幻想水滸伝エロ妄想スレPart12

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1名無しさん@ピンキー
2名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:14:38 ID:i1NM7ELq
ああっ、もう便意ッ! ぁあ…便意催すっ、便意催しますうっ!!
ベッ、ベンッ、便意便意便意ィィィーーーーーッッッ!!!
いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
便便便 便を見ないでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
便意ッ!便意イイイイーーーーーーッッッ…便意ッ!
便便便便便便意イイイイイイッッッッ!!!!
んはああーーーーっっっ!!!ベッ、ベンッ、便意ィィィッッ!!!
便意がするぅぅぅ おなか張るぅぅぅぅ ぽんぽこおなかぁぁぁっぁっっ
便意便意イッッ!!便意便意ッッ、便意便意便意ィィッッ!!!
おおっ!便意ッ!!ベッ、ベンッ、便意ッッ!!!
私ったら便意催してるうっ  ああっ、もう便意ッ!!便意いいいーーーーっっっ!!!
便意イッ!便意ッ!便意便意便意ィィィィッッッッ!!!!
便便便 糞糞糞糞   だっ 大便がしたいぃぃぃぃぃっっ!!茶色くてぶっとい大便んんんんんっ!!!
いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱい便意催してるゥゥッ!
便便便便便便便意ぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!便意便意便意ィィィッッ!!
便便便 糞糞糞 糞便糞便糞便んんんんんんんんっっっ!!
便意ッ!便意イイイイーーーーーーッッッ…便意ッ! 便便便便便便意イイイイイイッッッッ!!!
3名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:31:11 ID:ckrTkYo6
>>1
幽界の門がいかに精強とて乙には違いないッ!
4名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:55:49 ID:Xw7fXeyl
>>1
乙ともども、よしなに♪
5名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 18:21:23 ID:bVz9EZES
ちぇっ、せっかく>>1乙少年の背中流してやろうと思ったのに
6名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 18:46:24 ID:KKtUVr0K
バロウズ家の乙、共に背負いましょう>1
7名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 18:47:08 ID:wahAC0sp
1乙
8名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 19:04:07 ID:POi0zbIF
>>1乙ちゃん!!
俺と結婚してくれ!!
9名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 19:29:58 ID:k2NGOH99
はっはっは〜>>1乙〜!
10名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 20:26:12 ID:+ySIW8xK
>>1乙であります!
11名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 20:46:36 ID:mq6mu6bW
>>1乙なのじゃ〜!
12名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 21:01:31 ID:LAw1xJvW
>>1乙撃っ!!
13さんまるよん ◆Q9d2102H3k :2006/04/21(金) 21:07:55 ID:Uhpacncm
>>1
と言うわけでユーラムネタ、予定と大幅に狂ったけど、突撃。
14さんまるよん ◆Q9d2102H3k :2006/04/21(金) 21:09:22 ID:Uhpacncm
「だ、大丈夫かな…うわ…」
ランは軽く触れていく。
それだけでひくつくように反応を見せているユーラムのそれ。
フェイレンはフェイレンで
「えと、こうだよね…」
指先で竿を包み込んで、しごき始めようとしている。
たどたどしい指使いその刺激がユーラムを襲っていく、割と容赦なく。
「フェイレン、違う。たしか…こうするんだよ。」
そういって胸で彼の肉棒を挟みこんでいく。
ランの豊満な胸はユーラムのそれの大半をつつみ込んでいく。
そのまま、胸で挟み込むようにしつつ、ランはしごき始め、時折その先っぽ。そこに舌を這わせていく。
「ン…チュ…ン…フェイ…レン?」
「あたし…も。」
そういってフェイレンはよりにもよって仰向けに寝るユーラムの顔のほうをまたぐようにして、彼の肉にすがっていく。
両側から胸肉に挟みこみ、女二人はしごきたてていく…
「(これは…やっぱり…)」
「(気持ちいいかも?)」
二人は思う。そして思いが彼女たちの中で膨らんでいく。
徐々に、徐々に。
「ン…ム…ウン…ユゥ…ラム…」
「は…ぁ…ああ・・なんか…へんに…」
奪い合うかのように。
ランの、そしてフェイレンの挟み込んだ胸元。
ある意味それは、互いの胸をこすり付けあうかのような行為で。
15さんまるよん ◆Q9d2102H3k :2006/04/21(金) 21:10:02 ID:Uhpacncm

それを続けていけば…やがて結末が訪れる。
「う”あぁぁぁあああぁぁああぁぁあっ!!!」

それはユーラムの叫び。
ある意味では、断末魔の。
そして、ちょうど咥えていたランの…
「む、むぐううっうう!!ん、んうっう!!ん…んうう…」
「らん、こぼしてる…」
そういってフェイレンは、上向き、ユーラムのを飲もうとしているラン、そのこぼれたのを舐めとっていく。
「ゆーらむ?」
「あれ?」

ユーラムが白目をむいている。

まずい。

「フェイレンッ!早く後始末っ!あとあと、あと!!ニーック!」
「なんすかっ!」
ほとんど瞬間単位で入ってくる鼻血をたらした少年を殴り飛ばしてから
「早くせんせいっ!あとは…あとは…まかせたっ!」

大慌てで大きくパニくりながらもその夜は深けていく。



次にユーラムが目を覚ましたとき、目の前には緊急で呼び出されたシルヴァがいた。

「もう大丈夫だろう。後は栄養をとらせることだ。」
「はい…」
部屋の隅で正座してるランとフェイレンを見もせず、シルヴァは去っていく。
その返事のみを聞いて。
ユーラムが周囲を見ると、何人かがいた。
まずグレイグ、ラハル。ここにいるはずの人。
そして一応はなからみていたニック。本当に最初から。
グレイグの手の中を見れば…紙があった。
そして、手に取り、こちらにみせてくる。
「辞令。竜馬騎兵見習い、ラン・フェイレンの両名をレインウォール統括補佐ユーラム・バロウズの一連の行程の同行を命ずる…」
ユーラムはそのまま読み上げ、驚き、グレイグのほうをみる。
「今回の件は彼女らの不始末。それに、見方が変わった状態で、あなたが見ようとしている裏側を見るのも…悪くはないだろう。
 ユーラム。
 君は気負うべきではない。一人ではないのだから。」
「しかし…私しかいないのですよ。
 ロヴェレ卿、ゴドウィン親子、先代陛下・騎士長殿。あのロードレイクその一連にかかわった人は、
 父の含め、みな、もうここにはいません。
 あえてあげるとすれば、タルゲイユ殿。そして、私です。
 少なからず、罪を背負うべきです。私は。
 少なからず、引き金を引いているのですから」
「私は何も言わないよ。
 何を言っても、君はその意志を曲げないだろう。
 ただ、妹は大事にしてやるべきだ。家族は、大事に。」
そういって、クシャリ、とユーラムの髪をグレイグはなで、他の二人を連れて出て行った。
出る間際に一言。
「二人を頼んだ。
 …それと、手を出しすぎんようにな。」
16さんまるよん ◆Q9d2102H3k :2006/04/21(金) 21:11:58 ID:Uhpacncm
後日。
川の中程にあるがけ。その根元近くの岩場に、一席の船が止まっている。その中では…

「んあぁつう!ふああっああっ!ゆぅうらむうっう!!!もっとぉ!!」
「…あんたなんでそんなに乱れてるんだ」
船の中、騎乗位でユーラムの上で腰をふるラン。
そしてその傍らにはフェイレンもいる。
「ラフトフリートでいろいろあったんだっけ?あれ?ちがった?」
「おうじぃいさまにぃい……あああぁっう!!!」

大変だったんだろうなあとユーラムは思考を打ち切った。
自分の上で交代が始まっている。正直、ためる時間をくれといいたいのだが。

外の空を見る。青いなあと。なんとなく思った。


17さんまるよん ◆Q9d2102H3k :2006/04/21(金) 21:13:56 ID:Uhpacncm
えと、終了。
リオンと王子を出してポークビッツ呼ばわりして王子へ込ませたりとかも考えたけど。
無理。やっぱり。

ちなみに、アルママンの代の闘神祭のバロウズってサルムなのかな?
だとしたらIF物がかけそうだが
18名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 21:20:55 ID:tJYdQ+HB
16年前のサルムは既婚者なので違う。
長男(カイル?)かユーラムか、もしくはどっかの親類
19名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 21:27:21 ID:/mrJbXXZ
長男はヒラムな。カイルはヒラムの息子か、本来ならバロウズの次兄のどっちか、らしい。
20名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 21:30:25 ID:Uhpacncm
カウス(ファルズラームの夫)とサルムだとどんな関係かね。続けてで悪いけど。
21名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 21:33:22 ID:/mrJbXXZ
>>20
多分だけど、サルムの兄弟じゃないかね。アルのお母さんの旦那っつうなら
生きてたら5、60くらいだろうし。
22義勇兵:2006/04/21(金) 23:05:52 ID:nYpbDT7K
前スレ>>583からの続き、本拠地壊滅話三回目を投下します。
登場キャラはリンドブルムの三人とノーマ、エルンスト。
ノーマ輪姦です。
23義勇兵:2006/04/21(金) 23:06:41 ID:nYpbDT7K
「チッ!」
最後の敵を斬り捨てた拍子に、ヴィルヘルムの剣が鍔元から折れた。
もはや武器としての用をなさなくなったそれを忌々しげに投げ捨てて、ヴィルヘルムは舌打ちした。
周りにいるのは自分を含めてたった三人。
あとは全て物言わぬ死体だった。
円堂を囲む螺旋階段を戦場と定めて、どれくらいの敵を斬っただろうか。
わずか三人とはいえ、いずれも五千人を数えるリンドブルム傭兵旅団の中でも指折りの精鋭だ。
下からのぼってくる敵を迎えうつという有利な地形条件も手伝って、百や二百は倒したかもしれない。
だがそろそろ限界だった。
ヴィルヘルムは武器を失い、肩には決して浅くない傷を負っている。
ミューラーは直接的な怪我こそほとんどないが、疲労が激しくこれ以上の戦闘には耐えられそうにない。
そして剣王と名高いリヒャルトですら、全身に細かい傷をいくつも受け、肩で息をしていた。
「ったくなんなんだこいつら、なまくらばっかりだな」
三人の尋常ならざる強さに警戒したのか、それとも他を攻めるのに忙しいのか、一時的に螺旋階段には敵の姿は皆無となる。
今のうちに新しい武器を確保しようと、敵の死体のそばに転がる武器を物色していたヴィルヘルムに
ミューラーがはっきりと告げた。

「ここらが潮時だ。ずらかるぜ」
「…なんだって?」
「これ以上戦っても意味がねえ」
武器選びをやめ、ヴィルヘルムは自分より遥かに高いところにあるミューラーの顔をにらみつけた。
「ねーちゃんたちを見捨てて逃げるってのかい」
「軽口叩いてる場合じゃねえ」
ヴィルヘルムに有無を言わせず、ミューラーは油断なくあたりを見回しながら続ける。
「ちょっとでも勝ち目があるってんなら、つきあってやる。だがどうあがいてもこの城はもう終わりだ。
これ以上戦っても無駄死にするだけだ」
「…お前も、同じ意見か」
リヒャルトに視線を向ける。答えなどわかりきっている。それでも、問わずにはいられなかった。
「…ボクは、ミューラーさんが言うんなら」
予想通りの答えが返ってくる。
卑怯な話だ。ヴィルヘルムも、勝ち目がないのはわかっていた。既に中央部は押さえられ、組織的な反抗は封じられている。
加えて敵の圧倒的な数。一人一人はたいした連中ではないが、これほどの物量で攻められてはじきに確実に押し切られる。
自分の意思で逃げるわけではないと言い訳したかったのかもしれない。
二人ともが逃げるべきだと言うのだから、仕方ないのだと。
「…チッ」
自分で自分に唾を吐く。
「グズグズしてる暇はねえ。今ならなんとか逃げられる」
「…わかった」
唇を噛み切った。口の中に鉄の味が広がる。赤い唾を吐き捨てて、ヴィルヘルムは頷いた。
「遅れやがったら迷わず置いていくからな」
「ミューラーさんの背中にぴったりひっついてればいいんだよね?」
「本気で殺されたくなけりゃ黙ってろ」
「はーい」
仲間たちのいつもと変わらぬように見える、しかしいつになく真剣味の混じったやりとり。
「よっしゃ、行くぜ!」
鼻をつまんで螺旋階段から身を躍らせる。
かなり高いところから飛び降りたために水面にぶつかった衝撃はかなりのものだったが、
痛がっている余裕などない。
何十、何百という数の敵兵が浮かび、流れた血の色で真っ赤に染まった水に深く潜り、
三人は一度の息継ぎもなしに城の端、わずかな引っかかりのところまで泳ぎきった。
「ヴォヴァァー!」
ヴィルヘルムがミューラーの金棒を取り上げて、城壁に叩きつける。
何度かそれを繰り返すと小さな穴が開いた。金棒を向こう側に放り込んで、肩をすぼめてなんとか通り抜ける。
それからもう一度水に飛び込み、残り僅かの距離を泳ぎきって、三人はようやく城を脱出した。
24義勇兵:2006/04/21(金) 23:07:27 ID:nYpbDT7K
耳をすませば、城の方からは風に乗っていくつもの声が聞こえてきた。
男たちの怒号。
女たちの悲鳴。
あそこでは血みどろの戦いと狂気の凌辱が繰り広げられている。
自分たちが逃げ出した今も、まだ。
「無敵のヴィルヘルム様がざまあねえや」
自嘲気味に吐き捨てる。
無敵のヴィルヘルム様、か。
過去何度もそう名乗ってきた。ハッタリがきいていて気に入っていたし、
そう名乗ってもいいくらいの実力があると自分自身、信じていた。
しかし。
もう二度とその名前は名乗るまい。
「これからどうするよ、ミューラー」
相棒を振り返り、投げやりに言う。ヴィルヘルムの口癖だ。
今まで戦が終わるたびにヴィルヘルムはこの言葉を口にして、
ミューラーに次の仕事を見つける面倒を押し付けてきた。
だが今回は少し事情が違っていた。
長い傭兵稼業の中で、これほど自分の無力を痛感したのは初めてだった。
もしもミューラーが傭兵をやめようと言っていたら、ヴィルヘルムはすぐに頷いていただろう。
「さあな」
返ってきたミューラーの声は自分に怒っているようだった。
彼もまた自分のように無力感に苛まれているのだろうか。
「あえて言うなら、どこかの酒場に潜り込んで、酒を喰らって、潰れちまいたい気分だ」
現実からの逃避。
しかしそれは魅力的な提案だった。
酒の力を借りて、ほんの少しの間だけでもすべてを忘れてしまいたかった。

「じゃあ、そうしようじゃねえか」
返事を返しながら、ヴィルヘルムは充実した一時を過ごした城に視線を向ける。
そこに銀髪の王子の顔が浮かび上がったような錯覚を覚えた。
今までずっとそうしてきたように、金で雇われただけの関係のはずだった。
しかし幾多の戦場をともにし、同じ場所で時を過ごすにつれ、
この男にならば金でなくとも使われてもいいと思った。
ヴィルヘルムは自分を剣のようなものだと思っている。
そして彼のような人物こそ、自分を振るうにふさわしいと感じた。
彼の下で戦っている間、ヴィルヘルムはようやく自分がいるべき戦場に巡り合ったような高揚感を覚えていたのだ。
しかし、それももう終わってしまったことだ。
「とっとと行くぜ。近くに奴等の兵がいないともかぎらねえ」
ミューラーとリヒャルトを促し、ヴィルヘルムは痛む肩を押さえて歩き出した。
もしも王子が生き延びたら。
どこかに落ち延びて、再起を図っているという噂を聞いたら。
その時は真っ先に駆けつけよう。
金などもらわなくてもかまわない。ただ彼の信念のために力を貸してやろう。

無意味な思考だった。
この戦いが終わった時、王子が無事でいる可能性など万に一つもない。
それでも考えずにはいられなかった。
でなくば、彼を見捨てた自責の念に潰れてしまいそうだった。
森の入り口まで辿りつき、ヴィルヘルムはもう一度だけ振り向いた。
サウロニクスから来たという竜笛作りの女。
音がどうとかわけのわからないことを言うばかりで、さしものヴィルヘルムも敬遠していたのだが
今なら彼女の言っていたことがわかるような気がする。

城が、音を上げている。
あれは、悲しみの音か。
城に残っている人たちの嘆きの音か。
ヴィルヘルムは城を見ることをやめた。
これ以上は耐えられそうになかった。
(すまねえ、王子さん)
そしてリンドブルムの傭兵達は、滅びゆく遺跡を後にして森の中へと姿を消していった。
25義勇兵:2006/04/21(金) 23:08:09 ID:nYpbDT7K
円堂の中に広がるのは地獄絵図だった。
中が小さな個室にいくつも分かれている構造は、居住性という意味では優れていたが
この状況では災いした。
おびただしい数の敵兵が通路に溢れ、片端から扉を破っては踏み込んでいく。
中にいるのは一人、多くてもせいぜいが三人程度。
しかもこの円堂には戦闘力の高い者はあまりいなかった。
唯一の優れた武人であるダインが押し寄せる敵兵に挟みうちにされ早々に討ち取られてしまうと
円堂はゴドウィンとアーメスの兵たちの狩場と化した。
そしてその部屋でもまた、一つの悲劇が生まれる。

「エッちゃん! エッちゃん! しっかりして!」
部屋に押し入ってきた男たちに強烈に腹を蹴り上げられ、
身体を痙攣させながら倒れたエルンストにすがりつき、ノーマが泣き叫ぶ。
だが兵士どもはノーマを無理やりエルンストから引き剥がし、
たぎった欲情を幼さの残る肢体にぶつけようとしてきた。
「やめて! やだよ、さわらないでよ!」
じたばたとあがいてはみるが、非力な少女の力では大の男をはねのけることはかなわない。
「やめて…っ!? なにしてるの! やめて! エッちゃんにひどいことしないで!」
ノーマの身体からあぶれた男たちがエルンストに暴行を加えているのが目に入った。
一切の容赦のない足蹴りが幾度もエルンストを痛めつける。
それを必死でやめさせようと叫ぶと、ノーマの身体を撫で回していた男たちが
嫌らしい笑みを浮かべてささやいてきた。

「やめさせてやってもいいぜ? おまえさん次第では、な」
「わ、わたし次第…?」
「おいおい、まさか意味がわかんねえほどガキってわけじゃねえだろ?
おまえが俺たちにおとなしく犯られれば、あの畜生は見逃してやるってんだよ」
畜生? エッちゃんは畜生なんかじゃない。優しくて、勇気があって、
いつもわたしのことを守ってくれる素敵な人だもん。
あなたたちの方がよっぽど畜生だよ!
日頃は穏やかなノーマだが、エルンストに向けられた嘲りの言葉がノーマを熱くさせた。
だがそれを口に出さずに抑えるだけの自制心が残っていたのは幸いと言えるだろう。
「ほんとに、わたしが言うこと聞けば、エッちゃんは許してくれるんだね…」
ノーマはそう言うしかなかった。
ちらりと見えたエルンストの表情はいけない、と言っているようだったが
ノーマは静かに首を振って獣の姿をした幼馴染に答えた。
「おう、約束してやるよ」
「…わかったよ」
彼女はその言葉に縋るしかなかった。
男たちに見せ付けるように自ら服を脱ぎ捨てていき、成長途中の裸身をさらして目を伏せる。
「言うこと…聞くよ」
26義勇兵:2006/04/21(金) 23:08:49 ID:nYpbDT7K
「んむっ、じゅぷぷっ、ちゅるるっ…」
「うおっ…へへっ、なかなかいい舌使いだ。悪くないぜ」
不気味に赤黒く光り、毒々しい血管を浮き上がらせた肉棒に嫌悪感をこらえてノーマは舌を這わせていた。
エルンストを助けたい一心で、ともすれば吐き気をもよおしそうなそれに必死で奉仕する。
「おいおい、それじゃあしゃぶられてる奴は気持ちいいけど俺等がつまんねえだろうが」
「ちゅぱっ…じゃ、じゃあどうすれば…」
「休むんじゃねえよ!」
すかさず口淫奉仕を受けていた男の怒声がふってくる。ノーマは亀のように首をすくめてそれに耐え、
男のものを手でしごきながらおそるおそる周りの男たちに伺いをたてた。
「そうだな…」
「ここはオナニーしかねえだろ!」
「オ、オナ…?」
「ぶってんじゃねえ! しゃぶりながら自分でしろって言ってんだよ!」
「ひっ! わ、わかりました…します、しますから…!」
いかにもしかたなく、という動きで自分の割れ目に指を持っていき、申し訳程度に擦り上げる。
ノーマはそれ以上先に進もうとはせず、単調な動きを繰り返すだけだった。
「アホか、てめえは! あんまりなめてるとむりやりやらせるぞ!」
「オナニーってのはこうやんだよ!」
ノーマの自慰を観察して囃し立てる男の一人がノーマの手をとり、無理やり秘裂の奥に指を突っ込ませた。
「やああああっ!!」
「お、今のはよかったんじゃないか?」
「いい声が出たな」
「こうか? これがいいのかよ、おい!」
「はうううっ!?」
激しく指がかきまわされ、強引に引き出された快楽が愛液を染み出させる。
引き抜いた愛液にまみれた指をノーマに見せつけ、男たちが下卑た笑みを浮かべた。

「どうだよ、こんなに濡れてやがるぜ」
「はあ…ああ、やだあ…」
「ははは、しゃぶらされながら無理やりオナニーさせられて感じるなんざ、さてはてめえ変態だな!?」
「違う、違うよ…私は、変態なんかじゃ…」
「お…そろそろ出るぜ!」
「むううっ!?」
無理やり頭をつかまれ、肉棒を喉奥にまで突き込まれる。頭を激しく前後に揺さぶられ、
そのまま口の中で白い粘液を吐き出された。
「うえっ! おえっ、うええ…」
「おい、吐き出すなよ。出されたものはしっかり飲め!」
「おまえのは不味くて飲めねえってよ!」
粘つく汚らしい液を咳き込みながら吐き出すノーマの周りでげらげらと兵士どもが笑いあう。
(なんで…なんでこんなことして笑えるの…!?)
ノーマの血を吐くような問いに答えるものは誰もいない。
一度達した男を押しのけて、へたりこんだノーマを下半身を一斉にさらけ出した男たちが取り囲んだ。
27義勇兵:2006/04/21(金) 23:09:33 ID:nYpbDT7K
「あうっ! 痛い、痛いよお…!」
ノーマは前後を挟む形で男に抱え上げられ、前の穴と尻の穴の両方に硬くそりあがった怒張を突き入れられていた。
前の男はノーマの顔中を汚れた舌で嘗め回し、後ろの男はノーマの胸をめちゃくちゃに揉みしだきながら、
ノーマのことなど一切考えず、自分の快楽だけを追及した腰使いで攻め立てる。
不規則なリズムで前後から突かれ、ノーマは身体を揺らしながら苦痛の喘ぎを上げるが、
決して男たちを拒む言葉を口にすることはなかった。
男たちとのはかない口約束だけが、今のノーマを支えていた。
エルンストを守るために、ノーマは男たちの欲求のすべてを受け入れなければならないのだ。
「まだガキのくせに、すげえ身体だぜ…!」
「まったく、だなっ! この尻なんて最高だ! ずっと突っ込んだままでいたいくらいだぜ」
「ああ…い、た、い…裂ける…」
「安心しろよ、人間ってのは意外と頑丈にできてるんだ。これくらいで裂けやしねえよっ!」
「裂けたって俺は別にかまわねえけどなっ!」
男たちの動きが激しくなる。
既に二桁の男の相手をさせられているノーマは自分を支える力すら満足に残っておらず、
男たちの動きに合わせて激しく揺さぶられた。何度も揺らされた頭が脳震盪でも起こしたのか、
視界がぼやけてくる。

「よぅし、一緒に行くぜ!」
「おうよ」
「ま、また、中に、出すの…?」
「当然だろうが。まさか嫌だなんて言わねえだろうな?」
「…は、はい…す、好きにしてください…」
「じゃあお言葉に甘えて…っと!」
「あいよ!」
どくどくと完璧にタイミングを合わせて、前後の男が精液を流し込んでくる。
入りきらなかったものが結合部から溢れて、床に白い染みを作った。
満足したのか、男たちが肉棒を抜いてノーマを床に横たえる。
ひととおり犯り終えて満足したのか、新たな男がノーマに手を伸ばしてくることはなく
ノーマはわずかな休息の時間を得た。
28義勇兵:2006/04/21(金) 23:10:12 ID:nYpbDT7K
「は、う…」
荒い息を必死で整え、ノーマは自分の口から感じる精液の匂いに辟易しながら声を絞り出す。
「エッちゃん…エッちゃんの顔、見せて…」
「ああ? なんて言ってる?」
「エッちゃん…ああ、さっきの畜生を見せてくれ、だと」
「なんだよ、心配になっちまったか? ほらよ」
ぐいっ、と目の前に突き出されたのはまぎれもない大切な幼馴染の顔だった。
その顔を見て、ノーマは少しだけ元気を取り戻した。
どんなに辛い目に合っても生き延びなければ。彼を人間の姿に戻すまでは。
「エッちゃん…大丈夫だよ…」
エルンストを安心させようと弱々しい笑みを浮かべる。
しかしエルンストの表情はぴくりとも動かなかった。
やっぱりわたしが犯されている間も、殴ったり蹴られたりされたんだ…。
だから疲れているに違いない。返事をする気力も残っていないんだ。
こんなに顔が腫れちゃって痛そう…ごめんね。
わたしがもうちょっとがんばれば、きっと許してもらえるよ。
そしたら怪我を治して、またがんばろう。
ごめんね。疲れたよね。もうちょっとがまんしてね…。


ノーマは気づいていなかった。
いや、見えてはいるはずだ。だが脳がそれを認めることを拒んでいた。
兵士が掴んでいるエルンストの頭には、首から下が失われていることを。
ノーマは二度と動くことのないエルンストに、必死で笑顔を浮かべながら心の中で話しかけ続ける。
「なんだ…さぞかしわめきまくると思ったのによ」
面白くなさそうにエルンストの首をノーマから遠ざけ、男は再びノーマに手を伸ばしていく。
ノーマはもう顔を歪ませることはなかった。
おとなしくその手を受け入れ、顔に寄せられた肉棒にも自分から舌を伸ばしていく。
「もったいなかったかな…」
男の呟きはもう、ノーマの耳には届かなかった。
エッちゃん。
もうちょっとだよ。
もうちょっとがまんしてね。

きっと、助けてあげるから…。



(続)
29義勇兵:2006/04/21(金) 23:10:52 ID:nYpbDT7K
傭兵旅団&大道芸人編は以上です。
次が最後になる予定。
30名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:35:26 ID:+o/kmP30
こういうの書く奴ってさ
自分がたいそうなもの書いてるって思い込んでるのかなぁww
こんな容赦のない話の書ける俺すげえって
31名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:36:04 ID:vTRdsHRn
GJ!
しかし上手いが故に本気でかわいそうに思えてしまうなあ。
ノーマ、エッちゃん…。・゚・(ノД`)・゚・。
32名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:51:38 ID:g9wmv8zq
GJ!
雑音は気にせずに
一片の救いの無いお話は好きです
容赦の無いBEも大団円のBEも大好きです
ラストスパート期待しています
ええ、wktkしながら
33名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 00:17:07 ID:qw2w0vhW
うーーわ…
頭いかれてんじゃねえの?
キャラをこんな風にいためつけて、また見て喜ぶ神経がわからねえ
現実のことじゃない創作だからいいってか?
オリジナルなら『まだ』いいが二次でやる奴って絶対おかしい
高尚ぶってるんだかなんだかしらんがこういうのを書くことじたいがゆるせねえわ
34名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 00:21:09 ID:BguIkraO
アレニアが女王騎士になったのっていつごろだっけ?
35名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 00:29:16 ID:e3V1YwES
>>34
せっかく購入したコンプリートエディションで調べてやろうと思ったんだが、
アレニアはどこに居ますか?(ペラペラ。)
36名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 01:04:40 ID:PnGCBl7c
GJ!
ヴィルヘルム好きな自分としてはいつ死んでしまうのかビクビクしながら読んでしまた。
そしてほっとしたが…切なすぎる…。ノーマぁ…
37群島好き:2006/04/22(土) 01:16:19 ID:zbDQ1T/7
>>1 新スレ乙です!
>>17 ユーラム苦労人ですな…GJ!
>>29 たまらんですなぁ、次は誰が来るのやら。GJ!

そして王子×ランの話です。今回は起承転結も何もないまったりした話のつもりです。
まだ今回はエロなしです。
38群島好き:2006/04/22(土) 01:17:07 ID:zbDQ1T/7
その少女はしきりに時間を気にしていた。
サウロニクス城下町の入り口で、ウロウロと行ったり来たりを繰り返しては遠くを見つめ、ハァ…と一つ溜息をつく。
いや既に一つではない。もう何度もそれを繰り返しては時折通りすがる人に奇妙な目で見られていた。
「……おっそいなぁ……」
口に出すのももう何度目か、少女は―いや、竜馬騎兵の制服に身を包む女性は頭を捻る。
もしかして日にちを間違えたのか?とも思ったが、手紙は穴が開くほど何度も確認した。
――時間を無理矢理空けたからそっちに行くよ
そう書いてあるのを見て、人目を憚らず「やったぁー!!」と叫んで同僚の注目を浴びてしまった。
それほど嬉しくて、自分の部屋に帰ってからも何度も目を通した。その時は柄にもなくにやけた顔をしていたかもしれない。
そう彼女、竜馬騎兵団初の女性団員となったランは恋人を――その言い方は彼女を照れさせ怒鳴らせてしまうが――待っているのだ。
かつて起きたファレナの地の騒乱を共に戦い駆け抜けて、お互いの想いを重ね合った恋人を。
最初は身分の差から叶わぬ恋だと思っていた。しかし男はそんなもの、と一蹴した。
「ランだから。ランじゃなきゃ嫌だ」
その言葉に思わず涙して、こんな場面幼馴染には見せられない、と思ってしまった。
しかし戦乱後の処理はお互いの居場所を遠く隔ててしまう。
男は戦後処理に文字通り駆け回り、一緒にいられる時間は少なかった。
そして少女もそんな恋人に負けないようにと、密かに願っていた竜馬騎兵団に入りたいと打ち明ける。
離れる事は辛い事だけれども、互いの進むべき道を尊重して生きていこうと誓った。
一緒にいられる時間は格段に減ってしまったが、その分二人の想いはより高まり、一緒の時間を大切にした。
他人から見て非常にサッパリとした関係ではあったが、それが二人の付き合い方。
仲の良い友人にしか見えなくとも自分達だけがわかっていれば構わないと楽しく過ごし、体を重ね逢瀬を重ねてきた。
戦乱終結から四年。そして今日も――
久し振りに会える嬉しさについ、こんな城下町の入り口で待っている。まだかまだかと少々イラつきながら。
そしてランの華のような笑顔が炸裂する。
(見えたっ!!やっと来たっ!!)
他人の目を気にすることなく両手を振って、居ても立ってもいられず走り出す。
男の馬の傍に立って開口一番、溜まった思いを口にする。
「おっそーい!いつまで待たせる気だ、王子様!?」
恋人同士の再会の瞬間とは思えぬ言葉。しかしそこに悪意は何もない。それが分かっているからこそ、
「ハハ…勘弁してよ…。これでも急いで来たんだから…」
少年から立派な青年になったファルーシュは苦笑するしかなかった。
39群島好き:2006/04/22(土) 01:17:46 ID:zbDQ1T/7
「何も入り口で待ってなくても、部屋まで迎えに行ったのに…」
馬を預けてきて、一緒に歩きながらサウロニクス城へ向かう。
「なんだよー、折角待ってあげたのにひどい言い草だなー」
プンスカと、しかし本気で怒っていない様子にファルーシュは、相変わらずだな、と思う。
そしてもう一つ、試したい事が頭に浮かぶ。
「ごめんごめん、愛しの恋人を長い時間待たせて悪かったなって思ってね」
「ば、ばっきゃろー!恥ずかしい事、昼間っから言うんじゃねーよ!」
顔を真っ赤にさせて大声で照れを隠そうとする。いかに成長しようとも変わらない恋人にファルーシュはついつい嬉しくなる。
「ハハハッ、ごめん。……本当に変わらないなぁ、ランは」
その様子にからかわれたと感じ取ったランはまた頬を膨らませる。
「ったく、王子様も相変わらずだよ…」
そしてしばらくしてからどちらからともなく笑い声が出る。屈託のない笑い。
お互いを知り尽くしているのだなぁという思いからでた笑いだった。
そしてファルーシュは最愛の女性を見る。
内面は変わらないが、容姿は大分美しく変わった。母親譲りかその美貌は着実に女性のものへ変化している。
共に戦っていた頃は、快活な少女らしさに気を惹かれたが、今はそれ以上に魅力を感じる。
あの人に似ないで本当に良かった…と心の中でガハハと笑う男を思い浮かべ、そして神に感謝する。
残念ながらその格好はもう竜馬騎兵の制服に変わってしまったが、独自にアレンジを加えたそれがまた似合っている。
動きにくいから、と下半身はスカート状になっておりその下からは、昔から見慣れたスパッツを履いている。
あの頃は結構際どい格好をしていたのだなぁと今更ながらに思い、少し残念にも思う。
「ラン…僕はもう王子様じゃないよ?まぁ、二人の時は別に構わないけどね」
「あ〜、ずっとそう呼んでたからなかなか直らないんだよなぁ。母さんからも注意されたし…」
本当に忘れてた、とあっけらかんに言う恋人にまたちょっかいをかけたくなる。
「言い易いほうでいいよ。本音を言えば…」
「本音を言えば?」
「ファルーシュ、とか、あ・な・たとか呼ばれたいなぁ」
ボンッ!と音を立てて再び顔を真っ赤にする。
「また、恥ずかしいことを…!!」
わーわーと街中だと言うことも忘れてファルーシュに突っかかる。
そしてランもファルーシュを、大好きな人を見る。
あの頃のあどけなさを残しつつ、今では誰もが目を見張る青年に成長した。
その柔らかな、だが逞しさを併せ持つ容姿は世の女性を虜にし、現に今も街中の女性がファルーシュをみつめている。
今は普通の昔たまにみた服装のようなものだが、女王騎士長の格好は呆気に取られるほど、男性に言う言葉ではないが美しいと思った。
自分には勿体無いと思った事もあるが、今はもう誰にも渡したくない。
ファルーシュは自分だけのものなのだ!その思いを他の人に見せ付けるように、腕を抱き締める。
「ラ、ラン!?」
(お?驚いてる驚いてる!)
こういう時でなければ仕返しは出来ない。ファルーシュの驚く顔を堪能しつつ、言葉を発する。
「ほらほら!さっさと用事は済ませちまおう!」
あまりベタベタするのは好きではないが、今日ぐらいは構わないだろう。
せっかく会えたのだ、二人きりの時間にさっさとしなければ、そう考えて稀代の英雄を引っ張っていった。
40群島好き:2006/04/22(土) 01:18:27 ID:zbDQ1T/7
「えっと…ゴホン!団長、ランです!女王騎士長閣下をお連れいたしました!」
おやこんな言葉遣いも出来るようになったのか、とファルーシュは思いながら用事のついでを――本来はこちらが重要なのだが――
済ませようとサウロニクスの竜馬騎兵団団長の部屋の前に立つ。
「入りたまえ」
以前の主のような貫禄のある声ではないが、落ち着いた凛とした声で返答される。
「はい、どうぞお入り下さい!閣下!」
ドアを開けられ、ランの前を通る時「似合わないなぁ…」と呟きランの顔を引きつらせる。
何か言いたそうに睨んだが、その事は後で聞こう。時間はあるのだから。
「閣下直々にサウロニクスにおいでになられるとは。よくぞいらっしゃいました」
現在のこの部屋の主はラハル。その冷静さと観察眼、そして十分過ぎる程の力を買われて、若くして団長の座に着いた。
「団長、お久しぶりです。…ところでお一人ですか?」
その意図を一瞬で汲み取ったラハルは目でランに合図をして、部屋の扉を閉めさせる。
「ふぅ…、やっぱり肩が凝るなぁ。人目があるとどうにも肩肘張っちゃって」
「ははは、やはりその辺はまだ閣下も勉強中と言う所ですか」
中の声が外に漏れなくなってから、その心を良く知る者達は仮面を外し、素の表情を出す。
「今は本当に吹き出しそうになるのを我慢したよ。ランが別人になったのかと思ってさ」
「あたしだって怒鳴りそうになったよ!何もあんな時にボソリと言わなくても…って団長、失礼しましたっ!」
二人の悪ふざけの言い合いに、口を押さえて笑いラハルは弁明を流す。
「いや、君達の関係は知っているから別に構わんよ。しかし、こうして見ると普段とは全く別人だな…」
「そんなに別人なのかい?それはそれで見たいような見たくないような…」
「王子様!」
三者三様の本音が溢れ出る。共に戦乱を駆け抜けてきたあの頃のように話が弾む。
「はは、所で閣下。さっさと用事のほうを済まされたいのでは?」
二人の関係を長く知っているからこそ、ラハルはファルーシュに話を振る。
「そうだった、はいこれ。リューグからの報告と太陽宮からの要望書。色々と無茶も書いてあるけどまぁ適当に。
 現場の事を知らない人達が書いたものだから目を通すぐらいでいいよ」
まるで手紙でも渡すかのように、重要な書類をポンッと渡す。
「…本当にこちらは用事のついでなのですね。一人で来られた事と言い無茶をされる」
「随分泣きつかれたよ。お願いですからお供を、せめてリオン殿だけでもってね。
 これから恋人に会いに行くのに女性を連れて行くなんて、無茶を言ってるのはどっちだって言いたくなったよ」
隣のもう今日何度目かの顔を赤くしている恋人を見る。その目は今にも襲いかかりそうなほど睨んでいる。
「じゃあラハル、今日の所はこれで。五日ぐらいはこっちにいるから、また後程」
「ええ、ランとごゆっくり。今夜は部屋に戻らなくても咎めはしません」
そう言って仲良く(?)言い合いをする二人を見送る。
閉まった扉の向こうから「団長のバカーっ!」と女性の声が聞こえ、ラハルはまた口を押さえて笑っていた。
41群島好き:2006/04/22(土) 01:19:08 ID:zbDQ1T/7
二人を良く知る者達にとって、二人が付き合い始めたというニュースは然程驚くようなものではなかった。
数少ない同年代なだけあってよく一緒に話をしたり、様々な場所に一緒に行動していた。
また古参からの仲間だけあってお互いの気心は知れていた。
二人ともいつから意識をしていたかは覚えていない。ただ気が付けば傍にいて、惹かれ合っていた。
それが当たり前のことになっていた。

「…なぁ、王子様?」
「どうしたの、ラン?深刻な顔をして…」
ファルーシュの部屋、いつものように部屋にやってきたランをもてなしていたファルーシュはその深刻な表情に驚く。
普段はいつも快活に笑い、恥ずかしい台詞に照れて怒鳴るランだが今日は違う。至って真剣な顔だ。
「何か相談事?僕で力になれることだったら何でもするよ?」
何か重要な事だと悟りこちらも様子を変える。しかし
「ありがとな。…じゃあ聞くけど」
「うん」
ゴクリと唾を飲む。何か告白するカップルのようだ。心臓がドキドキする。
頭の中で金髪の軽薄な男が「女性から言わせてはだめですよー」と囁く。五月蠅い、黙れ。
「何で王子様は竜馬に乗れるんだ!?」
「…………」
両者沈黙。ランはファルーシュの言葉を待つ。一方ファルーシュは、
「はぁ?」
と護衛の少女が言うような間抜けな声を出すしか出来なかった。
「あ、あの、ラン?」
「ずるいじゃねーかっ!王子様だけ乗れてあたしが乗れないなんてっ!なぁ、何かコツでもあるのか?
 何か竜馬に好かれるものでも持ってんのか?なぁなぁ、教えてくれよー!」
「え、えっとそう言われても…僕にもどうしてなんだか…」
狼狽する。ここまで焦るのは生涯で初めてか。
「何だ!?天然か?天然なのか!?ずるいずるい、ずーるーいーっ!あたしものーりーたーいーっ!」
子供のように駄々をこねるランにただ呆然とすることしか出来ず、
それでも言葉の端々からその熱意が見え隠れしていた為、言わざるを得ないのだろうと観念した。
「ラン…、これはまだ内輪の内緒話なんだけど…」
その言葉にランが顔を寄せてこちらに乗り出してくる。
「うんうん、やっぱり王子様!頼りになるぜっ!」
あのそんなに身を乗り出してはその胸が視界に入り、気になるのですが…とは言えず、
「う、うん。クレイグさん達も男性だけ、というのは見直したいみたいで…」
「それって…」
「まだ気の早い話ではあるんだけど、この戦乱が終わってから…みたい…だけど、ラン?」
みるみる内にションボリしてしまったランを見る。
「そうかー、やっぱ今は無理かぁ。ハァ…」
「う、うん。僕もその話には賛成だし、でもまずは戦乱を終わらせないといけないから…ごめんね?」
本気で落ち込んでしまったランを何とか慰めようとする。
「そんな!王子様が悪いわけじゃねーって!あたしも頑張らないとなっ!」
少し元気が出たようで安心する。予想した話ではなかったことに残念ではあったが。
温くなったお茶を替えようと立ち上がり背を向けた時、また声をかけられる。先程とまた違った声色で。
42群島好き:2006/04/22(土) 01:20:42 ID:zbDQ1T/7
「なぁ…これが落ち着いたら…王子様はどうするんだ?」
その声は今まで聞いた事のない声だった。まるで何かに怯えているような声。
それが気にかかり、手を休め振り返る。そこには俯きがちにこちらを見つめる少女がいた。
「どうする…って、多分、リムの手伝いをしないと…」
さっきとは打って変わった様子に戸惑いながらも言葉を発する。
「って事はソルファレナへ戻る…って事だよな。離れ離れになる…んだよな…」
離れ離れ、その言葉に胸が締め付けられる。ランと離れる…
「もう、今みたいにのんびり喋ってもいられなくなるんだよな。王子様だもん、忙しくなるもんな!」
無理矢理大きくした声が今は痛々しくて。
「ラン…」
「あ、あたしみたいな漁師の娘が出しゃばる必要なんかないし!」
「ラン」
「お、王子様にはきっといい人が傍につくわけだし!」
涙が出てくる。何故だか無性に悲しくなって。何故だか無性に寂しくなって。
ただもう道が別々になるのだと考えたら気持ちは抑えられなくなってしまう。
ずっと一緒にいたのだから、ずっと傍にいたのだから離れたくなくて。だけど理性が働いて気持ちとは裏腹の言葉が出る。
「あ、あたしなんかより、ぐすっ、もっといい人が、ひっく、みつかる、わけ…だし…」
消え入りそうな言葉。本音を言えればどれだけ楽になれるのだろう。
だが強い心をもつ彼女だからこそ、それが出来ない。出来るのは、気持ちを包み隠してしまう事だけ。
「ラン」
そんなランの様子が見てられなくて、ファルーシュはようやく自分の心に気付く。
彼女を追い詰めたのは自分だと、傍に居る事が当たり前すぎて気付いてあげられなかった事を悔やむ。
「ごめんね、ラン」
彼女を抱き締める。気丈な彼女が腕に包まれてビクッと震える。
やっぱり女の子なんだと感じて自分の気持ちを伝える。
「ごめんね、気付いてあげられなくて。ランが傍に居る事、隣で支えてくれてる事が当たり前すぎて分からなかった」
「ひっく、お、王子様?」
「ランはずっと気にしてたんだよね。自分がただの漁師の娘だって事を」
またランの体が震える。
「僕はそんなもの気にしないし、ランにも気にさせない。…ランの事が好きだから。ランだから、ランじゃなきゃ嫌だ」
涙でグシャグシャになってしまった顔を上げてファルーシュを見上げる。
それが少し可愛らしくて涙を指で拭う。
「だから、今だけじゃない。これからも一緒にいてくれる?」
「そんなっ!あ、あたしなんか王子様に合わないよ!乱暴だしガサツだし…」
「知ってる」
「手が出るのは早いし、礼儀作法も知らないし…」
「うん、それも含めて全部好きなんだ、ランの事が」
もう涙を止める事は出来た。あとはこの少女を自分の大好きな少女に戻すだけ。
43群島好き:2006/04/22(土) 01:21:16 ID:zbDQ1T/7
「でもでも、やっぱり!」
「他の人の言う事なんか、いつもみたいに蹴散らしちゃえばいいんだよ」
「う〜、あ、あまりの粗忽さに呆れるはずだ!」
「そこはまぁ、追々治していけば」
「あうぅ…、ラフトフリートの女は嫉妬深いぞ!」
「嫉妬させる暇もないほど愛してあげるから」
「ば、ばっきゃろー!何恥ずかしい台詞言ってやがる!」
「あ、ようやく戻った」
気が付けば、涙は止まり言動もいつものようになっている。
やはりランは元気で、行動力があって、すこしばかり乱暴なほうがいい。
「それで、返事はどうなのかな?何となくは分かったけど言葉でちゃんと聞きたいな」
「あ…う…」
まともに戻っただけに尚更言いにくい。恋だの愛だのそういう少女らしい事とは無縁だったばかりに。
「あ、あたしも…」
「うん」
「お、王子様の事が…す、す、す、好き……だ…」
その一生懸命な必死さがいつも以上に可愛らしくてまたランを抱き締める。
「お、王子様?」
「もうちょっとこうしてたいなぁ」
「だ、駄目だよ。人が来たらどうすんだよ!」
今度は違うベクトルに必死さが見える。恥ずかしくて顔を真っ赤にしているが逃がさない。
「ここは僕の部屋だよ?来るにしてもノックぐらいするよ」
「だ、だからって!」
ジタバタと自由の利かない手足を必死に動かすが、所詮力ではファルーシュに敵うはずもなく。
「キス、してもいい?」
「なっ、なにぃっ!?」
至って真剣な表情で迫る。そこに少しばかり悪戯心があったかはともかく。
体を抱き締める手は既に解かれいつの間に、とランが思った時には両手でもう肩を掴まれている。
何の知識も持たない純朴な少女に、最早断るという選択肢などは与えられておらず、
また与えない情況にまで追い込んだファルーシュの作戦勝ちと言えよう。
ランはもう全てを覚悟して――それこそ首を斬られるような覚悟をして目を瞑る。
「大好きだよ、ラン」
その台詞が聞こえたあと、二人の唇は触れ合った。
44群島好き:2006/04/22(土) 01:22:25 ID:zbDQ1T/7
とりあえずここまでです。エロは次回からです。スマヌ。
45名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 01:36:11 ID:S2J8qT7Q
ラン( ;´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア
46名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 02:57:31 ID:PKBeXVTm
今日は善き日じゃ…
47名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 04:09:55 ID:w4urpE+Q
また来たのかよ。長文連投ウザ。
48名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 04:49:29 ID:5RcwFzuG
どうでもいいけどGJ!!とかハァハァだけの無駄にレス数稼ぐだけどレスやめたら?
49名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 05:59:33 ID:HKZ8/yGH
@投稿してもスルーされレス一つもらえない可哀想なやつ
A好きなキャラを書いて貰えないから逆切れと可哀想なやつ
さあ荒らしてるのはどっちだ?
50名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 06:14:38 ID:rD8O7CIk
どっちでも構わないが…GJとかハァハァの言外の意味を捉えてない辺り、トシに見合わず純真で根は素直な奴と見た
51名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 06:20:41 ID:6+5zCeAE
だからさ、無視すりゃ良いんだって。
イチイチ構わないこと。
52名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 07:34:51 ID:lKgJ1cwM
本日は下の二人が最萌トーナメントに出場しています。
投票宜しくお願いいたします。

Dブロック07組 <<シエラ・ミケーネ@幻想水滸伝2>>
Dブロック11組 <<テンガアール@幻想水滸伝シリーズ>>

詳しくは↓
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/vote/1145541044/
53名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 07:55:47 ID:VmOMf2sa
GJとかハァハァのレスはさして容量食わんので問題ナッシヴ
54名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 08:29:05 ID:ddMJvs+g
>>37
GJ!GJ!可愛いよなんかこそばゆいよww
ランは幸せな話が似合いますな
そして俺も読んでて幸せ
55名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 10:30:38 ID:w4urpE+Q
群島みたいなキモ作家に萌えキャラ書かれたらトラウマだ。
56名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 10:38:04 ID:htxvdkDf
ところでスレたてた奴なんだが、やっぱり女体化NGはテンプレに入れるべきだった?
前スレでそんな話題になってたからちょっと心配になった。
57名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 11:06:25 ID:e3V1YwES
>>56
ソレ書いたの俺だが、気にしないでくれ。
「入れるべき」っつーより
「そういう話が頻発するのもムリもないな」ってかんじだ。

元からエロパロの領分なのか801の延長なのか微妙なジャンルだと思うんだが(「絶対NG!」って人も多かろう。)
今回の王子は男の俺の目から見ても、ちょっと困ってしまうようなカワイコちゃんだからな。

住み分けを考えるなら、ここを利用する、という手もあるが。


【女体化】TS系小説総合スレ【男体化】3話目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1128085762/
58名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 11:46:23 ID:ZtCVqAg+
王子を許可すると坊ちゃんや2主の女体化までやってきそうだし
それを不許可にできなくなるからな
棲み分けを希望したい
59名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 11:57:36 ID:e3V1YwES
>>58
そういうことだな。
個人的にキライなわけじゃあないが、このスレではやっぱやめといてくれ、と思う。
60名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 13:40:21 ID:Vdyk6yOX
フタナリもNG?
61名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 14:15:06 ID:j4fHHT2K
>>60
 個人的にはちょっと……。
 でも上のヤツとは違うわけだし、個々人の好みを言い出したらキリ無いから、
注意書き必須。で良い気もする。
62名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 14:15:43 ID:Qd4zsT9y
自分は投下されても文句はいわないけど、
やっぱり注意書きがほしい。
63名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 14:18:46 ID:coBjyD/c
前板で質問した者です。
良い板への誘導トンクス

無差別女体化は、確かに俺も見たくない…orz
64名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 15:16:02 ID:VmOMf2sa
「ファルーシュ、リオン!何人かを連れて先に行け!残りはここを守る!」
「そんな…!」
「早くしろ!」
「……わかった。ゲオルグ、それに、みんなも…無事でね」
「ああ、父さんに任せろ」



「……何だって?」
「何でもない。早く行け!」
「行きましょう、王子!」
「待てぇ!離せーっ!ゲオルグ、父さんって何だよ!?言ったよね、絶対父さんって言ったよね!?」
65名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 17:51:03 ID:G+OmV0uk
66名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:16:11 ID:406kvHEz
大体主人公女性化が無理くさいのなんてラプソディア入れても3だけじゃないか。
…(スノウ×4主人公考えてたなんていわなくてよかったよかった)
67名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:45:42 ID:bwoB8SQw
>66のおかげで腕女体化は萌えることに気がついた俺カイル
68名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:46:02 ID:gik/GodK
3も可能だと思うぞ。ヒューゴのみでなら、ルシア似だしな。
自分的に女体化はキャラ改変と同義なので萎えだけど
王子に対してはちょっとだけわかるような気がするw
69名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 19:46:23 ID:ciZGJ+v9
>>52
よくわからんが、とりあえず投票してきた。
70名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 00:26:08 ID:l+ajTmYH
女体化テラキモス
71名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:12:14 ID:JyW/XSfV
いつかカイレレの続き書きたいと思っとります駄文です。
72名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 01:21:49 ID:JyW/XSfV
おっと途中送信今話考え中なので来週には投下させていただくかもしれませんえぇもうすいません
73名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 05:31:40 ID:A6lvkPwA
>>71
待ってるよええ待ってますとも速く書い(ry
74名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 09:11:04 ID:73lNRg0Z
流れがキモイぞヴォケ
75七誌:2006/04/23(日) 10:05:06 ID:9pm8v37K
 前スレで話に出した オボロ×フヨウ(探偵一家)のお話が出来たので、投下させて頂きます。
以下、注意点です。

・エロ皆無です。
・長いです。
 好みでない方はスルーするのが良いと思います。
76HOME 1 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:10:15 ID:9pm8v37K
 目が覚めて、二段ベッドから静かに降りた。娘はごく僅かな衣擦れを立てて装いを
整えると、しゃ。と、カーテンを開いた。窓を開けると鳥の囀り(さえずり)と共に、
朝の冷気が入って来る。ベッドの方から、うぅー。と、目覚めを嫌がる唸り声が聞こ
えて来た。

 「シグレ、朝」
 下のベッドに陣取っている、青年にそう声掛ける。わぁってる。と、くぐもった声
で青年は応えるものの、一向にベッドから身を起こす気配は無く、娘が起こそうと、
青年のベッドへと歩み寄ったところで――

 「シグレちゃん! サギリちゃん! ごはんよー!」
 と、フライパンを鳴らすような、明るい声が部屋へと響いた。


『 HOME 』


 「あんなでけぇ声出さなくても聞こえるっつーの……」
 まだ櫛を通していない、ぼさぼさの髪の毛を掻きながら、シグレは朝食の並ぶテー
ブルにつく。テーブルの上には、香り良いトーストと、黄が鮮やかなスクランブルエッ
グに、ぱりぱりのベーコン。薄切りのリンゴには、ヨーグルトに蜂蜜がかかる。

 「あら、だってシグレちゃんってば、なかなか起きてくれないんですもの。ね、セ
ンセ?」
 木製の大きなボウルに入れられた、青々としたサラダを皆に取り分けながら、フヨ
ウがオボロに話をふった。そうですよ。と、コーヒーを片手にオボロは応える。

 「シグレ君はお寝坊さんですからねぇ。朝食を食べ損なうことが無いようにと、フ
ヨウさんがわざわざ、呼んでくれているのですから、寧ろ、感謝しなくてはなりませ
んよ」
 「言われねぇでも、起きてるよ……」
 片肘を着きながら、シグレはトーストの上にサラダ、卵とベーコンを乗せてさくり、
と齧る。

 「起きていても、こちらに来ないのでは同じですよ。ご飯はなるべく、皆で一緒に
とりたいですからね。ね、サギリさん?」

 ベーコンに卵を包み、咀嚼していたサギリは、こくん、とそれを飲み下すと、オボ
ロの言葉に頷いた。それを横目で見たシグレは、ぽりぽり、とひとつ頭を掻いて、しょ
うがねえな。と、呟く。コーヒーは? というフヨウの言葉に、いる。と短く返事し
た。

 「で、ですね。シグレ君。本日の君のお仕事ですが……」
 「あー? なんだよ。また地図に間違いが無いか調べて来い、とか言うなよ?」

 ず。と、シグレは不機嫌な口調でマグカップいっぱいに淹れられたコーヒーを啜る。
言いませんよ。と、オボロはコーヒーカップ片手に笑う。
 「まさか。同じことを二度もお願いするような芸のない真似はしませんよ」
 「……芸だったのかよ」

 「いやぁ、普通のことしていたらつまらないでしょ? やっぱり、他の探偵とは一
味違うところをみせなくちゃ!」
 そんなところで違うところをみせようとするなよ。というシグレの言葉には触れず、
オボロは先を続ける。サギリはいつもと変わらぬ表情で、サラダを口へと運んでいる。

 「まぁ、いつもハードなことを頼んでいては申し訳ないので、今回はごく普通の尾
行調査です。しかもターゲットは美女!」
 「あー……それは……。ってちょっと待て。女の追跡は大体サギリだろ? 何で俺
なんだ?」
 「まぁ、シグレちゃんってば、照れちゃって! お年頃ね!」
77HOME 2 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:14:01 ID:9pm8v37K
 照れじゃねぇ! と、フヨウからの茶々を否定する。今まで受けた調査依頼の中で、
自分が担当したものを思い返す。嫌な予感があった。

 「大丈夫ですよフヨウさん。相手の女性も照れやさんですから、お似合いでしょう。
うまくいけばロマンスがあるかも知れません。いやぁ! 青春ですねぇ!」
 「尾行相手と芽生えるロマンスなんざロクなもんじゃねえだろ」

 「いやいや分かりませんよシグレ君。尾行調査を続けるうちに相手のことを知り、
不可解と思っていた相手の行動には信念と、真実とが隠されていたことを知るわけで
す! 相手の女性も、はじめは何かと付き纏う存在に嫌悪感を覚えるものの、多くの
局面を助けられ、やがてお互いに捨て置けない存在となるんです! けれども互いの
相反する立場! 揺れ動く心! ロマンスですよ! シグレ君!」

 まぁ! 面白そう! と、掛かった声に、そうでしょう? と、妙に満足げにオボ
ロは微笑む。もう何やらこの会話だけで疲れ果てたシグレは、会話の端々に突っ込む
気力も失せ、調査対象を言え。と話を促す。
 「あ、気になりますか? シグレ君」
 「……気になるからさっさと言ってくれ」

 深い溜息をつきながら、煙管に火を入れ、頬杖をつく。正直、多少の嫌な依頼だろ
うと何だろうと、さっさと受けて終えたかった。
 「ゼラセさんです。頑張って下さいね。あ、彼女は朝早くから夜遅くまで行動する
ようなので、こうしていてはなりませんね! フヨウさん! お弁当を!」

 はい! と、フヨウはオボロの声を受けて席を立つと、固まったままのシグレを残
して台所へと姿を消す。煙管の煙は暫し途切れ――ぶっ、と。吹き出したところで、
吸い込んでいた煙が一斉に噴き出した。

 「ちょっと待て! 俺、王子さんにあれほど止めろと……!!」
 「気になって仕方ないんですねぇ、きっと。今までにないタイプで興味津々なんで
しょう。これは手ごわいですよ、シグレ君!」
 「自分で調べるように王子に言えよ!」

 「あらあら、何言っているのシグレちゃん! 何のための探偵ですか! はい、こ
れお弁当」
 台所から戻ってきたフヨウが、ぽん、とシグレに竹の子の皮のお弁当と、シグレが
愛用している竹で作られた水筒とを手渡した。一番右から梅、おかか、鮭だから。と、
丁寧に具材の説明までつける。

 「はい! いってらしゃーい、シグレ君! 身の危険を感じたら帰って来てもいい
ですからねー!」
 それって身の危険を感じるまで帰って来るなって意味じゃねぇか。と、呟きながら
も、手櫛で髪を結わえ、羽織を羽織る。サギリちゃんとお菓子を作って待ってるから、
頑張ってねー! という、能天気な声を聞きながら、煙管を咥え、幾らか肩を落とし
ながら、シグレは外へと出て行った。

 「……やっぱり、シグレの代わりに、私が行った方が」
 良かったんじゃないかな。と、扉が閉まった後に、サギリがぽつりと呟いた。良い
んですよ。と、オボロは答える。

 「ゼラセさんは、こっちが勝手に尾行しているというのに、それに気付いても、ま
ずはきちんと警告をしてくれるひとですから、大丈夫ですよ。あまりお風呂に入った
り、食事をしているという話も聞きませんし、持久力あるシグレ君が適任でしょう」

 それに、と。サギリを見て、にこりと笑む。
 「あそこでサギリさんが『やる』と言ったところで、どうせシグレ君は自分がやる
と言ってきかなかったでしょうから、サギリさんが気にすることはありません。それ
よりも、シグレ君が仕事に行っている間、家の方を片付けましょう」

 オボロの言葉にサギリは頷き、かたりと食器を片付け始めた。
78HOME 3 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:18:57 ID:9pm8v37K

 夕方近くに、王子が調査報告を受け取りに来ると思うんですよね。というオボロに、
フヨウはベッドのシーツを取り換えながら、今回はリヒャルト君……じゃない、ミュ
ーラーさんでしたっけ。と、言葉を返した。

 「ミューラーさんからの言葉は頂けなかったんですよね、確か。でも、傭兵の皆さ
んの反応とか、リヒャルト君が傭兵部隊に入った時期とか考えると、センセの考える
通りなんですよね?」

 シグレの寝乱れていたベッドに、真っ白な、綺麗に洗われたシーツがふわりと広が
る。オボロがドアの前で話をする中、フヨウは手を止めず、丸い、ふっくらとした手
で、皺を伸ばし、安らかに眠れるようにと、シグレのベッドを整える。

 恐らくは。と、オボロは答える。
 仲間たちの鍛錬に時間を取られるから、しばらく事務所に来れないかも知れないと
いう王子に、ならば事前に聞いておきたい人を何人か伺っておきますよ。と声を掛け
た。次の探索で恐らく最後となることを予期してか、少年は時間を見出しては、こま
めに事務所へと通っていた。

 城に身を置くものは、何もこの国に関係した人間だけではない。戦が終われば、何
人かはまた、旅に出、二度と逢えない者もいることだろう。ならばせめて……という
のが、そこに集った人々を呼び寄せた軍主たる少年の思いだった。

 少年はオボロの言葉に表情を輝かせると、分かる範囲で、出来た順でいいからと、
二人の人間の名を上げた。ひとりが、ヴィルヘルム傭兵旅団、鬼の副長。そうしても
うひとりが、謎に包まれた黒衣の女、だった。

 ミューラーのことは、以前の調査を行う上で、城にいる仲間や、ヴィルヘルム傭兵
旅団の傭兵達、そうして彼を慕うリヒャルト少年から幾らか評判は聞いていた。人相
は悪い。口も悪いが、人格としては悪くない。寧ろ、曲がった事が嫌いな理のある人
間、と言っても良かった。

 厳しい面も多々あるが、それは部下を思っての事であり、それは一種の優しさに思
えた。ただ、偽悪者であった方が気が休まるのか、優しい面を恥じるのか、そうした
素振りをみせようとはしないのだが――
 彼がどうしてああも、リヒャルト少年から慕われているのか、は本人の口からは聞
けなかったが、推測として見えるものはあった。

 リヒャルトが傭兵として入った年齢。口を噤む人々。ミューラーの性格。型破りの
剣技に、長期の修練が必要とされそうな、身体能力。テイラーより耳にした、忘れ去っ
たと言う故郷。盲目的に慕う存在。そうして、かつて幽世の門において見続けた、親
の愛情に飢えて育った子どもがもつ、おぼろげな、目――

 導き出される答えが、自然とあった。
 「多分ね、当っていると思うんですよ。私の推理は、悲しいことに」

 恐らく、少年は親から虐待を受けていた。ヴィルヘルムのあの性格からして、それ
を行なっていたのは父親だろう。ミューラーはリヒャルトの父親に憤ってか、どうか
は知らないが、ミューラーはリヒャルトの父親を殺した。リヒャルトは父親の束縛か
ら解き放たれ、解き放った相手である、ミューラーを敬愛した。

 ――もしかしたら、ヴィルヘルム達がやっていたという『傭兵だか山賊だか分から
ない稼業』から足を洗ったのは、その事件がきっかけなのかも知れない。
 だが全ては、自分の推測でしかなかった。

 そうですねぇ。と、フヨウは返した。バスケットにシグレのシーツを放り込み、ぎぃ
ぎぃと音を立てて上のベッドへと登ると、サギリのシーツを抜き取り、ベッドの上か
ら放り投げた。
 白いシーツはゆっくりと、バスケットにかぶさった。私は、とフヨウが言った。
79HOME 4 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:23:50 ID:9pm8v37K
 「推理は推理! で、良いと思いますわ。センセ。誰かからきちんと証言を受けて
いれば、それは証言を受けたという確証を持てますけれど、今回はそれが無いわけで
すし。
 ユーラムさんの調査報告の時みたいに、その推理がそのひとの為になるというなら
ともかく、そうでないなら、伏せておくに越したことはない。と、思います」

 ぎっ、ぎっ。とベッドが賛同の声を上げる。シーツを敷き終わったのか、音を鳴ら
してベッドから降りると、よいせ、と、フヨウは白で包まれたバスケットを持ち上げ
た。
 「真実は尊い。でも、それが幸いであるかどうかは別問題。真実を教えて欲しいと
いう依頼でない限りは、より幸いに近い、嘘ではない事実を述べた方が良いと思いま
すわ」

 そうですね。と、フヨウの言葉にオボロは笑むと、ひょい、とフヨウの手にしてい
たバスケットを持ち上げた。センセ、私が……という声に、いいんですよ。と、バス
ケットを胸に抱える。振動でか、胸ポケットで眠っていたネズミがぴょこん、と飛び
起き、チュウ、と一声上げて床へと降りた。そのさまに、ふと、二人して笑いがこぼ
れた。
 ネズミは洗い場へと進む二人を、二本足で立って、しばらくじっと見ていたが、耳
を少し動かすと、ちょこちょこと後駆けて二人と並んだ。


 洗濯を済ますと、シンダルの機械であるという「えれべーたー」を使用し、宿の吊
橋へと辿り着いた。洗い桶にはオボロのシャツや、シグレの羽織、下着を除くサギリ
やフヨウの服などが入れられており、濡れた衣服はかなりの重さだが、気にせずオボ
ロは腕に抱える。

 宿の屋根と、吊橋近くにある円柱には、何本かのロープが渡してある。うち、吊橋
奥の円柱へとオボロは歩み寄ると、備え付けられた取っ手に軽く手を添えた。
 フヨウは、ぱぁん、と白いシーツを広げ、ロープにかける。
 「センセ、いいですよ。回してくださいー」

 フヨウの言葉に、オボロは取っ手を手にして、ぐるぐると回す。カタカタという音
を立てて歯車が回り、洗濯物をかけたロープが進み、空にはためく。フヨウは目の前
のロープに、洗濯物をかけ、また、オボロは取っ手を回す。

 人が住めば、それだけ多くの生活を営むための空間が必要とされる。そうした声に
いち早く答えたのがビーバー達や、バシュタンといった発明家の人々だった。
 「ぶつぶつ言いながらも、あっと言う間にこんなものを考えて、作っちゃうんです
から、何だかんだ言っても、凄いですよねぇ」
 そう呟きながら、オボロが取っ手を回していると、「あ!」という声が上がった。

 「センセ! 王子さまですよ! どうしたんでしょー? お早いお帰りですねー」
 フヨウの声に、目線を寄せると、階段下、塔一階入口近くに、見慣れた緋色の衣が
あった。見れば、暖かなレンガ色の上着と、若葉色の明るいスカートという、穏やか
な装いをした女性も目に留まる。

 ――わ! と、そこで突如、オボロはひとつ声上げた。同時に身を崩して取っ手が
回り、まだ洗濯物がかかっていないロープが進む。ぐわりぐわりと、洗濯物が風に舞
い、身を崩した拍子に、名刺がばらばらと、階段下にいる二人のもとへと散らばった。

 「すみませーん、フヨウさん。名刺、拾ってきまーす」
 言い、手を止め、ぱたぱたと階段を降りる。もぉ、どうしちゃたんですか、センセ。
という声を受けながら、申し訳無さそうにオボロは駆けた。
80HOME 5 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:28:54 ID:9pm8v37K

 「う、うわぁ!?」
 名刺は階段下の王子にぶつかったらしく、王子は何事かと、背後からふりかかった
名刺の嵐を、ばたばたと大きく腕を振り、払った。王子に付いていた紙が、後頭部か
ら滑り落ち、床へと散らばる。そうした王子の様子に、向かい合っていた少女はぱち
りと大きく目を見開き、
 「ロ……ロイさん?」
 と、おずおずと、遠慮がちに呟いた。
 「はぁ? なんで俺って……」
 言った拍子に、ロイのかつらが、ずるりとずれた。

 「やぁ、すみません。すみません。名刺が飛んでいってしまって……おや、王子……
じゃなくて、ロイ君。どうしたんですか? その格好は?」
 頭を軽く下げながら、階段を降りて来たオボロを、茶髪の少年はぎろりと睨む。気
にせずオボロはにこりと微笑む。くそー、あとちょっとだったのに。と、呟くロイに、
腰を屈めて名刺を拾いながら、「何があとちょっと、だったんですか?」と、にこや
かに問い掛けた。

 別に。という言葉に、人形劇の。という、チサトの言葉が僅かにかかった。目線を
走らせるロイに、チサトは萎縮するものの、笑顔で先を促すオボロに、おずおずと、
口を開いた。

 「あの……王子さまのお話を作りたいな、って思って……。子どもたちから喜ばれ
そうな、セーブルでのお話を、伺いに、行ったんです……」
 ぼそり、ぼそり、と言う言葉に、はぁー。と、ロイの盛大な溜息がかかった。

 「『セーブルでのお話』って、要するに、俺が王子さんに化けて悪さをしたって話
だろ? ま、確かに子どもウケはいーだろーよ」
 そんな! と、小さな声がかかった。ああ、悪りぃ。と、軽く手を上げ、ロイが制
す。

 「あー。アンタを悪く言ってるわけじゃねえんだ。俺がやったことを今さらどうこ
う言うつもりはねえよ。たださ、俺たち悪ガキにとってもさ、あんたのやってる、人
形劇とか、そういうのって、すげぇ小さい頃からの、アコガレ、ってゆーヤツだった
んだよ。普通のガキどもとは一緒にゃ見れねぇから、遠目で見たりさ。
 ここであんたを見た時、フェイレンとか、すげぇ喜んだんだ。この歳になったら、
恥ずかしいから近くでなんて見れねーってのに、よ。
 そこで、俺たちの話を作るために、王子さんから話を聞くっていうじゃねーか。ち
ょっとな……気になったんだよ。別に脅すつもりとか、そういう気は無かったんだ。
騙したことは、悪かった。悪りぃ」

 言い、ぺこり、と頭を下げる。チサトは小さな唇を僅かに震わせ、あの。と、呟い
た。
 「あの……! ロイ、さんっ!」
 大抵の人間からすれば、ごく普通の大きさの声。だが、娘からすれば、ありったけ
の大声、だったのだろう。頬をひどく紅潮させ、緊張からか、足をがたがた震わせて
いた。

 「あの……わたし。さっきまでロイさんのこと、王子さまだって、思って、ました。
気付かなかったん、です」
 「ああ、ここで俺と王子の違いを気付くのはリオンくれぇだ。気にすることねぇ
――」
 「ちがい、ます」
 わたし、は。と、震える唇でチサトは言った。

 「わたし、これでも、演技を見る目は厳しいんです。なのに、わたし、ぜんぜん、
気付かなかった。それって、ロイさんが、きちんと演じたから、だと、思います」
 ロイさん。と、娘は言った。
81HOME 6 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:34:42 ID:9pm8v37K
 「わ、わたし、こんなだから、人前になんて出られないけれど、ロイさんは、違い
ます。もし、この、いくさが終わって、やる気があるなら、一度、舞台に臨んで、み
て下さい」
 へぇ。と、ロイが応えた。口の端を吊り上げて、笑みを浮かべる。
 「俺みたいな下賎な人間にも、舞台っていうのは踏めんのか?」

 「ぶ、舞台は平等です! 見て、評価するのはお客であって、問われるのは役者の
力です! そりゃあ、はじめは端役ばかり、かも、知れないけれど……見ている人は、
見てくれています。才能、なんて言葉、私はあまり好きじゃないけれど……才能と、
本人の努力が、実を結ぶ世界だって、私は、思います。
 ――お客さんの、子どもたちの笑顔に、貴賎なんて、ないの――」

 言い、チサトは深く、面(おもて)を伏せた。少年が唇を僅かに開いたところで、
ああ、いいですねぇ! と、声がかかった。

 「今はロイ君が王子のそっくりさんですけれど、舞台に上がって、ロイ君が有名に
なれば、王子がロイ君のそっくりさんになりますね! 生まれだとか、血筋だとかと
は関係のない世界ですから!
 北の大陸にある劇団辺り、いいかも知れませんね。文化が発展しているから、お客
さんの目も厳しいでしょうが、その分実力でものを見てくれそうです」

 散らばった名刺を拾い集め、かさかさ、と、手で揃える。
 「おい! 俺はまだ、やるなんて……!!」
 「嫌ですね。可能性のひとつ、ですよ。どうするかは、自分しだいです。
 まぁ、有名になったらひとつ、うちの宣伝をお願いしますよ! あ、これ名刺です」

 言い、ふたりに名刺をそれぞれ手渡すと、「それでは、これで」と、階段を登り、
姿を消した。
 オボロを見送り、ふぅ。と、ロイはひとつ溜息を吐くと、ふと、ずれてしまったカ
ツラの三つ編みが、緋色のスカーフを巻き込んで、壁に引っかかっていることに気が
ついた。それを取ろうと、三つ編みに覆い被さるスカーフを手で払おうとし、凍り、
ついた。

 どれだけの力で刺さったのだろうか。そこには一枚の名刺が、銀色の髪と緋色の布
とを噛み合わせ、階段壁へと縫い付けていた。

 「真実をみつける、探偵、ね……」
 ちっ、と、どことなく悔しそうに少年は舌打ちし、やや乱暴に髪と布とを引っ張ると、
一枚の白い紙はひらりと外れ、ゆらゆら左右に揺れながら、少年の足元に、ふわりと
落ちた。

 洗濯物を干し終わると、フヨウはサギリとケーキを作るのだと、事務所の台所へと、
サギリと共に引っ込んでいった。ビーバー達の手もあって、ここは本拠地であり、同
時にかつての船でそのかたちを持っていた、『家』でもあった。

 本拠地に事務所を移すとなったときは、どうなることかと、幾許か不安の念もあっ
たが、結果的には良かったと、オボロは事務所のテーブルで報告予定の書類の整理を
しながらひとり、思う。

 案ずるよりも、とはよく言ったものだ。人と交流を持つことに抵抗がある、シグレ
やサギリも、うまくやっている。寧ろ、多くの人々の場で生活することによって、自
己を確立していっている傾向が見える。
 ――きっと、他者を知る、ということは、同時に自身を知ることでも、あるのだろ
う。

 「こうした考え方を力づけてくれたのは、フヨウさんのお陰、でしょうねぇ……」
 そっと、呟く。
 初めての依頼人としてフヨウが訪れ、それから事務所の手伝いに来始めた時、自分
たちの過去を話すか、話さないかが、オボロと子どもたちの間で問題となった。
82HOME 7 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:38:22 ID:9pm8v37K
 口煩いと愚痴をこぼしながらも、フヨウの明るさにシグレは救われ、サギリもフヨ
ウの気立ての良さや、くるくると変わる表情に憧れや、好感を覚えたようだった。し
かしそれでも、自分たちが元、暗殺集団であったことを告白するのは抵抗があった。

 罵られるのが怖いのでも、それを広められるのが怖いのでもない。勿論、罵られれ
ば悲しく、広められれば、死活問題にも成り得る。だが、それ以上に苦しく、悲しい
と思っていたのは、理解し合えない悲しさだった。自分たちが好感をもった人間から、
自分たちの過去や、存在を認められないということは、悲しい。これ以上もない程に。

 子どもたちとは何度も話をした。大抵シグレがオボロの意見に反対し、サギリが揺
れ動く。だが、最終的には過去を告白することとなった。
 ――なんのことはない。結局のところ、三人が三人とも、フヨウとより親しく、理
解してもらえる仲に、なりたいと、願ったのである。

 あの、告白をした日のことは、今でも忘れられない。桟橋に船を着け、普段閉め切
りがちなカーテンを全開し、いつでもフヨウが、「逃げられる」ようにした。自分た
ちは最早暗殺集団ではない。他人に聞かれては不味い話だが、出来る限り、信頼をし
て欲しかった。

 緊張した空気の中、ぽつり、ぽつり、と静かに話すオボロにフヨウは目を丸くして
聞いていた。怯える空気も、法螺話だと馬鹿にするような気配もそこにはなく、ただ、
少し気掛かりな様子で、話を終えた後、それでセンセ。と、聞いて来た。

 「それで、センセ。私にこの話をしたら、探偵を辞めてしまうおつもりなのでしょ
うか……?」
 え? と、全く虚をつかれた声をオボロは上げた。コトリ、とシグレの煙管が落ち
る音がした。
 「い、いえ……やっていける限りはやりたいと思っていますが……」
 珍しく、自信のない、口篭もりながらの言葉に、なら良かった! と、フヨウは朗
らかな笑みをふわり、とこぼした。

 「ならセンセ、全く問題ありませんよ! だって私は『オボロ探偵事務所』に惚れ
込んで、ここに来たんですから!」

 すとん、と。あるべきものが、あるべき場所へと納まったかのような、あの感覚を。
そうしてじんわりと胸へと染み込んで感覚を、自分は決して生涯、忘れることは無い
だろう。

 ありがとう。と、オボロはフヨウのふっくらとした、手を取った。いやぁだ! セ
ンセ! 照れ臭いじゃないですか! と、フヨウは恥ずかしそうに、それでも、明る
く笑って。骨筋ばったオボロの手を、包み込んだ。

 「ほぉら、サギリちゃん! この型に流し込んで……そうそう。じゃあね、今度は
イチゴを洗って、シロップと生クリームを作りましょう!」
 溌剌とした声が、耳に触れる。器具の触れる音と、水の音。サギリに指示を与えな
がら、片づけをしているのだろう。
 イチゴという言葉が出てくるところからすると、今日のケーキはイチゴのショート
ケーキなのかも知れない。

 フヨウがあのふっくらとした頬で笑みを作って、真っ白なクリームと、赤いイチゴ
で彩られたケーキを食べているところを思い描き、ふと、笑みを浮かべる。とても似
つかわしく、可愛らしい。台所で調理をしている二人の姿を覗きに行きたい衝動に駆
られるが、以前調理中に冷やかしに行って、フヨウからもサギリからも邪魔者扱いさ
れてしまった時のことを思い出し、どうにか留める。もうしばらくすれば、恐らく土
台が焼き上がる。その時を見計らって、覗きに行こうと、オボロは年甲斐もなく心を
そわそわ浮き立たせた。
83HOME 8 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:44:41 ID:9pm8v37K

 扉の側を通ると、ふんわりと、柔らかな香りが漂って来た。思わず、くぅ。と、腹
の虫が音(ね)を上げる。こっそりと中に忍び込み、何事かと覗き込む。

 中にはあの、憎っき好敵手であるオボロと、丸くてよく喋るのと、細くて全く喋ら
ない女とが、何故かお揃いのフリフリした白のエプロンを身につけて、ボウルをかちゃ
かちゃ鳴らしていた。側にはこんがりとキツネ色したスポンジケーキが金網の上に乗
せられており、ケーキの屑だろうか。茶色い欠片を、オボロは肩に乗せたネズミへと
与えていた。ネズミはそれを両手で行儀良く受け取って、カリカリと食べる。それを
見て、細身の無口女は「……可愛い」なんぞと、微笑みながら呟いて、丸い方は、
「甘いんだから、あんまり与えちゃ駄目ですよ!」等と、子どもを叱るような口調で
自分の好敵手を叱っていた。

 その言葉に対し、「いやいや。すみません。ついつい可愛くて……」と、自分の肩
にいるネズミではなく、丸いを見つめてにこにこ笑っている自分の好敵手に――
 ――何だか凄く腹立った。

 「じゃあ、クリームも出来たし、スポンジもいいみたいだから、シロップを塗って、
生クリームを塗りましょうか!」

 そう言い、フヨウがスポンジケーキへと手を伸ばしたところで、ぷつ……と窓のカ
ーテンの留め紐が切られ、陽の光が遮られた。ばぁん! とキッチンの扉が閉まる。
そこに、突如、わーはっはっはっはっはっはっは! という、聞き慣れた馬鹿笑いが
響き渡った。

 「スポンジケーキは貰った! 悔しければ、取り返してみろ、オボロ!」
 見れば、スポンジケーキがぷかりと宙に浮いている。原因が分かっている為、全く
驚くことはなかったが、なかなか面白い光景だと、一同は妙なところに関心を寄せた。

 暫くそうして見つめていると、「……おい」という、不機嫌な声が掛かって来た。
 「取り返せと言っているのだ! 取り返しに来んかー! 
 ……ははん! 分かったぞ! さては、この俺様の素早さと紋章の前に、恐れをな
したな!?」

 スポンジケーキから声が上がった。ケーキが喋るというのは、童話や絵本といった、
想像の世界だから良いのであって、実際に喋られると、あまり気持ちの良いものでは
ないな。などということを思いながら、別に良いんですよ。と、愛想良くオボロは答
えた。は? という、間の抜けた声がケーキから上がる。

 「だってそれ、レーヴンさんの分ですから。ね、フヨウさん?」
 「ええそう。レーヴンさんとナクラさんの分として作ったものですよ。本当はきち
んとデコレーションをしてから差し上げようと思ったのですけど、スポンジケーキで
欲しいのなら、仕方ないですわね。ね、センセ?」
 そうですね。と、にこやかにオボロは答え、「持ち帰って結構ですよ」と、手で勧
めた。

 「ま、待て待て待て待てーッツ!! 自分の物をとったところで、盗んだことにな
らんではないか! その上、他の人間の食べ物まで奪ったときては、俺は単なる食い
意地の張った悪漢ではないか! そ、それに! 俺が盗ったら、そのナクラという奴
の分のケーキはどうなるのだ!? 可哀想ではないか!!」
 大丈夫。と、サギリの細やかな声が上がった。
 「私の分、あげるから……」

 そう言って、笑みを形づくる娘に、レーヴンはきゅぅぅうーんと、何かを撃たれた。
何かは分からない。ただ撃たれて、ふらりと揺れた。あらあらあら! とフヨウの声
が上がる。
84HOME 9 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:51:20 ID:9pm8v37K
 「まぁま! サギリちゃんってば! そんなこと言わないで、皆の分をちょっとず
つ分けあえば大丈夫ですよ!」
 そうですよ。と、オボロからも声が掛かった。
 「それに、皆で一緒に食べた方が、美味しいに決まってます。ね? サギリさん」
 娘は二人の顔を代わる代わる見つめると、やがて、こくん。と、幼い仕草で頷いた。
またもやレーヴンの中で、何かが撃たれた。

 「ああああああああああ! こ、この大馬鹿ものどもがーッツ!!」
 さっと、カーテンが開いた。陽の光がキッチンに滑り落ちる。そこにはスポンジケ
ーキ片手に、涙目になった29歳とは思えない、自称大怪盗の姿があった。

 「そ、そんな。こと、を、したら……ッ! お、俺は大悪人では、ない、か……!」
 潤んでいる目頭を押さえながら、ぐずぐずと鼻を鳴らしている。ほら! と、手に
したケーキを差し出した。

 「こんなに、食ったら、俺は太って、怪盗など、やっておれん! と、いうか、半
ホールもいらん! 一切れで、じゅうぶんだ! 他のやつに、くれてやれ!」
 言い、フヨウにケーキを手渡した。

 「さっさとデコレーションしろ! それまで俺は出掛けてる!」
 ぐずぐずと、まだ、鼻を啜りながら、それでもしっかりとした足取りで、レーヴン
はキッチンを出、ぱたん、と、扉を閉めた。

 ――変わったひと。と、呟くサギリの頭をオボロは軽く撫ぜ、根は悪いひとじゃあ、
無いですからね。と、言葉を付け足す。
 「それじゃあ、フヨウさん、サギリさん。もうすぐ王子も見えるでしょうし、お願
いします」
 オボロの言葉に、ふたりは頷き、光を弾くボウルを手にした。

 昼が過ぎ、陽が傾きかけた頃に、王子は来た。ゆったりとした足音と、規則正しい
足音。軽いノック音に、どうぞ、と応えたところでドアが開き、「お邪魔します」と、
銀髪の少年と、黒髪の少女は入ってきた。

 「今日はご苦労様でした。成果はどうです?」
 椅子を立ち上がり、書類の束を整えてソファを勧めると、少年は頷き、少女は入口
で待っています。と辞退した。そうした少女に少年は何度か言葉を掛け、少女が折れ
て座ったところで、少年もようやくソファに座った。

 「鍛錬の方は、順調だよ。先の女王親征のお陰で、探索隊の絞込みもあまり苦労し
なかったから、思ったより早く進めそうだ。焦って仕損じるのは御免だけれど、時間
が無限にあるわけでもないからね。
 ――がんばるよ」

 不安や疲れを押し殺すように、笑みを浮かべる少年に、大丈夫です! と少女が力
強い声を上げた。
 「大丈夫……。あと、あとひといきですよ、王子! これが終われば本当に……み
んなで、帰れるんです!」

 みんな、と言うときに、少女も少し、俯いた。それでも少年と道を共にするような、
深い信頼がみえる抑揚に、少年は優しい眼差しで少女を見つめ。ありがとう。と答え
た。
 そうした二人のやりとりに、心温まるものを感じながら、こちらが調査結果です。
と、茶封筒に入れた一枚の紙を、少年に差し出す。
 少年はそれを受け取ると、さっと目を走らせる。口元に手をやり、くつくつと肩を
震わせて、笑った。
85HOME 10 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:53:53 ID:9pm8v37K
 「ふふ。そっか、随分と嫌な質問をさせてしまったね。棍棒で追い掛け回された?」
 さすがに人の目があったので。と、オボロは答える。
 「まぁ、そんなおおっぴらにはなりませんでしけど、目線で殺されるかと思いまし
たよ。ほんとに嫌なことに対しては、無口になるんですね。あのひと」

 そっか。と、また少年は、くつくつと笑う。そうして不思議そうな顔をしている少
女に、さっと報告書を差し出し、戸惑う少女に目で促した。
 少女はちらり、と少年とオボロに目線をやった後。さっと用紙に目を走らせ、困惑
気味の声を上げた。

 「ええっと……これ、結局分からなかった。ってことですか?」
 少女の言葉に、面目ない。と、オボロは頭を下げる。慌てて言葉を詫びる少女に、
分かったこともあるよ。と、少年は朗らかな声を上げた。

 「つまり、ミューラーさんにとって、リヒャルトさんが慕ってくる理由は、本当に
秘密にしておきたいことなんだ。ってことだね。
 自分のミスにも、他人のミスにも厳しいひとだけれど、リヒャルトの言葉を借りれ
ば『本当は優しい照れやさん』だから、秘密にしているのは、誰かのため、なんだろ
うね」

 その「誰か」が誰であるかは指摘せず。少年は目だけで、どこか楽しそうな笑みを
浮かべる。ふと、そうした少年の仕草や物言いから、彼の叔母を思い描いた。
 ありがとう。と、少年は言い、席を立った。

 「やっぱりちょっと、気になっていたんだ。でもこれで、これ以上聞かない方が良
いってことが分かったよ」
 少女を伴い、事務所を出ようとする少年に、あ、ちょっと! と、オボロが少年を
呼び止めた。キッチンから、白い紙箱を手にしたフヨウがぱたぱたと姿をみせる。

 「今日、サギリさんとフヨウさんとで作ったケーキです。折角ですから、王子も頂
いて下さい――甘いものは、疲れを取ります」

 少年は年相応の、まだあどけなさをもつ眼で一度、オボロを見ると。再度ありがと
う――と静かな笑みで礼を述べ、二人で事務所を出て行った。


 陽がとっぷりと落ち、星の光が見え始めた頃、シグレがよろよろとした足取りで、
事務所のうちへと帰って来た。ぼすん、とソファに座り込み。

 「疲れた……」
 と、心底深い溜息を漏らす。すぐにご飯にしますから! とフヨウの声がかかる中、
サギリがお疲れ様。と、汚れた羽織を脱ぐのを促す。シグレは促されるまま羽織を脱
ぎ、それを見たサギリが、穴が開いている。と、呟いた。

 見れば、確かに丁度、シグレの体の線にそって、何かが刺さったような跡が続いて
いた。恐らくは、針を投げつけられたのだろう。
86HOME 11 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:55:58 ID:9pm8v37K
 「ご苦労様でした、シグレ君。しかし、体を傷つけずに、こうも正確に狙って来る
とは、ゼラセさん、やりますねぇ」

 「感心するとこ違うだろ。こっちは本気で命の危険を感じたぞ。尾行してたっつー
のに、いつのまにかあのねーちゃん、俺の後ろに回ってて、問答無用に壁に縫い付け
やがった! 壁から身を離すのに、どんだけ大変だったと思うよ!?」
 ああ。それは……と、言葉を返す。

 「後でビーバーの皆さんにお知らせして、壁を埋めてもらわなくちゃなりませんね。
シグレ君の体の形が跡になってたら、皆さん何事かと思うでしょうし」
 だから見るところ違うだろ! と、シグレが荒げた声に、怒る元気があるのなら、
まだまだ平気ですよ。と、さらりと流す。

 「フヨウさんが支度をしているうちに、早く手を洗って来てしまいなさい。今晩は
フヨウさんの特製シチューですよ」
 オボロの言葉に、シグレはひとつ溜息をつき、頭をぽりぽり掻きながら、物臭そう
に立ち上がった。


 夕食を終え、出されたケーキをぶっきらぼうながらも、きちんと褒めると、シグレ
は眠ると言って自室へ戻った。片付けは良いから、と、サギリも戻す。恐らく自室で
二人、今日あった出来事を語り合うのだろうと思いながら、オボロとフヨウはゆっく
りと、コーヒーと、ケーキを食べる。

 ふわり、としたスポンジの弾力に、香ばしい香り。甘くひろがる生クリームに、イ
チゴの酸味。
 ほっと、肩の力を抜けさせて安堵させてくれるような、こころを慰撫する、味だっ
た。

 フヨウが食器を片付ける間、オボロはソファに腰掛け、ゆっくりと書物を捲る。外
に響く虫の音(ね)と、食器を洗う水音。やがて片付けも済んだのか、フヨウが手を
拭きながら現れると、向かい側のソファに座り、シグレの羽織を繕い出した。

 丸い、小さな指先が、器用に空いた穴を埋めてゆく。蝋燭の音が聞こえる。ぼぉん。
と、柱時計が、ときを告げた。
 「今日は、お疲れ様でした。センセ」
87HOME 12 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 10:59:59 ID:9pm8v37K
 顔を上げ、顔全体でフヨウは笑う。いえいえ。と、オボロは答える。

 「今日はシグレ君が頑張ってくれましたからね。まだまだのところもありますが、
ゼラセさん相手にあの時間まで粘れたんです。あともう少し教えたら、色々任せても、
良いかも知れません……」
 そうですね。と、フヨウは返し、手を止めずに針を進める。針に繋がれた糸は、縫
い目を殆ど感じさせずに、布と布を繋ぎ合わせる。

 また、しばらくの静寂が流れた。ページを捲る音と、何度か糸を切る、軽い鋏の音
が流れる。出来た。と、フヨウが満足そうに、シグレの破れていた羽織を広げた。
 それは完全に、破れていた箇所が修復され、清らかなかたちを保っていた。センセ。
と、針を仕舞いながら、フヨウが言った。

 「シグレちゃんも、サギリちゃんも、良くやってくれています。たぶん、何かを任
せれば、ふたりはきっと、全力で、それに応えようとしてくれると、思います。
 王子が、ここに私たちを呼んでくれて、様々な人たちと出会って、知って――いく
さは嫌ですけれど、ここでこうして過ごせたことは、事務所にとっても、子どもたち
にとっても、良いことだったと思います」

 ええ。と、言葉にオボロも同意する。様々な人のありさまを見た。そうして、それ
を率いる少年の、葛藤しながらも進む強さも、悲しみも、憤りも目にした。
 ――その光を目にし、何度も、目を逸らしていた、かつての闇を、深く思った――

 目を、伏せる。ナクラと出会った折、そっとしておいてやりたいというシグレに対
し、サギリは戦うことを臨んだ。目を逸らすことを拒んだ。過去の自分を否定せずに
受け入れた上で、なお、先へと歩もうとした。
 ――自分も、と、自然、思った。
88HOME 13 (エロ無し:オボロ×フヨウ):2006/04/23(日) 11:00:49 ID:9pm8v37K

 シグレやサギリが、一人前になるまで、探偵事務所がもう少し、根付くまでと、そ
う引き延ばし、引き延ばしにして来てしまったが、そろそろ、決着をつけなればなら
ない時期なのかもしれない。
 それは他の誰でもない、幹部であった自分自身の責務に思えた。
 保身を思うつもりはない。ただ、子どもたちに、フヨウに、累が及ぶことだけが恐
ろしい。失敗か、成功か、生か死か。それだけだった。

 センセ。と、フヨウの声が響いた。同時にふと、暖かな両の手が、自分の痩せこけ
た頬を、ふわりと覆った。大丈夫ですよ。と、声がかかった。

 「わたしが事務所に入りたいと思ったのは、わたしが、そうしたいと願ったからで
す。シグレちゃんも、サギリちゃんも、きっと、そうですよ。
 皆、そうしたいと思い、そうした。ただ、それだけなんです」
 センセ。と、フヨウは続ける。子どもを諭すような、やわらかな抑揚で。

 「センセの思うように、なさって下さい。ただね、忘れないで下さい。ここは、
『オボロ』探偵事務所、なんです。
 いつまでも看板が居ないのでは、看板に偽り有り。泥棒さんになってしまいますわ。
それじゃ、折角の依頼人も、来なくなって、しまいます!」
 ――だからね、と、フヨウは言った。

 「戻って来て、下さいね。真実を、守るためにも。それまでは、子どもたちと、私
が、守りますから――」

 じんわりと、手のひらからぬくもりが広がっていた。頬に当てられたまま、オボロ
は自分の手のひらを、フヨウに手に、そっと重ねる。ぷくり、とした、働き者のフヨ
ウの手は、安堵させ、こころを慰撫し、やわらかい。

 深く深く、頭を垂れていると。ぱたた、と、テーブルにいくつかの染みが、出来た。
フヨウは何も言わず、ただ、手のひらを重ねている。
 眼と心が、どこまでも熱かった。

 ――さいわいとは、こういうことをいうのだと、心の底から、そう思った――


*END*
89七誌:2006/04/23(日) 11:05:02 ID:9pm8v37K
 始めはもっと短いお話にするつもりだったのですが、
 探 偵 一 家 へ の 愛
 で、ついつい長くなってしまいましたー。
次来るときはきちんとエロのある作品持って来たいなと思います。それでは。
90名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 11:13:27 ID:OAbPNAnj

     r〜 、
    ((⌒::::;:))   
      lll!!         \∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧/
.     ,__,     ☆   Z  何をしているのです!!   Z
.   ,r'~`、<>、  ∧/   Z   早く続きを書きなさい!! Z
   〃;;;;r'ル~リリ、      /∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨\
  ∠;;;;ィリ#::Д>ゝ≡3   
.   Z;;;,j〃iヽ;;Z ─z,,           c ≡   職 
   ,r';;ィ(jj人jj)ヽ    `☆         c. 三_‐ (lll ゚Д)  | ̄ ̄ト┐ 
.  ゙=_;;;_|\/|;;i/              c ≡ c 「'lr' _っ__,...、|__l‐;! 
.   /;;;;》:i;;i::i;|;;|                  c   | L__, || ̄ ̄ ̄ ̄|| '〜
  /;;;;;/:i;;i::i;i;;|;|                     └rr-ノ||        || 
  ⌒⌒ ̄ ̄⌒                  _l.l_, ||────|| 

このAA気に入ったので貼っとく
91名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 11:26:23 ID:+5ZoiSbQ
>89
GJすぎる!!!
面白いの読ませてくれるなら俺はエロ無しでもいいよ
エロパロ板だけどさ
92名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 11:53:36 ID:R5WkbUr+
>89
この腐女子みたいな文章に本当に萎える。
腐は自分のサイトでホモだけ書いててくれ。
純粋にキモい。
93名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 11:53:45 ID:9oPeP40T
もうGJとしか…!
探偵一家大好き。ありがたやありがたや〜!
94名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 12:26:25 ID:Xv97Vr2e
>89
あったかくてなんか泣けた。GJ!
95名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 12:28:46 ID:jkPGz61X
キモ七死信者乙
96名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 12:39:02 ID:FTYPZPo2
>>89
あぁ、入り込んでしまった。
探偵一家の仲むつまじい姿ががありありと浮かびました。
とてもよかったです。ありがとうございます。
97名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 12:44:26 ID:vwQpqyS3
>>89
改めて探偵いいなぁとオモタ。
GJ!みんなキャラがらしくていい話だった・・・
98名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 12:51:44 ID:XfzjLfLe
「リオン、ケガのリハビリには乳を揉むのが一番だって
シルヴァ先生の元旦那の上司の息子が言ってたから揉んであげるよ」

「はぁ、…ってそれ王子のことじゃないですか?!却下!却下です!」
99名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 12:57:38 ID:FTYPZPo2
>>98
「えー!乳を揉むのは怪我にイイって、シルヴァ先生の元旦那の同僚の護衛対象のお兄さんも言ってたよ?」
「??? えーと……って、それやっぱり王子のことじゃないですか?!」
100名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 16:20:56 ID:azr4RMpy
揉む乳がない
101名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 16:50:47 ID:81pIyGzj
興奮して傷口が開くぞ
102アホキチ:2006/04/23(日) 17:44:15 ID:FTYPZPo2
ようやっとチサトの話が完成…
いやぁ、意外に難しいなぁ…って、いつも難しいけど。
103チサトの場合 1:2006/04/23(日) 17:45:25 ID:FTYPZPo2
今日も今日とて娼館『ジーンの館』にやってきた俺は、メニューに並ぶ娼婦たちの顔を順番に眺めていた。
どの娘も美人ぞろい……いや、ラージャ提督とかはさすがに守備範囲外だけどさ…。
まぁ、大半はどの娘にしようか迷ってしまうほどの粒ぞろいだ。
そんな中で、俺はひとりの娘に目を止めた。
「おや、新顔かな?」
失礼ながら、他の娘と比べると取り立てて美人と言うほどでもないその娘は、半分困ったような、
半分笑ったような微妙な表情でメニューに載っている。
名前はチサト、歳は24、たしか人形劇をやってた娘だったような…。
容姿はそれなり(決して不美人ではない、むしろカワイイと思う)で値段も手頃。
数ヶ月に1度、なんとか金が貯めてこの娼館に足を運んでる身としては、値段がお手頃なのは嬉しい。
…娼館通いを控えりゃあ良いんだろうけど、この娼館には抗いがたい魅力があるんだよなぁ。
なにせ、かつて俺が一兵士として所属していた王子様の軍の、女性宿星が大勢集まっているわけで。
高嶺の花だったあの肉体をお金しだいで堪能できると来れば、通いつめたくもなるというもの。
「よし、今日はこの娘にしよう」
館の主であるジーンさんにその旨を告げ、俺は案内された部屋に入った。

「あ、あの、失礼します…ち、チサトです」
「あぁ、どうも」
チサトちゃんが部屋にやってきた。
ぞろっとした服を着て、メニューと同じような表情をして、両手には人形を……人形?
「えーと…その人形はいったい…?」
当然の如く沸き起こる疑問をぶつけてみると、チサトちゃんはいきなり謝り始めた。
「す、す、すみません!わ、わたしあの、本職は人形劇をやってまして!」
うん、それは知ってる。
「そ、それであの、その…に、人形を手にしてないと落ち着かないんです!」
「あ、あぁ…そうなんだ」
変わった娘…もしかして人形持ったままヤるのかな、俺は細かいこと気にしないから別にいいけど。
それにしても気弱そうな娘だ…なんで娼館なんかで働いてるんだろ。
「あ、あ、あの…何か……?」
……ま、立ち入ったことは聞くまい。
104チサトの場合 2:2006/04/23(日) 17:46:28 ID:FTYPZPo2
「じゃ、じゃあ…その、始めさせていただいても、よ、よろしいでしょうか?」
「うん、よろしくね」
「は、はい。こ、こちらこそよろしくお願いします」
ぺこりと小さくお辞儀をして、チサトちゃんは服を脱ぎ始めた。
…器用だなぁ、人形を両手につけたまま服を脱いでるよ。
先に人形を外さなかったってことは、ホントに人形をつけたままするつもりなんだろうか…
「は、は、恥ずかしいですから…そ、そんなに見ないでください」
ありゃ、あとスリップ1枚ってとこで手が止まってしまった。
うーむ、それにしても恥ずかしがる女の子ってのはそそられますな。
素で恥ずかしがる娼婦ってのも珍しい気もするけど、まだ新顔みたいだから無理もないのかも。
「わ、わたし全然美人じゃないですし、か、身体も自信なくて。だからその、そんなにじっと見られると…」
顔を真っ赤にしてるぞ、なかなか良いじゃない。
よし、ここはちょっと褒めてみようか。
「そんなことないと思うけどなぁ。チサトちゃんはけっこうカワイイと思うけど?」
「え、あの、はい?…あ、えと、その……あの…」
あはは、かなり戸惑ってるみたい。
人形をパクパク動かしながらあたふたしてて実に可愛らしい。
「ヘ、変なこと言わないでください。は、恥ずかしいです」
「いやいや、全然変じゃないよ。カワイイと思ったから指名したんだし」
「……あぅあぅ…」
ありゃ、ついに言葉も出てこなくなっちゃった。
まぁあんまりいぢめても可哀想だから、そろそろ先に進ませてもらおう。
「ほらほら、手が止まってるよー。最後まで脱いじゃおうねー」
ふざけた口調でそう言いながら、チサトちゃんのスリップの肩紐を外してしまう。
支えの無くなったスリップがすとんと落ち、ついにショーツ一枚だけになりました。バンジャーイ!
「きゃっ…あ、あ、えーと、隠しちゃいけませんね。す、すみません」
あらわになった胸のふくらみを慌てて隠そうとして、それでも娼婦としての自覚が働いたのか、
手をゆっくりと下に下ろして、身体を見せてくれた。
俺としては別に隠してくれても、それはそれでそそるワケだが。
でもここで「いや、隠していいよ」って言うのも変なので、大人しくチサトちゃんの身体を拝見することに。
身体に自信ないって言うけど…確かにそれほど大きくないが、別に小さいってほどでもないと思う。
身体のラインが判りにくい服を着てるから、傍目には小さく見えるだけかもしれない。
全体的なバランスはいいと思うなぁ。キレイだし。
「身体だって悪くないじゃない。もっと自身持った方がいいよ」
「そんな、わたしなんて他の皆さんに比べたら全然…」
「ほら、そんな風に下向かないで。はい、こっち来てそろそろ始めようか」
105チサトの場合 3:2006/04/23(日) 17:47:09 ID:FTYPZPo2
俺はチサトちゃんを抱き寄せてベッドに腰かけると、そっと口づけした。
「んっ…ちゅっ、くちゅ、ぴちゃっ……」
うん、キスは上手だ…やっぱ仕込まれてたりするのかな?
キスを交わしたまま、俺はチサトちゃんの胸にそっと触れて、ゆっくりと揉み始める。
チサトちゃんは一瞬だけ身体を震わせたけど、すぐに身を委ねてくれた。
それどころか、彼女の手が――正確には手の中の人形の口が――既に勃ち上がっている
僕の股間のイチモツにそっと添えられ、ゆっくりと動き始める。
…なんか、人形にされるってのも妙な感じだなぁ。
「ン…はっ…あ、あの、人形、ちゃんと消毒してますから…き、汚くないですよ?」
俺の微妙な表情を見て取ったのか、慌ててそんな風に弁明するチサトちゃん。
「え、あぁ…」
なんて答えていいか迷う。
手で直接して欲しいっていうのもあるけど、人形越しの指づかいが思ったよりも上手で、
このままされていたいという気持ちもある。
「やっぱ人形をつけたままするんだ?」
適当にそう聞いてみる。
「や、やっぱり嫌ですか?わ、わたしいつも人形つけてるもので…は、外すと緊張しちゃって…」
「ん…まぁ、別にいいんだけどね。つけたままのほうが落ち着くんなら、それでも」
「す、す、すみません。ごめんなさい…」
どもっちゃうのは人形つけてても変わらないんだな、などとどうでもいいことを考えながら、
彼女の桜色の乳首を指で転がしてみる。
「ぁっ…ん……は…」
さらにもう片方の手でチサトちゃんの頭を抱き寄せ、再び舌を差し入れながら口付ける。
「はふっ…んむっ……くちゅっ…」
彼女と舌を絡めながら、今度は乳首を弄っていた右手を徐々に下ろしていき、
ショーツ越しに彼女の秘所をそっとなぞる。
「んっ……」
身体を再びピクリと震わせて身を硬くするものの、チサトちゃんはそのままキスを続けてくれた。
もちろんその間も、彼女の手(の中の人形)は僕の股間をさすり続けている。
…俺もそろそろこっちを攻めていかないとね。
106チサトの場合 4:2006/04/23(日) 17:47:51 ID:FTYPZPo2
片手でショーツをなんとかおろして、キレイに手入れされた恥毛を手に感じながら、秘裂をそっと撫でていく。
初めは優しくゆっくりと、馴染ませるように。
「ん、はっ…あっ……」
指が小さな突起に触れるたびに、チサトちゃんの身体はビクビクと反応する。
彼女の秘所は徐々に潤いを帯び、指の滑りがよくなってくる。
そろそろ指でも入れてみようか。
「…はぅっ……はぁ、はぁ…」
まず一本、人差し指をそっと挿し入れて、膣内を刺激する。
引っかかないように気をつけながら、じっくりとかき回すように。
「んぁっ、あふっ……あっ…」
うん、イイ感じ。
膣内への刺激が効いたのか、かなり濡れてきてる。
これならイケそうだと調子に乗ってもう一本…入れようとした時。
う…俺のナニへの刺激が一段と強くなる。
見ると、人形の口が俺のアレを咥えてる……まさか人形にフェラされるとは。
でもまぁ、力加減と手使いが絶妙なんで気持ちイイわけだが…
このままだと人形に口内射精しちゃいそうだ。
それだけはさすがにかっこ悪いから、仕方ないけどそろそろ生本番にイカせてもらおう。
「……そろそろ、いいかな?」
「え?…あ、は、はい。…ど、どうぞ」
よっし、許可も貰ったんでさっそく。
チサトちゃんをベッドに横たえると、イチモツを彼女のアソコにあてがって…ゆっくり、しかし一気に挿入した。
「っくぅ……んぅぅ…」
ちょっとキツイかな?
一応ゆっくり入れたつもりだけど…チサトちゃんは目をぎゅっと閉じて身を強張らせている。
「…ごめん、痛かった?」
「い、いえ、大丈夫です…その、ま、まだあまり慣れていなくて…」
「そう、じゃあゆっくり動かそうか」
客に気遣いされされるようじゃあまだまだ半人前なんだろうけど、なんでか許せてしまうなぁ。
気弱で腰が低い女性に弱いのかもしれない。
107チサトの場合 5:2006/04/23(日) 17:48:35 ID:FTYPZPo2
俺はチサトちゃんを気遣うように、ゆっくりと腰を動かしていく。
「あっ…んっ……は…あぅっ」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、結合部からは愛液が滴り落ちている。
チサトちゃんの程よい大きさの乳房が、俺の腰の動きに合わせて上下に揺さぶられる。
俺は右手をその胸に乗せて揉みしだきながら、徐々に腰の動きを速めていく。
と、チサトちゃんが僕の動きを制した。
「ま、待ってください…」
「ん?」
「わ、わ、わたしが動きますから…仰向けになってください」
いきなりどうしたんだろう?
押しが弱そうなチサトちゃんがこんな積極的なことを言い出すなんて。
「さ、さっきからずっとリードされっぱなしで…も、申し訳ないです…これでも一応、しょ、娼婦ですから」
なるほどね。プロの自覚はちゃんと持ってるってワケだ。
「…わかった。じゃあお願いしようかな」
一度抜いてから、チサトちゃんを見上げる形でベッドに仰向けになる。
「じゃ、じゃあいきますね…」
自分(の人形を持ったままの手)で秘裂を広げながら、チサトちゃんは腰を落としていく。
いや、ホント器用だねぇ。
「んんっ……」
俺のナニを全部飲み込んでしまうと、ひと呼吸おいてから、ゆっくりと腰を上下に振り始めた。
「…あふっ、はっ…あっ…あんっ…ど、どうですか…?」
「あ、あぁ…気持ちいいよ…けっこう上手だね…」
「はぁっ、はんっ…あ、ありがとうござい、ますっ…」
慣れ始めたのか、少しずつ締め付けが強く、腰の動きも大きくなっていく。
腰の動きに伴って目の前で乳房がゆさゆさと揺れる光景に目を奪われているうちに、
そろそろ限界が近づいてきた。
「ち、チサトちゃん…そろそろ出そうだ…」
「は、はい…どうぞ、中へ…出してください…」
そう、この『ジーンの館』は中出しOKなんだ。
「で、出るよ…!」
「は、はい……あぁぁぁっ!」
俺は、チサトちゃんの中に思いっきり精を放った。
108チサトの場合 6:2006/04/23(日) 17:50:39 ID:FTYPZPo2
「お、お疲れ様でした…」
コトが終わって一息ついて、チサトちゃんはペコリと頭を下げた。
その手にはまだ人形が。
結局最後まで人形を外さなかったんだなぁ。
「こちらこそ。とっても良かったよ」
「あ、あ、ありがとうございます!」
「これからも頑張ってね」
「は、はい!」
どうやら彼女、昼間はこの街で人形劇をやっているらしい。
うーん、大変なんだなぁ。
今度人形劇を見に言ってあげようと思いながら、俺は部屋を後にするのでありました。
…今度は、人形の中の手で直接触ってってお願いしてみるかな。

―オシマイ―



声色設定を使おうかと思ったんだけど、人前だと恥ずかしくできないそうなので断念。
チサトかわいいよチサト
109名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 18:07:40 ID:UcR8Y1GT
チサト来てたー
超GJです
110名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 18:16:28 ID:FTYPZPo2
あぅ、ミス発見。
人形の口でフェラしてるのは最初からじゃないか。
まぁ今さら直すのもアレだから別にいいか…

頭痛のせいかな、見直しが疎かでしたスマソ。
111名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 18:32:34 ID:vwQpqyS3
>>102
うおー!イイヨイイヨーGJ!
初々しいチサトさんかわいいな!客の気持ちがわからんでもない。
娼館シリーズも結構続いたね。
112名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 19:27:37 ID:wcWVbe+1
>>102
GJ!
いっそうこのまま5の女性キャラ全員コンプしてくれよ神々!!
113名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:00:31 ID:FI4Yh+3O
いや、5以外もコンプの勢いでお願いしたい。
ラージャ提督に衝撃がw
114名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:10:24 ID:i10p9SxK
ビーバーがいても驚けないw
115名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:35:24 ID:XnCtU5sC
過去のネタで行くのだよ。
過去の娼婦の逸話とか言って。ラージャとシルヴァ。
116名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:40:01 ID:FTYPZPo2
感想dクス
みんなも娼館シリーズ書こう!

>>115
でも娼館の主はジーンさんなんだよな
117名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 22:50:43 ID:ZttUT8l+
>>116
何が書こう!だよボケ
118名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:18:01 ID:FvR9/R6R

いいんじゃないか?書こう!で
119名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 23:45:04 ID:SdS58d8/
>七誌さんへ
エロ無しでも全然GJ!

120名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 00:54:42 ID:mE13Qrru
>>118
「娼館シリーズ」を書く事を、強制されたように受け取ってしまったんじゃないの?
>>116は、そんなつもりは全くないんだろうけど。
何を書くかは書き手の自由だって事を、踏まえた上で言ってるんだろうし。
121名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 01:44:58 ID:KSdp58yh
案外ここの連中が若くて知らないのか、それとも分かっていてわざとすっとぼけてるのか・・・

・感想に対する作者の感謝レス
・誘い受け(〜のネタ投下していいですか?云々)
・勧誘(〜しましょう)

基本的にこの板ではウザがられる事が多い行為だから控えめにな
122名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 02:06:47 ID:/Tr1uK61
>>121
肝に命じておくよ。
女体化の件とそれはテンプレに入れたほうがいいかもしれんね。

そして勧誘にのってしまって申し訳ないが書いてみた。娼館シリーズ
先に言っとく、続かない。





騙された…。

部屋に入った時の第一印象である。
大した手持ちも無いのに、やたら注文をつけた自分もまずかったと思うが
悪い評判の聞かないこの娼館の事。
何とでもしてくれるだろうと思っていたのが甘かったようだ。
おっとりしてて、お姉さん属性があって、それでいてカワイくて、ついでにソープ慣れしてる娘お願いします!
そう注文付けて案内された部屋の中に居たのは、
クッション、…いや毛玉?
いやいや毛玉はベビードールなんて着けないしなぁ。ぬいぐるみかな?
「いらっしゃいませ〜、お客さん、はじめてですか〜?」
アハハ、最近のぬいぐるみは喋るんですか高性能デスネ。
「上着おかけしましょうか〜」
おやおやぬいぐるみさんが近づいてきたよ。歩き回れたりもするんデスネ。
「あらあら〜、顔色悪いですよ〜、大丈夫ですか〜」
目眩がする。

…いい加減現実逃避はやめよう。
目の前に居るのは紛れも無く哺乳網、ネズミ目に属する種族。
ビーバー科のビーバーさんだ。
固有名詞はミルーン。
うん、そうだね。体毛は薄いほうが良いとは言わなかったしね。
もはや、ソープ慣れってそもそも”風呂”違いだろっというツッコミを起こす気にもなれない。
既に済ましてしまった会計の事を後悔しつつ
これからの45分間をどうやって過ごすか思案する。



追伸:お風呂で体を洗ってもらいました。
ミルーンさんはその体躯全てを駆使し自らスポンジ代わりになって僕を隅々まで洗ってくれました。
さすが毛玉生物だけあって気持ちよかったです。性感とは全く関係ありませんでしたけど。
123名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 02:15:23 ID:BNNIOofk
ワロタ
ついにミルーンが来たw
確かに条件に全てあってるなw

>>121
へー、ここ以外行かないし、ここに来たのも最近だから知らなかった。
よく覚えとく。
124名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 04:17:47 ID:XCor/G/n
122で
お風呂に来た女の子がルクレティアにキレイキレイされちゃうレズソープものを妄想してしまった
125名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 05:52:16 ID:xfj7leeH
ベルハヅで娼館モノとか思いついてしまったよ。
最近けっこうハヅキ投下されててハヅキ厨な漏れとしては嬉しい限り。
そのお礼に挑戦してみようかなと思いつつも、
神が書いてくれないかと期待もしている。
126名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 11:03:11 ID:NKWE2g76
>>124
ここのおかげで軍師様はガチレズに思えてきたよ…
>>125
何をしているのです速く書きな(ry
127名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 12:29:30 ID:FAnvG/P8
馬鹿の一つ覚えみたいにゼラセネタでなにをしているのでるってアフォか
128名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 12:45:37 ID:a2R8xH7a
そんな巻き舌で憎まれ口叩いたって可愛いだけだぞ
129クレオの受難:2006/04/24(月) 13:17:41 ID:uf2zFEdT
「参ったな」
ティル一行はクワンダ将軍の策略を知り、エルフの森へ向かったのであるが、焦魔鏡の
ことを長老は信じようとせず、一行は牢屋に閉じこめられてしまった。武器も当然、取
りあげられてしまった。ただ一人、クレオを除いて。

彼女の武器は飛刀という小型の短剣であった。その小型性ゆえ、服のあらゆる所に忍ばせることができ、服を脱がせない限りは、武装解除は困難と思われた。隙をつかれて、刺されることもありうるからだ。そのため、彼女だけ別の部屋へと連れていかれた。

「(どうして私だけ・・・)」 
クレオはそう心で呟いた。検査には女性が立ち会うようであったが、たとえ相手が女性であっても、裸をみられるというのは心地のいいものではない。さっさと部屋へ行き、そしてさっさと終わらせてほしいと思った。辱めを受けるようで嫌だったからだ。

部屋について、中に入った。暗かったが、蝋燭が幾つかつけられ、少し明るくなった。部屋の中央に机があった。そこまで歩いていった時、女から指示を与えられた。
「机に手をつけて。」
その通りに、クレオが手をつけた。その時であった。女が強引に、その手に手錠をかけようとしたのだ。
「なっ、やっ、やめろ!!!」
クレオは抵抗したが、相手の力が予想外に強かった。あっさりと手錠がかけられ、脚を強引に開かされてしまった。 
「な、何をする気だ!!」
強い口調ではあるものの、動揺は隠せなかった。脚が震えていたのだ。
「ふふ、怖がらなくていいのよ。ただ体を調べるだけよ。」
そう言うと、女はクレオの胸当てを外しにかかった。カチャカチャと、固定しているベル
トを外している音がした。すべてのベルトを外し終えると、胸当てを部屋の隅へと放り投げた。
「(こ、この女、まさか・・・・)」
嫌な予感がしたが、悪いほうへと的中してしまう。女の手が、胸に触れたのである。
「い、いやっ!!」
「あら、かわいい声出すのね。」
「か、体を調べるだけだと・・・」
「これがそうよ。」
「!!!」
女の手は止まることはなく、クレオの胸を揉みつづけ、首の裏を舌で愛撫し始めた。
「あぅ、あぁっ、はぁん、んんっ!や、あ、あ!」
「好きみたいね、こういうの。ふふ」
「ち、違・・う、あっ!」


130クレオの受難:2006/04/24(月) 13:21:05 ID:uf2zFEdT
クレオのエロがないので書いてみた。初めてなもんで下手くそだが
131名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 13:23:43 ID:BNNIOofk
続き続き!
お初歓迎!
132前野199:2006/04/24(月) 14:45:45 ID:kJDW7BSK
陽の高いうちからスマヌが投下。婚約時代のギゼル×サイアリーズです。
設定上内容が青臭いです。我ながら腹の底がむずがゆい。まあ青春なんてそんなもの。
エロ度低め。苦手な方スルーしてください。
133若き日のギゼルサイア:2006/04/24(月) 14:47:16 ID:kJDW7BSK
そのときの僕達はあやつり人形でしかなかった。
それでもかまわなかった。たとえ大人に、世界に踊らされてるとしても。

それでも きみを まもりたかったんだ。


「わあ…っ」
山中の古ぼけた小屋にも関わらず、少女は嬉しそうに声を上げた。
「木こりが道具を保管するのに使っているんですよ。
 本当に、このような何も無いところでよかったのですか?」
「ソルファレナに山は無いからね。ルナスまで足を運べばいいけど…聖地は気軽に行ける場所じゃないし。
 それに秘密基地なんて素敵じゃない。こんなのに興味示すなんて、変?」
案内した少年は慌てて首を横に振る。
「め、めっそうもございません!僕は姫様に喜んでいただければ!!」
「あのさ、ギゼル…いい加減姫様っての、やめてくれる?」
「失礼しましたっ。え、と…サイアリーズ…様」
サイアリーズは大きくため息をついた。

太陽暦439年。
多くの犠牲の後、新女王が誕生した。
この二人の婚約も明らかな政略結婚ではあったが、まだ無垢な二人はそれでも必死に幸せになろうとした。
先の継承権争いで母が死に、父が死に、きっとその凶刃は自分達にも向けられていたであろう。
もう誰も不幸になってはいけない。
たとえ傷の舐め合いでもいい。少年と少女は密やかに愛を育んでいた。
「ねえギゼル、あたしが奥方になってもそうやって敬語使う気?」
深い蒼の瞳がくるりと動き、許婚である少年の顔を覗き込む。
普段は王族として気品溢れる立ち居振舞いをみせるサイアリーズだが、
気の許す者の前ではあどけない少女の顔を見せていた。
それがギゼルの脈拍を最速にまで上げてしまうことを当の本人は気づいていないが。
「いや、そうは言われましても、その、すぐに切り替えるのが難しくて…」
至近距離まで近づく顔に、頭から湯気でも出そうな勢いで顔を真っ赤にする。
ギゼルにとって、サイアリーズは憧憬の対象でしかなかった。そんな方が今では許婚として、目の前にいるのだ。
こうして2人きりになるのも幾度目かというのに、いまだ行動すらままならない。
だがそれがギゼルの誠実さ故の態度であることをサイアリーズはよく理解していた。
「人前ならともかく、2人の時くらい普通に話してよ。なんか壁があるみたいで…寂しいじゃない」
「あ…」
少女の顔が曇る。ギゼルは普段の数分の1しか働いてくれない思考回路を必死に巡らせた。
どうしたら喜んでくれるだろうか。こんな時は…
「あの、サイアリーズ様」
「え?」
失礼します、と一礼し、彼女の左手をとる。片膝を付いて、薬指の付け根にそっと唇を落とした。
「…」
「遥か北の大陸では、将来を誓い合った相手に指輪を贈り合うと聞いたことがあります。
 その指輪を左手の薬指…心臓の最も近い所にはめることで自分を捧げる証とするとか。
 今ここに指輪はございませんが、僕は誓います。
 ギゼル・ゴドウィンはこの身を、心も全てあなたに捧げると」
不安ながらもゆっくりと、顔を上げる。
そこには、先程のギゼルと同じくらいに頬を紅潮させたサイアリーズの顔があった。
「えっ」
「…何よ!だって、そんなこと、一度も言われたことなかったからしょーがないじゃない!!
 突然、そんな…」
「ああっ、申し訳ありません!!」
「誰も謝れなんていってない!!」
「申し…っ、なっなんでもないです!!」
静かな山に、じゃれあう声はしばらく響いた。

そして、幸せな時間は突然終焉を迎える。
134若き日のギゼルサイア:2006/04/24(月) 14:48:06 ID:kJDW7BSK
太陽暦441年。
10年近く続いた暗闘の末、女王の座に就いたファルズラームが突然の崩御、
長女のアルシュタートが後を継いだ。
そして、サイアリーズから婚約破棄の書がギゼルに届いたのである。
「サイアリーズ様…なぜ…!!」
何がいけなかったのか、何が間違っていたのか。思いを巡らせど答えには辿り着かない。
婚約間もない頃ならば諦めもついただろうが、少年にとって2年の月日を忘れるにはあまりにも大きすぎた。

何も無かったことにできるはずがない。
母の手をとることが二度とできなくても。
父が昔の様に笑ってくれることが二度となくても。
それでも、前に踏み出そうと。もう一度明日を信じてみようと、歩き出すことができたのは。
あなたが僕の手をとってくれたから。

気がつけばその足は西の山に向かっていた。
秘密基地という昔の思い出を少女はいつも楽しそうに聞いてくれていた。
手をとり、指を絡め、時間の許す限り語り合った場所へ、ギゼルは足を運ぶ。
理由など無かった。ただそうするしかできなかった。
黄昏の光が山を、小屋を赤く染める中、ギゼルはふと足を止めた。
すでに木こりも使わなくなった小屋の中から物音がする。
少年の想いは所詮ただの希望だった。それでも彼の中には確信があった。
「ギゼル…」
扉を開けると、庶民服を身に纏ったサイアリーズが佇んでいた。

「たった一人で…ここに?」
こくりと、少女は頷いた。そこにかつて見せてくれた笑顔は無い。
「ストームフィストの手前までは、西の離宮の者が付き添ってくれた。
 今さらアンタに顔見せようなんてできるはずもないから…せめて、
 せめてここには来たかったんだ…」
目の前に立つ少女はギゼルよりも悲痛な表情を浮かべていた。
気品溢れた悠然さも、純粋無垢な幼さもない、今にも壊れてしまいそうなサイアリーズを
今まで見たことのない彼女を目の当たりにして、ギゼルは愕然とする。
「…理由を聞かせてください。サイアリーズ様の、本意ではない、ですよね?」
震える声を必死に絞り出す。
「私が決めたことだよ。ハス姉に相談して…ハス姉も決めた。
 私達は結婚しない。子供を残さないって。」
「ハスワール様…?」
先の継承権争いから逃れるためルナスの斎官となった、ゴドウィンの血縁者。
ギゼルとはあまり面識は無かったが、二人の婚約を自分のことのように喜んでくれたとサイアリーズから聞いていた。
「もう二度と母上達のような過ちを繰り返したくないんだ。
 夫が、子供がいればバロウズのような奴らの陰謀に巻き込まれる。
 私達は王位なんていらないんだ。姉上の、陛下のお力になりたいから…」
「そんな…っ!」
「ギゼル、アンタには酷い仕打ちをしたと思ってる。恨んでくれても構わない。
 でも、私には力がないから…っ!こうするしか姉上も、アンタも守ることができないんだよ…」
細い指が折れそうになる程、拳を握りしめる。
135若き日のギゼルサイア:2006/04/24(月) 14:49:13 ID:kJDW7BSK
力が無いのはギゼルにとっても同じことだった。
愛しいサイアリーズを自分で守れなかった。力が無いから、彼女にそのような決断をさせてしまった。
自分が子供であることをこれ程歯痒く感じたことはない。
「…逃げましょう」
「ギゼル…」
子供じみた浅はかな提案だと自覚していたがそれが自分のできる精一杯だった。
「僕はまだ子供です。頼りないかもしれない。でも、あなたの隣にいられるなら何だってやります!!
 ファレナを出て、名も無い村で、泥まみれになっても構いません。僕があなたを養います。
 だから、だから…」
「ありがとう、ギゼル。もういいから…」
サイアリーズは無理に笑顔を作るが、かえって痛々しい。
「でも、だめなんだ。逃げることなどできない」
「僕なんかでは、だめなのですか…」
「違うよ。ちがうんだ…」
サイアリーズの声も次第に震えていく。立っているのが精一杯の状態だった。
「セーブルから連絡があったんだ…アーメスが…侵攻してくる」
「っ!!」
「今ここで私達が消えたら、バロウズ辺りにアーメスの内通者とでも仕立て上げられる。
 そんなことになればゴドウィンも、姉上達も何をされるかわからないんだ。
 それに、こんな時だからこそ姉上を助けたい。お願い、わかって…」
身体を震わせ、俯いたまま、サイアリーズは懇願する。
「サイアリーズ様…お顔を上げてください」
この日、サイアリーズはまともにギゼルの顔を見ることができなかった。
会いたくなかった。
会えば、ギゼルの顔を見たら、自分の決意が脆く砕け散りそうで。
「サイアリーズ様」
この少年の前で二度と自分をさらけ出してはいけないと決めたのに。
「…っ」
冷たく突き放さなければいけなかったのに。この場所に全て閉じ込めようとしたのに。
突然の再会は少女の決意を揺さぶるのに充分なものだった。
「サイアリーズ様」
「…だめっ」

「サイアリーズ!!!!」

「っ!!!」
その衝撃に思わず顔をあげる。
初めて呼び捨てにされたことも衝撃だったが、ギゼルが焼け焦げるような声で叫んだことに驚く。
「…なぜ隠す」
翡翠の瞳には激情の渦が渦巻いていた。
「ギゼル、私は…」
「今言った事が本意だというならば!!どうして僕の目を見てくれない!?なぜそんな顔をする!?
 僕だってあなたを守りたいのに!!!」
その言葉で、サイアリーズは限界に達した。
深蒼の瞳から堰を切ったように大粒の涙が零れ落ち、ギゼルは感情のまま強く少女を抱き締める。
2年の月日の間にギゼルの背丈はサイアリーズを追い越した。
いつも年上ぶってみせたのに。自分の方が子供だったとサイアリーズは思う。
「僕は今も、あなたを愛している」
「あ、あたしだって…離れたくないっ、ずっとこうしていたいさ!ギゼルの、傍に…っ…
 でも、ダメなんだ…だ、め」
その先の言葉はギゼルの唇に塞がれた。
唇同士もうまく合わない、荒々しく、つたない口づけ。
自分の想いをぶつけるだけの一方的なものだったが、サイアリーズは受け入れた。
快楽も生まれない、ギゼルの舌はただ必死にサイアリーズの口中を犯す。
「ふぐっ、ん、はぁっ、んむぅっ」
苦しくてもいい。痛くてもいい。少年がここまで自分を愛してくれたという痕を残したいと思うのは我儘だろうか。
136若き日のギゼルサイア:2006/04/24(月) 14:51:30 ID:kJDW7BSK
「…っはあっ」
唇をようやく解放され、荒げた呼吸を整える。
ギゼルは着ていたマントを外し、足元に無造作に広げた。サイアリーズをその上に座らせる。
「え…?」
サイアリーズはこれから行うであろう行為を容易に予想できたが、それでも動揺を隠すことはできない。
ギゼルの瞳にはもはや激情は見られない。静かな、深い海のようだった。
「待って…」
「待たない。誰かに奪われるくらいなら僕が奪う」
ゆっくりと、涙に濡れた少女を押し倒す。
「ギゼル、信じて。他の男の所に行くわけじゃない」
わかっている、と吐息を漏らす。
「あなたを奪っていくものは形あるものじゃないと、わかっている。
 でも、あなたを奪う男はこの僕だ。…僕だけに、してくれ」
「ギゼル…」
「サイアリーズ。君が拒んでも、君を奪う。例え泣いて、叫んだとしても。
 処罰でも断首でも甘んじて受けよう。嫌なら、目を閉じていてくれ」
婚姻前の王族にこのようなことをするのは万死に値する罪だとわかっている。
それでもギゼルはやめる気はなかった。この少女のいない残りの人生に、価値などない。
サイアリーズの腫れた瞼に落とした口づけは、言葉とは裏腹に優しいものだった。
そのまま涙の跡を辿っていく。少年の柔らかな唇が首元にくると、サイアリーズはびくりと体を震わせた。
「あっ、は…あっ…、ダメ、ギゼル、おねがい…」
構わず舌を這わせる。サイアリーズの体は言葉ほど抵抗できていなかった。
ギゼルは自分よりさらに強い覚悟を持っている。愛しい者にここまで求められ、拒むことが出来るほど大人にはなれない。
胸元が大きくあいた服の下へ滑り込ませるその手は白く艶やかな肌だが、指の節々の太さは紛れも無く男の指だった。
無理矢理肩から上衣を引きおろすと弾けるように豊かな乳房が露わになった。
「やぁっ…」
まだ幼さが残る少女に不似合いなほど豊かな膨らみをやや乱暴に揉みしだく。
「ふぅ…っん…」
「サイアリーズ…」
初めて触れる女の体は予想以上に柔らかく、手に吸い付くような触感にギゼルの脈拍は上がっていく。
女を悦ばせる知識など皆無だったが、サイアリーズが漏らす甘い吐息にギゼルの指がさらに艶かしくうごめいた。
首筋にいくつか痕を残し、両の手で寄せ上げた乳房の先端を舌先で弄ぶ。
「ひゃあっ!あ、はぁっ」
いっそのこと絶望してくれたなら。自分を拒み、苦痛の声を漏らし、侮蔑の眼で睨んでくれたら。
全ての想いに未練を残さず消えてしまうことができたのに。
愛しい人は拒絶の言葉と裏腹に甘美の吐息を漏らし、優しい瞳で今もなお自分を受け入れる。
ギゼルには忘れることなど、この手を止めることなどできるはずもなかった。
137若き日のギゼルサイア:2006/04/24(月) 14:52:15 ID:kJDW7BSK
「あなたは、卑怯だ…」
「ひううぅっ!!やあっ、あああっ!!!」
既に屹立した乳首を強く摘み上げる。快楽を超えた刺激を受け、サイアリーズは大きく身体を仰け反らせた。
ギゼルはその手を止めず、質素な生地でできたスカートをたくし上げる。
「まって、そこはだめ!!」
サイアリーズがギゼルの腕をつかむよりはやく、肉付きの良い片脚を持ち上げた。自分の肩にかけ、開脚を固定する。
下着は湿り気を帯びていた。腰の辺りで結ばれた紐を片側だけ解けば秘所は容易く晒され、
触れると粘質な液が指に絡みつく。
「ふぁあっ、ダメ、や、あああんっ!」
「…こんなになっているのに?」
「だ、だめぇ、あう、んっ、みないで…っ」
羞恥に顔を赤らめ、涙をこぼしながら懇願する。ギゼルは顔を近づけ愛液を味わった。
「やあぅ、ギゼ…!きた、な、いっ…!!」
ピチャピチャと立つ水音も卑猥に聞こえ、高潔な少女の心を侵していく。
自分でもろくに見たことがない陰部を視姦され、指と舌でなぞられる。
少年を想って自慰もしたことがあるサイアリーズだが、自分の指とは段違いの快楽に少年の名を呼ぶのが精一杯だった。
「はあ、あ、ギゼル、ギゼル…っ!」
少年ももはや限界だった。ベルトを外し、既に屹立した肉棒だけ外気に晒し、濡れそぼった秘所に密着させる。
股間に触れる熱い感触にサイアリーズは身体を震わせた。
「…!!」
「舌、噛まないように…気をつけて」
「ダメ!!…あ、あかちゃん、あかちゃんできちゃうっ!!」
初めてまともに抵抗するも既に男の体格に成長している少年の力に敵うはずも無く
サイアリーズの細い両腕を片手ひとつで封じ込める。
自身に滴る少女の愛液を塗りたくり、先端を秘裂へ押し当てた。ゆっくり、腰を落とす。
「っっ、っうぁああああああっっ!!!!」
異物の侵入を体が激痛で訴え、少女はたまらず悲鳴を上げた。
その声にギゼルは奥歯が折れるほど噛み締めてこらえ、挿入を拒む内壁をなお強引に押し入り、最奥に到達する。
ようやくサイアリーズの両腕を解放し、苦痛に喘ぐ彼女の瞳に視線を落とした。
「…ずっと、こうしたかった」
「っ、んん…ギ、ゼ…」
「他のものに左右されず、ただ、僕だけのものにしたかった」
少年の声が震え、熱い雫がサイアリーズの頬に落ちる。
サイアリーズは両手を伸ばした。初めて見る少年の涙をそっと拭う。
「こんな、愚かな行為をしなければ…いや、こんなことをしたって…もう、あなたを」
「もう、いいから…つづけて…」
「サイアリーズ…」
「もう、最後…だから、こうして、愛されるのも…あなたを、ん、愛せるのも…最後、だから…」
首を引き寄せ唇を重ねる。
「ありがとう…」
その言葉を引き金にギゼルは激しく腰を叩きつけた。
「っ!うぁっ!!ん、ぐうっ、う、うっ、うんっ」
サイアリーズが低くくぐもった声を漏らす。それでも勢いを緩めることなく抽送を繰り返す。
ただ一言、感謝の言葉は少年の心を最奥までつらぬいた。
それはふたりの間にかろうじて繋がっていた糸を断ち切るナイフ。
あなたは、これで終わりにするのか。もう僕を捨ててしまうのか―――。
すがる想いはもはや憎悪に酷似していた。
体を引き裂かれるような激痛にその身に受けてもなお、サイアリーズの瞳は優しすぎた。
それが何よりギゼルを追い込んでいることを少女は気づくはずもなく、与えられる苦痛を必死に受け入れる。
「サイアリーズっ…僕は…っ!!!」
「ああっ!!ぎっ、ゼルっ、な…にぃっ、い、いぅっ、きこえ、なっ…!!!」
痛みしか感じない膣内に、熱いものが染み込み、溢れ出す。
酸欠に近い状態の中、サイアリーズは少年の言葉を聞き取ることができないまま意識を失った。
138若き日のギゼルサイア:2006/04/24(月) 14:54:00 ID:kJDW7BSK
夜明けが近づく中、山を下る少年達をふもとで待ち受ける人影があった。
サイアリーズと同様に質素な服を纏っているのは人目を避けるため。
二人の姿を見止めると馬からおり、静かに二人を出迎えた。
「義兄上、どうして…」
姉の即位とともに女王騎士長となった男は、いつものように屈託無く笑う。
「かわいい義妹が家出したんだ。迎えに来るのは当たり前だろう?」
息子達にするように、クシャリと頭を撫でる。ギゼルに向き直り、一礼した。
「サイアリーズが世話になった。礼を言う」
「…なぜですか。僕を斬らなくていいのですか?気づいて、いるのでしょう?」
サイアリーズはビクリと身体を震わせる。やつれた顔、腫れた目元、乱れた服。何事もなかったなどと言える筈がない。
「待って!義兄上!私の話を」
「サイアリーズは黙っていろ。男同士の話に割り入るものじゃない」
表情から笑みを消し、少女を下がらせる。
「あいにく俺は千里眼ではないのでね。この眼で見てもいない理由で貴殿を斬りつける資格は無い。
 それに…一晩、義妹をかくまってくれたことに変わりはない。それだけだ。
 早く父君のもとへ戻りなさい。ギゼル・ゴドウィン殿」
それだけ言うと少年に背を向け、馬に乗った。サイアリーズを手前に乗せ、身に着けていた外套を羽織らせる。
「ギゼル…!」
最後の言葉もなく、少年の姿はみるみる小さく遠ざかっていった。

夜明けの光が大地を照らし始める頃、サイアリーズは口を開く。
「義兄上、ソルファレナを、太陽宮を抜けて大丈夫だったの?
 今、大変なときなのに…」
「1日くらいなら俺のような若輩者がいなくても何とかなるさ。
 今頃はガレオン殿がうまくやってくれてるだろう。それよりもソルファレナに着く前に服を調達せんとな。
 そんな痕だらけの首元を晒して戻ってみろ。宮中の人間の大半が卒倒するぞ?」
慌てて外套を首元に寄せる。フェリドは全て見通した上、深くは追求しなかった。
「アルが…泣いていたぞ」
「…ごめんなさい」
家族を守るため、ファレナ王家を立て直すために涙など見せなかった姉。
「お前が家出したことではない。同じ過去を繰り返さない為とはいえ…
 婚約破棄をさせたこと、お前に家族を…子を持つ幸せを奪ったのは自分だと、嘆いていた。
 だから最後くらいはと、お前が黙って抜け出すのを見逃したんだよ。
 そうでもなければ俺1人だけでお前を見つけることなどできるまい?」
妹が婚約者の話をするときの顔が何より幸せそうだと、アルシュタートもフェリドもよく知っていた。
それだけに、婚約破棄をサイアリーズが自ら申し出た時に最も驚いたのもこのふたりである。
国の頂点に立ちながら、妹1人の幸せも叶えてやれないことを女王が人知れず泣いていたと聞き
少女はため息をついた。やはりあの姉にはかなわない。
「けじめは、ついたか?」
「うん…大丈夫。ありがとう、義兄上。姉上にも…お礼言わなきゃ」
たった一夜、王家のしがらみから離れ、ただの少女にさせてくれた。
ギゼルがどれだけ自分を愛してくれていたのか気づくことができた。
「もう、大丈夫。だいじょうぶだよ」
もう、逃げない。心の中でひとり、昇る朝日に誓いをたてた。

薄明るくなる草原は、夜明けへの知らせ。
もう既に少女の姿は見えなくなった草原を、ギゼルはいまだ見つめていた。
まだ、生きている。生かされたのは家族を持つ男からの憐れみ故か。
「もう、逃げるものか…」
その言葉は少女の誓いと同じだった。だが、想いのベクトルは真逆を指し示す。
必ず、奪り還す。
少年の誓いが歯車となり、未来の動乱に向けて動きはじめたことを知る者はまだ、いない。

END
139前野199:2006/04/24(月) 14:55:40 ID:kJDW7BSK
以上です。乱文失礼しました。
140名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 15:35:56 ID:/lIFc38H
うわああああああ切ないよおおおお
この話を踏まえてグッドEDの叔母上とギゼル君のツーショットを見たら
確実に泣く・・・GJ!
141名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 15:38:52 ID:BNNIOofk
ギゼル大嫌いなんだが…これは切ない。
グッジョブ。
142クレオの受難:2006/04/24(月) 16:05:45 ID:uf2zFEdT
「嘘は駄目よ。」
そう言うと女はクレオの上着のベルトを外した。そして下に身につけている赤のシャツ
を捲り上げた。薄い青色のブラに包まれた、程良い大きさの胸があらわになった。クレ
オの顔が一瞬にしてで真っ赤になる。
「ショーツも同じ色かしら?」
「み、見るな!!!」
ズボンを下ろされそうになり、クレオなんとかそれだけは阻止しようと体を動かそうと
したが、手錠をかけられた手が急に重くなって動くことはできなくなった。
「な、何よこれ・・」
「魔法の手錠よ。暴れると今度は手が千切れるわよ。」
それを聞いてクレオは凍り付いてしまった。手を失った、惨めな自分を想像してしまっ
たのだ。
「そうよ、そうやっておとなしくしてれば、後で外してあげるから。リラックスして。」
そういって女はクレオの頬に口付けをすると、右手で太股をなで始めた。クレオの体か
ら徐々に力が抜けていく。ブラはすでにずらされ、小さな突起が赤く充血していた。左手
で突起をつまみ、弾き、そして軽く押しつぶす。額あての布でかくされた耳を、舌で愛撫
する。
「あん、はふっ、はぁ、・・・」
息の荒くなったクレオを見て、女は意地悪くほほえむ。
「もう、そろそろね」
そう言って、今まで太股をなでていた右手で、ズボンの上からクレオの秘裂をなぞった。
クチュリ、と水気を含んだ音がした。
「ねぇ、すごいことになってるわよ、あなたのここ。」
「い、言うな・・・」
「強がっちゃだめよ。」
言い合っている内にクレオのズボンのホックを外し、それを膝の所まで下ろした。女の目
にはやや小振りな尻とそれを覆っている、ブラと同じ色のショーツが映った。やはり、秘裂を覆っている部分はぐっしょりと、形が分かるほど濡れ、髪と同じ色の茂みが透けて見
えていた。
「いい具合ね。感度はどうかしら」
女の細い指が、そこに差し込まれた。ざらりとした、猫の舌のような部分に触れた時、クレオの体が跳ね上がった。





143名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 16:36:54 ID:BNNIOofk
>>142
完成してから全部まとめて貼ろう。
楽しみにしてまする。
144名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 18:58:31 ID:nBezsz/g
>>139
泣いた。みんな良い人過ぎる。
大事な時に侵入してきやがったアーメスを憎むしかないなこれはww
145名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 19:25:59 ID:Ob1RSPNW
>>139
 いかん、ちと涙腺きた。青臭いかも知れんがその青臭さいい。青春だなぁ……。
146名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 19:43:28 ID:o60DpSMn
>139 サイアかわいいよサイア
ギゼル青い子だよギゼル

鼻の奥にツンときたよ。泣けました。
フェリドも出てきてGJJJJJJ!!!!
147群島好き:2006/04/24(月) 20:33:55 ID:UcT+6U52
>>139 切ねぇ…。泣けてくるよ。
あと>>142さんも続きお待ちしております。

では>>43からの続きです。
148群島好き:2006/04/24(月) 20:34:28 ID:UcT+6U52
その日からしばらく経った頃、最初こそぎこちない二人だったが今ではもうお互いの「らしさ」を取り戻していた。
世のカップルがするようなベタベタした付き合いが苦手だった二人は、自分達らしく付き合おうと話し合い、
ぎこちなさを払拭していつものように、友人のように一緒にいた。
それでも以前よりお互いを気遣い過ごす二人を、その変化に気付いた周りは微笑ましく見守っていた。
そしてまた二人がファルーシュの部屋で夕食後を過ごしている時――
「ねぇ、ラン。まさかとは思うけど僕達の事、誰にも喋ってない……よね?」
ルクレティアに頼まれた軍の編成をしながら、ファルーシュの部屋の本棚を見回しているランに尋ねる。
「へ?当たり前だろ。こんな事、大っぴらに言えるかよ」
ましてやスバルに知られたら…と言葉を繋げ、気になるタイトルでもあったのか背を伸ばして取ろうとする。
それが少し危なっかしくて、立ち上がり代わりに取り、手渡しながら尋ねる。
「はい、これ?……何か妙にカイルやミアキスがにやにやしてたり、キサラさんが異常に優しかったりしたから気になって」
「あ、ありがとっ。そう言えば母さんや提督が「子供はいいもんだ」とか言ってたけど、今思えばわざとらしすぎるな…。ば、ばれてる?」
二人は顔を見合わせる。一応以前とは変わらないような態度で臨んでいた筈だが。
「まだそんなにはっきりはしてないだろうけど…ばれてる気がする…」
「え〜〜っ!?ど、どうしよ?何がいけなかったのかな!?」
最も余程鈍い人物でもなければ二人の違いは、周りからみて一目瞭然なのだが、変な所で鈍い二人は気付かない。
「僕もログさんに殴られたりするのかな…?まぁ、それぐらいは覚悟してるつもりだけど」
「だ、大丈夫!あのバカ親父にゃあ手は出させないから!絶対に!」
その必死なまでの決意が嬉しくて、再び王子の暗黒面が顔を出す。
「ラン、キスしたいけど…いいかな?」
「え、えぇ!?なんでまた急にっ!?ってもう手が!?」
またもやいつの間にかランの肩にはもう手が、逃がすまいと禽獣のように掴んでいる。
「ランの一生懸命さが可愛くて、ね。…いくよ」
「ちょっ、ちょっと待っ――」
唇が触れるだけのキス。今まではここでお終いだったが今日のファルーシュは一味違った。
そこにはもうバレたのだからいけるとこまで、という気持ちがあったものか――
ともあれ終わらない。まずは唇を甘噛みする。ランがビクッとするがこれぐらいはまだ許容範囲のようだ。
カプカプとランの唇を味わい、そして舌を侵入させる。
「んっ!?んんっ!んむぅ〜〜〜!?」
流石にこれは予想も出来なかったのか、声を出し手をばたつかせる。
それでもファルーシュは侵入を止めず、舌で歯をなぞり、口腔裏を舐め取り、唾液を飲み込ませようと移動させる。
「んふっ!?ん〜ん〜、ふむぅ、……ごくん」
自分の唾液を飲み込んだのを確認してから、ゆっくりと唇を離す。その二人の間からは糸が引いていた。
「ラン…凄く良かったよ。……大丈夫?」
あまりの衝撃的な出来事にランの目はトロンと焦点が定まっておらず、体はガクガクと震えている。
本人としては、そんな事聞くな!と言いたかったのだが、それもままならない。
「ふ…あふ…はわぁ…」
とだらしなく口をポカンと開けて呆然とするばかり。ならばよし!とファルーシュは一気呵成に攻勢に出る。
「もう一度いくよ。今度はランも舌を出してね」
「ふあ…?んむっ!?んちゅっ…ふむぅ…じゅるっ、ちゅばっ…」
先程の言葉が理解できたのか定かではないが、それでもランは舌を差し出してきた。
舌を絡ませ唇を強く押し付ける。面白いもので舌を引っ込めると、物欲しそうに舌をより差し出してくる。
それが少し楽しくて、いけない事だとわかりつつも、後で殴られる事を覚悟しながらランの口を、舌を弄んだ。
149群島好き:2006/04/24(月) 20:35:05 ID:UcT+6U52
色恋の事など何も知らなかったであろう少女が、懸命に求めてくる。
それだけで嗜虐心をそそられ、また年頃の少年が求めるこの先へ、という渇望が湧き出してくる。
それでも大好きなこの少女を無理矢理などとはしたくない。それは最も忌むべき行為。
「ラン、もうあまり我慢出来ないんだけど……いいかな?」
キスを止め、真っ直ぐにランを見つめて素直な気持ちを言う。
「ふわぁ…王子様…我慢、してたのか…?」
どの予想とも違う返事に少々狼狽する。それはどういう意味なのか――
「ご、ごめんよ、あたし、そういうの良く分からなくってさ。その…男と女が抱き合う、ってのは知ってるし、
 好きな人同士がするってのも分かるんだけど、ど、どういう風にすればいいか分かんないし…。
 でも王子様が我慢してたんなら、あ、あたしは応じたほうがいいのかな?」
「今日が嫌なら、僕は無理矢理なんてしない。その…ランの事が好きだから二人が納得してから、その、したいし…」
「あ、あたしは嫌なんかじゃないよっ!」
突然の大声に驚くファルーシュと、自分の爆弾発言に真っ赤になるラン。
沈黙が続き、やがてどちらからともなく笑い出す。
「…何か僕達、お互いの事考え過ぎてたみたいだね」
「ホントだな。自分の頭だけで考えたって答えが出る訳ないのにさ、ははっ」
どこにでもいる恋人達のような甘い一時などは存在しない。だけど二人にはこれで十分な訳で。
「ラン、大好きだよ。……君を抱きたい」
「あたしも大好きだ!だから…王子様に抱かれたい」
150群島好き:2006/04/24(月) 20:35:37 ID:UcT+6U52
ベッドにちょこんと座るランはいつもより小さく見えた。
これから起こる事への不安と、少しばかりの期待が今の彼女をおとなしくさせる。
非常におおまかな事しか知らないランは、全てをファルーシュに任せようとした。それでも緊張は止まる筈もない。
「え、えっと、服は脱いだほうがいいのかな?」
知る限りの知識を総動員して言ってみたものの、幾分、暗黒面が出てきたファルーシュは認めない。
「僕に全部任せてくれるんだろ?だったら服を脱がすのも僕の役目だよね」
「あうぅ……」
ガチガチに緊張するランを尻目に、まず頭巾を外し見た目より量の多い髪が肩にかかる。
そして腰の帯を外し、羽織っている着物を脱がし、ランは胸に巻くサラシとスパッツだけになる。
「やっぱり、ランの肌は綺麗だね。すべすべしてる」
そう言って遂にサラシを解こうとする。スル…スル…と少しずつ解ける度に乳房が露になっていく。
時々、視界に入っては意識をさせられる胸が今は何の障害もなく見られようとしている。
「ランの胸…綺麗だ。…さわってもいい?」
「お……おう…」
色気のない返事だが、何か無性に嬉しくなる。
ふにゅふにゅと優しく触れる。柔らかさに感動しつつ、その感触をもっと確めようと両手で揉んでいく。
「ふあっ……何か、変な感じだ…」
その言葉にもう少し力を込めようとする。
「んんっ、はぁ…あうっ、な、なんか、すげぇ…ぐにゃってなってる…」
全体を揉みしだきつつ、それでも悪くないという声を出してくれるので、狙いをその頂につける。
「はぁ、ふあっ…あいたっ!」
「ご、ごめん!ちょっと力が強かったかな?」
「あ、あたしこそ大声出してごめん…。そこがそんなに敏感なんて分かんなかったし…」
どこまでもお互いを気遣う二人。
「うん、次はもうちょっと優しくやるね。………このぐらいでどうかな?」
「う、うんっ、ああっ、すごっ…なんかビリビリって…ひゃうっ!」
力加減を理解したファルーシュはそのまま乳首を弄る。指先で、指の腹で、また二本の指で少し捻ったり。
「ああうっ、ゾクゾクってしたり、ふはぁ、あうんっ、何か変に、なっちゃうっ、はぁんっ…」
思う存分声を上げてくれる事に嬉しく、そしてただ手で弄るだけでは物足りなくなる。
ちゅぱっ
「ふああっ、お、王子様、何やってんだ!?そ、そんな赤ちゃんみたいな!?ひゃうんっ!」
口全体で乳房を吸い、その口内では舌でなぞり、乳首を弄り、また歯で甘噛みする。
ランにとって予想だにしなかった事と、未知の体験による快感に頭が真っ白になる。
「そんっ、なっ、おうじ…さま、吸っちゃ、ふわぁっ!だめ…ひゃああっ!」
少し初めてなのにやりすぎたかな?と思い、口を離す。非常に残念ではあったが。
「…ラン、大丈夫?やり過ぎた…かな?」
「はぁ、はぁ、ふぅ…当たり前…だ…。ふぅ、で、でも気持ち悪いとかそんなんじゃないからな!
 ただ凄く驚いたってだけで、す、少しは気持ち……よかった……し」
最後の消え入りそうな声での本音に、ファルーシュの頭は衝撃を受ける。何て可愛いんだ!
「その、次は下を脱がすけど、いいよね?」
下、その言葉にランは一瞬考え、直ぐに顔を紅潮させる。
「やっぱり脱がなきゃ駄目か!?…駄目だよな……うぅ、恥ずかしい…」
151群島好き:2006/04/24(月) 20:36:13 ID:UcT+6U52
ベッドに横たわらせ、スパッツを脱がす。そこには後は下着が残るのみ。
「触るよ…あんまり緊張しないでね」
気休めにしかならないであろうが、それでも前置きをして、下着の上からさする。
シュッ…シュッ…とこするだけだが、そこは既に熱気に塗れ濡れている。
「もう濡れてるんだ…」
「あうっ!なな何で!?あたしの体、おかしくなっちまったのか!?」
本当に何も知らないのだと思い、ついクスリと笑ってしまう。
「大丈夫、これはランが気持ちよくなってくれたって証拠。何もおかしい事じゃないよ」
「そ、そうか。ならいいんだけど…ひゃうっ!これ、なんか、変に、なっちゃうよ…きゃうっ!」
「もっと声を出していいんだよ。感じて声を出してくれると僕も嬉しいし」
「そ、そうなのか。うあっ、お、王子様が嬉しくなるんなら、あ、あたしも…ひゃあっ!」
下着の上からさするだけの愛撫。それだけでランは声を上げてくれる。しかしまだ物足りない。
既に染みが出来始めている下着を取り外したい。
「じゃあ…これも脱がすよ…」
「ええ!?ちょっ、ちょっと待っ――」
行為を止める声をあえて聞き流し下着を脱がす。外気に曝され、誰も見たことのない場所が露になる。
「これが…ランの…。湿ってヒクヒクしてる…」
半ば独り言のように呟くが、その声はランの耳に入ってしまう。
「あうぅ〜、そんな、説明しなくても……ひゃうんっ!」
今度は直に触れる。茂みをさぐり、肉の感触を確める。
「熱くて、濡れて、うごめいてる…。これがクリトリスかな」
クレパスの上部の小さな突起を見つけ、さする。
「ひゃああっ!!い、今、なんかきた!そこは、まずい…ああっ、はうっ、ひああっ!」
今までの最上の声を出し、体が快楽に包まれる。体を駆け巡る衝撃が、頭を麻痺させて、嬌声を上げさせる。
「ふあっ、んくっ、ふぁふぅ、ひぃっ!?こえ、がっ、とまらなっ、ひゃうっ、あああっ!」
両手はシーツを握り締め、体は衝撃が来る度に揺れる。だらしなく開いた口からは涎が、その両目からは涙が零れている。
しかし身体は正直に、蜜壷からは愛液を垂れ流す。
ファルーシュとしてはもう少しこの声を、この痴態を見ていたかったが本能を無理矢理押し留める。
何しろランは初めてなのだ。気遣ってあげなければいけない。
それとファルーシュ自身ももう限界だった。既に秘部は十分な程濡れている。
「ラン…もう大丈夫かな。そろそろ挿入れるよ」
手を止めてランの顔に身を寄せる。
「はぁっ、ふぅ…も、もう王子様も、が、我慢できないんだろ…?あ、あたしも、王子様と…繋がりたい…」
その言葉に今日一番、いや生涯一番の衝撃がファルーシュの頭に響く。
こんな言葉を聞かされて、少女を愛おしく思わない奴はいない。
真っ直ぐで、純真で、真剣な言葉に脳が蕩けていく。ランの同意を待たずにキスをする。
「ふむぅ!?はうっ…ちゅ、ぺろ…んちゅっ…」
152群島好き:2006/04/24(月) 20:36:52 ID:UcT+6U52
名残惜しいキスを済ませ、自らの服を脱ぐ。既にペニスはガチガチに勃ってしまっている。
「うおあっ!?そ、そんなもんが、は、入るのか!?ふ、太い…」
今までに見た事のない、興奮している男のものを見てつい声を上げる。
予想してたものとは全然ちがうものに少しばかりの恐怖が出てくるが、それ以上の興味も出てくる。
「な、なぁ、ちょっと触らせてくれないか?お、男の人のって、は、初めてだし」
「ええっ!?いや、まぁ構わないけども…」
ファルーシュの許しが出た所で、まずはじっくり眺めてみる。
少し、いやかなりグロテスクなフォルムだがビクビクと震える様子は少し可愛らしく思った。
次に触ってみる。熱を持つそれは硬い。感触を確めてますます不安になる。
「すっげ…、こ、こんなのが、あ、あたしに入るのか?何か怖くなってきたけど…」
「うん、まぁ最初は多分痛いと思うけど……我慢するのは辛いけど、怖いのなら…やめたほうがいいかな?」
「な、何言ってんだよ!そりゃ確かに…ちょっとは怖いけど、ラフトフリートの女は度胸満点!
 惚れた男の為なら何だってやるぜ!」
気丈に振舞う少女が可愛らしくて、これ以上の迷いは少女を不安がらせるだけだと決心する。
「うん、わかった。…それじゃあ横になって」
ランを横たわらせ、それに覆い被さる形になる。
「じゃあ、挿入れるよ…」
ランの愛液をペニスに擦りつけて、誰も侵入した事のない秘裂を突き進む。
「あぐぅっ…うあっ…あ、熱いのが…」
熱を持った肉棒が熱を持った媚肉に絡まり奥へと侵入する。そしてひとまずの行き止まりへ。
「あうあっ…こ、これで……全部なの…か…?」
「ごめん、まだなんだ。…あんまり苦しまないように一気にいくよ」
ズグッ!
「うあああああぁっ!!」
処女膜を破り、少女は今、女となる。
ファルーシュはその悲鳴を聞き、心の中で謝ると同時に、愛しの少女を貫いたという黒い達成感も感じる。
それでもランの呼吸が落ち着くまで、少し待つ。
ハァッ…ハァッ…と呼吸が整ってから少女を気遣う。
「大丈夫…とは聞かないけど、少し落ち着いたかい?」
まだボロボロと涙を流しながらも、ランも言葉を返す。
「うぅ〜、ひっく、こんなに痛いもんなんて、えぐっ、思わなかったけど、う、うん、少しは、ひっく、落ち着いたかな…」
それのどこが落ち着いたのかと言いたいが、そんな事を言ったら拳でも飛んできかねない。
あくまで気丈に振舞っているのだから、その心意気は汲み取らねば。
「うん、でも動いても大丈夫かな。このままでも正直、気持ちいいんだけどもっとランを味わいたくて」
「えぐっ、あたしは料理じゃねーぞっ!でも…あたしも…王子様にもっと気持ち良くなってもらいたい。
 ここまでいっぱい気持ち良くしてもらったから。だから…動いていいぞ!」
ぶっきらぼうで、乱暴な言い方だけども。ランの想いが心に染み渡る。
「わかった。出来るだけ優しくするから…動くよ」
本能のまま動くのではなく、少しでも楽にさせようと正に抱きしめる。
153群島好き:2006/04/24(月) 20:37:21 ID:UcT+6U52
「あうっ、はあっ、ひぐぅ!だ、大丈夫…だか、ら、あうっ、ひっく、王子様、大丈夫、だから…」
いかに取り繕おうとも始めて体内に異物が入っているのだ。辛くない訳がない。
それなのにこの少女は自分の事を想い、愛する事の証を残したいと思っている。
男として、これからも傍に立つただ一人の男としてこれほど冥利に尽きる事はない。
「あふぅ、ふあっ、うああっ!王子様ぁ…王子様っ!」
自分の事だけを呼び、腕を首に回してくる。
心細いのか、それとも大好きな人の温もりを感じていたいのか。ファルーシュには分からない。それでも
「ラン、大好きだ!ラン、ラン、ランっ!」
愛する少女の名を呼び、その身体を貪る。抱き締めるように、その身に溺れるように。
ランを早く楽にしてあげたいと、腰の速度を上げる。
それでなくとも処女特有の締め付けは、先程からペニスを食いちぎらんばかりでファルーシュも限界なのだ。
「あうぐっ、は、早く…うああっ、すごっ、お腹にっ、響いてっ、うああっ!」
「ラン、凄い…もう、限界だ…出るっ!」
ドビュルルッ
引き抜いた腰の先から、ランの身体を白く汚す。大量の精液が、ランの身体に、胸に、顔に降りかかる。
腰が抜けたようにファルーシュは座り込み、白く飾られるランを見る。肌の色と白のコントラストに見入ってしまう。
「はあっ、はあっ…すっご……これが、男の人の…」
一方ランは自分の体を見る。粘つく液体をかけられても不快などとは思わない。
これが自分の体で大好きな人が気持ち良くなってくれた証なのだと分かったから。
今はもう自分の体を抉られている痛みもどっかに行ってしまった。白い精液を触ってみる。
少し熱を持っていてネバネバする。その時、いつだか友人が言っていた事を思い出し舐めてみる。
「うえぇ……苦え……」
「ラ、ラン!何も舐めなくても!い、今何か拭くもの持ってくるから!」
突拍子もない行動にファルーシュのほうが焦る。手拭いを持ってきてランの身体を拭く。
「いや〜、前誰かが舐めると男の人は喜ぶって言ってたからさぁ。王子様もそのほうが嬉しいかなって思って」
「そりゃ、嬉しい…じゃなくて!で、でも元はと言えば僕がランを汚しちゃったからなんだよね」
ランは今や身体を見られて拭われる事も忘れてファルーシュに言いかかる。
「そこで謝ったりすんなよ?王子様だって流石に、な、中はまずいって思ってやったことなんだろ?
 これが精液なら、あ、あ、赤ちゃんが出来ちゃうかもって」
「…ありがとう、うん、その通りだね。…はい、拭き終わったよ」
そう言って手拭いをその辺に投げ捨てる。
「さ、少し休もう。ほらそのまま横になって」
「え、ええ!?ふ、服もなしでか!?だってここ王子様のベッドだぜ!?」
「僕も一緒に横になるんだからいいんだよ。そーれ」
「おわああぁ!?」
154群島好き:2006/04/24(月) 20:37:55 ID:UcT+6U52
ファルーシュのベッドの上、裸のまま抱き合い横になる。もっともランはすぐに後ろを向いてしまったが。
「う〜ん、どうしてこっちを向いてくれないのかなぁ」
背中から手を回し抱き締めながら少し不満を言う。
「しょ、しょうがないだろっ!恥ずかしいんだから!あっ、こら、変なとこ触るなっ!」
決して本気ではない怒りと、照れてそっぽを向くのが可愛くてクスリと笑いちょっかいを出す。
すこしばかり甘い一時というのも味わいたいが、やっぱり自分達には合ってないようだ。
「ごめんごめん。ところで身体のほうは大丈夫?何か調子の悪い所はない?」
「あ、うん。まだ何か入ってるような感触があるけど、別に大丈夫だぜ?」
「そっか、良かった」
そう言ってまた抱き締める。今度は抵抗はない。そして今度はランから言葉を発する。
「あ、あのさ、王子様?今更言うのも何だけど……本当にあたしで良かったのか?」
それはまだどこか心に残るしこり。しかしファルーシュは、
「…ラン、こっちを向いて」
「え?え?」
「いいからこっちを向いて」
以前のような優しい声ではない。真剣な、そして怒りの声。
「王子様……」
手を振るわれ思わず目を瞑る。しかし
「あいたっ!デコピン!?」
「本当に今更だよ…。ランが変な事言ったからお仕置き。これに懲りたらもうそんな事は言わない事。いいね」
「で、でもっ!」
「ランじゃなきゃ嫌だ。その気持ちは絶対に変わらない、誰に言われても変えない。
 それとも皆の前でランへの愛の誓いを宣誓しようか?」
最後ににこやかに笑い、その想いをランにぶつける。
「それだけはやめてくれ!!恥ずかしすぎる!もう言わないから!」
そんな事されたら死んでしまう!と言わんばかりに謝る。
「まったくもう…えいっ!」
「きゅぷっ!?」
力強く、しかし優しく抱き締められファルーシュの胸板に頭を寄せられる。だけどこれ以上の確め方はないだろう。
「へへっ、王子様、あったかいな」
愛されてる、と実感し、嬉しくて涙を見せないように頭をうずめる。
そしてファルーシュも最後に、いや、これから何千回言うであろう言葉を発して眠りに落ちる。
「大好きだよ…ラン…」
155群島好き:2006/04/24(月) 20:38:55 ID:UcT+6U52
きりのいいここでひとまず。あと少しぐらい続きます。
156名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 20:59:21 ID:MAYvAroq
>>142
とりあえずsageるのと、投下はある程度まとめてからって言うのをお勧めする。
>>155
乙、続きに期待。
157名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 21:08:09 ID:xmPqZuQ1
>139
GJ!!
文章がとても上手で、情景や感情が浮んできますね。
ちょっと涙腺にキタ。二人の青臭さと、フェリドの懐の深さが素敵です
158名無しさん@ピンキー:2006/04/24(月) 23:25:58 ID:oSiY9DrD
また来たのかよ群島。
お前もういらねえよ。
159名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 00:43:49 ID:ko/n/T12
少なくとも>>158よりは余程いる人材だと思います
160名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 00:50:59 ID:UzaKcfMw
もう構わない方がいいよ
161名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 01:06:41 ID:TkDZSy2H
いや君も構うなとかスルーしろとか、もういい加減鬱陶しいからわざわざ書き込まんどいて・・・
出来てる奴は言われんでもそうするし
162名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 01:11:15 ID:2ZxhusfZ
群島アンチ、文句言うなら貴様が作品投下しろ。
群島氏に何か恨みでもあるのよ
163名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 01:11:33 ID:DWJFreV+
>>139>>155共にGJ!!
ラブラブもいいけど悲恋もいいなぁ。ギゼルがサイアリーズのことを「姫様」と呼んで
めちゃめちゃ慕ってた時期もあったんだと思うとなんか萌えるなww
164名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 01:16:03 ID:1XkFKZe2
群島諸乙w
馬鹿のひとつ覚えみたいに
文句あるなら作品投下しろかw
馬鹿だからそれしか言えないんだな。
こんなキモ小説で神なら
世の中のオタクはみんな神だな。
レベル低すぎるw
165名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 01:36:20 ID:DWJFreV+
>>164
にんべんを入れないと信者になってないぞ。イ諸と使うんだ。
166名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 01:58:34 ID:FEcSqViB
 萌え話題をしよう。
 女王騎士のフリフリの帯、萌えー。
リオンもそうだが、川に落ちたら浮かんでこれなさそうな装いだよな。
167名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 02:12:26 ID:ljZePvtj
たしかにw
あの服装は水を含むとかなりの重量になりそうだw
168名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 04:06:48 ID:aPbZxJY3
だな、あとTのカスミがエロイのはガチ
169名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 04:24:56 ID:1XkFKZe2
リオンはガチでストーカー。キモイ。
170名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 05:13:03 ID:dAuE24wo
群島叩きを擁護するつもりはないけど釣られてる群島マンセーヲタどもは正直痛いと思うんだが、どうか
受け流しできない低脳多すぎる
171名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 05:59:54 ID:VF3a9U6g
女王騎士の尻尾のフリフリは民族衣装的な何かだろうか…?
複雑怪奇なあの衣装、実は尻尾引っ張ったら瞬間芸のようにマッパになれるとか
172名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 07:10:38 ID:DpfXaNjb
イザベル様にジーンの館で働いていただくと、
素でマティアスがプレイルームの中までついてきそうで困る
173名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 07:24:28 ID:IIbDF2dy
もちろん、マティアスもプレイに協力するんですよ
174名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 07:37:11 ID:QkMBsr6y
一分の隙もない徹底的な責めの後浴槽に投棄か
175名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 07:47:33 ID:mdzYuC9u
いやいや、男の下半身にたまった悪を退治するという立派な仕事ですから、投棄はされませんよ。
まぁ、マティアスに抜かれることに変わりないかもしれんが。
176名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 16:35:19 ID:sMyKQHq6
イザベル・キャザリー・ゼラセの「高飛車」は、ありがちではあるがネタにならないだろうか?
177名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 16:37:56 ID:im1fBLct
>>172-176
期待している
178名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 17:25:34 ID:nih2w738
あの三人が揃ってガヴァヤの性奴隷とかだったらピンコ勃つんだけどな。
179名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 19:08:55 ID:k4MYVCkq
キャザリーものは今執筆中なんでもう少しお待ちを
180名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 20:09:23 ID:nSic/5YC
3の漫画11巻を読んだ。
ラストの演劇クリス良いなあ。
181名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 21:21:35 ID:JYcMt9d3
>>179
キャザリーwkwk
182名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 21:28:13 ID:NogJTyyx
5のデータコンバートで3をやると入手できる台本「女王奪還」
ファレナ女王騎士ミアキス著
…という小ネタが浮んだが、エロにならん。
183名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 23:38:02 ID:NEyigra0
>>180
ドレス姿のクリスいいね
漫画11巻設定のヒューゴとクリスのSSが見たくなってしまった
184名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 12:08:16 ID:jTyAfXGH
このスレ的にはダインとサリーシャはアウトなんだろうか。
この二人けっこう好きなんだけど、女側が半分モブキャラなので躊躇う。
サリーシャにかわいい顔グラがあったらなあ〜
185名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 12:17:48 ID:M81Oe+mP
サリー者の衣装はなんかリムっぽい
186名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 12:20:58 ID:qjmT3mx5
そもそもダインの話題があんまり出ないからな。
ほづみキャラはルセリナ以外は絵師がもともとBL作家のせいか、
あんまり魅力感じない。
他の絵師さんに比べてキャラが薄っぺらく見えて萌えないんだよなあ…。
187名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 13:41:14 ID:fFqvKPhP
貯蔵庫が見れん…
188名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 14:06:10 ID:asojK2O6
いや、普通に見られるよ
ソルファレナからこんにちはぁ
ミアキスちゃんクッキングのお時間ですよぉー

今日のお料理はちょぉっとだけ手が込みますので
まずは練習から初めてみましょうねぇ。

まず材料にバナナ1本と、たまごアイスを2個を用意します。

たまごアイスを左右に縦に並べて、その真ん中にバナナを配置しましょう、はい簡単ですねぇ。

配置ができたらそれぞれの根元を白い紐でキュっ〜と固く縛っちゃいましょうねぇ。

そして本番では一旦お湯につけて消毒して洗うんですが、ここは練習なので省略しちゃいましょう。
たまごアイスが溶けちゃいますしね。

はい、これで下準備は完成です。ここからいよいよ調理が始まりますよぉ。

斬っちゃいます。小太刀で。
たまごアイスも、バナナも根元からバッサリと。
手間をかけずに一気にスパっと斬っちゃうのがポイントでもあり優しさですよぉ。
小太刀がお手元になかったら長巻で代用しても構いませんからねぇ。

次に切り口に針を通します。
本番なら数ミリ程度の穴があって、そこに挿れるものなんですけど
ここでは練習用のバナナの真ん中にとりあえず挿しちゃいますねぇ、えぇい、ブスッ!
ちなみに針は黒ずくめの女の人から借りてきました。

それからよく冷えたお水に濡らした紙を
切り口にあてがって冷やします。
紙は破れちゃわないように耐水性のあるものを使用してくださいねぇ。

ここまできたらほとんどできあがりです。

あとは2,3時間程室内を歩き回らせた後に
3日ほど寝かせてから
針を抜いて、勢いよくお水がでたら完成なんですけど
練習では紙の部分までで大丈夫ですよぉ。

うまくできましたかぁ?

じゃあ本番にいってみましょお〜。

用意するものは
冥夢の秘薬と、
ロイ君で…
190名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 20:25:34 ID:KpwrkMCb
グロならグロって書いてくれな
191名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 20:43:39 ID:lQL/gsGy
>184
私もダイン×サリーシャって妄想したんだけど、サリーシャに顔グラ
ないので、どうも難しくて…。
なんとなく自分の中では2のヒルダを若くしたようなイメージ。
192名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 20:52:27 ID:KpwrkMCb
シリーズで恋人の決まった高嶺の花って、
オデッサとテレーズとジルとアルくらい?
若かりしサナもそんなかな
193名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 20:54:45 ID://cFWoN9
>>192
厳密には違うかもしれんが1のソニアとか
194名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:25:59 ID:ziOOQxLp
イク、テンガアールとか。
195名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:27:05 ID:ziOOQxLp
スマンちっとも高嶺じゃないなorz
196名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:35:16 ID:rQVMSa7N
>>193
つウィンディ様
197名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 21:36:21 ID:Ch5VmUvu
アルシュタート陛下も高値の花だな、恋人ってか人妻だけど
だがそれがイイ
198義勇兵:2006/04/26(水) 21:53:25 ID:6SaXgtPy
>>28からの続きを投下します。本拠地壊滅話の最終話です。
登場キャラはオボロ探偵事務所のメンバー+ナクラ。
エロはサギリ輪姦。
199義勇兵:2006/04/26(水) 21:56:36 ID:6SaXgtPy
シグレは苦戦していた。
オボロ探偵事務所の面々に与えられている部屋の前に仁王立ち、
忍び刀を振るって彼らの部屋の入り口を何重にもとりかこむ兵士達と渡り合う。
元幽世の門の一員として、徹底した訓練を施されたシグレの戦闘力は並の兵士の比ではない。
「めんどくせえ」が口癖の、普段の怠惰な様子からは想像もつかないほどに体力もある。
だがシグレが受けた訓練はあくまでも暗殺者としてのそれであり、正面からの戦いは得意とするところではなかった。
それでも部屋の中にいるサギリやオボロ、フヨウ、彼ら家族を守るため、一歩も退くわけにはいかない。
しかしそれでは攻撃を避けるために動くことすら満足にできないし、
一人の敵にだけ意識を集中させることもかなわない。
扉は開け放したままであり、部屋の中からはサギリが苦無を、オボロが名刺を投げつけてシグレを援護するが、
ともに投擲武器である以上、その数には限りがある。そしてその数は、もうそれほど多いものではないはずだ。
勢いだけで突き出されてくる槍の穂先を首の動きだけで避け、逆刃に構えた刀で喉元を斬り裂く。
だがその時には左から剣が振り下ろされている。
それを袖口に仕込んだ短刀を引き出して受け止め、金的に足蹴りをくわせて怯んだところを突き殺す。

「ああっ…! めんどくせえ、めんどくせえ!」
避けては斬り、受けては突く。
敵の返り血を全身に吸って重くなった衣服が動きを鈍らせる。
充満する血臭が嗅覚を侵し始め、徐々に勘が失われていく。
このままではじきに殺される。
そんな思いが脳裏によぎった。
かつて暗殺者として、数え切れぬ者達の命を奪った。
だからそのこと自体は当然だとも思う。
しかし、今殺されるわけにはいかなかった。
守るべき人がいる。
すべてをかなぐり捨ててでも、守りたい人達がいる。
「負けるわけにはいかねえ」
気力を奮い起こし、シグレは戦い続ける。
だが敵は無情だった。
大切な人を守りたいというシグレの想いを、破壊と殺戮と凌辱の欲望で押し流そうとするかのように
何人死のうとその屍を乗り越えて、攻撃を仕掛けてくる。
「チッ!」
短刀が折れた。
いつの間にか背後からの飛び道具の援護も止んでいる。
「死ねや!」
敵が斧を振りかぶり、純粋な殺意をぶつけてくる。だめだ。くらう。
200義勇兵:2006/04/26(水) 21:57:18 ID:6SaXgtPy
「ゲボッ…」
しかしその斧が振り下ろされることはなかった。
かわりにどす黒い血の塊を吐き出し、その敵はくずおれた。
「オラオラオラ!!」
気合の声とともに、次々と敵の兵士が倒されていく。
それが何度か続いた後、目の前の敵の首が消え失せた後ろに見覚えのある顔が現れた。
「なさけねえ野郎だな。こんなクズどもにてこずってやがるのか」
「あんたは…」
「ナクラ? てめえナクラじゃねえか!?」
シグレが彼の名を呼ぶよりも早く、敵の一人が叫んだ。
彼はもともと城を攻めているアーメス南岳兵団の一人だった。

「てめえ、死んだんじゃ…」
「そんなことより、なにしやがってんだ! てめえ裏切りやがったのか!?」
口汚く罵りの言葉を口にする兵士どもに、ナクラは手にした槍を振るうことで答えた。
瞬く間に二人の命を奪い、その死体を見下ろして呼ばわる。
「俺は俺の目的のために南岳兵団にいただけだ。てめえらを仲間と思ったことなんかねえ」
ナクラはシグレの隣に立ち、槍をかまえた。そして視線は敵に向けたまま話し出す。
「いいか、あの女を殺すのは俺だ。ゴドウィンの野郎をぶっつぶし、奴等に味方するアーメスをぶっつぶし、
幽世の門をぶっつぶした後で、俺があの女を殺す。
だからこんな奴等にあの女を殺させることはゆるさねえ」
「あんた…」
「もう戦えねえってんなら邪魔だ、すっこんでろ」
それで話は終わりとばかりに、ナクラは猛然と攻撃を始める。
屈強な肉体から繰り出される槍は、恐るべき死の誘い手となって敵兵に忍び寄る。
「めんどくせえ…なんて言ってる場合じゃねえな」
まだ戦える。
シグレは新たな力が湧き上がってくるのを感じ、再び忍び刀を振るい始めた。
201義勇兵:2006/04/26(水) 21:58:01 ID:6SaXgtPy
それからどれほどの時間が経ったのか。
ついにナクラの武器が失われた。
深く突き刺さった刃が抜けなくなり、力を込めて抜ききる前に、他の敵の攻撃がきたのだ。
それをかわすために、ナクラは槍を手放さなければならなかった。
それで、彼の戦いは終わりだった。
むきだしの肩や腕に剣が食い込み、気合とともに繰り出された槍が鎧を突き破って腹に刺さった。
大量の出血とともに、急速に意識が揺らいでいく。それを無理やり引き止めて、
ナクラは拳をつくって一人の頭蓋を砕いた。だが、それまでだった。
足に、脇腹に、胸に、何本もの刃が突き刺さっていく。
そして最後に額に槍が飲み込まれた。それが、彼の人生を閉じる決め手になった。
「サギリ…」
最後に彼はシグレの家族の名を呼んだ。
そして、こときれた。

シグレはその声を聞いていた。
悲しかった。
これほどの男が、こんな有象無象どもに殺されてしまったことがたまらなく悲しかった。
シグレは家族のために命をかけて戦ってくれた男に、感謝を捧げた。
「どこ、向いてんだよっ!」
胸板が突き破られた。背中まで抜けたその一撃が致命傷となった。
(センセー…フヨウさん…サギリ…)
次々と家族の顔が浮かんでは消えた。
彼等はどうなってしまうのだろう。
たまらなく不安で、たまらなく怖かった。
だが彼等がどうなろうとも、シグレはそれに関わることはできないのだ。
シグレは絶望した。
絶望の中で、彼は死んだ。
202義勇兵:2006/04/26(水) 21:58:45 ID:6SaXgtPy
「ナクラさん…シグレ…」
入り口を守っていた二人が倒れ、敵兵が部屋の中になだれ込んできたが、サギリは彼らのことなど見てはいなかった。
彼女はどんな時でも笑顔以外の表情を浮かべることはない。
今もそうだった。
だが一つだけ違っていることがあった。
「サギリさん…」
オボロはこんな状況で、彼女の顔を見つめ、そして瞑目した。
泣いていた。
彼女は笑いながら泣いていた。
笑ったまま凍りついてしまった彼女の表情にようやく変化をもたらしたのが、親しい者を失った悲しみだとは。
やりきれなさにオボロは首を振った。
「おいおい、この女笑ってるぜ?」
「俺達に犯されるのがそんなに楽しみってか!」
敵兵が上げるあまりの言葉に怒りが湧いた。
感情がないのではないかと噂されるほどに、いつも落ち着いているオボロの顔が怒りに歪んでいた。
十人ほどは殺したかもしれない。
だが、それだけだった。この運命を変えることはできなかった。
ずたずたに斬り刻まれて、オボロもまたナクラとシグレの後を追った。

「それじゃそろそろお楽しみといくか!」
サギリににじりよる敵兵の前に、フヨウが両手を広げて飛び出した。
「やめなさい! サギリちゃんに近寄ったら許しませんよ!」
内心恐怖で卒倒しそうだったが、家族を守ろうという想いがそれを上回った。
足を震わせることもなく、声を失うこともなく、フヨウは胸を張って言い放った。
「てめえの許しなんかいらねえんだよっ!」
「ひっこんでやがれ!」
だが、無駄だった。
フヨウの決死の行動さえ、人面獣心の外道どもにはわずかな良心の呵責さえもたらすことはなかった。
下品な声とともに突き出された槍が次々とフヨウの身体を貫く。
最後までサギリを守ろうと両手を大きく広げたまま、彼女は死んだ。
「あ…」
ほんのわずかな間に、家族が次々と命を失う様を見たサギリの口から呟きが漏れる。
それが彼女が生きている間に上げた最後の声だった。
203義勇兵:2006/04/26(水) 21:59:23 ID:6SaXgtPy
「なんだよこいつ…なにやっても何の反応もしないぜ」
「もう死んじまったんじゃねえか?」
「いや、息はしてるよ」
「おい、ちょっとは楽しませてみろ!」
何人もの声がさほど広くはない部屋の中でぐるぐると回っている。
だがサギリにとって、そのすべては何の意味ももたなかった。
ソファに押し倒され、服を剥ぎ取られ、未開通の穴を肉棒でこじあけられても、彼女は眉一つ動かさなかった。
サギリの心はもう死んでしまっていた。
何を言われても、何をされても、何も感じない。
破瓜の痛みを与えられても、死んでしまった心はそれを痛いと思わない。
下劣な欲望が形となったような言葉を四方八方から浴びせられても、何かを答えようという気持ちは浮かばない。
肉体は生きていても、魂が死んでしまっているサギリは人形と同じだった。

「こいつ…なめてんのか!?」
くだらないプライドを刺激されたのか、サギリを貫いている男が何とかして彼女に声を上げさせようと
激しい責めを繰り返す。それに周囲の男たちも手を貸し、サギリに容赦ない凌辱を加えていく。
「こいつでどうだ!」
「なんとか言ってみやがれ!」
無理やり秘裂をこじあけて、二本目の肉棒が入り込んできた。
先ほどまで処女だったサギリのそこは、当然そんなものに耐えられるようにはなっていない。
自己中心的な欲望の律動に入り口が裂け、破瓜の血にまじって新たな血が流れ出す。
「こっちもやってやるぜ!」
サギリの腰を持ち上げて、他の男が菊門に強引にねじこんでくる。
さらにターバンをむしりとられ、髪で肉棒を包んでしごきだす男がいるかと思えば、
左右からはそれぞれの手に肉棒を握らされる。
さらには脇を締めさせられ、膝を曲げられ、全身のあらゆる場所に肉棒をあてがわれた。
「はははははっ! こいつは壮観だ!」
十を越える肉棒が同時にサギリの身体を這い回る。
周囲にはあぶれた男たちが輪をつくり、時折白い欲望をサギリの裸身に浴びせかけてくる。
それでも彼女は何も言わなかった。
それに頭に血をのぼらせた男たちが、さらに苛烈な責めへと移行していく。
それは確実にサギリの生命をすり減らし始めていた。

三十…五十…あるいは百。
数え切れないほどの欲望をその小さな身体に受けたサギリの肉体は限界に達し始めていた。
いい加減諦めたのか、大半の兵士は部屋を去り他の場所へと向かっていたが、
一部のしつこい者たちは執拗にサギリを犯し続けていた。
「ハア…これでも、かよっ!」
五回目の絶頂に達し、ずいぶん薄くなった精液をサギリの膣内に注ぎ込む。
それで限界に達した男は荒い息をつきながら、彼女から離れた。
「も、もうだめだ…」
「な、なさけねえな…俺はまだまだやれるぜ!」
大量の精を流し込まれて膨らんだサギリの腹を押して精液を流し出すと、
別の男が半ば萎えているものを無理やり押し込んでいく。
いくらも腰を振らないうちに限界がきた。
達する寸前に引き抜き、身体にふりかけるとそこに赤いものが混じっていた。
「げ…洒落にならねえぜ」
「赤玉かよ」
「でもここまできたらひけねえよ。とことんまでやってやる」
また次の男がサギリにのしかかる。
既に精を浴びていないところなどないようなサギリの身体に触れて一瞬嫌な顔をしたが、
それでも意地だけで腰を振り続ける。
だが彼等の努力…と言うのも愚かしいような行為のすべては無駄だった。
彼女の命は尽き果てようとしていたから――。
204義勇兵:2006/04/26(水) 22:00:01 ID:6SaXgtPy
(私、死んだのかな)
サギリは不思議な場所にいた。
辺りは一面の白。白い霧だけが世界のすべてだった。
周囲に自分以外の者の姿はなく、限りない孤独に包まれていた。
(ここにいつまでいなくちゃいけないのかな)
膝を抱えて丸くなってみる。
もう何を考えるのも面倒だった。
その姿勢をとってからどれくらい経ったか。不意に肩を叩かれて、サギリは顔を上げた。
(こんなところで寝ては風邪をひきますよ)
(…先生)
見慣れたオボロの顔が、温かい笑顔と一緒にサギリを見下ろしていた。
(ここで待ってて正解だった…のかね)
(できればサギリちゃんだけでも来なくてすめばと思ったんですけどねえ)
その向こうにはシグレとフヨウの顔も見える。
二人ともどこか残念そうな顔をしてはいたが、サギリを歓迎しているように見えた。
(ここはどこ?)
(死んだ人たちが来る場所…なんでしょうねえ、たぶん)
(つまり誰も助からなかったわけだ。やってられねえ)
サギリの問いにはオボロとシグレが答えた。
(そうなんだ…)
幽世の門を滅ぼすのは自分たちの仕事だと思っていた。
それを果たせず命尽きてしまったことに悔いはあるが、
それ以上にサギリはまた家族が揃ったことが嬉しかった。


(ねえ、あの人はいないの?)
家族ではない、でもここにいてほしい男の姿を探す。
それに応じるように、白い霧の向こうから一人の男が現れた。
(てめえを殺すのは俺だって言っただろうが。勝手に死にやがって)
サギリの顔を見るなり、ナクラはそんなことを言ったがその声は驚くほど穏やかだった。
(ごめんなさい)
(もういい)
ぶっきらぼうに吐き捨てて、ナクラは背を向けて歩き出した。
(どこにいくの?)
(死んじまったんじゃ、おまえを殺すこともできねえ。もうおまえらにつきまとう理由もねえ)
(待って…)
(あん?)
(いっしょにいこう)
(ああ?)
ナクラの逞しい腕を握って、サギリは彼の目を見上げて言った。
(あなたに殺されてあげることはできないけど、他の方法で償わせて。あなたのお父さんを殺してしまった罪を)
シグレたちは何も言わなかった。黙ってサギリとナクラの二人を見守っている。
(なにをすればいいのかわからないけど、でも…)
(……)
(あの…)
黙ったままのナクラに不安を感じて、軽く腕を引いてみる。
ナクラはそれをつまらなそうに見下ろして言った。
(だったらそのツラをなんとかしろ)
(え…?)
(その癇に障る薄ら笑いをやめろ。そうしたら…許してやらないこともねえ)
染み付いた作り笑いをやめろ…普通の人のように、いろいろな表情を浮かべられるようになれと。
暗殺のための技術ではなく、心からの自然な笑顔ができるようになれと。
彼はそう言っているのか。
205義勇兵:2006/04/26(水) 22:00:41 ID:6SaXgtPy
(がんばる)
(そうかよ)
(だから、いっしょにいて。でないとちゃんと変わったところ見せられない)
(…てめえらもそれでいいのかよ)
(私はかまいませんよ)
(他ならぬナクラさんですからね! 歓迎しちゃいますよ。あ、今度ワタシのゲームの相手してくれません?)
(あんたの戦いは隣でずっと見てた。だから…いいよ)
(ふん)
サギリの腕を少し乱暴に振りほどき、ナクラは彼等に背を向けた。
(ねえ?)
(うるせえな。行くんならさっさと行くぜ)
(うん)
笑って頷き、ナクラの背中に続く。
オボロ、シグレ、フヨウ…サギリの家族達は、そこにわずかな違和感を感じていた。
背を向けたナクラには見えなかったろうが、今の彼女の笑みは普段とどこか違っていたようにも思えた。
(センセー)
(ひょっとしたら…)
(ナクラさんが許してくれるのも、そんなに遠いことじゃないかもしれませんねえ)
忍び笑いを漏らして、彼等も二人の後を追った。



「…死んじまったか」
「犯り殺したのは初めてだな。あ〜、疲れた…」
「変な女だったな。ったく、なんだよこのツラは…」
精を吐き出しすぎて疲れきった身体を持ち上げ、兵士達は命の火の消えたサギリを見下ろす。

彼女は、嬉しそうに笑っていた。



(終)
206義勇兵:2006/04/26(水) 22:01:22 ID:6SaXgtPy
以上です。
出てこなかったキャラについてはご想像にお任せしますということで…
207名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 22:46:41 ID:ifvnmTZz
GJだけど切ねえ・・
208名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 22:59:10 ID:qjmT3mx5
壊滅シリーズはエロよりも純粋に小説としての完成度に惹かれる。
個人的に一番心に残ってるのはハヅキ・マリノ編なんだが、
今回も素晴らしい作品だ…。
毎回自分が好きな女性キャラが取り上げられるので楽しみにしてた。
最終話ということで、今までの作品の分まで超GJ。ありがとう!
209名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 00:23:04 ID:uh3XmP6b
悲惨だけどGJ
GJだけど悲惨…
210名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 00:36:53 ID:Seyye/Y5
なまじ質が高いので、このシリーズが終わると聞いて
もう読めないことを悲しむのか、
女達の悲惨な結末が締めくくられたのを喜ぶべきか悩む…

ともかくお疲れ様でした。次作も楽しみにしてます!
211名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 07:42:35 ID:ZhhVI3Ob
>196-197
ウィンディとアルは相手にとっては高嶺じゃないから外してみた
ソニアも同様
212名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 10:30:34 ID:/tZ8doTg
>>206
女性陣の悲惨さと、彼女たちをとりまく人々の姿がそれぞれ心に残ったシリーズでした。
新しい作品も楽しみにしてます!
213名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 12:44:22 ID:fjCSMvfB
>191
遅レスなんだけどやはりサリーシャを書くのは自分も難しそうな気がしてきた。
割とドラマがありそうで面白そうな二人だけど、やりすぎてオリジナルみたいになりそうだし。
チラ裏にでも書いておくことにする
214名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 13:14:40 ID:ZqCLk79u
>>206
泣いた
ありがとう、乙GJでした・・・
215名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 14:44:36 ID:T2qF2fqt
>>206
GJ
しかし、赤玉って。迷信だろアレは。
216名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 00:08:49 ID:624tI1oj
過疎りだしたか
217名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 01:39:27 ID:8HydRtWT
投下したいけどまだ完成してないんだorz
他の神たちもきっとそうさ…。
218名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 01:45:39 ID:A5zyU2xH
219名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 07:56:41 ID:tXHDHcH0
神待ち
220名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 11:25:45 ID:V4KmdXFk
気力不足で書けない
221名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 14:21:11 ID:8VV5/NAI
俺はもう十分褒めて貰えたし、書きたいものは書き切っちゃったからもう書く気力が起きないってのはある
222名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 14:59:07 ID:4UBng5lW
書ききれてないのがあるので現在奮闘中。きっとそれを書いたら幻水熱もさめるだろう。
しかしすすまないorz
223名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 15:50:29 ID:8HydRtWT
何でみんな萎えレスばっかりなんだ…orz

自分も執筆中だけど、まだまとまってない。
すぐにでも投下したいんだけど。

「これ書いたら終り」とか「冷めた」とか、
思っても書かないでほしかった…。
自分ははまるの遅かったから今いちばん萌えてるよー。
224名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 15:55:25 ID:m8zlVmpY
俺も狂熱の時は過ぎて今はマターリだなぁ
ネタはないでもないんだが
225名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 16:09:19 ID:4UBng5lW
>223 すまん、確かに萎えレスだな。
今熱が高すぎて妄想がひどいんで、さめるってのはやっと通常モードで萌えますって感じなんだ。
うん、自分でも何言ってるかわからん。
226名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 17:54:46 ID:xfvyLk/Z
キモイマンセー儲ばっかだしそりゃ書き手も萎えるよ
227名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 20:57:04 ID:xNXmGlDd
連休中は変なの沸くしな











俺はとりあえず肝心のゲームをクリアしてユルく過ごす
228名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:20:43 ID:FQHHpwVq
失職したので妄想する
畜生時間だけはありやがる
229名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 22:29:29 ID:1tQ/B/Mc
糞NEETは職安通いでもしてろ禿
230名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 23:19:22 ID:8HydRtWT
ネタはあるし萌えもあるが書く時間がない。
こんな時に限ってネタがある…でもエロなしだから投下するのも躊躇う。
進まないよなかなか…。
231名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 23:44:24 ID:WB73JjiM
 エロなしで投下している人もいるわけだし、断り書きをすればイイ! かもしれんぞ。
と無責任にも煽ってみる。
 萌えを共有させてくれ。
232名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 03:13:12 ID:2GIbJjy0
自分は数年前からずーっと萌えてるぞ。もちろん今も現役だし
少し前は、一月に保守のレス以外つかないくらいで
数ヶ月に一編投下があれば良いほうだった。
だから、こんなんまだ全然辛くないし、過疎って無いと思う。
233名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 10:05:45 ID:h+fBljdX
Part1の一桁からいたりする
234名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 12:43:57 ID:ajxiOYRg
懐古厨うぜー
235名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 13:48:58 ID:IyzU7K9R
要するにみんな、エロが濃くて抜けるSSが読みたいんだな。
236名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 13:59:48 ID:TmEDZB3C
まあエロい雑談でもしてネ申の投下を待とうぜハフゥー
237名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 15:27:09 ID:vSXslj2a
本拠地内で、ふたりがエロいことをするのに適した場所ってどこだろう。
238名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 15:38:04 ID:EUVzZEAM
塔の一番下
239名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 15:42:04 ID:RRBVYmNs
個室を持っているやつなら自室で充分。
ゲオルグの部屋なんかは一度も使われた事がないから意外と穴場かもしれない。
マリノの宿屋で部屋を借りても良いし
ビッキーに頼んで本拠地開かずの間にテレポートしてらもらうのも有りかも。
この板においては深夜の風呂も高確率でミルーンが不在だからお勧め。
羞恥プレイを望むなら牢屋へレツゴー!
石像の間で、想い人の形を模したものいわぬかたまりに見られながらの寝取られもあるよ。
240名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 16:45:40 ID:mf8xQcFh
誰もいない倉庫とかも使えるかもな
241名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 17:18:55 ID:7aI2tJRq
牢屋いい!
擬似尋問プレイとかたまらん
242名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 17:24:14 ID:6sF2X0c3
牢屋はいいな。加入直後のミアキスを尋問プレイしたり
粗相したリオンをおしおきと称してするのもいいし、
ショタ・護衛連合に捕まった王子が調教されてもいいし
ルクレティアさまの秘密のプレイスポットとしても最適
243名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 18:00:38 ID:qRIra4Yd
そして、レーブンにこっそり覗かれると
244名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 18:03:43 ID:RRBVYmNs
牢屋の人気に嫉妬

エイプリルフールにネタが思い浮かばず、
結果間に合わずにお蔵入りになった
ネタにもならない小ネタを投棄しときますね



「もうこんなにして…本当にリオンは敏感なんだね」
「あぁ、いやぁ、そ、そんな事は…」
「うそつき」
「ひゃっ、あぁっ!」
「確かに今日はそういう日だけど、
さすがに僕に対しての嘘はまずいんじゃないの?
お仕置きが必要だね」
「あ、あぁ、王子…ゆ、許してください」
「…そうだ、確かこの城に牢屋があったなあ?」
245名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 19:05:52 ID:lDQ0M2WD
カットされてるだけで、一応みんな部屋はちゃんとあると思うんだが。
ビッキーは別として
246名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 19:08:13 ID:JBM4+vVC
ある日突然、チーズケーキに108人もの甘党眼帯が群がっていたらどうしますか?

それも……とびっきり風来坊で とびっきり強くて
とびっきり頼もしくて とびっきりのお助けヒーロー。
しかも、そのうえ…

彼らはみんなみんな、とびっきり! チーズケーキのコトが大好きなんです…
でも、残念なことにチーズケーキと眼帯は内乱の中に暮らしていて……
一緒に居られるのは、単独行動中かHP減少時か平時だけ。
大好きなチーズケーキを自由に食べれない眼帯たちは寂しくて
戦争中もチーズケーキのことばかり想ってしまいます。

だから、ようやく終戦の日がめぐってきて……
チーズケーキが出されたときには、
眼帯は世界中の幸せを独り占めしたみたいに、とってもとっても…幸せ。
もちろん旅立つんだけど、気分はまるでメイドインヘブン!
そして眼帯は、チーズケーキをむしゃむしゃと貪って…
愛しげにチーズケーキにほお擦りし、こう……言うのです。

「美味過ぎじゃないのか?」「…罪な奴め」

眼帯たちは幼少の頃からずっとずっと、ただ純粋にチーズケーキのことが大好きでした。
やさしくってステキで世界にたくさんある、甘酸っぱい大切なチーズケーキ…
だから、いつもいつもチーズケーキを食べていたくて、
いつもいつも甘党天サドの眼を気にしながら………
ここに登場するのはそんな素直な武人たち…外見こそ 区 別 の つ か な い 眼帯たちですが、
想いだってみんな同じ―――――

「……チーズケーキ、大好き!」




「…ミアキスさん、顔色が悪いわね」
「ふふ、ベルちゃぁん…悪夢を見るときって、疲れてるんでしょうかぁ…」
247名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 22:51:10 ID:h+fBljdX
美容院プレイと称してガーターベルト姿のルセリナを鏡の前でイスに座らせ
M字開脚させて縛り付けふわふわの恥毛に精液を塗りたくって剃毛、
パイパンを指でかきだすように弄ぶ…などと妄想してみたが
あの世界に美容院なんかあるのかどうかが問題だ
髪結い師とかになるんかな
248名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 12:23:20 ID:LvJf+/fX
宿の中に連れ込むとマリノがうるさいので、
その場(宿の外)でハヅキを喰うベルクート。
でも声で結局バレる、という妄想ならしょっ中している。
249名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 21:18:18 ID:yiZlii8M
今日部屋の掃除していたら幻水外伝1のイラスト集が出てきた。
パラパラ見ていたら、スペシャルCGのイラストにゲオルグが居た。

その中のゲオルグは…嬉しそうにプリン食ってる。

何故そこでチーズケーキじゃないんですかぁ〜と言うミアキス声での
ツッコミと、やっぱりゲオルグはこうでなきゃ、という思いで複雑だった。


コレだけでは何なので。
J( 'ー`)し………フェリド×リオンってダメカナ?
250名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 21:34:17 ID:mazbzdq2
>>249
何を迷うことがある?
お前はお前の望むまま、進めばいいさ。
251名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 21:41:51 ID:fBonP+jz
なんかチラシの裏に書いてろってレスばっかだな
252名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 22:06:21 ID:Txj4piv4
251 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/04/30(日) 21:41:51 ID:fBonP+jz
なんかチラシの裏に書いてろってレスばっかだな
253アレニア恋物語(1) ◆IGA.li4jPs :2006/04/30(日) 22:39:43 ID:J/zlDxrY
アレニア×ミアキスでかなり事実とは異なります。
個人的にアレニアさん好きなので…エロは現段階では×です。

遂に反乱軍に市内まで踏み込まれた。
ザハーク殿から何としても太陽宮だけでも死守するのだと言われ必死の思いで死守するも反乱軍の勢いを止められなかった。
守備隊が壊滅し、ギゼル様に太陽宮からの撤退を進言するもこれを拒否されてしまった。
その時、何らかのやりとりはあった筈なのにこの部分の記憶は全部抜けていた。必死に思い出そうとしたがダメだった。
一体何があったのか…恐らく一対一の会話だったと思われるので真相を知る者は居ないだろう。
その後、反乱軍の主力を目の前にして全く歯が立たなかった。
私とザハーク殿の剣術が全く相手にされず、むしろ遊ばれている感さえ思えた。
何度剣先を飛ばそうとも軽々と流され反対に追い詰められて行く。私達の背後にある謁見の間にはギゼル様が控えておられる。
せめて死に花だけは華々しく散りたいと思い、私は気力を振り絞り何度も何度も立ち上がり向かって行った。それが負け戦と
分かっていながらも…愛すべきお方の為、無様な死に方だけはしたくなかった。だが、それでも結果は同じだった。
壁際に追い詰められた私は死への恐怖に震えながらも剣を構えていた。今でも剣先が震えていたのを憶えている。膝もガクガクと
震え呼吸も荒くなる。緊張と恐怖で汗が止まらず、着ていた鎧の中は汗で湿っているのを通り越してびっしょりだった。背筋が凍る
思いとはこの事かもしれない。
私の周囲を反乱軍の人間が取り囲んでいる。その中にミアキス殿の姿も見ることができた。
ドラートの戦闘で私は彼女を…ミアキス殿を捨て駒に利用したのだ。今思えば、その時の私はどうかしていたに違いない。
軍を敗戦に追い込んだだけでなく、ギゼル様より拝借した太陽の紋章すらロクに扱えず私は悔しかった。行動するごとに自分で自分の
首を絞めているのが目に見えていた。しかし女王騎士である以上それでも前に進まなければならない。進まざるを得ないのだ。その
焦燥が己の身を滅ぼす原因になろうとは…。
視界から周り景色が少しずつ消えていく…目の前に誰が立っているのかさえぼやけてしまって分からない。
(遂にここまで来たか…)
消えつつある視界で辛うじてザハーク殿の方へ視線を送る。彼も私と同様、壁際に追い詰められていた。
しかも、彼を追い詰めている人間が私と同じ女王騎士のカイル殿とゲオルグ殿は何とも皮肉な結果だった。
私の方はミアキス殿が居た筈…だが真っ白な私の視界にはもう何も映らない。
「……殺るがよい」
254アレニア恋物語(2) ◆IGA.li4jPs :2006/04/30(日) 22:40:42 ID:J/zlDxrY
私は構えていた剣を手放した。その瞬間、全身から力が抜けた気がした。
何かから解放されたかの様に私はその場に座り込む。
「…これから死のうと言う時にこうも体が軽くなるとは…私は何をしていたのか………もっと前の段階でこうなれば良かった物を……
……見ての通りだ…何も言う事はない。殺るなら一思いに頼む…」
辺りは白一色で染められ、何の変化もない空間が何処までも果てしなく広がっている。
脳裏には何人もの人間に囲まれている私が想像できているが今は何も見えなかった。
白い空間に向かって私が独り言を言っている様にしか感じられない。
今何処を見ているのかそれすらも分からず、ただ死を座して待つ他には何も考えられなかった。音だけは聴こえてくる。
コツ、と何者かの足音がした。いよいよ来るべき時が来た。
「……頼む」
何も見えなくなっている目を私は閉じた。
もし、際になって視界が戻った時、私は醜態を曝け出している自分自身を見たくはなかった。
「せめて死に際位何も見ずに迎えよう…」体が知らず知らずの内にそうさせたのだろう。ともかく死ぬ事に変わりはない、そう思っていた。
足音が止まった。恐らく剣を振り上げたのだろう。後はその剣が振り下ろされれば私の魂は解放される。
行き着く先がどちらであろうと、少なくとも見えない重圧からは解放される。今ここで死ねるのはある意味正解かもしれない。
この世の苦しみとを断つ剣が迫ってくる。私には感じられた。
(やっとこれで…)
そう思うと気持ちが軽くなる。目には見えなくとも顔の筋肉が緩んでいるのが分かる。
(私は笑っているのか?これから死のうと言う時に笑うなど…)
それでも一向に構わなかった。死への恐怖よりも現実世界でもがき苦しむ方が何倍も辛かった。
自らの死ぬ事も許されず堂々巡りを繰り返す。同じ苦しみを一度ならず二度までも味わさせられる…。
「それだけ私が未熟だったのだろう」と言えるが、正直ここまで未熟だったとは…亡き父上に合わせる顔がない。
255アレニア恋物語(3) ◆IGA.li4jPs :2006/04/30(日) 22:41:43 ID:J/zlDxrY
……………。
どれ位の時間が経っただろうか…一向に剣が振り下された気配がしなかった。
確かに目の前に人が居る気配はある。だが一向に動作を起こそうとする気配がない。
(何故だ…何故斬らぬのだ!?私を何処まで見せしめにすれば気が済むと言うのだ…!)
私は込み上げてくる怒りを必死に抑えた。ここれ怒りに任せてしまっては負けである。ここは静を保とうと昂る気持ちを必死に抑えた。
「……くっ…」
反乱軍は私を見下ろしているに違いない。それを確認したくとも私の視界は相変わらず真っ白に覆われていた。
「アレニア殿…」
何処からか声がした。私は下を俯いたまま答える。
「…ミアキス殿か…」
「こんな事はもう…止めましょう……同じ女王騎士同士が殺し合っちゃダメですぅ…姫様が……姫様が悲しみますぅ…」
「悲しむ……か…」
ミアキス殿の問いにポツリと私は言葉を漏らした。
ドラートの戦闘で私はミアキス殿を捨石に利用した。私自身が助かる為だけに彼女を….
その後、彼女が向こうの陣営に加わったと聞いて内心ホッとしたが、それと同時に自分を酷く責めた。
そんな人間として最低な私を目の前にして私怨一つ言わず語りかけてくれている。本当に恨みはないののだろうか。
「戦闘は終わりました。ザハーク殿は先程私達の陣へ…」
「…そうか」
やはりザハーク殿もアレを使われなかったか。
あらかじめキゼル様より、私達は万一の事態に備えあるクスリを受け取っていた。
それは人間の能力の限界を一時的に極限まで高めるクスリで名は「烈火の秘薬」と言う。
但し、それを服用すれば絶命はまず確実で助からない。暗殺集団「幽世の門」のが開発したと言うが何故その様な劇薬を作ったのか
私には理解できなかった。
「残るは私一人か………フフフ………結局私は何をしておったのだろうな……こうもあっさり勝敗が決してしまうとは…これでは裏切り
を決行した時点で既に負けだったとしか言えぬ…言えぬ………」
最後の方は自分に対する恨み節になった。
「……………」
「剣を持たねば戦う意味はない…………投降しよう…」
256アレニア恋物語(4) ◆IGA.li4jPs :2006/04/30(日) 22:42:57 ID:J/zlDxrY
「良かったぁ……」
ミアキス殿は少し安堵した様だ。
「だが、その前に一つだけ聞かせてくれ。ミアキス殿」
「はい?」
「貴殿はその……私を恨んでいないのか?憎くはないのか?私は貴殿をコマとしか見なかった女だぞ?その様な女王騎士として最低な
女が貴殿の目の前に何故…」
これ以上、言葉は出なかった。言うと彼女をますます傷つける結果になる事は分かっていた。一度ならず二度までも彼女を傷つけてしまっては…。
私が頭を垂れていると、彼女の手が私の頭を撫でてくれた。
その手は決して大きくはなかったがとても温かかった。これだけ温かい手に触れたのは久しぶりだった。
「あの時はあぁでもしないと仕方がなかったって思ってます。そりゃ最初は「どうして?」って恨みましたけど……でも、でもきっとまた一緒に
なれるって信じてました。それがどんな形になろうとも……だから恨んでるとかそんなのすぐに忘れちゃいましたぁ。それよりもアレニア殿に
早く逢いたいなぁってずぅっと願ってたんですよーそれが今叶って凄く嬉しいですぅ。アレニア殿は思ってないんですかぁ?」
唐突な質問の切り返しに私は戸惑ったが、ここはあえて包み隠さずに話す事にした。
「いや…私も逢いたいと願ってた……逢って今までの数々の無礼を貴殿に謝りたかった…後は……上手く言えない…すまぬ」
「上手く言えなくても良いですよ…アレニア殿の気持ちが分かってスッキリです」
そう言うと彼女は私の頭を包み込んでくれた。掌同様にとても温かかった。
それにこうして人に抱きしめられるなど女王騎士になって…いや、それよりもっと前から記憶にない。
それ以前に、人に体を預けるなど到底許し難い行為だとばかり感じていた。何か私の心の奥底を見透かされている様な気分に陥る事が多かったのだ。
それを恐れるあまり、他者とはうわべだけの付き合いで済ましてしまう事が多く、気がつけばいつも独りで居る事が当たり前の様になってしまった。
「王子ぃ、アレニア殿を連れて行く役目、私がしても良いですかぁ?」
「え…」
私も王子も驚いた。
通常、捕虜を連行する役目は下級兵士が請け負うのが常識である。しかしそれを一人の将が請け負うなど余程の事が無い限り行なわれない。
「ちょ……待たれよミアキス殿…私ごとき、貴殿がわざわざ連行する役目をせずとも……」
「むーーー、私がすると言ったらするんですぅ!」
「う……」
私はそれ以上言葉が出なかった。ミアキス殿は一度言い出せばテコでも動かないのは知っていた。
この際、何を言っても無駄である。
それに、私は既に捕虜の身であるからこの場は反論できる立場ではない。
257アレニア恋物語(5) ◆IGA.li4jPs :2006/04/30(日) 22:44:17 ID:J/zlDxrY
ミアキス殿に連れられて私は反乱軍の本陣に連行された。
しかし、王宮から陣地へと連行される間、捕虜を扱う際に当然の行為とされている両手を縄などで拘束すると言った行為は一切行なわれず、半ば連れ
立って散歩に行く様な格好になってしまった。しかもミアキス殿と私の手はしっかりと握られているから物凄く恥ずかしい。
傍に居た兵士から「せめて手だけでも拘束を…」との声もあったが彼女は頑としてそれを拒んだ。
私も彼女が何を思い、私を拘束する事を拒んだのかが理解できなかった。
(彼女は一体何を……いざとなれば貴殿を襲う事など容易い事。それをわざわざこんな…)
「いやぁ、良い天気ですねぇー」
確かに天気は良かった。
思えば、今日この日まで景色を見る余裕など全くなかった。
目の前の事に捉われ過ぎるあまり、私は風景を愛でる心を忘れてしまった。どんなに美しい物を見ても感情が湧かなかった。
それが重圧から解放された今はとてもすがすがしく感じる。空はこんなにも高かったのか…。
ミアキス殿もいつもと変わりなかった。私を恨んでいないと言うのも分かった。
しかし、今の彼女の態度は素なのか、それとも私の事を思いわざと演じているのかは分からなかった。
「……貴殿、もう少し緊張感を持たれよ」
私は思わず注意をしてしまう。
「えぇーっ、だって戦闘はもう終わっちゃったんですよぉ?いつまでもピリピリしてたら体に悪いですぅ」
「それはそうだが……だが、私はこの通り何も拘束されておらぬ。その気になれば貴殿を…」
私は彼女の目の前でわざと拳を見せつける。それを見て、周囲の兵士は一斉に殺気立った様子を見せた。しかし、
「大丈夫です、私はアレニア殿を信じていますから」
その一言で周囲から殺気がフッと消えたのを感じた。
「……………」
「私はアレニア殿がそんな器用な人じゃないって分かってます…だから拘束しなかったんです。それに、ずぅーっと誰かに拘束されるのは嫌でしょ?」
「それは…」
彼女の言う事は最もだ。
私は騙し討ちができる程器用な人間ではない。どちらかと言えば不器用な人間だ。
だが、私はそれを認める事ができず無理矢理にでも器用にできる人間を演じてきた…女なのに不器用なのは笑われると思った。
「姫様が救出されるのも時間の問題です。それに、アレニア殿が色々と悩んでたのも知ってます。だから少しでも楽になったら良いなぁって…」
「…知っておられたのか」
「いつも思い詰めた顔をしていればそう思わざるを得ませんよぉ。遠くから見てても凄く辛そうでしたし……私に何か出来れば良いのですが…」
人前ではなるべく苦しそうな素振りを見せない様に気をつけていたが、今の一言で全て無駄な努力だと言うのが証明された。
しかも、私の身まで案じてくれていたとは…私はつくづく不器用な女だ。
「ミアキス殿………申し訳ない…」
私は頭を下げた。それを見て彼女は驚く。
「そ、そんな謝らないで下さいよぉ…私こそ何もお役に立てなくて…」
「しかし…」
「とりあえず立ち話もあれですから、本陣に行ってから色々とお話しましょう。積もる話もありますしぃ」
ミアキス殿は私の腕をグイグイと引っ張る。その表情はとても嬉しさに満ち溢れている。
「……分かった」
ミアキス殿にせかされる形で私は反乱軍の本陣へと連行された。
258 ◆IGA.li4jPs :2006/04/30(日) 22:46:44 ID:J/zlDxrY
第一部終了です。
ミアキスの口調はとても扱い難いです…。
259名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 23:19:35 ID:3VjygxI/
GJ
アレニアかわいいよな
敵に回ると粗が目について腹が立ったりもするけど
味方になってたらやたらかわいいお嬢さんだったろうなと思う
続き楽しみにしてるよ
260名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 23:58:35 ID:6SU0eeME
本編とは少し違いますが、可能性の一つという感じでいいですね。
GJっす。
261名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 09:41:58 ID:HyInw1SE
ジーンの館シリーズ見てて思いついた
エロ無しな導入部を投下。

ジェレミーにはホント、心底どう情するぜ。
262ジェレミー×:2006/05/01(月) 09:43:00 ID:HyInw1SE
ジーンの館・群島編@


――と、とうとうやっちまった……。

甘ったるい香のたちこめる、薄暗く狭い通路を歩きながら
ジェレミーの脳内は、激しい後悔と期待のせめぎあいに埋め尽くされていた。

ここは、ミドルポートの街中に点在する地下間道の一つを利用した、
知る人ぞ知る娼館のひとつ。
同僚の一人にその存在を教えられた当時は、「なにをくだらねえことを……」と聞き捨てていたその場所に、
心臓をバクバク言わせながら今足を踏み入れているという現実を思うと
大声あげて逃げ出したくなるような、凄まじい恥ずかしさがこみあげてくる。

通路の両脇に設けられた、分厚い木製のドアから
漏れ聞こえてくる男女の淫猥な話し声と、びっくりするほど激しい喘ぎ声に
いちいち思いっきり動揺して足を止めたりしながら
どうにかこうにか足を進めてたどり着いたのは、「13号室」と書かれた札のかかった
一番奥の方の部屋だった。

この向こうに、女が待機している。
これからきっちり丸一晩、同じベッドで過ご さ な け れ ば な ら な い おんな。
素朴な性の自分には、これまでとんと縁のなかったあんなことやこんなことを、
やら な け れ ば な ら な い 相手。

こんな時だというのに、胃の中に鉛の塊でも入れられたかのような気の重さを感じて
ジェレミーはしばらく、その場に立ち尽くした。

つい今しがた、館長の代理だという軽薄そうな青年と交わしてきた会話が
まざまざと脳裏に蘇る。

(ええっと、なんか、女の子のタイプのご希望とかありますかねー?)
(い、いや別に……ま、待ってくれ、ちょっと考える……)
(ええ、いいですよー。この時期はウチも稼ぎ時でね、たいがいのご希望には添えると思いマスし。)
(じ、じゃあ……。)

髪の色は黒。そんでショートカット。目が大きくて、小顔で、背丈は俺の肩くらいで、
胸はそこそこあるけど全体的に締まったからだつきで、元々は色白っぽいけど軽く日焼けしていて……

とんでもなく細かい特徴をダラダラと話しながら、
これじゃあ希望を言ってるっつーより行方不明者探しみたいじゃねえか、と気付いて頬に血が上り、

(や、やっぱ、ムリだよな?じ、じゃあ、えーっと、)
(……いますよ)
(はあ!!!???)
(いや、だから居るんですって!こりゃあ驚いたな、お客さんの好みに全部当てはまってる子が!
ちょうど一昨日から働いてるんですよ!!じゃ、その子で決定っスね!?)
(あ?……あ、ああ……。じゃあ、それで、頼む……)
(毎度!じゃあ、料金前払い指名料コミで、52000ポッチになります)

どうせ、丸ごとドブにでも捨てるような気持ちで持ってきた金だ。
むしろ気恥ずかしいやりとりがようやく終わってくれることにホッとしながら
ジェレミーはあっさりとその大枚を相手に手渡し、
言われるがままにこの通路に足を踏み入れてきたのだった。
263ジェレミー×:2006/05/01(月) 09:44:02 ID:HyInw1SE
――つっても、きっと似ても似つかねえ女なんだろうな……。いや、むしろ、その方がいいぜ。

脳裏に浮かぶ勝ち気な笑顔を振り払うように、ジェレミーはぶんと頭を一つ振って
ドアのノブに手をかけた。

――もう、テキトーにお茶を濁してすぐに眠っちまおう。金はキッチリ払ってんだ、文句言われる筋合いはねえよな!

ガチャ……と重たい音を立てて、ドアが開く。
淫らがましい香がいっそう濃度を増して、頭がクラクラしてきた。
うすぐらい室内にチラリと見えた、ほのかに光る真っ白なベッドの輝きに今さら思い切り動揺しながら
意を決して足を踏み入れ、慌てて後ろ手にドアを閉める。

……いきなり、真横から襲い掛かられた。
香とは違う、甘酸っぱい女の髪の匂いが一瞬鼻をくすぐったかと思うと、
わき腹めがけて抱きついてきた、はずむような弾力のある肢体がジェレミーの体をドンと突き飛ばす。

「うわっ!!?」
よろけて、思わず手を伸ばし、どうにか両手で女を抱きとめる形になった。
引き寄せた女の体はたとえようもなくしなやかに、ジェレミーの腕の間にすっぽりと収まってしまう。

そして、無闇やたらと元気のいい、女というより少女そのものな声が、
見下ろす黒い髪の下から飛んできた。
「もーっ!!おっそいぞー!!なにやってんの!!」
「…………!!!???」

知 っ て い る 声 だ 。

「へっへー。お客さん、さてはこういうトコ初めてなんでしょー。大丈夫、あたしがキッチリ、気持ちよーくしてあげるよン♪」
こちらの胸板に気持ちよさそうに顔を埋めたまま、そこまで一気にまくしたてた後、
少女はヒョコっと元気よく顔をあげ、前髪をブンと払いのけて。
イタズラ好きな天使、としか形容しようのない、天真爛漫な笑顔の真ん中で
鮮やかな深緑色の両の瞳が、キュウッと絞り込まれ点になる。

……二人同時に、絶叫した。
「じ、じじじっ、ジェレミーいいいっ!!!????」
「ンなんでテメエがここに居るんだああああああっ!!!!!!???????」

恋人同士のようにぴったりと身を寄せ合ったまま、
ムードたっぷりにしつらえられた淫靡な寝室のただ中で。

不倶戴天の敵ミツバとジェレミーの、数十回目の決戦の火蓋は、こうして切って落とされた。

続く。
264名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 17:36:07 ID:jEbkMBme
>>258
よいぞよいぞ
レズ恋というか久しぶりに天サドが見れそうでよいぞ。

>>263
ごめん。3と4やってないんだ。だからわかんない。レスつけらんないorz
265名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 18:12:06 ID:+QxXp8GO
>>261
俺、大好き、このケンカップル。
ベッドの上の決戦、楽しみにしてる。

ホント、ジェレミーにはどう情するぜw
266名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:01:28 ID:ZQnF2QbL
>>264
いちいち「やってない」なんて発言は余計だろ
スルーされてるみたいで不愉快になるぞ。
267名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:12:29 ID:DCgKKoyo
>>264
感想は書きようがないがスルーするのも忍びない、そんな時のための便利な言葉がコレ つ "GJ!"
268名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 21:50:44 ID:yVjOHGBh
>>267
GJ!
269名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 22:21:01 ID:TtLMem3I
保管庫が更新されてるー。
管理人さんありがとうございます〜。
27010スレの114:2006/05/02(火) 01:36:37 ID:hun3teHY
管理人さん保管庫の更新ありがとうございます。
10スレ目でリューグ×ミアキス(雲のように風のように)を書いた者なんですが
著者がほっけ様になってしまっているので次の更新の時にでも訂正していただけると有り難いです。
お忙しいとは思いますがよろしくお願いしますー
271名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 01:46:12 ID:CMG9F/RD
>>270
酒見賢一(ボソリ
スマソスレチガイ
272名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 01:51:35 ID:hun3teHY
>>271なんの事かわからなくてググってしまったじゃまいかwwww
273辻きり(馬鹿王子ルセ2-5):2006/05/02(火) 03:20:01 ID:CMG9F/RD

>>271
勝手にタイトルがあのアニメが元かと勘違いしてたw スマヌ
細切れですみませぬがpart 11>>413の続きを忘れた頃に投下
保管庫さんには2話が終わりの時に全部アンカしてしめしますのでご勘弁を(謝
では。


 ファルーシュは父の威徳を疑ったことをすぐさま後悔した。そう、バスタオルと思っていた
布は存外薄く、軽く水に濡れただけで肌に密着して、そのラインを浮き上がらせ、そして
肌の色すらも透けて見れる素敵仕様であった。豊満なハスワールの肉体にぴっちりと張り付いた
それはエロスを加速させる。
 ハスワールはじゃれあうようにウルダを水浸しにするくらいに激しく水を掻き揚げる。
ウルダも当然の如くそれに応戦。互いの闘いは激しさを増す。当然、布が透ける面積も
雨粒のようなものから侵食するが如く次第に拡大し、ハスワールのふくよかで大きなそれと、
ウルダの形の良い双乳の先にある桃色すらも透けてしまうようになる。まるでそれが布を
押し上げているようで、妄想は更に膨れ上がる。いわばピチピチのスケスケである。
 二人の真っ白な肌はそれでもこうしてみると肉感的でかつ情欲を煽る素晴らしさを
かねていることが十二分に分かる。
(クク・・・全ては予測通り・・・!)
 さんざハァハァしながらガッツポーツで大層なことを思うファルーシュ。父への感謝も
あらたなものとして二人の肢体をなめまわすかのように覗くが、
そこから見える光景の中で、ただ一つ彼を満足させえぬものがあった。
 端のほうでどこか二人のじゃれあいを避けるようにして佇む蜂蜜色の髪の少女である。
 大人しいルセリナには、どう割って入っていいかわからない状況だっただろう。
すみっこのほうでちっちゃくなっているさまがなんとも可愛らしいのだが、ファルーシュは、
(ああ、もう、そうじゃないんだよ・・・!ルセリナ、もっとこの僕にアピールしてくれなきゃ!)
 ・・・随分とまあ勝手なことを考えていたようである。そもそも何のアピールだ。
審査員にでもなったつもりだろうか。だとするならばこの場合は黄色い人なのかも知れない。
 ともかく、中々その肌を自分の目に晒そうとしてくれないことにやきもきして足踏みしながら
ルセリナを注視する。なぜか無意識のうちにそれぞれの魅力を持つ二人の女性の肉体より、
ルセリナに気がいってしまっていることにはファルーシュ自身はまだ気づいていないようだった。
 うう、と聞こえないくらいにうなりながらのぞいていると、ついつい腕が動いてしまった
らしい。こつん。
(・・・痛いですね)
 そうやら隣に人がいたようである。慌ててファルーシュはそちらへペコリと頭を下げる。
するとぴかっという眩しい光に一瞬くらまされそうになる。ひょっとしてこれは母が自分に
与えた天罰なのか。――そんなばかばかしいことが頭を過ぎったが、まあそんなわけもなく。
 結局眩暈からさめたファルーシュが見たのは例のお方である。皆まで言わずともわかろう。

274辻きり(馬鹿王子ルセ2-6):2006/05/02(火) 03:30:21 ID:L0ByEjRN
(・・・っていうかさ、何で普通にここに居るのさ、イサト)
(それは私の台詞です。王子殿下ともあろうお方が何をしていらっしゃるのですか)
 相変わらずの無表情で、ぶつくさとファルーシュに向かって言うイサト。目線は泉に
向かって一直線。どうやら相当のつわもののようである。
(何、ってそれはさ・・・王子も色々と大変なんだよ。それよりイサト、覗きなんかして
人間として、もといエルフとして恥ずかしくないのか?)
 色々と大変なのは全部自分のせいなのだが、そこらへんは置いておいてジト目で睨む。
イサトは自分の行為を覗きと言われて、さぞ心外そうな顔をする。ヒソヒソ話はまだ続く。
(覗き?同じにしてもらっては困ります。私には斎主様をお守りするという崇高な義務が
あるのですよ。お清めのときといえど、目を離すわけには参りませんから)
 流石お付の官の鑑。これから察するにマクシミリアン騎士団のほうも、平気でこういう
ことがまかり通っているのかもしれない。まあ、あの二人の場合なら合意かも知れないので
いいか。一応、ファルーシュは太陽拳使いのエルフに尋ねる。
(あの、さ、じゃあこれってハスワールおば様も承知の上?)
 だとしたら自分の立場はやばいことになる。いざとなったら媚びに媚びて逃げる準備は
万端だが、それは最後の手段にしておきたい。それに対してエルフは何を言っているんです、
と苦みばしった顔をしてこう告げた。
(斎主様に余計な心労をかけるに及びません。そんなことをしては私の名折れです)
 一見クールな斎官である。大したものだ。いくら理屈をこねようとやっていることは同じである。だが、
それでも忠節の男という仮面を崩さずただただミッションを遂行するかのように見えるこのエルフに、
同じ男として王子は尊敬の念を抱かずにはおれなかった。何か根本的におかしい気もするが。まあ良い。
とりあえずお互いが邪魔をせぬなら、ということで本来の目的に立ち返る二人。片方は見張り、片方は覗きである。
 さて皆さんは類は類を呼ぶといった言葉はご存知であろう。そう、いつのまにかここに新たな影が
侵入していたのである。間抜けなことに二人は気づかなかった。筆者も気づかなかった。
 それは元女王騎士、そしてここに立ち寄られることを禁ぜられたかの男の影であった。黙っていれば女が寄ってくる
といわれるくらいのあの男――
(いやぁ、いい眺めですねぇ。王子も成長されたんですねぇ・・・こうして社会勉強も人並みにされて)
 その男は感涙にひたすらむせび泣いていた。彼がとことん王族を愛する男だからこそであった。

以下続
275名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 08:05:00 ID:nty1f7n1
ちょwwwwwこの3人ステキ杉wwwwwww
GJ
276名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 09:12:31 ID:rO4he02g
くっ…ルセリナの裸体を王子以外が覗くなど許せんな
277名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 10:07:07 ID:A9zDCTVR
あ〜ははっははははははははははは

笑わせてもらいました!
278261:2006/05/02(火) 12:49:13 ID:8WbPOcCe
一日いち腐れ縁。
>>262-263の続き、ジェレミー×ミツバ(ミツバ×ジェレミー…?)の続き投下ー。
279ジェレミー×ミツバ?:2006/05/02(火) 12:50:23 ID:8WbPOcCe
「だーからあ!クエストギルドで貰ってきた、まっとうなお仕事なんだってば!!」
「バレバレなウソついてんじゃねえ!!娼婦なんてこんなヤバい依頼、見たことも聞いたこともねえよ!!」

薄く桃色の霧がただよう薄明かりの密室に、場違いにもほどがある怒号が際限なく飛び交いあう。

「うぐ……。だ、だってほら、キリルってまだ21歳なってないし……」
「お!ま!え!も!そうだろうがーッ!!!!!!」

ベッドの端に腰を下ろしてブーツの足をブラブラさせつつ、強情に胸を張って言い募るミツバの目の前を
足音も荒く行ったり来たりしながら、ジェレミーは両手をぶんぶん振り回してわめく。
「マ、マジで信じられねえ……。黙ってひょこっと出てったっきり姿が見えねえと思ったら、
よりにもよってこんなトコで働いてやがるなんて……」
フルフルと頭を震わせながらうつむいて、絶句すること十数秒。
クワッ、と両目を見開き、ミツバに指をつきつけて叫ぶ。
「見損なったぞミツバぁ!!恥を知れ、恥を!!」

おそるおそる、といったかんじで立ち上がって背を伸ばし、ジェレミーの肩に右手をかけようとしていたミツバの目が、
すうっと細くなる。
「……じゃあ、こっちも言わせてもらうけどさあ……」

……一流の剣士は、戦況の流れに敏感である。
この時、ジェレミーの背筋を貫いた戦慄は、勢いに乗って敵の間合いに踏み込みすぎたときのそれに、
非常によく似ていた。

言葉をなくしたジェレミーの頬に、ミツバの柔らかい手のひらがそっと重ねられ
むしろ優しげな、とでも言いたいような声色で、反撃の一打が襲いかかってきた。
「……あんた、いったいここにナニしに来たわけ……?」
「な、なにって……」
さわさわと、いとおしむように頬を撫でてゆくミツバの手のひらの感触。
静かな怒りに細められたミツバの眼差しは、普段の能天気な笑顔からは思いもよらないほどの『女』らしさを見せ
ゆっくりと言葉をつむぎながら揺れる、桜色のくちびるとのあまりの距離の近さが
ジェレミーを落ち着かない気持ちにさせる。
「あたしを連れ戻しに来たの?……違うよね。さっき、死ぬほどびっくりしてたし」
長い髪をかきわけてすべりこんだ細い指先が、ジェレミーの耳朶を回りこむように撫でる。
「う……」
「『見損なった』なんて、言わないよ。でも、正直びっくりしちゃったなあ……」
うたうようなミツバのささやき声。ゾクゾクと背筋を走る甘い戦慄。
「そ、そんなの、俺の勝手……」
「そうだよね。ジェレミーの勝手。こんなトコで、お金で買った女の人に、いっぱいいやらしいことしてても。
 あたしがどうこう言うことじゃないよね」
いまやミツバは、両手をジェレミーの首の後ろに回してぴったりと身を寄せ、
小ぶりだがしっかりとした丸みのある胸の先端を、触れるか触れないかのスレスレまで近づけている。
「だから……。あたしのことも。好きにしちゃって、いいんだよ?」
280ジェレミー×ミツバ?:2006/05/02(火) 12:55:13 ID:8WbPOcCe
「あ……」
おもわず、視線が下に落ちる。
ふくらみの根元あたりまでを大胆に露出している、ミツバの赤い上衣の胸元に向かってさ迷わせた視線が
ふと、なにかを期待するようにこちらを見あげるミツバの視線と絡み合ってしまって
ジェレミーは慌ててプイと顔をそらした。
「ば、バカ言ってんじゃねえ!なんで、おまえみたいなガキに俺が……!!」
ニュアンスにはすさまじい落差があるものの、本音と言って言えなくもない言葉を吐き捨てる。
「そう……」
首の後ろに回された、ミツバの両手にきゅっと力がこもる。
黒髪を揺らしてうつむいた少女の、意外なほどしおらしい姿に

――やべえ、言い過ぎたか!?

と、動揺した一瞬のスキを突かれ、

「えぇいっ!!」
「うぐぁああっ!!!???」
首を引っこ抜かれたかと思うほどの勢いで引かれ、ジェレミーは宙を舞った。
綺麗な半円を描いてターンするミツバの体を軸にして飛んだ先は、贅沢なクッションと幾重ものシーツに覆われたベッドの上。
無様に頭から突っ込んでしまったものの、素早く身を起こし振り向く。
「てめえ、なにしやが……!!」
「勝負しようよ、色男」
衝撃の余韻に揺れるベッドを軋ませながら上ってきたミツバが、猫のように身軽な動きでスルスルと這い登ってきて
横たわるジェレミーの体の上に、小さな天蓋のように覆い被さった。
281ジェレミー×ミツバ?:2006/05/02(火) 12:56:48 ID:8WbPOcCe
あと少しでも身をよじれば、少女の健康的に日焼けした四肢のどこかに触れてしまう。
そんな体勢に追い込まれて、少し顔を持ち上げれば唇が触れるほどちかづいたミツバの顔を見上げるジェレミーは
「……し、勝負……?」
やっとのことで、一言だけ問い返した。
「そ。勝負。ガキで恥知らずなあたしのことなんて、抱きたくないんだよねえ?」
ペロリ、と、小さくのぞかせた舌先で、唇の端を舐め濡らしながらミツバ。
「……ホントに一晩、我慢できたら。なんでも言うこと聞いたげる。
 このお仕事やめろって言うんならやめるしさ」
「な、なに勝手に……」
「でも、もしもジェレミーがウソついてて、あたしの『ここ』に、『これ』を」
くりっ、とミツバが身をひねると同時に、ジェレミーは息を呑んだ。
ズボン越しに、ミツバの薄い腰布越しに、それでもはっきりとわかる柔らかく熱い肉丘の感触が、
窮屈にしまいこまれたままの肉棒の裏側に、ぎゅうっと押し付けられたからだ。
それがすでに、はちきれそうなほどに勃起してしまっているのがバレたのだろう。
ミツバは驚くほど艶っぽく、あざけるような笑みを浮かべ
「……入れちゃったら、もう、あたしのやることに絶対文句つけないこと。
 これからも、脂ぎったオジサンたちに毎晩いーっぱいエッチなことされて、しっかり稼がせてもらうよん」

反論しようにも、言葉が出てこない。
そもそも拒絶したいのか、ミツバの『攻撃』を期待しているのか、
今すぐ建前もなにもかも振り払って、この長年の腐れ縁の相手を、がむしゃらに押し倒してしまいたいのか。

自分で自分の気持ちがまったく分からないまま、ジェレミーはただ黙り込むしかなかった。
その沈黙を、肯定と受け取ったらしいミツバはブンと軽く頭を振って、額に落ちかかる前髪を払い
片手で髪をかきあげ片方の耳を露出させると、
ゆっくりと顔を下ろして、ジェレミーへと近づけて来た。

……ふと、かすかな恥じらいを頬にのぼらせて囁いてくる。
「……目、閉じててよ……」

もう後戻りはできない。言われるままに従順に目を閉じ、暖かい薄闇の中、
早鐘のように脈打つ自分の鼓動の音と、ゆっくりと近づいてくる少女の熱い吐息に耳を傾けていると
寸前でためらうような一瞬の間をおいて、ミツバのたとえようもなく柔らかい、熱い唇が
そっとジェレミーの唇に重ねあわされてきた。


続く。

282名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 13:02:39 ID:uSeRMSrB
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 ジェレミツ!ジェレミツ!ミツジェレ?
 ⊂彡
283名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 16:35:31 ID:ifug5kLf
闇に純情っぽいミツバにドキドキw
俺もだまされてる?
284名無しさん@ピンキー:2006/05/02(火) 20:00:29 ID:pTpKQ0ar
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 ジェレミツ!ジェレミツ!ジェレミツ!
 ⊂彡

しかし、こんな仕事受けてきちゃうキリルもキリルだが、
斡旋するララクルもララクルだw
285ウィルボーン:2006/05/02(火) 20:45:05 ID:4UU3sUOH
ゲオルグ×ベルナデット投下します。
ちょっと長めで、エロ少な目かも。

…本スレに同じこと考えている人がいて、びっくりしました。
286ゲオルグ×ベルナデット1/8:2006/05/02(火) 20:45:50 ID:4UU3sUOH
二つの人影は、船着場でも特に人目を引いた。このご時世帯刀している人間は珍しくないが、
左目を眼帯で覆われた青年は、抜き身の刀のような鋭さを漂わせている。もう一人は線の細い
少年で、どことなく気品を感じさせる。どこぞの貴族とその護衛とでも言ったところか。
ベルナデットは思わず視線をその二人に向けた。
「ゲオルグ!こっちだ!」
傍らで、父スカルドが大きく手を振る。青年は顔をあげ、小走りに近づいてくる。スカルドは
大きく手を広げ、旧友にあった時のように肩を抱く。親子ほど年が離れているのに、
そんな距離など問題ないようだ。
「お久しぶりです提督。相変わらずお元気そうで」
「15年ぶり…、いや、もっとか?お前も変わらぬな。目の具合はどうだ?」
「ええ、まあまです。それより提督」
ゲオルグと呼ばれた青年は、背後に立っている少年を前に押し出した。スカルドは、
青年にしたように肩を抱こうとしたが、一瞬立ち止まり、そして恭しく一礼した。
「スカルド・イーガンと申します。殿下のお噂は群島にも聞こえております。
こちらは娘のベルナデット。20歳にもなって色気もなく、わしの副官をやっております」
「だ、誰のせいです誰の!!」
ベルナデットは真っ赤になって怒鳴った。と、青年の驚いたような視線にぶつかる。
「もしや、彼女が末の…?ああ、確かに面影がある」
青年が微笑を浮かべる。喜びと嬉しさと、微かな悲しみの交じった笑顔を向けられ、ベルナデットは
柄にもなく顔を赤らめた。低い声、眼帯で覆われた険しい表情、近寄りがたい圧倒的な威圧感。
青年から受ける印象は色々あったが、なぜか彼は、悲しみを受け止めて微笑むことの出来る、
心優しい人なんだと思った。
なぜか、と言われると分からないのだけれども。
「ゲオルグです。提督にはガキの頃お世話になりまして、生まれたばかりのあなたのオムツを
変えたこともあるんですよ」
「わはは、その頃からまったく変わっとらんだろう、この娘は。いいかベルナデット、
ゲオルグはファレナの女王騎士であり、今は王子殿下の護衛だ」
「ま、コイツは俺の護衛など必要ないんだが、まあ格好だけ、な」
そう言ってゲオルグは少年の肩に手を置いた。
王子殿下…?
「え…えぇっ!?このっ、この子がファレ…もがっ」
「ばか者。声に出すんじゃない。まったく、わが娘ながらどこまで鈍いのだ」
スカルドに口を塞がれたベルナデットは、まじまじと少年を見た。言われてみれば穏やかな
物腰も線の細さも立ち振る舞いも、王族ならではの優雅さを感じられる。しかし、それにしても
「はじめまして、スカルドどの、ベルナデットどの」
「はっ、はじめまして王子殿下、その、無作法者で申し訳ないです…」
みるみる声が小さくなっていくベルナデットを、スカルドは笑いながら見ている。海賊や荒くれ者
と立ち回りは出来ても、高貴な人と話すのは慣れていないのだ。
「あまり、かしこまらないで下さい。僕も困ります」
そう言って恥ずかしそうに笑う王子に、ベルナデットは親近感の覚えた。一国の王子殿下を前に
親近感が沸くというのもおかしな話だが。
287ゲオルグ×ベルナデット2/8:2006/05/02(火) 20:46:38 ID:4UU3sUOH
「ゲオルグどのは、群島の生まれなんですか?」
ニルバ島からエストライズへ向かう船の中で、ベルナデットはゲオルグと並んで甲板から遠ざかる
景色を見ていた。王子と護衛の少女は船酔いで起き上がることも出来ずに、打ち上げられた魚の
ようにぐったりとしている。
「いや、群島で育ったけれども生まれは別だ」
確かに、ゲオルグには潮の香りを感じない。群島の人間なら、たとえ故郷を離れて何年たっても
潮の香りは残っているものだ。
「ガキの頃提督にはお世話になったし、迷惑もかけた。いや、それにしても」
ゲオルグはまじまじとベルナデットを見つめる。
「あの時の赤ん坊がこんなに大きくなるなんて、俺も年を取るわけだ」
「いやだゲオルグどのったら、まだお若いですよ」
「他の兄弟はみな息災か?」
「ええ、それぞれ独立したり嫁いだりしています。何人か行方不明の兄たちもいますけど…。
私は末っ子なので、上の兄たちの記憶はないんです」
そう言うと、ゲオルグは当時の記憶を思い起こすかのように目を閉じた。ベルナデットはそっと
場を離れる。触れてはいけないものがある、そんな気がしたのだった。船室に入る時に振り返る。
夕陽を浴びて佇むゲオルグはまるで一枚の絵のようで、なぜか胸が締め付けられた。

「ベルナデット、早くおいでよ」
セラス湖のほとり、本拠地の脱衣所ですでにタオル一枚になったサイアリーズに呼ばれ、
ベルナデットは慌てて身支度を整えてあとに続く。
スカルドの名代としてやってきて、すでに一月経っていた。ここにはファレナだけでなく
様々な国や地域から人が集まっており、島国育ちのベルナデットにとっては、いるだけでも
学ぶことは多い。父に遣わされたことを密に感謝した。
不思議なことに一番気があったのは、王子の叔母サイアリーズであった。気品を保ちつつ
適度に奔放なサイアリーズは、普段は大人しいベルナデットにとって大きな刺激だった。
生まれも育ちも身分も違うのに、なぜか気が合うのだ。
「見てごらんよ、今日から露天風呂がオープンだって。行ってみようよ」
「え、でもサイアリーズさま、露天風呂は混浴ですよ」
「いいじゃないか。まだ誰も来てやしないよ。浸かっちまえば一緒さ」
半ば強引に腕を取られ、ベルナデットは大浴場を抜けて露天風呂へと足を踏み入れた。
まだ人影はなく、白く煙る湯気を縫ってセラス湖を一望できる絶景に、二人は息を呑んだ。
288ゲオルグ×ベルナデット3/8:2006/05/02(火) 20:47:27 ID:4UU3sUOH
「いい景色ですね。戦争中だって、忘れそう」
「まったくだよ。それより、今更だけどあんたけっこうスタイルいいよね」
「!!いきなり何を言うんですか。サイアリーズさまこそ、スタイル抜群じゃないですか」
「あたしは普段から開けっぴろげだからさ。あんたみたいに普段はぴったり着込んでいて、
その実…って方がグッとくるんだよ、男は」
ベルナデットは真っ赤になって両手で自分の体を隠した。
「駄目です。私のは何ていうか、単に凹凸があるだけで色気がないんです…」
常に父から色気がないと言われ続けていたが、悔しくもそれは図星である。海の男たちに
囲まれて育った生育段階に問題があるのか、生まれ持ったものかは分からないが。
「色気なんて男が出来れば自然に身につくよ。いい人はいないの?ゲオルグとはどうなの?」
「ゲオルグどの…ですかっ?」
思わず口ごもって顔を赤らめると、サイアリーズはニヤニヤと意味ありげな笑顔を向ける。
「なんだい、そうだったのかい。仲がいいと思ってたけど、へえ」
「ち、違います。その、父の知人ということで、妹のように良くしてもらってるだけで…」
「確かに、二人で一緒にいても色気がないというか、まるで兄妹みたいだからねえ」
追い討ちをかけられたようでがっくりと肩を落としたベルナデットだが、気にかかることがあった。
「サイアリーズさま、私とゲオルグどのって、似てます?」
「二人とも群島育ちだろう?顔じゃなく、何となく雰囲気は似てるものがあるよ」
以前、女王騎士のカイルに誰かに似ていると言われたことがある。スカルドと親しいゲオルグ。
赤ん坊の頃の自分を知っていた。そして、記憶にはない上の兄たち。
まさか、ゲオルグが自分の兄…なのか?
数々のピースが突如頭の中で合致して、ベルナデットは軽い眩暈を起こした。
ゲオルグは知っているのか。だから良くしてくれるのか。
…私は、私はその優しさを勘違いして勝手に舞い上がって。
ベルナデットは、溢れそうになる涙を気取られぬよう湯船に顔を沈めた。
…大丈夫。まだちゃんと好きだったわけじゃない。優しくしてもらって、嬉しかっただけ。
「のぼせたの?大丈夫か…い…」
サイアリーズの視線が湯船の一点を凝視する。ごくりと息を呑み、悲鳴を上げる。
「虫っ!虫っ!虫が〜〜〜!」
湯船に大きいムカデのようなものが浮いている。悲鳴を上げて勢い良く湯船から飛び出した
サイアリーズは、水に濡れた床に足を滑らせ思い切り転んでしまった。
「だ、誰か!誰か来てください!ミルーンさぁん!人を呼んで!」
頭を打ったのか、失神してしまったサイアリーズを抱き起こして叫ぶと、バタバタと
足音がして、二人の男が飛び込んできた。
289ゲオルグ×ベルナデット4/8:2006/05/02(火) 20:48:17 ID:4UU3sUOH
「どうした!敵か!?」
「ゲオルグどの、カイルさん!サイアリーズさまが転んで…」
飛び込んできたのは、着替え途中で着崩した格好のカイルとゲオルグだった。カイルは
ベルナデットの説明を皆まで聞かず、羽織っていた上着をかけてサイアリーズを抱き上げた。
「シルヴァ先生のところに行ってきます!」
慌しくカイルが出て行くと、広い露天にはベルナデットとゲオルグが残された。ベルナデットは
今更ながら自分が全裸であることに気づき、今度は自分が失神しそうだった。
飛び込むように湯船に浸かる。
「あ、ありがとうございました!あとは大丈夫ですから出てください」
「いや、ちょうど風呂に入るつもりだったから、ちょうどいい」
そう言ってゲオルグは着ているものを次々と脱いでいく。ベルナデットは悲鳴を上げて
顔を両手で覆った。
「駄目ですゲオルグどの!早く出てってください!」
「露天は混浴だろう?嫌ならそっちが出て行くんだな」
「そんなぁ…」
ゲオルグは湯船の中を逃げるように這いつくばるベルナデットをおいかけ、背後から抱きしめた。
「ひゃ…!」
「そんなに怯えることもなかろう。お前が俺をどう思っているかわからん程、鈍くはないぞ」
肌が密着し、風呂の熱気と相まって本当に失神しそうだった。生暖かい息が耳にかかり、
火照っているのに鳥肌が立つ。
流されてしまう…。いや、駄目だ。ベルナデットは渾身の力を込めてゲオルグを跳ね除けた。
「ゲオルグどの、知ってるんでしょう?知ってて、それでもこんな真似ができるんですか!?」
弾かれたように、ゲオルグは棒立ちになる。
「知っていたのか」
…やっぱり。ベルナデットの瞳から涙が溢れた。
「すまない、黙っていた方がいいと思ったんだ。よけいな負担をかけさせたくなかった」
「知っていて、こんなことが出来るなんて…見損ないました!」
「決して軽い気持ちじゃないんだ。分かってくれベルナデット」
「口では何とでも言えるんですね。実の兄妹で愛し合うなんて…獣だわ!」
290ゲオルグ×ベルナデット5/8:2006/05/02(火) 20:48:57 ID:4UU3sUOH
ベルナデットの悲痛な叫びが風呂場に響く。張り詰めた沈黙が続いたが、その沈黙を
打ち破ったのは、ゲオルグの大爆笑だった。
「ちょ、おま、何だそれ。誰と誰が兄妹だって!?」
「わ、私とゲオルグどのが…。違うんですかっ?」
「違う違う!お前の兄貴は、俺の親友だよ。ずいぶん影響受けたから、似てる部分は
あるかもしれんが」
ベルナデットは放心したように湯船にへたり込んだ。自分の勘違いに苦笑いと安堵の
ため息が漏れた。兄妹じゃないんだ…。ゲオルグは呆れたように笑いながら、ベルナデットを
抱き寄せた。再び密着する体の熱さに驚き、思わず身を引く。
「どうした?兄と妹じゃないから問題なかろう?」
「でも…」
「じゃあ何か?いったん風呂から出て服を着て、お前の部屋でもう一度服を脱ぐか?」
言葉に詰まって黙り込むと、許可の証とでも思ったのか、唇を塞がれた。流されているなぁ、と
心の隅で思いつつ、そっと心に蓋をした。自分の意思を持って流されるなら、
それは流されているとはいえないだろう。
ベルナデットはおずおずとゲオルグの背に手を回した。触れるだけのキスから、次第に激しさを
伴うキスへと移行する。呼吸するために少し唇を離して息をすると、その隙に舌が差し込まれて
口内を蹂躙される。
「んふぅ…っ。んん…」
体を内側からぞろりと嘗め上げられる感触に、ベルナデットは軽いめまいを覚えた。
しがみつく手にも力が入らなくなり、ずるずると湯船に沈みそうになる。
「おっと、これ以上湯船で続けると、どっちかが溺死するな」
ゲオルグはひょいとベルナデットを抱え、湯船を出た。
「あ、あのっ、誰か入ってきたらどうするんですか?」
「心配するな。俺とカイルが入る時、掃除中の看板を下げておいたから誰も来ない」
にやりと笑い、ゲオルグはベルナデットを浴槽の縁に座らせて、その辺に脱ぎ散らかしていた
マントを床に敷いた。
「まあ、これで少しはラクだろう。ホラ、おいで」
マントの上に正座すると、あっという間に押し倒された。背中に石の硬い感触があるが、
そもそも風呂場なのでどうしようもない。
「風呂場でやると、脱がす手間もないからラクだな」
茶化すゲオルグのわき腹を軽くつねる。お返しとばかりに胸の突起をつままれる。
「…っ、ん、あぅ…ん」
片方を指で捏ねながら、片方を口で含んで嘗めあげる。ベルナデットは声をあげぬように
歯を食いしばるが、いつの間にかすすり泣くような声を上げていた。ゲオルグはうてば響く
反応を楽しみつつ、手を次第に下腹部へと伸ばしていった。
291ゲオルグ×ベルナデット6/8:2006/05/02(火) 20:49:33 ID:4UU3sUOH
「あ…駄目、そこは…」
「何が駄目だ。もうびしょ濡れじゃないか」
「それはっ!お風呂に入っていたからですっ」
必死になって訂正するベルナデットを見て、ゲオルグ喉を鳴らすようにして笑う。
胸からわき腹、へそを通って禁断の場所へ。そこはすでにお湯ではない粘り気のある分泌物に
よってじんわりと湿っていた。
「んっ…!」
入り口付近に浅く指を差し入れると、ベルナデットは体を弓なりに反らした。
「んん、いやぁ…っ」
強烈な快感に、思わず逃げようと体をよじるが、ゲオルグは両手を捻りあげて片手で押さえ込み、
体重をかけて圧し掛かって逃げられないようにした。そして徐々に指を深く挿入していく。
やがて根元まですっぽりと飲み込む。
「いやぁ、ダメ、ダメぇ!ヘンになりそう…」
ベルナデットの目じりには涙が浮ぶ。だがゲオルグは容赦なく指を中で激しくかき回す。
「あーッ!や、ダメ…ッ!」
ぷしゅっ!と何かが薄く弾けるような音がして、飛沫が飛び散った。
「あ、あああ…っ」
ベルナデットはグッタリと弛緩し、顔を伏せた。
「だから、ダメっていったのに…っ」
恥ずかしさのあまり、死んでしまいそうだった。だがゲオルグは掌にかかった飛沫をぺろりと嘗め、
強引にベルナデットの口の中に突っ込んだ。
「なに、恥ずかしがることはないぞ。小便ではなく、潮を吹いただけだ。鯨と同じだ。
海を生きるお前には当然の生理現象だ。むしろ、俺の技がすごかったことを誉めて欲しいな」
「また…冗談ばっかり」
「本気だ。ご褒美をいただけますかな」
ゲオルグはにやりと笑って、ベルナデットの手を己のそそり立ったものに触れさせた。
思わず握ると、ゲオルグが小さく呻く。ベルナデットは手を上下させてそれを扱きはじめた。
ベルナデットにとってそれは初めての行為だったが、誰に教わるまでもなく自然に手が
動いていた。時に強弱をつけ、包み込むように、搾り取るように扱いていく。
やがて、ベルナデットは吸い寄せられるように顔を近づけ、存在を主張するそれを口に含んだ。
アイスを嘗めるように舌で転がし、それから口をすぼめて一気に吸い上げる。
「く…っ、どこで覚えたんだ」
「は、初めてですっ」
ベルナデットは真っ赤になって叫ぶ。そもそも、男女の交わりだって経験が豊富なわけではない。
風呂場で、真昼間から、ゲオルグとこんなことをしているなんて我ながら信じられなかった。
292ゲオルグ×ベルナデット7/8:2006/05/02(火) 20:50:12 ID:4UU3sUOH
しばらく同じ動作を続けていると、ゲオルグは身を起こしてベルナデットを押し倒した。
「もういい。これ以上続けたら俺のほうが持たん」
「え…?あ、キャッ!な、なに…?」
ゲオルグが股間に顔を埋め、秘所に舌を這わせて来たのだ。驚いて押しのけようとするが、
絶妙な舌使いに体中の力を奪われ、ただ力なくゲオルグの頭を抑えるしか出来ない。
「ああッ!あ、あ…ぅッ、やぁ…」
後から後から蜜がこぼれ、ゲオルグはわざと激しい音を立てて吸い上げる。舌のざらついた
感触が脳天から突き上げるような快感をもたらし、ベルナデットは息も絶え絶えに、ただ
すすり泣くような喘ぎ声を漏らすだけだった。
やがて顔を上げたゲオルグは、ベルナデットの両足を持ち上げ、膝を立てさせた。
もはや身も心もすっかり蕩けきっているベルナデットは抵抗することもない。
ゲオルグは狙いを定め、自身の猛ったものをその場所に押し当てた。
己の中に、異物が侵入してくる。その感触が、呆けていたベルナデットを覚醒させた。
「あ…!ああっ!」
そこは十分濡れそぼり、迎え入れる準備が整っていてたため、痛みはなかった。
ただ、それがどうしようもなく自分を圧迫する。
「あ、あん!!あ!あぁ…ッ」
ベルナデットの声に呼応するように、ゲオルグは己を激しく叩きつける。
時に最奥まで抉るように、時に浅く擦るように。
そして繋がったまま抱き起こし、座位の態勢になる。ベルナデットは自らゲオルグの背中に
腕を回し、体をぴったりと密着させてきた。豊かな胸が、くりゃりと形を変える。
「はぁ…はぁッ、も、ダメぇ…」
ゲオルグもだんだん限界が近づいてきた。最後の力を振り絞るかのように小刻みに体を
震わせ、そして己の思いの丈を、一滴残らずベルナデットに注いだ。

その後、二人は改めて風呂に浸かっていた。先ほどまで肌を交えて激しく乱れていた
ベルナデットだが、正気に戻ると理性が勝つらしく、きちんとゲオルグから距離をとっていた。
その生真面目さが、ゲオルグには愛らしく見える。
「もうちょっと近くに来たらどうだ」
「駄目です。これ以上は危険です」
「何が危険だ。もうやることやっちまったじゃないか」
「ゲオルグどの!」
真っ赤になって怒鳴りつつ、ベルナデットは心持ちゲオルグに近づく。
293ゲオルグ×ベルナデット8/8:2006/05/02(火) 20:51:25 ID:4UU3sUOH
「それにしても、俺とお前が兄弟だ何てどんな妄想だ。人の話を聞かずに思い込みが激しいのは、
一族の血なのか。提督も兄貴もそうだぞ」
「…反省してます。ところで、私の兄って今は何をしてるんですか?」
ベルナデットの質問に、ゲオルグは言葉を詰まらせた。
「ゲオルグどの?」
「…亡くなったよ。人間、いい死に方なんてないと思うが、それでもアイツにはああして
死ぬのは苦ではなかったんだろうな…」
「側にいらしたんですか?」
「ああ。俺が上手く立ち回れていれば、防げたかもしれないと思うと、やはり、な」
そう言って、ゲオルグは俯いた。あの時の出来事が甦る。あの時、もっと何か出来たのでは
ないだろうか。二人を失わずに済む何か別の方法が。そう思うだけで、罪悪感と後悔で
胸が潰れそうになる。自分がこんなにも脆く弱い人間だったのかと、自分を詰りたくなる。
大事なものを守ることも出来ないで、何が女王騎士だ。お前はその贖罪のために王子を
守ってるだけじゃないのか?また今度も失ったらどうするのだ?
と、背中からベルナデットがふわりと抱きついてきた。
「私が兄に代わって許します。だからもう一人で背負わないで。兄もきっと、ゲオルグどのが
辛そうにしているのを見たくないはずです」
振り返ると、ベルナデットの顔が近づき、そっと眼帯にキスしてきた。天使が舞い降りたかの
ような、軽やかで慈愛溢れる口付けだった。
「大丈夫。海の男は全部水に流しちゃうんです。次に同じ間違いをしなければ、それでいいんです」
ベルナデット、お前は許してくれるのか。お前の兄と義姉を助けられなかった俺を。
なあベルナデット。いつかお前に話してやりたい。お前に良く似た瞳を持つ男の話を。
人を愛し国を愛し、そのためには自ら傷つくことも厭わない、強い男がいたってことを。
ゲオルグはベルナデットを抱きしめた。精一杯の感謝と愛を込めて。
「ゲオルグどの…?」
ベルナデットが不思議そうに首をかしげ、くすぐったそうに笑う。
その笑顔は太陽の光を反射して輝く、深く碧い海の煌きに似ていた。
294ウィルボーン:2006/05/02(火) 20:55:33 ID:4UU3sUOH
以上ですー。最後がちょっとポエムちっくに…冷静に見ると恥ずかしい。

>279
GJ!もう一回4やろうかな。
295名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 00:21:43 ID:mLe7ScAt
オモシロスエロス
296名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 00:53:53 ID:WHBzUpo7
ジェレミツwktk
ゲオベルGJ!!
297名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 09:38:28 ID:hJ39BqsC
翻弄されるベルがカワユス。
真面目な人がうろたえる姿っていいですなあ〜。
GJ
298261:2006/05/03(水) 09:57:10 ID:7NIj3TyB
一日いち腐れ縁。
もはや需要とか濡れ場とかぶっちぎった展開ですが、ドゾー。
299ジェレミー×ミツバ?:2006/05/03(水) 09:58:00 ID:7NIj3TyB
今、長年の宿敵ミツバに覆い被さられて、キスをされている。
思えばかなり衝撃的なそんな事態を、ジェレミーの脳がきちんと把握する暇もないまま。
「うふっ……。んっ……」
ちいさな鼻息を漏らしながら、ミツバのくちびるがジェレミーのくちびるを
そっとついばんでいく。
上唇を、下唇を。かわるがわる咥えては、丁寧に舌先でなぞるように愛撫してゆくその動きは
どこかぎこちないながらも意外に丹念なもので
少女の高い体温が、やわらかく濡れた粘膜を伝って入り込んでくるような感覚に
ジェレミーの下腹部の緊張は、さらに増していく。
さらさらとした前髪でジェレミーの額をこすりながら、首をかすかに左右させていたミツバが
ひととおりの愛撫を終えてまっすぐに唇を押し付けてきたのにあわせて思わず舌を差し入れると、
ミツバは衝撃を受けたかのように僅かに体を震わせたものの、
やがて従順に口を開いて、熱っぽい口内へと招き入れた。

――こいつ……。

綺麗に並んだちいさな歯の列を開き、細い舌の先をこちらの舌に絡め吸い上げるミツバ。
その愛しげな様と、ぬかるむ口内の感触に陶然となりかけながらも、ジェレミーの中にちいさな疑念が生まれた。

――おとといから働いてる、って言ってたよな……。

ミツバがキリル達のキャラバンから、ふらりと姿を消したのは2週間ほど前のこと。
普段の言動が言動だっただけに、ラインホルトを含め誰一人として疑問には思わず
ただ単に、うまい儲け話でも聞きつけて勝手に脱退したのだと思って気にもとめていなかった。
ジェレミーにしても、ほぼその線で確実だと思っていたので心配はしなかった……
胸に穴があいたような、寂しさやるせなさだけはどうしようもなかったが。

実技指導やらがあるにしても、たった二週間で、ここまでうまくなるものなのか。

ツボを押さえた丁寧な愛撫に、快感が掘り起こされていけばいくほど
どうしようもなく膨らんでゆく疑問。
『もともと上手かった』などという発想は、普段のミツバを見慣れたジェレミーにはどうしても出てこない。
口ゲンカや『勝負』の合間合間、ふとみせる女っぽい仕草にガラにもなくドギマギしてしまうことはあっても、
ジェレミーの中のミツバはあくまでも、大人ぶって見せているだけの、ただの女の子に過ぎなかった。

――でもなきゃ、いくら俺でも。

絡み合うふたりの舌が立てる、小さな水音を遠く聞きながら、やるせなく物思いにふける。
無意識に伸ばした手で、ミツバの揺れる後頭部を、そこからうなじ、背中にかけてのラインをそっと撫で下ろし、
このちいさな暖かい体を、何人の見知らぬ男が組み敷いていったのかと想像せずにはいられない。
300ジェレミー×ミツバ?:2006/05/03(水) 09:59:09 ID:7NIj3TyB
不意にこみあげてきた、形のない怒りの赴くままに、ミツバのベストの端をギュッと握り締め
自分から相手の体をもぎ離そうとするように引っ張ってしまった。
背中を撫でるてのひらの動きに、気持ちよさそうに伸び上がりながら口内の愛撫を続けていたミツバは、
その動きに込められた意図をどう解釈したのか。
どこか名残惜しそうな風でジェレミーの舌をもうひと弄りしてから、ミツバはゆっくりと身を起こした。
声もなく、見上げたミツバの顔は、ランプの投げかける薄明かりの中白々と輝き
口の中に残った唾液を味わうように、頬を上気させ、陶然と目を閉じて上を向いたその大人びた表情が、
ジェレミーの胸に再び鈍い痛みを生む。
「はぁ……」
せつなげな、聞きようによっては媚びた演技に満ち満ちたため息のあと、ミツバは不意に目を開いて。
「もっとやってあげようと思ってたのに。案外せっかちだよねえ」
一瞬後には、この状況の中では違和感のありすぎるいつもの勝ち気な笑顔をたたえて
荒い息をつくこちらの顔を、意地の悪い眼差しで見下ろしている。

大きく股を広げた逆Vの字のひざ立ちから、ジェレミーの下腹部の上に遠慮なく腰をおろしてきた。
左右に腰を振りながらキスを繰り返していたせいなのか、頼りないヒモで前後をつながれているだけのミツバの腰布は
女らしくふくらんだ尻の丸みの上を盛大にめくれ上がっていて
まるっきり覆うものとてなく露出した、汗ばんだ尻肉とふとももの柔らかさが
ずっしりとジェレミーの腰にのしかかり覆い被さる。

ゆっくりと、見せ付けるようにゆっくりと、ミツバの両手が自身の胸元に寄せられ。
プチン、プチンと軽やかな音をたててベストの留め金を外し、その赤い表面をはちきれそうに押し上げている、
瑞々しい乳房のふくらみが曝け出されてゆく。

……思えば、何度夢に見た光景だろう。

くっきりと半球状の形を浮かび上がらせて盛り上がる、ミツバの両の乳房は
日焼け跡をかすかに残しながら蒼白く清楚に輝き、
薄明かりの中ではほとんど地肌と見分けがつかないほどかすかに色づいた頂の突端には、
可愛らしい蕾が震えながらうずくまっている。
汚れを知らない天使のように、静謐な美しさをたたえたミツバのほの白い裸身は
つかの間、ジェレミーに今置かれた状況を忘れ去らせるほどに、畏れを抱かせるほどに感動的な姿だった。
301ジェレミー×ミツバ?:2006/05/03(水) 10:00:20 ID:7NIj3TyB
……だが。

「降参ならいつでも言ってよね、お・きゃ・く・サ・ン」
卑猥な動きで円を描いて腰を回し、ズボンの中の男性自身の固さを自分の肉丘で確かめるようにこすりながら
細い肩をゆすってベストを脱ぎ落とそうとするミツバの淫蕩な嘲りの声と眼差しが、
ジェレミーの心をかきむしる。

「ミツバ……」
「んー?なに?」

苦しい気持ちをどうにかして伝えたくて、やっとの思いで搾り出した声に、ミツバは軽い生返事を返した。

やめてくれ、と言うつもりだった。
だが、こっちの苦悶になどまるで気がついた様子もなく、後ろに回した両手首にひっかかったベストを振りほどこうと
無邪気にブンブンと体を揺すっているミツバの横顔を見上げるうち、
ジェレミーの中でドス黒い怒りが急激に膨れ上がる。

自分でも意味不明な怒声を迸らせながら、ジェレミーは強引に体を起こし、
自分の体を押さえ込むように座っていたミツバの、半裸の上半身が不意の衝撃に揺らぐところを、両手で捕まえて横のシーツ上へと引きずり倒した。
「えっ…?きゃああああああああっ!!」
絹を裂くようなミツバの悲鳴。
しなやかに伸びたミツバの足が宙を舞い、一瞬で上下が入れ替わった。

くしゃくしゃになって手首に絡まったベストで、後ろ手に拘束されたような格好になったミツバの上半身を
両肩を掴んだ手でシーツに埋め込むようにして固定すると、
驚愕の表情を浮かべた愛らしい顔から、剥き出しになって揺れる両の乳房、きゅっとくびれた腹にいたるまでの真っ白な肌が
隠れもなく、逃げ場もなく、怒りと欲望に霞んだ視野を埋め尽くす。
302ジェレミー×ミツバ?:2006/05/03(水) 10:01:17 ID:7NIj3TyB
「じ、ジェレミー……」
こちらを見上げるミツバの眼差しはなぜか、さっきまでの堂に入った娼婦ぶりからは思いもよらないほど不安げで
その声はかぼそく震えていた。
恐怖に見開かれたその大きな目に映る自分は、おそらく飢えた獣のような、一度もこいつには見せたこともないような、
恐ろしく凶悪な表情を浮かべているのだろう。
その自覚を心のどこかで愉しみながら、ジェレミーはゆっくりとミツバの顔に顔を近づけ、
その耳元に囁きかけた。
「俺の負けだよ、ミツバ……」
ミツバがちいさく、息を呑むのが分かる。
「剣だけじゃなく、『コレ』でも負けだ。我ながら情けないけどな、でも、まあ……」
Vの字に大きく割り裂いたミツバの脚の間に、割り込ませた左の太ももを、少女の股間の頂にこすりつけるようにしてやると
たったそれだけのことで、ミツバは切羽詰ったような表情を浮かべ
なんとか逃れようとするかのように、シーツの上に拘束された体を、無為に左右に揺らす。
「しかたがないよなあ。おまえはもう、一人前の立派な娼婦なんだからさ。いや、マジで驚いたよ……。素人の俺なんかが、敵うわけない」

――もういい。

説得して連れて帰ろう、などという最初の甘い考えは、ジェレミーの脳裏から綺麗さっぱり消滅していた。
ミツバが消した。変わり果てた、なのに声も姿もなにもかも、いつも傍にいた『あいつ』のままで、
胸の奥にずっとしまっておくはずだった想いを、引きずり出し踏みにじったこいつが。

「あ、あの……」
動揺し、視線をオロオロとさ迷わせながら、ミツバがなにかを言おうと口を開いた。

――だから、もういいって。いまさらそんな、泣きそうな顔するなよ。

「愉しませてくれるんだろ……?」
まるで取り合うつもりもなく切り捨て、歯と歯がぶつかりあうほどの勢いで、ミツバの唇を奪った。
「……!!んむうっ!ふむううううっ!!」
乱れた黒髪の後頭部全体を、柔らかいシーツに埋め込まれるように乱暴なくちづけに、ミツバが苦しげな声をあげる。
今度は硬く閉ざされたまま震えるちいさな歯の列を、潜り込ませた舌の先端で弄るようになぞりながら
ジェレミーは、ミツバの肩を押さえつけていた手をスライドさせて両の乳房の上に滑り込ませた。
みっちりと肉の詰まった、瑞々しい弾力をみせるそのふくらみをわしづかみにしてぎゅうっと絞り上げてやると
ミツバの白鮎のような裸身が、激しくのけぞるように跳ねた。



続く。
303名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:21:00 ID:iZyFD6Ob
SS作者に一言

これからは、陵辱物は禁止にしてくれ
正直、陵辱物が苦手な人は大勢居るし
純情系ゲームなのに陵辱物を書く理由がわからん

書きたいなら
チラシの裏にでも書いてくれ
304名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:21:45 ID:aU03zmub
スルーで
305名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:36:49 ID:tYDPeLm9
306名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:44:25 ID:sAbDGS7T
>>303
まぁまぁ
俺も陵辱物を書く奴もそれを喜んで読むやつも頭がイカレてる
原作キャラを貶めて汚すなんてこのゲーム嫌いだろっておもってるが
嫌なら読むな避ければいい、な話なんでしょうがない
307名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 15:46:52 ID:C4JP1x7M
よくよく考えると、エロSS書くだけで貶めて汚してることになるんだけどね…(´・ω・`)
308名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 16:04:17 ID:hU75qk1X
陵辱はダメって人も多いから、苦手な人はスルーできるように
きちんと明記して欲しいとは思うけどな。
自分と価値観の違う人間は頭が狂ってると言い切る奴や、
気に食わないものは全て排除しないと気が済まない奴に比べれば、
創作として自由に妄想を遊ばせてるだけの人間の方がまともに思えるよ。
309名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 16:10:10 ID:aOX+Y0pV
嫌ならスルーすればいい
310名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 16:13:19 ID:8p7iTrae
まあな
それ言っちゃ、子供のやるようなゲームのキャラで
こういうエロ妄想してること自体、常人から見たら『頭がイカれてる』と思われてるだろうからな
いちいち自分の好みとは違うから書くなとかいってる奴の気が知れん

俺は鬼畜も純愛も両方イケます
もちろんこのゲームは大好きですよ
まあ、嫌いな人用に注意くらいはあってもいいと思うが
311名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 16:18:51 ID:sAbDGS7T
>>308
「自分と価値観の違う人間は…」ねぇ…
陵辱させて楽しむのも価値観の一つってか?
312名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 16:23:01 ID:d6JFJmNH
純愛エロだろうが陵辱だろうが根本的に対して変わらないから
「純愛エロしか認めない俺は陵辱なんかを好む奴らとは違うんだよ」てか?wwww
313名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 16:28:22 ID:C4JP1x7M
GWだなぁ
314名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 18:24:33 ID:nL4x0nDQ
>>298
ものすごい勢いでGJ!
ミツバ可愛いよミツバ。
そして、あっさり負けるジェレミーにはどう情するぜ。
315名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 18:36:16 ID:ml1STwoI
やっぱりジェレミーにはどう情するぜw
ミツバ可愛いよミツバ。超GJ!

ところで、投下前に相談するのはうざがられるのを承知の上で聞きたい。
・エロ薄め
・前置きが長い(エロまでの前置きだけでかなり長い)
・血なまぐさい表現有り(鬼畜・陵辱ではない)
・全体的にものすごく長い文章
以上のような作品を投下しても大丈夫だろうか。エロ事態はそんな特殊な嗜好ナシ、
ただのラブエロなんだけど…。
あまりに長すぎて投下を躊躇ってしまった。一日おきとかに投下するほうが無難?
316名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 18:42:53 ID:YPI8Jj1N
きっと次で勝つんだよ…と信じてみるw
そんな訳で次回も楽しみにしてます。

>315
直前に注意書きするのを忘れなければ大丈夫なんじゃないだろうか。
自分はエロに至る過程を重視する派なので、前置き長いの苦にはならない。
ただ、中にはそうでない人もいるから、そういう人には
スルーしてもらうという方向で……
317名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 18:46:49 ID:1QLzpz0r
名前欄とかの分かりやすい所に
概要や注意を表記しておいたら問題はないと思うよ

あと完成しているのなら一気に投下してもらった方が良いな、と。これは個人的主観だが。
318名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 19:59:01 ID:GyUhuoy/
長さにもよるかな。
40とか50レスとか使うなら、さすがに分けた方がイイと思う。
319名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:01:26 ID:cBtCitZc
陵辱どうこう言ってる奴は>>1読めよ
○男女・百合、和姦・強姦・輪姦・陵辱・3P等。お初神大歓迎。
ってあるだろうが、なに今更ごちゃごちゃ言ってんだ
320名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 21:09:44 ID:7hxzznNd
そんなことはどうでもいい、早く>>315は投下するんだ
321名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 22:50:43 ID:w46wYrGn
保管庫見たら、知らない間にログが流れちゃってた作品も読めて幸せ。
5発売から、すごい毎日のように神々が降臨してたんだな。
保管庫の管理人さん、乙です。
遡ってみてたら、5-821さんのシーナとタキのネタで大爆笑してしまった。
こういうギャグもいいな。
322アレニア恋物語(6) ◆IGA.li4jPs :2006/05/03(水) 23:27:10 ID:JH55DaxY
>>253-257
第二部の投下です。エロはまだ×と言う事でお願いします。

反乱軍の本陣は騒然となった。
捕虜である私が拘束も何もされずに連行された事、捕虜の連行にミアキス殿がついて来た事、更には私とミアキス殿がベッタリとくっ付いていた事
などが入り混じって喧騒が更に大きくなった。
「ミアキス殿…やはり離れて歩いた方が…」
「イヤですぅ、せっかく一緒になれたのに何で離れて歩かなきゃいけないんですかぁ?」
「周囲の目があるではないか……要らぬ誤解を与えかねない」
「もう…大丈夫ですよぉ。アレニア殿はホントに心配性ですねぇ」
そう言って更に体を密着させてきた。
私は恥ずかしさのあまり顔が火照ってしまった。恐らく耳まで真っ赤になっている事だろう…。
今すぐにでも避けたい衝動に駆られたが、ミアキス殿はミアキス殿なりに私の事を喜んで迎えてくれていたのは分かっていたのでそれを拒否するのは
悪い気がした。この場はとりあえず我慢する事にした。

ムニュ、

私の腕に妙な感触が…横目でチラッと見ると、ちょうど私の腕が彼女の胸の部分に当たっていた。
しかも、どう見ても意図的に当てている様にしか見えない。
「ミアキス殿!大衆の面前で何を…!」
私は小声で注意する。
「大丈夫ですよぉ、端から見ればじゃれあっている様にしか映りませんしぃ」
「場を弁えられよ…流石にこれは度が過ぎるぞ」
「まぁまぁ」
「まぁまぁ、ではない!破廉恥だ…!」
破廉恥と言う単語を口にした時、妙に恥ずかしくなってしまう私がそこには居た。
今のやり取りを他者に見られているのも重なって更に体が熱くなる。妙な汗も出てきた。
「あれぇ?さっきより顔が赤くなってますよぉ??」
「ぐ…」
「あーー、もしかして恥ずかしいんですかぁ?」
「と、当然ではないか!貴殿は恥ずかしくなくとも私は…」
「ウフフ、アレニア殿はホント純情ですねぇ。今時の若いコならこれ位普通の事ですよぉ?」
「……う」
それ以上言葉が出なかった。
今時の若者はこんな事を平気で行うのか…恋愛に対して全く興味のない私にとってすればついつい恥じるべき行為だと思ってしまう。
それだけ私の頭が固いのだろう。
しかし、その様な行為に対して興味を抱いてしまうのも事実だった。
いつもそうだった。他人が恋愛話に華を咲かせているのを横目で見ながら聞き耳を立てていた私が居た。
私もその輪に入ろうとしたが恥ずかしく思い、常に無関心を装っていた。
誰も居ない所で一人、物思いに耽っていた時もあるがそれは遠い昔の話である…それも随分と昔の話だ。
(…今が良い機会かもしれないな)
「??どうしたんですかぁ?」
ミアキス殿が私の顔を覗き込んでいる。彼女と目が合ってまた恥ずかしくなり慌てて視線を逸らす。
「???」
そんな私を彼女は不思議そうに見つめていた。
323アレニア恋物語(7) ◆IGA.li4jPs :2006/05/03(水) 23:28:14 ID:JH55DaxY
いよいよ本陣に通された。
流石にここの警備は厳重で、見張りの者が他の詰め所よりも多く配置されており空気が張り詰めている。
空気の重さと緊張とが入り混じってキリキリと胃が痛みだす。嘔吐をこらえて何とか我慢して時を待つ。
「アレニア殿、気楽にね」
そう言ってミアキス殿は私の両肩に手を置いた。ミアキス殿と肌が触れ合うと不思議と少しだけ緊張がほぐれる気がした。
程なくして、反乱軍の首脳部の関係であろう人間が現れた。場の空気は一気に張り詰め、その時ばかりは流石のミアキス殿も真剣な表情だ。
「あ、貴殿は確か…」
私はその中に見知った顔を見つけた。
「アレニア殿、お久しぶりですね」
その人物は団扇を口元に当てて軽く笑う。傍にはゴドウィン派の兵士の格好を装った人間が二人控えている。
「メルセス卿…」
「その名前で呼ぶのはよして下さいな。とっくの昔にメルセス卿と呼ばれる立場から遠のいてますよ。今はファルーシュ王子専属の軍師ですから」
そう言うとメルセス卿は穏やかな笑みを浮かべた。恐らくは私の緊張をほぐそうとして作り笑みを浮かべているに違いない…私はそう思えた。
この陣営は何処かおかしい…誰もが皆穏やかな顔をしているのだ。血生臭い戦地においてはあまりにもかけ離れ過ぎている。
いつ命を落とそうか分からぬ戦場でこれだけ穏やかな空気を吸うのは気が引ける。メルセス卿が現れて数分も経っていないのに場の空気は既に和みきっていた。
「アレニア殿…まずは今までの戦役、誠にお疲れ様でした。貴女の戦ぶりこの目で拝見させてもらいましたよ」
(いきなり私の功績を讃えるとは……メルセス卿は何を考えているのだ…分からぬ)
「貴女の戦上手は噂以上ですね。こればかりは過小評価をした私に落ち度があると言えるでしょう。もう少し早くこちらの陣営に加わって頂けたらこの戦も早く
終結していたに違いないんですけどねぇ…」
「……………」
「ま、過ぎた事を言っても始まらないので本題に入りましょう。今日の戦を持ってゴドウィン派の敗戦は決定的となりました。残念な事にマルスカール殿には
太陽の紋章を持ったまま逃げられちゃいましたけど…とりあえずソルファレナを奪回できた事だけでもヨシとしましょう」
「……………」
「本当はお酒でも酌み交わしながら色々とお話をしたかったんですけど…アレニア殿とザハーク殿には一応捕虜と言う格好を取らせてもらいますね。本当は
あんまりこう言う形は取りたくないんですけどねぇ……普通に扱うと内外に示しが付かないので形式だけは取らせて下さいね?」
「…承知している」
「とりあえず私達のお城に来てもらいます。そこで事が済むまで収監と言う事で…あ、生活の方は心配しなくても大丈夫ですよ。
「一日三食+お風呂付き」でちゃんと面倒みますから」
メルセス卿は嬉しそうに言うのを後ろの護衛の二人は何とも言えない表情を浮かべていた。私も内心複雑だった。
「メルセス卿…」
324アレニア恋物語(8) ◆IGA.li4jPs :2006/05/03(水) 23:30:09 ID:JH55DaxY
「はい?」
「…捕虜の身分で差し出がましい事を言う様だが何故そこまで私達を労わるのだ?私は国の根底を揺るがす大乱に加担した人間の一人だぞ?しかも国職の最高峰に
当たる女王騎士が反逆に加担して…私達を生かしておいても得な事は何も無い様に見受けるが…」
「確かに…アレニア殿のおっしゃる事も一理あります。けど、死んでしまっては分かる事も分からないでしょう?それに、生きて罪を償う事が一番大切だと思う
から私はそうしたのです」
そう言うとメルセス卿は右手で私の頬を撫でてきた。その白い指は私の顔の輪郭をゆっくりと撫でる。
「…随分と顔がやつれましたね。以前お会いした時は生気に満ち溢れていたのに……この二、三年ですっかり歳を取ったんじゃないですか?それに…」
彼女の指が頭に触れた瞬間、頭皮に痛みが走る。
私が「っつ!」と顔を歪めるとメルセス卿は「ほら」と言いながら私の目の前で手を開いて見せた。何か白い線が掌に見えたが良く見えない。
「あぁ、これじゃあ見えませんね」そう言うと衣の袖にその白い線を置いて私に見せてくれた。
「白髪ですよ…しかもこんなに長いのが。今まであまり自分の体に気を使って来なかったでしょう?今こうして見てもかなり見えてますよ、白髪が」
「……………」
「この際、ちょうど良い機会ですし捕虜の立場を利用して暫くお休みされたらどうです?尋問とかが始まればそう休めないと思いますし…それに」
「…?」
メルセス卿が私の顔を覗き込む。その目はとても穏やかで視線を逸らす事が出来ない。
「さっきからずーっと眉間にシワが寄りっぱなしですよ。そんな顔をしてちゃ楽しい事も楽しくないでしょう?アレニア殿は物事の全てを自分の中に背負い込み過ぎなんです」
メルセス卿の言う事は最もだ。今だからこそ素直に受け入れられるが、血気盛んな時だったら恐らく……いや確実に激怒している事だろう。特にドラードの頃の私は…。
「ルクレティアさんの言う通りです。アレニア殿は完璧を求め過ぎなんですよぉ。完璧な人間なんてこの世には存在しないんです。そりゃ私だって欠点の一つや
二つ持ってますしぃ…でも、その欠点を自分自身認めるか認めないかで大きく違ってくるんですよぉ?言い方は変かもしれませんが、要は開き直るんです。
「あ、私ってこんなモンなんだぁ」って。そう思えると随分と肩の荷が下りますよー」
ミアキス殿も私の肩に手を置いて語りかけてくれた。
ここまで人に親切にされると妙に恥ずかしくなってしまう。彼女の方に視線を送る事が出来ない。
こうしている間にも太陽宮内部での戦況が伝令によって本陣にもたらされる。
その伝令一つ一つが「ゴドウィン軍劣勢」と言う内容の物だと言うのは私でも分かる。
メルセス卿はその伝令一つ一つに細やかな指示を与えた。軍師がここまで細やかな指示を送るのだ、反乱軍の強さは半端な物ではない事を今、身を持って知る私が居た。
(これでは勝てる訳がない……悔しいが我々の負けだ)
例え、我々が一枚岩になって掛かっても勝てる見込みは少ない。
メルセス卿の思考回路は無限に広がっているに違いない。どんな状況にも動じる事のない策戦をその頭脳に収めているのだろう。
それを考えるとこの人物は常人の域を超えている…。
325アレニア恋物語(9) ◆IGA.li4jPs :2006/05/03(水) 23:30:50 ID:JH55DaxY
そんな中、私にとって一番耳にしたくなかった情報が飛び込んできた。
「太陽宮が陥落!ギゼル・ゴドウィン殿は戦死なされましたっ!!」
「ギゼル様…」
かつての主が戦死したと聞いて、私は胸が締め付けられる思いがした。
アルシュタート陛下とフェリド閣下がお亡くなりになられた時には…。
(薄情だ………お二人がお亡くなりになられた時には微塵も感じなかったのに…何故今になって…)
「また、リムスレーア女王はファルーシュ王子によって無事に救出されたとの事です!」
「ホントですか!?良かったぁ……」
ミアキス殿はその場にへたり込んでしまった。私は慌てて彼女を支えてやる。
彼女にとってリムスレーア王女はどんなかけがいの物よりも大切なお人だからだ。
何を差し置いても王女の事を第一に考える…護衛の鑑と言って過言ではない。それに比べ私は何と惨めだろうか。
「…これで勝敗は決しましたね」
報告を聞いてメルセス卿がポツリと呟く。
「後はマルスカール殿だけですか……これはこれでちょっと厄介ですね…別に作戦を練らないといけませんがアレニア殿とザハーク殿の件もありますし……」
独り言を呟きながら屋内をウロウロとしている。私はそれを黙って見ていた。
遠くで勝鬨が聞こえる…喜びに満ち溢れた声だ。兵士と共に市民の声も入り混じって聞こえる。これで私の帰るべき場所は無くなった。
(これからどうするか…)
「……決めた、とりあえず身柄はサンポート城に移しましょう。そこで暫く休暇を楽しんで下さい。然るべき事項は追って連絡します。護衛の方は…そうですねぇ…
…レレイさんとミアキスさんにお願いしようかしら?」
「ルクレティア様!それは…」
「大丈夫ですよレレイさん。シウスさんがこちらに残ってくれますから。それに、いざとなれば護衛してくれる人は大勢居ます」
「ですが…」
「良いじゃないですか。女王騎士殿と親交を結ぶ良い機会ですよ。色々とお話を聞けるチャンスですよ?」
「はぁ………了解です…」
レレイ殿は渋々承知する。それを見てメルセス卿は満足そうに頷く。
「そんな訳です。レレイさんの事を宜しくお願いしますね」
「はぁい、了解でぇす」
「……承知」
…何だかメルセス卿に上手い事丸め込まれた気がしてならないのは私だけだろうか。
326 ◆IGA.li4jPs :2006/05/03(水) 23:32:07 ID:JH55DaxY
第二部終了です。
ここから粘り強く執筆したいと思います。
327名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 01:10:55 ID:I3iOTRNI
実際、連投は大体何回くらいまでなら耐えられる?
あまり連投するとうざいかな。
328名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 01:12:10 ID:I3iOTRNI
>326
リロしてなかった、スマソ。GJです!アレニア可愛いよアレニア。
329名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 01:14:39 ID:iCcXkA6Y
アレニアの手ひどい裏切りは憎かったが彼女に「その後」があったら
こんな風に大人になっていくといいなと思う
恋愛話とかほんとに耳そばだてて聞いてそうだ。
続き楽しみにしてる。
330お茶:2006/05/04(木) 05:35:11 ID:M/8RMTLJ
マリハヅもまだ完結していないのにベルハヅ投下してみます。
というか315で質問したの自分です。すみません。
一応ラブエロですが前置き長いです。前置きだけで一本分orz
長文なのできりのいいところまで試しに投下してみます。
戦争描写あり、苦手な方は注意してください。
331ベルハヅ:2006/05/04(木) 05:37:38 ID:M/8RMTLJ
馬蹄の音が響く。刃の擦れる音。悲鳴。怒号。
そこは戦場。ハヅキは改めてそれを思い知る。
齢17にして、彼女は前線で戦う兵として戦場へと送り込まれていた。


「深追いはするなよ!目的はあくまで住民が避難するまでの時間稼ぎだ!」
響いたのはミューラーの声だったか。向かい来る兵を斬り捨てながらハヅキはそんな事を思った。
もうどれくらいの時間、こうして戦っているのだろう。
あとどれくらいの時間、こうして戦っていればいいのだろう。
考えながら、その手は確実に敵を仕留めるべく刀を閃かせる。
鎧の隙間を狙って刀を突き入れる。喉元を断ち切る。苦痛の少ない様に、確実に、
短い時間で絶命するように。
逃げる兵を追う事はしない。あくまで、これは時間稼ぎなのだから。
少女の細い腕が刀を振るう度に、ゴドウィンの兵はひとり、またひとりと倒れてゆく。
早く、早く終って欲しい。逃げればいいのだ。逃げるのは悪いことではない。
望まずして戦場へ送られたのなら、恐れをなして逃げ出したところで誰も咎めはしないから。
これ以上向かってこないでくれ。もう終ってくれ。
早く、早く─────祈りにもにた思いを抱き、それでも、残酷なほどに的確に、
向かうものを全て斬り捨てる。
肉を斬り骨を絶つ感触。刃がずぶり、と肉に沈む。眉を顰めた。そのまま力任せに斬り捨てる。
あっけない程簡単に人の身体を形作るその支柱はぼろりと折れてしまう。
肉や魚を切るのとは違う。もっと重い、生々しい感触。
吹き上がる血はまだ暖かい。絶命してなおびくびくと痙攣する肉の塊となったそれを、
決して視界に捉えないように。自ら手にかけたそれを決して見てしまわないように。
ハヅキは必死に剣を振るった。
332ベルハヅ:2006/05/04(木) 05:40:03 ID:M/8RMTLJ
砂埃は赤く染まり、生々しい匂いを伴って戦場を漂う。赤く煙る戦場。
吐きそうだ──もう、嫌だ。

どれくらい時間が経ったのだろう。まわりに見える兵は敵ばかりで、
同じ戦場にいるはずの仲間が見えない。少しずつ、心が麻痺してゆく。
血を浴びるたびに、命を絶つたびに、少しずつハヅキの心が、その胸の内がひんやりと冷えてゆくような錯覚に囚われる。
もう、終わってくれ───何度目かのその胸の内の声に答えるかのように、声が響いた。
「住民の避難は終わりました、退がります!」
聞きなれた声にハヅキは安堵を覚えた。姿が見えなくても傍にいる。
そう感じたのだ。続いてヴィルヘルムが総員に撤退命令を出すのが聞こえた。
既にゴドウィンの兵は敗走を開始している。
終わった。逃げてゆく兵たちの背中を見送りながらハヅキは刀を下ろした。


「───ハヅキさん」
慌しく兵たちが駆け回る中届いた声にハヅキが顔を上げる。ベルクートだった。
部隊長として戦場に出るベルクートの副官として、ハヅキはここへ来たのだ。
刀を納めようと視線を落とし、手が止まる。苦悶の表情。おびただしい血を流した兵の死体。
それはひとつやふたつではなかった。己の手に握られた刀はその血で赤く濡れていた。
先端から滴る赤い雫は、つい先程まで人を斬っていたのだと思い起こさせるには十分だった。
「…戻りましょう」
ベルクートは強引にハヅキの顔を上向かせる。
そんなベルクートの剣も同じように、赤く染まっていた。
長い大振りのその剣は柄に至るまでが染まっており、彼がどれほどの数の敵を斬ったのか、
容易に伺わせた。視線に気付いたベルクートはそれをさりげなく隠すように、
ハヅキの背を押して歩き出した。
幸いしたのは、ハヅキが身に纏う服は暗い色だったということだろう。
鮮やかな赤い革鎧と、黒の着物は血の跡を隠した。彼女がどれほどの血を浴びたのか。
それを知るのは本人ではなく、背中に触れたベルクートだけだった。
333ベルハヅ:2006/05/04(木) 05:42:13 ID:M/8RMTLJ
レルカー防衛線を勝利で終えた王子軍は、レルカーの街を離れ、本拠地であるヴァルハラ城へ向けて帰還した。
状況はさほど変わっていない。、無事にレルカーの民が避難を終えただけ。
近いうちにまた大規模な戦闘が行われる可能性は高い。
状況が状況だけに、それは止むを得ない事ではあった。
ベルクートは重い気持ちで戦果報告を終え軍儀の間を後にした。
いつも戦闘の後は気分が重く、苦しい。胸のあたりが圧迫されるような不快感。
生還した喜びなどない。
それはいつでも変わりはしないのだが、今日だけはいつもよりも強くそれを感じていた。
罪悪感。それ以上に感じたものは────。


「ベルクートさん、ちょっといいです?」
不意に呼び止められ、ベルクートは足を止めた。
振り返ると王子軍の頭脳であるルクレティアの姿があった。
少しお話したいことがあります。彼女はそう言うとベルクートを部屋へと誘った。
逡巡した後、ベルクートはそれに応じ、ルクレティアに続いた。


「あなたに謝らなければいけないと思っていたんです」
徐に、ルクレティアはそう切り出した。いつもの読めない飄々とした様子ではなく、
少しばかり消沈したような姿だった。
「私、私情を挟まないで下さい、って、出撃前にあなたに言いましたよね」
ベルクートはそれに答えなかった。
出撃前、編成を聞かされたベルクートは、珍しく怒りを露わにして王子とルクレティアに意見していた。
自分の隊にハヅキが配属されていることを。ハヅキを戦場へ送り出すという彼らの判断に反対し、
撤回することを求めたのだ。
ハヅキは腕の立つ剣士ではあるが、まだ幼い少女。まして人斬りの経験などないだろう。
穢れないその娘を、戦場に立たせることはしたくなかった。人を斬ることをさせたくはなかったのだ。
それが自分の勝手な思いであるとは判っていた。
だが、あまりに純粋で、無垢な少女に穢れを教えることはしたくなかったのだ。
血を浴びて戦うことの苦しみと、人を斬る痛みを、知ってほしくなかった。
334ベルハヅ:2006/05/04(木) 05:44:45 ID:M/8RMTLJ
我侭だというのは承知していた。だからこそ、きっと撤回することはないだろうと、それも判っていたのだ。
それでも言わずにはいられなかった。
思っていた通りその判断が覆されることはなかった。
それに加えて、王子やロイなども同じように戦場に出て戦っているのだと。
戦場では剣聖と恐れられるリヒャルトも、ハヅキと同じ年であるにも関わらず、戦場に出ているのだと。そう諭された。
彼女だけではないのだ。幼くして戦場へ向かう者は、と。

「あんな偉そうな事を言っておいてなんですが、今、少し後悔しています」
声の調子が低くなる。珍しい──ベルクートはそう思った。
いつも王子の為にはと、非情に徹することも厭わなかった彼女がそんな事を言うとは。
「ハヅキさんは強いですし、傍にあなたがいるなら大丈夫だと思ったんです。
実際、目立った怪我などはしていませんが───」
そこで一度、言葉を詰まらせた。ルクレティアが言わんとしている事は、十分に想像がついた。
そして、自分はそれを最も危惧していたのだ。
「……見えない所にも、傷は残ります」
ハヅキが女だということ。
それは剣士としての腕前には関わらない。実際に、ミアキスやイザベルなどは、
女性でありながら男性にも劣らぬ腕を持っている。
問題は、そこではない。

「…ハヅキさんは、人を斬ったことが一度もなかった」
ベルクートのその言葉に、ルクレティアは深く頷いた。
「私の思い込みです。ハヅキさんは心も強い子だから、大丈夫だと。
けれど、そうではなかったみたいです」
人を斬るのに慣れることほど残酷なことはない。
戦時中、従軍するものであれば、必ず一度は通る道だ。
ベルクートが初めて戦に関わったのは、奇しくも同じレルカーだった。
先の女王騎士ザハークとのレルカー会戦である。
その後、ドラート攻略、新女王親政と戦に関わってはいるが、未だに戦には慣れていない。
兵卒を務めるほどまでにはなったが、その心の内は変わってなどいない。
「こんな事を今更言うのもなんですけど……ハヅキさんの事、お願いしたいんです。
近いうちにまた戦いになるかもしれません。王子次第ですが…。残酷な事を言いますが、その時までに」
「わかっています。…もう、宜しいですか」
ルクレティアは頷き、ベルクートを下がらせた。彼が怒るのも無理はないと判っていた。
けれど、王子と自分の判断も間違っていなかったと信じている。
事実、レルカー防衛線での勝利に、ベルクートの部隊は大きく貢献している。
ハヅキ一人の力ではないだろうが、彼女が加わることでその結果が出たというのは事実なのだ。

335ベルハヅ:2006/05/04(木) 05:45:39 ID:M/8RMTLJ
きっと深く傷ついているであろう少女に、次の戦のために立ち直って貰わなければいけない。
そう思うと気が重い。
そしてそれを、彼女が出撃する事を最も拒んでいるベルクートに頼まなければならないことも、
ルクレティアの胸を痛めた。
ハヅキがこの城で最も信頼を寄せている相手は、王子でも自分でも、他の誰でもない。
ベルクートだ。それを知っているから、彼女が最も望む相手はベルクートだと判っているから、
ルクレティアはそうする事しか出来なかったのだ。
最も、自分が口を出さずとも、あの優しい男はそうしたのだろうが。

ひとつ大きな溜息をついて、ルクレティアは部屋を出た。
嫌われることには慣れているが、だからといって落ち込まないというわけではない。
けれど、重い気持ちを気取られてはいけない。何時もの表情に戻り、軍儀の間へと向かった。
336お茶:2006/05/04(木) 05:46:36 ID:M/8RMTLJ
長文連投申し訳ないです。とりあえずここまで。
城の名前がヴァルハラなのは特に気にしないで下さいw
夜か明日にでも続き投下しにきます。
337名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 09:37:24 ID:UzIWIxZK
 ベルハヅ、キター!!
 続きを正座して行儀良くして待っている!!
338名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 10:16:37 ID:wL8/BsiV
アレニア恋物語、かなりツボにはまってきた……。
まさか彼女に萌える日が来るなんて。
339アレニア恋物語(9)訂正版 ◆IGA.li4jPs :2006/05/04(木) 10:29:55 ID:TdSEU6yu
>>253-257>>322-324
おはようございます。昨晩、第二部を投稿した者です。
読み返すとどうもラストの部分がしっくり来ないので再度。

そんな中、私にとって一番耳にしたくなかった情報が飛び込んできた。
「太陽宮が陥落!ギゼル・ゴドウィン殿は戦死なされましたっ!!」
「ギゼル様…」
かつての主が戦死したと聞いて、私は胸が締め付けられる思いがした。
アルシュタート陛下とフェリド閣下がお亡くなりになられた時には…。
(薄情だ………お二人がお亡くなりになられた時には微塵も感じなかったのに…何故今になって…)
胸がとても苦しい……今まで収まっていた胃の痛みが再発した様だ。
キリキリとした痛みではなくまるで胃に穴が開きそうな勢いだ。嘔吐しそうな気配に襲われ思わず口を抑える。
「アレニア殿?」
突然の異変にメルセス卿は驚いたかもしれないだろう。慌てて私の背中をさすった。
「……ウッ!」
今日は殆ど食べ物を口に運んでいない。だから今嘔吐しても胃酸しか出ないだろう…。
胃酸を戻すと辺りに酷い悪臭が立ち込めるのは重々承知している。今、流石この場では嘔吐出来ない。
「…やっぱり相当体に負担を掛けましたね?」
「………面目ない」
「フゥ……誰かアレニア殿に温かい食事を準備して下さい」
メルセス卿は近くに居た兵士に命ずる。その兵士が出て行くのと入替わりに、
「あの…先程の伝令の続きですが…」
「あ、続けて下さいな」
「また、リムスレーア女王はファルーシュ王子によって無事に救出されたとの事です!」
「ホントですか!?良かったぁ……」
ミアキス殿はその場にへたり込んでしまった。私は慌てて彼女を支えてやる。
彼女にとってリムスレーア王女はどんなかけがいの物よりも大切なお人だからだ。
何を差し置いても王女の事を第一に考える…護衛の鑑と言って過言ではない。それに比べ私は何と惨めだろうか。
「…これで勝敗は決しましたね」
報告を聞いてメルセス卿がポツリと呟く。
「後はマルスカール殿だけですか……これはこれでちょっと厄介ですね…別に作戦を練らないといけませんがアレニア殿とザハーク殿の件もありますし……」
独り言を呟きながら屋内をウロウロとしている。私はそれを黙って見ていた。
遠くで勝鬨が聞こえる…喜びに満ち溢れた声だ。兵士と共に市民の声も入り混じって聞こえる。これで私の帰るべき場所は無くなった。
(これからどうするか…)
「……決めた、とりあえず身柄はサンポート城に移しましょう。そこで暫く休暇を楽しんで下さい。然るべき事項は追って連絡します。
護衛の方は…そうですねぇ……レレイさんとミアキスさんにお願いしようかしら?」
「ルクレティア様!それは…」
「大丈夫ですよレレイさん。シウスさんがこちらに残ってくれますから。それに、いざとなれば護衛してくれる人は大勢居ます」
「ですが…」
「良いじゃないですか。女王騎士殿と親交を結ぶ良い機会ですよ。色々とお話を聞けるチャンスですよ?」
「はぁ………了解です…」
レレイ殿は渋々承知する。それを見てメルセス卿は満足そうに頷く。
「そんな訳です。レレイさんの事を宜しくお願いしますね」
「はぁい、了解でぇす」
「……承知」
…何だかメルセス卿に上手い事丸め込まれた気がしてならないのは私だけだろうか。
340名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 10:46:43 ID:0Stlc2lj
ベルハヅ、GJ!そんなに長文ではないし、このくらい前置きあった方が
後々感情移入も出来るし、いいんじゃないかと思いますよ。
341名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 12:25:07 ID:7RtP8KvD
前置きだけで終わらなければな…
342名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 13:06:34 ID:bhQUTGjQ
保管庫が見れなくなっているのですがどうしてでしょうか?
343名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 13:06:57 ID:I3iOTRNI
どうして神を萎えさせる事言うかな…。
お前みたいなのがいるから、神々の足も遠のくんだよ。
344名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 13:18:16 ID:xZy9H1RE
>>343
何でスルーしないの?荒らしなの?
345261:2006/05/04(木) 17:09:13 ID:wL8/BsiV
一日いち腐れ縁。
ジェレミーがますます可哀想なことに。
346ジェレミー×ミツバ?(陵辱風味注意):2006/05/04(木) 17:10:38 ID:wL8/BsiV
(承前)

執拗に追いすがり唇を割り裂こうとする、ジェレミーの唇と舌先から何とか逃れようと
後ろ手に縛り上げられたにも等しい窮屈な姿勢のまま、裸の上半身をのたくらせて上へ、上へと体をずらしてゆくミツバ。
「ひああああっ!だっ、だめ、ああーっ!!」
欲望と激情にまかせて乱暴に揉みしだくだけの愛撫も、彼女の敏感な胸にはこらえ切れない疼きを与えるらしく
なんとか唇を解放される束の間の間隙を縫うように、恥も外聞もなく甲高い声をあげる。
思う様、少女の唇を味わいつくしたあと、思い切りのけぞった細い喉にかぶりつき、そこから鎖骨のくぼみへと、ゾロリと舌を這わせていく。
同時に掌で乳房の下半分を撫でさすりながら、両の中指で尖りきった乳首を押し込むようにして刺激してやると
ミツバは両足をバタつかせて面白いほど激しく暴れ、ジェレミーの腹に裸の腹を何度も何度も打ちつけながら喘いだ。

なんでここまで敏感なのか、そもそもこんなにも感じやすいようで娼婦など勤まるものなのか、と
先ほどまでとは正反対な疑問がチラリと脳裏をかすめたものの、
『どうせこれまでも、何人もの男相手に同じ痴態を晒してきたはずだ』という想像に凝り固まった今のジェレミーには
汗を飛び散らせながら身悶え続けるミツバの姿も、なにか空々しい演技の延長線上にしか見えず
せいぜい追い詰め、よがり狂わせてやろうという、嗜虐的な想いをますます強くしていくだけのことだった。
かつて漠然と夢想していたそれとは、悲しいほど遠く隔たった状況ではあったが
現に今、自分の体の下で踊るミツバの白い裸身を、思うさま味わい尽くしたいという衝動に身を委ねて。

胸を突き出すような格好で固定された細い両腕ごと、右腕をまわしてミツバの上半身を強引に抱きあげ
散々こねくり回されて湯気を立てるような左乳房の突端を、口元に運びむしゃぶりつく。
汗にまみれた甘い果実を舌先で転がしてやると、腕の中のミツバはせつなげに身をよじりながら哀願の言葉を漏らす。
「だめ……そこだめ……か、かまないで、か……、あひゃうッ!!」
なおも執拗な乳首責めを繰り返すうちに、ミツバの喘ぎ声は次第に切迫した響きを帯び始めた。
必死の抵抗と断続的な痙攣に、その丸みをたわませながら跳ね踊っていた右の乳房に手を伸ばし
指でつまんだ乳首を、きゅうっとひねりあげながら引っ張ってやる。
「ぃひいいいいいいいいいッ!!」
おもいっきり仰け反って声をあげた拍子に、ミツバの体がジェレミーの腕から離れ
乱れた白いシーツの上に投げ出された。

はぁはぁと荒い息をつくミツバの乱れきった姿を、ジェレミーはどこか他人事のように見下ろす。

横を向いた顔の上半分には、汗まみれになって乱れた黒い前髪が張り付き
愛らしい桜色の唇の端から、透明な唾液がこぼれてシーツに小さなしみをつけている。
どんな体勢でも型崩れひとつ起こさない、小ぶりながらも誇らしげに盛り上がった乳房を晒け出したままの上半身から、
痛々しいほどに上気した、引き締まったラインを描く肌の上をなぞるように視線を走らせていくと
まぶしく光輝く両ふとももの付け根に辛うじて絡み付いているだけ、という風情の、薄い腰布に目がとまった。
347ジェレミー×ミツバ?(陵辱風味注意):2006/05/04(木) 17:12:06 ID:wL8/BsiV

ここまでやってしまっておいて、今さらやめる理由など何一つない。
ジェレミーは、力なく投げ出されたミツバの左ひざに手をかけると、その両足をゆっくりと割り開き
少女の軽く盛り上がった股間の肉丘を、自分の真正面に来るように移動させた。
体を転がされるその動きに、ミツバは微かなうめき声を漏らしたが、
いまだ忘我の極みから回復していないのだろう、抵抗しようというそぶりすら見せない。

へそのあたりまでめくれあがった白布の下、初めて目の当たりにするミツバの秘裂は
髪と同じく黒々と濡れた繊毛の奥に垣間見える、白い肌に差し込まれたピンク色の傷口のように見えた。
罪悪感を刺激されるほど清楚な、薄く細い陰唇はしかし、かすかな湯気を立てながらしっとりと口を開き
とろとろと溢れ出す樹液はミツバの身体が既に、男を迎え入れる準備を整えていることを知らせている。
「…………」
ジェレミーは自分の腰に右手をやり、情欲を煽り立てるミツバのしどけない姿に視線を絡み付かせたままで
無言のままベルトの留め金を外し始めた。

これで、終わる。なにもかもが。

脳裏に浮かぶのは、ずる賢そうな上目遣いで自分を見上げ、勝手な理屈をこねながらまとわりつく少女の面影。
いつも自信たっぷりに、まるでこちらがその伸びやかな魅力に心を奪われていることまで知り尽くしているかのように
子供っぽいなかにもどこか誇らしげな様子で浮かべていた眩しい笑顔。

――ちきしょう……

これから自分が捨てようとしているもののもたらす痛みに、ジェレミーが心の中で呻いた、その瞬間。

視界の隅に白い残像を残しながら、思いがけなく素早い動きでミツバの右足が動いた。
「……!?」
胴体にぴったりと寄せられたわめられた、そのしなやかな脚の動きに気づいた、と思った次の瞬間には
猛然と繰り出されてきたミツバのつま先が、ジェレミーのみぞおちに深々と突き刺さっていた。
「うぐぅっ!!!???」
348ジェレミー×ミツバ?:2006/05/04(木) 17:13:07 ID:wL8/BsiV
たまらず身を折って呻きながら、両腕で自分の腹を押さえ、悶絶しているその隙をつかれ
ようやく目を上げたときには、既にミツバは両手首を拘束するベストから身をふりほどき、
ジェレミーの手が届かない距離にまで後じさり身を起こしていた。

ベッドから引き剥がしたシーツで、汗まみれの白い裸身を覆い隠し
交差させた両腕で、自分の身体をかばうように抱きしめたその明確な拒絶の姿勢に
ジェレミーの心を再び、煮えたぎるような怒りと悲しみが覆い尽くす。

どれだけ必死に暴れようが、無理やりにでも。

そう心に決めて、臓器にわだかまる猛烈な鈍痛と吐き気をこらえながらにじり寄ろうとした、そのとき。
「……来るなァッッッ!!!」
さんざん弄られ悶え続け、間違いなく決壊寸前まで追い込まれていたその小さな身体の、どこにそんな力が残っていたのか。
ミツバが、その細い喉がちぎれてしまうのではないのかと思うほどの大声で叫んだ。
思わず動きを止めて見つめ返したその顔は、真っ赤に上気しながら紛れもない敵意と怒りに歪み、ブルブルと小刻みに震えている。

……そしてジェレミーは、いまだかつて夢想だにしたことのない光景を目撃した。

まっすぐにこちらの目を見据える、ミツバの大きな両目の縁に、大粒の涙がゆっくりと盛り上がり
白い陶器のようになめらかなその頬の上を、ゆっくりと伝い降りてゆくのを。

「……おまえ…………?」
心の中で燃え盛っていた激情が、急速に冷えてゆくのが分かる。

それきり、言葉もなく黙り込んでしまったジェレミーの眼前で
ミツバは恥らうように俯いて前髪で顔を隠し、ただ小刻みに細い肩を震わせながら
幼子のような嗚咽の声を、とめどなく漏らし始めた。



続く。
349名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 17:22:47 ID:nUXix12Q
うわー、面白い。毎日読めてすげー嬉しい。
ミツバ、なんて可愛いんだミツバ。
続きもワクテカして待ってます。

そして、もうなんというかジェレミーには心の底からどう情するぜ……
350名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 18:15:35 ID:ARQXLAEg
GWだからー夏休みー冬休みーとか便利な言葉だよねー 馬鹿みたいだからあんま使うなよ
自治厨気取りの香具師は自分のレスが十分厨なのに気づくべき
351名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 18:22:41 ID:I3iOTRNI
下らねえ書き込みしてる暇あったらGJしろよGJ。
352名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 18:44:45 ID:ieMacvtu
腐れ縁エロセツナス
ジェレミーがミツバに勝てないのって、
究極的にはこういうことなのかもと思った。
353名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:04:20 ID:tQ3qnble
ジェレミー…ほんとどう情するぜ
354名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 23:35:18 ID:R5L74d3v
GJ!おもしろいよ!楽しみにしてる。
そして皆ジェレミーにどう情しすぎだ。
まったく…ジェレミーにはどう情するぜ。
355辻きり(馬鹿王子ルセ2-7) :2006/05/05(金) 03:54:54 ID:huzb5pyR
>>274の続き。細切れですが、今日のトーナメント二人ともがんばれ
という意味を込めて。では。

(ちょ・・・ば・・・カイル!なにやってんのさ)
(覗きとはいい度胸ですね・・・死にたいですか?)
 非難がましい目で文句の一つでも言おうとするファルーシュ。イサトのほうは弓をキリキリと引き絞って
煌く矢の先端をカイルの鼻先につきつける。零距離戦法というやつだ。(ちょっと違う)
カイルはそれにも同ずることなくもういやだなぁ、と鼻の下を擦りながらなんでもないことかの
ごとく振舞う。まあ少なくともこの二人にカイルを攻める資格など一つもありはしないことは
明白ではある。
(ね。ここで騒ぎ起こしたらね。折角あの三人が楽しんでるところに水をさしちゃいますよ。
そうでしょ?)
(う・・・確かに・・・)
(・・・そうですね。貴方に危険は・・・無いとは言い切れないですが。斎主様におかしなことををしたら・・・)
(わかってるって。僕たちはここで見守るだけ、でしょ?女性陣はお清めを楽しむ。
僕たちはそれを変なことがおきないようにちゃんと見守る。ね?王子、いいですよね?)
(ん・・・そうだね。いさかいを起こしてる場合じゃないんだね)
(そうそう・・・見つかったら駄目ですからね。われ等三人、死すべきときは同じ!ってとこですか。
女王騎士の本懐ってやつですよ)
 どこぞの三兄弟のようなことをいいつつ、変な誓いを結んだ三人はウォッチングに精を出す。
変なことは十分におきている、というより自分たちが起こしているという自覚はこいつらには
零である。早速目ざとく変化を発見したのは新参の金髪の男であった。
(お・・・ハスワール様がルセリナちゃんに近づいていってますよ〜。なんだかルセリナちゃん気がついてない
みたいですね)
(ルセリナは何か上の空って感じだね・・・おば様はどうしたんだろ)
(斎主様、お気をつけ下さい)
 三者三様の感想をのべつつ、やや冷静に俯瞰する。ハスワールはウルダと水かけっこにうつりつつも、
射程範囲内にやや俯き加減の蜂蜜色の彼女をおさめると、
「えい!!」
「ふぇ?・・・ああ・・・」
 ざっば〜んと大きな音を立てて、ルセリナにぎゅ、と飛びつく。どうやらカワイイモノセンサーに
ルセリナがひっかかったようである。館であったときよりも若干締め付ける力が強い。
「ぷはぁ・・・何をいきなり・・・ひぁ・・・」
「ルセリナちゃん本当にカワイイ・・・それにお肌もすべすべ」
 すりすりと背後からしっかりロックしつつ、手のひらをルセリナのふとももに這わせる。
つつ、となぞるだけなのに、敏感なルセリナはそれだけで嬌声を発してしまう。
「あ・・・は、ハスワール様やめて・・・」
「やめないわ・・・うらやましい・・・こんなに奇麗なお肌。おばさん嫉妬しちゃうわ・・・」
 目を閉じて精一杯声を上げるのを耐えようとするルセリナ。なんだか変なものを見る目
で見ていたウルダも、引き寄せられるようにルセリナの髪をなでて、そのしなやかさに驚き、
「人間の癖に・・・こんなに綺麗な髪・・・」
 櫛を入れるようにその髪をする、とかき分けながら、卑怯だわ、と嫉妬に似た言葉を
ルセリナの耳元に吹き込む。ルセリナは微細なその刺激に、昨日の事を思い出す。
「で、でんかぁ・・・」
 ハスワールはそのルセリナから漏れ出た声の意味を探って一旦動きを止めるが、次にはもの
凄く嬉しそうな顔をしながら、
「ルセリナちゃん。いまのどういうことかな?〜」
「え?い、今のって・・・ああ・・・」
「人間って最低ね・・・この状況でそんなことを聞くなんて」
 問い詰めるようにするハスワールと、慌てるルセリナ。口では文句をいいつつも、しっかり
聞き耳を立てているウルダ。恋話が大好きなのはエルフも同じらしい。
一方、男性陣は・・・
356辻きり(馬鹿王子ルセ2-8):2006/05/05(金) 03:57:21 ID:huzb5pyR

(み、見えないよ・・・ルセリナ・・・もっとこっちに・・・)
(ウルダが邪魔で見えませんね・・・)
(百合キターーー!)
 台詞が聞こえないから勝手な想像ばかり繰り広げている。ファルーシュは相変わらず
やきもきしているし、イサトは幼馴染を邪魔者扱い(いくらなんでもひどい)、
カイルは妄想しながらGJ!を連発している。
(あ・・・顔真っ赤にして何やってるんだろう・・・)
(斎主様・・・)
(・・・確かにこのままじゃ駄目ですね。もっと近くに寄らないと・・・)
(しかし隠れれる岩場なんか無いよ。ここでも結構きついのに)
 むう、と三人でどうしようも無い知恵を絞り考え込む。そこでカイルの頭に電球が浮かびあがる。ピコーン!
(閃いた!岩場が無いなら上を使えばいいじゃない!)
(上?・・・ま、まさか・・・)
(ここを上っていくというのですか・・・愚かな。私にすら出来ないことを)
(ふっふっふ・・・皆さん、女王騎士をなめてもらっちゃこまります。ミスターチーズケーキを
見てください。彼に不可能があるとお思いですか?流石に僕は彼には劣りますけどそれでも・・・
王子!元女王騎士の意地、とくとご覧下さい!)
 下を見れば烈身な女王騎士だが、そんな突っ込みはここでは不要だ。彼は壁に向き合い、
す、とそれに手をかざす。ピカ、と右腕の紋章がかすかに光る。
(元女王騎士、覗きのカイル参る!)
 カサコソ、ゴキブリダッシュよりさらに都合の良い・・・じゃない怪しい紋章をつけてるのか、
ピタリと壁に手がひっつき、それを交互に動かすことで高速で駆け上がる。
クライマーもビックリの正しくプロの姿がそこにあった。ポカーンとそれを見ていた二人だったが、
一応の賛辞を彼に送りたくなる気分になった。
 流石に天井にひっつくにはそれなりのことをせねばならないのか、動きが緩慢になる。
ようやくにしてカイルはルセリナ達の真上へと差し掛かる。振り向いて視界に女性たちの宴を
入れる。ニヤニヤがとまらないカイル。一方ファルーシュはそれを見て、
(なんだよ・・・自分だけ・・・)
(弓で撃ち落しましょうか・・・)
 自分が見れないことに大層腹を立てていた。ハゲの殺気を感じたカイルは、とりあえず
あの二人にもお零れを・・・と忍法鏡の術!ということで手鏡を前に取り出す。すると、
わずかではあるがルセリナ達の姿がそこに映り、ファルーシュたちにもその様子が
わかる。肌をこころなしか赤くして、くんずほぐれつな女性達の宴?がそこに…
とりわけ嫌がるようなルセリナのそぶりがファルーシュの心を大きく揺れ動かす。
(ルセリナのピンクのポッチキターーー!!)
(斎主様テラモエス)
 なんだかウルダさんが可愛そうになって来た。報われない女性である。こういうときにガヴァヤの
存在はありがたいのかも知れないとちょっと思った。ウルダファンの方はかわりにここにいてあげて下さい。
 ともあれ興奮の只中にいた三人だったが、天国はあっという間に終わる。ハスワールの手がルセリナの
胸にかかろうとしたその瞬間である。ひゅ、と何かが近くに落ちてきた。は、と落ちてきた元を女性三人は
見る。そして、その目線も次の瞬間にはウルダを筆頭として差すようなものに変わっていた。
 補足、ファルーシュとイサトから見たカイルの表情。
(;´Д`)……( ゚д゚)… ( ;゚д゚)… (;;゚д゚)…(;;゚д゚)…(((;;゚д゚)))

( ゚д゚ )

(ちょ…こっちみんなwwww)
 桃園の義は脆くも崩れ去る――

次回へ多分続く
357名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 09:08:14 ID:PuODs6Lq
神々のストーリーとエロがちょうどよく噛み合っててイイ感じw
いつきてもどっちも読めてウマー
358名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 13:56:56 ID:36FTo30z
>>355
イサトとハスワールが好きだったんで個人的に超×100GJ。
ハスワール馬鹿なイサトイイ!
359名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 14:15:32 ID:HEbvy0Uw
イサトが壊れてゆくwww
ていうか、元もとこういう性格だったとしか思えなくなってきたw

いいなあ、この明るいエッチノリすごくイイなあ!
360名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 18:55:19 ID:00HRQ+yN
えーでもちょっと2ちゃんの言葉を使いすぎのような気もする…個人的にはそういうの萎えます。
個人の好き好きなんでしょうけど。
361お茶:2006/05/05(金) 19:46:45 ID:vO0/emcT
>335からの続きです。ここからが長い…。
腐れラブコメみたいな展開ですが続き投下。今回もまだエロなしです。
362ベルハヅ:2006/05/05(金) 19:47:54 ID:vO0/emcT
「ここにいたんですか」
月が中空に昇る頃、既に夜の帳も下りたヴァルハラ城の離れで、ベルクートは漸く求めた姿を見つける。
月明かりに照らされたその身体はとても小さく見えた。
鎧を外し、湯浴みを終えたハヅキは、部屋へ戻らずそこにずっと立ち尽くしていた。
湯上りの身体は既に冷え切っている。長い時間、そこで月を眺めていたのだろう。
呼び声に、ゆっくりとハヅキが振り返る。今にも泣き出しそうな顔で、それでも目が合うと、
弱さを押し隠すように表情を変える。
「…月が」
そうまで言って、その先を飲み込んだ。声が震えている。
ベルクートはゆっくりとその傍らに歩み寄る。
ハヅキは一瞬怯えたように身を強張らせたが、ふわりと頭を撫でられ、少しだけ力を抜いた。
「綺麗ですね」
先を繋ぐように言うとハヅキは俯き、頷いた。それ以上は何も言わなかった。
「風邪をひきますから、もう部屋に戻りましょう。……送りますから」
答えはないと判っていた。ベルクートは細い肩を抱き寄せると、歩き出す。
ハヅキはそれに従うように、けれどとても緩慢な動きで歩き出した。
きっと誰にも会いたくないだろう。
そう思ったベルクートは、敢えて遠回りする道を選んだ。
人気のない道を選んで歩く。その気遣いにハヅキは気付いていたが、
ただ、小さな肩を震わせながら歩くことしかできなかった。
363ベルハヅ:2006/05/05(金) 19:49:04 ID:vO0/emcT
ハヅキの部屋は、ベルクートの部屋にごく近い場所にあった。
なるべく近くがいいと言い張ったハヅキに気を使った王子が、与えた部屋だった。
扉に手をかけるとハヅキがまた身体を強張らせた。
「…戻りたくない」
部屋の中には、戦の中身に付けていた衣装と刀がある。今日だけはそれを見たくない。
そう思った。ひとりで、部屋の中で、それらを見るのが恐かったのだ。
「一人に…なりたくない……」
弱弱しく紡がれたその言葉に、ベルクートは思い切りハヅキを抱き締めた。
こんな時にかけてやる言葉を自分は知らない。どんな風に接してやればいいのかわからない。
ただ、離したくないと思った。腕の中で震えるハヅキを、離したくないと、そう思った。


ハヅキを抱きかかえベルクートは自分の部屋へと戻った。
一人になりたくないというハヅキを置いてゆくことはできなかった。
少しでも傍にいることで慰めになるのなら、幾らでもそうしてやろうと思っていたからだ。
「疲れているでしょう、ここで休んでもらって構いませんから」
ベッドに下ろしてそう言うと、ハヅキは頷いた。決して顔を上げようとしないのは、
泣き顔を見られたくないからだろうか。こんな時まで隠さなくても良いのに。
触れたハヅキの身体はひどく冷たかった。
濡れた髪をそのままに立ち尽くしていたハヅキの着物は濡れており、
それが更にハヅキの身体を冷やしている。
何か着替えを用意しようと離れかけたベルクートの服を、ハヅキが掴んだ。
364ベルハヅ:2006/05/05(金) 19:51:25 ID:vO0/emcT
「───ハヅキさん」
優しく呼びかけると、ハヅキの唇から嗚咽が洩れた。
必死に堪えていたものが溢れたかのように。
押し殺すようなそれは、今のハヅキの思いのすべてを伝えていた。
「わ…私は…っ」
初めて人を斬った。それも、一人や二人ではない。
生まれて初めて戦場に立ち、初めて人を殺した。
多くの人間の命を、自らの手で奪った。
大儀ある戦いと判っていながら、それでも逃げ出したくて仕方がなかった。
恐かった。人が人ではなくなる。命を奪われ、唯の肉塊となる。
その瞬間が何より恐ろしかった。
それでも刀を奮わなければ自分が死ぬ。
戦いたくない。これ以上、殺したくない。
そう思いながら、死ぬことを恐れて手を止めることができなかった。
肌にかかる生暖かい血の匂い。断末魔の絶叫。血で煙る戦場。
見回せば、敵ばかりで。
「私は……あんなにも、多くの」
血に濡れた刀。刀だけではない。身体が濡れていたのは、汗ではなかった。
無論それもあった事は確かだった。だが、鎧を、着物を脱ぎ自らの裸身を見た時、
ハヅキの脳裏に浮かんだのは、最後に見たあの兵の顔だった。
苦悶に満ちた顔。おびただしい血。縋るように伸ばされた腕。幾つもの物言わぬ骸。
染みた血はハヅキの白い肌に跡を残していた。悲鳴を上げることはなかった。
否、出なかった。
忘れたいと思った。風呂に誰もいなかったのは幸いだった。ハヅキは涙を零しながら、
一心不乱にその血の跡を落とした。何度も、何度も。
それでもまだ、血の匂いがする。そんな気がするのだ。忘れられない。
頭の中にこびりついてはなれない顔。身体に染み付いてはなれない匂い。
それらがハヅキの心を支配した。
365ベルハヅ:2006/05/05(金) 19:58:39 ID:vO0/emcT
「ハヅキさん」
「私は……っ、わたしは…!」
ひとりでいれば思い出してしまう。
眠ればきっと、夢に見てしまう。
目をそらすことで自分を保つことしかまだ知らないハヅキは、
それを認めてしまうことで、自らが折れてしまうような気がした。
もう刀を持つことができなくなる。そう思った。ただ、怖かった。何もかもが。
「ハヅキさん…」
取り乱したハヅキを抱き締めた。堪えきれるものではないのだ。
泣いてくれたらどんなに楽だろうと思った。
ハヅキは強いからそれすら出来ないだろうとも思ってはいたが。

「ベルクート…!」
腕を伸ばして縋りつく。声を上げて泣きながら、ハヅキは力いっぱいその身体にしがみついた。
張り詰めていた糸が切れたハヅキは震えながら、泣いた。
戦の後の重みは、男も女も関わらない。剣を振るい人の命を絶つ。
それが仕事なのだ。だが、それはハヅキが一人で負うには重過ぎる。
罪悪感と呼ぶべきなのだろうか。後悔と言うべきなのだろうか。
それを知るものは、本人だけ。
死と隣り合わせの恐怖と戦いながら、ハヅキはどれだけ苦悩しただろう、一人で。
366お茶:2006/05/05(金) 19:59:50 ID:vO0/emcT
今日はここまで。明日また投下します。
長い&エロなくて申し訳ない…。
367名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 22:32:24 ID:2HOZPxIn
うん、構わないよ
どーせ読んでないし













本編にもう少しハヅキの恋愛観念が在れば
俺も血流を集結させる事が出来たのに(泣)
憎い・・・何かが憎い!!
368名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 22:53:56 ID:6+Xy7s5y
>>366
ハラドキしながら読んでるよ。続きが楽しみ!GJ!
369名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:02:53 ID:8dNJuqCV
読んでないなら読んでないでいいから黙ってろよ。
早くGW終ってくれ…。

神がどう思って書いてるのかわからないが、
逆にハヅキの内面が描かれてないのが新鮮で良い。
これから書かれてくるのかもしれんが。
370名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:08:15 ID:M6zjza+X
下三行はともかく上二行は、はき捨て系のスレで言うべきかと
>>367

自分は逆にストイックなキャラのエロのが萌えてしまう傾向があったりするな。
371名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:21:36 ID:UT5o0Tsq
ルセリナトナメ通過おめでとう
ここでルセリナ大好きになったので嬉しいぞ
かわいそうな目にあうのが似合いすぎると同時に
俺の幸せになってほしいキャラNo.1に輝いている
372名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:27:12 ID:4vQj+yyn
かなり久しぶりに来たんだけど、トーナメントってなんのことなのでしょうか?
373名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:32:33 ID:GbKEhxeS
投票板でやってるRPG最萌トーナメント
幻水は一回戦突破がシエラ・セシル・ルセリナ
試合残りはオデッサ・クリス・リムスレーアのみ
http://www.geocities.jp/rpgsaimoe/index.html
374名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 23:35:37 ID:4vQj+yyn
<<373
なるほど
どもですw
375名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 00:35:13 ID:v+5UiwwY
まあ、気にスンナ
376名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 21:24:37 ID:IZk7HGLD
愛あふれるエロってどういうエロだろうな。
377アレニア恋物語(10) ◆IGA.li4jPs :2006/05/06(土) 22:11:51 ID:f+EZFugS
>>253-257>>322-324>>339
第三部の投稿です。エロはやっぱり×で。

メルセス卿による一通りの尋問が終了してから私は別の場所に身柄を移送された。
尋問と言っても軍に関する事は殆ど聞かれず、専ら世間話に大半の時間を費やされた。何だか肩透かしを喰った感があり疲労感だけが残る…。
「レレイ殿…と言ったな……メルセス卿はいつもあんな感じなのか?」
「え………まぁ、そうです…」
レレイ殿の言葉にもキレが無かった。どうやらあれは演技ではなく正真正銘の天然らしい。
外見は抜けた感じがするのにいざとなれば縦横無尽に策を巡らす…このギャップの激しさが恐ろしい。
「着きました。こちらで暫くお休み下さい」
レレイ殿の案内により私は詰所に通された。普段は兵士の待機場所にでも使用されているのだろう。本陣よりも構えは数段落ちる。
とりあえず傍にあるイスに腰掛ける。
「フゥ……お手を煩わせた様で申し訳ない」
「いえ…これも大切な仕事です」
そう言ってレレイ殿は視線を伏せた。心なしか彼女の頬が赤く染まっているのは気のせいだろうか。
「レレイ殿は生真面目だな…私の生き写しを見ている様だ」
「そ、そんな…!格式高い女王騎士アレニア様にお近づきになれただけでも光栄な事です。それを似ているなど……」
レレイ殿は慌てて否定する。その顔は先程とは打って変わって焦りの色が見える。彼女には感受性が豊かそうな印象を受けた。
「……言わないでくれ」
これ以上女王騎士で居る事がどれだけ冒涜な事かは私自身が一番分かっている。
せめて女王騎士の名を汚さぬ様に務めるしか今の私には出来なかった。
「も、申し訳ありません…アレニア様…」
「いや…頭を上げてくれ…」
深々と頭を下げたレレイ殿に頭を上げる様に催促する。
レレイ殿には私と同じ道を歩んで欲しくない。私みたいに真面目過ぎるのは返って自分自身を苦しめる。
幸い、彼女にはまだ感情が残っている。その感情すら失ってしまっては……末路は惨めだ。
「あ…そう言えば、アレニア様にお出しするお食事の準備を忘れておりました。すぐに準備致します」
そう言うとレレイ殿は私に一礼をし、足早に詰所を後にした。
彼女が去って詰所は妙に静かになる。この場所は本陣から離れているせいだろうか。人の居る気配があまり感じられない。
378アレニア恋物語(11) ◆IGA.li4jPs :2006/05/06(土) 22:12:40 ID:f+EZFugS
「静かだな…」
思い切って詰所の外に出てみる。
詰所の周囲は一面草原に覆われており、詰所を吹き抜ける風が草を撫でて行く。空は抜ける様に高く、雲一つ無い快晴だった。
その空があまりに素晴らしく何だか哀しい気分になる。
「……………」
空を見つめながら私は自分自身の今後を考えた。
勝敗が決した今、暫く戦争とは無関係の所で時を過ごす事に…それが反乱軍の本拠地だと言う事は些か不本意だが止むを得ない。
しかし、私は反乱軍の本拠地をこの目で見た事が無かったのでどんな所にあるのか興味があった。噂ではセラス湖に沈んでいた建物を
そのまま利用していると言う。
何千年と水没していた建物が現世に甦った今、果たして本拠地としての機能は働くのだろうか…現に反乱軍がここまで来たのはその建物
があってこそだろう。
しかも、その水没した建物を長き眠りから呼び起こしたのは他でもない。王子殿下が所有する「黎明の紋章」だと言う。
(黎明の紋章…)
「黎明の紋章」と「黄昏の紋章」は対になっている。
私もかつて、この身に黄昏の紋章を所持した事があった。
しかし、その二つの紋章を使いこなせるのは紋章自身に選ばれし人間だけで当然ながら私にはその資格は無く、ドラードの戦いではただ闇雲に
紋章を使い危うく暴発させる所だった。その直後は紋章すらロクに扱えなかった自分が苦々しく思え自責の念に捉われた…悔しくて人知れず泣いた。
しかし、今になってすれば私が扱えないのは当然である。
私如き、器の小さな人間がその様な絶大な力を誇る紋章を軽々と扱えてしまっては紋章の重みがない。
紋章と言うのは私達の生活を助ける為にあって、悪用する為に生み出された物ではない。そこの部分が欠落していたのは私の落ち度だ。
しかし…あの時の私は力を欲していたのは紛れもない事実だ。反乱軍を撃退する為の力ではなく王家に刃向かう全ての反乱分子を抹殺する為の力…。
ファレナの繁栄の為には障害となる物は消し去る力が欲しい、そう強く念じていた。それはなりふり構わずと言った感じだった。
しかし、今となってその考えは大きな間違いだと思える様になった。
歴史に「もし…」と言う言葉は在り得ない。
しかし、若しゴドウィン派がこの戦に勝利しファレナを一つに統一していたとする。統一して暫くは繁栄が続くかもしれないが、恐らくその繁栄は
永くは続かないだろう。力で抑えつければ抑えつけられた下に力が蓄積される。そして抑圧していた物が無くなった時、その力は…思わず身震いした。
もう一度今回の様な戦争が起これば、この国は今度こそ立ち直る事さえ不可能になるかもしれない。そうなれば南のアーメスにこの国は蹂躙され属国
となるに違いない。アーメスの元、多くの民が圧政に苦しむ…私は後世に間違った功績を残そうとしていたのか…。
379アレニア恋物語(12) ◆IGA.li4jPs :2006/05/06(土) 22:13:35 ID:f+EZFugS
胸が苦しくなった私はその場にうずくまる。呼吸が苦しくなり指先が震えている。
「ハァ…ハァ……私は…」
私達が戦争で敗れた事は正しかったに違いない。
この後、私が逝く事になったとしても後世に汚点の残す結果にならなかっただけが幸いだろう。
「貴女がどうしたと言うのですか?」
いつの間にか私の目の前に誰かが立っていた。先程までは誰も立っていなかった筈だ。
(いつの間に…)
恐る恐る上目遣いで目の前の人物を見やる。その人物は黒の衣装を身に纏い悠然と立ち尽くしている。その姿、以前何処かで見た記憶が…。
「女王騎士ともあろう者が無様ですね」
「…貴殿、以前何処かで」
「貴女に答える必要はありません」
その人物は私の質問をバッサリと斬り捨てる。表情は黒のフードで覆われて見る事は出来ないが、相当神経質な人間なのだと言う事は雰囲気から
読み取れる。只、その声は女性にしてはやや低い。
「貴女ほどの人間に黄昏の紋章が利用されなかったのが幸いです」
「黄昏の紋章…………まさか」
私が黄昏の紋章を宿して挑んだドラードの戦いで確かにその人物を見た記憶がある。
確か黒衣の女性が王子殿下の傍に付いており、私が黄昏の紋章を暴発させそうになった時一番怒りを露わにしていた。
まさかその人物がこんな所に……私は驚きを隠せずにいた。
(まさかここで…)
私は一番最悪の事態を想像した。しかし、
「…何か私の顔に付いていますか?」
「いや…」
「…まぁ、良いでしょう。女王騎士二人がこちらに投降したと聞いて来てみましたが…全く……使いこなせない黄昏の紋章を無理に使用するから
こうなったのです」
「ぐ…」
「幸い黄昏の紋章はこちらの手に入ったから良かった物を…もう一度使用されたらどうなっていた事か…」
380アレニア恋物語(13) ◆IGA.li4jPs :2006/05/06(土) 22:14:31 ID:f+EZFugS
「面目ない…」
私は頭を垂れる。彼女の言う一言一言が心に深く突き刺さった。
「その様子だと少しは反省しているみたいですね」
彼女はわざわざしゃがみこんで私の顔を覗き込む様に見る。私は目を合わす事が出来なかった。
恐らくこの人物は27の紋章に深く関わっている人物だと言うのは薄々感づいていた。黄昏の紋章も27の一つに関係している。
その27の紋章を悪用したのだ…少なからず不愉快な思いをしただろう。
「私の目を見なさい」
そう言うと半ば強引に顔を持ち上げられる。彼女と目が合う。
「……………」
「……………」
一秒、二秒、三秒…時間だけが過ぎて行く。私は何故か瞬きする事も忘れ彼女の目を見つめ続けた。
その目に引き寄せられたと言った方が正しいだろう。
「…結構です」
一体どれ位の時間が経ったのだろうか…その一言で金縛りから解放されたかの様に全身から力が抜けた。地面にへたり込む私を見て彼女は、
「貴女は反省の色を示している…27の紋章を悪用した事は大罪に値します。しかし、それを悔いているのならまだ貴女は救われるでしょう」
「それは………誠か?」
「私は嘘を言いません」
「……感謝します」
「私は感謝される様な事をした覚えはありませんが」
彼女は馴れ合う事を嫌うのだろう。言葉の端々に棘のある言葉を言うがそれは決して嫌味には聞こえない。
未だにへたり込んでいる私に彼女は「立ちなさい」と言って手を差し出してくれた。その手はとても白く全身黒衣で覆われている分とても
見栄えのする物だった。
その手に誘われる様に私は彼女に抱き寄せられる。
彼女の胸に抱き寄せられた時、私は改めて彼女の顔を拝見した。表情は一切変わらず仏頂面だがその目はとても優しい物だった。
「私は貴女の全てを見た訳ではありません…ですが、貴女が精一杯何かを成し遂げようとしたのは感じ取る事は出来ます」
「……………」
「敵であれ……頑張りましたね」
そう言って彼女は笑ってくれた。その笑みはとても優しく、そして温かい物だった。
それを見た私の目頭に熱い物が込み上げてきた。それを悟られない様に失礼だとは分かっていながらも彼女の胸に顔を埋める。彼女は何も
言わず抱きとめてくれた。
381アレニア恋物語(14) ◆IGA.li4jPs :2006/05/06(土) 22:15:37 ID:f+EZFugS
「反省する気持ちがあるならそれを糧に今後精進なさい。幾多の困難を乗り越えて人間とは成長するのです」
「…………」
私は返事が出来なかった。返事をすると涙が今にも溢れ出しそうな感があった。ここで泣くのはまだ早い、そう思ったのでこらえるのに必死だ。
(今は泣けぬ…私には生きて償わなければならない事が山積しておるのだ)
暫く彼女と抱き合った後、私はそっと離れた。
「あの……宜しければ名を」
「本来は名乗る必要はありませんが……そうですね。私の名を名乗っておく前に…」
そう言うと彼女は懐から細い針を取り出して身構えた。私は何をするのかと気が気でならなかった。
「あの…」
私が全てを言う前に彼女は持っていた針を投げつけた。
針は一直線に飛んで行き、詰所の壁に「カーーン!」と乾いた高い音を立てて突き刺さる。その音が異常に響き渡ったのには少し驚いた。
「いつまでそこに隠れているのです?私達は見世物ではありませんよ」
「…???」
私は未だに事態が飲み込めていない…針の刺さった方向を見てようやく事態が理解できた。
「あぁビックリしたぁ……ゼラセさぁん、本気で狙わないで下さいよぉ」
「なら本気で狙われない様に行動なさい。覗き見とは不謹慎な…」
壁の向こうからミアキス殿とレレイ殿が現れた。
ゼラセ殿は苦虫を噛み潰した様な表情で言ったが、ミアキス殿にはなかなか通じない部分が多い。
私はそれを言おうか迷ったがここは黙る事にした。
「しかし意外な事実を見つけちゃいましたぁ。ゼラセさんがアレニア殿にすっごく優しいんだもの、驚きですぅ」
「私はそこまで冷徹ではありません。その人物に応じて応対しているだけです」
「じゃあ、何で私にはそんなに冷たいんですかぁ?」
「貴女には緊張感と言う物が感じられません。その様な人間は適度にあしらうのが最善です」
「うぅ…酷いですぅ…」
そう言ってミアキス殿は泣き真似を見せた。傍らにはそのやり取りに困惑した表情を浮かべるレレイ殿が居た。
「あの……お取り込み中申し訳ありません…アレニア様にお出しするお食事の準備が…」
「あぁ!すっかり忘れてたぁ。ささ、アレニア殿早く早くぅ」
「え、あ…」
ミアキス殿に半ば強引に腕を引かれながら詰所に連れて行かれた。私はゼラセ殿の方に視線を送る。
彼女は何も言わずその場に凛として姿で立っていた。
「ミアキス殿、暫し待たれよ」
「ほぇ?」
ミアキス殿にはその場で待ってもらう様に頼み、私はゼラセ殿の元に戻る。
「まだ何か?」
「宜しければもう少しだけお付き合いを…」
若しかしたら拒否されるかもしれない。私はそれも考えながら恐る恐る催促した。
「………良いでしょう」
あっさりと私の誘いに応じると、彼女は詰所の方にさっさと歩き出した。私がそれを黙って見ていると、
「何をしてるのです?食事が冷めてしまうでしょう」
反対に彼女の方から催促をされてしまう。私は慌てて彼女の後を追った。
382 ◆IGA.li4jPs :2006/05/06(土) 22:17:39 ID:f+EZFugS
第三部終了です。
何か史実からどんどんかけ離れて行っておりますが…これも可能性の一つと言う事で。
ゼラセ様、こんな感じでどうでしょうか?
383名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 23:12:56 ID:FU2lXZPU
どこまでGJなのですか!
384名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 23:43:33 ID:K2DO+L0w
ワクワクがとまりません
385名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 01:44:24 ID:9OS+dK28
ゼラセ×アレニアに目覚めそうwwwwww
386名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 10:05:19 ID:QQxzkkuU
ゼラセ様優しいよww
アレニア健気だよ
ツンツン同士でかわいいよ
続きが気になる気になる!!1!!
すごく楽しみにしていますGJ!

387261:2006/05/07(日) 13:44:47 ID:YktdPYY0
一日いち腐れ縁……の予定を大幅に狂わせてくれたのはミツバ。

……ジェレミー×ミツバの、エロパロを書いていたはずなのだが。
388ジェレミー×ミツバ?(最終回):2006/05/07(日) 13:46:37 ID:YktdPYY0
気化した汗の匂いと、甘くたゆたう香に包まれた部屋に
ミツバのすすり泣く声だけが、ひそやかに流れてゆく。

「……そんなに、嫌か」
ようやくのことでなげかけた声は、自分でも思いもよらないほど静かに、突き放したような響きを帯びてしまう。
ビクッ、と怯えるように身をすくませるミツバの姿に、また苛立ち
「……俺に抱かれるのは、嫌か。名前も知らねえどっかの野郎どもに、身体を売ることはできても」

それは質問ではなく、単なる確認の言葉だった。

ミツバの長い沈黙を肯定として受け取り、ジェレミーはひとつだけ小さなため息をつくと、
ひざ立ちのままゆっくりと後ずさって、ベッドを降りようとした。
下腹にわだかまる欲望の塊は、いまだ脈打つように明滅を繰り返し、隙あらば脳髄に這い登ろうと足掻いている。
なにかきっかけを与えられてしまえば、自分をはっきりと拒絶してみせたこの女にまた襲い掛かり、
今度こそ、その無力な裸身を組み敷き貫いてしまいかねない。
剣も持たず、ハッタリと詭弁を自在に操るその声すらも失った今のミツバは
そんな危惧を抱かせるほどに、悲しいほど脆く儚げな存在に見えた。

ミツバが、ポツリと呟いた。
「……わかって、ないよ……」
せつない声だった。
片足を床につけたところで、ジェレミーは動きを止める。こみ上げる怒りに身を任せて顔を振り上げ
「わかってねえのは、お前だろ!!!」
遠ざかったことでますます小さく見えるミツバの、力なく俯いた顔めがけて怒号を叩きつけた。
ついさっきミツバが演じてみせた、あまりにも官能的な挑発が脳裏にまざまざとよみがえる。
「……ふたりっきりの部屋で!男にあんな真似して!!なにがどうなっちまうのか、分かんなかったって言うのかよ!!」
……本当は、男だから、ではない。
もしも相手が、単なる行きずりの娼婦だったのなら、自分は戸惑いながらもその奉仕に身を委ねて
ただただ受身で与えられる快楽を享受し、微かな自己嫌悪を引きずったまま、おとなしくこの部屋を去っていたのかもしれない。

ミツバだったからだ。
意地と、今さらという気恥ずかしさと、いつも側にいるという安易な安心感と。無意識にわだかまる、傷つけることへの深い恐れに阻まれ
なにひとつ出来ずにいるうちに、自分の手の届く場所から遠くかけ離れてしまった大切なものを、無慈悲にも目の前に露呈されたからだ。

389ジェレミー×ミツバ?(最終回):2006/05/07(日) 13:47:39 ID:YktdPYY0

そんな本心を、口に上らせることもできないもどかしさが胸を焼く。
「何をカン違いしてんのか知らねえけどな、男が女を抱くってのは、そいつが好きだからとか、気持ちよくしてやりたいとかじゃねえんだよ。
どんだけ大ッ嫌いな女に向かってでも、吐き出すもん吐き出してすっきりしたいから抱くだけだ。おまえの都合なんか全然関係なくな! 
……自分でおさまりのつかねえようにしといて、突っこまれるのは嫌?
じゃあおまえいったい、なんのためにこんなとこに来て!俺にあんな真似したんだよッ!?」

……もう、間違いない。このままミツバには指一本触れずに、自分はあのドアから出て行ける。
胸中に湧き上がるその確信によって逆に歯止めを失い、とめどなくエスカレートしてゆく糾弾の声を
ミツバは身じろぎひとつせずに受けた。
鞭打たれる美しい咎人のような、しかし、なんの動揺も見せないその静かなたたずまいに、
ますます頭に血が上り口を開きかけた、その刹那。
「……おんなじゃない、っていった」
奇妙に抑揚を欠いた、なんの感情も感じさせない無色透明な声が、ミツバの唇から発せられた。
「……なに?」
前後の脈絡を全く無視したような、その唐突な一言に、ジェレミーは思わず問い返してしまう。

ミツバが、ゆっくりと顔をあげる。
流し続けた涙は、いまだ乾く様子もなく頬にくっきりと筋を引いていたが
微かに紅潮の名残をとどめたその顔からは、一切の感情が消えうせたかのようで。
「おまえなんか、女に見えないって。おまえを抱きたがる男なんて、どこ探したって絶対居るわけない、って。
 いったよね。ジェレミー」

いつ、どこでの話について問いかけられているのか、とっさには思い出せなかった。
おそらくミツバ自身も、ジェレミーが自分の言葉に反応することなど期待してはいないのだろう。
ふと、痛みに耐えるように顔をゆがめ、まるで自分自身に言い聞かせるかのように
「……冗談だったんだよ。いつもみたいな、ただの冗談。
なんて言いかえされたって、また適当にからかって、『ちぇっ』とか言ってさ。
へらへら笑って、引き下がって。それで終わりでも、よかったんだ……」
最初は、気づかないほどゆっくりと、小刻みに。
またミツバの頬が、震えはじめる。
390ジェレミー×ミツバ?(最終回):2006/05/07(日) 13:48:59 ID:YktdPYY0
「でも……、でも、ジェレミーの顔、ほんとにイヤそうで、汚らしいものみるみたいに、あたしの顔を見てて……」
ひっ、と小さくしゃくりあげるなり、枯れることを知らないような涙腺がまた涙をこぼしはじめ
それきり、もう言葉にもならない、とぎれとぎれの泣き声だけが続く。

思い出した。

頼れるオトコがどうとか、怒りっぽいのは欲求不満だからだとかどうとか。
いつも通り絡んできたミツバに、いつも通り応酬していたときの話だ。
普段に比べて妙にしつこい、無理やりに見えるほど性的な方向に偏った当てこすりの連発に、
いい加減ウンザリし始めたとき
『……しょーがない、あんたで手を打ったげるよ!』
勢いよく、なんのためらいも恥じらいも見せずに言い放たれたその一言に、ムッとして言い返した言葉だった。

『1000ポッチ賭けてまた決闘しろ』。『追いはぎ稼業の仲間になれ』。『カノジョにしろ』。
なんの違いがあるというのか。
少しだけ硬い声で、少しだけいつもより険しい表情を浮かべて、叩きつけた怒りの根もとにあったのはむしろ
自分が眠れない夜を過ごす原因自身の口から、冗談としてこともなげに、そんなセリフを聞かされたやるせなさで……

一瞬だけ、軽薄そのものな笑顔を凍りつかせて、大きく見開いた両目で見上げてきたミツバの顔。

全く違う意味を帯びて浮かび上がる過去が、ジェレミーの後頭部に、痺れるような衝撃となって襲い掛かる。
「……それでヤケ起こして。いきなりこんな稼業に足をつっこんだって言うのか……?」
たとえそうだとしても、自分の責任ではないはずだと思った。
単にこのどこまでも無鉄砲なバカが、勝手に我とわが身を粗末に投げ出した、これはその結果でしかない。
だが、ジェレミーが今感じているのは、そんな理屈をどれだけこね回そうがごまかしようのない
純然たる罪悪感だ。
391ジェレミー×ミツバ?(最終回):2006/05/07(日) 13:49:40 ID:YktdPYY0

……ミツバが、胸の前で抱きしめたシーツに顔を押し付けたままで、黒髪をブンブンと振り乱して首を振った。
「じゃあ、なんで……!!」
質問というより、それは既に、救いを求める悲鳴のようだった。
「オトナになんなきゃダメだったんだよ!!あんたが、また居なくなっちゃう前にッ!!」
応じたミツバの声は、狭い室内を揺るがすような激しく痛ましい叫び。
真っ赤に泣きはらした目で、射るようにジェレミーの目を見据えて
「わかんないんだもん!!どうやったらあんたをあたしのものにできるのかなんて、いくら考えても全然わかんなくてッ!!」
「…………!!」

堰を切ったように、ミツバは語りはじめた。
ほとんど再会したその日から、なんとなく自分の気持ちを察して応援してくれていた仲間の女の子たちにも、
どうしても相談ができなかったこと。
誰も居ない場所で泣いていたのに、なぜか見つけて優しい声をかけてきた人がいたこと。
逃げようとした背中になげかけられた、『つなぎ止めておくだけなら、絶対に失敗しない方法があるわ』という言葉に
その場から一歩も動けなくなってしまったこと。
この娼館に誘われ、まさに今ふたりが居るこの薄暗い部屋の中で、男を誘い、その気にさせる術を徹底的に教え込まれ。
お墨付きをもらっていざ帰ろうとした段になって初めて、どうしても足を踏み出す勇気が出なくなってしまったこと……。

……ただ聞いていることなど、とても出来なかった。
気がつけば、ジェレミーはミツバの傍らに膝を進め
泣きながら何もかもをさらけ出し続けるミツバの、小刻みに震えるほそい肩を両腕で抱きしめていた。
ミツバは抵抗しない。逃げようともしない。
まるでもう、それしかすがるものがないかのように、しっかりと抱きしめたシーツ以外には
なにひとつ帯びていない、たよりなく無防備な裸身。





こんなにも近く、こんなにも寄る辺なく、腕の中で息づく
あんなにも求め焦がれ続けた甘美なその果実を、摘み取ろうとするこの手を止めるものは。

392ジェレミー×ミツバ?(最終回):2006/05/07(日) 13:50:37 ID:YktdPYY0






……幾つかの夜が過ぎ、その同じ部屋の中で。

「……それで、どうなったんですか?その子……」
「さあ?」
「さ、『さあ?』って……。そんな、」
「……ドアの向こうはもう、当人たちだけの世界ですもの。わたしはただ、そこまでふたりが歩いた、道のりを知っているだけ」
「……その子にそうさせたのって、ジーンさんなんですよね……?」
「……ひどい女だと思って?」
青年のそばに寄り添うように横たわり、情事の名残に火照った肌を優しく撫でてやりながら
ジーンはしっとりと微笑んだ。
なにもかもを見透かすようなその視線を受けた青年は、がむしゃらに彼女の身体を貪っていた先ほどまでの姿がウソのように
一瞬言葉に詰まりながらも、人の良さそうな顔に心配そうな表情を浮かべ
「だ、だけど、それちょっとでも間違えたら、一生立ち直れないような傷に……だってその子、結局それまで一度も」
「正解なんて、あるのかしらね?」
やわらかくさえぎるように、自分自身に問い掛けるように、ふと呟き。
「心にも、身体にも傷ひとつ負わないで、生きてゆけるひとはこの世に居るのかしら。
泣くことも、遠い思い出のなかのあやまちに眠れない夜を過ごすこともなく生きてゆけるひとは、この世にひとりでも居るのかしら。 
もしも居るとしたら、そのひとの生はきっと……
やわらかいシーツに幾重にもくるまれたみたいな、とてもとても寂しいものなのではないのかしら」
うたうように囁きながらゆっくりと身を起こし、優美な肩に流れる銀色の髪をそっと払い
青年の裸の胸に、傷ひとつ、しみひとつない白魚のような指を這わせ。
まだ納得のいかないような顔の青年に微笑みかけながら

「……次の日の朝。ふたりで、この部屋を出ていったの。わたしの知っている『結末』は、それだけ」
「…………」

393ジェレミー×ミツバ?(最終回):2006/05/07(日) 13:51:34 ID:YktdPYY0

寝物語の時間は、静かに終わりを告げた。

ゆっくりと顔を下ろし、青年のかさつきひび割れた唇に、つややかに色づく唇を重ね合わせてゆく。
胸板に押し付けた豊かな両の乳房がしなやかに形を変え、再び乱れ始める青年の鼓動を、彼女に伝えはじめる。
誘うようにひらいた唇の間に、最初は拒むように、しかし、やがておずおずと探るように、差し込まれてくる青年の舌先。
やがて、なにもかもを溶かす媚薬のような愛撫に、ふたたび情欲の炎を煽り立てられた青年が
ジーンの身体にすがりつくように、つたなくも激しい手つきで、その肢体をまさぐり始めた。

ときには従順に、ときには軽く拒むように、ゆるやかに誘い込むように踊る美しい肢体にいつしか我を忘れ
優美な腰の後ろに手をまわして彼女の身体を抱き上げ、青年が熱くたぎる己の先端を突き入れてきたとき
ジーンは大きく背中をのけぞらせて、せつなく甘い歓喜の声をあげた。

揺れる視界の中、彼女はふと
熱く濡れそぼった身体の中心を猛々しく貫き、無我夢中で腰を使う青年の顔を見上げ
けして手の届かない何かを悼むように歪められた、その必死な表情につと胸を突かれる。

……全身を波のように浸すこの愉悦も、ひとつに絡み合う汗ばんだ肌のぬくもりも、満たされる想いも。
傷つきながら求め合い、求め合うことでまた傷つき、儚くも激しく燃え盛るひとのこころも。
いずれなにもかもを押し流し、記憶の彼方へと運び去る約束のあることを、彼女は知っていた。

やがてまたたく閃光とともに、最奥に迸る熱い飛沫を受けとめた彼女の脳裏に浮かぶものは
求めても得られない誰かの面影を、この身に重ね合わせては通り過ぎていった
脆く儚いものたちの記憶。
そして、夜明けを迎えようとする薄暮の街の中を、無言で肩を寄せ合ったまま歩み去ってゆく
あまりにも幼く、不器用すぎたふたりの、
遠い後ろ姿だった。



(終わり)
394名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 14:14:55 ID:isIZtiEz
はっはっは〜 グッジョブ〜
395名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 14:42:00 ID:56UMG3z7
ジェレミツのすったもんだした後の本番を見てみたかったですがw
これはこれでしっとりとしててイイと思います。
GJでした。
396名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 16:34:42 ID:EdRYp8PF
 すげー。いい話だと思う。青春だよ。青春。
 ラストの書き方とか、こう来るとは思わなかった。
 読ませられる良いお話ですた。GJ!
397名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 18:26:18 ID:7k37cxZW
なーんだエロ無しか

と思ったのもつかの間、それを上回る萌えをくらって戦闘不能になった
GJ!
398名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 20:31:06 ID:GDpYqnED
なにこのいいお話
GJ!
399名無しさん@ピンキー:2006/05/08(月) 11:57:27 ID:qLk29bxo
どこのプロ作家かと思ったよ、GJ!!
400名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 03:33:58 ID:/D8DNR9X
誉めすぎ。またウザイ流れだな。郡島再来?
401名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 04:51:06 ID:j40XVA2R
いい作品が来たから褒める事の何がそんなに気に入らないんだ?
402名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 07:51:06 ID:vFWahuNG
>>401
だからなんで反応するの?荒しなの??
403名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 08:13:12 ID:A4+qg7Kd
まぁ落ち着け御三方
せっかく良SSが投下されたのぜ?
404名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 10:27:44 ID:/D8DNR9X
途中までは面白かったけど、締め方で激萎えだ。
何を意識してそうしたのか知らんが、終盤で一気に三流昼メロになり下がった。
前半は良かったのに、いきなり安っぽいただのレディコミ展開だもんな…。
これが良作には思えない。
405名無しさん@ピンキー:2006/05/09(火) 11:53:06 ID:j40XVA2R
つまり、「ボクが糞と思う奴はみんなも糞と思ってくれなくちゃイヤだい!!」ってワケか
ガキの思考だな
406お茶:2006/05/09(火) 12:16:24 ID:WS+Dr+cP
空気を読まずに昼メロを投下しますよ。
まあまあ仲良くしましょうや。
エロまだないです。長くてごめん。
407ベルハヅ:2006/05/09(火) 12:17:49 ID:WS+Dr+cP
「ずっと…ずっと、匂いがする…。体中、血の匂いがして…手にも…感触が、
まだ残って…」
背に回された手に力が篭る。思い出したのだろうか、震えが一際強くなる。
「何処に居ても、何をしていても、思い出してしまう…頭から離れない、
私が、私が、殺した……」
「ハヅキさん…もう、いいですよ」
それ以上は、言わなくていい。言わないで欲しい。
人を殺すのは誉められたことではない。本来ならば咎められるべき事だ。
それが例え戦であっても。それでも、戦わなければ死ぬ。
死ぬことも、殺すことも、普通の人間には恐ろしいと思えることだ。
今までハヅキはきっと、大事に育てられてきた娘だろう。
そんな娘には辛すぎることだった。それでも────。

「…勝手とわかっています。でも、貴方が無事でよかった」
背中を撫でながら耳元で囁いた。いつもきちんと結われている髪が、
近くで見ると随分と乱れていた。きっと自分を抑えることで精一杯だったのだろう。
震える手で、それでも外見だけはいつもと同じようにと結んだ髪。
ベルクートがその紐を解いてやると、碧緑の髪がさらりと流れた。
「貴方を失っていたら、私は」
ハヅキが伏せていた顔を上げた。涙で濡れた顔は初めて見せる、
歳相応の少女の顔だった。
不安に押し潰されそうな弱々しい光を宿した瞳は、いつもと全く違った顔を見せていた。
そんなハヅキを、愛しいと思った。失わずに済んだことを、この腕に抱けることを、
誰にともなく感謝する。
ハヅキが瞳を閉じる。吸い寄せられるように、ベルクートはそっとハヅキに口付けた。
408ベルハヅ:2006/05/09(火) 12:19:17 ID:WS+Dr+cP
────怖かった。
冷たくなってゆく身体が。染み付いた匂いが。
まるで自分までそうなってしまうのではないかと思うほど。
それでも、「日常」へ戻る気にはならなかった。なれなかった。
暖かいその場所へ戻る資格は自分にはないのかもしれない。そうとまで思った。
本当は、ベルクートにだけは会いたくなかった。見られたくなかった。
まだ汚れているような気がするこの身体を見られたくなかった。
もしかしたら、まだ血の匂いがするかもしれない。そう思うと傍に行けなかった。
けれど、そう思う心とはまた逆に、傍にいたいとも強く思った。
怖かったから。不安だったから。一人で居ると押し潰されてしまいそうだったから。
ベルクートの声はいつも、どんな時でも、ハヅキの心に安堵を与えた。
ふとした時に触れた手の温もりを思い出し、恋しいと思った。
叶うなら、その温もりに包まれたいとも。
訓練の時、戦闘の時、いつも自分を気遣って守ってくれる。
近付いて、ベルクートの匂いを感じると安心した。誰よりも、信じていたから。
だからこそ、汚れてしまった自分を見られたくないと、触れられたくないとも思った。
元が潔癖な少女だけに、その葛藤に苦しんだ。触れてほしいのに、
自分に触れることで彼も穢れてしまうのではないかとまで思った。

ベルクートは、冷え切ったハヅキの身体を包む着物に手をかけ、ゆっくりと脱がしてゆく。
それは思ったよりもずっと冷たく、湿っていた。
帯を解き、床に落とす。直に触れた肌は生気を感じさせない程に冷たい。
白い肌は冷えすぎて、まるで血が通っていないのではないかと思わせるほどだった。
長い口付けから解放し、ハヅキをもう一度抱き締める。
409ベルハヅ:2006/05/09(火) 12:20:21 ID:WS+Dr+cP
「……ベルクート……」
既に上半身を露わにされたハヅキは、抗うことはしなかった。
逆にその細い腕をベルクートの首に、躊躇いがちに回した。
そのまま膝立ちになるように抱え上げ、濡れた布地を下ろし下肢をも露わにする。
帯と同じようにそれを床に落とすと、ゆっくりとハヅキをベッドへと押し倒した。

「私は……卑怯ですね」
ベルクートの青い瞳が揺らぐ。こんな時に、こんな事を。そう呟いた。
組み敷いた身体は細く、頼りない。鍛えられた身体に無駄はなく引き締まっており、美しかった。
だが、それは欲情を誘うような美しさではない。頼りなく、弱い、
触れた途端に壊れてしまうのではないかと思う、まるで硝子細工のような美しさだった。
「…卑怯となど思わぬ…。お前はいつも、私の欲しいものを与えてくれる」
そう言ってハヅキは、今度は自分からベルクートに口付けた。ぎこちない口付け。
それは少女が生まれて初めて、自分から求めたもの。
冷たい身体に、ベルクートの腕は温かかった。欲しかったのはこの温もり。
「私は、死にたくなかった…。怖かったのだ。あれだけ人を殺しておきながら、
自分が死ぬのは嫌だと思った…」
部屋の明かりが逆光になってベルクートの顔がよく見えないが、
辛そうな顔をしているのは判った。
まるで自分のことのように苦しんでくれるのかと、ハヅキは胸が痛くなった。
410お茶:2006/05/09(火) 12:21:54 ID:WS+Dr+cP
今日はここまでです。なかなかエロに入れないで申し訳ない…。
新たな神が降臨するまでの暇潰しにでもなれば。
411名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 00:30:12 ID:zwRXpeMt
混在する連載モノを一本ずつまとめて読むためには
ビューアーのソート機能で名前欄をソートすればいいのだと
今頃気がついた俺をさあ罵るがいい。
412名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 01:15:40 ID:p5BuBw3p
>>406
GJ!続き楽しみにしてます!
ベルハヅに目覚めてしまったよ(*´Д`)
413前野199:2006/05/10(水) 09:02:20 ID:DkM4Jwdw
おはようございます。懲りずにまたヴィルヘルム×リオン投下します。
前スレ556の続きとなりますが「一度リオンに自慰の手ほどきをした」という設定付きと思ってください。
(保管庫管理人様、更新お疲れ様です)
今回は本番あり。内容がノーマルEND前提です。ジョセフィーヌを仲間にしていないのがさりげに 重 要 。
25kbと長いですがまとめて投下します。すみません。
414ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:03:15 ID:DkM4Jwdw
黄昏の刻。
大地も、河も、夕焼け色に染まる。
当然本拠地においてもそれは例外ではなく、男が釣り糸を垂らす水面も紅く染まる。
まるで血の池だ、と物騒なことばかり思いつくのはもはや職業病だろうか。

王子軍の目標であった王都奪還を果たした現在、本拠地は閑散としていた。
それでもかろうじて機能を果たしているのは、いまだ戦いが終結していないため。
ソルファレナや王宮という格式高い街の空気に馴染めなかったヴィルヘルムは
王宮の護衛として自分の部隊から人手を貸し出すと、早々に本拠地に帰ってきていた。
釣りなんて性に合わない行為も、まもなく離れるであろうこの場所への、彼なりの別離の挨拶である。
ふと、夕日色の水面に人影がさす。
「…よお」
ヴィルヘルムは特に振り返りもせず、影の主に挨拶をした。
「あんたが1人なんて珍しいな。王子もこっちに来てるのか?」
「…今はサイアリーズ様の墓前に。今日は、おひとりで過ごされたいそうですから」
リオンが静かに答えた。

「釣れますか?」
ヴィルヘルムの隣にちょこんとしゃがみこむ。
「どいつもこいつも俺様を馬鹿にしやがる。まあそれもいいさ。
 ガラクタがひっかかったと思ったが、いい金になるヤツもあるらしい」
男の反対隣をちらりと見て、リオンは思わず微笑む。彼の戦績は壷や長靴ばかりだった。
「まだ本調子じゃないみてえだな」
「え?」
糸から少女に視線を移したヴィルヘルムがつぶやいた。少女の血色が良くないのは夕日のせいではない。
「普通は逆に顔色がよく見えるはずなのにな。相当無理してねーか?」
「無理なんて…私だけじゃありませんし、多少は無理しないと。
 まだ、太陽の紋章が残っていますから」
ファレナ女王国が長い歴史のなか守り続けてきた、27の真の紋章の1つ。
それを取り返すことができなければこの内乱は終わったことにはならない。
少女の頑なな決意も理解できるが、ヴィルヘルムは引っかかっていた。
「ねーちゃん、ちょい」
「?何で…きゃあっ」
手招きしてきた大きな手はリオンの腕を捕らえると強引に引き込んだ。
油断していたリオンはバランスを崩し、気づけば胡坐をかいているヴィルヘルムの膝の上にすっぽりと納まっている。
少女が座りやすいように抱え直すと、再び釣りを再開した。
「ほら見ろよ。今日の夕焼けは格別綺麗だぜ」
「…別にあなたの膝の上でなくても夕焼けくらい見えますけど?」
「まあそう堅えこと言うなよ。息抜きしに来たんだろ?」
「…」
諦めたのか、拒むことなくリオンはそのまま静かにしていた。
息抜きというのは確かに間違ってはいないのだが、ここに足を運んだのは美しい景色の為か、この男がいたからか。
自分にすら出せない答えをこの男は見抜いているようで、リオンは小さく溜め息をつく。
415ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:04:06 ID:DkM4Jwdw
紅く染まる景色の中、二人揃って釣り糸を気にしながら他愛のない話で刻は過ぎた。
どちらも先日まで返り血を浴び、仲間の断末魔の叫びを聞いていたとは思えないほど
それはあまりにも平穏で、安らかな時間。
「でよ、その酒はファレナに来てから知ったんだが…」
「あのっ」
平穏を逆に恐れるかのようにリオンは話を断ち切った。
「ん?」
振り返ると豪胆な戦士の顔が目の前にある。いつもの下卑た笑みではなく、周りの景色のように落ち着いた瞳。
「あの、ですね…」
「おうよ」
きっとこの男は気づいているのだろう。自分が気づかないふりをして、逃げているものを。
何も聞いてこないのはこの男の優しさか、ただの余裕か。
ソルファレナで紋章を受け継いでから、彼女の左手を気にしなかった者はこの男が初めてだった。
「ヴィルヘルムさんは…怖いと思ったことがありますか?」
「あぁ?急に難しいこと聞いてくんな」
頭を掻き、無精髭をいじりながら思いを巡らせる。
「そうだな、怖いか…あえて言えば、世界って怖えよな」
少女の瞳がきょとん、と丸くなる。ヴィルヘルムは口の端をニヤリと上げて話を続けた。
「世界に比べりゃ人ひとりなんてちっぽけな存在だ。
 争いでたくさん人が死んじまっても世界は動く。その死体のひとつが俺だったとしてもな。だから強くなるのさ」
「死なないために、ですか」
「いや、死なないってのも間違っちゃいないがちとずれてるな。
 悪あがきをする為さ。一日、一刻でも俺の存在を世界に知らしめるために」
所詮は悪あがきだけどな、と明るく笑い飛ばす。
「そういうあんたはどうだ?怖いモンでもできたのか?」
「あ…」
途端、リオンの表情が強張った。
「わたし、は」
ヴィルヘルムは微かに震える小さな肩を空いたほうの手でぽん、と叩き、背中をそっとさする。
ゆっくりと、リオンが言葉を吐き出せるように。
「王子をお守りする為に、そのためなら怖いものなどなにもありませんでした。
 私が幽世の門だったと伝えた時、王子に嫌われることが怖かったくらいで…
 でも」
自分の左手を夕日にかざす。小さな少女の手。その手の甲に紋章が紅く光る。
「…どうして私に宿せたのかわからなくても、王子のお力になれるなら、と
 そう、思っています。今でも。私でも役に立てるんです、この紋章を使えるのが…」

こわい。

「…っ」

体を蝕まれ、こころを削がれているようで。

「ねーちゃん」
「紋章を…宿してから、体も、心まで、弱くなってるようで、こんなんじゃダメなのに。
 王子をお守りしなきゃいけないのに、自分が言うことを聞いてくれなくて…っ!
 あと、もう少し、もう少しなのにっ!!」
少女がやつれて見えるのはかつての傷の所為ではないと、
他人にとってはただの予測でしかなくともリオン自身は確信していた。
わかっていた。黄昏の力に蝕まれていると。
それでも弱音を吐くことなんて、できるはずがなくて。
王子も、ゲオルグ様も、ミアキス様もロイ君だって言えばきっと優しく受け止めてくれると知っているけど。
これ以上心配をかけたくない。足手まといになりたくないから。
416ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:05:07 ID:DkM4Jwdw
パシャン。
ようやく魚が引っかかった釣竿が、手元を離れて湖に吸い込まれていった。
竿を持っていた大きな手はリオンの背中を強く支えている。
「ごめん、なさい」
「謝るこたあねえよ」
「だって」
あなたになら、甘えてもいいなんて。
「ひきょうじゃないですか…」
黄昏の世界が広がる中、遠く桟橋に男の背中を見つけたとき。勝手に足が向かっていた。
「あんたの独り言を俺が勝手に聞いてるだけさ。それに、」
少女の顎に手をかけ、自分に向かせた。濡れた蒼の瞳はヴィルヘルムを真っ直ぐ射抜く。
「俺が、他の奴らが何を言っても、あんたはそれを外す気ねえんだろ?」
涙に濡れても、瞳の奥の信念は揺らいでいない。
「…はい」
「なら今は泣けばいいじゃねえか。たとえ逃げたいと言ってもあんたを咎めねえよ。俺にそんな資格はねえしな。
 ただ泣きたいあんたを重いとも思わん。いくらでも抱えてやるよ」
ねーちゃん1人くらい、軽いもんさ。と。
ヴィルへルムはいつものように笑い飛ばした。
今、この国の運命を左右するモノに対抗できる、チカラ。その片割れを手にした少女。
だが、ただの少女なのだ。
盲目的に崇拝する王子の為にと強がっても、その体も精神も器はまだ未成熟で。
人々を巻き込み、導く覇者の器を先天的に持つ王子と肩を並べようとすれば弥が上にも負担はかかる。
そしてこの少女は馬鹿なほど生真面目すぎて、全てを自分に閉じ込めていた。
「相変わらず、不器用なこった」
「ふ…」
泣きじゃくる小さな背中を優しく抱き締めた。
見ていた夕日が沈んでいき、かわりに闇が広がるあいだ、ずっと。
417ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:07:08 ID:DkM4Jwdw
完全に日が暮れてしまった頃、リオンはようやく落ち着きを取り戻した。
顔を上げると、冷たい空気が頬に触れる。ヴィルヘルムにすっぽりと包まれていた状態だったリオンは
はじめて冷たい夜風から守られていることに気づいた。
両手を伸ばし、自分より冷えてしまったヴィルヘルムの頬を包む。
「すみません、こんな時間まで…」
「気にすんな。もう大丈ぶふぉっ」
リオンがそのまま腕を回し、ヴィルヘルムの頭をぎゅ、と抱き締めた。
当然ヴィルヘルムの顔にやわらかい膨らみが押し付けられ、リオンの温もりが伝わる。
「ほえー、こりゃ極楽だあ」
「…」
「でもよう、ねーちゃん。俺も男だからなあ、こんなことされちまうと…」
「っひゃっ!」
大きな手が太腿を這い、平然とスカートの中の双丘をまさぐる。
咄嗟にリオンは腰を落とし、ヴィルヘルムの腕をつかんだ。見上げるとヴィルヘルムの満面の笑みがある。
「…」
「んー?」
顔も真っ赤にしながらも、ヴィルヘルムの手をはねよけようとしない。
ヴィルヘルムの知っている彼女なら、視線もそむけるはずなのだが。
まさぐる手を止め(しかし手は置いたまま)彼女の様子を伺う。
「…て、くれますか?」
小さな、夜風に消え入りそうな声。しかしヴィルヘルムは聞き取れた。
だいてくれますか、と。
418ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:07:50 ID:DkM4Jwdw
「…当然、そういう意味で言ってんだよな?」
「ダメ、ですか」
「いやあ、俺は大歓迎だが…あんたはそれでいいのか?」
来るものは拒むどころか大歓迎のヴィルヘルムだが、何でもいいというわけでもない。
彼女はまだ男を知らないはずだ。破瓜が心身ともにそれなりの痛みを伴うこともいくら彼女でも知ってはいるはず。
「こないだのはただの手伝いだから俺も相当我慢してた。前と同じようにはいかねえ」
リオンはゆっくりうなずき、ヴィルヘルムの首にしがみついた。ヴィルヘルムの耳に小さな声が届く。
「こんな、こと…愛とかそういうのを、よくわからない私がお願いするのは、卑しいことだって、
 あなたにも失礼だと思います…でも、あなたは、こんなみっともない私を、私でも
 誰にも言わずに、ただ、受け止めてくれたから…おねがい、します…」
ヴィルヘルムは大きく溜め息をついた。
「だから、いちいち自分を悪く言いなさんな。ねーちゃんに覚悟ができてるなら構わんよ。
 怖いモンも何もかも忘れさせてやるさ」
「忘れ…られますか?」
しがみつく腕を緩め、そろりと男の顔を覗き込む。ニヤリと不敵な笑みが返された。
「忘れたいんだろ?」
「わたしは」
無意識に発した願いをゆっくりと反芻してみる。
あんなことを言ってしまったのは、あの方に似ているから…?
ちがう。それだけじゃない。
この人は私の世界の小ささを笑い飛ばしてくれた。
じゃあ、この人の世界は?
私より、もっともっと大きくてどこまでも広がっていそうな、あなたの世界を。
「みたいから」
「見たい?」
「あなたの、その目に広がる世界を見たいんです、私も…。教えてください」
ヴィルヘルムはクッと喉の奥を鳴らして笑う。
「んな理屈で考えるな。俺の世界は目でみるもんじゃねえ、感じればいい」
リオンの顔を両手で包む。その手に対して小さく、儚い顔。
やわらかい頬に感じる手の感触はあたたかくて、リオンにはむずがゆく、そればかり気にしているうちに
「ん」
唇にいままで経験したことがないものを感じた。
初めて感じる他人の唇がどんなものかよくわからないまま、さらに刺激は口の中へ移動する。
「んふ、んんっ…」
背中の大きな腕が逃げることを許さないで、さらに強く少女を抱き締める。
さらに深く、さらに激しく。リオンがこれ以上何も考えられなくなるまで舌が舌を犯し続けた。
「ふぁ、はあ…ん」
ようやく唇を解放されたころには体力まで吸い取られたかのようにふらついた。
体に力をいれることもままならず、だらりとヴィルヘルムに体を預ける。
「気持ちよかっただろ?」
リオンを覗き込む満面の笑みは少年のようだ。
「よく、わかんないです」
「それでいいんだよ。この程度でへたれてると最後までもたねえぞ?」
ヒャハハハといつもの笑いが夜の世界に響いた。
419ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:09:23 ID:DkM4Jwdw
その頃、本拠地食堂では落ち着かない様子で歩き回るロイがいた。
様子を見ていたベルナデットと視線が合うと珍しくロイの方から声をかける。
「なあ、リオン、見なかったか?」
「リオンさんを探していたの?うーん、…殿下と一緒じゃないの?」
「いや、王子さんにはもう聞いた。今日は自由にしてるらしいんだけど…」
悪い、あんまり気にしないでくれ、と言いながら食堂を去っていくロイを見送り
ベルナデットはひとつ溜め息を落とす。
先刻、塔の高台から桟橋をたまたま見渡していたときの光景。
傭兵の隊長に近づく人影は多分、先程の話題に出た少女。
ずっと注視していたわけでもないのでそのあと彼女がどうしたかなんてわかるはずもなく。
ただ、その不思議な組み合わせが心に残っていた。
「話した方がよかったかしら…」
ベルナデットは下手にそのまま話してロイを刺激しないほうがいいと判断した。
それは女のカンなのだろうか。
あえて理由をあげるなら、その組み合わせが不思議ではあったが不自然に感じなかったから。
二人のいる光景を壊したくなかったのだ。
結局、ロイのほうもリオン探しを諦め、一旦自室に戻っていった。
寝台に身体を投げ出し、最近元気のない少女を想う。
「リオン…」

皮肉なのは運命か、それとも頑丈にできた遺跡の造りか。

部屋の壁1枚向こうで、探していた少女が嬌声を上げているなんて。
ロイに気づくことなどできるはずがなかった。
420ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:10:18 ID:DkM4Jwdw
人目を避け、リオンを抱えたヴィルヘルムが向かったのは宿屋…の先の下り坂。
軍の要人の多くが太陽宮に移ったいま、この円堂も閑散としていた。
螺旋を描くなだらかな坂を歩き、最初に辿りつく扉を開ける。
全ての星が王子の下に集っていたらその部屋にも仲間が滞在していただろうが、
ヴィルヘルムの入った部屋は雑然とした物置になっていた。
「自分で立てるか?」
リオンを降ろし、後ろ手に扉を閉める。
「…まさか、いつもここに女性を連れ込んだりしてるんですか?」
「んなコソコソしねえよ。他のヤツらは使ってるみてえだけどな」
憮然とした表情をみせるリオン。そんな彼女に大きな手が頬をつまみ、ふにふにとやわらかい感触を楽しむ。
「俺は別にさっきのとこでもよかったんだが、あんたが風邪引いちまったら大変だしなあ」
「にゃっ、ふにゃけ、もう、ふざけないでくださいっ!外でそんな事できるわけないじゃないですか!」
しゃべりを邪魔する指を抑えて叫ぶ。
「星も綺麗でココより色気があると思ったんだが…しょっぱなから青姦は早すぎるか…」
「あおか…?なんですか?」
「独り言だ、気にすんな。わりいな、布団もムードもねえとこで」
保管してある毛皮や反物を勝手に敷き、寝床を作る。
「逃げるなら、最後のチャンスだが?」
ヴィルヘルムが目の前で鎧のベルトを外し始めるのでリオンはあわてて背を向けた。
「…逃げませんよ。ここに来たのも私が人の目を気にしてるのを、気遣ってくれたとわかってますから」
頬を真っ赤に染め、背を向けながらもとりあえず、ありがとうございますと礼を伝える。
がちゃん、と音が響く。鎧を外したヴィルヘルムはそのまま上衣も脱ぎ、厚い胸板を外気に晒した。
「なら、来いよ」
誘導されるまま振り返るが、ヴィルヘルムの上半身に顔を上げることができない。
リオンの手を引きながらヴィルヘルムが先に毛皮に座り、リオンも隣へ座らせる。
「あ…」
もはやからくり人形のような動きの少女。潤ませた蒼い瞳で男の顔を見るのが精一杯だ。
「んな顔するな。我慢できなくなっちまう」
「え、あ…ちょっと」
毛皮のかたまりを背当てにし、脚を伸ばすと自分の腹の上にリオンをまたがらせた。
強張るリオンを抱き寄せ、今度は優しく口付ける。
「ほら、簡単だろ?やってみな」
「い、今のですかっ」
「目閉じててやっから」
そう言ってその体格に似合わずおとなしく目を閉じてじっと待っている。
迷いながらもリオンは広い両肩に手をかけ、そっと、かろうじて触れる程度に唇を重ねる。
だが、ヴィルヘルムは動かない。
「…うう」
少しずつ、繰り返されるキスの練習。次第にリオンの唇の感触がはっきりと伝わる。
重ねる唇に無駄な力が抜けてきた頃、桜色の唇をちろりと舐められた。
「なかなかうまかったぜ、ごちそーさん」
「…変な言い方しないでください」
「そう拗ねんなよ。手本みせてやる」
今度はヴィルヘルムの方から唇が重ねられる。
意外に柔らかい唇は桜色の下唇をやんわり食み、なぞるように舐め上げる。
「ふ…」
抵抗をみせない唇にゆっくりと舌が侵入する。
ヴィルヘルムの頬にかかる少女の黒髪をすくと、さらりと絹のように心地良い。
「ん、ふぁ…」
わずかに吐息を漏らすたびにリオンから力が抜けていった。
もたれかかる女体の曲線を堪能するように武骨な指が背中を辿り、しゅるりと帯の結び目を解く。
「あ」
リオンが気づいたときは、鎧を留める紐を慣れた手つきで解いていた。
421ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:11:19 ID:DkM4Jwdw
「ほら、ちょっと起きな」
半身を少し浮かせば鎧はあっさり取り払われる。リオンを抱き寄せ上半身をぴたりと密着させた。
「これでようやくあんたのやわらかさが堪能できる」
「それは嫌味ですか…どうせ胸とか肉付きよくないですから」
「ハッ、でかきゃイイってもんじゃねえさ。俺はあんたみたいに感度が高い方が好みだが」
「もう、そういうこと言うのやめ、っひゃあんっ!」
リオンが文句を言おうと体を浮かせると、大きな両手は隙なく胸の膨らみを堪能し始める。
リオンの身体を持ち上げるような体勢のため、揉みしだく手の動きに細い上半身はゆらゆら揺れていた。
「あっ、はあぅ、んっ、ん、待って、っ」
「こうやって念入りに揉んどけば成長するって言うぜ?」
過敏な乳房は衣の上からでも突起した蕾を露わにした。指の腹で弄ぶと少女の身体が跳ね上げる。
「んんっ、んふぅっ」
弄ぶその手を止めず、さらに再び唇を塞ぐ。
 ぐちゅり、ぴちゃ、ちゅくっ。
舌を、歯列を、男の舌が卑猥な動きでかき回し、二人の唇の隙間から唾液が垂れてもなお止まらない。
「ふぁあ、あむ、ん」
いつしかリオンの舌も自ずから絡めるようになると、桜色の上衣の合わせを解き、膨らみに直接触れる。
「んふぅっ!!はあっ、ひゃああっっ!!!」
唇は解放されたものの、ヴィルヘルムの舌は耳へうなじへと執拗に刺激を与える。
白い肌に赤い花びらを残すと、リオンの身体を上へ抱き上げた。眼前にある桜の蕾をおいしそうにしゃぶりつく。
「あ、あっ!!」
捕まるようにヴィルヘルムの頭にしがみつき、必死に快楽を受け入れる。
少ない肉をたぐり寄せ、先端の蕾を舌先でいじられると、一際高い声で鳴いた。
「外には聞こえねえんだ。もっと鳴いてくれ。あんたの綺麗な声、ゾクゾクするぜ」
太腿を、そして突き出た双丘を撫で回し、揉み上げる。
中指を一本、双丘の割れ目をなぞっていくと、秘所を覆うタイツにまで愛液が染み出していた。
指の腹でぐにぐにと刺激を与えると、リオンの耳にぐちゃりと卑猥な音が届く。
実際には聴覚ではなく触覚で感じたのだが、リオンにはそれすら判断ができなかった。
「やああ…ああっ」
「おっと」
しがみつく力も抜け、だらりと身体を預けるリオンを抱き止める。
胸元のリボンもほどき、上衣を脱がせた。
どうやら胸元も隠す余裕もなく白磁器のようにすべらかな肌を晒し、荒げた呼吸を整えている。
「はあ、はあ…」
「大丈夫か?」
子供をあやすように髪を撫でる。くるりと指に巻きつけてもすぐに零れ落ちる感覚が気持ちよくて、
ヴィルヘルムはリオンが落ち着くまで絹髪の触り心地を楽しんでいた。
422ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:13:12 ID:DkM4Jwdw
「脚のプロテクター、自分で外せそうか?」
赤らんだリオンの頬をふにふにとつまんで反応を伺う。
ふらついていた焦点も定まり、こくりと頷いた。
ヴィルヘルムの腹から降り、プロテクターのボタンを外す。両足とも脱いでぺたりと座り込むと。
  「・・・」
ぼんやりとしていた思考が凍りつき、リオンの視線は一点に集中する。
それは、ヴィルヘルムが緩めたズボンから飛び出してきた、モノ。
「ん?そんなに珍しいか?王子も顔に似合わずご立派なのついてんじゃねえか」
「お、王子はそんなっ!いびつなもの…っ」
そこまで言って、自分の言葉に湯気が出そうになる。
目の前にあるモノが股間についた王子がリオンの頭をよぎり、慌てて首を横に振った。
(ちがーーうっ!!!王子が、王子がそんなっ…)
王子が性別上オスなのは重々承知している。
だからといって王子にもこのような太く赤黒い物体が存在すると思いたくなかった。
「そんなにビビんなよ。ほれ、触ってみな?」
百面相するリオンに笑いをこらえながらもリオンの腰に手を回し、誘導する。
「ううっ…」
リオンの手がゆっくり近づくとそそり立ったモノはピクリと揺れる。
「っ!」
「別に襲ってこやしねえよ、そっと触ってくれや。掴まれたら俺だって痛えからな」
言われるままにそっと肉棒の先端に触れてみた。
ぬるり、とリオンの指先にぬめった液が絡みつく。
「熱い…」
「ああ、あんたの中を掻き回したくてこんなになっちまった」

「あ」

「ん?」
再び固まるリオンをヴィルヘルムは不思議そうに眺める。
リオンはリオンで、最も重要なことをすっかり忘れていた。
これが、入ってくるのだ。自分の中に。
知識としてぼんやりと知っていても、いざ現実を目の前にすると到底信じられない。
こんな太いものが、一体身体のどこに収まるというのだ。
万に一つ、口に入れたとしても喉につかえて入りきるはずがない。
それを、よりによって―――。
「ちゃんと入るから心配すんな。女体の神秘ってやつよ」
ヴィルヘルムが引き寄せ、軽いキスを落とす。
この状況で不安要素などそのくらいしか思いつかなかったらしい。
「まあ初めから痛くないってのは無理なハナシだがな。それも覚悟の上だろう?」
耳元に低い声がそっと響く。
「痛いのは、覚悟してます。けれど、その…」
「大丈夫だから、深く考え込むな。ほれ、もっと気持ちよくなれよ」
そういって言葉は熱い吐息となり、リオンの耳を、首筋を、感度の高い箇所を刺激する。
「あっ…」
423ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:14:14 ID:DkM4Jwdw
先程とは逆にリオンを寝かせると、下半身を覆う衣に手をかけた。
スカートとともに黒いタイツと彼女らしい白いショーツもずるりと引きおろされる。
リオンは抵抗も見せなかったが、愛液溢れる秘所を隠したいのかもじもじと太腿を寄せて視線を逃れる。
結果的にヴィルヘルムに白い臀部を見せつけて欲情を掻きたてることになってしまったのだが。
「そんなに誘われると喰っちまうぞ」
それはリオンに、というより目の前の白い双丘への言葉。
「え?っうあん!」
双丘の割れ目を沿うように骨太い指がつたい、くちゃりという音が秘所へ辿り付いた事を知らせる。
「ああっ、やっ、ふうっん、ん、ん、んっ」
指が刺激を与える度にみずみずしい双丘がぷるぷると揺れる。
ニヤリと笑いを浮かべたヴィルヘルムは悪戯小僧の瞳をしていた。
 はむっ。
歯は立てず、厚い唇で双丘の片割れをぱっくりかんだ。
「へっ?やっ、ちょっとそんなっ」
リオンの制止を無視し、秘所への愛撫を止めぬまま唇と舌で肉の感触を楽しむ。
「やあ、だめですっ、くすぐったい…っ」
「そうかぁ?ココのよだれは増えてきたぜ?」
「…っ、そんなことっ!」
ふくれるリオンを笑いながらなだめ、ヴィルヘルムは試しに中指に力を入れた。
「っ!ふ…うっ…」
愛液を纏わせ、それが溢れる壷の中へとゆっくり押し入れる。
初めて侵入する異物を拒むように内壁は収縮し、ヴィルヘルムの指を締め付ける。
「コラ、力むな」
「そう、いっても、ん、うまく、力が、抜けなくて…」
指をゆっくり出し入れる度、白く細い脚が僅かに痙攣する。
内壁を傷つけないように、節を曲げながらリオンが反応する箇所を探った。
「ん…」
「痛いか?」
ふるふると首を横に振る。
「なんか、ぞわって…」
もう一度探りを当てると、今度は明らかに艶やかな声を上げた。
繰り返し、しつこいほどに同じ箇所に刺激を与える。
「ああっはあ、んっ、ひゃっ、ああ、あ、ああっ!」
溢れる愛液は指をつたって手の平までぐしょぐしょになっていた。
「ゾクゾクするんだろ?一度いっちまいな」
低く、そして優しく響く声にリオンは必死に抗う。
「や、だめ、だめっです!お願い、あなたも、あなたもっ…」
ヴィルヘルムの手首を押さえ、懇願した。
もうろうとした意識の中、自分だけ刺激の波に溺れるのをよしとしなかった。
これでは、前の、あの時と変わらない。
苦笑いしたヴィルヘルムは指を抜き、抑えていたリオンの手を取って甲にキスを落とす。
「いいんだな?」
乱れた呼吸の中、リオンはこの日初めてヴィルヘルムに笑顔を見せて、頷いた。
424ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:15:59 ID:DkM4Jwdw
完全に組み敷かれたリオンは、自分の意識とは無関係な脚の震えを止めようと力を入れる。
だが震えは止まるどころかさらに言うことを聞かなくなった。
「気にしなくていいから力だけは抜いとけ」
震えを収めるように大きな手が両の腿を優しくさする。目の前にある瞳に宿るのは以前に見た、真摯の光。
「ああっ…」
既に秘裂にはヴィルヘルムのモノがあてがわれていた。
指とも異なる熱い感触に自然と甘い吐息が漏れる。
 くちゅり、ぐちゅり。
肉棒の先端に愛液を塗りこみ、位置を定めて、体重をかけた。
「うっっ…ふううっ!!!!」
今までの快楽の刺激が全て無に返されてしまうほどの、ただの痛み。
指より遥かに太いモノを受け入れながらリオンは必死に痛みに耐える。
ヴィルヘルムの方も愛液で潤ってもなお激しい圧迫感の中、できる限り痛みを与えないようゆっくり腰を落とす。
「うああ…ううっ」
「もう少し…力、抜けるか…?」
頑強な身体にしがみつく少女を落ち着かせるにも、果たして自分の言葉は彼女に届いているのだろうか。
艶やかな黒髪を梳かし、少女の耳元へ、低く静かに言葉を放った。

「リオン」

「あ…」
なつかしい、ひびき。
その声が放った音が自分の名だと認識するのに、数瞬。
「リオン」
ヴィルヘルムがもう一度呼ぶと、蒼玉の瞳から溢れるように涙がこぼれた。
「ああっ、っ!ふぁあああっ!!!」
緩んだ内壁に肉棒が最奥まで押し入った。
自分の身体の下で全身を震わせる少女を抱き締める。
「ああっ、あ、ヴィル、ヘルムさ、ん…」
「ちゃんと入っちまったぞ?」
大きな手が柔らかい頬を包み、小さな白い手がその手を覆った。
「ヴィルヘルムさんに、名前、呼ばれると、あったかい、です…」
「そうか」
優しく、ついばむようなキスを落とし、涙も舐めて、二人はさらに深く繋がる。
ゆっくりと繰り返されていた挿入も、内壁の抵抗が弱まるのにあわせて次第に激しくなっていった。
「ああっ!!いっ…んん!!!」
「もう、少しの、我慢なっ…!」
ヴィルヘルムに激しく叩きつけられ、細いリオンの身体は折れそうなほど波に揺れた。
だがその口から拒絶の言葉は一切無く、全ての刺激を一身に受け入れる。
やがて苦悶の喘ぎの間に、少しづつ、甘い吐息が漏れた。
「うあ、あ、はぁ、ああっ!もう、もう、壊れてしまい、ま、す!うう!!」
「もう、ちょいだっ!リオン…!リオン!!!」
「はあっ、いっ、ヴィルヘルムさぁんっ!!!」

「あああっ…!!!」

肉棒が抜かれ、リオンの肢体に生暖かい液が勢いよくかかる。
白濁の液は、血に混じってくすんだ色をしていた。
「お疲れさん。…がんばったな」
「…はい」
聞き覚えのある言葉に思わず微笑んだ。
425ヴィルリオ 黄昏:2006/05/10(水) 09:18:01 ID:DkM4Jwdw
そして、戦いは終結した。
太陽の紋章は王宮に戻り、国に平和が訪れる。
そして次なる戦を求め、傭兵旅団は旅に出るのだ。
「すっかり沈んじまったな。影すら見えねえ」
ファレナ王国を出る直前、ヴィルヘルム達はかつての本拠地が沈むセラス湖に来ていた。
あの砦には命を落とした傭兵仲間や、この戦いで背中を預けた仲間達が眠っている。
ヴィルヘルムをはじめ、隊員達は皆ここの仲間達が好きだった。
湖を見つめ、皆それぞれ最後の別れをする。
声を上げて泣き出す者もいたが、今日に限りミューラーも何も言わなかった。
「…」
あの、少女も。ここに眠っている。

最後の戦いの後、王子に抱きかかえられて帰還した少女の体にはぬくもりが消えていた。
全ての戦いが終わり、王宮では祝宴の話が始まっているだろう。
だが、本拠地の住人は喜ぶことなどできなかった。
それだけ少女の存在が大きかったことを思い知らされる。

じっと湖を見つめていたヴィルヘルムの視界に見慣れた金髪の頭が入ってきた。
「リヒャルト、どっか行ってたのか?」
少年は振り返るといつものようにへにゃりと笑う。手には1輪、白い花を持っていた。
「?」
「ミューラーさんがね、さっきあっちの崖の下覗いてたんだ。
 何かなあって僕も覗いたら、絶壁の途中にこれだけ咲いてて」
「んで絶壁おりてそれを摘んできたのか。おめえよく落ちなかったなあ」
「へへー。何か、あんな所で1輪だけ咲いてるなんてすごいよね。
 白いし、あの子に似てるなあと思ったから」
そういって湖の方へ駆けていく。ヴィルヘルムが思わず目を見開いたことを気づいただろうか。
リヒャルトがそっと水面に花を浮かべると、静かな風がゆっくりと、
かつての砦に向かって花を泳がせる。
 『名前、呼ばれると、あったかい、です…』
名前など、呼ばなければ良かっただろうか。
ヴィルヘルムは普段から女性を名前で呼ぶことが少なかった。
それは決して女性を軽んじているわけではない。女も、土地もひとつに固執することがない彼の生き方ゆえ。
余程想い入れが強くなければ名前を呼ばないのは、忘れることができなくなるからかもしれない。
(いい女だったぜ、リオン)
頬を紅く膨らまして怒る少女の顔が目に見える。
「さて、」
湖を背に向け、隊員たちを見回す。コキコキと首を骨を鳴らすのはいつものクセ。
「そんじゃ、行くか!」
「ウィーーーーッス!!!」
いつもの声、いつもの表情。いつものように、旅立つ。馬に乗ると、もう一度だけ湖に視線を投げた。
「じゃあな」
つぶやくと、ぽんと馬の腹を蹴り、男達は旅立っていった。
END
426前野199:2006/05/10(水) 09:20:52 ID:DkM4Jwdw
以上です。自己満足な長文、失礼しました。後悔はしていません。
427名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 09:52:58 ID:IzavZnYM
>>426
ふくれたり拗ねるリオンが可愛いし
ヴィルヘルムはいい男だしエロ面白かったよ。

朝からいいもん読ませてもらった GJ!
428名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 09:53:55 ID:NyjuVlh3
GJ!!
最後のヴィルヘルムがかっこよく決まってるぜ!リオンも可愛い
429名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 12:37:27 ID:AVFPOiCW
前スレのヴィルリオ好きだったから、また読めて嬉しい。
はげしく萌えました。GJ!!!
430名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 20:44:46 ID:96L3EblG
王子に自己投影してゲームしてたからか、寝取られたような気がしてちょっと落ち込んだw
でも、そう思わせるほど良い作品だったってことで、GJです。
431名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:56:24 ID:1g5AD2lZ
センセー。
リムスレーア=ビッキーつーのはありでしょうか。
理由ですか?ちびビッキーが似すぎだというだけの話ですが。
432名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 17:43:12 ID:X4esaqtx
さすがにそれは・・・w
433名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 19:47:07 ID:rd2lfaw+
全然似てませんがな
一人称違うし
434名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 16:11:54 ID:Im+yvCFl
脳内補正が過ぎましたなー。申し訳ない。
435名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 17:02:58 ID:lEiHVU2a
>>434
謝る事はない。そういうところから良き妄想は始まるものだ。
436名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 00:25:36 ID:D/YQEIvA
お初の投下になります。ナクラとサギリのあんまり明るくない話になります。
エロ成分は極薄です。短い文の中でさらに短いし、突っ込んで(直接的表現)ませんし。
それでは箸休めにでもどぞー
437ナクラ×サギリ:2006/05/13(土) 00:26:56 ID:D/YQEIvA
ほんの気まぐれだったのだ。
普段は城の中に戻り、明日の戦闘のための休息をとる時刻になっても、眠れずに城外を歩いていたのは。
薬によって狂った幽世の門の暗殺者を、今日は何時もより多く征伐したため、気が昂ぶっていたからだと言えばそうかもしれない。
何にせよ、夜の本拠地をあえて彷徨う特別な理由はナクラにはなかった。
気が落ち着いたら適当に戻る、そんな気紛れな散歩だった。

そんな時に会いたくない相手の姿を見つけてしまうなど、ひどい偶然だと彼は思う。

「……おい」
気配にはとうに気づいているのだろうと思いつつも、ナクラは月光の中に佇む娘に声をかけた。
かけてしまってから、彼は自らの過ちに気づいた。声などかけず、無視して通り過ぎてしまえばよかったのだ。
「……」
娘――サギリは、呼びかけに言葉を返すことはなく、ただ彼をいつもと変わらぬ表情で見つめるのみだった。
その表情が、何よりも彼を苛立たせるのだと、わかっていながらも直すことができずに。
「ガキが夜中にうろついてていいのか? 『家族のみなさん』が心配してんじゃねえのかよ。特に兄貴がな」
いつも彼女を取り巻く、どこか食えない男とおっとりとした女。
そしていつも彼に、目自体は見せないくせに、鋭いということだけはわかる視線を投げかけてくる青年。
そういった気に食わない彼女の『家族』の姿を思い浮かべながら、ナクラは毒づいた。
彼らの多くが、サギリとかつて立場を同じくしていたものだということも、彼がその『家族』を好意的に見れない理由でもある。
「ガキじゃない。私、22歳。……たぶん」
「……そういうことを言ってんじゃねえ」
苛立ちを言に潜ませながらも、ナクラはそれだけを返す。
たぶん、という言葉に彼女の置かれていた境遇の一端を感じながらも、それに触れたくなかった。
438ナクラ×サギリ:2006/05/13(土) 00:27:34 ID:D/YQEIvA
何も考えずに目の前の娘を憎めるのならば、どんなに楽だろうか。
彼女が、今彼に向けているものと同じ笑顔を貼りつけたまま、彼の父を殺したことは紛れもない事実であるというのに。
片時も忘れたことがないほど憎んでいたはずの、その笑顔の真相を知ってしまった今。
ただ、彼は迷っていた。迷いという一言で表すことができないほど、彼の心情は複雑ではあったのだが。

「……なんだよ。ジロジロ見んな、気味わりぃ」
そこまで言って、ナクラはしまった、と息を飲む。しかしすぐにそれは舌打ちへと変わる。
「ごめんなさい」
「いや……」
彼を見つめる人形のような眼も、彼女がそうなりたくてなったわけではないということも知ってしまった。
蔑むようなことを言ってしまってから失言だったと気づき、またそれを気に懸けてしまう自分をナクラは嫌悪する。
「今、やろうと思えば私を殺せるのに、やらないのね」
サギリがぽつりと呟く。ナクラはその言葉に眉をひそめた。
「……あんだ? 殺されてえなら望み通りにしてやってもいいんだぜ?」
サギリは先ほどと同じように微笑を浮かべたまま、答えない。
いつもと変わらないはずのその態度が何故か癪に障って、ナクラは彼女に詰め寄った。
どん、と壁に手をつき、彼女を上から睨む。大柄なナクラの体に、サギリはほぼ隠れるような形になった。
普通の娘ならば腰を抜かして恐怖に震えるところだが、サギリはやはり変わらぬ笑顔のまま彼を見上げていた。
「……っ、少しは! 怖がってみせるとかできねえのかよ!」
「……ごめんなさい」
「謝るんじゃねえ!」
自分が滅茶苦茶なことを言っているということは痛いほどわかる。それだけナクラは混乱していた。
サギリにどうしてほしいのか、彼女にどうなってほしいのかもわからずに、ただ苛立ちだけが彼の中に募る。
その苛立ちの中に、無理矢理にでも彼女の笑顔を歪ませたいという、嗜虐的な思いが存在するのをナクラは否定できなかった。
――貼りついたままの悲しい仮面を奪ってしまえたなら、躊躇いなくこの女を殺すことができるだろうか。
それは敵に関する全てを忘れて、非情な復讐者に戻りたいという願い、ある意味では逃げであった。
439ナクラ×サギリ:2006/05/13(土) 00:28:08 ID:D/YQEIvA
気がつけば、サギリの唇を奪っていた。噛み付くようだったそれは、次第に深く、甘いものになっていく。
(俺は、何をやっている)
頭の片隅で、冷静な自分が叫ぶ。
辺りが月光に照らされる中、物陰で小柄な娘に覆い被さり食らいつく自分は、弁解のしようもない外道だ。
復讐などやめろと彼を諭した弟は、こんな兄をきっと蔑むだろう。
いや、とうに遅いか。復讐を誓い、手を暗殺者の血で染めてしまった以上、もう自分はまっとうには生きられないのだ。
(それとこれとは、別だろう――)
擬似とはいえ家族に愛され、その中でやっと少女として、幸せに生きはじめた彼女を穢す権利が自分にあるのか?
――しかし、だからといって。父を殺した女がのうのうと生きるのを、傍観するのか?

「くそおっ!」
思考の混乱は怒りに変わり、その感情のままにナクラはサギリの衣服を引き裂いた。
ぴったりとした服で隠れていた、豊かといえる乳房。それが露わになってなお、彼女は表情を変えない。
ただ口付けの合間に小さく息を漏らすだけで、抵抗もしない。
(なんで、何もしねえんだよ!)
それがさらに怒りを加速させ、愛撫を荒々しいものにした。
「……っ」
乳首を強く摘みあげてやると、口を噤んでいたサギリから小さく声が漏れる。
それを小気味よく感じ、舌先で弄んでやると、しているかも疑わしかった息が、少し荒くなる。
だが、それだけだ。
ナクラが今まで抱いてきた女のように、喘ぎよがることも。
または暴漢から辱めを受ける少女のように、泣き叫ぶこともなく。
サギリはただ、何時もよりいくらか頬と体を桃色に染めながら、普段どおりの笑顔を浮かべるだけだった。
(……本当に俺は、何をやってんだ)
しなやかな脚を開かせ、晒された秘所に指を這わせる。
そこは、反応の薄さからは考えられないほど濡れそぼっていた。少しだけ指を入れてみると、それを待っていたかのように絡みつく。
心と体が別に動いているのだ。笑顔しか浮かべることのできない普段と同じように。
「ん……」
サギリがまた、小さく声を漏らす。
中を掻き回してやったり、元の目的どおりナクラ自身を侵入させてやったりすれば、もう少し反応が見れたのかもしれない。
だが――どれだけ無理矢理に声を出させようとも、その笑顔は貼りついたまま剥がれることはないのだろう。
(馬鹿か、俺は……)
それを認識した瞬間、ナクラは頭と体に渦巻いていた熱が、急激に冷めていくのを感じた。
男を扇情的に誘うその体も、サギリ自身の顔立ちも、欲望を促すに十分すぎるはずだというのに。
は、とひとつ息をつき、ナクラは秘所から指を離すと、押さえ込んでいた体を開放した。
「服、破っちまったから……隠しとけ」
生憎上着などは着ていなかったため、せめてもと腕に巻いた布をサギリに押し付ける。
「……いいの?」
「……人形を抱いて喜ぶ趣味はねえからな」
苦々しげに彼が呟くと、サギリはごめんなさい、と3度目の謝罪をした。
「だから、何でも謝んな。今のは……俺が悪いんだよ。それくらいわかんねえのかよ」
憮然とした表情でナクラが言う。サギリは相変わらずそれに笑顔で返す。
何時もと変わらないはずのそれが、少し困ったような笑顔に見えたのは気のせいだろうか。
440ナクラ×サギリ:2006/05/13(土) 00:28:42 ID:D/YQEIvA
「……幽世の門ってのは……こういう教育もやんのか」
「子供のときから……すこしずつ、仕込まれる。私はあまり、得意じゃなかったけど」
そうだろうな、とナクラも納得する。
容貌には恵まれているとはいえ、反応の薄い女を好んで抱きたがる人間もいまい。特殊な性癖を持つものなら別だが。
ただ、体自体にはその手の才能があったのだろう、とは少し触れただけのナクラでもわかった。
「……ある意味幸せだったのかもな」
「……なにが?」
サギリが首を傾げる。ナクラはなんでもない、と話題を打ち切った。
(殺しのためなら体も使えってか。それをあの笑顔と一緒に、子供のころから。……ふざけてやがるぜ)
普通に考えれば、幸せでもあるまい。あの有様では、好きな男と愛し合うことも難しい。
そこまで考えて、ナクラは思考を停止させた。
(俺はなんで、こいつの将来なんぞ心配してるんだ)
本当にどうかしている、と彼は大きく溜息をついた。

しばらくして、サギリは無事な部分の着衣を整えると、静かに立ち上がった。
ナクラは何も言わず、また見送ることもせず下を向いている。
「……さっき、殺されたいのかってあなたは言ったけど……やっぱり私、まだ死ねない」
サギリの呟きに、ナクラは俯いていた顔をあげた。
「あなたの顔を見てると、いつも……あなたのために死んであげるべきなのか、と思ってしまう。
 ……でも、私が奪った命は、あなたのお父さんのものだけじゃないから。
 その償いだけのために、私の命をあげることは……まだ、できない」
「……へ、そうかよ。いいぜ、俺もてめえは最後にしようと思ってたとこだからな」
「……そう。じゃあ、ちょうどよかった」
なんでもないことのようにサギリは言う。それが少し、ナクラには歯痒かった。
「俺に殺されるまで……誰にも殺されんじゃねえぞ」
ナクラの言葉に、サギリは静かに頷いた。
441ナクラ×サギリ:2006/05/13(土) 00:29:13 ID:D/YQEIvA
それから、少しばかり時が経ち。
王子ファルーシュと、彼の元に集まった宿星たちの手で、ファレナ女王国は平穏のときを迎えた。
ゴドウィン家は滅び、そしてそれに付き従う幽世の門は『表向き』完全に姿を消したのだった。
役目を終えた宿星たちは、それぞれの在るべき場所へと帰り、あるいは旅立ってゆく。

オボロが彼の目的のために去り、探偵事務所は少し寂しくなった。
――賑やかな居候が夜にこっそり住み着いているが、それは別として。
オボロとナクラの目指すところが同じであるということに、サギリは不安と、なぜか安心を覚えていた。
2人両方が、柵を捨てて自由になれるからかもしれない。ナクラのそれは、彼女を殺すことで完遂を迎えるのかもしれないが。
「ねえ、サギリちゃん」
「……なあに?」
「ナクラちゃん、あなたは最後に殺す、って言ったんですって?」
「うん」
「……んだと。ナクラの野郎、そんなことを」
フヨウとサギリの会話を耳聡く聞いたシグレが、不機嫌な声で呟く。
「でもねえ。そんなことできるかしらねえ、ナクラちゃんが」
「どうかなあ……」
ふと、あの夜の日にナクラに襲われかけた記憶が蘇る。
あの時彼が躊躇しなかったとしたら、彼はサギリをどうしただろうか。
もしかすると、あの時自分は彼に殺されていたし、自分もそれを受け入れていたかもしれない、とサギリは思う。
しかし彼は躊躇し、それどころか謝ってくれた。辱めようとしたのだから当然といえばそうだが、それとは別に自分は彼の親の敵だ。
辱められるどころか、どんな殺され方をされても仕方がない立場だというのに。
「……ナクラちゃんって、本当は優しい子だと思うのよねえ」
「……私もそう思う」
そう呟くと、サギリは笑顔を浮かべた。
彼女の顔を見たシグレは小さく唸り、顔を引きつらせた。
「あらあら。サギリちゃんがナクラちゃんのために『本当に』笑ったからって、いじけちゃって」
「ち、ちげーよ……!」
シグレがさらに機嫌を悪くするのを見て、フヨウはおかしそうに笑った。
(私たちが罪を償い終えるときは、きっとこない。それだけ私たちは人を殺しすぎた。
 でも、あの人は私が全てを終えるのを待ってくれるだろうか。……待ってくれない、気がする)
サギリは一人考える。
ナクラのことだ、彼女のことなど待たずに、きっと彼なりに彼女を許してしまう。そんな気がした。

(生きよう。許されても、許されなくても。……私は、逃げない)
そう、静かにサギリは誓った。
442名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 00:31:38 ID:D/YQEIvA
フヨウさんの「ナクラちゃん」呼び@目安箱に驚愕。そりゃないだろw

幽世があっちの教育までやってたかなんて知ったことじゃありませんよ!
シグレとサギリがオボロに引き取られたのが8年前だから、暗殺してたの14歳までか……結構ギリギリだった罠。

次があったら、もうちょいエロい文書けるようにがんばりま。
443名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:08:13 ID:Vo1cMZbn
GJですよ。
ここまで心理描写が細かければ、エロが薄くても気にならない。
ナクラって、確かにこういう人っぽいな。

……ところで、最後のサギリの独白(?)が、ナクラちゃんの死亡フラグになってるように思えてしまった俺は歪んでますか?
444名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 01:24:12 ID:2tGHeCgg
ナクラっていい男だよな。
445名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 10:23:26 ID:iuo3M7K4
カズラーにモテモテだしな
446名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 17:30:01 ID:DsIkGedQ
ナクラは北斗の拳の世界からやってきたように見えた。あのビジュアル
447名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 18:29:12 ID:tciNDD/J
3〜5レスくらいの濡れ場メインなSSが書きたいんだが
なんかいいエロシチュをクレクレ。

1,2は若干キャラの記憶が曖昧、
3、4、ラプソ、5はたぶん誰と誰でも大丈夫。

今もらったら明日の夕方頃には投下できると思う。
448風と木の名無しさん:2006/05/13(土) 18:53:38 ID:gjZCOk0B
GJ!!
しかしナクラがサギリにあんなことしたのをもしシグレが知ったらと思うと、
ちとガクブルする
449名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 19:29:38 ID:3zrfVCDv
>>447
幼い頃偶然両親の濡れ場を目撃してしまい
後であれはなんだったの?と聞いたら
仲の良い男女がすることだよと教えられ
ならば自分も実践しよう、身近に居る女の子………そうだ!と思いつき
行為を倣おうとする
子供時代の王子とリオンなんてどうだろう
450お茶:2006/05/13(土) 20:29:44 ID:E0ZNtlWQ
まだまだ続く長文なのに不定期投下スマソ。
今回からエロに入れる…かな?
というわけで投下。』>409からの続き。
451ベルハヅ:2006/05/13(土) 20:31:20 ID:E0ZNtlWQ
「卑怯なのは、私の方だ」
この手にかけた者たちと同じように、冷えてゆく身体。ただ、それを受け入れながらも、
きっとベルクートなら暖めてくれるのだろうと思っていた。
その姿を見た時、声を聞いた時、そう思ったのだ。
結局、自分には逃げる場所がある。受け入れてくれる相手がいる。
弱い自分を見せれば、抱き締めてくれる相手が。
「お前は優しいから、私が弱さを見せれば慰めてくれるだろうと、思っていた…。
判っていたから…」
それを望んだのだ。一人になりたくないと言えば、傍に居てくれると思ったから。
そう言って、ハヅキは瞳を伏せた。私は、浅ましい女だ、と。

ベルクートは何も言わず、ただ微笑んだだけだった。
それだけでも、ハヅキには十分だった。




重ねた身体は、冷たかった。
ベルクートは、慈しむようにハヅキの華奢な身体に触れる。
その手が、唇が、触れるたびに、そこに熱が灯る。
「あ……っ」
首筋に口付けを落とされハヅキが吐息を漏らす。互いの指をじゃれあうように絡ませていた手が離れ
形のよい胸を包む。未だ熟れ切っていないそのふくらみは、身体の冷えも相俟ってか、
少しばかり張りが強かった。
優しく、暖めるように、ほぐすように揉みしだくと、ハヅキは切なげな声を漏らして、
唇を噛んだ。
「あまり強く噛むと、傷がついてしまいますよ」
言いながら空いた手で唇に触れ、緊張をほぐすように撫でる。
薄らと口元を緩めたのを確かめ、ベルクートは再び口付けた。
最初は触れるだけ。啄ばむような甘いキスを何度も繰り返す。
452ベルハヅ:2006/05/13(土) 20:33:39 ID:E0ZNtlWQ
ハヅキの頬が紅潮し、瞳が熱っぽく潤む。ゆっくりと、慣らすように。
怯えさせないように。次第に口付けを深めてゆく。きっとハヅキは何もかもが初めてだろう。
触れられるのも、きっと見られることすらも。
口付けた首筋も、触れた胸も、ひどく冷たかった。
ベルクートはその冷感に思わず眉を顰める。
こんなにも冷えてしまうまでずっと外にいたのだと思うと、
どうしてもっと早くに見つけることが出来なかったのかと、否、帰還したその時から、
目を離さずに傍らに置いておけばよかったと、後悔に似た感情が過る。

ハヅキが長いキスに少し息苦しい様子を見せた。
初めてなのだから息の継ぎ方もわからないのだろう。
ベルクートは最後にハヅキの桜色の唇をぺろり、と舐めて解放した。
銀糸がつい、と二人の口元を繋ぐ。ハヅキはそれを見て一際顔を赤くして、
恥らうように瞳を閉じた。
部屋の明かりは灯したままだった。ハヅキがそれを望んだからだ。
暗闇に紛れてしまうのが怖いと訴えたから。
そのためお互いの顔も、身体も、よく見えてしまう。
ハヅキが瞳を閉じる前に見たベルクートの瞳は、いつもの優しい、
まるで子供を見守るような温かいものではなく、今までに一度も見たことがない男の、
押し隠した欲情の灯った瞳。
その目で至るところを見られているのだと思うと、自ら望んだ事とはいえ、
ひどく恥ずかしかった。
同時に、強く、男であるベルクートを意識してしまう。今までは傍に居ても、
それを感じさせることがなかった。
女で言うところの母性のようなもの、父性と呼ぶべきか、それに似たものばかり感じていたのだ。
だが、今は違う。

「───ハヅキさん」
耳たぶを甘く噛んで刺激しながら耳元で囁く。
ハヅキの身体がふる、と小さく震えた。その声もまたいつもとは違う声。
低い、熱の篭った甘い声。それだけでハヅキは胸が締まるような感覚に囚われる。
直接与えられる刺激だけではなく、耳に滑り込むその声も、ハヅキの身体に、心に、熱を灯してゆく。
453ベルハヅ:2006/05/13(土) 20:35:03 ID:E0ZNtlWQ
「目を閉じないで…。それでは、灯かりをつけている意味がないですから」
瞼の裏に焼きついた記憶が、ハヅキの心をこれ以上傷付けることのないように。
囁きながら、首筋、肩口、鎖骨へと所有の印を落とす。
滑らかな肌を舌でなぞり、反応したそこへ口付けた。
その印はまるで、花の様に、ハヅキの白い肌に浮き上がる。
「ぁ…んっ…、ベルクート…」
胸に触れた手に、少しずつ力が篭る。淡く色付いた胸の頂きを、褐色の指がきゅ、と摘んだ。
「はあっ…!」
強い刺激に、ハヅキの身体が反る。ひときわ高い声が漏れ、自分でその声に驚いた。
自分のことなのに、こんな声が出るものなのかと。
男に抱かれる自分の姿など想像したこともなかった。
もともと興味の薄かったハヅキは、自らの手で触れることなどなかったし、
そんな気分になった事もないので、やはり自ら慰めたこともない。
本人ですらまだ触れていない身体。初めて聞く声。
戸惑うハヅキを優しく宥めながら、ベルクートは愛撫を続ける。
「あっ……!」
鎖骨から下へ。くすぐるように肌に触れる唇がすうっと下がる。
既に柔かく揉みほぐされた幼いふくらみに、舌が這う。背筋が震えた。
恐怖でも、羞恥でもない。
「ベルクート…!」
まるで泣き声のような呼び声に、ベルクートは顔を上げる。
瞳に涙を溜めて自分を見詰めるハヅキは、少し怯えているようだった。
震えているのは感じているからか、怯えているからか───。
454ベルハヅ:2006/05/13(土) 20:36:43 ID:E0ZNtlWQ
「…すみません。怖がらせてしまいましたね」
怯えさせないように慎重に、優しく触れているつもりだったが、
自分の触れたいという欲求のみで、急いてしまったかもしれない。
これ以上はと手を止めようとしたベルクートに、ハヅキは目を閉じて首をふるふると横に振った。
投げ出されていた手がベルクートの髪に触れる。細い指にベルクートの髪が絡んだ。
「違う……わ、私は…初めてで…」
自分で触れたこともないから、そう言った。ハヅキが初めてだという事は、その反応を見れば明らかだった。
自慰さえ知らないハヅキの身体は敏感で、強い刺激に慣れていない。
指で触れられただけであんなに強く感じてしまったのに、口付けられたら───
そう思うと、少しだけ怖かったのだ。

「つ…続けて…いい…。もし…私が、嫌がっても、続けて、いいから…」
これ以上ない、というほど赤い顔でハヅキは言った。ベルクートは逡巡したが、
ハヅキに急かされて、再びその胸に顔を埋めた。
それをハヅキが望むなら。自分の欲求ではなく、ハヅキが望むのだから。
そんな言い訳がましいことを考えながら、既に固く尖った、果実のような頂きに舌を絡めた。
「ふぁ…っ!」
指で触れた時よりも大きく、ハヅキの肢体が弾んだ。浮いた腰に腕を回して抱き寄せながら、
丹念に舐め、口に含む。空いた手はもう片方の胸を揉み、時折先端を転がすように指で弄ぶ。
それを、双方の乳房に交互に繰り返しながら、そこにも所有の証を残す。
455お茶:2006/05/13(土) 20:37:30 ID:E0ZNtlWQ
中途半端な所ですが今日はここまで。
なかなか終わらなくてゴメソ…。
456名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 20:44:44 ID:MQpffKhW
ベルクートとハヅキはストイックゆえのエロさがあるよな。
GJ
457名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 21:44:30 ID:tciNDD/J
>>449
なにそのエロ可愛いシチュエーションw
予想外な方向にツボなネタをありがd。さっそく書いてみるよ。
458449:2006/05/14(日) 19:56:13 ID:LPlH8UQv
>>447はまだかな
ワクワクテカテカ
459名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 19:57:44 ID:8KV2xA++
昔スレイ○ーズのだっけかな。ウツボカズラみたいなのの中に閉じ込められての陵辱とかあったなあと思い出す。触手物だったか。
460名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 20:07:58 ID:u8LvP4Jv
>>458

スマン
なんかまたエロパロじゃないのになりかけてたんで
ザクザク削りながら書き直してる真っ最中w

できあがるの明日くらいかなあ。

>>459
ラプソのカズラーはマジでエロいですよ。
「いやーっ!!とけてるーっ!!」だもんな。
極めつけはエマさん。
461名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 20:30:58 ID:7yCO2C9Z
ザ・過疎
462名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 21:47:27 ID:AbmTHZYH
二日前に投下があり、明日には出来上がるかもと言っている作者さんもいるのに
過疎とはこれいかに
463名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 23:19:58 ID:QoSLaK9b
だよな。週一で投下があるスレは過疎じゃない。
464名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 01:23:13 ID:wfrfwd6V
ワクワクテカテカ
465名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 16:29:56 ID:5M0a+OYY
あげまん
466名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 16:58:04 ID:ApBa/anN
初期案に倣って偽リオンに化けたフェイレンを知ってか知らずか王子が押し倒し
フェイレンも王子をロイだと勘違いして行為を受け入れる話を思いついたが
文章にする気力はない
467名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 17:29:22 ID:QRYEdhYP
466の案で思ったがフェイレンて王子とロイの区別ついてるんだろうかねぇ
最初のときはロイの居場所しってるから王子だと解ったようだが・・・
見逃してたらすまん
468名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 18:16:06 ID:paJOzBcv
惚れてる男の区別もつかないような鈍な子ではないと思うよ。フェイレン。
469名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 20:20:49 ID:PLDdjOY2
文まで書く気力はないのでシチュエーションのみ。

篭城ルートの後
王子のもとを訪れるフェイレン。茶色のカツラをかぶせ王子を泣きながら逆レイプ。
ロイを殺してしまった負い目からなすがままの王子。
リオンから王子を奪うことで悲しみを誤魔化そうとするものの暗い情念は静まらない。
快楽と憎悪の交じり合う中壊れていくフェイレン。
こんな妄想が浮かんだ。
470名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 21:23:06 ID:fEMU1bwR
惚れてる男の区別もつかないというのを、純と言っていいものかどうか。
471名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 21:25:53 ID:dWDkbQAr
>>470
○鈍
×純

フェイレンは見抜けると思うし、ロイのことで王子を責めたりもしないと思うからなあ
山賊兄妹は本当に強い。その後を見ると泣ける。
472名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 21:26:44 ID:JIG2pXjK
>>470
こらこら、「純」じゃなくて「鈍」だってw
似てるからしかたないけどさ。
473名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 21:28:18 ID:fEMU1bwR
俺が鈍だったか。
474名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 21:58:00 ID:Sm04vT3V
だれが上手いこと(ry
475名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 19:33:01 ID:j9us8C0A
あげてみる
476お茶:2006/05/18(木) 12:18:04 ID:IzA0geQ2
不定期連載ふたたび。まだまだ長いのにあまり来れないから終わらない…。
というわけで誰もいないのをいいことに、ちょっと多めに投下します。
477ベルハヅ:2006/05/18(木) 12:20:02 ID:IzA0geQ2
「あっ…!や、はぁあっ…ベルクート…!」
髪に絡めた指から力が抜け、再びベッドに投げ出される。
生まれて初めて味わう感覚。先程までのあやすような愛撫で感じたものとは違う。
強い、まるで痺れるような感覚。ゾクゾクと痺れのように背筋を伝うそれが、
快感であることを、ハヅキはそこで初めて知った。

既にハヅキの身体は熱を帯び、生気を感じなかった白い肌は仄かに赤く染まっていた。
先程までの、どこか現実離れした美しさではなく、生々しい色香を放つ、男を魅了する女の肢体。
これ以上は怯えるだろう。触れてはいけない──そう思いながらも、
胸を解放してその腕を脚へと滑らせる。
少女の瑞々しい腿を優しく撫で、脚を少しずつ開かせる。
「本当に嫌だと思ったら、言って下さい」
ハヅキが一瞬、身を強張らせたのを感じ、ベルクートはそう言った。
ハヅキ自身は、抵抗しても構わずに続けろとは言っていたが、ベルクートにはそのつもりはなかった。
ハヅキがこれ以上を拒むなら、続けるつもりはない。
心の内で、抗って欲しいと思う。反面、このまま抱きたいとも思う。
不安につけ込むような形で触れている今を、卑怯だと自分を謗りながら、
彼女が望んでくれたのだから、と、言い訳をする。
自分より一回り年下で、無垢で、穢れない純粋な少女。
その純潔は、自分などが奪ってよいものではない。
頭の中で、そう必死にブレーキをかけようとする。
478ベルハヅ:2006/05/18(木) 12:21:40 ID:IzA0geQ2
ハヅキは抗わず、けれどゆっくりと、その腕に応えるように脚を開く。
投げ出していた腕で顔を隠しながら。きっと固く瞳を閉ざしているに違いない。
だが、ハヅキにはもうそんな記憶が蘇るほどの余裕がなかった。
知識がないまま、身体だけが覚え、先を求める。
ハヅキ自身が既に抗うことなど出来ない程に、その快楽に溺れていた。
正確には、ハヅキの身体が、と、言うべきなのかもしれないが。

部屋の灯りがついたままだという事が頭から離れない。
まるでそこだけを照らされているような気持ちにさえなってしまう。
風呂に入る時でもなければ、自分でも触れない、
まして見ることなどない秘められた部分が晒されている。
羞恥を覚えるのと同時に、眩暈がした。
それが何故であるか頭で理解するのと殆ど同時に、ベルクートの指がそこに触れた。

「ああああっ…!」
びくっ、とハヅキの身体が大きく跳ね、強張る。達したのだろう。
ぴんと張っていた背中が崩れるようにベッドに落ちた。
ベルクートはハヅキを抱き締めると、触れるだけの優しいキスをしながら、
背中を撫でてやる。
ここでやめるべきだろう。これ以上はさせてはいけない。
触れただけで達してしまったハヅキに、この先の行為を強いることはしたくない。
もう十分だろう、このまま寝かしつけてしまえばいい。
ベルクートとて男だ。この歳になればそれなりに経験もある。
つまり、自分の欲求を吐き出す方法は心得ているという事だ。
ハヅキが寝入ったら適当に処理すればいいのだから。
479ベルハヅ:2006/05/18(木) 12:25:21 ID:IzA0geQ2
「もう休んでもいいんですよ。疲れたでしょう?」
耳元に囁く。眠ってくれたらいいと思いながら。
例えばハヅキがこの先を望んだとして、これ以上理性を保っていられるかどうかと聞かれれば、
その自信は全くないと言ってもいい。
いつまでも、ハヅキの望む理性ある男でいられる自信がないのだ。

「…まで…」
「ハヅキさん…?」
「最後、まで……」
抱いて欲しい。それは消え入りそうなほど小さな声だった。
「…ハヅキさん、それは…」
どういう事か、わかっているのか──そう問いかけようとして、飲み込んだ。
見上げてくるハヅキの瞳は、判らずに望んでいるものとは思えない、真剣な、
けれど何処か弱い、縋るような色を帯びていた。
達したことで冷静に戻ったのか。冷静に戻ったことで、また思い出してしまったのか。
どちらにせよ、拒んでしまえばきっと深く傷つくだろうという事だけは察して取れた。
それは同時に、最後の「言い訳」でもあった。拒んで傷付けるくらいなら、
望まれた通り抱いてしまえばいい。…それを許されたのだと。


「私は、きっとあなたが思ってるような男じゃありませんよ」
そんな立派な男じゃない。許されたなら、きっと思うがままにこの身体を貪るだろう。
傷付けてしまうかもしれない。
まして、経験のないハヅキを追い詰めるような事をするかもしれない。
これ以上自分の欲望を抑える自信などないのだ。
それでも構わないんですか?と、強い口調で問い掛ける。
余裕がないのは自分の方だ──そう思いながら。
480ベルハヅ:2006/05/18(木) 12:26:19 ID:IzA0geQ2
「…お前が自分を、どう思っているのかは知らぬ。知らぬが───」
ハヅキはその言葉を、視線を受け止めながら、答えた。
「私自身も、お前が思っているような女では、ないと思う…」
顔を赤くして背けながら、ハヅキはベッドの傍に置かれていたランプに手を伸ばし、
火を消した。部屋に灯されていたランプは2つ。
ベッドから離れたテーブルに置かれた大きなランプと、ハヅキがたった今消した小さなランプ。
テーブルのランプは大きいためまだ部屋の中は薄明かりが灯ってはいるが、
その灯りはベッドまで完全に届かない。
まるでそこだけ別の空間のように薄暗くなる。
ハヅキはそっとベルクートの首に腕をまわしてすがりつき、二度目の自分からのキスをした。
「…これ以上、言わせるな…」
言い訳をしていたのは、自分だけではなかったのかもしれない.
──いや、なかったのだろう。ベルクートは言葉ではなく、抱擁でその答えを示した。
それを望むのなら、と。
481お茶:2006/05/18(木) 12:27:01 ID:IzA0geQ2
というわけでここまでです。いつもいつも長文かつ駄文でスマソ…。
もうちょっとで終わりますんで勘弁して下さいorz
482名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 16:42:27 ID:xGaAmh6l
GGGGGGGGGGGJJJJJJJJJJJJJJJJ!!!!!!
続きお待ちしてます
483名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 17:47:07 ID:A/U84PyR
ちょwww激しく続き希望www
しかしここでガマンできるのもベルクートならではだよなあ
484名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 21:13:20 ID:gWWBobaU
リアルに浮んでくるよー。ハヅキカワユス。GJです。
マリノ?誰だっけ?

485名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 22:13:07 ID:ousP1srK
>お茶氏
毎度ウマーなSSをありがとうございます!
二人のもどかしさがたまりません。

>484
そういうこと言うなよ('A`)
黙って萌えようや
486名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 11:26:05 ID:Wuh9YEec
マリノは前スレあたりの、「魅惑の紋章レベル4発動!!」が神。
487名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 12:19:46 ID:JG1VIQ8P
ベルマリはマリノが相当長いこと頑張らないと、
気付いてさえもらえなさそうで大変だな。
ベルクートって罪な男だ
488名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 13:37:13 ID:mno41NyV
女に興味ないんじゃないかと思うときがある。
489名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 20:15:38 ID:daQ5DbJr
いや、その理屈は正しい
490名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 22:25:29 ID:vhzwKFgK
19歳と27歳だっけ?
せめてもうちょっと年が近かったらなあ。
491名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 22:28:06 ID:8lMiikKE
ハヅキは17歳だぞ
492名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 22:30:55 ID:8lMiikKE
ああ、マリノ19歳っていうけれど、ハヅキは17歳だぞ、という意味。
やりようによっては、幾らでもベルマリはいける…筈。

でも、本編中じゃ無理だろうなあ。後日設定がやりやすいか。
493名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 23:56:23 ID:KOeycnLh
実はフリックとニナくらい離れているベルハヅ
そう考えると大人と子供
494名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 00:45:30 ID:bTmujyfN
女の子の方が男を追い掛け回している、という構図だけは同じなんだなw
495名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 01:51:06 ID:t/w609G8
馬鹿王子シリーズの続きを正座して待ってる俺
496名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 02:25:11 ID:SS/te0mL
大人な恋愛って言うと
アナベルとビクトールとか
テオとソニアとか思い浮かばないのは何でだろう。
497名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 08:42:10 ID:AlHDhF8w
アナベルとビクトールは、恋愛に近い美しき友情って感じがする
「お前は偉くなりすぎちまった」とか
「私の背がもう少し低かったら」とか

あの時の会話は泣けるよなぁ
498名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 16:48:13 ID:pE1lzDGH
大人というと大統領アイリーンが即座に思い浮かぶ。
499名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 17:50:23 ID:DItXCzOO
アーイアイアイニージュー マイビュリフォサーンッ
500名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 21:14:56 ID:GIgzCGrl
さっそうと500げっと
5019_505:2006/05/21(日) 00:32:32 ID:2LGHdWAF
恐らく誰も覚えていないかと思われますが、
全スレで投下したシグレ×サギリ(悪夢ネタ)の続きを垂れ流したいと思います。

相変わらず、二人は血が繋がってない設定。今回もエロパートには至りません。
ひどく冗長な内容ですので、肌に合わないと感じた方はスルーでよろ(ry
502シグレ×サギリ(エロパート無し):2006/05/21(日) 00:34:14 ID:2LGHdWAF



酒が入ってわずかに火照った身体を冷やすため、シグレは外へ出た。
つぶれるほどに飲むような真似はしていなかったが、
セラス湖から吹いてくる冷たい夜気は肌に心地良い。
いい気分になった彼は特に考えもなく、のんびりと船着き場の方まで足を伸ばした。
その場所は、本体である塔の部分から湖へと差し伸べられる格好になっていて、
実際に降りてみるとますます涼しい風が流れている。
そこで男は何をするでもなく、どこまでも広がる景観を眺めていた。
澄んだ水面には雲一つない星空が映っていて、ときおり吹く風がさざ波を立てているばかり。
夜の本拠地はひっそりとしていて、すでに大半の人間が眠りについていることが伺えた。
見張りの兵士も少なく、そのことがいっそう今晩の空気を穏やかなものにしている。

この夜、ぼさぼさ頭の青年は遅くまで酒をたしなんでいた。
眠りたがりの彼にしては非常に珍しいことではある。
いつもは誰かしら人がいて騒がしい酒場が、今日に限っては無人だった。
青年はちょうどその折に寄ったのだが、そのままなんとなく落ち着いてしまったのだ。
何度か手酌を繰り返していると、ここ連日の戦いの疲れが癒されるようで、
なかなか悪くない気分がした。
この城にいる他の連中も、大仕事を終えて少し気がゆるんでいるのだろう。

ファルーシュ王子の義勇軍はゴドウィン卿の軍勢を破り、女王と王都を取り戻すことに成功した。
これにより、ファレナ全土を二分する内戦状態は王子側の勝利で終わりを告げた。
現在では、王都を敵軍の抑圧から解放した彼らのうち、主立った者がかの地に留まっている。
軍の中心となる者が拠点を移し、それに伴って多くの兵士が出払っているいま、
このセラス湖の本拠地には待機を命じられた少数の人間が戻ってきているのみであった。
シグレも、そんな中の一人だ。

悲願を達成した彼らだったが、事が全て終わったという訳ではない。
絶大なる力を秘めた、太陽の紋章―――それを奪ったゴドウィン卿は逃亡を続けたまま、
依然として居所が掴めなかったからだ。
彼を見つけだし太陽の紋章をあるべきところへ戻すまでは、
ファレナで起こった一連の動乱は真の結末を迎えることはない。
現在、義勇軍は全力を挙げてゴドウィン卿の所在を探っているが、
それさえ明らかになったならば、すぐにでも出撃があるのだろう。
おそらくはまた激しい戦いになるはずだ。
けれどもそれで今度こそ最後になるであろうことは、
この義勇軍にいる者は誰しも感じ取っているようだった。
そしていまは来るべき時のために、わずかでも休息を取る期間だと考えられていた。
503シグレ×サギリ(エロパート無し):2006/05/21(日) 00:34:58 ID:2LGHdWAF

……まあ、面倒くせえ事はもうすぐ終わりだ。
揺れる水面を見ながら、シグレは心の中で呟く。
戦いの終わりを前に、彼は幾分か気が休まる思いだった。
無愛想で表情の読めない青年であるが、いくさが好きかと問われれば即座に違うと答えるだろう。
彼は幼い頃、暗殺組織に身を置いていたという過去を持つ。
そこでは来る日も人を傷付ける術を教え込まれ、組織のための殺しを強要されていた。
苛酷な日々は彼の心に暗い影を落とし、いまだに癒えきらぬ部分さえあるほどである。
しかし平和な生活を与えられたいまでは、シグレは人と人とが殺し合う虚しさを
骨身に染みて理解していた。
それはきっと、普通の人生を送ってきた者と同じくらいに。
過去と向き合うためとはいえ、この義勇軍に身を寄せている以上
自分が再び誰かを害しているということは、分かっていた。そういう覚悟もしている。
けれど多くの犠牲者を出したこのいくさが終わることは、単純に嬉しいと思えた。
人死には、少なければ少ないほどいいに決まっているのだ。
それに―――サギリのこともある。

組織の束縛を逃れてからというもの、ずっと隣にいた近しい存在。
彼女もまた、暗殺組織のために幼い日々を暗闇に塗りつぶされた人間である。
サギリは普通の生活をはじめて八年経ったいまでも、
作り笑い以外の表情を浮かべることが出来ないでいた。
組織によって、標的の油断を誘うための笑顔を徹底的に訓練された末のことだ。
そして彼女も自分と同じように、多くの人を殺めるという罪を背負わされてしまった。
過去の苦い経験から流血を恐れ、戦うことを拒んでいた彼女も、
自分達を苦しめた組織がこのいくさでまたも暗躍しているのを知り、義勇軍に身を投じていた。
かつての彼女と同じ存在や命を奪われる人々を、少しでも減らしたいがための参加である。
それは、昔の過ちに正面から向き合おうという彼女の決意の現れでもある。

『わかった…私も、やる。もう……逃げない』
サギリを父の仇として憎んでいる者の前で、彼女が誓いを立てたとき。
微かに震えていた声音を、シグレはこの先忘れることはないだろうと思った。
罪と、覚悟と。名状しがたい感情を抱えたまま、今でもサギリはここにいる。
その固い意志を前に、余人が口を挟む余地はない。
誰よりサギリの近くにいたシグレであっても、彼女の心からの思いに対して
水を差すようなことは出来なかった。
人の、いちばん奥底にある問題に決着をつけられるのは、結局は当人だけだと知っているから。
自分達は同じ境遇で、ずっと隣にいた存在。
それでも、サギリが納得する生き方は、きっと彼女自身にしか見つけられない。
だから今は、彼女の気が済むまで。シグレは近い場所で、その軌跡を見届けようと考えていた。
サギリにとって、本当は何が最善かは分からない。けれど自分は変わらず、隣にありつづける。
それこそが過去と対峙する彼女の側にいるうえで、青年がかたく心に決めていたことであった。
そういった“本音”は―――気恥ずかしくて、誰に言えそうにもなかったが。

ただ、どんなに心積もりをしていても、気がかりはある。
戦いのさなか、彼女の瞳によぎる寂しい光のことだ。
もともとサギリは気の優しい女であり、戦いを極端に嫌っている。
そんな彼女は大規模な戦闘があるたびに、どこか疲れたような空気を纏わせていた。
おそらくはこの軍にいる間中、過去に向き合わなければならない責任と、
人を傷付けたくないという心情が、せめぎ合っていたのだろう。
感情の板挟みになるサギリの姿を間近で見ていると、
彼女を早く解放してやりたい気持ちになったのも確かであった。
サギリに決意があることは先に述べたとおりに、重々承知の上。
かといって、彼女の痛々しい様を見ていて平気かと言われれば、当然そうではなく―――
至極簡単でつまらない結論ではあるが、サギリのためにもこの争いが
早く終わることが重要だと考えたのだ。
戦いを続けなくてもいいならば、さしあたって彼女が心をすり減らすことはなくなるだろう。
……もう、あいつが痛い目を見るのは十分だ。
数々の憂いを抱えながらも、懸命に立ち上がろうとしているサギリ。
シグレは、そんな彼女に新たな傷を負わせたくはなかったのである。
504シグレ×サギリ(エロパート無し):2006/05/21(日) 00:35:48 ID:2LGHdWAF

「……どうも、柄じゃねえなあ」
とりとめのない思考がいつしか深刻になっていたのに気付いて、男はほんのわずかに口の端を上げた。
こんな風に真面目くさって考えこむなどということは、全くもって性に合わない。

サギリのことなら、もうそれほど心配は要らないはずだ。
王都奪還戦を終え共に本拠地に戻ってきたとき、
彼女は大仕事での緊張を解き、かなり心を休めていた風だった。
自分が必要以上に気に揉まなくても、特におかしな点はないように見える。
あとは、ファルーシュ王子が残している最後の後始末に手を貸したら、
ここでの自分達の役目は終わるのだろう。
義勇軍も解散して、また探偵船での日常が戻ってくる。
そうしたら、サギリも過去をもう少し吹っ切ることが出来るような気がしていた。
いくさの事でたびたび悩んでいたサギリだったが、義勇軍での生活の全てが
彼女にとってマイナスに働いたという訳ではない。
むしろ同年代の娘が仲間に数多くいるこの場所で暮らしたことは、
彼女にいい影響をもたらしていたように思う。
普通の毎日を繰り返して、そうしたら……いずれは、凍りついたサギリの表情にも
感情の起伏が表れるのではないかと、シグレは期待している。
いや―――待ち望んでいる。
だからその時のためにも、しっかりと生き残らなくてはならない。
自分も、彼女も。最後の戦いだけではなく、その先も。
まずは生きていなければ、どんな将来に繋がる道もないのだから。

ふと、愛用している煙管が欲しくなり、腰まわりに手を伸ばした。
しかしそこにいつもの感触はなく、どうやら寝泊まりしている部屋に
置いてきたらしいことに思い至る。シグレは少々不満だったが、諦めることにした。
どのみち眠気を感じ始めている。そろそろ戻って休むとするか。
寝付きのいい自分ならば、多少の欲求はものともせずに眠れるだろう。
青年は誰にはばかることなくあくびをし、来た道を戻るためその場を振り返った。
すると、視界の奥の方―――塔の露台の部分から、白い人影がこちらを見ていることに気付く。
それだけならまだ気に留めなかっただろうが、その人物はシグレが振り向いてから、
一拍置いて駆け出しはじめていた。
「……あん?」
こんな夜中に何をやっているのだろうか。
夜目が利くシグレであったが、距離があるために相手の顔までは判別がつかない。
けれども人影はただひたすらに自分に向かって走ってきており、それがさらに彼を訝しませていた。
やがてその人影が、湖水に建てられた石の廊下まで降りてきたころ、
相手の顔が分かったシグレは、ますます目を丸くすることとなった。
「サギリ。お前、どうしたんだ?」
脇目も振らずに青年の元へとやってきたのは、今しがた彼が思いを巡らせていた同僚の女性だった。
組織での特殊な訓練のためか、結構な距離を走ってきたにも関わらず、息にはあまり乱れがない。
彼女が自分を見上てくる瞳は、今は特にぼんやりとしていて、
容易に考えを掴むことが出来なかった。
「あー、だから、何だって……」
一体何ごとかと思い近くに寄ってみる。
と、シグレは彼女の着ている服に気付いた。
なるほど、遠くからでも彼女の姿だと分からなかったのは、このせいもあるらしい。
サギリが身につけているのは普段の探偵助手としての服装でなく、白い薄手の寝間着だったのだ。
丈の短い衣服の上下からは、ほっそりとした四肢がむき出しになっている。
それをまじまじと見たあとで、青年はあからさまな溜息を落とした。
「……お前なあ。そんな格好でうろうろしてんじゃねえよ」
シグレの口から出たのは、怒っているというよりも、呆れたような響きの声。
彼は元より愛想のいい青年ではないが、低められた口調でさらにすげない印象になる。
505シグレ×サギリ(エロパート無し):2006/05/21(日) 00:36:33 ID:2LGHdWAF

サギリという女には、年頃の割に鈍いというか、無防備な一面があった。
それを今のごとく目の当たりにしてしまうと、いい加減で通っているシグレも、
柄にもなく渋い顔にならざるを得ない。
大体にして、危なっかしいのだ。
この城には年がら年中・誰彼構わず求婚するような、度が過ぎた女好きがいる。
他の連中ならまだともかく、“アレ”と遭遇することを考えると、
サギリが寝間着姿で城を歩き回るのはとてつもなく好ましくないことに思えた。
それに―――何より自分が、目のやり場に困る。
サギリの、細くてまっすぐな髪はなめらかな首筋を隠し、彼女の呼吸に合わせて微かに揺れていた。
星明かりのもとで青白く発光しているかのような、華奢な手足。
さらに、大人しい顔立ちに反してふくらんだ胸が、寝間着を押し上げているのがちらついて―――
……………おっと、やべー。
いつの間にか、視線がその部分に吸い寄せられそうになり、シグレは慌てて彼女から目を逸らした。
こんな風に間近で見ていると、普段は努めて抑えている感情を、掻き立てられてしまいそうだ。
こいつは俺の頭ん中なんか、分かっちゃいねえんだろうが……
見上げる瞳は余りにも澄んでいたので、シグレはほんの少しだけ彼女が憎たらしい気分になった。

それにしても、本当に様子がおかしい。
今の家族と暮らすようになってから、規則正しい生活を送っているサギリは、
こんな風に夜中にふらふらと出歩く癖など無かった。
おまけに、自分を見つけて急いで走ってきたわりには、彼女はそれから一言も話そうとしない。
ただじいっと、シグレの顔を見つめているのみである。
「まさか、寝ぼけてんのか?」
怪訝に思った彼は、女の顔前で手を動かしてみるが、やはり反応はない。
長年の付き合いがあるシグレとしても、こうも妙な状態になっているサギリに対して
どう扱えばいいか戸惑ってしまう。
微笑んでいるばかりの、考えが読めない女―――他人からはそう見えていたとしても、
自分はおおむね彼女の感情を読むことが出来る。多少の自負があったのに。
茶色の頭をぼりぼりと掻いてみる。
しかし、それでこの状況がどういうことであるのか、答えが浮かぶはずもなく。
……なんか……考えるの、面倒くさくなってきたな。連れて帰るか。
非常に彼らしい結論に達したのは、間もなくのことであった。

しかし―――このままの状態の彼女の手を引いて部屋に戻るのは、何となく居心地が悪い。
せめてサギリの、この妙に刺激的な服装だけはどうにかしなくては。
そう思ったシグレはとりあえず自分が着ていた羽織を脱ぎ、女に手渡そうとした。
ところがぼんやりしているサギリは彼の意図には気付かない。
そのため青年はまたしても大きな溜息をつき、彼女の両肩に羽織を引っかけたのだった。
彼はさほど大柄な体格ではなかったが、男物の上着はさすがにサギリの体には合わない。
特に肩のラインは目立ってずれていて、少し不格好な姿になってしまう。
けれども露出した肌は大部分を覆うことが出来たので、シグレはそれで良しとした。
さしあたって一番の問題は……夜中に二人で手を繋いでいるという現場を、
誰かに見とがめられやしないかだ。
寝ぼけた同僚を部屋に連れて帰る。
それ自体には色気の欠片もない行為である。シグレとて、他意がある訳でもない。
しかし、こんなところを他人に目撃されたらと思うと、それこそ死にそうなくらい恥ずかしい。
その事態だけは猛烈に遠慮したい。
よって、出来るだけ人気のない道を通って帰ることを心に決める。
青年はいまだぼうっと佇んだままのサギリに、いつもの通り適当な言葉を掛けた。
「あー、サギリ。寝ててもいいけど、ちゃんと歩けよ」
帰るぜ、と。男は何気なく、彼女の片手を引いて歩き出す。
サギリの手はやけにひんやりとしていたが、シグレはさして気には留めなかった。
その時、背中ごしの彼女の様子も当然目にすることもなく―――。
506シグレ×サギリ(エロパート無し):2006/05/21(日) 00:37:33 ID:2LGHdWAF

「……………シグレ」
弱々しく、かすかな。
ようやく女の唇からこぼれた声は、己の名前。
それを頭で認識するより早く―――シグレは右腕に、何かが軽くぶつかるような感触を得た。
「えっ」
はっとしてその方向に首を動かしてみると、
サギリが自分の腕にしがみついているところが、目に飛び込んでくる。
「うおっ……!お、おい、何だ?」
シグレは思わず、阿呆のように上擦った声を上げてしまう。
女の動きは静かだったが、青年にはあまりに思いがけないものだった。
ゆえに彼は、自分が酔いのあまりあやしい幻覚でも見ていることを、疑ったくらいである。
しかしサギリと触れ合う感覚は、これをまさしく現実だと説明している。
抱きしめられた腕からは彼女の体温が伝わり、それがますます男をうろたえさせた。
冷たい。
先ほど手を取ったときはさして気にならなかったが、
こうして身を寄せ合っていると、改めてその異様さを実感させられる。
芯まで冷え切ったサギリの体は、シグレの羽織の下で小刻みに震えていた。
「……よ…った」
「あ?」
再び女の口に上ったのは、やはり消え入るような声音。
こんなに近くにいてさえ、上手く聞き取ることが出来ないほどの。
より注意深く耳を傾けると、サギリがわななき混じりに囁いているのが分かった。
「よかった…シグレ……ちゃんと、生きてる」
「サギリ、お前―――」
彼女の言葉が届いたとき、男は唐突に理解した。
サギリのこの体の震えが、どこから来ているものなのかを。
寝間着姿で自分の元へと駆けてきた、その理由は。

女は青年の腕に顔を押しつけている。
覗き込んでみたなら、おそらくそこには普段と変わらない微笑みがあるのだろう。
けれど彼女の心の内側の表情は、今のシグレには簡単に想像できた。
泣いているのだ、と。

右腕の戒めをそっとほどいて、サギリに向き直る。
「……あ…」
彼女が息を漏らした。その吐息には、落胆の色が隠せない。
わずかばかり腕に寄りかかっていた女の体は重心を失い、心許なくふらつく。
かろうじて姿勢を整えようとするサギリの姿。
だがシグレは彼女が顔を上げるよりも早く、その両肩を掴んでいた。
全身があらかじめ持っている考えを離れて、自然に動く。
よろめく細い体を引き寄せ、腕の中にすっぽりと収めてしまう。
彼女のわななきがいっそう強くなったけれども、一向に構わなかった。
ただ、苦しくない程度にやんわりと抱きしめる。
触れ合った場所から、サギリの冷えきった体温が伝わる。それに伴い、奪われる肌の熱。
しかし逆に、胸の奥からは温かな思いが次々と染み出すのを感じていた。
「……どんな夢、見たんだよ」
尋ねる男の声は、この夜で最も穏やかなものになった。

彼女は涙を流せない。
感情を、涙に変えて流すことは出来ない。
だから悲しみは、言葉に託して。


そして彼女は訥々と、辛い夢の内容を語りはじめる。
気が付けば、先程まで吹いていた風はほとんど止んでいた。
それでもシグレはサギリから身を離そうとはしない。
震えが収まるまでのしばらくの間、彼女を包むようにして抱いていたのだった。
[続]
5079_505:2006/05/21(日) 00:38:27 ID:2LGHdWAF
今回はこの辺りで。あと1〜2回程度の投下分で完結させようと思ってます。

キャラガイドで血縁関係が判明するかもしれないのが正直ガクブルですが、
そのときはこの話はパラレルという形で続けさせて頂きたい……です
508名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 00:51:30 ID:JfU5xkrS
羨ましい…こう言う書式で書けない自分が歯痒いです(鬱)
パラレル、とても良いですよ。
509名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 01:58:54 ID:wRBDim4y
期待あげ〜
510名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 02:16:10 ID:DuFSwGz/
考え中なのですが。
シーナのネタで行こうかとも思ったが小説版の異常なかっこよさがはなれない。
511名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 07:59:56 ID:6BnoR0ja
信じて待ってて良かった・・・シグレ×サギリ。
続き読めてうれしいです。
次回も期待。
512アレニア恋物語(15) ◆IGA.li4jPs :2006/05/23(火) 23:23:28 ID:FF6LwBJ0
>>253-257>>322-324>>339>>377-381
第四部の投稿です。
これは百合なのか?書いてて悩みます(汗)

詰所に戻るとレレイ殿が言った通り食事が準備されていた。
私の体調を考慮してか主食は白粥だった。恐らくメルセス卿が言ったのだろう…今はその配慮に感謝したい。
湯気の立った器に蓮華を差し込む。
粥は米粒の一つ一つがしっかりと立ち尚且つキラキラと光っており、野戦での食事にしては豪華だ。
私が知っている限り、野戦でここまでしっかりとした米を食すのは滅多にない。良くて雑穀辺りが妥当だ。
蓮華に掬った粥を口に運ぶ。
「……美味い」
ほんのりと甘みがある中にも塩加減が絶妙に混ざっている。米粒もしっかり立っており噛んで味わう事も出来た。
粥の水加減も完璧に近い。一般に病人食として重宝されている粥だが、ここまで美味いと普段の食事に出されても文句の付け様がない。
これに一品が付けばそれで一日過ごせるだろう。私はあっと言う間に平らげてしまった。
「あの…お味の方はいかがでしょうか?」
「素晴らしい…粥がここまで美味かったとは……太陽宮の中では毎日豪華な食事ばかりを食していたが、正直味わって食べる余裕など微塵も…。
こうして質素ながら味わい深い食事をゆっくり食せるのも幸せな事だ」
「良かった…まだまだありますので宜しければもう一杯いかがです?」
「そうか…是非頂こう」
レレイ殿に器を渡すと彼女は粥を装ってくれた。その横顔はとても嬉しそうに見えた。
一方、ミアキス殿は私の横で握り飯を頬張っていた。病気一つした事がないと言う事もあってか食欲は旺盛だ。
更にその横で私達が食事する様をゼラセ殿が見ている。
「レツオウさんの作ってくれるオニギリはいつ食べても美味しいですねぇ。アレニア殿もホント良い時に来ましたよぉー」
「いや……偶然に過ぎない」
「またまた謙遜しちゃってぇ…でも、改めてホント良かったです。アレニア殿とまた一緒に居る事ができて…」
「ミアキス殿…」
513アレニア恋物語(16) ◆IGA.li4jPs :2006/05/23(火) 23:24:46 ID:FF6LwBJ0
その声は少し沈んでいた。
改めてミアキス殿は私の事を心配していてくれたのだと痛感した。
一時とは言え敵味方に分かれて戦ったのは事実だ…それなのにここまで思いやってくれていたとは感謝する前に何だか申し訳なく思う。
「…何だか湿っぽくなっちゃいましたねぇ……やっぱり食事は楽しい雰囲気じゃないとねぇーあ、お粥が運ばれてきましたよぉ」
彼女はレレイ殿が運んで来てくれた粥の器を私よりも先に受け取る。蓮華で粥を掬いフーフーと湯気を冷ましている。
(まさか…)
「アレニア殿、アーン」
「……………」
…予測したのがやはり現実の物になった。
ミアキス殿はこれをしたくてわざと握り飯しか食さなかったのだろう。手の込んだ料理を食べていてはこれが出来ない。
恥ずかしい反面、その気持ちが少し嬉しかったが人が居る前でこれは流石に体裁が悪い…。
しかし、彼女には一切関係ない。ひたすらに我が道を行くまでの事だ。
「どうしたんですかぁ?ちゃんと冷ましましたから大丈夫ですよぉ?」
目の前に差し出された蓮華をじっと見つめる。
(食べるべきか…食べざるべきか…)
妙な葛藤に襲われる。普段から慣れていない事をするのはこんなにも恥ずかしい物なのだろうか。
しかしここで断るのも彼女に悪い気がする…ついミアキス殿から視線を外す。ゼラセ殿と視線が合う。
(何をしているのです、早く頂きなさい)
(そう言われても…この場では流石に…)
(私的な感情は抜きになさい。早く事を済まさないと彼女はいつまでも貴女に喰い付きますよ)
(む…)
言葉を交わさずとも大方の検討は付いた。
ゼラセ殿もミアキス殿の粘っこさは知っているのだろう。
確かにこのままではラチが開かない。それに、貴重な食糧を使用してまで作ってくれた粥が冷めてしまうのも忍びない。
514アレニア恋物語(17) ◆IGA.li4jPs :2006/05/23(火) 23:25:43 ID:FF6LwBJ0
はむ、

意を決してミアキス殿が差し出した蓮華に口を付けた。
時間が経ったせいかすっかり粥は冷め切っていた。しかし、それでも米粒は立っていたのには内心驚いた。
「お味の方はどうですかぁ?」
「……美味い…」
「ウフフ…そうですよねぇ」
私が粥を食べた事が余程嬉しかったのだろう。ミアキス殿はいつも以上に嬉しさを体現した。
その横でゼラセ殿が軽く苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべていた。
「しかし、アレニア殿が絶賛するお粥ってどんな味がするんでしょうねぇ?
一口頂きまーす………んーアレニア殿が絶賛する気持ちが分かりますぅ。このお粥を食べたら風邪なんてどっか飛んで行きそうですねぇ!」
ミアキス殿は一人で嬉しそうにしている。その光景は何だか微笑ましく感じられた。
彼女は純粋に物事に感動できる。それがとても羨ましく思えた。
私は感情表現をするのが苦手で、感情の起伏の小ささがいつも付きまとった。
無理に笑顔を作ろうとすると顔が強張る。その笑顔を作った後は決まって酷く疲れを感じてしまった。
疲れと言うよりかは「私は何をしているのか…」と言った虚しさを感じると言った方が的確かもしれない。
故に、感情を無理にでも押し殺して職務を遂行したので心に余裕を作れなくなった。
私と性格が正反対のカイル殿には随分と辛く当たってしまった…彼は彼なりに私の事を思いやってくれていたのだろう。
しかし、あの頃は酷い嫌悪感に襲われて仕方がなかった。
「…何だか悪いな」
「ほぇ?何ですかぁ?」
どうやら独り言がミアキス殿の耳に入ってしまった様だ。覗き込む彼女の顔を見て私は慌てて否定をする。
「そうですかぁ…じゃあ気を取り直してさっきの続きって事で、アーン」
今度はフーフーなしで蓮華を寄せてきた。今度は何も思わずに素直に口を付ける。
そんな私が食べる様を見て彼女はニコニコしている。私が食事をする姿がそれ程嬉しいのだろうか?
515アレニア恋物語(18) ◆IGA.li4jPs :2006/05/23(火) 23:27:04 ID:FF6LwBJ0
「やはりこの粥は美味いな…体に優しい」
「そう言って頂けて光栄です。この事をルクレティア様がお聞きになられたらさぞ喜ばれる事と思いますよ」
「こんな私にここまでしてくれるメルセス卿には本当に迷惑をかけっ放しだ……この恩は必ず返したい」
「そうですね。でも、その前にちゃんと元気になりましょうねぇ」
「…そうだな」
ミアキス殿の問いに私は頷く。レレイ殿もそれを見て安堵の表情を浮かべる。
彼女達とは歳が近いせいもあるのだろうか、見えない何かで結ばれている感すらこの時思えた。
(食事がここまで楽しい物だったとは…今まで何故気付かなかったのだろうか)
太陽宮では食事の時間ですら殺伐とした雰囲気に包まれていた。
誰もが皆、食事を味わって食すと言った今の感じとは程遠い物だった。
時間に追われ任務に追われる…豪華な食事がまるで炊き出しの様に見えた。私もその中に居たのは言うまでもない。
こうしてゆっくりと食事をする事が出来たのは何年振りの事だろうか。忘れかけていた人の温もりが感じられた瞬間だった。
(これが……団欒と言う物か…久しぶりだな)
その後も、捕虜の扱いとはまるで程遠い位に和やかな食事の時間は過ぎて行った。
私の場合は、ずっとミアキス殿に粥を食べさせられる格好だったが彼女がとても嬉しそうだったので不満はなかった。
それをレレイ殿がとても羨ましそうに見つめていた。
ミアキス殿が「レレイちゃんもするぅ?」と言うとレレイ殿は顔を真っ赤にして怒った。彼女は私に似て職務に生真面目だ。
ミアキス殿も職務には一応真面目だが、端から見れば遊びながら職務をこなしている様に見られてしまいがちである。
彼女には「能ある鷹は爪を隠す」の言葉が似合うだろう。
「ありゃ、お粥が無くなっちゃいましたねぇ…まだ食べますぅ?」
「いや、これ位で止めておく…美味かった」
程よく食欲が満たされた所で私は食事を止めた。
これだけ美味い食事を久しぶりに堪能する事が出来た事は喜ばしいが、これ以上食しても今の私には少しキツい。
516アレニア恋物語(19) ◆IGA.li4jPs :2006/05/23(火) 23:27:50 ID:FF6LwBJ0
「アレニア様のお口に合ったみたいで私も安心しました。
もう少ししましたら護送の準備が整うと思われますので、それまではこちらでお休み下さい」
「…お手数をお掛けする」
「いえ……失礼のない様、サンポート城まで護送させて頂きます」
そう言ってレレイ殿は敬礼した。私もそれに応えて敬礼する。
「そう言えば、王子達はこれからどうするんでしょうか…」
「あぁ…」
「太陽の紋章がこっちに帰ってこないと意味が無いですよねぇ。それをマルスカールのキンカ頭に持ち逃げされちゃいましたし…」
「その太陽の紋章をこれ以上悪用されない様に策はあるのですか?」
ゼラセ殿が痺れを切らした様に言う。相当太陽の紋章の行方が気になっているみたいだった。無理もないだろう。
「どうなんでしょう…ソルファレナの近くに紋章の気配は無いんですかぁ?」
「ありません。先程から神経を尖らせていますがこの近くには感じる事は出来ません」
「そうか……しかし、ファレナ全土は殿下の軍によって制圧されたから逃亡しようにも…」
「今は王子に任せましょう…ルクレティアさんも傍に居る事だし。
それに、アレニア殿は折角の休暇なんですから色々楽しまないと!サンポート城なら飽きる心配は無いですよぉ」
「休暇って…」
ミアキス殿は意地でも「休暇」と言う建前を通す気みたいだった。
私に対する扱いが「捕虜」と言われるのが余程気にいらないのだろうか。
しかし、どちらにしろ暫くの間は何もかも忘れてゆっくり出来る事に変わりはない。
(この際だ、暫くは休暇として過ごすか…)
この後の事で不安が無いと言えば嘘になるが、裏を返せば彼らの本拠地がどんな具合なのかをこの目で見られるのが楽しみだった。
しかし、それを体現するのは立場上不謹慎なので胸の内でそっと喜ぶ私が居た。
517 ◆IGA.li4jPs :2006/05/24(水) 00:58:36 ID:44d31pEq
第四部終了です。
アレニアさん、やっぱ好きやねん…。
518名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 01:02:23 ID:y21yUeFx
GJ!自分もアレニア好きです。
でもやる前からプロモでネタバレされてヤル気なくした…orz
何はともあれ幸せになってるアレニア見れて嬉しい。続きお待ちしてます。
519名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 07:55:50 ID:jWqIi/Cc
おおお、アレニア恋物語の続き待ってたよ。
日のよく入る明るい部屋で食卓を囲む四人が目に浮かぶようだ。
なんか粥食いたくなってきた。
GJ!
520名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 09:38:33 ID:DLdJewkP
かゆ・・・うま・・・
521名無しさん@ピンキー:2006/05/24(水) 20:45:31 ID:y21yUeFx
バイオハザードかよww
まあ、話的には似たような状態になるらしいからアリなんだろうけど…
522名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 00:05:03 ID:jWqIi/Cc
粥の米の立ち姿への執拗な拘りに感動した
523名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 03:10:54 ID:oitYjGYe
期待をしつつあげてみる
524ウィルボーン:2006/05/27(土) 21:01:47 ID:f2vRUHBA
カイル×サイアリーズ投下します。
電撃の攻略本の「カイルがサイアと共に裏切る予定」「ヒラムに似てる」
という製作者のコメントから捏造したifモノなので、ストーリーが変わって
います。パラレル系が苦手な方はスルー願います。
ちょっと長いのですが、お付き合いください。
525カイル×サイアリーズ1:2006/05/27(土) 21:02:30 ID:f2vRUHBA
太陽宮に陽が落ちるのは早い。厳しい統制の元に歓楽の類は一切禁止され、重苦しい闇が
朝日を待つのみである。サイアリーズは、灯りの消えた町並みをぼんやりと眺めていた。
太陽宮が落ちてまだ一年も経っていないのに、もう賑やかだった頃の町並みを思い出せない。
人の記憶など、なんて曖昧なものだろう。
背後に人の気配を感じ振り返ると、緊張した面持ちのアレニアが立っていた。
「サイアリーズさま、不測の事態が発生いたしました。謁見の間にお越しください」
大げさな物言いに口の端を引きつらせて笑い、サイアリーズはアレニアと共に謁見の間に
向かった。夜にも関わらず叩き起こされたリムスレーアが、不機嫌な顔で玉座に鎮座し、
ギゼルやザハークら女王騎士も軒並み勢ぞろいしていた。人々に囲まれるようにして床に
伏している人物を見て、サイアリーズは思わず声を上げた。
「カイル!」
「あはは。サイアリーズさま、お久しぶりです」
顔のあちこちを血で汚し、着ている服もボロボロであったが、間違いなくカイルだった。
「なんでアンタが…」
「兄上の使いであろう?」
リムスレーアが玉座から飛び降りて近づこうとする。すかさずギゼルが腕を取る。
「兄上の使いで、わらわを救い出しに来てくれたのであろう?」
ギゼルの腕の中でもがきながらも、リムスレーアは縋るようにカイルを見つめた。
「姫さま、ごめんなさい。オレ、サイアリーズさまのお力になるために来ました」
広間にどよめきが走る。ざわめきを制し、ギゼルが一歩近寄る。
「カイルどの、貴殿は王子の…いや、反乱軍の首魁に忠誠を誓ったのではないですか?」
「それは確かにそうなんだけど、王子にはリオンちゃんやゲオルグどのもいるし。でも
サイアリーズさまは一人でしょ。だから、せめてオレだけでも近くにいてあげたいなーと思って」
「信じられぬ!コイツはスパイだ!後から仲間を手引きするに決まっている!」
輪の外からアレニアがヒステリックに叫び、その声に呼応する声もさざなみのように広がる。
526カイル×サイアリーズ2:2006/05/27(土) 21:03:06 ID:f2vRUHBA
「…だそうだよ。もっともな話だけどね。アンタどうやって身の潔白を証明するつもりだい?」
「まあ、すんなり信じてもらえるとは思ってませんでしたけどね」
サイアリーズに聞かれると、カイルは懐から短刀を取り出した。
衛兵が近づくより早く、カイルは自分の髪をつかみ、頭頂部の髷を切り落とした。
息を呑む一同を前に、後ろで緩く束ねた髪も切り落としていく。
「もういい!分かったからやめよ!」
悲鳴のようなリムスレーアの声が響き、ザハークが短刀を取り上げ、手を捻り上げた。
髷を結うのは女王騎士の忠誠の証。それを躊躇なく切り落とすという行為に、一同は呆然とした。
ザハークの氷のように冷たい視線がカイルを射る。この愚か者め。口に出さずとも、
目はそう言っていた。あれだけ女王一家に忠誠を誓ったカイルがサイアリーズのために
見得も外聞も誇りも捨てたことに対する、侮蔑の瞳だ。
「サイアリーズさま、どうなさいます?」
そんな中、顔色一つ変えずギゼルはサイアリーズに問いかけた。
「ここまでされたんじゃ、追い返すわけにもいかないだろ。あたしの護衛くらいさせておきな」
「陛下もそれでよろしいですか?」
「わらわは知らぬ。勝手にするがよい。このたわけ者め!」
雷の如き痛烈な一撃を見舞い、リムスレーアはギゼルの腕を振り払って出て行った。
「さて、めでたく陛下のお許しも出ましたが、当面は監視付で行動も制限させてもらいますが
よろしいですか?」
「いいですよ、そのくらい覚悟していましたからね」
ギゼルの問いに、カイルは両手を挙げて全面降伏の構えを取った。
527カイル×サイアリーズ3:2006/05/27(土) 21:03:38 ID:f2vRUHBA
階段を下りるたび、ヒールの音が耳を打つ。手燭は地下から吹き上げる冷たい風に揺らめき、
ひどく覚束ない。
「サイアリーズさま、カイルどのにご面会ですか?」
衛兵が気づいて声をかけてきた。
「ああ、話すくらいならいいだろう?何もしやしないよ。カイル、起きてるかい?」
「…起きてますよー」
闇の中から気の抜けた声がした。声を頼りに近づいて手燭を翳すと、しんどそうに壁に寄りかかる
カイルの姿が見える。
「今になって強行突破した時の傷が疼いちゃって。寝たくても眠れないですねこれは」
いくら女王騎士とはいえ、単身ソルファレナに乗り込んで無事で済むはずがない。赤く腫れた頬、
目の下の赤黒い傷痕、激情のままに切り落とした髪は無残なものだ。
見ているうちにたまらなくなり、サイアリーズは顔を反らして独り言のように呟く。
「バカだよ、アンタ。あたしなんて、アンタがそこまで命をかける女じゃないよ」
「オレは、オレがしたいと思ったからそうしただけです。あなたが責任を感じることはない」
「あたしは、地獄に堕ちるよ」
「お供しますよ地獄まで。一人くらいお供がいないと格好つかないでしょう」
ありがとうといって微笑めばいいのか、殴ってでも追い返せばいいのかサイアリーズは迷い、
結局どちらも出来ずに逃げるようにその場を離れた。ひたすらまっすぐな、その思いが怖かった。

数ヶ月ぶりに訪れたレインウォールは、かつての華やかさが影を潜め、ソルファレナのように
重苦しい雰囲気が漂っていた。白亜の街と称えられたその建物はくすんだ色をかもし出し、
小競り合いの末か建物はあちこちひびが入り、廃墟と化しているものも多い。
「サイアリーズさま、すでに兵の撤退は完了しましたよ」
カイルが小走りに近づいてくる。
サイアリーズは、レインウォール駐屯兵に撤退命令を下すため、わざわざ出向いて来たのだった。
ギゼルは反対こそしなかったが、代わりに護衛にカイルを指名した。
528カイル×サイアリーズ4:2006/05/27(土) 21:04:58 ID:f2vRUHBA
「それにしても、ひどい荒廃ぶりですね」
思わずカイルも表情を曇らせる。女王騎士の中でもバロウズ派と呼ばれ、サルムの後見を受けて
きた身でもある。レルカーを飛び出し転々としてきたカイルにとって第二の故郷と言っていい。
街に漂う重い空気は、バロウズ邸に近づくにつれいっそう重く暗くなっていく。噴水は枯れ
花畑は荒らされ、見るも無残だった。
「サルムどの、ユーラムどのいるかい?」
扉を開けると、サルムとユーラムは手を取り合って腰を抜かしていた。
「サ、ササイアリーズさま、きょ、今日はなんの御用で…」
「兵を引き上げにきたんだよ。もうこの街に利用価値はないからね」
「そそそ、それはけっこうでございます」
サイアリーズは舌打ちをした。
胸の奥が焼ける。卑屈な愛想笑いを見るたび体が震える。そう、怒りのままに行動すればいい。
そのために自分はここに来たのだから。
右手を翳すと黎明の紋章がまばゆく光を放ち、自分たちの身に何が起こるか察知したサルムと
ユーラムは仰天して後ろにひっくり返った。
「あんたたちにも、もう利用価値はないんだよ。汚れた膿は出し切らないとね」
紋章の光が禍々しさを帯びる。この手を下ろせば禍根は絶てる。何も躊躇することはない。
戦場ではもっと多くの人をこの手にかけてきたのだから。
殺せ、殺せと頭の奥で誰かが叫ぶ。黄昏に紅き血を。ファレナ再生の贄を。
「ルセリナのことは心配しなくていいよ」
「ひ、ヒィィッ!」
「だめだ、サイアリーズさま!」
突然カイルが飛び込んで、サイアリーズを突き飛ばした。サルムは目を見張った。
「お…おまえ、ヒラム…!」
529カイル×サイアリーズ5:2006/05/27(土) 21:05:37 ID:f2vRUHBA
思いがけぬサルムの言葉に、サイアリーズは我に返った。紋章も光を失う。
「ヒラムだって!?バカ言うんじゃないよ。ヒラムは八年前に死んだろう?」
「サイアリーズさま、バロウズ家には男児は三人いたんですよ。長男ヒラム、次男ユーラム、
その間に身分の低い女の生んだ、男の子がね」
カイルの声はいつになく低く、重い。
「そ、そんな、パパ…?」
「知っていたんでしょう?だからオレの後見になってくれた。そうでもなきゃ、レルカーの
浮浪児上がりを後見する理由がないもんね、父さん?」
カイルは音もなく腰に履いた剣を抜き、サルムに近づく。
髷を切り落として髪型を変えたせいもあるが、金色の髪、やや垂れ気味の目、上がった口もと、
よくみるとユーラムとカイルはどこか似ている。
「親の不始末は子供が責任取らなくちゃね」
「ゆ、許してくれぇ!」
「パパ!」
ユーラムの絶叫とサルムの悲鳴が交錯する。カイルは一刀のもとにサルムを切り捨てた。
流れるように美しい所作だった。返り血がカイルとユーラムを赤く染める。
「あわわ…わ、パパーッ」
ユーラムがサルムに覆いかぶさって泣き叫ぶ。カイルは剣についた血を払い、次の狙いを定める。
「た、た助けてェ!!」
カイルはユーラムに向かって剣を振り上げた。が、サイアリーズが二人の間に割って入った。
「駄目だカイル、もう十分だ!」
「サイアリーズ…さま」
「アンタに、これ以上肉親を手にかけさせたくない!」
その言葉に、頭に上っていた血が、急速に冷えていくように感じる。カイルは剣を鞘に戻し
屋敷を飛び出した。
530カイル×サイアリーズ6:2006/05/27(土) 21:06:22 ID:f2vRUHBA
カイルを追いかけて屋敷を出たサイアリーズは、玄関を出たところでドルフの姿を見つけた。
「ご苦労さまです、サイアリーズさま。カイルどのは階段を下りて町に行きました」
「なんでアンタがここにいるんだい?」
「ギゼルさまからのご命令です。もしお二人がためらうようなら、代ってさしあげろと」
「ふぅん、アイツはお見通しってワケかい」
恭しく頷くドルフを置いて、サイアリーズは駆け出した。
駐屯している宿屋裏の池のほとりに、カイルは佇んでいた。後姿はひどく寂しげで、
サイアリーズは声をかけるのをためらった。気配に気づいたのか、カイルが振り返る。
そこにはいつもと同じ、飄々としたカイルがいた。
「あ、サイアリーズさま。よく分かりましたね」
「カイル…」
「ん?なんですかー?」
「さっきの、本当なのかい?」
カイルは懐からペンダントを取り出した。シルバー製で二匹のグリフィンが交差するエンブレムは、
バロウズ家のそれとまったく同じだった。
「気がついたらオレの首にかかってたんです。それだけのことですけどね。もらったのか
ひろったのか、本物か偽物か分からないですからね。ただ、親が息子に殺されるってのは、
あの人にとってもっとも惨めな死で、オレにとっては地獄への直行便だと思ったんで」
「…」
「母もサルムどのも死んじゃった今、何が真実なのか確かめようもないですけどね。ただ…」
「ただ?」
「ただ、オレがバロウズ家の次男として生きていたら、幼いあなたと婚約したのはギゼルくん
ではなくて、オレだったのかもしれないな…。そう考えると、ちょっと残念ですねー」
カイルは肩をすくめて笑い、サイアリーズの横を抜けて宿屋に歩き出した。追いかけるように
足を踏み出したサイアリーズに、カイルはぴしゃりと言った。
「すいません、疲れてるんで、一人にしてもらえますか」
通り過ぎる背中は冷たく遠く、わけもなく胸騒ぎがした。
531カイル×サイアリーズ7:2006/05/27(土) 21:06:57 ID:f2vRUHBA
その夜、サイアリーズはそっと寝床を抜け出してカイルの部屋をノックした。扉を開けたカイルは
夜目にも分かるほど憔悴していた。
「サイアリーズさま、どうしたんですかー?」
「中に、入るよ」
サイアリーズは強引に中に入り、内側から鍵をかけた。雲がかかり月も星も隠れ、
小さな灯りだけの部屋に、二人は距離をとって向かい合った。
サイアリーズは夜着のボタンに手をかけ、一つ一つ外していく。彼女の白い裸身が部屋にほのかに
映し出される。
「サイアリーズさま!?」
「あたしは…」
サイアリーズは生まれたままの姿になり、カイルしがみついてそっと腕を回した。
「あたしがアンタにしてあげられるのは、これくらいだから…」
しがみついた体は、びっくりするほど冷たかった。
カイルはしばらく躊躇したものの、やがておずおずとサイアリーズを抱きしめた。
「好きにしていいよ。アンタが望むなら、どんなことでもやってあげるから」
「やだな、それじゃオレが変態さんみたいじゃないですか」
サイアリーズが小さく噴出すと、つられてカイルも笑みを浮かべた。氷のように強張った
表情が、少しずつ溶け出していくようだった。
「それに、サイアリーズさまだって似たようなモンですよ。いきなり全裸になるなんて、
情緒もへったくれもないですよ。いつもそうなんですか?」
「あたしは!アンタがその気になるかなと思って、必死で…」
サイアリーズは真っ赤になって怒鳴り、カイルの胸板を叩いた。
「あはは、効果アリですねー。今すごく、あなたが欲しい」
カイルの顔が真顔になり、ゆっくりと近づいてきた。目を閉じると同時に唇にひやりとした
感触が伝わる。
532カイル×サイアリーズ8:2006/05/27(土) 21:07:29 ID:f2vRUHBA
最初は軽く触れるだけのキスから、じょじょに濃厚なキスへ。舌を絡ませ、丁寧に歯茎を嘗める。
遊び人のカイルらしく、そのテクニックはかなりのもので、サイアリーズは息をすることも
できずに軽い眩暈を起こし、もつれるように背後のベットに倒れこんだ。
「はぁ…はぁ、いきなり、こんな激しいんじゃ、あたしの身が持たないよ」
「好きにしていいって言ったじゃないですかぁ。本来ならばドアと窓全開にして明かりつけて
やりたいくらいなんですけど、そこは一応女王騎士の理性で止めてるんですよ」
「なんだいそりゃ…。じゃ、ギゼルでも呼んで、目の前でやるかい?」
「あははーいいですねー。きっと失神しますよ。あの人はあなたを女神のように崇めているから」
軽口を叩きながらも手探りでカイルの服を脱がせ、冷えた体を抱きしめる。
武人らしく鍛え上げられた胸板は外見に反して厚く、頬を寄せて耳を澄ませると鼓動が響く。
カイルの指がサイアリーズの輪郭をなぞり、頬から唇に触れる。紅も引いていないのにそれは
ほのかに色づいていて、何度か撫ぜているうちに不意に飲み込まれた。
サイアリーズはカイルの指をくわえ込み、わざと大きな音を立てて舌で愛撫した。
頬をすぼめて喉の奥まで吸い上げると、中で指が自在に存在を主張する。歯茎を、歯の裏側を
なぞり、舌に絡める。
「ぁあ…ッ!」
自分が愛撫しているつもりがいつのまにか愛撫される形となり、サイアリーズは小さく声を漏らす。
「やっぱ、こっちがいいな」
指を抜いて、代わりに唇を重ねる。最初から互いを飲み込むような激しいキスを交わす。
サイアリーズがカイルの首に手を回して引き寄せると、二人の体が隙間なく合わさる。
カイルの手が豊かな胸に伸びる。掌で覆い、ゆっくりと動かす。歓喜の声を上げようにも唇が
塞がれているので、くぐもった声が鼻から抜ける。
533カイル×サイアリーズ9:2006/05/27(土) 21:08:06 ID:f2vRUHBA
感触を確かめるようにゆっくりと揉みほぐしていく。柔らかい乳房は自在に形を変え、頂点の
突起はすでにぴんと硬く張り詰めていた。
「んぅ、んんっ!」
激しいキスと柔らかな愛撫に、サイアリーズはまともに呼吸することも出来ない。ようやく唇が
解放されると、息を整える間もなく胸の刺激に声を上げる。
「あぅ…ん!はぁ、あ…」
一際声が大きくなる。カイルが頂点の突起を口に含んだのだ。サイアリーズの白い裸身は
びくりと跳ね上がり、押し寄せる快感に身を震わせた。
カイルは桜色の頂を舌で転がしながら片方の頂は手で摘み上げる。
「あぁ…ッ!あん、あぁん!」
サイアリーズはすすり泣き、眉を寄せて顔をしかめる。カイルは飽きることなく愛撫を加え、
存分に堪能したところでようやく解放した。サイアリーズはぐったりとベッドに沈む。
軽く息を整えたサイアリーズは身を起こし、乱れた髪を整えた。
「今度は、アンタの番だ」
サイアリーズの手がカイルの股間に伸びた。すでに宙に向かってそそり立つそれをそっと握り、
強弱をつけて上下に弄ぶ。
「くぅ…ッ」
カイルが小さく呻く。滑らかな白い手に絡め取られただけで、鳥肌が立つような感覚を覚える。
しばらく続け、やがてサイアリーズは顔を埋めて口に運んだ。ぺろりと舌で嘗めてから、
ゆっくりと口に咥える。喉の奥まで咥え込み、舌でチロチロと愛撫を咥える。
すでに先端からは苦いものが迸っており、サイアリーズはわざと音を立ててそれを掬い取る。
「も、いいですよサイアリーズさま、オレ最近ヤッてないから我慢できない…」
「いいよ、口にでも、顔にでも出しな」
そういってサイアリーズはいっそう深く咥え込み、顎をすぼめて吸い上げた。
カイルはそれの刺激に我慢の限界を超え、口の中に放ってしまった。サイアリーズは放たれたものを
全て受け止め、飲み下した。口元に白い粘液が付着し、それを舌で掬い取って飲み込む仕草は、
萎えたカイルのものが再び硬度を取り戻すに十分刺激的な仕草だった。
534カイル×サイアリーズ10:2006/05/27(土) 21:08:37 ID:f2vRUHBA
先ほどと変わらず天に向かって主張するそれを指先で軽くいじりながら、サイアリーズは
感心したように言った。カイルは一度放った脱力感より、サイアリーズと一つになりたい
強い欲求を抑えきれず、彼女の秘所に手を伸ばした。
サイアリーズのその場所は、すでに迎え入れる準備は整っていた。太ももまで粘液が伝わり、
シーツの上に水溜りが出来ていた。
掌全体で包み込み、指を埋める。
「ぅ…ン!あふぅ…」
とたんにサイアリーズは嬌声を上げ腰から崩れ落ちた。指を抜き差しするだけで水音が
部屋中にこだまする。
「あぁ…もう駄目、我慢できない」
サイアリーズはカイルの上に跨って、自ら腰を沈めた。初めから決まっていたかのように
カイルのそれを隙間なくしっかりと迎え入れる。
「あぁ…ッ!」
深く腰を落とすと、子宮の奥まで貫かれる感覚がサイアリーズを襲う。眩暈がして倒れそうだ。
ふらつく体を下からカイルが支える。はじめは腰に手を当て、それから乳房へ。そうして
豊かな膨らみを両手で揉み、頂点をつまみ上げる。
「ああ、いい…ッ!おかしくなりそ…!」
サイアリーズは自ら狂ったように腰を振り、己の欲望を満たしていく。
乱れた銀色の髪が顔にかかり、陶酔した表情に更なる色気を与えている。
勢いのあまり、一度抜けてしまうと、その機を見逃さずカイルが起き上がってサイアリーズを
うつぶせに押し倒した。そのまま尻を高く持ち上げ、背後から挿入して激しく突く。
「あん!あ!あぁ、カイル…ゥ!もっと…ッ」
サイアリーズの切なげな声が、よけいに刺激する。カイルは初めての時の少年のように
闇雲に腰を振り、己の欲望をサイアリーズに叩きつけた。卑猥な水音が部屋に響き、
接合部分からは粘液があふれ出る。すでにシーツには何箇所もの水溜りができている。
535カイル×サイアリーズ11:2006/05/27(土) 21:09:39 ID:f2vRUHBA
互いの息遣いが激しくなり、限界が近づいていることを告げる。カイルは外で出そうと体を
引きかけたが、サイアリーズが止めた。
「いい…よ…。中で出して。カイルの好きなようにして…ッ」
サイアリーズの中がきゅっとすぼまり、カイルを締め上げた。その言葉と行為に、カイルは
思わず中で欲望を爆発させた。
「あ…あぁ、ああ…ッ」
サイアリーズも高みを迎えたらしく、喉を反らせて一際大きな声を上げた。
一度放っているにも関わらず、カイルのそれはいつまでもサイアリーズの中で爆発を続け、
彼女の中にとどまっていた。やがてカイルが身を引くと、接合部分から収まりきらない白濁液が
だらりと垂れ、新たな水溜りを作った。
精も根も尽き果てたカイルは、そのまま崩れるように体を沈める。サイアリーズは仰向けになり、
カイルの重みを体全体で受け止めた。
「カイル…寝たの?」
耳元で問いかけても応えない。緊張の糸が切れたのか規則正しい寝息が聞こえる。
サイアリーズはそんなカイルの短く刈り揃った金色の髪を撫ぜ、こめかみから伝わる汗を
掌でそっと拭う。
やがてサイアリーズはけだるい体を起こして身づくろいを済ませた。
隙間なく体を重ねても、言葉を尽くしても、なぜか虚しい。誰よりも互いのことを分かっている
はずなのに、お互い間違ったことをしていると分かっているからだろうか?
間違っていると分かったら、分かった段階でやり直せばいい。誰に聞いた言葉だろう。
だけど、間違っていることを分かって、敢えてそれを望む場合は?
「……」
サイアリーズは迷いを振り切るように立ち上がった。もう迷わない。
536ウィルボーン:2006/05/27(土) 21:11:21 ID:f2vRUHBA

ラストを二種類にしました。
どうしても一つに絞れなくて。
537カイル×サイアリーズ12-a:2006/05/27(土) 21:12:03 ID:f2vRUHBA
「お疲れさまでした、サイアリーズさま」
ギゼルの私室に戻ってきたサイアリーズを出迎えたのは、女王騎士の正装をしたカイルだった。
黄昏の紋章を発動させ、疲労の色を隠せないサイアリーズは、ソファに倒れこんだ。
「まもなくあの子達が来るよ。カイル、会いたくないなら先にソルファレナに戻ってな。
今日であたしの野望の八割は達成したからね、まああの子達に殺されるなら本望さ」
「冗談ばっかりー。ま、オレがいるから大丈夫ですよ」
カイルの軽口に、かすかに口をほころばせる。
扉の向こうから複数の足音が聞こえる。サイアリーズは体を起こしてドアの正面に仁王立ちになり、
カイルはその背後に影のように付き従った。レインウォールのあの夜から、カイルは常に
この場所からサイアリーズを支え、守ってきたのだ。
ドアが開いて懐かしい顔ぶれが飛び込んできた。王子やゲオルグは、待ち受けているのが
サイアリーズとは思いも寄らなかったらしく、飛び込んできたものの棒のように立ちすくんでいる。
「サイアリーズ、なぜお前が…。まさか、黄昏の紋章は、お前が…」
「ふふっ、どうだい、あたしもなかなかやるだろう?」
サイアリーズは、わざと挑発するように紋章を掲げてみせた。
「貴様!こいつらがどれだけ心配したと思ってるんだ!」
普段は感情を露にすることの少ないゲオルグが、怒りに顔を真っ赤にして腰の刀に手を伸ばした。
とっさに王子が止める。やめて、叔母上を斬らないでと目で訴える。
「…あいかわらず、優しい子だね。でも覚えておいで。世の中は優しく綺麗で正しいだけじゃ
生きていけないんだよ。悲しいけどね」
サイアリーズは掲げた右手を振り下ろした。赤い火の玉が連続して王子たちを襲い、一行は
左右に散った。ゲオルグが抜刀し、サイアリーズに狙いを定める。
「サイアリーズ!お前は俺が斬る!」
「駄目だ、ゲオルグどの!」
サイアリーズを庇うように、カイルが立ちはだかる。ゲオルグは驚きに目を見開いたが、
それでも容赦なく刀を振り下ろした。
「カイル!」
サイアリーズの悲鳴が部屋の動きを止めた。
538カイル×サイアリーズ13-a:2006/05/27(土) 21:13:32 ID:f2vRUHBA
カイルは膝をつき、そのまま血を吐きながらうつぶせに倒れこんだ。ゲオルグは刀を凪いで
再び腰に履いた。王子とサイアリーズが同時にカイルの元に駆け寄ろうとする。
「ドルフ!!」
拳を握り締め、歯を食いしばって立ち上がったカイルは、大声で叫んだ。すると、窓から
一陣の風のように人が飛び込んできた。
「サイアリーズさまを…ソルファレナ…へ…。急げ!!」
「仰せのままに」
ドルフは表情一つ変えずサイアリーズを抱え上げ、窓枠に足をかけた。サイアリーズはドルフの
腕の中から抜け出そうと必死にもがく。
「いやだ!カイル!アンタも一緒に!!」
「あ、あはは…。大丈夫、後から追っかけますから」
安心させようと笑顔を向けるが、激しく血を吐いてむせこむ。ドルフはふわりと窓から飛んだ。
ゲオルグが追ったが、すでに窓の下には高速艇がエンジンをふかしており、ドルフが着地すると
同時に爆音を立てて動き出した。
カイルは遠ざかるエンジン音を聞いてほっとしたように目を閉じたが、不意にぐいっと体を
起こされた。王子が抱え上げ、黎明の紋章を発動させようとしていたのだ。カイルは血にまみれた
手で王子を制した。
「いいんです、王子。オレの役目はここまでだから…。先に地獄に行って、あの人を待ってます」
「なぜそこまでお前は…。俺には理解できん」
ゲオルグが悔しそうに、心底悔しそうに唇をかみ締める。
「えへへ、いいでしょ、女のために死ぬのも…。あの人は、オレにとっての、太…陽…」
カイルの体がびくりと痙攣し、そして瞳が閉じられた。
「バカなヤツ…!」
ゲオルグが無念さを抑えきれずに拳を壁に叩きつけた。

カイル戦死の報告は、ソルファレナの私室で聞いた。
そんな予感はしていた。ソルファレナに単身乗り込んできたときから、髪を切り落とした時から、
サルムをこの手にかけたときから、いつかこの男は、あたしのために命を落とすだろうと。
サイアリーズの瞳に涙がにじんだ。胸が潰れそうなくらい苦しかった。
「…サイアリーズさま、会議のお時間です」
ドアの外から侍女が呼ぶ声がした。サイアリーズは涙を拭い、背筋を伸ばして歩き出した。

カイル、アンタに会ったら言いたいことがたくさんあるよ。
あたしはもう少し、この世界で自分の思うようにやってからアンタのところに行くよ。
それまでは少しの間、待っていてね。言ってくれたろう?地獄までお供しますって。
行くところが地獄でも、アンタがいればきっと怖くないだろうね。

                           <aパート終>
539カイル×サイアリーズ12-b:2006/05/27(土) 21:14:20 ID:f2vRUHBA
カイルを起こさぬようにそっと部屋を出る。
「いるんだろう、ドルフ」
囁くようなその声に闇夜がかすかにふるえ、サイアリーズの背後に人の気配がした。
漆黒の闇に、濁った白い目だけが浮き上がる。
「分かってるんだろう、あたしの考えてるコト」
「仰せのままに」
耳元で囁くようなドルフの声がした。
ドルフに続いて、先ほどまでの濃密な交わりの匂いの残る部屋に入る。
カイルは健康的な寝息を立てていた。ドルフはカイルの鼻先に粉薬のようなものを吹きつけ、
自分よりはるかに大柄な体を軽々と担ぎ上げる。
「よろしいのですね、本当に」
「くどいよ。さっさと捨ててきな。迷惑なんだよ、こんなところまでついてこられちゃ」
吐き捨てるように言って、サイアリーズは一足先に部屋を出た。
そう、これでいいんだ。カイルには地獄の道連れなどさせない。
あたしのお供はギゼルみたいなヤツで十分さ。あたしの分まで、あの二人をよろしく頼むよ。
あたしには、もうあの子達の側にいる資格はないから。
サイアリーズは振り返った。部屋の窓は開け放たれ、カーテンが風になびくだけだった。
体に焼け付くような印を残した男の姿は、もうどこにもなかった。

「ん…?」
頭に鈍い痛みを感じ、カイルは呻きながら目を開けた。薄暗い部屋はさっきまでいた部屋と
違っていた。体が横たわっているのは宿屋のベッドではなく、硬い床の上だった。
「おめざめですか?カイルどの」
そう呼びかけてきたのはルクレティアで、体を起こすと彼女のほかに王子やゲオルグなど、
懐かしい顔が飛び込んできた。
540カイル×サイアリーズ13-b:2006/05/27(土) 21:15:20 ID:f2vRUHBA
「ここは…」
「本拠地の地下牢ですよ。まさかここを使う日がくるなんて思いもしませんでしたけどねえ」
「オレ、レインウォールにいたんだけど…。サイアリーズさまは!?」
カイルは立ち上がったが、眩暈でふらつき、ぶざまに床にへたり込んだ。
「そのサイアリーズさまからの贈り物ですよ。あなたがいても邪魔だから、返すって」
ルクレティアが茶化すように言う。カイルは唇をかみ締め、拳を握り締めた。
王子が心配そうに顔を覗き込む。
「王子、勝手に抜け出してごめんなさい。だけど、オレはどうしてもあの人のそばにいたかった。
一人で全ての罪をかぶろうとしているあの人の力になりたかったんですでも、あの人にとっては
オレなんて、邪魔なだけの存在だったんですね…。オレの気持ちは通じてなかったのかな…」
自虐的な笑みを浮かべたカイルの肩を掴んで、王子は必死に首を横に振った。
そんなことはない、そう言っているように。
「お前を死なせたくないんだろうよ、サイアリーズは」
「ゲオルグどののおっしゃる通りだと思いますよ。あなたの思いをあの方は、痛いほど
分かっていると思いますよ。それでサイアリーズさまがこう決断をしたのは、あなたが邪魔
だったのではなく、大事だから死なせたくなかったんでしょう。ご自分に誇りをお持ちなさいな」
ルクレティアが続けた。
サイアリーズさまは、オレのことを思ってくれたのか。俯いて目を伏せるカイルに、
ゲオルグはゆっくりと頷いた。
「一緒に死ぬことだけが愛情ではない、ということだ」
闇夜に光る銀の髪、ふっくらとした唇。細い腰に豊かな胸。名を呼ぶ甘い声。甘い香り。
抱きしめた体の柔らかさ。まだ体に残っている。
サイアリーズさま。オレは自信を持っていいんですか?オレの思いはあなたに通じていたと。
…あたしの代りに、あの二人を頼んだよ。
彼女の声が聞こえたような気がした。
「王子、オレをもう一度王子の下で使ってください。なんでもします」
カイルは王子に頭を下げた。王子の手が肩に触れ、顔を上げると目じりに涙を浮かべた王子が
満面の笑みを浮かべていた。お帰り、カイル。そう言っているように。
それに続いてゲオルグが、ミアキスが、次々と肩を叩き、頭を叩いて笑顔を向ける。

サイアリーズさま。オレはこの場所で、自分の役目を果たします。
それが貴女も望んでいることだから。あなたの期待に応えられるようにオレ頑張りますよ。
きちんと役目を果たして、時がたって、いつかどこかで会う日が来たら、
よくやったって誉めてくださいよ。

セラス湖の優しい風を受けながら、愛しい人へ。あなたに剣の誓いを立てた女王騎士より。

                        <bパート終>
541名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 21:18:14 ID:CogZaPPJ
リアルタイムGJ!
542ウィルボーン:2006/05/27(土) 21:18:54 ID:f2vRUHBA
以上です。
読みにくくてすみません。
543名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 23:09:45 ID:f9Ccpe6s
とりあえず泣いた。
一緒に裏切ったらどうなるか、ずっと読んでみたかったんだ。
544名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 11:25:01 ID:vZ8pqtQ2
電撃のカイルはヒラム似って、結局なんだったんだ…。
545名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 13:17:14 ID:KUhvu1CU
熱烈GJ!
546名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 20:55:21 ID:obPGNs3E
GJ!!
篭城ルートと城放棄ルートみたいだ。
やっぱりカイルは一緒に裏切ったら、サイアリーズのために死ぬよね…。
それも悲しいなぁ。本編では残ってくれて良かった
547名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 00:51:36 ID:j3MYF/5B
超GJ!!
bパートの最後の一文すごく好きだ。
548名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 21:01:14 ID:RE3pk6Ml
Bパートの方が、サイアからカイルへの愛情が伝わってくる感じがする。
個人的にはそう感じた。
549名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 20:36:36 ID:4hDYTFcl
ほしゅ
キャラガは資料用にはイマイチだけど、巻末のSSがなかなか良かったね。



…やっぱり限定版を買えばよかった。
資料もじっくり見たいのに、あれじゃ小さすぎるよなぁ。
550名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 21:25:38 ID:c31pMJEV
ほしゅしゅ。
確かに設定イラストが小さすぎた。
でも個人的には王子とリオンの女王騎士イラストがあったのが嬉しい。
(限定版に載ってなかったので)
ミアキス視点のSSがなかったら絶対買ってなかったな。
551名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 21:53:52 ID:f/rFPqLy
ところでアンソロを買った奴はいるか?
ドジンサイトの感想見る限りではそんなに悪くなさそうなんだが…。
552名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 01:20:54 ID:d2mzbCX7
気をつけるとしたらファレナ勢(王子・リオン・カイル・ミアキス・リム)に出番が偏り気味って事ぐらいかね
ラフトフリート・アーメス・レルカー・エストライズ・群島組は出番皆無に等しいな
553名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 07:48:16 ID:5oazLHmB
れ、レインウォールは出るかね?
554名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 10:16:04 ID:yvcV7hF4
と、闘技奴隷は…
555名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 11:17:06 ID:bn3YWqgW
チ、チーズケーキは…
556名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 17:18:14 ID:JPOuyG9n
クックック、黒マテリア…
557名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 20:56:57 ID:ezjcbTQK
今難民が人大杉で入れないので、ここで感想を。
絵はみんな小綺麗というか、下手じゃないけど似たような絵。
そりゃ元絵があるから仕方ないのかもしれないけど。
話は女王騎士の絵の話と、リムの秘密の場所の話が良かった。

全体の感想とすれば、参加した作家さんはみんな幻水のことが好きなんだろうな、
って感じだった。クオリティは角川の三冊よりも格段に上。

長々とスマソ

ゼガイさんとベルクートは出てたよ。
558名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 00:26:07 ID:ifl64GR+
アンソロで何書かれてるか詳細書いてるサイトあったよ
559名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 06:41:04 ID:ltDi0Wvh
ハヅキたんなんてマイナーなフリーキャラは出てないよな…?
出てたら即取り寄せなんだが。
560名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 10:47:41 ID:9dd1BPbl
どっかでマリベルハヅが載ってたって聞いた
561名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 17:48:30 ID:TTzFtVWg
アンソロにランは出てないって事なんですね(´・ω・`)
562名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 21:15:26 ID:UDVk7ewe
とりあえずファレナメンバー以外だと
・ゼガイ
・ベルハヅマリノ
・探偵一家
・ルクレティア
・リムとギゼル
・竜馬
・マルーンとトーマ
なんかがネタになってた。詳しくは詳しいことが書いてあるサイト見て。
563名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 18:20:27 ID:01Z/4HSn
シュンミンのエロを書きたい。
ネタはないけど無性に書きたいという矛盾w
564名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 18:46:07 ID:4xk3r0ve
>>563
パッと浮かんだシチュエーションでよければ提供するよ


レツオウ編
今日はお父さんと一緒に料理のお勉強。
しかしうっかり包丁で指を切っちゃうシュンミンたん。
親バカレツオウお父さんはケガした指をなめてあげます。
え?衛生的でない?そんなの知ったこっちゃないです。ファンタジーですから。
一流の料理人は当然その一流です。よって舌裁きも一流です。
お父さんの巧みな舌使いにシュンミンたんは切った指の痛みも忘れ
おもわず痛みと正反対の位置にある感覚から「…ぁ」とか声を漏らしちゃいます。
お父さんもお父さんで妻に先立たれ女日照りの長い事。
久しぶりに耳にした嬌声で何かがふっきれちゃいます。
もはや目の前に居るのは娘である前に女であると、そう認識しちゃいました。
さぁシュンミンをレッツクッキング!(性的な意味で)

王子編
リムスレーアの奪還に失敗して落ち込む王子
なぐさめる為に「わたしでよかったら妹と思ってください」とか言っちゃう健気なシュンミンたん。
しかし王子様はリム奪還失敗やリオン負傷やサイア裏切りやらで
割と心身薄弱の状態だったのです。
曖昧な精神状態のまま
なんだかんだで襲っちゃう。

もしくは稚魚育成中にうっかりいけすに落ちちゃうシュンミンたん
それを王子が助けて
二人どこかの木陰でぬれた服を乾かします。
で、幼女の裸にリムの影思い出して欲情、襲い掛かる。


こんなもんでどうだろうか。
そういや実は自分は449なのだけど>>447はもう来ないのかなぁ。
565名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 18:48:55 ID:4xk3r0ve
うっひゃ レツオウ編の5行目間違えた。

一流の料理人は当然その舌も一流です。よって舌裁きも一流です。

こう書きたかった。
566名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 20:08:42 ID:01Z/4HSn
>>564
うは、ネタ出ししてもらっちゃって恐縮です。
頑張って書いてみます。
567名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 01:12:11 ID:M7gtP8br
シュンミン大好きなんで期待して待ってる
568566:2006/06/06(火) 20:53:10 ID:hUA0r3c2
遅筆なんで、首を伸ばし過ぎないようにして待ってくださいませ

やっぱマイナーなキャラを書きたいって気持ちが強いなー。
絵の才能があったら、絶対チサトのエロ絵とか描いてるw
569名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 03:46:16 ID:mvVZIXZV
で半虹のスレはまだですか?
570名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 13:50:16 ID:8Be0/Ogz
>で、幼女の裸にリムの影思い出して欲情、襲い掛かる。
ちょwwwww王子はナチュラルにリム=欲情ですかwwwwwww
571名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:56:54 ID:qvrxZHMQ
>570
何かおかしいところがあるのか?
572名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 07:40:53 ID:P4/hH4gj
その図を想像したら
シュンミンのビジュアルがなぜかシャボンになったよ
ほほほーい
573名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 14:49:46 ID:ZK8yUmKp
ギョーム乙
574名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 04:06:59 ID:cELgYPLF
>>573
 コナミ乙
575名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 02:51:33 ID:VvGHYjgX
コソーリ王子ランキボン
576名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 11:00:46 ID:jcUw0J0p
保守
577名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 12:07:10 ID:1wbKnq6r
空気読まずカミーユキボン!
ツンデレツンデレ!
オッパイオッパイ!
578名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 20:37:41 ID:G0O+AQYq
カミーユって、ウォーレンと共にシナリオカットの煽りを受けたキャラという
印象が強いなぁ。二つ名まであるのに…。
579名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 01:02:27 ID:gFoVOuLy
馬鹿の粘着叩きで最近日の目浴びてきた気もする。
580名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 07:38:05 ID:CbbZ8dqb
憧れのカミーユ“お姉様”を独占したいがため
日々暗躍するユリツンデレな粘着タンとカミーユタンの絡みをエロエロにキボン
581名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 07:18:38 ID:zRXMM/BW
カミーユとビッキーが並ぶと
二人はプリキュわなにをするキサマ…
5826スレ970:2006/06/15(木) 00:00:49 ID:1VugaHUM
カミーユなー。やっぱグレミオと?ビクトールともいいかもしれないな。二人はプリクマ…うわなにをするやめ

ところでそれとは関係なく2主×アイリです。
2主は異常にエロいです。いい子な2主が見たい人は避けてください。
583口説き文句:2006/06/15(木) 00:02:28 ID:h0ZQDk+j
「君、かわいいね。僕のお城に来ない?」

うららかな午後。久しぶりに戦いもなくて、「貿易で小遣い稼ぎをしよう!」と言い出した
軍主の少年に率いられて、あたし達はサウスウィンドウに来ていた。
着いた途端、今度は「仲間探しをしてくる!」なんて言ってあたし達に貿易仕事を任せて、
少年、リオウは街の中の雑踏に消えていった。
ため息をつく青色の戦士と一緒に商品をあらかた売りさばいて、
店から出たら、今度目の前に広がるのは軍主が街の娘を口説いてる風景。
なーにがかわいいね、だ!ふざけるな!と言おうとしたけど、
先に青色…フリックさんが私を制した。
(ここは大人の男として俺がびしっと注意してやる!)
アイコンタクトであたしに伝えると、フリックさんはリオウにつかつかと近づいていった。
「リオウ…お前、なにしてるんだ?」
「なにってフリックさん、大事な戦力補充だよ?僕らは常に仲間を必要としてるからね。」
大人の男が腰に手を当て厳しい声で聞いてるのに、
リオウは平然として女の子の手を握ってる。がんばれフリックさん!
「どこをどう見ても普通の娘さんだろうが!
戦力になるわけないだろう!いや、その前にそんな誘い方をするな!」
「いやだなぁ、フリックさん。見た目で判断しちゃ駄目だよ。
タキおばあちゃんだって宿星なんだよ?むしろフリックさんより重要な。」
「んなっ!?」
「ね?ちょっと子供っぽいところもあるけど、結構いい男だろう?
うちの軍にはああいういい男も揃ってるんだ。混浴まであるんだよ。
三食寝所に危険手当、他にもコボルトショーやら絶叫ウィンドホードトークに…」
大人の男から顔がいいだけの子供っぽい男に格下げされた青色の男は、
うんざりした顔であたしの方に戻ってきた。女の子も困ってるし、
あたしもイライラしてきたし、あいつを一発ぶんなぐって手鏡で戻ろう…。
584口説き文句:2006/06/15(木) 00:03:41 ID:1VugaHUM
その日の夜、今度は「昼間僕をキズモノにしたお詫びをしてもらわなきゃ」と言われて、
リオウの寝所に連れ込まれた。なんて勝手な、と思う暇もなくあれよあれよと
連れ去られて裸にされていろんなところ舐められて入れられて気持ちよくさせられて、
今あたしはこいつと一緒にベッドで寝ている。なんていうか…止めようがない。
どっちかというとあたしよりかわいい顔してるくせに、どこにこんなパワーがあるんだろう?
そう思ってリオウの顔を見ていると、リオウも頬杖をついてにやにやとあたしの顔を見る。
何だかあたしの方が先に恥ずかしくなって、姿勢を変えて後ろ向きになる。
「あれ?もうかわいい顔見せてくれないの?さびしいなぁ。」
心底楽しそうなリオウの声が後ろから聞こえてくる。多分こいつには一生勝てないな…。
でもそれも悔しい。悔しいから、昼間気になったことを聞いてみる。
「あんたってさ…いつもあんな風にして仲間集めてるの?」
「んーアイリ、妬いてくれてるの?大丈夫だよ。あれは単なる仲間集め。
僕が抱くのは君だけだから。」
「…っ!ば、ばかっ。」
「あーアイリ赤くなってるよ。かわいい。どれどれこっちもまた濡れて。」
「ばかーーー!!」
布団の中にもぞもぞ潜って、あたしのあそこに顔をくっつけようとしてきたから、
手でこいつの顔をばちんと挟んで引きずり出した。
いたーい、とか何とかいいながら、リオウの顔が目の前に出てくる。
585口説き文句:2006/06/15(木) 00:04:59 ID:h0ZQDk+j
こいつとこういう関係になったのはいつからだっけ。
顔を見ながらふと考える。最初も、あたしがこうやって好き放題犯されちゃったんだっけ?
違う。最初は、いつもとは違う暗い顔をしてるリオウが見てられなくて、
どうにかしたくて、少しでも私が力になれることがないかと考えて…
あたしからこのベッドに忍び込んだんだ。われながら、早まったのかな。
だってこいつはいつもいつも明るい顔で笑ってる。あの時のことが嘘みたいに。
嘘じゃないとしたら、無理してはしゃいでるの?気になった。
「なぁリオウ、あんたつらくないの?親友と戦うことになって、
軍を率いるなんてことして。本当はそんなことしたくないんだろう?」
「つらくないよ。目の前に君のかわいい顔があるし。キスしていいよね?」
「真剣な話をしてるんだよ!」
ヘラヘラ笑ってる顔を揺さぶる。あたしには嘘をついて欲しくない。
すーっと、リオウの笑顔が消えて、手で顔からあたしの手をどかす。
その手は、少し震えていた。いきなりの変化にあたしは戸惑う。
「ひどいなぁ。笑ってる顔のほうが似合う、って言ったのはアイリだろ?
だから僕はいつも笑ってたのに。」
「ご、ごめん。私は、あんたに無理させたかったわけじゃないんだ!
ただ、色々背負い込まないで欲しいって思って。あんたにつらい顔をして欲しくなくて。」
つらそうな目で言われた言葉に動揺し、あたしは必死で言い訳を口にした。
別に彼が明るいことを責めたかったわけじゃない。無理させたいわけでもない。
ただあたしの前では自然体でいて欲しかっただけで。
「なーんてウッソー。」
「へ?」
動揺するあたしの前で、ヘラヘラとした笑いが戻る。今なんて言った?
「無理に笑うなんてそんな疲れることは僕はしませーん。
やーいアイリ騙されたーいへへへへへ(痛ててててて)!」
「ふざけんなー!!」
あいつの口に両手をかけて、思いっきり左右に引っ張った。
586口説き文句:2006/06/15(木) 00:05:50 ID:h0ZQDk+j
「あのね、ああっ僕は何て不幸なんだっ生きてるのがつらすぎるっなんて考える
フニャチン野郎に軍主が務まるわけないでしょ?アイリは心配性だなぁ。」
ひっぱられた口の周りを痛そうに抑えながら、リオウが言う。
「それにね、僕のことを色々心配してくれる熊やら姉やらいるからね。
だからアイリは心配なんかしないで、僕と気持ちよくなってればいいの。」
そう言ってやっぱりヘラヘラ笑う。ビクトールさんとナナミは強い人たちだ。
「あたしは…あんたにとって抱かれてあげるくらいしかしてやれることはないの?」
リオウを元気付けられてあげる役目は、もっと強い人たちの方がいいのだろうか。
あたしにだけ弱さを見せて欲しいのに。
「もー。男にこれ以上言わせるつもり?僕はその気の強そうな猫目のくせに
僕が好きで好きで心配でたまらない君のことが好きなの。
君のことを抱いてる時が一番幸せなんです。いいから僕を幸せにしてください。」
笑顔のままあいつの顔が近づいてきて、口付けされた。
あたしがあいつのことを慰めて力づけてあげたいのに、これじゃあたしが慰められてる。
敵わないな…これが一国の軍主ってことなんだろうか。いや、元々こういう奴だっけ。

私も好きだよ。
どっかの犬みたいに馬鹿みたいに明るくて人懐っこくて…いやらしくて。
ジョウイの話をする時だけ、顔はどんなに笑ってても手は震えてて、
それを必死で隠そうとしてるあんたのことが。

あたしはそれを言ってやらない。リオウは口を離して、あたしを抱きしめる。
「アイリ」
名前を呼ばれただけなのに、背中がゾクゾクと震えた。ただの名前なのに。
もっと呼んで欲しくて、あたしも抱きつく。でもそれは剥がされて、またキスをされた。
耳たぶにもキスを落とされる。背中がまたぞくっとした。
耳たぶを甘く噛みながら、リオウの少し固い手があたしの体を撫で回す。
587口説き文句:2006/06/15(木) 00:06:57 ID:h0ZQDk+j
「はぁっ…ん、あ、あ…」
声が出てしまう。くちゅ、と音を立てながら耳を舐めていたリオウが、
優しく姿勢を変えてあたしの上に覆いかぶさる。
「ああっ…んっ、リオ…ウ…」
両方の腕が身体を撫でる。なのに、肝心な部分には一切触れて来ない。
もどかしくて、でも気持ち良くて、どうしていいのかわからない。
触れて欲しい。けど言えない。何だかあたしのほうがいやらしいみたいじゃないか。
悔しいから言わなかったのに、あたしの表情でわかったのか、物足りないと、
もしかして無意識に言ってしまったのか。
リオウは急に止まり、あたしの顔を覗き込んで来て、笑った。
「リ、リオウ…」
手を伸ばして顔に触ろうとしたけど、何だかそれもだるかった。
そんなあたしを見て、リオウは不敵な笑みを浮かべながら、あたしの脚をいきなり開く。
「…あ」
見られている。明るい部屋で、まじまじと見られている。
つっ、と熱いものが流れて行くのがわかった。
「触ってもないのにこんなに濡れてる。アイリってエッチな娘だよね。」
「っ…ん…」
言葉で、嬲られる。そしてその度にまた感じて行く。
これじゃリオウのこといやらしいとか、言えない。あたしってこうだったっけ…。
「嫌…?」
怖くなって聞いてしまった。そしたら、リオウが珍しく焦った声になる。
「や、嫌じゃないよ?むしろ嬉しいくらい。」
「…ばかっ…」
焦るくらいなら言わなければいいのに。ちょっと腹が立ったから脚を閉じようとしたけど、
それは許してくれなかった。
「ごめんね。」
リオウが優しくキスを落とす。キスしながら、あたしのそこに手を伸ばす。
さっき一度したからなのもあったと思う(じゃなきゃこんなになってないはず!)。
あたしのそこはもう十分、とろけそうなくらいに濡れていた。
588口説き文句:2006/06/15(木) 00:08:09 ID:h0ZQDk+j
「アイリ」
名前を呼ぶ。それを合図に、あたしの中にゆっくりとリオウが入ってきた。
「あっ…あう…うっ」
いやらしい音を立てて、少しずつ、リオウがあたしの中を満たす。
リオウが不意に唇を舐めて、反応して開いたあたしの口にそのまま舌が入り込む。
「ひゃ…う、ふっ…ぅっ…!」
最奥までたどり着いた。キスしたまま、リオウはあたしの一番感じるところを弄ってくる。
既に流れた液で濡れて、大きく膨らんでいたそこを、また濡れた指が擦る。
涙を捩じらせてしまうほどに、快感がまた大きくなる。
「あっ、ああっ…リオウ…っ…!」
あたしの中のリオウを締め付けると、リオウは急に動き始める。
ギリギリまで引き抜いて、また一気に奥までつらぬいて。あたしは体を大きく反らして、
声を上げてしまう。
「はぁっ、あっ、あ…んっ!」
いきなり乳首を吸われる。不意打ちのような攻撃にあたしはまた甲高い声を上げる。
大きく反応したからなのか、もう片方も摘み上げられて、それが良くて。
あたしはやっぱりそれが良かったので、もっともっと声を上げる。
「いっ…う、っあ、リ…オ…あっ」
あたしは泣きながらリオウを求める。手を伸ばすと、リオウが強く抱いてくれて。
あたしはそれが嬉しくて、余計泣きそうになって、リオウの唇を貪って、
恥じらいもなく腰を振る。もう悔しいとか思う感情はどこかに飛んでいった。
体がただただ快楽を求めてしまう。
「う…?」
不意に、リオウがあたしの体を持ち上げる。座ったまま繋がる格好で、
あたしは思わずリオウにしがみつく。体の自由はある程度きくようになった。
「リオウ…」
あたしは自分で腰を動かし始めた。多分、それが狙いだったんだろう。
でも、いいや。気持ちいいし。目の前の男に気持ちよくさせられるなら、それでも。
「あっ…あん…くっ…あっ駄目、もうあたし…もう…」
好き勝手に自分のペースで腰を振っていたら、すぐに限界が来てしまった。
「…っあ、ああっ…リオ…リオウ…すき…あっ…あ…!!」
びくんと大きく震える。小刻みに痙攣しながら、あたしは達した。
力が抜け、リオウにもたれかかる。
「イっちゃった?」
見れば分かるだろうに聞いてくる。もう反論する力もないから、あたしは素直に頷く。
けど。
589口説き文句:2006/06/15(木) 00:08:58 ID:h0ZQDk+j
「ごめんねー。僕、『二回目』だからさ。まだ、なんだ。」
え?…抵抗する暇もなく、またあたしは仰向けにされた。
「ぅあ…やっ…やああああっ!」
達したばかりで、まだ敏感な中を、今度はさっきよりも強く、思いっきり突かれる。
「ひっ…い、ああっ!…う…あっ、いっちゃ…!またっ…」
今日3度目の絶頂。それでもまだリオウはあたしを攻め続ける。
両方の胸を掴んで寄せて、痛いくらいに勃った乳首を嘗め回す。
あたしは汗と涙でぐちゃぐちゃになりながら、嬌声を上げ続ける
「アイリっ…!」
…最後はもう声も出なかった。気絶することもできないまま、動くことすらできない。
大きく脚を広げたまま、さっきよりは小さくなったリオウのが引き抜かれる。
「…あう・・・」
汗びっしょりであたしは動けないというのに、リオウはぴんぴんしている。
…敵わない…。
「ねえアイリ。それって誘ってる?」
動けないの!目で訴えると、リオウは笑いながらあたしを動かして横に寝かしてくれた。
良かった…これ以上攻められたらどうしようかと思ってしまった。
「好きだよアイリ」
「…あたしも。」
幸せだから、もうどうでもいいや。こいつのこと好きなのは確かだし。
「こーんなエッチな体、もう一生手放せないな。」
「リ・オ・ウーーーー…!」
息も絶え絶えなまま、声を上げた。好きだけど、でもなんか嫌だ!
「すぐにこういうかわいい目をするしさー。やっぱり誘ってるでしょ?」
笑いながら、涙のたまったあたしの目をなめた。もう無理…やめて…。



そうやって抱き合ってじゃれあって毎日を過ごしていたら、
彼の姉が死んで、彼の親友も死んで、戦いは終わった。
あたしは離れたくはなかったけど、どうしてもあいつの側にはいてやれなかった。
旅芸人はひとところには留まれないから。何もしてやれることはないから。
590口説き文句:2006/06/15(木) 00:09:57 ID:h0ZQDk+j
「おおーーー!!」
ボルガンの火吹きの芸に、観衆がざわめく。
いい反応だ。これなら今日のおひねりも大丈夫。
あの戦いから3年経って、リューベの村は大分活気を取り戻していた。
あたし達の芸で喜んでくれる人たちが多いのは嬉しい。さぁ、もう一沸きしてもらおう。
「さあて…そろそろ次の出し物に…そうだね、よしそこのあんた……っ!?」
人ごみの中を適当に指差した先にいたのは、赤い服を着た少年だった。

デュナン国の王をやめたというのは聞いていた。
ミューズに公演にいったときには、もういなかった。
会えなかったことは寂しかったけど、自由になったのならいつか会えるかもしれないと、
当てのない希望を抱いてもいた。
いつかと思っていたのに、今、いきなり彼は私の前に現れた。
都合のいい夢?いや、これは現実だ。人違いかもしれない。ううん、あれはリオウだ。
頭の中が整理できなくて止まっている間に、彼は並ぶ観客をかきわけて進んでくる。
姉さんとボルガンはどんな顔をしてるんだろう?公演はこの後どうやって続けよう?
考えているうちに、リオウはどんどん進んできて、気づいたら私は抱きしめられていた。
耳元で、3年前と変わらない、大人の男よりは少し高い少年の声で彼がつぶやく。

「君、かわいいね。僕のお嫁さんにならない?」
5916スレ970:2006/06/15(木) 00:10:34 ID:h0ZQDk+j
これで終わりです。
592名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 00:12:24 ID:n6N1gyzr
2主タラシすぎwwwwwwwwww
593名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 00:41:14 ID:dfRPIyNe
テラタラシwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
594名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 09:44:58 ID:6qt58OiV
タラスww
まぁ公式にも選択肢タラシなの多いしね
あれが普通に見えるから困る

>>プリクマ
ダーティーペアと答えていたら貴様の歳がばれるところだ…あれ?


ちくしょぉぉぉ!
595名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 10:13:37 ID:lyRa2PYu
ついうっかりボロを出してしまう>594に萌え。
そして>582超GJ。作品投下は久々だったので嬉しい。
雑談も好きだし悪くは無いけどやっぱり作品読みたいよ。

そんな自分はベルハヅとアレニア待ち。いつまでも待つ。
596名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 14:21:56 ID:V7mvgMrF
シュンミン待ち

レレイとエレシュとおにゃぬこ同士ちちくりあうのもいいなー
597名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 17:16:32 ID:rX/VVDI6
ルクレティアとキャザリー待ち
598名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 17:39:18 ID:hKr6m+Yw
ルナスの特別行政官と巫女とツンエルフと馬鹿三兄弟待ち
599名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 18:25:52 ID:6qt58OiV
ユリツンデレ粘着叩きタンにエロエロされるカミーユタン待ち
600名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 20:39:47 ID:3wkUJqyZ
>>594
そういやあったなあ、タラシ系の選択肢。『君、可愛いね』とか。
誰を落とす…じゃなくて誘う時だったかなぁ?
601名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 22:42:32 ID:hKr6m+Yw
こんな素敵なお嬢さんとごいっしょできるとは…リィナ
お姉さんも仲間になってよ…ローレライ
きれいな人ですね…エミリア
きみに会いたくて……ニナ
きみ、かわいいね…テンガアール
つ…つきあって……アニタ
きれいだね…カレン
きみみたいに、かわいい娘はかんげいだよ…ビッキー
すきにして…リキマル
602名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 23:11:17 ID:8KTDmlav
>>すきにして
ちょwwwwww
603名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 00:14:29 ID:wrrLAY7K
>>601
純真そうな顔してるくせに…リオウ、恐ろしい子…!
604名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 05:12:50 ID:9dC50YMR
アッー!
605566:2006/06/16(金) 06:34:07 ID:T0VoNmlm
>>596
ごめん…シュンミンモノだけどどうしても筆が進まない。
無期延期ってことにしてくだせい
6066スレ970:2006/06/16(金) 16:32:18 ID:DbKZ3O9Y
ネタ投下します。エロ描写はないんですんません。
607カリスマ:2006/06/16(金) 16:33:54 ID:DbKZ3O9Y
「はいっ、というわけで本日唐突に開催させていただきます、
『チキチキ!幻水主人公で魅力が一番あるのは誰だレース』!
司会とアナウンサーを勤めさせていただくフー・タンチェンです。
解説はファレナ女王国より軍師ルクレティアどのをお迎えしております。」
「ふふふ、よろしくお願いしますね。」
「なお今回の勝負は5人のビッキーさんのご協力により、時代地域を飛び越えて
全宿星の皆さんにビュッデヒュッケ城にお集まりしていただいた上で行います。
ルールは宿星を口説き落とすことのみ!単純です!つべこべ言わずに試合開始!
えー、ルクレティアさん、早速ですが今回の試合はどのような展開を」

「きみ、綺麗だね。今夜僕と踊ってくれない?」
「いいわよ。でも、私の踊りについてこられるかしら?」
「大丈夫、ターンにはちょっと自信があるんだ。」

「おおーっと!速い!!解説に話を聞く前に既に行動を起こしているリオウ選手!
早速ミーナ選手に目星をつけたようです。」
「自身のかわいさを自覚した上での素早い行動ですね。勝利への確実な道です。」

「…ばっかじゃねーの、こんなのやってられっか!」
「ラン」
「へ?お、王子様!?」

「おっとファルーシュ選手も既に行動を起こしているようです。
ランさんの手を取って見つめています。なおスキンシップはファールではありません。」
「いきなり女性の手を握れば拒否反応を起こされる可能性もありますが、
笑顔で有無を言わせない作戦に出ていますね。さすが我が主です。ふふふ。」
「放送席放送席、こちら会場の探偵キッド!僕の目を持ってしても天然なのかどうかの
判断はつかないよ。背中の露出についてはわざとかもしれない。」
「キッド君ありがとう。しかし露出もファールではありません。
ファルーシュ選手の技が光ります。」
608カリスマ:2006/06/16(金) 16:35:18 ID:DbKZ3O9Y
「…どんな勝負でも勝負は勝負…負けられない!司会者!衣装チェンジを要求する!」
「はい、それも認められています。どうぞ楽屋をお使いくださいクリスさん。」
ばっ
「おおーっと装いも新たに登場したクリス選手。
流れる銀髪にくっきり見える体のライン!これはかなりの結果が期待できますね!」
「そうですね。六騎士の皆さんやハルモニアの工作員のほか、
赤騎士や金髪の女王騎士も動きを見せそうです。美人には弱い人たちも多いですからね。」
「争奪戦が始まった場合の準備はしていないため、こちらとしては少し心配です。
おっと!どうやらクリス選手自身から誘うつもりのようです。相手は誰だ!」

「わ、私と付き合ってくれ!」
「ええっ、お、俺!?お、俺は駄目だ!!」
「な、なぜっ!?」

「クリス選手、フリックさんを選んでしまったようです。これは痛いですね。」
「彼は一生操を守り通すつもりなのでしょうね。女性からのアプローチは悪夢でしょう。
マントの色と顔色が同じになっていますから。おもしろいですけど。
この勝負では、シンさんと彼は選んではいけないでしょうね。」
「クリス選手、選択ミスで思わぬ時間を取られたようです。」

「何で俺がこんなのに参加しなくちゃいけないんだよ…ブツブツ…」
「おーや少年。どうしたんだい暗い顔して。もっと楽しまなきゃ。」
「わっ、お、俺は、ちょ、手、手をどこに」
「よさないかアニタ。こういう少年はもっと優しく扱ってあげなきゃ。」
「そうそう、こうやって少しずつ少しずつ。」
「や、やめてくれ!」
「ニフサーラも駄目よ。そんな風にがっついたりしちゃ。」

「ヒューゴ選手、行動を起こしてはいませんが何故か女性を集めているようです。
ルクレティアさん、これは?」
「野生のたくましさとうぶな少年性が同居していますからね。
手玉に取りたい、という女性の心理が働いたとしても不自然ではありません。
また、夜に勝負がもつれこんだ場合スタミナのありそうな体は有利です。」
「そうなった場合倫理規定に引っかかるかもしれませんが、
できるだけ最後までお伝えしたいと思います!」
609カリスマ:2006/06/16(金) 16:36:01 ID:DbKZ3O9Y
「トーマス様、みんな楽しそうですね!」
「う、うん、そうだね。このお城に活気があるのは嬉しいよ。」
「…」
「あ、ゲドさん。今お茶をお持ちしますね。お酒の方がいいですか?」

「勝負に参加するつもりがまったくない主人公もいるようです!」
「城主さんは平和を愛する人ですし、一方は112歳ですから。今回の勝負には不向きですね。」
「残念です。」

「はいラズロさん。これこの間遊んでくれたお礼。大事に使ってね!」
「あーリタずるーい!ノアもプレゼント用意したのにー!」
「あ、あの…これ、この間掘り当てたものなんです。良かったらどうぞ。」
「うちのお父さんが作った槍、すごく強いんです。ぜひ使ってください。」

「おおっと!これは意外!!
いつのまにかラズロ選手が年齢層の低い方々に囲まれています!無表情、無言!
一体ラズロ選手の何が彼女たちをひきつけているのかまったくわかりません!」
「無表情、無言、それに綺麗な顔、というのを付け加えるべきでしょう。
幼い彼女たちにとって、ラズロさんは着せ替え人形のように見えるのかもしれません。」
「正に神秘!真の紋章の謎の一端を垣間見ている気分です。
おや、ティル選手は先ほどからあまり動きがありません。少々苦戦している模様です。」
「彼は口説き文句や手段があまりありませんからね。
しかし、このままでは終わらないでしょうね。そろそろ本気を出すはずです。」

すっ
「三年前僕は…」
「ティ、ティル様…」

「出たー!!『片手のソウルイーターで顔を隠して暗い過去を語り出す攻撃』!!」
「つらい過去を背負った美青年というのは属性としては完璧に近いですからね。
主に全てを捧げ尽くすくのいちには特効でしょう。サスケ君の将来は暗いです。」
「おや、見えにくい位置ですが、どうやらアヤメさんも今の攻撃で落ちているようです。ルクレティアさん、どういうことでしょう?」
「暗い過去を背負って逃げ続ける男を追いかけたくなってしまう習性ですね。」
「一方、ミズキさんはあまり興味を示していないようです。
くのいち全ては落とせないみたいですね。」
「馬鹿な男をかわいいと思ってしまう、珍しいタイプのくのいちですから、彼女は。」
610カリスマ:2006/06/16(金) 16:36:58 ID:DbKZ3O9Y
「きみたち、帰るところがなくて困ってるんでしょ?僕のお城にみんなおいでよ。
ビッキーみたいにかわいい娘なら、何人いても困らないし。むしろ増えて嬉しいし。」
「「「「「えー、かくまってくれるの?ありがとう!あれ?
なんだかくしゃみが出そうになっちゃった。は、は」」」」」

「リオウ選手が5人のビッキーさんを一気に落とすつもりのようでしたが、
ここで残念ながらビッキーさんたちのくしゃみが発動しそうです!
「私としても結果が見られないまま帰るのは不本意ですが、仕方ありませんね。」
「大変残念ですが時間が来てしまいました!なお延長試合についての放送枠はありません。
第二回の放送を楽しみにして」
「「「「「はっくしょん!」」」」」
6116スレ970:2006/06/16(金) 16:38:19 ID:DbKZ3O9Y
終わりです。
612名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 17:58:16 ID:ClW/1H+j
GJ!
613名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 18:51:21 ID:lUfqOvXp
やべえw ティルの攻撃で爆笑してしまった GJ!
614名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 21:14:49 ID:SpBeSsAJ
すげー、歴代主人公の属性を余す所なく
生かし切ってるよ!GJ!

あ、一人忘れてた。キリル、カワイソス
615名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 21:43:10 ID:8JIfIYm8
キャラの個性が出ててわろす。エロもいいけど、こういうのも熱烈歓迎!

ナッシュも忘れないでー!!一番活躍できそうな人なのに。
616名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 22:00:14 ID:C0ksQ8VJ
風呂敷犬もいれてやってくれ
617名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 22:02:35 ID:9Py8Uert
歴代主人公の個性を比べると
一番個性があるのはラプソ4主で2主が一番無個性なキガス
未だに適当なあだ名もない。
618名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 23:42:04 ID:NQPj0NFp
あのたらしが無個性かね
6196スレ970:2006/06/16(金) 23:51:03 ID:9Xjcgz5v
じゃあせっかくだから全員に登場してもらいましょうか。
620カリスマ・裏:2006/06/16(金) 23:52:59 ID:9Xjcgz5v
「やぁトーマス君。私にもお茶もらえるかい?」
「あれ?ナッシュさん、参加しないんですか?」
「いやーちょっと疲れちゃってね。
いい機会だから銀髪の乙女さんと仲良くなろうとしたんだけど、
不良騎士とか赤騎士とか烈火の騎士とか…騎士ばっかりで斬り合いが始まってね。
おじさんも家宝持ってくりゃ良かったなー。」
「あ、あはは、クリスさん人気ありますよね…。」
「うん。あの気品とこうお尻のラインがきゅっとしてるのを見ちゃうとね。」
「…き、綺麗ですもんね。」
「城主さんは参加しないの?あーもう特定の人がいるから余裕なんだろう。このこの。」
「や、やめてください!」
「あはは、いいなぁ若いって。おや?あっちにいるのも主人公じゃないか?
どうも同じ外伝っぽさを感じるな、彼からは。」

「アンダルク…また振られたよ…命中スキルのない僕にはヒットなんて無理なんだ…。
ああ、もう人知れず歴史の裏舞台に消えちゃおうかな…。」
「き、キリルさまー!アイトーアイトー!
アンダルクはずっと(じじいになっても)貴方をお慕い申し上げております!」
「眼鏡に慕われても嬉しくも何ともないよ!この中途半端美形!
大体、何で僕だけヒロインが貧乳ロリなんだ…こんなこと間違ってる…
僕だってセネカみたいなお姉さんの方が良かった…なのにこの眼鏡が…。」
「き、キリル様誤解です!」

「た、大変みたいですね。」
「そうだねぇ…私もね、運が低くて色々苦労してるから、ちょっと分かるよ…。」
「そうなんですか…。」
「馬鹿みたいだね、どいつもこいつも。」
「ああっ!仮面の神官将さん!」
「おやぁー?仮面の神官将どのはこんな勝負には興味ない?」
「当たり前だよ…不特定多数の女性相手に媚を売って何が楽しいの。」
「そ、そうですよね!やっぱり真面目だなぁ。(ラスボスだけど)」
「ほほう。中身が30代だともうすっかり悟っているということかね?
おじさんも30代だがそこまでにはまだ至れてないなぁ。」
「馬鹿じゃないの。男としての機能はまだ10代なんだ。枯れるわけがない。
ただ、僕の場合はやり方がそこらの馬鹿とは違うだけさ。まず浚う。」
621カリスマ・裏:2006/06/16(金) 23:54:09 ID:9Xjcgz5v
「「はい?」」
「もちろん顔はなるべく綺麗な方がいい。苦しい状況に立たされていると、
より救い出した僕に対して執着するようになるからベターだね。
そこからは仕込みだ。もちろんいきなり襲い掛かるとかそんな野蛮なことはしない。
ああ、もちろん幼女の頃は一時しかないから貴重な画像は紋章で保存する。
好み、仕草、表情、化粧、全てを僕好みに誘導しながら育てあげるんだ。
成長のために時々胸は揉んだ方がいい。事に至った後も体の隅々、ひだの一枚一枚まで
嘗め尽くして調べ上げるんだ。完成品を見るマイスターの心境とでも言おうか。
まぁ、これは僕の師匠の技の一部に過ぎないけどね。」
「トーマス君、君はくれぐれもこういう黒い大人になっちゃ駄目だよ。
セシルちゅんにこういうことをしようとか考えないように。」
「あ、当たり前ですよっ!!」
「おや、コロクもモテてるみたいだよ。」
「え?」
「くぅぅぅぅ!!」
「シャアアアアアア!」
「コロクーー!?」
「おやおや、何だか随分大きいお嬢さんに追いかけられてるね。」
「お、お嬢さんって!あれって食べられそうになってるんじゃないんですか!?」
「トーマス君、恋愛は食うか食われるかだよ。私も昔吸血鬼に捕食されそうになったし。
少女から女に変わる絶妙な年齢のままの白い肉体にあの強気。
人間をやめちゃおうかなとちょっと考えたもんだよ。」
「変な昔話を始めないでください!!コロクー!!」
6226スレ970:2006/06/16(金) 23:54:42 ID:9Xjcgz5v
終わりです。みんな個性には溢れてると思うよ!
623名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 00:02:40 ID:9Py8Uert
GJ!
あいかわらずアンダルク乙でワロタwww
トーマスとセシルは性格にはカップルではないのに
一番受け入れられてるよな。
624名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 00:21:08 ID:EaXZt/an
爆笑した。腹がよじれました。

特に、ルックの問題発言、
>これは僕の師匠の技の一部に過ぎないけどね
って! レックナートさまーっ!ww
625名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 01:22:29 ID:6yZHg/78
ツマンネ
626名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 01:55:21 ID:swe24dND
レックナート様の少年趣味がついに神秘のベールを脱ぐのか!?
実は脱いだら凄い五百歳
627名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 01:56:58 ID:swe24dND
あっ四百歳位か
628名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 06:40:20 ID:Zq/UUiVm
レックナートのエロあっても良いと思うんだ
ウィンディとの姉妹レズも良いと思うんだ
629名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 09:46:19 ID:+gq6iNht
つかコロクを食おうとしてるのはビャクレンさんですかw
630名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 22:16:31 ID:emI+FMV9
ハラ痛い……。わ、笑いが……!!
自分はかなり楽しめたよ! GJ!
631名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 00:24:42 ID:DypnHCpW
よしキモい
632名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 14:24:21 ID:olo7WWek
イイヨイイヨー
633名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 06:52:23 ID:oiZZ4Axm
ミアキス×王子の逆レイプが読みたいのぉ・・・。
634名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 18:53:02 ID:asMSv6mq
それよりサイアリーズ×王子の筆おろしネタが読みたい
635名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 19:00:55 ID:l9d9f6aJ
だったら俺は原点回帰で王子×リオンが見たいよ
636名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 19:02:24 ID:jARyI3p7
王子の筆おろしはママンじゃないのか!
637名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 20:25:05 ID:nnaVJd+n
え?ふでおろしはハス様だろ?
638名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 20:32:57 ID:6OijV06b
ガレオ……
639アレニア恋物語(20) ◆IGA.li4jPs :2006/06/22(木) 22:25:01 ID:doKfwFIz
>>253-257>>322-324>>339>>377-381>>512-516
第五部の投稿です。
前回の投稿から丁度一月、アレニアと言う名の給金を皆様に…。

食事が済んだ後は迎えが到着するまでの時間は異常に長く感じられた。無理もない。
普段の私なら忙しく王宮内部を駆け回っているから時間が経つのが速かった。
しかし、こうしてゆったりと時を過ごすのは本当に久しぶりな事でどうやって時間を過ごそうかつい迷ってしまう。
食後の運動として本陣の周囲をフラフラする訳にも行かない。
「暇だ……」
壁にもたれて目を閉じる。
更に気持ちを落ち着かせ周囲の音に耳を傾ける。風が通り過ぎる音が微かにしている。
こうしてまた、自然の音を聞く事もそうなかった。
今日までゴドウィン軍の一武将として幾多の戦場に赴いた。
そこは甲冑の擦れる音、剣同士の鍔迫り合う音、矢が空を引き裂く音、威嚇、悲鳴、怒号…ありとあらゆる音が存在するが
それらは皆雑音にしかならない。その様な音で心中穏やかになれるのは狂人としか言えない。
束の間の休息時もやはり喧騒が渦巻いた。
体を張って戦場に立つ兵士達にとって食事の時間が唯一の楽しみなのだ。故に喧騒が大きくなるのは止むを得ない。
私もそこの部分は理解を示しているので何も言わなかったが心中は複雑な物だった。
しかし、多くの血が流れたこの闘いもいよいよ大詰め。
今は敗戦の将となった私だが、これ以上余計な血が流れぬ事には正直ホッとしている。そして自分自身にも…。
何となくだが、こうして生きている事が正解だった様な気がする。
今も胸に忍ばせている「烈火の秘薬」を飲むスキを与えずに一蹴されたのは私の腕がまだまだ未熟な証拠。
しかし、それ以上に私達の様な反乱軍の者でも生かしてくれた王子殿下並びに諸卿には感謝せずにはいられない。
生きて罪を償う事こそが天が私に与えて下さったある意味の「罰」なのかもしれない…こうなる事が分かっていたらもっと
早い時期に行動を起こしていたら結果は変わっていただろう。
しかし、その時の最善を尽くした結果がこうなったのだからこれはこれで割り切りたいが…。
そう言えば、先程からミアキス殿の姿が見えない。
ゼラセ殿は私の横で先程から読書をされているしこの様な時に一体何処へ…彼女の事なので何も起こらないとは思うが一抹の不安がよぎる。
そんな事を考えている内に本陣へレレイ殿が入ってきた。
640アレニア恋物語(21) ◆IGA.li4jPs :2006/06/22(木) 22:26:35 ID:doKfwFIz
「アレニア様、護送の準備が整いました。こちらへ…」
「あぁ、すまない」
「護送の方法ですが、ソルファレナ周囲の治安が未だ不安定な為、陸路を通るよりも大河を利用した方が安全だとの結論が出ましたので
そちらを利用する事になりました」
「…異論はない、宜しく頼む」
私はレレイ殿の言葉に軽く頷くと船着場へと案内される。その横をゼラセ殿が寄り添う様に歩を進める。
「ゼラセ殿………ご足労をお掛けする」
「これ位大した事ではありません。向こうの城にやり残した用事を思い出しましたので貴女に同行するだけです」
「…用事、ですか…」
「どうしました?何か引っ掛かる事でも?」
「いえ……こちらの事ですのでご心配には及ばぬ様…」
眉間にシワを寄せるゼラセ殿の顔を見て私は否定する。
ゼラセ殿からすれば私は黄昏の紋章を悪用した大罪人の筈だ。それを私が反省の意を示しただけであっさりと許してくれた。
この事に関しては私の中にも複雑な物がある。改めて真意を問い質すのも手だが果たして問い質して良い物なのかどうか迷う所だ…。
決してこれだけで許されたとは私の中では微塵も思っていない。償える事柄があるなら彼女には是非言って頂きたい。
やがて船着場が見えてきた。その周囲は兵士達によって厳重に警備されている。
太陽宮が陥落したとは言え油断は出来ない、と言った所だろうか。今まで歩いてきた所よりも明らかに兵士の数が違う。
「…ん?あっ!アレニア殿ぉ!」
私の姿を見てかつて同じ女王騎士だったカイル殿が走ってきた。
私はどうもこの者は苦手の類である。何と言えば良いのか分からぬが、掴み所が無い性格が妙に癪に触る。
本人には悪気は無いと思われる行為も私からすればアウトな事もある。
「良かった、元気そうで何よりですよー」
「…貴殿こそ息災で何よりだ」
「またまたぁ、そんな堅苦しい挨拶は抜きにしましょうよーハハハ」
カイル殿の笑う顔を見てどの様な顔をすれば良いのかが分からない。深く考えるほど憮然とした表情になってしまう。
しかし、カイル殿はそんな事を気にもせずに話を続けた。
「これからサンポート城に護送されるんですよね?」
641アレニア恋物語(22) ◆IGA.li4jPs :2006/06/22(木) 22:27:34 ID:doKfwFIz
「…まぁ」
やはりカイル殿もこの任務の担当になっていた。
ミアキス殿と良いカイル殿と良いどうも一癖も二癖もある人物がこうも護衛の任務に当たるのだろうか。
「じゃあザハーク殿と一緒ですね。彼もついさっき到着したトコですから早速お逢いになります?」
「それは…」
同じ女王騎士の間柄とは言え、ザハーク殿は年齢的にも実力的にも「先輩」に値する。私などまだまだ下の方だ。
これまでザハーク殿には何度も私の失敗の尻拭いをして貰っており、その度に申し訳ない気持ちで一杯になり謝罪してばかりだった。
彼は「気にしなくても良い」と言ってくれたが気にしない方が無理な話だ。それも体調不良の原因の一つになったと言っても過言ではない。
「今回もまた…迷惑を掛けてしまった……」
「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。ザハーク殿も今回の事に関しては「止むを得ない事だ」って言ってますし…誰もアレニア殿の事を
責めたりはしませんよ」
「それは……」
「まぁ、逢ってみれば分かりますよ」
カイル殿に手を引かれ私はザハーク殿の居る元へ連れて行かれる。
船内は思ったより広かった。私達が普段使用する船ならここまで広くはない。司令室がそこそこ広い程度で後は結構粗末な造りだ。
「はーい、アレニア殿お待ちぃ」
船室に入るなりカイル殿はいきなり手を離す。
「ちょっ…!」
軽く勢いのついた状態で前に飛ばされたので踏ん張りが効かなかったがそれでも何とか踏み留まる。
「アレニア殿…」
カイル殿の言う通りザハーク殿はそこに居た。軽くイスに腰掛け私を見つめる。その目は普段と変わりなく鋭く冷たい物だった。
(この目は……未だにこの御方は…)
「さぁさぁ、いつまでも立ってないで座って下さいよ」
ザハーク殿の横にカイル殿が腰を降ろして手招きをする。とりあえず私もイスに腰を降ろした。
「あれぇ?そう言えばミアキス殿は?」
「それは私も気になっていた…何処へ行ったのか」
「珍しいなぁ、ミアキス殿が勝手に居なくなるなんて。アレニア殿の傍にずーっと居たんでしょ?」
「途中までは、な…」
目の前には籠に果物が盛られていた。
恐らくは好き勝手に食しても良いと思われるが…それらを見ながら勝手に食して良い物か悩んでいるとザハーク殿の手が籠へ伸びた。
その中からリンゴを取ると持っていたナイフで器用に剥き始めた。普段の彼からは想像出来ない光景に私とカイル殿は呆気に取られていた。
「へぇ…こいつは驚いた。ザハーク殿って手先が器用なんですねー」
その言葉にザハーク殿は何も言わない。その代わりに不満そうな目をしてカイル殿を睨む。
カイル殿は「やだなーそんな目をしないで下さいよー」と言って笑う。
642アレニア恋物語(23) ◆IGA.li4jPs :2006/06/22(木) 22:28:54 ID:doKfwFIz
剥かれたリンゴはザハーク殿の手の上で八等分に切り分けられる。更にそれを持っていた手拭いに並べて私の目の前に置く。
「…食べられよ」
「え…あの…」
「気にする事はない。貴殿がじっと見つめていたのに刺激されただけの事だ」
そう言って彼は切り分けられたリンゴの一つを手に取って食べ始める。カイル殿もそれを見てリンゴに手をつけようとするとザハーク殿が
その手をピシッと叩いた。
「えっ!何で俺だけダメなんですか!?」
「…はしたない」
「えぇっ!?そんな理由で拒否されると参っちゃうなぁ…」
思えば今回の戦闘で私は敗者の立場に居ながら色々と得る物があった。それは「形」ではなく目に見えない「思い」が圧倒的に多い。
私は少なくとも今は望まれた存在ではない。
こんな疎まれる存在に在りながらこうも好意的に受け入れてくれる場所があろう等とは戦闘に入る際は露も思わなかった。
それだけ気持ちが荒んでいたのだろう。少しずつではあるが乾いた大地に水が満ちる…今はそんな気分だ。
「どうした?食べないのか?」
「いえ…頂きます」
一口かじったリンゴは甘酸っぱい。甘みが満ちるには時が早過ぎたのだろう…それでも今の私には充分な食物だ。
「しかしこれからもう一つ忙しくなりそうですね。太陽の紋章が戻るのは時間の問題としてこの後が…あーぁ、やっと一息つけると思ったの
に残念だなぁ」
「……………」
「でもまぁ、みんなが協力すれば何とかなるんじゃないですかねー今までだってそうやって幾つもの難局を乗り越えてきたんだし」
「…何が言いたいのだ、カイル殿」
「え?俺、何か言いましたっけ??」
そう言ってカイル殿はニヤッと笑う。それを見たザハーク殿は半ば呆れ気味に溜息をついた。
そんな二人のやり取りを私は黙って見ているしかなかった。
「どうしたんです?さっきから浮かない顔をして」
カイル殿が私の顔を覗きこんでいる。
彼に視線を合わせられると私の胸の内を見透かされている気分になるのであまりいい気はしなかった。
その事を彼は知っているのだろうか。私はさりげなく視線を逸らした。
「…何でもない」
「ホントですかぁ?アレニア殿は何でも深く考え過ぎなんですよ。だから体に余計な負担が掛かってどうにもならなくなるんです。
もっと気楽に構えましょうよ」
「まぁ……まぁな…」
「よさぬかカイル殿……彼女も彼女なりに努力しておるのだ」
カイル殿の執拗な追求をザハーク殿が上手い事断ってくれた。私は視線で感謝の意を表す。
「それなら問題ないんですけど…アレニア殿は頭が固いからなー」
「くっ…」
それを言われると反論する余地はない。私は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる。
「んーーそろそろ出航する時間の筈なんですけど…遅いですね」
「…何か手違いでも生じたのではないか?……良くある事だ」
「ちょっと俺、様子を見てきますね」
そう言ってカイル殿は部屋の外へ出て行った。室内には私とザハーク殿二人だけになる。
643アレニア恋物語(24) ◆IGA.li4jPs :2006/06/22(木) 22:30:14 ID:doKfwFIz
ここまで来て言うのもあれだが、やはり捕虜をこの様な形で放置するなどありえない事だ。甘いと言うか無用心だと言うか…。
部屋の中に沈黙が流れる。
ザハーク殿はイスから立ち上がって窓際に寄り添い外を眺めている。私はその姿を背後からぼんやりと眺めていた。
外は兵士達が慌しく動き回っているのか甲板を踏み鳴らす音がひっきりなしだ。
「…妙な気分だ」
ザハーク殿はふと呟く。
「我々は罪人だと言うのにあまりにも待遇が良過ぎる…何かウラでしておるのではないかと思うのだが……」
「その気配もない、と…」
「あぁ…」
ザハーク殿がこちらを振り向く。
「…その通りなのか、それとも我々が気付いていないだけなのか…どちらにしろメルセス卿の真意が読み取れない」
「あの御方は昔からあんな感じだったと聞いております。彼女の真意を読み取るのは至難の業でしょう…」
「そうか……」
「どちらにしろ我々の負けです…今は意に従うのが得策だと…」
「…そうだな」
彼はそう言うと残りのリンゴに手を伸ばす。
「しかし、貴殿にしては珍しい判断だな…何かあったのか?」
「……憑き物が落ちた、とだけ申しておきましょう」
それだけ言うと私は軽く頭を下げる。
「この機会にこれからの事を色々と考えたいと思います。今の私は何がしたいのか…時間は沢山ありますし」
そう言ってザハーク殿を真っ直ぐに見る。
「…それも良い事かもしれんな」
かじりかけたリンゴを口に放り込んで彼は軽く笑った。
「ザハーク殿はどうされるおつもりですか?」
「そうだな…」
ザハーク殿は腕組をして考え込んだ。
「恐らくだが……そう長くはこの地に留まる事は無理だろうな。国外追放されるのは確実だろう。まぁ、我々はそれだけの罪を
犯したのだから止むを得んかもしれないが…」
「……………」
「出来る事ならこの地でもう一度初めからやり直したいと言う気持ちもある。どちらの判断が下されるのかはその時になって
みないと分からないな…」
「私もそれには同意見です。生きて罪を償う事が一番の行いだとメルセス卿にも言われましたし………それに」
「…ん?」
「何と言えば良いのか分かりませんが……私の周囲に私の事を想ってくれている人が居る事を今頃になって気付かされました。
罪に穢れた私に想いを寄せてくれている人間も居るのだと…絶対に在りえない事柄だろうと決め付けていた私が恥ずかしい限りです…」
「そうか………貴殿もまだまだ心は「乙女」だな」
「なっ…!どう言う意味ですかそれは!」
「別にけなしておる訳ではない。それだけ感受性が豊かだなと言いたかったのだ。私みたいな白けた人間と違ってな…」
その目は先程の鋭い視線とは全く異なる物だった。
普段の威厳漂う彼からは想像も出来ない悲しそうな目。この瞬間だけザハーク殿が妙に老けて見えた。
644アレニア恋物語(25) ◆IGA.li4jPs :2006/06/22(木) 22:30:53 ID:doKfwFIz
「白けた人間だなんてとんでもない。私こそ感情だけで動く人間ですのでロクな事が何一つ……これでは何の為に女王騎士に…」
「…それ以上言われるな」
ザハーク殿が手で私の言葉を遮る。
「貴殿も職務を良くこなしておる。それは私も認める働きぶりだ。失敗が多いのは現場慣れしてない証拠に過ぎん…経験を積めば円滑に
事を行なう事が出来る様になるさ」
「ザハーク殿…」
「カイル殿もチラッと言っておったが貴殿は物事を深く考え過ぎなのだ。深く考え過ぎると返って深みに嵌って抜け出せなくなる。
それは重要な局面になればなる程に。そこを治せれば貴殿はもっともっと伸びるだろう」
「勿体無いお言葉……有難うございます」
「貴殿に何もしてやれなかった私を許してくれ…」
顔を上げた先にザハーク殿と視線が合う。何故だか分からないが妙に可笑しくなり二人で笑う。初めての事だった。
「失礼しま……?」
レレイ殿が扉を半分開けた所で固まる。
私達が笑っていた事がそんなに奇異に見えたのだろうか、口が半開きになったまま微動だにしなかった。
「レレイ殿、どうかされたか?」
ザハーク殿の呼びかけにハッとなりレレイ殿は戻ってきた。
「え、あぁ…失礼致しました……えぇと………」
「??…先程の光景が衝撃的だったのか?」
「いえ!そ、その様な事は………あ、思い出しました。出航の準備が完了致しました。これよりサンポート城の方へ護送する事をお伝えしようと…」
「そうか……だそうだ、アレニア殿」
「万事レレイ殿にお任せ致す…宜しく頼む」
「は!!」
レレイ殿は我々に最敬礼した後、甲板に凛とした声で高らかに宣誓した。
「これより本艦はサンポート城までの護送の任務に入る!!総員、出航!!」
645 ◆IGA.li4jPs :2006/06/22(木) 22:32:58 ID:doKfwFIz
第五部完了です。うっかり上げてまった…。
次回よりシーンが本拠地に移ります。
646名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 12:59:47 ID:tk/9V5yF
亀だがGJ!
このシリーズ好きなんで期待してます
647名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 17:33:36 ID:1U5zv26x
難しい顔しながらりんごをうさぎカットにするザハークを想像した
648名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 23:00:29 ID:M2BRubq4
笹切りも混じってるとさらに(・∀・)イイ!!

変わり種なサイアリーズ様に足蹴にされて(*´Д`)ハァハァするギゼルきぼん






…………あ、本編の香具師は既にそうか。
649名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 23:12:47 ID:PpFMf06+
当初ライバル視してたにも関わらず、女らしい情緒にかける男前なハヅキを見かねて世話を焼いてるうちに、
いつのまにかベルクートをライバル視するようになったマリノ×ハヅキ…に萌えるのは漏れだけ?
650名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 22:35:00 ID:gJvJhtsi
正にそんな感じのハヅキ×マリノ風味なら見たことがあるな。
651名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 23:54:48 ID:Jl0rKsX0
しかし、それだとマリノが尻軽女に見えてしまう罠





誰だ元から尻軽だとか言ってる奴!!
652名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 11:19:41 ID:JJ+adseC
そこでハヅキにマリノ製冥夢の秘薬飲ませて
「ベルクートさんに近づくならこうです」と調教しているうちに情がわいて…
653名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 16:13:20 ID:cyWcYVK0
>>651
全く失礼な話だよな
あのピザ尻のどこ見て軽(ry
654名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 17:25:23 ID:+e0ap4Vz
日記はここで途切れている…
655名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 23:12:53 ID:2T/VNM/l
過去作品みてみたけど、レックナートのエロがないよう!
同じオババでもシエラはあるのに
ウィンディと姉妹レズとか
ルックに犯られるとか
ハルモニア兵に失明するようなハード凌辱されるとか

美少年に夜ばいかけて襲うのも可
656名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 23:55:27 ID:amquhMgn
 なんつーか、こう、レックナート様は汚しちゃアカンっていうか、
色々超越しちゃってる気がするからなぁ……。

 しかし家出前(暴走気味)のルックにやられるのはイイかも。とか思った。
657名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 01:20:54 ID:XQmCw5ec
ぜんぜんエロじゃない小説は板違いじゃあるまいか?
658名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 06:51:14 ID:49r3thuW
ジーンさんに比べたら人間臭いとおもうよ
年齢も出身もわかってるし、ウィンディなんて壊れた姉もいるし
それに、390年前はょぅじょだったんだぞ!
659名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 18:53:07 ID:UpP5+eri
サイアリーズ様も15年前はょぅι゙ょですが何か?
ミアキスも10年前は(ry
660名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 21:45:27 ID:pgKRhVPR
ヒント:レックナートの声
661名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 22:32:37 ID:49r3thuW
普段神秘的なレクナート様がよがり狂うとこがみたい
目見えない彼女が
「いや!止めて姉さん!こんな事…もう、いやぁぁっ!」
でも本当は感じてるみたいな
だって何百年も男日照りだろうし、幼い頃から一緒だった姉と昔の悪ふざけみたいに
662名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 23:19:18 ID:CnKvzDGw
むしろ、レックナート様が、歴代の主人公達を夜這いしまくりんぐwww
3のみなさんと4主にも行って欲しかったなあ。
レック→クリスのレズなんか、ねっとりとやばい。
663名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 23:33:34 ID:yxOvTHGP
>>662
4主には来たが?
664名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 23:39:29 ID:CnKvzDGw
あれ、4主にきたっけ?石版無かったのは覚えてるんだけど。
665名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 20:27:14 ID:9X/FPUxV
レクナートって、主人公選びする時、鼻歌とか歌いそうだよな
「ふんふふ〜ん、次はどんな美少年にしようかしら…
いゃん困っちゃーう」

歳を考えて下さい!
666名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:21:32 ID:EuyGr3JG
>>664
4では、眠る4主の枕元に何度か現れてくれたぞ
レック様は。
667名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 23:52:15 ID:70szHSYr
Vではルックの回想とEDにしか出なかっただけか。
ヒューゴとゲドは好みじゃなかったのか?w
668名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 00:30:38 ID:q92D0Lv2
てんかいせいじゃないしな
669名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 03:37:18 ID:+LN0h+k7
トーマスの枕元にたってうぶなトーマスにあれやこれや…

うん、これイイ!!!
670名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 04:53:10 ID:6L/OTZrP
んでトーマスの貞操の危機に駆け付けたセシルを巻き込みww
671名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 21:16:44 ID:cjeyO3Js
やっぱ被凌辱ネタがいいよ
盲目の美女なら凌辱に最適でないの
672名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 02:21:03 ID:X88iCeP1
>>671
実はネタ的にはおいしそうなんだよなあ…。
介護というか手助けしようと思ったらつい手がいけないとこに、
みたいなのが好みだが。
673名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 03:29:40 ID:hxlnoP0t
ツヴァイク先生がレク納豆に襲いかかったりとか
674名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 05:26:31 ID:Q8rGkLox
おまいらツヴァイクなら何してもいいってわけじゃないんだぞw
675名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 07:20:58 ID:BuEzeuTV
男は度胸!
 なんでもやって
      みるものさ
 高和
676名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 09:18:50 ID:bw/SzFI6
主人公の睦ごとを覗き見しながらオナヌーする
レックナート様
677名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 10:31:19 ID:odrEr1u9
レクナート様は盲目だとあれほどry
678名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 10:34:17 ID:bw/SzFI6
心の目があるじゃない
679名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 12:39:59 ID:VxC/uIZm
汁つきもいいが、あえて縛られて遠巻きに眺められるというシーンで…
たとえば発動前に捕らえられちゃったアルママンが玉座に縛られて視姦されたり
クリスが敵に捕らえられて連行されるシーンとか…
680名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:30:16 ID:SvMDbK5J
せっしゃはカミーユタンのエロスが読めれば、それで幸せナリヨ
酔って人格変わった(関所で坊ちゃんにゴルァしたみたいな)グレミオに
無理矢理押し倒されたりさ
681名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 23:53:01 ID:MTwZKV2A
2,3年前にT主とレックナートでH後の会話みたいなSS読んだ記憶がある
どこのサイトか忘れたがもう一度読んでみたいもんだよ
6826スレ970:2006/07/03(月) 14:01:24 ID:0fAAqlgI
レックナート様のエロとは、お前らもまた無茶を言ってくれるぜ。
683名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 14:02:25 ID:0fAAqlgI
燃える故郷。矢で打ち抜かれる一族の者たち。
一族の紋章魔法をもってしても持ちこたえられない。
「もう諦めて、その紋章を渡せ。世界の安定のために。」
痛みでかすむ目でははっきりとは見えないが、相手は真の紋章を使おうとしている。
私たちよりも完全な紋章をはるかな昔から使ってきた男。敵うわけがない。逃げるしかない。
「いつか…いつかあんたにこの代償を払わせてやるわ!この紋章で!」
『姉』の手の甲に門の紋章が閃く。私も力を合わせ、転移魔法を発動した。

目が覚めると、いつもの寝室の中でいつものように寝ていた。
何のことはない。ただの夢だ。しかし、一瞬何が起きたのか分からないほど、
現実味のある夢だった。あの日の恐怖と屈辱がはっきりと蘇る。手のひらの汗を感じる。
とんとん、と軽いノックの音が聞こえた。それにも、体がびくっと反応する。
「おはようございます、レックナート様。お食事の用意ができました。」
「ええ、すぐ行きます。」
弟子の少年の声に応じて、寝台から身を起こした。

着替えて部屋から出ると、戸の先にはすぐにルックが立っていた。
私が出てきたのを見て、ゆっくりとした足取りで食事の間の方に歩いていく。
見えぬ目とは言え、長年暮らした塔でもあるし、精霊の声もあるから困ることはない。
しかし、前を歩くものの音があればよりわかりやすいのも確かだ。その心遣いが嬉しかった。
ふいに、先ほどの夢が頭をよぎった。
私達の村を焼いたあの男と、私の前を進むこの少年は、『同じ存在』なのだ。
歩を早くして、ルックの体に後ろから抱きついた。腕で、彼の両腕を封じる。
「レックナート様!?」
ルックが驚いた声をあげるが、構わない。首筋にふっと息をふきかけると、
彼の背中がぞくぞくと震えるのが抱きついた体に伝わる。
684名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 14:03:38 ID:0fAAqlgI
「や、やめてください!セラに見られたら!」
「彼女は今寝室で昼寝でもしているのでしょう?昨日は良く眠れなかったようだから。」
「け、けど!」
忌まわしいあの日、姉と私の故郷を涼しい顔をして焼いた男と同じ声。
黙らせてやりたくなって、顔をこちらに向かせて唇を奪った。
抵抗するように押し縮まっている舌を無理やり解いて絡めとる。
しばらくそうやって責めてやると、抵抗もしなくなりルックの舌も応じるようになった。
両手で彼の顔を探る。手のひらに伝わる感触と、精霊の声が彼の顔の造作を教えてくれる。
自分の写し身がこうして私に犯されていることをあの男が知ったら、どんな顔をするだろうか。
彼の衣の合わせ目から手を入れ、男根を軽く掴んだ。
「ん、んむぅ!?」
私の動きにルックは身をよじらせ抗おうとするが、
彼自身のものを握られていてはどうすることもできないだろう。
彼の口内を犯し続けながら、手で軽く男根をしごいてやる。
「はぁ、ん…」
興奮で息が荒くなり、それも少しずつ硬くなり出した。
かさを刺激するように、強く激しく手を動かす。彼の体も硬直していくのが分かる。
そろそろ限界だろう、と思ったところで、強く根元を握り締める。
「うぁっ、レックナート様!?」
口を離し、彼が抗議する。
685名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 14:04:40 ID:0fAAqlgI
「あなたが何をして欲しいのか、言うことができたら離してあげましょう。」
息をつめ、震えながら逡巡している彼の姿が『見える』。
当然だろう。これまでこんなことを要求したことはない。
彼をいたわるようなふりをしながら、受け入れただけだ。無理をさせたこともない。
しかし、今日は特別だった。この声が、私に従うところを聞きたいのだ。
「お願いします、い、イカせてください…!」
「よく言えましたね。」
手の力を緩め、おまけとばかりに擦ってやった。
「うっ…。」
息が漏れる程度の声で彼がつぶやき、果てるのが分かる。
どん、と、軽く突き放すように手を突き出し、彼の体を離すと、ルックは力なく床に沈みむ。
「食事の前に、着替えてきなさい。」
「は、はい、レックナート様。」
言い渡し、私はまた歩き出した。後ろで、よろよろと自室に戻るルックを感じる。
私も熱いものが溢れ、衣を汚しているのが分かったが、構う気にはなれなかった。
6866スレ970:2006/07/03(月) 14:05:42 ID:0fAAqlgI
これで終わり。…書いたらレックナート様のエロというよりルック陵辱になった。すまん。
687名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 16:33:59 ID:MDeKrYfT
GJ!!こんなことしとるからルックはグレちゃうんだレックナート様エロいよ!レックナート様。
688名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 19:39:39 ID:qQKdm7kC
百年近く引きこもって世間知らずなレクナート様は
実はウブな処女だよ派な俺とは認識が決定的に違うが、エロいな
大人(過ぎ)の女の悪意溢れる悪戯に、普段クールなルッキュンもこのざまだ
689名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:00:37 ID:DBa44RHi
昔のヤツ読んでたら面白いネタがあったので掘り起こしてみる


【ノーブラ】    リムスレーア、メルーン、エレシュ、シュンミン
【スポーツブラ】 スバル
【Aカプ】    ルクレティア、チサト
【Bカプ】    リオン、レレイ、ルウ、ウルダ、ラニア、フェイレン、ローレライ、ニフサーラ
【Cカプ】    アレニア、ルセリナ、シルヴァ、ハスワール、ビッキー、ノーマ、ハヅキ、キャザリー
【Dカプ】    マリノ、ユマ、サギリ、イザベル、ゼラセ、シャルミシタ
【Eカプ】    ミアキス、ラン、リンファ、ニケア、マハ
【Fカプ】    サイアリーズ、ネリス
【Gカプ】    アルシュタート、ズンダ、フヨウ、ジーン、ベルナデット
【奇跡】    キサラ   

修正頼んだ。ケツは無理だった。
690名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:03:05 ID:TMupcTwB
リオンBも無いだろ…
691名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:15:12 ID:GTdrIorB
>690
スバルとどっこいだろうな。
692名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:24:59 ID:Y/EDz7D8
>>686
モギャー!!
ヒクサクと絡めてくるとは思わなんだ。
GJ!
693名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 11:30:10 ID:CoywuKkB
レックナートはウィンディのことを思いながら、ベッドの中で
声を殺して泣きながら自慰をしてそうな人派な俺も萌えた。
694名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 12:03:22 ID:RyY9yjkW
ハヅキはBだと思う
ランはもっと↓でもいい(・∀・)
695名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 15:11:34 ID:DsQSwWyS
マリノのDカプはどう考えてもただの脂ぼ(ry
アンダーがすごいサイズなんだなきっとw
696名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 16:21:01 ID:g3TLz2o6
ミアキスはEもないだろ
あの服は着膨れすると思う
697名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 17:27:31 ID:jX+LtzpZ
ネタ投下したヤツだけども
リオンは迷ったんだけど設定資料見てたら別にないわけじゃないなと思ったんだ。スバルレベルだろうか。
ハヅキは鎧つけててあれだし鍛えてるからCかと思ったが確かにBかもしれない。確かにランはもっと上か
>>695言うな。笑
本拠地の人間がミアキスは隠れ巨乳だって言ってたから……巨乳ってEぐらいか?と安易な考えだったすまん
698名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 17:37:20 ID:nl3nxNNv
鍛えてると必然的にアンダーも大きk(ry
ハヅキもゲオルグみたいに日本人体型だとしたらなおさらじゃね。
699名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 17:45:45 ID:Y/EDz7D8
ムラード先生ならみんなのサイズ知ってるよ。
本拠地でこないだ健康診断したから。
700名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 18:49:15 ID:+XYPTTjR
        ゴガギーン
             ドッカン
         m    ドッカン
  =====) ))         ☆
      ∧_∧ | |         /          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     (   )| |_____    ∧_∧   <  おらっ!出てこいムラード
     「 ⌒ ̄ |   |    ||   (´Д` )    \___________
     |   /  ̄   |    |/    「    \
     |   | |    |    ||    ||   /\\
     |    | |    |    |  へ//|  |  | |
     |    | |    ロ|ロ   |/,へ \|  |  | |
     | ∧ | |    |    |/  \  / ( )
     | | | |〈    |    |     | |
     / / / / |  /  |    〈|     | |
    / /  / / |    |    ||      | |
   / / / / =-----=--------     | |
701名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 19:27:43 ID:bYWhE9Wk
リオンの女王岸姿は胸あての分を差し引くと…
私服もカシュクールはたるんだゆとり分で胸が大きく見える筈なんだが…

私服でビキニでカシュクールを選ぶその心の襞を汲み取ってあげようじゃないか
702名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 20:02:10 ID:40HMwxxA
ほらサギリが表情無くしたように元カクリヨの影響で
性知識・性意識とか無くなっちゃったんだよきっと…
703名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 20:04:17 ID:0Apa3fP2
一部俺なりに改正。
みんなの意見も足してみた。
特にアンダーがでかそうな方々を修正。

【ノーブラ】    リムスレーア、ミルーン、メルーン、エレシュ、シュンミン
【スポーツブラ】 スバル
【Aカプ】    ルクレティア、チサト、リオン、ルウ
【Bカプ】    レレイ、フェイレン、ローレライ、ニフサーラ、ハズキ、ノーマ、ハスワール
【Cカプ】    アレニア、ルセリナ、シルヴァ、ラニア、ビッキー、キャザリー、ウルダ、マリノ
【Dカプ】    ユマ、サギリ、イザベル、マハ、シャルミシタ、ミアキス
【Eカプ】    ラン、リンファ、ニケア、ゼラセ、フヨウ、ズンダ
【Fカプ】    サイアリーズ、ネリス
【Gカプ】    アルシュタート、ジーン、ベルナデット
【奇跡】    キサラ

新意見求む。
新SSも求む。   
704ウィルボーン:2006/07/04(火) 21:01:43 ID:+0x6YPu9
乳談義豚切りスミマセン。
テオとソニア投下します。エロはほとんどないので、嗜好にあわない方は
お手数ですが、スルーお願いします。
705テオ×ソニア1:2006/07/04(火) 21:02:22 ID:+0x6YPu9
遠征の前日にソニアの屋敷で過ごすことは、すでにテオの習慣になっていた。
数ヶ月前までは、それはほんの一時間ほどの短い逢瀬であった。父親として、
一家の大黒柱として、出征前の最後の夜を家族で過ごすのは至極当然のことだったからだ。
だが、今は家に帰っても迎えてくれる者はいない。
家政婦によって掃除され塵一つない部屋、コックが作る豪華な食事も、テオにとっては
無味乾燥のものでしかない。
あの雨の日を境に、全てが変わってしまったのだ。
テオが年若い恋人であるソニアに温もりを求めるのは自然の成り行きであった。

「どうしたソニア、今日はやけにおとなしいな」
食事を終えて寛ぎながら、テオはソニアに問いかけた。普段のソニアなら、たとえどんな
過酷な遠征の前日でも笑顔で接してくれていた。同じ武人として、残された者に悲しい顔を
されるほど滅入ることはないと分かっていたから。だが、今夜ばかりはそうもいかない。
「いつもは笑って送ってくれるじゃないか。今回も笑って見送ってくれ」
テオはいつもと変わらぬ笑顔でソニアの肩を抱いた。伝わってくる熱にうかされ、ソニアは
意を決して顔を上げた。
「テオ…。こんなこと言ってあなたを迷わせるのは本意ではないけれども、一度だけ言わせて。
今からでも間に合うわ。戦には行かないで」
「君らしくもない弱気な発言だな。私が負けるとでも思っているのか?」
「わたしは、あなたがティルを殺すのも、ティルに殺されるのも見たくないのよ」
ソニアは俯いて長い睫毛を震わせた。しばらくの沈黙の後、テオはソニアの手を取った。
「私は行かねばならぬ。ティルは私の息子である前に、陛下に弓引く反乱軍のリーダーだ。
私は帝国五将軍筆頭として、そのような輩を野放しにしておくわけにはいかぬ」
「でも、あなたの大事な息子よ」
「ソニア、君にも分かっているだろう。武人とは親子の情より優先すべき忠義があるということを」
テオに眼差しはゆるぎなく、ソニアはそれ以上言葉を紡ぐのを諦めた。何を言ってもテオの決意は
変わらない。言葉の代わりに涙が溢れ、頬を伝う。テオは困ったように頭を掻き、無骨な仕草で
頬の涙を拭った。
「すまない。私はこういう風にしか生きられぬ」
「分かっているわ。そんなあなただから、惹かれたのだもの」
ソニアは涙が滲む瞳を細め、精一杯の笑顔を浮かべた。
706テオ×ソニア2:2006/07/04(火) 21:03:48 ID:+0x6YPu9
「わがままついでに、一つ頼まれてくれないか」
「なあに?」
「私が死んだら、ティルのことを頼む」
「テオ!!」
ソニアは顔を強張らせたが、テオはあくまでも普段と同じ、穏やかな顔だった。
「もちろん私とて負けるつもりで戦に臨みはしない。だがソニア、時代には流れがある。
帝国の腐敗はもはや我々も認めざるを得ない。新たな力の台頭は、起こるべくして起こったのだ。
その中心にいるのが私の息子であること、それは喜びでもある。よくぞ起ってくれた、と」
そう話すテオの表情は明るく、息子の成長を喜ぶ一人の父親だった。
「あれは周囲の人に恵まれている。だがまだ若い。側で苦言を呈す者がいなくては。
ソニア、私の代わりに君にその役目を託したい」
「いやよ!そんなの自分勝手だわ。自分の役目なら、自分で果たせばいいのよ」
ソニアは激しく頭を振って、テオの胸に縋りついた。
「そんなにティルが心配なら、帝国を出ればいいわ。クワンダ殿もミルイヒ殿もすでに解放軍と
共にあるというじゃない。わたしだって、あなたと一緒なら…」
「ソニア」
高ぶる言葉を、テオの感情を抑えた冷たい一言が遮った。
「ソニア、そのようなことは間違っても口にしてはならぬ。我々帝国五将軍は陛下のために
生きると誓った。その誓いを、いかなる理由があろうと破ることはできない。帝国をここまで
腐敗させてしまったのは、我らにも責任があるのだ。だから私は、たとえなんと言われようとも…」
テオは言葉を詰まらせた。実直で正義感溢れるテオにとっては、帝国が腐敗しきっていると
認めるのは辛いことだろう。だが、官吏が私腹を肥やし平民が無理な税と徴兵に苦しんでいる
という事実は、隠しようがない。
十年前の継承戦争で、そういった輩は一掃したはずなのに。歴史は繰り返すと言うのか。
いや、絶対のカリスマであった皇帝の威光に影が差しているということなのか。
数年前から亡き王妃に良く似た素性の知れぬ女を招きいれて以来、皇帝は変わってしまった。
あらゆることに無気力になり、たがが外れた国は一気に腐敗した。
それでも、テオにとって仕える主君はバルバロッサただ一人。たとえ歴史が解放軍を選んでも、
その軍門に下ることはない。それが滅びの道だと分かっていても。
707テオ×ソニア3:2006/07/04(火) 21:04:30 ID:+0x6YPu9
「たとえ相手が自分の息子だろうと、ソニア、君だとしても。私は陛下をお守りする将軍として
全力で戦うのみだ。分かってくれとは言わない。許してくれとも言わない。私はこの役目に
誇りを持って立ち向かうだけだ」
一度収まった涙が、再びせりあがってきた。
「泣かないでくれ。その、君に泣かれると困る」
「あなたが泣かせるんじゃないの」
ソニアは口を尖らせて、涙を拭った。無骨で生真面目で男らしい、そんなテオに惹かれたのだ。
もう何も言うまい。戦う男の道を塞ぐことはすまい。残された女に出来る、ただ一つのことだ。
「わたし、待ってるわ。あなたの好きなもの作って、あなたの帰りを待っているから」
「特別な用意などいらないよ。ソニア、君の笑顔があればそれだけでいい」
普段は決してこんな甘い言葉を使うことはない。残されるソニアへの、テオの精一杯の優しさだった。
ソニアは微笑んでテオの頬にキスをした。お返しとばかりにテオの唇がソニアのまぶたに
触れる。まぶた、耳、頬と伝い、ふっくらとした唇に触れた。欠けたピースが重なるように
それはぴったりと符合する。
ソファに押し倒され、ソニアは全身でテオを受け入れた。今日を最後の夜になどしたくない。
でも、覚えておかなくちゃ。自分が愛した男の逞しさを、熱を、吐息を。
二人は飽くことなく互いを貪り、求め合い続けた。


テオの戦死の知らせが届いたのは、シャサラザードへ向かう行軍でのことだった。
ソニアはどこか遠い世界の出来事のように、その知らせを受け取った。心のどこかで
ああやっぱり、そんな風に思った。
息子との一騎打ちの末、壮絶な戦死を遂げたと言う。武人として父として、満足して
死んでいったのだろう。テオがそれを望んだのなら、それは悲しいことではない。
708テオ×ソニア4
シャサラザードでの攻防戦は、解放軍の奇襲もあって、数の上では勝っているはずの帝国軍が
押されていた。五将軍のうち四人が抜けた今、軍の規律は大きく乱れ、脱走や寝返りも
後を絶たないのだ。
時代が変わる。テオの言っていた意味がソニアにも分かるような気がした。
ティルたち解放軍は今や日の出の勢いで驀進し、方や帝国軍は黄昏に追い立てられている。
解放軍の一群が、ソニアのいるところまで迫って来ている。
テオを殺したティルが憎いわけではない。ただ一人残った将軍として、ここで負けるわけには
いかないのだ。
「いたぞ!ソニア将軍だ!」
大声といくつかの足音が聞こえ、ソニアは立ち上がり剣を抜いた。角から数人の人影が現れる。
「あ…!」
その中の一人を見て、ソニアは驚きのあまり立ちすくんでしまった。テオに良く似た少年。
一年前はまだ幼さすら残す少年だったのが、少年の俤は残るものの、今では背も伸び、
筋肉もつき、なにより父と同じ強い眼差しでソニアを射る。
傍らにはテオの部下だったアレンとグレンシールがいる。カシムもクワンダもミルイヒも。
独特の額飾りをつけた少女は竜洞騎士団の者だ。エルフもコボルトもドワーフもいる。
一年前雨の中僅かな供人と都を追われた少年は、今や種族も派閥も超えた大勢の仲間を従えて、
目の前に立っている。
叶わない、素直にそう思った。時代の転換点が今、この瞬間なのだと思い知る。
ソニアは剣の切っ先を自分の方に向けた。
テオ。あなたの息子は大丈夫よ。大勢の仲間に見守られ、健やかに成長している。
あの子はわたしがいなくても大丈夫よ。だから、あなたのそばに行ってもいいかしら。
あなたのいない人生など、考えたくもないの。弱い女だと笑っても、いいわ。
だけど、わたしはもう疲れてしまったわ…。
「ソニア!」
喉を突こうと身を乗り出そうとしたソニアを、強い力が引きとめた。それはティルの声でも
あり、テオの声でもあった。

……少女の頃、母に連れられて行った宮中で、テオの指揮する軍事訓練を見るのが好きだった。
早くに父を亡くしたソニアにとって、テオは父親のような存在だった。
少女の憧れが、確かな恋に変わったのはいつのことだろう。
母が事故で亡くなったとき、一番に駆けつけて全てを取り仕切ってくれたのは、テオだった。
自身もその少し前に妻を病気で亡くしており、ソニアの悲しみをまるで我がことのように、
全身で受け止めてくれた。
しっかりしなければ。絶望と不安の中で家を守るために、歯を食いしばって立ち続けるソニアが
泣けたのは、そのテオの腕の中だけだった。
多分その時には、テオを一人の男として愛していたのだと思う。
片思いでも構わなかった。だけど、少しでも近づきたくて。側にいたくて。自らを厳しく律し、
少しでもテオに相応しい人間になりたかった。
テオが自分を受け入れてくれたのは、ずいぶん後になってからだった。お互いの立場や過去、
年齢が二人の間に壁となってそびえていたから。だから、テオが自分と同じ気持ちだと知った時。
初めて唇を重ね、体を重ねた時。愛していると囁かれた時。涙が出るほど嬉しかった。
この人と出会うために生まれたんだと。体の奥に熱いものを受け止めながらそう思った。
やっと自分の半身を見つけたような、そんな気さえした。
やっとみつけた片割れを失って、もう生きている意味などない。
だからテオ、あなたのそばに…。