【女装】処女はお姉さまに恋してる 第5話【百合】

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1名無しさん@ピンキー
ここは「処女はお姉さまに恋してる」のSSスレです。
優雅に礼節をもって進行していきましょう。

前スレ
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第4話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1111234071/

メーカー公式
http://www.caramel-box.com/

処女はお姉さまに恋してるSS保管庫(仮)
http://www.type90.com/otome/index.html

・過去スレ
【女装】処女はお姉さまに恋してる【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1108774069/ (dat落ち)
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第2話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110222716/
【女装】処女はお姉さまに恋してる 第3話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110659167/

・関連スレ
キャラメルBOX Part16
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1111049075/
処女はお姉さまに恋してる 第13話
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1111248087/
おとぼく風におっしゃると
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1107183479/

おとボクSS投稿掲示板
http://cute.to/~hokuto/caramelkeijiban/story_bbs.php
23スレの226:2005/03/25(金) 22:37:21 ID:+ahvIpHo
>>1
乙なのですよ〜
3名無しさん@ピンキー:2005/03/25(金) 22:37:42 ID:MZtFfPj/
>1ちゃんお疲れさま〜
4名無しさん@ピンキー:2005/03/25(金) 22:41:45 ID:SEPBOAEB
>>1子ちゃんお疲れ様です

どうでもいい話ですが 
メーカーの人気投票、瑞穂お姉さまが1万票突破しました
5名無しさん@ピンキー:2005/03/25(金) 22:44:23 ID:3L3N/RbU

あぁ、SS核暇がねぇ・・・
64:2005/03/25(金) 22:47:42 ID:SEPBOAEB
IDが全て大文字・・・
縁起が良いのか悪いのか・・・・・
今までこんな妙なIDをとったことが無いのでリアクションに困ります
73-180:2005/03/25(金) 23:17:24 ID:7fQI5XQk
 1さん乙です。
 それにしても、オリキャラ居ないと書けないと思われてそうなので、そろそろ原作キャラのみで1個上げたいですね。
CDやっと手に入りましたし(おまけに妙なものがついてきましたけど)曲でも聴きながら考えることにしましょう。
8初代スレの45:2005/03/25(金) 23:50:08 ID:2A2XH8rA
>>1
乙ですわ。


私、ネタ切れですわ・・・orz
いくつか書いてはいるのですが、途中で引っかかり・・・気長にお待ちを。
94-385:2005/03/25(金) 23:53:25 ID:ng3Bg/n2
>>1さん
乙です。

書きたいネタはあるのですが…時間が…
102スレの402:2005/03/25(金) 23:55:16 ID:0cgN+xOx
>>1
スレ立て、乙ですわ。

頑張って、卒業証書の続き?を書いてます。
やはり、由佳里ちゃんと、奏ちゃんは難しいorz

待っていてくれる方がいましたら、今しばらくお待ちを。
11初代スレ126:2005/03/26(土) 00:36:18 ID:VNguHaa6
>>1お姉さま乙なのですよ〜

あと…あとちょっとで最強決定戦第4話が書きあがりそう…なんだけど、
なんかちょっと詰まってる…( ;´Д`)

あと、前スレの職人の方々(自分除く)に敬礼!!
12初代スレ126:2005/03/26(土) 01:14:44 ID:VNguHaa6
連続投稿になってしまいスマソ。
四苦八苦しつつ、王座決定戦第五話(上のレスの「四話」は間違いですな…)が
書きあがりました。
準決勝の二試合、一部趣味を交えつつ決着でありますw
13初代スレ126:2005/03/26(土) 01:17:02 ID:VNguHaa6
恵泉最強王座決定戦!!―第五話・劇闘!!そして血闘…!!―(1)

第二回戦が始まる前に、一度休憩時間が設けられた。僕は、奏ちゃんの様子を見に行くが…
体育館裏で発見した奏ちゃんは、やはり緊張していた。
「…さっきは紫苑さんだったから大丈夫だったけど、
流石に今度は手加減無しの勝負になりそうね。何しろ相手が…」
圭さんだ。
とてもじゃないが手を抜いてくれるとは思えない。
「当然よ。後輩をきっちり鍛えるのが、部長の役目なんだから」
「うわぁっ!!…毎度ながら背後を取るの、止めてくれませんか…?」
「気付かない方が悪い。…それより奏」
「は、はいなのですよ!!」
「もちろんわかってると思うけど…正々堂々、ちゃんと戦うのよ。
いきなりギブアップなんかしたら…死ぬ思いをするかも…?」
「し、死ぬ思い……?」
「………死ぬ」
「死ぬですか…奏、死ぬのですか…」
「け、圭さん!!不必要に奏ちゃんを脅さないで下さい!!」
「まあまあ…ともかく、甘えは赦さないってことよ」
「けど…」
一回戦の様子を見ればわかる。圭さんは只者じゃない…とてもじゃないけど、
奏ちゃんが勝てるとは思えない。
「仕方ないわね。そんな奏のために、一つ良いお膳立てをしてあげるとしようか」
「お膳立て…ですか?」
「奏。次の試合で、エチュードをやりなさい」
「え?試合で、ですか…?」
「お題目は…「師である父の仇を討つべく大会に参加した天才少女女格闘家」ってところかしら。
敵は同門の姉弟子。もちろん、私」
「は、はい…」
「あの…圭さん、エチュードって…?」
確か、音楽用語の「練習曲」って意味だったような…?
14初代スレ126:2005/03/26(土) 01:17:46 ID:VNguHaa6
恵泉最強王座決定戦!!―第五話・劇闘!!そして血闘…!!―(2)

「演劇では、エチュードは「即興劇」という意味よ。
設定だけ決めて後は完全にアドリブだったり、
短い台本を使ったりといろいろやり方はあるけどね」
「でも、何故それを試合で…?」
「まあ、見てなさい。…周防院奏という子が、どういう子か…ね」
そう云って、圭さんはすたすたと立ち去ってしまった…
一方の奏ちゃんは、難しい顔をしてなにやら呟いている。
「だ、大丈夫?奏ちゃん」
「え?…あ、はい、大丈夫なのですよ」
…硬さが消えて、明るい笑顔を見せてくれた。…一体、どうなってるんだろう…?

「皆さん、お待たせしました!!いよいよここに、四強による準決勝を行います!!」
場内を押し包むかのような黄色い歓声が沸き起こる。…うぅん、今更だけど、
お嬢様学校の生徒でもこういうの、好きなんだなぁ…
「それでは早速第二回戦第一試合。周防院奏選手VS小鳥遊圭選手を始めます!!
両選手中央へ!!」
緋紗子先生のアナウンスに、二人の少女がリング中央に立つ。
「……ついに。ついにここまで来たわ…ようやく、師父の仇である貴方を倒す事が出来る…
小鳥遊圭!!貴方を!!」
!?…奏ちゃんの様子がいつもと違う。…そもそも口調からして、全く別人だ。
「ふ…奏。随分な口を利くようになったじゃない。覚えているかしら…?
貴方が、私に一度も勝てなかったっていう事を…!!」
二人の科白に、場内がざわつき始める。
「これって…?ひょっとして、演出?」
「そっか、二人とも演劇部…しかも、ヒロインと部長、でしたわよね…?」
ちらほらとあがるその声で、一同はこれが演劇部による余興だと確信したようだ。
しかし、一体何故こんな余興を…?
「私は、あの頃の私じゃない!!…それに、最終目的は貴方ではないわ。
貴方は、その前に立ちふさがる路傍の石…!!」
15初代スレ126:2005/03/26(土) 01:18:55 ID:VNguHaa6
恵泉最強王座決定戦!!―第五話・劇闘!!そして血闘…!!―(3)

「ほぉ、云ってくれるじゃない。この私以上にお前を惹きつけるものがあるというの?」
「私は、お姉さまと戦う。…憧れの対象として。尊敬すべき格闘家として。
そして…ライバルとして!!確かに貴方は仇だけれど、今の私には、ただの邪魔者…
私は貴方を、越えて行く!!」
え、ええ?ぼ、僕?
「この私よりあんな女が上だと言うのかい…
…小娘が。その言葉、後悔させてあげようじゃないか。
圧倒的な力の差を、思い知らせてやろうじゃないさね…!!」
圭さんが構える。メイド服であるにもかかわらず、妙に堂に入っていて、威圧感を感じる。
「…周防院奏…参ります!!」
ビシィッ!!
そんな音が聞こえてきそうなくらい、奏ちゃんが気力の篭った構えを見せる。
その構えには威圧感すら漂い、圭さんに真っ向から相対している。
場内は、完全に二人の会話に耳を傾けていて、シンと静まり返っている。
僕だって、ともすれば対峙しているのが恵泉の女学生ではなく、
本物の格闘家同士だと錯覚してしまいそうだ。
「始めようか、奏…エルダーファイト!!レディ…」
「ゴォォォォォ!!」
奏ちゃんの雄たけびにも似た叫びと同時に、試合が始まる!!
先に仕掛けたのは、奏ちゃん。地面を蹴り真正面から圭さんに駆け出すと、
気合の篭った蹴りを繰り出す…!!
「…はい、終了」
「はやややや〜〜〜〜!!」
……その蹴りをあっさりと掴まれ、そのまま…宙に投げ飛ばされてしまった。
奏ちゃんは悲鳴を上げつつ放物線を描き…床に衝突。あえなくKOとなった。
『あぁ、やっぱり無理だったか』
そんな思いを込めた溜息が、場内中で一斉に起こる…
「あ。なんだかちょっと仕事忘れてたわ…周防院選手戦闘不能により、勝者!!小鳥遊圭!!」
ようやく、緋紗子先生の宣言が下される。
16初代スレ126:2005/03/26(土) 01:19:32 ID:VNguHaa6
恵泉最強王座決定戦!!―第五話・劇闘!!そして血闘…!!―(4)

って戦闘不能って、奏ちゃん!!
「か、奏ちゃん、大丈夫!?」
いけない…つい、僕も圧倒されてしまった…大急ぎで奏ちゃんを抱き起こす。と、
「はやや……地球が、回っているのですよ」
いや、奏ちゃん、地球は最初から回ってるからね?
大丈夫かな…?
「心配要らないわ。みね打ちよ」
「いやいや、打ってませんから」
「…じゃあ、みね投げ?」
「そんなもんありません!!」
大体、疑問系で言わないで下さい。
っと、そんな事してる場合じゃなかった。奏ちゃんは…
「はう…負けてしまいましたのですよ…」
「あ…奏ちゃん。大丈夫そうね。…何より無事でよかったわ」
とりあえず、一息つく。
「でも奏ちゃん、最初すっごくかっこよかったよ!!」
「ええ、本当に。私びっくりしてしまいました」
同じく駆け寄った由佳里ちゃんと紫苑さんが、交互に奏ちゃんを覗き込む。
「そ、そうなのですか…?奏、必死だったので…よくわからないのですよ」
でも本当にビックリした。もしかして、圭さんに勝っちゃうかも?なんてちょっと思ったし…
「次は、いよいよお姉さまの番ですね」
由佳里ちゃんの言葉に、現実に戻る。…そうだ。次は、僕の試合だ…そして相手は
「お姉さま。もうそろそろ時間のようです。…どうぞ、お手柔らかに」
「貴子さん…」
真剣な表情で僕を見据える貴子さんの姿があった。
見れば、チャイナ服の破れた部分は、「闘」と書かれた肩当で覆い補強されていた。
「それでは、第二回戦第二試合、厳島貴子VS宮小路瑞穂を始めます!!
両選手中央へ!!」
否応なく迫る時間が、僕の逡巡を赦さないかのようだった…
17初代スレ126:2005/03/26(土) 01:20:16 ID:VNguHaa6
恵泉最強王座決定戦!!―第五話・劇闘!!そして血闘…!!―(5)

「貴子さん。どうしても、闘わなければなりませんか…?」
「はい。…お姉さま。どうか、全力で戦ってくださいますよう…
ワザと負けたりなどしたら…赦しませんからね?」
そう云って構えを取る貴子さん。
…確かに、貴子さんのプライドの高さから考えれば、勝ちを譲られて嬉しがるとは思えない。
けれど、僕は貴子さんに対して…貴子さんだけじゃない。他の人たちに手を挙げるなんて。
とてもじゃないけど、出来ない…
「それでは、始めます!!第二回戦第二試合、エルダーファイト!!」
「レディ!!」
「……」
僕は応えられない。だが、そんな僕に貴子さんの叱咤が飛ぶ。
「お姉さま!!貴方もエルダーシスターならば、戦いなさい!!
少なくとも私は、貴方と戦うことを目標として参加しました!!
その私の期待、裏切らないで下さい…!!」
貴子さんの真剣な目。…はっきりと見据えられる瞳に、僕は意を決する。
闘う事が良い事とは思えない。けれど、それでも僕を待つ人がいるなら。
僕を求める人がいるなら…応えたい。
「そう…そんな表情のお姉さまを待っていたのです。…改めて。
エルダーファイト!!レディ…!!」
「ゴォ!!」
二人の掛け声が飛ぶ。貴子さんがまりやとの戦い同様、開始と同時に飛び掛る…!!
「たぁぁぁぁぁっ!!」
速い…!!やはり傍でみるのとでは体感速度が違う…!!
けれども、その一撃一撃は、僕のガードで完全に防がれる。先の闘いで睨んだ通り、
貴子さんにはパワーがなくて、僕に対してダメージを全く与えられていない。
「…そこ!!」
連打の中から、十分に見極めた一撃を追い、貴子さんの腕を掴む。
と、同時に、僕は出来る限り手を抜きながら貴子さんの腕を捻り投げる!!
18初代スレ126:2005/03/26(土) 01:21:35 ID:VNguHaa6
恵泉最強王座決定戦!!―第五話・劇闘!!そして血闘…!!―(6)

「甘いですわよ、お姉さま!!」
だが、貴子さんは身体能力を持ってその投げに同調して飛び、巧く着地すると同時に、
強烈な蹴りを繰り出す…!!
「ぅわぁっ!!」
間一髪で防いだものの、虚を突かれた一撃に、僕は吹き飛ばされ床に倒れる。
…油断した。貴子さんはこのときを狙ってワザと力を抜いていたんだ…!!
「くっ…」
急ぎ立ち上がろうとして…ふと、周りの様子の異変に気付く。
「え、あれ?皆さん、どうしたのですか…?」
じっと僕に視線が注がれていて…貴子さんなんて、顔が真っ赤だ。
「って、あぁぁぁぁっ!!」
そこで僕はようやく気付いた。…吹き飛ばされた衝撃で、道着の前が完全にはだけていた事に。
慌てて道着の前を手で閉めて、少しうずくまる。
幸い、パットの上からさらしを巻いていたので男だとはばれてないと思うんだけど…
「か…」
「…か?」
『かわいい…………』
場内中から、異口同音に発せられる言葉…え、可愛いって、僕の事…!?
「…きゅう」
!!た、貴子さん!?
真っ赤な顔をしていた貴子さんは、鼻血を流しながらそのままその場に転倒してしまった。
「貴子さん、しっかり!!貴子さん!!」
道着をちゃんと着なおすと、貴子さんに駆け寄る。…あ、ダメだ。完全に気を失ってる…
「え〜…決まり手、「エルダー悩殺ポーズ」により、厳島選手戦闘不能。
よって、勝者、宮小路瑞穂!!」
き、決まり手!?っていうか、それが決まり手!?
呆然とする僕を他所に、辺りは歓声に包まれていた…
19初代スレ126:2005/03/26(土) 01:22:11 ID:VNguHaa6
恵泉最強王座決定戦!!―第五話・劇闘!!そして血闘…!!―(7)

ちなみにこのとき、貴子さん以外に倒れた生徒多数だそうで、
またしばらくの間休憩時間を差し挟むこととなったのだった…
なんか物凄く複雑な心境だなぁ…

「来たわね、瑞穂っち」
「圭さん…」
貴子さんを救護班に任せ、リングを出ようとしたとき。声をかけてきたのは、圭さんだった。
「当然、わかっているわね。私には一切の手加減無用。でないと、死ぬわよ…?」
「………」
そのまま、踵を返して圭さんは立ち去ってしまった。
…確かに、手を抜ける相手じゃないだろう。ならば、本気で相手するしかないのか?
未だ僕は、ちゃんとした答えを出せないでいた…

                                                つづく
20初代スレ126:2005/03/26(土) 01:25:21 ID:VNguHaa6
…作中で演劇の練習風景(演劇部、奏ちゃんたちのほう)が出てきますが、
高校時代演劇部所属だった自分としては、なんとも懐かしい光景だなぁ、と…
えらく当時と似通ったシチュエーションで、しみじみしてしまいました。

閑話休題。

折角演劇部の二人の激突なので、ちょっと趣向を変えてみました。
ほら、圭さんが圧勝なのはわかりきっていたのでw

次回、いよいよ決勝。そして…感動はないけど(ぇ?)ラストへ…
212スレの402:2005/03/26(土) 01:43:27 ID:0mjeoMar
紫苑の場合 1   渡されなかった卒業証書4−2

 手紙を出した翌年の3月。とあるホテルの一室。
「はあーーーー。やっと着いた」
それだけ言うと、瑞穂はベットに倒れ込んだ。
(やはり、きついな。といっても、抱えている仕事の都合上、滞在時間は延ばせないし)
「まあ、最初から、きついのは判っていた事なんだけどな。さて、家に連絡して、楓さんに”必要な
物”を持ってきてもらうか」
瑞穂は、家に電話をかけ始めた。

 楓は、最後に瑞穂の髪をとかし終わると、ブラシを置いて
「瑞穂様。おわりました。ひさしぶりに、女装させて頂けたので、”思い切り”腕をふるっちゃいまし
た」
姿見に映った姿を見て
            (男の尊厳が・・・)
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;    '´  `ヽ  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;   . /  j ))ソ    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;    / / / /ノ      ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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「んんーーー。しかし、自分から女装を御願いするってことは・・・」
「言っておきますけど、”危ない趣味”に目覚めた訳では、ありませんよ。楓さん」
目だけ笑ってない笑顔を見せられた楓は、引きつった笑みを貼り付けて
「訳は聞いておりますってば・・・しっかりと。」
あわてて、言葉をつけたして
「まじめなお話。そのままで出向かれてもよろしいのでは?先方も、瑞穂様が”男性”と言う事を
ご存じなのですから・・・」
222スレの402:2005/03/26(土) 01:45:02 ID:0mjeoMar
紫苑の場合 2

「いや、会わないがいいよ。かえって気を遣わせては、申し訳ないから」
「でもですね・・・」
「いまさら、癒えたであろう古傷を、舐め合うつもりはないから」
そこまで瑞穂に言われると、楓は言葉を続けられなくなった。
 
 列車を乗り継ぎ懐かしい駅に降りると、近くで求めた花束を抱えて文化センターの受付で職員に
「あの、お仕事中申し訳ありませんが?」
「はい?なんでしょう?」
「私。こちらで講師をされています十条紫苑さんの古い友人で、宮小路瑞穂と申します」
「申し訳ありませんが、規則により講師の個人情報は教える事ができませんが?」
「いいえ。確か、もうすぐお誕生日と思いましたので、お祝いを預かっていただけないかと思いまし
て・・・」
そこに奥から、紫苑が現れて
「えっ・・おねえさま?」
「あっ・・・」
(花束だけおいて帰るつもりだったのに)
瑞穂は、わざと事務的な口調を作ると
「お久しぶりですわね。こちらの方に用事がありましたし、貴子さんがお手紙でこちらにお勤めと
教えてくださいましたので、誕生日のお祝いだけ預けに来ました。」
「ま、待ってください。おねえさま」
「ひさしぶりですね。紫苑さまにそう呼ばれますのは・・・」
二人のやりとりを見ていた職員の一人が、紫苑と瑞穂を応接室に案内した。
 しばらく沈黙が続いた後。瑞穂が口を開いて
「滞在時間の関係で、お誕生日にお渡しできませんので」
「・・・」
紫苑の沈黙を拒否と受け取った瑞穂は、花束をテーブルに置くと部屋から出て行こうとする。慌てて瑞穂の服を掴んだ紫苑は、責めるような口調で
「ずるい方ですわ。あの後、私たちが苦しまなかったと思いまして?驚かなかったといえば嘘になりま
すわ。せめて、謝罪文だけでも受け取って頂ければ、多少なりとも救われましたのに・・・貴子さんな
ど憔悴されまして、それは酷い有様でしたわ。無理とは言いませんし、言えませんが、せめて今日だけ
でも・・・」
232スレの402:2005/03/26(土) 01:46:58 ID:0mjeoMar
紫苑の場合 3

紫苑の言葉に、瑞穂は大きく息を吐くと
「今日、恵泉に行く事が出来ました。幸運にも学院長さんにお会いできまして、忘れ物を預かってます
と言われてしまいました。」
(瑞穂さんの忘れ物・・・・・そういえば、貴子さんが卒業証書を生徒会で預かっていると)
紫苑は、瑞穂の背中から回して、腰のところで両手を組むと
「おねえさま。出来れば、ソシアルの体験講座にも一緒に参加して頂けると嬉しいのですが?恵泉の時
は、踊っていただくことが叶いませんでしたので」
「紫苑さまに見つかってしまいましたのが不運とあきらめて、出来るだけおつきあいさせて頂きます。
お誕生日も間近ですし」
瑞穂のあきらめたような言い方に、紫苑は華のような笑顔を浮かべた。

 家に帰り玄関を開けたとき、奥から現れた菫に
「お母さま。ただ今戻りました。」
「紫苑さん。その花束はどなたから?」
「少し早いのですが、私の誕生日祝いにと、恵泉の時の友人が贈ってくれました。」
菫は、花束を受け取ると
「なにやら、長いお話になりそうですね。お茶を点てながら伺いますわ」
「はい。お母さま」
紫苑は、菫の後に付いて茶室へと移動した。
茶室の中には、作法通りお茶を点てる音と、釜の水がわく音の他には、ときおり風が、障子をならす
音しか聞こえなかった。お茶を紫苑の前に滑らすと、紫苑も作法通りお茶を飲んだ。
「紫苑さん。気持ちも落ち着かれたでしょうから」
「お祝いをいただいたのは、宮小路・・・いえ、鏑木瑞穂さんですわ。」
「鏑木家・・・・嫡子の」
紫苑は、柔らかな笑みを浮かべて
「はい。いまも、こうしてお母さまとお茶を楽しめますのも、瑞穂さんの影からのご尽力があったから
と、私は思っております。尤も、ご本人にお聞きしても答えて頂けますか、疑問ではありますが」
薫が、茶器を手元に戻すと
242スレの402:2005/03/26(土) 01:48:00 ID:0mjeoMar
紫苑の場合4

「瑞穂さんとお会いできましたのも、偶然ですわね。たまたま、私も受付に用事がありまして、顔を
出しましたら、瑞穂さんが受付にお見えでした。」
目だけで話を促す菫に
「最初。花束だけ預けられるおつもりだったようですが、無理を言いまして、お時間を割いて頂きました。つい、恨み言なども口から出てしまいましたけど。」
菫の咎めるような視線を受けて、言い訳するように
「お母さま。10年は、音信不通だったのですよ。恨み言の1つ、2つは、出てもおかしくありません
わ。あの事についても、私に一言も相談していただけませんでしたから」
目だけで問いかける菫に、紫苑は瑞穂が恵泉を去る事になったいきさつを説明した。
「そう。鏑木の先代さまのご遺言でしたか?先代さまもずいぶん酷なご遺言を残されましたわね。瑞穂まも、心中さぞや苦しまれた事でしょう。」
「瑞穂さんは、時々酷く落ち込まれておりました。まあ、当時の瑞穂さんは、女の子の心理に疎いと
いうのも理由の1つにあげられるかと思いますが」
菫は、着物の袖で上品に口元を隠しながら、笑い声を漏らしていた。
「10年過ぎてお見えになったと言う事は、けじめを付けられる気になられたのでしょう」
「恵泉の学院長さまから、当時の卒業証書を渡されたと、暗に言われましたから、けじめを付ける事が
出来たのだと思います。私も、ようやくけじめを付ける事が出来そうです。」
紫苑は、菫から微か視線を外し
「恵泉の時、唯一、出来なかったをことが今日叶いましたから、私も、許されたような気がします」
(でも、瑞穂さんの”女装姿”は、反則ですわね。女性としてのプライドが崩れてしまいますわ。)
紫苑の晴れやかな笑顔を見て
「紫苑さん。この間のお話。お会いするだけでもどう?」
「そうですね。お話だけなら」
「では、佳き日を選んで、一席設ける事に致しましょう」
席を変えて、紫苑がお茶を点てる音。茶釜の水がわく音が、静かな茶室に響いていた。
252スレの402:2005/03/26(土) 01:54:28 ID:0mjeoMar
ようやく 書き上がりました。
一応、書き始めた以上は、最後まで書いていきます。
と、いっても、もう終わりは、見えているのですが

今回の話は、外伝2で貴子が、瑞穂の処に来る、少し前というところでしょうか?
前にupした4Exは、紫苑に再会する直前の1こまです。
26名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 01:57:07 ID:DE/Q0xmi
GJ!
272スレの402:2005/03/26(土) 02:06:57 ID:0mjeoMar
>>24
>「そう。鏑木の先代さまのご遺言でしたか?先代さまもずいぶん酷なご遺言を残されましたわね。
瑞穂まも、心中さぞや苦しまれた事でしょう。」
^^^^^^^^
瑞穂さまも
^^^^^^^^^
に、脳内で修正しておいてください。
結構みなおしたのに、また脱字がorz
28名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 03:37:19 ID:OodHej4y
>>20
「・・・はい、終了」にワロスw
そして貴子さんはまた鼻血オチ要員ですか・・・_| ̄|○ ←貴子スキー

>>27
脱字よりも突っ込みどころがたくさんあるのですが・・・
・呼称がおかしい。いろいろあったにせよ、その二人が互いをそのように呼ぶとは思えない。
 (というか本編中、紫苑が瑞穂を「おねえさま」と呼んだことはない。)
・紫苑における「癒えた古傷」とは何かがわからない。
 (好意的に解釈したとして瑞穂を護れなかった後悔?それとも初日に紫苑が気づくのも無し設定?)
・第五章(11月)の廊下での瑞穂と紫苑のダンスはなかったことに?
 (もしくはこのシリーズでの「事件」は11月以前という設定?)

まあアナザーなんだから、原本を必ず完全に踏襲する必要があるとまでは云いませんが
少し外れすぎてるように感じます。特に呼称はとても気になります。

291話スレ241:2005/03/26(土) 03:48:38 ID:JmSOyG8L
遅くなりましたが>>1さん、スレ立て乙です

>>20
貴子さん、オーバーヒートしてますな。イイ!!(・∀・)

>>25,27
>>28さんもおっしゃってますが、確かに呼称が気になりますね。
美智子さんが1回お姉さまと呼んだのは覚えてますが。
次もお励みください。
30スレ3-171:2005/03/26(土) 09:13:39 ID:0fxtQsV9
 1様,スレ立てお疲れ様です.

 21〜25様
 GJ!

 28,29様
 確かに最初呼称が疑問でしたが,紫苑様が瑞穂と話した場所が
外または他の方がいらっしゃる場所であり,他の人の目がある状
況で名前を出すとまずいという事から意図してそうよんだのでは?
菫との会話ではちゃんと瑞穂さんと呼んでますし.作者様がわざ
とかかれたのでは?
 瑞穂の紫苑様発言も恵泉でめいわくをかけたということを暗に
意味して書かれたと思ったのですが,どうでしょうかね?
315時起き:2005/03/26(土) 10:59:30 ID:BOQcfkuC
ご苦労様です、皆様。

|柱|ω・`)前スレ埋め立て工事お手伝い完了…
|柱|ω・`)それと>1お姉さま乙なのですよ〜

>初代スレ126氏
貴子さんやっぱり鼻血なんですね(笑)。

>2スレの402さん
まあ呼称云々はさておき、瑞穂ちゃんけじめ付けにあるいてるんですね。
何となくほっとしたような。

争奪戦はもうちょっと続かせて頂きます。
番外編で参加者全員のパジャマパーティーとかも浮かんでるんですが、
どーしようかな・・・。
323-226:2005/03/26(土) 12:59:58 ID:gY9jJIle
>>前スレ581-583氏
Good Job!!夢オチながら、こういうほのぼの素敵系なら無問題。
ところで成長した紫穂タンはどちら似ですか?

>>5時起き氏@前スレ
ワロタ。ツンデレの面目躍如ですな。普段からツンツンなだけに甘えさせてくれる
人間が居ると、どこまでも甘えちゃうんですな。カワ(*・∀・*)イイ!
33名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:21:41 ID:zt4yyJ38
前スレの続きを投下。

昔話
前編:再会
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1111234071/549-563

34昔話:2005/03/26(土) 13:22:35 ID:zt4yyJ38
それは3学期始業式の日の出来事。
寮の皆さんとの夕食を済ませた私は自分の部屋に戻るなりその場で凍り付いてしまった。
一子ちゃんが、クローゼットにもたれ掛かるようにして、倒れていた。
「いっ、一子ちゃんっ!」
見た事がないはずの光景がリフレインしてくるようだった。
夏の暑い日、私の部屋、荒い息を必死に抑えて私を待つ一子ちゃん。
何度も何度も夢で見た光景、それが目の前で現実のものとなっていた。
「ちょっと一子ちゃん、しっかりして!」
慌てて一子ちゃんを抱きかかえる。
「んん〜、お姉さまぁ……すぴぃ〜……くかぁ〜〜〜」
「…………一子ちゃん」
ホッと胸を撫で下ろす。
あぁ、本当に驚いた。
どうやら、単に寝ているだけみたいだ。
それにしても……、最近の一子ちゃんは常に眠そうにしている気がする。
心なしか起きているときも元気が足りないというか、
どこか辛そうなのを我慢している気がしてならない。
「本当に……何ともないのならいいのですけど」
幽霊だし、普通の人よりもたくさん眠る……のかな?
「まったく……こんなところで寝てしまっては風邪をひいてしまいますよ」
ひょいっと一子ちゃんの体を抱えて、ベッドに運ぶ。
幽霊だけあってとても軽い。
35名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:23:26 ID:zt4yyJ38
「……しょっと。一子ちゃんが幽霊で助かりました」
初めて再会した日に私を押しつぶした一子ちゃんのお尻は
もうちょっと重く感じられた気がする。
感覚的なものなのではっきりとは云えないけど、なんだか変な感じ。
完全に眠り込んでいる一子ちゃんをベッドに横たえ、布団をかけてあげる。
……自分で横たわるならともかく、私が横たえてあげてもベッドはすり抜けないらしい。
今更かもしれないけど、幽霊というのは一体どういう原理なのだろうか。
実は浮いていて布団はすり抜けているとか……?
いや、確かに布団は膨らんでいる。
いつだったか、朝起きたら寝ぼけた一子ちゃんがどざえもんのようにひっくり返っていて
上半身が一階まですりぬけていた事があったりする。
あの時は本当に肝を冷やした。
この部屋の下が使われていない倉庫で本当によかった。
……莫迦な事を考えていたら、大分落ち着いてきたようだ。
今夜もちゃんと眠れそうかな。
一子ちゃんの隣に潜り込むと、その手をとって、私もまた眠りについた。



36名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:24:36 ID:zt4yyJ38



「お姉さま……やっと……お逢いできる」
必死の思いで、それこそ体を引きずるようにして辿り着いたお姉さまのお部屋には、残念な事に誰もいなかった。
どこかに出かけているのかな?
お姉さまには悪いけど、勝手に待たせてもらう事にしよう。
さすがに夕方までには帰ってくるだろうし。
「早く……逢いたいです…………お姉さま」
なんだか体が重くてしょうがない。
この部屋は北側で涼しいし、少し寝てしまおうかな。
お姉さまが帰ってきて、私がお部屋で寝ていたらきっと驚かれるでしょうね。
「ごめなさい、お姉さま……なんだか、眠くて……起きていられそうにありません」
霞んでいく視界の中で、お姉さまの影が浮かんだ気がした。
さっきまで外の蝉よりもやかましく鳴り響いていた心音も、いつのまにか静かになっていた。
これで、静かに眠れそう。……お姉さま……目を覚ましたら、お姉さまは一子の前にいらっしゃるのでしょうか?

未だ、けたたましく鳴き続けている蝉の音も、とうに届いていなかった。




後編:約束




37名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:25:49 ID:zt4yyJ38


「…………っ!!」
跳ねるようにして布団から身を剥がす。
またあの夢を見ていたらしい。
何度も何度も見た、一子ちゃんの最期の夢。
見た事がないはずの光景なのに、不自然なまでに真に迫った夢。
最近は見なくなっていたのに、昨日の……あの光景を目の当たりにしたせいだろうか、
久しぶりの悪夢に、全身が凍えるように冷たくなっていて、下着が汗でべったりとしていた。
涙でぐちゃぐちゃになった顔をタオルで拭くために、ベッドを後にする。
一子ちゃんはこの時間はまだ眠っているはずなので、起こさないように注意を払う。
とは言っても、普段どんなに起こそうとしても中々起きないから困っているのだけれど。
「お……姉さま……」
「…………。 …………一子ちゃん?」
すぐに不審に気付いた。
か細くて酷く辛そうな声だったし、
何より、その声を認識するのに、
どういうわけか、かなりの時間を要してしまったのだから。
一瞬、誰の声だか考えてしまった。
――いや、何の音だか分からなかった自分がいた。
ゾッとする気持ちを抑えて、一子ちゃんに声をかける。
「ちょっと、一子ちゃん? どうしたの、どこか苦しいの? ねえ、大丈夫?
 ねえっ、一子っ……ちゃ……ん……?」
何? これは何?
いったいどういう事なの?
38名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:27:12 ID:zt4yyJ38
「お姉さま……ごめんなさい……なんだか、……私、頭がボーっとしちゃって……」
薄い。一子ちゃんが薄くなっている。
見た目の問題ではない。
そこに一子ちゃんがいると、一瞬だけれども気付かなかった。
そこに何かがあると気付いてから
それが一子ちゃんだと理解するまでに、間があった。
どういう事なの? これは。
「お姉さま……、どうかしましたか?」
「ううん、私は何でもないわ。一子ちゃんが辛そうで、少し動揺してしまったのね」
「そうですか……。お姉さまも…体調が優れないのかと……、……心配して…しまいました」
うまく動かせないのだろうか、ぎこちない笑顔を向ける一子ちゃん。
「私は大丈夫、それよりも一子ちゃん。あなた、やっぱり体の調子、よくないの?
 少し詳しく話してくださらないかしら」
「よく分かりませんけど……、頭がボーっとしちゃって……うまく考えられないというか……
 わたし……どうしちゃったのかな…体……重くて……すごく、寒いです……」
「……一子ちゃん、今日は寝ていなさい。なるべく早く帰ってきますから」
「はい……。あの、お姉さま……?」
「なぁに?」
「幽霊って……風邪はひきませんよねぇ……」
「……あんまり難しい事を考えるのは体に毒よ。さ、おやすみなさい、一子ちゃん」
一子ちゃんの頭をひと撫でして、部屋を後にする。
触れた一子ちゃんの感触は、既に思い出せなくなるくらい希薄だった。


39名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:28:25 ID:zt4yyJ38


勿論その日の授業なんて一つも頭に入る事はなかった。
何をしててもずっと上の空。
とにかく早く寮に帰りたい一心で一日を過ごした。
こんな事なら、学校を休めばよかったかもしれない。
「起立」
やっと最後の授業が終わった。
私はいつもよりセカセカとして号令を告げる。
「礼――」
放課するやいなや、鞄に教科書を詰め込んで、廊下に飛び出る。
待っててね、一子ちゃん。
校舎を出ると走り出す。
いつもの並木道を一人で駆け抜け、寮を目指す。
寮の中は静まり返っていた、まだ誰も帰って来ていないようだ。
コンコンッ
自分の部屋だが、一応ノックをする。
「ただいまっ。一子ちゃん……調子、どうかな?」
鞄を机に放り投げるように置くと、部屋を見渡す。
「……あれ?」
返事もなければ、一子ちゃんの姿もない。
「うそ? ……一子ちゃん?」
いない……部屋の外に出て行ったの?
「そんなはず……ない……」
けれど、一子ちゃんはどこにも見当たらなかった。
「……ぇ……さま……お帰り……なさい」
「一子ちゃんっ!? いるの? どこっ!? どこなのっ!?」
「……ここ……ですよ……ねぇさまったら……どう……しちゃったんですか?」
40名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:30:08 ID:zt4yyJ38
なんの事はない。一子ちゃんはきちんとベッドの中で寝込んでいた。
いつもそうしているように、ただベッドで布団に包まれていただけ。
……なのに私は、自分から彼女を認識することができなかった。
「ごめんね、一子ちゃん。ちょっとボンヤリしちゃっていたみたい」
「………そう……ですか……私ったら…てっきり……」
話すのも辛そうになっている。
朝から症状が悪化しているのは明らかだ。
「一子ちゃん、……体調、悪くなってるのね?」
「ぅ……朝よりも……頭……だるくて……だんだん…………」
やはり自覚症状も重くなっているらしい。
「困りましたね……幽霊さんの病気だなんて、どうすればいいのか判りません」
「あは…は……大丈夫ですよ……きっと……明日には……元気に…なっていますから……
 そんなに……ご心配…なさらずに……」
本当に……本当に何もしないで、よくなるのだろうか?
だって、一子ちゃん……どう見ても朝よりも消えてきてるじゃないですか。
ひょっとして、明日になったら私の前からいなくなってしまうのかもしれないじゃ…ないですか。
消える? 一子ちゃんが、私の前からいなくなる?
そんなの……いやだ、……絶対に、嫌だ。
「ごめん、一子ちゃん。少しだけ出かけてきますっ!」
「……えっ……やだ…ぉ姉さ、ま……どこ、行くの……?」
「何か対処法がないのか、図書館で調べてきます。
 ごめんね一子ちゃん、すぐ戻るから。何もしないだなんて、やっぱりそんな事できない」
藁にも縋る、そんな気持ちには違いない。
解決策なんて見つかるわけもない。でも、何もしないだなんて、絶対に嫌だった。
今度こそ一子ちゃんを助けてあげたかった。
「……それよりも、……一緒に居て欲しかったです……」
一子ちゃんが何か言っていたが、その内容は既に私には届いていなかった。
41名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:31:50 ID:zt4yyJ38

図書室。やはり、役に立ちそうな情報の載った本など、一向に見つかる気配はなかった。
「……あぁっ、もう……こんなもの何の役にも立たないっ!」
怪奇現象関係の本なんて、やっぱりこんな物だろう。
おまじないも占いも、宛になるような代物とはとても思えない。
「神様に祈れとでも言うのですか……? 今からお百度参りでもすれば、助かるとでも……」
無論、いざとなったらそれも辞さない構えだ。
ああ、でも、一子ちゃんのおうちはクリスチャンだったっけ?
その場合はどうすればいいんだろう、礼拝堂で祈ればいいのかな。
「そうだっ、礼拝堂……」
確か、礼拝堂の奥にも蔵書室があったはず。
古い怪しげな本が並んでいると聞いた事がある。
あそこのなら、図書室の本よりも手がかりを掴める可能性が高そうだ。
鍵がかかっているはずだけど、何とか頼み込めば貸してくれるかもしれない。
図書委員長の子にどうしても調べたいものがあるから鍵を貸してくれるよう頼むと
あそこの鍵は学院長が管理していると言われた。
随分と大層な部屋のようだ。

「失礼します、宮小路幸穂です。学院長にお願いがあって参りました」
「まあ、宮小路さん……何でしょうか、私にお願いとは」
「お願いです先生……蔵書室の鍵を貸してくださいませんでしょうか」
「蔵書室……というのは、礼拝堂の、ですか?」
「はい」
怪訝な顔をされた。当然だろう。
「あの部屋にある本の性質を、お知りになってのお願い、でしょうね?」
「……はい」
本当は、あまりよくは知らないけど。
「高島一子さんと関係があるのですか?」
「………っ!」
42名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:33:10 ID:zt4yyJ38
表情を隠す事はできなかった。
だって、一子ちゃんの名前がいきなり出てきたから。
「あなたは、大変その子の事を可愛がっていたそうですからね……。
 いいですか、宮小路さん。死んだ人間は決して生き返ったりはしませんよ?
 莫迦な事を考えるのは……」
「違いますっ! そんなんじゃありませんっ、このままでは一子ちゃんが! 一子ちゃんがっ!」
「……何かあった、という事ですか。
 神に仕える身としては、本来は見過ごせぬような出来事が」
「っ………」
やはり無理だろうか……。
それどころか、このままでは一子ちゃんの事すらバレてしまうかもしれない。
でも、今の学院長の口ぶりからして、確実にあそこの本には
何か手がかりがありそうだという事は分かった。
ならば、絶対に諦めるわけにはいかない。
「お願いしますっ、どうしても、知りたい事があるんですっ! お願いしますっ!」
何度も何度も頭を下げる。絶対に一子ちゃんを助けてあげたい。
「……いいでしょう、特別にお渡しします。
 ただし、あそこの本は貴重な物、そして危険な物ばかりです。
 決して軽はずみな使い方はしないでください」
「学院長……ありがとうございますっ」
「いいえ。今のあなたの目は、きちんしたと強い光を持っています。
 夏の事故以来、一度も戻って来なかった火です。
 私が消すわけには行きませんものね」
43名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:35:06 ID:zt4yyJ38
そういうと、懐から出した鍵を使って、棚の施錠を解く。
中には、何本もの鍵が保管されていた。
「はい。この鍵です」
そのうちの一本を手渡される。
「ありがとうございますっ、それでは失礼します!」
走り出したい気持ちを抑えて、踵を返す。
「宮小路さん」
後ろから声をかけられた。
「頑張ってください。きっと、救ってあげられますわ。
 ……それと、涙を拭いてから、お行きなさい」
「……はい。失礼しました」
学院長に感謝し、礼拝堂へと向かう。
この奥に、手がかりが……あるかもしれない。
カシャンッ――ギギギィィイイイ
鍵は軽快な音を立てて外れた。
そして、さび付いた鉄のドアは凄く重たいものだった。
「すごい……何、これ……」
石畳でできた部屋の中には分厚い本が整然と並んでいた。
量は決して多くはないが、その一冊一冊が異様な雰囲気をかもし出している。
手近な一冊を取り出して、流し読んでみる。
よかった。ちゃんと和訳されている。
ひょっとして、全部誰かが翻訳したものなんだろうか?
「何、これ……黒魔術、じゃない……」
学院長が言っていた意味が深く理解できた。
こんな本たちが、礼拝堂の奥に厳重に保管されているだなんて、怪しすぎる。
とりあえず、魔術は置いておく事にして、一子ちゃんの症状について書かれた本を探す。
「幽霊の病気について、書かれた本……なんて、あるのかな」
時間はない。一子ちゃんが待っているんだ。
気を引き締めると、うんざりするような文字の渦との格闘を始めた。

44名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:36:36 ID:zt4yyJ38

「……これって……」
古書の海と格闘を始めて、どのくらい時間がたっただろうか、
興味深い内容と巡り合った。
それは礼拝堂の中にあったにもかかわらず、
どう見ても東洋的な宗教観に基づいて書かれた本だったのだが、
「これ……どう考えても、今の一子ちゃんとぴったり合致してるよね……」
でも……その本の内容はとても信じたくはない物だった。
「とりあえず……一子ちゃんの所に、戻らなきゃ……」
私はその本を手にすると、ふらふらとした足取りで蔵書室を後にした。


「ただいま」
随分遅くなってしまった。
本を一冊選ぶのにこんなに時間がかかるだなんて。
夕飯の時間、間に合わなかったな。
明日みんなに言い訳しておかなきゃ。
食堂で用意してきたグラスを机に置く。
「あれ……?」
これ、何のお水だったかしら?
そもそも私、どうして本なんて借りにいったのだろう?
「……ぇ……ま……」
「え?」
何か聞こえた気がした。
気のせいだろう、だってこの部屋には、私しか……。
「……ね……さま! ……お姉さまってばっ!」
「……いっ、ちこ……ちゃん……」
……そうだ、一子ちゃんだ。
一子ちゃんが大変な事になっていたから、私は走り回ってたんだ。
……私……今、一子ちゃんの事……。
45名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:38:52 ID:zt4yyJ38
「お……ねえさま……やっぱり、一子の事……見えませんか?」
いる。一子ちゃんが、……目の前で私の肩を揺すっている。
私、こんな距離なのに、今まで気付いていなかったの……?
「一子ちゃん、大丈夫。ちゃんと分かるわ」
「よかった……お姉さま、気付いて…くれた……
 私……お姉さまに……気付かれなかったら、……どうしようかと……ぅう……」
倒れそうになる一子ちゃんを抱きかかえる。
それなのに、抱きしめている実感が全く湧かない自分に歯噛みする。
立つ事も辛いのだろうに、無理をさせてしまった。
ごめんね一子ちゃん……。
すっかり憔悴しきった様子の一子ちゃんをベッドに寝かしつけると、用意してきたグラスを持つ。
「一子ちゃん、これ……飲んで」
「でも……私……飲み食いは……」
「大丈夫、だと思う……そういう飲み物らしいから……グラスは私が持っているから」
「……はぁ」
一子ちゃんの口にそれを注ぐ。
本当だ……本当に飲めてる。この本、……きっと本当の事を書いている。
「んくんくんく……ふぅ、お姉さまっ、これ何ですか?
 少しだけしょっぱいけど、美味しかったです」
「……えぇと、作り方は、その、取り合えず措いておきましょう」
思い出しただけでも顔から火が吹き出そうな思いだ。
ましてや、それが混ざったものを一子ちゃんに飲ませてしまうだなんて……。
でも私、生娘でよかった。
……っと、いけない。話が逸れるところだった。
「それよりも、一子ちゃん、体の感じは……どう?」
「体……ですか? お? おぉ? 何だか頭がはっきりしてる気がします」
「よかった……ちゃんと効いてるみたいね」
「わ〜、凄い凄い凄いですお姉さま〜〜〜!
 お姉さまは幽霊の病気も治せちゃうのですねっ、一子は今物凄く感動しておりますあ〜んお姉さまぁ〜〜!!」
がばーっと飛びついてくる一子ちゃんをあわてて受け止める。
それにしても、いくらなんでも元気になりすぎな気もする。
46名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:40:12 ID:zt4yyJ38
「違うの、一子ちゃん。今のはね、一時的なものなの……。
 根本的な解決にはなってないの……」
「えぇ〜〜!? そうなんですかっ!?
 じゃあ、私はこの後……どうなってしまうのでしょうか?」
「…………その事なんだけど……本にね、一子ちゃんとよく似た事例が載っていたの
 今飲んでもらった水も、その本を参考に作ったものだから、多分、一子ちゃんに当てはまっていると思うの」
「……はぁ。……それでその本によれば私はどうなってしまうのですか?」
黙ってるわけには行かない。ましてや、嘘なんてつきようがない。
私は覚悟を決めた。
「消えてしまいます」
一瞬の沈黙。
「…………そう、ですか……」
出てきた返事はあっけない物だった。心のどこかで、覚悟をしていたのかもしれない。
いつかこういう日が来るのではと、彼女なりの覚悟の元、生活を送ってきたのかもしれない。
私とは大違いだ。
「元々、一子ちゃんは幽霊になるはずではなかったの。こうなったのは、多分……私のせいなの」
「……どういう、事ですか」
「一子ちゃんは、無理やり呼ばれて現れた幽霊みたいなの。呼んでしまったのは、恐らく……私です。
 ……だから、足りないの……」
「……足りない、ですか?」
「一子ちゃんの魂……みたいなものがね、幽霊で居続けるには存在が希薄なの。
 それを無理に削って現世に存在し続けたから、一子ちゃんの魂が消えかかっているの。
 だから……今の一子ちゃんには、成仏……
 基督教で云うところの昇天をする力さえ、なくなってしまっているらしいわ」
「それで……私はこのまま消えてしまう、という事ですか?」
「そう……このままだと一子ちゃんは昇天する事もできずに、魂が尽き果てて、
 存在そのものが世界から消えてしまいます。その後に待っているのは、完全な、無……」
それはきっと、地獄に落ちるのよりも、恐ろしい事……。
47名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:42:28 ID:zt4yyJ38
「あは、あははは……。そうですか……それは困ってしまいましたね。
 ……でも、しょうがないのかもしれません……死んだ後もお姉さまと一緒に過ごしていたのに、
 その対価も払わないままでいるだなんて、ちょっと虫が良すぎますよね……」
「そんな事……それに、まだ消えてしまうと決まったわけではないです」
そう、ここからが本題。
「ねえ一子ちゃん。私の事、信じてくれますか?
 一子ちゃんを裏切り続けてきた私ですけど、こんな私の事を信用してくれるというのなら、
 あなたの未来、私に預けてはくれませんか?」
一子ちゃんの両手を取ってお願いをする。
「……お姉さま、なんだかプロポーズをしてるみたいです……」
不安でいっぱいだろうに、私の大好きな微笑を絶やすことなく応えてくれる。
「私は……いつだって、お姉さまの事を世界で一番信頼しています。
 だって、……お姉さまは、私のお姉さまですもの」
ありがとう一子ちゃん。私、今度こそきっとあなたの信頼に応えてみせます。
意を決して私はそれを告げる。
「助かる方法は……一つだけあります。
 一子ちゃんの魂を、昇天に耐える力を取り戻すまで眠らせるのです」
蔵書室から持ってきた本を鞄の中から取り出してみせる。
「詳しい方法はこの本にあります。先程の聖水の効果からして、信頼できる内容だと思えます。
 一子ちゃんの魂をお札に封印して、それを一子ちゃんの生と死に縁の深い場所に貼って、
 現世にその存在を繋ぎとめておくのです。その間、一子ちゃんの魂には眠っていてもらいます」
「それで……私は助かるのですか?」
「ええ、眠りから覚めた時、一子ちゃんは昇天に耐えられる魂ができあがっているそうです。
 そのままでも一年前後は現世で活動できるらしいです。
 その代わり現世で活動する場合は、お札が貼られていた物、場所との繋がりに力を借りて留まっているので、
 今の一子ちゃんと違って、行動範囲がかなり狭くなるそうです。
 ……それも、幽霊として存在する時間が長くなるほど薄れていき、
 次第にどこにでも行けるようになりますが……一年弱で、また今回と同じ症状になるそうです」
48名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:44:33 ID:zt4yyJ38
「つまり、その一年の間に昇天する方法を見つければいいという事ですか……」
「…………決して簡単な条件ではないと思います。
 お札を作るのも、執行するのも素人の私が見よう見まねでする事です。
 だから、心配かもしれないけど、どうか私に任せてほしい……。必ず、今度こそ一子ちゃんを救ってみせます」
「……私はお姉さまを信じています。だから、お姉さまになら全てお任せできます」
「待って、……まだ、問題が二つ残っているの。
 一つ目、一子ちゃんが眠らなければいけない時間は、最低でも20年になるわ」
「にっ、にににに、20年ですかぁ!?」
あまりにも長い年月に一子ちゃんが素っ頓狂な声を上げる。無理もないと私も思う。
「……それともう一つ、次に目覚めた時の一子ちゃんは……
 この一週間の……幽霊として過ごした日々の記憶を、失っているそうです」
「……え?」
沈黙が流れる。今までで、一番驚いたという顔をしている。
見ていて辛くなるくらい、絶望的な表情。
何を言われたのか理解できないという、信じたくないといった表情。
「じゃあ、……お姉さまと再会できたことも、お姉さまと毎晩一緒に寝た事も、
 お姉さまと過ごした思い出を、全部……忘れてしまうんですか……?」
私は黙って頷く。嘘なんてつけるわけがない。
「うそ……そんな……。私、忘れたく、ない……。
 いやですっ! そんなの絶対にいやですっ!」
「ごめんね、一子ちゃん。残酷かもしれないけど……でも、私は……
 一子ちゃんに、絶対に消えて欲しくないの、この一週間の記憶よりも、
 もっともっと大事な物が、私にはあるの……」
「ぉ、姉さまぁ……」
「お願い……分かって……私に、託してちょうだい……
 必ず、迎えにくるからっ、今度こそ、私が一子ちゃんを救うから……」
乱暴だと分かっているけど、例え一子ちゃんが嫌がっても
無理やりにでも眠らせる覚悟くらいは持っている。
それで、例え恨まれても構わない。
絶対に消えさせたりなんて、するものか。
492スレの402:2005/03/26(土) 13:46:35 ID:0mjeoMar
>>28さま 
>・呼称がおかしい。いろいろあったにせよ、その二人が互いをそのように呼ぶとは思えない。
カウンターの中の紫苑が、瑞穂の所に行くには一度奥の部屋に戻って、カウンター横の関係者用
通路に出る必要があり、それだけの時間があれば、瑞穂は街の中に消えてしまう可能性がある。
そう考えた紫苑は、とっさに”おねえさま”と呼びかけた。
そういう、背景を作ってあったのですが、地の文にでも書いておくべきでだったのしょうか?

>・紫苑における「癒えた古傷」とは何かがわからない
 これは、紫苑にというより、瑞穂自身の古傷(瑞穂排斥騒ぎ)に触られたくない。
物語中の時間で10年は、たってようやく、折り合いを付ける事ができたのに、当時の事を思い出した
くないという、瑞穂の心理なのです。
 その根底というと大げさなのですが、祖父の遺言で恵泉に編入する事なったが、恵泉では
常に自分の存在は、異物でしかないという意識が、瑞穂のこころの奥底にあったと、私個人はそう解釈
しているのですが?
 当時の恵泉での親しかった人と会う事で、苦い記憶(騒ぎで傷つけた事)を思い出したくない(思い出
させたくない)というのを”癒えた古傷”と書いてみました。

>・第五章(11月)の廊下での瑞穂と紫苑のダンスはなかったことに?
紫苑とのダンスですが、11月の廊下のダンスではなく、12月のダンスパーティで
紫苑は、瑞穂と踊るつもりだったが、体調を崩したため踊る事ができなかった。
後、瑞穂の正体については、初日に紫苑は知っています。

一応、疑問点の説明はさせて頂きましたが、いかがでしょうか?
こういう、辛口の(?)疑問点を書いて頂けるという事は、少しの時間を割いていただけるに
値する物が、書けたのではないかと、自惚れております。
50名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:46:46 ID:zt4yyJ38
「……絶対、私の事、起こしにきてくださいね」
「……うん」
「そしたら、この一週間の事を忘れてる私の事、いっぱい叱って下さいますか?」
「……うんっ」
「そしたら、ちゃんと……私にもう一度思い出をくださいますか?」
「……っ、うんっ……」
「私が昇天するとき、笑って送り出してくれますよね?」
「……勿論よ、一子ちゃん……」
「分かりました。……私、ちょっとだけお休みさせて頂きます。
 お姉さまに起こしてもらうまで、ここで待ち続けています。
 あははっ、ねぼすけだと自分でも思っていましたけど、……まさか、20年も眠るだなんて……」
泣き笑い……涙こそ流れていたけど、それは私の大好きな一子ちゃんの笑顔。
絶対にこの笑顔を失わないためにも、この長い年月を、耐えていこう。
そして、必ず起こしに来てあげて、私が……一子ちゃんを天国に送ってあげよう。
笑顔でっていう注文は、凄く難しいけど、それも絶対に守ろう。
「……ねぇ……お姉さま、私……眠る前に、一つだけお願いがあります……」
「なぁに? 何でも……何でも聞いてあげますよ」
「私、……お姉さまの……お嫁さんになりたいです……ずっと、夢だったから……
 お姉さまの嫁さん……」
「……分かったわ。あなたを私のお嫁さんにしてあげます」
一子ちゃんの手を取って、礼拝堂に向かう。
「大丈夫? 歩けますか、一子ちゃん」
「はい……大丈夫です。ちゃんと二人で、ヴァージンロード、歩けますよ」
「私、新郎なのに歩くのですね」
「いいんですよ。……お姉さまも、ヴァージンですもの」
なんだか、強引な理屈なんだけど、そういうものなんだろうか。
「……あ…、ヴァージン……ですよね? お姉さま……」
「えぇ……今の所ね」
「……む〜、今だけは、絶対に未来の旦那さまののろけ話は聞きませんからね」
「莫迦ね。……分かっていますよ」
51名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:48:46 ID:zt4yyJ38
礼拝堂の中はステンドグラスから月明かりが差し込んでいて、
キラキラと輝いて見えた。
「……綺麗……この景色、覚えていたかったなぁ……」
「ごめんね……」
「いいんです、お姉さま。私は今、一生のうちで一番幸せです。
 延長時間も残り少ないみたいですけど」
「始めましょう……」
「はい、お姉さま……」
二人で祭壇の前に立つ。
「私の夢……かなっちゃいました。……お姉さまのお嫁さんになるって……
 ドレスに身を包んで、お揃いの服装で……なのに私よりも何倍も綺麗なお姉さまに、
 一子ちゃん綺麗だよっ、って……言ってもらうの……」
「さすがにドレスはないけど……」
部屋から持ってきた白いシーツを取り出す。
「これじゃあ、さまにならないかな?」
「いいえっ……、お姉さまっ……私……嬉しいです……」
「あっ、でも……私もお揃いがいいのでしたね。ごめんなさい……シーツは一枚しかないの」
「簡単ですよ。……お姉さまも、一緒に入りましょう……」
私も一子ちゃんと一緒のシーツに包まる。
「これで一緒ですよ。……それに、ほら……これなら、一枚の方が嬉しいですよ……?」
「一子ちゃん、ごめんね……それと、ありがとう……」
「お姉さま……大好きです……」
希薄になっていたはずの、一子ちゃんの唇はとても柔らかく、
とても熱くて……私の体に、多くのものが流れ込んできた。
「んっ……ん……」
「は…むっ……ん……ん……」
互いに生涯初めてであろうキスを交わす。
「お姉さまと、キス……しちゃった……」
「誓いのキスよ、……これで私たちは、ずっと一緒よ」
52名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:50:43 ID:zt4yyJ38
「……もう、時間……ありませんか……?」
「……うん」
「……次にお逢いするときは……
 お姉さま、すっかりオバさんになってますね」
「……そうね」
「私、幽霊だった間の記憶がなくなってるなら、
 きっと…… お姉さまの事をみたら、驚いちゃうでしょうね」
「……まあっ、酷いわね」
「でも、お姉さまなら、何歳になってもお綺麗ですよ、絶対に」
「……そう、かな」
もう、うまく言葉が出てこない。溢れる涙を抑えようと、必死だった。
「お姉さま、涙……凄い事になってますよ?」
「うん……うん……」
そっと……一子ちゃんが私の頬に指をかける。
「よかった……、お姉さまの涙も、ちゃんとさわれました……。
 ちゃんと、お姉さまの涙……拭えました」
「一子ちゃん……一子ちゃんっ!
 大好き…………本当に、大好きだよっ……」
「ありがとうございます。……私も…お姉さまの事、大好きです」
一子ちゃんの輪郭は既にぼやけ始めている。
もう、時間がない……私は本にあった通りに作ったお札を、一子ちゃんに差し出す。
「…………始めましょう」
「……はいっ、お姉さま」
一子ちゃんらしい笑顔。私の大好きだった笑顔を最後まで絶やさない。
本当に強い子なんだな、一子ちゃんは。
……私は、もうダメみたいなのに。
お札が淡い光を発し始めると、それに呼応するように一子ちゃんも、青く発光し始めた。
53名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:51:45 ID:zt4yyJ38
「またお逢いしましょう、お姉さま……」
「えぇ……かならず。あなたを……昇天させに……戻ってくるわ」
「そしたら、……今度こそ、天国では私が先輩ですね。
 お姉さまが天国に来たら、色んなところを案内できるように、勉強しておかなきゃ」
「……なんだか今すぐ昇天するような物言いですよ……まだ、20年も先の事ですからね」
「そうですね……でもっ、私は眠っているのですから、きっとすぐです」
「起きてきたら、おはようって言ってあげる。その後で、絶対に天国に送ってあげるわ」
「はいっ。……それじゃあ……おやすみなさい……お姉さま」
お札の発光が止むと、一子ちゃんの姿は消えていて、
パサリっと……シーツだけが床に落ちた。
「必ず……起こしてあげるからね……
 今度こそ、天国に送ってあげるからね……約束よ、一子ちゃん……」

『はい、お姉さま。約束です……』





54名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:54:16 ID:zt4yyJ38






「そして……その後で……わたっ、私は……お札を持ち帰り、
 お部屋のクローゼットの中に……貼りました……。
 一子ちゃんは……今も……ずっと眠っていて……その時を待っています……」
「……そう、か……そんな事が、な……いや、にわかには信じがたいが……
 ……それであの時…自分の部屋をそのままに取って置くように頼んだのか。幸穂は……」
「私……また、一子ちゃんとの約束を、守れませんでした……本当にっ、……ダメなお姉さん、でした……」
私は今、鏑木家の自室で横になっている。
もう、自力で起きることもままならない。
……きっと、このまま起きる事は二度とないのだろうと、漠然と理解していた。
「私、このままでは死んでも死にきれません……お義父さま……」
「大丈夫だ。幸穂の意志……しっかりと聞いた。何が何でも一子さんを起こして、昇天させる。
 お前の意志は……鏑木の血族みんなでもって、受け継いでやる」
「はい……ありがとうございます、お義父さま。 よろしく……お願い、します……」
喋っているだけでも酷く苦しい。
でも、よかった……死ぬ前に、全部話す事ができて……。
これで、私の意志を受け継いでもらえる……。
「あなた……瑞穂を抱かせてください……」
「あぁ……ほらっ、瑞穂……こっちへ」
「おかぁたま、くるしいのですか? おかぁたま……みずほに、なにかできること、ないですか……?」
重たいなぁ。……瑞穂も、こんなに大きくなったんだなぁ。
「いいのよ、瑞穂。あなたは、強く、優しく、自分を…生きて……」
「よく、わかんないです」
「そうね、瑞穂には……ちょっと……難しかったかな……」
55名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 13:56:13 ID:zt4yyJ38
「ほら、お母さまが疲れちゃうから、もう降りるんだ瑞穂」
慶行さんが、瑞穂を抱きかかえる。
「あなた……ごめんなさい。短い間でしたが……
 あなたの妻として生きた時間、……とても幸せでした。
 初めてお会いしたあの日から、あなたの事を……ずっと、ずっと愛してきて、……本当によかった。
 ありがとう、愛してるわ……慶行ちゃん……」
「さっちゃん……わしを……おいていかないで、くれ……
 わしは……今だって……これからだって……さっちゃんがいないと
 ……何もできないよ……」
「大丈夫よ、あなたは強くなったわ。そして、これから、もっともっと強くなって……」
もう、ダメかな……?
話したいこと、残したいこと、いっぱいありすぎて……全然たりない……。
「……いちこ…ちゃん……さきに……いってますね……」
天国で、あなたが来るのを、待っています……。
いっぱい……いっぱいごめんね……一子ちゃん。
「やくそく……」







56名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 14:00:02 ID:zt4yyJ38

 ――epilogue――

「凄いです凄いです凄いです〜! とっても綺麗ですね〜お姉さま〜」
一年を通して咲き続ける桜の並木道を二人で歩く。
「えぇ、凄いでしょ。私のお気に入りの場所なの。
 ほら、……恵泉の並木道に、どこか似ている気がしませんか?」
「あ〜っ、それ凄くよく分かります! 私も何だか似ているな〜って思っていたところですから」
「この並木道を抜けると、広い草原になっているの……凄く気持ちいいですよ」
「へぇ〜、何だか凄そうですっ、天国っていいところですね〜、お姉さまっ!」
ざぁぁあああああ――
一面、抜けるような緑の草原と青い空。
二色の境界が遠すぎてぼやけてしまっている。
「うわぁ……すごぉい……風が……とても気持ちいいですねぇ、お姉さま」
二人で草の上に腰を下ろす。日差しが暖かくてとても気持ちがいい。
「はい、ここが私のお気に入りの場所ですよ。
 ……さ、約束通り案内したのですから……今日も瑞穂の話を聞かせてくださいね」
「わっかりました〜! お任せください。
 ……そうですね…前回はプールのお話までしましたから……
 今日は、夜の第二音楽室に潜入した時のお話をしましょうか」
「あら……礼拝堂の秘め事は話してくれないのかしら」
意地悪に笑ってみせる。
案の定、真っ白になって驚いている一子ちゃんに笑いをこらえきれない。
「なっ、ななななななっ、何で知ってるんですかぁ、お姉さまぁ〜〜!!」
「それはね……礼拝堂ですもの、天使さんはいつでも見てますよ」
「そんなのプライバシーの侵害です〜〜〜!!」
じたばた暴れて全身で抗議する一子ちゃん。
可愛いなあ。何年たっても、全然変わってないなあ。


「ありがとう……瑞穂……」
57名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 14:05:47 ID:zt4yyJ38
終わった〜。

糸が色々絡んでてほどくのが大変でした。
辻褄…あったかなぁ。
582スレの402:2005/03/26(土) 14:06:55 ID:0mjeoMar
>>29さま >>30さま 5時起きさまレスありがとうございます。

一括になりますが
>>29さま
>>28さんもおっしゃってますが、確かに呼称が気になりますね。
この件につきましては、28さまへのレスに書かせて頂きました。

>>30さま
>瑞穂の紫苑様発言も恵泉でめいわくをかけたということを暗に
意味して書かれたと思ったのですが,どうでしょうかね?
はい。そのような意味で書いてみました。

>>31 5時起きさま
>瑞穂ちゃんけじめ付けにあるいてるんですね
自分が(自分も?)前に進むために、過去を引きずったまま新しい家庭を築きたくない
から、けじめを付けるために

もう少しだけこの話は続きます。
次の話が実質的な終わりになります。オリキャラ満載の話でも有ります。
もし、少しの時間をさいていただけるのなら、幸いに思います。

リロードしなかったので、割り込んでいましたら、ごめんなさい。
59名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 14:23:16 ID:aVdumvKw
>>57
・゚・(ノД`)・゚・ハッピーエンドでよかったよぉ
60名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 14:32:35 ID:ekZwhsMV
>>57
GJ!なんか一子の話は不思議と涙腺が緩みます・・・
本編で一子を封印してた?お札については幸穂と楓が
巫女装束着て一子を眠らせたのかなと妄想してました。。。
61名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 14:48:52 ID:KTcWsgy4
この話に準拠すると、本編のノーマルエンドが
実はちゃんとバッドエンドだったという事になるのか。

ところで一子よりも幸穂さまの最期にヤラれた俺は異端ですか?
623スレの226:2005/03/26(土) 15:44:46 ID:gY9jJIle
>>57
うん、良い話でした。ホロリと来ました。
なんか、エピローグ素敵杉ですよ・・・。
ホント、エエ話や・・・・・・
63名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 16:22:56 ID:HaqM9cLZ
。・゚・(ノД`)・゚・。
64名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 17:55:00 ID:A9I8pHOh
伏線が処理されてて、ラストも綺麗にまとまっているし、GJでした。
というかこれは泣けます。


幸穂さまのお手製聖水が飲みたくて仕方がない。
65名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 18:18:02 ID:3HZXWvy9
。・゚・(ノД`)・゚・。 うぇーん、二人に幸あってよかった。
66test:2005/03/26(土) 18:56:24 ID:kKKqGWvM
 ネタが無いので、奏ブラック追加してみるtest

おボク様 あなざぁ 『奏ブラックと新寮生の秘密』

 第一印象が大切。新しい寮生の方はもう来ている筈。夕食前に紅茶を運んで
さし上げて、可愛らしくご挨拶しておこう。そう思った。でも、奏の小ささを
アピールするために、わざと大きめのお盆を選んだのは失敗で、古い寮の階段
は急なので上りにくい。引き返すか考えているうちに、後ろから誰かに抱き留
められる。
「ひゃっ………?!」
 一瞬振り返ろうとして思いとどまる。お盆を落としたらいけない。でも、何
で男の人がこんなところに!?
「驚かせてごめんなさい…でも、ちょっと危なっかしかったから」
 奏の聞いたことのない声が後ろから。えっ? 女の人?
「えっ…あ、は、はい」
「さ、前に」
「あっ、は、はいっ……」
 そのまま、その男の人はお盆と奏を後ろから支えてくれている。軽くパニッ
クになりながら奏はゆっくり階段を上った。
「あの……ひょっとして、奏ったら階段を塞いでしまっていましたかっ?」
 後ろの人は同意する。小さくなって反省している振りをしておこう。そんな
他愛無い話を続ける間に階段を上り切る。お盆はそのまま後ろの人が持ってく
れた。
 抱き留められた時には男の人だと思ったんだけど、その人はどう見ても女の
人にしか見えない。
「あの…お姉さまが…ひょっとして………」
 男の人ですかと聞くべきかどうか、奏は躊躇した。
「え、ええ。私がそうよ」

  続く
67test:2005/03/26(土) 18:57:00 ID:kKKqGWvM
 えっ!?ああそうか。新しい寮生だということか。この人は自分のために用
意されたティーセットを自分で運んだことになる。奏が謝ると、いかにも育ち
のよさそうな笑顔で打ち消して、おっとり自己紹介をする。
 宮小路瑞穂。女の人の名前だけど。とっても綺麗な女の人にしか見えないん
だけれど。でも、奏は孤児院という男の子が身近にいる環境で育った。奏を抱
いた、あの腕とかの固い感じは男の人みたいだった。
 とりあえず考えるのはやめて、お茶を入れることにする。ちらっと肩と腰の
ラインを見てから、座ってもらう。あの胸が詰め物だとしたら、体型はモデル
のように細いのに筋肉質な女性というより、活発でやせている男の子の……
 奏が何を考えているかも気がつかないで、瑞穂という人は奏のお茶を入れる
動作に感心の声を上げる。
 もう間違いない、根拠はないけどこの人はきっと男の人だ。そう思い奏の顔
色が変わる。でも、悟ったことを悟られるのは良くないかも。奏はとっさに照
れた振りをして誤魔化した。誤魔化せた。そして、お茶を渡しながら観察を続
ける。
 まりやお姉さまの従姉妹というのが嘘でも、良家の子女というのは間違いな
さそう。そんな男の人が悪戯で女学園に来るとは考えにくい。とりあえず男の
子受けしそうに可愛らしくしておこう。
 奏がお世話係になると説明すると、瑞穂(仮)さんは申し訳なさそうな顔を
する。あまり悪い人ではないみたい。最初に考えた通りお姉さまとして持ち上
げておこう。正体は置くとして。
 瑞穂お姉さま(仮)は可愛い後輩が出来てうれしいと言った後で。
「あ、でも……」

  続く
68test:2005/03/26(土) 18:58:22 ID:kKKqGWvM
「で、でも……?」
 奏の完璧な演技が失敗して、バレてるのがバレた!?
 ところが、瑞穂お姉さま(仮)は、もっと小さいお盆を使うように言っただ
けだった。勘違い。一瞬、頬が赤くなるのを感じた。

 ティーセットを片付けると、奏は御門まりやの部屋に向かった。
「まりやお姉さま、奏です。あの、お話が」
 どう仄めかそうかと思ったけど、相手は奏の表情でわかったようだ。
「うん、入って」
 そして、奏に座らせて。まりやお姉さまはあっさりと聞いた。
「瑞穂ちゃんのことね、何でわかったのかな?」
 ええと、何かそれらしいことを。
「奏、階段で転びそうになって、あの方に助けていただいて、その時に……」
 まりやお姉さまは溜め息を吐く。納得してくれたようだ。
「瑞穂ちゃんは私の従兄弟。それは本当よ。性別は男だけどね」
「あの、どうしてなのですか〜?」
「ごめん、詳しい話は後にして、瑞穂ちゃんは何も悪くないの。どうしても、
この寮に入るようにというお祖父さんの遺言で、あたしも協力していて、仕方
なく来たのよ。できるなら他の人には黙っていて欲しいんだ。虫のいい話とは
思うけど……」
 まりやお姉さまに恩を着せるいい機会。協力すれば、いつか見返りもあるだ
ろう。奏はうなずいた。
「奏ちゃんありがとう。でも、瑞穂ちゃんに遠慮は要らないから、あれでも男
の子だし何か悪さしたら追い出すから遠慮なく言ってね。あたしがいない時に
は学院長や教頭先生は知っているから」
 そうか、ずいぶん大きな話なんだ。

  続く
69test:2005/03/26(土) 18:58:59 ID:kKKqGWvM
「それから、瑞穂ちゃんもバレたこと知ってるのかな?」
「いえ、大丈夫なのですよ」
「そうか、こんなに早くバレたって知ったら、瑞穂ちゃんも自信無くしちゃう
だろうから、他の人はもちろん、瑞穂ちゃんにも黙っててくれないかな」
「わかりました。奏、まりやお姉さまと瑞穂お姉さまのために、がんばって秘
密にするのですよ」
「ありがとう。良い子だね奏ちゃん」
 やっぱり話してみてよかった。奏は御門まりやにも巧みに取り入ることがで
きたみたいだ。

 翌朝の食事の時間に瑞穂お姉さまのことが話題になった。多分、瑞穂お姉さ
まの言葉にしたことには、基本的に嘘なんてないんだろう。嘘を吐いてないの
に嘘しかない奏とは大違いだ。

 その日の放課後、瑞穂お姉さまにお茶をお持ちすると、エルダー制度につい
て聞かれた。男のエルダー・シスター候補か。面白そう。
 そのうち、奏がなぜ寮にいるかという話題になり、奏には答えられなかった。
瑞穂お姉さまは何も解からないのに奏を慰めてくれる。ふと、遠い過去に病院
で出会ったお姉さんのことを思い出して、何故か泣いてしまった。きっとこの
男の人が、今まで奏が知っていたどんな人にも劣らない程、やさしいから。そ
のことに気がついて奏は落ち着いた。奏は、ああいう人には成れない。今度は
意識して、泣いている振りをする。そして見上げて、試しにおねだりしてみる。
「『お姉さま』って呼んでも…いいですか……?」
 瑞穂お姉さまは奏のおでこに優しくキスしてくれた。そんなとこまで、あの
時のお姉さんみたいだ。瑞穂お姉さまか。

 隠された秘密は大きければ大きい程いい。それに、身近にエルダーがいれば
メリットもあるはず。奏は、まりやお姉さまに協力してみよう。きっとうまく
行く。

  終了
70名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 20:31:08 ID:SqjgwAtj
いいなぁ、こういうのも凄いいいね
71名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 20:46:04 ID:OodHej4y
>>57
(゚Д゚)!!→(TДT)
泣いた。本編の泣き所並みに泣きました。
つうか個人的に、瑞穂が恵泉に行かされた理由の真相として絶賛公式化中!
というか>>57氏が嵩夜あやさんではないかと云う疑惑まで!
・・・いやあくまで個人的に(・ω・)

>>49
ありがとうございます。>>28です。
書いたものに注釈、という無粋なまねをさせてしまい申し訳ありませんでした。
ただ補完いただいた内容でも、残念ながら疑問点というか違和感は消えませんでした。
むしろ余計に疑問に感じるところも出てきたのですが、細かいことを挙げるのもなんですし
場としても相応しくないと思いますので、ここまでとし止めておこうとおもいます。
>>28は、私が感じた違和感が、本編を解っている方が書いているようには思えないほどのものだった。
という理由からでした。作品の感想を書かせていただきますと、「紫苑の場合」に限ってですが
(シリーズの)過去の設定(伏線)を拾っているだけで、可もなく不可もなくぐらいかな。という印象でした。
シリーズの主眼が瑞穂の苦悩(もしくは巡礼?)にあるのはわかりましたが、紫苑自身の持っていた問題
なども触れられていたほうがよかったかなとおもいます。(降誕祭で倒れていたなら尚更)
シリーズ自体は個性的で雰囲気のある展開を面白く感じ、期待しております。
すこし辛い云い様もさせていただきましたが辛口批評も批評のうちと受け止めるもしくは流していただけると幸いです。

>>66
黒い・・・・・・というか何が彼女をここまでに(´Д`;)
これまで何があったのかを思い巡らせてしまいます。
ただこのまま続いていくと、本編中の奏のその黒い部分を吐露するシーンや
さらに10月の最重要シーンとかどうなっちゃうんだろうと不安・・・。
やっぱさらに黒い?それとも・・・
そんな奏ちゃんいやだと思いつつも読みたくもありーの、困りーの(´・ω・`)

あとSSでもないのに長文スマソorz
722スレの402:2005/03/26(土) 22:01:39 ID:0mjeoMar
>>71
丁寧なお返事。まずはありがとうございます。

>書いたものに注釈、という無粋なまねをさせてしまい申し訳ありませんでした
本来でしたら、物語中に書き込むべきものではないかとおもいますし、そうあるのが理想ではない
かと、個人的には思っております。
疑問点や、違和感を読み手に与えたとするならば、キャラクターの掘り下げ不足や、物語の背景の
設定の甘さ、整合性の不足など物語の練り込みが不足と言いますか、十分ではなかったと、
それは、突き詰めて言えば、私の力量不足ではないかと、扱うテーマに対しての私の咀嚼能力が
追いつかず、その結果できあがったものが消化不良になってしまった。
例え辛口の感想とは、時間を割いて書き込んでくださる方がいる以上、出来るだけ最後まで終わらせ
るのが礼儀ではないかと、私個人として思っております。重ねて申し上げますが、あくまでも、私個人
としての書き込みである事を明記しておきます。

>紫苑自身の持っていた問題なども触れられていたほうがよかったかなとおもいます。
この件につきましても、一応の構想といえば大げさになりますが、ないわけではありません。
ただ、どこで織り込むか・・・今回の紫苑編で織り込むべきだったのかも知れませんが、そうすると
話が、どっちつかずになりそうな雰囲気でしたので(所詮、力量不足の言い訳にしかすぎませんが)

>シリーズ自体は個性的で雰囲気のある展開を面白く感じ、期待しております
残り少しになりましたが、ご期待に添えるものが出来るとはお約束できませんが、少しでも
面白いと思って頂ける物を書いていきたいと思っております。また、辛口批判を受け入れるだけの
気持も持っております。

長文になりましたが、この件につきましては、私もここまでに致したいと思います。
>>49で、次回を実質的なおわりにすると書きましたが、実質残り2回ということになりそうです。
できるだけ、きれいに(?)落としたいとは思っております。

最後に、こういう考え方もしている書き手が、いるとだけ思って頂ければさいわいです。
SSスレの雰囲気を壊していたのなら、ごめんなさい。
73名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 22:26:45 ID:wD2ILt68
黒いっていっても性悪な黒さじゃなく生まれと環境が要因の自己防衛本能的な悲しい黒さなのがイイ!
74名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 23:04:44 ID:SUrKcnXE
>というか>>57氏が嵩夜あやさんではないかと云う疑惑まで!
こういうゲームのライターだからなぁ・・・。
本当に降臨したのかも。

どっちにせよ、名作ですね。
75名無しさん@ピンキー:2005/03/26(土) 23:44:04 ID:wetLyM4H
本人というのは有り得ないだろ
小説書きとしての基本はキチンと踏んでいるみたいだけど、おとぼくのオリジナルとテキストの性格が違いすぎる
具体的に言うと、句読点の使い方とか



とSS書きの一人が偉そうに言ってみるけれど、まだざっと目を通しただけでちゃんと読んでないので今から読んできます
前評判高いから楽しみ
763スレの226:2005/03/27(日) 00:29:37 ID:IexJ4RBD
>>66-70
確かにブラックなんだよな。それは感じた。
ただ、それが性格が悪いとかそういうとこから来るのではなく、自らの
存在故にそうなってるのがもの悲しい。ちょっちやりきれない感じ。

おボク様のブラックユーモアとは全然違う辺り、この作品はおボク様あなざぁ
ではない、と思いたい感ず。
77初代スレ126:2005/03/27(日) 00:34:23 ID:ZfxbBi60
貴子スキーな私も、貴子さんの鼻血には触れざるを得なかった…
というか、その方が「貴子さんらしい」しwこの場面は例のヨダ絵を想像してもらうと良いかとw

>>57
・゚・(ノД`)・゚・
いや、ホントええ話でした…こんな綺麗な話を書けるようになりたいなぁ、と。
本気で思いましたよ…GJでした!!

>>奏ブラックの中の人
黒いのに…黒いのに、ヤな感じじゃない…!!なんて稀有な存在なんだ奏ブラック!!w
GJです!!

とりあえず、王座決定戦最終話は明日、の予定で。
…良作ばっかりで気が引けますが…( ;´Д`)
78名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 01:44:48 ID:2goqDeeF
>>57
本人云々とか言い始めるのはナンセンスかと思われるでしょうが、
それくらい面白かったと受け止めてもらえれば幸いです。
79初代550:2005/03/27(日) 01:58:28 ID:RCrjxmw5
貴子ED後、貴子視点。過去の「海に行こう!」シリーズは必読。読んだからといって楽しめるかどうかは知らない(ぉぃぉぃ
海に行こう!
花火だ!編

夜空に大輪の華が咲き、僅かに遅れてドーンという音が聞こえる。
それを砂浜に出したテーブルの前に座ってみている私たち7人(一子さんは座ってませんが)。
瑞穂さんと一子さん以外の5人は色鮮やかな浴衣を身に着けている。
まりやさんの「折角だから」と言う言葉に従ったのだが、何が「折角」なのかは私にはわかりません。
「ちょっと迫力に足りないわねぇ・・・」
奏さん手製のトロピカルジュースを飲みながら、まりやさんが贅沢を言い出す。
「そうですか?私は人ごみが苦手ですから、こういう風に見るほうが好きですわね」
紫苑さまがまりやさんに答える。紫苑さまのトロピカルジュースは少しだけアルコール入り。実はお酒が御好きなのかしら?
「スイカが切れましたよ」
由佳里さんが初日にフルーツの器になったスイカの片割れを切って、お盆に載せて持ってきた。
他の5人が口々にお礼を言って、スイカを手に取り口をつける。5日も放置してた割には美味しい。
しかし、スイカの汁が浴衣に飛ばないように食べるのは、ちょっと気を使う。
いよいよ明日は東京に帰る。あっという間の一週間だった。これだけ遊びほうけたのは初めてかもしれない。
日に焼けて少しひりひりする肌が夜の浜風に気持ちいい・・・この風を感じられるのも今日が最後。

「遠い大きな花火よりも、近くの小さな花火よね♪」
納得出来るんだか出来ないんだかよく判らない理論を言い出し、まりやさんがどこにあったのかわからない大量の花火を持ってくる。
「凄い量だね・・・まりや」
「本当ですね。線香花火から大型の打ち上げ花火、爆竹までありますよ」
荷物運びに狩り出された瑞穂さんと由佳里さんがあきれ返った声を出している。
「あれもこれもって思って買ってるうちに、膨れ上がっちゃって」
笑って誤魔化すまりやさん。計画性があるんだかないんだか・・・
「まりやさん、これは最後にしましょうね」
大量の花火の中から、特に大きな打ち上げ花火を指差している一子さんがそう言った。
「最後は線香花火でしょう」
いくつかの手持ち花火をキープした紫苑さまがニコニコと笑って、まりやさんの代わりに答えた。
(1/3)
80初代550:2005/03/27(日) 02:00:01 ID:RCrjxmw5
「確かに礼儀と言いましょうが、作法と言いましょうか、そういうものとしては花火のしめは線香花火以外にないと私も思ってはいるのですが、今日は打ち上げ花火でしめたいと思いますので、ぜひとも最後はこの大きな花火にして欲しいのです」
そこまで言うのなら・・・と言う事で、一子さんの希望が聞き入れられた。別に、線香花火を最後にしなきゃいけないって言うわけでもありませんし。
出来るだけ平らそうな岩の上にろうそくを立て、バケツに水を汲んで用意は終了。この旅行最後のイベントはこうして始まった。

パパパパパパン!!連続した破裂音が響く。
「いきなり爆竹を投げないでください!」
まりやさんが投げた爆竹が、足元で破裂した由佳里さんが悲鳴と抗議の声を上げる。
「走って逃げると、裾が危ないですよ」
紫苑さまが楽しそうに笑いながら、爆竹から逃げている由佳里さんに教えると、由佳里さんを赤らめて浴衣の裾に手をやった。
横で気まずそうな顔をしている瑞穂さんの太ももを軽くねじり上げておく。
「そんなに近くに投げてないわよ」
また、爆竹の束に火をつけながら、まりやさんが大げさすぎとでも言いたそうな声で答えた。
初っ端から爆竹を手に持つあたりがまりやさんらしい。どうせ次はロケット花火でしょう。
「お姉さま、これに火をつけて欲しいのですよ」
奏さんが、一子さんが選んだものとは違う打ち上げ花火を選んで、瑞穂さんに手渡す。
「良いですよ、少し離れてくださいね」
瑞穂さんが火をつけると、火の玉が音を立て夜空に舞い上がり、心地よい破裂音とともに小柄な華を咲かせた。
「たまや〜」
怪我の心配のない一子さんは、ぱらぱらと降り注ぐ火の粉のすぐ下にまで近づき、それを手で受け止めるような仕草をしている。
「うふふ、少し幽霊さんがうらやましくなりますわね。まるで真夏の雪のようですわ」
手に持つタイプの花火で夜空に円を描いていた紫苑さまが、一子さんの様子をまぶしそうに見つめていた。
「生きてる人がやると、火傷してしまいますわね」
「では、生きてる人は生きてる人にしか楽しめない花火を楽しみましょう」
そう言って花火を一つ手渡し、その先端に火をつけてくれた。赤い火花がパチパチと弾けながら砂を焼く。
「お姉さま、もっと、打ち上げてください!」
(2/3)
81初代550:2005/03/27(日) 02:01:04 ID:RCrjxmw5
瑞穂さんが新しい花火に火をつけるたびに、その周りでダンスを踊っている。様々な花火に火がともり、火の粉が舞い降り、それに照らし出された一子さんが踊る。
それは私たちの目を惹きつけるに余りあるほどに美しく、幻想的で、そして儚い。
「一子さん、綺麗なのです・・・」
奏さんが全員の気持ちを代弁するようにつぶやいた・・・いつしか、私たちは手に持つ花火に火をつけることも忘れ、ただ、一子さんの踊りを見つめ続けていた。
「あっ、もう、打ち上げ花火は最後ですよ」
火をつけていた瑞穂さんがそう宣言する。手に持つ花火はいくつも残っているが、打ち上げ花火は、一子さんが選んだ一番大きなものしか残っていない。
「それじゃ、もう、終わりにしましょうか?」
上げ終わった花火のゴミを大きな袋一杯に詰め込んでいた由佳里さんが提案した。一子さんのダンスを見てしまったら、手持ちの花火やロケット花火は少し物足りないような気がする。
対岸の花火も終わってしまっている所を見ると、時間も頃合なのかもしれませんね。明日も早いですし・・・
最後の花火に瑞穂さんが火をつける。それは数回の打ち上げを繰り返すタイプ。
「そうですね、これで・・・おしまいです」
相変わらず花火の真下に立っている一子さんが静かに宣言した。
「私はあちらに帰ります。里帰りは終わりです」
静かだが、言葉を挟めない雰囲気がそこにあった。私たちはそんな一子さんを先ほどまでと同じように見つめる事しか出来ない。
「東京までついて行ったら、一子は帰りたくなくってしまいますから。ここでお別れします」
誰もが何かを言いたがっている、しかし、誰も何も言う事が見つけられない。
「この何日か、凄く楽しかったです。貴子さんや紫苑さんとお会いできたのも嬉しかったです」
そういう彼女の体が音もなく薄らいでいく。
最後の火の華が宙で開き、その最後の一片が砂の上で消えると、彼女の姿もそこにはなかった。静かに涙を流す6人だけを残して・・・
『お姉さまとお幸せに・・・』
そんな声が聞こえたような気がした。他の人たちにもそれぞれ違う声が聞こえたそうだ。それがどんな言葉だったかは教えあわない。多分、自分の胸の中にだけしまいこんでいればいいものだと思ったから。
お盆よりも早くこの世に帰ってきた優しい幽霊は、お盆の直前にあちらに帰ってしまった。
(げっ、2行だけ続く)
82初代550:2005/03/27(日) 02:01:46 ID:RCrjxmw5

こうして、夏の旅行は終わった。来る時と同じ道のりを、同じだけの時間をかけて東京まで帰ったはずなのに、帰り道はやけにあっけなく着いてしまったような気がする。
帰ってから、私たち6人は一子さんのお墓に参った。その墓碑には小さく一子さんの命日が、あの旅の最終日である事が書かれていた。
(おしまい。80行程度で目測を誤るなよ、俺・・・)
83初代550:2005/03/27(日) 02:10:36 ID:RCrjxmw5
終わった終わった、やっと終わった・・・
とりあえず、何とか終わりまで書けてよかった・・・
84名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 04:28:12 ID:XB5JkZp1
お疲れ様でした
85名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 05:01:06 ID:+tTefioZ
長編乙でした。
86名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 09:13:35 ID:YVf3YA1D
そろそろスピード落ちてきたな。
過疎化が進むかな・・・?
87名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 09:55:15 ID:+tTefioZ
これまでの勢いが異常だっただけでしょ。
88名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 10:37:06 ID:06Wdadwu
というよりも、ここ数日で終る連載モノが多すぎるキガス
あらしを肯定するわけではないが、やはりみんな言われたことに自覚があったのかね
89名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 10:51:51 ID:oi5R89KH
偶々だと思うし、皆さんが頑張ってくれたし、ちょいと寂しいけど、
新しい空気が入るのは悪い事じゃないよね。
90名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 13:04:11 ID:wKitD9lt
海に行こうはもうちょい続いてほしかったかな、個人的には。

閉めにメインの貴子と瑞穂によるシリーズ通してのエンディングが欲しかった〜
91お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/27(日) 13:14:41 ID:fDk6VPS9
Blessing Your Marriage 第一部

1/5
「紫苑さまお久しぶりです」
「…紫苑さん、おひさー」
「お久しぶりです」
「あら圭さん、『紫苑さま』ってお呼びしないんですか?」
「もう恵泉じゃないんだからいいじゃない。年上の人の名前を
さま付けで呼ぶのはお嬢様学校だけよ」
恵泉女学院を卒業して一年と少し経ったある日紫苑は
親しかった美智子と圭に会うこととなった。
「お二人のご実家に連絡したら揃って家を出たと言っていたのでびっくりしました」
「圭さんから聞きましたよ。紫苑さまが婚約なさったって。
こちらもびっくりです。」
「ええ」
紫苑は久しぶりに積もる話がしたいというのもあったが
なにより親しかった二人に婚約の報告をしておきたかったのである。
「…そうね。どこかで茶でもしばきましょう」
「お茶をしばくってなんですか?」
「野点をするということですよ。紫苑さんのお手前も一度見ておきたいですし」
「茶碗とか用意されてるんですか?それに野点は結構難しいんですよ」
「真に受けないでください紫苑さま。とにかくあそこの喫茶店にしましょう」
「美智子、ここは『なんでやねん』と平手チョップよ」
三人は喫茶店に入っていった。
------------------------------------------------
「野点が難しい」
野外でお茶を点てる茶会を野点というがこれといった作法や
道具が定まっていないので、もてなし方がかなり難しく
よほどの名人でなければ開くことはできないと言われている。
野点の極意は「定法なきがゆえに定法あり」とまで言われている。
------------------------------------------------
92お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/27(日) 13:15:51 ID:fDk6VPS9
2/5
「そうですか。今は圭さんと美智子さんは二人暮らしなんですよね」
「ええ」
美智子はコーヒーカップを抱えながら嬉々として答える。
「学生になったから、一人暮らしを始めようと家を出たら美智子が
いきなり部屋に押し掛けてきたんですよ」
「私に黙って一人暮らしなんて、ひどいじゃありませんか」
「私がどこに住もうといいじゃない」
「一人でお部屋を借りるよりはいろいろと楽じゃないですか」
「そうだけど…」
「まぁまぁ」
紫苑は二人を仲のいい夫婦喧嘩のように見ていた。
彼女たちの関係を紫苑はそれとなく理解はしていたが
そのことに言及することはない。
確信がないこともあるが、誰かに暴露されることで秘めておくしかない
二人の関係が壊れてしまうようなことがあってはならないと考えているからである。
誰だって人と惹かれあうものである。
自分だって瑞穂と惹かれあって今に至るのである。
この手の関係は長く続けられないのが世の常ではあるが
当の本人が幸せならば続いて欲しいと思うのである。
「ほんと、美智子にはかなわないわね」
「そういうことです。圭さん、口にクリームがついてますよ」
「…ん、ありがと」
ショートケーキのクリームを美智子が優しくふき取る。
紫苑は二人の楽しそうな様子に微笑むのだった。
93お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/27(日) 13:17:16 ID:fDk6VPS9
3/5
「紫苑さま、婚約者はどんな方ですの?」
「…あの第71代エルダーを口説き落とした男…
どんな素敵な方なのかしら…ふふふ…」
圭は何やら不気味に怪気炎をあげている。
「最初にお会いしたときからお慕いしている方です」
「…一目惚れですか。素敵ですね」
圭が合いの手を入れる。
「鈍感で一度こうだと決めたらそのまま走っていってしまうようなほど
一途で頑固なんですけど、優しくて人情に篤くて…困った人を見ると
助けずにはいられない。そんな人です」
「まぁ、素敵な方ですね。あれ、圭さん」
「…」
圭はあごに手を当てて何やら考え込んでいる。
「でも私、本当は親が決めた別の方が婚約者でこの思いは自分の中に
秘めておくつもりでした。でもとうとう思いが当の本人にわかってしまいました。
そして『ご両親に迷惑を掛けないから、一緒になって欲しい』って言ってくれたんです。
本当にあの時はうれしかった」
「…瑞穂さんみたいな方ね」
圭が核心に触れる一言をいきなり言い放つ。
「え?」
思わず紫苑が驚きの声を上げてしまう。
「まぁ、確かに瑞穂さんはそういう方でしたけど…どうしました、紫苑さま?」
「言われてみればそういう所があるかなと今、気がつきました」
実は後で瑞穂が紫苑の携帯にそっちに向かうと連絡し、二人の前に現れてから
「僕たちは婚約どころか既に結婚してます」と発表するというドッキリを計画していたのである。
こんなときにばれては台無しである。
94お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/27(日) 13:19:28 ID:fDk6VPS9
4/5
「結構、その方と婚約するまでは長かったんですか?」
「半年ぐらいはかかりました。なんせ前の方との破談に手間取りまして…」
「その方とはいつお知り合いになったんですか?」
「そうですね。一昨年の6月ですね。そのときはまだお付き合いはしていませんが」
紫苑は当たり障りのないところで正直に答える。
「…そういえば瑞穂さんが転入したときもその頃でしたね」
(美智子さん、鋭いですわね)
美智子と圭はお互いを見合った。
「紫苑さんは帰宅部でしたけど、その方と仲良くなっていく時間はどうやって作ったんですか?
家族にも内緒の恋じゃないですか。そんな人と会っている時間はそんなになかったんでは…。
とても一緒の学校に通っていないとその方との接点なんて持ちようがないですよ」
「こっそり、家を出ては会いに行っていました」
紫苑は平然とした顔で誤魔化す。
「今までの話を聞いてると紫苑さまとその方って、お付き合いするのがプロポーズの
後からなんですよね。ところが逢引みたいなことをしてたといいましたよね。そこまでして
会いに行っていらしたらその方も普通、紫苑さまのお気持ちにすぐ気づくと思うんですけど」
「その…お互いに好きだって、なかなか言い出せなかったんですよ」
「…その自分の気持ちにうじうじと悩んでいるところも瑞穂さんによく似ているわ」
「そうかもしれませんね」
紫苑は微笑を崩さずに答えながらも二人の確信を否定するべく思案している。
「そんな優柔不断な方は紫苑さまにふさわしくありません」
美智子が突拍子もなく紫苑の婚約を否定しだした。
「そうね、なんか付き合うって言っても何かその場の勢いって感じがしないでもないわね」
圭も同調する。
「そんな方と結婚しても長く続きませんわ」
「…そうね。できちゃった結婚になってないだけ今はいいけど…」
「そ、そんな瑞穂さんと私に限って…」
紫苑は途中で口をつぐんでしまった。
「へぇ、名前まで一緒なんですか。こりゃアマゾンの圭さんもびっくりだ」
「瑞穂さんって男の方でしたっけ。ふふ…どういうことなんですか?」
95お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/27(日) 13:19:55 ID:fDk6VPS9
5/5
二人にしてやられた紫苑は瑞穂の正体と結婚していることを告白した。
「身体能力も女の方にしては結構あるほうだとは思っていましたが
そういうことだったのですか」
「…」
「圭さん、どうかしましたか」
落ち込んでいる圭に美智子が話しかける。
「…私とあろうものが…男と見抜けなかったなんて…一生の不覚」
「まぁまぁ、男だとわかったらどうするつもりだったんですか」
「…そりゃあ…もう…」
圭は不気味で不適な笑みを浮かべた。
「でも、出会いはともかく、本当に素敵な方と結婚なさったんですね」
「…紫苑さん、おめでとう」
「ありがとうございます」
「でも、今の今まで私達はまんまとだまされてたわけですか」
「…考えれば着替えのとき、一緒だったのよ。女だらけの中でやましいことなんて
考えてる余裕はなかったでしょうけどちょっと腹が立つわね」
「そうですね。何かこう瑞穂さんに"思い出に残るような"祝福をして差し上げないと」
「…モチのロン、トイトイ、サンアンコー、ドラドラドラのマンガンよ」
紫苑がドッキリによる結婚報告を計画した理由は彼女達に
何かを考える時間を与えたくなかったからである。
だったら婚約したなどと最初から言わなければと紫苑は後悔している。
"ド、ド、ドリフのだいばくしょう、チャンネルあわせば…"
「な、何、これ」
「私の携帯です、はいもしもし…あら、あなた」
あなたという言葉に反応した圭と美智子が紫苑に無言の圧力を掛ける。
「はい、はい…今からいらっしゃるんですね。じゃぁ公園で
待ち合わせましょうか。はい…そこです。では、また」
「まぁ、紫苑さま。お茶目な着うたですこと…ふふふふ…」
「さぁ、今日は羊をささげる祭壇を用意しなくては…」
美智子と圭は喜色満面になにやらつぶやいている。
(瑞穂さん、ごめんなさい)
96お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/27(日) 13:20:48 ID:fDk6VPS9
とりあえず第一部はここまでです。
徹夜明けはしんどいですわ。

続きは望まれるのならば後ほど…。
973スレの226:2005/03/27(日) 14:26:58 ID:4dCZ+dJ7
>>初代550氏
乙でありました。せっかくだから番外編キボンヌ。

>>一緒のなかのひと
(・∀・)イイ!続きよろしくです。
982スレの402:2005/03/27(日) 15:29:31 ID:5LzXOhJh
>>83

初代550さん。完結おめでとうございます。
できることなら、番外編とか希望したいです。

>>96
中の人、続きを希望したいです。
紫苑さんが、いかに瑞穂を生け贄に差し出すか、気になります。
994-41:2005/03/27(日) 16:03:07 ID:XXfeo1a6
4スレ目の41です。
一連の一子SSを読んで、こんな光景が浮かびました。

ただ、設定は3レス目の674さんと一緒ですので、
2番煎じではありますが。

100転生:2005/03/27(日) 16:04:47 ID:XXfeo1a6

私は今、吸い込まれるように天上界から下界に降りている。
先ほど神様に呼ばれて、転生することを告げられたのだ。

どの様な家に生まれるのか、私は知らない。
でも、私は今までたくさんの人に貰った幸せを、新しいお父様やお母様、
そして周りの人すべてに分けて行きたい。

幸穂お姉さまは、一足先に転生なさっている。
いつか、どこかで出会えたら嬉しい。
そんなことを考えていると、1件の病院が近づいてくる。
ああ、ここが私の新しい家族のいるところなんだ。
そして、新しいお母様のおなかに吸い込まれる瞬間、私はその両親を知った。

『神様・・・ありがとうございます』

101転生:2005/03/27(日) 16:06:30 ID:XXfeo1a6

ここはある病院の一室、出産を終えた夫婦が話している。
もちろん、隣りには生まれたばかりの赤ちゃんが眠っている。
「ご苦労様、がんばったね、由佳里」
「そんな、瑞穂さんだって、ずっと傍についててくれてたから」
「ふふっ、幸せそうに寝てるね」
「そうね、この子がいつもこんな表情でいられるようにしていきましょうね」
「大丈夫だよ。この子を見てるだけで、こんなに幸せな気持ちになれるんだ。
この気持ちを忘れずに、そしてまた、この子に幸せを返していけば、家族みんな
幸せな表情を保っていける」
「ねぇ、瑞穂さん。この子の名前なんだけど、私に考えがあるのだけれど」
「ああ、いいよ。多分、僕の考えてた名前も由佳里と同じだと思うからね」
「ありがとう、瑞穂さん」

そして母親は、生まれたばかりのわが子に話しかける。
「はじめまして、それともお帰りかな、一子ちゃん」
赤ちゃんは目を覚まし、二人に笑いかける。

『ただいま』

そんな声が聞こえたような気がして、二人は顔を見合わせ、そして微笑んだ。
1024-41:2005/03/27(日) 16:07:28 ID:XXfeo1a6
以上です。
短くてすみません。
103名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 17:47:30 ID:wXFWpgb9
なんというか、見当違いな感想で申し訳ないが、親の姿勢として問題だと思った。
>お帰り、一子ちゃん
104初代550:2005/03/27(日) 21:36:23 ID:RCrjxmw5
>>88-89
俺のは一応、ここまでって言うのを決めてやってましたからねぇ
3回目のラストで一子を出した時から、最終日、打ち上げ花火を送り火の代わりに一子を返しておしまいって
深い考えもネタのストックもなしで、これ以上続けるのは無理だと思ったし(爆

とりあえず、SSと言うには長すぎるものにお付き合いしてくれた方、ありがとうございます
ひとまず、帰れと言われなくてよかったと本気で思ってます
1052スレの402:2005/03/27(日) 21:51:21 ID:5LzXOhJh
公式の記念壁紙を元にした作品を、どなたも投下されていないようなので
僭越ながら、投下させていただきます。

貴子一人称にも、挑戦してみました。
1062スレの402:2005/03/27(日) 21:52:02 ID:5LzXOhJh
SECRET RENDEZVOUS

 夕陽の差し込む廊下、熱い空気が澱んでいる第二校舎。響くのは私の足音だけ。窓の外にはいくつも
のざわめき、遊歩道を走っている姿も見える。
 私は微かに息を漏らし、愛しい人の事を想う。
(おねえさま。宮小路瑞穂さん。いつのまにか、私の心の中に入り込んでいる不思議な人。あの人の
前では、忌まわしい”厳島”の名字すら忘れる事も出来る。)
握りしめた手の中に存在を主張する物。
(いけない事だとわかってる。生徒会長としてあるまじきことだとも、紛失を装い手に入れるなど、私
には生徒会長の肩書きが、そして、あの人には、エルダーシスターの肩書きが・・・)
汗に濡れた鍵で扉を開け、熱く澱んだ空気の中に自分の体を沈め、静かに息を漏らす。
他人に見られなかった安堵感かも知れない。おねえさまの姿を見なかった安堵感なのかも知れない。
残り香が残ってるかも知れない。そんな衝動に突き動かされるように部屋の中を彷徨う。他人が見たら
不思議というより、心配されるだろう。それでも、あの人の香りに包まれてたいと望む自分がいる。
 2度目の扉の開く音。それが、二人だけの時間の始まり。
瑞穂は、二人だけの世界を築くように扉に鍵を掛ける。部屋を彷徨っている貴子の姿に笑みを漏らすと、
静かに近寄り耳元で「貴子」とささやく。貴子の腰に手を触れ、空いている手を制服の裾に這わせ、ゆっ
くり、ゆっくり、持ち上げる。
 私は、おねえさまの手の動きを遮るように手を重ねる。
「おねえさま。意地悪しないで・・・・」
後ろから抱きしめられ、崩れ落ちそうな体を支えられる。
(はしたない心臓の音まで聞こえないでしょうか?)
不安にかられ、振り向く事も出来ない私。
「かわいい貴子も好きですから。いつもの凜とした貴子も、私だけに甘えてくれる貴子も好きですよ。」
(おねえさま。それ以上おっしゃらないで・・・・)
「いいのですよ。貴子との二重奏なら、いつまでも奏でていたいと思いますから」
「おねえさま」
返事の代わりの抱擁。今の私には、何物にも優る宝物。
1072スレの402:2005/03/27(日) 21:53:05 ID:5LzXOhJh
SECRET RENDEZVOUS 2

譫言のように今日も繰り返す「おねえさま」と言う言葉。導かれるままに床に腰を下ろす。恵泉の生
徒としてはしたないと言われそうだけど、おねえさまとなら制服の汚れも気にならない。おねえさまに
髪を撫でられる幸せ。何気ない会話。優しく私に触れる手。はしたないと思うけどおねえさまと過ごす
夜を夢想する。今は、叶わない夢を。
「今日は、甘えて頂けませんのね?なにか、貴子の気に障るような事しましたか?」
おねえさまの声が少し震えている。
(おねえさまの悪い癖、自分が悪いのだと思いこむ事。)
「おねえさま。”ぎゅ”してください。きつく、強く、跡が残るほどに、私が、私の全てが、おねえさ
まのものだと、私の体にわからせてください。」
「いいのですか?着替えの時困りますよ?」
おねえさまの心配そうな声。おねえさまは優しい。だから、困らせたくなってしまう。
「おねえさまに会えなくても耐えられるように、証しを私の体に残してください。」
逢瀬の度に口から漏れる願い。この人の前ではどこまで弱くなっていくのだろう。
「大丈夫ですよ。貴子は自分が思っているほど、弱くもなければ、悪い人でもありませんから、他の誰が言っても気にしないでください。」
紡がれる魔法の呪文。心に溜まった澱を、ゆっくり、ゆっくり溶かしていく、私だけに向けられた言葉。
 
 幸せな時間は、鐘の音と共に終わりを告げる。私は家に、おねえさまは寮に。
「哀しそうな顔をしますのね」
おねえさまは、私の秘密の場所に唇で証しを、紅いおねえさまの唇にも負けない赤い印。私がおねえさまのものだという刻印。
 
 私は、おねえさまに手を引かれ、日常へと戻っていく。

 
そして、夕陽が差し込む頃。また私は・・・・・・
1082スレの402:2005/03/27(日) 21:58:26 ID:5LzXOhJh
できるだけ、壁紙のイメージを模したつもりですが、いかかなものでしょう?

恵泉の校舎配置がわからないので、一般教室棟(第一校舎)と、特別教室棟(第二校舎)
という、設定にしてみました。
109名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 23:23:42 ID:WbciqhXy
自分には読解力が欠けていると知りました。
描写から読み取れない部分が多数……orz
110test:2005/03/27(日) 23:25:47 ID:F2vih7WK
 読む人もいるんだなあと思いつつ、軽く奏ブラック続けてみるtest

おボク様 あなざぁ 『奏ブラック革命』
 夏休みを過ぎたぐらいから、奏は瑞穂お姉さまとお茶を一緒するようになっ
た。もちろん、一子ちゃんも一緒。今日はもう寝てしまったみたいだけど。瑞
穂お姉さまが奏の隣に座り、そしていきなり抱き付いてきた。奏は一瞬抗うべ
きかどうか迷う。奏の体力では抵抗できない。もう少し様子を見て大声を出す
か逃げるか……
「お姉さま………?」
 でも、瑞穂お姉さまは奏に甘えてもいいのだと言ってくれただけだった。奏
はそのまま体を瑞穂お姉さまに預ける。今だけはこうしていてもいいかもしれ
ない。
 生徒会長が奏のリボンを華美だと指導したことについて、瑞穂お姉さまは異
議申し立てを考えている。このリボンと過去の思い出は奏にとって唯一の綺麗
な宝物だから、どんなことをしても守りたい。エルダー2人を味方につけた。
あとは、あの人に話をして味方にできるかどうか。

  続く
111test:2005/03/27(日) 23:26:48 ID:F2vih7WK
「そのリボンが校則違反ですか?」
 いかにもバカバカしいというように、部長の恋人の美智子お姉さまは言い放
つ。
「はい、瑞穂お姉さまと紫苑お姉さま、まりやお姉さまが異議申し立てをして
いただけると仰ってます」
 演劇部の小道具置き場になっている空き教室に来てもらえて、話を聞いても
らえた。エルダー選挙の時にも相談したのだけど、この方は『受付嬢』の要の
ような存在で、密やかに一種のゆるやかな組織の一員になっている。隠れて目
立たないでいる間は、きっと大きな力を持ち続ける。基本的に2人の保身以外
のことは考えないみたいだけど。
「それで奏さんは、私のところにも根回しに来たのですね。いいでしょう。校
則が厳しくないほうが私にもメリットがありますから。もちろん、いくらあの
貴子さんでも、校則に不順同性交友を禁じると書くまでエスカレートはしない
でしょうけどね」
 そう言って微笑む。奏はこの人と敵対しないでいられることに、ほっとする。
「でも、圭さんも含めて人気のある最上級生の多くが奏さんを支持するとなる
と、奏さんへの嫉妬もあると思うのだけど、大丈夫かしら」
 それは奏も考えていた。
「事件にでもなれば逆効果ですか」
「ええ、わたくしが奏さん支持する以上、そういうことになっては困りますわ
ね。『お姉さま』にそれとなく注意するように伝えておきますが、奏さんも注
意してくださいね」

  続く
112test:2005/03/27(日) 23:27:56 ID:F2vih7WK
 そこに、部長が入ってくる。
「あら、圭さん」
「部長」
 部長は、少し困ったような顔をする。
「美智子、いたいけな後輩を何か引き込もうとしてる?」
「いいえ、ああいう子は好きですけど、あの子は瑞穂さんの妹ですよ?」
「私、瑞穂さんも奏もノーマルだと思うのだけど」
 奏は頭を下げて2人の逢引の場所から離れた。これで、怖い人からの支持も
取り付けた。

 お嬢様学校の嫌がらせなんて多寡が知れていると思ったけれど、確かに階段
の上り下りにも、授業中の嫌がらせにも遭わなかった。一番大きいのは、靴に
ガラスを入れられたことで、これは代わりに小石を入れてケガした振りをする
ことにした。後は、呼び出し。
 やはり、しばらくして奏は昼休みに数人に教室から呼び出された。ここでの
対応次第で支持が変わるだろう。受付嬢から瑞穂お姉さまのところに話が行く
ように手配したから、時間を稼げば良いだけなんだけど。
「ふん……知っているんですからね。あなたみたいな孤児、本来ならお姉さま
の傍にいることすら烏滸がましいのにっ!」
 予想はしていたけど、その一言で奏の頭の中が真っ白になる。ダメだ、対応
しなきゃいけないのに。そんな奏を瑞穂お姉さまの声が救った。
「………おやめなさいっ!」
「お……お姉さま………っ?!」
 瑞穂お姉さまが、駆け寄って奏の肩を抱く。
「奏は、私の大事な妹です!」
 その瞬間に勝負はついた。でも、どうしてこんなに早く? 驚く奏を抱き締
めて、瑞穂お姉さまが謝る。体が震えている。
「お姉さま……お姉さまどうして……どうして謝るのですか………」
 瑞穂お姉さまは、ただ、奏を知らなかったことに傷ついて、震えている。こ
の人は……

  続く
113test:2005/03/27(日) 23:29:49 ID:F2vih7WK
 気が付くと奏は寮の瑞穂お姉さまのベッドにいた。奏は、あのまま泣きなが
ら寝てしまったらしい。あの時、自分が何を言ったか頭の中で繰り返す。あの
人は男の人だけど、奏たちを騙している人だけど、でも……
 園長先生、病院で会ったお姉さん。もう一人ぐらい、信じる人が、好きな人
がいてもいいのかも知れない。ううん、いつの間にか奏の中で瑞穂お姉さまは
特別な存在になっている。
 それでも奏は嘘を吐き続けるんだろうけど。そう思って、奏は、もうしばら
く寝たふりを続けた。

  終了
114名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 23:53:40 ID:WbciqhXy
奏ブラック、ただ不条理に黒いわけでなく、
きちんと奏の心情が読み取れるので好きです。
そんなに黒くないのではと思い始めたのは俺が黒奏に騙され始めただけかもw
115お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/28(月) 00:37:50 ID:GLCmRKqM
(あれ、紫苑たちは…どこ?)
瑞穂は待ち合わせの公園にやってきた。
みんなを探している中、長髪の女性が彼を待っていた。
「お久しぶりね、瑞穂さん…」
「け、圭さん?」

Blessed Your Marriage 第2部

1/5
「あら、瑞穂さん。ずいぶんラフな格好ね。まるで男の方だわ」
「いや、あの…美智子さんや紫苑さんはどこにいるんですか?」
「…さぁ…」
「じゃなくて美智子さんたちはどこですか?」
「…ふふ…そんなことどうでもいいわ」
「何を言って…」
圭が瑞穂を不意に抱きしめる。
「私はこのときを待っていた…ずっと貴方を待っていた」
「はい?」
「私…ずっと貴方ことが好きだった」
「…!」
「恵泉の同じクラスで出会ってからずっと貴方を見ていたわ。
ロミオを文化祭でさせたのも貴方もし男だったならと夢見て…。
でも、本当に男だったなんて私…」
涙を浮かべ圭は瑞穂に訴える。
「圭さん、泣いてるの…」
「ねぇ、私を…側において欲しい」
「そ、それは…。そんなことよりも紫苑は…」
「紫苑さんをそう呼んでいるの…でも、もう呼ぶことはこれからないわ。
なぜなら…あの人の変わりに私が側にいてあげるから…」
何やら圭の右手が赤く…血塗られている。
116お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/28(月) 00:39:57 ID:GLCmRKqM
2/5
「どういうこと?」
圭の右手をつかんで瑞穂は問いただす。
「…何って、見ればわかるじゃない」
「そ、そんな…」
「紫苑さまは本当にいい方だわ。確かに瑞穂さんにふさわしい方…。
あの人には」
「何を言ってるんですか?」
「ふふっ…代わりはいるもの。…私が」
「ふざけないで。紫苑を返せ」
「圭さん、どういうことなの」
二人の前に美智子が現れる。
「美智子…どうしたの」
「何って、圭さんの部屋に行ってみたら、紫苑さまが…」
「紫苑さんは祭壇にささげる羊…ふふ…」
「美智子さん、紫苑がそこにいるんですね」
「は、はい」
「どこなんですか」
美智子さんの肩をゆする。
「ちょ、ちょっと痛いです瑞穂さん」
「いいから、早く」
「とにかく一緒にいらしてください」
美智子と一緒に部屋の前までやってきた。
「さぁ、入りますよ。落ち着けというのは無理ですけど…」
無言で瑞穂はうなずき部屋に入っていった。
「紫苑、どこ?」
圭が住む部屋を瑞穂は捜し歩く。
「…瑞穂さん」
紫苑の声が瑞穂の眼前の襖から聞こえてくる。
「紫苑!!」
「あけましょう、瑞穂さん」
117お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/28(月) 00:41:48 ID:GLCmRKqM
3/5
瑞穂が美智子に促されるままに瑞穂は襖を開けた。
「紫苑…!?」
「瑞穂さん…私、羊さんになっちゃいました」
そこにいたのは元の体型をうかがい知ることができない程
ふかふかでだぼだぼの羊の着ぐるみパジャマに身を包み
ベッドに横たえる紫苑だった。
「あの…紫苑!?」
「…だから言ったでしょ、紫苑さんは羊だって」
「圭さん、まさか」
「…私達にドッキリなんて1億光年早いわ」
「圭さん、突っ込みませんよ」
「美智子、よくやったわ」
「元演劇部長にはかないませんわ」
緊張から開放されたのか、それとも悔しいのか瑞穂は無言のまま
腰を落としてうなだれていた。
よく見ると圭の手の赤は血にしては鮮やか過ぎていた。
「あの…圭さん」
「何ですか紫苑さん?」
「このパジャマ、ふかふかで気持ちいいので…しばらく着ててもいいですか?」
紫苑はそう言うと着ぐるみの中にうずくまって肌触りを楽しんでいた。
「「「か…」」」
「か?」
「快適ですか、そのパジャマは」
「ええ、とても」
危うく三人は可愛いといいかけたところをうまく誤魔化した。
1183スレの226:2005/03/28(月) 00:41:54 ID:8CMRLPKD
>>test氏
奏ブラックシリーズもいよいよ佳境ですかな?自らの出自故に身に付いた
黒き感情。瑞穂は彼女を心の闇から解き放てるのか・・・。
名作の予感。

それにしても、奏ブラックって略すと「奏ブラ」になると思うのだが、これ
って昆虫の「カナブン」に似てるよ・・・誰だ貴様!PAMPAM!!
119お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/28(月) 00:47:09 ID:GLCmRKqM
4/5
瑞穂も無理やりパンダの着ぐるみパジャマを着せられていた。
「似合ってますわ、瑞穂さん」
「はぁ…」
紫苑はふらふらと瑞穂に近づくと案の定抱きしめる。
「し、紫苑」
「可愛いですわ、瑞穂さん」
「まぁ、お熱いですわ、お二人とも」
「アツイゼ、アツイゼ、アツクテシヌゼ…」
「圭さん、火は噴かないでくださいよ」
わかる美智子さんもさすがです。

2、3時間の談笑の後、二人は帰ることにした。
「…お二人とも、今日は楽しかったわ」
「あの、このパジャマ、もらっていいんですか」
「はい」
羊やパンダだけではなくウサギやら犬やらいろいろもらってしまう。
「…この着ぐるみで今夜はお楽しみくださいね」
「「…」」
「ふふっ、なかなかおつなものだと思いますよ」
圭は意地悪な笑みを浮かべる。
「これが私達の祝福の品ですわ。いつもこんなパジャマが
着ていられるように楽しくお幸せに暮らしてください」
美智子は素直な笑顔で二人を祝福する。
「美智子さん、ありがとう」
「それでは、また」
瑞穂と紫苑は別れを惜しみながらも圭たちの部屋を後にした。
120名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 00:50:19 ID:IzbmZsDj
> 予想はしていたけど、その一言で奏の頭の中が真っ白になる。
うおお・・・微妙なライン突いてくるなあ(´Д`;)
前半の美智子さんとの会話も妙な緊張感が・・・
惜しむらくは「自分が嫌い」のくだりの描写をもう少し掘り下げ・・・
と思って読み直したら、>>110の部分、奏ブラックが「自分が嫌い」と弱い部分をわざと見せるんじゃなくて
「自分が嫌い」なのは当たり前のこととなってるという風に解釈すると・・・このまま方が趣があるなあ(´Д`;)ヾ
特に>>113の中3行の重みが違ってきた・・・サラッと書いてるように見えて何気にすごいっす。

1人称の呼称が「奏」だからか、なんだか別人格が俯瞰視点で分析してるようにも見えるし
そうでないようにも読めるのも面白い。

色彩と同じように黒にも実はいろんな黒があるのだなとフと思った。
121お姉さまと一緒のなかのひと:2005/03/28(月) 00:52:44 ID:GLCmRKqM
5/5
「さぁ、今日はこれで寝ましょう」
「…」
紫苑は犬、瑞穂はウサギの着ぐるみである。
二人は寝室に向かう途中、慶行に出会う。
「こ、これは、義父様」
「父様…」
「…」
二人は何か気まずい。
「義父様?」
「父様…まさか」
「さ、幸穂〜〜〜〜」
迫る慶行右正拳突きでカウンターを取り、吹き飛ばす。
「がああぁあぁぁぁああ…」
「男の格好をしてなかったら僕は母様なんですか」
「大丈夫ですか義父様」

「さぁ圭さん、今日は羊さんですよ」
「まだこのパジャマ買ってたの、新しいの全部あげたと思ったのに」
「当然、私達の分も買ってありますよ。さて私は今日は狼さんです。
今日は羊さんを食べちゃいますよ」
「えぇー。こんなの私の趣味じゃないわ」
「あら圭さん、そんな事言ってノリノリでパジャマかぶってるくせに」
「ちょっと、やって…ん…んふっ…」

続かない
1223スレの226:2005/03/28(月) 01:05:38 ID:8CMRLPKD
>>一緒のなかのひと
後半、乙でした。いきなりヤヴァイ展開かと思いきや・・・笑わせてもらいました。
着ぐるみにうずくまる紫苑様・・・漏れなら一気に「可愛い」と言ってしまいそうなり。

>瑞穂も無理やりパンダの
損○○ャパンだ?!

>紫苑は犬、瑞穂はウサギ
なんとなく二人の微妙なパワーバランスを表しているような・・・。
でもベッドの中では全然逆なのよ、と。

あと、途中で割り込んで正直スマンカッタ・・・
123120:2005/03/28(月) 01:06:40 ID:IzbmZsDj
>>お姉さまと一緒のなかのひと
割ってしまった・・・申し訳ないorz
逆ドッキリだとわかりつつも文章のスピード感からかドキドキしました。
あと
>>「アツイゼ、アツイゼ、アツクテシヌゼ…」
・・・デコ(⊃ω・`)・・・
124初代スレの45:2005/03/28(月) 01:19:28 ID:9neuTC3y
みなさんGJです。


>>test氏
奏ブラックシリーズ・・・
実際にこんな計算深かったら恐いですけど、ただ黒いだけじゃなく、それを信じさせる力を感じます。
次の展開をドキドキして待ってます。

>>お姉さまと一緒のなかのひと
瑞穂だけじゃなく紫苑さんにまで着せますかw
新たな風ですw GJw


このところ長編がいくつか終わってしまい、ちょっと寂しい気分ですね。


追伸・遅ればせながら、『One-After-Another』の感想を書いていただいた方、
ありがとうございました。

うーむ、ホントにネタが無い・・・
いくつかあるにはあるんですが、書き上げられるほど強力なネタでもなく・・・
降りてきて〜orz
125名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 01:27:45 ID:c4KHVyD3
羊の紫苑・・・お持ち帰りしたい・・・
1261話スレ241:2005/03/28(月) 03:21:04 ID:j4oSGtYt
嗚呼、ぼやぼやしているうちにどんどん投下されていく・・・・・・。
ネタ3つも浮かんでるのに・・・・・・orz。
とりあえず、皆様ハラショー。
127初代269:2005/03/28(月) 09:12:42 ID:05KYnQlp
>>お姉さまと一緒の中の人
羊の紫苑様 イイ!ですねぇ。私に下さいw

>>test氏
黒いはずなのにそれをあまり感じさせないのは、奏ちゃんの人徳(?)でしょうか。
次の展開が楽しみです。

>>ALL
今、由佳里ちゃんとお義姉さんの話を絡めたものを考えているところなのですが、
お義姉さんの名前って出てきましたっけ?無いようでしたらこちらで勝手につけて
しまっても良いでしょうか?
 また、良い名前があったらご意見下さい。宜しくお願いします。

 前スレで「五月晴れ」の感想を頂いた方々、遅くなりましたがお付き合い下さい
ましてありがとうございました。
128名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 09:43:13 ID:Tj6HnNCy
ひきつづき、おとぼくSSをお楽しみください

 さぁ〜お化粧しましょうね〜♪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         _
      '´  ,、゙ヽ
      i iノリノ !リx)〈,.'⌒
     ヾリ! ゚∀'´ , `´ ヽ
        {(lつi イノノ))))
   .    //「 | リ;Tヮノl! < ……
      ~じ| ノ/~~~~~~ヽ
129test:2005/03/28(月) 10:53:07 ID:1iByBv7f
 奏ブラック、続ける程ネタもないなぁと思いつつ投下してみるtest

おボク様 あなざぁ 『奏ブラックたびたび』

 奏は芝居が巧いはず。今までずっと独りでお芝居してきた。お芝居して先生
や、他の大人たちの顔色を伺って、御機嫌をとりながら奏は生きてきた。それ
が崩れ始めたのは瑞穂お姉さまが優しいから。
 でも、瑞穂お姉さまのお膝の上に一子ちゃんがいるのを見て、一瞬嫉妬した
奏は、そんな自分を隠すことができた。お芝居で。でも、一子ちゃんは誤魔化
せなかったのかもしれない。

 奏が学園祭の芝居で主役になったのは、あの部長の恋人の『受付嬢』美智子
お姉さまが裏で手配したのだろう。多分、瑞穂お姉さまとのコラボレーション
という話でもしたのだと思う。
 以前、美智子お姉さまは、部長をエルダー候補から完全に外すには瑞穂お姉
さまを応援すれば良いという奏の提案に乗ってくれた。その時からいくらか交
流がある。そう考えなければ目立たないようにしていた奏が、主役にいきなり
抜擢されるのは不自然だった。

 奏は、いつから瑞穂お姉さまが好きになったんだろう。最初は男の人が何を
やってるんだろうと思ったし、利用することしか考えなかった。奏のリボンが
問題になった時も利用した。そこに疑問なんて無かったはずなのに。人の良い
『お姉さま』を利用する。そんな気持ちが崩れたのはいつからなんだろう。で
も、そんな奏に、瑞穂お姉さまはいつも優しくしてくれた。
 ううん、いつからかなんて関係ない。今の奏は瑞穂お姉さまが好きだ。部長
たちや緋紗子先生たちを見ていても解からなかったことも、今なら……
 そんな思いを、一子ちゃんだけは解かっていたらしい。もしかしたら奏が、
瑞穂お姉さまは男の人だと知っていることも知っていたのかも。一子ちゃんは
昇天する前に奏の背中を押してくれた。瑞穂お姉さまはラストダンスで両思い
ねと言ってくれた。それで終わってもいいと思った。

  続く
130test:2005/03/28(月) 10:54:09 ID:1iByBv7f
「いいんじゃない、別に」
 そう、まりやお姉さまは答えた。
「恋は思案のなんとかっていうでしょ。遠慮しないで二人とも暴走しちゃえば
いいのに。奏ちゃんは瑞穂ちゃんが男の子だって知ってるんだから、裸で抱き
つくとかして誘惑しちゃえば?」
「そんな、奏は胸も腰とかも、その、未発達ですし、その……」
 裸じゃないけど、何度も抱きついているし。
「いやー、じつは瑞穂ちゃんはロリコンじゃないかと疑ってたりするんだな。
一子ちゃんて妹タイプの子だったでしょう? お姉さまか叔母さまかという存
在は、楓さんていうハウスキーパーの人がいるのよ。だから守りたくなるよう
な年下というのが瑞穂ちゃんの好みかなぁって思ってたんだ。そこらへんは奏
ちゃんなら一子ちゃん以上の逸材だし、二人が付き合えば瑞穂ちゃんは幸せか
なって」
 それは、こんな嘘だらけの奏じゃなければの話で…… ホントの奏は、とて
も悪い子になってしまった。瑞穂お姉さまはまだ、奏が瑞穂お姉さまが男の人
だなんて知らないと思っているはずだし……
「まあ、この冬休みに少し考えてみたら。女装癖の男と付き合うのに勇気がい
るのはわかるし、瑞穂ちゃん避妊とかも知らなそうだしねぇ。私は実家に戻ん
なきゃいけないけど、一応ピルとか手に入るかどうか試してあげるから」
 そう言って、まりやお姉さまも寮を出て行って、奏は寮に独りぼっちになっ
た。こういう状況には慣れている。逆に奏らしいかも知れない。夏休みの頃よ
り寂しく感じるのは、きっと奏が弱くなったせい。
「お姉さま」
 口に出すと、よけい寂しくなる。そう思っても、誰もいない食卓でつい口に
してしまう。園長先生がそうだったように、返事は無く、奏はよけい悲しくな
る。

  続く
131test:2005/03/28(月) 10:55:16 ID:1iByBv7f
 そのはずだったけど。
「はい、奏ちゃん」
 やわらかくはないけど、固くて強くて暖かい腕が奏を抱きしめる。
「お姉さま?!」
 瑞穂お姉さま?!
「うん、もし良ければ一緒に初詣とかしたいなって思って誘いに来たのよ。三
が日は紫苑さんと一緒に私の実家に遊びに来ない?」
「よろしいのですか?」
「もちろんよ、奏ちゃんは私の大切な妹ですもの。遠慮は要らないわ」
 妹…… 自然と涙がこぼれる。
「奏ちゃん?」
 いけない、奏は微笑んだ。
「奏、とってもうれしいのですよ」
 そう、また嘘を吐いた。

 瑞穂お姉さまの実家として案内されたのは大きなマンション。紫苑お姉さま
も、もう来られていて、瑞穂お姉さまのお父様と思われる方と、何か御歓談さ
れていた。紫苑お姉さま泣いてらっしゃった? でも、悲しそうには見えない
けど……
「奏ちゃん、私の父よ」
「おお、いらっしゃい。私がこれの父の慶行です」
 そう言って奏の手をとって、ぶんぶん振るように握手する。
「旦那様、周防院様がお困りになられますよ」
 そういうと、エプロンをした綺麗な女の人がはじめましてと頭を下げる。
「こちらは家政婦の織倉楓さん、母が亡くなる前からずっとお世話になってい
るんだ」

  続く
132test:2005/03/28(月) 10:56:10 ID:1iByBv7f
 奏は2人に頭を下げてご挨拶する。
「はじめまして、周防院奏と申します。お世話になります」
 瑞穂お姉さまのお父様は鷹揚に頷いて
「明日は年始の挨拶に十条さんのところに行くことになった。紫苑さんには案
内してもらうことになったからな。瑞穂ちょっとこっちへ」
 お姉さまにそう言ってから。
「私はちょっと仕事で席を外しますが、お嬢さん方はどうぞくつろいで下さい」
 バタバタと他の部屋に行かれたみたいだ。

「奏さんは、まだショートケーキがお好きなのかしら、今お持ちしますので」
 それから、楓さんは奏の不思議そうな表情に気がついて。
「ふふ、周防院先生はホームに移られる前は恵泉の初等部の先生でしたから、
私や瑞穂さんのお母様にも恩師になるんですよ。お亡くなりになられた時には、
奏さんは小さかったから、きっと御記憶には無いでしょうね」
 そう言うとカフェオレとショートケーキを持って来てくださる。紫苑お姉さ
まは落ち着かれた様子で、奏の隣に来て、奏を抱きしめた。
「冬休みまで奏ちゃんに会えて嬉しいですわ」
 紫苑お姉さまも御機嫌はよろしいようだ。
 そんな奏たちに、楓さんは残念そうに言った。
「本当は瑞穂さんに内緒で、瑞穂さんのお部屋とかアルバムとかを、お見せし
たかったんですが、こちらは実は御実家ではなくて、お仕事用に用意していた
部屋なんですよ。まだ瑞穂さんは秘密を守ってると思ってらっしゃいますから」
「あの、楓さんは、その……」
 楓さんは優しそうにうなずいた。
「ええ、まりやさんから伺ってますから。そうそう、まりやさんは2日に来ら
れるそうですよ」

  続く
133test:2005/03/28(月) 10:56:46 ID:1iByBv7f
 そこに、何も知らない瑞穂お姉さまが戻られた。
「元日は紫苑さんはいないですから、初詣はまりやと一緒に2日にするとして、
今日はゆったりと過ごしますか」

 それから奏は、瑞穂お姉さまと紫苑お姉さまの妹として、初めて普通のうち
のお正月を過ごした。何も知らない瑞穂さまは、とても優しくて、奏たちのた
めに一生懸命で、奏の気持ちなんて、きっと知らないままなんだろう。でも、
奏は……

  終了
134名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 11:09:03 ID:AKg60NTG
あいかわらず良いですな。
ひょっとして瑞穂ちゃんは紫苑様を選んだのだろうかとハアハアしてます。

紫苑様とイチャイチャする瑞穂ちゃんを見て、しょんぼりする黒秦ちゃん…イイ!
135名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 11:42:31 ID:81+77nkF
>>108
舞台となる時期が分からないです。
恵泉在学中で、瑞穂は貴子相手に女言葉を使いつつ迫っていて、さらに貴子を呼び捨て、
パラレルでしょうか?

あと、二人の言動に流れが乏しくて、文章から場面が読み起こしにくいです。
136名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 13:43:39 ID:t9xPbtsn
>402さん
ここじゃ書いてないから今まで言わなかったけど、思いつきや脳内設定をそのまま垂れ流すのはちょっと…。
面倒でも投下前に本編をやり直すなりしてシナリオやキャラクターとの整合性をチェックした方がいいと思う。
違和感が先に来るせいで、他の細かい粗まで気になって素直に読めなくなるから。
折角書いてるのにそんなところで評価を下げるなんてもったいない。
ついでに文章の前後関係や表現の練り直し、誤字脱字などの推敲もしておくと吉。
いきなり書かず、まずはローカルでテキストファイルとかにまとめてからがいいかと。

あと、書いてない自分特有の裏設定を察しろというのは無理があるのでは。
確かにクドクド説明するのは煩わしいだけだけど、ト書きなりで簡単に説明するくらいの親切心はあった方がいいと思う。
自分は分かってるからと読者置き去りって姿勢は物書きとしてどうだろうか。
137名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 13:55:08 ID:fIDQhQvb
>>136
自分は逆に、あの手のショートにト書きがいちいち付いてたら萎えるけどなぁ。

壁紙CGからさらっと思いついたショートを書いてみました、ていうコンセプトなん
だから、いちいち背景なんかの説明を入れてたらショートじゃなくなるし、書き出す
のにも腰が重くなる(=ここに晒す前に没る)とおもうけど。

1しか書かれてなくて、残りの9はお察しください。的なのでもいいと思うけどね。
誤字脱字についてはまあ(ry
138名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 13:57:02 ID:2xjzHdnb
>シナリオやキャラクターとの整合性をチェックした方がいいと思う。

パラレルってことでいいじゃん。
139名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 14:02:26 ID:t9xPbtsn
>138
多少ならともかく、あまりに違うとそれ既存のキャラの名前使っただけのオリジナルじゃねえかってことに。
リレーSSでまりやたちが見てる前で瑞穂襲ってる紫苑とか、本編からすればありえないんじゃ?
あの後なんか変な香具師まで湧いてたから余計そんな気がするだけかもしれないけど。
140ト書きなんてなくてもいいよ。:2005/03/28(月) 14:05:32 ID:qzR0BL0g
人気のない第二校舎の廊下は、差し込む西日のせいか、熱い空気で澱んでいた。
その場に響く私の足音が、やけに大きく聞こえる。
窓の外ではいくつものざわめきが遠く木霊し、遊歩道を走っている人の姿も見える。
私は微かに息を漏らし、愛しい人の事を想う。
お姉さま――宮小路瑞穂…さん。いつのまにか、私の心の中に入り込んでいた不思議な人。
今となっては、あの人の前では、自分が"厳島"の人間であるという事実を忘れてしまう事すらある。
握りしめた手の中で、それの存在を再確認する。
紛失を装って備品を手に入れるなど、我ながらなんという所業だろうか。
しかも、私は生徒会長、瑞穂さんはエルダーシスターというの肩書きすらあるというのに。
汗に濡れた件の鍵を取り出し、扉を開ける。部屋の中の空気も熱く澱んでいた。
自らその中へと体を沈めると、静かに息を漏らす。
それは、誰にもに見られずにすんだという安堵か、
それとも、お姉さまがまだお見えになっていないと知った安堵か。
部屋の中で一人、お姉さまを待つ。
背後で扉の開く音がした。それをきっかけに、二人だけの時間が始まる。
瑞穂さんが、二人の世界から他者を締め出すかのように、鍵をかける。
そして、部屋を彷徨っていた私に笑みを漏らすと、
静かに歩み寄ってきて「貴子さんっ」と耳元で囁いた。
そのまま私の腰に手を触れ、空いているもう一方の手を制服に這わせてきた。
ゆっくり、ゆっくり、スカートの裾が持ち上げられていく。
たまらずに、その動きを遮るように自分の手を重ねる。
「意地悪、しないでください……」
崩れ落ちそうになったことろを、後ろから抱きしめられ、支えられる。
「貴子さんの、心臓の音が聞こえます……。とても大きくて、速い音」 
「はしたない女と……お思いになりますか?」
不安と恥ずかしさで、振り向く事すら出来ない。
「かわいい貴子さん、凜とした貴子さん、私だけに甘えてくれる貴子さん
 ……貴子さんなら、どんな面でも好きですよ」
「それにほら、聞こえますか? 僕の心臓の音も凄いんですよ? 
 こんな二重奏なら、いつまででも奏でていたいです」
「お姉さま……」
向き直って、正面からの抱擁。二人の心臓が合わさり、鼓動が和音を刻み始める。
141名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 14:11:55 ID:ABvxrAkx
同じくリレーSS書いてる206に至ってはセリフのみで構成されているわけだがw
142名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 14:22:02 ID:ABvxrAkx
まあ206にしろ402にしろ、進行やら自分が暴走させたフォローやらを他人任せなのはな
tu-ka四日以上止まってるけど飽きたか?w
143名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 15:03:29 ID:MnpleHJN
>402さま
感想を言ってみます。あくまでも感想です。
1について
4行目、密会するような関係になっていると考えると過去形の方が違和感なく読める。
もしくは、いつのまにかという言葉を削って、ニュアンスを変えるか。
6行目、握り締めたのが密会する部屋の鍵で、それを不正に入手したというのが伝わりにくいと思う。
10行目、見なかった、見られなかった、と、見るという表現で韻を踏みたかったのだろうけど、
文が不自然になってしまっている。
11行目、残り香云々は始まりが唐突。前の文章と繋がりが欲しい、
部屋には一人だった→待ってる間についついお姉さまの残りがを追ってしまう、みたいな。
14〜16行目、二人だけの時間が始まった瞬間いきなり3行くらい三人称になる。
(まぁ、誰彼でプロの人も用いていた技ではありますが……)
16〜18行。読んでて置いてけぼり。やりとりが噛みあっていない。
作者脳内の情報は読者には必ずしもあるわけではないので、最低限の描写がほしい。

2について
5行目、瑞穂の口調が女言葉になっている意図が汲み取れない。
10行目、きつく抱きしめても着替えのときに困るような跡はつかないかなぁ、と違和感。
11行目によると、瑞穂は冗談めかして言ったのではなく心配そうに言ってるみたいだし。
瑞穂が考え足らずで心配性なのか、それとも演技をおりまぜた冗談で、貴子が気付いていないだけなのか。
14行目、瑞穂の台詞の前後関係が崩壊してる。
18行目、そもそもどっちの台詞なのか。文脈的には瑞穂っぽいけど、このシチュで瑞穂が女言葉を使う理由が
見当たらないので、読者は違和感。

全体的に、文章から無駄を削って省略する日本語の美学を好んでいるように見受けられたのですが、
削りすぎて、無駄な体言止めも多くなり、逆にリズムが単調になっている気がしました。
それと、とにかく文章ごとの関係が希薄。流れが読みにくいと思いました。
辛口になってしまって申し訳ないとは思うけど、
前回同様、時間を割いてまで感想を書いてもらったと次への糧としてくれれば光栄です。
144名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 15:04:32 ID:nhc/cKUo
137に同意。
何でもかんでも一々説明されないと理解出来ないってのもどうかと。
与えられた情報の中から背景や情景を想像するってのも、ひとつの愉しみだと思うんだが。
ま、それでも理解出来んものは存在する訳だしな、そう云うのはスルーしようぜ。
一々声高にして云う事でもない。
145名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 15:10:28 ID:fIDQhQvb
>時間を割いてまで感想を書いてもらったと

( ゚Д゚)ポカーン

146名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 15:13:53 ID:d91Rs+ca
402本人の弁の流用だな。

どう考えても皮肉にしかとれないがな。
147名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 15:37:26 ID:2xjzHdnb
>146
書いた側がこのフレーズを使うのは謙虚で好感持てるが

ex) 時間を割いてまで観想下さって感謝です

読んだ側がこのフレーズを使うのはどうよ、と。

ex) 時間を割いてまで観想書いてもらったと思って下さい。

本音でそれを思っても口に出さないのが恵泉流。
148名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 15:50:05 ID:sX4FS+UM
だからこそ皮肉なんでしょ、悪意こめてんだよ。
まぁ俺は書いた側がそのフレーズを使った時もあまりの空気スルーっぷりにポカーンとしたけどな。


あと、掘り返すようで悪いけど、
>>58
>リロードしなかったので、割り込んでいましたら、ごめんなさい。
これちょっと頭にきた。
149名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 16:58:35 ID:3jRRGfJI
>148
お前は漏れか?
狭量と言われそうだが、他の奴なんてどうでもいい、俺がやりたいようにやるって言ってるみたいで癇に障った。
口調とあいまって慇懃無礼というかそんな感じでなおさらイヤミっぽい。
リロードなんてシングルクリックかダブルクリックだけで済むんだから、その程度の心遣いくらいしろよと小一時間(ry
こういうこと書くと叩きとか言われそうだけどな(w
150名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:02:21 ID:2IGGlUcU
まぁ、個人叩きだな。

SSに関する批判ならまだしも
SS以外の事での個人に対する批判は程々にしなさいな。
151名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:06:12 ID:fIDQhQvb
( ´-`)。o O(スレが廃れるのって148とか149みたいなのがキッカケなんだろうなぁ・・・)
152名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:09:21 ID:3jRRGfJI
どうせ今までからしてスルーするだろうからモーマンタイ(w
まあ、多少は人目を気にしない図太さがないと自作の発表なんて出来ないだろう品。
あまり謙られると構ってちゃんにしか見えないし難儀なもんだ。
漏れみたく普段ROMってる奴が偉そうに言うことでもないけどな。
153名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:12:32 ID:3jRRGfJI
>151
その通り(w
で、漏れみたいなのを叩く自治厨やら擁護厨が湧いて空気が悪くなり、
まともな職人はいなくなってマンセー厨と402みたいなのばかり残るってわけだ(w
154名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:17:55 ID:/D/L0+QS
確かにあれは割り込んだ自覚があった上でとぼけたようにしか見えなかったが、
作者から文句がついたわけでもないしなぁ。
こうなるのを恐れて誰も言い出さなかったんだろうし。

>>153
exactly(その通りでございます)
155名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:18:39 ID:3jRRGfJI
まあなんだ、構うとそれに反応してますます暴れるからスルーしといた方がいいぞ。
こんな風に無駄に居座るだけだし。
無視しとけばそのままどこかに行くか、暖簾に腕押しでそのうち飽きるから。
どうせ説得したって無駄だしな。燃料投下になるくらいで。
論破したって開き直るか逆切れするだけだし。
156名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:29:18 ID:3jRRGfJI
>154
いや、作者から文句は言わないだろ。
てか笑って許すしかないって。表向きはな。
よくも俺様が書いてる最中に割り込みやがったなとか怒り出したらそっちの方がイタイ。
157名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:33:28 ID:4L5EfqmS
( ´-`)。o O(スレを潰したいのか?このアホは)
158名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:36:47 ID:3jRRGfJI
>157
アホか?そんなことしたら遊び場がなくなるだろ(w
159名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:38:00 ID:2xjzHdnb
>>157
( ´-`)。o O(まぁもうすぐ春休みが終わるってんでムシャクシャしてんじゃない?)
160名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:38:47 ID:3jRRGfJI
心配せずとも漏れは適当なところでひっこむさ。
お前みたく周りがあまり長々引きずってると便乗が湧くかもしれないけど、そこまではシラネ(w
161名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:40:34 ID:3jRRGfJI
>159
そうやってすぐレッテル張りたがるのも悪い癖だぞ(w
春厨に春厨呼ばわりしたって自省なんかしないんだから。
162名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:40:42 ID:fIDQhQvb
( ´-`)。o O(ま、基本に戻って放置ってことでいいんじゃ、なーい?)
163名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:40:56 ID:4L5EfqmS
>>159
( ´-`)。o O(かもね、アホは放置しとくか。)
164名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:41:59 ID:3jRRGfJI
そうしとけ。
あとで冷静になってから自分の書き込み見て悶えるだろうから(w
165名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:44:26 ID:19FPG7S9
つうかお前から痛さをあまり感じられないんだよなぁ。
内心鬱憤溜まってんのかな、俺。
166名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:47:37 ID:2xjzHdnb
書き忘れてたけど
スレタイに百合と付いてる割には百合成分が薄い(まあ瑞穂ちんは男だし)と
感じてたので百合度高い >106-107 は漏れ的GJ。

#詩織と先生の百合成分はなかった事に(ry

167名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:53:15 ID:3jRRGfJI
置き土産のアドバイ厨。

スルースルーと連呼するのも逆効果だぞ。
反応してる点で叩くのと同じだからな。今の漏れみたく食いついてくるだけ。
黙殺、対厨手段としてはこれが最強。
ケンカ吹っかけても相手が買わなきゃやりようがない。
するとコピペ爆撃くらいしかできないけど、そうなったら堂々と削除依頼出せるってわけだ。
アンカー付けてなければ透明アボーンも可能。
相手すると会話が成立してるとみなされて削除対象外になるから注意しろ。
168名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 17:57:16 ID:fIDQhQvb
>>166
いや、百合成分は対瑞穂じゃなくて、瑞穂以外のペアだろ。
圭×美智子とか、紫苑×貴子とか成分豊富な話はたくさんあったと思うが。

瑞穂を絡めて百合成分と言うのはそもそもなんか矛盾してるw
169名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 18:19:18 ID:19FPG7S9
あの瑞穂は心まで女になってしまっていて、
貴子も女としてのお姉さまに惚れているという裏設定があるんだよ。
ほら、瑞穂女言葉だったし。

読者はそういうのを読み取らなければいけないんだよ。
読解力がないときのこ先生の作品を読めないのと一緒だよ。
170名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 18:32:07 ID:cXNE6CTJ
まあ、そういう裏設定に関係なく、瑞穂は突如としてオネエ言葉
になったりするけどな。ゲーム本編でも。奏イジメの現場とかで
もオネエ言葉だし。

心ってのは外見によって形作られるって言う面は実際にあるんだ
よ。(有名なのが囚人服のテスト)恵泉の制服で暮らしてるうち
に、心も恵泉女学生になっちまったってこった。マジで。
171名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 18:59:46 ID:+UmHl449
ギャグで言ってるんだよな?
172名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 19:20:40 ID:+UmHl449
>>169
瑞穂は貴子に男だとばれてないで騙し続けてたままって設定なのかもしれん。
勿論言及はしてないが、瑞穂が二回くらい女言葉を喋ってるので、そこから察しろという事に違いない。

>>170
なんか勘違いしてない?
見当違いも甚だしい例を出してるけど。
173名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 19:36:53 ID:nhc/cKUo
強ち間違いでもないと思うが…例えは極端だけど。
174名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 19:39:25 ID:RfffkYjn
前提としてさー、あのSSで瑞穂は貴子に男だと明かしてるかどうかってのによると思う。

そこを両者がどう認識してるかによって意見が分かれてるんじゃないかな。
175初代スレ126:2005/03/28(月) 22:00:56 ID:6YOLl8yN
よーやく、王座決定戦最終回出来上がりました…
ホントは昨日投下するはずだったんだけどorz

いろいろ突込みどころも多いこのシリーズですが、
最後ですので生暖かい目で見てやってください…
176初代スレ126:2005/03/28(月) 22:04:21 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!第六話―最終決戦・そして…―(1)

「…はぁ」
深い深い溜息が漏れる。
決勝までの休憩時間、体育館の裏で僕はずっと悩んでいた。
「なぁに?まだ悩んでるの?瑞穂ちゃん」
「あ…まりや。
……うん。ほら、私は…」
男だから。その言葉を無言のうちに伝えて、
「だから、圭さんと闘うのは、正直気が進まない。だってそんなの、あまりにも…」
「いいんじゃない?闘っちゃえば」
「え?」
見上げると、まりやはすごく優しい笑顔をしていて。
僕は少しドキッとした。ちょっと顔が赤くなったかもしれない…
「圭は確かに知らないだろうけど…それを踏まえても、
やっぱり本気の瑞穂ちゃんと闘いたいって思うんじゃないかな?」
「…なんだかだんだん話が女学院っていう世界から遠く離れてきたような気がするんだけど…」
「う…確かに、あたしもなんだかそんな気がしてきたけど…
ま、とにかく。圭の性格上、ちゃんと闘いたいって考えるだろうと思うわけよ。それに…」
「それに?」
「あたし達は負けちゃったから。その分、瑞穂ちゃんに頑張って欲しい、って。そう思うんだ。
みんなもそうでしょ?」
まりやが振り向くと。何時の間にいたのか、紫苑さんに貴子さん、
それに由佳里ちゃんや奏ちゃんまで揃っていて…
「みんな…」
「そうですね、私も一回戦で終わってしまいましたし」
「私も、お姉さまに…お恥ずかしいながら負けてしまいましたしね」
「私と奏ちゃんは、小鳥遊お姉さまに直接負けちゃいましたから。
瑞穂お姉さまに頑張って欲しいです」
「奏は…確かに部長さんにも頑張って欲しいですけど、
お姉さまにも頑張って欲しいのですよ…」
177初代スレ126:2005/03/28(月) 22:04:59 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!第六話―最終決戦・そして…―(2)

奏ちゃんのちょっと複雑そうな顔が印象的だけれど、みんな僕に後を託してくれているんだと…
そう感じ取る事が出来た。
「だからさ。精一杯頑張りなよ。あたし達が応援してるからさ」
まりやが、自分の巻いていたハチマキを手渡してくれた。
こうしてみると結構長いそれを手にとって
「…ありがとう、みんな…」
僕は、ようやく決心する事が出来た…

「みなさん、お待たせいたしました!!いよいよ、バトルエルダートーナメント、
決勝戦を始めます!!」
緋紗子先生の宣言に、体育館内の興奮は一気に頂点に達した。
割れんばかりの拍手の中、僕は一歩一歩、踏みしめるようにして闘技場へ歩く。
向こうからは、相変わらずのメイド姿の圭さんが、美智子さんに伴われて現われた。
「良い顔ね。決心はついたのかしら?」
「ええ。本気で行きますよ、圭さん…!!」
「おっけー。そうこなくっちゃ面白くないってもんよ」
圭さんが構えを取る。僕はまりやから貰ったハチマキを額に締め、構えを取る。もう、迷いはない。
「それでは、バトルエルダートーナメント決勝戦!!エルダーファイトォ!!」
「レディ…」
「ゴォ!!」
最初に仕掛けたのは、僕!!
真正面から走り寄ると、真っ直ぐ圭さんに向けて掌打を放つ!!
圭さんは伸びた僕の腕を受け流しながら、掴む。と、同時に捻り投げ飛ばそうとする!!
「ここだ!!」
その直前、掴んだ圭さんの腕を逆に僕が掴むと、掴まれた腕と両方で圭さんの腕を捻り上げる!!
「ちっ」
舌打ちと共に圭さんが僕の腕を放すと、巧みに腕を捻って僕の手を振り解く。
解きながら繰り出された蹴りを、後ろへと飛び退き、かわし…再び、構える。
…淡々と状況は推移したけれど、周りの人達は何が起こったのか良くわからなかったようで、
辺りは静まり返っていた。
178初代スレ126:2005/03/28(月) 22:06:00 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!第六話―最終決戦・そして…―(3)

「流石に、一筋縄では行かないですね…」
「そっちもね。流石は我が永遠のライバルってところかしら?」
「何時の間にライバルになったんですか…」
僕は苦笑する…その間も、気は抜けない。
圭さんからは常に言い知れぬ威圧感が感じられ、こうして会話していてもそれが途切れない。
それが怖くて…でも、すごくワクワクする。こんな感覚は、父様と手合わせして以来だった。
まさか、こんなところで同レベルの相手と出くわすなんて、思っても見なかった。
「だから…貴方に、勝ちたい!!」
再び僕が床を蹴る。今度は一転、乱打戦になった。
お互いに突き、受けて。蹴り、避けて。掴んで、払う。
繰り出すお互いの技の全てが、しかしお互い決められない。
「…もらった」
「!?しま…っ!!」
ずんっ!!
…余計な考え事をしていたのがまずかった。下から突き上げるような一撃が胸元に当たり、
僕は大きく後ろへとよろめく。
「…まずい、なぁ」
その拍子に、さらしが僅かに緩んでしまったみたいで、僕は胸元を押さえる。
今はまだ大丈夫そうだけれど、痛みよりも、さらしが解けてしまう方が怖い…
「おやおや。体面を気にしている場合かね?…このまま、終わらせましょうか?エルダー様」
圭さんの抑揚のない声が響く。…負けたく、ない。みんなが託してくれた思いのために…!!
「まだ…まだです!!」
まりやから貰ったハチマキを解くと、手早くたすき掛けに身体に縛る。
これで、道着が締まってまだ持つだろうけど…そう長くは持たないかも。
だとすれば、次で、決める…!!
「そう。それでいいの、瑞穂さん。ちゃんとした形で、決着をつけましょう…!!」
「…はい!!」
お互いに構える。じっと動かず、ただ息遣いだけが響く。
179初代スレ126:2005/03/28(月) 22:06:48 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!第六話―最終決戦・そして…―(4)

『………………』
場内からも、息を呑むような緊張感が漂う。
「…!!」
「っ!!」
どちら、とも云えぬくらい。同時に僕たちは動き、その影が交差する…!!
「……瑞穂、さん」
「はい…圭、さん」
「勝負、あったわね…」
「ええ。僕、の…」
僕は、耐え切れずに膝を突く。突かれた脇が、かなり痛む。
「でも、”勝った”のは私。だって、貴方の本気、見たかったんですもの…」
その声と共に…圭さんが崩れ落ちる音が聞こえて…!!
「圭さん!!」
美智子さんが闘技場内に飛び込み、圭さんに向かって走り寄る。
僕も、痛みをこらえて圭さんにゆっくりと近づく。
「けど、バカね…貴方なら、私の攻撃を避けて一撃を加えられたでしょうに。
わざわざダメージ受けながら、手を抜くなんて…ホント、お人好しね…」
「圭さん、喋っちゃダメです。お願いですから…!!」
美智子さんの悲痛な声が響く。僕は、そっと圭さんの横にしゃがみ込む。
「ホントに、バカ…けど、負けは負けね。…美智子、ごめん。ちょっと眠る…ね…」
「圭さん…」
「ダメです、圭さん…返事してください。圭さん!!圭さん!!」
美智子さんの震える声に、けれど圭さんが答えることはなかった…
180初代スレ126:2005/03/28(月) 22:07:21 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!第六話―最終決戦・そして…―(5)

「ってこら。なに雰囲気だしてんの」
ぺち、と、何時の間にか近づいてきたまりやが圭さんの額を叩く。
「…むう。折角人がそれっぽく纏めているのに…デリカシーがない人ね」
「やかましい。大体、自分で「手加減してもらった」って言っておいて、何やってんの。
美智子さんも、ノリ過ぎ!!」
「だって、折角ですから」
つい今まで泣き声だった美智子さんが、今はすっかり何時もの笑顔だ。
…何気に、下手な役者よりもよっぽど演技巧いなぁ…
「瑞穂ちゃんも!!なぁにそれに付き合って悲壮感漂う顔してるの!!」
「いや、なんか、雰囲気に飲まれちゃって…」
乾いた笑いしか出なかった。…相変わらず、流されやすいな、僕…
「こほん、えっと、いいかしら?
…それでは、バトルエルダートーナメント、試合終了!!優勝!!宮小路瑞穂!!!!」
緋紗子先生の宣言で、静まり返っていた場内は一転、再び歓声の渦に包まれた。
「お姉さまぁ!!」
「凄いのですよ、お姉さま!!」
由佳里ちゃんと奏ちゃんも駆け寄って、僕に抱きついてきた。
その後ろから、紫苑さんと貴子さんも…
「おめでとう、宮小路さん」
後ろから名前を呼ばれ、振り向くと…学院長先生の姿があった。
「ありがとうございます、学院長先生」
「さて。それではいよいよ…この大会最後の仕上げにかからなくてはいけませんね」
「仕上げ、ですか?」
「ええ。…この学院の次期学院長となる為の最後の仕上げ。
……私と闘い、勝つこと、です」
「え…ええええ!?」
学院長先生の言葉はあまりに唐突で…僕は、大声を上げてしまった。
181初代スレ126:2005/03/28(月) 22:08:06 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!第六話―最終決戦・そして…―(6)

場内がざわついている。それもその筈。なにしろ最後に学院長先生と闘わなきゃいけないなんて…
「これは、この恵泉女学院が設立されて以来の決まりなのです。
頂点に立ったエルダーが、学院長を破る事で初めて学院長としての資格を得る…
私も、そうでしたから」
「し、しかし…」
だからと言って学院長先生と闘う、なんて…そんな事…
僕の困惑を他所に、学院長先生は一歩一歩近づいてくる。
「今更変更は無しです。さ、行きますよ?」
ゆっくりした口調…が止まると同時に、学院長先生の姿がかき消えた…!!
後ろ!?
「しまった!!」
僕はそう叫ぶ。つい、身体が反応して、後ろに回った学院長先生に肘を下ろしていた!!
当たる…!!
「良い反応です。…けれどまだまだですね」
!?当たらない!?
確実に当たると思っていた一撃は、学院長先生の残像に当たっただけで、手ごたえはなかった。
何処に!?
「こっちですよ、宮小路さん」
「え!?」
横から声がした…と思った次の瞬間に、僕は宙を舞っていた。
ちらりと見えたのは、しっかりと足を踏みしめ、掌打を僕に叩き込んでいた学院長先生の姿…
「発……剄…?」
薄れ行く意識の中、そう呟いていた…
182初代スレ126:2005/03/28(月) 22:09:21 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!第六話―最終決戦・そして…―(7)

「…さて、厳島さん」
「は、ははははは、はい!?」
突然声をかけられ、呆然としていた私は上擦った声を上げてしまいました…
まあ、呆然としていたのは私一人ではないのですが。
「生徒会の皆さんには、今回の件でご迷惑をおかけしましたね。
…結局、学院長候補が擁立できなかったのは残念ですが…後の片付け、お願いしてよろしいですか?」
「は、はい、ももも、勿論!!お任せください!!」
「では、頼みましたよ」
何時もの柔和な笑顔を見せて去って行く学院長先生…
けれど、誰もがただただ黙ってそれを見送るしか出来なかったのでした。
「…結局、今年”も”、学院長先生に勝てませんでしたね…」
前回もですか…そうですか。
「っああああ!!み、瑞穂ちゃん、大丈夫!?」
あ…ごめんなさい、お姉さま。あまりの事に忘れていましたわ…
183初代スレ126:2005/03/28(月) 22:11:07 ID:6YOLl8yN
恵泉最強王座決定戦!!―エピローグ―

こうして、良いんだか悪いんだかわからないままバトルエルダートーナメントは終了した。
余談だけれど、これから先2年間、今の一年生が卒業するまで、
学院長先生は今までの敬意の対象とは別に畏怖の対象としても見られるようになったのでした。
…更に云うと、僕は最後の発剄のおかげで…

「瑞穂ちゃん、大丈夫?」
「うう、あんまり大丈夫じゃないかも…」
寮でベッドに横たわる僕。側ではまりやが看病してくれている。
「ま、男の子なんだから、気合で治すべし!!」
「そんな無茶苦茶な…」
「んじゃ…元気になるおまじない」
「あ…ん…ちゅ…まりや…」
「…んっふっふ、これから先は、元気になってからね」
「う…」
なるほど、これじゃ直ぐに元気にならなきゃって思うなぁ。
…そう思う自分は限りなく情けないとは思うけど…
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;    '´  `ヽ  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;   . /  j ))ソ    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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184初代スレ126:2005/03/28(月) 22:13:49 ID:6YOLl8yN
…以上、終了です。
誰ルートか設定するのを、途中まですっかり忘れてたと言うのは内緒です(ぉぃ
整合性を取るために、まりやルートにしてしまいましたが…(^^;
それでも無理いっぱいですねorz
「パロディだから」という一言で済ませられる範囲を超えてるような気もしますが…
最後のほうは趣味に走ってるし。
とりあえず、完結です。以上!!
185名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 22:38:20 ID:fIDQhQvb
>>172
( ゚д゚)ポカーン
超有名な実験だから、看守と囚人でググるか、映画「es」でも見とけ。
186名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 23:01:49 ID:NI8FoT8v
その実験自体は有名だけど、あんたのは見当違いのレスだわな。

そもそも

>読解力がないときのこ先生の作品を読めないのと一緒

なんて書いている時点で
>>169 自体がネタだとおもうんだが……。
187名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 23:32:52 ID:X7cBxSsS
なんでもいい
188猫野:2005/03/28(月) 23:49:55 ID:TEvZoecy
初代スレ126さん
楽しく読ませていただきました
189名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 23:55:30 ID:kvaiB7Rl
>(有名なのが囚人服のテスト)恵泉の制服で暮らしてるうちに、心も恵泉女学生になっちまったってこった。マジで。

これ。なんて実験だっけ?
すっごい結果になったから急遽中止されてこの実験をやる事自体が禁止されたんだよね
190名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 23:56:30 ID:rN1BMsvy
なんか止めちゃったみたいだから連投。
前スレ374-378から続けてみるテスト。

ある日の鏑木家

「んっ…ぁ……」
「…貴子さん?」
「………お姉……さま………?」
「よかった、気が付いたのね?」
「ここは……私………ええっ!?…ぁ」
「慌てないで、貴子さん…酸欠で倒れたのよ」
「み、瑞穂さんが介抱してくださったのですか…?」
「ええ、ご迷惑だったかしら?」
「そ、そんなことありません!」
「お〜お〜、顔真っ赤にして動揺しちゃってまあ」
「な、ま、まりやさん!何であなたがここに!?」
「なんでって…あんたこそ何言ってるのよ。まだ正気に戻ってないわけ?」
「うふふ、可愛いですわよ?貴子さん」
「紫苑さま?…あ、そうでしたわね。ここは…」
「ええ、あのマンションです。…もう大丈夫ですか?貴子さん」
「あ、はい。すみませんでした、瑞穂さん」
「いえ、お気になさらず。ところで……私は瑞穂ではありませんよ?」
「え…?」
「今の私は鏑木千穂ですから」
「へ?……ちょっ、ちょっとまりやさん!」
「な、何よ貴子。いたた、引っ張らないでってば!」
191名無しさん@ピンキー:2005/03/28(月) 23:58:11 ID:rN1BMsvy
(…どういうことですの?)
(どういうことって…見たまんまだけど?)
(すっかり女の方になりきってしまってるじゃありませんか!)
(それが?だってそれが目的でしょ?いいことじゃない)
(それにしても急すぎます!…まりやさん、まさかとは思いますが怪しい薬なんて…)
(使うか!単に覚悟を決めただけよ、瑞穂ちゃんなりにね)
(覚悟って…)
(あー…まあ何だ、あんたが気絶してた間にちょっとね。話すと長くなるからまた後でいい?)
(…今ひとつ納得しかねますが、まあいいでしょう。後で説明して頂きます)
(了解)

「…何か密談でもしているんでしょうか?」
「さあ…どうでしょうね?それにしても瑞穂さん、すっかり雰囲気が昔に戻ってますわね」
「…ええ、やるからには紫穂ちゃんに幸せな夢を見せてあげたいですから」
「うふふ、頼もしいですわよ。千穂さん?」
「からかわないでくださいよ、紫苑さん…」

「というわけで、今から私は鏑木千穂として振舞います。皆さんもそのつもりで接してください」
「OK」「わかりました」「ええ、もちろんです」
「さて、それじゃ貴子も起きたところで早速始めましょうか」
「え?今すぐですか?確か少し演技指導してからの予定だったのでは?」
「うん、とりあえずエルダーモードはもう発動したみたいだしね。女としての仕草も自然に思い出すんじゃない?」
「一年近く続けていたわけですからね。身体が覚えていると思いますよ」
「嬉しいような、嬉しくないような、複雑な心境です…」
「まあもちろん、予定通り三日間みっちりリハビリに励んでもらうけどね。襤褸が出ちゃまずいから念には念をってわけでさ」
「それはいいですけど…あまり際どい恰好はやめてくださいね?」
「大丈夫、おとなしめなデザインから選んでるから」
「それならいいんですけど…」
1923-206:2005/03/29(火) 00:00:51 ID:rN1BMsvy
ようやくファッションショー開始?
…というより、やっと本筋に戻っただけですね。
私はそういうのに疎いので、詳しい描写が出来る人がいたらよろしくお願いします。
193test:2005/03/29(火) 00:32:34 ID:FrWtbGTt
 奏ブラック、女同士の大乱闘と嘘を書いてみるtest

おボク様 あなざぁ 『奏ブラックの告白』
 奏はあわてて演劇部の小道具室になっている空き教室に向かった。待っていた
のは、美智子お姉さま。
「奏さん、早かったですわね。偉いですわ」
 そういうと、奏の手から手紙を回収して、ライターで火を点ける。学園のパ
ソコンから印刷されていた文面は『来ないと死ぬ、小道具室』というもの。奏
の気が付かないうちにカバンに入れられていた。
「今日は奏さんを叱咤しようと思ってお呼びしました」
 そう言って美智子お姉さまは微笑む。
「私は瑞穂さんがどんな人でもかまいません。大切なお友達ですが、一番大切
なものではありませんから。でも、奏さんの一番大切なものは何かしら?」
「奏の、一番大切なもの……」
「瑞穂さんの顔色、ずいぶん疲れてらっしゃるようですわ。大切な人でしたら、
泣き付いても、嫌われても、止めて差し上げるべきではないかしら。ごめんな
さい。話はそれだけです」
 奏には意外だった。
「あの、美智子お姉さまは、どうして奏なんかに親切に……」
「あら、私も奏さんの姉ですから、かわいい妹を気に掛けるのは当然ですわ。
もし万一、死んでも屍は拾ってあげますから、特別に圭さんの胸で泣かせて
あげますわ」

 瑞穂お姉さまは最近生徒会のお仕事をしている。それで、ずいぶん疲れてい
る。それでも瑞穂お姉さまが止められないのは、きっと生徒会長に弱みを握ら
れてしまったから。奏が強く止められないのは、瑞穂お姉さまの正体を知って
しまったから。

  続く
194test:2005/03/29(火) 00:33:16 ID:FrWtbGTt
 生徒会長が誘拐されそうになった時、瑞穂お姉さまは4人相手に戦って生徒
会長を守り、男の人であることを知られた。そのことを奏はお姉さまの部屋の
外で聞いてしまった。もう一つ、瑞穂お姉さまが鏑木財閥のあととりであるこ
とも。

 まりやお姉さまに聞いたら。
「ごめん、まだ言ってなかったっけ?」
 そう言われた。
「ま、まあ、でも瑞穂ちゃん小学生の時に作文で、家にあんまりお父さんがい
ないから、うちは貧乏ですなんて書いてたりしたもん。気にしない方がいいん
じゃないかなー。いいじゃん奏ちゃん、目指せ玉の輿ってことで」
 玉の輿、今まで奏の頭の中にそんな考えはなかった。そもそも、こんな奏が、
誰かに愛されるなんて考えたこともなかった。
「男に免疫の無い貴子だもの、助けてくれた瑞穂ちゃんに、あっさり恋に落ち
ても不思議ないよね。しかも、瑞穂ちゃんの弱みも握っちゃってるんだもの。
ねえ?」
 まりやお姉さまは、じっと奏の目を見る。
「奏ちゃんは瑞穂ちゃんに甘えているけど、でも、一歩引いちゃってるところ
もあるんじゃないかな。あたしは欲しがらなきゃ手に入らないものもあると思
う。もちろん、それでも手に入らないものは、あるかも知れない。だけど、諦
める理由にはならないよ」
 でも、それはこんな奏が望んではいけないもの。それに……
「奏は…瑞穂お姉さまにとって……妹ですから」

 奏は嫉妬して、でも嫌われるのが怖くて、臆病で。いつまでも妹のままなの
が嫌で、妹でなくなるのも怖かった。でも、それまで奏が利用しようとしか考
えていなかった人たちが、そんな奏の背中を押してくれている。そんな人たち
のためにも、瑞穂お姉さまのためにも、奏は勇気を出さなくてはいけない。
 奏は瑞穂お姉さまと、生徒会長に話をすることに決めた。

  続く
195test:2005/03/29(火) 00:34:06 ID:FrWtbGTt
 その後、奏はお姉さま方に、瑞穂お姉さまが奏を受け入れてくださったこと
の報告と、相談をすることにした。奏がお漏らししたことだけ伏せて。
「好きですって言われたからって、いきなり裸にしちゃうのもどうかと思うけ
ど、そこまでして最後まで行かないのもどうかな瑞穂ちゃんは?!」
 まりやお姉さまの言葉に、美智子お姉さまは微笑む。
「瑞穂さまは、おもしろい方ですね。緊張されて、まさか若年性インポテンツ
ということは、ございませんか?」
 インポテンツというのはその、大きくならないことなのでしょうか。
「あ、あの、ちゃんと大きくなってらっしゃったのが、奏の体に当たってたの
ですよ〜」
 奏はそう答えたけど、演技じゃなくて頬が赤くなっているみたい。
「うーん、奏ちゃんかわいらしいですわ」
 そう言って、紫苑お姉さまが奏に抱きつく。そのまま離さずに。
「それでは瑞穂さんがバレンタインまでにどこまで行くかで、何か賭けましょ
うか」
 そう言い出す。そのまま、3人のお姉さまは賭けの条件を話しあってる。瑞
穂お姉さまは、こんなことになってるとは思ってないかも知れないけど。奏は
お姉さまたちが大好きなのです。

  終了
196test:2005/03/29(火) 00:39:19 ID:FrWtbGTt
 奏ブラック、飽きたと思いつつ終わらせてみるtest

おボク様 あなざぁ 『さようなら奏ブラック』

 バレンタインの夜。奏たち寮の女の子は、まりやお姉さまの部屋に集まった。
「今回は、奏ちゃんロストバージンを肴にパジャマパーティーします」
 まりやお姉さまの言葉に、あまり事情を知らない由佳里ちゃんは驚きの声を
上げて、まりやお姉さまに口を塞がれる。
「ゆかりん、さわいじゃダメ。当人が起きちゃうじゃない」
「当人って、瑞穂お姉さまなんですよね。ロ、ロストバージンって、その……」
「ああ、瑞穂ちゃんって、ああ見えて男の子だから」
「はい?! ええと冗談じゃ…… ええ!」
 また口を塞がれる。
「さすがに証拠見せるとか無理だけど、瑞穂ちゃんは本当に男よ。疑うなら今
度2人がエッチしてるとこ覗いてみようか」
「そ、それは恥ずかしいのですよ〜」
 まりやお姉さまは、瑞穂お姉さまが転入してきた理由と、奏にどうしてバレ
たかを簡単に説明する。
「ゆかりんに、いつ話そうかと思ってたんだ。ちょうど良い機会っていうか、
こんなおいしい話まで黙ってられないと思って。にゃは」
「はぁ、あんな綺麗な人がホントに男の人だなんて……由佳里、女として自信
なくしちゃいます」
「そんじゃ奏先生の体験談を聞こうか」
 奏は促されて教室での体験を話した。
「いきなり裸になっちゃうなんて、よっぽど溜まってたのかな瑞穂ちゃん。も
うちょっとムードとか……」

  続く
197test:2005/03/29(火) 00:40:05 ID:FrWtbGTt
「でも良かったね、奏ちゃん」
「由佳里ちゃん。ありがとう」
「そんなわけだから、今後2人の部屋に入る時にはノックして返事が帰るまで
待たなきゃダメよ。それと、瑞穂ちゃんには明日コンドームを渡しとくから、
ちゃんと使わせてね」
 そうしてパジャマパーティーは終わった。

 翌朝は奏だけでお茶の用意をすることになった。
「あれ、奏ちゃんだけ?」
 今日は早めに瑞穂さまが下りて来た。
「はい、由佳里ちゃんは朝練で、さっき出て行きましたのですよ」
「そうか、奏ちゃん、その……体のほうは、大丈夫なのかな?」
 奏は恥ずかしそうにうなずくと、瑞穂さまを見上げて、目を閉じる。瑞穂さ
まは奏を優しく抱き寄せて、そして……
「おー、やることやったら元気になったねえ瑞穂ちゃん」
 そう後ろから声をかけられて飛び上がる瑞穂さま。まりやお姉さま、昨日の
打ち合わせ通りのタイミング。
「ああ、そうそう。瑞穂ちゃん、外出しは避妊にならないからね」
 奏が真っ赤になってお茶を淹れに行くのも、もちろん演技。
「まりや、どうして!?」
 後から瑞穂さまのあわてた声が聞こえる。
「どうしてって、奏ちゃんが変な歩き方してるからケガでもしたのかと思って
声かけたら、真っ赤になっちゃうんだもん。わかるわよ。それにしても、あた
しの従兄弟が下級生を襲っちゃう色魔だったとわねぇ。しかも教室で全裸で。
ああ、これはお祝い」
「まりやに隠すつもりは無かったけど、こんなに直ぐバレるなんて。なに、こ
のキーホルダー?」
「コンドームだよ。ちゃんと使ってよ」
 瑞穂さまの驚く声が続く。ふふ、今日はおいしい紅茶を淹れて差し上げない
と。

  続く
198test:2005/03/29(火) 00:40:48 ID:FrWtbGTt
 そして、瑞穂さまは卒業式を迎え、奏を実家に連れて来て下さった。
「瑞穂さま、奏は緊張してきました」
「大丈夫、こんな素敵な子をお嫁さんにしたいんだって、僕が父さんに言うだ
けだから」
「でも……」
「何があっても、僕には奏ちゃんしかいないから、大丈夫だよ」

 瑞穂さまは、お父様の前で。
「この周防院奏さんと、一緒になりたいと思います」
 そう言ってくれた。
「許さん、勘当だ」
 瑞穂さまのお父様のその答えは、意外なものではなかった。鏑木という大き
な家の、瑞穂さまは跡継ぎの人なのだから、奏との交際が反対されるのは想定
していた。でも続く言葉は予想外だった。
「うちの孤児院を出て、うちの奨学金の対象になってる未成年の少女に手を出
して妊娠させました。責任をとって一緒に成りますと言っても、鏑木グループ
の総帥として簡単に許せるわけがないだろう!」
 瑞穂さまは驚いて奏のほうを見るけど、奏はまだ妊娠なんてしてない。
「あの、妊娠とかはまだですし、実際に結婚するのは奏の卒業を待つつもりな
んですが」
 お父様は、瑞穂さまと奏の顔を見て、そして笑った。
「いや、すまん。真面目な顔して時間用意してくれなんて言い出すから勘違い
していた」
「どういう勘違いですか?!」
 その瑞穂さまの言葉を無視して、お父様は奏の目を見て訊ねた。
「奏さん、息子は、こんな女の格好しかできないような奴だがいいのかね」
 奏ははっきり、静かに答える。
「はい、瑞穂さまがいらっしゃれば、それだけで奏は幸せです」
「そうか、奏さん、よろしくおねがいします」
 お父様はそういって奏に、頭を下げる。奏のことを認めてくださった。

  続く
199test:2005/03/29(火) 00:41:58 ID:FrWtbGTt
 翌日、瑞穂さまと奏は、一緒に園長先生のお墓参りに行くことにした。待ち
合わせの時間より早く着くと、そこにいたのはまりやお姉さま。自然に話題は
昨日の話になる。
「そっか、婚約おめでとう」
「ありがとうございますなのです」
「それで、奏ちゃんが最初から瑞穂ちゃんの正体知ってたって話は、まだして
ないの?」
 奏は微笑んだ。
「はい、もう一生お話しなくてもいいかもって思うのですよ」
「まあ、それもいいかもねえ。おっ、噂してたら王子様のご登場だ」
 それでも待ち合わせの時間より少し早く瑞穂さまが来た。
「奏ちゃん待った? あれ、まりやもいたの」
「たまたま会ったから、ラブラブな様子を根掘り葉掘り聞いてたのよ。御婚約
おめでとう」
 その言葉に、照れながら嬉しそうにありがとうと答える瑞穂さま。
「そんじゃ、奏ちゃん、またね。旅行の件、由佳里にも伝えておいて」
 そう言って、離れていくまりやお姉さまを見送って瑞穂さんは。
「まりやにも感謝しなきゃいけないのかなあ、僕たちが出会えたのだって、ま
りやのおかげみたいなものだし」
 そう言い出す。
「奏はいつも、まりやお姉さまには感謝してるのですよ〜」

 奏はこれからも大切な人に嘘を吐いて、騙し続けるのかも知れない。でも、
逃げたりしない。『お姉さま』と一緒にいれば、どんな嘘でも本当になる。そ
んな気がするから。だから奏が嫌いな奏とは、もう、さよならできる。
「瑞穂さま、ずっと一緒です」
「うん」
 そう言って瑞穂さまは、奏のおでこにキスをする。奏は瑞穂さまの胸の中で、
誰にも見えないようにそっと舌を出した。

  終了
200名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 00:52:51 ID:1SkLWnLU
流れを読まずに投下。

「貴子さんとまりやさんよ」、5レス予定です。
201貴子さんとまりやさんよ(1/5):2005/03/29(火) 00:54:08 ID:1SkLWnLU
貴子は、幼なじみで同級生のまりやさんと、口論をしていた。
原因や内容など覚えていない。いつものこと、それだけ。
ただ、今日はなぜか頭に血が上り、表現が暴力的になる。
まりやさんのほうも、状況は同じようだ。似たもの同士とはよく言ったものだ。
そのとき、貴子の視界に瑞穂さんが現れる。
まりやさんとのけんかを止めてくれるときの瑞穂さんは、一番格好いい。ほら、今だってこっちを見てくれている。
そんな風に考えている貴子だから、一瞬思考が飛ぶ。
貴子の、この瞬間不安定になった体では、まりやさんが肩を押す程度の衝撃ですら、立っていられない。
バランスを崩して、ゆっくりと回転しながら倒れる貴子の額に、机の角があった。

次の瞬間、額に薬品のしみる痛みを覚えて目覚めた貴子の目の前には、瑞穂さんの顔のアップがあった。
「み、みみ、みずほさん!?」
「落ち着いて、貴子さん」
そういいながら、瑞穂さんはアルコール消毒を、貴子の傷跡の周りに施す。
「少しだけ、動かないで」
瑞穂さんの顔がもう一度アップになると、貴子の心臓がはねる。
「これで大丈夫です、絆創膏がちょっと不細工ですけれど」
そういいながら、瑞穂さんは立ち上がり、少し離れた机に置いてある鏡を貴子に渡す。
「通常の3倍早く治る絆創膏ですから、少し我慢してください。……あれ、顔が赤いですよ?」
「こ、こんな格好では、恥ずかしいですわ」
鏡を見て感想を言う振りをしながら、貴子は少しでも落ち着きを取り戻そうとする。どちらにせよ、額に×の形で張り付けられた白い絆創膏は、あまり見栄えのいいものではない。
「ところで、なぜ私はこのようなことになっていますの?」
貴子はあたりを見渡す。
そう、ここは保健室のベッドの上なのだ。
「えっと、あまり言いたくはないのですが」
瑞穂さんは前置きをすると、そのときの様子を語りだした。
202貴子さんとまりやさんよ(2/5):2005/03/29(火) 00:54:58 ID:1SkLWnLU
瑞穂が貴子さんとまりやの姿を見かけたとき、二人は喧嘩腰で立っていた。
普段より張りつめたその空気は近寄りがたく、瑞穂はふたりを止めに入らないとまずいと考え、食事を持って急いだ。
瑞穂が近づいたとき、まりやが貴子さんの肩を軽く小突こうと構えたのが見えた。
あの一撃の次は貴子さんの反撃が入る。瑞穂はそう思って、二人の一挙手一投足を見逃さないように気を張る。
しかし、貴子さんの動きは、瑞穂の予想とは全く違うものだった。
まりやの攻撃を受けることも、耐えることもせずに、ただ倒れる。
まりやの一撃で体が半回転し、そのまま額を後ろの机の角に強く打ち付ける。
そして、打ち付けた机と貴子さんの額には、生々しい血の色。
「貴子っ!」
まりやの叫びが食堂に響き渡る。瑞穂もその言葉に反応して、現場への数メートルを急ぐ。
「貴子さん!」
瑞穂の声にも、貴子さんは反応しない。
そのとき、どこからともなく紫苑さんが現れた。
「王大人(ワン・ターレン)死亡確認ですわ」
紫苑さんの言葉で正気に返った瑞穂は、貴子さんをそのまま抱えて保健室へ向かおうとする。
そのとき、瑞穂の視界の端っこに、まりやの泣き顔があった。
「貴子ぉ……あんなことで……死なないでよ……」
まりやをフォローする暇がないことも認識していた瑞穂は、紫苑さんに声をかけてまりやのことをお願いする。
紫苑さんのウィンクが、今は頼もしかった。
203貴子さんとまりやさんよ(3/5):2005/03/29(火) 00:55:39 ID:1SkLWnLU
「というわけなのです」
瑞穂さんのわかりやすいお話を聞き終え、貴子は思わず笑い出しそうになった。
「机の角に頭をぶつけたくらいで死ぬわけないでしょう」
「後頭部だったら危なかったですよ」
真剣な面もちを崩さない瑞穂さんの指摘に少しだけ恐怖を感じながら、貴子は疑問点を口にする。
「その後、騒ぎはどうなりましたの?」
「さぁ、紫苑さんと奏ちゃんがうまくやったんじゃないでしょうか」
結局、瑞穂さんも知らないらしい。それだけ一生懸命になってくれたことを再確認し、貴子の頬はもう一度熱くなった。
「と、とと、ところでっ」
「はい?」
「紫苑さまとまりやさんはどちらにいらっしゃるのでしょう?」
「人目に付かないところ――たぶん屋上じゃないですかね」
「ありがとうございます、ちょっと行ってみますわ」
そういうと、貴子はベッドをゆっくり降りる。大丈夫、特に調子が悪いということもない。
「一応ついていきましょうか」
「お願いいたします」
瑞穂さんの好意に甘え、並んで屋上へと向かう。
そこにはおそらく、紫苑さまとまりやさんがいるはずだから。
204貴子さんとまりやさんよ(4/5):2005/03/29(火) 00:56:17 ID:1SkLWnLU
まりやは、紫苑さまに肩を借りて、重い足取りで食堂を後にした。
紫苑さまは優しい声をかけてくださるが、まりやは気が晴れない。
それもそのはず、まりやはつい先ほど、人を殺めてしまったのだ。
厳島貴子。小さい頃から恵泉女学院で共に過ごしてきたライバル。
まりやの暴力による負傷で、そんな大切な貴子が死んでしまった。
それを確認したのは、今現在まりやと歩を共にしている紫苑さま。
とりあえず、誰もいない屋上へ行こう。まりやのことを思ってくれる紫苑さまの提案が、身にしみてありがたかった。
屋上にたどり着く。
「すこし、落ち着きましょう」
紫苑さまが、フェンスの土台にハンカチを二枚敷く。一枚は自分用、もう一枚はまりやのために用意してくれたものだ。
「紫苑さま……ありがとう、ございます……」
紫苑さまの隣に座ると、まりやの目から涙があふれる。
「大丈夫、今は誰もいないわ」
そういわれてしまうと、涙が止まらなくなる。
紫苑さまの胸を借りて、まりやは泣き続けた。
今は、何もする気が起こらなかった。
こんなことがないと、ライバルの貴子がいる幸せに気がつかないなんて、どれだけ馬鹿だったのだろう。
こんなことになってしまって、瑞穂ちゃんや親戚たちにどういえばいいのだろう。
こんなことになるなら、貴子ともう少し距離を置けばよかったんだ。
こんなことになってしまった……許されるなら、『転校』してしまいたい。くけけけけ。
とりとめもなく思考をランダム・ウォークさせながら、まりやはしばらく涙を流し続けた。
紫苑さまは何も言わず、ただほほえんでいるだけだった。
205貴子さんとまりやさんよ(5/5):2005/03/29(火) 00:56:58 ID:1SkLWnLU
そのとき。
まりやの耳に、ありえないはずの声が響いてきた。
「ほーっほっほっほ……げほっ、げほっ、ふ、不死鳥のように復活して参りましたわよ、まりやさん!」
高笑いなんて、慣れないことするからそうなるのよ。
悪態をつこうとするも、新しくあふれる涙が止まらない。先ほどとは成分の違う涙が、まりやの頬を伝う。
貴子、生きててくれたんだ。
「な、何を泣いていますの、気味が悪いですわね」
気味が悪くたってべつにかまわない。
ライバルで親友の貴子が戻ってきてくれてうれしい。
まりやは、そのときは素直にそう思うことができた。

Appendix

まりやが、貴子さんに抱きついて、しばらく涙を流す。その表情は、うれしさであふれている。
そんなふたりに、ハンカチを片付けた紫苑さんが近づく。
「ところで貴子さん、絆創膏をはがすとパワーアップしたりしません?」
紫苑さん、貴子さんの額の傷は第三の目でも、邪眼でもありませんよ?
206200:2005/03/29(火) 00:57:42 ID:1SkLWnLU
以上 >>201-205 です。
207名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 02:19:47 ID:+026hIDY
超ぐっぢょぶ!!
2081話スレ241:2005/03/29(火) 03:20:51 ID:0naiI/NF
>>206
邪眼は違うではと思いつつもGJ!!

>>199
黒奏、よいですな。
なんと言ったらいいかわからないけど、
イイですな。
209初代スレ126:2005/03/29(火) 03:35:43 ID:6GWepTtB
>>199
黒奏、新しい萌えになりました。貴子スキーなのに浮気しそうです…( ;´Д`)
この奏ちゃん好きだ〜!!
GJでした!!

>>206
三つ目&幽白ネタにワラタw
GJでした〜
210名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 11:06:18 ID:ZIshnh9H
>>199
黒奏、最初はどうかと思ったけど
最後の方は良かった!
GJです。

もっと、奏が好きになっていくところを強く書いていれば
更に良かった気がします。
211初代スレ123:2005/03/29(火) 15:36:39 ID:5xmY54nl
誰もいない……やるなら今だ!

G−1グランプリ 恵泉女学院一発ギャグトーナメント
第一弾を投下します。
誰がなんと言っても主役は梶浦緋紗子先生です。
ジャンル分けは緋紗子先生でお願いします。
ちょっと変わった形式です。
212初代スレ123:2005/03/29(火) 15:37:44 ID:5xmY54nl
G−1グランプリ 恵泉女学院一発ギャグトーナメント


緋紗子「全国一千万人の恵泉女学院OGのみなさま、ごきげんよう。
今、長い歴史と伝統を誇る、恵泉女学院の歴史に新たな一ページが刻まれようとしています。
お聞きください、この乙女たちの歓声を。リングが置かれたここ恵泉女学院の体育館は、
異様な熱気に包まれています。
決戦の時間まであとわずか。会場を埋め尽くす生徒たちもそれぞれの思いを胸に、
選手たちの登場を今か今かと待ちかまえています。
G−1グランプリ 恵泉女学院一発ギャグトーナメント。この試合の実況は、
マイクと○○○を握ったら離さない女。百合の園に咲く一本のドクダミ草、梶浦緋紗子。
そして解説は、格闘技と吉本をこよなく愛する女。知っているか? 
日本プロレスを、の美倉サヱさんです。よろしくも願いします、美倉さん」
学院長「よろしくお願いします、梶浦先生。それからわたくしのことは、いつもの通り学院長と呼んでください」
緋紗子「よろしくお願いします、学院長。では私のことは緋紗子と呼んでください」
学院長「分かりました、緋紗子さん」
緋紗子「この放送は鏑木グループ、恵泉女学院OG会の提供でお送りします」

――CM中――
213初代スレ123:2005/03/29(火) 15:38:46 ID:5xmY54nl
緋紗子「さて学院長。まもなく始まるG−1グランプリについて、
一般的な他の大会との違いを説明してもらえませんか?」
学院長「分かりました。詳しく説明しましょう。今回のG−1グランプリですが、
今までの大会と大きく違う点があります。それは、犬さんチーム、猫さんチームに分かれていることです。
先に三勝したほうが勝利チームになります」
緋紗子「今大会はチーム戦、ということですね? なぜ今回チーム戦になったのでしょうか?」
学院長「深い意味はありません。作者の思いつきです。ちなみにそれぞれのメンバー構成はこのようになります。
犬さんチーム
宮小路瑞穂
厳島貴子
小鳥遊圭
上岡由佳里

猫さんチーム
十条紫苑
御門まりや
高根美智子
周防院奏
といっても、特に具体的なイメージはなく、
瑞穂さんがアフガンハウンド・紫苑さんがシャム猫、だけだそうですけど」
緋紗子「分かります。分かります、学院長。貴子さんに犬耳をつけて、あんなことやこんなことができたら、
と思うと……潤んだ瞳で上目遣いにお願いされたらもう……」
学院長「……梶浦先生。今、ふしだらなことを考えていませんでしたか?」
緋紗子「い、いえ、めっそうもない。誤解です、学院長」
学院長「でしたらいいのですが。……話を続けますと、この試合が事実上の決勝戦になります」
緋紗子「……ではなぜ、タイトルがトーナメントとなっているのでしょうか?」
学院長「それについては一通の謝罪文がわたくしの元に届いています。ぶっちゃければ、
チーム戦にすることは決まっていたのに、語呂と勢いで書きこんでしまったようですね」
緋紗子「バカですね」
学院長「まったく」
214初代スレ123:2005/03/29(火) 15:41:19 ID:5xmY54nl
緋紗子「あっ、学院長。誰かリングに上がるようですよ」
学院長「生徒会の菅原君枝さんですね」
緋紗子「蝶ネクタイにスラックス姿は可愛らしいのですが、おさげにメガネをしたレフリーというのは、
前代未聞ではないでしょうか?」
君枝「今回、リングアナウンサー兼レフリーを務めます、生徒会会計の菅原君枝と申します。
ふつつか者ではありますが精一杯公平なジャジをするつもりです。みなさん、よろしくお願いします」
緋紗子「あらあら、自己紹介されてしまいましたね」
学院長「君枝さんらしくていいと思いますよ」
緋紗子「さあ、いよいよ会場の照明が落ち、リング上の君枝さんにスポットライトが当たります。
騒がしかった場内も、うってかわって静かに君枝さんのコールを待ちます」
君枝「ただ今より、G−1グランプリ 恵泉女学院一発ギャグトーナメント決勝戦をおこないます」
緋紗子「お聞きください、この歓声を。地鳴りのような、いえ、黄色い声援が会場を包みます」
君枝「まずは猫さんチームの入場です」
緋紗子「再び照明が落とされた会場に……おおっと、この印象的なイントロは」
学院長「杏里のキャッツアイですね。八十年代の名曲ですよ」
緋紗子「なるほど、チーム名とかけての選曲ですか。まりやさんあたりの入れ知恵でしょうか。花道にスポットライトが当たり、
選手が入場してきます。……どうしたことでしょう。紫苑さんを先頭に、全員黒いフードとマントに身を包んでいますが、これは?」
学院長「おそらく、衣装そのものがギャグのネタなのではないでしょうか? 
今から見えてしまってはインパクトに欠けますからね。そうでない人もいるでしょうが、衣装を隠すことはマイナスになりませんから」
215初代スレ123:2005/03/29(火) 15:44:02 ID:5xmY54nl
緋紗子「なるほど。そういった理由があるわけですか。――誰でしょう? 
一番後ろを歩いている方はセコンドのようですけど、
見覚えのない人ですね……それになんだか瑞穂さんに似ているような……」
学院長「あ、あの人は……」
緋紗子「知っているんですか? 学院長」
学院長「え、ええ。よく知っていますとも。昔のわたくしの教え子ですからね。
瑞穂さんに似ているのも当然でしょう。あの方は宮小路幸穂さん。
ずいぶん前に亡くなった瑞穂さんのお母さまですよ。見てください、姿が透けています」
緋紗子「あ、今情報が入りました。これによれば『猫か犬かでいえば、猫でしょう』とのことですが、
いいんでしょうか、学院長」
学院長「ああ、思い起こせば二十年前……あなたがわたくしのクラスに……」
緋紗子「お願いですから、袖から袖まで走ったりしないでくださいね。カメラが追い切れませんから……」
君枝「続いて犬さんチームの入場です」
216初代スレ123:2005/03/29(火) 15:44:36 ID:5xmY54nl
緋紗子「こ、これはなんの曲ですか?」
学院長「わんわん忠臣蔵のわんわんマーチですね、これは。いやー、なつかしいですね」
緋紗子「いったい誰の趣味なんでしょうか……。やはり犬さんチームも黒いマントを着ていますね。
ああっと、フードを目深にかぶっているのは奏さんでしょうか。意味深であります。
ななな、なんですかあれ? ち、宙に浮いてますよぉ」
学院長「あらあら、高島一子さんじゃありませんか」
緋紗子「しっ、知っているんですか、学院長」
学院長「知っているも何も、幸穂さんの後輩で在学中に寮でなくなった子です。
まったく落ち着きのないところは相変わらずですね。……それにしてもおかしな人ですね、
あなたも。幸穂さんの時は何ともなかったじゃありませんか」
緋紗子「ま、まあ、あからさまに宙を飛んでいませんでしたし。それにしても明るい子ですね。観客に手を振ってますよ」
学院長「それがあの子のいいところです。高島さんの生き生きした姿を見ると、こちらまで元気づけられたものです」
緋紗子「まあ、もう死んでいるんですけどね」
君枝「選手紹介。まずは犬さんチーム……」
緋紗子「選手の名前が呼ばれるたびに、観客席から黄色い声援が飛んでいます。
一つでもない、一カ所からでもない。会場全体から次々と沸きあがる拍手と歓声」
君枝「そして猫さんチーム……」
緋紗子「そしてその声援に、おのおのの方法で応える選手たち」
君枝「まずは第一試合。宮小路幸穂VS十条紫苑」
217初代スレ123:2005/03/29(火) 15:45:50 ID:5xmY54nl
第一弾は以上です
2183スレの226:2005/03/29(火) 15:56:17 ID:gNh1qVn6
>>test氏
乙カレー。めでたしめでたしで良かったのですよ〜。

>>200
乙です。なんか全然そうは見えない貴子が高笑いしてるのが最高(笑)
2193スレの226:2005/03/29(火) 16:09:01 ID:gNh1qVn6
>>初代123氏
ワロタ・・・というか何とコメントして良いのやら。
ひとまず次回に期待します

>犬チーム・猫チーム
見事に犬系と猫系だよなぁ・・・。

>>218に補足
奏ブラックシリーズは、当初はブラックユーモアの世界と思ってたのだが、
なかなかに硬派で良いシリーズだったと思います。
改めてGJ!!>test氏
220名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 16:24:37 ID:ELtyvxYq
>>test氏
乙でした。
ちょっと疑問におもたのだが、なんでいつもageてるの?
もし気に障ったらスマソ。気になったもんで……

>>初代123氏
ワロタ つか第1試合すげー気になるw
221名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 16:44:27 ID:8sL1dvTP
>>217
幸穂さまの戦いがすごく気になるwww
222名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 22:05:00 ID:HQmXLIMR
申し訳ない、訂正です。宮小路幸穂ではなく、宮小路瑞穂です。IMEのミスでした。
お母さまはセコンドであって、選手ではありませんので。
それから一発ギャグの大会です。一発です。


緋紗子「こ、これはなんの曲ですか?」
学院長「わんわん忠臣蔵のわんわんマーチですね、これは。いやー、なつかしいですね」
緋紗子「いったい誰の趣味なんでしょうか……。やはり犬さんチームも黒いマントを着ていますね。
ああっと、フードを目深にかぶっているのは奏さんでしょうか。意味深であります。
ななな、なんですかあれ? ち、宙に浮いてますよぉ」
学院長「あらあら、高島一子さんじゃありませんか」
緋紗子「しっ、知っているんですか、学院長」
学院長「知っているも何も、幸穂さんの後輩で在学中に寮でなくなった子です。
まったく落ち着きのないところは相変わらずですね。……それにしてもおかしな人ですね、
あなたも。幸穂さんの時は何ともなかったじゃありませんか」
緋紗子「ま、まあ、あからさまに宙を飛んでいませんでしたし。それにしても明るい子ですね。観客に手を振ってますよ」
学院長「それがあの子のいいところです。高島さんの生き生きした姿を見ると、こちらまで元気づけられたものです」
緋紗子「まあ、もう死んでいるんですけどね」
君枝「選手紹介。まずは犬さんチーム……」
緋紗子「選手の名前が呼ばれるたびに、観客席から黄色い声援が飛んでいます。
一つでもない、一カ所からでもない。会場全体から次々と沸きあがる拍手と歓声」
君枝「そして猫さんチーム……」
緋紗子「そしてその声援に、おのおのの方法で応える選手たち」
君枝「まずは第一試合。宮小路瑞穂VS十条紫苑」
223名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 23:33:29 ID:kv9Mn/QY
修正するなら該当部分だけでいいじゃんよ。
同じの2回投稿って容量の無駄じゃないか?
224名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 12:06:07 ID:u3/tHD/O
既に過疎スレに成り下がりましたか…。
12時間も書きこみがないって初めてじゃない?
225名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 12:54:28 ID:tA2jDVDg
誕生日は待とう
次は5月のお姉さま
226名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 13:16:35 ID:fLEeB4hz
そりゃあんだけ荒れれば過疎にもなる
227名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 13:28:01 ID:Uo1d+cN9
>>57の続きが読みたい。
天国の二人のお話。
228名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 14:22:05 ID:KEYIXprf
( ´-`)。o O(224みたいな香具師は自分が職人どものやる気をなくさせてるとは思わないだろうな・・・)
229名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 17:38:13 ID:xkrMTUIf
( ´-`)。o O(ねたは、無い訳じゃないが、形にならない)
230名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 17:54:03 ID:dgpZLLP/
( ´-`)。o O(最近投下してない職人って結構いそうだなぁ)
231471 ◆471.Pt54hU :2005/03/30(水) 18:08:49 ID:xEPUFx68
( ´-`)。o O(ここにいるよ……)
232名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 18:33:07 ID:fLEeB4hz
( ´-`)。o O(ってか作者からしたら無償で投下してるのに感想・批評以外の面で文句言われたらなぁ
233名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 18:36:00 ID:xCvTiYYc
( ´-`)。o O(まあ、春休みが終わるまではdat落ちを避けつつマターリ行こうよ)
234名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 18:37:43 ID:dgpZLLP/
( ´-`)。o O(209と269の新作キボンヌっ、と……)
235初代スレの45:2005/03/30(水) 19:25:56 ID:+NCiDjo/
( ´-`)。o O(あと少しで完成しそうなんだけど・・・まとまらない・・・。もうちょっとお待ち下さい。)
236名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 19:59:03 ID:GFpAiOJ5
( ´-`)。o O(>>235 楽しみに待ってます。がんがってください。)
2372スレの402:2005/03/30(水) 20:08:02 ID:xkrMTUIf
( ´-`)。o O(期待すらされてなさそうだし、また叩かれそうな書き手もいるが)
238名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 20:23:37 ID:P9/tGp6E
( ´-`)。o O(そんなことないですよ…とでも言って欲しい?そんなところが変なのに目を付けられる原因だと思うんだけど)
( ´-`)。o O(まあとりあえず連載完結させてからしばらく名無しで潜ってた方がいいと思うよ…ほとぼりが冷めるまで)
2391スレの301:2005/03/30(水) 20:35:10 ID:82aU7DXD
( ´-`)。o O(ワシももうちょっとで書きあがりそう……)
240名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 20:51:01 ID:R5ompiOK
高原だもん
241名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 20:51:45 ID:R5ompiOK
ごめん誤爆
242名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 21:06:04 ID:w06UDIDa
いつも、隣りにいる人なんだって、そう思ってた。

そしてきっと、もっと高く、もっと綺麗に飛べる人なんだって、ずっと思ってた。

だから、翼をあげようと思った。
その人に相応しい、その人のためにあるような、そんな翼を。

でも、そんな自分の思い込みを超えて、その人は飛んでゆく。
遠く、高く、遥かな場所に。

綺麗だなって見詰めながら、でも、もう追いつかないんだ、
一緒に飛ぶことは出来ないんだって。



そう気付いた時・・・・・・・・その翼をもぎ取りたくなった。

もぎ取って、折って、切り刻んで、めちゃめちゃに壊して。
二度と飛べないように、徹底的に、徹底的に、徹底的に・・・・・・

そうすれば、一緒に、光の射さない暗闇を這いずってくれると思ったから。
私のもとから離れていく事も無いと、そう思ったから。



    まりやシナリオ another





黒奏に対抗して黒まりやキボンヌ(黒紫苑でも可)
243初代スレの45:2005/03/30(水) 21:35:08 ID:+NCiDjo/
>>242
・・・よく見たら、キボンヌでしたか・・・




さて、とりあえず久しぶりに投下します。

まあ例によってまりやEND後のお話です。今回は短いです。8レス分を予定。

幼馴染なふたりの婚約のお話。
別に盛り上がりもなく、ジャンルがよくわからないとある日常のお話。
でもふたりが結婚決める時ってこんな感じかなと思ってたり。
244初代スレの45:2005/03/30(水) 21:36:45 ID:+NCiDjo/
『start line』.1

―――まりやが帰国してからもう随分経ち・・・

「・・・ですので、この地域で新規展開して・・・」
「・・・ふむ。ならば現地のこの支社を起点として・・・」

本部の会長室。僕は父様と『鏑木テクスタイルプランニング』の今後の海外展開について話し合っていた。

「・・・なるほど。確かにお前の言うとおりだな。・・・お前も随分と経営というものが判ってきたな。
 ・・・この様子ならば、近々隠居できそうだ。」
「いえ、そんな・・・。僕はまだ若輩者です。まだまだ学ぶことが山程あります。」
「ふむ。相変わらず謙虚だな。そういう姿勢もいいのだが・・・多少強気であることも必要だぞ、瑞穂。
 それに、お前はやはり優しすぎるな。それがお前の長所であり、短所でもある。
 時には厳しい態度で当たることも社員にとって有益であることを忘れるな。」
「はい・・・。」

仕事の話も一段落し、父様がこんな話を切り出してきた。
「ところで瑞穂。俺の孫はまだできんのか?」
「ぶっ!」
急にそんな話をしてくるので、僕は飲んでいた紅茶を噴出してしまった。
「なんだ、そんなに驚くようなことを聞いたか?」
「・・・けほっ・・・。そ、そんな直接的な・・・。ま、まだですよ・・・。それにまだ結婚してませんし・・・」
「ほう。しかし何故だ。毎日のように愛を確かめているのだろう?」
「なっ!・・・な、な、な・・・なんでそんなことをっ!」
「くっくっく・・・そうかそうか。ふむ。若いのはいいことだ。」
「はっ・・・」
謀られた・・・誘導尋問ですか、父様・・・orz
「くくっ、そう面白い顔をするな、瑞穂。素直なのは良いことだが、少しは疑うことも身につけんとな?
 相変わらずチェスも弱そうだな、この様子では。」
「・・・」
僕に応える余裕はなかった・・・orz
245初代スレの45:2005/03/30(水) 21:37:35 ID:+NCiDjo/
『start line』.2

「しかし、そうか。毎日愛し合っているわけか。
 となると子供ができんのも不思議だな、え?瑞穂。」
「・・・そういうお話は勘弁してください・・・」
「いやいや瑞穂。大事な話だぞ。ゆくゆくは我が鏑木財閥の跡取りとなるのだからな、お前の子は。」
そんな、ニヤニヤしながら話さないで下さい、父様・・・
「確かにそうですけれど・・・」
「ということは、避妊でもしているということか。」
「いや・・・ですから・・・プライバシー侵害ですよ、父様」
「ふん。何を云うか。鏑木財閥の御曹司ができちゃった婚、なんて格好がつかんだろう。大丈夫なのか?」
「一応危険日はお尻だけにしてますから・・・って何を云わせるんですかっ?!」
「ほうほうほうほう。」
すっごく嬉しそうですね、父様・・・orz


「それにしても、何故だ?」
父様は打って変わって真面目な表情になり、イキナリこうたずねてきた。
「・・・何が、ですか?」
「何故、結婚しないのだ。別に『子供はいらない』などと考えているわけではあるまい?」
「は、はい。今すぐにとはいいませんが、いずれ子供は欲しいと考えています。」
「それならば尚更だ。子供が欲しいと考えているならば、何故結婚しない?」
「そ、それは・・・」

まりやのコトは大好きだし、愛している。まりやも僕のことを愛してくれている。
結婚のことは何度も考えたことがあった。けれど、結局何故か乗る気にならなくて、まだまりやに言い出せないでいた。
246初代スレの45:2005/03/30(水) 21:38:23 ID:+NCiDjo/
『start line』.3

「ふむ。・・・怖いのか?」
「・・・」
そう、かもしれない・・・。
結婚したら、僕のまりやの関係が変わってしまう気が・・・そんな気がしているのかもしれない・・・。

「ま、お前とまりやちゃんのコトだ。俺が心配する必要もないだろうが、な。」
「・・・父様は、僕がまりやと結婚する、と云ったら、どうしますか?」
「なんだ、今更聞くようなことか?こんな話をするほど俺もお前たちの関係を知っているし、
 まりやちゃんには俺のことを『お義父様』と呼ぶように、と云ってあるじゃあないか。」
「・・・よくよく考えると、随分なフライングですよね。付き合ってます、としか言ってないのに・・・」
「それに、グループ全体で既にお前たちのその熱愛ぶりが有名になっているんだぞ。文句があるならとっくに云っておるわ。」
「え・・・?」
「くくく・・・。知らずは当事者ばかりなり、か。」
「か、会社では自粛しているつもりなんですけれど・・・。」
「くっくく、その様子では貴子さんの苦労が知れるな。ふむ。今度特別ボーナスでもあげるか。」
「・・・僕の生写真とかはやめてくださいね。」
「ま、それはともかくとしてだ。」
「流さないで下さい・・・。」
「本題に戻ろうとしているだけだ。でだ、まりやちゃんとの結婚だが。
 俺が反対する理由はない。それに、お前はもう一人前だ。俺の意向など心配する必要などない。」
「はい・・・」
「それに、まりやちゃんのコトは彼女の小さい頃からよく知っている。昔も今も、多少お転婆だが素直で良い娘だ。
 彼女はお前のコトを一番理解しているし、お前も彼女のコトを一番理解しているだろう。
 お前のパートナーとして最良じゃないか。重ねて言うが、反対する理由は見つからん。むしろ推奨するぞ。」
「ありがとう、ございます。」
「結婚する時期についてはこれ以上言及はせん。お前たちの好きにするがいい。
 ま、俺としては早く孫の顔を見て、それを土産話に幸穂と再会したいのだがな。」
「ちょ・・・っ!父様っ!演技でもないコトを云わないで下さい!」
「ふ、冗談だ。そんな死に急ぐようなことをしたら幸穂に嫌われてしまうわ。そんな事はせんよ。」
247初代スレの45:2005/03/30(水) 21:39:44 ID:+NCiDjo/
『start line』.4

「しかし不思議なものだな。」
「何が、ですか?」
「お前たちがそういう関係になっているということが、だ。お前たちが小さい頃から見ているからな。
 二人とも子供だと思っていたら、いつのまにか大人になって、しかも結婚するというのだからな。」
「・・・」
「お前もまりやちゃんも、根は幼い頃から変わっていないからな。特にそう思うのかもしれん。
 ふ、まあ俺も歳をとったというわけだな。」
「父様・・・」
「そしてそのうち、俺にも孫が出来るというわけか。うむ、やはり歳をとったものだな。
 孫なんて、はるか遠い話だと思っていたのにな。・・・お前たちの子供か。女の子だったら瑞穂に似てもらいたいものだな。」
「それ・・・僕に似てもらいたいんじゃなくて、母様に似て欲しいんじゃないんですか?」
「・・・そうとも、いうな。ま、男の子だったらまりやちゃん似のほうがいいかもな。宝塚俳優みたいにカッコイイ子になりそうだ。」
「女の子なら僕似で、男の子ならまりや似ですか。それ、まりやが聞いたらどんな反応するでしょうね・・・?」
「・・・喜ぶか、激怒するか、どっちかだな。」

・・・
・・・
「ふむ。随分と話し込んでしまったな。今日はこのくらいにしておこう。」
「はい。それでは失礼します。」
僕は席を立ち、部屋の扉へと向かっていった。
「そうだ、最後に。」
すると、父様に呼び止められた。
「・・・なんでしょうか?」
「これは父として、総裁としてではない。一人の人生の先輩として、言っておく。
・・・怖がっている理由は知らんが、それを忘れて一度考えてみろ。そうすればおのずと答えは見つかる。」
248初代スレの45:2005/03/30(水) 21:41:19 ID:+NCiDjo/
『start line』.5

・・・
・・・
「・・・忘れて考えてみろ、か。」
帰り道。僕はさっきの父様の言葉を思い出していた。

・・・僕がまりやをどう思っているか、なんてわかりきっている。
それに、まりやと結婚したいって思ってる。
ただ、二人の関係が変わってしまいそうで・・・ってこれは今は忘れないと。


となると。



・・

・・・

・・・そっか。そうだよね。答えは簡単。僕はまりやと結婚したいんだ。まりやと夫婦になりたいんだ。
だったら、それでいいじゃないか。


こんな漠然とした不安なんて心配する必要なんてない。大丈夫。何があってもまりやとなら乗り越えていける。
今よりももっともっといい関係になれるよ。絶対に。

こんな簡単な答えなのに、随分悩んでいたなんて、なんかみっともないね、僕。

そうと決まったら善は急げだ。
僕は方向転換して、駅前の繁華街へと赴いた。
249初代スレの45:2005/03/30(水) 21:42:04 ID:+NCiDjo/
『start line』.6

・・・
・・・
―――その日の夜。

「ねぇ、まりや。ちょっと話があるんだけど・・・」
僕はそう話を切り出した。
「ん、何?瑞穂ちゃん。急に改まって。」


僕は小さい箱を取り出して、まりやに差し出した。


「これって・・・指輪・・・」
「随分と時間がかかっちゃったけど・・・。まりや、結婚しよう。」

「・・・」
まりやは、きょとんとした表情で、僕の顔を見つめてくる。

「ま、まりや・・・?」

「あ、あはは。そういえばまだ婚約してなかったっけ。ちょっとびっくり。」
「ま、まりや〜・・・」
僕はなんか力が抜けてしまった。云うとき、ちょっと緊張したのに・・・
250初代スレの45:2005/03/30(水) 21:43:21 ID:+NCiDjo/
『start line』.7

「なんてね。冗談。」
そういって、まりやは僕に抱きついてきた。
「瑞穂ちゃん、ありがとう・・・。すっごく嬉しいよ・・・」
「まりや・・・」
「あたしね・・・。ずっと待ってたんだよ?瑞穂ちゃんにプロポーズしてもらうのを・・・」
「あ・・・まりや、ごめん・・・」
「ううん。大丈夫。別に怒ってたわけでも、焦ってたわけでもないから。
 瑞穂ちゃんがあたしを大切に想ってくれてるから、だから悩んでたってことはわかってたから・・・。」
「でも、まりやを待たせちゃったのは確かだから・・・。ごめんね。
 ・・・怖かったんだ。僕とまりやの関係が変わってしまいそうで・・・」
「うん、わかってる。あたしもね、瑞穂ちゃんとの結婚を考えたとき、ちょっとそれが怖いと思ったんだ。
 でもね、確かに変わるかもしれないけど、今までの関係が壊れちゃうわけじゃないんだ。
 積み重なってもっともっといい関係になれるんだって。そうわかったら、不安なんて吹き飛んじゃった。」
「まりや・・・。まりやは強いね・・・。うん。そうだよ、そうだよね。」
「あたしから云っても良かったんだけどね〜。でも、あたしも一応女だから。瑞穂ちゃんから云って欲しかったんだ。」
「まりや・・・僕は、必ずまりやを幸せにするよ。」
「あ、瑞穂ちゃん。それ嫌。」
「え・・・?」
「あたしだけ幸せになってもしょうがないもん。瑞穂ちゃん、一緒に幸せになろうね。」
「ふふっ・・・まりやらしいや。うん、そうだね。一緒に、幸せになろう!」
「うん・・・。にはは。でも、あたしは今でも十分幸せなんだけどね。これ以上幸せになったら、死亡フラグ立っちゃうよ?」
「なにそれ・・・物騒な・・・。大丈夫だよ。あの6年間で十分罰は受けたんだから・・・」
僕はまりやにキスをした。
「ん・・・」
「・・・んむ・・・」

・・・夜が、更けていく・・・
251初代スレの45:2005/03/30(水) 21:45:18 ID:+NCiDjo/
『start line』.8

・・・
・・・
―――次の日の朝。日曜なのでちょっとふたりして寝坊してしまったみたいだ。

「まりや、おはよう。」
「おはよ〜、瑞穂ちゃん。うぅ・・・」
「ど、どうしたの、まりや・・・朝からなんかつらそうだけど・・・」
「・・・瑞穂ちゃん、激しすぎ。お尻にまだ違和感が・・・」
「あ・・・ははは・・・やっぱり、お尻ばっかりだとつらかった?」
「うん・・・。危険日だったから仕方なかったけど・・・」
「避妊具使うっていう選択肢はないんだ?」
「だって・・・瑞穂ちゃんを直に感じられないなんて、いやだモン・・・」
「まりや・・・。その科白、なんかすっごく嬉しい。」
「・・・これに感動されても・・・。うぅ〜、なんだか恥ずかしくなっちゃう・・・」

「ねぇ、瑞穂ちゃん。」
「なに?」
「あのさ、瑞穂ちゃんのコト、これからなんて呼んでほしい?あなた?それとも瑞穂ちゃんのままがいい?」
「えっと・・・そうだね・・・。まりやにはこれまでどおりに呼んでほしいかな。」
「瑞穂ちゃん・・・。うん、あたしも瑞穂ちゃんのことは瑞穂ちゃんって呼びたい。そうでないと調子でないし。」

「これからも、よろしくね。まりや。」
「瑞穂ちゃん、よろしくっ!」
252初代スレの45:2005/03/30(水) 21:46:01 ID:+NCiDjo/
終わり。←入れ忘れたorz



とりあえずここまで。
めずらしくほのぼのEND。

幼馴染だからこその小さな不安。結末は決まっている、ほんの後押しさえあればすぐに無くなる不安。
みたいな感じを書いてみました。
ところどころでふたりの「らしさ」を感じていただければなと思います。
ああ、死亡フラグは立ちませんから安心してくださいw
あと、いつもオチにしか書いてなかったので、たまには豪快でやるときはやるパパを書いてみましたw

続きがあるんですけど、相変わらずのドタバタなんで、せっかくのテーマがぶち壊しになってしまうのでまた後日にw
253名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 22:22:28 ID:HKRvR+U4
キタ━━(゚∀゚)━━!!!!!!

乙!
254名無しさん@ピンキー:2005/03/30(水) 23:40:25 ID:RswQE/L/
GJ

今回も素晴らしかったよ
255at the time:2005/03/31(木) 00:32:25 ID:E0wzHM9p
エロなし、シリアス、SSというより本編補完もの。
終盤のネタバレにつき紫苑ルート未クリアな人は飛ばすが吉。


「…卒業まで残り二ヶ月ですか。早いものですね」
生徒会室を出た私は、夕暮れに染まる廊下で独り言ちた。
「生徒会も葉子さん達に安心して任せられそうです。…少しだけ寂しい気もしますけど」
何気なしに窓の外を見てみると、屋上に人影を見つけた。
「あれは……紫苑さま?」
間違いない、あの遠目にも分かる長身と美しい黒髪は紫苑さまのものだ。
退院されたとは言え、病み上がりの身にこの寒気は毒のはず。
そう思った私は屋上へと足を向けた。

「…あら?この声は…紫苑さまと、お姉さま?」
屋上へと通じる扉の向こうから、微かに声が聞こえる。
『まあ、ご自分でお解りになっていらっしゃらないなんて……変な人ですね、瑞穂さんは』
『す、すみません……』
「…ふふ、お姉さまったら」
でも紫苑さまの言いたいことは解る。
瑞穂さんは本当に変な人だ。
周りの人に否応無しに影響を与えてしまう人。
おかげで、私もいろいろなことを知ることが出来た。
紫苑さまとはまた違ったタイプですが、まさに理想のエルダーと云えるでしょう。
…私も、あの人には感謝の念だけでは表せない好意を抱いていますから。
256at the time:2005/03/31(木) 00:33:12 ID:E0wzHM9p
……だからこそ、次の紫苑さまの言葉が理解できなかった。
『私、あなたとお友達になれて……本当に、よかったですわ……あなたが男だと云うこと、秘密にしておいて本当によかった』
「……え?」
オトコ?…男?瑞穂さんが?
……そんな莫迦な。紫苑さまの冗談に決まっている。
私も最近知ったが、あの方は結構その手の悪ふざけが好きな方ですから。
…でも、瑞穂さんは笑い飛ばしも否定もしない。
二人の間に流れる空気も真剣そのものだ。

『やめて下さい…………っ!』
呆然としていると、急に瑞穂さんの気配が変わった。
これは…困惑?いえ、恐怖?
『やめて下さいよ…紫苑さん……だって、まだ。二ヶ月以上あるんですよ……?』
…まるで小さな子供が泣いているような声。
『病気は関係ありません。でも、そう云う約束なのです……今はどうか聞かないでおいて下さい。私は、私の下らない事情なんかの為に、あなたに変わって欲しくはないのです』
『紫苑……さん……』
…そう、紫苑さまはあの忌まわしい男の所有物となってしまう。
ただ名家とやらの称号を手に入れるためだけの道具として。
それは、おそらく政略結婚の道具として飼われている籠の鳥の私よりもなお深い暗闇に違いない。
…今までは何とか先延ばしに出来たが、名声が欲しい父や紫苑さまの身体を狙う兄はこの機を逃すまい。
今度倒れてしまえば結婚式どころではなくなる…などと云いながら内外から圧力を掛け、下手をすれば卒業と同時に話を進めようとするだろう。
資金援助という名目の金の鎖で幾重にも縛られた今の十条家に、それを跳ね除ける力があるとは思えない…。
257at the time:2005/03/31(木) 00:34:05 ID:E0wzHM9p
『帰りましょう、紫苑さん……。病み上がりなんだから、身体に障りますよ?』
そんな暗澹とした思考に沈んでいると、そんな声が聞こえてきた。
…いけない、見つかってしまう。
咄嗟にそう思った私は、足音を殺して階段を駆け下り、近くの教室へ身を隠した。

…お互い口を開かず、手を繋いだまま黙って曲がり角の奥へと消えていく紫苑さまと瑞穂さん。
それを見届けた私は、お二人と入れ替わるように屋上へ足を踏み入れた。
……身を切るような寒風が私の身体を通り過ぎていく。
そのおかげで頭が冷えたのか、少しは今の話について考えることが出来るようになった。

…おそらく、瑞穂さんが男だという話は真実だ。
確証はないが確信できる。
ならば、何故この恵泉に編入できたのか?
いくらなんでも書類の偽造くらいでは誤魔化せないだろう。
ということは、この学院に対し小さくない影響力を持つ存在が背後にいるはずだ。
「…調べてみる必要がありますわね」
今までに瑞穂さんから聞いた話を思い出す。
恐らく正体がばれぬよう虚偽も入っているとは思うが、それでも手がかりには変わりない。
「…そう云えば、お母さまがエルダーだったと仰っていましたね」
普段の振る舞いはともかく、母の思い出に触れることが出来たと喜んでいたあの顔まで演技ではないだろう。
確か図書館に卒業生名簿や名士録があったはず。
もしかすると気の遠くなるような作業かもしれない、空振りに終わる可能性もある。
それでも私は躊躇いを切り捨て、ゆっくりと歩き始めた…。
2583-206:2005/03/31(木) 00:38:48 ID:E0wzHM9p
以上。
一応続きのプロットもありますが、書くかどうかは未定です。
うまくまとまれば投下します。
259初代スレの45:2005/03/31(木) 01:12:13 ID:khtsX8Z3
>>258
乙です。
確かにあのあたり、気になるところですよね。
是非続きをお願いします。

>>253
>>254
感想どうもです。
続きはあとちょっとで出来るんですが・・・オチが弱い・・・。
明日にでも投下できればいいんですが。
260名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 10:41:21 ID:zGEgMEFQ
ところで、まとめサイト止まってる?
261名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 10:42:48 ID:FA/RTnzn
みたいね
262名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 11:24:48 ID:KEPDOEhm
止まってるっていうかググってもHITしなくなってる。
一応更新自体はしてるみたいだよ
263初代550:2005/03/31(木) 11:51:22 ID:fSKSXhlV
>>262
もしかして、アドレス変わった?
264名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 12:24:47 ID:KEPDOEhm
>>263
 いや、他のところからリンク辿ると行けるし、前にgoogleの巡回(?)中に
更新作業してて検索順位が下がったって書いてあったから、それの影響じゃな
いかな?
265名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 12:28:06 ID:KEPDOEhm
連投スマソ
>>263
試しにyahooで「処女はお姉さまに恋してる」と検索してみたら2番目にHITした。
266名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 12:32:08 ID:ds56yIWa
>>260
まとめサイト。更新されてますよ。
雑記だったかに、googleに掛からなくなったとか書いてあったので
その影響かと思うのですが
>>263
アドレスはもとのままです。一応、ブックマークしてあるんで
267初代550:2005/03/31(木) 12:36:08 ID:fSKSXhlV
こんなページがあったんだ・・・知らなかった
更新が止まってる云々はSS保管庫の方の話じゃない?
268図書委員:2005/03/31(木) 13:53:12 ID:s3EZfOvO
4月に持ち越せない仕事が合って忙しかった
明日から更新します
269名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 13:58:53 ID:ySSk09lI
図書委員様お疲れです。
くれぐれも無理はなさらぬように。
270名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 15:02:59 ID:ds56yIWa
(´-`).。oO(ねたが、おりてきてくれない)
>>258
出来ることなら、続きを希望したいです。
271test:2005/03/31(木) 15:22:01 ID:3cuvNQWL
 書き落としたネタがまとまらないので、別のネタ投下してみるtest

おボク様 あなざぁ 『百合と薔薇の詩』

 舞台正面、寝ている瑞穂、貴子が近づいて行き、ムッとした顔で起こそうとする。その
手をとってキスする瑞穂。
貴子「瑞穂、一体何を?!」
瑞穂「君はこういうことを期待していたんだろ、貴子」
貴子「不潔な」
瑞穂「男同士のキスは嫌いかい、このキスはただにしておいてやるよ、次から僕を起こす
時には5ドル用意しておくか、忍び足なんてやめるんだな!」
 走り去る瑞穂、替わりに君江と葉子が登場。
君江「貴子、気にするなよ。瑞穂は不良だからな。こないだは温室で先生とキスしている
ところを見たよ」
葉子「まあ、この寄宿舎学校には女がいないからな、女の子より綺麗な瑞穂の口付けを5
ドルで買うやつがいても不思議ないよ」
貴子「知るか、いつも瑞穂の奴、俺をからかいやがって。奴が真面目に授業に出てくるな
ら5ドル払ったっていいぜ」
君江「ああ、俺たちも急がないと授業に遅れるよ」

  続く
272test:2005/03/31(木) 15:23:24 ID:3cuvNQWL
 暗転。教室。授業を受ける貴子たち。
 教室に入ってくる瑞穂。紫苑、教壇から瑞穂をにらむが、何も言わない。
 瑞穂、貴子の隣の席の君江の耳元に顔を寄せて囁く。
瑞穂「僕と席替わってくれるかな」
 君江、真っ赤になって立ち上がり、後ろへ下がる。そのまま座って瑞穂、貴子を面白そ
うに眺める。
瑞穂「普段真面目そうな奴は、授業中も真面目そうだな」
貴子「真面目に授業を受ける気はないのかい」
瑞穂「5ドルくれるなら真面目にしなきゃな、今夜取立てに行くから窓開けておけ」
 瑞穂、真面目そうな顔で前を見る。
 貴子、声をかけそびれる。

 暗転。寮。
貴子「僕もどうかしている。あんな奴のいうことを気にして窓を開けて待ってるなんて。
しかも、僕の部屋は3階じゃないか。絶対来ない」
 瑞穂、窓から登場。貴子、慌てて手を貸す。
貴子「君、どうやって窓から」
瑞穂「お前にとっては、窓の外の枝振りのいい大木も意味がないのか。恋人たちの逢瀬に
も使えるだろうに、宝の持ち腐れだ。」
貴子「君には呆れたよ、わざわざ5ドルのためにこんな……」
 瑞穂、貴子を抱き寄せる。
瑞穂「そうだな5ドルより良い物で支払って貰いたいな」
 瑞穂そのまま貴子をベッドへ。

  続く
273test:2005/03/31(木) 15:24:23 ID:3cuvNQWL
貴子「瑞穂?!」
瑞穂「おっと、騒がない方がいい。人が来たら真面目な貴子と不良の瑞穂が抱き合ってい
るのを見てどう思うかな」
 瑞穂、貴子の股間に手を伸ばし、微笑む。
瑞穂「こっちの君は正直だ」
 貴子、真っ赤になって立ち上がり叫ぶ。
貴子「やめろ!!」
 物音、ドアをあけて入ってくる紫苑。
紫苑「何をやってるんだ」
 赤くなって答えられない貴子。
瑞穂「真面目人間をからかって遊んでました」
紫苑「お前……」
 そんな紫苑に抱きつかんばかりに擦り寄る瑞穂。紫苑、思わず抱き締めようとして逃げ
られる。

 君江はそこまで読んで、台本を机の上に置いた。
「駄目です。この台本は無理です」

  続く
274test:2005/03/31(木) 15:25:04 ID:3cuvNQWL
 不満顔の演劇部長。
「自信作なのに。受けるのに」
 確かに君江も見てみたいというか後ろ髪を引かれるのだけど、生徒会の劇でこんなもの
をやるなんて言ったら、生徒会長に殺されてしまう。よく生徒会長のヒステリーの対象に
なる君江には、その怖さが解かっていた。
「はあ、しょうがないですね。それでは台本の書き下ろしは時間的にもう無理ですから、
シェイクスピアでいいですか?」
「はい、それなら」
 あっさり、そう答えてしまう君江。
「ええと、ロミオとジュリエットなら人数も合うか。キャスティングはロミオが瑞穂さん
で…」
 台本の頭に書き込んでいく演劇部長。
「はい、主要なキャスティングもいま決めたので、書かれていない役者さんは生徒会で決
めて、人数分コピーして配布してください」
 そう言って台本を渡す。その内容をチェックしないで、君江は後でまた生徒会長のヒス
テリーの対象になるのだが。ここは圭さんの作戦勝ちだった。

  終了
275名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 16:00:48 ID:cMGg521G
おお〜〜〜〜
凄い面白かったですよ
276名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 16:04:56 ID:bek3A530
イイ!味してるね。
277初代550:2005/03/31(木) 21:24:55 ID:fSKSXhlV
貴子視点 海に行こう!に入れると前後のつながりがおかしくなるので入れなかった海ネタ。海に行こう!の番外編のような、全く無関係なような・・・一子は一応いるけど。

タイトル:海といえば
ビーチパラソルの下、遠くではしゃいでいるメンバーの声を聞きながら、私はサングラス越しの視線を文庫本に落とす。
耳をくすぐる潮騒の音と頬をなでる潮風が心地良い。
「貴子お姉さまは泳がないのですか?」
ビーチパラソルから少し離れた所で甲羅干しをしている由佳里さんが、不思議そうに視線をこちらに向けた。
「ええ、気分ではありませんから。由佳里さんも泳がないのですか?」
氷をたっぷりと入れた冷たいジュースに口をつける。
「はい。いつも半袖のトレーニングウェアで練習していますから、この辺が目立っちゃって・・・」
彼女はそう言って、二の腕に出来た境目を指差した。
「陸上部の部長さんは大変ですわね」
「はい、そういうわけで、今日はたっぷりと焼いて、土方焼けを消すんです」
嬉しそうにそう言うと、彼女は真夏のまぶしい太陽の下に体を投げ出した。

「あれ、貴子、もしかして全然泳いでないの?」
浜辺で走り回っていたまりやさんが帰ってきて、パラソルの下においてあったクーラーボックスから缶ジュースを手に取った。
「ええ、今日はのんびりとしたい気分なので・・・」
ぐびぐびと缶ジュースを飲みながら、不信そうな表情で私を見つめる。
「まあ、あんたが変わってるのはいつものことね」
大きなお世話です。
「折角海に来てるのですから、貴子さんも泳げばよろしいのに・・・」
紫苑さままでもが帰ってきて、ジュースを手に取った。
「もしかして、月の物なのですか?」
げほっ・・・奏さんの言葉に思わずジュースをむせてしまった。
「それは終わりました・・・」

(1/2)
278初代550:2005/03/31(木) 21:26:26 ID:fSKSXhlV
一応、男性もいるんですから、そういうことは言わないで欲しい・・・と、その一応男性の瑞穂さんは帰ってきてないのですか?
「お姉さまなら、一子さんと一緒に別荘にお弁当を取りに行ったのですよ」
一子さんがついて行ってなんの役に立つのか、非常に疑問なんですけど・・・一人で行くよりかはマシと言うものでしょうか?
そんな話をしながら、まりやさんがいつの間にか寝てしまっている由佳里さんの隣に腰を下ろした。その瞬間・・・
「うひゃっ!?」
間の抜けた声を上げ、由佳里さんが飛び起ききょろきょろと周りを見回す。
「なに!?えっ、あっ!?・・・まりやお姉さま!」
そんな由佳里さんの顔を笑いながら見ているまりやさんの手には、凍る直前にまで冷やされた缶ジュースが握られている。
「由佳里もこんな所で寝てないで、ちょっとは泳いだら?」
「私は良いんです!今日は肌を焼く事に決めてるんですから。泳いだらオイルが流れちゃいます!」
気持ちよく寝ていたところを起こされ、由佳里さんは少し機嫌が悪そうだ。
紫苑さまはそんな由佳里さんとまりやさんの話を聞き、そして、私と由佳里さんのいる場所を見比べたてこういった。
「あっ・・・もしかして、貴子さん、肌を焼くのが嫌なのですか?」
ビクン!私の肩が1cmほど跳ね上がる。一同の視線がテーブルの隅にこっそりと置かれたサンスクリーンに集中する。
ちなみにこれは、普通に市販されているやつの中で一番強力な部類に入る代物。
「べっべつにそう言う訳ではありませんわ」
上ずった声でそう言えば、「はい、私は肌を焼きたくないんです」と言ってるのと同じだ。
「貴子、あんた海に何しに来たわけ?」
まりやさんが呆れた声を上げ、それに他のメンバーが同意をする。
はぁ・・・仕方ありませんわね・・・言い難い理由を小さな声で言う。
それを聞いたメンバーは、なるほど、と大きく頷き、そして、昼食後・・・

「あの・・・皆さん、泳がないんですか?」
まぶしい光の下で遊んでいる瑞穂さんが、不思議そうな顔をして、ビーチパラソルの下でくつろぐ一子さんと由佳里さんを除いたメンバーに声をかけた。
口々に「もう疲れたから」などと言い訳をする4人。全員の視線は瑞穂さんの肌に集中している。

『あの白さは女への挑戦か?嫌味か?』
(また、2行だけ目測を誤った。後1回続きます)
279初代550:2005/03/31(木) 21:27:06 ID:fSKSXhlV
「どうせ、私は色黒ですよ・・・」
手遅れな約一名は開き直って、土方焼けを消しながら砂浜にのの字を書いていた。
280初代550:2005/03/31(木) 21:29:29 ID:fSKSXhlV
と、一応、ずいぶん前に予告してた使えなかった海に行こう!で思いついてたけど、使えなかった小ねたを投下
なんか知らんけど、やけに難産だったなぁ・・・このネタ。小ねたの癖に、オチが全然思いつかなかった
しかし、最近、目測があわないなぁ・・・行数で行くと、容量オーバーになっちゃう
2813スレの226:2005/03/31(木) 22:58:58 ID:i8ggX+Pd
>>3-206
GJ。続きもお願いしますよ。これはこれでまとまってますけど。
なんかもう一波乱ありそうな気がするので。

>>test氏
ワロタ。なんか大昔のOVAにこういう薔薇な展開のが有ったのを思い出した。
ていうか、台本の続きを激しくキボンヌ。

>>初代550氏
番外編、乙です。なるほど、そういうことなのかと。恐らく瑞穂タンは焼いても焼けない
タイプなんだろうな・・・(色が付かないか、付いてもあっという間に抜ける)。
そりゃ、女は別な方が妬ける罠(笑)
282名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 23:45:31 ID:ds56yIWa
>>280

瑞穂ちゃん。それは、女性陣たちの反感買いまくりでしょ。
色白で肌理の細かいところに、日焼けしにくいなんて・・・

まりやとか、由佳里ちゃんは、夜中に、わら人形に五寸釘打ちそうな気が(^^;
283at the time:皇紀2665/04/01(金) 00:24:00 ID:znEU5nR/
>255-257の続き。
シリアス、エロなし、貴子視点。
激しくネタバレなので紫苑ルート未クリアの人は飛ばすが吉。


時間が遅いためか、図書館には人の気配がなかった。
…あまり知られたくない調べ物なだけに好都合だ。
資料になりそうなものを揃えた私は、人目を避けるべく図書館の奥にある個室へと閉じこもった。

まずは宮小路という姓から当たってみよう。
珍しい姓だから、もし母親がエルダーだったという話が本当ならばすぐに見つかるはず。
「…もっとも、いくらなんでもそれはないと思いますが…」
身元を隠すのならば、普通本名とは関係のない姓をでっち上げるはず。
「代々のエルダーの方を、卒業アルバムの顔写真と照合するしかないでしょうね…」
瑞穂さんが母親似とは限りませんが、あの女性と見紛う容姿からすれば可能性も低くはなさそうだ。

「…って何でこんなにあっさり見つかるんですか!」
調査開始から僅か5分。
思わず大声で叫んでしまった私は慌てて口を噤む。
…よかった、誰も聞きとがめなかったようだ。
改めて22年前の卒業者名簿に目を落とす。
『第五十代エルダーシスター 宮小路幸穂』
…一度深呼吸して気を落ち着ける。
もしかすると名前がよく似ているだけの別人かもしれない。
念の為、宮小路幸穂さんの写真を探す。
……似ているどころか生き写しだった。
「…いくらなんでも無防備すぎますわよ、瑞穂さん」
なんだか頭が痛くなってきた。
普通は素性を知られないよう細心の注意を払うのでは?
まったく、暴き立てようとしている私に心配されてどうするんですか。
嘘の吐けないあの方らしいというか何というか…。
思わず苦笑いがこぼれた。
284at the time:皇紀2665/04/01(金) 00:26:29 ID:znEU5nR/
…そろそろ下校時刻だ。
もうここで調べられることはないだろう。
いくら生徒会長であろうと卒業生の消息についての資料を閲覧できるはずがないし、仮にできるとしても許可を請求すれば不審に思われるだけだ。
後は別の方面から類推するしかない。
そう判断した私は鞄を抱え帰路へとついた。

いつものように美味ではあるが味気ない夕食を終えた私は、勉強する気にもなれずベッドへと倒れこんだ。
無駄に豪奢な天井を見上げながら溜息を吐き、頭の中を整理する。
…あの宮小路幸穂という方が瑞穂さんの母上であることは間違いない。
だが、瑞穂さん自身は宮小路家の人間ではないだろう。
生徒会長の職を拝命した際、出来る限り学院のことを知っておきたいと学院史を紐解いたことがあったが、その中で宮小路という家名を見た記憶はない。
いくら元エルダーとは言え単なる一卒業生が学院に対する影響力を行使できるとは考えにくい以上、父方の家の権力によるものだと考えるのが妥当だ。
それも、性別を偽っての編入を認めるなどとは、学院はその家に対しよっぽど多大な恩義を蒙っているに違いない。
となると、まず筆頭に上げられるのは創業者の鏑木家ですが…。
「まさか…ね」
確かにそれならば条件としては申し分ない。
まりやさんと幼馴染だという話だが、私同様に幼等部の頃から恵泉にいた彼女も男の子と知り合うような機会は数少なかったはず。
ならば、従姉妹か何かの血縁関係だからこそと考えた方が自然な気がする。
ああ見えてもまりやさんは鏑木家の親戚筋とのこと、ありえない話ではないだろう。
だが…仮にそうだとして、天敵と言ってもいい厳島家の娘である私に対し、ああも友好的に接することが出来るだろうか?
当時の私とまりやさんとの敵対関係からすれば、まりやさんが瑞穂さんに私のことをどう吹き込んでいたのかは想像に難くない。
しかも私自身当初は敵愾心を隠そうともせず、冷血女の通り名が相応しいと云われても仕方がない態度だったというのにだ。
…少なくとも私が同じ立場だったら、良くて無視、あるいは排斥しようとするだろう。
「…或いはまりやさんの母方の親戚筋で、御門家を通じて鏑木の口添えを頼んだという可能性もありますね」
それならば、厳島家に対する印象も比較的中立に近くなるだろう。
推理としては悪くないと思うが…。
285at the time:皇紀2665/04/01(金) 00:28:28 ID:znEU5nR/
「…こうして想像に想像を重ねているだけでは仕方ありませんか」
鏑木一族に関する資料を調べよう。
父は鏑木を敵視している為その情報収集にも余念がなく、鏑木一族についてはそれこそ100年以上前に分かれたような遠縁の素行に至るまで詳しく調べ上げている。
その中に宮小路幸穂の名があるかどうかを調べればいいだけだ。
他に有力な推論が思い浮かばない以上、駄目元でも当たってみる価値はある。
「…今はあなたに感謝しておきます、お父さま」
私は父の書庫へと向かった。

「……嘘」
危うく取り落としかけたファイルを抱え直し、もう一度確かめる。
『幸穂(旧姓:宮小路)・故人』
その文字はあっけなく見つかった。
何せ家系図の一枚目に書いてあったのだ。
鏑木本家現当主鏑木慶行が正妻、嫡子鏑木瑞穂の母…と。
あの瑞穂さんが…鏑木本家の御曹司?
明治より続く名家であり、政財界に根強い影響力を持ち、そして厳島グループと対立しているあの鏑木財閥の後継者?
俄かには信じがたい。いや、信じられない。
ファイルを捲り、写真などが添付された個人データを調べる。
…間違いない、男の姿をしているが面影がある。
震える手でファイルを元の場所に戻した私は、静かに部屋を出ると平静を装いながら自室へと戻った。

……倒れ込むようにベッドに横たわり、枕に顔を埋める。
私は今までになく動揺している、それは間違いない。
たった半日で今まで見ていた世界がひっくり返ってしまったのだ、驚かない方がどうかしている。
でも、そのこと自体で動揺しているわけではないようだ。
あの話を事実として受け止め、すぐさま善後策の検討を始めた冷静な自分がいたのがその証拠だ。
思えば屋上で紫苑さまたちの話を立ち聞きしてしまった時も、不思議と男だということに対する嫌悪感や今まで騙されていたことに対する憤りは生まれなかった。
それどころか、心の奥底では歓喜や安堵に近い感情が湧いてきているような気もする。
驚くのは分かる。しかし何故嬉しい?
私は、その得体の知れない感情に困惑し、恐怖しているからこそ動揺しているのではないだろうか?
286at the time:皇紀2665/04/01(金) 00:29:13 ID:znEU5nR/
……行き詰まった思考で答えの出ない問題を考えても仕方ない。
明日になれば気持ちの整理もつくだろう。
もう夜も遅い。私は無理矢理寝てしまうことにした。
あまり薬には頼りたくないが、どうしても駄目ならば睡眠導入剤を使うことにしよう…。

…翌日から、私は紫苑さまや瑞穂さんに近寄らないよう努めていた。
紫苑さまはその鋭さで私の異常を悟ってしまうだろうし、瑞穂さんと顔を合わせてしまった場合平静を保てる自信がなかったからだ。
千々に乱れた心を繕う術もわからぬまま、三日経ったある日。
私は、紫苑さまが再び倒れ入院したという知らせを聞いた……。
2873-206:皇紀2665/04/01(金) 00:34:20 ID:znEU5nR/
というわけで続きます。
プロットでは瑞穂ちゃんが十条家に行った翌日まで話が続きますが、流石に長すぎる気がしないでもない。
とりあえず屋上への呼び出しまではきっちり観ることが出来たので、そこまでは明日にでも書くつもりです。
288名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 00:51:00 ID:740MYXU8
>>287
GJです!!
紫苑シナリオの貴子さんが一番好きなので応援します!
289初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:35:05 ID:bonqy6Gg
再び盛り上がってきて、嬉しい限りです。みなさんGJです。

>>287
実に素晴らしいです。いやぁ、私も以前貴子さんが瑞穂ちゃんの経歴を調べるところを書いたりしましたが・・・
あまりのLVの違いにちょっと凹み気味・・・orz



ま、凹んでいてもしょうがないので、昨日の続きを投下します。

>>244-251 の『start line』の後日談・・・というより直後のお話です。
なので読まれていない方は『start line』を読まれてからのほうがいいかもです。
290初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:36:04 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.1

・・・
・・・
遅めの朝食をとった後。
「ねぇ、まりや。今日はヒマ?」
「今日?んと・・・ごめん、ちょっと野暮用があるんだ。あたしも必要な用事?」
「ううん。急だし、仕方ないよね。いいよ、まりやはまりやの用事を優先させて。」
「ん・・・わかった。」

・・・
「んじゃ、いってきま〜す。夕方には帰ってくるから。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
「わかってますって。プロポーズされた次の日に死にたくないし。」
まりやはその野暮用とかのため、出かけていった。

「さて、僕も準備しないと。まりやも一緒のほうがいいんだろうけれど・・・。」
でも、これまでまりやを随分待たせちゃったし、ね。それにたまにはまりやを驚かせないと。
291初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:36:51 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.2

―――ちょっと後。

両親が一度会いに帰ってきて〜とうるさいので、あたしは、まあたまには親孝行しないとって思って、実家に帰ってきた。
「ただいま〜」
玄関の扉を開けて入ると、いきなり両親が突撃してきた。
「まりやおかえり〜!!」
「まりや、父さんは寂しかったぞ〜!よく帰ってきた〜!!」
「うわぁっ!ちょ、ちょっと、抱きつかないでっ!」
「そんなつれないこというな〜!お前が居ない間、儂らがどれだけ心配していたか、わからんのか〜!」
「そうよ、お父さんの云う通りよ。まりや〜!」
「や〜め〜て〜っ!ヒゲがジョリジョリする〜っ!離れて〜っ!」
ひ〜、瑞穂ちゃん助けて〜っ!

「はぁ・・・はぁ・・・」
結局、離してもらえたのは15分後だった。
「ささ、玄関で立ち話もなんだから、あがってあがって。」
「まったく、もう・・・」
あたしのコトを愛してくれてるのは嬉しいんだけど、過激すぎよ・・・
292初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:37:50 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.3

「そうそう。今日はね、まりやが帰ってくるっていうから、プレゼントを用意したのよ。」
「そうなの?」
「ああ。リビングに用意しておいた。喜んでくれると嬉しいんだが・・・」

がちゃり。リビングルームのドアを開ける。

「・・・な・・・」
そこには、大量の、フリフリのついたドレスが陳列されていた。
「なんじゃこりゃーーーー!!」
「あら、まりやはいまデザイナーの仕事してるそうじゃない。だからこういうのも参考になるかな〜って。」
「いや、だからって・・・っていうかなんでいきなりあたしの服脱がそうとするの、お母さん!」
「だって〜、まりやのために特注で作ってもらっただもん・・・ねぇ、着てみて〜?」
「いやっ!あたしには絶対こんなドレス似合わないから!
 っていうかあたしがデザイナーやってるって知ってるのに他人に注文しないでよ!」
「そんなこと云わないの〜。まりやは可愛いんだから、似合うわよ〜?
 それに、まりやにお願いしたって作ってくれないでしょ〜?」
「そりゃそうだけどって・・・やめてってば!」
どんどん脱がされ、しまいには下着だけになってしまった・・・
「ほらほら、着て着て!」
「まりや・・・立派になったの・・・」
「あっ!お父さんっ、見るな〜〜〜!」
ガゴッ!
「ぶがっ・・・!痛い〜、儂はもうだめだ〜!。冥土の土産にそのドレスを着てくれ〜・・・」
「そうよ、はやく着てみて。ほらほら〜〜!」



ひ〜、こいつら、やっぱりあたしの親だ〜!
293初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:39:53 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.4

・・・
・・・
「まりや、可愛い〜」
「絶対、似合ってない・・・それにもうこういうの着る歳じゃないって・・・」
結局、黒いゴスロリを着せられてしまった・・・
「何が悲しくて、デザイナーが似合ってもいない他人がデザインした服を着なきゃならないのよ・・・」
「まぁまぁ。親孝行だと思って。」
「はぁ・・・」
文句を云いながら、あたしはお父さんの肩を揉む。
「随分こってるわね・・・」
「儂ももうすぐ老人に分類される年だしな。あ゛あ゛〜、気持ちいいぞ。お母さんだと力が足りんでな、物足りなかったんだ。」
あんまり意識していなかったけど・・・ふたりとももう結構歳なんだよね・・・。
「ごめんね、お父さん、お母さん。あたし・・・ろくに親孝行もしないで・・・。」
「なんだ、急に。何をいっているか。儂らはな、お前が幸せならそれが一番なんだ。」
「そうよ。まりやが幸せなら、それが一番の親孝行なんだから。」
「・・・うん・・・」
そっか・・・。あたしも子供ができたらそんな風に思うのかな・・・。
幸せなら、それが親孝行か・・・。じゃ、瑞穂ちゃんとのコトも、親孝行かな。
「ね、お父さん、お母さん。」
「ん?」
「なぁに、まりや」
「あたしね、結婚するんだ。」
「ほう。そうかそうか。」
「そうなんだ、よかったわね。」

「「「・・・」」」

「な、なんですってーー!」
「な、なんだってーーー!ぐぇっ!」
294初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:40:57 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.5

「び、びっくりした。いきなり叫ばないでよ・・・お父さん、大丈夫?」
急に振り返ったものだから、お父さんは腰を抑えながらうめいている。
「ちょ、ちょっとまりや、けっこ、結婚ってどういうことよ!」
「そ、そうだぞ。ぐ・・・お、おま、お前どこの誰と結婚するっていうんだっ!?」
「年収は!?経歴は!?ご両親は!?容姿は!?性格は!?馴れ初めは!?」
「儂らの大切な大切な目に入れても痛くないまりやだ。そこらの馬の骨にはやらんぞっ!ぐ・・・ぉ・・・こ、腰が・・・」
「ちょっとちょっと・・・あたしが幸せならいいんじゃないの?」
「ま、まぁ・・・そうだけど・・・でもでもっ!」
「まったくもう・・・。それじゃ教えてあげようか?あたしの彼氏は、とあるファッション系会社の社長さん。
 某有名大学を首席で卒業。お義父様は大財閥の総裁。容姿はあたしより可愛い女の敵。
 謙虚で優しくて根はしっかりしてる。馴れ初めはめちゃくちゃ昔、お父さんもお母さんも知ってる人。」
「・・・」
「・・・それって・・・」
「そ、瑞穂ちゃん。」
「・・・」
「・・・」
「文句、ある?」
「・・・なぁんだ、瑞穂ちゃんか、って・・・。お父さん、女の子同士で結婚できましたっけ?」
「・・・どうだったかな・・・。今の法律じゃあできないんじゃなかったかな。」
「・・・」
「どうしましょう。」
「しかし女の子同士で結婚するのでは・・・非生産的だなぁ・・・。確かに瑞穂ちゃんはいい子だが・・・。」
「・・・ちょっと・・・。瑞穂ちゃんはオトコのコよ・・・。」
「・・・そ、そうだったかしら?」
「はぁ。それ聞いたら瑞穂ちゃんショックで凹んじゃうわよ。」
「は、はは・・・。じょ。冗談よ、冗談。そ、そうね。瑞穂ちゃんなら安心ね。」
「そ、そうだ、冗談だ。うむ。瑞穂ちゃんならまりやを任せられるな。」
「・・・ホンキだったわね、確実に。でも、まあいいわ。認めてもらえたし。」
295初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:41:45 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.6

・・・
・・・
ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
「誰か来たみたいね。まりや、出て?」
「・・・この格好で・・・?」
「もちろん。まりやの可愛い姿、みんなに見てもらいたいもの」
「・・・はぁ・・・。どうせふたりとも出るつもりないんでしょ。しょうがない・・・」

「は〜い」
応えながら、あたしは玄関の扉を開けた。すると、そこには瑞穂ちゃんが居た。
「あれ?瑞穂ちゃん?どったの?」
「まりや・・・なんでいるの?それにそのカッコは何?」
瑞穂ちゃんがヘンな顔してる・・・うぅ・・・似合わないよね、やっぱり・・・
「ん〜?久しぶりに親孝行を、ね。格好については、聞かないで・・・。」

・・・
・・・
296初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:43:25 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.7

―――ちょっと前。
「なんて云うか・・・まりやのご両親に会うのって久しぶりだな・・・」

僕はまりやの実家に向かった。僕の用事。まりやのご両親にまりやとの結婚を許してもらうこと。
まりやの家とは遠い親戚にあたり、昔から家族ぐるみのお付き合いをしている。
だから当然、まりやのご両親も僕のことをよく知っている。
僕が小さいときは随分お世話になっていたし。・・・まさかダメって言われるとは思わないけど・・・でも、かえって緊張するなぁ・・・

呼び鈴を鳴らす。
「は〜い」
・・・あれ?
「あれ?瑞穂ちゃん?どったの?」
出てきたのは、まりやだった。
「まりや・・・なんでいるの?それにそのカッコは何?」
まりやは、黒いゴスロリの服を着ていた。・・・似合わないけど、なんかそのギャップがいいかも・・・
「ん〜?久しぶりに親孝行を、ね。格好については、聞かないで・・・。」

「そういう瑞穂ちゃんは・・・そっか、なるほどなるほど。用事って、そういうことね〜。」
「う、うん。たぶんまりやが言ってること、だと思う。」
まりやが居るのは好都合かもしれない。やっぱりご両親へのご挨拶だから本人も居たほうがいいし。
「お父さん、お母さん!あたしのダーリン、瑞穂ちゃんが来たよ〜!」
・・・ちょっとまって、まりや。今、なんて云った?
どたどた、という音を上げながら、まりやのご両親が現れた。
「瑞穂ちゃん、久しぶり〜。うちのまりや貰ってくれるんだって?」
「いやぁ〜、どこぞの馬の骨に取られちゃたまんない、と常々心配していたんだが・・・瑞穂ちゃんなら安心だ!
 娘を、よろしく頼む!」
「は、はい。もちろんです。」
・・・いつのまにやら、話が通っていたらしい。その、許してもらえるどころか喜んでくれるのは嬉しいんだけど・・・

・・・滅多にない男としての見せ場だったのに・・・
297初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:44:14 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.8

―――夕方。

4人でいろいろお話をした。恵泉での話、まりやが留学していた時の話、そして今の仕事の話。
こんな風に過去を振り返って話をすると、まりやとの絆がますます深くなっていく、そんな気がした。

「さて、そろそろ帰ろっか、瑞穂ちゃん。」
「そうだね、もう夜になっちゃうし。それでは、お義父様、お義母様、お邪魔しました。まりやのことは、僕に任せてください。」
「やぁねえ、瑞穂ちゃんったら。そんな急に畏まったりしないでよ。」
「そうだよ、瑞穂ちゃん。またいつでも遊びに来なさい。楽しみにしてるから。」
「はい、ありがとうございます。」
「さ、着替えないと・・・。あれ・・・あたしの服は・・・?」
「まりや、ダメよ。今日はその格好で居るの。」
「ちょ、ちょっと、お母さんっ!こ、こんな似合わない服で街中歩けっていうの!?」
「似合ってるわよぉ〜まりや。」
「似合ってるぞ、まりや。なぁ、瑞穂ちゃん。」
「え・・・そ、そうですね・・・」
「・・・ほら、瑞穂ちゃんは微妙だって云ってるよ?」
「ふふ、ううん、似合ってるよ、まりや。可愛いよ?」
「な・・・っ!み、瑞穂ちゃん!さては普段の仕返しかっ!?」
「そんなことはないよ。だって、まりやはどんな格好をしてたって可愛いんだから。」
「あらあらあらあら。おあついわね、瑞穂ちゃん」
「ええ。僕はまりやの魅力に蕩けちゃってますから。・・・あれ?」
ふと、まりやを見ると、なにやらドレスをあさっている。・・・いやな予感が。
298初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:45:04 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.9

「ふ・・・ふふふふふ・・・ありがとう、瑞穂ちゃん。・・・お礼といってはなんだけど、おそろいのドレスを着て帰ろうね?」
といって、まりやが取り出したのはまりやが着てるゴスロリとは色違いの白いゴスロリだった。
「ま、まさか、それを僕に着ろって・・・?」
僕の問いには答えず、まりやは僕に飛び掛って、僕の服を脱がそうとする。
「わぁ、ま、ちょっとまって!」
「ふふふふふ・・・待たない。瑞穂ちゃんのゴスロリ姿、可愛いんだろうね・・・うふふふふ・・・」
「ま、まりやっ、やめてったら!ちょ・・・」
僕の拒否にもかまわず、まりやはどんどん僕の服を脱がしていく。
「あらまあ。瑞穂ちゃんって体綺麗。ホントにオトコのコ?」
「あいかわらずなんだなあ、ふたりは。この様子じゃ、瑞穂ちゃん尻にしかれるなぁ。」
なんでそんなに能天気なんですか、お義父様にお義母様・・・。

「ほら、瑞穂ちゃん!覚悟を決めて着ろ〜!」
「瑞穂ちゃんの女の子姿って久しぶりね〜。私も是非見てみたいわ〜」
「昔から女の子の格好がよく似合っていたからなぁ。今もそうなのかな?儂も見たいなぁ。」

ま、まりやが3人居るっ!ジェ、ジェットストリー○アタックですか?!この親あってこの娘ありですか?!


・・・
・・・
結局、白いゴスロリを着せられてしまった・・・とほほ。
「うぅ〜」
「まぁ、瑞穂ちゃん可愛い〜!」
「うむ。どこからどう見ても、女の子にしか見えないな。可愛い。」
「さすがあたしの瑞穂ちゃん!こんなに可愛い瑞穂ちゃんが旦那さまなんて、あたしってば幸せ者だね〜」
「可愛いを連呼しないで・・・。凹みますから・・・」
299初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:46:01 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.10

―――帰り道。
ざわざわ。
「うぅ・・・じろじろ見られてる・・・」
「あ、あたりまえじゃない・・・。こんな格好してるんだし・・・。はぁ。ひとりでこんな格好するのいやだったから
 瑞穂ちゃんにも着せたのに、瑞穂ちゃん似合いすぎてるから逆効果じゃない。」
「ま、まりや・・・へこむってば、それ・・・orz」

(ねぇねぇ、見てよあの2人組。可愛い〜)
(背高いわりには随分似合ってるわね。)
(俺、黒いほうが好みだな〜)
(おれは白いほうだな。)
(俺も白だ。ああもうこう、ぎゅ〜っと抱きしめたいよな)

「瑞穂ちゃん人気ねぇ・・・あたしたちが婚約してるって云って、何割の人が信じるのかね、コレ・・・瑞穂ちゃん、女の敵。
「僕はオトコに人気でも嬉しくないよ・・・。っていうか勘弁して、身の毛が・・・うぅ・・・」
「でもまあ、そんな可愛い瑞穂ちゃんを独り占めできるんだからあたしとしてはちょっと嬉しいかも?」

(あらあら。2人とも可愛らしい格好で。不思議なデートですわね。)
(とっても素敵なのですよ〜)
(でも、瑞穂お姉さまはともかくまりやお姉さまはあまり似合っていない気もしますけれど・・・)

「「・・・」」

「ねぇ、まりや。いまどこかで聞いたような声が聞こえなかった・・・?」
「奇遇ね、瑞穂ちゃん。あたしも聞こえた。」

「「・・・」」

「し、紫苑さんっ!?奏ちゃんっ!?」
「ゆ、由佳里?!」
300初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:47:07 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.11

・・・
―――喫茶店に入り。

「それにしても、珍しいわね。紫苑さんと奏ちゃんは孤児院の職員だから一緒に居るのはわかるけど、由佳里も一緒なんて。」
「まりやお姉さま、その言い方なんか傷つきます・・・」
「ああ、ごめんごめん。別に変な意味はないのよ。でも、どうしたの?」
「今日、孤児院のほうでお料理会を開いたのですよ〜。」
「それで、先生役に由佳里ちゃんをお招きしたのです。由佳里ちゃんは有名な料理研究家ですものね。皆さん大喜びでしたわ。」
「し、紫苑お姉さま。は、恥ずかしいですよ・・・」
「そういえば、由佳里ちゃんってお料理のレシピ本を出したんだよね。」
「そうなんですよ。思ったよりも好評で嬉しいんです。」
「実はあたしも買ったんだ。ちょっとは料理も出来るようにならないとって思ってね。わかりやすくて重宝してるわ。」
「ま、まりやお姉さま・・・言ってくだされば差し上げましたのに・・・」
「いいのよ由佳里。そんな変なところで気を使わなくても。姉として、由佳里が活躍をしてくれてるのは嬉しいしね?」

「それで・・・。瑞穂さんにまりやさんはどうしてそんな格好で街中を?」
「・・・あ・・・はは。赤信号ふたりで渡れば怖くないといいますか。」
「付き合わされた僕はいい迷惑ですけれど・・・」
「・・・よくわかりませんが・・・。でも、なにかいいことがあったようですね?」
「「・・・え・・・?」」
「だって、お二人とも、なんだか嬉しそうなオーラが漂っていますもの。」
「あ、あはは〜。まあ、それはもう。ねぇ、瑞穂ちゃん。」
「えっと、うん、そうだね。」
「ね、瑞穂ちゃん。譲ってあげる。」

「ん、こほん。紫苑さん、奏ちゃん、由佳里ちゃん。」
僕はまりやを抱き寄せて、
「僕たち、結婚します。」
301初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:48:10 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.12

「瑞穂お姉さま、まりやお姉さま、おめでとうございます!」
「おめでとうございますなのですよ〜。」
「瑞穂さん、まりやさん。おめでとうございます。」
みんなが満面の笑みを浮かべて祝福してくれる。僕はそれがすごく嬉しかった。それにまりやも・・・。
「みんな・・・ありがとう・・・」
まりやも、涙を浮かべて喜んでいる。
「ありがとうございます、紫苑さん、由佳里ちゃん、奏ちゃん。」
「ふふ。幸せそうで何よりですわ。まりやさんが帰国してから随分経ちますのに、
 そういうお話がなかったので少々心配していたのですが、取り越し苦労だったようですね。」
あ・・・。みんなにも心配されちゃってたんだ・・・。
「ごめんなさい、余計な心配をおかけしていたみたいで・・・。まりやも、ごめんね。」
「瑞穂ちゃん、あたしには謝らなくていいんだってば。瑞穂ちゃんがあたしを大切に想ってくれてることはわかってるんだから。」
「まりや・・・」
僕は、まりやをさらに強く抱き寄せた・・・。
「ふふ。相変わらず、仲がよろしいわね。いつまでも、お幸せにね、お二人とも。」
「「はい、ありがとうございます!」」


「・・・『堀越公方』・・・?」
「由佳里ちゃん、『取り越し苦労』なのですよ。」
302初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:49:06 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.13

「それにしても・・・まさか、そのような姿で婚約会見なさるとは、思ってもみませんでしたわ。」
「え・・・あ・・・」
そうだ、そういえばふたりともゴスロリ姿で・・・
「しかもそんなに寄り添って・・・。お店の皆さんの注目の的になっていますよ?」
「えっ!わぁ!」

(ねぇねぇ、聞いた?結婚するんだって!)
(聞いた聞いた!でも女の子同士で結婚?どういうことなんだろ?)
(お似合いだし、いいんじゃないの?)
(そういう問題・・・?)
(くぁー!あの白い方の子、超好みなのにな〜!なんで女同士でくっつくんだよ〜!)
(でも、白い方って、「僕」って云ってなかったか?ひょっとして白い方って男?)
(バッカ、オトコなわけないじゃん。一人称が「僕」なんて、萌え〜!)

「うぅ・・・寒気が・・・」
「相変わらずですわね、瑞穂さん。恵泉を卒業してからもう6年以上経ちますのに、可愛いらしい女の子のままで。」
「お姉さまはやっぱりお姉さまなのですよ〜」
「私は、実はまだ瑞穂お姉さまが男の方だって、信じきれてなかったりするんですが・・・」
「・・・orz」
「そんなに凹まないでよ、瑞穂ちゃん。」
「そうはいっても・・・」
「あたしは、可愛いところも含めて瑞穂ちゃんの全部が好きなんだから、ね? 瑞穂ちゃん、こっち向いて・・・?」
「え・・・?」
僕は言われるままに、まりやのほうを向いた。
303初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:50:50 ID:bonqy6Gg
『start line afterward』.14

「瑞穂ちゃん・・・ん・・・」
まりやは目を閉じて、唇を僕の唇に会わせてきた・・・
「ん・・・んぅ・・・」
まりやの唇はとても心地よくて、僕も自然と目を閉じてしまった・・・

キャーーーーーー!
ワーーーーーー!!

喫茶店とは思えない、絶叫と云ってもいいような歓声が上がる。
「ま、まりや・・・恥ずかしいよ・・・」
「あはは。卒業式のときのお返し。」
そして、まりやは僕に抱きついてきた。

「あらあら。妬けちゃいますわね。」
「お姉さま方・・・大胆なのですよ〜」
「でも、よかったです。まりやお姉さまが留学されるとき、本当に心配だったんですから・・・」
「ふふ。そうですわね。本当に、よかったですわ・・・。でもやっぱり妬けちゃいますわね。では対抗して、奏ちゃん?」
ぎゅむ。
「はややっ!?」
「ああ・・・至福のひとときですわね・・・。瑞穂さん、まりやさん。結婚式のときは是非呼んでくださいね?」
「もちろんですよ、紫苑さん。それに奏ちゃんと由佳里ちゃんも。是非来て下さい。」
「由佳里、来なかったら承知しないわよ?」
「あ、あたりまえじゃないですか!来るなって云われても行きますよ!」
「か、かなも・・・絶対、行きます、ので・・・すよ〜・・・紫苑、おねえ、さま・・・離し、てください・・・なのですよ〜・・・」

「ふふ。結婚式の衣装、楽しみにしてますからね?」
「ええ、紫苑さま。あたしが腕によりをかけてデザインしますから、期待していてください!」
「・・・まさか・・・まさか、ね・・・。」

一抹の不安を感じつつ、終わり。
304初代スレの45:皇紀2665/04/01(金) 01:52:04 ID:bonqy6Gg
あとがき。

今回はまりやのご両親に結婚のことを伝えるお話です。
まりやの両親って、こんな感じかな〜と。
母はおっとりマイペース。父もやっぱりマイペースというか母のペースに釣られているというか。
どっちにしろあまりたよりにならなそうな感じでw で、趣味はまりやの着せ替え。
まりやの両親って、結構高齢な気がしますね。まりや24のときに60前後くらいで、一人っ子なまりやを溺愛してるってイメージです。

まああとは相変わらず瑞穂ちゃんの女装を楽しみながら、らぶらぶ、と。

結婚式についても書いてるんですけど・・・かなりの難産なので、いつになるやら。
305名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 01:55:18 ID:toNRbouc
長編GJ!
しかし由佳里はアホの子なのに
「堀越公方」なんて言葉を知ってるのかw
306名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 02:02:28 ID:k4qwH59A
堀越公方ってわかんないからぐぐったたら
ワロタw戦国時代かww
ともあれGJ!
3072スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:05:10 ID:iDnDox/U
良作が、続けて投下された後なので、気が引けるのですが

投下します。
外伝2で、貴子さんが、瑞穂のところ来てからしばらくして
と言うところからはじまります。
3082スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:10:20 ID:iDnDox/U
瑞穂と貴子           渡されなかった卒業証書外伝5
 
 貴子は、小さなこどもが自分の思い通りにならないと怒るように不満を、瑞穂にぶつけている。二人
のそばにやって来たイブンは"拗ねてるのか?"いう表情を顔に貼り付け
『あーー。ミス・貴子。瑞穂に甘えたいのもわかるが、お昼休みに会社の面会スペースまでくるのは
どうかと思うぞ?』
気が付いた瑞穂は、貴子の相手をしながら
『あ、貴子は、役所に観光以外での在留許可の手続について聞きに行ったのだけど、在日本大使館を通
すか、日本にあるこの国の大使館でしか、初回申請を受け付けてくれないのを怒っている』
『瑞穂のそばにいたいのならそれぐらいは甘受すべきだ。不法就労者として国外追放されるの可能性と、
どちらを選ぶ?』
イブンは、大げさに肩をすくめると貴子に問いかけた。少し落ち着いてきた貴子は、
『ええ、私が準備不足なのも認めますけど・・・・』
瑞穂は、抱きしめてる貴子を落ち着かせるように、背中をなでてる。
「貴子さん。規則は、規則。」
「わ、わかってますわ」
二人の様子に、わざとらしく咳払いをして
『ミス・貴子。まじめな話。余分なトラブルにまきこまれたくないのなら、許可書を手に入れる為の手続
きを開始するべきだ。それも、今すぐに』
イブンからの忠告を聞いて
『そうね。イブンのいう通りだわ。許可書があれば、不当なクレームにも対抗できるわね』
瑞穂の腕の中から抜け出すと部屋から出て行った。
 イブンは、注いだコーヒーの1つを瑞穂に渡すと"話したいことがある"いう意味で
『んーーー。ひさしぶりに酒でも飲まないか?オレの部屋で』
『久しぶりに飲むか』
瑞穂は、飲みかけのコーヒー片手に、自分の席に戻っていった。
 
3092スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:11:39 ID:iDnDox/U
瑞穂と貴子

 瑞穂は、仕事の帰り手頃な値段の酒を買うと、イブンの部屋を訪れた。へやの中を見渡して
『あいかわらず、殺風景だな。それに・・・・』
瑞穂の視線の先には、カットチーズの皿、人参をスティック状に切って挿した細長いグラスが
載ったテーブルがあった。イブンは、酒もテーブルに載せると
『瑞穂相手に、気取る必要もないからな。適当に座ってくれ』 
瑞穂が椅子の一つに座ると、イブンは食器棚から、人差し指程度の高さで指3本程度の大きさの、彫り模
様の美しいアクアブルーのグラスを、2つ取り出して来て、瑞穂の対面に座った。
『さてと、ミス・貴子の来たわけを聞かせてもらおうか?』
『そのつもり出来たが、デリケートなところもあるからな』
瑞穂の言い方に、イブンは真面目な表情になり
『少なくとも、人に話せることかどうかの判断は出来るつもりでいる』
瑞穂は、酒の注がれたグラスの1つを手に取り
『私と貴子さんの家が、ビジネスでライバル関係にあると言うこと』
イブンはわざと軽い口調で
『"ロミオとジュリエット"の関係と思えばいいのだろう?』
『まあ、そんな感じか?ただ、この"ジュリエット"と"ロミオ"出会い方にも、大きな違いがあるんだが
な。』
瑞穂は、もてあそんでいたグラスを置くと、スティックの1つに手を伸ばし
『貴子さんの家は、父親1代で財をなした』
一度、言葉を区切ると
『私の家だが、昔は公爵家の1つ数えられた家柄。もっとも、第二次大戦後は、制度自体が崩壊したから
な。』
今じゃ何の意味もないと言う瑞穂の顔を、まじまじと見て
『元貴族さまか。お上品だとおもっていたが、やっとわかった』
 瑞穂は一息にあおると、ひとりごとでも言うように
『祖父の2代前が、日本の近代化にともない、女子にもふさわしい教養の場を必要との理念で"恵泉女学
院"を創立して、それが現代まで続いている。第二次大戦後再建されたときには、幼稚園から女子大学院
までの一貫教育機関となった。祖父の遺言で編入したのは、高校3年の6月。彼女は、生徒会会長職に就
いていた』
3102スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:13:01 ID:iDnDox/U
瑞穂と貴子

イブンの顔に書いてる"本当なのか"という問いに答えるように
『もちろん。私が、"女装させられて"の編入。祖父の顧問弁護士の4時間にも及ぶ説得と、幼なじみの裏
工作で退路を断たれてのな。付け加えると、寮生活の件も遺言に入っていた。これで、答えになったかな?』
当時を思い出したように苦笑いを浮かべると、イブンの注いでくれた酒をあおり
『身の不運とあきらめるしかないが、幼なじみの起こす騒動に巻き込まれるたびに、貴子さんと関わりも
深くなっていった』
瑞穂のグラスに酒を注ぐことで、イブンは話を促す。
『貴子さんは、貴子さんで、抱え込んでいた物が』
瑞穂は言葉をとぎると、昔を思い出すように指を折りながら
『1つは、友人関係。1つは、父兄の人格。もう1つは、"厳島"という名の呪縛。これ以外にも抱えて
いたのかもしれん』
人格という言葉を聞いたイブンは、"下半身の無節操?"という顔をしていた。
『後から聞いた話では、兄は、女性を壁の飾りとしか考えてないとか?父親は、推して知るべきだろう』
イブンの持つグラスの表面が、大きく波立っていった。
『金はあるか・・・・なら、次は地位か、名誉だな。そういうのが、欲しがるのは』
地の底から聞こえてくるような低い声で、吐き捨てるように言ったイブンに続けるように
『貴子さんに兄の婚約者として紹介されたのは、後に病気休学で1年留年したため同級生になったが、
"十条紫苑"という女性。十条家も遡れば、侯爵家の家柄』
イブンの眉が、じょじょにつり上がる。
『イブンの想像している通り、貴子さんの父親は"元侯爵家"と縁続きになりたいが為に、兄との婚約を成
立させた。まあ、早い話が金で家柄を買おうとしたんだが、兄の性格を知り抜いている貴子さんとしては
婚約破棄させたかった。紫苑さんの方も、この婚約が形ばかりということを知っていたが、自分が犠牲に
なれば済むと思っていた。紫苑さんは、日本の時代劇に出てくるお姫様ような女性だからな』
イブンのグラスに、自分のグラスを軽くあてると
『融資を受けている十条家としては、娘が不幸になるだろうと判っていても、婚約破棄は言い出せない
だろうから、厳島家と"大人同士"の話し合いになるように、周りに協力を求めたらしい。その結果、婚
約破棄
3112スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:14:50 ID:iDnDox/U
瑞穂と貴子

は成立。厳島側からみれば、"もしかしたら"程度にしか考えていなかった事が現実になった。誰
が、お膳立てしたのかと?探し出しても不思議じゃないだろ?』
イブンは、口笛を吹くと
『ははあ、ミス・貴子にも疑いが?』
『ああ、貴子さんも証拠を残すほど、馬鹿じゃないだろうからな。貴子さんが大学に合格すると、学費
付きで家から出された。後は、ほとんど家は絶縁状態とか?』
『それにしても、よく瑞穂の住所知っていたな?』
空にしたグラスをもてあそびながら、
『恵泉に自主退学届をだして以来、連絡先は教えてなかったのだけど、季節ごとの手紙を10年は、送
り続けてきてた。家の住所にな。気持ちに区切りがついたところで、名刺入りの返事をだしたら』
『来てしまったのか』
瑞穂からグラスを取り上げて新しく注ぐと、自分にも継ぎ足し、酔いの回ってきた目つきで"どうするん
だ"と問いかけてきた。
 瑞穂は、独り言のように
『彼女が落ち着いたら、二人の今後についても、話し合ってもいいかなと思ってる』
『ふーーん。だったら、日曜ごとに教会に通うべきだな。信者にならなくても、二人で教会に通ってい
て、損はないはずだ』
そういうとイブンは"にやり"と笑って飲み干した。

 貴子は、瑞穂の勤めている会社と雇用契約を結ぶと、一度帰国して就労のための在留許可を得てから
再び、瑞穂の元にもどってきた。
 月日は流れ、11月のある日曜日。
教会の日曜ミサに出席した帰り、街では、クリスマスの飾り付けが始められていた。その様子を見た瑞
穂は、"そうか、今年もアドヴェントが始まるな"と呟いた。聞き慣れない言葉に戸惑う貴子に、瑞穂は
日本語に切り替え
3122スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:16:13 ID:iDnDox/U
瑞穂と貴子

「貴子さん。日本でも、12月に入ると、クリスマスの飾り付けが目に付きますよね」
「え、ええ。そうですわね」
「こちらでは、クリスマスの飾り付けを12月25日の4週間前の日曜から始めるのだそうです。クリス
マスまでの4週間は、キリストの降誕を待ち望む期間と言うことで、待降節(アドベンド)という名前が
付いているのですよ。」
解りましたかという顔をして、貴子を見る。
「降誕祭ですが、これはいいですよね。公現祭は、東方三博士がお祝いの持ってキリストの元を訪れた
日で、降誕祭から公現祭までの2週間を降誕節とも言うのですよ。このあたりは、恵泉でもやっていた
のかもしれませんが、私は、もう覚えてませんね」
説明は終わりましたよと、貴子の顔をのぞき込んだ。
 貴子は瑞穂の腕を引っ張って、クリスマス用品を並べ始めた店に入っては、部屋に飾る物の下見を始
めるのだった。

 そして、クリスマスが近づくころになると
『瑞穂。これを預かってきましたわ』
ルヴィアは、蝋と紋章で封印された書状を瑞穂の机の上に置いた。恨めしそうにルヴィアを見上げて、
日本語に切り替えると、そばにいた貴子に
「降誕節の夜会への招待状。"宮小路瑞穂"と”鏑木瑞穂”宛」
「宮小路・・・ということは、女装を?」
「そう。去年の降誕節に事情で、宮小路瑞穂を演じることになってしまった。適当なところで、体調が
優れないと言って、夜会から抜け出したけどね」
苦虫を噛み潰したような瑞穂に、満面の笑みを浮かべたルヴィアが
『夜会での瑞穂の姿は素敵でしたわよ。家の女の子たちの"プライド"を揺るがす程度に』
貴子も同意するように
『初めて見たとき、"全然"気が付きませんでしたから』
『貴子さん。イブの夜は"一人"ですごされるのですね?』
盛り上がりかけた会話に水を差すかのような瑞穂の言葉。
『ふ、不本意ですが、この話題は打ち切る事にします』
3132スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:17:14 ID:iDnDox/U
瑞穂と貴子

(瑞穂さん。ずるい。私が楽しみにしているのをご存じのくせに)
顔をうつむきかげんにして、下げた両手を握りしめた貴子はそう呟くしかないのだった。貴子が席を外
すと、瑞穂は右手で輪を作り、左手の薬指にはめる仕草をして
『ルヴィア。いい店を紹介してくれて、ありがとう』
『お礼なら、降誕祭の夜。ミス・貴子と二人で夜会に来ていただきたいですわね』
瑞穂は"なにか、たくらんでますね?"という表情をみせると、ルヴィアは微かに視線をはずし
『たまには、サンタクロースのまねごともしたくなりますの』
そういうと、にこやかな笑顔で、瑞穂に"来てくださいますね"と圧力を掛けてくる。
『新年だけは日本で過ごすつもりだけどな。』
瑞穂の独り言を耳にしたルヴィアは、謎めいた笑みを浮かべ
『もしかして、お披露目ですの?』
『それは、ご想像にお任せしますよ』
瑞穂は、話を打ち切ると仕事に戻っていった。
 そして、イブの日。
教会に訪れた二人は、すっかり顔なじみになった受付の人と、挨拶を交わし空いている席に着いた。
 パイプオルガンの調べから始まる礼拝も進み、回ってきた献金の籠に用意していた小銭を入れ、最後の
パイプオルガンの演奏が終わった後も瑞穂は留まり、"なぜ"という顔をしている貴子を伴って牧師の部屋
を訪れる。
 穏やかな笑顔で、部屋に招き入れてくれた牧師は
『ミスター・鏑木。お待ちしておりました』
『アルベール牧師。私願いをお聞きくださいまして、ありがとうございます』
アルベールは、二人に座るように促し
『この喜ばしき日に、喜ばしき事のお手伝いが出来るとは、これも主のお導き』
瑞穂は苦笑して
『喜ばしき事になりますかどうかは、主のみぞ知ると』
年老いた牧師は、穏やかな笑みを浮かべ二人を見つめた。状況の飲み込めず困惑している貴子の方に顔
を向けてに瑞穂は
『貴子さん』
『はい』
貴子は、反射的に返事をすると、瑞穂の残りの言葉を待った。
3142スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:18:10 ID:iDnDox/U
瑞穂と貴子

『私と残りの人生を、一緒に歩んで頂けますか?』
『ミス・厳島。ミスター・鏑木の申し出をお断りになさいますか?それとも、承諾なさいますか?貴女
の一生の問題ですから、ゆっくりお考えになさるがよろしい』
慈愛に満ちた笑みを浮かべ、おだやかに告げる。
(一生の問題?人生を共に歩む?)
予想もていなかった瑞穂の申し出に、貴子は瞳に迷いの色を浮かべて
『あの、私・・・』
『いかがなさいます?』
(瑞穂さんからのプロポーズが嫌なわけないけど、厳島との争いに巻き込んでしまうのが恐い)
 瑞穂にしてみれば、1分が1時間にも思えるような沈黙の後。貴子は、膝の上に置いた両手をきつく
握りしめて、のどの奥から押し出すように
『私』
『私・・・』
瑞穂は、迷っている貴子の背中をそっと押すように
『"厳島"からのことは、私の持つ力をすべて使ってでも、貴子さんを守りますよ。この場で、はっきり
と誓います』
『私も、瑞穂さんと一緒に歩みます』
貴子の瑞穂を見つめる瞳には、先ほどまでの迷いが消えていた。
『お二人に、主の祝福のあらんことを』
二人の様子を見ていたアルベール牧師は厳かにそう告げた。
3152スレの402:皇紀2665/04/01(金) 02:22:17 ID:iDnDox/U
瑞穂が貴子にプロポーズしたところで、きりをつけたいと、おもいます。

まがりなりにも、初連載を終わらせることができました。
316初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:37:16 ID:qXNafVaJ
ふおおお、良作が次々と投下されている…皆様GJです!!( ;´Д`)

そんな中ですが一本出来上がったので投下させていただきます。
いろいろと矛盾点が浮き彫りになる作品ですが、ご容赦くださいませ。。。(^^;
317初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:38:00 ID:qXNafVaJ
乙女の想い―御門まりやの場合―
「ね、瑞穂ちゃん」
「何?まりや」
「…あたしたちってさ。何でこんなに鈍いんだろうね?
もっと早くにお互いが必要不可欠な存在だったって気付いてれば良かったのに」
「そう、だね。もっと早くに気付いていれば、
もっともっとまりやとの思い出を作れたかもしれないのに…
「だから…もっともっと刻みたい。
あたしが瑞穂ちゃんのもので、瑞穂ちゃんがあたしのものだって。
それが、あたしが留学前に出来る最後の思い出で、二人一緒に受ける、罰」
「…まりや」
「わかってる。そんな自虐的な言い方、良くないって。
でもね、それだけ瑞穂ちゃんのことが、大好きなんだよ…?」
「…うん、僕もまりやが、大好きだよ…」
自然に重なる唇。いつまでもいつまでも、別れを惜しむように重なりつづける口付け。
けれど、それはいつか必ず離れなくてはならなくて…それが凄く寂しくて。
「待っててね、瑞穂ちゃん」
「うん。待ってるよ、まりや」
やがてくる再会の時まで、僕はその寂しさと戦わなくちゃいけないんだ。
それが、僕が受ける罰なのだから…

―十条紫苑の場合―
「どうですか?具合は?」
「ええ。手術の後遺症もなくて、順調みたいです。卒業式前には退院できそうですわ」
「よかった。皆、紫苑と一緒に卒業するのを楽しみにしてましたから」
「でも、そうして私が多くの人に愛されていて、
必要とされてるって解かる事が出来たのも、瑞穂さんのお陰ですね」
「そんな事ないですよ」
「いいえ、そんな事あります。…私が、この先も生きていたいと願う事が出来るのも、です」
「紫苑…」
318初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:39:11 ID:qXNafVaJ
「貴方は、私の固く閉ざされた扉を開けてくださいました。
そして、未来への希望を与えてくれました。だから私にとって貴方は……っ」
「泣かないでください、紫苑。僕が紫苑を幸せにしたいと思うのは、
泣かせるためではなくて、笑顔を浮かべさせたいと願っているからなのですから」
「…はい」
そう云って紫苑は、とても綺麗なの笑顔を見せてくれた。
そんな紫苑の笑顔を…僕は、ずっとずっと守っていきたいと。改めて思った…

―厳島貴子の場合―

「本当に、瑞穂さんは不思議な方ですね」
「そ、そうですか…?」
「ええ。…本当に不思議な人です。貴方は私を変えてしまいました。
いままで見えなかった…いいえ、見ようともしていなかった世界を教えてくださいました」
「僕だって…最初からこうだったわけじゃないと思います。
この恵泉に来て、多くの人と知り合って。そのお陰で、僕も変わることが出来ました。
…それに何より、貴子さんに会う事ができたのは大きかったかもしれませんね」
「…瑞穂さん…な、なんだか照れてしまいますわ…」
「照れた貴子さんも可愛いですよ」
「もう!!からかわないで下さい!!」
そう顔を膨らませてる貴子さんも可愛くて。
僕は、貴子さんと唇を重ねた…
319初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:39:43 ID:qXNafVaJ
―周防院奏の場合―

「…瑞穂様」
「なあに?奏」
「…呼んでみただけなのですよ…」
「どうしたの?急に」
「奏にとって、瑞穂様が居る事は当たり前の事で。
逆に、瑞穂様が居ない世界なんて考えられなくて…こうして呼んで返事が来る事が、
すごく、すっごく幸せなのですよ…」
「僕も、奏が居ない世界なんて考えられないよ。奏が居ないと…すごく、寂しい」
「瑞穂様。ずっと、ずっと奏のそばに居てくださいなのですよ。
奏は、瑞穂様が居てくれなければ、もう…」
「…大丈夫だよ、奏…」
僕はそっと奏の頭を抱きかかえる。優しくその小さな頭を撫でる。
僕は、この小さな少女を守る事が、とてもとても大事な事だと…強く感じていた。

―上岡由佳里の場合―

「どうしたの?由佳里。そんなにじっと見つめて…なんだか照れちゃうな」
「え。あ、だって…瑞穂さんの事、もっともっと目に焼き付けていたいんです。
いくら見つめていても、それでももっともっと瑞穂さんのことを見つめていたいって。
そう思っちゃうんです。
…迷惑、ですか?」
「ううん。そんな事ないよ。確かにちょっと恥ずかしいけれど…
僕だって、由佳里の事を見つめてるの好きだし、ね」
「あはは…なんだか瑞穂さんに見られてると思うと、私も恥ずかしくなってきちゃいました」
「でも。由佳里だってそうやって僕に見つめられるの、好きなんでしょ?」
「…やっぱり、瑞穂さんは私の事なんでもわかっちゃうんですね。
はい。瑞穂さんに私の事を見てもらえるのが…すごくすごく、大好きです」
そして僕らはまた見つめ合う。ベッドの中で、横になったまま。
そのまま、吸い込まれるように互いに顔を近づけると、どちらともなく、唇が重なって。
何度かのキスを繰り返してから、眠りについた…
320初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:40:17 ID:qXNafVaJ
乙女達の想い―本編―

「…で。これはどういうことなのかな?瑞穂ちゃん…!!」
「え?あの、どういうこと、って云いますと…?」
ここは第二音楽室。まりやに呼び出されたんだけれど…待っていたまりやは、
鋭い眼光をこちらに向ける。
…いや、正確にはまりやだけじゃない。
そこには「紫苑」や「貴子」。「奏」に「由佳里」まで居て…すごく、イヤな予感がする。
「私たち。それぞれに話をしてみたんですけれど…お互いに話をしてビックリしましたわ」
「ええ、本当に。何しろ、ここに居る全員が、「瑞穂さんと結ばれた」って言うんですもの…!!」
紫苑、それに貴子の言葉で…目の前が暗くなった。
やっぱり、いつかはバレるとは思っていたけど、いざそうなると…やっぱり辛い。
「一体どういうことなのか、説明してください、瑞穂さん!!」
「奏…捨てられてしまうのですか…?」
本気で困ってしまったけれど…こうなった以上、正直に話すしかない。
「実は…」
最初に結ばれたのは、貴子とだった。それから、奏に由佳里、紫苑、そしてまりやと…
次々と彼女たちの僕への思いに気付いてしまって。そしてそれを無下にする事が出来なくて…
気付いたら、現在のような状態になってしまっていた。
「皆が皆、僕にとっては大切な人で。大好きって気持ちには嘘偽りなくて…
…と、云うわけなんだ」
「”と、云うわけなんだ”じゃないわ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
ガッシャ〜〜〜ン!!
「うわわわっ!!まりや、落ち着いてっ!!」
「きゅう…」
「あぁっ!!会長さんがとばっちりを受けて倒れてしまったのですよぉ」
「あらあら。大変な事になりましたわねぇ…」
「…紫苑お姉さま、笑顔がなんだか怖いです…」
321初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:40:56 ID:qXNafVaJ
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ま、まりや、落ち着いた…?」
「一応…納得は全然してないけど…!!」
「全く、何で私がこんな目に…
仮にも恵泉の生徒なのですから、直ぐに破壊衝動に走るのはやめていただけませんか…!?」
「にゃはは、ゴメンゴメン…」
「さて。それでは…どうしましょうか?瑞穂さんの件は…」
紫苑が難しい顔で周りを見回す。
「あたしは……う〜ん、それでも瑞穂ちゃんを捨てるか、っていうと、それは…ねぇ?」
「私もですわ。今更瑞穂さんを諦めろ、だなんて云われても…!!」
「奏、瑞穂様が居ない生活なんて考えられないのですよ…」
「私だって。確かにちょっと見損ないはしましたけど。
それでも、やっぱりそれで瑞穂さんを捨ててしまうか、と言うと…出来ないです…」
「…ふう、私も含めて、皆さん同じ気持ちだ、というわけなのですね…
当の瑞穂さんは一人に決められないから、こんな状況になってしまったわけですし…
どうしましょう?」
「ここはやっぱり…誰か一人が瑞穂ちゃんのハートを完全に射止めるまで、
争奪戦を繰り広げる…!!それっきゃないんじゃない?」
え?
「少なくともまりやさん。貴方にだけは瑞穂さんは渡しませんわよ…!!」
「私だって!!瑞穂さんを誰にも渡したりしませんから!!」
あ、あの?
「はやや。奏、頑張るのですよ〜!!」
「あらあら。奏ちゃんと争う事になってしまうなんて…
ちょっと心苦しいですけれど、仕方ありませんわね…」
「あの…そんな、勝手に…」
『瑞穂ちゃん(さん)(様)は黙ってて!』
「…はい」
5人の眼光に射竦められて、僕はじっと押し黙ってしまう。
322初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:41:36 ID:qXNafVaJ
「とりあえず、公平にローテーションを組んでアタックする事にしましょ」
「あ、じゃあ私が一番に…」
「あ、由佳里ちゃんずるいのですよ。奏が一番最初がいいのですよぉ」
「ここは、公平にジャンケンで決めませんか…?」
「そうですわね。それで…恨みっこ無しですよ。はい、最初はグー」
僕はただただ、乙女達の死闘を眺めやる事しか出来なかった…
…これからどうなるんだろう…?


おまけ

順番も決まり、各々帰途へついた後…寮では、瑞穂を除く寮生たちの会話が繰り広げられていた。
「…え。私、一子ちゃんに応援されたんだけれど…」
「奏も一子さんに、瑞穂様のことを頼まれたのですよぉ」
「私も、一子さんに魔法をかけてもらって。それで瑞穂さんと…」
「…一子ちゃん、寮の全員に発破かけてたのか…困った天使も居たものねぇ…」

天国の一子・談
「え?だってほら、下手な鉄砲数打ちゃ当たると言いますし、
寮生三人も居れば誰か一人くらいは当たりを引くかなと思いまして、
けれどまさかお姉さまが全員を選ばれるとは思ってもみなかったとも云いますか、
なかなか人生と言うのは複雑怪奇で思うようには行かないものですねぇ…
って、はぁっ!!い、一子の人生はもう終わっていたんですよね…
だから巧くいかなかったのでしょうか…!?
で、でも、見方を変えれば皆さんの思いは通じたわけですし…!!
これでよかったんですよ、ええ!!」
良かったのやら、悪かったのやら…
                                          終わり?
323初代スレ126:皇紀2665/04/01(金) 02:44:11 ID:qXNafVaJ
…ええ、そうですね。本編中の繋がりをいろいろと無視して書いてますね…( ;´Д`)
まりやのお蔭で紫苑様と結ばれたわけだし、貴子さんも紫苑様も
まりや他に「初夜」を立ち聞きされてるし…
(そう言えば、二人の立ち聞きに共通するの、まりやだな…立ち聞きクイーン?)
まあ、一種のネタと思って下されば…(^^;
324test:皇紀2665/04/01(金) 07:24:33 ID:Qli1NzzI
 奏ブラックで書き落としたネタ投下してみるtest
おボク様 あなざぁ 『∞ 奏ブラックに死す鵺の鳴く夜は恐ろしい動く指パンプルムース氏のおすすめ料理館物おまけシナリオ邪馬台国はどこですか殺人事件(嘘』

 奏の淹れる紅茶の中で唯一不評なのはイチゴ紅茶。フレーバーティーじゃな
くて、ロシア風だと砂糖の替わりにジャムが入るけど、これをイチゴジャムに
したもの。それでもジャムが少量ならいいと思うんだ。
「奏、あんた妊娠して味覚変わったとかじゃないよね」
 そう、まりやが言い出す程、たっぷりとジャムが入る。
「妊娠してませんし、普通に美味しいのですよー」
 奏は美味しいと言うんだけどね。僕たちは本当に普通の紅茶を飲んでいる。
「でも、まりや、お茶飲みに来たの? 何か話があるって……」
 奏は長期の休みに簡単な花嫁修業をすることになり、春休み現在、僕の実家
に住んでいる。僕は学生向けのアパートに引っ越した。奏と一緒の女子寮生活
が懐かしくなりそうだ。今日はまりやに実家へ呼び出されたんだけど。
「卒業旅行じゃないけど、うちの別荘にみんなで集まりたいなぁって思って。
ええと、由佳里ちゃん、紫苑様に、貴子と生徒会の君江って子、圭さん美智子
さん。で、計9人かな。今のところ。瑞穂ちゃんと奏ちゃんは強制参加」
「強制参加?」
「奏ちゃんが、いつまでも瑞穂ちゃんとのこと黙っているのも大変だろうから、
婚約披露もしちゃえばいいと思って」
「それは、僕も本当のことが言えればいいんだけど……」
 大丈夫かな。
「そうね。2人とも少し遅れて着くようにしてよ、あたしが先に簡単な話して
おくから」
「そうか、まりやにはいつも助けてもらってるね」
 その時は、どんな惨劇が用意されているか知らず素直にそう言ったんだけど。

  続く
325test:皇紀2665/04/01(金) 07:25:40 ID:Qli1NzzI
 そんなわけで僕たちは、まりやの別荘に泊りがけの旅行に行くことになった。
一応女装して移動して、婚約発表の時は普通の格好に戻るというのはどうかと
いわれて、久しぶりにブラジャーに胸パッドを着ける。こんなことも多分最後
だろう。
 僕の胸を見て、うれしそうに奏が抱きついてくる。
「久しぶりの瑞穂お姉さまなのですよ」
「あらあら、奏ちゃんたら、甘えん坊さんね」
 そう言って僕たちは笑った。

 別荘に着いたのは僕たち2人が最後。
「遅すぎー」
 玄関でまりやが出迎える。一升瓶を片手にしてるんだけど。
「お酒飲んでるの?」
「まりやお姉さま、御機嫌なのですよー」
「うん、もうみんな集まってるから。おーい、ロミオと姫が来たよー」
 そのまま、僕たちを引っ張って行く。どうやら、出来上がっているのはまり
やだけみたいで、他の人は普通にお茶を飲んでいるみたいだ。
「はーい注目。じつはあたしは、うそぉをついてました」
 そう言って僕の服を捲り上げてパッドを外す。
「瑞穂ちゃん『お姉さま』は、じつは男だったのでしたー。にゃはは」
 たちまち驚きの声が上がる。反応は僕の予想を遥かに超えていた。

 いきなり君江さんが泣き叫ぶ。
「そんな、お姉さまがホントは男の人だなんて。騙してたんですか。そんな、
酷い裏切りです。会長は知ってらっしゃったんですか」
「ごめんなさい、君江さん。私はお姉さまに助けて頂いたことがあるから、ど
うしても言えなかったの。でも、確かにあの時に黙ってしまったのは、私の誤
りでした」
「会長……」

  続く
326test:皇紀2665/04/01(金) 07:26:24 ID:Qli1NzzI
「お姉さまが男の人だったなんて、まりやお姉さまもご存知だったんですよね。
奏ちゃんも知っていたの?!」
 そう言って由佳里ちゃんが奏に迫り、その表情を見て顔色を変える。
「みんなで由佳里を騙して、笑ってたんですか。酷い!」
 そう言って駆け出していく。奏は、その後を追いかけた。

 圭さんと美智子さんは、あからさまに不潔なものを見るような目で僕を見て
いる。
「女学園に女装の生徒。これは問題だわ。私たちは騙されてたのね」
「不潔です。信じられません。許せません。そんな方を今までお友達だと思っ
ていたなんて」

 僕は…みんなに……何と言えばいいんだろう。
「ごめん、みんな。でも僕は……」
 そんな僕の肩に手を置いて紫苑さん。
「事情については、まりやさんが説明して下さることになっていましたが、ご
覧の通りなので……」
 まりやは一升瓶を抱えて、何だか床で寝ちゃってる。
「みなさん、2時間後、またここに集まって頂けませんか。まりやさんたちに、
少しだけ時間をあげてください」
 みんな、紫苑さんの言うことにしたがって、部屋を出て行く。後には僕と紫
苑さんと、寝ているまりやだけが残った。紫苑さんは落ちた胸パッドを拾って、
揉み始める。
「紫苑さん、僕は一体どうすれば?!」
「そうですね、ええと、どうするのだったかしら…まりやさんは私が見ていま
すので、瑞穂さんは奏ちゃんの様子を見て来てあげて」
 そうだ、奏だけは僕が守らないと。

  続く
327test:皇紀2665/04/01(金) 07:27:34 ID:Qli1NzzI
 部屋を出ると、悲鳴が聞こえた。声がした方に向かうと、開いたドアの前に
しゃがみこんだ美智子さんと、彼女の肩を抱いた圭さん。
「一体……」
 ドアの向こうには、血塗れになった貴子さんと君江さん?
「瑞穂さん近づかないで!」
 倒れた二人に駆け寄ろうとする僕を圭さんが止める。
「もう死んでいるわ。警察が来るまでは誰も触っちゃいけない」
 そうか、救急車と警察を呼ばないと。携帯を取り出した僕を圭さんが止める。
そして、冷ややかな目で僕を見る。
「この別荘にいるのは私の友達だけ、知らない人は瑞穂さん、あなただけなの。
信用できないわ」
 そう言ってから、美智子さんを立ち上がらせる。
「まりやさんなら普通の電話の場所を知っているわ。瑞穂さんも一緒に来て」
 僕は圭さんの言う通りにするしかなかった。3人で最初の部屋に向かう。で
も遅かった。僕たちが見つけたのは血塗れになったまりやと紫苑さんだった。
「犯人は2人のどちらかね。奏か、由佳里という子か」
 圭さんのその言葉に、僕はショックを受けた。
「奏は……由佳里ちゃんもこんなことするような子じゃ……」
「解からないわ、私も瑞穂さんのことを、そんなことするような人じゃないと
思っていたわ」
 美智子さん、何かを思い出したように。
「この部屋から、真っ先に出て行ったのは、あの2人でした。きっと、この部
屋の近くに」
 そう言って部屋を出た瞬間に、美智子さんの頭が真っ赤に染まる。
「美智子!」
 美智子さんを抱き起こそうとした圭さんも、ゆっくり倒れていく。その向こ
うにいたのは、奏。両手を赤く染めて、ギラギラ光るナイフを握り締めていた。

  解決編へ続くかも
328名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 11:51:16 ID:hqhWITib
ぐはっ、そこで続くのか。気になるなぁ。
329猫野:皇紀2665/04/01(金) 12:14:23 ID:c9HUWlaI
キャラメルBOX に
チャイナドレスのお姉さまが
素敵過ぎます〜
3303スレの226:皇紀2665/04/01(金) 12:43:07 ID:ejWOeSqU
>>初代126氏
Good Job!正直、どうなるんだろうかと気になる。下手するとハーレム状態?!
それにしても恐るべきはまりやの地獄耳・・・
瑞穂「まりやの耳は、地獄耳〜」

>>test氏
おおっ、ブラックエナジー炸裂ですな。ただ、まともにやっちゃうと解決しない悪寒。

>>猫野氏
反則です。超反則です。これは以後禁じ手にすべきだと思います!・・・とか言ってみるテスト
331初代550:皇紀2665/04/01(金) 15:02:19 ID:OP5d9sYl
海に行こう!の後日談だが、読んでなくても多分問題なし。オリキャラ多数・・・と言うか、本編に出た人間がほとんど出ないというたわけたSS。思いついちゃったんだもん・・・

タイトル:陸上部
陸上部部室。夏休みも終わりかけたある日の事、そこに陸上部の3年生全員が集まっていた。仮にA,B,C,Dとしておこう。
A「我らが陸上部部長、琥珀の君との呼び声も高い、上岡由佳里嬢が裏切りました」
B「裏切ったって?」
A「C、例の情報を・・・」
C「って言うか、私、Cなの?Dはあるわよ」
D「別にカップの話をしてるわけじゃないのよ」
B「えっ、Dもあるの?私、B・・・」
A「Bで泣かないでよ・・・私なんてAAなんだから」
B「何でウェストが落ちずに、バストで落ちるのかな・・・私の脂肪ちゃん」
D「いいから、話を続行してよね。全く・・・」
C「コホン、部長はなんと、自主トレを1週間も休んで、あの宮小路瑞穂お姉さま、十条紫苑お姉さま、そして、現エルダー周防院奏嬢との旅行に行ってしまったのです!しかも海!しかも水着!」
B,D「えーーーーーーーーーー里帰りじゃなかったのっ!?」
A「なお、未確認ではあるが、2年前の生徒会長厳島貴子お姉さまも参加していたと言う情報もあります」
B「うそ〜〜〜〜貴子お姉さままでぇ?うそぉ〜あぁん、貴子お姉さまの水着・・・」もじもじ(←足をこすり付けてます)
A「B・・・自家発電なら家に帰ってからやってよね」
B「どうせ、私はBカップだもん・・・(泣き)」
C「もう一つ未確認情報としては、御門まりや元部長も参加していたそうです」
D「あっ、それは別に良い」
B「わっ、Dちゃんひどっ!」
A「確かに、まりや部長がいると理不尽な苦労をしそうとか・・・楽しさ3倍、苦労は5倍と言うか・・・」
C「私たち、しごかれましたもんねぇ・・・思い出すだけで、汗が出てきます」
D「私なんか、思い出しただけで、ふくらはぎのあたりが筋肉痛になるわ」
B「私は思い出すと、あそこがジュンと・・・」
ACD『あっ、私だけじゃないんだ・・・』
A「と・・・まあ、そういうわけで、こういう旅行に一人だけ参加したのは、鉄の団結を誇る陸上部への重大な裏切りであると言わざるを得ない!」
D「いつからそんな団結が出来たのよ・・・」
(1/2)
332初代550:皇紀2665/04/01(金) 15:02:51 ID:OP5d9sYl
B「個人競技だしね、陸上って」
C「平たく言えば、私らも連れて行け、と言う事です」
A「C、平たく言いすぎ」
D「で・・・どうするわけ?高校生活ももう終わりって時期で、いじめって言うのも寒いわよ」
B「由佳里ちゃんとは仲がいいしねぇ〜旅行行っただけでいじめって言うのはちょっと・・・休んだのは自主トレだし」
C「ふふふ、ちゃんと制裁は考えてあります」
A「そうそう、しかも私たちの良心は全く痛まない制裁よ。夏休みの宿題、終わってる?皆」
B「3割って所かな・・・何の関係があるわけ?」
D「8割、Cさん、数学出来てる?」
C「Bちゃん、出来てなさすぎ・・・7割。数学は終わってるわよ」
A「私も半分。これまでの経験則から言えば、由佳里ちゃんも3割。お姉さま(奏)に見せてもらえて半分って所ね」
D「毎回、終わる直前に部室で写してるわねぇ・・・」
B「私と一緒にね」
A「B、それ、自慢にならないから・・・」
C「まあ、そういうわけだから・・・ぼそぼそ・・・」
>数日後、夏休み終了直前の部活後。
由佳里「ごめん、皆、宿題出来てる?」
A「部室においてるわよ。お姉さまに見せてもらわなかったの?」
由佳里「あはは・・・流石に全部とは言い出しにくくて・・・」
C「私たちは写し終えてるから」
B「部長がそんなざまじゃ、後輩に示しがつかないよ」
D「Bもあまり人の事は言えないって・・・」
由佳里「ありがとうっ!恩にきるわ」
>提出後、由佳里、比沙子に呼び出しを食らう
比沙子「上岡さん、この宿題、冗談としてもイマイチよ・・・Q:紀貫之の書いた日本最初の日記は?A:新妻絵日記」
由佳里「えっ・・・・・・・」
比沙子「Q:枕草子の作者は?A:ダッシュ村の清君。あの人、今は冒険チアーズよ」
由佳里「あは・・・あははははは・・・(滝汗)」
比沙子「再提出ね」

ABCD「ここまで見事に引っかかるとは思わなかったなぁ・・・」
(2/2おしまい)
333初代550:皇紀2665/04/01(金) 15:04:18 ID:OP5d9sYl
思いついたからやってしまった、ネタは何でも良かった、反省してる(w
334402:皇紀2665/04/01(金) 15:13:52 ID:1ueXRsz0
実は57を書いたのは私ですwwwww
335名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 15:58:12 ID:g4z0RQAs
>>334
つ[ ttp://www.ne.jp/asahi/den/pata/SS.htm ]

いくら四月一日とはいえ、やめてくれ
336名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 16:41:37 ID:1x4I9lKm
本人じゃないでしょ
337名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 17:40:17 ID:rGPIF32E
再び活発になってきてよかった。

>>初代45氏
相変わらずのまりや萌えなSS、GJです。

>>初代126氏
こんな展開もSSならではですね、GJ。でも、原作にこういうのがあったら瑞穂はこれほど人気でなかったでしょうねw

ほかの職人方も凄くGJです。
338test:皇紀2665/04/01(金) 20:16:37 ID:Qli1NzzI
おボク様 あなざぁ 『∞ 奏ブラック神父の醜聞バスカービルの三毛猫ホームズ鏡は横にひび割れて館物おまけシナリオ新・世界の七不思議殺人事件(嘘』

 奏は泣きながら僕の方にゆっくりと歩いて来た。
「ごめんなさい、ごめんなさい、奏は悪い子なのです」
 その声はまるで部屋中に響くように聞こえる。僕は動けなかった。
「奏、いったい……」
「奏は、いつも瑞穂さまに守ってもらってました。今度は奏が守りたかったの
に、由佳里ちゃんはどうしても聞いてくれなくて、このナイフで刺してしまっ
たのです。次に君江さんのところに行ったのですが、会長さんまで、瑞穂さん
のことを発表すると言い出されて。お2人を刺してから、すぐに部長さんと美
智子さんが来て、奏は慌ててクローゼットに隠れて、警察を呼ぶという話を聞
いてしまいました。それで、先回りして、まりやお姉さまと、紫苑お姉さまま
で……後はもう、こんな奏さえいなくなれば」
 そう言って奏はナイフの切っ先を自分の咽喉に向ける。僕はあわててそのナ
イフを握り締めて……
 ぐにゃ? ナイフの刃は僕の手の中で曲がっている。これは……
「ゴム?!」
 その時、拍手の音が僕たちを囲む。血だらけのみんなが、笑って手を叩いて
いる。
「私、まさか奏ちゃんだと思わなかったから、真っ先に死んじゃいました」
「奏さんの殺人鬼は迫力がありましたわね」
「私も本当に悲鳴を上げてしまいました。さすが次期演劇部長さんです」
「酔っ払った振りしてたから、あっという間に殺されちゃったよ。うーん、よ
く死んだ」
「殺人鬼役の奏ちゃんも、かわいいですわ」
「ふふ、死体の役も面白かったですわね」
「不覚、奏の方だったか」

  続く
339test:皇紀2665/04/01(金) 20:17:21 ID:Qli1NzzI
 これは……?
「四月馬鹿のイベントですわ。瑞穂さんと奏ちゃんの婚約なんて、申し訳あり
ませんが今更ですから。くじを作って、当たりを引いた人が秘密で殺人鬼役を
するゲームを企画しましたの」
 紫苑さんの言葉が頭の中に入って行かない。僕たちの婚約が…今更……四月?
「それじゃ、みんな血糊を落として着替えてから、また集合ねー」
 僕の手を奏ちゃんが取る。不安そうな、心配そうな瞳で僕を見つめる。
「瑞穂さま、奏のこと怒っていますか?」
 そんな目で見られて、怒れるわけがない。というか、どうせ怒れないだろう
と思って、まりやが企画したんだろうな。
「怒ってる、奏とお風呂入れないと、機嫌直らないかも」
「はう、瑞穂さまエッチなのですよ」

 そんなわけで、再び僕たちは遅刻した。その理由もみんなわかってたみたい
で、まりやに仲がいいねと冷やかされる。
「ねえ、まりや。僕たちの婚約が今更って言われたんだけど」
「ああ、だって、瑞穂ちゃんが男で、奏ちゃんと付き合ってること知らなかっ
たのって、圭さんと、君江って子だけだったから」
「えぇっ?!」
 圭さんが残念そうな声で。
「在学中に知っていたら、あんなネタやこんなこともできたのに、美智子に裏
切られた」
 その隣で、美智子さんはただ笑っている。そうか美智子さんも知ってたんだ。
「お姉さま、奏ちゃん、どうぞ」
 由佳里ちゃんが僕たちにグラスを配る。
「それでは不肖御門まりやが乾杯の音頭を取ります。瑞穂ちゃん奏ちゃん婚約
おめでとう!」
 口々におめでとうと、みんなが僕たちを祝福してくれる。また何か騙されて
いる気もするんだけど、みんなと友達になれて良かったと、僕は心から思った。

  続く
340test:皇紀2665/04/01(金) 20:17:51 ID:Qli1NzzI
「そうそう、ネタとして瑞穂ちゃんアルバムを借りてきたんだ。色々と面白い
写真あるよー、にゃはは」
 そう、まりやが言い出す。
「ちょっと、まりや、恥ずかしいんだけど…」
「瑞穂さま、こんなにアルバムがあるなんて、ちょっと奏、うらやましいので
すよ」
 そうか奏ちゃんは……孤児院で育ったから、写真を撮る機会も僕なんかより
少なかったのかも知れない。
「これからは、僕たち2人の写真でアルバムを埋めていこう」
 ちょっと恥ずかしかったけど、奏ちゃんはうなずいてくれた。
「そんな2人の記念写真を早速追加。奏ちゃんに全裸で迫った翌朝、ラブラブ
モード全開の瑞穂ちゃん奏ちゃん。撮影者はゆかりんでーす」
 うわっ、あの朝の写真だ。どうやってそんな写真を?! 奏ちゃんも僕に抱
きついたまま赤くなっている。
「あと、2人が最初に会った時の写真もあったよ」
 まりやが開いたページには古い写真。病院の廊下、泣いている幼い僕と、も
う一人の子供、このリボンの子は……
「これは、奏ちゃん?」
「はい……奏なのです」
 写真を見た奏ちゃんも驚いているようだ。
「当時を知る瑞穂ちゃんちの使用人の楓さんの証言では、育ての親である孤児
院の院長先生が亡くなられて泣きじゃくる奏ちゃんに、瑞穂ちゃんがいつの間
にか抱きついていて、可哀想だから連れて帰ると駄々をこねたそうです」
 そう言われたって……
「悪いけど、まったく覚えてないや。奏は覚えてる?」
「はい、あれは瑞穂さまだったのですね。今までお姉さんだと思ってました」
 うーん、認めたくないけど、この写真の僕なら、女の子と間違えられても不
思議無いかもしれない。
「奏は、少しだけ覚えています。瑞穂さまはとっても優しいお姉さまでした」

  続く
341test:皇紀2665/04/01(金) 20:18:26 ID:Qli1NzzI
 そんな僕たちに貴子さんが声を掛ける。
「お2人とも、ますますのバカップルぶりですわね」
 そうかな……
「そうそう、紫苑さまとの婚約、わたくしの両親も完全に諦めたようで、わた
くしからも、お礼を申し上げます」
 まりやが横から口を挟む。
「貴子、紫苑さまと婚約してたの?」
「まさか、私の兄と紫苑さまです。私の家は成り上がりですから、父は名家と
縁戚になりたかったのでしょう。紫苑さまの御実家に融資する代わりに縁談を
進めようとしてたんです。瑞穂さんの御実家で融資の肩代わりをされたので破
談となりました。どうせ兄のような色魔と紫苑さまでは釣り合いませんから」
「えー、貴子のお兄さんて、貴子のこと昔からすっごく可愛がってなかった?
冷たいなあ、さすが冷血人間だね」
「まー、そうおっしゃるのなら熨斗を付けてまりやさんに差し上げても宜しく
てよ。おーほっほっほ。こないだなんて、私の部屋に勝手に上がりこんでいて
気持ち悪かったですわ。まあ、それで破談の話を聞けたのですけど」
 ええと、貴子さんは女性用マンションで一人暮らしを始めたんだっけ。もっ
とも、実家に戻ったまりやが入り浸っているらしいけど。
「ごめん、それ、あたし」
「はい?」
「いや、だって貴子のお兄さんだから部屋で待ってて貰った方が良いよね?」
「なんですって、あなたは……」
 また、いつも通り喧嘩を始める2人。
「まりやお姉さまも会長さんも、仲がよろしいのですよ」
 まあ、そうなんだろうね。どっちが勝ったのか、まりやが記念写真を撮ろう
と言い出した。

  続く
342test:皇紀2665/04/01(金) 20:19:32 ID:Qli1NzzI
「中古なんだけどタキシードとウェディングドレス、手直しして用意したから」
 そう言って、まりやはウィンク。僕と奏は別の部屋で着替えることになった
んだけど。これは……
「何で僕がウェディングドレスを着るの?」
「サイズ直すのに苦労したんだから。奏ちゃんの方も可愛く作ったわよ」
 そう言われて、ブーケを受け取る。こんなものまで用意したのか。
「瑞穂さま、綺麗なのです」
 白いタキシードに着替えた奏とカメラを持った由佳里ちゃんが入ってきた。
「奏も、すごい可愛いよ」
 本心からそう思った。そんな僕たちに、由佳里ちゃんがカメラを構える。
「早速、一枚取りますよ」
 そして、この日の写真が2人でアルバムに張る最初の写真になった。

  終了
343名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 20:36:43 ID:HXxih8wg
>>testGJです。
流石演劇部ですね…って、実力高すぎですけど。
3443代目226:皇紀2665/04/01(金) 21:53:32 ID:eW1ce4VK
>>test氏
GJ!!クソ、やられた。そういうオチだったのか。まさに俺は4月馬鹿。
当てこすりに吊ってやる!(笑)

しかしながら最後がめでたしめでたしでとても微笑ましいのであります。
345at the time:皇紀2665/04/01(金) 23:44:04 ID:1Ko5mwxc
エロなし、シリアス、SSというより紫苑ルート7〜8話の貴子視点。
やっぱり激しくネタバレなので紫苑ルート未クリアな人は飛ばすが吉。


あれから、瑞穂さんは毎日紫苑さまのお見舞いに行っているらしい。
お二人は親友なのだから別におかしいことでも非難されるようなことでもない。
だが、何故か私の心には小さな痛みがあった。
…厳島という後ろめたさのせいで紫苑さまのお見舞いに行けないせいだろうか?
それとも他の理由が…?

そんなある日のこと。
いつになく意気消沈しているまりやさんを見かけた。
「どうなさったの?まりやさん」
「貴子か…」
「随分と元気がないようですが…貴女らしくありませんわよ?」
「ん…そうかもね」
「…理由を訊いてもよろしいかしら?」
「…まあ、貴子ならいいか。やっぱり瑞穂ちゃんが元気なくしてるのを見てると…さ」
「お姉さまが?毎日欠かさず紫苑さまのお見舞いに行ってらっしゃるのでしょう?」
「まあね。でも…帰ってくる度にとても辛そうな顔をしてるんだよ」
「そんなに紫苑さまの病状は悪いんですの!?」
「お、落ち着きなさいよ貴子。そういうんじゃないみたい。…元気のない紫苑さまと顔を合わせるのが辛くなってきた…って」
「紫苑さまが…」
心当たりはある。というよりも一つしかない。
やはり、十条家に対する圧力が強まったのだろう。
紫苑さまは僅かな猶予すら取り上げられ、未来を失ったことに絶望してしまっているのではないか。
「あたしも辛いよ…そんな瑞穂ちゃんを見るのも、そんな紫苑さまを想像するのも」
「…ええ」
私には曖昧な相槌しか打てなかった。
もし本当の理由を知れば、まりやさんだけでなく瑞穂さんや奏さんたちも私を許さないだろうから。
346at the time:皇紀2665/04/01(金) 23:45:02 ID:1Ko5mwxc
「予鈴か…貴子、あんたも教室に戻った方がいいんじゃない?」
「…そうですね」
「…大丈夫だよ、瑞穂ちゃんは強いから」
「……同感です」
確かに瑞穂さんは強い人だ。
籠の鳥にすぎない私などとは比べ物にならないくらいに。
だが、それでもあの人だって一人の人間だ。
哀しみや苦しみの余り心が折れてしまわないとは限らないのではないか?
あの日、屋上で悲痛な叫びを上げていた瑞穂さんを思い出す。
…不意に、胸が痛くなった。

…眠れない。
未来を閉ざされ全てを拒絶してしまった紫苑さま。
そんなあの方を見て心を磨り減らしていく瑞穂さん。
私の大事な人たちが苦しんでいる。
しかもその原因は私の家にあるのだ。
もし紫苑さまの相手が私の兄などでなければ。
そう、瑞穂さんのような人ならば幸せになれるだろうに。
……瑞穂さんならば?
そうだ、その手があった。
鏑木家ならば厳島家の力を抑え、紫苑さまと十条家を救うことが出来るはずだ。
少なくとも、紫苑さまと瑞穂さんが互いに憎からず想っていることは間違いない。
…いや、相思相愛と考えてもいいのではないか?
私が後押しすれば、瑞穂さんも動く決心が付くかもしれない。
よし、明日瑞穂さんと話そう。
少しだけ軽くなった心と、微かな胸の疼きを抱えて私は瞼を閉じた…。
347at the time:皇紀2665/04/01(金) 23:45:45 ID:1Ko5mwxc
そして翌日の昼休み。
私が3年A組へと足を運ぶと、ちょうど瑞穂さんが教室から出てきたところだった。
…あれがあの瑞穂さんなのだろうか?
すっかり憔悴しきり、いつもの穏やかな微笑みは影も形もない。
ショックを押し殺し、瑞穂さんに声を掛ける。
私の存在を認識し、瑞穂さんは無理に笑顔を作ろうとする。
そんな瑞穂さんを見ることに耐えられず、私は動揺を隠す為事務的に用件を伝えた。
快諾しつつも不思議そうな顔で私を見つめる瑞穂さんに背を向け歩き出す。
落ち着きなさい、私。
全ては放課後なのだから。
3483-206:皇紀2665/04/01(金) 23:49:36 ID:1Ko5mwxc
一応次回屋上での場面で一区切りの予定。
後半のプロットはあるものの、まだ観ていないのでいつ書けるかは。
因みに、at the time(そのころ)というのは仮タイトルだったり。
後半も書くなら変更するかもしれません。
当初『会長は見ていた』なんてタイトルを付けかけた…というのは冗談です。

>288
紫苑さんシナリオの貴子さんはいい味だしてますよね。
実は紫苑シナリオの彼女が一番人間的に成長してるんじゃないかなと思ってたり。
彼女のシナリオだと、瑞穂ちゃんに依存してって部分も少なからずあるようですし。
後半のプロットでは少しその辺にも触れていたりしますが…形になるものやら。

>289
いえいえいえそのようなことはありません!私のように無駄だらけで要点が全然纏まっていない巡回冗長物書きもどき、
略してCRM(cyclic redundancy mockwriter・注:超適当英語)が垂れ流したような駄文を持ち上げられては思わず黄泉比良坂を駆け下りてそのままどこかへ飛んでいってしまいそうですー!!

…恥ずかしさの余り似非一子ちゃん状態になってしまったことをお詫び申し上げます。
いや、詰め込みすぎて結局山場がわからなくなっている有様。
おまけに推敲も甘く、昨日書いたものですら今見直すと修正したいところが山のように出てくる始末。
他にもいろいろありますが、せめてもう少し読みやすい文章を描けるようになりたいです、はい。

>まとめサイトの中の人
ええっと、ある日の鏑木家ですが実は(6)(7)(8)も私だったり。
…というか、続きを書く人はいないのはやっぱり私が妙な脱線させたせいなのだろうか>ある日の鏑木家
リレー形式なのに一人で書くのもあれだし。
349名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/02(土) 00:02:47 ID:fzfRhewn
続き書くにはまず読まないとならんしな
350名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/02(土) 00:17:23 ID:TDROz5+f
>349
あ、いや。
もちろんゲーム本編とおまけシナリオは全て読了してます。
理解してはもらえないかもしれませんが、『読む』んじゃなくて『観る』なんです。
私の場合、脳内の妄想劇場で上演されたのを書き起こして形にしてますから。
プロットから自力で起こせないこともありませんが、駄作になることが多いです。

色つき、動きあり、声&効果音つきという多分豪華仕様なんですけど、不定期なのが難点だったり。
私の思考とは無関係な面もあるらしく、思わぬ展開を楽しめたりもしますが外れを引くことも。
351名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/02(土) 00:27:53 ID:rOj5gECQ
>>349はリレー小説の話だと思われ
352名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/02(土) 01:32:43 ID:76xCSSdG
1つ上はまだ皇紀だが、これはどうだろう?
3535時起き:2005/04/02(土) 07:32:50 ID:s/9R+/oP
  『チャイナ』


「瑞穂ちゃん瑞穂ちゃん! こ、こここここれ着て、絶対着て、
とにかく着て!」
 ある日の事。
 突然部屋にまりやが大きめの紙袋を抱えて乱入してきたかと
思うと、そんな事を口走りながら僕の方に迫って来た。
「うわっ、ま、まりや? 一体どうしたって云うの?」
「ええい、黙ってこれ着るの〜! とっとと脱げ〜っ!!」
 そんな事を云いながら、まりやは僕の服を脱がしはじめた。
「きゃっ、ちょ、ま、まりやっ……いや、一子ちゃんが見てるってー!」
「えーい、問答無用! それに今さらおねえ言葉使って逃げようっ
たってダーメ!」
「そ、そんなぁ……とほほ」
 ちなみに、その時ちらっとみた一子ちゃんは、余りの突然の出来事に
目を丸くしたまま成り行きを呆然と見て居る。
 ううっ、一子ちゃん助けて……。
「……やっぱり、お姉さまとまりやさんって、『幼馴染』なんて言葉じゃ
語れないような関係ですよねぇ……」
 ふと気がついたらしい一子ちゃんは赤くなって顔を被いながらも、
しっかりと指のすき間からこちらを観察しながらそんな事を呟いて居た。
「一子ちゃ〜ん……」
「そうは云われましてもお姉さま? 私は非力な幽霊三等兵な訳で
ありまして、まりやさんを止める事など到底敵わない訳なのですよ」
 とほほ……。

3545時起き:2005/04/02(土) 07:33:32 ID:s/9R+/oP
「………………」
「やーん、瑞穂ちゃん色っぽい〜」
 何やらまりやが頬に手を当ててぷるぷるして居る。
「お姉さまっ! に、似合い過ぎです! そして色っぽさ炸裂拳で
銀河の果てまで一気にびゅーんですよっ!」
 一子ちゃんは相変わらず誉め方もちょっと訳がわからない。
 と、言うか……。
「ねぇ……コレって、やっぱり……」
「うん、チャイナドレス♪」
「……やっぱりそうなのね」
 独特の光沢のある生地、花柄模様のプリント、腰の所まである
深いスリット。
 そして……。
「それに……何でガーターベルトまで……」
 ガーターベルトまで着させられた物だから、スリットの部分から
ベルトが時折チラリとのぞいて居る。
 そしてその先には、少し光沢のあるストッキング。
「ああ、それは『見せる』為のガーターベルトだから、それで良いのよ」
 『見せる』って、何を?!
 と言うか、ショーツの下にコレを履く物だからって事で、ショーツまで
脱がされた訳で……orz。
「にゃははは♪ まあまあ」
 そう言いながらまりやは、僕の頭に髪飾りをつけて、腕にリボンを
巻き付けた。
「はい、これで出来上がり〜。読者サービスよ、サービス♪」
「読者って何ですか……」


  終わり。
3555時起き:2005/04/02(土) 07:35:12 ID:s/9R+/oP
トップ絵を見てついむらむらとなって書いた一発ネタでした。

さ、仕事仕事……
356初代スレ123:2005/04/02(土) 08:16:14 ID:u2Llcyc7
GJ!
G〜J!
357名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 09:57:39 ID:KtAJ/P44
五時起き氏GJ!
そしてまりやもGJ!w
358名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 13:03:06 ID:hlBkZCkZ
こんなの書いてみました。
359名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 13:05:23 ID:hlBkZCkZ
ある日、僕は気がついたんだ。

まりやに女装させられてるってことが
逆に日常になってゆくと、僕は気持ちが変わっていった。

周囲に男が居ないとはいえ、男だという事に気がつかない。
それは、カンペキな女装を意味してる。

僕は、そう、その完璧な女装に魅せられてるんだ。

僕はやっと気がついた。
僕は女であるべきなんだ。
360名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 13:12:05 ID:hlBkZCkZ
性同一性障害にかかってしまったのか瑞穂は!?。
ジェンダーを捨て去った瑞穂の運命やいかに。

「瑞穂ちゃん…ごめんね。わたしのせいで。」
密かに思いを寄せるまりや

「恋愛は性別でするものではありませんわ」
恋しながらも、彼の動向を見守りサポートする紫苑。

「お姉さまのお世話ができる事が奏のしあわせなのですよ。」
奉仕をする事が何よりの幸せ薄倖の少女奏。

「お姉さま、お姉さま、お姉さま、あいたかったです…。」
マシンガントークは幽霊になっても健在一子。

「瑞穂くん・・・。」
そういったとき、彼女は強姦魔になる。非沙子。

そして…
「瑞穂さん。あなたは敵なのですか?」
瑞穂の前に立ちはだかる貴子。

6人の女と1人の精神病患者が織り成す組曲。
「お姉さまは処女になりたいっ」(僕は乙女になりたいっ)

激しくキボンヌ
361名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 13:13:17 ID:hlBkZCkZ
誰か足りないよ(笑)
END。

ということで、女装に目覚めていく瑞穂ちゃんキボンヌ。
362名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 16:34:32 ID:q/5rORz2
>>361
これもキボンかよ。
363名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 20:42:21 ID:KtAJ/P44
あからさまに足りねえ!wひでえ、センセすらいるのにw

まあ、おもいっきり誤字だけど。漢字からしてわざとっぽいが。w
364名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 21:25:29 ID:Ey+6gU/L
今日、何気に紫苑様ルート再プレイしてたんだけど。
肉好きな彼女ってさ、後半になると立ち絵はあっても一言も台詞が無いシーンとか沢山
あるんだよな。もう殆ど背景画のレベル。哀れで哀れで つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
3651話スレ241:2005/04/03(日) 01:11:59 ID:i4Y+QQN0
チャイナ瑞穂ちゃんSS、GJ!
みなさんのを見てると浮かんでいるのに書け(か?)ない自分のふがいなさを恨むばかりです…

激しい腹痛&発熱のため2、3日何もしません。
ただでさえ筆遅いのに…ウワーン
私情スマソ
366初代スレの45:2005/04/03(日) 10:21:05 ID:9RR3Oao3
みなさんGJです。

しかし、いきなり投下が途絶えてるますね。
まあこれまでの流れが速すぎたっていうのもありますけど・・・
みなさんやはりネタギレ・・・?
私も書き悩んでいますが・・・

常連さんじゃなくても、
初めてSSをお書きになった方も是非是非投下してください&書いたことのない方も脳内を垂れ流して書いてみてください!
私もココでの投下作品がSS初書きでしたし。
367名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 11:33:20 ID:BIrp83H5
たった一日で過疎か、おめでてーなw
368358:2005/04/03(日) 11:40:01 ID:1olq2UT/
>>363
あの誤字はワザと。
センセにはあんな立派な文字は必要ないと言う事で
ちょっと抜いてみた。

キボンだったけど、自分で書くかも?
でも、仕事があるからなぁ…
369名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 11:45:14 ID:BIrp83H5
だったら俺が書いてやろうかw

ある日の鏑木家

「もうこんな生活いやだーーーーー!!!」
パリーン・・・・ドサッ
跡取りが女装姿で自殺したというニュースが大々的に流れた鏑木財閥は没落した

リレーなんだから好きにやらせてもらったぜw
もういっちょいくか
続きキボンってのが多かったあれだw

処女は俺に恋してない

あの子のことを探偵に調べさせたら実は男だと言われた
・・・・それでもいいか
数日後、鏑木財閥の長男は女装して系列の女学校に行ってる変態だと暴露され、瑞穂は姿を消した
そしてあの子は今眠ったまま俺の目の前にいる
この地下室でずっと幸せに暮らそう

以上、これで二つの連載が無事完結しますた
次回作にご期待くださいww
370名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 12:04:25 ID:BYV5ySTH
せっかく書いてもらってなんだが、面白くない。
あたらしいの投下するならもうちょい楽しいの書いてくれ。
371test:2005/04/03(日) 12:15:48 ID:r5pKw9fW
おボク様 あなざぁ 『∞ 写真』
 奏さんを送ると言って、瑞穂は一緒に家を出た。もう、息子も結婚する年頃
なのかと思うと、うれしくもあり、寂しくもあり……幸穂の部屋に久しぶりに
入ると、先客がいた。
「おや、楓ちゃん」
「慶行様、幸穂お姉さまとお話に来られたんですか?」
 そういうと、何かを抱えたまま、久方ぶりに見る悪戯っぽい目をして出て行
こうとした。
「いや、ちょっといいかな。たまには一杯付き合ってくれないか、私や幸穂と」
「はい、それではお持ちしますね」
 抱えた物を床に置いて、出て行く。どうやら古いアルバムらしいが。瑞穂の
子供の頃からのものだな。見ているうちに、楓ちゃんがお酒を持って戻ってき
た。杯4つ、酒は角瓶だ。
「また、随分懐かしい酒だな」
「一度、お姉さまが寮に持ち込まれたことがありました。慶行様に頂いたと」
「ああ、女へのプレゼントなど分からなくてな。後で後輩が酷く酔い潰れたと、
なぜか文句を言われたよ」
 その娘さんは、もしかしたら、その時から体が弱かったのかもしれない。彼
女が亡くなった時の幸穂の憔悴した様子を思い出す。
「慶行様、幸穂お姉さま、一子さん、私」
 楓ちゃんが、順番に水割りを作っていく。
「瑞穂が結婚を考えるまでに育ったのも、楓ちゃんの御蔭だな」
「どうでしょう、あの日から楽しい思い出ばかりで、私が今日までやってこれ
たのは瑞穂さんがいらっしゃったからかも知れません」

  続く
372test:2005/04/03(日) 12:16:19 ID:r5pKw9fW
 そして、杯を軽く掲げてみせて、私も応じる。若い2人に幸あれと乾杯。
「アルバムを見て昔を思い出していたのかね」
「ええ、瑞穂さまの婚約発表の余興にとお貸ししていたのが戻りまして」
「そうか」
 それで、楓ちゃんは面白そうにしていたのか。
「大熱出してひっくり返った時の写真が目玉だったのかな?」
「いえ、周防院先生の病室で、瑞穂さんと奏さんを撮った写真がありました」
 ほお、あの時に写真を撮っていたのか。
「動物園に行かれるはずが、周防院先生が急に危篤になられて」
 普段は聞き分けの良い瑞穂が、あの時は珍しく駄々をこねたので、病院まで
連れて行ったのだが。
「病院で先生の娘さんといつの間にか抱き合っていて、しかも、かわいいから
持ち帰るんだと言い出して、こりゃ将来色魔になるんじゃないかと懸念したも
んだが」
 アルバムを開く。写真はすぐに見つかった。病院の廊下、泣いている幼い奏
さんと瑞穂。
「2人は覚えているのかなあ、こんなことがあったこと」
「唯一の身寄りを亡くされた日のことですから、奏さんは覚えてらっしゃるか
も。でも、もしかしたら瑞穂さんのことは女の子だと思われたかも知れません」
 まあ、写真を見て2人とも驚いただろう。

  続く
373test:2005/04/03(日) 12:17:00 ID:r5pKw9fW
「瑞穂を恵泉にやれという親父の遺言には迷ったが、瑞穂は随分しっかりして
きたよ。私の叱責に引くどころか、好きな娘さんのことで我がままを言う」
「瑞穂さんは御立派になられました。性格は慶行様に似られましたね」
 そうだな、あれは幸穂似だとばかり思っていたが。
「私が良い親でないからかも知れんが。子供が大きくなるというのは、ずいぶ
ん不思議な感じがするものだ。楓ちゃんは、奏さんをどう思った?」
「ふふふ、素敵なお嬢様ですわ。お姉さまも喜ばれてらっしゃると思います」
 そうか。
「楓ちゃんがそう言うなら安心だ。奏さんだけでなく友達も増えたようだしな」
 アルバムをめくる慶行の手が止まる。新しいアルバムの一番最初に貼られて
いたのは、恵泉の制服を着て奏さんに抱きついた瑞穂の写真。うれしそうに瑞
穂がウェディングドレスを着ている写真。
 やはり育て方を間違えたかも知れないと思い悩む父親だった。

  終了
374名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 12:49:49 ID:BYV5ySTH
スバラシイノキター!
375名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 14:13:15 ID:DZWPKTsC
まともなお父さまだw
376名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 15:22:18 ID:Fj3c2YK6
(´-`).。oO(遅筆ながら、書いています)

>>373

まともな瑞穂パパってのは、初めてかも知れない。
377471 ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:45:22 ID:aDT1dhLz
pack of lies

瑞穂男バレのやつですよ。
378pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:45:56 ID:aDT1dhLz
 ここは恵泉女学院のとある一室。
 あるのは質素な丸テーブルと椅子、何故か照明は裸電球、と言う部屋に秘密裏に御門まりや、
十条紫苑、厳島貴子の三名が集まっていた。

「今日集まってもらったのは、これ」
 まりやはそう言って、一部の校内新聞をテーブルの上に置いた。

『お手柄!エルダーシスター・宮小路瑞穂、誘拐犯を撃退!』

 と言う見出しから始まっている。
 実は昨日の終業式が終わった後、瑞穂は図書室に立ち寄って帰りが遅くなって、その際に誘
拐犯に襲われた。しかし誘拐犯達にとっては不運な事に、護身術と称した各種格闘術を身に付
けていた瑞穂は、逆に誘拐犯を返り討ちにしてしまった。
 それだけなら良かったのだが、その現場を写真部と新聞部の部長に目撃されて、写真まで取
られて記事にされていたのだ。
 記事の中には一連の写真も掲載されていて、その写真の見出しには『誘拐犯と戦うお姉さま、
セクシーショット連発!』と書いてある。恐らくは動きを妨げないようにと、瑞穂がスカートを裂い
た後の立ち回りの写真が何枚か掲載されていた。スカートを裂いて立ち回ったものだから、当
然下着も見えていた訳だ。

379pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:46:28 ID:aDT1dhLz
「これなら私も見ましたが、それが何か?」
「問題はこの写真よ。ここ」
 疑問を示す貴子に、まりやは一枚の写真を指差して答えた。その写真には裂けたスカートが
めくれて下着が見えている瑞穂の姿が写っていた。
「まりやさん……よろしいのですか?」
 写真を見て何かに気が付いた紫苑がまりやに問いかける。
「いいんです。もうかなり噂は広まっちゃってますから」
「そうですか……」
「もう、一体何なんですか?」
「ここ。良く見てみてよ」
 そう言って、まりやは再び写真のある一部を指し示した。
「お、お姉さまの、し、ししし下着が写ってますわね」
「はいはい興奮しないの。で、ここんとこ良く見て。膨らんでるように見えない?」
「……?」
「だからさ、瑞穂ちゃんのショーツの股間のところ、膨らんで見えない?」
「言われてみればそうですね……栓抜きでも隠し持っているのでしょうか?」
 まりやは椅子からずり落ちた。
「あんた、瑞穂ちゃんを何だと思ってんのよ……どこぞの悪役レスラーじゃないっての」
「じゃあ……ま、まさか、大麻!?」
「○新でもないわよ!まったくあんたって奴は……あーもう、瑞穂ちゃんはね、男なの、お・と・
こ!」
「はぁ……そうでしたの……って、お、男!?」
 貴子はついテーブルに手を突いて立ち上がる。
「ちょっと、落ち着きなさいよ、貴子」
 まりやの言葉で自分の姿勢に気が付いて、貴子は席に着いた。
「……瑞穂ちゃんがここに通う事になったのは、お爺さまの遺言でね」
「し、しかし、そんな事がまかり通るものなのですか?」
「まかり通ったのよ。んで、ここからが本題」
「こ、これ以上何があるというのですか!?」
380pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:47:01 ID:aDT1dhLz
「……その噂、既に流れ始めているのですね、まりやさん」
 うろたえる貴子をよそに紫苑が落ち着いた口調で言った。
「ええ、そうです。私の耳にも入ってきたくらいですから、恐らく明日の朝には学院中に広まって
いる事でしょう」
「でも、どうするのですか?」
「そこで、貴子の出番って訳です」
 まりやは貴子の方に振り向きながら言った。
「と、その前に。貴子には聞いておかなきゃいけないことがある」
「な、なんですの?」
「うん、あんたがどっちの味方に付くかって事よ。あんたにやって欲しい事はあるけど、ムリヤリ
ってのはあたしも嫌だしね」
「どういう事です?」
「んー、この噂が広まったらね、瑞穂ちゃんを排斥しようとする動きが出てくるわよね。そんでね、
そのうち瑞穂ちゃんの周囲にも嫌がらせをしようとする連中も出てくるわけよ。そうなったら瑞穂
ちゃんの事だから、これ以上迷惑はかけられない、なーんて事を言って自分から出て行っちゃう
わけ。そこでさ、貴子が『恵泉の生徒らしからぬ行動は起こさないように』って先に念押ししとけ
ば、それは防げると思うんだ」
「……でもそれなら、紫苑さまが仰った方が効き目があるのではありませんか?」
「こういうのは貴子の方が向いてるわ。必要以上に風紀を乱すなって警告するんだから、生徒
会長が言った方が都合が良いのよ」
「そうですか……」
「悪いんだけど、悩まないですぐに決めちゃって欲しい。すぐに動き始めないと手遅れになるか
もしれないから。……別に敵になる事を選んでも恨んだりはしないから安心して」
 貴子は少しの間、考える素振りを見せていたが、やがて決意したように顔を上げた。
「……分かりました、協力しましょう」
「そっか、ありがとう。そう言ってくれると思ってたよ。……やっぱ貴子も瑞穂ちゃんとお別れした
くないんだ」
「ええ……えっ!あ、え、いえ、その……」
「いいっていいって、あたしも同じだから。それじゃ、これからの作戦を……」
381pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:47:32 ID:aDT1dhLz
「話は聞かせてもらったわ。その計画、私も参加させてもらうわ」
「!!」
 一体いつから潜んでいたのか、テーブルの下からごそごそと小鳥遊圭が這い出てきた。
 まりやや貴子は圭の行動に面食らっていたが、紫苑だけはさすがと言うべきか、動じていなか
った。この一年、瑞穂の次に親しく接してきたのは伊達ではなかった。
「圭さん……一つ聞いてもよろしいですか」
「何でしょう、紫苑さま」
「なぜ、私たちに協力しようと思ったのですか……?」
「瑞穂さんがいた方が面白いに決まっているからです。それはもう色々と」
 不敵な笑みを浮かべながら圭は答えた。
 こうして瑞穂お姉さまを退学から護ってエルダーのまま卒業させる委員会、通称・姉会が結成
された。

「それじゃ、これからの方針を話し合いましょう」
「そうですね」
 そして、話し合いが始まった。
 基本的には相手に何かをされる前に動きを封じてしまうと言う方向で話は進んでいった。
 まず、貴子が翌日の昼休み、一般生徒に向けて校内放送で警告を出す。
 次に、悪い噂の拡散や情報操作を防ぐ為に、何としてでも押さえなければならないのは受付
嬢連合だったが、これに関しては連合の筆頭が圭の親友の高根美智子と言う事もあって、圭が
牽制する事で抑えられるだろう、という事で落ち着いた。
 そして、瑞穂のサポートはまりやと紫苑で行うことになった。
 一般生徒の方はこれである程度抑えられるだろう。問題は教師たちの方だったが、とりあえ
ず最低でも緋紗子先生と学院長は味方のはずなので、そちらの方はもう少し出方を見て考えよ
う、と言う事になった。

382pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:48:07 ID:aDT1dhLz
 一通り話し終わって、解散しようとした時。
「そうそう、今回の主犯を捕獲してあるけど、会う?」
 圭が言った。どうやら新聞部と写真部の部長を捕まえて演劇部の部室に連行したらしい。
「証拠品も持ってこさせてるけど、どうする?」
「そうね、とりあえず話を聞いてみて、写真とか没収してしまいましょうか」
 まりやのその言葉を合図に、一同は演劇部部室へと向かった。

「横暴です!こんなことが許されるとでも思っているのですか!」
「そうです!私たちは報道の自由に則って行動したまでです!」
「あーん、部長、早く戻ってきてくださいよー」
 演劇部部室の前に着くと、新聞部長と写真部長、それに演劇部員の声が聞こえてきた。
 しかし、部室に入った圭たちの顔を見ると、それまで騒いでいた彼女たちは絶句してしまった。
しかし、それも無理はない。何せ、先代エルダーの紫苑、生徒会長の貴子、運動部から絶大な
支持を受けるまりや、そして結構幅広く固定ファンを持っている圭と、学院内の人気ランキング
トップ5の内、四人までもが揃っていたのである。ちなみにもう一人は言わずと知れた瑞穂その
人である。
 それはさておき。
 哀れ新聞部長と写真部長は証拠品として瑞穂の写真やネガ、データ等を全て没収されてしま
った挙句、それぞれまりやに『東スポ』『フライデー』と言うあだ名を付けられてしまうのであった。


383pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:48:39 ID:aDT1dhLz
 まりやが寮に帰ると、昨日の出来事を説明する為に警察に出頭していた瑞穂は既に帰ってき
ていたので、事情を説明する為に瑞穂の元に向かった。
「瑞穂ちゃん、いる? 入るよ」
 まりやは勝手知ったる瑞穂の部屋にノックも無しに入っていった。
「はぁ……ノックくらいしてよね、まりや」
「まあいいじゃないの。あたしたちの仲なんだし」
「それで、何か用事? 今日は一日中警察にいて疲れたから、もう休みたいんだけど」
「大事な用よ。これ、見て」
 そう言うとまりやは今日配られた校内新聞を瑞穂に手渡して、問題の写真を示した。
「何これ?」
「昨日の瑞穂ちゃんの大立ち回りが、よりにもよって新聞部と写真部にスッパ抜かれてたのよ。
で、この写真。股間が膨らんでるから男なんじゃないか、って噂が流れてる。これには胸の事は
書いてないけど他にも目撃者がいたみたいでさ、胸パッドの事もばれちゃってる。多分明日に
は大騒ぎよ」
「そうなんだ」
「……それだけ?」
「僕としては昨日ああしていなかったら良くて大怪我、最悪死んでたかもしれないからね。相手
の一人はちゃんとした戦闘訓練を受けたプロみたいだったから、こうして無傷でいられる事に文
句は言えないよ。それに男だってばれた事も、最初にここに来た時から覚悟だけはしてたから
ね。それで取り乱したりするのも格好悪いし」
「そっか。……瑞穂ちゃんはどうしたいの?」
「どうにも。なるようにしかならないんじゃないかな? 今更転校するのもなんだから、みんなが
いてもいい、って言ってくれるなら卒業までここにいようとは思うけど。でも、迷惑を掛けるような
ら僕は出て行くべきだろうね」
「やっぱりそういうこと言っちゃうか、瑞穂ちゃんは」
 そう言ってまりやは立ち上がると、扉に向かった。
「瑞穂ちゃんはさ、何も心配しなくていいよ。今まで通りに過ごせばいい。あとはあたしたちで何
とかするから。ただ、明日大騒ぎになる事だけは間違いないから、それは覚悟しておいてね。…
…そうそう、由佳里や奏ちゃんには私から伝えておくよ」
 それだけ言うと、まりやは部屋から出て行ってしまった。

384pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:49:13 ID:aDT1dhLz
「はぁ……まいったな」
 瑞穂はまりやの出て行った扉を眺めながら呟いた。瑞穂にしてみれば、昨日の放課後から気
の休まる時は無かったのだ。そこにきてこれである。
「とにかく、今は休もう……」
 瑞穂は着替えもそこそこにベッドに倒れこむと、そのまま眠りに落ちてしまった。

 翌朝、瑞穂はいつもと同じように、朝食を摂る為に食堂に降りていった。
「おはよう、奏ちゃん、由佳里ちゃん」
「あ……お、おはようございます」
「おはよう、ございます」
 ある程度予想できていたとは言え、朝食はかなりぎこちないものになってしまっていた。奏も由
佳里も瑞穂にどう接して良いか分からなくなってしまっているようで、挨拶だけは何とかしたもの
の、それ以後は終始無言で終わってしまった。
「由佳里と奏ちゃんは先に行ってて。あたしは瑞穂ちゃんと話があるから」
 朝食を済ませて登校しようとした時、まりやが奏と由佳里を先に送り出した。
「まりや……?」
「今はこの方が気が楽でしょ。いつまでもこのままって訳にもいかないけどさ」
「そうだね」
「それじゃ本題。今日は瑞穂ちゃんが男かどうか確認しようとする娘たちが押し寄せるだろうけ
ど、いちいち相手にしない事。そこら辺のことは紫苑さまにも頼んであるから、紫苑さまから離
れないようにね」
「うん、わかったよ」
「それじゃ、行ってみますか」
 そうして瑞穂とまりやは校舎へと向かった。
385pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:50:21 ID:aDT1dhLz
 噂が広まっている為か、登校中に挨拶してくる生徒たちの態度もどこかぎこちないものがあっ
たが、隣にいるまりやがいつも通りの態度を取っていたので突っ込んだ質問をされる事はなか
ったし、教室では、今度は紫苑や圭がいつもと変わらずに接してくれていたので、瑞穂は周りの
反応を極力気にかけない事にした。
 いざ授業が始まってしまえば集まってきていた生徒たちはそれぞれの教室に帰っていくし、授
業間の休憩時間もそう長いものでもない。問題は昼休みだったが、それも昨日立てられた計画
通りに貴子が校内放送を行えば、ある程度は抑制できるはずだった。
 しかし、昼休みが始まって掛けられた放送は全く別のものだった。

『三年A組、宮小路瑞穂さん。至急、生活指導室に来てください。繰り返します。三年A組、宮小
路瑞穂さん──』
386471 ◆471.Pt54hU :2005/04/03(日) 17:51:01 ID:aDT1dhLz
続く。
387猫野:2005/04/03(日) 17:59:24 ID:wDdcgDxP
すごくいいです〜
続きが楽しみです〜
388名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 17:59:59 ID:a2DKapa5
さあ、切なくなって
            ま
              い
                り
                 ま
                 し
                  た
3894-385:2005/04/03(日) 19:29:08 ID:7F203KAs
みなさんGJです。
個別に感想を書きたいのですが…最近多忙ですので…
390名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 20:52:09 ID:TgkQ1lHP
>190-191から続けてみるテスト。

ある日の鏑木家

「…これで終わりですか?」
「一応ね。…うん、問題なし。お疲れさま、みず…じゃなかった、千穂さん」
「お疲れのようですね、千穂さん」
「ええ、ちょっと。ただ着替えるだけでなく、自由に動けるかどうかも確かめる必要もありましたから」
「歩き方までチェックされない分、専業モデルより楽だって考えなさい」
「ところでまりやさん、どうやって正確なサイズを調べたんですの?」
「ん?そりゃ社員全員受けてる健康診断のデータからに決まってるじゃない。この前やったばかりだからうってつけでしょ?」
「それでもラインは解らないと思うのですが…特にこのスーツなんかよっぽどきっちり寸を取らなければ着る事すら出来ないのでは?」
「うん、だからその辺はキスする振りして調べた」
「なっ!?ま、まりやさん!瑞穂さんには紫苑さまという人がいらっしゃるのにあなたという人は!」
「…何考えてるのよ貴子。はは〜ん、もしかして…」
「ち、ちちち違います!わわ私は秘書として社長の乱行の噂が広まるのは問題だと判断しその芽を摘むべく処理しようと考えているだけであってあなたが妄想しているような破廉恥な真似は想像すらしては…」
「…あー、解ったから落ち着きなさい貴子。軽い冗談なんだから」
「…は?冗談?」
「そ、この前瑞穂ちゃんの家に行った時、幼馴染のスキンシップの一環って感じで抱きついて計ったのよ」
「うふふ、「ま、まりや!紫苑が見てるから!」なんて焦る瑞穂さんも可愛らしかったですわ」
「…普通、幼馴染だからって異性に抱きついたりはしないと思うのですが」
「まあ、そこはほら、瑞穂ちゃんだから。…ん?どうしたの、千穂さん」
391名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 20:52:53 ID:TgkQ1lHP
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;    '´  `ヽ  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;   . /  j ))ソ    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;    / / / /ノ      ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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「…いえ、我が兄ながら情けないと思っただけです」
「まあまあ、幼馴染の仲がいいのは良い事じゃない?」
「それはそうですけどね…」

「あら、もうこんな時間ですか?」
「本当だ、6時過ぎてるね」
「それでは皆さん、そろそろお帰りになられた方がよろしいのでは?夜道の一人歩きは危険ですから」
「ああ、それは大丈夫。あたしたちもここに泊まるから」
「……は?」
「一人になると人目がないから無意識のうちに男が出ちゃうかもしれないでしょ?日程に余裕なんてないんだし、寮の時みたいに女同士の共同生活やった方が効率いいと思ってね」
「うふふ、旅行みたいで楽しそうですわ」
「え…えええ!?いや、流石にちょっとそれは…貴子さん、やっぱりそれって問題ですよね?」
「…いえ、まりやさんの意見にも一理ありますから」
「そ、そんな…で、でも寝る場所があるでしょう?」
「ああ、安心して。千穂さんとあたしたちの部屋は別にしてるから。その為に大きめの部屋を借りたんだしね」
「本当は私は一緒の部屋になりたかったんですけど…風紀上駄目だって怒られちゃいました」
「当たり前です、紫苑さま…」
392名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 20:54:21 ID:TgkQ1lHP
「というわけで。こっちの服も着てもらいましょうか!」
「…ってどこから取り出したんですかそのトランク!?」
「細かいことは気にしない!さっきのは人前で着るから抑えてたけど、こっちは思いっきり趣味に走らせてもらったからね!メイド服とか巫女服とか喫茶店風制服とかチャイナとかドレスとか!」
「い、いつの間にそんなものを…」
「己の趣味の為ならば人は限界を超えられるのだよ、貴子君」
「お、恐ろしいですわね…」
「あら?まりやさん、確かこの服は男の方の服では?」
「あ、ガクランのことですか?それはほら、倒錯的な魅力があるかなってことで」

     学生服姿が倒錯的…

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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;     , ´/ `´ ヽ  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;     l !ノノリ))ソ  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;     ノ, /i _i ノ_i リ    .;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;      ( とんU )U ノ     ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;

「そりゃ千穂さんは女性だからねぇ」
「なるほど、男装の麗人ということですか」
「せめて中性的な魅力と云っておあげなさいな、まりやさん…」
3933-206:2005/04/03(日) 20:58:42 ID:TgkQ1lHP
at the timeが本編の台詞のほとんどを引用したせいでやたら長くなってしまった。
削るか再構成するか悩んでいる。
だから気分転換に書いた…ということで。

軌道修正になっているようでなっていない、先に進んでいるようで進んでいない連投ですまん。
3941スレの301:2005/04/03(日) 22:11:18 ID:jXgINBkG
一子ちゃんメインで書いていると宣言してから既に3週間 orz
ようやく形になったので、投下します。

だらだらと書いていたら40KB越えちゃいました。結構長いです。スマン。


題名:「Dear Mom」

・ 時期的には学院際のあと、一子ちゃんの誕生日あたりのお話。
・ シリアスに書いたつもり……
・ 一子ちゃんメインです。
・ チェック漏れが激しいと思いますが、その際には突っ込んでいただければ幸いです。
・ 学院祭は月末と言うにはちょっと早いけど11/23。学院祭の後じゃないと瑞穂とまりや
が仲違いの真っ最中……になっちゃいますんで。

・カレンダーは去年のを参考にしてます。
395Dear Mom:2005/04/03(日) 22:12:09 ID:jXgINBkG
学院祭が終わった11月末の事。思い返せば騒がしいことや大変な事も多かったけれど、や
り遂げた充実感と、みんなとの繋がりを実感できたことが嬉しかった。そして、また日常
が繰り返されると思われた、そんな日のこと。ホームルームの後、僕は緋沙子先生に呼び
止められた。

「瑞穂さん」
「あ、緋紗子先生。なんでしょうか」
「学院長がお呼びですよ」
「どんな用事でしょう?」
「さぁ……。あ…そういえば、もうそんな時期ですね。行ってみればわかりますよ」
「??」

一体どんな用事だろう。僕はクラスの皆に「ごきげんよう」と挨拶をしてから学院長室に
向かった。

コンコン。ゆっくりとドアを叩く。中からは学院長の声。

「どうぞお入り下さい」

僕は緩やかに、静かに、ドアを開ける。それが恵泉でのたしなみ。

「失礼します」

挨拶の後、また緩やかに、静かにドアを閉める。学院長は執務中の様子だったが、僕を認
めると、書類を片付けながら、こちらに目を向けた。

「いらっしゃいましたね。瑞穂さん。学院祭はご苦労様でした」

いつも通りの穏やかな表情。
396Dear Mom:2005/04/03(日) 22:12:56 ID:jXgINBkG
「いいえ、私も十分楽しませて頂きました。それで、どのようなご用件でしょうか、学院
長」

「次の土曜日、瑞穂さんは寮にいらっしゃいますか?」

「……特に用事もありませんし、学院祭が終わったばかりですから、寮でのんびりと骨休
めをしようかと思っています」

僕がそう答えると、学院長は得たりと思ったのか、にこやかにこう言った。

「そうですか……ところで、瑞穂さんは今のお部屋を、かつて幸穂さんが使っていたとい
う事はご存知でしたね」

「はい」

「実は、少し言い辛くて今まで黙ってしまっていたのですが、幸穂さんが在学の頃……あ
の部屋で一人の生徒がお亡くなりになっているのです」

問い返すまでも無い。一子ちゃんのことだ。今まで笑顔だった学院長の顔が少しだけ曇る。

「寮の後輩からその話は聞いています。なんでもその方は、私の母をとても慕っていらし
たと」

まさか幽霊になって今でも校内をさまよっているなんて、とてもいえないけど。

「それはそれは健気で良い子だったのですよ、高島さんは……。その高島さんのお母様が
次の土曜日、瑞穂さんのお部屋にお伺いしたいとおっしゃっているのです」

え、一子ちゃんのお母様が?

「そ、そうなのですか」
397Dear Mom:2005/04/03(日) 22:13:56 ID:jXgINBkG
「はい。実は高島さんの誕生日が11月25日なのです」

そういえば前に奏ちゃんや由佳里ちゃんと占いの本を見ていた時、一子ちゃんが「わたし
の誕生日は11月25日なんです」って言っていた。でも……それって今日だ。昨日から由佳
里ちゃんが「とびっきり大きなケーキを作ってますよっ」って張り切っているし、今日は
一子ちゃんのお誕生会をする予定なのだから。

「今日は11月25日ですよね。何故誕生日当日ではなく、次の土曜日なのですか?」

「今の時期、学院祭があることをご存知ですし、こちらが忙しい最中にいらしても迷惑が
かかってしまうとお考えなのでしょう。それに平日ではなかなか都合がつかないでしょう
し」

きっと細かい日程まではわからないのだろうし、もしかしたら学院祭が終わった後でも数
日は後片付けやなにやらで忙しい事をご存知なのかも知れない。

「そうですか。それでは、私はかまいませんとお伝え願えますか」
「わかりました。そう伝えておきますね。それにしても……」
「なんでしょうか、学院長」

学院長は少しだけ笑いながらこう言った。

「高島さんのお母様は幸穂さんとお会いになったことがあるのですよ。瑞穂さんを御覧に
なったら、驚かれるかもしれませんね。ほんと、幸穂さんにそっくりなのですから、瑞穂
さんは」

あははは……ちょっと複雑。でも、一子ちゃんには最高の誕生日プレゼントになりそう。
僕は、一子ちゃんが喜ぶ顔を想像しながら帰途についた。

「瑞穂ちゃん、何ニヤニヤしてんのよ」
と、まりやにからかわれながら。
398Dear Mom:2005/04/03(日) 22:14:47 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────

その日の夜。

部活だった奏ちゃんや由佳里ちゃんもいつもより少しだけ早く帰ってきて、一子ちゃんの
お誕生会の準備が始まった。本当は皆で何かプレゼントをしようと思っていたのだけれど
も、幽霊は服も着れないし、アクセサリーだって身につけられないし、そもそもプレゼン
ト自体に触れない……ともかくお誕生会だけでもということで。

「あの〜……お祝いしていただけるのは大変嬉しいのですが……わたし、死んじゃってい
るんですけど……よろしいのでしょうか?」

いや、それはそうなんだけどね。するとまりやは飲み物のコップを並べながらこう言った。

「それを言っちゃ元も子もないよ、一子ちゃん。お誕生会なんてもんは、誕生日にかこつ
けて皆が楽しめれば、それでいいの。如何にも『お祝いしてあげるんだから感謝しろ』っ
て感じがするお誕生会よりはずっと良いいでしょ」

そうか。確かに一理あるかも。

「それに私達にとって一子さんは生きている人と何もかわらない大切なお友達なんですか
ら、お祝いくらいさせてください」

そう言いながら由佳里ちゃんは自作のケーキを厨房から持ってきた。綺麗に飾り付けされ
たイチゴのショートケーキは本職顔負けの出来栄え。しかも結構大きい……。4人で食べ
きれるのかな……。
399Dear Mom:2005/04/03(日) 22:15:31 ID:jXgINBkG
「ねえ、由佳里ちゃん。そのケーキ、少し大きくはないかしら?」

「あは。そうなんですよ。本当だったら4号か5号くらいで良いんですけど、寮のオーブン
って大きいから7号の型で焼いちゃいました。でも大丈夫です。一子さんのお祝いには丁
度いいくらいです」

あの……なにが丁度良いのか、全然理屈が分からないのだけど……。

「そうなのですよ。せっかく由佳里ちゃんが心を込めて作ってくれた、いちごさんのシ
ョートケーキなのです。生クリームタップリでふわふわで、おっきくて、とっても甘々な
のですよ〜☆」

奏ちゃんは一子ちゃんのお祝いよりもショートケーキの方が楽しみな様子。目が輝きすぎ
てお星様が散っているし……。

「でも、わたしは幽霊ですからケーキも食べられませんし、ローソクもふ〜って消せませ
んし、そもそも死んでから22年も経っているからやっぱりローソクは30本オーバーで三十
路どころか四十路間近の危機ですかっ!!てな感じで、出来ればその分は勘弁していただ
きたく、しかしながらそれはそれで永遠の女子校生? ヤッホーこんちくしょう……で…
…あの……よろしいのでしょうか……わたしなんかが皆さんに祝って頂いて……」

「だから〜、いいって言っているでしょ。あたしたちが祝いたいんだから、素直に祝って
もらうのが筋ってもんよ。ケーキはね……ほら」

そう言って、まりやは僕を指差した。あ、そうか。イチゴ大福の時と同じで、一子ちゃん
に体を貸してあげればいいんだ。

「私? うん。いいけど……」

一子ちゃんにイチゴ大福を食べてもらった時には、少しばかりダイエットしなくちゃなぁ
って思ったものだけど……。まぁ、こういう場合、仕方ないよね。
400Dear Mom:2005/04/03(日) 22:16:19 ID:jXgINBkG
「お姉さま、よろしいのですか?ほんっと〜〜〜〜〜に宜しいんですか? わたしってば
嬉しさにかまけて見境無く食べちゃいますよ? ショートケーキをホール丸ごと食べちゃ
うくらいの勢いですよ? 鶏モモだって何羽分か分からないくらいむさぼっちゃいます
よ? 飲み物だってミッキーやグレッグもビックリ、ジェット機並みの勢いで飲み干しち
ゃいますよ? もしかしたらガロン単位で飲んじゃって燃料食いのドラ猫とか言われちゃ
うかもしれませんよ?」

「いや、あの……そこまでいわれると……」

あのおっきなケーキを丸ごと一子ちゃん(=僕)が食べる姿を想像すると、それだけで胃が
もたれそうな気が……。というか、ミッキーやグレッグって……誰?

「うんにゃ、全然構わん。よきにはからえ、喰いまくれっ!!!!!」

えっ!! 僕の意向は完全無視ですか? まりやさんっ!

「すみ゛ま゛ぜん〜おね゛ぇ゛〜ざま〜〜〜〜。う゛れじいです〜〜〜」
「しょ、しょうがないわね。いいわよ……お誕生会が終わったらジョギングでもしようか
しら……」

由佳里ちゃんが毎日走っているあのコースって一周何Kmあったっけ……。一体一周で何カ
ロリー消費出来るやら……。

「準備完了っと。それじゃ行くわよっ!!せーのっ!!」

まりやの掛け声と共に、ぱんぱんぱんぱんっ!と一斉にはじけるクラッカー。飛び散る
テープと紙ふぶき。

「一子ちゃん、お誕生日おめでとう!」
「おめでとうございますなのですよ〜」
「一子さん、おめでとうございます」
「おめでとー!!」
401Dear Mom:2005/04/03(日) 22:17:06 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────
あの後、まりやが怪しげなオヤジ的かくし芸(安来節ではない)を披露したり、由佳里ちゃ
んが奏ちゃんの伴奏付でマジックを披露したり(ピアニカは使っていない)、僕は舞を披露
したりした(扇子に『あっぱれ』なんて書いていない)。物をプレゼントできないなら、何
か他のものをと考えた僕らからの贈り物。一子ちゃんは「こんな居候幽霊に過分な贈り物、
有難うございますっ」と、涙を流して大げさなくらいに喜んでくれた。

そして一子ちゃんは宣言どおり、喜びにかまけて直径20cmはあろうかというケーキの半分
以上を平らげてしまうわ、鶏モモはひたすら食べまくるわで、大変なことになってしまっ
た。ジョギング? とんでもありません。絶対無理。無理ったら、無理。

「すっごく楽しかったです、お姉さま。あ、でも調子にのってちょっと食べ過ぎてしまい
ましたね。ほんと、申し訳ありませんでした。一子ってばぁ、お茶目さんなんだから。て
へ」

『てへ』じゃありません、『てへ』じゃ。

「おかげで私は動くのも精一杯ですよ、もぅ……。お腹の中が生クリームや鶏モモでいっ
ぱいだと思うと、それだけで気持ち悪くなりそう」

いや、もう十分気持ち悪いんだけどね。

「でも、22年ぶりに食べるイチゴのショートケーキがこんなに美味しいなんて思いません
でした。お姉さまに感謝、感謝なのですっ!」

「そう、それならよかったわね」

「はいっ!」

元気に答える一子ちゃんを見ると、お腹の苦しさも「ま、いいか」って気になってくる。
そうだ、あの事を言わなくちゃ。きっと喜んでくれるに違いない。
402Dear Mom:2005/04/03(日) 22:17:54 ID:jXgINBkG
「ところでね、一子ちゃん」

「なんですか、お姉さま」

「今日、学院長から伺ったのだけれど、次の土曜日に一子ちゃんのお母様がここにいらっ
しゃるそうよ。一子ちゃんは幽霊だから、お母様は少し驚きになるかもしれないけれど、
逢ってみてはどうかしら」

「あ、そうなんですか」

そっけなく。本当にそっけなく、他人事のように一子ちゃんは言った。

「そうなんですかって……一子ちゃん、お母様がいらっしゃるのよ? 逢えるのよ?」

「ええ、わかっています。でも、わたし死んじゃってますしねぇ……無理ですよ」

そう言って、一子ちゃんは少しだけ笑った。

「無理って……きっとお母様もお喜びになるわ。それに一子ちゃんはお母様に逢いたくな
いの?」

「わたしにはお母様に逢う資格が無いんです」

一子ちゃんは、はっきりとこう言った。

「資格が無いって……そんな事……」

「いいえ、お姉さま。わたしには、その資格がないんです……。さ、お姉さま。明日もあ
ることですし、ささっと寝てしまいましょ」

一子ちゃんはそういうと、詮索無用とばかりに布団にもぐってしまった。そして僕は、何
も声をかけることが出来なかった。
403Dear Mom:2005/04/03(日) 22:18:34 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────
次の日の朝。僕はいつも通りの時間に起きた。廊下に出るとちょっとだけ寒い。そうか、
もう少しで12月だものね。一子ちゃんはまだ眠ったままだ。起こすのも可哀相だし、昨日
の事もあって声をかけ辛かった。

「おはよう、奏ちゃん」
「お姉さま、おはようございますなのです。今お茶をご用意いたしますのですよ」

そう言うと、奏ちゃんは厨房にパタパタと入っていった。

「おはよ、瑞穂ちゃん。それにしても、すっかり寒くなってきたよねぇ。わ、青森なんて
最低気温が零度だってさ」

まりやがTVの天気予報を見ながらあくびをかみ殺している。

「そうね……こんな寒い日でも由佳里ちゃんは朝から部活なのね」

きっと、例のコースを走っているに違いない。

「はいなのです。由佳里ちゃん、頑張っているのですよ」

奏ちゃんが私のカップに紅茶をそそいでくれた。眠気がまだ抜けきっていない頭に、紅茶
の香りと暖かさが心地よい。

「あら? お茶の葉を変えたかしら」

「はいなのです。秋摘みのダージリンなのですよ。きちんとした葉だと少々お高いのです
けど、柔らかい香りと優しいお味で、朝にはピッタリなのです。このお茶の葉のことも、
美味しいいれ方も、一子さんが教えてくれたのですよ〜」
404Dear Mom:2005/04/03(日) 22:19:15 ID:jXgINBkG
奏ちゃんが嬉しそうに説明してくれた。母様が一子ちゃんの事を「お茶を淹れさせたら日
本一」と言っていたのは伊達ではないらしい。まるで一子ちゃんみたいな、そんな優しい
味。少しばかり胸が痛んだ。

「へぇ……そうなの。確かに優しいお味ね」

少し渋みが残るけど全然嫌味じゃないし、それもまた朝にはあっている、そんな気がする。

「お姉さまに気に入っていただければ、奏も嬉しいのですよ」

普通の食堂の風景。いつも通りの朝の風景。

「あれ? そういえば一子ちゃん、まだ寝てんの?」

紅茶の話で一子ちゃんがおきてこない事に気がついて、まりやがそう聞いてきた。

「……う、うん」

僕は少しだけ口篭もる。

「そっか。昨日アレだけはしゃいでいたもんね。少し疲れちゃったのかも」

そう言いながら、まりやも紅茶に口をつけた「いい香りだね」と呟きながら。

「そのこと……なんだけど」
405Dear Mom:2005/04/03(日) 22:19:58 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────
僕は昨日の事を二人に話してみることにした。一子ちゃんのお母様がこの寮にいらっしゃ
る事、それが今度の土曜日である事、そして一子ちゃんが「お母様に逢う資格が無い」と
言っていた事……。

すると、まりやはあからさまに怒った顔でこう言った。

「あっちゃ〜。あんたね、それでもエルダーなの?」

「でも……どこか理由を聞かれたくないような雰囲気だったのよ」

実際、一子ちゃんはベットに入るとすぐ、こちらに背を向けてしまったんだ。理由を聞け
るような雰囲気じゃなかった。

「あのね、瑞穂ちゃん。一子ちゃんは『お母様に逢う資格が無い』って言っていたんでし
ょ。けして『お母様に逢いたくない』って言っていたわけじゃないよね」

「う、うん」

「まったく、エルダー様ともあろうお方が、肝心なところで抜けていてどうする。逢いた
いに決まっているでしょ。どんな理由か知らないけど、一子ちゃんが勝手に『資格が無
い』って思っちゃってるだけの事よ」

「そうなのでしょうか」

奏ちゃんがティーポッドを片付けながらそう言った。

「去年と一昨年のちょうど今の時期に女の人が寮を尋ねて来ているの。その人、『私の娘
も恵泉に通っていたんですよ』なんて言っていたから、てっきり卒業生のお母様かと思っ
ていたんだけど、今考えてみると、一子ちゃんのお母様だったんだね。きっと、一子ちゃ
んが亡くなってから毎年来ているんだ。一子ちゃんがどう思っているかはともかく、お母
様の方は『資格が無い』だなんて絶対思ってなんかいない」
406Dear Mom:2005/04/03(日) 22:20:40 ID:jXgINBkG

そうだ。一子ちゃんに……あの優しい子に『資格が無い』なんて事はない。そう信じてあ
げたい。僕は心からそう思った。

「そう……。私は私の母様のこと、殆ど覚えてはいないのだけど……もし逢えるのだとし
たら逢ってみたいと思うわ。一子ちゃんもきっとそう思っているわよね」

「まりやお姉さまの言う通りなのです。奏も、一子さんはお母様と会うべきだと思うので
すよ」

奏ちゃんは何度も頷いた。

「うん。あたしもそう思う。一子ちゃんっていつも他の人のことばかり気にかけていてさ、
自分の事なんて少しも考えない子じゃない? なんとかしてあげたいよね」
407Dear Mom:2005/04/03(日) 22:21:29 ID:jXgINBkG
「で、どうするの? まりや。無理矢理にでもお母様と逢わせてしまう?」

少し乱暴な気もするけど、それも方法の一つかなと僕は思う。

「そんなの駄目。それで逢えたとしても、お母様と素直に話しが出来なくなっちゃうよ。
一子ちゃんが自分の意志でお母様と逢う、それが大事なんだ。それには一子ちゃんが思っ
ている理由なんてどうでもいい……というわけじゃ無いんだろうけどさ。お母様はそんな
風に思っていないって事を、一子ちゃんが納得する必要があるんだ」

まりやの目が少しだけつりあがる。そうだよね。まりやの言うとおりだ。

「そうね、ごめんなさい。考えが足りなかったわ」

なにより先に考えなくちゃいけないのは一子ちゃんの事。なのに一体僕は、逢わせてあげ
たいという思いだけが先走ってしまった。一体何をやっているんだろう。

「いいよ。それも一子ちゃんのことを考えての事だしね」

まりやは肩をすくめる。

「でも、私たちで一子ちゃんを納得させる事が出来るものなのかしら」

まりやはあごの下に人差し指を置いて、ちょっと考えるしぐさを見せた。

「ん〜そうだね。まずさ、どうして『資格が無い』なんて一子ちゃんが考えているのか、
その理由がわからないと駄目だよね」
408Dear Mom:2005/04/03(日) 22:22:07 ID:jXgINBkG

「う〜ん」

考えてもなかなか結論なんて出てこない。そのとき

「あれ? 皆さん何を話しているんですか?」

と言いながら壁をすり抜けて一子ちゃんが現れた。食堂の壁から頭だけ……。

「わっ!!!」
「きゃっ!!!」
「うぉっ!!!」

いきなりのことに三者三様の声をあげて驚いてしまった。そんな事にお構いなく、一子ち
ゃんはにこりと笑う。

「あ、すみません。驚かせちゃいました? でも、もうこんな時間ですよ〜。そろそろ出
かけないと遅刻しちゃいますよ〜」


はぁ。一晩たってみれば、いつも通りの一子ちゃんだ。
409Dear Mom:2005/04/03(日) 22:22:47 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────
「お姉さま、寄り道なんてしないで早く帰ってきてくださいね〜」

「一子さん、なんか、旦那様に声をかける奥様みたいなのですよ〜〜」

「そんな、照れちゃいますよ、奏ちゃん。 えへへ」

「ま、まぁ……今日は特に用事もないし、早く帰れると思うわ。それでは、いってきます
ね。一子ちゃん」

「は〜い、お気をつけて〜〜〜」

「はいはい、お熱い事で。そんじゃいってくるね〜」

わたしは、お姉さま達を見送ってから、いつものように寮の屋根に登る。遠くから聞こえ
てくるのは生徒たちの黄色い声。頭上には、どこまでも高くて透き通るような気持ちのい
い青空。校庭の向こうに色付く銀杏木、そして少し冷たい風と、舞う木の葉。

そう、秋はもうおしまい。

「わたしが生きていた頃は、もう少し早く銀杏が黄色くなっていた気がしますね〜」

あはは、どこかのオバさんみたい。わたしは十数年しか生きていなかったし、お姉さまの
部屋で気がついてからの分を合わせても、そんな昔を懐かしむような歳じゃないはずなの
に。
410Dear Mom:2005/04/03(日) 22:23:28 ID:jXgINBkG
「夢……みたいだよね……」

生きていた頃とは全然時代も違うけど、お姉さまも、奏ちゃんも、まりやさんも、由佳里
ちゃんも……みんな優しくて、穏やかで、幸せな日々。本当に幸せな日々。夢のような
日々。

見上げれば白く伸びていく飛行機雲。先には蒼穹を駆けて行く飛行機。ごぉ〜っと音をた
てて飛んでいく。はたしてあれは何処に向かうのだろう。

ふと膝を抱えて座り、顔を伏せてみる。

「わたし……何しているんだろう。何処に行きたいんだろう…………」

この夢が永遠に続くなんてこと、あるわけ無いのに。

「そういえば、お母様が来るって……お姉さま、言っていたな……」

お母様に逢える? そんな資格、わたしには無い。そう考えると、急に寂しくなったよう
な気がして、わたしは両の手で我が身を抱く。

「はぁ……」

考えれば考えるほど泥沼にはまっていく。笑顔と元気だけがとりえだというのに、ため息
ばかりが出てくる。ほんと、わたし、何をしたいんだろう……。一体何を望んでいるとい
うんだろう。


気がつけば飛行機は空の彼方に消えていた。
411Dear Mom:2005/04/03(日) 22:24:06 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────
「では次の方、もう一度最初から読んでください」

「はい。『In 1957, tail fins, not seat belts, were standard eqipment on American
cars.Tail fins reached a peak in popularity with the 1957 Chevrolet Bel-Air.Pow
erd by a 235-cubic-inch straight six or a 283-cubic-inch V-8, with either manual
overdrive or power glide automatic transmission……』」

指名された同級生は淡々と英語の教科書を読む。大半の生徒が既にエスカレータ式で上の
学校にいけると決まっているからか、期末考査が近いというのに、のどかな雰囲気で授業
は進んでいく。外部受験組にしても、今ごろ教科書を一生懸命やっているようでは全然間
に合わないわけで、今の時期、最上級生にとっては授業を真面目に受ける意味なんてほと
んど無いに等しい。

どうにせよ、今日の気分では授業の内容なんて頭に入るはずが無いのだけど。

「はぁ……」

それにしても、ため息しか出てこない。窓の外をみると、たなびく飛行機雲。飛んでいく
飛行機。上の空(うわのそら)とは、まさにこのことか。考えをめぐらして、答えに手が届
きかかったと思っても、それがえらく見当違いの事に感じられてしまったりして、さっぱ
り結論なんて出やしない。一体一子ちゃんは何を考えているのだろう。


そうこうしているうち、あっという間に昼休みになってしまった。


僕は、今朝、部活の朝練で寮にいなかった由佳里ちゃんを昼食に誘い、一子ちゃんの話を
聞いてもらう事にした。最後には一子ちゃんに直接聞いてみるにせよ、できるだけ多くの
人の意見を聞くのは悪い事では無いと思う。
412Dear Mom:2005/04/03(日) 22:24:56 ID:jXgINBkG
「一子さんがそんな事を……」

由佳里ちゃんはハンバーグにかぶりつくのをとめて(この娘の場合『かぶりつく』という
表現が正しいと思う)、しばらく考えてからこう言った。

「私はお姉さまや奏ちゃんと違って両親とも健在ですし、一子さんの気持ちがわかるなん
て事は……おこがましくて言えないのですけど」

とはいえ、由佳里ちゃんは義理の姉さまを亡くしているし、大切な人と逢えない悲しさは、
きっと誰よりもよく知っている……筈だ。そして、またしばらく考えるしぐさを見せた後
に返ってきたのは意外な答えだった。

「そうですね……もうどうやっても逢えない人……逢えないはずだった人に逢えるってい
うのは、怖いんだと思います」

怖い? 嬉しいんじゃなくて? 確かに死んでしまった人が目の前に現れたらビックリす
るとは思うけど。

「それはどういうことかしら。相手が幽霊になっているかもしれないから?」

由佳里ちゃんは怖い話、苦手だし。

「いえ、別に幽霊だからとかそういうことではなくて……。えっと、例えば……その……
ある人と約束をしたとしますよね。それは次の日に『あれ、なかった事にしない?』って
言っても全然なんてことない、他愛も無い約束かもしれません」

由佳里ちゃんは少しだけ下を向いて話し始めた。

「でも、そんな他愛も無い約束も、相手が亡くなったり、いなくなったりしてしまうと、
絶対の……永遠の約束になっちゃうんです。そして、それだけだったら良いんですけど…
…なにせ相手は思い出の中にしかいないから無敵なんです。その約束はどんどん膨らんで
いっちゃうんですよ。そして、何時の間にか背負いきれない重荷になってしまうんです」
413Dear Mom:2005/04/03(日) 22:25:40 ID:jXgINBkG
背負いきれない……? あ、そうか。

「それは別に約束だけではないということなのね」

「そうです。約束だけじゃ……ないんです。例えばその人に対して負い目があったりする
と、それもどんどん膨らんでいっちゃうんです……そしてその人への想いも……。一子さ
んのように死んでいるのと生きているのが逆でも、二人が逢えないというのであれば、そ
れは変わらないのではないでしょうか」

膨らみすぎた約束、負い目、想い……。普通ならば、それらは心の中だけに留まっている
ものだ。例え約束を違えようと、負い目があろうと、その代価を払うべき人は既にいない
のだから。そして、想いがいかに募ろうと、その想いを伝えるべき人も、またいないのだ。

しかし、逢えるはずが無い人が現れてしまえば、それらを心の中にだけ押し込めておくわ
けにはいかなくなる……それは確かにとても怖い事に思えた。

由佳里ちゃんの顔が少しだけ曇る。

「由佳里ちゃん、ごめんなさい。もしかして、悲しい事を思い出させてしまったかしら…
…」

本当、優しい子ね、由佳里ちゃんは。

「いえ、いいんです。でも、一子さんが迷っているのはそれだけではないような気がしま
す。なにが? と問われても、うまく言えないんですけど、誕生会のずっと前から、何か
考えているように見える事が多かったですし……」

そして、由佳里ちゃんは力強くこう言った。

「とにかく、一子さんが、お母様を大好きだって事は確かだと思うんです。そうだったら、
一子さんがお母様に逢うのに理由や資格なんて要らないんじゃないでしょうか」
414Dear Mom:2005/04/03(日) 22:26:32 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────

夕方。

寮に帰った僕たちは、夕食をとりながら、再度一子ちゃんのことを相談した。一子ちゃん
はおそらく部屋に篭ってしまっているのだろう。もっとも食事の時間に食堂に出てきても、
食べる事が出来ない一子ちゃんには酷なだけなのだけど。

「う〜ん。やっぱ本人にきいてみるしかないんだろうね……」

まりやがマッシュドポテトとトッド・インザ・ホールをつっつきながら、そう言った。ト
ッド・インザ・ホール。直訳すれば「穴の中のかえる」なのだけど、ソーセージをヨーク
シャープディングの中に入れてオーブンで焼いた料理。変な名前をつけるものだ。

「そうなんですよね。こうやって悶々としているだけではだめなんじゃないでしょうか…
…にしても今日は量が多いですね」

由佳里ちゃんはサラダを突っついている。コーンを丁寧により分けながら食べているのは、
ちょっと微笑ましい。

「でも、それが出来たら、苦労しませんのです……時間もありませんし、ほんと、どうし
たらいいのか分からないのですよ……」

奏ちゃんはそう言って「ふぅ……」とため息をついてからカップスープに口をつけた。そ
う、明日は土曜日。朝には一子ちゃんのお母様がやってきてしまう。
415Dear Mom:2005/04/03(日) 22:27:04 ID:jXgINBkG
「昨日は駄目って言ったけどさ……もしかしたら無理矢理にでも逢わせちゃった方が良い
のかも……ね」

まりやまで「はあ……」とらしくないため息をつく。

「だけどさ、まりや。それは昨日私が言ったことだけど、よく考えてみれば、一子ちゃん
はもうお母様が来る事を知っているし、だまして逢わせるっていうのも難しいわよね……
大体それじゃ一子ちゃんの気持ちが……ふぅ、埒があかないわね……」

「だよね……。あのね、瑞穂ちゃん」

「なに、まりや」

そこでまりやは悲しげにうつむいた。

「あたしね。今日一日、ずっと考えてたんだ。あたしには珍しいくらい、いっぱい、いっ
ぱい考えた。一子ちゃんが何で『お母様に逢う資格が無い』って言ったのか。一子ちゃん
はどういう子なのか……。でね、きっとあたし達じゃ一子ちゃんの力にはなれないって、
分かっちゃった」
416Dear Mom:2005/04/03(日) 22:27:37 ID:jXgINBkG
「どうして?」

「ちょっとくやしいけどさ、あたしたちじゃ駄目なんだ。一子ちゃんのチカラになれるの
は、瑞穂ちゃんだけなんだよ。あの子にとって、瑞穂ちゃんの言うことは絶対。今回の事
にしたって、瑞穂ちゃんにしか理由を教えてくれない……と思う」

「うん」

「一子ちゃんは人の幸せをいつも願っているけど、自分のことには頑(かたく)なで……悪
く言えば、無頓着なのよ。だから、あたし達がいくら一子ちゃんのことを助けてあげよう
としても、あの子にはおせっかいとしか映らない。自分のことなんてどうでもいい……き
っとそう思っているから」

まりやには悪いけど、確かにその通りだと思う。僕以外の人が、一子ちゃんを助けようと
しても、きっと拒まれてしまうのだろうに違いなかった。

そして、今度は正面を向いて、まりやはこう言った。

「ごめん、瑞穂ちゃん。一子ちゃんを頼むね。瑞穂ちゃんなら一子ちゃんを助けてあげら
れるよ」

と。
417Dear Mom:2005/04/03(日) 22:28:16 ID:jXgINBkG
──────────────────────────────────────
夕食の後、僕は自分の部屋に戻った。


少し緊張する。一体、一子ちゃんは理由を話してくれるだろうか。そして、お母様と逢お
うとしてくれるだろうか。


ドアを開けると、一子ちゃんはタンスの前に膝を抱えて座っていた。

「お姉さま……」

一子ちゃんはこちらを向くと、直ぐ膝を抱えたままうつむいてしまう。

「一子ちゃん……」

彼女は小さく震えながら泣いていた。小さくて、儚いその姿は……今にも消えてしまいそ
うで……だから僕はは思わず手を伸ばした。消える前に、この手をとってくれる事を願い
ながら。しかし、一子ちゃんはうつむいたまま、いっそう身を固くして、無言で僕を拒絶
した。

それは、小さな子が自分が何を悲しんでいるのか、何を怖がっているのかすら知らずに泣
いている姿に重なって見えた。きっと、一子ちゃんは、悲しくて、怖くて……でも、自分
では何が悲しいのかすら知らないのだ。それが、僕にはとても切なく感じられた。

でも……いや、だからこそ、僕は一子ちゃんに話しかける。
418Dear Mom:2005/04/03(日) 22:29:02 ID:jXgINBkG
「ねえ、一子ちゃん。皆心配しているわ。一子ちゃんが『お母様に逢う事が出来ない』っ
て言っているのを、悲しんでいるの」

「放っておいて下さい。もう少し……もう少ししたら……きっといつものように笑えます
から……元気な一子に戻りますから……」

「ううん。放っておくなんて事、私には出来ないわ。一子ちゃんが悲しんでいれば、皆が
悲しくなってしまうのだから」

「……わたし、悲しんでなんかいませんよ」

それはとても強がりには聞こえない、弱くて、小さな言葉。

「だったら、どうして……一子ちゃんは………泣いているの?」

僕がそう言うと、一子ちゃんはようやく顔を上げた。

「え………?」

一子ちゃんは、自分が泣いている事にようやく気がついた、そんな顔をしていた。「うぅ
ぅ……」と嗚咽する、その顔には大粒の涙。私は思わず一子ちゃんを抱きしめる。

「お姉さま……お姉さま……」

一子ちゃんは、ただそう言いながら、泣き続けた。

────────────────────────────────────────
419Dear Mom:2005/04/03(日) 22:29:39 ID:jXgINBkG
一子ちゃんは、ひとしきり泣いた後、ベッドに座りながら、僕のことを見ていた。

「落ち着いた?」

「はい……」

「本当だったら、ここでホットココアのひとつも出すと良いのでしょうけど……一子ちゃ
ん幽霊だし……あ、また私の体に入る?」

「い、いえ……おかまいなく」

「ねぇ、一子ちゃん。お母様に逢う資格が無いと言う理由、よかったら聞かせてくれない
かしら」

「分かりました。お話しますね」

一子ちゃんはそう言ってから、顔を上げると淡々と話し始めた。
420Dear Mom:2005/04/03(日) 22:30:19 ID:jXgINBkG
「わたし、元から体が弱かったんです。小さい頃から何度も手術をしました。何度も手術
をするうちに、体にはひずみが溜まっていきました。学院には何とか入ることが出来まし
たけど、もう限界だったんです。気がつけば、もうどうしようもない状態になってしまっ
ていました。あの夏に倒れてしまって、そのまま即入院です」

「あ、でも今のわたしの体には手術の傷痕なんてありませんね。生きている頃に『こんな
傷痕なんて無ければ良いのに』ってずっと思っていたからかもしれません」

「お母様は病室の壁に恵泉の制服を掛けてくれました。『ちゃんとよくなって、もう一度
学院に行こうね』って言いながら。でも、もう二度とあの制服を着て恵泉の門をくぐる事
は無いって、お母様も、そしてわたしも分かっていたんです」

「お母様は何度か幸穂お姉さまを呼ぼうとしました。わたしがどんなに幸穂お姉さまの事
が好きかって知っていましたから。でも、わたしはそれを止めました。お姉さまに御心配
をおかけしたくはなかったんです。そもそも、お姉さまに病気の事は話していませんでし
たし、友達にも絶対お姉さまに病気の事は話さないよう、固く口止めしていました。でも、
お姉さまへの想いは募るばかりでした」

「病状はどんどん悪化して……ついには絶対安静の札が病室の扉にかかげられました。お
父様とお母様が、わたしの回復を願い……もしかしたら、わたしが間も無く去り逝くと思
った為なのかもしれませんが……司祭様に塗油の秘跡を施していただいた次の日、わたし
は思いました。『お姉さまに逢いにいこう』って」

一子ちゃんは顔を上に向けた。まるで何かを見つめるみたいに。

「『お姉さまに来て頂く』のではなくて『お姉さまに逢いにいく』。自分の想いの力を糧
に自分の脚で逢いに行こう。そこにはとても大きな意味があるように思えたんです。でも、
おそらくお姉さまの所にたどり着くことはできないとも思いました。それくらい、わたし
の体はぼろぼろになってしまっていました」
421Dear Mom:2005/04/03(日) 22:31:01 ID:jXgINBkG
「わたしは心の中で全てにお別れをしました。わたしの育った街、育った家、友達だった
人たち……そしてお母様とお父様にも。全てを捨て去ってもいい。だから、その代わりに、
お姉さまに逢いにいける力をください……そう願ったんです」

「わたしはお姉さまを選びました。幸穂お姉さまにお逢いできるのなら、他には何もいら
なかったんです。ただ、お姉さまに逢いしたかったんですよ」

「わがままだったんです。あれほどわたしを愛してくださったお母様やお父様や友達のこ
となんて、少しも考えていなかったんですから。わたしが病室から居なくなれば悲しむ人
がいるって、そして、あの時の体の状態なら、その人達とは二度と逢えなくなるって……
解からないはずが無かったのに……」

「わたしはそういう娘です。だから……お母様に逢う資格なんて無いんですよ」

「そんな……」

まりやの言う通りだ。いつも人の幸せばかりを考えているこの子は、どうして自分の幸せ
についてこんなにも無頓着なのだろう。他人を想う気持ちの、果たして数十分の一だけで
も自分の為に使えたのなら、そして、その真っ直ぐな心をほんの少しだけでも曲げること
が出来たのならば、この子はもっと幸せになれただろうに。

「それに、お姉さま。前にも言いましたけど、わたしはもう『死んでしまった』人間なん
ですよ。お母様にとっては、22年前に死んでしまった娘なんです。そんな娘がひょっこり
現れたりしたら……お母様はきっと驚いてショック死しちゃいますよ」


その顔はとても綺麗で、でもとても寂しげで……。だから、僕は一子ちゃんに少しだけチ
カラをあげよう。そう思った。

────────────────────────────────────────
422Dear Mom:2005/04/03(日) 22:31:44 ID:jXgINBkG
「ねえ、一子ちゃん。私ね、多分母様のことが大好きだったのだと思うの」

「多分……ですか」

「そう、多分。だって、物心ついた頃には母様はもういなかったのだもの。知っているの
は皆が聞かせてくれる思い出ばかり」

「……」

「でもね、私が恵泉に来るまでは、その皆が語る思い出すらも怪しいものだって思ってい
た。実感が湧かなかったのよ。前にも話したけれど、母様は治療を拒んで、そのまま死に
至る事を望んだ。それを聞いた私は『母様は私のことなんて気にかけもしないで、生きる
ことから逃げてしまった』と僻(ひが)んでいたの」

「そんな……幸穂お姉さまが瑞穂お姉さまのことを気にかけなかったなんて……そんな事
絶対にありませんっ! あるはず無いです……」

一子ちゃんは自分の事を言われているように反論する。微笑ましくて、わたしも思わず顔
をほころばす。やさしく、できるだけやさしく語る。

「そうね。今ならそう思える……どんな理由があって治療を拒んだのかは分からないけど、
きっと最後の最後まで、私や父様のことを想っていてくれていたって……。それはお祖父
様が、まりやが、私をこの恵泉に入れてくれたから分かった事……そして一子ちゃん、あ
なたのおかげなの」

「え? わたし……ですか」

「気がついている? 一子ちゃんが私の母様の事を話すとき、とても嬉しそうな顔をして
いることを。綺麗な輝いている眼をしている事を。そのたびに、私は一子ちゃんを通して
母様の心に触れる事が出来たのよ……とても嬉しかった。こんなにも一子ちゃんに慕われ
ている人が、私の事を気にもかけず逝ってしまったなんて事はありえないってわかったか
ら」
423Dear Mom:2005/04/03(日) 22:32:21 ID:jXgINBkG
「ねぇ、一子ちゃん。人間ってね、すぐ自分の考えの中に閉じこもってしまうものだわ。
思い込みや誤解、妄想……。大抵は他人からみれば滑稽で『そんな事』と思えてしまう些
細な原因だったりするの。でも当人にはそんな事はわからない。その思い込みや誤解が絶
対だと思って、そのまま鍵をかけてしまう。それどころか、思い込みや誤解は、閉じ込め
ておけば閉じ込めておくほどに大きくなっていってしまうのよ。それは悲しいことね」

「結局私もそうだったのよ。自分の思い込みを閉じ込めたままにして、お母様の気持ちな
んて知ろうともしなかった。それで僻んでいたんだから、ほんと滑稽よね」

「一子ちゃんは知っているかしら。あなたのお母様、毎年ここにいらっしゃっているそう
なのよ」

「お母様が……」

「そう。お母様は今でも一子ちゃんのことを愛していらっしゃるのよ。一子ちゃんは『わ
たしはお母様に逢う資格が無い』……そう言ったけど、それはあなたがそう思っているだ
け。そこに鍵をかけてはいけないわ。避けていちゃ駄目。資格なんていらない。お母様の
ことを好きだという気持ちだけあれば、一子ちゃんはお母様に逢う事ができるのよ」

「で、でもっ!」

「怖いの? 一子ちゃん」

「はい……多分怖い……いえ、怖くないわけ……ないじゃないですか。体の震えが……と
まりませんよ」

僕は一子ちゃんを出来るだけ優しく抱く。一子ちゃんの震えが伝わってくる。
424Dear Mom:2005/04/03(日) 22:33:04 ID:jXgINBkG
「あとはあなたの気持ち次第。どうするのも自由よ。でもね。お母様が一子ちゃんの事を
愛していらっしゃる……どうか、その事だけは忘れないで」

「……考えさせて……ください」

一子ちゃんはそう言うと、私から離れて、布団にもぐりこんでしまった。僕は一子ちゃん
の背中を押すことが出来ただろうか。少しでも、ほんの少しだけでも力になることは出来
ただろうか。

「答えを間違えちゃだめよ。一子ちゃん」

僕はそう心の中で呟いた。
425Dear Mom:2005/04/03(日) 22:33:57 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────
わたしは考える。

何もかもを諦めていた頃、お姉さまと引き換えに捨ててしまったものを、今更手繰り寄せ
る事ができるの? お姉さまが仰るように、単に自分が避けていただけなのかな。

わたしがお母様に逢える。逢う事が叶う。少し怖いけど、それは夢のようなこと。でも、
お母様に逢う事がかなってしまえば……きっとわたしは……。

「やだな……」

何が嫌なの? 一子?

「わからないんです……」

それは困ったわね……。

「何もわからないんです……幸穂お姉さま……。わたしは何故ここにいるのでしょうか。
どうしてお姉さまのいないこの世界に留まっているのでしょうか……」

それはきっと、一子がそう望んだから。一子はどうしたいの? 何処に行きたいの? そ
れは難しい事なの?

「いえ……それほど難しい事じゃないと思うんです……ただ、少しだけ怖くて……背中を
押してくれる、ちょっとしたきっかけが欲しかった……そんな気がするんです」

なら、答えはもう一子の中にあるのね。

「はい……とはまだ言えないのですけど……瑞穂お姉さまが背中を押してくださいました
から」

そう、よかったわね、一子。胸をはってお行きなさい。
426Dear Mom:2005/04/03(日) 22:34:38 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────

…………
………………………

「夢…………」

考えをめぐらすうちに、寝てしまっていたらしい。

幸穂お姉さまの夢。
幽霊が見た夢。

わたしが見た夢。

答えはまだわからない。けど、瑞穂お姉さまが背中を押してくれたなら、わたしには迷う
理由なんてなかったんだ。ほんの少しだけ背中を押してくれる人がほしかった、それだけ
のこと。

だから、わたしはお母様に逢おう。なにも怖がることなんてない。ただ逢って、自分の想
いを話すだけ。そう、ただ、それだけのことなんだ。そして……きっと気がついてしまう。
427Dear Mom:2005/04/03(日) 22:35:21 ID:jXgINBkG


「お姉さま、おきて……いらっしゃいますか」

顔をあげてみると、お姉さまは机で本を読んでいらっしゃった。

「ええ、おきているわよ。一子ちゃんが何時答えを返してくれてもいいようにね」

「お姉さまはいじわるです」

きっと、わたしの返事なんて、最初からお見通しだったに違いない。

「まあ、それは酷い言い草ね。せっかく一子ちゃんが心配で、こんな時間までおきていた
というのに」

こんなときの言葉も優しさに満ちていて……ほんと、無自覚でいらっしゃるから、性質が
悪いですよね。


「お姉さま、決めました。わたし、お母様に逢います」


428Dear Mom:2005/04/03(日) 22:36:00 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────

朝。


晴れ渡る空。まぶしく差し込む光。平日の喧騒とはちがう、休日独特の空気。わたしは寮
のみんなと、お母様が来るのを待ちます。時間が物凄く長くなったような感じがします。

「お母様がきました……」

いま丁度恵泉の門をくぐったところ。他の人にはわからないと思いますけど、わたしには
分かります。ゆっくりと、本当にゆっくりと……歩いてきます。

どきどき。あるはずの無い心臓がばくばくしています。頭の中なんて、もう真っ白です。

「一子ちゃん、大丈夫」

「……大丈夫です。もう、大丈夫です。お姉さまが背中を押してくれたから……」

「そう……よかったわね。胸をはってお行きなさい」

「あ……」

「どうしたの? 一子ちゃん」

「いえ、なんでもないです、お姉さま」

それは、夢の中の幸穂お姉さまと同じ言葉。わたしは、その言葉だけで胸をはってお母様
に逢う事が出来ます。ありがとう、瑞穂お姉さま。

「それではっ。不詳、高島一子幽霊三等兵、気合とガッツと根性で行って来ますっ!!」
429Dear Mom:2005/04/03(日) 22:36:50 ID:jXgINBkG
「いってらっしゃい」
「頑張ってね」
「いってらっしゃいなのですよ」
「一子さん、ファイトです」

みんな、ありがとう。

わたしは寮の扉をすり抜け、短い桜並木を行きます。お母様がどんどん近付いてくるのが
わかります。空を見上げれば飛行機雲。先には蒼穹を駆けて行く飛行機。ごぉ〜っと音を
たてて飛んでいきます。

……そうか。そうだよね。わたしがしたいこと。わたしは何処へいきたいのか。分かっち
ゃいました、お姉さま。

お母様が見えてきました。わたしは地面に足をつけてみます。ちょっと地面にめり込んじ
ゃうけど、構いません。気分だけでも自分の足で歩いていきたいですから。お母様の髪、
大分白髪が目立っていますね。しわもすごく増えちゃっています。苦労したのかなぁ。そ
っか、22年……。わたしは眠っていたけど、お母様はずっと生きてきたんですね。一子は
親不孝者です。

さあ、せめて今だけは精一杯の笑顔で。

「お母様……お久しぶりです」

「まさか……一子……一子なの……?」

「はい、一子です」



fin
────────────────────────────────────────
430Dear Mom:2005/04/03(日) 22:37:30 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────


Appendix 〜 Last Letter

────────────────────────────────────────

お母様へ


今、瑞穂お姉さまのお体を貸して頂き、この手紙を書いています。

あの日、お母様と逢えた事、とても、とても嬉しかったです。

あの時もお話しましたが、勝手に病室を抜け出してしまって、お別れもいえなかった事、
本当にごめんなさい。ずっと一子の為に看病をしてくれた事、とても感謝しています。わ
たしが「お母様に逢う資格が無い」って言った時、お母様は泣いてわたしを叱ってくれま
したね。一子は凄く嬉しかったです。

わたしは今まで自分がどうすべきなのか、迷っていました。お母様、お父様、幸穂お姉さ
ま、わたしにとても優しくしてくれた、大切な人たち。みんなと離れたくないと想う余り、
わたしは死んでしまった後も、この地に留まる事になってしまいました。

そして幽霊になってからも寮の皆さん、そして瑞穂お姉さまの気持ちに甘えつづけてきま
した。生きている時は病気だからと、幽霊になってからも死んでいるんだからと自分に言
い訳をしながら、わたしはずっと皆に甘えてばかりだったんです。

その上、お母様のことを考えもせずに「お母様に逢う資格が無い」なんて言っていたんで
す。自分勝手でわがままな娘でした。
431Dear Mom:2005/04/03(日) 22:38:09 ID:jXgINBkG

お母様と逢うことが出来て、ようやく決心がつきました。だからあの場でわたしはお母様
にお別れを言いました。主の御前以外で再び逢う事は無いだろうと。また勝手な事を言っ
てしまい、申し訳ありませんでした。でも、わたしはもう迷いません。

一子は今見ている幸せな夢から目覚めよう、そう思います。許されるのであれば、一子は
天に昇ります。甘えを捨てて、頑張って前へ、未来へと進んでみようと思います。

本当はもう一度、お母様の焼くスコーンをあつあつのミルクティで頂きたかったんですけ
ど、そんな事を言っていたらきりがないですよね。

瑞穂お姉さまには、わたしが天に昇る事が叶ったならば、この手紙をお母様に渡してくだ
さいとお願いしてあります。お母様がこの手紙を読んでいるということは、一子はちゃん
と主に召される事が出来たのでしょう。

どうか悲しまないで下さい。22年もさまよっていたわたしがようやく天へと昇れるのです
から。お父様にもよろしくお伝えください。一子は幸せでしたと。


それでは、主の御前で再び会えることを楽しみにしています。それまではどうかお元気で。




お母様の事、大好きでした。そして、さようなら。




                                                       一子

────────────────────────────────────────
432Dear Mom:2005/04/03(日) 22:39:46 ID:jXgINBkG
────────────────────────────────────────
補足とどうでもいい事(あとがき)
「塗油の秘跡」 ttp://www.cwjpn.com/kijiback/y2000/3595/6p-tenrei.htm
↑参考の事。カソリックでは洗礼、堅信、聖体、ゆるし、叙階、婚姻と並ぶ7秘跡の一つ
として、非常に大切な事とされています。……ま「おとボク」の世界じゃ婚前交渉はする
し、あれやコレやで、とてもカソリックの教義を守っているとはいえんのですが……。

「ショートケーキ」: 「短いケーキ」というわけではないので、丸ごとで切り分けてい
なくても「ショートケーキ」は「ショートケーキ」。「ショート」には「壊れやすい、さ
くさくした」という意味があるからショートケーキと呼ばれるそうな。確かに壊れやすく
て、繊細なお菓子ですもんね。さくさくはしないけど。
 作中のケーキは7号(直径21cm)。ちょっと聞いただけだと小さそうですが……下手する
と10人前以上になります(スポンジの厚さや生クリーム層の厚さ、それぞれが食べたい量
などで変わるので一概には言えないのですが)……。おまけにデカイとスポンジを焼くの
も大変です。由佳里ちゃん、頑張ったね。スポンジは少し寝かしておくとしっとりするの
で、前日から仕込んでいたと思われます。ちなみに5号(直径15cm)で大体4〜6人前くらい
です。女の子4人なら、4号(直径12cm)で丁度良いくらいかもしれませんね(この場合一子
ちゃん=瑞穂なので4人前)。

今回のSSの目標は元々「一子ちゃんの幽霊らしい昏い心を書く」所にあったんですが、書
いてみたら結構ほのぼのモノになっちゃいまして、元の名残は「あ、そうなんですか」と
一子ちゃんが淡々と答えるシーンくらいです。で、3回目の書き直しで「オリキャラであ
る一子母の登場は最小限に」を心がけてみたところ、こういう展開&話になった次第。
(一子母の独白……も結構書いちゃっていたんですが、ボツ)

楽しんでいただけたならば重畳です。では。
────────────────────────────────────────
433名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 22:45:40 ID:Fj3c2YK6
>>432
長編ごくろうさまでした。

月並みな言葉ですが、しんみりとしたいいお話でした。
一子シナリオ?の裏側というとおかしな言い方になりますが、
このような事があったのではと思わせる話でした。
リアル読みみでの感想です。
4341スレの301:2005/04/03(日) 23:07:18 ID:jXgINBkG
>>433
さっそくの感想ありがとうございます。
久々の投下で、どんな感想をいただけるか、本当に胃が痛い状態だったんで、
凄くありがたいです。

自分も本当の意味での一子ちゃんシナリオがあったら、どんな風になるだろうと
思って書いていました。一子ちゃんが生き返るなんて事もしたくなかったので、
こんな感じです。

ちょっと展開に無理があるんで、もう少し練りたかったんですけど、
今日のこのスレ、ちょっと元気なかったんで思い切って投下しちゃいました。
435初代スレの45:2005/04/03(日) 23:25:15 ID:9RR3Oao3
うおお!
素晴らしい力作長編お疲れ様です。

最後の母に宛てた手紙で本編の昇天シーンもフラッシュバックしてきて涙が出てきましたよ・・・
436名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 23:39:31 ID:zblcWF7+
すげぇ!
お疲れ様でした。
437スレ3-171:2005/04/03(日) 23:58:24 ID:NWLL1syX
 なんていうか,すばらしいとしか言えないSSでした.
 一子ちゃんの心の葛藤や寮生のはげまし等がすばらしかったです.
ほんの少しだけ欲を言えば,一子と一子母の会話シーンや,一子母と
寮生との会話があったらなぁ〜とか思いましたが,逆に蛇足になって
しまうような気もしますね.超大作お疲れ様でした.
438名無しさん@ピンキー:2005/04/04(月) 00:18:12 ID:JW5qWOjV
>432
感嘆いたしました。
数週間分かけただけのことはあるといいましょうか、
SSというよりもむしろアンソロジー収録作品といいましょうか…。
そもそも、ここまで難易度の高いテーマを、真正面から書けたと言うか。

エリア88のF−14ネタ。
ところであの英語の教科書って一体・・・?
439名無しさん@ピンキー:2005/04/04(月) 01:27:44 ID:9RlzGRfv
>1スレの301さん
大作お疲れ様でした。
誕生会など、温かい雰囲気が再現できててとてもよかったです。

…リレーや補完ものなど、人の褌で相撲を取ることしか出来ない自分が恥ずかしいです。
at the timeの続きを投下しますが、前述の通り今回は本編との重複だらけです。
長い上に無駄な描写もかなり多いと思われますので、読まれる方は予めご了承ください。
440名無しさん@ピンキー:2005/04/04(月) 01:28:20 ID:9RlzGRfv
エロなし、シリアス、SSというより紫苑ルート7〜8話の視点変更もの。
ネタバレだらけなので紫苑ルート未クリアな人は飛ばすが吉。


立春前の冷たい風が吹き荒ぶ。
内容が内容だけに人の来ない屋上を選んだが…流石に少々辛い。
壁を風除けに、扉のすぐ近くの物陰に入る。
瑞穂さんが来るまでここにいることにしよう。

どう話を切り出すかを考えていると、扉の軋む音がした。
顔を上げると瑞穂さんの横顔が見えた。
何か深く考え込んでいるらしく、こちらに気付いていないようだ。
声を掛けようとしたが…何故か躊躇われた。
そのまま瑞穂さんは手摺の近くへ進むと、空を見上げながら嘆息する。
「結局、どうしたいのか解らないなんて。情けないですよ、紫苑さん……」
紫苑さまへの思いと、自嘲の篭った声。
それを聞いた私は、反射的に思いもよらぬ言葉を投げ付けてしまった。
「思いつめた表情をしていらっしゃいますね?お姉さま…いえ、『鏑木瑞穂』さん」
「貴子さんっ?!」
驚いた顔で振り返る瑞穂さん。
…当然だ、この場で耳にするはずのない本名で呼びかけられたのだから。
「どうかなさいましたか……?」
もっと穏やかな流れで切り出すつもりだったのに、何故いきなりあんな云い方をしてしまったのだろう?
…でも云ってしまったものは仕方がない、このまま続けるだけだ。
出来る限り表情や声から感情を殺す。
「貴子さん………どうして私の名前を………」
「以前、あなたと紫苑さまの会話を漏れ聞いたことがありましたから……失礼かと思いましたが、個人的に調べさせて頂きました」
瑞穂さんの顔からも表情が消える。
「………お話があります。鏑木瑞穂さん」
改めて本名で呼びかける。
だが私も後の言葉を続けることが出来ず、そのまま重苦しい沈黙が続く。
441at the time:2005/04/04(月) 01:29:06 ID:9RlzGRfv
こうしていても埒が明かない。
性急に過ぎるが本題を切り出すことにしよう。
「………瑞穂さんは、紫苑さまの境遇を知ってらっしゃいますか?」
「境遇、ですか……いいえ」
ああ…やはり紫苑さまは一人で抱え込んでいたのか。
紫苑さまらしいとは思う。
あの方は他人に自分の弱みを見せない人だから。
でも…一番近しい人であるはずの瑞穂さんにまで隠そうとしていることが哀しかった。
「……聞いていないのですか。あの人はあなたにすら打ち明けようとはなさらなかったのですね」
「……どういうことです。だいたい、何故貴子さんが紫苑さんのことを…?」
虚を衝かれたような顔をする瑞穂さん。
確かに、瑞穂さんからすれば私が紫苑さまの話で呼び出す理由など想像もつかないだろう。

…真実を知れば、もう二度と笑いかけてはくれないかもしれない。
言い知れぬ恐怖と、よくわからない胸の疼き。
それらを震える唇ごと抑え、なんとか言葉を搾り出す。
「……紫苑さまを……助けて…あげて下さい」
「助けるって貴子さん……どういうことです、話が…」
…紫苑さまが隠したがっているのに私が話してしまっていいものか?
本人の意思を尊重し、このまま話を切り上げてしまえという囁きが聞こえる。
でも、それでは誰も救われない。
それに、一度話し始めた以上、止める事など出来ないのだ。
…仮令、厳島である私が瑞穂さんに嫌悪される事になろうとも。
「紫苑さまは……私の兄と婚約しているのです……」
「……………えっ?!」
瑞穂さんの表情が崩れる。浮かぶのは困惑。驚愕。そして不審。
「でも、今助けるって……」
「紫苑さまは、私の親に『買われた』のです……」
「買わ…れた………?」
呆然とする瑞穂さん。
442at the time:2005/04/04(月) 01:30:08 ID:9RlzGRfv
私はただ淡々と言葉を続ける。
「瑞穂さんはご存知だと思いますが、私の父親は一代で成功した……云わば『成金』です」…そのおかげで、私も不自由せずに生きてこられたわけですが。
「そう云った人間が度を超えた財産を持つと、次にはお金で手に入らないものを欲する傾向があるようです」
「まさか……」
「……紫苑さまの十条家は凋落こそしましたが、元を辿れば侯爵家の元華族という家柄だそうですね」
「その門地の為だけに、貴子さんの親御さんは…紫苑さんとお兄さんの結婚を?」
信じられないと云いたげな瑞穂さん。
当然だ、こんなことをすぐ納得する方がどうかしている。
でも、これは紛れもない事実なのだ。
「私の兄は…私などよりも強くあの父親の血を引いている人間です。女性なんて壁の飾り程度としか考えていないような人なのですよ」
込み上げる嫌悪感に思わず表情が歪む。
もっとも、私も同様に父の恩恵に与ってのうのうと暮らしている時点で非難できる立場ではないが。
「紫苑さんが以前、自分には未来がないって……そう云うのを聞きました。一度だけですが……」
…それは、紫苑さまが見せたわずかな弱さ。
だが、それは瑞穂さんが紫苑さまにとって特別な存在だという証のはずだ。
ならば、望みはある。
「女にとって、望まない結婚ほど恐ろしいことはないのではありませんか……それが夢見がちな人であればなおさら……」
…そう、私も瑞穂さんのおかげで知ったのだが、紫苑さまは見かけや印象とは裏腹に可愛らしい趣味の方だ。
それなのに、あの方は。
「それでも、あの女が逃げ出したりしないのは、自分が犠牲になれば両親は救われると……そう思っているのでしょうね」
「そんな……今の時代に、そんな莫迦な話が……」
「確かに莫迦な話ですが……でも、現実の大人たちは、そんな莫迦なことを自分の欲望の為に平気でやってのけようとするものなんですよ」
それを止められない私も含めて…ね。
443at the time:2005/04/04(月) 01:31:09 ID:9RlzGRfv
「でも……僕にそれをどうにかする力なんて……」
「出来ませんか?あなたに出来なければ誰にも出来ないのではありませんか………『鏑木瑞穂』」
あえてその名で呼ぶ。
この人は、自分の力というものを理解していない。
いや、しようとすらしていないのか。
その無欲さも瑞穂さんの魅力のひとつではあるのだが…今はそれがもどかしかった。
「瑞穂さんは、紫苑さまがお好きだから、ああして悩んでいたのではありませんか?」
「筋を通し、その上で私たち厳島の力を押さえこんで……そして何より、紫苑さまを愛してあげられるのは、あなたしかいないのではありませんか?!鏑木財閥の御曹司が、惚れた女一人救うことも出来ないのですか…っ?!」
私の口から放たれた言葉の刃が瑞穂さんを切り刻む。
瑞穂さんの顔が苦痛に歪む。
「それとも……あなたは紫苑さまを愛していないのですか………?」
お願い、否定して。
そうでないと…私は今度こそ何も信じられなくなる。

「………でも、紫苑さんが…僕を好きかどうか……僕は知らないんです」
…返ってきた言葉は思いもよらないものだった。
「確かに、僕は今貴子さんが云った通りのことをすることが出来るでしょう……今の…今の僕なら」
「でも、それは紫苑さんにとって良い事なのですか?それは紫苑さんにとって、ただ買い手が変わるだけなのではありませんか?紫苑さんのことは確かに大好きです!でも…相手を、紫苑さんを金で買うことには変わりが……なんの変わりも無いじゃありませんか!!」
絶叫する瑞穂さん。
ああ…よかった。
この人は本当に紫苑さまのことを想ってくれている。
だから、そんな不器用な瑞穂さんだからこそ。
444at the time:2005/04/04(月) 01:32:06 ID:9RlzGRfv
「………逢えばいいのですよ」
紫苑さまをずっと守ってくれるだろう。
見ているだけで何も出来なかった私とは違って。
「貴子さん……でも、紫苑さんはもう来て欲しくないと」
…鈍感にも程がありますよ、瑞穂さん。
少しは言葉の裏というものを読んでください。
「逢えば紫苑さまは辛くなるのでしょう。これから先の自分の人生のことを思えば、今が楽しければ楽しいほど、紫苑さまには辛くなるのではありませんか?」
「だったら……」
そんな傷口に塩を塗りこむようなことは出来ない。
そう仰りたいのですか?
…優しいところはあなたの美徳ですが、それだけではいけませんよ。
「だからこそ、紫苑さまに逢えばいいのです………男なのですから、いつも女の云うことばかり聞いていてどうするのですか?」
冗談めかしてそんなことを云ってみる。
私の言葉に百面相を始める瑞穂さん。
「安心しました。あなたでも……そんな顔をすることがあるんですね」
おそらく今の瑞穂さんの心の中では、整理しきれない感情が渦巻いているのだろう。
…私に出来ることはここまで。
あとは、瑞穂さんの意志に任せるしかない。
もっと縋れば瑞穂さんを確実に動かすことが出来るかもしれないが、それでは意味がない。
これは二人の人生に関わる事、瑞穂さん自身に決断してもらわなくてはいけないのだ。

…瑞穂さんに背を向け、出口へと向かう。
ドアノブに手を掛けたところで独り言のように呟いた。
「紫苑さまは……あの方は、私などには及びもつかないほど、古風な方なのですよ」
「古風……?」
「貞節とか、忍従とか……今では聞かなくなった言葉ですけれど、紫苑さまはそういう人…生粋のお姫さまです。私には到底真似出来ませんけれど」
「………?」
「そんな紫苑さまです……生真面目な瑞穂さんには、きっとお似合いですわね」
そう言い残して、私は鉄の扉を閉めた。
445at the time:2005/04/04(月) 01:33:00 ID:9RlzGRfv
そのまま私は生徒会室へ向かう。
中に誰もいないことを確認し、鍵を掛ける。
そして、扉に凭れ掛かったまま床にへたり込んだ。

ああ…やっとわかった。
あの胸の痛み、そして疼きの理由が。
そうだ、私は…瑞穂さんが好きだったんだ。
だから、瑞穂さんが男と知った時に嬉しいと思ったのだろう。
だって、許されない想い、叶わぬ願いではなくなったのだから。
…でも、現実はもっと残酷で。
まさか本当にロミオとジュリエットだったなんて。
初恋は実らない…なんていうけれど、まさかこんな喜劇で幕を閉じるなんて。
だって私の初恋は、始まる前からもう終わっていたのだから。

喜びなさい、貴子。
あの人の心の中心には紫苑さまがいる。
だから、あなたが大好きな二人は必ず幸せになれる。
それはあなたが望んでいた、とても素敵なことだから。

……でも、少しだけ泣いてもいいですよね?
明日からはいつも通りの私でいますから。
だから…今だけは。
446at the time:2005/04/04(月) 01:34:10 ID:9RlzGRfv
翌日の放課後。
瑞穂さんが私に会いにきた。
昨日までとは違い、晴れやかな顔をしている。
…よかった、決心してくれたのですね。
話があるとの事だが、他人に聞かれるのは少々まずいかもしれない。
かと言って屋上はちょっと…そうだ、確か今日は三人とも資材の補充の為に街へ買い物に出かけているはず。
場所を生徒会室へ移して話を聞くことにする。

瑞穂さんを招き入れ、鍵を掛ける。
…これで盗み聞きの心配もないだろう。
「それで、お話とは?」
「紫苑さんの所に、行ってこようと思います」
自分自身に言い聞かせるように宣言する瑞穂さん。
「……そうですか」
内心の嬉しさを隠し、素っ気無く返事する。
「アドバイスを下さった貴子さんに感謝のお礼と、それから一つだけ質問を」
「感謝の言葉は必要ありませんが、質問……というのは?」
「貴子さんは私が男だと知ったはずです。どうして公になさらないのですか?」
…そう云えばそうでしたね。
紫苑さまのことや鏑木ということに気を取られて、どうでもよくなっていました。
少しからかってみましょうか。
「……して欲しいのですか?」
「あ、いえ……そう云う、わけでは……」
途端にうろたえる瑞穂さん。
…本当に面白い人です。
思わず笑みがこぼれる。
「ふふふっ…解っています。冗談です」
「では…なぜ?」
さて、どう説明したものか…。
「あなたを男だと告発して、紫苑さまの最後の希望を吹き消すことなんて……私には出来ません」
「それだけ……なのですか?別に、私が退学になっても紫苑さんを助ける可能性は変わらないと思いますが……」
447at the time:2005/04/04(月) 01:35:10 ID:9RlzGRfv
「……表向きには、全校の代表たるエルダーが男だった、なんて……体裁が悪すぎるから隠したいだけです」
見る見るうちに落ち込む瑞穂さん。
本当に愉快な方だ。
…いけない、笑いが抑えられない。
堪えきれなくなった笑い声が口から漏れる。
「た、貴子さん………?!」
「も、申し訳ありません……瑞穂さんがあまりにも正直に落ち込んだ顔をなさるから……あは……っ」
あ、今度は戸惑ってますね。
本当にわかりやすい方です。
笑いすぎて目元に滲んだ涙を拭う。
「今云ったではありませんか、表向きと……そう云う時は裏があると勘繰るものですよ、普通は……」
「す、すみません」
本当にすまなそうに頭を下げる瑞穂さん。
まったく、この人は…。
「次期当主がこんな莫迦正直な人間で、鏑木グループはやっていけるのでしょうか……少なからず心配になってしまいますね」
…だから、そんなに解りやすく落ち込まないでください。
ポーカーフェイスくらい出来なくては足元を掬われますよ?
「ですが、そんな瑞穂さんだからこそ、私は男であることを秘密にしていようと思ったのです」
「もしあなたが後ろ暗い策略家のような人だったなら、どんな手段を使ってでも追い出して差し上げましたわ」
「あはは……怖いですね」
次に言う台詞の面映さを隠すため、少し芝居っぽく、机に腰掛け腕を組んでみせる。
「何度か瑞穂さんとは意見を異としましたが、その度にあなたは自分の周りの人間だけではなくて、私たちにまで救いの手を伸ばそうとなさいました……あれは私には出来ないことでした」
「結果的に、あなたがエルダーになったのは正解であったのだと思います。私も…瑞穂さんには何度となく助けられましたから」
そう、瑞穂さんのお陰で私はいろいろなことを知ることが出来た。
私が葉子さんや君江さんたちに慕われていたこと。
まりやさんとのはた迷惑な相互理解関係。
…そして、人を好きになるということ。
「僕は…何も……」
「まあ、そう云ったわけです。瑞穂さんには、お姉さまとして立派に勤め上げて頂きたいですわね」
それは、私自身の願いでもあるのですから。
448at the time:2005/04/04(月) 01:35:47 ID:9RlzGRfv
「これで、瑞穂さんに質問の答えにはなりましたかしら?」
「え、ええ……」
理解はしたがまだ納得はしていないらしい。
そのまま独り語ちるように言葉を継ぐ。
「私は、紫苑さまのような女性になりたかったのですよ…でも、それは無理だと思いました。というか、それでは生きていくことが出来ないのです……環境の違いとでも云いましょうか」
「お姫様のように生きていくには、報われない時代なのかも知れませんね」
瑞穂さんの口から出た、意外と少女趣味な言い回しに少し驚く。
すっかり女の子に染まっていませんか?瑞穂さん。
…でも、私も同感です。
「ええ…ですから私、お姫様を護る騎士役を買って出ようと思いましたの……初めてあの人にお逢いした時に」
「もっとも私は厳島の人間で、紫苑さまにはあまり快く思われてはいないのですけれど」
思い当たる節があるのか、記憶を探るような仕草をする瑞穂さん。
「いいのですよ、瑞穂さん。全ては厳島の身から出た錆なのです。そして私は厳島であるお陰で、こうしてあの人を救うことが出来るかも知れない……それでいいのです」
そう、誤解されたままでも構わない。
言い訳なんかしたくはないし、私が、私自身の意思で勝手にやることなのだから。
「素敵ですね……貴子さんは」
…っ!え、笑顔でそんなことを云わないで下さい!
もっとも、瑞穂さんは無意識なんでしょうけれど。
まったく…その容姿といい女の敵ですね。
赤面を隠すべく、大仰な仕草で飄げるように流す。
「今更気付いても無駄ですわ。それよりも、お願いしますね……紫苑さまのこと」
「…………ええ」
さあ、いつまでも引き止めていないで早く瑞穂さんを送り出さないと。
待ち人がいる戦場へ。
「さ……どうぞ行ってらして下さい。ご武運をお祈りしていますわ」
「あはは、ありがとうございます……では」
会釈をしながら部屋を出て行く瑞穂さん。
もういないその背中へ向かい、そっと呟く。
「本当は……男嫌いな私の、ファーストキッスの相手だから…なんて、口が裂けても云いませんけどね」
さようなら、私の恋。
好きだったということを明かすこともないでしょう。
恋人にはなれなかったけれど、私はいつまでもあなたたちの味方です。
4493-206:2005/04/04(月) 01:44:23 ID:9RlzGRfv
以上、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
at the time、これにて中程でございます。
もし後半があったら、慶行パパが一発殴って快諾した理由や貴子が実家を出ると決心した時を書けるかも。

そういえば440にタイトルを振り忘れました。
すみません。

・読むのが面倒な人へ
要するにこんな筋です。
「紫苑を助けろと詰め寄る貴子。だが全てが終わった後に気付く。自分もまた彼を愛していたことを…」
ベタですね。
450名無しさん@ピンキー:2005/04/04(月) 01:55:08 ID:cc5ODmcD
お疲れ様です。
一子ちゃんの感じがよかった・・・。
すごく、らしいというか。
文章量もここまでくると、短編ものですね。

こんな英文の載ってる教科書見てみたいな、車好きの私としては。
ひょっとして、わざわざ調べたのですか?
直6の6リッターとV8の7.2リッターとは、さすがアメリカン。
あと、重箱の隅をつつくようですがスペルが違ってましたよ。
equipmentがeqipmentになってましたよ。
4512スレの402:2005/04/04(月) 05:18:56 ID:LmJ/hJEm
 えっと、良作が続けて投下された後に何ですが、書き残しを投下します。

貴子を慶行に紹介するための、一時帰国を連絡して、まりやに貴子のドレスの
制作を頼むために慶行の秘書にまりやとのアポをとるところから始まります。
4522スレの402:2005/04/04(月) 05:20:57 ID:LmJ/hJEm
エピローグ           渡されなかった卒業証書外伝

 瑞穂と貴子が年末の一時帰国の準備をして居る頃。
恵泉女学院と同じ街にある、まりやの事務所の一室。
慶行の秘書室に勤めている一人が、ある契約の交渉を行っていた。
「では、基本的にはこの線でよろしいでしょうか?」
「ええ。結構です。最終的な契約日時と場所に付きましては、後日改めてご連絡致します」
「鏑木グループからのオファーでしたら、例え、南極点と言われましてもお伺います」
「では、後日。」
「お待ちしております」
(ふうーーーー。ようやく、ここまでたどり着けた)
まりやは、交渉相手を部屋の外まで送ると、その後ろ姿に丁寧に頭を下げた。

 年が明けて。
 まりやはスケジュール帳を再確認すると鏑木家の門の前に立っていた。自分に気合いを入れると、門の
横のインターホンのボタンを押して「慶行さまとお約束していた御門まりやといいますが?」と話しかけ
た。
 同じ頃。貴子は、瑞穂の婚約者としての扱いを受けていた。貴子は、もっと反対されるだろうと内心思っ
ていたのだが、慶行もあっさりと二人の仲を認めて
「”厳島”との件は、私に任せてもらいたい。貴子さんは、瑞穂に甘えてればいい」
貴子は、耳まで真っ赤にすると恥ずかしそうに視線をはずした。瑞穂は慶行に
「本当の式は、現地の教会で、親しい人だけ招いて行うつもり。向こうで公式書類に記載される資格を
をもつ結婚証明書を取得を目指す。それは、日本でも効力を持ち戸籍に”現地の方式での婚姻”という
一文が付け加わるだけのこと。」
「そうか。まだ、しばらくは現地で暮らすつもりか?」
瑞穂は、少し間をおいて
「そうだな。貴子さんも苦労して在留許可を取得したのだから、しばらく向こうで働いてみるつもり。
独自のコネクションも築けたらいいと思ってる。」
瑞穂の声が終わるのを待っていたかのようにリビングの扉が開き、楓が瑞穂に「御門まりやさまが、お見
えになりました。」と告げた。まりやが入ってくると、瑞穂は楓に
4532スレの402:2005/04/04(月) 05:23:06 ID:LmJ/hJEm
エピローグpart2

「楓さん。まりやの分のお茶を用意したら、しばらくここには誰も立ち入らないようにして、まだ公表
できる時期ではないから」
楓は、まりやの分のお茶を用意すると部屋から出て行った。
「さて、ビジネスの話を始めようか」
まりやも頭を切り換えて
「私も、今日はデザイナーとして契約に呼ばれたから」
まりやの言葉を受けて、瑞穂はビジネスライクに話を切り出した。
「第一点は、貴子さんと6月に現地で、親しい人だけ招いて結婚式を挙げる事にした。で、その時に貴子
さんが着るドレスを依頼したい。第二点は、結婚式関連一切について、こちらが許可するまでの守秘義務。
追加条項としては、日本での披露宴をするときのドレスも依頼したい。最後のは、決まった時点で連絡を
入れる。」
「わかった。やる以上は、今の私に出来る最高の物を作ってあげる。」
瑞穂は、あらかじめ用意しておいた契約書を提示して
「今回のドレスが好評なら、デザイナーとしてのまりやを個人的に紹介する用意はある。納得したらサ
インをしてほしい。」
瑞穂は言葉を区切ると
「ここまでで、何か質問は?」
まりやは、内心の動揺を必死に押さえて、瑞穂に
「招待予定の人の名前は?
「ああ、紫苑さん、由佳里ちゃん、奏ちゃん。それに、幼なじみの御門まりやの4人」
いくつかの質疑応答の後。瑞穂の連絡先を聞いたまりやは、契約書にサインして
「デザインが固まったら連絡するね。最悪5月の連休までには出来るようにしておくから、後、今抱えて
いる仕事を前倒しにて、かたずける事にするから。今日はこれで失礼するわ」
部屋から出て行く時、まりやの肩が僅かに震えていたのを、瑞穂、貴子、そして慶行も気が付かなかっ
た。 
4542スレの402:2005/04/04(月) 05:24:23 ID:LmJ/hJEm
エピローグpart3

 瑞穂の家を出たまりやは、そのまま自分の家に戻り、年始周りの客が途絶えたところで父親に「おとう
さん。ただいま」と、いうと父親の反対側に座り
「今日。瑞穂ちゃんの家に行ってきた。実は、年末に慶行おじさまの秘書室の人から、契約の話が来て
最初、鏑木グループの仕事かと思ったんだけど、実際は瑞穂ちゃん個人との契約だった」
「と、いうと、瑞穂くんは、まりやに会ってくれたんだね?」
「うん。”デザイナーとしての”御門まりやにね。守秘義務付きだからお父さんにも言えないんだけど、
5月までに1つ作品を仕上げるという契約を結んできた。で、この作品が好評なら、個人的にデザイナー
の御門まりやを、紹介する用意はあると言ってくれた」
テーブルの上のたばこ入れから、たばこを取り出し火を付けると
「ほおーーー。ずいぶん早く機会をくれたな」
「うん。でもね。恵泉の時の事言い出せなかった。一言謝りたかったのに・・・瑞穂ちゃんに”ビジネス
の話をしようか”って、先に言われちゃった。そういわれたら、昔話なんか切り出せないじゃない」
手にしたたばこの灰を、灰皿に落としながら、さとすように
「まりや・・・例えビジネスの話でもあってくれたんだろう?なら、まずはその作品を最高に仕上げて、
瑞穂くんの信頼を得るべきだと思うけどな。まりや、焦ったらだめになるよ。謝りたいのなら、瑞穂くん
が、自分から昔話を言い出すのを待って、それからでも遅くはないと、おとうさんは思う。ビジネスの失
敗じゃないからね」
「でも、瑞穂ちゃんのほうから、恵泉の話とかしてほしかった。そうすれば、思い切って謝れたのに」
まりやの話を遮るように「It is no use crying over spilt milk.」まだ長いたばこを灰皿でもみ消し
「まりやの言っていることだよ。意味は自分で調べなさい」
それだけいうと、部屋から出て行った。残されたまりやは、父親がなにをいいたいのか解らなかった。
 一人っきりになると、瑞穂の隣で幸せそうに微笑んでいた貴子の姿を思い出し、押さえていた物が吹き
出すように
「どうして、どうして、貴子なのよ。よりにもよって・・・・紫苑さまでも、由佳里ちゃんでも、奏ちゃ
んもない」
4552スレの402:2005/04/04(月) 05:25:26 ID:LmJ/hJEm
エピローグpart4

テーブルの上の物を床に払い落とし、しばらく泣き崩れていた。一時の激情が去っていった後、のろのろ
と立ち上がり自嘲気味に「あたし、なにやっているんだろう」そう呟くと、自分の払い落とした物を、
テーブルに戻し始めて、床にこぼれたたばこの灰を見ていると、「It is no use crying over spilt mil
k.」の意味がわかったような気がしてきた。
「そっか、私。また、自分の都合で物事を考えていたんだね。過ぎたことは仕方がないのに」
床の上に、また広がる涙を見ながら
「でも、やっぱり、瑞穂ちゃんから指輪もらいたかったな」
吸い殻を拾っていると、吸い殻にもう一つの手が伸びてきた。まりやが顔を上げると「どうやら、おとう
さんの言いたいことがわかったようだね?」父親は、まりやの手から灰皿を取るとテーブルに載せ、まり
やを胸の中に顔を埋めさせ「我慢してないで思っていることをはき出しなさい」そういいながら、優しく
背中を撫で始めた。
 父親の胸の中で胸の中のものをはき出すと、まりやは小さい頃のように泣き疲れて眠ってしまった。
「重くなったな」起こさないようにソファーに寝かせ自分の上着を掛けると、まりやの母親が入ってきた
父親は、母親に向かって
「まりやが、瑞穂くんに失恋しただけの事だ」
「あら、あら、それにしてはずいぶん荒れていたようですが?」
「ああ、長いこと想っていたから、その分ショックも大きいのだろう」
母親は、涙で濡れた顔を見つめて、目に掛かった髪の毛を指先でずらしていると、父親が「The longest
day must have an end」と呟いていた。
「そうですわね。いつかは、瑞穂ちゃんと笑える日がきますよ。私たちの自慢の娘ですもの」
そういうと、父親の袖を引っ張って部屋の外に出て行った。
                                         end
4562スレの402:2005/04/04(月) 05:31:57 ID:LmJ/hJEm
補足。
It is no use crying over spilt milk
こぼれてしまったミルクを嘆いても無駄である(覆水盆に返らず)

The longest day must have an end.
 どんなに長い日にも終わりはある(嫌なことも、いつかは終わる)

まりやパパの言った英文のことわざです。
参考までにと思いまして
蛇足かと思いましたが、切り捨てたところを再度つなぎ合わせて
瑞穂と貴子に対するまりやの話を書いてみました。
457初代269:2005/04/04(月) 09:28:12 ID:SZtPoyYw
>>1-301氏・3-206氏・2-402氏
乙でした。

久々に来ましたが以前の活気が戻ってて安心しました。
私も久しぶりに、明日あたりに1本投下できると思います。
3人称ではなく、瑞穂ちゃんの1人称形式のものです。
期待せずにお待ち下さい。では。
458初代スレ123:2005/04/04(月) 09:57:58 ID:mLz4D3Un
G−1グランプリの続きです
本当なら話が終わっているはずなのに……
すべてはあの男のせいです
G−1グランプリ 恵泉女学院一発ギャグトーナメント
第二弾
459初代スレ123:2005/04/04(月) 10:00:32 ID:mLz4D3Un
君枝「猫さんチーム、十条紫苑〜」
緋紗子「な、なんとマントの下は恵泉女学院の夏服。しかも誰も今まで見たことのないミニスカートバージョンだぁ」
瑞穂「かっ……」
緋紗子「おおっと、どうしたんでしょうか、瑞穂さん。何か言いかけて慌てて口を押さえました。いったい何を言いかけたのでしょうか? 学院長」
学院長「おそらく『可愛い』と言いかけたのではないでしょうか。確かにわたくしの目から見ても、今の紫苑さんは十分可愛らしいと思います」
緋紗子「なるほど」
学院長「ですが面と向かって言うのを、瑞穂さんははばかったのでしょう。
まがりなりにも紫苑さんは年上ですからね」
緋紗子「くすっ。それは大変瑞穂さんらしい気の使いようですね。……あっと、
そうこうしているうちにレフリーによる紫苑さんへのボディーチェックが終わったようです。
いや〜君枝さんが実にうらやましい」
君枝「続いて犬さんチーム、宮小路瑞穂〜」
緋紗子「こっこれは……水着です。トップは白地に花柄のUネック&Uカットのミドリフトップ。
そろいの生地を使ったミニスカート式ボトムという、目映いばかりのセパレーツ水着ぃぃぃぃ」
学院長「女性であることをアピールしながらも可愛さと品格を兼ね備えた、
瑞穂さんらしい健康美あふれる水着ですね」
緋紗子「瑞穂さんのおヘソ可愛い。……あ、こらっ。手で隠さないの。もっとおヘソをよく見せなさい。
これもエルダーの勤めというものですよ、瑞穂さん」
学院長「緋紗子さん、紫苑さんの様子が変ですよ」
緋紗子「どうしたのでしょうか、紫苑さん。ふらふらとした足取りで……おおっと、
紫苑さんが対戦相手である瑞穂さんに抱きついたぁーっ。瑞穂さんを正面から抱きしめています。
瑞穂さんも抵抗しません。それとも抵抗したくてもできないのか。これは危ない。二人の間にいったい何があったのでしょうか」
学院長「おそらく、瑞穂さんの水着姿に当てられてしまったんでしょう。紫苑さんはああ見えて、可愛いものに目がないようですから」
460初代スレ123:2005/04/04(月) 10:02:53 ID:mLz4D3Un
緋紗子「レフリーの君枝さんがあわてて両者の間に割って入ります。抱きつかれた瑞穂さんも抱きついた紫苑さんも、割って入った君枝さんも顔中真っ赤です。というか会場全体も騒然とした雰囲気に包まれています」
学院長「現エルダーと前エルダーの抱擁など、滅多に見れるものではないですからね。無理もないと思いますよ」
緋紗子「君枝さんが紫苑さんに注意しています。が紫苑さん、まだちょっと上の空でしょうか」
「幸穂〜っ」
緋紗子「なっ、乙女の園のこの学院に、どこからともなく男の叫び声が。いったいどこから……」
学院長「緋紗子さん、誰かが花道を走ってきます」
緋紗子「と、飛んだぁ。そして空中で前方かかえ込み2回宙返り1/2ひねり、
そのままコーナーのトップロープに立ったぁ」
学院長「男物のホワイトシャツを着ていますよ。いったい何者なんでしょうか? どう見ても学校の関係者には見えませんが……」
緋紗子「コーナーに立った不審人物がリングへと振り返る。なっなんと、正体は謎のマスクマン。
おそらく中年の男性でしょう。スーツを着た謎のマスクマンが瑞穂さんを見おろしています。
帰宅したサラリーマンのように、コーナーに立ったままネクタイをゆるめるマスクマンっ」
瑞穂「お、お父さま?」
緋紗子「い、今瑞穂さん、お父さまって言いませんでしたか?」
学院長「……わたくしには聞こえませんでしたが、空耳ではないですか?」
461初代スレ123:2005/04/04(月) 10:03:46 ID:mLz4D3Un
マスクマン「幸穂〜」
緋紗子「瑞穂さんに向かってフライングボディアタックを仕掛けるマスクマン。もちろん難なくそれをかわした瑞穂さん。間髪置かず、押さえ込みにいったぁ」
学院長「いけません、瑞穂さん。締めるにはまだ早い」
マスクマン「カブラギアン柔術を舐めるなぁ」
緋紗子「あーっと、瑞穂さん。押さえにいったところを、
まともにテイクダウンされ一気にガードポジションを取られてしまった、これはまずい」
学院長「首を絞めて一気に片をつける気だったのでしょうが、それが仇となってしまいましたね。
体重差もありますし、ある意味、マウントポジションより危険ですよ、この体勢は」
緋紗子「危ない。瑞穂さんの貞操が危ない。マスクマンの手が腰が――あっとここで、
猫さんチームのセコンド・宮小路幸穂さんが、リングに上がってマスクマン脇腹を蹴り飛ばしました。
そのまま幸穂さんは、瑞穂さんをかばうようにマスクマンとの間に立ちます」
学院長「まあ、楓さん。お久しぶりね。……いえいえ、謝らなくても結構ですよ。いい余興になってますもの」
緋紗子「瑞穂さんと幸穂さん。親子とはいえ、こうしてみると本当に似てますね。娘は母親に似ると言いますし……。
あっ今二人がタッチしました。幸穂さんが後ろ手に伸ばした手に瑞穂さんが手を合わせました」
マスクマン「さ、幸穂が二人? ……奇跡だ、愛のなせる技だ」
学院長「さあ、ここからが本当の勝負ですよ。一瞬たりとも目を離せません」
462初代スレ123:2005/04/04(月) 10:04:28 ID:mLz4D3Un
マスクマン「幸穂ーっ」
緋紗子「マスクマン、猛然と幸穂さんに躍りかかったぁ。――なんと、抱きつかれる寸前に幸穂さんの姿が消えました」
学院長「霊体ならではのトリッキーな動きですね」
緋紗子「そしてそこに、ロープの反動を利用した瑞穂さんのドロップキックが炸裂。マスクマン、これをまともに食らってしまった。――それにしても学院長。瑞穂さんはどちらかといえば、打撃技より投げ技や関節技を得意としていたはずですが……」
学院長「おそらく密着したくないのでしょう。生理的なものもあるでしょうが、相手のほうがウエイトもありますし、何より一日の長があるようですから。ある程度は距離を取って戦うつもりじゃないでしょうか。あぁ、見てください、緋紗子さん」
緋紗子「いつの間にか、幸穂さんがコーナーのトップロープの上に立っています。
そしてマスクマンめがけてミサイルキックだーっ。どういう訳か、スカートがまったくひるがえらないのも不思議ですが、
なぜでしょう、学院長」
学院長「どこを見てるのですか、どこを」
緋紗子「あ〜と、そして今度は瑞穂さん・幸穂さん、自らロープに飛んで〜サンドイッチラリアットだぁぁ。
これは綺麗に決まりました。マスクマン、ダウン。ダウンです」
学院長「どうやらここで、とどめを刺しにいくようですよ」
緋紗子「瑞穂さんと幸穂さん。膝をつくマスクマンに二人がかりで組みつきます。ラグビーのスクラムのようなこのスタイル、
この体勢から繰り出されるツープラトン技といえば……」
学院長「おそらくブレンバスターで間違いないでしょう」
緋紗子「二人でゆっくりとマスクマンを持ちあげます――と、止まった、ちょうど時計が十二時をさした位置で止まりました」
学院長「場内もかたずを飲んで成り行きを見守っています……」
緋紗子「瑞穂さん、幸穂さんの体がゆっくりと倒れていきます。そして、決まった〜。決まりました、滞空時間の長いプレンバスター。
つかさず二人がかりでマスクマンをフォールにいきます」
463初代スレ123:2005/04/04(月) 10:06:17 ID:mLz4D3Un
君枝「カウント、一……」
観客「二……」
緋紗子「三、やりました、瑞穂・幸穂ペア。すばらしいコンビネーション。見事な勝利です。
君枝さんが二人の手を高々と掲げ、観客も惜しみない拍手で勝利をたたえます」
学院長「君枝さんもノリがいいですね」
緋紗子「おや? リングにメイド服を着た女性があがりましたよ。何をするつもりでしょうか。
マイクパフォーマンスでもするのでしょうか?」
学院長「彼女はマスクマンの関係者ですよ。きっと付き添いの方でしょう。さっそく瑞穂さんと幸穂さんに謝っていますね」
緋紗子「それに対して二人とも険悪な雰囲気はなく、むしろ和やかに話が弾んでいるようですが……
マスクマンと瑞穂さん・幸穂さん、三人の関係はいったい?」
学院長「その辺りの事情は察してあげてください。――緋紗子さん、マスクマンが意識を取り戻したみたいですよ」
緋紗子「ゆっくりと起きあがるマスクマン。な、なんと、立ち上がりかけたマスクマンの後頭部を背後に立ったメイドさんが一蹴。
延髄切りを綺麗に決めて、再びマスクマンの意識を刈り取ってしまいました。学院長、これはいったいどういうことでしょうか?」
学院長「今、目を覚まされて先ほどのような騒ぎになるのは避けたいのだと思います。
運び出す途中で暴れられても困りますからね。会場を出るまでは゛気絶していてほしい、というのが本音だと思いますし、
それは正しい判断だと思いますよ――あぁ、やはりマスクマンを肩に担ぎ上げましたね」
464初代スレ123:2005/04/04(月) 10:06:48 ID:mLz4D3Un
緋紗子「瑞穂さんと幸穂さんがロープを開いて、マスクマンを肩に担いだメイドさんのために道を開きました。
今、ゆっくりとマスクマンを担いだメイドさんが花道を退場していきます。皆さん、
マスクマンと付き添いのメイドさんに盛大な拍手をお願いします」
学院長「すばらしいファイトでした、瑞穂さん、幸穂さん。そしてマスクマンも……」
緋紗子「えー、皆様にお知らせします。ただ今より10分間の休憩といたします。
繰り返しお知らせいたします。G−1グランプリは10分後の再開となりますので……」
465初代スレ123:2005/04/04(月) 10:09:01 ID:mLz4D3Un
以上です。
次こそは本編になります。
一発ギャグにご期待ください。
466471 ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:12:31 ID:Ci5Sa27v
pack of liesですよー。
>>385の続きですよー。
467pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:13:02 ID:Ci5Sa27v

      ◆

 まりやがその放送を聞いたのは、少し長引いた授業が終わって、その片付けをしている時だ
った。
 生活指導室……ってことはやっぱり例の噂の件だよね──
 放送を聞いたまりやは片付けを途中で放り出すと、すぐに隣の教室へと向かったが、瑞穂は
既に生活指導室に向かった後だった。
 まりやはその足で生活指導室に向かうと、途中で貴子と出会った。
「あっ、貴子!これ一体どういうことなの? あんた放送室に行ったんじゃなかったの?」
「私にも分かりませんわ。放送室に向かっている最中にあの放送があったんですから」
「学院側の動きは予想以上に早かったわね。計算外だったわ」
「どうするんですか?」
「どうもこうも、様子を見るしかないでしょ。とにかく、あたしたちも生活指導室に」
「ええ、そうですわね」
 まりやと貴子が生活指導室前に着くと、そこは既に人ごみでごった返していた。その中には紫
苑や圭の姿もあった。
468pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:13:33 ID:Ci5Sa27v
「紫苑さま!」
「ああ、まりやさん……瑞穂さんは……」
 そう言うと、生活指導室の扉の方に視線を向けた。
「そうですか……何か言ってました?」
「なるようにしかならないから、あまり気に病んでも仕方がないと……」
 まりやたちは、とにかく瑞穂が出てくるのを待とうと、しばらくその場で待っていた。しかし、生
活指導室の扉が開く事は無く、そのかわりに校内放送が流れ始めた。

『全校の皆さんにお知らせします。緊急の職員会議を行う事になった為、本日の午後の授業は
休講になりました。生徒の皆さんは教室に戻り、ホームルームが終わり次第、直ちに下校してく
ださい。繰り返します──』

「ちょっと、どういうことよ!」
 放送の内容を聞いたまりやは貴子に詰め寄る。
「私に聞かれても困ります。それより落ち着いてください、まりやさん」
「あ……ゴメン……」
「とにかく、一旦教室に戻りましょう。ホームルームが終わったら、例の場所で」
「……わかった」
 そして四人は瑞穂を生活指導室に残したまま、それぞれの教室に帰っていった。

469pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:14:04 ID:Ci5Sa27v

 紫苑と圭が教室に戻ってしばらくすると、緋紗子がやってきてホームルームが始まった。
「本日の職員会議の事ですが……その議題について皆さんにもお伝えしておきます。ご存知の
方も多いと思いますが、昨日から、エルダーの宮小路瑞穂さんが実は男性なのではないか、と
言う噂が流れていました。先程、瑞穂さんが生活指導室に呼ばれたのはその真偽を確かめる
為だったのですが、本人の証言もありまして、男性であることが確認されました」
 緋紗子の言葉に教室中から驚愕の声が上がる。
「はいはい、お静かに。驚くのは分かりますが、落ち着いて聞いてくださいね。
 それで、本来なら男の子が女装して女子校に通っていたのですから即刻退学、と言う事にな
るのでしょうが、少し特殊な事情があるようでして、学院は瑞穂くんが男性であると知りつつも受
け入れていたと言う事、また瑞穂くんが今期のエルダーであり、これまで学院に色々と貢献して
きたという事から、学院側としましても単純に退学にすれば済む問題なのか、と言う疑問が出て
います。ですから、今日行われる会議はそれについて検討し、瑞穂くんの処分を決める為のも
のです。
 学院側にとっても結構重大な問題ですので、今日明日の内に結論が出る、と言う事は無いと
は思いますが、どのような結果になるにしても、皆さんはそれを受け入れられるだけの覚悟をし
ておいてください。それから、今回の件に関しては学外の方には他言無用に願います。先生か
らのお知らせは以上です。それでは、皆さん気を付けて下校してください」
 そしてホームルームが終わり緋紗子が立ち去ると、生徒たちは思い思いの行動をとり始めた。
 紫苑は圭を誘って例の部屋に行こうとしたが、周りを見渡してみても圭の姿はどこにも無かっ
た。仕方がないので、隣のクラスに行ってまりやと合流する事にした。

470pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:14:35 ID:Ci5Sa27v
 二人が例の部屋に着くと、既に貴子が来ていた。紫苑たちが席に着いてからも、誰も発言せ
ず無言の状態が続いていた。
 このような事態は全く想定していなかったと言うわけでもなかったのだが、それにしても展開が
速すぎた為に用意しておこうと思っていたことが全て無駄になってしまった。
 大した計画を立てていたわけではないが、新たに計画を練り直さなければいけない──
 今ここにいる三人は皆が皆そんな思いに駆られて焦っていた。
 その時。扉の開く音で静寂が破られた。圭だった。
「…………お通夜?」
「そう見えても仕方ないわね。ちょっとどうしていいか分かんなくなっちゃってさ」
 まりやが答える。軽口を叩いてはいるが、その口調は重い。
「そんなあなたに朗報です」
 圭はニヤリと笑いながら、ラジオのような物をテーブルの上に置いた。
「これは……?」
「ふふふ。実はさっき、緋紗子先生に頼んで職員会議の様子を盗聴できるようにしておいたのよ。
こんな時はまず情報収集よ」
 そう言って受信機のスイッチを入れた。何か言い合っている声が聞こえてくる。
 四人はしばらく職員会議の様子を聴いていた。その会話からは瑞穂を擁護している中心人物
は緋紗子、学院長、教頭と、最初から瑞穂が男だと知っていた者たちで、排斥しようとしている
のは三年の学年主任が中心となっている事くらいしか分からなかった。他はどうにも要領を得
ず、何と言うか責任の擦り合いをしているようにしか聞こえなかった。
 まりやはその会話から何かに気が付いたようで、そのことを圭に尋ねてみた。
「ねえ圭さん、ひょっとして瑞穂ちゃんって会議室にいるのかしら?」
「ああ、そういえば緋紗子先生はそんな事も言っていたわね」
471pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:15:13 ID:Ci5Sa27v
「……どうしてお姉さまがいると分かったのですか?」
 貴子が尋ねた。
「ああ、瑞穂ちゃんを辞めさせようとしてる奴等がね、どうも学院長たちを責めてるように聞こえ
なかったのよ。大方、学院長や教頭を説得できないんで、瑞穂ちゃんを責めて自主退学に追い
込む為に呼んだ、ってところでしょ。全くせこい連中だわ」
「瑞穂さん、大丈夫でしょうか……?」
 紫苑が心配そうに尋ねる。
「大丈夫だと思いますよ。学院長や教頭、緋紗子先生も付いてますし。それに、ああいう追い込
み方をする奴って、瑞穂ちゃんが一番嫌いなタイプですから」
「それにしても……学院長はともかく、教頭まで味方につけてるとはね。瑞穂さんって実は大
物?」
「まあ……大物って言えば大物なのよね……。学院長たちも味方に付いたんじゃなくて、最初っ
から味方だったし」
「どういうことです?」
「どうもこうも。言葉どおりの意味よ」
「宮小路瑞穂さん……あの方は、一体何者なのです?」
 紫苑が疑問を口にする。貴子や圭も口にはしなかったが、同じ疑問を抱いていた。
「そうですね……みんなには知っておいて貰った方がいいかもしれません。絶対に他言しないと
約束できるなら、ですけど」
「もし話したら……どうなります?」
「んー、どのくらい影響があるかはあたしにはちょっと想像できないけど、とりあえずこの学院は
消えて無くなるかな」
 貴子の問いにまりやは軽口を叩くように返したが、その眼は笑っていなかった。
 その言葉を聞いて、貴子だけは何か思い当たるところがあるようだった。
「お姉さま……瑞穂さん、あの方は、もしや……」
472pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:15:45 ID:Ci5Sa27v
「あら、貴子は気付いちゃったか。まあ、あんたなら分かるわよね」
「私たちにも教えていただけますか? 約束は絶対に守りますから」
 紫苑の言葉に圭も頷く。
「分かりました。……瑞穂ちゃんの本当の名前は鏑木瑞穂、つまり鏑木グループの御曹司で後
継者なんです」
 紫苑たちは今度こそ絶句した。貴子も改めて言葉でその事を聞かされると、ショックを隠しき
れなかった。
 鏑木家。由緒正しき華族の血筋で古くは侯爵の名を持つ。現在では日本最大の企業グルー
プを所有し、日本経済界を牽引している存在と言っても過言ではない。
 瑞穂はその御曹司で、次期会長であると言うのだ。
「まあ、そういうわけですから、鏑木の後継者が女装して女子校に通っていた、なんてスキャン
ダルが流れたりしたら大変な事になります。この学院も鏑木の経営ですから、当然巻き込まれ
るでしょう。入れ物は残るかもしれませんが、中身は別物になってしまうでしょうね」
「……先生が仰っていた特殊な事情、と言うのはその事だったのですね」
 いち早く立ち直った貴子が言った。
「そうなるわね。もっとも、この事を知っているのは学院長と教頭だけでしょうけど。迂闊に話して
どこかに漏れたりしたら大事だから」
「それで、学院長先生たちは最初からお姉さまの味方、と言うわけですか……。では、緋紗子先
生もこの事はご存知なのですか?」
「いや、さすがにそれは無いでしょ。緋紗子先生がそう言うの気にしない人だからこそ、瑞穂ち
ゃんのサポート役に選ばれたんだろうしね。そういう意味じゃ今、会議室で騒いでる連中には絶
対教えられないよね」
473pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:16:16 ID:Ci5Sa27v
 まりやは苦笑して言うと、受信機から聞こえてくる喧騒に耳を傾けた。相変わらず愚にも付か
ない事を騒ぎ立てている。
「とにかく、これからどうするか考えなきゃね。で、一つ提案があるんだ」
「何かいい案があるのですか?」
「まあね。貴子のうろたえてる顔見てたら思いついちゃった」
「な、何て事を言うのですか、あなたと言う人は!」
「冗談よ。もう、本気にしないでよ。それでね……」

 そして第二回作戦会議が始まった。
 まず、基本的には前に話し合ったときと同じように、相手の出鼻を挫いて何かされる前に動き
を封じる。
 瑞穂に普段通りの行動をさせておけば、一般の生徒たちは、今は反発していても時間さえあ
れば必ず堕ちるはずなので、とにかく時間を稼ぎたい。その為には学院側から何らかの承認を
取らなければならないが、そこは職員会議を聞く限り、教師たちの意見はどうにもまとまりそうに
ないので、そこに付け入ろうという事になった。
474471 ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 16:16:54 ID:Ci5Sa27v
続くー。
475名無しさん@ピンキー:2005/04/04(月) 18:15:23 ID:/8PuXHcT
>>474
GJ!
男バレはオフィシャルな話がない分、アンオフィシャルにいろんなパターンがあって
楽しいなぁ。今後の展開に期待。

ところで、
鏑木家は侯爵じゃなくて公爵だったような。
しかしゲーム内の仮想空間とはいえ、公爵はちとやりすぎのような。公爵なんて歴代
20人程度しかいなくて、伊藤博文とか山県有朋とかなんだけど。かの東郷平八郎で
も侯爵。まさに鏑木家はパーフェクトジオングですな。
476471 ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 18:32:28 ID:Ci5Sa27v
>>474
確認してみたらやっぱりハムの方だった。音でしか覚えてなかったからなあ。
うろ覚えで書くのはいけませんな。

というわけで変換して読んでくださいな。
477471 ◆471.Pt54hU :2005/04/04(月) 18:33:13 ID:Ci5Sa27v
レス番間違えた……orz
4785時起き:2005/04/04(月) 20:04:34 ID:ekDLZ2DF
ttp://www.clubhobi.jp/products/cab/cab_yaruki/index.html

ネタと漏れの好みでロングチャイナ激スリットにしたのに、
まさか当たりとは・・・

予約してきまつ(*´Д`)'`ァ'`ァ
4791スレの301:2005/04/04(月) 20:08:42 ID:Cb9hm/nG
せっかく感想を頂いていながら、遅レスもうしわけないです。

>>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>450

皆さん、過分な感想を有難うございます。
ご指摘いただいているように、誤字脱字は多いですし、
その上、展開にも無理があるわで、未熟すぎる我が身がアイタタタなのですが、
楽しんでいただけた様子で、大変嬉しいです。

>一子母の話
今回は一子ちゃん心を描くのがメインなので、一子母のシーンとかは
(結構書いていながら)ボツになっています。すみません。
同じ理由で会長や紫苑さんの話もオミットしちゃっています。

>英語の教科書
えっと、アレは『Project Orion: The Story of the Atomic Spaceship』
という洋書の最初の部分を頂きました。
ttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0805059857/250-7098833-3954601

内容は原子力宇宙船の研究・開発の実話です。車には関係ありませんが、
そっち方面に興味があれば、大変面白い本ですので、よかったらどうぞ。

あ、車も大好きですよ。7.2リットルのV8。しびれますよねぇ……。
しかもアメリカンV8だからOHVだったりするんだ。伝統ですね。

とっても遅筆なんで、今度の投下もまた一ヶ月後くらいに
なってしまうかもしれませんが、よろしければまた読んでいただけると幸いです。

ではでは。
480名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 00:29:47 ID:xXisZOm8
>>478
今頃本家は祭状態なのかな?
471さん、乙です。
481名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 00:32:37 ID:tkSiM/9r
本家?
482お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:03:38 ID:FIhTUlBl
1
「ただいま帰りました」
慶行は紫穂と手をつないで千穂を出迎える。
「お…おお、千穂。よく帰ってきたな。お前も幸穂に似て…!」
「千穂様、お久しぶりでございます」
「お久しぶりです。千穂さん」
後ろでは紫苑と楓が慶行が暴走しないようセーフティデバイスとして
後ろについている。
とくに楓は何かしらの慶行にプレッシャーを与えているようだ。
「お久しぶりです。父様」
「おじいさま。あのひとがちほおばさま?」
「そうだよ。お前の父様の双子の妹だよ」

とうとうこの日の鏑木家

「はじめまして…と言った方がいいかな、紫穂ちゃん。
もう何年振りかしら」
紫穂は千穂を黙って見据えている。
「ねぇ」
「何かな?」
「ちほおねえさまっておよびしてもいいですか?」
「まぁ、紫穂ちゃん。こっちにいらっしゃい」
「はい」
千穂は紫穂が寄ってくるところを抱きかかえる。
「お姉さまね…ふふっ」
紫苑は懐かしそうに微笑む。
「あのね、ちほおねえさま」
「紫穂ちゃん、どうしたの?」
「なにかおとうさまにだっこされてるみたい」
483お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:04:00 ID:FIhTUlBl
2
「…あら、そうなの」
紫穂に無邪気な感想に周囲が一瞬凍りついたが千穂は
何食わぬ顔をして答える。
「うん」
「まぁ、瑞穂兄様とは双子ですからね。感じもよく似ているかもしれないわね」
「…ふたごってなぁに?」
「一緒にお母さんから生まれてきた二人兄弟のことよ。私が少し後から
生まれてきたから瑞穂兄様の妹なの」
「ふーん」
紫穂は納得したようだった。
「玄関でこうしているのも何だ。部屋に案内するから荷物を置いて少し休みなさい」
その場を何気なく取り繕うように慶行が部屋に行くように千穂を促した。
「それでは紫穂ちゃん、またね」
「紫穂、私と一緒に行きましょうね」
「はーい、おかあさま。おねえさままたね」
「じゃあ、楓さん。千穂さんと"義父様"をよろしくお願いします」
「はい。心得ております」
484お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:04:23 ID:FIhTUlBl
3
「いやぁ、あの時はちょっと焦ったぞ」
「まぁ、父様ったら」
「いや、それにしても…」
「何ですか旦那様」
「お…おお、楓か」
「もうお部屋の前に着きました」
「うむ、それではお前が蒔いた種とは言え…くれぐれもな…瑞穂」
「あら、私は千穂ですよ。こちらこそくれぐれもよろしくお願いいたします。
"母様を思い出して我を忘れることのない"ように」
「…わかっておる…でもやっぱり…幸穂…うげっ」
「それでは楓さん、しばらくしたらリビングに参ります」
「はい」
楓は千穂とのヘルミッショネルズなラリアットで伸びている
慶行を引きずっていった。
「ふぅ…子供を誤魔化すというのはなかなかうまくいかないものだな」
瑞穂に戻って鏡台の前に座る。
今いる部屋は元は幸穂のものである。
「さて、いきますか」
気合を入れて"千穂"はリビングへ向かう。
485お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:04:49 ID:FIhTUlBl
4
リビングでは千穂の土産話(脚本、演技指導:幻惑のスオウイン)で盛り上がった。
そして、昼食を摂ったあと一緒にテレビを見ていたときである。
「ねえ、ちほおねえさま、いつけっこんするの?」
「そうね、いつかしたいわね」
「きっとちほおねえさまがドレスをきたら、すてきだとおもうの」
「…そ、そう。ありがとう」
「?」
千穂は無理やり披露宴で衣装直しにまりやに着せられた
ウェディングドレスを思い出していた。
「わたしね、おとうさまみたいなきれいなひとのおよめさんになりたい」
「そう。格好いい人じゃなくて」
「かっこいいひともいいけど…きれいなひとがいいの」
「そう」
千穂はうれしさ半分複雑な気分だった。
一方、紫苑はそのときに着たタキシードと瑞穂を思い出してうっとりしている。
「それでね、おとうさまはおねえさまからみてどんなひと?」
「そうね、気が弱いけど頑固な人ね」
「がんこ?」
「自分がこうだと決めたらなかなか人の言うことを聞かなくなっちゃうこと」
「ふーん、なんとなくわかる」
「そう」
何か素直に認められて千穂はがっかりした。
486お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:05:10 ID:FIhTUlBl
5
「まぁ、そんな事いってもなかなか優しくて面倒見があるのよ、ねえ千穂」
「ま…まりやさん」
「…おひさー、千穂」
「け、圭さん…?なぜ、ここに」
「だって自分の姪っ子に会いに帰って来るっていうだからどんな面白いことに…
じゃなくて一度紫苑さんのお子さんを見てみたかったのよ」
(…どこから聞きつけたのか来ちゃったんだよ。瑞穂ちゃんのフォローするとは言ってるんだけど…)
もちろん奏から燻りだした事は言うまでもない。
(…大丈夫なんでしょうね…)
「おかあさま、このひとだぁれ」
「小鳥遊圭さんといって私が恵泉のときのお友達よ」
「はじめまして。かぶらぎしほです」
「おれがブラジル帰りのアマゾンの圭さんよ」
「あの…そんな事いわれてもわかりませんよ」
紫穂が圭の下に寄ってくる。
「?」
「なんでやね〜ん」
紫穂のつこっみの後、圭の太ももの辺りに平手打ちした。
「…あら、紫穂ちゃんは紫苑さんとお父さんに似て賢い子ね」
圭は跪くと紫穂の頭を抱いて撫でていた。
「きっと貴女は立派な芸人になるわ」
「勝手に決めないでください、私の娘の…」
千穂の発言に周りの血の気が引いていく。
「…ように可愛い紫穂ちゃんの人生を」
「うん、わたしはきれいなひとのおよめさんになるの」
「…なかなかデンジャラスね」
「圭さん、ちょっと頼むわよ」
「…ちっ」
487お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:05:39 ID:FIhTUlBl
6
「そういえば、ちほおねえさまってけいせんのときに…なんだったかな…」
「何?」
「うーん、なんとかなんとかって…」
「…わかったわ、グレートシングね」
「わかってて言ってるでしょ、圭さん」
「冗談よ、エルダーシスターね、紫穂ちゃん」
「うん、えるだーしすたーだったころのちほおねえさまってどんなかんじ?」
「…とても、怖かったわ」
「え?」
「…あのね、制服の背中のところにとてもキレイな赤いちょうちょさんが
描いてあったの。この赤色は他の学校の生徒の血の色だって言われていたわ」
あることないことを圭はここぞとばかりに紫穂に吹き込もうとする。
「ちょっと、変なことを吹き込まないでください。本気にしたらどうするんですか」
「ねぇ…『なんでやね〜ん』てしなきゃいけない?」
「…ほんと賢いわ。紫穂ちゃんはやっぱり芸人にしなきゃ勿体無い」
「もういいですから」
「紫穂ちゃん、千穂はみんなに『お姉さま』って呼ばれてたのよ。でね、千穂がエルダーに
なったとき倒れちゃった紫苑さまをみんなの前でお姫様抱っこして保健室に運んだのよ」
まりやがフォローとばかりに結果発表のことを話して聞かせる。
「おひめさまだっこ…かっこいい」
「そうよ。千穂はキレイだけどとってもカッコいいんだから」
「じゃあ、紫穂ちゃんにお姫様抱っこしてあげようか」
「いいの?おねえさま」
「どうぞ、お姫様」
千穂は紫穂を抱えあげる。
「…」
「どうしたの?」
「なにかおとうさまにだっこしてもらってるときといっしょ…。
でもお父さまとふたごなんだよね…」
(…瑞穂ちゃん、調子に乗りすぎ…)
(…私は何もしてないわよ…)
488お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:06:05 ID:FIhTUlBl
7
まりやと圭が帰宅し、夕ご飯も終えたあとのこと。
「ちほおねえさま、さきにおふろにはいっちゃたのですか」
「そうよ」
「いっしょにはいりたかったのに…」
「ごめんね」
「あしたははいれる?」
「もうあしたは外国に帰っちゃうの」
「そう…」
「ごめんね紫穂ちゃん」
「じゃぁおふろにはいってくるからいっしょのベッドでねてもいい」
「…」
「いい?」
「…いいわ、あとで私の部屋にいらっしゃい」
こういうスキンシップが一番危険なことを今日は嫌というほど思い知ったが
収まりをつけるには言うことを聞くしかなかった。
「はぁい」
紫穂が風呂に向かう。
「瑞穂さん」
「大分困ったことになりました、紫苑」
「しかも何か紫穂の"千穂さん"を見る目が変わってきました」
「それもわかってる。で、一緒に寝たいと言ってきた、と」
「じゃあ、あれで凌ぐしかありませんわ」
「これは封印した…確かに体形はは気にならなくなるけど…」
紫苑が紙袋を瑞穂に差し出す。

「しほです。はいってもいいですか」
「どうぞ」
「しつれいします…うわぁ、かわいい」
千穂はクマのふかふかだぼだぼの着ぐるみパジャマを着ていた。
489お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:06:34 ID:FIhTUlBl
8
「そういえばわたし、このおへやははじめて」
「ここはね、私と瑞穂兄様の母様の部屋だったのよ」
「ちほおねえさまとおとうさまのおかあさま…じゃあおばあさま?」
「そう、私が四歳のときにはもう死んじゃったけど」
「そうなのですか」
「ええ、この年になっちゃうと何も覚えてないはずなんだけど何か
懐かしい気持ちになるの」
「わたしもこのおへやははじめてだけど、なにかあたたかいかんじがする」
「そう」
「このしゃしんは?」
紫穂が指差した机の写真立てを千穂が持ってくる。
「ああ、これは貴女の御祖父ちゃんと私の母様が結婚したときの記念写真よ」
「わあ、おじいちゃんわかい」
「ふふ」
「千穂、いるか」
「はい」
「あしたも早いんだろう、だから…」
「…まさか」
「さちほのくまさん…くまさんのさちほ…」
「やっぱり」
「さちほーーーー」
千穂は両手を広げ慶行を迎え入れる。
「うおー幸穂」
千穂は慶行の胴体を抱えるとそのまま締め上げる。
「う、さほ、ほんとうの…くまさんみたいに…だき…ついた…ら…」
「千穂様、大丈夫ですか」
「まあ、なんとか」
「旦那様をお連れ致します。それではごゆっくり」
ベアハッグで締め上げられ気を失った慶行を楓は引き摺る。
「お休みなさい」
「かえでさん、ばいばい」
490お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:07:14 ID:FIhTUlBl
9
「ちほおねえさま、おやすみなさい」
「お休みなさい、紫穂ちゃん」
千穂は明かりを消し紫穂と一緒にベッドに入る。
「…ねえ、ちほおねえさま」
「何?」
「こんどはいつあえるの?」
「そうね、いつかははっきり言えないけど今度の夏休みに
遭えるんじゃないかな」
「ふーん」
「どうしたの?」
「いまおとうさまはがいこくへおしごとにいってるの」
「そうなの」
「うん…でもほんとうにおとうさまにそっくり」
「…」
「だっこしてもらったときも、こえのかんじも、いっしょにねてるときも」
「そう」
「ねえ、ほんとうはおとうさまでしょ」
「そんなことないわ」
「ほんとう?」
「ええ」
「……わかった、じゃあおやすみなさい」
「おやすみ」
491お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:07:41 ID:FIhTUlBl
10
次の日の朝。
「それでは、また仕事に戻ります」
「気をつけてな、千穂」
「はい」
「ちほおねえさま、わたしさびしい」
「また夏にくるから」
「そんなのやだぁ」
紫穂はうつむいてつぶやく。
「だめですよ紫穂、わがままを言うんじゃありません」
「うわぁあああぁ」
紫穂は紫苑のスカートに抱きついて顔をうずめていた。
「ごめんね、紫穂ちゃん。じゃあ」
千穂が玄関の扉に手をかける。
「ばいばい、紫穂ちゃん」
「またな、千穂」
「はい」
「千穂さん、お元気で」
「はい」
「…じゃあまたね、ちほおねえさま」
「はい」
玄関の扉をしめ瑞穂は安堵の息を漏らした。
「なんとかごまかせたかなぁ…まぁいい。とにかくマンションに戻ろう」
瑞穂はウィークリーマンションに向かった。
492お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:08:03 ID:FIhTUlBl
11
1週間後
「あの、まりやおねえさまのおうちですか」
『紫穂ちゃん?電話なんてめずらしい』
「あのね、まりやおねえさまにききたいことがあって」
『何?』
「ちほおねえさまって、ほんとうはおとうさまでしょ?」
『何を言ってるの?』
「あのね、まりやおねえさまがわたしにえらんでくれるおようふくのかんじが
ちほおねえさまによくにているから、もしかしたらしってるかとおもって」
『まぁ、たしかに私が千穂の服を選んであげたけど』
「わたし、しってるんだ。おかあさまといっしょにおとうさまにおんなの
ひとのかっこうをさせたいってときどきおはなししているの」
『え!まぁきれいだからね瑞穂ちゃんは』
「おとうさまはきれいだから」
『ねぇ、そうでしょ。よく似合うでしょ…あ』
「やっぱり」
『あの…』
「もう、べつにおこってるとかそんなのじゃないの」
『紫穂ちゃん?』
「おとうさまのこと、おしえてほしいの」
493お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:08:22 ID:FIhTUlBl
12
「おかあさま」
「なんですか、紫穂」
「おとうさまはどこにいっていたの?あめりか?あふりか?」
「そうね、どこかしら」
「ほんとにしらないの?」
「ええ」
「そういえばね、おとうさまのかばんのちかくにこんなのがおちてた」
紫穂は紫苑にマスカラを差し出す。
「これってまつげにつけるやつだよね」
「そ、そうよ。私が使ってるの」
「うそ、おかあさまがこれをつかってるのみたことない」
「え…」
「それにまりやおねえさまからきいたんだ」
「え?」
「ねえ、おかあさま。ほんとうのことをおしえてほしいの」
「何?」
「おとうさまはおんなのひとのかっこうをしておかあさまといっしょのがっこうにいったんでしょ?」
「…」
「おしえて?」
494お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:09:31 ID:FIhTUlBl
13
「ねえおとうさま」
「何、紫穂?」
「もういちど…ちほおねえさまになってほしい」
「え?」
「きれいなおとうさまがみたい」
「あの…何を」
「あきらめな、瑞穂ちゃん」
「まりや?」
「その、ばれてしまいました」
「…」
「おねがい、ちほおねえさまになるところがみたい」
「…どうしましょうか?」
「あのね、ようちえんのおともだちにわたしのじまんのおねえさまにあわせてあげるって
やくそくしちゃったの」
「親バカだとおもってあきらめて」
まりやは右手に女性用かみそりもって左手を瑞穂の肩に置く。
「もう、なんの気兼ねも要りませんのよ」
貴子が瑞穂の前に陣取る。
「さ、参りましょうか…瑞穂さん」
紫苑は瑞穂のもう片方の肩に手を置く。
「わーい。うれしいおとうさま」
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495お姉さまと一緒のなかのひと:2005/04/05(火) 03:11:01 ID:FIhTUlBl
14
「鏑木千穂といいます。よろしく」
「わぁ、しほちゃん。このおねえさん、ほんとうにきれい」
「わたしもあんなおんなのひとになりたい」
「でしょ、わたしのじまんのおねえさまよ」

そして紫穂が小学校に上がるまで瑞穂は父親の威厳を
よってたかってズタボロにされたということは賢明なスレ住人の
推察のとおりである。

「ぼく、がんばったよね」
「何ですか瑞穂さん」
「ぼく、がんばったからもうゴールするね」
「空にとどける思い出もないでしょうが、瑞穂ちゃんは。
紫穂ちゃんと紫苑さまを置いてゴールするかね」
「うう…」

続かない
4961話スレ241:2005/04/05(火) 03:37:05 ID:KH4b38yu
>>495
GJ!!
瑞穂ちゃ〜ん、戻ってきてー。
がんばったけどゴールはまだ先だよー。
まだ女装してもら・・・ゲフンゲフン。
4971スレの301:2005/04/05(火) 08:38:23 ID:5JzSj36I
>>495
わはははは。瑞穂ちゃんの正体がわかるところで爆笑したり、
グレートシングだったり、フルバネタだったり、笑わせていただきました。

わたしもコミカルモノが書きたくなってきましたよ。
GJでした。
498名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 10:01:35 ID:Rg9bRTrN
Airネタとフルバネタ、あと幻惑のスオウインで笑わせてもらいました。GJ!
しかし、初代スレからいるのにいまだ作品を手に入れられない俺はもうだめぽ…orz
499名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 11:09:02 ID:R4iXFaDp
>>495

あーあ。瑞穂ちゃんの苦労は、報われませんでしたね。

きっと、これから日常的に”女装”させられる日々が始まるのでしょう。

家庭内での孤立無援の戦い(^^;
武器弾薬は底を付き、補給の目処はたたず。救援要請も出来ない・・・絶望的な戦いの日々

そのうち瑞穂ちゃん家出したりして(^^;
あういう性格の人が切れると、手に負えないような気がするのだけど
5003代目226:2005/04/05(火) 12:25:38 ID:lOytadOX
職人の皆様、スレ焦土化作戦、乙であります。
もう余りにも名作多すぎて各個レスは省略します。
今後とも、期待さして頂きます!

>>478
<<我々も一緒に予約に逝くよ>>

>>499
<<司令部、こちら3スレ226。瑞穂ちゃんが攻撃を受けている。交戦の許可を>>
<<攻撃を受けているのか?>>
<<いいえ>>
<<鏑木家の問題だ。3スレ226、帰投せよ>>

瑞穂ちゃんがキれた場合・・・最終的にはは紫苑様が怒髪天モードに入ったことによって収束しそうな悪寒。
501名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 12:38:29 ID:SduKubIE
>494
三人ともイイ笑顔してるー!?(ガビーン

激しくワラタwGJ!
502初代269:2005/04/05(火) 14:36:37 ID:mV+6eiof
久々に投下します。『瑞穂たちの休日』です。

時期的には転入後1週間位。
体育のイベントが終わった後くらいです。
503初代269:2005/04/05(火) 14:37:42 ID:mV+6eiof
 「瑞穂ちゃん、準備できた?」
ドア越しにまりやの声が聞こえてきた。
「…う、うん」
僕はためらいながら返事を返す。
……うぅ………憂鬱だ…
恵泉女学院に編入して、初めての日曜日。寮生の皆との親睦を深めると
いう名目で少し遠出をすることとなった…のだけれど……
 「……はぁ」
 鏡台に写る自分を見て溜息を溢す。
 目に映るのは明るい若草色のワンピースを着た、やや大きめの白い帽子を
被った女の子……
 「とほほ…」
 未だに学院の制服を着ることにすら抵抗を覚えているのに、休みの日にま
でこんな格好することになるなんて……
 今着ているもの――それ以外の服もだけど――は、まりやが用意してくれ
たものだ。まりやが用意してきたもの全てが、僕にサイズがぴったりなのは
何故なんだろう…?
 「瑞穂ちゃん?準備できたんなら早く出てきなよ」
 「わ、わかった…今行くよ…」
 まりやに急かされて部屋を出る。
 かちゃ。
 「ヒュ〜!」
 部屋を出た僕の姿を一目見ると口笛を鳴らすまりや。
 「……」
 僕は気恥ずかしさに思わず俯いてしまう。
 「いやぁ〜、さっすが瑞穂ちゃんよね〜〜!結構着こなすの難しいかな
って思ってたんだけど……なんていうか、清楚って感じで凄く良いわね」
 「…それは…どうも……」
 僕としては返す言葉が見つからない。……清楚………
 「おっと。んじゃ、そろそろ階下に行こうか。二人が食堂で待ってるから」
504初代269:2005/04/05(火) 14:39:04 ID:mV+6eiof
 「おっ待たせ〜〜!!」
 元気良く大声を出しながら食堂の扉を潜るまりや。
 「あ、まりやお姉さま」
 「お待ちしてましたのですよ〜」
 中から奏ちゃんと由佳里ちゃんの声が聞こえる。…僕はまだ階段を下
りた辺りで、食堂に入るのを躊躇している。
 「あれ?まりやお姉さま、瑞穂お姉さまはどうなさったんですか?」
 由佳里ちゃんの声が聞こえる。
 …そ、外で……待ってようかな…?…なんか恥ずかしいし……
 「え…あれ?さっき一緒に下りて来たんだけど…玄関で待ってんのか
な……?」
 「そうなのですか?じゃあ、奏たちも…」
 「ん、そうだね。んじゃ、行きますか!」
 靴を履き終え玄関の扉を潜る頃、そんな声が聞こえてきた…

 奏ちゃんと由佳里を従えて玄関に向かう。が、瑞穂ちゃんの姿は無か
った。どうやら先に外に出ているらしい。
 「さ、行こう」
 靴を履き、二人に声を掛けて玄関を出る…と……
 「あ…」
 先に出て、玄関を背に並木道を見ていた瑞穂ちゃんがこちらに気付い
て振り返る。
 「「「………」」」
 三人とも立ち尽くす。
…一瞬、時間が止まった…気がした。
 「ど、どうしたの?」
 何も云わないこちらの様子に驚いた瑞穂ちゃんが慌てて云う。
 「!……ああ、なんでも無いなんでも無い」
 慌ててその場を取り繕うあたし。
 「…そう?…ならいいけど…」
 …見惚れてました、なんて云えるわけないじゃない……男の子相手に…
505初代269:2005/04/05(火) 14:40:09 ID:mV+6eiof
 ガタンゴトン……
 「で、何処に行くの?まりや…」
 ここは電車の中。今日の予定は全てまりやの立案によるものなので詳
しいことは何一つわかっていない。
 駅での切符の購入すらまりやが四人分買ってきた。 
 「うぅ〜…すっごく気になるのですよ〜」
 「どこに連れてかれるのかな……?」
 奏ちゃんと由佳里ちゃんも詳しいことは何も聞かされていないらしく
しきりに気にしている。
 …南に向かっていることだけはわかるんだけど……
 「ま、着いてからのお・た・の・し・み!」
 にははっと笑いながら云うまりや。
 「あったしに任せなさい!」
 …まりやに任せて良い思いをした記憶が無いんだよなぁ……
 「それにしても…」
 由佳里ちゃんが思い出したように話し出す。
 「?…どうかした?由佳里ちゃん」
 「いえ…瑞穂お姉さまって……本当にお綺麗だなって思って…」
 もじもじと顔を赤くしながら云う由佳里ちゃん。
 「え…?」
 唐突に云われて反応に窮していると
 「由佳里ちゃんの云う通りなのですよ〜〜。制服姿の瑞穂お姉さまも
 とても素敵なのですが、今日のワンピース姿のお姉さまもとってもお
 美しいのですよ〜〜。キュートなのです」
 奏ちゃんもそんなことを云い出す。
 「え…あ、ありがとう…」
 …で、良いのかな?ここは……素直には喜べないけど……
 「そうだね…瑞穂ちゃんってば、背は高いし美人だし大抵のものは苦
もなく着こなすだろうとは思っていたけど…まさかここまでとは…ね…」
 苦笑を浮かべながらまりやが云う。
 …だったら、もっと違う服を用意してくれれば良かったのに……
506初代269:2005/04/05(火) 14:41:08 ID:mV+6eiof
 「あ、着いたみたい。降りるよ」
 電車で揺られること1時間強。どうやらやっと目的地に着いたみたい
だ。
 「あれ…ここって……?」
 降りたホームの駅名を見て由佳里ちゃんが呟く。
 「?」
 …僕には駅名を見ても何も思いつかないけど……
 「あ、由佳里。わかっても云っちゃ駄目だからね」
 悪戯っぽい顔でまりやが云う。
 「は、はい」
 「由佳里ちゃん。何がわかったのです?ここはそんなに有名な駅なの
ですか?」
不思議そうな顔で由佳里ちゃんに云う奏ちゃん。
「にひひ。着いたらわかるわよ、奏ちゃん」
云って改札に向かって歩き出すまりや。
「あ、待って下さい。まりやお姉さま」
慌ててまりやの後に付いていく由佳里ちゃん。
「ふふっ。さぁ、奏ちゃん、私たちも行きましょう」
「はいなのです!」
僕と奏ちゃんは並んで二人の後を追った。

「ん〜。そうだね、大体10分くらいで着くと思うよ」
改札を潜った辺りで、まりやが云った。
「駅前にあるわけではないのね…」
目的地が未だにわからないので何とも云えないのだが。
「どんなところに行くのですか……まりやお姉さま…?」
興味津々と云った様子で奏ちゃんが云う。
「迷わず行けよ、行けばわかるさ。ってね☆」
楽しそうな笑顔を浮かべてまりやが云う。
……まさか迷子になってたりは…しないよね……?
507初代269:2005/04/05(火) 14:42:09 ID:mV+6eiof
 「着いた〜〜!!」
 おおげさに声を上げるまりや。
「ここは……」
 「話には聞いていましたけど…初めて来ました……」
 「か、奏もなのですよ〜」
 まりやに連れられて歩くこと10分ちょっと。僕たちの眼前に広がる
その光景は……
 …チャイナタウン?!
 決して広いとは云えない道の両端に中華まんやらなんやらを扱う屋台
が所狭しと並び、それに群がる人の波。何処からか流れてくる食欲をそ
そる美味しそうな料理の匂い。
 日本の中にある異国の装い。
「「「…中華街」」」
 まりやを除く三人が異口同音に口にする。
「そ。驚いた?」
 意味も無く胸を張って云うまりや。
 「……少し…」
 遊びに行くって云っていたからもっと違うところ…遊園地とかそう云
ったところを想像していた。
 …まさか中華街に連れて来られるとは……
 「さあ、ぼーっとしててもしょうがない。さっさと行きましょ」
 云うとまりやはさっさと通りに向かって歩き出す。
 「あ…待って……」
 慌てて三人で後に続く。
こうして僕たちは中華街のメインストリートへと足を踏み入れたのだった。
508初代269:2005/04/05(火) 14:43:13 ID:mV+6eiof
 あれから僕たちはウインドウショッピングをしながら中華街を歩いて
いた。
特に前もってお店に予約をしていたわけでもないので、通りを歩き、
気になったものを買って、食べたり飲んだりしながら楽しい時間を過ご
していた。
 「ちょっと見て見て、瑞穂ちゃん!」
とあるお店の前を通り掛ったとき、まりやが話しかけてきた。
 「?」
 まりやが指を指す方向を見る。
 …と、そこには…
 「わあ!チャイナドレス!!」
 「チャイナドレスなのですよ〜」
 マネキンにディスプレイされたチャイナドレスが置いてあった。
 「いいな〜〜。これ…」
 まりやが目を輝かせて見入っている。
 …なんか嫌な予感が……
 「…あ!」
 同じくそのお店を眺めていた由佳里ちゃんが声を上げた。
 「どうしたのですか…由佳里ちゃん?」
 奏ちゃんが問いかける。
 「ほら…あれ!」
 云ってある一点を指差す由佳里ちゃん。
 その先に視線を移すと……
 「………な」
 やばい!
 「え〜!!レンタル?!」
 案の定まりやが食い付いてしまった。
 くるり。
 「み〜ず〜ほ〜ちゃ〜〜ん?」
 振り返り、怪しい笑みを浮かべながら僕ににじり寄るまりや。
 「ななな、なに…?」
509初代269:2005/04/05(火) 14:44:23 ID:mV+6eiof
 「レンタルしてくれんだってさ〜」
ずい。
さらににじり寄るまりや。
「そそそ、そうみたい…だね」
思わず後ずさる僕。
「あれってなかなか着れる機会が無いのよね〜」
ずずい。
にじり寄るまりや。
「だ、だから……?」
さらに後ずさる僕。
「…ふふん。わかってんでしょう……?」
不敵な笑みを浮かべるまりや。
…怖い。……怖いよ…まりや……
 「もしかしてレンタルなさるのですか?お姉さま方」
 僕たちのやり取りを眺めていた由佳里ちゃんが声を上げる。
 「わあ!きっと、とっても素敵だと思うのですよ〜〜」
 目を輝かせて奏ちゃんが云う。
 「お。奏ちゃんもそう思う?」
 我が意を得たりと奏ちゃんに言葉を返すまりや。
 「はいなのです!」
 元気良く返事をする奏ちゃん。
 「……というわけで…」
 がしっ!と僕の腕を掴むまりや。
 「さあ、行くわよ!」
 そのまま物凄い勢いで引きずり込まれる。
「え、ええ?えええええぇぇ?!」
 僕に拒否権は?!
 僕は為す術なく店内に連れて行かれてしまった……
 暴走したまりやにはどうやっても敵わないことは長年の付き合いで良
くわかっている。
 …あきらめよう……
510初代269:2005/04/05(火) 14:45:23 ID:mV+6eiof
 「「わあ!!」」
 試着を終え更衣室を出ると奏ちゃんと由佳里ちゃんが歓声を上げた。
 …すごく……恥ずかしい………
 レンタルして貰ったドレスは白地のもので左胸のところに大きな薔薇
の刺繍が施されたものだった。…ちなみに頭には花飾りが二つほど。
 ドレスはぴったりと身体にフィットする感じで、身体の線がはっきり
とわかってしまう。やや厚めの生地なのでパットのラインはわからない
と思うけど…
 何よりも恥ずかしいのが、太腿の辺りからスリットが入っていること
だ。制服のスカートですら恥ずかしいのにこのドレスときたら……
 「瑞穂お姉さま…素敵です……」
 「はぅ〜。奏、なんだかクラクラしてきたのですよ〜〜」
 顔を赤らめながら二人が云う。
 …奏ちゃん……大丈夫かな?本当に身体が揺れているけど…
 「お!瑞穂ちゃん、いいねいいね〜!」
 着替えの終わったまりやがやってきた。
 「そう?…そう云うまりやもすごく似合ってるわよ?」
 「そ、そう…かな…?」
 照れ笑いを浮かべて鼻の頭を掻くまりや。
 まりやのドレスは赤地のもので、昇り龍の刺繍が施された、いかにも
中国って感じがするものだった。
 「…って、あれ……?」
 不思議そうな顔をするまりや。
 「?…どうしたの?」
 「…奏ちゃん……」
 「…え?」
 奏ちゃんに目を向けると……?
 鼻血を出しながら倒れている奏ちゃんと介抱する由佳里ちゃんの姿が…
 「わわっ!か、奏ちゃん?!」
 「きゅ〜〜」
 …幸せそうな顔で気絶してしまった奏ちゃんだった……
511初代269:2005/04/05(火) 14:47:03 ID:mV+6eiof
 「んじゃ、行きますか」
 お店で貸してくれた中国風の扇子を弄んでいたまりやが云い出した。
 「え?」
 まりやの言葉にびっくりて聞き返す。
 「え?じゃないわよ。せっかく着替えたんだから街中に出なきゃ意味
が無いじゃない…?」
 さも当然といった面持ちで云うまりや。
 「そんな……人前に出るなんて…」
 恥ずかしい事この上ない…
 「瑞穂お姉さま…もう着替えてしまわれるのですか?とても良く似合
っていらっしゃいますのに……」
 「そうですよ。まりやお姉さまとお二人でいる姿なんて、とても絵に
なっていると思います」
 口々に云う奏ちゃんと由佳里ちゃん。
 「う…ぅん……そう云われても…ねぇ……」
 やはりこの格好で人前に出るのは躊躇われる。
 「ああ、もう!…こうなったら……強制連行だ!!二人とも手伝って!」
 「は、はい!」
 「はいなのです」
 まりやの号令で奏ちゃんが右から、由佳里ちゃんが左から押さえつけてくる。
 「わわわっ……ちょ…っ……」
 二人から何とか逃れようとしていた隙に、まりやに背後を取られて捕まって
しまった。そのまま羽交い絞めにされてしまう。
 「にひひっ…さぁ、行こう!」
 「わわわかったから、外に出るから押さないで…」
 ぎゅっぎゅっとまりやが身体ごと押し付けてくるものだから、背中にまりやの
胸が当たっているわけで……このままでは非常にまずい…色々な意味で…
 「ん…そう?だったら最初から素直にそう云えばいいのに」
 そう云ってまりやは身体を離す。腕を掴んでいた二人も手を離した…危なかった。
 「じゃあ、あらためて行きますか」
 「とほほ……」
512初代269:2005/04/05(火) 14:48:23 ID:mV+6eiof
 「ひゃぁっ!」
 外に出たのはいいけれど、今日は少し風がある。ちょっと強めの風が
吹くとドレスが風でめくれてしまう。その度に手でめくれるのを押さえる。
 …うぅ……やっぱり外に出るんじゃなかった…
 お店で着替える時、お店の人に下着を替えるように云われて新しい下着を
手渡されたのだけど…
 『そのドレスはスリットがきつめのものなのでこういった下着じゃないと
 格好悪いのよね』
 と云ってかなりエグい下着に替えさせられてしまった。
…超ハイレグの上にTバック……保護色のサポーターを履いてきて良かった…
 無かったら、とてもじゃないが隠しきれるとは思えない。
 「…なんか…ものすごく注目されていますね…」
 「はうぅ…みんな見てるのですよ〜」
 遠巻きに周囲の人がこちらを見ては何かを囁き合ったりしている。中にはカ
メラを取り出し、撮影を始めている者もいた。
 「いやぁ〜〜。照れますなぁ〜」
 満更でもなさそうな笑みを浮かべてまりやが云う。
 「…うぅ……もう帰りたい…」
 我ながら情けないが、もはや弱々しい声しか出ない。
 「なに云ってるの瑞穂ちゃん。まだ10分も経ってないんだよ?」
 呆れた顔をして云うまりや。
 …そう云えばレンタルは1時間単位だったっけ……
 「…でも……」
 あまりの気恥ずかしさに、俯き加減でまりやを見やる。
 「う……そ、そんな可愛らしく上目遣いしても駄目だからね」
 何故か顔を赤らめながら云うまりや。
 「…瑞穂お姉さま…可愛い……」
 ぼそりと由佳里ちゃんが呟くのが聞こえた。
 「はぅぅ………きゃ…っ…!」
 ふらふらとした足取りをした奏ちゃんが大きくよろめいた瞬間!
 「つ…痛ってぇなぁ…」
513初代269:2005/04/05(火) 14:49:28 ID:mV+6eiof
 近くを歩いていた若い男にぶつかってしまった。
 「ご、ごめんなさいなのです」
 我に返った奏ちゃんが頭を下げる。
 「おい、どうした?」
 ぶつかった男の連れらしき男が姿を現す。
 「いや、こいつがいきなりぶつかってきやがって…」
 云って奏ちゃんを指差す。
 「ああ…?お……結構可愛いじゃねぇか…詫び代わりにちょっと付き
合って貰おうか」
 「きゃっ!」
 男は強引に奏ちゃんを手元に引き摺り込む。
 「ちょっとあんたたち!」
 まりやが扇子をびしっ!っと突きつけ怒鳴りつけると男たちに歩み寄る。
 「なんだ?仲間に入りてぇのか?」
 いやらしい笑いを浮かべながら男が云う。
 「んなわけあるか!さっさと手を離しなさい!!」
 奏ちゃんを押さえていた男の手を持っていた扇子で激しく打ち付ける。
 「痛っ!…なにしやがる!!」
 ばしっ!
 「きゃあ!」
 叩かれた男がまりやを突き飛ばす。
 「!」
 それを見た瞬間、僕は動き出していた。
 「はっっ!!!」
 奏ちゃんを押さえていた男の眼前に飛び込み、右の掌底でアゴを撃つ!
 「がはぁぁ…!!」
 男はそのまま後ろに崩れ落ちる。僕は休まず続けてもう一人の男に接近する。
 「…な?!」
 事態を把握出来ていないのか、驚愕している男の水月に右の掌底を叩き込む!
 「ぐぇぇ……!!」
 男は両手で腹を抱えて前のめりに倒れた……
514初代269:2005/04/05(火) 14:50:59 ID:mV+6eiof
 「大丈夫…?」
 「ああ…あたしは平気。なんとも無い……?!瑞穂ちゃん!!」
 「?!」
 まりやの目線から察して右に飛ぶ。
 ぶぅん!
 飛び去った瞬間、元いた場所に拳が飛んできた。
 「くっ…」
 一人目の男?!…倒しきれなかったか…
 僕は急いで体勢を立て直す。と、そこに…
「うらぁぁぁ!!!」
 右の拳を振り上げて男が突進してくる。
 「!…」
 左斜め後ろに半歩下がり、攻撃をいなす。
 「ちっ…」
 攻撃をかわされた男がやや前のめりに蹈鞴を踏む。
 …今だ!
 「ふっ…!」
 男の後頭部目掛けて左の回し蹴りを放つ!
 「……っ」
 …ばたん。
 今度こそ白目を剥いて崩れる男。
 「…ふぅ……」
 やっと終わったか…
 ほっ、と胸を撫で下ろした瞬間。
 「わあぁぁぁぁ!!!!」
 歓声が沸き起こった。
 「え??」
 唐突に沸き起こった歓声に驚いて周囲を見渡す。
「…あ」
 …僕たちはいつの間にか二重三重のギャラリーに囲まれていた……
515初代269:2005/04/05(火) 14:52:39 ID:mV+6eiof
 「すげぇな!姉ちゃん!!」
 「格好良いぞ〜!」
 ギャラリーから拍手と賞賛の声が上がっている。
 「あは…あはは……」
 ……どうしよう。
 呆然と僕が立ち竦んでいると、そこに奏ちゃんが飛び込んで来た。
 「わあぁぁぁ……ぉ…お姉さ…ま……っ…」
 僕にしがみつきしゃくり上げる奏ちゃん。
 …ああ、そうだった……
 泣き付く奏ちゃんを見て、僕は我に返った。
 「怖かったのね…もう大丈夫よ」
 奏ちゃんの頭を撫でながら優しく囁く。
 「……お姉さま…あり…がとう…ござい……ます……」
 つっかえつっかえ言葉を紡ぐ奏ちゃん。
 …怪我とか無くてほんとに良かった……
 「み、瑞穂お姉さま…?」
 「なあに?」
 由佳里ちゃんの声に反応してそちらを見やる…
 「…!」
 …忘れてた……ギャラリーがいたんだっけ…
 「…場所、変えようか…?」
 「……そう…だね…」
 まりやの提案に反対する者は誰一人としていなかった……
 「すかっとしたぞ〜!」
 「格好良かったわよ〜」
 ギャラリーからの声に愛想笑いを浮かべながらその場を離れる。
 「?」
 去り際、まりやがギャラリーの一人に呼び止められ何か話しをしている。
 「……なんだろう?」
 話を終えたまりやが小走りに駆け寄ってきた。
 「お待たせ〜。さ、行こう」
516初代269:2005/04/05(火) 14:54:23 ID:mV+6eiof
 あの後、近くの喫茶店に入って一休みすることにした。
 「…ふぅ」
 アイスコーヒーを一口飲んで一息入れる。
 「瑞穂ちゃん。お疲れ」
 そんな僕を見てまりやが云う。
  「…瑞穂お姉さま。…ありがとうございますなのです」
 ちょっと、しゅん、となった奏ちゃんが頭を下げる。
 「ふふふっ…いいのよ。気にしないでちょうだい。妹を守るのは姉の
役目なんですから…」
 云って奏ちゃんに笑顔を向ける。
 「瑞穂お姉さま……はい…」
 にっこりと微笑む奏ちゃん。
 …やっぱり女の子は笑っていた方がいいな……
 「…それにしても……」
 紅茶を一口啜った由佳里ちゃんが云う。
 「?」
 「瑞穂お姉さま…なんていうか…お強いのですね…」
 「そりゃあ、もう。って前にも云ったじゃない。合気道やら空手やら
も標準装備だって…」
 ミルクティーを飲んでいたまりやが由佳里ちゃんに答えた。
 「…なんだか、商品のスペック紹介みたいな言い方ね……」
 …オプションで何か付きそうな感じがする。
 「いえ、まさか本当に武道の心得があるなんて思って無かったんです。
なんて云うか、想像し辛いものが……」
 「う〜ん…まぁ、そうかもね……」
 からん、とコップの氷を転がしながらまりやが続ける、
 「黙って立ってりゃ、良家のお嬢様って感じだしね。瑞穂ちゃんは」
 「それは…まりやだって人のことは云えないんじゃないの…?」
 黙っていれば……の件はむしろまりやに当てはまる気がするし。
 「…にゃはは、薮蛇だったかな?これは」
 楽しそうに笑うまりや。
517初代269:2005/04/05(火) 14:55:27 ID:mV+6eiof
 「あ、そう云えば……」
 僕は気になっていたことをまりやに聞くことにした。
 「ん?なに」
 「さっき知らない人と何か話をしていたけど…なんだったの……?」
 「ああ…あれ?ふふん…後でわかるわよ。後で…ね?」
 悪戯な微笑を浮かべてまりやが云う。
 ……なんだろう?
 とりあえず、いくら考えてもわからない、ということだけはわかる。
 「ま、いいわ…」
 気にしても仕様がない…僕は残りのアイスコーヒーを一気に飲み下した。


 「おはようございます。瑞穂さん」
 「おはようございます。美智子さん」
 翌日、教室に入ると美智子さんが出迎えてくれた。
 「あれ?紫苑さんはまだいらっしゃらないんですか?それに圭さんも」
 「ええ、お二人ともまだいらっしゃってないですよ」
 にっこりと笑って僕の質問に答える美智子さん。
 と、
「瑞穂ちゃん!」
 まりやが教室に駆け込んできた。
 「どうしたの?まりやさん…朝見かけなかったから陸上部の朝錬に出
てるのかと思ってたのに…」
登校するときにグラウンドを覗いて見たけどそこにはまりやはいなか
った。
 「へへ〜ん」
 にやにや笑いを浮かべながらバックから封筒を取り出すまりや。
 「なんですの?それ…?」
 美智子さんが不思議そうに封筒を見つめる。
 「じゃ〜ん!!」
 封筒の中身を机に広げるまりや……って…!
518初代269:2005/04/05(火) 14:57:56 ID:mV+6eiof
 「えええ〜〜?!!」
 ななな、なんでここにそんなものが…?!
 まりやが取り出したもの……それは…
 「まぁ…チャイナドレス!」
 目を輝かせて見入る美智子さん。
 …昨日の写真……
 「なんでそんなものが…?!」
 誰もカメラなんて持って無かったのに…
 「ほら、昨日知らない人と話をしてたでしょ?あの時に貰ったんだ。
 使い捨てカメラ。瑞穂ちゃんを撮ったからって…」
 「あ……」
 あの時の……『後でわかる』って云ってたっけ…
 「わお…大胆ね。瑞穂さん……」
 「わわっ!け、圭さん?!」
 いきなり背後から圭さんが現れた。
 …なんでいつも背後から現れるんだ?この人は…
 「だ、大胆って…?」
 「……ほら」
 云って一枚の写真を僕の目の前に掲げる圭さん。
 「〜〜!!」
 そこには、チャイナドレスの格好で大きく足を上げた僕の姿が……
 スリットの入った服でのこと、当然……
 「…まぁ、見事なパンチラですわね……」
 「し、紫苑さん?!」
 丁度登校してきた紫苑さんが写真を見て一言云った。
 「…ちょっとサービスし過ぎじゃない?」
 他の写真にも目を通しながら圭さんが云う。
 「〜〜〜!!」
 なんじゃあ!こりゃあぁ!!
 どれもこれもパンチラばかり。何故か戦っていた相手の姿はこれっぽ
っちも写っていない。中にはTバックのおしりのアップまで…
519初代269:2005/04/05(火) 14:59:13 ID:mV+6eiof
 「ま〜り〜や〜〜?」
 僕はいま、多分、いや間違いなく目が据わっていると思う。
 「え?いいいや、あ、あたしも何が写ってるのかは知らなかったし…」
 うろたえながら後ずさるまりや。
 「……」
 無言で詰め寄る僕。
 「あはは…は………さ、さいなら〜〜!!」
 脱兎の如く逃げ出すまりや。
 「お待ちなさい!!」
 逃げ去るまりやを追いかける僕。
 

「……あらあら、行ってしまいました」
 呆れた口調の美智子さん。
 「………」
 無言で二人を見送る圭さん。
 「…これ、どうしたらよろしいのでしょう?」
 私は机に広がる瑞穂さんの写真の群れを見て呟いたが、心では、
 (…あとで焼き増しして頂きましょう)
 瑞穂さんが聞いたら怒りそうなことを考えていた……



 fin
520初代269:2005/04/05(火) 15:02:00 ID:mV+6eiof
やる気箱のトップ絵を見てたら書きたくなってやってしまいました。

久しぶりに投下させて頂きました。楽しんで頂けたら幸いです。
521名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 15:14:03 ID:aiqHI/di
>520
こういうのをまっていた!
嫌がる瑞穂ちゃんサイコー!
瑞穂ちゃんの恥ずかしい写真ホスィハァハァ

こういうのをGJと言うのだ!
今後の活躍と、6スレ目での269番ゲトを願ってます。
522名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 15:28:22 ID:YXxlhf7J
最近はもうどんな笑える不幸な目にあっても
「ああ、瑞穂ちゃんだからなぁ……」
と思うようになってきました。万歳。
523名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 15:29:24 ID:eh+8tea6
       〈,.'⌒
     '´ , `´ ヽ
    i イノノ))))
    | リ;゚ヮ゚ノl!  し、写真は没収!
   ノ⊂)i〆)つ
  ( (( ハ___| ) )
       !_ハ_i
524名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 15:33:14 ID:R4iXFaDp
>>520

あれだけ、ギャラリー(かめこ込み)がいたら、投稿写真雑誌とか
自分の持っているWEBページに写真を無断upとかされていそう
なんだけど・・

GJでした。

>>478
(司令部。新たなる目標発見。これより接近を試みる)
(目標に動きはあるか?)
(いや。目標は、大休止中の模様)
(増援部隊を至急送る。それまで現時点での待機を命ず)
(了解。これにて通信を終わる)
<<我々も一緒に予約に逝くよ>>
525471 ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:32:43 ID:ydMlsfZP
pack of liesです。
>>473の続きですな。
526pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:33:24 ID:ydMlsfZP
「それじゃ、話がまとまったところで会議室に乗り込みましょうか」
 四人は会議室へと向かった。

 ドバン!!
「失礼します!」
 まりやはノックもせずに物凄い勢いで扉を開け、会議室に踏み込んだ。その音と声に会議室
は一瞬静寂に包まれる。
「な、何ですか、いきなり!」
 今もなお瑞穂を攻撃していた三年の学年主任が振り返って言った。
 一方の瑞穂はと言うと、『柳のように、風になびくんだ……っ!』を実行していたようで、実に涼
しげな顔をしていた。前々日からの疲れが取れないのか、酷く眠そうではあったが。
「三年B組、御門まりや他三名、本日は生徒を代表して意見を申し上げに参りました」
 その後ろから貴子、紫苑、圭が現れた。貴子は生徒会長、紫苑は元エルダー、まりやと圭は
それぞれが運動部と文化部の代表と言う事にしている。もちろん、半分思いつきでやって来た
ようなものなので、生徒たちの意見がまとめられているわけではない。
 それはともかく。
「学院長先生、発言を許可願いたいのですが、よろしいでしょうか?」
 まりやは学院長に向かって言った。
「ええ、どうぞ」
「有難う御座います。……私の見る限り、この会議は完全に膠着しているように見受けられます。
このままこんな会議を続けていても全く埒が明きませんし、何度会議を繰り返したところでそれ
は同じことでしょう。
 また、今回の様な重大な事を先生方の意見だけで決められてしまうのはどうかとも思います。
瑞穂さんをエルダーに選出したのは我々生徒側ですし、そのエルダーである瑞穂さんの……」
527pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:34:07 ID:ydMlsfZP
「ちょっとお待ちなさい! エルダーかどうかは今は関係ないでしょう! それに、そもそも男が
エルダーだなんて、無効に決まっています!」
 まりやの言葉を遮って学年主任が反論する。
「まだ私が話している最中ですよ、先生。人の話はちゃんと聞くように、と幼等部で習いませんで
したか?」
 バカにしたようにまりやは言った。周囲からクスクスと失笑が漏れる。
「今、男がエルダーなんて、と言う発言がありましたが、そんな事はどうでもいいことです。エル
ダーは生徒たちの支持率、すなわち得票数が全て。それがエルダーである為に必要な、たった
一つの真実だったはずです。途中編入だとか男だとか、そんな事は一切関係ありません! そ
こにいる瑞穂さんは単独得票数82%という、過去最高の数字を獲得した、まさに史上最高のエ
ルダーなのです!
 そのエルダーである瑞穂さんの処置を決めると言うのであれば、それを選出した我々生徒の
意見も取り入れて然るべきです。
 本来なら、ここで生徒たちの意見をまとめたものを提出すべきなのでしょうが、生憎と時間が
無かった為にそのようなものは用意できていません。そこで……」
「それなら何故あなたはこのような所まででしゃばって来ているのですか。生徒の総意と言うなら
その意見はまとめて来て然るべきでしょう?」
 再びまりやの言葉を遮って学年主任が反論する。今度はまりやの弱みを付け込んだつもりで
得意げに発言したのだが、学習能力は無いようだった。
「まだ私が話している最中ですよ、先生。二度も同じ事を言わせないでください。あなたの頭は
幼等部の子以下ですか?」
 今度は呆れたように言った。再び失笑が漏れる。学年主任は顔を真っ赤にしていた。
528pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:34:39 ID:ydMlsfZP
「生徒たちの意見をまとめられなかったのには理由があります。誰とは申しませんが、何が何で
も、今すぐにでも瑞穂さんを辞めさせたい、という方がいらっしゃったようですので、残念ながら
あまり悠長な事をしている時間がなかったのです」
 学年主任の方に向かって「誰とは」の部分を強調して言った。周囲の含み笑いが大きくなる。
学年主任はぷるぷると震えていたが、さすがにこれ以上反論する事は出来なかった。
「そこで、提案があります。瑞穂さんが本当にエルダーに相応しいかどうか、信任投票を行うの
です。今すぐに、と言いたいところですが、先生方と違って私たちは何だかんだ言ってもまだ子
供ですので、今の混乱した状況ではまともな判断は到底出来るとは思えません。そこで、今月
末に信任投票を行う為の臨時生徒総会を開き、それまでの期間を利用して、瑞穂さんが本当
にエルダーに相応しいかどうかを見極めて貰います。もちろん、この投票には先生方も参加し
ていただきます。
 もし、その投票で不信任と言う結果になれば、瑞穂さんはエルダーでなくただの生徒と言う事
になりますので、その時は学院に在籍できる理由がありません。故に学院から去って頂きます。
また、このような状況にも拘らず信任されるのであれば、瑞穂さんは真のエルダー、即ちこの恵
泉女学院の精神の体現者、と言う事が出来ますので、卒業まできっちりと在籍して頂く、と言う
のはいかがでしょうか? ……私からの発言は以上です」
 発言を終えたまりやは、他の三人がいる壁際に移動した。
 会議の方はと言うと、瑞穂の攻撃に固執していた学年主任がまりやに抑えられ、また、まりや
によって新たな意見が出された為に、その妥当性を検討する方向に動いていった。もともと膠
着していただけあって他に建設的な意見が出るわけでもなく、学院長や教頭が推した事もあっ
て、結局まりやの提唱した案が採用される事となり、会議はそこでお開きになった。
529pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:35:12 ID:ydMlsfZP


 そして翌日の放課後──
「貴子さん、準備はよろしいですか?」
 講堂の舞台袖で紫苑が言った。
 貴子は昨日の職員会議の説明の準備をしていた。
 本来ならそれは朝のホームルームで生徒に伝えられているはずのもので、実際にそうではあ
ったのだが、教師たちのスタンスによっては情報が捻じ曲げられて伝えられていたり、不完全だ
ったりしていたので、改めて姉会主催で説明会を行うことになった。
 また、説明にかこつけて、一般生徒たちが先走って問題を起こす前にそれを抑えてしまおうと
いう思惑もあった。
 今回の一件はあくまで公式行事ではないので、授業時間を潰して説明会を行うようなことは出
来なかった。それ故に、放課後に自由参加と言う形を取り、呼びかけに応じたものだけに説明
すると言う形になってしまったが、やはり話がエルダーに関するものだった為か、生徒たちの関
心は高く、全校一致で召集に応じていた。
 演説をするのが貴子なのは生徒会長という立場もあり、この手の説明会や、特に注意事項な
どの通達においては一般の教員などより余程受けが良く、生徒たちにスムーズに受け入れて貰
えるからだ。これがまりやだったりすると、普段の素行から説得力が皆無なので貴子のようには
行かない。
 それはさておき。
 演説の準備を終えた貴子は、舞台の中央に進み出ていった。
530pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:35:45 ID:ydMlsfZP
「皆さん、お静かに! 本日はこのような急な呼びかけに応じていただきまして、ありがとうござ
います。今回集まって頂きましたのは、皆さんももうご存知だとは思いますが、エルダーの宮小
路瑞穂さんが実は男性であったと言う件で行われた昨日の職員会議の結果と、いくつかの補足
点について、改めて説明させていただく為です。
 現状では、生徒会の方にもお姉さまの即刻退学処分を望む投書が多数寄せられております
が、生徒会にはそこまでの権限はありませんし、また、その逆の意見も上がっておりますが、そ
れについても同様です。
 それらの意見は先生方にも報告してはおりますが、なにぶん女装して学院に通っていた生徒
がエルダーだった言う事もありまして、先生方の間でも意見が割れているような状況です。
 私どもとしましても、どちらかの意見を握り潰すといったような事はしたくありませんし、かとい
ってこのまま先生方に任せていても埒が明きません。そこで、一定の猶予期間を設けてお姉さ
まの進退を決めると言う提案をし、承認されるに至りました。
 つきましては、今月末に先生方も含めた臨時総会を行い、そこでお姉さまがエルダーとして相
応しいかどうかの信任投票を行い、その結果をもってお姉さまの処分が決定すると言う事にな
りました。
 それまでは、お姉さまには今まで通りに過ごして頂くことになります。皆さんは総会までの間、
お姉さまをよく観察し、信任投票に備えてください。勿論、総会に向けて広報活動などを行って
いただいても構いませんが、その場合は、くれぐれも恵泉の生徒らしからぬ行為で学院の品位
を堕とす、などと言う事のないように、よく考えて行動してください。
 今日お話したことについては生徒会の掲示板にも告示しておきます。不明な点がございました
ら質問は随時受け付けておりますので、私までお願いします。
 生徒会からのお知らせは以上です。本日はお忙しいところをお集まりいただき、ありがとうご
ざいました」
531pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:36:17 ID:ydMlsfZP
 貴子は演説を締めくくると、舞台袖に下がっていった。
 さすがに拍手が沸き起こると言うような事は無かったが、それでも生徒たちは貴子の言葉を
真摯に受け止めていた。

 壇上から降りてきた貴子をまりやが迎え出た。
「はぁ……こんなものでよろしかったですか、まりやさん?」
「上出来よ。これで排斥派も迂闊な行動は起こせなくなるわ」
「私たちの方はどうするつもりですか?」
「それなんだけど……とりあえず今出来る事ってもう無いんだよねー。後は生徒会に要望とか質
問が来たら対応するくらいかな。学年主任たちの動きは気になるけど、あまり大っぴらに動くの
はまずいしね」
「お姉さまのイメージアップ活動などはどうします?」
「それも今は必要ないね。今やっても、多分逆効果にしかならないよ。やるなら来週くらいからか
な」
「そうですか。では、私は生徒会室で待機しています。何かあったら呼んで下さい」
 貴子はそう言って、生徒会室に行く為に講堂から出て行った。
532471 ◆471.Pt54hU :2005/04/05(火) 16:37:18 ID:ydMlsfZP
続く。
533猫野:2005/04/05(火) 17:13:14 ID:QdMhfYkJ
471さん続きがんばってください

すばらしいお姉さまの絵があったのでこちらに貼っておきました
ttp://i-bbs.sijex.net/imageDisp.jsp?id=thegame&file=1112687984593o.jpg
5343代目226:2005/04/05(火) 18:30:14 ID:lOytadOX
>>471
乙。さぁ盛り上がって参りました。

>>533
学園のプールが血に染まる悪寒(笑)
535名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 18:54:56 ID:R4iXFaDp
>>533

瑞穂WITH一子verですか

破壊力抜群・・・保健室は、野戦病院とかすでしょう(たぶん)w
536名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 19:02:57 ID:DjvkafCd

( ゚д゚)  >>533

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)   >>533

(つд⊂)ゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚)  >>533





⊂⌒~⊃*。Д。)⊃ <エロいよ瑞穂ちゃんエロいよ
537名無しさん@ピンキー:2005/04/05(火) 20:20:53 ID:Nbw32/S5
>初代269氏
GJ! 瑞穂ちゃんのサービス素敵〜!
と言うか使い捨てカメラでそこまでセクシーショット撮れる
ギャラリーもGJだw

>523
残念、先に私がもらうわなにをするやtgyふじこlp

>471氏
続きが凄く気になります。

>533
ぶはっ(鼻血)
5383-180:2005/04/05(火) 23:56:34 ID:Ha7/8MJx
 取り敢えずリレーSSの本編は完結かな?参加者の皆さんご苦労様でした。
539名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 01:21:52 ID:04m5RQlM
結局一度も参加できませんでしたが、ご苦労様でした > リレーSSの皆様
読んでてとても楽しかったです。

また、こういう企画が出来ると楽しいですね〜。
5402スレの402:2005/04/06(水) 03:13:46 ID:EtreabGh
リレーSS企画完結しましたね。参加者の皆様ご苦労様でした。
541471 ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:53:19 ID:aKeNPr0l
pack of liesです。
>>531の続き。
542pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:53:54 ID:aKeNPr0l

      ◆

 貴子の演説から一週間が経過した。
 最初の方こそ、瑞穂は女子校に潜入してきた変態女装男と言うレッテルが貼られていたが、
よくよく考えてみると、当たり前だが瑞穂が変態行為を行ったことなど一度も無く、七ヶ月の間こ
れといって問題なく過ごしてきているし、一般の生徒たちに与えてきた恩恵はかなり大きなもの
だった。真実を知らされて最初は頭に血が上っていた生徒たちもその事に気付き始め、瑞穂に
対する態度は軟化し、次第に元の姿を取り戻しつつあった。
 大方の所はまりやたちの考えていた通りの展開になっていたのだが、生徒会に寄せられる投
書の数は日に日に増していった。
 貴子たちは毎日の日課として、例の部屋で寄せられた投書の内容の確認をしている。大抵は、
お姉さまと一緒に学院生活を送りたいだとか、早く変態を追い出してくれとかだったのだが、そ
んな中、日が経つにつれて徐々に増えつつある意見があった。
「ねえ貴子、これどう思う?」
 まりやは投書の一つを広げ、貴子に差し出した。
543pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:54:28 ID:aKeNPr0l
『男の人が女の子の格好をしているのはなんだか気持ち悪いので、お姉さまには男の人の格
好をしてもらいたいです』
 投書にはそう書き記されていた。
「……最近この手の投書が増えているようですね」
 溜息をついて貴子は答えた。
「いっそのこと、瑞穂ちゃんに男の格好させてみる?」
「賛成」
「賛成ですわ」
 まりやの提案に圭と紫苑は間髪入れずに答える。
「ちょっと待ってください、紫苑さまも圭さんも。いくらお姉さまが男性だからと言っても、制服は
女子用しかないのですから、ここは女子用の制服を着てもらうしかないのではありませんか?」
「そういうわけはいきません。実際にこうして要望が来ている以上、それに可能な限り応えるよう
にしていかなければ、支持率を得る事など出来ません」
「それに、今は特殊な状態だから、その程度なら緋紗子先生に話せばすぐに許可は得られる
わ」
 貴子の言葉に紫苑が反論し、それに圭も続く。
「それはそうかもしれませんが……」
「まあいいじゃないの貴子。瑞穂ちゃんを護るなんて言っても、あたしたちに出来る事なんてた
かが知れてるんだからさ。やれることからやってみようよ」
「……それもそうですわね」
 と言うわけで、四人は許可を貰いに職員室へ向かうのであった。

544pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:55:01 ID:aKeNPr0l
「そういうわけだから男物の服を用意しといてね、瑞穂ちゃん!」
 まりやは寮に帰るなり瑞穂の部屋に吶喊し、発した第一声がこれだった。
「もう、どういうわけだよ……」
 当たり前だが、瑞穂には何の事だかわからない。
「んー、つまり瑞穂ちゃんは男の格好をして登校すんの」
「何で?」
「そういう要望があったからよ。男が女の格好してるのがヘンだってさ」
「でも、いきなりそんな事して怒られたりしない……?」
「その辺は抜かりなく。ちゃんと許可は取ってあるよん」
「根回しが早いね。それで、いつまでに用意すればいいの?」
「今すぐ」
 瑞穂は椅子からずり落ちかけた。
「……あのね。そんなすぐに用意できるわけがないでしょ」
「冗談よ。あたしが楓さんに頼んでおいたから、もうすぐ着くわよ。瑞穂ちゃんの男物のスーツ一
式」
 コンコン
 ドアをノックする音が聞こえた。
「ほら来た。どうぞ〜」
「何でまりやが答えるの……」
 ガチャリとドアが開くと、そこには清楚でクラシックなメイド服に身を包んだ眼鏡美人が立って
いた。
「楓さん……」
545pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:55:33 ID:aKeNPr0l
 織倉楓。瑞穂付きのメイドで、鏑木家のメイドを束ねるメイド長でもある。瑞穂が幼い頃に母親
を亡くしてからは、母親代わりも務めてきた。見た目は若く、どう見ても二十代前半にしか見えな
いのだが、本当はもうかなりいい歳だったりする。瑞穂は記憶にある楓の姿がいつも同じな事
を不思議に思い、何度か年齢を訊ねてみた事もあるのだが、その度に上手く誤魔化されてしま
っていた。歳の事はかなり気にしているらしい。ちなみに瑞穂の初恋の人であったりもする。そ
の事を指摘すると、瑞穂は必死になって否定するのだが。
 それはさておき。
 その楓が瑞穂の服を届けに来た。
「瑞穂様のスーツ一式、お届けにあがりました」
「楓さん、自分で来ちゃったの!?」
「はい、何かいけませんでしたか……?」
「いや、そう言う訳じゃないけど……」
 瑞穂は楓自らが来た事に驚いていた。と言っても当然と言えば当然だった。楓もメイド長とい
う立場があるのでそれほど暇ではない、と言うかはっきり言ってかなり忙しい。本当ならこんな
所に来ている暇など無いはずだった。
「こんな所に来てて、仕事の方は大丈夫なの……?」
「全部部下に押し付けてきましたから大丈夫ですよ」
 そう言って楓はにこりと微笑んだ。
「いや、あの、押し付けたって……」
「冗談です。本当は瑞穂様にお会いする為に、大急ぎで終わらせてきました。嬉しいですか?」
「え……その、うん」
「それはようございました。私も久しぶりに瑞穂様とお会いできて、とても嬉しゅうございます」
 楓が頬を薄く染めて蟲惑的な笑みを浮かべると、それを見た瑞穂の頬も紅に染まる。
546pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:56:06 ID:aKeNPr0l
 まりやはそんな二人の様子を見ているうちに、なんだか無性に不愉快な気分になってきた。
「あーもう、やめやめ! ほら、楓さん忙しいんでしょ、服置いたらさっさと帰って下さいよ」
「あら、まりやさん……やきもち?」
 楓が悪戯っぽく笑う。
「なっ……そ、そんなんじゃないです! 瑞穂ちゃんだって困ってるじゃないですか!」
「……そうなのですか、瑞穂様?」
「ぼ、僕は別に……」
「だそうですよ、うふふ」
「うぅ、瑞穂ちゃんは楓さんの味方なんだ……」
「当然です。瑞穂様は私に約束してくださいましたもの。大きくなったら私をお嫁さ「わー、わー!
 わー!!」
「ど、どうしたの瑞穂ちゃん? 突然大きな声出して」
「い、いや、何でも……楓さん、そんな昔の話を……」
「まあ酷い。瑞穂様は私を弄んだのですね……しくしく」
「そんなあからさまな嘘泣きは止めてよ、もう」
 とまあ、昔からこの三人はこんな感じである。まりやも小さい頃はよく楓に遊んでもらっていた
ので、どうにも頭の上がらないところがあった。
 楓は一通り瑞穂とまりやをからかった後、瑞穂の服を置いて帰っていった。

「相変わらずだね、楓さんは」
「そうだね……」
「ところで、約束って何?」
「……それは聞かないで」

547pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:56:38 ID:aKeNPr0l
 翌朝、瑞穂はいつもとは違い、髪を後ろで縛り、制服の替わりにスーツを着込んでいた。その
姿がスーツ姿の男ではなく、男装の麗人に見えてしまうところはご愛嬌だ。ちなみに、そのスー
ツは鏑木系列の紳士服店で取り扱っている、三着でいくらの安物である。その割にセンスが良
いのはさすが鏑木、と言ったところだった。
「みーずほちゃーん、おーはーよっ!」
 相変わらずノックも無しにまりやが部屋に飛び込んできた。
「だから、ノックくらいしなさいって……それに何なの、その挨拶は」
「まーいいじゃないの。それにしても久しぶりよね、瑞穂ちゃんが男の格好してるとこ見るの」
「そうだっけ?」
「そうよ。そんでね、今日は男言葉で通してね」
「何で?」
「その格好でお嬢さま言葉は似合わな……いや、それもアリか……瑞穂ちゃんの好きなほうで
いいや」
「わかったよ。でも、何でスーツなの? 前の制服でも良かったんじゃ……?」
「お嬢さま学校に余所の男子生徒がいちゃまずいでしょ。その格好なら来客って誤魔化しが効く
し。ところで一子ちゃんは? 瑞穂ちゃんのその格好見て何か言ってた?」
「一子ちゃんはまだ寝てるよ。最近朝が辛いんだって」
「あ、そうなんだ。それじゃ無理に起こすこともないね。食堂行こっか」
「うん」
548pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:57:10 ID:aKeNPr0l
 瑞穂とまりやは朝食を摂る為に食堂へと降りていった。
「奏ちゃん、由佳里ちゃん、おはよう」
「あ、お姉さま。おはようござい、ま……」
 奏と由佳里の二人は瑞穂の姿を見て固まってしまった。
「どうしたの? 奏ちゃん、由佳里ちゃん?」
「は、は、はいなのでございますのことですよ〜」
「……はぅぁ〜」
「こりゃ破壊力が大きすぎたようね。こーら、由佳里! 奏ちゃんも! しっかりしなさい!」
 結局、奏も由佳里もショックから立ち直る事が出来ず、半ばまりやに動かされるような形で呆
然としたまま食事を終えた。
「ゴメン瑞穂ちゃん、あたし、この子たち教室まで連れてくから先に行くね」
 そう言うと、まりやは奏と由佳里を引っ張って登校していった。
549pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 15:59:49 ID:QxOorYgJ
 取り残されてしまった瑞穂は、仕方なく一人で寮を出た。
 いつもと違う格好をしている為か、通りがけに挨拶してくる生徒は全くいなかった。瑞穂はその
事を、服が違うから話しかけづらいんだろう、程度に考えてそのまま昇降口へと向かった。
 昇降口まで来ると、さすがの瑞穂も異変に気が付いた。誰も話し掛けてこないのに加えて、い
つもに比べて異様に視線を感じるのである。
 もしかして、部外者と思われているのではないだろうか。でも、それにしては警備員が飛んでこ
ない。と言う事は、別に挙動不審な態度を取っているつもりもないし、多分、学院関係者とでも
思われているのだろう。それなら特に心配する必要は無いかな──。
 そのような事を考えながら瑞穂は上履きに履き替えた。
 校舎内に入ると、貴子の後ろ姿を見つけたので、瑞穂は近付いて声を掛けた。
「貴子さん、おはようございます」
「あらお姉さま。おはようござい……ま……………………」
 貴子もまた、挨拶の途中でポカンとして黙り込んでしまった。耳までまっかっかだった。
「……貴子さん?」
 二人は黙り込んだまましばらくの間見詰め合っていたが、やがて貴子は「きゅぅ」というどこか
ら出たのか判らないような鳴き声を上げて気絶して倒れてしまった。
「ちょ……貴子さん、貴子さん!?」
 このまま放って置く訳にも行かないので、瑞穂はお姫様抱っこで貴子を抱きかかえると、保健
室に連れて行った。
 保健室に着いたはいいものの、生憎と保険医は留守にしていた。瑞穂は貴子をベッドに寝か
せると、保険医が戻るか貴子が目を覚ますまで、そのまま保健室で待機する事にした。
550pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 16:00:24 ID:QxOorYgJ

      ◆

 由佳里と奏を教室に送り届けたまりやは、自分の教室に向かっていた。教室に着いて荷物を
置くと、まだ時間がある事を確認してA組の教室に向かった。
「おはよーございます、っと。瑞穂ちゃんは……あれ?」
 まりやはA組の教室に入って瑞穂の席に向かったが、そこには誰も座っていなかった。
「おはようございます、まりやさん。今日は瑞穂さんはどうかなさったのですか?」
「っと、おはようございます、紫苑さま。いえ、ちゃんと寮は出たと思うんですけど……」
「けど?」
「ちょっと由佳里と奏ちゃんを教室まで送っていたものですから、瑞穂ちゃんがどうしたかは知ら
ないんです。それで様子を見に来たんですけど……」
 そう言って教室の入口の方に視線を向けるが、瑞穂が入ってくるような気配はない。
 その時、音も無くまりやの背後に忍び寄り、うなじを撫でつつ耳元で囁く影があった。
「面白い噂を仕入れてきたわよ」
「ぎゃあっ!」
 圭だった。
551pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 16:00:53 ID:QxOorYgJ
「ふふふ、なんて声を出してるの、まりやさん」
「あ、あ、あんたね……何すんのよ、鳥肌立っちゃったじゃないの……」
「噂とは、どう言ったものですか?」
 腕を擦りながら文句を言うまりやをよそに、紫苑は圭に尋ねた。
「王子様が生徒会長をお持ち帰りです」
「はい?」
「王子様が生徒会長をお持ち帰りです」
「いや、繰り返さなくてもいいから……って王子様ねえ……なるほど」
 紫苑は訳が分かっていなかったが、まりやは納得したように頷いた。当然ながら、王子様と言
うのは瑞穂の事だ。
「あの、どういうことですか?」
 話の見えない紫苑が尋ねる。
「王子様、ってのは瑞穂ちゃんのことですよ。大方、男装の瑞穂ちゃんを見て気絶した貴子を、
保健室に連れて行った、ってところでしょう」
「ああ、そうだったのですか」
「うっ、セリフ取られた……やはり宝瓶宮に火星が……」
 納得する紫苑の後ろで圭がいじけていた。
552pack of lies ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 16:01:30 ID:QxOorYgJ
「おはようございます、皆さん」
 その時、教室の入口から瑞穂の挨拶が聞こえてきた。
 その声に教室はしんと静まり返り、どこからか「誰?」と言う声が聞こえてきた。確かに顔は同
じだが、髪型は違うし化粧はしてないし、服装に至っては全然違うから、パッと見、瑞穂だと言う
事がわからかったのである。
「瑞穂ちゃん、おそーい!」
 まりやが叫んだ。
「…………ぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええっっ!!!」
 教室が狂乱に包まれる。いや、瑞穂の後ろを追いかけてきていた者達も、廊下で一緒に悲鳴
をあげた。
 それからは学院中を巻き込んだ大騒ぎになった。
 まず叫び声を聞きつけた他のクラスの生徒達が大勢押し寄せ、ホームルームにやってきた緋
紗子が悪ノリして、男装瑞穂のお披露目会を開く事になった。
 初めのうちは三年A組で行っていたのだが、ギャラリーは増える一方で、それならばと緋紗子
が学院長に話を通し、二時限目まで潰して改めて全校生徒に対してのお披露目会を講堂で行
った。
 そして、それが終わった後も興奮醒めやらず、とても授業に集中できるような雰囲気ではなか
った為、その日は瑞穂の触れ合い感謝デー、と言うことになってしまったのである。
 結局、その日は終日お祭り騒ぎで、瑞穂はと言うと、放課後が来て下校時間になるまで解放さ
れる事は無かった。
 そして、学院を揺るがす程の大騒ぎに事態を重く見た学院側は、瑞穂に対して男装禁止令を
発令したのであった。
553471 ◆471.Pt54hU :2005/04/06(水) 16:02:13 ID:QxOorYgJ
続く。
次で終わります。
554名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 16:04:55 ID:Il2a6JYM
テイクアウトですとぉー!
555名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 17:26:45 ID:YJjiELZD
>>552
男なのに、女装を義務付けるんですか…w
PCの前で大爆笑してしまいました。
556名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 17:54:10 ID:viI6hRCP
男装禁止令って…瑞穂ちゃん本来の恰好なのにw
5572スレの402:2005/04/06(水) 18:09:56 ID:EtreabGh
>>552
えっと、瑞穂ちゃんに男装禁止令って、なにかおかしいような?
女装禁止令ならともかく・・・・ねえ。
          (男装禁止)
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;      ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;        ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;         ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;     _,.'⌒  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;    '´  `ヽ  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;   . /  j ))ソ    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;    / / / /ノ      ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;   ノノノノj{_)       ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;   ´θ^θン)u        ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
    (また、女装の日々?)
次回で終わりとのことですが、楽しみにしております。
558名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 18:20:24 ID:30eCq7w3
「 pack of lies 」
女子校に男子がかようかどうかと言う問題を生徒の親に黙って決めようとするのは問題ありでは?

559名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 18:38:14 ID:TnT9Tgn+
そんな野暮なこと言いなさんな。w
そもそも瑞穂ちゃんは最初から、学院長公認で通ってますよ?
560名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 19:29:53 ID:ceD7EMyw
御都合主義
561名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 20:11:44 ID:YJjiELZD
ってあと28KB!?
最後は次スレのほうがよろしくて?>>441
5623代目226:2005/04/06(水) 21:42:10 ID:fbsOEVd4
オーケー、次スレ設置完了。
長編チームは次スレに転戦されたし。

【女装】処女はお姉さまに恋してる 第6話【百合】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1112791250/
563名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 21:51:39 ID:YJjiELZD
>>562
乙ですわ

今からなにして埋めましょうか?
564ヤマモン:2005/04/06(水) 23:13:39 ID:shAA2nEy
ヤバイ。瑞穂ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
瑞穂ヤバイ。
まず女装。もう女装なんてもんじゃない。超女装。
女装とかっても
「少年少女くらい?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
何しろ無限。スゲェ!なんか単位とか無いの。何坪とか何?fとかを超越してる。無限だし超エロい。
しかも性転換してるらしい。ヤバイよ、性転換だよ。
だって普通は性転換しないじゃん。だって女子高に入学させられたら困るジャン。トイレとかやりかたわからないとか困るっしょ。
一年のときは彼氏だったのに、三年のときは彼女で同性愛状態とか泣くっしょ。
だから紫苑とか性転換しない。話のわかるヤツだ。
けど瑞穂はヤバイ。そんなの気にしない。性転換しまくり。最も近くから到達する光とか観測してもよくわかんないくらい美しい。ヤバすぎ。
無限っていたけど、もしかしたら有限かもしんない。でも有限って事にすると
「じゃあ、瑞穂より美しいやつってだれよ?」
って事になるし、それは誰もわからない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。
あと超賢い。開正でトップクラス。恵泉で言うと一位。ヤバイ賢すぎ。塾行く暇もなく合格する。怖い。
それに超強い。四人敵に回しても勝てる。それに超運動神経良い。完璧超人とか平気で出てくる。完璧超人。小学生でも言わねぇよ、最近。
なんつっても瑞穂は馬力が凄い。3又とか平気だし。
うちらなんて彼女とかたかだかエロゲで出てきただけで上手く扱えないからセーブしたり、再プレイしたり、攻略サイト使ったりするのに、
瑞穂は全然平気。彼女を彼女のまま扱ってる。凄い。ヤバイ。
とにかく貴様ら、瑞穂のヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなヤバイ瑞穂のパロディ書いてる職人様方超偉い。もっとがんばれ。超がんばれ。
565名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 23:22:47 ID:T7ElQpP5
作品or作者紹介、オリキャラ紹介、埋め立てSSでも良いなぁ
566名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 23:23:02 ID:Uo63zijF
>392の直後と思いねえ。

ある日の鏑木家 〜幕間〜

「ところで紫苑さん、家に帰らなくていいんですか?」
「まあ、千穂さんったら…私がお邪魔なんですね?よよよ…」
「いえ、そうではなく…父親がいない上に母親も不在では紫穂ちゃんが寂しがるのでは?」
「大丈夫ですよ、楓さんに頼んできましたから」
「ああ、それなら安心…ってまさかお父さまにまで頼んでないですよね?」
「ええ、もちろんです」
「安心しました…」
「…何故総帥には頼まないんですの?」
「それは…」
「ねえ…」
「初孫は目に入れても…などとは言いますが…」
「?」
567名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 23:23:52 ID:Uo63zijF
一方その頃。

「紫穂かわいいよかわいいよしほ」
「お爺さま!く、苦しいです!」
「あああほんとうにだきごこちがいいなあよしこのままだいてねよう」
「お、お爺さま!お髭が!お髭が!!」
「いい加減にしなさい!!」
「へう゛っ!?」
「か、楓さ〜ん」
「よしよし、大丈夫だった?」
「は、はい…」
「まったく、慶行ちゃんったらちょっと人が目を離した隙に…」
「今日のは特にこわかったです…」
「ごめんね…私が紫穂ちゃんを置いて慶行ちゃんを野放しにしちゃったから」
「いえ、楓さんは悪くなんかありません。お仕事が忙しかったんですから」
「そう云ってくれると助かるわ。お爺ちゃんの暴走も許してあげてくれる?」
「はい…紫穂のことを大事に思いすぎてああなっちゃうんだってわかってますから」
「ありがと。…さて、慶行ちゃんにはみっちり言い聞かせておかないと。紫苑さまやまりやさんから留守中くれぐれもと頼まれてるからね」
「え、ええっと…手加減してあげてくださいね?」

「…なんだかお父さまの悲鳴が聞こえたような気がする」
「また楓さんに説教されてるのかもね」
「否定できないのが情けないです…」
「?」
568名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 23:26:03 ID:Uo63zijF
完結済みな上に埋め立てだからって完全な色物にしてしまった…すまん親父。
at the timeの続編ではまともな役処だから成仏してくれ。
断片ばっかりで一本に通して書けるかどうかすら未定だけど。

というわけでおまけのプチ予告?
都合により変更される可能性があります。

「昔から、御伽噺はめでたしめでたしで終わるものだ。そうだろう?」

「ううん、貴子なら安心だ。…あたしもこのままじゃいられないよね」

「厳島貴子としてではなく、ただの貴子として…ですか」

……そして、それぞれの未来へと。
at the time -latter half-
coming soon...?
5691話スレ241:2005/04/07(木) 04:05:26 ID:Z/RvydYe
>>553
瑞穂ちゃん、哀れ・・・・・・。
いったい何人倒れたんだろう・・・・・・・・・。

あと24KBありますから短編or単発長編くらいは入りそうな気がします
570名無しさん@ピンキー:2005/04/07(木) 21:32:19 ID:mYtLGYHm
「楓さんは見ていた・裏2」
小ネタを集めてみました。
パクリネタでよければ、すぐに思いつけるんだけど……。


「突っ込み自在」
まりや「にゃはははは。それにしても瑞穂ちゃんて、突っ込み上手いよねぇ」
瑞穂「……」
まりや「隣の柿はよく客食う柿だ――ほぅーら、突っ込んでごらん、瑞穂ちゃん」
瑞穂「(特徴的なSE)」
まりや「ぐはぁ、まさかサマーソルトキックがくるとは……さすが瑞穂ちゃん……」
571初代スレ123>570も:2005/04/07(木) 21:33:33 ID:mYtLGYHm
「エロの君」
瑞穂「由佳里ちゃん、やめて、やめてください。女子トイレでオナニーするのはやめてください」
瑞穂「そこは寮のトイレです」
瑞穂「そこは体育倉庫です」
瑞穂「由佳里ちゃんがエロエロのエロエロに……」
瑞穂「奏ちゃん、にげて〜」


「養女・鏑木奏」
由佳里「奏ちゃんて、誘拐されないのですか?」
まりや・奏・紫苑「――」
奏「私は誘拐されるのですか?」
由佳里「されるかも」
奏「そ、そうなのですか?」
まりや「何を言いだすのかな、由佳里は……」
由佳里「だって捕まえやすいし」
奏「リ、リボンをつかまないでくださいなのです……」
まりや「まあ、確かに、かなちゃんなら小脇に抱えれそうだものね」
奏「で、でもいざとなったら、お姉さまが守ってくれるのですよ〜」
由佳里「……。バーン! 瑞穂さんは撃たれました」
奏「ええっ!!」
紫苑「大丈夫。いざとなったら、奏ちゃんのお父さんが……」
奏『キャー、助けてー』
慶行『まてーい』
紫苑「きっと飛んできてくれる」
奏「そ、そうなのですか」
由佳里「バーン」
奏「ああ!! お父さんも?」
紫苑「……」
慶行『――』
紫苑「大丈夫。跳ね返した」
由佳里・奏「うそっ」
572初代スレ123>570も:2005/04/07(木) 21:34:36 ID:mYtLGYHm
以上です。
アニメ版のほうが良かったかも。
業務連絡
図書委員の中の人へ。
「楓さんが見ている3」は「楓さんは見ていた3」
の間違いです。お手数ですが訂正してください。
573名無しさん@ピンキー:2005/04/07(木) 22:59:51 ID:k+1A6Dzf
だからモトネタを(ry
574名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 00:25:11 ID:EIyalU6g
えー元ネタはあずまんが大王です
575名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 01:05:20 ID:Ryg5w9Lm
鏑木家のその後。

 千穂から瑞穂に戻るため、すっかり慣れてしまった手つきでメイクを落としながら
(うっうっうっ・・・・・父親の威厳なんてなに?)
「はあ・・・・・・、メイク落としに慣れてしまった自分が恨めしい。紫穂が、まともに育ってくれるのか
将来心配になってきた。お父さまは、ますます凶暴化してくるし・・・・」
「いまや、ぼくにとって、この家も心を休めれる場所じゃなくなってきたな。会社では、暴走する貴子
さんとまりや・・・家では、紫穂と紫苑・・・・いっそ・・・」
「瑞穂さま・・・お気持ちは痛いほど理解できますが、くれくれも軽はずみな事は、謹んでくださいね」
鏡に映った楓を見て
「楓さん?」
「今のは、聞かなかったことにいたしますから、それと瑞穂さまのプライベート空間のクリーニングは
済ませてありますが、外からの盗聴までは防げませんので、くれくれもお気を付けください」
「というと、盗聴器が?」
瑞穂が驚いたように問いかけると
「はい。瑞穂さまが気を許す場所に・・・・犯人の目星はついておりますので、私の裁量で処理しても
よろしいでしょうか?」
「うん。楓さんの裁量で処理してもらってかまわないけど、きき腕は傷つけないでね。なにかと困る
から、車いすがあれば、移動は出来ないことはないが、利き腕が使えないと・・・ね」
楓は、ブラシを手にすると瑞穂の髪の毛をすきながら
「ええ。利き腕に関しましては、配慮いたします。それと、まりやさまにも、お灸を据えてもよろしい
でしょうか?”少し”調子に乗られているようなので・・・」
「そうだね。まりやの仕事に差し支えない範囲でなら、出来れば、女装とか言わないでくれるとあり
がたけど・・・、後、紫穂も、わがままが過ぎるようだからね」
「少し、千穂おばさまをお呼びになりすぎますわね。私の裁量でしかっておきますわ」
「本来なら、父親の役目なんだけど・・・なにもかも楓さんに押しつけるようで悪いね」
楓に頭を下げそうな瑞穂に
「だめでしょ。昔とは違うのですから・・・」
”めっ”という表情をわざと作ると瑞穂をたしなめた。
576名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 01:56:57 ID:Ryg5w9Lm
>>575から、数日の後
鏑木家のその後

楓は、リビングにある時計を見ると”そろそろ、紫穂さまが幼等部からお戻りになりますわね”
「ただいま」
楓の呟きが終わらないうちに、紫穂の元気な声がした。
「おかえりなさいませ。紫穂さま。まずは、手を洗ってきてくださいね。その間にお飲み物を用意して
置きますから」
紫穂は、かばんをソファーの上に置くと手を洗いに出て行った。
(さて、瑞穂さまに頼まれたことを・・・)
紫穂が、楓に言われたとおり手を洗って戻ってくると
「紫穂さま。ジュースの前に、少しお小言を聞いて頂きます。よろしいですね」
紫穂が嫌そうな顔をすると
「では、夕食には、紫穂さまの苦手な物ばかりお出ししましょう。全部食べ終わるまで楓がついてい
てさしあげますから・・・」
「お小言のほうがいい」
「紫穂さま。少し、千穂おばさまをお呼びになり過ぎませんか?まあ、お友達に自慢したいお気持ち
は解りますが、このままですと、千穂おばさまも、おとうさまも、紫穂さまを嫌いになられますわよ」
「し、紫穂を嫌いになるの?」
「はい。紫穂さまを嫌いになるぐらいで済めばいいのですが、もしかすると、紫穂さまの前から姿を
姿を消されるかもしれませんわね・・・・」
紫穂は驚いて大きく目を見開くと
「いなくなっちゃうの?」
「はい。お父さまも、千穂おばさまも、紫穂さまの前から・・・・どうなさいます?」
「いっちゃだめ」
「いまのままでは、いつかは、そうなりますよ」
大好きな父親が自分の前からいなくなると聞かされた紫穂は
「楓さん」
「だめですよ。紫穂さまが、ご自分で考えませんと・・・ジュースは置いておきますから、ご自分で
どうすればいいのか考えてくださいね」
紫穂の前のテーブルにジュースを置くと部屋から出て行った。
577名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 01:59:12 ID:rdgknYA0
夫と嫁では一般的に夫の方が権力ある
その夫より偉いと思ってる姑は、当然 嫁より格上と勘違い
嫁いびり。これが、カス女の典型

ヤンキーの女も原理は一緒。姑のように勘違いしてえばりたいカス女。

援助交際はしない女でも、お金持ちに嫁ごうとする。
違法か合法の違いであって、金のために人生売る援助。
援助の方がまだ健全、カス女達は勘違いし続ける。
578名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 02:20:21 ID:S5lGSKca
>482-495から数年後の一幕なんて書いてみるテスト。

その後の鏑木家

紫穂が恵泉付属小学校に入学して少し経った頃のこと。

「お父さま、お母さま、よろしいですか?」
「なんだい?紫穂」
「再来週の月曜日に授業参観があるんですけれど、見学に来てもらえますか?」
「うん、いいよ」「ええ、もちろん」
「よかった。それで、ひとつだけお願いが…」
「え…まさか…」
「千穂さんとお母さんに来て欲しいんです」

         やっぱり…
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「駄目…ですか?」
「…いいよ、紫穂の頼みだからね」
「ありがとうお父さま!(抱きつき)」
「あらあら、あなた。随分と遠い目をしてますね」
「ははは…今更だからね…ずっとないから安心してたのに…」
579名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 02:20:59 ID:S5lGSKca
「ここが紫穂ちゃんの教室ですか…」
「そうみたいですね。…どうかしたんですか?」
「いえ、恵泉の小等部の校舎内を見るのは初めてでしたから少し珍しくて」
「なるほど、でもあまりきょろきょろしていると不審人物に間違われるかもしれませんよ?」
「あはは、それは困りますよね。それでは中に入りましょうか」

ざわっ…
  ざわっ…

(うわ〜すごくきれいなお姉さんたちだ…誰のお母さんだろ?)
(なんだかキラキラ光ってるような気がする…)
(あ、確か紫穂ちゃんのお姉さんだよ!私会ったことがある!)
(本当?あ、よく見るとそっくり!)
(それじゃ隣にいるのは紫穂ちゃんのお母さんかな?)
(だと思うよ。だって似てるもん)

(まあ…なんてお美しい…)
(思わず見惚れてしまいますわ…)

「な、何だか凄い反応ですね…」
「うふふ、千穂さんがいらっしゃるからでしょうか?少し妬けてしまいますね」
「からかわないでくださいよ、紫苑さん…」
580名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 02:21:48 ID:S5lGSKca
「はい、皆静かにして。授業を始め…お、お姉さま方っ!?」
「えっ!?」
「あら?もしかしてあなた、恵泉の…」
「お、おおおおねえさまがた、なぜこのようなところに…?」
「何故と云われましても…娘の授業参観に来ただけですよ?」
「し、しおんおねえさまとみずほおねえさまがわたくしのじゅぎょうをごらんに…はぅ」
「せ、先生!?しっかりしてください先生!」

5分後。
「う、ううん…」
「気が付きましたか?」
「お、お姉さま!?」
「ええっと…人違いをなさっているのではないでしょうか?私は紫穂ちゃんの叔母で、鏑木千穂というのですが」
「え?え?宮小路瑞穂お姉さまではないのですか?」
「宮小路瑞穂は私の従姉妹です。よく似ているそうですから、それでお見違えになられたのではないでしょうか?」
「す、すみませんでした。本当にそっくりでいらっしゃったものですから。…そうですか、ご親戚の方でしたか」
「驚かせてしまったみたいでごめんなさいね?」
「い、いえ!とんでもありません!わたくしがかってにかんちがいしただけですから!」
「そうですね、私も最初勘違いしましたから」
「し、紫苑お姉さまにも失礼いたしました」

「…こほん。御父兄の皆様、お忙しい中ご足労頂きありがとうございます。私、当学級の担任をさせていただいております時宮鈴子と申します。先程はお見苦しい姿をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」
「随分と緊張されているようですけれど、もしかして新任の方なんでしょうか?」
「それはちょっと違うような気がします…」

多少開始が遅れたもののその後は恙無く授業は進み、無事に終了となった。
「し、紫苑お姉さま!この後の懇親会には出席なされますか!?鏑木さんも是非!」
「いえ、残念ですけれど、私たちはこの後用事がありますから…」
「そうなんですか…」
(残念ですわね…)
(本当に…お近づきになれると思ったのですが…)
「ええ、こちらこそ折角の機会ですのに残念です。それでは皆様、お先に失礼させていただきますね。ごきげんよう」
581名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 02:23:32 ID:S5lGSKca
そして帰宅後。
「まさか恵泉時代の後輩が担任になっているなんて思ってもいませんでした…」
「うふふ、あなたったらやっぱりどこか抜けていらっしゃるんですね。あの小学校は恵泉の付属校ですからありえない話ではないと思いますよ?」
「あはは…恥ずかしいです。…それにしてもあんな騒ぎになるなんて」
「うふふ、本当に千穂さんは罪作りなお方ですわ」
「勘弁してよ、紫苑…」
「ただいま帰りました…」
「お帰りなさい、紫穂」
「お父さま…やっぱりもう千穂叔母さんにはなってくれなくてもいいです…」
「ど、どうしたの?急に…」
「クラスの友達やお母さんたちに色々聞かれて疲れました…」
「あらあら…」
「それに先生や他のクラスの先生まで来て全然帰してくれませんでしたし…」
「そうなんだ…」
「お父さま、お母さま。お行儀が悪いですけど少し休ませ…て…」
「…眠っちゃいましたね」
「本当に疲れていたんでしょうね…夕食まではまだ間がありますし、このまま寝させてあげましょう」
「あ、楓さん」
「それでは瑞穂さまと紫苑さまはごゆっくりなさっていてください。私が紫穂さまをお部屋へお連れしておきますから」
「いえ、僕が抱えて行きますよ。楓さんだって忙しいでしょうから」
「大丈夫ですよ、瑞穂さん。それでは…」
「…予想以上の大騒動だったみたいですね」
「明日には沈静化しているといいんですけど…」

それから一週間は休み時間の度によそのクラスの子からも質問攻めだったとか。
先生たちには紫苑さまと千穂さんのツーショット写真をくれないか、むしろ自分と一緒に撮ってくれるよう頼んでくれとも言い寄られて大弱り。
これに懲りたのか、それからは瑞穂ちゃんに女装を頼まなくなったそうな。
582名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 02:24:55 ID:Ryg5w9Lm
>>576の続き
一人にされた紫穂は、ジュースにも手を付けず
「おとうさまが、しほをきらいになって・・・いなくなる」
(んーーと、どうしたら・・・・・・おとうさまがいなくなると、ちほおばさまもいなくなるし・・・そんなの
ぜったいだめ)
「んーーーと、んーーと、だったら、ちほおばさまにあうのをずーーーっとへらせばいいのかな?
おともだちには、がいこくにいったことにすれば・・・・」
どうにか、考えらしきものをまとめた紫穂は、初めてジュースに手を伸ばして
「おとうさまにも、ごめんなさいしないとだめだね。うん。かえってきたら、ごめんなさいしよっと」
「紫穂さま」。お考えはまとまったようですわね。楓も付いていってさしあげましょうか?」
「しほ。ひとりであやまれるから・・・・ちほおばさまにあうのをずーーーーっとへらすことにしたの
おとうさまが、いなくなるのいやだから」
そういうと、ジュースを飲み干して、リビングから出て行った。
(これで、紫穂さまに関してはしばらく大丈夫ですわね。鏑木グループ次期総帥の家出なんて
笑い話にもなりませんから)
楓は声に出さすにそう呟いた。
5833-206:2005/04/08(金) 02:27:33 ID:S5lGSKca
>495の「紫穂が小学校に上がるまで〜」というところからなんとなく浮かんだので。
…at the timeが冒頭部から進まないことからの現実逃避とも言う。
584名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 02:31:12 ID:Ryg5w9Lm

書きかけのが途中でつまったので
埋めたて協力かねて投下
585名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 02:33:07 ID:S5lGSKca
>582
割り込み申し訳ない…

補足。
時宮鈴子というのは思いつきでつけた名前なので特に意味はありません。
恵泉のOGで、紫苑さんへの反応が瑞穂ちゃんよりも薄いところから考えると、作中では奏ちゃんや由佳里ちゃんと同学年…かな?
5862スレの402:2005/04/08(金) 10:15:14 ID:Ryg5w9Lm
>>585

授業参観ネタは、考えていたのですが
さきにかかれてしまいました。(^^;
やっぱり、考えることは一緒?なんですね
587名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 13:50:48 ID:Ryg5w9Lm
>>578-581の数年後
鏑木家のその後
いつも起きてくる紫穂がを起きてこないのを、不思議に思い起こしに行った楓はベットの横に
立つと
「紫穂さま。お腹が痛いのですか?」
紫穂は、はれぼったい目で楓を見ると
「もういや。またお腹の痛いときがきちゃった」
楓は紫穂と視線を合わせると
「こればっかりは、楓が替わってあげられませんからね。紫穂さまの体が、大人になっていく
という証拠でもありますから・・・紫苑さまも苦しまれているのですよ?」
「えっ、お母さまも?だって・・・・・」
紫穂の問いかけに優しく頷きながら
「紫穂さまに余計な心配をかけたくないとの想いから、顔に出されないだけですよ。紫穂さま
これから。おばあさまになるまでのおつき合いですからね。上手なおつき合いの仕方を今の
内から覚えませんと、将来お困りになりますよ」
「ずっーーーとおばあさまになるまで」
「はい。今の時期は、赤ちゃんを生むための体を一生懸命作っていますからね。ですから、
男の子から、「太った」とか「でぶ」とか言われても気にしてはいけませんよ。紫穂さまに気
にしていただきたいから、そう言うのだと心の内で思っていましょうね。それと、紫穂さまが
恥ずかしがったりしますと、相手が調子に乗りますから、堂々としていましょう。赤ちゃんを
生むことが出来ますよと、体が教えてくれてるのですから」
「で、でも・・・」
楓は、心配そうな紫穂の顔をのぞき込むと
「ひやかす男の子に「それがどうしたの」とふつうの声で言ってあげなさい」
「それがどうしたの?」
楓はよくできましたといわんばかりに、紫穂の頭を撫でて
「学校で、どうしてもお腹の痛いのが我慢できなければ、保健室で休ませていただくのです
よ」
優しい笑みを浮かべて、紫穂に注意を与えると「食堂でお待ちしています」と告げ、部屋から
出て行った。
588名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 13:57:01 ID:6x7Wj7MZ
女子校じゃないのか、と思い。
589名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 14:05:07 ID:Ryg5w9Lm
埋め立て第二弾ということで
紫穂ちゃんの女の子の日に話されそうなのを書いてみました。

一応、露骨には書かず、ぼかした書き方にしてみましたが(^^;
つらい方は、生活に支障が出るほどだそうですが
590名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 14:10:15 ID:Ryg5w9Lm
>>588
二人の娘なら、外でちょっかい出してくる男の子がいても
なんら不思議ではないと思うのだけど?
591名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 14:41:01 ID:6x7Wj7MZ
>>590
それはそうなんだが、外でちょっかいかけられるのと
生理でひやかされる話とでは繋がらんような気がするが。
592名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:15:08 ID:ntLleS4j
>>591
確かに不自然な気がする。
中学部以上は女子とか男子のみでも、小学部までは共学っていう所はありそうだけど、
前の部分だと、どう考えても小学部も女子のみに見えるし。

ちぃと辛いね ( ´Д`)
593名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:22:25 ID:S51UOcqU
こいつは通りすがりの女に「お前生理だな」って言って回ってんだろw
てかこいつに理屈が通用するかっての
思いつきだけで書いてんだからよw
594名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:27:00 ID:xUZ+WMi6
というか紫穂なんて絶対恵泉幼等部〜恵泉女子大だろ。
そして親子3代(4代?)エルダー。

男との接点なんか父親以外ありえんよ。

595名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:28:09 ID:S51UOcqU
まあどうせ梅なんだからこいつのひとりよがりも笑って流してやろうぜ
寛容の精神とやらでなw
596名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:35:44 ID:ntLleS4j
まだ粘着しとんのか、お前は。
597名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:36:12 ID:6x7Wj7MZ
スマソ、なんか漏れのせいで変なのまでわいてきたみたいだ。
598名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:41:34 ID:S51UOcqU
あんたはあからさまにおかしいところにツッコんだだけだから誤る必要なし
開き直って変ないいわけして正当化してるやつが悪いw
599名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:48:38 ID:S51UOcqU
それにしても402にしろ206にしろ名無しでもわかるくらいくせえな
オリキャラ厨は失せろとまでは言わねえけど勘違いしてでしゃばるんじゃねえよ
600名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 15:53:51 ID:S51UOcqU
まあどうせ梅なんだから仲良く逝こうぜ兄弟
いまのとこ向こうにツラ出すつもりはねえからよw
601名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 22:07:04 ID:Lwe6SHNB
俺は10月、11月もすきだけどな。
12月はなんか印象薄いな。でかいイベントないし、一子昇天あったりなかったりだし。まりやとのダンスはよかったけど。

個別にはいると結構重い話多くなっちゃうのがなあ。それはそれでいいんだが、どうしても再プレイが躊躇われる。
602名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 22:10:14 ID:Lwe6SHNB
超誤爆すまん・・・
どこに書きこもうとしてたかは瞭然だとおもうが・・・・。
603名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 22:59:45 ID:ntLleS4j
むしろ、ありがとう。

おかげでまったりしたよ。
604名無しさん@ピンキー:2005/04/09(土) 21:41:54 ID:g3z2Q0G1
次のスレに投下するかもしれない作品予告編。

7月のこと。
「あの、御門さん」
「はいなんでしょう、緋沙子先生?」
「瑞穂さんのことなんですけど?」
「瑞穂ちゃんの…?」
「あの子大丈夫かしら、だって、ほら、ココは女子高でしょ?
 その、そういうのって、大乗なのかしら?
 なにせ、男の子のことですから」
男の子というところはかなり声を潜めて教師は言った。
「えっ…そうですね。
 たしかに、瑞穂ちゃんとはいえ、そうならないとも言い切れませんね。」
「それで、いい案があるんです。」
「いい案?
 まさか、切っちゃうとかですか?先生大胆ですね」
「違います。これです。」
緋沙子が広げた本には…
「窄精…?」
「そうです。これで、睾丸の働きを過剰にして
 一時的に去勢するんです。」
「なるほど、『有効期間はおよそ一年』…とも書いてあるみたいだし
 効果ありそうですね。」

かくして、窄精がスタート。
瑞穂の運命やいかに。
605名無しさん@ピンキー:2005/04/09(土) 21:43:03 ID:g3z2Q0G1
大乗…
ブッキョウですか?

「あの子大丈夫かしら、だって、ほら、ココは女子高でしょ?
 その、そういうのって、大乗(仏教)なのかしら?
 なにせ、男の子のことですから」

意味分からん・・・。
吊ってくる。
606名無しさん@ピンキー:2005/04/09(土) 22:04:01 ID:KTUiFlGQ
>>604-605
607名無しさん@ピンキー:2005/04/09(土) 23:39:43 ID:JhE9cx1W
はじめまして
で、穴埋めに協力。

こネタ 瑞穂の趣味
1/2
「お姉さま。奏、こっちを探してみるのですよ〜」
少女の幽霊を封印するための御札が、瑞穂の部屋のどこかに貼られているらしい。
御札を探すため、スカートが乱れるのも気にせずに奏はクローゼットの中を探っていた。
「あっ!」
「どうしたの? 奏ちゃん」
振り返った奏は手に何かを持っている。
「こ、これ、男性用の下着なのではないのですか〜」
「――それはっ」
瑞穂はまりやに反発して下着だけは男性物も持ってきていたのが奏に見つかってしまった。
後から思えば父親の物が紛れ込んでいたとか適切な言い訳があっただろう。
しかし、慌てた瑞穂はとっさにおかしな返事をしてしまっていた。
「奏ちゃん! そ、それは単なる趣味で……」
「お姉さま! お姉さまは男の方と付き合っ……」
同時にしゃべり出した2人は、お互いの言葉の中に思ってもいなかった単語を聞いた。
「……付き合う?」
「……趣味?」
間。
「…………」
「…………」
608名無しさん@ピンキー:2005/04/09(土) 23:40:13 ID:JhE9cx1W
2/2
まずいと思った瑞穂だったがとっさに言葉が出なかった。
何か言わなければますます誤解させてしまうことは明らかだ。
瑞穂が思考をまとめる前に、ニコリと微笑んだ奏が言葉を発した。
「この下着はお姉さまのもの、でよろしいのでしょうか?」
「え、ええ」
「お姉さまは、付き合っている男の方はいないのですよね?」
「そ、そんな相手いないわ」
「お姉さま、奏、このことは誰にも言いませんです」
「え? あ、ありがとう」
「大丈夫です、奏はお姉さまの味方ですから!」
そう言うと奏は、瑞穂の手を取るとギュッと握った。
瑞穂は奏がいったい何を納得したのか全くわからなかった。
「これから奏の前では、男性になりたいことを無理して我慢する必要はないのですよ〜」
「…………え、ええ。あ、ありがとう」
ここまでバレたのに全く男と疑われないどころか応援までされてしまったことに、瑞穂は
自分のアイデンティティがどんどん崩れていくのを感じた。

次の日の朝
化粧と髪を整えに来たまりやに瑞穂は質問した。
「男になりたい女の子を演じるにはどうしたらいいと思う?」
「なにそれ」


終わり
609名無しさん@ピンキー:2005/04/10(日) 00:06:55 ID:TfwDXMXC
>>607-608
ワロタ
6101スレの301
そして最後はやっぱり
−−−−−−−−−− 再開 −−−−−−−−−−
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;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;   ´θ^θン)u        ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
そして
−−−−−−−−−− 終了 −−−−−−−−−−−