嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 無言電話14回

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ

■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十二因縁
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152367165/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 墓標11基
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1151452702/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十戒
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150625025/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 九死に一生
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149764666/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁八日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148998078/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁七日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148113935/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫六匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147003471/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145036205/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143547426/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142092213/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/

2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第13章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1152011761/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
2名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 00:44:06 ID:h3Lj8xIG
2get
3名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 00:44:09 ID:k6j9q/aI
誘導用
【3P】ハーレムな小説を書くスレ【二股】 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144805092/l50
寝取り・寝取られ総合スレ 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133346643/l50
ヤンデレの小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148704799/l50

前スレ抜けてましたごめんなさい
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 13日の金曜日
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153233347/
4名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 00:47:43 ID:KNYUy1SC
>>1の乙さに嫉妬

さっき立てようとしたらhttp://〜が多すぎるって警告が出て立てれなかったから
次スレからは過去スレを前スレだけにしてそれ以前は修羅場さんのところに
おいておいてもらったらどうだろう?
5名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 00:47:46 ID:SyoScD2J
.:.:.:.: |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
.:.:.:.: |:/: : ; :: /V: : ヽ: ヽ: : : : : : :\\
.:.:.:.: | : : : : :i:|'~'`'|:ト;: : ::\ : :i: : :i : i:: ヽ
.:.:.:.: |: : : : i:.|.   |i |i:ヽ,: : :i: : :i: : :i: : i :ヽ
.:.:.:.: |:: i: : i:|    |i, .|ト :ヽ :ト,: ::i:: : i: : i:: i|
.:.:.:.: | :i:: ハ:|   _,,.ii, ヾ\;:::|ヾ i: : :i: : ト;::i|
.:.:.:.: | i :|_,,irーニ´  \, \ミ;,;| |:.i:: : i: ::|.|:.|
.:.:.:.: | i´|,r{チテト`.    ヽ、,ェュト、i:i: : i:: :| |:.|  >>1さん乙です
.:.:.:.: | トイ{::}:::ト;}      ケチ;}ト|リ : :i:: :| |:/ 
.:.:.:.: | :| i`ャ;;;:ソ,      {;;;;ソ`i/::: ノ::/ '   
.:.:.:.: | iヽ::: ̄        ~^'ノ::イノイ
.:.:.:.: | :ト、      .,_, '  :::: /ノ'´~:|
.:.:.:.: |i :i i .、        ィ':i : /:: : |
.:.:.:.: | i i:|  ` 、 _ , r i´::i i:: / : : |
.:.:.:.: |ヾ:.:|     |、: : : :i i:: i:/:: : : ト
.:.:.:.: | :i`;|     ト|`-、:.i i レ: : : : :||i
.:.:.:.: ト;;:i.i:|     `i  ~`/: : : : :イi |i
.:.:.:.: | ` i i:| ̄`' '´~|  i; |: : : : /|;| |i
6血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:54:22 ID:wmtpz+Zx
投下します
7血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:55:09 ID:wmtpz+Zx

 ビビス公爵からの指令は、非常にシンプルなものだった。
 
 ――アマツ・コミナトを消す前に。
 ――奴が居なくなったら抑える者がいない血塗れ竜を。
 ――殺す。
 
 そのための手段は問わないとされた。
 血塗れ竜の戦闘能力は侮れないが――不意を打てばどうにでもなる。
 そう思い、“暗殺侍女”は確実に隙を突ける手段を模索した。
 まず最初に浮かんだのは寝込みを襲うことだが――これは却下。
 気配を断って暗殺する術は身に付けているが、それはあくまで常人に対してのものである。
 ビビス公爵が怪物姉妹を手に入れた際、警告としてセツノ・ヒトヒラを軽く脅そうとしたが、
 就寝中だったはずの怪物妹は、ティーの襲撃をあっさり看破し、難なく撃退してみせた。
 一定以上の能力を持つ者にとって、寝込みを襲われるのはたいした脅威ではないことを知った。
 強さの種類にもよるのだろうが――血塗れ竜の特殊性から考えて、寝込みを襲うのは確実とは思えない。
 通常の不意打ち程度では殺せそうもない、というのがティーとミシアの結論である。
 
 では、どうするか。
 
 思いついたのが、精神的な動揺を狙い、その隙を突くことだ。
 血塗れ竜の戦闘能力は確かに飛び抜けてはいるが、精神的な強さは皆無といってもいいだろう。
 彼女が付き人にご執心であることは周知の事実である。
 手品師との試合で右腕を負傷したのも、食人姫とのいざこざで動揺していたからのようだ。
 これを利用しない手はなかった。
 
 ユウキ・メイラーを寝取るか殺害するのが確実かもしれなかったが。
 彼は食人姫のお気に入りでもあるし、銀の甲冑とも距離が近い。
 直接狙うのは難しかったため、他の人間を有効活用することにした。
 
 食人姫に、寝取らせる。
 
 食人姫の方の積極性などから考えても、これが一番確実だった。
 元付き人が寝取られた様を見せつけ、動揺した隙を突いて殺す。
 食人姫を焚きつけその気にさせるのがミシアの役目。
 血塗れ竜を現場に連れて行き、隙を突いて殺すのが自分の役割。
 
 扉をノックする寸前、中から伝わってきた睦み事の気配より、ティーは成功を確信していた。
 
 しかし。

8血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:55:52 ID:wmtpz+Zx
 
 
 
 空気が歪んでいた。
 まるで空間がねじ曲げられたかの如く。
 2人の少女を中心に、部屋が修羅場に変わっている。
 
 呼吸をすることすらままならない。
 手足どころか指先を動かしただけで殺されそうだ。
 でも――動かなければ。
 することは簡単だ。今まで自分が幾度となく実行してきたこと。
 相手の意識の裏に滑り込み、死角から急所を一突きする。
 ただ、それだけ。
 武器はある。技術もある。経験もある。
 
 ――なのに。
 
“暗殺侍女”とまで称えられたはずのトゥシア・キッコラは、まるで彫像のように固まっていた。
 
(怖い……怖い……怖い、怖い怖い怖い……っ!)
 かちかちと奥歯が鳴ってしまうのを止められない。
 今まで己がくぐってきた修羅場なんて、今この状況に比べれば、遊戯場としか思えない。
 武器を取り出す?
 攻撃する?
 ――1歩近付く?
 
 無理だ。
 
 自分たちは、血塗れ竜を甘く見ていた。
 ――否、血塗れ竜だけではない。
 それに対面する食人姫も――自分たちが思っていた以上の存在である。
 アマツ・コミナトを消した後、憂いとなるのは血塗れ竜だけではない。
 食人姫、アトリ――こいつも、制御不能としか思えない。
 
 この2人のどちらかを殺す――そんなこと、不可能だ。
 こいつらは、確実に、人間の域を逸している。
 戦って、敵を殺す。
 その暴力性は、どんな軍隊ですら及ばない。
 相手を殺すことに特化された存在。
 
 つまり、怪物だ。


9血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:56:26 ID:wmtpz+Zx

 睨み合っているのは竜と鬼。
 どちらも人間などではなく。
 近付けば、きっと殺される。
 その片割れを殺そうとしてただなんて、自分の愚かさに涙が出る。
 
 思い上がっていた。
 殺すのなんて不可能だ。
 任務なんて知ったことか。
 この場を生き延びたら、辺境に逃げ、片田舎でのんびり暮らしてやる。
 
 だから、かみさま、おねがいです。
 わたしを、ここから、ぶじにかえしてください。
 
 失禁しそうな――否、既にしてしまっている恐怖の中。
 暗殺侍女の片割れは、奥歯を鳴らしながら、神に祈った。
 
 
 がしり、と。
 細い腕が、ティーの胸ぐらを掴んだ。
 
 
 血塗れ竜に掴まれた。
 それが、自分の死が確定した瞬間だと気付いたのは、バラバラにされた後だった。
 
 肉の弾ける音と。
 バラバラになって宙を併走する、己の体。
 
 向かっていく先には――口を開けた、食人姫。
 
 
 ……神様は非情だなあ。
 そう思った次の瞬間。
 ティーの頭部は噛み砕かれていた。
 
 
 
 
 
10血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:57:03 ID:wmtpz+Zx
 
 
「――危ないなあ。ユウキさんに当たっちゃったらどうするつもり?」
 バリバリとメイドだった肉片を噛み砕きながら、アトリは呑気そうにそう言った。
「うるさい、だまれ」
 対する白の声は硬く、そこには敵意しか感じられなかった。
 
「ユウキさんは私の大切な人なんだから、傷つけたら許さないよ――絶対に」
「ユウキから離れろ」
「えー。折角繋がることができたんだから、もう離れたくないなあ」
「離れろ」
「それよりー。男と女がえっちなことしてるところに踏み込むなんて、無粋じゃない? 出てきなさいよ」
「離れろっ!」
 
 白の叫びに。
 仕方ないなあ、とベッドから降りるアトリ。
 
「ユウキさん、ごめんね?
 このお邪魔虫を喰い殺したら、あとでいっぱいいっぱい、続きしよ」
 白の乱入に気付いて呆然としていたユウキに、アトリは片目をつぶって謝った。
 裸のまま、白と相対する。
 鎧以上の防御力を誇るアトリとしては、服なんてあってもなくても同じようなものだ。
 終わった後、すぐにユウキと続きをすることを考えれば、着てない方が都合いいくらいである。
 
 
「ユウキ」
 一瞬。
 白がアトリから視線を外し、呆然としているユウキを見る。
「こいつ殺したら、帰ってきて」
 それだけ言うと、後はただ、アトリのみを見つめていた。
 
 食人姫はどこを喰うか見定めて。
 血塗れ竜はどこを破壊するか観察している。
 
 空気は刃物のように緊張を帯びていき、動いただけで切り刻まれそうな鋭さとなる。
 もう、誰にも止められない。第三者が見たら、そう断言するだろう。
 狭い部屋。
 向かい合う怪物2匹。


11血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:57:43 ID:wmtpz+Zx

 殺し合いが――始まる。
 
 触れて破壊するか喰って破壊するかの違いはあるが。
 両者とも、近づけなければ始まらない。
 互いの歩みに気負いはなく。
 ただ、相手を殺すためだけに、普通に歩いて距離を詰める。
 
 接触まで、あと数歩。
 
 
 そこでようやく、声が出た。
 
「――2人とも、止まりなさい!」
 
 ユウキ・メイラーの声だった。
 薬で意識は曖昧だが、それを雑巾のように引き絞って、制止の声を捻り出した。
 でも――2人は止まらない。
 
 ユウキは2人にとっては商品のようなものである。
 手に入れたい、という欲求は強まるが、止まろうなんて考えは欠片も浮かんでこないだろう。
 
 
 朦朧とした頭で、ユウキは必死に考える。
 このままでは2人が殺し合ってしまう。
 そんなの絶対に見たくはない。
 試合として仕方なく、ならともかく、現状はそんなの関係ない。
 どうしてこうなってしまったのだろう?
 何が悪いのだろうか。誰が悪いのだろうか。
 
 
 そんなの簡単だ。
 悪いのは、どう考えても自分じゃないか。
 
 
 じゃあ、どうすればいいのか。
 何をすれば、2人を止められ、罪滅ぼしができるのだろうか。
 
 
 そんなの、簡単だ。
 
 
 
 
 
12血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:58:28 ID:wmtpz+Zx
 
 
 もうすぐ。
 もうすぐで、食人姫に手が届く。
 手が届いたら、まずそこを破壊しよう。
 口にだけは注意して、他の場所を念入りに。
 体が丈夫なのは、よく見ればわかる。
 以前の自分だったら、上手く壊せなかったかもしれないけど――今の自分なら、難なく破壊できる。
 だから、もうすぐ。
 
 
 あと少し。
 あと少しで、血塗れ竜に口が届く。
 近付いたら、まずは食べられるところから食べてしまおう。
 端っこからでも喰っていけば、そのうち勝手に死んでくれる。
 別に、手足が破壊されても構わない。
 一度だけ、急所に食いつくことさえできれば、大抵の人間は脆いから、簡単に死んでくれるだろう。
 苦痛には慣れている。手足が千切れた程度の痛みで――私はかぶりつくのを止めはしない。
 だから、あと少し。
 
 
 互いが、相手しか見ていなかった。
 だから、その瞬間まで気付けなかった。
 
 
 血塗れ竜と食人姫。
 もう互いが触れ合えそうな距離まで近付いていたその狭間に。
 何者かが、割り込んできた。
 2人を突き飛ばそうと、両手が伸ばされる。
 
 
 目の前に障害物が現れた。
 両者の認識はこの程度。
 とにかく相手を殺すことにのみ集中していたので。
 邪魔なものは排除するだけだった。
 
 
 いつも通り。向かってくる力を利用し、ねじ曲げ千切り飛ばした。
 
 いつも通り。首を巡らせ、強靱な顎と歯で簡単に食い千切った。
 
 
 そして。
 両腕を失った乱入者が、悲鳴を上げた。
 そこでようやく――2人は、“誰”が割り込んできたのか、わかった。


13血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:59:15 ID:wmtpz+Zx
 
 
「――ユウキッ!?」「――ユウキさんっ!?」
 2人の叫びが部屋に響く。
 白は己の左手に残る感触を。
 アトリは己の口の中にある肉片を。
 すぐには、受け入れられなかった。
 
 ユウキの腕を千切ってしまった。
 ユウキさんの腕を食べてしまった。
 
 2匹の怪物は、その事実に現実を見失いかけた。
 
 
「……囚人同士の……私闘は、厳禁です」
 
 
 ユウキの掠れた声。
 それが、2人を現実に帰らせた。
「ユウキ! ごめんなさい! ごめんなさい!」
「××××ッ!? 血が! 血が止まらないよっ!?」
「――ね、根元を押さえて! 上に伸ばしてっ!」
「う、うん!」
 断面より溢れる鮮血に慌てる2人。
 このままでは、ユウキが死んでしまう。
 それは、2人を恐慌寸前にまで追いつめる。
 
 白が止血方法を知っていたのが幸いだった。
 観察能力に優れ、半ば本能的に止血方法を知っていた白は、即座に実践しアトリに指示する。
 アトリも反発している場合じゃないことはわかっているので、素直に白の指示に従う。
 殺し合おうとしていた2人が、奇妙な連携を見せていた。
 
 
 
 やがて。
 両腕の先端こそ失ったものの。
 完全に止血されて、ユウキはベッドの上に横たわっていた。
 とにかく血を止める方法しか知らない2人は、ユウキがこれ以上出血しないように、左右それぞれの腕を持ち上げていた。
 自分たちは素人だというのははっきりと理解している。
 落ち着いたら、すぐに人を呼んで、ちゃんとした治療を受けさせなければ。
 白もアトリも、示し合わせたわけでもないのに、そう考えていた。


14血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 00:59:57 ID:wmtpz+Zx

「ユウキ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
 白は、ひたすら謝っていた。
 難しい言葉を考えるより、とにかくユウキに謝りたかった。
 あんなに会いたかったのに。会って愛してほしかったのに。
 自分は、なんてことをしてしまったのか。
 腕が無くなる痛みはよくわかっている。それをユウキに与えてしまった。
 嫌われて当然だが――それでも、嫌われたくなかった。だから、ひたすら、謝り続ける。
 すぐ近くに食人姫がいるのも気にしない。ユウキに謝るのが最優先だった。
 隙を突かれて喰い殺されるのであれば、それはそれで仕方ない。
 
 ――囚人同士の私闘は厳禁です。
 
 ユウキには絶対に嫌われたくなかったから。
 言いつけを破るつもりなんて、欠片もなかった。
 
 
 
 
 
「……なんかなあ」
 ぼんやりと、アトリは溜息を吐いた。
 思うのは、ユウキのこと。
 ――普通、あそこで飛び込むか?
 自分も血塗れ竜も異常で、その間に飛び込んで無事に済むだなんて、どう考えてもありえない。
 事実、今こうして、両腕を失ってしまっている。
 これでも運がいい方だと思う。最悪、死んでしまってもおかしくなかった。
 だというのに――飛び込んできた。
 己の体を顧みず。
 私と血塗れ竜の衝突を防ぐためだけに。
 きっと、ユウキにとって、血塗れ竜と食人姫は、どちらも大事な存在で。
 2人を、守りたかったのだろう。だから、こんなことをした。
 ……不謹慎だとはわかっている。でも、それでも。
 
 ますます、好きになってしまった。
 
 血塗れ竜との決着は後回しだ。
 今はただ、この愛しい人の無事だけを祈ろう。
 
 
 
 
 
15血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 01:00:31 ID:wmtpz+Zx


 血塗れ竜と食人姫。
 衝突するかと思われた2人だが、なんとかそれを回避することができた。
 短くなった両腕の先端を大事そうに抱える2人の少女を見て、ユウキ・メイラーは安堵の溜息を吐いた。
 腕からは間断なく激痛が伝わってくるが、こんなのは自業自得である。
 白にはもっと早く謝っておけばよかったのに。
 アトリにはもっと誠実に接していればよかったのに。
 自分の心地よさを優先して、ずるずるとここまで引きずってきた自分が悪い。
 
 とりあえず、これで一段落。
 気絶してもおかしくない激痛に晒されながら、しかし2人のためにも考えるのを止めることなんてできなかった。
 2人が再びぶつかり合わないように、何か良い方法を考えなければ――
 
 
 そう、思った瞬間。
 
 
 轟音。
 
 
 空気がびりびりと震えていた。
 洋燈が揺れ、テーブルの上のコップが倒れた。
 建物が倒壊したかのような轟音に、3人が目を白黒させる。
「じ、地震ですかね?」
 掠れた声で、ユウキが呟く。
 アトリもそう思ったのか、呆然としながら頷いた。
 
 しかし。
 ――白だけは、頷かなかった。


16血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 01:01:16 ID:wmtpz+Zx

「…………」
 険しい表情で、音のした方向を見据えている。
 と。
 再び、轟音が鳴り響いた。
 ……心なし、先程より大きな音がした。
 それから、何度も何度も音が響く。
 そのたびに空気は揺れ、ユウキは傷口へ伝わる振動に歯を食いしばる。
 音はどんどん大きくなってきている。
 まるで、音源が近付いてきているかのように――
 
 
「……信じられない」
 再び轟音。やはり、近付いてきている。
「し、白? この音に、心当たりが?」
 轟音。まるで、建物の一部が破壊されたかのように。
「……生きてた」
 轟音。やはり、移動している。もう、すぐ近くから――
 
 
「あいつ、生きてた」
 
 
 白がそう呟いた、次の瞬間。
 
 轟音と共に、個室の壁が破壊される。
 ユウキは響く振動に激痛の悲鳴を上げ、アトリは破片からユウキを庇った。
 白は、ベッドから離れ、破壊された壁へ向き直る。
 
 砕けた石壁。
 粉塵が舞い、その奥で、何かが動いた。
 
 
 ゆうきさん
 みつけた
 
 
 見覚えのある黒髪が、揺れていた。


17血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/07/31(月) 01:02:35 ID:wmtpz+Zx
復ッ活ッ!

>>1
乙!
次からはもうちょい短くできるよう努力しますorz
18名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 01:06:46 ID:KNYUy1SC
リアルタイム乙ぅぅぅぅぅ
19名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 01:40:55 ID:IkJU34Jd
こいつはやべぇぇぇえぇぇぇ
20名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 02:02:51 ID:GV3pVfkU
ここから果たしてどうやって収拾をつけるのか…
気になって、落ち着かなくて、夜も眠れなくて。
21名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 02:33:57 ID:DU0+pIEr
あれ?ビビスもしかしてシボンヌ?
22名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 03:07:27 ID:7ETmxlhu
五体満足なのアトリだけかwwww

次が楽しみだー
23名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 03:30:58 ID:yNsg2HVp
あれ?細木もしかしてシボンヌ? 
24名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 03:50:22 ID:xsM0iJfW
怪物エロ姉?復活キタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━━!!
25名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 05:23:42 ID:utLzgzj1
なんかどんどんキャラが増えてくな……
どうするんだユウキは。
26名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 07:06:57 ID:/ZCeZJ+8
新スレが立って早々しょっぱなからキター
「首を巡らせ」が「(相手の)首を捻らせ」に見えたせいでユウキ死んだかと一瞬思った
27名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 07:36:29 ID:/6jqWCga
ユウキのこれからにwktk
ついでに「商品」は「賞品」?ウリモノだったら俺が借金してでもユウキを買ってしまいそうです。
28名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 07:39:06 ID:cGT/5TAS
>>27
あーあ、そんなこというから……ってもう生きちゃいないか……
29名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 07:53:58 ID:SyoScD2J
朝起きたら早くも作品が投下されてるなんて・・・GJです!!
というか姉生きてたんですね、やっぱりビビスは死んだのか・・・
30名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 08:16:46 ID:I37rqHCX
ビビスが 死んでも 誰も泣〜かない
 
それはそうとユウキ……あんた漢だ(つД`)
31名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 09:26:54 ID:R5HWvePi
さすが終わりのない修羅場を作り上げるだけの漢だな
代償は両腕か…
32名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 11:30:34 ID:IyQsBF9d
ちょっとハッピーENDの匂いがしてきたぞ
33名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 11:39:03 ID:KNYUy1SC
正直ユウキが最萌えだね
普通にヒロインだしw
34名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 13:38:44 ID:7o4AykAZ
歴代最萌主人公
35名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 16:36:45 ID:quz/T8zF
歴代最へたれはゆう君?
36名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 17:33:33 ID:fArOskJ7
37名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 18:02:54 ID:0vswN4KZ
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
白テラカワイス!!!

>>35
個人的には士郎君の方がどうしようもない感じなんだが
38名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 18:27:02 ID:fwFt0CI2
やっぱ、腕はあったほうがいいな
39名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 18:41:00 ID:iwBG8XOL
ストーカースレみたいなスレタイだな、まぁ本質は近いけど
40名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 18:49:12 ID:xOmcIP3M
個人的なユウキのビジュアルイメージってアニメ版雪風の零が浮かんで困る。
41名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 19:27:53 ID:6I8DSIao
>>40
俺の白のビジュアルイメージってシャナなんだよなぁ・・・orz
42名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 19:30:55 ID:mglNERjW
>>40
あー、なんかわかる
俺も眼鏡かけてるイメージだ
43 ◆wGJXSLA5ys :2006/07/31(月) 20:01:06 ID:vlx9D/ZU
「はぁ…はぁ…」
「ん、そ、蒼也…さまぁ……」
「くっ、いくぞっ」
「はい、中に…だしてぇ!」
いわれたとおりに中に出す。いつものような体の求め合い。今も彼女を抱いている。けど…何か違う。いつもと違う。「何が?」と聞かれても分からないだろうけど、違和感は否めない。
「はぁ、はぁ、そ、蒼也さま…よかった…ですか?」
「ああ、悪くはなかったな……」
互いに息を整え、ベットで横になる。いつもの道具のような物は周りに転がってはいない。
「今日の蒼也さま……なにか違いましたね……」
彼女にも悟られていたようだ。それほどまでに変わってたのか、俺………
「どういう風に違った?」
「なんだか……いつもより優しかったです。バイブとか……使わない、普通のエッチをしてくれましたし……初めてじゃないですか?」
「初めて……か。」
確かに。いままでたくさんの「彼女」達とこういう事をしてきたが、普通なんてのは初めてかもしれない。でも、何故か……悪くはないとおもった。俺の欠陥からして無いと思ってたんだがなぁ。
「でも私は……今回のほうがいいです…」
44 ◆wGJXSLA5ys :2006/07/31(月) 20:01:50 ID:vlx9D/ZU
「そう……」
後始末をして、服を着る。
「あれ?どこか出かけるんですか?」
「ああ、なぁに……ちょっち喉が渇いたからな。飲み物買ってくるだけさ。」
「あ、じゃあじゃあ、私パンタオレンジ!」
「ふん、貴様が俺をパシらせるなぞ、一世紀早いわ!」
「うぅ…ごめんなさい……私が行ってきますぅ。」
ショボンとして、彼女も服を着始める。ああ、こいつは本当に買いに行っちまうな。
「いいってば、ジョーダンジョーダン。マイケルジョーダン。」
嗚呼!また化石級な駄洒落をいってしまった!いかんなぁ、オッサン化してるよ。
「俺が行く。パンタオレンジな。」
そう言いうと、彼女はまるで夜の猫の様に目をまるくし、驚いている。
「え、えぇえぇえ!?」
「なぁーにを叫んでおるんじゃい。夜中に……近所迷惑だぞ。」
「だって……飲み物を買ってきてくれるのも初めてだったから……」
そうか……なんだか初めてばかりだな、今日は。
「てめっ!俺が鬼畜みたいな言い方じゃないか!」
「じ、実際鬼畜ですっ!」
「ああ、いいよぅ、なら後でパンタ代払えよ!」
そんな子供のやり取りをして部屋をでていった…
45 ◆wGJXSLA5ys :2006/07/31(月) 20:02:52 ID:vlx9D/ZU
「〜〜♪」
鼻歌交じりで自販機まで行く。時間は夜中の一時。この島にはコンビニなるものは存在しないため、自販機しか買う手段は無い。
もう蝉が鳴く季節だが、夜は涼しくて気持ちいい。吹き抜ける風が先ほどまでほてっていた体を冷やす。どうやら浮浪者も見当たらない。いい夜だ。
ガコン
言われたパンタオレンジと、お茶を買う。どうもこういうジュース系の飲み物は苦手だ。甘すぎると思うんだけどなぁ。ひとまず買い終え、帰ろうと振り向くと………
「蒼也……」
「うあだぁ!?」
何の気配も無く忍び寄っていた彼女におどろいた。こうやってこられるのは本当に心臓に悪い。
「な、なんだよ……いきなり……」
「ううん、話が合ったから。」
「ふーん。……で?なに?」
いつものように冷たく。彼女に余計な感情を見せたくはない。
「…最近の蒼也、変。」
「変って……失礼だなぁ。夜中にストーカーしてる君の方が変だ。」
「む………最近の蒼也、いろんな事感じて、変わってきてる。特に、いま家にいるあの女の子から大きな影響受けてる。」
「そう?普通だけど?」
46 ◆wGJXSLA5ys :2006/07/31(月) 20:03:51 ID:vlx9D/ZU
「今日、彼女に対して優しかったし、いつもみたいに壊そうとしなかった。」
「……見てたの?」
「見なくても分かる。蒼也は私で、私は蒼也だもの。」
「やめてくれって……俺は俺、アイデンティティーを尊重してくれよ。」
「……でも本当に、蒼也は人間らしくなってきた。」
その彼女の言葉に反応する。もっともいわれたくない言葉だからだ。
「らしいっていうなよ……らしいって。俺はれっきとした人間だ。」
「人間の擬態。」
「顔も、体も、声も、心も、みんな人間ど同じだ!!何一つ変わらない!!」
「形が同じだけ。でも本質的には違う物。蒼也も、私も………この島に住んでる者は……いえ、『物』は人間と似て非なる物。」
「違う!違う!!違う!!!俺は人間だ!作り物なんかじゃない!心がある……思い出がある、感情もある!!」
「逃げられないの……私達は生まれた瞬間から縛り付けられている……残酷な運命……私達は…所詮………人間のクローンなの………」
その一言は、なによりも聞きたくない、忘れてしまいたい言葉だった………
47 ◆wGJXSLA5ys :2006/07/31(月) 20:04:55 ID:vlx9D/ZU
はい、やっと次回は世界観の説明と個別フラグたてです。
……ナゲェorz
48名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 20:28:12 ID:N23kb5xo
>>36
これペイントで描いたんなら凄すぎる
49名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 20:32:28 ID:udAA9I0n
なんかクロスチャンネルの曜子ちゃんっぽいな。
50名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 20:34:45 ID:zt7OCkVS
>>37
どうしようもなさでは勝っているかもしれないが
ゆう君は鬼畜とのダブルエントリー可能なレア種だからなw
51振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/07/31(月) 21:05:38 ID:ljfhMU5G


 ・   ・   ・   ・ 


 俺は屋上を一人後にした。
 伊藤の事が気にならないわけじゃないが本人が一人になりたいと言ってたし。
 ああいう状況なら肩でも抱いて慰めてあげるべきなのかもしれないが、
でもそんな仲じゃ無いからな。 俺たちは只のクラスメイト同士だから。

 でも本当に何だったんだろ。何をあんな凄い剣幕で怒ってたんだ?
 まさか……未だ俺に好意を?
 いや、そんなまさか。 だって以前きっぱり断わってるし。
 確かにいつもデザートをご馳走してくれたりするけど、でもあんなのは味見とかそう言うのだろ?
 実際本人もそう言ってたし。 それに確かに俺以外続けて同じクラスだった男なんて居ないから、
だから俺に話し掛けやすかっただけだし。

 そうだよ、きっぱり断わられたんだからとっくに俺の事なんか諦めて……、諦めて?
 諦めきれるか? よくよく考えてみればコレって……この状況って……。

 気付いて俺は頭を抱えた。
 そうだよ、俺に断わられた羽津姉がその後簡単に俺を諦めたか?
 かって結季に断わられた俺が簡単に諦めたか?
 ――否。
 そう俺も羽津姉も諦めたりなんかしなかった。恋愛なんてそう簡単に諦めたり出来ない。
 其の事を誰よりも俺自身が身を持って知ってた事じゃないか。


 そんな事を考えてるとやがて伊藤が教室に戻ってきた。
 俺は……視線を合わせられなかった。 何と言葉を掛けていいか分からなかった。
 そしてそのまま伊藤とは言葉も視線すらも交わす事無く、気まずいままその日の学校を終えた。


 だがそんな気まずい思いも放課後、結季の顔を見れば全て吹っ飛んだ。
 クラスメイトと上手く行かなくて気持が沈んでようと、愛しき人の顔を見るだけで全て吹き飛ぶ。
 何て言うか改めて恋愛してるって恋人同士って凄いなとか思う。

 その後一緒に帰って、一緒に寄り道して、帰った後も就寝前には電話で互いに愛を囁きあって、
そして日付が変わり朝になれば一緒に通学路を歩む。 そういった一つ一つが幸せで幸せで、
心が軽やかでまるで羽根でも生えて飛んでいってしまいそうなくらいだった。

 だが学校に到着し、結季と別れ教室に入ると現実に引き戻される。
 伊藤と視線が合った瞬間一気に心が重くなる。
 正直この瞬間まですっかり忘れてたが……無視できない避けられない問題だよな。

 でも……どうして良いかなんて……やっぱりきっぱりと引導渡すべきか?
 う〜ん、でも再度告白されたわけじゃないからな。
 それに今度はちゃんと恋人が居るって伝えてあるし。

 そんな悩みも時間が流れ昼飯時のチャイムが鳴り結季とのランチタイムになると一気に吹っ飛ぶ。
 伊藤に申し訳ない気持が無いわけでも無いが、だがこれは俺とクラスメイトの問題だ。
 こんな事で結季を煩わせたくもないしな。

To be continued.....
52名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 21:40:29 ID:MIvS8lkp
>>7
なぁ・・・
今更だけど暗殺侍女ってあの媚薬の飲まされてフラグ立ちかかった子?
だったらおっちゃん泣くよ?
53名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 22:11:39 ID:ljfhMU5G
>>7には
>食人姫を焚きつけその気にさせるのがミシアの役目。
と書いてあります

つまり媚薬飲まされたのはミシアで今回殺されたのはティー(トゥシア)
54名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 22:18:50 ID:SyoScD2J
>>52
そうだが、逆に考えるんだ。ここで死なせておいて後で番外がでると・・・
少なくとも俺は総考えてる。
55名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 22:44:41 ID:6XGMkdQI
なんで、誰も13スレ張らないのさ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1153233347/
56名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 22:52:30 ID:SyoScD2J
>>55
あ、忘れてたわ・・・
57名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 23:26:33 ID:hbSKXW/7
>>51
この雰囲気は・・・
彼の幸せが本当に羽が生えて飛んでいきそうですね
楽しみ(*´д`*)
58名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 23:34:55 ID:xsM0iJfW
>>47
クローン……( ゚д゚)ポカーン まあ双子みたいなもんか(*´Д`)ハァハァ
59名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 23:42:11 ID:ihMqtEis
>>51
一度修羅場を経験しているだけあって、これをどう乗り切るのかにwktk
60名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 00:01:59 ID:k6j9q/aI
61名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 01:59:31 ID:SLW/JeeA
>>55
m9(^Д^)プギャー
62名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 02:08:45 ID:+WVCmCgo
>>55は13スレ自身と大胆予想
63名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 02:23:39 ID:lfe82qyr
>>55の人気に嫉妬
64名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 02:50:49 ID:1/XYxOOh
スマンカッタ・・・

 ∧||∧
(  ⌒ ヽ
 ∪  ノ
  ∪∪
65 ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:28:18 ID:GD3OQ0DO
前スレの埋めネタで予告したとおり、書いたものを投下しますね。
今回はちょっと長めです。
66永遠の願い 第八話  ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:29:25 ID:GD3OQ0DO
屋上にはまばらにお昼休みを過ごす人影があった。
この学校の屋上は跳ね返りのある高めのフェンスが作られていて、謝って落ちることはもちろん、登って自殺を試みることもできないようになっている。
その代わりにコンクリート張りのそこには吹きさらしのベンチが点々と設置されていて、お昼をいただくにはもってこいのロケーションになっていた。
たまに晴海とここに来て食べることもあったりしたが、あと1年で卒業し、お互い大学生になるのだと思うと少々感慨深いものがある。
学校の成績優秀者として首都の一流大を目指す、などという気概は俺にはなく、適当に晴海と、この学校が所属する大学へ進学するつもりでいたから、進路で悩むようなことはない。
晴海こそ、首都の大学受験すればいいものを、「孝人と離れ離れになったら誰が世話焼くのー?」と、姉か母にでもなったかのような過干渉ぶりを見せた。
うっとおしい、などと思ったことはない。
正直、当たり前のようになっていることに単に身を任せているだけだ。

晴海と肩を並べ、時間が過ぎ、榊さんが来るのを待つ。
こいつは、なぜ榊さんとお昼を食べたいなどと言い出したんだろう。
俺と二人だけがいい、静かだからそのほうが、などといってはばからなかったやつが。
「孝人、今日のお弁当は鮭の切り身とほうれん草のおひたしと……」
弁当のメニューを逐一報告しながら、包みを解き、弁当の蓋を開けて中身を見せる。
「大学芋に、味のりご飯〜」
その海苔は、蓋につかないようにするために上からラップを乗せられていて、晴海がそれを取り除くと、水気を吸ってご飯に張り付いた味海苔がお目見えする。
素朴ながら、晴海らしいひとつひとつの工夫の感じられる献立だった。
魚、野菜、イモ類、米、海藻。
イモにもご飯にも黒ごまを振ってあり、ご飯の真ん中には梅干が鎮座している。
数える間もなく、晴海の詰め込んだ気持ち一杯の弁当だった。
「昨日はとんかつだったから、今日はお魚中心でいってみようと思うんだ」
「今日はまたうまそうだな。いただきます」
「はい、どうぞ」
自分の分に、箸をつけようと、手にもつべきそれを探した。
いつもなら、俺の分の弁当箱のあたりにあるはずのそれ。
だが、今日はそれらしいものは見当たらない。
「晴海」
探しながら呼びつけるように名を告げた。
「なになに?」
「箸がないぞ」
晴海の顔を見る。見慣れた端正な表情だ。
「あ……ごめん、忘れてた」
「ごめんじゃないだろ、箸がなかったらどうやって……」
「困ったな、どうしよう」
どうやら本当に失念していたようだ。
何か変な考え事をしていたのか? 晴海らしくもない。
いや、彼女がらしくなくなっているのは、きっと榊さんの関連があったからだと思うのだが。
昨日から、ずっと榊さんのことで晴海が機嫌が悪そうだったから。
まだその榊さんはこない。
晴海のやつ、何をそんなに気を揉んでいるんだ。
晴海は晴海で、榊さんとは関係ないだろうが。
「どうしようっていってもな……」
「私の分だけあってもだめだよね。うーん」
「うーんとかいってもどうにもならないぞ。あれだ、売店に割り箸あると思うからちょっと言ってくる」
「ちょっと待って……待って、大丈夫だから」
俺が席を立って晴海から離れようとしたとき、晴海に腕を捕まれる。
「何がどう大丈夫なんだ? 何かいい案でも浮かんだか?」
「……私の箸で、食べさせてあげるから」
67永遠の願い 第八話  ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:30:03 ID:GD3OQ0DO
「はぁ?」
食べさせる、といった。
その単語をちょっとだけ頭の中でぐるぐるぐると回して、すぐにその意味を感づいた。
「間接ディープキスだな」
「っ、ち、違う、かんせつ、キスなのはそうだけど、ディープじゃないよ……」
「あれだろ、口に入れてもらったときに、少し先を舐めるかもしれないし」
「やぁぁ、そんな変なことしないで……」
「恥ずかしいなら別に無理しなくていいんだぞ」
晴海の隣に座りなおす。
今の晴海は、見て分かるほど顔を紅潮させていた。
自分で申し出て自分で自爆しているんだから世話ない。
まったく、こいつはどこからエロネタの材料を持ってくるんだか。
こつこつと肩と肩が触れあい、晴海が自分の分を寄せて、俺の分を自分の膝に乗せ、箸をその右手に持った。
「む、無理じゃない。無理じゃないから、え、えと、孝人、まず、何から食べたい?」
「何からって言ってもな。晴海本当に大丈夫なのか?」
「は、恥ずかしいより、孝人が困っているほうが辛いから、だから、早く食べたいもの、言ってよ」
晴海を左肩に感じる。
肌が触れ合うことって、今までもけしてないわけじゃなかったが、改めてこうして触れ合っているのは、どこか緊張してしまう。
それ以上に、晴海が今やろうとしているのは、恋人たち御用達の、「あーんパク」である。
それがどれほど周りの目を引くのかを想像するだけで、この場を立たずにはいられなくなる。
どうあっても、かわせない、逃れられないこの状況。
甘んじて、受け入れるしかないのだろうか。
そう、半ば諦めかけていた俺たちの目の前に。
「孝人さん、お待たせしました」
約束の少女、榊幸奈は、プラスチックのパックを左手に、飲み物のパックを右手に現れた。

彼女が近づいてくる足音すら気づくことができなかった。
箸のことで揉めていた俺たちは、声をかけられてふと彼女の姿を見上げる。
「あ、ああ、榊さん、来てくれてありがとう」
「いえ……来たくて来たんですから、お礼はいりません。それより、お隣よろしいでしょうか」
「ん、いいぞ」
「ええどうぞどうぞ、はい、榊さんはこっちへ」
と、俺が榊さんを招きいれようとしたとたんに、晴海が俺の隣側のベンチの隙間を無くすかのように無理矢理端へ追いやった。
抵抗するつもりもなくそのまま俺は晴海の意図のままに位置をずらされた。
なんとなく窮屈なのは、この際省こう。
晴海の尻に押しやられている事実が、どこか得をしたように感じるのは、この際考えないでおこう。
「あの……」
「用事があって呼んだのは私なんだから、こっちじゃないと孝人に迷惑かけるよ?」
迷惑をかけるという言葉の意味がいまいちつかめない。
晴海を見れば、どこかあせっているようにも思え、また、剥き出しの何かどす黒いものを思わせるようだった。
榊さんに対して何もそこまですることないんじゃないか。
晴海はどういった気持ちで俺を見ているか知らないが、そこまで榊さんに嫌悪を見せることないだろう。
「俺は全然迷惑しないんだが」
「孝人ってば、無理はだめだよ」
「別に無理なんかしてないぞ」
「そんなこと言って。これから榊さんとの話がどうなるかわかる癖に」
「そりゃ大体予想はつくがな。まあ、そこまでいうなら、今俺の座ってるところに榊さん譲る。俺は二人の前でメシ食えばいいだけだろ」
「……むー」
「席次は決まりましたか?」
晴海とのなんとなく馬鹿馬鹿しいやり取りを、榊さんはずっと静観していた。
表情こそ豊かなものではないのだが、俺たちのやり取りについてはそれほど感情を揺らしているようではなかった。
何者にも動じず、晴海のようにあわてもせず。
俺は、席を立ってそこに榊さんを招いて、二人の真正面に腰をおろした。

68永遠の願い 第八話  ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:30:40 ID:GD3OQ0DO
晴海と榊さんが隣り合わせ、俺はその二人を鑑賞する。
晴海は完全さをその身で証明するような、華やかさと穏やかさを両立させていた。
榊さんは、小柄な中に知的な気品に溢れ、それでいて静かな水の流れを思わせた。
「孝人、このお箸使って。私の分は後で……」
「孝人さん、この割り箸どうぞ使ってください。まだ口をつけていないので、間接キスにはなりませんよ」
「……っ!?」
「あー、それなら榊さんのほうがいいか。晴海のは、いつも晴海が使ってるから本気で間接ディープキスになりかねない」
と、榊さんの差し出した、まだ割っていない割り箸を受け取る。
みしっ、と、箸がこすれ合うような音が晴海の手の中で鳴ったのを聞こえたが、とりあえず考えないことに。
「でもこれじゃ、榊さん食えないだろ?」
「いえ、私はお寿司のセットパックなので、素手でも大丈夫です」
「寿司って、うちの学校じゃ学食でも売店でも扱っていなかったような……」
「すぐそこのスーパーに行って買ってきたから、遅くなったんです。ちょっと出遅れて、パンが売り切れだったので……屋上というお約束なので、学食を食べるわけにもいきませんし」
もっともらしい理屈である。
「榊さん、いくら近くにスーパーがあるからって、お昼休みに買いに行くのは怒られるよ?」
晴海が隣に、けん制するように視線をやりながら突付いた。
「そうだぞ、それはあまり、認められたものじゃないな」
なんとなく便乗する形ではあるが……だが、俺はすぐその棘を引っ込めないといけない気がした。
「まあそのおかげで箸が手に入ったから、今回だけは大目に見るか。ありがとう榊さん」
「いえ、ケガの功名ですから。校則違反のような真似をしてまで遅れてすみません」
「気にすることないない。とにかく食おうぜ」
目の前に晴海の弁当をお預けされていたのだ。
鳴る空腹を押さえ込むのはもう限界だった。
榊さんの渡してくれた割り箸ではあるが、榊さんのものではない。
そう信じて、俺は晴海の手作りにやっと、ありつくことを許された。
俺が箸を進める間、晴海は何かを押し殺すようなため息をついてから、榊さんに向き直った。
「改めて自己紹介します。私は孝人の幼なじみで、村崎晴海といいます」
「はい、ご存知でしょうけれど、榊幸奈です」
「失礼かと思ったけれど、あなたのことはだいたい見たり、孝人から聞いたりした。勉強すごくできるっていうお話を伺ったよ」
敬語とそうでないのが混じってるのは、晴海らしいか。
俺としては、晴海が榊さんと仲良くやってくれるのはとても喜ばしいことなんだが、それを表面上で感じるだけでは、今の晴海の毒々しい雰囲気は語れない。
緊張の裏に、少しずつ晴海の穏やかさが消えていくように思えた。
「かいかぶりです。全国レベルで考えれば私なんか」
全国レベルで考える、という言葉の地点で次元の違う世界にいるような話だった。
俺も晴海も、ここの大学に通うことを決めているから無理に受ける必要はないんだが、なまらせてはいけないという晴海たっての願いで全国模試を受けに行ったことがある。
マークシート式のそれは俺たちが想像しているよりもはるかに難易度を洗練した問題が揃っており、俺はもちろん、学年でも上位の成績の晴海ですら、だいぶ打ちのめされてしまった。
「もしかしたら今度教えてもらっちゃうほうになるかも」
「ありえませんよ、上級生に教えるなんて……」
「どうかな、勉強のできるできないは学年じゃないよ」
なんだか、話を仲良く併せられそうな雰囲気になっていた。
少なくとも表面上は、晴海は榊さんに親しげな様相を見せているように見える。
俺としても、なんとなく安心した。
最初は、晴海が彼女を呼んだときは、とてもこのような形で話が始まるとは思えなかったから。
今の二人は、緑の丘を静かに吹き流れる風のようだった。
69永遠の願い 第八話  ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:31:17 ID:GD3OQ0DO
「まあ榊さんの力がいるときはまた声かけるさ。下級生に負けるのは忍びないが、榊さんじゃな」
「孝人さんまで……」
「む、孝人ー、そういえば聞きたかったんだけど、いつのまにさん付けおーけーしたのかな?」
もっともそれは、嵐の前の静けさだったのかもしれないが。
晴海の表情に、わずかな歪みを感知する。
「別に呼び方くらいどうだっていいだろ?」
「それはそうだけど……」
もちろん、それは言いがかり、という言葉が当てはまるようなことなのではあるのだが。
晴海はすんなりとそれで矛を収めた。
「まあいつもうまい弁当作ってもらってることの感謝で、見逃してやってくれるか?」
「それはなんか論点ずれてるよー? でもまぁ、いっかぁ」
「お二人とも仲いいですね」
ずっと俺たちの間を見ているだけだった榊さんが、割って入るように申し出てきた。
「悪くはないだろ。そりゃ、こいつとは幼稚園のころからずっと一緒だったけどな」
榊さんに答える。
鮭の切り身の塩加減が絶妙すぎるのを感じながら。
「ずっとだったんですか?」
「ああ、幼なじみらしいことはひととおりやってきてるぞ」
「ひととおりって、孝人っ……」
なんとなく晴海が赤くなっているところから、俺はさらにそっち方向に話を進めたくなった。
「一緒に風呂入ったのは一度や二度じゃないぞ。家の庭でゴムプールするときの生着替えも見せ合ってやってたし、クラスもずっと同じだったから、小学校低学年のころは身体測定も同じ場所だったよな」
「な、孝人、恥ずかしいことばかりいわないでよぉ……」
晴海が完全にゆでだこになっているのをほうっておくことにする。
その話を聞いた榊さんのリアクションを待つために。
彼女は、さして表情を変えることなく俺のほうに向き直るように、膝の居座りを変えた。
「長い時間にたくさんの思い出があったんですね。うらやましいです」
「そうか?」
「はい。私は……大好きな孝人さんに出会ってから、1週間も過ぎていませんし」
ひとくちひとくち、小さな口で噛み付いて稲荷も巻きも胃に入れながら、榊さんはじっと俺を見つめて言葉をつむいだ。
その瞳の羨望から、俺はしばらく目を離せない。
「でもきっとこれからは……たぶん、いえ、孝人さんにちゃんとお付き合いしていいと許しを貰わなければいけませんけれど、でももしそうなったら、村崎さんにはたくさん、お礼をしなくてはいけませんね」
「お、お礼?」
晴海は、自分の弁当に手をつけるのを忘れてじっとこっちを見ていた。
昼休み終わるのじきだと思うんだが……
「はい。孝人さんを支えてくださった村崎さんに。孝人さんという素敵な人を連れてきてくれた、村崎さんに」
榊さんの視線が、俺から移って、晴海を見据える。
膝の隙間が開けるように、榊さんは体をよじった。
「それは、どういうふうに受け取るといいんだろう」
「そのままの意味と、思っていてもらえるといいと思います」
じりじりと、二人の視線がぶつかりあっているように思える。
さっきまでの平穏さはどこへやら。
そういう火種を持ち込んで、どうにかしようとしていたのは晴海のほうだからとはいえ……ちょっとこれは怪訝に思いすぎなんじゃないか?
晴海もそれほど表情に怒りは感じられなかったが、その心の奥に渦巻く灼熱を察せずにはいられない。
「そうね。でも、お礼を言われるようなことはないんじゃないかな。そういうことになるとは思えないし」
「それはとんだ考え違いですよ。いくらずっとそばにいたからといって、いえそれがむしろあなたの枷ですよ」
「そうかもしれないね。でも、降って湧いたこにほいほい孝人を任せるわけにはいかないもの。お料理はできるの?」
「料理……」
「掃除、洗濯、孝人に付き合うなら、ひととおりの家事はこなせないとだめだよ」
「それは、今から勉強してがんばるつもりです。孝人さんはできないからって嫌いになりません」
「ふうん、いろいろ楽しみにしておくね」
お互い冷静に冷静に務めようとしているのはわかるが、ぶつかり合う視線がどんどん二人の口調に憤りを含ませてきた。
もう、止めようにも止められない。
何か、きっかけはないか。
完成美の晴海。
知性美の榊さん。
この二人が、かちあって争うのは、見ていられなかった。
70永遠の願い 第八話  ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:32:08 ID:GD3OQ0DO
「二人とも熱くなるのはいいが……お互いに下着の色の答えを出してどうする」
実際は見えてないんだが、いや、榊さんのはその白みがかった布地がわずかに覗いた気がしたが、気がするだけで自信があるわけじゃない。
それを指摘すると、慌てて二人とも膝を閉じてスカートを抑えた。
「た、孝人、見たの!?」
「晴海のは薄紫か……榊さんは、っと、いわないでおくか」
と、けたたましく俺に突っかかる晴海に対し、榊さんはうつむいたままぶつぶつと何かをつぶやいているようだった。
「……別に、いっても……い、いえ、なんでもありませんっ」
ただそのひとことだけ、俺の耳に飛び込んできたように思えたが。
その目に妬きついた彼女の白っぽい布地は、そこに包まれているであろう大事な部分のことは、完全に脳裏に完全に焼き付いていた。
「孝人のばかぁ……なんでいっちゃうの……」
「おい、もしかして」
「……ぅぅぅ、孝人にお嫁に貰ってもらわないと貰い手ないよ……」
「おいおい」
もっとも、そんな榊さんの太ももの内側の事情よりも、あてずっぽうで言った色が図星になってしまったことを気にしていた。
俺はつついてはいけない藪をつついてしまったことを後悔していた。
晴海のような、できすぎた人を貰うのはやぶさかではないんだが、な。
なんだか、それを思い切れない俺もいた。
榊さんの手前、だからだろうか。
考えをまとめながらも、今の一言で俺はここで二人をなだめたつもりでいた。
もっともそれはあくまで「つもり」であり、逆に、火に油を注いだなどとは。
「それは私も一緒です……見られてしまったんじゃ孝人さん以外に嫁げません……」
「さ、榊さんまで」
「だ、だめっ、それは私、私なんだから」
「いいえ、孝人さんのお側にいるのは私がふさわしいんです」
思いもよらなかった。
雲行きが、一気に怪しくなった。

「お料理ができないで孝人の側にいたって、孝人が苦労するんだよ、だから私が」
「それは思い上がった言い分だと思います。分業すればいいと思うんですが」
「そんなふうにして孝人に倍の苦労させる気?」
「倍じゃありません、平等分配です」
「できることをお互いにするのが分業だと思う。孝人と私、ずっとそうしてきたんだから」
「じゃあ私がお付き合いしたら、孝人さんのために必死で頑張ります」
「それはご大層なこと、でも結局榊さんは家よりお仕事をとっちゃうタイプでしょ?」
「違います、孝人さんに望まれれば、家に入っても……」
「そんなこと孝人は優しいからさせないよ。自分から進んでやれないんじゃ、孝人はあげられない」
「あげるあげないって、孝人さんはあなたの所有物ですか?」
「幼なじみとして、しっかりした人に任せなくちゃって思うのは当然の気持ち。あなたは不合格っ」
「合格か不合格かは孝人さんが決めることです。あなたがどうこういうことではありません」
「いいえ、孝人があなたを選んでも、絶対私は認めないっ」
「そのときはせいぜい悔しがっているといいです。孝人さんのお側にいられるようになったのは私で、あなたは部外者」
「そうは絶対ならない、だって孝人はあなたのような人は選ばないから」
「決め付けないでください、孝人さんの気持ちも聞かずに」
「いいえ、決め付けじゃない、ずっと見てきたから、ずっとそばにいたからわかるの。孝人の好きそうなこも、そうじゃなさそうなこも」
「でも、それはあなたの思い込みかもしれませんよ?」
「違う、違う違う違うっ、絶対そんなことない!」

71永遠の願い 第八話  ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:32:48 ID:GD3OQ0DO
じっと聞くと、榊さんの怒りは静かなもので、晴海のほうが取り乱しているようだった。
晴海が感情的になるのを榊さんがいなしにいなして、揚げ足をとったりして晴海を転ばそうとしていた。
落ち着き払う榊さんに、晴海はだんだん追い込まれていた。
そのうちに、だんだん言葉を失い、ただ意地だけで張り合っている苦しげな晴海を見て。
俺はそっと立ち上がる。
「認めない、絶対あなたに孝人は」
「そういう問題ではなくなっていますよ、孝人さんは……」
「そのくらいでいいだろ、晴海」
「え……」
「……孝人さん……」
晴海の後ろについて、両肩を抱いた。
そっと、今の晴海の押しつぶされそうな心を、その手に乗せて癒してやるような気持ちで。
ずっと、晴海を押しつづけていた榊さんが、俺の行動に凝り固まり、口をつぐんでしまった。
「まだ俺は、はっきりと答えを出してないんだ。そんな中途半端な状態のまま、理屈を走らせてどうする」
「そんなこといったって……」
「おちつけ晴海。それに榊さんも。まだ榊さんは恋人じゃないんだからな。俺の恩人をそんなふうに振り回したら、認めたくても認めてやれないぞ?」
「……っ!?」
「おん、じん……」
今かち合っても始まらないじゃないか。
咄嗟のことばかりだが、俺にこの二人を取り持てるだろうか。
俺は、そっと晴海の耳元から、二人に呼びかけた。
「小さい頃からこいつ、なんだかんだで俺の世話焼いてくれてるんだ。うちの両親ってなんだかんだで出張が多くてさ、こいつの両親や、こいつにはまるで家族同然に大事にしてもらってたんだ。
そういう恩を忘れて仇で返すようなことをして、榊さんと付き合うつもりはない」
「孝人さん……」
「孝人……」
「でも、榊さんからあの手紙貰って、そろそろ晴海から卒業しなけりゃなと思っていたが……まだ何も返せてないんだよな。つか、卒業する必要があるのかすらもまだわからない。
だから、二人には、争って欲しくないんだ。それは、俺のわがままか?」
本当に、二人がこのまま争いつづけるようなことがあったら、どっちを選ぶにしろ、お互いの関係にとって絶対いい結果にはならないと思った。
ほうっておいたら、昼ドラなんか目じゃないような、悲しい結末になったりしないだろうか。
二人が争う理由が、俺であるとはっきり分かる以上、俺は二人の争いを止めなければならないのだ。
「うん……ごめんね、孝人」
「わかりました。孝人さんのお望みですから、従います」
「よし、仲直りは、握手だよな」
そっと、俺は二人の真ん中に陣取る。
彼女らの右手をそっと差し伸べ合わせ、しっかり、握り合わせる。
取り交わす握手を見届けて、俺は二人がこれで変なかち合いを避けると踏み。
「よし、じゃあさっさと残りの飯食うぞ。あと5分だからな」
「もうそんな時間? 食べるよりしまって移動しないといけないよ」
「じゃあ、私はこれで失礼しますね」
「うん、今日はごめんね」
「いえ、こちらこそ……」
予鈴の5分前、ではあるが、半分も終わっていない弁当を前に、俺はその手に握っていた榊さんの寿司パックの割り箸に、視線を落とした。

デート、明日だったよな。
ふと思い出したことが、新たな火種になることは疑いなく。
そのお昼が終わって俺の頭の中に残っていたのは、榊さんの内股の中身のことがほとんどだった。
72 ◆JfoDS60Gas :2006/08/01(火) 14:35:09 ID:GD3OQ0DO
終了です。
序盤最初の山場、晴海と幸奈の初対決をお送りしました。
しかし……仲裁するとかなんとかいっておきながらこの主人公ただの工口野郎だな……

次は幸奈視点になると思いますが、予定は未定です。
73名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 16:23:09 ID:Zz0XLj5p
こういう火花が散るような修羅場はやっぱり良い物だなあ 
箸を握り締める晴海テラ素晴らしす(*゚∀゚)=3ハァハァ
74 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/01(火) 16:41:10 ID:ImVhrhOb

三匹目

発情しまくるポチを今夜は彼女の好きなおかずを夕食に作り夜通しスキンシップをする約束で、何とかその場を沈静化した。
ポチは感情と体をもてあまし気味であったが、完熟トマトのように赤い頬で
『ちぇーっ』
とのたまうと、そそくさと教室に入っていった。
まぁ、隣のクラスなんだけどな。
一時限目は古典。
ヴィンテージものの老教師の織り成す奇天烈怪奇な異世界の貴族の話にどこか同情を覚えつつ、横手からの誘惑に必死で耐えていた。

それはボロボロになりながらも教室に入り、遅れてやってきた玉緒さんに挨拶をしたときだった。
『古典の教科書忘れてしまいましたわ。ユースケさん。見せてくださる?』
なんて目の前で大胆に人類の至宝とも言える美脚を組みなおされたら、誰が断れるだろうか?
隣の教室で地獄の番犬がうなったような気がしたが、気のせいだろう。
今は目の前の絶対領域こそ俺のすべて!!
命を張って高らかに宣言して見せよう。
『も、勿論。玉緒さんの頼みごととあれば何でも!!たとえ火の中水の中あの娘のスカートの中!!
 ヤンデレ幼馴染と義姉が織り成す修羅場にだって突貫して刺されてみせます!!』
握りこぶしで熱く語ってみる。
すると玉緒さんは・・・
『玉緒さんじゃなくて、タ・マ♪』
アーモンド形の大きな猫目をキラキラと輝かせて色っぽく体を摺り寄せ、俺の鼻の頭にちょこんと触れた。
あ、甘い息が、暖かいいいいい息が、あああ当たって・・・・
思わず下半身に血液が集中する。
『タ、タマ・・・』
『うん、合格♪』
鈴を鳴らしながらケセラセラと笑った。細められた瞳と、独特のしなやかな仕草が更に俺を混乱させる。
満足げにゆれている灰色の細長い尻尾。
玉緒さんの傾国な魅力の前では、俺はただのイエスマンと化す。
それよりも早くこの下半身で自己主張するGUNを何とかしなくては・・・・
モジモジとする俺を不思議そうに見た玉緒さんは、俺の股間に目をやるとチェシャのように気分屋でペルシャの蟲惑さを以って微笑んだ。
『・・・・安心してくださいな、ユースケさん。二時限目は体育ですわ。あの牝犬はお外で野蛮にマラソンですが、ちょうど貴方はバスケット。わたくしは新体操を選択しています。
わたくしたちは体育館で、女狼は炎天下の屋外ですわ・・・体育準備室で、不肖このタマが運動後の体を沈めて差し上げますわ・・・』
色っぽい声にあまりにも魅力的過ぎる提案。
誘いに乗ってしまっていいのか、どうする、俺??
また今朝の閉鎖空間を発生させてしまうのか??
摺り寄せられるしなやかなボディ、首筋に掛かる熱い息。宝玉のように光る妖しい瞳にとらわれ、俺はあっけなく陥落した。
『い、いきます・・・』
どこにイくのか?それはゴッドオンリーノウズ。
『ふふ・・・お待ちしておりますわ・・・コレで女狐や牝犬から一歩リードですわ・・・』
最後の言葉は良く聞えなかったが、舌なめずりをしながら妖艶に微笑む玉緒さんを見て、背筋がぞくりとした。
教室の後ろで危険度を増したケルベロスが今にも解き放たれようとしているが、今の俺は絶対領域の虜であった。

75 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/01(火) 16:42:00 ID:ImVhrhOb

そうして教科書をただ見せるだけにしては、密着しすぎている玉緒さんの先制攻撃におかしくなりかけながらも俺はやや前かがみになって体操着に着替えた。
そして逃げるように体育館へ向かう。
築数十年の体育館はかび臭さと埃臭さが交じり合った独特の空間だが、この中の一室で約一時間後に蜜月が発生するとなると話は別。
禁じられた楽園にすら見える。
俺はいつもなら忌まわしいだけの体育館の空気を胸いっぱいに吸い込んで旧友達に怪訝な目で見られながらも、準備運動に精を出した。
体育館を二つに割るネットのカーテン。
向こう側ではレオタードに着替えた女子達が柔軟運動をしていた。
男子の視線が次々に突き刺さっているので居心地が悪そうだが、アイスブルーのレオタードにこれまたマニアックに黒いストッキングを着用した玉緒さんが微笑みながら手を振ってくれる。
周りにも猫人の女子はいるが、腰の高さが違うぞ、腰の高さが。その脚線美はどう考えでも犯罪ですよ。
有罪間違いなし、ギルティです。
思わず鼻の奥が熱くなったが、気合で封印。
情熱をもてあましながらも、バスケットに没頭した。
隣では玉緒さんが神々しいほどに整った肢体で艶やかで美しい舞を広げている。
女子は思わずため息だ。俺も二秒おきにチラチラと見ているが、その身体はあと少しで俺のモノになるのだ!どうだ、うらやましいか??

そして煩悩をもてあます体育の時間は、通常の十倍以上長く感じられつつも滞りなく修了した。
男子と女子は別々に体育用具を片付けでいる。
俺は新体操用の道具を持った玉緒さんとアイコンタクトを交わしながら、いよいよ抑えきれなくなってきた高ぶりを腹筋に力を入れて殺している。
授業が終って暫くし生徒が体育館から殆どいなくなったあと、俺は玉緒さんに腕を引っ張られて第四体育倉庫にしけ込んだ。
暗い体育倉庫。
埃とカビ臭さは体育館の比ではない。
しかし隣から発せられるオスというオスを惑わす甘い香りに、脳までやられそうだ。
玉緒さんは内側から閂をかけると、ポチもびっくりなボディプレスをかましてきた。

「にゃ〜〜〜ごろごろごろごろごろごろごろ・・・やっと二人になれたにゃん。
さぁ、ユーにゃんの好きなように可愛がって欲しいにゃん〜」

きゃ、キャットォ!!
76 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/01(火) 16:43:30 ID:ImVhrhOb

コレは本当に玉緒さんか!?いつもの尊大な態度からは想像もつかないほどの甘い声。
細い体を目いっぱい俺に絡みつかせ、胸に頬をこすり付けて丸くなる。
「た、タマ・・・な、なんかいつものタマとは違うような・・・」
「コレがタマの本性だにゃん。ご主人様にしか見せない本当の姿にゃにゃ」
タマはじゃれ続ける。
頬を摺り寄せるのに飽きたのか、今度は俺の体を愛しげに舐め始めた。
「ユーにゃん。早く服を脱ぐにゃ。タマの服も乱暴に脱がして欲しいにゃン〜
でも、ストッキングは脱がさなくてもいいにょろ。
ユーにゃんの性癖はチェック済みにゃん〜」
バ、ばれてた・・・
まぁいいや。早速その犯罪的なボディを味わうとするか・・・
手始めに程よく肉のついた、完璧なバランスの太ももに手を這わす。ストッキングの感触が心地よく、何度も何度も繰り返して触れた。
体育の後だからだろうか。
若干汗ばんだ肌と、人類の生み出した最高の布地は一生触れていても飽きないだろう。
右手で太ももを撫で回し、左では背中に這わせる。
勿論小ぶりで形の整った唇に吸い付いて柔らかさを味わうのも忘れない。
「う・・・ん・・・じゅ・・・ずずずずっ・・・・」
唇を合わせるだけでは満足できなくなってきたのか、俺たちはマットの上で折り重なるようにして舌を吸いあう。
ざらざらとした独特の感触。甘すぎる唾液の味が媚薬となって俺を狂わせた。
「ちゅっ・・・んは・・・・」
吸い、舐り、這わせ、また吸う。
単純な動作の繰り返しに加え、尖った歯列に割り込ませる。
「にゃ・・・にゃあ・・・!」
上顎を舌で突っついてやると、一際大きな声を上げた。どうやら咥内の弱点はここらしい。
細い首筋を撫でながら、更に上顎を攻め立てる。突き抜ける快感と柔らかい肉の感触。
上顎の形を楽しむように舌を走らせると、タマはいよいよ呼吸が苦しくなってきたのか
「にゃにゃ・・・」
甘い息を断続的に吐きながらも、目じりに涙を浮かべ始めた。
二人がつながる口から零れる唾液は、埃臭さの元凶とも言えるマットを蒸せるような匂いに染め、密室にいよいよ立ち込め始めた甘い獣臭は頭の奥をちりちりと焼いた。
右手をずらしてタマの足を開くと、もはや隠しきれないほどにメスをアピールしている股間にたどり着いた。
ぴったりと身体に張り付くレオタード。滲み出す臭気と淫蕩な湿り気は十分すぎるほどだ。
爪の先端で布地の上からそこを引っかいてやると、タマは大きく身体を振るわせた。
「タマ・・・」
「んにゃあ・・・・ももっと・・・して・・・にゃあ!!」
徐々に指のスピードを速めていく。円を描くように臀部を撫で回し、自分の意思とは無関係に指はタマの入り口を犯し続ける。
布地をすこしずらすようにこすり付けてやると、ぬかるんだような感触と、黒いストッキングに広がる染みがより大きくなってマットを濡らした。
77 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/01(火) 16:44:32 ID:ImVhrhOb

「そ、そろそろ、ユーにゃんをここで感じたいにゃ・・・」
俺の腕を掴んでタマが哀願するように言った。アーモンド形の翡翠石は零れんばかりに揺れている。
俺は体を起こしてタマを押し倒すと、ストッキングの股間の部分だけを丁寧に引き裂いた。
そのまま薄い下着を横にずらす。十分な湿り気帯び、ひくひくと俺を受け入れるのを待っている秘唇に軽く舌を這わせて感触を確かめる。
俺はいよいよこれ以上ないほどに屹立した自分のモノを、入り口にあてがった。
「タマ・・・いくよ?」
「うん・・・早くきて!!ユーにゃんの早く欲しぃにゃあ」
割れ目に沿うように先端をこすりつけ、潤滑油をなじませてから一気に貫く。
猫人の中はきつくて狭いという噂は本当だった。これ以上ないほどに濡らしていたタマだが、俺のモノは半分も埋まらない。
かろうじて亀頭までは侵入したものの、それ以上先でまったく動かなくなる。
「タマ・・・もうちょっと力抜いて」
「あぁっ・・・ん・・・・」
タマも先端だけではもどかしいのか腰を振って俺を受け入れようとするが、ぬるぬるの膣内に擦れて快感が伝わるだけだった。
しかし、本当に良すぎる・・・下手するとこのまま焦れているだけでも果ててしまいそうだった。
「た、たま・・・力抜いて・・・」
「にゃ、にゃ、にゃ・・・」
タマは俺の声が聞えていないのか、締め付けたり緩めたり、多種多様な動きで感触を楽しんでいる。
てか、このままじゃ生殺しだ・・・
「タマ〜力抜いて!!」
「にゃん・・・・ユーちゃんの、とってもいいにゃん・・・んぁ・・ん・・・」
タマの腰は止まらない。中がとてもいいだけにそこまで挿入感が得られていなくても、十分に気持ちい。
もしかして猫人の男は全員短小なのか??だからタマもここまで入っただけで満足しているとか??
だとしても・・・
「くっ・・・」
せりあがってくる射精感。こりゃ、マジで、ヤバイ・・・
「ふにゃーーーっ・・・にゃ・・・・にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ・・・」
一際大きく腰をストロークさせると、俺を受け入れているタマの中が更にきつくなった。
突き上げられるような快感。頭の中が白くなったかと思うと、俺もタマの中に果てていた。
「にゃ〜っ」
満足したのか、俺を抱き寄せて丸くなるタマ。
なにやら不完全燃焼だが、程よい疲労感で俺は彼女に覆いかぶさるように倒れこんでいた。

78 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/01(火) 16:46:19 ID:ImVhrhOb

流れぶち壊しで本当に申し訳ない。
Hシーンがやっつけですが、次のは結構長いです。
全五話完結となりました。
長々とウザいかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。
79名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 18:45:58 ID:NcVfGy5P
エローー(*´Д`)イ!!
80 ◆wGJXSLA5ys :2006/08/01(火) 19:35:46 ID:jwYhRlcR
2200年………ついに世界人口は2000年の半分にまで減った。それに伴う各国の経済力の低下、そして滅亡の危機………
その対策として、2205年、ついに全世界に『クローン製造法』が認可され、人型クローンを作る事が可能となった。
経済力が下がったとはいえ、科学力の上昇は止どまることを知らなかった。夢の猫型ロボットや、四次元空間は23世紀になってもムリであったが、クローンの製造などどの国でもたやすかった。
今や全世界の九割が先進国……発展途上国など指で数えられるほどだった。そのため、製造法が認可された次の日から、物凄い勢いで作られた。
無差別に住宅に徴収がかけられ、選ばれた家の人間は、皆遺伝子の提供……つまり、『オリジナル』となることを義務つけられたのである。
この策は成功し、わずか半世紀で世界人口は2000年七割にまで戻ったのだ。ただ、クローンに課せられた一つの義務は、オリジナルと同じ国に住んではいけないということ。同じ顔がワラワラいては気持ち悪いからである。
そのせいで、もはや一つの国には大量の人種が混じっているのである。
81 ◆wGJXSLA5ys :2006/08/01(火) 19:37:09 ID:jwYhRlcR
例えば日本では、純粋な日本人は国人口の四割にしか及ばない。後は皆クローンの他国籍者だ。
そして世界が安定を取り戻し始めた2060年……とある国が、何世紀先の事も考え、クローンの改良型を開発したのである。
改良型……これは普通の人間や、初期型クローンに比べ、身体、及び精神年齢の成長速度が半分になるものだった。単純にいえば、倍長生きできるのだ。
その改良型もまた世界に広まり、大量に製造され、2070年にはついに2000年と同じにまで戻った。
が………改良とはメリットばかりではなく、デメリットも生み出した。ごく稀に……五千体に一体程度の割合で、『欠陥品』が生まれたのだ。
欠陥品とは、人間としての何かが欠けた、そんなクローンである。身体的には目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり……精神的には自閉症や、理性の失われた者などがいる。
ただ、これはほんの一部の例で、もっと酷い『欠陥』を持っているものもいる。だが、いくら欠陥品とはいえ、クローン………製造法の認可と同時に最低限の人権も成立したため、むやみやたらと処理できないのである。
82 ◆wGJXSLA5ys :2006/08/01(火) 19:37:58 ID:jwYhRlcR
が、ここは言葉というもの。『最低限』の人権……つまり、生きている事が最低限なのであり、あとは何をしようが構わなかったのである。
そこで世界は、大海のど真ん中。周りを見渡しても見えるのは水平線ばかりという孤独な場所に、巨大な人工島を作ったのだ。
そこは見るだけでは普通の街がある島だが、住人は皆欠陥品ばかり………そう、欠陥品はこの島に『放棄』されたのだ。だれもがこのやり方に目をつぶった。異端分子が社会に紛れる方が危ういからだ。
それ以降、改良型クローンは作られるとすぐに社会適応検査を受け、それになにか一つでも引っ掛かった者は人工島……別名『廃棄島』へ。
合格者は社会へと出て、何不自由ない生活を過ごすのである。そして欠陥品、または合格者でも人間社会で罪を犯した者は、皆廃棄島送りとなった。
だからこの島でまともに生きていける奴なんて少ない。大半が狂った浮浪者となり、好き勝手やっているのだ。警察も無い、治安も守られない………まさに世界のはき溜めといった場所なのだ。
そして俺は、欠陥品でもあり、社会の犯罪者。そのどちらにもあてはまるのだ…
83 ◆kZWZvdLsog :2006/08/01(火) 21:02:04 ID:r/tdTIEG
投下します。
84 ◆kZWZvdLsog :2006/08/01(火) 21:06:10 ID:r/tdTIEG
 聞き覚えのない声が突然背後から――もちろん俺は驚いた。
「な……誰ですかあんた!?」
 振り向いた先、我が家に侵入してきた人物は、なぜか四つんばいで移動していた。
(アイヴァンホー!?)
 蛆王女まで驚きの声を出す。こいつの関係者らしいが、なんでそんなにびっくりしてるんだ。
「そちらか」
 位置を確認し、間にいる俺を肩で押しのけながら進む。
「ちょっ……お、おい、なに挨拶もなく勝手に上がりこんでるんですか!?」
 動揺し、目もくれずフォイレのところへ向かう謎の人物の肩を掴んで制止した。
 途端に。天地が逆転した。
 投げられた、と気づいたのは後頭部が床に叩きつけられてから。
「―――がッ!?」
 世界が揺れ、星がまたたいた。すぐには起き上がることもできず、ただうずくまった。
「すげー、まるで格ゲーの吸い込みみたいだ……っ!」
 おい、良治、友達が激痛で声も出せない状態でいるときになに感心してんだよ!
 俺も「ジェットコースターより……はやーい!」とかちょっと思ったけどさ。
(和彦さんっ! 大丈夫ですかっ!?)
 結局俺のことを純粋に心配してくれたのはフォイレだけだった。
 この瞬間、良治は俺にとって蛆虫以下の存在に決定した。
 図示すると「蛆虫(フォイレ)>>>>>良治」。
「ふん、だらしがない奴め」
 俺を投げ飛ばしといて偉そうにほざくニューカマーは、良治の三個下くらいにしくとか?
「――で。あんた誰なんですか」
 早くもたんこぶの出来かかっている後頭部を涙目で押さえながら、俺は最初の質問に戻った。

「名はアイヴァンホーだ」
 例によって姓はないとのこと。
(つまり、彼女も蛆界の住人なんです)
 とフォイレは説明した。
 「彼女」。そう、アイヴァンホーさんはその名に反し女性だった。起伏と丸みのある体からしても明らか。
体格からすると十代後半から二十代後半ってところだろうか。顔が見えないからよく分からない。
 顔が見えない、というのはそのまんまの意味だ。彼女は青い仮面を被っていた。口から額まですっぽり
隠れるような、屋台で売ってる奴に似た形状。目のところだけに穴が開き、表面は「未開の奥地に住む
部族が成人の儀式でイニシエーションとして彫る刺青」っぽい模様が白で描き込まれている。
「なんでお面被ってるんですか?」
 と訊くと、「醜貌ゆえ……」と答えたきり、うんともすんとも言わない。
(人化したアイヴァンホーには、その……鼻がないんですよ)
 フォイレのフォローが入り、「で、でも、結構美人さんなんですの!」とフォローのフォローまで加わった。
「へえ、あれみたいだな……えっと……ほら、『センゴク』に出てきた武将で、誰だっけ?」
「俺『センゴク』読んでねえから知らない」
85うじひめっ! Vol.4 ◆kZWZvdLsog :2006/08/01(火) 21:08:16 ID:r/tdTIEG
 良治のトークをすぱっと断ち切り、遅まきながら紹介されたアイヴァンホーさんへ目を向ける。
 蛆化したフォイレの横、少し距離を置いた地点で背筋を伸ばし、端然と正座している。
 フォイレをうっかり踏み潰したりしないように、という配慮なんだろう。ダイニングに入ってきたときに
四つんばいだったのもきっと同じ理由だ。
 仮面ばかりに注意が行ってしまったので、他の部分も観察してみる。
 銀色の髪――フォイレのそれと似通っているが、やや短めに肩の上で切り揃えられていた。
 すっきりとしたボブカット。髪色とも重なって涼しげな風情を醸している。
 服装は……普通の夏服だ。上はショートスリーブの白シャツと淡い灰色のカーディガン、下は紺のジーンズ。
地味で、特に得るべき感想もない。つくづく仮面だけが全体から浮いている。
 と、そうやってじろじろ眺めていたら、気に障ったのかギンッと睨み返された。
「――何か?」
 ぞくぞくっと脊椎まで架空の寒気が染み渡ってくる。
「え? い、いえ、なんでもありません……」
 怖ぇ。なんつー眼光だよ。こいつ間違いなく一人や二人は殺してるぞ。「冷血獣」とかそんなあだ名で
呼ばれたりしているんだ。たとえ子どもが対象だろうと眉一つ動かさずに始末できるんだ。やばすぎる。
逃げたい。でもここで背を向けたらすっと忍び寄られて、悲鳴を挙げる暇もなく巻きつけらた腕で頚骨を
折られて即死しそう。良治、頼みの綱はお前一人だけだ。早く隙をついて通報して来い……!
 隣をそっと窺うと、頼みの綱はだるそうに尻を掻いていた。
 て……てめえっ……! ふざけんな、無関係ぶるにもほどがあるだろうがっ……!
 あ、こっち見た――
 っておい、「あー早く無修正エロDVD見てえなー。和彦、先に部屋行ってていい?」みたいなアイコンタクト
してくんな! 空気読め! 察しろボケ!
(なんだか和彦さんが萎縮しているみたいですけど……アイヴァンホー、あまり怖がらせないでくださいね?)
「――はっ」
 眼光が熄む。全身を包むプレッシャーが消え、息詰まる緊張感が抜けていった。
(申し訳ありません、和彦さん。アイヴァンホーは、私のお目付け役なんです)
 いかにもそんな感じだな。
(ご無礼なことはなさいませんでしたか?)
「いや……なんにも……!」
 余計なことを言ったら殺す、という意志の篭もったオーラを肌で感じる以上、こう答えるしかない。
(本来は爺やが就いているのですが……先日のこともあって、外に出ていた彼女が呼び戻されまして。
何があっても私の安全を確保しなければならないと意気込んで、ここずっとピリピリしているんですの)
 へー、そう。道理でさっきから殺意飛ばしてくんのか。
 ……けど、姫様を踏み潰そうとしたのは隣のアホだぞ? できればそっちに殺意向けてくれないか?
 それはともかくとして。
「質問、いいかな?」
(はい?)
「その、アイヴァンホーさんなんですけど……」
 チラッと窺い、不躾にならない程度に目を遣って。
「……手足が、あるような」
 半袖からすらりと伸びる綺麗の肌した腕。ジーンズを履きこなす細めの足。どちらもフォイレにないもの。
 それに目も見えているみたいだし。
 義肢? 義眼?
「ああ、それはだな、」
 と本人が直接説明してくれた。なにげない口ぶりで。

「わたしが蛆と人の間に生まれたハーフヒューマン――お前らの立場で言えばハーフマゴットって奴だからだ」
86 ◆kZWZvdLsog :2006/08/01(火) 21:11:30 ID:r/tdTIEG
だんだん変な設定になってきてますが、今後もめげずに続けます。
87名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 21:16:17 ID:GD3OQ0DO
>>86
がんがれ。
うじむしうんぬんはちと、気がひけるとこありますが、姫様かわいいよ姫様
88リボンの剣士 26話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/01(火) 21:36:52 ID:n6trLhOB
投下します。
89リボンの剣士 26話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/01(火) 21:37:41 ID:n6trLhOB
はい、新聞部の超新星、屋聞です。こんにちは。って、そんなことを言っている場合ではありません。
緊急事態が発生しました。
陰で密かに木場先輩の支援活動を行っていた自分ですが、なんと木場先輩の悪評が、よりにもよって伊星先輩か
ら入ってきたのです。
既に周知の通り、伊星先輩の交友関係は非常に狭いです。先輩ご自身は、その話をどこからか聞いた、等とぼか
していましたが、どうせ新城先輩か、その友人からでしょう。
いえ、誰からか、というのは些細なことです。
伊星先輩がそれを知っているということは、もう既に多くの人が知っている訳です。そしてその幾らかは、新城
先輩の味方に付いている――。
このままでは、数の差で押し切られることは必至。これを打破するには、出回っている噂が真実ではないという
証拠を掴む他にありません。
急ぎ木場先輩を直撃です。日を置いている暇はありません。対応が遅れたら、命取りになります。
現在、放課後になりしばらく経った時刻で、多くの人が部活に行ったか帰宅したため、校舎内に生徒は、木場先
輩はいませんでした。

階段を降り、中庭へ向かいます。ここで木場先輩が待ち伏せしてればいいのですが。
中庭に着き、噴水のまわりを一周して見渡しますが、歩いていたりベンチに座っていたりするのは関係の無い人
ばかり。木場先輩の姿が見られません。
こうなったら最後の手段です。
携帯電話を出し、即座に木場先輩へコールします。
電話を耳に当てたとき、初めて自分がかなり汗をかいている事に気付きました。
ぺたっ、とした気色悪い感じが、耳と頬から伝わります。
先輩が出るまで、そんなに長い時間は掛からなかったはずですが、自分には物凄い長い時間を待たされた気分で
した。
『もしもし。屋聞くん?』
「木場先輩、今どちらに?」
『ん〜、家にいるよ。何かあったの?』
「今すぐ出てきてもらえますか!? 作戦会議です!」
完っ全に忘れていました。自分は伊星先輩のことについて調査していましたが、木場先輩の男性の遍歴について
はノータッチでした。
というか木場先輩、何であんな聞こえの悪い噂を立てられているんですか。
そのような悪条件がついていたなんて、知りませんでしたよ?

とにかく全ては、木場先輩と話せばわかります。先輩と合流するまでには、落ち着いておかないといけません。
……全く、今日は綱渡りの連続で困ります。前もって覚悟ができていれば楽なもんですが、どれもこれも不意打
ちばかり。
はじめに伊星先輩から突っ込みが入っていたら、何もかもが瓦解してたと思うと、今更ながらぞっとします。
トイレに入る前に、周囲に誰も居ないことをしっかり確認したのに……。

待ち合わせ場所は、以前に二人で入ったファーストフード店。先に来てしばらく待つと、私服姿の木場先輩が現
れました。
自分の向かいの椅子に腰掛けます。
スカートが絶妙な高さで一瞬だけ捲くれ上がりました。自分にそんな演出はしなくて結構です。
「急に呼び出して……何か掴めたの?」
「はい、掴めましたよ。ただし、悪い意味です」
「どういうこと?」
人差し指を頬に当て、大きく顔を傾ける先輩。
……なんていうか、思いっきりわざとらしい仕草なんですが、もう本人の癖になっているんでしょうね。
90リボンの剣士 26話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/01(火) 21:38:31 ID:n6trLhOB
「実は、木場先輩に関する、悪い噂が広まりつつあるようです」
「どんな噂?」
「木場先輩の、男性に対する癖の悪さ、節操の無さ、そういったものです」
それを聞いた先輩は目を細めます。整えられた眉も動きました。
「特に、他人の男を奪ってすぐ捨てた。これが際立っています」
「ん〜……」
両肘を突き、苦々しい表情を覗かせています。
「その話は、誰から聞いたの?」
「……。伊星先輩からですよ」
「!!」
あー、やっちゃった、って顔してますね。事が重大になっているのは、理解して頂けたようです。
とはいえ、対策はこれからなら間に合うでしょう。
噂など所詮噂。ご本人から真相を聞いて伝えれば、大してマイナスにはならないはずです。
「……それで、伊星くんは、その話をどう思っているかわかる?」
「はい?」
「だから、私の噂に対して、伊星くんはどんな風に言ってたの?」
先輩の目が、鋭く光ったような気がしました。
なるほど。伊星先輩自身がどう思っているのか、そこに焦点を当てるのも自然な流れです。
「そうですね……」
伊星先輩と話したときのことを思い出しますと、どうも話し方が淡々としているというか、伝言をそのまま口に
しているだけ、というか、はっきりとした感情が篭っていないようでした。
大体そんな意味のことを答えると、木場先輩の表情が緩みました。
「ということは、伊星くんはそんなに気にしてないのかな?」
「だと思います」
適当に相槌を打ちましたが、実は本意ではありません。伊星先輩は、自分にこの噂の真偽について調べてくれと
言いました。
気にしてなければ、普通、そんなことは頼みません。

これについては、解釈の仕方が二通りあります。
一つ。木場先輩に対して好意的で、そんなことがあるものか、との思いがある。
もう一つ。先輩への疑念が強まって、警戒心から気になりだした。
色々考えるべきところですが、これは木場先輩には言えません。伊星先輩も少しは気にしてるみたいですよー、
と明かせば、話を都合よくでっち上げられる可能性があります。
まあ、でっち上げられても自分には関係のない話なんですがね。ほら、自分は新聞部ですから。
「なら、心配はいらないよ」
木場先輩は、いつもの笑顔、伊星先輩に見せる笑顔で言いました。
「噂くらいで、伊星くんが突き放したりはしないって」
凄い自信です。これだけ言うなら、何か根拠が……。
すいません忘れてました。先日、木場先輩は、伊星先輩と一緒に帰る、を成功させ、絡んできた連中を一喝。
そのまま喫茶店で一時を共にしていましたね。
自分は後をつけ、店内で一緒にいる写真を撮り、新城先輩に見せて嫉妬心を引き出してやろうとしたことがあり
ました。
あれでだいぶ好感度を稼いだのでしょうか。自分には、会話までは聞き取れず、よく分からなかったのですが。

木場先輩は心配ないと言いますが、自分には心配です。普通、悪い噂を聞いたら少しは疑ってかかりそうなもの
です。まして伊星先輩は、他人を疑う気持ちが強い。
せめて噂が……って、肝心な所がまだではないですか。
「それで、今出回っている噂の方なんですが、真偽のほどは?」
「う〜ん……」
頼みますよ先輩。拍子抜けするくらい、スパッと真実を言っちゃって下さい。
大体、この手の噂なんて、実際は大したこと無いのが常ですから。
「まあ、間違ってはいないね〜」
「……はい?」
「彼女がいるって分かってて、その男の人に近づいた事は、確かにあるよ」
え、え、えぇっ!?
91リボンの剣士 26話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/01(火) 21:39:16 ID:n6trLhOB
ちょっと待ってください。何でそう、ふつ〜に言ってるんですか?
いえいえ、彼女がいると分かっていても好きになるというケースは、無いわけではないです。
「で、では……前の彼氏さんと別れた理由は?」
非常に嫌な予感がします。なぜなら、今の木場先輩からは、心苦しさとか、気まずさとか、そういうのが全く感
じられないのですから。
これが伊星先輩の耳に入っては不味いという事くらい、判らない訳ではないでしょうに。
しかし木場先輩は、何の迷いも、躊躇いもなく、言いました。
「別れたのはね、飽きたから」
「……すみません。もう一度お願いします」
「飽きたの。付き合ってて、面白くなくなったから」
「……ほんの、一ヶ月で?」
「うん」
……えー、ただいま混乱中です。しばらくお待ちください。


・・
・・・

大変失礼致しました。結果を纏めます。
木場先輩が男を奪い、飽きたら捨てるというのは、事実でした。
つまり、木場先輩が伊星先輩を狙うのは、前の男に飽きたから、新しい男を見つけよっと。そう思ったというこ
とです。
あまりのショックで手も動きません。メモを取るまでも無く、頭に深く刻み込まれました。

伊星先輩、こんな人に目を付けられたのですか。
    ・            
さすがの私も、同情したくなります。

「屋聞くん、どうしたの固まっちゃって」
「い、いえ、何でもありません」
この場では、お茶を濁すのがやっとでした。
これ、伊星先輩に話していいのでしょうか。
やめましょう。そんなことをすれば一巻の終わりです。
自分はあくまで、二人の争いをもっと激しくする為、木場先輩の援護をしているのですから。

……もし、激闘の末、木場先輩が勝ったら、伊星先輩はどうなるのでしょう。
木場先輩と付き合うことになるのは間違いないでしょうが、恐らく、すぐ捨てられるのでは?
考えも巡らせても、伊星先輩の幸福な未来は想像できません。
はて、自分は一体、何を考えているのでしょう。
伊星先輩がどうなろうと、知ったことじゃありません。自分は二人の戦いを記事にするだけの、
ただの第三者であり、全ては新聞のネタの為です。

そう、ネタの為。ネタの……。
……。


(27話に続く)
92リボンの剣士 26話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/01(火) 21:40:57 ID:n6trLhOB
・の位置がずれた……ort
93名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 21:43:42 ID:9kQDOdKM
>>83
マジで蛆虫以下になった良治に爆笑w
ある意味では凄い好きな作品なので、期待してます

>>88
うはあ、なんか屋聞も盛り上がってきてるなあw
94名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 21:53:24 ID:E6iEPhoQ
ええ…えええ!?

マジでマジで、屋聞フラグってありうるのか…?
自分のことを「私」と呼んでいる…
95名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 21:54:04 ID:KwySGAdg
>>92
木場さんやっぱり・・・あぁ、がんばれ幼馴染(;つД`)
>>85
ってことは蛆姫と主人公との間に子供が作ることが可能ってことか!
こいつは暑いぜ(*´д`*)
96名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 21:55:54 ID:dCEQbBYE
>ジェットコースターより……はやーい!

あれ…?なんでだろう?胸が痛いよ?
97名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 00:15:46 ID:KQ2vhNTD
>>92
ort
が犬プレイの散歩中の
マーキングに見えた俺は勝ち組

98名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 01:13:00 ID:caiz/UX8
>>83
ウジ虫良治ガンバ(´・ω・`)
ウジ虫と人間のハーフ…
父親はどうしてるんだろうか…

>>88
木場が嫉妬に狂うところがみたいよ
飽きたから捨てるみたいなタイプの子が普通はありえないはずなのに
必死になるというギャップがたまらないんだ それとも木場はフェードアウトしてしまって尾聞フラグが立つのかな
99名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 10:53:28 ID:qUoc3u7N
嗚呼・・・

短編読みてぇ・・・・・
100過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/02(水) 16:10:11 ID:+CqpDwyK
ゆっくりと歩み寄ってくる先輩を前に、僕は何もすることができなかった……
言葉を発する事も……身じろぎする事さえ……
「黒崎先輩!?どうして……」
最上が怯えているかのような声を漏らした。
あの鋭い眼光、全身から漂う気迫、それは見る者を恐怖させる。
でもそれは違うんだ、それは黒崎先輩を知らないからそう感じるんだ。
だけど僕にはわかった。
いや、わかってしまった。
あの表情は……全てを引き裂かんばかりに荒れ狂うあの表情は……
あれはそう……悲しい……だ。
「健斗、君の知り合いか?」
「せん……ぱい……」
「知り合いかと聞いているんだっ!!」
怒声が辺りに響く。
僕のすぐ後ろで最上が身を縮ませていた。
「そうか……そうなんだな。私と別れたいと言った矢先にこれだからな……」
先輩は僕の答えを待つ事はしなかった。
きっともう全部悟ったんだと思う。
いつかはバレるとは思っていた。
だけど……
「馬鹿みたいだろう。君の気も知らないで、私は君の見舞いを心待ちにしたいたんだ。本当に馬鹿みたいだろう……」
先輩は怒らなかった、だけど涙を流す事もなかった。
先輩を知らない人から見れば、全身から殺気を迸らせているようにしか見えないだろう。
だけど僕にはわかった。
いや、わかってしまった。
先輩が自分の中に吹き荒れる感情を必死に抱き留めているのを……
それはパンパンに膨らんだ紙風船の様に……体中に裂け目を作って、それでも必死に抱き留めて……
「私は君の恋人である事を当然だと思っていた、でも健斗はそうじゃなかったんだな」
せめて怒り狂ってくれれば、泣き叫んでくれればどれだけ楽になれたんだろう。
僕がじゃない、先輩がだ。
先輩はいつもそうだ。
他人の事にはどこまでも過保護になるのに、自分の事になるとどこまでも我慢する。
そうだ……やっと思い出した……どうして忘れていたんだろう……
僕はそんなアンバランスさを放っておけなかったんだ。
そんな黒崎先輩をなんとかしてあげたいと本気で思っていたんだ。
「すまなかったな、私は悪い恋人だったな……」
先輩の独白が続く……
僕を糾弾するためではなく、最上を憎むでもなく、ただ自らを罰する言葉を紡いでいた。
「先輩……」
……言葉が続かなかった。
良いんですよ、こんな時くらいは感情を爆発させても良いんですよ。
僕を糾弾しても、最上を憎んでも良いんですよ。
そうじゃないと先輩が……壊れてしまう……
101過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/02(水) 16:11:04 ID:+CqpDwyK
「先輩……」
どうしても次の言葉が出てこなかった。
黒崎先輩が自分の感情に押しつぶされていくのをただ見ている事しかできなかった。
きっと先輩自身、自分が今どうなっているかわかっていないと思う。
「………………」
「………………」
「………………」
気がつけば誰も一言も喋れなくなっていた。
時折吹くそよ風と木々のさざめき、先輩の荒い息、そして僕の心臓の鼓動だけがはっきりと聞こえていた。
先輩は……先輩はやっぱり涙を流していなかった。
ただ鋭く真っ直ぐに僕の眼だけを見つめていた。
だけど僕はそれを見据える事はできなかった。
僕が最上に目移りしたせいだろうか?
黒崎先輩への最初の想いを忘れていたせいだろうか?
……きっと全部だ。
僕は先輩と目を合わせる事はできなかった。
「健斗、君の考えは良くわかった。もうこれ以上つきまとって君に迷惑をかける気は無い。だから……」
「先輩……」
そこから先を言っちゃいけない。
そう言いたかった、そう言わなくちゃいけなかった。
先輩とは長い付き合いだから、その先に何を言おうとしているのかはすぐにわかった。
だけど言葉が続かなかった。
どうしても次の言葉が出てこなかった。
もう先輩は止まらない、ものの一秒もしない内に次の言葉を発する……
「だからもう……絶交だ……」
……そう告げた。
ゆっくりと歩き去って行く先輩を前に、僕は何もすることができなかった……
言葉を発する事も……身じろぎする事さえ……
僕は完全に先輩との縁を絶たれた。
きっともう僕にはどうする事もできない。
先輩が狂おうと、壊れようと……
知らなかった訳じゃない、気づかなかった訳じゃない、先輩が僕の事を本気で想ってくれていると。
最上はきっと大丈夫だ、僕がいなくても生きていける。
だけど先輩は僕がいなくても生きられるんだろうか?
うぬぼれかもしれない、でも僕には黒崎先輩の声にならぬ悲痛を確かに感じていた。
いや、感じてしまっていた。
僕は……どうすれば良い?
空には青空だけが広がっていた……
神社の屋根に、一匹の狐が眠そうに座っていた……
102シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/02(水) 16:11:52 ID:+CqpDwyK

非現実的な設定が割と好きなシベリア!です。
個人的には『リボンの剣士』と『血塗れ竜と食人姫』は特に楽しく読んでいます。

次回、黒崎栞が反撃の策を練る、その時倉田健斗は……乞うご期待!
103名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 16:36:20 ID:7TWdpRUl
過保護きましたねぇ。
といっても、いったん過去ログたどらないと分からないorz

今までをたどらねばならない作品結構あるよね。
リボンの剣士はここ来たときにはだいぶお話進んでいたし……

今のところの連載では、血塗れとブラマリととらとら楽しく読んでます。
104名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 18:24:30 ID:TEzsvkLI
俺は逆に、現実系の方が好きかなぁ。
小細工なしに、真正面からヤンデレ修羅場にぶつかっている「疾走」なんかが、凄く好き。
ありきたりな学園物設定でも、まだまだ全然掘り下げていけるのかと衝撃を受けた。

最近は、中世風現代風SF風問わず、ファンタジー系が主流みたいだけどね。
ただちょっと、肝心の「嫉妬・修羅場」へのアピールが薄いんじゃないかなぁと思う時がある。
キャラ萌えやインパクトは大きいんだけど……。

だから今、あえて俺は現実系作品の作者様たちに、熱いエールを送ろう。
ファンタジー系に比べてどうしても地味になってしまうが、地味だからこそ光るドロドロな情念のぶつかり合い。
がんばって、頑張って。応援してます。気後れしないで。いつでも待ってます。
つか、スィッチブレイドナイフカムバック!
105名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 19:41:51 ID:1k+hTMWh
>>103
話数がない作品は、どこまで読んだかわからなくなる時あるね
まとめサイトの有り難味がよくわかる
106名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 20:30:10 ID:DjEXfSSf
>>80-82は長文コピペ
107しっとな日々  ◆xvhaSPKbVw :2006/08/02(水) 21:57:39 ID:/0qFuh99
「月夜月夜憑きYO月夜〜〜っ!!」

「えぇいウルサイっ、人の名前連呼するな、あと字が違うのが一回あったぞこらっ!」

昼休み、屋上で一人もふもふとサンドイッチを食べていたら、一応友人である佐倉 美星(さくら みほし)が雄叫びの如く叫びながら現れた。
ぷぷ、女なのに雄叫び、ぷくくくっ

「ちょっとぉ、一人ベクトルの違うツボ入った笑いしてないで話聞いてよ〜っ」
「失礼な、笑いのツボが独特と言いなさい。で、あによ?」
うん、あのね…と言いつつあたしの隣に座る美星。
シャギーのかかった栗色のショートヘアーに、まぁ見栄えは良い顔立ち。
一見美少女一歩手前、中身暴走爆進お馬鹿な友人である。

「何か今、物凄く失礼な事を考えてなかった?」
「あんたエスパーか、レベルは5位か?」
「考えてたんかいっ、って漫才してる場合じゃなかった、大変だよ月夜、大変なんだよっ?」
いや、疑問系で言うな、意味分からないから。
まぁ、あんたの頭が大変なのはよく分かったけどさ。

「その汚い耳の穴かっぽじってクスコで拡張してプラグ詰めて聞いてねっ」
いや、最終的に聞こえないだろ、それ。と言うか誰の耳が汚いだぁコラ、ア〇ル扱いするなっ。

「あのね、和磨君が穢れた売女と恋人になっちゃったんだよーーーっ!!」

…………ほぇ?

「美星、ワンスアゲイン、もう一度」
「だから、私の愛しの王子様の和磨君が、淫乱汚物売女の告白受けちゃったんだってばぁっ!!」
うわ、珍しく泣きそうな顔だ美星。
と言うか、え、マジで?
か、和磨が?人違いでなくて?
「か、和磨と言うのは反逆している人とか、じゃなくて?」
「不動 和磨、通称笑わずの和磨の和磨君だってのっ」
…………最悪だ。
最悪で最低で最高に最悪だ、あの和磨が、私の和磨が、女と…つきあうだとぉっ!?
許せん、何が何でもそれだけは許せん、許してたまるかコンチクショウ!
「どうしよう月夜、やっぱりあれかな、手始めに下駄箱に猫のウンコ入れて、そんで包丁でブスリかなっ?」
「いや、落ち着け美星。周囲に迷惑な嫌がらせの後殺害って飛び過ぎだから」
あははは、目の前の友人のお陰で怒りが冷めちゃったよ、どうしてくれるこの暴走お馬鹿。
まぁ、私としては嫌がらせは大いに結構なのだが、流石にブスリはねぇ、駄目だよねブスリは。
「せめてサクッ、にしておきなさい」
「月夜、それあんま変わらない」
そうかしらん?
まぁとりあえず。
「美星、情報収集に行くわよ。敵を知り己を知るのが勝利への一歩」
「了解、そのついでに和磨君の体操着を拝借しよう、今日三時間目体育だったから…じゅるり」
こらこらそこの見た目一応女子高生、その行動はあまりにオヤジで変態ですよ。
そういうのはバレないように密かに楽しむのが乙女なんだから。

手早くサンドイッチのゴミを片付けて、あたし達は屋上を後にした。
108名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 22:45:03 ID:7wUUsc7c
ヒロイン2人がいきなりストーカーの新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
109過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/02(水) 22:49:17 ID:+CqpDwyK
夢遊病患者の様に彷徨う黒崎栞を見つけて、早くも12時間……
東の空が段々と明るくなっていくのがわかる。
容態は……未だ回復の兆し見えず。
ただ糸の切れたマリオネットの如く、黒埼栞は虚空を見つめていた。
「ジェンティーレ、どう思う?」
「失恋……だと思う」
「俺はどうすれば良いと思う?」
「他人にできる事なんて無いよ、ただ時が解決してくれるのを待つ以外にはね」
「そうか……」
他人にできる事は無い、本当にそうだろうか?
少なくとも俺は医者だ、そして黒崎栞がこうなった事情もある程度は把握している。
ならば黒崎栞を放っておく選択肢は無い。
「質問を変えよう……ジェンティーレ、この家をどう思う?」
ジェンティーレはしばらく天井を……その先にある星々を見上げ、答える。
「似てると思う、私が来る前の友美の家に」
ジェンティーレの占星術によって割り出した黒崎栞の家。
人の気配は無く、間もなく夜が明けようとしているのにもかかわらず家の者が帰ってくる様子も無い。
広さも家具もそれなりの物が揃っているものの、掃除は雑だ。
ふとカレンダーに目をやる、そこには暗号の様にスケジュールが刻み込まれていた。
「仕事の虫……という事か」
「友美のお母さんは娘の事が大好きだった、だから友美もあんなに良い子に育った。けどこっちの両親はどうだろう……」
再び黒埼栞に視線を戻す。
病室で悪態をついていた少女はそこには居なかった。
「一度だけ黒崎栞の母親に会った事がある」
俺が黒崎栞の見舞いに行った際、先客として病室に居た人物を思い出す。
「どんな人だったんだい?」
「そうだな……一言で言えば、義務で動いているような人間だった」
「義務……?」
「積極的に何かに関わろうとしない、それが娘でもだ。おそらくあの日黒崎栞の見舞いに現れたのも誰かに言われたからなのだろうな」
「そうかい……」
「だが黒崎栞からは嫌われてはいないようだぞ、普段よりもいくらか表情が和んでいた。もっとも、本人がどう思っているのかは知らんがな」
父親の方は……結局一度も見舞いに訪れた気配は無い。
その点に関しては憤慨すら覚える。
「たぶん……だけどね」
今まで聞き役に回っていたジェンティーレがおずおずと口を開いた。
「やっぱり栞さんは寂しかったんだと思うよ。これでも誰からも愛情を受け取れない人の気持ちは少しはわかるつもりだから」
「………………」
「それで、初めて栞さんに本気で愛情を傾けてくれた人が例の恋人だったんだと思う。
たぶん無意識の内に栞さんもそれがわかっていた、だからこんなにも寂しそうにしているんだと思うよ」
「そうだな……おそらくそれで正解だ」
やはりジェンティーレを連れて来たのは正解だった。
こと女性の心理に関しては俺はあまりにも頼りない。
「ならばジェンティーレ、今から考えるべき事は一つだ」
「わかってる……何とかして力になってあげよう。だろう?」
「当たり前だろ、俺は医者だぞ」
110過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/02(水) 22:50:14 ID:+CqpDwyK
「とは言ってみたものの……俺にできる事などありそうもないな」
「まだ2秒しか経っていないよ……」
「残念ながら色恋沙汰は専門外だ。俺に思いつく事など、せいぜい運動をさせて発散させてやる事ぐらいのものだ」
ノイローゼの類は肉体よりも精神の方が先行しすぎる事によって起こる現象だ。
故に何も考えずに肉体を動かす事でバランスをとらせる……という理屈なのだが、色恋沙汰にも効果があるかどうかは微妙な所だ。
「ジェンティーレは何か考えはないのか?」
「そうだね……」
そう言うとジェンティーレはしばらく天を仰ぎ……
「……少し不本意だけど、無い事はないよ」
……そう呟いた。

 コンッコンッ……
ノックの音が聞こえた。
 ガチャッ……
返事を待たずに気配が一つ入ってきた。
もっとも、返事をする気も無かった。
「黒崎栞、朝食が出来たぞ」
そう言って入ってきたのは、入院中に飽きるほど顔を合わせた男だった。
「ジェンティーレまで落ち込んでしまった、『私よりも上手い』とな。
俺はそこまで料理が得意だとは思わんのだがな」
美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。
 くううぅぅ……
身体が空腹を訴えていた。
そういえば昨日から何も口にしていない事を思い出した。
「腹を鳴らす程度には回復したか、良い傾向だな」
不撓の手からシチューを渡される。
いっそ死んでしまおうかとも考えたというのに、もう食欲が戻ってきていた。
自分の現金な身体を疎ましく感じる。
「黒崎栞、俺はお前に何があったかなど知らんし、知りたいとも思わん」
不撓は壁に向かってそう呟いた。
奇妙な事に……私はその言葉に耳を傾けていた。
「だがお前は後悔している、そうでなければこうも落ち込む訳が無い。違うか?」
そうかもしれない……
「静忍が言っていた、『折れぬ心、負けぬ心、諦めぬ心があれば、世の中はキミが思っている以上に何とかなる』とな。
あいつはいつも突拍子も無い事ばかりを言うが、こればかりはあいつが正しい」
そうかもしれない……
「そうやって思考を停止させても何も始まるまい。逆に思考を働かせ行動を開始しろ、そうすれば何かが始めるかもしれんぞ」
そうかもしれない……
「どんなつまらん考えでも良い、何をすべきか考えろ。そうすれば……」
そうだ、私はまだ何もやっていない。
このまま何もわからずに健斗を盗られるのだけは絶対に嫌だ。
「そうすれば……俺が力を貸そう」
なんて……なんて力強い言葉なんだろう。
その言葉を聞いただけで、私の身体に思考と食欲が急激な勢いで戻ってくるのがわかった。
「不撓、ありがたく頂くよ」
私はそれだけ言い、シチューを勢い良く胃の中に流し込……
 げほっ!ごほっ!……
……気管支に入った。
「逸る気持ちはわかるが、ゆっくりと食え」
不撓のシチューは、私の身体を芯から暖めてくれた。
111シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/02(水) 22:51:04 ID:+CqpDwyK
怒りのパワーでもう一回分執筆。
シベリア!の半分は対抗意識で出来ています。

>>103-104

こんな話題になった時に100%話題に出ない私……
3スレ目からずっと書いてるのに……orz
まあ、ただ単に文才が無いからなんでしょうね。
足りない文才はこまめにリクエストに答える事でカバーしようかと思っているのですが……
そんな訳でリクエスト募集、先着一名様の要望に答える形で何か書きます。
続き物にするか短編にするかはお題次第、どうぞお気軽に。
(ただし『ジェンティーレを殺さないで』だとか『会長の出番を増やして』など、
不撓家や過保護のストーリーに直接関わる内容の物には応じられないと思います。
一応大まかなストーリーは最後まで考えてありますので……)
112名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 22:59:34 ID:jw8INTHt
魅力がないんじゃないかな
113名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 23:02:37 ID:1X/WrEe0
その、結論を出すのは早いぜ>>111ッ!!
天野さんなんてテラカワイスだし栞さんなんかむしろ俺が過保護した(ry
リクは栞さんの軽いやきもち物を一つ……
114名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 23:17:15 ID:K+NgddsA
>>111
失礼なことを言うかもしれないけれど、
同じ頃から書いてたロボさんもとらとらの前まではそんな感じだったし
他にもそんな職人さんはたくさん居る
こんな傾向の自虐は良くない

でも内容は面白いと思って読んでいるし、
何て言うか、不屈兄さんモエス!!!!
115名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 23:29:41 ID:DjEXfSSf
うむ、前に感想書こうと思ったら別の作品投下があって流れ的に機を逸した
なんて事もあったよ。 このスレならROMもかなりの数いるだろうし、漏れは
全作品ちゃんと読んでるので心配召されるな。

作品読んでる人も積極的に感想あげると、職人さんの禿味になりますよマジデ
116名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 23:31:47 ID:kXbhs9/6
作品投下したのに全くレスがつかなかった時はヘコむよな
117名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 23:39:16 ID:G+aZXx4Q
そうだねロボ氏の「とらとら」俺も大好きだけど
其の前の「歌わない雨」と「ジグザグ」はどうにも読みにくく癖が強くて好きになれなかった

「とらとら」になっていきなり超神レベルにドカンと上がった感じだった


>>116
俺もだorz 特にトゥルーエンドでレスが付かなかった時は
118名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 23:41:01 ID:Q+ura4G1
こういう議論始めると、新作も連載も投下しづらくなって大抵廃れる

勢いも他スレよりあるとはいえ全盛期より明らかになくなってきたし、
これじゃこのまま勢いなくなる一方だな
119名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 23:42:54 ID:1X/WrEe0
んじゃ、この話題はおしまいで↓のもの、
心震えるような修羅場のネタを頼む。
120 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/02(水) 23:54:17 ID:2+VJ5WiV
心震えるかどうかはわかりませんが、一発行きます!!

四匹目

あのまま倒れこむように眠ってしまった俺とタマ。
気づくと体育の倉庫の小さな窓には、夕日が差し込んでいた。
ヤバイ・・・・
「ユーにゃん、やっと起きたにゃん♪ユーにゃんの寝顔はとても可愛かったにゃン」
にゃんにゃんとご機嫌なタマ。
しかし俺は、あのまま二人でいなくなったきり戻らなかったことによる追及が恐すぎた。
「ユーにゃんのアレはとても大きかったにゃん。ユーにゃんがタマをもっと開発してくれれば奥までユーにゃんを感じられるにゃん」
そうか、それは楽しみだが・・・
じゃれ付いてくるタマを撫でながら、俺はポチとの約束を思い出していた。
今日はポチの好きなおかずを作って、夜通しスキンシップ。
正直くたびれる・・・
俺たちは体育館に人気がないことを確認すると、乱れた着衣を直して今日のところは別れた。
タマはシたりないといった表情だったが、今日のところは勘弁してもらいたい。
ヤっておいて失礼な話だが。

俺は急いで家に猛ダッシュした。
汗でワイシャツが背中に張り付くのも忘れ、髪の毛が滅茶苦茶になるのも気にせずに
走る。
家の玄関にようやくたどり着くと、地獄の底から這い上がってくるようなどす黒いオーラをビンビント感じ取った。
毒ガスで壊滅したアッテムトもかくやという凄絶さ。
コレは、まずい。
まずいぞ。
思わず2、3歩後ずさってみる。
瘴気が領域を増して、俺の影を吸い込んでいく。
間違いない。間違いなくポチがこの家の中にいて、怒っている。
何に怒っているかは知らんが、溶岩のような灼熱の怒りを感じる。
俺が玄関の前でがくがく震えていると、扉がゆっくりと開いた。
それはもう『地獄へようこそと』告げんばかりに。
そこには闇の底よりも昏く濁った瞳のポチが正座をしていた。
灼熱が、凍てついた。
「お帰り、ユースケ。ご飯のおかず、ボクの大好物のハンバーグを作ってくれるんだよね?
 待ってたよ。ずっと。ユースケがどこかに言ってる間、ずーっと」
口だけは笑っているが、目はまったく形を変えない。これぞ地獄のエレジー。
普段のポチの溌剌さはひとかけらも感じられず、立ち込めているのは暗黒のオーラ。
桜色の唇からは鋭い牙が覗いているが、見なかったことにしよう。
「ねぇユースケ、体育が終ったあと、どこに行ってたの?休み時間にみんな探してたよ。
 ちょうどユースケがいない時、あの薄汚い野良猫もいなかったんだ〜
 ねぇ、二人ともどこに行ってたのかなぁ〜ボクにちゃんと教えて欲しいな〜」
「あははは・・・・それは、その・・・・」
乾いた笑いでつくろってみるが、ポチのシリアスさはより角度を増していく。
玄関に恭しく正座していたポチだが、ゆらぁりと立ち上がると一歩ずつ距離を詰めてくる。
「ねぇ、ユースケ。どこに行ってたの?」
「う〜んと・・・」
ポチが一歩詰め、俺が一歩下がる。
「あの泥棒猫と、どこに行って何シてたの?」
二歩詰める。俺は二歩下がる。
「ユースケはボクの所有物なんだよ。このボクにいえないようなことをシてたの?」
三歩つめる、俺は四歩下がった。
そこでようやく自分が家の庭から飛び出して道路にはみ出していることに気がついた。
ポチの殺気はいよいよ頂点に達しようとしていた。
ヤ、ヤバイ・・・・まさか・・・・
「・・・ぷんぷんするんだよねぇ・・・ぷんぷん・・・薄汚い・・・・あ、あ、あの
・・・・あの泥棒猫(おんな)の匂いがぁ〜!!!!」
121 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/02(水) 23:55:56 ID:2+VJ5WiV
ポチは目にも留まらない速さで俺に飛びついた。
瞬間、背後を圧倒的な質量で空気を押しつぶし、トラックが台風のように通過していった。
シャレに、なってねぇ・・・・
ポチはそんなことを一切きに止めていないのか、そのまま道路に俺を押し付けると服を鋭い犬歯で噛み切っていく。
そこで濁りきって何も映さない虚ろな瞳が、俺を射殺さんばかりに見開かれた。
「・・・・・・・・なに・・・これ・・・・ユースケは、ボクのなのに・・・ボクのものなのに・・・・なんなの・・・これ」
俺のワイシャツを引き裂いて胸板を睨みつけながら、ポチはぼろぼろと涙を流し始めた。
胸板には、赤いキスマークが幾多にも刻まれていた。
きっとタマが寝ている間につけたのだろう。
「嘘、でしょ、嘘、だよね?・・・・ユースケ・・・あの泥棒猫とシたなんて・・・嘘だよね?・・・
 嘘っていってよぉおおおお〜」
このまま食い殺されるのではないかと恐れおののいていたが。
意外にもポチは俺の胸に崩れ落ちてむせび泣いていた。
「どうして・・・・どうしてなの・・・ずっと前から、一緒だったのに・・・
どうしていきなり出てきたあの女に取られちゃうの?ユースケは犬人より猫人のほうが好きなの?・・・ボクも、猫人に生まれればよかったのかなぁ・・・そうすればユースケと交尾できたのに・・・
ユースケはボクのどこが不満なの?ユースケに言われたら僕なんでも治しちゃうよ。体が丸くて子供っぽいから?
それともこの尻尾かなぁ・・・気に入らないなら今すぐ喰いちぎるから、ね?ちょっと待ってて・・・今すぐ・・・」
「ポチ・・・俺には何も言い訳できないけど、ポチはポチだよ。犬人で幼馴染のポチが、俺は大好きだ。
 こんなこと言ってずるいかもしれないけど、ポチは俺のもので俺はポチのものなんだろ?
 だからそんな悲しい顔をしないでくれよ」
垂れ下がっていた耳と尻尾が、ゆっくりと持ち上がった。
「う・・・えぐぅ、ユースケは、ボクの、だよぉ・・・ぐず・・・えぐ・・・うわああああん」
ポチは泣きながら瞳に大きな涙の粒をためながら、俺の唇に吸い付いた。
「ぶじゅ・・・・ずずずずう・・・・じゅ・・・・」
これ以上ないほど強く、舌を絡ませて唇を吸い上げる。
あふれ出す唾液を一滴たりとも逃すまいと、ポチの長い舌が俺の口元を奔走する。
ざらざらとした感触がくすぐったく、ポチの身体の柔らかさと一緒に俺の欲望に火花を放つ。
しかしここは夕方になると交通量の増す通りだ。このままだとイロイロ危険である。
「ユ、ユースケ?ど、どこに行くのさ?」
俺はポチをお姫様抱っこして、尻尾を軽く撫でながらバスルームへ連れて行った。
ウチのバスルームは何故か設計上、普通の住宅よりも大きい。
「ちょ、ちょっとぉ・・・・」
ちゃっちゃと服を脱いでポチの制服も剥ぎ取った。
「は、恥ずかしいよぉ・・・ユースケぇ・・・・」
「俺とするの、嫌か?」
ポチは顔を真っ赤にして瞳を潤ませる。
大きな黒目が溶けて溢れそうなほどに揺れていた。
耳は頭に張り付いて、尻尾は所在無さげに宙をさまよう。
「ズルイよ・・・ユースケは。こうやってあの雌猫のことも手篭めにしちゃったの?」
「違うさ・・・こういうことをするのはポチだけだよ。今まで煮え切らない態度でごめんな
 もう寂しい思いはさせないからさ」
すこしかがんでポチの目線にあわせ、そっと重ねるだけのキスをする。
タマとはまた違った柔らかさにくらくらする。
ポチ特有のミルクのような芳香が唇を通して伝わった。
「ん・・・ちゅ・・・・」
壁に押し付けて舌を更に深く差し入れる。
ポチは必死に俺は捕まえようとするが、俺は逃げ回って歯列を掠めたり舌の裏筋をなぞる。
「むむむむ・・・手馴れてるよぉ・・・ユースケぇ〜。こんなエッチなのどこで覚えてきたの?」
「オマエだっていつもぺろぺろやってるだろうに。続きはこっちだ」
全裸になって白い柔肌を曝しているポチを抱き上げて、常に自動給湯に設定してある浴槽に身を沈める。
すこし熱めのお湯が汗ばんだ肌に心地よく、俺の腕の中に抱かれたポチの柔らかさも加わって正に極楽だ。
お湯からぴょっこりと顔を出してふらふらゆれている尻尾が可愛らしい。
「ねぇ〜ユースケ〜続き、して・・・」
くるりと体を反転させて、柔らかい体をたっぷりと押し付けてくる。
小柄なポチは湯船で胡坐を掻いた俺の隙間にぴったりと埋まる。
風呂の熱と、お互いの体から発せられる熱。
このまま溶けていきそうだった。
122 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/02(水) 23:56:59 ID:2+VJ5WiV

髪を撫でてやりながら再び口付ける。背中に腕を回してポチの感触を掌で味わう。
逆の手は程よい肉感の太ももへ。タマほどの美脚ではないが、犬人特有の良質な筋肉が心地よい。
そして何よりも俺を狂わせるのは肌のすべらかさ。
黒い尻尾の色と映えてなんとも官能的だ。
唇から徐々に下降して首筋を攻める。普段からここを撫でてやると喜ぶので徹底的に攻める。
吸い、這わせ、押し付ける。絹のような肌に幾重にも桜色の痕を刻みつけた。
「そんなに強くしたら、あとついちゃうよぉ・・・」
「ポチは俺のモノなんだろ・・・・?」
「そ、そうだけどぉ・・・・あ、ふぅ・・・・ああ・・・・やっぱりユースケはズルいや・・・」
ガクリと俺に体を預けてくるポチ。顔は官能と恥辱に染まり、なんともいえない色っぽさを発している。
普段の快活さと相まって、どこか背徳的な魅力すら宿している。
「ん・・・ちゅ・・・じゅ・・・・ちゅ・・・」
舌を深く差し込んで、ポチの咥内を十分に満喫する。小さな咥内にそぐわない長い舌が、俺に絡み付いて離さない。
「あ、はぁ・・・・うぅん・・・・ひゃあ」
鎖骨に顔をうずめ、肉感たっぷりの双丘を両手でこね回してみる。
吸い付くような肌に千切れてしまいそうなほど柔らかい肉。頂点の小さな突起はこれ以上ないほどに充血し、信じられないほど敏感に反応した。
「や、やっぱり、ユースケはエッチだ・・・」
「ならやめるか?」
ぱっと両手を離し、俺の首筋に蛇のように絡みつくポチの腕を引き剥がそうとする。
「ダメ・・・・・・・・ちゃんと最後まで」
おふざけ半分でしてみたのだが、物凄く低い唸り声に阻まれた。
「あの泥棒猫には絶対負けないから・・・・ちゃんとボクの中にもユースケのが欲しい。ボクもユースケを気持ちよくさせるから・・・・」
「わ、わかったよ・・・」
据わった瞳で睨みつけられると、気づけば形勢逆転している。
浴槽の端に押さえつけられるように立たされ、カチコチに硬化した愚息の根元を握られる。
獣であったころの名残である肉球に挟み込まれるように扱かれ、先端をじらすように舌で突付かれた。
細い電流になって快感が駆け抜けていく。
オマエこそどこでこんなの覚えてきた?まさか別の男で練習したのか?
「バカ・・・ボクがユースケ以外のオスに興味を持つわけないでしょ」
尿道に舌を差し入れられる。矢張り普段からの習性か、舌使いは抜群に巧い。
緩急をつけた愛撫と、流れ込む血液の量を統制するような指先の動きに今にも爆発寸前だ。
「・・・じゅる・・・・ぷちゅ・・・ぷっ・・・・ちゅ・・・・」
口に大量の唾液を含ませてのオーラルセックス。
脳が快楽の情報許容量を飛び越え、スパークを起こす。
ぶちゅぶちゅと卑猥な音と、完璧に統制された快感が俺を追い詰めていく。
「じゅ、ずず・・・」
長い舌を巻きつかせるように絡め、唾液の膜の上を蛇のように這いまわる。管を握りこんで膨張させ、今度は根元から持っていかれそうなほどに強く吸う。
先ほどからあふれているだろう先走りを、すべて腹に収めんばかりの吸引力。
くぼんだ頬と、染まった目元が痴態に華を添えている。
形骸化したリズムとは違う。犬人特有の本能が働いているかのように、野性的で、情熱的な愛撫。
それに技巧が乗っかっている。正直気持ちよすぎる。
「ゆ、ユースケ、ちゅぷ・・・、どう?、んふ・・・、泥棒猫より、ん・・・、いい?」
どうにかなってしまうそうだ。
括約筋を総動員して耐えるものの、自分のものとは思えないほど膨張した我が子はもはや限界に達していた。
123 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/02(水) 23:57:39 ID:2+VJ5WiV

「ポチ・・・ヤバイ・・・・そろそろ・・・・」
「ん・・・、ちゅ・・・、じゅじゅ・・・、ボクの・・、ぶじゅ・・、口に・・・、ちゅ・・・、出して・・・、じゅぶ・・、いいよ・・・」
ポチは聖母のように微笑むと、根元に込めていた力を一気に抜いた。
そしてこれまでで一番の力で吸い上げる。
「ずぷぷぷぷ・・・」
腹の奥から持っていかれそうな快感。脊髄と脳幹、脳髄ごと吸い込まれそうな圧倒的な快楽。
どくどくと血液が海綿体に集中し最後にふた周りほど愚息が膨張するのを思考の端っこに捕らえたあと、噴火するように熱いものが流れ込んでいく。
びゅくーー、びゅ、ぶびゅ・・・・びゅ・・・
「あぶっ、んぷぅう、うむっ、ぶぷー・・・・」
濁流のように押し寄せる迸りを、上目遣いを固定したまま必死で嚥下している。
視線が俺に訴えている。他のメスには負けない、と。
「んっ、ぶっ、む・・・・」
喉に絡みついて呼吸がきつくなっているのだろうか、白い肌は満遍なくピンクに染まっている。
それでもあふれた精液が口の端からあふれ、ねっとりと糸を引く。
顎に手を添えて波堤をつくり、たまった白濁液をまたゆっくりとすする。
口元にこびりついた分を長い舌で舐めとると、信じられないほどの妖艶さで甘く微笑んだ。
「・・・いっぱいだしてくれて嬉しいよ、ユースケ・・・」
風呂の熱気と、マグマのように律動する心臓。
昂ぶった体温はまだ静まりそうもない・・・
124 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/03(木) 00:00:25 ID:2+VJ5WiV

長々と失礼いたしました。
次で最終話です。
スウィッチブレイドを待っていただいている方、本当に感謝です。作者冥利につきます。
順調に進んでいますので、八月中には必ず投下させていただきます。
125名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 00:01:17 ID:jw8INTHt
リアルタイムGJ!!
126名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 00:11:48 ID:EmKK0373
なんてエロい雌犬なんだ、けしからん!実にけしからん(*´Д`)ハァハァ
127名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 00:17:27 ID:VRy1ywy/
ぽちかわいいよぽち
スウィッチにも超絶期待してます。
作者さんGJでした
128名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 00:23:19 ID:cqeOG2Dq
ユースケくん・・・?
ユースケくん!!!!!???
129名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 00:25:40 ID:3IItEivj
もう次で終わっちゃうの・・・・・・
エロエロシリーズはとらとらとかがあるが作品が少ないのでもっと堪能したかった。

とにかくGJ

130名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 01:30:40 ID:STNfl6Hq
>>124
いやぁ、エロくて( ・∀・)イイ!
あとユースケ君のクズっぷりもなかなかw
まだまだ続きを読みたいんだけど、正直次が最後なんて言わないで欲しい…
131名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 01:50:13 ID:sM0w0SPr
>>111
|ω・`) タイミングの問題かと、過保護投下後、次の作品が間挟まずに投下されるし
不撓家の食卓とか嫉妬じゃなくなっても人気ある(゚ー゚*)
>>124
スウィッチブレイド、のんびりと待たせていただきます(*´д`*)
それにしても犬はボクっ娘という法則にこの作品で気づいた・・・
132名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 02:02:07 ID:+oALTfK4
>>124がGJなのは言うまでもないが、
>>119の召還能力も神がかっていると打ち震えた俺。
133名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 02:11:10 ID:MDTzLGky
そろそろ本格的にモカさん分が不足してきた……。
134名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 02:14:55 ID:JXeNBr/O
俺はたぬきなべ分が足りないぜ…
135名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 02:15:53 ID:GMfV5mxx
まとめサイト更新キタコレ
忘れた展開もまとめて読めます
136名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 02:20:05 ID:STNfl6Hq
阿修羅氏おつ!
新婚生活は満喫しておりますか?
137名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 03:26:57 ID:548id41Q
俺はしゅらばとるだな
138名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 03:27:01 ID:8FY5DJ/m
>>133-134
まじでその二つは飢えてる人多いんだな…
こういう話題ある度に出てくるし
自分は沃野関連にいまだ飢えておりますが

それはそうと阿修羅氏乙です
139名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 04:12:15 ID:wVidTg5x
>>111
修羅場とは関係のない成分が多すぎるんじゃないかな
過保護も、メインキャラの3人だけで十分に成り立ちそうな話なのに、
修羅場とは無関係そうな(しかもメインキャラ3人よりもキャラ濃い)不屈とか会長とかが
でしゃばってるしな
そういうのって不撓家とかに興味がある人には嬉しいんだろうけど、
修羅場にしか興味ない人にとっては萎えるんだよ

何が言いたいかっていうと、
不撓家とかと関係のない修羅場だけに焦点をあてた作品を投下すれば、
みんなの反応も結構違うと思う
140名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 04:18:17 ID:wVidTg5x
酔った勢いで偉そうなことかいちゃったけど、
単に俺がシベリアさんのそういう話を読んでみたいってだけの話です
スレ汚しスマン
141名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 07:01:45 ID:yzvngctO
GJと一言あるだけでも次への活力になる

だから、もうちょっと多くレスを下さい。
一番きついのは無反応だから。
142『疾走』 第十九話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/03(木) 07:22:07 ID:8GXLXJyi
 思えば――。
 俺は、過剰に怖がり過ぎちゃ、いないだろうか。
 いたり先輩の……はにかんだ笑顔が脳裏を過ぎり、俺は――っ。
「じゃ、じゃあ、さっそく放課後寄って、渡しておきます」
 言った。
 そして決意を胸に。
 今日こそは、ちゃんと、いたり先輩が、『有華と俺が付き合っている』という事実を受け止めてくれるまで。
 きちんと、俺が納得させないと。
 嘘を重ねるのは――今日で最後だと、誓おう。
「あ、あのぅ、それで、生方先輩に聞きたいことが……っ」
「うんっ? なにかな」
 可愛らしく小首を傾げる生方先輩に、俺は適当な理由を吐き出す。
 まだいたり先輩のお家にお邪魔したことがないので、住所がわからない。などと。
「なので、教えてもらえませんか、すみませんけど」
「ふぅ――ん。なるほど」
 腕を組みつつ、しきりに頷きながら。
「まだ密室で二人っきりというシチュエーションには至っていない、と」
「は、……ぁ?」
 なにを仰る、生方さんよっ……?
 バシッと背中を平手で叩かれる。
「いやぁ――っ。清い、清いね、エースケくんっ。わたしは大好きだよ、誠実な男はっ!」
「はあ……ぁ、ありがとう、ございます」
 褒められてしまうことにも――罪悪感が、ちくりと。
 はあ。
 とにかく、快くいたり先輩の住所を、わざわざ地図まで書いて教えてくれた生方先輩は、元気に走り去っていった。
 家のマンションからは……結構距離があるな。
 多分帰るのはおそくなるだろう。それは覚悟しておく。
143『疾走』 第十九話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/03(木) 07:22:38 ID:8GXLXJyi
 放課後。
 友人らの誘いは即行で断わり、とにかく急いで校門を抜ける。
 有華は――よし、今日は俺が早かった。
(携帯の電源も切って……っ、と)
 有華に、何処へ向かうのかと問い質されると厄介だからな。
 理由を説明するのは、いたり先輩に納得してもらってからでも、大丈夫な……はずだ。
 うん。
 間に有華が割り込んできたら、もっと悪化がひどくなりそう、だから。
「さて」
 地図を確認する。――うん、ふにゃふにゃの線がおどっているだけだと最初は思ったけど、辛うじて理解できる。
 マンションの八階か……俺は一階だから、高いところは新鮮だな。
「あ……っ、お見舞いなんだから、なにか買っていかないと」
 馬鹿か俺は、緊張してそんなことまで忘れてしまっている。
 反省するように髪を掻き毟りながら、歩き出す。
 さて、なにがいいかな――。
144名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 07:23:18 ID:JXeNBr/O
まだそういう話し続けるのか、感想レスは乞うものじゃないでしょ
自分とノリの会わない作品に無理してでもレスして欲しいだなんて、
その、なんだ、困る
145『疾走』 第十九話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/03(木) 07:24:23 ID:8GXLXJyi
 風邪にはビタミンCがいいよ、などと言われているが……医学的にはビタミンCをはじめ、
 特定の栄養素が風邪の予防に効果があることは、実証されていなかったりする、らしい。
 だいたい今更予防して、それは無意味なのでは……と、考えなくも、なかったが。
 とりあえずキウイとか――豊富そうなやつを見繕った。
「ちゃんと飯食ってるかなあ……っ」
 ぽつりと呟く。
 ほとんど家では独りらしいし……だるくても栄養は摂取しないと。
 無意識に消化のよいレシピを思いつつ――歩いていたときだった。
 何か。
 首筋が――ぞくりと、する。
「……ぅ、んっ?」
 結構な人混み。振り返る。
 ――っ、っ!?
 俺はかけあしで――近くの本屋に飛び込んだ。自動のドアをくぐる。
 入り口に近い雑誌のコーナーで、適当なモノを手に、……しばし、それに視線を落としてから。
 透明なドアの向こうを……、上目でうかがう。
 そこには――ぁっ。
「……な、んで……っ?」




 有華が。
 きょろきょろと、首を巡らしながら……歩いていた。



146『疾走』 第十九話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/03(木) 07:25:16 ID:8GXLXJyi
 雑誌をすぐさま定位置に戻すと、奥に引っ込む。
 果物の入ったビニールの袋の音がうるさい。
 気付けば……左右の棚には、文庫の本が。
 ――ここは一番の奥。これより先には、どうやっても……抜けられない。
 と、とにかく、ビニールの袋は、鞄の中にしまって……っ?
 はあ、ぁっ?
 いや落ち着けよ、だいたいあれ、本当に有華だったか。人違いじゃ、ないのか。
 第一有華だったとして――何故俺は、本屋の奥にまで、移動しやがったっ……?
 見つかるのが……怖かったっ、か?
(なんで、だよ、ははっ)
 見つかっちゃったら、しょうがない。正直に事情を話せば、いいだけじゃないか。
 そこで、思い出す。
 例の誓いに――やたらと高圧的な、近頃の有華の態度。
(駄目だ、駄目だって)
 順風に物事を進めるためにも……俺は、とにかく、有華とばったり出くわしちゃ、いけない。
 脳味噌の奥底で……警鐘が響いてくる。
 本棚の陰から、入り口の方向をうかがってみる。――自然に、チラッと視線を……っ。
「……ぅ、あっ?」
 本屋に来ているというのに、それらには見向きもしない、少女がいた。
 歩みは真っ直ぐに。けれど視線はあちこちまどわせつつ。
 有華が――確実に、近付いて……い、る。
147『疾走』 第十九話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/03(木) 07:26:03 ID:8GXLXJyi
 おかしいなあ。
 急にエー兄の背中が見えなくなった地点には、この本屋のあたりだったから……っ、
 ここに入ったのは、確実だと思うんだけど。
 それにしても……驚いたなあ。
 あたしを待たずに――校門を走り抜けるエー兄を、見ちゃったときは、さ。
 急ぎつつ、かつ勘付かれずに追跡するの、苦労するんだからね……もぅ。
 さてと。
 さっさと首根っこ掴んで……っ、何処に、あたしに黙って何処に行こうとしてたのか、問い質さないとね。
 また、ごめんなさいって言わないとね……ふふ、エー兄ぃ。
 だって……そうでしょ。
 ――彼女のあたしをほったらかしで、他の女と会おうとしてた、なんて可能性も大いにありえるんだから。
 あたしの、心労の責任は……きちんと、償って、もらわないと。
 だから。
 出て来てよ……ね、エー兄ぃ……っ?
148『疾走』 第十九話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/03(木) 07:27:00 ID:8GXLXJyi
「は、ぁあっ……」
 盛大に、吐息を漏らす。
 本棚の死角を利用して、なんとか抜け出し、それからはほぼ全力の疾走だ。
 それにしても――間抜けだ、俺は。
 こんなことなら、怪しまれても構わないから、先に有華へ嘘の用事でも伝えておけば、よかった。
 まさか……追跡されていた、なんて。
 後ろを――黙って、背中に視線を固定しながら、歩く。
(あ、れ……っ?)
 デジャビュ。
 ――いや、いや……違うよ、違うさ、うん。
 でも俺は……有華から、逃げたんだよな……っ?
 や、やっぱり、理由はちゃんと説明するべきだったよな……畜生、俺の阿呆っ。
 しかしくやんでも……おそい。
 とにかくだ。
 もう、いたり先輩のマンションは――目前だ。
「……よ、しっ」
 ちゃんと、今日で嘘を終わらせようっ。
 それだけは達成しなければ、ならないことだ。
 ――歩き出す。




 そうして。
 阿良川瑛丞は――。




 いって、しまうのだった。



149 ◆/wR0eG5/sc :2006/08/03(木) 07:41:15 ID:8GXLXJyi
 皆様さえよろしければ、時間はかかるとは思いますが、ABC全部書かせてもらいたいと思っています。
 それで、まずは一番上のAから投下することに、しました。
 というか――まだAですら、最後まで書き終えてないんですが。
 もうしばらくお付き合いいただけたら幸いです。


 そしてまとめサイトの更新、阿修羅氏お疲れ様です。毎度ありがとうございます。
 あと画廊を見たらなにやらいたり先輩が……っ!
 お書きになって下さった神様、本当にありがとうございますっ。正直たまりません。あの濁った、目、うへへっ……。
150名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 07:44:45 ID:JXeNBr/O
話引きずってたのは俺だったね
割り込みごめんね(´・ω・`)

有華怖いよ有華
エー兄死亡フラグ立ってるよエー兄
151名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 08:30:05 ID:lvwCfuWr
有華ヤバス
152名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 08:55:41 ID:Ls2VVbb8
エー兄…
きみはわりかしいい奴だけどどこか抜けてるね
153名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 09:01:54 ID:0VTl9pd8
ここまでズルズルと修羅場を呼び込む才能はなかなかないぜ…GJ
154名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 09:11:18 ID:EmKK0373
有華素晴らしいよ有華(((( *゚Д゚)))ガクガクハァハァブルブル 
155名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 10:36:20 ID:hGkcEpzo
エー兄の葬式は何時かな・・・
出席はしないとなぁ
156名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 12:04:16 ID:kkrnEOAO
わざわざDEAD ENDになる選択肢を選んでるようにしか見えん>エー兄
157Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/03(木) 13:46:40 ID:jazga0hp

番外編『氷解する心』

 あの人と初めて出会ったのは戦場だった。
当時のあたしはまだ十三歳で戦闘には参加してなかったけど、いつも傭兵隊のみんなにくっついて行った。
三年前のフォルン村虐殺事件。その駆逐部隊の斥候から帰ってきたお父さんがあの人を連れてきた。
泣き腫らした瞳と決して手放さなかった果物ナイフ。あたしでは及びもつかないような酷い目に遭ったのは一目瞭然だ。
 彼の入隊が決まったのはそれから数日後のことだった。
今まで剣を握ったことすらない手に血豆を作りながら黙々と鍛錬をこなすその人。
あたしは興味本位で遠くからそれを眺めていた。
 変わった人だな。他の傭兵たちと馴れ合わない姿を見てあたしはそう思った。
普通の人なら「気にくわないヤツ」と煙たがっていただろうけど、なぜかあたしはそうは感じなかった。

 大人の傭兵たちに混じって修練を積む、あたしよりふたつ年上のお兄ちゃん。
終始観察していたけど、お父さん以外の人とろくに話もしていないみたい。
そのお父さんも訓練に関することしか話してないそうだ。
 部隊内で孤立しても気にせず、独りで訓練に明け暮れていた。
別にみんなが冷たいわけじゃない。あの人が拒んでいるのだ。
 最小限度の必要なことしか口にせず、他愛ない会話をしようとしても無視してその場から去ってしまう。
「取り付く島もねぇな」とお父さんは苦笑していた。
みんなとは離れた席で食事を取るお兄ちゃん。そんなあの人の様子を見ていたあたしは“可哀想”だと思った。
どうしてだか解らない。ただあの人の背中が泣いているように見えた。

 あたしだって何度も話しかけたけど。あの人にとってはあたしも他の傭兵たちと変わらないのだろう、ことごとく無視された。
それでもあたしは諦めずに根気強く話しかけた。でもやっぱり無視され続けた。
暫くそんな日々が続いた。

 今でもあまり思い出したくないけど、お兄ちゃんに酷く拒絶されたことがある。
確かあれはお兄ちゃんが剣の手入れをしていたとき。
158Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/03(木) 13:47:30 ID:jazga0hp





「ね、ね。ウィルお兄ちゃん」
 いつものようにできるだけ気さくに話しかける。

「…………」
 今日もやっぱり無視された。
お兄ちゃんはこちらを一瞥するだけで再び剣を研ぐ作業に戻った。

「大変そうだね。あ、それ、おとーさんから貰った剣?」

「…………」
 無視。黙々と剣を研いでいる。

「あ、あはは……」
……ええぃ!へこたれるな!マローネ!
 自分に渇を入れて再度挑戦。

「えっとね…お兄ちゃんってもしかしてポトフ好きなの?」

 あっ、ちらっと一瞬こっち見た。もしかして手ごたえアリ?
先日の夕食がポトフだった。その時珍しくお兄ちゃんがおかわりをしたものだから、もしやと思ったけど。

「じ、実はあたし結構料理得意なんだ。だからどんな味が好みなのか教えてくれると嬉しいなぁ」
 今度は二度こっちを見た。
よしよし。落城するまでもう少しだぞぅ。

「そうすればお兄ちゃん好みのポトフ作れるんだけど。でもお兄ちゃん何も言ってくれないし…弱ったなぁ」
 わざとらしく困った素振りで顎に指を当てた。ぴくぴくお兄ちゃんの耳が動いている。

 一瞬の沈黙。あたしとお兄ちゃん、それぞれの思惑が鎬を削る。
そして。

「――――――――――――ミルク」

「え?」
 思わず聞き返してしまった。

「昨日のは………ミルクの風味が足りなかった」

……やった!とうとうお兄ちゃんが返事した!
本当は踊りだしたくなるくらい嬉しかったけどなんとか我慢した。
159Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/03(木) 13:48:52 ID:jazga0hp

「そか、そか。お兄ちゃんはミルク風味が好きなのかー」
 再び剣の手入れを始めたお兄ちゃんの耳は真っ赤だった。
それを見ながら、あたしは気を良くしてうんうん頷く。
「なるほどねー。えへへ」
 そこで止めておけばよかった。だけどお兄ちゃんからまともな返答が聞けて、あたしは舞い上がっていた。
そのせいでお兄ちゃんに余計なことまで訊いてしまった。

「でもなんでミルクなの?あ、もしかしてお母さんの味?
まさか恋人の味〜、とか言わないよねぇ…?」

 茶化すように言ったつもりだった。今思えば配慮が足りなかったと思う。
でもその時のあたしはそこまで気が回っていなかった。


 結局、お兄ちゃんはあたしの余計な一言で雰囲気が一変した。



「……出て行ってくれ」


 いつもよりもっと冷たい声。あたしは自分の耳を疑った。

「邪魔だ、出て行け」

「え……え?」
 お兄ちゃんの急な変化にあたしは狼狽するばかりで。

「目障りだって言ってるんだッ!さっさと消えろッ!!」
 初めて聞いたお兄ちゃんの怒声。
無視されたことは今まで何度もあったけど。怒りをぶつけられたのはこれが初めてだった。

「あ……うぅ……え、と………その、あのっ――――――――――ご、ごめんなさいっ!」

 あたしは恐怖に震え、泣きながらそこから逃げ出した。
怒っているお兄ちゃんが恐かったんじゃない。
あたしがとんでもないことを仕出かして、二度とお兄ちゃんと話が出来なくなってしまったのではないか。
それが恐かった。
160Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/03(木) 13:49:52 ID:jazga0hp





 その日の出来事は流石のあたしも堪えた。
夜通し泣き続け、それ以後お兄ちゃんに話しかけるのが恐くなった。
 これは後で知ったのだけれど、お兄ちゃんがポトフ好きなのは幼馴染みの得意料理だったかららしい。
キャス――――――――お兄ちゃんの初恋の相手。彼女の作るポトフにいつも隠し味としてミルクが入っていたのだそうだ。
 今でこそなんともないけど、当時のお兄ちゃんに幼馴染みの話はご法度だった。

それからはお兄ちゃんに話しかけられない日々がしばらく続く。
ビクビクしながらお兄ちゃんと距離を置いて、遠くから眺めていた。

 そして、運命の日が来た。
お兄ちゃんの初陣。待ってる間、不安で不安でおかしくなりそうだった。
 ここでお兄ちゃんが死んでしまえば本当に二度と話せなくなる。
あれから今までお兄ちゃんを避けていたことを後悔した。
……無視されてもいい。お兄ちゃんにもっと話しかけたい。
だから、お兄ちゃんが帰ってきたらあの日のことを謝ろう。そう思った。

結果を言えば、あたしが心配する必要などどこにもなかった。
お兄ちゃんは傷ひとつ負うことなく帰ってきたのだから。お父さんの話では新兵とは思えない活躍振りだったらしい。

 ともかく、無事に帰ってきたことにあたしは安堵した。
多分今までもこれから先も、この時以上に安心したことはないだろう。

安堵のあまり、あたしは泣いて飛びついた。

「ごめっ…んなさい……ご、ごめんなさい…ごめんっ…な、さい……」
 嗚咽で声を詰まらせながら、ひたすら謝り続けた。
なんとか許してほしい一心で。だって、あたしには謝り続ける以外、他にいい方法を知らなかったから。
 その時のお兄ちゃんの顔はよく憶えていない。
頼りない記憶を掘り起こすと……少し驚いていた……ように思う。
そのまま泣き疲れて眠ってしまったので自信はないけど。
161Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/03(木) 13:50:42 ID:jazga0hp


 翌日。あたしはお詫びの意味を込めてポトフを作った。お兄ちゃんの好きなミルク風味で。
お兄ちゃんに夕食を差し出すのは凄く恐かった。恐くてたまらなかった。
今日もいつものように無視されるのだろうか。それともあの日みたいに怒号で拒絶される?
嫌な考えばかりが頭の中をぐるぐる回って逃げ出したくなった。
でも、もう後悔したくない。あたしは勇気を振り絞ってお兄ちゃんの前にお皿を置いた。

「………」
 いつもの仏頂面があたしを見つめる。

「……っ…」
 恐い。足がひとりでに震えだした。本当はお皿を置いたらさっさとお兄ちゃんから離れたかった。
でも、我慢してその場に踏ん張った。血が滲むくらい唇を噛み締めて彼の反応を窺う。

 ひとしきり見つめられた後、お兄ちゃんは黙ってポトフを食べ始めた。

―――――ああ。今日も無視されちゃったか。
 そう思ったとき。

「……マローネ」
 初めて。
お兄ちゃんがあたしの名前を呼んだ。
……聞き違いかな。信じられない気持ちでお兄ちゃんの顔を見る。そしたら。


「ありがとう。……すごく美味しい」


 柔らかい笑顔で。あたしにそう言った。


「あ―――――」
 
 お兄ちゃんがあたしにお礼を言ってくれた。
お兄ちゃんがあたしの料理を褒めてくれた。
それが、凄く嬉しくて。嬉しくて嬉しくて仕方なくて。

―――――あたしはまた、泣いてしまった。
162Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/03(木) 13:51:25 ID:jazga0hp





 あのときの笑顔は今でもあたしの宝物だ。
その日を境にお兄ちゃんは傭兵隊のみんなとも打ち解けていくようになる。
あたしにとってはそれが嬉しくもあり、残念でもあり。ちょっと複雑な気分だった。
 
 実のところ。
あたしは初めてお兄ちゃんの笑顔を見たとき、本心では独り占めしたかった。
……あたしにだけ、その笑顔を向けて欲しい。あたしとだけ、話をして欲しい。

 その想いは、お兄ちゃんと離れて暮らすことになって急速に膨らんでいった。


だから。あたしは―――――――――。
163Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/03(木) 13:53:34 ID:jazga0hp
ただいま。
久しぶりなのに恐縮ですが番外編になります。
本編ではすぐに黒化してしまい、こういう話も入れとくべきだったと今になって反省。

(チラシ)
作中、やたらとポトフが出てきますが実は食べたことありません。
164名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 13:54:44 ID:3IItEivj
GJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ!!!

165名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 13:58:59 ID:qC7a8php
お久しぶりGJ!相変わらず読みやすい文章ですね。


隠し味ミルクと聞いて、
少しでも脳内に精液が出てきた俺は死ぬべきだと思うんだ(´・ω・`)
166名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 14:30:27 ID:Ls2VVbb8
このヘンタイ( ´∀`)σ)Д`)
167名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 14:37:11 ID:yKBERGTm
    ⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒ヽ ⊂゙⌒゙、∩
キタ━ __乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__ノ  ⊂(。A。)━!!!

    ⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒ヽ ⊂゙⌒゙、∩
キタ━ __乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__ノ  ⊂(。A。)━!!!

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168『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/03(木) 15:50:42 ID:9WUDbAv8
「ほらほら!志穂!キノコキノコ!みろよー、エロいよなー。形がまるで……ぶっ!」
試合時間十秒足らず。神速の右で静められる。スーパーの野菜売り場になだれ込むように倒れる俺。放置する志穂。イヤン、きっちくー!
「ヒソヒソ…また来ましたよ、あの二人…」
「ヒソヒソ…まったく、来る度に商品棚を押し倒していくのはやめてほしい……」
店員と店長のヒソヒソ声を目覚ましのようにしてカボチャ達に囲まれて意識を覚醒させる。ははっ、まいったなぁ、みんなの注目浴びてるよ、俺。
「見られると、体が熱くなっ……てててて!!!!耳ひっぱんな、志穂!」
つい先週買ったエロゲーの名台詞(?)を決めようとしたら、志穂に阻止された。余談だが、恋人がいてもエロゲやエロ本を欲するのは男のDNAに刻まれているのだろうか。
買っても三日足らずで志穂のスキャンに引っ掛かってしまい、塵と化してしまう。まぁ、本屋のおっちゃんに顔馴染みで安くしてもらってんだけどねー。
会計を済ましている間でも、しっかり手を繋いでいる志穂は正直Cawaii!と思う。人がいなければ力の限り抱き締めんばかりだ。
169『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/03(木) 15:52:19 ID:9WUDbAv8
ピッ……ピッ……
ふと気付くと、レジを打っている店員さんがバリバリの顔黒(死語)だ。今時珍しい。学生……だとしたら俺達と同い年だろうか。
レッドアニマルかと思っていたが、珍しや。しかもピアスまで。そんな店員さんの目線が、ふと俺達の手元………つまり繋いでいるところにいく。
その瞬間…
(チッ……真夏にベタベタしてんじゃねーよ、暑苦しい。)
とでもいいたそうな顔になった。ふふん、この晋也、人の顔色を伺うのは天下一。………なんせ隣りには我が儘ちゃんがいるからネ。大変な訳さ。
そんな事を考えながらレジ打ちを見ていると…………
ギュウーーーーッ!!ゴキッ!
「ahch!」
嫌な音とともに、手首の関節が外れていた。
「ま、曲がってるよ!し、志穂ぉ?!なにやって………」
「ふん!はい、二千円!お釣はいりません!!」
顔黒に二千円を払ってから、本当にお釣をもらわないまま行ってしまった。レジの子もポカーンとした顔のままであった。
「お、おい!志穂!?なんなんだ?なに怒ってんだ?」
志穂を追いかけようとして……
「あ、お釣はもらうヨ。」
170『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/03(木) 15:53:49 ID:9WUDbAv8
スーパーを出ると、すでに志穂は一人で歩いていってしまった。そのオーラ、魔王がごとし。おお!人波が勝手に分かれて道が出来ておりまする!
「ってモーゼじゃあるまいし。」
その波が戻る前に、志穂の後ろを追っかける。
「おーい、志っ穂ちゃん!なーに怒ってんだヨ?」
「知らない!」
「し、知らないって……」
「晋也なんて、スーパーで働いて一生でれでれしてればいいのよ!さっきの店員さんと仲良くしてれば?」
はぁーん。そういうことか。まったく、別にでれでれしてたわけじゃない。物珍しくて見てただけだっつーの(失礼ナリ)
「違う、違う。あんな顔黒はお断りさ。」
「じゃあどうしてじーっと見てたのよ………」
「いや、ほら。だって顔黒だよ?今時だよ?あの子も、その子も、あっちの子も。みんな普通じゃないか。」
そう言いながら適当な女の子を指差す。
「最後はオバサン………」
「ば、馬鹿もん!オバサンだって立派なレディだ!」
まぁ、典型的なチリチリパーマだったわけだが………
「と、とにかく!オイラは顔黒になんかキョーミ無いの!」
171『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/03(木) 15:54:43 ID:9WUDbAv8
「本当……?」
「ほ、ホントだ。俺はお前のように白雪が如く肌が好きなんだ……」
「肌、が?」
「いや、お、おまえが………」
そんなうれしはずかしなことを人々が行き交う通りのど真ん中でしていると……天罰は下るものだ。
「せぇ〜〜〜ん〜〜〜〜〜ぱぁ〜〜〜い!!!」
フッ
暗転?……否、顔が地面にめり込んでいたのだ。後頭部に響く痛み、「晋也?晋也!?」と志穂が心配してくれる声。嗚呼、あいされてますなぁ……
ムクリ
「さて、春華よ。突然のドロップキック、どのように説明いたす?」
「はい、私が休日を優雅に過ごそうと思ったら、向こうからクリームが如く甘い空気が流れて来るではないですか。と、走って来て見たらうれしはずかしやってて腹だったので、ランニングキックを決めてみました。」
「あははは、そうかぁ!」
「おほほほ、そうです!」
「うふふふ……そぅ…」
ああ、まずい…志穂の機嫌がまた……くっ、こいつこうやって春華とふざけ合ってるだけで妬くからなぁ………3Pまでしましたが何か?
「悪い、いま志穂の機嫌がわるいんだ。」
172『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/03(木) 15:55:28 ID:9WUDbAv8
こそこそと春華に耳打ちする。
「た、確かに、目が虚ろですね。」
「ふふふ……お二人ともなかがいいのね……耳打ちするぐらいなんて……私も眼中に無いっていうの……そう…」
と、ごそごそとスーパーの袋を漁ると……
キラーン!
「この切れ味……急に試したくなったなぁ……」
「ば!おま、そこで『万能包丁』取り出すなよ!」
「せんぱい、万能っていうぐらいだから、人間もスッパリ逝きますよ、多分。」
そこでいつもみたいに乗ってくる春華よ、お前が大物になるのは俺が保証しよう。
そんなやり取りを大通りで(迷惑)していると、またもや向こうから……今度は幼稚園児ぐらいの幼女がやってくる。
ま、まさかあんな子までにフラグ立てなんて鬼畜なことはしてないよ。
が、神はいるのだとしたら、そいつこそ鬼畜というもんだろう。幼女は俺の顔を見るやいなや………
「パパッ!」
ギュウ!
乱闘のゴングは今まさに鳴らされた………
「「(晋也)(せんぱい)!!どういうこと(よ)(ですか)!!!!??」」
173『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/03(木) 15:56:48 ID:9WUDbAv8
なんとなく番外編を書きたくなって書いてみた。今は反省してる。
(´・ω・`)
174名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 16:05:03 ID:xhfV2xie
久しぶりにキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!!
175名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 16:13:32 ID:Hml9nGPQ
か…神……

神々のお出ましじゃああああぁぁぁああああああ!!!!!!!!!!

176名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 16:16:38 ID:GMfV5mxx
パパ・・・・・何これ安い
177名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 16:31:45 ID:wdyTkJtC
晋也復活って喜んでたら……隠し(?)子キター!
なんて続きが気になる終わり方なんだ!
178名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 16:35:56 ID:Ls2VVbb8
晋也ぁあああぁぁ
パパktkrえぇぇええぇ
179名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 16:51:49 ID:EmKK0373
幼女キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
フラグか!?フラグなのか!?
180名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 17:09:29 ID:sM0w0SPr
|ω・`) なんか久々な作品がいっぱい

やはり、ここに投下された作品は全て素晴らしい(*´д`*)
181名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 17:21:15 ID:GMfV5mxx
|ω・`) 二等辺はまだでぃすか
182名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 18:16:21 ID:HvqNsoXv
黄金期再来?
183名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 18:20:32 ID:JXeNBr/O
マローネキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!


この頃からキモウトの資質を持ってたのね(ノД゚ )
184名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 18:32:23 ID:IsleAmzK
帰宅したら神キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
GJです!


細かいですが誤字かな…と

>うれしはずかしやってて腹だったので、→腹たったので、
ではと思いました。

誤字じゃなかったらスマンス∩( ・ω・)∩
185名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 18:40:24 ID:n2m1PDiB
神々纏めさせていただきますがGJ!
186うじひめっ! Vol.5 ◆kZWZvdLsog :2006/08/03(木) 19:36:43 ID:mCWdkqlP
「「な、なんだってー!?」」
 尋常ならざる驚愕がもたらされ、隣で他人面していた良治まで声をハモらせて絶叫。大いに狼狽える。
 う、蛆虫が人間形態を取れるというだけで充分寝耳に水だというのに、蛆と人とで子どもがつくれるだと!?
 青天の霹靂もいいところだ! 理解の範囲を易々と突破! ありえない、限度枠超過してるだろそれ!?
「ま、そうした反応は慣れているが――」
 動揺する俺らから奇異の視線を受けても、アイヴァンホーさんは怒りも悲しみもしなかった。
 代わりに、気遣う目で斜め下を見る。
 そこに位置するものは――あ。
(う、蛆が――)
 ぷるぷると小刻みに蠕動するフォイレ。
 テレパシーとして脳に入ってくる声は噴火寸前のご様子。
(蛆が人間と愛し合って子どもをつくることがそんなにお嫌なんですのッッッ!?)
 鼓膜が痺れる――そんな錯覚を味わった。
「げぇっ!?」
 思わず両手で耳を塞ぐ。無駄だった。そんなもので憤怒に焦げつくフォイレの責め苦を遮断することなど叶わない。
(なんですの!? 人間そんなに偉いんですの!? 蛆ってそんなに穢らわしいですの!? ふ、ふざけてますわ!
いくらなんでも怒りますわよ私!? 愛に貴賎などありませんわ! これだけは断固主張させていただきます!)
 今にも湯気が立ちそうな、白い蛆の肌をしたフォイレが真っ赤に染まりそうな、激甚たる叱責の波動に
我々は為す術もなく身を縮こまらせた。
 その後もフォイレの説教は長々と続き、「そろそろ両親が帰ってくると思うんで、続きは俺の部屋で……」と
場所変更しても終わる気配がなく、昼飯の時間になるまでたっぷりと聞かされた。

 ぐったりしながら午後が始まった。窓から差し込む灼熱の日差しは殺したいほど憎かった。
 扇風機を回し、なけなしの涼風を良治と奪い合う。このクソ暑さにアイヴァンホーさんは汗一つかかず
平然と佇んでいて、フォイレは本棚と本棚の間の陰所に身を収めて怒りの熱をクールダウンさせていた。
(ふう……まだ言い足りない気分ですの)
 恐ろしいことをおっしゃる。
「しかし、姫様が『助けてもらった人間にお礼がしたい』とおっしゃるので、言われるままダンボールに貼るための
小包ラベルを記入して差し上げましたが……まさかあの中にご自身をお入れになるとは予想しておりませんで」
 首を振り、さらさらのボブカットヘアーを揺らしながら述懐するアイヴァンホーさん。
 口ぶりから苦労が忍ばれた。つまり、フォイレは仲間にも黙って俺ん家に来てたのか。
 人間化して箱に入ってたのは、蛆のままだと気味悪がられて外に捨てられたりトイレに流されたりといった
はめに陥りそうだったからだろうが――もし両親が受け取って、ふたりの見ている前で開封していたら、それは
もうエラいことになっていただろうな。想像だけでも頭痛がしてきた。さっきの激怒テレパシーの余韻もあるが。
 冷蔵庫からかっぱらってきたカルピスを飲み飲み、アイヴァンホーさんに声を掛ける。
「じゃあ、無事に見つかったってことで。連れ戻して行かれるんですよね?」
 ドタバタしていろいろ驚かされたり投げ飛ばされたりしたけど、これでやっと蛆の世界とは無関係な日常に
戻れるんだ、と安心しきっていた俺に、仮面の侍従は告げた。
「――それはならん」
 苦りきった口調。本心ではない。それゆえに、覆すことができぬと重く響いてくる言葉。
 ちりーん、と。窓の外で室内の茹だる暑さを無視した風鈴が涼しく鳴った。
187うじひめっ! Vol.5 ◆kZWZvdLsog :2006/08/03(木) 19:39:50 ID:mCWdkqlP
「畏くも蛆界の王女にあらせられる姫様が、命を救われた相手に何の恩も返さず済ませるなど、下々に示しがつかぬ」
 苦渋に満ちた唸り。なにやらひどく時代錯誤なことを言われてる気がするのは、俺の気のせいだろうか?
(その通りです。だから何でもバンバンおっしゃってください)
 勝手に抜け出してきたお姫様は、本来引き止めるべきお目付け役を味方に回せた安堵からか、自信に溢れていた。
「王族の恩とは重いものだ。たとえ国を傾けてでも返さねば誉れとされない。蛆界の掟ゆえ半人半蛆のわたしは
尚更これを遵守しなくてはならん。可能ならば今すぐにでも姫様を摘んで帰途に就きたいところなんだが……」
 無念そうに日陰で寛ぐフォイレを眺めやっていた。
 よく分からんが、アイヴァンホーさんもアイヴァンホーさんで微妙な立場らしい。
 それを把握したところで、事態はさして進展する道理もなかったが。
(私だけではうまくご恩をお返しできそうにありませんし、アイヴァンホーにも手伝っていただきますね)
「無論のことです。正直に申しましても、難事を早く終わらせたいものですから助力は拒みません」
 あれよあれよという間に俺の意向を無視して協力戦線が着々と築かれていった。
 所在なく、シャツをぱたぱたさせて腹に風を送り込んだ。
 良治はせっかくの無修正エロDVDが、フォイレとアイヴァンホーさんの存在が気に咎めて見れないでいるのを
密かに悔しがっている。しきりに顎をしごくのは、こいつがエロスの養分を欲しているときの癖だ。
「それで、何をやったら満足してあんた方は帰ってくれると言うんですかね」
 疲れて遠回しな言い方をするのも面倒になってきた俺は直球で訊ねる。
(一番手っ取り早いのは、体で――)
「却下」
「なりません」
 俺と仮面侍従が口を揃えて押し留める。心なしか蛆はしょぼーんとした様子になった。
(私みたいな幼い体つきはお嫌ですか……?)
 そういう問題ではないんだが、本音を言うとさっきみたいに荒れそうだからやめとこう。
 テキトーに話を合わせておくことにした。真剣な顔つきで頷いてみせる。
「うん、俺、おっぱいスキーだから」
「うわっ! 婦女子の前で性癖を自己暴露する和彦ってばだいたーん! つか大胆すぎてキモッ!」
「混ぜっ返すなてめえは」
 手近なビームサーベル(丸めたポスター)で「モッ」と発音した瞬間の顔面を叩く。
 もともと歪んでいる顔が更に歪んで悲惨なことになったが俺は気にしない。
(では、参考にアイヴァンホーはどうです?)
 訊かれて反射的に観察の目を伸ばす。
 顔――は仮面があるせいで分からん。髪がさらさらして美人っぽいが、俺の脳みそは髪に惹かれて
騙されたエロビデオの記憶が氾濫している。安易には信用できない。
 スタイルは全体的にほっそりした感じで手足が長い。半分だけとはいえ蛆とは思えなかった。
 くびれた腰つきにはちょっとドキドキ。尻もエロそうで、却って直視しがたい。童貞の心理は複雑だ。
 胸は、巨乳というほどではないにしても明確に膨らんでいる。C? いや、着痩せ補正を加えてDか?
「け、結構なお手前で……」
 面と向かって誉めるのが気恥ずかしくて変な表現が口を突いて出た。
「―――」
 アイヴァンホーさんは何もいわず、静かに蔑むような、冷ややかな視線で応えた。
 身の置き所がないプレッシャーを覚えるが、妙に心地良くもあって、少し間違えるとMに目覚めそう。
 そうやってもじもじしている俺に。
(ならアイヴァンホーで構わない、ということで――なさいませ)
 蛆虫の姫様はとんでもないことを仰せつかった。
188 ◆kZWZvdLsog :2006/08/03(木) 19:42:05 ID:mCWdkqlP
特に前触れもなく主人公に貞操の危機が。

神々が多いのでこんな色物も安心して連載できます。感謝。
189名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 20:45:38 ID:XsKAHo5K
色物でもいいじゃない
にんげんだもの
            320
190名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 20:56:32 ID:GMfV5mxx
|ω・`)   アイヴァンホーのがモエス
191名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 21:01:19 ID:JXeNBr/O
珍味キター(゚∀゚)
192名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 21:02:51 ID:sM0w0SPr
|ω・`) 姫・・・カワイス・・・蛆と分かっているのに!分かっているはずなのに!

変な門が開いた悪寒
193名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 21:04:17 ID:EmKK0373
俺も変な属性に目覚めさせられた予感
194名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 21:28:35 ID:Ls2VVbb8
スレ住人に蛆属性が備わりました








やったね!(´∀`)
195名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 21:33:38 ID:35sFJqxR
ケアルでダメージ喰らいそうだな
196名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 21:33:42 ID:0VTl9pd8
これほどまでに蛆を萌えキャラに出来るとは…恐るべし
197名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 21:39:09 ID:PcmKFL0A
>>111
登場人物が把握しきれないうちに次から次へと増え、主要人物の名も埋もれ投げるが俺のパターン
198しっとな日々 その2  ◆xvhaSPKbVw :2006/08/03(木) 21:40:42 ID:ZFR9900y
Mission1、ターゲットを捕捉せよ

いまだ昼休みの廊下を駆け抜け、和磨の在籍している教室前へと到達する。
いや、ぶっちゃけ自分のクラスなんだけどね。
「それで、告白した女の情報は?」
「うん、同じクラスの綾瀬 光っていう雌豚だよ」
ナチュラルに口悪いわね美星。まぁもう慣れたけどさ。
それにしても…
「綾瀬か…強敵ね」
そう、この上なく強敵なのだ、綾瀬 光という女は。
今時珍しい大和撫子を地で行く才女。
温室育ちのお嬢様って言葉がよく似合うのだこれが。
おまけにマイペースでボケボケ。
ある意味メイン張れるヒロインタイプね。
「で、どうする月夜、やっぱり机の中に生ゴミ入れて、階段突き落とした後全力での踏みつけが理想かな?」
「だから周囲にまで影響ある嫌がらせの後に殺すなっての」
全く、殺るなら完全犯罪を目指さないと。
そう、それも惨めで悲惨で最高に残虐な死に方を…
あれ、結局同じかあたし?むしろ酷い?
「つ、月夜、大変大変っ」
「あによ?……って、なんじゃありゃぁっ!」
教室の後ろの扉から中を覗き込むと、そこには――――

「不動くん、美味しいですか?」
「ん」
「良かった、このから揚げも自信作なんですよ?」
「ん」

――――バカップルオーラ全開の二人が居た。

「……………………」
「美星美星、無言でカイザーナックル装備しない」
「なによ、そう言う月夜だってナイフ出してるじゃない」
おっといけない、一応学校だってこと忘れてたわ。
まぁドンマイ私、あんな光景見せられれば誰だってこうなるわよね。
現に、クラスに居る男子が殺意の視線で和磨睨んでるし。
でも流石だ和磨、全く動じてない。その苗字は伊達じゃないんだね。
「えぇい憎々しい憎々しい、和磨君に手作り弁当だなんて…私も食べて欲しいのに、むしろ私が食われたいみたいな?」
「カニバリズムじゃないっての和磨は」
まぁ、私も食われたいけど。むしろ食べちゃいたいみたいな。
おっと、想像して少々濡れてしまった。
でも大丈夫、多い日でも安心ですから。
「で、とりあえずどうする?」
「そうだね、もう昼休みも終わるし、放課後までに各々で対策考えよう」
いまだにあの和磨が告白にOK出したことが信じられないが、和磨とイチャイチャしているあの女は許せない。
なので、ちょいと痛い目に遭ってもらうことにしました、えぇ決定ですとも。

和磨と親しくしていいのは、あたしと美星だけって決まってるんだから…さ。


199名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 22:36:02 ID:cAvIFrjB
GJ!
良い感じに壊れてるwwww



とらとらマダー?
今までコンスタントに投下してくれてたから
何か気になってきた
200名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 22:46:53 ID:+QpFeTR5
物乞いしない!
201Pet☆Hot☆High-School!! ◆pmLYRh7rmU :2006/08/03(木) 23:15:49 ID:gomqx4ud
阿修羅様素晴らしいタイトルありがとうございます&更新作業お疲れ様です。
色々手間をかけさせて申し訳ありません。
最終話行かせていただきます。

5匹目

「んふぅ・・・ユースケぇ、今度はこっちに頂戴・・・・」
熱に冒された瞳のまま、ポチは俺の指を秘所に導いた。
風呂のお湯の中でもはっきりと解る。湯よりも熱いとろみが、幼い秘裂をふやかしていた。
軽く指を差し入れてみると、狭い入り口から万力のように締め付けてくる。
間接をまげてこすってやると、ポチは弾かれたように反応する。
「あひゃっ!」
肩を優しく撫でて、更に深く指を進入させる。すると、細かな襞が意思を持つように蠢いた。
「はわん!ふ、ふひーっ・・・」
ゆっくりと指を上下させる。かき混ぜるように角度を変え、引っかくように擦り上げる。
「あ、あひゃ・・・んあ、は・・ぁ・・・・」
もう限界だった。すこしのアクションに大きすぎるリアクション。
思わずポチを洗い場に抱き上げ、浴槽の縁に足を掛けさせた。
自分は膝で立ち、ポチのものが良く見えるようにする。
ポチの顔に羞恥の赤みが急激に加速して、調子にのった俺は腕を上下させるようにして指の平で天井を刺激していく。
ずじゅ、ぶじゅ、ぷっ・・・くちゅぅ・・・・
湿った水温が風呂場に響き渡る。淫猥だ。これ以上ないほどに男の性を駆り立てる擬音。
「ア・・・・あ・・・・あ・・・・アァーー」
くちゅくちゅくちゅくちゅーーっ!!
ポチの痙攣が大きくなっていく。
本人は口から長い舌をだらしなく下げ、虚ろな瞳で俺を見つめている。
黒い瞳は官能しか宿していない。
かすかな細い息は熱く、甘い。
「はぁ、アア・・・・、ふひっ、ん・・・・ハァハァ・・・・ユースケ、ユースケ、ユースケっ!!!
 だめ、おかしくなる、おかしくなっちゃうよっ・・・」
ポチの震えは体全体で押さえなければ暴れだしてしまいそうなほどになっていた。
腰に反対に腕を巻きつけ、開脚させたポチの太股に自らの膝を割り込ませるようにして安定させる。
がく、がく、がく・・・とポチが一番弱い部分を擦るたびに、ポチは壊れたみたいにぶんぶんと首を振った。
尻尾は快楽が伝わるたびに跳ね上がり、ポチの感覚を理解するのに一役買っている。
そこであえて、尻尾とはずれたタイミングで指を動かしてみた。
「ふひっ??アッ、あ・・・あ゛あ゛あ゛・・・・・わ・・・」
指の動きにあわせて体をコントロールすることによって、感覚の暴走を食い止めていたのだろう。
しかしそのタイミングを外すことによって、ポチが何とか押さえ込んでいた箍はあっさりと外れた。
俺はその機会を逃すまいと、膣内を傷つけないように静かに、かつ激しく腕をストロークしていく。
くちくちくちくち・・・・くちゅ、くちゅ、くちゅ・・・・
ずっ、ぐちゅ、くちゅ・・・
「わわ、もう、だめ、壊れちゃうーーーーーっ!!」
ずちゅ、くちゅ・・・
「あはっ、ユーズケ、ゆる゛じで、もう、だめ・・・・」
くちゅくちゅくちゅくちゅくちゅ、ずちゅっ・・・・!!!
天井の突起が密集した部分を、最後に強く押し込むように擦り上げる。
「ふひゃん、あわっ、きゃわん、あわアアアアアアアアアっ!!!」
声にならない悲鳴を上げて、ポチは大量の潮を噴き出した。
熱い迸りがシャワーとなって俺に降りかかる。
さらさらとした粘性の無い液体。尿とも似た香りがするが、また違う。
俺は掌でそれをもてあそび、ポチの内股に擦り付けるようにして感触を味わう。
「あひっ、ふふぅーーーーっ・・・・壊されちゃった、ユースケに、こわされちゃった・・・」
ポチは肩で息をして未だ全身を駆けている快楽の余韻に浸りながら、俺の顔面を汚した自分自身の迸りを丁寧に舐めている。
焦点の合っていない瞳に快楽の渦に飲まれた理性。
いつも俺の隣にいる少女は、熱に毒された淫蕩な女神になっていた。



202Pet☆Hot☆High-School!! ◆pmLYRh7rmU :2006/08/03(木) 23:16:43 ID:gomqx4ud

「まだまだこれからだぞ、ポチ」
「ふわっ、ユ、ユースケっ?」
「我慢できなくなった」
短く告げて、ポチを洗い場に四つんばいにさせる。
腕を地面に着かせ、足はピンと張らせてからポチの秘唇にペニスをあてがった。
「ひゃ、ひゃあ・・・・こんな恰好、恥ずかしいよぉ・・・」
「後ろからのほうが落ち着くんだろ?それにこっちのほうがポチの全部が見えて、いい」
48手では碁盤攻め、一般には立ちバックの形だ。
野性的かつ、本能的。
それにポチが一番落ち着くって言ったしな。
「挿れるぞ・・・」
手を這わせて尻の感触を味わい、アストロンしたモノで柔肉を引き裂いていく。
指でも味わったが、狭い、熱い、きつい。それに愛液のぬめりが加わって、自然と腰が動いてしまう。
ずずずずず・・・熱い粘性の海にゆっくりと沈めていく。
タマのも相当のきつさだったが、ポチのもすごい。
しかし十分に前戯をおこなったために、俺のモノをすべて飲み込めるほどになっていた。
「あひっ、あああああつ・・・・」
カリ首で引っかくように千の襞を味わう。
意思とは無関係に動く腰と、俺の勢いを受け止めてぷるぷると弾けるポチの尻。
小さな体は俺の動きと一緒に律動し、ぱちんぱちんと弾ける音が俺の劣情に火を注ぐ。
ペニスの角度を変えて、天井をこすり、上からつきこむようにして、床の襞が密集している地域を攻める。
「あん、は、あひっ、はわっ、きゅむっ」
息子の形に開発されていく膣内。動くたびに締め付ける強さは増し、ぬめりは粘度を増していく。
じゅぷ、じゅぷ、ずぽ、と泥を棒切れでかき回すような卑猥な音。
あり得ないほど固まっている俺自身。もはやどこまでが俺の体なのか、快楽に溺れて判別がつかなくなっている。
従順に俺の攻めを受け入れ文字通り犬のように鳴くポチに、ただひたすら鉄の杭となったモノを打ち込んでいく。
「はわん、うわん、ふひっ、あぁああ、きゅん」
先祖がえりしたような鳴き声を上げるポチ。
尻肉が震えるたびにイロイロな液が混ざり合った水音が弾ける。
脳はもうぐちゃぐちゃだ。
おかしくなっている。
俺もただ、猿となって腰を振っている。
ポチは犬になってソレを受け入れる。
何かが、おかしい。
狂っている。
しかし、気持ちがいい。
「わん、わん、ふぁん、うう、わん!」
甲高いポチの悲鳴。時折膣の締め付けが強くなり、伸ばした足が痙攣している。
それでも俺は止まらない。ひょっとしたらポチがそうしているように俺も何度も果てているのかもしれない。
そうすればあふれてくるこの液体にも説明がつく。
あぁ、もうどうでもいいじゃないか、気持ちがよければ。
ポチと一つになってしまえば。
あぁ、ソレがいい。
全部、混ざり合ってしまえ。
最後に思考が明滅し白い濁流が攻め寄せたと思うと、全身から何かがポチに流れ込んでいった。
壮絶な快楽が俺を塗りつぶしていくと、自然に電源が切れた。

「・・・ゆ・・・・・す・・・・け・・・・・ぼ・・・・の・・・・・モノ・・・・・・・よ」

203Pet☆Hot☆High-School!! ◆pmLYRh7rmU :2006/08/03(木) 23:18:06 ID:gomqx4ud

目覚めると、ベッドの上でポチと二人だった。
誰が俺をここまで運んだには定かではないが時間は待ってくれないようで、窓からは朝日が差しこんでいる。
急いで壁の時計をチェックすると、七時半。
水曜日は朝礼がある日。八時二十分に滑り込めばぎりぎりセーフだった。
「ポチ、おい、起きろ!!」
俺の左腕を枕にし、絡みつくようにしているポチ。白いシーツを剥ぎ取ると、抜けるような白衣の肌。
昨日の光景がフラッシュバックする。
最後は滅茶苦茶にしちまったけど・・・ダイジョウブか??
「ポチ!!!」
「あ・・・・うん・・・・もう飲めないよ、ユースケの・・・・」
何を飲もうとしているのかはこの際不問にしよう。
俺は強くポチを揺さぶった。
「ひゃわん!!!ユ、ユースケ?もう朝っ??」
「七時半だ。今から速攻で着替えて猛ダッシュすればギリギリ朝礼には間に合うぞ」
「ボ、ボクが寝坊なんて・・・・一生の不覚ッ・・・・でも急ぐよっ!!」
この世の終わりみたいな顔をすると、ポチは竜巻みたいに着替え始めた。
朝の日差しに照らされた眩しいポチの裸身。白磁には、赤いキスマークの跡が生々しく刻まれている。
俺がポケーっとそれを眺めていると
「もう、ユースケにしてもらったんだからっ、責任とってよ!!」
頬を染めながらの極上の笑顔で返されてしまった。
俺もそれに微笑み返し、若干筋肉2の体にワイシャツを羽織った。

さて、ここまでは穏やかな朝の光景。
俺を引っ張るように全力疾走するポチ。
それに全力で引きずられる俺。
二回に一回しか地面に足が着いていなかったりしたが、それはファンタジーだ。
忘れよう。
全力疾走の甲斐があってか、なんと五分前に学校に到着した。
校門の前にはたくさんの生徒たち。
俺は肩で息をしながら、ポチに腕をとられていた。
結論すると、ポチとしてしまったことによって、彼女の依存と独占欲は強まった。
しかし、俺はそれでいい気がしていた。
何時もどおりこの日常が過ぎ去って、隣にポチがいるというこの平和な世界があれば。

そこにやってきたのは、長身で細長い尻尾にリボンがキュートなエンジェル・・・
タ、タマ??しかもご立腹の様子。鼻面には深く刻まれた皺、至宝の瞳は夜でもないのに炯炯とした輝きを宿している。
「それ以上ユースケさんにこびりつかないで下さる!!??彼が恐ろしい狂犬病にかかってしまいますわ!!」
「で、でたな泥棒猫!!ユースケを誑かしたことは不問にしてやろうと思ったけど、やっぱり許してやらなーいっ!!」
ふしゃーっ、ぐるるるるとお互いの臨戦態勢をとる二人。
あの、お二人さん・・・・朝礼の途中だってこと忘れてませんか?
「おほほほほ〜わたくしは体育倉庫で致してしまうという全高校生垂涎のプレイまで経験しましたわ〜」
「へ、へんだ!!ボクなんてお風呂場で頭が湯立つまで突いてもらったモンね!!」
「ふ、ふにゃーっ!!!ユースケさんはわたくしのものだといっているのに、よくも汚い真似を!!
 どんな姑息な手段でたぶらかしたんですかっ!!この狂犬わっ!!」
「誑かしてなんかないやいっ!!ユースケからケモノみたいに襲い掛かってきたモンね〜
 それにユースケのしゃぶってあげたらぷるぷる震えて喜んでたもんね〜っ!!」
あ、あの、お二人さん、そろそろやめにしませんか?その、えーっと・・・・
「ふしゃーっ!!こ、ここここの牝犬!!!よ、よくもわたくしのユースケさんにそんなまねを〜
わたくしなんてストッキング破かれたのに〜っ!!
 ゆ、ゆるさないにゃーっつ!!!」
「ようやく本性現したね!!この泥棒猫がっ!!今日こそ地獄へ落としてやるっ〜!!」
「やれるモンならやってみるにゃん!!その汚い舌、引き抜いてやるにゃん!!」
加熱していく二人。
突き刺さる生徒と教師の冷ややかな視線。
そして、俺を置いてきぼりにする二人。そんなだと・・・・
204Pet☆Hot☆High-School!! ◆pmLYRh7rmU :2006/08/03(木) 23:19:33 ID:gomqx4ud

「・・・ユウスケ。私に黙ってそんなことをしていたのか。私が教え込んだ技術は私だけのものだぞ」
ほら、この人がやってくるじゃありませんか。
何時ものようにワイシャツの裾をちょいっと引っ張って、今先輩が現れた。
眼鏡の奥のキレ長の美しい瞳は・・・・怒ってらっしゃる??

「ユウスケ、今ここで私にあの二匹にしたことをスれば不問にしてやるぞ」

あ、あの・・・・ワイシャツを握る指が白くなってますよ〜・・・あ、布がぴりぴりゆってる・・・
「「あ゛―――――――っ゛、女狐先輩!!!!」」
そこでようやく気がついたのか、二人がこっちを見て大声を上げた。

「ふむ、キミ達が争っている間にユウスケはいただいた」

ひょこっと腕を引っ張って、すたすたと速歩をはじめる。
「ちょ、ちょちょちょ、と先輩?」

「今夜はお姉さんがたっぷりと可愛がってやるぞ、ユウスケ♪」

そんな、♪をつけられても・・・
「まてーーーっ!!」「まつにゃーーん!!」

「おぉ、そうだ!!」

急停止する先輩。先輩の胸に突っ込む俺。
あいや、失念していたが先輩は着痩せするタイプだった・・・
たっぷりとしたバストに頬肉までたっぷりと埋まる。

「大切なことを忘れていたよ・・・キミはいったい誰を選ぶんだ、ユウスケ?」

そこにタイミングよく?追いついたポチとタマ。
ずいっと三人で身を寄せ、照らし合わせたように三者三様に凄む。

「そうにゃん・・・」「そうだよっ!」「ふむ・・・」

あ、あの〜っ・・・朝からこういうのやめません??
えっと、視線が痛いんですが・・・・
覚悟を決めろ、といわんばかりに擦り寄ってくる三人。
どうしてこういうときだけは都合よく足並みが揃うんでしょうか?

「「「勿論・・・・・・・・」」」

一呼吸置いて・・・

「「「選ぶのは・・・」」」


「愛しのタマだにゃん、ユーにゃん?」「飼い主のボクだよねっ、ユースケ?」「・・・・勿論キミを一人前のオスにした私だよな?ユウスケ?」

ポチ、タマ、コンの三人娘に迫られる俺。
空は抜けるように晴れている。

おぉ、ゴッド・・・今日もあなたの作りたもうた世界は平和です。

でも・・・・やっぱ誰か俺と代わりま鮮花?




205名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 23:26:58 ID:hGkcEpzo
>>204
GJです。ユースケを殺してでも俺が変わっと来客だ。誰だろう・・?

(翌日、猫か犬か狐かよく分からないが、動物に殺されている死体が一つ)


先輩のシーンも見たいな・・・・
206 ◆pmLYRh7rmU :2006/08/03(木) 23:27:25 ID:gomqx4ud
今まで見てくださった皆様。本当にありがとうございます。
意外に好評をいただき、感謝のかぎりです。
自分としても続きをやりたいのですが、
これ以上はスレの趣旨である嫉妬・三角関係・修羅場に反してしまいそうなので後々自分のサイトを作ってそこでやりたいと思っています。
スウィッチの方では張り切って底冷えするような真迫る修羅場を描きたいと思っております。

最後に、いつもながら乱筆失礼いたしました。
207名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 23:30:45 ID:CgieFhBK
GJ
下手に流血沙汰にせず、程ほどのヤキモチで済んでいたので和みました。
こういうのは好みです。
208名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 23:32:31 ID:JXeNBr/O
乙かレンゲル

ブレイドも期待してるぜ
209名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 23:37:44 ID:mC/Ot44o
たまには血で血を洗うような修羅場でなくライトな感じのもいいね。
ブレイドには期待してるんで、よろ。
210名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 23:38:14 ID:mC/Ot44o
ageスマソorz
211名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 23:42:58 ID:sM0w0SPr
懐かしの3daysのラストを思い出す3人問い詰めだぜ(*´д`*)
こういうのも良いね!
212過保護『前夜祭(前編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/03(木) 23:45:20 ID:/t5lVkS2
このお話は『過保護』本編から約二ヶ月前のお話です。
倉田健斗と黒崎栞が付き合い始めてまだ一ヶ月の頃です……



秋は学園祭の季節、それは昇龍高校に代々伝わる伝統の一つらしい。
当然今年も例外ではなく、現在僕……倉田健斗は学園祭の準備の真っ只中。
クラスの出し物は演劇に決定し、僕達は学園祭に向けて稽古を繰り返していた。
けど……これだけなら去年と同じく何の変哲も無いごく普通の学園祭として、僕の記憶の奥底に留められるだけで終わった事だろう。
だけど去年までの学園祭とは大きく異なる点が二つ。
一つは僕に念願の恋人が居る事。
もう一つは、何故か僕がその演劇の主役を演じる事になった事だ。
どちらも一つ一つは大事な事だけど、世間から見れば良くある事だと思う。
だけど僕の場合は……この二つが化学反応を起こして、決して忘れられない学園祭になったんだ。
213過保護『前夜祭(前編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/03(木) 23:46:09 ID:/t5lVkS2
ある日の昼休み、僕がいつものように黒崎先輩と昼食をとっている時だった。
ふとしたきっかけで学園祭の話題になり、そのまま出し物の話題に話が展開していった。
「先輩のクラスでは何をするんですか?」
「私か?私達は出店をすることになった」
黒崎先輩、エビフライを咥えたまま喋らないでください。行儀が悪いですよ。
「大変そうですね」
「そうでもない。私達は一応三年生だし、学園祭の直前に軽く準備をするだけでできるって理由で選ばれたようなものだから」
「先輩は何かやるんですか?」
「ウェイトレスだ。健斗も是非来てくれ、渾身の力で接客させてもらうよ」
その瞬間、脳裏にこの間のマッサージがフラッシュバックした。
あれはマッサージと言うより……整体?
黒崎先輩に悪気は無いのはわかってるんだけど……正直に言って恐怖以外の何物でもない記憶が蘇った。
「渾身の力はやめてください。行ったら全身の骨が砕かれそうで怖いです……」
そう言うと黒崎先輩はみるみる内に萎んでいって……
「そんな顔しないでくださいよ。ちゃんと行きますって」
「本当かい!?」
……すぐに復活した。
「やっぱり制服とかも着るんですか?」
「もちろんだ、期待していてほしい」
うん、それは楽しみだ。
「健斗はどうなんだ?学園祭では何をやるんだ?」
「演劇です。なんと僕が主役を任されてるんですよ」
「本当か!?それは楽しみだな」
黒崎先輩が笑顔を見せる。
僕が先輩と付き合い始めてから早一ヶ月。
それだけの期間の間に僕はこの笑顔を頻繁に見るようになった。
黒崎先輩は元々あまり笑う方じゃない、だから正確に言うのなら以前に比べて頻繁に見るようになった。
たった一ヶ月の間に、それまでの一年以上の期間に見た笑顔よりも多くの笑顔を見てきたと思う。
僕のお蔭だ……なんてうぬぼれるつもりはないけど、それでもちょっとは嬉しく感じる。
他人の事を自分の事みたいに喜べる……そんな先輩が僕は大好きだ。
……恥ずかしいから口には出せないけどね。
「しかしそれだと練習が大変だろう」
「そうですね、やっぱり放課後とかは残って練習しないといけないと思いますよ」
「そうか……それは残念だな」
僕も先輩も放課後には基本的に日本舞踊部に顔を出して、部活動が終わったら先輩に送ってもらう事になっている。
……本当は僕が先輩を送るべきなんじゃないかと思ってるんだけど、残念ながら先輩は僕の何倍も何十倍も強い。
でもしばらくはクラスを優先させる以上、放課後のひと時は大幅に減る事になるだろう。
ちなみに日本舞踊部も学園祭で演舞を行う事になっているんだけど、そっちは普段の積み重ねが試されるから今更ジタバタする人はいない。
「それなら健斗の練習が終わるまで待っていよう。せめて帰り道くらいは一緒に居たい」
「そんな……悪いですよ」
「良いんだ、私は健斗の恋人なんだぞ」
倉田先輩は一見真面目な顔で……それでも少しだけ顔を赤らめていった。
そんな言葉がちょっと嬉しかった
214過保護『前夜祭(前編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/03(木) 23:47:01 ID:/t5lVkS2
「さあ、この香油を持っていって。これを身体に塗れば一日の間炎も剣も防いでくれます」
「そうか、ありがたく頂こう」
「ねぇ……私の事愛してる?」
村風さんが顔を後数cmの所まで寄せてくる。
心臓が普段の三倍増しで高鳴る。
落ち着いて……これは演技なんだ。
だけど懇願するような村風さんの目が僕の思考を高揚させる。
「も……もちろんだとも、私と君の出会いは神によって定められていたのだ」
「愛してるって……言って」
村風さんがそっと目を閉じる。
けっこう美人なんだな……って、何を考えてるんだ。
次の台詞は……
「愛している……メディア……」
何度言ってもこの台詞は慣れない、そしてギリギリまで接近してくる村風さんにも。
そして舞台が暗転するまで村風さんを抱きしめる。
本当は監督からキスを要求されてたんだけど、抱擁で妥協してもらった。
ところで村風さん、なんでそんなに嬉しそうな顔をするんですか?演技ですよね?
「もう良いわよ」
本番と違い照明が無いので、村風さんの合図で身体を離した
「健斗君、監督兼脚本家からも言われたと思うけどイアソンは真正のジゴロなのよ。
顔を近づけた時にうろたえすぎ、それに愛してるって言うまで間が空きすぎよ」
急に村風さんの雰囲気がガラッと変わる。
うん、やっぱり演技だったんだ。
そう思うと少しは気が楽になる。
「……聞いてるの?」
「あっ、ごめん」
……いけない、完全に他の事を考えてた。
「どうして他のシーンは普通に演じれるのに、私とのシーンだけはいつまで経ってもぎこちないのかしら……」
「ごめん……」
村風さんとのシーンが苦手なんじゃないと思う、たぶんラブシーンが苦手なんだ。
僕と村風さん……イアソンとメディアのシーンはラブシーンばかりで構成されている。
だから必然的に村風さんとのシーンでは動きがぎこちなくなってしまうんだ。
慣れようとは思ってるんだけど……どうしてもやりきれない。
そんな事を考えていると、ふと視界の端に黒崎先輩が居るのに気がついた。
「村風さん、ちょっと良いかな」
村風さんは少しだけ睨むようにこちらを見たけど、すぐにいつもの呆れ顔に戻った。
「良いわよ。もうけっこう遅いし、今日の練習はこの位にしておきましょう」
「うん、ありがと」
僕はそれだけ言い残して先輩の元へ向かった。
215過保護『前夜祭(前編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/03(木) 23:47:55 ID:/t5lVkS2
「黒崎先輩、何時から居たんですか?」
「そうか……気がついてなかったんだな」
「すいません、練習中に来るとは思いませんでしたから」
「いや、別に怒っている訳じゃないんだ」
そう言う先輩は少しだけ悲しそうな表情に見えた。
「先輩、どうしたんですか?」
「いや、なんでもない……なんでもないんだ……」
先輩とは一年とちょっとの付き合いだったけれど、その言葉が真意からの物ではない事はすぐにわかった。
本当にどうして先輩は心にも無い事を言うんだろう?
「先輩、とりあえず一緒に帰りませんか?」
できるだけにこやかに言う。
少しでも先輩に辛い思いをさせたくないから、少しでも先輩の心を知りたいから。
けれど先輩はやっぱり少しだけ悲しそうな顔をして……
「健斗……すまんっ!」
 ガララララッ
「ちょっと、先輩!?」
僕が呼び止めるよりも早くどこかへ走り出してしまった。

「ぜぇっ、ぜえっ、ぜえっ……」
息が苦しい、心臓が痛い。
胸が……握り潰されているかのように痛む。
気がつくと私は自分の家の前まで逃げ延びて来ていた。
私はあれ以上健斗の顔を見ていられなかった。
知らなかった、私がこうも嫉妬深い女だったなんて。
私は見た、健斗と知らない娘が抱き合う姿を。
……私でさえ手を繋いだ事はあっても、ああも身体を密着させた事は無いというのに。
私は聞いた、健斗が知らない娘に『愛している』と言ったのを。
……私でさえ『大好きです』と言われた事はあっても、『愛している』と言われた事は無いというのに。
耐え切れなかった、すぐにでも目を逸らし逃げ出したいと思った。
だが私の全身はまるで石になった様に硬直してしまっていた。
落胆した、悲しかった、羨ましかった、愛しかった、そしてついにはあの娘が憎いとさえ思ってしまった。
今の私は……とても醜い。
怖かった、健斗に今の私を見られるのが。
怖かった、健斗に私の心を見透かされるのが。
怖かった、何より健斗に嫌われるのが。
「嫌だよ……助けてよ……健斗……」
怖かった、健斗を恐れながら健斗に助けを求める身勝手な自分が。
一度でも口にしてしまえば、もう止める事は不可能だった。
「嫌だよ……怖いよ……」
ただうずくまって、呟く様に苦しむ様に言葉が流れ出していた……
「足速いですね、先輩」
「けん……と……?」
……信じられなかった、健斗がそこに居た。
「帰って……」
それだけ言うのが精一杯だった。
見られたくなかった、私の醜い姿を。
見られたくなかった、私の弱音を。
「嫌です、先輩の弱音を聞くまで帰りません」
健斗は残酷にも言い放った。
私はそれを疎ましいと感じつつ……喜んでいた。
「帰って……お願い……」
「嫌です、先輩のこんな姿を見て放っておいたら恋人失格じゃありませんか」
嫌だった、怖かった、それでも健斗を頼もしく思ってしまった。
「うっ……うわああああああぁぁぁぁぁん……」
泣き出していた、全てを忘れて。
健斗のシャツを破れるほどに握り締めて。
216過保護『前夜祭(前編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/03(木) 23:48:42 ID:/t5lVkS2
「落ち着きましたか」
「……うん」
人通りの少ない住宅街だった故か、幸いにもあれほど大声で泣き喚いたというのに人目を引く事はなかった。
私が泣き止むまで健斗はずっと抱きしめ続けてくれた。
それであの娘と彼女に嫉妬した自分を思い出して……もう少しだけ泣いた。
「先輩はもう少し弱音もわがままも言っても良いと思いますよ」
「……うん」
良く覚えていないが、泣きながら私は自分の心情を洗いざらい健斗にぶちまけていたらしい。
それでも健斗は私を抱き続けてくれていた。
醜い私を抱き続けてくれていた。
「先輩……僕はもう演劇を降りる事はできません。けどその代わり、僕にできる事であれば先輩のわがままを聞いてあげたいって思います」
「……うん」
「僕が大好きなのは先輩だけですから……」
「……うん」
その言葉が嬉しくて嬉しくて……またもう少しだけ泣いた。
「健斗……お願いがある……」
「はい」
だから私は健斗に甘えたくなった、健斗にわがままを言いたくなった。
「あの劇であの娘にしてた事、私にもして……」
すると健斗は少しだけ困ったような顔をして……
「先輩……それはできません」
……拒絶の言葉を発した。
217シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/03(木) 23:49:30 ID:/t5lVkS2
後編に続く。

>113
こうですか?わかりません!
218名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 00:08:40 ID:sM0w0SPr
|ω・`) 何やらラストが不穏な雰囲気

後編に期待(*´д`*)
219名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 01:15:47 ID:H8X7+L8V
俺いっつも夜中に、このスレ来るから作品に感想レスが間に合わないんだ(´・ω・`)
220名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 02:10:22 ID:7LHWiq8g
どんなにおそくなっても かけばいいじゃない かんそうなんだから
ニンゲンナンダモン
320
221名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 02:59:28 ID:v/e2DiBn
先輩の嫉妬にwktkして後編を待っていますね(*´Д`)
222名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 03:50:44 ID:BxorjE8N
@wktkしながら泣き言を言う
Awktkしながら感想を言って作者に活力を与える
BwktkしながらハァハァGJGJしつつ感想を書いて作者に活力を与える


このスレの住人ならどれが正解か分かるよな?(ちなみにAは高等テクニックで、要テレパシー)
223名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 03:52:30 ID:9Mm71LuS
>>217
>>111みたいな愚痴は心の中で思っとくことで、口に出したら駄目なんだよ。
義務感で感想レスもらっても、本末転倒だろーに
224名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 05:07:56 ID:TNpCOyd5
いままで遠慮していた人達が
感想言いやすくなったとかもあるから
別にいいじゃない。
交流しやすくなってるんだし。

という訳で作者様GJ
225名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 06:51:21 ID:Jj566fZi
いたり先輩が好きですでも有華ちゃんにドキドキします。だからエースケ君はふたりで半分コづつにわけわけしたらいいと思いますニンゲンだもん320
226名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 07:30:55 ID:ioGSGnYl
衝撃のアルベルトに頼むしかないな
227名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 08:11:58 ID:8RwVP3y3
>>217
俺も正直修羅場分がなくなってからの前作のほうは見てなかったから、今回のキャラだけで修羅場分があるほうか゛いいなと思ってた。
そしてすぐに対応して短編を書いてくれたのにビビった。
なにが言いたいかというと、神様GJでした!
228名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 09:01:04 ID:qnyFJ8Ff
>>225
半分こと言えばやはり左右にわけるのが基本かね。
上下だと不公平感が(ry
229名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 09:56:48 ID:zWOaQmmr
>>225
>>228
二人ともどう考えても半分じゃ納得しそうにありません・・・
と、いうわけで、「さあ、戦いだぁっ!」(ナレーター:政宗一成)
230名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 10:55:45 ID:Jj566fZi
勝った方が好きなパーツが貰えます。
231名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 12:10:31 ID:ncu2Oce3
>>226
いたり 「エースケくんは渡さないっ……!」
有華  「ふざけんなっエー兄の手、はなせよっ!」
エースケ「いたた、痛い痛いちぎれる離せ、助けてだれか。あっ生方先輩、ちょ助けてください」
生方  「助けてやろうか少年っ! 
     ただし、まっぷたつだ」

こうですか? わ(ry
232名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 13:38:20 ID:Psykfez2
今更聞くのも恥ずかしいのだが、有華ってユウカとアリカのどっちで読むんだろう?
個人的にはアリカでイタリでウブカタでエースケのアイウエオだと思っているのだが・・・・・・
そしてウの人が3人目として参戦してくれると信じていたりする。
233名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 13:53:47 ID:hVPzIOeW
俺はユカだと思ってたぜ
234名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 14:10:23 ID:9Mm71LuS
普通にユカだろ
235名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 14:29:17 ID:Jj566fZi
おいらもユウカだとアリカもイイ!!(゚∀゚)。アイウエ説支持。
236名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 14:44:28 ID:HLEXlZRK
うお、まさかこんなに早く書いてくれるとは……GJ!!です。
完璧な女の子が嫉妬で歪んでゆくさまを見るのは楽しいな。
あれ? 俺っていつからこんなクズ野郎になったんだろう?
237名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 16:28:09 ID:TK0bwOV/
アリカって読んでたけど、確かにユカユウカって読み方もあるか。
どっちなんだろ?  
238名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 19:13:58 ID:yxj/OZ+f
そんなんアリカ
239名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 19:24:04 ID:ioGSGnYl
G戦場のアリカ
240名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 20:46:08 ID:Jj566fZi
召喚士エースケくんがいたり先輩を呼んだときの有華ちゃんの狂う様を考えると恋をしている気持ちになれる僕はもうだめですか?
241名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 20:50:47 ID:Q/+kr/EQ
|ω・`) 未来日記一巻読んだ。しかし短けー
242名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 20:54:32 ID:8RwVP3y3
10話でゆかってよんでる
243名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 21:01:26 ID:GbJ9VF8T
>>242
ホントだ。気が付かなかった……。
244名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 21:36:59 ID:CwXc3qiy
245名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 22:05:28 ID:kuRYrZXb
>>226-231
二人とも待つんだ
それはアルベルトじゃなくて素晴らしきヒィッツカフルドのほうだww
246名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 22:23:30 ID:K2aoqxhB
最近スレの速度が急に遅くなったな・・・・・・
247名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 22:27:04 ID:v/e2DiBn
五日で180KBとエロパロ板では驚異的なスピードを続けているのにか!?

……なんだ誤爆か
248名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 22:36:23 ID:MitraoaY
昨日は怒濤の連続投下があったけど今日はまだ何も来てないからな
ムラがあるのはしょうがない
249名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 22:38:44 ID:Mrf+MhZz
まあ、怒涛の未完結連載が再開してくれたら嬉しいですけどねww
250しっとな日々 その3−1  ◆xvhaSPKbVw :2006/08/04(金) 23:04:42 ID:utfGarc8
淡々と進行する午後の授業。
本日の五時間目はMrラリホーマこと歴史の本田。
句読点が存在しないかのような独特の言葉に、クラスの半数が眠りの世界。
「すぴ〜、すぴ〜…」
ほら、あたしの後ろの生徒も熟睡中…ってこら美星、寝るなバカ、作戦考えろって言っただろっ!
あぁもう、本当にこのおバカ娘は…。

「…………………………」

ちらりと、横目で和磨の姿を覗き見る。
和磨は他の男子のように眠らずに、一心不乱に――――ニ〇テ〇ドーDSやってた。
駄目じゃん。
まぁ兎も角。
横目で窺う和磨は、やっぱり素敵だ。
無口無表情無愛想の三無を極めた和磨の表情はやっぱり無表情。
だけど、あたしには分かる。
今の和磨の状態は、恐らくスパ〇ボとかで敵を撃破している歓喜か愉悦だろう。
和磨はクールで紳士に見えるが、実際はかなり腹黒くて残虐で鬼畜な男だ。
その危険っぷりが逆にあたしにはカリスマ的でもうグッドなんだけどね。

あたしと和磨の出会いは小学生の時。
当時、家庭の環境から荒れていた私は、とんでもない悪ガキで、悪童女なんて呼ばれてた。
友達は一人も居なくて、唯一の友が美星だった。
美星も家庭環境のことで周囲から孤立していたいじめられっ子。
あたし達は、お互い似た境遇であることに一種の仲間意識を持っていた。
二人だったら寂しくない、二人だったら怖くない。
そんな関係だった。
ある時、あたし達二人は前々から敵対していたガキ大将グループに囲まれてしまった。
流石に数には勝てず、あたし達は紐で縛られて蹴られまくった。
やがて、小学生の好奇心が異性の身体に興味を示し、あたし達の服を脱がそうとし始めた。
その時、和磨が来てくれた。
ただ、登場が普通じゃなかった。
「待て!」とか、「やめろ!」なんて言葉を発して登場するのがヒーローだけど、和磨はまったく違っていた。

251しっとな日々 その3−2  ◆xvhaSPKbVw :2006/08/04(金) 23:05:24 ID:utfGarc8
―――ゴズッ!―――

鈍い、嫌な音が響いて、ガキ大将グループの一人が倒れた。
倒れた理由は頭を鉄パイプで殴打されたからで、殴打したのは不気味な無表情を張り付かせた当時の和磨。
「な、何するんだよおまえっ!?」
「ひ、ひとごろしだぞっ!」
騒ぎ立てる連中を和磨は一瞥して、鉄パイプで再び殴りかかった。
その後はもう阿鼻叫喚の地獄絵図。
泣き叫ぶ小学生を、同じ小学生が無表情に鉄パイプで殴り倒す、そんな光景。
今思うと、普通にトラウマ光景だよな、あれ。
グループのガキを全員半殺しにした和磨は、無表情にあたし達の紐を解き、無表情にあたし達二人の頭を撫でて、そして去って行った。
普通なら恐怖やら畏怖やら抱くのだろうけど、どうもあたしも美星もその辺りの感覚がおかしいらしい。
なにせ、そんな和磨に恋心を抱いたのだから。
それも強く。
後日、当然和磨は学校やら警察やらで呼び出された。
何を聞かれても答えず、怒鳴られても動じない和磨に、大人達は気味悪がっていた。
もっとも、怒鳴っていた大人達、悪ガキどもの保護者はその後大恥かいて帰っていったけどね。
あたしと美星が校長室に飛び込んで、あの連中のことあること無いこと叫んでやった。
教師達の間でも持て余していた悪ガキどもだけに、効果抜群。
ざまぁみろだ、へへへ。
…でも、和磨のやった事は過剰防衛と言われ、厳しく叱られていた。
でも、心配で窓の隙間から覗き見ていたあたし達に、和磨は少しだけ笑みを見せてくれた。
もうここで完全にアウト、あたし達の心には、キューピットの矢なんて目じゃない、ロンギヌス級のぶっといモノが突き刺さった。
それ以来、あたし達はつかず離れずの位置をキープし続けた。
本当は恋人以上の関係になりたいけど、和磨は煩わしいのを嫌う。
だから、影から見つめ続ける、それがあたし達の恋愛協定。

でも、あの女は図々しくも和磨に近づいた。
これだけでも許せないのに、告白、恋人、手作り弁当。
もう許せない、許さない。
綾瀬 光、あんたには最高に悲惨で惨めな目にあってもらう。
そう、最高に悲惨な、惨めな思いをして―――死んでくれよ?
252名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 23:17:02 ID:v/e2DiBn
>ぶっといモノが突き刺さった。

……エロス(*´д`*) 心が汚れていますかそうですか(・ω・`)
253『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/04(金) 23:36:14 ID:Vw97vv0k
ぱ、パパ?ぱぱ?……ファザー?……誰がって、俺が?
「は、ははは……ヘイ、Girl。落ち着こうじゃまいか。」
いやいや、俺の方こそ落ち着けや。
「パパ……このおねーさんたちだれ?うわきはいけないんだよ?」
「え、ちょ、おまっ。」
「ふふふ……うわきはいけないんだよ?……晋也?」
ゾクッ
嗚呼……万能包丁が背骨をゆっくりなぞってるよ………ノー!通行人!!見て見ぬ振りしないでよ!
「せんぱぁい、私はだめでこの子の母親ならよかったんですかぁ?」
「ひ、ひいぃ!」
ギャーーーーース!!!!!
この後その場が合戦跡地になったのはいうまでも無い。
数分後、俺の部屋。
「さーて、お嬢ちゃん、詳しく話し聞かせて欲しいなぁ。」
「そいそう、せんぱいの娘さんだなんて冗談だよねー。」
「んー!んーー!」
簀巻きにされた俺をよそに、黒いオーラをまとった二人が笑顔で尋問を始める。さすがの幼女もその不穏な空気を読んだのだろうか、かなり怯えている。
「え、えっとね……ほんとうにパパなの…」
嗚呼……俺は夜な夜な子作りでもしてたのでしょうか?
254『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/04(金) 23:37:00 ID:Vw97vv0k
「んーん、んがんんがい……」(いーや、そんなことない……)
ヒュッ、ズダ!
「………」
必死の反論空しく、『あんたはだまってて』といわんばかりに、志穂が万能包丁を投げてきた。頭の上スレスレに刺さったんなら黙るしかないでしょ。
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「…笹原…ナミ……」
「ふーん……名字までいっしょだなんて、これは……」
「確定、ですね。」
あ、あれあれ?なんでこんな時に限って二人仲がいいんですかい?ナミなんていう名前、おいどんはしらんよ?
と、いきなり春華が小さい木製トンカチを取り出すと、机を叩いて…
タンタン!
「被告人に判決を言い渡す!……死刑!」
「異議なし!」
「いぎなしー。」
あ、こら、ナミちゃんまで悪ノリしちゃいけません。この二人は本気なんですよ、マジなんですよ!
「ん、んん、んぁ!」
こんなところで死にたかない。必死の抵抗により隣りに住む浪人生、三浪君(自作名)に助けを!
「ふふ、みっともない……私を裏切るからこうなるのよ………春華と3Pさしただけでも、地獄行き間際だったんだから………」
255『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/04(金) 23:37:44 ID:Vw97vv0k
志穂がゆっくりと万能包丁を抜き、喉元に当てる。
「あははー、せんぱい、最後に遺言ぐらい残してあげます……よっ!」
ビリッ!
「おああああああ!!????」
口に貼ってあったガムテープをいきなり全力で剥す春華。口ごと持ってかれちゃうよ!
「ぐああ…ち、違う、潔白だ!純白だ!俺の好きな下着の色は!」
それは白違い。ってかこんな状況でなに言ってんだ、俺!
「ふふ、この子の名字が笹原……そのうえ本人があんたをパパって呼んでるじゃない…」
「くっ……じゃ、じゃあ…おとこばに甘えて遺言を……」
「お言葉ね。」
「……そのベットのシーツの中にあるエロの宝を…墓に埋葬してくれ…」
「………」
志穂はそのエログッツを取り出すと………
「えいっ!」
ヴァキ!
「ああ!!?折らないで!割らないでぇ!」
命の次に大切な戦友が蹂躙されてく!
「ううう……くっ…ひっく、私がいるのに、こんなのまで買って…子供もつくるだなんてぇ……私は晋也のなんなのよー!」
そう叫びながら剣の舞いを放ってきた!
「パパ……と、すこしちがう。」
256『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/04(金) 23:38:44 ID:Vw97vv0k
「なっ!」
「「!?」」
それを聞いた途端、二人がまるで地獄に垂れた蜘蛛の糸を見つけたような、そんな希望にあふれた顔をした。
「え、ほほ、ほ、本当に!?晋也が親じゃないの!?」
「うん、かおはそっくりだけど、……うーん、こんなにあかるくない……もっとよわきだよ、ナミのパパは。」
顔はそっくりで弱気?そんな奴がいてたまるか!
「よ、弱気なせんぱい………せんぱいはSなのに、そのそっくりさんは弱気……そ、総受けなせんぱい?……ハァハァ、ウッ!」
??春華が少し壊れたようだ。壁に向かってなんだかぼやいている。あ、危ない奴だ。
「はぁあああ〜〜〜……よ、よかったぁ……ひっく……晋也が……無実で……うく……」
志穂は嬉し涙か。そうだよ、志穂、俺にはおまえしかいないんだよ。愛しい奴め。
「うぅ……で、でも……晋也ぁ………」
「ん?なんだい、志穂?」
全身全霊、生まれて初めてなほどの優しい声で聞く。
「さっきのエログッツは、別に話を聞くからね。」
「は、はひ。」
前言撤回………愛しい奴もとい、恐ろしい奴め………
257名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 00:04:12 ID:Ku0iCgU+
>>256
GJ。晋也が復活して嬉しい限り。
258名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 00:09:42 ID:4EDtsDHu
>>256
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
まさかこの子は選択肢の彼方へ消えて行った、もう一人の主人公の子なのか!
259sage:2006/08/05(土) 01:23:52 ID:Tl0Om+uM
>>256
懐かしいぜ晋也
それよりも純也君か!!!純也君の子供なのか!!!!
260名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 02:06:36 ID:RtWgpFEb
母親が気になるゼヨ。やはり花穂なのか?それとももしや。

>>しっとな日々
少女コミックのような?感じ。泥棒猫がこの2人のステキヒロインに対抗できるのかどうか期待してます。
261名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 04:47:39 ID:ckj7Lu8d
まぁ、呑め、純也君。

それからたっぷり聞かせてもらおうじゃないか、君が体験した実にうらやま…
んん、壮絶な苦労話を。
262『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 05:57:30 ID:wE2yCQtc
「おぉうっ」
 高いなあ……流石に、八階から眼下を眺めれば、無理はなかった。
 同じマンションでも俺は一階だから、これは新鮮である。
 おおっ、ここから学校も見えるな、凄いぞっ。俺の家は、さて見えるかなあ、なんて。
 などとはしゃいでいる場合では断じて無かったり、する。
「よ、よしっ」
 表札には、『瀬口』の、文字。何度確認してもそれに間違いは、無い。
 到着してから五分は経過したか――いい加減尻込みしているのも女々しくして情けないっ。押せ、チャイムを鳴らすのだ……っ。
「え、ぇえいっ」
 指を伸ばした――瞬間である。
 ガチャリ。
「――ふえっ」
「ぃ、え……っ?」
 ドアが開いて。
 いたり先輩が、眼前に現れたのは……っ!?
263『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 05:59:26 ID:wE2yCQtc
「ど、どあっ――!」
 伸ばした右手を引っ込めつつ、奇声。
 なんたる、偶然か。
 まさか俺がいざチャイムを鳴らそうと決心し行動に移した瞬間に――あちらから、ドアが開くなんて。
 奇声も無理はない、決して俺がおかしいわけじゃないぞ。……多分、な。
「エ、……スケ、くんっ? あぅ、その、どぅして……っ」
 いたり先輩があたふたするのも無理からぬ反応だった。
「い、いや、その――ええっと、生方先輩に、届け物を、頼まれまして……っ」
「さくちゃんに、ですか」
「そうなんですっ。テスト近いから、いたり先輩風邪で三日も休んでたそうですし、ああ風邪って言えば、ビタミンCが、いいらしいですので……っ」
 お、俺はなにが言いたいんだ……っ。狼狽する自分がさっきより情けない。
 鞄から拙い動作で見舞いの品の果物と、生方先輩から預かった三冊のノートを取り出す。
「こ、ここ、これです、はいっ!」
「あ――りがとう、ございます」
 いたり先輩にそれらを持たせる。やや強制的に。
「そ、それじゃあ、俺はこれで――っ」
「……あ、ぅ」
 なにか言いたげないたり先輩の視線に背中を向けて、俺は……っ。
 そのまま、走って――っ。
264『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 06:00:16 ID:wE2yCQtc
 ち、違ぁ――うっ!
 なにを、決意したってのに、俺は今なにを考えて……っ?
 今日こそはちゃんといたり先輩に、理解してもらうって、決心したんだろう。俺よ。
「あ、いやぁ、それで、ですね……っ」
 ゆっくりと、振り返る。
 ――改めていたり先輩の顔色をうかがうと……、傍目でも、熱っぽいと判断できた。顔の全体がやや紅潮しているし、額も汗ばんでいる。
「あの、先輩……、体調は、どうなんですかっ?」
 というか。
 病人なのに、いたり先輩は――何処に、行こうとしていたのだろう。
 俺がチャイムを鳴らす、それ以前にドアを開けたということは……何処かに、出かけようとしていた、ということ。
「体調、ですか……ぁ?」
 常の以上に間延びしている、返答。
「だ、大丈夫ですよぉ、ちょっと熱っぽいだけで……その、だからエースケくんがお邪魔しても、まったく構わないというか……っ」
「――すいません。ちょっと、失礼しますね」
 今の状態で、大丈夫などと言われたってちっとも信用できない。ならば自分で確かめる。
 かみがた変えたんだよなあ、今のも似合ってる……なんて思いつつ、髪をのけてから、額に手の平を密着させた。
「あ、う、え、ええっ! ……は、ぅう」
「――あ、熱いですよ、それもかなりっ」
 手の平を離してから、しかりつけるように言い聞かせる。
 まったく……こんな体調で、外出しようなんて、許可できる道理は転がっていない。
「何処に行こうとしてたのかは、知りませんけど……駄目ですっ! 寝てないと駄目じゃないですか」
「は、はい……ご、ごめんなさい」
 しゅんと、胸に袋とノートを抱えながら、いたり先輩は俯いた。
「それと――ちゃんとご飯、食べてるんですかっ?」
「ご、はんですか……っ?」
 しばし考え込まれてしまう。
「その、食欲がなくて、あんまり……っ」
「だ、駄目じゃないですかぁ――っ! 病人は、嫌でも栄養取らないと、そんなんじゃ治らないじゃないですかっ!」
 信じられない。
 まったく、ご両親は一体どんな扱い方を――っ……、あ。
 そっか……。
 俺と、一緒なんだよな、いたり先輩。
 病気って、言っても――片親で、家では孤独だから、誰も心配してくれなくて。
 俺はまだマシだった。有華がいたから。
 でも――少なくとも、今の先輩は……っ?
「いたり先輩……、あの、家、誰もいないんですかっ?」
「――ずっと、独りですけど」
 やっぱり……。こんな時でも、そうなのか。
 ひどく――俺は、悲しくなって。
「そ、うですか。とにかく……買出しとかだったら、俺がいってきますから、家で寝ててください」
「――あ、その、そ、そんなんじゃないんですっ! ほんと、大した用事じゃなかった、ですから」
「……っ? そうなんですか」
 まあ、問題はそんな用事なんかではなく……。
「とにかく栄養取りましょうっ! 消化しやすいの作りますんで、台所、借りますね――お邪魔しまぁ、す」
「う、うぇっ……? あ、あの、エースケくんっ!?」
 強引にお邪魔させて頂くっ。腕まくりしつつ。
「ああ、先輩は食材の場所とか教えてくれるだけで結構ですんで、横になって待っててください」
「あ、あああああの、それって……」
「はい。今日のところは、俺の料理で我慢してください……って、ことで」
 まあ――話すのは、それからでも、遅くないだろ。
 それにこれくらいのことはしてあげても……悪くは、ない。
「よぉし」
 そうと決まったら。
 まずは、気合入れて、先輩の舌に見合うモノを作らないと。
265『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 06:02:14 ID:wE2yCQtc
 気合を入れるとは豪語したものの……まあ、おかゆなんだが。
 先輩はいまだに信じられないという表情を張り付かせたまま、俺に食材の場所を教えると、
「き、着替えてきますっ。部屋には絶対に入らないでっ! お願いしますっ!」
 かなり真剣な視線と声で俺に厳命すると、自分の部屋に戻り、次に出てきたときは、なんとパジャマの格好だった。
 ピンクの、サイズが合っていないのか、ややだぼだぼな……っ。
「あ、のう……部屋で寝てて、結構ですよ、出来たら持っていきますから」
「嫌ですっ! ――エースケくんがお料理してるところ、見たいです。……駄目ですか?」
 別に面白くないのになあ……。
 そして、おかゆが出来上がるまで――物凄くニコニコと、ねつっぽそうにしながら、いたり先輩は俺の背後にぽつんと立って、俺の調理を眺めていた。
「出来ましたよ……あの、だから、テーブルいきましょう、ね、先輩っ」
「うへっ、えへっ……料理、エースケくんが、私だけに――えへへへっ、あうぅっ!」
 真っ赤な顔で、弛緩しきった両方の頬を両手で押さえながら、やんやんと首をしきりに振っている……っ。
「あ、あのぉ……聞いてますか、先輩」
「――ふぁっ!?」
 ぱっと、真っ赤なお顔が俺とようやく対峙する。
「座ってください、出来ましたから」
「は、ははは、はいぃ。それはもう、はい、座りますよ、私っ!」
 テーブルまで疾走すると、先輩はきっちり背筋を伸ばして、なんと正座する。
 ……正直、そこまで気合入れて座ってもらえるとは、思いませんでした。
「器、熱いですから、注意してくださいね……はい、スプーン」
 置いて、木製のスプーンを手渡す。
「は、ははは、はい、はい」
 受け取って、しきりに頷く先輩。
 さっきから様子がかなりおかしいが……む、そんなに出来栄えが悪かったかなあ。
 少しショックだったり。
「そ、それでは、あの、いただきます」
「どうぞ」
 だが味は、悪くないはずですよ、うん。
 まずは少量すくい……っ、あれ? 手の、動きが止まった……っ?
 見ると――ぼうっと、すくったおかゆを見つめたまま、半口を開けて動かない、いたり先輩。
「ど、どうかしましたかっ!?」
 そ――そんなに、不味そうですかぁっ!? 食べるのを躊躇うなんて……っ!
 少しではなく、多大なショックに俺はうちひしがれる。まだまだ、だな、俺ってやつは……。
「だ、めです……も、……い、です」
「――えっ」
 なにか言ったのが、僅かに聞こえる。
 ……何かが。
 ぽとりと、おかゆの、上に……落下した。
266『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 06:04:02 ID:wE2yCQtc
 涙が。
 その、何かの正体だと理解するのには……、結構な時間を要したように、思う。
「勿体無くて……ぅ、ひっ、ぐ……た、食べれないです、私、えぅ……ぅ、あ」
「せ、せんぱ――いっ?」
 なんで。
 そんなに、嬉しそうに――泣くんですか。
 いたり、先輩。
「う、ぁ……あ、ぁ……」
「え、えっと、その、いたり先輩……」
 とまどうことしか出来ない、俺を尻目に。




 あ――ん、うあぁ――ん……っ。




 スプーンは、落とし。
 泣き顔も隠さずに、……転んだ、幼い子供みたいに。
 いたり先輩は――純粋に、泣き出したのだった。
267『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 06:05:28 ID:wE2yCQtc
 いたり先輩が泣き止んだのは……おかゆが、冷めてしまって、それでも足りないくらいの、時間が経過してから。
 その間に俺はどんな行動に至っていたのかと、問われると――。
「そ、そんなに不味そうでしたか、す、すみませぇ――んっ!」
 テーブルに額をこすり付けつつ何故か謝ってみたり。
「そ、そんなに泣いちゃったら死にますって、だから泣き止んでくださいよぉっ! お願いですからぁっ! す、すみませぇ――んっ!」
 テーブルに額をこすり付けつつ何故か謝ってみたり。
「な、なんでも言うこと聞きますから、お願いです、泣くのは勘弁してくださいっ! 俺が悪いんです、す、すみませぇ――んっ!」
 ……テーブルに額をこすり付けつつ何故か謝ってみたり。
 ともかく馬鹿としか形容できない、謝罪の連発。……もっと上手に語りかけることが、出来ないのか、俺には。
「ひどいこと、いっぱい言っちゃって、本当に、ごめんなさいっ!」
 ここからは土下座である。……いや、俺が悪いのだから、これは当然なのだ。
「だから、だから、その……っ!」
「――、……て、ください」
 うんっ?
 おお、やっと先輩が泣き止んでくれたかっ!? ま、まあ、まだ若干拗ねたような声色だけどね。
 俺は安堵しつつ顔を持ち上げて。
「は、はいっ。なんですか、先輩っ!」
「食べさせて、ください」
「そ、そうですかっ! なるほど、食べさせてください……ぅ、んっ?」
 何ですと……っ?
 泣き腫らして、潤んだ双眸が、俺のそれと衝突する。
「……なんでも言うこと聞くって、言いました。ですから、あ、あ――ん、って、食べさせて、ください」
 人差し指が、冷え切ったおかゆを示している。
 ――スプーンが、俺に、手渡される。
「え、ぇ、と」
 確かに、そんなことも、言いましたけど……っ。
 そ、そんな、行為は……。
 恋人、同士が――やること、なのでは。
「そ、れは……っ」
「――なんでも、言うこと聞くって、言いました」
 う、ぐぅ……っ!
 頬をふくらませて、そんな事を、言われたら……。
「わ、わかりましたっ! でもっ! も、もう泣いたりしないで、くださいよっ!」
「……そんなの、わかりません、ぷん」
 そ、そんなぁ……っ、俺の心労も限界だって、これじゃあ。
 先輩は器を持って立ち上がると――俺のすぐ真横に、座りなおす。
 肩と、肩とが触れ合う……そんな、距離で。
「はい。ちゃんと、全部食べますからね……、早く、してください」
「ぅ、あ……ぃ、はい、はい」
 なんつう展開に、なってしまったんだ。
 俺は――スプーンを、構えるしかない。
268『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 06:06:45 ID:wE2yCQtc
「は、はい、いたり先輩……、あ、ぁ――ん」
「あ――んっ」
 もぐもぐと、そしゃく。
 実に笑顔で――先輩は、もぐもぐと、美味しそうに食べてくれていた。
 あ、あと、もう何口かだ、もうちょっと……っ。
 ――俺は駄目だ。
 今日の目的と、今のこの行為は……あまりにも、相反すると理解しているのに……。
 結局は折れて先輩のお願いを、叶えてしまっている。
「……はい、おしまいです」
「はいっ。ごちそう、様でした。――とっても、美味しかったですよ」
 その賞賛も、笑顔も。
 俺には――ひどく、不釣合いにすら、思えてきている。
「そ、うですか」
「エースケくんに食べさせてもらったんですから……当たり前ですよ、……ぇへ」
 そんなに……幸せそうに、俯かないで、くださいよ。
 俺はこれから――あなたに、きちんと説明しないと、いけないことが。
 あるのに。
「――す、すみません。ちょっと、トイレお借りして、よろしいですかっ」
 いたたまれなくなった。
「あ、すみません、我慢させちゃいましたね……そこ、突き当りです」
「ど、どうも、はは、あははっ」
 早々に角を曲がり……まるで、逃げ出すように、だ。
 個室に入ると、鍵を閉めて――考える。
(ちゃんと、話さないと、な……うん)
 そもそも――それが、目的なのだ。
 また先輩は泣き出してしまうかもしれないけれど……、それは、俺が覚悟するべき、当然の事項。
(よ、っし)
 ……こもったのは、二分くらい。
 俺は再度の決意を固めると、そこから出て、先輩のいるリビングに戻ろうと廊下を逆行し――っ。
 それを、発見した。
269『疾走』 第二十話 A ◆/wR0eG5/sc :2006/08/05(土) 06:09:27 ID:wE2yCQtc
 ――僅かに隙間のあいている、ドアが、見えた。
(確か……先輩の、部屋か)
 絶対に、入るなと厳命された空間の入り口。そこが僅かに開いている。
 ひどく……、俺は、不謹慎だが、気に、なった。
 女の子の部屋に興味津々、という、理由ではなく。
 俺はなにか、ひどい勘違いを、しているのだと。
 ここをあければ――その勘違いに気付けるんだぞと……、俺という存在の内側に存在する、誰かが、告げている……ような、気が、したんだ。
 そして同時に……。




 絶対に、開けてはいけない。
 入るなと厳命されたのだから……開くという行為に至ったら、見合った代償が貴様に降り注ぐのだぞ。




 なんて警告も……聞こえたような、気が、……したような。
 でも。
 ドアは、ちゃんと閉まってないと、落ち着かないじゃないか。うん。
 ドアを閉める、そのついでだって……ちょこっと中をうかがってしまった理由として、それは成立するよな、うん。
 自分を必死に正当化しながら。
 ドアに、近付き。
 ノブを回す。
 ――汗ばんだ右手で、俺は、それを……。



 開ける。



270名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 06:30:31 ID:ckj7Lu8d
>>269
GJ!!グゥーーッジョヴ!!
ああ!!もう可愛いないたり先輩!!

だがしかし、途中でどっちがヒロインか分からなくなっちまったのは俺だけですか?
271名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 06:45:21 ID:LTzhpVld
>>269
先輩の両親が死んでいるオチだったら笑うな
まるで未来日記な展開
272名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 07:21:02 ID:+tPg6vlY
いたり先輩可愛すぎるよいたり先輩(;´Д`)ハァハァ

273名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 08:16:42 ID:pFhVAWbj
いたり先輩いたり先輩いたり先輩いたり先輩のせいで仕事が手につかない・・・いたり先輩いたり先輩かわいいな〜神様GJです。疾走は麻薬ですな〜
274名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 11:42:35 ID:Udczoqgn
駄目だと分かってるのに優しくする主人公、このスレでは結構多いな
彼女がいるのに他のヒロインの心を鷲づかみにしてる主人公、このスレでは結構多いな
第1回目から選択肢間違えて死への直行便に乗ってることに気付いてない主人公、このスレでは結構多いな
そしてある意味ヒロインよりも萌えさせてくれる主人公、このスレでは結構多いな

おまいら本当……最高の修羅場仕掛人だm9(´Д`)
275名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 12:21:27 ID:02Vb9AGb
やべぇ、俺の中でのいたり先輩株がすごいことになってる……
この日を一生忘れることはないだろう。
276名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 14:59:59 ID:LKP66RD2
うじひめかわいいようじひめ
蛆がくねくねしている映像が脳内で再生されているのにかわいい
277うじひめっ! Vol.6 ◆kZWZvdLsog :2006/08/05(土) 20:12:36 ID:m7Er+/w4
「御意」
 重々しい頷き。え? なにこれ。なんか、急にまずいことになってきた?
「では和彦殿……存分に果てられたし」
 正座から膝立ちの姿勢、膝立ちから四つんばいの姿勢に移行した仮面の女性がにじりよってくる。
 いわゆる「女豹のポーズ」に近い姿勢となり、悩殺されそうになる……仮面さえなかったらな。
 顔面を覆う青い仮面によってすべての色気は打ち砕かれていた。俺は迷わず逃げた。
 手と膝をついてよちよち這ってくるのだから速度は当然鈍い。追いつかれるはずはない。余裕で離脱。
(あっ、なんで逃げるんですの!?)
 部屋の奥で蛆が非難する。バカ野郎、非難したいのは俺の方だ。
「話の展開が早すぎるぞ! お前、有無を言わせず既成事実つくろうとしてないか!?」
(バレましたか)
 悪びれたふうでもなく、しれっと認める。
(半人のアイヴァンホーで慣れたら、私にも抵抗がなくなるかと思ったんですが……)
 ちょっとちょっと! なにげに考えることがあざといなぁ、あんた!
 さっき散々あれだけ「蛆虫の正当なる扱いについて」という題で一席ぶっていたくせに、
自分の配下は何の気兼ねもなく道具扱いかよ。王政だから基本的蛆権とかないのか、蛆界。
 使われる側としても本意ではないらしく、ぎしっと歯を噛み締める音が仮面越しに届いた。
「くっ……このようなところで我が純潔を……しかし……武士の命は主君に捧ぐもの、だ……!」
 咆哮と同時に、だんっと四つんばいのまま跳躍。獲物に飛びかかる獅子の如き挙動。
 不意を突かれて、そのまま押し倒された。ごっ、と衝撃が背に来て噎せる。
「げほ、ごほ……! ってか、えっ!? アイヴァンホーさん、名前の割にサムライなんですか!?」
 動転して違うところに驚いてしまった。
(蛆界は少数のサディストと無数のマゾヒストで構成されていますからー)
 む、無茶苦茶な世界だなぁ! 確かに蛆虫ってなんかMっぽいが!
「どうかお覚悟を……っ! わたしは既に肚を据えたから……っ! この身を健やかに産み育ててくれた
母上と父上には『ごめんなさい、今度帰ったら孝行しますんで許してください』と今謝ったから……っ!」
「心の中で両親に謝る暇があったらまず俺に謝れよ!」
「すまぬ。……これでよいか?」
 とても淡白に流して俺のシャツをビリビリィと力任せに引き裂く。ああっ、そんな無体な!
「いやあ! やめてえ!」
「くくっ……お主もウブな生娘ではあるまいに。下も、口ほどには嫌がっておらぬと見えるがな」
 ヤケクソなのかなんなのか、怪しい笑いを漏らしながら俺の下腹部をさする。確かにちょっと勃ってた。
 そりゃ、仮面はともかくサラサラした銀髪のお姉さんに押し倒されて馬乗りになられたらキますよ。
 でも、このまましちゃってもいいかな、と思えるほどエロゲー脳に侵されてない。
 良治もカルピス啜りながらワクテカして見ていることだしな。いやお前少しは助けろよ。
「や、やめてくれませんかっ」
 マウントポジションを取られ絶体絶命ながら、腕を振り回してあがく。
 その指先が仮面の淵に引っ掛かり、すぱーんと跳ね除けてしまった。
「あっ……」
278うじひめっ! Vol.6 ◆kZWZvdLsog :2006/08/05(土) 20:14:48 ID:m7Er+/w4
 妙に可愛らしい悲鳴を上げ、仮面を剥ぎ取られた婦女が両手で顔を覆う。
 指の隙間から、人化したフォイレに負けず劣らずの肌白な容貌が覗いた。
 ――聞いていた通り、鼻がない。突起のみならず、鼻孔そのものが存在していなくて顔の中央が平坦になっている。
 のっぺらぼうを目撃してしまったような、意識に引っ掛かる違和感はあった。
 知らずに見ていたらぎょっとしていたかもしれない。が、あらかじめ知った上で見ると。
 それほどの醜貌とは思えず、却って拍子抜けした。
 鼻の欠如を除けば、顔全体の輪郭も綺麗で、造作は整っている。引き締まった顎が凛々しい。
 形の良い耳や、横に細く切れた目も彼女のイメージに添う具合で、なるほど「美人さん」だ。
 何より、指と指の狭間に見えるその瞳が。
「鮮やかな水色……」
 ターコイズブルーって奴だ。暖色より寒色を好みとする俺には、惹き込まれる魅力を感じた。
 寒色――とはいえ、意外に冷たい印象がない。
 夏の海で、汚れや濁りがなく異常に透き通った場所にある淡い碧。
 空を映すのではなく海底の砂を覗かせる素朴さが、暑さに喘いでいるさなかにも関らず、心が浮き立って
しまって「あそこに飛び込んだら涼しさよりも温かみを得るのではないか」とワクワクさせる配色。
 それが、二つの眼球、虹彩の中に淵いっぱいまで湛えられている。
 見惚れて、ついつい不躾にとっくり覗き込んでしまった。
「――綺麗な目をしていますね」
 当たり前の感想。すると、アイヴァンホーさんは顔を覆ったまま目を泳がせて、
「……そうか?」
 と半信半疑の様子で訊ねる。
「もっと見せてくれませんか」
 要求すると、しばしためらう様子を見せたがやがておずおずと指を外して素顔を晒してくれた。
 ――ああ、これは本当に。
「綺麗、ですね」
 心からの賞賛がするりとこぼれ出た。
「仮面なんて――付けない方が絶対にいいと思います」
 すると彼女は困ったように目を逸らした。
「誉めてくれるのはありがたいが、なんというか、もう付け慣れているのでな」
 外すと裸になった心地がする、と呟き、俯いた。
 真っ赤にはならないが、頬のあたりにほんのり薄紅色がのぼっている。清楚なボブカットとシンプルな
色合いのカーディガンが恥らう姿によく映えていた。
 この人、なにげに結構なお嬢様なんじゃないか――とふと思った。
「強姦される寸前に口説くとは、お前もなかなか器用なやっちゃなー」
(むうう……ちょっと! 私の侍従にコナかけないでくださいませ!)
 観客からの野次。って待てよフォイレ、自分で命令して襲わせといてナニぷんすかしてんだよ。
(もういいですの、やっぱやめですの。アイヴァンホー、和彦さんから離れなさい)
「……御意」
 銀髪のノーズレス令嬢が心なしか残念そうな表情を浮かべたのは錯覚だろうか? ともあれ俺から腰を上げようとして。
「やほー、かずくんひっさしっぶりー!」
 そこに何の伏線もなくやってきた従妹(二ヶ月遅生まれ)が、ずかずかと部屋に踏み込んできた!
279 ◆kZWZvdLsog :2006/08/05(土) 20:16:27 ID:m7Er+/w4
このへんで折り返し。後半は超展開の目白押しです。
……まあ、前半も似た感じでしたが。
280名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 20:19:01 ID:dZHoMYcH
アイヴァンホーさんモエスw
ヒアカムアニューチャレンジャーキター
281名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 20:43:28 ID:4EDtsDHu
三人目のヒロイン参戦キタY⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒Y !!!
282名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 21:17:58 ID:onabmx5r
主人公の名前は和彦。そして、お姫様の名前はフォイレ。
ごく普通のふたりは、ごく普通に出会い、ごく普通に再会しました。
でも、ただひとつ違っていたのは、お姫様は・・・・蛆虫だったのです。
283名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 22:23:34 ID:AjCHfwId
>>282
それなんてアメリアンドラマ?

ともかく、うじひめGJです。超展開?そんなのフィオレの可愛さの前に消し飛んでしまうわ!
284名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 22:25:21 ID:AjCHfwId
いきなりフォイレの名前打ち間違えてる。
ちなみにモチロン従妹にもアイヴァンホーさんにも期待しておりますよ?
285sage:2006/08/05(土) 22:43:55 ID:Tl0Om+uM
GJです やっべ変な属性が俺に・・・
従妹(二ヶ月遅生まれ)に果てしなく期待
286名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 22:54:44 ID:TfXl4gpK
俺も最初はフィオレって読み間違えてました。ごめんなさい

それと、人と蛆のハーフは鼻がないって設定読んで、真っ先にクリリンの顔を思い浮べました。ごめんなさい
287名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 22:57:06 ID:KGCQNTsg
あのう、新規投稿って大丈夫でしょうか?
288名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:01:25 ID:TfXl4gpK
個人的にはどんとこい!
289名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:01:51 ID:dZHoMYcH
You can do
290名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:07:45 ID:aKc/bm5o
|ω・`) むしろ新しい作品を書いていただけるのがありがたい
291名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:09:46 ID:gtgW0QdL
拒む理由が一体どこにありましょうか
292名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:13:54 ID:4EDtsDHu
щ(゚Д゚щ)カモォォォン
293名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:15:20 ID:0M6TE2oY
アイヴァンホーテラモエスw新たにでてきた従妹にも期待。
作者さんGJでした
294名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:22:50 ID:hAWSFNDM
どんと来ーい
住人は常に餓えている どんなに良作が沢山有ってもだ!
295名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:31:02 ID:B7k8ooGR
このスレのSS修羅場シーンをデビルメイクライのAnarchy in the U.W.や
Karnival、Mental machineを聞きながら見てる自分は相ッ当に病んでると思う

いやね、どうも合う気がしてね…
296名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 23:54:35 ID:1u7aZhhj
>>245
お前も落ち着け、それ言うなら「ヒイッツカラルド」だ
297名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 00:42:25 ID:XAZr/xZ+
アイヴァンホーカワユス(*´д`*)
従妹は修羅場を作ってくれるのかな?

>>295
ジャンヌのsisterとかヴァンパイア、Dry?とかを聞きながら読んでる
病んでる気はしない……しないはず…・・


298名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 00:52:39 ID:9w/KlB3X
君達は変な事を言うね。
僕らは、やさしくて健気で可愛い女の子の
微笑ましい嫉妬が好きなだけじゃないか。
299 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 00:59:37 ID:6u5HaZdB
>>287ではないですけど、投下してみます。
300名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 01:00:33 ID:Z3NJhR+3
>>298
このスレ本来の形で言えば嫉妬から修羅場までなんでもありだしな
301 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 01:00:55 ID:6u5HaZdB
「……め……ん…………ね……」

彼女の声は泣き声でかすれて全部は聞き取れない。
けど必死に俺の前でひたすら涙を流して許しを請うている。
彼女が俺に謝らねばならない何をしたというのだ。
彼女は俺に謝られることなんて何もしてないはずだ。思い出そうとしても何も頭には浮かんでこない。
必死に考えをめぐらそうとするが、どうしてか思考がうまく周らない。

――泣かないでくれよ――

そんな、しびれた思考回路の中でも俺はひたすらに泣きはらす
彼女が見ていられなくて自分の手を彼女に伸ばし頬を伝う涙を拭いとる。
それでも、目の前にいる見知った女の子は顔を歪ませたままで、
俺の手の指だけじゃ拭いきれないほどの雫が溢れ、指をわずかに伝っていた。

なあ、頼むから泣かないでくれって。
俺がお前のことを守るからさ。
絶対に傷つけさせたりしないから。
だから――――


そこで、俺の意識が途切れた。正確には現実に戻っただけだ。
先ほどまで見ていた夢から俺を引き戻したのは目覚まし時計の耳障りな音だ。
朝は弱いわけではないが、あんな夢を見た後じゃ寝覚めも悪くなるってもんだ。
なんだって、あんな夢をいまさら……
そんなことを、ぼやいても時間は待ってはくれない。
時計を見れば、時間はもう朝の八時の少し前……ちょっと寝過ごしてしまったようだ。
急がないと、あいつを待たしてしまうな、そう思いながら、
朝の支度の準備を早く済ませようと未だに残る眠気を瞬時に取り払って、
手際よく制服に着替えかばんを背負い二階から台所のある部屋へと降りていく。


「今日は遅いわね、空也朝ごはんは?」
「じゃあ、少しだけ」

台所に降りてくると母さんがいつもより起床の遅い俺に話しかけてくる。
どこの、家庭でもあるようなありふれた会話。
だけど、俺はそれに抑揚もない、とらえようによっては冷めたような口調で返す。
仕事に出かけようとする父さんにも似たような返事しかしない。
別に両親が嫌いなわけでも、仲がうまくいってないわけでもない。
ただ、俺が感情を表に出すのが得意ではないだけだ。
二人もそれをわかっていてくれて、特に何も言おうとはしない。
だでに、長年親子をやってるわけじゃないのだ。

テーブルにおいてある焼きあがったパンを口に放り込み、
お茶を使って強引に流し込む。そのまま、急いで洗面台へ。
軽く顔を洗って、歯を磨き終わった頃に玄関からのチャイムか鳴り響く。
側に置いた、鞄を肩にかけてそのまま玄関へと足早に向かっていった。
302 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 01:02:59 ID:6u5HaZdB
おはよ。クーちゃん」
「ああ、おはよ」

玄関を開けると、俺を待ってくれたいた彼女は満面の笑みを浮かべて俺を出迎えてくれた。
彼女、古瀬伶菜(ふるせれな)はこの俺、香月空也(かづきくうや)の幼馴染みである。
セミロングの髪は染めてはいないが、光の加減によっては栗色にも見え、
少しだけ色素が抜けている。綺麗だとかいうよりはどこか幼く、その大きく
くりっとした目がその子供っぽい容姿に拍車をかけていた。

彼女は何故かいつも一緒に学校に通ってくれている。
幼い頃からの付き合いというものは意外と心地よい。
特に何も言わなくても意志の疎通も長年の付き合いから図りやすいので、
普段から無口な俺にはかなり助かったりしている。
一緒にいるときは大抵彼女が一方的に話しかけてくる。
俺は基本的に、それに相づちをうったりふられた話しに受け答えしている。
内容は特に取りとめもない話しで、部活の内容とか学校の宿題が難しいとか、
昨日見たバラエティー番組は良かったとか本当にとりとめもない話しだ。
玲奈が楽しそうにしてると俺もすごく楽しい気分になる。

「でねでねこの前、尚美ちゃんがね……」
「オッス、クー!!」

2人で会話をしてると頭から後頭部に鋭い衝撃が走る。
紺の学生鞄を遠心力をかけるがごとく、そのまま振り回したためか威力はかなりのものだ。
一瞬、意識が飛ぶんじゃないかってくらいの激しいフルスイングに、
それを放った張本人のほうへと振り向いた。
303 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 01:05:11 ID:6u5HaZdB
「いやー、相変わらずお熱いこったなー!! この新婚夫婦が!!」
「……そんなんじゃないよ」
「またまたー、照れるな照れるなッ!!!」

そうカラカラ笑いながら、俺をクーと呼ぶ伶菜以外の人間こと、こいつ相場亮介(あいばりょうすけ)は、
先ほど鞄で打たれたばかりの人の頭をばしばし乱暴に叩く。

こいつは、元々こんな性格だ。
あっけらかんとしていて誰とでも溶け込めそうで気がつけばみんなに好かれているような奴。
俺とはどことなく対極的な位置にいる人種といえる。
だけど、さすがに学校ではここまで飛びぬけてはないが。
亮介も高校に入り、社会の常識というものを学んだせいか人前ではこの性格をある程度抑えているらしい。
その、証拠に学校でこいつはバカ呼ばわりされてない。
せいぜい、テンションがやけに高いクラスメイトといったところと思われる。
304 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 01:06:37 ID:6u5HaZdB
「痛いっての、頭を叩くな。頭を」
「まあまあ、そんな細かいこと気にしてるようじゃ、将来立派な大人にはなれんよ。クー君」

人の頭をあいさつ代わりにぶったたき、その上こぶの出来たところを
さらに叩いて追い討ちをかけることのどこか細かいことなんだ。

「だ、大丈夫? クーちゃん」
「大丈夫……まあ、ちょっと痛いけど」
「おーおー、またまた見せ付けちゃって――ぐえっ!!」

頭をさすりながら顔をしかめている俺に伶菜が心配そうに覗き込んでくる。
心配ないと返すと、亮介の奴がいつものごとく冷やかしてくるのでそれに
肘打ちを入れて強制的に黙らせる。奴は、地面でもんどりかえって悶絶していた。
みぞおちにでも入ったのか? だけど、同情の余地はない。あいつの、自業自得だし。

こうした、朝の光景は俺にとっては酷く心地よい。
伶菜とのおしゃべりはもちろん楽しいし、亮介との掛け合いも
――たまに、本気で殴ってやりたいこともあるが――まあ、楽しい。
だけど、それも学校に近づくにつれて終わりが近づいている。
陰鬱な気分にはならないが、楽しい気にもならない。
305 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 01:08:10 ID:6u5HaZdB
「じゃあね、クーちゃん」
「それじゃあな!!」

伶菜と亮介は同じクラスだが俺だけは別のクラスだ。
2人は教室は3階で俺は2階、玲菜の無邪気な笑顔と亮介のおちゃらけた
大げさな手振りにこちらも軽く手を振って返し俺は自分のクラスへと向かっていった。

2人と分かれた瞬間からこの俺、香月空也の人格は一時的に停止する。
完全に停止はしない、ただ感情のバリエーションがほとんどなくなる。
学生としての日常生活としての機能はきちんと作動するがそれまでだ。
精密機械のようにただ与えられたことを黙々とこなす。
授業中はノートをとり掃除の時間は掃除をし、昼休みには昼食をとリ、終れば下校する。
事務的なこと以外は誰もこちらに話しかけてこようとはしない。
元来、無口なほうだがそれでも何かのきっかけで友達の一人や二人くらいいてもいいはずなのだがそれもない。
この、クラスの全員がまるで腫れ物をさわるかのような態度や、
触れれば傷つけられるのではという少し怖がってるようなまなざしを向けている。
まあ、別にどうでもいいことなんだけど。
306 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 01:09:10 ID:6u5HaZdB
放課のチャイムが鳴り俺はすぐさま帰り支度を始める。
鞄に宿題に使う教科書を詰め込み、使わないのは机の中にしまい、
いの一番に教室から出て行った。空は夕焼けに染まっていて橙色になっている。
学校から抜け出ることでようやく、いつもの自分が戻ってくる。


さて……と今日はどうしようか。家に帰ってもいいが、帰ったところで両親はいない。
会うのはもっぱら朝の時間帯だけだ。
二人とも共働きでいつも帰りは遅い。夕飯もおそらく母さんが作ったのが
ラッピングしてるだろうし特に問題はない。玲菜はバレー部、亮介はサッカー部で今は俺一人だ。


そんなわけで今俺は近くの河川敷にいる。
着いてしばらく立つと俺が来たのを察知したのかわらわらと野良犬、猫たちが寄ってきた。
俺は手馴れた手つきで周りに群がるこいつらに餌を与える。
最初は寂しそうにしている独りぼっちの子犬に餌付けをしただけだったのだ。
だが、その噂をどこで聞きつけたのか一匹、また一匹と増え、
ついには十匹を越える大所帯となってしまったしだいである。



さすがにこれだけ多いと収集をつけるのも大変だ。
元々、家族なわけじゃないし、いろんな所から集まってきたいわば他人同士。
これが昔ほどでもないがたまに喧嘩することがある。
ほら、現に今、黒と三毛の猫が餌箱の取り合いをしてるし。
そろそろ、止めに行かんとさすがに怪我するかなあ、と俺は思い始めていた。
なので、寝転がってた体を気だるげに起こし、目を向けると……







「だめですよ。みんな、仲良くしないと」

そう言いながら、気性の荒いこいつらを何故か手なづけてる変な女が一人いた。
307 ◆U9DQeTtJII :2006/08/06(日) 01:14:09 ID:6u5HaZdB
自分で書いてみて始めてここの神のすごさがわかったorz
ss書くのって難しいね(´・ω・`)
308名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 01:15:46 ID:S5auPnmz
新作キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!
まだ始まったばかりだが、伶菜の嫉妬が楽しみでしょうがないZE!
309名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 01:17:01 ID:t55IpWAZ
いえいえGJ
310名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 01:19:33 ID:gFMdZ9F0
wktk
311名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 01:26:32 ID:XYlwavv3
さて、今回はいつもの「ロリコン教授」の他に一本書いて見ました。
まずは「ロリコン教授」から投下します。
312教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:28:16 ID:XYlwavv3
「晴香はM属性の巻」


ここはトーキョー、アキハバラ。
マンガ、アニメ、ゲーム、家電などなどオタク産業が花開く街である。
そんなオタクの、オタクによる、オタクのための街、アキハバラにおいて
今ちょっとしたブームなのが「メイド喫茶」だ。

「お帰りなさいませ御主人様」
「行ってらっしゃいませ御主人様」

などと、かわいい女の子と擬似主従関係を体験できるとあって、アキハバラのみ
ならず全国的に現在店舗も増えている。
もちろん店舗内においてもウェイトレスの人気取りは激しく、この熾烈な戦い
に勝利した者だけがナンバーワンの座に座ることが出来るのだ。
そしてそれはアキハバラの一角にある新装開店したばかりのこの
「メイド喫茶」にも当てはまった。

「さて皆さん。ついにこの「冥土の土産」も無事オープンしましたが、
今この業界は過当競争の真っ只中です。一人一人の努力で勝ち抜きましょう!!」

「「はい!!」」

店のオーナーの激励に従業員は気合をいれた。唯1人を除いて……

「お帰りなさいませ御主人様。空いてる席へどうぞ。」
「雌犬と御主人様コースですね。首輪と鎖をお持ち致しますので、少々お待ち下さい。」

夏休みもあと僅かということで、この店に限らずアキハバラ全体が人で溢れていた。
そしてこの「冥土の土産」でアルバイトをしている、ある1人の女性がいた。

「注文したいんですけれど」
そう呼ばれてめんどくさそうにテーブルまで近づいた。
「えーと、このミックスピザ1つ」
本来ウェイトレスは接客業なので、スマイルを絶やさず、お客に対して
失礼のないようにするのが基本なはずなのに、それを完全無視して

「ピザ〜?あんたそんなに太っているのにそんなもの食べたら
さらに太るよ。ウーロン茶でも飲んでさっさと帰りな。」

その瞬間言われたお客はのみならず、店全体が凍りついた。
それを察したのか厨房からオーナーが真っ青な顔をしながら飛んできた。
313教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:29:30 ID:XYlwavv3
「お客さま申し訳御座いませんでした。なにぶんまだ新人なもので
口の聞き方も知らないで……」

しかし言われた相手はキョトンとしていたが、なぜか笑顔になって
「いやいや、中々良いサービスですね〜。逆にオーナーは邪魔しないで!!」
オーナーは訳が分からなかったが、とりあえずお客が怒っていないようなので
ひとまず安心した。
言われたお客はウェイトレスの名札を見て
「えーと、五十嵐さん?いい「ツンデレ」だね。ちょっと感動しちゃったよ。
じゃあウーロン茶で。」
「最初からそうすればいいのよ。ウーロン茶ね。」

お客から注文を取って厨房へ戻るとオーナーが
「晴香ちゃんまずいよ。お客さんに対してあの態度は……」
顔を真っ青にして晴香に注意したが、当の晴香は
「何言ってんですか!あんなデブにピザなんか食わしたら大変ですよ!」
まるで悪いのはお客と言わんばかりに言うのでさすがのオーナ
ーもちょっときつく叱らなきゃと思ったその時
「お、オーナー大変です!!」
1人のウェイトレスが血相を変えて厨房へ入ってきた。
「ん?ちょっと後にしてもらえる?」
「それどころじゃないですよ!お客さん全員が「自分もツンデレコースを」
って言ってるんですよ!!」
「な?!」


―――数日後―――

「すいません、「ツンデレコース」で。」
「ふんっ!!わかったわよ!!」

「べ、べつにあんたのためにコーヒー持ってきたんじゃないんだから!」

「もう帰っちゃうの?ちょっとだけ寂しいからまた来てもいいわよ。」

噂が評判を呼び、「冥土の土産」はアキハバラでも有名な「ツンデレ喫茶」
として連日大行列が出来ていた。しかし肝心の張本人の晴香は……

「晴香ちゃん、ちょっと。」
オーナーは厨房で軽食を作っていた晴香を事務所まで呼んだ
314教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:31:27 ID:XYlwavv3
「何です?」
「晴香ちゃん、お願い!ウェイトレスをやって下さい!!」
実はお店に来るお客の殆どは評判の晴香目当てで、いないと分かると
注文すらしないで帰る客がけっこういるのだ。

「いやです!何であんなデブやオタクの相手をしなきゃならないんですか!」
「お願い!他のウェイトレスでは「ツンデレ」がよく分かっていないらしくて、
お客さんが怒らせちゃうケースもあって、ほとほと困ってるんだよ。
助けると思って、ね。」
「い・や!じゃあ無理にツンデレなんかしなければいいんですよ。大体私は
料理の修業の為にこのアルバイトを選んだんですから。あんなオタクのデブ
なんか相手にしたくはないです。」

そうよそうよ。なんで私があんな奴らの相手なんかするのよ。
場所柄しょうがないとはいえ客がオタクか物珍しさかのどちら
かで、なんか気持ち悪いし……。大体御主人様なんて呼ばれて
嬉しいのかしら。全然分からないわ。そんなに奉仕の精神なんて無いし……
あ、でも樹さんだったら奉仕の精神はあるわね。ああ……樹さん
に御奉仕したいわ。そうだ!今度このプレイしてみようかしら
。「この薄汚い雌豚めを調教して下さい。」って……
うん、ちょっと良いかも……。今度樹さんに言ってみよっと。

お昼も過ぎ、客足が鈍くなった頃交代の時間になった
「晴香ちゃん、ここはもういいから店前に出て呼び込みして。」

えー!こんな暑い日に外出て呼び込み?冗談じゃない!……と
言いたいけれどさっき我侭言い過ぎたからここは仕方ないか。

「わかりました。」


「いらっしゃいませー、今評判のメイド喫茶「冥土の土産」でーす!」

はあはあ……あちぃ……なによ、少しはチラシ受け取りなさいよ。こんな
に暑いんだから……それにしても……今日は歩行者天国だからなのか道路のど真ん
中でコスプレの写真撮影なんかやってるわね。バッカじゃないの?通行者の
邪魔なんだからどっかいきなさいよ!

「あの〜、すいません。写真一枚良いですか?」

ああん?写真だあ?ふざけんじゃないわよ!!あんた何考えて
んの!このクソ暑い日に写真だなんて。でもまだ理性は残って
いるわ。キレる前にさっさと追い返さないと

晴香はカメラ小僧の胸倉を取って、耳元で優しく言った

「カメラ壊されたくなかったらさっさと消えろ。」

笑顔で言ったつもりだったが、逆に怖がらせたのか、
カメラ小僧は泣きながら走っていった。
はあ……もうイヤ!…………ん?蜃気楼の向こうに樹さんが見えるわ…
んなわけないか。
でも幻でも見えるなんてラッキー。……あ、こっちに近づいてくるわ。
315教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:33:18 ID:XYlwavv3
「やっぱり晴香ちゃんじゃない!こんな所で何してんの?しかもその格好は……」

え?え?幻が喋った!……いや、どうも本物のようね。嬉しいーーーー!!
今日は酷いことばっかりだったけど、こんな所で会えるなんて……愛ね。

「樹さん!私今近くの喫茶店でアルバイトしてるんです!ちょっと冷たい物でも
飲みませんか?」

きゃ♪言っちゃった。でもこれってちょっとしたデートよね。これぐらいの役得はなくちゃ。
「あ、いいね。でも今やよ……夕子ちゃんと待ち合わせしてるから
ここにいなちょちょっと何で引っ張るの?」

何よ何よ!!またあのチビが邪魔するの?そうはさせないわ!お店に入ればこっちのものよ!!
「お帰りなさいませ……って晴香ちゃんじゃん。どうしたの?その人?」
「うん!お客さん。私が席まで案内するね。」
メニュー片手に樹を窓際の席まで案内し、座ってもらったが、その間中周りから
ヒソヒソ話が聞こえてきた。

(おい、あの子はもしかして……)
(ああ、間違いない。ツンデレの晴香だ)
(本物は初めて見たけど、あの笑顔……ツンじゃなくてデレのほうか?)
(噂じゃデレを見た者はいないと言われていたが……あの男何者?)

そんな会話が飛び交っているとも知らず、樹はお店の雰囲気に少々驚いていたら、晴香が
ちょっと大きい器にジュースを入れた飲み物を持ってきた。

「御主人様、お待たせ致しました。晴香特製ラブラブジュースです。」
「ラブラブジュース?御主人様??」
「はい。こちらは持ってきたウェイトレスさんと一緒にジュースを飲むことが出来ます。
……というわけで樹さん、一緒に飲みましょ♪。」

晴香はストローを二本入れて飲み始め、樹も一緒に飲んだ。
周りの羨望の眼差しを受けながら飲むのは、樹はちょっと恥ずかしかったが晴香はご満悦だった。

うーん、幸せ。まさか樹さんとこうしてジュースを飲み合えるとは思わなかったわ。
ちょっとだけこのバイトしてて良かったわ。それにしても樹さん、さっきから周りばかり
気にしてるわね。周りのオタクどもなんか気にしなくてもいいのよ。正面にいる貴方の忠実な
メイドの五十嵐晴香だけ見て下さい。身も心も捧げているのですから……

しかしそんな至福の時間は長くは続かなかった。
「ん?着信だ。ちょっとごめん。」
樹はポケットに入っていた携帯を開き、着信の相手をみた瞬間顔色が変わった。

「しまった……忘れてた。」

おそるおそる通話ボタンを押し、耳に当てた。
「はい、もしもし……えーと、近くの喫茶店で……たまたま晴香ちゃんに会ってそれで
誘われて……え、場所ですか?」
む?まさかあのチビじゃ?また私の邪魔をするのね。そうはさせないわ。
この至福の時間は邪魔させないわ!!
晴香はわざと聞こえるように大声で
「あー、樹さんと二人で飲むジュースは美味しいですねーー!!」
316教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:35:06 ID:XYlwavv3
樹は驚いて
「晴香ちゃん!何を言って……え?い、いやただジュースを飲み合いしているだけ
……いやそれだけですよ……」
ふふっ、チビめ、慌ててるわね。トドメをさすわ。
「あ、樹さん、あとお持ち帰りもできますから今日はわ・た・し・をお持ち帰りして
食べて下さいね。」
もう樹の顔は真っ青を通り越して血の気が引いていた。
「……え、あ、場所ですか?えーと」
その瞬間晴香は、樹の手にあった携帯をひったくった。
「あ、駄目ですよ。ここ携帯禁止なので電源切りますね。」
電源を切る直前、なんだかギャーギャー聞こえてきたが、無視して切った。
「ふう……まったく五月蝿いですね、あいつ。さ、邪魔者はいないですしゆっくり楽しみましょ。」

―――数十分前―――

はあ、はあ、いないわ……暑い……樹どこいったのよ!確かにこのパチスロ屋の前で
待ち合わせなはずよね。一体何処に……
大体さっきから私に声を掛けてくる奴らが多すぎるわ!しかもなんか気持ち悪いし……。
まあ声掛けてきた挙動不審者は鉄拳制裁したからいいけど。
携帯も中々繋がらないわね……あ、やっと繋がった。

「あ、樹!一体どこにいるのよ!……喫茶店?なんでそんなとこにいるのよ!!
私を待たせて……何?晴香がここにいるの?あいつ何処にでも現れるわね。いいわ。
今どこにいるの?直ぐ其処に行くわ」

何でここにもあいつが現れるのよ!!せっかく二人だけで買い物に来た
のに……しかも喫茶店に連れ込んで……樹を守らなきゃ

「……ん?今晴香の声が聞こえたわね。目の前にいるの?しかも二人で飲むジュース?
ちょっと!!何やってんのよ!!……嘘!!あいつのことだからエッチなことでも
してるんでしょ!!……いいからさっさと場所を教えなさい!!!」

ああ、この暑さでイライラするわ。それもこれも全部晴香が悪いんだから!!

「……は?お持ち帰り?晴香を?ふざけんじゃないわよ!!しかもそ
んなもの食べたら食中毒かO−157にでも感染しちゃうわよ!!愚図愚図言ってないで
さっさと場所を言いなさい!!……あ、晴香!!電源?あ、ちょっと!!もしもし、もしもし
、………切りやがった。」

晴香…………許さない………ここまで私をコケにして……樹を拉致監禁までして…
わかったわ。晴香の顔……ピカソにしてやるわ!!
とはいえ……どこに捕らわれているかわからないと……喫茶店
っていってたけどそれだけじゃ……弥生が思案にくれていた時、
ふと見たら道路に一枚のチラシが落ちていた。
何気なくそれを拾ってみたら

「新装開店!!喫茶「冥土の土産」!!」

(もしかして………)
317教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:37:02 ID:XYlwavv3
「はい、樹さん。あーーん。」
「ちょ、ちょっと晴香ちゃん、恥ずかしいよ」
晴香はジュースの中に入っていたアイスをスプーンで取り出し
、樹に食べさせようとしていた。
「いいじゃないですか、これぐらい。はい、あーん、あーん。」

周りのお客は羨ましそうに樹を睨んでいたが、当の樹は生きたこごちがしなかった。

(弥生さんに会ったらなんて言うんだよ……)

そんなことはお構いなしに晴香は楽しそうに、スプーンにアイスを乗せて、
樹の口へ運んでいた。

「あん、もう樹さんったら食いしんぼうさんなんだから。あ、もう最後の一口ね。
はい、あーん。」

晴香がスプーンにアイスを乗せて樹の口へ運ぼうとしたその時、乱入者が現れた!
樹の前に出て、テーブルに身を乗り出して差し出されたアイスを食べてしまった。

「な?誰よ!邪魔するのは!!……やっぱりあんたね!チビ!!」

チビこと弥生は銜えていたスプーンを吐き捨てて、晴香を睨みながら

「まさかこんなとこでバイトしていたなんて、迂闊だったわ。」
二人が睨み合っていたら、晴香が
「そういえば、よくここにいるって分かったわね。」
すると弥生はポケットから一枚のチラシを出してきた。
「待ち合わせの場所に落ちていたから、もしかしたらってね。」

くっ、まさかチラシで嗅ぎ当てるなんて……目聡い奴ね。あんなもの配らなきゃよかった。
さてどうしよう……何とかこのチビを樹さんから引き離さなきゃ。

「さて、晴香の奢りでジュースも飲んだし、そろそろ帰りましょ。」
318教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:38:12 ID:XYlwavv3
弥生は立ち上がり出口へ歩きだし、樹もそれに従った。
「ちょっとまった!チビはともかく樹さんは帰さないわ!」
「何馬鹿なことを言ってんの?お客さんが帰ろうっていってんのに何引き止めてんのよ。」

弥生の勝ち誇った顔や樹の不安そうな顔や他のお客の固唾を飲
む顔などが、晴香の頭の中でグルグル回りだした。

うう……どうしようどうしよう。引きとめはしたけどこの後どうしよう?
何も考えてないわ。かといって実力であのチビを排除しようとしたら、店から
「ちょっと」だけ五月蝿く言われそうだし……。何とかこの二人を引き離さないと……。
そうだ!!この手で行こう!ちょっと強引だけどこれしかないわ。愛する樹さんのために私
頑張るから!!

「ちょっと!!さっきから何黙ってんのよ!」

痺れを切らしたのか弥生が晴香に近づいたその時

「店長!私ちょっと用事が出来たので、帰らせていただきます!!」
「あ、ああ」

その店長の返事を聞いた瞬間、晴香は弥生を突き飛ばして樹の手を握って店から出た。

「走りますよ!!!!」
「ちょ、ちょっと晴香ちゃん、うわああああ!!」

全力疾走で店を出、人を掻き分け、ひたすら走った。
後ろから弥生の叫び声が聞こえてきたが、構わず走り続けた。
「愛の逃避行ね!!」



「はあ……はあ……。ここまでくれば……もう大丈夫ですね。」

樹の手を握りながら走っていたら、段々と楽しくなり、
晴香は方向も分からず、ただやみくもに走り見知らぬ公園に着いた。

ベンチに座り、息を整えて改めて今の状況を考えようとしたら
「生きて明日を迎えること出来るかな……。」
そんな樹の遺言を聞いた晴香は
「何言ってるんですか!!樹さんは別に悪いことはしてないじゃないですか!!
あんなくそチビなんかほっとけばいいんですよ!」

うんそうよ!あいつなんかほっといて二人だけで楽しんじゃえばいいんです!こ
こ最近ゆっくりと遊んだり話したりすることもあいつのせいでままらなかったし……。

「それでは御主人様、どこまでもお供致します。まずカラオケなんてどうですか?」
樹に向かって微笑みながら手を差し出しす晴香を見て樹は
「よーし、もうこうなったらとことん遊んでやる!!」
319教授の狂詩曲、ロリコンの二重奏 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:39:40 ID:XYlwavv3



今樹は人生の中で一番後悔していた。
時計を見ると日の出まであと数時間だった。
しかも携帯の電源を喫茶店で切られてからそのままだった。
電話の着信があったかどうかは分からないが、その代わりメールが……

「未開封 53件」

本文を開ける勇気は無いが、タイトルで大体わかった。

件名「今どこ?」
件名「電話が繋がらない」
件名「夕飯出来たよ」
件名「晴香のせいで…」
件名「殺してやる!!」
件名「淋しいよ……」
件名「死んでやる!!」

最後の方になるほど過激になっていたが、たまらず携帯を閉じた。
そしてゆっくりと部屋の前まで来た。
何やらただならぬ気配を感じつつ樹は意を決した

(何をびびってるんだ俺は?別に悪いことはしてないじゃないか!……たぶん)

ドアノブに手を掛けてゆっくりと回した。
(開いてる)
「ただーいまぁ……。」
静かに入って周りを見て愕然とした。
物が壊れて散らかり、荒れ果てていた。
「これは一体…。」
その時、暗闇から何かが飛んできた。
樹の頬を掠め、後ろのドアに突き刺さった。
ゆっくりと振り返ってみると……
(包丁!!)
包丁が飛んできた先へ近づいて見ると、樹は見てしまった。暗闇の中にただずむ


   鬼を


「うわああああーーーーーー!!!」



「ねえ奥さん聞きました?201号室の佐藤さん、昨夜痴話ゲンカですって!か
なり激しくやったらしくて窓ガラスは割れて、女の怒鳴り声と男の叫び声が聞こ
えたけど、大丈夫ですかね?………

第七話「とある日常@」完
次回第八話「とある日常A」
320名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 01:42:14 ID:XYlwavv3
えー、ぶっちゃけメイド喫茶はよく知りません。独断と偏見とテレビで見た知識
で書いちゃいました。
では引き続き新作を投下します。
321「スクエア☆アタック」 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:44:16 ID:XYlwavv3
「プロローグ」


―――朝―――
小鳥の囀り、新聞配達のバイクの音、学校の校庭での運動部の朝錬、
遠くの公園から聞こえるラジオ体操の音楽………
よく朝は静か、なんて言うけれど我が家の周りに限っていえばそうでもないだろう。
……いや、「周り」じゃなくて、「内」も喧しかったな。
まだ重い瞼を無理やり開けて時計を見た。

6時30分

「そろそろ始まるかも………」
すると一階の台所から女性の言い争う声が聞こえて来た。
「これで後30分は寝れるな。」



「当番を勝手に変えないで!!今週は私が料理当番なんだから!!」
「や〜だ〜!!占いで言ってたもん!!「蠍座のあなたは料理
をすれば異性運アップ!」って。だから優那が料理する〜〜!!」

料理当番の三条千晴(さんじょうちはる)とそれを横取りしようとする
氏本優那(うじもとゆうな)が料理担当の証である「エプロン」を綱引きのように
引っ張り合っていた。

「は〜な〜せ〜!!」
「や〜だ〜!!」

渾身の力で引っ張りあうので、エプロンがいよいよ千切れるかという時

「お姉ちゃんたち!!何やってるの?喧嘩してる場合じゃないでしょう?
全く、朝から飽きもせず……」

部屋に入ってきた尼知友紀(あまちゆき)の一喝でエプロンの
取り合いをしていた二人はしゅんとなった。

「千晴お姉ちゃん、もう時間もそんなに無いし大至急朝食の用意をして。」
「わ、わかったわ。」

争奪戦に耐え抜いたエプロンを掴んで台所へ走っていった。
まだ諦めきれない優那は恨めしそうに千晴を睨んでいたが、友紀の眼光に
気負い負けしていた。

「優那お姉ちゃん!」
「は、はい!!」
322「スクエア☆アタック」 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:45:32 ID:XYlwavv3
友紀はドスの効いた声で姉の我侭を嗜めた。

「ダメじゃない!!決められたルールを破っちゃ!!今週は千晴お姉ちゃんが
料理当番で、優那お姉ちゃんがお買い物と大智お兄ちゃんを起こす当番でしょ?
この当番制を破るつもり?」
「うう〜」

この家では留守にしがちな大智の両親に代わり、三人の「幼馴染」が
この家の生活を支えていた。

大智の家を向いて右隣が
「クラスメイト」で「幼馴染」の三条千晴が住む家
左隣が「お姉ちゃん」で「幼馴染」の氏本優那が住む家
お向かいが「従妹」で「幼馴染」の尼知友紀が住む家

この三人、とにかく昔から大智を巡って死闘を繰り広げてきた。

おままごとをすればだれが奥さん役をするかでケンカになり
プールに行けば溺れたふりをして抱きつこうとしたら、嘘がばれてケンカになり
花火をしたら互いに打ち上げ花火をぶつけ合って、火傷し
クリスマスにはプレゼントに三人とも「私の初めてをア・ゲ・ル♪」
と言って、ケーキをぶつけ合う大喧嘩になったりもした。

しかし、大智の両親が留守にしがちになってきたことと、ある事件をきっ
かけにして数年前に紳士協定を結んだのだった。
323「スクエア☆アタック」 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/06(日) 01:46:37 ID:XYlwavv3
「いい?喧嘩ばかりしていた私たちが紳士協定を結んだ理由は知ってるでしょ?」
「う、うん。」

優那と友紀はその理由を思い出したのか、俯いてしまった。

「あの事件を教訓にして私たち三人は、たとえ表面上だけでも仲良くやってきたんだから。
ここで優那お姉ちゃんが協定を破ると言うのなら……」

友紀は掛けていた眼鏡を掛け直し

「大智お兄ちゃんの家を出入り禁止に……」
「やだやだやだ!!!それだけはやだー!!」

優那は友紀に掴みかかって泣き崩れた。泣きながら、ごめんなさいごめんなさいと
連呼しながら泣く姿はとても痛々しかった。

私たち三人にとって出入り禁止は「死」を意味しているからね……

友紀はビービー泣き叫ぶ優那を落ち着かせ

「分かってもらえればいいのよ。だからもう泣かないで。仮にも一番年上なんだから。
さ!そろそろ朝食も出来るから早く大智お兄ちゃんを起こしに行ってきて。」
「ぐすっ……すん……わかった……」

泣きはらした真っ赤な目と、鼻を啜りながら大智を起こすため
に二階へ上がっていった。



くすん、なによ友紀ったら……。ちょっと頭が良いからって偉そうにしてさ!
あの時アメリカの……なんていったっけ……なんとか大学に留学すればよかったのよ!
それなのに「大智お兄ちゃんを置いてはいけません!!」なんていってさ!!……優那は
みんなのお姉ちゃんなんだからね!偉いんだぞ!!だけど千晴と友紀ったらいっつも
馬鹿にして……大智だけね。ちゃんとお姉ちゃん扱いしてくれるし、頼りにしてくれるし。
千晴と友紀!覚えてなさいよ!いつか必ず協定なんか破って、
二人を出し抜いて大智と結婚しちゃうんだから!!

今ここに狐と狸の騙し合いが始まろうとしていた。
324名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 01:50:30 ID:XYlwavv3
とりあえず勢いで書いちゃいました。続きはここでの評判次第か気が乗ったら。
「ロリコン教授」の次はこれとはまた別にありますので、そのうちプロローグでも
投下しようと思います。
325名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 02:03:09 ID:uOQ1lgop
|ω・`) 作者様GJ
次から次へと新しい設定を作れる才能に嫉妬
しかも内容もしっかりとしてるし・・・(((( ;゚д゚)))アワワワワ

それにしてもそれぞれ属性を持っているとはいえ「幼馴染」が三人
幼馴染派としては堪らん(*´д`*)
続き期待してます!
326名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 02:04:34 ID:QQqecnsc
うわぁぁぁぁもうやべぇよ
胸を小人がたたくんだ なんなんだこの胸のトキメキは
言葉にできない程興奮してるよ今おれ
うおああぁああ最高だあああぁぁ
M属性の晴香ちゃんに弥生ちゃんのエンドレスメール
そして幼なじみとクラスメートと従妹の三つ巴!!!
あぁもうwktkが止まらないよおおぉぉぉ
327名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 02:04:54 ID:+l0LFmbw
|ω・`) 好みの展開・・・・ 
     とりあえず従兄弟は漏れが・・・・
328名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 02:06:53 ID:+l0LFmbw
|ω・`)  あれ?スクエアてことはもう一人・・・・
329名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 02:14:03 ID:BQtQ9M3y
男1と女3で既にスクエア(四角関係)になってるんじゃね?
それともスクエア・アタックだから4人によるアタックなのかっ!?
とにかく作者様GJ
330名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 02:14:17 ID:t55IpWAZ
異性同士の絡み大変スバラシイ。
331名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 04:15:34 ID:cmHecXgd
初投下、いきます。

お手柔らかに・・・・・・
332夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/06(日) 04:17:26 ID:cmHecXgd
 夕暮れの中、俺――縁皓一(えにし こういち)は、ある家の前に立っていた。
 中を覗くと手入れの行き届いた庭が目に入る。芝生に置かれた木棚には色とりどりの花の植木鉢が置かれ、
それらはつい先程浴びたらしい水を受けて、瑞々しい輝きを放っている。
(先輩、家に居るんだな・・・)
 花を育てるのが趣味なのだと、恥ずかしそうにはにかんでいた少女の笑顔が浮かぶ。今は夏場だから、花に水をやるにしても
遅めの時間にしないといけないと言っていたっけ。
 俺は、先輩に自分の決意を告げるためにここにいる。正直気が重い。先輩の反応が怖くて仕方ない。
 出来るなら逃げ出したいが、そんなことをしても、ほんの僅か先延ばしになるだけ。それどころか気の重さが増すだけだ。
 俺は深呼吸と第一声のシミュレートを玄関の前で一分間繰り返し・・・不審者として通報される前に、チャイムに指を伸ばした。
333夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/06(日) 04:20:04 ID:cmHecXgd
 先輩――二条紗耶香(にじょう さやか)さん。俺の一つ上で、俺の通う高校の三年生。
 長い髪をなびかせる美少女だが、お洒落にはあまり興味が無いのか、髪を飾るのは薄いピンクのヘアバンドだけ。
 性格も控えめで大人しいため、容姿の端麗さの割には男共の話題に上ることはあまりない。それでも、何度か告白されたりはしているらしいけど。
 学業は学年でもトップクラスの成績で(俺も何度か見てもらったりしている)、運動神経も並以上はあると思う。
 信じられない話だが、贔屓目に見ても平凡の域を脱しない俺と、俺とは天地の差がありそうな紗耶香先輩は、
 彼氏彼女――いわゆる恋人同士の間柄だ。3ヶ月前、学年が上がって間もなくの頃、些細なことがきっかけで知り合った俺に、
 紗耶香先輩はなぜか何くれと構うようになった。始めは軽く話す程度で多少親しい先輩後輩という感じだったのだが、
 いつしかお昼を一緒に食べたり時には弁当を作ってきてくれたり、一緒に帰ろうと放課後に校門や昇降口で待っていたり
 俺が遅いと教室まで迎えに来てくれるようになったり・・・とするようになった。俺に会えなかった日の翌日は機嫌が悪く、
 機嫌を直す条件が手を繋いで一緒に帰るだったり、その際必要以上に身体を密着させてきたりした。
 ここまでされれば、流石の俺でも何となく分かる。「いや、でも」「まさか先輩が」「相手は俺だぞ?」こんな自問自答を
数日間繰り返して、それでも「先輩は俺を好きなのかも」という推論は変わらなかった。
334夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/06(日) 04:23:26 ID:cmHecXgd
 ある日俺は、自分から先輩に告白した。

 特定の誰かが好き、ということがないため漠然としたものでしかなかったが、俺とて彼女が欲しいかもという気持ちはあった。
 紗耶香先輩がその特別な人になったとしたら、それは俺なんかには勿体ないくらいの幸運だろう。
 それに、先輩と共に居るのは純粋に心地いい。俺も先輩も人付き合いは広くなく、派手に遊びまわったりするのは
好きじゃないので、付き合ったからといって無理に背伸びする必要はないと思うし、化粧っ気のない控えめな美しさの容姿も、
むしろ俺的には好みだ。

 まだ恋、には遠いが、それはこれから共に居ることで埋めていける、いや、埋めていきたい距離だと思ったのだ。
 いつも通り先輩を家まで送っての別れ際での告白。気恥ずかしさから俺は端的かつ早口に、しかし先輩の目を見て告白した。
先輩は、時間が止まったように無反応。あまりに続く沈黙に不安は増し、挙句「もしや俺ってザ・ワールドの使い手?」などと
現実逃避じみたことを考え出した頃、先輩がようやく反応した。瞳にいっぱいの涙と共に。泣きじゃくる先輩をなだめること数分、
通りがかる人の冷たい視線に耐えつつ(先輩の両親が留守でよかった・・・)、先輩は嬉しくて泣いてしまったと、自分こそ
俺のことが好きだったと告白してくれた。


 結局その日は真っ暗になるまで玄関の前で、一通り赤くなったりモジモジしたりソワソワしたりしていた気がする。
 はっきり覚えているのは、別れ際に触れるだけの小さなキスを交わしたことくらいだ。

 こうして恋人同士になった俺たちだが、それほど付き合い方が変わったわけでもない。せいぜい先輩が俺に気兼ねなく
くっついてくるようになったことくらいだ。(あれで気兼ねしていたのか、と俺は少し思ったけど)
 それでも、以前は感じる事のなかった満たされた気分で日々を過ごしていた。


 そうして一ヶ月が過ぎた。



 ・・・一ヶ月しか、保たなかった。
335名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 04:29:33 ID:cmHecXgd
眠いので続きはまた。近いうちに投下します。
次で多少の動きを見せられるようにするつもりです。


それにしても、我ながら読みにくいな。第一話なので多少説明的になるのは仕方ないけど、
行間全然とってないし・・・。
ここら辺はこれから改善していきたいと思います。
書き方のアドバイスとかあったら教えてくれると嬉しいかも、です。
336名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 04:40:39 ID:+l0LFmbw
|ω・`) >>335様GJ
非常読みやすい文章ですよ
337名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 07:14:05 ID:tuQWWHEJ
|ω・`)<<335様GJ
338名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 08:13:12 ID:NnNgwgXk
とりあえずGJ!
339名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 09:10:27 ID:SJTTDRgu
期待の新作ここに爆誕!!俺は読みづらくはなかったかな。今回は前フリっぽいとこだけだったけど、かなりおもしろそうだし。作者さんGJでした
340名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 10:46:35 ID:xe5/xMrV
341名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 12:17:33 ID:9tNjdDaA
>>332
新たなクズ主人公の予感wktk
342名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 13:24:35 ID:6u5HaZdB
文才のない漏れじゃアドバイスなんて出来ないよ。
ハァハァGJしつつ職人さんにエールを送ることくらいだよ。
343名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 14:44:24 ID:cmHecXgd
おはようございます・・・って遅いよ。
続き、投下します。
344夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/06(日) 14:46:30 ID:cmHecXgd
「アメリカに行く!? 先輩が!?」

 屋上とはいえ学校であることも忘れ、俺は思わず声を荒げる。
先輩は俺の声に一瞬驚きの表情を見せたが、すぐにさっきまでの
沈んだ表情に戻った。
 先輩・・・今日はテンション低いなと思っていたら、そんな話があったなんて。
 これが晴天の霹靂っていうやつか。

「それで・・・出発はいつ? 期間はどのくらい?」

 質問に、先輩は沈んだ表情のまま俯く。

「夏休みに入ったら、退学届けを出して発つ予定・・・。期間は・・・最低でも一年以上は・・・」

「一年・・・」

 ポツリと力なく零された言葉。大声を上げるのは自制したが、心に広がる波紋は止められない。
 咄嗟に日付は出て来なかったが、確かもう7月に入っているはず。夏休みまで一ヶ月も無い。

 家の事情がどうとか、親が残ることを許さなかったとか、大学は向こうのを受けるかもとか、
そんな話がされたけど、俺はあまり聞いていなった。
 ただ、紗耶香先輩と離れ離れにならねばならないということだけが、
はっきりと耳に残った。
345夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/06(日) 14:50:00 ID:cmHecXgd
 その日は一人で帰った。先輩も顔を合わせづらいのか、姿を見せなかった。
 家に帰るとベッドに横になり、思考の海へダイブする。

(一年以上、か・・・)

 その時間をイメージしてみる。具体的には、新しい制服に袖を通してから今に至るまでの日々。
試験勉強に追われ、夏休みはバイトに精を出し、文化祭や体育祭で盛り上がり、すぐに二度目の期末試験、
バレンタインや卒業式といったイベントに興奮する連中を尻目にのんびり過ごした冬の時間・・・。
今でこそあっという間だったように思えるが、それは紛れも無く長い、一年という期間だ。


 対して俺が先輩と共に過ごしたのは3ヶ月程度。ただの先輩でなく「紗耶香」先輩と意識して
接したとなると2ヶ月程度。恋人同士としてならたった一ヶ月だ。
 なのに、いきなり一年以上も離れ離れだという。

 ・・・落ち着いて考えよう。選択肢は2つ、単純だ。待つか別れるかしかない。
 国を隔てていては、会うことはおろか電話さえもままならず、遠距離恋愛とはならないだろうし。

 俺が待つのはいい。自分には先輩がいると思っていれば、周囲の女の子も大して気にならないだろう。
 俺自身もモテるわけじゃないし、周りの連中のように女の子にがっつくようなタイプではない・・・つもりだ。

 だが先輩はどうだ? 俺という出逢って間もない存在に、一年以上も縛られていいのか?
 先輩は優しい人だ、俺が待っているといえば、それに応えようとするだろう。それは果たしていいことなのだろうか。
 先輩は綺麗で、優しくて、能力もある人だ。新天地での生活は、身に秘めた可能性を更に大きくすることだろう。
 そこに、俺という存在は先輩の足枷にしかならないような気がする。



 それは、俺の不安――積み重ねた時間に対する別離の期間の長さや、俺にはもったいなさすぎる恋人の存在
――がさせた、逃避なのかもしれない。それでも、先輩により大きな可能性を掴んで欲しいというのも本心だ。
 それは、自信を持って言える。

(明日・・・先輩に会おう。俺の決意を伝えよう)

 そして、心からの感謝と激励を伝えよう。
 恋人じゃなくなっても、紗耶香先輩は俺の大切な人だ。
 何のことはない、また一ヶ月前までの間柄に戻るだけなのだから。

 決意を固めると、胸がスっと軽くなる。今日はもう、このまま寝てしまおう・・・。
346夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/06(日) 14:52:14 ID:cmHecXgd
 そして、冒頭のシーンへ戻る。俺は紗耶香先輩の家の前にいるわけだ。
 いざここまで来ると、やはり気が重くなってくる。
 それでも、チャイムは押されてしまった。もう、やるしかないのだ。

「は〜い、どちら様ですか?」

 やや間延びした声が響く。

「先輩、俺です。縁です」
「皓一くん!?」

 驚いてるな、先輩。だが考えてみれば、俺が先輩の家に自分から来るのは初めてだ。いつも先輩に引っ張られて来ているからな。

 ドアが開き、紗耶香先輩が姿を見せる。白のサマーセーターに、ブルーのミニスカートの先輩。
 薄いセーターは豊かな胸を強調し、短いスカートからは肉付きのよい太股がのぞいている。
 学校では決してお目にかかれない先輩の姿だ。こんな先輩をみたら、男子生徒連中は即日ファンクラブを
結成してしまうんじゃないかとさえ思う。かく言う俺も、初めて先輩の私服姿を見たときには
思わず目のやり場に困ってしまったほどだ。密着された時の感触から感づいてはいたが、
紗耶香先輩は非常にスタイルがいい。

「えっと・・・先輩にお話があって・・・」

 いつの間にか下がっていた目線を上げると、俺は先輩の顔を見て言う。

「あっ・・・えっと、上がって! こんな所で立ち話も何でしょ?」

 紗耶香先輩に導かれ、俺は二条邸に足を踏み入れた。
347夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/06(日) 15:03:32 ID:cmHecXgd
 二度目となる、紗耶香先輩の部屋。
 ぬいぐるみなどが置いてあるわけではないが、薄い暖色系の色で統一された綺麗な部屋は、
それだけで女の子らしさというものを感じさせるから不思議だ。
 先輩がベッドに腰掛ける。俺に隣りを勧めたが、俺はそれを丁重に断った。

「えっと・・・まずは、すみませんでした。昨日から先輩を避けてしまって」
「ううん、いいの。私こそごめんなさい、いきなりあんな話をして。驚くのも当然だよね」

 小さく微笑む先輩。それだけで心が温かくなる。以前の俺にはなかったことだ。
 これがちょっとした痴話喧嘩だったら、今ので全て解決だろう。
 しかし今の状況では、その微笑みは逆に俺の心を締め付ける。皮肉な話だ。
 つい表情が暗くなってしまったらしい。それを感じ取ったのか、紗耶香先輩が殊更に明るく俺に話しかけてくる。

「あっ、でもね! 早く帰りたいって、一年遅れてでも日本の大学に行きたいって、両親には言ってるの。
 家族で戻るのが無理なら、親戚の人に頼んで私一人だけでも戻りたいって。
 そうすれば、皓一くんと同じ学年になれるし、一緒の大学にだって行けるよ。だからね・・・」

「先輩!」

 俺は思わず大声で遮って立ち上がる。先輩が驚いたように俺を見上げていた。

(やっぱり俺、先輩に気を遣わせちまってるんだ・・・)

 俺とてそろそろ本腰を入れて勉強するつもりだが、それでも行ける大学なんてたかが知れてるだろう。
 少なくとも先輩のレベルに釣り合うような所なんて無理だ。
 それは俺に勉強を教えることもある先輩ならよく分かっているはず。なのにこんなことを言うということは・・・。

(俺のバカ・・・! 暗い顔なんてしてたから・・・)

 紗耶香先輩は時に驚くほど鋭い。そして、包み込むように優しい。
 以前俺が落ち込んでいた時も、何も言わずに俺をその豊かな胸で掻き抱いてくれた。
 俺はその甘美過ぎる感触に負けないよう(?)、母性とおっぱいの大きさって比例するんだなあと、
ダメな現実逃避していたが。
 ともあれ付き合って一ヶ月、俺は先輩に何もしてあげられていない。

 言わなくては。これ以上先輩に甘えるわけにはいかない。今の俺では、紗耶香先輩と対等な位置に立つには
未熟すぎる。俺から、先輩を解放しなくては。
 縁があれば(俺のことじゃないぞ)、また交わることもあるだろうから。
 だから。



「別れましょう、先輩」

 少なくとも、今は。
 貴女にさよならを。



 少年を責めるのは酷だろう。彼が自分と恋人の関係について下した決断は客観的に見て適切だし、
時間という要因がそれを後押ししている。
 だが、客観的な正しさなど時に何の意味も持たないということを、少年は知らなければならなかった。
 相応に何かして上げられなければ恋人たる資格はないという認識を、改めなければならなかった。

 せめてあと一ヶ月・・・少年の思いがはっきりと自覚できるほどに「恋」と呼べるものに昇華する時間があれば、
あるいは違う未来もあったのかもしれない。だが、それは無意味な仮定。
 彼女の想いもまた、自分と同じくまだ引き返せる程度のものだろうと思っていた少年は、
ゆえに気づかなかった。

 僅か数文字の己の言葉が、少女の心をズタズタに切り裂いてしまったことを。
348名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 15:11:27 ID:cmHecXgd
 今回はここまで。ちょっと長くなりました。
 思いのほか反応が多くて嬉しいです。

 いきなりアメリカとか言ってますが、つっこまないでください。
 先輩はわりとお嬢様な設定なのでこういうこともあるのです。
 次は先輩の一人称の予定なので、ある程度先輩の形をはっきりさせたいところ。
 
>>341
 なるべく好感度の高い主人公を目指したんだけどなあ・・・。精進します。


 以後、やや遅い更新になりますが付き合ってもらえると嬉しいです。
(社会人でなければ一気に書き上げちゃうんだけどなあ・・・)
349名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 15:32:55 ID:6u5HaZdB
いやいや、>>341は最初のやつしか見てなかったからあんなことを言ったんだよ。
俺は比較的誠実ないいヤシだと思うよ。これからにwktk
350名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 16:06:45 ID:Mdm90yVi
おいらの子供とおなじ名前・・・GJ
351名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 16:55:18 ID:SJTTDRgu
個人的には主人公はいいやつだと思った。
はやくも先輩の動向が気になります。
作者さんGJでした!
352名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 17:35:47 ID:Zm2sCH91
作者さんGJ!!

>>350
そ、そこはGJって言ってしまっていいのかwwwwwww
353名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 20:26:01 ID:GCnPkflm
            -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
            / /" `ヽ ヽ  \
        //, '/     ヽハ  、 ヽ
        〃 {_{.⌒  ⌒ヽリ| l │ i|
        レ! . (○)  (○).从 |、i|
         ヽ|l⊃.(__人__)⊂⊃ |ノ| 死ぬまで一緒よ、名無し君♥
      /⌒ヽ__|ヘ  |r┬-|  ..j /⌒i !
     \ /:::::| l>.`ー'´.イァ/  /│
       /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
      `ヽ< | |  ヾ∨:::/ヾ:::彡' |
354名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 20:48:44 ID:S5auPnmz
GJ!これ以降の展開に今からwktk状態で期待してますね
355名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 21:25:05 ID:bCkdPDjF
末恐ろしいことにどんどんと神が投下してくれるこの状況は
エロパロ板ナンバーワンの称号を頂く日も夢じゃないかもしれん。

創造と工夫でお話は無限大に広がる



とりあえず、神たちに栄光あれ!!
356名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:47:59 ID:GXuqKY78
ナンバーワン云々言うほどお前ら他スレを見てるのかと
357名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:00:24 ID:Mdm90yVi
今更やけどわたあなは何回でも読めることに気付いた。属性が妹じゃないのに。週間じゃんふより面白いスレですな
358名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:07:25 ID:MWxigoRG
あの人が好きだけど、あの人には他の女の人が→諦めよう。その方があの人の為にも…
な展開にモヤモヤしていた俺にとって
あの人が好きだけど、あの人には他の女の人が→許せない。消してやる
と、愛をストレート且つダイレクトに伝えようとするこのスレの女キャラは聖女に見えるぜ
359名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:08:52 ID:llO2wgNc
>>356
ここって作者マンセーし過ぎなんだよな。
悪い所は指摘したほうが作者さんの力量も上がるだろうに。

でもそれ言うと、住民から袋叩きに合いそうなんだよな、ここw
360名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:17:18 ID:Z3NJhR+3
>>359
的を射た指摘ならどんどんすべきだよな
作者さんとしてもそういうのは欲しいだろうし
361名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:22:37 ID:DXE/B0Br
すべきなの?ほんとにいいのか?じゃあ言うけど
>>323の一行目は
知ってるでしょ? より 覚えてるでしょ? のが正しいだろうなと思ってはいた。
展開やらあまり大きな部分については善し悪しで語ることではないと思うけどね。
362名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:23:21 ID:1idOE1kr
まぁ、まともな指摘ならした方がいいとは思うけど。

>>356
数と質のバランスの問題じゃない?
そりゃ他のスレにも良作はあるけどいかんせん投下スピードが……
363名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:33:57 ID:rEM1PGmW
とりあえず過保護はあの気持ちの悪い素敵に無敵な兄貴をなんとかしる。
あれが出てきてから過保護が急激につまんなくなって読むのやめた。
そういうのはチラシの裏にでも書いとけ、と言いたくなったよ。

ってこういう事こそチラシの裏に書いとけと言われそう。自分でもそう思う。
だから俺は自分に合わない作品はスルーする事にしてる。
そしてもう俺はこのスレでは余程の事がない限り毒は吐かないだろう。
364名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:34:33 ID:v+bUE9jT
「夕焼けの徒花」にwktkです
このまま修羅場っていくなら、このスレでは珍しい泥棒猫無し作品になるかも?
でも、もちろん泥棒猫はいつでも大歓迎です! 2人でも3人でも!
365名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:38:11 ID:35A7GhrZ
あんまり指摘とかすると神々が投稿しにくい雰囲気になるからバランスが重要。
ちょっと気になったことぐらいを言うのがいいのかと。

あとやっぱり人によっては癖の強い書き方する人がいるんだなぁと文才が無い俺が言ってみる。

さてエロエロマダーー?
366名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:44:06 ID:PrYNBkkh
悪いところを指摘するのは良いことだと思うよ。
それが本当に「悪いところ」で、尚且つ指摘と叩きの区別ができてたらな。
こういう流れになると、指摘でもなんでもなく、
ただ自分の嫌いな作品を叩くだけのやつがでてくるからな。
367名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:44:43 ID:0h55xtSR
義姉マダーー?
あれで終りじゃないよね?
368名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:54:10 ID:gFMdZ9F0
文章の指摘とかならいいけど展開とかに口を出すのはどうかな
好きじゃなくなった作品は見なければいいと思うし
369名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:56:42 ID:GXuqKY78
>>359
俺は馴れ合いでもいいと思うけどね。
こういう流れからわたあなやら沃野やらが出てきたわけだし。
たまに神作品と出会えるだけで満足さ
370名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:57:58 ID:BQtQ9M3y
まあ誤字脱字とか、文章の表現方法とかについての軽い指摘なら良いかもな。
ただ内容やストーリーについては書く人間の自由だと思うな。
基本的に自分の書きたいストーリーとかキャラを書くわけだし。
ストーリーやキャラが自分に合わないなら読まなければいいと思う。

てか基本的には感想レスだけでいいんじゃないか?
指摘して欲しい人もいりゃ、指摘されると投下しづらいって人もいるだろう。
指摘OKな作者様は予め投下する時にメル欄に書いておくとかさ。
371名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:58:14 ID:6u5HaZdB
>>366
確かになあ……>>363とか叩きとまではいかないけどちょっと言いすぎだと思う。
漏れは過保護とか結構楽しく読んでるので楽しみ方は人それぞれでしょ。
なんだか、荒れそうなのでこの話題はこの辺にしとかないか?
372名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:01:31 ID:j2E5bQ4W
作品への指摘の是非は、この板のどのスレでも、永遠の課題ではあるな。
大抵正論としては、「やればいいじゃん」ということになる。
作者の側からも、レスがつかないよりはずっといいという意見が強い。
だが、そこから荒れたり過疎ったりするのも、動かしがたい事実。
元々エロパロ板自体、職人同士が切磋琢磨する場としては向いていないからさ。

批判するなと言うのではなくて、するなら皆でちゃんと「覚悟」をして欲しい。
この板の良スレが、ほんの些細なことで、一瞬で廃墟と化すのを何度も見てきたんだよ……。
この板は、最も荒らしやすい板の一つだ。
そしていわゆる「的を得た批判」というのは、荒らしにとって非常に利用しやすいもの。

だから、危険に対する覚悟があるのなら、ドンドン批評していけば良いとおもう。
作品投下数がちょっと減ってもかまわないし、荒らしは見分けられる。スルーできる。
できなければ荒れる。その覚悟はしておいた方がいい。
373名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:07:33 ID:GXuqKY78
馴れ合いは馴れ合いでまた、荒らしを呼び込むもんだよ。
各人の判断で好きにすればいいんじゃね?

↓の人、まとめか投下たのむ。
374名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:09:10 ID:uvkupEE5
>>372
いや、指摘と批判、批評は違うでしょ。
上で言われてるのは誤字脱字とか、表現がおかしかったり、
そういう作者の勘違いや間違いを指摘するってことでしょ。
批判、批評なんてのは結局個人の好き嫌いなんだから、それこそチラシの裏にでも書いてろって
ことになると思う。
375名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:11:45 ID:uvkupEE5
すまん、割り込んでしまったorz

↓の人、まとめか投下たのむ。
376 ◆U9DQeTtJII :2006/08/07(月) 00:12:22 ID:h96yQgHl
それでは、投下でも……
377 ◆U9DQeTtJII :2006/08/07(月) 00:12:55 ID:h96yQgHl
「は……?」
「はいはい、仲良くしてくださいね。あ、すいませんお邪魔して」

これはいったい? 彼女は誰? つか何してんだこの人?
こんな、数ある疑問が脳内に光のような速さで浮かんでは消えていく。
とりあえずは状況確認。
目の前には俺と同じくらいの少女がいる。
髪は黒、長い瞳も黒どうみても典型的日本人。
っても、ここは日本なんだからそれは当たり前、むしろ外人のほうが少ないだろう。
そんくらい、判れよ俺!! そんなアホなことを思うくらい、今の俺は混乱している。
378名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:13:25 ID:5vuIw5D8
1指摘するなら誤字脱字
2展開に口出しするな
3嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
4荒らしはスルー
5職人さんが投下しづらい空気はやめよう
6指摘してほしい職人さんは事前に書いてね

こんなもんでどうでしょ
流し読みでまとめてみただけだから色々おかしいと思う
追加あったり削除あったらよろしくです
379名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:13:54 ID:AUnX5mur
>>376
キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー
380 ◆U9DQeTtJII :2006/08/07(月) 00:13:56 ID:h96yQgHl
「ってそうじゃなくてッ!!」
「……?」
「あんた誰!!??」
「私ですが、雪乃ですけど。神崎雪乃」
「いや、そーじゃなくて」

なんだか、会話が噛みあわない。
何だよ、まるでここに居るのが当たり前みたいな態度。
人の敷居に土足で入られたみたいな気がしてあまりいい気がしない。
向こうにはそんな悪意がないのかもしれんし、それは被害妄想ってもんだろう。
でも、見知らぬ他人が近くにいるのは正直居心地がよくない。

彼女――雪乃って人は食事を終えたら今度は犬たちと遊んでいる。
その内、一匹だけ蚊帳の外でポツンと立っている犬を見つけると、
彼女は寂しそうと思ったか、その薄茶で斑のある毛をしたどこにでも居そうな犬に近寄っていく。

「そいつには近寄んないほうがいいよ」
「どうしてですか?」
「チビは人見知りだから」
「そうなんですか? でも、大丈夫です。見ててください」
381 ◆U9DQeTtJII :2006/08/07(月) 00:14:51 ID:h96yQgHl
そう言うと彼女はチビにそっと頭を撫でようと手を伸ばす。
慌てて、俺はそれを止めようと制しようかと思ったが、やめてしまった。
一応、注意はしたんだしそこまで面倒見てあげるほどの義理もこちらにもない。
チビは俺が始めて餌付けをした奴――つまり、一人で寂しく一匹で佇んでいた奴だ。
名前は至極単純、始めたあったときはチビっこかったから、食いっぷりがチビチビしてたから。
今では立派な成犬となりチビとは言えない大きさになってるけど。
ちなみにこいつ、人(犬?)一倍人見知りが激しく臆病者だ。
下手に手出しすれば間違いなく噛まれる……はずなんだけど。

「〜♪」
「うそ……」

撫でてるよなあ……チビもやけに気持ちよさそうにしてるし。
完全に、リラックスモードに入ってるよ。
てか、俺並みに心を開かないこいつがこうもあっさり懐くなんて。
呆気に取られて、しばらくの間ずっと彼女を見つめてたせいかふと目があった。
彼女はどこか気恥ずかしそうにこちらを見ている。
そんな、彼女の反応も合間ってこちらまで恥ずかしくなり顔を背けてしまった。
382 ◆U9DQeTtJII :2006/08/07(月) 00:16:16 ID:h96yQgHl
「どうやったわけ?」
相手と視線は合わせずにボソボソと声を出す。
「え?」
「いや、チビが俺以外の人に懐くなんて滅多にないからさ。しかも、初対面で」
それに、彼女はう〜ん、と考えるそぶりを見せる。
「実は私もわかんないんですよね」
「へ?」
「体質といいますか……気づいたら、いろんな動物に好かれるようになっちゃってたみたいで」
「そうなんだ」

興味がないように答え、その後はいつもの通り。
適当にこいつらと遊んだり、うたた寝したりして時間を潰す。
彼女も俺と同じようなことをしてるが基本的に干渉はしなかった。
話したのもさっきまでの会話だけだ。
やがて、日も沈みそろそろ帰り時かと鞄を肩にかける。
彼女はまだ、帰る気配がない。

「帰んないの?」
さすがに女性を一人この夜道においてくのは気が引けるのか、
少し気になって手短に聞いてみる。
「それは、そうなんですけど……」
彼女はこちらを向いて少し困ったように苦笑すると。
「最近、ここに引っ越してきたばかりで……」
「どうやって、ここに来たかわかんなくて」
「つまり、道に迷ったと」
「はい」

だったら、こんな所で油売ってる場合じゃないだろうに。
383名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:16:46 ID:r7m4/Ba4
自分としては、改行をもっとうまく使ったらどうかなって作品がいくつか。
パッと見で読みづらいのは最近スルーしちゃうな。

で、後でレスの反応見て面白そうなのはまとめサイトで一気読みw
384 ◆U9DQeTtJII :2006/08/07(月) 00:18:58 ID:h96yQgHl
これで終わりです。
続きは少しばかり時間がかかるかもしれません。
<チラシの裏>
勢いで書いてしまったので題名を決めてない。
主人公が感じ悪いのは仕様です。
</チラシの裏>
385名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:20:14 ID:Uh0FB8ul
               _,. -‐1    ,. - ‐:‐:‐:‐:‐- 、
          _,. -‐:'´: : : : : |  , :'´::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.丶
     ,.イ ,.-:'´: : : : : : : : : : : ! /::.::.::.;.ィ::; ヘ::.::.::.::.::.::.::.::.::.:\
      /: ∨: : : : : : : : : : : : : : :l'/l:/::./ ,':/  i::.:ト、::.l、::.:!::.::.::.::.',
  ,. -:' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : -┴-'.._l/    l:| i::| i::l::.::.::.::.::i
 ー‐ァ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :`ーァ  l|  l|  l:|::.::.::.::.::|
   /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/  ー‐‐---、!ヘ::.::.::.::|
  ,': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/    ┬--、  }::.:/::.!
  ! : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ;.イj     {辷リ ′/::/!::/ここは貴方の日記帳じゃないわ。
 ノ: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.. : :、/     ;         /〃ノ:/
´. .:.:.:.:.:.:.:.: : : .:.: : : .:.:.:.. : : :.:.:.:.:.:.:__:.:.ヽ   r―-,    /-:'´::;′ チラシの裏にでも書いてなさい。
`ー---;.:.:.:..:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.V ̄`ヽ、 `ー‐'   ィ;、:::∧:{
    /:.:.:.:._:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|'´ヽ  rく` ト、. -‐'´ | `:く `   ね!
   厶-‐'´ |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ト、:.:.:.|  _,.-‐! \  __,,. -‐''´ }‐:、
       _l;.ィ´ヽ:./ヽ:|'´ ,>‐'´: : く    ∨       > \
   _,r{`7  ̄{ ̄} ̄¨`‐く__ヽ_;,: -‐; :\       _,.-:'´: : : : : :>、
 ,.イ | 〉´ ̄ ̄ ̄:  ̄`ー‘v'´>‐_く : : : \___,,. -‐:'´: : :ト-、_;,.-'´  ヽ
r'l ! ,し′: : : : : : : : :}_ノ/ __,,.ヽ: : : : : : : : : : : : : : V       l
,Jー'´: : : : : : : : : : :`辷'_,,、 '; : : ∧: : : : : :_; -'´         |
  l´: : : : : : : : : : : : }´   l  l`ー':.:.:`ー:.'"´:〈         v'
386名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:20:58 ID:s/4OwpTv
ストーカー体験談が書いてあるサイトとか知らないか?
SSを書くときに参考にしてみたい・・
387名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:22:15 ID:uvkupEE5
>>376
GJ
この投下しにくい流れの中でよく投下してくれてありがとう。
続き楽しみにしてます。
388名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:23:36 ID:cYryOp6s
読み手の要求するレベルが高くなってきたのは、このスレのピークが過ぎた証拠だな。
389名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:23:36 ID:AUnX5mur
>>384
YOUはユウキあるな!!
GJ!!!!
390名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:28:53 ID:r+Dve4fv
>>384
この流れの中ありがとう。とりあえずGJ
391名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:34:38 ID:+awWpOkD
>>386
リアルストーカーの9割は男だからあんま参考にならんかもね・・・。
ぐぐったら色々出てきたよ
392名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 00:37:23 ID:uvkupEE5
有名なのは「お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!」だなw
393名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 01:18:16 ID:qUbigeWB
S県月宮((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
394名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 01:48:08 ID:3dv7N3+Y
アレはいくら何でもアレ過ぎてアレだ>S県月宮
395名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 01:49:45 ID:fBud6J91
>>384
ここからどう展開していくのか今から(*´д`*)

自分が求めるものを具現化してくれる神に感謝
いつ読み返しても保管庫にある作品は素晴らしい
保管庫を管理していらっしゃる阿修羅殿にも感謝


で、俺の元に合鍵の藍子タンが現れるのはいつですか?
396名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 02:19:50 ID:9b3ywuJ0
馴れ合い馴れ合い言うけど、ここの住人は嫉妬修羅場成分が少なかったり
女性同志のパワーバランスが一方に偏ってる作品には冷たいと思う。
397名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 02:22:41 ID:fBud6J91
|ω・`) 修羅場だけじゃなくて嫉妬も好きだよ

依存が絡む嫉妬が大好物なおいらはマイノリティですか?
398名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 02:27:15 ID:+awWpOkD
デフォです
399名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 02:33:52 ID:/z6SjEzP
>>395
俺の元に来てからだな
あぁ投下が多くてなんだか服が脱ぎたくなってきた
400名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 03:04:24 ID:wKJKjpvd
>>399
なにい
じゃあ俺のとこにいる藍子たんはいったい
401振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/08/07(月) 03:12:18 ID:u7QcoJde


 ・   ・   ・   ・ 


 鬱な気持が昨日の昼から全く晴れない。
 昨年度までは端岬クンと毎朝顔を合わせては笑顔で挨拶を交わせてたのに……。

「こんな事してももう意味なんて無いかもしれないのに……」
 昼休み、食事を済ませた私はリンゴを剥きながらポツリと呟く。
 昨年度だったら何の問題も無く食べてくれた。 でも昨日はデザート食べてくれなかった。
 それも意識してではなく無意識で完全に忘れさられてた。
 今こうして剥いてるリンゴも、きっと気付かず食べてもらえない。
 そんな事考えながら剥いてると戸を開ける音が聞こえた。 顔を上げれば戸には端岬クンがいた。
 其の顔にはやはり満面の笑みが浮かんでいた。
 また屋上であの女と……『カノジョ』と会ってたんだ。
 だが私と視線が合った瞬間笑顔が消え代わりに困惑の色が浮かぶ。
 次の瞬間私の左手の指に違和感。

 どうやら手元が狂いナイフの刃で指を切ってしまったらしい。
 見る間に傷口から血が溢れ出す。皮が剥かれ白い身を晒してたリンゴが見る見る赤く染まってく。
 鋭い刃であまりにもスパット綺麗に切れた直後って案外痛くなかったりするからね。

「い、伊藤さん大丈夫?!」
 私が呆然と自分の傷口を見つめてると端岬クンが慌ててハンカチで傷口を押さえてくれた。
 大丈夫よ、と私が口を開こうとすると、それより先に端岬クンが口を開く。
「直ぐ保健室へ行こう!」
「大丈夫よ。 それにもう直ぐ授業始まっちゃ……」
「そんな事言ってる場合じゃないだろ?!」

 そして私は端岬クンに連れられ保健室へ向かった。

「ハイ、コレでもう大丈夫よ」
「ありがとうございます」
 止血と消毒をし包帯を巻いてもらった私は保険の先生にお礼を言う。
 そして一部始終をずっと心配そうに見守っていた端岬クンもホっと安堵の息を洩らした。
 端岬クンに向かい私は声をかける
「ゴメンね私のせいで。 授業もう始まっちゃって」
「気にしなくていいよ。 だってクラスメイトだろ」
――クラスメイト……
「うん、そうだね。 ありがとう、じゃぁ教室に戻ろうか」
 クラスメイトか。 端岬クン、あくまでもあなたにとっての私はそうだと言うのね。
 ふん――。

 その時私の心の内にあったのは何だったのだろう。
 どう足掻いても振り向いてくれない端岬クン。 だけど――それでも私は諦め切れなかった。
 どうして私じゃ駄目なの? どうしてあんな目付きの悪い女を選ぶと言うの?
 憎かった。 妬ましかった。 あの女が。

 只あの時私を心配してくれた端岬クンは、少なくともあの時だけは私だけを見つめてくれてた。
 ――あの時は一時だけでも私に関心が向いてた。 
 きっとあの時の端岬クンの心の中にはあの目付きの悪い女なんかいなかったはずだ。

 この怪我の――。
 私はジッと包帯の巻かれた手を見つめる。
 こんな怪我ぐらいで一時でも其の心を向かせる事が出来るなら私は……。

 ふふっ……。
402振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/08/07(月) 03:17:26 ID:u7QcoJde


 ・   ・   ・   ・ 


「結季お待たせ〜」
 放課後。校門で待ってたわたしの瞳に映ったのは満面の笑顔で駆け寄ってくる祥おにいちゃんの姿。
「ううん。 大丈夫わたしも今さっき終わったばかりだから」
「そっか? じゃ行くか。 ところでどこか行きたい所とかあるか?」
「うん。 えっと、ね……」


 付き合い始めてからと言うものわたしと一緒にいるときの祥おにいちゃんはいつも本当に楽しそう。
 そして楽しいのはわたしも一緒。 一緒に居るときだけじゃない。
 気が付けば居ない時も祥おにいちゃんに思いをはせて幸せな気持になってる。

 お姉ちゃんに対する申し訳ない気持や後ろめたさはやっぱりあるけど……
でもやっぱり祥おにいちゃんには笑顔でいて欲しい。
 祥おにいちゃんの笑顔を見てるとコッチまで幸せな気持になれるし。

 そんな祥おにいちゃんだけどたまにふっと物憂げな表情を見せる事がある。

「祥おにいちゃん。 何か悩み事でもあるの?」
 ある日の事わたしは其の疑問を口に出してみた。
 言われて祥おにいちゃんは一瞬驚いたような表情を見せた。 でも直ぐに笑って見せた。
 だけど分かる。 其の笑顔は気持を隠したものだって。
 だからわたしは構わず続ける。
「祥おにいちゃんの悩みってお姉ちゃんの事?」
 訊きながらわたしは祥おにいちゃんの顔を見つめ反応を注視する。
「……じゃないみたいね」
 わたしの言葉に祥おにいちゃんは困ったようにポリポリと頬を掻いた。

「祥おにいちゃんの悩みがお姉ちゃんについてだったなら私は何も言わないわ。
酷く聞こえるかもしれないけど、お姉ちゃんのことで悩んでるのだったのなら、
わたしは悩まないでなんて言わないよ。 でもね……」
 私は一息ついて続ける。
「だからこそそれ以外で悩まないで欲しいの。 悩んでるのだったら力になりたいのわたし」
 わたしがそう言うと祥おにいちゃんにホッとしたように笑顔がともりそして口を開く。
「ありがとう結季。 其の気持だけで十分だよ。 大丈夫ちゃんと自分で解決できるから。
それよりゴメンな。 心配掛けさせちゃって」
「そう? でも本当に無理してない? わたしに出来る事なら……」
「そうだな……じゃぁ特効薬でも貰おうかな?」
「特効薬?」
 わたしが其の声に思わず小首を傾げると
「あぁ、ちょっと目を閉じてくれるか? あ、そうそう首の角度も其のままで」
 言われてわたしは祥おにいちゃんの言わんとしてることが分かった。
 言われるまま私は瞳を閉じる。 目を瞑った途端自分でも顔が火照ってくるのが分かる。
 やがてわたしの唇に祥おにいちゃんの唇が重なる。
403振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/08/07(月) 03:19:09 ID:u7QcoJde

 唇――体の中で最も鋭敏な部分の一つ。
 そして瞳を閉じた状態で交わすことにより其の感触は更に鮮明に伝わってくる。
 祥おにいちゃんの唇の其の柔らかさが、感触が、温もりが、そして鼓動までもが。
 わたし達のキスは回を重ねるごとに重ねる時間が、味わう時間も増していった。
 そして今交わしたキスも数十秒といつもと比べても特に長かった。
 やがて唇を離し、目を明けると目の前には祥おにいちゃんの顔。
 キスそのものの感触も好きだけど、実はわたしは其の直後に見せる祥おにいちゃんの表情。
 それを見るのがもっと好きだったりする。
 そう、この幸せ一杯の顔を間近で見るのが。

「元気でた?」
「あぁ、もうばっちり。 ありがとうな結季」
「ううん。 わたしもその……祥おにいちゃんとのキス……するの好きだから」
 言ってて自分でも顔がますます熱くなっていくのが分かる。
 そしてわたしのそんな顔に祥おにいちゃんは一段と其の笑顔を輝かせる。
 良かった祥おにいちゃん元気になってくれて。

 でも逆に私の胸中には疑問が残る。 祥おにいちゃん結局何を悩んでたんだろう。
 気にはなるけど……でも今はあえて訊かない。
 折角祥おにいちゃんが元気を取り戻してくれたのに蒸し返す事になるから。
 だから訊かなかった。

 でも本当に何なのかしら。 一人で解決できるって言ってたけど、大丈夫かなぁ……。
 大丈夫なら良いけど、若しそうじゃなかったのなら……。
 そして祥おにいちゃんがあんな顔をしてる原因が誰か――他の誰かによるものだったのなら……。

 わたしはそのひとをゆるさない


 To be continued...
404血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:15:55 ID:/FsiCDxB
投下します
405血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:16:34 ID:/FsiCDxB


 時間は少々遡る。
 
 荒々しく踵を鳴らし、アマツはミシアに指定された場所へと向かっていた。
 指定された場所は、東4番棟の応接室だった。
 応接室とはいえ、あくまで本棟ではなく東棟の応接室なので、その造りは豪奢とはほど遠い。
 見栄えを気にするビビス公爵が待っている場所としては、かなり不自然だ。
 しかし、近衛隊隊長とはいえ、正式な爵位は士爵であるアマツとしては。
 ビビス公爵の大抵の指示には、立場上従わなければならなかった。
 
 でも。
 本音を言えば。
 ユウキの側を、一時たりとて離れたくはなかった。
 
 折角、ユウキに抱きしめて貰えたのに。
 ユウキの心の内側に入り込めたのに。
 ――ユウキを付け狙う、食人姫のもとに置き去りにしてきてしまった。
 
 ユウキは無事だろうか。
 無理を言ってでも、一緒に連れてくるべきだったのかもしれない。
 襲われていたらどうしよう。
 食人姫に常識を期待してはいけない。
 ひょっとしたら、泣き叫ぶユウキを押さえ込み、服を破き、嫌がるユウキに無理矢理――
 
 ぎり、と奥歯が軋んでしまう。
 今からでも遅くはない。すぐに引き返してユウキを助けに行くべきか。
 
 
 ――いや、落ち着け、アマツ・コミナト。
 食人姫も馬鹿ではない。強姦することでユウキの心を手放すような真似はしないだろう。
 ことに及ぶのであれば、周到に手を尽くしてからの可能性が高い。
 しかし、激昂に駆られて人の背中に噛み付く程度では、そんな策など準備できまい。
 すぐに用事を終わらせて、すぐにユウキのもとへ向かえばいい。
 食人姫の部屋にいても関係ない。そのまま外に連れ出して、自分の部屋か宿にでも連れ込めばいい。
 そして昨晩のことをいっぱい慰めてもらい、ユウキに弱い私を印象づけた後、血塗れ竜を殺せばいい。
 そうすれば、ユウキの心は私のもの。

406血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:17:14 ID:/FsiCDxB

 組み上げた計画の結末を想像すると、頬が緩むのを止められない。
 もうすぐだ。もうすぐで、ユウキは私のものになる。
 いつでも私を気にかけてくれるようになる。
 いつでも私を抱きしめてくれるようになる。
 いつでも私を“愛して”くれるようになる。
 
 ぞくぞくする。
 
「……やべ。下着がちょいと濡れちった」
 これから公爵に会うというのに、自分はなんてはしたないんだろう。
 ユウキにお仕置きしてもらいたいなあ。
 お尻を平手や鞭で叩かれたり。
 縄できつく縛られたり。
 首輪を付けられ、裸で散歩させられたり。
 ユウキにされるのであれば、どんなことだって悦べる。
 って、私が悦んでしまっては、お仕置きにならないか。残念。
 私が堪えそうなお仕置き――たとえば、ユウキに無視されるだとか、
 
 それは駄目だ。
 
 一瞬で血の気が引いてしまった。
 頭のてっぺんから爪先まで冷たくなり、ごうごうと耳鳴りがして歩けなくなる。
 ユウキは私を見ていなくちゃ駄目。
 ユウキに無視されたりしたら、きっと私は生きていけない。
 だから、やっぱり、お仕置きは駄目だ。
 そんなことを考えるより、ユウキに悦んでもらえることを考えよう。
 ――ではなくて。
 変なことを考えるのは止めて、さっさと公爵の所に行かなければ。
 ビビス公爵がこちらを敵対視しているのは承知している。
 故に、油断してはいけない。
 死んでしまってはユウキと会えなくなってしまうのだから、殺されないように気を付けなければ。
 何せ、今の自分は負傷中の身。
 右腕は、間接をはめ直したとはいえ、筋が痛んでしまっているため、まともに動かすのは難しい。
 実質、片手しか使えないようなものだ。
 こんな状態で、最悪の場合、荒事に挑まなければならない。
 ビビス公爵はメイドを私兵にしてしまうような大変態だ。応接室でいきなり殺されそうになる可能性だってある。
 腰の剣は、左腕で抜きやすい位置に佩き直す。
 部屋に入った瞬間襲われる、という可能性は低いだろうが、それでも気を張っておくに越したことはない。
 
 
 そして、応接室の前に辿り着いた。
 入念に準備を整えて、扉向こうに明確な殺気が潜んでないのを確認してから。
 こんこん、と。
 落ち着いて、ノックをする。

407血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:17:49 ID:/FsiCDxB
 
 
 
 ――部屋に控えているのは6人。
 ビビスは応接室のソファーにふんぞり返っている。
 その脇にメイドが2人。気配から察するに、戦闘訓練を積んでいる模様。
 部屋の端に武装した兵士が2名。制服は正規軍のものではない。私兵か。
 そして――後の1人は姿が見えない。
 奇襲役として隠れているのかと思ったが、気配を隠している様子もなく、奥の部屋で何やら盛んに動いている。
 感じとしては、男女の情事の気配に近いが――相手の気配を欠片も感じられない。
 まさか、一人でとんでもない自慰をしているのかとも思ったが、状況からしてそれはあるまい。
 こちらを攪乱させる役だろうか。それならそれで、気にしなければいいだけの話である。
 
 
 公爵の話は、退屈なものだった。
 私が囚人と死闘したことに対する叱責と、それに関する問題点の羅列。
 しかし、そんなことが本題ではないことは、わかりきっている。
 ビビスがクドクドと語る内容の裏には、ある明確な言葉がはっきりと示されていた。
 
 お前の弱みは自分が握った。
 逆らうことは許さない。
 
 中央での政権争いに参加している身なら、ここではビビスに従わざるをえないだろう。
 私自身、本家の駒のひとつとして、余計な問題は起こさないように厳命されている。
 でも。
 ビビスの狙いは、あくまで私を亡き者とすることのみ。
 囚人闘技場で、更に好き勝手出来るようになりたいだけなのだ。この変態親父は。
 血塗れ竜を庇ったことがそんなに気に食わなかったのか。
 今なら喜んで受け渡せるが、残念ながら手遅れだろう。
 ――しかし、私としては、こんな変態親父を満足させるためだけに死ぬつもりなんて毛頭無い。
 責任を負わされ、無茶苦茶な要求を押しつけられたら――コイツを殺してユウキと一緒に逃げるのもいいかもしれない。
 ユウキは多少渋るかもしれないが……そのときは、強引に連れ出してしまえばいい。
 
 
 
 しばらくの間。
 ビビスのどうでもいい話を延々と聞かされ。
 途中何度か小休止を挟んだ上で、ビビスが改めて、話題を出してきた。
「――それで、君の処分だが」
 ビビスの目に、一際特殊な光が見えた。
 ここからが本題か。
 さて、どんな要求を突きつけてくるつもりか。

408血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:18:24 ID:/FsiCDxB

「このままでは、他の騎士達に示しが付かない。
 君も、隊を束ねる騎士として、範を示さねばならない立場であるわけだしな。
 しかし、君のような立場の者を罰するとなると、爵位剥奪か謹慎しかないのかもしれないが――」
 
 いいからさっさと要求を言え。
 アンタが謹慎程度で満足するだなんて、欠片も思っちゃいないんだよ。
 
「――事件を起こした場所の特性から鑑みて、ひとつ趣向を凝らそうと思う。
 囚人闘技場の選手として、その戦いぶりを民衆に見せてみろ。
 己が今後も隊を束ねるに相応しいことを、実力をもって示してみろ」
 
 戦うことは君の領分だろう、と。
 どう見ても腹の中に何か抱えてる笑みを浮かべながら、ビビスはそう言い放った。
 
 ……囚人闘技場で、ねえ。
 
「公爵様。ひとつ質問があります」
「何だ?」
「囚人闘技場で戦う場合――私は抜剣を許されるのでしょうか」
 
 要は武器ありかそうでないかということだ。
 まあ、答えは大体想像できるが――
 
「アマツ君。君も闘技場の仕組みはよくわかっているだろう?
 囚人に戦わせるのだから、武器の持ち込みなど以ての外だ」
「つまり、素手、と」
「そうなるな」
 
 あー。脂ぎった笑みのど真ん中に拳をぶち込みたい。
 ユウキの爽やかな微笑みを見たいなあ。
 ……しかし、素手か。
 徒手空拳も、少なからず自信はある。
 街のごろつき程度なら軽くあしらうことができるし、ここの闘技場の連中でも、中堅程度までなら何とかなる。
 だが。
 
「相手は決まっていますか?」
「ああ。ついこの間初戦をこなしたばかりの新入りだ。君の敵ではないだろう?」
「名前は?」
「新入りだと言っているだろう?」
「その新入りの名前を教えていただきたいのですが」
「…………」

409血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:18:58 ID:/FsiCDxB

 じっとりした視線が突き刺さる。
 まあ、言いたくないのなら、こっちから言ってやるか。
 
「――アトリ。通称“食人姫”ですね?」
「……察しがいいな。まあ、そういうことだ。
 まさか、近衛隊を束ねる者が、新入り程度に無様に負けるはずがないよなあ?」
 
 いけしゃあしゃあとよく言ったものだ。
 食人姫が新入りレベルではないことをよく知っているくせに。
 ……武器があれば、おそらく倒すことは可能だろう。
 怪物妹との戦いは見たし、その特性も大体理解できた。
 愛剣の使用が許可されるのであれば、きっと苦もなく殺せるだろう。
 しかし――素手となると話は別だ。
 殺すことは勿論、倒すことも難しい。上手くいって相打ちが限界だろう。
 
 つまり……これは、無茶苦茶な要求ということだ。
 
 故に。
「お断りします」
 本家の権威など知ったことか。
 中央での政権争いは、ジジイどもが好き勝手やっていればいい。
 私は、ユウキを連れてどこか遠くに行ってやる。そして幸せになるんだ。彼の暖かさに包まれて。
 
 背を向ける。
 もうこんな場所に用はない。
 さっさとユウキのところへ向かうだけ――
 
 
「断っても、いいのか?
 あの監視員――ユウキ・メイラーといったかな」
 
 
 ぴたり、と。
 私の足は、地面に貼り付けられ動かなくなる。
 
「……聞き覚えのない名前ですが、その監視員が、何か?」
「なに。その監視員のもとに、ミシアとティーを付けてある。
 お前が一人で奴の側に近付いたら、即殺すように言いつけた」
 
 ……殺す?
 ユウキを?

410血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:19:48 ID:/FsiCDxB

「幸いなことに、“暗殺侍女”の腕前を、食人姫や血塗れ竜は知らないからな。
 一瞬の隙を突いて殺させることは十分に可能だ」
 
 ……なるほど。
 ビビスの懐刀である暗殺侍女がこの場にいないのはそういうことか。
 食人姫がすぐ側にいたとしても、メイドの技能を見抜けない限り、ユウキを守るのは難しいだろう。
 ……ここまで、手を打ってくるとはな。
 ビビスの執念は、ユウキにまで及ぶようになっていたか。
 
 
 それがわかれば、もう躊躇う理由なんてない。
 
 
「公爵様」
「ん? 受ける気になったか?」
「ユウキが殺される条件は、“私が彼に近付いたと暗殺侍女が認識する”ということですね?」
「ああ、だから大人しく――」
「ユウキが殺されないようにするには、2通りの手がありますね。
 ひとつは貴方の指示に大人しく従うこと。
 そして、もう一つが――」
 
 
 左手を剣の柄へと滑らせる。
 片腕での抜剣なんて慣れてないが、まあ、何とかなるだろう。
 ビビスの脇に控えているメイドの一人が咄嗟に気付き、飛び出てくる。
 腰の捻りと抜剣の勢いを利用して、一閃。
 真一文字に振り抜かれた愛剣は、メイドが盾代わりに挟んだ暗器を破壊し、そのまま頭部を斬り裂いた。
 
「「ビビス様!」」
 一連の動きに反応し、部屋の両脇に控えていた兵士が、ビビスの近くへ駆け寄った。
 ……ちっ。流石に単独で襲いかかってくるほど馬鹿じゃない、か。
 まあ、この程度の連中なら、3人がかりでも大したことないけどな。
 
「――ここで皆殺しにして、暗殺侍女の2人に気付かれないように、ユウキを助ける。
 私は、後者を取らせていただきます」


411血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:20:29 ID:/FsiCDxB

 さて、あとは、こいつらを斬り殺すだけ。
 そう思ったが。
 
 ……ふと、違和感を覚えた。
 奥の部屋で動いていた気配が。
 突然、動かなくなった。
 
 否。それだけではない。
 先程まで感じていた気配とは別の気配が。
 並の兵士には到底発せられないような、禍々しい殺気を放ちながら――
 
 
 ごがん、と。
 部屋の壁が爆発した。
 
 
「……っ!?」
 飛んでくる破片を何とか弾き、粉塵の向こうに目を凝らす。
 この攻撃、この気配、まさか――
 
「ゆうきさん、どこ?」
 
 ――怪物姉。
 間違いない。女で、石壁を破壊できる攻撃を行える者など、コイツ以外は存在しまい。
 だが……まさか、生きていたとは。
 血塗れ竜との戦いは見ていたが、腕を引き千切られ、しかもそれを眼孔に突き刺されていた。
 腕だけの負傷ならともかく、脳まで破壊されてなお生きているとは……。
 
「……いや、そういえば、あのとき」
 血塗れ竜は、確かに怪物姉の腕を、突き刺していた。
 しかし、己の腕が吹き飛ばされた直後ということもあり、踏み込みが甘くなっていた気がする。
 それで――浅い部分までしか刺さらなかったのか。
 しかし、だとしても十二分に致命傷だとは思うが、それでも生きているあたり、コイツは名前の通り“怪物”だ
 
 先程まで動いていた気配は、怪物姉を強姦でもしていたということか。
 ビビスの異常極まりない変態性には呆れ果てるしかない。
 だが、そんなことより――
 気配が死体同然であったはずの怪物姉は、どうしていきなり動き出したのか。
 
 ゆうきさん、どこ
 
 ――ああ、そういうことか。
 脳の一部を破壊されても。
 残っていたものが、あったのか。

412血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:27:33 ID:/FsiCDxB

 ユウキと怪物姉がいつ出会ったのかはわからない。
 だが、その経緯は想像できる。
 奇しくも、私が忠告したことだ。
 ――血塗れ竜の弱点を探るため。
 あの小娘はどう考えても疫病神だ。あいつのせいで、ユウキに変な虫がまた一匹、付いてしまった。
 
 とんでもない攻撃は健在――とはいえ、見てくれは死にかけ以外の何ものでもない。
 左腕の根元は赤黒く染まり、左目には暗い孔が空いている。
 着ている服はボロボロで、布切れを纏っているのと大差ない。
 それなりに離れているにもかかわらず、異臭がここまで届いてくる。
 生肉と精液が腐った臭い。
 ろくな手当もされずに、死姦の如く犯され続けた結果だろう。
 はっきりいって、生きていることすら奇跡である。
 こんな状態で、まともな戦闘なんて不可能だろう。
 
 そう、思ったが。
 
 怪物姉が、足下から何かを拾い上げる。
 ……先程私が殺したメイドの武器だった。手甲型のナイフ。無事だった方が床に落ちていた模様。
「ねえ、どこなの?」
 ゆらり、と怪物姉が動く。
 向かう先は――ビビス公爵。そちらを虚ろな右目で捉えながら、一歩、一歩と進んでいく。
 
 メイドと兵士2人が目配せを交す。
「……ふっ!」
 私と同じ判断を下したか、こちらに注意を向けつつ、一人が怪物姉へと攻撃を仕掛ける。
 長剣での一撃。
 脳の一部を破壊された半死体では、絶対に防げないと思われる一撃。
 なのに。
 
 一閃を完全に見切り。
 手甲を付けた右手を引き絞りながら一歩詰め、
 
 振り抜かれた右腕は、
 
“鎧ごと”、兵士の胴を引き裂いていた。

413血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:28:22 ID:/FsiCDxB

 金属の引き裂かれた異音が耳に残る。
 あの零距離打撃と似た技術か。
 しかし驚くべきは、その動作。あまりにも滑らかで、半死体とは思えない。
 血塗れ竜との戦闘から、怪物姉は素手での戦闘を得意とする者だと思いこんでいたが。
 
 ――コイツも、武器を扱うのか。
 
 怪物姉妹はイナヴァ村で育てられた諜報員だ。
 闘技場の選手ではない。故に、素手で戦う必然性は本来なく。
 得意とするのは――武器を用いた戦闘の方だったのか。
 
 素手で血塗れ竜と互角の戦いを演じた怪物姉。
 それが武装したら……一体どれほどのものになるのか。
 
 
「ねえ! ゆうきさん! どこ!」
 
 
 ばちん、ずがん、と。
 たった2撃で、残りの2人は肉塊になった。
 どちらもそれぞれ手甲による一撃。
 しかも――血塗れ竜に対して見せた素手のそれより、明らかに速い。
 素手であの破壊力を発揮するには、手を保護するため細心の注意が要る。
 それに対し今は手甲で守られている。その差が、攻撃の速度に表れているのか。
 
 怪物姉が、ちらりとこちらに視線を向ける。
 かちん、と床に落ちたナイフを蹴り上げて、そのまま空中で投擲動作へ入った。
「っ!」
 咄嗟に横に跳び、私の額を貫くコースだった投擲を何とか避ける。
 怪物姉との距離が、先程より更に開いた。
 完全に、私の剣の有効範囲外だ。踏み込んで斬りつけても届かない距離。
 ……間合いの把握もできるのか。
 半死体なんかじゃない。武装した状態の怪物姉は、立派な“脅威”である。

414血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:29:12 ID:/FsiCDxB

 怪物姉は私から目を逸らし、ビビスの方へと向き直る。
「ひっ!?」
「ゆうきさん、どこ?」
「し、知らな――ぎゃっ!?」
 怪物姉の踵が、ビビスの右手指を3本ほど踏みつぶした。
「ぅぎぃ……かはっ……ひゅ、ひゅびが」
 ぐるん、と白目を剥いてビビスは気絶しかける。
 その瞬間、怪物姉が喉を軽く蹴る。ビビスは咳き込み、気絶を無理矢理防がれた。
「ゆうきさん、どこ?」
「た、たぶん東棟のどこかにいる! た、たすけ」
 ぶち、と再び指を踏む。潰されたカエルのような悲鳴がこぼれた。
「どこ?」
 
「しょ、食人姫――アトリのところにいると思う! そこで事を起こすように指示した!
 だからきっとそこにいる! 部屋の場所はここの4階だ!」
 
 ビビスがそう叫んだ瞬間。
 食人姫は後ろに飛び退き、残されたビビスの額に――小剣が突き立った。
 
「ちっ! 間に合わなかったか……!」
 投擲した姿勢のまま、毒づく。
 ユウキの場所を吐く前に死ねよ、このアブラ豚!
 
「よんかい……」
 怪物姉が周囲を見回す。
 私は慌てて扉の前に立ちふさがる。
 こんな怪物、ユウキのもとへは行かせられない。
 だいたい、こいつはユウキの中では死んだことになってるのだ。
 そんなのがユウキの前に現れでもしたら――あのお人好しが、放っておくはずない。
 そうなってしまっては、私がユウキの一番になりにくくなってしまう。
 だから――ここで殺さなければ。
 
 
 
415血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:29:56 ID:/FsiCDxB
 
 
 出口はひとつだけ。
 通路側に出るには、私のいる方の壁を壊すしかない。
 攻撃の威力は凄まじくとも、別の対象に放っている瞬間は隙だらけだ。
 相手もそれはわかっているだろうから、私に向かってくるしかない――って、ええっ!?
 
 
 怪物姉は、窓側の壁に跳躍し、三角跳びの要領で、そのまま天井へと到達した。
 そして。
 
 ごがん、と天井を破壊。
 
 そのまま2階へと上っていった。
「……くそっ!」
 こちらは上の穴まで跳躍できない。仮にできたとしても、待ち伏せされていたら瞬殺されてしまう。
 舌打ちしながら通路へ出る。向かう先はわかっている。ユウキがいるであろう4階だ。
 全速力へ階段へと向かう。
 上の方から、幾度となく轟音が響いてくる。
 くそ、あの怪物、どんどん壁や天井を破壊しながら進んでやがる!
 音の聞こえる位置から推測するに、既に4階へは到達しているようだ。
 今は一部屋一部屋調べているのだろう。
 しかも――私にとっては不運で、奴にとっては幸運にも、食人姫の部屋へと徐々に近付いている。
 
 4階に辿り着いた。
 食人姫の部屋の位置はわかっている。
 轟音。
 そうだ、ちょうど今、音が鳴ったあたり――
「――畜生ッ!」
 全速力で通路を駆ける。
 このままでは、ユウキに奴の姿を見られてしまう。
 そうなったら、優しいユウキのことだ。彼の一番気になる対象が怪物姉になってしまう可能性がある。
 それは駄目だ。
 ユウキの一番は自分でなければ。
 汚らわしい姿をユウキの前に晒すな。彼の目を汚すな。
 お前はユウキにとっては害悪でしかない。彼のためを思うのであれば、すぐさま死体も残さず消えてくれ。
 ユウキを傷つける奴は許さない。心であろうと体であろうと、ユウキを傷つける奴は殺してやる。
 それは、私だけに許されたことなのだ。
 学生時代から培われた大事な関係。
 彼の心も身体も全て私のもの。奪う奴は殺してやる。


416血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:30:46 ID:/FsiCDxB

 息は切れ、足は千切れそうなくらい酷使して。
 ようやく、食人姫の部屋へ到着した。
 扉は開け放たれている。
 壁に穴が空いていないところを見ると、怪物姉は隣の部屋から壁を破ったのか。
 音が止んだのは少し前。
 まだ、部屋に入った直後のはず。
 
 とにかく部屋に突入して、ユウキが怪物姉にはっきりと注意を向ける前に、殺す。
 
 そう決意して、部屋へと突入し。
 ぜんぶ、吹っ飛んだ。
 
 
 粉塵の舞う部屋の端。
 ベッドの上で、食人姫が側にいる。
 
 
 ユウキ。
 
 
 アマツ・コミナトにとって、何ものにも代え難い、世界で一番大事な男性。
 その、両腕が。
 どちらも、失われていた。
 
 白い布で縛られて。
 つい今しがた止血されたように見える。
 
 部屋の中にいるのは。
 ユウキと私と怪物姉と。
 
 
 血塗れ竜と、食人姫。
 
 
 …………。
 こいつらか。
 この糞餓鬼どもが。
 ユウキを。よりにもよってユウキを。
 傷つけたのか。
 腕を千切ったのか。
 私を抱きしめてくれるはずだったユウキの両腕を。
 ふざけるな。
 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるな!!!


417血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:31:42 ID:/FsiCDxB

 なあ、血塗れ竜。
 おまえ、ユウキのことが好きだったんだろう。
 なのに、なんだ、これは。
 よりにもよって、おまえが、ユウキを傷つけたのか。
 お前なんか、助けなければよかった。
 ユウキを傷つけるような糞餓鬼には、お仕置きしないといけないよな?
 いいよ、とびっきりのやつをやってやる。
 手足切断どころじゃない。身体全体、余すところ無くミンチにしてやる。
 
 
 食人姫、おまえもだ。
 ユウキを慕っているくせに。まさか、ユウキを食いやがったのか?
 お前が食べていいものなんかでは断じて無い。
 お前はもう何も食うな。ユウキの腕を食った時点で、お前は一生分の食事をしたようなものだ。
 これ以上ものを食うのは許さない。
 今すぐ殺して、何も食えない身体にしてやる。
 身体、に――
 
 
 まて。
 
 
 どうして、食人姫は、裸なんだ?
 それに――ユウキ。両腕が失われていることだけに目を奪われていたが、格好も妙だ。
 下半身を露出させて、しかも、妙に湿っていて――まるで、女を抱いた後のように。
 
 
 
 ……。
 …………。
 ……そう、か。
 …………はは。
 ……そういう、こと、か。
 ……おまえら、あれだろ。
 わたしのいやなことをするために、うまれてきたんだろ。
 そうだ、そうにきまってる。
 だから、こんなひどいことばかりするんだよな?
 ……ふ、ふふ。
 …………。
 …………す。
 ………………ろす。
 ……………………殺す。
 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
 コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
 うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!

418血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:32:40 ID:/FsiCDxB
 
 
 
 がきん、と壁に剣を突き立てる。
 包帯をべりべりと毟り、右手を露出させる。
 薬剤の匂いが鼻につく。未だ痺れが残っているが――気にしない。
 両腕で、しっかりと愛剣を握りしめる。
 数え切れないくらい私の斬撃を支えてきた柄が、みしみしと悲鳴を上げていた。
 
 
 ――怪物姉を殺すのは後回しだ。
 
 
 まずは、この、糞餓鬼どもをぶち殺す。
 怪物姉の相手は、それからだ。
 
 見ると、怪物姉は、血塗れ竜と食人姫に対して戦闘態勢を取っている。
 都合が良い。2人をいっぺんに相手にするのは厳しいので、ここは一旦怪物姉と組むことにしよう。
 そして、確実に、こいつらを、殺す。
 
 
 こいつらは、ユウキの信頼を裏切ったんだ。
 ――その罪は、自身の命で償わせてやる。
 
 
419血塗れ竜と食人姫 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:36:09 ID:/FsiCDxB
どう見ても長すぎです。本当にありがとうございました。
まあそれはそれとして。
タッグマッチ、開始。

>>36
白だ!
メインヒロインだ!
GJ!!!!!
420名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 04:45:06 ID:CGxFypA1
>>419
こんな時間に全裸でグッジョヴッ!!

なんだろう、このもの凄い(((゜Д゜;)))と(*´Д`)が入り混じったこの気持ち
うまく言葉にできないけれど

俺今スゲー幸せ
421 ◆gPbPvQ478E :2006/08/07(月) 04:51:00 ID:/FsiCDxB
>>420
そう言っていただけると嬉しいです。
これからも頑張ります
 
そして誤字発見orz
>>414
>食人姫は後ろに飛び退き、残されたビビスの額に――小剣が突き立った。
↑食人姫ではなく怪物姉ですorz
重要な場面でのとんでもない誤字、誠に申し訳ありませんでした。
422 ◆tVzTTTyvm. :2006/08/07(月) 04:53:34 ID:u7QcoJde
キターーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
タイトルがタイトルだけに白とアトリが勝つ……のか?
全然先が読めません!!
ユメカが再び死んでしまうのかと絶望しかけてたのですが
アマツさんと組んだのなら勝つ可能性が見えてきた?? え? え?
怪物姉が勝ち残ると言う敵わぬ幻想を抱いてしまいそうです

兎に角最高級のGJを奉げたいです!!
423名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 05:11:46 ID:Gsdm0gyp
おお、今まで起きてた甲斐があったぜ…
424名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 05:30:58 ID:9H5RJaWB
×タッグマッチ
○バトルロワイヤル
425名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 06:29:42 ID:IFoB32B9
ビビスが死んで良かったと思ってるのは俺だけだろうかか
426名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 06:42:51 ID:7KCECFbl
>>424
この局面は2対2だからタッグマッチであってると思う。

とにかく作者様GJ!
427名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 07:08:08 ID:ZNOPF6Uy
GJ!おいおい、なんだこの 神 展 開 は !!1!!1
修羅場(*´Д`)ハァハァハァハァ 
428名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 07:36:02 ID:ywPs47Kr
どう考えても血みどろの展開だが……

ユウキなら何とかしてくれる!!
429名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 08:41:49 ID:h96yQgHl
いや、なんとかしちゃだめだろ。
このまま、どんどんドロドロのカオス修羅場に突入するんだよ。
430名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 08:45:04 ID:6DM4L9ab
起きたら投下されてるぅ
まったく先が読めないぜ
やっほぉぉい!!!



あぁビビスは楽に死ねてよかったね('A`)
431名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 09:11:13 ID:cLNadXHF
こ、これは一体どっちを応援すればいいんだ……!!


ビビスはまあ、死んでよかったね
432名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 10:15:04 ID:Rs0BmBoM
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

せっかくだから俺はこの怪物姉とアーマーバロンを応援するぜ
433名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 10:52:54 ID:P3O4vXMT
>>432
>アーマーバロン
ちょっwww
434名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 11:17:55 ID:fBud6J91
>>403
なんかやばいことに気づいちゃった子がいるー((;゚Д゚)ガクガクブルブル
あぁ、これはいい○○フラグですね、楽しみ(*´д`*)

>>418
うわぁ、こいつは血みどろな戦いだわ
一人の男を巡ってってところがどう見てもユウキはヒロ(略
それにしてもアマツ、いいわぁ
435アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:38:47 ID:vA2T2jLX
ども、いまや忘れられていないか心配なアビスです
投下の前にサノベです
http://upload.jerog.com/up/moe7202.zip.html
パスはメル欄です
436BLOOD 8章『差す光』  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:40:49 ID:vA2T2jLX
 やめろ―――――――――!
 何も見えない暗闇の中でゼルの声が聞こえた
 自分を見失うな・・・・
 その声にハッとし自らの手が血に染まっているのに初めて気づいた
 ゼル――――――――――
 辺りを見渡し、ゼルの姿を探す・・・・
 ゼルの声も完全に途絶え、姿も無く
 ただ虚無と暗闇・・・・それだけだった
『逃げられないよ・・・・プレシア』
 その声に私は思わずゾッとし声の方へ視線を向けた
 先に見えたのはお姫様のような綺麗なドレスを真っ赤に染めたワタシが立っていた
 左目を失い黒く変色させ、そこからの血が全身に滴り身体を紅にしていく
 頭が・・・・痛い
 頭を抱えうずくまった時だった
 断続しなにかが頭に入ってくる
 痛みも忘れ、私は目を見開きワタシを見た
 悲しげな瞳・・・・乱れた髪・・・・その手の剣
 私は知っている、ワタシを知っている
『シェルを・・・・殺すのよ・・・・プレシア』
 プレシア――――――――!!!!!
 再び聞こえたゼルの声と共に暗闇に光が差した
437BLOOD 8章『差す光』  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:42:45 ID:vA2T2jLX
 温もりを感じた、優しさを感じた
 でもそれはすぐにでも壊れてしまいそうなほど・・・・弱々しかった
 逃げられない楔が私と何かを繋ぎ、縛り付けている
 私は悟った、逃げられないのだと・・・・
438BLOOD 8章『差す光』  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:43:24 ID:vA2T2jLX
「あ、兄様・・・・なぜ邪魔をするのですか!!!」
 完全に瞳孔の開いた白い瞳が俺に向けられた
 俺は怒りを露にしリストを睨みつけた
「う・・・・く」
 ようやく自らの腹に突き刺さり血に染まる剣に気づきリストはその場に崩れた
「プレシア・・・・」
 頬に浮かぶ黒の紋様を見て俺の胸の中に罪悪感がこみ上げてきた
「ごめん・・・・ごめんな・・・・プレシア」

「それで?飲んでくれるの?」
 引き締まった身体、鋭い眼光で彼女・・・・リルスが俺を見つめた
 薄暗い城の一角で俺は彼女にある条件を突きつけられていた
 それは・・・・メシア様との婚約だ
「身分違いじゃないのか?」
「貴方も王族・・・・誰も文句をいうわけないでしょ?」
 当然か・・・・
「もし、断ったら・・・・姫様とあの・・・・プレシアに」
 プレシア・・・・その言葉だけ彼女は苦々しそうに言った
 そうか・・・・気づいてしまったのか・・・・
 俺の罪と・・・・彼女たちの因果に
 当然かだって彼女は・・・・・
「解った・・・・それで・・・・いいよ」
 俺はこのときもっと考えるべきだったのかもしれない・・・・
 俺の軽はずみな行動が・・・・何を意味するのかを
439BLOOD 8章『差す光』  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:44:09 ID:vA2T2jLX
「それで?飲んでくれるの?」
 引き締まった身体、鋭い眼光で彼女・・・・リルスが俺を見つめた
 薄暗い城の一角で俺は彼女にある条件を突きつけられていた
 それは・・・・メシア様との婚約だ
「身分違いじゃないのか?」
「貴方も王族・・・・誰も文句をいうわけないでしょ?」
 当然か・・・・
「もし、断ったら・・・・姫様とあの・・・・プレシアに」
 プレシア・・・・その言葉だけ彼女は苦々しそうに言った
 そうか・・・・気づいてしまったのか・・・・
 俺の罪と・・・・彼女たちの因果に
 当然かだって彼女は・・・・・
「解った・・・・それで・・・・いいよ」
 俺はこのときもっと考えるべきだったのかもしれない・・・・
 俺の軽はずみな行動が・・・・何を意味するのかを
 
「嘘だ・・・・」
 目を覚ますとゼルの姿はなかった
 そして・・・・同じく最近目覚めたばかりのリストに事を聞いて私は愕然とした
 ゼルが婚約し、ゼートラルに行ってしまった
 短いその言葉に私は地獄の底に叩きつけられた
「一時休戦ね・・・・プレシア」
 悔しそうにそう言うとリストは苦笑した
 
 まさか・・・・ゼルが結婚する・・・・私以外の女とだなんて
 嘘だ、ずっと一緒に居ると言ってたじゃない
 愛していると、言ってくれたじゃない・・・・
 ――――――そうか
 ゼルは騙されてしまったんだ、もしくは政略結婚で無理やりに・・・・
 可愛そうなゼル、私は助けてあげなくちゃ・・・・
 ゼルの残した剣を握り私は刀身をあらわにした
 銀色に輝く剣が反射し頬に線を入れる
 彼のためなら・・・・私は修羅になる・・・・
 待っていてください、ゼル・・・・・
440BLOOD 8章『差す光』  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:45:07 ID:vA2T2jLX
 炎に焼かれる町を見つめ、私はリストの言葉を思い返した
『ゼートラルが反乱を目論んでいるという証拠を持ってくるの、でっちあげてもいいわ』
 ガイロスト・・・・ゼルの率いた部隊を引き連れ私はあの女・・・・
 メシアの討伐へと繰り出した
 襲い掛かる矢と槍をすり抜け敵を八つ裂きにする
「殺してやる、ゼルと私の愛を邪魔するものは・・・・みんな!!!」
 自然と笑みが浮かび、私は炎と血だけのこの空間で笑い声を上げた
 その瞳に浮かぶ涙に気づかずに
 
 殺してやる、消してやる・・・・・今度こそよ・・・・シェル
441アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:46:05 ID:vA2T2jLX
区切ります
442姉妹日記 16話 Bルート  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:47:15 ID:vA2T2jLX
 二人で歩く並木道・・・・朝の清々しい空気を胸いっぱいに吸った
 少し前を歩く、彼の背中・・・・大きくて頼りがいのあるその背中
 彼・・・・涼さんには本当に感謝している
 自分を変えるきっかけをくれた
 人を愛する嬉しさをくれた
 思いは通じるのだと教えてくれた
「秋乃さん・・・・」
 振り返り、彼は私を見つめ微笑んだ
 その瞳に私の姿が映るだけで心が沸き心臓が跳ねた
 二人の間にあったわずかな距離を感じ私は駆け寄り肩を並べた
 肩が少し触れるたびに心臓が飛び跳ねた・・・・
 うぅ・・・・心臓に悪いよ
 涼さんは気取ることも無くいつもどおりに振舞っている
 なんか、私だけがドキドキしてるのかな?
 平然としている涼さんの横顔を見つめる
 頬が熱くなり顔を前方に戻して息を整える
 うぅ・・・・緊張する
 最初のデートのときはもう無我夢中でよく覚えていない
 逆に二回目の方が緊張するよ・・・・静まれ心臓・・・・
 うるさい鼓動は止まらずに私は急かした
「どれにする?」
「あ、え・・・・はい!!!」
 妙に気構えて私が答えると涼さんはくすくすと笑んで目の前の自販機を指差した
 う・・・・うぅ・・・・恥ずかしい・・・・・
 私は震える指でボタンを押すといつもの音と共に自販機から飲み物が出てきて、彼はそれを取ってくれた
「・・・・・」
 ラベルを見て涼さんは顔をしかめて、私を見た・・・・
「これ・・・好きなの?」
 私はろくに確認もせずにカクカクと機械のように頷くと涼さんの手から飲み物を受け取った
 涼さんがジュースを買うのを待って私たちはベンチに腰掛けた
「・・・・んむ」
 一気に飲み干した、それは物凄く不味かった・・・・ラベルを見ると不味くて話題の飲み物だった
 涼さんは興味半分でそれを買ったのだと思ったのか、様子をジッと見ていて
 私が不本意でそれを選んだのだと真っ先に気づき、自分の飲み物と私のを変えてくれた
443姉妹日記 16話 Bルート  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:48:13 ID:vA2T2jLX
 不味いことで有名なその飲み物を口にする涼さん
 あれ?これって間接キスじゃ・・・・
「あ・・・・ああ!!!」
 また変な声を出してしまった私に彼が不思議そうな顔して見つめた
「あ、いえ・・・・・なんでもないであります」
 赤くなる私を見、くすくすと声をあげ「不味い・・・・」
 と、言ってにっこりと笑んだ
 どうして、そんなに平然としていられるのかな?
 私なんてもうドキドキが止まらないし、緊張して失敗ばかりだし
 うぅ・・・・ごめんね、不出来な彼女で・・・・
 いつの間にか涙目になっていた私の瞳の下を涼さんの手が拭った
 そして、ゆっくりと手が繋がれた
「冷たくないですか?私の手・・・・」
 涼さんは何も答えずに微笑んで少し指の力を強めた
 その指の一本一本かた涼さんの温もりが私の中に流れ込んでくるようだった
 暖かい・・・・無意識に私が二人の手を頬に当てると涼さんは私の髪を撫でてくれた・・・・
 愛おしかった、この時間が・・・・
 離したくなかった、このぬくもりを・・・・
 どうしよう、涼さんが愛おしくてしょうがなくなってきた・・・・
「好きです、涼さん・・・・」
「僕もだよ・・・・秋乃さん」
444姉妹日記 16話 Bルート  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:49:00 ID:vA2T2jLX
「う・・・・ん」
 いつの間にか私は寝てしまったようだった
 昔のまだ、なにも無く穏やかだった時の時間のことを・・・・夢に見ていた・・・・
 私は頬を伝う涙を拭うと少しでも涼さんの近くに居たくて病室の前までやって来た
 深夜の病室、看護士さんに気づかれないようにしながら扉を開く
 そこには苦悶の表情を浮かべ、弱々しく息をする彼が居た
 こみ上げる涙が溢れ出し、私は右手を口元に当てた
「ダメよ・・・・お兄ちゃんに近づいたら」
 幽霊のような声がして振り返ると同時に私はその場に崩れた
 霞む視界の中で冬香さんの不敵な笑みが見えた
 お腹から流れる血を感じ私はうつろな瞳で血に染まった手を差し伸べ彼を見つめた
 涼さ・・・・・ん・・・・・・
445アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:49:39 ID:vA2T2jLX
区切ります
長くてすいません
446アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:50:29 ID:vA2T2jLX
 快感を舐り合い僕たちは荒々しくベットに横たわった
「りょ・う・ちゃ・ん♪」
 嬉しそうに僕の胸に頬ずりし夏姉ちゃん
 もう、なにがなんだかわからなくなっていた・・・・
 昨晩は冬香・・・今日は夏姉ちゃん
 己の愚行を思い返した、僕は二人を利用した
 彼女を・・・・秋乃さんを忘れる為に
「ごめん・・・・」
「いいのよ〜、そんなことより・・・・」
 夏姉ちゃんが雨のように僕の身体にキスした・・・・
「もう一度・・・・しましょ?」
 
 翌日・・・・
 僕は何度かコンタクトを取ろうとする秋乃さんを無視し続けた
「あの涼さん・・・・」
「・・・・・」
 無言で立ち去る僕・・・・振り返る事無く僕はその場を・・・・去った
 放課後、一通のメールが来た
『秋乃:私、もう自分を偽るのをやめました・・・・自分に正直に生きます』
 どういうことだろうか?
 そんなことよりももっと疑問に思うべ点がある
 なんで彼女が僕のメールアドレスを知っているのかってことだ・・・・
 昨日のメールもそうだ、彼女にメールアドレスなんて教えていない
 凍ったように僕の体の動きが止まった
 振り向くと満面の笑みがそこにあった、南条秋乃・・・・
「どうしたんですか?涼さん・・・・?」
 頬にその手が触れる前に僕はその手を払った
「やめてくれ!」
 少し赤くなった手のひらを撫でながら彼女は僕を上目遣いに見つめてきた
「どうしたんですか?なにもこわがることなんてないんですよ?涼さん」
 その瞳に生はなく薄くなっていた・・・・
 僕は踵を返して走り、その場から逃げ出した
 
 ふふ、涼さんったら・・・・照れちゃって・・・・可愛い
 異性に慣れていない涼さんの反応に私を頬を染めその後姿を見送った
 でも・・・・いまのあんまりだと思うな・・・・いくら恥ずかしいからって手を払うなんて
 あとでしっかりと言い聞かせないと・・・・
 私は何度か涼さんにメールを送って後ろを振り返った
 すると数人の女子が物陰に隠れた
 その理由は簡単明白・・・・今日がバレンタインだから
 まず私は涼さんの行動に細心の注意をはらいながら机や下駄箱のなかにある薄汚れたチョコを廃棄し
 放課後は後ろに張り付き涼さんが他の女と接触できないよにした
 いくらなんでも私の目の前でチョコを渡すなんて愚行できるわけないか
 私が笑むと彼女たちは悔しそうに目を細めた
 ダメよ、彼は私のなんだから・・・・私はもう偽らないし誤魔化さないの・・・・
 この間のあれが私に自分にもっと自信を持てってことだったのよね?涼さん・・・・
 だから・・・・私・・・・もっと自分に自信を待つことにしたの・・・・
448アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/08/07(月) 11:54:17 ID:vA2T2jLX
ここまで読んでくださった方
お疲れ様です

長くてすいません

『もう一の』の秋乃さんはストーカーにしようかヤンデレにしようか悩んでいます
それと以前書いたこのスレの方に先のストーリーを考えてもらう件ですが
面白そうなので『もう一つ』の選択でやりたいのですが・・・・
出来れば協力お願いいたします、そのルートは皆さんの案がないと出来ないので
449名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 11:57:09 ID:fBud6J91
>>440
|ω・`) 嫉妬で革命とは・・・恐るべし
>>444
(;つД`) あぁ、2回目のデートの暖かさがヨリ痛い
秋乃さん・・・
>>446
でもってこっちの秋乃さんはジョブチェンジかよ(*´д`*)
|ω・`) 個人的にはヤンデレが好きだけどストーカーでもいいわね

何か協力できることがあるのならいくらでも手伝いますぜ
450名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 12:11:35 ID:ZNOPF6Uy
忘れるどころか常に待ち焦がれていますよ!
しかし秋乃タンは本当に良いな(*´Д`)ハァハァ

もう一つの方の秋乃タンのクラスチェンジはヤンデレ+ストーカー希望
451名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 15:25:43 ID:ZQVbvUaJ
お、血塗れ竜きてるー!
今まで数多くのオリジナルのssをネットで読んだが
1,2を争う面白さかもしれん

作者さんサイトとか持ってないのかな
452 ◆eOod7XM/js :2006/08/07(月) 22:51:31 ID:BEsctZMW
投下します。
453『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/08/07(月) 22:53:32 ID:BEsctZMW

 面会時間はとっくに終わり、夜の闇に包まれた病院の廊下。
 月光の薄明かりに照らされたリノリウムは、忍び寄りつつある秋季の冷気と相俟って、怪談め
いた薄ら寒さを醸し出している。
 それは俺のいるこのフリースペースでも同様だ。
 無人の大型ソファや、客など来やしないのに健気に発行を続ける自動販売機。さっき隅に置い
てある血圧測定器で健康チェックなどやってみたが、静寂に低く響くモーターの駆動音は、平均
値を大きく下回ったその結果と同じく、要らないものでしかなかった。
 携帯を開き、時間を見る。もうすぐ日付が変わる頃合だ。
 担当した医師の話に寄れば、服用させた催眠鎮静剤(鎮静剤とあるが、睡眠薬の正式名称だ
そうだ)の効果は十二時間程度、とのことだったから、正午を幾らか過ぎた時間に打った薬の効
果が切れるまでもう暫らくの辛抱だろう。
 ナースセンターの人が差し入れてくれたコーヒーをちびちび飲んでいると、背後から機械的なま
でに等間隔な足音が聞こえた。

 「まだ起きていらっしゃったんですか」
 「あんまり動くと傷が開くよ?」
 彼女が手術で打たれた麻酔はとうに効果は切れている。しっかりしているのは足取りだけでは
なくて、その感情を感じさせない表情も含めて全てがそうだ。精神的な心配も無用のようだが、入
院服の裾や襟から覗く、包帯でグルグル巻きにされた左の上半身は、どうにも痛々しかった。
 「多少、ジンジン痺れるような痛みはありますけどね。平気ですよ、これくらい。何週間か入院す
れば無事退院できるそうですし。傷跡は残ってしまうそうですが、武勲ですからむしろ誇りです。
――それよりも、先輩は誰を待っているんですか?」
 いや……あくまで心配が要らないのは上辺だけだ。あるいは必ず治癒する傷よりも、こっちの方
がずっと性質が悪いかもしれない。
 雫にしろ、この娘にしろ、裡に抱え込むタイプが一旦暴走すると手が付けられないのは、日中に
散々学習した。後戻りができるなんて考えを今更抱くつもりもない。
 「……また暴れられたら病院の人に迷惑だと思ってね」
 「結構じゃないですか。その時にはまた薬で大人しくさせればいいんです。そうですね……いっ
そのことそのまま永眠させたら如何です?」
 臆面も無く言い放つ。冗談めかした科白だが、その平淡な調子の裏に隠れた煮え滾るような殺
意は、もう半ば透けているように思えた。
 「……今日発見した麻衣実ちゃんの新たな一面は限りなくブラックだね」
 「黒い娘はお嫌いですか? それとも私が先輩に牙を向くなどと、要らぬ心配をなさっているの
でしょうか? 大丈夫ですよ、私が消すのは先輩に纏わり付く害虫だけですから」
 「『消す』……ね」
 随分と物騒な話だ。
454『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/08/07(月) 22:55:24 ID:BEsctZMW

 何で俺はここまでこの娘に好かれてしまったのだろう。俺の何が、この娘を平気で片腕を犠牲
にしてしまうくらいに熱烈な愛情に駆り立てたのだろう。
 疑問ほかにもある。
 それだけのことをやらかした後なのに、麻衣実ちゃんはこれといって情緒が不安定なってないっ
てことだ。ポイントとしては、饒舌になり、自身がそういうように積極性を増したことくらいか。
 弁当を含めた荷物を教室に置いてきてしまったので、代わりの昼飯を病院の売店に買いに行っ
た僅かな時間、俺が隣からいなくなったことに恐慌して騒ぎ立てた雫が眠らされてから消灯時間
まで、その内、麻衣実ちゃんが手術を終えて目覚めた後の時間は彼女の独壇場だった。
 麻衣実ちゃんは、いかに自分が俺を愛しているか、いかに自分が雫より上回っているかを、多
種多様な同義語異義語を留まるところを知らない言葉の激流に乗せ、さらには異文化間でも通
用しそうな大げさなジェスチャーまで交じえて雄弁に語ってくれた。
 告白ならすでに『あの時』にされていたが、その理由付けということらしい。ご丁寧に自分が狂っ
た理由まで滔々と話す様子を見て、『冷静に狂う』という彼女の言葉が理解できた気がした。
 言うなれば、冷徹に狡猾な策も、破滅的な狂気も、いかなことさえもできると言いたいのだろう。
 そして、その目的は極めてシンプル。
 俺に愛してもらうため。ただそれだけ。
 麻衣実ちゃんが持てる限りの語彙を使い果たしたと思われる弁論は、他に目的がないのだ。

 「麻衣実ちゃんはさ……、その……、どうしてそこまで俺を好きになってくれたわけ?」
 余りに純粋で猟奇的、なのに理性的。
 彼女の愛情の度を過ぎた奇妙さに気おされて、聞きそびれていた疑問が、ふと口を付いた。
 異常者に何を訊いてるんだろうなと思いながらも、麻衣実ちゃんが真摯な答えを返してくれると
疑わない自分に驚く。
 あるいは、昼間雫への好意を悟った瞬間に、もう順応してしまっていたのかもしれない。
 リストカットによる謝罪と、ガラスに腕を突っ込む対抗意識。二つの差を説明しろと言われたとこ
ろで俺に説明できるはずもない。どちらもただ、破裂せんばかりの巨大な愛情表現の一部だとい
うことだけだ。そして、俺はそのような形の愛情にすでに堕ちてしまっているわけで、それだけで
麻衣実ちゃんを拒絶したりはしないのだろう。
 好かれたら惹かれるのは真理。何度目の繰り返しか知らないが。だから嫌悪感なんて湧くはず
もないし、従って取り乱したりもしない。
 事実、俺は自らが冷静と評する麻衣実ちゃん以上に冷静なのではないかと思う。
455『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/08/07(月) 22:56:53 ID:BEsctZMW

 「先輩はどうして自傷で気を惹こうとするような陰気な女が好きになったんです?」
 「陰気って……雫は我が侭言ったから俺に嫌われたかもって、ちょっと不安になっただけだよ」
 質問を質問で返されてしまった。
 麻衣実ちゃんは頭が切れるため、俺の拙い話術ではその本心を引き摺り出せそうにない。
 さりげなくフォローしまくりな自分は一先ず置いておくとしてだ。
 「俺も内緒にしておこうかな。……いろいろあるんだよ。感情移入したくなるような理由がさ。ま
あ、ある意味では保健室で言ったあの言葉が俺の気持ちの全てだと思うよ」
 「……そうですか」
 お互いに腹を割って話そうとしないので会話が途切れる。それこそ腹の探りあいになりそうな無
意味な雑談ができるほど、俺は面の皮が厚くはない。間を持たせるために空のカップを傾ける。

 「――椎名さん? ああ……やっぱり……。あなたはベットに括りつけられていなければじっとし
ていることもできないの?」
 幸か不幸か丁度いいタイミングで、巡回の看護師さんが現れた。人生の酸いも甘いも知り尽く
したような壮年期の女性は、俺にコーヒーを差し入れてくれた婦長さんだ。
 口振りからわかるが、術後間髪入れずに俺に付きっ切りの麻衣実ちゃんに呆れているご様子。
 「痛みだってまだ引いてないでしょうに、もう少し自分の身体を大切にしたらどうなの? そんな
んじゃ何をやっても肝心な時に力が入らなくて悲惨な結果に終わるわよ」
 「……すみません。……ですが、余計なお世話と言わせて下さい。私にとって先輩と話すのは
自分の身体よりも大事なんです。――それと私は自力では生きられない無力な虫ごときに負け
ませんので」
 淡々と敵意をぶつけられた婦長さんは、俺に軽く目配せした。雫の事情を知っているプロの医
療関係者は、この手の痴情の縺れが原因で引き起こされる事態を懸念してくれているらしい。
 具体的には俺の心労や雫の自傷症か。…全く、雫は幾つ『症』の字を付ければ気が済むんだ。
 「……いいわ。少なくとも今日はもう遅いから後にしましょう。他の患者さんの迷惑になるから。
用件だけ伝える事にします。――アナタのお父さんがさっきいらっしゃって、今、江田先生のとこ
ろで説明を受けているところよ。――お父さんとお話したら、頭も少しは冷えるでしょう」
 やや厳しく告げて、婦長さんは巡回に戻っていった。
456『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/08/07(月) 22:58:20 ID:BEsctZMW

 見た感じ冷静とはいえ、麻衣実ちゃんもなかなかに危険な精神構造を持っているのだが、どう
にも対応が雑じゃないだろうか。そりゃ確かに言ってることは正しいが、下手な刺激は向こうも気
を遣うところだと思う。事実、俺や雫なんかとの対応に対して開きがあるような……。
 「私は錯乱した竹沢先輩に突き飛ばされて怪我をしたことになってるんですよ。ですから、あの
方も私を一般患者と同じように扱っているんでしょう。慇懃無礼な態度と合わせて、精神が不安
定な竹沢先輩を挑発した生意気な泥棒猫、とでも考えていらっしゃるんじゃないですか」
 尋ねるチャンスを逸してしまい、後ろ髪を引かれる思いで婦長さんの消えた廊下の先を見続け
る俺に、麻衣実ちゃんがその理由を教えてくれる。
 「……私はあの方が私を先輩から引き剥がそうとするんで、そうした態度を取っただけなんです
がね。いや、竹沢先輩を先輩の正規の恋人としているのに頭にきたのも事実ですが。――それ
にしても何も知らないということは、ネームプレートに婦長とありましたが、下っ端なんですね」
 「ちょっと待って……、それってどういう……」
 「……窓の外、ご覧になっていただけませんか」
 言われるままに四階からの展望を見る。
 深夜とは言えないが、一応は真夜中だ。眼下に広がる病院の駐車場は、電灯を除けば灯りな
どほとんど見えないが……。
 ……違った。端のほうに一台目立つのが止まっている。白と黒のツートンカラーに、眩く光る赤
色灯。サイレンこそ鳴らしてないが、良かれ悪かれ人目を惹く車ではあるだろう。
 「公用車を平然と私用で使う性質の悪さからもわかると思いますが、どうしようもない人間でして
ね。薄汚い権力者の鑑みたいな人です。多分学校か病院に圧力をかけて偽装工作を施したんで
しょう。その手のパイプは下水管に負けず劣らずの本数を持っていますし。――先輩、ここの医者
から私と竹沢先輩が怪我をした状況を訊かれていないでしょう?」
 「言われてみればそうだな……」
 概要ならあの後、事態を察知して即座に飛び込んで来た保険医に伝えたが、麻衣実ちゃんの
意図するところでは、その詳細はかなり変わっているらしい。
 「竹沢先輩は手首の切り傷ですから、見れば誰だってある種の状況に思い至ります。そこを利
用したんでしょうね。私も手術が終わって、医者の話を聞くまで知りませんでしたよ」
 馬鹿馬鹿しい、今にもそう口に出しそうなほどの嫌悪感を露にし、麻衣実ちゃんは、明らかに侮
蔑とわかる視線で四階下に位置する車を睨む。
 半年一緒にやってきた俺でも、彼女がそこまで鮮明に感情を向ける相手は二人しか知らない。
 一人目は言わずもがな、雫に向ける殺意の類である。俺への好意じゃないのが少し悲しい。
 「どうせ、病院の先生方との辻褄合わせの仕上げでもしに来たんでしょう。揉み消すなら徹底的
に、あの人は自分の立場を何よりも重んじますから。たかだか県警のお偉いさんごときで、何にし
がみ付いているんだか知りませんけどね」
 「……お父さん?」
 「父と呼ぶのも憚られますよ。そもそも私の心配をしに来たのではありませんから、話が終われ
ば即帰るはずですし。あの男こそ害悪の名に相応しい、存在価値零どころかマイナスの――そう
でもありませんか、少しは利用価値がありましたね」
 くるりと振り向き、透き通るような瞳で見詰めてくる。
 その一瞬に完全に表情を消してみせるのが、麻衣実ちゃんの異常性なんだろう。そこにある狂
気の奥行きが深ければ深いほどに。
457『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/08/07(月) 23:02:55 ID:BEsctZMW
         
  ・ ・  ・ ・ ・                 ・ ・ ・ ・ ・   ・ ・ ・ ・ ・
 「殺人を事故死に偽装するのは無理でも、不審な事故死を、普通の事故死にするくらいなら恐ら
く可能でしょう。失敗すれば間違いなく切り捨てられて、良くて順当に檻の中でしょうが」

 絶句した俺から麻衣実ちゃんは眼を離さそうとしない。
 麻衣実ちゃんの視線は固い信念を持った槍だ。俺を貫いたきり、抜かれることを一厘だって疑っ
ていない。――麻衣実ちゃんの父親のことはよくわからないが、少なくともある点では俺と共通し
ている。……どうして俺はここまで俺を信じてくれる娘を切り捨てなきゃいけないんだろうな。
 「……そういうことです。先輩の責任感が最高に素晴らしいんですよ」
 信じられないことに(失礼だけど)、麻衣実ちゃんはニッコリと笑った。単純にギャップの問題もあ
るんだろうが、その極上の笑みに俺は思わず陥落しそうになった。普段のクールな麻衣実ちゃん
もいいけど、やっぱり笑顔のほうが可愛い。緩んだ口元なんて超絶レアものだぞ。
 ――三人目。麻衣実ちゃんは間違いなく俺を愛してくれている。そうでなければ、こんな心を躍
らせるような笑顔を向けてくれるものか。

 「先輩なら、例え私が檻の中に入ろうとも、先輩の愛しているならば、決して見捨てたりしないと
信じていますから。――だから竹沢先輩を私が殺しさえすれば、きっと先輩は残った私を大事に
してくれるでしょう?」

 折角の笑顔が台無しになったなと、俺はそれだけを思った。それだけで十分だった。
 だってそれは予想されうる未来の形の確固たる一つだったから。
 こと恋愛関係において、責任を取れる相手は一人だけだ。だから俺は俺が選んだ雫を誰よりも
大切にするつもりだし、殺させる気なんて毛頭ない。麻衣実ちゃんの好意は死ぬほど嬉しいが、
それとこれとは別問題だ。
 ――だが、もし雫が死んでしまったらどうなる? 俺は死人に対して責任を果たせるのか? そ
れは誠実さだと言えるのか? ……俺は死後の世界なんて信じちゃいない。あるのは現世、この
世だけだ。それなら、雫と同じくらい俺を愛してくれる人に俺は惹かれるんじゃないか?
 愛されたら惹かれるのは摂理。愛してるから恋敵を殺して自分が愛されるなんて、イカレてる。

 でも、それほど愛されるってのは何ものにも変え難い至福じゃないだろうか。

 ――俺も壊れてるに違いねえな。

 どんなロジックだよ、それ。狂人と化した哲学者だって、人殺しが好きだとは言わないだろうに。

 「……明日精神科に行って俺の分の精神安定剤も貰っておくとするわ。それじゃあ、もう一人の
精神異常者がそろそろ起きる時間だから、おやすみ、麻衣実ちゃん。……くれぐれも強硬手段に
は出ないでくれよ」

 雫の病室に歩き出す。
 麻衣実ちゃんは『お休みなさい、幸平先輩』とだけ言った。
 起伏のないトーンの裏に、どれだけの想いが秘められているのかはとても計り知れない。
 その想いを受ける俺は、抜け出せない混沌の中に嵌まり込んでいた。
458『二等辺な三角関係』 ◆eOod7XM/js :2006/08/07(月) 23:06:09 ID:BEsctZMW
ここまでになります。間があいてしまってすみませんでした。
予想以上に長くなったので、次の雫サイドで一部を終わりにします。

文章どころか、内容まで人を選びそうですが……、
きっと全部こ〜ちゃんの趣味が良過ぎるせいだ!
459名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 23:20:16 ID:Rs0BmBoM
キター

麻衣実かわいいよ麻衣実
460名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 23:32:14 ID:Fnsmuws1
作者さんGJ!

権力に汚い父・・・新たなファクターとなる人物の登場ですね。
雫も父というキーワードを持っているし、これがどう話しに絡んでいくのか・・・。
「血塗れ竜〜」もそうですが、主人公とヒロインだけで完結しない物語が書ける人は
すごいです。物語の深みが何倍にも増すと思うので。


麻衣実ちゃんの絶賛はほかの人に任せます^^
461名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 23:55:52 ID:zWwd00Y5
雫はこんな強敵に立ち向かう事が出来るのか!?
それともただひたすら幸平にアピールして今のアドバンテージで逃げ切るのか!?


麻衣実ちゃんの絶賛は次の人に任せます
462名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 00:39:08 ID:UYJMmwT2
麻衣実ちゃんナイス壊れガール!!

策士と言っても特殊な位置付けになるけど、
この素直な腹黒さが良い感じ


このスレで誰が最初に書いたかは分からんが、
作品全体の割合で見ると策士の割合が結構高い気がする
463名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 00:40:10 ID:0a/yNDU/
ジャーンジャーンジャーン


ゲェー!麻衣実!
464名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 01:04:21 ID:46IhhAbV
こーちゃんも気が狂いだしそうですね
こんな場面なのに二人を心配するなんて・・・
465名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 01:22:27 ID:D39yqOxn
とりあえず何はともあれ、麻衣実ちゃんは俺の嫁ってことで。
466名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 02:03:15 ID:FrPXQd06
まとめ乙
仕事haeeeeeeeeeeeee
467Bloody Mary 2nd container 第十八話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/08(火) 02:15:14 ID:8RNxaU3O
「……黙れって言ってるんだよっ…!」

――――――――ゴッ

 俺は怒りと共に右手を振り下ろした。鈍い感触が腕に伝わる。

…殺してはいない。
刃を振り下ろさず、剣を握ったままの拳をモルドの顔面に打ち込んでいた。

「はぁ……はぁ……はぁ…」
 限界値を超えた怒りを無理矢理押し殺したせいだろうか。少し息苦しい。
だけどその息苦しさに反して、心は軽くなっていた。

 拳をどけると鼻っ柱の折れたモルドの顔が見えた。
まともにパンチをもらってのびている。

……間抜けな顔だ。こんなヤツにさっきまで踊らされていたのかと思うと情けない気分になった。
 どうして殺さなかったのか自分でもよくわからない。
確かにコイツの死に顔を拝むために剣の修練を積んできた。大切な人たちはコイツのせいで死んだ。
たとえ復讐を抜きにしてもモルドが今日やったことは万死に値する。
正直に言ってしまえば……今も心の奥底にある黒い情念が「殺せ」と囁いている。
 だけど、それでも。
過去のしがらみにいつまでも縛られているのは嫌だった。復讐はもうウンザリだとアリマテアでそう思った。
だからコイツを殺すと決定的な何かを、俺が本当に守るべきだった何かを失うような気がして。
土壇場で殺意を抑えこんだ。

「……………」

……これでいい。
 俺はもう前を向くって決めたんだ。こいつを殺しに来たわけじゃない。姫様を助けたかっただけだ。
姫様が無事なら――――――それでいいんだ。
468Bloody Mary 2nd container 第十八話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/08(火) 02:15:55 ID:8RNxaU3O

 ひとつ、深呼吸。

「姫様、怪我はありませんか?」
 自分の気持ちに決着を付けて姫様に歩み寄った。

「……ウィリ、アム……」
 彼女の目には涙。
とめどなく溢れる涙が間もなく頬に零れようとしている。

「〜〜ッ!!」
 涙が零れた瞬間。姫様が顔をくしゃくしゃにして走り出した。俺も手を広げて彼女を迎え入れる。
俺が一歩、二歩近づく間に彼女はすぐ俺のところまで駆け寄ってきていた。

「ウィリアムッ!!」

 いつものように俺に飛びつく。元気だ、と言わんばかりに。
それをしっかりと抱き止めた。姫様の温もりが伝わって、俺も張り詰めていた緊張をやっと解くことができた。
そのせいか疲れがどっと押し寄せ、がしゃん、と握っていた剣を取り落としてしまった。

「恐かった…!恐かった…!!」
 泣きじゃくりながら胸に顔を埋めて吐露する姫様。

「もう大丈夫です。もう、大丈夫」
 安心させようと背中を摩る。彼女の肩は震えていた。
「遅れてすいません。怪我はしてませんか?」

「ああ!ああ!きっと…きっとウィリアムなら来てくれると思っておったぞっ」

 やっとだ。やっと守れた。三年前、出来なかったことをやっと。

「俺は姫様の『王の盾』ですよ?どこにだって駆けつけます。
それより……すいません。俺が姫様から離れたせいで…こんな―――――」
 姫様の肩に手を添えて謝ろうとしたが。
「もうよい」
 俺の言葉を遮って再び俺の胸に顔をうずめた。
「それはもうよいのじゃ。ただ、今はもう少しだけこのまま………」
 今日だけは姫様の気が済むまで甘えさせてあげよう。
そんなことを思いながら、自分の顔も自然と綻んでいた。

……あ。団長が微妙な顔してる。後で何か言われそうだなぁ……
「ははは…」
 彼女に向かって苦笑いを浮かべた。
469Bloody Mary 2nd container 第十八話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/08(火) 02:17:16 ID:8RNxaU3O

―――――あれ…?様子が変だ。
団長の顔がみるみるうちに驚愕と焦りの表情に変わっていく。
俺の苦笑いに対しての反応じゃない。

「団長?」

――――――? 焦点が俺に合っていない。……後ろ?

「ウィルッ!!」


……!!!!!


 長年、団長の隣で死線を潜り抜けてきたおかげか。
その声ひとつで俺たちに危険が迫っているのを感じ取った。戦慄が全身を襲う。


「きゃッ!?」
 半ば反射的に姫様を突き飛ばし、後ろを振り返った。

天啓と言うべきか。先に姫様を自分から離したのは正解だった。



 そこにあったのは、『死』。

 死を与える者が。

 残った左手で剣を握り締め。

 歪な笑みを浮かべて立っていた。


気を失っていたはずの、モルドがそこにいた。
そのモルドが今まさに俺に死を与えようと。腕を振り上げようとしている。
470Bloody Mary 2nd container 第十八話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/08(火) 02:17:47 ID:8RNxaU3O


 驚きのあまり頭のどこかに異常を来たしのか。その動きが異様にゆっくりに見える。
いつの間に起き上がっていたのか。右手の出血で動けないだろうとタカを括っていたのが間違いだった。
モルドの持つ剣が夕陽の光を受けて朱色に染まる。見慣れた剣を目で追う。

 モルドが持っているのは――――――団長がいつも帯刀している剣だ。
今まで幾度となく俺を助けてくれた剣が、今度は俺の命を狙っている。


反射的に腰に手を回すが、剣の柄を掴むはずの手が空を切った。
「うっ…!?」

 しまった。剣が、ない。

一本は団長に。もう一本は俺の足元に。俺は今、丸腰だった。
 その間にもモルド完全に振り上げる動作が完了し、刀身に俺の姿が映る。
それを見ながら剣を拾い上げようと考えたが、到底間に合いそうになかった。

「だからてめぇはガキなんだよ」

 ひしゃげた鼻から滴る血を拭うこともせず。
俺を見据えて―――――死の宣告。

「死ね」

 ……殺される。直感的にそう理解した。
宣言と共に振り下ろされるであろう刃から目を背け、俺は瞼を閉じた。
471Bloody Mary 2nd container 第十八話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/08(火) 02:19:01 ID:8RNxaU3O




―――――ドンッ



 響く轟音。同時にびちゃっ、と何かが爆ぜる。
いつまで経っても剣が振り下ろされる気配がない。何が、起こった?
「……?」
 静寂が山小屋を支配する中、恐る恐る目を開くと。

「ッ!?」
 モルドの奥歯と舌がはっきりと見えた。
開いた口からじゃない。そもそも、閉じるべき上顎が無かった。
……顎から上が消し飛んでいる。残った体は剣を振り上げたままの体勢。
もう存在しない脳に血液を送ろうと切断面から血飛沫を上げている。

 どういうわけか完璧に王手を取っていたモルドが死んでいたのだ。

……がしゃん

 ほどなくしてモルドだったものの手から剣が抜け落ち、静寂に金属音を響かせた。
そのまま崩れるように遺骸が倒れ。

そして、その向こうには。




 マスケット銃を構えるマローネの姿があった。
472Bloody Mary 2nd container 第十八話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/08(火) 02:20:36 ID:8RNxaU3O
読んでる人でも多分忘れてる気がしないでもない分岐地点から再開。
473名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 02:23:16 ID:Awv7xMAJ
>>472
GJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ
今度は誰が性ヒロインになるかwktk
474名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 02:25:15 ID:0a/yNDU/
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
支援
475 ◆XAsJoDwS3o :2006/08/08(火) 02:31:20 ID:8RNxaU3O
申し訳ありません。ちょっと細かいですが訂正。

>>471の10行目
>>もう存在しない脳に血液を送ろうと切断面から血飛沫を上げている。

の“切断面”→“断面”に訂正します。

銃ぶっ放しといて“切断面”はないだろう、俺。

476名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 03:06:06 ID:KOWhoKw4
>>472
キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
マローネ様の標的が泥棒猫からモルドへ……これで団長生き残ったよ。・゚・(ノ∀`)・゚・。
477名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 11:31:32 ID:d/4VIAcT
ブラマリキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
478 ◆kZWZvdLsog :2006/08/08(火) 20:12:39 ID:9m8Xg61z
ブラマリのBルート、遂にキター!
今度はどういう展開で来るのか。
続きがすごく楽しみー。

そして投下します。
479うじひめっ! Vol.7 ◆kZWZvdLsog :2006/08/08(火) 20:18:22 ID:9m8Xg61z
 困り眉にポニーテール、美人とまでは行かないが非常に愛嬌のある顔立ちをした彼女こそ従妹の木更津遥香。
 見ているだけでいじめたくなる顔だが、絶対にいじめてはならぬ存在である。
 やほーと陽気に挨拶かました彼女の表情が一気に凍り付いて氷点下に達したのはひとえに俺が上半身裸で、
鼻がないとはいえなかなかの美人さんに組み敷かれて騎上位に移行する寸前の格好に見えていたからだろう。
「……なにしてんの、かずくん」
「なにって、ほら……ナニを?」
「へえー」
 無表情に頷くと、肩に下げていたスポーツバッグをぶるんぶるん横スイング。
 存分に遠心力をかけたところで縦回転に移行。背中から掬い上げる軌道で天井ギリギリまで持っていき。
 ――そのまま鉄槌のように振り下ろす!
「ぶべらっ!」
 が、すっぽ抜けて俺ではなく良治に直撃した。
 重く湿った音とともに奴は宙に持ち上げられ、盛大に吹っ飛ぶ。
 これが遥香の必殺技、ギャラクティカ・スポーツバッグだ。誤爆は仕様。
 暢気に他人気分で見ていた野郎が一瞬にして巻き込まれ、哀れな犠牲者へ変貌する地獄が醍醐味である。
 アホタレ良治は壁に叩きつけられた後、ずるずると下がって前のめりに倒れた。
 尻を天に突き上げ、二度と立ち上がって来れない敗北のポーズを形作る。いいザマだ。
「ひっでー! ひっでーよ、かずくん!」
 目尻に涙を浮かべた遥香が泣き叫ぶ。自分がかました誤爆はどっかの軍みたくガン無視か。
「12000発何かを喰らわせたいけど我慢してまず訊くよ! 誰、その真ん中だけのっぺらぼう女!?」
「真ん中だけのっぺらぼう女……」
 普通にショックに受けたとおぼしきアイヴァンホーさんが呆然として脱力。すとんと俺の下腹部に腰を下ろす。
 お……き、危険な位置だ。ヤンチャな愚息が叛乱軍と手を結んで理性に謀反を起こしかねない位置取り……!
 咄嗟に良治の顔を見る。気絶して壮絶なマヌケ面を晒していた。うまい具合に萎えた。
 平静を取り戻し、クールに切り返す俺。
「そんなことより遥香ヨー、いつ家族旅行から帰ってきたんだヨー。あとうちに来る予定もしばらくないって聞いたけどヨー」
「んー、昨日。それと、こっちには『友達んとこ泊まる』って虚偽報告してから来ちゃった☆ アリバイ工作も
バッチリだし、かずくんの叔父さんたちにバレなきゃもうなんつーか、アレ。アレです。ヤリたい放題デスよ☆」
「星記号が散りそうな口調でいともあっさりと……」
 こいつがザ・ワールド・イズ・マインでやりたい放題なのは昔から変わらないところである。

 少し昔話をしようか。
 小さい頃の彼女は内向的なところがあって、周りの輪に溶け込もうとしないで一人遊びすることが多かった。
 俺ん家に遊びに来たときも母親の陰に隠れてなかなか出てこないような子で、大して興味が持てなかったもんだ。
 ある日、良治と掴み合いの喧嘩をして一時的な絶交モードに入った俺は、くさくさして公園へ砂場遊びをしに行った。
するとそこには最近見知った従妹の子がいて、黙々ぺたぺたと砂の建造物を丹念につくりあげていたわけ。
 まあ、そっから先の展開は言わずもがなだろう。発作的に破壊衝動に乗っ取られた俺はそいつを速やかに破壊。
心ない罵声を浴びせて、いつも困ったように眉毛をハの字にした新参の従妹を泣かせてやろうとした。
 ――泣かなかった。足元の砂をぐっと掴み、投げつけて目潰しを仕掛けてきやがった。
 眼球の痛みに悶える愚かなクソガキ(俺)を押し倒すや、馬乗りになってガッツンガッツン殴って殴って殴った。
 何発目かで鼻血が出た。少し怯む様子を見せた。その隙をついて拘束から抜け出した俺はすかさず逆襲。その子も
負けずに応戦。互いに一歩も退かず壮絶なインファイトを展開し、駆けつけた親たちに引き離されるまで続けた。
 込み上げる鼻血を拭われながら、痛感した。こいつはハブられてひとりなのではない。
 虎が群れないのと同じ、いささか凶暴すぎるがゆえの孤高だ――と。
 かくして、最前の良治とよりもいっそうヒドい本気の喧嘩を泥だらけになって繰り広げた俺たちは、互いを無視
できなくなった。ガンの付け合いから和解へと歩み出すのに二週間かかった。全力を尽くしてドローにまで持ち込んだ
相手のことを、今の言葉でいうならリスペクトする気持ちもあったのだろう。すんなり馴染んだ。
 一緒に絵本を読んだり、おうたを歌ったり、手を繋いであっちこっちに行ったりした俺らは男女やいとこの仲を越え、
親友としての絆を結んだ。そこまでは良かった。

 問題は、はるかがキス魔として覚醒してしまったことだった――
480うじひめっ! Vol.7 ◆kZWZvdLsog :2006/08/08(火) 20:20:16 ID:9m8Xg61z
「かーずくんっ」
 まだ当時は肩上のショートにしていた彼女が、お気に入りの赤い服を着てパタパタと駆け寄ってきた。
 俺は家の前で「きょしんへー」になったつもりで夏の虫どもにホースで散水してブチ殺しの愉悦に耽っていた。
「なんでえ、やぶからへびに」
「それは『ぼう』だよ。べつのとまざってるよ。と、んなこたーどーでもよくて」
 じゃじゃーん、という口擬音とともに一冊の本を取り出した。マンガだ。姉のものをかっぱらったらしい。
「ここをみれ」
 指差したコマは、まあいわゆるキスシーンだった。しかも少女コミックではなくレディコミだったもんだから
やたらと濃厚に描かれていた。ようやくマンガの読み方を理解してきた俺にはちょっとしたカルチャーショック。
ぽかんと口を開けっぴろげにして見入った。
「なあ、なんでおくちすっとるの、こいつら」
「フフーン。かずくんってば、しらないんだー」
 得意げに目を閉じて鼻で笑う姿が腹立たしかった。
 目をつむると、遥香の困り眉は逆に自信ありげに見えるのだ。
 拗ねた俺は「しらねー」と投げやりに答えた。
「これは『キス』っていってねー、すきなひととするとチョーきもちイイんだってさー」
「ふーん」
「じゃ、しよっか」
「いきなりかよ!?」
 子ども心にも過程を無視したアバウトな話運びには慄然としたものだった。
「べつにいーじゃんかー。あたしはかずくんすきだよぉ? かずくんはあたしのこときらいー?」
 つぶらな瞳を困り眉の下でキラキラさせて小首傾げてくる幼女を無下にできる奴はすごいと思う。
 俺にはできなかった。「そうやね、にばんめくらいにすき」と譲歩返答。一番は「なうしか」だった。
「なら、」
 がしっ、としゃがんでいた俺の両耳を摘む。「いててっ」と悲鳴とともに手を振り払った俺は面を上げて睨む。
「んちゅー」
 睨まれたのもなんのその、顔を上げたのをこれ幸いとばかりに屈み込んでアヒル口を接近させた。
 キス。そう、考えてみればそれが俺にとってのファーストキスだった。たぶん遥香にとっても、だ。
 ちゅぱちゅぱじゅるじゅる、マナーのなっていないスープの啜り方みたいに音を立てて唇を吸ってきた。
 その柔らかさと口の肉を吸われる感触、ほのかに香る幼女特有の匂い――未成熟の性はがっつり刺激された。
「ぶちゅー」
 夢中になって吸い返し、止め忘れたホースの水が蟻の巣へ流れ込んで水没させるなか、真夏の太陽の熱に肌を
汗ばませて唾液を交換し合い口から頬、ときに鼻まで濡らして接吻タイムを満喫。
 一方が唇を離しても必ずもう一方はどこかを吸ったり舐めたりしている狂騒的なじゃれ合いが連鎖した。
 終わったのがむしろ不思議なくらいだった。
 まだ乾き切らぬべたべたどろどろの顔面を乱暴に手で拭いつつ、彼女は「にへへ」と不敵に微笑む。
「……これでいちばんになった?」
 瞳には、決して幼さとは相容れぬ生臭い妖しさが宿っていた。

 陽炎揺らぐ路上で座り尽くす俺と立ち尽くす相手。ともに四歳。
 ――二匹の獣が目覚めた昼下がりであった。
481うじひめっ! Vol.7 ◆kZWZvdLsog :2006/08/08(火) 20:23:41 ID:9m8Xg61z
 薄手の布団にふたり揃って転がり込んで小山をつくりチュッチュチュッチュと小鳥みたいに絶えず囀ってみたり、
お風呂で全裸になって百数える代わりに百キスしたりお湯に潜って水中キスを試みたりお外で誰もいない隙を見て
むちゅーっと大胆に戯れてみたり、果てには俺が立ちションしてるときまでムチュムチュしてみたりと、幼いがゆえに
一向に歯止めの利かない四歳児たちはバカップルも青ざめる接吻アニマルに化していった。
 そんな感じでチュッパチャップスしまくっていた某日、また姉の本棚からろくでもない蔵書を借用してきた
遥香がいくつかのコマを指して解説した。
「『キス』のときにしたをからめると、それはもうすっげーらしいぞ?」
「すっげーのか?」
 ワクワクした。早速見詰め合い、照れなんて一コンマたりとも挟まぬ素早さで唇を合わせる。
「ふむぅ……」
 しばし感触を味わった後、おもむろに口を開け広げていった。
「あーん……れろっ」
 同時に口中の軟体生物を解き放った。唾がこぼれそうになった。互いが相手の唾を啜って飲んだ。
 それでも啜り切れず顎のあたりをべたべたにしながら俺とはるかはれろれろと舌を絡め合わせ、ときに引っ込ませて
相手の舌を迎え入れ、時に追い出して自ら攻め込む。出たり入ったり絡めたり、お口とお口の攻防がひとしきり続いた。
頭ん中がぽわーっと羽根でも生えたみたいに軽くなって「すっげー」「すっげーね」と舌を接触させたまま頷き交わした。

「ただいまー……あ?」

 そこに遥香の親父が帰ってきた。忘れ物をして昼休みに取りに来たらしい。俺らは遥香の母親の目を盗むべく玄関の
上がり框に腰掛けてディープキスに勤しんでいた。パパってば愛娘がいとこのクソガキとびっちゃびっちゃ唾液を
したたらせながらそのちっちゃな舌を出し入れし合って激しく親愛の情を交わしてる場面を間近で目撃しちゃったわけ。
 それはもうすっげーことになった。一時は俺んとこと遥香んとこで断絶するんじゃないかってほどに。
 時間の経過とともに自重することを覚えた俺らはその後なんともない、ただのいとこ同士としての付き合いを続けたが。
 中学の卒業式で遥香のタガが外れてしまった。
 衆人環視のなか、感極まって泣きながら俺に「ぶちゅー」とやったのだ。
「か、かずくん……かずくんんんーっ!」
 ぐおわっ
 熊の威嚇さながら両手を天に突き上げ指を鉤状に曲げた従妹の子が至近距離から突撃してくる恐怖。
「ま、待て、話せば分か……!」
 制止も間に合わず。遥香は俺の首にかじりつき、柔道みたいな要領で無理矢理屈み込むませたところを爪先立ちになって
目を瞑ったまま――猛禽の鋭さで一気に喰らいついてきた!
 ズキュウウゥン! 昭和ライクな銃声が鳴り響く情熱的なベーゼ。濃厚すぎるほどに濃厚。
 いや――果たして何百名にも上る観客がいる前でぐいぐい唇を押し付けてくる蛮行を情熱と呼ぶべきなのか。
 突き刺さる視線も意に介さずしきりに上唇を吸い下唇を吸い両方同時に吸ってと大忙しでしたよ?
「えっ、あれ? 遥香!? 遥香が……思いっきりキッスしてるううう!?」
「か、和彦の肩甲骨付近をがっちりホールドして! 一向に離そうとしねえッ!?」
「ききききき木更津さんっ!? さささっきから激しく水音を立てて、なな、なにをなさってるんですかぁぁぁ!?」
「う、わああ……キ、キスの音がこっちまで聞こえてくるよぅ」
「へええ。キスって、こ、こんなにうるさく音がするんだぁ……」
「って、まだ続いてる!? もう一分は経ったよな!? あいつら、いつまでするつもりなんだよ!?」
「あんなに爪先がプルプル震えて……足もつらいだろうに、少っしもやめる兆しがありませんですハイ!」
「す、すごい……生徒会長の感動的な演説が彼女の本性を地獄から呼び覚ましたんだ……!」
「もしもし!? 今すごいわよ! 体育館に来なさい!」
 あー、鼻息くすぐってーなー。つか、さっきから唇吸いすぎ。お前はあれか、ラムネの瓶の口か。
 周りで騒ぐ生徒たちと、パイプ椅子蹴立てて保護者席から飛び出す遥香の親父を視界の端に捉えながら。
 俺は現実逃避することに精魂傾けた。

 そんな春のこと。

 唾液と血にまみれた卒業式のこと。
482 ◆kZWZvdLsog :2006/08/08(火) 20:25:21 ID:9m8Xg61z
困らない困り眉、降臨。属性:キス魔。
木に竹を接いだ気がするけどキニシナイ。
483名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 20:28:47 ID:LBaDVAci
GJ!

親父さん災難だなwww
484名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 20:32:53 ID:0a/yNDU/
GJ

遥香さーんw
485名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 20:46:16 ID:T0hjFCdM
>熊の威嚇さながら両手を天に突き上げ指を鉤状に曲げた従妹の子至近距離から突撃してくる
なにその燃え萌えポーズ&アクション(*´Д`)
486名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 21:23:43 ID:kBj9zn3D
初めてwintersのゲームをやった時の衝撃を思い出しました。
487リボンの剣士 27話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/08(火) 22:45:21 ID:j4Cqrzfs
投下します。
488名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 22:45:25 ID:wXhaQ9VD
やべぇ、とんでもねぇ凶器だ、遥香・・・
すでに、うじひめの存在を吹っ飛ばすほど俺の中に何かが・・・
しかもかずくんって・・・俺と同じ・・・(*´д`*)
489リボンの剣士 27話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/08(火) 22:46:10 ID:j4Cqrzfs
一睡もできなかった。
目覚まし時計が、朝になったことを騒がしく教えている。
このベルの音を聞くのも久しぶりだった。
あたしは、目覚ましを止めて、染みが付いたシーツと枕を見下ろしながら、うつ伏せの姿勢から起き上がる。
学校……行きたくないけど、行かなくちゃ……。

家を出た直後、このままいくといつものように途中で人志と会うことになる、って気付いた。
だからあたしは、全力で走った。人志に会わないように、先に学校に行った。
走ったからって、何かが振り落とせるわけじゃない。息が上がっただけ。
会えない。人志に顔を見せられない。
昨夜、人志から電話が掛かってきた。
あたしは出なかった。お母さんが引きずり出そうとして、必至にベッドにかじりついていたのを覚えている。
結局お母さんが応対したけど、人志はあたしに、こう伝えてと残したらしい。
『怒ってもいないし、恨んでもいない』
お母さんからそう聞いたけど、本当かどうかは分からない。
もしかしたら、人志はあたしに文句をぶちまけたけど、お母さんがわざと内容を変えたんじゃないか――。
……疑われたら怒るくせに、今度はあたしが人志を疑っている。
自分が嫌になる。
人志を守れるくらいあたしは強い――完全に自惚れていた。
本当は、臆病で、自分勝手で、どうしようもないくらいバカで……。

学校に着いたのはいいけど、武道場へ行こうという気にならない。
あそこは剣道をやるところで、あたしも、人志のために剣を振っていたけど――。
手に持っている竹刀が、くたびれたかのように圧し掛かっている。
昨日までは当たり前のように持っていたけど、今は煩わしい。
人志を傷付けるなら、これはもう……いらない。

結局あたしは朝錬には行かず、教室に入った。
電気の消えた、誰もいない教室。まだ朝早いから、廊下側は薄暗い。
風もなく、あたしが動かなければ音もない。
カーテンを閉めると、さらに薄暗くなった。
席に座ってじっとしてれば、音、風は止まって、光もあまり届かない空間が出来上がる。
どうしてか、あたしには、この空間がとても心地良かった。

先生が褒めてくれた。
なぜなら、今日は授業を真面目に聞いて、当てられてもすぐ正解を答えられたから。
でも、別に凄いことでもなんでもない。
ただ授業に入り込んで、ほかの事を忘れたかっただけだから。
人志の方には、絶対に顔を向けられない。

休み時間中、人志は何か言って来ることはなかった。
わかってる。もう、きっと絶交なんだ。口なんて一切聞いてくれないんだ。
それはしょうがないこと、そう思っているのに――。
490リボンの剣士 27話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/08(火) 22:46:59 ID:j4Cqrzfs
昼休み、木場春奈が、人志の手を引っぱって教室を出ていく、その背中を見て、吐き気がした。
胃の中のものが、マグマになって込み上げてきて、噴火しそうなくらい。
……確かにあたしは、人志に酷いことをして、傷付けた。人志が好きになる女に離れない。
だからといって、木場春奈。
そこにあんたが入っていいわけじゃない。
あんたは、あたしの後釜になる資格なんてない!

後をつけるなんて性に合わないけど、そうでもしないと、何かが、抑えきれないような気がした。
あたしが人志に合わせる顔がないとはいえ、女が――特に、木場春奈が接近してるのを見逃すことはできない。
つくづく自分勝手だと思うけど。
木場は、手を引いている状態から、人志との距離を縮めて腕を絡ませる。
その早さ、鮮やかさは、毒蛇が獲物を捕らえて締め上げるようだった。
握り拳が熱くなる。血反吐を吐かせてやりたくなる。
触るな。
人志に触るな! 毒蛇女が!!

「離せ」
人志は、絡みついてきた木場さんの手を。振りほどいた。
火の付いた導火線が、途中で切られて不発に終わった気分だった。
つまり、人志は木場さんに靡いているわけじゃない。
それが救いだった。

二人が食堂に入っていったところで、引き返すことにした。
あたしも中に入って様子を見たいんだけど……、そこまでやったら、ストーカーになる。
大丈夫よね。人志があたしを嫌いになったからって、すぐ木場さんに乗り換える、なんてことはしないわよね。
人志が、あたしを嫌いに……。
その部分を思うと、涙が出てくる。悲しくて、辛くて、苦しくなる。
あたしは……強くなんかない。
人志に嫌われることに耐えられない。他の女と仲良くしてるのに耐えられない。
本当のあたしは、弱い。

部長さんに、剣道部を辞めたいと言って、竹刀を返した。
部長さんは驚いていたけど、すぐ落ち着きを取り戻して、他の部員に何か言った後、あたしのところに戻ってき
た。
「……事情を話せ」
道場のすみで、互いに正座して向き合う。
あたしは、感情だけで人志に暴力を振るってしまったこと、そんなことをした自分に、剣を持つ資格はないこと
を話した。
この人相手に、下手な隠し事は通用しない。すぐばれて、お説教されるのがオチだから。
あたしたちからそう離れてないところで、他の人たちは練習をしている。
でも、その間には気まずい空気が流れているのがわかった。

「以前から、お前の様子が変であることは気掛かりだった」
部長さんが、重々しく口を開く。
「伊星に手を上げたのは、いつのことだ?」
「昨日……です」
「昨日だと!? 昨日といえば、放課後、私は伊星に会ったのだが」
「えっ?」
今度はあたしが驚かされた。人志は、放課後まで、部長さんと会ってない。あたしがずっと見てたから分かる。
ということは、人志と部長さんが会ったのは、あたしが帰った後……。
「しかも、私は伊星に、お前の様子がおかしいことを話した」
「……」
「もしや……」
「あたしが、手を上げた後……」
「そうか……」
部長さんの握り拳が、ぐっと硬く握り締められていた。
491リボンの剣士 27話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/08(火) 22:47:36 ID:j4Cqrzfs
怖い。きっと人志は、あたしへの恨みを、部長さんに言っている。
今こうして沈黙ができたのも、それを明かすべきかどうか迷っているから。
隠して欲しくない。聞きたい。でも、ありにままを聞かされたら……あたしは、耐えられるの?
「伊星は」
いよいよ来る。神経が激しく波打った。
「お前を非難するようなことは、一つも言わなかったな」
「……」
まただ。お母さんのときと同じで、誤魔化されている。
「そんなこと……ないです」
「本当だ。こんなところで嘘は言わん」
部長さんの姿勢はわずかの乱れもなく、山でも背負っているような、どっしりとした正座。
一種の構えのように見える。
わかってるわよ。部長さんは嘘をつくような人じゃない。嘘をついているのは、あたしのほうだ。
「それに伊星は、お前の力になることを引き受けた」
「そ……それは……」
嘘ではないと思うには、さすがに都合が良過ぎない?
それとも、あたしの脳が、都合の良いところだけ拾ってるのかな。
「信じられないか? 私が直接、伊星から聞いたことだぞ」
「……」
「伊星を疑っているのか?」
「そんなこと!」
つい勢いで返したけど、実は全く疑っていないわけじゃない……。
「なら、信じればいい」
部長さんは、返した竹刀を、あたしの膝の前に置いた。
「大体、お前は剣道においても、横に回り込んだり、変則的に攻めるのは不得意だろうが。真正面から向かって
 行くのが、一番得意なのではないか?」
「それは……」
そう言われても、どうなのかわからない。
あたしは、自分が何なのか、どういう性格なのか、はっきり見出せない。

「見ろ」
部長さんの顔が横を向く。あたしも追って見ると――。
……嘘。何で、どうして?
道場入り口のところに、人志がいる。こっちを見てる。
「お前を嫌っているなら、ここに来るなど有り得ないだろう」
そうよ。ありえないわよ。人志は、あたしのことなんて嫌になったんじゃないの?
「己の目で、心で、真正面から確かめてみろ。もとより、ここで逃げるなど、私が許さんが」
部長さんが立ち上がった。あたしも立つと、目の前に竹刀が突きつけられた。
「剣道部を辞めるかどうかは、また後で聞く」
「……わかりました」
竹刀を受け取り、鞄を持つ。
足を、人志のほうへ動かす。人志に向かって歩く。
顔を見るのだけは、怖くてできなかった。


(28話に続く)
492名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 22:52:48 ID:wXhaQ9VD
>>491
作者様GJです
あぁ、グッドエンドに近づいている気がする(*´д`*)
これでもう一波乱あると怖いが((;゚Д゚)ガクガクブルブル

投下しますのあとに入ってしまって申し訳ないm( __ __ )m
493怪物姉敢闘記(前編) ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 22:56:17 ID:atrcBXa1
埋めネタに使うつもりでしたが、前後編に分けることになったので普通に投下します。
494リボンの剣士 27話 ◆YH6IINt2zM :2006/08/08(火) 22:56:48 ID:j4Cqrzfs
しまったまた誤字だ。
>>490の「離れない」は「はなれない」です。
495怪物姉敢闘記(前編) ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 22:57:13 ID:atrcBXa1

 ユメカ・ヒトヒラと出会ってから、二十日が過ぎていた。

「ユウキさーん。えへー」
 むにゅ、と柔らかい感触が背中に押しつけられる。
 持ち主の美貌や甘い声とも相俟って、大抵の男なら陥落してしまいそうな快感だが。
「……勘弁してください」
 ユウキ・メイラーはげっそりした面持ちでそう呟いた。
「何をですかー?」
 むにむに、と背中で双丘が形を自在に変えている。反則的な柔らかさだ。
「あの……体力的な限界を軽く突破しちゃってるんですが」
「言ってる意味がよくわかりませんー。今晩もいっぱい熱いのくださいね」
 つい、と腰の裏を指が這う。
「……僕の記憶が確かならば、その台詞、1時間前にも聞いたんですけど」
「それはユウキさんが私を求めるあまり捏造してしまった幻想です。
 もう、可愛いんだから。そんな可愛いユウキさんにはたっぷりサービスしちゃいますね」
「ちょ……本当に無理……んあっ!?」
「ふふふー。コリコリしてるー。ここであの熱いのが作られてるんですねー」
「……や、やめ……ユメカさん、やめて……あ……、――ゆ、指入れないでください!」
「ぐりぐりー。……あらあら、あんなこと言ってたわりには、ここはもう、こんなに硬くなっちゃってますけど?」
「……もう……勘弁してください」
「体は正直さんですねー。そして嘘つきさんにはお仕置きです。
 今晩は、まだまだ休ませないんだから……んちゅ」
「い、今、“まだまだ”って言った! さっき2回済ませたこと絶対覚えてますよね!?」
「ユウキさんのと愛の営みは絶対に忘れませんよー」
「言ってることが滅茶苦茶だこの人――って、ふあっ!?」
「ああもう、悲鳴まで可愛いんだからー」
 
 何というか。
 搾り取られる毎日だった。
 
 
 
 
「……ユウキ、だいじょぶ? なんかげっそりしてるけど」
 休み明け、執政省の通路で偶然出会ったサラにまで心配される始末である。
 とはいえ、何故疲れているのかなんて到底言えることではないため、ユウキは笑って誤魔化すのみ。
(半ば無理矢理)共犯関係にさせられたユウキだが、別段、法を犯すようなことは何一つしていなかったりする。
 ユメカが要求してくることはただひとつ。
 仕事が終わった後、ユウキの自室でひたすら愛し合う。それだけだ。
 慣れない仕事で疲れて帰ったところで、ユメカの濃密な性行為に翻弄される毎日。
 生命力がガリガリと削られているのをユウキは自覚していた。

496怪物姉敢闘記(前編) ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 22:58:02 ID:atrcBXa1

 ――しかし、共犯という立場になっている自覚は、正直皆無だったりする。
 ユメカはことあるたびに、
「私とユウキさんは共犯ですからねー」
「死なば諸共ですよー」
「秘密を共有しちゃってるんです、えへへ」
 といったことを繰り返し言うが、さりとて犯罪行為を強制させられたことは一度もない。
 まるで熱愛中の恋人同士のように、毎晩性行為に勤しむだけ。
 重要なことは任せられないからなのか、それとも発覚した際ユウキを守るためなのか。
 それはさっぱりわからないが。
 
 ユメカは、いったい、何をしているのだろうか。
 
 
 
 
 
 とか何とか考え事をしているうちに、終業時間がやってきた。
「あ……上の空で仕事してしまいました」
 新人秘書だというのに、この体たらく。クロス執政官に申し訳ない。
 とりあえず今日の分の仕事は済んでいるため、このまま帰ることはできる。
 しかし、真剣にやっていたら、明日の分もそれなりに手を付けることができていたはず。
 私事はあくまで就業時間外が鉄則なのに、自分が情けなくなってくる。
「……帰りますか」
 クロス執政官に終業報告を済ませ、ユウキはそのまま帰宅準備を始めた。
 ――と。そういえば。
「サラに心配かけてたんでしたっけ。
 ……そういえば、お互い就任してからろくに話してないですし、食事にでも誘ってみますかね」
 サラとは学院生時代からの付き合いである。食事を誘うことに、今更抵抗を覚えたりはしない。
 
 
 そういえば。
 ユメカと会って二十日も経つが。
 ――彼女とは、一度も食事の席を共にしたことがないことに、今更のように気が付いた。
 
 
 
497怪物姉敢闘記(前編) ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 22:58:46 ID:atrcBXa1
 
 
 サラは終わりきらなかった仕事と涙目で相対していたので、残念ながら食事は又の機会となった。
 なお、その旨を伝えた際、「こ、今度は絶対に仕事終わらせておくから! 絶対だから!」と息巻いていたが、
 こちらの奢りであることがそんなに貴重なのだろうか。そういえば、最後にサラと食事をしたのはいつだっけ。
 
 そんなことを考えながら。
 のんびりと帰路を進んでいたら。
 ふと、黒髪が目に付いた。
 
 帝国民の髪の色は金銀黒が主だが、帝都に多く見られるのは前者2つである。
 黒髪はどちらかといったら辺境の方に多く、中央では珍しい髪の色だ。
 ユメカが最初に連想されたのは、ユウキの中に彼女の印象が拭い去れないところまで染みこんだからか。
 
 それとも――黒髪の主が、ユメカにそっくりだからだろうか。
 
 まあ、何はともあれ。
 黒髪の少女を見たときに、ユウキは思わず立ち止まって見入ってしまった。
 だからだろうか。
 きょろきょろと辺りを見回していた黒髪少女は、ユウキに目を付け駆け寄ってきた。
 
「あの、すみません。道をお尋ねしたいのですが」
 
 驚いた。声までそっくりだ。
 思わずぽかんと口を開けてしまったユウキに訝しげな表情を見せる少女。
「すみません。貴女が知人と似ていたもので。それで、何処に行きたいのですか?」
「あ、えっと……中央西通りの……特徴的な形をした噴水に向かいたいのですが」
「特徴的な形、ですか?」
 いまいちイメージが湧かず、首を傾げてしまう。
「わ、わかりにくくてすみません……。
 ……あ、あと、ブチの野良犬兄弟が近くを縄張りにしているそうです」
「――はい?」
「……すみません、妄言です。忘れてください」
 何故か疲れた様子で溜息を吐く黒髪少女。
 とりあえずそれには触れないでおいて、ユウキは少女の目的地を自分なりに推察する。
 
「中央西通りに噴水は幾つかありますが、そんなに数は多くありません。とりあえず、通りまで案内します」
「そ、そんな! 悪いですよ! 道順だけ教えていただければ充分です」
「気にしないでください。このあたりは少し入り組んでいまして、慣れない人は迷いがちです。
 僕も心配で悶々とするのは嫌ですので、どうか助けると思って案内させてくれませんか」
「……あ、ありがとうございます。……お優しいんですね」
 後半は小声でよく聞き取れなかったが、案内することには同意してもらえたようだ。
 
 しかし、見れば見るほど、ユメカによく似ている。
 彼女を少しだけ幼くしたような感じである。中身はこっちの方が大人っぽいが。

498怪物姉敢闘記(前編) ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 22:59:32 ID:atrcBXa1
 
 
 
「私、セツノっていいます。本当にすみません、お兄さん」
 
「待ち合わせしてるのは姉なんです」
 
 と、黒髪少女――セツノは言った。
 最近こちらに住むようになった姉を心配して会いに来たようなのだが、姉の情報伝達力の皆無さに絶望している模様。
「セツノちゃんは、しっかりしてるんですね」
「そ、そんなことないですよ! 姉が駄目すぎるだけです!」
 それはそれでどうかと思うが。
 
 しかし……セツノの話を聞いていて、幾つか引っかかることがあった。
 まず――セツノが、姉の住所を知らないこと。
 帝都は区画整理はそれなりに進んでいるため、大抵の建物には住所が割り振られている。
 引っ越した姉の住んでいる場所を知らないというのは、少々不自然ではなかろうか。
 それと――セツノの喋り方。
 注意して話の内容を吟味しないと気付けないが、彼女の出身地について、情報が欠片も含まれていない。
“田舎”“森がある”“川の水は綺麗”といった当たり前の情報こそ伝えてくるものの、
 地名や気候、果てには植生している草や野生の獣の種類まで明言していない。
 出身地を明かすことを禁じられているのだろうか。ここまで徹底しているのは、妙を通り越して異常である。
 そして何より気になるのが――セツノの語る、姉の特徴。
 何度聞いても。
 何度考え直しても。
 ――ユメカとしか、思えない。
 
 まさかとは思う。
 まさかとは思うが――
 
 
「ここが、中央西通りです。
 似た名前で、中間西通り、というのが近くにあるので、間違える人は多かったりします」
「そうなんですかー」
「それで、噴水ですけど……手近なところでは、あの狸を模した形の像ですが――」
 あれは特徴的、というほどではないですね。と、言おうとしたら。
 
 
「あ、セっちゃん」
 
 
 聞き覚えの、ある声が。
 恐る恐る、声のした方を見ると――やはりというか何というか。
 
 ユメカ・ヒトヒラが、そこにいた。

499怪物姉敢闘記(前編) ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 23:00:54 ID:atrcBXa1

「姉さん! 待ち合わせの場所、ちゃんと教えてよね!」
 固まるユウキには気付かずに、セツノはプンスカしながらユメカに文句を言った。
 それに対して、ユメカは不満そうに、
「えー。だって特徴的な形じゃない、この噴水。狸なんてイナヴァ村では見かけないし」
 噴水を指さしながら、そう言った。
 
 ――イナヴァ村?
 どこかで、聞いた覚えが……。
 
「ちょ、ま、名前名前!」
 慌てた様子で手を振るセツノ。しかしユメカは首を傾げるのみ。
「? 名前? 私の名前はユメカだけど、忘れちゃったの?」
「ボケるのも大概にしなさい!」
「? ――あ、ユウキさんだ!」
 慌てる妹など欠片も気にせず、ぱあっと表情に花を咲かせるユメカ。
 しかし、その表情はすぐに翳った。
 
「……あれ? なんで、セっちゃんが、ユウキさんと一緒にいるの?」
 
 言うなり、その場で何やら考え込む。
「え? 姉さん、このお兄さんと知り合いなの……?」
「“お兄さん”!? なにその気安い呼び方!」
「へ? いきなり何言って――」
 
「せ、セっちゃんの……」
 ずかずかずか、とユメカは足音荒く近付いてきて。
 
 
「……泥棒猫さん!」
 
 
 ズドン、と。
 セツノの鳩尾に拳が叩き込まれていた。
 
 
「…………」
 帝都中央の巨大学院で、様々な人間を見てきたユウキだが。
 
 妹に腰の入ったボディーブローを叩き込む姉は、初めて見た。
 
 
「お兄さんだなんて! 何その兄妹プレイ!
 私が今晩やろうと思ってたのに! 抜け駆けしちゃってずるいんだから!」
 ユメカはセツノの胸ぐらを掴んで、がっくんがっくん揺らしている。
 
 それを見ながら、ユウキはひとつの確信を得た。
 
 うん。変な姉妹だ。色々な意味で。

500怪物姉敢闘記(前編) ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 23:02:34 ID:atrcBXa1
続きます。
あと、年齢設定ですが、本編より5歳くらい若いです。全員。
裏設定として、ユウキとユメカは18歳、セツノは14歳です。

というか、一話一話完結させるつもりだったのに、いきなり前後編。
しかも前回の内容を引きずっているとか、なんか駄目駄目ですみませんorz
己の実力不足が身に沁みます……。

まあそれはそれとして、本編はあと4話で終わる予定ですので、
ほのぼの成分の補給は外伝がメインになると思います。
本編は、ラストに向けて突き進むのみ。
シリアス本編と壊れ外伝、両方楽しんでいただけると幸いです。

501名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 23:04:04 ID:Awv7xMAJ
>>500
GJJJJJJJJJJJJJJJJJJ!!
このほのぼのエロチックがよすぎる!!
本編といい感じで作風が分かれてるのが尚良し!!!!!!!
502 ◆gPbPvQ478E :2006/08/08(火) 23:06:12 ID:atrcBXa1
>>494
後書きの前に始めてしまってすみませんでしたorz
もう少し間を空けるべきでしたね。ごめんなさい。
503名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 23:20:13 ID:Jl/2MP3k
あと4話で終わるなんてヤダヤダァヽ(`Д´)ノ
504名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 23:48:47 ID:x9+CDG9v
キタキタキタキタキターーーー!!!!
セッちゃんキターーーーーーー!!!!

あぁやっぱ自分セッちゃん大好きだわぁ
しかも本編より幼くなって萌え度アー――ップ!!
本編終わるのは寂しいですが外伝が其の分続いてくれたら
そんな寂しさも吹っ飛ぶかも

何はともあれ超GJっスゥゥゥゥ!!!!
505名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 00:00:05 ID:hDiTQRq8
Wキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

部長さん格好いいよ部長さん
セっちゃんかわいいよセっちゃん
506名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 00:04:40 ID:Awv7xMAJ
木場がどういう風に伊星を取り込んでいくか期待大!!!!
ただ今更気づいたんだが・・・・
伊星ってなかなかのヘタレ?
507名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 00:24:36 ID:Lc3IsWXj
人志がヘタレなんてとっくの昔から気付いてt(ry

このスレのヒロインってヘタレor勘違いって意外に多いね
そこがカワイイんだけどな(*´д`*)
508名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 00:53:57 ID:AxXM7imz
投下しますよ
509『とらとらシスター』14虎:2006/08/09(水) 00:55:41 ID:AxXM7imz
 あちらとこちらを行ったり来たり、心の扉の調子は良好。
 あの日から数日が経ったけれど特に何事もなく日々が過ぎている。朝はサクラと姉さん
がショートコントのようなものを繰り広げ、家族で仲良く食事をして、青海のリムジンに
乗って学校へ行く。昼には四人で弁当を食べて、軽い喧嘩のような騒ぎを起こしながらも
平和に過ぎていく。少し変わった部分と言えば、たまに姉さんがサクラをなだめたりする
ことが出てきたくらいだ。放課後は青海とデートをして、家に帰ればサクラや姉さんとの
セックスが待っている。
 今までの暮らしに少しだけ非日常が混じっているけれど、何も問題はない。
「でね、矢崎先生がうっかり花びら大回転の話をして」
 こら、昼休みの教室で何てことを言い出すんだ!!
「その、花びら何とかと言うのは何だ?」
 青海にはまだ早い!!
「今から青海さんを使って実演してみますか?」
 止めろ!!
「それはですね、割れ目を晒した女性が…」
 いつから居たんですかユキさん、て言うか説明すんな!!
 今は昼休み、皆で仲良く弁当をつつきながらの楽しい食事の筈だったのに、僅か数秒で
こんなに疲れたのは何故なんだろう。喧嘩になるよりは余程良いけれど、少しは教室の皆
のことを考えても良いと思う。
「虎徹君はそれを見たら喜ぶか?」
 まだそんな話をしていたのか、ユキさんも笑顔で頷かないの!!
510『とらとらシスター』14虎:2006/08/09(水) 00:56:27 ID:AxXM7imz
「青海、食事時にはそんな話はしちゃいけません。それに、そんなことをしなくても」
「しなくても?」
 幼い表情で小首を傾げ、訊き返してくる。
「青海のことは大好きだし」
「のろけ禁止ィ!!」
 青海が何か反応を返してくるより先に、姉さんがチョップを叩き込んできた。けれども、
その表情には以前程の怒りや嫉妬の色は浮かんでいない。毎晩の情事が精神の安定剤にな
っているのだとしたら、それも悪くないのかもしれない。最初はひたすらに拒否感があっ
ただけだけれど、今では少しずつ楽しむ余裕も出てきている。
 楽しむ?
 今、僕は何を考えた?
 青海の為にと言っておきながら、姉さんとのセックスを楽しんでいる。許されないこと
を平気な顔をして、それでも問題ないと言っているのはどこの誰だ。
「大丈夫ですか、兄さん?」
「うん、何も問題ない」
 扉の鍵が、少し緩んでいるのかもしれない。こっち側の方には存在しない、あっち側の
僕が少しだけ顔を出してきた。帰宅したあとの堕落した僕が扉の隙間から笑みを向けて、
楽しめ、と囁いてくる。
 無視だ。
 強い音をたてて、扉を閉めた。
 問題ない、これも日常と青海のため。
「エロい話題よりもっと健全な話をしてみよう、例えば」
 心の扉の施錠をしっかりとして、笑顔を作る。
「呑助ちゃんの話とか?」
511『とらとらシスター』14虎:2006/08/09(水) 00:59:19 ID:AxXM7imz
 姉さんが珍しく、まともに話を繋いでくれた。そもそも妙な話を始めたのが姉さん自身
だから当然と言えば当然なのかもしれないけれど、こうして味わうことが出来る日常が僕
はとても大好きだ。もう暫く、夜の僕は顔を出さない。
「そう言えば、以前に君の家に遊びに行ったときは姿が見えなかったが、元気だろうか」
「青海さんが心配する程のことでもありません。私が我が子のように可愛がっています」
 言いながら、サクラは虎の目を青海に向けた。確かに姉さんも可愛がっているれども、
サクラはそれ以上に世話を焼いている。たまに恐ろしい程の暗い笑顔で抱き締め、嫌がる
くらいに撫でまくっているのは少し間違っている気がするけれど、一番熱心なのは間違い
ないと思う。虎を殺した血筋なのに、同じ猫科でも扱いが随分と変わるもんだ。
「ありがとう。わたしが虎徹君に出会えた恩人、いや恩猫だから、気になっていたんだ」
「お礼を言われるまでもありません。将来の練習だと思えば、辛さも幸せに変わります」
「そうか、虎徹君もこれで安心できるな」
「はい、数年後に控えた夫婦生活が楽しみです」
 何だろう、この殺伐としてきた空気は。表情も穏やかだし交わされている会話も和やか
なものだと思うのに、どこかが軋んでいるような気がする。普通の会話の端々から不可視
の棘が見え隠れしつつ、お互いに刺さりに特攻しているような。和やかな話題を持ってき
たつもりなのに、余計に辛くなってきた。
512『とらとらシスター』14虎:2006/08/09(水) 01:00:04 ID:AxXM7imz
「虎徹君も、嬉しいだろう。これで心おきなくわたしとの結婚に向かって行ける」
「え? あ、うん」
 こちらに話を向けられると思わなかったから適当な返事が出たけれど、結構魅力的な話
かもしれない。現実的とは言えない話だけれども、僕も青海とそんな生活をしているのを
想像してみると、結構楽しそうな気がしてきた。朝は青海が隣で寝息をたてていて二人で
目を覚まし、青海が作ってくれた朝食を食べて会社に行く。帰ってきたら定番のお風呂、
御飯、女体の3択問題を出されてルパンダイブ。庭には赤いスイートピーと白い犬、いや、
呑助が居るから三毛猫か。その内冗談でも良いから、将来設計を話してみるのも良いかも
しれない。
「楽しみだな、虎徹君。部屋とYシャツとわたし…」
「外した、そっちだったか」
「不満か?」
「とんでもない」
 青海がこうして楽しそうな顔をしてくれるなら、僕も頑張れるかもしれない。
「子作りはいつにしようか?」
「ちょっと待て」
 いきなり話が飛躍をしすぎている。青海のことは好きだし、今までもそうだったから驚
きはしないけれども、僕としては少し直して欲しいと思う。思い返してみれば最初の告白
のときも『子供を産ませてくれ』だったし、全開なところはもしかしたら治らない癖みた
いなものなのかもしれない可能性もあるけれど。
「ちょっと待て、か。わたしもあまり気が長い方じゃないから、早めに頼むよ」
「そうじゃねぇ!!」
 ついでに一直線すぎるところも直してほしいと思います。
513『とらとらシスター』14虎:2006/08/09(水) 01:03:15 ID:AxXM7imz
「兄さん」
 不意に、一言。
 僕と青海が話している間ずっと黙っていたサクラが、低く呟いた。見てみれば小さく肩
を震わせて、箸をへし折らんばかりの気迫を見せつけている。うつむいて垂れた長い前髪
の間から覗く瞳は、今にも青海を悔い殺しそうな勢いで燃え盛っていた。
「公共の場でふしだらな、それも妙なイチャ付き方をしないで下さい。皆さんに迷惑です」
 しまった、仲良くしすぎたかもしれない。姉さんはまだ大丈夫みたいだけれど、サクラ
が臨界点を突破しようとしている。二人の気持ちは分かっていた筈なのに、少し限度を超
えすぎてしまったみたいだ。
「姉さんも、何か言ってやって下さい」
「えぇと、うん。虎徹ちゃんも青海ちゃんも、メッ! えっちなのは、メッ!」
 よりにもよって、姉さんがエロ禁止と言うのか。しかも今時の高校生が、高校生を叱る
のに今の発言はないと思う。もう少し他にも言い方があるんじゃないだろたうか。
「役立たず!!」
「ひゃあ、ごめんなさい」
 案の定、サクラも同じことを思ったらしく姉さんを一喝すると僕と青海に向き直った。
仁王立ちをして腕を組み、獰猛に牙を剥き出しにしながら、
「青海さんは兄さんにベタベタしすぎです、一体何の権利があってそんなに」
「彼女だからだ」
 そうだよなぁ。
「それに」
 青海も立ち上がるとサクラに人指し指を付きつけ、睨みつける。その表情は今までサク
ラや姉さんに影響されてきたせいなのか、見間違えようもない虎のもの。長年、サクラや
姉さんの顔を見慣れた僕だから分かるそれを、青海も浮かべていた。
「恋人なのだから、例え身内でも口出しをされる覚えはない」
「この、泥棒猫」
「はン、面白いことを言う」
 そろそろ限界だろうか。姉さんに仲裁を頼もうにも、未だにしょんぼりしているので頼
りにはなりそうにない。ユキさんは基本的にはこういう場合は関わってこないので、残念
なことに、仲裁をする役は消去法で僕になる。
 溜息を一つ吐き、
「喧嘩は止めなさい、そろそろ怒るよ?」
 数秒。
 お互いに睨みあっていたが、顔を反らし、
「ふん」
「はっ」
 争いは止めたものの、空気が重いまま食事が再会された。
 どうしたものか。
514ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/09(水) 01:04:31 ID:AxXM7imz
今回はこれで終わりです

久し振りのコテツミン補給

グランファンタズムをやっていて、ドロドロ三角関係を
期待した俺はもう駄目かもしれん('A`)
515名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 01:12:18 ID:Yyh9X86d
作者様GJ!
そして阿修羅様も早い仕事GJです!
516名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 02:45:02 ID:IQBVq8jv
コテツミンが補給された今必要なのはモカさん分ではないか。 
517名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 03:03:19 ID:m0KhGNew
|ω・`) えろはいいな、えろは
518名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 03:07:29 ID:et5UE4Qc
コテツミン補給完了!虎姉妹の嫉妬は相変わらず素晴らしいな(*゚∀゚)=3ハァハァ
519名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 03:07:32 ID:kYBjCNxM
モカ分と山本の姉さん分が不足してるんです
520名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 04:08:57 ID:TDwPCzbI
ところで、いたり先輩分の供給はまだでありますか!?
521名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 07:08:45 ID:oC9J34ym
今回は虎姉妹に加えて青海が修羅道への第一歩を踏み出したのでよかったですW
作者さんGJでした

山本くん分と赤色分の補給を・・・
522名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 07:20:50 ID:uW+k2U0O
ここで語っていいのかわからんけど、まさかエロゲーで修羅場分補充できるとはなあ……
523名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 07:38:53 ID:HAJVlmXq
>>522
それは本スレのほうだと思うが...
kwsk
524名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 12:30:43 ID:vsfSrMMg
ていうか修羅場分補充するには主にエロゲでしょ・・・。
妻しぼりは本スレで結構評判だったよ
525名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 15:03:32 ID:59tfYDRS
このスレ、母親の嫉妬って需要ある?
526名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 15:15:01 ID:FhAZueyg
>>525
何を今更。
527名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 15:23:22 ID:U8Q8LcWg
>>525
無いわけがないだろう?
528名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 15:49:32 ID:gR9fnDqt
>>525
むしろ飢えている
529名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 16:13:01 ID:I6DRH/oy
>>526-528のやり取りがあまりにも通じあっているのにワロタwwww
530sage:2006/08/09(水) 19:47:23 ID:nMIM5zYy
うじひめは修羅場だけじゃなく通常のギャグからレベル高すぎ。
一体何度俺を笑い字にさせれば気が済むのか・・・
531名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 19:58:48 ID:m0KhGNew
|ω・`) さて、そろそろ疾走が読みた(ry
532名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 20:19:31 ID:xb2bo5iS
>>530
同意。
正直ギャグが秀逸すぎて…。
このスレで腹抱えて笑い転げるのって珍しいわw
533名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 20:49:38 ID:I5ciH3fi
ttp://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi47681.png.html
ママー左の子に泥棒猫属性つけてー
534名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 22:41:40 ID:WdMvwhlS
>>533
よく知らないが、すでについてるように見える

くそぅ、このスレ見てたら今日中に仕事が終わらなくなっちゃったじゃないかw
535名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 22:44:38 ID:mrPqXKze
パソコンの前で投下を待ってる君達

内に秘めた嫉妬分……プロットで投下してみないか?
536名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 22:47:44 ID:nMIM5zYy
ま、まさかプロットを投下すれば書いてくださるのですか!!?
537名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 23:25:06 ID:w5l7mTGk
プロットから作品へ
過去にそう言う前例は幾つか存在してる
「姉妹日記」「スウィッチブレイド・ナイフ」
が正にそうだったと記憶してる

そういう訳で書いてみてはどうだ?
そのプロットがツボに嵌った作者がいれば書いてくれるかもよ?
538名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 23:33:45 ID:aEhNK0GA
         ,..-─‐-..、
          /.: : : : : : : .ヽ
        |: : : : :. : : : : :i}
         |:. : : : : : : : .レ′     パ     パ          ,-─―、
        ノ: : : : : : : :::j|    ス          ン !!   /.: : : : : : :ヽ
      /:.:/: : : : :/:.:ノ|!           /\          {リx:c: : : : :ヽ=ェ、_
       /:./: : : : :/: :/ }!       / ,x'^          /ヽ:: : : : : : ヽ
     {;:./: : : : :/: f  |        / ,x^      く::\   {i ヽ: : : : : : : ヽ
     /V|从W:/|:リ| ├--r─yへ,,x^ ミ、     \a`く   ヽ.i:: :i : i :/、
   /     r'‐-| ├-┴〆      _,   、_⌒彡 \::V   |  |`===ヘ
    仁二ニ_‐-イ  | |         ∩ ゚||Д゚)     ゙と[l ̄|  |      \
    | l i  厂  ̄ニニ¬         ノ   ||⊂ノ         ̄|  |       ヽ
   ,ゝ、 \ \   __厂`ヽ      (__ ̄)| | )           |  |\     _}
  _/ /\_i⌒ト、_   ノrr- }       し'し             /{_〆 ̄`ー‐=='^┤
 └-' ̄ `|  |_二二._」」__ノ                   {| -‐   / | | }
      └ー′                              └─-二_/⌒Y ̄}

                こんなプロットを望むっ!!
539Bloody Mary 2nd container 第十九話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/09(水) 23:46:31 ID:Jk+7zdIY
 夕陽に照らされている姿が、まるで返り血を浴びて紅く染まっているかのようで。
不安に心が掻き乱される。 
「マローネ…?」
 どうしてここに。そう云いかけたが、その言葉が舌に乗ることはなかった。

「先に――――――――かったのはマズかったかな…?」
 構えていた銃を軽く下げて何か呟くマローネ。
その様子に俺は違和感を感じた。わずかに本能がざわついている。

原因は彼女の眼だ。父親を亡くしたばかりとは思えない、射抜くような瞳。
その眼を見て俺は警戒を解けなかった。
 どっどっどっど、と心臓の鼓動がやけに五月蝿い。

――――何、やってるんだ?俺は。なんでビビッてるんだよ。
 もう敵はいないだろ。張り詰める必要なんかどこにもない。

「た、助かったよ、マローネ」
 自分の異変にかぶりを振りながらマローネに礼を言う。だけど声は少し震えていた。
「……ギリギリセーフだったね」
 安堵の笑み。
…いや。やっぱり何処か変だ。
どうしてそんな冷たい眼をしている。どうしてそんな眼で姫様を注視しているんだ…?

「マ、マローネ…?」
「ごめん、お兄ちゃん。“約束”はもうちょっとだけ待って」
 約束…?心当たりがない。何のことだ?

 俺が訝しくマローネを見ても彼女は姫様を眺めているだけだった。
 絶対に変だ。山道で襲われてから今までの間にいったい何があった?
オークニーに来てすぐあたりから変だと思っていたが、今のマローネは明らかにおかしい。

 俺と目が合ったマローネがふっと目を細めて嗤った。………どこかで見たことのある笑顔だった。
540Bloody Mary 2nd container 第十八話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/09(水) 23:47:17 ID:Jk+7zdIY

「大丈夫ですか!?」
 団長たちが駆け寄ってくる。
「え、えぇ…」
 俺はマローネから目を離すことができず、ただ呆然とそう答えるだけだった。

「ウィル?」

「あ、はい。平気です、どこも怪我してませんよ」
 これ以上心配かけまいと努めて明るく返事をした。

「す、すまぬ。わらわがこんなところで抱きついたばっかりに――――」
 姫様が申し訳なさそうに視線を伏せて謝罪。
馬車に隠れて山道まで付いて来てしまった件もあるのだろう。本当に済まなそうだった。

「姫様のせいじゃありません。油断した俺が悪いんですから」
 こうべを垂れて俯いている姫様の頭を、労わるように撫でた。


「…とりあえず街に帰りましょう。このことを斡旋所の方に報告しなければなりませんし」
 団長が落ちている自分の剣を拾い上げる。
「――――そう、ですね」
 団長の提案で小屋を離れることにしたが、心のざわめきが治まる事はなかった。








 オークニーへの帰路の途中。
私は前を歩くウィルとマローネさんの背中を眺めながら考え込んでいた。

―――――あの眼。
 彼女の、私と姫様を見るあの瞳は、見たことのある眼だ。いや、正確には“経験したのことのある”と言った方が正しい。
殺意と嫉妬に支配された瞳。
そう、アリマテアで私が姫様に向けたのと同じ瞳だ。
経験者ゆえか、同じ匂いのする者同士だからこそ直感ですぐ理解した。

 彼女は。マローネさんは確実に私たちを殺そうとしている。
単なる秘めた殺意じゃない。そう遠くない未来、その抑え難い殺意を爆発させるだろう。
宿のバーで彼女に怒鳴りつけられたとき、こうなるのではないかと心のどこかで危惧していたけれど。
よもやこうも早く予感が的中するとは思わなかった。

 前を歩く二人の様子はどこかぎこちない。と言うかぎこちないのはウィルだけだった。
それに比べ、マローネさんの表情は明るかった。…気味が悪いほどに。
ウィルがその様子に眉根を顰めていることを彼女は気付いているだろうか。
自分が今、父親を亡くしたばかりの少女とは思えないくらい明るいことに気付いているのだろうか。
541Bloody Mary 2nd container 第十九話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/09(水) 23:48:26 ID:Jk+7zdIY

「マリィ」

 不意に姫様が隣まで来て話しかけてきた。前の二人には聞こえないくらいの小声で。
「気付いておるか、あやつのこと」
「……ええ」

 姫様もマローネさんの様子に気付いたらしい。
 当たり前と言えば当たり前か。
城で私に同じ眼を向けられた姫様ならマローネさんの様子がおかしいことにすぐ気付くのは当然だろう。

「まったく……ウィリアムも業の深い男じゃな。
あの者に言い寄る娘は過激な連中ばかりじゃ。嘆かわしい」
 そう言いながら乾いた笑いを浮かべる。
……自分は違うみたいな言い方しないでくださいね?マリベル王女。

「……と。じゃが流石にこれは笑い事では済まされぬ。捨て置くのはあまりに危険じゃ」
 顎に手を当てて考え込む姫様。
 捕らえられていた疲れからか顔色は優れなかったが、平然としている。

「そんなこと言って……私には余裕があるように見えるんですが」
 姫様のそんな様子を見てしまうとさっきウィルに飛びついたのも演技なんじゃないかと疑ってしまう。

「これで二度目じゃからな。誰かのおかげで…恐怖で前後不覚になるようなことはなくなったわ」
 責めるように半眼で睨まれ、私はそっぽを向いて「あはは」と笑うしかできなかった。

「で、どうするのじゃ」
 真剣な表情に戻って前の二人を見る。

「以前の私なら“殺られる前に殺る”を実行していたところでしょうけど―――――」
 ウィルを見ながら嘆息。
「仮にマローネさんを殺したとして。ウィルは『はいそうですか』と黙っているはずがありません。
……かと言って、わけを話したら今度はきっと自分を責めます。
最悪の場合、私たちとも別れて旅をするかも知れません」

 ……それに。
彼女の父親を殺してしまった罪悪感もある。
マローネさんをここまで追い詰めてしまったのは私が原因だ。
チクリと胸の奥が痛んで顔を顰めた。
542Bloody Mary 2nd container 第十九話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/09(水) 23:49:08 ID:Jk+7zdIY

「……意外じゃな。おぬしが恋敵に情けをかけるとは思わなんだぞ」
 私の様子を窺いながら茶化す姫様。

「まさか。私はただウィルに嫌われたくないだけです」
 可能な限り軽口になるようにそう言った。
 ウィルに嫌われたくない。…そう。それだけ。
彼女を殺すしかないだとしたら私は迷わない。ウィルに危険が及ぶと解れば、ためらいなくマローネさんを殺すだろう。
だけど他に方法があるなら、私は―――――――

「じゃからと言ってわらわは黙って殺されるのは御免じゃ」
 きゅっ、と唇を噛んでマローネさんの背中を見つめる。

「それは私も同じです。
マローネさんを説得…というと少し変ですが……とにかく彼女と話してみるつもりです」

「話が通じる相手と思うか?」

「それはわかりませんけど。
―――――ですがやってみないことには」
 ウィルが私を助けてくれたように。
私が彼女を説得できるかわからないけど、やってみる価値はある。

「じゃがおぬしが失敗したときのことも考えねばならんぞ」
 姫様の表情からは既にいつもの小生意気な印象は消え失せていた。
……まったく。油断ならない。年相応の少女を遥かに越えた、一国の王女の顔になっている。
この程度で動じないのも、本来なら国を束ねるはずだった器ゆえなのかもしれない。

「えぇ。マローネさんも殺さずこちらにも被害が及ばない、何かいい方法があればいいんですが………」

 かなり都合にいい話ではあるけれど。
少なくともウィルにこれ以上辛い思いをさせたくない。


「そういうことでしたら、私に考えがございます」

 黙考している最中に。
 私たちより、やや後ろを付いて来ていたシャロンさんが静かに提案した。
543Bloody Mary 2nd container 第十九話B ◆XAsJoDwS3o :2006/08/09(水) 23:51:49 ID:Jk+7zdIY
以上。
>>540のタイトルが間違って十八話になっちゃいました。
544過保護『前夜祭(後編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/09(水) 23:59:46 ID:c8G5txtJ
昔々ある所に、イアソンという名の男が居ました。
彼は本来なら国王になれる身分でしたが、幼い頃にペリアスという男に王位を奪われてしまったのです。
ある日立派な青年に成長したイアソンは、王位を取り返すためにペリアスに会いに行きました。
しかしイアソンはペリアスの口車に乗せられ、海を隔てた遠い遠いコルキスの国にある黄金の羊の毛皮を取りに行く事となったのです。
当時は現代ほど航海技術も地図も無く、その旅はおおよそ不可能な難題である事は明白でした。
しかしイアソンは女神アテナや船大工アルゴス、無双の英雄ヘラクレスら幾多の神々、英雄達の力を借り、とうとうコルキスへたどり着く事に成功したのです。
しかしコルキスの王であり黄金の毛皮の所有者でもあるアイエテスは、イアソンに黄金の毛皮を渡す気はありませんでした。
アイエテスはイアソンに無理難題を押し付け、諦めさせようとしたのです。
困り果てたイアソンに救いの手を差し伸べる一人の女性が居ました。
彼女の名はメディア、コルキスの王女であり優れた魔術師でもある彼女はイアソンに一目惚れをしていたのです。
イアソンはメディアの力を借り、見事にアイエテスの要求に答えたのでした。
しかしアイエテスは黄金の毛皮を渡そうとはせず、イアソンとその仲間達を暗殺しようと計画したのです。
その計画を知ったメディアはイアソンを助けるために黄金の毛皮を盗み出し、イアソン達と共にコルキスから逃げ出したのです。
こうしてとうとう黄金の毛皮を手に入れたイアソンは、メディアや仲間達と共に故郷へと帰っていったのでした……

……物語はここで終わる。
これが僕が演じる事になった劇の内容だ。
この劇はギリシャ神話が元に、所々改変を加えてある。
そして僕は主人公のイアソンの役を演じるのだ。
それにしても……それにしても……
黒崎先輩……いきなり恐怖の整体フルコースはやめてください……
しかもそのまま路上に放置するのは本当に勘弁してください……
ねぇ先輩……ねぇってば……
……結局、たまたま居合わせた村風さんに助け起こされるまで僕は倒れ続ける事になった。
女の子におぶさって行くのが格好悪いだなんて思っていませんとも。
ちゃんとお礼は言いましたよ、『でも何で村風さんがここに居たの?』なんて聞いていませんよ。
『他人の痴話喧嘩を聞き逃しちゃ村風由江の名が廃るわ』だなんて村風さんが言う訳が無いじゃありませんか。
……えっ?泣いてなんかいませんよ。
泣いてなんか……いませんとも……
545名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 00:00:00 ID:PP+u/6ND
   |::::   |::  |
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    |__,||__|           ぶら下がり健康法
    /::__) /::__)
    / / /ノ,/ ))
    ~^~ ~^~
   ____
546過保護『前夜祭(後編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/10(木) 00:00:38 ID:i9ZcS1Yo
「これは……まさか!?」
「はい、黄金の羊の毛皮です。貴方にお渡しするために持ってまいりました」
「なんと美しい……しかし、毛皮は明朝アイエテスが直々に受け渡すをするのではなかったのか?」
「それは嘘です、父は毛皮を渡す気などありません。私が父が貴方を殺せと部下に命令しているのを聞いたのです」
「なんだと!?おのれアイエテス……」
「これさえ手に入れば貴方がこの国に居る理由はありません。さあ、刺客がやって来ない内に逃げて」
「しかし其方はもうこの国には居れまい」
「イアソン様、どうか私も連れて行ってください。決して足手まといにはなりません、これでも魔術には自信があります」
「国も家族も王女の地位も捨てる事になるのだぞ……」
「構いません。愛しています……イアソン様……」
……ここでやや多めに間を空ける。
イアソンにとっては重要な問題だ、即答なんてできる筈が無い。
「……わかった。もう長居は無用だ、アルゴー号に戻ろう。そなたも一緒だ」
「はいっ!」
躊躇せずに村風さんの手を握り、舞台右側へ向かって走り出す
ここで一瞬でも恥ずかしいだなんて考えたら負けだ。
……そして劇はクライマックスシーンに突入する。
イアソン達はすぐに船を出しコルキスから脱出を図るが、それを察知したアイエテスが軍勢を繰り出してくるのだ。
その後一騎当千の英雄達が奮戦し、ついには追っ手を防ぐために港中の船を破壊して見事に逃げおおせるのだ……
547過保護『前夜祭(後編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/10(木) 00:01:25 ID:i9ZcS1Yo
「お疲れ様」
最後の練習が終わり、村風さんが汗を拭きながらスポーツドリンクを差し出してきた。
「ありがとう」
ありがたく受け取る。
監督兼脚本さんからの差し入れらしい。
あの人は口は悪いけど意外と良い所がある。
窓を見ると、外はもうすっかり暗くなっていた事に気づいた。
「いよいよ明日からが本番ね」
「そうだね」
そう……明日からの3日間が本番、昇龍高校学園祭が始まる。
「健斗君も良く頑張ったわね、初めの頃と比べると雲泥の差よ」
「良くも悪くも、これだけやったら慣れるよ」
周りでは一部を除いたクラスの全員が慌ただしく帰りの支度をしていた。
今夜はこれから体育館で前夜祭がある。
学園祭を前に全校生徒の士気を高めるために生徒会が企画したもので、今年から初めての試みらしい。
さっきからクラスの人達がその事を話題にしているのが聞こえる。
「そういえば健斗君はどうするの?」
「えっ?何が?」
咄嗟にそう答えていた。
考え事をしていたせいか、僕は村風さんの話を全然聞いてなかった。
「前夜祭よ。健斗君は見に行くの?それとも参加してみる?」
「うん……まだ決めてない」
そうなんだ、僕にはそんな事を考えている余裕なんて無かった。
あの日……約一週間ぶりに恐怖の整体フルコースを受けた日から、僕は黒崎先輩と一言も口をきいていない。
あれからもう半月近くも経ったというのにだ。
朝や昼休みに先輩が僕のクラスを訪れなくなると、驚くほど僕達は接点が無くなってしまう。
部活動にも顔を出してないらしい。
正直避けられてるとは思うし、仲直りをするのなら自分から会いに行かなくちゃいけないとも思ってる。
だけどどうしようか迷ってる内に、気がつけば半月も経ってしまっていた。
情けないとは思ってる、だけど僕は……自分でも驚く位に優柔不断だった。
「あまり悩みすぎると身体に良くないわよ。気休めだと思って出てみたらどう?」
「うん……」
村風さんの言う事にも一理ある。
それでもやっぱり僕は黒崎先輩が気になっていた。
「私としては是非見に来てほしいのよね。私も一応参加するし」
「参加って……村風さんが?」
「そっ、生徒会のメンバーでバンドを組んだの。私がギターでね」
村風さんはあたかも当然だと言わんばかりの顔をしている。
ちなみに僕は初耳だ。
「……と、もうこんな時間か、そろそろ行かなくちゃ。健斗君、私はもう行くけどあなたはどうするの?」
どうしよう?
先輩の事も気になるけど……ここで帰っても何かが変わる訳でもないか。
「わかった、僕も行くよ」
548過保護『前夜祭(後編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/10(木) 00:02:14 ID:c8G5txtJ
村風さんと階段を下りていく。
意外と前夜祭を見に行こうとする人は多く、廊下も階段も混雑していた。
「ところで一つ聞きたい事があるんだけど、良いかしら?」
ふと思い出したかのように村風さんが言った。
「何?」
「二週間前の話よ。どうしてあなたは黒崎先輩の頼みを断ったりしたの?」
「ああ、その事……」
「ごめんなさい、やっぱり気になっちゃって。この件に関しては誰にも言ってないし、これからも言う気は無いから教えてくれないかしら?」
どうしようか……別に隠すような話じゃない、ただ……
その時だった、僕は見慣れた後姿が前方にあるのに気づいた。
「ごめん、その話は後で……」
「えっ!?ちょっと……」
少し……ほんの少しだけ前まではただの憧れで……
だけどその姿がまるでトランプのピラミッドの様に、なんの支えも無くグラグラと辛うじて危ういバランスをとっている事に気づいて。
それに気づいた頃から、誰よりも何よりも愛しいと感じたあの人が居た……
先輩はいつも僕が近づくと気配でわかると言っていた、この半月の間奇妙なまでに会うことが無かったのはたぶんそのせい。
けど今なら……いつも以上に人で溢れかえっている今なら気づかれずに近づけるかもしれない。
ゆっくりと近づいていく……距離が近づくにつれ鼓動が高まっていくのがわかる。
あと三歩……二歩……一歩……
「やっと捕まえましたよ……先輩……」
その瞬間、先輩はビクッと全身を緊張させ……
……投げられた……
「先輩……ひどい……」
「わぁっ!すまない、健斗だとは思わなかった」
先輩が見事にうろたえている。
まあ、いきなり後ろから抱きついた僕も悪かったんですけどね……
先輩の姿を見ただけで動転していたかもしれない。
「先輩、今からちょっと時間を貰えませんか」
背中にリノリウムの感触を感じながら……ちょっと情けない格好だけど、僕は先輩の眼をはっきりと見ながら言った。
先輩と視線が通じる事はなかった、その無意識に逸らされた視線が何処を彷徨っているのかはわからない……
「……わかった」
それでも先輩はそう応えてくれていた。
549過保護『前夜祭(後編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/10(木) 00:03:40 ID:i9ZcS1Yo
屋上の空には満天の星空が輝いていた。
明かりは頼りない蛍光灯が情けなく輝くのみだったけど、先輩の顔ははっきりと見て取れた。
「どうしたんですか?最近部活にも顔を出さないで」
「……すまない」
その顔はとても年上には見えない、まるで……そう、まるでお仕置きを恐れる幼い子供の様に見えた。
「何をそんなに怖がっているんですか?」
「……すまない」
返答は変わらない。
ただ嵐が過ぎ去るのを待っているかのように固まっている。
本当にまるで子供じゃないか。
「謝ってるだけじゃ何もわかりませんよ」
「……ッ!!」
しまった……そう思った時にはもう遅かった。
先輩の身体がまたビクッと緊張して、それっきり何も喋ってくれなくなってしまった。
「はぁ……」
ため息が漏れる。
当の先輩はそれすらも怖がって、ただ固まって一言も発する事はなかった。
だからもう覚悟を決めた。
とにかく誤解を解こう。
そして伝えよう……僕が先輩の事が大好きだって事を。
「先輩、そのままで良いから聞いててください」
「……うん」
ゆっくりと息を吐き……吸う。
「先輩はあの劇のストーリーは知ってますか?」
「台本……読ませてもらった」
やっぱり……先輩は誤解している。
いや、誤解と言うよりも誤認と言うべきかもしれない。
「あの劇の元になった物語ってけっこう長くて、だから所々が省略されてるんです」
「………………」
先輩は何も言わない、けれど視線がこっちを向いた事を見逃しはしなかった。
「例えばヘラクレスはコルキスに到着する前に仲間から外れちゃいますし、故郷に戻ってからもペリアスは素直に王位を譲らなかったり……
でもそんな事はどうでもいいんです。本当に大事なのは、あの劇では語りきれなかったイアソンとメディアの関係についてなんです」
550過保護『前夜祭(後編)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/10(木) 00:04:31 ID:i9ZcS1Yo
「それが……どうしたんだ?」
「先輩はメディアがイアソンに恋した理由を知ってますか?」
「……たしか一目惚れだった」
「ええ、あの劇では」
そう……あの劇ではハッピーエンドにするためにわざとその部分を描いていなかった。
本当は違う、あの話は恋と冒険の物語なんかじゃない。
恋心を錯覚し利用された少女の……悲劇の物語だったんだ。
「愛と美を司る女神アプロディテ。その女神によって恋心を吹き込まれたメディアはイアソンに対して盲目的に尽くすようになり、
父を裏切り、弟を八つ裂きにし、その後も何人もの人々を殺し、それでも最後にはイアソンに裏切られるんです」
「そんな……そんな事って……」
「例え演技でも僕は先輩とメディアを同一視したくはありませんでした。それに……」
それに例え演技でもイアソンとして黒崎先輩を愛したくなかった、僕はイアソンに嫉妬していた。
……なんて事は、きっと言わない方が良いんだろうな。
「僕は先輩が大好きです、先輩から避けられようと嫌われようと大好きです」
「嫌いなんかじゃないっ!!」
先輩がそう叫んだ。
「怖かったんだ、健斗に嫌われるのが。
あの日健斗に嫌われたと思って、それでも健斗本人からそう告げられるのが怖くて、だから健斗と顔を合わせられなかったんだ」
「先輩……」
その声は震えていた、怖がりながら泣いていた。
だけどそれは、やっぱり僕がこの世で一番大好きな人の声だった。
「お願いだから……私を見捨てないでくれ……」
その姿はまるで子供だ。
だけど……だからこそ、とても愛しく感じた。
「大好きですよ……」
僕はもう一度先輩を抱きしめていた。
今度はもう投げ飛ばされる事はなかった。
「健斗……」
先輩が……たまらなく愛しかった。
551過保護『前夜祭(後日談)』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/10(木) 00:05:24 ID:i9ZcS1Yo
それから一週間……学園祭は無事に終わり、僕らはまた平穏な日常へと戻っていた。
そんなある日……
「ねぇ先輩、僕達って恋人としてまだまだですよね」
「そうか?私は健斗が居るだけで幸せだぞ」
「この間だって、僕達はお互いの思ってる事、あんまり伝えきれてなかったじゃないですか」
「そうかもな……」
「だいたい先輩は我慢しすぎなんですよ。もっとわがままでも言ってくれた方が恋人らしいと思いますよ」
「そう……なのか?」
「そうですよ。ほら、その方が僕も嬉しいですし」
「なら、今度は倉田健斗として愛してると言ってほしいな」
「先輩……まだ諦めてなかったんですか……」
「当然だ」
「いや、それは恥ずかしいんですけど……」
「駄目だ。言い出したのは健斗じゃないか、健斗には聞く義務がある」
「むむむ……」
「………………」
「愛……してます……」
「声が小さいぞ」
「駄目です、勘弁してください」
「私は何度だって言えるぞ。あ……」
「わあぁーーっ!!!駄目ですよ、ここは教室なんですよ」
「健斗……私の事が嫌いになったのか……」
「黒崎先輩、愛してますっ!」
「私もだ、健斗」

「はぁっ……」
「由江、どうしたの?最近元気無いよ」
「バカップルにあてられただけよ」
「バカップル?」
「こっちの話よ。私もあの時にもう一押ししてれば女同士で寂しく食事する事もなかったのにねぇ……」
「なによ、私じゃ不満なの?」
「そんな事は無いわ。ただ私は可奈ほどずうずうしくはないし、可奈ほど誰かに依存できなかったって話よ」
「……とりあえず由江が私の事をどう思ってるのかは良くわかったわ」
「可奈、健斗君の事はまだ好きなの?」
「なっ!?ななっ……」
「もう良いわ、その反応だけで十分よ」
「由江っ!いきなり何を言うのっ!」
「頑張りなさい、貴方ならまだ勝機はあるわ」
「えっ……?」
「とは言え今すぐには無理ね、黒崎栞先輩がもう少し精神的に安定してきたら……あるいは……」
「由江、本当に何を言ってるの?」
「……負け犬の遠吠えよ」
552シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/10(木) 00:06:12 ID:i9ZcS1Yo
>113

こうですか?わかりません!

そんな訳でリクエスト外伝完結。
過保護初登場キャラだけで構成した今回、気がつけばリクエストからずれてる気も……
感想をいただければ幸いです。
553名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 00:11:00 ID:zU0YkpZ+
ブラマリキターーー!!
姫様とマリィ、コレは良ひ呉越同舟ですねw
シャロンもガンガレ
554名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 00:24:43 ID:RywLfySZ
ブラマリ、おもしろす
555名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 01:00:57 ID:NW46b404
うん。最高。
556名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 01:33:11 ID:0BGSUczz
ブラマリと略されると
魔法の少尉ブラスターマリだと思うから困る
557名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 02:32:12 ID:NW46b404
>>556
とりあえずアレは未来永劫封印すべきモノだと思うが。
558名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 03:44:24 ID:QC/EjIVm
>>552
113ではないがGJ!
個人的にはもっと修羅場成分が欲しいがこの軽いヤキモチみたいのも良いと思う
559名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 04:22:14 ID:0ez0vFtw
>>543
マローネ殺る気満々だー
シャロンの考えが気になるw

>>552
黒崎先輩(*´д`*)
可奈がそろそろクルー?
560赤色 第三回  ◆tTXEpFaQTE :2006/08/10(木) 04:58:05 ID:iv6btL9i
赤色 第三回


「シン様、シン様、起きてください。起きてください」
耳元で声がする。優しい声だ。
「朝ですよ朝なんですよ」
起きる様に促しているようだが、その声の心地の良さにまたトロトロと眠りに
落ちそうになる。
「……起きないんですか、そうですか。
 …………じゃあ、とっておきの方法で起こさせて頂きますからね。
 …………………うふ…初日から、ついてますね、私。
 …………………いただいちゃいますからね」

そう言うと、声の主はシンの布団にもぞもぞと手を入れてきた。
そして、シンの寝巻きを探り当てると弄り始めた。

体への刺激に、シンの意識は猛スピードで覚醒し始めた。飛び跳ねるシン。

「あ、起きられましたか、シン様」
シンの体を弄っていた、メイド服を着た女性がにっこりと微笑んだ。
「な、なにすんだよ、あんた!てっか、誰だよ、あんた!?」
「何って、シン様を、起こしに来ただけですが」
さも当然、といった顔で答える。
「だからって、あんた、何も、あんな事しなくても!」
「でも、このとおり、シン様は起きてくださいましたよ?」
そういってメイド服の女性が首をかしげると、栗色のウェーブがかった髪が
ふわふわと揺れた。

そうなのか、屋敷では、こういうのが普通なのか?
…そういえば、屋敷を出る前は毎朝こうやって、メイドさんに起こしてもらって
た気がする。毎朝、くすぐられて起こされてたな。

あの時のメイドさん、どうしてるかなあ。
もう、顔も思い出せないけど、大好きだったなあ。俺の初恋のひと。
はあ。
561赤色 第三回  ◆tTXEpFaQTE :2006/08/10(木) 04:59:42 ID:iv6btL9i
「シン様?」
急に溜息をついたシンをみて、メイドさんが顔を覗き込んだ。
「どうしました?低血圧になったんですか?」
「いや、違う違う。大丈夫だよ」

ベッドから立ち上がり、新鮮な空気を吸うため、窓をあけるシン。
朝の爽やかな空気が心地いい。

窓から屋敷の庭が一望できた。
左には竹やぶがあり、右には大きな池があった。

―――大きな池。
昔お世話になってたメイドさんの事を思い出していたせいか、ずっと忘れていた
記憶が蘇ってきた。

シンは屋敷を出る前、よく遊んでいたのは、その大きな池だった。
中で泳いでいる金魚に餌をやったり、アメンボを観察することがとても好きだった。

ある日、いつもの様に池を覗き込んでいたら、何かの拍子に滑ってしまい、
池に溺れてしまった。
池の中でもがいていたが、誰も助けに来てくれず、死を意識し始めたとき、
そのメイドさんが助けに来てくれたのだった。

池からあげられ、そのメイドさんに抱っこされたとき、シンはメイドさんのおでこから
血が出ていることに気が付いた。
後から聞いた話だが、シンが池の中で暴れたため、池の中の岩で頭を打ってしまったらしい。

その時の、メイドさんの髪の栗色と、血の赤色のコントラストを、シンははっきりと
思い出していた。

ん?栗色の髪?
シンが後ろを振り返り、起こしに来てくれたメイドさんも栗色の髪だ。
シンがまじまじと見ていると、メイドさんはにっこりと微笑み返した。

もしかして、いや、ひょっとして、多分、ええと、たしか、
あのメイドさんの名前は、確か……
「…………朔、さん?」

キョトン、とした顔を見せるメイドさん。
あ、やっぱり人違いか、シンがそう思っていると、

「……ふぇ」
と変な声がメイドさんの口から漏れた。
次の瞬間、メイドさんの瞳から涙がボロボロ溢れてきた。

「ちょ、ど、どしたんですか!」
あわててシンが駆け寄ると、メイドさんは泣きながら、微笑んだ。
「だって、だってね、シン様がね、なん、何にも、私が言う前からね、
 ひっく、わた、私のこと、おぼい、思いだだぢで、ひっく、
 くれるん、うううううああっっぅううぅぅぅぅぅ」

メイドさんが―――朔さんが泣き止んだのは、数十分たった後だった。


赤色 第三回 終わり
562名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 08:08:04 ID:NW46b404
赤色キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
563名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 09:02:26 ID:QyxN2SPx
妹の戦いだけでなく初恋のメイドさんまで参戦(*゚∀゚)=3ハァハァ
564名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 10:04:59 ID:KV2N+o8m
朝からこの悶々とした気持ちをどうすりゃいいんだ!
565名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 11:08:30 ID:Wid+nLtP
女の泣きは強いわ(*´д`*)
このスレのおかげで女の子の泣きがツボに・・・
というか変な性癖が付きそう・・・((;゚Д゚)ガクガクブルブル
566名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:31:03 ID:Z1zsSktp
まぁ、女性の泣きはこのスレ的に結構怖い事態に発展する可能性あるから
むしろ、大人より10代の方が大人じゃない分怖い時もあるし
そんなに経験無いけど、裾掴まれてビクともしなくて挙句に服破かれて肝を冷やした事はあったな

このスレ的にだと包丁とか持ちださなきゃ修羅場じゃないかもしれんけど
567名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:35:37 ID:95q4wMtf
|ω・`) さて、そろそろ疾走が読みた(ry
568名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:36:14 ID:cCLqBK4u
>>566
マテコラ。ビクともしない時点で上質の修羅場、さらに破れたなんて極上の修羅場だぞ。
……詳しく聞こうじゃないか。
569名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:38:13 ID:rhrcaVN1
>>566
その裾を掴まれて云々のところを詳しく!
570名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:42:24 ID:hLmxDAQk
>>566
そういう事を淡々と語れることから、かなりの修羅場経験者と見たw
571名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 12:52:57 ID:Wid+nLtP
>>566
どうだい、君の経験を作品にしてみる気はないか?

もちろん多少は誇張していただいてもよろしいので
是非書いていただきたいm( __ __ )m
572名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 13:04:38 ID:9K0pk+C6
>>566
素晴らしい体験だ!

…ま、見てる分にはいいけど、
正直ガチ修羅場なんて楽しくないよな…
573名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 13:22:54 ID:vbWYlJGC
>>566の人気に(ry
574名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 14:54:23 ID:CYhtD7NM
若ければ若いほど、修羅場で刃物が出てくる確率高し。
575赤色 第四回  ◆tTXEpFaQTE :2006/08/10(木) 15:46:04 ID:iv6btL9i
赤色 第四回

シンと朔、二人ともベッドに腰をかけて、他愛も無い事を話し続けた。
シンが離れていた間の屋敷の出来事。シンが暮らしていた町のこと。
それに、鈴音のこと。

「じゃあ、その、鈴音さんも、シンちゃんにとって、大切な妹なんですね」
「うん、血こそ、繋がってないけどね。それでも、鈴音がいたから、セリや朔姉ちゃんに
 会えなくなっても、寂しさはまぎれたよ。
 …大丈夫かな、鈴音。
 今頃、寮生活で大変だろうな。泣いてなけりゃいいけど」
「うふふ。そんなに心配してもらえるなんて、鈴音さんは幸せですね」

何だか、自分のシスコンっぷりをからかわれた気がしたので、シンは話題を変えた。
「そう言えば、朔姉、昨日屋敷を見て回ったとき、いなかったよな?
 休みだったの?」
その質問に、朔はうふふ、とだけ笑い、
「あら、いけない。もうこんな時間。そろそろ、怖い人がやってきちゃいますね」
と答えた。

怖い人?だれのこと?
そう聞こうとした時、シンの部屋のドアがぶち破られた。
ドアの向こうにいたのは、セリ。

「朔っっっ!!!!」
そう叫びツカツカと2人が座るベッドによってきた。
じろりと朔を睨み、シンを睨むと、
「朔、あなた、何をしているのかしら?」
地獄の底から響いてきたような声だ。
だが朔は気にすることも無く、
「シンちゃんを、起こしにきました」
と、あっけらかんと答えた。
「………あなたに、それを命じた覚えは無いわよ?
 第一、あなたには二週間の休暇を与えといたはずよ!
 なんでここにいるのよ!!
 そ、そ、それに、シ、シンちゃんですってぇ?
 あ、あなた、メイドの分際でなれなれしすぎるのよっ!」
セリがまくし立てるのを朔は聞き流し、
「ええとですね、まず何で私がシンちゃんを起こしに来たかと言えば、
 それがずっと私に仕事だったからですよー?シンちゃんが帰ってきたら、
 やっぱりそれが私の仕事になると思いますのよ、はい。
 あと、私の休暇の件ですが……これについては、ちょっと、講義したいことがあるんですよ」
微笑みながら、しっかりとセリを見据え、朔は続けた。

576赤色 第四回  ◆tTXEpFaQTE :2006/08/10(木) 15:46:52 ID:iv6btL9i
「そもそもですね、何だか怪しいと思っていたんですよ。
 突然に休暇を下さったのは有難いのですが、その理由がこれですか。
 ……随分と姑息な事を」
「こ、姑息ですって」
「ええ、もう、大姑息。
 私に知らせないで、シンちゃんを屋敷に戻されて、しかもその時に私を
 外に追い出しとく腹積もりとは。
 私だって、シンちゃんが帰ってきたら嬉しい事ぐらい知ってるでしょうに
 そんなに、私をシンちゃんに会わせたくなかったのですか」
「な、何よ。なんで、メイド風情に、お兄様が帰ってくること知らせとかなきゃ
 ならないのよ。あんた、分をわきまえときなさいよ」
「嫌です。これだけは譲れません」
「な、生意気な口きくのね。
 解雇しても、いいのよ、こちらは」
「構いません。と言うより、あなたにその権限はありません。
 私は、シンちゃん専用のメイドになりましたから」

へ?そんな話、聞いてないよ。
そうシンが首をかしげていると、
「……………お兄様?」
セリがギロリと睨んできた。

シンが朔の方を見ると、朔は自分のおでこを撫でていた。
「あ」
思い出した。

池に溺れて朔に助けられてしばらく、朔は頭に包帯を巻いていた。
数日たって、やっと包帯が取れたが、おでこに傷が残ってしまった。
その傷を見せながら、朔はシンにとうとうと語った。

「見えますか、シンちゃん?これは、あなたを助けるときにできた傷です。
 …こんな傷ができては、私、もうお嫁にいけないんです。
 どうしてくれます?」
お嫁にいけない。シンは幼いながらに、自分のせいで、朔の人生がだめになったのかと
おののいた。
「…ご、ごめんなさい」
「本気で、あやまってくれてますか?」
「ほ、本気だよ」
「じゃあ、責任、取ってくださいね」
「せ、責任?」
ごくりとつばを飲む幼いシン。

朔はシンの手をとり、
「では、ずっと、私をお側においてください。
 シンちゃんが大人になるまでずっと、大人になってもずっと、
 結婚してもずっと。
 たとえ、この屋敷が潰れ、路頭に迷うようなことになっても、ずっと
 ずっと、永遠に、死が2人を分かつときまで、その後生まれ変わっても、
 ずっと、ずっと、ずうっと」
シンはコクコクと頷いた。
罪悪感と、朔の雰囲気に飲まれて。

577赤色 第四回  ◆tTXEpFaQTE :2006/08/10(木) 15:49:00 ID:iv6btL9i
そんなことを思い出していると、
「…お兄様?」
セリが迫力のあるまなざしで睨んできた。

「あー、うん、そういえば、そうなんだ。朔姉、俺の、メイドさんなんだよ」
「…はあ?おれのぉ?俺の、ですって?」
口をパクパクさせながら、セリがまなじりを吊り上げる。
「そうなんです。私ってば、シンちゃん専用になっちゃったんです。いやん」
「か、…は…」
ぶるぶると全身を振るわせるセリ。

「あの…セリ?」
おずおずとシンがセリに声をかけると、セリは引きつった笑顔で、
「何でしょうか?お兄様?
 ああ、そうですか。これから、専用のメイドと、用があるから
 出てってくれと言うつもりですか。わかりましたわかりました。
 ああ、そうですか。出てきますよ出てきますよ。
 でていきますよ!」
それだけ叫ぶなり、セリはきびすを返して部屋から出て行った。

あとには、ぶち破られたドアだけが残っていた。
578名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 16:02:37 ID:CmlD2iya
赤色が連続更新だなんて嬉し過ぎる。
579名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 16:04:22 ID:ecvEnNsW
阿修羅氏おめ
580名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 16:40:14 ID:95q4wMtf
|ω・`) 主導権を握る使用人 
     ・・・ハァハァ
581名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 16:45:46 ID:Wid+nLtP
押しが強いメイド(*´д`*)
主人公のナイス受けっぷりに萌え

あと阿修羅殿おめでとうございます
ただ奥さんが居ないからって修羅場の種蒔いちゃだめだよ
絶対ダメだからな(ダチョウ倶楽部の「押すなよ」風で
582名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 17:40:03 ID:Z1zsSktp
そうだな、ちょっと怖い体験かもしれないがこれをネタにすれば凡作くらいは書けるかもしれない
神の如き筆者達、神者の作品には及ばないかもしれないが
15スレ辺りまでに仕事の合間を縫ってプロット(誇張有りでいいなら)でも考えておくよ


体験的には3人(?)の女性に追いかけられただけの話
最終的には家族の人に引き取られちゃったんだけど
(こっちは当時14歳、あっちは19歳、最後に聞いた時は病院行ってるみたいだった、今は交流無し)
浮気なんて考えも無かったし、他の人には目もくれなかったしその人だけと遊んだんだけど
(小さかったし、ある意味好きっていう気持ちが純粋だったかもしれん)
違う反応が面白くて好きになっちゃっただけなんだ3人(?)共
小さかったから少し不思議に思っただけで、別に怖くなかったし

なんか有名漫画にあったな、こういうの


期待しないで待ってて下さい
583名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 17:42:11 ID:bUIa/VMf
ヤッベェエ!朔萌えすぎだ!!

阿修羅氏、お子さんおめでとうございます
584名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 18:03:29 ID:KV2N+o8m
ふと思ったんだけど。朔ちゃんって何歳?
585名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 18:08:01 ID:95q4wMtf
|ω・`) 五十くらいかな。市原悦子的なイメージで良いと思う
586名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 18:32:12 ID:9X7FV/B3
そんなのはイヤだ('A`)
姉ちゃんってよんでるから20代後半ジャマイカ
587名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 18:44:48 ID:oq5ZVY5h
母の嫉妬マダー?
588名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 19:01:04 ID:Wid+nLtP
>> 582
簡単なプロットの段階なのに凄く面白そうなんですが・・・
なかなかいい経験をお持ちで・・・このスレを見てる方なら尚更・・・

その経験に嫉妬
589名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 19:36:35 ID:GjyV14bk
赤色のメイドさんの名前の読みってなんですか?orz
のり?
590名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 19:54:04 ID:GTy9dqJ4
「さく」だとオモ 
591名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 19:59:31 ID:QC/EjIVm
セリ嫉妬可愛いよセリ(*´д`*)ハァハァ

>>582
迸るほどwktk期待して待ってる
592名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 20:50:40 ID:rhrcaVN1
13スレちゃんオチちゃったねー。
プークスク酢w。(~o~)
593名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 21:00:01 ID:Z38dsc6p
llllllllllllllll  lllll :::::::::.  :::iハi ヽ i `. i _,,... -=- ..,リ ::. i:: ::::::: .::   l  i::ヽ:  iヾ
lllllllllllllllll lllllll :::: ::::. ::l 丶 `'  ,r',~- ''''二._' -._丶ハ:::リ.::::: .:::  i.:  !:: l:  l ヽ
llllllllllllllllll .llllllllllll,:. :::. ::i    ,r',r' ,.-'~    `ヽヽ,丶ノ:::ハ::::   y   !:: リ、i  i
llllllllllllllllllll lllllllllllヽハ::. :l   '7´ i   ,,;;;;;,,  `l i ヾリi:::  ノ /.:   l /イ i  l
llllllllllllllllllllllllllllllll ; ヽ、i  、 .i  l   '';;;;;;''   i l  ,.リ:: ,y'./.::::   l / リハ i
lllllllllllllllllllllllllllllllヽ,ヾ、 ヽ、 .` ヽ, ヽ,     ,y' ,i _,/ノ / .::::::::   r'
lllllllllllllllllllllllllllll “”,;   ..::::::::...丶., ` -=- ''"_.r'-'  / 7.:::::::::::::::   l
llllllllllllllllllllllllllllll:::  # ,  ::::::::::::::::....` ー= rr‐'i   ノ /.:: イ :::::::::   l
llllllllllllllllllllllllllllll:::  *    ::::::      ¨ ,  r'.::: i i ::::::::    i
llllllllllllllllllllllllllllll.:::                ;〉'".::: i" l :::::::::: .:  .l
llllllllllllllllllllllllllllllll:::.        , =@   叮フ .::::イ l .l :::::::::: .:::  i    クワッ
llllllllllllllllllllll,.;.._lll::::::.        ¨$,¨   y'イ.:: / i.i l ::::::::: .::::  l
llllllllllllll_,rニ-..,,,__,,..,_     ;;,_   `   .rJ::::/ イi l ::::::::: ::::::  l
lllllllllllll、-ー─ ─一-  ̄,7ニ-'´   ;   # ;i::::l y" ! l ::::::::...:::::  l
lllllllllllllllll`- ._  _,,r-'"´    , \=G ヽ::i   .l :::::::: .:::::  i


594名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 23:04:08 ID:s4txYuSQ
何でか知らないけど、拉致監禁折檻という言葉が思い浮かんだ…
595『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/10(木) 23:25:36 ID:Wp64PqtI
「で、だ。一体どこの子なんだい、ちみわ。」
我、問幼女。
「テキトーな漢文つかってんじゃないの。……それにしても、本当にどこの子なのかしらね……弱気な晋也って………」
と、そうだ。ひとつ気になることがある…。『ママ』は誰なのか、だ。まさか男のオナニで生まれるわきゃない。
「なあなあ、ナミちゃん。」
「ん?なーに?おじちゃん?」
ピク!お、おじちゃん?仮にもまだ現役学生の俺におじちゃん?ならん、ならぬぞ!俺のそっくりさん!教育がなっとならん!
「いや、違うよ、ナミちゃん。お、に、い、ちゃ、ん。さぁ、言ってみなさい。」
「おにいちゃん……?」
「うおああああおあがいあがあなぁ!!!!」
「せ、せんぱい!自重くだされ!妹属性がばれてしまいますよ!」
と、志穂が…
「くぅ……」
苦虫を噛み潰したような顔をしていた。(見たことないが)
「お、お……おお……」
「どうした、志穂?なにを嘆いてんだ?」
「おにいちゃん……」
「うおああああおあがいあがあなぁ!!!」
「嗚呼!せんぱい!顔中からいろんな液が出てます!!」
596『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/10(木) 23:27:17 ID:Wp64PqtI
「うぐっ……ひっく…」
涙、鼻水、汗。その全てが顔から流れ出て、まるで滝のように床を打ち付ける。
「だってよぅ……今までHなことに消極的だった志穂が……おにいちゃんだなんてワードを言ってくれるなんて……感激だぁ…」
「おにいちゃん、がHなの……?」
「どうしたの?おにいちゃんいたいの?」
「ううん、うれしいんだよ……」
いやぁ、可愛らしいなぁ、ナミちゃん。ほんと、娘が欲しくなってきたよ……
「せんぱい、せんぱい♪」
「ん?どした?」
「おにいちゃぁん…」(最大限の甘い声)
「………」
「…………」
「…………………」
「な、なんなんですか、この白けた空気は!?むせび泣いて喜ぶ所でしょう?」
「いや、っつーか春華はさ、後輩のキャラが強いわけさ。だから、なぁ……おにいちゃんってのは来ないな。うん。」
「ぱくりー、私のぱくりー。」
「きゃははは、ぱくりー。」
「う、うぅ……」
哀れ、春華よ。志穂とナミちゃんにダブルで弄られてる。
「ま、しょうがない。今日のところはナミちゃんを泊めてあげるしかないか。今から親探しするのも難しいしな。」
597『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/10(木) 23:29:19 ID:Wp64PqtI
「うぐっ……ひっく…」
涙、鼻水、汗。その全てが顔から流れ出て、まるで滝のように床を打ち付ける。
「だってよぅ……今までHなことに消極的だった志穂が……おにいちゃんだなんてワードを言ってくれるなんて……感激だぁ…」
「おにいちゃん、がHなの……?」
「どうしたの?おにいちゃんいたいの?」
「ううん、うれしいんだよ……」
いやぁ、可愛らしいなぁ、ナミちゃん。ほんと、娘が欲しくなってきたよ……
「せんぱい、せんぱい!」
「ん?どした?」
「おにいちゃん!」
「………」
「…………」
「…………………」
「な、なんなんですか、この白けた空気は!?むせび泣いて喜ぶ所でしょう?」
「いや、っつーか春華はさ、後輩のキャラが強いわけさ。だから、なぁ……おにいちゃんってのは来ないな。うん。」
「ぱくりー、私のぱくりー。」
「きゃははは、ぱくりー。」
「う、うぅ……」
哀れ、春華よ。志穂とナミちゃんにダブルで弄られてる。
「ま、しょうがない。今日のところはナミちゃんを泊めてあげるしかないか。今から親探しするのも難しいしな。」
598『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/10(木) 23:31:09 ID:Wp64PqtI
「そうね……このままにしてはおけないものね。」
よしよしと頭を撫でる。
「さぁ、ナミちゃん!今日だけは、俺たちがパパとママだぜ!」
「おにいちゃんと………ままはどっち?」
志穂と春華に問うた瞬間……
「はい!はい!!はぁい!!!私がママです!っていうことでせんぱ……もとい、だーりん♪今日も夜な夜な子作りでも……」
「ちょ、ちょっと春華!なに勝手に進めてるのよ!?夫婦っていったら私と晋也しかないでしょ?何勝手に決めて……」
おうおうおう。また始まった。どーもこの二人は犬猿の仲というかなんというか。春華が挑発するし、またそれに志穂も乗るし………
と、二人がギャースカ言い合っているのをよそに、ナミちゃんが俺の服の裾を引っ張る。
「ん?なんだい?」
「あのね、ママの事なんだけど……」
なんと!俺のそっくりさんの妻についての情報か!?
「えぇい静まれい!ナミ殿のお言葉である!静まれいぃ!!!」
「なんでですか!?普段ムカつくぐらいイチャついてるんですから、今日ぐらいせんぱいを譲ってくれたっていいじゃないですか!!」
599『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/10(木) 23:32:45 ID:Wp64PqtI
「はん!その『今日ぐらい』でなにされるかわかんないじゃない!晋也の貞操は私の貞操でもあるの!春華と一晩過ごさしたらなにされるかわからないじゃない!!」
「うっ……うぅ……いいかい、ナミちゃん。こんな女の子になっちゃいけないよ?もっと清らかに、大和撫子に育つんだ……」
「うん、あのね、おにいちゃん。………おねーさん、ふたりともママにはなれないよ?」
「ほぅ?」
おお、なんと健気な幼女だ。自分のママは一人だけとおおせられるか。代わりは勤まらないと。なんと一途、なんと鉄壁……
「だって………ママ、もっとおむねおおきいもん…」
「………」
「……………」
「………………」
「…(´_ゝ`)プッ」
「「黙れ!!!」」
「ぐばらがぁ!?!?」
秘技、ツープラトンエルボーがもろに食らい、壁にたたきつけられる。
「ぐっ……ふ、二人で……世界を…」
「悪かったわね!!ナイムネで!巨乳の奥さん想像したんでしょ!?この妄想浮気者!!殺してやるぅ!あんたを殺して私もしぬー!!」
最早暴走状態の志穂。春華は……嗚呼!?手錠!?やめてっ!トラウマなのだー!何故か手錠を見ると寒気がする。きっと前世の俺と手錠なにかしらの因縁があったんだろうなぁ………
600『この子どこの子?』 ◆yjUbNj66VQ :2006/08/10(木) 23:36:36 ID:Wp64PqtI
ごめん。ダブったorz
601名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 23:42:07 ID:GjyV14bk
新旧の作者さん入り混じっていい流れだ
602名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 00:03:45 ID:jq+EbCPY
朔さんのおでこの傷って
TOのオリビ・・・げふげふん
603名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 00:19:13 ID:5q0NEF6y
>>この子どこの子
ママが明らかになるかと期待したのですが引っ張りますな
ところで晋也よ。春華のおにいちゃんに萌えないとはどういう了見だ


>>602
オレも思った。だがTOは対姉だったから、赤色の妹達ならなんとかしてくれるはず
604名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 00:30:21 ID:8oErbA4Y
投下します。
605夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/11(金) 00:33:07 ID:8oErbA4Y
 私は夏が嫌い。

 夏は暑いから。夏は人を解放的にする。それは身に纏う服装も例外じゃない。
 私は肌を晒すことが嫌いだから。身体の線の浮き出る服は着たくない。でも、夏だとそうも言っていられない。
 同性からはスタイルが良くて羨ましいなんて言われるけど、私はその反対。特に男の人の視線を受けるのが嫌だった。
 同年代の女子より発育が早かった私は、始めこそみんなより早く大きくなっていることを単純に喜んでいたが、
男子の視線を集めるようになると、それも急激に無くなっていった。
 男子にちょっかいを出されたり、身体測定の度にその気持ちは逆のベクトルを向いていった。

 中学に入る頃には、その気持ちの名称をはっきりと認識した。それは『嫌悪』だった。
 分かったからには対処の仕様もある。なるべく目立たないようにすることだった。
 といっても、極端に野暮ったい格好をすればいいというものじゃない。それではかえって目立ってしまうから。
 大きめの制服で胸を隠し、スカートはちょうど膝くらいに。あとは極力その格好を維持する。
 中学生にもなれば新しいことを積極的にして目立とうとする子が多いから、みんなの視線は自然とそちらに行ってくれる。
 あとは、ヘンに孤立しないように小さな友達の輪に入れば殆ど大丈夫だった。

606夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/11(金) 00:39:50 ID:8oErbA4Y
 子供が何を言うかと思うかもしれないけど、私はこの頃には既に人生を達観しているところがあった。
 いや、半ば諦めていたと言ったほうがいいかもしれない。

 父は祖父から継いだ事業の拡大に情熱を燃やす人で、殆ど家にいない。母とはお見合い結婚だという。
 しかし愛情がないわけではなく、それは父が家にもたらす財からも分かるし、時にはお土産を手に帰宅しのんびり食卓を囲むこともある。
 父の事業に興味はないけど、家庭に不満はない。

 父は、私を何処に出しても恥ずかしくないようにしたいと思っている人だった。そしてその思いは習い事という方向を向いた。
 祖父のように身一つから一代で身を立てたのではない二世ゆえ、だろうか。
 色々なものに手を出し、今でも続けているのはピアノくらい。それなりのレベルには達したと思うけど、気が向いたときに少し弾くという程度のものに終わっている。

 もう一つ、花がある。これは私の意思で今でも続けている、趣味と呼んでも差し支えないもの。
 元は生け花の習い事だったのが、花好きと大きな庭の存在により、長じて園芸になった。
 花は花瓶に生けて室内で愛でるより、外で陽の光を浴びて活き活きと咲く方がよく似合う。


 ・・・これは、私の心の中の願望が生んだ好みなのかもしれない。
 私は将来、父が選んだ人と結ばれることになるだろう。それはお見合いか、はたまた政略結婚か。父の事業に関わるものになるのは間違いないと思う。
 だが父は、それが私の幸せだと心から信じていると思う。私を任せるに足る、経済的にも精神的にも見込みのある男性を選ぶだろう。
 実際、思春期のころには「あそこの家のご子息が〜」とか「昨日の発表会でその家の息子さんが〜」とか話すことが多くなっている。
 父と母の間に跡継ぎとなる男の子は結局生まれず、父は残念がっていた。だから、私の結婚には特に気を使うはず。


 私の未来のレールは敷かれているのだ。
 その諦観に対するささやかな希望。・・・普通の恋愛。
 父と母の間には愛はあるが、恋はない。私はそれに焦がれていた。
 生け花のような穏やかな束縛ではなく、風雨に晒されても太陽に向かう、外の花強さと自由さに。
 ふと庭を見ると、一輪の花が目に付いた。美しく咲いていながら、それは実を結んではいない。外が綺麗でも、中身が伴っていない花。

 ――徒花〈あだばな〉

 それは、まるで私のようだと思った。
607夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/11(金) 00:43:28 ID:8oErbA4Y
 私立のお嬢様学校に通わせようとした父の反対を押し切り、私は普通の公立高校に通うことにした。
 父は渋ったけれど、祖父の鶴の一声が効いたみたいだった。
 いつもは父に追従する母が中立を貫いたのも大きかった。もしかしたら、同じ女として私の気持ちを分かってくれたのかもしれない。
 結局私は、約束された穏やかな日々より儚い希望を選んでしまったのだ。もしかしたら、という思いを捨てきれず。


 けれど、そんなもしかしたら、ほど当てにならないものも無い。二年間、結局私は中学の頃と似たような日々を過ごすことになったのだから。

 入学して3ヶ月、夏休み直前に、告白というものを初めてされた。
 しかし私の心が高鳴ることは無く。最初は顔を見て付き合って欲しいと言っていた男子の目線が無意識のうちに下がっているのに気づくと、あとはもう嫌悪が増していくのみだった。
「ああ、この人の付き合ってほしいはそういうことなんだ」と分かってしまったから。
 当たり障り無く、且つ早く済ませるように穏やかな微笑を張り付かせてやんわりと断るのも、幾度か断りの返事をするたびに上手くなっていった。
 
 勉強は授業を聞かなくても分かるくらいだし、運動など部活に打ち込む気にもならなかった。
 それでもこの高校に通い続けたのは、言い出したのが自分自身だという意地。正直、父が「転校を考える気はないか?」と言ってくれるのを待っていたくらいだった。


 そのつまらない意地に、今は感謝している。そのお陰で彼と――皓一くんと出逢えたのだから。
608夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/11(金) 00:47:23 ID:8oErbA4Y
 私と彼の出逢いは何と言うか・・・些細というか、偶然というか、陳腐というか、そんなものだった。

 登校中、曲がり角で激突。猛ダッシュしていた皓一くんにぶつかられたのだ。
 余程急いでいたのか前傾姿勢になっていた皓一くんは、私の胸元へ正面衝突。押し倒される形で、もつれて倒れこんでしまった。

「すっ、すいません! 大丈夫ですか!?」

 暫し私の胸に顔を埋めたまま呻いていた皓一くんは、その状態を悟るや否や凄まじい勢いで飛び退き、傍目にも真っ赤な顔をしたまま
即座に私に手を差し伸べてきた。
 呆然としていた私は、促されるままその手を取る。細めの体つきとは裏腹の強い力で引き上げられた。

「ケガ、ないですか? 痛いところとかもないですか?」

 酸欠気味に荒い息を繰り返しながら、皓一くんは私に話しかける。心からすまなそうな表情と真摯な瞳は、はっきりと私の目を捉えていた。

‘ドクン’

 心臓が不自然に跳ねた。こんな真剣な顔で私を見る男の人はこれまでいなかったからだろうか。父でさえ、私をこんな風に見つめてきたことはないと思う。
 内心の不自然さを必死に押し隠し、私は大丈夫だよ、と微笑みかけた。
 実際、車もかくやというほどの急ブレーキをかけていた皓一くんのお陰で、私は尻もちをついた程度の痛みしかなかった。
 むしろ大丈夫じゃないのは皓一くんのほうだと思う。靴からは摩擦熱による蒸気が立ち上っているのが見えたくらいだから。
 それでも、私の言葉を受けて心から安堵したことが分かる溜息をつくと、良かったです、と控えめに微笑んでくれた。

‘ドクンッ’

 心臓が、もう一回り大きく跳ねる。
 ヘンだ。こんな至近距離に男の子がいれば間違いなく嫌悪感を催すのに、それがない。

「えっと・・・ホントにすみませんでした。その・・・とんでもなく失礼なことをして・・・」

 改めて、彼が頭を下げた。失礼なこと、のくだりで声が少々裏返る。それが私の胸に顔を埋めたことを指しているのはすぐに分かったけど、
やはりというか嫌悪感はない。これが他の男の子だったら、私の身体でいやらしいこと考えてるんだ、と嫌な気持ちになるのは間違いないと思うのに。
 頭を上げた皓一くんは、最後にもう一度すみませんと言って走っていった。酸欠と照れでまだ赤いままになっている顔だけど、それを隠すことなく、しっかりと私の目を見て。
609夕焼けの徒花 ◆6xSmO/z5xE :2006/08/11(金) 00:55:30 ID:8oErbA4Y
 私は彼が走り去った後も、しばらくその場に立ち尽くしていた。
 別れ際の私を見つめる彼の瞳、三度高鳴った心臓――それが、嫌悪を抱かなかった理由を教えてくれた気がして。

 今まで告白してきた男の子は、私の身体にしか興味がないくせに、それを全く認めようとしない人ばかりだった。
 やましい気持ちでいっぱいのくせに、そんな気持ちが全く無いように振る舞い、上辺だけの美麗字句で紳士的な態度をアピールする。
 エッチなことなんて全く考えてないかのように。

 私だって高校生ともなれば「そういう」お付き合いがあるのは分かる。
 彼らがそれを求めているのはいわずもがな、なのに。
 私の顔を見つめる瞳が、ともすれば目線を胸元へ下げているのはバレているのに。
 身体ばかりで『私』を見ようとせず、あまつさえそれを誤魔化そうとする。
 正直に「エッチなことさせて欲しい!」と言われた方がまだマシだ。・・・させないけど。

 だから男の人は信用できないと思っていた。同性愛に走るつもりはこれっぽっちも無いけれど、
異性に恋するなんてそれ以上にありえないと思っていた。自らの望みとは裏腹に。


 皓一くんの狼狽ぶりを見れば、私を押し倒してやましい気持ちを抱いたのは明らかだ。
 でも彼は、それを誤魔化さなかった。認めた上で謝ってくれた。ちゃんと私を「見て」。
 身体だけが私じゃない。でも、身体を抜いても私じゃない。

 やっと分かった。私は、全てをひっくるめて私を見てくれる人を欲していたんだ。


 私を本当の意味で女の子扱いしてくれた初めての人。ネクタイの色と制服から、同じ学校の二年生だと分かった。

(同じ学校の後輩、か・・・)

 もう一度会いたい。自分の反応が知りたい。何より、彼の反応が知りたい。

 あれほど嫌いだった異性のことで頭を一杯にして、私は春の陽気の下のんびりと学校へ向かった。
 ・・・その日は、三年目にして初めての遅刻。皓一くんが急いでいたのはそのためだったのだろう。
 素行で先生に注意されたのも初めてだったというのに、私の心は昼休みや放課後に後輩の少年を探す算段へと飛んでいたのだった。
610名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 01:01:01 ID:8oErbA4Y
 今回はここまで。先輩のモノローグ前編でした。

 なんでこんなに長く暗くなってるの? つうか先輩の一人称は一話で終わらす予定だったのに。
 書いてるうちにノッてきて、気が付けば文章が肥満状態に・・・。

 ごめんなさい、先輩のモノローグにもう一話お付き合いください。その次からは新キャラとか出してくつもりです。
 ああ、赤色の人みたいに短く濃縮した文章が書けるようになりたい。
611名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 01:22:47 ID:lZ6oEvIW
>>610
今後、先輩がどんな嫉妬を見せてくれるのか
そしてまだ見ぬ新キャラも期待して待ってます
612名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 02:27:57 ID:pHOxbJ1C
自分のわがままを言ってもいいのなら……
と、興味本位で見てみたいものを提示してみたり。

◆男VS女の修羅場をもっと見てみたい。
→例えば、主人公は一定条件で性別が変化する、とか。
同性愛ネタは一つあったから、それ以外のもので。

◆ツンデレVS素直クール
→あくまでクールなままの修羅場がみたい。
 みんなバーサー化するからなぁ……。
613名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 02:35:03 ID:CJEhxNnC
先輩良いよ先輩(*´Д`)'`ァ'`ァ
614名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 02:36:10 ID:zHR3jwWs
>>610
もったいぶられたらぶられるほどときめくこの気持ち
果てしなく期待してまつ
615名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 03:01:11 ID:YEmJO+nB
>>600
二人とも、いや三人ともカワイイぜ。嫁にしてえ。
616名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 03:43:38 ID:RpHCE5gf
>>612
>同性愛ネタ
え、あったっけ…?
617名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 04:16:40 ID:xz/zYYGb
夢魔法
618名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 07:05:59 ID:HaN5OJ2J
先輩の嫉妬が楽しみでしょうがないぜ!
619名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 10:54:03 ID:NpGmVNp3
>>609
いたり先輩に負けないほどの嫉妬心を俺は感じている・・
620名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 12:19:54 ID:7gw8vKnB
荒れない程度のリクをしてみる。

中・短編物をもっと書いてほしい。

・学園ネタはちょっと食傷気味なんで、登場キャラの平均年齢を
もっと上げて欲しい。(学園ネタでも、例えば登場キャラに家庭教師の
お姉さんを出して、それに嫉妬するヒロインとかetc)

・作品内にもっとエロシーンを入れて欲しい。嫉妬はあっても、エロが
いつまでたってもこないのは勘弁して欲しい。この板に立っている以上
エロが主で嫉妬・修羅場が従であるはず。エロが絡まない嫉妬・修羅場は
程々に。
621名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 12:51:31 ID:NzpfAf7i
>>620
いかにも荒れそうなんだが('A`)
クレクレ始まると直ぐ荒れるからやめないか。
要望とかは作者様が時々リクエストする時があるから
その時言えばいいんジャマイカ
622名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 13:21:43 ID:Ydwnmfvv
女が嫉妬して主人公に無言電話等のストーカーまがいをしてる作品を教えて下さい
623名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 13:24:44 ID:pu9bqrtD
>>620
前半はともかくとして後半の断定が気に食わない。
624名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 13:25:38 ID:po3yFLen
>>622
つ【疾走】
625名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 13:29:01 ID:NIBio0yg
リクっていうか、最後の方は完全な自治だよね。
626名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 13:45:48 ID:i2YZmlv1
エロは作者の好きでいいよ。
苦手なのをうだうだ書かれても読む方が萎える
627名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 13:46:14 ID:HaN5OJ2J
>>620
最後のは神が投下しづらくなるから、ちょい勘弁して欲しい
このシチュエーションやテーマだけにエロなんておまけ程度でも問題無いわけだし

それに元々このスレは嫉妬・三角関係・修羅場統合スレからの派生だから
住人やスレの空気が嫉妬・修羅場を中心になるのだと思う
628名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 14:01:07 ID:NzpfAf7i
よく考えたら血塗れのアマツとか
最近では赤色の朔とか
年齢高めの人も出てきてるな(´・ω・`)

過去作品にも結構あるし、問題ないような希ガス
629620:2006/08/11(金) 14:27:36 ID:7gw8vKnB
最後の方は、この板にいてよく経験したことなんだけど、
スレ内でエロ無しの作品の比重が高まると、エロありの作品が
投下されなくなって、最後はエロ無し作品ばかりになるのを何度も
経験しているから。そして、読者の方も、エロ無しばかりにレスをつけて、
エロありのほうはあんまりレスをつけなくなるんだよね。そして、作品を批評する
住人が現れて、それが元で荒れる原因になり、結果過疎化するという
ことが何度かあったので。

つまり、何が言いたいのかというと、私はお姉さん物が好きということです。
630名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 14:32:24 ID:sTTpc9B4
長編も勿論いいけど、サクッと楽しめる短編中編っていいな

てか、短編中編が専門の神っていないよな…
631名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 14:34:48 ID:/jFyYZrm
>>629
>作品を批評する住人が現れて、それが元で荒れる原因になり

エロの比重関係ないじゃん。
632名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 14:41:49 ID:po3yFLen
短編は簡単な設定しか出来ないから他の作品と被りやすくてやりずらい。

まあ、実力次第なんだけどさ。
633名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 14:50:41 ID:JKtBHWJj
怪物姉とか虎姉妹とか
良質で上質なエロは十分足りてると思うが?
少し前に遡ると広き獄とか義姉とか沃野とか優柔とかはエロかった

そう言えば一時、優柔の神が良質な短編を連発してくれてたね
634名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 14:52:49 ID:c9NnNSZE
>>630
優柔神が優柔後ちょこっと書いてた筈。三作位。
635名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 14:53:33 ID:c9NnNSZE
かぶったorz
636名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 15:05:38 ID:16Oz2Xeh
>>629
|ω・`)リクよりも、こんな嫉妬が好きみたいな
シチュエーションだと読むほうも面白いので良いかも
たまに作者様にシチュエーションを元に作品を作っていただけたりもするし
姉妹日記もそういった形だったから・・・

エロよりも嫉妬で興奮する猛者が集まってると思ったが
どちらかというとマイノリティな性癖だったのか、おいら

>>610
あぁ、先輩・・・堪らん
637名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 15:10:04 ID:NzpfAf7i
後は短篇のつもりだったのが
住人のリクエストに神が応えてくれて
連載になった作品もあるし。


>エロよりも嫉妬で興奮する

ノシ
ナカーマ
638名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 15:10:35 ID:EjIvds4+
>>636
おもいっきりマジョリティだと思うぞ。

>SSスレのお約束
>指摘するなら誤字脱字
>展開に口出しするな
>嫌いな作品なら見るな。飛ばせ
>荒らしはスルー
>職人さんが投下しづらい空気はやめよう
>指摘してほしい職人さんは事前に書いてね
639名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 15:16:37 ID:B/rP63Ld
ノシ
俺もエロよりも嫉妬のほうが興奮する

てか最近の作品はエロ要素のほうが強い作品が多い気がする
640名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 15:20:11 ID:HaN5OJ2J
>>636
エロよりも嫉妬で興奮する猛者が集まってる
ノシ

むしろそれが基本だから他とは一線を隔しているんだろうな
641名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 15:35:10 ID:i2YZmlv1
興奮のベクトルが違うからなんとも。抜くとかとはできんし
642名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 15:55:05 ID:X7X89yzM
えっ?普通に修羅場で抜けるでしょ
沃野とか合鍵は抜き所があり過ぎて逆に困ったもんだったよ
643名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:02:13 ID:9SSXvUQC
エロうんぬん問題よりも


夕焼けの徒花の続きが読みたい
山本くんとお姉さんの続きが読みたい


644名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:02:15 ID:lOsfXCb4
まぁ、抜くのが目的ならこのスレは向かないわな。
元々女の子が嫉妬に狂うシチュエーションが好きだ!って人向けな訳で。
あくまで嫉妬がメインであってエロはサブ。エロは神がしたいようにすればいい。
最初の頃は本スレ住人=このスレ住人だったからこんな話も出てこなかったんだが……。

>>642
そりゃ修羅場で抜くんじゃなくて作品のエロで抜いてるんだ。
645名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:05:56 ID:7+1KxNVD
神達も投下しづらくなるしこの話題はそろそろこの辺にしておけ、って思うのはオレだけか?
 
646名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:09:09 ID:/jFyYZrm
エロなんて所詮は修羅場の為のフラグ立て作業に過ぎんのですよ。

ど う し て あ の 女 の に お い が す る の ?

とか、

責 任 取 っ て く れ る よ ね ?

にハァハァするのがこのスレの嗜み。
647名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:12:36 ID:2uH8GZVv
>>645
ノシ
そもそも620が妙な自治を始めようとしたことが荒れた原因であるような気がしてならない
648620:2006/08/11(金) 16:16:47 ID:7gw8vKnB
自分としては、エロスのにおいが感じられない嫉妬は、キモイだけなん
だよなぁ。でも、自分がマイノリティーだということはわかった。
空気読めてなかった。お騒がせしてスマソ。
649名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:16:53 ID:HaN5OJ2J
>>645
そうだな、この話題はもう終わりにしよう
結局620は嫉妬・修羅場よりもエロを求めている時点でこのスレには向いていなかったのかもしれんな
650名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:21:45 ID:HaN5OJ2J
って>>648の時点で終決しとるやんOTL
1番引きずっていたのは俺だったなスマソ

以下何事もなかったかのようにドゾー↓
651名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:30:00 ID:kZJsb96Z
(そろそろこの女も捨て時かな……次の女でも探すか……)
652名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:36:48 ID:2uH8GZVv
>>651
言ってみたいセリフだな
653名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:37:00 ID:nseoMo+T
>>651
待て待てw
654名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 16:49:34 ID:kzzoFZM+
>>651
ヽ/ : :/ン<lニニl>ムi : :|ヽ
/: : ,rト/l: :/|::トl :!|: : | }
: : /ノル' レ' リ レリl : :|ノ
: / ::○:::::::::::::○:: | : :|
:/  ::::::::::::::::::::::::::: l : |i      __
|     、__,    l: :|:l      | |  >*
|ゝ_   |   /  ,,.ィ| :|: |.     | |  >
|: : :"''`ァ__ァ'- "´ : |:|ムXフ.   | |  >
|: : :_メ`yヘ、 : : l: : : リ/: :i\  | |  >
r''"/。@。Yヽ、 |ヘ: :/ : : :| ヽ. | |  >
655名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 17:14:01 ID:nedg+jPM
>>654から>>651を守れ!!頼んだぞ>>657
656名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 17:15:42 ID:kZJsb96Z
ハァ・・・ハァ・・・
狂った女に追っかけられる、これぞ修羅場の醍醐味よ!
657名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 17:37:06 ID:JQeSAV/s
スレ進んでるからwktkしたのにおまいらときたら・・・・
658名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 17:41:23 ID:WK9ij4Y+
まあ、今450KBだから、もう少ししたら15スレ目の…タイトルどうしよう?
659名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 17:44:03 ID:JKtBHWJj
手首の傷15本目とか
660名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 17:46:41 ID:ylifUMWe
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ十五年戦争
661名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 17:54:11 ID:HgVlmziF
嫉妬〜SSスレ15の夜
662名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 18:00:27 ID:K1vLz/P+
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ十五夜の刀傷沙汰
663名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 18:00:39 ID:jq+EbCPY
剃刀レター15通目
664名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 18:11:38 ID:6xLHFxTQ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ十五少年漂流記
665名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 18:40:08 ID:lZ6oEvIW
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ待ち伏せ15時間目
666名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 19:16:44 ID:4aPURXh5
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ盗んだバイク15台目
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ割れた窓ガラス15枚目

尾崎豊しか思いつかない_| ̄|○
667名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 19:21:24 ID:igyb5EQm
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 15年目の浮気
668名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 19:25:23 ID:c9NnNSZE
>>667
それいいなw
669名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 19:30:48 ID:xsnZ/8iS
毎回次スレの話題になると作品投下のペース鈍るからヤメレ!
670名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 19:49:32 ID:/jFyYZrm
キチンとリロードして投下の邪魔してなければ深夜帯以外は
そんなにカリカリする事もないと思うが。
671名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 19:49:55 ID:KSZPtlS8
前からこん位に新スレ立ててんだからいいんじゃね?
それと新スレが立てば投下してくれるからペースが鈍るのはあんま関係ない。
672 ◆kZWZvdLsog :2006/08/11(金) 20:03:43 ID:Sg6FZw5b
スレ移行が迫っている中で投稿する勇気。

というわけで投下します。
673うじひめっ! Vol.8 ◆kZWZvdLsog :2006/08/11(金) 20:07:01 ID:Sg6FZw5b
 卒業式の騒動で「謹慎させるべき」という風潮になり、高校が別々になったこともあって
 ――半径百メートル以内に近寄るな
 というストーカー法じみた接近禁止命令が俺と遥香の両名に達せられたが、まあ至ってザル法だった。
 電話やメールくらいは普通に交わすし、週に一回くらいは遊びに行ったりする、相変わらずな関係が続いた。
 まあ、さすがにキスはいろいろアレだし、あんましなくなったが。ほら、十六にもなるとお口だけで済ませられない
気分とかなっちゃうわけやん? それで遥香とねんごろな仲になってしまうのも安易な気がして距離は保っていた。

 夏休みに入ってから家族と母方の実家に赴いていたとかで、会うのは二週間ぶりくらいだが――
「かずくんがオクテすぎてじれったくなってきたからねー。今年の夏はガンガンいこうぜー」
 俺から強奪したカルピスをちびちび飲んではフフーと笑う。
 間接キスだぞそれ、とか注意してもムダだ。だってこいつキス魔だもん。直チュー平気でするもん。
「つまり、状況を整理するとこうか?」
 気絶したままの良治は放置され、仮面を付け戻したアイヴァンホーさんが気を取り直していた。
「和彦殿は遥香殿を憎からず思っているが、親戚の仲を越えて男女の関係にまで発展させる気がない――と」
「まあ、そうですけど……てか『殿』はやめてくださいよ、アイヴァンホーさん。呼び捨てでいいですから」
「む。そうか、失礼した。では和彦、わたしのことも遠慮なくアイヴァンホーと呼べ」
「え、でも……」
「気にするでない。あと無理に丁寧語を使おうとするな。却って聞き苦しい」
「あー、うん、分かったよ」
 すっ、と深呼吸して彼女の名前を舌に乗せる。

「……アイたん?」

 殴られた。しこたま殴られた。
「この痴れ者が痴れ者が痴れ者が痴れ者が痴れ者が痴れ者が痴れ者が痴れ者が痴れ者が痴れ者がァーッ!!」
 左右の拳は暴走機関のピストンと化す。認識を凌駕する超暴力に悶絶した。
「親しくすることと馴れ馴れしくすることは天と地ほどの開きがあるッ! わきまえろ痴れ者がッ!」
「ちょっと!? あたしをブッチして勝手にかずくんと親密になったうえに何してくれてんのよっ、お面女!」
 立ち上がって制止する遥香。シュプレヒコールするように握り拳をぐっと掲げ。
「かずくんを叩いていいのはあたしだけだぁっ!」
 さりげなくSっ気をアピールした。
「はぁ、はぁ……」
 遥香の横槍もあって、ようやく矛を収めたアイヴァンホーが荒い息をつく。
「貴様ごときのたわけ者など蛆界の腐肉壺に埋めたいところだが、姫様を助けてもらった手前やめておこう」
 お前ら、恩返しに来たんじゃないですか? なのになぜそんなに偉そうなの? 理解不能。
「んもう、顔をボコボコにしてくれちゃって! かずくんがこんな顔すんの、卒業式以来よ!」
 ぐったりする俺を抱え上げ、アイヴァンホーを睨んでいた遥香はふと怪訝そうに首を傾げる。
「ってーか……姫様? 助けた? いったいなんのこと言ってるの、さっきから?」
「ああ、話せば長くなるが、実は俺そこにいる蛆虫のお姫様の命を救ってな」
 と部屋の隅を指差す。「ちょっ、なんの冗談よ」と笑いながら指の方向を見た遥香が固まった。
(あ、どうも。初めまして。私、蛆界で王女をやっておりますフォイレと申しますわ。以後お見知りお――)
「げえッ!? 蛆虫っ!? しかも喋ってるっ!? ディ、ディ○ニーの刺客かああーっ!?」
 当然の反応だったが、既にその地点を通過した俺には微笑ましいかぎりだった。
 困り眉に驚愕の表情がプラスされて、なかなかいい塩梅の顔になっている。愛い奴め。

 ようやくホッとひと息ついた。
674うじひめっ! Vol.8 ◆kZWZvdLsog :2006/08/11(金) 20:09:23 ID:Sg6FZw5b
「なるほどー、それでフォイレちゃんが恩返しにねえ」
 最終的に平然と受け容れてしまうのがいかにも遥香だった。
 こいつは心底「困らないくせに困り眉」だからな。この顔で性格を読み誤り、加虐心とか庇護欲をそそられた男どもが
ちょっかいを掛けて破滅していく様を何度も目に収めてきた。連中の末路は悲惨の一語に尽きた。
 木更津遥香の眉毛は、ある意味兵器にも等しい破壊力を持った罠なのだ。正に「まゆわな」。
 ――なんでも四文字に略して満足してしまう最近の風潮を、俺はもっと憂えるべきだと思う。
(なのです。そこで、手っ取り早く体でお返したいので遥香さんも手伝ってくだ――)
「だから却下」
「なりませぬとあれほど」
「そいつはちょっと聞けねぇなー」
 否定の三重奏。蛆虫姫君も本格的にいじけモードへ入っていった。
(ふんっ、ふんっ、ふーんっ、ですの)
 部屋の隅で全身を使って「の」の字を書く。
(和彦さんなんか、私が成長して魅惑的な体に育った暁には後悔のあまり舌を噛み切って死ぬがいいですの……!)
「呪詛を振りまくな。蛆に祟られているかと思うと正直いい気分がしない」
 ふう、と一つ溜息。あーなんか疲れた。バタバタしたせいで腹も減ってきた。
 時計を見る。もう夕方だった。両親は「今日帰り遅いから晩飯とかテキトーに食っとけ」っつってたけど。
「ちゃっちゃっとインスタントでもつくって食うかな」
「あ、ちゃーんす。……フフーン? かずくん、なんならあたしが手料理を振る舞ってもエエよ?」
「いらん」
 遥香の調理アビリティはおにぎりが普通に握ったつもりでヒトデ型になるくらいだ。その技量は推して知るべし。
「ならわたしがつくろう」
 すっ、と立ち上が……らないで四つんばいのまま移動するアイヴァンホー。
 やはり姫様が蛆形態のときは気を遣うのか。
「え? アイヴァンホーって料理できるの?」
「何を意外そうに……姫様と違って半人のわたしは人間とほぼ同様のものを摂食する。料理くらい嗜んでいる」
 怒ったように睨むが、四つんばいなので迫力はない。
(私はこのままで食事を摂らせていただきますわ。人化して摂るよりも効率がいいですの)
 とフォイレがついでに発言。まあ、人形態で生ゴミをガツガツやられるよりは蛆形態のままがまだマシか。
「ちぇー、つまんねーのー。せっかく『家庭的な女の子』っぽいステータスを上げるチャンスだったのにー」
 ぶーたれながらもご飯大好き人種である困り眉は素直に付いてきた。
「フンフフンフフンフフンフフ〜ン……♪」
 鼻歌をハミングしつつ。
 床を這うアイヴァンホーの尻をチラッと見下ろした遥香は。
 げしっ
「ぬおっ!?」
「あっ、ごめーん。ちょうどいい位置にお尻があったものだからつい足が……」
「『つい』で他人の尻にヤクザキックかますなよ!」
「だって自分のお尻は蹴れないし……あっ、かずく〜ん。確かこのへんにバットなかったっけ?」
 ケツバットする気満々できょろきょろあたりを見回す困り眉少女。
 仮面侍従は「……!」と息を呑み、脱兎の勢いで逃げ出した。

 とまれかくまれ。
 期せずして賑やかな夕食会が始まった。気絶から覚めた良治も「おー、メシメシー」と当然の顔して紛れ込む。
「いや……お前はそろそろ消えていいキャラじゃねえか?」
 人数増えてきたし。
「ひ、ひでえ。付き合いの長さでは遥香ちゃんを上回っているというのに……!」
「エロゲーでも悪友キャラって大抵途中で空気化してフェードアウトだよな――よし、遠慮せず消え失せろ」
「『拡散』じゃあるまいし人間がそう易々といなくなれるかよ!」
675うじひめっ! Vol.8 ◆kZWZvdLsog :2006/08/11(金) 20:11:28 ID:Sg6FZw5b
 なんだかんだでいただきます、と手を合わせて食事。ごはんに味噌汁に焼き魚とお新香、シンプルな和食だった。
「おかわり」
 と茶碗を差し出すと何も言わずジャーからぺたぺたと盛ってくれるアイヴァンホー。
 ご飯時なので仮面はオフ。なにげにエプロンが似合っていた。ごはんの盛り方もキレイで手馴れている。
「ふむ。こりゃあ将来はいいお嫁さんになるなー、アイたんは」
「その呼び方をするな」
 すぱーんっ
 しゃもじで頬を張られた。いいよな、しゃもじビンタ。
 いかにもこう、「家庭的な女の子」って感じが……するわけねえ。
 クソ、ご飯粒が口の端についた。ちょっと熱い。
「動くな。取ってやる」
 叩いた張本人が優しい手つきで頬に触れた。あ、少し胸がキュンとする。
 これはあれか、「右手で与えて左手で奪う」の逆パターンか。プラマイゼロなのにときめいちゃう罠。
「ほら、もう取れたぞ」
 と見せて示したご飯粒を、何のためらいもなくパクッと食べた。
 え、今のって。
「……間接キス?」
「間接チュウだー!? くそう、お面女め! やってくれる!」
「英語で言えば『サブミッション・キス』だな」
 おい、わざと言っているのか。それとも素でボケたか良治。
「あ……えっ……と……」
 三方から攻められたうえ、
(かんせつきす、ってなんですの?)
 と姫様から素朴な質問を寄せられ、狼狽えたアイたんは。
「う、うるさい黙れ喋るな口を閉じろ息もするなさっさと飯を食え」
 手にしたしゃもじをスイング。縦に。今度はそう、しゃもじチョップだ。脳天直撃。めっさ痛い。
 強制的に話題が終了となり、俺は頭をさすりながらの食事となった。
 にしても……口を閉じて息もせずに飯食うのはさすがに不可能だろ。

 そろそろ寝る時間である。良治もあくびを噛み殺しながら帰っていった。
「――なのにまだ居座るつもりか」
「だって、お泊りセットも用意してきたからにゃー」
 とスポーツバッグを引きずってくる遥香。ああ、良治にブチ込んだアレか。
 じじーっとジッパーを開けてみる。ふむ、中身は概ね着替えか。下着もあるな。
「なっ……勝手に開けて見るなってば!」
 ひったくるようにして奪い返す。頬が赤らんでいた。キス魔ながら羞恥心は湧くらしい。
 うーん、乙女の精神構造って複雑。
 というか遥香がノリ軽いからってついプライバシーを侵害してしまったことには猛省。
「で、お前らも住み着くわけ?」
 我が物顔して押入れの検分を始めたフォイレとアイヴァンホーのコンビに訊ねる。
「ああ、差し当たっては急がないからな。明日中にでも片付けば良くしたところだ」
(のんびりと宿泊して恩返しさせてもらいますの)
 のほほんたる返事。
 こいつら、こんなことを言っといて俺の部屋の押入れを治外法権の魔都に変えるつもりじゃなかろうな。
 明くる朝に襖を置けたら乳白色の蛆虫がうじゃうじゃ、だったりしたら悶死するぞ。
「それこそ正に租界だな……」
「かずくん、なにうまいこと言ったような顔して頷いてんの?」
 シェラフを広げている遥香に呆れられた。そんなものを用意しているお前に呆れたいんだがな、俺は。
676 ◆kZWZvdLsog :2006/08/11(金) 20:12:44 ID:Sg6FZw5b
基本的にコメディなので殺伐としない方針で。
まあ先のことは分かりませんが。
677名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 20:32:34 ID:zHtNC2TO
GJ!
コメディーナンバーワン!
678名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 20:32:38 ID:/Wi46OHV
キス魔なのに恥ずかしがる遥香……テラカワイス。
ちょっと、今の俺は色んな意味でやばいと思う。
679名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 20:42:59 ID:XdiYUv9C
投下しますよ
680『とらとらシスター』15虎:2006/08/11(金) 20:44:45 ID:XdiYUv9C
 青海と楽しく放課後デートを終え、自宅に帰ると思わず溜息が溢れてきた。どうも昼の
ことでフラストレーションが貯まっていたらしく、必要以上にくっ付いてくる青海は僕を
いかに愛しているのかを言ってくれたけれど、正直疲れたという感情もあった。何よりも、
初めて手を繋いだ理由がこんなものだったのが少し辛かったりする。未だに青海と手を繋
いだことがなかったので勿論嬉しいけれど、何なんだろうこの違和感は。
 理由を考えてみる。
 浮かんできた答えはごくシンプルなもので、出来ることならもう少し良い感じの流れで
こういうことをしたいという個人的な感情が、原因なんだろう。思考に浮き上がってきた
のはそれだけじゃない。それと共に沸き上がってきたのは罪悪感。殆んどの友達に浪漫が
足りないと言われている僕でさえそんな風に夢見るのならば、女の子の青海はもっとそう
したかった筈だ。それなのに今までしてあげられなかったことと、つまらない嫉妬で行動
させてしまったという後ろめたさが辛くさせる。厳密に言えば違うかもしれないけれど、
初めての恋愛だ。でもそれを抜きにしても、彼氏としてはもう少し頑張った方が良いのか
もしれない。
 部屋に入り、上着を脱ぎ捨てる。
「朗漫か……ときめけ☆青春浪漫回路!!」
 叫んでみても、どうなる訳でもない。
681『とらとらシスター』15虎:2006/08/11(金) 20:46:09 ID:XdiYUv9C
 軽く溜息を吐き、上着をハンガーにかけようとしていると、
 軽音。
 誰だろうか、と思いノックの音の方向を見て、
「どうぞ?」
「失礼します」
 小さな音をたてて扉を開いたのは、サクラだった。晩御飯の準備が早く終わったのか、
それとも早く終わらせてきたのか、時計を見て確認してみるといつもより若干早い。サク
ラも青海と同じような状態だったらしく、よく見てみると少し浮足立っていた。
「今ブラシをかけるから、座って待ってて」
 変にがっついてどうこうなるのが嫌だからだろうか、僕を脅して関係を強要している割
に、サクラはいつものようにおとなしくベッドに腰掛けた。昼のことも少し気にしている
んだろう。話がこじれるのは嫌だから訊かないけれど、その辺りのバランスをたまに不思
議に思う。
「兄さん」
「何?」
 待たせるのもなんなので、手早くブラシをかける。
「さっき部屋に入る前に妙な言葉が聞こえてきたんですが」
 聞かれていたのか!?
 危うく落としそうになったブラシを気合いで受け止め、
「気にしないの、若さを求めていただけだから」
「そうなんですか」
 小首を傾げてこちらを見るサクラは、いまいち理解できていないような表情を浮かべて
いた。それはそうだろう、僕だって何であんな言葉が出てきたのか分からない。もしそれ
をサクラが理解できていたとしたら、少し家族のあり方を説くところだ。
 そんなことを考えている内に、制服は綺麗になっていた。
682『とらとらシスター』15虎:2006/08/11(金) 20:49:08 ID:XdiYUv9C
 そして、今からはあちら側の時間。
 軽く目を閉じて心の扉を開き、向こう側へと渡り、しっかりと施錠する。日常の方の僕
が何か言いたそうな、心配そうな目で僕を見ていたけれども気にしない。
「兄さん、そろそろ」
 僕は黙ってサクラの隣に腰掛け、唇を重ねた。最初はまだ付き合いの浅い恋人がする、
幼いもの。これを合図に始めるのが好みらしく、幾秒も経たない内に離すと照れてはいる
が嬉しそうな表情で僕の顔を見つめてきた。それがとても可愛らしく、思わず頭を撫でる
と今度は擽ったそうに小さな笑い声を漏らす。
「兄さん、早く」
 言われ、急かされて僕はサクラの襟に手をかけた。壊れ物を扱うように丁寧にボタンを
外していくと、華奢な瑣骨や、スリップ越しでも分かるような膨らみのない薄い乳が見え
てくる。そのままスリップとシャツを脱がせスカートを降ろすと、サクラは靴下とショー
ツだけの姿になった。最初は靴下を穿いたままの状態にしたことを訝しんでいたけれど、
個人の性癖だけはどうしようもない。
 服を脱いで今まで以上に華奢に見える体を抱き締め、キスをする。今度は、お互いの舌
を絡める濃厚なもの。奥深くまで舌を伸ばして唾液の交換し音をたてて飲み込むと、媚薬
を飲まされたような感覚になる。それはサクラも同じようで、幼い外見とそぐわない程に
唇を妖しく歪め、笑いかけてくる。
「もっと、下さい」
 この一言で、箍が外れた。
683『とらとらシスター』15虎:2006/08/11(金) 20:50:19 ID:XdiYUv9C
 また唇を重ねると、口内を乱暴に掻き混ぜながらシーツの上に押し倒していく。
 片手で柔らかな髪を撫で、もう片方の手は首筋へ。その手で軽く擦るように撫でるとサ
クラの口から溢れてくる、小さな笑い声が耳に快い。次に瑣骨、更にその下へと滑るよう
に下ろしていく。乳の頂点にある桜色の突起を弱い力で抓むように擦りあげ、撫でると声
が今まで以上に甘いものへと変化した。小豆よりも僅かに小さな大きさながら、それでも
固くなり事故主張しているそれを少し強めに捻ると、更に声が高くなる。肌から伝わって
くる女の子特有の柔らかい感触よりも、口元からの水音や荒く途切れる息遣い、僕をひた
すらに求める声で興奮が高まってくる。それと共に、自然と指の動きも激しく加速する。
「にい、さ、ん。し、たも」
 リクエストに応えて、髪を撫でていた手を下半身の方へ移動させた。淡い桃色の下着の
クロッチ部分は既に湿っていて、押すようにして指を動かすと指先に伝わる液体の感触が
すぐに広いものへと変わってくる。
「撫でるよ」
「は、ひゃい」
 耳元で囁くように言うと、顔を赤く染めて頷いた。
 言葉の通りに、撫でる。下着越しであるにも関わらず、豆を親指で揉みながら割れ目を
擦るとサクラの体が小さく震えた。下は弄り始めたばかりなのに、一度目の限界はかなり
近いらしい。一旦手を止め、後ろの穴をつつくように押すとそれで達してしまったらしく、
体を大きく弓なりに反らせて大きな声を漏らした。
684『とらとらシスター』15虎:2006/08/11(金) 20:53:23 ID:XdiYUv9C
 数秒。
 息をきらせて脱力しているサクラの下着を脱がせて、今度は直で秘部へと指を伸ばす。
口や両手を使い左右の胸の突起や下の穴を二つ、弱点らしい豆を責めると快感が強すぎる
らしく、シーツを噛んで堪えているものの、それでも部屋の外に聞こえる程の声を出して
僕にしがみ付いてきた。断続的に達しているらしく、顔を覗き込んでみると瞳の焦点は虚
で、口元のシーツは絶頂を迎える度に声と共に漏れる唾液のせいでかなり濡れている。
 もう入れて良いだろう。
「サクラ、今日はどっちが良い?」
 どちら、というのは、サクラは両方の穴を使えるということだ。僕も最初の頃は後ろの
穴を使うことに抵抗を感じていたけれど、慣れもあるが、何よりサクラ自身が気持ち良さ
そうにしているので毎回どちらの穴を使うか訊くことにしている。
 幾らか時間をかけて僕に焦点を定めると、サクラははにかみ、
「今日、私は悪い娘でした。青海さんと喧嘩しちゃって、つい怒ってムキになって。この
ことも危うく言ってしまいそうになりました、本当に悪い娘です」
 この流れだと、後ろだろうか。膝の裏に手を伸ばし、脚を抱えあげて、固くなった僕の
ものを中間辺りの位置に当てがった。どちらでも簡単に入れることができる。
「だから、後ろでお仕置きして下さい」
「分かった」
685『とらとらシスター』15虎:2006/08/11(金) 20:55:51 ID:XdiYUv9C
 果たして、結果は予想通り。言いながら、既に当てていたものを後ろの穴の中へと侵入
させていく。勢い良く進めたせいか刺激が強かったのらしく、小さく涙を流し、シーツを
掴んで体を大きくのけぞらせた。漏れる声はもはや我慢をせずに、垂れ流しの状態になっている。
 僕も状態は似たようなもので、靄がかかったような思考の中でも自覚が出来る程に呼吸
が荒れている。前の穴とは違いひだが少ないものの、そちらの穴より強い圧迫感で責めて
くるそれは、強い快感を脳に叩き込んでくる。
 しかしサクラはまだ足りないらしく、更なる快感を得るべく僕と唇を重ねてきた。舌を
絡め、空いている僕の手を使って自分の体をまさぐっている。
 数分。
 限界が近い。
「どっちに、出す?」
「な、かに、く、ださい」
 言い終えるのと同時、揺れていた小さな体の動きが止まって、僕を抱き締める力と穴の
締め付けが強くなる。絶頂に達したサクラから少し遅れる形で、僕も射精をする。
 下にタオルを敷きながら僕のものを引き抜くと、その上にサクラの後ろの穴から白い液
体が糸を引いて垂れてくる。何度見ても、このいやらしい光景に飽きが来ることはない。
「見ないで、下さい」
「あ、ごめん、つい。可愛いって言うか、綺麗だったからさ」
「もう、兄さん」
 恥ずかしそうに笑って言うサクラは、しかし少し不満そうだ。
 数秒。
「兄さん」
 やや気不味い沈黙を破ったのは、サクラの方だった。
「嫌いにならないで下さいね?」
「当然だろ?」
 そう、裏と表が隣合う奇妙な生活だけれども、これで良い。
 姉さんもサクラも愛して、
 青海と仲良く恋人として過ごす。
 僕はこんな暮らしが好きになってきた。


『"The Double Tiger Sisters" Like Like Tiger』is END
686ロボ ◆JypZpjo0ig :2006/08/11(金) 20:56:54 ID:XdiYUv9C
第一部のようなものはこれで終わりです

と言うかここで分岐します

Aルート(Drop Dice Game)
Bルート(Strike Star Story)
以前にアンケートをとったときに書いた通りに、
取り敢えずAルートからです


鬱が貯まってきたので、倶楽部シリーズもその内に
687名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 21:26:58 ID:c0cBCMSC
サクラちん萌え。
688名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 21:38:27 ID:HaN5OJ2J
コテツミン補給完了!しかし虎徹ちゃんはこのまま堕ちていってしまうのか
689シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/08/11(金) 21:49:49 ID:NqdWGieb
>>630

ご要望があるのならお書きしますが。
今日立ち読み中に思いついたネタで良ければですが……
おそらく2・3日中には完成するかと。
690名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 22:01:37 ID:JKtBHWJj
そろそろ次建てないとヤヴァいんとちゃう?
691名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 22:18:49 ID:16Oz2Xeh
>>689
期待しておりますm( __ __ )m

>>686
鬱が貯まってきたという表現に迫力を感じる(((( ;゚д゚)))アワワワワ
それにしてもエロイ、そして面白い

>>676
気づいたら姫の存在が薄く((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
でも、それ以上にアイヴァンホーカワイス
692名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 23:40:41 ID:c7A0q+vF
さて、次スレに移る前に軽〜いネタでも投下しますか。
693分裂少女 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/11(金) 23:44:48 ID:c7A0q+vF
 「起」

どうやら私は寝ていたようだ。
いや、寝ていたかどうか分からないのに「寝ていた」という表現はおかしいな。
「多分」寝ていた私は目覚めてみると、あるベットで寝ていた。
まったく見慣れない風景だった。

見知らぬ部屋
見知らぬ自分

……ん?今なんて考えた?

見知らぬ自分

そういえば……私、だれ?

名前を思い出してみる……ダメ。少し前のことを思い出してみる……ダメ。
うん、よく世間一般でいう「記憶喪失」というやつだろう。

「アハハハハ……」

……まあ笑うしかないか。
とにかく現状を把握してみよう。
周りを見渡してみると、窓が無くドアが有り家具も今自分が横たわってるベッド
のみの殺風景な部屋だった。周りには誰もいない。壁に掛かっている時計を見ると
どうやら深夜のようだ。
それと今気づいたが、右目が全く見えない。触ってみようと手を動かした瞬間

「!!!!!!!!」

筆舌に尽くしがたい激痛が全身に走った
どうやら私は大怪我をしているようだ。だぶんそれでこの病院に運ばれたって所だろう。

右目はどうやら肌の感覚からどうやら包帯が巻かれているようだ。
なんとか見える左目で少し顔を上げて、自分の体を見てみると……

「な、何これ…」
694分裂少女 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/11(金) 23:48:19 ID:c7A0q+vF
私の体は顔の一部を除き、全身が包帯で覆われていた。
両手、両足、体全部……隙間なく巻かれていた。こりゃかなりの大怪我だったんだろう。
不幸中の幸いというべきか、五体満足な上に感覚はあるから下半身不随とかは無いかな?
最悪体は何とか大丈夫と思ったら少し気持ちに余裕が出たのか

「よく見ると、服着てない上にノーパンノーブラじゃん
…まあ包帯で隠れているから良いけど」

つまんないことを考えながら、とりあえずどうするか考えた。

「まあどうするもこうするも、まともに動かないし……寝るか」

そう自分に言い聞かせて、静かに目を閉じた。
しかし「女」は分かっていた。寝たのは眠いからじゃなくて、「自分」の存在が
分からなくなり、不安でパニックになるのを防ぐための一時凌ぎということを……

(次目が醒めたら元の生活に戻っていた、っていうのだったら良いんだけどな…)



どのくらい時間がたったのだろう。「女」は静かに寝息を立てていた。
病室のドアが静かに開き、二人の白衣の男が入ってきた。
その内の一人が持ってきたバッグを開け、中から一本の注射器を取り出し、
「女」の腕に刺した。その際の痛みで「女」が若干目覚めたようだ。

う………なんだろ、今腕がチクッてしたような……あれ、誰か立っている。
でも……あれ?声が出ない。体も鉛みたいに重い。部屋もなんだかグニャグニャと
動いている……でも声は僅かに聞こえる。

「麻酔は効いたか?……で生きてるのは奇跡……**さん……」

あ、今もしかしたら私の名前言ったような……よく聞こえない。

「人体実験……既に死亡扱い……どうしようが自由……」

何か危険な単語が聞こえるけど……意識が保てない…教えて……私はだれ?
695名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 23:53:17 ID:c7A0q+vF
全四話予定。「起承転結」の「起」のつもりでかきました。
あと数時間して次スレたってましたら「ロリコン教授」と「スクエア☆アタック」
を同時に投下予定
696名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 23:55:44 ID:/S7ZQ8PW
早急に次スレを
697名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 00:05:01 ID:nfOViwL6
じゃあスレ立て宣言します
スレ立て一号言葉様いきまーす
698名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 00:10:16 ID:UxueHShu
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 15回目の浮気
699名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 00:15:37 ID:85h5ObSb
次スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 15年目の浮気
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155309105/

立てようとしたら
ERROR!
ERROR:http:// が多すぎます!
が出たのでテンプレ少しいじりました。
700名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 00:26:09 ID:UjpUmi1G
>>699くんっ!スレ立て乙だよっ!

|ω・`) これで14スレタンともお別れか
701Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/12(土) 02:12:34 ID:BmTMjX8p

番外編2『第7.5話』


「あーうぅー……」
 昼食の時間のピークがすぎ、閑散とした宿屋の食堂にて。
机に突っ伏して呻き声を上げる、銀髪の女性がいた。
今現在、彼女の心の色はブルー。もう真っ青。
まぁ、朝起きたままのボサボサの髪、何処を見てるのか解らない虚ろな瞳を見れば、
普段の彼女を知っている者なら誰でも容易に推測できることではあるが。

彼女がここまで落ち込んでいるのには一応のワケがある。
なに、大したことじゃない。第三者にとっては取るに足らない、とても些細なことだ。
…些細なことではあるのだが、当の本人には再起不能になるほど重大なものであるらしい。

「う〜……あの背伸びロリロリ王女め〜。
早朝からウィルをデートに誘うなんて……。ウィルは私のなのにぃ…」

 もうお分かりだろうか。
この御仁、マリィ元騎士団長様は“背伸びロリロリ王女”に意中の人を連れ出され、大変ヘコんでおられるのだった。
今日は私に付き合ってもらおうと思ってたのに、だとか。
多分今日は日が暮れるまで帰ってこないだろう、とか。
今、二人が何をしているのかetcetc・・・を考えると料理も喉を通らないようである。

 と、そんな彼女の横を通り過ぎる能面を被ったウェイトレス。
いや違った。ウェイトレスと言っても着てるのは女中服だし、能面についてもただ表情が全く変わらないだけだった。
……マリィの旅の仲間、シャロンである。

「ベイリン様、パスタ入りミネストローネでございます」

 シャロンは、だらしないマリィをちらりと横目で見ながら、
隣のテーブルで注文の品を待っていたベイリンの前に、料理を置いた。

「おぅ、サンキュー」

 さっそく件の料理をすすり始めるベイリンを尻目にシャロンは未だ腑抜けた声を上げるマリィの隣に立った。
702Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/12(土) 02:13:18 ID:BmTMjX8p


「マリィ様、いつまで不貞腐れているおつもりですか。
そろそろ身だしなみをきちんとなさってください。
そんなお姿をウィリアム様が見れば千年の恋も冷めるというものですよ」

 諭すように叱りつけるシャロンだが、一方のマリィはぶぅ、と頬を膨らませて。

「シャロンさんまで私をイジメるんですか?
酷いです、私はただウィルと一緒にいたいだけなのに」

 本来、その顔は駄々をこねる少女のようで可愛らしいものなのだが。
如何せんボサボサの髪のせいで、ただの生臭な女性にしか見えない。

「嬢ちゃん。駄目だぜ、そんなことじゃ。手が空いてるなら剣の手入れでもしたらどうだ?
なぁ?マリ――――――――シャロン」

「ベイリン様の言うとおりです」

 ベイリンもシャロンに助け舟を出すが、結局はますますマリィを不機嫌にさせるだけだった。
バタンと突然立ち上がり、一声。

「もういいですっ!こうなったら呑んだくれてやるっ!」

 やさぐれ宣言をした後は肩を怒らせながら食堂を去っていった。
その後ろ姿を見て、誰が彼女を救国の戦姫だと思うだろうか。全く情けないことこの上ない。

「やれやれ…」
 肩を竦ませてため息をつくベイリン。


「マリアンヌ、追加注文頼めるか?」
 既にミネストローネを脅威の速度で平らげていたベイリンはシャロンを見ながらそう言った。

「ベイリン様。私のことはシャロンとお呼びください、と以前申し上げたはずですが」
 いつも無表情のシャロンにしては珍しく、少し不機嫌そうに眉根を顰めている。

「かっかっかっ!いいじゃねぇか、ウィルたちはみんな居ねぇんだし。
それに、お前に様付けで呼ばれると鳥肌が立って仕方ねぇ」

 ベイリンのその一言で、ますます不機嫌そうな表情になり。
不意にシャロンを取り巻く雰囲気が変化した。
703Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/12(土) 02:14:11 ID:BmTMjX8p

「五月蝿いわね。私だってあなたなんかを敬称したくないわよ」

 高圧的な態度でベイリンを見下ろすシャロン。その変わりようは普段の彼女の姿からは想像し難い。

「うぉっ!?本当に凄ぇ猫の被りようだな」
 ベイリンは今の彼女の態度を見たことがあるらしかったが、それでもその変わり身の速さに驚いた。

「別に猫被ってるわけじゃないわよ。
これはこれで都合がいいの。いろいろ自制できるから。
ま、最近はもう演技なのか二重人格なのか解らないくらいシャロンのままだけどね」

 肩を竦ませながらやれやれ、とさっきのベイリンの真似をする。

「――――――ところで、ベイリン。
アリマテアで渡した、モルドの契約書。役に立ったみたいね」

「おかげさんでな。一時はウィルも相当落ち込んでたが、何とか持ち直したみたいだな」
 少し誇らしげに話すベイリンの笑みは、息子の成長を喜ぶ父親のそれだった。

「当然よ。ウィリアムはあんなことで駄目のなるような人間じゃないわ」
 こちらはこれでもかと言うほどに誇らしげだ。

「よく言うぜ。むちゃくちゃ心配してたくせによ」

「うっ、うるさい!ウィリアムのことは私が一番よく解ってるのよっ!」
 突っつかれながら茶化されると、シャロンの顔は茹蛸のように真っ赤になった。
どうやら今の彼女は冷やかされるのにとんと弱いらしい。

「だいたいどういう風の吹き回しだ?ウィリアムとは離れて見守るんじゃなかったのか?」
 真剣な表情に戻ったベイリンにバツが悪くなったのか、目を逸らすシャロン。
「………我慢、できなくなっただけよ」
 恥ずかしそうに。注意していなければ聞き取れないほどの声でそう返答した。

「……そうか。そこんところはオレも賛成だからいいんだけどよ。
それでもやっぱりウィルに何も話す気はないのか?」

 痛いところを突かれた、とシャロンは眉間に皺を寄せる。
704Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/12(土) 02:14:52 ID:BmTMjX8p

「―――――ないわ。それだけは絶対あり得ない。
言わなくていい、ウィリアムにとっては知らなくていいことよ。
余計な問題を抱える必要なんてない。……あんなの、彼の幸せには邪魔なだけ」

 決意は固いようだが、それを話すシャロンの顔はどことなく辛そうだった。
ベイリンもなまじ彼女の事情を知っていたので、『さて、どうしたものか』と腕を組んで嘆息した。

「オレがとやかく言う問題じゃねぇが……やっぱり―――――」

「やめて」
 ベイリンの声を途中で打ち切った。辛そうな表情ではあったが、彼女の目に迷いはない。
そんな顔をされてしまっては出しかけた言葉も飲み込んでしまう。
結局シャロンの気持ちを汲んで、ベイリンはそれ以上何も言わないことにした。

「……お前がウィルの傍に居るならオレも多少安心できるってもんだし、別に構わねぇけどな。
あーあ。オレもトシだねぇ。こりゃ迎えが近いのかもな」
 ベイリンのいつもの癖―――――重い話の後は冗談を言って場を和ませる。
ただいつもと少し違うのは、最後の部分がやや冗談ではないかもしれない、という危惧が彼の中にあった。

「あら。“ニ太刀のベイリン”が弱音かしら?本当に年なんじゃないの?」
 ベイリンの気遣いに感謝しつつ。
シャロンはほんの少しだけ顔を綻ばせた。

「……るせっ」
 肘を突いて不貞腐れるベイリンに背を向け。

「―――――ウィリアムのことは心配しないで。ちゃんと私が見ておくから」

 そのまま厨房の方に去って行った。



「……………」
 そのシャロンの背中を見送ってから、ベイリンはふと思った。




――――――――――追加注文まだ頼んでねぇんだけど。
705Bloody Mary 2nd container ◆XAsJoDwS3o :2006/08/12(土) 02:17:51 ID:BmTMjX8p
埋め埋め。
諸事情により削除したシーン。
おかげでシャロンの出番が恐ろしいほど減りました。
タイトル通り、本編の7話と8話の間のお話です。
706名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 02:24:23 ID:gzmXZJly
GJ!
シャロンがお気にな俺にはサイコーでした!
707名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 02:38:16 ID:OSWmh877
シャロンちゃん地はこんな感じなのか。
708名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 03:24:05 ID:BJvF3yjw
なんだか、シャロンEDが異常に見たくなってきた。
709名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 05:06:57 ID:kd348rGX
>>695
いきなり人体実験ってΣ(゚д゚lll)軽くない軽くないよ!
でもGJ!昔パワプロやってた頃のダイジョーブ博士を思い出したのは秘密だ

>>705
シャロンの地の性格ってこんなにも黒かったのか……(*´Д`)ハァハァ
710名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 06:11:51 ID:tPHVoGDr
黒シャロン。いや、でも割と普通?
慣れて感性がおかしくなったかな…

ところで、まとめサイトのサウンドノベル、沃野とWaldがダウンロードできないのは俺だけ?
画面は出るけどエラーになっちゃうんだよなぁ…
711名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 08:53:12 ID:/e69t+dw
捨てネタ投下します。
712分裂少女 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/12(土) 09:00:30 ID:/e69t+dw
「承」

私が生まれて60日が経とうとしていた。
正確には60回寝たので、60日ぐらいは経っただろう。
「生まれた」というのも表現がおかしいが、それ以前の記憶が無いのだからまあ妥当だろう。

はっきりいってこの60日間は退屈な日々だった。
何の変化も無く、精々一日三回の食事やたまにくる看護師の定期検診ぐらいだろう。
それでも無いよりはましだが……

生まれて10日ぐらいまでは体が思うように動かず、痛みに顔を歪ませていたが、
20日目ぐらいから痛みは無くなっていき、今は歩けるぐらいには回復した。

そのかわり考える時間は腐るほどあったので、あれから色々考えたが……

「なーーーんにも思い出せないや。」

そう、結局昔のことを思い出そうとしてもここで目覚めた所までは思い出せるが、それ以前となると
真っ白だった。そうなると……

「やはり、ここから脱出するしかないか」

ドアには当然鍵が掛かってて、食事はドアの下から出てくるので全くスキがなかった。
チャンスがあるとすれば

「あの定期検診の時にあの無愛想な看護師をぶっとばして……」

そういえばあの看護師、私がいくら聞いても何も答えてはくれなかったわね。
まあ看護師には悪いけど、恨まないでね。

しかし不安もあった。記憶のことは当然だが、このドアを出てた先はどうなってるんだろう。
もしかしたらこの建物から出るまでに何枚ものドアを突破しなければいけないかもしれないし、
途中で警備の人に見つかったらまたここに逆戻りになるだろう。
でも何もしないよりは当たって砕けろだ。覚悟を決めた

「よし!次看護師が着たら死なない程度にボコボコにして、あのドアから脱出だ!」



チャンスは意外に早く来た。
覚悟を決めてから二回寝たら看護師がやって来た。ただしいつもとちょっと違った。
いつもの薬などの他にちょっと大きいリュックサックを持ってきたのだ。
「女」はなぜかぶっ飛ばすことを忘れて看護師の挙動を見ていた。いつもと同じように薬を
渡され、それを飲む所まではおなじだ。だが、その先は違っていた。
突然看護師が、持ってきたリュックサックを「女」に投げつけてきた。そして

「……開けろ」
713分裂少女 ◆n6LQPM.CMA :2006/08/12(土) 09:04:58 ID:/e69t+dw
初めて聞いた看護師の言葉だったが、その驚きよりリュックサックの方に興味がいっていた。
そのリュックサックを触った瞬間、「女」の頭に鮮明な映像が浮かんできた。

「これ……私のだ」

この肌さわり、この匂い……間違い無い!私のだ!
逸る気持ちを押さえて、ゆっくりとリュックサックを開けた。中には

「……服?」

可愛い絵柄がプリントされたTシャツにジーパンが入っていた。ただ、所々破れている上に
何か染みが夥しく付いていた。「女」その染みが何なのかすぐ分かった。……血だった。
何かが思い出せそうなそんな気がして考えていたら

「それを持って逃げろ。チャンスは今日だけだ。」
「え?」

何この看護師、今までどんなに話し掛けても口を開かなかったくせに「逃げろ」だあ?
何たくらんでんのよ。でもチャンスでもあるのよね。
……罠、というのも可能性はあるけど……ええい!ままよ!!

「あと10分後、この建物は停電になる。その間セキュリティーは解除になるから
ドアも普通に開く。……もう会うこともないだろう。」

それだけ言って看護師はドアから出ていった。
とりあえず、あと10分後が脱出のチャンスということだ。

「罠だろうが何だろうが、やるっきゃないか…」

「女」はリュックサックに入っていた服を着てみた。サイズはピッタリだが、よく考えてみると
服は血糊が付いてて、腕と顔の右半分は包帯で巻かれてるこの姿はおそらく目立つだろう。

「でもスッポンポンよりましか」

暫くジーパンを眺めていたら、突然足がガクガクと震え出してきた。顔からは汗が溢れ、
自分で自分を支えていないと分裂しそうな感覚に息も荒くなってきた。この服には何かがあった。
直感的にそう感じていた。だが

「逆に考えてみれば、この服は私の記憶を取り戻す手がかりでもあるわ!」

そう自分に言い聞かせていた時、フッと蛍光灯が消えた。「女」はドアを押してみた。すると

「……開いた」

何の抵抗も無くドアは静かに開いた。「女」はまるで
自分の頭の中のような真っ暗な廊下を無我夢中で走っていった。
714名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 09:09:56 ID:/e69t+dw
起承転結の内「起」と「承」までは終わりましたが、「転」「結」は
また捨てネタとして使おうと思います。
715名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 14:24:32 ID:UjpUmi1G
>>714
先の展開がまったく予想できないぜ((;゚Д゚)ガクガクブルブル
って先はお預けか(;つД`)
716名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 15:55:37 ID:k5GPrgus
埋めネタに
新規さんの為の過去名作紹介でもやんね?
717名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:00:22 ID:gyceothq
名作紹介っつーとアレだけど、あらすじ位ならいいんじゃね?
718名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:03:06 ID:HTH9XBuC
まとめるとだな


各作品の全ヒロイン
    ↓好き
    俺

こんな感じ
719名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:12:35 ID:L7xLuo46
>>620
じゃあ、こんなのどうよ?
学生時代からずっと慕っていた相手と、ようやく結婚した新妻。
しかし不満は、毎日新郎の帰宅がやけに遅く、ろくに性活w の相手をしてくれないこと。
理由を尋ねても、「お前のために、会社の仕事を頑張っているんだ」
と笑顔で返されるだけ。
しかしシャツについた僅かな残り香で、新妻の疑惑は一気に膨れ上がる。
こっそり新郎の後をつける彼女。
もちろん、かばんの中には盗聴器を仕込済み。

会社を定時に出た後、新郎が向かったのはあるマンションの一室。
その部屋の持ち主は・・・なんと新妻の学生時代の親友で、
結婚式の祝辞を読むときに泣き出した、新郎の姉であった。
結局翌朝になって帰宅した新郎。
震えながら盗聴器の録音を聞いた新妻は・・・

ってな、ヒロイン視点の寝取られ&エロエロSS
はどうだい?
720名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 16:42:52 ID:+Wbe2yZc
>>719
いいなそれ。誰か書いてくれんだろうか。
721名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 17:56:17 ID:SLK2ZDeS
よし、俺が書いてみようか。

と言うか書かせて下さい。
722名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 18:04:02 ID:HTH9XBuC
つーか書いてください。
723名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 18:14:24 ID:UjpUmi1G
>>721
期待してますm( __ __ )m
724719:2006/08/12(土) 18:36:49 ID:L7xLuo46
>>721
かつては親友同士、しかし今は弟と愛する夫をめぐって
憎み合う二人の年上の女。

かッ、書いてェ〜〜!

個人的には、新郎さんは新妻のことを結婚後も「先輩」と呼ぶって
シチュだったりすると、俺の愚息も最凶w
725名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 19:06:35 ID:3mW48Oun
>>721
書いてくれる人は神。
726721:2006/08/12(土) 19:42:48 ID:SLK2ZDeS
それじゃ、ほんのり待っててくれ。
727名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 20:02:46 ID:HTH9XBuC
(*´∀`)ほんのり


てかもうすぐこのスレも乗り換えどきだな、捨てるか
728名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 20:49:31 ID:L7xLuo46
>>719の変形シチュになるけど、学園もの

同じ部活で親友同士のA美とB子。
ふとしたきっかけで、B子はA美の弟とつきあいはじめる。
それをしったA美は、なぜか姉弟仲が険悪になってしまう。
家庭内でも口数が少なくなるA美。
B子に相談する弟クンだが、「A美も、弟離れが出来て良かったんじゃないの〜」
と気楽な返事。

ある大雨の日、A美は傘を忘れた弟に自分の傘を貸して濡れたまま帰宅する。
風邪を引いて寝込むA美。看病する弟に、
「寝汗をかいたから、服を脱がせて」と頼み込む。
震える手で、姉のパジャマを脱がせる弟だが、
下着姿になったA美はそのまま弟を押し倒す・・・

翌日、B子は目を合わせようとしない彼氏に不審感を抱く。
しかも、ぎくしゃくしていたはずのA美の姉弟仲がえらく親密に。
『一体何が・・・』

みたいなエロから始まる嫉妬シチュってのも、まあいいんじゃねてことで
729名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 21:15:04 ID:k6cu0asw
モカさんはどこだ?
730名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 21:23:48 ID:k5GPrgus
731名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 22:57:24 ID:k6cu0asw
( ゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚) ナンダコレハ・・・・?

(*´Д`) 萌エルジャナイカ♥
732梅ねた:2006/08/12(土) 23:24:24 ID:PcUJpJZs
「さあどうした?まだ二回寝取られただけだぞ。かかってこい!!」
「!!」
「ラブレターを出せ!!性格を変化させろ!!心を再構築して立ち上がれ!!武器をひろって反撃しろ!!」
「さあ修羅場はこれからだ!!お楽しみはこれからだ!!早く!早く早く!!早く早く早く!!!」
「こっ……こっ恋敵め!」
「……そうか貴様もそうなのか小娘。恋人が出来たくらいで身を引くくだらない雌狐め」
「ほざくな!スレ住人のオモチャめ!!人を攻撃するにヤンデレに成り下がった貴様に純愛のなんたるかを」
「五月蝿い!!」
「おまえはナイフのえさだ」

 ズブリ
733名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 00:09:57 ID:400t6WN1
減る寝具って改変するとこのスレ向きの台詞として使えることに気付かされますた。
734名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 02:44:19 ID:ci76vwQz
>>732
warata

「はっ…はははははっ!!」
「何がおかしい!」
「貴様はまだ成りたての恋人で、私はあの子の16年来の姉」
「成りたての赤子が姉に向かって『幸運』とは」
「笑える冗談だ幼児体型、あの世で卒塔婆にパッドをもらうといい」
「きッ、貴様あぁァァ〜〜〜ッ!!!」
735名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 07:41:58 ID:Fb/tHCc+
736名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 14:15:13 ID:YdsFLz/F
ハマってまとめサイトとか見て気づいた事なんだが
俺は片方が痛いだけじゃなく両方痛い方が好きな事が分かったw
737名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 18:25:03 ID:d5/PYfqc
そんでもって状況についていけないテンパり気味の主人公がケアレスな判断ミスを連発すると燃えね?
読んでる方が、
あわわ(;゚д゚)あわわ
って感じで。
738名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 18:33:28 ID:UQrTKPE+
バッドエンドなのが目にみえてるのに、敢えてそっちを選ぶこのスレの主人公が大好きです。
739名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 09:28:49 ID:v3uD7I31
それも主人公のSA・GAか・・・・
740名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 10:37:32 ID:HC9HFMGk
んで、いつの間にか主人公が萌えキャラになってたりな
741名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 14:50:24 ID:MkA9gIiA
ユウキに掘られたい!
742名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 15:35:35 ID:EkV0i8fU
|ω・`) 違うな、ユウキは掘られる側だ!鎧によって・・・
743名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 00:11:41 ID:XB9v1t8I
なかなか、しぶといね
744名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 00:17:03 ID:Z8uefWg5
このカキコミで500kbだったら
俺を取り合う女の子が2人現れる
745名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 00:20:51 ID:tczMZm0w
そして二人に刺される。
君はその二人の心の中で生き続ける。
今ならオプションで二人に君の子供を孕ませることができます。
746名無しさん@ピンキー
       _,;‐-、_   .______,
      /,. ..::.  'i∠三;;;:.:`‐、.  
      し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)  
        `"/ _C) . .:.:_.::;`ト-‐、
          i.;'"゛  . : :.::C)::::!:.:;;` `i
       ,,イヾ、  .: : . `;::;ノし;:.. 丿
       / `‐、`'ー、,,___,.ノ;(  し'゛  ちくしょう……
      ,ゞ、 ,,イ`マニヽ-‐".}   
      ノ`''ミヽ!_ ‐く,、:.::).:.:.ノ  

  __,冖__ ,、  __冖__   / //  
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /  
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    /´        r'゚'=、
  __,冖__ ,、   ,へ    /        / ̄`''''"'x、
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//  ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /_,,/    i!        i, ̄\ ` 、
   n     「 |      /   |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
   ll     || .,ヘ   /    1  i・ ノ       く、ノ |    i  i,
   ll     ヽ二ノ__  {     {,      ニ  ,    .|    |  i,
   l|         _| ゙っ  ̄フ   }   人   ノヽ   |    {   {
   |l        (,・_,゙>  /    T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
   ll     __,冖__ ,、  >     },  `ー--ー'''" /       }   i,
   l|     `,-. -、'ヽ'  \.     `x,    _,,.x="       .|   ,}
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー       `ー'"          iiJi_,ノ
   ll     __,冖__ ,、 |
   ll     `,-. -、'ヽ' iヾ
. n. n. n  ヽ_'_ノ)_ノ  {
  |!  |!  |!     へ l 
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