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{ ト、/__/ヽ _
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新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
それは愛情というにはあまりにも大きすぎた
大きく、ぶ厚く、重く、
そして嫉妬しすぎた
それはまさに修羅場だった
あ、いらっしゃいお兄ちゃん。
前スレお姉ちゃんのところにいたんでしょ? お姉ちゃんの様子、どうだった。
……なんでお姉ちゃんのとこにいたのを知ってるかって?
そりゃあ、お兄ちゃんのことならなんでもお見通し。うふふ。
……監禁されてた? なんでまた。
前SSスレさんに、新SSスレさんとのことがばれて、それで前スレお姉ちゃんの
ところに逃げたらそのまま。あ、そう。
それで今度はわたし?
……やだ、そうじゃないよ。うれしいの。
わたしが、奥さんよりも愛人よりもお姉ちゃんよりも、わたしのほうが、わたしのほうが
お兄ちゃんはいいんだよね? 最高!
わたし、書き込まれちゃうんだ。いっぱい。
まだ真っ白なスレのわたしがたくさんたくさんたくさん、お兄ちゃんに書き込まれて、
ときどき保守されて。
あ、ぞくぞくする……
でもその前に、やることがあるよね。
埋めちゃおうよ。前SSスレさんと前スレお姉ちゃん。
もういいよね? だって今までずうっとお兄ちゃんをわたしからとってたんだもの。
さ、埋めちゃお? だってこれからはずうっとお兄ちゃんはわたしといっしょだもの。
うふふ、あは。
きっとすきっとするよ……
ところでお兄ちゃん。わたしが書き込まれきれなくなったら、もちろんいっしょに
埋まってくれるよね。信じてるからね。もし裏切ったら。
……なんでもないよ。なんでもない……
≪1 乙です
前スレお姉ちゃんは2週間足らずで乗り換えられたか・・・
13 :
1/4:2006/05/20(土) 20:07:35 ID:x4BswFf5
昼休みは風紀委員会の会議兼昼食。
幼なじみに作ってもらった弁当を食べつつ、今週の報告を済ませる――という名目の下、雑談に耽る。
会話するのは主に男子。
縁がないのか気が合わないのか、僕は女子の委員と仲良くなったことがない。
どうも、向こうが避けてるようで、最近は声をかけることもなくなってしまった。
それでも委員会の活動に支障は来されないのだから、世の中は無情である。南無南無。
まあ、そんなこんなで雑談しながらそぼろ弁当をもしゃもしゃと食べていたのだが。
「狸君、ちょっといいかな」
唯一の例外、風紀委員の女子で僕と普通に会話してくれる先輩が、声をかけてきた。
14 :
2/4:2006/05/20(土) 20:08:08 ID:x4BswFf5
「あ、先輩」
先程まで女子委員と昼食を取っていたのか、可愛らしい子犬柄の包みを片手に、先輩が隣に座ってきた。
何か話があるのかな、と慌てて箸を置こうとするが、
「あ、気にしないで。そのまま食べながらでいいよ」
気にするなと言われましても。
それなりの学生数を誇るこの学園でも、先輩は確実に5本指に含まれる美人である。
そんなお方が隣に座って、こちらをにこやかに見つめていたりしたら、気になって気になって弁当の味もわからなくなってしまう。
せっかく弁当を作ってくれた幼なじみには申し訳ないが、こんな状態でまともに働くほど、僕の舌は無神経じゃないんだよう。
まあそれはそれとして。
先輩は、いつものように、僕に向かって手を差し出してきた。
「はい、これ。狸君の忘れ物でしょ」
そう言って渡してきたのは、確かに僕の腕時計だった。
安物だけどお気に入りで、3年以上使っている代物だ。
昨日の昼当たりから見当たらなかったのだけれども、やはり落っことしていた模様。
「狸君って、よく落とし物するよね」
「……すみません」
うう。僕のドジっ子! 先輩にくすくすと笑われてしまったじゃないか!
15 :
3/4:2006/05/20(土) 20:08:44 ID:x4BswFf5
先輩の言うとおり、僕はよく忘れ物をする。
特に昼食後に忘れることが多く、大抵昼休みに、ここ風紀委員の会議の際、何かを必ず忘れていく。
今回は腕時計、その前はハンカチ、その前はボールペン、その前は数学のノート。
それを毎回発見し、次の日に渡してくれるのが先輩である。
先輩にはお世話になりっぱなしである。
いつか恩返しをしたいとは思うものの、具体案はひとつたりとて出てこない。チキンめ。
「今日こそは、今日こそは何も忘れないようにします! 本当にごめんなさい!」
「そんな、気にしなくっていいってば。
なんというか、ほら、忘れ物をしてこそ狸君っていうか」
「そんな情けない個人特性なんか要らんとです」
「ふふっ。……あれ? 狸君、シャンプー変えた?」
先輩が顔を近づけて、鼻をすんすんさせてきた。
どうやら先輩は匂いが気になる人のようで、僕はよく匂いを嗅がれている。
うう、そんなに顔を近づけられたら、あ、息が首筋に、ぐあ、落ち着け青少年回路!
16 :
4/4:2006/05/20(土) 20:09:18 ID:x4BswFf5
結局しばらくの間匂いを嗅がれた後、先輩は何故かとても満足したような表情で離れていった。
しかし、ひとつだけ気になることがある。
先輩、離れる直前、さりげなく僕の鞄に手を入れてなかったか?
…………。
いや、気のせいに違いない。
毎日僕の忘れ物を渡してくれるような先輩が、人の物を盗るなんて真似、するはずないじゃないか。
おおかた、立ち上がるときにバランスを崩して少し触れてしまっただとか、そんなのだろう。
おっと、それより昼飯昼飯。
先輩によって刺激された青少年回路を必死になだめすかしつつ、そぼろ弁当の残りを一気にかっ込むことにした。
うん、今度は味がわかる。
いつも美味しい弁当を作ってくれる幼なじみに感謝感謝。
>>1乙
好きな人の匂いは良い匂い……
そう思っていた時期が(ry
>>16 キタキタキタ━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━!!
続編待ってます。
拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された
拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された拒絶された!!!!
昨日から何度もループしている光景が現実になる。
私の目を一度も見ず私の脇を抜けていくウィル。
足が諤々と震え出す。
何。ウィルの今の態度。デートのときキスされたのが恥ずかしいから?
いや。ウィルは照れであんな態度を取るような人間じゃない。
そ、それじゃあ……
恐怖が。絶対的な恐怖が私に襲い掛かってくる。
「あ……あ…あぅ…あ…あ……」
知ってる!どうしてか分からないけどウィルはあのことを知っている!!
ち、違うの……ウィル。私は何も知らなかったの……私はウィルの味方、だよ?
だから、待って……私を捨てないで…私を置いていかないで。
置いていかないで置いていかないで置いていかないで置いていかないで置いていかないで
置いていかないで置いていかないで置いていかないで置いていかないで――――
どんどん離れていくウィルの背中に向かって声を出そうとしているのに
身体が引き攣って声どころか瞬きすらできなかった。
呼吸ができない。意識が朦朧とする。
茫然自失の中、ウィルを追って王女が駆け足で通り抜けていった。
――――嘲笑っていた。こちらを見ながら。
……そうか。あの小娘が。
王女なら納得がいく。どういう経緯で事件のことを知ったのか分からないが
ウィルに告げ口でもしたのは間違いない。
殺してやる。ウィルに二度と付きまとえないように足を切断し、生きたまま内臓を引きずり出して
身体をバラバラに引き裂き街にばら撒いて晒し者にしてやる。
王女への怒りとウィルへの恐怖をない交ぜにしながら私の意識はそこでぷっつり切れた。
何分そうしていたのか分からない。気が付くと意識が途絶えたときのままそこに立っていた。
頭がくらくらする。
「ウィルを追わないと……」
私は彼の後を追って駆け出した。
ウィルに話さなくちゃ。私は何も知らなかったんだ、本当はウィルの味方だって。
精神誠意話せばウィルだってきっと分かってくれる。ちょっと困った顔しながらも笑ってくれる。
私を抱きしめてくれる。
そうしたら邪魔者の王女を殺して二人で生きていくんだ。あはっ。
うん。大丈夫。きっと、だいじょうぶ。
そう心の中で繰り返しながら食糧庫の前を通りかかったとき、何故かおかしな音が聞こえた。
なに…?この音。まるで動物の息遣い。
音の出所を探ると食糧庫の扉がわずかに開いていた。
嫌な…予感がする。この中を見てはいけない気がする。
見たくない。でも見ないと。よせ。でも中を確認しないと。
そこにはウィルはいない。でも一応確かめてみないと。
自問自答を繰り返しながらゆっくり扉の隙間から中を窺う。
そこには。
ウィルと。
あの小娘が。
ケモノのように交わっていた。
「あ………ぎ……」
怒りと悲しみと。憎悪と恐怖と。許容量を超えた信号が脳に伝わってくぐもった声が漏れる。
何が起こっているの?この意味不明な光景はなに…?
なんでウィルと王女が――――
「はぁ…はぁ…はぁ…も、もう……」
「射精して、くれ……な、かに欲しい……っ……ウィリアムの…せい…えき」
ウィルの腰の動きが速くなる。ウィルの腰に足を絡める王女。
ウィル、どうして?どうしてそんな女なんかとしてるの…?そんなのより私を使ってください。
私なら何だってしてあげます。ウィルの望むことならなんでも。
だから、お願い…その女とそんなことしないで。
私以外の女の胎内に私だけの精子を射精さないで…!
打ちひしがれながら自分の秘所をまさぐる。
「わらわも…んっ……あ、あ、来る!来る…!」
「くっ…!」
「や、あ、あ、ああぁぁっ!!」
二人が硬直する。
ウィルが私以外のおんなの子宮に精を放っている。わたし、いがいの。
サラサラと。
サラサラと。
私の中の何かが零れ落ちていく。
二人にやや遅れて、私も密かに絶頂を迎えた。
姫様との情事を終えて、俺は後悔した。
快楽を貪っている間は忘れられていた行為が、今は更なる罪となりその重さも加わって俺にのしかかる。
何をした、俺は。
罪悪感から逃げたい一心で姫様を抱いた。彼女の好意を利用して。
下衆め。俺はキャスが死んで以降、不幸を撒き散らすだけの存在だ。
俺みたいなヤツは他人と関わっちゃいけない。
そうだよ。他人と関わるからまわりがどんどん不幸になるんだ。
気づけば当座のやるべきことは決まった。
――――よし。
「ふーむ……誰か居たような気がしたんじゃが……気のせいか」
「姫様」
扉のところで何やら独り言を言っていた姫様に声を掛ける。
「む、どうしたんじゃ?ウィリアム。
あ、もう一回というのは無しじゃぞ。これ以上遅くなると侍女たちが心配するからな。
まぁどうしてもと言うのなら……」
「姫様、聞いてください」
深呼吸をひとつ。
俺はゆっくりと自分の決意を言葉に紡いだ。
「――――俺、騎士を辞めようと思います」
以上第九話でした。
そろそろ団長がヤバイです。
>>17 匂いフェチの先輩……(・∀・)イイ!!
このスレ的には、ヤバイ=ナイス!
やっちゃったのか。
勢いで王女とやっちゃうってどうなんだ。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
私は旅館の前で季歩おねえちゃんを待つ。
程なくしてまぶしい明かりを感じる。 車のヘッドライトだ。 見れば昼間に私達を迎えにきてくれた季歩おねえちゃんの車。 わたしが手を振ると季歩おねえちゃんは私に気付いてくれたのだろう、車はわたしの目の前に来て停まった。
「待った?」
季歩おねえちゃんはウィンドウを開けわたしに語りかけてきた。
「ううん、私も今丁度出たところだから。 私のほうこそ今日は色々無理聞いてもらっちゃってゴメンネ」
「従姉妹同士で何水臭い事言ってるの。 さ、乗って乗って」
「あ、ハイ」
わたしは季歩おねえちゃんに促され助手席に座った。
「ちゃんと乗ったわね。 シートベルトは……って言われなくてもちゃんと締めてるか。 うん、関心関心。 じゃ、出すわよ」
そして季歩おねえちゃんはわたしが座ったのを確認すると車を発車させた。
「しっかしアンタと羽津季、相変らず仲良いのね。 姉の為に一肌脱ぐ妹。 う〜ん健気ね〜」
夜の道路をとばしながら季歩おねえちゃんはわたしに話し掛けてくる。
「別にそんな大げさな物じゃ無いわよ。 たった一人の血を分けた大切なお姉ちゃんなんだもの。 其のお姉ちゃんの為なら何だって……」
わたしは季歩お姉ちゃんの声に窓の外を眺めながら答える。 開けたウインドウからは夜風が流れ込んでくる。
カーステレオからは流行のポップスが流れていた。
そしてやがて車は季歩おねえちゃんのマンションに到着した。
「眠れないの? 結季」
どうにも寝付けず窓辺に立ち夜景を眺めていたわたしは季歩おねえちゃんの声に振り返る。
「あ、うん。 何だか寝付けなくって」
「ううん。 気にしなくていいよ。 ……って結季泣いてるの?!」
季歩おねえちゃんの声にわたしは頬に手をあてると確かに濡れていた。
「そ、そんな泣いてなんか……」
慌てて私は涙を拭う。 何時の間に涙なんか流していたんだろ。
「結季、若しかして昼間の幼馴染クンってアンタも好きだったの?」
季歩おねえちゃんの問いかけにわたしは答えられなかった。
「あらら……、そうだったの」
でもわたしの沈黙が、それがすなわち肯定を意味してると季歩おねえちゃんに気付かれてしまった。
「因果ねぇ、まさか姉妹で同じヒトを好きになっちゃったなんて。 でもしょうがないわよね。 彼がアンタじゃなくて羽津季を選んだんだから」
本当は少し違うんだけど、でもそんな事わざわざ言う必要は無いのでわたしは尚も黙っていた。
「にしても私の目も曇ったかな。 昼間見た限りじゃ幼馴染クンが好きなのはてっきりアンタだと思ったんだけどな」
季歩おねえちゃんの声を耳にした瞬間わたしの肩がビクッと震えてしまった。
「って若しかして図星?」
わたしは答えなかった。 けど……。
「まさかとは思うけど、アンタ自分を選んでくれたのに身を引いたんじゃないでしょうね?」
完全に気付かれてしまった。
「鋭いのね季歩おねえちゃん……」
私は自嘲気味に力なく答えた。
「じゃぁ両想いだってのに諦めたって言うの?」
わたしは答えなかった。 でも応えなくとも季歩おねえちゃんは分かってしまったようだ。
そして季歩おねえちゃんは呆れたように呟いた。
「アンタ、そこまで行くと健気やお人よし通り越して只のバカよ?」
「うん……」
確かに人から見れば馬鹿げてるかも。
「うん、ってアンタ本当にそれで良い訳?」
「わたし……祥おにいちゃんのこと大好きだけど、お姉ちゃんも大好きだから。 お姉ちゃんの幸せ奪いたくなんか無いから……」
そう。 幾ら馬鹿げてると言われようと、わたしにはお姉ちゃんを差し置いてまで自分の我を通す事なんて出来なかったから。
「それで身を引いたって言うの?」
「うん、私さえ身を引けば全て丸く収まるから……」
「全て……? アンタ本気でそう思っているの? そのために自分が辛い思いしても構わないって言うの?」
「辛くなんか……無いよ」
そう、辛いわけなんか無い。 だって私の大好きな二人が恋人同士になってくれるんだから。
「嘘おっしゃい! だったら其の涙は何よ!!」
「それは……」
答えられなかった。 言葉の代わりに只々涙だけが溢れてきた。
「ハァ……。 仮によ。 アンタがそれで良かったとしても、幼馴染クンのほうはどうなのよ? 好きな、それも相思相愛であるはずの相手に振り向いてもらえず、それどころか拒絶されるような真似されて」
「大丈夫よ。 きっと二人上手く行くはずよ。 出るときにお姉ちゃんにハッパかけてきたもの。 今頃はきっと躯を重ね本当の恋人同士になってるは……ず……」
そう、今回の旅行は全て其の為のものなのだから。 お姉ちゃんを応援し、お姉ちゃんと祥おにいちゃんの仲を確固たるものにする為の。
そして、わたしの恋心にピリオドを打つ為の。
わたしの初恋に……サヨナラ……する……為の……。
わたしの両の瞳からはボロボロと大粒の涙がとめどなく溢れていた。
そんなわたしの頭の上に季歩おねえちゃんは平手で叩くように手を置き、そしてそのまま頭を掴んでそのまま抱き寄せた。
「分かったわよ。 もう何も言わないわよ。 だから……思いっきり泣きなさい」
季歩おねえちゃんに抱きしめられ、わたしはその場で声を上げて泣き崩れてしまった。
・ ・ ・ ・
夜、俺は温泉から上がって上機嫌だった。 昼間夢中で遊んだ疲労感を温泉で洗い流し、体も心も心地良い充実感で一杯だった。
久しぶりに童心に帰って遊べて本当に楽しかった。 結季とは勿論だが羽津姉とも無邪気に笑いあって。
俺は結季の事が大好きだが、羽津姉だって俺にとってかけがえの無い大切な人なんだ。 恋愛感情はやっぱり持てないけど、でもそれでも大切な幼馴染で姉同然の親しい存在なんだと再認識できた。
そしてそんな大切なヒト達と楽しい一時を過ごせた。
そう、今この瞬間俺は物凄く幸せな気分に包まれていた。
部屋に戻ったら何しようかな。 折角だし枕投げでもしようって持ちかけてみようか。 そんな事考えながら部屋に戻る。
ちなみに部屋は一応一部屋だが、衾で二部屋に区切れる構造。 年頃の男女が同じ部屋、同じ布団てのは流石にマズいもんな。
部屋に戻ると既に布団は敷かれてた。 だがそこには羽津姉の姿だけで結季の姿が見当たらない。 灯りも豆電球しか点いていない。
「あれ、結季は? 未だ風呂に入ってるのか。 それよりなんで電気点けないんだよ……」
俺が問い掛け、電機の紐に手を掛けようとすると羽津姉はゆっくりと近づいてきてそれを遮るように俺の手に其のしなやかな指を絡めてきた。
なんだか羽津姉の雰囲気がいつもと違う。 風呂上りのせいか、何かいつもと違う色気みたいなものを感じさせてるせいだろうか。
そして羽津姉は俺の胸に頭を付けるようにしなだれかかってきた。 そして静かに口を開いた。
「結季ってば本当良いコよね。 こんなに楽しい旅行に誘ってくれて……」
「ああ、本当に楽しい一日だったな」
俺は羽津姉の意図が今一掴めず、困惑しながらも相槌を打つ。
「本当にあのコってば人のことばっか気遣って……今日もね私と祥ちゃんの二人っきりの時間まで用意してくれて……。 だからね結季はもうココに居ないの」
「な、ちょ、ちょっと待ってくれ。 い、一体どういう……」
俺の頭は状況が飲み込めず混乱をきたす。 いや、違う。 本当は何が起こったのか把握してる。 理解してる。 だが俺は其の事実を受け入れられずに、認められずに……クソ!!
結季、あくまでもそれがお前の望みだって言うのか!
そんなにも俺と羽津姉を付き合わせたいのか!
俺を受け入れないと言うのか!
おまえ自身の本当の気持を押さえ込んでまで!
「ね、だからお願いよ祥ちゃん。 抱いて。 そして私を祥ちゃんだけの女にして……」
良いだろう結季! 分かったよ! 畜生! お前の望みどおりにしてやるよ!
俺は答える代わりに羽津姉を抱きしめ、そのまま布団に押し倒した。
俺は羽津姉に覆い被さる形になり、そして浴衣に手をかけ前を開いた。 羽津姉の豊満な乳房とそれを覆うブラが目に飛び込む。 そしてそのブラにも手をかけ上へとずらすと、花びらのように可憐な淡い桜色の乳首も露わになる。
やはり美しさや艶やかさに関して言えば羽津姉のそれは正に至上と言っても決して過言ではない。
そう、こんな極上の女をこの手に抱き、そして独り占めできるんだ。 男にとって無上の幸せと言えよう。 そこに恋愛感情が無いからと言ってそれが何だと言うんだ。 愛なんぞ無くたって女は抱けるんだ!
それで羽津姉も満足してくれる。
俺も、今ここで羽津姉を抱いて、そして結季、お前への未練を断ち切ってやるよ。 それで良いんだろ。
そして、サヨナラだ……結季。
サヨナラ、俺の初恋……。
サヨナラ、俺が誰よりも大好きで、俺が誰よりも大切に想い、そして……俺が何物に代えてでも手に入れたかった最愛のヒト……。
俺はまるで餓えた獣が貪るように羽津姉を抱いた。
肌を重ね、其の躯を隅々まで手と唇で愛撫し、いつしか俺も羽津姉も着ていた浴衣も下着も全て脱ぎ去り、二人共生まれたままの姿になっていた。
やがて羽津姉は堪え切れないかのように艶やかな蕩けるような声で囁く。
「来て……祥ちゃん、私の中に。 そして一つに……」
これで、もう後戻りは出来ない。 今から俺たちは最後の一線を超える。 これで俺達は……、俺と羽津姉は……。
俺は……………………………………
……………………………………
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……
俺は……、一体どうしちまったんだ? 気が付けば仰向けにぐったりと横たわっていた。 目の前には心配そうに俺の顔を覗き込む羽津姉の顔。
どうやら羽津姉に膝枕してもらっているらしい。 姿は二人共きちんと浴衣を着込んでいる。
「大丈夫? 祥ちゃん……」
「ああ……」
心配そうに口を開く羽津姉の問いに俺は力なく答える。
「ゴメンね……。祥ちゃん……」
羽津姉は今にも泣き出してきそうな、そして申し訳なさそうな声で語りかけてきた。
「羽津姉が悪いんじゃないよ……」
ああ、そうか。 出来なかったんだ……。 俺たちは最後の一線を越える事が……。
いざ、最後の一線を越え、一つになろうとしたその時、俺の中から言葉に表し難いものが込み上げてきて……。
それは恐怖感とも罪悪感とも喪失感とも、そのどれとも似ているようで、それでいながら其のどれとも違うようなそんな得体の知れないものだった。
それは突然込み上げて来た。 例えれば高い絶壁を上っている時うかつにも下を覗き見て、瞬間それまで気付かずにいた恐怖が一気に込み上げてきたかのような、そんな風に突然込み上げて来たのだった。
そしてソイツはまるで氷のような冷たく鋭い鋼の爪で内蔵を抉るかのような、そんな不快感を俺に与え、俺は其の不快感にトイレに駆け込み吐き戻してしまったのだった。 晩飯に喰ったものどころか胃液までも。
そしてその後はまるで天地がひっくり返ったかのような目眩と不快感に立ち上がる事すら出来なくなっていた。 最早添い遂げるどころではなかった。
「ゴメンな、羽津姉……。 折角……」
「ううん。 気にしないで。 また、次があるよ。 だから……」
羽津姉は相変らず申し訳無さそうな声で呟いた。
……妙な気分だった。 相変らず躯はぐったりとしていたが不思議と不快感は無く、罪悪感も後ろめたさも無かった。 それどころかどこかホッとしたような奇妙な安らぎの様なそんな感じすらあった。
そしてどこか気まずい雰囲気のまま夜は更けていった。
To be continued...
<チラシの裏>
今回は書いて手自分でも結構イタかったorz
</チラシの裏>
流されてやっちゃった事は置いといてウィルっていいヤツだよな
黒幕に対する怒りよりも自分のしでかした事に思い悩む
イイヤツだからこそ苦しむ……か
前のスレ見てすっ飛んできました
まじで感激です・・・・そこまで気に入っていただけるとは
作品のほうも羽津姉派として楽しく見させていただいてます
詩織のイメージですが髪は腰まで伸びていて大人な女性って感じです
奈々は髪は肩位です元気な女の子って感じですね身長はかなり小さいです
香葉さんがイメージのままだったので感じたままでも結構ですよ
>>32 やはり結季への想いが……今回未練が断ち切れなかった事によって
これからどう動くのか期待
35 :
1/4:2006/05/21(日) 00:53:30 ID:zjQ6MXFI
「先輩、この子なんてどうですか? このこんもりと丸くなりつつ見上げてくる愛らしさとか最高ですよね!」
ぐわばーっと襲いかかりながら写真を目の前に差し出してきているのは、動物部の後輩である。
動物部。それが僕の所属している部活動だ。
生物部ではない。動物部である。
活動内容は単純明快。
ただひたすら動物の写真集などを持ち寄って、あれこれ講評し合うだけである。
当然学園に認可されるはずもなく、部費はゼロである。というか同好会の域すら脱していないかもしれない。
何せ、所属しているのは僕と後輩女子のたった2人。
同好会ですら設立に3名以上の人員が必要なので、むしろ同好会ですらない。泣ける。
まあ、部費どころか活動用の教室すら与えられない動物部は、今日も今日とて屋上手前の踊り場で活動していた。
夏は暑くて冬は寒いこの場所だが、愛くるしい後輩は文句ひとつなく活動に参加してくれている。
後輩はジャンガリアンハムスターの写真をきゃいきゃいと褒め称えているが、この後輩も負けないくらい可愛いと思う。
言ったら調子に乗ると思うので絶対に言わないが。
36 :
2/4:2006/05/21(日) 00:54:16 ID:zjQ6MXFI
「ねえねえ先輩! この子なんてどうでしょう!」
ぎゅむ。
うあ。
「ちょ、落ち着けってば」
「落ち着いてなんかいられますかっ! 見てくださいこの丸さ! この写真だけでこれ買った価値はありますってば!」
ぎゅうぎゅう。
胸が。太股が。くそ、こればっかりはいつまで経っても慣れないな。
「せんぱーい? どうかしたんですか。やっぱり先輩も、この子の魅力にメロメロですかー?」
貴方の体の柔らかさにアタフタです。
ではなくて。
「ええい落ち着きなさい!」
ぐい、と両手を使って押し離す。
「あん」
「そのハムスターが可愛いのはわかったから。とりあえず俺にもゆっくり見させてくれ」
そう言って、手元の写真集に視線を落とす。
「はーい」
うむ。素直でよろしい。
37 :
3/4:2006/05/21(日) 00:54:54 ID:zjQ6MXFI
さてさてそれでは、俺はこのエゾタヌキの写真集を心ゆくまで――
「先輩せんぱーいっ! これ見てくださいこれ! なんというかもう、垂涎モノですよー!」
がばっ!
「ちょ、こら、お前は鳥か!?」
可愛いし聞き分けのいい少女なのだが、こいつにはひとつだけ欠点がある。
なにかと人に抱きつく癖があるのだ。
たとえば今のように、僕に見せたい写真があった場合、
目の前に回り込む→座る→写真を差し出す→見て貰う
なんてプロセスを踏まずに、
ダイビング→抱きつく→見せる
といった感じで急がば回れを完全無視。
しかも腕や足を器用に絡めてくるため、引きはがすのにも一苦労。
しかも、先輩や幼なじみほどではないものの、それなりに出るところも出ているため、こう、後ろから抱きつかれたときは、
(うあー!? 薄い布地の感触と硬い布地の感触とその奥の柔らかい感触がががギギギ!?)
ぐりぐりと押しつけられてくる少女の感触に、何というか、こう、身悶えせざるをえないわけで。
38 :
4/4:2006/05/21(日) 00:55:40 ID:zjQ6MXFI
かくして、動物部なのかプロレス部なのかよくわからない活動を終えた後、帰り支度をし昇降口へ。
「あの……先輩?」
「ん?」
「いつもいつも、ありがとうございます。私のわがままで始まった部活なのに……」
しゅん、と下を向いてそう言ってくる後輩。
何を今更。
別に動物写真の鑑賞は嫌いではない。むしろ好きな方だ。
イヌ科の動物、特にタヌキ属の写真なんて最高だね。
まあ、抱きつかれるのには未だ慣れないが、それ以外は基本的に楽しいし。
頭をぽんぽんと撫でてやり、「気にするなよ」と笑ってみせる。
この後輩が落ち込んでいるところなんて見たくない。
小動物相手にきゃあきゃあ言っている姿の方が何万倍もマシである。
後輩は、数秒間僕の顔を凝視したかと思うと、おもむろに。
「先輩っ! ありがとうございますっ!」
「ってまたかよっ!?」
首筋にかじりつくように、真正面から抱きつかれた。
後輩の両腕は背中に回され、両足は僕の右足に絡みついている。
うぎゃあ、右足の太股に、何か感じてはいけない感触が押しつけられてる気がーっ!?
何とか引き離そうとするも、後輩はしがみついて離れない。
うわーん。放課後の昇降口で何やってるんだ僕たちはーっ!?
部活上がりの皆さんが、視線をずさずさと突き刺していく。
痛いよう。痛いよう。柔らかいよう。でもやっぱり痛いよう。
と。
僕が後輩のオクトパスホールドから抜け出せないでいたところで。
「――あ。たっく、ん……?」
幼なじみが現れた。
ラッキー。ちょうどよかった。後輩を引きはがすのを手伝ってはもらえまいか。
ほのぼの連続モノから修羅場クルー(゚∀゚)
一段落。
動物は無条件で可愛い……
そう思っていた時期が(ry
拙作を読んで頂き誠にありがとうございました。
少しでも修羅場分の足しになれば幸いです。
>>6は本スレのコピペ
ていうか書いたの俺
どうせなら、その続きを書いてくれ
>>6
>>42 あえて、って言ってるからわかってるんじゃない?
ちなみに俺が作品を書くのは_('∀`)
後輩といちゃいちゃしているところに
幼なじみがやってきたのにラッキーか…
修羅場を呼ぶ男は神経が図太くないといけないんだな
>>40 ものすごく面白い、登場人物も魅力的だから修羅場への期待が否応無しに高まる
神様はわたしに少しイジワルだ。
わたしに普通の生活をさせてくれず、耳と家族を奪っていった。
だから、今の生活は信じられないくらい幸せ。
大好きなお兄ちゃんとお母さんと暮らす日々はまるで夢のようにさえ思える。
わたしは、神様にたくさんのものを奪われた。
だから、今の生活とお兄ちゃんだけは奪わないでね。
昨日、お兄ちゃん達サッカー部は、ついに全国大会出場の夢を達成した。
そのためか、今朝のお兄ちゃんの機嫌はすこぶる良好のように思われる。
わたし達の通う高校ははっきり言ってサッカー弱小校だ。
それに対し、お兄ちゃんは年代別の日本代表には常に選ばれるほどサッカーが上手く、高校サッカー界の頂点に君臨していると言っても過言ではない選手である。
だから、お兄ちゃんの中学卒業時には全国の強豪校やクラブユースからたくさんの誘いがあった。
しかし、お兄ちゃんはどんな魅力的な話にも見向きもせずに、さっさとウチの高校に進学を決めてしまった。
何故そんな事をしたのか?
その理由は、恐らくわたしにある。
わたしは生まれながらに耳が聞こえない。
そんなわたしを受け入れてくれる高校は思った以上に少なく、自宅から通える範囲で考えるとウチの高校しかなかった。
だから、お兄ちゃんは来年のわたしの高校進学を見据えて、あえてこの高校に進学したのだ。
お兄ちゃんは、自分から進んでこの高校に進学したんだって言ってたけど、それは恐らく嘘。
だってわたしは知っているから。
去年の冬の総体をテレビで見るお兄ちゃんのひどく寂しそうな横顔を。
晴れ晴れとした顔とは対照的に、お兄ちゃんの足取りはひどく重い。
曰く、全身が油のきれたロボットのような気分らしい。
スポーツ経験のほとんどないわたしにはいまいちわからない感覚ではあったが、ひとまずつらいみたいだ。
主人公に片思いの幼馴染→主人公が他の子と付き合いだす
→幼馴染が少しずつ、少しずつ狂いだす→幼馴染が主人公とその彼女のいちゃいちゃシーンに遭遇
→彼女と主人公が喧嘩して気まずくなる→ここぞとばかりに幼馴染が主人公を誑かす
→幼馴染、主人公の元彼女にいろいろ話をして精神的に追い込む→元彼女、たまたま主人公と遭遇する
→主人公「やっぱり僕は○○(元彼女)が好きなんだ、君じゃないとダメなんだ)」と、ヨリを戻す
→主人公、幼馴染に“それとなく”(ここ重要)別れ話を切り出す→幼馴染、ストーカー化する
→幼馴染、校内にて主人公とその彼女との愛の営みを目撃→完全に壊れる
→幼馴染、主人公を監禁→ある程度時間が経ち、姿を見せないことを不審に思った彼女が主人公宅へ訪問
→彼女、主人公の部屋で憔悴しきった姿の主人公を見つける→安否を確かめてる隙に後ろから幼馴染侵入
→そして…
こんな構成のSSを昔に書いたことがあった。
あまりに稚拙な文章だったから消してしまったという悲しい過去の話だがね。
だからわたし達は少し早めに家を出ることにした。
透き通るような青空をゆったりと泳ぐ白い雲、衣替えをはじめた遠くの山。
子供の頃から見慣れた景色だけど、こうやってゆっくり歩くと色々な新しい発見がある。
こんな朝もたまにはいいかな。
そんな事を思いながら、わたし達二人はいつもの道を通り、桂橋へと向かった。
桂橋とは、わたしの家と駅との中間あたりにある大きな橋で、駅前付近の比較的近代的な街並みと、わたし達の家周辺の片田舎のようなのどかな街並みとを二分している。
そんな大きな橋で、わたし達と待ち合わせをしている人が一人いる。
もう、沙耶お姉ちゃんは来ているかな?
――柊 沙耶。
お兄ちゃんとわたしの幼馴染みで毎日一緒に学校に行っている。
沙耶お姉ちゃんはいつも優しく面倒を見てくれる姉のような存在で、憧れてしまう程綺麗でカッコいい人だ。
少し気の強そうな印象を受ける大きな瞳と、高く綺麗な鼻。その下にはキュッと引き締まったクローバー型の小さな唇。
短めな髪と緩やかな曲線を描く輪郭。
その全てが彫刻のような完璧なバランスをたもっている。
その顔に、165センチの長身からスラッと延びる細くしなやかな足と、わたしとは正反対のメリハリのきいたスタイルがあいなって、さながらファッションモデルのような成り立ちだ。
わたしと沙耶お姉ちゃんのスタイルを見比べると、くやしいけどやはり見劣りしてしまう。
やっぱりわたしより沙耶お姉ちゃんの方がお兄ちゃんと釣り合っているのかもしれない。
沙耶お姉ちゃんは二年前、まだわたしが中学生のころにお兄ちゃんと付き合っていたことがある。
はじめてその話を聞いた時は、大好きなお兄ちゃんと沙耶お姉ちゃんだったから嬉しかったし、二人を応援しようとした。
だけど、やっぱりどうしてもそれが出来なかった。
だって、わたしもお兄ちゃんが大好きだったから。
以来、お兄ちゃんと沙耶お姉ちゃんが楽しそうに会話をしているのを見るだけで、まるでわたしだけ、のけものになったかのような居心地の悪さを感じた。
そして居心地の悪さを感じる度に、沙耶お姉ちゃんに対するやるせなさも積もっていった。
沙耶お姉ちゃんはわたしの気持ちを知っているはずなのに、どうしてお兄ちゃんを奪っていくの?
やるせなさは、やがて沙耶お姉ちゃんに対する苛立ちに変化していった。
だから、二人が別れたと聞いた時は不謹慎だけど、少し安心した。
お兄ちゃんをとられないですんだことも大きな理由のひとつだけど、何より沙耶お姉ちゃんを嫌いにならないですんだから。
50 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 01:42:25 ID:3LEuRgg1
>>49 あー、投下中に申し訳なかった、今では反省している
>>50 そうだ、反省しる。
反省の証に、そのアイデアでSS投下を。
52 :
保守ネタ:2006/05/21(日) 04:19:57 ID:j0S1HUfZ
「(前スレが)埋まった…!」
「このスレに相応しい“修羅場”は決まった!」
「策略巡らす才覚!グレイブレイン!
偽り隠す仮面!ブラックストマック!
勝利酔う快哉!ホワイトスマイル!」
「奪え!泥棒猫・フェイトビューティー!」
アンリミテッドなつかしいなぁ。
純也との別れ話は、自分からきりだした。
純也は初恋の相手だったし、その時も……いや、今でも好きだ。
だけど、私達は別れた。
高校に入り私と純也が付き合い始めると、今まで、気軽に話しかけてきた茜ちゃんの態度が急によそよそしくなった。
茜ちゃんが私を慕ってくれているのは知っていたし、純也に対して兄を越えた特別な感情を抱いているのも知っていた。
だから茜ちゃんは自分が姉のように慕っている女性に、最愛の人をとられてものすごく辛かったんだと思う。
私もつらかった。
小学校の頃から一緒だった三人の関係に生じた歪みがどんどん大きくなっていくのが。
そして、何より怖かった。心のなかでうねりをまく黒い感情が。
初めは本当にささいな事だった。
二人でデートしている時立ち寄った喫茶店で、純也が気をきかせて紅茶を持ってきてくれた。
そして純也は二つの紅茶をテーブルに置くと、慣れた手付きで私の紅茶に砂糖を二ついれたのだ。
私は紅茶に砂糖をいれない。
砂糖を二ついれるのは甘党の茜ちゃんの飲み方だ。
その時は笑って指摘したけど、それ以来少し気を付けて純也を見てみれば、純也のいたるところに茜ちゃん染み入っていることに気付いた。
歩道の歩き方や買ってくる飲み物、歩くペース等の本当にささいな事。
しかし、確実に純也は茜ちゃん仕様に設定されている。
私達三人はずっと一緒だったはずなのに、いつのまにか純也は茜ちゃんによって染めあげられていた。
その事実がたまらなく悔しかった。
今純也と付き合っているのは私なのに……。
自分の独占欲がこんなに強いとは思わなかった。
気が付くとそれは、黒い濁流に姿を変え、わたしを飲み込もうとしていた。
だから、純也と別れた。
茜ちゃんは私にとって大切な存在だし、嫌いになりたくなかったから。
幸いな事に、私と純也が別れた後で三人の関係はある程度元通りに戻ってくれた。
どこかすっきりしないモヤが心に残ったが、これでよかったんだと思う。
「おはよう、沙耶」
いつもの時間、いつもの橋で私は純也達と合流する。
昨日、念願の全国大会出場を決めたからであろうか、純也の声はいつもより機嫌がいいように思えた。
「おはよう」
私は純也に軽く挨拶をすると、となりに佇む小さな影にも手話で挨拶をする。
"おはよう"
私の手話を茜ちゃんが理解すると、いつものハニカミをみせて
"おはようございます"
と相変わらずどこかオドオドした態度で丁寧に挨拶を返してきた。
茜ちゃんは同性から見てもかわいいと思うし、もっと自信を持つべきだと思う。
少し頼りなげな垂れ目と綺麗に縦に並ぶ鼻と小さな口。
笑顔のさいにこぼれる白い歯は綺麗な並びをしている。
それにはっきりとした輪郭と、肩に届く程度のストレートな髪質が重なり正にアイドルのような可愛らしい顔立ちをしている。
そしてまた、ほっそりとした体つきと、制服のスカートからとびでる白く美しい足は、色気とは違った魅力をかもしだしている。
「何ボケッとしてんだよ。早くいかないと間に合わないぞ」
私の沈黙を打ち破る純也の声が、頭の中を舞った。
「ちょっと、まだ時間あるでしょ?」
「全身筋肉痛でうまく歩けないんだよ」
やっぱり純也はご機嫌だった。
トロトロ歩く駅までの道の上でも、不規則に揺れる電車の中でも、聞いてもいない昨日の試合の話が止まらない。
後半バテてたくせに……。
しかし、何だかんだ言っても、純也の活躍は大きい。
ウチの高校は大量得点と大量失点を繰り返す超攻撃的チームだ。
特に前半の攻撃力は凄まじい。
その攻撃をささえているのはやはり純也だ。
予選の得点のほとんどが純也絡みで、シュート、パス、ドリブル等の技術面、後悪い意味でスタミナの次元が他の選手とは明らかに違う。
少なくとも、個人の力で純也を押さえられるDFはこの県にはいない。
決勝の相手のように、ウチの高校との実力差がかなりあり、かつ何人もマークをつけないと純也は止められない。
それほど、純也は飛び抜けている。
しかし、攻撃の中心である純也がバテた後半からウチの本性が暴かれる。
魔法の解けたチームはあっという間に崩壊し、大量失点を繰り返す。
去年の大会の準決勝はもはやギャグの領域だった。
あの時、純也のハットトリック等で前半に5点のリードを奪い、初の決勝進出確実か?と思われた後半にドカドカ失点し、まさかの逆転負け。
失望も怒りも通りこし、もはや笑うしかなかった。
ちなみにその試合、純也はスタミナ切れで後半ピッチに立っていない。
「そしたら牧がな………」
………長い。まだ続くのか。
純也はもう十分以上マシンガンのごとく延々としゃべり続けている。
さすがに話を聞くのがしんどくなった私は、適当に相槌をうち、聞いてるフリをする。
茜ちゃんもそろそろウンザリしてきただろう。
そう思い、未だしゃべり続ける純也を横目に、チラッと茜ちゃんの顔を覗きこんだ。
しかし、私の想像とは違い、茜ちゃんはずっと純也の話を、とても楽しそうに聞いていた。
いや、純也はもはや手話を行っていない。だから茜ちゃんが純也の話を理解するのは不可能だ。
茜ちゃんは単純に純也の嬉しそうに話す姿を見るのが楽しいのだろう。
やっぱり、この娘は本当に純也が好きなんだなぁ。
つくづくそう思う。
そして、そんな純粋な気持ちがもてる茜ちゃんが、何故か少しうらやましかった。
電車が駅につくと、私達は人混みの改札をすり抜け、トロトロ学校まで歩き出した。
それでも純也はまだしゃべってる。そろそろ止めてあげようか。
「あ〜、そう言えば純也。今日、朝の全校集会にサッカー部は出るの?」
「ああ、出るよ。優勝メダルとトロフィー、あと個人賞のトロフィーが校長から与えられるらしい」
「純也は最優秀選手賞取ったんだってね。さすが"妖精"」
さっきまでたらたら話してくれたお返しに、少し嫌味をこめて言った。
"妖精"。
それはあらゆる人を魅了する華麗なプレーをするという意味だ。
しかし、純也にその名がついた理由はもうひとつある。
気まぐれ。つまり、安定してチームに貢献できないと言うこと。
だから、純也は昔からその名前を嫌っていた。
「ははは、でもあれは俺のタイトルじゃないよ。みんなが頑張ってくれたから取れたんだ」
やっぱり純也の方が一枚上手だったようで、私の挑発には乗らずに、綺麗にスルーされてしまった。
このあたりの精神的な完成度も純也の魅力なのかもしれない。
そこまで二人で話していると、ふと背中に刺さるような嫌な視線を感じた。
その視線に釣られるように慌てて後ろを振り返ると、そこにはすごく怖い顔をした茜ちゃんが私を睨んでいた。
振り返った私と目があうと、茜ちゃんのさっきまでの表情が一変し、すまなそうな顔でうつむく。
そのすまなそうな顔の茜ちゃんの姿を確認すると、私は少しがっかりしてふーっと小さな溜め息をついた。
私と純也が付き合っていた頃から、茜ちゃんは私と純也が二人だけで話しているのを見ると、露骨に嫌な顔をする。
また、私と純也が付き合いだすんじゃないかって不安なのだろう。
茜ちゃんには私達の会話が聞こえないから。
やっぱり私達の関係は、完全に元通りってわけにはいかないのね。
私は再び純也にも聞こえるように、大きな溜め息をついた。
新キャラ登場。
先の作品では、ボツにされたりしたお人ですが、今回は完全版なので登場していただきました。
これからは、純也、円香、茜、沙耶の四人の視点で話を進めていきます。
ちなみに、次は円香視点です。
わーい、もし神の完全版が来てる。
そんなこんなで私は入院した。
医者が言うには全治一ヶ月だそうだ。
正直に言ってあれだけの傷が一ヶ月で治るとは信じられなかったが、とにかく3週間ほどで退院できるそうだ。
それも嬉しいが、特に傷跡も後遺症も残らないと聞いた時はもっと嬉しかった。
それと私が発見されたのは病院の玄関前だったそうだ。
それも…本職の眼で見ても見事な処置を施されていたらしい。
まあ、正直に言ってそんな事はどうでも良い。
医者から怪我をした状況を尋ねられたが、知らぬ存ぜぬで押し通した。
そんな事もどうでも良い。
重要な事は一つ。
眼が覚めた次の日に、私の恋人である倉田健斗(くらた けんと)が見舞いに訪れた事だけだ。
それはもう嬉しかった。
思わず飛び上がりそうになる位嬉しかった。
まあ、飛び上がろうにも私の四肢は言う事を聞いてくれなかったが。
「黒崎先輩、大丈夫ですか…」
その言葉は千金にも勝ると私は信じて疑わない。
「大丈夫、この位どうって事はないよ」
「聞きましたよ、全治一ヶ月じゃないですか」
そう言って健斗は腰に手を当て、全身で怒りを表現する。
いや…呆れに近いか。
「すまない、君には心配をかけた…」
「別に…良いですよ…」
そう言う健斗の眼はどこかに泳いでいるかのようだ。
なにか用事でもあるのだろうか?
だが、私は少しでもこの時間を長く感じていたかった。
「やはり、一人は寂しいよ…」
ずるい手だとは思ったが、情に訴えるような言葉を使った。
この子は思いやりがあって、やさしいから…
「あの…すいません、この後用事があるんですよ」
「えっ…?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
「その…先輩、おだいじに」
…ガチャン
我に返った時には、既にあの子は逃げ去るように病室から出た後だった。
何故か…どこか余所余所しく別れを告げたあの子が…
様々な思考が頭の中を交錯した。
あの子に何かがあったのだろうか?
それとも私に何か落ち度があったのだろうか?
まさかあの日かっ!?
…いや、それだけは無い。あの子は男の子じゃないか。
だけどあの子があんな態度をとった時があっただろうか?
そう…良く良く思い出せば心当たりがあった。
あの子が舞踊部に入部して間もない頃はあんな感じだった。
あれから…もう1年と3ヶ月。
まるで大昔のように感じるが、思えば恋人同士になってからまだ3ヶ月しか経っていなかった。
あるいは…飽きられたのだろうか?
いや、そんな事はないっ!
信じるんだ…健斗を…
コンッコンッコンッ…
「健斗!?」
迂闊な事に…私はその一瞬あの子の顔を思い浮かべていた。
あの子が部屋から出て行って数分しかたっておらず、忘れ物でもしない限り戻って来る筈が無いと言うのに。
「失礼する」
ガチャ…
期待は最悪の…いや、最悪に程近い形で裏切られた。
それは私をここに連れてきた本人…
「お前は…」
…今一番見たくない顔だった。
「その様子では大事には至らなかったようだな」
などと冷静に言われるが、私は到底平静を保ってはいられなかった。
あの時の恐怖が…私の頭の中でフラッシュバックのように蘇っていた。
「何しに来た…」
そう言うのが精一杯の強がりだった。
「なに、お前にどうしても言っておかねばならない事があってな」
静かにそう言った。
怖かった、どうしようもなく怖かった。
この状態が長く続けば、私はもう一度失禁してしまうかもしれなかった。
それだけに…
「すまなかった」
…この落差は大きかった。
私よりも何倍も大きく感じるこの男が…腰を直角に折り曲げて謝罪をしていたのだ。
「なん…で…?」
我ながらあほらしい声が出ていた。
私は自分の置かれた状況が理解できなかったのだ。
「正直に言おう。あの日の俺は少々イライラしていた、その故に必要以上にお前を痛めつけた。
すまなかった、謝罪する」
こいつは頭を上げずに言った。
恐怖は…雲散していた。
「とりあえず頭を上げて…」
「うむ」
たぶん…初めて真正面からこいつの顔を見た。
不思議な事に、怒りも恐怖も浮かばなかった。
それだけこいつの謝罪が意外だったのだろうか?
「とりあえず…名前は?」
「不撓不屈、偽名のようだが本名だ」
驚くほど現実味の無い名前であったが、驚くほど違和感も無かった。
それだけ…こいつの存在自体が現実離れしている証拠なのだろうか。
少しだけ…興味が湧いた。
「じゃあ…不撓」
「何だ?」
「なんでそんなにイライラしてた?」
「ああ…それか…」
不撓の目が泳いだ…
なんとなくバツが悪そうだ。
「実はな…弟がな…兄離れをだな…」
今まで浮かんでこなかった怒りが一気に噴出した。
「お前…そんな事で私に…」
「いや、すまない。本当にすまなかった」
手が思い通りに動くのならひっぱたいてただろう。
そのくだらない理由もそうだが…こいつの表情には既視感があったからだ。
「いや、しかしだな…母さんに二人を頼むと願われた手前、たとえ来るなと言われても後をつけたくなるのが兄としての…」
そうそう、こうやって何かとつけては理由を作りたがる姿とか…
「たしかに行き過ぎた面もあろう、だからと言って弟にああも拒絶される必要も無かろう…」
そうそう、こうやって非を認めそうになって結局は全然反省してない姿とか…
「第一、あいつはまだまだ子供だ。見ていて危なっかしくて仕方がない」
そうそう、こうやって相手を子供に、自分は大人だと決め付ける姿とか…
ついでに聞いてもいないのにペラペラと喋りだす姿とか…
お父さんに似ていたのだ。
早い話が…こいつは過保護なんだ。
「もういいよ…」
「ああ、すまない。とにかく俺にできる限りの償いはやらせてもらおう」
「それももういいよ…」
もう興味は無くなっていた。
不屈兄さんカワユスwww
GJwwwwww
このスレやっぱ最高だわ
週末の神々のたて続けの投下にGJが追い付かねぇ…。
「あ〜もう何やってんのよ〜」
この台詞も何度目だろう。数えるのも憂鬱になる。
我ながら、なんてバカなのよ。ねぇ?
試合に負けて、頭がごちゃごちゃして、一晩中雨の中で素振りやって。
おかげで熱が出て学校を欠席。
それより何より、学校を休んだことで、人志と顔を合わせずに済んだから結果オーライ、なんて事を今朝
考えた自分にイライラする。こそこそ逃げるなんて、やっちゃいけないのに。
あーもう、バカバカ! 大バカ!
とにかく、今日中に風邪を治して、復帰しないと。
夕方の今、熱はだいぶ下がっている。このまま行けば、夜には全快しそう。
人志への言い訳は……ま、後で考えればいいか。
結論が出ると、なんだか胸の奥のしこりが取れたような気分になった。
そうよ、また明日から頑張ればいいのよ。
ピンポーン。
「?」
インターフォンが鳴ってる。たぶん、お母さんが出るわよね。二階の閉まった部屋にいるあたしには、誰
が来たのかわからない。
少ししたら、パタパタと足音が聞こえてきた。誰かが、二階に上がって来てる?
「明日香ー」
「お母さん?」
ドアの向こう側よりまだ遠い、階段のあたりからの声が聞こえる。
「人志君が、お見舞いに来たわよー」
「え」
え、えぇ? 人志が、お見舞い?
「おばさん、見舞いじゃなくて見物です」
この声はほんとに人志! ちょっと、何やってんの? 顔合わせるのは明日だと思ってたのに、なに奇襲
かけてんの?
こっちはびっくりしてどういうわけか直立姿勢よ? さっきまで寝てたのに!
ええいうろたえるな! これは孔明の罠よ!
「入るぞ、いいか?」
ちゃ、と人志がドアノブに手をかける音がする。
「待って! まだ心の準備が!」
「ん?……そうか」
人志の手は離れた……と思う。こっちからは見えないけど。
と、とにかく、ここ最近整理してなかった机を何とかしないと。
机の上には、人志から借りたノートも置きっ放しになっている。しかもジュースを溢してでっかい染みを
つけちゃったヤツ。
これ、いつ返そう……ってそんなこと考えてる場合じゃなかった。
机の上に散らかった本を重ねて、本棚に押し込んでおく。
「……もういいかい?」
「もういいよああああぁぁぁーっ!!」
「どうした!? いいのか? 悪いのか?」
「悪い! いや人志は悪くない! もうちょっとだけ待って!」
危ないところだった。ベッドの上からだと見えなかった、って言うかすっかり忘れてたんだけど、床には
寝苦しいからと放り投げたブラジャーが!
こんなの見られたら、末代までの恥よ。
すばやくそれをタンスの中に詰め込む。あー危なかった。
……もう大丈夫よね。
ベッドに潜ってから、ドアの向こうに「もういいよ」と声を飛ばす。
それにしても、人志がお見舞いに来るなんて、どういう風の吹き回しよ。
あれ、見物って言ってたっけ? まぁ同じよ同じ。
今ドタバタしたせいで、妙にテンション上がってきちゃった。
人志に会うのはちょっと気まずいけど、この気分なら乗り切れそうな気がするわ。
あーでも、試合で負けたことの話が出てきたらどうしよう。
いまさら考えたって間に合わない。アドリブしかないわね。
人志だったら、少しくらい変なこと言ってもスルーしてくれそうだし。
ガチャ。
ドアが開いて、人志が入ってくる。
「やけに騒がしかったな」
「おじゃましまーす」
そして、予想してなかった、もう一人。
さっき上がったテンションが、急降下していった。
(11話に続く)
詰め所で城の中にある自分の荷物を整理する。
といっても俺は物にあまり執着しないタイプだから殆ど全部、同僚に譲ってしまった。
鎧も引き払った。
「残ったのは結局これだけか…」
目の前に置いてある一対の剣。
この剣は騎士団の支給品ではない。傭兵時代に師匠から譲り受けた物だ。
相当の業物らしく、刃毀れすることなく俺と三年間を共に過ごしてきた。
今となっては俺の罪の証だ。こいつの刀身には隣国の何人もの兵の血が染み付いている。
もう二度と使うこともないだろうが、これは俺が持っていなくちゃいけない。俺が墓に入ったとき一緒に埋めるべきものだ。
剣を取り、腰に挿す。
「ウィル、お前本当に辞めるのか?」
そろそろ出ようかと考えていると、同僚が残念だと言わんばかりの顔で訊いてきた。
彼は俺が入団当初から良くしてくれていた戦友だ。
「耳が早いな。辞めると言い出してから二日と経っていないのに」
「そりゃお前、『戦姫の懐刀』が辞めるんだぞ。城内はその噂で持ちきりだって。だいたい何で上の連中は止めないんだ」
当たり前だ。騎士団の運営を取り仕切ってるのはあのゲイル=トレイクネルだ。
俺のような目の上のコブはさっさと取り除きたいだろう。
「これからどうするんだよ?前の傭兵隊のところに戻るのか?」
「いや。故郷に帰ろうと思う」
俺の答えに同僚は驚く。
「故郷って、お前……あそこはもう……」
「わかってる。でももう決めたことだから」
「………そう、か……」
同僚たちに別れを告げ、城を出る。
あれからとうとう団長に会えなかったな。今までのお礼を言っておきたかったのに。
仕方ない。村に帰ったら手紙でも出そう。
だが、彼女は城門の前で待っていた。
「ウィル!!」
俺を見つけると全速力で俺に駆け寄ってくる。
彼女の目は赤く腫れ上がっていた。泣いていたのか……きっと俺の所為だ。
団長は速度を落とさず、俺に抱きついた。強く、強く。
彼女の鎧が当たって、胸が痛い。苦しい。
「辞めないで!辞めないで辞めないで辞めないで!!
どうしてウィルが騎士を辞めるの!?なんで!なんで!!」
団長の悲痛の叫びが胸に刺さる。
本当に下衆野郎だ、俺は。団長にまで恩を仇で返すようなマネばかりしている。
でも、団長。もうこれで終わりですから……
「すいません、団長」
「私がトレイクネルの人間だから!?私のお父様があなたの村を襲わせたから!?
それなら謝りますからお願い、辞めるなんて言わないで!私を置いていかないで!!謝りますから!!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
何度も何度も。俺に許しを乞う団長。
その姿はあの日のキャスを思い起こさせる。
団長は事件の真相を知っていたのか。前に会ったとき様子がおかしかったのはそのせいなのだろう。
「団長、やめてください…」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――――」
「団長!」
肩を揺すってやめさせる。
「もういいんです…団長。謝らないでください。
俺はもう誰にも関わることなく、ひっそりと生きていこうと思います」
「いやッ!いやッ!」
団長は聞きたくないと首を左右に振る。
「ごめんなさい。俺はもう……此処には居られない」
しがみ付いている団長を引き剥がす。
「あ………」
「団長。今まで本当に有難う御座いました」
最後にありったけ感謝の念を込めて彼女に言った。
「ま、まっ…て…」
今はまだ無理でもいつかきっと団長は解ってくれるだろう。
そう願って、振り返ることなく城を後にした。
城を出るウィルをただただ見送るだけの私。駆け寄って止めようにも腰が抜けて走ることができなかった。
――――許してくれなかった。
許してくれなかった許してくれなかった許してくれなかった!!
あれだけ謝ってもウィルは許してくれなかった!!
それだけ彼は怒ってるんだ。どうしよう。どうしよう!どうすればいい!?
絶望の中、必死でウィルに許してもらえる方法を探す。
とにかく先ず、なんとしてでも私は味方だってこと、分かってもらわないと。
そのためには何をすればいい?いったい何をすれば!?何を!!?
あ。
――――ソウダ。
ウィルニ カワッテ ワタシガ カレノ カタキヲ ウテバイインダ。
あはっ。あははっ。
あははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!!!!!!!!!!
なーんだ。思いつけば簡単なことじゃない。
私がウィルの代わりに復讐すればいいんだ。
そうすればウィルはきっとわかってくれる。よくやったよ、って褒めてくれる。
私の側にずっと居てくれる。
お父様も。加担した貴族たちも。事件を見過ごしたこの国の王も。ウィルに告げ口して彼を苦しめた王女も。
みんな、み〜んな殺してやればいいんだ。
あはは。
待っててください、ウィル。
あなたを苦しめてるヤツらはみんな私が殺してあげますから。
「ふ、ふふっ……あはは…あははははははははははははははっっ!!!」
爽快な気分で笑い声を上げながら天を仰ぐと。
そこには今の私の気持ちを代弁するように雲ひとつない真っ青な空が広がっていた。
団長キテますキテますの回でした。
74 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 14:15:19 ID:3LEuRgg1
団長可愛いよ団長
修羅場激しく期待してます!
このスレに来る前の俺なら間違いなく団長に引いていただろう。
だが、修羅場色に染まった今の俺は何故かそんな団長がとても愛おしく思ってしまう。
修羅場ってすばらしい者だとあらためて確認してしまった。
リボン━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
団長━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ウィルが発狂するくらい、洒落にならない事が起きる予感
リボン、いよいよ直接対決キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
普段強気なのにワタワタする明日香カワイス(*´д`*)
またダラダラ長くなったので、<5>を前・後で切って投下。まず5レス分↓ここから
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<5>
山本くんちの玄関には、お地蔵さんが祀ってある。
お地蔵さんが口を開いた。
「秋くんがいつまでもグズグズ愚図愚図してるからぁぁぁあああああ!!」
失礼。お地蔵さんではなくて、どうやら硬直していた姉のようだ。
ここで状況を把握するために、十五分ほど前に時を遡ってみたい。
お地蔵さん、いや姉が、とある男性からの電話を受け取った時までだ。
『あ〜〜、亜由美ちゃん? 元気してるう? いやっはっは、ど〜も。え? おじさんの方かい?
おじさんはね〜先週のゴルフで腰痛めっちゃってさぁ。それよりも大学の方はどう?あ、そう。
うん、おじさんも最近はろくに休みをとれなくて。うん、今も仕事中だよ。
駅前の薬局の向かいの土地分かる?今大きなビルを建ててるでしょ? あれおじさんの担当なんだよ〜。
それで今ね、梓をそっちに行かせたから。携帯にかけて、帰りに寄って行けと言っといたんだけどね。
そっちが二人とも留守だったらイカンなと思って。うん。都合が悪くないみたいでよかった。
それより秋人くんはどう? 元気してる? また背が伸びただろうねぇ、もうおじさんより随分――
――どうしたの亜由美ちゃん? やっぱり今忙しかった? あ、そう、料理中なんだ。それじゃ切るね。
梓の面倒みてやってね。うん。それじゃまたね亜由美ちゃん。はい。ごめんください〜』
はい、ストップ。
>>お父様も。加担した貴族たちも。事件を見過ごしたこの国の王も。ウィルに告げ口して彼を苦しめた王女も。
>>みんな、み〜んな殺してやればいいんだ。
工工エエエ(´д`)エエエ工工
…
…
…
(´Д`;) ハアハア
賢明なる諸兄ならば、もうお分かりであろう。
この姉、実にみっともない。みっともないことこの上ない。
さぁ、断罪しよう。
――この姉は、
――従妹の少女とほんのちょっと会わせるのが妬けるので、
――わざわざ弟の少年を引き離そうとしたのである。
しかも予想よりも早く現れた少女によって目論みは外れ、逆に連れ立って出て行かれてしまった。
嗚呼、なんとゆうくだらない理由。なんとゆうなさけない行動。なんとゆうふがいない結果。
だがここで、こんな消極的な手段に訴えたこの姉を、少しだけ弁護しておかなければならない。
なぜなら姉は、この少女がすこぶる苦手だったからである。
その昔。姉は少女を、妹としてたいそう可愛がっていた。
既に最愛の存在だった少年と、妹のような少女。幼き三人きょうだいによる仲良き日々だ。
そんなある日のこと、若き姉はふと思った。
――いとこ同士って、結婚できるよねぇ――
姉がひとつの危惧を抱き始めた頃には、もう既に手遅れだったのかもしれない。
幼い少女が少年を見つめる瞳の奥に、身に覚えのありすぎる光が宿り始めていたからである。
疑いを持って観察してみると、今まで気づかなかったのが情けなくなる程、少女の行動は露骨だった。
朝起きると、泊まりに来てた少女が少年のベッドに潜り込んでいる。
意味が分かっているのか分かっていないのか、太腿を少年の腰に擦りつけながら。
半分飲みかけのマグカップを、少年のものとこっそりすり替えている。
気がつけば、少年が脱ぎ捨てたシャツを着ている。
少年が入浴中の浴室に、すっぽんぽんで飛び込んでいく。
幼さゆえの無垢でもって、禁断の行いを軽々と遂行していく従妹。
姉の心の中でドス黒い奔流がそろそろ決壊しようとしていた頃、事態はさらに風雲急を告げる。
……両親の海外出張決定である。
恐るべきことに「少年と少女と姉、三人が一つ屋根の下で暮らす」という状況が強要されようとしていた。
姉は抵抗した。全身全霊、もてる力の全てを賭けて抵抗した。
その結果、至福とも言える今の「愛する弟と二人っきりの生活」を手に入れたわけである。
…
……
その後、少女は変わってしまうことになる。
少なくとも表面上は、まるで少年に興味がないような態度だ。
だからであろうか。姉は少女に対して、なんとなく後ろめたさみたいなものを感じている。
できれば顔を会わせたくない。
そして少年の方も問題だ。明らかに彼は、冷たくなってしまった従妹に寂寥感を抱いている。
姉の嫉妬心を煽っている事も知らず、従妹にアレコレと構おうとする。気遣おうとする。部屋に上げようとする。
少女の方にその気がないとしても、少年の方がオオカミさんになる可能性だって捨てきれないのだ。
できれば少年とも会わせたくない。
しかし今の極楽生活を続けるためには、彼女の来訪だけは受け入れざるを得ないのだ。
少年の保護者である叔父の手前、少女とも昔ながらの仲良しであることをアピールしなければならない。
さっさと追い払えば良い、よその泥棒猫とは違う。
姉は今でも、この少女が苦手だった。
………
……
…
さて、そろそろ現在の姉の様子を見てみよう。
姉は揉み手で果物ナイフをもて遊びながら、リビングをうろうろうろうろ歩き回っている。
……なぜ果物ナイフを握っているのだろうか、我々にはその理由を推し量ることはできない。
どうやら今日はそうするのがお気に入りなのだ、安心できるのだ――そういうことにしておこう。
不機嫌そうである、傍目にも不機嫌そうである。
苛立たしげに髪の毛を掻き毟りながら、コツコツとナイフで壁を叩く姉。
だいたい欲張らずに少女を家に上げておけば、一時間かそこらで帰っていったはずなのだ。
仮に少年が部屋へ連れ込んだとしても、必殺のお茶&お茶菓子攻撃で乱入することは可能だった。
それなのに余計なことをしたから……。自業自得。後悔先にたたず。
おっと、なにやらブツブツと呟き始めた。
――図書館まで片道二十分、往復四十分。あとは宿題とやらを片付けるのにどれぐらいかかるのかしら。
――秋くんはかしこいから三十分もあれば充分かな。合計七十分……長いッ! 六十分が限度だ!
――……一時間あれば帰ってこれるかなぁ。一時間……そうだよねぇ。それ以上一緒にいたら、もう浮気だよ。
――梓ちゃんだっていつも一時間くらいで帰るんだから。
自分に都合よく状況を解釈し、自分に都合よく条件を作り上げていくことは、この女性の得意技であった。
しかし今の彼女にとっては、脳内で大幅に短縮されたその一時間でさえ待つことは苦痛だ。
例えばラブホテルの看板。ご休憩は普通二時間だ。
彼女が大切なものを少年に優しく引き裂いてもらうその日には、最低でも四回はして貰うつもりでいる。
つまり半分の一時間あれば、二回は中に出して貰えそうである。彼女の脳内ではそう計算されている。
二回だ! 二回も膣内射精されれば、周期さえ合えばすぐにも孕めそうである!
双子だったら一躍二児の母親だ!
翻って、仲良く肩を並べて出て行った少年と少女のことを考えてみる。
そのまま寄り添うように、びらびらビニールのついたお城のような建物の入り口へと消えて行く二人。
部屋の向こうから聞こえてくるシャワーの音と、そわそわ何度もベッドに座りなおす少年。
俯き加減にバスローブ巻いて出てきたしなやかな肩。そっと手が添えられて。
少年の唇が、首筋に、鎖骨に、双丘の頂きに、そして茂みに
漲った少年があてがわれ、シーツを噛みしめた少女の口から悲痛とも歓喜ともいえる――
―――
――
―
山本くんちのリビングルームに、顔色真っ青の陰気なお地蔵さんが祀ってある。
弟の結婚式場へ包丁片手に駆けつけるところまで想像して、お地蔵さんは我に返った。
ぶんぶんぶんと頭を振る。随分と最低最悪な妄想をしてしまったお地蔵さんだ。
そんなことあるはずがない。
少年に限って、そんなことあるはずがないのだ。もっと彼を信用しなければ。
置時計はもう三時を指している。
イケナイ妄想をしている間にも、悪魔の一時間は過ぎてしまったようだ。
それを確認した姉は一転、ほころぶように顔を輝かせる。もうすぐ帰ってくる。もうすぐ少年が帰ってくる。
弟の帰宅を迎える時、姉はいつだって幸せなのだ。
――とびっきりの笑顔で、おかえりを言ってあげようかな。
「玄関 あけたら 二分で お姉ちゃん」
――ううん、二分もいらない。二秒でお姉ちゃん。
――そのままいただきますしてくれても、いいんだよ?
ふん、ふん、ふん、と上機嫌で古いCMテーマをハミングしながら、玄関の方へと移動する。
――まだかな。まだかな。
―秋くん、まだ帰ってこないかな……
―かな…
………
……
…
三十分後。
山本くんちの玄関には、もはやお地蔵さんと囃す気にもなれない程、無残にしょぼくれた姉の姿があった。
少年が出て行ってからもう一時間半になる。つまり、少女と二人っきりにしてから一時間半だ。
姉は心の中で断じた。これは重大な裏切り行為であると。
ぷりぷりしながら携帯を取り出した。
待ち受け画像は――当然少年の笑顔の写真。
「うぅ……」
――秋くんはずるいよ……。
――ずるいよ……。そんな顔されたら、お姉ちゃん……
――お姉ちゃん、怒っているんだから……
ちゅ
目を閉じて、大事な宝石にするように、そっと口付けする。
嗚呼、寂しくてしょうがない。まるでもう半日も会っていないかのような錯覚。
メールを出そう。さりげなくメールを出して、早く帰ってくるよう催促しよう。
『そろそろ帰ってくる?』『はやく帰ってきてよ』『そばにいてよ』……こんなフレーズが真っ先に頭に浮かんだ。
――あぁ、でも駄目……そんなの。
――そんなあからさまにおねだりしては、お姉ちゃんとしてはしたない……。
外にお仕事に出た旦那様を、じっと耐えて待つのも妻のつとめ。姉だってそう変わるものではない。
……なんだかよく分からないが、彼女の中では姉としてそういう倫理観が重要みたいだった。
ひとしきり頭を捻った後、にっこり微笑んで携帯を操り始める姉。
弟へのメールを考える時、姉はいつだって幸せなのだ。
『2006/05/20 15:36 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん、今日のお夕飯何がいいかな――』
メール、送信。
――うん、完璧だっ。
我々にはどうしようもなく平凡な一文に見える。しかし姉にとっては細部まで吟味されつくした文面なのだ。
少年の食欲を刺激して家を恋しくさせるキーワードに加え、お姉ちゃんらしい家庭的な側面をアピール。
これらをバランスよく配合したメールなのだ。これならば、お姉ちゃんとして恥ずかしくないメールである。
――まだかな、お返事まだかな。
さっきすぐに帰ってきていれば、夕飯は少年の好物の茶碗蒸しにするつもりだった。
今でも少年がおねだりしてくれば、作ってあげるのに吝かではない。
……ただし少年の茶碗蒸しにはちょっぴり、いやたっぷり、お姉ちゃんの唾を落しちゃうつもりでいる。
間接キスだ。
――まだ、かな
…
……
………五分過ぎた。
十分過ぎた。
返事はこない。
――……おかしいな、秋くん。気がつかなかったのかな。
想いが通じないと余計に寂しさが募るもの。
左手小指第二間接を切なげに甘噛みしながら、携帯をぽち、ぽち、ぽち、と。
――秋くんがイケナイんだからね? 秋くんがお姉ちゃんをさみしがらせるからだよ……。
『2006/05/20 15:49 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん、そろそろ帰ってくる?――』
メール、送信。
――出しちゃった……。言っちゃった……。
――秋くんが、こんなはしたないお姉ちゃんにしたんだから……。
――秋くんはちゃんと責任取らないと……だめなんだよ……?
自分に浸って、長い睫毛を伏せる姉だ。
中途半端なところで一時中断。<5>前半ここまで。後半4レス分は数時間後に。
>>80 ごめん、はさんじゃった。
(,,゚Д゚)∩ハイッ!!先生、このお地蔵さんはどこに行ったら拾えますか?
あと幼い頃の従妹YABEEEEEEEEE、策士過ぎ((;゚Д゚)ガクガクブルブル
「おはよう」
家を出ると、芹が玄関の前で笑いながら立っていた。
何故、と思いかけて、そう言えば昨日から恋人になったのだと思い出す。
そう思い始めると、朝に玄関の前で待っていてくれたことも愛おしく思えてくる。
可愛い奴め、と思いながら見とれていると突然表情が険しくなった。
「挨拶くらい、してくれても良いんじゃないか?」
「うわ、スマン。おはよう」
「あぁ、おはよう」
途端に笑顔に戻る芹。
説明しようとして後ろを向くと、邪気は無いが露骨に嫉妬した表情の緑と、苦笑した雪が立っていた。
どう説明したものか考えていると、
「昨日から伸人と付き合うことになった」
あぁ、言っちゃった。
ストレートにものを言うのはこいつの美点だが、もう少し言葉に気を使うと言うか、色々飾るとかしても良いかと思う。
緑は芹を睨むと、
「本当なの? 伸人」
しかし僕に話を振ってきた。
「そんな訳だ」
「ラブラブだぞ?」
芹のその言葉に緑は僕さえも睨んでくる。
未練は無いのかもしれないが、まだ少し寂しいのだろうと思う。
それとも僕が幸せではなく、無理をしているとでも思ったのだろうか。
助け舟を貰おうと雪を見ると、黙って目を反らされた。もしかしたら、色々思うことがあるのかもしれない。
「伸人ちゃん、今は幸せ?」
ゆっくりと視線を戻してきた雪の言葉に僕は少し考え、
「幸せだ」
短く答えた。
その答えに雪は鈍く笑った。
校門前、不意に芹の歩みが止まった。
「どうした?」
無言のままでいる芹の視線の先を見ると、芹が手を刺す数日前に叩きのめしていた生徒が数人。
『暴君』と言われている芹に挑戦する生徒は少なくない。腕に覚えのある者は、不良から格闘系の部活まで様々だ。
だから珍しい事だとは思わなかったが、なんだか嫌な予感がした。
「もう喧嘩はするなよ」
念のために小さく囁くと、芹は当然だ、と言う顔を向けて笑ってきた。
一旦止めていた歩みを再会すると、案の定挑発の声が飛んでくる。
最初は無視をしていたが、ある時点で再び止まった。
恐らく原因は、僕へのヤジだ。
相手もそれに気が付いたらしく、それを中心に罵倒を始めた。
そして始まるのは、いつもの喧嘩。
「加勢するか?」
流石に芹と言えども片手が使えないのは不便らしく、不安定な体制で戦っている。
しかし芹は軽くこちらを見て、
「いらん。これだけは私の問題だ」
その一瞬の隙が仇となった。
いつもの芹ならふらついていなかっただろう。
いつもの芹なら避けれただろう。
いつもの芹なら当たっても大したことはなく踏み止まれただろう。
周りの人垣から伸びた女性の手が、芹の背中を軽く押した。
それだけなのに芹はバランスを崩し、地面に倒れ込んだ。
その拍子に、ポケットから僕が昔にプレゼントしたナイフが落ちた。
「良いもの持ってるねェ、暴君さん」
相当頭に来ていたらしいその相手は、ナイフを拾うと芹に向かって振り下ろす。
危ない、と思う前に体が動いていた。
最初に会った時は、僕が助ける側だった。
昨日も一昨日も、芹に助けられた。
なら今度は僕が助ける番だ。
芹を突き飛ばした直後、喉元に熱さが走った。
大切にしていてくれたらしいナイフは、かなり良く磨いてある。
倒れ込むと同時に、首に走る痛み。
視界に入るのは相手が逃げていく背中と、僕の大事な三人の顔。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
泣き叫ぶ雪の声がする。
馬鹿、お前が何したよ。謝らなきゃならないのはこっちの方だ。
そう言おうと思ったが、喉から漏れてくるのは空気が流れるかすれた音だけだった。
死ぬんだな、とぼやけてきた頭で考える。
「伸人、これからも私の料理食べてくれるって言ったじゃん!!」
ごめん、その約束は守れそうにない。
「私のせいだ、私が馬鹿な喧嘩をしたから。自分で自分の手を刺したから。いや、そもそも初めから私に会わなかったら!!」
それは違う。
確かに二年前から辛かったけど、ここ十日間は地獄だったけど、碌な事なんて無かったけれど、でも。
最後に短い間だったけれど、僕は幸せを芹に貰った。
これだけは胸を張って言って良いと思う。
思えば、皆を傷付けすぎた。
皆、僕みたいな冷たい、それこそ冬のような奴からは脱け出して良いと思う。
辛い冬から、暖かい春へ。
『雪』は溶けて雨になり、
『緑』は芽吹き、
『芹』等の七草が生い茂る季節へ。
もう僕から脱け出して新しい一歩を。
だがいくら春になっても雨は歌ってくれないし、風も後押しをしてくれない。
僕の手助けなんてもっての他だ。
だからこそ自分で前へと自分で踏み出してほしい。
意識が薄れてくる。
最後に力を振り絞る。
せめて皆の勇気になるように。
「ありがとう」
葬儀場。
少年の両親が泣き叫ぶその後ろで、やはり涙に顔を濡らした少女二人が居た。
「せっちん、来なかったね」
「本当に、どこで何してるんだか。あの泥棒猫」
降り頻る雨の中、公園のベンチに座り少女は歌っていた。
傘はあるが、少女の隣に置いてある缶珈琲と灰皿、その上に置いてある煙草に被せるように置いてあるので少女は濡れていた。
そして歌っている曲は、彼女の最愛の少年が好きだった曲だ。
少年は死んだ。
殺した人間は少し進んだ交差点で、車に挽かれて死んだらしい。
まぬけな話だ、と少女は心の中で毒を吐く。
しかし、歌うのを少女は止めない。
雨で濡れても、歌い続けた。
雨は歌ってくれないから、自分が歌う。
そうでもしなければ、少年があまりにもかわいそうだと少女は思った。
暫くして歌い終え、少女は二本目の缶珈琲に口を付ける。
そして、泣き始めた。
雨は歌ってはくれないけれど、涙を洗い流してくれる程度には優しいのだ。
少女は目元を乱暴に拭うと、今はもう誰も居ない、灰皿を置いている位置。少年がいつも座っていた場所を見つめた。
そして空を見上げる。
「ばかやろう」
"The Don't Singing Rain" is END
最終回でした
いかがでしたでしょうか?
今までレスしてくれた方々、読んでくれた皆様
ありがとうございました
個人的には次回作も書き始めているので
次も付き合って頂けたら嬉しいです
>>82 ここのお姉さんの思考が神展開すぎです。
それでいてメールの文面に悩むだなんて……なんて素晴らしい姉なんだ!
歌わない雨
な、なんと。もしやこの結末は初めから用意されていた?
個人的には雪が暴走を始めるかと思っていたからチョッピリ残念。
ともかく完結オツカレさまです。次回作もwktkで期待しております。
しかしおかしいな、まだ1日しかたってないっていうのにもうこの量だ。
姉━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
>>91 もつかれー
次回策はどんな嫉妬が待ち受けるのかwktk
おつかれさまでした
登場キャラクターたちも個性的で話としては面白かった
特に裏方で暗躍した雪は他に類を見ない良いキャラだったと思う
ただ、文章がかなり読み辛かった
良い点も沢山あっただけにそのことが非常に惜しい
>>82 GJです。果たしてお姉ちゃんはあまりに重大なミスを犯したってか携帯家に置きっぱなしなことに何時気づくのか!?
歌わない雨が遂に完結してしまった……
伸人はドロドロの鮮血の結末ではなく美しい散り様でした、作者様本当にGJ!おつかれさまでした
次回作をwktkしながら待っていますね
>>85 梓は素晴らしいな、今秋人と何をやっているのか非常に気になる
<5>後半、
>>84の続き4レス分↓ここから
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
…
……
………そして、三分が過ぎた。
五分が過ぎた。
返事はやっぱりこない。
――ん、おかしいなぁ……。
配信ミスだろうか? 図書館は電波が弱いのだろうか? これだからこの携帯会社は困る。
見えない何かにぷんすかしながらもう一度、やや乱暴に同じ文面をぽち、ぽち、ぽち。
『2006/05/20 15:57 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん、そろそろ帰ってくる?――』
メール、送信。
三分経過。
反応なし。
――図書館だから自粛してるのかな?
しかし三回もメールを入れたのに、少年が反応しないのは珍しい。
姉の記憶内のデータを検索しても、そこまで無視されたのは体育の授業とテスト中の時ぐらいしか思い出せなかった。
今だってちゃんと、バイブモードにして身につけてくれているはずなのだ。姉の言いつけを守って。
『2006/05/20 16:03 From 亜由美 To 秋人 ――ねぇ、秋くん――』
メール、送信。
そろそろ不安になってきたのだろうか。指が汗ばんでボタンの上で滑る。
一分経過。
音沙汰なし。
――秋くんッ!
番号呼び出し、コール、コール、コール、コール……出ない。
もう一度呼び出し、コール、コール、コール、コール……出ない。
『2006/05/20 16:09 From 亜由美 To 秋人 ――秋くんなにやっているの?――』
『2006/05/20 16:11 From 亜由美 To 秋人 ――もう帰り道なんだよね?――』
『2006/05/20 16:13 From 亜由美 To 秋人 ――バスが止まっているのかな。渋滞?――』
番号呼び出し、コール、コール、コール、コール。
返事なし。
――どうしよう、どうしよう、どうすればいい?
『2006/05/20 16:19 ――変な人が家に来て、消火器買ってくれってしつこい。こわい――』
『2006/05/20 16:21 ――秋くんたすけて!――』
『2006/05/20 16:22 ――こわいから助けてよ!!――』
『2006/05/20 16:23 ――秋くん!――』
返事、なし。
――やだ……
『2006/05/20 16:24 ――秋くん!!――』
返事、なし。
まぶたが熱い。
息がつまる。
視界がぼやけてる。
意識の果てで、生々しい極彩色を撒き散らしながら、さっき妄想した少年と少女の結合シーンが何度もリプレイされる。
――やだよ……
やだよ……
やだよお……そんなの、そんなの……
……そんなの!! いやだッ!!
そんなのぜったいにいやだッ!
秋くんはわたしとずっと一緒にいるんだよ!?
死ぬまでずっと、ううん、死んでからもずっと一緒にいなきゃいけないんだよ!?
秋くんはわたしのものなのに!! わたしのものなのに!! わたしだけのものなのにッ!!
盗ったんだ! やっぱりあの娘が盗ったんだ! ううん、誰だっていいッ!
梓だろうが藤原の売女だろうがよその雌猫だろうがどうでもいいッ!!
秋くんを盗った! わたしのものなのに盗った!! 誰かが秋くんを盗ったッ!!
ゆるせない! そんなの許せない!! 許さないッ!!
そばにいてくれなきゃいやだ! いつも繋がってなきゃいやだッ!
いつもわたしのこと考えてくれなきゃいやだ! いつもわたしのこと想ってくれなきゃいやだッ!
わたしのことだけを想ってくれなきゃいやだ! わたしだけに優しくしてくれなきゃいやだッ!
わたし以外のこと考えないで! わたし以外の子と喋らないで! 近寄らないで! 見ないで!
お姉ちゃんだけを見てよッ!!
お姉ちゃんだけのそばにいてよッ!!
お姉ちゃんだけを、愛してよッ!!!!
『2006/05/20 16:28 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん――』
『2006/05/20 16:28 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん――』
『2006/05/20 16:29 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん――』
『2006/05/20 16:30 From 亜由美 To 秋人 ――ねえ秋くん――』
番号呼び出し、コール、コール、コール
『2006/05/20 16:33 From 亜由美 To 秋人 ――ゆるさない――』
『2006/05/20 16:34 From 亜由美 To 秋人 ――ゆるさなあ――』
『2006/05/20 16:35 From 亜由美 To 秋人 ――ゆるさないから――』
『2006/05/20 16:35 From 亜由美 To 秋人 ――ゆるさないから――』
番号呼び出し、コール、コール、コール
番号呼び出し、コール、コール、コール
『2006/05/20 16:39 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん秋くん秋くん――』
『2006/05/20 16:40 From 亜由美 To 秋人 ――もう死ぬから――』
『2006/05/20 16:40 From 亜由美 To 秋人 ――お姉ちゃん死んでやるから!――』
『2006/05/20 16:41 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん!――』
『2006/05/20 16:41 From 亜由美 To 秋人 ――本当にもう知らないんだから!――』
『2006/05/20 16:42 From 亜由美 To 秋人 ――もう駄目だよう…――』
『2006/05/20 16:42 From 亜由美 To 秋人 ――返事してよう…――』
『2006/05/20 16:42 From 亜由美 To 秋人 ――いじわるしないでよう…――』
『2006/05/20 16:43 From 亜由美 To 秋人 ――お願い…――』
『2006/05/20 16:44 From 亜由美 To 秋人 ――秋くん秋くん秋くん秋くん秋くん秋くん秋くん――』
『2006/05/20 16:45 From 亜由美 To 秋人 ――ころしてやるから――』
『2006/05/20 16:45 From 亜由美 To 秋人 ――でないと みんな ころしてやるから――』
番号呼び出し、コール、コール、コール
番号呼び出し、コール、コール、コール
番号呼び出し、コール、コール、コール
番号呼び出し、コール、コール、コール
『2006/05/20 16:49 From 亜由美 To 秋人 ――あは――』
『2006/05/20 16:51 From 亜由美 To 秋人 ――あははははははははははははは――』
『2006/05/20 16:52 From 亜由美 To 秋人 ――う ――』
『2006/05/20 16:54 From 亜由美 To 秋人 ――あきくんきらい――』
『2006/05/20 16:55 From 亜由美 To 秋人 ――ひつ ――』
『2006/05/20 16:56 From 亜由美 To 秋人 ――あきと――』
『2006/05/20 16:59 From 亜由美 To 秋人 ――あきくん あきと――』
『2006/05/20 17:03 From 亜由美 To 秋人 ――おい で――』
『2006/05/20 17:06 From 亜由美 To 秋人 ――…………――』
『2006/05/20 17:07 From 亜由美 To 秋人 ――あきくん だいすき――』
『2006/05/20 17:09 From 亜由美 To 秋人 ――大好き、だよ?――』
『2006/05/20 17:11 From 亜由美 To 秋人 ――だい すき――』
番号呼び出し、コール、コール、コール、コール、コール……
返事 なし
……かたん
酷使され続けた携帯が手の平から零れて、自由落下にその身を委ねる。
……ずるずるずる……ぺたん。
溢れ出す絶望を支えきれなくなった両脚が、崩れ落ちる。力なく座り込む。
「捨て……られた……」
ぽたり、ぽたり、床に大きな水溜りを作っていく。
「……秋くんに……見捨てられた……」
静まり返った山本家の廊下に、低い嗚咽だけが響き渡る。
「……私を……見捨てた……」
両手の中には、果物ナイフ。
いつの間にかフタの外れた、果物ナイフ。
姉のなきべそ顔が映りこんだ、ぎらぎらひかるナイフ。
吸い込まれるように。
惹き付けられるように。
大きく見開いた姉の瞳から、少しずつ少しずつ、潮が引くように涙が乾いていく。
表情から絶望が消え……ただただ乾いていく。乾いていく。
他に名称も形容もない、何もない、ただ美しい、乾いたかお。
姉は、じっと、ナイフに、魅入っていた。
ところでここは、すぐ真上にある少年の部屋。
「着信有り 11件 未読メール有り 46件」と表示された携帯電話が転がっている。
<5>ここまで。お姉ちゃん、梓がどうする以前に盛大に自爆中。
次回、忘れられてたあの人カムバック。
>まとめサイトの阿修羅さま
>>79-
>>84の前半とこの後半部分は、投稿の便宜上分割しただけです。
アップして下さる場合、前半後半をガチーンと合体させてそのまま続けて載せちゃってください。
元々同一のものとして章分けしていますし、その方が読みやすいでしょうから。
はい、すべては短くまとめられなかった拙者のせい。お手数かけます。
姉神キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
作者様(*^ー゚)b グッジョブ!! 特に携帯が(*´д`*)
息抜きに来たらとんでもないものを見ちまった(((;゚д゚)))ガクブル
お姉ちゃんGJ
携帯持たす暇なく追い出したのはこの伏線だったのか…
お姉ちゃんマジいいよGJ、超GJ!
>>101 つまりオウガ風に言うとこういう事か!
亜由美
「ウソッ!!
じゃ、どうして私を置き去りにしたの? どうして一緒にいてくれなかったの?」
置き去りにしたわけじゃない。
→たしかに置き去りにしたよ。
秋人
「・・・そうさ、たしかに僕は姉さんを置き去りにしたよ。
でも、それは姉さんを修羅場に巻き込みたくなかったからなんだよ。」
亜由美
「ウソよッ! 私と一緒にいるのがイヤになったんでしょッ!?」
僕は姉さんを愛している!
→僕は姉さんと離れたくない!
キャ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
策がまるまる裏目に出てるドジっ娘なお姉ちゃん可愛いぜ。
だがそれでも俺は梓派を貫くけどな!
ヤベェ・・・・・・
実姉ハンパないよ(*´Д`*)
私にはすべてを捧げていい男性がいます。
5歳の時、私は生まれつき魔力と言うものが強いらしく、それを理由に魔道士の女に引き
取られました。引き取られたと言うか、押し付けられたとでも言うのでしょうか。子供の、魔力の
使い方を知らない私が、魔力を暴走させ村人に大怪我を負わせた事がありました。私は自
分が何をしたのか分からず、ただ呆然とし、小さいながらも人々から向けられる悪意、嫌悪、恐
怖と言った感情を、名前は知らないでも感じました。そしてそれは実の両親からも…。
次の日から私は、引き取られるまで小さな部屋に閉じ込められました。食事は与えられます
が、今まで他の子供と一緒に外に遊んでいたのに急に閉じ込められて、何がなんだか分かりま
せんでした。そして今までかわいがってくれた両親は、私を今思えばモンスターを見る目のよう
に見ていたような気がします。
その生活が一月続き、私はやっと外に出られましたが、わけも分からずその魔術師の女に
引き取られました。私に愛情を向けてくれた両親が、負の感情を私にぶつけてくる事は幼心に
も分かり、心は軋み悲鳴を上げていました。それが、今の私の性格、暗く人見知りな性格を形
成する事になったのでしょう。
そして…、私は彼女の連れていた子供、シュンと会ったのです。
―――――――――――――――――
ゴルラント王国王都のレンジャーギルド。そこに今、私はいます。レンジャーとは、王国に忠誠を誓
う騎士や魔道士が表立って動けない問題や、住民から依頼された問題を解決する見返りに報酬
をもらう商売です。要請される問題は、物騒な物から迷子のペット探しまで幅広いです。
「アイラ、マスターに次の依頼をもらったよ。それと、前回の報酬。」
「そうですか。」
笑みを浮かべながら、私の座っているテーブルの向かいに座る男性が私の大切な人、シュン。彼と
私は、この国での成人年齢の16になると同時に王都のギルドに登録をしてもらい、コンビを組んで仕
事をしています。彼の両親は宮廷魔道士と名うてのレンジャーだったらしいのですが、彼が生まれて
間もなくある事故に巻き込まれ亡くなってしまって、彼は父の姉で、私達の育て親のリーリア義母さん
に引き取られたそうです。
「前回は大変だったね。なかなか強いモンスターでさ。結局アイラの魔法の方が効いて、僕はあん
まり役に立ってなかったよね。」
申し訳なさそうに言う彼の言葉を聞いて、私はすぐに訂正した。
「そんなことないです、私一人だったら勝てませんよ。それに助けてもらってるのはこっちも同じです。
シュンが敵の注意を引き付けているから、私も魔法の詠唱に集中できました。」
確かに、前回の敵はシュンの剣術や体術が効きにくかったけど、その分彼は私の盾になってくれま
した。役に立たなかったなんてとんでもないです。
「ですけど、あんなに体中傷だらけになって…。あんまり無理はしないで下さいね。私は…」
あなたが死んだら生きてはいけない。そう言いそうになって口を噤んだ。
「分かってるよ、心配なんでしょ。大丈夫、体の丈夫さには自信があるから。」
シュンが私に笑いかけてくれました。それを見て、私もつられて笑顔になりました。
「あ、いたいた!」
「よう、二人とも。元気そうで何よりだ。」
そう言って私達の会話に割り込んでくる雑音が来ました。
「…」
「あ、こんにちはジンバさん、ミーシャさん。依頼を探しに来たんですか。ほら、アイラ。挨拶しないと。」
「…こんにちは。」
シュンに言われて、仕方なく私は挨拶をしました。彼らは私達より先輩のレンジャーで、王都のギルド
の中でも腕前はかなり上のほうです。特に、ジンバさんはシュンのお母さんの弟子みたいなものだった
らしく、よく私達の様子を見に来ます。
「ああ、まあな。前回の分の報酬がもう尽きそうだからな。誰かさんのせいで…」
「ちょっと、それってどういう意味よ!あんただって武器の補修と強化といってかなりを使ったじゃな
い!」
「お前の方が間違いなく使ってる。しかもほとんどが、酒代だ。俺の有意義な使い方に文句を言われ
る筋合いはない。」
「なによもう!シュンく〜ん、ジンバがあたしをいじめるの〜」
「う、うわっ。抱きつかないでください!」
…。この年増!ミーシャさんも軽いスキンシップでやっているのでしょうが、それでもむかつきます。
シュンも顔を赤くしたりして。確かに私にはあんなに胸はないけど、いつだってシュンとその…シュンが
望むなら、セックスだってしていいんですから!
「…痴話ゲンカを見せるためにここにきたんですか。やるなら他の所でやってください。」
せっかくシュンと、二人のゆったりとした時間が取れそうだったのに邪魔されて、私の言葉には棘が
出ていたのでしょう。ジンバさんはシュンの方を見て、困った顔をしました。
「どうしたんだ、シュン。今日も不機嫌だな、アイラの奴。」
「いや、僕に聞かれても…」
「あら、アイラちゃん妬いてるの?かわいい〜」
…。流石に頭に来ましたよ。軽く魔力を練って…。
ボン!
「わっ!」
彼女の顔の前で軽い爆発を起こさせました。
「さっさとシュンから離れてください。」
「分かったわよ、アイラちゃん冗談が通じないもんね。ごめんね、シュンくん」
「いえ、こちらこそすいません…。」
シュンが謝るのを見て、また胸にもやもやが起きてきます。ミーシャさんなんかに謝る必要なんかな
いのに。…分かっています、この感情が醜い嫉妬なのは。いっそのこと、自分のこの抑えてる感
情、シュンに対する好意を彼に言えば、少しはこの感情が出てくる事がなくなるのでしょうか。…ない
ですね。仮に恋人になったとしても、彼に言い寄ってくる泥棒猫が出てくる可能性はあります。それ
に、告白する勇気が出ない理由があります。
彼の私に対する気持ちが異性ではなく家族だったら、拒絶されたら…もう生きていけません。だっ
たら今の関係のままでいれた方がいくらかましです。かといって、他の女と彼が付き合うなんてのも
許せるかといったら…許せないでしょうね。
まず誑かした雌犬を捕まえて、まず槍の柄でボコボコに殴って、ええ突き刺して一思いに逝かせる
なんてことしません動けなくなったらゆっくりと槍を突き刺すか空気を炸裂させて火傷をつくって……
ふ……ふふふっ
「アイラ?どうしたの、急に笑っちゃって。」
はっ、いけない。表情に出てたのかな。さっきまで考えた事を思い出します……どこまで自己中な
んでしょうか、私は。だけど……それだけシュンのことが大事なんです、シュンがいなかったら今の私
はいません。誰にも……誰にも渡しません。
アイラが急に不機嫌になってしまったが、僕は別段驚く事はなかった。彼女は、僕と叔母さん以外
には無愛想な態度を取る。ジンバさんとミーシャさんは結構魅力的な人だと思うんだけど、ジンバさんと
は9年、ミーシャさんとは5年、僕らと出会ってから経ってる今も無愛想なままだ。だからといって、ア
イラが悪い子な訳ではない。これでも出会った頃より他人にずいぶん心を開くようになったと思う。
アイラが無愛想なのは、昔のことがあったからなんだろう。僕には、父さんと母さんの記憶はないが、
肉親に拒絶されるのが、しかもまだ5歳だった彼女がどれだけ傷ついたのかは、想像を絶するもの
だったと思う。だから、アイラを支えてあげたい、守りたい。僕は心の中でそう誓いを立ててる。
シンバさん達に挨拶して、僕らはギルドから出た。二人とも特に込み入った用事ではなく、僕達の
様子を見たかったらしい。
「久しぶりに話すことができて良かったね。」
「…そうですね。」
アイラはあの後、二人から話しかけてこないと話さなかった。やっぱりからかわれたのが癇に障った
のかな。
「それじゃ、家に戻ろうか。叔母さんも待っているだろうし。」
「はい。」
王都の東地区にある魔道具(魔力増強の指輪や、杖など)の店が僕達の家だ。多少ガタがきている
けど、古い趣のあるいい家だと、僕は思ってる。
「叔母さん、ただいま。」
「ただいま、お義母さん。」
…返事が返ってこない。また寝てるのかな。店の前にも休業って書いてたし。僕らは家の奥のリーリ
ア叔母さんの部屋へと向かった。
「う〜、もう少し寝かせて〜。」
「駄目ですよ、そろそろ注文された品を、完成させなくちゃいけないじゃないですか。私も手伝いますか
ら頑張りましょう。」
アイラが叔母さんを起こして、工房へと引っ張っていく。昼ごはんを食べてから眠くなって、惰眠を貪
るのが叔母さんの日課になってる。ぐうたらしている面もあるけど、僕達を女手一つで育ててくれた大
切な家族だ。過去には、父さんと一緒に宮廷魔道士となり、二人とも次期宮廷魔道士長を狙える実力
者だったらしいけど…なんで辞めたかは話してくれないし、僕も聞こうとはしてない。そのことには触れて
はいけない、そんな感じがするから。
叔母さんの魔道具はなかなか好評を得ており、魔道士はもちろん、レンジャーや魔法も使う魔法騎
士なども店にやってくる。僕は、魔法の資質は治癒・強化などの体内の気を活性させるの以外は0だ
し、元の魔力のスペックが低い方だから、魔術具の作製は手伝う事が少ない。叔母さんいわく
「顔とくそ真面目な性格はカインそっくりなのに、髪や瞳の色と資質はヤヨイの方を受け継いだみたい
だ。」
らしい。
「僕は夕飯の買い物にいってくるから。二人とも頑張ってね。」
「わかりました、頑張ります。」
「ん、わかった。寄り道はするんじゃないよ〜。」
相変わらず、この時間の市場は人で賑わっているなぁ。僕みたいに今晩の食事の買出しや、武具店
に立ち寄る冒険者、交易商の人達、いろんな人がいる。
「おう、坊主。いつもご苦労さん!」
「あら、シュンくん。いらっしゃい。今日は何を買っていくの?」
とりあえず、一通りいつもの店によって食材は買い終えた。さて……帰るとしよう。
「そこの君!」
急に呼び止められ振り返る。
僕は呼び止めえてきた人を見た。赤い髪に、僕と同じくらいか少し上の年頃と思える顔立ち。服装は
普通だが、容姿はとても高貴に思えた。
「す、すまんな、いきなり。」
「い、いえ。……どうしました?」
その人は、僕をジロジロと見ていた。何か変なところでもあるんだろうか?
「あの〜、何か僕の格好変ですか?」
「…いやっ、そんなわけではない。……君は珍しい剣を持ってるな。」
? ああ、カタナのことか。やっぱり珍しいのかな。王都のレンジャー達の中では僕とジンバさん達ぐら
いしか使ってないだろうし。あとは冒険者がたまに使ってるぐらいかな。
「これは、カタナといって東方の地域の剣みたいなものです。」
「そうか……、君はレンジャーのシュンだな」
「え、どうして僕の名前を!」
「……」
問には答えず、僕をじっと見て何か考えてるようだ。なんだろう、少し気まずいな……。
「あの…。」
「ああ、すまん。いきなりだが、今からわたしと手合わせしてもらえるか?」
「……はぁ!?」
思わず間抜けな声を上げてしまった。いや、だれでも街中でいきなりこんなこと言われたらびっくりする
でしょ。
「駄目…か」
どうやら僕の反応を拒絶の意思と取ったらしい。すごく残念そうな顔をしてる。う……ん。ちょっとくらい
ならいいかな。
「分かりました…とりあえず理由をきか「本当か!ありがとう!それでは付いてきてくれ!」
「わっ!ちょっと!」
僕は、いきなり彼女に引っ張られて家の方向と逆に連れて行かれた。ごめん、アイラ、叔母さん、帰
るのは遅くなりそうだよ……。
とりあえずここまで。Bloody Maryの神様に及ぶかどうか分かりませんが、頑張ります。
ファンタジーまたキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
轟く蝉の泣き声。一般的なミンミンゼミだ。蝉というのは長い間地面にいて、成虫になると地上に出て来る。だが、地上では一週間程度しか生きられないと聞く。
なんと悲しい事カナ。出てきて鳴いて交尾して。それが蝉の一生なのだよ、諸君!!!
………さすがに蝉について考えての現実逃避は厳しくなってきたな。
「ではでは志穂せんぱい。そろそろ春校へ向かったらよろしいのではないでしょうか?正反対な訳ですからねー。遅刻しちゃいますよ?
まさか名門春校の一生徒がそんな失態をしでかす訳にはいきませんよねぇ。」
「あら、十分に間に合うわよ。そのことを考えて早く家を出たんですから。あなたこそ、一人でアパートをでて一人で登校すれば?って提案したじゃない。」
双椀に取り付く二人の少女。ぎりぎりと会話が進む度に腕が締め付けられていく。んー、もっとこう胸があればこう、クル、ものがあるんだけどなぁ………洗濯板に期待するのは酷か。
が、何度も言うが、嫌いではない!!
「ほらほら、せんぱい、校門ですよ。ささ、早く行きましょう。」
「お、おい。」
グイグイと腕を引っ張っていく春華。それにつられ、俺、志穂と続いていく。
「さあ、校門に入りました。……あっれ〜?おかしいですねぇ、夏校の敷地内に春校の生徒が混じってますねぇ。こりゃ侵入者だ。きゃ〜、先生〜!痴女が現れましたぁ。」
さすが我が後輩。口が早い。朝早いとは言え、少しは生徒がおり、春華の声に振り向く。
「くっ…このガキ…」
「ま、まぁまぁ、志穂さんや。怒りなさんな。」
「あんたはどっちの味方なのよ!!」
「うっ…」
卑怯だなあ、その質問。
「まあいいわ、晋也。ちょっとかがみなさい。」
「ん?」
言われるように、目線が合うぐらいまでかがむ。俺の身長が180。志穂が143なため、結構差がある。
次の瞬間、志穂が近付いてキスをした。軽いキスだ。
「!!ばっ!!お前……」
「じゃあ続きは放課後ね。ばいばい晋也。……ついでに『後輩』さん。」
言いたいことだけ言って、スカートを翻しはしりさってしまった。残ったのは凍結した校門という空間。
……前と違い、志穂の方からやられるのはかなり恥ずかしい。て、テヘリ。
ここでいち早く再起動したのは春華だった。
「せ、せんぱい!ほら、私にも、キス、キスです。ファーストキスが衆人観衆プレイってのもナンですが、いい思ひ出に……」
「な、なにをおっしゃる兎さん!ちゃっちゃと教室に行くですます。」
噛みまくりながら、皆の視線というLASERをかいくぐるように早足で歩く。春華はまだ腕に近付きながら顔を寄せて来る。
「な、なんでですかー!あのちび痴女とはキスしといて、私にはしてくれないんですか!?
USAじゃ挨拶代わりですよ?おはようの意味ですよ?」
「こ、ここは日本です!トイレだろうがキスだろうが、なんでも洋式にすりゃいいってもんじゃないですぜ?」
和式トイレを使えない俺が言えるもんじゃないが。
「せんぱいだってこの前キスしたじゃないですか!しかも初対面で脈絡もなくですよ?一歩間違えればレイプ。強姦ではなく口姦ですよ?」
「ですよ、ですよってお前はしつこいセールスマンか?それにあれは強姦じゃない、れっきとした和姦だ。それに俺と志穂は恋人……」
「あー!あー!」
俺の言葉を書き消すように叫ぶ。もうさっきからのやり取りで注目されまくりだヨ!
「みなさん、すみません!いませんぱいの声帯が故障いたしました。『志穂』といって『春華』という意味です。つまり私とせんぱいは恋人……」
ビシッ
「あう!」
デコチョップ一発。
これ以上面倒なことになら内容、沈黙した春華を一年教室に連行する。
……はあ、一週間分の体力と気力を使った気がする。
その分は午前授業を睡眠ということで補えますな。
>>113 いやっほ〜い!! また、ファンタジーキター!!
広き檻シリーズもこれからの修羅場にwktk
ここは、神々が多すぎるなあ。
GJのレスが追いつかないよ。
GJ!春華可愛いよ春華
それにしても晋也は本当に修羅場を引き寄せる漢だな、うらやましす
180cmと143pという身長差にさりげなく萌えてしまった件。
「ほら、私にも、キス、キスです。」
この部分最高。
「お父様は何処ですか?」
「あら?お嬢様、どうしてこちらに?突然帰ってくるなんて」
「えぇ。ちょっと」
あれからすぐ馬を全速力で走らせ、私はトレイクネル家の邸宅に帰ってきていた。
帰ると早々にトレイクネルの侍女にお父様の居場所を尋ねた。
――――そう、まず一人目。
「旦那様なら今、書斎の方にいらっしゃると思います」
「そう、ありがとう」
部屋で鎧を脱ぐこともせず、一目散に書斎へ向かう。
――――ウィルの敵を殺す。
「お父様」
ノックもせずに書斎の扉を開ける。
…いた。ウィルの大切なものを奪った張本人。
「マ、マリィ!なんだ突然!?城の方は……お前、なぜ鎧を着ている…?」
お父様が不審そうにこちらを窺う。
――――待ってて、ウィル。
「私、凄く凄く怒ってるんです。あのことさえなければきっと私とウィルは今頃うまく行っていた。
ううん。間違いなく私を頭のてっぺんからつま先まで愛してくれてるはずだった」
一歩、一歩、お父様に近づく。獲物を定めた肉食獣のように。
「な、何を言っている…?」
少し怯えて一歩下がるお父様。あはっ。私の殺気に気づいたのかな?
「でもね……実を言えば感謝もしているの。だってそうでしょう?
お父様があの事件を起こさなければ私はウィルに出会うことはなかったんですもの」
剣の間合いまで後少し。
「なっ…」
――――すぐこの男を殺しますから。
「それでもやっぱりお父様はウィルの敵。ウィルを苦しめる人間はこの世にいちゃいけないと思うんです。
だからね、お父様――――」
間合いに入った。剣をゆっくり鞘から引き抜く。
「ひっ…!」
お父様の顔が恐怖に歪む。なんて醜い顔。
「死んでください」
私は剣を振り下ろした。
「――――ふぅ」
わらわは自室でこれからの対策を練っていた。
「……ウィリアム」
迂闊だった。マリィを引き摺り落とすことに集中しすぎてウィリアムがどうなるかの予測が外れてしまった。
例の報告書を流してすぐ効果が出たのは嬉しい誤算だったが、それを聞いてウィリアムがあんなに苦しむとは思わなかった。
まさかあんなことを言い出すとは。
『――――俺、騎士を辞めようと思います』
てっきりトレイクネルに敵意を向けるのだと思った。
多少ウィリアムが罪の意識に苛まれることは計画の中に折込済みだったがわらわがケアすれば問題ないと考えていた。
しかし蓋を開けてみればこの有様。
思いとどまるよう泣いて懇願したがウィリアムの決意は固かった。
策を練る暇もなくあっという間にウィリアムは城を去ってしまった。
泣きたくなったがそれでウィリアムが戻ってくれば苦労はない。
――――これからどうすればよいのじゃ。
なんとかウィリアムを手元に置く方法を……
思いつかない。
ふーむ……誘拐でもして軟禁…――――駄目じゃ。
誘拐自体、あの懐刀のウィリアムを攫うのにかなり苦労する。それまでわらわは待てない。
第一、ウィリアムにもう二度と口を利いてもらえなくなりそうじゃ。
「はぁ……いったいどうすれば――――」
いい案が浮かばず嘆息していると。
「姫様!!」
普段朴念仁のシャロンが珍しく血相を変えて飛び込んできた。
「なんじゃシャロン…騒々しい」
「ゲ、ゲイル=トレイクネル卿が昨晩、自宅で殺害されました!」
「なっ!?」
シャロンの言葉にわらわは耳を疑った。
ど、どういうことじゃ。殺された――――やったのはウィリアムか?いやあの様子では考えられない。
ま、まさか……
「シャ、シャロン…犯人は…?」
「まだ逃亡中とのことです。それから……トレイクネル卿が殺害された夜、突然娘のマリィ騎士団長が
邸宅を訪れたらしく、それ以後行方がわかっていません」
あの女!実の父親を殺害しおった!!気でも狂ったか!?
完全に予想外じゃ。まさかマリィがこのような凶行に走るとは。
い、いやあの女がウィルに捨てられたと悟れば自然な行動だったのやも知れん。
本当に迂闊じゃった。
わらわは自分の失態の愚かさ加減に唇を噛んだ。
「ど、どうなさいますか?姫様」
とにかくマリィをこのまま捨て置くのは危険じゃ。あやつは間違いなくわらわを殺しに来るじゃろう…
は、早く手を打たなければ――――
迫り来る死の恐怖にわらわはカチカチと歯を鳴らしていた。
た、助けてくれ……ウィリアム…
「これで…よし、と」
最後の荷物を始末する。部屋には小さな机とベッド、後は旅立ちの際のカバンがひとつだけ。
明日になれば俺は街を出る。荷造りが終わり、珈琲を飲みながら窓辺で一息つく。
「随分殺風景になったな……」
部屋を見渡し、独り呟く。
「――――……」
団長も、姫様も泣いていたな……
二人の最後に会った顔を頭に浮かべ、胸が痛んだ。
俺は本当にこれで良かったんだろうか。
今になって自分の決心が揺らぐ。
いや。これでよかったんだ。俺がいたらまた二人を泣かせてしまうだろう。
殺された人たちが俺を地獄に引き摺り落とすまで独りで生きていくべきだ。
ふと窓の外を見ると、そあらには満月が煌々と輝いていた。
あの日……村が襲われた日と同じ満月の夜。
満月――――なんだ…?この異様な胸騒ぎは。
なにか、なにかこのままここに居てはいけないような気がする。
自分の鼓動がうるさい。
心の中のキャスが必死で俺に何かを訴えかけているような気がする。
なんなんだよ…この焦燥感は。
A.街を離れるのが決まってナーバスになってるだけだ。もう寝た方がいい。
B.もう一度だけ…城に行ってみるか
なんか物凄いスピードで更新してます。ごめんなさい。
さて、初登場の選択肢。
三つのENDをご用意致しました。お品書きはそれぞれ以下の通りです。
A→団長エンド…初期プロットから存在するルートです。
B→姫様エンド…なんか予想外に人気が出たため急遽作成。
C→いわゆるハッピーエンド…分岐するのならどうせだからハッピーも。
まずはAの方から先へ進めてみたいと思います。
>>113 もしかして前スレの165氏ですか?
うひょー、まさしく修羅の国
更新速度はええぇぇw
作者の方々、お疲れ様ですっ!
もうね。団長とかね。亜由美お姉ちゃんとかね・・・
・・・神すぎるんだよコンチクショウ!!!
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) ワクワクテカテカ
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
「まずは」だってーーー!?
うっひょー全部やってくれんのかよ!!!
ここ最近大量の作品投下で見に来る頻度が朝、夜の2回から
朝、昼(仕事休憩時)、夕方(帰宅前)夜(帰宅後)深夜(日付が変わるぐらい)
の5回に増えている件
こんなに幸せなことはない
ホントは全部見たいんですけどね……
しかし!Aでお願いします!やはり初期プロットが一番みたいので。
>>133 (((((((((*´Д`))))))))あ、慌てるな!「まずは」と言っているだろうが!
◆XAsJoDwS3o神は全部のルートをやってくれるんだよ!
135 :
阿修羅:2006/05/22(月) 01:04:08 ID:tjxEVNDo
スレが立ってまだ1日くらいなのに既に100KB越えてるって・・・・恐ろしいwww
神々の皆様、本当にGJです。
既に私の編集速度を超越しまくっております。
どれも面白すぎて読み耽ってしまふ・・・
>ID:x4BswFf5様
まことに勝手ながら、仮のタイトルをつけて掲載させていただいています。
間接キスにドギマギするような、甘酸っぱいイメージをそのままタイトルにしてますが・・
おそらくはお気にそぐわないと思いますので、変更案をいただければ幸いです。
>◆PP7RTz/9/U様
ID:x4BswFf5様のときと同様、仮のタイトルを付けて掲載させていただいております。
ファンタジーものということで、魔法のイメージ、炎のイメージを前面に出したつもりです。
・・・某社のグラフィックカード2枚差しテクノロジと被っているような気がするのは気のせいです。
センスがなくて本当に申し訳ないです・・タイトル案お待ちしております。。
>アビス様
14章の没案(失礼)をどのように掲載するか迷いましたが、結局テキストファイルとして14章の傍らに
配置しています。外伝としてまとめるということも考えましたが、、、「こういう掲載方法にして欲しい」
という案がございましたらお知らせください。。他力本願ですみませんm(_ _)m
「玄関 あけたら 二分で お姉ちゃん」
ンッンー〜
名言だなこれは
●鎧衣さんによる略語講座
「ところでタケルはよく使われる略語を知っているかな?」
ヘ〉
, ´^ ̄^ヽ、 。 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
く((((~~)ノゝ ./ | オルタネイティヴ(AlterNative)=AN,AL
ヽゝ゚ ヮ゚ノ´/ < エクストラ(EXtra)=EX
⊂Y巫Yつ | アンリミテッド(UnLimited)=UL,UN
く/j_|> | ファイナルエピソード(Final episode EXtra)=FEX
しソ \___________________
「この四種類を覚えておけば、流れの速いこのスレでも安心だね」
「そう言えば、誰かが委員長のことをまゆげ大使と呼ぶ、とか言ってなかったか?」
「ぬわんですってえぇぇぇぇ!」 「おわっ、委員長!!」
「え…ボ、ボクは知らないよ!タケルが言ってたんじゃないか!」
●七瀬凛さんからの風紀委員的な提案
. / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ .
. 〃´ ̄`ヘ .| 1 割れ厨、荒らし、煽りはスルー。ID確認をして発言の意図を考えましょう
. i〈(リ!ノ)〉ゞ | 2 ここはあくまで「マブラヴ総合スレ」ということをゆめゆめお忘れなきよう
. ⌒/゚!il ゚ ヮ゚ノi゚⌒ < 3 コテは出来ればネタ関連時、1000取り前後のみを推奨
( i⊂}i卯}つ. .| 4 馴れ合いはほどほどに。不快な人もいると心に留めておいてください
从く_i__i〉リ. | 5 流れや意見の違いに過剰反応しない
し'ノ. \_______________________________
「この5つは出来るだけ守ってくださいね、白銀先輩」
「だけど、自治厨がこれを笠にきるんじゃないか?」 「そういう人は、荒らしと思ってください」
「じゃあ、そういう奴等を構ってからか 「白・銀・先・輩!それに反応する人も荒らしと同類ですっ」
「わかったよ。わかったからそう怒るなって………」 「全く、争わないで仲良くしてください」
酷い誤爆をした…
>>137はあぼ〜んするなりしてくだちいOTL
投下します。
”武術なんて……女の子なんですからもっとお淑やかになられないと。”
”屋敷を抜け出して街に出られてはなりません。なにかあったらどうなさるんですか。”
昔から、お付きの侍女に言われた台詞。でもわたしは、騎士になりたかった。父はとても立派な騎
士だった。その姿を見て育ったわたしは、父の騎士としての姿に憧れ、そうなりたいと日々稽古に明
け暮れた。後継者には兄上がいるので、周りはそうなる事を反対したが、家族は複雑な顔をしなが
らも、最終的に認めてくれた。
そうやって念願かなって騎士になったが、その現状は見てられないものだった。
昔の栄光ばかりが一人歩きして、全体的なレベルは低い事この上ない。中には実力で地位を勝
ち取ったとは思えない屑もいる。父上や兄上の様に骨のある奴は貴族の息女に見初められて、婚
約したりなどしてるから恋愛などに興味を持たなかったし、持てる相手もいなかったし、そんなこと
腑抜けがするものだと思った。…あいつに出会うまでは。
―――――――――――――――――
外見は軟弱そうだが…若手の中でも高評価なレンジャーらしいな。人柄に対する住民の評判も、ギ
ルドマスターに聞いたところ上々。何はともあれ実力を確かめないと。
「あの……だから…理由を」
なにやら後ろから声が聞こえてくるがまずは屋敷に戻る事が先決だ。そこの稽古場で行おう。彼の
手を引っ張り、さらに走るスピードを上げた。
とりあえず目をつけた黒髪の青年、シュンを屋敷の前まで連れてきた。どうやら驚いてるようだが…
「どうしたんだ?とても驚いてるようだが。」
「いや、驚かない方がおかしいですよ!ここはフィッツガルド卿のお屋敷じゃないですか!もしかしてあ
なたは……」
ああ、自己紹介してなかったな。
「申し遅れた。わたしはレイナ・フィッツガルド。前王宮騎士副団長アルド・フィッツガルドの娘だ。よろし
くな。」
そう言って、手を差し出した。
「別にそんなに恐縮する必要はないぞ?」
「あ、はい!あらためて…僕はシュンといいます。よろしくお願いします。」
お互いの自己紹介と握手をした後、早速中に入ろうとする前に彼に呼び止められた。
「あの…僕と手合わせをする理由なんですが……どうしてなんでしょうか?」
ふむ、確かに街中でいきなり呼び止められたと思ったら手合わせなどと、今思えばわれながら急だっ
たと思うな。しょうがない、早く戦いたいが少し説明をするか。
「わかった、それでは説明をしよう。君ら、王宮勤めの人間でない物は分からないが、最近は騎士団の
質の低下が著しくてな。今、騎士団の再建が考えられてるんだ。この間の、団長の交代もその一つだ。」
団長の交代は、一ヶ月前に起こった。金にまみれた体制を粉砕するために、その筆頭であった前
団長を父らがその内情の証拠を王に提供し、その結果前団長派は力を失い、父は時期と見て副団
長を退いた。
「そして、今は騎士団の建て直しをおこなっている。その一つに、民間の間やレンジャー達から才能、も
しくは実力のあるもののスカウト。ここまでくれば分かるな。」
「つまり、スカウトの一環として僕と手合わせを?」
「そう言う事だ。」
「でも、僕より強い人はいっぱいいると思うのですが…。」
「そちらにも、別があたってるはずだ。わたしは君の担当ということだな。さて、着いたぞ。」
いつもの稽古場に着いた。父上と兄上も、スカウトに回ってるだろうからいないか…。さて
「誰かきてくれ!君、とりあえず持ってる荷物は侍女に預けてくれ。そのあと準備をしよう。」
「は、はい!」
なかなかいい返事をする青年だな。ますます楽しみになってきた。
刃を潰した訓練用の剣を選び、一通り体を慣らした。いよいよか。
大変な事になったな。女性騎士の中でも若手の筆頭であるレイナさんと手合わせする事になるなん
て…。それに急に騎士になれと言われても、いや正確に言えばまだそんなことは言われてないけど……。
「女だからとか遠慮はいらないぞ。無用な気使いをしたら、容赦なく叩きのめすからな。」
それに緊張しっぱなしだ。やはり、騎士の中の騎士といわれるフィッツガルド家の一員だ。高貴さと風
格のあるたたずまい。王宮からの依頼もあるから、騎士と立ち会うのは初めてではないけど、その人
たちとはぜんぜん違う。まぁ今思えばその騎士は、レイナさんの言う腐敗した前団長派の騎士だった
のかな。
一緒に依頼を解決した時も、偉そうにして後ろから見てるだけで、ほとんど僕とアイラだけでやったよう
なものだったから。
「それではいいか?」
おっと、まずは目の前の事に集中しなきゃ。訓練でも実戦を意識しないと……油断は……死を呼ぶ!
「はい」
「ふふ、目が変わったな。それでこそだ。では……いくぞ!」
言うや否や、レイナさんが踏み込んできた!僕も負けじと踏み込み剣をなぎ払う。剣がぶつかり、鈍
い音がする。彼女の剣は速い上に、その一撃一撃も軽くない!
このまま受けていては防戦一方だ。僕はさらに踏み込み、そのまま鍔迫り合いに持ち込んだ。
ガッ!
「! なるほど……攻撃を防ぐために後退せず、恐れずに踏み込んでくるか。なかなかやるな。」
勢いを付けていったつもりだったが、いとも簡単に受けられてしまった。
「くっ……」
あわよくばそのまま体勢を崩そうと思ったのに、押し切る事ができない。なら!
「はぁ!」
「な!」
鍔迫り合いを受ける方向に流し、そのまま横を流れて行こうとする体に膝蹴りを打ち込んだ。
「ぐっ!」
追撃も考えたが、近接での打ち合いには向こうに分がある。そう判断し、そのまま距離を置く。
「ふぅ、なかなかやるな。今のは少し効いたよ。」
「……」
打たれたお腹をさすりながら、レイナさんがこちらに笑いかけてきた。お腹の弱い場所に入れたはず
なのに……すぐに立ち直ってる。入れる場所をずらされたか、それともレイナさんが打たれ強いのか。
とにかく次の一手を考えないと。
「どうした?離れたからには何か考えがあるんだろう?」
それもお見通しか。通用するかどうかは分からないけど…。
「分かりました。」
僕は剣を鞘におさめ、右手を剣の柄に添えて、いつでも抜剣できる構えを取る。東の国の剣技の構え
の一つの居合い。僕の母さんがこの構えを得意とする剣士だったらしく、僕はジンバさんに教えられ
てこの構えを使ってる。
「……」
先ほどまで、いくらか和やかだったレイナさんの顔が引き締まった。レイナさんはこの構えを知ってる
のかな。
この構えは一見、剣を収めることから攻撃より防御重視の構えに見えるが、攻撃もかねている。中距
離から不用意に近づいた敵には容赦なく攻撃を加え、近距離に近寄られても、敵の攻撃を体捌きな
どで流しつつ、隙を狙って一撃を加える攻防一体の構え。
一分ぐらいだろうか。お互いに距離を保ったまま睨み合いを続けてる。……来た!レイナさんが踏み
込んできた。っ!やっぱり踏み込みが早い!このまま抜剣しても相打ち、もしくはやられる。
なら隙ができるまで凌ぐしかない。
「はぁ!」
太刀筋を読み、僕は次々と繰り出してくる斬撃を避けていく。
「なかなか…やるな!だが避けてるだけでは話にならんぞ!」
仰るとおり。レイナさんは大振りせずに、素早く斬りから突きと攻撃を繋げてくる。このままではジリ貧って
やつだ。なら、隙を作るまで!
「だぁぁぁ!」
横になぎ払ってきた攻撃をしゃがんで避け、下から突き上げるように体当たりを繰り出す。
「なっ!」
僅かながら彼女が身構えるより早かったのか、後ろによろめいた。今だ!
体当たりの屈んだ姿勢から抜剣し、彼女の首の手前で剣を寸止めする。
「うっ……ふぅ、わたしの負けだ。見事だ。」
レイナさんが、今まで真剣だった表情を僅かに緩め、剣を鞘に戻した。
「はぁ……はぁ……。ありがとう…ございます。」
こっちが勝ったのに、向こうの方が余裕のある感じだ。本当に勝ったのかな?
「まさか負けてしまうとはな……」
そう言うと、レイナさんは腕を組み、顎に片手をあてて目を伏せ、何か考えるそぶりを見せてきた。どうし
たんだろう、まさか怒ってるのかな。遠慮なく来いって言ったから、躊躇なくお腹に蹴りを入れたりしたんだ
けど、やっぱり怒って…
負けた……。そのことはショックだったが、なにより久方に拮抗した手合わせを行う事ができた事の、満足
感の方が大きかった。
さて、どうしようか。もちろんスカウトする事は確定だとして。もっと彼と話がしたいな。彼の事も知りたいし、
なによりわたしのことを知って欲しいと思う。なんだろう、この気持ちは…家族以外の男性にこんなに好感
を持てたのは初めてだ。
もっと、もっと知りたい。彼のことを。
「あの〜」
申し訳なさそうに聞いてくる彼に目をやる。ああ、そうだ。一応騎士団のスカウトだったんだな。これは。まぁ
今は、そんなことはどうでも良くなってるけど。
「ん、ああ。結果か。とりあえず、合格といった所だ。そんなことより、その……なんだ。もっと話を聞きたい。
これからわたしと夕食をとらないか?」
「……えっ、そ、そんな!駄目です!そんな恐れ多い!」
む、まだそんなことを、今更じゃないか。
「遠慮ならいらないぞ。」
「いえ、それに…家族の夕食を作らなければならないので。」
ふむ、そう言う事か。ならば彼の身内への挨拶も兼ねて、行くとしようかな。
「ならば君についていこう。食材が足りないと遠慮する必要はないぞ。わたしには何も出さなくてもかまわん。
君の家族にも正式にスカウトする事を、挨拶も兼ねて言わなければならないことだし。」
「え、いや、その」
「いいから気にするな!行くぞ!」
そのまま押し切るように彼の荷物を受け取りに、侍女の部屋へ彼を引っ張りながら向かった。
遅い。普通に買い物に行ったのならもう戻ってきてもいいはず。それなのに戻ってこない。本当は一緒に
買い物に行きたかったけど、店のお手伝いも重要だったから……。とにかく探しに行かなきゃ!
「お義母さん、私出かけて探してきます!きっと何かあったんです!」
「う〜ん、大丈夫だと思うんだけどね。待っていれば来ると思うよ……って居ないし。」
「シュンくん?店によってからアイラちゃん達の家のほうに帰っていったけど。」
行きつけの食材屋のおばさんに聞いたけど帰ったと言う。どうしたんだろう、やっぱりなにかあったんだ。
「シュンだったらなんか女の人に呼び止められて連れて行かれ「なんですって!」
女に連れて行かれた…そんな!
「どっちに!どっちに連れて行かれたんですか!」
おばさんと世間話をしていた近くの武具店の奥さんに詰め寄る。
「うっ、ちょっ、ちょっと!落ち着いて「早く教えなさい!」
「ア、アイラちゃん?」
早く!こうしている間にもシュンが何をされているか!
私としたことが、少し取り乱してしまいました。どうやらシュンは北部の方向に連れて行かれたそうです。女
は赤い髪で、帯剣していたそうです。騎士の格好はしていなかったそうですから、冒険者でしょうか。
とにかく、急がないと。もう日も傾いてきてる。
……どうしよう。勢いで王都の北部まで来たけど、手がかりがありません。人に聞き込みをするのは嫌だ
けど、やるしかありませんでした。でも、知らないという人ばかり。
「シュン……どこに行ったんですか。」
急に泣きたくなってきました。でも慌てて堪えます。泣くのはあの時からやめたんだから…。
「あれ?アイラ。」
シュンの、声?すぐに聞こえた方向を振り向きます。いた!良かった…シュン!
「シュン!心配した……誰です、その女は…」
彼の隣に居る女を見たとたん、シュンが見つかった喜びは、すぐに女に対する嫌悪感に塗り替えられまし
た。
「あ、その…彼女は。」
「いいぞ、シュン。私が言う。王宮騎士のレイナだ。君がシュンのパートナーなんだな。よろしく。」
王宮騎士?なんでシュンが王宮騎士と一緒に?
女は手を差し出してきました。握手でもするつもりなのでしょうか。…こっちはよろしくするつもりはないです
が、シュンの手前、叩き落とす訳にも行きません。
「…よろしく」
「ああ、よろしくな。」
握手を交わしながら、女を見ます。私とは正反対の自身に満ち溢れた目。私の青い髪とは正反対の赤
い髪。見ながら、絶対にこの女とは気が合わない、そう思いました。
はい、誤字ハケーンorz
最後から2行目 自身→自信
>>126 はい、その通りです。神作品、読ませていただいてます。
自分は団長派ですね、どっちかと言うと。
>阿修羅さん
仮のタイトルありがとうございます。
正直自分でもなかなかセンスがいいもの思いつかないので…。
もう少し考えてみて、思いつかなかったらそれでいきますのでよろしくお願いします。
今日は休みだったので、すべて執筆に使いましたが、平日はペースが遅れると思います。
そうだ。もう寝よう。身辺整理して疲れているんだろう。
無理矢理焦燥感を押し込め、俺はベッドに入ることにした。
――――――――…………
城の中が慌しい。つい先程、賊が侵入したとのことだ。
「……ウィリアム…こ、怖い」
なんという体たらく。己で引き起こした事態に部屋でガタガタ怯え、
あろうことか城を去ったウィリアムに助けを求めるとは。
しっかりせよ!マリベル!このまま死ねばウィリアムに二度と会えなくなる!
震えている暇があるのなら何か考えよ!!
ぱんっ!と自分の頬を打ち、奮い立たせる。
「シャロン!シャロン!」
「こちらに」
恐怖を払いのけ、シャロンを呼びつけるとすぐ私の元に来てくれた。
こういう切羽詰った状況のとき、本当にシャロンの存在は心強い。
「シャロン、おぬし戦姫マリィに勝てるか?」
「無理です」
即答だった。わかってはいたが、そうはっきり答えられると不安になる。
「じゃ、じゃがおぬしは気配を殺すのが得意じゃろう?
この部屋に来るまでたくさんの警備兵や騎士を相手にして疲弊している状態のマリィならばどうじゃ?」
沈黙。シャロンは考え込んでいるようだ。
しばらく吟味したのちわらわに答えた。
「マリィ騎士団長が他の何かに意識を集中していて、その時に背後から奇襲すればあるいは……」
他の何か……マリィを返り討ちにするためにはその要素が足りない。
……いや、あるではないか。マリィがこれでもかと言うくらい集中する対象が。
「よし。ならばシャロンは隠れて待機。わらわがマリィを引き付ける。
あの女が周囲の警戒を解いたと感じたら奇襲をかけよ」
「かしこまりました」
シャロンはすっと気配を消してどこぞの物陰に隠れた。ふ、本当に気配を殺すのが上手い。
策は成った。後はわらわ次第じゃ。決着のときは近い。
深呼吸してあの女が来るのを待った。
バタンッ!!
乱暴に扉をぶち開ける音。
――――来た。
扉の先にはぶつけられただけでショック死してしまいそうな程の殺気を放つ、王国騎士団長マリィ=トレイクネルが立っていた。
「あはっ。見〜つけたァ」
底冷えするくらい楽しそうな声。これが戦姫の殺気ッ…!
「ふん、来おったか。マリィ」
できるだけ強気に声を発する。
殺気をぶつけられて発狂してしまいそうになるのを必死で抑えた。
「殺されるのが分かってて逃げなかったみたいですね。
偉いですよ、姫様。それに免じて苦しまないよう殺して……」
喋ってる途中で黙り込むマリィ。
なんじゃ!?バレたのかっ!!?怖い、怖い!!
「やっぱり駄〜目ェッ!!あははははははははははっっ!!!!
あなたはウィルを誑かしたんですもの。苦しみぬいて死なないと。あはっ」
「別に貴様のモノと言うでもなし……おのれにそのようなこと言われる筋合いなどないわ!」
恐怖を押し殺す。本当は今すぐここから逃げ出したかった。
「ウィルは私のものウィルは私のものウィルは私のものウィルは私のものウィルは私のものウィルは私のもの
ウィルは私のものウィルは私のものウィルは私のものウィルは私のもの!!!!!!!!!」
怖い怖い!!!ウィリアムに助けてと叫びたくなる。
「だから人の物を盗っちゃう悪いお姫様にはきつ〜いお仕置きしないといけませんねぇ。
あなたはウィルを苦しめた敵であると同時に私の敵。
実は生きてました、なんてことがないよう念入りに殺してあげます。念入りに、ね」
いつまでもこんなやりとりを続けていても意味がない。
そろそろマリィの注意を完全にこちらに向けさせないとこちらが保たない。
「フンッ、何を言い出すかと思えば…おぬしの物?笑わせるでないわ。
わらわはもうウィリアムと交わったぞ?おぬしはまだじゃろう?
おぬしは知らぬのじゃろう?ウィリアムのものが身体に入るときの悦びを」
瞬間。マリィの殺意が爆発的に膨れ上がる。
わらわは恐怖で声をあげそうになった。だが周りへの注意が逸れるまで後少し。
「もういい。殺してやる…小娘」
静かな激情を放ちながら剣を抜くマリィ。
注意が――――――逸れた。
瞬時に物陰から飛び出すシャロン。あっという間にマリィへ距離を詰める。
あの女はまだシャロンに気づいていない。
わらわは勝利を確信した。
脳裏に浮かぶ、ウィリアムの少し困った笑顔。
――――――もうすぐ会いに行くからな、ウィリアム。
「――――――ル!おい!起きろ!!ウィル!」
急激に現実へ呼び戻す誰かの声。
「え……あ………師匠…?」
家の扉を叩く音と師匠の声で俺は覚醒した。
「なんです、こんな夜中に」
瞼を擦りながら鍵を開錠する。
「ウィル!!お前聞いたか!!?」
すぐに入ってきた師匠の慌て具合に俺は目を白黒させた。
「な、何をです?」
「城内で戦闘になってる!!賊は……あの騎士団長だ!!!」
なッ!!!!?
なんだ!?なんでそんなことが起こってる!!
……いや。だけどもう俺は―――――
「お前、こんなとこで寝てる場合かッ!!?さっさと城に行けッ!!」
「師匠。俺は騎士を辞めたんです。もう俺には関係ない…」
ぐっ、と俺の胸倉を掴みあげる師匠。
「テメェ、本気で言ってんのか!!守りたいもんがあるんだろうがッ!!
このまま放っとけばそれがなくなっちまうかも知れねぇんだぞ!!
今度は本当に見殺しにすることになるんだぞッ!!!」
「ッ!!!」
あの日のキャスの光景が鮮明に蘇る。
そのキャスの姿に――――――姫様が重なった。
「くッ!!」
俺は急いで剣を取り、弾かれたように家を飛び出した。
個人的に今回の団長と姫様のやりとりが一番の見せ場かと。
次回でAルート最終話になりそうです。
>>138 すいません。あのレス実は俺でした。
つい悪戯心でやった、今は反省している。
>>145 やっぱり。
自分に続いてファンタジー書いてくれる方が現れて嬉しい限り。
投下します
暗い世界に閉じこめられている
ここは・・・・・どこだ?
俺は・・・・誰だ?
全身が重い・・・・
このまま俺は消えてしまうのか?
自分が誰かもわからないまま俺は消えていく
その存在がはじめからなかったかのように
「ここは・・・・?」
瞳を開くと見知らぬ天井が目に入った
「仁くん!!」
「仁ちゃん!!」
二人の女の子の声が俺を出迎えてくれた
痛む首を少し横にすると二人の少女が俺を見つめながら泣いていた
「詩織さん・・・・?それと・・・・この前逢ったよね?・・・・奈々さんだっけ?」
俺の言葉に二人はなにを言っているの?という風に俺を見ている
どうした?俺なんか変なこと言ったかな?
そのあと俺は医者から今の自分の状況を聞いた
俺をストーキングしていた女の人が家族を殺して
詩織さんと俺をも襲ったらしい
俺は詩織さんを護ったいいけど大量の出血で脳が血液不足になったらしい
そのせいで二年前ほどの記憶・・・・つまり奈々さんと逢ってすぐからの記憶をなくしてしまったらしい
今後そのような症状は出ないしふとしたきっかけで思い出すこともあるらしい
簡単な話、軽い記憶喪失だ
それから詩織さんは毎日お見舞いに来てくれた
それと奈々さんも毎日来てくれる
でもどうして?聞けば彼女と俺は同じ学校に入学して同じクラスで隣の席らしい
正直な話だが中二までの記憶しかないので俺の中の彼女は儚げなままだった
けど・・・・
「それでね、東児ってばまた女の子に告白してフラれたんだって〜、身の程をわきまえろって言ってやったよ・・・・うん、それでねそれでね」
マシンガントークが続く
こんな生き物だったのか彼女は
けど確かに二年の月日は感じさせる
詩織さんなんてすごい美人になってるし
奈々さんも記憶の中の彼女より女の子らしい可愛らしい容姿になっている
「どうかした?」
無言の俺に奈々さんが首をかしげそう聞いてきた
「いや・・・・・どうして毎日お見舞いに来てくれるのかなって?」
二年前・・・・と、言っても俺にはつい最近のことだがそれがあったにしろ
彼女の俺を心配する目や時々見せる詩織さんへの対抗心
嫌でも見えてくる
彼女が俺をどう思ってるか
ただのクラスメイトじゃないのか?
そう聞けば彼女を傷つけることになるだろう
だから俺は遠まわしにそう聞いてみた
「そっか、覚えていないんだね」
奈々さんは悲しそうにそうつぶやいた
どうして、そんな悲しい顔をするの?
「実はね・・・・私と仁ちゃんって・・・・恋人だったんだよ?」
え・・・・・
俺の好きな人は・・・・・詩織さんのはず
彼女のその言葉にある記憶がフラッシュバックした
奈々さんが俺に後ろから抱き着いて口付けを交わす姿が・・・・
「キス・・・・した」
口にでたその言葉に奈々さんはにっこりと笑んだ
「そうだよ!・・・・思い出してくれた?」
「でも、俺・・・・詩織さんと婚約」
現状の説明でそういう風な話を俺は聞かされていた
詩織さんに確認を取ったが事実だと言っていた
「あれはね、親同士が勝手に決めたことなんだよ?詩織さんは仁ちゃんのこと好きだったからいいけど、仁ちゃんは私のことが好きだったの」
信じられない・・・・でも、俺の見た記憶はそれが事実だと告げている
確かに詩織さんとはまったく正反対の彼女に俺は惹かれたのかもしれない
それほど彼女は魅力的だった
「ねぇ、仁ちゃん・・・・あの時のキスの続き・・・・して」
ベッドに身を乗り出し奈々さんは俺の唇に自分の唇を重ねた
なんとか仕事を終えて帰ってこれました
仁を一途にしすぎた・・・・
選択肢は一つでした・・・・
思わず突っ込みを入れたかた大勢いると思いますが流してやってください
しかも記憶喪失もテレビで大量出血すると脳に障害が出るというぼんやりしたもののみで調べたわけでもありません
次章 奈々は泥棒猫になってしまうのか?
仁は名前の通りに流人になってしまうのか?
後悔の念を抱く詩織はどうなってしまうのか?
次章から香葉さんは少し休んでもらってこの三人が中心です
期待に添えられるように頑張ります
◆tVzTTTyvm.さま
詩織、拝見させてもらいました
詩織は完璧な女性をと思い書いてきたので容姿の設定はしていましたが
正直な話イメージは自分で出来ていませんでした
◆tVzTTTyvm.さまの絵を見て詩織はこんな容姿なんだ・・・・と関心させらてもらいました
ほんとに感謝しています
ありがとうです・・・・
管理人様ご苦労様です
言われて気づきました
あれは迷いますよね、ごめんなさい
あれは十四章の没案として他のとは区切っていただけないでしょうか?
刷り込みは記憶喪失と洗脳の基本ですね。
ちょ、セカンドステージ開幕ですか!
いよいよ奈々の本格攻勢がはじまる。すごく楽しみです。
大逆転のチャンスだな・・・
奈々の時代が遂にキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
Σ(´д`ノ)ノ 詩織さん急いでー!仁君が取られちゃうよー
と詩織さんを応援している身としてはこの状況は危機
そしてそれ以上に姿が見えない奴が一番危険((;゚Д゚)ガクガクブルブル
休んでいる間に何を仕込むのやら・・・
レスありがと・・・・
神々の作品に感想をば・・・・
>>91 綺麗なラストに感服です
次回作楽しみに待ってます
>>101 キモ姉・・・・梓・・・・・どっちも良い!
さてさてこの先あの人が戻ってきてどうなるやら
wktk
>>117 お嬢がいないのはさびしいですが後輩や志保かわいいですね
あなたの修羅場はほんとにバリエーションが豊富で尊敬しております
>>145 ですます口調のアイラがすっごく好みのタイプなのでその子が取り乱す姿がすごくよかったです
このさきの修羅場はかなり期待ですね
>>149 壊れた団長と姫の心理戦がすごくよかったです
ルートがわかれるとなっていましたが全部wktkしながら待っております
あたしはきっと壊れているわ。
だけど、そんな愛しか出来なかった。
昔からそう。つい、手を出してしまう。
人のものが欲しかった。
愛は、奪うもの。それが、あたしの流儀。
彼の顔が、罪悪感に揺れる時、あたしは愛を感じてしまう。
だから、この結末は…きっとあたしに相応しい。
短かったけれど楽しかったわ。
※
私はたぶん壊れているの。
だけど、そんな愛しか認められなかった。
昔からそう。つい、むきになってしまう。
誰にも触らせたくなかった。
愛は、縛るもの。それが、私の在り方。
あの人の顔が、私だけを見てくれるだけで、私は愛を感じてしまう。
だから、この結末は…たぶん私に相応しい。
短かったけれど、幸せでしたよ。
※
ボクはおそらく壊れているんだ。
だけど、そんな愛しか知らなかった。
昔からそう。つい、意地悪してしまう。
愛は煽るもの。それが、ボクの悪癖。
人の激情が見てみたかった。
彼女達の顔が、嫉妬で歪む度、ボクは愛を感じてしまう。
だから、この結末は…恐らくボクに相応しい。
短かったけれど、素敵だったね。
※
「ホトケは?」
「リビングに。こちらです」
「…ふぅ。凄い量の血だな。足の踏み場もねぇ」
「三人分ですからね。フローリングで、床が吸い取ることもなかったみたいですし。
女性二人は、全身を滅多刺しされたことによるショック死と、頚動脈切断による失血死です。
男性の方は、心臓を一突き、即死ですね」
「女二人に男一人……痴情の縺れによる大修羅場ってところか?」
「詳しい聞き込みはまだですが、その線が濃いです……ただ」
「ただ?」
「見てもらった方が早いです」
「…南無、と。どれどれ…… ! こいつぁ…」
「ええ、三人とも酷く穏やかな死に顔なんです」
END
僕のあだ名である『毒電波』とは巧く表現したもので、成程、中々的を獲ていると思う。
「おはようございます、御主人様」
僕の眼前に立っている後輩の少女とは、別に主従関係を結んでいる訳ではない。彼女が
一方的に僕をそう呼んでいるだけだ。
端的に表現すると、変態。
どうやら僕は毒電波を垂れ流しているらしく、それを受信しているこの手の輩が昔からこぞって寄ってくる。
それも春だから産まれた限定品ではなく、天然ものばかりだ。
因みに、この少女はその中でも郡を抜いてトップクラスに位置している。
僕は短く溜息を吐き、
「おはようございます。朝から絶好調だね」「はい、それでは今日も御願いします」
言葉と一緒に僕に渡されるのは一通の便箋。ファンシーなピンクの封筒に入っているの
は、僕への熱烈なラブレターだ。毎回違う文面というだけでも、その努力は伺い知れる。
それを受け取ると、僕は細かく千切った。そして、少女の目に見えるようにばらばらと
捨ててやる。この時のコツは、掃除をしやすいように一ヶ所に落としてやることだ。初め
てこれをした時にはゴミが広がり、以外にモラリストな彼女に猛烈な注意を受けた。
閑話休題。彼女がとろけた表情でそれを拾うのを見届けると、僕は蔑んだ表情と冷たい声を作り、
「満足したか、雌豚」
この一言に、彼女の体は歓喜で震えた。
僕としてはあまりこんな事をしたくはないのだが、土下座までしてきた彼女に根負けし
た。土下座中にとろけた表情をしていたのは、早く忘れたい思い出だ。
「今日は何点?」
「調子良いですね、98点ですよ」
「そうか良かった。それじゃあね」
僕に手を振りながら元気に友達の所へと向かっていく彼女を見送り、僕は待たせていた
華の所へと早足で歩く。
「遅い」
いきなり怒声が飛んできた。
なるべく早めに終わらせたつもりだが、それでも長かったらしい。
只今御立腹らしい彼女が、あの後輩すらも断突で抜いて僕の人生の中でトップに君臨し
続ける存在だ。恐らく生涯現役だろう。
渡島・華。
僕、鎚宮・誠の幼馴染みで一番の友達。長い髪に低身長、誰もが羨まない幼児体型。そ
の愛くるしいポッコリお腹は珠玉の逸品だ。
「ごめん、許して」
「…姫ダッコ」
僕は華をお姫様だっこすると、教室へと向かう。
ついつい人を甘やかしてしまう。僕のこんな部分が、際限無く変態を引き寄せているの
かな、などとどうしようもないことを考えた。
華をなだめすかして教室に入るが、僕の朝はこの程度では終わらない。この程度で済む
のなら、この人生もどれだけ楽になっていただろうか。
机に教科書をしまい、今日の一時限目の予習をしようとすると、声を掛けられる。
不本意だが、これも仕方のないことだ。
「おはよ、誠ちゃん」
綺麗なソプラノの声の主は、学年一の美少女、ではない。
「おはよう」
「帰れ、オカマ野郎」
華の辛辣な口調にその少年、城濱・勇二は苦笑を浮かべた。
女子用の制服に身を包む外見の中身が僕と同じ性別なのは、中学の修学旅行の風呂で若
干僕より小さいサイズの物を確認したので間違いない。
そんな勇二は小首を傾げると、
「あれ、宿題出てたっけ?」
「いや、今日は当たる番だから」
そう言って、僕は予習を再会する。いつもの如く首筋に抱き付いて、僕の体臭をかぐの
に夢中になっている華も、今だけは無視。
暫くして、予令が鳴る頃に予習が終わり、名残惜しそうにしている華を引き剥がす。
「ほら、席に戻って」
渋々、といった表情の華は右手を前に出し、
「愛してるよ」
「僕もだよ」
僕と軽く握り拳をぶつけあう。
数分。
「はい皆さん、おはようございます」
豪快に教室の扉を開いて、つい先日失恋をしたという担任が入ってきた。
「今日から皆と一緒に過ごす、新しい友達を紹介します」
この言葉に、教室は独特の熱気に包まれる。
「それではどうぞ」
教室に入ってくるのは、一目で分かる美人。失礼な言い方をすると華とは真逆の体型だ。
彼女は細やかな指使いで黒板に名前を書いていく。
「陸崎・水です。よろしく」
彼女はそう言って、ブイサイン。
ブイサイン!?
今時そんなマネをする女子高生が居るとは思わなかった。男子生徒でも居ないだろう。
最後に担任は、絶望的な言葉を口にした。
「席は、鎚宮の後ろが空いているな」
その一言で、一気に教室の空気がやるせないものになる。
僕に向いた視線は、皆同じ考えを乗せていた。
あぁ、また変人か。
僕が嘆いている間に担任は幾つかの連絡をして教室を出ていった。恐らく、あまり関わ
っていたくなかったのだろう。万人共通の思いを、担任も持っていた。
「よろしく、旦那」
陸崎さんは、ヘラヘラと笑いながら歩いてくると、握手の手を差し出した。
握手の距離、これは不味い。
危ない、と注意するより先にその手が引っ込められた。
「危なッ」
手があった場所を通過したのは、華の鋭い拳。『暴君』程ではないにしろ、凡人では避
けることは殆んど不可能なそれを陸崎さんは避けた。
それだけでは終わらない。
そのまま続く連撃を、一歩も動かずに上半身の動きだけで避けている。
「なかなか良いモン持ってんじゃん」
「ヘラヘラと笑うな」
華が本格的にキレる前に、僕は羽交い締めにして暴走を止める。
「ごめんね、あと1m位下がって」
「誠はボクのだ」
そう、これが華が常にトップに位置する理由。僕に依存するあまり異常に嫉妬深く、誰
にでも牙を向く。男子は1.5m、女子は2m以内に近付けないのが華の不文律だ。他にも
弊害は山程あるが、これが最大の彼女の個性。
「へぇ、これはこれは。どっちも面白い」
彼女は意地悪く唇の端を歪めると、
「でも無理だ。一目惚れって、ホントにあるんだね。
握手の距離、これは不味い。
危ない、と注意するより先にその手が引っ込められた。
「危なッ」
手があった場所を通過したのは、華の鋭い拳。『暴君』程ではないにしろ、凡人では避
けることは殆んど不可能なそれを陸崎さんは避けた。
それだけでは終わらない。
そのまま続く連撃を、一歩も動かずに上半身の動きだけで避けている。
「なかなか良いモン持ってんじゃん」
「ヘラヘラと笑うな」
華が本格的にキレる前に、僕は羽交い締めにして暴走を止める。
「ごめんね、あと1m位下がって」
「誠はボクのだ」
そう、これが華が常にトップに位置する理由。僕に依存するあまり異常に嫉妬深く、誰
にでも牙を向く。男子は1.5m、女子は2m以内に近付けないのが華の不文律だ。他にも
弊害は山程あるが、これが最大の彼女の個性。
「へぇ、これはこれは。どっちも面白い」
彼女は意地悪く唇の端を歪めると、
「でも無理だ。一目惚れって、ホントにあるんだね。物事は貫き通す、それが私の礼儀だから」
そう言って僕にキスをして教室から出ていった。
新作です
凡ミスしてすみませんでした
毎回読みにくい文章ですみません
この癖は抜けそうにないんで…
内容と言えば、今回『も』嫉妬アリのほのぼの路線です
また屁理屈が沢山出るのでそれなりにお楽しみ下さい
楽しみに待ってるぜ
こういうの 大 好 き だ !
+ +
∧_∧ +
(0゚・∀・) wktkしながら正座で期待して待ってますね
(0゚∪ ∪ +
と__)__) +
はぁ、教室についたとたん、これだよ。
「おはよう、晋也。」
「…ちっ」
「おやおや、晋也君。昨日の今日で早速浮気ですか。君にも僕の電波が届い………」
「はいや!」
五月蠅い馬鹿に猪木もびっくり延髄蹴り。完全に敵艦は沈黙す。こいつがいるから今日はきずらかったんだ。
とりあえずセンセにみつからんように掃除ロッカーの中へ。グッナイ!
と、ちょうどチャイムが鳴る。うん、睡眠の合図か。
「オラー。席に着きやがれ愚徒ども!」
相変わらずうっさい鬼山が入室。このご時世にジャージ角刈りとはいかなものか。まあ、馬鹿だから許すけど。
「そうだ、笹原。昨日今日と校門前でやらかしてくれたなぁ。即刻退学にしてや……」
早速胸ポケットから生徒手帳を取り出し、素早く捲る。このとき俺の脳と視覚は常人の軽く5倍は上回る!現代コムピュタもびつくりだ!
「あっれー?生徒手帳にゃ『校門での口付け及び愛の告白を禁ず』なんざひとっつもかいてねぇぜぇ?」
「くっ!…貴様、こんな時だけ無駄に頭が働きおって……TPOを考えろ!普通はあんなことはしない。」
掛かった!
某司令官のように、くいっと眼鏡を中指で上げる。
「おやおや、センセは人前でキスをした事がございませんか。そーですか。あ、失礼。彼女いない歴=年齢な貴殿にとっては愚問ですな。」
「うぐっ…」
反論できない辺り、図星だな。クラスメイトもくすくすわらってらぁ。
涙目になる鬼山勝二。今日も元気です。ってかそんなんで泣くからからかわれるんだよなぁ………
「じゅ、授業を始めるぞ!貴様ら!」
そんな言葉を無視し、やっと待望の睡眠時間に入る。やりましたよ、母さん。今日も今日とて、迷える小羊に贖罪の一撃を食らわしてやりました。…………
「ぐぅ…」
・
・
・
・
・
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・
・
・
・
・
「はっ!」
と言う間に昼休み。うーん。汗かいたなぁ。食堂にでも行きますか。
我らがオアシス、食堂『生半可』へ。……うーん、なんか忘れてるような。
ま、気にしちゃ埒が明かない。ちゃっちゃと行こうか。徒歩一分。そこにそびえ立つ食堂『生半可』。客入りはそれなりってとこか。お、チャンス。注文口が空いてる。
「あら〜、晋也くん。いらっしゃあい。」
受付のおねいさん。自称、『鉄の未亡人』。由来は、未亡人にして処女らしい。歳は……見た感じ20前半か。
まあ、なぜ俺の名前がしられてるかってーのは。
「おねーさん、かき氷、豚汁シロップでひとつ。」
こんな下らない注文を毎日してるからだ。ちなみに豚汁シロップというのは、俺が一度間違えて『おばちゃん』と呼んでしまった時に出された究極料理だ。
その日の夜は、トイレにかかる水道代が半端なかっただろう。
「うぅーん…困りましたねぇ。今日は豚汁作ってないんですよぉ。」
真剣に悩んでくれてるおねーさん(名前なんだったかな……まだ記憶があいまいだ。)を余所に、失礼ながらも揺れる乳に目が行く。
で、でかい。まぁ、志穂や春華みたいに俺の周りに集まる女子の胸が平均的に小さいって事もあるが、それを引いてもでかい。
………メイド服とか着せたら似合いそーだなぁ……なんて事を考えてたら
「晋也くん?ごめんなさい、豚汁はまた今度用意しておきますねぇ。」
「あ、いえ、どうも。」
そういっても用意はしないのだが。さて、次は毎日の日課だ。
「ふむ、では今日もおねーさんの処女膜をいただこうじゃないか。いくらだったかね?」
「ふふふ、時価です。」
「うむ、で、今日は?」
「国の国家予算くらいですかねぇ。」
「ほう、昨日は億で、今日は兆かい。」
「あ、米国のですぅ。」
笹原銀行は崩落の一方ですよ、父さん。とんだインフレがあったもんだ。
「うーん、今日は無料でスマイルが貰えたから心はパンパンです。」
「あらぁ、うまいわねぇ、晋也くん………誰に対しても。」
最後のスマイルはお釣が返ってきそうなほど怖かったヨ。
結局なにも頼まず、水だけを飲んで冷やかし。金に余裕がない限り、大体昼飯は抜きだ。……うん、そろそろか。腕時計を見る。毎朝ラジオで合わしてるから、一秒の狂いもないはずだ。
5…4…3…2…1…
「あ!せんぱい、せんぱい。奇遇ですねえ!また会いました。」
「おのれの奇遇というのは毎日続くものなのかい。」
「うーん、どうでしょ。こうも毎日続いたらこれは運命と言い換えるしかありませんよ。うん、私達は運命の赤い海底ケーブルで繋がってるんですよ。大丈夫、切れることはありません。」
「ほう、それは、それは。こいつぁ堕辰○様にぶったぎってもらわにゃならんとですばい。」
「どーしてですかぁ!」
そう言って俺の隣りに座る。毎日の昼休みの費やし方はいつもこんな感じだ。春華相手に談話。悪くはない。今は志穂が居なくて寂しいが。
「ではせんぱい、これなんだと思います?何が入っているでしょう?」
そう言って手提げを見せる。俺が誕生日だと聞いて買ってやったやつだ。まだ使ってたのか………
「金か!?そうかそうか、憂い奴じゃ。」
「そういう欲望に素直なせんぱいも尊敬しますが、残念ながらお金ではありません。」
あきれたような顔をしながらも、声はウキウキだ。
「…じゃあ、なに?」
「ふっふっふっ…」
まってましたと言わんばかりに、中から箱を取り出す。
「不肖、この烏丸春華。恐れながらせんぱいのために愛妻弁当を作って参りました。」
「な、に!?『負傷、この烏丸春華。畏れながら哀砕弁当を作って』きただと!?」
「んー、見えない違和感がありますが、まあ、いいでしょう。はい、食べてください。」
そう言って差し出された弁当はうまそうだった。が!その……こいつは気付いているのか。周りで冷凍食品チンレベルの飯を食っている猛者どもの、嫉妬と羨望のまなざしヲ!!
君は一年にして夏校のアイドルだとうことを自覚してくれぇ!!!
グウーー
「……いただきます」
なによりも食欲が勝る俺だった。
175 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 00:37:15 ID:8EY92NDd
まとめサイトみたけど数がありすぎてどれからよもうか迷っています。
これだけは読んどけっての教えて下さい
ちょwwおまww
だけど禿げ上がるほど同意。
あえて上げるなら
幼馴染属性→合鍵、姉属性→姉貴と恋人、妹属性→妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる
そしてクズ主人公が好きなら優柔かな。というかこのままだと切りがないww全部おススメ。
>>175 全部読むのが基本だが最低限妹恋と不義理と優柔は必須。
沃野 間違い無く最高神レベル
優柔 主人公の屑っぷりは未だ語り草になるほどの伝説
あとは現在連載中の作品は全て目を通しておくと良いでしょう
最終的には全て目を通すべし
あとオススメしたいのが
義姉 〜不義理チョコ パラレル〜
修羅場云々は抜きとしてある一人の最高のヒロインに萌え苦しめばいい
神には失礼な発言だがこの作品だけは自分はあんまり修羅場を期待してません
とにかく萌え死にたい
受付のおねいさん可愛いよ(*´д`*)
>>175 全部に決まってんだろ!
まぁあえて俺がオススメするなら沃野と鏡だな、あと完結した物全てと現在連載されているものだな
阿修羅さんへ
o◇◎。o☆
:☆ ∧∧☆。◎:
/o○(*゚ー゚)◇☆
/ | ̄ ̄∪ ̄∪ ̄ ̄|:
/。| 祝パパおめでと|
▲ .。◇o☆_____|
□▼――☆:∂o☆◎
ホントだ。近況最近流してたから気付かなかった。
何はともあれ阿修羅さんおめでとう。
合鍵最高だお
広き檻も最高だお
ていうか全部最高だお
_,..----、_
/ ,r ̄\!!;へ 普段まとめご苦労様です阿修羅殿
/〃/ 、 , ;i パパになるということでおめでとうございます
i,__ i ‐=・ァj,ir=・゙) だが、敢えて言おう!娘と嫁による修羅場展開に期待と!
lk i.l /',!゙i\ i
゙iヾ,. ,..-ニ_ /
∩___∩ Y ト、 ト-:=┘i
| ノ ヽ/⌒ l ! \__j'.l
/⌒) (゚) (゚) | .| 」-ゝr―‐==;十i _,r--――、
/ / ( _●_) ミ/ .ト、.j.!レ' ̄三! >ーr‐r‐r‐< _,.r<"「 l_____
.( ヽ |∪| /=ヾヽj,r―'"≦__ ̄ ̄r―'"\\ \r",.-、, \
\ ∧ ト-'‐'"三へ>ト-‐'"~ ゙i / \\(_.人 ヽ._ ヽ
レ'へ._ノi 「 \ ゙l //./",「 ̄/ / / ヽ-ゝ. \ /
レ'// .l l ! ! i/./ ./ / / / ,( \ ノハ
レ'/ .! ! i ゙'!  ̄ ∠, / ヽ._ ,ター '",〈 !
/゙" ,r'" .l‐=ニ゙,「l ! 「 ̄!. /./ ー==' .l.ト、. -‐'"/!.ト,
/ .ト- ゙ー―┘!└‐'='-‐" ヽ._/ 、 トミ、 ̄ ̄._ノノli\
うしろのクマは気にしないように
* * *
『モカ』
本日最後の授業は終わり軽く鼻歌混じりに校門へと向かおうと教室をでたら彼女――三沢さんがそこにいた。
雰囲気・場所からも行って待ってました感じかな。普段挨拶すらしない無視すればいい関係のはずなのに俯き気味の彼女から出る空気でうっかり私は足を止めてしまった。
今から何事もなかったように歩きはじめてもいいかな――そう思っても一度止めた
えーと、第一声は何かな……か、返せって言っても返さないからね!
いきなりビンタ? それともグー? いやまさか学内で刃物沙汰って事は……
ビクビクと、しばらく待つが彼女から何も行ってこない。彼女の顔を見れば目をきつく閉じて体が小さく震えていた。
「えーと……私行っていいかな?」正直言ってこんな空気から一秒でも早く逃げたい。
返事はない。数秒待った結果彼女を大きく避けるようにして歩いていった。
正直言ってこういうのって気分良くない。
別に騙したり――嘘ともとれることはいったけど、カノジョいるのに寝取ったり――夜這いはかけたけど、まあ……とにかく後ろ指さされるような事はしてないんだけど。
んー、誰か適当な友達でも紹介してあげた方がいいのかな。
――嫌なことはさっさと忘れよっと。今日はとっておきがあるんだから。
* * *
モカさんの部屋には何というか独特の空気がある。女の子部屋だからというのか、そういうものだと思ってたが今日匂いの元であるポプリが置かれているのを発見した。姉ちゃんの部屋にはあったかな、こんなの。
「ちょっと目閉じててくれる?」
「いいですけど?」
いつも挨拶代わりにしているキスなのに目を閉じてとしては妙に改まった感じがする。そう思いながら頭をおろし目を閉じて静かに待つ。
慣れた唇の感触の代わりに頭に何かかぶせられた。感触からしてプラスチック製のカチューシャの様な気がする。
頭の上に手を伸ばして触ってみると何か毛のついた三角形のものがあった。
「ネコミミィィー!」
薄目で見てみると目の前でなんかが悶え狂っていた。
「えーと……」
「違う! にゃー!」
「へ?」
「ネコだから『にゃー』」
モカさんにほお擦りされている――モカさん曰く猫だからスリスリしなきゃダメとの事。
「あの――モカさん」
「『にゃー』忘れてる」
「……モカさんって姉ちゃんとケンカしたことあるんですか……にゃー」
ぐっと恥辱に耐えつつ言葉を吐き出す。
「涼子と? まあ士郎君より付き合い長いから結構したけど。士郎君ケンカでもしたの?」
ケンカとは少し違うのかもしれない。でも、何かが違っている。だから前みたいに元通りになりたい。
「その――仲直りってどうやってしてましたか……にゃー」
「んー、大体はお互い頭冷えたら何事もなかったようにケロッとした顔で話すのが殆どだったけど」
オレもそうだったはずなのに――
「謝るんならさっさと謝った方がいいよ、よっぽど頭に来ている時はともかく素直に謝れば大抵許してくれる子だから。後にゃーはもっとナチュラルに」
「……にゃー」
呼吸を大きく整えて姉の部屋の前で大きくノックを二度する。
しばらく待つが返事はない。でも部屋にいるのは分る。
「……入るよ」
震える手でドアノブを回す。
家の中でもすれ違う程度でしか顔をあわせていなかった姉がそこにいた。
「――誰が入っていいって言った?」そうつまらなそうに一瞥をくれた後再び文庫本に目を戻していた。
「いや、あの――ごめん……」
他に何か言わなきゃいけない事があったはずなのに、頭の中が空っぽになってそれ以上言葉が続かなかった。
「……なにが?」
その返事に対して自分の口が動かない。
「なにが『ごめん』なの。あんたよく分ってなくても適当に謝れば許してもらえるって思ってるでしょ。そういうのって一番ムカつくんだけど」
苛立ちを隠さない声でぶつけてくる。それでいてこちらには目さえ向けない。視線は文庫本へいったまま話してくる。
「いや……だから……」
はっきりしない自分の口目掛けてさっきまで姉ちゃんの手にあった文庫本が飛んできていた。姉の顔は怒りで歪んでいる。
「……ごめん」
もうそれ以上何も言えなくなっていた。何がいけなかったんだろう、そう思いつつ姉に対して背を向けていた。
何がいけなかったんだろう、そう思いながら泣きたいのを堪えつつ部屋を出よう
背を向けていてもわかる。姉ちゃんが近づいてくる。
――背中に抱きつかれている。
* * *
『涼子』
クソッ! クソッ! クソッ! 何でこいつの顔見ていると苛立ってくるんだ。
背中から抱きつきシロウのベルトをすばやく外す。重力に従いズボンは一気にずり落ちた。そのままシロウの足を払い床にうつ伏せに転がしてパンツをズリ下ろす。
「抵抗したら只じゃおかないよ」
頭を床に押さえつけつつ、もう一方の手でベッド下からバイブを引っ張り出す。
狙いを定めシロウの菊門目掛けてバイブを押し込む。強い抵抗があるが無視してさらにねじ込む。シロウの口から声にならない悲鳴がこぼれた。
目を閉じ歯を食いしばり苦痛に耐えている――フン、泣き叫んでみなさいよ。
モーター音が流れ出すとシロウの表情が変化した。ふーん、こいつってこういう顔するのか。
シロウの反応を観察しつつ掻き回す――なんだ感じているのか。
――どのぐらいこの退廃的に遊びを楽しんでいたのだろうか。
涙を流し鼻水と涎を垂らしながらもこいつは何も言わない。
こういうのも穴兄弟って言うのかな――
<チラシの裏>
モカさんの行動パターンが大学時代の友人の行動パターンまんまだという事に気づいた今日この頃。
</チラシの裏>
ナ ゝ ナ ゝ / 十_" ー;=‐ |! |!
cト cト /^、_ノ | 、.__ つ (.__  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・
,. -─- 、._ ,. -─v─- 、._ _
,. ‐'´ `‐、 __, ‐'´ ヽ, ‐''´~ `´ ̄`‐、
/ ヽ、_/)ノ ≦ ヽ‐'´ `‐、
/ / ̄~`'''‐- 、.._ ノ ≦ ≦ ヽ
i. /  ̄l 7 1 イ/l/|ヘ ヽヘ ≦ , ,ヘ 、 i
,!ヘ. / ‐- 、._ u |/ l |/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、l イ/l/|/ヽlヘト、 │
. |〃、!ミ: -─ゝ、 __ .l レ二ヽ、 、__∠´_ |/ | ! | | ヾ ヾヘト、 l
!_ヒ; L(.:)_ `ー'"〈:)_,` / riヽ_(:)_i '_(:)_/ ! ‐;-、 、__,._-─‐ヽ. ,.-'、
/`゙i u ´ ヽ ! !{ ,! ` ( } ' (:)〉 ´(.:)`i |//ニ !
_/:::::::! ,,..ゝ! ゙! ヽ ' .゙! 7  ̄ | トy'/
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、 r'´~`''‐、 / !、 ‐=ニ⊃ /! `ヽ" u ;-‐i´
! \::::::::::::::ヽ `ー─ ' / ヽ ‐- / ヽ ` ̄二) /ヽト、
i、 \:::::::::::::::..、 ~" / ヽ.___,./ //ヽ、 ー / ゝ
.! \ `‐、. `ー;--'´ //イ;;::::: //〃 \ __, ‐' / / \
ヽ \ \ / / /i:::::. //  ̄ i::::: / /
モカさんがリアルの世界にいるって言うのか、キバヤシ
そいつはMMR緊急出動だ
そのリアルモカたんが実は男だったという罠
夜這いしてくれ…
士郎はそうとうのMっ娘だったんだな
早速箸を付けようとした矢先………
「あ、そうそう、晋也くん!これ、あなたにお届け物ですよぉ。」
おねいさんが出て来て、包みを渡された。……どう見ても弁当だ。
「春校の女の子が晋也くんにって、わざわざ渡しに来たのよぉ。この炎天下の中、走って来たのねぇ。」
春校?……ってこたぁ…
そう考えていると、携帯の着メロが鳴る。面倒だから初期設定のままにしてたら、春華に親父臭いと言われた……クスン。
ピッ
「俺だ。」
「……知らない人が出たら驚くわよ。」
「おお、志穂か。これ、お前のか?」
「あ、届いた?今日作ったんだけど渡すヒマ無かったから、三時間目サボってもってっちゃった。」
泣かせてくれるねぇ。おじさん、感動だよ。
が!ここで初めて気付く。……その………周囲のキツい視線を。まぁ、そのなかでも特にキッついのが……
「……せんぱい。」
春華だ。目の前に二つ弁当箱が並び、かなり不機嫌な感じだ。さらに追撃。
「あ、あと他に何か生ゴミなんて貰っても食べちゃダメよ?そんなの食べるのは烏ぐらいなんだから。」
あわわわわわ。あんたにはみえているんですか?
それが聞こえてたのか、春華も反撃に入る。
「せんぱい、せんぱい。やっぱり青空の元、屋上で二人っきりで食べる『私の』お弁当はおいしいですね!
あ、そんな産業廃棄物、捨てちゃいましょう。わざわざせんぱいの胃の中に不法投棄する必要はありませんよ!」
あわわわわわ。あんたもそんな大声で叫ばんでも。ってかここは食堂ですよ!
「ちょっと!晋也!!屋上ってなによ!?……うわーーーーん!この浮気者ぉ!」
そらみなさい!勘違いして涙声になっちゃったじゃないか。
「いやいや、志穂!早合点だ!ここは食堂!ほかの奴等もいるんだって!ねぇ!おねいさん!?」
「おねいさん!?ちょっと!!あの烏以外にも女がいるってゆーの?……もういや!あんたを殺して私も死ぬぅ!!」
い、いかん。火に油を注いでしまった。どうしよう。対処に困り、おろおろしていると、春華が携帯をひったくる。
「あー!せんぱい!!電池が切れちゃいますよ!!これ以上の会話は無理ですねぇ、残念!」
そう言って、勝手に電話を切る。
「ふう、本当にしつこいですねぇ。これだから子供は……」
どっちが?というのは、心の声。まあいいや、食おう。
「気をつけて下さい、せんぱい。きっとあの強欲痴女のことだから食べたら金を要求されますよ。」
「いや、これ俺んちの食材……」
「きっと労働費とか言ってきますよ。うん、違いない。それに比べて、私のはオールフリーです。いや、完全にタダってのもなんですから……
うん、そうですね。お代はラヴで結構。」
「馬鹿を言いなさい。どこぞの花人みたいなこと言ってるんじゃないです。米粒を残すと目が潰れると昔から教えられました。
まだまだ世界をこの目で見たい私にとっちゃ、それは難儀ナリ。つーこって、両方食べます。」
二つとも開いて、ガツガツと腹に詰め込んでいく。
「うぁー…私の愛妻弁当が汚されていくぅ……」
なんか春華がぼやいてたけど、とりあえず無視。ちなみに味は同じぐらいだったよ。
・
・
・
・
・
・
・
「う、おぇっ」
まずいから吐きたいんじゃない……食い過ぎだ。
「だかは私のだけでやめとけば良かったんですよ。自業自得です、せんぱい。」
「う、うぅ。ご、午後はサボる。……保健室で寝てる。」「……もっと自分を大切にしてくださいね、せんぱい……」
「…サンクス。」
ひらひらと手を振り、春華と別れる。あぁ、おねいさんの名字が高橋だ。苦しみによってどうでもいい事思い出したヨ………
無難にラブコメ路線が続いているけど今度の刺殺はいつなのママン?
>>189 そのリアルモカたんが実は猫だったという罠
個人的に今回は、ラブコメ路線でいってほしい思ってるが…
心の底では、やはりドロドロトした修羅場を望んでる俺が居る…
まあとにかく、晋也、上手くやれよ、今度は復活できないぞw
嫉妬全開な修羅場も大好きだが
こういうソフトなラブコメチックなヤキモチも良いな
無理してキツい修羅場にしなくてもいいな
私の男運の無さは生来のものらしい。 何せ私の父親に当たるヒトは私が生まれる前に女を作って、私を身ごもった母を捨てて逃げたらしいのだから。
そんな私でも中学の頃には初恋を覚えた。 その人は私の告白を受け入れ付き合ってくれた。
だが彼は私が暴漢に襲われた時助けてはくれず、あろう事か私を見捨てて逃げてしまった。 その時助けてくれた女性のお陰でかろうじて純潔は失わずにすんだものの、私の男嫌いを決定付けるには十分だった。
勿論助けてくれた事には感謝してるが、その時助けてくれたのが男の人だったのなら未だ男嫌いにならずにすんだのかもしれない。
背が高くて綺麗でカッコいいその女性は武術の達人だった。
私はそれを機にそのヒトを師と仰ぎ武術を習い始めた。 男なんかに頼らず自分の力だけで身を護っていけるように。 お陰で空手と剣道の段位を習得するまでに到った。
そんな私だけど全く男に興味が無くなったかと言うと少し違った。 正確には現実の男に対しては相変らず幻滅したままだったけど、代わりに小説やフィクションの世界の中の男性に心惹かれるようになっていった。
そしてそれは特に中世のヨーロッパを舞台にした幻想小説に惹かれるようになる。
やがて私はある骨董品屋さんの常連になった。 常連って言ってもいち高校生のお小遣いなんてたかが知れてる。 いつも眺めさせてもらってるだけ。
でも店主のおばあさんは嫌な顔一つせず私を迎えてくれ、私を孫のように可愛がってくれる。 私にとっても実のおばあちゃんみたいに親しみが持てた。
おばあちゃんの人柄もあるのだが私がこのお店に惹かれるようになったもう一つの理由。 それはそこで取り扱われてるものの中には小説に出てくるような中世ヨーロッパの頃のアンティークや、果ては武器や甲冑までが沢山あったのだから。
多くはガラクタ同然の美術的な価値のそれほど無いものばかりではあったが、私を夢の世界へ誘ってくれるには十分だった。
だけどまさか本当に異世界へ連れて行かれる事になるなんて誰が想像できて?
ある日の午後、いつものように骨董屋によると奇妙な武器を見つけた。 シルエットだけ見ればそれはインドの武器カタールに似ていたが、デザインが微妙に異なっており刻まれた文様などは中世ヨーロッパのそれっぽかった。
何故か心惹かれた私は店主のおばあさんに手にとって良いか訊いてみる。 おばあさんはいつもの笑顔で良いよ、と応えてくれた。 ただし錆付いてるのか鞘は抜けないよとも付け加えられ。
手に握ってみると驚くほどシックリと手に馴染んだ。 まるで私の手のサイズに合わせて創られたかのように思えたほどだ。
そっと鞘に触れてみると動いた。 え?錆付いてるんじゃ無かったの?
そして鞘の中から現れた刀身はまるで新雪と見紛うばかりの輝きを放っていた。 それはこんな薄暗い店の中でありえないほどのまばゆい光を放ち、其の光に包まれ私の視界は白一色に塗りつぶされていった。
私の目が光から開放された時、其の目に広がっていたのは今まで居たはずの骨董屋ではなく、ところどころ岩肌の露出した荒地であった。 そしてその時大気を震わすような凄まじい咆哮が聞こえた。
見た瞬間私は唖然とした。 そこに居たのは全身を鱗で覆われ、ナイフのような牙と爪、そして象をも超こえるほどの巨体の生物だったのだから。 そう、一言で言えばそれは小説やマンガやゲームの中でしか存在しないはずのドラゴンの姿そのものであった。
一体何の冗談? 夢? 白昼夢でも見てると言うの?
だが再び私の耳に届いた大気を震わせるような咆哮に我に返る。 鼓膜が破れるかと思うほどのそれはとても夢とは思えない。 どうやらコレを夢だと思い込むことのほうがよっぽど現実逃避なようである。
私は混乱する頭で現状を整理する。 隠れられるような場所は見当たらない。 逃げた場合、あの巨体ならそれほど速くは追ってこないかもしれないが、ゴツゴツとしたその足場は私の機動力をも殺ぐものであるのは容易に想像できた。
逃げる事も隠れる事も出来ない。 ならばどうする? 立ち向かう? いや、一番現実的ではない選択だろうそれは。
確かに私の手には骨董屋で手にとった武器がはめられたままだった。 白く輝く刀身は鋭い切れ味を期待させてくれる。 コレまで習得した武術と相まって高い攻撃力を発揮してくれるかもしれない。
しかしそれはあくまでも希望的、楽観的観測。 目の前の化け物相手に実際にはいかほどの威力を発揮してくれるのだろう。
でも……だからと言って黙ってみすみす化け物の餌になるつもりは無い。 敵わないまでもせめて一太刀食らわせてやる。 そう思い武器を構えた。
唸りを上げて迫ってくるドラゴン。 そして其の牙が眼前に迫ったその時私は全身全霊を込め勢いよく武器を振り下ろした。
手ごたえは無い。 そして視界が赤一色に染まる。 ああ、やっぱり駄目だったんだ。 こんな武器やっぱりあんな化け物相手には何の役にも立たなかったか。 正に蟷螂の斧と言うヤツね。
だが実際にはそうではなかった。 私は生きていた。 先ほど私の視界を染めた赤は自分の血ではなくドラゴンの鮮血。
後ろを振り向けばそこにはドラゴンの巨体が横たわっていた。 下顎部から喉、胸、腹に掛けて一直線に切り裂かれ、鮮血と臓物をぶちまけ其の屍を晒している。
私は呆然としていた。 コレを私がやったって言うの? 幾ら日々の鍛錬を欠かしてなかったからと言って人間の力でこのような芸当が可能なの? 何より斬った手ごたえがまるで無かったはず。
手の武器を見れば刃こぼれ一つ無く相変わらず新雪の如き輝きを湛えている。 つまりはこの武器がそれだけの威力を秘めていたと言うの?
いや、そもそもこの状況は? この武器は何? 思えばこの武器を手にした瞬間からこの異変は起こった。
その時また咆哮が聞こえた。 声のした方、上空を見上げればそこには巨大な蝙蝠のような、だが明らかに蝙蝠とは違う生き物が飛んでいた。 何故なら其の生き物には蛇のような長い首と尾と猛禽のような鋭い爪を備え、そして何よりも蝙蝠はあんなに巨大じゃない。
ドラゴンの次はワイバーン? 一体全体どうなっているのよ。
そしてその生き物は口を大きく開いた。 大きく開かれた其の口から巨大な火の玉が放たれた。
しまった! 避けられない! そう観念した瞬間目の前に板状の氷の塊、いや氷の盾が現れ火の玉から私を護ってくれた。
そして次の瞬間視界の外から飛来した氷の矢が、いや氷の槍がワイバーンを貫いた。 そしてワイバーンはそのまま氷付けになり地面へと落下した。
氷の槍が飛んできたほうを見ればローブに身を包んだ男の子が居た。 其の姿は正に小説の挿絵やマンガやゲームに描かれている魔導師を髣髴とさせるものだった。 って事はさっきの氷の盾と槍は魔法? あの子が助けてくれたの?
その子はゆっくりと私のほうに近づいてきた。 ローブで身を包んだその魔導師(?)は私とそう齢が変わらないように見えた。 顔立ちは中性的でオマケに金髪碧眼、浮世離れした美しさを感じさせる。
私が口を開こうとするとそれよりも先にその子が口を開く。
「あのドラゴンを一刀の元に斬り伏せるとはお見事です。 お陰で助かりました」
そう言って頭を下げた。 成る程、見ればローブの端々がところどころ破れ切り裂かれ敗れている。 あのドラゴン、私の前にこの子を襲ってたわけか。
さらに向こうの岩陰をよーく見るとドラゴンの犠牲になったと思しき戦士団の屍が見えるような気が……。
「い、いえ私のほうこそ危ない所をありがとうございました……」
ってチョット待って。 ドコとも分からない世界。 オマケに目の前の子は明らかに日本人じゃない。 って言うか人間? 若しかしたら妖精か精霊の類って可能性もある。 そんな相手に何で言葉が通じるわけ?
「大丈夫ですか? どこか怪我でもされましたか?」
やっぱり言葉が分かる。 けどその聞こえ方が少し変なのに気付いた。 何て言うか直接頭に響いてきたような。 そして其の頭に響いてきた声とは別に同時に聞こえてきた声があった。 そっちの声は男の子の口から直接聞こえてきた感じだ。
何て言うか二ヶ国語放送? 頭に同時通訳が響いてくるようなそんな感じ?
「あ、あの大丈夫ですか?」
尚も心配そうに訊いてくる男の子。
「あ、はい大丈夫です」
「そうですか。良かった」
私が答えると男の子は安堵の表情を見せる。 どうやらコッチの言葉も通じているようだ。
とりあえず便利で助かるけど一体この二ヶ国語放送、或いは同時通訳の正体は一体……若しかしてこれ? 私は手にはめられた武器を見た。
試しに武器を手から外しそして左手の鞘と共に地面に置いてみる。 そしてもう一度話し掛けてみる。
「あの、私の言葉分かりますか?」
瞬間男の子は驚いた表情を見せる。
「$>&√Д”#%∀&^?!」
頭の中から同時通訳が消えた。
拾い上げると
「あ、あの今なんて仰ったのですか? よく聞き取れなかったのですが」
成る程、どうやら間違い無いようね。
「あ、いえ何でも有りません」
「そ、そうですか……突然妙な言葉を発せられましたから驚きました」
再び安堵の表情。 そして其のくるくる変わる表情に私は可愛いなと思ってしまった。
って可愛い? 今私はこの子に対して可愛いって思ったの? 男の子に対して? あの日以来男の子に対して良い感情など抱いた事の無い私が?
「それにしても先ほどの斬撃実に見事でした。 私も長い事旅をしていますが、あのような凄まじい斬撃初めて目の当たりに……?! そ、その武器は?!」
男の子は私の手にはめられた武器を目にし驚愕の声を上げる。
「す、すいません突然大きな声を出してしまって。 若しよろしければ見せていただけますか?」
私は男の子の求めに応じ、手から武器を外して渡した。
「この輝くばかりの純白の刀身! 他に類を見ない独特の形状! そしてドラゴンを一刀で斬り伏せる程の攻撃力! 間違い無い! 昔お師匠様の書庫で見た書物に記された伝説の武器アルヴィオンファング!!」
武器を手にした男の子は驚愕の声を上げる。 へぇ、伝説の武器だったんだ。 どおりで色々便利な機能が付いていた訳ね。 あと、アルヴィオンファングって言う名前だったんだ。
ん? 伝説の武器? まさかこの後私を指して伝説の勇者なんていうんじゃないでしょうね。
「探しておりました。 貴方こそこの混沌とした暗闇を打ち払う伝説の勇者さまです」
私は思わず吹き出しそうになった。 何このべタな展開?! 今時そこら辺に転がってる三流ファンタジーノベルだってやらないわよ?!
私は可笑しいやら呆れるやらで、笑いを堪えていると男の子は両手で私の手を握り、真剣な眼差しで見つめてきた。
其の眼差しに私は思わずドキリとする。
「勇者さま! お願いです。 どうか其のお力を我等にお貸しください。 そしてこの世界を救う救世主になって下さい!」
とりあえず頭で整理してみる。
先ず元の世界に戻る方法はあるのか? 皆目見当もつかない。 って言うより戻る必要ある? そもそも私は現実世界の男の子に幻滅していた。 そう言う意味ではそんな世界に大して未練など無い。
対してこの世界はと言うと、来たばかりで分からない事だらけだけど、でも今私の目の前にいる男の子。 端整な顔立ち、綺麗な金色の髪、アクアマリンのような済んだ瞳。 そして何よりも其の真剣な眼差しに、さっき私はドキリとさせられた。 それは紛れも無い事実。
この世界の事は分からないけど、でもこの男の子一人だけを取ってみてもあのくだらない日常よりはるかに魅力的かも。
何の因果でこの世界に召喚させられたのか、どうして私なんかが勇者に選ばれたのか。 とりあえずそうした疑問は置いといて頑張ってみようかしら。
そして私は口を開く。
「コチラこそヨロシクね」
そして私は手を差し出した。
「あ、そう言えばお互い名前未だ言ってなかったわね。 私は白澤 雪薙。 セツナって呼んで」
「ボクの名前はリオ。 ヨロシクお願いします。 セツナ」
そう言って私の手も優しく握り返すリオ。
そして私とリオの冒険は始まった。
ココまで第1話 或いはプロローグ?
どっちが良いだろうか
リアルでRPG。 冒険をしながら私が感じた事の一つ。
兎に角先ず、行く先々でモンスターが現れる。 かってはこんな風にモンスターが大量発生して人々を襲う事は無かったらしい。 このモンスターたちの元締めは予想通り魔物の王、すなわち魔王。 最終的にはコイツをやっつけるのが私達の目標。 うん、正にリアルRPG。
で、とりあえず降りかかる火の粉は払わなきゃいけないわけだから、地道に倒していくのだがコレがそんなに順調にことが運ぶわけではない。
確かにリオの魔法は強力だし、私のアルヴィオンファングも並のモンスター相手に遅れを取る事は無い。 しかし魔法には一日に使える限界数があるみたいだし、私のアルヴィオンファングも基本は只切れ味が鋭いだけの剣。
初日にドラゴンを一刀の元に屠ったあれはどうやらまぐれで出た奥義のようなものらしい。 自在に扱えるようになればあんな風に巨大な魔物を一刀で斬り伏せたり、一薙で複数の敵を一掃出来るようになるらしい。
でもそれを自在に出せるようになるには相当な熟練が必要とされる。 すなわち実戦を積んで経験値を積み重ねてレベルアップ。 正に……切りが無いから以下略。
そんな未だ未熟な私達だから時に不覚をとり危険な目に会う事もある。 でもどんな時もリオは私を見捨てたりしない。 自分を後回しにしてまで私に回復魔法を掛けてくれたり、魔力が尽きてシールドが貼れないのに身を呈して私をモンスターの攻撃からかばってくれたり。
それは私がリオにとって救世の勇者だからなのかも知れない。 でも、それでも私は嬉しかった。
もっとも四六時中敵モンスターと戦ってばかりじゃない。 モンスターがいない時、戦っていない時はリオがこの世界に付いて教えてくれる。 何せ私はこの世界のことは何も知らないのだから。
リオとのおしゃべりのひと時は何ものにも変えがたいほど楽しい。
先ず何と言ってもその話し方。 ちゃんと私のペースに合わせてゆっくりと丁寧に話してくれる。 杓子定規にテープレコーダーのように話す学校の先生とは大違いだ。 もしリオが学校の先生をやったのなら落第生なんて出ないんじゃないだろうか。
そう思えるほど分かりやすく丁寧な喋り方だった。
そしてその声の美しさも絶品だった。 よく通るとても済んだ綺麗な声は私を夢見心地にさせてくれる。 其の美声は私の世界にきたら歌手になれるんじゃないかと思わせるほど。
そして日を重ねるごとに私はリオの事がどんどん好きになっていった。 外見的な魅力だけじゃない。 其の魔法の腕前も、知的なところも、優しさも、体を張って私を護ろうとしてくれる男らしさも、其の全てに私は魅了されていった。
私は完全に恋に落ちた。
そして私は望む。
私が彼に魅了されたように、リオにも私のことを好きになってもらいたいと。
情報収集も冒険の基本。 その為に色んな町や村にも度々訪れる。
情報収集以外にも武器防具の新調や資金や食料等の調達などでも立ち寄る。 もっとも武具に関しては私の場合武器は既に最高レベルのものを手にしてるので結果、私の場合防具のみだけど。
資金の調達は大きく分けて2種類。 どちらもモンスターがらみで、先ず一つ目はモンスターの死体を換金する方法。 モンスターの爪や牙、角、そして骨や皮等は時に武器防具やマジックアイテムの貴重な材料になるとのこと。
特に私が初日に倒したドラゴンはモンスタートしても素材としても最高レベルで、鱗なんかまるで鋼のように、いや鋼よりも硬くそれでいながら鉄よりはるかに軽く鎧や盾に最適だった。
伝説の武器とは言え良くこんなの切れたものだと驚かされるほど。 お陰で当座の資金も確保できたほど。
更に言うと既にこの鱗で私専用の鎧と盾をオーダ―してある。 完成して装備できるようになるのは未だ当分先だけど。
もう一つは町や村の依頼を受けてモンスターを退治し報酬を受け取る方法。 大きく分けてこの二つ
そうした訳で様々な町や村を尋ね歩いていく中、今日もある村に立ち寄る。 そこはリオの生まれ育った村。 リオのお師匠さんは膨大な知識と資料を保有しており、それゆえ定期的に調べ物のため立ち寄っているのだと。
リオの生まれ育った村と言う事で私は訪れる事を密かに楽しみにしてた。
だけど立ち寄ったそこで私は衝撃を受ける事になる。 そこで知ってしまった。 リオに恋人が居ると言う事を。
彼女はリオの幼馴染で魔王を打ち滅ぼした暁には結婚する約束までしてると言う。
愕然とした。 まさかそんな、異世界に来てやっと巡り合えたと思った理想の男性なのに! どこまでも私の男運の悪さは付いて回ると言うの!?
そのときのショックは中学のときの初恋を裏切られた時の比ではなかった。
一応言ってくが二股掛けられてたと言うかそんなのじゃない。 リオはいつも私に優しくしてくれたが、そこには決して下心なんて無い誠実なものだったのだから。 尤もそれはそれで少し寂しかったが。 何せ私の一方的な片想いだったのだから。
でも諦められなかった。 諦めるつもりも無かった。
幼馴染? 婚約者? それが何だって言うの? その娘がリオに何をしてあげられると言うの? ただ、村にこもってリオが使命を果たして帰ってくるのを待ってるだけじゃない!
ただ、待つだけしか出来ない女。 そんな女に負けてなるものか。
確かに知り合ってから未だ間もない。 でも既に幾度も共に死線を潜り抜けてきた。 そしてこれからももっと多くの危難を一緒に乗り越えていくだろう。 これから先もっと多くの時間を私はリオと過ごすことになる。
そう、時間ならたっぷりあるんだ。 だから魔王を倒すそのときまでにリオの心を掴んでみせる。
それに、いざとなれば私には切り札がある。
切り札――それは私がこの世界で『伝説の勇者』であること。 伝説では魔王はこのアルヴィオンファングでしか其の防御結界を切り裂き倒せないらしい。 しかもこのアルヴィオンファング。 試してみたところ私以外には扱えないようだ。
私が装備すれば、まるで手に吸い付くようにフィットし羽根のように軽く感じられ無類の切れ味を発揮してくれる。 だけどそんな伝説の武器も、私以外のものが装備するとたちどころ其の輝きを失い、只の鈍らと化すのだった。
すなわち正真正銘私にしか扱えない伝説の武器で、と同時に私自身が魔王を倒しうる唯一にして絶対の切り札であると言う事。
そう、いざとなれば世界の運命を天秤に掛けてリオに迫る事が出来るのだ。 尤もコレは最後の手段。
この方法を用いれば確かにリオを手に入れられるだろう。 でも心までは手に入らない。 表面では私を受け入れながらも心の底では私を蔑むかもしれない。 だから、コレはあくまでも最後の手段。
結構自分って感化されやすいのかなぁ
即興でファンタジーっぽいの書いたら気付けば形になってた
Bloody Maryは姫様派として楽しく読ませて頂いております
Aは団長エンドってことは姫様の運命は……
生きここは奈々さんがお見事
自分を忘れられたと言う不利なはずの状況を逆手にとって一気に挽回とは!
と言うわけで近日中に奈々も描かせていただきます
広き監は相変らず晋也が良い味です
この独特のノリの一人称やっぱり大好きです
207 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 19:04:03 ID:8O3I1Hel
レズかと思ったYO。やっぱり野郎がいないとダメだな
sageてくれよ。頼むぜブラザー
何気に今回の主人公は女性ですか。
しかも、泥棒猫視点で、新しい試みにwktk
食堂のおねえさんは里緒なのかな?>広き檻
黙祷(予想)。>姫様
あれじゃ負けましたと同義だよ戦いが終わるまでは笑っちゃいけないんだよ姫様。
投下します
仁ちゃんを騙してしまった
ごめんね仁ちゃん
でもこれは神様が私にくれたチャンスなの
だから私はこの罪を背負ってこれからも生きていくよ
私は覚悟して仁ちゃんと口付けを交わす
仁ちゃんはすべてを受け入れてゆっくりと私を抱きしめてくれた
「抱いて・・・・仁ちゃん」
私がそうつぶやくと仁ちゃんは少し戸惑ったけどうなずいてくれた
静かに服を脱がされる
下着もうまく仁ちゃんは外した
もしかして経験あるの?詩織さんと・・・・
心は覚えていなくても身体は覚えているの?
いまはよそう・・・・あの人のことを考えるのは
やさしい愛撫が私を未知の世界にいざなう
幸せ・・・・
罪悪感をも溶かしてくれる仁ちゃんの愛撫
そして仁ちゃんと私は初めて繋がった
初めての痛みを感じながら私は仁ちゃんとひとつになった
血の付いてしまったシーツを私は抱えて仁ちゃんの病室を後にする
さすがにこれは自分で洗わないと
だって、恥ずかしいし・・・・
でも・・・・仁ちゃんに抱かれちゃった
何度も夢見たその行為を私は現実に仁ちゃんにしてもらった
でも一種の不安もある
いつ仁ちゃんの記憶が戻るかどうかだ
お医者さんの話では戻るかもしれないし戻らないかもしれないらしい
覚悟はしている
それでも私はこの道を選んだ・・・・
だってもう仁ちゃん以外私は愛せないから
身体も心も・・・・
この十字架を背負って私は生きていく
それが愛する人を騙した私の罪
それでも私は・・・・・
愛してるよ・・・・仁ちゃん
「・・・・・」
詩織さんへの未練がない訳ではない
けれど俺は奈々さんを・・・・選んだ
あれほど悲しそうな顔をする奈々さんが嘘を言うわけない
そんなことを考えていると時間は夜になっていた
静かな音でドアが開かれた
「奈々さん・・・・?」
その方向を見ると詩織さんが立っていた
一気に未練が音を立てるかのように噴出した
「・・・・・・・・・」
奈々さんという言葉を聞いても詩織さんはなにも言わずに俺の横の椅子に腰掛けた
「仁くん・・・・・私ね」
少し悲しげにつぶやくと詩織さんは意を決したかのように口を開いた
「私のせいで仁くんが大怪我をして記憶まで・・・・だから!」
顔が寄せられる
綺麗な顔が俺の目の前まで
「・・・・・・?」
俺の首元を見つめる
「キスマーク・・・・」
それは先ほど奈々さんが俺に付けていったものだ
「どういう・・・・こと?」
悲しげな瞳が俺に向けられる
「これは・・・・奈々さんと・・・・」
それを聞くと詩織さんは俺に口付けた
そして舌を絡める
ゆっくりと離れる顔と顔
「私には仁くんしかいないの・・・・・だから!」
その顔にまた記憶がフラッシュバックした
夕暮れの帰り道
俺と詩織さんが口付けている
どうして?・・・・・俺は奈々さんと・・・・・
わからなくなった
「仁くん・・・・私を抱いて」
俺は言われるがまま詩織さんを抱いた
先ほど奈々さんを抱いた時と同じように
それで思ったことがある
俺は詩織さんの身体を知っているっていうこと・・・・
最悪だ・・・・俺、最悪だよ・・・・・
記憶を失う前の俺は最低の二股野郎だったってことだよな?
ごめん・・・・詩織さん・・・・・奈々さん・・・・
『生きここ』がひと段落したので次回作の構想中・・・・
ネタが・・・・・ねぇー!
愚痴ってすいません・・・・
依存症の詩織と奈々・・・・仁が羨ましい
刺されるのはごめんだけど・・・・
次章は少しドキドキしながら投下します
神々の作品の感想・・・・
>>168 新作・・・・楽しみです
読みぬくいなんてないと思うけど・・・・
あなたの書く登場人物は独特ですごく好きです
個性的で・・・・
>>187 今更ながらモカさんいいですね
しかし不義理チョコの時から智子派だったので彼女の動向に激しく期待しております
>>194 以前出てた人はこの人かな?と、毎回楽しみにしています
話の持って行き方がうまいですね
>>206 おお!新作!
よし自分も次回作はファンタジーで・・・・
仁が王子様で・・・・
詩織が隣国のお姫様で今は仁の妻・・・・
奈々が詩織の妹で仁の第二夫人の座を・・・・
香葉さんは騎士団長で相変わらず怖いヒト・・・・
ネタが・・・・ない・・・・しかも『生きここ』とかぶる・・・・orz
想像力が自分には決定的に欠けている
女性主人公楽しみにしています
>>168 すいません読みにくいなんてことないと思います・・・・
です・・・・
あんなに一途だった仁が最低の二股野郎に……ニヤリ
これからの修羅場に期待が急上昇だ(*゚∀゚)=3ハァハァ
城は異様な雰囲気だった。
手当てをされている兵士、固まって怯えている侍女たち、何か口論している騎士。
城門付近にはいくつかの死体袋が転がっていた。
まさか本当に団長が―――――
侵入したという賊が本当に団長だったのか確認したくなったが、姫様の安否も気になる。
すぐに城の中に向かおうか迷っていたそのとき。
「ウィル!」
口論していた騎士の中に知り合いがいたらしい。 俺を見つけると急いでこちらに走ってきた。
「丁度良かった!ウィル、お前すぐ姫様のところへ行ってくれ!」
「なぁ、本当に―――」
「話は後だ!お前が辞めて姫様の『王の盾』がいないんだよ!
団長が姫様を捜してるらしい!このままだと姫様が危ない!!」
血の気が引いた。なんで、団長が姫様を……?
「それに団長は今トレイクネル卿殺しの容疑者―――」
「くそッ!!」
「あ!おいウィル!」
同僚の話の途中で駆け出してしまった。
ゲイル=トレイクネルが死んだ?団長が疑われている?
俺が辞めてからいったい何があったんだ―――
フォルン村のときと同じ悪寒が身体を包んで酷く寒い。
姫様の自室に向かって走る。無事でいてくれと祈りながら。
極度の緊張のせいかすぐに息があがってしまう。
自分の身体に鞭を打ちつつ、ひたすら走った。
やがて見えてくる姫様の自室の入り口。
(扉が――――開いてる!!)
全身に戦慄が駆け巡る。一瞬そこで走るのをやめたくなった。鼓動が更に速くなる。
―――――姫様!!
開かれた扉の前で立ち止まり、姫様の無事を―――――
「―――!!!!」
だけど。
そこに立っていたのは。
誰かの鮮血を浴び、狂おしいほど鎧を紅く染め上げた、
血まみれのマリィ団長だった。
「あ……あ……」
(なんだ、部屋一面に広がる紅いコレは―――――)
団長がこちらに気づいて不思議そうな顔をする。
「あれ?ウィル、どうして此処に?
あ、それより見てください!ほら!ウィルの敵、ちゃんと殺してあげましたよ!」
楽しそうに両手を広げ、くるりと一回転。
(ベッドの上にある、あの赤い塊は何なんだ…?)
「これ、ぜ〜んぶあの王女の血ですよ!あはっ。
あ、違うか。変な蠅が飛んできたからそいつの血も混ざっちゃってるんだった」
童女のように笑う。
(団長が左手に持ってるソレはいったい何なんだよッ!!!)
「とにかく!あの王女は徹底的に殺しておきましたよ!ほら、これ!」
得意気に左手に持つ物を俺に見せた。
キャスの最期の瞬間と同じ苦悶の表情。それは、姫様の――――首だった。
「う……」
バチバチバチッ
脳髄が痛みを伴ってスパークする。
「うわああぁぁぁぁッッッッッッ!!!!!!!」
無様に泣き叫びながら俺は剣を抜いた。
また!また守れなかったッッ!!
今度こそ、言い訳する余地もなく見殺しにした!!
「どうして私に剣を向けるんですか?大丈夫です、安心してください。私はウィルの味方ですよ。
ウィルの仇はみんな私が殺してあげますから。こんな風に!」
左手をプラプラさせる。
「……やめろ」
わからない。自分の感情が。ただ頭が痛い。
「はい?」
「姫様を放せって言ってるんだッ!」
どうして俺が叫んでいるのか本当に理解できない、といった表情で姫様の首を投げ捨てた。
「なんでまだ怒ってるんです…?これだけしてもウィルは私を許してくれないんですか?
ウィルの代わりに復讐してるのに。」
団長の言っていることが分からない。いや、わかりたくない。
「私を褒めてください。いい子いい子、してください。
私の側を離れるなんてもう言わないでください。私と一緒に居てくださいよッ!!」
俺の、せい……?
俺が騎士を辞めたから…?
俺のせいで姫様が死んだ…?
俺のせいで団長はおかしくなった…?
手が震え、持っている剣がカタカタと音を鳴らす。
「あ、そうか。まだ足りないんですね?
これから陛下にも死んでもらいますから。他の人たちもなるべく早く殺します。
そうすればウィルも私を許してくれますよね?」
また、俺の所為なのか……
剣を取り落としそうになって、慌てて構え直した。
とにかくこのまま団長を行かせるわけにはいかない。
これは俺の責任だ。俺が選択を間違えたからこんなことになった。
だから俺が、団長を止めないと。
「行かせない」
それだけ言うのが精一杯だった。
つい先日まで尊敬していた上司に剣を向ける。
気がどうにかなりそうだ。
「そこを通してください。
ウィルは強いんですから手加減なんてできませんよ?痛い思いしちゃいますよ?
私が味方だって証拠もすぐ見せます。だから剣を収めてください」
曇った瞳を俺に向ける団長。
彼女はもう、俺の知ってる団長じゃない………
そう決断すれば身体はなんとか動いてくれた。
「わぁぁッッッ!!!」
型も何もあったもんじゃない。団長に向かってただ我武者羅に剣を振るう。
だけどそんな太刀筋が通用する筈がない。
「もう。大人しくしててください」
俺の斬撃を軽くいなし、こちらの体勢が崩れると
もの凄い速さで突きを繰り出してきた。
目前にまで迫る団長の剣先。
必死で身体を捻るものの、体勢の崩れた俺にかわせる道理もなく。
「ぎっ!!?」
あっさり直撃し、激痛と共に俺の世界は暗転した。
最終回のつもりが予想より長くなってしまったのでここで一旦切ります
次こそ最終回。すいません。
最大級のGJを!!!! 団長オソロシス
>>223 _ ∩
( ゚∀゚)彡 虐殺!団長!虐殺!団長!
⊂彡
>>206 _ ∩
( ゚∀゚)彡 勇者様は泥棒猫!勇者様は泥棒猫!
⊂彡
wktkが止まらねえwww
で、これらはいつアニメ化されるんですか?
団長の壊れっぷりに乾杯。
てかもう200KBって、凄えなぁ。
>>217 仁くんカワイソス、私見だけど感情移入しやすい作品で読みにくいってことはないですよ
詩織さん派なのに奈々さん派に傾きかけてる俺がいる((;゚Д゚)ガクガクブルブル
>>223 団長の心の叫びにワクテカが止まらない。
団長かわいいよ団長
姫様ー(ノA`)
変な蠅扱いのシャロンカワイソス
朝の陽射しを顔に浴びて、私はむくりと起き上がると、少し眠たい目を擦りながらリビングへと向かった。
朝の光が射しこんでいるとはいえ、雨戸で閉ざされた家は薄暗く、もう朝の六時をまわった頃なのにリビングには電気さえついていなかった。
家族はここにはいない。父の転勤に母が付いていってしまったからだ。
普通の神経をしている親なら、耳の聞こえない娘を一人おいて単身赴任などできないだろう。
要するに、彼等にとっては私はその程度の存在なのだ。
私は少し自潮気味に笑い、そのままの笑みを浮かべ、台所へと向かった。
オーブンでパンを焼き、お湯を沸かす。
そして、それらを持ってリビングへ再び戻ると、大きなテーブルに座り食事をはじめた。
三つの椅子が並べられた大きなテーブルには、私ひとりしかいない。
物寂しいように見えるが、私にとってはこれが日常。
逆にアイツ等がいると私の気分重くなるだけなので、一人の空間の方が私には心地よかった。
何よりあの無機質な、まるで空気でも見ているかのように私の存在を否定する目でみられるのが嫌だったから。
アイツ等にとって、私は邪魔者でしかないのだ。
そのくせ、世間の目を気にして、いつもは見せない笑顔まで浮かべて、よく学校行事に参加してきた。
結局のところ、アイツ等は人の前でこそ障害児の面倒を見る優しい親を演じているだけで、仮面の下の瞳に私は入っていない。
昔はそのことで悩んだこともあったが、今はどうでもよくなった。
私は純也くんの瞳の中に入っていればそれでいい。
朝焼けに染まる空と、誰もいない校門。
ずいぶんと早くついた学校のグラウンドでは、サッカー部以外が朝練をやっていた。
いつもの朝は、運動部の朝練が終わった静かなグラウンドしか見ていなかったので、砂煙舞う今の状態に少し違和感を感じた。
しかし、これも日常。
どうやら私の知らない日常はたくさんあるみたいだ。
私は日常の多彩さに少し感心した。
そして、私はそれを横目に見ながら、朝特有のハイなテンションで下駄箱へと向かった。
まだ朝早く、人影のない三年校舎にある純也くんの下駄箱。
今一度辺りに誰もいないのを確認し、その中を覗いてみると、靴の上にちょこんと置かれた可愛らしい便箋が数枚発見できた。
やっぱり。
昨日の明日だし予想していた事なので、特に驚くことはなかったが、何か許せないモヤモヤが胸に募った。
ねぇ、純也くん。こういう事は気を付けなきゃ駄目だよ?
悪い虫がついちゃったら嫌だからね。
私は下駄箱の中から手紙を乱暴に取り出すと、それをクシャクシャにまるめ、鞄の中に突っ込んだ。
やるべきことはまだある、次は教室。
私は踵を返し、朝日でピカピカ光る無人の校内に入っていった。
人一人いない校舎とは、不思議なもので、人混みがない分、いつもの階段や廊下がひどく広大なものに思える。
そして何より、窓から溢れる朝日も、少し埃を被った階段も、果てしなく続くのではと思わせる廊下もとても新鮮に感じられた。
私は腕時計でまだ時間があるのを確認すると、のんびりといつもとは違う世界を満喫しながら階段を上っていった。
私の教室は二階、でも目的は三階。
三階には純也くんの教室があるからだ。
三階階段横にある教室。ここが純也くんの教室。
私はゆっくりそこに近付くと、開けっぱなしのドアから中を覗きこんだ。
中では窓から降り注ぐ光がいくつかの机を照らしていたが、それだけで人影は見えない。私は小さくガッツポーズをとると、その無人の教室へと入っていった。
普通のクラスの教室は私のクラスとは違い、たくさんの机がある。
私のクラスは、いわゆる特別クラスで聾唖の生徒で編成されている。
本来なら聾学校に行くべきなのかもしれないが、この近郊にはそれがない。
そのため、特例として公立学校であるウチの学校に設置したわけだ。
最も、そんな生徒は三学年合計で三十人足らず。
だから、ずっと壁一枚隔てた普通がうらやましかった。
あ〜、そう言えば純也くんの妹も特別クラスらしいわね。
茜ちゃんと言ったかしら?
もしかしたら、何度か話した事があるかもしれない。
普通クラスとの合同行事は少ないくせに、特別クラス同士の行事はやけに多いから。
私は教壇の中に置いてあった座席表で、純也くんの席を確認し、数ある机をすり抜けて純也くんの机へと向かった。
窓側の後ろから三番目、せっかくの窓側のメリットを無効化する柱の横にある席で、ここからは外は見えない。
そのくせ陽当たりは最高で、窓から斜めに降り注ぐ光により、手をのせた机の表面は木のもつ暖かさとは違った太陽の暖かさが感じられた。
……?
加地、カカ、中村、シェフチェンコ、リケルメ……。
目を下ろした暖かい机の上にどこかで聞いた事のある外人の名前や、日本人の名前が書きこまれている。
うーん、純也くんの好きなサッカー選手の名前だろうか?
私はなんとなく机の文字をツーッとなぞり、笑った。
サッカー選手の事はよく分からないけど、純也くんの生活に少し触れた気がして、心の中から沸き上がる嬉しさのようなものを感じたからだ。
さて、誰かが来ないうちにさっさと終らせないと。
しばし感傷ににひたっていた私は、思い出したようにゴソゴソと机のなかに手を突っ込み、一度中のモノを全て出すと、それを机の上に広げた。
そして、一つづつ机の上に広がっているものを調べてみる。
すると国語や日本史の教科書に紛れて、明らかに不自然なほどの綺麗な便箋に包まれた手紙があった。
しかも四通も……。
私は少し苦笑いをすると、その全てをカバンにねじこんだ。
残念ながら想像以上に邪魔者は多いみたいだ。
私はひとつ大きな溜め息をついた。
まぁ、ひとまず手紙を書いた人には申し訳ないけど、全て焼却炉行きね。
純也くんはわたしのモノだから。
やるべきことを全て終らせた私は、机の上に広がるものを整理し、丁寧に机の中に戻した。
何とも言えない圧迫感がさり、事を無事にやり遂げた事による安堵の溜め息がもれた。
しかし、ここから出ようとは思わなかった。
時間はまだあるはずだ。
時間があるのを確認すると、私は純也くんの椅子や机をベタベタとなでまわしはじめた。
純也くんはここで学校生活を送っているんだ。
そう思うと、今まで感じたことのない暖かい気持ちが心の内からジワジワと広がってくる。
その気持ちをもっと味わいたくて机をなで続けていると、ふと机の横にかけてある布袋に気が付いた。
一端なでるのを中断し、手にとってみたそれは意外に重かった。
何だろ、これ?
私は何の気なしに袋に右手を入れ、ひとつだけ中身を取り出してみた。
出てきたのは左胸に"兵藤"と刺繍のしてある体操着。
そしてそれは心なしか湿っているような気がした。
ドキドキドキドキ。
自然と心臓が脈打つペースを上げていく。
それほど今、私の右手にあるモノは魅力的で刺激的だった。
ドキドキドキドキドキドキ。
顔がカーッと熱くなっていく。
そして、その熱い顔のままでキョロキョロと辺りを何度も確認した。
誰もいない……。
これ、もらってもいいよね?
次から再び純也視点です。
小ネタを入れるので長くなる寒感。
前作と比べて円香の可愛さが大増量
そしてキング加地を真っ先に持ってくる辺りが素晴らしいw
恋の始まりに理由は存在しない。
誰かがそんな事を言っていたような気がする。
小学校の頃、一人の男の子と席が隣同士になった。
出会ってみてわかった。その子はとても優しいが、とても筋が通っている。
正確には、いつも筋を通そうと努力している。
自分が正しいと思う時は決して退かない、自分が間違っていると気がついた時は一生懸命謝る。
当然の事だけど、私が知る限りそれを貫いているのはその子だけだった。
それでいてその子はとても優しい。
昔の私は割と物忘れが多い、失敗も多い、要は鈍臭かった。
その子はいつでも少しだけ怒って、そして最後には必ず笑ってくれた。
教科書を見せてくれた事もあった、一緒に謝ってくれた事もあった。
私は少しでも恩を返したかった。
一生懸命に失敗を減らしていって、男の子が喜ぶような事をなんでも学んでいった。
そしたらその子は、ちゃんと褒めてくれた。
私がその子を好きになるのに、そう時間は必要無かった。
恋はいつだって理不尽だ。
私はそう思う。
私の想い人には…倉田健斗には…恋人がいる。
三ヶ月前から、部活の先輩と付き合っている。
倉田君に好きな人がいると知ったのは、それよりもずっと前だった。
はっきり言って私は油断していた。
その理由は二つある。
倉田君の見た目は割と平凡だし、その良さを見極めるには相当注意深く見ていないとわからない。
勉強もスポーツもかなり目立たない。
現に過去において倉田君に告白を慣行した女子は一人もいなかった。
もう一つの理由は、好きになった相手がかの有名な黒崎先輩だった事だ。
噂によれば、黒崎先輩は異性同性を問わずとてつもなくモテる、だが一度たりとも恋人を作った事はないらしい。
彼女に告白して玉砕しなかった人間は一人もいないのだ。
以上二つの理由から、私は油断していた。
どうせ玉砕するのなら、手出しをする必要は無い。
いっそのこと失恋した直後に上手く立ち回れば、倉田君との関係を今度こそ改善できるかもしれない。
そんな事を考えていた。
でも…現実は非情だった。
倉田君は嬉しそうに…本当に嬉しそうに私に報告してきた。
「恋人が…できたんだ」
なんでもっと早く倉田君に告白しなかったんだろう。
私は嘆いた、そして大声で泣いた。
まるで全身が涙で浸されたかのように私は泣いた。
後で聞いた話だと、家中に私の泣き声が聞こえたらしい。
いっそのこと学校をやめてしまおうかと思ったが、それはできなかった。
これ以上倉田君との接点が減るのは耐え切れなかったし、倉田君はいつものように笑ってくれていた。
そんな微笑を見ている間は、私はどんな時よりも嬉しく感じる。
でも…倉田君と会える時間は大きく減った。
休日に遊びに行く事はできなくなったし、昼食を誘う事もできなくなった。
もっとも、昼食を一緒にする事なんて滅多に無い。
私の女子高生としての面子のような物が邪魔したからだ。
高校生にもなると男子と二人っきりになるのは恥ずかしいし、下手をすると友達が減るかもしらない。
そんな事情が私を躊躇させていた。
もしこんな事になるとわかっていたら…恥も外聞も捨て去っているだろうに…
私にできる事は後悔する事だけだった。
あの時にああしていれば…
あの時にああしていれば…
幾多の妄想が産まれた。
幾多の後悔が産まれた。
幾千万の…夢を見ていた。
私にできる事は嫉妬する事だけだった。
教室まで迎えに来る黒崎先輩を。
倉田君にお弁当を渡す黒崎先輩を。
照れ隠しに関節を捻る黒崎先輩を。
あんなにも倉田君の近くに居る黒崎先輩を。
私はこんなにも惨めな立ち位置に居るのに…
黒崎先輩は何もしていないのに…
ただ告白されただけ、ただ好かれただけ。
私と違って…
でも…天は私を見捨てなかった。
二ヶ月もした頃、倉田君がなんとなく黒埼先輩を避けているような気がした。
最初は気のせいかと思った。
だけどそれは少しづつ確信に変わっていった。
早い話、私は倉田君を諦めてはいなかった。
だから私は今までと同じように…いいえ、今まで以上に倉田君の挙動に注目していた。
だからわかった、倉田君の顔から少しづつ…本当に少しづつ嬉しそうな顔が消えていってた事に。
私は今更ながら決心した。
もう恥も外聞も関係ない、私は倉田君が欲しい。
そしたら胸のモヤモヤが嘘のように晴れ渡り、気がついた時には言っていた。
「倉田君、たまには私と一緒にお昼を食べない?」
倉田君は少しだけ驚き…少しだけ悩んだ後に…こう言った。
「うん、良いよ」
幼馴染の名前には一切触れずに完成。
これの続きは仮名で書いていますけど…
以下チラシの裏
保管庫の管理人様へ。
不撓家第九話のサブタイトルは『記憶』です。
『出会い』は第十話のサブタイトルです。
それと夕食のシーンの天野の台詞「不撓さん、お醤油取ってください」ですが、
良く考えたらハンバーグにソースは使いませんでした…
この部分を「不撓さん、ソースを取ってください」に変更しておいていただけませんでしょうか?
>>232 ちょwww
純也はもしかしてミランが好きなのか?
>>232 高校生にもなって机に落書きするなんてキチガイな要素あるなw
アリマテア王国から程近い国の、とある街の一角。裏通りの真ん中で一人の男が斬殺されていた。
相変わらず惨い殺し方だな……
思わず目を背けたくなる。
「どうやら武器商人のようですね。
アリマテアから亡命してきた例の事件の関係者みたいです」
死体の身元を割り出してきた兵士が上司にメモを読み上げながら報告した。
「そうか。となると今回もどこか近くに犯人がいるってことだな」
「どうします?捜索しますか?」
「馬鹿言え。あんな化け物、相手にできるかよ」
部下の提案を慌てて却下する上司。
「この事件はな、専門に追ってる人間がいるんだよ。
追跡はそいつに任せて俺たちは現場検証担当だ」
そこでちらりと俺を見た。どうやらお呼びらしい。
少し離れて様子を見ていた俺は二人に近づく。
「あんた本当に大丈夫なのか?」
俺への信用はゼロ。
まぁ当然か。事件の度、俺は彼女を取り逃がしている。
その辺りの話は噂で誰もが知っている事実だ。
「問題ない。それに多分、今日で最後だ」
「はぁ?」
その上司の疑問の声は無視して俺は歩き出した。
そう、今日で最後。虐殺事件に関わったとされる貴族や武器商人たちはもう全員、この世にいないのだから。
どうせここからそう遠くない場所で俺を待っているんだろう。別段急ぐ必要もない。
姫様が殺されて丁度一年が過ぎた。
あの団長の刺突で死んだと思ったが、どうやらなんだかんだ言っても手加減されていたらしい。
俺は右目を失ったものの、命に別状はなかった。
国王陛下もあの晩、団長に暗殺された。
国内は先の戦争の英雄が乱心したと騒ぎになったが、次いでフォルン村の真実がまことしやかに囁かれるようになると
彼女への人気は更に高まった。今では尾ヒレがついて王も事件に何か関わっていたのではないかと言われている。
あれから団長は虐殺事件に加担した者を次々と殺害していった。俺に許してもらうために。
だけどそれは民にとって、腐敗した王国政治を粛清する高潔な人物に見えるらしい。
団長を『救国の戦姫』と呼んでいる者はもういない。
今の彼女の二つ名は戦争を引き起こした罪人を容赦なく惨殺するその姿から、畏敬の念を込めてこう呼ばれている。ブラッディ・マリィ、と。
一方俺の方は、王国に団長追跡の任を任せられている。民から見れば俺の方が悪者なのだろう。
名声のために故郷を売り、かつての上司を殺そうとしている大罪人として罵られている。
これでいい。責められるべきは俺なのだから。
国内は現在ガタガタだ。新たな王を迎えて何とか立て直そうとしているが、例の事件が明るみになったせいで国民の反感が強すぎる。
国民が革命を起こすのも時間の問題だ。
そんなこと今の俺にはどうでもいい話だが。
しばらく歩いていると急に視界が開けた。
「墓地か……」
その墓地の真ん中で彼女が俺を待っていた。今の俺たちにお誂え向きな場所だ。
「団長」
「あははっ。おかしいですよ、ウィル。私もう騎士団長じゃないのに」
狂った瞳。俺は一年間、この眼だけを追ってきた。
俺が捨てた復讐心を拾って彼女は狂ってしまった。
一年奔走したが、とうとう団長を正気に戻すことは出来なかった。
「終わりにしましょう。もうあなたが殺したい人間は居ません」
そう言いながら抜剣した。
「そうですね、私も正直疲れました。全部殺したのに結局ウィルは許してくれませんでしたし。
他に許してもらう方法も知りません。だから――――」
俺に続いて剣を抜く団長。
「あなたを殺してゆっくり愛してあげます。これでずっと一緒ですね。ふふっ」
嬉しくて悲しい。
こんなに俺を愛してくれているのに俺の声は届かない。
恐らくこの戦いは一撃で決まるだろう。
一年間随分と苦労したが最後はあっさりした終幕になりそうだ。
向き合いながら同時に剣を構えた。
そこで団長が何か思い出したように。
「あ、最期にひとつ言い忘れてました。
ウィルがこの一年間、私だけを追ってきてくれて、私だけを見てくれて凄く嬉しかったですよ。
ありがとう」
その言葉を最後に俺たちの殺し合いが始まった。
一気に二人の距離が縮まる。
お互いの心臓を狙って交差する二本の剣。
避けられるはずの俺の突きを団長はかわさなかった。
命を刈り取らんと急所に向かって突進する切っ先。
それが心臓に到達する直前、俺は確かに聞いた。
『愛しています、ウィル』
致命傷を与えた手応えと心臓を破壊される痛みを感じながら、思う。
俺の告白に笑顔で答えてくれたキャス。
いつも俺に飛びついて甘えてきた姫様。
嬉しそうにプレゼントを受け取った団長。
―――――――結局俺は、最期の最期まで何も守れないんだな………
END A 『咎人たちの末路』
以上でAルート終了です。
次回は選択肢に戻り、Bを選んだ後からスタート。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
(´・ω・)ウィルキングカワイソス
>>241 非常に残念ながらイスラム圏などの一夫多妻をとっている国では
基本的に女同士は仲が良いものらしい。
まあ、例外がどれだけあるかは知らないがw
ぐっじょぶっ!
団長素敵過ぎ。やっぱり最期は殺し愛だよね
Bルート期待
投下します
仁くんに抱いてもらったあと私は出入り口である人を待っていた
来た・・・・・奈々ちゃんだ
奈々ちゃんは私を確認すると少し顔を俯けた
「どうして・・・・ここに?」
「わかっているよね?」
彼女は仁くんの記憶がないのをいいことに騙したんだ
けれど彼女はまるで開き直ったかのように笑みを浮かべた
「あなたの・・・・・あなたのせいじゃないですか!」
その言葉に私は一瞬で言葉を失った
「あなたのせいで仁ちゃんは記憶を失った!大怪我までした!あなたに私にそんなこという資格があるんですか!」
思わず奈々ちゃんの頬を叩く私
奈々ちゃんもひるまずに私の頬を叩いた
「私がどんな気持ちで仁ちゃんと接してきたかわかりますか!どんなに想っても仁ちゃんはいつもあなたを見ていた・・・・・嫉妬で狂いそうになった日もありました!その気持ちがあなたにわかりますか!」
乾いた音が辺りに響く
先ほどよりも大きな力で頬を叩かれた
「私だって・・・・苦しいんだよ!」
仁くんが私のせいで・・・・考えただけでも怖くなる
だって私は自分が死ぬよりも仁くんを失うことのほうが怖い
だから・・・・・私は・・・・・
>>245 なるほど、2ルート見た後に第三の目が開眼するのですね。GJ。
後ろめたさがないわけじゃなかった
でも、この人はいつも私を見下したように見ていた
仁くんは私の物なのよ〜って毎回毎回
どれだけ私が嫉妬したかわかりますか?
いまあなたが味わっている嫉妬を私は長い間一人で耐えていたんです
ようやく回ってきた私の至福の時間を誰にも邪魔なんてさせない
仁ちゃんは私の物なの!
「私はあなたを許しません・・・・仁ちゃんを傷つけたのは香葉って人だけど、私はその
人の次にあなたを許しません!」
詩織さんの顔が悲痛に歪んでいく
私はなおも続けた
「もう、私は我慢するなんて・・・・しません!」
そうだ・・・・私はもう引けないところまで脚を入れてしまっている
後悔はないむしろ幸福のほうが強い
だから邪魔なんてさせない
「私は仁ちゃんを必ずあなたから奪い取ります・・・・必ず!」
そう言うと詩織さんは私の頬を思い切り叩いてきた
そしてファーストコンタクトしたときと同じように無言で睨みつける
あのときの私には唖然とすることしかできなかったけど今は違う
私は叩き返してやると詩織さんも叩き返してきた
「私がどれだけ仁くんを想っているのか知っていてよくも!」
「言ったでしょ!あなたにそんな資格ないって!」
「うるさい!泥棒猫!」
詩織さんらしくない声
私らしくない声が病院の前に響く
「泥棒猫で結構です!私はもうあなたに遠慮なんてしません!」
「どれだけ私が仁くんのことで苦しんでいるのか知っていて・・・・・よくも!よくも!」
「あなたがすべていけないんです!すべて!」
「うるさい!」
もう詩織さんの頬は真っ赤になっている
私の頬も同じだろう
「泥棒猫のくせに!私の仁くんを!」
「何度でも言います・・・・あなたにそんなこと言える資格はありません!」
でもお互いに引かない
私たちはもう引き返せない場所まで来てしまったから
完璧人間詩織がやや押し負けている
奈々が優勢ですが・・・・
物語も最終章に向けて徐々に進んでいってます、当たり前ですが
このままの投下の速さで来週あたりに完結です
まだまだ続きますがお付き合いください・・
>>234 少し棘が抜けたかな?
これから以前のように残虐な彼女になっていくのか・・・・
>>238 自分はどちらかというと泥棒猫派になりやすいので
彼女には期待しております
>>245 切ないラストでした・・・・
Bルート楽しみに待ってます
すごく今更なつっこみだけど、仁くんに一言
>>215 >記憶を失う前の俺は最低の二股野郎だったってことだよな?
奈々に偽の事情説明を受けたのに言われるがまま抱いたって、今のほうがもっとダメじゃんw
とりあえずアビス氏GJです。この激しい口論を待っていた!
はい、私もそこはつっこみ入ると思いました・・・・
つっこみが入ったら書こうと思ったので・・・・言い訳じゃないですよ?
記憶のない、誰の言葉を信じていいのかわからない・・・・
自分の記憶は二人と関係していたと言っている
必死な詩織を混乱した仁は抱いてしまいました
先の話の展開上こうするしかなかったんです
私の力量不足です・・・・はい
なんか書きかたが変ですね
昔の記憶がなくて、フラッシュバックした記憶が二人と関係を持っていたと言っている
どちらの言葉も嘘だとは思えなかった・・・・
混乱する仁に詩織が迫ります・・・・
仁にはああするしかありませんでした
はっきりしないまま詩織を抱いてしまったことを含めて彼は自分を最低野郎と罵ったのです
記憶喪失でヘタレにグレードダウンって思ってたw
そうでなくては修羅場は成立しない。
修羅バロスww
投下します
『この話はあくまで外伝です
本編とはあまり関連性はありません
少しつながりますが
基本的に関連性はありません
この話は補完の話です』
詩織さんに東児・・・・そしてもう一人
俺には幼馴染の女の子がいた
あれは俺が中学一年の時だ
入学してから半年・・・・
季節はずれの転校生は小さな頃に海外へ行ってしまった幼馴染の少女だ
「お久しぶりですね・・・・仁さま」
青い目と金色の髪
詩織さんと並んでも見劣りしないその少女は小さく笑って再開を喜んだ
実の話俺はこの子に恋していた
大好きだった・・・・ずっと一緒にいたいと思った
けれど幼い俺の願いを現実は残酷に砕けさせた
彼女を失った心の隙間を埋めてくれたのが詩織さんと東児だった
「どうしてこんな時期に戻ってきたの?」
彼女の家は資産家で有名な旧貴族の末裔だ・・・・
そんな彼女に出会ったのはまだ俺が幼い頃
公園の前でおお泣きする彼女を見たのが最初の出会い
一緒に遊んで・・・・・家までつれて帰った
高田さんが彼女を見て驚いていた
すぐに彼女の迎えがやって来てその日は分かれた
数ヵ月後・・・・
当然彼女が俺の屋敷の近くに引っ越してきた
それから詩織さんや東児と遊ばない日は毎日彼女と遊んだ
夕暮れ・・・・彼女と歩いた夕暮れがいまも深く心に残っている
「あなたに・・・・また逢いにきたんです」
俺はこのときなぜ彼女が少し悲しそうに笑んだのかわからなかった
このとき俺がそのことに気づいていたのなら・・・・あんなふうに・・・・
終わらないで済んだのかな?
「お帰り・・・・・リース」
彼女の笑顔は俺の太陽だった・・・・・
久しぶりに再会したあの人は昔のままで私を迎えてくれた
うれしかった・・・・・そして・・・・悲しかった
夕暮れの帰り道
私は5年ぶりに彼と帰り道を歩く
でも5年の距離はできていた
手を繋ぐこともできない
この五年間は私にとってこの時間のためがんばってきた時間
だから・・・・・勇気を持とう
私は彼の手を握った
夕暮れの帰り道・・・・
これが最後かもしれない帰り道・・・・
仁さま・・・・私は今を生きています・・・・
あなたと共に・・・・
あれから三ヶ月が経った
詩織さんや東児・・・・そしてリース
何気ない時間を俺はなによりも大事に思っていた
それと同時に想いがよみがえる
彼女に対する恋心が・・・・
俺がそれを認識しだしたときだった
高田さんが俺にこう告げた・・・・
『彼女は不治の病なんです・・・・』
え・・・・・いまなんて?
彼女が・・・・病気?
そんな素振りなかった・・・・・はずだ
絶望と悲しみの中で俺は・・・・
なにもできずにただ呆然とするしかなかった・・・・
どうしてかな?彼の・・・・仁さまの私を見る目が少し変わってきた
もしかして・・・・気づかれてしまったの?
私の時間がもうないことを・・・・
本当は学校に通うなんてできない身体・・・・
でもこの五年間私は必死に耐えた・・・・
この運命を呪ってはない・・・・
だってこの短い人生になる私に仁さまは光を灯してくれたから
恋?愛?そんなものはもうとっくに超えています
私は彼の一部・・・・彼の所有物
幸せですよ・・・・あなたとの時間は私にとってどんなものよりも
慈しむを感じる時間です
ある日私は仁さまの前で倒れた・・・・
もう時間なのかもしれません・・・・
この五年間、私は一筋の希望を目指して病魔と必死で戦いました
その五年間の結果がたった三ヶ月です
こんなことなら、この病気を死を・・・・受け入れてあなたと共にいればよかった
でも・・・・この三ヶ月間とても楽しかったです・・・・
彼女は笑んでまるで枝のような細い腕を持ち上げて俺の頬にその手を重ねた
まるで生を感じさせないその手に俺は絶望と
彼女の笑顔に希望を見た
そして決心した
この気持ちを伝えよう・・・・
そう思って俺が病室に脚を踏み入れた時だった
「え・・・・・」
彼女は寝ているかのように息絶えていた
なんだよ・・・・・どうしてだよ・・・・
「俺は・・・・キミが!リースが好きだったんだぞ・・・・・俺は!」
護りたかった・・・・俺にはなにもできないのに・・・・
「ずるいだろ・・・・好きも言わせてくれないのかよ・・・・なぁ!」
返事はない・・・・
ずるいだろ・・・・俺はキミに・・・・伝えたかったんだ
好きです・・・・
FIN 『好きですが言えなくて・・・・』
なぜ仁があそこまで自分が誰かを護ろうとするのか
奈々が言っていた悲しいや辛いを知っているの意味は?
その補完の話です
この経験から仁は失うことを何よりも恐れるようになりました
なぜこのときに投下したのかは・・・・あまり意味はありません
つっこみや不思議に思ったことわからないなどありましたら気にせず聞いてくださって結構です
出来る限りお答えします
ここでQ&Aやるんじゃなくて、できるだけ謎や疑問が残らないように
作品内で描写してください。
そうはしていますが、やっぱり伝わらない部分もあると思いまして
こういう、過去編は主人公とかの心情とかを掘り下げる意味でも
大事だと思う。とても、GJ!!だと思った。
これからも、がんばってください。
* * *
『モカ』
校門で士郎君はっけーん!
小走りで近づいていくと言われる前に頭をおろして来る。よしよし、わかってきたじゃないか。
ほっぺにチュっと。
ん? 改めて士郎君の顔を見れば表情が激変している。怯えている。
原因は何かと士郎君の視線の先、私の真後ろを向けば――「や、涼子」そう言いながら自分の顔が少し引きつっているのが自覚した。
涼子は私なんか見えない聞こえないといった態度で士郎君の襟首を掴んで歩き出していた。士郎君は荷馬車の子牛の如く引っ張られるまま引っ張られていく。
あぅ、私の士郎君返してー
「お義姉さん、弟さんを僕にください。僕は本気です。必ず幸せにします」
おどけて見せるがムスっとした顔で涼子は士郎君をグイグイ引っ張って駅のホームまで来ていた。
さっきから何言っても涼子は聞こえない見えないといわんばかりに無反応。士郎君は文字通り震えつつ落ち着かない目で涼子の顔色をうかがっている。
そうこうやっているうちに電車がやってきて、涼子は士郎君の襟首を掴んだまま電車に乗り込んだ。
「……ひょっとして怒ってる?」電車に乗り込む前に涼子に尋ねてみる。
返事の代わりにキツイ視線が飛んできた。
――マジギレ?
背筋を冷たいものを這いずり上がって脳天まで昇り上がり体温を二度ほど下げる。無意識のうちに足が二歩程下がっていた。
全身が固まっている中、電車の中ドアが閉じられた。
ああん、士郎君――
次の電車が来るまでの間暇なので一人で考えることにした。
バレても、ちょっとぐずったり、ネチネチ文句言ってきたり、根掘り葉掘り聞いてくるとかは想像してたけどあんな態度を示すとは想定外だった。
あれって黙ってたからじゃなくて士郎君が相手だから怒ってたのかな。そうだとすると涼子って結構ブラコンだったのかな。
まあ、あの様子だと今晩はこってり絞られるのかな。
そして手錠、うん革手錠、色は黒。それでベッドに拘束されて夜明けまでヒイヒイ言わされて、士郎君は「ごめんなさい、ごめんなさい」って何度も泣きながら嘆願するけど――いや、ギャグボール咬ませているから声は上げられないのか。
あと首輪――首輪か、やっぱりネコは鈴付だよね。耳と合わせて尻尾もつけるべきか。
……いけない、変な妄想して涎が少し出てた。
――まあ、冗談はおいといて今晩一晩は士郎君はこってりと問い詰められて、しばらくネチネチとからかわられるのか。
* * *
『涼子』
減速Gを感じ始めたので、つり革を握る手に力を込める。
「言いたいことがあるなら言ったら」
シロウは顔をそらし私を見ようとしない。それでいて何か言おうとして顔をこちらに向けるが結局やめて口をもごもごさせてから視線を下に落とした。
最近ずっとそうだったが昨日の一件でさらに悪化した。
「嫌いなら嫌いってハッキリ言いなさいよ!」
電車の中だというのに勝手に語気が荒くなってくる。何事かと視線が集まってくる。
「……違う……」
顔は俯けたまま、電車の中であるという事を考慮してもか細く、聞き取るのがやっとの声だった。
既に電車は止まってシロウの後ろのドアは開いている。一つ前の駅ではあるが士郎をホームへと蹴り飛ばしていた。
無遠慮な目を向けてくる輩は睨み返すとすぐさま視線を逸らしていた。
* * *
『智子』
いつもの学校から帰り道だった。
土手に誰かが寝そべっている。制服からしてうちの学校の男子。
――士郎だ。
辺りを見回してみるがあの人は見当たらない。
大きく二度深呼吸した後ゆっくりと士郎へと近づいていく。
「……隣いい?」
――いいんだよね、友達とこうするぐらい。
「あ――いいけど……」
一度だけこっちに顔を向けたけど直ぐに寝そべって空へと視線を向けていた。
ゆっくりと士郎の隣に腰を下ろす。
「何しているの?」
「……ちょっと考え事」
無造作に投げ出されている士郎の左手に躊躇いがちに私の右手が伸びてゆく。
「――付き合っている人の事?」
「……ちょっと違う」
――私の事考えていたらいいのに。
士郎の手の上に私の手がそっと重なる。顔を見ていられず、私も空を見上げた。
――握って。心のなかでそっと囁く。心の声が届いたのか指が絡み合う。
手が熱い、脈打っている。まるで心臓がもうひとつ手に出来たみたい。もしこれが本当の心臓なら私達ずっと離れられない。いつまでも一緒にいなきゃいけない。なんでそうならないんだろう。
「なんか……こうして一緒にいるのって随分久しぶりな気がするな」
「……そうだね」
恐る恐る士郎の方を見れば、頭を空と川へ数回行ったり来たりした後、二度頷き小さく呟いた。「――オレそろそろ帰る事に決めたから」
士郎の手から力は抜けていた。
「あ、うん……じゃあ明日学校でね」
私の方から手を離す。わがまま言っちゃいけないよね……
「うん……学校で」
そう言って士郎は行った。
まだ右手が熱い。士郎の熱が残っている。
徐々にではあるが右手にあった士郎の熱が消えつつある。その手を見ながら歩いていたら電柱にぶつかった。
隣の塀から無遠慮に伸びたエンゼルトランペットが私を見下して馬鹿にして笑っていた。なんでこいつはこんなに高く伸びるのに上を見ないのだろう。
――上から見下ろすのってどんな気分なんだろう。
<チラシの裏>
落としどころ模索中。案だけなら三つぐらいあるけど
うまくまとまらない
</チラシの裏>
モカさんがかわいすぎる件について
モカさんはホンマに義姉のオアシスやで。
まあ、どろどろグツグツの方が好きなんだけどね。
モカさん、かわいいよモカさん。
そして、智子もかわいく見えてきた今日この頃。
なぜかモカさん>>>>>姉>智子という人気になっている件についてミカが嫉妬
そしてモカさんの人気に俺が嫉妬
モカさんの可愛さに惚れた
密会の場所は校舎裏を選んだ。
「はぁ…やっぱり持つべき物は料理の上手な友達だねぇ…」
「倉田君は相変わらず大げさだねぇ…」
でも…こんな光景は何年ぶりだろう…
私の隣に倉田君が居る。
たったそれだけで心が躍る、たったそれだけで胸が燃える。
それに倉田君は最近笑顔が少ない。
私に向ける笑顔は元より、私以外の人に向ける笑顔もだ。
だからこそ…こんな些細な微笑が何よりも尊い。
「ねぇ最上…ちょっと愚痴を言っても良いかな…」
倉田君がそっと呟いた…
私はもう一度思った…天は私を見捨ててはいないと。
実は最初からこの話題に持って行けない物かと考えていた。
倉田君から笑顔が消えた理由を聞いてそれを何とかすれば…
いいえ、場合によっては聞くだけでも、私の評価は上がるハズ。
そんな自分でも呆れる程に利己的な事を最初から考えていた。
それが私は何もしていないのに倉田君から喋り始めた…私は天の意思を感じずにはいられなかった。
いいえ…もしかしたら初めから倉田君は私に愚痴を聞いて欲しかったのかもしれない。
私に救いを求めていたのかもしれない。
助けなきゃ…私が…
私にしかできないから…
あんな女には…できないから…
「私で良かったら…力になるよ…」
「うん…ありがと…」
倉田君は…ゆっくりと言葉を紡ぐ…
「実は…先輩がね…」
案の定と言うか…その内容には黒崎先輩が関わっていた。
でもそれは決してノロケなんかじゃない。
やっぱり倉田君は黒崎先輩に不満を抱いているんだ。
やっぱり黒埼先輩じゃ役不足だったんだ。
そう思うと闘志が湧いてきた。
「本当はこんな事言っちゃいけないと思うんだけど、最近ちょっと重圧みたいなのを感じてるんだ…」
「そうなの…」
顔では心配そうな表情を作りつつ…本当は大笑いしたい気分でいっぱいだった。
「例えば毎日作ってもらうお弁当」
「美味しくないの?」
「いや…前はともかく今はそうでもない」
…ちょっと残念。
「じゃあ何が不満なの?」
そう、それが(私にとっては)一番重要なのだ。
倉田君はかなり深刻な顔をして…
「おかずが僕の嫌いな物を狙い撃ちしてくる…」
「うわぁ…」
それは…かなり切実だと思った…
自分で言うのも何だけど、私は倉田君の好みは熟知している。
だけど黒崎先輩はそんな基本的な事すら心得ていないみたいだ。
「行きも帰りも一人歩きさせてくれないし、寄り道もできないし…」
さらに愚痴っぽくなってきた…
「なんか電話とかメールとか多いし…しかもほとんど意味無いし…」
な…なんか倉田君のキャラが変わってる気も…
「急に他人の部屋に押しかけるし…勝手に掃除を始めるし…あまつさえエロ本の隠し場所を暴くし…」
痛い…理由は不明だけど胸が痛い…
「しかも全部が日を追う毎にエスカレートするし…」
倉田君が私にこんな発言をするのは初めてだった。
それだけ…追い詰められてたんだ。
「………」
「最上…」
私は…倉田君を抱きとめていた。
「ごめんな…こんな話聞かせちゃって…」
「謝らなくて良いよ…」
「………」
「………」
「最上…」
「どうしたの?」
「この体勢恥ずかしんだけど…」
「わっ!?」
慌てて体を引き剥がしてしまう。
どうも未だに私のプライドと面子が邪魔をしているらしい。
まあ…いいや。
勝負を急ぎすぎるのも良くない。
…次の日。
私は黒崎先輩を打倒する策を導き出すために、必死に頭を回転させていた。
そんな時だ、友人が私にとんでもないニュースを伝えてくれた。
「ねぇ可奈、知ってる?」
「何の話?」
「3年の黒崎先輩がね、大怪我して入院したんだって」
「それ…本当にっ!?」
「本当だって、何週間か学校も休むらしいよ」
この時、私は確信した…天は我に味方せり。
天の道を往き、総てを司る。
…言ってみたかっただけです。
意地と根性の更新。
もうすぐ冒頭の別れ話のシーンに辿り着きます。
ちなみに分量的にはやっと不撓家一話分。
先は長い…
君が願うこと〜なら〜全て〜が現実になる〜だろ〜
>>275 モカさんの可愛さが神クラスなんですけど。
陸崎さんが教室を出ていって数秒、クラスは緊張に包まれていた。クラスメイトは気不
味さと恐怖に黙り込み、華は今にも暴れだそうと体を震わせ、僕に至ってはあまりの出来
事に思考を遥か銀河の彼方まで飛ばしている状態だ。
と言うか、あれが僕の初キス。
どうしよう。
取り敢えず僕は華を抱えて椅子に座るとシャツの下に手を滑り込ませて、滑らかなお腹
を撫で始める。今日も抜群の感触の肌は、触れていて快い。
普段はこれで大分機嫌も直るのだが、今回はいつもより強く抱き締めた。
少しでも気にくわない事があると、周囲の人間を際限無く傷付ける。それが華のあだ名、
『殺戮姫』の所以だ。『暴君』と似ているが、あちらはルールを守っていて、華はノール
ール。それが二人の違いだろう。
それから三分程して、机と椅子を持った陸崎さんが戻ってきた。
「よう旦那、さっきは悪かったね。流石に初めてって事は無いと思うけど、そっちのお嬢
ちゃんには悪い事したなと思ってさ。ま、私の初物って事で許してくれよ」
ヘラヘラと笑いながら、よく喋る。
だけど、その勝負ならこちらの得意分野だ。
「僕の周りでのルールを言ってなかったね。悪いけど、半径2m以内に近付かないでくれ
るかな? それが友好関係の第一ルールだ」
陸崎さんはどっこいしょと僕の後ろに机を置くと、しかし椅子に座らずに僕を向いた。
恐らく、さっきのように華が攻撃してくるのを警戒しているんだろう。
「最初に無理って言わなかったっけ? 興味が湧いたら一直線に走っていく、それが私の
あだ名『疾走狂』の所以だよ?」
「それこそ距離を取らないと。道やゴールが無かったら、走るものも走れない」
多分、この言葉さえも時間稼ぎにしかならないだろう。こんな目をしたタイプは、勝手
にルートを決めてつき進む。さっきからの僅かなやりとりでも分かるが、陸崎さんは馬鹿
じゃないから尚更危険だ。
「それに、何で僕なんだ? 他にも沢山良い男は居るだろう、例えば…勇二」
僕の声に、勇二が顔をこちらに向けた。浮かんでいる表情は、巻き込むなの一言だ。
「あれは女子だろ? え? 嘘? 男?」
「どうだい?」
僕は薄笑いを浮かべて陸崎さんを見たが、視線は既にこちらを向いていた。
「アレは無し、彼氏が彼女より可愛いくてどうすんの。それに一目惚れって言ったでしょ、
旦那の存在に惹かれたの」
かなり厄介な上に、しつこい。本当に偏執的な性格らしく、一目惚れとは思えない程に
食い下がってくる。成程、僕の後ろの席にも着くわけだ。
「それこそ無理だ。僕の隣は華の名義で、墓穴の中まで予約済みだよ。それにキスも、僕だって初物なんだから許すことなんて出来ないね。せっかく、華の成人まで取っておいたのに」
気は進まないが華の御機嫌取りも兼ねて、強攻手段に出る。この方法を使うと一週間は
依存が酷くなるのであまり使いたくなかったが、背に腹は変えられない。
これで諦めてくれるかと思ったら、完全に予想外だった。
「そうかぁ、えっと…華ちゃん以外には?」
ヘラヘラと笑いながら、近付いてくる。
「予約殺到中でね、僕はこれでもモテるんだ」
主に変人にだが。
「だから、大分並ぶよ?」
「だったら先頭まで走っていくさ、それが『疾走狂』だからね」
駄目だ、今の彼女には言葉は通じない。
僕は溜息を吐くと、
「とにかく僕に嫌われたくなかったら、離れて離れて」
以外にもこの言葉が効いたらしく、陸崎さんはあっさりと距離を取った。
腐りきっても、根っこの部分は乙女らしい。
これは、使える。
僕がそう思って陸崎さんを見ると、その視線は下を向いていた。
「ところでさ」
「うん?」
「さっきから気になってたんだけど、何で華ちゃんの腹を直撫でしてんの?」
お前のせいだ、という言葉を飲み込むと僕は笑みを作り、
「これをしてると、気分が落ち着くんだ。最高の触り心地だぜ、他の誰にも触らせたくな
いから分からんかもしれんがな」
華を刺激しないように、落ち着かせるため、とは絶対に言わない。それに、この言葉は
僕の本心でもある。他の誰かが触っていることを考えるだけで、気分が悪くなる。
「へぇ」
陸崎さんは唇の端を歪めると、華を見下ろした。
それに気が付いたのか、気持ち良さそうにしていた華は顔を上げると、
「何見てるんだ、この泥棒猫。見せ物じゃないぞ」
表情を厳しくして、陸崎さんを睨みつける。
逆に陸崎さんは、表情をヘラヘラとしたものに戻すと、
「泥棒猫ね。その名前も良いんだけと、私にゃもう、『疾走狂』って名前があるから頂けないね」
「容量の少ない奴だな」
「まぁね、ひひひ」
そう言うと、陸崎さんは独特な笑い声をあげた。
本当に、よく笑う娘だ。
「まぁ。その代わりにささやかではあるけども、『疾走狂』の名前にふさわしい働きをし
てみせるよ。昼休みを楽しみにしておきな」
そう締め括って、陸崎さんは席に着いた。
華を抱えて授業を受け、昼休み。授業中、教師が溜息や疲れた視線を送りながらも注意
をしてこなかったのは、悲しむべきなのか、喜ぶべきなのか。陸崎さんを含め、クラスメ
イトが何か諦めきった悟りのような表情をしていたのもいろいろ考えるべきなのだろう。
華だけは始終御満悦で、それだけは嬉しいことだ。
『女』が『喜』ぶと書いて、『嬉』しい。
閑話休題。
僕たちは超満員の購買に居た。今日は二人とも寝坊をしたので、僕も華も弁当無しの状
態だ。それに手を差し延べたのが陸崎さんで、朝の詫びにとパンを奢るつもりだったと言
われて僕たちはのこのこと着いてきたという話だ。
「混んでるねぇ」
楽しそうに陸崎さんが笑いかけてくる。
確かに今日はいつもより人は少ないが、それでも多過ぎるので僕は入っていけない。僕
の胴体にしがみ付いている華が原因で上手く歩けないし、何よりあんな沢山の人に囲まれ
たら暴走した華によって一瞬で地獄絵図だ。
どうすんの、と言おうとして隣を見ると、何故か陸崎さんは準備運動をしていた。
そして5m程下がると僕に向けて笑いかけ、
「危ないから端っこに寄ってしゃがんで」
嫌な予感がして、僕は言われた通りにした。
次の瞬間、陸崎さんは一瞬で加速するとそのままの勢いで壁を疾走。窓枠を踏み切り台
にして跳躍し、先頭に居た男子生徒にドロップキックをしつつクッションにして着地した。
化け物。
その一言が頭をよぎる。
「おまたせ」
帰りはモーゼのように人垣を割りながら悠々と歩いてくる。
パンを華に放り投げながら、
「どう? 少しは凄いでしょ」
少しどころではない。
華が指紋を拭き取ったパンを受け取りながら、僕は視線で訊いた。
「昔は『偏執狂』だったんだけど、陸上にハマった時に頑張りすぎてこんな事まで出来る
ようになったのさ。それ以来、私のあだ名は『疾走狂』。心配しないで、それとも残念な
のかな。下にはスパッツ穿いてるから。夏にはムレて困るぜ」
言い終えると、ヘラヘラと笑いながら教室へと向かっていく。
僕は、とんでもない奴に目を付けられた。
今回はこれで終わりです
他の神々様はまともな修羅場作品を書いているので、
自分は色物を書こうと思いました
どう見ても言い訳です
本当にありがとうございました
予想外のSF物と呼んでいいのかわからないが能力者の話で
今からどうなるか楽しみでたまらない
そして華派として華を先物買いしておくっす
変人達の修羅場か、新しくて面白いな
俺はM?の後輩派を宣言しときますね
ちょっと異名多すぎないか?
何回も自分の事を異名で呼ぶのも違和感が…
それを含めて変人か
今更だが、『レモネード(仮)』の登場キャラって動物だよな?
主人公→狸
幼馴染み→?(狐?熊?)
先輩→犬
後輩→ハムスター
てことは、臭いフェチの先輩は純情な牝犬になってくれるんでしょうか(*´Д`)ハァハァ
リオの村に入ると一人の少女が駆けてきた。
「おかえりなさい。リオ!」
そしてリオに向かって抱きついた。 其の光景を見た瞬間、頭の血管が切れそうになるかと思った。
「ただいまコレット」
そして小娘を優しく抱きとめるリオ。
そんな光景にはらわたが煮えくり返りそうになるのを押さえながらどうにか平静を保つ。
事前にココに来るまでの道のりでリオに幼馴染の恋人がいることを聞いてたから心の準備ができてたから良いようなものの、そうでなければこの場でこの小娘を切り捨てていたかもしれない。
「あら、コチラの方は?」
私の存在に気付いた小娘はリオに問いかける。 私の心のうちなど知らないリオは其の小娘、もとい幼馴染に私を紹介した。
「ああ、紹介するよコレット。 この方こそ探していたこの混沌とした暗闇の時代を打ち払う勇者様、セツナさんだ」
リオがそう言うと小娘は瞳を輝かせ
「本当!? 素敵! ついに現れたのね伝説の勇者さまが!」
そして私の手をとり更に口を開く。
「勇者さまお願いします。 是非其のお力でこの世界をお救い下さい」
私を見つめる其の瞳は見るからに素直で純真でヒトを疑う事を知らないと言った感じ。
私がリオを想ってるなんて露ほどにも思っていないのだろう。
とりあえず私は笑顔を作る。 リオの前で取り乱した嫉妬丸出しの顔なんか見せれる訳ないからね。
「ふふっ、そんな畏まらなくったって良いわよ。 あと、勇者さまじゃなくってセツナって呼んで」
今のところは本音なんか出さない。
「分かりました。 セツナ様」
「様も要らないわ」
焦る事は無い。 時間はたっぷりと有る。
「え、でもそんな……」
「じゃぁお友達になりましょ」
「え、そんな良いんですか?」
「勿論よ。 だってあなたは、私にとって大切な仲間であるリオの大切な人なんですから」
とりあえずこの場は小娘に譲っておいて上げる。
「ありがとう! よろしくね。 セツナ!」
そう言って小娘は笑顔で答えた。 本当、疑う事を知らない素直な性格ね。 それならコッチはそれに合わせて策を練らせてもらう。
「コチラこそヨロシクね、コレット」
それまでは小娘、いえ、当分の間はコレットって呼んであげる。 その時が来るまでの間はお友達で居てあげるわ。
ココまで前回の補足分
リオからこの世界の事を教えてもらって分かった事の一つ。 人間ってやつはどこの世界でもそう変わるものではないらしい。
この世界に魔王が現れた切っ掛け。 それは一つの王家での色恋沙汰に端を発しているらしい。
其の国の王位継承者でもある第一王子に嫁いできた花嫁。 コレが大層美人だったらしく第二王子までもが惚れてしまった。
どうしても花嫁を手に入れたいと望んだ其の第二王子はあろうことか悪魔の力に頼った。 悪魔を引き入れ結果邪魔者の第一王子を消す事に成功したものの、事はそれで終わらず悪魔たちはその機に乗じて国の全てを乗っ取ってしまった。
一人の女を巡る騒動が国家を滅ぼし、果ては魔族までをも引き寄せてしまったと言う事。 どこの世界でも傾国の美女と言うやつはいるらしい。
そしてその日以来そこは魔族の侵略拠点となり、城は魔王城と化し現在に至る。
更に付け加えるとこの世界には幾つかの王家が――国家が存在している。 そして魔族によって乗りっ取られた国はその中でも最大の勢力を誇る宗主国であった。
この事実は他国に野心をも抱かせることになった。 すなわち魔王を打ち滅ぼした国は次なる宗主国となれる、と。
愚かな事である。 その様な野心のぶつかり合いのお陰で一つに纏らねばならぬはずの人間同士がばらばらで結果魔族の思う壺。
其の各国の思惑はやがて私の冒険にも影響を与えることになる。
最初の頃は私の事をどの国も信じてなどいなかった。 それも当然であるこんなどこの誰とも素性の知れない女の事など誰が信じる。 まぁ別に信じて欲しかったわけじゃないけど。 実際今まで何人もの偽者の『伝説の勇者』が現れてはことごとく散っていたらしいのだから。
それが一変したのはある日のこと。
「この塔に魔将軍がいるのね」
「ハイ、魔王の腹心の部下の一人――魔将軍ウォドゥス。 今まで何人もの名だたる戦士、騎士、魔導師達を返り討ちにしてきた恐るべき敵です」
私にとって第一になすべき事はやはり打倒魔王。 本音を言えばリオと恋人同士になる事こそ私にとっての最優先事項だけど、とりあえずコレが当面の課題。 共同作業によって絆を深めていくって効果もあるしね。
魔王配下には数人の強力な魔将軍が居て、各々が結界を張っていると言う。 即ちそれら魔将軍を打ち倒し結界を解かない事には魔王城へ攻め入る事も出来ないと言うのだ。
其の手始めにこの塔で結界を張っている魔将軍を倒す為に来たのだ。
「で、どうするの? 正攻法で行くのなら塔に侵入し最上階まで登っていくってことよね」
「はい。 でも塔の中には間違い無く魔物がひしめいています。 それだとおそらく最上階に辿り着くまでかなりの消耗が予想されるでしょう。 果たしてそこまで私の魔力が持つかどうか……」
私は塔を見上げた。塔には幾つもの窓が見える。
「ねぇ、リオ。 あなた飛翔魔法使えたわよね。 それであの窓まで飛んでいって中に進入できない?」
そう、リオが使える数ある魔法の中には飛翔魔法がある。 それほど長い時間飛べるわけではないが塔の最上階に到達するには十分であろう。 私を抱えれば其の分時間も制限されるがそれを差し引いても多分大丈夫。
「確かに私も出来ればそうしたいです。 ですが以前にも同じ事を試みた魔導師が居たようです。 しかし塔の周囲に飛翔封じの結界が張ってあるらしく試みは無駄に終わったとのことです」
「結界……ね。 でも私達にはこれがある」
そう言って私はアルヴィオンファングを鞘から抜きはなった。
「アルヴィオンファング……。 成る程、試してみる価値はありそうですね」
リオがそう言うと私はニッと笑ってみせる。 様々な力を秘めたこの武器には魔封じや結界を無効化する力も幾らか備わっている。
さすがにこの塔が魔王城を護る結界を無効化するほどの力は無いみたいだが、それでも若しかしたら飛翔封じぐらいは無効化出来るかもしれない。
私はアルヴィオンファングを装備した右手を高く掲げた。 そしてリオは片手を私の右手に沿わせ、そしてもう片方の手で私の肩を抱く。 体を密着させた状態でリオは意識を集中させて詠唱を始めた。
直ぐ耳元で唱えられる其の詠唱の響はどこか神秘的で、まるで遠い異国の唄のように私の耳に心地良く届き陶酔感すら感じさせる。 僅かに感じられる吐息が少しこそばゆく、でもとても心地良い。
やがて詠唱が終わると足元から地面の感触が少しづつ消え、やがて私達の体は上空に向かって一気に急上昇する。
「やった! 成功よ!」
私は思わず歓声を上げた。
「ハイ! このまま一気に最上階に突入します!」
そしてダイレクトに最上階の魔将軍の間に突入!
「魔将軍ウォドゥス覚悟! 其の命貰いうける!!」
目の前で玉座に座るモンスターに向かって私は叫んだ。 策が上手く運んだ事と、先ほどまでリオと密着してたお陰か私のテンションは異様なまでに昂ぶっていた。
「人間風情ガ図ニに乗リオッテ!! 返リ討チニシテクレルワ!!」
モンスター――魔将軍ウォドゥスは咆哮を上げた。 その容貌は装飾の施された鎧に身を包んだ角の生えた漆黒の人狼と言った風体。 そして燃え滾る石炭のような眼は並みの騎士や戦士など一睨みで呑まれてしまいそうなほどの眼光と威圧感を放っていた。
成る程、流石に魔将軍と呼ばれるほどの魔物。 容貌、そして其の身から発せられる威圧感からして今までのモンスターとは訳が違う。
だがコチラの体力も気力もリオの魔力もほぼ満タン! 加えて異様にテンションも昂ぶっている! 全く負ける気がしない!
私は床を蹴って斬りかかった。 合わせてウォドゥスも抜刀する。 人間の戦士なら両手で扱うような巨大な剣を片手で軽々と振り回す。 おまけに其の剣速も並じゃない。 完全武装の重戦士でも真っ二つに出来そうなほどだ。
周囲を見渡せば白骨に混じって真っ二つにされた鎧が転がっている。 確かに今まで誰も敵わなかったのも頷ける。
だけど私だってこの世界に来たときの自分じゃない。 これまでに幾多の死線を潜り抜けてきたんだ。
剣撃をくぐりぬけ懐に飛び込み様に一閃! アルヴィオンファングがウォドゥスの鎧を切り裂き瞬間鮮血がほとばしる。 だが浅い。
「キサマァッ!!」
ウォドゥスの顔に驚愕と怒りの色が浮かぶ。 おそらく鎧の強度に相当自信があったのだろう。 刻まれた幾多の細かい刀傷から幾多の剣戟を防いできたことが伺える。 だが如何に強固な鎧もこのアルヴィオンファングの前では無意味。
自信と誇りを傷つけられたのか、逆上したウォドゥスの剣速が更に速度を増した。
そのスピードにかわすので手一杯になってきた。 チョットヤバいかも。 そう思った瞬間かわし損ねて体勢をくずしてしまった。
私が体勢を崩した其の隙をウォドゥスが見逃す筈も無く大剣を大きく振りかぶった。
だがウォドゥスが大剣を振り下ろそうとした瞬間其の顔面に火球が炸裂した。 其の拍子に今度はウォドゥスに隙が生まれる。
「ナイスフォロー! リオ!」
私は其の隙を付きウォドゥスに一撃を加えその場を離脱する。 致命傷には至らなかったものの今度のは結構深く入った。
完全に私に意識が集中してたウォドゥスにリオは完全に意中の外だったのだ。
「ギ、ギザマァァァ……!!」
腹から血を滴らせ怒りの眼で睨むウォドゥス。 苦痛と怒りに顔を歪ませ腹の傷を押さえている。 形成は完全にコッチに傾いた。
「ふふっ、作戦通りっ。 さぁ! 一気に畳み掛けるわよ!!」
「はい!」
そして私は刃を構え一気に切り込む。 合わせてリオも火球を打ち出す。
「オノレ! オノレ! オノレェェェ!!!」
咆哮を上げ怒りをあらわにして大剣を振り回すウォドゥス。 だがその剣速は鈍り、更にはリオの魔法攻撃が気になって意識の集中も乱れている。 結果私の剣撃が一撃、また一撃と傷を負わせていく。 そして……
袈裟懸けに一閃。 私の放った渾身の一撃はウォドゥスの体を真っ二つにした。
遂に倒した! 今までの雑魚とは明らかに違う魔王軍の幹部クラスの強敵を!
「やったよ! リオ!」
私は嬉しさのあまりリオに向かって駆け出した。 この瞬間を、この喜びをリオと分かち合いたい! 抱き合って全身で喜びを分かち合いたい! だけど次の瞬間……
「危ない! セツナ!! ヤツは未だ……」
「え……?」
あろうことかウォドゥスは真っ二つにされ頭部と片手だけになったその体で、其の残った片手で跳躍して襲い掛かってきたのだ。 完全に虚空をつかれた私は反応できない。 やられる! そう観念した。 だが……。
「くっ……」
「リ、リオ?!」
リオが咄嗟に身を呈してかばってくれたのだ。 だが其の結果リオの肩にはウォドゥスの牙が深々と……。
「う、うわあああぁぁぁ!!! リオ!! リオ!! この犬畜生がああぁぁぁっっ!! よくも! よくもリオにいいぃぃぃ!!!」
大切なリオを傷つけられた怒りで逆上した私は、リオの肩に喰らい付いてる犬畜生に向かって刃を突き刺す。 顔面に刃が深くのめりこみ其の衝撃で目玉が血飛沫と共に飛び出す。
「離れろ! はなれろ!! この犬畜生がああぁぁっっ!!」
私は立て続けに犬畜生の頭に向かって刃を付きたてる。 そしてやっとリオの肩から外れると其の頭に向かって思いっきり踏みつけた!! 何度も!! 何度も!!
「落ち着いてくださいセツナ! ボクなら大丈夫ですから!」
リオに抱きすくめられ私は我に帰る。 足元にはミンチになった犬畜生の首だったもの。 そして其の血と脳みそで穢れた私の足……、そんな事は今どうでもイイ! リオ! リオは?!
「リオ! 大丈夫なのリオ!!」
「はい、私なら大丈夫です。 だから……」
そう言ってリオは微笑んだ。 本当は物凄く痛いくせに、それなのに私に心配かけまいと……
「全然大丈夫じゃないじゃない!! ああ……肩からこんなに血が……! 私の、私のせいで……。 あああぁぁぁぁ!! ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! ゴメンナサ……」
「だから大丈夫ですってば。 ほら……」
そう言ってリオは自分の肩に回復魔法を掛け始めた。 柔らかな光がリオの肩の傷を癒していく。 やがて光が消える。
「治った……の? もう……痛くない……の?」
「ハイ。 もう大丈夫です。 だから……うわっ」
「良かった! 良かった……! もしリオの身に何かあったら、私、私……。 うわあああぁぁぁぁ〜〜ん!!!」
私はリオに抱きついた。 そしてその胸で思いっきり泣いた。 そしてそんな私をリオは優しく抱き返してくれる。
「ありがとうございます。 そんなにも心配してくださって……。 それよりもセツナ。 貴方の方こそ血まみれじゃないですか」
「平気よこんなの。 ただの返り血だもん……」
「駄目ですよ。 女の子なんですから。 綺麗にしないと」
そう言ってリオは私の顔にかかった血を優しく拭ってくれた。 やっぱりリオは優しい。 そしてそんなリオが……私はやっぱり大好きだ。
「大分綺麗になりました。 さ、残りは帰ってから落としましょう」
だから……必ず手に入れてみせる。 リオの愛を。
「さ、胸をはってください。 英雄の凱旋です。 今まで誰も倒せなかった魔将軍を倒したんですから」
そう言って優しく微笑むリオ。
「うん、そうだね」
そして私も笑顔で応えた。
この日から世界の私を見る目が変わった。 魔将軍ウォドゥスを倒した。
ウォドゥスは魔王軍全体から見れば其の地位はせいぜい中間管理職程度のヤツだったのだろう。
それでも今まで何人もの名だたる戦士、騎士、魔導師達を返り討ちにし、無敗を誇っていたウォドゥスを倒した事は、皆に私を勇者と信じさせるに十分であった。
To be continued...
時間は深夜、時計は既に二時を示している。満月が照らす明るい月夜に、街灯の下で二
人の少女が肩を並べて歩いていた。
それだけなら普通の光景だが少女達の場合、それとは異なる点があった。
武器を持って歩いている。
小柄な方は刃渡りの長いナイフを持ち、もう片方は鉄パイプを持って歩いている。
「この時間に会うのは久し振りですね」
「まぁな。落ち着いてきたと思ってたんだが、久し振りにカッと来た。人殺しでもしない
とグッスリと眠れない。誠が隣に居るのに、だ」
「転入生、ですか」
誠を『御主人様』と呼んでいる少女、宮内・さくらは溜息を一つ。
「厄介ですね。頑張って下さい」
「そっちこそ。虫の駆除は良好なのか?」
「最近は警察も厳しくて」
さくらと華は同時に肩を落とすと、大きな溜息を吐いた。
暫く無言で歩き、十字路に着くと立ち止まる。
「それじゃあ、精々頑張れ変態」
「『奴隷』ですってば。そっちこそ殺戮も程々に」
さくらと華は軽口を叩くとお互いに背を向けて、歩き始めた。
一人になったさくらは、鉄パイプを引き擦りながら、深夜の散歩を再会する。本当なら
ば警察の目が厳しい今、不自然な音をたてて歩くのは自殺行為だ。そもそも今の状態は見
付かった時点で即通報だし、この独特な音だけでも非常に危ない。しかし、それを理解し
ながらも止めないのは、彼女を突き動かす目的が有るからだ。
住宅の多い部分を抜け、安心している彼女の視界に人影が映った。
「あれは…」
その姿を確認して、さくらの体が歓喜に震えた。
人影の名前は、陸崎・水。今のところの最大の的で、それを見付けた自分に天は味方を
していると確信した。幸いにして人影も無いし、近くに寂れた駐車場もある。
「こんばんは」
さくらは笑みを浮かべると、明るい声で話しかけた。
「こんばんは」
水はヘラヘラと笑いながら返事を返す。
「ちょっとお話しませんか? こんな良い月夜に独りは寂しくて」
「ごめんね、早く帰らないとアイスが溶けちゃうからさ」
さくらは鉄パイプで強くアスファルトを打ち鳴らすと、
「そう言わずに、少しだけでも良いので」
「へぇ、そういう事か。そうだね、この辺りに開けた場所はあるかな? 夜道で女子高生
が立ち話なんて、危険すぎていけない」
無言で、しかし満面の笑みで歩き出すさくらに水は黙って着いていく。
数分後、二人は野外駐車場へと来ていた。
水はヘラヘラと笑いながら、
「理由は? さっき言ったのは無しだ」
「そうですね、『御主人様』に近寄りすぎたからです」
「ごしゅじんさま、ね。変態め」
「変態じゃなくて『奴隷』ですよ」
数秒、二人は短く笑い声をあげる。
一瞬。
高速で何何度も振り下ろされる鉄パイプを、ジャージのポケットに手を入れたまま水は避ける。
「剣道何段?」
「ちびっ子剣道クラブで、三日間習っただけです」
言葉と共に突き込まれる鉄パイプ。
水はそれを蹴りあげると、そのままの勢いで後方回転飛び。更に着地した身を上げ、さ
くらの間合いの中へと滑り込む。
「危なッ」
追撃をするように飛んできた左フックをしゃがんで避けると、足払い。立ち上がり、仰
向けに倒れたさくらの腹上で、いつでも振り下ろせるように足を固定する。
り込む。
「危なッ」
追撃をするように飛んできた左フックをしゃがんで避けると、足払い。立ち上がり、仰
向けに倒れたさくらの腹上で、いつでも振り下ろせるように足を固定する。
「んで、ごしゅじ…あ、成程。でも、これはバレたら嫌われるんじゃないか? 他にもや
りようがあるだろ? それに直接旦那に手を出さないの?」
動けない状態のさくらは、しかし笑みを浮かべ、
「それなりに頭は回るみたいですけど、馬鹿ですねアナタ。どんなに強い思いを持ってい
ても、直接的には触れ合わない。それが『奴隷』のたしなみですよ。そして主が気付かな
いまま事を終えるのが一流というものです」「成程、そんなもんか。で、何で旦那なんだ? って聞くまでもないか。眼、だな」
「そうですね、あの人は華さん以外、誰も見ていない。そこが良いんです」
さくらは鉄パイプを捨てると軽く身をよじり、
「もう攻撃しないので、足をどけて下さい」
水はさくらの上から足を外すと、助け起こして座らせる。
そして、袋に入っていたアイスを一つ渡し、
「旦那とはどんな出会い方?」
さくらはアイスを受け取りながら、
「長くなりますよ」
構わない、といった表情で自分のアイスを舐め始める水を見て、さくらは溜息を一つ。
「あたしは自分で言うのもアレなんですけど、頭も良くて、運動も得意です。容姿にも自
信がありますし、正直負け知らずだったんですよ」
この高校に入ってからは化け物ばかりで、すぐに間違いだと気付かされたんですけどね、
とさくらは苦笑を浮かべてアイスを舐める。
「それでも、そんな人達からも高評価だし、周りからは相変わらず好意や嫉妬、羨望の眼
を向けられていたんです。調子に乗っていたあたしは、この高校の化け物が集まる人の噂
を聞いて近寄っていったんです。最初は驚きました。何もかもが、平均より若干上なだけ
の人なんですよ。なのに、あの人はまるで他の人を見下しているどころか、眼中にすら無
かったんです。その視線でどん底に落とされたあたしは、あの人を遠巻きながらも崇拝す
るようになりました」
どん底になると、上しか見えませんから。周りの全てが幸福で良いですよ。
とろけた表情でアイスにかぶりつくさくらを見て、水は苦笑を浮かべた。
「成程ね。じゃ、次。何でこの方法なの? 正直、辛いだろ?」
さくらは少し考え、
「呪いって、どんなシステムか分かりますか?」
水は数秒呆けた表情をすると、次の瞬間には笑いだした。
「んな非科学的な」
逆に、さくらは溜息を吐いた。
「それは、非科学的な考え方をしているからです。呪いっていうのは、例えるなら爆弾みたいなものですよ」
困惑した顔で見てくる水に、さくらは苦笑で返し、
「例えば、熱心な仏教徒が仏像を傷付けたら、その人は困りますよね。逆に、アマゾン奥
地の人は、そんなの気にしません」
「そりゃそうだ。アマゾン奥地の人から見たら、ただのオブジェだからね」
「その三日後に怪我をしたら、仏教徒の場合は祟りだと思うかもしれません。しかし、アマゾンの人が怪我をしても、本人はただの事故だと思うわけです」
「成程ね。関係のない複数の現象を関連付けさせる意識が、あんたの言う呪いの本質か。
そして、意識が爆薬で現象が起爆剤。それで引き起こされる感情が爆発、と」
「そう、そして今は爆発中なんですよ。殺人でも、あの人の為だと思えば快楽の極みです」
暫く水は考えていたが、やがて立ち上がると自分のものとさくらのアイスの棒を袋に入れて歩き出す。
数歩進んで振り返り、
「いや、勉強になった。あと一つだけ訊きたい事があるんだけど」
「何ですか?」
「旦那のあだ名って何かな? 交流には周知のあだ名が必要だ」
さくらは苦笑で、
「聞かない方が良いと思いますよ? 仲良くしたいなら尚更。日常で呼べませんし」
「そんなに酷いの?」
「『毒電波』」
お互いに苦笑をして、眼を反らす。
「それじゃあ、また今度遊ぼう。殺人も程々にな。私も昔ハマったけど、良いこと無いよ?」
ひひひひ、と笑いながら去ってゆく水の背中を見て、さくらは呟いた。
「しまった。今日は誰も殺してない」
太陽が昇りかけていた。
今回はこれで終わりです
これは能力やSFの無いほのぼの学園ラブコメです
今回も前作みたいな舌先三寸ばかりの予定です
一部、文章がカブる凡ミスがありましたが、忘れてください
投下します
「私は・・・・あなたにだけには負けません」
「うるさい!私は・・・・・私は苦しんでるの!」
仁ちゃんを傷つけたこと?
違うよ・・・・あなたのそれは後悔の念じゃないの
「違いますね・・・・あなたはそうやって仁ちゃんに慰めてもらおうとしています」
ずるいヒト・・・・・
「自分だけをって・・・・・そうやってあなたは仁ちゃんを縛り続けてきたんです」
「違う・・・・・違う!」
否定しても無駄ですよ・・・・・
だって仁ちゃんは忘れません・・・・
心ではあなたに非はないとわかっていてもその恐怖までは拭いきれません
「あなたを見るたびに・・・・仁ちゃんは思い出しますよ?」
赤と狂気の笑顔を・・・・
「あなたが無力だから・・・・仁ちゃんを傷つけた」
「違う・・・・違う!」
違うしか言えないんですか?
「ただ自分に言い訳しているだけじゃないですか・・・・・ふふ」
「仁くんを惑わす・・・・泥棒猫!」
今度は罵声ですか?
芸の幅が広いんですね・・・・
ああ、あれほど遠く感じたあなたとの距離が今は微塵も感じませんよ
もうあなたに大きな顔させません・・・・
ようやく同じ舞台に立てたんですから
私はこの舞台のヒロインなんです
あなたはただの当て馬なんです
私と仁ちゃんが愛し合うのは運命なんです
泥棒猫の言葉が私の心を射抜いていく
「仁くんと私は小さい頃から一緒だったの!」
「だからってあなたのものじゃないでしょ?」
どうしてあなたはそんなに冷静でいられるの?
無償に腹立たしくなってきた
「私はあなたの知らない仁くんを知ってる・・・・・私が一番仁くんを・・・・」
「いつまでそうやって・・・・仁ちゃんを束縛する気ですか!」
な・・・・・・そんなこと・・・・・
「あなたはいつもそうです・・・・仁ちゃんを所有物かなにかと勘違いしていませんか?」
そんなことない!そんなことない!そんなことない!
「私は純粋に仁くんを・・・・」
「自分勝手に仁くんを振り回わしていただけでしょ?」
「違う!違う!」
そんな訳ない私の自己満足なだけじゃない・・・・
「仁くんは私を愛してくれた・・・・」
「私だってそうですよ?」
まるで悪びれる様子もなく泥棒猫はそう言った
「あなたが仁くんを騙してしたことでしょ!」
そうだ、この泥棒猫が一番に悪いんだ
私も仁くんも悪くない・・・・全部・・・・全部
「仁ちゃんがそういう人じゃないってあなた・・・・わからないんですか?」
どうして・・・・・そんな風に堂々としていられるの?泥棒猫のくせに!!
「うるさい!泥棒猫!」
もう私は自分を忘れていた
小さな雨粒が頭上から降ってくる
まるでこの口論を止めるかのように・・・・
これだけ本音をぶつけたのってはじめてかも
「うるさい!泥棒猫!」
綺麗な容姿に似つかわしくない荒げた声で私を罵声する
「仁ちゃんは私を抱いてくれました・・・・どうしてだと思います?」
なんで黙るんですか?わかっているのでしょ?
「仁ちゃんは好きでもない女を抱いたりなんてしません・・・・記憶を失っていても」
「違う・・・・仁くんの記憶がないことをいいことに・・・・あんたは!」
「あなたのせいで仁ちゃんは大怪我をした!記憶まで失った!いつまで自分を正当化する
気ですか!」
「うるさい!黙れ!この泥棒猫!」
小さな吐息があたりを包んだ
ぽつぽつと降り出した雨がまるで泣いてるかのように私たちを濡らした
まるで私たちの口論をたしなめるかのように雨は降る
いつか・・・・雨は止む・・・・
でも、また雨は降る・・・・
雨から逃げるには深い海に身を沈めるしかない
雨はそれでしのげる・・・・
けれどもう抜け出せなくなる
その中に私といま目の前で私に銀色の刃物を向けるヒトは身体を沈めてしまった・・・・
もう、逃げられない・・・・私は確信した
奈々の方が物事を深く見そしてうまく突くことができます
この場に彼は登場せず・・・・なわけありません
次章で今頃かよの仁くんが荒波に飛び込みます
>>275 智子が動きだした・・・・モカさんとの対決も近いかな?
>>284 なんか幼馴染のこの子の方が可愛い・・・・
>>297 修羅場的にはまだ嵐の前の静けさ・・・・かな?
この先どうなるのか期待しております
>>308 なんかみんなすごい変人・・・・もとい個性的な方々ですね・・・・
すばらしい
トリップてすと。
レモネード(仮)の作者です。
埋めネタのつもりが何か妙に気に入ってしまったので、
一応続きっぽいものが存在しますが、投下した方がいいですか?
展開は例の三人がぶつかり合ったり噛み合ったりですが
>>阿修羅氏
タイトルを付けて頂けるのでしたら、
「たぬきなべ」
でお願いします。そんな感じの内容ですので
自分で投下したいなら投下すればいい。
つーわけでカモーンщ(゚Д゚щ)
OK。いつでもこい。
私は一向に構わん!
ばっちこーい
現状を再確認してみよう。
場所は昇降口。
時刻は放課後夕暮れどき。
抱きつき魔の後輩に囚われて、周囲の視線がマジ痛い。
其処へ現れた救世主、生まれた頃からのお付き合い、毎朝昼晩と美味い飯を作ってくれる幼なじみ。
アイコンタクトなど朝飯前の間柄。
現在の僕の困った状況、こやつなら何とかしてくれるに違いない。
そう思い、幼なじみに目配せを。
しばし、ぽかん、とこちらの様子を眺めていた幼なじみだったが、僕の目配せに気付いた後には、すぐに歩み寄ってきていた。
つかつかつか、とつま先を叩き付けるような足音が響いたかと思うと、
がつん、と。
四角く硬い学校指定の黒鞄で、後輩の後頭部を殴りつけていた。
……はい?
目の前で展開された光景が、さっぱり欠片も理解できない。
いきなり人を殴ったのに、怖いくらいに無表情な幼なじみ。
いきなり頭を殴られたのに、振り向くどころか手の力を緩めようとすらしない後輩。
なにがなんだか、わからなかった。
ぎりり、と後輩の抱きつく力が強くなる。
息が詰まり、軽く咳き込む。
それを見た幼なじみが、後輩の襟首を、ぐい、と掴んだ。
「ねえ、たっくんが困ってるの。離れてくれないかな?」
「…………」
「離れようよ。ほら、みんな見てるよ。恥ずかしくないの?」
「…………」
「離れてよ。離れなさい!」
激高した幼なじみが。後輩の髪の毛を掴んで引っ張った。
ぶちぶちぶち、と髪の毛の千切れる音がするも、後輩は一向に抱きつく力を緩めない。
僕はといえば、天地がひっくり返ったかのような展開に、眼を白黒させるだけである。
なんで、幼なじみはこんなに怒っているのだろうか。
なんで、後輩はこんなにも意固地になっているのだろうか。
僕の知る限り、幼なじみは人当たりも良く誰にでも優しく接していたはずだ。
僕の知る限り、後輩は人見知りする方で、誰かに強く言われると断れない面があったはずだ。
なのに。
二人は僕を挟んで、まるで牙を剥いているかのような対立を見せていた。
このままわけのわからない膠着が続くかと思われた。
しかし、ふと、後輩が口を開く。
「……なんで、単なる幼なじみの貴女に、そんなことを言われなくちゃいけないんですか?」
後輩のものとは思えない、固く尖った声がした。
「ただの幼なじみなんでしょう? 私と先輩はこういう関係なんですから、見て見ぬふりをすればいいじゃないですか」
言いながら、胸や腰をこすりつけてくる。
普段の僕なら、その甘い感覚に腰砕けにもなりそうだが、今の僕にはそうなれない事情があった。
目の前。
幼なじみの表情が、般若のように歪められていた。
今まで見たことのないその表情に、恥ずかしながら、僕は完全に凍り付いていた。
「こういう関係? ただ階段の踊り場で、写真を見せ合うだけの関係のくせに、そんなはしたない真似が許されると思ってるの?」
あれ?
幼なじみに動物部の活動内容を話した覚えはないはずだが。
「……それでも、“ただの”幼なじみの貴女よりは、私は先輩に近いですよ?」
こんなこと、したこともないでしょう? と呟きながら、後輩は体を僕にこすりつけてくる。
――と。
「ただの、幼なじみなんかじゃ、ない」
その声には、どこか陶然としたものが含まれていたような。
幼なじみは、後輩から目を逸らし、そのまま僕の真正面に顔を合わせ、
「って、ええっ――んぷっ!?」
おもむろに、唇を重ねてきた。
突然のことに頭の中が真っ白に染まる。
ぬちゃり、と舌が侵入してきた。
とっさに頭を引こうとしても、がっちりと後頭部を押さえられていたので離れられない。
舌先で歯茎をなぞられたかと思うと、こちらの舌を巻き込むように絡め取っていく。
つぷ、ぷちゅ、と湿った音を響かせて、幼なじみの舌が僕の口内を蹂躙した。
その舌使いは、とてもスムーズなもので、熟達した技術を伺わせる。
しかし、僕の記憶が確かならば、幼なじみは異性と付き合った経験など皆無なはず。
なのに、この接吻の慣れようは、一体何処で積み重ねられたのだろうか。
後輩が振り向く気配がした。幼なじみの顔しか見えないので、どのような表情をしているのかはわからない。
「いやっ!? やめてっ!」
悲鳴のような声と、ぐいぐいと後輩の暴れる気配。
しかし、幼なじみの顔が離れることはなく、後頭部を固定されたまま、幼なじみの口づけは終わらない。
後輩に抱きつかれていたかと思ったら、今度は幼なじみにキスされています。
誰か助けて。
「貴方達! こんなところで何をしてるの!」
願いが天に通じたのか、今度こそはの救世主が現れた。
救世主は、風紀委員の腕章が似合う、いつも落とし物を届けてくれる先輩だった。
やっぱり今日はラッキーだ。先輩が見回ってくれていて助かった。
学習しない人間などいない
そう思っていた時期が(ry
なんつうか超展開ですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです
先輩に頑張らせたいところです
326 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 22:40:34 ID:AWMEU6Xv
鈍いのもここまで来ると神がかりだ
修羅場に修羅が来た!
さぁ・・・ジャンジャンいこうか・・・
また前後編分けだー。<6>前半ここから5レス↓
――――――――――――――――――――――――――
<6>
胸が高鳴る。
声が、震える。
わたしのための、その背中に。
「山本くんっ!」
「ふ、藤原さん?!」
―――
――
―
今は長き恨みもはればれとなりぬる事の喜しく侍り。
逢ふを待つ間に恋ひ死なんは人しらぬ恨みなるべしと。
又よよと泣くを。夜こそ短きにといひなぐさめてともに臥ぬ。
ええと、『今はもう長い恨みも、』はればれとなりぬる……『晴れた』『ことが嬉しいです』
『逢うのを待つあいだに』……ん〜……『恋い慕って死ぬのは』 人しらぬ恨み――あ、註がついてる。
「ひたすらに待ち続ける女心を知ってくれない、想い人の無情への恨み」
そういう恨みに『なるというものです』 『またよよと泣く。夜は短いと慰めて、』
臥ぬ……。臥ぬ?
「ちぃちゃん、辞書かして」
「ごめん、電子の方はアタシが使ってる」
「里香ちゃん、そっち終わった〜?」
「半分くらい……。なんかもう、文法とか超適当……」
はう〜。
なんとか火曜までには終わりそうかなぁ、こりゃ。
古文の加藤先生が、週末になって急に「和訳二十ページ」なんて大型宿題を出してくれるから。
休日だというのに友達三人で図書館へ繰り出して、朝から缶詰状態。
うちのクラスみんな、今頃ひーこら言いながら同じことしてるんだろうなぁ……。
はう〜。
……。
あれ?
あそこに居るのって……。
似てるけど、でも……。
もしそうだったら――そんなことを考えただけで、心臓がタップダンスを踊りだす。
……うぅ、わたしったら、彼のこといつもかんがえすぎなのかなぁ。
でも、でも、似てる、よねぇ……?
め、めがねめがね。
普段は恥ずかしいからかけないけど、緊急事態だから仕方ない。
えっとぉ、どれどれ……。
「……ねぇ。アレって、うちのクラスの山本?」
う。まー子めざとい。ちょっとムカ。
「あ、山本くんだねぇ」
うん、そう! 山本くんだよう!
どうしようどうしよう、まさかこんなところで偶然なんて。
うぅ、至福姿、じゃない、私服姿なんて初めて見たよう……。
あ、会えないと思ってた日に会えちゃうと、なんか、こう、余計に……。
「リカー?」
「………ど、ど、どうしよう、わたし、どうしよう……」
「里香ちゃん?」
「……や、やまもとくんだよう……」
「あんた何動揺してんのよ」
「……はうぅ……」
そ、そんなこと言ったってぇ。意識しちゃうよう……。
はう〜。会えると分かってたら、ミニスカート穿いてきたのになぁ……。
折角だから、折角だから、一緒に勉強したいなぁ……。
あ、わ、わ、めがねはずさないと、あわわ。
「山本ねぇ〜……。
目立たないというか昼行灯というか、あたしにゃイマイチ印象の薄い奴なんだけどねぇ。
……………わ、わかった。わかったからそんな顔で睨むなって」
まー子には分かんないだよ、山本くんのいいとこ!
……でも教えてあげないもん。
他の子はずっとずっと、山本くんのいいところに気づかないままでいいんだから。
「じゃあ、三人で山本くんの所へ行ってみる? 里香ちゃん?」
「……」
さんにんかぁ。
うぅ、どうしようかな……。
でもまぁ、
この三人なら私が引き立つからいいけど。
「それとも一人で行く? いいよ、アタシらは」
「……」
が、がんばろうかな、かな。
うん、せっかくの神様がくれた偶然だもん。
それに、山本くんとお話し、したいし。えへ。
「んじゃ、頑張れ。アタシらはアタシらでキリついたら帰るから」
「里香ちゃん、ふぁいと〜」
うん、ありがとっ
「エロイことすんなよ〜」
し・ま・せ・ん!
まー子ってば、そういう下世話なことばっか言うんだからっ。
ほんとに、もう、
だから男に相手にされないんだよ。
―
――
―――
「山本くんっ!」
「ふ、藤原さん!?」
駆け足してきたわけでもないのに、心臓がしきりと酸素を要求している。
喉元で交通渋滞でも発生したみたいに、言葉がつかえて出てこない。
はうぅ、毎日顔を会わせているはずなのになんでこんなに緊張してんのー。
「こんなとこで奇遇じゃ〜ん。あ、藤原さんもひょっとして、これ?」
山本くんが手元を開いて、まだまだ真っ白なノートと古文のテキストを晒す。
オーバーヒート中の顔面を扇ぎ冷ますように、コクコクと頷いてみせた。
やあぁ、わたしなに泣きそうになってるんだよう……。
やんやん、山本くん、休日だからってそんなにじろじろ見つめないでぇ。
……ぬ、ぬ、ぬれちゃう……よ……。
……え?
山本くんじゃない? はぁ。
でもなんか、ねっとりとした視線を感じちゃってますけど……。
落ち着いて見渡せば、山本くんの隣りの席で本を読んでいた女の子が、顔を上げてこっちを見ている。
……うわすごい、女学院の子だ。上着脱いでるしベレー帽も被ってないから、わかんなかった。
すごーい、綺麗な子ー。
……。
だ、だからなんなんですかぁ……?
さっきからその視線、痛いです……。
へんな子だよう。あ、あっちいってくださいっ!
や、山本くぅん……。
「え? あぁ、彼女は僕の父方の従妹で、山本梓。あず、僕のクラスメートだよ」
「……こんにちわ」
……なんだ、知り合いだったのかぁ。従妹……ねぇ。
でもでも、山本くんの親戚なら、仲良くなって欲しいかな。欲しいかな。
「はじめまして。藤原里香です」
えへ。
……。
………。
あのぉ……。
どうしてそんな目で、睨むんですかぁ……?
……。
なんだか……。
どこかで感じたことがあるよ、このめつき……。
うん、前に会った山本くんのお姉さんそっくり……。
はうぅ、親戚の人とは仲良くなりたいだけなのになぁ。
やだなぁ。
こーゆーの、やだな……。
山本くんの一族の女性って、こーゆー感じの人たちばっかりなのかなぁ……。
それでそれで親戚で法事があると、ぞろぞろ集まってくるとか……。
どうしようどうしよう。わたしうまく溶け込んで、一緒にお茶汲みとかできるのかなぁ、ちゃんと。
自信ないなぁ……。
……でもでも、がんばるもん。
あー! 山本くんのお母様まで、こーゆー感じだったらどうしよう?
いじめられて、お隣の奥さまに悪口流されて、秋茄子も食べさせてもらえないのかなぁ。
はうぅ……。
あ、でも、この子は父方の従妹だって言ってたなぁ。ひょっとしてお父様の血なのかな、こういうの。
……お父様の方なら……うん、なんとかできそう。
大丈夫、やれるよ里香、がんばろ。
……。
………あ。
え、えっとぉ、あずさ……さん?
……さ、さっきにも増して激しく睨まれると、わたしこわいんですけど……。あの……
や、山本くぅん……。
「……あ? はは……。梓はちょっと人見知りするタイプだから。でも悪い子じゃないから」
そそそ、と山本くんの背中に隠れちゃった私に、彼が小声で教えてくれた。
ふ〜ん、そうなんだ〜。
でもねでもね、
なにこのうざい女、キモっ
………
……
…
「ところで、ねぇ山本くん。宿題すすんでる……?」
ちょいちょい、と山本くんのシャツを引っ張る。
端っこをちょっぴりつまんで、俯き加減に、ほんの少しだけ縋るように引っ張るのがポイントだよ。
「いや、ご覧のとおり。最初の二ページしか終わっていない、このヤバさ」
あ、やっぱり。えへ。
「じゃ、いっしょにやろ? 二人でやれば早く片付くよ」
「えっ……と。でも」
むむむむ。
じゃあ、ちょっと胸元で手をもじもじさせて。上目遣いにして……こんな感じかな?
もう一声。
「……いっしょに、やろ?」
「あ、うん。別にいいよ」
うふふふ。可愛い。山本くんったら、押しに弱いから。
もう。そんなんじゃ、すぐに知らないオネーサンに連れて行かれちゃうなぁ。
……だからって、実のオネーサンに連れて行かれるのもイヤだけど。
ま、それはいいとして。
「あの、それでね、梓さん」
「…………私に、なにか?」
「あの、席……変わってもらえますかぁ……?」
……。
はい。そうです、貴女の座っている席のことですよぉ。
だって、山本くんは閲覧テーブルの端に座っているから、お隣りは貴女の席しかないんです。はい。
お隣りじゃないと、一緒に勉強できませんから。
それにわたし、学校でも山本くんの隣りの席だったりしますし……。えへ。
……。
………あ。
だ、だからそんなにこわいかおしないでください……。
あ、あの〜……。もしかして、おイヤですかぁ?
で、でも梓さん、見たところご本を読んでいるだけですし……。
だったらどこの席で読もうが一緒ですし……。
その、わたし達はノートの見せあいっこして頑張らないと、課題終わりそうにないし……。
………。
や、山本くぅん……。
「あ……はははは。あー、うん。じゃあ僕がそっち側の席に移るよ。
あず、さっきから読書の邪魔してたみたいで、ごめんね。あずはそこで読んでてくれていいから」
わ〜い。山本くんが隣りにきた、きた!
えへ、なんか学校にいる時と一緒だね。
まぁ、それにしても、
ほんっと気が利かないガキだな、こいつ!
<6>前半ここまで。残り5レスは……明日の朝かなぁ。
心の叫びがうまく左端に表示されないと、わけわかんないかも。
里香たん可愛いよハァハァ
はじっこに表示させる為には補完庫収録の際に阿修羅さんにお願いしましょう
<div align="right"> </div>
と言うタグを使ってもらえば多分お望みどおりの表示になるはずです
黒い、黒いぜ
首を長くして待ってましたよ、「山本くん」!
いやぁ、それにしてもヒロインsの何ともいえない個性描写
に脱帽。
「ウロボロスの蛇」亜由美姉さん、幽玄の洗脳者あず、そして
腹黒ブリッ娘里香タソ。
最高です。
レモネード(仮)ってなんだっけ?と思いつつまとめサイト覗いてたら途中で更新されてビックリ
管理人様ご苦労様です。
けど、前スレの『今日もいっぱいして』が無い件
お姉さんも黒いけど、やはりクラスメイトと従妹も黒かったとw
うーん、修羅場の予感がする・・
黒い、黒すぎる
だがそれもまた至福
里香タソ腹黒だよ里香タソ、だが そ れ が い い !
いいねぇ、この淀み具合。実に心地良い。
土日が休めなくてもこのスレの黒い成分で頑張れるよ。
心の声がとても黒い……。
だが、それがイイ!
「うーん……」
結局午後の授業も保健室でおサボり。今日の授業はまともに出てないや。……まあ、いい。何ごとも経験さ!
教室へ鞄をとりに戻る。授業を受けられなかった分、家で神速並に勉強しなければならない。学年の脳を司る俺にとっては大変なことだ。
今日へ近付くと………
「きゃ!ちょっと誰よ〜。こいつロッカーの中に閉じ込めたの。」
「あー、めんどくさいからまた入れ直しとけ。」
あ、忘れてた。いやぁ、あいつも律義に最後まで入ってるたぁ、馬鹿だねぇ。
まあいいや、俺が行っても面倒になるから帰ろう。さらば、鞄。さらば、教科書。
下駄箱に行くと、そこには驚愕せし光景が……
「しんやぁー!」
「おどっ!!」
志穂が居た。早いなぁ。春校から結構距離あるんだけど。愛の力って奴?
ニヤニヤしながら近付く。愛しい奴め。
「な、なにニヤニヤしてんのよ……」
「いや、俺って幸せもんだなぁって思ってね。」
だが、そのとき周囲の目に気付くべきだった。
(ヒソヒソ……おい、晋也の奴、今度は春校の子だぜ?)
(今日のお昼に春華ちゃんといたよな?たらしってやつ?)
いかん、また変な噂が立ってきた。
「いくぞ、志穂」
「わわ!」
半強制的に志穂を引っ張って行く。負けませんよ、ええ、負けません。
しばらく歩いて、人の少ないとこまで来る。うん、ここなら大丈夫だろう。
「ふう、いきなりひっぱって……驚いたわよ。」
「ああ、ちょいと俺の地位が危うくなったからな。」
一段落したと思ったらまた一難。今度は志穂が目の前に立ち塞がった。その(ない)胸を堂々と張り、手を腰に当ててとうせんぼをしている………つもりらしい。
まあ、威圧感なんてのは全く無いが。
「で?今日のお昼は……どういうことだったの?」
「あー……」
よく覚えていらっしゃることで。誠心誠意を込めて説明をする。
「ほ、ほら。お前の弁当箱!からっぽだろ?まあ、確かに春華が隣りに居たがそれは偶然であり、食堂の受付の人をおばちゃんって呼ぶと光にされちゃうんだ。」
「ふ〜ん……」
ええぃ!こうなりゃ強行突破だ。周りを見回す。うん、誰もおらんな。
「まったく、あの烏。いいかげんにどっか……んん!」
不意打ちでキス。かなりディープなやつ。うーん、俺ってやり手だなぁ。
「ぷはぁっ……ちょ、ちょっと!」
「まあまあ、これで許してくれよ。」
「……もう。」
なんとか退けたようだ。
「………ねえ、晋也…」
志穂がしおらしく話しかけてくる。これはめずらしいテンションですね。
「なんだい?悩みならお兄さんに言ってみなさい。」
「うん……実は、明日から修学旅行なんだ。」
「なんですと!?」
「それで……明日から三日間いないから、その………今日泊まってってもいい?」
なぁーる。そういう事か。
「……えっち。」
「な!そ、そんなんじゃないわよ!ただ、私が居なくなって、寂しくなるかなぁ〜って思ったから、泊まってやるっていったのよ!」
「っ!」
ギュッ
不意に、志穂を抱き締めた。なんか……なんか悲しかった。
「居なくなるなんて、言うなよ。……ほんとに寂しくなるジャンかよ。」
「晋也……」
いかん、テンションダウンだ。上げないと。
「いやはや、むらむらしちゃいましたよ。早く子作りしますか。」
「ストレートすぎよ、馬鹿。」
トマトみたいに赤くなっちゃって、かわいい奴め。あまりにもかわいくて、もういちどキスしようとすると………
「あぶなーい!!」
「ごふぅ!」
もろに脇腹に衝撃を食らう。あまりの強さに吹っ飛び倒れ込んでしまう。い、いてぇ。
「危ないところでしたね、せんぱい!この女、まさか催眠術まで習得しているとは。」
「ぐぅ…さすが我が直属の後輩。何のためらいも無くソバットをぶちかますとは。……しかもスカートで。」
「あ・ん・たねぇ!!」
突然の登場+キスの中断により、志穂の怒りボルテージマックス!!!速攻でナイフを抜刀(!?)。
「どうしていっつも邪魔ばかりすんのよ!!」
「なにをいってるですか!!邪魔なのは貴女ですよ!ロリチビ!」
ギャーギャーワーワーさわぐふたり。
……どっちか一人でもいいからおれのこと心配してほしかったなぁ。
348 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 17:35:59 ID:/KhJLdOi
ssうp早すぎ! だがGJ!!!
相変わらず志穂さんの可愛さがぜんぜん衰えていない。GJです。
しかしアレだけ努力しても報われない春華もなんだか……
猛烈アタックにより傍目には恋人っぽくみえる関係
↓
突如想い人のまえに前世女が現れる
↓
ネドラレ
これなんて少女コミック?
雀の鳴き声と電子音が部屋に響き、僕は眠りから覚めた。必要な家具以外は殆んど無い
殺風景な部屋は、必要以上に電子音を大きく聞こえさせる。
首だけ起こして視界に入ってくるのは、いつもと同じ、ワンルームマンションの室内風景だ。
続いて視線を僕の隣へと移す。
「ヨッシャヨッシャ。バッチコ〜イ」
意味の分からない寝言を呟く華を見て、僕は溜息を一つ。登校まではまだまだ時間があ
るので、もう少し寝させても良いだろう。ワイシャツ一枚でしがみ付いているのに、何故
だか全く情欲がそそられない寝姿を僕は眺めた。当然、僕の手は神が作りし逸品であるそ
の愛くるしいぽっこりお腹へ。
「成長してないなぁ」
成長していない、と言うよりは、姿が変わっていない。目線の高さが変わることもなけ
れば、ワイシャツの胸の部分を押し上げるような変化もない。初潮すらも来ていない。
たった一つだけ変化があるとしたら、それは僕への依存が深まったことだけだ。
昔から僕にベタベタとくっついていたが、これ程酷くはなかったと思う。しかし、華が
十歳になった日がきっかけでそれが悪化した。それから考えるともう七年になるのか、と
時間の流れる速さを実感する。
華の両親の蒸発。それで一人になることが出来なくなった華は、引き取られた先の一人
息子である僕に深く依存した。華と僕の両親は昔からの友人で交流があり、華が僕にくっ
つくのを不自然に思わなかったし、僕も嫌ではなかったので仲良くしていた。
そして、気が付いたら重度の依存になっていた。
まるで、十歳の誕生日で止まった成長の代わりとでも言うように。それとも、もしかし
たら華の両親は時間と自制心を持っていったのかもしれない。
「馬鹿馬鹿しい」
僕は呟くと小さく体を揺すり、華を起こす。目が覚めたとき、僕が隣に居ないとパニッ
クを起こすので、華が起きるまではベッドから出られない。
「起きろ起きろ」
「おはよう」
十数秒動かし、やっと薄目を開いた華は小さく唇を動かす。
ここからが大仕事で、寝惚けたままの華を洗面所まで連れていき…
「おはようさーん」
突然玄関の方から、非常識な声が飛んでくる。つい最近聞いた、超聞き覚えのある声だ。
「どうする誠」
すっかり目が覚めたらしい華が眉を寄せて尋ねてくるが、答えは一つだ。
「無視」
しようとしたら、ドアを何度も打撃する音が聞こえてきた。
「あんにゃろぉ」
若い男女高校生の二人暮らしってだけで周りからの視線が厳しいのに、これ以上酷くさ
せてなるものか。しかもマンションの修理費を出したり、大家さんや近所の人に謝りに行
くことの苦痛がどれ程のものか。実際にやってみればもう二度とそんな気は起きなくなる。
僕は酷くなる音を聞きながら、持っていく菓子折りの金額を算段をしつつ玄関に向かった。
除き窓から見ると、やはり陸崎さんだった。
チェーンをかけたままドアを開ける。
「おはよう」
「えへへ、来ちゃった」
「帰れ」
一言言って、ドアを閉めようと…閉まらない!?
視線を下に向けると、ドアの隙間にブーツが超しっかり指し込まれていた。
「大体、何で僕の住所を知ってるんだよ」
「愛の力?」
「よし、帰れ」
「ごめんウソウソ。乙女の秘密スキル、ストーキングしちゃった。テへ☆」
何がテへ☆、か。第一、そんな乙女が居るものか。仮にだが、それが本当に乙女の秘密
スキルだとしたら、僕はこの世界に絶望する。
「誠、どうした?」
「お、その声は華ちゃん」
恐ろしいことに、陸崎さんは鞄から取り出したチェーンカッターでチェーンを切ると、
強引にドアを開け室内に入ってきた。これはもう、積極的の範囲を越えている。
「うわ、華ちゃん。何その格好」
「羨ましいだろう」
僕との身長差が45cmなせいでワンピースのようになっている、僕の着古しのワイシャツ
姿。華はその薄い胸を反らして、陸崎さんを見下した表情だ。
「それにしても、何で華ちゃんがここに居るの?」
「ララブ同棲中だ、だから帰れ」
「それよりも」
急に華の表情が真剣なものになった。
「昨日、いや今日か。鉄パイプに会わなかったか?」
その言葉に陸崎さんの唇の端が歪んだ。
「会わなかったのならまだ良い。今日は機嫌が良いんでな、忠告しといてやる。死にたく
なかったら、二度と面を出すな」
「残念。倒して丸め込んだよ」
二人の間に流れている空気が急に冷たいものへと変わる。しかも、流れを読むと僕の知
らない物騒なことがあり、多分それに僕が関わっているらしい。もしかしたら関わってい
るどころか、僕がその中心かもしれない。
またか。
僕は心の中で溜息を吐き、華を見た。
「…好きにしろ」
「ひひひ、お邪魔します」
数分後。
我が家では珍しく、三人分の朝食が並んでいた。
「いただきます」
もしかしたらだけど、陸崎さんのどこかを華が認めたのかもしれない。僕としては少し
寂しいけれど、これを機に華の友達が少しずつ出来ていくのは正直嬉しい。
「あ、醤油とって」
陸崎さんの言葉にいち早く反応した華は、醤油刺しを取り、
「ほら」
陸崎さんの手に醤油を垂らした。ソースを取ったり、勝手にかけるのは予想していたが、これ以上は予想外だ。
「な」
「違ったか? ボクは醤油と聞こえたんだが、ソースだったか」
「醤油」
「なら合ってるだろ。醤油入りの瓶とは言ってないしな」
軽音。
「ごめんね。醤油を取ってくれたお礼に、蚊を退治したの」
陸崎さんはヘラヘラと笑いながら、華をビンタした醤油まみれの手を拭う。
取り敢えず僕は華を抱き締めながらお腹をさすり、頬を拭い始めた。
今回はこれで終わりです
コメントが思い浮かびません
………
……
…
「見て見て、じゃ〜ん! わたしもう『菊花の約』の方は訳し終わってるの。あとで写させてあげるよ」
「マ、マジっすかぁ!? ラッキー!」
「うん。だから残りの『浅茅が宿』の方を、がんばって訳そうね」
山本くんの教科書に、スッと鉛筆を伸ばす。
該当箇所はここから……………ここまで、だね。
……ついでに髪をサラリと揺らして、山本くんが吸う空気に匂いづけしておくのも忘れない。
五更の空明けゆくころ、うつつなき心にもすずろに寒かりければ、
ふすまかづかんと探る手に、何物にや、さやさやと音するに目覚めぬ。
「『五更の空が明ける頃、』うつつなし、うつつなし――『正気でない』……どういう意味だろね」
「……主格の人は寝てるみたいだから、『夢見心地にも、』って感じで良いんじゃ?」
集中している……。山本くん、集中している……。
無造作に投げ出されている、山本くんの左手。
はうっ はうっ はうぅぅ……好機ッ みっしょんすたーと!
――ええいっ!
ぺと。
1、偶然を装って手を重ねる。
2、三秒数える。
3、「きゃっ」と呟いて、添えた手を引き離す。
4、その手をグッと、切なげに胸元へ(グーで握り締め、小刻みに震えてたりするとポイント高)
5、赤面しながら視線を逸らす(やや俯き加減だとさらにグッド)
1から5の作業を、鍛えられた軍人の如く正確無比かつ機械的にこなすわたし。
目線の流し方、脇の締め、顔色の調節……全てが山本くん好みに最適化されたもの。
……さて、山本くんは……。
よし、成功っ! わーい照れてる照れてる! わたわたしてるー!
えへ。えへへへ。
そうだよね〜、そうだよね〜。わたしがこうやって乙女の恥らいを見せ付けている以上、
いくら鈍感星人の山本くんでも、わたしの「女の子」を意識しちゃうよね〜。えへへへ。
……だ、誰ですかぁ。今、「バカップルだ」なんて思ったのは?
い、いやですよ、カップルだなんて、そんな、本当のことを言っては……。
こんなノリでも、ばかにしちゃいけません。
クラスでは「おとなしい藤原さん」で通っているんですから、丁度いいんです。これが正解なんです。
山本くんはね、なんていうか、こーゆー中学生っぽいノリの方が安心できるみたいなの。
想い人の性癖にさりげなく合わせてあげるのが、賢妻良母というやつです。
……さらにぶっちゃけて言えば、彼の「雰囲気が読めない」という欠点も原因の一つ。
こういう分かりやすいお約束で攻めないと、コッチの気持ちを理解すらしてくれませんから。
だから反復継続して、わたしの「女の子」を意識させていく。これは一種の躾け、調教ですね。
と、ともかく、です。
こんなちょっとしたスキンシップでも、ですよ?
毎日も何度も繰り返していけば、さすがの朴念仁さんでも心と身体がオープンになっていくものです。
手を握っている時間が三秒から三分、三十分、三時間、三日、三年と延長しても気にならなくなります。
やりますよ〜。
今日の帰りまでには、ドロドロになるまで男と女の体液(訳注:手汗)をねっとり絡め合うんです!
えへ。
次の一手は……そうだなぁ。
「二人が同時に辞書に手を伸ばす → 偶然手が重なっちゃって『きゃっ』」なんて流れが自然かな。
よ〜し、タイミングを合わせるぞ。
がんばろ、里香。ふぁいとっ、おー。
………
……
…
「すずろなりすずろなり――思いかけず。『思いもよらずに、寒かった、ので』かな」
「ふすまかづかんと探る手……? なんだろうねこれ。ふすま? 襖を閉めたってことかなぁ……」
「ん、ちょっと待ってて」
山本くんが――辞書に手を伸ばした!
見えるッ! わたしにも、ちゃんすの神様の笑顔が見えるッ!
え、ええいっ!
「布団のことです。秋人さん」
「ふ、ふすまは、布団のことです。夜具のことです。秋人さん」
………。
「かづくは『かぶる』です。カ行四段の未然形に、『ん』は推量・意志の助動詞『む』です」
………。
「ふ、『布団をかぶろうと探る手』です、秋人さん……」
……。
外 野 は す っ こ ん で ろ !
わ、わー、すごーい。
すごいねー、さすが女学院の生徒だねー
ねー、やまもとくーん?
「……がんばって、いっぱい努力してたんだね、あず」
ど、どうしてそんなに嬉しそうに、はにかむの……?
わたしだって……。ねぇねぇ、山本くぅん……。
「………」
アンタの方はなんでそこでポーカーフェイスになるのよ。
これ見よがしにプイプイそっぽ向きやがって。わざとらしいんだよ馬鹿。
………あわ? あわわわ、いけない
つい本音が。
「あず……」
山本くんも、そこでそんなに寂しがらなくても……。
むぅぅぅぅ。
むーーーーーーーーぅぅぅぅうううううう!
なんですか、なんですか、なんですかぁ、この間合いはぁ!
ひょっとしてこれ、「つんでれ」……って奴ですかぁ?
ちょっと前のアキバ系ドラマでネタになっていた、あの……。
はうぅ……梓さんって、「つんでれ」キャラだったんですねぇ。
生でそんな人、初めて見ましたぁ〜。
――って、キモッー!
この女、キャラ作ってるよ恥ずッ!
………
……
…
さりともと 思ふ心に はかられて 世にも今日まで 生ける命か
「『それにしてもと思う心に騙されて、今日まで生きてきた命のことよ』か。意味が分かりにくいな」
――トン。ころころころ……。
山本くんが考え込んでいる隙に、狙いあやまたず彼の足元に転がっていった消しゴム。
「ちょっと、ごめんね?」
襟首の準備をしっかりと整えておいてから、山本くんの足元に屈みこむ。よい……しょ。
……。
………どう?
……………ち、ちゃんと……見えた、かな?
えへ。えへへへへ、かわいいブラ、でしょ?
……ぜ、ぜんぶ……山本くんのためなんだよ……。
中も……見てみたい……?
…………………いいよ。……山本くんさえよければ、いつでもいいよ……。
ごめんね、山本くん……。
この程度しかしてあげられなくて、ごめんね……。
今日会えるって事前に分かっていたら、ミニスカート穿いてこれたのに。
そしたらもっと色んなコンボを使えたんだけど……こんなのでごめん……。
でもでも、まだまだ今日は閉館まで時間があるから、ね?
えーと、次の一手はぁ……。
「秋人さんッ!!」
「は、ハイ!」
「さっきから秋人さんに言いたかったことがあるんですけど」
「ど、どうしたの、あず? ……なにか……怒ってる?」
「図書館では、静粛にするのがマナーだと思います」
……………。
「そうやってくっつ――ンんッ、お喋りしながら勉強するのは、賢明ではないかと」
…………。
「わ、私は別に気にしないのですけど、周囲の方々の迷惑になるといけません」
………。
「気をつけた方がいいと思うんです」
……。
や、山本くぅん……。
「……そうだね」
山本くぅん……。
「ごめん。ちょっと無神経だった」
恥ずかしげに鼻をかきながら、申し訳なさそうにわたしを一瞥する山本くん。
……。
はうぅ。そ、そうだよねぇ……。
図書館のマナーは守らないと……。
ごめんなさい……梓さんの言う通りでした……。
あ〜あ……。わたし、山本くんに会えて浮かれてたのかなぁ。
ちょっと自己嫌悪……。
さて。
怒られちゃったから。
それじゃあ、思いっきり山本くんの方へ椅子を寄せて、っと。
自分の教材もずずずっと、山本くんの手元へ寄せて、っと。
ついでに山本くんにぴったり肩を寄せて、……ぴとっと。
これでいいかな、うん。
「ふ、藤原さん!?」
(しーっ。そうやってお喋りするの、まわりの迷惑になるよ)
かつてない程接近しちゃった山本くんに、そっと耳打ちする。
はうぅ。山本くんの耳たぶ、ぷにぷにしてて可愛いよう。
……あとで触らせてもらおうかなぁ。触らせてもらおっと。
(い、いやそうじゃなくて、どうして……)
(仕方ないよ。相談しながら勉強するなら、こうやって、小声で邪魔にならないようにしないと)
(……あ、そっか)
(うんっ、図書館のマナーだからね)
回りに聞こえないように耳打ちで内緒話しなきゃ、マナー違反だからね。
そのためには、ぴったりとたっぷりとどっぷりと寄り添っていなければ。
じゃあ、お勉強続けよ――
きゃん!
……あ、あのぉ、梓さぁん?
そ、そんな風に思いっ切り本を叩きつけると、わたしびっくりしちゃいます……。
それに、あの、図書館では静粛にするのがマナーだと思うんです、わたし。
………あ。
………。
あー、ははは……、えっとですねぇ。
差し出がましいかもしれませんけどぉ……。ちょっと「ソレ」は控えた方が……。
ですから「ソレ」を披露するのはやめておいた方が……。はい、そのお顔のことですよぉ。
あのですね、わたしを挟んですぐ隣りには、山本くんも居るわけ……なんですよ?
今の何と言いますかぁ、般若……のような形相には、千年の恋も冷めるというか……その……。
特に梓さんは、千年どころかほんの五分すらも、山本くんから恋されてないじゃないですかぁ?
ですからぁ……結構キッツイと思うんですよ、それ。他人事ながらイタイというか。
……せっかくのキャラ、壊れますよ? えへ。
きゃん!
あ、わ、わ、駄目ですよう、公共の本を乱暴に扱ったりしては……。図書館のマナーですよ?
大丈夫ですか? そんなに真っ赤になってぶるぶる震えてぇ、切羽つまったご様子で……
あ、お手洗いにでも行きたいんですかぁ?
………。
……ど、どうしたんですかぁ。
梓さんがさっきからなんだか変ですぅ……。
なんか……殺気立ってて、こわい……。
や、山本くぅん……。
「あのね、あず」
「な、なんですかっ? 秋人さんッ!」
「トイレなら、そこの社会科学Tの書棚を曲がった所にあるよ?」
……うんうん。
よかったですねー、
お手洗いの場所が分かって。
トイレで一人で自慰ってな
ば〜かっ!
え へ へ へ。
<6>ここまで。小さじ一杯の腹黒は淑女のたしなみ。
ヒロインどもには「三すくみ」の関係があったり。
・キモ姉…自己完結型変態姉 →その変態でもって泥棒猫を圧倒するが、梓には虚を突かれる。
・あずあず…対キモ姉専用兵器 →打倒姉だけを考えてきた。しかし他の泥棒猫への対応が手薄。
・フジワラ…「よその泥棒猫」代表 →あずあずのような未熟者を駆逐するが、変態には負ける。
はい。そりゃあもう、たった今ふと思いついただけです。
次回のこの時間は、魏蜀呉三国時代の幕開けについてお送りします。
>まとめサイトの阿修羅さま
こちらからお願いする前に、フジワラ心の叫びを右寄せにしてくださって感激しました。
お気遣い、全裸で感謝いたします。
しかも
>>334では自分ボケかまして、「左端」と間違えて書いてるのに……嗚呼、以心伝心は美しい。
つきましてはもう一つ、お願い申し上げます。
<5>の時と同様、この後半部分は
>>333の後にガチーンと合体させて続けて載せちゃってください。
お手数おかけします。
>>335 ご助言、ありがとうございました。
連載二つもつのはとても真似できません。頑張ってください。勇者さまは泥棒猫です。
投下します
声が聞こえた
それも俺がよく知った二人の声だ
痛む身体を引きずると手すりを伝ってなんとか出口まで向かっていく
向こうに見えた詩織さんと奈々さんの姿に俺は息を飲んだ
詩織さんが奈々にナイフを向けている
どうしてあんなものを・・・・・
そういえば果物を切るようにあったような・・・・
そんなこと今はどうでもいい・・・・
早く・・・・早く・・・・・思うだけで身体は付いてきてくれない
どうしたら・・・・・
もう私はおかしくなってしまったのかもしれない
気づいたときには私は奈々ちゃんにナイフを向けていた
・・・どうしてこんなことに?
そうだ、この子は私がどれだけ苦しんでいるか知っていて
たった一つの・・・・私の・・・・
だから!だから!
怖いの・・・・仁くんを失うのが
私にとって仁くんはすべてなの・・・・
すべてを捧げたただ一人のヒトなの・・・・
どうしてあなたは私のささやかな、だけどなによりも大切な者を奪おうとするの?
「やめろーーーー!!!」
仁くんの声が私の頭に深く響いた
私は・・・・仁くんに微笑んだあと泥棒猫を見つめた
「泥棒猫さん・・・・見せてあげる・・・・私がどれだけ仁くんを愛してるか」
私はなんのためらいもなく仁くんの傷と同じ肩にナイフを突き刺した
「あ・・・・くふ」
小さな声が私の口から無意識に漏れると同時に痛みが全身を駆け巡る
仁くんと同じ痛み・・・・それだけで幸せを感じた
「どう・・・・奈々ちゃん・・・・あなたにはこんなことできないでしょ?」
倒れる私を仁くん脚を引きずって這って来てくれた
あなたの痛みには遠く及ばないけど・・・・わかってくれたよね?
仁くん・・・・
私と仁くんとの間を邪魔するかのように泥棒猫が物凄い形相で私を睨み付けた
赤に染まった身体を仁ちゃんが抱きしめる
すごい・・・・嫉妬の度合いが上がってる
香葉って人も・・・・詩織さんも・・・・私も壊れちゃったみたい
私はもう詩織さんに遠慮なんてしない・・・・
それは反則だから・・・・
私は倒れた詩織さんの足元に落ちている血に染まったナイフを取った
そして左手を地面に置いて右手に持ったナイフで左手の真ん中を突き刺した
「く・・・・・」
ナイフを抜くと血が噴出して私の顔を赤く染めていく
あ・・・・・ふふ・・・・・・私も・・・・・できた
こんなこと・・・私にだってできるの・・・・特別なことじゃないのよ?
仁ちゃんは呆然と私の姿を見つめている
そうだよ・・・・仁ちゃん・・・・私だけを見て・・・・
私だけに触って・・・・私だけにキスして・・・・私だけを抱いて・・・・
私だけがあなたに触りたい・・・・私だけが・・・・
もうあんな反則なんてする雌豚なんか忘れて・・・・私だけを・・・・
どう・・・・なってるんだ?
詩織さんも奈々さんも・・・・どうしてこんなこと
俺が奈々さんに視線を向けていると下の詩織さんが俺の腕を掴んだ・・・・
「仁くん・・・・見ないで・・・・あんな子見ないで・・・・私だけを」
詩織さん・・・・・・
「仁ちゃん・・・・・騙されちゃダメ・・・・・仁ちゃんは私を選んでくれたの」
俺は・・・・・・ほんと最低だ・・・・・この二人を壊してしまったのは俺なんだ
「泥棒猫なんかの言葉信じちゃダメ・・・・」
そう言って詩織さんは俺に向けていた視線を奈々さんに向けてにっこりと笑んだ
その笑顔はなんの憂いもない晴れやかなものだ・・・・
「今度・・・・仁くんを惑わせたら・・・・あなたを・・・・私が・・・・」
なにを言ってるんだ・・・・詩織さん
「あなたこそ・・・・仁ちゃんの婚約者だからって・・・・自分のものだなんて思わないでください・・・・・あ、くふ!」
苦しそうに顔をしかめて奈々さんが肩を地面に付けた
「奈々さん!」
思わず駆け寄ろうとした俺の腰に詩織さんが抱きつきそれを止める
「行かないで!」
その血が俺の服を濡らしていく
「ふふ・・・・悔しいですか?でも仁ちゃんの無意識の判断まではとめられません」
「うるさい!仁くんを惑わすな!泥棒猫!!!そのまま死んじゃえ!!!」
俺の胸に顔をうずめ離すものかと抱きついてくる
「忘れたんですか・・・・あなたのせいで・・・・仁ちゃんは・・・・仁ちゃんはそれを
わかっているんです・・・・だから無意識に私を求めているんです」
表情は伺えないがその顔はもう青ざめている
詩織さんも・・・・もう耳まで真っ青だ
「そんなことない!」
「開き直るんですか?・・・・・でも、仁ちゃんは忘れません・・・・・だから、仁ちゃ
んは必ず・・・・」
声が途切れていく・・・・奈々・・・・さん?
「奈々さん!」
そう呼ぶと同時に詩織さんが俺を見上げて目を細めた
「あんな子の名前なんて呼ばないで!」
いつも綺麗でやさしかった詩織さんが・・・・
「ふふ・・・・・やっぱり仁ちゃんは・・・・私を・・・・」
いつも元気で明るかった奈々さんが・・・・
全部、全部俺のせいだ・・・・俺は・・・・俺は!
最低野郎だ・・・・・自分で自分が怖くなるくらいの・・・・最低野郎だ
あれから一ヶ月で俺は学校に復帰した
二人とはあれから一度も関係を持っていない
そして繰り広げられる詩織さんと奈々さんの俺の争奪戦
「はい、仁くん・・・・あ〜ん」
「仁ちゃ〜ん・・・・・あ〜ん」
二人は箸を俺に向ける
そしてお互いを牽制しあう
「泥棒猫ちゃん・・・・仁くんが困ってるよ?」
「困らせてるのはあなたです、雌豚さん・・・・、私のはむしろ喜んでます」
「そんなことないよね〜仁くん?」
どうしてこの二人こんな二股最低野郎の俺をこんなにも想ってくれるんだ?
二人はどうやら俺が二股野郎だというのはわかっているらしい
そんな俺なのにこの子たちは・・・・どちらも傷つけたくない
そんな想いが俺の中をめぐっていた
三ヵ月後・・・・二人の妊娠が発覚した
お互いの親に俺は謝りぬいた
なぜか二人の親は渋りながらも許してくれた
本当は殴りつけてやりたい相手のはずなのに
聞くと俺は二人を護ったナイトらしい
だからこれも仕方ない・・・・
そう言ってお互いの両親は微笑んだ
八ヶ月後・・・・・二人は学校に休学を申請した
それから俺も・・・・・いま二人は俺の屋敷に居る
俺は二人の身の回りの世話等をこなして毎日を送っている
二人は妊娠以来ケンカもやめて・・・・
とはいかずに詩織さんは奈々さんを泥棒猫と呼び奈々さんは詩織さんを雌豚・・・・・呼ばわりして相手を互いに威嚇している
俺は複雑な心境だったが二人が俺に向けてくれる幸せそうな笑顔だけで満足させられていた
このとき俺はわかっていなかった・・・・・
最後の恐怖が近くに迫っていることを
今更ですが女性観のドロドロしたのはむずかしい
詩織、奈々、香葉さん・・・・仁をめぐる三つ巴も最終局面です
はたして誰が仁を物にするのか・・・・はたまた誰も手に出来ず?
ラストまでの過程では黒い展開ですがラストは切なくをめざしております
もう少しで最終章です
実姉マダー?
続けて投下します
ふふ・・・・・
私は確信していた
神は私に味方をしていると
だって・・・・・脱獄できるなんて思ってもみなかった
私は脱獄に成功すると予備で隠しておいた刀を持って仁さんの元に向かう
待てってね・・・・仁さん
すぐにあなたの元に行くから
でも、私は彼を傷つけてしまった
許してくれるよね?最初からそんな気はなかったのだし
それもこれもあの雌犬のせいだ
私は自分にそう言い聞かせると仁さんの屋敷の前まで足を進めた
高い塀を登って私は屋敷に侵入する
その先で私はあるものを見てしまった
腹のでかくなったあの二匹の雌犬が仁さんと楽しげに雑談している姿を
なに?あれ・・・・・
私はかつて感じたこともないような嫉妬をこの身に感じた
あの雌犬どもが・・・・・仁さんの子供を?
とうとう洗脳もそこまで進んでしまったの?
それももう一匹加わっている
私は唇を噛み締めた
唇から血が滴り口の中に血の味がひろがる
そうだ、まだ間に合う・・・・あの腹から汚れた子を取り出して息の根を止めればまだ
私は刀を鞘から抜くと静かに歩みを進めた
「仁さま!詩織さま!奈々さま!」
高田さんが慌てて部屋に入ってくる
どうしたのだろう?
俺が首をかしげると高田さんは青ざめた顔でこう言った
「羽津木香葉が脱獄・・・・したようです」
香葉・・・・・その名に俺は恐怖感を覚えた
確か俺をストーキングしていた女で・・・・
二人を見ると恐怖で身体を震わせていた
俺が強く自分をもたなくちゃな・・・・そうだ
「警察の方がこちらに向かっているとのことですが・・・・」
俺の中の見えない何かがこう告げている
その前に奴は来ると
それと同時にガラスの割れる大きな音がした
音の方向へ目線を向けると
そこには肌の半分を炎に焼かれたまさに悪魔という風貌の女性が立っていた
一瞬で体中が凍ったように固まる
だが・・・・・俺は負けない
二人を護るんだ・・・・・
俺が向かっていくと同時に高田さんが二人を逃がそうとする
よそ見をしているうちに刃先が横をかすめていく
よけれ・・・・た?
聞く話によると俺はボクシングをしていたらしい
記憶は失っても身体は覚えているらしい
しかし傷をつけた相手を思い出したかのように肩の傷が悲鳴をあげた
「ぐ・・・・・俺は・・・・こんなときに」
ダ・カーポ2の音姉は
>>360並のキモ姉であった・・
何か変な属性がつきそうな予感が・・
>>374 やべ、まったく興味なかったがそんなこと言われたら
思わずやりたくなってシマタw
生きてここに いきなり妊娠には驚いた。次の投下、楽しみにしてます。
たのむからハッピーに・・
>>352 乙女の秘密スキルワロスw
むしろストーキングは淑女のたしなみとも言える(*´д`*)
仁さんが肩を抑えて膝を付いた
やっぱり私の付けた傷がまだ治ってないの?
後で私がたっぷりと癒してあげるから待っていてね?
私は仁さんの横を通ると必死で逃げようとする二匹を追う
なに?邪魔ね・・・・
一人の歳を取った男性が私の前に立ちはだかる
でも私が軽く脚を斬っただけで倒れちゃった
倒れた男性を蹴飛ばして私は雌犬の一匹を捕まえた
「奈々ちゃん!」
そう呼ばれた雌犬が私を睨みつける
そんな目しちゃだめじゃない
雌犬は雌犬らしくしていなさい・・・・
私は刃先を雌犬のノド仏に向けた
「やめろ〜!!!!!」
仁さんが私にタックルしてくる
まだ洗脳が解けていないの?
私は怒りと嫉妬の念を込めて倒れざまに雌犬の胸に刃を突き立てた
「奈々さん―――――――!!!!!!」
まずは一匹・・・・
最後はもっとも憎きあの雌犬
「やめろ!」
脚にすがりつく仁さんのお腹を蹴って少し大人しくしてもらう
その光景を見て雌犬は私を睨み付けた
あなたは簡単には殺してあげないわよ
ここまで読んでくださった方・・・・お疲れ様です
突然パソコンがフリーズしました・・・・orz
中途半端な感じですいませんでした!
妊娠はいきなりすぎだと思いましたが・・・・意味をもたせています
>> 377
すいません・・・・
でも、構想段階で二つの結末を考えております
この章は真実編の二十四章です
管理人様・・・・この話を真実編として区切ってください
奈々・・・・・
この章と次章そして次の章は自分で書いててつらかったです
次章は月曜日に投下します
「倉田君っ!!」
「なっ…何、いきなり!?」
「今こそ飛躍の時、我が志は千里に在り!」
「いや、だからさ…」
…倉田君が引いている。
いけないいけない、どうやら地の文が言葉になっていたらしい。
「まあ、冗談はさておき」
「冗談ですか…そーですか…」
良し、とりあえず誤魔化せた…と、いう事にしておこう。
「倉田君の祈りが天に通じたんだよっ!」
「祈り…?」
…駄目だ、わかってないこの人は。
「黒崎先輩、入院」
「へっ?」
「大怪我、意識不明」
「ええええぇぇぇぇっ!?」
…どうやら知らなかったらしい。
「最上、一応聞くけど本気なの?」
「えっと…私も他人から聞いただけなんだけど…」
「そういえば、昨日は珍しく先輩から何の音沙汰も無かったな…」
「珍しいんだ、それって…」
「そうだ、一応こっちからでも連絡は…」
そう言いながら倉田君は携帯電話を取り出して…
ピッ、ピッ、ピッ…
「………」
「………」
「どう…?」
「電源が切れているか、電波の届かない場所にうんぬんかんぬん…」
「決まり…かな?」
「たぶんね…」
どうやら噂は本当だったらしい。
後はこの状況をいかに利用するかだ。
「まあ、あの人はああ見えて生傷が絶えない人だからね…」
「倉田君、遊びに行こうっ!」
「ええええぇぇぇぇっ!?」
「いやさ、流石にこの場はお見舞いに行くべきだと思うんだけど」
倉田君は正論を言う。
セオリー通りなら正論には勢いで対抗すべし。
とは言え倉田君はそう簡単には考えを曲げたりはしない、それが正論ならなおさらだ。
だがしかし…私には倉田君が揺れているのが見える。
そして私は今、上り坂に居る。
倉田君に考える時間を与えない事…とにかく即効で勝負をかけるしかないだろう。
「今行ってもまだ寝てると思うよ」
「いや…まあ…それはそうだけど…」
「良い?倉田君、ストレスを溜め込んでほっとくと後でとんでもない事になるんだよ」
「それは…まぁ…」
「だったら遊びに行こう、このままじゃ倉田君にとって良くないよ」
「えっと…」
「黒崎先輩と別れるにしてもこのまま付き合うにしても、ちゃんと息継ぎくらいはしておかないと溺れちゃうよ」
もっとも、後で是が非でも別れさせるけどね…
「………」
「遊びに行こう、息継ぎしよう、発散させよう」
「でも…先輩に悪いし…」
「仮にも恋人にストレスを感じさせる人の方が絶対に悪いっ!」
「………」
「………」
「良いの…かな?」
折れた…
倉田君の良い所は人の話はちゃんと聞く事、聞いて理解した後でちゃんと考える事。
普段の倉田君が相手ならともかく、迷いを持つ倉田君が相手なら言い包める手はあるのだ。
「明日の…いいえ、今日の放課後に…宝瓶水族館で良い?」
「用事は…無いけど」
まだ迷ってる。
もう一押しが必要らしい。
「倉田君、黒崎先輩が怪我をしたのは誰のせいなの?」
「えっ…と…」
倉田君は本気で考え込む…
私個人としては天が私に味方したせいだと思うけど…
まぁ、そんな事はともかく。
「断言しても良い、倉田君のせいじゃないよ」
「最上…」
「そんな暗い気分のままじゃお見舞いに行っても先輩は喜ばないし、それどころか倉田君にも良い事ないよ」
「かもね…」
倉田君はまだ納得していなさそうだ。
まぁ…ある程度は仕方ないか。
「午後3時、宝瓶水族館で待ってるから」
とりあえず言いたい事はだいたい言った、ならば倉田君にゆっくりと考える時間を与えてあげるべきだろう。
私は倉田君の教室を後に…
「ありがと…」
「…えっ!?」
振り向いた時には、倉田君はもう自分の席に向かっていた。
灼熱の嫉妬エネルギーが、SS書きの妄想システムにスパークする。
増幅された嫉妬エネルギーは、紅いショートストーリーに転換され、修羅場スレに赤射蒸着されるのだ。
…言ってみたかっただけです。
次回はデートイベントでGO!
おお〜動いたよ・・・・幼馴染が・・・・
泥棒猫本格始動ですね
ちょっと見ぬ間に300レス進んでておっつくのが大変なわけで。
ともあれ神々GJです!
魔将軍を倒したと言う事実は瞬く間に世間に知れ渡った。 私のことを聞きつけてきた多くの国が援助を、或いは王家のお抱えの騎士などが私とのパーティーを組む事を申し出てきた。
どの国も狙いは一つ、私に尽力する事により魔王を倒したと言う大義名分が欲しいのだ。 魔王亡き後の世界の宗主国になる為に。
最初の頃は来るものを拒まず受け入れてた時もあった。 各国の思惑がどうであれ利用できるものはさせてもらおうと。
でも、私達の仲間が長く勤まるものは殆ど居なかった。 彼らが弱かったと言うより私達が強すぎたのかもしれない。
そうした訳で入れ替わり立ち代り色んな人たちとパーティーを組んでみた。
そんな中、今はある姉弟の騎士と組んでる。 名前を姉がシビッラと、弟をコージモと言った。
腕前は、正直今一つだった。 だが貴族として高い地位を持っていたのかパトロンがいるのか武器防具やマジックアイテムは潤沢に持っておりそれなりに冒険の助けにはなった。
だけど、正直虫の好かない連中だった。 二人とも所謂美男美女なのだがどうにも気障で馴れ馴れしい。 男の方は私に必要以上に媚るわ歯の浮くような台詞は吐くは、女の方はリオに色目を使うわ!!
だから私はこんな連中と一緒に居たくなかったんだけど、何より折角のリオと一緒の時間を邪魔されたくないし。
だけどリオは折角の申し入れなのだから組もうって。 リオは疑う事を知らない純粋な性格だから。 まぁそこがリオの良いところでもあるんだけど。 それに確かに組むなりのメリットも無いわけじゃないけど……。
ある日の夜私達は最寄の村で宿を取って休んでいた。 夜も更けた頃同室のシビッラががさごそと起き、部屋の外に出る。 こんな夜更けに何の用事かと思ってそっと後をつけてみる。 人気の無い所で立ち止まるとそこに弟のコージモも現れる。
なにやら内緒話でもしてる様だ。 私はそっと聞き耳を立てる。
<あんな小娘さっさと手篭めにしちゃいなさいよ>
<そう言う姉貴の方こそどうなんだよ。 あの魔導師の小僧に未だ手間取ってるじゃねえかよ>
一体何の話?
<私よりアンタの方が重要でしょうが。 あの勇者の小娘を惚れさせることが出来れば魔王を倒した時その手柄は我が一族のものなのよ?>
<分かっているよ。 だけどその為には姉貴にも頑張ってもらわねぇといけねぇんだよ。 あの小娘、あの小僧に惚れてやがるからよ。 だからあの小僧を先に何とかしてくれよ>
<あぁ、それなら大丈夫よ。 あの子、小娘のことなんか全然眼中に無いみたいだから。 ま、考えてみりゃ当然よね。 あんな香水よりも血の臭いが、ドレスよりも鎧が似合うような色気もクソも無い小娘>
<ハハッ違いねぇや。 あんな血生臭い女、勇者でもなければ俺だって近づきたくも無ぇぜ>
<アハハハ。 それもそうね。 そう言う意味じゃアンタもとんだ貧乏くじよね>
ア、アイツラアアアアァァァァ!! ブッ殺してやるっっ!! いや……落ち着け。 確かに私の腕ならこんなゴミども簡単に消せる。 だからと言ってイキナリここで消してしまっては不信がられる。
そう、ジッとチャンスが訪れるのを待ち、殺る時は細心の注意を払って殺らなきゃ、ね。
そして、其の機会は意外と早くやってきた。
私達がある村に立ち寄った時そこの村長に依頼を受けた。 近くの洞窟にモンスター達が住み着いて度々村を襲い困っているのだと。 私達は二つ返事で引き受けた。
そして洞窟の探索中、大した戦闘も無くある程度進んだ時、突然足元が崩れた。 罠! 咄嗟に気付いた私は壁に刃を付きたて開いた方の手でリオの手を掴んみ落下の難を逃れた。
だが腐れ姉弟の二人は対応できずそのまま落下。 ザマアミロ!! だが当然顔になんか出さない。
「大丈夫でしょうか」
相変らずリオは優しいな。 あんなヤツラ心配してやる必要ないのに。 そう、コレでくたばってくれれば万々歳なのだがそうも上手くいかないでしょうね。
「確かに心配ね。 よし、私が下りていって助けてくる」
私は手頃の場所にロープを縛り付ける。
「そうですね。 では……」
「あ、待って。 リオはもしもの時のためにココに残って」
「でもセツナ一人では……」
「大丈夫よ。 直ぐにあの二人を見つけて戻ってくるから。 じゃぁ行ってきます」
そう言って私は崩れて出来た穴に向かって飛び込む。
「危ないと思ったら、直ぐに戻るかロープを引っ張って合図を送るかしてください。 くれぐれも無茶はしないで下さいね!」
下に降り立つと私は二人を探す。 勿論助けるためなんかじゃない。 折角降って沸いたこのチャンス、活かさせてもらうわ。 フフ……。
暫らく進むと剣戟の音が聞こえる。 音のした方を見れば、居た。
敵は1,2……6匹ってところね。 豚のような面構えの亜人種型モンスターの一種オーク。 手には各々剣や槍、斧などを持っている。
オークなど、モンスターとしては下級の部類。 幾ら数で押されているとは言え、あんな相手に苦戦してるとは相変らずへッポこな腕前ね。
それでもマジックアイテムとかに頼ってるお陰か時間を掛ければどうにか勝ちそうだ。
でも勝たれちゃ困る。 やはりあんなモンスターに倒される事に期待するより自分で手を下さなきゃ駄目ね。
私は抜刀してモンスターに斬りかかる。 一匹につき1,2秒。 全てのモンスターを片付けるのに10秒とかからなかった。
やっぱこんなモンスターに苦戦するなんてアイツ等へっぽこだわ。 そのくせ嘗めた事抜かしてくれたものね。 まぁ良いわ。 其の耳障りな口ももう聞かずに済むものね。
私の思惑なんか知らずコージモは歩み寄ってくる。 私はしゃがみこみ、今倒したオークの手から剣を拾い……
「ありがとうございます勇者さま! お陰で助かり……」
私に向かって馴れ馴れしく歩み寄ってくる気障男に向かって投げた。 剣は狙い違わず喉に突き刺さり一撃で絶命させる。
「いやああぁぁぁぁ!? コ、コージモ!? ゆ、勇者さま、い一体どうなさ……」
あー五月蝿い。 でもこの耳障りな金切り声もコレで聞き収め。
私は今度は斧を拾いシビッラに向かって投げつける。 これも狙い通り阿婆擦れの頭に見事命中。 アハッ真っ二つに割れてまるで石榴みたーい。
無事害虫駆除完了。 二人に刺さっている武器は何れもモンスターのもの。 傍から見ればモンスターとの戦闘で命を落としたようにしか見えない。
これで邪魔者は消えた。 一仕事終えた私は清々しい気持で充実した達成感に包まれていた。
おっと一段落つくには未だ早いかな。 早くリオの所に戻ってココのボスモンスターを一緒にやっつけると言う本来の仕事が残っているんだから。
んー、それにしても久しぶりに二人っきりに戻れると思うと自然と頬が緩みそうになる。 でもまだ笑うには早い。
一応仮にも『仲間』は既にモンスターに殺されてました、と報告するのに笑顔は不自然だモノね。
広き監 ナイスソバットw そしてあのナイフはこの世界でも血に染まるのか?
山本君 やっぱ里香たん可愛いくて策士で黒くてナイスですわ お姉ちゃんも同じぐらい好きですが
三竦みの構図もとても面白いです あと、助けになれたようで幸いです
生きここ あうぅ、結構奈々応援してただけにショックっす
皆様GJ 複数連載は単に自分が浮気性なだけです……
一時の激情に流されることなくチャンスをうかがい策を練り、
そして機を逃さずに確実に邪魔者を排除する・・・
素晴らしい!
まさに泥棒猫界の勇者たるにふさわしいではないデスカ!!
>>360 これは一分の隙もない三すくみですね
梓の強さがキモ姉の強力さに依存してる感じでちょっと不利じゃないかなあと思うのだけど、
魔王<英雄<民衆<魔王...
という三すくみを彷彿とさせるのでオッケーです。ええ梓派ですとも。
注)『優柔』本編を先に読んでから、この物語をお楽しみ下さい。
この『優柔 previous』は、愛原優希と水谷椿が恋仲になった所から、優希が別れを決心するまでの約半年間を振り返った記録である。
なお、本編では『クズ系主人公』という不名誉な称号を与えられた優希だが、今作では心優しい一青少年であるのであしからず。
1年の11月某日、優希は椿に告白し、付き合うことになった。
同じクラスであったのと、お互い両思いであったことで、二人の恋は順調に進展していった。
ところで、この男子は誰にでも優しく、それに加えて母親譲りのベビーフェイスを備えていたので(身長は168pなので、ショタではないと思われる)、
女子生徒の間で(一部の男子にも)ひそかに人気があった。
そのことを椿は知っていたが、この時点ではまだ、嫉妬心を持ち合わせていなかったので特に気にすることはなかった。
付き合い始めた当初も、自分以外の女子生徒と話をしている優希を見て、「ああ、私と違って異性と仲良くできて凄いなあ」ぐらいにか思わなかった。
嫉妬深く、独占欲をむき出しにするのは、しばらく後になる。
実のところ、初体験があまりうまくいかなかった。セックスに興味津々の優希と、抵抗のあった椿は、お互いに未経験。
極度の興奮状態にあった優希は、破瓜の痛みを必死に堪えていた椿を、力任せに突き続けた。
大した前戯も行わないままに行ったものだから、椿には初めてのセックスが苦痛以外の何者でもなかった。
普段、温厚で他人を優先して行動するような優希が、まるで別人のように息を荒げて、自分を襲っている。とても恐い思いをした。
そしてそのまま膣内射精。痛みと予告なしで膣内に射精されたショックで、行為が終わった後、しばらく涙が止まらなかった。
我に返った優希は何度も謝ったが、簡単に許せるものではなく、その後1週間は口を利かなかった。
優希には、この仕打ちが堪えた。引っ叩かれ罵られたほうが何倍も楽だっただろう。
自分だけが楽しむ、独りよがりのセックス。この愚行のせいでずっと無視され続けられるかもしれない。
何度も何度も頭を下げて、心から謝った。そして許して貰えたのはさらに1週間後のことだった。
初体験の日から数えて二週間、優希はただ謝っていただけではない。
二度とあんな失態を犯さないように、あることをしていたのだ。
まず、クラスの所謂プレイボーイに、セックスのHOW TOを聞き回った。
女はこうされると悦ぶとか、逆にこれはしてはいけないとか、端から見ればちょっと馬鹿げたことに、熱心に耳を傾けていた。
それだけではない。上の階に住んでいる、仲良くなったお姉さんにも相談し、
(このようなことが露見すると、おそらく大修羅場に発展しかねないが)お姉さんから『いけないレッスン』を受けた。
その内容とは、少しでも女性の身体に慣れるために・・・。
だがここで弁明するならば、性交渉はしていない。
・お姉さんが裸になり身体の隅々まで見せ、それを優希が観察し、迫り来る性的衝動に耐え得る精神力を身につける。
・お姉さんの手足の指を丹念に舐めることによって、奉仕の重要性を体感する。
簡単に言えばこのようなことだ。
優希のこの行為は、セーフかアウトかで判定するならば紙一重の差でアウトだが、あくまでも自分の愚行を猛省していたからこその行為であり、決してやましい気持ちはなかった。
だがやはり、いけないことかもしれないという気持ちもあって、優希はこの体験を誰にも喋らず、墓の中に持って行こうと心に決めた。
ちなみにこのお姉さん、レッスンと称して本当は優希をつまみ食いしようと打算していた。
しかし、彼女のことをいかに想っているかということを痛感し、自分の裸を見ても必死に耐えていた優希を見ているうちに、とうとう踏み切ることができなかった。
今では後悔しているらしい。
そのような影の努力もあり、2度目のセックスはうまくいった。
前回のように暴走することもなく、椿の心身を思い遣り、快楽を与えようと健闘し、最後まで恋人としてこなすことができた。
そして4回目にして椿は、初の絶頂を迎えることができた。
自身の身体の変化に戸惑いながらも、傍らで「大丈夫?」と労わりの言葉を掛けてくれる優希が、益々好きになった。
しかし変化したのは身体だけではない。心境もまた変化していったのだ。
翌日のことである。通学路を2人仲良く歩いていると、背後から元気な女子生徒の声。
「おっはよ〜ゆうき〜!」
バンッ!と優希の背中を叩くと、早々に学校に向かっていった。
ただそれだけの行為。以前の椿なら大して気にも留めなかったのだが、その時は違った。
今まで感じたことのない不快感が身を過ぎったのだ。
「ねえ、優希君・・・今の人・・・誰?」
「えっ、うん、5組の浅田さんって言うんだけど・・・椿ちゃん、どうかしたの?」
「・・・何でも、ないよ」
何故このようなことを尋ねたのか椿自身も分からなかった。
だが、自分の知らない女が、自分の恋人とスキンシップを図ったことが、何とも言えない感情をもたらした。
さらに放課後、下駄箱で靴を履き替えている時のことである。
「愛原君、さよなら」
「さよなら、室田さん」
「愛原バイバ〜イまた明日〜」
「ばいばい井上さん。早くお金返してね」
クラスメイトと挨拶をしただけなのだが・・・
「ねえ、優希君・・・他の女の子と話すの・・・止めてもらえないかな?」
「えっ?」
言わずにはいられない自分がいた。それは優希にとっても予想外のことだった。
帰りの挨拶をするという、人間としてごく当たり前の行為に、難点を示されたからだ。
キモ姉がんばれ
「どうして?」
優希が問うと、歯切れの悪い返答が返ってきた。
「うん・・・ゆう君が他の女の子と話してるとね、何だか、ちょっと、嫌だな・・・」
その言葉に違和感を感じた優希はしばらく考えた。何故椿がこんなことを言うのかと。
そして優希の導き出した結論は・・・
『・・・ああ、そうか!
僕は理解しました。あれですね、ラブコメとかでよく見かける、嫉妬する彼女。
要は椿ちゃんは、僕が他の女の子と話したことに焼き餅を焼いてるんです。
きっとこういうのって、恋人ができたら誰もが通過するシーンなんですね。
なんだ、そうなんだ。僕って幸せ者だなあ。』
あながち間違いではなかった。当時の椿の心境も、焼き餅程度のものだったからである。
椿の嫉妬深さは、本来ならばこの程度のものだったのである。
2人が普通に付き合って、普通に愛し合っていれば、椿はただの可愛い焼き餅焼き屋さんだったはず。
しかし、本編の第1話で優希は椿に別れを告げた。
それは言うまでもないが、椿の嫉妬深さと独占欲に耐えられなくなったからである。
では、いつ、誰のせいで椿はそうなってしまったのだろう。
(つづく)
神々に触発されて、久しぶりに投下してみました。
これから少し続くと思いますので。気長に待ってて貰えるなら幸いです。
それにしても、このスレの進行具合はすごい・・・
>>395 ゆう君がまだクズじゃない!!
ニュータイプ仕様か!?
楽しみに待ってますよ!!
本編ゆう君のクズっぷりとののギャップに萌えw
とあるシリーズにも期待してます!!
GJでした
>>395 影の努力ウラヤマシス、しかしゆう君モテモテだな
本編前にお姉さんを毒牙にかける寸前だったとは……
このまま幸せなカップルとして生活できたらよかったのにね
と言ってあげるのは間違ってるんですよね
400 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 01:29:56 ID:na2DJ4zy
少なくともココではね間違ってる。
ノコギリみたいに傷痕の残る切り傷が欲しいんだ。
優君のM属性は、お姉さんによって、植え付けられたのね
城に行けばこの焦燥感が意味のないものだとはっきりするはずだ。
最後にもう一度だけ、城に行こう。
姫様にもちゃんと別れの挨拶をしておきたいしな。
自分に言い訳をしながら身支度をして俺は城に向かった。
――――――――…………
本来、部外者は夜、城に入ることは許されない。
でも同僚の計らいや姫様の侍女の何人かと顔見知りだったこともあり、
なにより姫様が俺に会いたがっているということですんなり俺は姫様の部屋に通された。
「失礼します」
そう断ってから扉を開けた。
「ウィリアム!!」
部屋に入ると、いつものようにいきなり抱きつかれた。
騎士を辞めたのはつい最近だというのに彼女の体温が懐かしい。
だけど姫様の様子が変だ。何かに怯えるように身体が震えている。
「どうしたんですか…?」
姫様の表情を確認しようと少し姫様を引き離す。
「助けて……ウィリアム…わらわは……死にとうない!」
姫様の口から出たのは予想以上に穏やかではない言葉だった。
「死にたくないって……いったい何があったんです?」
怯えが収まるように彼女の目線に高さを合わせ、ゆっくり問いかけた。
「マリィが……マリィが――――――」
姫様の話を聞いて俺は戸惑いを隠せなかった。
以前師匠から受け取ったモルド傭兵部隊とトレイクネルの契約書は姫様が情報屋に流したものらしい。
姫様がどういう経緯で手に入れたかはわからないがそれを師匠が情報屋から入手したのだろう。
いや、それよりも団長がゲイル=トレイクネルを殺害したという話だ。
さすがにこれには耳を疑った。というより信じたくなかった。
しかし姫様の話を鵜呑みにするのなら状況から考えて団長は確かに疑わしい。
ゲイル=トレイクネルはフォルン村の事件の首謀者だ。
殺された理由はそのことだと見て間違いはないだろう。
団長はフォルン村の真実を知ってかなり自分を責めていたのかもしれない。
城門で会ったとき、その辺りのことをちゃんと話しておくべきだった。
「でも…トレイクネル卿殺しの犯人が団長だとしても、姫様を殺しにくるって言うのは無理がありませんか?」
疑問を持つとすればその一点に尽きる。
団長の動機がフォルン村の虐殺事件にあるのなら姫様は全く関係ない。
政治的理由で疑うなら刃は陛下に向けられるはずだ。
だが姫様は当時まだ十二歳。流石に政治に首を突っ込んでいたなんて疑う余地はないはずだ。
「いや絶対にあやつはわらわを殺しにくる……
ウィリアムが騎士を辞めると城内で噂された前後からあの女の様子が気味悪いくらいおかしかった……
それに加えてマリィはわらわに恨みを抱いておる。」
様子がおかしかったというその時の団長の姿を思い出したのか、ゾクリと身震いした。
「恨み?」
「わかるじゃろう?マリィもわらわもおぬしを慕っておる。それだけで充分じゃと言うのに
更にあの者はわらわがウィリアムに事件のことを知らせたことに気づいた可能性が高い。
無理矢理自分の殺意を事件の関与にすり替えてわらわを殺す動機にするじゃろう」
想像が飛躍しすぎだ。その意見には否定したくなった。
「団長がそんなことするわけ―――――」
「わらわには解る!何が何でもあやつはわらわを殺す気じゃ!!
あの眼は確実にわらわへの殺意を実行に移すことを決意した眼じゃ!!」
俺の日和見な意見に業を煮やしたのか大声を上げる姫様。
姫様の見たことのない迫力に思わず黙ってしまった。
こんなに確信するほど団長は様子がおかしかったのか?
少なくとも俺が最後に会ったときは気が触れていたとは思えない。
―――――いや。俺が引き金を引いたのかも知れない。
トレイクネル卿が死んだのは昨日の夜だ。あれから馬を飛ばせば丁度その時間になるじゃないか。
……ということは俺のせいで……?
「助けて……ウィリアム、助けて……」
恐怖がぶり返したのか再び震えだして俺にしがみ付く姫様。
『ウィル!助けて!!お願い!!た―――』
キャスの最期の言葉。あの日俺はただ見ているだけしかできなかった。
だけど今はどうだ。手足も縛られていないし、あれから強くもなった。姫様を守ることは出来るはずだ。でも………
どうすればいいのかわからない。
姫様を守るために団長を殺すのか……団長を死なせないために姫様を見殺しにするのか……
第一、団長を相手にしたところで到底勝てるとは思えない。
賭けに出るには低すぎる勝率。それくらい剣の腕は俺よりはるかに上だ。
そう思いながら腰の剣に手をやる。
「…あ」
そうしてからやっと気づいた。しまった、剣は家に置いてきたままだ。
自分の間抜けさに舌打ちする。
何か武器になるものは―――
そこで慣れ親しんだ足首の重みを思い出した。いつも足首につけている隠しナイフだ。
戦時中、お守り代わりに身に着けていた小振りのナイフ。
これはいわゆる戦闘用のものじゃない。どこにでもあるただの果物ナイフだ。
師匠に連れられて村を脱出する際、我を失っていた俺が握っていたものらしい。
村から持ち出した唯一の遺品としてずっと肌身放さず持っている。
ナイフを取り、手で玩ぶ。
……ひとつだけ団長を退ける方法がある。何も奇策を思いついたわけじゃない。
本当に彼女が俺に対して負い目を感じているなら勝算はある。
剣を手に真っ向から立ち向かうよりも勝算の高い手。
だけどそれは鬼畜外道、彼女の気持ちを逆手に取った卑怯な仕打ちだ。
正直な話…こんな策を思いついたこと自体、激しい自己嫌悪に襲われている。
どうする?俺はどうしたらいい?教えてくれ……キャス。
とにかく、団長に城のみんなを相手にさせるわけにはいかない。
これ以上団長を狂気に走らせても得なことなど何もない。
「姫様」
「な、なんじゃ…?」
「城の者に団長が来ても邪魔をしないように言って貰えますか?」
「なっ!?じゃ、じゃがそれでは…!」
俺の提案に酷く狼狽する姫様。
「大丈夫。何とかしてみせます。……絶対に」
しばらく不安げに俺を見ていたが、とりあえず納得してくれたらしく「わかった」と言って部屋から出て行った。
城の人間に伝えに行ってくれたのだろう。
「―――」
後は俺の決断次第。
悪魔に魂を売るのか、それとも三年前に立てた誓いを捨てるのか。
B.何が何でも姫様を守らないと。だけど……
C.いや、決断するのはまだ時期尚早だ。
例によって選択肢。
先にBから進めます。
>>395 優柔の新作キタコレ
さらに選択肢キター(゚∀゚)
今週末にはスレたて一週間で400KB越えしそうな予感
何であんたまでいるのよ。
そう言いたかったけど、口からは出てこなかった。
人志が入ってきて、そこまでは良かったのに、この、川の水が流れるかのように後からするりと入ってき
た、木場春奈。
いつものニコニコ顔が、今日に限っていやに腹立たしい。
「具合はどうだ?」
「……別に。もうそんなに熱はないから」
人志が来たのに、たぶん心配してくれてるのに、それに応えるのが、面倒くさい。
「そうか……。それなら、震度2くらいの地震で済みそうだな」
「何の話よ」
「地球の話だ」
全く繋がってない。でも、いつもの人志だった。
「新城さん、これ、お見舞いにどうぞ」
そこに割って入ってきて、木場さんがヨーグルトを差し出してきた。
身体を起こして、とりあえずは受け取っておく。
……見舞いだなんて白々しい。どうせ人志に付きまとって、へばり付いて来たんでしょ?
あたしとの接触も、人志をモノにするっていう目的のための布石でしかないのは分かってるんだから。
人を踏み台にしようだなんて、いい度胸してるじゃないの。
「ところで明日香」
「ん?」
「数学のノートってどれだ?」
「真ん中あたりの……って人志! 何勝手に人の机調べてんのよ!」
押し込んであった本とかその他もろもろが、あっという間に人志の手によって散らかされてるじゃないの
。
やめてよ人志。一人で変な事言うのはともかく、他人のものに断り無く手をつけないでよ。
でも人志はあたしの言葉なんか完全無視して、一冊のノートを取り出す。
「すうがくの ノートを はっけんした」
いやいいから。人の物に何する気よ。
人志はぱらぱらとその中を見始める。中身について文句言ったら殴るわよ。竹刀で。
「伊星くん。数学のノートがどうしたの?」
「いや、ちょっとな……」
あるページ、あたしが最後に書いた部分を広げたまま机において、今度は人志は自分の鞄から、ノートと
ペンを取り出した。
それも開いて、机の上、あたしのノートの隣に置いた。
「……何してんの」
「書き写し」
人志のペンが、あたしのノートの上で動き回っている。書き写し、今日の授業の分?
なんか新スレになるたびに消費スピードが加速してる気がするw
「やけに親切じゃないの」
「こんなことになっては困るからな」
また一冊のノートが机から引っ張り出される。それはジュースを溢して汚した、あのノートだった。
ばれてるし……。
「う……ごめん」
「俺も忘れてたんだけどな」
人志は左手で汚れたノートを自分の鞄に戻した。右手は休まず書き写しを続けている。
「伊星くん、私もや」
「いや大丈夫だ」
たぶん、書き写しを手伝おうとしたんだと思う。木場さんのその申し出は、言い終わる前に断られた。
少し気分が良くなった。
「むう〜っ。じゃあ新城さん」
「……」
じゃあ、って何よ。やっぱりこいつ、あたしの見舞いじゃなくて、人志にコナかけに来てるんじゃないの
よ。
「新城さん?」
「何よ」
「昨日の試合、どうしちゃったの?」
「!!」
……っ。ここで来るとは思わなかった。それも人志からじゃなく、木場さんから来るなんて。
試合を見るのは初めての癖に、いつも見ているかのような聞き方しないでよ。
「ちょっと……調子が悪かっただけよ」
もし、試合を見に来てたのが人志だけだったら、絶対に負けなかった。でも、そんな馬鹿馬鹿しい言い訳
はできない。
この言い訳も、ひどく格好悪いけど。
「調子が悪いまま試合して、ついに今日体調崩しちゃった、って事?」
「……そうよ」
「へ〜ぇ、ふ〜ん、そうなんだ〜。大変なんだね、剣道って」
「……」
うざい。いちいち嫌味っぽく言わないで。
「とにかく、早く良くなってね」
「……ふん」
あんたに言われなくたって、すぐ回復してやるわよ。
「……ん〜にぃ……♪」
ほらすぐ人志のほうに擦り寄っていく。上っ面だけの見舞いの文句なんていらないっての。
人志のあの手この手で言い寄るのはご苦労様だけど、場所は選びなさいよね。
大体その鳴き声は何よ? あんた人間でしょ?
最近のアニメは猫の耳を生やした女の子がよく出てきて、今の木場みたいな声を(声優が)出してるらし
いけど、実際に人がやってるのを見ると、かなりキモいわね。
そんな声が許されるのはアニメの中だけでしょうが。
「最後は、イングリッシュ」
木場が背中にへばりついても、人志は気にしないで書き写しを続けている。つまり、相手にしてない。
これはこれで面白い光景だった。
「……終わった」
人志がノートをぱたん、と閉じる。
「ありがと」
「お疲れ様〜」
あたしと木場さんの言葉は同時だった。あんたは喋るな。
「さて、と」
自分のノートを鞄に戻して、人志は立ち上がった。
「それじゃあ今日はこの辺で」
「えっ? もう、帰るの?」
もう帰るなんてさすがに早すぎる。はじめに体調聞いて、後はノートの書き写しをしただけなのに。
試合のことも、人志からの突っ込みは無かった。あんまり気にしてないのか、さっきの木場さんとの二言
三言で納得したのか……。そんなもんなのかしらね。
「まあ、あまり長居しては悪いし」
「そうそう、伊星くんは、”見物”しに来ただけだもんね〜」
……こいつ、余計なことを。人志があたしを心配してお見舞いに来たのは雰囲気で分かるでしょ。
ほんっと、空気の読めない女ね。
でも早く帰るなら、それはそれでいいわ。見舞いの振りして媚売ってる誰かさんも居なくなるだろうし。
「明日香。また明日、な」
「……うん」
明日、そう、明日。人志はこんな風邪ごときで何日もヘタれたりしないって、きっとそう思ってるんだ。
解ってるわよ。みっともない姿を見せるのは今日までだから。
「お大事にね、新城さん」
はいはい、木場さんも早く帰ってね。
二人は部屋を出た。扉が閉まって、また静かになる。
と思ったら……。
ガタタタタ、バン!
階段のほうから凄い音がした。
「人志君、大丈夫!?」
「すいません。ちょっと足滑って……」
……。
全く、何やってんのよあいつは。
(12話に続く)
明日香の心の声が素敵過ぎる
>>406 姫様ルートか……またもや鮮血の予感!そして新たな選択肢にも期待
女同士の水面下の攻防と我関せずな主人公。
面白いし続きが楽しみだ。
レベルの高い作品一杯(*´д`*)ハァハァ
今日だけで優柔の新シリーズに、リボンの剣士、そしてBloodyMary
作者様凄すぎ((;゚Д゚)ガクガクブルブル
久々に「妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる」
を読んでほのぼのエンドに和んだ・・・
まとめサイトのありがたさを痛感
阿修羅さんいつもまとめご苦労様です
原因は勿論、優希にある。
気づかないうちに、椿の秘めたる嫉妬心と独占欲を引き出してしまったのだ。
具体的に何が原因だったかというと、それは優希のセックスのやり方である。
この男子は、ある意味での『変態』だったのだ。
別にスカトロ趣味があるとか、極度のサディストだったとか、そのようなものではない。
お姉さんとの一件から、奉仕することの悦びに目覚めただけである。
初期段階においては、大した知識も経験もなかったので、ただの前戯だった。
だが身体を重ねるごとに、優希のテクニックは向上していった。
やがて指だけで椿をイかせることができるまでになった。
そしてここから、優希の『変態』が目を覚ました。
この男子にとっては「奉仕してやってる」のではなく「奉仕させてもらっている」なのだ。
椿を一つ上の存在と位置付け、無意識的に自分の立場を下げる。
そうすることによって、普通の青少年なら抵抗を感じてしまうような奉仕を難なくこなせてしまう。
事実、奉仕の悦びを覚えた優希は、何の迷いもなくスカートの中に顔を突っ込み、秘部を舐め上げる。
やがてアナルにまで奉仕の対象を向けるようになった。
全国の男子学生で彼女のアナルに奉仕する人は一体何人いるのだろうか。
おそらく、数える程もいないと思う。これが、優希が変態であることの所以なのである。
だが今説明したことは、ほんの一部にすぎない。
これだけならば、単に過度な奉仕好きなだけで終わり、椿の開花とは結び付かない。
重要なのは、さらに2つの要因なのである。
優希の奉仕は、椿にとって恥辱だった。
ほんの1ヵ月前まで穢れを知らなかった彼女にとって、平気で股間に顔を埋めてくる恋人の行動は、理解出来ないものであった。
汚らわしい行為をさせているという罪悪感もあり、やめてほしいと願い出た。
しかし優希は、
「椿ちゃんを愛してるから・・・だからもっと、椿ちゃんを気持ち良くしてあげたいんだ・・・」
と言い、奉仕を止めようとしなかった。
さすがの椿も、うるんだ瞳で幸せそうに請う優希を見ていると、断ることができなかった。
それどころか、これほどまでに自分を想ってくれているのだと実感し、優希の奉仕を望むようになった。
それがいけなかった。
この後、優希の行為はエスカレートする。
最初は単なるクンニリングスやペッティングで納まっていたのが、日に日に過激なものなった。
ある時は椿をまんぐり返しにし、手マン、もしくはクンニリングスを行ったり、またある時は椿を四つんばいにし、アナルを舐めながら、
片方の手で陰部を、もう片方の手で乳首を擦り続けたりもした。
このように、どう見ても一男子生徒とは思えないような淫行で椿を何度も絶頂に至らしめた。
さらには、奉仕中に尿意を催した椿を浴室に連れて行き、膝に乗せて陰部を擦り続け、強制的に放尿させたこともあった。
さすがにその時は、お漏らしという一般の人間にとっては最も恥ずべき行為の1つをしたことによって、恥ずかしさと、恋人に幻滅されるのではないかという恐怖感で泣いてしまった。
しかし優希は、歓喜の表情を浮かべながら、もっと恥ずかしい姿を曝け出してほしいと言ったのだ。
椿は、優希の奉仕に、かつて味わったことがないような幸福感と快感を得るようになる。
そして、そのような愛し方をされているうちに、優希への思慕が異常なまでに募っていった。
あられもない姿、自分では恥辱以外の何者でもなく、人として見られてはいけない姿を晒しても、優希がそれを受け入れてくれるからだ。
これが1つ目の原因である。そしてもう1つ、椿が変貌を遂げる原因を述べる。
この男子は、相手が絶頂を迎える時の表情に、何よりも性的興奮を覚える。
簡単に言えば、相手のイった顔を見るのが好きなのだ。
そのために、1度のセックスで椿を何度も果てさてる。
幾度となく迫り来る快楽に耐え切れなくなり、正気を保てなくなっても、指や舌で弄んだ。
しかし、ただ奉仕をするだけではなかった。
優希は、事が終わるまでずっと、愛を囁き続けるのだ。
これがいけなかった。
ただ「愛してる」と言われるより、快楽を与えられ、朦朧とした意識の中での「愛してる」は、椿の深層心理により深く刻まれていった。
呪文のように囁き、まるでマインドコントロールのように刷り込んでいくことで、椿は異常なまでの愛を体感した。
最終的には、快感を得ると(それが自慰であっても)優希に愛されていると自動的に思うようになり、
逆に、優希に愛を囁かれるだけで、感じてしまうようになった。
つまり、優希無しでは生きていけないようにされてしまったのである。
断っておくが、優希は意図して椿を開発したのではない。
ただ椿を想い、愛したからこそであって、彼にとってはごく普通の行為でしかなかった。
これこそがこの男子の恐ろしい所である。自身の気付かないところ、すなわち無意識下で、恋人を私物化してしまったのだから。
しかし、たった今述べたように、優希は自分の所業に気付いていなかった。
よって、椿が嫉妬深く、独占欲に満ちても、どうしてそうなったのか分からなかった。
それは奇しくも、丁度『優希君』から『ゆう君』に呼称を変えた時期だった。
椿にとって、優希の他人への優しさは、すでに耐えられるものではなくなっていた。
優希が愛しているのは自分だけ、そのような自負があったから。
優希の優しさが何よりも心地よい椿は、誰にも渡したくなかった。
そして、これほど自分を愛しているにも関わらず、他の女にも、自分と同じように接するのは我慢ならなかった。
結果、自分以外の人間、とりわけ女性に対して、制御不可能なほどの嫉妬心を燃やすようになってしまった。
(つづく)
管理人様へ
第1話の、「うん・・・ゆう君が他の女の子と話してるとね、何だか、ちょっと、嫌だな・・・」 を
「うん・・・優希君が他の女の子と話してるとね、何だか、ちょっと、嫌だな・・・」 に修正して載せて下さい。御願い致します。
次回、ようやく椿ちゃんの嫉妬が見られると思います。
ですが色々と事情がありまして、次の投下はしばらく先になるかもしれませんのでご了承下さい。
エントロピーが増大しすぎた朝食を終え、僕たちは登校。
そして不自然な程に何事もなく授業も進み、ついには四時限目の中程になった。
僕の頭の中にあるのは、珍しく華以外の人間のこと。陸崎さんは何故僕に関わってきた
のだろうか、ということだ。しかも、朝は強烈すぎる程に関わってきたのに、教室に入っ
てからは一言も話しかけて来ずに、何か考え事をしているらしかった。他にも朝に華が言
っていた鉄パイプも気になるし、あの変態な後輩(今日初めて名前を知った、さくらとい
う少女)と知り合いなのも疑問だった。
僕の唯一持つ解決方法である交渉をするにしても、分からない事が多すぎて使えない。
話し合いをするための言葉がなければ、そもそも話し合いなんて不可能だ。仮説は幾つか
あるが、突飛なものばかりで使えない。証拠を揃えるまでは只の妄言としてしか機能しな
いし、下手をすれば逆に相手に利用されるのがオチだ。
「どうしたものか」
「うん? どうしたの、旦那」
大きな悩みの種の一つである陸崎さんが話しかけてくる。昨日約束した通りに、迂濶に
触れてくるようなことはしない。破天荒なくせに、このバランス感覚は卑怯な組み合わせ
だ。もしかしたら、それを維持するために発達したのかもしれないけれど。
閑話休題。
どうもしない。と言いかけて、しかし止めた。分からない事があるのなら、一つづつ解
決していくのが凡人である僕の方法だ。もしかしたら発展するかもしれないし、上手くい
けば問題も幾つか解決出来る。
僕は陸崎さんに聞こえる程度の小さな声で、尚且つ前を見ながら、
「陸崎さんとの関係で悩んでいたんだよ」
「へぇ、華ちゃん以外の人のことも考えるんだ。嬉しいけど、意外」
返ってくるのは、喜びではなく警戒の声。しかし、その中にも多少の興味が入っている
のは間違い無いだろう。そして、引きずり込めば僕の仕切りだ。
「出来れば僕との間に問題を作らないでほしいんだけどね」
「なら、まずは私を名前で呼んで。名字なんて他人狭義なのは止めてさ。これで意外と、
ストレス溜るんだよね」
一瞬考える。まず相手に従って交渉をすることは、動かしやすく出来る反面、調子付か
せる事にもなる。それに、僕が陸崎さんを名前で呼ぶと華の方に問題が起きるかもしれな
いし、大元はそれを避けるための交渉だからそれこそ本末転倒だ。
「悪いけど…」
「もちろん、華ちゃんは気にしなくて良い。聞かれたら、脅されたって言ってくれても私
は気にしない。ただ、私が旦那を好きだからその不名誉も被ることを忘れないで」
やっぱり、陸崎さんはただの馬鹿じゃない。先に相手の逃げ道を用意して、そこに追い
込む。これは交渉ではなく、寧ろ誘導だ。
「どうしたの?」
選ぶ余地なんて無いでしょ、という言葉が声の端に僅かに現れる。
僕はこの時間に交渉を開始したことを、成功だと確信した。
授業中だから、という理由で向き合わなくて済むし、小さく発音する声は感情の揺れを
伝えにくい。それは相手も同じハンデだが、相手の表情を見ずに済むし、自分の揺らぎを
見られたくない僕にとっては重要だった。更に、僕は短期決戦型なので適当に打ち切るの
に授業は丁度良い。
「水、だっけ?」
「うん。宜しく、旦那」
「このまま交渉を開始、ってので良いのかな」
「へぇ、良い言葉使うじゃん」
「茶化すな」
本当に、この娘はやりにくい。
「僕からの要求は二つ。今朝に言ってた鉄パイプのことと、僕に対する明確な目的だ」
「はいはい、まずは目的ね、これは簡単。ねぇ旦那、この世界で一番優れている人間って、
どんな人だと思う?」
そんなの、分かるわけがない。人間の価値基準が人によって違う以上、明確なランク付
けが出来るわけがないし、それは考えるだけ無駄というものだろう。質問の答えが存在し
ない以上、その問題は破綻していて質問としての意味を持っていない。
だから僕は、
「そんなの居ないよ」
人類が有限である以上、この答えも矛盾しているが、こう答えた。
「そう、それで正しい。だから私は上も見ずに、下も見ずに、横に走った。それこそ偏執
的に。そして会ったのが旦那だ。視線が誰にも向いていない旦那は、枠から離れて完結し
ていた。それこそ最高の人間だよ」
「過大評価だよ」
「社会の価値観を決めるのは社会だけど、個人の価値観を決めるのは個人だよ。行動する
のも、また個人。それこそ、旦那の考えだろ?」
反論が出来ない。
「そして、私はその人間の隣に立ちたいと思った」
これが、一つ目の答えか。無意味にこだわっているのではなく、明確に目標を持ち、更
には偏執的に寄って来る。本当に不器用だけと、だからこそ厄介なタイプだ。
「鉄パイプは、ごめん。今は言えない」
成程。一つを言えないからもう片方を素直に言ったのか。更には、僕へのアピールもあ
るんだろう。僕への愛情故に泥を被ると言い、更には理由も言われた今は、心が重い。
「ごめんね、他の要求は?」
二つの手札を出そうとしているのは、要求が二つ有るからか、大きなものなのか。
勘だが、多分前者だ。
愛情を無下にしている現状を考えると、多少は無茶な難易度でも数が同じで通るだろう。
結局は押しに弱く、通してしまう。それが僕の甘さだ。
それは後にして、今は僕の要求だ。聞いてもらえる内に布石を打っておいた方が良いだろう。
僕は少し考え、
「僕と華がくっついている時には話しかけるな」
これで水からの行動を防げるし、行動自体も制限できる。僕や華から話しかけた場合は
行動できるというのが、一番の大きな利点だ。
「良いよ。それじゃあ、私からの要求は二つ」
正解だった。こちらも制限が大きく付くかもしれないが、状況は多分こちらが有利。
「一つは、昨日のキスを許して」
また、愛情故に、という言葉を出してくる。
「もう一つは要求じゃないかもしれないけど、旦那と華ちゃんの関係や気持を考えてみて?」
瞬間、心臓が強く脈打った。
僕と華との関係?
気持ち?
馬鹿らしい。二人は幼馴染みで大親友。僕は華が大切で、華は僕に依存していて…
考えたところで電子音が鳴り、授業を終えた教師が礼もせずに出ていった。
「誠、メシだメシだ」
言いながら、華が背中に抱きついてくる。
「そうだな、早く食おう」
華を振り返ると、視界の端に水が映る。
今日出来たらしい、新しい友達の席に向かう横顔は、やっぱりヘラヘラと笑う顔で、
でもなんだか寂しそうで、
少し胸が痛んだ。
今回はこれで終わりです
あれ? また交渉?
そうです、気が付いたらこうなってました
今回から話が本格的に動きだします
姫様は命に代えても守る。その想いに偽りは無い。
だけど。
俺の命が代償ならまだいい。いくら姫様を守るためでも団長の―――
「くそっ」
いくら考えてもどちらかを選ぶなんて決められない。
俺は頭を抱えてベッドに腰掛けた。
無茶苦茶だ。こんなことならもっと早く騎士を辞めるべきだった。
戦争が終わった段階で辞めれば良かったんだ。
いや、突き詰めて言うなら三年前のあの日に死ぬべきだったんだよ…
今すぐ発狂して何もかも忘れたい。そんな気分だ。
騎士を辞めると決断してから治まっていた嘔吐感がぶりかえしてくる。
「なんで……」
なんでこんなことに。そう口に出す前に。
バサリ
いきなり背中に重みを感じた。
「ひ、姫様?」
いつの間に帰ってきていたのか、姫様が後ろから俺に抱き付いていた。
後ろに首を回したが丁度死角になって顔が見えない。
「ウィリアム……」
さっきまで死の恐怖に怯えていた声とは思えない。
妙に落ち着いていて俺の心の奥にまで入ってくるくるような、そんな声。
「わらわは…まだ、死にとうない。
ウィリアム、おぬしはどうじゃ?わらわには生きていて欲しいか…?」
変だ。心がざわつく。
「あ、当たり前です」
「―――嬉しい。でもわらわの命を奪おうとする者がおるのじゃ。それが誰か、解るか?」
ゆっくり、まるで子供を躾けるように俺に囁く。
「団長です…」
気分が楽になる。
姫様に誘導されて答えるだけで、俺の心はあんなに悩んでいたのが嘘みたいに落ち着きを取り戻していった。
「そうじゃ。あの者がわらわを殺そうとしておる。
おぬしが生きていて欲しいと思う者を、殺そうとしておるのじゃ」
思考が霞みがかっていく。心地いい。
「わらわはおぬしにとって大切な者か…?」
それにははっきり答えられる。
「はい」
「ならばわらわを守ってくれ……わらわを助けてくれ」
「だけど団長を…」
言い切る前に姫様が言葉を重ねる。
「マリィはおぬしの大切な者を奪おうとしておるのじゃぞ?
つまり、あやつはおぬしの――――敵じゃ」
「て、き…」
そうだよ。姫様はこんなに助けを求めているじゃないか。何を迷う?
どちらを選ぶかは自明の理だ。
「マリィは言わばフォルン村を襲った者たちと同じことをしようとしておる。
あの時の再現をしてウィリアムに三年前と同じ思いをさせようとしておるのじゃ」
喉が渇く。いや、だ…そんなの、いやだ。
「いやだ……あんなの、にどと、みたくない……」
「そのためには、どうするか解っておるな…?」
握っているナイフを俺の手の上から更に強く握る。
あぁ。そうだ。だんちょうはおれのてきだ。
ひめさまをまもらないと。あんなおもいは、もうにどとしたくない……
とうとう決断した。
知らせでついさっき、敵が城を訪れたらしい。
「ウィリアム……」
俺の腕にしがみつく姫様。
「だいじょうぶです、ひめさま。かならずおまもりします」
そう言うと彼女は不安ながらも笑顔を向けた。
部屋の外で鎧の擦れる音と足音が聞こえる。来た。俺の敵が。
ガチャリ。
部屋の扉が開く。
「こんばんわ〜姫様♪黄泉に行く時間ですよ〜。ふふっ」
何が可笑しいのかくすくす笑う、俺の敵。
「き、来たな…マリィ」
「すぐに殺し……あれ、ウィル?」
やっと俺の存在に気づく。さっきまで笑っていた敵がキッと姫様を睨んだ。
「さっさとウィルを放しなさい!!」
剣を抜いて突然怒り狂う。まずい、早く何とかしないと本当に姫様が敵に殺されてしまう。
「ひめさま」
「う、うむ」
俺が言うと姫様は腕を放してくれた。
「ウィル、そんなところに立ってないで、こっちに来て…」
敵が潤んだ瞳でこちらに手を伸ばす。あぁ、すぐそっちにいってやるよ。
黙って敵の方へ歩く。手の中には相手に見えないように隠し持っているナイフ。
「早く…早く」
この敵はなんで、こんなにうれしそうなんだ。へんなやつ。
「嗚呼、ウィル」
手の届く位置まで来ると俺を抱きしめた。ほんとにへんなやつ。
「良かった、良かった……私を許してくれるんですね……嬉しい」
敵が何か言ってる。まぁ、いいや。おれはひめさまをまもらきゃ。とっとところしてしまおう。
「嬉しい……嬉しい……うれ――――」
「しね」
強く俺を抱きしめる敵の胸にナイフをできるだけ深く刺しこんだ。
鎧の隙間をぬってナイフの刃が全て敵の中に埋まる。
やった。ひめさまをまもった。
「あ、れ―――?」
敵が不思議そうな顔をしてがしゃん、と剣を落とし、鎧の音をたてて倒れる。よし、てきをたおした。
「な…なんで?ウィル……あれ?ち、力が入ら、ない」
敵が倒れたところから少しづつ血が広がっていく。
「寒い…寒いです……ウィル……お願い、こっちに……来て…」
見下ろす俺に手を伸ばす変な敵。なにやってるんだ、こいつ。
「さ、寒いん、です……お願いですから、こ、こっちに……」
必死で手を伸ばす。何処かから聞こえる誰かの嗤い声。
「い、痛……怖い…なんで、こん、な……暗いの…?ウィル……何処…?」
光を失っていく瞳がきょろきょろと彷徨う。なんで、こいつ、おれをよんでるんだ?
ふと敵の髪飾りが眼に入る。ブローチか。
……ん?なんだ……?このブローチ、まえにどこかでみたような―――?
「怖いよ……ウィル、た、助け…て…」
このブローチは……えと、たしかおれがだれかにプレゼントした………だれに?
「さむい……ウィ、ル………た…けて……」
だれにプレゼントしたんだ……?
「た………け………」
パタンと。
伸ばしていた手が力なく落ちる。さっきまでうるさく呟いていた敵の声も聞こえなくなった。
いったい、だれ、に…………?
『すまないが、このブローチをくれ』
ピシリ
『欲しいんでしょう?このブローチ』
ピシリ
なにかがひび割れていく音が聞こえる。
『あの…いいんですか?』
ピシリ
俺の中のなにかが。
『えぇ。日頃お世話になっているほんのお返しです。気にしないでください』
ピシリ
なにかが壊れようとしている。
『あ、ありがとう……』
ガシャン
たった今、俺の中の何かが粉々に砕け散った。
あ、そうだ。だんちょうにプレゼントしたんだ。
…ってことは、おれは、だんちょうを、こ、ころ、ころし――――――
以上、Bの13話でした。
次回はBルートのエピローグになると思います。
〃〃∩ n_, ,_n
⊂⌒( ・(ェ)・) < ウィル君が洗脳されちゃうなんて
`ヽ_つ ⊂ノ
n_, ,_n
(・(ェ)・ ∩ < 団長が死んじゃうなんて
⊂ (
ヽ∩ つ ジタバタ
〃〃
〃〃∩ n_, ,_n
⊂⌒( つ(ェ)・) < やだやだ〜
`ヽ_ ノ ⊂ノ
作者様GJ!姫、恐ろしい子!
432 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 22:15:06 ID:OG98A8A/
GJ!GJ!GJェェェェェイ!
だ、だんちょーーーーーーーーー!!
かわいそ過ぎる。
ウィル君を思うあまりついかっとなってやってしまっただけなのに。
これはハーレムエンドに期待しますw
GJです!!
A、BだけでもGJ!なのにCもあると思うと笑いが止まらないぜーーー!
だんちょぉおおぉおおぉおおぉおお
自分のルートでも死んじゃうし・・・
団長とウィルが素直にくっつくことがないのが悲しいぜ
>>426 いろいろ考えているが、結局修羅場になってしまうこの主人公好きだぞ
>>430 団長ぉおぉおおぉぉーー!!1
団長ーっ。・゚・(ノД`)・゚・。
このままいくと自殺エンドか、姫の言いなりエンドのどっちかだな
個人的には、団長との甘々エンドと団長の奴隷エンドがいい
う・・うあああ・・・!!団長オォォォ―――ッ!!
団長カワイソスorz
・ ・ ・ ・
「なぁ、羽津姉……」
「なぁに、祥ちゃん……」
あれから暫らくしてやっと祥ちゃんは落ち着いて、私達は布団で横になっていた。 衾では区切ってないけど、でも布団は別々で、そう言う状態でそれぞれ横になっていた。
「今日……楽しかったよな」
「うん……。 私も、楽しかった」
祥ちゃんの呟きに私は答える
「俺が居て、羽津姉が居て、そして結季がいて……」
「うん……」
「夜も、そんな楽しい時間が続くと思って楽しみにしてたんだけどな……」
ズキリと胸が痛んだ。 祥ちゃんは童心に帰って楽しんでいた。 そしてそんな楽しい時間のまま夜も過ごす事を望んでいた。
それなのに私はそんな祥ちゃんの気持を……。 そう、そんな祥ちゃんからすれば私のしでかした事は裏切りだったのかもしれない。 純真な気持に戻って楽しんでいた祥ちゃんの気持を踏みにじった。 私の女としての欲望で。
この状況をお膳立てしてくれたのは確かに結季だが、でも悪いのは結季じゃない。 あのコは私の望みを察してとりなしてくれただけだ。 悪いのはそれを望んだ私……。
「ゴメンね……祥ちゃん……」
「羽津姉が悪いんじゃないよ……」
祥ちゃんは私を気遣って優しい言葉を掛けてくれる。 でも、其の顔は相変らず力なく天井を見上げたままだ。
「ゴメン……」
私はまた呟く。
「もう寝よう。 オヤスミ羽津姉……」
「うん……。 オヤスミ祥ちゃん」
瞳を閉じた祥ちゃんの横顔を見ながら思う。
何でこんな風になっちゃったんだろう。 いや、解かっている。 解かりきっていた。 でも認められずにいた。 認めたくなかった――私が間違っていたという事を……。
あの日、私が告白なんかしたから。 あの日の告白から全ての歯車は狂いだしていたんだ。
祥ちゃんは昔っから私を慕ってくれていた。 幼馴染として、姉として。 それなのに其の事に満足しないで私はそれ以上を望んでしまった。
私にとって祥ちゃんは太陽だった。 でもどんなに想っても近づきすぎてはいけなかったんだ。 幼馴染以上の距離に。
でもそれに気付かずそれ以上の、恋人の距離にまで近づこうとしてしまった。 結果こんな無残な事になってしまった。 まるで太陽に近づきすぎて墜ちて死んだ哀れなイカロスみたいに……。
「大丈夫? 羽津姉?」
「え?」
気が付けば祥ちゃんが心配そうに私のことを覗き込んでいる。
気付かないうちに私は泣いてた。 そんな私を祥ちゃんは心配して声をかけてくれていた。
「う、うわああぁぁぁああぁぁぁん……!! ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……!!」
私は堪えきれず祥ちゃんの胸に飛び込み声を立てて泣いてしまった。
そんな私に祥ちゃんは戸惑いながらも優しく抱きしめなだめてくれた。
そう、今日がなんであんなに楽しかったのか。 それは幼馴染に戻って無邪気に笑いあい楽しんでいたから……。
でも認められなかった。 今日の祥ちゃんの顔がここ数ヶ月のどんな時よりも輝いていたのを。 いつも感じてた距離感もぎこちなさも無くなってた事を。 幼馴染としての時間が恋人同士として過ごした時よりも楽しく満ち足りたものだったことを……。
私はどうしてもそれを認められずにいた。 でも、でも……もうこれ以上は限界だ。 もう、これ以上『コイビト』の立場にしがみつき、縋り続けても苦しみ傷つくだけだ。 私も祥ちゃんも……。
私達は恋人同士になんかなる必要は無かったんだ。 いや、なっちゃいけなかったんだ。
私達は何時だって誰よりも近い間柄だったんだ。 それは幼馴染だから、姉弟のような間柄だったからこそ築けた関係だったんだ。
そして……泣きながら私は心を決めた。
「大丈夫? 羽津姉」
ようやく涙が収まった私に祥ちゃんが優しく語りかけてくれる。 祥ちゃんの優しい言葉に決心が揺らぎそうになる。 けど……ココで意思を翻しちゃ駄目だ。 そして意を決して口を開く。
「ねぇ、祥ちゃん。 戻ろう……幼馴染に、姉弟だった頃に……」
言いながらまた私の目から涙が滲んでくる。 改めて口にするとやっぱり辛い。
「羽津姉……。 羽津姉はそれでいいの?」
「勝手な事言ってるって解ってる。 私のほうから告白したのに……。 それなのに……」
「俺のほうこそごめん……。 俺が不甲斐ないばっかりに……」
祥ちゃんの言葉に私は首を横に振る。
「ううん、祥ちゃんは何も悪くないよ! 私の考えが足りなかっただけだから。 それに……これは、何も悲しいことでも辛いでも無いんだよね。 元通りに……元の幼馴染に、姉弟に戻るだけなんだから……ね」
「ああ。 羽津姉はこれからもずっとずっと、俺の大事な姉さ」
そう言って祥ちゃんは優しく微笑んでくれた。 そう、幼い頃からいつも側で微笑んでくれていた優しい笑顔。 小さい頃から時に私の前を、時に私の後ろを付いて歩き、いつだって振り向けばそこにあった優しい笑顔。
「ありがとう……祥ちゃん……」
「うん、じゃぁ今度こそオヤスミ……」
そう言った直後祥ちゃんは何か考え込むようなそぶりを見せ、そして口を開く。
「なぁ、一緒の布団で寝ようか? 小さいころのお泊りの時みたいにさ」
其の言葉に私の胸は堪らないほどの優しさと温かさに満たされていく。
「うん!」
そして私は応える。 布団の中でそっと手を繋ぐ。 掌から祥ちゃんの温もりと一緒に優しさが伝わってくる。 そしてお互いの顔を見ると自然と笑顔がほころぶ。 其の笑顔に私の心は満たされていく。
そう、それはさっき躯を重ねてた時なんかよりもずっと満ち足りたものだった。
夜にまた投下します
おぉ、ついに明日香たんが幼馴染以上の感情を自覚し始めるのか?
このまま黒化かするのか?他の武道ヒロインのように凶悪化してしまうのか?!
姫様が助かって安堵しつつも
ウィル君心が壊れてしまってカワイソス
>>441 相変わらず主人公のへたれぶりが冴え渡ってます!
これからもより一層のへたれを期待してます。
羽津姉ぇぇぇぇ
くそっ俺ならたぶんこんなひどいことはしない気がしないでもないのに
くっ!ここ最近の祥ちゃんは、ちょっとにくめない…でも、羽津姉…切ないよ、切なすぎるよ〜
羽津姉……テラセツナス。・゚・(ノД`)・゚・。
『ふっ!惰眠を貪るしか脳のない愚民が!!起きよ!貴様らに我が名誉なる言葉をかけてやって………』
カチッ
「ふあーー……ネムいネムい。」
春華から貰った目覚ましをけす。相変わらずハイセンスな方でいらっしゃる。
起きたらもう志穂は出ていた。うーん。昨日は遅くまでしてたってのに………バイタリティあるねぇ。こっちはまだ朝日が眩しいってのに。
ベットからおり、居間に行くと、テーブルには朝食が置いてあった。ご飯に味噌汁に鮭。あー、日本の朝飯だねぇ。
「いただきます。」
時計を見ると、まだまだ余裕が有る。久々に悠々とした朝食を食らおうじゃないか。
「ズズーー……はぁ。」
あは、親父臭い。でもこういうのも必要だよなぁ。普段から忙しないと心が荒んでしまうよ。だからこう………
「せんぱーい!おはようございまーぁっす!!」
ゆったりとした……
「あれ?もうご飯たべてました?まさか!せんぱいが自分で!?」
日本の…………
「いや、そんなことあるはずがありませんよね!そうだ、あのチビがつくったんでしょぅ?嗚呼!たべちゃだめです!きっとほれぐすりなんて汚いのが入ってますよ!」
朝食をですね………………
「ほらほら!さっさとそんな悪玉は捨てましょう!私、朝食用のおにぎりと昼のお弁当つくってきたんですよ?せんぱいの好きな固めの目玉やき………」
デコチョップ!
ビシッ!!
「あうぁ!な、なにするんですかぁー、せーんぱぁい……」
「貴様、俺の朝食思想を読めなかったのか?朝からドヤドヤと捲し立ておって。もう学校行く気も失せたわい。」
「ああ!ご、ごめんなさい!もうしゃべりません、お口チャック、お口010INA!」
くっ、俺以外にそのネタは通じねえっての。まぁ、俺しかいないが。はぁ、志穂が居ようが居まいがこいつのテンションは変わらんのな。
「今日はですね、あの女がいないからやりたい放題なわけですよ。ここ数日あの強欲痴女のせいで煮え湯を飲まされてましたからねぇ。
切なさやるせなさはんぱなかったんですよ!」
前言撤回。志穂がいないから元気なんだな。
はぁ……これ以上疲れる前に学校いこ。
〜登校中〜
「だー、暑い。引っ付くな。」
「なんでですか。あの女とはべたべたできて私はシッシですか。新しい女が出来ると冷たくなるってのは本当なんですね。」
「マテ、お前がいつ俺の女になった?」
「もうそりゃ生まれた瞬間にですよ。定としか言い様が有りません。」
ときどきこいつのテンションがうざったくなる時があるが、まぁ根はいいやつだから一緒にいては楽しいんだよな。
………志穂とは違う位置になるのだが。こいつが興奮剤なら志穂は清涼剤。その志穂が居ないとなるとピンチだ。ただでさえオーバーヒート状態だし。
「あ、せんぱい。今日私の部屋に来ませんか?どうせ暇でしょう?」
「んん、いや、暇じゃない。今日は部活だ。」
「?せんぱい部活なんてやってましたっけ?」
「あぁ、今日は帰宅部部長として、清く正しい帰宅方法を皆の衆に見せなきゃならんのですよ。」
「………」
うぅ、視線が痛い。
「ごめ、嘘。」
「はぁーい、じゃあ私の部屋、決定ですねぇ。」
まぁ、断る理由もないし、いっか。別にやましい事なんか………な、ないよね?
投下中でしたら申し訳ない
作者様GJです。
「広き檻の中で」の主人公の性質を考えたら(*´д`*)
部屋に入った途端逆レ(ry
「――――では、そのようにいたせ」
「仰せのままに」
わらわの言葉に大臣の一人が傅いてから立ち去った。
「……ふぅ」
疲れを隠し切れず、玉座にもたれた。
「女王陛下、やはり政は大臣たちに任せて暫く休養を取るべきではないですか?」
側に控えていた執政官が心配そうにこちらを窺っている。
「……そうもいかぬ。ただでさえ人が足らぬのじゃ。
頭となる王がいなくては正常な政治を維持できん」
「それは…そうかもしれませんが……」
「とはいうものの。流石に今日は疲れた。自室で休ませてもらう。
何かあったら必ずわらわをよぶのじゃぞ?」
「はっ」
身体を気遣いながら立ち上がり、自室に向かった。
あれから一年が過ぎようとしている。
マリィの死後、わらわはフォルン村の事件の真相を民に発表した。勿論、大騒ぎになった。
トレイクネル家は完全に没落、事件に加担した貴族たちは軒並み失脚した。
父上は責任を取って半年後に王の座を退き、現在はわらわが指揮を執っている。
といっても貴族たちが大勢失脚して人手不足。わらわは激務に追われた。
今は人員補充に奔走している。
ウィリアムは―――――
ウィリアムはわらわが女王になる直前に死んだ。死因は衰弱死。
あの後、ウィリアムは廃墟となった故郷に戻り、ひっそりと暮らしていた。わらわの静止は聞き入れてくれなかった。
わらわは勿論それに納得せず、何度もフォルン村を訪れた。
ウィリアムはボロボロだった。あまり食事も取っていなかったいらしい。
わらわは足げくウィリアムの下に通い、何度も慰めた。身体を使うことも度々あった。
それでも、頑なに故郷を離れることを拒み、最後までウィリアムを城に戻すことは叶わなかった。
ウィリアムはずっとマリィを手にかけたことを悔やんでいた。
彼が逝く間際の言葉は今でも忘れられない。
『許してください…団長』
わらわのせい。いくら生き残る方法があれしか無かったと言ってもウィリアムに殺させるべきではなかったのだ。
後悔した。ウィリアムにとってはマリィも大切な、大切な人物だったのだと真の意味で知らされた。
彼が死んだ後、わらわもすぐに後を追おうと思った。ウィリアムのいないこの世界に未練などない、そう思っていた。
でも………
「あら、陛下。お休みでございますか?」
「うむ。わらわも流石に今日は堪えた。すまぬが休ませてもらうぞ」
自室に入ると部屋を掃除していた侍女に声をかけ、寝具に着替えた。
「陛下、身重なのですから御無理は程々になさってください。
お腹の子に響きます」
「わかっておる。以後気をつけよう」
「それでは私はこれで」
侍女は恭しくお辞儀して退室した。
それを見送ってからベッドに腰掛ける。
そう、わらわは妊娠していた。ウィリアムの子だ。この子の存在がわらわをこの世に繋ぎ止めた。
ウィリアムが遺してくれた大切なもの。この子を道連れにどうして死ぬことができよう。
今のわらわの生き甲斐はこの子が大きくなるまでに王国を平和に立て直すことだ。
そうでなくては先に逝ってしまったウィリアムに申し訳が立たない。
不意にお腹の中で、子供が動いた。
「ふふっ…」
この子が安心して暮らせるようになるまでは、まだわらわは死ねない。
わらわが死ぬその時まで、すまぬがそちらで待っていてくれ、ウィリアム。
そして、マリィ。その時はもう一度、わらわと勝負じゃ。それまでウィリアムに手出しするでないぞ?
わらわが逝く、その日まで。
「のぅ、ウィリアム―――――」
未だ生まれ出ぬ我が子を撫でながら、自然と自分の顔が綻ぶのがわかった。
END B 『盾の仔』
Bエンドでした。
実は姫様、作者的に全くビジュアルイメージが固まっていません。
せいぜいロリってくらいで。
文中にその辺の表現がないのもそのせいです。すいません。
結局最後まで固まらなかったorz
次回は最終ルート、C。
今まで死亡率が高かった分、歯の浮くような台詞満載でハッピールートをお届けします。
切ないな・・
待ちに待ったハッピーエンドw
せつない
姫はロリだったんだな
いや違うぞ別に姫がロリってことにせつなさをかんじてるわけではなくて
むしろ団長のほうがとか思ってたわけじゃないぞ
いやマジだぜ
一応1話冒頭に団長が童顔と言う描写がある。
つまりウィリアムはロ(ry。
>>449 春華チャンスだよ春華!敵は遠くへ、そして獲物を自分のホームに引き寄せる
泥棒猫の本領発揮に期待大
>>453 ついにハッピーエンドか、いままでのせつなさを満たしてくれ
・ ・ ・ ・
「ゴメンね季歩おねえちゃん。 色々してもらって泊めてもらった上にみっともない所まで見せちゃって」
朝、わたしは季歩おねえちゃんの部屋で朝を迎えた。
「気にしなくても良いわよ。 従姉なんだから変な遠慮なんかしないでどんどん甘えなさい。 それより平気なの?」
「うん、大丈夫……」
わたしがそう言いかけると季歩おねえちゃんは私の顔にそっと手を沿える。
「もう、だから強がりはよしなさいって。 昨晩はずっと泣きっぱなしで結局泣きながら寝ちゃったじゃない。 今日も二人と一緒に回るんでしょ?」
「うん」
そう、宿はそれぞれ別にとったものの予定では旅館の前で再び合流し午前中一杯軽く観光地を回ってから家に帰る予定。
「大丈夫なの? 辛いなら無理しないで良いのよ? 私から言ってあげるから」
「うん、もう平気。 折角の旅行最後まで綺麗に終わらせたいから」
「でもひどい顔してるわよ。 折角の可愛い顔が台無し……。 チョット待っててね」
そう言うと季歩おねえちゃんはファンデーションとパフを取り出す。
「ほらジッとして。 気休めかも知れないけどやらないよりは少しはマシだから」
「ありがとう。 季歩おねえちゃん」
「ここでイイの?」
「うん、ありがとう季歩おねえちゃん」
私はシートベルトを外しながら答える。
「ゴメンね。 本当は旅館まで送っていってあげたかったんだけど今日は仕事があるから……」
「ううん、十分よ。 本当色々ありがとうね季歩おねえちゃん」
そう、季歩おねえちゃんは出勤前にわざわざ最寄の駅まで送ってくれたのだった。
「あと、辛かったらいつでも電話してきなさい。 私でよければ力になるから。 もっとも泣き言や愚痴聞いてあげるぐらいしか出来ないけど」
「うん、ありがとう。 本当に大丈夫だから。 それじゃぁ、ね」
「じゃぁね結季。 羽津季と幼馴染クン、叔父さんと叔母さんにもヨロシクね」
そしてわたしは季歩おねえちゃんの車を見送ると駅構内へと向かった。
電車とバスを乗り継いで旅館に到着すると祥おにいちゃんとお姉ちゃんは笑顔で出迎えてくれた。 二人共笑顔ってことは上手く行ったってことだよね? うん、良かった。 こんな事突っ込んで聞けないけどそう言うことだよね。
そしてガイドブック片手に予定通り観光地を回る。 三人で回るのも多分コレが最後なんだろうな……。 そう思うと……駄目泣いたりしちゃ。 最後だからこそ笑顔で楽しい思い出にしなくちゃ。
祥おにいちゃん、お姉ちゃん。 二人共幸せになってね……。
そして正午を過ぎた頃、帰りの電車に乗り帰路に着く。 お昼ごはんに買った駅弁に車内で舌鼓を打ち、来た時と同じ様にお喋りに興じたりトランプで遊んだり。
きっとコレが最後になるであろう三人での楽しい一時。 わたしは其の最後の瞬間まで噛締める。 そして、この瞬間を想い出に胸にしまっていこう……。
日が西に傾いた頃、わたし達は無事帰宅。 これにて旅行は終り。 最後まで無事済んでくれて本当に良かった。 そしてわたしの……。
夕食時、お父さんとお母さんと一緒に食事しながら旅行の話に花が咲く。 わたし達の話を聞いて、お父さんもお母さんも楽しい旅行でよかったねって言ってくれた。
お風呂に入って旅行の疲れを完全に流しそして就寝、その時部屋にお姉ちゃんが入ってきた。
「今回は本当ありがとうね、結季。 本当に楽しかった」
「そんな……。 楽しかったのは私も一緒……お、お姉ちゃん?!」
私の言葉を遮るようにお姉ちゃんは抱きついてきた。 私が戸惑いを隠せないでいるとお姉ちゃんはそっと口を開く。
「ごめんね……結季」
え? どう言う事? まさか……気付かれてたの? わたしの……
「ごめんね……折角お膳立てしてくれたのに……」
いや、そうじゃないみたい。 でも、だったら一体……
「ど、どうしたの? お姉ちゃ……」
でも返事は無い。 ただお姉ちゃんは私に縋るようにわたしに抱きつき、そして「ゴメンネ、ゴメンネ……」と繰り返すだけ。
私は抱きとめながら、ただ戸惑うしかできなかった。
やがてお姉ちゃんはポツリと口を開く。
「私ね……祥ちゃんと別かれちゃった……」
私は耳を疑った。 な、何で?! 何でそうなるの?!
「お、お姉ちゃん一体どう言う事なの? ねぇ、何があったの?」
返事は無かった。 ただ、お姉ちゃんは尚もすすり泣くだけだった。 そんなお姉ちゃんにわたしはこれ以上問うことなど出来なかった。
・ ・ ・ ・
旅行から帰った翌日。 俺は結季から電話で呼び出された。 其の声は明らかに不機嫌そのもので用件だけを言い、取り付く島も無く切られた。 俺は言われたとおり向かう。
用件は……大体察しがつく。 俺が到着すると結季は既に待っていた。
結季は俺の姿を確認すると真っ直ぐ歩み寄って来、そして其の右手を思いっきり振りぬいた。 左頬に鈍い痛みが疾る。 反す手で反対側の頬も打たれた。
結季の其の顔には怒りの色が、そして其の目には今にも溢れ出しそうなほどの涙が浮かんでいた。
痛い……。 頬よりもそれ以上に胸が、心臓が……心が痛かった。
「どうして……」
声を震わせながら結季は口を開く。
「どうしてお姉ちゃんと別れたのよ?! お姉ちゃんの何が不満なのよ?!」
結季は俺の胸を打ちながら俺を責め続ける。 俺は黙っていた。 ココで謝るつもりは無い。 確かに羽津姉を傷つけたことに罪悪感や胸の痛みがないわけじゃない。 でもココで謝ってしまえばそれは自分の気持を偽る事になるから。
「どうしようもない事もあるんだよ。 どうしようも……」
「どうして!! どうし……!」
「俺だってなぁ!」
俺は思わず叫んだ。 其の叫びを聞いて結季の体がビクッと震えた。
「……俺だって一度は腹を決めたさ……。 確かに羽津姉は魅力的な女性さ。 そしてあくまでもお前がそれを望むならそうしようとも考えたさ」
俺が言葉を切ると結季は口を開く。
「だ、だったら……」
俺は結季の言葉を遮り再び口を開く。
「だけどなぁ! どうしようもない事もあるんだよ!! 俺だってなぁ! あの夜覚悟を決めようとしたんだ!! 羽津姉を抱いてお前への未練を断ち切ろうと思ったさ! だけどなぁ! だけど出来なかったんだよ!!!」
「祥おにいちゃん……」
「駄目なんだよ……。 お前じゃなきゃ駄目なんだよ結季……」
気付けば俺の両目からは涙がボロボロ溢れ始めていた。 そして俺は結季に縋りつくように泣いていた。
泣きじゃくる俺を結季は優しく抱きしめてくれた。 そしてポツリと呟くのが聞こえた。
「ゴメンナサイ……。 祥おにいちゃん……」
泣いて、泣いて、ひとしきり泣いて、心は未だ痛いけど、でもやっと少し落ち着いた俺は口を開く。
「ゴメン結季……。 みっともない所見せちまって……。 俺に泣く資格なんか無いのに……」
我ながらみっともない。 ガキみたいに泣きじゃくって……。
「ううん。 みっともないなんて、そんな事無いよ祥おにいちゃん……」
優しく諭してくれる結季。 涙は収まったが、だが依然俺は膝をつき結季に抱かれた状態だ。
結季は俺を抱きしめながらそっと口を開く。
「祥おにいちゃん……。 お願いがあるの」
「お願い……?」
結季の呟きに俺は問い返す。
「来年の……桜が咲く頃まで待ってください。 そしたら、其の時には……」
「え……? そ、それって……? それって、つまり……」
長かった旅行編もやっと幕 そして、やっと結季が……
春華たん ギリギリウザくならず可愛らしさを感じさせるその微妙なさじ加減がお見事
結局コッチでもウィルは死んじゃったか……ハッピーエンド期待してます
姫様も団長も両方の顔を立ててのハッピーエンドとは如何なるものか期待してますね
祥も結季もはっきりしないから羽津姉が被害者になるんだよな
いやでもそろそろ修羅場がくるんですかね?
wktkwktk
>>462 言われてみると、ここまで『修羅場』と言える場面はなかったな。
しかし、今更ここから修羅場に持っていくのはさすがに無茶だろ。
たしかに嫉妬と修羅場はないなぁ
でも三角関係なのでちゃんとスレに合っている
>>463 ダ・カーポ2で音姉と主人公が抱き合っている姿を恋人の由夢に目撃されるという
素晴らしいシーンが出てくるかもしれないので待ちましょう
>>463 いや、全然余裕であるだろ。
付き合い始めた二人を見てまだ吹っ切れてなかった羽津姉が……とか。
俺もそう思う。
他の奴ならともかく今まで応援してくれた妹の結季と
付き合うことになると……wktkするね
>>463 つかさ、「姉だから」という理由を無理矢理こじつけて、自分を
納得させて身を引いたのに、その男が実の妹と付き合い始める
ってのはどうよ。
他の女ならともかく、祥と結季が付き合い始めれば、確実に3人の
関係は拗れるだろう。
ここまでは祥の計略通りにことは進んでいるように見えるが・・・
なぁに、お楽しみの修羅場はこれからさ。
で、いつアニメ化するんだこのスレは?
小恋物っ
小恋物はまだかっ
勢いベスト10に三スレも入っている(23:35現在)
圧倒的ではないか我が神々は
現在の三角関係だけでも俺は十分ハァハァできるぜ!
>>468 一番最初のとこで、最初に今まで姉弟みたいに過ごしてきたのに
恋人なんてとかいって断っといて、同じように姉弟みたいに過ごしてきた
結季に舌の根も乾かぬうちに告白って祥ちゃんどうよ?
まあ何が言いたいかっていうと
祥ちゃんはクズってことでww
羽津姉黒化か。
ええっと、もう400kb? うわっはー。
今はじめて来たんだけどここのSSエロの割合低い?
476 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 00:32:05 ID:IfkpTgu2
嫉妬5:修羅場4:エロ1 ぐらいじゃね?
>>472 本命の女を射止めるために、それ以外の女の気持ちを踏み台
すらできるほど一途な男ととるか。
色恋のため一線を越えた真のゴミクズ野郎ととるか。
読者の意見も分かれるところだろうて。
それはそれ!これはこれ!!
8スレは八裂光輪がいいなあ
沃野の人は続編とかは書かないのかな?
むしろ、胡桃エンドをずっと期待してたんだが。
SSまとめサイトで、これまで投稿されてきた作品読んでて、思ったけど、姉系のキャラの勝率って悪いよね
羽津姉こうなったら逆レイ(ry
幼馴染もなかなか不利っぽいね
個人的には幼馴染キャラがツボだったり・・・
合鍵しかり沃野しかり・・・
やはり当て馬にされやすいのかねぇ(;つД`)
まあ俺は妹系のほうが好きだから問題はないな
長年主人公への想いを暖めて来た方、依存度が高い方が不利な傾向が
ある気ガス。
「妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる」も結局妹が妊娠してギリギリ
ドローに持ち込んだだけで主人公の気持ちは泥棒猫の方にあった訳だし。
>>485 ボクシングでは、チャンピオンとチャレンジャーでは相手の研究がしやすいチャレンジャーのが有利だと鴨川会長が言ってた!
依存度が高い方が手段を選ばないしな
夜は人の気持ちを解放する、という話を昔に聞いたことがある。これは多分、暗闇が人
の後ろめたい行動を隠してくれるからで、その定義で考えると人は生悪説が正しいことに
なる。続けて考えると、解放が必ずしも良い方向に向かうとは限らない。例えば殺人鬼は
夜に動くものだし、悪い方えの考えも夜には活発化する。
僕がそんなことを考えていたのは、要は困っていたからで、
「泣き止め、華」
そう。華が泣いていたからだ。
華は元々泣きやすい娘で、普段の生活では必死に涙を堪えているだけだ。
因みに、今の状況は深夜0時。二人で仲良くベッドに入り、僕が華を抱き締めながらお
腹を撫でている状況。いつも通りの、何気無い日常の一コマというものだ。
「今日はどうした?」
「誠に嫌われた」
今日はそんなに酷いことはしていない筈だが、これは流石に僕の中での話であり、もし
かしたら何気無い一言があったのかもしれない。
「嫌ってないよ」
しかし暗闇の中で返ってくるのは、すすり泣く声だけだ。いつも以上に酷い状態で、僕
は今日一日の出来事を思い出す。いつもと違う行動は、
「もしかして、酒と煙草か?」
いつもの奇行の中で埋もれていたが、これ位しか思いつかない。昨日見た映画の中で男
女の俳優が、いかにも大人な雰囲気で酒と煙草を呑んでいた。それを真似した華が未成年
禁止なそれらを買ってきて、僕が先程叱ったことだ。
か思いつかない。昨日見た映画の中で男
女の俳優が、いかにも大人な雰囲気で酒と煙草を呑んでいた。それを真似した華が未成年
禁止なそれらを買ってきて、僕が先程叱ったことだ。
「さっきのことなら、怒ってないよ」
少し抱き締める力を強くする。
「だって、誠は怒っただろ? それに、成長にも良くないって」
確かに、今は成長が止まっているとは言え、これから伸びる可能性があるので強く叱っ
た覚えがある。だがそれは華の為を思ってしたことだ。
「誠はロリコンじゃないよな?」
ちょ、華さん?
「確かに、僕こと鎚宮・誠は普通の性癖しか持っていないと自負し…」
僕が言い終える前に華は、お腹を撫でるためシャツの中に滑り込ませていた僕の右手を
胸元へと持っていく。指先に膨らみのない胸の先にある突起が当たり、僕は息を飲んだ。
しかし僕の意思を無視して、華は僕の右手を使って擦り続ける。
「華?」
僕の声に応えるのは、興奮して荒くなった華の吐息だけ。
「華、止めろ」
続けて華は、湿り気を含んだ股間の谷間へと僕の右手を運んでいく。無毛のそこは、し
かし幼い外見とそぐわない程に濡れていた。
心臓が、冷たく脈を打つ。
「止めろ」
僕は強く華の手を振り払うとこちらを向かせ、ほぼ全力できつく抱き締めた。
それと同時に、華の泣き声が大きくなる。
「こういうのは、20になってからって言っただろ?」
「さっきのことなら、怒ってないよ」
少し抱き締める力を強くする。
「だって、誠は怒っただろ? それに、成長にも良くないって」
確かに、今は成長が止まっているとは言え、これから伸びる可能性があるので強く叱っ
た覚えがある。だがそれは華の為を思ってしたことだ。
「誠はロリコンじゃないよな?」
ちょ、華さん?
「確かに、僕こと鎚宮・誠は普通の性癖しか持っていないと自負し…」
僕が言い終える前に華は、お腹を撫でるためシャツの中に滑り込ませていた僕の右手を
胸元へと持っていく。指先に膨らみのない胸の先にある突起が当たり、僕は息を飲んだ。
しかし僕の意思を無視して、華は僕の右手を使って擦り続ける。
「華?」
僕の声に応えるのは、興奮して荒くなった華の吐息だけ。
「華、止めろ」
続けて華は、湿り気を含んだ股間の谷間へと僕の右手を運んでいく。無毛のそこは、し
かし幼い外見とそぐわない程に濡れていた。
心臓が、冷たく脈を打つ。
「止めろ」
僕は強く華の手を振り払うとこちらを向かせ、ほぼ全力できつく抱き締めた。
それと同時に、華の泣き声が大きくなる。
「こういうのは、20になってからって言っただろ?」
「ボクはこんな体型だし、欲情しないのかもしれない」
「そんな事はない」
「だったら、キスをしてくれ」
「20になってからって約束だ」
「やっぱり、嫌われた」
会話が、噛み合わない。
「嫌ってないよ」
「だったら、キスをして」
「だから…」
「あいつとはしたのに」
ようやく合点がいった。要は、華は焦っていたんだろう。自分の体型に劣等感を持ち、
大人らしいと思っていた行動も閉ざされ、繋がりに不安を持っていたのだ。将来結婚する
という約束にしても、普通の高校生がするような行為も禁止しているから、余計に辛かっ
たに違いない。これでは、守られるか疑うのも当然だ。
そして極めつけは、僕と水が不本意ながらキスをしてしまったことだ。
僕が他の娘をなるべく避けていたことで保たれていたバランスが、昨日のキスで壊れて
しまった。そして、今みたいに大胆と言うには大胆すぎる行動に出たんだろう。
「あの女とはしたのに、出来たのに、ボクは、ボクじゃ」
「ごめん」
僕は、更に強く抱き締める。
「だけど華のことは大切に思ってるから、誰にも文句を言われないようにしたくて」
本当にそうだろうか。
突然浮かんだ小さな疑問に、心が痛む。
『旦那と華ちゃんの関係や気持を考えてみて?』
痛みから浮かび上がってくるのは、水の呟いた最後の言葉と、僕と華から無言で離れて
いくときの寂しそうな表情。
何で今更。
「誠?」
「僕と華は」
「うん」
「今は友達だけど」
「うん」
「大好きだよ」
「ボクもだよ」
「愛してる」
「愛してる」
強く、抱き締めあう。
何を今更、分かりきっていることじゃないか。昼に考えたときと、寸分も違わない。僕
と華は産まれた時からの幼馴染み、今では大親友。華は僕のことが大好きで、僕は華のこ
とが大好きだ。今はプラトニックにしているだけで、将来二十歳になったら結婚をして思
う存分いちゃいちゃして暮らす。
だけど、
「華」
「ん?」
「キスをしようか?」
今までのようなごまかしのキスではない。いつもしているような、家族の、頬や額のものではないもの。
視線を華に向けると、顔を真っ赤にしてうつむいていた。僕から逃げようと手足をばた
つかせる様子は可愛らしくて、見ていて父性本能を刺激される。
父性本能?
違う。
「するよ?」
僕の言葉に、華は小さく頷く。
僕は頭に浮かんだ疑問を振り切るように、行為で確認するように、
華にキスをした。
今回はこれで終わりです
何か凡ミスグダグダですね
次回は個人的に好きな裏方作業です
管理人様へ
第一話は、開幕にして下さい
あと、携帯から入れるようにしてくれるとありがたいです
華ロリ可愛いよ華、変人ばっか寄ってくるのに誠の真面目さに驚愕
GJーーーっ!!
あぁ華、健気だなぁ……
幸せになって欲しい、欲しいが…修羅場が見たいこの矛盾
続き期待してます
投下します
「詩織さん!」
仁さん・・・・もう限界なのでしょ?身体が動かないのでしょ?
だからそこで待っててね、すぐに洗脳を解いてあげるから
雌犬の肩を抑えて投げ飛ばす
壁に激突させる
そのまま肩を狙って刃を向ける
「く!」
まるで楽器のように音が鳴った
ああ、快感・・・・幸せ・・・・・
もう少しで刃先が食い込む
「やめろーーーーー!!!!!」
床を伝って仁さんが私の足を掴む
まさかこんなに洗脳が進んでいたなんて
そう思った瞬間だった
光が私を照らした
と、同時に何人もの警官が私に向かって銃を向ける
なに・・・・?
もうお終いなの?
私は向かってくる警官を斬り付けてドアを開き駆ける
私の荒れた呼吸と私を追う足音が階段を登っていく
屋上に出た・・・・もう逃げ場はない
銃が私に向けられる
邪魔するの・・・・あなた達も私と仁さんとの間を・・・・
なら壊してやる!
「あぁぁぁぁ!!!!!!」
放たれる拳銃の弾を避けて警官を斬り刻んでいく
右肩に弾が食い込む
今度は右の胸に・・・・
次は脚に食い込んでいく
それでも私は警官を斬り刻む
ああ、怯えてる・・・・私がそんなに怖い?
思い知らせてあげる私と仁さんとの間を邪魔したことの罪深さを
「あ、はははは!思い知りなさい・・・・・・・・・うぐ!」
あれ・・・・脚が動かない
手も・・・・
力を失って刀が地面に落ちる
ああ・・・・・仁さん・・・・・私は・・・・・
あなたと二人だけの世界を・・・・・・
「詩織さん!」
急いで駆け寄る
詩織さんは少し顔を歪めたがすぐに笑んだ
「私のことより奈々ちゃんを・・・・・」
少し心配だったが俺は奈々さんの元に向かった
右の胸から血がどんどん流れていく
俺は必死で傷口を抑えたが血が止まらない
「仁・・・・ちゃん」
かすれた声が俺の耳に届いた
「しゃべらないで・・・・・いま警察の人が・・・・」
「最後に話・・・・させて・・・・仁ちゃん」
最後だなんて・・・・そんなこと言わないでくれよ
香葉さん・・・・あなたは純粋でした
故に白が黒に染まるのも速かった
こんな形の終わりかたでごめんなさい、香葉さん・・・・
次章は自分で書いていて泣いたことしか覚えておりません・・・・
しかし、土日の投下数はすさまじいですね
生きここも忘れられないように・・・・と、言ってももうすぐラストですが・・・・
本当はすべての作品に感想をと思っていたのですが
一時間掛けても全部読めなかった・・・・・orz
もうすぐラストです次章の次・・・・・つまり明後日で真実編は完結の予定です
こ、これは・・・勝者は一体誰になるんだろう・・・
最後までたのしみにしてます(*_ _)人
そして、出切れば詩織さんと奈々さんとの修羅場の
アナザーエピソードが読みたい・・・
アナザーですか・・・・
妊娠発覚までのラブコメ争奪戦ならできます
よろしいですか?
……いや。よく考えろ。片方を選ばなきゃならないほど差し迫った状況か?
だいたいどうして二人のうちどちらかを犠牲にしなきゃならないんだ。
二人とも失いたくないならその方法を探せばいい。最後まで諦めるな。
どちらの選択もしたくないのなら自分で別の手を見つければいいんだ。
――――――よし。
団長を説得しよう。
俺は別にもうフォルン村のことは気にしていないって団長に伝えるんだ。
団長も姫様も死なせない。第三の選択だ。
握っていたナイフを足首に戻した。
「ウィリアム?」
声のした方に振り向くと姫様がいつの間にか戻ってきていた。
「姫様、俺決めました」
怪訝そうな顔でこちらを見つめる姫様。
「団長を説得してやめさせます」
「なっ!?待て、ウィリアム!
あやつが途中でやめるわけなかろう!絶対にわらわを殺すまでやめぬぞ!?」
「俺は団長を信じたい。ちょっと歯車の噛み合わせが悪くてこんなことになってるだけなんだと思います。
だから、姫様もどうか俺を信じてください。
大丈夫。絶対に姫様は守ってみせます。だけど、団長も失いたくない。それが、俺の答えです」
「ウ、ウィリアム…」
そうだ。キャスが死んだあのとき、誓ったじゃないか。
あんな思いをしないために強くなろうって。剣の腕の強さじゃない。
三年間培ってきたものは復讐心だけじゃない筈だ。それが今、試されるときなんだ。
やれる。絶対に。
心の中で何度も復唱して決意を更に強固なものにしていった。
誰かがこの部屋に向かって歩いてくる。
この聞き慣れた足音は――――団長だ。
「ふー……」
首を反らしてゆっくり息を吐いた。
うん、問題ない。落ち着いてる。
足音がやみ、扉の取っ手が回った。
「姫様〜。死神があなたに引導を渡しに来ましたよ〜♪あはっ」
扉を開けて中に入ってくる団長。その瞳は狂気に曇っている。
説得なんてできるのかと一瞬ぞっとしたが決意は揺らがなかった。
「ウィルを誑かす悪い仔猫ちゃんにはこれから生まれてこなきゃよかった、って後悔させてあげますね♪」
「くっ……」
団長の殺気にたじろぐ姫様。
俺は姫様の前に立って団長に向かい合った。
「ウィリアム」
姫様の安堵した声。
「……ウィル?なんでこんなところに?
あ、わかった。またこの小娘にワガママ言われてここに来たんでしょう?
もう、いけませんよ。だから王女が着けあがるんです。でもそれも今日で終わりですけど」
くすくす笑いながら鞘から剣を抜いた。背後にいる姫様に剣先を向ける。
全然大丈夫。俺の水面には波紋ひとつ立っていない。
「団長、もうやめにしましょう」
俺の第一声を聞いて、団長は豆鉄砲をもらった鳩のように目を丸くした。
「何言ってるんです?彼女はあなたの敵ですよ?
これからその小娘を殺してウィルに許してもらうんですからやめるなんてことできません」
「俺に何を許してもらうんですか?
俺がいつ団長を許さないなんてこと言ったんですか?」
その言葉でさっきまでの狂気が揺らぎ始め、目が泳ぎだす団長。
「え……?だって、私はトレイクネルの人間で、お父様がフォルン村の事件の黒幕で……
だからウィルは私を許せなくて騎士を辞めて――――」
「そんなこと、俺が、いつ、どこで、言ったんです?」
団長の目が更に忙しなく動き出した。
「え、え…?いや、だって…えと……」
曇っていた瞳が少しずつ晴れてきた。もう少し。もう少しで団長の呪縛が開放される。
「別に俺に許しを求める必要なんてないんです」
そう諭しながら団長に近づく。
「で……も…」
「団長がいつも俺を気遣ってくれていたこと、知ってます。
事件のことがわかったからって俺が団長を恨むなんてことするわけないじゃないですか」
一歩一歩踏みしめるように団長に向かって歩く。
「あ………」
ゆっくり、囚われた復讐心を解きほぐすように、団長を抱きしめた。
「だから、もう、そんなことしなくたっていいんです」
「う……あ…」
ガランッ
腕から力が抜けたのか彼女は剣を手から取りこぼした。
「や……やめて、ください…ウィル。私は実の父親を殺したんですよ…?
私を捜していた兵も何人か殺しました。
こ、こんなところで、途中でやめられるわけ、な――――」
もっと強く、抱きしめる。
「まだ、戻れます。
俺だって、罪のない人間を数え切れないくらい殺しました。
でも…罪を償いたい気持ちがあるなら、まだ戻れるんです。」
最後の部分は自分にも言い聞かせるように。
「う……うぅ…」
「俺と一緒に償う方法を探しましょう」
「う……あ…うぅ、ぅぅ……」
泣き崩れる団長を倒れないように肩を支えながらとりあえずその場に座らせた。
「姫様」
「……え?あ、なんじゃ?」
呆けていた姫様の方に振り向いて声を掛けた。
「俺たちはこれからこの国を出ます」
「ッ!!?ま、待てウィリアム!どういうことじゃ!」
慌てて俺の胸に飛び込み、服を掴む姫様。
「理由はどうあれ、団長は謀反を起こしました。
王族暗殺は未遂でも捕らえられれば即死刑です。償い方としてはそれも一つの方法なのかも知れません。
だけど――――」
嗚咽を漏らす団長をちらりと見る。
「だけど俺はそれで納得したくありません。
俺たちはこれから旅に出て罪を償う方法を探そうと思います。答えなんて無いのかもしれないけれど」
俺の返事を聞いている姫様の頬には一筋の涙。
「い、いやじゃ!わらわを独りにせんでくれ!寂しいのはもう嫌じゃ!なぜマリィと一緒なのじゃ!
おぬしはここに残ればいいじゃろう!?」
泣きながら俺に懇願する。
「すいません、姫様」
「いやじゃ、いやじゃ!!おぬしはわらわを抱いたのじゃぞ!?わらわを置いていくな!
わらわをキズモノにした責任を取れっ!女を食べて即ポイなど、男としていけないことなのじゃぞ!!」
何が何でも聞き入れない、と俺に顔を埋める姫様。
どう決心しようが、俺は女性を泣かせてしまう性分らしい。
「よく聞いてくれ、マリベル」
無礼を承知で彼女を引き離し、目線を合わせて言う。
「俺は自分の犯した罪の償い方が知りたい。そのために旅に出るんだ。
でも――――もし、その方法が見つかったら、もう一度最初から団長と姫様のこと考えてみようと思う。
そのときは必ず、君に会いに行くよ。どうかそれまで待っていて欲しい」
姫様の頭を撫でながら言い聞かせる。
「で、でも…」
ガチャガチャと外が騒がしい。
どうやら痺れを切らした城内の兵たちがこちらに向かって来ているようだ。
そろそろここを出た方が良さそうだ。
「団長、行きましょう。兵が来ます」
黙って泣いている団長を抱き起こし、歩かせた。
「あ……ウィリアム」
涙の乾ききっていない目が俺を見つめる。
「必ず、必ずまた来ます」
それだけ言って俺たちは姫様の部屋を出た。
「……待つ―――か……ウィリアム…」
Cルート13話でした。
次はラスト、Cのエピローグです。
>>506 乙です。
いやーこのエンドが一番好きだ
団長が狂気から冷めたのが嬉しい
暗闇に、鈍い音が響き渡る。
音の発生源は寂れた駐車場に横たわる高校生の少女と鉄パイプで、生まれる音は水気を
含んだ粘着質なもの。さくらが血まみれの少女に鉄パイプを振り下ろす度、その音は生ま
れていた。どれ程続けられていたのか、既に骨が砕ける音は無い。
一度振り下ろすのを止め、相手が呼吸をしていないことを確認すると、更に念を押すよ
うに三回殴り漸く完全に行為を止めた。
「ふぅ、良い汗。奴隷も楽じゃないですね」
そう呟きながら鉄パイプを杖代わりに姿勢を正すと、さくらは笑みを浮かべて額の汗と
返り血を拭った。
一瞬後。
不意に、さくらは駐車場の入り口に視線を向けた。寄せられた眉根が示す視線の先、女
性の陰と軽い足音、そして下手な鼻唄が聞こえてくる。
「あれ? 随分な血の匂いに誘われて来てみれば、さくらちゃん」
「水さんですか」
さくらは溜息を吐き、数秒。
僅かな体重移動を初速にし、二歩目でトッピスピードに加速をして、水の隣へと移動。
そして慣性のままに銅を横回転。遠心力と共に、横薙に水へと殴りかかる。
決着は一瞬。
水が蹴り上げた鉄パイプは回転しながら上空に飛び、高い音をたてながら数m離れた場
所へと転がった。
片足を上げた姿勢のまま水は笑みを作ると、
「ありゃ、随分な挨拶じゃねぇの」
「昨日で馴れ合ったと思ったら大間違いです。今はあなたの方が強いから殺さないだけ」
「自分のことを客観的に見れるのは良いことだけど、酷くない?」
「御主人様以外に屈し、ましてや尻尾を振るのは『奴隷』の名折れですから」
水は足を下ろすとバックステップで数歩下がり、
「そう言わないで。今日はドンパチしに来たんじゃないの」
どういうことだ、とさくらは表情を険しくした。無意味にここに来るには、たとえ無関
係だとしても危険すぎるし、はっきり言って利益が皆無なのは誰の目にも明らかだ。しか
し、それなのに自発的に来るには、何か明確な目標があるということで、血生臭い現場に
一人で来るというのは争いを望むか殺されたいということだ。攻撃を防いだら残る選択肢
は争いで、それを否定したら選択肢は残らない。
しかし水は、そんなさくらの考えを無視するようにニヤニヤと笑い、
「第一、女子高生が殺し合いなんて出来る訳ないじゃん」
さくらは白々しい、と内心毒を吐き、
「何が目的ですか?」
「いや、ね。コムスメからマジナイシに転職したから、レベル上げ」
「大胆なジョブチェンジですね」
さくらは昨日の会話を思い出し、少し呼吸を整える。
要は、自分に危害は加えないが、騙し合いをこれから始める。それで、あわよくば手駒
にして使おうということだろう。目的は華の排絶か、誠の攻略だろうか。
どちらにしろ、
「気に食わないですね」
「そう言わないで」
「要は、自分の為でしょう?」
「言い方が悪かったね、旦那の言葉を借りるなら交渉かな」
それはつまり、相手を自分の手駒にしてしまう、という宣言だ。
「それなら尚更」
「相手も甘い汁を吸えないと、交渉とは言えないんだよ?」
こっちにも、それなりのメリットがある。
さくらは少し考え、「良いでしょう。少しなら付き合います」
「そう来なくっちゃ」
笑い、水は唇の端をシニカルに歪めた。
「私の要求はもう決まっているから、そっちから」
「そうですね。では、御主人様に…」
「待ってよ。私の要求が旦那に関わるものだから、定義崩しはいけないよ。一度納得して
交渉を始めたら、それをおじゃんにするような話は無しだ」
さくらは舌打ちし、
「それでは、一度だけで良いので御主人様とサシで話せる機会を作って下さい」
「難しいね」
「だから交渉の手札になるんです」
数秒。水は少し黙り目を閉じると、
「分かった。でも、一度だけで良いの?」
「構いません、それでも多いくらいです。奴隷の定義からすれば外れまくりもいいところ、
大反れている上に破廉痴です」
「奴隷ね。言い過ぎじゃない、その単語。大義名分にこだわる年でもないのに」
「それよりそっちの要求を言って下さい」
少し苛ついたさくらの言葉に、水は今日何度目か分からない溜息を一つ。
「簡単。私と旦那と華ちゃんが揃っているときに、会話を作って。ちょっとした事情で、
旦那たちには私から話しかけられないんだ」
そんなことですか、とさくらは苦笑。
今日の目的は簡単で、誠に口先で丸め込まれたから、それの定義を破壊する手札が欲し
かったのだ。他にも含みはあるが大元の意思が分かり、さくらは口元を綻ばせる。
表情をヘラヘラとしたものに戻すと、癖なのか水は溜息をまた一つ。
「交渉はこれで終わりとして、雑談タイム」
「何ですか」
「さくらちゃんが旦那に近付く娘を退治しているのは分かるんだけどさ」
私も殺されかけたしね、という言葉と一緒に出てくるのは乾いた笑い。思い出して少し
引いたのか、その目には、先程までには無かった警戒の色が大量に含まれている。
「華ちゃんは?」
「あの人は特別です。居なくなったら、御主人様が悲しまれますから」
その言葉を聞いて水の口から漏れてくるのは、氷点下の冷たい笑い声。視線には最早警
戒は含まれておらずに、ただ愉悦の色が浮かんでいる。
ひひひひひ、と独特な笑い声と共に、水は近くに転がっている鉄パイプを見た。
「悲しまなきゃ、手を出すって聞こえるよ」
「どうでしょうね?」
両手を肩の高さまで上げ、笑みを作りながら緩く首を振る。しかしその目は笑っておら
ず、浮かんでいるのは明確な敵意。
「それじゃあ、仮に悲しまないとする方法があれば?」
その言葉に、さくらは無言。
「例えば、好意がさくらちゃんに向いていたとしたら?」
「それこそ、定義崩壊ですよ。奴隷の定義を忘れたんですか?」
しかし、水の余裕の表情は崩れない。
「でも、可能性はある。サシで話をしたいのも、だからでしょう?」
「それは…」
「それに、旦那の初キスの話は聞いているよね。最初は華ちゃんが本命かと思ったんだけ
ど、キスもしていない。友達とも言っていたし、華ちゃんに対する旦那の好意は、異性や
恋人に対するものじゃなくて、家族や友達に対するそれじゃないのかな。つまり、恋人の
座は常に空席なんだ」
さくらは、いつの間にか乾いていた唇を舌で舐めると、
「でも、御主人様の隣を狙っているのはあなたもでしょう? 何であたしに? 第一に、
御主人様は誰も見ないで…」
「だから、その定義を崩す必要がある」
「それに、誰も見ていないからこその…」
震え、脅えた表情のさくらに対し、水は笑顔のまま、
「だからこそ、だよ。自分と旦那で閉じるんだ。キスにしたって、私からしたからで…」
さくらを見ながら軽く唇を舐め、
「旦那からしたことは無い。つまり、旦那が自発的にしてくる人は、これから出来るんだ」
「な」
いつの間にかさくらに密着する程に寄っていた水は、唇を耳元へと寄せると、
「旦那の隣に、立ちたいとは思わない? 主従関係のみで成り立ちながらも、甘美な欲が
作る箱庭的な極限世界」
呟き、再び独特な笑い声を漏らしてさくらから離れる。
「ま、考えておいて」
先程とは打って代わり、快活な声で笑いかけると水は駐車場を後にした。
今回はこれで終わりです
水がエンジン全開な感じです
勘の良い人ならここで殆んど最後まで分かると思いますが
予想以上の結果に出来ると良いと思います
そういえば団長の登場台詞毎回違うんだよなぁ
改札口でゆう君を待つ。そんな日常化したことが、今日の私には特別に感じられる。
先週の金曜日はゆう君の誕生日だった。そして、初めて男の人にプレゼントをあげた。
手編みのマフラー、巻いてきてくれるかな・・・
ほんの1ヵ月前、私は好きな人に告白された。
私達以外には誰もいない、夕暮れの教室。
すごく緊張してたけど、何も隠してない、ありのままの姿で想いをぶつけてくれた。
嬉しくて涙が出そうだった。
だってね、初恋の人が恋人になったんだもん。こんなに幸せなことはないよ。
「あっ、椿ちゃんおはよう」
私に気付いて、ゆう君は駆け足でやってきた。・・・ああ、やっぱり・・・ゆう君は優しいな。
「えと、マフラー巻いてきたんだけど・・・似合うかな?」
今日はそんなに寒くないのに、わざわざ巻いてきてくれたんだね。そういう優しいところ・・・
「うーん・・・マフラーに巻き付かれてるみたい」
「ええっ!?」
「うそうそ、じょうだん。すごく似合ってるよ」
「もう、朝からびっくりさせないでよ、椿ちゃん」
慌てる姿もすごく可愛くて・・・どうしよう、幸せすぎるよ。
でもね、ゆう君の誰にでも優しいところ、止めたほうが良いよ。
「おっはよ〜ゆうき〜!」
バンッ!
・・・ほら、勘違いする人が出てくるから。
「ゆう君・・・嫌なら嫌ってはっきり言わなきゃ」
「えっ・・・」
苦笑していたゆう君は、あっけにとられたような顔をした。
「あの人、いつもゆう君の背中を叩いていくけど、本当は嫌なんでしょ?」
「別に嫌ってわけじゃ・・・」
「そう?でも・・・私は嫌かな」
「椿ちゃん?」
「例えばね、私が毎朝他の男の人に身体を触られてるとするね。ゆう君、どう思う?」
「・・・嫌な気分になるかも」
「でしょ?だからこれからは、背中を叩かせないようにしてくれたら嬉しいな」
「う、うん。気を付けるよ」
「変なこと言ってごめんね」
「いや、僕の方こそごめん」
ゆう君は悪くないよ。
ゆう君は他人に強く言えない所も長所なんだから仕方ないよ。
でも本当、気を付けなくちゃ。
勘違いした人が出てきて、ストーカーにでもなったら大変だもん。
駄目、私以外に優しくしちゃ。
・・・あれ?前はこんなこと、思わなかったのに。なんでだろう?
お昼になった。さすがに12時40分まで授業していればお腹が減る。
だから授業が終わるとみんなすぐに食べる準備にかかる。
「ほら椿、さっさと食堂行くよ」
恋人になったとは言え、やっぱりゆう君と2人っきりで食べるのはまだ恥ずかしいかな。
そんなことを思いながら、私は友達に付いていった。
教室を出る瞬間、ゆう君を見た。男友達と楽しそうに喋りながら、包みを開いている。
そしてすぐに、私の視線に気付いて、誰にも分からないように微笑んでくれた。
・・・いつかお弁当、作ってこよう。
「あっ、愛原〜ちょっと待って〜」
「井上さん?」
昨日と同じ。
学校を出ようとしたところで、ゆう君は女子に声を掛けられる。
「椿ちゃん、ちょっと待っててね」
「どうしたの?」
「昨日やっとバイト代入ってさ、借金返そうと思って」
「本当?」
・・・初めてした時、すごく恐かった。
普段からは想像できないぐらいに野蛮で、やっぱりゆう君も男なんだって思った。
付き合い始めて1週間でしちゃうなんていくらなんでも早すぎると思ったけど、ずっと前から好きだったんだもん。
「いつまでも借りっぱなしも悪いし。ほら、利息分、色目つけとくよ」
「え、いいよそんな・・・」
「いいから貰っとけって。長引いた分のお詫びだから」
付き合ってからの時間なんて関係ないよね。
それからほぼ毎日愛し合って・・・私ね、1ヵ月前は男のひとの素肌を見ただけで顔が赤くなってたのに、今ではすごくエッチな子になっちゃったんだよ?
それは、ゆう君のせい。普段あんなに優しくて大人しいゆう君が、あんなにエッチな顔して私を愛してくれて・・・
それなのに・・・私をこんなにしたのに・・・どうして他の女の子にその笑顔を向けるの?
「ありがとう。井上さんって・・・」
「ん?」
「変な所で律儀だね」
「変って何!?超ムカつくんだけど〜」
「ゴメンゴメン、冗談」
駄目だよゆう君・・・ゆう君は私を愛してるんでしょ?毎回気持ち良くしながら、「愛してるよ」って囁いてくれるのに・・・駄目だよ。
クラスの女子って言っても勘違いしたらどうするの?そんな優しさは逆にみんなを傷つけるだけだっていうのが分かってないのかな・・・
ゆう君は私以外にそんな顔見せたら駄目なんだよ?私はゆう君の恋人だから、私にしかその優しさを与えなきゃ駄目なんだよ・・・
「ったく・・・あ、そうだ愛原?」
「えっ?」
「今度合コンやるんだけどさ、愛原もどう?カワイイ子いっぱい来るよ」
「いや、高校生で合コンって言うのはちょっと・・・」
ゆう君・・・駄目・・・私以外の女に話しちゃ・・・私以外の女と仲良さそうにするのは・・・駄目だよゆう君。
ゆう君は私だけのものなんだから・・・ゆう君を愛してるのは私だけなんだから・・・ゆう君いい加減にして・・・いい加減に他の女としゃべらないで・・・
「え〜いいじゃん。愛原って結構人気あるんだよ?ペットにしたい男ナンバーワンって」
「ははっ、何それ・・・」
ゆう君・・・ゆう君・・・ゆう君・・・ゆう君、ゆう君、ゆう君、ゆう君、ゆう君、ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君
ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君ゆう君
「ゆう君!!!!!!!!!!」
響き渡る自分の声に一番驚いたのは、私。感情が抑えられなくなってた。
みんなびっくりしてる。無理もないと思う。こんな大きな声、出したことなんてなかったから。
ゆう君も井上さんも、他の人もみんな、私を見てる。
急に恥ずかしくなってきた。
「えっと・・・誘ってくれたのは嬉しいけど、やっぱりごめん」
「あ・・・い、いや、いいって別に・・・」
「あっ、うん、じゃあ、さよなら。また明日」
何だか気まずくて帰り道はお互いに無言だったけど、しばらくしてゆう君は手を握ってくれた。
ゆう君は優しくて気配りができるから、私の気持ちも分かってくれてるんだと思う。
嬉しいよ・・・でもね、その優しさは私以外の誰にも向けちゃ駄目。
きっとそれにつけ込んで、ゆう君を不幸にする人が現れるから。
私は手を握り直した。お互いの指を絡める合わせる、恋人の握り方。
私の髪を撫でる手。私の頬を撫でる手。私を悦ばせる手。
この手はもう、私のものなんだから。絶対誰にも渡したくない。
手だけじゃない。表情も、身体も、優しさも全部・・・全部!
私・・・いつからこんなこと思うようになったの?
こんな汚い感情、今まで感じたことなんてないのに。
嫉妬・・・独占欲・・・辞書で数回見ただけで、自分とは関係ないと思ってたのに。
ううん、違う。嫉妬とか独占欲じゃない。
ゆう君が好きなだけ。
そんな人間じゃない・・・違うよ、きっと。
(つづく)
うほっ
いい心理描写
優柔キター!!!
思わず叫んじゃったとこなんか最高w
何このすさまじい三連星
ゆう君俺と代わらないか?
こうして狂気の椿たんが形成されていったんだなぁ・・・(しみじみ
この頃のゆう君は綾乃先輩とはどんな感じだったんだろう?
恋人同士になったばかりなのだから、先輩は落ち込んでる真っ最中っていう
タイミングになるんかな。
ところで>◆JypZpjo0ig 氏が話していたけれど、
携帯端末からまとめサイト見られないひとっているの?
俺は第2世代のMOVAだから、読み込んでもサイズ制限で途中までしか
表示できないっていうのはあるけど、サイトそのものには入れるのよね。
FOMAとか第3世代携帯で、フルブラウザ搭載なら普通に見られるんだろうけど。
相変わらず椿タンは素晴らしいな
>>513 さくら(((((((((*´д`*))))))))ガクガクハァハァブルブルハァハァガタガタブルハァハァガタ
524 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 00:45:58 ID:OTH54MsU
cルートのエピローグHSまだデスカ?
ゆう君のエロマインドコントロールを椿ちゃん視点から読んでみたいなあ
全作者GJ!超GJ!
「おはよう、晋也君」
「はぁ……」
いい加減挨拶ぐらいしてやるか。
「おはよ、信彦」
高橋信彦。この町に本社がある、高橋コンツェルンの御曹司にしてどら息子。
「ふふ、君もたくさんの女の子と付き合う喜びを知ったんだね。」
まぁ、男の俺から見てもルックスはいいだろう。
「まぁ、僕には両手で抱えくれないぐらいの女の子がいくらから。夏休みは大変なんだよ。」
しかも金持ちでスケコマシ野郎。
「ま、そのためにも今はセーブデータ作りに励んでいるのさ。」
いや、最後のは二次元の話ですよ。
「うーん。でも『夏休み100回デート計画』には時間が足りないかもしれない。まだ半分しかデータがないんだ。」
まぁ、これが天然なため、女子からは引かれ気味。男子からは英雄扱いだ。悪い奴では無い。
「と、いうことで、一日20時間のプレイが必須となる。では。」
そう言って颯爽と教室を出て行く。その笑顔は正に恋する少年だ。まあ、一時間目さえ始まって無いのを気にしない辺り、流石だ。
「あいつがコンツェルン継いだら、世の中なギャルゲーが溢れるな。」
ま、それが夢らしいからいいだろ。
では俺も…………
「ZZZZ……」
「あっ」
という間に放課後。どうやら昼休みもぶっ通しで寝ていたようだ。うーん。昨日の志穂との×××(←学園内なため伏せ字)が尾を引いたなぁ。
昼夜逆転生活でボロボロな体を引きずり、下校を開始。帰宅部の本領発揮だ。
『生徒の呼び出しだ。笹原晋也!速急に俺の所まで来い!!』
声からして鬼山だ。この放送も日常的になったためか、生徒も他の教師も完全にスルー。いやぁ、なんて放置的な学園なんだ!
「あー!あー!あー!きこえーなーいー!!!」
この俺の行為を咎めずに黙認するクラスメートも同罪だゾ!
一通り叫んですっきり。さあ帰りましょ。
・
・
・
・
・
「せんぱーい。待ってました!」
忘れてたなんて言ったら怒るだろうな。そう、完全に忘れてた。今日は春華の部屋に行くんだった。寝てたから夢と現実がごっちゃだよ。
ここで鬼山について触れないのも定番だ。
何食わぬ顔で校門を出る。再度放送が聞こえたが、どうやら聴神経がいかれたらしい。残念!
「んっふふ〜。せーんぱいが、せっんぱいがうーちにーくるぅ♪」
鼻歌交じりで帰り道を縦横無尽に踊りまくる春華。天気がお花畑だ。
嗚呼、春華のおばさん。こいつはネジが少し飛んでるようです。何だか寂しくて涙ちょちょぎれですよ。
春華の部屋。
真っ直ぐ歩かないからやたらと時間が掛かった。にしても久しぶりに来た気がする。去年は週一ぐらいと頻繁に来た気がするが………
まあ、部屋は『女の子』って感じだな。ぬいぐるみやら花やら香水やら………あ、いい匂いだ。
「ちょっと着替えるから待っててくださいね。あ、お望みなら今ここで生着替えでも………」
「望まん!」
「ぶぅ。」
ふくれて奥の部屋に入って行く。まったく、年頃の女の子があんなこといっちゃいけません。
………着替え始めたのか、衣服のこすれる音が聞こえる。……な、なんか変に緊張すんなあ。紛らわすために部屋を見回すと、なんとパソコンがあるではないか。
「くっ、しかも最新型とは……ブルジョワジーな。」
「あ、いじっててもいいですよー。」
始めて火を見た原人の如く、恐る恐る電源を入れる………おお、今のパソコンって起動早いなぁ。早速ネットへ繋ぐ。これまた早い。
「ちょっとお茶とお菓子切らしてたんで買って来ますね。」
別にかまわん。という前に既に居なかった。喉乾いてたからちょうどいいか。
さて、それではとりあえずお気に入りチェーック!
普通なら最低な行為だが、俺と春華の仲。遠慮は無用だ。………とはいえ、あまり興味を引くものが…………ん?
一つだけ、無題のお気に入りがあったのだ。他のサイトはついているが、一つだけない。
「おやおやぁ、春華さん。こんなことしてエロサイト隠したって無駄っすよー。」
いざ、天国の門を目指してクリック!!
そして、な、なんと!そこに現れたサイトは!
・
・
・
・
・
「………?」
予想を裏切り、エロくなかった。あまり詳しくはないが、これは見る限り今はやりのBlogというやつなのか。
「…日記みたいなもんだろ?」
が、別に春華が日記を書き、それを見ず知らずの奴等に見せようが俺は構わない。ってか関係がない。
「でも……なぁ。」
これは流石に関係無いとは言えなくなって来た。いや、大問題だろ。……問題点、それは、そのBlogの題名が。
『今日のせんぱい』
だった。
……あいつが「せんぱい」と呼ぶのは、知る限り俺しかいない。というより、あいつは学園のアイドルと言われながらも、人付き合いが悪い方(らしい)。大体は俺に纏わりついている。
となるとこれは、俺について書いてあるのか………
「ど、どうやら地獄の門を開けちまったらしい。」
興味半分、恐怖半分で、俺はその中身を読み始めた…
GJ!新キャラがどう話に絡んで来るのか楽しみ。
|ω・`) 所謂日記系キタコレ
どんなことが書いてあるのか今からワクテカが止まらない(*´д`*)
先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩
先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩
先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩
こんな感じでブログが埋まってたらサイ娘さんでそれはそれで(*´д`*)
まぁそうならこのまま監禁されそうだけど((;゚Д゚)ガクガクブルブル
春華日記キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
はてさて何が書かれているのやら、晋也のフラグ力に期待
<7>、ついに前編・中編・後編の三分割。 前編4レス分ここから↓
――――――――――――――――――――――――――――――――――
<7>
閉館のベルが鳴った。
タイミングよく、コピー機が藤原さんのノートの最後の一ページを吐き出す。
時計は午後六時を指していた。
―――
――
―
そして今、僕らは三人で帰りのバスに揺られている。
――ごとん、ごとん、ごとん……
今日は結果的に、図書館に来て大正解だったと思う。
特に宿題の進捗具合が素晴らしかった。
「私も手伝います!」――途中からは梓までがそう宣言して、猛烈な勢いで残りを処理されてしまった。
未着手の前半部分については、藤原さんのノートをコピーさせて貰っている。あとは写すだけ。
つまりは、提出期限に間に合うかどうかの瀬戸際だったものが、あっけなく片付いてしまったわけで。
明日の夜には孝輔の奴が泣きついてくるだろうが、それまでには充分終わっていることだろう。
三人寄れば文殊の知恵というけど、人海戦術って無敵に素敵だ。
今日は図書館に来て良かった。
……。
そうだ……。そうなんだよ……。
僕は、良かったんだ。図書館に来て、良かったんだ。
藤原さんにも会えたし、久しぶりに梓と街を歩けたし、宿題だって終わらせた。
おい、いいことづくめじゃないか? 家になんか居なくて得をしたぞ、山本秋人よ。
そうだ。これでよかったんだ。
……そうだよ。
姉さんは、姉さん。
僕は、僕だ。
お互いどこで、誰と、どうしていようと……関係ない。
姉さんなんか……関係ないんだ。
バスがひとつ揺れる度に、僕はあの人の待つ家に近づいている。
分からない。
なんだかこのまま、家に帰りたくない。
あの家には、入りたくない。
帰るのが、こわい。
何かが、こぼれるから。
何かが、くずれるから。
何かを、すくいきれないから。
無機質なバスの揺れに、ほのかな吐き気を覚えていた。
―――
――
―
――ごとん、ごとん、ごとん……
土曜とはいえバスの本数自体が少ないので、この時間はかなり混んでいた。
だから目の前の二人掛けの座席に、女の子達をさっさと座らせている。
特に梓は、際立って人目を惹く容姿をしているからな。
これだけ混んでいる中で、痴漢みたいな奴に変な事をされては可哀想だ。
周囲にお年寄りもいないみたいだし。
――ごとん、ごとん、ごとん……
……。
……しかしまぁ、なんというか。
な、なんか、ちょっと静か……かな?
もうちょっとだけ賑やかでも、罰はあたらないような……。
さっきから僕も努力しているのだが、三人で会話が続かないのだ。
窓側に座った梓は、窓外に流れ行く電信柱をひたすら黙々と見つめ続けている。
……梓は本数を数えるのが楽しいみたいだ。
通路側に座った藤原さんは、斜め前方仰角三十度のバス路線図を淡々と眺め続けている。
……藤原さんは街の運輸システムに興味があるみたいだ。
それはいい。それはいいんだけどさ。
なにもめいめい別方向を向いて、押し黙らなくても。
もっとこう、会話とかさ……してもいいんじゃないかな?
座り方もそうだ。二人は異様に両端に詰めて座っている。
おかげで二人掛け座席のはずが、真ん中にもう一人座れそうなスペースが空いてしまった。
もっとゆったり座ればいいのになぁ……。
いや、待てよ?
僕を座らせるためにわざわざ空けてくれた、ということなのかな?
僕のことなんか気にしなくていいのになぁ。それよりなにか会話してよ、会話。
――ごとん、ごとん、ごとん……
女三人寄れば姦しいという。二人でもそれなりのものだろう。
だからこの二人にしても、何かの話題できゃいきゃい盛り上り始めるかと思っていたのだが……。
場が、すごく、重い。
そりゃ、二人で完全に別空間を作り始めてもらっても困る。
梓が子供の頃の僕の様子を嬉々として話し、藤原さんが学校での僕のありかたをにこやかに暴露する…
……そんなそら恐ろしい光景を期待するものでは、決してない。
しかしなぁ、もう少し和んでいても……。
――ごとん、ごとん、ごとん……
「藤原さんはさぁ」
とりあえず、手前にいる藤原さんに話しかけてみる。
「ん、なあに?」
「休みの日とかは、何してるの……、…………かな?」
くるりと振り向いた梓に見つめられて、語尾が尻つぼみになる。
「普通だよ。映画観たりとか、お菓子作ったりとか」
「お菓子かー、藤原さんらしいねー」
「そうでもないよ」
つきはなさなくても。
「あー、あずは今日は学校だったんだよねぇ? ど、どんな特別講義だったの……、…………かな?」
傍らから藤原さんに凝視されて、語尾が小声になる。
「医療関係の方々を招いて、職業体験の講演でした。私の高校は医学部希望者多いですから」
「そ、そっかー。あ、あずもお医者様になるのかなー?」
「いえ」
とりつくしまもない。
「やー、はっはっは……。ふ、二人とも、今日は疲れたよねー?」
「それほどでも」「別に」
「…………」
さっきから、万事がこの調子だ。
藤原さんに話しかけると、梓から無言のプレッシャーをかけられる。
梓に話題を振ると、藤原さんが顔を覗き込んでくる。
二人同時に話し掛けると、気だるい返事しか返ってこない。
……これでどうやって会話を続けろというのか?
僕は自分で思っている以上に、人とのコミュニケーションが苦手なのかな……。
はぁ……
――ごとん、ごとん、ガタンッ!!
うおっとっと……。
ぼけっとしながら吊り革にぶらさがっていたせいか、急激な横Gにバランスを奪われる。
よろけて後ろの人にぶつかった。
「あ、すいませ――
――」
「山本くん?」
え、あ?
え、あ、え、えぇっと。
「……ご、ごめん。なんでも」
訝しげに振り返った藤原さんと、それを追い縋る梓の目線。
平然なる構えで、それらを迎え撃った。
そう。
なんにも、おかしいことは、ない。
ぜんぜん、これっぽっちも、ない。
まえみてすわってないと、おぎょうぎがわるいよ、ふたりとも。
――ごとん、ごとん、ごとん……
落ち着け。
落ち着くんだ。
冷静になれ。クールに。
そう、深呼吸をするんだ。
………。
振り向かないと。
確かめないと。
い、いや、振り向けない。
い、いつから……
いつから、そこにいたんだろう?
どうしてそこに、いるんだろう?
僕らがバスに乗り込んだ時には、確かにいなかったはずなのに。
この身長。
この服装。
この空気。
間違いない。
間違うはずがない。
僕の 後ろに いた。
僕の 背後に 立ってる。
ね
姉さんだ。
一時中断。次は中篇4レス分。夜頃になるかな?
まってw
もしかして修羅場の最高峰の生霊って奴かw
541 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 17:40:11 ID:OTH54MsU
お姉ちゃん背後霊説。
さすが源氏物語の時代から修羅場の秘密兵器生霊だぜ。
おいらワクワクしてきたぞ
なんかもう450kb近いな。
最近の投下の多さはマジ異常。
正直読む速度が追いつけていない。
で、次スレのスレタイどうすっる?
>>480で八裂光輪とかでてるが。
てかそろそろ次スレの事も話し合うべきではなかろうか。
「ここまで来ればもう大丈夫でしょう」
そう言って俺たちはかぶっていたフードを脱いだ。
頭上には朝日が顔を見せる直前の白夜のような空。
はるか向こうにはアリマテアの王都の出口。まわりには平野と一本の道。
あれから急いで旅支度を終えると、捜索している兵の目を盗んで街を出た。
なんとか見つからずに王都を出ることが出来たようだ。
「……」
団長が口を閉ざしたまま城の方見つめている。
「団長?」
「……これで、良かったんでしょうか…」
その問いは果たして俺に言っているのか、自分に言っているのか。
「わかりません。でも、俺はあのまま団長を死なせたくなかった。それは確かです」
「そう、ですか…」
吹っ切れたのかどうか解らないが俺の方を見つめて微笑った。
「これからどうするんですか?ウィル」
「そうですね…この辺はこれから寒くなりそうですし……とりあえず南へ。
構いませんか?」
「えぇ。どこへでも付いて行きます」
「行きましょうか、団長」
「はい!」
俺たちは、南方へ続く道を歩いて――――って、あれ??
監視八日目
尾行八時間目
盗聴器八つ目
八墓村
このまま監禁日数がどんどん延びていくのもオツかも。
道の側に立つ、一本の木の根元で二人の人影が見える。
そのうちの一人はやけに体躯が小さい。……ちょっと待て。
「ウィリアムーーっ!!!」
尋常ではない速さでこっちに駆け寄ってくる小柄な人影。……まさか。
「姫様っっ!!?」
素っ頓狂な声を上げた俺に容赦なく飛びつく姫様。
「ウィリアムウィリアムウィリアムぅ!!
来るのが遅いぞ!わらわは待ちくたびれたっ!!」
どどどっどうなってる!!?なんで姫様がここにっ!?
俺に頬を摺り寄せる姫様を見てここは城の中庭なんじゃないかと錯覚する。
「あ、あああなた!どうしてここに!?」
混乱して舌がまわらない俺に代わって団長が聞いてくれた。
「ふふん、城を抜け出してきたのじゃ。わらわは待つのは苦手なのでな」
得意げな笑み。
……し、城を抜けてきたぁ!?もしかして、俺たちが追われているのは団長が暗殺未遂したんじゃなくて
王女誘拐の罪でなんじゃないのか……!?
「ひ、ひめさま〜…」
「む、ウィリアム。今さら城に戻れと言っても聞かんからな。
何と言おうとぜっっったいに帰らぬからなっ!」
俺の情けない声を遮って、先に答えた。
……やれやれ。姫様のいつものワガママっぷりに呆れながらも、どこか嬉しく感じている自分がいる。
「ところで姫様、あの人は?」
姫様とは対照的にゆっくり歩いてくるもう一人の人影。
「あぁ、わらわが城を出ると言ったら侍女の一人が自分も付いて行くと聞かなくてな。
結局、ここまで連れてきてしまった」
姫様の侍女か。こちらに歩いてくる侍女の顔に目を向けた。
………ん?あれ、この顔は……。
「ご無沙汰しております、ウィリアム様」
「あれ…?シャロンちゃん?姫様の侍女だったの?」
……………。
なぜか一瞬の沈黙。
「なぬぅっっっ!!!??」
沈黙を破ったのは姫様の声とは思えない重低音ボイス。……下品ですよ、姫様。
「どどどどういうことじゃ!?ウィリアム!
おぬし部屋でシャロンに会ったことはなかろう!!?」
俺に顔を近づけ詰問。……ツバがとんでます、姫様。
「え、いや俺が騎士団に入った頃、新米騎士の給仕係をやってくれていたので……
しばらくして居なくなったと思ったら…そうか、姫様の侍女をやっていたのか」
懐かしみながら見つめると、シャロンちゃんは俺に黙ってお辞儀した。
「シャ、シャロン!!どうしてそのことをわらわに言わぬのじゃっ!!」
「聞かれなかったので」
「なっなんじゃと!」
姫様の怒りの声をものともせず、飄々と答えた。
はは。相変わらずだな。
と、ここで会話に参加していなかった者の声が。
「それより姫様?」
会話に置いていかれたのを拗ねているのか、なぜか団長の低い声。
「何用じゃ、マリィ」
あれ、なんで姫様も臨戦態勢?
「いい加減そろそろウィルを放してくれませんか?彼に泥棒猫の匂いが付いたら困ります」
団長の笑顔。でもやっぱり目が笑ってない。
「ほう。よう言うたわ、マリィよ」
姫様はそう言って俺から放れた。対峙する二人。
「ふ、鎧を着ているときはわからなんだが……はんっ!」
「な、なんですか」
嘲りの視線を受けて団長がたじろいだ。
「なんじゃ?その申し訳程度のヒンソな胸は?それでウィリアムをどうこうできると思うのか?」
「うっ…!こ、これは鎧の所為で圧迫されてこうなっただけですっ!まだこれから大きくなります!
だいたい姫様に言われたくありませんねっ!そんな、胸どころか身体全部が幼児体型のあなたに!」
「ぐっ!ふ、ふん!じゃがわらわはもうウィリアムと交わったからの、ウィリアムはこういうのが好きなのじゃ」
…もしかして凄く不名誉なこと言われてないか?
「くぅぅっっ!!ウィル!!」
「わっ!は、はい!!」
急にこっちを睨まれた。
「今から私を抱きなさい!!さぁ!!」
「はいぃ!?って…うわ!団長!こんなとこで服脱がないでください!!」
「構いません!“あおかん”というやつです!!ウィル!早くあなたも脱ぎなさい!!」
暴走する団長を必死で宥める。なんでこんなことしてるんだ…俺。
いや、あの、俺ね、罪を償うためにね、旅をね……
そこで俺の努力を無に帰す、姫様の非情な言葉。
「やめておけ。そんな情けなくなるような胸を晒すでない。
せっかく出てきた太陽が呆れて引っ込んでしまうわ」
暴れていた団長の動きがピタリと止まった。
……ブチッ
あ、なんか切れた。何の音?
その音を境に、さわやかな朝焼けなのになぜか物々しい雰囲気が漂い始める。
(あははっ。言ってくれますね。その首、切り落としてあげましょうか?)
(ふん!ならばわらわはウィリアムをけしかけておぬしの心臓に刃を突き立ててくれるわ)
「「ふふふふふふふふふふふふふふふふふ………………」」
二人の不気味な笑い声。こ、怖いです…二人とも。
どうやってこの場を収めようか悩んでいると。
「御二人は忙しいようなので、私たちは先に参りましょうか。ウィリアム様」
仏頂面のままシャロンちゃんが俺に腕を絡め、無理矢理歩き出した。
「え?あ、でも……う、ちょ、ちょっと、シャロンちゃん?む、胸が…」
腕に触れる柔らかな感触。二人のひん……いや、控えめな胸とは比べ物にならない質感がぽよぽよと……あ、鼻血でそう…
「だ、だから当たってるって、シャロンちゃん!」
「当てているのです」
「は、はい…?」
なんつったの、今。
「「あ!」」
先へ進む俺たちにやっと気づいたのか、走って近づいてくる二人。
「ウィルから離れなさいっ!」
「ウィリアムから離れよっ!」
二人が同時に声を上げた。
ゆっくり、東から登り始めた太陽が俺たちを優しく照らす。
背負ってる十字架はやっぱり重いけど。
それでも前に進むことはできる。
二人が追い付いたのを確認してから後ろを振り返った。
朝日に照らされる王都を見ながら復讐ばかり、後ろばかり見ていた過去の自分に決別。
――――そろそろ、俺も前を見て歩こうと思うんだ。
………いいよな?キャス。
前を見ると、俺たちの前に広大な平野と、一本の長い道がはるか先まで続いていた。
END C 『前へ』
感動した
真ヒロインに
Cエンドでした。
サウンドノベル版『沃野』完成後、ふと思いついたネタを形にしたBloody Maryもこれにて終了です。
今ザッと読み返してみたんですが何というか、
アクが強いと言いますか、癖丸出しの文章ですね……
SSなんて初めてだったので最初はどうなることかと思いましたが何とか最後まで書けてほっとしてます。
こんなんでも最後まで読んでくださった皆さん、ありがとうございした。
そして暖かいレスをくれた方々も本当にありがとうございました。
そのおかげで当初よりかなり早いペースで書き上げることができました。
本編はこれで終わりですが
ラストの部分のギャグっぽいのをもう少し書きたくなったので
後日談のようなものを一話作成しました。後日、投下します。
お美事っ!お美事にございます!
後日談にも期待させていただく所存
そして
>>546の意見に賛同
尾行も捨てがたいが・・・
完結おめでとうございます
まさか最後の最後でああくるとはw
後日談にもものすごく期待しております
GJでした!!!
心の中ですさまじいほどのGJと黒飴をあげるよ
後日談wktk
>>538 姉さん、事件です
やべぇ第三のヒロインが横殴り仕掛けてきたよっ!ぐっじょぶ!
凄く面白かった。俺の属性は修羅場+ハーレムだから
CEND凄くよかった〜
投下します
体中の力が抜けていく
もうダメだって私にはわかるの・・・・
だからね・・・・聞いて・・・・最後だから
「仁ちゃん・・・・本当はね恋人だなんて・・・・嘘なの・・・・・私の片思いだったの」
最後だから・・・・最後になるから
涙が止まらない
仁ちゃんの涙も私の頬に落ちてきた
泣かないで仁ちゃん・・・・・
「ごめんね、嘘なんて言って・・・・・ごめんね?」
仁ちゃんはゆっくりと首を振った
ずっと謝りたかった・・・・
「でも、好きなの・・・・・愛してるの」
本当の意味で伝えることができた
あなたが好きです・・・・愛しています
私がひとつ誇れるものがあるとすれば仁ちゃんへの想い
他にはなにもない
でもたった一つでいい・・・・・それだけで充分
「奈々・・・・・」
奈々?いま仁ちゃん奈々って呼んでくれたの
「記憶・・・・戻ったの?」
仁ちゃんはまたゆっくりとした動作でうなずいた
「ごめんね・・・・ごめんね、仁ちゃん」
どうしてだろう・・・・すごく穏やかな気持ちだよ・・・・仁ちゃん
私を見つめてまた仁ちゃんは首を横に振った
そして・・・・・
「愛してる・・・・奈々」
え・・・・愛してる?そう言ってくれたの?
その言葉・・・・二年前からずっと聞きたかった言葉・・・・
仁ちゃん・・・・・私・・・・・
「嬉しい・・・・・嬉しいよ・・・・仁ちゃん」
頬に伝う涙の量が多くなっていく
あれ・・・・でも、仁ちゃんが見えなくなっていく
でもいいの・・・・・たとえ瞳が死んでも私の手は生きてここにいる
頬に手を乗せて温かみを分け合う
すぐに力が抜けて床に手が落ちた
でもいいの・・・・・たとえ手が死んでも私の感覚はまだ生きてここにいる
抱きしめられたぬくもりが私の身体を包み込む
けど・・・・それもすぐになくなっていく
「おねがい・・・・最後のお願い・・・聞いて」
「そんなこと言わないでくれ!」
「聞いてよ・・・・お願い」
「わかったなんでも聞いてやるから・・・・だから生きてくれ!」
ありがとう仁ちゃん・・・・
もうなんのしがらみもない・・・・
私は私のままで愛するヒトの腕に包まれている
これが・・・・・本当の私の幸せ・・・・
「子供だけは助けてあげて・・・・おねがい・・・・」
・・・・・言葉を発することすら出来なくなった
耳も聞こえないよ・・・・・
意識だけの存在になってしまった
でもそれでもかまわない
私の心はまだ生きている
たとえこのままこの身が果てても
死ですら私の想いを止めたりなんて出来ないのだから
「な・・・・・な?」
感じるよ・・・・仁ちゃんの心を・・・・
仁ちゃんの想いを・・・・
やっぱり死なんかで私の心を止められなんてしない
私は今、誰よりも幸せです・・・・仁ちゃん
たとえこの身体と意識がなくなっても私の想いはあなたと共に
あなたの中に預けるね・・・・私は・・・・生きてここに・・・・いるよ
ずっとあなたの心に・・・・
やっと・・・・掴めた・・・・あなたの・・・・・心・・・・仁・・・・ちゃん
地獄でした・・・・自分にとってこの章は・・・・奈々・・・・
思えば彼女が一番のお気に入りでした
けど、最初からこうしようと決めていたので
でもほんとに書いてて辛かった
明日は二十七章と最終章を投下いたします
まだ生きここが完結していませんが・・・・
新作を一時間ほどしたら投下します
新作はヤキモチラブコメです
どうしようか悩みましたがも可愛いラブコメチックなヤキモチもいいのかな?
と、思い決心しました
期待はしないでもう少し待ってやってください
>>560 作品、毎回楽しみにしてます
投下速度早い上に内容濃いからいつもお世話になってます、GJ
あと、すごい蛇足ですが
けど
でも
をそういう風に使うのはちょっと日本語が変なような
細かすぎですね、どうでもいいですね、スミマセンorz
言われて気づいた・・・・ご指摘ありがとうございます
この章はもう自分でもなにがなんだかわかってなくて・・・・
細かくないですよ
もしかしたら、以前の章も同じことが・・・・・orz
これはからは気をつけます
奈々。・゚・(ノД`)・゚・。
新作の方もものすごく期待して待っていますねw
ここまで自分の作品に入り込めるのも凄い(゚ー゚*)
それだけ自分の作品を愛してるってことで
読んでるほうもワクテカしてます
あと、ラブコメ争奪戦期待してます
誰か次スレ立ててくれ。オレは立てられぬのだ
まずい、なぜか文章を保管しておいたデータが消えた
すいません、新作のほうはすぐに書いて投下します
しかも生きここの・・・・も・・・・・だ
orz
明日までにはなんとかします
>>567 嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁八日目
でいいんだよね?
問題無ければ今日中に立てるよ。
投下行きます
起きた。昨日の風邪はすっかり治って、いつも通りの朝を迎えた。
一分後に鳴る予定の目覚ましは今日も出番なし。一階に降りて、朝ごはん。
食べ終わったら部屋に戻って、着替える。
いつもの制服、いつもの鞄、いつもの竹刀、いつものリボン。
でも今日はなんだか身体が軽い。昨日とは打って変わって調子が出そう。
「いってきまーす!」
すっごくいい気分。歩いている途中でスキップなんか混ぜちゃったり。
そうこうしてる内に、駄菓子屋が見えてくる。人志、いるわよね?
「人志っ」
呼んでみると、ひょいと出てきた。
「Good morningだ、明日香」
何よ人志、今日はやけに発音が綺麗……じゃ……。
「おっはよ〜っ」
……あたし、幻でも見てるのかな。人志の隣に、何で木場さんが?
足が急に重くなった。歩けない。
「ちょっ、き、き、きば……」
口もうまく動かない。腕も、身体全体が自分のものじゃないような。
「木場? ああそうそう、実はな」
え? 待って、何を言うつもり? まさか。やめて人志!
「私たち、付き合うことになったの〜」
わたしたち、つきあうことに、なったの。
木場さんはそう言って、人志の腕に抱きついた。あの大きな胸が押し付けられて、人志の顔が、あたしの
見たことないくらいニヤけていた。
「あ……そ、そ、そ、そう。良かったじゃない」
嘘。
「まさか人志が、こんな可愛い人を捕まえるなんてね」
嘘よ。
「いやね。急に暑くなってきちゃった。二人のせいかなあ」
嘘でしょ。
「あ、あたしは先に行くわね。二人はゆっくりどうぞ」
嘘だって言ってよ!
足はここに来てちゃんと動いてくれた。走って、早く!
後ろを振り返れない。前もよく見えない。
走って、走って、いつの間にか周りは真っ暗。何も見えない。見たくない。
足元が、崩れた。
落ちる。落ちていく――――。
……はっ!
急に自分の居場所が変わった。ここは……あたしの部屋?
そうよ。見慣れた天井、身体の上には毛布、机があって、竹刀が立て掛けてある。
確かあたしは二人が帰った後、そのまま一眠りして……って事は。
今のは、夢?
……。
「はぁ〜っ」
な〜んだ。夢だったんだ。よかった。本当によかった。
薄暗い中、時計を見ると、二時だった。外は暗いから、午前二時ね。
中途半端な時間に起きちゃった。もう一回寝ようにも、さっきの夢のせいで寝付けない。
夢、ただの夢よ。でも……。
木場さんが、人志を狙っているのは事実。もしかしたら、ああいう未来も、有り得るかもしれない?
あたしは、そんな未来は嫌。絶対に嫌よ。何でかっていうと、それは……。
そうね、あたしにとって、人志は何なのか。
横目で竹刀を見る。剣道は、六歳のときから始めた。
子供の頃のあたしは、男の子みたいに、チャンバラごっことか、石合戦とかの遊びが好きだった。
そういう性格もあって、「じゃあ、剣道でもやってみるか?」ってお父さんに言われてやってみたら、す
ぐにハマっていった。
上達していけば、チャンバラごっこでも強くなったから、楽しくて楽しくてしょうがなかった。
でも、あたしが剣道を続ける理由は、変わった。
人志の両親が離婚してから、人志はひどく大人しい性格になった。同い年の子のような、好奇心みたいな
ものが無くなって、冷めた眼をするようになった。
あたしへの態度はそれまでと変わらなかったけど、少しずつ、人志はクラスから浮いていった。
そして中学。
片親であること。お母さんが離婚の時いっぱい慰謝料と養育費を分捕った、という噂。本人の冷めた態度
。
人志は、血の気が多い奴、ガラの悪い奴等のターゲットにされた。
いきなり人気の無いところに引きずられて、暴力を振るわれる。
人志が悪いわけじゃないのに、言い掛かりを付けて、一人に対して大人数で、理不尽な暴力。
許せなかった。
あたしは竹刀を持って現場に突撃した。人志を取り囲んでいた奴らを、全員殴り倒した。
もちろん、一回叩いたくらいで、人志への暴力は止まらない。
あたしは、人志が連れて行かれるたびに、追いかけて行っては、暴力男たちをやっつけた。
その都度、剣道をやってて良かったと思った。あたしが勝てば、人志を守れる。
人志が傷つけられないよう、更に剣道に打ち込んだ。
中学を卒業して、進路がバラバラになった今、人志にいちゃもん付けてくる奴はいない。
でも、どこからか現れるかもしれないから、ひそかに警戒している。
元々人志は、あたしとは逆に、ケンカは苦手で、物静かな性格だった。
”勇者ごっこ”なんて遊びのときは、大体が村人役か、ザコモンスター役。みんながやりたがらない役を
やるのが、人志の常だった。
そんな人畜無害な人志は、あたしが守りたい、幸せでいて欲しい、大事な人。
これからもずっと一緒がいい。
一緒になって、人志があたしの一番、あたしが人志の一番、になって欲しい。
だから、だからね。
いきなりぽっと出てきた女なんかに、人志の隣の座は渡せない。
あちこちの男に手を出しては別れるなんて、自分勝手もいいところ。人志がこんな女に捕まったら、いい
玩具にされて、捨てられて、そして傷つけられる。
あたしは人志を守り抜く。暴力を振るう男からも、弄んで捨てるような女からも。
(13話に続く)
埋まるの早ぇなー。生後10日で寿命とは。
ギャーなんで生まれてきやがったー
575 :
6スレ目:2006/05/30(火) 22:42:15 ID:OCnHdMRv
そうよ!あんたなんか生まれてこなければよかったんだわ!
小恋物語は……わたさない……
貴女たちなんかには……わたさないぃいぃいいいい
ちょwwwww神集いすぎwwwwwwwwwwww
まさに聖地wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ちくしょお、久々に覗いたら神々の作品が多すぎて1つ1つの感想が書き込めねえ。
明日香の意思が確個たるものへと変わった様子。
そして不吉な夢。
いよいよ対決(?)の時が迫ってきた・・・・??
続きを楽しみにしてます。
次スレどうすんの?
もう次スレ立ったのかな?
「監視カメラ八台目」とか「(観察)日記八冊目」もいいと思ったんだけど
過去スレ共の言い争いに興奮した
訂正版を投下します
体中の力が抜けていく
もうダメだって私にはわかるの・・・・
だからね・・・・聞いて・・・・最後だから
「仁ちゃん・・・・本当はね恋人だなんて・・・・嘘なの・・・・・私の片思いだったの」
最後だから・・・・最後になるから
涙が止まらない
仁ちゃんの涙も私の頬に落ちてきた
泣かないで仁ちゃん・・・・・
「ごめんね、嘘なんて言って・・・・・ごめんね?」
仁ちゃんはゆっくりと首を振った
ずっと謝りたかった・・・・
「でも、好きなの・・・・・愛してるの」
本当の意味で伝えることができた
あなたが好きです・・・・愛しています
私がひとつ誇れるものがあるとすれば仁ちゃんへの想い
他にはなにもない
たった一つでいい・・・・・それだけで充分
「奈々・・・・・」
奈々?いま仁ちゃん奈々って呼んでくれたの
「記憶・・・・戻ったの?」
仁ちゃんはまたゆっくりとした動作でうなずいた
「ごめんね・・・・ごめんね、仁ちゃん」
どうしてだろう・・・・すごく穏やかな気持ちだよ・・・・仁ちゃん
私を見つめてまた仁ちゃんは首を横に振った
そして・・・・・
「愛してる・・・・奈々」
え・・・・愛してる?そう言ってくれたの?
その言葉・・・・二年前からずっと聞きたかった言葉・・・・
仁ちゃん・・・・・私・・・・・
「嬉しい・・・・・嬉しいよ・・・・仁ちゃん」
頬に伝う涙の量が多くなっていく
あれ・・・・仁ちゃんが見えなくなっていく
それでも構わない・・・・・たとえ瞳が死んでも私の手は生きてここにいる
頬に手を乗せて温かみを分け合う
すぐに力が抜けて床に手が落ちた
それでも構わない・・・・・たとえ手が死んでも私の感覚はまだ生きてここにいる
抱きしめられたぬくもりが私の身体を包み込む
それもすぐになくなっていく
「おねがい・・・・最後のお願い・・・聞いて」
「そんなこと言わないでくれ!」
「聞いてよ・・・・お願い」
「わかったなんでも聞いてやるから・・・・だから生きてくれ!」
ありがとう仁ちゃん・・・・
もうなんのしがらみもない・・・・
私は私のままで愛するヒトの腕に包まれている
これが・・・・・本当の私の幸せ・・・・
「子供だけは助けてあげて・・・・おねがい・・・・」
・・・・・言葉を発することすら出来なくなった
耳も聞こえないよ・・・・・
意識だけの存在になってしまった
それでもかまわないよ
私の心はまだ生きている
たとえこのままこの身が果てても
死ですら私の想いを止めたりなんて出来ないのだから
「な・・・・・な?」
感じるよ・・・・仁ちゃんの心を・・・・
仁ちゃんの想いを・・・・
やっぱり死なんかで私の心を止められなんてしない
私は今、誰よりも幸せです・・・・仁ちゃん
たとえこの身体と意識がなくなっても私の想いはあなたと共に
あなたの中に預けるね・・・・私は・・・・生きてここに・・・・いるよ
ずっとあなたの心に・・・・
やっと・・・・掴めた・・・・あなたの・・・・・心・・・・仁・・・・ちゃん
ご指摘ありがとうございます。
ここはやはり重要だと思い訂正いたします。
管理人様、申し訳ありませんがこちらの訂正版のほうをまとめサイトに掲載してください
―――
――
―
姉さんだ。
いる。
すぐ真後ろに、いる。
ひっそりと、立っている。
振り向かなくては。
把握しなくては。現実を。
ぎっ、ぎっ、ぎっ
まるで頚骨がオイル切れを起こしたように、ぎこちなく背後を覗き見る。
――ああ
姉さんだ。確かに姉さんだ。
じっと俯いたままの姉さん。
陰になって、その表情が伺えない。
何かブツブツ呟いている。
でも何を言っているのか、よく聞こえない。
姉さんのブラウスの襟元が、どういうわけかびっしょりと濡れている。
おかしい。
どこかおかしい。
「どうかしましたか、秋人さん?」
「なんでも!」
咄嗟に姉さんを庇うように胸を張った。
顔面神経に向って『えがお』と命令文を連打する。
今のただならぬオーラを発する姉さんを、これ以上人の目に晒すべきではない。
特にこの二人に知れたら、なんか分からないけどとんでもないことが起こる気がする。
――理性と本能が珍しく全会一致で、そう結論を下したのだ。
背骨と両胸をぐっと反らし、背中から姉さんに覆いかぶさるようにして胸を張る。
きつい。
この体勢きつい。
後ろ手で姉さんを引き寄せようとして、後ずさった拍子に何か柔らかいものを踏みつけた。
……姉さんの素足だった。
靴を履いていない。
額からじっとりと噴き出してくる汗が、前髪を張り付かせる。
やばい。
なにかやばい。
何があったんだよ、姉さん……。
一体、どうしちゃったんだよ……。
可哀想に、姉さんの小さな肩がふるふると震えている。
こんな姉さんはとても見ていられないよ……。
………あれ?
胸に抱えるようにして、両手で何かを握り締めている。
なんだろう?
昼間の果物ナイフだった。
泣きたくなった。
ああぁあっ!? やめてよ姉さんッ! やめてそれ以上抜かないでッ!!
抜いちゃ駄目!! 閉めて! しめてしめてそのままフタ閉めて!!
こんな満員バスの中で白刃煌めかせたら、洒落になんないって! 捕まっちゃうって!ホント!!
無意識に覆い隠そうとして、ほとんど海老反り状態になってしまった。
隣の人が不審な目で睨んできたが、もう気にしていられない。
ちょっと涙が出た。
(「……ゆ………さ……な………」)
姉さんの呟きが、ひと際はっきりと聞こえた。
でも梓達二人の監視の目があるから、大っぴらには話しかけられないんだ。
ええと、なんだい……?
(「……ゆる……さ……ない……」)
ええい、このバス駆動がうるさいなぁ! 聞こえないじゃないかっ!
(「……ゆる………………い……」)
ゆ る い ?
ナイフのフタが緩いのかな?
だから抜けちゃったの?
納得だけど、そんなものを一日中いじくってるからだよ……。
(「……うぅ………ひっく……ぐすッ……ひ……っく……」)
ね、姉さん……。
……な、泣かないでよ……。
お願いだよ、泣かないでくれよ……。
背中からくぐもった嗚咽が漏れ聞こえてきて、行き場のないやるせなさを持て余してしまう。
いったい何があったんだよ、姉さん。
どうしてそんなことになっているんだよ。
僕のいない間に、何が…………
僕の……
いない……?
…………。
そうだ。僕のいない間なんだ。
僕のいない間に、姉さんの身に何かが起こったんだ。
脳裏に閃光が走る。耳元に蘇る、あの時の梓の言葉。
―――――『きっと、素敵な男性なんだろうなぁ』――――――
……そいつだ。
……その男だ。
……僕がいない間に、家に来た男だ。
姉さんを……。姉さんを……そいつが……。
瞬時、沸点を越えた。
背筋を駆けぬけた激流が、全身の毛を逆立たせる。細胞が煮え滾る。紅い鼓動を漲らせる。
バスの中が捩れて歪む。うねり狂った瞼の裏で、何度も何度も閃光が瞬く。破裂する。
よくも……
よくも! よくも!! よくもッ!!! よくも姉さんをッ!!!
僕の大切な、大切な姉さんを、よくも傷つけやがってッ!!!!!!
あんなに朗らかな姉さんを……お日様みたいに……優しく笑ってた姉さんを……こんな……こんな……。
こんなになるまで……弄びやがって……。
糞っタレがぁッ!!!!
畜生、畜生ッ、畜生ッ!畜生ッ!! 畜生ッ!!! 畜生ッ!!!!
ゆるさない、オレは、絶対に、絶対に許さないッ!!! 許さないッ!!!
どこのどいつだ……。
どいつが、姉さんを傷つけたんだよッ!! (←←←←←)
どいつが、姉さんをこんな姿にしたんだよッ!! (←←←←←)
いったいどこのどいつだよッ!! (←←←←←)
殺してやる……!
ブチ殺してやるッ!!!
「や、山本……くん?」
みつけだして、叩き殺してやるッ!!!
「やまもとくんッ!!」
目の前に、酷く怯えた藤原さんの顔があって。
あれだけ渦を巻いて捻じ曲がっていた世界が、あっけないほど整然と物理法則に従い始めた。
ありきたりな市内バスの風景。眠気を誘うほど緩慢に響いてくるバスの振動。
今まで煮え滾っていたマグマが、急激に冷え固まっていく。
ずっと握り締めていた拳を開く。青白くなっていて、痛い。
思わず顔をさする。僕は一体、どんな表情をしていたことやら。
おとなしいクラスメート脅して、何やってんだよ僕は……。
「山本くん……」
「あの、ごめん。考え事しててちょっと……。ぜ、全然、藤原さんのことじゃないから」
「う、うん……」
でもおかげで冷静になれた。
姉さんはきっと、その男に何かされたんだ。何か……酷いことを。
……でもこんな風になっているということは――破綻したということだ。二人の関係が。
当たり前だよ。大切な人をこんな風に傷つけて、恋人で居続けられるわけがない!
もう終わりなんだ。姉さんとその男は……。
そう思った途端。昼間からずっと燻っていたわだかまりが、不思議と消えていくのを感じた。
今の姉さんは傷ついている。可哀想だ。
でも、なんというか、結果的にはこれでよかったんだよ。姉さんにはいいクスリになったと思うんだ。
ね、姉さんも、もっと、男を見る目を養わないと……。
そ、それに、そんな男なんかいなくたって、僕が姉さんについている。
今の姉さんを支えることができるのは、僕しかいないんだ。
姉さんを守れるのは、その傷を癒せるのは、励ませるのは、今日来た奴なんかじゃない。僕なんだ。
心が軽い。
前向きになってくると、先の先まで物事を見通すことができるようになる。
まずは梓達に気づかれないように、姉さんを家に連れて帰るんだ。それからだ、慰めてあげるのは。
今の姉さんは、きっと八つ当たりでもしたい気分なんだろう。
いいよ。僕が姉さんの気持ち、全部受け止めてあげる。八つ当たりされてあげる。
だからもう帰ろう? 僕ら二人の家にさ……。
――ピンポン
『音取川駅前、ねとりがわえきまえです。お降りの際は、足元にご注意下さい』
「わたし、行くね……」
あ、あぁ、そうか。藤原さんはここで降りるんだ。だから立っていたのか。
確かこの辺りのマンションに住んでいるんだっけ。
今日は色々世話になったというのに、帰り道ではなんだか気まずい雰囲気になっちゃって……。
罪悪感が募る。いけないことをした気も。
……と思った刹那、藤原さんは鞄を後ろ手にしてくるっと振り向いた。
よかった、笑顔だ。
「山本くん、“また”ね」
うん、月曜日に!
藤原さんはスカートを翻して、小気味よくステップを降りていった。
――って、姉さん?
ちょっと待ってよ、藤原さんの後についていってどうするのさ?
止まって止まって、梓に見つかっちゃうよ。
わ、駄目だって、ナイフ抜いてちゃ駄目! しまって! フタ閉めて!
だからついていかなくていいんだって! 藤原さんについていかなくていいんだって!
うわわっ 暴れないでよ! 落ち着いて、落ち着いて姉さん! そのナイフしまって!
中篇ここまで。残り後編4レス。
……新スレに二股かけちゃお。クックック……
>
どいつが、姉さんを傷つけたんだよッ!! (←←←←←)
どいつが、姉さんをこんな姿にしたんだよッ!! (←←←←←)
いったいどこのどいつだよッ!! (←←←←←)
ちょwwww
姉さん!惚れた、あんたに惚れたよ!
>>592 お主も悪よのぉ…
音姉もこれだけ壊れたら、ダ・カーポ2は神作品だったろうに・・w
とりあえず、キモ姉GJ
はたして、秋くんはメール見ても自分が姉を泣かせたことに気がつけないのだろうか。
いやそもそも姉が何もさせずに追い出したのが原因だ
それを姉が知ったら・・・・
何も変わらないんだろうな
秋人の勘違いっぷりにワロタw
そしてキモ姉こと亜由美に惚れた
>>音取川駅
ワロタ
600 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:48:32 ID:ESqDnleU
秋人なんだかんだ言って姉萌えだなからなあ。デニム君みたいに
「僕は姉さんを(姉として)愛してる!」とか言ってみてほしいよ。
・・・選択肢を間違えたらカチュアみたく自害したりして
個人的には、策士系あずあずが理性をかなぐり捨て女の業丸出しで
キモ姉と対決してほしい。
もちろん、どんな展開になろうと俺は神についていきますが。
>>592 いつもながら、あなた本当に巧いね。感じ入りました。
あずも里香もいいが、やはり姉さんが最高だ。
>でも、なんというか、結果的にはこれでよかったんだよ。
>(中略)
>心が軽い。
いや、今時、実にできた弟君じゃあないですか。中々考えられる
発想ではありません。
602 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:56:22 ID:OTH54MsU
GJ! 何気に駅の名前オモシロス!
今迄、姉があんなだっみんな聞いてくれ。俺はとんでもない思い違いをしていたんだ
姉がアレだから弟がああなのだと思ってたんだ
だが違ったんだ
この弟にしてこの姉あり、だったんだよ!
ミスったoTL
_人人人人人人人人人人人人人人_
> な・・・・なんだってー!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
_,,.-‐-..,,_ _,,..--v--..,_
/ `''.v'ν Σ´ `、_,.-'""`´""ヽ
i' / ̄""''--i 7 | ,.イi,i,i,、 、,、 Σ ヽ
. !ヘ /‐- 、u. |' |ノ-、 ' ` `,_` | /i'i^iヘ、 ,、、 |
|'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ! iiヽ~oj.`'<_o.7 !'.__ ' ' ``_,,....、 .|
. ,`| u ..ゝ! ‖ .j (} 'o〉 `''o'ヽ |',`i
_,,..-<:::::\ (二> / ! _`-っ / | 7  ̄ u |i'/
. |、 \:::::\ '' / \ '' /〃.ヽ `''⊃ , 'v>、
!、\ \. , ̄ γ/| ̄ 〃 \二-‐' //
教えてくれキバヤシ
俺たちはもう姉さんを止めることが出来ないのか?
俺はキモ姉も弟君の鈍さもGJだったんだが音取川(ねとりがわ)という地名に吹いたw
これは他の家でも修羅場が起きているということか?w
俺はキモ姉も弟君の鈍さもGJだったんだが音取川(ねとりがわ)という地名に吹いたw
これは他の家でも修羅場が起きているということか?w
しかしキモ姉はますます神がかって来ているな、wktkが止まらないぜ
山本くーん!
GJ!!!!!!!!
実は登場人物の中で梓が一番まともというこの現実
ところで修羅場において女二人が「私を選ぶよねうんそうでしょわかってる」と自己完結せずに
「どっちなの!」と男を問い詰めるのはこのスレ的にはありなのか?
>>611 むしろそっちの方が純粋な修羅場じゃないか?
最近はサイ娘がトレンドっぽい気はするが
男「…やっぱり俺には選べないよ…」
女「どうして!?」
男「どっちかなんて…そんな…」
女「どっちも好きだから?傷つけたくないから?」
男「…うん」
女「優しい通り越して、もう優柔ね」
男「……」
女「…大丈夫。私は傷ついたりしないよ」
男「え?本当に?」
女「うん。だって…
私 を 選 ん で く れ る だ も ん ね !」
「傷つくのは あ の 子 の 方 だ も ん」
こういう展開は大いにあり
男「どっちかなんて選べないよ」
女「…わかった」
男「え?」
女「じゃあ…2等分しましょ」
男「ちょ、まって、それなに?」
女「大丈夫。私は捨てたりしないから」
「え?うそ?その右手に持ってるナt」
ざしゅ
こうですか?わかりません!
世にも奇妙な物語でそんな話あったな。
何でも半分こする双子姉妹の話。
いいよ、僕が姉さんの気持ち、全部受け止めてあげる。
八つ裂きにされてあげる。
と読んでしまったのは俺だけでいい
山本くんは語尾がジョジョっぽいな
ねぇ、アンタあたしに隠し事してない?
…ふぅん。そう。嘘、ね。
なんで、って?
何年アンタの幼馴染みやってると思ってるのよ?
アンタの癖なんてお見通しなのよ。
……はぁ〜、そう。ふぅん。へぇ。それで?
……。
い い 加 減 に し な さ い よ ! ?
忘れたってなら教えてあげましょうか?
アンタがあたしの他に
前スレの6 と 次スレの8 に手ぇ出したでしょ。
…とぼけないでっ!
証拠はあがってんのよっ!!
かわいそうに6なんか、埋められちゃったのよ!?
あれだけ長い間放置しといて!今更棄てるっての!?
その上、今度は8!?人を馬鹿にするのも大概にしなさいよ!
……ぐす。
はぁ、はぁ、ぐすっ…な、泣いてなんかいないわよ。
いないのよっ!
分ってるわよ。アンタの心がもぅ8にあるのは。
もぅ、あたしじゃ引き止めて置けないってのは。
とっくに分ってる!!
だから、選びなさいよ…。
こんな中途半端じゃなくて、きっぱりと一スレを選びなさいよ。
8をスレストさせたら承知しないんだからね!?
なによ、さっさと行きなさいよ。8の所に。
行きなさいってば!
…
……あ〜あ、行っちゃった。ふふ、あたしも損な性分ね。
さよなら、楽しかったわ。
…ふぇ…ぐすっ
……馬鹿ぁ…。
620 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 03:59:49 ID:eFSt2tvM
そこで諦めたら 試 合 終 了 で す よ
埋めの予感!
:|| 只 // | | ___
,. - ─── 、 ::|ヽム-' ヘ _,| ,. -─-- 、. | '⌒)>,. ────='´
ヽ.| /__N> ̄ ̄ ̄へ,//|/ 、_> |,.イ> \
:|/了>/ \ | >'ー _\\ |/| :ト、|\ | 'ーヽN\|
/レ'_,V,_レ\ | :| レ __ノ Vレ\N | | >/ ミ \\ |::ヽ| :| -' \ (__) J }
(__) (__)| | | | |.| | \ 丶:|\:| L| / __ } \:|: | :| (__) ''' イ
''' / ̄| '''イ :|/レ'ヽ|.| |,, ̄´__ <:|:| . | \ └' /\\|: | 〉 ''' <> ノ//
'ー-{____:|-‐' レV| _.´ト|、__/_ _| ''ノ |: | \ \___,. <__ \ト、 N ト、 __ /ソ
从/<)_)ソ人|::::| {:{ //>Yノ-|} ̄ レN: |\ \ \ マゝノノ_ . | \ト| レ' ム∧
//只-ヽ | ヽ=T\_/ハ} :| \ ヽ |ノVムゝ:::| ノケハ〉\
小恋が来るまでは埋めてはならんぞ皆の衆。
シッ!
小恋の話しをすると、5スレの怨霊が……
小恋来い恋小恋来い〜
それで・・・埋めていいの?ダメなの?
,:' 仁ミヽ のんびり小恋を待ちましょう♪
((リ 从ノi 8スレちゃんが埋まるまで
i、∀゚ ノl| まだ私は名無しさんと一緒よ
ノ⊂)l大iつ 離さないんだから♪
〈|_ ヽ>
し'ヽ.)
、
__ヽ._
,.‐ァ'´ / ` v−、
/ レi ,ハ ト、ハ | }
i/lハ|V(_)Vレ(_)Vトヘハ
レト、__ワ__,リ うめ
レ ,<ハ>、 ヽ
└1__|_ト-′
ノ__,ゝ
. |_| |_|
628 :
反省埋め:2006/06/03(土) 23:56:14 ID:k0XOAEBz
ぼーっとしながらも目を覚ますと体が動かなかった。
いや、体だけじゃない。手も足も頭も口もピクリとも動かせない。
全身をなにか紐のようなもので固い板に縛られ床にいる。
ためしに声を出そうとしたがうなり声すら出ない
なぜか力の入らない体を動かすのを諦めて目であたりの様子をうかがう。
学校の教室より少しせまい程度の大きな部屋、その中央に仰向けにされているようだ。
部屋の中にはベッドとドアが一つずつ。それのほかは窓すらない。
だれかがベッドにいる。なにやら鎖も見える。そう気付いたところで突然ドアが開いた。
入ってきたのはあのオンナ。私と彼の邪魔ばかりする八重だ。
「なぁ、八重。いいかげんこの鎖をほどいてくれないか?」
八重が部屋にはいってきたとたんにベッドから声があがる。彼だ。
どうやら彼も縛られているらしい。ココからじゃベッドが邪魔で互いに死角になっているから確認までは出来ないが……。
とりあえず私に気がついて欲しかったが、声どころか物音一つ立てられない今は無理のようだ。
「いやよ。せっかく二人っきりになれたと思ったのに、七嗣ったら逃げ出すんですもの」
「あたりまえだ。首輪なんかつけられて喜ぶヤツいやしない」
「別に首輪をつけただけじゃない。部屋の中は自由に動けたし、部屋はユニットバス付きを用意したわ。一体なにが不満だったのよ! 」
なにがって。そんなことも解らないとは、この雌豚の頭の弱さには呆れてしまう。
629 :
反省埋め:2006/06/04(日) 00:01:33 ID:k0XOAEBz
「なぁホントに謝るからさ」
「……それで、ほどいたらまたあのオンナのところに行くの?」
「あのオンナって……別にナナミのところに行くってわけじゃないよ」
「嘘ね。昨日もあのオンナのところに居たわ。わたしが居ないからって……あの泥棒猫!」
そう。私と彼は昨日一緒に居た。私の部屋で一緒にすごしていたはずだ。
なのに……なんで今こんなところにいるのだろう?
いや。なんでか、は推察できる。あの雌豚のせいだ。
どうやってか、なんて今気にすることじゃない。
一番重要なのはコレからどうなるか、だ。
「泥棒猫って元々オレはナナミと付き合っていたんだ」
「私を好きだって言ったじゃない。もうあのオンナには会わないっていってよ。そうしたらスグにだってほどいてあげるわよ」
「……。ナナミは大切な恋人だ。そんな約束はできない」
「やっぱり……七嗣はあの泥棒猫に騙されているのよ? コレだって七嗣が目を覚ますのに必要だからやっているの。
あの泥棒猫はそうとうキタナイ手をつかったようだからしかたないのよ?きっと淫乱なフェロモンで誘惑したんだわ。
泥棒猫はそこらの野良猫とでもやっていればいいのに」
さすがにそのでたらめな中傷に彼も頭にきたようだ。
「いいかげんにしろ!目を覚ますのはオマエの方だ。オレはナナミを愛しているし、ナナミもオレを愛していてくれている!」
630 :
反省埋め:2006/06/04(日) 00:03:57 ID:k0XOAEBz
一瞬体も表情も固まった八重だったが
「……そう。まだこの豚がいいっていうのね」
横をむいて私に向けられた顔は凍えるような怒りの顔だった。
「お、おい! そこにナナミがいるのか?!」
やはり彼からは死角になっていて私のことは今まで気がついていなかったようだ。
「うん。昨日一緒に……ね。よっぽど刺し殺してやろうと思ったけど、このオンナもちょっと縛る程度にしておいたんだ。
本当は七嗣が自分で目を覚ますのが一番良かったのだけどね。でも、どうしても目が覚めないっていうならしかたないよね」
そう言いながら八重はいったん部屋の外に出て行ったが、すぐに手に何かを持って戻ってきた。
「ほら、このオンナがいかにキタナイか見せてあげるよ」
そう言いながら手に持ったものを大きく振りかぶる。
女の腕とは思えない勢いで振り下ろされるそれが目の前に迫るのが、私の見た最後のものだった。
「あは。やっぱりこんなにキタナイ顔」
「見て見て。って、ベッドの上からじゃ見えないよね」
「次はお腹〜」
「このキタナイ女は私がちゃんと埋めておくから七嗣は安心してね」
「ほら、これでもう目が覚めたでしょ。七嗣」
埋めの予感!
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ヽ.| /__N> ̄ ̄ ̄へ,//|/ 、_> |,.イ> \
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//只-ヽ | ヽ=T\_/ハ} :| \ ヽ |ノVムゝ:::| ノケハ〉\
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(((( ;゚Д゚)))コエー!!
まだいかせないわっ!!
埋めの予感!
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そろそろ私の出番ね♪
m(ryまっててね♪
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