、あたしは剣を手放した。踊りの動きがスローペースであった
為にそれ程ではないものの、それでも慣性を持った剣は勢いを持って飛んでゆく。それは
少し離れた場所に落ちると、存外大きな音をたてた。
「また……ですね」
自分で言った『また』という言葉に、情けなさを感じる。心がそんな仕組みになるよう
心を改造されたのだから仕方がないと言えばそれまでだけれど、ここまで引きずっている
のは間違いなく自分のせいだ。それがまた情けない。
「馬鹿ですね、あたし」
馬鹿と言うよりも、心が弱いのか。一月も前のことを引きずって、気を抜いてしまえば
暴走してしまいそうになる。曲がりなりに告白をして、その結果拒絶をされたというのに
諦めきれずに青さんを自分のものにしようとしている。その結果が、この様だ。昔、姉が
あたしのことを変な部分で頑固だと言っていたけれども、それは間違いだ。あたしは単に
未練たらしいだけなのだろう。駄目だと理解したものでも素直に諦めることが出来ない、
言うなれば子供のような未熟な精神構造なのだ。それが、あたしの心の改造された厄介な
部分と重なって、どうしようもない状態になっているだけだ。
「本当に、弱いですね」
今に始まったことじゃない、昔からそうだった。それが原因で上層部から目を付けられ、
改造が始まったのだから。向こうとしては、さぞや楽しかっただろう。簡単に突け込んで
きて、思うがままにいじることが出来たのだから。
だから、あたしは落ち込んでしまう。
「それが原因で」
姉を、死なせてしまった。
姉も、あたしを見捨ててくれれば良かったのに。そうすれば苦しむことなく普通に日々
を過ごすことが出来ただろうし、あんな目に遭うことも無かった。思い出すのは、壊れた
笑みを浮かべてこちらを見つめてくる姉の姿。人間としての尊厳を全て無くしてしまった
表情や、上層部の奴らのいやらしい表情だ。
思わず奥歯を噛み締める。
歯が音をたてて軋み、沸き上がる後悔が痛みとなって伝わってくる。
「……リサ」
どうしようもなく優しく、あたしを助けてくれた最愛の姉。
「すみません」
せっかく今回こそは助けることが出来たと思ったのにあたし自身が駄目にしてしまった、
本当にあたしは馬鹿だ。一時の感情に流され、その結果全てを失ってしまった。
いや、完全に失ったという訳では無いだろう。あたしは死んではいないし、青さんなら
全てを打ち明ければきっと元のように接してくれるようになる。青さん自身もSSランクの
罪人だったということもあるけれども、そんなことを抜きにしてもあたしを一人の人間と
して扱ってくれたあの人のことだ。何とかなる、そんな妙な確信がある。
でも、だからこそ頼んではいけないと思う。
今までに知り合ってきた中で一番に優しくて、本当の家族のように接してくれた青さん
だからこそ、そう思う。これ以上迷惑になってはいけない、そしたら今度こそ自分を許せ
なくなってしまうだろう。姉を殺し、更には青さんをも殺そうというのか。
それは、それだけは駄目だ。
一番良い方法は、忘れることだ。
他の監獄都市での失敗のときのように全てを忘れ、無かったことにする。そうすれば、
少なくともあたしの中では何の後腐れもなく終えることが出来る。今までずっとそうして
きたように、今回もそうして次の都市に行けば良いだけだ。青さんのことだから、暫くは
あたしのことを思い出してくれるだろうけれど、きっと時間が何とかしてくれる。不老の
良いところは、それを可能にしても尚、長い時間の人生を楽しめるところだ。青さんの隣
にはナナミさんも居るし、きっと幸せになれるだろう。
そこまで考えて、不意に力が抜けてゆくのを感じた。
「あれ?」
視界が傾き、膝から衝撃がやってきたことで座り込んでしまったのだと理解する。立ち
上がろうとしても足腰に上手く力が込められず、ついには倒れ込んでしまった。どうした
ことだろうか、いつもの通りにしようとしただけなのに、何故か体が震えてしまう。
「青さん、すみませんが……」
少し手を貸して下さい。
自然とその言葉が思い浮かび、今の状況がどんなものかを理解した。
きっと怖いのだ、それもどうしようもないくらいに。
愛した人を忘れ、そして忘れられることがこんなにも恐ろしいものだとは思わなかった。
断られはしたものの、まだあたしの中の青さんへの気持ちは消えておらず、それが恐れへ
直結しているのだ。何て身勝手なのだろう、もう何度目になるか分からないが、再び自己
嫌悪の気持ちが沸いてきた。自分を軽蔑しながらも、しかし青さんへの想いがそれを遮り
阻害してくる。別れなければいけないのに、それを阻もうと甘い衝動が思考を占める。
「会いたいです」
一度言葉にしてみれば、その想いは止まらない。
「会いたい、です」
涙が滲み、視界がぼやけてくる。逃避だと分かりながらもせめて姉さんを感じる為に剣
を拾おうとして失敗し、取り落としてしまった。もう足腰どころか、腕にも力が入らない。
「会い、たい、です」
この剣は、今の自分と同じだ。
元の場所に戻ろうとしても、上手く行くことが出来ない。
「会い……たい…………です」
剣から目を反らして仰向けになり、空を見上げれば、日は既に昇っていた。
「青さん」
青さんの名前の由来、その瞳と同じ優しい色が目に染みてくる。以前はいつまでも見て
いたいと思っていた色が、今はとても辛い。そして、これからのことを思えばそれは尚更
心を強く締め付けてくる。だけど、青さんのことを思えば一番の選択だ。
「言わないと」
さよならの言葉を。
「あたしがあたしでなくなってしまう前に」
青さんを傷付けてしまう前に。
今度は落とさないように剣をしっかりと握り締め、胸に抱いて立ち上がった。
今回はこれで終わりです
まとめを読み返したら、皆の設定が思った以上にややこしかった
GJ!
ロボ氏のSSひとつで3日は保ちます
久しぶりにいたり先輩の背中を押してあげるよ。
── =≡∧_∧ =!!
── =≡( ・∀・) ≡ ガッ ∧_∧
─ =≡○_ ⊂)_=_ \ 从/-=≡ r( )
── =≡ > __ ノ ))< > -= 〉# つ
─ =≡ ( / ≡ /VV\-=≡⊂ 、>> いたり
── .=≡( ノ =≡ -= し'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|
|
| 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
| 東 京 湾
いたり先輩に普通に引く俺は修羅場スキーとしてはまだ甘いのだろうか
>>545 甘いどれだけ甘いかってとアメリカのチョコ並にあまーい
ヤンデレ耐性も無い者が修羅場を語ろうなんて、おこがましいとは思わんかね
さっさと帰るべきだな。
×ヤンデレ耐性
○ヤンデレ活性
で、あるべきだと思うんだ。むしろ攻撃魔法食らうと回復するよ、みたいな。
それぐらいまで行けばいたり先輩を笑って受け入れられるよ。がんばれ。
まあ普通の嫉妬スキーもいるかもしれんからね
スクデイのあれでちょっと流血に進んだし
つかスクイズで嫉妬なんてあったっけ?
|ω・`)攻めていた、いたり先輩が
自分の家の前にいたエースケ君を見ただけで動揺する姿に
興奮を覚えるのだが俺はまだまだ甘いですか?
投下いきます。
自我を手放した人間は、ただ生命を繋ぐための行動のみをするようになる。
理性はなくとも意識はあり、また生物としての機能が止まるわけでもないからだ。
生きる意志がが消えたとて、より根源的な欲求――生きる本能に従うようになるまでのこと。
本能と身体に染み付いた習慣に従うまま生きるそれは、ある意味獣と変わらないといえる。
ならば、人の精神と人にあらざる肉体を持つ者がそうなれば、それは。
獣と言うより、魔物と呼んだ方が近いのかもしれない―――。
・
・
・
・
・
深夜0時、繁華街の裏路地の奥。
3人の若い女性が折り重なるように倒れていた。
完全に意識を落とし、ピクリとも動かないセーラー服の女学生。
くぐもった声で荒い息を吐いている、男の目を惹く際どい格好の女子大生。
恍惚とした表情でだらしなく涎を垂らす、スーツ姿の年若いOL。
年も格好もバラバラの彼女たちだが、血の気の引いた顔色と首筋にある刺し傷のような穿ち痕が共通して見られた。
「・・・・・・・・・・・・」
そして、それを見下ろす人影が一つ。170センチ近い長身と、暗がりでも色を失わない紫の髪を持つ美しい女性。
先の3人も一般的に見れば十分に美少女・美女の部類に入るだろうが、彼女と比べれば道端の石ころに過ぎなくなるだろう。
光無く虚ろな目と相まって、この世の生き物とは思えない様相を呈している。
だが、口の端には血がこびり付き、僅かに開いた唇からは一際鋭い歯―――赤く染まった牙が除いていた。
あまりに異常。
異常なところが多すぎて、どこから指摘していいか分からないほど異常な光景。
だが、女性―――エルにとっては当たり前の行動だった。
いや、そもそも異常という当てはめ自体成り立たない。
なぜならこれは―――吸血行動は、自我を放棄した今のエルが取り得る唯一の行動なのだから。
―――あれから一週間の時が流れた。
エルの一日の行動は、完全にルーチンワークと化していた。
日が昇っている間は、暗がりにうずくまって微動だにせず過ごす。
日が落ちると立ち上がり、血を求めて繁華街を徘徊する。
そして獲物を見つけると、機を見て暗がりに引きずり込み、その首筋に牙を立てる。
人目を忍ぶのは吸血鬼という異端種としての生存本能。
人間を襲う手際は100年近い人生で身体に染み付いた習慣。
ここ数日、暗がりで気絶した女性が立て続けに発見される事件が世間を賑わしている。
無論、その犯人はエルだ。
警察は通り魔事件として注意を促し、繁華街では警官が夜間巡回を行っているが、効果は一向にない。
100年近くを人に知られず吸血鬼として生きてきたのは伊達ではないのだ。
その手際は周囲の人間の目に止まるどころか、不審とさえ思わせない。
何の為生きるかも分からず、ただ本能の赴くままに人を襲い、血を求める吸血鬼。
今のエルは、まさに『魔物』だった。
そして、今日も狩りの時間がやってくる。
時刻が夕方の6時を回った頃、路地裏の廃ビルに身を潜めていたエルがむくりと起き上がった。
「・・・・・・・・・・・・・・」
少々ぼんやりとしていた。何か映像らしきものを見ていた気がする。
だが今のエルにはそれが夢だとさえ分からず、そして何を見ていたかも思い出せない。
とても大切なことだった気がするが、思い浮かべようとすると強烈なノイズが邪魔するように走るからだ。
熱くなりかけた頭を冷やすように冷たい隙間風に身を任せ、ビルの外に出る。
茜色の空はまだ十分に明るいが、行動を妨げるほどの光ではない。
表通りに現れたエルは、早速ターゲットを探し始めた。
歩く彼女の美貌に擦れ違う人間の多くが男女問わず振り返るが、声を掛けようという者はいない。
能面のような無表情と人に在らざる者の異質なオーラが、常人にさえ感じられるほどの近づきがたい雰囲気を発していたからだ。
エル自身は他者を拒絶するオーラを発しているわけではない。そもそも、今の彼女にそういう意識自体ない。
それでも、他者からの接触など邪魔以外の何物でもないエルにとっては好都合と言えた。
だが―――どこにでも、空気を読めない輩と言うのは存在する。
「よお姉ちゃん、久しぶりだな〜?」
「いつぞやは随分恥かかせてくれたよな。お礼参りに来てやったぜぇ?」
「あのクソガキはいねえのか。あんたみたいな美人のこったから、弄んで捨てちまったのか?
それとも、逆に捨てられちまったってか? ぎゃはははははははっ!」
進路を遮られ、エルの足が止まる。
全身で『チンピラです』と主張しているような3人組が、エルの前に立ち塞がった。
どう見ても取るに足らない連中だが、もしエルが自我のある状態だったら、彼らが誰なのか覚えていただろう。
何せ彼らに絡まれたお陰で智と出逢えたわけであり、エルにとっては恋のキューピットと言っても差し支えない存在なのだ。
もっとも当の本人たちは知る由もなく、それどころか恥をかかされた恨みがあるばかり。
智が手加減したこともあるのだろうが、全く懲りていなかった。
心なし俯き無表情で佇むエルを怖がっているとでも判断したのか、男たちはにやけ面を増してエルとの距離を詰める。
「へへへ、ここで会ったが百年目ってな・・・。今日はあのガキも来ねえだろ。
そのヤラシイ身体に、朝まで付き合ってもらおうか」
下卑た笑みを浮かべ、1人がエルへと手を伸ばした。指先を鉤状にした卑猥な手つきで、豊かな胸元を無遠慮に掴もうとする。
行き交う人々は、やはりというか、無視を決め込むか同情の視線を寄越すだけ。
割り込もうとするのは勿論、何らかのリアクションを起こそうとする者さえいない。
その間にも男の手はエルに近づいていくが、エルは何の反応も見せない。
現時点では、別に命を脅かすまでのことはされないと判断しているからだ。
生きるための最低限の危機感しか持たない今のエルに、男たちを拒む意思は持てない。
そして、男の手がその肢体に触れようとしたところで―――。
「・・・・・・!!」
強烈なフラッシュバックがエルを襲った。
今とは違う、だがほぼ同じ状況を映した映像が、記憶の底より引き出される。
男たちに痛い目を見せてやろうとした所に割り込んできた、1人の少年の背中。
その時から始まった、狂おしいまでの愛しさ。
―――でも今、あなたはいない。ここにはいない。私を助けに来てはくれない。
あなたは私のものなのに。そして、私はあなたのものなのに。
その私が、今まさに、あなた以外の男に汚されようとしているのに。
あなたが守ってくれないのなら―――。
その時、後ろにいる男2人は、エルの瞳が紅く光ったのを見たような気がした。
だが、そんなことを気にする余裕はすぐに消え失せることになる。
「私に―――触れるな」
瞳に憎悪の光を宿したエルが、無造作に腕を薙ぎ払う。
エルに触れようとしていた男は、思わずその動きを一瞬止め―――。
ブシュッ!!
―――己の胸から、大量の血を噴き出した。
「ぎゃああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」
自分から血が噴き出すのを見下ろすという異様な光景に、男がたたらを踏んで後退する。
「お、おいっ!?」
その悲鳴に周囲の目が集まる中、連れ2人が男の前に回り込んで、やはり同じように悲鳴を上げた。
爪で引っ掻いたような3本の線が、服を破って肉に食い込んでいたのだ。
血はもう噴き出すほどではなくなっているが、まだ断続的に流れ続けている。
男たちの頭に浮かんだのは、先程まで絡んでいた紫髪の女性。
2人は逃げる態勢を取りつつ、恐る恐る同時に背後を振り返り―――。
そこに彼女はいなかった。
初めから何もなかったような、まるで狐に摘まれたような、そんな肩透かしに拍子抜けしてしまった。
しかし、聞こえてきた声にすぐに我に返る。
「いてええぇ・・・・・・いてえよぉ・・・」
ジタバタと喚く友人の声。見た目は派手な出血だったが致命傷にはほど遠く、思いのほか元気そうである。
機を失ったことで逃げ損ねた2人は、本当なら今からでも逃げ出したい気持ちを抑え、救急車救急車と騒ぎ始める。
そんな彼らをざわめきながら遠巻きに見つめる人々の輪。
その中の誰の目にも、消えた紫髪の女性の行方は映っていなかった・・・。
・
・
・
「はあ・・・はあ・・・」
裏路地の奥深くへ逃げ込み、エルは肩で息を吐く。
物理的な疲労ではなく、精神的な緊張からだ。
いくら身を守るためとはいえ、人通りの多い場所で力を振るってしまったのだから。
この地に留まるのも潮時かもしれない。
この一週間、アフターフォローもなく血を吸って回ったこともあり、結構な騒ぎを起こしているだろうことも想像がつく。
だがその前に、やらなければならないことがあった。
(サトシくん・・・)
やはり忘れられなかった。自我を封じ意識の外に追いやろうとしても出来なかった。
この一週間、女の血しか吸わなかった自分。智以外の男に触れることを、無意識に忌避している。
男性吸血鬼のように特出した性欲を持たない女性吸血鬼は、別に異性からでなくとも血や精気を十分に補給できる。
個人によって多少嗜好は異なるものの、基本的には鮮度の良い血なら何でもいいと言え、それはエルも同じだ。
なのに、女性からしか血を吸わなかった。隙のある若い男性だって沢山いたというのに。
右手の指先に付いた血を、ひと舐めしてみる。
「うっ・・・!」
不味い、気持ち悪い。
あんなチンピラでも一応は若い男の血なのに、激しい嫌悪しか感じなかった。
セックスしながら智の身体に牙を突き立てたあの時の快楽とは比ぶるべくもない。
最早認めざるを得ないとエルは思う。
自分は本能レベルで智に呪縛されていると。
女としても吸血鬼としても、智という存在を欲している。
彼を手に入れずしてこの街を出るなど、在り得ない。
ふと右腕を持ち上げてみる。肉を裂いた感触が未だ残る、細いながらも吸血鬼の力を秘めた腕。
他者を傷つけたのは10年以上ぶり。相手が人間となると半世紀以上になるだろうか。
智が守ってくれないなら自分で守るしかないと振るった力は、彼女自身忘れていたくらいに圧倒的だった。
自分だけじゃない、自分の大切なものだって十分に守れる―――奪える力だ。
(・・・サトシくんでも?)
忌まわしい、けれど何より確かな存在である己の血に、導きを請う。
返るのは肯定の意思。もしかしたら、血の導きが望む答えを返したのは初めてかもしれないとエルは思った。
ならばもう躊躇うことはない。
一体何を恐れていたのだろう。
自分は化物。いくら厭おうと、それは変えられない事実だ。
だったら化物らしく振る舞ってやる。
力で以って、智を手に入れてやる。
『明日も明後日もその先も、ずっとそう。ずぅっとずぅーっとそうなの』
・・・何がずっとだ。何の力もない、何も知らない、ただの人間のくせに。
サトシを守るのは私の役目だ。永遠に近い時間をずっと、本当にずっと共に生きられるのは私だけだ。
お前なんか、お前なんか、お前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんかお前なんか―――。
この手で、八つ裂きにしてやる。
そうと決まればやることは決まり。
何としてでも智を探す。辺りの学校を片っ端から当たるなどすれば、住所くらいは簡単に特定できるだろう。
なぜこんな簡単な方法を思いつかなかったのか、エルは自分を罵りたい衝動に駆られる。
だが、早速行動を開始しようとしたエルの耳に、遠くからの悲鳴が聞こえた。
「・・・!! サトシくん・・・!?」
反射的に空を仰ぐ。近くからの音でないと分かっているが、つい周囲を見渡してしまった。
間違えるはずがない。たった一晩の関係でも、忘れるはずがない。
小さな音だったが、吸血鬼の超感覚は確かに智の声を拾ったのだ。
決意したと同時にこれとは、もう運命としか思えない。
(もっと奥からだわ・・・!)
薄暗い裏路地の、更に奥深く。打ち捨てられた工場地帯。智の声はそこから聞こえた。
人は勿論、街灯もないそこはまだ夕方にも関わらず真っ暗で、まるで深い闇へと誘うよう。
それでもエルは躊躇うことなく走り出した。闇は彼女の最も身近な隣人であり、恐れるものではない。
何より、そこに智がいるのだから。
・
・
・
路地を抜け空き地に出た時、一気に明るくなった風景に視界を焼かれた。
そして視力が戻った時、エルは最悪の光景を目の当たりにしていた。
智と、ポニーテールの見知らぬ女の、キスシーン。
絶望に堕ちかけた心は、しかしすぐさま別の感情に塗りかえられる。
女は剣を手にしており、その切っ先からは血が滴っていて。
智と女の足元には血溜まりが出来ており、今も尚ポタポタとその容積を増やしていて。
頬を赤く染め情熱的に唇を押し付ける女に対し、智の顔は青白く、その身体はただ重力に任せて傾いているだけで。
加えて、先程の絶叫。
導かれる結論は一つしかない。
この女が、智を刺したのだ。
「サトシっ!!」
悲鳴に近い呼びかけに、智は応えない。
代わりに視線を向けたのは、ポニーテールの女の方。
その瞳に浮かぶのは、紛れもない敵意―――いや、殺意だ。
だからエルも、あらん限りの殺意を篭めて睨み返した。
常人ならとっくに失神しているほどの瘴気が立ち込める。
こんな悪意を受け止めるくらいなら、たとえ殺されると分かっていても、意識を手放した方がましと思うだろう。
だが女は―――ただの人間でしかないはずの女は、それを真っ向から受け止める。
それどころか見下すように睨み返し、口元を嘲笑の形に歪めた。
赤く汚れた唇を見せ付けるように舌なめずりし、額から流れ落ちる赤い雫を指で掬って口内へ運ぶ。
エルの目の前で、智の血を。エルしか味わった事のない少年の血を。
見知らぬ女が、我が物顔で、飲んでいる。
そして女は、今エルに気づいたとでも言うように、白々しく言い放ったのだ。
「私の智先輩に、何か御用ですか?」
と。
『・・・シに・・・るな』
エルの怒気が、憎悪が、瘴気が増す。
嫌な思い出しかない為に使うのを避けていた母国語が、自然と口をついて出た。
思い出すのは初めて人を殺した日。人外の魔に生まれ変わった翌日のこと。
無力な少女と思い下卑た欲望丸出しで襲ってきた男を討ち払う時、同じ言葉を口にしていた。
その日以来課してきた、憎しみに身を委ねることへの禁を、今エルは破る。
自らの意志によって。
『サトシに触れるなぁっ!』
叫びと共に、エルは弾かれたように飛び出していた。
今回はここまで。エルは自分的に一番可愛い女の子だと思います。
次回、きれちゃった女2人のバトル。作者としては、自分の首を絞めるような展開です。
ラストのエルの台詞は本当なら外国語で書きたかったですが、スペルが分からないので断念しました。ちくしょう。
>>541 複雑な設定の話が書けるのは凄い。読んでて普通に面白いし。
勿論、次の修羅場にも激しく期待してます!
おちゅかれ
ヘブンオアヘールレッツロック!
対決ktkr!
更なる修羅場の予感も感じる!
聞こえるか 聞こえるだろう
千早の とどろき
点がよぶ、血がよぶ、火とがよぶ!
>>561 二回連続直後投下で申し訳ありません
小ネタ投下します
とある高名な妖狐一族の末娘として生まれたテンコ
妖術の才能に恵まれたテンコは、史上最少年齢で、偶発的に人化の術を為しえてしまった。
しかし。
術は完璧なものではなく、いくつもの代償を支払う羽目に。
記憶を失い、元に戻る術も知らず、人里に出てしまったので助けも来られず。
「……ここはどこですかー? 貴方は誰ですかー?」
「――!? おまえ、狐か!? こんなところで何やってるんだ!」
「ふにゃ?」
「……? 人化に失敗してるのか? 人間に見つかったらまずいかもな……」
「……? あのー……」
「なんだよ?」
「……おなか、すきましたー」
「…………あー。とりあえず美味いもん食わせてやるからウチに来い」
「わーい」
テンコは運良く、人に紛れて生活していた鬼の少年に拾われた。
「白くてあったかいの、いっぱいくださいー。えっと、ぎゅーにゅーです、ぎゅーにゅー。……確か。
……? コノオ、おかしな顔してますけど、どーしたのですかー?」
「風呂上がりに抱きついて変なこと言わないでくれ……。頼むから……!」
「コノオはたまにヘンですねー。でもそれはどうでもいいですー。
にゅーぎゅー! にゅーぎゅー! いっぱいくださいー!」
「ぎゅうにゅう、な。牛はまだ早いだろ。牛は」
次第に打ち解け合っていく狐と鬼。
狐はだんだんと記憶を取り戻していくが、鬼との暮らしが心地良いため、隠しておくことに。
鬼の方は、諸事情により山や里との連絡が困難な状況のため、狐の出自を調べられず、
放り出すわけにもいかないので、ずるずるとそのまま居座らせるしかなかった。
そんな、ある日。
「コノオー! おかえりなさいー!」
「うわ!? テンコ、いきなり抱きつくな――っと、それはそれとして」
「? どうしたのー? いきなりテンコをだきあげてー」
「すまん、ちょい隠れててくれ。あとでいなり寿司作ってやるから」
「いいよー。でも、どうしてー?」
「いやな、ちと雲永さん……えっと、クラスの友達なんだけど、その人が勉強教えてくれるとのことでな」
「?」
「あー。えっと、その、つまりだな、まあ千載一遇のチャンスをふいにしたくないので」
「コノオが何を言いたいのかわからないー」
「要するにアレだ、いなり寿司10個!」
「らじゃー」
「おしいれの中はせまいですねー。
しかしこれもコノオのいなり寿司のためー!
……お、あれがクモナガサンかー…………………………
………………………………………………おんなのこ、ですか」
「あー、悪かったなテンコ。狭かっただろ。
約束通り、いなり寿司たくさん作ってやるから――」
「――コノオは」
「ん?」
「コノオは、よーかいですよね?
わたしと、いっしょですよね?」
「? そうだけど、何を今更」
「じゃあ、ニンゲンといっしょにはなれませんよね?
コノオはよーかいだから。ニンゲンとなかよくしちゃ、だめですよね?」
「は? お前、何を――」
「だめ! ニンゲンのオンナとなかよくしちゃだめ!
コノオはよーかいなんですから! ニンゲンじゃなくて、ニンゲンじゃなくて!」
「――わたしじゃなきゃ、だめ!」
>>569 いい病んだ目をしているな
つうか裏の絵も気になる
>>569 小ネタでも素直にいい感じ
折角だし本格的に描いてみる気は内科医?
あとは絵も好みだ
輪音ちゃんはいきなり覚醒&最強の気配がして素敵すぎるなw
>>569 人外絵師に人外エロパロ師ですか。いいコンビですね。羨ましいです。
互いの煩悩・妄想が作品となって交感される…素敵な関係だ。
この嫉妬狐もの凄く好みだ、九十九の影響で俺も人外属性が大好きになったぜ
>>561 輪音とエルの修羅場大戦勃発ktkr!しかし智にとってはどっちが勝っても大変な事になりそうですな
>>561 エルの見事な依存っぷりに(*´Д`)ハァハァ
俺はエルを応援し続けますとも!
>>569 狐っ子カワユスw
こういう軽い嫉妬もたまにはいいです
エルの故郷はルーマニア?
ノリ・メ・タンゲレ
そろそろ俺にレッドペッパー分の不足による禁断症状が
山本君とたぬきなべとぶらっでぃ☆まりぃとリボンの剣士とキョータくんと(ry
579 :
記憶:2006/12/19(火) 13:30:02 ID:769A/oK5
*02-冷気
そろそろ冬に近いのだろう。道には所々落ち葉が落ちている。
今は過ごしやすい気温だが、冬になれば冷えた空気に身体を縮めてしまいそうだ。
雪も降るかもしれない。何たって冬は寒いんだから。水たまりも凍ってしまうくらい冷たいんだから。
「そろそろ冬ですかねぇ」
沈黙が続いたのでとりあえず思っていたことを口にした。先輩と何も話さずに歩くのは何か気恥ずかしい。
どう言おうと異性同士で登校している事に変わりはない。
「そうね。寒いのは私苦手だけど。綺雪君は?」
先輩は顔を動かさず前を見たまま言った。
「苦手というより怖い、ですね」
ハハ、と笑って頭をかく。自分でも馬鹿な感覚だと思っている。
冬が怖い、いや、寒さが怖いなんて。
「冬が怖いって訳解らないわよ」
「まあ、そうですよね。自分でも解らないです。どうしてなのか」
言ってハァと息を吐いてみる。まだ白い息になるくらいの寒さではないようだ。
だが一瞬、ふわりと冷たい空気が肌を撫でた。
「それはあなたが冬に厭な記憶を持っているからではなくて?」
冷気を纏ったような少女が、いつの間にか横を歩いている。空気が冷たい。
背は俺の肩くらいまでしかないのに妙な威圧感、いや寒気がする。何処かで感じたことのある感覚がする。
胸辺りまで伸びた透き通る水色の髪の毛は綺麗な雪の結晶を想像させる。とても冷たい印象を感じてしまう。
碧く澄んだ瞳からは水晶のような輝き。無機物の美しさを放っていた。
そう、少女はまるで人形のよう。
――寒い。
580 :
記憶:2006/12/19(火) 13:31:54 ID:769A/oK5
「……」
僕は少女に何も言葉を返せなかった。あると言えば、ある。しかし、この少女からはあの日の事しか連想されないのだ。
言ってしまうと何かいけない気がする。これは恐怖なのか。どうしてもこの少女に話してはいけない理由がある。
理由は解らない。でも、その瞳すら合わしてはいけない。
「誰よ、あなた」
僕の横で今まで何も言わずにいた先輩が言った。どことなく口調に棘があり、目も少し吊り上がっている。
少し、恐い。
「私ですか?」
少女は先輩の方へと顔を向けると首を傾げた。
「そうよ。他にいないじゃない」
やはり何か怒っているようだ。
「名乗る程の者ではありませんわ」
時代劇のような台詞を吐くと、少女は僕達の進行方向の向こうへと行ってしまった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
先輩が止めようとするが、少女は振り向かずに歩いていく。何だったんだろうか。
どことなく寒さはなくなっている。うん、日本はまだ温かい。
「あの子誰?」
妙に低い先輩の声を聞き、顔を向ける。
そこには、瞳に輝きがなく、ただこちらを視ている見た事のない先輩の顔があった。
怖い。いつもの先輩じゃない。
「ねぇ、あの子誰?」
声が更に低くなった。死霊の呪詛にも聞こえるそれは恐怖以外感じない。
眼は笑っていないのに、口の端が吊り上がっている。
「し、知りませんよ」
言ってすぐ俺は顔を前に向けた。これ以上あんな先輩の顔、見ていられる自信がない。
「本当に?」
「は、はい」
「そう。今は信じてあげる」
ニコリと笑う先輩。今日の先輩は朝から何かおかしい。朱くなったり、怖い顔をしたり。
でも、どうしてだろうか。それなのにいつもの顔をされると何も言えなくなる。
「……」
何も返せなかった僕は、止めていた足を学校の方へと進めていく。先輩も後を追うように僕の後ろを歩いた。
今はどんな顔をしているのだろうか……。
少しばかり歩くと、僕達と同じ制服を着た学生がちらほらと見えてきた。そろそろ学校が近い。
さっきからここまで何となく気まずいので先輩とは一言も喋っていない。いや、喋れていない。
後ろから黒いオーラのようなモノを感じるのだ。今の先輩に話しかけるのは到底不可能である。ましてや僕みたいな臆病者は絶対に。
何故不機嫌なのかすら解らない。さっき会った少女が原因か……? いや、少女は怒らせる程態度は悪くなかった。むしろお嬢様のような気品溢れるものだった。
そんな問答を頭の中でぐるぐると巡らせていると、校門まで来てしまった。
「あ、じゃあね先輩」
靴箱に靴を入れ忘れんばかりの勢いで先輩から逃げ出した。
後ろも振り向かず、走っては怪しまれるので早歩きでスタスタと教室を目指す。
本当に、今日の先輩は変だ――。
マイペースに続きます。ごくマイペースに。
輪音じゃなくて倫音じゃなかったか?
輪姦じゃなくて倫音じゃなかったか?
736 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/11/27(月) 00:18:15 ID:tkw1B5QT
>>716 こんなんか?
貴方は今からラグナさんです
さあラグナさん、ここが農場ですよ
一生懸命カブを育てて行きましょうね
ラグナさん、弱いモンスターを呼び寄せました
大丈夫です、これ位ならラグナさんは負けません
カッコいい所見せてくださいねラグナさん
ラグナさん、ちゃんと働いているか見に来ましたよ
真面目に働いているようで何よりです
楽しみにしていてください、雨の日は家に遊びに行きますね?
ラグナさん、自分で収穫したカブは格別でしょう?
一杯作って私にプレゼントしてくださいねラグナさん
ラグナさん、私はラグナさんの事が大好きです
私の事をもっと見てくださいねラグナさん
ラグナさん、回収に来るロゼッタさんとは仲良くお話をするんですね
本当に楽しそうです
でも最近私に余り構ってくれなくて寂しいです
これもロゼッタちゃんのせいですか?
そうだ、ロゼッタちゃんがラグナさんの前から居なくなれば良いんですね
そうしたら私に構ってくれますよねラグナさん?
ラグナさん、最近病気や怪我をしているみたいでで心配です
だって毎日エド先生の所に通っているじゃないですか
もしかしてラグナさんはラピスさん目当てで通っているんですか?
それじゃあラピスさんにお仕置きをしなければいけませんね
もうみんな女の子は居なくなったのにラグナさんは出かけてばっかりですね
そうだ、ラグナさんが動けなくしてしまえば良いんですね
大丈夫です、すぐに終わりますよラグナさん
もうどこにも行かなくていいんですよ
ラグナさん、どうしたんですか?
私だけを見てくださいラグナさん
どうして私だけを見てくだらないのですか?
私だけを見てくれないならこんな眼は要らないです
そうだ、どうして気がつかなかったのでしょう
目がなければ他の女の子に目移りしたりしませんよね
ラグナさんラグナさんラグナさんラグナさんラグナさんラグナさんラグナさん…
↑これの続きを誰か書いて
虹は他所でって話じゃなかったっけ?
>>580 GJ!片方のヒロインの戦闘能力が高いから先輩がどう対抗するのかにも注目
子供のころから成長を待ってたのか
逆源氏計画だな
ああー、九十九が気になる。刺されながら強姦されながら死にかけてるという素敵な状況にいる彼の今後が。
>>580 マイペースで期待してます。雪女なのかな?
すげぇ…あの流、刺しながら強姦してる…
今更だけど、流さんってこのスレでも相当人気ある方だよなあ。
590 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 15:50:02 ID:t91VqhQL
殺伐としたスレに救世主が!!
.__
ヽ|・∀・|ノ ようかんマン
|__|
| |
このスレも一気に勢いがなくなってきたな・・
まさか、一日に一作も投下されないとは
と、いう書き込みがある日には大概、投下が来るから、世の中ってホントよく出来てるよね。
このスレのことを心配して言っているんだよ
1日1回小説がないと心配になるってどんな飽食坊やだよ
嫉妬SSこそ、俺の動力源ですから
スレを読み返してみたら昨日も一昨日も一昨々日も四日前も投下がある件について
しかもそのちょっと前には投下ラッシュが起こっているし、……慣れって怖いな
いつもの奴だろ相手にするな
一日っておまえ、俺がどれだけ不義理チョコ待ってると思ってんだw
小恋物語を待ち続けてて全裸状態、はや半年になる俺が来ましたよ。
まあ、なんだかんだでこのスレは今日も平和だな。
ひさしぶりに、新作投下します。
603 :
ツイスター:2006/12/20(水) 19:46:37 ID:QeuBNXeF
平沢進(ひらさわ すすむ)の左足は、膝から下が動かない。
それは生まれついてのものではなく、かつて負ってしまった怪我のせいだった。
10年ほど昔のこと、進は今17歳の高校2年生だから、小学生のころに負った怪我だということになる。
大きな怪我だった。
それ以来、歩くときには二本の松葉杖が欠かせない。松葉杖を体の前方については、右足で地面を蹴って進むのだ。
10年も付き合い続けて、松葉杖さばきも熟練の域に達している。
進は二本の松葉杖と右足だけを使って、ほとんど常人と変わらない速度で歩くことできた。
走れといわれれば、小学生が走るくらいの速さで進むこともできる。
今も、隣で歩いている女の子と同じスピードで、登校することができている。
その娘は、足立沙織(あだち さおり)といって、進の幼馴染だった。
両家の母親同士が、二人が生まれる以前からの親友で、わざわざマンションの隣りの部屋を選んで住むほど仲が良かった。二人は母親のお腹の中にいたころから一緒にいたわけだ。
ちなみに、沙織には父親がいない。沙織が生まれてからすぐに離婚したらしい。つまり、母子家庭だった。
昔は、母親が仕事で出ている間に沙織を進の家で預かることが多かった。
今でも母親がいない日には、進の家に夕飯を食べにくることがあった。そのときはいつも料理の手伝いをしてくれるので、進の母親は喜んでいた。
校門が見てきたところで、進がいつものように沙織に話を切り出した。
「ねえ、沙織ちゃん、そろそろかばん、僕が持つから」
両手を松葉杖に取られている進は、学生かばんを沙織に持たせているのだった。
誤解のないように言っておけば、それを要求するのは進ではなくて沙織だ。
進はかばんを持っていても歩けないわけではない。何より女の子にかばんを持たせるのがはずかしいやら申し訳ないやらで、正直自分で持って歩きたいのだ。
だが、沙織はいつも半ば強引に取り上げてしまうのだった。
それを聞いて、やはりいつものように沙織は笑っていった。
沙織は、笑うとえくぼができる。それがチャームポイントだった。
「なあに遠慮してんのよ。いいから、お姉ちゃんに任せといて」
進はそっとため息をついた。
沙織は世話好きの少女だった。いや、世話好きという言葉では物足りない。献身的とでもいえばいいのか。
何くれとなく、進の世話を焼きたがった。それこそ、進の保護者のように。
もちろん、幼馴染の足が不自由であれば助けてやりたいと思うのが人情だろう。そして、沙織は進より1歳年上の、いわば姉代わりなのだ。
だが、沙織のそれは少々度が過ぎていると、進は思っていた。
沙織は活動的な印象の美少女だった。
ショートの髪に、若干たれ気味のパッチリとした目、通った鼻筋、とがった頤、笑うとできる小さなえくぼ。そして、部活で焼けた小麦色の肌。
そんな少女が献身的に世話を焼いてくれるのだから、男なら舞い上がっても仕方がない状況だといえただろう。
しかし、進はそんな気にはなれなかった。
進の怪我には沙織が関わっていた。はっきり言えば、それは沙織が負わせた怪我なのだ。
過剰な世話焼きには、そのことに対する罪悪感、償いの気持ちがあるのだろうと進は思っていた。
だが、進はもうそのことを気にしてなどいない。昔の話なのだ。
確かに、左足は動かないし、松葉杖なしで歩くことはできない。だが、それでも何とかやっていけるようになった。
おそらく、人の助けが必要になることはこれからもあるだろう。自分は障害者なのだ。
しかし、それも沙織が全てやる必要などないはずだった。助けを求めることもまた、進がそのつど自分でやるべきことだった。
進のそういう気持ちを知ってか知らずか、沙織は相変わらず進の世話を焼き続けた。
それは正直、進にとってつらいものになり始めていた。
かといって、その気持ちを無碍にするのもはばかられた。
沙織と一緒に教室へ向かう途中、沙織には頻繁に挨拶の声がかかる。彼女は人気者なのだ。
美少女で、気立てがよく、成績優秀で、テニス部のエース、しかもそれを鼻にかける様子もないとくれば、人気を集めないはずがなかった。
もちろん、同性からの嫉妬はあるのだろうが、進には分からない。
それに対して、沙織の横を歩いている進に対して声がかかることはない。
いつも松葉杖をついているという以外、進はまったく目立たない生徒だった。
いわば、空気のようなものだ。
だが、男子生徒から向けられる視線にははっきりと嫉妬の色、あるいは敵意の色が伺えた。
彼らは進を、沙織という学校屈指の美少女を、動かない足をだしにして独り占めしているのだと思っていた。
彼らには進は、沙織の優しさにつけこむ卑怯な男として認識されていた。
さすがに直接的に攻撃を受けるということはなかったが、それでもいずれは彼らの鬱積が爆発するときが来るだろうと、進は半ば観念していた。
教室の前まで来て、沙織はやっとかばんを返してくれた。
これでも改善したほうだった。1年生のときには、机まで付き添っていたのだから。
「じゃ、勉強頑張ってね」
沙織はかばんを渡すと、保護者のようなことをいって去っていった。
それを見送った進は、教室に入り、まっすぐ自分の机に向かった。
始業時間までは、まだかなりの時間があったが、すでに教室には何人かの生徒が来ていた。だが、進との間に挨拶も会話もない。進は、無言で自分の席に着いた。
進には友人と呼べる人はいなかった。それこそ、沙織を除いては。
それは単に沙織がらみで反感をかっているというだけでなく、進自身、人付き合いが苦手なのだった。
そうなったきっかけは、足の怪我だった。あれから、友達と遊ぶことが難しくなり、いつも一緒にいるのは沙織だけになった。
そして、沙織が自分以外の友達を作ることにいい顔をしなかったこともあって、進は友達を作る仕方を忘れてしまった。
だから、実際に進が沙織から独り立ちしたとして、本当にうまくやっていけるのかどうか実は自信がないのだった。
本当に自信があれば、多少強引にでも沙織を拒絶すればいいのだ。
だが、進はいろいろと理由をつけてそれをしてこなかった。結局のところ、進も沙織に甘えているのだった。
進の机は、窓際の一番後ろにあった。進はかばんから文庫本を取り出すと、ホームルームが始までそれを読み始めた。
そうやってホームルームを待っているご同輩を、進は斜め前の席に見つけた。
川名愛美(かわな あゆみ)だった。進と同じく、一人で文庫本を読んでいた。
進は、彼女のことをほとんど知らない。会話をしたことすらなかった。
それでも、なんとなく気にしていた。自分と同じく、いつも一人だったからだ。
いや、進には沙織がいるが、愛美にはだれもいないように見えた。
長い黒髪がトレードマークの少女だった。それといささか野暮ったい黒ぶちのめがね。
ただ、肌は白く、顔も進の目には整っているように見えた。多少、痩せすぎかもしれないが。
しかし、とにかくおとなしい少女なので、普段はまったく目立たなかった。
目立つときといえば、彼女がクラスの連中から何かと雑用を押し付けられるときだけだった。
例えば、掃除当番や委員会の仕事を代わってもらうときなど。
愛美は、それを断ったためしがなかった。唯々諾々と従った。
それは、ゆるやかな虐めだといえたかもしれない。
もちろん、愛美が虐められていたとして、進に何ができるわけでもなかったのだが。
進はいつも、一方的な仲間意識といくばくかの罪悪感を持って、愛美の顔を眺めるのだった。
別段、愛美のことが好きだというわけではなかった。会話したことすらないのだ。
ただ、その野暮ったいめがねをはずせば美人に見えるだろうにと、そう思うだけだった。
授業が全て終わって、進だけが教室に残っていた。
進は部活に入っていなかった。だが、帰ろうとする気配はない。
今はテニス部で汗を流しているだろう、沙織を待っているのだった。
登校の時だけでなく、帰宅の時にも沙織は進に付き添った。先に帰ると、沙織の機嫌は悪くなる。
だからこうして、沙織の部活が終わる時間になるまで教室で待っているのだった。
待っている間はいつも、スケッチブックを開いて絵を描いていた。
進の数少ない、というよりは唯一の特技にして趣味がデッサンだった。
静物から人物まで、何でも描く。
だが、こうして沙織を待っている間に描くのはたいてい沙織の顔だった。
脳裏に沙織の笑顔を浮かべながら、鉛筆を動かす。そうしていると、時間を忘れられた。
進は沙織が好きだった。
ただ、それを沙織に言ったことはない。だから、進と沙織はずっと幼馴染のままだ。
進と沙織はまるで姉弟のような関係で付き合ってきた。いまさらその関係を壊すのは怖かった。
確かに、沙織は自分に好意を持ってくれてはいるだろう。そのくらいのことは進にも分かっていた。
ただ、その好意が恋愛感情にもとづいているのかどうか疑わしいと思っていた。
というのも、非現実的なほどに立派な沙織に比べて、絶望的にさえない男だと進は自分のことを思っていたから。
ハンサムでもなく、のっぺりした顔でどちらかといえば女顔で、背も高くなく沙織の方が高いくらいで、成績も良くなく、とりえといえば絵を描くことぐらい。それだって、たいしたことないのは、自分でも良くわかっていた。
釣り合わないにもほどがあった。
そしてなにより、足のことがある。
もちろん、障害を持った自分では沙織に迷惑をかけ続けることになるという気持ちもある。
だがそれ以上に気になるのは、沙織が進の気持ちを受け入れたとしてもそれは結局、同情と罪悪感からのものではないかということだ。
それでは、あまりにも惨めだった。
だから、進にできることといえば、こうしてスケッチブックに沙織の笑顔を描くことだけだった。
我ながら根暗なことだと思いながら。
やがて、教室の戸ががらりと開いた。沙織だった。
「おまたせ。帰ろうか」
進はスケッチブックを閉じた。
もちろん、そこに何が描かれているのかは秘密だった。
見れば、進がどういう気持ちでそれを描いていたのか、一目で分かってしまうだろう。
スケッチブックに描かれたのと寸分たがわぬ笑顔で、沙織が進のそばに駆け寄った。
進はそれを、まぶしい思いで見た。
以上、ノン・トロッポ第一話でした。
ぎゃー!最初の投下分、タイトル間違った。「ツイスター」ではなく、「ノン・トロッポ」です。
>>606 これはいいネガティブ少年…どんな風に翻弄されるのか今から楽しみ。
やっぱ、このスレはいいよ。一日置かずにレベルの高い作品が投下される。
三ヶ月に一度開いたら作品が投下されててすごく嬉しかった、なんてスレもある。贅沢言っちゃいけないな。
608 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 20:31:40 ID:PxHWaeE0
作者様お疲れ様です。ツイスターのパラレルかと思ってビックリしましたw
こういう自信の持てない主人公は大好きです。
ネガティブ思考は修羅場を引き起こす天性の才能でもある。
のっけから痛々しいノリにwktk
新作だ!!
◆zIIME6i97I様は一風変わった修羅場を生み出すので今回もwktkして待ってますよ
新作超GJ!
だけど、主人公の名前が……平沢師匠が頭に浮かぶとどうしても
新作キタwww
俺も最初ツイスターのパラレルなのかとおもたw
こういう主人公は好きだ。これからどうなっていくのか激しくwktk
あと俺が◆zIIME6i97I氏の作品なしでは駄目な体になりそう・・・
613 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 22:50:16 ID:CU5aHttT
平沢進のことかああああ!
咲け〜ロータスぉぉぉ
新作ですねー
相変わらずの執筆速度、頭が下がる思いです
タイトルは音楽用語でしたっけ?
〜過ぎ、とかはなはだしく、とか強調に用いる修飾語句だったような
またマイナーな用語を・・・音大生の方ですか?
新作いいねえ
そういえば今までネガティブ系の主人公って出てきたっけ?
沙織がどう嫉妬道に堕ちていくか楽しみでならねぇ
>>616 自分を卑下するってタイプなら結構いるんじゃね?
不義理チョコの士郎はよく泣いてるけどここまでネガティブじゃなかった。
リボンの剣士とかの方が当てはまるかな。
不義理チョコって最後どうなったっけか
忘れたな
姉ちゃんが寝取ってサヨナラホームランだよ
不義理チョコってまだ終わってない気がしたんだが…
ウシロウシロウシロ(ryから見た記憶がない
気長に待チルダ
そういや、俺の雪桜さんまだぁ?
うえまちE5
したまちC6あたりのNPC
お兄ちゃん、他のスレの匂いがするよっ!
死の館の続きはもう投下されないのだろうか…
そんなこと言ったら
二等辺三角形は…
九十九の想いマダー
小恋物語・・・
632 :
くるっく:2006/12/21(木) 20:02:48 ID:IqXnlB9Q
投下します。初投稿なので駄作と思われるかもしれませんが
不愉快な方はスルーの方向でお願いします。
批判はお手柔らかに(^^)
633 :
関係の境界線:2006/12/21(木) 20:04:31 ID:IqXnlB9Q
今まで一日で一番憂鬱な時間は授業の時間だった。別に僕に限らず大抵の高校生は似たようなものだろう。
しかし最近の僕は家への岐路につく時間が一番憂鬱になってしまった。自業自得といってしまえばそれまでなのだけど。
チャイムが鳴った。全ての授業が終わったことへの開放感が教室に満ちていく。
これから皆、思い思いの放課後を過ごすんだろう。僕――上代宏幸(かみしろひろゆき)――は部活動に参加しなければならない。
しなければならない、とはいっても別に部活動が嫌なわけではない。高校に入学して10ヶ月、部にも慣れてきてそれなりに楽しく過ご
せる時間になっている。
単純に最近は早く家に帰りたいだけだった。
だからといって部活をサボれる気概もない僕はそこそこ友達と会話を交わしつつ部室に向かった。
後ろに感じる視線を振り切って。
634 :
関係の境界線:2006/12/21(木) 20:07:18 ID:IqXnlB9Q
僕は吹奏楽部だ。
最近ではブラスバンド部なんていう今風の呼び方があるみたいだけどこの高校は公立校のせいか昔ながらの吹奏楽部という呼び名を使っ
ている。
逃げるように教室を出てきたからか部室には一番乗りだった。
こういうときは少しだけ気分がいい。
保管室に入って楽器――トランペット――を取り出してくる。
一人だけの部室で組み立てを済まして楽譜を広げる。
この時間はとても心が静かになって部室の静寂に沈んでいくような気分になれる。
まあ、そんな大層なものじゃない。
要は朝起きてコーヒーを飲みながら新聞を読むと優雅な気分になれる、みたいな感じなんだろう。うん。
静寂に沈みながら楽譜をじぃっと見つめていると不意に視界が真っ暗になった。
「だ〜れだ?」
「白峰先輩。」
即答した。
一人で部室にいるときにはよくあることだ。
「もう、つまらないなぁ。」
拗ねた口調ながらも顔は笑っている。
白峰沙由佳(しらみねさゆか)先輩。
二年生の先輩で現部長である。
(別に吹奏楽部は夏に大会があるというわけではないので三年が引退したというわけではないが、公立校の堅さ故か夏が終われば体育会系
、文化系関わらず部長交代しなければならないのだ。)
「また一番乗り取られちゃったわね。これでも授業終わってからすぐ出てきたのだけど。」
保管室から自分の楽器を取り出してきながら先輩が言ってきた。
「一年の教室のほうが部室に近いですからね。」
「最近早いわね。もうすこしゆっくりしてきてもいいのよ?」
「ええ、まあ、大会も近いですし。」
本当の理由は教室から一秒でも早く逃げ出したかっただけだ。
「ふふ、感心ね。部長としても負けていられないわ。」
僕の横に椅子を置いて譜面を立てながら顔を覗き込むようにして先輩が微笑んだ。
先輩の綺麗な蒼い目で覗き込まれると心の底まで見透かされているような気分になる。
635 :
関係の境界線:2006/12/21(木) 20:08:59 ID:IqXnlB9Q
白峰先輩は文句の付けようもないほどに美人だ。
大きくてパッチリとし開いた瞳はそれだけでも愛らしさを出しているのに加えて青い瞳が不思議な美しさをかもし出している。
スッと通った鼻梁に長い睫毛、つやつやの唇、小作りの顔立ちは愛されるために生まれてきたといった感じだ。
白いヘアバンドをつけ腰まで届くウェーブのかかった髪を揺らしながら背筋をピンと伸ばして廊下を歩いているのを見ると皆畏れ多いと
ばかりに廊下のはじによって道を譲る。
実際その光景を見たことがあるけどまさに王族にひれ伏す民衆といった感じだった。(先輩は背も高いから威圧感もあるのだ。)
そんな先輩には同じトランペット奏者ということもあって入学当初から色々面倒を見てもらってきた。
皆からは嫉妬の目で見られたが新入生ならではの無知っぷりでやり過ごした。
といってもそれほど激しい嫉妬に晒されてきたわけではない。
どうも先輩は美人過ぎるせいか近寄りがたいらしく羨ましがられても代わってほしいという願いは少なかった。
曰く、あの眼で見られるとどぎまぎして何も話せない。
曰く、高貴な雰囲気にあてられて窒息するなど。
前述のやり取りを見れば分かるように意外と気さくな人なんだけどな。
「では先輩、今日もよろしくお願いします。」
「ええ、では第三楽章から……」
その後ちらほらと部員が集まり始め、二十人ほど集まった。
大体楽器ごとに分かれての個人練習を行い、最後に合奏練習といういつもどおりの練習を二時間ほどこなした。
636 :
関係の境界線:2006/12/21(木) 20:10:45 ID:IqXnlB9Q
「それでは本日の練習はここまでにしましょう。皆さん、お疲れ様です。」
白峰先輩の締めの言葉と共に皆が楽器の片づけを始める。
僕もため息をつきながら楽器の片づけを開始する。
「あら、今日の練習はそんなに疲れたかしら?」
ため息を聞きつけたのか隣にいた白峰先輩が心配げな眼差しを向けてきた。
「いや、そんなことはないですよ。まだまだ練習し足りないな〜、なんて思ってました。」
あわてて首を横に振りつつ答える。いやもうホントずっと続けばいいのに。
「まあ、熱心なのね。でも駄目。最近は日が沈むのが早くなってきたから早めに切り上げないと。ここは女の子の多い部だものね。」
クスクス笑いながらも楽器を片付けに保管室に歩いていった。
僕も楽器を担いでその後に続く。
確かに僕の個人的都合で部の女性を危険にさらすわけには行かない。
「でもそうね。もうすぐ中間考査もあるし……これから練習時間はますます減ってしまうわね。」
先輩が人差し指を唇に当てながら思案にふけっている。
まったく関係ないけどこういう仕草が無意識に出るからこそ彼女は目立つのだろうと思う。
「朝練を全員参加にすればいいんじゃないんですか?コンクールが近いっていう理由なら皆納得すると思いますけど。」
「あまり厳しくするのもね……やっぱり楽器は楽しい気持ちで奏でないと良い音が出ないから。うん、まあそのことは考えておくわ。」
先輩が考えておくというなら本当に考えてくるだろう。この人はホントに優秀な部長なのだ。
そうこうしてるうちに帰宅準備がお互いに出来ていた。
他の部員は皆帰ってしまって周りには人がいない。
白峰先輩は非常に人気があるのになぜか最後にひとりで残っていることが多い。成りゆきで残っている僕と一緒に帰ることが多かった。
先輩とは帰る方向が同じなのでわりと家に近いところまで一緒なのだ。
637 :
関係の境界線:2006/12/21(木) 20:12:35 ID:IqXnlB9Q
話し上手な先輩との会話は飽きることなく楽しい時間なのだがやはりこの後に待っていることを考えると気が重くなる。
ああ、帰りたくない……
「何か悩み事……?顔色が悪いみたいだけれど。」
鋭い先輩は僕の変化に気づいたらしい。
気遣わしげな視線を向けてくる。
なんとなく優しさに甘えてしまいたくなるが流石にグッと我慢した。
軽蔑はされたくない。
「う〜ん。自炊が続いているせいですかね。一人だとどうも手を抜いてしまいがちで。」
「自炊?あなた、一人暮らしだったかしら?」
「いや。親が長期の出張で家を空けてるんです。後一月ほど戻ってこないみたいです。」
「そう……大変ね。」
あれ?余計な気を使わせてしまったかな。
気を逸らさせるだけのつもりだったのに。
「まあ、一人だと色々気楽なんですけどね。」
慌ててフォローする。
「特にあなたぐらいの年頃だと、かしら?」
悪戯っ気な輝きを瞳に湛えて先輩が顔を覗き込んでくる。
そういう仕草はやめてほしい、特にそういう言動と一緒には。
「もうすっかり秋ですね。まだ6時なのにこんなに暗くなってきたし。」
すさまじく強引に話題転換を試みる。
と、ちょうど別れる場所の交差点だった。
「ふふっ、そうね。それじゃあ急いで帰りましょうか。あなたも寄り道しないようにね。」
優雅な微笑を浮かべながらこれまた優雅な足取りで去っていった。
寄り道……したいなぁ。
638 :
関係の境界線:2006/12/21(木) 20:13:50 ID:IqXnlB9Q
自宅の影が見えてくるにつれて家の前に立つ人間の影も見えてきた。
もしかしたら今日は居ないんじゃないか、なんていう淡い期待はあっさりと打ち砕かれた。
家に近づくたびに足取りが重くなる。
ここ毎日のように繰り返されていることとはいえ――というより毎日のように繰り返されいるからこそ近づきたくないのだ……彼女には。
声が届く距離になって彼女のほうから声を掛けてきた。
「宏くん……」
弱々しい声で、すがりつくような声で僕の名を呼んでくる。
そんな彼女――青崎舞(あおざきまい)――の姿は見ているだけで痛々しい。10月とはいえもうずいぶんと肌寒くなってきているのに。
「舞ちゃん……風邪引くから早く家に帰ったほうがいいよ?」
なるべく素っ気無くなるような言い方で突き放した。
なぜ待ってたのか、なんてことは聞かない。いつものことだからだ。
「宏くん、話があるの。」
僕の声をスルーして舞ちゃんが僕の袖をつかんで上目遣いで訴えてきた。
彼女の僕の袖をつかむのは昔からの癖だ。
639 :
関係の境界線:2006/12/21(木) 20:15:50 ID:IqXnlB9Q
青崎舞。僕と同い年で同じ学校の高校一年生。
更にいうなら同じ幼稚園で同じ小学校で同じ中学校に通ってきた昔馴染みだ。
そして家が隣で現在同じクラス。いわゆる幼馴染というやつなんだろうけど僕はそういう言い方はしたことがない。
そんな言葉で片付けられないほど長い時間を過ごして来たからだ。
小学生、中学生ぐらいの年頃で男女が一緒に居るとたいてい冷やかしという洗礼を受けるけれど運が良かったのか友人に恵まれたのか仲
が引き裂かれるほどの事態に陥ることはなかった。
舞ちゃんは肩口までかかる髪に右側の髪を一房おさげにしている。
小柄な体に白い肌に丸い眼、ふっくらとした頬が白兎をイメージさせる愛らしさを持っている。
家事万能で真面目で穏やか、誰からも好かれる性格だ。
白峰先輩は西洋系の美人とするならば舞ちゃんは日本系の美人なのだろう。
僕達はずっと一緒だった。
だからといってこれからも一緒に居られるとは限らない、男女の仲というものは特に。
なんとなくそのことが分かっていた僕は高校に入学して迎える最初のゴールデンウィーク前に告白した。
「僕は舞ちゃんと居るととても幸せだ。今まではなんとなく一緒だったけどこれからもずっと一緒に居るためにはちゃんとした関係が必要
だと思う。もし君も同じ気持ちならこれからは恋人として付き合ってほしい。」
舞ちゃんは涙を流しながら僕の気持ちを受け入れてくれた。
それから8ヶ月、僕達は恋人として付き合ってきた。そして10月初頭、僕のほうから別れを告げた。
640 :
くるっく:2006/12/21(木) 20:18:05 ID:IqXnlB9Q
以上です。
修羅場分が少なくてスミマセン。
初投稿乙
次回(舞)を楽しみにしてます
GJです。
修羅場デビューおめでとうございますww
何で分かれたんだろう
「僕には彼女の想いが重すぎるよ」とかか?
タイトル見て空の境界を思い出した。
「あー……ヘイ!志穂!」
「うぐ……ひっく…」
「しぃーほぉーちゃんっ!」
「うぅ……ふぇ…し、晋也?」
「はいはい、みんなの晋也君ですよー。」
「あ、れ?強姦魔は?」
「ほれ、これ。俺、だ。」
そう言ってさっきまで被っていたマスクを見せる。
「はぁぁぁぁぁ!?」
驚いたような安心したような顔を見せる。まぁ、レイプされたことに喜ばれたら俺もショックだ。
「な、な、な、な、なんで!?」
「いやぁー、最近志穂が冷たいからさー。ちょっちゅ懲らしめてやろーかなーって………」
「だ、だって、電話……」
「あー、春華にテープレコーダー使って一人二役をやってもらったわけだ。」
「よ、よかったぁぁ………し、晋也以外にやられちゃったかと思って……」
「おうおう。」
憂いやつめ。ああ、俺だって自分以外の男に志穂を抱かせるものかっ!!あー、俺も独占欲強いなぁ。
「でも……よくもそんなこと……」
「へ?」
「してくれたわねぇぇぇ!!!」
「ぎゃあああああ!!!!」
それから枯れるまで志穂に搾り取られましたとさ。笑い事ってレヴェルじゃねーぞ!!
「ほらー、先輩。そんなふうに干からびてないで、はやくナミちゃんの親を探しにいきましょーよ。」
「くぁ……こ、腰がっ……くぅ……は、春華!お前の生気をわけてくれっ!!」
「はいっ!先輩の為なら私のパワーをわけてあげます。んちゅー…」
「んちゅー……ううぅぁぁ!!!」
春華がキスする前に、志穂に唇を持ってかれるんじゃないかというぐらい、強いキスをされた。
「んく……ぷは……ほほほ、間に合ってますからー。」
「うふふ、いえいえ、遠慮なさらずに。」
バチバチバチ…
あー、どうしてこう仲良くできないかなぁ。よっし、ここはいっちょ、俺が一肌脱いでやりますか。
「ほらほら、喧嘩しないで、もっと仲良くしようゼ!ほら、このまえやったみたいに、3Pしようぜ!!」
「「だが断る!」」
「うっ……そんなににらまなくても……」
結構気持ち良かったんだよなぁ、3P。もっかいしたいなぁ。……そうだっ!今からナミちゃんともう一人の幼女を俺好みに育てて……くっくく……ははは!!そうだ!光GENJI作戦だ!
まぁ、俺がその歳で体力が保つか問題だが。
「またやらしい事考えてるわね……」
「先輩、そういう時って後ろ頭を掻きますよね。青少年やっちゃった風に。」
「えっ?」
気付けば確かに頭を掻いていた。ま、まじでが。だから志穂なすぐバレたのか。
「と、とにかくっ!ナミちゃんを迎えに行こうゼ!きっと俺を待ちくたびれてるヨ!」
痛々しい二人の視線に耐え切れず、出るように急かす。
・
・
・
・
・
・
・
・
PinPo-n
「はぁい、あら、いらっしゃい。」
「どうも、志穂のお母様。今日もまた一段となまめかしく……」
ギュウッ!
「HEEEEYYYYEEEAAAAA!!!!!」
志穂と春華による痛恨の一撃が両爪先にヒット!お、親指の爪が剥げるー!!
「あら、いつ見ても元気な子ね、晋也君は。」
「ええ、馬鹿なぐらいにね。」
「ナミちゃんを引き取りに来ましたー。」
「はーい、今連れて来ますねー。」
パタパタとスリッパをならして奥に行く。あー、いい、ねえ、エプロン。年齢に比例して効果が上がっていくね。上限は30までだな。俺の中では。熟女はあんまり好きじゃないネ。
ふふん、今回は頭をかいてないもんね。
これは良作の予感というか雰囲気がガンガン来てるぜGJ!
依存っぽい舞の嫉妬が楽しみだ
ちょい気になった所は最後の
>高校に入学して迎える最初のゴールデンウィーク前に告白した〜―――(中略)―――
>それから8ヶ月、僕達は恋人として付き合ってきた。そして10月初頭、僕のほうから別れを告げた。
付き合ってた期間はGW前〜10月初頭だから6ヶ月かな?無駄に細かくてスマソ(・ω・`)
パァン!!
「がっく!!……な、なぜっ!?」
「頭掻いてなくても、目が完全にイヤらしいわよ。それと……もしお母さんに手を出したら……」
すっと近寄り、いつの間にか俺の秘孔を抑え、脅す。
「二度とエッチできない体にしてやるからね……」
「………」
それは御免仕る。
トタトタトタ……
「パパーー!」
「おっ!ナミちゃん!おかえりー!!」
両手を広げて走って来る可愛らしいナミちゃんを、抱き留めようとした………が…
スカッ
「おぅ?」
俺の腕が空を切る。俺が受け止める前に、志穂がナミちゃんを抱き上げた。
「はーい、晋也はパパじゃないからねー。『私』の彼氏だからねー。」
「ふふ、志穂ったら、ナミちゃんにヤキモチやいちゃって。」
「お、お母さんはだまっててよ!」
「あ、志穂先輩のお母様、晋也先輩の正妻は私です、この春華ですからね。勘違いしないように。」
「なんですって!?」
「あらら、なんでしょーか?」
キャーー!!こんな所でやめてくれー!!
「あらやだ奥さん……修羅場ですよ……」
「まぁまぁ……」
マンマミーヤ…
久しぶりに書いたらなんか変だ……
下手くそでスマソorz
晋也がとうとう帰ってきた!これからナミの真の母親でもうひと波乱あるのかな?
ハーレムも続き期待していますね、五大怪獣大集合の所で終わっているのでwktk状態が収まらない……
そして遂に広き檻の中でシリーズが久しぶりに投下されたのに
割り込んでしまう俺はもうダメポOTL
やった!会いたかったよ春華!
そんなわけでハーレム裏修羅(変な略し方)も待ってますー!
>>650 う・・うおぉぉぉおおおッ!!
神サンタが修羅場を運んで来たッ
続き楽しみに待ってます、全裸で。
さ〜て、クリスマスまで全裸で待つかぁ・・・・・
>654
風邪ひくお、これ使うお
( ^ω^)つ【マフラー】
>>655のマフラーなんて使っちゃダメッ!何が編みこまれてるか分からないわ!
これを全身に貼って!
つ【ホッカイロ】
>>656のホッカイロなんて使っちゃダメッ!何が入ってるか分からないわ!
これを全身にぶっかけて!
つ【熱湯】
>>654 じゃあ私は、腕とか足とか食べて、寒いところを減らしてあげるね
ノン・トロッポ、投下します。
母親が仕事で帰りが遅くなるというので、平沢家は沙織を夕食に招待した。
招待といってもこれはたびたびあることで、双方特別気を使うこともない。
沙織は、おかずを一品持参してきた。沙織自身が作ったものだ。
母親が仕事で忙しい分、沙織が家事のほとんどを分担していて、料理もお手の物だった。
沙織が持ち寄るおかずは、進の両親に好評だった。もちろん進も気に入っている。毎回なかなか凝ったものを持ってきてくれるのだ。
今日は、トマトソースで煮込んだハンバーグだった。
むろん、平沢家が沙織を歓迎するのは、その手土産だけが理由なのではない。
進の父親は、「女の子がひとりいるだけで食卓がぐっと華やかになる」と沙織が来るたびに、それこそ聞き飽きるほどいっていた。
実際、沙織がいるのといないのとでは、食卓での会話と笑いの量が段違いだった。
「だからいったの、目玉焼きにお醤油じゃないひととは付き合えないって」
沙織の、進にはどこがおかしいのかいまいちよく分からない話を、父親も母親も笑って聞いていた。
余談だが、進は父親の影響で目玉焼きには醤油派だった。ご飯にのせた目玉焼きに醤油をたらし、しかるのち崩した目玉焼きと共にご飯をかきこむのが好きだった。
「でも、やっぱりもてるんだなあ、沙織ちゃんは」
父親がいうと、沙織は照れ笑いを浮かべた。
「そりゃ、こんなにかわいいんだから。もてないほうがおかしいでしょ。料理も上手だし。すごくいいお嫁さんになるわよ、きっと」
母親はそういって、進に流し目を送った。沙織は顔をうつむかせている。
沙織が家に来るたびに、しばしばこういう流れの会話になるのが、進は苦手だった。
だから、こちらに話を振られる前にご飯のお代わりをして話の流れを切ろうとする。
「進はどうかなー?」
無駄だった。母親が、空の茶碗を受け取りながら、今度は沙織に流し目を送っていった。
「進はちょっとおとなしいからなあ。ぐいぐいひっぱってくれるような子がいいんだけどなあ」
父親も、沙織に流し目を送りながらいった。
進はそっとため息をついた。
「僕はそういうの、興味ないから」
それで少し白けてしまった座を取り繕うように、母親がいった。
「まあ、進はまだまだお子様だから」
「ああ、そういえばこの前も進ったら…」
沙織がそれを受けて、話を継いだ。
663 :
ツイスター:2006/12/22(金) 12:58:36 ID:voNU+SQ6
進の沙織に対する気持ちを知っているのかどうか、両親が進と沙織にくっついて欲しいと本気で思っていることを、進は知っていた。
二人を茶化しているだけではないのだ。ただ、それが自分を沙織に押し付けようとしているようで、進はいやだった。
もちろん両親が進を疎んじているというわけではない。片足の動かない自分のために、両親はできるだけのことをしてくれたし、十分な愛情をもらっていると思っている。
進と沙織をくっつけたいのは、その愛情ゆえなのだ。つまり、しっかりとした人と一緒になってもらいたいという。
それは分かっているのだが、親の欲目なのか沙織と進が不釣合いであることを考えもしないらしい。
あるいは、両親の気持ちがどうあれ、それが沙織に進の不具の責任を取らせようとしているように見えるということも。
沙織が進に怪我を負わせ、そして左足が動かなくなってしまったことが分かったときには、さすがに平沢家と足立家の間の関係も冷え込んだ。
しかし、沙織の謝罪と、彼女自身が一番参っているのを見て、その仲もすぐに修復してしまった。何せ、進がすぐに沙織を許してしまったのだから。
ただ、すべてが元通りになったわけではないのも確かだった。何より、進の足が元に戻ることはない。
そのしこりはきっと沙織と両親の間にも残っているはずで、この食卓の会話の端々にもそれが顕在化しているような気が進にはした。
「ごちそうさま」
進はこれ以上話が妙な方向に行かないうちに、食事を切り上げることにした。
席を立って、自分の部屋に戻ろうとする。それを沙織が呼び止めた。
「今日、どうだった?」
ハンバーグの感想を聞きたいらしい。
「うん、おいしかった、母さんのより」
進がそういうと、沙織はうれしそうに笑った。花が咲いたような笑顔だった。ひまわりかチューリップだな、と進は思った。
母親も笑っている。こちらには特に気を止めない。
進は今度こそ食卓に背を向けて、ダイニングキッチンを出た。
自分の部屋へ入って、先ほどのやり取りを思い出す。
沙織のことは好きだ。それに両親のことも。ただ、妙な期待をされるのは困る。
沙織にも、進にもそれぞれもっとふさわしい相手がいることだろう。
それに、このまま沙織と一緒にいるのは自分のためにも良くない気がしていた。
沙織がいると、どうしても甘えてしまうのだ。両親も、どこかそれをよしとしているところもある。
結局、両親も進には甘いのだ。
少なくとも、心の上だけでも独り立ちする必要がある。進はそのきっかけが欲しかった。
翌日、進は数学の授業を聞き流しながら、教壇に立つ教師の顔をノートの隅にデッサンしていた。
つまらない授業の間、進はたびたびそうやって時間を潰すのだった。
すると、視界の端を、白いものが横切った。斜め前の席、つまり愛美の机の上から落ちたようだった。
消しゴムだ。自分の椅子のところに転がってきた。
愛美は気づいていない。進はそれを拾い上げた。ただ、授業中の今それを返してやるのは、目立つようでいやだった。
幸い、愛美も今は消しゴムを必要としていないらしい。必要になったときに渡してやろう、そうならなければ授業が終わってから渡してやろう。
進はそう考えて、自分の机の隅に消しゴムを置いた。
664 :
ツイスター:2006/12/22(金) 12:59:24 ID:voNU+SQ6
結局、授業が終わっても、消しゴムは机の上にあった。
休憩時間になったので、進はそれを愛美に返してやることにした。
「川名さん」
後ろから呼びかけるが、聞こえないのか愛美は振り返ろうとしない。何度か呼びかける。それでも反応がなかった。
確かに教室はざわついているが、それでも聞こえないほどではないだろうに。無視されているのだろうか。
進はそう考えて暗澹たる気持ちになりながら、それでも立ち上がって消しゴムを愛美の机においてやった。
すると、愛美はようやく進の方を振り返った。それから消しゴムを見て、筆箱の中を確認して、やっと進が消しゴムを拾ってやったことに気づいたようだった。
「あ、ありがと」
進は愛美にそういわれると、「いや」とか「別に」とか口の中でもごもごいいながら、自分の席に戻った。
そんな風に感謝の言葉をもらうのに、慣れていないのだった。自分でいうことはたくさんあっても。
椅子に座って顔を上げると、愛美はまだ進の方を見ていた。目が合った。
愛美は顔を赤くして、すばやく顔を正面に戻した。その反応に、進は首をひねった。
放課後、進はスケッチブックを脇に抱えて中庭に向かっていた。
今日は天気がいいので、沙織を待つ間、外で絵を描いて時間を潰すことにしたのだ。
皆、部活に出るか帰ったか、廊下には進以外いなかった。校庭からは、ランニングする生徒の掛け声が聞こえてきた。
自分が皆と違うことをいやでも思い知らされるのは、やはりスポーツに関わるときだ。
体育の教師などは、授業のときでも進を積極的に参加させようとし、そのための便宜も図ってくれる。
その気持ちはうれしいが、正直ありがた迷惑だった。特別扱いをされるのはつらい。
「なんかいいなさいよ!」
一階の階段下から、声が聞こえてきた。あまり穏やかな感じではない。進は、気づかれずにやり過ごそうと、音を立てないよう、慎重に階段を下りた。
案の定、階段の下には進に背を向ける形の何人かの少女たちがいて、一人の少女を囲んでいるようだった。
「何よその顔。気持ち悪い。いってみなさいよ」
そうやって罵声を浴びせられているのは、愛美だった。いやなものを見てしまったと、進は思った。
こういう目にあっているのではないかと、うすうす思っていた。
「前から気に入らなかったんだから、この根暗女」
そういっているのは、進と同じクラスの女生徒だった。かわいいと評判の少女で、少女たちで作るひとつのグループを仕切っていた。
今、愛美を囲んでいるのも、そのグループの少女たちのようだった。
進はこれまで彼女たちと関わることはなかったし、この現場を目撃して、これからも二度と係わり合いにはなりたくないと思った。
だから、愛美に対して罪悪感をおぼえながらも、その場を離れようとしたそのとき。
ずっとうつむいていた愛美がなぜか顔を上げた。めがねの奥の目と目があってしまった。
怯えた表情をしていた。目が潤んでいた。助けて欲しいのだろうか。
だが、こんな自分に助けを求めるだなんて、状況がよく分かっていないのではないか。
進はそっとため息をついた。
そして、片方の松葉杖から手を離した。それは床に倒れて、コーンと音をたてた。
それを聞いて、愛美を囲んでいた連中が肩をびくりと震わせて振り返った。
そんなにびくびくするくらいなら、どこかよそでやってくれればよかったのに、進はそう思った。
「あ、平沢…君」
リーダー格の少女はそういうと、いやそうな顔をした。
それはもちろん、誰に見られてもいやな現場だったろうが、進に見られるのは特にいやだったのだろう。
彼女が、自分を苦手にしているのを、進はなんとなく感じていた。
きっと障害者を相手にするとペースを狂わされるのがいやなのだろう。
それに、進のバックには彼女も及ばない学園一の美少女で人気ものの沙織がいる。
幼馴染の威を借る卑怯者といったところか。進は自嘲した。
「ごめん、誰か、杖拾ってくれない?」
進がそういうとしらけてしまったのか、少女たちは今にも舌打ちでもしそうな様子で愛美の方を何度も振り返りながら、囲みを解いて去っていった。
杖は拾ってくれないようだった。進は少女たちを見送ると、愛美の方を見ないようにしたまま、松葉杖を拾おうとした。
虐められている現場を見られたというのは、当人にとっていやなものだろう。そう思ったからだ。
だが、進が一本だけの杖に体重を乗せながら床に手を伸ばしたところで、愛美が駆け寄ってきた。
そして、進より早く、しゃがみこんで杖を拾った。そして、しゃがんだまま進に捧げ持つようにして渡そうとした。
「あ、ありがと」
進は、多少とまどいながら、それを受け取った。
「あ、あの」
愛美が見上げながら何かいいかけたが、進はそれを聞く前に愛美がびっくりするほど素早く松葉杖を操ってその場を離れようとした。
だが、慌てたために、今度は脇に抱えていたスケッチブックを落としてしまった。
「うわっ」
そしてそれを拾おうとして、また一本の松葉杖を床に落としてしまう。
なんてかっこ悪いんだろう、進はそう思った。
まだしゃがんだままだった愛美が、松葉杖とスケッチブックを拾って立ち上がった。
愛美は、手にしていた杖とスケッチブックを進に渡した。
「はい、これ」
それから、進の目を見ていった。
「あの、ありがとう、平沢君、本当に」
愛美は、さっきまでの様子がうそのように微笑んでいた。進は、しばしば彼女の顔を眺めていたのだが、笑ったところをみたのは初めてだった。
かわいいと思った。沙織のような華やかな笑みではない。けれど、路傍の小さな花が一年ぶりに開いたかのような、そんな笑みだった。
庇護欲をそそられた。
いつもは庇護される対象の進は、自分のその気持ちにうろたえた。
そうしてやはり、「いや」とか「別に」とか口の中でもごもごいいながら、愛美に背を向けた。
今度は慌てすぎないように、だが早足で、その場を立ち去った。
変なことをしてしまったと、後悔しながら。
愛美は、進が廊下の角を曲がって見えなくなるまで、その背中を見送っていた。
以上、ノン・トロッポ第2話でした。
ぐああ!またタイトルがツイスターになってしもうた。エディタのあほおお。
愛美が何でいじめられたのか気になりますなぁ…………
タイトルが ツイスターでも GJだ!
こんな風に相手の事考えるあまり自分を卑下して
ネガティブになる主人公とかマジ好み
いじめっ子のリーダー格の少女に俺のレーダーが反応したw
GJ!
着々と物語が進んでいっていますね。
主人公の主観だメインだから、いろいろと妄想できるあたりが楽しいです。
進の怪我の原因が沙織というところになにかあるな・・・
他の女の所に行けないようについやっちゃったんだぜ
673 :
くるっく:2006/12/22(金) 17:35:54 ID:rJE3/RCa
第二話投下致します。ちょっと短いんですがキリが良かったんで(^^)
674 :
くるっく:2006/12/22(金) 17:37:32 ID:rJE3/RCa
「ねえ、宏くん。話を聞いて……」
意識が現実に戻された。
いまだ舞ちゃんは僕の袖を掴んだままだ。
「話って……いつものことだろ?なら僕の返事も同じだよ。」
別れてからほぼ毎日続けられている話――つまるところまた恋人に戻りたいという話だ。
舞ちゃんは毎日のように泣きながら頼んでくるので家に帰るのが非常に嫌になる。
別に僕は舞ちゃんが嫌いになったわけではないから彼女の泣き顔は見ているのが辛いのだ。
「そんな……宏くんが気に入らないところは全部直すよ……髪型だって変えるし服装だって好みに合わせるよ。頑張ってお化粧も覚えてもっと綺麗になれるよう努力する。料理だってもっと上達するよう頑張るから、」
「そんなところを直して欲しい訳じゃないよ……何度も話したじゃないか。」
舞ちゃんの言葉をさえぎって少し強い口調で言い聞かせる。
本当に何度も話してきたからうんざりするのだ。
「何度も何度も何度もいったけど直して欲しいのはヤキモチ焼きなその性格だよ!他の女の子と喋っただけで泣かれるんじゃやっていけないよ……!」
付き合い始めて二週間ほどした頃だろうか、彼女の変化に気づいたのは。
クラスで席が隣になった娘と仲良くなった。
とはいっても彼女持ちな僕は節度を守って休み時間ににこやかに話す程度の関係に留めておいた。
しかしそれが気に入らなかったのだろう、家への帰り道で彼女には珍しい激しい口調で僕に迫ってきた。
「あの子とはもう話さないで!」
それを皮切りに彼女の嫉妬が眼に見える範囲で多くなってきた。
部活動でよくペアで指導してもらってきていた白峰先輩と縁を切って欲しい、帰るときは必ず自分と一緒に帰って欲しい、昼食は必ず一緒に食べて欲しい、など。
最もそれぐらいは何とか許容範囲内だった。
自分だって彼女がイケメンとマンツーマンで部活動にいそしんでるとなればいい気はしない。
昼食だって帰宅だって一緒にしたい。
そのあたりまでは納得できる範囲だったのだ。
付き合い始めが一番難しい、と何かの雑誌で読んだことがある。
ああ、なるほどと思ったものだ。
友達から恋人という関係に変わったのだから対応も少しずつだが変えていかなければならない。
それは今まで誰より――もしかしたら親よりもいっしょにいたかもしれない舞ちゃんでもそれは同じだ。
それでも一緒にやっていきたいと思っていたからこそ僕は舞ちゃんと恋人になったのだから。
しかし徐々に彼女の要求はエスカレートした。行動もエスカレートした。
私以外の女の子と口をきかないで、学校ではずっと自分と一緒の行動して、部活をやめて、など。
更にいつの間にか自分の携帯から女の子のアドレス(部の連絡網)が全て消されていたり、部屋中の女性が載っている雑誌(やましい本ではない)が焼却されたりと我慢できない行動が増えてきたのだ。
僕が言われたことに従わないと泣くことが多くなった。
正直暴れられるより泣かれるほうが辛い。
彼女と話し合って何とか解決しようとした。
こんなことでダメになりたくはなかった。しかし結局彼女の考えは変わらなかった。
だから別れた。
ずっと一緒にいたいと思えなくなってしまったから……
そして別れて二週間、彼女はずっと僕の家の前で待っている。
「だって……いやなんだもの、宏くんが他の女の子と話しているのを見るの……宏くん、かっこいいから眼を離してると他の子に取られちゃいそうで……」
別にそんなに僕はもてたことはない、というか一度も告白されたことなんかない。
むしろ舞ちゃんの人気の高さに僕のほうが嫉妬するほうが自然な流れだと思う。
舞ちゃんは一年の中ではかなりの人気を誇る。
中学の後半あたりから女の子としての魅力が急速に増してきた。
特に小柄な体に不釣合いな大きさな胸は人目を引く。
僕という彼氏がいなければ交際の申し込みが絶えなかったろう。
「とにかくそういう考え方なら僕とはやっていけないよ。お互いに不幸になるだけだと思う。」
突き放した言い方をして背を向けた。
どうすればやり直せるかなんてことは別れる前にもここ二週間でも散々話し合ったことだ。
いまさら話し合うことはない。
「それじゃまた明日。風邪引かないうちに早く家に戻りなよ。」
「……やっぱりあの人のせいなの?」
ぽつりと、今までのすがるような声と違って少しだけ低い声で聞いてきた。
……ん?この展開は初めてだな。
「あの人って……誰?」
「白峰先輩……」
「……は?何で白峰先輩が出てくるの?」
僕ではないものを見ながら睨むような目つきで舞ちゃんは言葉を続けた。
「あの人……ずっと宏くんのこと見てるもん、わかるよ。あの人が宏くんにわたしの悪口を吹き込んだんだ!」
いきなり激昂した。
しかし流石に聞き流してやるわけにはいかなかった。
このままだと先輩にいらぬ火の粉がかかりそうだ。
「先輩は関係ないよ。あの人は冗談でも他人の悪口をいうような人じゃない。舞ちゃんと別れたのは僕自身の判断だよ。僕に恨み言を言うのは仕方ないことだけど先輩に変な言いがかりをつけるのはやめてくれ。」
なるべく穏やかな声で刺激しないように諭した。
「……!!やっぱり、そんなにかばったりして酷いよ!わたしはずっと宏くんだけが大好きなのに!」
叫んで彼女は隣の自分の家に走っていってしまった……
対応間違えたかな?でも何を言っても駄目だった気がする。
ため息を一つついて僕も家の中に入った。
嫌な気分で家の中に入ると空気が余計冷たくなるものだ。
夕食を作る気にもなれずそのまま二階の自分の部屋に上がった。
「何でこんなことになっちゃったのかなぁ。」
なんとなく弱音が出た。
付き合っていた頃はよく食事を作りにきてくれた。
僕もそれなりのものを作ることが出来るのだが彼女は僕より遥かに美味い味付けをする。
同じ本を読んで勉強したのにどうしてこんなに差があるのか聞いてみたことがある。
『わたしの味付けには愛情がこもっているからだよ……』
恥ずかしそうに、それでも嬉しそうなはにかんだ笑顔を浮かべて答えてくれた。
そういう笑顔があったからこそ、わずか二週間で破綻の兆しが見えたのに5ヶ月も頑張ってきたのだ。
努力はした……と思う。
なら駄目だったのは相性、ということになるのだろうか。
友達としては最高、でも恋人としては駄目、とかそういうことなんだろうか。
じゃあどんな人なら恋人として最高なんだろう?
「舞ちゃんにはどんな人がふさわしかったのかな……」
眠りに落ちる前にそんなことをつぶやいた。
678 :
くるっく:2006/12/22(金) 17:46:49 ID:rJE3/RCa
以上です。
前回レスくれた方々、ご感想ありがとうございました。
648さま、ご指摘どうもです。
読み返してみて悶えました(;´д`)
6ヶ月……ていうか5ヶ月ですね。5月の頭から10月の頭までの話ですから。
皆さんの頭の中で訂正してくださいませ。
初心者だけに王道のような感じで書いていくつもりです。
書き溜めてるんで続きはある程度もう出来てるんですけど皆さんの反応を見ながら投下していきたいと思います。
今回みたいな失敗が何処に転がってるかわかんないしね。
って書いてるそばからタイトルの付け間違いがーーーーーー!?
GJ、ここに来る楽しみが増えた
GJそしてどんまいw
舞さんいきなり暴走してるな
投下しますよ
「ねぇ、ユカリ」
『何デショウカ?』
もう何度目になるのだろうか、意味のない呼び掛けにもユカリは答えてくれる。呼んだ
のは良いけれど、その後に続く言葉が思い浮かばない。当然だ、用事も何も無いのだから。
強いて言うならば、呼ぶことが用事になるのだろうか。一人きりと表現すば、ユカリには
申し訳無いけれど。それでも一人きりだと思ってしまうこの状況では、わたしの下らない
呼び掛けにも律儀に答えてくれるその対応が嬉しかった。
目の前にやってきたユカリが小首を傾げて、次の言葉を待つ。馬鹿では無いのだから、
そんなものがやって来ることは無いと本人も分かっているだろう。それでもわたしが諦め
の言葉を言うまで待ってくれているのは、気遣いというものなのだろうか。そんなことを
して貰える資格なんて無いというのに、わたしが親だというだけでそうしてくれている。
「ユカリは今、どんな表情をしているの?」
何気無しに尋ねてみた。外見はデッサンに使う人形をそのまま大きくしたような姿なの
で、顔から中身を窺い知ることは出来ない。中身は人間以上に人間らしいので表情の概念
はあるらしいけれど、それを知る為にはこうやって尋ねる必要があるのだ。
数秒。
『恐ラク、苦笑デショウ』
優しく、どこか困ったような声でその返事が来た。何に対しての苦笑なのかは、答えて
くれない。何度も呼び掛けてしまう子供に対する、母親のような気持ちなのか。それとも
真実を知り、傷付くことを恐れている雛鳥を見ているような気持ちなのか。どちらも有り
得そうで、わたしも苦笑を返してしまった。
全く、愚かにも程があるというものだ。
今まで2000年以上、誰にも相手をされてこなかったからといって、優しく接してくれた
ブルーに対して甘えきっていた。浮かれ、騒ぎ、更には盲目的に感情を入れ込んでしまい、
その想いが叶わないと知ったときには全てを駄目にしようとしてしまった。駄目人間にも
程があると思う、引き込もっていたこの一月の間に、結論が出ていた。
「馬鹿ね、本当に」
幸せになれる機会を、自分で、全て逃してしまった。
一度回り始めた思考は止まることを許してくれずに、最悪の結果を連続で浮かべてくる。
嫌われた、もう二度と会うことは出来ない、会っても拒絶をされてしまう。そんな考えが
浮かんでは消え、想像の量に比例するように涙が溢れてくる。
『さら様、外ニ出マショウ。今日ハ、良イ風デス』
涙を拭い、こちらを覗き込んできた。視覚装置のレンズに映るわたしの顔は、随分酷い
ものになっている。一ヶ月もの間に殆んど絶えることなく流れていた涙によって瞼は腫れ、
食事を軽く取っていたけれどもそれを上回る疲労によって頬は痩せこけている。そのくせ
目は異様な程に輝いていて、それが無ければまるで死体か廃人かのように見えた。いや、
もう廃人も同然だ。ユカリが居てくれたから、まだ、この状態で収まっているのだろう。
それすらも無ければ、もっと酷いことになっていたに違いない。
『無理ニデモ、外ニ出テ下サイ。人ハ、ソレダケデモ楽ニナレマス』
頷きを返して、無理矢理に笑みを浮かべた。これだけ心配をしてくれているユカリには
逆らう意思なんて浮かばない。殆んど動かなかったせいで重く感じる体を立たせ、本当に
久し振りに自室のドアを開いた。それも少し重く感じる。人の体とは不便なものだと思う、
一月前は毎日のようにリーちゃんやユンちゃんの相手をこなせていたというのに、もう体
が鈍ってしまっている。ふらつく足取りを支えるようにユカリに肩を貸して貰いながら、
ゆっくりとした速度で玄関の外に出た。
青い。
最初に浮かんできた言葉は、その一言だった。
ブルーの名前の由来となった、どこまでも透き通る瞳と同じ色。久し振りに人工灯では
ない光を見たせいで目が痛いけれど、ずっと眺めていたくなる。
『さら様』
「気持ち良い風ね。ありがと、外に出してくれて」
柵にもたれかかり目を伏せると、ユカリはわたしの肩から手を離して一歩下がった。
風が頬を撫でてゆく感触が快い。
目を開けば、眼下に広がるのは平和な都市の風景。なだらかな平野に作られている中で
ブルーと行く約束だった時計塔が、高く自己主張をしている。他の建物の何倍もの高さを
誇るそれは、しかし寂しそうに見えない。皆に親しまれているからだと思う。
行きたかった。
また、ブルーと話をしたい。
時計塔を案内してくれると言ったブルーは、そこでどんな話をしてくれるつもりだった
のだろうか。きっと約束通り、わたしが普通だと言ってくれたに違いない。もしかしたら
ここに入った理由も話してくれたかもしれないし、他にも様々に話題を提供してくれたに
違いない。それはどれだけ楽しく、充実した時間なのだろうか。
想像だけで、居る筈の無い人との溝が埋まっていくような気がする。孤独によって渇き
きった心が潤い、満たされていくような感触がある。あくまで想像の産物なのだけれども、
それでもわたしが元気になってゆくのが実感出来た。架空のものでもそうなのだ、実際に
会えばどれだけ楽しくなるか分からない。今まで逃げていたのが馬鹿らしい。
改めて、思う。
やはり、わたしにはブルーが必要だ。
深く息を吸えば、覚悟は決まる。
「ユカリ、わたし悪役になるわ」
どんな反応をするかと振り向けば、軽く目線を伏せていた。
『さら様、ソレハ』
「ごめんなさい、協力してくれる?」
僅かに躊躇った様子の後で、ユカリは頷いた。
「そこに隠れている貴方も、ね」
物陰に隠れていた人影に向かい、指輪を投げ渡す。
これからは忙しくなってくる、わたしが行おうとしているのは一世一代の大博打だから。
上手くいくかは分からない、寧ろ上手く行かない確率の方がずっと高い。でもせめて最後
は派手に、世界最高の大罪人としての務めを果たそうと、そう思う。
「ブルーに伝えて。これから一週間後の午前零時、この世界の全ての確率システムを停止
させるわ。世界は全て狂ってしまうだろうし、ナナミちゃんも動かなくなる。それを阻止
したいなら、その時間に約束の場所に来て頂戴」
そして、
「誰よりもわたしを大切にしてくれた貴方を、誰よりも愛しています、って」
そう、愛しているからこそ、してしまう愚行もある。他の誰にも渡したくないし、それ
を許容してしまう世界も嫌いだ。一度知った蜜の味は、忘れてしまうことなど出来ない。
ブルーのような人が現れるのを2000年以上も待った、そしてその甘美な味に酔いしれた。
次にそのような人が現れるまで、あと何年待てば良いのだろうか。10年、100年、下手を
すると1000年以上も待たなければいけないかもしれない。隣に誰かが居る温もりを知り、
尚孤独に過ごすのはもう不可能だ。そんなこと、絶対に耐えられない。
だから、方法は二つ。
再びブルーを手に入れるのか、
それとも世界を破壊してしまうのか。
気が付けば背後に居る人影は消えていて、ブルーのところに向かったのだと認識する。
「ブルーは、わたしの想いに応えてくれるかしら?」
再び天を高く仰げば、視界を満たすのは曇一つ無い青空。
どこまでも、いつまでもブルーの隣に居たいと思った。
今回はこれで終わりです
サラさんラスボス化のお話
打ち切り最終回っぽい展開ですが、まだまだ続きます
リーダーの女の子が愛実をいじめるのは進の愛実への視線を知ってて、嫉妬にかられたからだと夢想した。
見られて気まずかったのは、進の事が好きだったから…なんかSS一本書けそうだ。
サラさんの相棒ってデッサン人形みたいなもんだったんか。
なんか無根拠に無表情な執事みたいなの想像してた。
>>666 乙です。ネガティブさに不自然なところがなくてすごく好きだな。
>>687 GJ サラの「彼が手に入らない世界なんて壊れてしまえばいい」、そんな考えは素敵すぎるぜ
>>678 舞タソの独占欲と嫉妬心と暴走している思考回路に惚れた
やはり愛情は恋する乙女の調味料であると
>>650 GJ
俺はずっと待っていたんだ
俺から言えるのはこれだけだ
イィィィヤッフゥウゥゥゥゥ
>>666 ネガティブ思考な主人公がマジでツボです
本当に素晴らしい作品だ
勢いに任せて書いちゃいました。投下します。
Episode1 「The person who watches it」
「はあぁぁぁぁ………」
城島友二(じょうしまゆうじ)は教室の自分の席に座りながら、本日何回目かの
溜息をついていた。
いや、今日だけじゃない。昨日も一昨日もその前も友二は気が付くと溜息をつい
ていた。
そう、全てが始まった「あの日」から……。
「ねえ、ちょっと」
腕をつつかれ、呼ばれたので隣を振り向くとその視線の先には幼なじみにして彼女の
「坂奈睦美」(さかなむつみ)が険しい表情で
「ねえ友ちゃん、また来てるわよ。どうするの?」
「どうするもこうするも……俺が聞きたいよ。」
そう、友二の溜息の原因。それは――
友二のクラスの廊下に出るドアがほんの僅かにに開いてて、隙間から覗く
「目」
友二の席からドアは5〜6メートルは離れているはずなので、普通なら他の生徒
の喧騒によって聞こえないはずなのに友二には聞こえていた。こちらを覗いている目
から囁く声が……。
「友二くん友二くん友二くん友二くん友二くん友二くん友二くん……」
まるで呪文のように呟くその人を友二はよく知っていた。
しかしそんな光景も朝のチャイムが鳴れば終わる。だからそれまでの我慢だ……
友二は必死に自分に言い聞かせていた。
案の定
「キーンコーンカーンコーン」
「友二くん……お昼に逢いましょ」
鐘の音と共にこちらを覗いていた目はそう囁き、スーッと消えていった。
それと同時に友二にとって「授業」というささやかな休息が始まった。
そうお昼までの……。
お昼休み
クラスの生徒は各々弁当や食堂へ向かう者などいる中で、友二は
重い足取りで食堂へ向かおうとしていたら不意に睦美が
「友ちゃん、お弁当作ってきたんだ。一緒に食べよ」
睦美が声を弾ませながら、鞄から弁当を2個出してきた。
これも「あの日」から始まった光景だが、友二は居た堪れない気持ちを堪えて
「睦美……知ってるだろ?先輩が食堂で待ってるんだ。睦美一人で食べてて」
「ほら見てみて!友ちゃんの大好物の卵焼きも入れたんだ。美味しそうでしょ?」
涙目で卵焼きを箸に摘んで差し出してきた睦美に
「ごめん、今食べると先輩にばれて大騒ぎになるから……」
「あれ?卵焼き嫌い?だったらこのたこさんウィンナーなんてどお?」
もう何も言えない友二。だがそんな友二に睦美は溜まっていたものが爆発し
「ねえ?ねえってば!!どうして黙ってるの?!私達付き合ってるんでしょ?!
なのにどうしてお昼に弁当を一緒に食べてくれないの?!そんなにあの先輩の方がいいの?!
ねえ!!どうして……あの日から一回も弁当食べてくれないの……」
「……ごめん」
早足で教室を出る友二の耳には睦美の泣き叫ぶ声がいつまでもこびり付いていた。
食堂にやって来た友二は探すことなく窓際の席へ向かった。
そこに必ず居る指定席……居た。先輩だ。
「遅い!!5分も一人で待っちゃったわよ!!」
「先輩…………………」
頬を膨らませて怒っている先輩のテーブルには既に昼食が並んでいた。
「先輩、何度も言ってますが俺には睦美っていうちゃんとした彼女がいて、お昼は
弁当を食べるから食堂では食べない―――」
「まあいいわ。お腹空いちゃったから食べましょ。あ、友二は今日食べたい
のは「みそラーメン」でしょ?はい、頼んどいたわよ」
「最後まで話を聞いて下さい!!」
友二は力一杯机を叩き、真紀を睨みつけた。だが―――
「ひっ………酷い……そんなに怒らなくても……ただ私は……ぐすっ……
友二と一緒に……お昼を食べたいだけなのに……」
すると真紀はしくしく泣きながら、手首に着けていたリストバンドを外し、
胸ポケットから取り出したカッターを手首に当て
「友二に嫌われた……さようなら」
「待って!!先輩!!ストップ!!」
「離して!!離してよ!!私のこと嫌いなんでしょ?!だったらこんな世界に用はないわ!!
死んで来世で幸せになるわ!!!!」
「大丈夫!!大丈夫ですよ!!俺は先輩のこと嫌ってませんよ。だからそんな物騒な物しまって
下さい。」
真紀の手首を掴みながら、友二は必死に説得した。こんなこと一度や二度ではない。
真紀の手首には無数の切り傷が走っていて、事あるごとに手首を切りつけてきたのだ。
「……ほんとう?本当に嫌いになってない?」
「ええ、本当です。さ、先輩が用意してくれたお昼を食べましょ」
「うん……うんそうよね、友二が私のこと嫌いになるわけないもんね。
食べましょ♪」
本当はとてもそんな気分じゃなかった。全く味を感じることがなく
ただ炭水化物を胃に流し込むだけだった。
「はい友二、あ―――んして♪」
昼休みが終わった後は睦美の冷たい視線を感じつつ、放課後を迎えたが
友二にはまだ大きな仕事があった。
お昼にすっかりヘソを曲げた睦美の機嫌を直すという大仕事が……
真紀は帰りは一人で帰るため、友二にとってこの帰り道は睦美
の機嫌を直す数少ない時間だった。
もっとも真紀の放課後の行動の理由は、友二にとって迷惑以外の何物でも
ないのだが……
家に帰宅する途中、友二は手を繋いだり優しい言葉を掛けたりとあらゆる手を使って
睦美の機嫌を直そうとしていた。その甲斐あって少し機嫌を直した睦美が
「そりゃ……私だって分かってるわよ、あの先輩の奇行淫行悪行蛮行は。
友ちゃん優しいからね、あんな肥溜めに溜まっている汚物以下でも優しくしちゃうんでしょ」
「汚物って……まあそれはともかく今度の冬休みには旅行にいけそうだから
予定空けとけよ」
「え?!本当?やったーー!!ダメだと思ってたから嬉しい!!」
はしゃぐ睦美を見ていると、友二はここ数日のバイトの苦労も報われる思いだった。
よかった、何とか機嫌が直ったようだな
「ぐふふ……、友ちゃんと二人きり、邪魔者はいない、旅行の開放感から大胆になる
友ちゃん、混浴なんかあればそのまま浴槽で……ズブリ」
「おい、睦美!!涎出てるぞ!!」
「おっとっと、じゅるり。じゃ、友ちゃんまた明日ね!!」
すっかり機嫌の直った睦美は疾風の如く走っていき、友二はそんな睦美の後ろ姿を眺めていて、
僅かな不安を感じていた
あの先輩がもしこのことを知ったら……
しかし所詮無駄なのだった。あの桝井真紀(ますいまき)に隠し事など……
それでも友二はこの時まではまだ睦美との旅行を楽しみにしていた。
もしこの時、真紀の本性を知っていたら旅行は取りやめにしていただろう。
友二の遥か後方の電柱の影にいる一人の女性……
長い髪のその女性は友二を血走った目で真っ直ぐ見つめ、一言呟いた
「…………旅行…………」
と。
第一話「見守る人」完
勢いが続く限り書いちゃいます。壊れていたデータもつい先日復旧し
シューティング☆スターとハーフ&ハーフのデータも無事取り出せました
ので、近いうちに投下予定
タイトルの意味は「絆と絆」です。果たして誰と誰との絆だか……
>>699GJ!
修羅場スレにまた一つ眩い綺羅星が!
GJ!!
早朝投下
翌朝、沙織と並んで登校していた進は、学校の近くまで来て、前方に見慣れた背中を見つけた。
愛美だった。朝日を受けて、長い黒髪が白っぽく光を跳ね返していた。
その姿を見て昨日のことを思い出し、進はため息をついた。
「あ、またため息ついた。良くないよ、その癖」
それを目ざとく見つけた沙織に指摘された。
「ああ、また幸せが逃げていった」
進はわざとらしく嘆いて見せた。
「まあまあ、その分はわたしが補填してあげるから」
そういって笑う沙織に、進も笑い返すしかなかった。
確かに沙織は幸せそうだ。それこそ、他人に分けてやれるほどに。
不幸の種があるとすれば、離婚して家を出た父親のことくらいだろうか。
もう、ずっと会っていなくて、顔も分からないらしい。
離婚した親でも子供に会う権利はあるはずだ。それでも会っていないというのは、父親の方が顔を合わせたくないということなのだろうか。
沙織と母親の仲はとても良いように見えた。
もちろん、進も沙織の母親とは顔見知りで、おばさんおばさんと慕っていた。今では恥ずかしい話だが、進の初恋の相手でもあった。
年は進の母親と一緒のはずだが、とてもそうは見えず若々しかった。そして沙織に似て、といより沙織の方が似ていることになるのだろうが、活発そうな美人だった。
大手のアパレルメーカーに勤めていて、毎日多忙のようだった。
その母親を、沙織はよく支えていた。しかも、ずっと以前から。中学生のころにはもう、一通りの家事をこなしていた。
そのころから沙織は実際の年齢以上にしっかりとしていて、それが今の手厚い世話焼きにつながっているのだろうと、進は思っていた。
進は教室に入ると、愛美は一足先に席についていて、いつものように文庫本を読んでいた。
進は愛美の席を横切って、自分の席に向かう。
どことなく気まずい。
そのとき、愛美が文庫本から目を離して、顔を上げた。
何気なくという感じではない。タイミングを計っていたようだった。
「あの、お、おはよう」
進は虚をつかれた。
「ああ、うん、えと、おはよ」
進はなんとか挨拶を返した。沙織はすぐに再び文庫本に目を落としてしまった。
その耳が赤くなっていた。
704 :
ツイスター:2006/12/23(土) 07:41:22 ID:aq8hKwAQ
放課後、進は教室でスケッチブックを広げていた。
いつものように、沙織の顔を描いていた。
くぎりがついて、手を休める。ふと、斜め前の愛美の席が目に入った。
今朝の挨拶以外、彼女と言葉を交わしてはいなかった。それはいつものことだった。
昨日はちょっとしたイレギュラーがあっただけで、それだけで今までの関係が変わるわけではない。
というより、もともと二人の間にはクラスメートということ以上の関係はないのだ。
進は昨日、愛美が見せた笑顔を思い出した。
いつもあの顔で笑っていれば、友達だってできるだろうに。
進も愛想のあるほうではないが、愛美はそれ以上に無愛想であるように、進には見えた。
それからめがねをとってみたら。意外ともてるのではないか。
進はそれを想像しながら、鉛筆を手にとっていた。
スケッチブックをめくって、愛美の顔を描きはじめた。
まずはめがねつきで。いつもの表情で。暗い。
それから、笑顔バージョン。なかなかいい。
めがねなしバージョン。
めがねなし、笑顔バージョン。ぐっとよくなったが、まだどこか暗いか。
そこまで描いて、どことなく暗く見えるのは前髪が長すぎるせいだと気づき、それを少しだけ短く切りそろえてみる。
古風な美人ができあがった。欧米系に見える沙織とは、まったくタイプの違う美人だった。
和服が似合いそうだと思った進は調子に乗って、和服バージョンを描きはじめた。
いつの間にか机のうえに臥せっていた進は、自分のそばに誰かの気配を感じて目を覚ました。
がばりと体を起こした。
そばにいた誰かが、「きゃっ」と小さく声を挙げた。
愛美だった。
進のスケッチブックを覗いていた。
進は、「わっ」と声を挙げてそれを隠した。
見られてしまった。だが、どこまで見られたのだろう。
「ご、ごめんないごめんなさい、わたし、わたしつい」
愛美はぺこぺこと頭を下げた。
「ああ、いや、別に、どうってことはないけど」
正直文句は言いたかったが、自分のスケッチブックを覗かれたぐらいでぐだぐだいうのは男らしくないと思い直した。
そのまましばらく頭を下げていた愛美が、おそるおそるといった感じでいった。
「あの、それ、もしかして、わたし?」
進は自分で隠したスケッチブックを改めて見た。
めがねを取り、前髪を少し短くして、しかも和服を着せた愛美が微笑んでいた。
とてつもなく恥ずかしい。顔が赤くなった。
愛美の顔も、これ以上ないというほど赤くなっていた。
それは、こんな勝手な妄想の具にされれば女の子として恥ずかしいのは当たり前だろう。
いやそれどころか、怒っているのかもしれない。
甘やかされてきた進は、怒られるのが苦手だった。いつまでも引きずってしまうのだ。
「あの、ごめんっ、おかしなもん描いて」
進はそこまでいって、自分のほうこそおかしなことをいってしまったことに気が付いた。
「あ、いや別に川名さんがおかしなもんってわけじゃなくて、ただ僕の絵が、その、なんか違うっていうか、これは想像で」
進がわたわたとそういうと、愛美は少しだけ微笑んだような気が、進むにはした。
「わたしはただ、すごく上手だなって思っただけで」
どうやら、怒ってはいないようで進はほっとした。
「あの、ほかには見た?」
「ううん、それだけだけど」
進は安堵のため息をついた。沙織の絵のほうは見られていないらしい。
それを見られていたら、しゃれにならない。何しろ、何十枚と沙織を描いているのだ。まるでストーカーだった。
少しの間、沈黙が降りて、それから愛美がいった。
「美術部には入らないの」
前にも、誰かにいわれたことがあった。
「うん、これはただの趣味だし、暇つぶしっていうか、いや、描くのは好きなんだけど」
「わたしもそんな感じ。でも、入ってますよ、美術部」
初耳だった。愛美も同じ帰宅部だとばかり、進は思っていた。
「どうせ描くなら道具があるほうがいいし、石膏とか、静物もあるし、美術部は人も少ないから落ち着いて描けるし、それから、えと」
愛美の声は少しずつ小さくなった。
「あの、だから、もしよかったら、入らない、美術部。今、うち人がいなくて。男の子が一人もいなくて。それは別にいいんだけど、いえ、よくないんだけど、でも女の子もやっぱりほとんどいなくて、あの」
進も、美術部に入ろうと考えてみたことはあったから、そういう事情は知っていた。
部員は女子ばかりで5人ほどだという。そこに愛美が入っているのは知らなかったが。
「でも、僕もう2年だし。2年からってのもなんだか」
「大丈夫!」
愛美が、進の想像外の大きな声でいった。
「うちは上下の関係なんかもないし、部長さんはいいひとだし、みんなもいいひとだし、顧問の先生もいいひとだし、きっと歓迎すると思う、みんな」
愛美の話を聞いていると、世界中いいひとだらけのような気がしてきた。
彼女の口から、そういう言葉を聞くのは意外な気が、進にはした。
孤独だと思っていたのはこちらの勝手な想像で、彼女には彼女の居場所があるらしい。
「うん、でも、なんていうか、その」
進は煮え切らない。はっきりとはいえないが、沙織のことが引っかかっていた。
「じゃあ、見学しましょう」
「今から?」
「今から」
ここまで積極的になれる娘だとは、思ってもみなかった。
新入部員勧誘のノルマでも課されているのではないかと、進は思った。
例えば、その「いいひと」である部長にいいつけられているとか。
だとすれば、むげに断るのも悪い気がしてきた。あの愛美がここまでくいさがるのだから。
別にすぐに入部させられるわけでもない。見学くらいかまわないだろう。
時計を見ると、沙織が来るまでにまだ時間はあるようだった。
進はそっとため息をついて、杖を突きながら立ち上がった。
「わかった、行こ」
愛美はうれしそう笑った。
どうやらまるっきり関係が変わらなかったというわけではなさそうだと、進は思った。
進としては、それがいい関係であるように祈るしかなかった。
幸い、愛美はいかにも人畜無害であるように思えた。
以上、ノン・トロッポ第3話でした。
そしていつものごとく、タイトルをミス。
青春っていいなあ。帰りたい、あの頃に。
>>707 GJです。
一箇所誤字を発見したので、いちおうご報告を。
>進はなんとか挨拶を返した。沙織はすぐに再び文庫本に目を落としてしまった。
その耳が赤くなっていた。
ここって沙織→愛美ですか?
>>708 あぎゃ。そのとおり、愛美です。
ご報告どうもです。
>>707 GJ! そしてこれからの展開にwktk
美術部と聞くとエロゲのcanvasを思い出して
自分の高校生活との差を思い知らされて鬱になる俺
弱小空手部だったからなぁ・・・
コードギアスがいい感じにどろどろしてきたw
GJですよ。やっぱりずっと一人称だと主人公の鬱が引き立ちますね
しかしタイトルミスはもう次子の怨念としか思えない
「ただいまミャー子」
玄関のドアを開け、挨拶をする。そこには既にミャー子がいて、僕に擦り寄ってくる。これが日常の風景です。
「シンタローおかえりっ!」
人間の姿になり喋ることを除けば今でも変わりありません。靴を脱ごうと腰掛けた僕に後ろから抱きついてきました。
「シンタロ〜」
「あっ、こらっ、ミャー子。靴が脱げないじゃないか」
抱きつくだけではなく、甘い声を出して首筋に鼻を押し付けました。
「シンタローのにおい、すき」
僕にもはっきり分かるように鼻を鳴らしてます。
相変わらず匂いを嗅ぎまくるのは勘弁してほしいです。
ここで一つ分かったことがあります。背中におっぱいが押し付けられるのを感じても、それで興奮することはありません。
やはりと思いました。
昨日、ミャー子の体に股間が反応したのは、何日も溜めてたからなんです。
僕は安心しました。可愛い女の子になった飼い猫を、雑念を以て見ることがなくなったからです。
定期的に、それこそムラムラする前に発散させれば万事解決です。
確かに、ワンルームですから人間2人が住むには狭いです。今日も同じ蒲団で寝ないといけません。
ですが大丈夫です。僕がしっかりしてれば、今まで通り仲良くやっていけると思います。
「……あれ……」
突然、ミャー子の動きが止まりました。
「ミャー子?」
「シンタローのまたから、せいえきのにおい、する……」
発せられたのは、冷たい声。いつものそれとは違い、低い音程でした。
そして、次第に震え出す体。彼女の振動を背中からダイレクトに感じ、僕は冷や汗をかきました。
(まさか、ばれた?)
僕は咄嗟に抱擁を解き、玄関のドアにのけ反りました。
格段に嫉妬深いこの猫の次の反応に戦慄したからです。
ただ下を向き、ブルブルと体を震わせ、それが次第に大きくなっていきます。
尻尾も、ピンとV字型に伸びてます。
「あの……ミャー子?」
今の気分は、立て篭もった犯人を刺激しないように説得する新米警官。
来るはずのないネゴシエーターを心待ちにしながら、僕は身構えました。
「シンタロー!!!」
「ひっ!?」
何という情けない声でしょう。飼い猫に怒鳴られて怯える主人なんて聞いたことがありません。
ミャー子はまさに飛び掛かりらんとするような威勢で待機してるので、思わず身構えてしまいました。
「がっこうでち〇ち〇しゅっしゅっ、したな!!!」
「ごめんなさいごめんなさ……って、え?」
「がっこう、べんきょうするところ!シンタローばかっ!!せめて、いえでしろ!」
……どうやら、勘違いしているようです。
先生に抜いてもらったのではなく、自分でしたと。
実は、うちの学校の更衣室にはシャワールームが併設されてます。
6限の体育は持久走だったので使用したんですが、それで勘違いしたようです。
パンツにごく微量の精液が付着してるだけで身体からは特に別の匂いはない。だから自慰したのだと。
それに、先生に直接触られたのは睾丸と唇だけだったので大丈夫だったんだと思います。
それにしても、さすが猫。犬には及ばないまでもその嗅覚の鋭さには驚かされます。
もっと執拗に匂いを嗅がれてたらばれていたかもしれません。不幸中の幸いですね……
「わ、悪かったな!もう限界だったんだよ……家でしようにもいつもミャー子が邪魔するしさ……」
僕はミャー子の勘違いに乗ることにしました。やはり、情事は知られたくありません。
「ミャー子と交尾すればいい!」
「だからできるわけないだろ……」
「なんで!?ミャー子、ヒトになった!シンタロー、ミャー子のしゅじん!すきにしていい!」
激しい口調の割りには、その顔から怒りが消えてました。代わりに表れたのは、何とも言い難い、やるせない表情でした。
「ミャー子がしあわせなの、シンタローのおかげ。シンタローがたすけてくれたから、ミャー子いきてる。
はらいっぱいたべさせてくれて、いっぱいあそんでくれる。シンタロー、ミャー子のためにいろいろしてくれる。
でもミャー子、シンタローにおんがえしできてない。ネコだったから、できなかった。
いま、ヒトのすがた。それでも、なにもできないけど、交尾ならできる。シンタローのやくにたちたい」
たどたどしい口調だけど、ミャー子は切実な想いをぶつけました。
それは、猫の姿の頃からずっと抱いてたものなのでしょう。
水臭い。そう思いました。
ペットのくせに、主人に恩返ししたいなんて言うんですから。
「ミャー子」
僕はミャー子を抱きしめました。
「恩返しなんていつもしてもらってるよ」
「えっ……」
「ミャー子がいてくれるだけで、僕に構ってくれるだけで、幸せな気持ちになれるんだ」
寒空の元から帰っきて身体が冷えてるので、ミャー子の体温が心地良く、そして愛しく感じられます。
「交尾なんてしなくていい。今まで通り僕を愛してくれれば、それでいいから……」
「シンタロー……」
ミャー子は頬擦りをしてきました。頬に当たるその温かさは、僕を癒してくれます。
「ミャー子、シンタローのこと、あいしてる」
「僕もだよ、ミャー子」
しばらくの間、お互いの感触と愛情を確かめ合いました。
2本の尻尾が縦にゆらゆら動いています。これは嬉しさの表れです。
「でも」
「ん?」
「どうしてもがまんできなくなったら、ミャー子にいえ」
「うん、分かった」
「それと」
「うん」
「ほかのメスとうわきしたら、とうきょうわんにしずめてやる」
「だからお前猫だろ!?どこでそんな言葉覚えたんだよ!!」
感動的なシーンを台無しにしやがってこの愚猫は……
さっきはミャー子のことが思考の大部分を占めてましたが、夜が深まり床に就くと別のことを考えてしまいます。
そう、響子先生のことです。
一学期から授業などで面識がありました。でもそれは、新任教師と生徒という、何の変哲もない関係でした。
長身でセミロングを後ろに束ねタイトスーツに身を包んだ、所謂デキる女性の体現。
一瞥すればきっと英語や数学の担当教諭かと思うほどです。
そのせいか近寄りがたい雰囲気を持ち、近寄りたくても近寄れない生徒がたくさんいるようでした。
僕もご多分に漏れず先生に苦手意識を持っていたため、対した交流もありませんでした。
状況が変わったのは一ヶ月前です。
ある出来事がきっかけで、僕は先生と親密な関係になりました。
……いえ、親密という言葉で片付けるほど単純なものではありません。
仲良くなりいくつかの段階を経て初体験……ではないのです。
何の前触れもなく家庭科実習室に連れていかれ、僕は童貞を奪われ、同時に先生の処女を貰う形になりました。
その時僕は気が動転していて碌な反論もできず、されるがままでした。
気付いた時には、先生の中で果ててました。
それ以来、先生のことを意図的に避けてました。
勝手に事を進めたのは先生だという風に言い聞かせても、対して親しくもない人の純潔を汚してしまったことに罪悪感があったからです。
本当は、今日の呼び出しを無視するはずでした。
事実を認識する度胸を持ち合わせていないせいで、先生と再び対峙するのが怖かったから、うやむやに濁してしまおうと思いました。
でも僕はそうしませんでした。
何故か。
たぶんそれは、先生にもう一度会って、半ば強制的に屠られたいという深層心理が働いたからかもしれないと、今になって考えられるのです。
結果的に僕の考えた通りになりました。
先生に興奮剤を盛られ、恥ずかしさの中で顔を背けることも許されずに扱かれ、格別の快感を与えられました。
男の性のせい、と片付ければ簡単です。ですがそれは、ただの逃避に過ぎません。
結局のところ、性の主は僕なんですから。
先生のことを考えれば、胸が苦しくなります。
勿論それは恋い焦がれる気持ちではありません。先生に対する罪悪感と、期待です。
前者は、先生の好意に戸惑いを感じつつも素直に応えられないことに対して。
後者は、僕が望めばいつでも先生に気持ち良くしてもらえるんじゃないかという邪な気持ち。
もう少し歳を重ねれば、事実を冷静に理解して相応の対応ができるのでしょうか。
そうであるならば、早く大人になりたいです。今の僕は、ただ流されるだけの駄目なやつなんですから。
隣で寝てるミャー子の頬をそっと撫でました。
「んん…………」
すると、気持ち良さそうに喉を鳴らしました。
「もっとしっかりしないとな……」
自分にそう言い聞かせて、瞼を閉じました。
目を覚ました時には、日光がカーテンの合間を縫って差し込んでました。
今日は土曜、12月にしては暖かく、洗濯日和のようです。
「ぐぅぅぅ…………」
昨日は9時に寝たというのに、ミャー子はまだ寝てます。
やはり猫、「寝る子」という名は伊達ではありません。
それにしても……もの凄いアホ面です。
頬は緩み、口はモゴモゴと動き、手を丸めて何かを捕まえようと顔の回りで円を描いてます。
僕は吹き出しそうになるのを堪えて、洗面所に行きました。機会があれば顔に落書きしてやろうと思います。
「う゛〜ん……」
洗濯物を干し終え、朝ごはんの用意ができようかという時になってようやく目を醒ましました。
「おはよう、ミャー子。ご飯の用意できてるよ」
「シンタロー……しっこ……」
「ほら、ちゃんと目を開けてトイレに行きなさい」
「うーん……」
ミャー子は寝ぼけ眼を擦りながらトイレに向かいました。
特に教えたわけではないのに、ちゃんと人間用のトイレを使ったのには最初驚きました。やはり賢い猫です。
それはともかく、今日の寝起きはあまり良くないようです。変な夢でも見たんでしょうか。
「よし、どこからどう見たって猫には見えない」
ニット帽とおさがりのコートを着たミャー子を前に、僕は自画自賛しました。
僕の言い付けで昨日は家から一歩も出なかったので、それと、今日は休みだから外出したいというミャー子の申し出があったからです。
最初は戸惑いましたが、猫耳と尻尾が見えなければ外に出ても問題ないはずです。
「それじゃあ行こうか」
「うん!」
自転車で街を走ります。信号待ちの自動車を横目に、すいすいと路を抜けていきます。
いつもと違うのは、後ろにミャー子を乗せてること。
以前は、彼女と一緒に出歩く時にはフード付きの服を着てました。
そこに後ろ脚を入れ前脚を僕の肩に乗せてやれば、二本の尻尾がうまい具合に隠れるからです。
そうやってた頃がまるで昔のことのように感じます。
猫が人間になるという信じられないことに、未だ妙な気持ちにさせられます。
それにしても、すれ違う人達、特に男性が冷たい視線をぶつけてくるのは僕に嫉妬してるからなんでしょうか。
もしそうなら、軽い優越感です。
さて今日は休日映画館や遊園地といった、人工のレジャー施設に行くわけではありません。
僕達が向かうのは『自由の羽根公園』。広大な敷地面積と豊かな自然が広がる、何とも健康的な娯楽場です。
「シンタロー!はやくはやくー」
「ちょ、ミャー子、速いって」
ミャー子はコートと靴を脱ぎ捨てて家にいる時と同じ格好になりました。
ジャージにニット帽という組み合わせは何とも言えず滑稽ですが、同時に可愛いと思いました。
僕が学校に行ってる時はいつも来てるらしいほど、お気に入りの場所のようです。
それに、昨日外に出てない分を取り戻そうとするかのようなはしゃぎっぷりに、思わず頬が緩みます。
走り回ったり転がったりと忙しそうで、その度に長い髪が靡いて、きらきらと輝いてます。
……おっぱいも、ジャージの上からでもはっきり分かるほど揺れてます。
目を逸らそうにも、あまりに見事な揺れっぷりには抗えせん。
ごめん、ミャー子……
おっぱいを見てると幸せな気持ちになれるんだ。性的な意味はないから、今だけは見させて……
「じーーー」
「うっ……」
腕で胸元を隠すミャー子。気付かれてしまったようです。
「シンタローのえっち」
「いや、その……ごめんなさい」
僕は駄目な飼い主です。
楽しい時間でした。
自然の中で走り回ったり、行ったことのないエリアを探検したりと、まるで童心に帰ったようでした。
ですがその後、ちょっとした出来事がありました。
はしゃぎ疲れて膝で眠ってるミャー子につられて、僕もウトウトしてた時のことです。
太陽が赤く染まり始め、肌寒さを感じて目を醒ますと、僕達の前に立ち尽くしてる人影。
子犬を3匹連れながら、僕とミャー子を見下ろしてます。
「あれ……川原木さん、なんでこんなとこに」
それは、僕がよく利用してるペットショップのアルバイトで、同級生でもある女の子でした。
「ああ、犬の散歩か。いつもご苦労さ……」
「大窪君」
僕の言葉を遮り、川原木さんは言いました。
「その人……誰なんですか」
今まで聞いたことのない、威圧的な声でした。
やっとそれなりの修羅場に突入できそうです。
720 :
くるっく:2006/12/23(土) 12:28:58 ID:9F3OcVBz
投下します。今回は舞編です。
「……っすん…………うぅ…………くすん………すんっ…………すん………」
青崎舞は自分の部屋のベッドに顔を押し付けて泣いていた。
家族に心配を掛けたくないから夕食と入浴を済ませるでは我慢した。
しかしパジャマに着替えて自分の部屋にこもってしまうともう限界だった。
涙が止まらなくなる。
ここ二週間、毎日繰り返しているこの行為はもはや日課とさえ呼べる。
「どうして……宏くん………どうしてわかってくれないの………?」
毎日泣いても心の苦しみが消えることはない。
毎日泣いても胸の悲しみが癒えることはない。
彼女を慰めることは出来るのは愛しい人の温もりだけだ。
「わたしは、ただ、ずっと、ずっと一緒に居たいだけなのにっ………!!」
叫ぶように心の裡を吐き出した。
皮肉なことにその願いだけは上代宏幸と同じものだった。
舞は幼少の頃からずっと宏幸のことだけを見ていた。
幼少の頃、というより物心ついたときから、といってもいいかもしれない。
歳が近かったためか互いの母親は仲が良かった。
親達が楽しく談笑している間、手間のかかる幼児を二人で遊んでおけとばかりに放置しておく。仲良くなるのはむしろ必然だったのだろ
う。
そして宏幸が四歳のとき転機が訪れる。
父親がよそに女を作って家を出たのだ。
同情した青崎母は女同士の結束といわんばかりにますます上代母と仲良くなった。
働きに出なければいけなくなった母親は忙しくなり宏幸は青崎家で食事をご馳走になることが多くなる。
家庭的な舞と穏やかな性格の宏幸は互いに反発することなく寄り添って過ごしてきた。
男性よりも女性のほうが肉体的にも精神的にも早熟である。
小学三年にあがる頃には舞は宏幸へ抱く感情が異性に対する「好き」であることに気づいていた。
(宏くん以外の人と一緒に居る自分なんて考えられない……宏くん以外の人に触られたくなんてないよ!)
それでも彼女は告白はしなかった、いやできなかった。
小学三年生ごろの年頃は成長に差がではじめる頃でもある。
彼女の成長は精神のそれとは別に肉体的には同年代の女の子に比べてひどく遅かった。
身長はクラスで三番目に低かったし女の子らしい体つきなど夢のまた夢、といった感じだった。
対して宏幸の成長は早い。
背が高くなり勉強もスポーツも人並み以上に出来た。穏やかな性格ではあったものの別に内向的な性格ではなく友達も多かった。彼は舞
との仲を冷やかされなかったのは運が良かった、などと思っているが実際は彼の人徳がそうさせなかっただけのことだ。
要するに舞は自分とは釣り合わない、と心の中で決めつけてしまったのである。
それでも諦められなかった。だからせめて一番親しい友人としてそばに居ることを選んだのだ。
ずっとそばにいたら周囲にはカップルのように見えたらしい。彼女が中学の頃から急激に成長し可愛らしくなってきたせいもあるのだろ
う、宏幸に告白しようとする女はいなくなった。
そして県内で一番難関の名門進学校に受験を決めた宏幸についていくために猛勉強し見事合格、中学時代の友達は宏幸以外一人もいなか
ったが彼女には何の不満もなかった。
そして入学して一ヶ月、ついに宏幸が彼女に交際を申し込んだ。
幸せだった。幸せすぎて涙を流してしまった。
一緒にいる為に必死で勉強してきた努力が、少しでも可愛く見せようと頑張って覚えたオシャレが、喜んでもらえるように磨いた料理の
腕が、今までずっと育ててきた想いが、その全てが報われた瞬間だった。
(なのに……)
夢の時間は終わってしまった。たった五ヶ月で。
慢心していたつもりはない。むしろ勉強もファッションも今まで以上に力を注いだ。
もっともっと好きになって欲しかった。自分のことだけ見て欲しかった。
(それは……少しぐらいヤキモチ焼いちゃったかもしれないけど……)
手に入らないと思っていたものが手に入ったことで絶対に手放したくなくなってしまった。彼女の自信の無さが災いしたのもある。
想いが通じたらますます他の女の子の眼が気になってしまった。
(皆、宏くんのこと狙ってる……)
もちろんそれは舞の思い込みだ。
しかし宏幸に好意を抱いている人間は確かにクラスに何人かいた。一人でも疑わしいものがいれば後はもう全てが疑わしい。
彼女は溢れる嫉妬を抑えることが出来なかった。
(私以外の女の子と話さないで、私以外の女の子をじっと見ないで、私以外の女の子に触ったりしないで、いつでも一緒に居て欲しいよぉ
……)
「ひっく…………ぅ………………っく…………」
感情的になると泣いてしまう。
今の舞は破裂寸前の水風船のようなものだった。
(宏くん……)
彼女は泣き出した自分を唯一止められる『儀式』を始めた。
涙に濡れた右手がそろそろと胸に昇っていく。
「んっ……」
最初は表面を撫でるだけ、舞の胸を繊細な動きで手のひらが滑っていく。
こんな微妙な刺激でも昂ぶった舞の神経は快感として受け止めてしまう。
「……っふ……………ふぅん……………………」
空いていた左手でシャツのボタンに手を伸ばす。
もどかしげに一つずつ外していく。ワンポイントのシンプルな白い下着が姿を現した。
撫でるだけだった右手の動きが乳房を揉みこむような動きに変わる。
「あぁ…………」
鈍い刺激が胸の奥にまで広がっていった。
「……ふぁあ………………あっ………ンンッ……」
漏れそうになる声を指を甘噛みして耐える。
右手の中で彼女の人より大きな胸が淫靡に形を変えていく。
舞はこの大きな胸があまり好きではなかった。
社交的、遊び好きな性格の女性なら自分のスタイルを武器に楽しくやっていけたのだろう。
だが良い意味でも悪い意味でも内向的な彼女には重いものでしかなかった。物理的にも。
中学二年生のとき、舞は生まれて初めて男子に告白された。
自分には縁のないイベントだと思っていただけにパニックになった。
しかしすぐにその男子の目が胸のほうをちらちら見ているのに気がついてしまった。
女の体に一番興味のある年頃の男としては良くある反応だったのだが、舞は少女らしい潔癖さですぐに気分が悪くなり拒絶した。
それ以来男性の目を意識するようになり、ますます自分を卑下していった。
(宏くんはわたしの胸がぺたんこな時からずっとそばに居てくれたもの……)
胸を揉みしだきながらも考えるのは宏幸のことだ。
自分のことを一番理解してくれる人、そして自分が一番理解してあげられる人。
「んんっ………んぁ……………宏くんっ……………!」
ブラジャーのごわごわした感触が煩わしい。外すのももどかしく上にずり上げる。
ぶるんっ、という音が聞こえてきそうなほどの勢いで乳房がまろびでた。
人差し指と親指で初々しいピンク色の乳頭をきゅっと摘んだ。
「ンっ…………!」
鈍い刺激から鋭い刺激に変わって声が抑えられなくなるそうになる。
(でも……宏くんも大きな胸が好きなのかな……?)
だったらいいな、と思う。
友達は『男はみんな巨乳が好きなのよ!!』と力説していた。
もっとも舞の胸を親の敵のような眼でねめつける小さな胸の友人の台詞だったのであまり参考にはしていなかった。
「はぁ………宏くん…………宏くんも触りたかったの………?」
想像の中で舞の手と宏幸の手がすり変わる。
ゆっくりとした手の動きが激しいものに変わっていく。
「宏くん……いいよ。触って……」
上にずらしたブラジャーの圧力で更に強調された舞の胸を更に絞るようにして揉んだ。
「…あん………んぁぁ……………そんなに強く揉まないで……………」
完全に彼女の意識を離れた右手とは別に左手が腹部をつたって下半身へ降りていく。
パジャマのズボンに入り込んだ手のひらが下着の上から彼女の秘部に覆うようにして触れた。
「ああッ……………あっ……あっ………」
指にぬるっとした感触が伝わってくる。
すでに下着の上からでも水気を感じ取れるほど舞の女陰は濡れそぼっていた。
「宏くぅん……………」
甲高い鼻声を出して愛しい人の名前を呼ぶ。
少しだけ自慰行為を中断しカーテンを開けた。
彼女の部屋とはちょうど向かい側に宏幸の部屋がある。
ベッドの上から窓を見れば宏幸の部屋を見ることが出来る。
それは採光の問題でも嗜好の問題でもなんでもなく、寝るときでも横見れば窓越しでも宏幸を感じられるという彼女の思いが現れたベッ
ドの配置だった。
(明かりがついている……宏くん、勉強してるの?……………それとも私のことを考えてくれているの……?)
宏幸は電気を点けたまま寝ているだけだったのだがそんなことを舞が知るはずもない。
分厚いカーテンに覆われているため中の様子まで窺い知ることは出来ないのだ。
机の上から一つのシャーペンを手に取りベッドに戻る。
いまだに体に灯った微熱は消えていない。
むしろ中途半端に終わった刺激に抗議を挙げるように疼きを増していた。
「んんっ……………宏くんが触ってくれないから…………」
下着を脱いでシャーペンを逆さまにして擦りつける。
上部に熊のマスコットが付いている少し幼い感じのシャーペンだ。
このペンは宏幸が小学3年生のときに誕生日プレゼントとして彼女に送ったものだった。
宏幸に送られたものは全て舞にとっては宝物だった。
時を重ねて子供っぽいデザインのため学校や人目の付くところでは使えなくなったが今でも家で勉強する時はこのペンを使っている。
もっとも最近では別の使われかたをしているのだが。
「ふぁ!…………ンン……ンッ………ンンンッッ!!」
熊の微妙なごつごつが彼女の秘部に予測できない刺激を与えてくる。
加えてこのシャーペンが宏幸のプレゼントであるということも彼女の興奮に一役買っている。
(ごめんね。宏くん、ごめんね。誕生日プレゼントをこんなことに使っちゃって……でも宏くんも悪いんだよ。私のこと放っておくから…
…)
心の中で謝罪を繰り返しながらもペンを動かす手を緩めることはない。
むしろ謝罪を繰り返すごとに手の動きが激しくなっていく。
「あぁ!………宏くんが………宏くんが触ってくれないからぁ!……………こんなものを使うしかないんだよっ……………………!!」
心の声が現実に口から漏れ出してくる。
本格的に昂ぶってきたせいでもう声が出ることを気にする余裕が無くなってきたのだ。
「寂しいよぅ………んぁ……………ふぅん……」
うわ言のように呟きながら、それでもペンが彼女の大事なとこに入り込まないように細心の注意を払っていた。
舞は処女だった。
5ヶ月も付き合っていたのだから肉体関係を持ったとしても不思議ではない。
舞だって宏幸と結ばれることに抵抗はなかった。自分から求めるようなことはしなかったが求められれば拒絶はしなかっただろう。
もちろん宏幸も健全な男なのだからそういうことに興味があった。
ただ興味はあっても舞との居心地の良い空気を壊してまで一気にそこまでの関係になろう、とは考えなかっただけのことだ。
舞の変貌に頭を悩ませる日々が続いていたせいというのもあるが。
舞自身も二人で居られればそれで幸せ、という考えだったので無理に関係を進めようとしなかった。
結局のところ二人の関係はキス止まりだった。
舞は今ではそれを深く後悔している。
(ちゃんと体も結ばれていればこんなことにはならなかったのかな……?)
今となっては遅い後悔が頭をよぎる。
「んんんっ………はっ………はぁん…………!」
後悔を振り払うかのようにペンを動かす手を激しくする。
熊が女陰の幾重に重なったヒダヒダにふれて鋭い刺激が体中を駆けめぐる。
「宏くんっ………奪いにきてっ………舞の処女っ……捧げるからぁ!!……………ぜんぶ、ぜんぶ、あげるからぁ!!」
頭の中が白く塗りつぶされていく。
そのとき偶然ペン先が彼女の秘芯を押し潰した。
「ふぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!……………………ンンンンンンンンンンンンッ……!!」
頭の中が真っ白になった。
最後の理性で声を押し殺す。
「…………はぁ…………はぁ……………はっ…………はぁ………」
荒い息を吐きながら舞は睡魔が襲ってくるのを感じた。
これが彼女の『儀式』。
悲しみで押し潰されそうな心を空しい快楽で真っ白に染めてしまう。
そうして得た肉体の疲れで睡魔に身を委ねることが出来る。
朝になればとりあえず落ち着いた精神状態になっている。
だが心には満たされない思いが募っていく一方だ。
(宏くん…………)
眠りに付く直前、閉じた眼から一滴の涙が流れ落ちた。
以上です。
ようやくエロパート突入です。
エロって書くの難しすぎ、特にあえぎ声とか。
修羅場がまったく無くてすいません。
そして申し訳ないのですが次の話にも修羅場がありません。
とりあえず今回エロだけ補完しました。
うわっ、また投下失敗してる!?
おもしろい。でも、前もそうだったけど改行がおかしいところがあるよね。
神々の降臨!
みなさん超GJでした!
良作続きですごいな最近
まあ、あえて言うならトリップは付けた方がいいんじゃないかと
|ω・`)クリスマスはやっぱり嫉妬の季節ですよね
神々の皆さんのおかげで無事今年も乗り切れそうです(;つД`)
返り血を浴びずに済む。そしてフードを被れば顔を覚えられることもないだろう。
深津瀬里乃は、降水確率七十パーセントの予報を見て口元を綻ばせた。
雨合羽、外套、レインコート。折り畳み傘に安物のビニール傘。
一纏めに雨具と言っても多様な販促がなされているが、ワンタッチで開く高目の良品が瀬里乃はお気に入りだ。幼馴染の想い
人から借りた際に頼み込んでそのまま貰った傘。落ち着いた深緑に白のチェック模様。
しかし、それをこれから痛めつける人間の薄汚れた血で汚すなんてことは絶対にあってはならない。もしそんなことになった
ら、自分は狂乱して相手を殺してしまうから。
瀬里乃は激情的な自分の性質を宿命染みた根深さで思い知っている。逆らえないと本能的に理解している。理性が風化して殺
意が支配して温情が磨耗して憎悪が制御する。それも瞬時に。その不可避の衝動の存在を受容している。
瀬里乃の表層を取り繕っていた陸地が早送りで削られて悪意の海に飲み込まれていく。瀬里乃が暗く淀んだ塩水に汚染されて
いく。そんな体験を思い出す。
一度目、小学校二年生の時。それまでそんな衝動とは無縁の素直で優しい娘として誰もに慕われていた自分。子供心に想いを
寄せていた相手が、幼子の戯れで頬にキスをされていた。気付けば工作用のカッターナイフを掴んでいた。投擲した鋭利な刃が
真っ直ぐに標的を切り裂いた。
日頃の生活態度がものを言ったのか、手が滑ったという拙い言い訳は疑われずに済んだ。しかし、とうとう腕から血を流す相
手の少女には謝れなかった。謝意が沸くこともなく、かといって責任逃れをしたいわけでもなく、ただ放心状態で呆けていた。
瀬里乃が意識を取り戻したとき、彼女は意中の相手に抱きつきながらしゃくりあげていた。謝り倒していた。明らかに対象を
取り違えた瀬里乃の行動に担任教師は戸惑った。でも、幼馴染からの慰めが欲しいのだろうと理解した。事実、彼女の幼馴染は
優しく彼女の頭を撫でてくれていた。瀬里乃はますます彼が好きになった。
今でも瀬里乃に対する世間の評価は変わっていないが、瀬里乃はそんな偽物の仮面を被って暮らしている自分は、偽善者にし
て猫被りにして面従腹背を冷酷に貫いているような最低人間にしか思えない。それが罪意識となって圧し掛かっている。
けれど、瀬里乃は世間体よりも幼馴染への愛情の方が十倍も二十倍も優先すべき事項だと考えていた。価値判断の基準が何処
にあるかの話でしかない。切捨てが可能ならとうの昔にやっている。無論、無理だった。
そして二度目の凶行。三度目の殺人未遂。回数を重ねた。紆余曲折を経た。
逃げられない内面は真実を映し出していると納得してからは、むしろ積極的にそれを肯定するようになっていた。躊躇いを持
たなくなった。けれど、事後に全身を縛り付けるような鎖の束縛を感じるようになった。それは形容し難い衝動と等しい重量の
十字架だった。
その過程で彼との関係は停滞した。恋仲としては扱われない。瀬里乃の暗黒面を勘付かれていた。胸が八つ裂きにされるよう
な悲痛。しかし、瀬里乃は幼馴染のポジションまでを失わうことはなかった。彼は瀬里乃を非情に切り捨てられなかった。
二人の共通項。切れないライン。それは確かに、幼馴染の絆と呼ぶべきものだった。
瀬里乃が邪魔者を排除し続ける限り、彼の隣にいられるのは自分だけだ。
「さあ、殺さなきゃ」
深津瀬里乃。三水ばかりの自分の名前。そのせいで雨女として苛められたこともあった。だが、彼が傘をくれたその日から、
彼女にとって雨模様の曇天は世界からの祝福だ。
分厚いレインコートを着込んでハンドバックに抜き身の万能包丁を仕込む。傘立てではなく、ベットの枕元に置いてある宝物
の傘を手に取り、開閉スイッチを押した。
室内に咲く見事な一輪。瀬里乃は魅了されている。
フレームを決して歪めないように、万が一にも痛めたりしないように、いたわるようにクルクルクルリと主軸を転がして渦を
描き出す。目まぐるしく回る模様が格子状から無数の同心円へと眼に錯覚を起こさせる。
「あははははは」
少女趣味の愚か者。狂った人間の常人には理解不能な趣向。何でもよかった。
瀬里乃の願いは、ただそんな自分に彼が微笑みながら傘を差し向けてくれること。穏やかな雨滴の伴奏を聴きながら、二人で
相合傘をすること。未だ叶わぬささやかな夢。
大学生となった瀬里乃。何度目か知らない嫉妬の衝動。
その女は知らずして禁忌に触れてしまった。それは瀬里乃の逆鱗だった。
突然の通り雨。偶然会った男友達は傘を差していた。彼女は傘を持っていなった。冗談半分で肩を寄り添わせた。同じ傘に入
った。それを瀬里乃は目撃していた。
半殺しにする凶器に肉厚な包丁は間違っていることに瀬里乃は気付かない。熱病が解けるのは何時も全てが終結し、彼と向き
合う時だけだ。そして瀬里乃は泣きじゃくる。泣いて許しを乞う。成長し無知でなくなった彼は、嫉妬心に駆り立てられた彼女
から一歩引いた位置にいる。
自己嫌悪が止まらない。この身を焦がすような扇動を前に無力化される自分の良心が情けない。同じ過ちを繰り返す自分を見
捨てられるのが怖い。軽い鬱病になる。どん底に叩き落された瀬里乃にとって、それでも贖罪の相手は被害者でも神父でも裁判
長でもない。
瀬里乃はどうしたらいいかわからない。ただ、切羽詰った謝罪は彼から憐憫を引き出せる。どれだけ歳月を経てもそれは変わ
らない。それを瀬里乃は利用する。そしてまた自己嫌悪に陥る。罪悪感に取り殺されそうになる。見兼ねた彼は折れて瀬里乃を
抱いてくれる。優しく慰めてくれる。過去の記憶が蘇る。瀬里乃はますます彼が好きになる。
本日付で瀬里乃は殺人者の称号を得るだろう。けれど、彼は瀬里乃を庇ってくれるに違いない。揺るがない確信。自分はまた
枷を嵌められる。倫理の呪詛が聞こえる。二度と引き返せない領域に瀬里乃は足を踏み出している。
心が軋もうとも、破壊されようとも瀬里乃は止まらない。
また突き放される。ささいな夢は遠退いていく。それでも瀬里乃は彼を求めてやまない。
「ホントにホントに好きなんだけどな……」
祈るように傘を掲げ、慈しむように折り畳んだ。流した涙は、雨が洗い流してくれる。
「いってきます」
瀬里乃は誰もいない部屋に別れを告げ、彼女の敵を始末しに出かけた。
書きたくなったので書いたら短編ができてしまった。
このスレとは方向性が違うかもしれません。
「おはよう!」 「おふぁよう」 欠伸交じりに挨拶をかえす。「また寝癖ついてるよ?」
彼女はこちらへ近づくと少し背伸びをしてポンポンと秀一の髪を直す。
長い髪が風で踊り、ふわっと良い香りがする。秀一は恥ずかしさから少し顔を背けつつ感謝の気持ちを伝える。
「・・・ありがとう」 「いえいえ♪」彼女は秀一に笑いかけた。毎朝その笑顔を見るたびに心が落ち着く。
「今日レッスン無いよね?」「うん、来週からだよ」 そして学校まで他愛無い会話を続ける。
TVのニュースは日に日に悪くなっていく世界情勢を伝える。
しかし、日本の隣国による核の脅威についての特別番組を観た後でも、宗教戦争で一触即発という国々の報道を観た後でも
二人で登校しているこのときだけは、秀一は 「世界は平和だ」 と心の底から感じていた。
↑まだ続くの? 投下控えようか
ないんじゃないかな
>>736 題材はよさげだが文章が読みずれー(;´Д`)
「シュンちゃん、これってどういうことかな?」
「ま、まぁ茜。せっかく学校に来れたんだから自己紹介でも……」
「どういうことかな?」
「いや、まぁ、だから……」
「ど、う、い、う、こ、と!?」
「うや……う…」
「そうだなぁ、さすがのこれは、先生も聞きたいんだが?生徒の恋愛については、変な虫がつくといけないからな。」
「レナセンセ……あんたさっき……」
「で、だ。そこの婦警さん。あなたはコレとどういう関係で?」
「エリナっちさー、交番ほっといて大丈夫なん?」
「うぅ、だって、犯人つかまえたら俊太がさっきのしてくれるって……」
「シュン、ちゃん?」
「俊太?」
「シュンー?」
『…………』
「な、なんのこっとかなぁ?そんな状況証拠じゃあ立証はできないぞー?」
へたれ特有の必殺奥義!!しらばっくれる!さぁさ、これでこの場はしのげる……
『えっと、じゃあ目をつぶって……』
『ん……んん!』
『あ、あはははは!おまじない完了だ!さぁさぁ!犯人逮捕にのりだそう!』
『逮捕したらまたしてくれる?』
『え?あ、あぁ、あんなのならいくらでも。』
一部始終完全収録!これはあれかっ!よくテレビでやる警察二十四時とかでのあの隠しカメラかっ!?
「ほら、証拠もあるでしょ?」
嗚呼っ!そんな無垢な笑顔で言われたらっ!
「あーらら、決定的だな、シュン。」
『自業自得ね。』
「シュンちゃん……これって、裏切りだよね?」
「俊太、後で職員室に来い。これは命令だ。」
右から茜、左からレナセンセがにじり寄ってくる。某、一世一大のピンチ!シュンタちん、ぴんち!
ガッ
「うお!?」
右に左にオロオロしていると、急に歩が俺の腕をつかみ、教室から脱出する。
「あ、あゆ……!」
『………』
声もかけてもやっぱり聞こえず。振り返ることなく猛走する。
……チラ
「シュンちゃんをどこへつれてくかー!!!!まてぇー!!」
「てめー!無口女ー!!なにシュンと手を繋いでやがるー!なんか……なんかムカツクーー!!」
「こ、こらっ!俊太!もっとさっきの唇合わせるやつやりなさい!でないと逮捕するわよ!」
うあーん!振り向かなければよかった!!神様!仏様!!歩様!!どうか俺をボスケテ!!
バッ
「ヲ!?」
廊下を曲がったかと思うと、急にすぐ近くの教室に飛び込んだ。俺もそれに習い、教室に入ってドアを閉める。
「「「「マテコラァァ!!!」」」」
ドタドタドタドタ………
「ふ、ふぅ……なんとかやり過ごしたか………」
『ありがとな、歩。』
『気にしないで。でも……』
「ん?」
『エリナにやったこと、私にもして。』
「んん〜〜?」
なんか変な方向に向かってますよ?ここで歩にもキスしちゃったら、更に酷くなっちゃうじゃないか。
『O.K』
ぎゃふん!俺の手の馬鹿!な、なんて欲望に忠実!
『じゃあ、して。』
……な、なんか、その言葉だけを見ると、それ以上のことまだしていいように感じる。
フニ…
ああっ!?知らぬ間に!胸を鷲掴みにしてしまっているこの腕が憎い!!
「ん……」
「こ、こらっ!!やめんか!この右腕野郎!!なにをしやがるぅ!す、すまん、歩……この愚腕が……」
「ん……ふぁ…」
そんな俺の声は当然聞こえず、微かな喘ぎ声をあげる。初めてきいた声は、とても可愛らしくてますます興奮してしまった………
そろそろ佐奈嬢SPをやろーかなーな予感
なんか、読みづらくなってる……。
今日は投下ラッシュですな
毎日まんべんなく投下されればいいのに
なんつうか、読みづらいとか指摘するにしても、もう少し書く人のモチベーションを考えた言い方できないわけ?
超絶投下ラッシュキキキ、キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)゚∀゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)−_)゚∋゚)´Д`)゚ー゚)━━━!!!!
>>699 ストーク&リストカッターという強力な先輩に恋人というアドバンテージがある睦美はどう対抗するのか期待
旅行先での激突は必至か
>>707 内気な愛美の猛プッシュが物凄くイイ!
美術部というのはなんだか華やかなイメージがある青春時代を剣道に捧げた俺
>>719 先生とミャー子の戦いかと思いきや最初に修羅場へ突入したのは新登場の川原木さん
ぬこ可愛いよぬこ(*´д`*)ハァハァだが川原木さんの素晴らしい台詞にファンになりそうだ
>>728 エロ補完テラ乙GJ、やっぱり幼馴染みの独占欲って良いなあ
そしてトリップを付けることをオススメする、やり方は簡単
名前欄に#○○○←シャープの後に文字でも数字でも記号でも好きなpasswordを何文字か入れるだけ(全角でも半角でもOK。)
>>736 愛>>>(超えられない壁)>>>倫理観、世間という一途な心って素晴らしいよね
>>744 ハーレム修羅場ktkr!人物が多いが、まとめサイトで読んでからだと余裕で平気なので俺は気にならない
そしてそろそろお嬢SPと聞いてwktk状態が収まらない
俺が間違えてるのかもしれないけど、
くるっくさんと◆rgG2t.iTewさんってすごい変なところで文章に改行入れてない?
言葉の途中で改行は入れない方がいいと思うんだけどな。
単純に、モニターサイズに綺麗に収まるよう意識して折り返しのつもりでやってるんじゃあるまいか?
その場合だとしたら、モニターは人それぞれで大きさが違うから、書く人がそれをやっても他の人が綺麗に折り返しを見れるとは限らないし、
その点で言えばあまり改行を挟む必要はないと思うんだぜ?
>>750 多分それだよね。折り返し点を入れて成功しても入れないままでも画面的な見え方は一緒だし、
折り返し点を入れて失敗したらすごく見にくくなるんだし、挟む必要はないと思うよ。俺も。
まぁ書き手の方々の自由ですが。
その神々たちのモニターサイズによって違ってくるね
別に祖父の誕生記念に買ってきたものではなかったが、その大きくてノッポな年代物の柱時計は廊下の隅で埃を被って止まっていた。
当時小学校高学年だった兄は、葬儀帰りの制服姿でそれを修理した。制服はクリーニングにかけねばならなくなった。しかし、錆付いた二本の針は、専門家に預けることなく再度時を刻み始めた。
一仕事成し遂げた兄は得意げに言った。
「この時計が死んだじいちゃんの代わりに僕達を見守ってくれるよ」
「お兄ちゃんは? お兄ちゃんはみまもってくれないの?」
時計の再起はむしろ死者への追悼の意味合いが強かった。生者が気持ちに区切りをつけるための儀式だった。ただ、妹は祖父より兄に懐いていた。その無邪気さが兄には残酷に思える。
けれど、兄はそれを咎めたりしなかった。猫可愛がりしている妹に悲しまれるほうが、祖父の死よりも深い苦痛を伴っていた。重要度のシーソーが片方に傾く。結局、兄妹は似た者同士だった。誰かの死よりもお互いの存在のほうを大切にしている。
「じゃあ、この時計は僕の代わりに葵を見守ってくれることにするよ」
「そんなのいや。とけいなんていらない。お兄ちゃんがいなくなっちゃうのはやだあー」
そういう意味で言ったのではなかった。幼い妹は勘違いをしていた。
微笑ましさと愛おしさがこみ上げてくる。兄は妹をぎゅっと抱き締めた。
しかし、ふいに昔祖父にそうしてもらったことを思い出してしまった。温かな気持ちが消えて胸に悲しみが溢れてきた。瞳がみるみる潤んでいくのがわかる。
妹の前だぞ、自分を奮い立たせようとした。しくじった。タイミング悪く、痩せ細りざらついた祖父の腕の感触を思い出してしまった。いよいよ歯止めがかからなくなった。
急に泣き出した兄に、妹は理由がわからず目をぱちくりさせた。死の痛みは実感するのに年齢条件がついている心理だった。ただ、妹は悲しむ兄を放っておけなかった。妹想いの兄よりも、妹は兄想いだった。
「なかないでお兄ちゃん。あおいがおにいちゃんをまもってあげるから」
妹の誓いからは『見』の字が抜けていた。小さな言い間違いだと思った。そんなことより、妹の気遣いが暗く淀んだ悲しみを吹き飛ばしていく。そんな自身の感情の変化に驚くのに精一杯だった。
兄は妹のために泣き止んだ。妹はほっとした顔をした。
落ち着きを取り戻した兄は、父親に手伝ってもらって柱時計を自室に運び込んだ。そして妹に何度も感謝した。
妹はそのことを誇らしく思ったが、率直にそのことを表に出してしまうと、もう兄に甘えられなくなるように思った。だから、素っ気なく「いいですよ。どういたしまして」と憶えたての決まり文句を返すに留めた。兄への配慮に限り、妹は鋭敏な感性を持っていた。
そして月日は流れる。
萩原葵。十二歳。小学六年生。
彼女は隣の部屋から漏れ聞こえる振り子時計の鈍い時報に、高校生となった兄を救うべく誓いを再確認した。
思いつきで書いた結果は散々だったようで。
これでミスがなくなったかなと思うんですが大丈夫ですかね?
大丈夫なら明日にでも残りを投下するつもりなんですが。
見苦しいようでしたらズバッと言っちゃってくれると助かります。
また短編なんで手直しは楽ですし。
乙
まあ改行を作者さん自身に合わせていたんだろうな。
適当に1文終わったとこで改行すればokだと思う。
内容の感想も何も言う前に見づれぇとか文句言うのもどうかと思ったが。とにかくGJ
クリスマス効果か分からんけど大量じゃい!
>>754 乙です。改行の問題はなくなってると思います。
些細な問題で、内容は散々なんてことはないので気にしないでください。
小学校六年生か。展開が楽しみな年齢ですねw
明日イブなうえに彼女なしの俺だが、全然負けた気がしないぜ。
なんせこんなたくさんの修羅場ssが家で読めるからな!!作者様方超GJ!!
皆様、ご指摘ありがとうございます。
モニターサイズに合わせて改行して列を揃えていたんですけど皆さん見辛かったんですね。
とりあえず、修正してみる意味でもストックある部分を投下してみます。
ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ,ピピピッ……
ぽち。
『ピ』が四回続くまでに目覚しい時計を止めることが出来た。
この目覚ましは早く止めないと『ピ』が何度も連続して続くようになりとてもうるさいのだ。
まあ目覚ましとしてはとても優秀ということなんだろうけど。
「あ〜、電気点けっぱなしだよ……」
溜息一つついて、電気を消してカーテンを開ける。
意識的に外は見ないようにした。
この部屋はちょうど舞ちゃんの部屋の向かい側にある。
今は舞ちゃんに関するものは眼に入れたくもないし考えたくもない。
どうしていいか分からないことを朝から考えて鬱になりたくない。
一階に降りて朝食を取る事にした。
そういえば夕食も取っていない。
「でも、あんまりお腹空いてないんだよな〜」
現在6時、食欲がないのは朝早いからかもしれない。
こんなに早く起きるのは吹奏楽部の朝練に参加するためである。
朝練は基本的には自主参加だ。コンクール前には強制参加になったりするけど。
事実、僕は今までは参加してなかった。
舞ちゃんと一緒に登校するために。
そして今は舞ちゃんと登校するのを避けるために自主練に参加する。
「…………パンでいいか。」
結局、舞ちゃんのことを考えてしまった。
それほど僕の生活で深い割合を占めていたのだ、彼女は。
頭を振って棚から食パンを取り出しレンジに入れてトーストのボタンを押す。
冷蔵庫からマーガリンとヨーグルトを取り出して机に置いた。他に用意するほどの気力がない。
パンが焼ける間に二階から今日の分の教科書を詰め込んだ鞄を取ってくる。
「あっ!?そういえば数Tの課題があったんだっけ……」
まあ、いっか。今日が提出日じゃないし、授業中にでも終わらせよう。
ピー。
パンが焼けた。
次のパンをセットしつつ食卓に座る。
ホント、一人になると手を抜いちゃうんだよなぁ、家事って。
味気ない食事はさっさと済ませてしまうに限る。
パパッと済ませて朝風呂へ。
うちの部活動は女子比率が異様に高いので清潔にしておかないと恐ろしいことが起こりそうだ。
というか部の最中に『なんか変な臭いしない?』とか噂されたら自殺もののトラウマになること必定である。
特に僕の席は白峰先輩の隣だし。
念入りに体を洗って制服に着替える。
今から家を出れば7時には学校に着くだろう。
習慣というかなんというか鍵穴から外の様子を確かめてから外に出てしまった。
無論、舞ちゃんが待ち構えていないか確かめるためである。
塀の外も確かめてようやく道路へと足を踏み出す。
いつまでこんな生活が続くのかなぁ……
心もち肩を落としながら学校に向かった。
学校に着くと教室へは向かわずそのまま音楽室へ直行する。
盗まれる確率などほとんどないにしても鞄を教室に放置しておくのは心理的に嫌だった。
自分は結構プライバシーに関しては神経質なところがあると思う。
だからこそ思いっきりプライベートを侵攻しようとした舞ちゃんの行為についていけなかったのかもしれない。
ってまた舞ちゃんのこと考えてるし……
〜〜〜♪〜〜〜♪♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜
自己嫌悪に陥っていると進行方向から旋律が流れてきた。
誰かなどと考えるまでもない。
音楽室でトランペットを吹くのは僕以外には白峰沙由佳先輩だけだ。
「おはようございまーす。」
挨拶しながら扉を開ける。
練習の邪魔をすることになるけどこれも礼儀だ、致し方ない。
「おはよう、宏幸くん。」
演奏を中断してニッコリとした微笑と共に挨拶をしてくれた。
これやられたら女性に免疫がない男は大抵落とされるな……
幸いにして慣れている僕はハートに打ち込まれる銃弾をかわす事が出来たのでちゃんと挨拶を返した。
「おはようございます。いつも早いですね、先輩。」
「鍵を開けないといけないでしょう?朝の一番乗りは譲れないわね。」
昨日のことを言っているのだろう、悪戯っぽく笑いながら演奏を再開する。
さすが先輩、朝一でも優雅なことこの上ない。
あはは〜と愛想笑いをしながら保管室に楽器を取りに行く。
とりあえず安らぎの時間の始まりだ。
授業が始まってしまえば同じクラスの舞ちゃんからの視線にさらされる。
最も僕のことを気遣ってくれているのか皆の前では恥ずかしいのかクラスで迫られることはなかった。
時間の問題かもしれないが。
「また溜息?本当、最近多いわね。何か悩みでもあるのかしら?」
気づかないうちに悩みが顔に出ていたらしい。
「え?あ……いやそれは……」
先輩は心配そうにこちらを見ている。
どうしよう?
こんなことを人に相談するのは結構な恥だ。
自分から告白して、自分のほうから別れを切り出して、元カノに付きまとわれて困っている。
いかにも無計画な遊び人といった感じだ。
しかし自分ではどうにも出来ないところにきているのも事実。
先輩ならばしつこい男に付きまとわれて困った経験ぐらいあっても不思議ではない。
「悩みがあるなら相談してみない?お役に立てるかは分からないけれど秘密は絶対厳守するわ。」
先輩の蒼い目には真摯な輝きがある。
先輩になら……話してみようかな。
「実はですね、僕には付き合っていた彼女がいたんですけど……」
「ええ、聞いているわ。確か最近お別れしたとか?」
あれ?何で知ってるんだ?
先輩はおろか誰にも破局したことは教えていない。
「そういう噂は速いものよ。」
顔から疑問を読み取ったのか先輩が答えを教えてくれた。
僕達に流れる空気からクラスの人間なら破局を察知しても不思議ではない。
しかし上級生のせんぱいまで知りわたっているとは……
「ま、まあ知っているなら話は早いんですけど。僕のほうから別れたいと言ったんです。でも彼女、それに納得してくれなくて。」
言ってしまうと単純な問題なんだよな、コレ。
「ずっと会う度によりを戻したいって言ってくるんです。いえ、もちろん僕のほうから告白して僕が一方的に別れを切り出したんですから悪いのは僕のほうなんですけど……」
動揺していたのか一息で言ってしまった。
先輩はじっと黙って聞いていたが僕の話が一段落したのを見て相槌を入れてくる。
「それで、どうしてあなたは別れたいと思ったのかしら?」
「えぇっと、一般的には多分彼女の気持ちが重くなったとかそういう理由になるのかな?」
「一般的なんてどうでもいいの。あなたが別れたいと思った理由を順を追って話して御覧なさい?」
ぴしゃりとはっきり先輩は言ってくれた。
こういうことをちゃんと言ってくれるのだからそれだけでも先輩に打ち明けた甲斐があるのかもしれない。
その後順を追って彼女のヤキモチ振りを話していった。
「そう、確かに彼女の行動はいき過ぎたものかもしれないわね……」
白峰先輩は話を聞いて考えるように目を瞑った。
しかし僕の主張が一方的に受け入れられるとむしろ居心地が悪くなる。
「でも愛されている証拠だと思えばそれまでですし、それに彼女は浮気みたいな恋人として不埒な行動は決して取りませんでしたよ。」
なんとなくフォローした。
最も僕も浮気なんかした事はない。
「それでも生活が乱されて困ったのでしょう?勿論、少しぐらいのヤキモチは無いよりあったほうがいいのでしょうけど。相手の生活を思いやるのも恋人としての務めだと思うわ。」
先輩はあくまで僕の味方をしてくれる。
確かにそれは僕を慰めてくれるのだが僕は慰められたいわけじゃない。
「この際どっちが悪いかなんてどうでもいいんです。どうしたらしつこく迫ってくる相手からすっぱり縁を切れるのかお聞きしたいんです!先輩ならそういう経験も豊富だと思って。」
「そんなに別れた相手のことをかばわなくてもいいのに……というより今あなたが私をどういう風に見ているのかが分かったわね。」
「別に悪い意味じゃないですよ〜。先輩はもてるでしょうから。」
先輩はツン、と横を向いてしまった。
多分、僕の気持ちを汲んで演技してくれたのだろう。
「さすが先輩、横顔も美人ですよ。こんな美人の先輩なら今まで数多くの男を虜にしてきたんでしょ?その豊富な体験から僕に適したアドバイスをどうか一つ。」
「もう、しょうがないわね。」
ふう、と溜息をついて
「私、そんな軽い女じゃないわ……」
ぽつりと、小さな声で呟いた。
「?何です?」
「……私はそれほど経験豊富じゃないっていったの。悩みを打ち明けてくれたあなただから恥を忍んで私も言うけれど男の人とお付き合いしたことなんて無いもの。」
「そうなんですか?」
激しく意外だ。
「それほど交際に興味があるわけじゃないから。確かに周りのお友達が皆お付き合いし始めて少し焦る様な気持ちもあるけれど、自分を安売りしたくは無いもの。無理に交際を始めようとは思わなかったわ。」
「へぇ、聞いてみると先輩らしくて何だか納得してしまいますね。」
「それに……」
ちらりと先輩が僕の顔を見た。
「……それにあなたが思っているほど交際の申し込みは無いのよ?あまり男の人は私に近づこうとはしないから。」
なるほど。
高嶺の花過ぎるからかな。それとも牽制しあっているのか。
僕も羨ましがられていても代わってほしいとは思われないしな。
「でもそうね。確かにしつこく迫ってくる男、というのは存在したわ。でもあまり参考にならないと思うわよ?」
「まあ、言うだけ言ってみてください。」
「二度と近づきたいと思わなくなるぐらい殴りつける。」
「全然参考になりません……」
「でしょうね……」
お互いに溜息をつく。
というか先輩って怖い人なんだ。薄々気付いてはいたけどね。
「はっきり言ってみるのはどう?」
「言ってますよ。君とはもう付き合えないって。」
あれから色々と意見を出しあっている。
そろそろ時間が無い。他の部員が出てくる頃だ。
「そうじゃなくて嫌いっていうの。」
「別に嫌いってわけじゃないですよ。それにはっきり拒絶しちゃうと何をするか分からない気がして……」
「そうね。関係と一緒に命まで失ってしまっては元も子もないわね。」
「やめてくださいよ。冗談にならないんですから……」
先輩はふむ、と人差し指を口に当てて考えるポーズをとる。
「このお話は放課後にしましょうか。今は良いアイディアが出ないし、放課後までに考えをまとめておくわ。」
「えっと、そんなに考えていただかなくても結構ですよ?結局は僕の問題ですから。」
ただでさえ色々と務めの多い先輩をあまり煩わせたくない。
しかし先輩は優雅に髪をかきあげて微笑んだ。
「悩みを打ち明けてくれるぐらい信頼してくれるのでしょう?その信頼にきっと応えてみせるわ。」
気持ちの良い空気で話を打ち切った。
さらりとこういうことが言えるから先輩の周りには人が集まるのだろう。
男は恐怖で近づかないかもしれないが。
「でも先輩?無理はしないでください。別に先輩にアイディアが無くても僕は気にしませんよ。」
先輩は珍しく少しだけ驚いたような顔し、照れたような顔になって笑った。
その後、他の部員が登校していつも通りの朝練が始まった。
練習が終わって教室に戻る前に先輩と眼が合ってにこりと微笑んでくれた。
うん、何だか上手くいく気がしてきた。
もう少し自分で考えてみようかな。
恐らくは舞ちゃんが居るであろう教室にいつもより軽い足取りで向かった。
以上です。上手く投下できたかな?
今回はエロも修羅場もありません。
期待していて下さった方、真に申し訳ありません。
748様、ご指導ありがとうございます。
トリップって何だか分からないんですけどよく見たら皆つけてますねΣ( ̄〇 ̄;)
というわけで付けてみました。
メリークリスマス!!
クリスマスの夜に嫉妬に狂うべし!!
乙です。見やすくなりました。先輩の企みに期待
GJ!
対抗馬の先輩がもっと掘り下げられるのを楽しみにしてます。
へっへっへ年上の嫉妬は大好きだぜ
投下しますよ
小鳥の声が爽やかに響く朝、部屋の中ではもう一つの音が響いていました。師走の寒い
空気を震わせるのは、目覚まし時計の電子音です。金属を打ち鳴らしたような高音は毎秒
十六回響き、凡人ならば嫌でも目が覚めてしまうでしょう。しかしそこはネボスケの少年、
タイマー式のストーブによって暖められた空気を強い味方にして嫌でも布団から出ようと
しません。困ったものですが、しかし安心して駄眠を貪ることが出来るのはあと少しです。
ほら、「ムニャムニャ、もう食べられないよウヒヒ」なんてふざけた寝言を言っている
間に、いつもの女の子がやって来ましたよ。優雅に足音を忍ばせて、綺麗な銀髪を翻して、
少年を起こすべく可愛いあの娘がやってきます。
「青様、御起床の時間です。起きて下さいませ」
静かにドアを開き、女の子が声をかけてきました。それを合図に少年は漸く目を開き、
ゆっくりと上体を起こしました。ごしごしと目を擦り、女の子の姿を確認すると薄く目を
開いて笑みを浮かべて伸びをします。
この少年がこの物語の主人公、どこにでも居る平凡な高校生の青くん(857才)です。
特徴といえば首に付いた二つの黒い金属性の首輪と青い瞳。年齢がおかしい気がしますが
青くんは不老なので問題はありません、そんな設定なのだから仕方が無いのです。
そして青くんを起こした女の子は、幼馴染みのナナミちゃん。肩口で切揃えられた銀髪
が目にも麗しいクールビューティ、無表情なのは感情が無いからです。何故かメイド服を
着ていますが仕方がありません、そんな設定なのです。
八百年以上の付き合いである二人は、何とも微妙な関係。いつも一緒に居るので恋人と
思われそうなものですが、そう尋ねると返ってくるのは主従関係という答えです。
「青様、学校に行きますよ」
「あ、もうそんな時間?」
本当ならば嬉し恥ずかしのイベントが入るのですが、文字量の都合があるので省略です。
基本的には乳を揉んだりエロシーンが入ったりするのですが、それは各自で脳内保管して
おいてくれると助かります。どんなプレイかは、あなたの思うがままです。
色々あって家を出ると、二人は駆け足で学校に向かいました。朝からハッスルしすぎた
せいで、時計で時間を確認するまでもなく遅刻寸前です。こんな状態になるのなら十八禁
なことをしなければ良いと思うのですが、そこは若い二人。エロパロ板の特権を利用して、
下品な意味でやりたい放題です。特に機械人形であるナナミちゃんは黄金比でエロい体を
設計されているので、青くんには堪らないものがあったのでしょう。
門に着くと、鉄の風紀委員として恐れられているユンちゃんとリーちゃんの双娘姉妹が
待ち受けていました。この二人はスラム出身で、しかも身長1mにも満たない体ですが、
売春をしているという噂がまことしやかに囁かれています。更には実年齢が一桁だという
噂もありますが、きっと嘘っぱちでしょう。十八才未満の女の子がエロシーンに使われる
なんて、世間の目や現代の法律が許してくれる筈がありません。
そんな不名誉な噂を気にした様子もなく、二人は青くんとナナミちゃんを睨みつけ、
「お兄ちゃん、また遅刻なの?」
「……次は、許さない」
不思議な言葉を吐きました。
因みにこの二人と青くんは血が繋がっているという訳でもなければ、義理の家族という
訳でもありません。原作ではこう呼んでいるので、それを引き継いでいるだけです。
「悪い子にはお仕置きだよ?」
「……覚悟して」
舌なめずりをして寄ってくる二人を見ると顔を青く染め上げ、青くんは脱兎の如く駆け
出しました。二人に逆レイプをされたのは記憶に新しく、どうも上手く接することが無理
なようです。いつかはどうにかしたいと思っているようですが、暫くは無理そうですね。
肩で息をしながら教室に駆け込むと、幸いにもまだ先生は来ていないようでした。軽く
吐息をしながら席に着くと、クラスメイトのリサちゃんが寄ってきました。本当の名前は
フランチェスカというのですが彼女は極度のシスコンで、死んだ姉の名前を名乗り、また
他の生徒にもリサと呼ばせています。何やら姉を復活させるという電波感が溢れる秘密の
計画が有るようなのですが、その度に問題を起こして転校を繰り返しているらしいです。
また彼女はかなりの問題児でもあり、過去に3000人の人間を殺しているらしいのです。
「おはよ、おにーさん、ナナミちゃん。今日も二人仲良く遅刻ですか? うらやまスィ」
こちらも妙な呼び方をしていますが、家族だったりすることはありません。
リサちゃんは自分の身長程もある大剣を鳴らしながら、陽気に挨拶をしました。こちら
も身長は1mに満たず、外見は幼い子供のように見えますが、れっきとした成人(74才)
です。因みにこの剣は原作と違い刃引きをしてあるので、法に触れることは有りません。
過去に姉とお揃いで買った音叉剣をいつも持ち歩いているのはソードダンス部のエースの
証なので、疑問に思ってはいけないのです。
そんなリサちゃん、笑顔のまま柄に手をかけ、
「本当に、羨ましいです」
歯ぎしりをしてナナミちゃんを睨みつけ、よく見れば額には青筋をを浮かべています。
笑顔のままでこんな顔をするなんて器用なものですね。リサちゃん今にも刃を抜き放って
しまいそう、はしたなくも嫉妬心が丸出しです。今まで家族や軍の上層部にいじめられて
いた反動で、リサちゃんは優しくしてくれた青くんに首ったけ。そんな青くんと常に一緒
に居るナナミちゃんが気に食わないようです。恋する乙女(74才)は無敵ですね。
因みに青くんはアワアワ言いながら二人を見ていました、ヘタレなことこの上無いです。
本編では無かったシーンにどう対応して良いのか分からないのでしょう、どうやら予想外
の出来事に弱いようです。全く、ナナミちゃんも大変ですね。
数秒。
奇妙な緊張感が空間を包み込み、ナナミちゃんはパイルバンカーを構えました。学校に
なぜこんなものを持ってきているのかは分かりませんが、青くんを守る為には仕方がない
のでしょう。どう考えても無理がある部分は『仕方がない』や『設定です』の一言で大抵
乗り越えることが出来るのです、何故ならこれはパロの世界だから。
いつまで続くのかと思われた睨み合いですが、それは担任のサラ先生(2021才)が教室に
入ってきたことで終了しました。もはや半泣き状態になっていた青くんも、漸く安心です。
サラ先生はナナミちゃんを見て忌々し気に舌打ちをしながら教壇に着くと、吐息します。
過去に悪いことをしたせいで今まで人類総シカトをされていたサラ先生は、普通の人間と
して扱ってくれた青くんにべったり依存状態なのですが、やはりリサちゃんと同じく普段
隣に居るナナミちゃんが気に食わないようです。恋する乙女(年齢が半端じゃ無いですが、
一応正ヒロインの一人なので乙女と表現します)は無敵ですね。
「今日からこの『極楽喫茶』組に新しいお友達がやってきます、皆仲良くするように」
この言葉に、生徒の皆さんは一気に盛り上がりました。嫌われ者のサラ先生でも、今の
ようなイベントでは普通に解け込むことが出来るので内心ウハウハです。
「入ってきなさい」
長い黒髪をたなびかせ、教室に転入生が入ってきます。
「シャーサ?」
その女の子は、何と青くんのもう一人の幼馴染みのシャーサちゃんでした。どことなく
他人を見下したような雰囲気がポイントの、お嬢様然とした女の子です。
シャーサちゃんは約800年ぶりに青くんの姿を見付けると、自己紹介もせずに勢い良く
駆け出してゆきます。何が何だか分からないリサちゃんとサラ先生はアホの子のように口
を開きっぱなし、呆然としている間にシャーサちゃんは青くんの胸へと抱きつきました。
そして続くのは熱いキスの雨嵐、青くんもされるがままになっています。
「な、何を」
事情が分からないリサちゃん、見る間に青筋が浮かんできます。
そう、何を隠そうこの二人は元恋人同士。シャーサちゃんの親戚は恋愛に厳しくて人目
を憚るように付き合っていたいたのですが、彼女のオイタの濡衣を青くん自らが被り監獄
都市に入ってしまったことで別れたのでした。そんな事情で離れ離れになったのですが、
シャーサちゃんは再び悪さをしてここに入ってきたのです。これを使うのももう三度目に
なりますが、恋する乙女は無敵ですね。
しかし無敵といっても限度が有ります。
「「何を……」」
おやおや、サラ先生とリサちゃんがMK5ですよ。
カウントダウン5、4……
「「何をしとるんジャーぁァッ!!!!」」
あらら、いけないいけない。カウントを最後まで待つことも無く、二人の怒りは沸点に
達してしまったようです。サラ先生は指輪を、リサちゃんは剣を構えます。
次の瞬間、惨劇が起こりました。
シャーサちゃんの首から上が消失して、胴体も肋骨を全て割るように切られています。
普段ならばモザイクが入るところなのですが、間近で見てしまった青くんはフィルターを
かけていない状態だったようです。顔面蒼白、先程のプチ修羅場の比ではありません。
「青様、しっかりなさって下さい!!」
いつの間にか感情回路をセットインしていたナナミちゃん、声にも瞳にも張りがあって、
まるで別人のようです。綺麗な目の奥にある色は、青くんを何だかエラい状態にした二人
に対する怒りの色。本編通りならば青くんの命令で戦闘を始めるのですが、今の青くんは
本編と違い現実を直視出来る状態ではありません。主人公を無視して三人は戦闘を始め、
今や教室は地獄絵図となっています。もうパロも何も有ったもんじゃ無いです。
さてさて、これからどうなることやら。
続かない!!
今回はこれで終わりです
すいません、悪ノリしました
クリスマス企画のつもりが、クリスマス関係無いですね
次からは真面目に本編を書きます
メリークリスマス☆
うwwwwwwwはwwwwwww
なwwwにwwwこwwwれwwww
GwwwwwwwJwwwwwww
いきなり過ぎてコーンポタージュ吹いたwwwwwwww
何やってんのロボさんwwwwwwwwでもGJッ!
一瞬ロボさんが修羅場書く心労でぶっ壊れたのかと真面目に心配したww
ともかくGJwww
ちょwなんだこれはwwwGJw
ものすごいパロディを見た気がするwww
>>778 クリスマスにふさわしいカオスップリに吹いたwww
ロボさんGJ!
久々の投下です
2話連続投稿です
第11話『現在、逃亡中』
エロ本を発見されて俺は傷心のまま水澄家を飛び出してきた。
追い掛けてくるだろうハンター(虹葉姉と紗桜)から逃げるために痛めた足を必死に動かして、俺は寂れた公園に辿り着いた。
足や膝の痛みが激痛となり、ついに走ることはできないと判断して、俺はブランコに座り込んだ。
子供の頃はよく公園とかで遊んだりしたが、成長するにつれてブランコや滑り台とかで遊ぶ機会はなくなってしまった。
ブランコに座ることすらも一体何年ぶりだろうか。
しばらくの間、小休憩を取っていると再び足に激痛が走った。足を地面に立たせるだけで今まで感じたことがない痛みが襲ってくる。
まさか、二階から飛び降りた時に足を捻ったのか?
今時の子供である俺はカルシウム摂取不足とかせいで飛び降りた際に骨折しまったのではないのか?
これはさすがにシャレにならない事態だ。
水澄家に帰ることができない事情がある俺は骨折したかもしれない足でどこかに家出をするのは現実的ではない。
もし、俺が救急車とかで運ばれたりするならば、虹葉姉や紗桜に居場所を知られてしまう。
しかも、今度は逃げることができない。
家に帰れば、想像を絶する拷問が待っているのに違いない。
さあ、どうする?
肝心な親友である忠生とは携帯を持ってくるのを忘れて連絡が取れない。
今の身動きできない状態では彼の家に辿り着くことができないし、家を改装するとでも言っていたので泊めてもらうことは無理であろう。
すでに万策は尽きた。
虹葉姉と紗桜には俺が姉妹に変な性欲を持っている変態さんと誤解された時点で俺の人生を終わりを告げたんだ。
あの家から社会に出ると俺自身がもっとも無力であること嫌程思い知らされた。
もう、ダメだ。
痛みを堪えるのにも限界がやってきそうだ。
ここは寂れた公園だから人通りも少ないだろうし。発見されるのはいつになるのやら。
「月ちゃん? 月ちゃんだよね?」
公園の入り口で聞き慣れた声が聞こえてきた。
「音羽?」
「月ちゃん。どうしたの? 大企業で問答無用にリストラされた中高年みたいな生気もない座り方をして」
「それは……」
音羽が来てくれたのは偶然、いや、奇跡に近い。
神がくれたチャンスと言ってもいいだろう。ならば、このチャンスを逃さずに物にしてみせる。
そのためには俺が水澄家を追い出された理由を音羽に明かしてはならない。
エロ本が見つかって逃げて来たという本当の事を話せば拒否反応を示すことであろう。
「虹葉姉と紗桜とちょっとした事で喧嘩したんだ」
「えっ!? あの女どもと?」
「うん。それで家に当分帰れそうにもないから友達の家で泊めてもらおうとしたんだけど。
歩いている途中で足を踏み外してちょっと捻ったみたいなんだ」
「月ちゃん。大丈夫なの。痛くない」
「いや、冗談抜きにやばいかも」
「わかりました。月ちゃんは私の家で面倒をみるよ」
「いいのか?」
「私の家は一人暮らしだし。だって、その方がうふふ」
怪しい含み笑いの笑みを零す音羽は顔を真っ赤にして嬉しそうであった。
だが、これは計画の内だ。
音羽と出会った途端に閃いたのは怪我が癒える間は音羽の家に厄介なろうと考えた。
幼なじみの間柄だし、音羽は俺に好意を示している。
そこで俺が怪我で身動きできない状態なら喜んで家の方に連れてもらえる可能性が高い。
全て計算通りだ。
「音羽。悪いけど肩を貸してくれないか?」
「ええっ? ええっーー!!」
「足が痛くて一人じゃあ動けなさそうだ」
「うん。わかったよ。しっかりと掴まってね」
音羽が肩を貸そうとすると俺は彼女の首に手をかけて、なんとか立ち上がろうとした。
足が強烈に痛むが全身の体重のいくらかは音羽のおかげで普通に立つよりは痛くはない。
やはり、女はちょろいもんさ。
と、俺は女性を軽視していた。
この後に起きる騒動で女性という生物の恐怖を知ることとなる。
音羽の家は公園から少し離れた場所にあるマンションの二階にあった。
階段を登る時の足の激痛に耐えて、ようやく音羽の家の中に入れる。
ドアを開けて音羽慌ただしいく走って行くと俺のためにシップと包帯を持ってきた。
音羽による不器用な治療が終わると俺はようやく安堵の息を吐いた。
「これでしばらくは大丈夫です。後はちゃんと病院に行って検査と痛み止めの薬をもらえば大丈夫だよ」
「ありがとう。音羽」
「えへへ。どういたしまして」
音羽は優しく微笑すると持ってきた湿布と包帯を元通りの場所へと戻して行く。
音羽の家の中はいかにも女の子らしい生活空間に染められて部屋の広さは一人暮らしには適度な広さであった。
そこで俺は思わず聞いてみた。
「音羽って、もしかして一人暮らしなのか?」
「そうだよ。ここに戻ってからだけど」
「おじさんとおばさんは?」
「……ずっと前に亡くなったの」
「そうか」
「ううん。そんなに気を遣わなくていいよ。一人暮らしだと言っても今日からは月ちゃんがいてくれるから寂しくなんかないんだから」
「でも、女の子が一人暮らしなのに男が泊まろうというのも色々問題が」
「幼なじみ同士だから全然問題ないよ。大体、月君の足の怪我が癒えるまでは私はちゃんと面倒みるって決めているもん。心配しないで」
「ああ。ありがとうな」
音羽の共同生活に胸が躍るようなものはあるが、衣食住の内、食だけは音羽のお世話になるわけはいかない。
忠生があのお弁当を食べて泡を吹いて倒れた時の記憶はつい最近の事だ。これだけは最初に主張しておこう。
「でも、俺はコンビニの弁当しか食べないからな」
「えっ!? わ、私の愛情がたっぷりと詰まった稲荷寿司を食べてくれないんですか?
誠意を込めて月ちゃんのために作ってあげようと思ったのに」
「今の俺の体でそんな毒物を体内に注入したら食中毒で間違いなくとどめを刺される自信はある」
「むっ。酷い言い草ですね。毒物なんて入れていないのに」
音羽が拗ねるように頬を膨らませるが厳しすぎる事実を俺は無視することはできない。
虹葉姉と紗桜と同等の料理技術を持つ音羽に料理をさせるということは俺が死ぬと同意義の意味を持つ。
「まあ、いいじゃないか」
「よくありません。月ちゃんの立派なお嫁さんになるために花嫁修業でもやりまくって、修業を終えた時は幸せの鐘が鳴る教会で
月ちゃんと永遠の愛を誓うぐらいに美味しい料理を作ってやるんだからね。覚悟してね!!」
「逆の方向を極めないように頑張れよ……」
「逆ってなんですか。私は月ちゃんのとこの虹葉さんと紗桜さんのポンコツな女の子とは違うんですよ。
もう、家庭を月ちゃんに任せている最近の家事をしない主婦のような女の子達には絶対負けませんから」
「あの二人をライバル視する時点で音羽の生活能力は退廃的のように思えるんだがな」
虹葉姉と紗桜は普段から家事を俺に任せているおかげで俺なしでは生活できない女の子になってしまったことに
天国にいるおじさんとおばさんに謝りたくなる。
それと同等レベルの音羽にこれから世話をされるといろんな意味で不安に思ってしまう。
「それにしても」
気になることはただ一つ。
「どうして、音羽は虹葉姉と紗桜にライバル視しているんだ?」
「こ〜ん……」
意表を突かれたのか音羽の表情は強張り視線を俺からずらした。ただ、何のこともない一言で見事に部屋の空気が変わってしまった。
「月ちゃんはどうしていつも大切な事には気付かないのかな?」
「うん?」
「あの姉妹は私にとっては倒すべき天敵なんです」
「天敵ってオイ」
「鷺森家の名に懸けて必ず滅ぼしますから」
「いや、滅ぼさなくていいから」
この調子で足が治るまで俺はここで上手くやっていけるのかと首を傾げたくなってきた。
第12話『悪魔の囁き』
*水澄紗桜視点
兄さんが部屋の窓から飛び出してから一週間の月日が流れました。
家は兄さんがいないおかげでまるで電灯10個分が失われたような暗さを漂わせています。
あちこちに私たちが食べ散らかしたコンビニのお弁当を片付けることもなく置かれていて、そこからはすでに異臭を発しています。
それでも、私たちは何かをしようという気力は皆無であった。
兄さんがいないだけでお姉ちゃんも私もこんなにダメになっちゃうなんて。
前に兄さんが門限時間を守らなかっただけで私たちの心は引き裂かれて崩壊寸前だった。
寂しい。 寂しすぎるよ。
お姉ちゃんは虚ろ瞳をして、私の頭を大切に撫でてくれています。
でも、内心はお姉ちゃんも私以上に寂しがり屋で兄さんの事が心配でたまらないんです
こうやって、お互いしっかりと抱きしめておかないと正気を保つことなんかできない。私が狂わないのはお姉ちゃんのおかげです。
でも、一週間は長い。
せっかくの楽しみにしていた兄さんとの夏休みの時間が過ぎて行く。
私とお姉ちゃんはどれだけ楽しみにして夏休みという日を待っていたことやら。
学校で引き裂かれていた兄さんを私とお姉ちゃんとで好きなだけ独占できる時間がどれほど愛しいことか。
夏休みが終わることを、他の誰よりも私たちは惜しんでいる。
なのに。
兄さんがいない……。
絶望が私の心を蝕んで行く。
兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん!
兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん!
兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん!
兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん! 兄さん!
どれだけ呼んでも兄さんは私たちの前から現われてはくれない。
目の前が真っ暗になりそうであった。
私は兄さんがいない現実を逃避していると頭を撫でてくれていたお姉ちゃんがふと立ち上がって食器台の方へ向かいます。
私は首を傾げながらお姉ちゃんの行動を見守っているとお姉ちゃんは乾いた笑みを浮かべて言った。
「月君が帰ってこないの」
絶望に心酔している表情を浮かべて虚ろな瞳をして私に向かって言った。
お姉ちゃんの気持ちは痛い程わかります。
だって、兄さんがいないだけで私は自分が壊れるそうになるぐらいに狂いそうだ。
「月君はきっと監禁されているんだよ。あの泥棒猫に!!」
泥棒猫という言葉にお姉ちゃんはどれだけの殺意を込めているのか充分に伝わってくる。
私も泥棒猫と該当する人物の指を全て切り落としたい衝動にかられる。
「だから、ね?」
食器台から取り出してきたのは銀色の光を宿して眩しいフォークであった。
「刺しに行かなきゃ!! 刺してやるぅぅ!!」
錯乱したお姉ちゃんを私は慌てて後ろから抑え込む。
強い力でバタバタと暴れだすお姉ちゃんを抑えるのは苦労したが、本当はそのまま泥棒猫とこに放してやりたかった。
「うぐぅ……ぐすぐす」
お姉ちゃんの嗚咽する声を聞くと私も泣きたくなってきた。
兄さんがいないだけで私たちはこんなにも弱い。お姉ちゃんに甘えるように抱き締めるとまた優しく頭を撫でてくれた。
「月君は私たちの事を嫌いになったのかな?」
「兄さんは今まで私たちの事を本当の姉や妹のように接してくれてたよ」
「そうだね」
「いつも私たちの事を想ってくれていた」
「でも、月君は私たちを置いて家をでちゃった」
それは避けられない事実。
家族の私たちを見捨てて兄さんは家を出る事実を冷酷にも受け止めよう。
兄さんの隠していたエロ本が見つけられたことで私たちに気まずい思いをさせたっていうことで気遣って家を出なくてもいいんだよ。
あのエロ本は全て燃やしてしまったけれど。
本の中にある裸のメス欲情するぐらいなら私たちにして欲しかった。
私は兄さんのためならなんでもしてあげる。
エロ本にあったような事を私は兄さんのためなら喜んでしてあげるから。
戻ってきてよ。
お願いだから一緒にいてよっ!!
「紗桜ちゃん?」
「私も憎いよ」
兄さんに近付いてくる女性が。異性が。
私の大切な物を奪って行く女たちが。
もし、兄さんが他の女に生活を送っているのなら。
私は喜んで殺人者となろう。
その女に生存権は存在していない。
鈍器で頭を潰して、潰して、原型がわからない程に殴ってやる。
それでも私の気がおさまるはずがないので、ガソリンを流して火を付けてあげる。
生きたまま焼かれる姿は私にとっては喜びだよ。
「
兄さんに近付く泥棒猫が」
「うふふ。紗桜ちゃん」
お姉ちゃんも私と同じ気持ちのようだ。更に優しく頭を撫でてくれた。それが何よりも嬉しかった。
だから、泥棒猫から兄さんを取り戻そう。
私たちのために。
*水澄虹葉視点
月君が帰ってこない。
もう、2週間にもなる。
家族想いの月君が2週間も家に連絡をしないのは基本的にありえないことである。
私は月君のことならなんでも知っている。
ずっと暮らしていた家族だもの。
月君が私のことをわかってくれているように私も月君の事ならなんでもわかっている。
月君は私たちと一緒でとても寂しがり屋さん。
誰かに依存しないと厳しい世の中を生きては行けない。これも私たちと一緒。
月君の依存する相手は当然私たちだ。
家族という表向きの殻で偽り、本当は私たちは両想いの間柄であると私はそう思っている。
そんな月君が私たちに連絡の一つも入れてこないってことは誰かに監禁されている可能性が高いと思った。
月君は学園では結構モテる男の子だ。学園中のメス猫どもが私たちの月君を狙っている。
いやらしい欲情に満ちた瞳で見つめているメス猫どもが多い。
そのわかりやすい例はバレンタインデーの時だ。
月君の下駄箱にチョコを入れてくるメス猫達が多いこと。私は紗桜ちゃんと協力してチョコをいつも焼却炉で全て燃やしている。
月君にチョコを送っていいのは私たちだけなんだから。
だが、監禁となると話は別だ。
想いを受け入れない男の子を監禁して自分の好みに洗脳する恋愛最上級テクニック。
もし、月君が泥棒猫に洗脳されているとするならば、家に帰ってこない理由がわかる。
手を手錠で拘束されて女の子の言う通りにしないと生存できない苛酷な状況下では人の精神は簡単に病んでしまう。
な、なんて羨ましい!!
じゃなかった。
洗脳されている人間を説得して家に帰すのは難しい。マインドコントロールされた人間は大抵の人間の言葉に耳を貸すことはない。
それが家族から声であってもだ。
だから、早急に対策を打ち出す必要性があったのに。私たちは今まで何をやっていたのであろうか?
月君が泥棒猫から取り返そうとはせずにただ泣いているだけであった。
私たちが泣いていたら、月君はきっと私たちの事を心配して帰ってくると心のどこかで信じていたに違いない。
なんて、滑稽な事なんだ。
泥棒猫に捕われているなら、私たちの手で泥棒猫から取り戻さなくちゃいけない。
それがどんな障害が待っていてもだ。
その前に。
「紗桜ちゃん。お買い物に行くよ」
「えっ!?」
「月君を取り戻すためにいろいろと準備しなくちゃね。長期戦になるからね」
「お姉ちゃん!!」
月君。きっと。きっと。泥棒猫から助けだします。必ず!!
これにて謹慎終了
頑張って嫉妬SSスレに復帰致します。
でも、年末はとても忙しいからこれが今年の最後の更新になる可能性が高いですが
謹慎している間にヤンデレスレで短編でも投稿しようと考えたが忙しいゆえに
ヤンデレスレの定義と空気の流れが全く読めなかったので諦めました。
ネタ的には
とりあえず、真っ先にタイトルが浮かびました
『七人殺しの千紗』
好きな異性である主人公に声をかける勇気も持てない千紗は
主人公が私に興味を持ってくれないのは主人公に寄ってくる女の子のせいだと
勝手に決め付けて、主人公に近付く女の子を殺すことを決意します。
流れ的には主人公の幼馴染やクラスメイト、バイト仲間、隣に住んでいるお姉さんと
言ったお約束的なキャラクターを惨殺してゆく。
ラストでは千紗が主人公に近付いた女の子を殺した事を告白しながら
私と付き合ってください
と虚ろな瞳をして主人公に無理矢理抱きつきます
あまりにも恐怖で脅えた主人公は逃げ出そうとしますが
人間離れした千紗に追いつかれて、両足両腕を切断されて
千紗の家へと運び出されます。
ラストでは
主人公の世話を懸命に千紗が看病するというHAPPYENDオチで終わります
でも、ヤンデレスレ向けじゃないなと思って、ネタだけ考えて投稿しませんでした
どちらかというと凶悪ヒロイン向けのような気も
最後に雪桜の舞う時に☆埋めネタは今回は休載します
書く時間がありませんでしたw
(((((;゜Д゜)))))
お帰りなさいそしてGJ!!
ヤッパこの姉妹最高だぜ!
そして月の外道で嘗めた思考回路も最高だw
トライデント氏のご帰還は正にクリスマスの奇跡だなw
トライデント氏復帰キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
これで今年のクリスマスもなんとか凌げそうだ。・゚・(ノД`)・゚・。
「お嬢、世間じゃもうクリスマスらしいゾ。」
「クリスマス?……でも、一週間もしないウチにお正月…」
「だめですよ、日本人はお祭り好きなんですから、そこはサランラップです。」
「シャラップね………ごほん!と、ところで、晋也は……ク、クリスマスは、誰かと……」
「いやーっはっー!クリスマスですぜー!女どもは受かれるイベント!無神論者だけどいまは神様に感謝だぜ!」
「………」
「ということでお嬢!明日から三日ほど休暇を……」
「却下!!!晋也はクリスマスも年末年始も休暇無し!!ずっと私の世話をすること!!」
「ヘェェェェィィイ!ああぁぁんまりだぁぁぁ!なんでー!?」
「う、うるさいわね。雇主の私の言うことが聞けないの?とにかくっ!休みは無しよ!」
バタン!
なんか怒ったまま出ていってしまった。なんだかなぁ、相変わらずお嬢ってば気難しいヨ。しっかし、クリスマスかぁ。
クリスマスといったらプレゼント。うん、雇主であるお嬢に、プレゼントの一つぐらい用意しようかね。我が儘な小さいお姫様に。うーん……なににしよ。
バタン
「ん?」
「晋也さぁん、また佐奈様を怒らせましたねぇ?」
「あ、里緒さん、グッドタイミング。実わさー、お嬢にクリスマスプレゼントをあげようかと考えてるわけなんだけど……」
「えー、本当ですかぁ?うーん、私、晋也からだったら何もらってもうれしいですよぉ。ダイヤとかダイヤとかダイヤとか……」
「ソーリー、里緒さんに聞いたのが間違いだったヨ。」
「うふふ、冗談ですよ。…うーん、そうですねぇ。佐奈様だったらなにもらってもうれしいんじゃないですかぁ?」
なんでもっていうのが一番悩むんだよなぁ。まぁ、この屋敷で働いてるし、それなりにお金はあるからな。
「ようっし!ここは俺らしく、セクハラ方面でセメルゼッ!」
〜〜〜♪♪〜〜♪
さっそく部屋に戻り、MY秘蔵Boxを開ける。山を下りる度買ったり、通販で取り寄せたりして集めた逸品だ。
恐らく給料の大半をこれに注ぎ込んだと言っても間違いないだろう。では……
「オープン!」
パカッ
…………
バンッ!
「は、、歯は派は葉は!ま、まいったなぁ!働き過ぎかな?箱の中が空っぽに見えるよ!?」
パカッ
………………
「な、んっでぇ?ないのぉ!?」
パチパチパチパチ……
「ん?」
なんだか火が焚ける音と、プラスチックを焼いたときの匂いがする。イヤな予感がし、ベッタリと窓に張り付いて見ると……
パチパチパチパチ……
あの後ろ姿は……志穂?そしてあれは焚き火……その中にはッッッ!?
「MYコレクショーン!!!!」
さっそうと窓から飛び出し、消化活動に入る。が、すでに時おそし。MYコレはこんがりと良い色に焼けていた。
「もう、なにすんのよ。せっかく焼芋焼こうとしてたのに……」
「ヤキモチと一緒にAVを焼くなぁぁぁ!うああああ!」
「ふん、丁度良いじゃない。年末の大掃除よ。こんな下らないものがなくなって、綺麗になったでしょ?」
「ううぅぅ……えぅ……お、おれこの惨劇を火の七日間と称し、決して忘れることはないだろう……」
「それ、なんてパトレイ……」
「ふっひゃひゃや!この代償……おのれの体で払ってもらうわいっ!」
「えっ!?ちょっ!ばか……!」
とかいいながらも本気で抵抗しないあたり、志穂も好きものよのう。
「晋也〜!さっきはすまなかったな。ついカッとなって………て…」
「あ。」
「あ。」
服がはだけた志穂に、それを脱がしにかかっている俺。そこから叩き出される結果は一つ………
「う…うぅ…く……うああああん!ふええぇ!」
「お、お嬢!な、泣くなって……」
「ねぇー、晋也ぁ、続き、しよ?」
「ばっ……おま…」
「うわああああん!」
そのまま泣いて走りさってしまうお嬢。
「お、お嬢〜〜!!勘違いだぁ!俺が愛してるのはお嬢だけだよー!!カムバック!お嬢!!!」
「ねぇー、晋也ぁ〜〜〜。」
「くぅ!」
そ、そんな猫みたいな声出されたら……俺は猫が大好きなんだ!
それにしても、お嬢を喜ばせようとしてるのに、なんでこうタイミングが悪いかなぁ。
……余談だが、志穂が燃やしたAVは、『フィニッシュの時、男優の喘ぎ声が女優のソレをかき消してしまう駄作。』というダミーだ。
本当の秘蔵品は鍵をかけ、倉庫に厳重守備している。鍵の番号は4桁で俺しか知らない……
「それもなくなってRYYYYUUUUUUU!!!AWOOOONNNN!!!!」
GJなんだけど、
サブタイだけしか書かないのは紛らわしいから止めて欲しいと思うます
あと投稿終了がわかりづらいので何かしら「おわり」とか「つづく」とか入れるなり工夫してもらいたいんだぜ
↑禿しく同意だ。 ついでに800ゲト
もう次スレの時期か
まだ前スレ埋まってないのに…
萩原葵の兄、萩原大樹は一言で言うなら脆弱な人間だった。
機械弄りの好きな技術屋気質と、酷く繊細な芸術家肌の両面を持ち合わせていた。
常にオドオドして周囲を見渡しては、気弱で挙動不審な印象に拍車をかけていた。小柄で活動的でもなく、小麦色の肌の子供達の中で、一人小さな雪達磨のような自分を持て余していた。友達と外で遊ぶくらいなら室内に遊び相手を探した。それが葵と工具箱だった。
それでも兄は昔から妹の前でだけは強がろうとした。内向的な性格は社会的にあまり好まれないことを知っていた。妹が自分のせいで要らぬ謗りを受けるのが許せなかった。
そのために大樹は彼の安息地であった妹に寄り付かなくなった。賢い妹は黙ってそれを受け入れた。彼のプライドを守り、自分に向けられた決定を尊重しようとした。結果、賢過ぎる妹は全てを失った。兄は工具箱だけでは生きていけなかった。
「兄さん? 入ってもいい?」
ノックする。葵は兄をそう呼ぶ。『お兄ちゃん』と呼べば甘えが見えるし、『兄貴』やまして代名詞なんかだと敬意が感じられない。一年ほど前、悟り切った少女が思春期に悩み抜いた末の判断だった。これも間違っていた。何もかもが間違っていた。
呻き声のような覇気のない了承を受け、葵は兄の部屋に入る。大柄な柱時計が壁際に佇んでいる。お前は用無しだと言われた気がした。そこに何もなかった頃に戻りたかった。
兄を見守るのは自分ではなくて時計の役目だった。
「……どうしたの? 何か用事?」
大樹は訝しげに訊いた。葵は用事がなければ大樹に近付くことさえなくなっていたのに気付く。お互いの必要性は出来立ての和紙より脆くなっている。けれど、葵にとってはそれはどんな鋼にも比類しない強固な繋がりだった。
「兄さんあのね……やっぱり兄さんはあの女とは――」
「……またその話? いいよもう……。彼女は葵が言うような人じゃないよ。……どうして葵はそんなにまで僕を嫌がるんだよ? 馬鹿にしたいんだよ? 僕が誰かを好きになるのがそんなにおかしいことなのかよっ!」
あの時自分は兄を守ることを誓った。また、大樹が兄の立場を保持したままで、葵に負い目を感じずに生きていけるよう手を尽くした。甘えられる余地を残したいという気持ちもあった。虻蜂取らずの格言。教わった時には手遅れだった。
葵は確かに兄の心を慮ることに長けていた。ただ、相手の気持ちを傷付けずに自己主張することは困難を極めた。それは大人でも習得に梃摺る交渉技術だった。そうしたビジネススキルは、理解していても実践できなければ意味がない。
葵は兄を立てることにしか気を回せなかった。
「その……私はそんなつもりじゃ……」
「もういいから。そのことだけなら早く出てってくれよ……」
激昂したはずの大樹。だが、その顔には悲しみが克明に貼り付いている。
何時からか素っ気なくなった妹。クラスメイトからの些細なからかいを真に受けて、苛めじゃないかと苦しんだとき。
工学部に行きたかったのに要領が悪いせいか数学がまるでできず、担任の不用意な「お前は理系じゃやっていけないだろ」の宣告に怯えて、文系志望で文理分けの申請を出してしまったとき。
脆弱な兄は五歳も歳の違う妹に救いを求めた。だが妹は兄のためを想ってそれを突き放した。誓いを破らぬように心がけているうちに、性格が硬直したまま形成されていった。
妹は表面上は昔のように兄に懐かなくなった少女にしか見えなかった。大樹もそう思ったから孤独に苦痛に苛まれ続けた。
居た堪れなくなった葵は、黙って兄の部屋を出た。「ごめん……」弱々しい声が聞こえた。それが彼女に決意をさせた。
情けない兄を嫌悪して無視するようになった妹、それが葵。最愛の兄の評価。神からの嫌がらせはあまりに残酷だ。
説得は通用しそうにない。葵が何を言っても大樹には無視だけでは飽き足らず、遠まわしな罵倒を浴びせかけているようにしか思えないんだろう。
兄の願いも虚しく、葵は大樹と同じで内向的かつ友達が少なく、口下手だった。その上、兄の意に逆らって自己主張などできるわけがなかった。葵はそうしないように生きてきたのだ。
自室に戻ると、ラジオを付けて手頃な番組に合わせた。何かの学習教材の付録だったキット。兄が組み立てた手製の品。柱時計とは異なり、葵が貰っていた。
ラジオ好きなクラスメイトなど一人もいない。最近は低年齢層にまで技術革新の波が押し寄せている。ラジオよりも携帯、パソコンが主流だ。葵は一人時代に取り残されている。
兄のことを想う。縋る相手が掌を返した。裏返った愛情は何となるのだろう。
だが、大樹は弱音を吐くことはなかった。相変わらず妹の前では平気な素振りを見せていた。絆創膏を貼って誤魔化していた傷。その実は悪化を止めていただけだった。
今更それを抉るような妹の振る舞い。歳の差は消え、兄よりも妹のほうがずっと冷静な現状が生まれる。構造的には葵を頼る大樹の構図に似ていた。依存か憎悪か。片方が感情的ならもう片方は自然と理性的に動けるものだ。葵はその傾向が極端だったに過ぎない。
番組のリクエストコーナーで流行のメロディが流れていた。哀しい旋律のバラードだった。鼻がつんとした。強風に煽られる竹林のように胸がざわめいている。
大樹は騙されていた。女慣れどころか他人にすら免疫を持てないような人だった。嘘っぱちの労わりと同情に引っ掛かっていた。葵が欠けた部分。空洞のできたコンクリートを手近な泥で塞ごうとしていた。
大樹に残された友達。ドライバーセットや半田鏝の納められた工具箱。大樹はそれを駆使して相手の女に尽くしていた。手作りのラジオや無線機なんかをいくつもあげていた。
無骨なプレゼントだった。葵でなければ喜ばないようなものだった。世間知らずな大樹は、嬉しいと言う女の言葉を信じているらしかった。
中学時代に技術科目で腕前を褒められたのが切欠だったと言っていた。無感動な妹の気を惹こうと、照れたように頬を掻きながら出した話題。葵はそれを作り話だと思った。兄は葵が不可欠な人間のはずだった。どうしてそんな嘘を吐くのかと頭にきて責め立てた。
思えばあれが分岐点であり、決定打だった。あそこで形振り構わず兄を引き止めていればこんなことにはならなかった。あそこで自分が優しく同調してあげれば、兄は女の存在が紛い物であることを素直に認めてくれた。葵は堂々と兄の守護者であり続けられた。
無意味な後悔だった。それでも葵は大樹を守り続けるつもりでいた。
ラジオを切った。感傷に浸る時間は終わりだ。
葵は電気スタンドの笠の裏に隠してある鍵を取り出した。誰にでもプライバシーがあるんだよ、そう葵に説きながら兄が取り付けてくれた蝶番と金具。それを繋ぐ南京錠を解いた。机の引き出しを開いて、目当てのものを引っ張り出した。
兄がくれたものよりも一回り大きく、外装もスケルトンの安っぽいプラスティックなんかではない。ずっしりとした重量を感じさせる、黒光りした立派なラジオ。確かに、この引き出しには大樹を守る葵の明かされたくない秘密が詰まっていた。
技術屋気質で芸術家肌の兄。妹は何処までも兄に似ていた。妹も機械工作が得意だった。そのためにそうしたものの扱いに慣れていた。
盗聴器とその受信用のFMラジオ。受信距離は短いが、最も手軽で安価な盗聴セット。葵の小遣いでも十分に入手可能だった。年間数十万台が流通する最新技術の塊。社会変動に対して葵も無関係ではなかった。
仕掛けた部屋は言うまでもない。何かへの当て付け。柱時計の内壁にくっつけてある。
ラジオに接続したヘッドフォンを装着する。つまみを捻って音を拾う。誰かに見られたら確実に怪しまれるだろうが、葵は部屋に鍵をかけていない。両親なら適当にあしらえる。もし大樹に葵がこうして盗み聞きをしていることを知られても、それはそれでよかった。
果たしてそのときどうなるのだろう。それはわからない。しかし、自分の半身にも近い純度で兄を慕う葵にとって、守るべき兄を拒絶する鍵など以ての外だった。秘密にするのは自分の守護者としての立場だけだ。兄の立場を壊さぬために。
バサバサと冊子が床に散らばる音の後、話し声が聞こえた。大樹がバックから携帯電話を取り出して通話を開始した。毎日のように聞かされていれば、嫌でも推理ができるようになる。
大樹は酷く落ち込んでいた。聴覚だけで十分判断できた。妹との不仲を嘆いていた。昔のように戻りたいと弱音を吐いていた。兄の願いは妹の願いと変わらなかった。
葵は柱時計を呪った。自分に余計な誓いを立てさせたあの時計を呪った。元に戻せぬ時間軸の代わりに、それを指し示す現存する物質を憎んでいた。
そして地獄からの使者が葵を絶望に追い込んでいく。葵を狂わせる雄叫びをヘッドフォンから流し続ける。兄が冥界に引きずり込まれそうになる。悪魔が手薬煉引いて待ち構えている。守らなければ守らなければ。葵は使命感に追い立てられていく。
電話相手の声までは拾えない。拾うまでもない。兄の声質に張りが戻ってくる。兄がどす黒い甘言に唆されていく。何時しか話題は葵のことからは離れ、二人は葵のいない世界に沈んでいく。葵以外の人間が兄を救うことなどできない。兄は騙されている。
憤怒に震え、悲痛に打ちひしがれる葵に、一つの妙案が降り立つ。
古びた時計の錆びた針。先端は鋭く、下部に近付くにつれて幅広になっていく硬質な鉄片。柄のない剣に似ていた。騎士が振るう正義の刃。悪に鉄槌を下すには最適に思えた。
あれを取り外して女の首に突き立てる。時間軸の呪縛から開放され、同時に守護者の使命を果たせる。葵は天才的発想だと思った。
そうと決まれば相手の女がどんな奴かを突き止めなければならない。受信範囲の広い高価な盗聴器が要る。小学生である葵は、どう頑張っても高校に侵入することはできない。尾行すれば手っ取り早いが、兄譲りの気質を誇示することで兄の眼を覚ましたい。
葵は兄を羊水にして育った赤子のようなものだった。
――だから、気付かない。現状認識の誤りに、気付けない。
兄が世界法則である葵は、『それ』に疑問を挟みはしない。
どれだけ賢くても彼女は小学生であり、そして嫉妬に狂った一人の女だった。
ボーン、ボーンと古めかしい合図が鳴る。柱時計の内部に置かれた盗聴器は、その共鳴を余すことなく葵に送り届ける。耳を劈く厳粛な響き。その音色が直に途絶える。過去に戻れる。やり直せる。
葵は今度こそ、好きなだけ兄に甘えようと思った。
……ガードナーの単語が間違ってる気がしないでもない。
そして妄想乙、で終わる話。
恐らく投下上のミスはないはず……。
それと、中途半端に区切れてるんで、保管の際は一纏めにして貰えると助かります。
よりによって昨日今日にインスピレーションがビビッとくるあたり、
複雑な気持ちになりますね……。まあいいか、好きなシチュだし。
どっちも短い上、一本目は読むことも困難みたいですが、
クリスマスのささやかな暇潰しにでもしていただければ。
GJ!
「あの女」側の話も読みたいと思ってしまったのは俺だけじゃないはず
今宵、リアルワールドで起きている修羅場に想いを馳せつつ
投下します。
12月24日
今宵はクリスマス・イブ
街中にクリスマスソングが流れ、ケーキを買っていくお父さんが足早に帰る、
年に一度の記念日
子供達はサンタのプレゼントを待ちながら夢を見ている、そんな奇跡がバーゲン
セールで売られている日に、一人のサンタがある街に到着した。
「ふーっ、間に合った。飛行機の乗り継ぎしても半日も掛かっちゃったわ」
彼女の名は
「三択ロース410号」(19歳 処女)
正真正銘本物のサンタだ。ただしまだ半人前だったが。
あ〜あ、私も自家用ソリがあればこんな苦労もしなくていいんだけどな〜〜。
レンタルは高いし、何で仮免の時は自腹でプレゼント配達しなきゃいけないのよ!!
……愚痴っても仕方ない、免許を取るまではガマンガマン。
彼女には目的があった。ちょうど一年前のクリスマスの日にある少年にプレゼン
トを届けた。
一目惚れだった。
まだ小学生の高学年ぐらいだろうか、その少年に三択はあろうことか心を奪われ
てしまったのだ。
だからこそ飛行機を乗り継ぎしてでも三択ははるばる日本まで来たのだ。年に一
度だけ、この日にしか逢えないから……。
「懐かしいわ……、別段変わってないわね。あの子元気にしていたかしら」
目的の少年の家に到着した三択は懐かしさに浸りながら、ゆっくりと家の周りを
見渡し、中の様子を伺った。
……どうやら全員寝静まったようね。じゃ、始めますか。
庭に侵入した三択は鳶職も真っ青なテクニックでスルスルと壁を登り、あっとい
う間に二階に上がった。だが――
失敗した……。ミニスカートのサンタ服なんて着てくるんじゃなかったわ。これ
じゃ足が寒い上にショーツ丸見えじゃない!!……まあ誰も見ないけど。
二階のベランダに登った三択は窓の前に立つと、何やら袋をごそごそと探し、あ
るものを取り出した。
えーー……っと、このテープを此処に貼って……よし。で、取り出したるはこの
ハンマーで、こつんと叩けば……。
カチャン
よし、成功。鍵を外して、おっじゃましま〜〜す。
泥棒も感心するほどの早業で鍵を開けた三択はすべりこむように部屋へ入った。
そこはいかにも男の子の部屋らしくバットやグローブがあり、クリスマスツリー
が暗闇の中ネオンを輝かせていた。
そんな部屋のベットに一人の男の子が寝ていた。
「むにゃ………」
「お久しぶり。元気にしてた?……って寝てるか。………かわいい」
暫らく少年の顔を眺めていたら、枕元の靴下と一緒に手紙があった。宛名は……
「さんたさんえ」
「え?!私に手紙?……嬉しい……」
早速手紙を読んでみると
「さんたさん。一年かんいい子にしてました。てすとも100てんとりました。
やきゅうはほーむらんをうちました。だからぷれぜんとください。おながいします。
4の3 つかはらたくや」
つたない字ながらも一生懸命書いた手紙に三択は込み上げる思いが止められなか
った。
「ぐすっ……うんうん。いい子にしていたのは知っているから。よ〜〜し、お姉
ちゃん大奮発しちゃうよ。まずは……」
三択は持ってきた袋の中に手を入れた。すると手には何やら物の感触が触れ、取
り出した。
「ふ〜ん、今欲しいのはプラモデルか。じゃ、まずはこれと、次は……」
出したプラモデルを枕元にそっと置き、次にポケットから銀の腕輪を取り
出し、少年の腕に嵌めた。
「この腕輪はね……お守り。悪い虫から守ってくれるわ。大事にしてね。
ちゅっ♪」
頬に優しくキスをし、立ち去ろうとしたその時ベットの中から
「う………ん、お兄ちゃん大好き……」
三択の動きが止まった。見る見る眉毛が吊り上がり、眉間に皺を寄せた。
今……ベットの中から……
おそるおそるベットの布団を取ってみると、少年の体にしがみ付く少女が寝息を
立てて寝ていた。
「んっ……………お兄ちゃん」
むか。誰よこいつ。私の少年に抱きつきやがって!!離れなさい!!
まるで床に貼りついたガムテープを剥がすかのようにベリベリッと
少年から剥がした。
「はいはい、不法侵入者は追い出さなきゃ」
少女の体をかかえて、近くにあった毛布ですまきにし、寒い廊下に投げ捨て、ドアに鍵を掛けた。
「これでよし、と。それじゃまた来年ね。待っててね、少年がもう少し
大きくなったら迎えに来るから」
修羅場を愛する皆にメリークリスマス!!
続きません。こんなネタ今日しか出来ないから作っちゃいました。本当だったら
「魔法少女」投下しようと思ったけど……
今度は正月ネタでも書こうかな
嫉妬25ろされる
25った瞳
25日はクリスマス
雌豚は地獄25
(めすぶたはじごくにGO)
>>811 GJ。すまきワロタ
将来の再会が非常に楽しみですね
新スレ立て、行って参る
822 :
737:2006/12/24(日) 22:41:15 ID:DIdgaBk8
時間が空いてしまいましたが、737には続きがあります。
よろしければ投下したいのですがいかがでしょうか
823 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 22:45:47 ID:47i8zwHW
オーケー。
>>823 ありがとうございます
一応737から投下します。
826 :
737:2006/12/24(日) 22:53:48 ID:DIdgaBk8
「おはよう!」 「おふぁよう」 欠伸交じりに挨拶をかえす。「また寝癖ついてるよ?」
彼女はこちらへ近づくと少し背伸びをしてポンポンと秀一の髪を直す。
長い髪が風で踊り、ふわっと良い香りがする。秀一は恥ずかしさから少し顔を背けつつ感謝の気持ちを伝える。
「・・・ありがとう」 「いえいえ♪」彼女は秀一に笑いかけた。毎朝その笑顔を見るたびに心が落ち着く。
「今日レッスン無いよね?」「うん、来週からだよ」 そして学校まで他愛無い会話を続ける。
TVのニュースは日に日に悪くなっていく世界情勢を伝える。
しかし、日本の隣国による核の脅威についての特別番組を観た後でも、宗教戦争で一触即発という国々の報道を観た後でも
二人で登校しているこのときだけは、秀一は 「世界は平和だ」 と胸を張って言えた。
827 :
737:2006/12/24(日) 22:55:15 ID:DIdgaBk8
「夫婦登校かよ、朝からラブラブだな!」
二人一緒に教室に入ると男子からやじが飛んできます。
根も葉も無い事ですが、秀君と「夫婦」と言われ嫌な気はしません。
少なくとも自分が秀君と一緒に居ても不釣り合いでは無いということです。
安心感と喜びが胸を満たします。思わず笑顔になってしまいました。
そのことを周りに悟られないように顔を伏せて自分の席へ向います。
途中、ちらりと秀君の方を見ました。困ったような顔でやじを飛ばした男子達としゃべっています。
一抹の不安が胸をよぎった。
――――秀君は「夫婦」とまで言われてどう思っているのかな・・・
828 :
737:2006/12/24(日) 22:58:38 ID:DIdgaBk8
彼女は顔を伏せて自分の席へと行ってしまった。朝から夫婦などと言われ、嫌だったのだろうか。
なんだか申し訳ない気持ちになった。
「朝の第一声がそれか。挨拶はどうした、挨拶は。それに僕達は夫婦じゃなければ付き合ってもいないぞ」
おどけた調子だがしっかりと男子達に釘を刺す。
誤解や噂をそのままにしておくと、彼女を傷つけることになる。
しかしすぐに男子から疑いの声があがった。
「うそつけ。幼馴染で登下校から昼食まで一緒、しかもその相手があの北條優奈で男がロマンス感じないわけないだろ?」
「あのなぁ・・・」 確かに登下校も昼食も、高校入学してからこの一年間一緒だったし、これからもそうだろう。
だがそれは彼が最初に言った「幼馴染」という言葉で全て説明がつく。
「幼馴染」とはそういうものなのだ。
北條優奈。僕の幼馴染。
健康的にスラリとのびた脚。細い腰に、セーターとブレザーの上からでもはっきりと分かる胸。
決して胸が大きいというわけではないが体の線が細いため胸が強調されて見える。
肩までの黒く艶のある綺麗な髪。長いまつげと黒目がちの大きな瞳が特徴の整った顔立ち。
その容姿もさることながら、常に笑顔で誰にも分け隔てなく優しく接する人柄から
性別、先輩後輩問わず好かれていた。女子は嫉妬を超え羨望の眼差しで彼女を見ているし、
本人はまったく気付いていないがクラスのアイドル的存在だ。
まさに非の打ち所が無い。自分との接点は「幼馴染」というだけだ。
――――だがそれがいい。今の関係が自分には心地よかった。
829 :
737:2006/12/24(日) 23:09:14 ID:DIdgaBk8
投下終了です。
不愉快な方はスルーでお願いします
読んで頂き、問題点や不自然な所、日本語としておかしかったりもっと良い表現があるだろという所がありましたら
是非ご指摘お願いします。
ご指摘頂いた事を糧にさらに精進する次第です。
GJ。 途中で投げ出さず完結させて欲しい、お願いしたいことはそれだけです
完結させるのって大変だよね。俺も端緒は思い浮かべど終わらせることはできんな。
クリスマス超超超投下ラッシュだワッショ━━∩(´∀`∩(´∀`∩(´∀`∩(´∀`∩(´∀`∩)━━イ
ノン・トロッポ、投下します。
美術部は美術室を部室として使っていた。
愛美は戸を開けると、その中へつかつかと入っていった。
愛美の後についてきていた進は、体は教室の外に置いたまま、教室の中を覗き込んだ。
何かあれば、すぐに帰ろうと思ってのことだ。
そこには、女生徒がひとりだけいた。その女生徒と目が合った。見覚えのない顔だった。女の子にしてはずいぶん背が高い。
髪を無造作にゴムで束ねていた。束ねきれていない髪が、ぴょんぴょんとはねている。髪の色は多少薄かった。
くっきりした二重の目に、濃い眉毛。目の下あたりにそばかすが散っているのが特徴的だった。全体的に、彫りの深い顔だった。
その彼女と目が合ってしまったのだから仕方がない。進も諦めて教室に入ることにした。
進は愛美の隣にたった。愛美が口を開きかける。
だがその前に、女生徒が機先を制して話し出した。
「おお、君は平沢進君ではないか。いや、お噂はかねがね」
進はそれを聞いて、機嫌を悪くした。
沙織のおかげで、進は校内でそれなりの有名人であるが、その評判はよいものではなかったからだ。
沙織の金魚の糞であるというぐらいなら事実なのでまだいいが、根も葉もない噂も流されていた。
それを察したのか、女生徒が付け加えた。
「おおっと、誤解しないでもらいたい。あたしは足立沙織と同じクラスの友達でね。沙織から直接、君のことは聞いているのだよ」
つまり、彼女は1年先輩らしい。
「あたしは3−Aの山口翠(やまぐち みどり)。美術部の部長をやっている」
「あ、僕は」
「だから知ってるって。平沢進君。2−C所属。まれに見るがんばりやさんだが、子供っぽいところがある。好きな食べ物はシチュー。コーヒーには砂糖とミルクを入れる。
炭酸飲料が苦手。好きな色は青で、好きな音楽はテクノ。趣味は読書、それから」
翠は、そこでいったん休憩を入れて、というよりタメを作って続けた。
「絵が上手いらしい。これは全部沙織が勝手にしゃべったことだから。間違いがあったらいってね」
進は沙織の暴露ぶりにあきれた。友達と自分の話をしているなどと、想像もしていなかった。
「いや、だいたいあってます。絵が上手いってこと以外は」
翠はそれを聞いて「ふーん」と肯いた。
「で、その平沢進君がいったい何用でこんなところまで?」
そこで、蚊帳の外に置かれていた愛美がやっと口を開いた。
「見学です、美術部の。平沢君、どこにも入ってなくて、だからわたしが誘ったんです」
「ほおほお、グッジョブ、川名さん!この部には何かが足りないと思っていた。画材か?予算か?いや違う!それは若い男だ。あたしは若い男に飢えていた」
「あの、別にまだ入ると決めたわけじゃないですから」
進は釘を刺した。翠はいかにも口が上手くて、押しの強い娘であるように、進には思えた。
進はそういうタイプが苦手だった。あれよあれよと向こうのペースに巻き込まれて、進のような人間はいつの間にか流されてしまう。
実のところ、沙織もまた似たようなタイプだったのだが。
「いやいや、まあ見てってよお客さん。画材は全部部費で買えるし、静物だってこんなのもあるし」
翠はそういって、水牛の頭蓋骨らしきものを手に取った。
「ほらほら、ハリケーンミキサー!!なんちて。それだけじゃない。うちの部には5人の美少女が控えている。そこにいる川名さんなんて、結構かわいいでしょうが。え、何?
それとも川名さんがかわいくないとでもいうつもり?」
「あ、いや、かわいいと思いますけど」
翠の押しに、進がついいってしまうと、愛美はそれを聞いて顔を赤くした。
翠はそれを見て、にやりと笑った。
「まあもちろん、筆頭美少女はこのあたしなんだけどね。なんだったらモデルだってしてあげるよお。何、全裸がいい?仕方ないなあ、そこまでいわれちゃあ、後には引けない。あたしのナイスバディーを拝んで空までぶっ飛びやがれ!!」
翠はそういって、セーラー服のリボンを解き始めた。進は展開のあまり速さについていけていない。
おろおろすることもできず、ただ唖然としていた。
翠を止めたのは、進ではなく、愛美だった。
「ちょっと部長!平沢君が困ってますから」
「あははー、ごめんごめん。やっぱりメインは後輩に譲らないとね。ほらほら川名さん、平沢君も待ってるから、じっとして」
今度は、翠のリボンを解き始めた。
「あっ、あのっ」
愛美はなぜか律儀に翠のいうことを聞いて、じっとしていた。リボンが完全に解かれてしまう。
愛美が進の方をちらりと見た。赤い顔をしていた。だが、単に恥ずかしがっているという風ではなく。
進はやっと再起動した。
「ストップ!僕はいいですから、もう止めてください」
「ふむ、平沢君がそういうのなら、このくらいでよしておくか。じゃあ、入部は決定ということで」
翠が愛美のリボンから手を離した。愛美はそれをすばやく結びなおした。
「いや、だからまだ決めたわけじゃなくて」
「まあまあ、とにかく仮入部ということで。しばらくここに来て、いい感じだったら本入部すればいいんだし。だから、明日から放課後にはここに来るように。いちおう活動日は月曜から金曜まで。
うちは固いところじゃないから。気が進まなかったら休んでもいいし、天気がよかったら外で描いていてもいいし。顧問は明日来ると思うから」
「あの、でも沙織ちゃ、足立先輩が」
「知ってる知ってる。いつも一緒に帰ってるんでしょ。まあ、そのときまでいればいいじゃない。教室で描くのも、ここで描くのも一緒でしょ」
確かにそうだった。それに、断るのに沙織のことを理由にするのは、いかにも情けないことのように進には思えた。
だとすれば、他に断る理由などないようにも思えた。
「あの、分かりました。とりあえず明日から様子見ということで」
「おお!来てくれるか。後の歴史家は、君の決断を英断と呼ぶだろう、平沢卿」
翠はそういって、右手を差し出してきた。握手をしろということらしい。
進が杖を離して右手を出すと、翠はそれを握ってぶんぶんと振った。
怒涛の展開に時間を忘れていたが、そろそろ沙織が迎えに来る時間だった。今日はもう戻ることにした。
「ささ、川名さん。旦那を送って差し上げて」
一人で大丈夫だという進に、翠は無理やり愛美をつけた。
美術室に来たときと同じように、二人して教室に向かった。
「すごいひとだったね」
「あの、ごめんなさい、うちの部長っていつもああだから。迷惑だった?」
愛美が顔をうつむかせていった。
「いや、確かに驚いたけど。でも面白かったし。ああいう人は嫌いじゃないっていうか」
「平沢君は部長みたいに明るい人が好きなの?」
話が妙な方向に進んでいた。