懐かしYAWARAのエロパロ 4

このエントリーをはてなブックマークに追加
1女子柔道部マネージャー
1 名前: 男子柔道部員代理 [age] 投稿日: 02/12/04 12:54 ID:lmnAoURf 
懐かしYAWARAのエロパロ 第4弾です 
---------------------------------------------------------------------- 
懐かしYAWARAのエロパロ 
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1020005505/l50 
懐かしYAWARAのエロパロ 2 
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1038791719/l50 
懐かしYAWARAのエロパロ 2 .1 
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1038974096/l50 
懐かしYAWARAのエロパロ 3
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1087581794/l50
過去ログ
http://f53.aaa.livedoor.jp/~musique/
縮刷版 
http://www2.gol.com/users/kyr01354/yawara/index.html 

2名無しさん@ピンキー:04/11/29 21:47:02 ID:QbfptXLx
とりあえずほしゅ
3名無しさん@ピンキー:04/11/29 21:48:59 ID:QbfptXLx
4名無しさん@ピンキー:04/11/29 21:50:23 ID:QbfptXLx
5名無しさん@ピンキー:04/11/29 21:52:00 ID:QbfptXLx
【キンちゃん】YAWARA!7【タマちゃん】 
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/rcomic/1097905670/l50
6名無しさん@ピンキー:04/11/29 21:53:43 ID:QbfptXLx
7名無しさん@ピンキー:04/11/29 22:06:14 ID:QbfptXLx
あとはまかせた!
8名無しさん@ピンキー:04/11/29 22:34:44 ID:TM9gddsQ
さあみんな!がんがって保守れ!!
9名無しさん@ピンキー:04/11/29 23:21:26 ID:PQd8LQPq
あげええええええええええええええええええええええええ
10名無しさん@ピンキー:04/11/30 01:02:29 ID:44pksyrq
保守
11名無しさん@ピンキー:04/11/30 04:29:43 ID:0k/BFG6G
1さん乙です!!

ほしゅ〜
12名無しさん@ピンキー:04/11/30 06:54:09 ID:6PEGOyuH
恋の一本背負い
13名無しさん@ピンキー:04/11/30 17:12:28 ID:ybaen5kR
何時の間に新スレが…ほしゅさげ。
14名無しさん@ピンキー:04/11/30 21:39:28 ID:oPxi6XMJ
モツカレー
15名無しさん@ピンキー:04/11/30 22:13:52 ID:GZdtobwA
16この人になら投げられたい:04/11/30 23:16:38 ID:1Jf1Hbau
不敗神話見て泣いたーww
アニメオリジナルのハンカチ出すとことか
最高だね!
最高といえば最高のプレゼントも
最高だね!
17名無しさん@ピンキー:04/11/30 23:58:00 ID:NUHeRMT3
でだ、つぎのSSはどうなるかという問題が放置されているようなんだが・・・・
18名無しさん@ピンキー:04/12/01 20:11:06 ID:pbitzAkW
新作まだ?
19名無しさん@ピンキー:04/12/01 21:50:25 ID:iDgm0nRF
誰もいないんでしたら・・・・・

             イヒ
20名無しさん@ピンキー:04/12/01 21:59:44 ID:IBJLB1sq
ぜひおながいしまつ
21名無しさん@ピンキー:04/12/01 22:33:26 ID:dpKaSk0v
>>19
正座して待ってます
22名無しさん@ピンキー:04/12/01 22:48:08 ID:MUioXIDy
パンツ脱いで待ってます
23ほの暗い海の底から:04/12/01 22:59:43 ID:y782YgMs
スレ立てお疲れ様です。

財宝があるという『アドミラル・ナヒモフ』をサルベージ……という妄想を
働かせつつ、SS書きながら待ってます。
24名無しさん@ピンキー:04/12/02 01:10:57 ID:ryFFx8kP
>>23
新しい職人さん登場?ヤター!
とにかく新作キボン!

化け猫さんも早く来て〜ん!
25名無しさん@ピンキー:04/12/02 23:58:28 ID:AUwfyQwN
うおー、保守するであります!
26名無しさん@ピンキー:04/12/03 00:13:41 ID:OUN8z9O2
23は新しい職人じゃなくてきっと・・・・・・・
27名無しさん@ピンキー:04/12/03 00:45:57 ID:tOyRmEiM
某アレ
28名無しさん@ピンキー:04/12/03 05:08:20 ID:czzsdWMU
やっぱそうか
29名無しさん@ピンキー:04/12/03 05:54:27 ID:OUN8z9O2
そんでも良いよ。

某さん続きは?
30名無しさん@ピンキー:04/12/03 20:27:07 ID:7fD2GOPc
柔と松田の新婚旅行”

「飛行機の座席のシートにAとかBとかって
アルファベットがあるよね?
あれって、Iが無いっていうの知ってた?
なんでかというと数字の1とまぎらわしいからなんですって。
知ってた?猪熊さん?」
「ううん。あっ、松田さん帰ってきたから
 1回切るね」

今、二人は新婚の同棲生活中である。
柔は結婚後柔道を引退して普通の主婦へ。
そしてハワイへの新婚旅行の飛行機の切符の
手配がすんだところである。
ところが・・・
31名無しさん@ピンキー:04/12/03 20:28:11 ID:7fD2GOPc
「ちょっとそれどういうことですか!!
 二人で隣同士に座りたかったのに、
 二人の席がHとJの席っていうのは、
 どいうことですか!!」
松田が、飛行機の切符のことで珍しく
怒っていた。
無理もないだろう。
新婚夫婦が離れ離れに座るなんて。

旅行会社の係員
「いいえ、そんなことありませんよ。
 お二人の間には愛があるじゃないですか?」




ーーーーーー終わりーーーーーー
32名無しさん@ピンキー:04/12/03 20:46:42 ID:tOyRmEiM
(ノД`)
33名無しさん@ピンキー:04/12/04 00:56:38 ID:TxCjrg1z
ごめん、超個人的にツボッた。
34名無しさん@ピンキー:04/12/04 01:01:56 ID:4Rk25qgB
>>30-31
これどっかで読んだ気がするんだが
こういうネタってよくあるのかな
35名無しさん@ピンキー:04/12/04 02:39:40 ID:1xQEuCg+
( ´∀`)σ)∀`)>>30-31
36名無しさん@ピンキー:04/12/04 06:14:18 ID:Jpd3ZbQu
前スレでもこのネタありましたね。
37名無しさん@ピンキー:04/12/04 06:39:16 ID:Jpd3ZbQu
あの、それでは誰もいないようですので、また少しおつきあいをお願いします。
 話としては12年後、4年後ときて、今度は8年後。一連の話で、前二つの間に
挟まるものと思ってください。だったら順番に書けと言う話もありますが、
まあ、スターウォーズ方式と言うことで。
 4年後、8年後、12年後と松田さんと柔の距離感の変化を感じてもらえたらなあと
思います。

                                        江戸家化け猫
38江戸家化け猫:04/12/04 06:46:10 ID:Jpd3ZbQu
☆☆8年後☆☆

 五輪選考の体重別選手権もあと2日、練習も打ち上げ、軽く自宅の道場で
汗を流す程度にとどめた。年中無休で働いているような松田も、それにあわせ
休みを取ってくれている。
 昼過ぎ松田のアパートを訪ねようと外に出ると、小雨が降っている。いつもは
体が重く感じて、憂鬱さが先に立つが、松田と久しぶりに会う事で気分が軽く
なっていた。ふと、昔、子供番組で流れていた「雨に濡れても」の映像が頭に
浮かぶ。歌のお姉さんが傘をさして踊っていた。ふとまねをしたくなり、水たまりに
踏み込み、水をはねさせる。 
”いけない!ストッキングぬれちゃった。雨で遊びに行けないのは残念だけど、
松田さんの部屋でのんびりするのも、それはそれで楽しいかな・・・”

 松田の部屋のドアの前に立ち、呼び鈴を押す。合い鍵も持っているが、できることなら
松田に迎え入れて貰いたい。部屋の中で何かしらひっくり返るような音がした後、
寝不足がにじみ出た顔で松田がドアをあける。
「あ、おはよう。」
松田が寝ぼけた声を出す。
「おはようってもう午後よ。」
「今日休むのに徹夜で仕事してたんだよ。」
言い訳をしながら柔を部屋の中に招き入れる。
39江戸家化け猫:04/12/04 06:54:23 ID:Jpd3ZbQu
☆☆8年後☆☆

「意外にきれいね。」
「いつもこんなもんだよ。」
松田が平然と答える。
”誰が信じると思ってるの。どうせ押入に押し込んだだけのくせに。”
柔の目には、お見通しのようだ。
「お茶でも入れよう。」
「あっ、あたしやります。」
勝手の知った狭い台所で、一口コンロでお湯を沸かす。
「いいかげん電気ポット買った方がいいですよ。無精なんだから。」
コーヒー豆などあるわけもなく、インスタントコーヒーを入れて持ってくる。
今度コーヒーメーカー家から持ってこよう、と柔は思う。
「雨か、遊びに行けないな。」
外を見た松田は残念そうに言う。
「お掃除でもしましょうか?」
「せっかくの休みじゃないか。」
「どうせずっと掃除していないんでしょう?ダニがわくような部屋、私はいや。」
きっぱりというと、気乗りしなさそうな松田を放っておいて周りを片付けはじめる。
渋々松田も手伝おうと手を出すが結局邪魔にされる。 
「もう邪魔しないでください!松田さん、おトイレ掃除して。」
「なんでせっかくの休みに便所掃除しなきゃならないんだ。」
文句を言いながらも便所掃除を始める。なんだかんだ言ってすっかり尻に引かれているようだ。
40名無しさん@ピンキー:04/12/04 17:40:03 ID:bgVh247c
>化け猫さん
ぎゃー新作ー
続き楽しみにしてまつ
41名無しさん@ピンキー:04/12/04 19:04:00 ID:fGoD/ckr
>>化け猫さん
新スレでもゴチになります!
42江戸家化け猫:04/12/05 07:45:41 ID:c8gmBIu8
☆☆8年後☆☆

掃除が終わったのはすっかり夕方になった頃だった。
「晩飯食いに行こうか?」
「祐天寺さんが米沢牛持ってきてくれたんです。晩ご飯、おうちで食べましょう?」
「高いんだろう?良いのか、持って来ちゃって?」
二人で買うときはOGビーフ専門だけに、少し心配そうだ。無論のこと松田一人で
肉を買いにいくことはない。
「お祖父ちゃんは、糖尿気味だし、お母さんはお肉あんまり好きじゃないから。それに
米沢牛って地元のお肉でしょ?」
そう言うと、エプロンを付けながら台所に入っていった。
”なにか付け合わせにするもんないかしら。”
なにもない台所で何とかジャガイモを見つけだす。
”サラダにしようにも他に何もないし、やっぱりじゃがバターかしら。でも、よくここまで
芽が伸びたもんね。あれ、この袋、2ヶ月前に私が買ってきたやつじゃない!”
芽を取り除くと十字に切れ目をいれる。少ししめらせサランラップを巻き、そして
電子レンジに放り込む
”さて、次はお肉。筋を切って・・・。えーと、松田さん、男のくせにレアが苦手なのよね。”
43江戸家化け猫:04/12/05 07:52:30 ID:c8gmBIu8
☆☆8年後☆☆

「おまたせーっ」
小さい折り畳みテーブルの上にステーキを並べる。松田の目が点になる。
「すげー、こんなでっかいステーキ、アメリカでも食べなかったな。」
同じ大きさのステーキが二つある。
「柔さんもこんなに食べるの・・・?」
「だって・・・」
赤くなって下を向いた。
「そう言えばワインがあったな。」
松田が押入を、詰め込んだ物が崩れ出さないように用心深く探し出す。
「白しかないな。」 
「白のが飲みやすくて私好き。」
清涼飲料水のキャンペーンで貰ったコップで乾杯し、いつになく豪勢な夕食が始まった。
 ステーキを食べ終わる頃には既に柔はほろ酔いになっている。といっても、コップ一杯開けた
だけだが。 
「泊まっていこうかな。」
 アルコールで朱を帯びた顔でつぶやく。頻繁ではないにしろ、今となってはそれほど特別な
ことではない。もっともこの部屋ではただ泊まっていくだけで何事か有った試しがない。 
 真っ赤になった柔が、松田の横にぺたりと座り寄りかかる。もしこれが邦子だったら胸の
圧力を感じさせられたことだろう。半分目をつぶりながら、肩に頭を預ける。別に深い意味が
あるようではない。単に酔いで身体を支えるのがだるくなったらしい。もう一度グラスに手を
伸ばす。既にワイン3杯目、ビール3杯が限界の柔には十分なアルコール量だ。とろんとした
目つきで松田を見つめる。
44江戸家化け猫:04/12/05 08:08:13 ID:c8gmBIu8
☆☆8年後☆☆

 酔いが柔を少しだけ大胆にさせる。いつも心の中で不安に思っていたが、言えなかったことを訊ねる。
「ずっと、あのう・・・・・・あれ、してないけど、平気?」
ここ何ヶ月も関係を持っていない。どうしても気が進まないのだ。初めての時の痛みが
忘れられない。それ以降もたまにしか関係を持たないためか、いまだに痛みを覚える。
それを察して居るのか、松田から求められた事はない。     
「え、別に大丈夫・・・」
柔にしては大胆な質問に少しとまどいながら答える。
「ほんと?」
柔は何を思ったかおぼつかない足元で立ち上がると、押入に近づく。
「大丈夫か?・・・あっ、そこを開けるな!」
時既に遅し、詰め込んだゴミやら洗濯物やらが崩れ落ちてくる。そのゴミの山には、目もくれず押入の奥底からなにかを掘り出す。
「これでも大丈夫なの・・・」
どこをどう叩いてもAVとしか見えないビデオのパッケージを振ってみせる。
「いや、それは。でもどうしてそこにあることを・・・・・・・・・」
「気が付いてないと思うけど、松田さんいないときに、この部屋を片付けてるの私よ!」
”道理でずっと片づけもしてないのに寝る場所が無くならないはずだ。”
「いつもエッチな本とかビデオ片付けるのいやだったんだから・・・。見ちゃ駄目とは言わないけど
せめて私に判らないようにしておいて。」
頭をかくしかない。
「ごめん。今度はちゃんっと見つからない場所にしまっておくから。」
何か謝り方を間違っている気がする。
「でも、本当にいいの?あたし絶対にいやという訳じゃ・・・。」
いよいよ酔いが回ってきたのか、松田の太股を枕にして寝ころびながら酔いで潤んだ瞳で松田の顔をのぞき込む。
「試合前の大事な時期に、何かあったらどうするんだ。去年のクリスマスだって2,3日痛そうな
顔してたじゃないか。」
「だって・・・。」
「明日早いんだろ。もう寝よう。」
柔は少し不満そうな顔をするが、眠気と戦うのに精一杯だった。
45名無しさん@ピンキー:04/12/05 12:36:25 ID:0xzWZoRk
>二人で買うときはOGビーフ専門だけに

激ワロタw
化け猫さんのこういったリアリズム指向が好き。

話はまだ途中段階だけど、「4年後」「12年後」の中間の話だというのが
よく分かるね。
46名無しさん@ピンキー:04/12/05 22:32:49 ID:oq+z5l5U
ハウスキーパーと化している柔にメイドの格好をさせて、そのまま(ry
47名無しさん@ピンキー:04/12/07 08:04:37 ID:eB6gKgUd
続きが気になるわぁ・・・
48名無しさん@ピンキー:04/12/07 23:37:52 ID:77PZv4eE
>45
そう言ってもらえると非常にうれしい。生活感こそ私の信条。

                                  イヒ
49江戸家化け猫:04/12/07 23:40:53 ID:77PZv4eE
☆☆8年後☆☆

 松田がひと組しかない布団を敷く。さすがに昔のように外に寝ることはしないが、
少し離して寝袋を置く。そろいのスポーツブラとショーツだけの下着姿になった柔が
目をこすりながら布団に潜り込んだ。その横で寝袋に入ろうとしている松田に、布団の
中から声をかける。
「一緒に寝ましょう?」
「でも・・・」
松田が少しとまどいを見せる。
「一緒にいることなんか、たまにしかないのに。」
怪しいろれつで松田にせがむ。松田が布団に入ると、柔は背中で松田に寄りかかる
ように添い寝をする。柔の素肌が松田に密着した。柔が日頃使っているコロンの
かすかな薫りに包まれる。
”いくら試合前だってここまでしてくれるなら・・・。”
さすがの松田でもこれ以上我慢することはできなかった。それを責めることをできる人は
いないだろう。滋悟郎を除いて・・・。
 背中から柔の胸元に手を伸ばす。スポーツブラの裾から手をしのばせる。ブラが
抵抗無くずり上がって胸があらわになった。柔も待っていたのだろうか、なにも言わない。
僅かなふくらみを松田の手が包み込む。小さなバストトップを指で挟み込んだ。
「?」
いくら何でも、反応がなさすぎる。
「柔さん?」
松田がのぞき込むと小さな寝息を立てている柔の横顔があった。
”こんな事なら、もう少し早く・・・”
後悔先に立たずとはこのことを言うのだろう。今さら柔を起こすわけも行かず涙をのんで眠らざるを得ない。
”これでどうやって寝ろっていうんだよ。”
松田が眠りに落ちたのは夜明け前のことだった。
50江戸家化け猫:04/12/07 23:45:12 ID:77PZv4eE
☆☆8年後☆☆

 松田が眠りについて間もなく、柔が目を覚ます。ブラジャーがめくれていることに
気がついた。あわてて、元に戻す。それほど酔った記憶はないが、何時眠ったのか
ははっきりしない。自分から松田を誘っていたような気がしないでもない。
”私、酔っぱらって、松田さんを誘惑したのかしら?ひょっとしてそのまま・・・。”
不安になって自分の淡い陰りの陰に手を伸ばす。
”なにもなかったみたい。”
ほっとしたような、残念なような少し複雑な気持ちになる。横を見ると下着姿で眠っている
松田がいる。トランクスの前を膨らましているのが一目瞭然だ。
”松田さんたら、やせ我慢して。”
つついてみたい気持ちにかられるが、さすがに気恥ずかしかった。松田に毛布を
掛けると台所に入って朝ごはんの準備をする。
 しばらくして、松田の部屋の中にみそ汁の匂いが漂い出すが、松田が動き出す気配はない。
”もういかなきゃ。おじいちゃんに怒られちゃう。”
松田の枕元に目覚まし時計をセットし、あわてて飛び出していった。 

51江戸家化け猫:04/12/07 23:46:14 ID:77PZv4eE
☆☆8年後☆☆

 その日の午後、日刊エヴリーのデスクで、寝不足のまま出勤した松田が机に
突っ伏して居眠りをしていた。そのとき、いつも、ざわめいている編集部が一瞬静まる。
そしてどよめきに包まれた。そして、立て続けにカメラのフラッシュがたかれる。何の予告も無しに、
本阿弥さやかが現れたのだ。いつも試合前には、マスコミに勝利宣言をしてきたが、相手はテレビや
大手新聞社のみ、たかがスポーツ新聞社に姿を現したのは初めてのことだった。
「明日の試合の記事を書くのはどなたですの?」
高飛車に尋ねる。
「俺だ。」
松田が突っ伏したままめんどくさそうに答える。
「私が勝ったなら、記事の主役は私ですわね。」
『柔さんが負けるわけがない。』
昔なら即座に言ったことだろう。が、言えなかった。何気なく横目で見たさやかの瞳には、口調と裏腹の
寂しさがあふれていた。おそらく風祭とうまくいっていないのだろう、と松田は思う。
「勝ったらな。」
眼中にないかのようにデスクに向かい、週刊誌を読み始める。その一言を聞くとさやかはドレスの裾を
翻すように帰っていった。
「あんな冷たくして大丈夫?いくら柔ちゃんの敵だからって。」
邦子が心配そうに話しかける。
「記者としての仕事をするだけだ。」
週刊誌から目を上げることもなく、おもしろくなさそうに答えた。
52名無しさん@ピンキー:04/12/08 19:59:20 ID:8Hb1TmUb
江戸家化け猫ガンガレ保守
53名無しさん@ピンキー:04/12/08 22:15:59 ID:Alrv4khP
「柔さん、誕生日おめでとう」
テーブルの上には小さなケーキと、小さなプレゼントの包みが置いてある。
「祝ってもらうような歳じゃないけど、ありがとうございます。でも他に欲しいものが…」
「欲しいものって、なに?」
「もう一人、赤ちゃん、欲しいな…」


   … 続 か な い
54名無しさん@ピンキー:04/12/08 22:35:15 ID:joRGwSeh
誰かっ! 俺の代わりに風見鶏を叱ってやってくれっ・・・!!
55江戸家化け猫:04/12/09 00:04:25 ID:9eJLMRNh
☆☆8年後☆☆

 試合当日、決勝戦まで何の波乱も起きなかった。下馬評通り柔とさやかの
決勝戦となる。波乱が起きようにも二人の強さが際だちすぎていた。対戦相手も
名前が通りすぎている二人と試合ができるだけで満足、と言うあきらめムードが
漂っていた。そして、決勝戦。他の選手と比較すればさやかは別の次元にいる。
しかし、柔と戦うには明らかに精彩を欠いていた。というよりも、試合に対する
執着心というものを少しも感じさせなかった。ただ、それに気がついたのは、
柔、滋悟郎・・・。解説の犀藤が果たして気づいたかどうか。端で見ているだけでは
いつもどおりスピーディー。得意技となっている巴投げからの十字固めなど見せ場は
十分に作っていた。が、その全てに思い切り、力強さがなかった。それを感じた柔も
攻めに躊躇する。そのために観衆にはベテラン同士の技の読み合いによる好勝負と
映っていた。
 試合時間も終了間近、不用意に奥襟を取りに行ったさやかに柔の一本背負いが
極まった。悄然としてさやかは試合場を後にする。いつもであれば負けたことに対する
悔しさを溢れかえさせていたが、それすら感じさせなかった。
「さやかさん!」
あまりに、力無い様子に柔は思わず声をかけた。が、さやかはちらっと視線を走らせた
だけだった。記者席の横を通るとき松田と目が合う。そして目をそらすように体育館を
後にした。それはすべて一瞬のことだった。しかし、その様子を見た柔の心に小さな
不安の影がよぎった。 
56江戸家化け猫:04/12/09 00:06:50 ID:9eJLMRNh
☆☆8年後☆☆

 その日の深夜、松田は原稿を書き上げ、アパートまでバイクを走らせる。夜半から
降り始めた雨がバイザーに流れる。アパートの前につくと、階段の前に傘も差さず
立っている人影がみえた。柔だろうか?いや、合い鍵を持っているはずだ。 
「さやかさん!こんな雨の中でなにやってるんだ!」 
うつむいているだけで返事はない。雨にさらしておくわけにも行かず、とりあえず部屋の
中に連れ込む。幸い部屋はおととい片付けたばかり、まだきれいに片づいている。
「とりあえず頭を拭け。」 
 バスタオルを渡す。柔に洗濯して貰ったものと思うと、別に悪いことをしているわけでは
ないが、双方に後ろめたい気持ちになる。
「こんな時間にどうしたんだ。風祭は?」
「昨日から急な出張が入りましたの。」
さやかが寂しげに笑う。松田は、さやか、進之介の両方に対して同情する。きっとさやかは、
進之介に試合を見て貰いたかったのだろう。そして、またも敗れたことを慰めて貰いたかった
のだろう。一方進之介は、八つ当たりを畏れたに違いない。 
「俺みたいなしがない記者とは違うからな。忙しいんだろう。」
おそらくどこか他の女の所に行っているに違いない。しかし、二人のため、進之介に成りかわり
言い訳をする。が、恐らく慰めにはなっていないだろう。さやかは、何も言わず、すり切れた
畳を見つめていた。服の袖口からぽたりと水滴がおちた。
「風邪ひくぞ。それも脱いだほうが・・・。」
何気なく言いかけるが、この狭い部屋で男女2人きりであることに気づく。 
「・・・良くはないな。」
が、聞いているのかいないのか、あるいは、雨の冷たさが身に応えていたのか、何も言わず
濡れた服を脱ぎ、下着姿になる。雨が身体の芯まで冷やしているのだろう。小さくふるえている。
57江戸家化け猫:04/12/09 00:08:27 ID:9eJLMRNh
☆☆8年後☆☆

「何か着るものを・・」
松田が腰を浮かす。その瞬間、さやかが松田に抱きついた。どうして良いか
判らない松田は無意識のうちにさやかの背に手を回した。一瞬さやかの
肌の柔らかさに心が揺れる。恐らく、さやかに求めれば身体を開いてくれるだろう。
いや、むしろさやかが求めている。この完璧な肉体を前にして、指をくわえている
ことなど不必要なことではないか。さやかのほのかな体臭が松田の理性を揺らがせる。
さやかに回した手に思わず力が加わる。
 どれほどそうしていただろう。さやかが小さく肩をふるわせた。そのことが、さやかの
気持ちを松田に感じさせた。
「本当は俺じゃなくて風祭に慰めて貰いたいんだろう。ここで好きなだけ泣いていいよ。
でもそうしたら家に帰るんだ。」
さやかは、それを聞くと堰を切ったように、泣き出した。
「大丈夫だ。風祭はきっと帰ってくる。」
58江戸家化け猫:04/12/09 00:10:43 ID:9eJLMRNh
☆☆8年後☆☆

 そのとき音もなくアパートのドアが開いた。そして、そこに柔が立っている。
さやかの背中越しに松田と柔の目が合う。
「あっ。」
柔の表情がすっと消える。怒るでも泣くでもなく。そして、何も言わずまたドアの
向こうに消えていった。あまりの衝撃に松田は追いかけることができなかった。
”どうして俺はさやかを抱きしめてしまったのだろう?”
一瞬真っ白になった頭が我に返ったとき、不運を嘆くよりも自分のうかつさを
悔やんでいた。いやむしろ、さやかに心を動かしかけた自分自身を責めていた。
そのことが、柔を追いかけ、そしてこの状況の説明をすることを、自分に許さなかった。
  一方さやかは泣くだけ泣くと落ち着いたのだろう、自分の背で起きていたことを
知ることなく、徳永を呼び、そして帰っていった。

 柔は何が起きたのか判らなかった。いや判りたくなかった。松田が裸の女と
抱き合っていた。そして、それはさやかだった。試合会場での松田とさやかの視線の
交叉は何だったのだろう。その不安をうち消したくて松田のアパートを訪れたのに、
想像もしていなかった光景を目の当たりにしてしまった。一体どのような感情を
持ったらいいのだろう。怒っていいのか、悲しんだらいいのか。ただ心が空っぽに
なっていた。傘もささず雨の町をひたすら歩いた。どうやって家に辿り着いたのだろう。
気がつけばびしょぬれの服を着たまま自分の部屋でへたり込んでいた。
59名無しさん@ピンキー:04/12/09 00:23:02 ID:gkLbQtuq
>>53
勝手に続けちゃってすいません↓


「あ、赤ちゃんっ…。そ、そそ、そうか、ずっと一人っ子のままじゃアイツも寂しい
だろうしなぁ…!」
どもりつつも、子作りに必要な行為を想像し顔が赤らむ。
相も変わらず仕事中心の生活を送る松田。
最近は年のせいか家に帰るとクタクタで、夜の営みの方はすっかりご無沙汰だった。
(柔さん、それが不満なんだって言いたいのかな…?)
チラ、と柔の様子を伺うが、当の本人はプレゼントの指輪にすっかりご満悦のようで、
特別怒っているようには見受けられない。
(でも、柔さん案外根に持つタイプというか…。普段大人しくしてるかわりに一度怒ると
ものすごいからなぁ…)
以前、別件で柔を爆発させた経験のある松田だった。その時の苦労を思い出し、思わず
背筋に冷たいものが流れる。
(あんな経験はもうこりごりだ…。それを防ぐ為には、不安要素は徹底的に排除しておかねばっ)
松田はそう心に決めた。柔の肩を掴み、ぐいと自分のほうに引き寄せる。
「あ、耕作さん…?」
「じゃ、今から子作りしようか…」
60名無しさん@ピンキー:04/12/09 00:23:48 ID:gkLbQtuq
>化け猫さん
 うわーあの浮気事件を引きずってる!ドキドキ…
61名無しさん@ピンキー:04/12/09 06:09:35 ID:H1ypRuTB
>59
ちょっと三佐さん風?
62ほの暗い海の底から:04/12/09 06:29:57 ID:guuVrfIj
「夫婦をあげての決戦に、対応の煩雑さがなんだ。八つ当たりの恐怖が何だ。馬鹿野郎!」

(元ネタ:大井篤「海上護衛戦」)

風祭よ、お前だってコーチだろう? 敵前逃亡は銃殺刑だ。

シャレにならん…(わくわく)
63名無しさん@ピンキー:04/12/09 08:43:42 ID:gkLbQtuq
初めてなんですが、妄想が抑えられなくなり
思わずお話を書いてしまいました。
(と言いつつも、59に続きを書いたのは自分なんですが…)
化け猫さんのご様子を伺いつつ、1〜2話づつUPする形で
進めたいと思っているんですが、いかがでしょう…

下手くそですが、ひとまず1話投下してみます。宜しくお願いします。
(我に返って後悔しないうちにさくさくっと進めたくて)
6463:04/12/09 08:45:39 ID:gkLbQtuq
柔は最近、今まで味わったことのなかったある症状に悩まされていた。
その”症状”が顕著に現れるのは生理前。体は火照り、下腹部が熱く疼く。
たまらず太股を摺り合わせる事もしばしば。
昼間はそれでも、そんな柔の体調の変化があろうがなかろうが、
会社などで多くの人間と関わりを持つものであるから気も紛れるというものだが。
夜、一人っきりになると、忘れかけていたその症状がたちまちむくむくと顔を覗かせるのだ。
柔道によって培われた鋼の肉体と精神を併せ持つ【健康優良児・柔】といえども
こうなってしまっては眠るに眠れず、布団の中で悶々としつつ寝返りをうつ、を繰り返す。
現役スポーツ選手にとって、良質な睡眠はその道を究めるにあたり必要不可欠なものである。
幾多の障害を乗り越えようやく柔道の楽しさに気付き、本気で柔道に取り組みはじめた
現在の柔であるから睡眠時間の確保には十分な注意を払っていたし、まれに寝付けない事が
あっても自分なりに眠りに入る為の工夫を凝らしていた。
だが最近は?b?b。寝不足気味の目を擦りつつ早朝稽古に臨み、滋悟郎の激しい叱責を受けて
しまった事もあった。

なぜこんな症状に悩まされなければならないのか、柔にはよく分かっていた。
松田耕作。自分の恋人となったあの人に抱かれたから。
女としての喜びを、知ってしまったから。
65名無しさん@ピンキー:04/12/09 20:17:45 ID:r4pBgVu1
新職人さんキター!楽しみが増えて嬉しいです
久々のエロパロらしい滑り出しが新鮮でかなりドキドキしますw
6653:04/12/09 22:27:26 ID:4AzNi3Ju
>>59
適当に作った話に続きを作って頂いてありがとうございます。
責任を持って完結させます。

「えっ」
突然の松田の宣言に戸惑う間もなく唇を塞がれた。
「んんっ」
松田は柔の中に舌を侵入させつつ、右手でブラウスのボタンを外し始める。
「あっ…」
柔のスカートを脱がし、下着も一気に引きはがす。
「は、恥ずかしい…」
そして松田も自分の服を脱ぎ始める。
「………」
全裸になると、柔の視線が一点に集中する。その視線の先では松田の分身が隆起し、存在を誇示していた。
「ああっ、ダメッ」
柔の大事なところに手でなぞると、その手を掴み、動きを止めてしまう。
「ベッドに連れて行って…」
松田はニコッと笑うと、柔を抱きかかえ居間を出て、寝室の中に入った。
6753:04/12/09 22:28:04 ID:4AzNi3Ju
「よっ」
柔をベッドに寝かし、その裸をじっくりと観察する。
「そんな…、見ないで…」
柔は目を逸らしてしまった。
「さて、まだ母乳は出るかな?」
松田は柔の右の乳首にむしゃぶりついた。
「あぁん!」
乳首を舐め、吸い、歯を立てる。
「んんっ…、はぁ…、はう!」
右手は柔の下の唇の合わせをなぞり、敏感な所を撫でまわす。
「耕作さん…、あたし…、もう…」
柔が潤んだ瞳で哀願してきた。すでに柔から溢れた蜜で、シーツの色が変わっている。松田は柔の膝を立てると、亀頭で入
り口を刺激した。
「ああ…、はや…」
挿入が待ちきれないとばかりに、柔が腰を浮かせる。
(これ以上焦らすのも可哀相か)
松田が一気に柔を貫こうとした時
「んぎゃあああ、んぎゃあああ、んぎゃあああ…」
居間に寝かせていた子供が泣き出した。
「あっ、大変!」
柔は裸のまま、蜜が太股を伝うのも構わず、寝室を出ていった。
「えっ、あっ、そんな…」
(なんてタイミングの悪い。焦らさないで早く入れておけばよかった…)
がっくりと肩を落とす。視線の先では松田の分身が、行き場を失い右往左往したのち、力無く頭を垂れていった。

   お わ る ?
68名無しさん@ピンキー:04/12/09 22:29:05 ID:4AzNi3Ju
早く予告した話を完成させなければ。なんとか今年中に投下したいけど…。
69名無しさん@ピンキー:04/12/09 23:43:07 ID:mM6qUFlM
>62
いつまでも潜ってないで早く続き!
>63
あの、私のことはお気になさらずどんどん行っちゃってください。

                                     イヒ
70江戸家化け猫:04/12/09 23:47:16 ID:mM6qUFlM
☆☆8年後☆☆

 次の日、花園家では、柔道の練習に出かけたはずの富薫子がすぐ家に帰ってきた。
「あら、猪熊さん居なかったの?」
富士子が尋ねる。オリンピックも近づき多忙な柔のこと、急に留守をすることは珍しくない。
「部屋から出てこないの。もう柔道しないって。」
柔の”柔道やめる”は、毎度のこと、富士子には概ね予想がつく。
”あの二人、またどうせつまらないことで、けんかしたんでしょう。すぐ意地の張り合いを
するんだから。私の出番ね。”
すぐ柔に電話をかける。
「猪熊さん、いつもの喫茶店まで来てくれない?」
「でも・・・。」
柔が口ごもる。 
「待ってるからね、来るのよ。」
強引に言い切ると電話を切った。

 富士子は、いつもの窓際の席で柔を待つ。富士子に少し遅れて硬い表情の柔が入ってきた。
いつものけんかだと思っている富士子が、単刀直入に尋ねる。
「松田さんとけんかしたんでしょう?」
「ううん、してない。」
下を向いたままこたえる。
「ほんと?」
「うん、でも・・・」
「でも?」
富士子が聞き返す。柔が顔を上げた。少し笑みが浮かんでいる。
「松田さんにふられちゃった・・・。」
笑顔のまま涙がこぼれた。
71江戸家化け猫:04/12/09 23:55:38 ID:mM6qUFlM
☆☆8年後☆☆
「うそよ!まちがいよ!」
富士子が思わず立ち上がる。
柔は、ううん、と首を横に振った。
「女の人と抱き合ってた。」
さやかとはなぜか言えなかった。
「松田さんに限ってそんなこと有るわけないじゃない。たまたま女の人とぶつかることだってあるわ。」
「裸だった。」
「たまたま裸の事だって・・・・えっ!」
さすがの富士子も絶句する。
「松田さんに確かめたの?」
首を小さく横に振る。
「私が悪かったの。柔道ばかりして松田さんになにもしてあげられなかった。」
「それは松田さんが・・・」
「いいの、もう柔道やめる。」
そう言うと涙も拭かず立ち上がり店を出ていった。

 二人の後見人を自認している富士子も、どうしていいか判らなかった。花園に相談すれば
話がこじれるのは分かり切っている。キョンキョンやマリリンが頼りになるとも思えない。
南田に話したら松田を逮捕しかねない。思いあまって相談した先は滋悟郎だった。一番こじれる様な
気もするが、他に手は思いつかなかった。
「ここのところ、猪熊さんの様子おかしくないですか?」
「ろくに練習もせんと、部屋から出てこん。たかが代表に選ばれたぐらいでたるんどる!」
「そうじゃないんですよ、実は・・・。」
滋悟郎の顔がみるみる苦虫をかみつぶしたようになる。
「3流記者などと惚れたはれたなどしているからそうなるんじゃ。まあ、全日本十連覇
柔道十一段のわしに任せておけ。」
年々数字が増えどこまで行き着くかは謎だが、とりあえずここは滋悟郎に任せるしかない。
「ちょっとフクちゃんを呼んでくれるかの。」

7263:04/12/10 01:38:20 ID:Ny064zKX
>65
うわー、ありがとうございます〜。ヘタレですが宜しくお願いします。
エロパロらしい話なのかはどうだろう…。後半にちょいエロ程度なんで…。
>66
や、こちらこそ勝手に続きを書いてしまってスミマセン!
ちなみに自分もこんな感じのオチを予想してましたw
松田さんはこうやってズッコケてくれないと。
>69
ありがとうございます!では、こちらは毎日1話づつUPします。


テーマは柔の自慰行為ですが、相当ゆるいです。
しかもしばらくはエロ無しが続きます。暇つぶし程度にお付き合いいただけると幸いです。
では2投目…
7363:04/12/10 01:40:07 ID:Ny064zKX
柔が恋人・松田の赴任先であるアメリカから帰国して、早3ヶ月が過ぎようとしていた。
4日間という短い滞在期間。しかし柔にとってその4日間は一生忘れられない宝物となった。

?b?bとうとう、松田さんと結ばれた?b?b

松田さんに自分の全てを受け止めて貰いたい。そうすれば離れている間もそれを支えに頑張れる。
初めてアメリカの地に降り立った柔は、相当の覚悟を胸に秘めていた。
しかし最初の2日間、松田はキスはおろか、ろくに体に触れようとはしてくれなかった。
常に優しく接してくれてはいたが、柔に接近しないよう若干警戒している様子さえ感じられる。
どうして?成田空港で告白された時のように、思いっきり抱きしめてほしいのに…。
3日目の夜、柔は僅かに震えつつも真剣な表情で前を見据え、松田に対してこう問い詰めた。
「…今まで色々と、すれ違ってばかりでしたけど…。でも。でも今は、今は私、松田さんの
『恋人』なんですよね…?どうして、キ、キスしたりとか、『そういう扱い』を、
してくれないんですかっ…?」
考え抜いた上で口にした台詞とはいえ、その言葉の大胆さに頭の中がカッと熱くなり、
恥ずかしさのあまり瞳から涙が零れ落ちた。
7463:04/12/11 01:02:31 ID:yHEAEVPt
12分割してUPしますです。 3投目。
7563:04/12/11 01:04:02 ID:yHEAEVPt
一方松田は、普段寂しい思いをさせてしまっている柔の為に、せめてこの短い滞在期間の
間だけは目一杯楽しんでもらおう、柔の笑顔の為ならどんな事でもしてやろう、と
固く決意していた。
…にもかかわらず迂闊にも泣かしてしまった事に酷く慌て、狼狽えつつ柔の両肩を掴んだ。
「えっ?ゴメン!な、泣かないでくれ、柔さん!」
柔の涙は止まらない。肩を震わせ、しゃくり声をあげる。(何て事しちまったんだ、俺は!)
「え、えーと、柔さん、そういう風に、考えてくれてたんだ…?そ、そっか。そんな台詞、
女の君に言わせちゃってホントすまない!」
額から汗を流しつつ、必死の形相でたどたどしく言葉を続ける。
「俺は安易に、そういう扱いをしたくなかったんだ。君は、俺にとって一番、大事な人だから。
いや、俺にとってだけじゃない。全国民にとって大事な、宝だから…」
「そんな、宝だなんて…。その前に私は一人の普通の女性として…」
「ゴメン!そうだよな、うん、君は普通の女の子だ。で、だな。普通の女の子としての君も、その…」
一瞬、息を飲み、柔から目を逸らし明後日の方向を向いて言葉を続ける。
「……大好きなんだ。好きだから、下手な事して君を傷つけちゃいけないって、そう思って…」
76江戸家化け猫:04/12/11 02:48:47 ID:OZc8wFar
☆☆8年後☆☆

 しばらくして富士子に電話で呼ばれた冨薫子が現れる。滋悟郎が猫なで声で話しかける。
「フクちゃんや。お小遣いが欲しかろう。」
「うん。」
「ちょこーっとおじいちゃんが書く物を読んでくれれば500円あげよう。」
「いいよ。」
柔の部屋の前までつれていき、せりふを書いた紙を渡す。
「お姉ちゃん一緒に練習しよう。一人で練習してもつまらないの。」
意外に上手に読み上げる。滋悟郎は思う。
”子供といえども、女はなめられん。”
「ごめんね。お姉ちゃん、柔道するの、もう疲れちゃった。」
力無い声で返事が返ってくる。滋伍郎がなにやら紙に書いて、富薫子に渡す。
「元気出して。」
「もう、だめなの。」
再び滋伍郎がさらさらと書き付ける。
「そんなことでどうするの、・・・・これはなんて読むの?」
まだ学校で習ってない字があったらしい。
「暗雲たれこめるじゃ。あんうん。」
滋悟郎が小声で教える。
「えーと暗雲たれ込める昭和13年・・・」
冨薫子がそこまで読んだとき、すっとドアが開いた。立っている柔と滋悟郎の目が合う。
「おう、柔。やっとやる気に・・・。」
「フクちゃんにつまらないことをやらせないで」
静かに言うとまたドアを閉めた。
77江戸家化け猫:04/12/11 02:51:51 ID:OZc8wFar
☆☆8年後☆☆
 居間に来ない柔のために玉緒が部屋の前に食事を置く。会社には体調を崩したと言うことで
玉緒が連絡しているが、柔は、すっかり退職する気になっているようだ。柔道をやめると決めた以上、
会社にいることはできないと思っている。
”会社に行かないのはともかく、あれだけ食欲旺盛な子が食事に手も付けないなんて。”
玉緒は首を傾げ少し考え込む。コンコン。玉緒がドアをノックした。 
「柔、入るわよ。」
柔が、魂が抜けたような表情をしてベッドの上に横座りしている。玉緒もベッドに座った。少しほほえみ
ながら柔に話しかける。 
「松田さんとまたけんかしたの?」
首を横に振る。
「じゃあどうしたの?」
「他の人と抱き合ってた・・・。」
それを聞いた玉緒は思う。
”松田さんも男だから少しぐらいは火遊びするかもしれないけど、でも潔癖性の子だから・・・。”
玉緒の表情から笑みが消える。
「たかが一度くらい女の人と抱き合っていたぐらいなんですか!それぐらいで信じてあげることができないの。」
少しきつい口調で柔に語りかける。
「だって・・・。」
「お父さんなんか20年もうちに帰ってこなかったのよ。でも私は信じていましたよ。いつか帰ってくるって。」
「でも、お父さんがよその女の人と抱き合ってるの見ても信じられる?」
「それぐらいのことで・・・・。でも、やっぱり怒るかもね。」
玉緒が柔に笑いかける。柔が思わず吹き出した。柔にようやく浮かんだ笑みに少し安心する。
「私は松田さん、浮気なんかする人じゃないと思ってるわ。でもこれはあなたの問題よ。一度きちんと
話し合っていらっしゃい。」
そういうと玉緒は部屋を出ていった。
7863:04/12/12 01:38:34 ID:EhKqUvX0
今は化け猫さんが執筆中ですけど、他の職人さんはお忙しそうなご様子ですし
このスレが閑散としちゃったら嫌なんで場つなぎ的発想で
1話ずつ垂れ流していこうかなんて考えてたんですけど、
さっき他のスレをちょっと覗いてみたら皆さん一気にUPしてるんですね。
今日は2話にしてみます。
タルイの。という人いましたら教えて下さい、一気あげしますので。


4、5投目。  …しっかしホント下手っぴぃで、こりゃ。
7963:04/12/12 01:39:25 ID:EhKqUvX0
柔は松田の必死の弁明にじっと聞き入っていた。
自分の事を大事に思ってくれていたからこそ、何も出来なかったという松田の想いを
何とか理解しようとした。
やっぱり、松田さんはいい人だ…。胸がじんわりと温まる。
何より、『大好きなんだ。』そうはっきりと言ってくれた事がとても嬉しくて、
涙の乾かぬ顔を綻ばせた。
「もう、松田さんったら!そんなに気を遣って貰わなくても、そういった事で私が
傷つく筈がないじゃないですか!」
良かった、笑ってくれた!松田は更に気持ちを解きほぐそうとあえて冗談っぽく続ける。
「いーや!それはどうかなー。豹変した俺に恐れ戦いた柔さんの一本背負いが炸裂!
なんて事になっちまったら…!俺、おっかなくて、尚更柔さんに近づけなくなっちまうよ!」
「やだ、もう!そんな事する訳ないでしょ!」
そう言いながらも、松田の気遣いに対する感謝の気持ちを表そうと精一杯の笑顔を浮かべる柔だった。

「あ。あとね…」
「はい?」
松田は少し言い淀み、視線を足元に落としつつ呟いた。
「…関係を持ってしまったら…、その、離れている間、余計に辛くなっちまうんじゃ
ないのかな…?」
最後のほうは、あまり聞き取れなかった。
8063:04/12/12 01:40:01 ID:EhKqUvX0
どうして、辛くなったりするの?その時の柔は全く理解できなかった。
恋人同士なのだから、結ばれて喜びこそすれ、辛くなるなんてそんな事、ある訳がないもの。
私は、あなたに愛されているという証が欲しいの。松田さんは”証”が欲しくないの?
「そんな事、ありません!次いつ会えるか分からないのにこのままお別れしてしまったら…。
…もう、もう私、日本で一人で耐えられる自信が、無いんです…」
「柔さん…。」
「我が儘言って、ごめんなさい。松田さんとは、一緒にいるだけでも楽しい。でも、
何かが足りなくて、何だかもどかしくて…。あ、あの、その…」
「柔さん…。…分かった。俺は、その、君の望む事は何でもしてあげたいと思ってるから。
や、勿論、俺だって君を抱きたいと、お、思ってるし…。」
「松田さん…。」
そうして迎えた夜は、痛いままで終わった。痛くても、やっと松田とひとつになれたという
満足感で充分幸せを噛みしめる事ができた柔だったが、更なる幸せは次の日、最終夜に訪れた。
痛みの中から少しずつ芽生えた快感は次第に大きく膨らみ、柔の全身を覆い尽くした。
柔が目覚めた事に気付いた松田はそれまで必死に抑えていた男としての激情を柔にぶつけ、
柔も身を貫くような快感に朦朧としながらもそれに応えた。
二人きりの部屋に充満する濃密な空気。素肌に触れるその空気さえ、更なる快楽を呼び寄せる為の
道具のような気がしてくる。
お互いが何度も求め合う。柔のアメリカ滞在最後の夜は、こうして更けていった?b?b
81三佐衛門:04/12/13 00:07:42 ID:G0uDyIwy
どうも、新スレコテ初カキコの三佐衛門です。新しい方の投稿も始まって、存在を忘れられてしまいましたかね。
続きは完成させてからと言ったもののまだ完成してないし、化け猫さんや63さんの作品を読むと、盛り上がらず、
波乱も無い自分の創作に少々自信喪失気味です。
これまでいくつか投稿しておいて今更何ですが、設定など自分の勝手な妄想な訳だけど、読み手のかた的には
okでしょうか?特にこの前の「お疲れさま」について、是非ご意見お願いします。
82名無しさん@ピンキー:04/12/13 00:38:20 ID:I566Mlmw
職人さんオツですー。
俺の脳内イメージはこの二人は
なかなか進展しなそうな感じ。
松田さんは相手がスーパースターだから
告白はしたもののどっか気を使うというか
萎縮しちゃうところが少しはありそうだし、
柔たんも奥手だからなー。

>三佐
個人的にはすごい面白かったです。
また気が向いたら是非ともよろしくです。
8382:04/12/13 00:39:25 ID:I566Mlmw
すいません。さんを付け忘れました。
>三佐さんです。
8463:04/12/13 03:42:37 ID:KD08kDq1
>81
わ、お待ちしておりました!
「お疲れさま」は、読んでいてほんわか幸せな気分になれました。ほんといい創作でした。
上手く伝えられないのがモドカシイ…
内容云々以前に、これは全職人さんに言えることですけど文字に起こしてくれたというだけで感謝してますです。
第二部が楽しみです。

>82
こちら、自分へのレスでいいんですよね??
自分もそういうイメージで捉えてます。もどかしい感じがイイんですよねぇ。
その辺りを描写した話は既に大作が仕上がってますし、
この話では結ばれた後の柔ちゃんの変化を書いてみたかった(えっらそうに)ので、
大分端折ってしまいました。
ただそうやって前半をコンパクトに纏めたら、後半もそれに合わせてコンパクトに
纏めざるを得なくなってしまい…。勿論才能ある人ならきちんと拡げられるんでしょうけど。
8563:04/12/13 03:46:09 ID:KD08kDq1
文章書くのって難しいもんですねぇ。
↓6、7投目↓
8663:04/12/13 03:47:11 ID:KD08kDq1
「辛くなる」って、こういう意味だったのね…。
パジャマ姿で自室のベッドに腰掛け、あの時松田が言った言葉の意味を噛みしめる柔。
一度あの感覚を覚えてしまうと、貪欲にも求め続けてしまうものだったんだ。そう、毎日でも…。
その感覚を与えたのは、柔が限りなく愛する松田だったのだから尚の事、松田が欲しくてたまらない。
柔は、帰国後幾度となく思い返した『あのひととき』に思いを馳せていった。

?b?b初めて見たあの人の体。
不摂生な生活を送っている割に引き締まっていた、男らしい体つき。
今まで見たことのなかった、その時のあの人の眼差し。
自分を何度も何度も抱きしめた、あの力強い腕の感触。
そして……ひとつになったときのあのえもいわれぬ感覚。
彼が動きを早めると、とろけるような感覚がどんどん増していって……
初めはあんなに痛かったのに…。もっと。もっと、奥まで来て。
どんなに受け入れても、足りないの…?b?b

階下から聞こえた物音で我に返った。私また、あの時の事を思い出してる!
自分は何て淫らな人間なのだろうか。羞恥心から思わず泣きそうになる。
そう思いながらも体の奥では熱い塊が疼き続け、落ち着かない柔は腰を
少し浮かせては座り直す、を何度か繰り返した。
8763:04/12/13 03:47:52 ID:KD08kDq1
いっそのこと、松田さんに会いに行ったあの4日間を無かったことにしてしまえば
良いのではないだろうか?
私はアメリカに行かず、今まで通り仕事と柔道に明け暮れる毎日を送っていたんだ。
そう。松田さんの腕の中に包み込まれたあの至福の時、あれははじめから無かった事なんだ。
必死に頭の中から4日間の思い出を消去しようと試みる。
でも…。だけど…。
股の上の両手で握り拳を作り、ぎゅっと力を込める。
そんなの無理だ。忘れられるはずがない。長い間素直になれなくて、やっと気持ちが通じ合って、
そしてようやく全てを受け止めて貰えたのだから。
深い溜息が口をついた。視線を横にずらせば写真立てに収まった松田の写真。
屈託のない笑顔。日本にいた頃、柔をずっと見守り続けた暖かい眼差し。
その眼差しは遠く離れた今も柔に向けられている?b?b結ばれた今、はっきりとそう確信できた。
写真立てを手に取り、ガラス越しの彼の瞳をじっと見つめ返す。

?b?b大好きです。松田さん。
あなただけを、愛しています?b?b

誰かを愛するという心。
愛している。その言葉をなんの恥じらいもなく、何度でも打ち明けられる相手がいるということ。

愛しているし、愛されてもいる。そしてこれからも私の事を励まし続けてくれる。
今は離れ離れだけど、彼の心を支えに柔道を頑張って、仕事も頑張って…
8863:04/12/13 03:57:02 ID:KD08kDq1
>でも…。だけど…。
>股の上の両手で握り拳を作り、ぎゅっと力を込める。

…おまたじゃなく、ももです、ふともも…。

「もも」で変換したらこの字が出てきたんですけど。あら?


あ゛ーーーー。
89名無しさん@ピンキー:04/12/13 22:29:13 ID:X3yjixxY
>三佐さん
やはり保守本流は大事ですよね。読んでいて安心感があるのはすごく良いと思います。
次も期待しています。次と言えば駄文さんやルルさんは、どうされたんでしょうね。
                                                   イヒ
90ろく(旧63):04/12/14 01:36:15 ID:Djrpr5pR
コテハンにしてみました。
63=ろくさん。自分でさん付けは変なので、ろく。宜しくお願いします。
8、9、10投目。
91ろく(旧63):04/12/14 01:37:33 ID:Djrpr5pR
……違うの!
柔は大きくかぶりを振った。
今、そばにいて。そして私を抱きしめて下さい、松田さん!!
こんなに、こんなに好きなのに…!どうして、側にいてくれないの…?
どうして、私達は離れ離れなの…?こんなの、嫌!

柔の瞳から涙が溢れ出ては、両の頬をつたう。
この感情を、全て彼にぶつけてしまいたい。しかし単身アメリカで頑張っている松田に
こんな『我が儘』を言える訳がない…。
やるせない思いを胸に抱え、ベッドにぽさりと身を投げ出した。
「松田さん…ひっく、まつだ、さん……まつださん……」
泣きながら、柔は下腹部がまるで別の違う何かのように熱くなっているのを感じていた。
(柔さん。)
松田の優しい声が頭の中に響く。たまらず、両腕で自分の体を強く抱きしめる。
(こんな風に、何度も何度も抱きしめてくれた…)
密着した腕に、自分の胸の感触が伝わる。その先端はすっかり固くなっていた。
恐る恐る腕を解き、人差し指で先端をそっと撫でてみる。
「んっ…くっ」声が漏れてしまった。慌てて片手で口を押さえ、身を固くする。
少しの間そのまま身を固くしていた柔だったが、ほんの少し触れただけで松田の愛撫を
思い起こさせてくれたこの行為により、何だか松田が側に居てくれているような錯覚を感じていた。
(松田さんがここに居るみたい…)
今度は中指と親指を使い、つまみつつ刺激を与えてみた。松田の手の動きを必死に思い出す。
「あっ、…んっ、…あんっ」
刺激を与える度に声が漏れる。指の動きはどんどん速まり、両手で乳房を包み揉みほぐしていた。
92ろく(旧63):04/12/14 01:38:23 ID:Djrpr5pR
「は、はぁっ、…あっ、…松田さ、ん…」
松田の名前が口をつき、ふと我に返る。(あ、あたし、自分で…!な、何て事してるの!)
でも、もう動きを止められなかった。どうしても慰めが欲しかった。
暫く自分の胸に刺激を与え続けていた柔だったが、それだけでは物足りなくなってきた。
そろそろと、下半身に手を伸ばす。
そこに到達する瞬間、思わずぎゅっと目を瞑る。秘部はすっかり濡れそぼっていて、
ぴちゃっとした感触が指に伝わった。
指の腹を使って最も敏感な部分を撫で上げると、電流が走ったように体がビクンと跳ね上がり、
「あっ!…はぁぁ…ぁん…」何とも淫らな声が漏れた。
「松田さんが、側に、居てくれないから…、ぁあんっ、い、いけないん、だもん…!」
指で刺激を与えながら、そう呟いた。

朦朧とした頭で柔は思う。今、ここはどんな風になっているんだろう…?
だいたいの形状は中学の保健体育の授業で習ったので知っているが、
自分の秘部でそれをおさらいしたことは、勿論今まで一度もない。
(見て…見ようかな……)液体でべとべとになった指を離し、ベッドから身を起こす。
全身が写る大きな姿見の前に腰を降ろした柔は、えいっとばかりに開脚し、秘部をさらけ出してみた。
(えっ…!何、コレ!き、気持ち悪い……)
自分のここを、松田は「きれいだ」と言ってくれていた。だけど、こんなものが『きれい』?
ぬらぬらとしてグロテスクだとさえ感じる。何だか内蔵でも見ているような???
93ろく(旧63):04/12/14 01:39:39 ID:Djrpr5pR
柔が半ば呆然とそこを眺めている間にも、液体は溢れ続け、床を汚していく。
改めて、大きく足を開いた自分の姿を観察する。
紅潮した頬、潤んだ瞳、少し緩んだ口元。自分のこんな表情を見るのも初めてだ。
一瞬、激しい嫌悪感が頭をよぎった。
そして自分の意志とは無関係に勝手にひくついている、あの部分。
…ここに、松田さんのアレが入っていたんだ。こんな姿を、松田さんに見られていたんだ…
そう考えると、俄に高ぶってきた。
鏡に自分の姿を映したまま、指を何度も出し入れさせ、中を掻き回す。
親指で、充血しきった敏感な部分を刺激する。
くちゅ、くちゅ、という水音が、部屋中に響き渡る。
刺激を与えているのは自分ではなく、松田なんだと必死に思い込もうとした。
「ああっ、まつださんっ、…まつださんっ、ああん、ああ、あ、あ、あ、あ…ああぁぁぁっ!」
漸く絶頂に達することが出来た。
しかし松田との行為では必ず訪れた絶頂後の幸福感は、微塵も感じられない。
ただ、空しさだけが胸の中で渦を巻く。

(……ひとりぼっち。)
猛烈な虚脱感と睡魔に襲われ、床に横たわり、固く目を閉じた。
94江戸家化け猫:04/12/14 21:44:13 ID:h5xBURn6
☆☆8年後☆☆

 一人になった柔は、松田の部屋の合い鍵を眺めていた。キーホルダーは付いて
いない。ただ部屋番号を書いた紙の荷札が針金で縛り付けてある。その無造作な
感じがいかにも松田らしくてそのまま使っていた。
 玉緒には、話し合えといわれたが、やはり迷いがあった。今、会えばそれが松田との
訣別になってしまうような気がした。
”でもちゃんとけじめを付けないと。”
迷いに迷った末、家を出たのは結局、夜9時も過ぎたころだった。
 松田のアパートの階段を上がる。幾度も上がった階段がとてつもなく長く感じる。
”さやかさんがいるかも。”
そう思うとそのまま家へ引き返したいとさえ思った。不安な気持ちを抑えやっとの思いで
松田の部屋の前に着く。ドアの前で中の様子をうかがった。
”あっ、女の人の声がする!”
膝の震えを抑えることができなかった。立っていることができずにドアのノブにすがる
ようにしてしゃがみ込んだ。コンクリートの床に塩水の水滴が二つ落ちる。
”やっぱり・・・。来なければ良かった。”
そのまま帰ろうと思った。しかし未練を簡単に断ち切れるものでは無い。せめて最後の
別れだけは告げようと、柔は鍵を開けそっとドアを開いた。足元を見ると松田の汚れた
スニーカーが転がっている。この部屋を見ることも、もう無いだろう。最後の勇気を
ふるって居間をのぞきこんだ。
95三佐衛門:04/12/14 22:15:12 ID:mKBgVzXF
みなさんありがとうございます。
頭の中の構想を文章化するのは結構労力が要るもので、忙しい中の暇な時に執筆しなかったら結局続きが書けなくて、
投稿すると言ったのにほったらかしにするわけにもいかず、あまり期待されていなかったら無期限延期させてもらおうかな
と思ったのですが、みなさんのレスを見て、期待されているのならもう少し頑張ろうと思った次第です。
ちょっと肩の力を抜いて、他の漫画のSS書いてみたりしつつ、ゆっくり、でもなんとか今年中に完成させたいと思うので
よろしくお願いします。
96ろく:04/12/15 02:17:28 ID:OvImyr22
数日後、猪熊家の電話が鳴った。こんな時間に、一体誰だろう?
「はい、猪熊です。」
「柔さんか?」
「……松田さん……。」

久し振りの松田からの電話だった。
なのに隠れてあんな事をしてしまった後ろめたさから、自然と声のトーンが落ちてしまう。
「あ、あれ?どうした、元気ないみたいだけど…。あ、全然音沙汰無しで、怒ってたとか…」
「い、いえ、そんなことないです。その、久し振りに声が聞けて、えと、嬉しくて。」
慌てて誤魔化す。
「嬉しくて、か。そ、そうか。ならいいんだ。…で、あのな、俺、一週間後、日本に帰れる
事になったんだ!と言っても業務報告の為だけだから、ほんの少ししか居られないだろうけど。
でも久し振りに君に会えるから、その、嬉しくってさ、慌ててそっちの時間も確かめずに
電話しちまった、ハハ…ゴメンな。」
松田のほうも、つい今しがた言われた事なのだろうか?若干興奮気味なのが手にとるように分かる。
そんな彼の声を聞くうちに、柔は悶々としたあの感情が、まるで霧が晴れるかのように
拡散していくのを感じていた。
久し振りに太陽の光を浴びたかのようで。広い野原に出て思いっきり深呼吸をしたかのようで。
何だか凄く気持ちいい…。
自然と、涙が溢れた。
97ろく:04/12/15 02:18:46 ID:OvImyr22
柔は思った。
?b?bああ、あんな事しちゃって、私、ほんとに馬鹿だった。
あんな事をしても、表面的な快感しか得られなかった。全然、幸せじゃなかった。
終わった後、空しくなっただけだった。
それが今、こうして電話越しに話しているだけで、あの時の何百倍も幸せになれるなんて?b?b?b。


そう。松田さんに、また会えるんだ!
会ったら、うんとお喋りをしよう。彼の仕事についても聞こう。私も沢山、報告したい事がある。
そして、お日様みたいな彼の暖かさを、思いっきり感じよう?b?b。

「ん?どうした、柔さん?」
「あ。…ううん、何でもないです。…ふふっ、楽しみだなぁ!早く一週間が過ぎないかなぁ!
松田さんも、そう思うでしょう?」




<終>
98ろく:04/12/15 02:19:35 ID:OvImyr22
おしまい。お付き合いいただき有り難う御座いました。
YAWARAのエロ「のみ」が好きというわけではなく、清純派指向が強い自分なので、
うpしてる間これって原作を汚してる?などと戸惑ったりもしますた。
書きたい話は他にもあるので時間とれたらまたチャレンジしたいと思ってます。(暫く休みがとれない)
ここの住人の方々が引いちゃうようだったら勿論やめますが…
次回はもう少しマシなものを書けたらいいなぁ。では、ROMに戻りますです。

>化け猫さん 割り込んですみませんでした。今回の話も凄くイイ!です。続きがんがってください。
>三佐さん マターリと待ってますw
99三佐衛門:04/12/15 22:38:17 ID:Cpl1oDh2
>>ろくさん
お疲れさまでした。自分は心理描写が苦手なので、それでストーリーを作ってしまうなんて素晴らしいと思います。
>>化け猫さん
化け猫さんの作品を読むと、自分の頭の固さを認識してしまいますw
100江戸家化け猫:04/12/16 00:30:19 ID:TLVzlrBi
☆☆8年後☆☆

 そこには、寂しそうな顔をして、AVを眺めている松田が一人寝ころんでいた。
”あの女の人の声、ビデオの・・・よかった。”
緊張の糸がとぎれる。安心と脱力感で、松田に声をかけることができなかった。
気配を感じたのか、松田が振り返る。
「あ、や、や、やわ、柔さん!」
飛び跳ねるように立ち上がる。
玄関とも言い難い、狭い靴脱ぎで立ちつくしていた柔がぽつりという。
「松田さんのエッチ。」
「えっ?」
AVが画面に流れていることに気がつく
「いや、あの・・・」  
あわててビデオを止める。
「松田さんのエッチ!」
そう叫ぶように言うと、松田の胸の中に飛び込んだ。そしてずっと肩をふるわせていた。
胸の中から松田の顔を見上げる。
「ちゃんと寝てないでしょう?目の下に隈ができてる。」
泣き笑いのような表情を浮かべる。
「柔さんだって腫れぼったい目をして。寝不足は小じわの元だぞ。」
「松田さんのいじわる。」
柔は力の限り松田を抱きしめた。
101江戸家化け猫:04/12/16 00:34:33 ID:TLVzlrBi
☆☆8年後☆☆

 柔は、先日のことを確かめたかった。不安から解き放されたかった。
「あの・・・」
言いかけたとき、ググーと音がした。松田は不審げな顔をする。柔は真っ赤な顔を
して下を向いた。1週間近くまともな食事をしていない。安心して身体もようやく空腹で
あることに気がついたのだろう。
「ラーメンでも食うか?」
「うん。」
松田は台所に入り、そしてインスタントラーメンを作りはじめる。松田が柔のために
料理を作るのはこれが初めてだ。もっともインスタントラーメンが料理とすればの話だが。
 3分後、ラーメンの入ったどんぶりをもって台所から帰ってくる。そして柔の前に置いた。
「ありがとう。」
柔は、どんぶりを手に取り、ずずっとスープをすする。具はなにも入っていない。浮いているのは
スープに混ざっている乾燥ネギだけ。所々麺に火が通っていない。溶け残ったスープのかたまりもある。
「うまくないかもしれないけど・・・・」
「ううん、おいしい。」
決して少食とは言い難い柔が数日ほとんどなにも食べていなかった。まずかろうはずがない。
それ以上にスープが体を温める感覚が心地よい。そしてそのぬくもりがわだかまりを少しずつ
溶かしていく。もう、さやかのことを訊ねる必要もないと感じていた。。
 食べ終わりほっと息をつく。柔は、空になったどんぶりを見つめながら、聞き取るのがやっと
というぐらいの小さな声で訊ねる。
「泊まっても・・・いい?」
「ああ。」
柔は自分で食べたどんぶりやテーブルを片付けると、部屋に隅に丸めてある布団をひろげる。 
「一緒・・・・・・で、いいですよね?」                        
「ああ。」
お互い口が重い。二人とも、お互いに対するしこりはほとんど溶け去った。しかし、だからといって、
全ての不安が解消されたわけではない。
102名無しさん@ピンキー:04/12/16 00:39:22 ID:TLVzlrBi
ろくさん、おつかれさまでした。
しかしこれでまたしばらく一人かなあ。柔を読んでた世代で時間に
ゆとりのある人なんてそういないんでしょうねえ。さみしいなあ。

                                     イ ヒ

                                 
103ろく:04/12/16 03:12:55 ID:84XnwGov
三佐さん、化け猫さん
労いのお言葉ありがとうございます。
メールの返事ですらまともなのを返せないような人間が書いたモノですから
稚拙極まりないんですケド、素人の自己満足ということで…

>化け猫さん
しかも師走ですからねぇ。最近書き込み少なくてわたすもさみしいです。このスレ廃れさせたくないなぁ。
あと「寂しい顔でAVを眺める松田さん」 松田さんには悪いけどウケマシタw
104ろく:04/12/16 03:14:42 ID:84XnwGov
あ。あげちった
105ouennage:04/12/17 05:36:38 ID:xnwjGtnz
106江戸家化け猫:04/12/17 07:44:34 ID:Gnto4DAY
☆☆8年後☆☆

「電気消そうか?」                               
柔がこくりと頷く。松田は蛍光灯のひもを2度ひいた。部屋が暗やみに包まれる。きぬづれの
音がする。窓から漏れてくる月明かりで柔が服を脱いでいるのがぼんやり見えた。淡い光に
白いからだが浮き上がる。下着姿になると布団に滑り込んだ。それを確認して松田も床につく。
眠りに落ちるでもなく、話しかけるでもなく、ただ天井を見つめていた。様子は見えないが恐らく
柔も同じだろう、と思う。
 柔の手が布団の中でのび、松田の手を握った。松田がぴくりと震える。静寂が二人を包んでいる。
 どれだけそうしていただろうか。つぶやくように柔が訊ねる。
「ずっと信じていていいんですよね・・・?」
「ああ。」
「何があっても・・・・・」
「ああ。」          
 柔は、先ほど握った手を自分の胸元に引き寄せる。
「わたし、あの・・・魅力無い?」
不安げに訊ねる。
「そんなわけないじゃないか。」
少し怒ったように松田が答える。
「でも松田さんからは、一度も・・・。いつも私が誘ってた気がする。」
「それは・・・」
 口ごもった。当然柔を気遣ってのことだが、それを言うと一層柔を傷つける気がする。
「私が痛がるから?でも、松田さんに我慢してもらうことの方がつらいの。松田さんいつも仕事で、
たまにしかあえないし、もう私に興味がなくなっちゃったんじゃないかって不安なの!」
107江戸家化け猫:04/12/17 07:50:07 ID:Gnto4DAY
☆☆8年後☆☆

そう言うと松田にしがみついた。
「ごめん、そんなことで心配かけて。でも・・・」
「松田さんとなら、がまんできる。」
そう言うと布団の中で、もぞもぞっと下着を脱いだ。あまりに張りつめた表情をしている
だけにむしろ滑稽さすら感じさせる。松田は柔が自分を受け入れる事を願っている
ことを感じた。傍らにいる柔の顔をのぞき込む。
「お願い。」
柔は見つめ返した。
  松田が柔の脚の間の身体を割り込ませる。この件に関しては、学習能力のない二人が、
気持ちに任せて、なんの前戯も無しに挿入を試みる。柔の身体はいつもに比べて熱く
なっていた。そして潤ってもいただろう。しかし、数ヶ月ぶりに交わりを持つには不十分
だったのは言うまでもない。
「あっ!」
柔が悲鳴を上げる。
「大丈夫か?」
「うん、平気。」
笑顔を浮かべるが完全に引きつっている。松田がせめて少しでも負担を軽くしようと姿勢を変えた。
「うっ。」
顔をしかめる。声は出していないが、相当な痛みに耐えていることはその表情からも見て取れる。
「無理しなくてもいいよ。」
松田はそっと柔から離れた。
108名無しさん@ピンキー:04/12/18 04:46:16 ID:lm77BWlB
☆☆8年後2☆☆

 柔は少し落ち込んだ顔をしている。
「ごめんなさい。私が大丈夫って言ったのに。」
「いいんだ。柔さんもつらいって言ったけど、柔さんに無理させることの方が
俺もつらいんだ。それに、きっと、次はうまくいくさ。」
松田は柔の方に向き直ろうと動いた。その拍子にビデオのリモコンのスイッチを
押してしまったらしい。先ほど止めたビデオが動き始める。
「いや、あの、あはは・・・。」 
松田は気まずい笑いを浮かべるしかない。その困った様子を見て柔は思わず吹き出す。
くだらないと思いつつも初めて見るAV画面に見入る。AV嬢が男優のペニスを手で刺激している。
「あれだったらできるかも・・・。」
松田の顔をのぞき込む。
「いいよ。はずかしいから。・・」
「おねがい、やらせて。」
「お願いってそういう問題じゃ・・・」
松田がとまどっている間に、柔は起きあがると松田の股間に手を伸ばす。
「あっ。」
松田が身を縮める。
「手、冷たくないですか?」
「いや。」
109名無しさん@ピンキー:04/12/18 04:48:31 ID:lm77BWlB
☆☆8年後☆☆

松田の男性自身を握り、見よう見まねで手を上下させる。半ば硬さを失っていた
松田の物は、すぐに力強さを取り戻した。松田の物を見るのは初めてというわけ
ではないが、まじまじと見るのは気恥ずかしく横目で確認する。
”こんなのが入るんだもの。痛いはずよ・・・。”
松田の物が特別大きいわけではないだろう。が、柔にとって比較の対象は生理用品
ぐらいだった。何となく破廉恥なことをしている様な気がして無意識のうちに力がはいる。
が、たとえ小柄でも普通の女の子とは力強さが違う。  
「いて!」
松田が口走る。
「あ、ごめんなさい。」
もう一度柔らかく握り直した。ふと画面に目をやると、女優が男性自身を口に含んでいる。
松田に少しでも多く満足して貰いたかった。自分の気持ちをわかって貰いたかった。
”ああいう風にした方が気持ちいいのかしら。でもあんな事したらきっと変に思われちゃうだろうし・・・。”
110名無しさん@ピンキー:04/12/18 22:33:42 ID:FiVL3p02
>>ろくさん
遅れましたが、乙です。
柔が松田と結ばれた後、松田と長い間会えないときは柔は
一体何をしているのかなと気になっていました。
柔の心理描写も細かくてとても面白かったです。

>>化け猫さん
盛り上がってきましたね。
AVを見ながらと言えど、積極的な柔が新鮮で(;´Д`)スバラスィ ...ハァハァ
続き楽しみに待ってます。

>>三佐衛門さん
新作を首を長くして待ってます。


職人さんの活動が活発で、読み手としては感謝の気持ちでいっぱいです。(TдT) アリガトウ
111名無しさん@ピンキー:04/12/18 23:24:20 ID:jEMgXErL
職人の皆様乙です。
楽しく読ませて頂いているのですが、師走で忙しくてなかなか
一読み手として感想さえもなかなか書くことが出来なく申し訳ないです。
>ろくさん
ろくさんの作品を呼んで
久しぶりに会った柔と松田の話なんて読んで見たくなってしまいました。

>三佐さん
「お疲れ様」凄く良かったです。
また続きお願いします。

>猫さん
今回も楽しく読ませていただいております。
続きが毎日楽しみでしかたありません。
112ろく:04/12/19 04:05:47 ID:HiG146nm
>>110,111
読んでいただきアリガトゴザイマス! うう、うれすい。

>111
あの話の続編っぽいのもアリかもなぁ…。


妄想ばかり溜まっていくけどしばらくは纏める時間トレナイヤ…

113江戸家化け猫:04/12/19 06:02:56 ID:PqQ9MTUm
☆☆8年後☆☆

が、そのような迷いは無用のことだった。柔の一生懸命の横顔に松田の
胸がいっぱいになる。決してその行為が上手なわけではないが、気持ちの
高ぶりに技術は関係ない。
 唐突に、松田は、尻の筋肉が引きつる感覚に囚われる。ふくらはぎが
軽くけいれんするような気がする。
「あ、柔さん!」
 思わず横にいる柔の太股をつかむ。
「痛かった?」
謝ろうと思った瞬間に握りしめていた男性自身から白い物が吹き出した。
「きゃ。」
柔は少し後ろにのけぞる。松田の身体の上に飛び散った。柔の手にも
付いていた。松田は、気恥ずかしそうにそっぽを向いている。
 一息ついて、柔はティッシュで松田の身体をふき始めた。
「すごい跳ぶんですね。驚いちゃった。」
柔が何気なく見せた笑顔に胸を締め付けられる。慣れないことをしたせいだろうか、
汗で額に少し垂らした髪が張り付いている。この1週間どれだけの不安を
与えたのだろう。そう思うと、耐えられなかった。松田は思わず柔を抱き寄せる。 
「あ、ちょ、ちょっと、だめ・・・」
急に抱きすくめられた柔は、口では抗していた。が、松田のぬくもりを身体全体で
感じとれることに安らぎを覚えていた。
114江戸家化け猫:04/12/19 06:06:18 ID:PqQ9MTUm
☆☆8年後☆☆

「ちゃんと拭く前に抱きつくんだもの。私のおなかにもべったりついちゃったじゃない。」
少し口をとがらすように文句を言う。
「ごめん、つい・・・」
「タオルとってくるから待ってて。」
台所からお湯で湿らせたタオルを持ってくると松田の体を拭き始める。
「明日からまた練習始めなきゃ。1週間さぼったから、きっとおじいちゃん怒ってるだろうな。」
独り言を言いながら、自分の身体についたものもふき取る。
「俺も一緒に行って謝ろう。」
松田も、自分が当事者であることは十分理解している。 
「怪我しても知らないわよ。」
「大丈夫だ、ここで逃げたら男がすたるってもんだ。」
昭和30年代生まれが古くさい見得を切る。
「ありがとう。あてにしてます。」
そういうと身体を松田に預けた。
115江戸家化け猫:04/12/19 06:10:18 ID:PqQ9MTUm
☆☆8年後☆☆

 翌朝、猪熊家の玄関の前に二人で立ちつくす。松田は言うに及ばず、
柔も朝帰りは気が引けるようだ。
「二人で朝帰りって火に油を注ぐようなもの・・・ですよね。」
「・・・。」
柔も世の常識に今頃気がついたらしい。
その時、がらりと玄関が開く。口をへの字に曲げた滋悟郎が立っている。
「あ、あの・・・」
松田が必死に言い訳を言おうとする。が、滋伍郎は目もくれなかった。
「なーにをぐずぐずしとる。さっさと、着替えんか!1週間分取り戻すぞ!」 
「はい!」
柔はあわてて家の中へ駆け込んだ。
「打ち込み10万本!」
「無茶言わないで。そんなの1週間かかったって終わらないわ!」
声が家の奥へ遠くなっていく。滋伍郎の前に一人残された松田。
「松ちゃんよ。」
滋伍郎がちらりと視線を走らす。背筋に冷たい物が走る。
「あのノッポのねーちゃんみたいなことになったら一本背負いをお見舞いするぞ。」
松田に背を向ける。
「は、はい!」
滋伍郎の殺気に、直立不動のまま動けない。
「そして、もし・・・」
背中越しに鋭さを増した殺気が松田を包み込む。
「もう一度柔を泣かしたら地獄車じゃ。」
玄関をぴしゃりと閉めた。

                                   終わり
116名無しさん@ピンキー:04/12/19 08:07:51 ID:IM+AfV+J
ずっとROMでしたが、浦沢直樹氏作品が好きな俺は化け猫氏のSSがとても好きです。
アナザーワールドをいつも読ませてくれてありがとうございます。

いつもお疲れ様です。応援しています。
117名無しさん@ピンキー:04/12/19 17:13:33 ID:zhrl2Isp
>「もう一度柔を泣かしたら地獄車じゃ。」

全く同意である。

・・・ただ、問題の根本は風見鶏なんだよなぁ・・・。
118名無しさん@ピンキー:04/12/19 17:31:48 ID:n3MBTyIZ
柔を辱めて・・・・
119江戸家化け猫:04/12/19 21:34:30 ID:ApGDDLr2
 えーと今回は、何年間もつきあってれば嵐も吹けば風も吹く事もあるだろう。
この二人に限って自分たちでは乗り越えられないけれど周りの助けで何とか
続けられるんじゃないかな、関係を深められるんじゃないかなと言う二人の
子供じみた関係のイメージを書いてみました。
 4年後8年後12年後と一連の流れの中で書いているわけですが、原作とあわせて
松田と柔の距離感の変化を個人的に楽しんではいるものの、その他それぞれの
思考パターンは変えてないつもりなんです、話のおもしろい詰まらないはおいといて
(それでも”愛情イッポン”よりはおもしろいんじゃないかと・・・・、あっ嘘です・・・)。
変わってないと思いません?変えてないつもりなんだけどなあ。

ちなみに地獄車ってどんな技なんでしょうね?響きのすさまじさに何となく使ったんですけど。
連れあいが柔道初段なんですが、まさかSS書くから教えてくれとも言いづらいし・・・・・




120江戸家化け猫:04/12/19 21:38:18 ID:ApGDDLr2
>116
読んでくれている人がいる、と言うことだけが書くことの原動力です。ありがとうございました。
>117
本当は風見鶏の関係改善というプロットも考えていたんですが話がぼけそうでカットしました。
夜中の3時頃酔った風祭が帰ってくる。さやかがはれた目で初めて茶漬けでも出す。
こうなったら後は一気に離婚か風見鶏が改心するか二つに一つですね。実生活であれば
前者の確率の方がいと思いますが・・・・
>118
別に私あてじゃないと思うんですけど、荒れますからね。
121名無しさん@ピンキー:04/12/20 01:41:09 ID:aJ1fdz7l
化け猫さん
おつかれさまでした、すごく面白かったです。
YAWARAの魅力の一つとして展開のテンポの良さ(会話含め)があると思うんですが、
化け猫さんの小説はその辺を上手く表現しているのが毎度毎度感心させられます。
時間とれそうでしたら、また何か書いてくださいね。   ろく
122三佐衛門:04/12/20 22:27:27 ID:gNjAouIa
>>化け猫さん
さやかさんはどうなったのか気になりつつ、お疲れさまです。
二人の性格はねぇ…、原作のままだと話がなかなか進展しないですからw
123名無しさん@ピンキー:04/12/21 16:31:29 ID:n7NFB2w9
age
124名無しさん@ピンキー:04/12/22 00:32:47 ID:b9bUrWKg



125名無しさん@ピンキー:04/12/22 00:34:11 ID:b9bUrWKg
>119
確かに三つつなげて読むと説得力があるような気もするなあ
126アーケード板住人@182cm:04/12/22 10:55:32 ID:Ow77Z55a
YAWARAさまにうんちを喰わされたい
127名無しさん@ピンキー:04/12/22 23:49:33 ID:b9bUrWKg
原作でも松田より柔の方が積極的ですよね。
128名無しさん@ピンキー:04/12/23 01:28:10 ID:slWrBCbG
二人とも奥手じゃない?
柔は邦ちゃんにちゃんとしないさよって
いわれてからはがんばってたかも
129名無しさん@ピンキー:04/12/23 12:27:01 ID:YgT2a+cK
でも、松田さんよりは、積極的なのは間違いない。
130名無しさん@ピンキー:04/12/23 22:29:06 ID:YgT2a+cK
で、次は・・・・・・・?
131名無しさん@ピンキー:04/12/23 22:41:22 ID:slWrBCbG
俺は松田さんの方が積極的だと
思うなあ。
告白も松田さんからだし
ずいぶん前に告白したのもあったよね。
柔ちゃんは、告白しようとしても
いつも赤面してるだけのような気がする。
132名無しさん@ピンキー:04/12/23 23:03:19 ID:YgT2a+cK
でも、自分から松田の家へ行ったり泊まるって言ったりしてるし。
邦ちゃんが来なかったら間違いなく・・・・・ねえ?

最後の告白だってあそこまで(言葉は悪いけど)追い込まれても
まだ、何も言わずに行きかけるし。

全編通じて柔道以外のことで松田から会話をしてる記憶がほとんど無い。
133名無しさん@ピンキー:04/12/24 05:49:47 ID:IbKX81gG
まー、どっちも奥手だわなw
134名無しさん@ピンキー:04/12/24 21:11:28 ID:xZhvMO2T
そうか、今日はあの日か・・・・・
135名無しさん@ピンキー:04/12/24 22:27:37 ID:xZhvMO2T
そう言えばきょうのあれみました?
そんなにできが悪いんですか?
136名無しさん@ピンキー:04/12/25 08:02:12 ID:debrKaGZ
腰抜けキッズの柔さんって、FUKUKOにかかれてたのと雰囲気にてますね。
137:04/12/25 19:13:47 ID:xmBCue7c
松田さん、ごめんなさい
記者やめないでください
138名無しさん@ピンキー:04/12/26 01:45:57 ID:urnvsGWr
私、柔道やりますから!
(だからこれからも私のそばにいてください)←本心
139名無しさん@ピンキー:04/12/26 07:09:27 ID:+0rNume3
あのう、1日二日後に、また・・・・・

                    イヒ
140名無しさん@ピンキー:04/12/26 10:09:16 ID:SUtfm3s/
こんにちは。えっと昔一応書いたもんです。今年一年疲れた・・・orz
忘れられてるよなぁ。完結させたかったのですが、化け猫さんはじめ
アナザーワルドがかなりできてるので、もういらないですよね・・・。
柔ちゃん、ことしで35か・・・。でも、我らが柔らちゃんは永遠に不滅
なのです・・・。
深い仲になったら、柔ちゃんが積極的というのはほぼ、固まっているよう
ですね。多分男が多いからかな。でも柔ちゃんがきっかけをつくって
松田さんが、しっかり決めるというのは、おいらの中では崩せない
一線なのれす。(;´Д`)ハァハァ
また書きたいけど、膨大なログを読まないといけない・・・orz。
141名無しさん@ピンキー:04/12/26 11:52:45 ID:+0rNume3
だから旅情編のまとめは?!
142三佐衛門:04/12/26 22:32:51 ID:/ftjJA+p
同じく忘れられてそうな三佐衛門です。
期待せずに適当に待ってもらえれば、そのうちなんとか…。
143名無しさん@ピンキー:04/12/26 23:09:14 ID:+0rNume3
柔が積極的と言うよりは、二人とも固まって動けないときにトラブル・アクシデントが起きる。
そのときこらえ性のない柔の方が暴走すると言うイメージなんだけどなあ。
144ろく…ろ首:04/12/27 03:50:35 ID:/Gc6w1sP
>139
先日完結したばかりなのに、スゴイ…三つ指揃えてお待ちしてます
>140,>141
忘れるとかいらないとか、絶対ないですよう!無理せずマイペースでおながいしますm(_ _)m

145ろく…ろ首:04/12/27 03:53:29 ID:/Gc6w1sP

× >140,>141
○ >140,>142  スイマセン
146名無しさん@ピンキー:04/12/27 05:48:10 ID:zcc8Ydg1
柔は富士子の後押しが
結構あったからな。
松田にはそういう人いなかったしね。
ユーゴのときのかーちゃんくらいか。
147三佐衛門:04/12/27 22:50:21 ID:r9eXuUuX
試しに投下。続きはできるだけ早いうちに。
148三佐衛門「家族旅行」:04/12/27 22:50:35 ID:r9eXuUuX
「松田さん、ミカン食べます?」
柔が東京駅のキオスクで買ったミカンを取り出す。
「ありがとう」
手を出したが柔はすぐには渡さず、皮を剥いてから松田の掌の上に置いた。そんなちょっとした事がとても嬉しく感じる。
「やっぱり新幹線だと早いですね」
「そうだな。俺が東京に出てきた時はまだ新幹線が無かったから、特急で5時間かかってたもんな」
それが今は新幹線で3時間もかからない。しかも山形直通である。
(でも新幹線なのに踏切があるのはなぜだろう?)
山形出身だが、新幹線が走るようになった経緯はよく解ってない。
「身体のほうは大丈夫ですか?」
「もう大丈夫だよ」
けさガタガタだった身体を柔にマッサージしてもらい、なんとか昼前に家を出てきて東京駅から新幹線に乗ったのだ。実を言うとまだ痛みが残っているが、あまり柔に心配をかけられない。
「お父さん、お母さんに連絡されたんですか?」
山形が近づくにつれて、柔の言動に緊張が感じられるようになってきた。
「柔さんを連れて行くって言ったら『早く連れてこい』って」
「…大丈夫かな?」
「なにも心配する事ないよ」
「はい」
少し落ち着いた柔と一緒に車窓を眺めているうちに、列車は駅に停車した。
「次が山形だよ」
「……温泉かぁ」
松田の声が聞こえていない様子の柔が、小さな声で呟いた。
「?」
窓の外を見てみると『〜おんせん』と書かれた駅名が目に入る。
(温泉か)
柔は『おんせん』の文字を見て、何を思うのだろう。
149名無しさん@ピンキー:04/12/27 22:56:58 ID:w5MXeHNI
あ、まるっきりかぶっちゃった・・・・・

               イヒ
150三佐衛門:04/12/27 23:02:33 ID:r9eXuUuX
あれ?もしかして山形の話ですか?
151名無しさん@ピンキー:04/12/27 23:17:03 ID:w5MXeHNI
はい、間が空くようでしたら3日ぐらいで一気に終わらそうかと言う気もしますし、
そんなに空かないようでしたら終わるまで待とうかと思っているのですが?
                                         イヒ
152三佐衛門:04/12/28 00:02:16 ID:hUm/cgTa
それでは先に投稿お願いします。自分は年明けにでも続きを投下します。


もう、あとは山形に行く話ぐらいしかネタが無いんですよね…。
153名無しさん@ピンキー:04/12/28 07:20:08 ID:8mYrFdvN
猫さん、三佐さんともに山形ネタですか。
こりゃ楽しみぢゃ。

でも明日から海外行っちゃうんでこのスレのぞけない orz
154名無しさん@ピンキー:04/12/28 18:17:38 ID:lFL4xwwZ
あれ?
155江戸家化け猫:04/12/28 18:29:02 ID:lFL4xwwZ
時は、前に書いた”12年後”の半年後(読んでない人はごめんなさい)、
ちょうど今、平成16年12月です。今まで以上に松田と柔の距離感が縮まった
関係(一応この夏に入籍をすませたという設定です)を自分なりに楽しんでみました。
山形の話なんですが、15年ほど前、数ヶ月滞在したことがあるだけなので、
地元の人の言葉は適当、あくまでイメージです。

ちなみに、この話で化け猫的YAWARAシミュレーション『○年後』の締めとなります
                              言い訳先行の江戸家化け猫でした。            
156江戸家化け猫:04/12/28 18:32:36 ID:lFL4xwwZ
☆☆12.5年後☆☆
 大晦日の夜、辺りには真っ白な雪が降り積もっている。古びた外灯が一つ有るだけ
だが雪灯りでほのかに明るい。除夜の鐘が響いている。
 半ば雪に隠れた、民宿松田の看板が見える。松田と柔が、珍しく2週間近い休みを
取り、新婚旅行も兼ねた里帰りをしている。柔は初めて、松田も何年間顔を見せなかった
ろうか。 

 柔は一人廊下から外を見ている。
”しんしんと降る雪ってこういうのを言うのかしら。”
降り続く雪を飽きもせず眺める。
”初めてクリスマスプレゼントを貰ったときも雪だったわ。そう言えばあれから一回も
貰ってない。まあ、しょうがないわ、松田さんだもん。”
物思いにふける。
「寒くないべか?」
何時のまに来ていたのか松田の母親がうしろから声をかける。
「大丈夫です。東京ではこんなに雪を見ることがないから何かうれしくって。」
小さく笑顔を浮かべて応えた。松田の母も柔の横に立って一緒に外を見る。
「ちゃんとした新婚旅行もつれてってもらえないで悪がったなぁ。」
すまなそうな顔をする。
157江戸家化け猫:04/12/28 18:34:29 ID:lFL4xwwZ
☆☆12.5年後☆☆

「のんびりできる方が良いんです。それに海外旅行なら何遍も一緒に行ったし。他の人も
いっぱいいましたけど。」
屈託のない笑顔を見せる。
「こんな可愛い嫁さんもらえたんなら、耕作に利子付けて返して貰わなきゃなんねーな。」
「利子?」
借金があるのだろうか?少し不安になる。
「ユンゴスラビア行く金がないって泣き付いてきたんだ。世界一強い子を追っかけなきゃ
ならないって。」
”あ、ベオグラードの世界選手権の時だ!”
「したっけ、そのあとその強い子を追っかける自信がないから、記者やめて民宿継ぐなんて
意気地のないこと言うんだぁ。だから、言ってやったんだぁ。ばかこくでねえ、そんな奴に
まかせられねえって。」
”きっとあのクリスマスの前・・・”   
走馬燈のように、脳裏に浮かぶ。松田が居ないまま不安の中での出場した試合、そして
現れたときの安心感、電気の消えたチチカカ、松田が投げた手袋の入った紙袋、その手袋を
して富士子と走った土手・・・
”私たち、そんな前からみんなに応援されてたんだ。” 
胸に湧き上がった熱いものが、瞳からあふれそうになる。
「耕作さんに言っておきます。ちゃんと利子を付けて返すようにって。」
涙は見せたくなかったのだろう。少し上を向いていった。
「耕作をおねがいします。」
頭を下げ柔の手を握る。思わず一緒に頭を下げた柔の目から温かい涙がこぼれた。
158江戸家化け猫:04/12/28 18:37:58 ID:lFL4xwwZ
☆☆12.5年後☆☆

「遅かったな。なんかあったのか?」
布団の上で寝ころんでいた松田が寝室に入ってきた柔に声をかける。
「雪を見てただけ。」
「あんまり田舎で驚いたろう。飯は口に合うか?」
「うん、おいしい。でも菊の花を食べたのって初めて。」
東京では、よほど注意していないとお目にかかることはない。
「『もってのほか』っていうんだ。」
「面白い名前。」
興味深そうだ。
「嫁が食べるなんて『もってのほか』って昔は言ったらしいよ。」
「どうしよう!食べちゃった。」
一瞬まじめな顔で向かい合ったあと、二人で笑いころげる。
「あのお漬物は?」
「ままけは。」
「ままけは?」
日本語とは思えない響きに怪訝な顔をする。
「”まんま食えば”が縮まったんだろうな。」
「おいしくってご飯いっぱい食べちゃった。」
「親父も驚いてたよ。どこに入ってるんだろうって。」
柔と初めて食事をした人間が持つ共通の疑問だ。あの小さな身体で1日5000カロリー以上
採ることも珍しくない。まわりには意識させないが、想像を絶する激しいトレーニングをしていた
のだろう。
159江戸家化け猫:04/12/28 18:39:12 ID:lFL4xwwZ
「だっておいしかったんだもん。下品と思われたかしら?」
「いや、よろこんでたよ。自分ち用の田んぼでとれた米だからな。下手なブランド米より
よっぽどうまいんだ。」
「ふーん。」
少し上目遣いで、腹に一物ありげな返事をする。
「なんだ?」
「松田さん、違いわかるんですか?」
「うっ。」
今だに、周りに人が居ないときの呼び方は変えられない。それはともかく、味覚音痴の
松田に何度と無くがっかりさせられたことのある柔としては、文句の一つも言いたくなる
だろう。松田が言葉に詰まりとっさに話を変える。
「あした、村共同の露天風呂行かないか?混浴なんだけど。子供の頃よく行ったんだ。」
「そんなのがあるの?楽しみにしてるわ。・・・もう電気消しますね。」
そう言うとカチリと蛍光灯を消した。
160江戸家化け猫:04/12/28 18:46:09 ID:lFL4xwwZ
☆☆12.5年後☆☆

  翌日の夜9時もすぎた頃、露天風呂に出かける。歩いていけない距離ではないが冷えない
ようにと車を使う。2mほどの木の塀で囲まれたひなびたと言うよりはこじんまりとした公衆浴場
だった。わざとらしい観光用の岩風呂ではなく周囲にすのこをひいた約2m四方の檜風呂風の
浴槽が一つ。他には更衣室代わりのあずまやに更衣かごがおいてあるだけだった。
「誰か来ないかしら。」
「大丈夫。こんな時間に誰も来ないよ。」
東京であればこれからネオンも明るくなろうかという時間だが、周囲に動いている物は空から
ちらつく雪だけだった。
 柔は片手で胸を、そしてタオルで下を隠すようにして浴槽に歩み寄る。
「誰もいないのにそんなしっかり隠さなくたっていいじゃないか。」
「新妻の恥じらいよ。」
そう言いながら、身体を軽く流し、浴槽につかる。
「いいお湯ね。」
髪留めを外し、無造作に前髪をおろした頭の上に折り畳んだタオルをのせていたずらっぽく
微笑みかける。

  しばらく湯に浸かり、身体も火照ってきたのだろう、浴槽の縁に二人並んで座る。柔は
タオルを太股の上に置く。火照った身体に冷たい空気が心地よい。ちらつく雪が、肌に触れては
溶ける。柔は何を思ったのか自分の身体中をまじまじと見ている。その様子を不思議に思った
松田が尋ねる。
「何してるんだ?」
161江戸家化け猫:04/12/28 18:49:12 ID:lFL4xwwZ
☆☆12.5年後☆☆

「もうあざも無くなったなと思って・・・・。」
物心付いた頃から身体から痣が消えたことはなかった。学生時代はそれが嫌でしょうがなかった
が、今となっては少し寂しい気もする。
「もう練習しないのか?」
「フクちゃんの練習につきあうぐらいにしようかなと思ってるの。それだけでも大変なんですけどね。」
「そうか。」
 松田の気持ちは少し複雑だ。柔道をして一番輝いている柔をいつまでも追いかけていたいという
思いを捨てることはできない。その一方で子供をつくるためには、もう決して若いとは言えない
二人のこと、柔道第一の生活はあきらめねばならないだろうと言う事もわかっている。それらが
入り交じって口を重くさせていた。
「あの子、強くなるわ。富士子さんの柔軟性と花園君のパワーを受け継いだって感じ。私も
今ぐらいの練習しかしなかったら、3年で・・・・2年かな、もう勝てなくなるかもしれない。記事の
書き甲斐があるわ。」
松田の気持ちを察したのだろう。明るい口調で富薫子の将来に期待を待たせる。が、自分でも、
口調のわりに少しだけ寂しそうな表情を見せた。
「そんなすごいのか?」
「だって、私が教えてるんだもの。」
最近柔の言うことが滋悟郎に似てきた気がして不安にとらわれる松田だった。
162江戸家化け猫:04/12/29 23:43:34 ID:8LXxUoup
☆☆12.5年後☆☆

  そんな松田の心を知ってか知らずか、
「貸し切りみたい。なんかすごい贅沢。」
そう言うと空を見上げた。その無邪気な横顔を松田が見つめる。柔がその視線に気づいた。
照れたのか小さくうつむく。
「人の顔、そんなじっと見て。なにかついてる?」
そう言った柔の鼻の頭に雪が落ち、そして溶ける。
「いままでいっしょに風呂に入ったこと、無かったなと思ってさ。」
「だって松田さんのアパートのお風呂じゃ狭くて二人で入れなかったし。今だって何時帰ってくるか
わからないじゃない。」
そう言う肌が淡いピンクに上気している。
その姿に切なさを覚えたのだろうか、松田は柔の唇を求める。
「こんなところで、だ・・うmg。」
唇を離すと文句を言う。
「いっつも突然なんだもん。たまにはムードも考えてください!」
「ごめん。」
とはいえ本当にいやがっているわけではない。その証拠に今度は自分からピトッと松田の胸に
抱きついた。
「あったかい。」
「温泉だからな・・・」
松田は照れたように言う。
”本当にムードのかけらもない人。判ってはいるけど。・・・からかっちゃおうかな。”
163江戸家化け猫:04/12/29 23:45:42 ID:8LXxUoup
☆☆12.5年後☆☆
「おなか出てきたんじゃない?」
「そんなこと無い。」
自分でも少し気にしている松田は、むきになる。
「ほら。」
松田の脇腹をつかんだ。
「いてーっ。無理矢理つかむな!」
二人ともいい歳をしている割に大人げない。すれ違いの多い日常が二人の関係を子供じみた物
にしているのだろう。
「ほら、こっち側も。」
脇腹につき始めた脂肪を掴まれた松田は急にのけぞってにげようとする。
”危ない!”
床に打ち付けそうになった後頭部に、柔が飛びつくようにして手を添え、辛うじて衝撃を防ぐ。
「気を付けなきゃ危ないじゃないですか。私がいなかったら大怪我したかもしれないわ。」
松田に飛びついたまま、すのこの上に組み伏せたような姿勢で文句を言う。
「ごめん。」
謝ってはみたものの、よく考えてみれば明らかに柔のいたずらのせいだ。文句を言われる
筋合いはない。そう思った松田が不意をついて体勢を入れ柔を替え組み伏せる。もっとも柔は
予期していたのだろう。もし本当に不意打ちだったら、松田の身体は間違いなくどこかに
飛んでいる。
「もともと、柔さんのせいじゃないか!」
「ごめんなさい・・・。」
口だけ申し訳なさそうに謝る。が、そう言った舌の根が渇かないうちに笑い出す。
「柔さんのだってつかめるんだぞ。」
「絶対無理よ。」
腹筋に目一杯力を入れる。もし見ている人がいればくっきりと腹筋が分かれるのがわかった
だろう。

164江戸家化け猫:04/12/29 23:47:39 ID:8LXxUoup
☆☆12.5年後☆☆
 しかし、
「ほらっ。」
「きゃっ。」
松田が手を添えたのは左胸だった。
「反則よ。いくら私だって少しぐらいは・・・・。」
そっぽを向いて少しむくれたように言う。
「本当に反則かい?」
「知らない!」
その答えを待っていたかのように、もう一度唇を重ねた。先ほどよりずっと長く。
「本当にムードがないんだから。」
柔はかすれた声で不満を言う。が、言葉とは裏腹に松田の手のひらにある慎ましやかな
ふくらみの頂が硬さを増す。その変化を感じ取った松田は、存在感を僅かに増した乳首に
唇を合わせ、転がす。松田が刺激した左胸が固く、充血している。
「こっちの胸だけこんなに。」
松田の言葉に思わず自分の胸に目を走らす。
”ほんとだ。左の胸だけ・・・”
自分の身体が反応していることに気づいた恥ずかしさに火照っていた顔が一層赤くなる。
無意識に胸を隠したい気持ちが働いたのか腕が上がりかける。その拍子に松田の男性自身に
手がぶつかる。
「私のことばっかり言って、松田さんだってこんなに・・・・」
自分も興奮していることに気がつかれ、少し照れた松田が軽く胸に歯を立てた。
「あ。」
思わず松田の頭を抱え込む。
「だめ、こんなところで。人が来たら・・・。」
言葉ではいっているが、抱きしめている力はゆるんでいない。
「こんな時間に人なんか来ないさ。」
そう言うと脇腹を刺激しようと体の横にあった柔の腕を少し動かした。
「あっ。」
少し驚いたように言うと、まるで気を付けをするように身体の横に手を付けた。
165江戸家化け猫:04/12/29 23:49:20 ID:8LXxUoup
☆☆12.5年後☆☆

「どうしたの?」
「何でもないわ。気にしないで下さい。」
柔の目が泳いでいる。
「でも変だよ。どうしたんだ。」
「あの、お風呂の火消してきたかなって・・・」
「最初からつけてないじゃないか。」
疑い深げに柔を見つめる。
「えーと、つまり、その、冬だからつい、あのう・・・」
言葉に詰まった柔が小さな声で言い始める。
「冬?つい?」
松田はいよいよ謎が深まったような顔をする。
「こんな事になると思ってなかったから・・・。」
「こんなこと?」
確かに公衆浴場でこんな事をするとは思わなかったろう。松田もそのようなことを考えて
露天風呂に誘ったわけではない。でも、それが?と松田の中では結びつかない。
「だからあの、しょ・・・しょ・・・」
「しょうじょう寺?」
「違うわよ!・・・しょ・・・り、その、お手入れ・・・。」
ようやく女性にうとい松田でも理解する。
「柔さんでもしてたんだ。」
新たな発見をしたような顔をする。
「当たり前でしょ。馬鹿なこと言わないでください。」
まるで、湯あたりしたかのように頬が真っ赤だ。
「だってそんなところ見たこと無かったから。」
「他人に見せるもんじゃないんです!」
「見てもいいかい?」
悪戯っぽい口調で松田が言う。
「絶対だめ、死んでも嫌!」
オリンピックの決勝でもこんな真剣な顔を見せたことはないだろう。
166江戸家化け猫:04/12/29 23:51:43 ID:8LXxUoup
☆☆12.5年後☆☆
「ごめん。でも、全然ないのかと思ってた。こっちも薄いから。」
そろそろっと下腹部へ手を伸ばす。
「松田さんのエッチ。」
夜空の下で肌を触れ合わすことが二人の羞恥心を薄れさせていたのかもしれない。
 松田の手が女性自身に触れる。柔は思わず脚を閉じる。筋肉の張りつめた脚ではさまれたら
動かすこともできない。
「力を抜いて。」
耳元でささやく。柔は、大きく深呼吸をし、脚の力を抜いた。見ているだけでも筋肉がゆるむのが
判る。
”そんなに力まなくたって良いのに。”
淡い茂みの陰に触れる。柔の太股がぴくりと震えた。
「んっ。」
軽く触れただけでも、熱く潤っていることが指先に伝わる。割れ目に沿った柔らかな肉付きには、
産毛ほどの存在しか感じさせない。ただ熱さのみを感じさせる。
秘所に指をはわす。その刺激に柔が身じろぎをしたはずみで、指先が後ろをかすめた。また
全身に力が入る。
「そこはいや。お願い。」
「わざとじゃないよ。ごめん。」
柔は安心したのかほっと息をつく。松田は潤いを感じ取るように指をゆっくりと前に動かす。
割れ目を通り過ぎそして小さなふくらみを感じる。
「ううっん。」
今までより大きい声がもれる。
「ここが・・・?」
柔は答える変わりに松田の背中をつかむ。声を抑えることができない、いやむしろ徐々に大きく
なっていくのが自分でも判っていた。下腹部から広がる感覚に身体がぴくりぴくりと引きつるのを
感じる。
「あっ。い・・・・。」
167江戸家化け猫:04/12/29 23:54:06 ID:8LXxUoup
☆☆12.5年後☆☆
松田は、指先で転がすように刺激を続ける。熱い潤いがあふれ出して来るのを指先に感じる。
柔の今まで見せたことのない反応に興奮したのか力が入る。
「あ、・・・」
びくんと柔の身体がはねた。
”ちょっと苦しい。”
刺激が強すぎたらしい。
「もう少し優しくして、お願い。」
「ごめんよ。」
少しソフトになった刺激が再び柔を頂点に押し上げる。
”なに、この感じ。これだけで・・・・そんな、なんか急に・・・変。身体が・・うそ。あ・・・。”
「気持ちいいかい?」
無粋に松田が訊ねる。
”すごく、いい・・・”
と頭では思ったが、既に言葉にすることができなかった。
”軽く触れられてるだけなのに。自分の身体じゃないみたい。”
全身を貫いた浮き上がるような感覚に、松田の背筋をわしづかみする。その痛みが松田を
高ぶらせ、手に力を加えさせた。
”あ、脚がつりそう。だめ、あっ、私・・”
「ああん、うっうーんっ、うっ」
瞬間、頭の中からすべてが消える。柔の体が大きくのけぞる。そして、動きが止まった。しばらく
背はアーチを描いたままでいたが、すっと力が抜ける。全身がぴく、ぴくっと軽く痙攣する。
「あ、あの、わ、私、どうしたの。」
ぴくりと震えるたびに言葉に詰まる。
「たぶん・・・。」
松田が口ごもる。
”こういう事だったんだ・・・今はなにもしたくない・・・・”
しばらくの間、なにも考えずただ快感に身をゆだねていた。
168名無しさん@ピンキー:04/12/30 01:52:54 ID:h3Fw00q4
ちんこたった
169YAWARA最高っす:04/12/31 00:09:49 ID:q3L3Z1ou
いいなー
応援あげ

170江戸家化け猫:04/12/31 02:52:25 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

”あ、松田さんのこと放りっぱなし・・・。”
どれほど時間が経ったのだろう、少し霞がかった頭で横にいる松田をみると、肘枕でじっと
みまもっている。
「ごめんなさい。」
「なにが?」
「私だけ・・・。」
ただ快感に浸っていたことに気が咎める。
「良いんだよ。」
「お願い、あ、あの、松田さんも・・・」
”自分だけいったことを気にしてるんだな。”
柔の気持ちは伝わっている。
「大丈夫かい?」
まだ余韻に浸っているのか、少し疲れたような口調と時折の痙攣に松田が少し心配する。
「平気。」
恥ずかしいのか少しうつむきながら脚をゆるめ松田を待つ。松田は脚を広げさせると身体を
割り込ませる。少しでも柔の身体に負担をかけたくないと、ゆっくりと身体を沈み込ませた。 
「はうっ。」 
押し広げられる感覚に息が詰まる。柔の小さな身体が松田を締め付けた。しかし、準備が完全に
整っていたのだろう、滑らかにのみこんでいく。余韻が治まりかけたからだが再び高みに登る。
松田は痛みを覚えるぐらいきつく締め付けてくる感覚と熱さに不安を覚える。
「痛くないか?」
「いっぱいだけど、・・・いいの。」
松田の二の腕にしがみつく。
「動いても大丈夫?」
「たぶん。」
171江戸家化け猫:04/12/31 02:53:39 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

松田は、少しだけ腰を動かした。
「あっ。」
声が漏れる。
「やっぱり、きついか?」
「ううん、あの・・・気持ちい・・・」
うまく口が回らない。松田はゆっくりと動き始める。動きの度に柔の口から声が漏れる。身体が
宙に登っていく感覚に囚われる。松田とふれあっている部分が、滑らかになっていく。にも
かかわらず締め付けはいよいよきつくなっていった。
”あ、さっきと同じ・・・”
柔の脳裏が白くなる。しがみついた二の腕に思わず爪を立てる。それと同時に背が弧を描く。
松田も、瞬間的に強まった刺激と締め付けに限界を超えた。
「あっううっ、うーん。」
「柔さ・・・ん。」
 二人とも肌を合わせたまま、お互いの痙攣を感じていた。
172江戸家化け猫:04/12/31 02:57:50 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

 松田は柔の横に仰向けに寝そべった。二人並んで、すのこの上に横たわり、いつの間にか雲が
とぎれた夜空を見ていた。
「雲が晴れましたね。」
照れているのか、東京では見ることのできない満天の星空に心を奪われているのか、妙に感情の
ない声で話しかける。
「ああ。」
松田も同じように気があるのか無いのか判らない返事をする。
「星空の下でしちゃった。」
「ああ。」
生返事を返す。
「でもこんな雪景色の中で、真っ白な世界で経験できるなんてなんか素敵・・・・かな。」
「さっきはムード無いって言ってたじゃないか。」
「ムードが無いのは松田さん。私は景色の話をしてるんだもん。」
からかうように言って松田を見た。その腕にひっかき傷のようなものができている。
「あっ、腕に傷が。・・・ひょっとして私?」
「平気だよ。大丈夫。」
「ごめんなさい。私、何がなんだか分からなくなっちゃって。」
申し訳ないような恥ずかしいような複雑な表情を浮かべた。
「えーと、あの、良かったか?」
こくりと小さくうなずいた。
「暖まろうか、風邪ひいちまう。」
「はい。」
浴槽に入ろうと起きあがったとき、がたっと言う音が入り口の方から響く。
「あっ。」
柔はあわててタオルを広げ、胸をかくす。
173江戸家化け猫:04/12/31 03:00:29 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

”誰も来ないって言ったじゃない!”
”普通こんな時間には誰もこないんだよ。”
視線だけで会話を交わす。
入り口の方を見ると、湯煙の向こうから四つんばいの黒い影がのっそり入ってくる。
「のらいぬ?」
にしては明らかに大きい。そして、その影が立ち上がった。
「く・・・・ま」
松田の腕にしがみつく。
「ま、ま、松田さん・・・」
さすがの柔も歯の根が合わない。震えていることは松田も同じだった。が、
「お、俺が、ひ、ひきつけてるあいだに助けを連れてきてくれ。」
何とか柔を逃がそうと熊の前に立ちふさがった。熊は湯煙を破っているようにのっそりと近づいて
くる。   
「や、や、柔さん、早く!」
松田から2mほどの位置まで来るとその熊は急に立ち上がった。立ち向かおうにも入浴中だ。
武器になりそうな物は何もない。松田の頭には何とかして柔を逃がしたいと言うことしかなかった。
しかし、できることはただ身をさらすことだけだった。立ち上がった熊の振り下ろした手が松田の
顔の付近を通りすぎる。野生の力だろうか、さして速いスピードにも見えず、また強い力であたった
とも見えないにもかかわらず松田がその場に崩れ落ちた。熊がまるで品定めをするかのように
松田の匂いをかいでいる。
「松田さーん!」
涙が溢れる。色々な想い出が脳裏に明滅した。
174江戸家化け猫:04/12/31 03:03:38 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

  再び我に返ったときには助けを求めろと言われたことは既に頭になかった。有るのは怒り
だけだった。
「松田さんを・・・・」
 倒れている松田の横に立ち、熊とにらみ合う。 もしその光景を見ている人間が居たとしても
自分の目を信じられなかったろう。白雪の散る中で全裸の女と熊との対峙、この非現実的な
光景は、菊池秀幸か夢枕獏か・・・。
 柔の目前で熊が再び立ち上がる。記録映画でよく見るような両前足をあげた姿勢で覆い被さって
くる。胸の白い三日月模様が目に映る。
”ジョディよりは小さい。”
柔は瞬時に判断する。冬眠の途中なのか意外に動きが遅い。
”これなら投げられる。”
既に理性の大半が吹き飛んで闘争本能に支配されている柔は思う。爪を避け、そして熊の勢いを
利用して巴投げをしかける。
”この重さなら・・・”
不完全ながらも後方に投げきった。ばりっと言う大きな音が響く。熊が木の塀に頭からつっこんだ。
熊も頭を打った衝撃か、獲物に反撃されたショックがあったのか動きが止まっている。ふと松田の
アパートが頭に浮かぶ。
”松田さんと初めて知り合ったきっかけも巴投げだった。”
そう思うとまた、涙に視界がゆがむ。
”食べられちゃうのかな。松田さんと一緒に。”
 人間が野生動物に素手で立ち向かうことなどできないことは判っている。しかし、逃げようと言う
気持ちは起きなかった。恐怖感とは違う、澄み切った自分がいるのを感じていた。きっと次に熊が
動き出したときが自分と松田の最後なのだろう、と静かに考えていた。
175江戸家化け猫:04/12/31 03:05:41 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

 と、そのとき、
「熊五郎、わるさしちゃダメだべ。」
緊張感のかけらもない声が聞こえてくる。ジャージに半纏を着たいかにも田舎の老人が
露天風呂に入ってくる
「熊五郎?」
?マークが頭の上に並んだ柔が、立ちつくしているのを見たその老人は、少し狼狽した顔をする。
「すまねーな、人がいるって気がつかながったもんだから・・・。」
土地独特の訛りで謝る。
「あの熊五郎って?」
「うちで飼ってる熊だぁ。」
「さっきがばって襲われたんですけど・・・?」
微妙に納得行かない気持ちで訊ねる。
「熊五郎、人さ好きでよく抱きつくんだぁ。力入れるようなまねさあ、しねえんだけども。悪がった
なぁ。」
”抱きついただけ?道理で簡単に投げれたはずだわ。じゃあ・・・・”
「松田さんは?」
その老人が倒れている松田を見る。
「松田さん?ああ、耕作じゃねえべか。ははあ、おおかた襲われたと思って気ー失ったんだべ。
かすり傷一つ付いてねえ。ん、あんたかね、耕作んとこに来た柔道やってるべっぴんの嫁さん
てーのは?」
「はあ。」
緊張感のとぎれた、呆然とした頭で返事をする。
176江戸家化け猫:04/12/31 03:08:02 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

「で、熊五郎はどこだべ?」
柔は、気まずそうに塀に突き刺さった熊を指さす。
「おやまあ、どうしたんだべ?」
「野生の熊だと思ってつい投げ飛ばしちゃって・・・」
「おやまあ、ちっちゃいのにたいした力だ。」
そう言いながら熊を木の塀から引きずり出す。何となく気が咎めている柔も手伝う。
「大丈夫?」
先ほどまでとはうってかわって熊五郎の身を心配をする。壁から助け出された熊五郎の目に
柔がうつったようだ。あわててお尻を柔につきだし恭順の意を示す。
「大丈夫よ、もういじめないから。」
ぽんぽんと重量感のある頭を叩く。おびえている熊五郎は柔の身体を抱え込むと、顔をなめ
必死に機嫌を取ろうとする。が、熊の舌の荒いざらつきに柔が顔をしかめる。
「わかったから。もう怒ってないから。お願い、やめて!」
必死で熊の顔を押しのける。その様子を見ていた老人がぽつっと言った。
「そろそろ服きねーと風邪さひくぞ。」
「えっ?」
ずっと全裸でいたことにようやく気がついた。あわてて胸を押さえて、浴槽に飛び込む。
「じゃあ。」
その老人は熊を連れて出ていった。
177江戸家化け猫:04/12/31 03:15:13 ID:l3R3NGjo
☆☆12.5年後☆☆

「松田さん!」
活を入れると松田は気を取り戻す。やはり恐怖で失神していただけらしい。
「熊は?」
朦朧とした表情で松田が訊ねる。
「隣のうちで飼ってる熊なんですって。名前、熊五郎って言うの。」
「そうだったのか・・・」
少し居心地の悪そうな表情になる
「何かかっこわるかったな。」
「ううん、守ってくれてありがとう。本当にかっこよかったわ。」
そう言うとまだ半ば呆然としている松田を力の限り抱きしめた。

 その数日後、朝刊を取りに行った柔の表情が変わる。
「松田さん!!この記事なに!」
寝室まで駆け戻ってくると、こめかみに米印がついているような形相で新聞を松田に突きつける。
”柔・熊退治!!”
金太郎の腹掛けをした柔の合成写真とおびえている熊五郎の写真がのせられている。寝ぼけて
いた松田の顔に狼狽が走る。
「いや、編集長にちょっと電話で話したら、他に記事がなかったらしくって。いや、俺はやめた方が
いいって・・・・」
最後まで言い切ることもなく窓ガラスを突き破り、そして、降り積もった雪の上に大の字を描いた。

「5mは有ろうかという熊が松田さんに襲いかかろうとしたところを、私が巴投げで・・・・」
「うっそだあ。だって柔さんと一緒に映ってたの小熊だったじゃない。それにツキノワグマってどんな
に大きくたって2mこえる事なんか無いのよ。」
松田家の茶の間で、柔の武勇伝に富薫子が疑いのまなざしを向ける。 
「だってそれぐらいに見えたんだもん。ねえ?」
頭に包帯を巻いてコーヒーをすすっている松田の横で、柔は肩をすくめた。

                                                    お わ り
178江戸家化け猫:04/12/31 03:36:39 ID:l3R3NGjo
えー、約半年にわたって書き続けてきた『○年後』はこれでとりあえず最後です。
尻切れトンボのような気もしますが、この後三佐さんの『冨薫子12歳柔34歳』での
妊娠発覚へとつながり(本当は丸1年誤差があるのですが)、フクちゃんに”1月の初め”
とつっこまれ真っ赤になるシーンへとかってに連携させたつもりです。そしてめでたく
『2004年の男達』(これも本当は2005年でなければ繋がらないのですが)で無事出産の
運びとなって欲しいなあ(勝手にイメージをつなげて三佐さんすみません)。

薄いながらも半年間、私が考えられることは(レイープ物を除き)全てやらせた気がします。
異種格闘技戦からレズ風味、逆レイプ風味、ショタ風味、青姦(嫌な言葉ですね)、
熊との勝負、etc・・・・・。うすーくですけども。

おつきあいいただきましてありがとうございました。
あー、半年間おもしろかった、私は・・・・・。
179名無しさん@ピンキー:04/12/31 16:40:41 ID:+RSvBnzX
お疲れさまでした。楽しませてもらいましたよ!
また、アイデアが浮かんだらよろしく!
180三佐衛門:04/12/31 20:19:59 ID:04VOpHFB
化け猫さんお疲れさまでした。と言いつつ、実は「12.5年後」はまだ一切読んでいませんで、
同じ山形の話という事ですので、被る事は無いとは思いますが、自分の話を書き上げてから
一気に読もうかと思っています。
「富薫子12歳、柔34歳」などの話が面白く作れたと自画自賛出来るのは、化け猫さんの
フクちゃんあってこそで(創作も楽しかったです)、フクちゃんが登場しない今制作中の話は
うまく盛り上げられなくてかなり苦労しています。
また単発の話でも出来たら投稿してください。楽しみにしています。

今年、自分の創作を読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
来年が良い年であります様に…。
181ろくさんじゅうはち:05/01/01 02:40:41 ID:NOS0Ph6+
化け猫さん
半年もの長い間お疲れさまでした。
「おびえている熊五郎」、思わず吹き出してしまいましたよ…。

182名無しさん@ピンキー:05/01/03 21:12:11 ID:AEcb05Tc
ホッシュ
183名無しさん@ピンキー:05/01/03 22:07:58 ID:e7eh6FUY
皆さん、
あけおめです
去年は面白い小説
ありがとうございました。

今年も職人さんがかいてくれることを
願いつつ応援あげ
184名無しさん@ピンキー:05/01/06 02:59:32 ID:yUf9co0Y
保守
185名無しさん@ピンキー:05/01/08 01:33:08 ID:UFNWY4PW
ホッシュン
186名無しさん@ピンキー:05/01/10 19:04:46 ID:XwjVIzi7


187名無しさん@ピンキー:05/01/10 19:12:58 ID:XwjVIzi7
化け猫さんの○年後シリーズを全部並べて読んでみた。
普通の小説ぐらい長かったけどおもしろかった。
でもこれで冬休みの感想文出したら怒られるよなあ。

オリキャラは邪道だと思ってたけどフクちゃんは結構好きになりました。
よそのスレでも良いから続き読みたい。
188名無しさん@ピンキー:05/01/12 01:52:58 ID:so7dLo5N
ほしゅ
189名無しさん@ピンキー:05/01/12 22:10:53 ID:/iPR8t9m
ここも力つきたかな・・・・・・
190名無しさん@ピンキー:05/01/13 01:35:58 ID:XeTsBl3R
いや、まだまだ・・・お待ちしています、職人さん♪
191名無しさん@ピンキー:05/01/13 03:24:25 ID:d5928NtS
書きたいけど時間も休みもとれない…orz
192名無しさん@ピンキー:05/01/13 21:53:10 ID:E+Y0PBm9
半年間半ばひとりでもってましたからねえ。
193名無しさん@ピンキー:05/01/14 18:58:27 ID:xUS1eVkd
どなたかいませんかあー、かいてくれる人。
194名無しさん@ピンキー:05/01/16 16:37:31 ID:2LTTdsIH
今までは不思議と救世主が現れたもんだったが・・・・・・・・
195名無しさん@ピンキー:05/01/16 21:12:48 ID:wbplr79n
三左右衛門さん、山形編の続きを、続きを・・・。
196名無しさん@ピンキー:05/01/17 05:07:17 ID:fxKsxvxO
皆さん飢えてますねぇ・・・
ここの住人って何人いるのかな?

10人以下とみた。
197名無しさん@ピンキー:05/01/17 05:48:19 ID:YQG/gNS+
書いてる人がいるときはもうちょっといるみいたいよ。
198名無しさん@ピンキー:05/01/17 21:49:29 ID:OAJEjZHm
あちらこちらのスレも細々と続いてるし、住人は共通だろうし・・・・・
20人はいるんじゃないか?
199名無しさん@ピンキー:05/01/18 00:15:53 ID:eT14qnap
196はよくいるただの点呼好きだろ。
200名無しさん@ピンキー:05/01/18 00:37:14 ID:3I2PJZz2
雑談しようにも語り尽くされた感は否めないとあっちでも言ってたし。
これは弱った・・・・・・
201名無しさん@ピンキー:05/01/19 00:35:53 ID:g1/Kta0C
まだかな・・・・
202名無しさん@ピンキー:05/01/19 01:13:33 ID:q5efIKqR
語り尽くされたなんてそんな・・・。
みんなで盛り上げてもっとファンを増やしていこう。

皆さんに質問。エロを読みたい?それともぶっちゃけエロ無しのほうがいい?
203名無しさん@ピンキー:05/01/19 01:20:34 ID:q5efIKqR
追加。
エロ描写がないと認めねぇって人いる?
昔と違い、今の客層はほぼ原作重視の清純派で占められてる気がするんだけど。
204名無しさん@ピンキー:05/01/19 05:56:50 ID:/6ko1+OO
あるに越したことはないけど、まあ、無くても良いかな。
205名無しさん@ピンキー:05/01/20 15:22:47 ID:2sr5m3Zy
一応、今度こんな感じで
書こうと思ってるのですが、
どうでしょうか?
ただ、当方、理系のため文章力がないんで、
挫折するかもしれませんけど・・・
エロは入るかは分からんです。

一応、簡単なシナリオは・・・
(空港での告白の後の話)
柔が松田に会いに半年後、渡米する。
松田と無事、会うも
松田が熱を出して寝込んでしまう。
「ごめんな、柔さん、こんなことになっちまって」
「いえ、それより松田さん、辛くないですか。」
と、松田に付き添って看病する柔。
食事も柔の手作りのお粥。
「熱いですから、気をつけてくださいね。」

看病する柔萌えーーー!
206名無しさん@ピンキー:05/01/20 23:23:30 ID:s5V+FkSv
正直エロはなしか少々のほうが。
三左右衛門さんの「お疲れさま」なら、ノベルズの公式続編としても十分良いくらい
207205:05/01/20 23:59:10 ID:bUD37zf4
(シナリオ 続き)
看病してる最中、松田はふっと手に
暖かい感触を感じる。
柔が少し赤くなりながら
手を握っているのだ。
「や、柔さん、風邪が移っちまうよ」
少し照れながら松田が言う。
「いえ、いいんです。
 もう少しこうしててもいい?」
柔も照れながらいう。

こんなほのぼのした二人が萌えーーー!

結局、松田が良くなった頃には
もう柔は帰る日に・・・
「柔さん、ほんとごめんな。
 いろいろ案内とかするつもりだったんだけど、
 こんなことになっちまって」
松田が申し訳なさそうに謝る。

「ううん。あたしもほんんとに来て良かったです。」
(松田の為に尽くせた喜びをかみしめている)

そして別れの時は、柔は(お約束だけど)
泣き崩れちゃう・・・
208名無しさん@ピンキー:05/01/21 00:30:12 ID:eFhZ7OUd
205さん
ドンドンいっちゃってくださいよー新しい職人さん大歓迎。

やはり此処は原作のほのぼの路線を保守したいという傾向のスレみたいですね。
他のスレから浮きまくりってのも味があって良いかと。
以前から薄々感じていたことですが、





此処って唯一稼働中のYAWARA!創作系ファンサイトですなw
209名無しさん@ピンキー:05/01/21 00:31:46 ID:eFhZ7OUd
あ。sageとこ
210名無しさん@ピンキー:05/01/22 17:53:25 ID:kj0jNI3Q
hosyu
211名無しさん@ピンキー:05/01/22 18:54:18 ID:5D4M8whc
そこまで書いて2日も待たせるな!飢えてるんだぞ!

お願い、早くして・・・・・・・・
212三佐衛門:05/01/23 17:07:11 ID:iW5+nLJ8
どうも、お久しぶりです。完全に放置状態ですね。スイマセン。
自分の投稿予定が化け猫さんの「12.5年後」と同じ山形編ということで投稿を遠慮していたのですが、
温泉が出てくる所まで被ってまして、しかも新しい職人さんが投稿を予定されていると言う事で、
いまいち完成度に納得がいっていない事もあって、もう少し遠慮しようかと思います。御免なさい。
213名無しさん@ピンキー:05/01/23 18:03:51 ID:JoBucWO3
山形といえば良い温泉が多いですねえ。

蔵王、天童。やっぱり銀山も捨てがたい。まにあっくに昔のるるぶに何もないと書かれた
東根なんてのも悪くないし。
214名無しさん@ピンキー:05/01/23 23:34:00 ID:kGDXzGra
>>212
待ちます。待ちますとも!
お疲れ様を読んでから、続きが気になって仕方ないですが。
新作では、松田と柔の婚約がマスコミに知られる時の騒動も予定されておられるのですか?
私の希望としては、そこら辺も描いて欲しいです。
期待してます。頑張って下さい。
215三佐衛門:05/01/24 23:00:47 ID:75IU85ZM
>>214
婚約はマスコミにばれる予定です
216名無しさん@ピンキー:05/01/27 23:41:22 ID:LUuSqYEE
まだかな♪
217205:05/01/28 00:44:54 ID:iC0HetqX
すいません、いま
思案中なんですが、なかなか
進ままなくて・・・
細かい描写とかを言葉にするのが
難しいですね。
今までの職人さんはすごいなーと思います。

もし三佐衛門さん、作品ができているならば
私を無視してもらって結構ですんで
UPしちゃってください。

ちょっとまだ時間かかりそうなんで。
申し訳ないっす。
218名無しさん@ピンキー:05/01/28 12:46:15 ID:v3aVNrb+
219名無しさん@ピンキー:05/01/28 23:56:28 ID:VTUNIJCM
>>215
ますます楽しみだ。。。
220名無しさん@ピンキー:05/01/29 23:54:46 ID:fOaJQ9ds
飽満感があった頃が懐かしい。

ううっ、禁断症状が・・・・・・。誰か、SSをくれ!
221名無しさん@ピンキー:05/01/30 00:19:53 ID:Ntb8q+SH
早く、早く・・・・。
222名無しさん@ピンキー:05/01/30 22:45:15 ID:Hcre5EV3
このところの流れを見てるとコンスタントに続けるのって
大変なことだったんですね。

今更ながら化けねこさんに感謝・・・・・・・・
223名無しさん@ピンキー:05/01/30 23:25:23 ID:Qz5A+pWj
化けねこさんしか感謝されないのか…
224222:05/01/30 23:58:11 ID:mKa734uo
そう言う意味じゃなかったんだけど最近一番いっぱい書いてたから。
三佐衛門さんやルルさんやろくさんやバニラさんや駄文浪人さんにも
ぶちさんにももちろん感謝しております。ただどこまでさかのぼればいいのか
キリがなさそうだったので。とりあえず近々の名前をお借りしただけで・・・・・
225名無しさん@ピンキー:05/01/31 00:25:55 ID:JKkYVNcp
確かに職人さんは偉大だな・・・。。。
226ろく@ROM中:05/01/31 01:39:33 ID:5j0sjxJk
お久しぶりです。
2月中旬あたりに書く時間がちょっととれそうなので、
結婚後・エチー描写なし(予定)の話を一本書きたいなーと思ってます。

とりあえず参加表明しておこうかしら…と思いまして。はい…。
227駄文浪人:05/01/31 09:10:42 ID:uQ4hamLW
お久しぶりです。YAWARA!にはまって早一年。あれを書いたのは
YAWARA!を読破した後、どうしても後日談を書きたかったのです。
私は絵の才能がないので(文才もないですが)ほぼ妄想炸裂で突っ走って
ました。
実は、体調不良で会社も辞めて、今後どうしようかと悩み中です。で
精神的余裕がなく、なかなか書く気力がありません。でも中途半端は
嫌いなので、非難されても、ネタバレしますがじいちゃんが柔と松田の
交際を認めるまでの、おまけ編はいつの日か完成させます。エロ無しですが。

あと、息抜きで、アトランタ後新婚生活の柔×松田を執筆できればと思って
います。基本的に私は原作からあまり離れたSSは書けないのです。想像力が
貧困と言うか。
でも、浦沢先生がもう後日談を執筆する可能性がほぼゼロに近い以上、みんなが
それぞれ妄想を爆発されるのはいいことだと思うのです。勿論皆さんの設定と
ずれるのは仕方ないと思いますが、私の理想の後日談として「こういうのもありかな」と
思っていただけると幸いです。
まあ、こういいつつ中々投下しないのですが、本当に気長に待っていただけると
幸いです。ではまた。
228名無しさん@ピンキー:05/02/01 00:57:18 ID:l2LGc0l2
お二人さん、お待ちしております。
229ろく@馴れ馴れしくてすいません:05/02/01 04:13:24 ID:V2IVCZzj
駄文浪人さん

お気持ちお察しいたします
ファイトー!
230名無しさん@ピンキー:05/02/03 03:09:13 ID:5W9F03Vp
age
231名無しさん@ピンキー:05/02/05 00:31:46 ID:lRkFbkxr
>>227
久しぶりです。

旅情編の感動再び!待ってます。
232名無しさん@ピンキー:05/02/05 11:26:28 ID:UzcRumG4
と言うことで誰か書かない?
233名無しさん@ピンキー:05/02/07 11:45:18 ID:DgZM823R
にしこり
234名無しさん@ピンキー:05/02/07 23:36:03 ID:mFFiawK9
松井なんか呼んでねぇんだよ
235名無しさん@ピンキー:05/02/08 00:58:08 ID:n/e8Jbwx
上の二つの意味がよく分からないのですが
236名無しさん@ピンキー:05/02/10 00:04:43 ID:cnCaKZ1w
ほしゅ
237名無しさん@ピンキー:05/02/10 06:55:38 ID:BBB8K9h2
にしこり<あいっ
238名無しさん@ピンキー:05/02/11 00:06:43 ID:IHcsWcDn
そろそろ誰か・・・。
239ろく:05/02/12 14:35:51 ID:1smA7I0A
こんにちはろくです。
もう少し先になる筈が、誘惑に負けて書き始めてしまいました。
まだ荒いので今日は1話のみですけどひとまずうpします。
連載開始宣言されている職人さん達の内容と丸被りはしてないと思うんですが、
もし被ってしまっていても気にせず始めちゃってください。
あと、自分のは少し間があくかもしれないので、もし仕上がっていたら同様に
連載開始しちゃってくださいね。
240ろく:05/02/12 14:38:20 ID:1smA7I0A
1

松田と柔が結婚しておよそ半年が経過した。
柔の才能を発掘したスポーツ新聞記者と天才柔道家の恋。事ある毎に関係者一同をやきもきさせた
純愛――悪く言えば天然ボケ同士のお子様恋愛――は、記者会見の場を設けて二人の仲を公表
した途端、その関係の特異性も手伝って全国民の関心の的となった。
ワイドショーや特番が、運命の出会いから現在までの道程、はたまた未来予想図に至るまで
半ば競い合うようにして放送する中、松田の所属する日刊エヴリースポーツ新聞社は、我こそは
元祖なりと言わんばかりに、彼が書いた柔に関する記事をまとめた『耕作から柔へ・愛のメッセージ集
(仮題)』なるものを出版しようとし、企画段階で松田が半泣きで阻止するという珍騒動が
起こったりもした。
そんなこんなで開かれた、最も旬な二人の結婚式。その一部始終をお茶の間に届けた中継番組は
平均視聴率75.2パーセントという驚異的数字を叩き出す結果となったのだった。
式が無事終わり、これでやっと一息と思いきや、今度は『アツアツ新婚生活の全貌』に関心が移った
国民に情報を提供するべく近寄くインタビュアー達に追われる日々が待っていた。
挙げ句の果てに、とある家のペットが「ヤワラン!」「ヤワニャン!」と鳴きましたという
ニュースまで飛び出す始末。しかしこれら一連の大騒動も、ここでようやく落ち着きを取り戻し
つつある。
二人は柔の実家から徒歩5分の2LDK中古賃貸マンションを、「滋悟郎さんには日頃お世話になって
(特にAV関係で)ますし、小さい頃から頑張ってきた柔ちゃんにも何かご褒美を」と申し出た、
滋悟郎のAV観賞仲間である商店街の不動産屋から特別割引賃料で借りることができ、此処を拠点に
新生活をスタートさせていた。
241ろく:05/02/12 14:40:54 ID:1smA7I0A
この後、花園夫婦の家・柔夫婦の住むマンションで話を展開します。
ではまた。
242名無しさん@ピンキー:05/02/12 15:10:35 ID:0W7aRQFS
乙。

>『耕作から柔へ・愛のメッセージ集(仮題)』なるもの

み…見たい。
243ろく:05/02/12 16:05:07 ID:1smA7I0A
ヤヴァイ止まらん… もう1話だけうpします。

>>242
早速どうもです。「耕作から柔へ〜」、企画では記事を飾り罫で囲み
記事の間に紗のかかったツーショット写真なんかをはさむ予定、だったそうです(と想定。)
そりゃ松田も泣くだろって話で。
244ろく:05/02/12 16:06:20 ID:1smA7I0A
2

「猪熊さんお疲れ様!乾杯ー!!」
「ぱん・かーい!」
アルコールが入ったグラス3つと、オレンジジュースが入ったプラスチックのコップ1つが
カチッと音を立てて合わさる。
「やーっと落ち着いてきたわねぇー、猪熊さん!」
「日本中お祭り騒ぎだったもんなぁ!猪熊ー!」
「やわらちゃんにあえないから、ふくちゃんねぇ、さみしかった!」
ここは花園宅。花園と富士子、ついでにフクちゃんは、結婚騒動がようやく落ち着いた柔を自宅に
招き、ささやかな食事会を開いていた。
4人が囲むテーブルの上には、富士子が腕を振るった自慢の料理が所狭しと並び、ホカホカと湯気を
立てている。
「ほんと、半年も経ってようやくって感じ!富士子さんも花園くんも、何度もインタビューされたり
して、迷惑かけちゃってごめんね。」
「迷惑だなんて、とんでもない!私達の結婚の時にあんなに良くしてくれた猪熊さんと松田さんの為
だもの。それ位、へでもないわよぉ!…さあさあ、料理、冷めないうちに沢山食べてね!」
結婚して松田姓に変わった柔を、花園夫妻は当初「柔さん」と呼ぶようにしていたのだが、二人共
なかなか馴染めず、つい「いの…じゃない、柔さん!」となってしまっていたので、柔が特別こだわり
を持たなかったのもあり、今まで通り「猪熊」「猪熊さん」という呼び方で落ち着いていた。
245名無しさん@ピンキー:05/02/12 23:23:07 ID:tEEKqUT0
>>240
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
どんどん行って下さい!!
246ろく:05/02/13 01:25:37 ID:7+Sz4VDD
>>245
アリガタウ!!
書き始めてしまうと容易に止められず… このまま突っ走る危険ありです
247ろく:05/02/13 01:27:05 ID:7+Sz4VDD
3

フクちゃんがたどたどしい手つきで料理を取り皿に盛り、柔に手渡す。
「やわらちゃん、はい、どうぞ!」
「わぁ、フクちゃん、どうもありがと!」
乾杯の後、しばらく4人は富士子の料理に舌鼓を打った。
「さっすが富士子さん!すごくおいしい!短大の頃も成績優秀だったもんね。
………あれ?なぁに、二人とも?」
料理を堪能していた筈の花園と富士子が、いつの間にやら箸を置き、にやにやしながら
自分を見ているのに気付く。
「念願叶ってようやく結婚にこぎ着けたんだものねぇ〜。二人のラブラブ生活裏情報、そろそろ
お聞きしてもいいかしらぁ〜、なんて思って〜」
「ラブラブ、っていうか…。テ、テレビや雑誌で見たでしょ、普通よ、普通!」
ラブラブと口にした途端、頬が熟した林檎のように真っ赤に染まってしまうのだから、これでは
私達ラブラブです、と言っているも同然である。
「猪熊さんったら照れちゃって!んもー可愛いんだから〜。今日はとことん吐いてもらうわよー!」
言いながら富士子は、ニヤケ顔で柔の肩を、肘を使ってうりうりと突っついた。
「げー、してもらうわよぅー!」
げー、では意味が変わってしまうのだが、フクちゃんも母親の真似をして肘で柔を攻める。
それを受け、柔はわざとらしく大げさなふくれ面をしてみせた。
「あー!フクちゃんまで!…もー、これじゃ全然落ち着かないじゃない!」
248名無しさん@ピンキー:05/02/13 02:05:01 ID:QPLbtWsw
.゜゜.*:.。..。..*・゜(η‘д‘)ηキタワァァア.゜゜.*:.。..。..*・゜
小ネタ(松田の愛の冊子とか)がよいですね!もっと続きを〜(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
249ろく:05/02/13 10:51:50 ID:t43+H3Ge
>>248
小ネタは書きながら思いついたものばかりで…。書き進めるうちに全く違うラストになったりして。
250ろく:05/02/13 10:52:47 ID:t43+H3Ge
4

気の休まる暇も無かったであろう柔を労おうと家に招待した筈だったのだが、いざ本人を目の前に
すると、変わらぬ純情ぶりについついからかいたくなってしまうお茶目な富士子達である。
しかしながら、インタビュアーに追いかけ回され、仕方なしに当たり障りのない内容を二言三言
話すのと、気心知れた友人同士ではしゃぎつつお喋りするのとではまるで訳が違う。
それに富士子達は長きにわたり二人の仲を応援し続けてくれた、大切な親友。柔は、彼女達には
取材では言わずにおいた本心を包み隠さず話そう、言い換えれば報告する義務がある、と思っていた。
居間に明るい笑い声が響き渡る。ひとしきりじゃれあった後、ふと真面目な表情に戻った富士子が
こう尋ねた。
「今、すっごく幸せなんでしょ?」
「…うん。」照れ隠しなのか、取り皿に盛られた料理を食べやすい大きさに切り崩す動作を繰り返し、
俯いたままではあるがはっきりそう答える柔。
「よかった。本当に…おめでとう。」
インタビュアーが口にするうわべだけの祝辞とは違う。富士子の祝辞は短いが、マスコミに追われ
疲弊していた柔の心にじんわりと沁みこんだ。
「富士子さん、ありがとう…。でもね、正直言うと、結婚したって実感はあまり沸いてないかも
しれないなぁー。」
「幸せすぎて地に足がつかない状態ってやつか?」と、花園。
「え!そういうんじゃなくて。……ううん、やっぱりそれも少しあるかもしれないけど……、私達、
あまり顔を合わせる機会がないから。」
「え?」
顔を合わせる『機会』がない?……一緒に住んでるのに??
251名無しさん@ピンキー:05/02/13 12:01:37 ID:yQbUWQai
遂にキタキタキタキタキタ━(゜∀゜)━!!!!!
続き楽しみに待ってます!
252ろく:05/02/13 12:05:51 ID:t43+H3Ge
>>251
どうもです。出来る限り時間作って頑張りますですー
253ろく:05/02/13 12:06:51 ID:t43+H3Ge
5

「顔を合わせないっ…て、どれ位?」
なんだか嫌な予感がするわ…。富士子が恐る恐る聞いてみる。
「んーと、最近では…。1ヶ月近く、あまり顔を見てないかな。」
「えええっ?!い、1ヶ月?!」
テレビや雑誌の情報では窺い知れなかった、新婚夫婦の衝撃の実態に、花園と富士子は思わず
同時に腰を浮かせてしまった。
柔と松田は共働き夫婦である。そして松田は仕事柄、多忙な毎日を送っている。
今日の食事会も、本当は柔のみではなく夫婦で招待したかったのだが、残念ながら松田の都合が
合わなかった。
当然、多少のすれ違いはあることだろうと予測していたが…。それにしても新婚ホヤホヤの夫婦が
1ヶ月ろくに顔を合わせないとは、これは一体全体どういう事だ。
「うん。……?どうかした?」きょとんとした顔で、腰を浮かせたままの二人を見上げる。
「い、いやぁ、何でもないぞ、猪熊ぁ!」
「猪熊さん…。二人がどんな生活を送っているのか、もう少し詳しく聞いてもいい…?」
今のところ、柔は(何故か)平然とした様子なのだが。
(こ、これは検証する必要がありそうだわ…。)
「いいけど…。それより二人とも、いつまでもそうしてるつもり?早く座ってってば!」
柔が笑いながら二人に着席を促した。
254ろく:05/02/13 12:37:39 ID:t43+H3Ge
6

「まず、朝5時に私が起きて実家の道場に行くでしょ。戻ってくるのが6時半で、それからシャワー
浴びて身支度整えて」
「ふんふん」
「インタビューでは、具体的な話はちっとも出てこなかったのよねぇー」
「これはいわゆる大スクープだな!」
「花園くん、内緒よ?…で、朝御飯作って、私の分と松田さんの分のお弁当作って…」
「あら、二人分作ってるの?大変ねぇ!」
「ほら、外食だと栄養偏っちゃうし。カップラーメンで済ませる事も多いって聞いてるから、
ちゃんとした物を食べさせてあげたいなって…」
「へー、そう〜。聞いた?花園くん!愛だわね〜〜」
「愛だな〜〜」
『愛』の部分に反応した柔の顔が、さっと赤らんだ。しかしこの手の冷やかしに慣れてきたのか、
はたまた開き直りか、こほん、と軽く咳払いをしてそのまま続ける。
「で!朝御飯食べて、後片づけして、松田さんの朝食をテーブルに用意して。…ここで、ちょうど
私が会社に行く時間になるの。」
「松田さんと、一緒に食べないのか?」
「うん、私のほうが家を出る時間が早いから。はじめは一緒に食べるようにしてたんだけど、あの人、
食べながらぐーぐー寝ちゃうの!一度なんか、味噌汁に鼻を突っ込みそうになったんだから!」
その時の状況を思い出したのか、話しながらくすくすと笑う。
255ろく:05/02/13 13:19:21 ID:t43+H3Ge
7

「まあその辺は、松田さんに寝ないように頑張ってもらうとして…。うーん、朝御飯は一緒に
食べたほうがいいかもしれないわねぇ〜」
「でも、あんまり眠そうだから何時に帰ってきたのか聞いてみたら、午前12時1時は当たり前で、
もっと遅い日もあったのよ?帰ってくるのがその時間だから、寝るのはもっと遅くなるでしょ?
しかも家に戻ってから、持ち込みの仕事こなしたりもしてるんだから!…だから、ギリギリまで
寝ていて下さいねって私の方から言ったの。無理させたら可哀相だもの。」
「帰ってくる時間を知らないって事は、猪熊さん、先に休んでるって事よね?」
「そうなの。実は松田さんから、遅くても10時半までには寝なさい、って言われてて。」
「10時半!!」
ここで『新婚夫婦の衝撃の実態・その2』が明らかになった。
『遅くても10時半までには寝なさい。』
これは夫婦の会話というより、まるで父親と娘のそれではないか。
(いつの間にか、猪熊さんと松田さんの話から、うちの花園くんとフクちゃんの話にすり替わって
いたのかしら…?)
いや、違う。『松田さんから』と、確かに言っていた。
「はじめのうちは、それでも帰ってくるのを待ってたんだけど。普段優しい人なのに、こればかりは
物凄ーく怒るの!こんなよ!」と言いつつ、頭のてっぺんに人差し指で角を作る。
ここにフクちゃんが居る手前、あからさまな内容は聞けないが、咄嗟に『夜の生活』のほうを
心配してしまう花園夫妻である。
256名無しさん@ピンキー:05/02/13 16:46:52 ID:ktBuKqeu
良い勢いになってきましたね。
>こほん、と軽く咳払いをしてそのまま続ける
が、個人的にすき
257名無しさん@ピンキー:05/02/14 00:30:41 ID:n9X2HGmx
しばらく居なかったら、新作、きたーーー
258ろく:05/02/14 10:29:56 ID:6vS3Jnr0
>>256 >>257
アリガトゴザイマフ! 後半にぶれが生じてきて四苦八苦しそうですけど、なんとか頑張ります
259ろく:05/02/14 10:31:51 ID:6vS3Jnr0
8

「ホ、ホラ!夜は二人でお喋りしたり…。ほ、他にも色々、大ー事なことが!あるでしょぉー?」
『他に大事なことが』のあたりを強調し、それとなく探ってみようと試みる。
「そうね。夜の会話は大切よね。お弁当に入れるおかず、何がいいか夜のうちに確認しておきたいな、
って思うことだってあるもの。」
全く通じず、かわりに色気の無い返事が戻ってきた。肩すかしをくらう富士子。
(し、少々ツメが甘かったようだわ……)
それに気付かず柔は、自分の睡眠時間について話を続けた。
「遅くて10時半で、本当は9時には寝てて欲しいんだって。それでも会社のつき合いとか、たまに
お友達と会ったりする時くらいは見逃してくれるわよ?でも、『スポーツ選手たるもの、技を極めた
ければ睡眠時間はきちんと守るべきだ。寝不足で稽古中にケガでもしたらどうするんだ』って言われ
ちゃうと…。私の為を思ってそう言ってくれてるんだもの、自分でもなるべく気を付けないと。」
「うーむ、己の鍛錬を第一に、という事かー。松田さんらしいなぁー。」
「猪熊さんの柔道の為なら、仕方がないのかしら…。でもそんなに早寝だと、晩御飯も一緒に食べられ
ないわね…。」
「うん。最近は、松田さんの晩御飯の支度した後、実家に食べに帰ってるの。一人で食べても
つまらないだろうし、その方がおじいちゃん達も喜ぶんじゃないかって言ってくれて。」
「滋悟郎先生、何て…?」
「あんな奴の嫁になるからこんな目にあうんぢゃ、この馬鹿たれ!って、散々文句言われるわ!
お母さんは、本当は嬉しいのを隠そうとして怒ったふりしてるだけなのよって言うんだけど…。」
「しかし…、平日は無理だとしても、休みの日くらいは一緒に過ごせないのか?」
「そ、そうよぉ!二人とも、この日ばかりはって…!キャーーー!!!」俄にテンションが上がる。
「あ、松田さん、休みが殆ど貰えないの。」
「ア、アラ?そう……。」再び、肩すかしをくらってしまう富士子。
(お、驚くほどサラリと返されてしまったわ……)
260ろく:05/02/14 13:14:20 ID:6vS3Jnr0
9

「…そんな状態じゃ、結婚した実感が沸かないのも無理ないわねぇ…。」
富士子はそう言うと、がっくりと肩を落とした。
今時珍しいほどウブで天然な二人だが、さすがに今度ばかりは全うな新婚生活を送っている筈だと
信じていたのだ。今まで散々回り道を重ねてきた二人を間近で見てきたから、今度こそ幸せになって
もらいたいと心の底から願っていたのだ。それなのに。
(これで幸せって言えるのかしら…?猪熊さん、本当は少し後悔してるんじゃないかしら…?)
予想外の実態を聞かされた花園と富士子は、情けない顔でお互いを見合わせてしまった。
一方柔は、富士子達の落胆ぶりに全く気付かぬ様子でニコッと軽く微笑む。
「…ふふっ。顔を合わせないって言っても、たまに寝顔くらいは見られるのよ?」
「へ?」
「アメリカと日本で離れ離れになっていた頃は、全然だったでしょ?それが今は、一つ屋根の下で
一緒に暮らせているんだもの!」言いながらテーブルに肘をつき、組んだ指に顎を乗せる。
「だからそれだけで……。ああ幸せだなぁ、って思って……。」言い終わるとほぅ、と息をつき、
うっとりとした表情を浮かべた。
「……………。」(い、猪熊ぁぁ!)
「……………。」(い、猪熊さんっっ!)
花園夫妻は柔の手を掴みとり、ぎゅっと握りしめた。
(『いじらしい』という形容詞は猪熊の為に作られたのではないだろうか……)
思いあまった花園夫妻のまなじりから、涙がとめどなく溢れ出す。
(松田さん!忙しいのは分かるけど!!お願いだから猪熊さんをどうにかしてあげてぇぇっっ!!!)
今、自分がどれほどに幸せなのかを精一杯アピールしたつもりが、いきなり二人に泣かれてしまい、
訳が分からず激しく動揺する柔。
「な、なに?二人とも!」
「……………!」
「ど、どうしたのよ、いきなり!!」
「……………!!」
無言のままハラハラと涙を落とし、ただただうんうん、と頷き続ける花園夫妻であった……。
261ろく:05/02/14 13:21:07 ID:6vS3Jnr0
書き進めながらの投下は少々無理があったかな…
ここから先、松田夫婦のマンションに舞台を移します。
時間がなくなってきたのでここで一息いれようと思いまふ。ではまた。
262ろく:05/02/14 18:48:15 ID:6vS3Jnr0
やっぱりもう一話だけ… 。何度もすみません。
263ろく:05/02/14 18:49:11 ID:6vS3Jnr0
10

柔が自宅マンションに戻ったのは、夜の7時半を少しまわった頃だった。
(あれ?鍵があいてる。)
ドアを開けると、玄関に履き潰した松田の靴が散らばっている。部屋の中は真っ暗である。
松田の靴と、自分が脱いだ靴を脇に揃え、部屋の中に足を進める。
「松田さん?居るんですか?」
リビングの電気をつけようと手探りでスイッチに手を伸ばす。
明かりがつくと、リフォーム後半年あまりの白い壁紙に光が反射し、明るさに一瞬目が眩んだ。
隣の寝室に続く扉が少し開いている。ひょいと覗くと、布団にくるまり爆睡している松田が居る。
柔は顔を綻ばせた。(松田さん…。帰ってたんだ。)
「ただいま。」軽くイビキを立てて眠る松田に向けて、小さく声をかけた。
ソファの上にバッグを置いた柔は、家を出る前に松田宛に残した書き置きに目を遣る。
『富士子さんの家に行って来ます。夜には戻ります。 柔』
万が一、松田が早く帰宅してこの書き置きを見たら、ひょっとして迎えに来てくれるかもしれない、
と思って残した書き置きだった。ほぼ一月ぶりに早めに帰宅した松田だが、しかしそのまま眠って
しまったようだ。
(出来れば、迎えに来て欲しかったんだけどなぁ)
バイクの後ろに乗っけてもらって、ぐるっと遠回りしたり。帰り道の途中にあるファミレスに寄って
一緒にコーヒー飲んだり。それだけでいいんだけどなぁ。
「なーんて、ね。」
(松田さん疲れてるんだもの。我が儘言っちゃ駄目、柔!)
リビングからの明かりで薄ぼんやりとした寝室にそっと入り、松田がくるまっている布団の傍らに
ぺたんと座る。このところ朝の慌ただしい時間にちらっと見遣る程度だったので、まともに顔を
見るのは実に久し振りだった。
264名無しさん@ピンキー:05/02/14 21:49:23 ID:BOzhkVjX
俺は柔たんは結婚後はあっさり柔道を
引退しそうなイメージがあるんだけど
(松田さんとの時間を大切にしたいから)
ろくさんの松田x柔もいいですねー。

ワガママ逝っちゃダメって言い聞かせてる
柔たんがかわいいw
265ろく:05/02/17 12:10:46 ID:BRRCCBqt
>>264
ありがとうございます。励みになります。
自分は、柔ちゃんには無差別級で金をとれる間は現役選手でいてほしいかなぁ…
266ろく:05/02/17 12:14:01 ID:BRRCCBqt
あ、書き忘れてしまった…
この話に「一つ屋根の下で」というタイトルをつけてみました。
どっかで見たようなタイトルでアレですけど。
267ろく:05/02/17 12:21:00 ID:BRRCCBqt
一つ屋根の下で 11

富士子の家では、毎日家族揃って食卓を囲み、夜はフクちゃんを寝かせた後、二人で眠くなるまで
お喋りするという。
(相変わらず仲がいいなぁ、あの二人。なんだか新婚の私のほうが、あてつけられちゃったみたい。)
帰り際、玄関先で交わしたやりとりを思い出す。
「辛くなったら、我慢せずに言うのよ。」そう言ってから、富士子さんったらまた泣いちゃったの
よね。「やせがまんしちゃぁ、だめなのよ?」なんて、フクちゃんまで。フクちゃんったら『やせ
我慢』、だって!もうそんな難しい言葉、覚えちゃったんだ…。
それにしても、小さい子にまでそんな事言われちゃうなんて。私、そんなに辛そうだった?
「うーん…」腕を組み考え込んでしまう。親友に隠し事などしたくないが、ひょっとすると、『一ヶ月
顔を合わせていない』これは、言うべきでなかったのかもしれない。
好きだから結婚したのだ。当然、花園と富士子のように始終ベッタリ出来るほうがいいに決まって
いる。でも現実には、まともに顔を会わせる機会の少ない私達である。ただ、それでも、
(邦子さんと恋人同士だと思い込んでいた頃に比べたら、これ位、ちっとも苦にならないわ…)
高校生の頃、実家で松田の腕に絡みつく邦子を見たあの時から、自分を恋愛対象として扱う素振りの
ない松田に対し、イライラし通しだった。松田の事が好きだとはっきり自覚してからは、想いを伝え
られない苦しみに胸を焦がした。
結局5年もの間、ずっと彼に片思いしていたのだ。それが今は、結婚して一緒に暮らしている。それ
だけで満足してしまえる柔だった。しかし、周りはそうは受け取ってくれないようだ。
「今日は無事に顔を会わせることができました。」明日電話で富士子にそう伝えよう、と柔は思った。
そうすれば安心してもらえるだろう。
実際は『無事に』という言葉に反応した富士子にまたしても泣かれてしまう事になるのだが、勿論
今の柔は知るよしもない。
268ろく:05/02/17 20:34:36 ID:BRRCCBqt
一つ屋根の下で 12


「ねえ松田さん。私達夫婦って、ちょっと変わってるみたいよ?」
そう言い、少し苦笑いしてみる。
それに気付かず、口を半開きにして眠る松田。何だか小さい子の寝顔みたいだ、と思う。
(ふふっ、かわいいなぁ。)
7歳も年上の人に『かわいい』なんて言ったら気を悪くしそうで、面と向かっては言えないけれど。

事実、ラフな格好で年がら年中ドタバタ走り回っている松田は、童顔なのも手伝ってとても30代
半ばには見えない。出会った頃と全く変わらず、と言うにはさすがに無理があるが、20代後半まで
なら何とか通用しそうである。
しかし元々オーバーワーク気味であったところに、自分達の結婚に関してのあれやこれやが加わった
ことでさすがに無理がきているのか、一月振りにまともに見る松田の顔つきは、心持ちやつれてしまっているように思えた。
それに気付き、ふう、と小さな溜息を漏らす。
(あまり、無理しないで下さいね?)

程なくして、強烈な眠気が柔を襲った。
酔いは覚めていた筈だったが、アルコールが抜けてきれていなかったのだろうか。
(少し、横になりたいな…。)
269ろく:05/02/17 20:41:06 ID:BRRCCBqt
一つ屋根の下で 13

ソファのあるリビングへ戻ろうとして腰を浮かせかけたが、すぐに思い直し、布団と一体化した松田を
横目でちらりと見遣る。

……ここで、ちょっとだけ。服を着たままだけど、少しだけならいいわよね?
一緒に寝るって言ったって、これは別に変な意味じゃないわ。
眠くて自分のお布団敷くの面倒なだけだもの。
でも、床に寝ると風邪引くかもしれないもの。
無論、丈夫な柔が、少し床に寝た程度で風邪など引く筈がない。

実のところ、二人は正真正銘夫婦なのだから、一緒に寝ようが乳くりあおうが何の問題もないのだが。
自ら夫の眠る布団に潜り込む事などない柔は、照れ隠しからか、いちいち言い訳してしまう。

(大丈夫。松田さん、一度寝たらなかなか起きない人だから。)
ゆっくりゆっくり布団を捲り、起こさないよう注意を払いながら、隣にごそごそと潜り込んだ。

わずかに躊躇した後、眠り続ける松田の肩に、こつ、と自分の頭を当て、そっと目を閉じる。
たまに松田と共寝する時の、柔お気に入りの体勢。
(5分だけこうしたら、お風呂に入ろう。あ、松田さんに晩御飯済ませたかどうか聞かなきゃ…)
すぐに意識が飛び、そのまますうっと眠りの世界へ引き込まれていった。
270名無しさん@ピンキー:05/02/17 22:05:07 ID:xVbcKT5J
いいですね〜。
柔さんの仕草がとても細かく描かれてるので、目に浮かぶようです。
この調子でドンドンお願いします!
271ろく:05/02/18 16:07:25 ID:ozTwcU1Q
>>270
ありがとうございますー。
次は、いきなりポエム風味です。何か申し訳ないです。
272ろく:05/02/18 16:10:59 ID:ozTwcU1Q
一つ屋根の下で 14


松田は真っ白い空間に、一人ぽつんと立っていた。

ありゃ?ここどこだ?
えーと、1992年…って、何でカレンダーが貼ってあるんだ?
他に何もないのにいきなり変だろ、これは。
…ってことは、バルセロナオリンピックがあるんだな。そうだ、今は1992年。
…………そうだっけ?

向こうのほうに誰か居る。
柔さんだ!おーい、柔さーん!
すぐに駆け寄ってくるかと思ったのに、黙ってこっちを見ている。
何だよ、大声で呼んだのに。聞こえなかったのかな。

あれ、柔さん、いつの間に柔道着に着替えたんだ?
大歓声が聞こえてきた。得意の一本背負いが見事に決まる。
ズバァァァン!
…すげぇ!すっげぇ!!
273ろく:05/02/18 16:12:27 ID:ozTwcU1Q
一つ屋根の下で 15


大勢の記者が俺の横を走り抜ける。俺も慌てて後に続く。
俺はただ、柔さんの後を追いかけ回すのみ。

記者に囲まれた柔さんが、くるっと俺を振り返る。
「松田さんには、関係ないですから!」
そう、俺は三流新聞の三流記者。でもって、柔さんはスーパースター。
つかつかと俺に近づき、泣き出しそうな顔をずいっと寄せてくる。
「柔道、柔道。それしか言ってくれないんだもの!」
ご、ごめん。でも、本当はそれだけじゃないんだ。

うーん、何かいい匂いがする。それに、柔らかい。……柔らかい?
俺の体に犬か猫がまとわりついてる……そんな訳、ないしなぁ。
あっ、柔さんがいっちまう。
くそっ、体がだるくて足が思うように動かねぇ。
待ってくれ、柔さん!!
274名無しさん@ピンキー:05/02/18 21:14:55 ID:Zc4tOTeL
続きを!
いいところで終わらないでーーー
275原作を読んで分析 違ってるかもw:05/02/19 00:46:54 ID:qcahW57I
松田と柔は円満夫婦を妄想しちゃうなあ
松田は手袋渡すために何時間もまってたりとか
バイクで柔を送ったりとか
原作の行動を見てるとケコーン後も
柔のことを大事にしそう

柔はミーハーなところもあるけど
一度本気で好きになれば
夫を立てて尽くすタイプなような気がする

なにはともあれ
ろくさん応援あげ
276ろく:05/02/19 09:32:05 ID:mk9KPYkN
>>274
ポエマー松田はここで終了、でございます…。
>>275
ありがとうございます。「柔を大事に」「松田に尽くす」…禿同!
277ろく:05/02/19 09:33:26 ID:mk9KPYkN
一つ屋根の下で 16

「ぅが!!!」なんだ、夢か。
……ん?隣に誰か…。
………えぇぇっ!?や、柔さん!?!?
「う、うわぁぁぁ〜〜〜〜〜っっっ!!!」
「き、きゃ〜〜〜っっ!!」
突然松田が発した叫び声に驚いた柔も同時に叫び、寝室に不協和音が広がった。
「は、はれ?ろ、ろうして柔さんがここに?何れだ?何れ?はれっ?」
呂律が回らない割に体の方はすぐさま反応し、柔に密着していた自分の体を瞬時に引き剥がす。
「ご、ごめんなさい!眠くて、布団敷くの面倒になってしまって!ちょっとだけならいいかなって!」
一方柔は、慌てて布団から飛び出し、床に手を付き米つきバッタのように頭を下げる。
松田はなんとかこの状況を把握しようと、寝ぼけ眼で周囲をきょろきょろと見渡した。
(……あれ?ここ、俺のアパートじゃないな…。)
塵一つない、きちんと整頓された部屋。そして、最近買ったばかりのような真新しい家具。
(で、隣には柔さん………。)

…あ!そうか、俺、結婚したんだよ!柔さん、俺の奥さんになったんだ!一瞬、柔のウエディング姿が
脳裏を横切り、ここでようやく目が覚めた。
「ち、ちょっと待って。別に、謝らなくても。俺達、夫婦なんだから…。」
「そ、そうですよね…。」
松田に釣られたとはいえ、自分のあまりの狼狽え振りに気づき急に恥ずかしくなった柔は、おずおずと
顔を上げ、平謝りの姿勢を解いた。
278ろく:05/02/20 00:41:08 ID:Y74UwqiU
一つ屋根の下で 17

完全に覚醒した松田は布団から身を起こした状態のまま、傍らにちょこんと正座する自分の妻に、仕切り
直しの意味を込めつつこう話しかけた。
「…お帰り。富士子さんの家に行ってたんだよな。花園やフクちゃんも、元気だったか?」
「あ、書き置き、読んだんですね。今夜も遅くなるだろうからいらないかなって思ったんですけど、一応
残しておいたんです。花園くんもフクちゃんも、みんな元気でしたよ!で、松田さんによろしくっ、て
言ってました。」
「俺、今日、6時に帰ってきたんだよ。お前、今日はもういいからとっとと帰れ!って編集長に言われち
まって。…全く、始めからそうと分かれば、さっさと仕事片づけて富士子さんの家に行ったのに!」
「編集長さん、松田さんの体調を気遣ってくれたんですね…。私達の結婚式でも思ったけど、編集長さん
って、人情味に溢れた優しい方ですよね。」
「や、優しい…?違う違う!俺がグダグダだったから、いい加減にしろって放り出されただけだって!
…で、あのー、柔さん。」
「はい?」
「…一緒に行けなくて、本当にゴメンな?」そう言い、心底済まない、という表情を浮かべる。
「…ううん、気にしないでくださいね?」
仕事が忙しいのは松田さんのせいではないのに。ずっと休んでいないから物凄く疲れてる筈なのに…。
柔は、彼のこういうところが大好きだ、と改めて思った。
「テーブルの上の書き置き見て、せめて迎えに行こうって思ったんだけどね。最近あまり寝てなかったから
家まで帰るのも正直運転がやばくって。柔さん乗せるんなら仮眠とってからにしたほうがいいかなーと…」
それを聞き、それまでにこやかだった柔の表情が、さっと変わる。
「そんな、危ないじゃないですか!そういう時は電車やタクシーで帰って来てください!」
「あ、そうか。そうした方が良かったかもな。」
「かもな、じゃないです。事故にあったらどうするんですか!」
「う!スミマセン、以後気をつけます…。」柔の剣幕に、思わず松田は身を小さく縮こませた。
279名無しさん@ピンキー:05/02/22 23:24:27 ID:G867Po0s
age
280名無しさん@ピンキー:05/02/23 00:39:49 ID:RTXnlabR
久しぶりに来たら神が…
続き楽しみにしてます!
281ろく:05/02/23 08:34:34 ID:oznka857
>>280
カ、カミ!? ヒィ!
一話を区切りのいいところで収めるのって難しいですね… 長すぎるとエラーが出ちゃうし。
282ろく:05/02/23 08:36:17 ID:oznka857
一つ屋根の下で 18

柔は肩を怒らせ、松田を窘めるかのように睨み続けていたが、ふいに目を逸らすと、ぷぷっと吹き出した。
「あれ?どうした?」
「松田さん、あんなに驚くから…。」
くっくっ、と、こみ上げる笑いを抑えきれずに相好を崩す。
「あ、さっきの?…あのー、夢、見てたんだ。柔さんが出てくる夢。」
先ほどの年甲斐もなく取り乱した状態を思い出し、松田は恥ずかしげに頭を掻いた。
「私が出てくる夢?どんな夢ですか?」
「昔の…俺達が結婚する前の夢。バルセロナオリンピックあたりかな、柔道着着た柔さんが出てきたんだ。
で、その頃はまだつき合ってなかっただろ?目が覚めた後もそのつもりだったから、何で柔さんが隣に
寝てるんだ?って慌てちまって。…でもまぁそうは言っても、あれはちょっと驚きすぎだよな!ハハハ…」

(バルセロナオリンピック、かぁ……。)
松田を巡って深く傷つき、松田によって最高の幸せを与えられたあの頃に、しばし思いを馳せる。
「私のこと、夢に見たりするんですね。」
柔はそう言うと少しはにかみ、膝の上の手に視線を落とした。(ちょっと、嬉しいかな…)
「何言ってんの、そりゃそうだよ!アメリカにいた頃なんか殆ど毎晩のように…!」
「え?」
「…あ。」しまった、といった風に、手の平でぱっと口を塞ぐ。
「いや、まぁ…。そ、そういう訳だ。」
どういう訳なのかは良く分からないが、松田はしどろもどろになりつつそう言うと、そっぽを向いてしまった。
283ろく:05/02/23 10:08:15 ID:oznka857
一つ屋根の下で 19

あの頃は、連絡が途絶えがちの松田に、自分に興味が無くなってしまったのかと不安を感じたりしたものだった。
(でも実は、アメリカにいた頃、私の事ちゃんと考えてくれてたんだ…)
そう思うと、口元がにんまりしてしまうのを抑えきれない。
一方、それを見た松田のほうは、
(ありゃ?何か楽しそうだけど…)相も変わらず、女心に疎いご様子である。

会話が途切れ、静まりかえった薄明かりの室内に、時計の秒針の音がわずかに響く。
「松田さん…。」
「ん?」
「………」何も言わず小首を傾け、にっこりと微笑む。
その可憐な笑顔に、松田の頭にかぁっと血が上った。(かか、可愛いい……!!)

可愛くて、気立ても良くて、出会った頃と殆ど変わらぬ瑞々しさを保ち続ける柔。
だが別に、彼女のうわべのみに惹かれて好きになった訳じゃない。
7つも年下の可愛い奥さんいいわねぇ、と誰かしらにからかわれる度に、
そんなんじゃありません!俺は柔道家の猪熊柔に惚れ抜いて一緒になったんです!と言い返してきた。
惚れた、などと言うと、今度は揚げ足取りのからかい攻撃が始まってしまうのだが…。
柔さんは、そんな陳腐な表現で片づけられない特別な存在なんだ!
でも………。

(……可愛いもんは可愛いんだから、仕方がないじゃないか!)

うーん、もっと近くに来て欲しいんだけど…。こうやって顔会わせるのも久し振りだし。それに俺達夫婦なんだから、
誘ったって別におかしくはないよな?
この類の行動を起こす前にいちいち言い訳するのは、流石似た者夫婦とでもいうべきか。
284名無しさん@ピンキー:05/02/23 13:22:49 ID:VD4jLh8n
うが…ッ!!
昼間っから続きが気になって覗いてしまったら、丁度いいとこで止まってやンの・・・!!
生殺し、生殺しやでぇー!!
つづきをー、平に続きをー
285名無しさん@ピンキー:05/02/23 13:26:51 ID:VD4jLh8n
すみません、脳内そのままに書きなぐって送信してしまいました。

キャラクターの描写や、コミカルタッチな部分など、原作のイメージまんまです。
文体も、キャラクターの心理描写もあり、第三者の地の文もあり、小説として非常に読みやすいです。
ここの職人さんはほんとお上手でお上手で・・・!感動です!!
ということで続きを待ちわびております。

つづきうぉー
286ろく:05/02/23 17:44:21 ID:oznka857
>>284
原作の雰囲気に近付けようと気を配っているつもりだったので、そう言って頂けると非常にうれすい…
287ろく:05/02/23 17:45:10 ID:oznka857
一つ屋根の下で 20

松田は、自分の横で幸せそうな笑みを浮かべる柔に向けて、こう問いかけた。
「……あの〜」
「はい?」
「柔さん、寒くない……?」何故か、恐る恐るといった感がある。
「いいえ?」
「あ、そう……。」
静寂が戻り、時計の秒針が一周する。松田は再び、柔に向けて問いかけた。
「……あの〜」
「はい?」
「柔さん、眠くない?」
「さっき少し寝たから、何だか目が覚めちゃいました。」
「あ。ソウデスカ……。」
松田としては、「寒くない?」「寒いです」「じゃあ布団に入りなよ」という展開に持っていきたかったのである。
しかし肝心の柔は、そんな松田の意図に全く気付く素振りもない。
(ええと…、替わりの言葉は他にあるか?)
ただ一言、「こっちにおいで」で済む話なのだ。いい年をして、恋愛初心者ぶりにも程がある。
(松田さん、何だか辛そう…。一体どうしたのかしら…。)
松田の不自然な態度に疑問を感じた柔は、たった今交わしたやりとりから彼の思いを導き出そうと試みた。
(ええと…、寒かったら?…服を着る。眠かったら?…布団に入る。で、ここには松田さんのお布団が……)
ここで、柔は閃いた。
(あ、そうか!松田さん、布団に入れって私を誘ってたんだ!)
愛する夫からのせっかくのお誘いをすぐに気付いてやれず、申し訳なさで胸を一杯にして一気に捲し立てる。
「あ!えーと、さ、寒いです!それにやっぱり眠いです!で、でも、布団敷くのが面倒で!」
「あのー……、じゃあ、入る?」少々ばつが悪そうにしながら、松田が布団の端を捲り上げる。
「は、はい!」失礼します、と早口で言い、布団に潜り込んだ。
288名無しさん@ピンキー:05/02/23 21:28:57 ID:gGUMxrmG
>>287
キタキタキタ______(。A。)_____(。A。)____!!
で?で?続きを〜。
289名無しさん@ピンキー:05/02/24 20:59:38 ID:+5yySA4k
つづきを〜age゜゜.*:.。..。..*・゜(η‘д‘)η
290名無しさん@ピンキー:05/02/24 23:15:25 ID:Ovu/cx0F
tudukiwo!!!!!
291名無しさん@ピンキー:05/02/24 23:31:15 ID:VBxj9C9T
原作っぽい雰囲気ですね♪
松田さんは柔ちゃんが家に来てた時も
飯を作る柔ちゃんを
赤くなりながら見てたし
(とまっていこうかなの回だたと思う)

二人とも天然記念物級の奥手純愛路線だからなw
292ろく:05/02/25 01:22:44 ID:f14EyPty
これは、いよいよエロ登場か?と期待させちゃってるんでしょうか。
すいません、話が無駄に長くなっておりまして…
293ろく:05/02/25 01:23:51 ID:f14EyPty
一つ屋根の下で 21

この二人、こと色恋に関し、どうしてこうも回りくどいのか。
最早これは『夫からの誘いに応じる新妻』のやり取りではない。むしろ謎かけ、もしくは連想ゲームである。

一組の布団の中に、無事、着地成功した松田夫妻は、天井を眺めながらぽつりぽつりと話しはじめた。
「結婚して、そろそろ半年か…」
「…何だか、あっという間でしたね。」
「ごめんな?忙しいばっかりで、ちっとも構ってやれなくて。」
「私、全然平気です。…まあ、思い描いていた結婚生活とは、少し違っちゃったかもしれないけど……」
「う゛。ゴメ…」
「あ、ううん、違うの!…あの、そんなに謝らないで下さいね?私のほうこそ柔道ばかりしていて、ちっとも
奥さんらしくないじゃないですか。松田さんはただ、頑張ってお仕事してるってだけなんですから。気に病む
事なんて無いんですよ?」
「んー、でもなぁ…」
「もう、松田さんったら!私、松田さんが書いた記事を読むの、毎日楽しみにしてるんですから。だから……、
今まで通り頑張ってもらわないと、困っちゃいます。」
「……うーん、そうか…。じゃあ、これからは柔さんの為に、更に気合い入れて記事書かなきゃな……」

幼い頃から父親が不在、母親も家を空けがちで、唯一身近にいる肉親の祖父は、ひたすら柔道一直線。
そんな環境で育った柔さんだから、日本全国どこにでも見られるような、ごく普通の家庭に対する憧れが
人一倍強く、結婚後は絶対それを実現させるんだ、と思っていた筈だ。
しかしいざ蓋を開けてみたら、出てきたのは夫が仕事にかまけて家庭を顧みないという現実。こんな現実、
本当ならいくら責められようが、なじられようが、何も文句は返せない。
『柔さん、ごめん』とは、何度口にしても足りないが、彼女はそれは必要ないと言い、こんな自分を
ありのままで受け入れようとしてくれている。だからせめて、偽りのない素の自分でそれに応え、
一緒に過ごせる時は精一杯の思いやりを込めて接するしかないんだろう。
松田はそんな事を思いながら、自分の横で天井を見つめる柔の横顔を暫く見つめていた。
294ろく:05/02/25 10:36:45 ID:if+UkGUU
>>291
「泊まっていこうかな」は何度読み直したことか…。読みながら照れくさくてカユくなるんですが。

↓の話もかなりカユイです
295ろく:05/02/25 10:37:40 ID:if+UkGUU
一つ屋根の下で 22

「…あ、そうそう!柔さん!」
「何ですか?」
「あのさ。そろそろ、お互いの呼び方変えないか?…実はこれ、つき合ってる頃から思ってたんだけど。
あと、俺に対して敬語使うの、ナシに出来ない…?」
「あ。」
(そうだ…。そういえば私、昔からずっと敬語使ってる。)
「夫婦なのにいつまでもこれじゃ、変ですよね。ひょっとして迷惑でしたか…?」
「そんなんじゃないよ。ただ、何だか目上の人に対する接し方って感じが少しするから。でもホラ、見ての通り、
俺は昔っからそんなガラじゃないからさ!」と、少しおどけてみせる。
「高校生の頃からずっとこうだから、急に変えられるかしら?……ううんでも、頑張って変えてみます!」
柔はヨシ!と、両方の握り拳を胸の上で固め、くるっと勢いをつけて松田のほうに体の向きを変えた。
「何て呼びましょうか?…じゃなくて何て呼ぼうか、でした。えーと、『あなた』なんてどうで…、どう?」
(ハハ、柔さん、無理してるなー。)突っ込みどころ満載だが、それでも頑張っているのだからと、そのまま
見守ることする。
「うーん。それはちょっと、大人っぽすぎるかなぁ。」
「そうで…、そ、そうね。」
「やっぱり、下の名前になるのかなぁ…。」
「下の名前?じゃあ、………耕作さん。」
松田を初めて下の名前で呼ぶその表情の、なんと初々しいことか。
「………。は、はひ…。」
つい見とれてしまい、何とも情けない声で返事をしてしまった松田である。
「よ、よし。じゃあ、俺も変えてみっか!」はっと我に返り、誤魔化すかのようにわざと大きめな声を出した。
296名無しさん@ピンキー:05/02/25 23:21:12 ID:tmsHwNk/
嗚呼・・(・∀・)イイ!!んだけどたしかに痒い。
3,4行読んだ辺りで一旦片手で顔を覆ってしまったw
297名無しさん@ピンキー:05/02/26 00:49:00 ID:ELdS3nFQ
このむずがゆさが、たまらないんだよ!
298名無しさん@ピンキー:05/02/26 01:15:18 ID:B8M1g4Ay
キタ━(゚∀゚ )≡( ゚∀゚)━━!! いい、いいよ。
けど、人と一緒に読めないな、照れくさくて。
299ろく:05/02/26 01:25:51 ID:gQhvIxCV
>>296 >>297
楽しんで書いてますが、ふと我に返ると、   _| ̄|○ ハ、ハズ…
300ろく:05/02/26 01:27:03 ID:gQhvIxCV
一つ屋根の下で 23

「柔。」
途端に柔の顔が、夜目にも分かるほど赤くなる。
「……さん。」
「あー!いいだしっぺなんですよ?」
「柔さんが赤くなるから…。」
「言い訳は受け付けません!7つも年上なんだから、ちゃんとリードして下さいね?」
「柔さんだって、ほら、敬語!」
「あ!えっと……ええと………。ご、ごめんなさい!私、ちょっと無理みたいです…。」
「何だよ、俺には怒ったくせに……。で、無理って、どうして?」
「…松田さんが年上だからかもしれないけど、たまにお父さんと一緒にいるような、変な感覚になるんです。
それに、松田さんはずっと私の側に居て、励ましたり導いたりしてくれた人だから、何だか先生みたいって
いうか…。だからそのー、今のままの方がしっくりくるみたいで…。」
「そ、そう…。お父さんに先生、なの…。」
お、お父さん…。確か、大分前にも言われたな。で、今度は先生も追加か。夫の俺はどこに行っちまったんだ?
正直、ショックだ…。…だがしかし、これを『一緒といると安心する』という意味で受け取ってみてはどうだろう。
先生って表現も、裏を返せば俺に頼っていると言えるかもしれない。…そうそう、こう解釈すれば、何だか
彼女がいじらしく思えてくるじゃないか!
松田はそう分析することで、傷ついた心に辛うじて蓋をした。
「…まあ、無理しないでおいおい変えていけばいっか。」あっけらかんとした表情を作り、笑いかける。
「ふふっ。そうですね。」松田の葛藤に気付かぬまま、柔のほうも無邪気な笑みを返した。

(『柔。』だって。うーん、くすぐったい。でも嬉しい…。)私を幸せにしてくれるこの人に、もっと触れていたい。
柔は松田の二の腕に自分の腕を絡め、頬を寄せた。松田の体がぴくっと反応する。
交錯する二つの眼差し。松田は、柔が今、夫としての自分を見ていることに気が付いた。
柔の腕をやさしく解き、薄い肩に両手を添える。そしてそのまま、ゆっくりと顔を近付け………、たのだが、
間近に迫ったところでピタリと止めた。
「……………。」
301名無しさん@ピンキー:05/02/26 01:48:20 ID:9lt4ookt
スバラシク(つД`)モエェー
302名無しさん@ピンキー:05/02/26 03:49:00 ID:Jpzr3bYv
なんで止めてんの、なんで止めてんのー!!! うおぉぁお(悶絶
耕作めぇーおとこらしぅとっとと決めんかこのバカチンがぁ

こんなに一つ一つの些細な過程を大事にできる関係の2人って、良いよね。(*`д´)b YES!
303ろく:05/02/26 10:34:22 ID:tlkVzcRY
>>298 オフにYAWARAファソが?羨ましい…
>>301 アリガトゴザイマス!
>>302 それは↓で明らかに。
304ろく:05/02/26 10:35:26 ID:tlkVzcRY
一つ屋根の下で 24

(もしや、また何か……)不安げな目で互いを見つめ合う。
二人は前々から、どうにも腑に落ちない疑問を抱えている。このようなムードになると、どういう訳か
ちょくちょく邪魔が入るのだ。
邪魔をする回数ナンバーワンは、猪熊滋悟郎である。例えばこんな風に。
ぷるるるる、ぷるるるる。(松田です。只今留守に…………ピーーー)
「よ!わしぢゃ!!………………こらぁ、松田ぁ!さっさと出んかい!そこにいるのは分かっておる!」
「…実の息子は遠く離れたパリへと旅立ち、可愛い義理の息子は近くに住んでいながらちーっとも顔を見せん。
老いさらばえた体に鞭打つような、酷い仕打ちぢゃ!のう耕作くん、わしゃ、じーつーに、寂しい!(ぶびーっ!)」
(耕作くん、だってぇ?)慌てて受話器を取り、背筋が寒くなるのを我慢しながら適当にあしらうのだが、
電話を切った後も猫撫で声の『耕作くん』が耳に残り、すっかり萎えてしまうのである。
「お義父さん、せっかく夫婦水入らずで過ごしているんですから、あまり意地悪なさらない方が……」
「可愛い孫娘をあんな野郎に取られたんぢゃ。この位やらにゃあ、わしの気が済まんわい!!」
その後猪熊家でこのようなやり取りがある事は、無論知るよしもなく。
また、こんな出来事もあった。
ピンポーン、ピンポーン。
「宅配便でーす。えーと松田柔さん宛のお荷物…って、え?あの柔道の!?うっわー俺大ファンなんですよ!
試合いつも見てて……(5分経過)……そこで冴え渡るあの技のキレ、なんですよね!そうだサイン貰えます?
あ、受け取りのサインとは別でお願いしますね!」
更には、こんな出来事も。
ドンドンドン!ドンドンドン!
「松田さん!松田さん!ステレオの音がうるさすぎるじゃないですか!ボリューム絞ってくださいよ!だいたい
お宅はいつもねぇっ……(5分経過)……ちょっと!聞いてるんですか!?」
「あのー…、うるさいのはうちじゃなくて、隣の部屋みたいですけど……。」
松田が家にいる機会はそうそうあるものではない。なのに狙い澄ますかのように邪魔が入るのは一体何故なのか。
305ろく:05/02/26 12:29:38 ID:tlkVzcRY
一つ屋根の下で 25

試しに松田は、ちゅっ、と軽く唇に触れてみた。暫く周囲に耳をそばだてる。
「何も起こらない…。今のところ大丈夫そうだな……。」
当たり前だ。柔の唇が起爆ボタンか何かだと、すっかり勘違いしている松田である。
「そ、そうですね…。」
「あのー、じゃあ、いい…?」コクリと頷いたのを確認し、柔の背中に腕をまわす。慎ましやかな胸の感触が伝わる。
思い余った松田は、柔をぎゅうっと抱き締めた。その力強さにうっとりとしかけた柔だったが、
「あ!」小さく声を上げた。
「な、何?」松田の体が、びくっと跳ね上がる。
「あの、シャワーを……」
「い、いや!俺は入ったし、全然気にならないから!!」
(ここで中断したら、きっと今までの二の舞だ!)男として、このチャンスは絶対に逃せない。
松田は柔の細い首に顔を埋めた。久方振りに味わう感覚に恍惚としかけた柔だったが、
「あ!」
「今度は……何っ?」ばっ、と顔を上げる松田。
「…テレビ!松田さん、テレビ!」
「へ?」
「前に言ってたじゃないですか、早く帰ってきた時はテレビを見たいって。」
「ああ、言ったけど…。で、でも今は……」
「ほら、早くしないと好きなテレビ番組終わっちゃいますよ!」そう急かし、ぐいぐい布団の外へ押し出そうとする。
「え、ちょっとちょっと……!」(まずい!このままじゃ……)

と、ここで押し切られてしまうのが、気弱ないつもの松田。
だが、今回は一味違った。松田の砂漠化した性生活に危機を感じた生物学的本能が、彼の脳に『子孫を残せ』と
指令を出したのだ。松田はがしっと柔の両肩を掴み、今だかつてない必死の形相でこう告げた。
「テレビなんかより!柔さんと!こうしている事のほうが大事なんだ!!」(ヨシ、決まった!……か?)
「ま、松田さん…。」(松田さん、素敵!!)
「柔さん…。」(決まったみたいだ……)
306ろく:05/02/26 14:15:15 ID:tlkVzcRY
一つ屋根の下で 26

再開。
松田さん。松田さん…。…何だか、凄く久し振り。この前は……、一ヶ月以上前、だったかな…。
すっかり固くなった松田自身が、柔の太腿に触れる。
松田さんたら、やだ…。これって、まだちょっと慣れないなぁ…。
松田が柔の服の下に手を忍び込ませ、下着をぐい、と引き上げる。
胸を大きな手で包み込まれた柔は、微かに身じろぎした。
胸をまさぐっていた松田が、その手を下半身へと降ろしてゆく。その時、柔は下半身に違和感を感じた。
あ、あれ?何か……。あ。もしかして……!
「ち、ちょっ…、松田さん、ストップ!」
体を大きくよじると、思わず膝で松田の大事な部分を蹴り上げた格好になってしまった。
「ぉぷぅっっっ!!!!」
「きゃ、ごめんなさい!大丈夫ですか?…ええと……、すみません、ちょっと行って来ます!」
股間を押さえてうずくまる松田を置き去りにして、ぴゅっとトイレへ駆け込んだ。

数分後。急いで寝室に戻ると、同じ姿勢でうずくまったままの松田が視界に飛び込む。
「だ、大丈夫ですか……?」
「うぐぅ……。」
「ど、どうしよう!この場合、救急車、呼んだ方がいいんでしょうか?」
顔面蒼白の柔は、救急車は119番だったわね、と呟きながら電話のあるリビングへ向かおうとした。
(おい待て、冗談じゃねぇ!)
「ハハハ!だ、大丈夫!もう痛く無いから!で、急にどうしたの?」
松田は慌てて飛び起き、これくらい大したことない、と、両手を広げてアピールしてみせた。
307ろく:05/02/26 22:02:10 ID:P7cYiqUQ
一つ屋根の下で 27

腕が震え、目にうっすら涙が浮かんでいるのは隠しきれなかったが、どうやら柔は一安心したようだ。
ホッと安堵の表情を浮かべると、視線を外し、躊躇いがちに呟いた。
「あのー……、アレが。」
「え?」
「アレが、始まっちゃって……」
(アレ?)腕を組み、はて、と考え込む。…アレ。アレが始まる。……あ!
「あ。そ、そうなの……?」そうか、生理だ。じゃあ仕方ないな。
しかし何というタイミングの悪さ……。
「…お布団、汚さなかったかしら……。」敷布団の、松田が胡座をかいているあたりを覗き込む。
ああ、血で?「…えーと、大丈夫みたいだよ。」
「…そうですか………」
「…ああ………」
(…うーーーん………)今回のトラブルメーカーは柔自身であったらしい。軽い脱力感に襲われた二人は、
そのまま下を向いて黙り込んでしまった。

「ごめんなさい…。…中途半端だと、しんどいですか?」先に柔が沈黙を破った。消え入りそうな声で松田を気遣う。
こんな事で彼女に気を遣わせてはいけない。それに気付いた松田は、柔を元気づけようと殊更明るい声を出した。
「な、何で謝るんだよ!いいっていいって!今のケリで俺のほうもおさまっちまったから。…いやーしかし、さすが
天才柔道家!蹴りのほうも強烈だなー!」
「!!……馬鹿力で、ごめんなさいっ……」
(しまった、失言!)「い、いや、今のは冗談だから!あと、さっきのは本当に気にするなよ?こんなの、いつでも
出来ることだし!な?」
顔を寄せそう言うと、にかっと笑った。身をちぢ込ませていた柔も、松田のその表情に安心したのか微笑みを返す。
ひとまずこれで、気まずい空気は霧散した。だが。
(『いつでも』って、次はいつになるんだろう…)微笑み合いながら、実は二人共こう思っていた。口には出せないが…。
308名無しさん@ピンキー:05/02/26 23:03:18 ID:EcegPcLM
続きがきになるぅ〜!!(・∀・)イイ!!いたわりあう二人に萌え〜
309名無しさん@ピンキー:05/02/27 00:30:11 ID:nlTt3OZI
生物学的本能w
ほんとモエー
310名無しさん@ピンキー:05/02/27 20:23:53 ID:2V3ObtIl
つづきを〜age゜゜.*:.。..。..*・゜(η‘д‘)η
311名無しさん@ピンキー:05/02/28 20:39:44 ID:1hpNAiGL
age age゜゜.*:.。..。..*・゜(η‘д‘)η


312名無しさん@ピンキー:05/03/01 04:26:49 ID:DiOr9F2b
age age〜 めちゃage〜
313ろく:05/03/01 23:55:48 ID:dfwns0ri
遅くなってすみません。以下2話でラストです。
314ろく:05/03/01 23:56:56 ID:dfwns0ri
一つ屋根の下で 28

(気まずい雰囲気は追っ払えたんだから良しとするか。)松田は、ちらりと時計に目を遣った。
「あ!もうすぐ10時じゃないか!柔さん、そろそろ寝る準備しなきゃな。」
「え……。」
「ホラ立って、立って!」そう言いつつ腰を上げ、柔の腕を取った。
「…………。あ、あのぉー……」
「でもって、風呂入って、歯磨いて!」更に背中を押し、浴室に向かわせようとする。
「松田さん。私、お願いがあるんです……。」柔は足を踏ん張ってその場に留まり、おずおずと切り出した。
「柔さんは長風呂なんだから、急がないと……。え?お願い?」
「松田さんが早く帰ってきた時は、夜更かししてもいいですか…?」果たして聞き入れてもらえるだろうか。
案の定、松田の表情が俄然厳しくなった。
「駄目駄目!君はしっかり睡眠とって、次の日の稽古に備えなきゃ。」
「……私の為を思ってそう言ってくれるのは、凄く感謝してます。自分でも松田さんの言う通りだと思うから、
今までちゃんと言いつけを守ってきたつもりですけど、」と、ここで一呼吸おく。
「…今日、久し振りにこうやって過ごしてみて、やっぱり松田さんと一緒に居ると張り合いが違うなぁ、って
思ったんです。やる気がどんどん漲ってくるっていうか…。」
「…………。」
柔の言葉に耳を傾ける松田は、普段口うるさくしている手前、腕を組み渋面を作っている。しかし本音を言って
しまえば、そう言われて物凄く嬉しいのだ。本当は自分だって、少しでも長く柔と一緒に過ごしたいのだから。
「…明日も稽古頑張ろうって、そう思えるんです。だから……、メンタル面のケア、って言うのか…、私には
そういうのも必要なのかなって…。」
「!」
「やっぱり無理でしょうか…。」生意気なことを言うなと叱られるだろうか?恐る恐る様子を窺う。
「…………。いや…、俺のほうこそ、無理させて悪かった。」何か考え込むようにしながら、松田が言った。
「稽古により集中出来るんなら、今度からそうしようか。」それを聞いた柔の表情が、ぱっと明るく輝く。
『夫が早く帰宅した日は夜更かし可能。』松田夫婦の決まり事が、一つ改正されることとなった。
315ろく:05/03/01 23:58:02 ID:dfwns0ri
一つ屋根の下で 29

「じゃあ、一緒にテレビ見ましょ!ね!」柔は嬉々とした表情で松田の手を取り、リビングへと導いた。
「…ああ、そうすっか!」
「松田さん、お腹空いてませんか?」
「んーと、カップラーメン食ったから、それ程でもないかな。」
「カップラーメン?そういうのは、あまり食べて欲しくないですけど…。何かおつまみでも用意しますね。
ビールも飲みますか?」そう言いながら、軽い足取りでキッチンへ向かう。
「そうだな、じゃあ一緒に飲もうか。」
柔の後ろ姿を見送る松田は、先ほどの彼女の発言を思い返していた。
メンタル面のケア。うーん成程。確かに、必要なのは体調管理だけじゃないんだよな…。でも、俺は専門の
トレーナーじゃないからなぁ。具体的にどんな事をしてあげればいいんだろう?
上を向き頭を悩ませていると、柔がくるっと振り向いた。
「ケアが必要、なんて言っちゃいましたけど、難しく考えないでくださいね?私は、たまにこうして一緒に
過ごせるだけでいいんですから……」
それを聞いた松田は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
…あれ?何だ、何だ?まるで俺の頭の中を見透かしたみたいじゃないか。
これは所謂、以心伝心ってやつか?……へぇー。夫婦ともなると、こんなことも起こるんだなぁ。
松田はそう思いながらソファの上で胡座をかき、リモコンのスイッチを入れた。


限りなくウブで、限りなく天然ボケの柔と松田。結婚半年あまりの現在も、相も変わらず『我が道を行く』。
そんな二人の歩みは亀のようにのろいけれど、少しづつ少しづつ、彼等なりの新しい家庭を築き始めていた。
時に周囲にからかわれ。時に周囲に助けられ。

「あら、お義父さん。今夜は柔の家に電話なさらないんですか?」
「ふん、……たまには許してやるわい!」

(おわり)
316ろく:05/03/02 00:03:39 ID:MSq9SHo4
お付き合いいただき有り難う御座いました。
後日シメの後書きめいたものを書きにきます。ひとまずお礼まで。
317名無しさん@ピンキー:05/03/02 00:05:03 ID:FYUx19+p
キタキタキタ______(。A。)_____(。A。)____!!
エロが少なくったって十分に楽しめ、モエました!
もう次回作が楽しみです(気が早い)
318ろく:05/03/02 15:46:02 ID:kUraG5kQ
今回の話は、アトランタ終了後で柔27歳松田34歳位、お互い忙しくてすれ違いが多いのと天然ボケが災いして相変
わらず恋愛下手の二人という設定を、自分なりになるべく原作イメージを生かす方向で書きました。妄想では、柔が
眠っている松田の傍らで「富士子さん達はラブラブなのに私達はちっとも夫婦らしくない」と悩む話、だったんです
が…。自分の場合、思い悩む柔を書こうとすると文章が女々しくなりすぎるようなので、これで良かったのかもしれ
ないです。実は「いくらなんでも幼すぎやしないか?」とか「5時起きなら10時半就寝は変じゃないだろ」とか他にも
色々、書き始めてから設定の軸となる部分に疑問を感じてしまい、かなり慌てました。ぼんやり思い描いていた設定を
勢いで文章にしてしまうと、どんどんボロが出てくるものなんですねぇ…。表現力不足、説明不足が目立ち、
やたら読みづらい文章になってしまいすみません(でもこれが限界)。反省点は挙げるとキリないですが、こんな拙い
文を投下することで、同じYAWARAファンの皆さんと萌え心を共有できたのは何より嬉しかったです。
あと言い忘れてましたが、今回の話は前に書いた柔ちゃん自慰行為の話とは全く別物、ということでお願いします。
設定のストックがいくつかあるので、時間がとれそうな頃合いを見て書いてみたいと思います。その際は、また
お付き合いをよろしくお願いいたします。
319名無しさん@ピンキー:05/03/02 20:22:30 ID:Gh8Bfl0E
ろくサン乙&GJ!
エロネタなしでもかなり萌えました!
次回作も期待してます〜
320名無しさん@ピンキー:05/03/02 20:33:25 ID:r3QoRIE2
おつですー
次回作も気が向いたら
是非お願いします♪
321名無しさん@ピンキー:05/03/02 22:36:31 ID:raKqB1t8
ろくさん乙でした、面白かったです!
二人ともらしくて可愛くてひたすら萌えました。
次回作も楽しみにしとります。
322名無しさん@ピンキー:05/03/03 23:42:58 ID:x5OY3QHH
神降臨までage〜〜age゜゜.*:.。..。..*・゜(η‘д‘)η
323名無しさん@ピンキー:05/03/04 01:50:11 ID:gMxjUAPY
ろくさん乙でした
すごい面白かったですー
また気が向いた時にでも次回作お願いします
324warai:05/03/05 10:51:19 ID:hBKFJXAQ
神降臨までかいてもいいですか?投下します。

〜3年後の二人〜
松田が3年間のアメリカ出張から帰ってきて1ヶ月が経ち、毎日のようにある「松田帰還の喜び宴会」を抜け出す技も覚え、
日本での仕事も順調にいって、編集長のおかげで休みを取れることもできた。

柔と松田はその3年間を埋めるようにデートした。
「松田さん、はい、あ〜ん」
「あ〜ん」
めったに人が来ないような古いインテリアが沢山飾ってある喫茶店で二人はチョコレートパフェをほおばっていた
「おいしい?」
「うん、おいしいよ(昨日の飲み会で胃がもたれてるんだけどな・・・)」

頬を赤らめた柔が自分をまっすぐ見つめ、

「・・松田さん、私幸せ・・・あ、いや次は何にしようかな〜・・・////」

自然に出たらしいその言葉の照れ隠しに柔はメニューに目線をそらした。

・・・なんだろう・・・その言葉に胸が高まっている。
耳まで熱くなり心臓の音が外に聞こえてるんじゃないかというくらい鳴っている。
今ならなんでも出来そうな気がする。
これが幸せの絶頂というやつか?!
深呼吸をして柔を見つめる。その視線を感じてメニューから松田に目をむけた柔と視線が重なった瞬間、
せきが切れたようにその口からその言葉が飛び出た。

「柔さん、結婚してくれないか!」



325warai:05/03/05 11:21:44 ID:hBKFJXAQ
〜3年後の二人2〜

突然の言葉に柔は身動きひとつとれない放心状態になっていた。
「ごめん、突然・・・返事はいつでもいいから。(俺なんてことを・・・柔さんは今が大切な時期なのに・・)」
いそいそと二人分の料金を払おうと席を立つ松田、
(あたし、松田さんとずっと一緒にいたい・・・)
「松田さん・・・聞いて」
「・・・・・・・」
うっすら涙をうかべ微笑んだ柔をみてまたもや胸が高鳴った。
「・・・あたしでいいの?」
それが松田からのプロポーズの答えだった。

(どうしよう・・さっきとは比べ物にならないくらい嬉しい気持ちがこみ上げてくる。)
無言で二人は抱き合った。

「・・・コホン」

店の奥にいた喫茶店のマスターが顔を赤らめてカウンターに立っていた。
(見られた・・・・)
抱き合った柔からやんわりと身体を離すと料金をおき柔の手をひいて店から出て行ってしまった。
「うまくいった兄ちゃんに乾杯。」
マスターは微笑んで自分で入れたコーヒーを飲み干した。
326名無しさん@ピンキー:05/03/05 23:26:28 ID:XjvQ6mM0
お、新作!
・・・あれ?ひょっとして・・・・(伏せときます)
327名無しさん@ピンキー:05/03/06 11:03:54 ID:SdpxKZr4
ひょっとしてなに?!
328名無しさん@ピンキー:05/03/06 11:28:11 ID:uBn+c/zb
某所でお見かけした人かな?と思っただけです。場所は伏せます。
作品自体がどうとかってことじゃないです。失礼しました。
・・・続きドゾ!
329warai:05/03/06 20:10:50 ID:SdpxKZr4
見かけてくださった場所が気になります(笑)
グダグダやってすみません(汗


店から出て行ったものはいいものの、外は雨になっていた。
「雨か・・・柔さん寒くない?」
「ちょっとだけ・・・あ、傘もってますよ」
ガサガサとバックから折り畳み傘を取り出した。
「・・・あのさ、うちくる?ここから近いし。」
照れ隠しのせいか目を天に向けた松田が柔に提案してきた。
その姿がとってもかわいくて、柔は『この人がとても好きだ』と再度実感した。
「じゃあ、それまでアイアイ傘しましょ。」
「あいあい!!?」
純情中学生のように”アイアイ傘”という表現に過剰反応してしまった松田に柔は腕を絡ませ小さな傘のなかに収まり、
松田は傘をもって、ぜんまい仕掛けの人形のように自分の家まで歩いた。

無事到着。
「お邪魔しま〜す。」
柔と長年すんでいるあのアパートに帰ってきた。
(俺、緊張しすぎてどうやって帰ってきたか覚えてない・・)
柔と帰り道、何をしゃべったかすらまったく思い出せない。
「何か食べますか?」
「い・・いや今お腹いっぱい。こっちにきて座ってよ、今お茶入れるから。」
「じゃあ、失礼います。」
コタツにはいって部屋を見渡す柔さん。お茶を入れながら柔さんと過ごしてきた日々を思い出していた。
アメリカにいたときは1年に一度会いに来てくれて・・・。
「俺のほうこそ幸せだよ・・」
お茶をいれ終わった松田は、ぽそりと呟いた。
330warai:05/03/06 20:50:55 ID:SdpxKZr4
3の「柔と長年〜」と書いていますが、柔と一緒に住んでいるわけではありません。
文章力が無くてすみません(汗

〜3年後の二人〜4
部屋に戻ってみると柔さんが、かがんで何か読んでいる。
「なにしてるの・・・・!!!」
それは鴨田に借りた夜のおとも!
滝のような汗が俺から大量に流れ出ている、足が一歩も動かない・・おちつけ〜俺、おちつけー・・・。
柔さんがゆっくり振り向いた。目が怒ってる・・・・。
「松田さん、ちょっと」
声も笑ってない!!
「か・・鴨田に借り・・・」
「言い訳はいいです。別に悪いことしてるわけじゃないですし。」
(目が怖いよ柔さん・・)
「男の人ってやっぱりわからない。こうゆうのがいいの?」
パラパラとページをめくる柔さん・・これは新手の拷問かなにかか?
「あたしよりこっちの人のほうがグラマーだし・・本のほうが楽しんでしょ?」
「何言ってるんだよ。俺は・・・」
「だって最近してくれないじゃない・・」
「!!」
「最後にしたのって半年も前よ。」
「アメリカにいたときだったね・・・。」
「忙しいのはわかる。でもあたし寂しかったの。」
かえってきて一ヶ月、柔さんとはお互い忙しくて久しぶりの二人きりだ。
しかし俺の欲は本で満たされても柔さんのそういう欲求は満たされていなかった。
「”結婚してくれ”っていってくれてすごく嬉しい。でも松田さんを満たしていたのがあたしじゃないって思うと・・」
顔は、真っ赤になって目には涙がうっすら溜まっている。
「馬鹿よね・・本に嫉妬するなんて・・・」
柔さんの身体を大切にしてると一人で納得していた俺は馬鹿だった。柔さんだって普通の女性なんだよな・・・。
俺は無言で柔さんの柔らかい唇を自分の唇で塞いでいた。
331名無しさん@ピンキー:05/03/07 14:59:14 ID:hMcC8WFe
わらいさん
応援あげ
332名無しさん@ピンキー:05/03/07 20:58:59 ID:bsXIcVug
支援あげ
333warai:05/03/07 21:30:10 ID:uu2NEPNK
ありがとうございます。(感涙!!
皆さんのイメージを変えないように頑張ります。
334warai:05/03/07 21:31:50 ID:uu2NEPNK
〜3年後の二人〜5
ただ重なっていただけの唇を微妙に動かし、柔の唇を開かせる。
本能のままに位置を変え、柔の甘い吐息に満ちた口内を楽しんだ。
「・・ん・・・んふぅ・・・」
うっすら目をあけて柔の表情を間近で見つめる。
柔はそんなこととは知らず夢中で松田のキスを受けている。・・顔は紅潮してややうれしそうにも見れる。
十分にキスを楽しんでいる松田はあることに気がついた。
(今、やっちゃって1年後のオリンピックに柔さんが出れないって事になったら・・・・!!)
「っぷはぁ!!」
「?!」
松田はキスをいきなりやめて柔を引き剥がした。柔はなにがなんだかさっぱりだ。
「柔さん・・・俺、今はできないよ・・」
335warai:05/03/07 21:33:11 ID:uu2NEPNK
〜3年後のふたり〜6
「・・・なんで・・?」(あたしに魅力が無いの??)
「君は・・来年オリンピックに出るんだから・・」(君に迷惑かけたくない。今日アレないし・・。)
「・・・・・・・・」
「だから・・今は・・・」
「・・オリンピック前だからこそ受け入れて欲しいのに・・・」
松田の首に腕を回し抱きしめる。松田も耳元でそんなことを言われるとたまったものではない。
(オリンピックに近づくと当分できないんだよな〜・・)
頭の片隅では沢山の松田が柔の想いとオリンピックを天秤にかけていた。
「きょ・・今日は無理・・俺アレ持ってないから・・・」
「あれ??」
「・・・・ゴム」
(無しで出来るわけない・・(したいけど)妊娠なんかしちゃったら大変だ・・)
「あぁ」
柔はなんだか納得した顔して自分のバックをガサゴソと探し始め、何かを取り出した。
名刺入れ??何で今そんなものを・・・
「エチケットは女も大切ですよね。」
「は?」
中をみてみるとアレが入っていた。昔財布に入れるとなんとやらという噂があったよなぁ〜・・。
「名刺入れが傷つかなくて持ち運びにいいらしいですよ。」
(そうなの、勉強になった。)
「松田さん、お願いします・・・」
好きな子にそこまでさせちゃ男がすたるってもんだ松田耕作・・。
「俺のほうこそお願いします。」
俺たちはお互いに土下座していた。
336名無しさん@ピンキー:05/03/07 21:53:36 ID:/0izII21
>頭の片隅では沢山の松田が柔の想いとオリンピックを天秤にかけていた
大勢のミニ松田が天秤の周りでヨイショーヨイショー言ってる図を想像してウケタ・・・
笑うとこじゃないんだろうけど。
337warai:05/03/08 01:47:20 ID:cQO90YAe
ミニ松田万歳!カワイイ(η‘д‘*)η
ちゃんと文章になっているかなぞですが・・・投下します。

〜3年後の二人〜7
「柔さん・・・好きだ」
「あたしも・・・」
柔を布団に組み敷くと頬にキスし、段々首筋へと落としていった、同時に胸元に手を添える。
松田の大きな手にはやや余るがしっかりとした存在感のそれをシャツの上から揉みしだき始めた。
ビクッとぎこちない松田の手つきに反応する彼女に、抑えきれない欲望が溢れ出てきた。
耐え切れずシャツの中に手を滑り込ませ、直にその感触を楽しむ。
「あっ・・ま・・つだ・・さん・・」
胸の突起は硬くなり興奮していることを松田に悟られてしまっている。
興奮しているという羞恥の気持ちが益々興奮につながって松田の顔がみれない、目をつぶり声を上げて悶えることしか出来なかった。
松田はフロントホックのブラをあけると突起を口に含み軽く吸い上げたり、転がして愛撫する。
柔には含まれた瞬間に甘い痺れが全身を走った。
「あっ・・・んっ・・はぁ・・・・」
高まった気持ちが激しい愛撫に変わる。右手を下半身に下ろし内太ももを撫で、ショーツの中に手を入れ、秘部触れる。
「!!」
(濡れてる・・・・)
過剰に感じたため勢いで目を開けた柔と松田の目が合った。
「・・・・・」
「・・・・・」
ついついニコリと互いに微笑んでしまった。
(これ・・雰囲気がちがうよなぁ??)
338warai:05/03/08 20:31:47 ID:cQO90YAe
〜3年後の二人〜8
柔に唇を押し付けて目をつぶらせ、秘部に指を這わせる。
(濡れてるから大丈夫かな?)
「痛かったら言ってね・・・」
「・・・ん・っふ・・あぁ・・」
自分の愛撫に濡れている柔をみるだけでズボンの中に収めてある自分の分身は元気になっていた。
柔はその苦しそうな松田自身を薄れている意識の中で開放しようとズボンのチャックをずり下げてあげた。
「苦し・・そぅ・・・だい・・じょうぶ?」
「柔さん・・・欲しい・・・?」(一度言ってみたかったんだ。)
トランクスからも自分を解放してあげて二人は生まれたままの姿になっていた。
「・・・・////」(あたし、なんてエッチなんだろう!はずかしい!!)
柔との行為も片手で数えられる程度で、いつまでも初々しい柔を淫らに変化させてみたかった。秘部の入り口に自身をあてがう。
「・・・言ってくれ柔さん・・君の気持ちを・・・」
(松田さんも顔が真っ赤・・息も荒くて・・松田さんもはずかしいんだ・・・。)
「ねぇ・・・柔さん・・」
柔のところどころを目をそらしながら愛撫する姿をみて意を決したように涙目で松田に懇願した。
「松田さん・・ん・・ほ・・し・・ぃ・・・」
(柔さん!!)
そのまま挿入したい衝動にかられたが、松田は張った自分自身にゴムを装着し、柔に再度あてがった。
「っはぁ・・・お・・れも柔さん・・ほしぃ・・・」
「まつ・・ださぁん・・・あぁ!!」
一気に挿入し柔の奥まで突き上げ、そして急激に柔の内部が松田を締め付けた。
「ご・・めん・・乱暴に・・し・・ちゃって・・・」
松田も急激に締め付けられたことにより理性というものがはちきれそうだった。
339warai:05/03/09 01:37:50 ID:Vp25lm+p
〜3年後の二人〜9

「お・・ねがい・・もっと・・ゆっ・・・くり」

柔が松田の顔を抱きしめ、頬を赤く染め切れ切れに懇願した。
このまま昇りつめたい衝動を抑え、柔の言うとおりゆっくり挿入する動きを再開した。
ゆっくりの挿入はかえって全ての感覚を拾ってしまい、松田の熱の先端が狭い体内を満たして最奥まで達する。
動きがよりリアルに感じることが出来た。

「んあっ・・・あはぁ・・・ま・・つださ・・ん」

のけぞった柔を優しく抱きしめる。
「こえ・・だし・・て・・・」

「ま・・まつだ・・さ・・ぁん・・あた・・しもうっ。」

自分の肩に柔の両脚を掛けさせ、結合部分をを深くさせる。
「やぁ・・あ、あ、あっ・・こんな格好・・・」

(締め付け方がもっとキツクなった・・)

「あぁっ・・もう・・あたし、あたし・・・!!」

松田は限界が近づいていることを悟っり、そしていきなり下から突き上げた。
「あぁ!!!」

「・・っく!!」

柔の内部はその急激な変化に驚いて今まで以上の締め付けを松田に与え、柔は果て、松田も締め付けに耐え切れず果てた。
340warai:05/03/09 01:58:15 ID:Vp25lm+p
>松田は限界が近づいていることを悟っり←なんだこれ(。A。)失敗しました。

〜3年後の二人〜10
「柔さん、いままでごめん・・。」
全ての行為が終わり松田の腕枕の中幸せをかみ締めていた柔に松田が謝った。
「俺、柔さんのこと柔道中心で考えてた部分があった。でも柔さんもしたい時あるよね。」

天井を眺め今までの自分を見つめ返した。かなり柔道中心で考えていたことが頭の中で駆け巡っている。

「ねぇ、松田さん」
「ん?」
「あたしのこと好きですか?」
「!////・・好きだよ」
「じゃあ、許してあげます。」

腕の中でニコリと微笑む柔をみて
(絶対に幸せにしてあげたい)と心に決める。

「そうだ、松田さんから言ってもらうばっかりじゃ公平じゃないわね」
「なにが?」

きょとんと柔をみつめる。

「松田さん、あたしと結婚してください」
「!!!」

ぎゅっと松田の身体を抱きしめる。吐く息は甘い。柔らかい身体と幸せに松田は包み込まれた。

「末永くお願いします。」

テレながらも素直な気持ちで柔を抱きしめ返した。
END
341warai:05/03/09 02:01:03 ID:Vp25lm+p
これで全部投下しました。
お見苦しいものだったと思いますが、なんとか出来上がったので嬉しいです。
どうも、最後までありがとうございました。

(本当は絵描きなのでssちゃんとかけるかなぞでしたが)

またなにか話が出来れば投稿したいと思います。
342名無しさん@ピンキー:05/03/09 05:18:15 ID:wo+2ZUfr
おつですー
柔タンハアハアですな
343名無しさん@ピンキー:05/03/09 23:57:14 ID:Vp25lm+p
ageage〜
344名無しさん@ピンキー:05/03/10 15:08:49 ID:HsM1WOuw
waraiさん乙ですー
エロかった・・・
345warai:05/03/11 10:41:38 ID:U+RVbrGI
柔と松田のイメージは壊れてませんか?心配です。
ネ申の降臨おまちしてます。(。A。)
346age:05/03/12 09:55:29 ID:vDcS0QPk
age
347名無しさん@ピンキー:05/03/13 01:02:09 ID:MgfX2z6I
おつです
柔タンはAGEマンだね
348駄文浪人:05/03/13 09:06:08 ID:XDqvcI+7
唐突ですが、あの後をカキコします。ご容赦を・・・。ほんとに勝手です・・・。orz
28巻の松田さんの回・・・。(T◇T)


ズドーン!ドーン!・・・と柔道場から音が響く。かれこれ1時間は続いているだろうか。
「柔ぁ〜!何ぢゃ、其の様は!それ見たことか!なまりきっておるわ!せっかくの国民栄誉賞が泣いておるわ!」
滋悟郎が血相を上げて怒鳴り散らす。虎滋郎は黙って道場の隅で滋悟郎と柔の稽古を見守っていた。
「はぁはぁ・・・」柔もさすがに息が上がっていた。バルセロナの後もしっかり稽古はこなしていたが、さすがにアメリカの
旅行で疲れていた。オリンピック前は難なく投げていた滋悟郎だが、やはり緊張の糸が切れると柔でもなかなか素直に投げられない。
それに、あの後だし・・・
「まーったく、腑抜け取る!だから反対したのぢゃ!わしを投げるまで、稽古は終わらんぞ、柔!」
滋悟郎が体を構えている。
「はぁはぁ、おじいちゃん、全然隙がないんだもん。力技は互角だと思うけどそこまでも持ち込めないわ・・・」
いつものことではあったが、さすがに柔も「あの後」と長旅の疲れでなかなか集中力が保てない。
「でも、さすがに疲れてきたわ!お父さんとも久しぶりにあえたのに・・・。しっかりしなきゃ!おじいちゃんを投げないと徹夜よ!」
疲労困憊ながら、逆に集中しようとする柔であった。
「ほらほら!そんな腑抜けた体では、わしは投げられないぞ!」滋悟郎が容赦なく小内刈り等々で軽々と柔を投げ続ける。
ドーン!ドーン!かれこれ15分くらい続いたであろうか。虎滋郎は相変わらず黙って壁に寄りかかっている。
「なんとかしなくちゃ・・・」柔も疲労に反比例するように集中力が高まっていった。



349駄文浪人:05/03/13 09:08:45 ID:XDqvcI+7
日の木漏れ日が道場を覆っていた。

「うんっ?}虎滋郎の目が光った。一瞬の隙が・・・。
「入れるっ!」柔は滋悟郎の懐に入った・・・。
「むっ!」滋悟郎の体が宙に舞う・・・。

ズドーン!

見事な一本背負いであった!
滋悟郎が畳の上に横たわる。

「お、おじいちゃん大丈夫・・・?」

柔が滋悟郎に声をかけた
「ふんっ!腑抜てはおったが、なんとか崩れてはおらんようだったな!ここまでぢゃ!」
滋悟郎が少し息をあげながら、そそくさと一礼をして道場からでていく。

柔は少し息をあげながら、滋悟郎の背を見守っていた。そして、虎滋郎の傍に駆け寄った。
350駄文浪人:05/03/13 09:13:41 ID:XDqvcI+7
「お父さん・・・ごめんなさい。やっぱり疲れてたかもしれないけど、おじいちゃんの言うとおりだわ。
怠けちゃってたのかも・・・」
柔がうつむく。

「いや・・・」虎滋郎がつぶやく
「えっ?」柔は顔をあげた

「オヤジは一瞬の隙を作ったんだ。あの合間を見抜けるのは、そうそう居るまい、さすがだな、柔」虎滋郎が優しく柔につぶやく。
「えっ・・・」きょとんとする柔。
「さあ、飯にするか。お母さんが待ってるぞ。疲れているだろうが手伝ってやれ」
「は、はいっ!」柔もそそくさと更衣室に着替えに行った。
「さすがだな。二人とも・・・」虎滋郎が悟った目で柔の背を見守りつつ自分も道場に一礼して母屋に向かった。
351駄文浪人:05/03/13 10:09:52 ID:XDqvcI+7
玉緒は黙々と料理を続けていた、道場の音が静まった。「そろそろね・・・。」料理の盛り付けに入っていた。
ぢぶ煮やらなんやら色々と何故か滋悟郎の好物ばっかりであった。それと地獄車が・・・。

「はぁはぁ、お母さん、ごめんなさい!ちょっと稽古が長引いて。おじいちゃん、何であんなに元気なんだろ・・・」
柔が台所に入ってきた。薄黄色のセーターとグレーのスカートで、稽古とは一転しておしとやかな姿になっていた。

「柔。お疲れ様。料理は終わったから、早くおじいちゃんとお父さんの所にもって行ってね。疲れてるだろうけどね」
相変わらず、玉緒はコロコロ笑っている。でもいつも以上の笑顔で。

「は、はいっ!」柔がいそいそと玉緒が盛り付けた料理を居間へと運んでいく。いつも多い料理が、なぜか一層増して多い。
「どうしたんだろう、お母さん?あたしの分があるけど、さすがに多いわ?」
柔が、振り向いて玉緒のほうを見つめる。玉緒はぱちっっと目配せして、柔に微笑んだ。
「なんなんだろう?お母さん、もしかして松田さんとあたしのこと全部分かってるのかも?」柔は戸惑いながら居間へ料理を運んでいった。
「がんばってね!柔。おじいちゃんを説き伏せるのは大変よ。でも大丈夫!松田さんだし。」玉緒もしんみりしながら、柔の姿を見守っていた。
居間では滋悟郎と虎滋郎が、相変わらずズドンと座っていた。でも二人ともなぜかちょっと正装であった。滋悟郎も虎悟郎もなれない
ネクタイを締めていた。

「???」訳の分からない柔であったが、二人とも食欲大旺盛なので、黙々と料理を運んでいった。
352駄文浪人:05/03/13 10:12:49 ID:XDqvcI+7
「んまい!相変わらずこのぢぶ煮は絶品ぢゃ!しかしなんぢゃこりゃ、鯛の御頭まで。どうしたのぢゃ、玉緒しゃん」はぐはぐと
料理を口に運びながら滋悟郎が玉緒につぶやく。
「ええ、せっかくの家族全員ですし。奮発しました。それにね!」玉緒が柔に笑顔を見せる。
「?????」柔はますます訳が分からなくなっていた。
虎滋郎もは言葉は語らずとも滋悟郎と同じく、はぐはぐと飯を口にほおばらせていた。
みんな何故か無口であった。久しぶりに一同介したのに。でも緊張感はそれほどなかった。柔を除いて。

食事も半ばに進んだところ、滋悟が、突然「玉緒しゃん!久しぶりに皆あったので酒でも飲むかのう、なあ虎滋郎!」と叫んだ。
「あぁ、」虎滋郎も相変わらずそっけなくだが何故か笑顔で答えた。

「はい。分かりました。私も片付けがありますけど、ちょっと頂いてよろしいですか?柔も」玉緒が滋悟郎に聞いてみた。
「ふん!腑抜けた状態だが、まあよかろう。まあまあぢゃったな、最後の一本背負いは」
滋悟郎はそっけなく答えた。虎滋郎は何故かニヤっとしていた。
「わかりました。じゃあ、みんなで晩酌しましょう。久しぶりですね」相変わらずコロコロ笑顔の玉緒であった。
「あっ、お母さん手伝うわ!」柔が立ち上がろうとした。
「いいのよ。お母さんでできるわ。それにね・・・。」玉緒が滋悟郎と虎滋郎に目配せした。
虎滋郎は黙っていたが、滋悟郎は何故かちょっと照れくさそうにしていた。
353駄文浪人:05/03/13 10:51:08 ID:XDqvcI+7
「はい、晩酌です。」玉緒が「地獄車」を運んできた。
「な、なんぢゃ!玉緒さん!家族が集まったとは言え、この酒は!」しらぢらしく滋悟郎が叫ぶ。
「あらあら、まだおめでたいことがあるかもしれませんよ。」玉緒が一層笑顔になる。
「ふんっ!あんな腑抜けた技でめでたい話もなかろう!」必死に話題を引き伸ばそうとする滋悟郎。
黙っていた虎滋郎と滋悟郎は何故か二人とも同時に杯が空いた。
「オヤジ・・・」虎滋郎が思わず呟く。
「ええぃ、分かっておるや!」滋悟郎は一杯しか飲んでないのに真っ赤になっていた。
「じゃあ、わたしも少しだけ・・・」柔がとっくりに手を伸ばした時。
「まてい!!!!!」滋悟郎が叫んだ。
「柔!お主、酒に手をつける前に話すことがあるぢゃろう!」
「えっ!?」柔は一気に赤くなった「みんな気付いてる???」
虎滋郎は二杯目の杯を空けた。滋悟郎はジロッと柔を睨んでいる。
「柔・・・。正直に言いなさい。貴方から。大丈夫よ!」玉緒が真剣な顔で言う。
「お、お母さん・・」柔もその場の雰囲気を悟り、決心をした。
354駄文浪人:05/03/13 10:53:33 ID:XDqvcI+7
「お主、アメリカに気晴らし旅行と言ったが!ただの気晴らしぢゃなかろう!
そーいえば、あのハイエナ野郎がおったな!」滋悟郎の表情が一層険しくなる。
「えっ・・・!ハイエナじゃないもん!!!」思わず口にしてしまった柔!
「ほほう、ハイエナじゃなくか。松田は元気にしよったか?隠し事はいかんぞ!
虎滋郎もいるし、正直に今回のことをはなせい!柔道家としてはずかしいないように!」
滋悟郎が険しい表情の中にもなぜか待ちわびたような顔をしている。
「え・・・えっ・・・っと、その、あの・・・」真っ赤になりながら虎滋郎に目を向ける柔
虎滋郎は優しくうつむいた。
「柔。大丈夫よ・・・。しっかり」玉緒もちょっとうつむいて柔を肘でつついた。
でも表情は穏やかであった。
「お父さん・・・。お母さん・・・」柔は二人の表情を見て決心をつけた。

柔は、きっと滋悟郎の方に姿勢をただし澄んだ目で滋悟郎を見つめた。
355駄文浪人:05/03/13 10:55:55 ID:XDqvcI+7
「おじいちゃん!お父さん!お母さん!私、アメリカで松田さんと会いました!
会ったんじゃなく、松田さんの家に泊まりました!私達、お付き合いしてます!真面目です!」
柔は一気に語った。

シーン・・・。場が静まった。

プルプルと体を震わせながら「こぅのぉ不良娘が!あの情けない稽古はそのせいか!もー許さん!」
滋悟郎が立ち上がり、柔にずかずかと寄ってくる!
「あぁ、まずい!」柔が一気に青ざめる!迫り来る滋悟郎・・・。投げられる!わっ!
「待て!オヤジ!」虎滋郎が珍しく大声を上げる。
あまりの声の大きさにきょとんと二人とも虎滋郎の方を見つめる。
「お義父さんも気付いてらっしゃんでしょう。ね。私達は反対しません。いやむしろ賛成です。ね、虎滋郎さん」
玉緒が虎滋郎に微笑む。
「ああ・・・」虎滋郎も少し寂しげな顔をしながら、微笑んでいた。
「むむぅ・・・!ふんっ!まあ良かろう!あのハイエナ野郎は柔じゃないと面倒見切れんだろうからな!」
「だからハイエナじゃないって!松田さん!」柔は認められたことも忘れて、むきになり言い返す。
「ふん!猪熊家の大事な一人娘を奪っておいてハイエナと呼ばずなんと呼ぶのぢゃ!あの松田は!」
といいつつ、真っ赤になりながら上座にドンと座る滋悟郎であった。
「えっ?松田さん・・・。それじゃあ・・・」柔がおそるおそる滋悟郎の方を見つめた。
「あぁ!なんじゃかんじゃは言わん!二人を認める。しかしあんな腑抜けた柔道のままじゃ、松田に
必殺の締め技を掛けにいくからな!精進を怠るな!それだけぢゃ!注げ、柔!」
滋悟郎がそっぽを向きながら、杯を柔に差し出す。虎滋郎と玉緒も静かに一緒に差し出していた。
「おじいちゃん・・・。お父さん・・・お母さん・・・」柔は涙を抑えることが出来なかった。
356駄文浪人:05/03/13 11:31:03 ID:XDqvcI+7
ほろほろと柔の涙が食卓に落ちる。みんな黙っていた。柔はそっと滋悟郎・虎滋郎・玉緒に地獄車を
注いでいった。
玉緒が「柔・・・」穏やかな表情をしながら、とっくりを柔から手に取り、柔の杯に注いだ。
「では、乾杯といくか。何がめでたいか分からんのぢゃが!」滋悟郎は相変わらず真っ赤である。
「お義父さん」「オヤジ・・・」虎滋郎と玉緒が同時に呟く。
「あぁ、なんかか分からんがめでたいんぢゃ!乾杯ぢゃ!」滋悟郎がたかだかと杯を上げる。
それにあわせて虎滋郎と玉緒も杯を合わせる。
「おじいちゃ・・・」もう柔は涙を止めようがなかった。言葉が続かなかった。
おじいちゃんもお父さんもお母さんも認めてくれて祝福してくれる・・・。
柔も目を押さえうつむきながら杯を合わせた。
「えぇぇい!めでたい席で泣くではない!女々しい!ではいいか?乾杯ぢゃ!!!!!」
「カチン」と音が鳴り、四人とも一気に杯を空けた
「よかったな。柔・・・。しっかり松田さんと歩んでいくんだぞ。なあ!」虎滋郎は
微笑みながら、玉緒に目を向けた。「そうよ、しっかりね!松田さんと一緒にがんばりなさい」
「お父さん・・・お母さん・・・」柔はあふれ出てくる涙を必死に抑えようと両手で
顔をおおっていた。
「玉緒しゃん。なんかまだ腹がへったぞ。ぢぶ煮のお代わりはあるかね!?」
「ええ、全部お代わりありますわ。どんどん召し上がってくだされ。そちらの方が
私も片付けが楽ですわ」いつものコロコロ笑顔に玉緒も戻っていた。
「あっ、お母さん。手伝うわ!」目を真っ赤にしながら柔が玉緒の後についていく。
「長い夜になりそうだな。明日は休みでいいだろう。オヤジ・・・」虎滋郎が滋悟郎に呟く。
「ふんっ!。最後の一本背負いで少々腰が痛いわ。明日はちょっとゆっくりするかのぅ!」
「ふっ」
またまた二人同時に杯が空いた。やはり親子である。
357駄文浪人:05/03/13 11:53:23 ID:XDqvcI+7
夜もふけていった。滋悟郎はすっかり酔っ払い、「まっこと!これが〜黒田節〜!!」と
踊りだす始末。玉緒が手拍子を打っていた。虎滋郎も珍しくニコニコしながら、はぐはぐと
飯をくっている。
柔も明日休みということで、お酒の許可をもらい、久々の両親との出会いを楽しみながら
地獄車を飲んでいた。
「ところで、や〜わ〜ら〜。松田はいまどこにおるのぢゃ!」滋悟郎が目をトローンとさせて
踊りながら柔に迫ってくる。もう投げられることはないと分かりながらもまだドキドキする
柔であった。
「どこって、ニューヨークよ!それくらいおじいちゃんも知ってるでしょ!」柔も真っ赤に
しながら、答える。
「にゅーよくのどこぢゃと聞いておるのぢゃ!、今の時間だと仕事場ぢゃろう!電話番号を
ださんかい!」
「えっ、仕事中だから迷惑よ!」
「ええい、やかましい!一言松田にいわんことには寝るに寝られんわい!」滋悟郎がわめき散らす。
「で、でも・・・」柔がためらっている。
「ええい、まどろっこしい、どこぢゃ!」滋悟郎が柔の旅行かばんに迫りよっていく。
「あぁ!もう。ここよ!」柔がポケットからメモを取り出し松田の連絡先を滋悟郎に手渡す。
「うむ、それでよいのぢゃ!むむぅ、上か下か?二つあるのう!」
「下よ!松田さんの仕事場!日刊エブリーのニューヨーク支社!おじいちゃん英語しゃべられないでしょ!」
柔は最後の抵抗をしていた。無理とは分かっていたが。
「英語だかフランツ語だか知らんが、松田がおるぢゃろう!日本語でかまわんのぢゃ!」
「もう!」柔も諦め気味であった。
358駄文浪人:05/03/13 11:55:21 ID:XDqvcI+7
リーン、リーン!
こちらは日刊エブリーニューヨーク支社。柔との再会で仕事が山積みの松田であった。
現地記者の記事に目を通しつつ、自分の取材予定を確認したりと大忙しであった。
「ヘイ、マツダ!コーリング ユウ、イン ジャパニーズ!ユア ボス?」
現地社員が松田に声を掛ける。
「オーセンキュー!、プリーズ!」松田はやっとなれて来た英語で対応している。
「この時間に?編集長だな。下手な記事送ったらただじゃおかねぇって言ってたもんなぁ。
仕事は溜めたけど一応それなりの記事送ったつもりだけどなぁ」ちょっとブルーの松田。
「もしもーし、編集・・・」
「くぉらぁ〜このハイエナ野郎〜!!!よくも柔に手を出したな〜!明日必殺技を掛けに
飛行機に乗るから覚悟しておけ〜!!!!」
柔はとめることも出来ず、顔を片手で覆って、うんざりしていた。

キーン・・・

「じ、滋悟郎さん???」編集長より怖い人である。
「全部聞いらぞ、柔から!よくも猪熊家の一人娘に手を出しらな!その度胸は認めて
やらう!ただ、明日の命は保障せんぞ!」
一気に青ざめる松田。「柔さん、滋悟郎さんに話したんだ〜。いやそれはいいけど
これは・・・まずい・・・!」電話の迫力に押され気味の松田であった。
しかし気を取り直し
「は、はい!俺は柔さんさんとお付き合いしてます!本気です!真面目です!
信じてください。柔さんもそういってくれているはずです。許せないなら受けて
立ちます!」滋悟郎の凄さを知ってるだけに、声は震えていたが、もうこれは
柔さんでも止められないだろう。松田は覚悟した。でも車の中では勘弁してくれ・・・。
「ごちゃごちゃうるさいのぢゃ。柔も泣いておったわ!これ以上柔を泣かせるのは
断じて許さん!!」
「えっ!」柔さんが泣いてる??滋悟郎さんが認めてくれなかったのか?それともあの
言葉がやっぱり重荷だったのか?柔が泣いていると聞き動揺する松田であった。
359駄文浪人:05/03/13 12:54:02 ID:XDqvcI+7
「な、なんで柔さんが泣いているんですか?お、俺のせいですか?!」必死に理由を
探す松田。
「ええい、ごちゃごちゃうるさい!わしも虎滋郎も玉緒しゃんも柔とお主の仲を認める
といったのじゃ!柔は嬉し涙ぢゃろう!ただしわしはお主が許せんのぢゃ!」
「もう、おじいちゃん!さっきおめでとうっていってくれたじゃない!」柔が思わず
電話口の滋悟郎に駆け寄る。
「ま、松田さん、お忙しいのにごめんなさい。みんな気付いてたので、正直に話して
おじいちゃんもお父さんもお母さんも認めてくれて、祝福してくれたのに、おじいちゃん
よっぱらって・・・」柔が必死に謝る。
「そ、そうなのか・・・。良かった・・・。いや柔さんが泣いてるって聞いて、もしかしたら
結婚前提が重荷だったのかと・・・」ほっとしながらも柔の声を聞いてちょっと松田も震えていた。
「い、いいえ。そうじゃなくて、本当に、おじいちゃんもお父さんもお母さんも認めてくれたの。
それで嬉しくて泣いちゃっただけ。それだけです。心配しないで・・・」
柔もこんなにすぐ松田の声を聞こえるとは思わなかったが、報告できてよかったと思っていた。
「そ、そうか。それなら安心したよ。後は滋悟郎先生の技に耐えるだけだな。が、頑張るよ!」
といいつつ、声が震える松田であった。
「いえ、おじいちゃんかなり飲んだから冗談だと思うけど、どうなるかわからないし・・・。
あたしも止められるかどうか・・・」柔も青くなりながら松田に伝えた。
「そ、そうか・・・」逆上した滋悟郎先生は、さすがの柔さんでも無理かもしれない。松田は覚悟を決めた。
柔から電話を取り上げた滋悟郎。
「わしゃー、本気じゃ!!!仕事場荒らされたくなかったら、自宅で待機しとけ!柔道家の情けじゃ!」

ガチャ!しーん

「ヘイ、マツダ!アーユーオーケー?」松田の動揺ぶりにドライなアメリカ現地社員も声を掛けてきた。

「オ、オフコース!アイム、ファイン!」認めてもらえた嬉しさと「来るべき」滋悟郎の必殺技の間で
板ばさみになる松田であった。実際必殺技をかけられるのは、半年後の帰国の時ではあるが・・・。
360駄文浪人:05/03/13 12:55:09 ID:XDqvcI+7
「もう、おじいちゃんったら!冗談でしょ、止めてよ!おじいちゃんが本気で締め技かけたら
松田さん、死んじゃうわ!」必死に滋悟郎を説得する柔。
「わしゃー、本気じゃ。ただ歳だしのう!長旅はつらいわ!松田の野郎が日本に帰ってきた時
家に呼べ!そこでじっくり柔の相手にふさわしいか試してやるわい。その時は虎滋郎もきて貰うぞ
よいな!」滋悟郎がニヤっと虎滋郎を見る。
「そうだな。松田君は柔にふさわしいと思うが、けじめはつけないとな」虎滋郎もめずらしく
冗談をいい、笑っていた。
「もう、おじいちゃんも、お父さんもいい加減にしてよ。二人相手に松田さんがかなうわけ
ないでしょ!」
「いーや、そんな根性なしなら、猪熊家の大事な一人娘を預けることはできん、なあ虎滋郎!」
滋悟郎は相変わらず、ニヤニヤしながら地獄車を口に運んでいる。
「はは、そうだな」虎滋郎もうなずく。まあ実際会う以外は冗談であるが。
「もう!松田さんになんかあったら許さないから!」締め技は冗談とは分からず本気で怒っている
柔であった。
361駄文浪人:05/03/13 12:56:28 ID:XDqvcI+7
「さて、わしはそろそろ寝るかの。明日は休みとするが、あさってからはいつもどおりぢゃぞ。
いんや、旅行の浮かれ気分を抜くために2時間追加ぢゃ!良いな。ではわしは寝る!」
「は、はい。おやすみなさい!」柔は軽く会釈した。

自室に入った滋悟郎。ふすまを閉めふと顔を上げた。目線の先には「カネコ」の写真があった。
「カネコさん、柔も徐々に成長しておるぞ。心配せんでくれ。相手の松田と言う奴もどうして
なかなかしっかりした奴だ。安心できるぞ。でも何かのために柔を「カネコ」さんの分も
見守るからな。」
「カネコ」さんに報告した滋悟郎はふと気が抜けて、ぐっすり寝入ったのであった。
362駄文浪人:05/03/13 12:56:57 ID:XDqvcI+7
滋悟郎が抜けて、親子三人になった。虎滋郎も酔っ払っているようだが、それほど騒ぐことも
なく黙々と飲んでいた。玉緒もちょっと顔を赤くしながらも杯を進めていた。
「お父さん、お母さん、あたし、柔道もまた一生懸命がんばる。松田さんもあたしが頑張っている
ところがとても素敵だと言ってくれたし・・・」
柔も久々の日本での休日と言うことで顔を赤くしながら、杯を進めていた。
「ああ。松田君ならお父さんも安心だ。またパリに帰らないといけないが、距離は離れていても
大丈夫だ。それは柔が一番分かっているだろう。お父さんやお母さんと同じ気持ちで松田君も
アメリカで柔のことを思ってくれながら、がんばるだろう。心配はいらないさ。」
「そうよ。お母さんも松田さんと聞いて安心したわ。早く孫の顔がみたいわね、ね、あなた」
「ふふ、そうだな」虎滋郎もうなずいた。
「ま、まだそういう段階じゃないけど、松田さんも次のオリンピックが終わったら帰国できる
みたいだから、もう少しさき・・・かな・・・」顔を赤らめて柔は言った。
「まあ、次のオリンピックはもっと厳しいだろう。フランスの選手も柔を目指して励んでいる。
マルソーもまた強くなったぞ。柔との対戦を楽しみにしてる。覚悟して稽古に望め!」酒が
入りながらもキッとして虎滋郎は言った
「は、はい!」柔もキッと澄んだ目で答えた。金メダルが目標ではないが、柔道を一生懸命
やることで、お父さんも、お母さんもそして、松田さんも喜んでくれるだろう。私も今は
柔道が本当に楽しい。この楽しさを教えてくれたのはずっと私を見守ってくれていた松田さんの
おかげである。親子水入らずの団欒をこころ行くまで味わいながら、猪熊家の夜はふけていった。
363駄文浪人:05/03/13 14:22:31 ID:XDqvcI+7
〜数日後〜

いつもの日常がもどりつつあった。仕事と稽古の毎日である。
「猪熊さ〜ん、せっかく仕事も早く終わったしちょっと食事にいかない?」鶴亀トラベルの
同僚が声をかけてきた。
「あっ、ごめんなさい。今日はちょっと予定があって・・・」ちょっとそわそわしている柔であった。
空港で取った写真が出来る日なのである。
「え〜何々〜。彼氏アメリカでしょ〜。浮気はだめよ〜」同僚が柔をからかう。
「そ、そんなのじゃないわよ。本当にちょっと用事があって」顔が赤くなる柔。
「冗談よ。猪熊さんが彼氏にぞっこんなのは分かってるし!稽古も忙しそうだしね。
猪熊さんが浮気するわけないもんね〜。行こう。じゃあ、またね!」同僚は二人で飲みに行くようである。
「う、うん。ごめんね。また誘ってね!」柔は同僚に声をかけ、いそいそと写真店にむかった。

同僚には正直に松田のことを話していた。羽衣課長代理にも松田のことは話しておいた。
マスコミにばれてもよかったが、まだ早いかなと羽衣と相談してマスコミには伏せておくことにした。
羽衣が同期には口止めをしてくれたので、幸い漏れてはいない。いざと言う時は頼りになる
上司である。
364駄文浪人:05/03/13 14:24:24 ID:XDqvcI+7

帰り道写真店により、帰宅後の稽古をこなしてぐったりの柔であった。袋を机の上に置き
しばらくベットの横になっていた。
「はぁ、さすがに疲れるわね〜時差ボケもあるし・・・。」平日は仕事と稽古で疲れて
そのまま早く寝てしまう柔であったが、今日は写真を飾り、松田へ手紙を書かないといけないので
ちょっと夜更かししていた。

「さてと・・・」柔はべっとから立ち上がり、袋から写真を取り出した。ちょっと顔が火照っている。
写真はきれいに取れていた。笑顔で腕を組み、Vサインをしている柔と松田。数日前のことなのに
もう大分前のような気がする。写真をみると、切ない気持ちと腕にからまる松田の感触がよみがえって来る。
やっぱりちょっと寂しいかな。今度会えるのは春頃であろう。本当なら週末にでも会えるに。こればかりは
しかたがない。

柔は机の引き出しから空港で交換したメモを取り出し、写真立てにメモと写真を入れて机に立てて
頬杖をつきながら、しばし見とれていた。松田に手紙を書き写真を同封して机の上にそっと置いた。
「松田さん・・・。私達大丈夫ですよね。待ってます・・・。」柔は写真の松田の顔とメモに目を通し
ベットに横になり、眠りについた。

柔さんへ 柔道をしてる君はとても素敵だけど、そのままの君はもっと素敵だ。柔さん好きだよ。
君を好きでいられて、俺は幸せだと思う。本当にありがとう。 耕作より
365駄文浪人:05/03/13 14:26:32 ID:XDqvcI+7
年の瀬も迫るニューヨーク。本来なら柔に会いに帰国してついでに実家にもよりたいところであるが
年がら年中とっかんどっかんスポーツイベントがあるアメリカ。松田は一人で年越しを迎えようと
していた。
ベットの横には柔からの手紙が置いてある。先日届いたが、激務のためすぐに寝ていたのでまだ
封は開けていなかった。本当はすぐにでも開けたかったが、年越しを迎えて一人なのは分かって
いたので、その時にゆっくり読もうと思っていたのだ。
ビールをベッドサイドに起き、松田は柔からの手紙をの封を切った。
写真が一枚と便箋が入っていた。

松田さんへ

お元気ですが?東京も本格的に寒くなってきました。ニューヨークはもっと寒いのでしょうね。
お体に気をつけて・・・。先日松田さんと過ごした日々がとても遠くに感じます。でも寂しくは
ありません。ほんとは・・・ちょっと寂しいけど・・・。空港の写真が出来上がりました。
机の上にあのメモと一緒に飾ってあります。松田さんも、私のメモに飾ってくれると嬉しいな。
あっ、そうそうそろそろ耕作さんって書いちゃっていいですか?ちょっと恥ずかしいけど、
あなたのこと名前で呼びたいんです。いいですよね。それでは耕作さん、また会える日まで・・・。
私がんばります。 

柔より

松田はそっと微笑み、自分のことを名前で呼んでくれる柔に喜んでいた。
「あ〜そういや、俺は柔さんってずっと呼んでたけど、柔さんは俺のこと松田さんって
言ってたなぁ。なんでだろう。でも柔さんも嫌がってなかったし。不思議なもんだな」

写真の柔はあふれんばかりの笑顔であった。松田も空港での腕の感触がよみがえってきた。
柔さん・・・。俺も愛してるよ・・・。松田も写真立てに写真とメモを入れてベットの脇に置いた。

松田さんへ あたしも松田さんが大好きです。今あたしがいるのは松田さんのおかげだと
思います。私にとって一番大事な人・・・。愛してます、松田さん。 柔より。
366駄文浪人:05/03/13 14:28:06 ID:XDqvcI+7
松田は窓からニューヨークの街を眺めていた。相変わらず夜まで車が行き来している。
雪がちらついている。柔と初めてキスをしたあの日。松田はその感触を思い出しながら
しばし雪をながめ、ベットに入った。

元旦・・・
「こら〜柔〜!初詣のあと、初稽古ぢゃ!」さっさと準備せんかい!」滋悟郎が
あいかわらず叫んでいる。
「はーい!ちょっと待ってよ〜!」振袖を玉緒に着付けしてもらいながら柔は
準備をしていた。
「もういいか?」虎滋郎が入って来た。
「ええ、準備できましたわ」玉緒が笑顔で虎滋郎を迎える。

「まっこと遅い!さっさと行くぞ!ほれ!」滋悟郎も乱入してきた。
「いたたたた、せっかくお母さんが着付けしてくれたんだから襟ひっぱらないでよ!」
柔が相変わらず、口答えする。
「ええい、やかましい!虎滋郎・玉緒さんもいいな?行くぞ!」

4人で近くの神社に向かっていった。
「4人で初詣というのも久しぶりだな」虎滋郎が呟いた。
「ほんとね・・・」玉緒も呟いた。
「ふん!虎滋郎、お主がふらふら放浪しておったからぢゃ!」滋悟郎がせかせかと歩きながらブツブツ文句を言っている。
「今年から5人よ」柔が呟いた。
「あん?」滋悟郎が呟く「どこにもう一人おるぢゃ?おとそをもう飲んだのか?」滋悟郎が柔に聞く
367駄文浪人:05/03/13 14:30:18 ID:XDqvcI+7
「ちがいます!ここです!」柔が着物の胸から、手帳に入った松田と柔の写真を取り出した。
「な、なんぢゃと!そんなもの持ち歩いておるのか!そんな腑抜けた態度では金メダルはおろか、アトランタも
怪しいぞ!家において置くのぢゃ!」
「柔道場以外は、何を持っていようが、私の勝手でしょ!それにこれは私のお守りなの!」柔が滋悟郎にベーっと
して「さっ、お父さん・お母さんさっさと行きましょう!」と二人の手をとりすたすたと歩き出した。
「ああ」「そうね、クスっ」虎滋郎と玉緒は柔に引っ張られつつ、歩みを進めた。

「こ、こらまたんかい!柔〜!」滋悟郎が必死に「4人」の後を追いかける。

松田と柔の将来を祝福するかのような澄み切った世田谷のあっぱれな日本晴れ。

アメリカ旅情編おまけ Fin 
368駄文浪人:05/03/13 14:35:03 ID:XDqvcI+7
あとがき

いつ書こう。いつ書こうと思い、YAWARA!と出会い一年がすぎました。
一時期のように読みふけることは少なくなりましたが、たまに読み返すと、
やはりいいですね。
本当につたないおまけ編で。だらだらとカキコしてしまいました。しかも
エロなしで。。。orz
完全に自己満足の世界ですが、平にご容赦ください。
なんかやっと肩の荷が下りたようなきがします。

まったく未定ですが、駄文浪人ワールド(そんな大層なものでもないですが)と
して、結婚後のちょっとすねた柔ちゃんとか書いてみたいなぁと妄想する
今日この頃です。

本当にありがとうございました。
369名無しさん@ピンキー:05/03/13 16:40:30 ID:TRQodIMU
GJ!
370warai:05/03/13 19:49:30 ID:QxWl4qnX
おつかれさま〜面白かったです!゜゜.*:.。..。..*・゜(η‘д‘)η
猪熊一家大好きなので読めてよかったです。
次回作楽しみにしています。
371名無しさん@ピンキー:05/03/13 20:24:32 ID:UBFscCCF
駄文浪人さん、お疲れ様ですー!
旅情編リアルタイムで読んで、それからずーっと待ってたので、続きが読めて嬉しかったです。
次のお話も期待してます!!
372名無しさん@ピンキー:05/03/13 20:25:25 ID:MgfX2z6I
職人さんたちおつです。
最近、また盛り上がってきて
ロムってる方としては
嬉しい限りです。
373名無しさん@ピンキー:05/03/13 22:29:56 ID:LqdAjy45
waraiさん駄文浪人さん乙でした。
立て続けに創作が読める幸せ…
自分で書くより読むほうが100倍面白いです。
374名無しさん@ピンキー:05/03/13 22:52:59 ID:bfsUA/N4
駄文浪人さん、GJ!エロなしでも十分楽しめました!
特に、虎滋郎サンの描写が凄く味が出てて良かったです。
この続きでの次回作もお願いします。
375駄文浪人:05/03/14 02:33:21 ID:pArr2TdT
お褒めの言葉、身に余る光栄であります。駄文・駄文といいつつ、やはり
読んでいただけると書きがいもあるというものであります。他の職人さんの
SSも読ませていただき、その方なりのYAWARA!への思い入れが伝わってきて
YAWARA!ファンとしては嬉しい限りです。
最近他スレとかファンサイトもちょっと寂しい状況なので、ここが盛り上がって
いると非常に嬉しい限りです。本当に柔ちゃんはかわ(・∀・)イイ!
あんな彼女が欲しいとおもう今日この頃です。
上でも書いたとおり、次回作は未定ですが、ほんとに気ままに投稿してるので
また見かけたら、読んでやってください。足掛け一年以上で途中長く中断してたので
お待たせしてしまったことを深くお詫びするとともに、今一度スレ住人のみなさんに
感謝したいと思いまする。
376age:05/03/14 20:44:41 ID:HW1eNVId
ageage
377名無しさん@ピンキー:05/03/15 23:17:43 ID:mkxtnQJu
駄文浪人さん激しく乙です。
アメリカ旅情編を読んだ後の感慨深さは、なんだか本編最終回を読んだ後の
それと勝るとも劣らないものがありました。
続編がある?って噂を聞いて密かに待望してたりしました。
半ば諦めかけてたんで読めてよっかったです。次作も期待してます。
378名無しさん@ピンキー:05/03/16 22:35:04 ID:TdJeN8Lj
あたしもずっと好きだった
379名無しさん@ピンキー:05/03/17 20:19:49 ID:OM/jkEyL
泊まっていくか?
380名無しさん@ピンキー:05/03/17 22:44:08 ID:1I7ws+1J
新たな連載、お願いします。
求む、神・降臨!
381ろく:05/03/19 01:28:53 ID:RcGA7AL4
こんばんは。遅くなりましたが前回の話終了後に感想くださった方々、どうも有り難う御座いました!
今、前回の続編めいたものを書いています。ただ、ほんの序盤あたり(たぶん全体量の3分の1以下)
までしか書けておらず、そこから先は殆ど骨組み状態です。あと、恐ろしく遅筆なのと、この先忙しくなる
かもしれないので間があく可能性大です。それで構わないようでしたら投下始めようかと思っているんですが、
他の職人さん達は、状況いかがなものでしょうか…?
他の方の連載が始まるようでしたらor住民の方々の反応がなさそうでしたら、もう少し書きためてからにします。。。
382warai:05/03/19 19:05:54 ID:QQ4VK0uY
すんごい読みたいです!!間が開いたって待ってますから投下してください★
383名無しさん@ピンキー:05/03/20 12:11:18 ID:c4C0Mkum
ろくさん
ガンバ!
384名無しさん@ピンキー:05/03/20 12:27:57 ID:Kpf+eshE
楽しいデートの帰り、柔の部屋へ行くことになった松田。
「今夜こそ、決めてやるぜっ!」と意気込んでいた。
が、ある重大なことに気づき、突然もじもじし始めてしまった。
その様子を見ていた邦子は、今夜何かが起こる!と確信した。
次回「松田…靴下に穴が…しかも両足…」


邦子「柔、お前、俺のこと好きなんだろ?
 目を見りゃわかるって…おれもお前のこと好きなんだから」
突然の告白に戸惑いを隠せない柔。
だって、私べつに邦子のこと好きじゃないもの…。
勘違いしまくりの邦子の運命は??
松田「柔の彼氏は僕ですよ」
お楽しみに!!

「松田…、君を抱きたい」
柔の突然の告白に動揺を隠せない松田…!
そしてその告白により、密かに慕い合っていた松田と邦子の関係に微妙な空気が流れるようになってしまう…!
次回「三人、そして…」
柔「松田…俺は君をあきらめたりはしない」
いきなり次回予告というサイトで作りました。なんじゃこりゃ!という展開。
暇つぶしに読んでください。
385名無しさん@ピンキー:05/03/20 17:51:09 ID:hDnu3toB

ここは高校の練習場。
日曜の午前中は道場の掃除と筋トレと基礎練なのだが、今日はお盆のため来ているのは柔だけだ。
なにをするわけでもない。
ただ畳の上に寝転び目をつぶっている。

「はぁ……」
今日は練習をするつもりはない。
けれど、この畳の匂いは好きだ。
気持ちが落ち着くのはなぜだろう。
真夏の太陽がじりじりと体温をあげていく。
将来のこと・柔道のこと、色々なことが浮かんでは消えた。
遠くで野球部のバットや掛け声が響いている。
それに混じって足音が近づいてきた。
386:05/03/20 17:57:36 ID:hDnu3toB
「たのもう!!!」
ガラガラと道場の扉が開いたかと思うと、柔道着姿の二人の男が入ってきた。
慌てて立ち上がると声をかけた。
「あの?」
「貴様が猪熊柔か!一本勝負を頼みたい!」
やれやれと内心柔はため息をついた。
あいにくそんな気にはなれない。
今日は練習するつもりできたのではなくただふらりときていただけなのだから。
なにより柔道着ももってはいない。

「ごめんなさい…今日はできません」
「なにをお?逃げるのか貴様!」
「違います。今日は練習日ではないので。ごめんなさい」
「天下の猪熊柔もおじ気ついたか!」
387:05/03/20 18:10:43 ID:hDnu3toB
「(むっ…)ちがいます」
「いや違うな。俺様にびびっているのだろ」
「ちがいます。お引き取りを。」
「…松田っていったかなあいつ」
「?」
「勝負受けないとどうなるかわかんないよ彼氏」
「!?…彼氏じゃありません」
「ふーん…」
「いったいなんなんですかあなたたち」
「俺、黒田つーんだけどさぁ、山川高の柔道部なんだけど、君に勝てば次の試合だしてもらえるんだよね」
「つーわけでさあ。頼むよ」
だらだらと二人は喋る。
松田の話をだしたかと思えば、自分の話。柔は思わず真面目に聞いている。
「な、一回でいいからさ、頼むぜ」
「…でも私、今日何ももってません」
「…あーだいじょぶ。オレらの貸すし。」
「……はぁ…」
「まじ?じゃあオレらの申し出正式に受けてくれるの?」
「……はぁ…」
まんまと乗せられたかんじはしたが、どうせすぐに終わるだろうと柔は承諾した。
黒田という男は、がたいのいいいかにも柔道部というかんじだがどこかヤンキーのような印象を受ける。
一方もうひとりの男は木村というらしい。
筋肉質だかやや背が低い。
388:05/03/20 18:21:15 ID:hDnu3toB
木村から手渡された柔道着の袋を手に、女子トイレに向かう。
そして汗ばんで張りついたワンピースを脱いで、はたと気付く。
「……Tシャツは…?」
慌てて探すが袋には入っていない。
慌ててワンピースをかぶりなおし、木村のもとにかけよる。
「あの、Tシャツがないんですけど、、」

するとなぜか木村はにやりと笑った。
「ないよ」
「!え…。」
「いまさらやめるとかなしね。一回受けたんだからさ」
にやにやと木村は笑う。
その様子に慌てたのは黒田だった。
「き、木村先輩。やばいっすよ」
「うるせえ。な、猪熊さん。不戦勝でもいいんだぜ?」
「……そんな…卑怯です」
「じゃあ着替えておいでよ。早くしないと午後の練習で人が集まっちゃうよ」

(ちょっとまって。Tシャツがないならあたし…いや!そんなの…!)
うつむく柔をにやにやと木村は見つめる。
黒田はどうなるかを想像して顔を真っ赤にしている。
「着替えておいでよ。負けたくないんだろ?」
木村をきっとにらむと柔は小走りにトイレに向かっていった。
389:05/03/20 18:37:41 ID:hDnu3toB

道場に入ると木村は正座し、黒田が真ん中で立っていた。
柔は真っ赤な顔で、だがまっすぐに黒田を見据えている。
胸元はきつく閉じられ、鎖骨の辺りまでが確認できる。

「じゃあはじめるか。はじめ!」
ストップウォッチを片手に木村が叫んだ。
柔は横にとぶ。黒田は軸足を後ろに引く。
間合いを一気につめて一本勝負。
そうすればすぐに終わる。
腹をくくり間合いをとる。
その瞬間、左襟首をとられる。
「くっ!!」
その次の瞬間思い出す。
(!胸!)
無情にも柔の胸元が大きく開かれる。
「やっ!やだっ!」
足は踊るように間合いをはかり続ける。
黒田は鼻息荒く柔のむっちりとした白い谷間を凝視している。
「やっ!やぁっ!」
必死に胸元を直そうと腕を使おうとするがうまくいかない。
焦れば焦るほど胸がゆれる。
胸元はどんどんひっぱられあらわになる。
柔はもうパニックだ。
顔を真っ赤にして必死に胸を隠そうと奮闘する。

一方、対戦相手の黒田も必死には変わりなかった。
小柄な柔の甘い匂い、初めて接する女の匂いに頭がくらくらする。
そのうえすぐ前にはたゆんたゆんと揺れる白いおっぱいが見える。
薄い水色のブラジャーからはみ出るむっちりとしたもの。
気が遠くなりそうだった。
390:05/03/20 18:51:42 ID:hDnu3toB

「はあっ、かあっ、はあっ」
口で息をし、目を血走らせ、顔を真っ赤にする坊主頭の黒田。
その視線から必死にのがれようと柔は身をよじり、己のふくらみから目をそらす。
(いやっいやっ…!見られてる…!見ないで!見ちゃイヤ…ッ!)
半泣きで無理矢理に身を捩ったそのときだった。
襟元をつかんでいた黒田の親指が、ブラジャーの肩紐をずり下げた。
むき出しになった柔の華奢で白い左肩と、そして乳首までぎりぎり見えそうなおっぱい。
汗ばんでほんのり桃色に染まっている。
「だっ…だああっ!」
黒田は慌てるが視線が外せない。
「や…いやああっ…!」

慌てた弾みでぐらりと二人の身体が揺れる。
黒田の足首にひっかかり柔は尻餅をつく。
上からのしかかる黒田の巨体。ぐっ…と二人の身体が重なる。
反射的に柔は抵抗し技はとられていないが、自分の体勢に気付いた。
乳房に埋まるように黒田の大きな顔がある。
鼻息が谷間に生暖かい。
「!!!!いやっ!いやっ!もういいですから!イヤぁあ」
391名無しさん@ピンキー:05/03/20 18:54:25 ID:hDnu3toB
すみません休憩です
392通りすがりの小説家:05/03/21 01:01:51 ID:mq5Srb2H
あれからもう二十年もたつのか・・・
月日が経つのは早いものだな
二人の気持ちがやっとひとつになったあの日から

今のこの幸せな生活、あの頃は全然想像していなかったな
いまでは、二人の可愛い娘と息子、そして愛すべき妻に囲まれて・・・
平凡といえばそれまでなのだが自分にとってはこれ以上すばらしいことはない
自分はこの家族のためだったら、どんな困難なことだってできるつもりだ
393通りすがりの小説家:05/03/21 01:02:26 ID:mq5Srb2H

「あなた、朋絵の服を見てよ。どこか、見覚えないかな?」
その服は綺麗に見えたのだがどこか古めかしかった。
「これは、あなたが私がまだ高校生だったときに買ってくれたもの。
 今思えば男の人に何かを買ってもらうのはあれが初めてだったかな。」
そういえば、あの頃は柔さんは風祭に夢中で自分のことなど無視していたかな
「似あってるよ。朋絵。お前も、もうその服を着る年になったのか。」
朋絵は少し照れたのか、足をもじもじさせていた。
「ねえ、お父さん。お母さんの若い頃はどうだったの?」
朋絵が無邪気な笑顔を浮かべて話しかけてきた。
「お母さんはね、今も綺麗だけど、若いときはもっと綺麗で可愛かったよ。
 特に、柔道をやっていたときは輝いていたよ。」
「じゃー、今は輝いていないってわけですか?」
柔がむすっとした顔で答えた。
「なにいってんだよ。今も輝いてるよ。最高の妻じゃないか。」
柔は嬉しそうな顔をしていた。
「ねぇ、お父さん。お父さんはお母さんから何かもらったの?」
雄滋の顔は素朴だった。
394通りすがりの小説家:05/03/21 01:03:13 ID:mq5Srb2H
今思い出せば、柔さんから何かをもらったという記憶はあまりなかった。
あの頃はそういう関係じゃなかったからな。
まぁ、料理を二回ほど作ってもらった記憶はあるけど・・・

「雄滋。お父さんはね、お母さんから沢山の夢をもらったよ。
 一人では、きっと叶えられなかった夢を。」
雄滋は不思議そうな顔をしていた。
「さぁ、早く行こうか。そうしないと混んで大変だぞ。」
「そうね、早く行きましょうか。あなた。」 
柔は幸せそうな顔をしていた。

今日は、家族でディズニーランド。
松田家久しぶりの一家団欒だった。
395名無しさん@ピンキー:2005/03/22(火) 19:55:14 ID:KfAQX2aK
柔たんあげ
396名無しさん@ピンキー:2005/03/22(火) 23:42:02 ID:EYuYqNvB
松田さんさげ
397名無しさん@ピンキー:2005/03/23(水) 00:22:19 ID:BdTMxkaR
松田さんもあげ!
398ろく:2005/03/24(木) 01:06:03 ID:NpqzygQC
そろそろ大丈夫かな…
先日書いた「一つ屋根の下で」の続編にあたる「一つ屋根の下で2」です。
脳内設定ではだいたいこんな流れになっています。
96年アトランタ五輪後松ちゃん帰国→97年春ごろ結婚→約半年後「一つ屋根の下で」
→約半年後98年春「一つ屋根の下で2」
この流れだと超有名人の挙式にしては準備期間が短すぎるかもしれないですが
その場合松田が帰国する前からぼちぼち準備を始めていたとでも思っていただければと…
399ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:08:03 ID:NpqzygQC
1

『プロ野球速報です』
ニュースキャスターの声にぴくりと反応した柔は慌てて箸を置き、ブラウン管に向かって姿勢を正した。
『パシフィック・リーグ。開幕4日目となる今夜、ナイトゲーム3試合が行われています……』
手慣れた調子で原稿を読み上げる滑舌の良い声が、一家が夕餉を囲む茶の間に響き渡る。
『大阪ドーム、近鉄対西武は現在3回裏、近鉄の攻撃。1対0で近鉄がリード……』
夫の松田はこの試合開場に足を運んでいる筈だ。試合状況を確認し終えた柔は軽く息を吐き、
てんこ盛りのおかずがズラリと並ぶ座卓に向き直った。
「耕作さん、この試合の取材中なの?」柔と向かい合わせで座る玉緒が尋ねる。
「うん…。」湯気の立つ味噌汁に息を吹きかけつつ返す言葉には、何となく覇気が無い。
「予定通りなら今日明日は大阪ドームで取材して、明後日帰ってくるわ。」
「一週間も家を空けおって!相変わらず、見事なまでの駄目亭主振りぢゃ!」里芋の煮転がしをパクつきながら
滋悟郎が毒を吐く。
「…もう。お仕事なんだから仕方ないじゃない。忙しいのは腕を買われているからよ。あの人が記事を書くと
売り上げが全然違うんだから。」
400ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:09:45 ID:NpqzygQC
2

4年に及んだNY駐在員としての武者修行は松田を大きく成長させた。本質を見抜く眼力を持ち、臨場感溢れる
記事を書く松田記者に注目するスポーツ愛好家は多く、柔の夫という事実も加わり、今や名うてのスポーツ記者
として次期編集長の呼び声高い存在となっている。
「耕作さんみたいな方が柔の旦那様だなんて、お母さんも鼻高々だわ!…ところで柔。その『松田さん』
って呼び方、いい加減早く直しなさい。結婚して1年になるのよ?」
「一応、直そうと努力してるんだけど…。どうしてもしっくりこなくって。向こうの家では、ちゃんと
耕作さんって呼ぶようにしてるから、安心して。」向こうの家とは、山形に住む義理の両親のことである。
「ハイエナ三流男、とでも呼んどればいいんぢゃ!」
「おじいちゃん!松田さんはハイエナでも三流でもありません!松田さんがどれだけ凄い記者か、毎日
記事を読んでるおじいちゃんならよーく分かるでしょ!」

RRRR……その時電話が鳴った。
「はい猪熊です……あー、松田さん!仕事中じゃないんですか?」
(すぐに連絡入れなくてごめん、実は今日明日の取材、別の奴と交代する事になって。今、北下沢の駅なんだ。
その辺で晩メシ食ってから迎えにいくから。)
401ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:10:47 ID:NpqzygQC
3

「えー!そうだったんですか?晩御飯なら、今ちょうど食べてる最中なんです。うちで食べてください。」
(え?…いいの?)
「当たり前でしょ!…じゃあ、準備して待ってますね。」
電話を切り、振り向いた表情は生き生きと輝いていた。
「お母さん、松田さんがこれからうちに来るって!取材、変わってもらえたんだって!」
そう言うとばっと立ち上がり、座卓に並ぶ大分箸の進んだおかずの残量を、頬に手を当てつつ確認する。
「わー、どうしよう!おかず、足りるかな?魚の煮付けくらいならすぐに出来るわね。お母さん、冷蔵庫の
切り身使ってもいい?あと、おじいちゃん!ご飯おかわりしちゃ駄目だからね!残りは、松田さんの分!」
「な、何ぢゃと?」
底なし胃袋の滋悟郎に釘を指すと、ぱたぱたと台所に向かった。
「ほほほ…。柔ったら、あんなにはしゃいじゃって。」
先程までぼんやりと冴えない表情をしていた娘の変わり様に、玉緒の顔が綻ぶ。
それに対し、ご飯のおかわりを禁じられた上、夫の帰宅で孫娘がはしゃぐ様を見せつけられた滋悟郎は
何とも面白くない。
(松田め〜、飯釜の中に痔の薬でもぶち込んでやりたい気分ぢゃわい!)
402ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:11:35 ID:NpqzygQC
4

「づ、疲れた……。」
柔と電話で話した後、松田は足を引きずるようにしながら家路に向かっていた。
骨折とぎっくり腰で記者二名の欠員を出し、おおわらわの日刊エヴリー。松田もその例外ではなく、今回は
大阪に飛ばされていた。
大相撲春場所を千秋楽まで見届け、その足で開幕間もないプロ野球3連戦の取材に向かい、野球の取材を
交代し本日朝イチの新幹線で帰京、都内で取材を三本こなし、会社に戻り超人的スピードで原稿を書き、
整理部の仕事である筈のレイアウト作業をやらされ、購買意欲をそそる見出し作りに頭を悩ませ……。
漸く解放された今、彼の目の下にはクマが幾重も重なってしまっている。
通常、スポーツ紙では種目別で細かく担当分けして記者の専門化を計るものだが、日刊エヴリーでは
掛け持ちでこなしており、一日で相撲、サッカー、プロレスと3種目跨ぐなんてこともざらにある。
おかげで情報収集だけでもかなりの時間を割かねばならない。
疲労のあまり頬の痩せこけた社員達の苦情に対し、多くの人員を雇う余裕など無いと言いつつも、
どうやらこれは現役時代に希望と反するジャンルの担当に押し込められ鬱屈した経験のある編集長の、
彼なりの温情的配慮というものであるらしい。
他の記者仲間はどうであれ、好奇心の塊のような松田にはこの方針が案外性に合っているようで、
人使いの荒い会社だと愚痴をこぼしながらも実は密かに感謝したりもしていた。
403ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:12:14 ID:NpqzygQC
5

しかしやりがいのある仕事とは、得てして気力体力の限界と隣り合わせというもの。若い頃は何とか
こなせていたが、最近は疲れを感じて仕方がない。
(俺も、もう歳なのかなぁ…。)背中に哀愁を漂わせてとぼとぼ歩くうち、気が付けば猪熊家の門前に
辿り着いていた。柔は、おそらく真っ先に出迎えてくれるだろう。
『……あー、松田さん!仕事中じゃないんですか?』
久し振りに聞いた柔の声。短いやりとりだったが、声の調子から自分に会うのを楽しみにしている事が
十分伝わってきた。毎度毎度ほったらかしにされているというのに、有り難い話だ。
(彼女の前では、疲れたとこは見せないようにしないと!)
松田はそう決心すると玄関先でぐっと背筋を伸ばし、引き戸に手を掛けた。
「こんばんはー。」
「帰ってきた!」その声を聞いた柔が、たたっと玄関へ駆けていく。
「まあまあ…。本当に耕作さんにベッタリね。」
「ふん!あんな野郎のどこがいいんぢゃ!」
半ば吐き捨てるようにそう言うと腕を組み、不満を露わにする滋悟郎であった。
404ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:13:02 ID:NpqzygQC
6

「お帰りなさい!!」松田の姿を視界に捉えた柔は駆け寄り腕を取ると、きゅっと抱きついた。
「ああ、…ただいま!」たったそれだけで、鉛のように重かった体が軽くなる気がするから不思議である。
「入って入って!」柔は甘えん坊の子供のようにぐいぐい腕を引っ張り、松田を茶の間に連れて行った。

「どうも、戻りました。」茶の間の入り口で立ち止まり、ぺこっと軽く頭を下げる。
「すいません、お邪魔しちゃって…。」
(…あら……)
自分も挨拶をしようと松田の顔を見上げた玉緒は、僅かに表情を曇らせた。
「…何言ってるんです、ここは耕作さんの家じゃないですか。出張、お疲れさまでした。お腹空いたでしょう?
大したものはないけど、沢山食べてくださいね。」
しかしそれはほんの一瞬で、労いの言葉を口にし、にこっと微笑む。
一方、柔は予定より早い夫の帰還ですっかり上機嫌である。
「松田さん、ここに座って!」座布団を引っ張り出すと自分の隣にポンと置き、着席を促した。
405ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:13:59 ID:NpqzygQC
7

二人が席につくと、それまで黙りこくっていた滋悟郎がゆっくりと片目を開き、松田をぎろりと睨み付けた。
「で、約束の品はどうなったんぢゃ。」
「これです。…全く、『地元住民が存在を隠したがるという噂の幻の一品』だなんて、注文が曖昧な上に
厳しすぎますよ。」ブツブツ文句を言いながら、持っていた紙袋から菓子折を取り出し滋悟郎に差し出す。
滋悟郎はそれを片手でぞんざいに受け取ると、包装紙のかかった箱の表裏を、品定めするかのように
じろじろ眺めた。
「これは確かに大阪でいっちばん美味い、幻の一品なんぢゃろうな?」
「う…。試食してみて…俺は、美味しいと思いましたけど……。」
実は探す時間など取れる筈がなく、通りすがりに見つけた何となく古めかしい店構えの和菓子屋に飛び込み
その中で選んだ品なのだが、本音を言えば帰りついでにkioskで買わなかっただけでも感謝して欲しい所である。
「よしご苦労。ハズレなら送り襟絞めぢゃ。」
「んな!」
「おじいちゃん!忙しい中わざわざ買ってきてくれたんじゃない、もっと感謝してください!」
「耕作さん、有り難う。いつもすみません。」
「い、いえいえ……。」

(…そういえば『イチゴ大福』って結構有名じゃなかったか?………絞め技ってホント苦しいんだよな…。)
土産の選択を誤ったことに今頃気付き、平静を装いつつも内心腹をくくる松田だった。
406ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:14:52 ID:NpqzygQC
8

「あっ、そうそう!うっかり大事な事を忘れてたわ!」玉緒がぽん、と手を打った。
「今日、虎滋郎さんから電話があったの。うちと柔と耕作さん、みんなで近い内にパリに来ないかって!」

後進の育成の為、遠く離れたパリに居を構える虎滋郎。しかし6年前、バルセロナで親子感動の対面を
果たしてからは、猪熊家では約半年に一度の割合で、頃合いを見計らいつつフランスと日本を交互に
行き来するようにしていた。…最も玉緒に限っては、その合間にもちょこちょこ夫に逢いにいっているのだが。
「えー!お父さんから電話があったの?」
「ちょうど国内の大会が終わって一息ついたところなんですって。マルソーさん、柔に早く会いたくて
待ちきれないって言っているそうよ。」
柔がパリに出向く時は、虎滋郎がコーチを務める道場にも顔を出す。その為、虎滋郎の愛弟子である
マルソーとは、二人の年齢が近いことも手伝って、今ではすっかり仲良くなっていた。
「マルソーが?うわー、早く会いたいなー。」
「ほう!マルちゃんが手合わせを望んでおるとな?飽くなきチャレンジ精神、まっこと見上げた心がけぢゃ!
柔よ、その申し出受けてやれい!」
「またそうやって、都合良く解釈する…。大きな大会が終わった直後なら、暫くは息抜きしたい筈よ?
……でも、マルソーがそういうつもりだったら、それもいいかな…。」
407ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:15:49 ID:NpqzygQC
9

マルソーのような強い相手となら時を問わず、何度でも戦ってみたい。それに、そうすることで
松田だって大喜びしてくれるだろう。
今回の訪問が実現すれば、松田とは新婚旅行以来、二度目の海外旅行になる。柔はシャンゼリゼ大通りを
松田と手を繋いで散歩する光景を頭に浮かべた。過去の訪問中、虎滋郎の案内で家族揃って大通りを
歩く際、無意識の内に手を取り合い、言葉少なげに前を歩く両親の姿を微笑ましく眺めていた柔は、
いつか自分も、この大通りを松田と手を繋いで歩きたいというささやかな夢を抱いていたのだ。

「うひょー、夢の対決再びか!くぅーっ、これは是が非でも見たい!!」マルソーとの手合わせが満更でも
なさそうな柔の様子に、松田は興奮を抑えきれず拳を固めて天井を仰いだ。
「ほほほ…。耕作さんにとっては初めてのパリ行きね。仕事の調整、出来そうかしら?」
「あ。」松田の動きがピタリと止まる。
「そうだ、今、記者仲間に二人欠員が出てるんだった…。休みが欲しいなんて、とてもじゃないけど
言えそうもないなぁ。有給はたんまり残ってるんですけど…。」そう言うと、がっかりと肩を落とした。
「そう…。残念だけど、大事なお仕事ですものね。虎滋郎さんにはそう言っておきますから。」
「せっかく誘ってもらったのにすみません。…柔さんは、勿論行くよな?」
気を取り直し、隣の柔に笑みを向ける。
「え?う、うーん…。」『シャンゼリゼを二人で散歩』の夢は、儚くも一瞬でしぼんでしまった。
408ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:16:30 ID:NpqzygQC
10

柔の気落ちした様子を横目でチラリと確認した滋悟郎は、大口を開け小皿に盛られた肉団子を一気に
流し込むと、口をもぐもぐさせつつさも苦々しげに言い放った。
「フン!…どうせ柔がいないうちに羽根を伸ばそうという魂胆ぢゃろうて!」
それを聞き、口に含んだ味噌汁をあやうく吹き出しそうになる松田。
そんな松田には目もくれず、滋悟郎はオーバーな身振り手振りを交えながら、いつもの『迷』調子を
披露し始めた。

「妻の留守中、これ幸いと夜な夜な『倶楽部』に通い詰め、綺麗どころを侍らせては飲めや歌えの
乱痴気騒ぎ!挙げ句、お目当ての『ほすてす』を札束をチラつかせつつ口説き倒すと、手に手をとって
夜の街へと消えてゆくのであった…!!嗚呼!哀れなるはそれを知った我が孫娘!一人冷たい布団の中で
声を殺してむせび泣きィ!」

(あーあ、また始まったよ…。)この『盛り上がり癖』、どうにかならないもんかな。
「しょうがないな、滋悟郎さんは。なぁ、柔さん……」
「ま、ま、まつださん……?」
唇をわなわなと震わせ、その表情は見る見るうちに強張っていく。
「へっ?!な、何だよその目、柔さん!俺がそんな事する訳無いだろ!」
(大体『札束をチラつかせ』って、何者だよ俺は!)予想外の妻の反応に、松田は慌てふためいた。
409ろく「一つ屋根の下で2」:2005/03/24(木) 01:17:13 ID:NpqzygQC
11

「…本当かしら……。」拗ねたようにポツリと呟き、顔を俯かせる柔。
「ちょっと、勘弁してよ、柔さん……。」
(いつもの与太話に決まってるじゃないか。素直なのはいいけど、ここまで鵜呑みにしちまうのは
考えものだよな。)
日頃、滋悟郎に翻弄され続けている自分の事は棚に上げ、何とか機嫌を直してもらおうと矛先を変えた。

「で、でも、良かったな!何たって、久し振りにお父さんに会えるんだぞ?仕事に差し支えなければ
出来るだけ長く、ゆっくりしてこいよ!」

努めて明るい調子でそう言いながら、小さな背中をぽんと軽く叩く。
「長いほど、いいんですか?」
その努力も空しく、柔はきっ、と顔を上げ、上目遣いで松田を睨み付けた。
「ええ?そうじゃないって、せっかくの機会だから……。」

(離れ離れになったって、松田さんはちっともさみしくなんかないって訳?)
何かと刷り込みされやすい性格は、昔からちっとも変わらない。大弱りの松田を睨み付ける柔は
大人気なくぷぅっと頬を膨らませると、つん、と横を向いてしまった。
見かねた玉緒が口を挟む。
「柔、いい加減にしなさい。それに、お義父さんも。耕作さんに限って、そんな事無いですわ。」
410ろく:2005/03/24(木) 01:25:44 ID:NpqzygQC
以降、小出しになります
間空くかもしれませんので他の職人さん書けていたら
気にせずどうぞ。
411名無しさん@ピンキー:2005/03/24(木) 16:31:19 ID:MvkrCE9L
続きがはやくよみた〜いage
412名無しさん@ピンキー:2005/03/25(金) 22:38:41 ID:nUmgen1K
つ・・続きを早く・・・。
413名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 22:12:38 ID:g3E7jcWO
続きプリーズ?
ダメっすか?
414名無しさん@ピンキー:2005/03/27(日) 22:31:19 ID:bqNCm7CX
間あくってかいてるじゃん。
はやる気持もよくわかるけど、職人さんにも生活があるわけだし。
暖かく見もってやれ。
415warai:2005/03/29(火) 00:52:06 ID:MzuTEDZ+
三年後の二人〜結婚前夜〜1

「松田さん、あたしと結婚してください」

「末永くお願いします。」

・・・ーあれから3ヶ月、俺たちは明日結婚する。

明日の晴れ舞台を祝って、猪熊家で両家その他をあわせて大宴会をやっている最中に俺は部屋から抜け出し、
縁側で酒をチビチビやっていた。
柔さんと出会って10年が経とうとして、俺は本当におっさんになった気がする。
当時17歳だった柔さんと24歳の俺、はっきり言って犯罪じゃないか!ストーカーっていわれても仕方が無い。
あのころはおてんばだったし、俺にきついことも言っていたのに・・。
いろいろ変わって、めまぐるしかった10年間。

「嫌われてるとおもってたんだよなぁ〜・・・」

「何やってるんですか?松田さん」

「お?柔さん、抜け出してきたの?」

「松田さんがいないから探しにきちゃった。」

416warai:2005/03/29(火) 00:54:43 ID:MzuTEDZ+
三年後の二人〜結婚前夜〜2

か・・・かわいい・・・。

「松田さん、どうしたの?」

「い、いやぁ・・柔さんに会った当時は、こんな風になるなんて思わなかったから、当時のこと思い出してたんだ。」

「あたしも、松田さんの第一印象って最悪でしたから。」

「やっぱり・・・」

「でも、いつからかなぁ・・松田さんがとっても側にいないと、とても寂しく思い始めたのは・・」

ため息をついて遠い目をする柔さんが月明かりに照らされてとても綺麗だ。
本当に彼女が明日、俺のお嫁さんになるのか・・・。

「松田さんのお休みも明日までなんですよね・・さみしいなぁ・・・」

そうだ!俺は急遽、結婚式が終わったら九州までいかなきゃならなくなったんだぁー!!
新妻ほっといてなんなんだよ日刊エヴリー。
九州とか、遠すぎだよ。
せっかくの柔さんとの・・・・初ゃ///・・・。

「松田さん、今だけでいいですからもっと近寄ってもいいですか?」

「え?あ、あぁ」

いかんいかん、妄想に突っ走ってしまった。

417warai:2005/03/29(火) 00:58:47 ID:MzuTEDZ+
三年後の二人〜結婚前夜〜3
「松田さんにこれからは堂々と甘えてもいいんですよね。」

「柔さん・・・(いじらしい!)」

柔さんの頭が俺の肩にやんわりと乗せられた。
柔らかい髪の毛にシャンプーの匂い、それだけでわかる寂しい思いをさせているんだろうな・・。
新聞記者って仕事は休みも少ないし、給料安いし。
本当に彼女を幸せにできるのだろうか・・。
じっと見つめて彼女の方を抱いた。息がかかるほどに顔がちかくなった。

「松田さん・・」

「柔さん・・・」

ターゲットロックオン。到着まであと6センチ!5.4.3.2.1・・・

「主役二人がなにやっとるんじゃぁ〜」

「わ!」

「きゃ!」

酔っ払った滋悟郎が縁側に乱入してきた。酔っ払っているので松田と柔の行動にまったく疑問を感じず、
二人の首根っこをつまんで引きずって部屋に連れて行った。

とにかく、明日はめでたい結婚式である。
418warai:2005/03/29(火) 01:41:21 ID:MzuTEDZ+
とりあえず場持たせで書かせていただきました。

表現力が稚拙ですが、ご容赦ください(汗

これからも神の降臨をお持ちしています。

ろくさんがんばって!
419名無しさん@ピンキー:2005/03/29(火) 23:47:19 ID:sJsgWOIi
ろくさん、わらいさん
おつです。
気長に待たせてもらいますよ。
420名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 22:22:39 ID:0eIfHTNK
ネ申降臨望むage
421名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 09:19:34 ID:exGrf6ln
ここは日付かわるかな
422ろく:皇紀2665/04/02(土) 00:09:18 ID:XKuWT0Fx
waraiさん乙です。
成る程結婚前夜ですか…。良いなあ、この話。


自分の話を待ってくれていた方、遅くなってすみません。
423ろく「一つ屋根の下で2」:皇紀2665/04/02(土) 00:10:34 ID:XKuWT0Fx
12

小型蛍光灯に照らされた流し台の前に、二つの影が並ぶ。柔は、夕食が終わるといつもこうして玉緒と
台所に立ち、後片づけを手伝うのが習慣になっていた。

「…出来るだけ長く行って来い、だって!」玉緒が水切りカゴに重ねた食器を布巾で磨きをかけ、
背後のテーブルに並べる。ある程度たまったところで食器棚にしまい込む。
「しかも、何か喜んじゃって。」ぶつぶつ文句を言いながら、手際よく食器を片づけていく。
玉緒は黙ってそれに耳を傾けていたが、食器を洗う手を休め、苦笑いを浮かべた。
「柔。」
その、いつになく強い口調に驚いた柔が、くるっと振り返る。
「片付けはいいから。ちょっと、そこの椅子に座りなさい。」玉緒はそう言い、テーブルを指差した。

テーブルを挟み向かい合わせで座ると、玉緒は殊更厳しい表情で話し始めた。
「駄目じゃないの。」
「え…?」
424ろく「一つ屋根の下で2」:皇紀2665/04/02(土) 00:11:26 ID:XKuWT0Fx
13

「出来るだけ長く、ゆっくりしてこいって耕作さんが言ったのは、どうしてだと思う?」
「それは……、」
「長い付きあいの耕作さんには、貴方がお父さんと離れ離れでどれだけ寂しい思いをしてきたのかが
良く分かるからでしょ。貴方を思いやってそう言ってくれたのよ。これ位、冷静に考えれば分かる筈
なのに、どうしてあんな冷たい態度を取るの?」
「だって…、おじいちゃんが。」
「耕作さん、物凄く疲れた顔してたじゃない。」
「疲れた顔?」
玉緒は呆れた、という風に目を見開いた。
「貴方まさか、気付かなかったの?お母さんは耕作さんの顔を一目見て、すぐに分かったわよ?」
「全然、気付かなかった…。」
「きっと、貴方に気を遣わせたくないから、無理して空元気だしてるのよ。それなのに子供みたいに
はしゃいだり、拗ねたりして困らせて。」
425ろく「一つ屋根の下で2」:皇紀2665/04/02(土) 00:12:15 ID:XKuWT0Fx
14

柔は、暫し無言で玉緒を見つめていたが、ついと目を逸らすと、伏し目がちに言った。
「松田さんって、いつもあんな感じだから……。」
「だから?」
「…いつの間にか、それが当たり前だと思っちゃってた。どんな我が儘言っても笑って許してくれるって。
どういう思いで接してくれているのか気付いてあげられないなんて、妻失格よね…。」
「どんな時も、夫に対してさりげない気配りを忘れない事。それが、妻の心得ってものよ。…分かった?」
「…はい。ごめんなさい。」
玉緒は項垂れてしまった我が娘を愛おしげに見つめ、ふっと息を吐いた。
最近気付いた事だが、父親にろくに甘えることが出来ないまま育った娘は、少女の頃からずっと自分の
傍にいる松田に父性を求めてしまっているようなのだ。娘にとって松田は、夫であり、柔道の指導者であり、
そして父親代わりでもあるらしい。
優しい性格の松田に限って、それを疎ましいなどとは思わないだろう。だからといって、甘えが高じて
あのように拗ねてしまうのでは、娘の全てを受け止めようとしてくれる松田があまりにも気の毒だから、
その辺は自分がしっかり灸を据えておかなければならない。これは夫の行方を案じるあまり、娘を充分に
構ってやれなかった自分の責任もあるだろうから…。
426ろく「一つ屋根の下で2」:皇紀2665/04/02(土) 00:13:05 ID:XKuWT0Fx
15

「今時、あんないい人、なかなかいないんだから!耕作さんが柔と結婚してくれて、本当に良かったと
思ってるわ!柔もそう思うでしょ?」
「うん…。そう思う。」
松田以外の人間が自分の夫になる事など、絶対に考えられない。
「だったら、もっともっと労ってあげなさい。甘えるのはその後!ね?」玉緒は悪戯っぽくウィンク
すると、にっこり微笑んだ。
「さてと、お母さんの小言は、これでお終い!後片づけの続き、やっちゃいましょ。」
立ち上がり流しに向かう母親を、椅子に腰掛けたまま目で追いかける。
「…うん。」

小さい頃から求め続けてきた家族の絆を手に入れる事が出来て。もう独りぼっちなんかじゃなくて。
ずっとこれを望んでた。私、今、すごく幸せ。
でもいつの間にか、その幸せの上に胡座をかいてしまっていた。大好きな私の家族は、それに気付いても
普段通り優しく接してくれていた。……情けない。
柔は、鼻歌交じりに食器を洗う母親の、まろやかな丸みをもった後ろ姿を見つめながら呟いた。
「これじゃ私、赤ん坊みたいじゃない…。」
427ろく「一つ屋根の下で2」:皇紀2665/04/02(土) 00:13:51 ID:XKuWT0Fx
16

その頃茶の間では、松田がじごろうの晩酌に無理矢理つき合わされていた。
「何ぢゃ、若いもんが情けない!ホレもっとつき合わんか!!」
「す、すいません。今日はこの辺で…。」
このまま、うわばみの事後労ペースに合わせていたら、完全に酔い潰れてしまう。
「ほう、義理の祖父の酌なんぞにこれ以上つき合えんと!稀代の柔道家の夫が、かような冷酷人間で
あったとはのう!」
「い、いえ、そんな訳では!じゃあもう少しだけ、いただきます!!」松田は愛想笑いを浮かべながら
自分の杯に酒をなみなみと注ぐと、ぐいっと飲み干した。
事後労は、飲み残しがあったらただではおかぬといった風に、松田が手に持つ杯を覗き込むと、一転して
しみじみとした口調でこう呟いた。
「可愛い孫娘と、へっぽこ腰抜け三流記者が夫婦になって一年が経つのう…。」
「そうですねえ。」一箇所聞き捨てならない表現があったが、あえて触れずにおく。
「松ちゃんよ、ちょいと耳を貸せ。」にやりと底意地の悪い笑いを浮かべ、人差し指をちょいと動かした。
「はい?」
言われるままに顔を寄せる松田の耳元でこう囁く。
(時に、夜のほうは上手くいっとるのか?)
「は、はぁっっ!?!?」
義理の祖父の思いもよらぬ発言にぶったまげた松田は、反射的に体を仰け反らすと手足をわたわたと
動かして退いた。
(い、いきなり何言い出すんだ?このジイさんは!!)
428ろく:皇紀2665/04/02(土) 00:20:48 ID:XKuWT0Fx
やっちまった!
×じごろう・事後労
○滋悟郎
事後労て、馬鹿丸出しやん!脳内変換お願いいたします
429ろく「一つ屋根の下で2」:皇紀2665/04/02(土) 02:14:52 ID:XKuWT0Fx
17

「ちと豊満さに欠けるが、あやつの体もなかなかのものぢゃ。毎日稽古をつけてやってるわしには
よーく分かっておる!お主、日本一の幸せ者ぢゃぞ?ほっほっほっ!」
滋悟郎のこの一言で、(たまに)行為に及ぶ時の、自分の腕の中に収まった(滅多に拝めない)
しなやかな肢体が生々しく脳裏に浮かび上ってしまい、酔いでほのかに赤らんでいた松田の顔は、
瞬時に茹でダコのように真っ赤に染まってしまった。
「……。じ、滋悟郎さん酔ってます…?か、勘弁してください、に、肉親がそういう事言うのって、
エグすぎますって…。」
自分の頭の中を見透かすように意地悪く笑う滋悟郎の視線に耐えきれずにふいっと下を向くと、
蚊の鳴くような声でもそもそ呟いた。
「で、どうなんぢゃ!」
容赦なく詰問する滋悟郎の苛立った様子に観念した松田は、ばっと顔を上げてこう答えた。
「じ、順調ですとも!心配ご無用!!は、ははは…。」
「フン!ろくに顔も合わせんで、順調もくそもあるかい!」
「ぐ。」
痛いところを突かれ言葉が詰まってしまった松田を、それ見た事かと言うように睨みつける。
「良いか、松田ぁ!生涯忠誠を誓った己の妻は、勾玉を扱うように大事にせねばならんのぢゃ!」
「はい…。」(ま、勾玉…。そこは宝石でいいだろ…。)
「…とうとう、お主にこの話を聞かせる時が来たようぢゃの!」
「は?」
430名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 19:00:04 ID:3NqNzm3b
ろくさん応援あげ♪
431名無しさん@ピンキー:2005/04/02(土) 21:49:18 ID:nigCAkaZ
キタ━━(´д(○=(゚∀゚)=○)д`)━━!!
432ろく:2005/04/02(土) 22:13:22 ID:Yu7hKYjS
ありがとうございます。↑でアフォな変換してしまってすみませんでした。
433ろく「一つ屋根の下で2」:2005/04/02(土) 22:14:21 ID:Yu7hKYjS
18

滋悟郎は鼻からふんっと息を吐き、意気揚々と立ち上がった。
「思いおこせば昭和11年、離れに敷かれた真新しい布団の脇で、新妻カネコは頬をほんのり赤く染めえ!」
(おいおいそんな話隠し持ってたのかよ!)不本意ながら少々興味が沸いてしまった松田だが、このまま
放っておけば終わりはいつになるか分からない。
「ちょっとちょっと!やめてください、そんな話聞きたくないですって!」
身振りを加え朗々と語る滋悟郎の腰を掴み、何とか座らせようとする。
「わしとカネコの、壮大なスケールで綴られた愛と感動の一夜を、『そんな話』呼ばわりするとは
何事ぢゃ!」
「壮大なスケールなら余計聞きたくないですよ!こっちは出張帰りで疲れてるんです。…ほら、座って
座って。」
「フン…、張り合いのない奴ぢゃ。」
つまらなそうにそう言い腰を降ろすと、今度は背中を丸め、げほごほと咳き込み始めた。
「ゲェーッホ、ゲホ、ゲホ…、しっかし、わしももう歳ぢゃの。情けない話ぢゃが、ここんとこ咳が
出るわ、胃はもたれるわで、柔の稽古の相手を務めるのが堪えてのう…。」
434ろく「一つ屋根の下で2」:2005/04/02(土) 22:15:05 ID:Yu7hKYjS
19

(?……滋悟郎さん、柔さんの扱いについて、俺に説教するつもりなんじゃなかったのか?)
松田は滋悟郎の変わり身の早さに疑問を感じながらも、.それでも小言を言われるよりはましと
この猿芝居につき合う事にした。
「まーたそんなわざとらしい咳をして。あれだけ飲み食いして胃がもたれる程度なら、充分健康体
でしょう。大丈夫ですって、滋悟郎さんは『この人不死身か?』って位にお元気ですよ。」
「言いたかないが、わしの寿命にも限りがあるわい!しかも最近、イボ痔の気もでておる。腰を
降ろすたびに激痛のあまり命を削るという、恐ろしい病ぢゃ!しかし、それでも曾孫に柔道の稽古を
つけるまでは死んでも死にきれんわい…。全く、いつまで待たせる事やら…グェーッホ、ゲホ、ゲホ。」

(ひまご!?)

「あのー曾孫って、柔さんと俺の子供、ですよね…?」
「当然ぢゃ。柔とオランウータンの子供である筈がなかろう。」
あっけらかんとした口調でそう言うと、滋悟郎は杯をぐいっと煽った。
435ろく「一つ屋根の下で2」:2005/04/03(日) 02:08:24 ID:NsV8SAc9
20

「わしの計画では、国民栄誉賞受賞後、ただちにしかるべき相手と見合いをさせ、ド派手な婚儀で
世間をあっと言わせる予定だったのぢゃ。予定通りなら、今頃わしは日の当たる縁側で、可愛い曾孫に
囲まれてホッペを突っついたり突っつかれたり、オデコを突っついたり突っつかれたり………まあ、
そのような幸せな毎日を送っていた筈だったのぢゃ。それが何を血迷ったか柔の奴、『結婚はまだまだ
先の話』などと、のらりくらりとかわしおって。結果、このように婚期が遅れてしまったのは自業自得
とはいえ、まっこと不憫でならぬ!!」
「ま、まあ、それには色々と込み入った事情が…。」松田の背筋に冷や汗が伝わる。
「…誰かさんが、アメリカで4年ものんびりしておったお陰でな!!」
「…はい、俺のせいです……。申し訳御座いません……。」
滋悟郎は手に持っていた杯を叩きつけるように座卓に置くと、人差し指を松田の眼前に突きつけた。
「ええい、しょげてる場合か!いいか良く聞け、松田!あやつは今年で28。子を産み母としての喜びを
知るには遅すぎる位ぢゃ。それに、出産と子育ては母体に過分な負荷がかかるもの。初産の年齢が
上がる程、復帰に時間がかかる事ぢゃろう。そんでもって、柔は2年後のシドニーオリンピックも
2階級制覇を目標に据えておる。オリンピック代表の選考試合に、妊娠出産の為欠場するなどという
事態は死んでも避けねばならぬ!よって、子を為すチャンスは限られる。それが、『今』ぢゃ!」
436ろく「一つ屋根の下で2」:2005/04/03(日) 02:09:14 ID:NsV8SAc9
21

「…………。」
松田は滋悟郎の迫力に圧倒されてしまい、すぐには返事が返せなかった。
そうだ。柔さんは、世界の頂点に君臨するに値する実力を備えた、いわば『神に選ばれし人間』
なんだ。適当な時期に子供を作って、その機会を台無しにする訳にはいかないんだ…。
女性スポーツ選手の『子作り調整』に関する噂は、仕事柄何度か耳にしてきたけれど、まさか
その噂を聞き込みに回る立場であった筈の自分が、調整する側に立つことになるなんて。
今回の滋悟郎の発言で、先程まで自分の隣ではしゃいでいた小柄な女性が、日本国家をしょって立つ
立場の超一流アスリートであるという事実を、改めて思い知らされた松田であった。

「そうですね、今、なんですよね…。」
松田は宙を見据え、一言づつ噛みしめるように言葉を繋いだ。
「一々言わねばそれ位も分からんのか、この呆けナスが!そうと決まれば今日仕込め!必ず仕込め!
そんでもってめでたく懐妊ぢゃ!」
その態度がいかにもやる気がなさそうに見えたのか、滋悟郎が唾を飛ばしつつハッパをかける。
437ろく「一つ屋根の下で2」:2005/04/03(日) 02:10:02 ID:NsV8SAc9
22

「い、いや、今日必ずと言われても、こればかりは運もあるだろうし…。仮に今すぐ妊娠してしまったら
時期的に、次の体重別選手権に出場出来なくなりますよ?」
「この大会は、欠場してもオリンピックに影響は及ばん。この際切り捨てぢゃ。」
「し、しかし…。」
「試合より、柔と顔を合わせる暇のないお前さんの事情も考慮してやろうと譲歩しておるんぢゃ!!!
このたわけ、ちったあ有り難く思わんかい!!」
「でも、この大会での柔さんの活躍を心待ちにしているファンも多い訳でして…。」
「……お主まさか、いい歳して『やり方が分からん』などとほざくのではなかろうな…?成る程!
それで今まで仕事で忙しいフリをして逃げておったと、そういう事であったのぢゃな!これはこれは…。
そうとも知らず無理な注文を押しつけて、申し訳ない事をしてしまったものよのう!」
煮え切らない態度に業を煮やした滋悟郎が、あからさまに挑発する。
「そ、そんな事、ある筈ないでしょう!!!」
まんまと乗せられてしまった松田は、ぶんぶん首を振り否定すると杯に酒を注ぎ、がばっと飲み干した。
「分かりました!ま、任せて下さい!俺も男だ、しかと仕込んで見せましょう!!」
438名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 13:09:47 ID:aCcspXLB
ろくさん応援あげあげ
439ろく「一つ屋根の下で2」:2005/04/03(日) 14:18:17 ID:NsV8SAc9
23

「何を仕込むの?」台所にいた柔が、ひょいと顔を覗かせた。
「おお、グッドタイミングぢゃ!柔よ、聞け!松田が今夜はやると……むぐぅ」
「こら、滋悟郎さん!!あぁっいや、な、何でもない!」
「ふふっ、相変わらず仲がいいですね!でも松田さん、無理してつき合わなくてもいいんですよ?」
滋悟郎のきわどい発言を阻止しようと慌てて口を押さえ込む様子が、柔の目には子犬がじゃれ合っている
かのように写ったらしい。柔はくすくす笑いながら、松田の隣にすとんと座った。

滋悟郎は覆い被さった松田の手を邪険に振り払うと、腕を組み滋悟郎らしからぬ厳かな様子で話し始めた。
「柔よ。」
「なあに?おじいちゃん。」
「暫くの間、稽古は免除する。」
「え!?どうして…?」
「今夜はもう帰れ。夫婦が久し振りに顔を会わせたのぢゃ、積もる話もあろう。それに、オリンピックは
まだ先ぢゃ。わしも鬼ではない、今のうちに二人でのんびり朝寝坊でもするが良かろう。」
「お、おじいちゃん……!」思いもよらぬ労りの言葉に、柔の目に大粒の涙が溢れ出す。
「…ありがとう、おじいちゃん!」感極まった柔は、がばっと滋悟郎に抱きついた。

「稽古を免除、って…。滋悟郎さん、本当にいいんですか…?」
「孫娘の幸せが優先ぢゃ、柔道家に二言は無い!その代わり今宵……、分かっとるだろうな!」
(やべえ。滋悟郎さん、本気だ…。)
必ず、柔さんを妊娠させろって?どうしよう、勢いで変な約束しちまった……!!
440ろく:2005/04/03(日) 14:23:17 ID:NsV8SAc9
>438
ありがとうございます。

ひとまずキリのいいところまでうpしました。また少し、間があいてしまうかもしれません。
ちなみにエチーは、も少し先です… 
441名無しさん@ピンキー:2005/04/03(日) 23:32:29 ID:Gra/pheu

ろくさん、waraiさん乙です。
続きマターリお待ちしております。
442ろく「一つ屋根の下で2」:2005/04/05(火) 23:52:02 ID:bbs6hKcy
24

実家を後にした二人は、ゆったりとした足取りで肩を並べて歩き出した。
「すぐそこの公園に、一本だけ早咲きの桜があるんですよ。散歩がてら、少し遠回りして見に
行きませんか?……あっ、疲れてるんですもんね。早く帰らなきゃ!」
「おっ、いいねー桜かあ。いや、俺はゆっくりでいいよ。そうやってのんびり歩くのって、何か
気分いいし。それに遠回りっていっても、近所ならせいぜい数分の差だろ?」
勿論、気分がいいのは隣に柔がいるせいでもある。
「じゃあ、見に行きましょ!…でね、その公園って、大体このくらいの時間に猫がいるんです。
公園の隣の家の飼い猫と、窓を挟んでじーっと見つめ合ってるの。今夜もいるかな?」
「…柔さん、実家から戻る時、いつもそうやって寄り道してるのか?」
「うん。」
勝手知ったる近所とはいえ危ないじゃないか、と言おうとしたが、すぐに思い直す。
仮に危険な目に出くわしたとしても、天下の松田柔が大人しくいいなりになる筈がないもんな…。
松田は、まだ高校生だった柔が、自分の目の前で学ランを着た男共をこてんぱんにやっつけてしまった
遠い日の出来事を、苦笑混じりに思い出した。
「あ、いた…。ほら、ああやってじっと見てるの。」
「ホントだ!へえー、動物って仲が悪いもんだと思ってた。」
二人は近くのベンチまでこそこそ移動し、暫くその光景を眺めていた。頭上には満開の桜の花。頬を
撫でるひんやりとした空気が心地よい。
443ろく:2005/04/05(火) 23:56:22 ID:bbs6hKcy
>>441
下手すると一ヶ月位ほったらかしになってしまうかも…
時間作る努力はしますので、どうか見捨てないでくださいませ
444名無しさん@ピンキー:2005/04/06(水) 21:50:20 ID:u+nKSSHB
ろくさん、乙!
これからもお願いしま。
ガンガレ
445名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 19:17:15 ID:tpd9tld3
ろくさんファイトage
446名無しさん@ピンキー:2005/04/08(金) 23:55:13 ID:7pSEOb0E
応援あげ
447名無しさん@ピンキー:2005/04/12(火) 06:26:38 ID:QMVd8mHR
保守age
448名無しさん@ピンキー:2005/04/16(土) 05:32:34 ID:QB1weGE6
hosyu
449名無しさん@ピンキー:2005/04/20(水) 18:49:40 ID:OKCdhrkm
ほしゅ
450名無しさん@ピンキー:2005/04/24(日) 16:36:37 ID:FQSqkbvX
保守
451名無しさん@ピンキー:2005/04/24(日) 22:28:43 ID:0d6Z6UaG
このスレ読んで、懐かしくなってYAWARA!買いました。
早く続きが読みたい(>_<)
そして保守
452名無しさん@ピンキー:2005/04/27(水) 22:53:22 ID:INgyD4uw
誰か続きをーーー
453hoshu:2005/04/30(土) 02:29:21 ID:aEuVrS+9
hoshu
454warai:2005/04/30(土) 11:07:31 ID:ztSFvX67
お話できたら書きこします〜!!それまで保守
455名無しさん@ピンキー:2005/04/30(土) 19:00:57 ID:zGEYUsvI
期待してお待ちしております。
456名無しさん@ピンキー:2005/04/30(土) 19:27:22 ID:9vv+KtXW
このスレ、最近ageる人多くなったね。
前はsage進行だったけど、これって住人が入れ替わったってことかな?
ageることで住人が増えて賑わってくれるならうれしい限りですが。
457名無しさん@ピンキー:2005/05/04(水) 19:19:39 ID:dn1i8iEH
age
458ろく:2005/05/04(水) 22:37:25 ID:gfKwCtwO
ほったらかしですみませんでした。
まだ少しばたばたしてるので連続投下は難しいですが
ぼちぼち再開したいと思っております
459ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/04(水) 22:39:34 ID:gfKwCtwO
25

「松田さん、ごめんなさい。」
「へ?何が?」
「台所で、お母さんに怒られちゃったんです。松田さんは疲れてるんだから、もっと気遣ってあげないと
駄目だって。さっきもつまらない事で怒ったりしちゃって…。よくよく考えると最近の私って、我が儘
言ってばかり。反省してます。」
「疲れてた…かもしれないけど、柔さんの顔見ると元気でるから。気にすんな、君は普段通りでいいんだよ。」
松田は、謝罪の言葉を続けようとする柔を押しとどめるように笑みを返すと、見事に咲き誇る桜を見上げた。
「昔からそうだったなあ。徹夜続きでくたくたにへばってても、君が絡むと元気がでちまうんだ。
猪熊柔の事になるとゴキブリのようなパワーを出すって、よく言われた。」
「そうなんですか?そういえば、徹夜明けで会いに来たこともありましたね。この人タフだなぁって。」
その当時を思い出したのか、はたまた『”昔から”自分が絡むと元気が出る』と松田がサラッと口にした事が
嬉しかったのか、柔は口元を綻ばせて俯いた。

そのまま二人は黙り込み、心地よい静けさにしばし身を預けた。
ベンチに両手をつき頭上の桜を満足気に眺める柔を見つめ、松田は思う。
寝ても覚めても、いつだって君の事を考えている。
柔道家松田柔を崇拝する一人として、読者に感動を伝える記者として、そして君の夫として。
あの日、ひったくり犯を投げ飛ばす君を偶然目撃しなかったら、俺は今頃何をしていただろう?
芸能人のスキャンダルを追いかけ回すのなんか真っ平だ!とか言って、さっさと会社を辞めてたかも
しれないな。で、実家のヒマな民宿継いで…。
君のおかげで、俺はスポーツ記者として、男として、充実した毎日を送れているんだ。
君に会えて、本当に良かった。
460名無しさん@ピンキー:2005/05/04(水) 23:02:09 ID:+JcYBTrK
     ___        ______
  __| |(,,゚∀゚)_    /      /  /
  |   ⊂) ̄ | ̄ |   / / ̄ ̄/ (,,゚∀゚)
   ̄ ̄| | ̄ ̄| ̄   /   ̄ ̄⊂)/  /    ∧∧  
 | ̄ ̄   ̄| ̄ ̄|  \ / ̄ ̄/ /  /   | ̄ (,,゚∀゚) ̄| ̄|
   ̄ ̄(ノ| ̄ ̄| ̄     ̄ ̄(ノ /  /      ̄ ノっ っ ̄ ̄
     | |   |       / /  /     〜(  つ
      ̄ ̄ ̄         ̄ ̄ ̄       ∪"

ろくさん、お待ちしてました!!
また、よろしくお願いします!
461ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/05(木) 00:03:33 ID:gfKwCtwO
26

「柔さんには、いくら感謝してもし尽くせないよ…。俺は、いつも君に助けられてるんだ。」
「え?松田さんが、私に?」
「ああ!…そろそろいこうか?」
そう言って立ち上がり、二人は公園を後にした。

ぽつりぽつりと夜道を照らす街灯の下、柔は松田の腕に手を廻し、ぴったりと寄り添った。
「あのー、誰かに見られたらまずいんじゃない……?」
「大丈夫!この時間、滅多に人に会いませんから。」
体を押しつけられ若干身を固くする松田に対し、柔は余裕綽々、にこにこ顔で歩を進める。
「うーん…。」
「あ。…こういうのも、我が儘?」
にこにこ顔から一転して眉をひそめ、松田の顔を覗き込む。
「い、いや?……全然!」
むしろ大歓迎だけど、二人きりの時にくっつかれると君の匂いが、表情一つ一つが、やけに生々しく
感じられてこそばゆいというか、何というか。久し振りに会ったから余計そう感じるんだよなあ…。

余裕の態度をかまそうとする松田の苦労も知らず、柔は無邪気な声でこう尋ねた。
「さっき、おじいちゃんと何の話をしてたんですか?」
「ん?あ、ああ…。」
「何?何?はっきり言って!」言いづらそうな態度に興味を引かれたのか、口を尖らせてけしかける。
「そのー…、さっさと子供作れ、ってさ。」
「あ……。」
「ま、まあ、滋悟郎さん相変わらず元気だから、曾孫に早く柔道教えたくてうずうずしちまってるんだろうな!
あと、次のオリンピックに影響が出ない今の内に、とか。」
462ろく:2005/05/05(木) 00:08:37 ID:2JA6GsYr
>>460
即レスありがとうございます。AAがカワイイ…
463ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/05(木) 15:32:44 ID:Bj4SHjaw
27

そう言いながら、柔の様子を横目でこっそりと伺う。『子供を作るなら今しかない』なんて、男二人で
さっさと結論出しちまったけど、俺達、先走ってるのかもしれない。肝心の柔さんは、これについて
どう思ってるんだろう…?

「子供だなんて、私…、何だか実感が沸かない……。」
「そ、そっか!そうそう、別に急がなくてもいいもんな!」
わざとらしく声を張り上げる松田と対照的に、柔は恥ずかしそうに呟いた。
「…だって自分が、まだ子供なんだもの…。」ついさっきお母さんに、子供っぽいと叱られたばかりなのに。
「こ、子供だなんて、これっぽっちも思ってないさ。」腕に当たる胸の膨らみを意識しながら松田が言う。
「…本当?」
「ああ。」

松田さんと私の子供。…子供。私達の子供…。心の中で呪文のように繰り返しながら、赤ん坊に授乳する
自分の姿を想像してみる。こんな私でも、赤ちゃんを産めば自然と母親としての自覚が備わるものなのかしら?
「俺が家にいると決まって邪魔してきたけど、今回は大人しく見守るつもりなんだろうな。まあそのかわり
さっき散々いじられたけどさ!…でも何だかんだ言って、自分が元気なうちに曾孫の顔が見たいってのが本音
なんだろうなあ。そう思うとあの滋悟郎さんが、妙にいじらしく感じるよ。」
「あ!おじいちゃん、だからしばらく稽古を免除するって…。」
「…そうみたいだな。」
「………。」
「…今夜、つき合ってもらえる?」
「………。そんな事、いちいち聞かなくても…」
「ご、ごめん、気が利かなくて。」
「そうじゃなくて…、私が、嫌なんていう筈がないでしょ…?」
松田の腕に廻した指に、僅かに力がこもる。
「あの、…よろしくお願いします……。」柔は照れくさそうに松田を見上げると、ぺこっと頭を下げた。
464名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 15:49:12 ID:rNVd2y2q
sageになってるかなぁ…?
ともかく…わくわく(・∀・)
465ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/05(木) 17:52:44 ID:Bj4SHjaw
28

マンションに帰り着いた二人は居間の中央まで無言で進むと、どちらからともなく向き合った。
瞳の中に、お互いの姿が映り込むのを確認する。
「柔さん…。」松田は柔の瞳を見据えたまま囁くと、両腕をゆっくりと柔の背に伸ばした。

「松田さん…。………お風呂、沸かします?」

「あ!!……えーと、いや、シャワーでいい。」我に返った松田は、間近まで迫った両腕を慌てて引っ込めた。
「じゃあそうしましょうか。松田さん、お先にどうぞ。」
松田の帰宅後、始めに入浴を勧めるのはいつもの事なのだが、今夜はその目的が明確なだけに少々気まずい。
柔はくるりと背を向けキッチンに向かうと、わざとあっけらかんとした口調で入浴を促した。

(何か焦ってるな、俺。)松田は頭を掻き掻き、浴室に向かった。落ち着け!時間はたっぷりある。
暖かい水流を浴び、ほっと息をつく。滋悟郎の晩酌につき合った後だが、公園で夜桜見物をした事で
少し体が冷えていたらしい。
体が温まってくるにつれ、疲労の波が再び押し寄せてくるのを感じ取る。
やべえ…。疲れがぶり返してきたな。
今夜は眠い、疲れただなんて言ってられない。松田はシャワーを温水から冷水に切り替えると、頭から被った。
466ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/05(木) 20:13:05 ID:Bj4SHjaw
29

頭をタオルでごしごし擦りながら居間に戻ると、寝室から柔がひょっこり顔を覗かせた。
「お布団、敷いておきましたけど…。」
「あ、いや…、ここでテレビ観てる。」布団の中で待っていたら、あっという間に眠ってしまいそうだ。

疲れている筈なのに、頭の中がもやもや、がやがやと妙に騒がしい。松田は、そんな変てこな気分を
振り払うように、勢いをつけてソファに腰を降ろした。
入れ替わりで柔が使うシャワーの音を耳の端で捉えながら、適当にザッピングする。特別、面白そうな
番組はない。5分も経たぬ間に画面を追うのが辛くなり、ぱちぱちと目を瞬く。
それを何度か繰り返すうちに目が開かなくなり、ソファにもたれかかったまま眠り込んでしまった。

(松田さん、松田さん)
気がつくと、シャワーを済ませた柔が屈んで松田の顔を覗き込んでいた。照明を背にする柔の顔には
うっすらと影が落ち、輪郭を縁取るくせのない毛髪が薄茶色に光っている。
「あの……、今夜はこのまま寝ましょ?すごく疲れてますよね?」
467ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/05(木) 20:13:55 ID:Bj4SHjaw
30

すれ違いの生活スタイルが定着している松田家では、夜に顔を会わせたとしても、柔はとっくに入浴を
済ませてしまっている事が殆どである。
久し振りに見る入浴したてのその姿は、起きたてで思考のぼやけた頭には刺激が強く、松田は息を呑んだ。
ほんのり上気した頬。屈んでいるため隙間が出来たパジャマの襟元から覗く、木目の細かい肌。しとやかな
二つの膨らみ。
「ごめん、大丈夫だから…。」眠たそうな声で返事をする松田の視線は、胸元に釘付けになっていた。

「駄目ですよ、ちゃんと布団で寝て下さいね?さ、起きて。」
松田の意識が自分の胸元に集中している事に気付かない柔は、松田を立ち上がらせようと体を寄せた。
体が近付いた瞬間、松田は石鹸の香りと入浴したての体から発せられる熱にふわっと包まれたような
感覚に陥り、反射的に柔の手を掴むと体を抱き寄せ、唇を押しつぶすようにキスをした。

「くっ……。」
いきなり強く抱き締められた柔は一瞬身を固くしたが、すぐに体の力を抜き大人しく松田に身を預けた。
その従順な態度に高ぶりを覚えた松田は、がむしゃらに何度も何度も唇を重ねた。
数分後、ようやく唇を離し、柔の顔をじっと見つめる。
「布団、入ろっか。」
松田の問いかけに、柔はただ、首を一回縦に振るのが精一杯だった。
468ろく:2005/05/05(木) 20:16:36 ID:Bj4SHjaw
>>464
Hシーンにはあまり期待されないよう…

今日はここまでです
469名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 20:59:29 ID:VWiCx2m3
ばんざーい!待っていたかいかってすんばらしいお話が!!
470名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 23:19:21 ID:Wvcbrw+K
>ろく様

いやーお疲れ様です
続きのんびりと待ってますねぇ
471名無しさん@ピンキー:2005/05/05(木) 23:57:03 ID:rguZY9HP
今日はじめてきました。
>>385さん
かなりの萌えシチュ。
続き投下、気長にキボン。
472名無しさん@ピンキー:2005/05/08(日) 04:00:44 ID:uLhnJeI4
ouennage-
473名無しさん@ピンキー:2005/05/09(月) 18:59:40 ID:/IK/s3gl
あげ〜
474名無しさん@ピンキー:2005/05/12(木) 22:30:10 ID:ZI2HdZc5
あげ
475ろく:2005/05/13(金) 14:26:52 ID:K1XknpV8
応援してくれる方々、ゴメン…

476ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/13(金) 14:27:43 ID:K1XknpV8
31

(おかしい……。)松田は焦っていた。
先程からずっと、精一杯の技巧を尽くして柔を愛し続けている。
腕の中の柔は十分魅力的で、見ているだけで愛しさがこみ上げ、脳味噌が沸騰しそうになる。
今すぐ組み伏して、思い切り動きたい。なのに、肝心の自分の分身がちっとも反応を見せないのだ。

出張中、あれ程会いたかったのに。久し振りに、誰にも邪魔されることなく抱いているというのに。
いくら疲れてるっていっても、……溜まってるんだぞ?昨日まで扱いに難儀してたってのに、
いざこの状況で『全く』反応無しってのは、おかしくないか?普通もう少しあるだろ、こう…。

感じやすい部分を舌で追うたび、指と手の平で刺激を与えるたびに、柔の体が小さく跳ねる。
僅かに開いた口から吐息を漏らし、声を上げないようぎりぎりまで堪える様子が、いかにも清純な
柔らしくて愛おしい。
その合間合間にいやいやをするように首を振り、覆い被さる松田の顔を物言いたげに見つめる。

柔の下半身は十分に潤い、触れると指が滑らかに動く。
受け入れ態勢は整っている、松田に向けられた柔の眼差しはそう訴えるかのごとく、せつなく歪んだ。

(ど、どうしよう……。)
477ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/13(金) 15:15:30 ID:K1XknpV8
32

『今日仕込め!必ず仕込め!』
『分かりました、しかと仕込んで見せましょう!』
俺って本当に馬鹿だ。大馬鹿だ。何であんな約束しちまったんだろう?
どうして勃たないんだよ、ピクリともしねえ………くっそー、少しくらい反応見せやがれ!
はあ、こんなんじゃ今日は無理だ…。ただ、子供を作るなら今、というのに変わりはない。
オリンピックに影響が出てしまってはまずいんだ。

「はぁぁっ!」柔が耐えきれずに漏らした声で、はっと我に返った。失礼な話だが、考え事をしながら
しつこく胸の先端を責め続けていたらしい。
慌てて顔を上げると、柔は瞳をぎゅっと閉じて顔を横に向け、片手で口を押さえていた。
(うわっ、ご、ごめん…。)
とにかく、このままでは柔さんも辛いだろう。早くいかせてあげなきゃ!余裕のなくなった松田は
柔の両足を無遠慮に大きく広げて赤みを増した部分を露わにすると、そこに顔を埋めた。
「!!」
柔の体に一瞬力がこもったがすぐに緩み、殊勝にも大人しく為すがままになる。
松田は下から上へ、詫びるかのように舌で丁寧になぞり、膨らんだ突起に到達すると軽く歯を立てた。
松田の動きに合わせて、柔の体がびくんと大きく波打つ。
「あっ…、あっ……!」
口元を押さえていた手が、全身を揺さぶる快感に従い次第次第に離れてゆく。布団にぽとりと落ちると
シーツをぎゅっと掴んだ。掴んだあたりから皺が放射状に広がる。
抑えられなくなった声は除々に声量を増し、薄暗い寝室に鋭角的に響き渡った。
478ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/13(金) 17:32:44 ID:K1XknpV8
33

もう耐えられないと言うかのごとく、松田の頭を引き離そうと押し下げるその手をぎゅっと握り、
自由を奪った。
松田は温もりを帯びた内部に指をそっと差し入れた。自分がこれから与える刺激を苦痛に感じないよう、
そこが十分に湿っているのを確認し、はじめはゆっくりと、次第にスピードを上げていく。
「あ!い、いや、ま、待って……!」
柔は片肘をついて上半身を斜めに起こし、松田に向けて途切れ途切れの声で懇願した。
しかし全身に広がっていく快感に、すぐに腕一本で体を支えきれなくなり、小さく呻いて倒れ込む。
声を発する間隔が段々短くなってゆく。指の動きに合わせて柔の羞恥心を煽るような音が響いているのだが、
最早彼女の耳には届かない。
柔の喘ぎ声と指の壁の隙間から漏れる音が松田の脳にこびりついて層になり、雑念を覆い尽くす。
松田は無我夢中で突起を吸いたてた。
「あ、ああぁーっっ!」
頭の中が白くスパークする。柔はひときわ大きく叫ぶと体を仰け反らせて喉元を露わにし、数秒硬直
した後、糸が切れたようにくたっと倒れた。

寝室には少しの間、柔の荒い息づかいのみが響いていた。
松田は息を整えながら眼を閉じて、このまま暴走しそうになる気持ちの高ぶりを何とか押さえ込み、
ゆっくり体を起こした。
視線を下に向けると、その先にある自分の分身は申し訳なさそうに縮こまり、ふにゃりと倒れていた。
とうとう、最後まで勢いづくことはなかった。
「……??」納得がいかず、首をひねる。
疲れているのとはちょっと違う気がする。昨日までは直結作用していた、欲望をコントロールする神経と
生殖器官の関係が、いきなりぶちっと断ち切れてしまったような感じだ。
479ろく:2005/05/13(金) 17:47:11 ID:K1XknpV8
>>478
訂正
×柔の喘ぎ声と指の壁の隙間から
○柔の喘ぎ声と、指と壁の隙間から
480ろく「一つ屋根の下で2」:2005/05/14(土) 23:43:51 ID:bjC/TpK6
34

ふいに『ED』 という単語が頭を掠め、心臓がどきんと音を立てた。
…は、ははは!んな、まさか!俺、まだ30代だぜ?
愛する人を目の前にしての初めての経験に、ただただ頭が混乱するばかりである。

「松田さん…。」
柔が頭をもたげ、弱々しい声を発した。絶頂の余韻を感じ取っているのか、時折体をぴくっと震わせ
瞳を薄く細める。
「…あ。ゴメン!」
またもやほったらかしにしてしまった事に気付いた松田は、慌てて柔の横に移動するとぎゅっと抱き締めた。
「松田さん、あのー…。」
返事のかわりに、済まなそうな顔をして頭を撫でる。

撫で始めにぽんと軽く叩かれるような、いかにも不器用な男といった感じのたどたどしい手つきなのだが、
それがかえって彼の飾らない誠実さと素朴さを表わしているように思える。
柔は松田の胸に頭を当ててそっと瞳を閉じ、彼の心音と頭頂部の手の動きに意識を集中させた。
そしてそのままうとうとしかけ……、ぱかっと目を開ける。
(いけない、寝ちゃうところだった!)
いつもならこのまま眠ってしまうところだが、今夜はまだ、目的を達成していない。今夜は、子供を
作るという前提で愛し合っている筈なのだ。
にもかかわらず、松田は自分の頭を撫でるのみで、それ以上動こうとしない。
(松田さん、このまま終わりにしようとしているみたい。…どうしたのかな。)
柔は、まだ声に力が入りきらないのか、囁くような声で問いかけた。
「松田さんは、そのー…、まだ、ですよね…?」
「え!!…うんまあ、そうだけど。」
「…どうしたらいいですか?」
481名無しさん@ピンキー:2005/05/15(日) 03:39:27 ID:DWKVPjX1
作家のみなさんトリつけないの?
482名無しさん@ピンキー:2005/05/15(日) 12:10:40 ID:6KJ31Mup
ろくさん応援あげ
483warai:2005/05/15(日) 19:51:42 ID:2Xcf13K1
ろくさん応援あげ〜!
484ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/16(月) 16:17:57 ID:z9zHicAi
トリップつけたことないので。てすと
485ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/16(月) 16:27:27 ID:z9zHicAi
>>482 >>483
ぐだぐだな構成になってしまっているので、非常に申し訳ないです

waraiさん
お話が出来上がっていたらガンガン投下して下さい。
交互に投下する形が気にならないようでしたら、ですけど。
自分のはもう少し時間がかかってしまいます…。


486ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/16(月) 16:29:15 ID:z9zHicAi
「一つ屋根の下で2」35

「どうしたらって、えーと…」
そこまで口にしたあたりで、自分の下半身に顔を埋めてけなげに奉仕する柔らしからぬ淫らな姿を
想像してしまい、松田の頭にカッと血が上った。
「い、いや!君は、何もしなくていいんだ。」
そんな男性主体の妄想をしてしまった事に、後ろめたさを感じる。
(駄目だよ、彼女にそんな事させちゃ!)
柔さんは今時珍しい程純粋な人だ。そういう愛し方がある事など、恐らく知らないんじゃないかと思う。
そんな汚れ無き彼女に強要するのは、基本、自分だけが楽しめる行為だけに何やら脅迫的で気が引ける。
それに、そうまでさせて、それでも勃たなかったら立つ瀬がない。
(しっかし、自分から誘って柔さんをその気にさせて、結果これかよ。)俺って、つくづく情けない男だな。
ムラムラがおさまんねえし。
再び、身勝手な妄想が首をもたげる。
だーー!だからやめろっつの!
「寝よ寝よ!柔さんも、もう眠いだろ?」
情けなさと感情を抑制できない苛立ちに囚われた松田の言葉は、少し突き放すような調子を帯びていた。
「え?だって、」
柔はそう言いかけたが、はっと口をつぐんだ。
(松田さん、イライラしてる。私、何かした…?)
思い当たることといえば、これしかない。
柔はそっと松田から身を離すと、自分の体に視線を落とした。
昔、彼の家で見つけたエッチな本に載っていた色っぽい女性とは、比べ物にならない程貧弱な体。
裸になるたび、そう思ってへこんでしまう。わざわざ購入する位なのだから、彼は本来そういう色気の
ある女性が好みなのだろう。
487ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/16(月) 20:05:05 ID:z9zHicAi
「一つ屋根の下で2」36

なのに深い愛情を注いでくれる彼に対して申し訳なく感じながらも、足りない分は愛で補えるものなんだと
思えてきたところだったのだが、そもそも自分は、彼に対する愛情をきちんと表現出来ていたのだろうか?
(やっぱり、もっといやらしくしないと駄目だったんじゃ…。)
松田さんはこんな自分に愛想をつかして、もう抱きたくないと思ったのかもしれない。
でも、もっといやらしくなんて、私には無理。体だって、これ以上発育しようがないんだし。

「はぁ…。」
すっかりしおれてしまった柔は、知らず知らずのうちに溜息を漏らした。
「!」それに過敏に反応した松田が、びくっと肩を揺らす。
「私が子供っぽいから。こんなんじゃ、つまらないですよね。」柔はそう呟くと、淋しげに笑った。
げ、どうしよう。何だか雲行きが怪しい…。焦った松田は、ぶんぶんと首を大きく横に振った。
「いやちょっと、つ、疲れてて。」
ホントに疲れてるだけか?
「………だと思う…。」
「……?」その奇妙な狼狽えぶりが、迂闊にも柔にいらぬ猜疑心を植え付けてしまった。
(なあに?その含みのある言い方。何か隠し事してるみたい。すごーく、変!!)

妻には言えない隠し事…。自分とは正反対の肉感的な女性といちゃいちゃする松田の姿が瞬時に浮かび、
柔の心臓は大きく波打った。
「松田さん…。今日まで出張だったんですよね。」
「勿論、そうだけど…?」
「本当は、誰か女の人と会ってたんじゃないですか?」おじいちゃんが言ったような、夜の街で。
「は?」
柔はぐっと大きく顔を歪ませると、松田に背を向けた。肩を小刻みに震わせ、小さな嗚咽を漏らす。

488ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/17(火) 00:38:02 ID:NQGeBJN/
「一つ屋根の下で2」37

泣かせてしまった!最悪だ……。松田の顔がサッと青ざめた。
「だ、だから、少し疲れてたみたいで、」
「女の人と会って、それで体力使っちゃったんですか?」
『女性と会って体力を使った』とは、かなり大胆な発言だったと気づき、涙に濡れた頬を赤くする。
(ひ、ひでえ……。)思いも寄らぬ柔の暴言に、松田は口をあんぐりと開けて絶句してしまった。
そりゃ、勃たなかった俺も悪いけど、出張って嘘ついて浮気して、それで体力使っちまったなんて発想は
ちょっと酷すぎないか?俺は、君に会いたい気持ちを必死に堪えながら仕事してたんだぞ?
こういう時、どう言い聞かせりゃいいんだよ。畜生、これっぽっちも分からねえ…。
「柔さん、こっち向いてくれよ。」
「嫌…。」
「柔さん!」

あ゛ーー、もう!

松田はやけになってわめいた。
「何だよ!ずっと好きで、やっと思いが通じたのに、浮気なんてそんな気起こる訳ないだろ!?」
やべ、カッとなっちまった!!
あれ?俺、今、何言った?

それを聞いた柔は、弾かれたように振り返った。
『好き』なんて、新婚旅行の夜以来一度も言われていない。しかも『ずっと好きで、やっと思いが通じた』
だなんて。こんなに熱のこもった告白をされたのは、生まれて初めてだ。
振り向いた先の松田は、顔を真っ赤に染めて惚けた顔をしている。硬派崩れの無骨な松田にとって、いわゆる
守備範囲外のセリフだったのだろう。
松田さん、凄い顔してますよ?
でも多分、私も今、松田さんと同じ顔をしてる…。
489名無しさん@ピンキー:2005/05/17(火) 04:28:50 ID:iZZLzynj
此処まで読んで単行本を引っ張り出した
俺が居る

読んでて楽しいな。
お疲れ様です。いつも読んでますよ。
490名無しさん@ピンキー:2005/05/18(水) 02:11:49 ID:pqdrldYX
ろくさん乙です。
顔が真っ赤な柔タンハアハア
491ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/18(水) 21:26:20 ID:5V4QrbmV
「一つ屋根の下で2」38

松田にとっては、恥ずかしさのあまりそこら中に頭を打ち付けたくなる程のアクシデントだったのだが、
それでも、負の感情が入り交じった柔の心を解きほぐすのには十二分の効果があった。
柔は目を閉じ、火照った頬を両手で包み込むようにしながらゆっくり息を吐いた。それに伴い、体の
強張りが和らいでいくのが分かる。
「松田さん…。」
「は、はひ。」
「ええと、私だけ気持ちよくなっちゃっていいのかな?って、少し思うんですけど…。」
あ。良かった、一応満足してくれてたのか。
松田は気を取り直して柔と対面するかたちで座り、先生と生徒の関係よろしく『男性器の不思議』
について説明した。
「あのー、男って、いくら相手の事が好きでも、すごく疲れてるとあそこが大きくならないんだよ。」
あれだけ溜め込んで半勃ちすらしないのは初めてだが、いつまでもくよくよしていては埒があかない。
松田は、自分自身にもそう言い聞かせてみる事にした。
「え?そうだったんですか!?」
普段の彼の自分に対する反応から、男性の性器は女性の裸を見るといつでも無条件で大きくなると
思っていた柔にとっては、目からウロコの説明だった。
よくよく考えてみると、とかく刺激の多いこのご時世、それでは生活しづらいだろう。
(馬鹿ね、いつでもそんなじゃ困るじゃない。例えば浅草サンバカーニバルを見に行った時とか…。)
疲れで頭がぼーっとしているせいなのか、自分でも何だかよく分からない例えだな、と思う。
492ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/18(水) 21:29:43 ID:5V4QrbmV
>>489 >>490
・゚・(ノД`)・゚・。 ・゚・(ノД`)・゚・。  アリガトウ!

493ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/18(水) 21:42:35 ID:5V4QrbmV
※浅草サンバカーニバル
東京都台東区浅草で毎年開催される割とけったいなイベント
セクシーなサンバガールが多数参加し踊り狂います
少なくとも都民なら誰でも知っている有名なイベントの筈なので例えに出してしまいました
494名無しさん@ピンキー:2005/05/19(木) 01:56:02 ID:SPm7IK8A
少年誌だけど、こち亀で浅草は知名度高いからね

テレビ放映もされてるから
知ってる読み手やROMも多いんじゃないかな?

それより、上手く話を構成してますね。
頑張ってくださいね。
495名無しさん@ピンキー:2005/05/19(木) 14:37:45 ID:5taVl2Qz
サンバカーニバルて。ワロスw
496ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/20(金) 12:05:59 ID:Gwelqeys
「一つ屋根の下で2」39

「もう!それならそうと、はじめに言ってくれれば良かったのに。」
柔は笑い混じりの声で松田にケチをつけた。疑惑が解消したことによる安堵感が、柔の声を明るくする。
そのにこやかな表情に、松田は心底救われるような思いがしていた。
「疲れてるけど何とかなるって思っちまったんだ。…俺から言い出した事なのに、ほんと、ごめん。」
柔はそろそろと腕を伸ばし、松田の手の甲に自分の指を重ねた。松田がその手をとり、ぐっと強く握る。
二人はぴったり合わさった二つの手を、若干照れを伴わせながらもしっかりと見つめ、そしてそのまま
じっと、互いの体温を感じていた。

不意に、松田がぷっと吹き出した。
「今、すんごく眠いだろ。」そう言い、握っていた手をパッと離す。
「座ったまま寝ちゃいそう…。」柔ははにかむように笑い、布団に潜り込んだ。
「松田さんは、子供何人欲しい…?」
布団の中からそう問いかける柔の瞼は、今にも閉じようとしている。
「へ…?二人?いや三人か?ええと、考えとくから。じゃ、おやすみ!」
(照れてる。)柔は、頬が緩みそうになるのをこらえつつ目を閉じた。

「はあー……。」
松田は柔が完全に眠ったのを確認すると、天井を見上げて大きく息を吐いた。
性欲があるのに抜けないって、辛いもんだなあ…。こんなの、今夜限りで勘弁だ。
明日滋悟郎さんに何か言われたら、……適当にやり過ごすしかないよな。『今夜絶対に』なんて、
土台無理な話なんだし。
まあ、たっぷり眠れば回復するさ。
497ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/20(金) 12:20:20 ID:Gwelqeys
>>494
そうかこち亀がありましたね。お褒めの言葉、恐縮です
>>495
こちらの狙い通りに捉えてもらえたのかな…?
498名無しさん@ピンキー:2005/05/20(金) 23:18:09 ID:P/XFy/Mu
GJGJGJGJGJGJGJ!!
499ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/21(土) 22:13:12 ID:DeIQkEXF
「一つ屋根の下で2」40

翌日、日刊エヴリー新聞社。
「……本日のゲストは柔道家、猪熊滋悟郎七段です。」
「司会の兄ちゃんよ、わしゃ十段ぢゃ。そこんとこよーっく頭に叩きこんどけ!」
フロアに設置された始終つけっぱなしのテレビから、聞き慣れた威勢のいい声が聞こえてきた。
(お?滋悟郎さん出てるのか。)
滋悟郎の目立ちたがりの性格と派手なアクションは家族にとっては閉口ものだが、テレビマンには案外
ウケがよく出演依頼が重複する事も珍しくはない。松田は、進行を無視して一方的に喋りまくる滋悟郎の
いつもの調子に苦笑いを浮かべ、執筆中の原稿に意識を戻した。

「……ええ!?」
暫く原稿の執筆に没頭していた松田の耳に、司会役のアナウンサーが驚く声が飛び込んだ。
(また何か変なこと言って困らせてんのかな。)
「……それは、松田柔選手が懐妊…、つまり二世誕生、という事でよろしいのでしょうか!」
「その通り、柔道家・松田柔二世の誕生ぢゃ!近い内に正式に発表するから楽しみにしとれ!
ほーっほっほっほっ!」

「!!!」松田は仰天して顔を上げた。
(なな、何だって〜〜〜!?!?)

「…ここだけの話、旦那のほうも相当頑張ったようでの!」アナウンサーに耳打ちする滋悟郎。
「…ほう!!松田記者、やりますねえ〜」顔を突き合わせ、意味深に笑う二人の顔がアップになる。
(うわぁぁぁ……)松田は書きかけの原稿用紙にペンでミミズを這わせてへたり込んだ。ここだけの
話もなにも、これは全国ネットの生放送番組だ。己の性生活を日本中に暴露される、こんな悲惨な婿が
かつて他にいただろうか?
滋悟郎のこの発言で予定が狂ってしまったアナウンサーが、遅れを取り戻そうと早口でまくしたてる。
「えー突然の爆弾発言ですが、残念ながらここでお別れの時間となってしまいました。また明日お会い」
その声は半端に途切れ、CMに切り替わった。
500ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/21(土) 22:18:41 ID:DeIQkEXF
>>498
ありがとうございます。
予想以上の長文になってしまい恐縮ですが、もう少しだけお付き合いください
501ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/22(日) 01:25:31 ID:3+xqDYUj
「一つ屋根の下で2」41

普段の喧騒が嘘のようにしんと静まり返る中、明るいCMソングがやけに大きくフロアに響く。
一拍おいてようやく事態を飲み込んだ同僚達は、松田に対し一斉攻撃を始めた。
「おい!これだけハードワークで、よく子供なんか作れるな!」
「仕事の手、抜いてたんじゃないか!?」
「ちょ、ちょっと!これは違…。」
「ま、ま、松田ぁーーーー!」
背後から怒鳴り声と共にドタバタした足音が迫り、松田は誰かに思い切り頭を殴られた。
「いっ……ってぇぇーー!!何だよ!!」
振り向くと、怒りで顔を真っ赤にした編集長が肩で息をしながら立っていた。
「お前、滋悟郎さんにテレビで何言わせてるんだよ!大スクープ逃しちまったじゃねえか!!!」
「へ、編集長!!いや、ち、違うんですよ!」
「何でうちの一面で報告しないんだよ!!愛社精神というものが、お前にはないのかーーー!!!!」
編集長は耳をつんざくような大声でそう言うと松田に掴み掛かり、襟元をつかんで引っ張りあげた。
「だから、滋悟郎さんが勘違いしてるだけなんですって……ぐえぇ!」

「松田松田!滋悟郎氏から電話!」
「!」皆が一斉に声の方を向き、松田は慌てて受話器を取った。
(おう松ちゃんよ、テレビ見たか?)いたって呑気な声に、軽い殺意を覚える。
「滋悟郎さんあなた、何て事言ってくれたんですか!二世誕生だなんてあまりに時期尚早でしょう!」
(お主、約束したろうが!昨晩、確かに仕込んだのぢゃろう?)
「いやあの、それは……。」
(だから国民の皆々様にいち早く報告したまでぢゃ、わしはなーんも悪くないわい!)
「あのー、おかしいですって。一回で簡単に成功するなら誰も苦労しません。犬猫とは違うんですよ?」
(男はスタミナぢゃ、回数こなさんで何とする!一晩で二回、三回、いっそ十回ぢゃ!)
「ん、んな!サルじゃあるまいし…。」
(曾孫の顔を見るのが楽しみぢゃな!)その一言を最後に、電話は一方的にガチャリと切れた。
502名無しさん@ピンキー:2005/05/22(日) 16:47:54 ID:+v53pgah
爆笑しました!
滋悟郎さんなら、やりかねないですねw
503ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/22(日) 18:58:14 ID:PXaqDEYG
「一つ屋根の下で2」42

「もしもし、もしもし?くそー、切りやがったな。……この、ヒヒじじいーー!!」
滋悟郎の身勝手な行動に腹を立てた松田は受話器に罵声を浴びせ、荒々しく電話を切った。
「柔ちゃん、本当に妊娠してないんだな…?」
滋悟郎とのやりとりを固唾を呑んで見守っていた編集長が、松田に向けて念を押す。
「断言します、彼女は妊娠などしてません!!」
松田のその一言で、鬼の形相だった編集長の顔は一転した。
「よっしゃあ!真相を伝えうるは我が日刊エヴリーのみ。明日の朝刊でライバル紙を蹴落としてやる!」
編集長は満面の笑みを浮かべ、握り拳を高く掲げた。周りからわーっという歓声が上がる。
「はあ。」
「何ぼーっとしてんだ、この馬鹿!真相を知ってるんだろ?旦那のお前が、それを記事に書くんだよ!!
お前の記事が明日の売上にかかってるんだからな、ビシッと気合いれて書けよ?」
「ついでに、柔ちゃんとのナニを赤裸々に告白したエロ記事も書いちまえ!」
「何なら、ピンク小説の欄も明日の分はお前が担当するか?」
品のないヤジが飛びかい、どっと笑い声が起こる。
松田はその場にしゃがみ込み、泣きそうな顔で頭を抱えた。
「何だそりゃ!?俺は、単なる一スポーツ記者にすぎないんだぜ?俺個人を前に出すようなそんな記事、
書きたくねえよ…!」

そして迎えた翌朝。『柔、妊娠!』という大きな見出しを掲げた新聞がズラリと並ぶ中、日刊エヴリーは
松田がへろへろになりながら書き上げた謝罪まがいの記事を、さも誇らしげに掲載していた。
なんせ渦中の夫自らが書いた記事である。その日の売上は他社を圧倒的に凌ぐ勢いでダントツ一位となり、
滋悟郎の嘘情報にまんまと踊らされた結果に、ライバル達は地団駄を踏んで悔しがった。

滋悟郎さんの早とちりって事で一応謝罪もしたし、今回の騒ぎはこれでひとまず収まるだろう。
松田はそう高をくくった。
しかし世間は、そう甘くはなかった。
504ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/22(日) 19:55:29 ID:PXaqDEYG
>>502
爆笑していただけたとは。頑張って書いたかいがありました
505名無しさん@ピンキー:2005/05/23(月) 23:47:32 ID:Stm+tkzD
ouennage
506ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/24(火) 00:15:59 ID:OSLEUJM3
「一つ屋根の下で2」43

『皆のアイドル、柔ちゃんがママになったら?【特集】柔親子の一日 シミュレーション・ウォッチング』
女性週刊誌・A誌
『彼女は5月に行われる体重別選手権にエントリーしていませんからね。シドニーオリンピックを視野に
入れ、現在子作りに励んでいるという証拠ですよ。』
週刊誌・B誌、評論家コメント
『以上3つの観点から、母となった松田柔選手の技はより切れ味を増し、他者を圧倒する存在になるで
あろうと予測する。日本女子柔道界の明るい未来は彼女の双肩にかかっている。』
C新聞・社説

就寝前のひととき。柔と松田はソファに腰掛け、テーブルにどんと積まれた新聞雑誌をぱらぱら捲っていた。
「すっかりネタにされちまってるなあ…。他に話題がない訳でもないだろうに。」
松田は溜息をつき、手に取っていた週刊誌を床に放った。
滋悟郎が先日、生出演中の番組で爆弾を投下したのを皮切りに、職場や柔の実家、そしてこのマンションに
連日のように報道陣が押し掛けてきていた。実に、結婚直後の取材攻勢を彷彿させるような執着ぶりだ。
「何だか、すごい騒ぎになっちゃいましたね。」
柔がそう言いながら、松田が放った週刊誌を拾い上げる。そしてそれを膝の上に乗せると、表紙に印刷された
自分の顔写真をじっと見つめてこう呟いた。
「どうして、そっとしておいてくれないのかな…。」
「……柔さんって、ホント人気あるからな。国民的大スターの宿命ってとこかなあ…。」
同じマスコミに籍を置く者として、彼女の呟きは実に耳が痛い。
所詮自分という人間は、たまたま夫だったから彼女に同調してやれるに過ぎず、自分達が赤の他人だったら、
あいつらと同じように事ある毎にしつこく追い回していたに違いない。
「昔から、普通の生活に憧れてたもんな。子供だって、好きな時に産みたいよなあ。」
そう言うと松田は頭の後ろに腕をまわし、ぼんやり上を眺めた。
「俺が君をスクープしなかったら、君は柔道辞めて普通の女の子として生活して、今頃は旦那と子供に
囲まれて毎日幸せに過ごしてたんだろうな。…俺って何だろな。」
507名無しさん@ピンキー:2005/05/25(水) 19:27:13 ID:cV3b9Rpz
ろくさん
オツです。
いつも楽しませてもらてます。
508ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/28(土) 01:51:25 ID:R/eVi0HD
「一つ屋根の下で2」44

松田が別の男性と幸せに暮らす自分の姿を想像したことが、柔には少々不満だった。
「松田さんと逢わなかったら、私絶対に、ずーーっと独身でしたよーだ!」
ぐいと顔を寄せ、大人気なくべぇっと舌を出す。
「それは無いね!俺、玉緒さんから聞いてるんだぜ?柔さんって小さい頃からミーハーで、すごく
惚れっぽかったんだろ?」
松田が直ぐさま切り返す。青臭い過去を夫に知られていたという事実に、柔は慌てふためいた。
「や、やだ!お母さん、松田さんにそんなこと言ったの?……は、恥ずかしいー!」
たまらず両手で顔を覆う様子に、松田はしてやったりとけたけた笑った。それに釣られて柔も吹き出す。
先ほどまで鬱々としていた気分は瞬く間に消え去り、部屋の中は明るい笑い声で満たされた。

ひとしきり笑った二人はどさりとソファにもたれかかり、心地よい気だるさに身をゆだねた。
気心が通じる関係ならではの、ゆったりとした静けさ。その静けさを破り、柔が呟く。
「早く子供を産んで、おじいちゃん孝行しなきゃ。応援してくれる人達を喜ばせてあげなきゃ…。
出産後の調整に失敗してオリンピックに出られなかったら、みんな、ガッカリしちゃいますよね。」
「………。」
「オリンピック……、金メダル……、連勝記録……。」
じっと前を見つめ、柔は淡々と言葉を繋いでいく。その横顔を黙って見守ることしか、松田には出来ない。
松田の眼差しの意味するところに気付いた柔は顔を向け、優しく笑った。
「でも、そういうのを抜きにしても…、私、早く松田さんの子供が欲しいなって……思ってます。」
「柔さん……。」
柔さんを守りたい。幸せにしてやりたい。俺は君が好きだ、好きだ!
柔への想いがどっと押し寄せ、頭の中にぽっかりと穴を開ける。松田は柔のパジャマのボタンに手をかけた。
「え?…え?」
これまで、寝室以外の場所で裸を見せた事はない。突然の展開に柔は狼狽え、あたりをきょろきょろ見渡した。
狼狽する柔をよそに、松田はあっさり上半身を露わにさせると、自分もTシャツを片手で引き抜き裸になった。
「ま、待って!明かりが……きゃっ!」その抵抗もむなしく、あっという間に柔はソファに押し倒された。
509ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/28(土) 02:03:12 ID:R/eVi0HD
>>507
ありがとうございます。うpが遅くて申し訳ないです。


>Tシャツを片手で引き抜き
原作で松田がアパートにいる時に着ている
あの上下という想定です

510ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/28(土) 02:09:39 ID:R/eVi0HD
春なのにそれじゃ寒いだろと思った方は
脳内で彼の服に長ソデをつけ足してやってください
511名無しさん@ピンキー:2005/05/29(日) 17:36:36 ID:pWjDnukM
>510
w
512ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/31(火) 00:41:06 ID:iF3asKtb
「一つ屋根の下で2」45

首筋から胸元に跡がつきそうなほど唇を押し付けられ、乳房を痛い位に強く揉まれる。もう片方の手で
下着もろとも一息に脱がされ、腰と太ももを熱い掌が何度も往復した。
そのいつになく強引な振る舞いから、松田が相手を気遣う余裕がないほど興奮しているのが分かる。
しかし柔は点けっぱなしの照明が気になってしまい、正直、それどころではない。
「ま、松田さん…っ」
肉体のコンプレックスと極めて慎ましやかなその性格から、柔は明るい照明の下で抱かれるのを頑なに
拒んでいた。すれ違いの生活ゆえ場数を踏んでいないという事情もあるにはあるが、彼女が豆球の明かり
までなら、とOKを出したのは、なんと二人が結婚して半年も経ってからのことである。
柔はもみくちゃにされながら、なおも懸命に声を発した。
「あ、あのっ……!!」

戸惑いに満ちたその声に、ようやく松田は動きを止めた。がっちり抑え込んだ体に顔を埋めたまま、
のぼせた頭を冷やすように時間をかけて息を整え、顔を上げる。
「俺、そろそろ明るいところで柔さんの体を見たいんだけど…。駄目か?」
それは、照れ屋の松田らしからぬストレートな欲求だった。躊躇いのない真剣な眼差しといい、先程までの
強引な愛し方といい、今まで窺い知れなかった男臭い魅力を目の前の松田に感じ、柔の胸は甘く疼く。
柔はぽーっとした表情で彼の瞳を見つめ返した。
気が急いている松田は勝手にそれを肯定の返事と受け取り、下を脱いで全裸になると再び覆いかぶさった。

513ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/05/31(火) 02:19:31 ID:iF3asKtb
説明不足っぽいので一応訂正します

×もう片方の手で下着もろとも一息に脱がされ、
○もう片方の手でパジャマのズボンを下着もろとも一息に脱がされ、
514名無しさん@ピンキー:2005/05/31(火) 09:35:23 ID:dYvBbn2C
ろくさん乙です!
第2弾があったとは!
515名無しさん@ピンキー:2005/06/01(水) 00:35:50 ID:9yjXx2cu
ろくさんおつです
516ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/03(金) 20:36:48 ID:A4Mrivwa
「一つ屋根の下で2」46

(どうしよう。恥ずかしい。見られたくない…。)
柔は松田に抱かれながら、そうすることで気が紛れるとでもいうのか、天井に張り付く照明の形状を
意味もなく目で追いかけた。
丸みを帯びたプラスチックの板。それを固定する輪っか。わずかに透ける蛍光灯。それらを何遍も
辿るうちに真白い光が目に突き刺さり、柔は堪えきれずに視線を逸らすと、自分に覆い被さる松田のほうへ
恐る恐る目を向けた。
自分より濃い肌の色が、肩の筋肉が、短い髪の一筋一筋がはっきり確認出来ることに、妙な違和感を感じる。
松田が体を少し起こし、柔の上半身をまじまじと眺めた。…あ!とうとう見られてしまった。
丸まって体を隠したくなる衝動をぐっと堪える。…逃げちゃ駄目!松田さんがこれを望んでいるんだから。
私、いい加減大人にならなくちゃ…!
柔はそう覚悟を決めると松田の背中に腕を回し、ぎゅっと力を込めた。

緊張を解き、この状況を受け入れた柔の体がゆるやかに熱を帯びていく。
先程の激しさは影をひそめ、松田の愛撫はいたわるようなものに変わっていた。両胸を円を描くように
やわらかく揉みほぐされ、柔が掠れた声でか細く喘ぐ。
気持ちいい…。好きな人に抱かれるって、本当に幸せ。出来ることなら一晩中、こうして抱かれていたい。
この後訪れるであろう更なる快感を、はしたなくも心待ちにしている自分がいる。
もう少ししたら松田さんも気持ちよくなってくれて、そして…。
517ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/03(金) 20:51:55 ID:A4Mrivwa
>>514
>>515
ありがとうございます。第2弾……またしてもしょぼいです

エロパロに投下するには長すぎますね、この話。
あと5、6レスで終わると思います。多分…。
518ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/03(金) 22:48:02 ID:A4Mrivwa
「一つ屋根の下で2」47

絶え間なく襲う波で自分を見失わないよう松田にしがみつきながら、柔は眉を僅かにひそめた。
松田さん。どうしてこの前の時と同じなの…?
『疲れてると大きくならないんだよ。』この前、松田さんはこう言っていたけど。
今まで、こんなこと一度もなかったじゃない……。
一体どうしちゃったんだろう。
柔と松田の視線が一瞬重なった。
い、いけない、集中しなきゃ!

密着する二人の体は、春だというのにじっとりと汗ばんでいた。
松田が体勢を変えるたびに、ぬるっとした感触が皮膚に伝わる。そう、自分がソファに押し倒されてから
かなり時間が経っているはずだ。なのに、彼の下半身には全く変化がみられない。
このまま続けても変わらないんだろう。そう気づき、柔の火照りは急激に冷めていった。
……電気、点けるんじゃなかった…。明るいところで私の体を見て、がっかりされちゃった…?
柔の落胆を知ってか知らずか、松田は柔の肌から唇を離すと、完全に体を起こした。
「あ…。」
ずっしりのし掛かっていた重みと、張り付くような熱から解放され身軽になった体が、ひんやりとした
空気に晒される。それだけでこんなに心細くて、こんなに胸が痛むなんて。
「悪い、勝手に盛り上がっちまって。」
「疲れてるんですよね…?」柔はぴょんと松田に寄り添い、顔を覗き込んだ。
「そうかな。」
(『かな』って…。)取り繕うようにぎこちなく笑い、なおも問いかける。
「この間は、疲れてて…。それで、たまたま今日も疲れてるってだけですよね?」

「私のせい……?」
「い、いや…。ごめん……。」
ソファに座り込んだ二人の間に、何とも気まずい空気が流れた。
519名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 21:37:30 ID:3J4q3FWc
保守
520名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 10:31:50 ID:PcusmQFi
応援あげ
521名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 00:10:34 ID:ynAqumF0
保守
522名無しさん@ピンキー:2005/06/08(水) 04:03:44 ID:ynAqumF0
あったまきちゃった
関係ないもん
もう座っています
523名無しさん@ピンキー:2005/06/10(金) 00:06:10 ID:ss/ltG5K
おお!
続きが出てますね。
ろくさん、乙です。
524名無しさん@ピンキー:2005/06/12(日) 22:39:10 ID:amyn4ewF
hosyuage
525ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/15(水) 23:55:00 ID:sw1DNXwD
「一つ屋根の下で2」48

「うーー……。」
日刊エヴリー休憩室の片隅に、愚鈍な芋虫のように横たわる男が一人。
(こりゃもう決定的だ。朝立ちすらしないのは、いくら何でもおかしすぎる!)
芋虫男は心の中でそう叫び、ぐっと拳を固めた。
あの気まずい夜以降、柔と松田の間にはこれまでにないぎこちなさが漂っていた。お互い、努めて普段通りに
接しようとしているのだが、柔が時折見せる戸惑いの眼差しが、その苦労を全て台無しにしている。
はあ…。誤解を解くには、正直に告白するしかないんだろうけど。
『柔さん。俺、あそこが病気なんだ!』
…………んな事、言えるかあ!!
俺、どんだけ溜め込んでるんだよ。正直、抜きたくて仕方ないってのに。これじゃろくに眠れやしねえ…。
「うぐうーー……。」

「さっきから、なに一人でうなってんのよ。」
「んあ?ああ、加賀くんか…。」
「随分とお疲れじゃなーい?」そう言いながら、邦子は松田の隣に腰掛けた。
「…まあな。」
「目の下にクマまで作っちゃって……あ、そっか!」ひらめいたとばかりに手を叩く。
「そっかそっか、柔ちゃんと子作りに励んでるんだったわね!大変ねえ〜、耕作の頑張りにかかってるん
だものねぇ〜。でもぉ、大変って言っても、ねえ?……キャー!もおエッチ、エッチィーー!!」
何を想像したのか邦子は一人で大いに盛り上がり、ゲンコツを振り回し松田の体をバシバシ叩いた。
「こ、こら、やめろ!!子作りって……ったく、加賀くんまでそんなこと言うのかよ!」
「照れることないわよ、それだけ仲がいいってことじゃなーい。憎いね、この幸せ者ぉー!」
「痛え!痛えっつってんだろ!…………あーーー畜生、分かったよ。気の済むまで俺を殴りやがれ…。」
松田は投げやるように言うと、ぐったりとテーブルに顔を伏せた。
526ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/16(木) 00:06:45 ID:sw1DNXwD
超スローペース、本当にすみません
527名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 01:42:27 ID:dluGA718
全然平気!
528名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 16:35:02 ID:O22BI0ay
>527
富士子さん?
529名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 21:51:29 ID:GX+aQu/T
>>528

邦ちゃんです。

叫んだあと、雨の中全速で走り去るのがYAWARAクオリティ。

「ちゃんとしなさいよ!」は圧巻です。
530名無しさん@ピンキー:2005/06/16(木) 23:03:24 ID:42ASixzm
>>526
ろくさん、毎度おつです。
頑張って下さい!!

>>529
おれ、あの回のずぶ濡れ&泣き顔の柔さんが一番好き。
531名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 13:57:06 ID:D224phDa
ろくさんおうえんあげ
532ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/18(土) 14:56:33 ID:u1o3ix0U
「一つ屋根の下で2」49

「あら、いいのぉ?じゃあ、気の済むまでやっちゃうわよー?こーの、むっつりスケベ!!」
パチン!
「これは、柔ちゃんのファンの分!『僕らのマドンナといちゃいちゃしやがってー!』」
ポカッ!
「……んなことねえ。ぎくしゃくしちまってるよ。」
「『柔ちゃんの作った味噌汁、俺達にも恵んで下さーい!』……えっ、ぎくしゃく?」
つい聞き流しそうになったその囁きに邦子は目を丸くし、椅子を倒す勢いで立ち上がるとテーブルに
ばんと手をついた。
「何やってんのよぉ、オリンピック前に子供を作りたいんでしょ?オリンピック連覇に向けて、夫婦力を
合わせて頑張んなきゃ駄目じゃなーい!」
「そうなんだよなあ、オリンピックの事を考えると今しかないんだよなあ…。」
のっそり体を起こした松田のぼんやりとした顔を、眉根を寄せて覗き込む。
「耕作ぅ……どうしたの?」
「オリンピックまであと2年…子作りは今、かあ。」
「…耕作?」
「だーーー!!もう、知るか知るか!!!」
「きゃっ!…ちょっとお、いきなり耳元で大声出さないでよ!!」
「取材、行って来る!」
「あん待ってよ、私も…。」
「俺一人で大丈夫だから!絶ーー対、ついてくんなよ?じゃあな!!」

「なあに、あの態度!」
邦子は先程の自分の行動を棚に上げ、ぷぅっと頬を膨らませるとぶつくさ文句を言いながら休憩室を後にした。
「『あの』柔ちゃんと、飽きるほど気持ちーことやってんでしょ?なのに何でしょげてんのよ………ん?」
ピタリと足を止め、松田が去った方向を振り返る。
「あら…?もしかして……。まーーったく、耕作ったら世話が焼けるんだから!!」
533ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/18(土) 15:08:11 ID:u1o3ix0U
「一つ屋根の下で2」50

「柔ちゃん!…おーい、柔ちゃん!」
お昼近くの神保町。鶴亀トラベル神保町支店に突如、邦子が姿を現した。
「邦子さん?!」
フロア奥のパソコンに向かっていた柔は自分を呼ぶ声に顔を上げ、その声の主が邦子だと分かると、
驚きの表情を浮かべカウンターに近付いた。邦子が単身、自分を訪問することなど滅多にない。
「近くまで来たもんだから。ねぇそろそろ昼休みでしょ?お昼、一緒にどお?」

二人は柔が時折利用する、手頃な値段のランチを提供する店へ足を運んだ。
OLやサラリーマンの話し声でざわつく店内に入り、案内された席に向かい合わせで座る。
「あら?柔ちゃん、少し緊張してるみたい。あ、そっか!外に連れ出されて迷惑だった?大丈夫よ、何食わぬ
顔で座ってれば、有名人でも案外ばれないものだから。こういう場合、人混みに紛れちゃうのが勝ちなのよ。」
安心なさい、と邦子は笑った。
「それにしても、繁盛してるわね〜。企業戦士の束の間の休息ってとこかしら?」
「は、はい…。安くておいしいって人気の店ですから。」
柔は伏し目がちに答えると注文したアイスコーヒーを手に取り、ぎこちなくストローを回した。グラスの中の
氷がカランと音を立てる。
その様子を邦子は無言で見守り、自分もドリンクを手に取ると一口二口、口に含んだ。
「……そうそう最近、えらい騒ぎようね〜。柔2世はまだか、って。」
「…は、はい……。」
「まあ何にしろ、子供っていいものよね。うちもそろそろ子供欲しいなぁ〜なんて思ってるんだけど。
夫婦揃ってブン屋なんてしてると、これがなかなかね〜。」
邦子は松田の元相棒・鴨田と結婚し、鴨田邦子になったのだ。職場では夫婦別姓のスタイルを取っている。
「鴨田さんと邦子さんの子供…。何だかすごく賑やかな家庭になりそう。そういうのって、いいですよね。」
明るい笑い声の絶えない鴨田一家の様子がありありと脳裏に浮かび、柔はくすりと笑った。
「まあ、私達ってそれだけが取り柄だし!……で、実際のところ、どうなの?子作り順調?」
(やっぱり、取材…。)
「え、えーと…。」どう答えればよいか分からず、視線を外して口篭る。
「あ、やーだ!ネタになんてしないわよ!耕作に内緒でそんなことしたら、半殺しにされちゃう!」
534ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/18(土) 15:16:11 ID:u1o3ix0U
ナイスタイミングな邦ちゃんレス等、励ましのお言葉ありがとうございます
根が小心者なので冷や汗ものですが有り難く頂戴いたします
535ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/18(土) 17:20:17 ID:u1o3ix0U
「一つ屋根の下で2」51

「…は、はあ……。」
それでも堅さのとれない柔に、邦子は小さく笑って頬杖をつき、活気ある店内に目を向けた。
「…昔、柔ちゃんに散々意地悪しちゃったからね〜。今更私のこと信用しろなんて、ムシが良すぎる
かもしれないけどー?」
「い、いえ!あたし、邦子さんのこと、そんな風に思ってませんから!」
柔は慌てて顔を上げ、両手を振って否定した。邦子の虚言で、彼との間に長きに渡り誤解が生じてしまったのは
紛れもない事実だが、奥手な自分達が歩み寄るきっかけを作ったのもその実、邦子に他ならないのだ。
『もういい加減ちゃんとしなさいよ!』
あの雨の夜、濡れ鼠になりながら活を入れてくれた邦子。
その後、彼を交えてではあるが共に楽しく食事をしたりしているし、今更わだかまりなど欠片も無いというのに。
いざこうして彼抜きで向き合うと、一体何を恐れるというのか、得体の知れない警戒心がちらりと顔を覗かせる。
柔は心の中で邦子に対して詫びを入れつつ、おずおずと現状を正直に打ち明けた。
「子作り。…じ、実は、なかなか上手くいかないんです。」
その告白を受け、邦子がニヤリと笑う。
「……ひょっとして耕作、勃たないんじゃない?」
「!!」何で分かるの!
「訳を知ってるんですか!?」柔は声を荒げて立ち上がった。その様子に驚いた周りの客が振り向く。
「シー!目立ちすぎ!」
「は、はい。…すみません。」小声で謝り、そろそろと腰を降ろす。
「そっかぁ〜、勃たないんだ〜。」邦子は可笑しくてたまらないといった様子で何度も繰り返した。
真昼間、しかも昼休みとはいえ勤務中にする話題だろうか。柔は頬を染めて俯くしかない。
それにしても邦子さん、何で知ってるの……?あの夜以来しっくりこない自分達のちぐはぐなやりとりを
思い浮かべ、苦い思いが胸に広がる。
「その理由は……、さーて、何でしょうー?」
そう言い終わると、邦子は柔の瞳をじっと見つめた。
536ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/18(土) 20:07:56 ID:u1o3ix0U
「一つ屋根の下で2」52

「え…。」
邦子は余裕の表情を浮かべ、柔を真っ直ぐ見つめている。その躊躇いのない強い視線を浴びた柔の体は
がちがちに強張り、目を逸らそうにも逸らせずにいた。
あの妙な警戒心は、自分の直感が警鐘を鳴らしていたのかもしれない。そう思い当たり、背筋に冷たいものが
走る。柔はこくりと息を飲み、口を開いた。
「う、浮気とか…。」
まさか…まさか…く、邦子さん??

「………。ふふ〜ん、柔ちゃん…。今、私を疑ったでしょ…?」
図星だと体を縮こませる柔に、邦子はいつもの明るい表情に戻り腹を手を当ててけらけら笑った。
「きゃきゃ!そんなの、あるわけないでしょ!耕作は大事なパートナー、今は鴨ちゃん一筋よ!」
邦子はうっすら涙を浮かべて笑い転げ、ようやく真顔に戻ると一転して穏やかに語りはじめた。
「柔ちゃんあのね、男って以外と繊細なんだから。悩み事抱え込んでると使い物にならなくなったりするの。
特に耕作ってホラ、あの性格じゃない?周りの期待に責任感じて、勝手にプレッシャー負けしてんのよ。」
そこまで言うと邦子は大げさな表情を作り、肩をすくめた。
「男ならドンと構えなさいよって思うけどね!でもまあ、耕作は耕作なりに色々気を遣ってるのよ。
そこに気付いてあげなきゃ…。」

(邦子さん忙しいのに、わざわざ励ましに来てくれたんだ。)
そんな彼女を一瞬疑ってしまった事を恥じ、頭にかあっと血が昇った。邦子が穏やかな声で自分に向けて
語るその一言一言が、胸に重くのし掛かる。
537ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/18(土) 20:37:53 ID:u1o3ix0U
「一つ屋根の下で2」53

(お母さんも、そして邦子さんも、松田さんの辛さに気付いている。なのに一番近くにいる私は…。)
自分に関わる人間と自分との器の差を思い知り、柔は愕然とする思いだった。

神妙な面もちで黙り込む柔の胸中を察した邦子が、元気づけるようなからりとした口調で問いかける。
「柔ちゃん。今、楽しい?」
「…つらいです。」
「耕作のこと、好きなんでしょ?耕作も柔ちゃんが好きで、結婚して一緒に生活してる。それだけで充分
じゃない。2世を育てる為に結婚したんじゃないんだから、周りに何言われようと、二人とも胸張って
堂々としてればいいのよ。そうだ!私達の邪魔するなって、マスコミの前でがつーんと言っちゃったら?」
「…がつんと……。」
「そう。例えば、こうよ!『皆さん、聞いてください!お願いです、私達夫婦の邪魔をしないでください!』
『こんなに愛し合っているのに、このままでは夫が焦るばかりでまともな夫婦生活が送れません!』
それを聞いて胸を打たれた耕作が、水飴みたいな涙を流して駆け寄るの!
『柔さん!』『松田さん!』
そんでもって、テレビカメラの前でがばーっと抱き合う二人!きゃーもー、やーだー!!」
一度自分の世界に入り込むともう止まらない。邦子は柔そっちのけで一人二役の寸劇を演じ、悶えに悶えた。
「…なーんて!ゴメンね、茶化しちゃって!いくら何でもそれは出来ない……あら?柔ちゃん?…あれれ、
はしゃいでる間に消えちゃった…。」

翌日、柔は滑り込みで体重別選手権への出場手続きを済ませた。
538名無しさん@ピンキー:2005/06/18(土) 23:20:22 ID:V51RNJKa
いつもながらGJです。
539ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/18(土) 23:52:20 ID:u1o3ix0U
「一つ屋根の下で2」54

そして迎えた5月、全日本体重別選手権。
「…見事優勝した、松田柔選手です!」
「ありがとうございます。」
「ますます冴え渡る技の数々!いやーまさしく、あ、圧巻の、一言です!!」
インタビュアーは拳を握りしめ、試合内容を思い出したのかぽろぽろと涙を流して感動に打ち震えた。
「や!…失礼、私どうも感激屋なもので。ところで、世間は柔2世の話題でもちきりですが、よろしければ
ここで一言!今後、どのような計画が?」
「………。」
「松田選手ー?」
黙り込む柔の様子を不審に思ったインタビュアーが、涙をハンカチで拭いつつその横顔を覗き込む。
柔は無言のまま鼻から息を一杯に吸い込むと、突きつけられたマイクを強引に奪い取った。
「ちょっと、貸してください。」
「あ、あら?松田選手??」
戸惑うインタビュアーには目もくれず、思い詰めた鋭い視線をテレビカメラのクルーに向ける。
「カメラは…、こっちですね。もっと寄ってください。」
「へ?俺?」いきなり声を掛けられたクルーが、自分の顔を指差しきょとんとした顔をする。
「…寄って、ください。」
低く落とした声から伝わる迫力に怖じ気着いたクルーは素直にその指示に従い、確認用の画面一杯に
柔の顔が映し出された。
「ありがとうございます。」
柔はクルーに対して丁寧にお辞儀をすると、くるりと正面を向き、マイク片手に声を張り上げた。
「マスコミの皆さん、聞いてください!お願いです、私達夫婦をそっとしておいてください!!」

…ください、…ださい、…さい……。
キーンと耳障りなノイズが走り、自分の発した言葉が会場一杯にこだまする。予想を上回るボリュームに
驚いた柔はぱっと口に手を当て、声のトーンを少し落とした。
540ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/19(日) 02:50:12 ID:oCnGEt+p
「一つ屋根の下で2」55

「ええと…、期待して下さるお気持ちは有り難いのですが、いつまでもこのままでは、まともな生活が
送れません。私達の子供について、今まで公での発言を避けてきましたが、この場を借りてはっきりと
お伝えします。私は、何がなんでも今、子供を産みたいとは思っていません。勿論オリンピックも大事
ですが、あまり無理をせず、出来る限り自然の流れに任せたいと思います。…仮に、子供が出来なくても、
それはそれで構わない。私は、2世を育てる為に彼と結婚したのではないのですから。」
柔はここまで一息で言い終えると口をつぐんだ。

皆が固唾を呑んで注目する中、柔はたった一人、激闘の余韻が残る畳の上ですうっと大きく息を吸う。
そのまま息を止め目を固く閉じると、震えるマイクにもう片方の手を添え、がっちりと握った。
「ま、松田さん!!夫を思い遣る事すら出来ない未熟者の妻ですが、これからもずっと、仲良くしてください。
よろしくお願いします!!!」

…おねがいします!!…します!!…ます!!……
張り裂けんばかりの大声が会場中に響き渡り、大観衆がたまらず耳を塞ぐ。柔はぱっと口に手を当て、
またやっちゃった、という表情を浮かべるとぺこりと一礼し、呆気に取られ静まり返る会場を後にした。

「柔ちゃん、本当にがつーんと言っちゃった…。」
記者席でカメラを構える邦子はシャッターを切るのも忘れ、退場口の奥へ姿を消す柔の後姿を、目を
白黒させながら見送った。
「ねえ、耕作ぅ!私達、この後どうすれば…。」
「……えなあ…。」
「え?」
「…柔さんは強えなあ……。」
541ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/19(日) 02:54:09 ID:oCnGEt+p
>>538
ありがとうございます
残り2、3話、生暖かく見守っていてください
542名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 08:09:48 ID:Q6/2K1lr
>>541
良いですね!!
いつも読みながら完全に脳内でアニメーション化
されてますよ、俺は。
続きも楽しみにしてます♪


あぁ、頭の中のアニメ映像がそのままリアルに
マンガかアニメに変換される装置とか出来ないかなぁ・・・
543名無しさん@ピンキー:2005/06/19(日) 15:14:15 ID:/5rQBEsK
>>541
いつもたのしく読ませてもらってます。
もうすぐ終わりなんですね。
どんなENDになるのか、すごく楽しみです!
544ななし:2005/06/19(日) 18:48:27 ID:i1GvOC1Z
南海キャンディースのしずちゃん入っている?
これは「クリリンの分」。
545名無しさん@ピンキー:2005/06/21(火) 01:33:34 ID:AsMUEZct
ろくさん
ガンバ
546ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/21(火) 21:55:26 ID:oSctr1R7
「一つ屋根の下で2」56

ほんとは、男の俺が盾になって彼女を守ってやらなきゃならないのに。
インタビューが大の苦手で、マイクを向けられるとおどおどしてしまうあの柔さんが、あろうことか
大観衆を背に、マイク片手にあんな事を言ってのけるなんて。
内気な柔が披露した、あっと驚くパフォーマンス。その大胆な行動に込められた、自分へのひたむきな
愛情に松田は激しく心を打たれた。頬にこぼれ落ちる涙に気付き、慌ててシャツの袖で拭う。

松田は辺りにひしめく記者の群れを見渡した。皆、揃いも揃って口をあんぐりと開け、呆然としている。
どうやら彼女が放った捨て身の告白に、すっかり後追いする気勢を削がれてしまったようだ。
やがて彼等は憮然とした顔で後片付けを始め、壁際に立つ松田をじろりと一瞥すると一人二人とその場を
去っていった。

彼女を巡るこの騒動も、これでようやく収まるだろう。記者達の態度にそう実感し、ほっと胸を撫で下ろす。
松田は壁にもたれかかり、そのままずるずると身を沈めた。
結局、柔さんは自分一人の力で俺達夫婦の危機にケリをつけちまったのか。
柔さん、凄えな!
何故だか、言いようのない可笑しさがこみ上げる。
柔さんには敵わない。
『俺は、いつも君に助けられてるんだ。』
『え?松田さんが、あたしに?』
出張明けの夜、公園で柔と交わした会話を思い出す。また、助けられちまった……。

「はは…、しっかしこの記事、俺は何て書けばいいんだよ。」

547ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/21(火) 22:32:53 ID:oSctr1R7
応援ありがとうございます

>>542
「頭の中に浮かんだマンガがテキストに変換される装置が出来ないかなぁ…」
自分はこんな事考えてます

548ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/22(水) 16:48:56 ID:tD2wycnU
「一つ屋根の下で2」57

リビングに散らばる雑誌、脱ぎっぱなしの衣服、カップラーメンの器に握り潰したビールの空き缶。
松田は床の上に胡座を掻き、背中を丸めて受話器を握る。話す相手は現在、遠いパリの空の下。

「…だ、大丈夫!心配すんなって。栄養のあるもん食ってるし、部屋も散らかさないように気を付けてるから。
で、そっちはどう?」
たった数日で、我ながらよくもここまで散らかせるものだ。しらじらしい嘘をつきながら、片手で申し訳
程度に雑誌を積み重ねてみる。
(あのね、おじいちゃんがエスカルゴを殻ごと食べて、喉に詰まらせそうになって…)

電話の向こうから聞こえるその声はいつになく饒舌で、子作り騒動に翻弄され続けた心がすっかり癒され、
旅を充分満喫している事が伺える。松田は、パリでの出来事を事細かに報告する柔らかな声に耳を傾け、
胸に暖かな陽の光が差すような思いで相槌を打ち続けた。

電話線を介した二人の会話はとめどなく弾み、隣に彼女がいるみたいだ、と松田は思う。
がしかし、これはパリからかけられた国際電話だ。この調子でいつまでも喋り続ける訳にはいかない。
「楽しんでるみたいで良かったよ。親子水入らずで過ごすのが、柔さんには一番効くストレス解消法だな。」
(楽しいけど、で、でもね…)
「えーと、続きはまた次回な。そっちは今、深夜だろ?柔さん、そろそろ寝なきゃ。…うんと親孝行して、
虎滋郎さんを喜ばせてやるんだぞ?それじゃあ、おやすみ!」
おやすみの挨拶を口にして受話器を離した松田の耳に、柔の縋るような声が届く。
(…待って、切らないで!)
549ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/22(水) 16:51:18 ID:tD2wycnU
残り3話です。伸びてしまいました
550ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/22(水) 18:47:28 ID:tD2wycnU
「一つ屋根の下で2」58

「どうした?」
(あ、あたし…!本当はさみしいんです…。)
「…へ?何で?みんなから仲間はずれにされちまったのか?」
(もう、違います!…松田さんが、ここにいないから!)
「あ!そ、そっか!さみしいのか。…そりゃあ俺だって、」
「そのー、……さみしいさ。」この手の会話、俺はいつまで経っても慣れないなあ…。
どうにか照れを誤魔化そうと、松田は目線を上向けた。

(今すぐ、顔が見たいです…。)悲しげに漏らす声がいじらしく、松田は回線を切るタイミングを失う。
ようやく柔と仲直りしたというのに、その後、タイミング悪く松田のほうに徹夜仕事が続いてしまい、
例によってろくに顔を会わせぬまま、柔はパリへと飛び立った。
「柔さん、俺…。」
俺だって、今すぐ会いたい。言葉で伝えるのは苦手だけど、彼女が目の前にいれば、かわりにうんと
抱き締めてやれる。今の俺は使い物になんないから、その後が続かないけど。それでも、柔さんの笑顔が
見られればそれで充分………あれ?

「の、のわっ?!?!」
(ど、どうしたんですか?!)
「勃った……!」
(え、何が…あ!もしかして……!)
ええー!きゃー!と、一人で大騒ぎする声が聞こえてくる。
(お、おめでとうございます!!……遠すぎて何も出来ないけど……。)
大喜びした後に申し訳なさそうに呟く、柔のその言い方がツボに入り松田は膝を叩いて笑った。
「ははは!ホントだな。パリと東京じゃ、なんも出来ないな!」
551ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/22(水) 20:25:58 ID:tD2wycnU
「一つ屋根の下で2」59

「…それじゃ今度こそ、おやすみ!」
穏やかな声でそう言い松田は静かに受話器を置くと、表情を一変させ、大慌てで下半身を覗き込んだ。
かちんこちんに膨張し、僕はここに居ますよ、と己の存在を誇らしげに主張している!

「よっ…」
「……っしゃああああーーーっっ!!!」
気合いの籠もった叫び声を上げながら松田は手近の雑誌を掴み取り、思いっきりぶん投げた。
ばしん!派手な音を立てて壁を叩き、ゴミが散乱した床にばさりと落ちる。体の内側から漲る力に
松田は居ても立ってもいられなくなり、だだっと窓際に駆け寄ると、ガラス窓を窓枠から外れる勢いで
がらりと開けた。
「いやー、いい天気だー!あーー、朝の空気はうまいっ。すげーうまいっ!……何だよ、東京の空も
捨てたもんじゃねえなあ!」
「…一等賞っ!」雲一つ無い青空に向け、陽気にびしっと指を差す。

チュンチュン!ピチュピチュ…。澄み切った空からは当然何の反応も無く、ただ、太古より変わらぬ
日差しを松田の体にさんさんと降り注がせる。
………。んなこたぁ、どうでも良いんだ!松田はご満悦の表情で両手を腰に当てた。
「柔さん!パリから戻ったら………覚悟しとけよ?あっはっはっーーー!!」

仁王立ちで股間を膨らませ、柔に向けて声高らかに宣戦布告する松田。
快晴の休日、付近の住民がたまたま朝早くからレジャーに出かけていた事を神に感謝すべきであろう。
552ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/22(水) 21:37:15 ID:tD2wycnU
「一つ屋根の下で2」60

「まーつーだーくぅ〜ん。」
「ふぁい?」
松田の同僚は優しく微笑みながら時計を指差し、校了の時刻が迫っている事を暗に示唆した。
呼びかけられ腑抜けた顔を上げた松田が、胸の上でひらひらと手を振る。
「ああ…。書いてますよー、書いてますから。…ははは。」
「ははは。」同僚はにこやかに手を振り返すと背を向け、ちっ、と苦々しげに舌を鳴らした。
「ぼーっとしやがって。馬鹿かあいつは。」
「この間の大会で、愛しの奥さんにド派手な愛の告白をされちまったもんだから。」
「おいおいあいつ、まだ引きずってたのかよ…!」
「でもよ、柔ちゃんはお父さんに会いに、パリに行ってるんだろ?会えなくてしょげてんなら分かるけど、
何であいつの頭のてっぺんにはあんなに沢山、蝶々が舞ってるんだ?」
「なんでも柔ちゃん、明日帰国するらしいぜ。」
「ほほぉ、待ちきれないってか。嗚呼、仲良きことは美しき哉……仕事はきちんとやれよ、くそったれ!
ねぇー、編集長?」
そのやりとりを黙って聞いていた編集長が、手にしていた書類の束を机の上にばさっと投げ出す。
「明日から10日間の出張、誰に行ってもらうか決めかねてたんだが…。」
そこまで言うと、よっこらせと椅子から腰を上げ、呆れた顔で松田を眺めた。
「こりゃ、松田の馬鹿野郎で決まりだな。柔ちゃんには悪いが、あの調子じゃあ仕方ねえ。」

突如降りかかった障害を見事乗り越え、より一層結びつきを深めた柔と松田、二人の心。
だがその愛を直接確かめ合うには、もう少しだけ時間がかかりそうである。      《おわり》
553ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/22(水) 21:38:35 ID:tD2wycnU
これで終わりです。お付き合い有難う御座いました。
554名無しさん@ピンキー:2005/06/24(金) 00:30:31 ID:oSGwRqLD
おつです
面白かったです!!
555名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 01:30:45 ID:ZYczKj9h
おつかれさまでした
楽しかったです。またおねがいしますね。
556名無しさん@ピンキー:2005/06/25(土) 02:35:14 ID:28CT0wX4
おつかれさまです。
結局、松田は「仕込めなかった」わけですねw

次回作も期待して待ってます!

557ろく ◆Vbcq2tOVzA :2005/06/25(土) 13:16:39 ID:A8gIIUjM
554-556さん有難う、あと投下中のレス有難う御座いました。中でも脳内で映像化している・原作を引っ張り
出したというレス、構成を褒めてくれた方、何だか報われる思いでした。初心者が陥り易いガチガチで無駄な
描写が多い文章、しかも致命的ミスが散らばりまくりですが、散々頭捻ってコレです。お許しください。
エロが書けないかわりにと、安易な気持ちで松田をEDにしてしまったんですが、どちらにしろヘタレにはハードルが
高く、結果予定の倍のボリュームに。納得できる内容に書けたかどうか、特に男性住人の反応が気になってました。
もしこういった事で悩んでる住人がいらっしゃったらすみません。い、いないですよね?
本当は某w○bドラマを利用したかったんですがほぼ活動停止状態、自サイトはあまり持ちたくないのでエロ無し作品に
寛容?なこのスレにお邪魔しています。勿論異端だという自覚は常に持ってますので、スレの雰囲気を察しつつ
出来る限り柔軟に、ぼそぼそ投下していきたいと思っております。保守がてらの投下ならエロくなくても許されるか?
とは言え暫くは書けないなあ。どなたかSSを恵んで…。あと三佐さんの続きが読みたい…
558名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 17:07:10 ID:xuzc2iIN
惨事中田氏妊娠 orz
・・・関係ないかw
559名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 19:53:16 ID:8KTzEJ3y
TAWARAがおめでただってよ。
ろくさんの話が終わった途端にこの話が出て
なんかワロタw
560名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 22:05:05 ID:rmRp1bPX
こら松田 挿入する相手間違えてんぞー
561名無しさん@ピンキー:2005/06/27(月) 22:30:50 ID:TbRhnETW
>>559
俺も思ったw
あと保守。
562名無しさん@ピンキー:2005/06/28(火) 00:43:24 ID:39A2yoRt
高校時代のヤワラはいい感じのツンデレ娘だな。
563名無しさん@ピンキー:2005/06/28(火) 02:35:11 ID:2YB/oKtg
>560
ワラタ
そんな松田は嫌だw
564名無しさん@ピンキー:2005/06/28(火) 10:40:41 ID:zh6ayzp3
>>563

「ううー…」
松田は激しい頭痛に顔を顰め、よろよろとベッドから身を起こした。
俺、どうしちまったんだ?
そうだ、部屋に入るなり誰かに変な薬を嗅がされて、それで…

「…ひっっ……」
横を向いた途端体が凍り付き、ひきつった声を上げ口を押さえる。
俺の横ですやすやと眠るその女性の名は…
松田は床に脱ぎ捨てられた服を鷲掴み、部屋を飛び出した。

「柔さん、ごめん!ごめん!…俺、俺っ……」
朝靄の立ちこめる街を闇雲に走りながら、零れ出る涙もそのままに
うおーと一声雄叫びを上げる。
そんな、やるせなさ。


「入れる相手間違えちまった!柔さん、ごめんよ!!」


注:松田は素っ裸
565名無しさん@ピンキー:2005/06/28(火) 14:04:45 ID:gF6leD22
猪熊でも金 松田でも金  ママでも金
566名無しさん@ピンキー:2005/06/29(水) 00:39:14 ID:xAaZKQoz
一生懸命やるのっていいね で金
あったまきちゃった!  で金
関係ないもん。     で金
もう座っています    で金 
567名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 00:56:14 ID:+wwT+OA1
age
568名無しさん@ピンキー:2005/07/01(金) 02:04:05 ID:FW8NJHk8
569名無しさん@ピンキー:2005/07/02(土) 01:41:23 ID:usJVP1pr
三左右衛門さん、そろそろ御降臨お願いします!!

あんど保守
570名無しさん@ピンキー:2005/07/02(土) 09:32:45 ID:+LgwhVq3
>>569
名前間違えてるよ・・・

三佐さん、もうここを卒業してしまったのだろうか?と不安。
化け猫さんも同じく。カムバック希望。
571名無しさん@ピンキー:2005/07/03(日) 22:35:35 ID:JT/kFtT5
>>570
正直スマン。

あんど保守。
572名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 04:11:12 ID:cBp1Jfe4
あんど保守
573名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 23:09:03 ID:y0LajR/Z
あんど保守

>>570
見物客A                        イ
574名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 23:20:42 ID:PmSjalvm
あんど捕手
575名無しさん@ピンキー:2005/07/05(火) 23:27:05 ID:cBp1Jfe4
>574
しまった
先越された

安堵ほしゅ
576名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 03:28:17 ID:0VFkiptw
柔強姦もの書こうと思うんですが、よろしい?
577名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 12:32:47 ID:Wo2kAKjt
俺は、書いてくださるだけで
ありがたいと思うんで
全然大丈夫ですけど
他の人が嫌がるかも・・・

でも柔タンは強いから
強姦ってイメージ沸かないですねw
投げ飛ばしちゃいそうですね。
578名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 15:02:39 ID:32b+Mp5T
>>576
レイプ物投下で荒れた過去があるけど
自分も577と同じく、書いてくれるだけでありがたいと思ってます

ただ、強姦のみで柔が救われない内容だと、きついと感じる人がいるかも・・・
最終的に松田との絆が深まるような展開ならクレームつかなさそう

まあ、合わない話はスルーが基本ですから・・・
排除はイカンです
579名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 16:48:32 ID:0VFkiptw
あー、何か荒れそうですから、好みのシチュエーションか何かありますか?
580名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 18:11:57 ID:Wo2kAKjt
レイプ物なら
最終的に松田さんと
絆が深まる感じのが
荒れずらくていいと思います。

でも、書いていただけるなら
ホント何でもいいっす。

毎日ロムってますが、
なかなかお話書かれる方が
いらっしゃらないんで。
581名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 18:22:09 ID:2AZPye17
レイプされるならさやかの方が絵になるんじゃないかと・・・・・・
582名無しさん@ピンキー:2005/07/06(水) 18:27:54 ID:2AZPye17
それはそうとしてここの保管庫って更新されないんでしょうかねー。
まとまった文章の形で読みたいなあ。
583名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 09:39:42 ID:XTrBEof3
>>581
レイプ物って標的が誰だっていいんだよなあ?
でしたらもっとネタが歓迎されるキャラのスレでやって下さい。>576
>578
合わないとかの問題じゃねえよ、徹底排除でいいんだよ。
584名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 10:03:49 ID:8skgFP5w
>>583
あなた
前にレイープものが投下されたときに
やっきになって騒いでた香具師?
585名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 10:09:40 ID:8skgFP5w
>取りあえず言えるのは、
>見る人によって感じ方が違うはずのことを
>自分の感覚が絶対だという前提で語る奴はもれなく痛い
586名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 10:12:49 ID:Ac0ah9J2
柔が風祭とやっちゃうくらいは許容範囲だがレイプはなあ・・・
どうせ薬嗅がせて拉致監禁とか、松田人質にしてとかいう展開でしょ。
酒とか大喧嘩で狂った松田にレイプ、その後に和解ならいいかもしれんが。
587名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 18:24:33 ID:q5XiZ7qm
リク受け付けてくれるんなら、風祭×さやかのマターリ調教ものキボン。
588名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 18:24:54 ID:GX/sm4An
しょうがない、松田の逆レイプで手を打たないか?

レイプ騒動といえば、バニラさんどこ行っちゃったんでしょうねえ・・・・・・・
589名無しさん@ピンキー:2005/07/07(木) 20:54:50 ID:lljHhcJl
前書きさえあればレイプものだってOK。
読まない権利もあるんだから、嫌なものはスルーすればいいんじゃない?
俺は読みたい。
590松田と柔:2005/07/07(木) 23:35:30 ID:AE3udpaR
いままでに何回も出てるかと思いますが、柔ちゃんのアメリカ行きの話を書きたいと思います。
このスレ見る前から、(こんなんだったらいいなあ)という想像があったんで。
基本的にはエロより、2人の会話や心理描写に重点置きたいと思います。
591松田と柔:2005/07/07(木) 23:36:54 ID:AE3udpaR
今話を書こうとしてる方の話が終わったら始めようかと思うんですが。。。
よいでしょうか。。。
592名無しさん@ピンキー:2005/07/08(金) 00:08:34 ID:fymhYshh
>590さん
是非ともおねがいします。

レイプ物うんぬんは読みたくない人は
黙ってスルーすればいいのでは?
中には、読みたい人だっているわけだし。
自分が読みたくないからここに書くな!っていうのは
ワガママだと思います。
593名無しさん@ピンキー:2005/07/08(金) 00:17:15 ID:sCIU58nS
>>590
私は同時進行でも良いと思うんですが…。正座して待ってます

>>586
大喧嘩で狂った松田って設定、斬新でいいですねー。それ読みたいかも

>>588
以前書いてた職人さんがひょこっと戻ってきてくれると
嬉しいですよね。駄文さんみたく。
594松田と柔:2005/07/08(金) 00:22:39 ID:M4b7b99L
592さん・593さん
ありがとうございます!
いろんなほかのサイトでも何度もでてきてるアメリカ版話なんで、多少かぶってくるって思われるかもしれませんが。。。
自分が考える「松田と柔ちゃん」で書いていきます。
595松田と柔:2005/07/08(金) 01:05:44 ID:M4b7b99L
「当機は、まもなく離陸いたします・・・」アナウンスの声が、機内に響いている。
「やっと・・・やっと行ける・・・!」柔の胸の鼓動は、どんどんと高鳴っていた。

「ずっと好きだった!」
あの別れから、もう早くも1年。どれだけ待ちわびただろうか。。
柔は今、ようやく、アメリカ行きの飛行機に乗り、念願だった、松田の元へと旅立とうと
していた。
 ここにたどり着くまでの1年。
この1年は、柔にとって、とても長い1年だった。
なんといっても相手は、スポーツの本場、アメリカ中を飛び回る新聞記者である。
一言でアメリカと言っても、日本とは桁外れの広さ、そしてスポーツの催しの多さ。
しかも加えて彼は、人使いの荒さで有名な日刊エブリーの記者である。
連絡を取り合うことは、本当に困難で、柔は、ずいぶんと淋しいおもいをした。

でも、だからといって、まったくの音信不通だったわけではない。
数ヶ月に1回くらいだが、松田は手紙を送ってくれた。
といっても、滋梧朗が、決まって、「おい、日刊エブリから手紙がきとったぞ!」
と、大概先に封を開け、読んでからよこしてくるので、そのときは、
たいてい大喧嘩になってしまうのだが。。。
喧嘩が終わると、柔は決まって、そそくさと自分の部屋へ行き、1文字1文字、
ゆっくりと読み返した。
「柔さん。元気か?俺は、なんとか元気でやってるよ」
出だしの文章は、いつも決まってこんな感じだ。
そして、「そういえば、ジョディーが、カナダの大会で優勝したらしいな。
君も毎日がんばってるか?」と、必ず柔道について聞いてくる。
(いつもいつも柔道なんだから。)柔は、いつもそう思いながらも、本当にうれしかった。
不器用で、記者のくせに文章はたいてい同じようなことばかり。
でも、松田のやさしさや、心配してくれている気持ちが痛いほど伝わりとても幸せだった。



596松田と柔:2005/07/08(金) 01:22:48 ID:M4b7b99L
時差の関係もあり、すれ違いの方が多かったといえ、電話もかけてきてくれた。
(といっても、柔が掛けた回数の方が、遥かに多いだろうが。。。)
その場合も、滋梧朗が決まって先に出て、「おーい柔!日刊エブリーからじゃ!」と、取り次いではくれるものの、横から盗み聞きするので、
やはり後から大喧嘩になるのがお約束だった。しかしこれらは、母である玉緒の協力により(柔の仕事中は、滋梧朗より先に郵便受けに走ったり、柔の話中は、滋梧朗の晩酌をするなど。)
、うまくいくことももちろんあったので、母が家にいるときは、その点は安心だった。

でもやはり柔は淋しかった。やっと想いが伝わったのになあ・・・
そんな日が続き、あの別れから約1年後の梅雨のある日だった。
「ただいまー。」柔が仕事を終え、家に帰ると、母がうれしそうに出迎え、言った。
「柔、おかえり!さっき松田さんから電話があったのよ!」
「え!?ほんと?松田さん、なんて?」
「今からかけなさい。今なら出れるそうよ。おじいちゃんもいないことだし!はい、子機!」
母がうれしそうに言った。
柔は子機を受け取り部屋に走った。荷物をベッドに置き、着替えもせず、とうに覚えてしまった
電話番号のボタンを、どきどきしながら押した。

597松田と柔:2005/07/08(金) 01:28:29 ID:M4b7b99L
後から書くとか言いつつ、どんどん書いてます、すみません。
かなりありきたりな話かもしれませんが、読んでくださったらうれしいです。
598名無しさん@ピンキー:2005/07/08(金) 02:29:59 ID:iOzEeUVh
期待してますよー。

柔タンは萌えますなー。
599松田と柔:2005/07/08(金) 09:13:03 ID:M4b7b99L
598さん、ありがとうございます!
訂正があります。
滋梧朗→滋悟朗(変換ミス)
梅雨→秋(今の季節からくる条件反射ミス)
失礼しました。
600松田と柔:2005/07/08(金) 09:48:49 ID:M4b7b99L
呼び出し音がなる。
日本は今、夜の7時過ぎ。アメリカは、夜中の3時ごろである。
こんな時間に電話していいなんて、いったい松田さんどんな生活してるんだろう・・・
柔がそんなことをことを考えていると、
「ハロー?」日本語英語の発音。松田さんだ!
「あ、あの・・・あたしです!」
「柔さん!?柔さんだよな?」
「はい、松田さん、あの・・・」
「仕事終わったのかい?お疲れさん!ごめんな急に・・・」
「いえ!そんな・・・」
いつ聞いても明くて安心する松田さんの声。柔は、安堵感に包まれた。
「・・・・あの柔さん・・・」
「おじいちゃん、今はいないですよ、近所に出かけてますから」
くすっと笑い、柔は答えた。
「あ、そっかそっか・・・、はは、よかった!」
ホントに、玉緒のいないときは、毎度毎度、滋悟朗の野次が柔の後ろからどんがらどんがら
聞こえてきていたため、松田は、電話のはじめに滋悟朗がいるかいないかを確認するのか常になっていた。
「・・・元気か?」
「・・・松田さんこそ。」
「へ?」
「だって、いまそっちは真夜中でしょ?毎晩こんな時間まで起きてるんですか?」
「あ、いや・・・今日は大丈夫!明日の朝はゆっくりできるから心配いらないよ」
「それならいいですけど・・・」
姿が見れない分柔は心配でならない。どうせ今でも、毎日カップラーメンやファーストフードを
食べてるんだろうし。。。部屋の掃除もできてないだろう。
近くにいるなら、すぐに行って、掃除をしてあげたり、料理も作ってあげられるのに・・・
柔はそう思っていた。
601松田と柔:2005/07/08(金) 09:54:14 ID:M4b7b99L
ごほん。松田は少し咳払いしてから口を開いた。
「あのさ、柔さん」
「・・・はい・・・」
「あのさ、・・・俺年末、まとまった休みがとれそうなんだ。いつかりだされるかわからないから、帰国はできないだけど・・・」
「え!?ほんとですか!?」
柔は驚いて答えた。柔の驚きように松田は少々驚いたが、続けて言った。
「あ、ああ、3、4日だけど。それで・・・・」
「・・はい・・・」

少しの沈黙。
そして松田が口を開いた。
「・・・こっちに・・・来ないか・・・?」
602松田と柔:2005/07/08(金) 21:57:41 ID:M4b7b99L
「・・・・あ、いや、ごめん。急に言われても困るよな・・・」
「・・・・」
「・・・柔さん?」
「・・・ます。」
「へ?」
「行きます!・・・い・・ってもいいですか・・?」
「え・・あ、いや、もちろ。あ、いや、柔さんさえよければ・・・」
「・・松田さん、あたし・・・」
「くおらー!!!柔ー!柔いつまで電話しとるんじゃー!」
滋悟朗が帰ってきたようだ。1階から声が飛んでくる。
「あ、おじいちゃん。。。」
「あ、ごめん、怒られるだろ、もう切るよ。」
「え、でも。。」
「怒られるちまうよ、な、またかけるからさ」
「はい・・・、待ってます」
カチャ。。。電話を切った後しぎ、滋悟朗の声が響いた。
「柔!稽古じゃ!わしがおらんと思ってだらつきよって!はよ降りてこんかー!」
「・・・もう!わかったわよー!」
(どうせ今までどこかで遊んでたくせに!)
そう思いながらも、柔は松田からの誘いに、うれしいやら、恥ずかしいやらな気持ちで、
柔道着に着替えた。

カチャ。。「ふー。。。」
松田は、一仕事終えたかのようにため息をついた。
松田の性格からして、柔を自分の元に誘うのは、どんなことより緊張する
ことだった。(いっちまったよ俺。柔さん、行きますって言ってくれたよな・・・言ってくれたよな・・・)
ふー。松田は、また大きなため息をついた。
「考えてたって仕方ないな。」松田はひざをたたいて勢い良く立ち上がり、
机に向かった。柔に心配をかけないため。。。そして柔の説教を避けるためうそをついて
いたが、仕事はまだおわってはいなかった。
「とりあえずやるしかねーな。。」
そういって、松田は鉛筆を持ち、原稿を書き始めた。
603松田と柔:2005/07/08(金) 22:13:52 ID:M4b7b99L
そんな、秋のあの日から3ヶ月近くたち、今柔は、アメリカ行きの飛行機の乗っている。
あの後も、互いになんとか連絡を取り合い、お互いの休みを合わせた。
容易な事ではなかった。なんといっても、滋悟朗にことごとく反対された。。

そんな滋悟朗がなんとか容認した理由は、玉緒の多大な協力と、膨大な量のお土産
の約束だった。。
あの電話の後すぐ、富士子や花園にももちろん報告したが、驚くほど喜び、
賛成してくれた。

(いままで、試合のために何度も海外には行ったけど。。。こんなにどきどき
してるのは初めてかも。。)柔はそう感じた。
自分がまさか、松田さんを追いかけて海外に行く事になるなんて。
(松田さん、どんな顔するかな・・・)会えるのはうれしい、なんせ1年ぶりだ。
でも1番気になっているのは、やはり
、「泊まり」だということ。
(泊まるのは・・・もちろん。。松田さんの家よね、、あーんどうしよう!)柔はうれしさと恥ずかしさで、1人で真っ赤になり、両手でほっぺたを押さえた。

ゴォー・・・
柔のいろんな思いをのせ、飛行機はとうとう地を離れ、飛び立っていった。


604松田と柔:2005/07/08(金) 22:51:48 ID:M4b7b99L
飛行機のなかで、柔はどきどきを紛らわすために、自分のことを応援してくれた
人たちのことを思い出していた。
1番の協力者は、なんといっても母、玉緒であろう。
玉緒はどんなときでも、柔の思いを1番に考え、応援してくれた。
思い起こせば、あの、国民栄誉賞授賞式の日、家に帰ってきた柔に、滋悟朗は、
「おまえが馬鹿なことをしてくれたおかげで、わしの武勇伝がたっぷり
話せたわい」と、これまた自分勝手なことを言い、しかられることは免れた。柔は、玉緒の元へ行った。
「お母さん・・」
「あら、おかえり柔!」
「ただいま・・お母さん、あのね・・・」
「どうしたの?」玉緒はにこにこしていた。
柔は思わず、なきながら、すべてを話した。ずっと松田が好きだったことも、
松田と思いが通じ合ったことも、松田がアメリカにいってしまったことも。。
玉緒は、すべてを、うん、うん、と聞き入れた。
そして柔が落ち着いたころ、静かに言った。
「柔・・良かったわね・・・」
1「え・・」
「松田さん、柔のこと、本当に、大切に思ってくれていたものね。。」
続けて言った。
「短大の受験の時も、柔が柔道をやめようとしていたときも、松田さん、いつでも
柔のこと、1番見てくれてた・・お母さん、わかってたわ。松田さんは、本当に
いい人だもの・・柔は、幸せものね。」
「お母さん。。」
「柔、がんばりなさい!大丈夫!お母さんも応援するわ!」

それ以来、玉緒は何があっても柔の味方だった。玉緒は、松田と柔の想いが通じ合えたことが、
本当にうれしかったのだろう。
今回の旅行も、「いってらっしゃい!おじいちゃんのことはまかせなさい!」
と、背中を押してくれた。
しかし、2人の関係をここまで協力してくれたには、玉緒だけではなかった。
605松田と柔:2005/07/08(金) 22:53:24 ID:M4b7b99L
誤字が多くてすみません。。気をつけます。
606松田と柔:2005/07/08(金) 23:12:39 ID:M4b7b99L
想いが通じるまで、散々2人の間に入り、邪魔をしていた存在。そう、邦子である。
邦子は、松田が渡米して以来、まめに柔に連絡を取り、そして会い、松田とはうまくいってるのかと尋ねてきた。
最近連絡がとれない、と話すと、「もー何やってんのよ耕作ったら!」
といい、すぐに公衆電話から松田に電話をかけ、留守電に、
「耕作!あたしだけど!もー何「やってんのよ!柔ちゃん寂しがってるじゃない!
電話の1つくらいしなさーい!」といい、カチャンと切るのだった。

そんな柔がアメリカに行く事を話すと、邦子は、それはそれは喜び、柔を喫茶店に
呼び出した。

「よかったわね、柔ちゃん!とうとうね!」
「はい。。でも、なんだかドキドキしちゃって・・」
「なーに言ってんのよ!バーンと胸に飛び込んでらっしゃい!」
「は、はい。」

柔は、あの日以来、まだ邦子に、少し、壁を作っていた。
そう、あの雨の日のあの日。。
邦子も、それを察していた。

「・・・柔ちゃん、ごめんねぇ・・」
「え?」
「あたし、まだ、ちゃんと話してなかったもんね」
「・・・?」



607松田と柔:2005/07/08(金) 23:21:55 ID:M4b7b99L
「あたしね、耕作のこと、本当に好きだった。・・・ふふっ、わかってたでしょ?柔ちゃん!」
「あ、あの。。」
「いいのよ、もういいの!もう時効!」

「不器用だし、鈍感だし、すぐ怒るし。でも耕作のこと、ほんと好きだった。
だから、柔ちゃんにヤキモチやいてたわけ!」
「え・・・」
「耕作、いつも柔さん、柔さーんばっかりで。だから柔ちゃんに意地悪して、
いっぱいうそついちゃった。」

「・・・私ね、あの日、ふられたの」
「え?」
「耕作にね、私から襲ってやったのよー!」
「おそっ・・・!」柔は真っ赤になった。
「きゃはは、柔ちゃん真っ赤よー!かーわいいー!」
「だって。。。」

「・・・でもね、だめだった。好きな人がいるーなんていわれちゃって・・
あたし、裸で攻めたのに。。。背中向けて言うのよー?」
「・・・」

608松田と柔:2005/07/08(金) 23:33:27 ID:M4b7b99L
「・・・そのときほんとにわかったの。耕作は柔ちゃんが好きなんだって。」

柔は何も答えられなかった。

「耕作には柔ちゃん、柔ちゃんには耕作・・・あたしに入るすきはないって思い知らされたの。
・・・悔しかったなー!」
「邦子さん・・・」

「・・・だから、2人には幸せになってほしいのよ。耕作は、ずーっと・・
ずぅーっと柔ちゃんがすきだったんだから。柔ちゃんも。。そうだったんでしょ?」

「・・・」
「もーやだ!しんみりしないで!もうほんとにへいきよ!ふっきれた!
柔ちゃん、がんばって!ね!応援してる!」

「・・・はい・・!」


数週間前に初めて聞いた真実。
邦子さんもあたしの背中を押してくれてる!
柔は勇気が沸いてきた。
(それにしても・・邦子さんは積極的だなあ。。)
柔は、また真っ赤になった。
609松田と柔:2005/07/09(土) 00:15:37 ID:5HHBRvI0
その頃いるアメリカは朝。徹夜明けで仕事を済ませ、そのまま試合の取材に繰り出していた。
あまりの多忙さに、さすがの松田も疲れ気味。
でも、今日の仕事は午後まで。もう終わる。午後には柔が到着するということで、恥ずかしいやら緊張やらで、
落ち着かなかった。
(だめだだめだ、今は仕事!)
顔をパンとたたき、試合に集中した。

「あ!見えてきた」
飛行機の窓の下には、日本とは違う街並み。アメリカだ!
松田は今ニューヨークに住んでいるため、到着地はニューヨークである。
モニターを見ている限り、到着は約1時間後。
(松田さんに会える。。)
柔の胸は、もういっぱいいっぱいだった。
   

試合終了、取材も終え、松田の今日の勤務は終了。
早速報告の書類、記事を日本に送り、日刊エブリーに電話をかけた。
「あ、編集長!松田です!」
「おー松田!ごくろうさん!」
「お疲れ様です!あ、じゃあ編集長、今日は。。」
「まて松田!急で悪いんだが、もう1つ取材にまわってくれ。大至急だ。」
「え、えー!?」
610松田と柔:2005/07/09(土) 00:16:33 ID:5HHBRvI0
その頃いる→その頃松田のいる
すみません訂正です
611松田と柔:2005/07/09(土) 00:26:03 ID:5HHBRvI0
「待ってください編集長、今日はだめです、勘弁してください!」
「アメフトのマイク選手が引退宣言した。おまえが行かないで誰が行くってんだ」
「頼みますよ、勘弁してください。。。」
「それが終われば休んでいい。だがおまえがいるのはアメリカだ。代わりの
記者はいないんだ!頼んだぞ!」ぷつっ・・・つーつーつー・・・
「ちょ・・・もしもし?もしもし?」
今日は絶対だめだ、柔さんが来る。
でも、俺が取材しないと。。。ここはアメリカだ。
柔さんの到着まであと1時間。
取材先は、空港からは近い。
「・・・ちくしょう!」
松田はヘルメットをかぶり、バイクに乗った。
「間に合わせるしかない!」
エンジンをふかし、松田は取材先に向かった。

612名無しさん@ピンキー:2005/07/09(土) 00:47:00 ID:YK7vMb5+
もりもり書かれてるご様子。乙です。
すんなり会えるのかと思いきやトラブル発生?
この二人はそうでなくちゃ。面白くなってきたw
613名無しさん@ピンキー:2005/07/09(土) 00:57:34 ID:5oGrZ3DJ
  この真夏に、冬の話を書くとはクリスマス落ちを狙っているのか!・・・・・・な?


  誤字脱字がなんぞ気にする必要ないですよ。大事なのは勢いです、気合いです!
10行ぐらい抜かしてうpして、2,3べん頭を抱えてこそ一人前・・・・かも。
614松田と柔:2005/07/09(土) 01:14:53 ID:5HHBRvI0
ありがとうございます
暇なときは、なるだけどんどん書いていくつもりです!
615松田と柔:2005/07/09(土) 01:29:41 ID:5HHBRvI0
着いた。。柔はニューヨークに到着。
(こっちもだいぶ寒いな。。。)
12月の末。かなり寒い季節である。
待ち合わせは2時。どきどき。
入国検査を済ませ、ロビーに出たが、松田の姿はまだなかった。
まだ心の準備が出来ていなかったので、ほんの少し安堵感。
ソファーがあったので、そこで待つことにした。

その頃松田は目のまわるような忙しさに追われつつ、会見を終え、必死に仕事を終えようとしていた。
(あーくそ!間違えた!)あせる気持ちが失敗を呼ぶ。
(柔さん、着いただろうな・・・待っててくれよ・・・)


(よし!)終わった!さすがはアメリカで1年鍛えただけある。
松田は自分では気づいていないが、仕事をこなすのは、本当にはやくなった。
「待っててくれよー!」松田は取材陣の中でも群を抜いた早さで仕事を終わらせ、
会見場を後にした。

かなりの速さでバイクを走らせる。もう30分は遅刻だ。
「はやくつけー!」

そのときだった。

616松田と柔:2005/07/09(土) 14:25:47 ID:5HHBRvI0
「松田さん、遅いなあ・・・」
柔は、かれこれ1時間は待っている。
家に電話しても留守。。。
少しずつ、不安な気持ちが押し寄せる。


「だーかーらー!俺もこいつもなんともないっていってんだろーが!」
松田は警察官に食って掛かっていた。
住宅街を走っているときに、犬が飛び出してきて、避けようとして転んだらしい。
なんとも松田らしい事故である。
幸い(なんとも幸運すぎるが)松田もたいした怪我は負わず犬も無傷だったが、問題は飼い主。
「Oh!My preety dog・・・」と嘆いている。犬は舌を出し元気に
へーへー言っている。
(なんだよ過保護だなあ!)松田は思った。
「どーみても無傷だろうが!俺が必死で避けたんだ!行かせてくれよ!
プリーズ、レットミーゴー!マイフレンドイズウェイティング!」
「No!」
警官は、この犬が病院で診査を受け終わるまでここを動くなと言った。

「ば、ばかいえー!!柔さんが待ってんだよー!」
617松田と柔:2005/07/09(土) 14:46:25 ID:5HHBRvI0
もう、待って2時間以上。いや、3時間は経ったかもしれない。
家に電話は、もう数十回はした。

柔はいろんな想像をしていた。
(事故にでも合ったのかな・・・)
(ううん、仕事が急に入ったのかも・・・)
(・・・もしかして、ほかの女のひとと。。。?ううん、まさか!でも・・)

泣けてきて、誰かに話したかったが、日本はいま夜中の2時。
電話なんてできない。


「松田さん・・・」
ひっく、ひっく。。。とうとうないてしまった。


とそこに、
「柔さん!」
声がした。柔が顔を上げると、そこには松田の姿があった。
618松田と柔:2005/07/09(土) 20:29:49 ID:5HHBRvI0
はあはあ、と息を切らしながら目の前に立っている松田。
柔はその姿を見て、一瞬で、涙も止まってしまった。

「ごめん!ほんとごめん柔さん!こんなに遅れちまった。。。」

ジャケットにジーパン姿。片手にヘルメットを抱えている。
まったく変わってない松田の姿。

(松田さん・・・)
何時間も待たされたことよりも会えた喜びが勝り、柔はまたじわじわと泣き出した。

「あ・・・いや、ほんとごめん・・・」松田は柔の肩を持つ。でも、柔の涙の、本当の意味なんて、まるでわかっていない。

柔は必死に首を振った。
(そりゃ、こんなに待たされれば泣いちまうよな・・こまったなあ。。)
松田は頭をぽりぽりと掻いた。

「・・・・とりあえず歩こうか。。」
「はい。。」
2人とも恥ずかしくて、まだろくに目をあわせていない。

「ほんとにごめんな。。」
「・・・いえ、いいんです・・お仕事だったんですか?」
「え?あ、いや、その・・ああ!急に呼び出されて!」
「大変なお仕事ですものね。。」
「あ、いやーなんていうか。。。ははは。」
(まさか犬を轢きかけて、警官につかまってたなんていえるかよ。。)




619松田と柔:2005/07/09(土) 20:45:43 ID:5HHBRvI0
沈黙が流れる。
「松田さん、あたし・・・」
「ん?・・・腹でも減ったか?」松田は恥ずかしさを紛らわすためにこんなこと
を口走ってしまった。柔はむっとした。
「ちがいます!」
「え。」
「なんでそんなこと言うんですか?!」
「え・・・いや。なんでって・・なんでそんなに怒るんだよ・・」松田には怒る理由がわからない。
「怒ってません!」
「怒ってるじゃないかー。なんなんだよ。。」
(せっかく1年ぶりに会えたのに・・楽しみにしてたのに。。3時間も待たせておいて、
おなかすいたなんて聞くなんて・・・!)
この微妙な女心がわからない松田に腹が立ち、柔は口を尖らせている。

「悪かったよ柔さん・・」
「・・・」
「その・・・なんていうんだ、その・・・なんかてれくさくて・・・」
「・・」
「わざわざきてくれて・・・ありがとうな。」
松田の横顔が真っ赤になったのを見て、柔も真っ赤になった。

「どうする?」
「え?」
「いや、もううち来るか?それともどっかで夕食。。」
柔は、はっとした顔で言った。
「スーパーに連れて行ってください。。」
「え、スーパー?」
そして、はずかしそうに笑いながら言った。
「はい。。今晩は、私がつくります!」


620名無しさん@ピンキー:2005/07/09(土) 20:52:52 ID:ZgWj5w9d
ビフストロガロフage
621松田と柔:2005/07/09(土) 21:24:13 ID:5HHBRvI0
「ちらかってるけど・・・どーぞ!」
「は、はい・・」
松田の部屋に入った。市街からは少し離れた場所にある小さなアパートの一室。
日本の家ほどは散らかってはいなかった。松田が言うには、毎日アメリカ中を
飛び回っているため、ろくに帰っていないらしい。
角の四隅には、いろんな物がまとめておいてある。今日は突然の訪問ではないので、松田なりに片付けたのだろう。

「・・・」柔は部屋を見渡した。
「あんまり見ないでくれよ。汚いしさあ。」松田が言った。

「まずはおそうじします!」柔が言った。
「え・・・何いってんだよ、せっかくきたんだからゆっくりしなよ!」
と松田が答えたが、柔は、どうせ掃除機かけたりしてないんでしょう?
松田さんは、お仕事しててください、といい、掃除を始めた。
松田は居場所がなくなり、ベッドの上にちょんと座った。

(柔さんが今、俺のうちにきてる。。。もちろん、と、とまるんだよな。。
)松田は1人で悶々としてきた。柔は掃除機をあてている。
(柔さんはどういう気でいるんだ?泊まるのを承知なんだから、その気。。いやいや、
暴走しちゃいかん。柔さんの気持ちをまず考えねば。。)
そんなことを考えて柔のうしろすがたを見ていると、柔がこっちを向き目があった。
松田は、かあっと赤くなり、「さ、さ、さあーて、残ってる仕事でもすっかなー!」
と言い机に向かった。もちろん、仕事なんか手につくはずがなかった。



622名無しさん@ピンキー:2005/07/09(土) 21:47:23 ID:ZgWj5w9d
ガスパチョsage
623松田と柔:2005/07/09(土) 22:16:15 ID:5HHBRvI0
「んまいっ!ほんっとうにうまいっ!」
松田ががつがつと、柔の作った料理を食べている。
松田に何を食べたいか聞いたところ、何でもいい、最近ろくなもん食べてない。とのことだったので、柔はきっと恋しいだろうと思い、
ご飯、お味噌汁などの和食を作った。柔の得意料理はもっと別にあったが、今の松田にはきっとこれがいいだろう
と思ったのだ。
案の定松田は(今は悶々とした気持ちを忘れ)本当においしそうに食べている。柔は、この、子供みたいな松田の顔をみるのが
かなり楽しみだった。でもその姿は、どこか滋悟朗にも似ていた・・こんなこと、松田には決していえないけれど。

食べ終えると・・・
「どうですか?お仕事・・・」柔が口を開いた。
「え?ああ・・・まあ大変だなあ・・ははっ。今日もいきなり飛ばされたしな」
「そうだったんですか・・」
「でもやりがいあるよ。俺、こんなスポーツの本場で記者やってんだもんなあ。」

そう、松田さんはアメリカでがんばってる。そしてあたしは今、松田さんのもとにきてる。。。
実感し、柔は突然真っ赤になった。
「?どーした柔さん」きょとんとしている松田。
「な、なんでもないです。これ、片付けますね!」柔は食器を片付けようと立ち上がった。
「あ、いーよ、それくらいはやるよ」松田も立ち上がり、柔に座るよう促した。
いいです!と柔がはらいのけようとした瞬間、2人の顔が一気に接近した。

「・・・」硬直する2人。
624松田と柔:2005/07/09(土) 23:36:05 ID:5HHBRvI0
かなり一気に書きましたが、都合上ちょっとペース落とします。
もし読んでくださってる方がいたら、すみません。
625名無しさん@ピンキー:2005/07/10(日) 01:38:49 ID:mgItnW6x
はい!待ってます。
焦らず書いてくださいね!
626579です:2005/07/10(日) 04:28:05 ID:R1yvZ0xu
すいません。家の事情によりしばらくPCに触れられない事になってしまったので投下が出来なくなってしまいました。
期待して下さった方々本当にすいませんでしたm(__)m
今投下して下さってる方頑張って下さい。PC復帰したらマターリと読ませていただきますw
627松田と柔:2005/07/10(日) 21:29:49 ID:QojKe3pZ
625さん→ありがとうございます!
626さん→ありがとうございます、あなたの作品、楽しみにしてます。
628松田と柔:2005/07/10(日) 21:52:18 ID:QojKe3pZ
「・・・・・!」2人は目が会ったまま動けない。


「や、柔さ・・・」
コンッ・・・
松田が口を開こうとした瞬間、コップが床のじゅうたんに落ち、ベッドの下に
転がっていった。
ハッ・・とする2人。
「あ・・お、落ちちゃった・・・」
柔は、恥ずかしさを紛らわすために、目を逸らし、床のコップをとろうと座り込んだ。
松田も我に返り、髪をくしゃくしゃとかいた。

「・・・・・・」
柔がなかなか立ち上がらない。
「どーした?柔さん・・あー!!そこはっっ・・!」

コップが転がっていったベッドのしたには、柔には見られたくないビデオや本が・・・
家の訪問のたび毎度見られているので、かくしていたのだ。松田なりに手を尽くしたが、無駄だった。


柔が、座ったまま、ムーっとした顔で松田を見上げる。
「あ、いや、その、これはだな、その・・」
松田はなんとか言い訳しようとするが、何を言えばいいというのか。
男としては当然のこと。言い訳するようなことでもないのだが、柔には、こんな
男の悲しい習性がまったく理解できなかった。
629名無しさん@ピンキー:2005/07/10(日) 23:55:54 ID:Bnx/KVDi
>>579
PC復帰した際はよろしくです

松田と柔(で、いいのかな?)さん
2人の会話が清々しくていい感じ、雰囲気出てますね
630名無しさん@ピンキー:2005/07/11(月) 01:19:37 ID:+JHUv23q
>>626
もう読んでないかもしれんけど、、
復帰したらジャンルに気兼ねなく投下してください。
631名無しさん@ピンキー:2005/07/11(月) 20:50:17 ID:QjTmWIrj
職人さん応援あげ
632松田と柔:2005/07/11(月) 23:24:39 ID:08fFZaj+
「や、柔さん、手伝うよ!」
「結構です。」
「・・・。」
「やっぱり松田さんは、ああいう、胸の大きい、きれいな女の人が好きなんですね!」
「そ、そんなんじゃないよー・・・なんだよそれ・・」柔が洗いものをしてる後ろから松田が声をかけるが、柔は少しそっけない。
(なによなによ、いやらしい!どーせあたしは・・・胸が小さいですよ!)
松田の隠していた本やビデオ。
以前から大量に持っていたことはわかっていたが、柔には、どうしても、あんなものを
みて喜ぶ男心が、いまだ理解できないでいた。
その上自分の体へのコンプレックスもあったので、ほとんど八つ当たりに近いものであった・・・。
しかしそれ以上に松田には、そんな柔をなだめる方法が、さっぱりわからない。
(なんでこんなに怒るんだ・・・?)松田はぽりぽりと頭をかいた。
わからないのも無理はない。気の毒な松田。


ジリリリリージリリリリー
突然電話が鳴った。
「おっと・・・」松田が電話の元に走った。

「ハロー?」
「お!!松田か??」
「へ・・・編集長!」
編集長からの電話だった。
「おまえ、マイク選手の原稿の件だがな!汚い字のまま送ってくんじゃねーよ!」
松田の原稿が雑少々雑だったので、日本の編集部が迷惑した、と編集長は怒っていた。
「あ・・・すみませんでした・・」(柔さんが来んのに、急に飛ばしたりするからじゃねーかよぉ・・・)


633松田と柔:2005/07/11(月) 23:44:25 ID:08fFZaj+
「はい・・・はい・・・いえ・・・すみません編集長・・」
松田が電話の向こうの相手に謝っている。
柔が洗い場から顔を出して耳を傾けた。

(仕事で何かあったのかな・・)
心配になる柔。
(松田さんはこの国でこんなにお仕事がんばってる。。それなのにあたしったら、
しょうもないことで、松田さんに八つ当たりしちゃった。。)
柔は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。なんていう流されやすい性格なのだろうか。

カチャ・・・
「ふー」編集長のお叱りを受け、松田が電話をきった。もう慣れっこだ。
「ごめんなさい、松田さん」
「へ?」
「あたし、松田さんがこんなにがんばってるのに、八つ当たりあたりなんかしちゃって。。」
「は・・・はい?」
「松田さん、本当にがんばってらっしゃるんですね!」
「あ・・ああ!気にしなくていいよ!いつものことだから!あはは・・・」
さっきまでは怒ってたのに、今は、ごめんなさいと自分に謝っている柔。
松田はもう柔の変化についていけず、ちんぷんかんぷんだった。

「そんなことより柔さん、シ、シャワーでも浴びなよ、もう遅いし!」
「シ、シャワー?」
「ああ、俺後でいいから!な!」
「は・・・はい、でも・・」
柔が真っ赤になってうつむいた。
「ん?」松田は最初その理由がわからなかったが、少し間を置き自分が大発言
したことにようやく気がついた。
「あ、あ、いや、そういうことじゃなくて・・俺はただ、そのっ!」
また2人とも真っ赤になった。
いったいいつまでこんな調子でいるつもりなのだろうか。
634松田と柔:2005/07/11(月) 23:48:35 ID:08fFZaj+
何度もいいますが、誤字が何箇所もあってすみません。
なるだけ気をつけてるんですが。。目をつぶっていただけるとありがたいです。
635名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 01:22:35 ID:TJQGc5Qs
とんちんかんな柔に萌え萌えです
続き楽しみにしとります
636名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 11:10:17 ID:/dxhuw0B
どーせあたしは
胸が小さいですよ

原作で一番好きなセリフです
637名無しさん@ピンキー:2005/07/12(火) 18:56:19 ID:LnVuHYpK
やっぱりコンプレックスあってのYAWARA ちょっと化け猫さん風のテイストですね。
638名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 06:04:43 ID:Ulblmb9y
縮小版保管庫さんが更新されてないようなのでエロパロガイド内にページ借りました
勝手にこんな使い方していいのかな…とも思いつつ、やっぱりまとめて読みたい!
この量だと裏方さんが戻ってこられても編集大変だと思いましたのでまとめました
ttp://hhh111.s4.x-beat.com/pukiwiki.php?%B2%FB%A4%AB%A4%B7YAWARA%A4%CE%A5%A8%A5%ED%A5%D1%A5%ED%A1%CA%B2%BE%CA%DD%B4%C9%A1%CB

自由に編集可能なので気になるところは手直しお願いします
639名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 07:53:51 ID:Ulblmb9y
…と思ったら何故か表示されない
>638は忘れてください。。。
640名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 10:33:22 ID:JZN68KMs
余計なURL削ったら見れましたよ
すっげー目次がついてる!
「エロパロガイド」の仕組みがよく分かってないけど
じっくり調べて見てみます
とりあえず638さんGJ!!!
641名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 20:51:37 ID:Q9I+bSIP
完全無欠で高慢ちきさやかお嬢様を陵辱しつくして失意のどん底に突き落としてやるにはどうすれば良いですか?
642名無しさん@ピンキー:2005/07/13(水) 23:33:50 ID:Ulblmb9y
かえって風祭がめろめろに愛情かけたほうがお嬢様のツンデレ具合が見れそうな
きっとそのほうがさやかも不本意だろうw
643松田と柔:2005/07/13(水) 23:37:01 ID:24rGUdPc
柔がシャワーを浴び始めた。
シャワールームは部屋のすぐ隣にあるので、水の音は筒抜け。
松田は気が気でならない。
ベッドに座り頭を抱えている。
(あーもう、どうすりゃいいんだ??そりゃ、柔さんが嫌じゃないなら俺は・・・
いやいや、何でこう暴走するんだ俺は!・・・でも泊まりにきてるんだもんな・・・でも、さっきはなんか怒ってたしなあ。。。)
さっきから柔に、怒られるわ謝られるわ尊敬されるわ照れられるわで、本当に自分の
ことが好きなのか、よくわからなくなっていた。

「・・・さん」「・・田さん」
「松田さん、あの・・」
「うわっ!」
気がついたら柔が横にたっていた。
「ご、ごめん!」
「あ、いえ・・シャワー、ありがとうございました、松田さん、入ってきてください。」
「あ、ああ・・」
お風呂上りの柔。少し髪が濡れていて、妙に色っぽい。パジャマを着て、自分の前に立っている。
松田は固まってしまった。
「松田さん?」
「あ!いや、ごめん!じゃあ、俺も!」松田はそそくさと用意し、テレビでも見てなよと言い残し、
シャワールームに入っていった。
「この状況でどうしろってんだよ・・・」松田は1人でつぶやきシャワーを思いっきり浴び始めた。
644松田と柔:2005/07/13(水) 23:42:16 ID:24rGUdPc
どんどん話を進めていきたいのですが、どうにもこうにもこの2人なので、
進行がかなりスローペースです。。。いまだに渡米1日目・・・先が思いやられる。。
長い目で見ていただけたらありがたいです。
645松田と柔:2005/07/14(木) 00:54:12 ID:gsf36Xpu
緊張してるのはもちろん松田だけではない。
柔は、今までの25年間、好きな人こそいたが、それ以上の恋愛経験はないに等しく、ましてや
家に泊まるなど、まったく初めての経験だった。(以前、松田の家でかくまってもらった件を別として・・・)
(どうしよう・・・・あたし・・・)
初めて経験する緊張感。
(あたし、松田さんとなら・・・でも・・)

そのとき柔は、ふと本棚の方を見た。さっき片付けたときにも少し目にしていたが、松田の、仕事の資料がいろいろと入ってるようだ。
柔は気を紛らわすために、その本棚の中を見た。松田の書いた原稿や書類、記事、いろんな資料が入っている。
(うわぁ・・・すごい量の資料。)
長い間松田の仕事を理解できなかった柔だが、そのとき改めて、松田の仕事のすごさを実感した。


しばらくしてその本棚の中に、柔は1冊のファイルを見つけた。だいぶ分厚い。
柔が手にとって見てみると・・・、
そのなかには、柔に関する記事ばかりが、集められてた。
646松田と柔:2005/07/14(木) 01:14:27 ID:gsf36Xpu
カチャ・・「ふー・・気持ちよかっ・・・」
柔が驚いて見ているときにちょうど松田がシャワーを終え、出てきた。
「や、柔さん!それは・・・・っ!」
松田はあまりの恥ずかしさに、柔の元に走り、すぐにファイルを取り上げた。

「ま、松田さん・・・」
「・・・・」松田は恥ずかしさで何も答えられない。
6年間追い続けた。1人の選手として。
同時に、6年間想い続けた。1人の女性として。
そのファイルには、松田の、6年分の想いが詰まっていた。プラス、離れてからの1年間分も。邦子や
鴨田が送ってくれたのだろう。少々粗雑にだが、ファイルにまとめられている。
恥ずかしいのも無理はない。ラブレターを見られたようなものだ。
「・・・はははっ!これはさ・・・その、あれだよっ。長い間君のこと追いかけてたわけだし・・
なんて言えばいいのかな・・」うまく説明できない松田。
でも柔はうれしかった。
「松田さん、あたし・・・」
松田は、照れくさくててたまらない。
「・・・や、柔さん!なんか飲むかい?のどかわいただろ?なっ?」
「・・・はい・・」
松田は冷蔵庫から、何本か飲み物を取り出した。

647名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 21:12:49 ID:RM1MpX1U
松田と柔さん
応援AGE
648名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 22:39:25 ID:rOyuBW+4
松田には照れないで堂々と自慢してほしいなあ。
柔道に関係さえすれば、柔への想いを開けっぴろげにできるところが
松田のいいところなのに。
649648:2005/07/14(木) 23:22:01 ID:gsf36Xpu
確かに。
でも、松田と柔さんの書いている、「松田のファイル」には、記者としての松田の想いと同時に、
1人の男として見守ってきた柔への想い(私情)が割り込んできてるから、やっぱ見られるのは恥ずかしいんじゃないかなあ。
ただ単に、柔の記事を見るだけなら松田も興奮して楽しく会話できただろうけどね。
松田が集めたってとこがミソなんじゃないかな?


650松田と柔:2005/07/14(木) 23:23:49 ID:gsf36Xpu
648さん→かなり自分的意見です。えらそうなことをいてしまい申し訳ないです。


651松田と柔:2005/07/14(木) 23:30:11 ID:gsf36Xpu
すみません!
むちゃくちゃ私事なんですが、自分の書いている作品を見ていた弟が、
いま勝手に648さんの意見に書き込みをしたみたいで。。
ID名が一緒だったんで驚きました。
ほんと申し訳ないです。続き、がんばって書きます。
652名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 23:33:41 ID:rOyuBW+4
自分的意見を好き勝手にかく場ですからね。

とはいえ弟に書いてるものをみられる方がファイルを見られた
松田よりずっと恥ずかしいと思うんですけど・・・・・・・
653松田と柔:2005/07/14(木) 23:36:35 ID:gsf36Xpu
ほんと急にすみません。
ほんっとにむちゃくちゃ恥ずかしいです・・・
松田に負けずがんばります・・・
654名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 23:48:59 ID:ifkSh2Qp
身 内 晴 れ
松田と柔さんゴメン、ちょいウケタ

弟さんもYAWARA!にお詳しいご様子。
いっそのこと職人デビューされてみてはww
655名無しさん@ピンキー:2005/07/14(木) 23:53:58 ID:Nbj4hp5a
エロ
656松田と柔:2005/07/15(金) 00:06:25 ID:gsf36Xpu
「・・・何飲む?」
「あ・・あたしはなんでも・・・」
松田はジュースを柔に手渡し、自分はビールを飲み始めた。しらふではいられない松田。

テレビを付けており、部屋の中はにぎやかだが、2人はどことなく落ち着かない。
時計を見ると、もう10時をまわっている。


「・・・柔さん、時差ぼけ大丈夫?」
「え・・・あ、はい。慣れてますから・・」
「あ・・・、そっか、そうだよな、ははっ!」必死で考えた会話は、僅か10秒で終わった。
(・・・どーすりゃいいんだ・・)松田は困惑。本当にこういう状況が苦手なのだ。

そのとき、「・・あっ!!」柔がテレビに目を向けた。
スポーツニュースにジョディーが写っている。
「ジョディー!」「あ、ほんとだ、ジョディーだ!」
アナウンサーが、英語で何かいっている。
「・・・・なんだって・・・?すっげー!」
「え、なんて言ってるんですか?」
「ジョディー、またカナダの大会で優勝したってよ!」
「そうなんですか?」
「ああ!ジョディーは、1年前、君に敗れてから、またどんどん強くなってるんだ!そしていつかまた、世界の舞台で、柔さんと
戦えることを、願ってるんだよ・・・っくー!すっげーなージョディー!」
松田は、突然水を得た魚のように元気になった。
「ジョディーだけじゃない、君に敗れたたくさんの強豪達が、またいつか君と戦おうと、必死になってるんだ!」
「・・・」



657松田と柔:2005/07/15(金) 00:50:12 ID:OaAQLHKa
「フランスのマルソーも、君とまた戦うため、特訓中らしいぞ!彼女も強いからな!
柔さんもがんばれよー!といってもアメリカで1番の人気は、やっぱりなんといっても、やわ・・ん?」

ふと柔を見ると、柔は少し照れたように笑いながら松田を見ていた。
「・・・何?何か俺、変なこと・・」
柔は首を横に振り、がんばります、と答えた。柔はただ、松田の、日本にいた頃とまったく変わらない、少年のような表情を見る
ことができ、なんだかうれしかった。数年前までは、そんな松田の良さに気づかず、柔道の楽しさに気づかず、ただただ
敬遠していたのに・・・

松田はぽかんとしている。

「・・・松田さん、明日なんですけど・・」
「明日?ああ!明日か。どこ行きたい?バイクでいいかな。」
「はい、あの・・街を歩きたいです。」
「街?」
「はい、イルミネーションがきれいだろうなと思って・・」
「イルミネーション?何の?」
表情が少し曇った。
「明日は・・・クリスマスイブです・・・」柔が口を尖らした。
「・・・・!」(あー!!そーだった・・)松田はやっと気づいた。疎い松田。すっかり忘れていた。
「そ、そーだな、クリスマスイブだもんな!あはは!街だな、街に行こう!」
松田は必死に返したが、柔は案の定少しだけ機嫌を損ねてしまった。
658松田と柔:2005/07/15(金) 00:52:01 ID:OaAQLHKa
654さん。
とんでもないです。むしろ笑ってやってください。。
弟には、またほとぼりが冷めたら誘ってみます・・(笑)
659松田と柔:2005/07/15(金) 01:28:46 ID:OaAQLHKa
「や、柔さん、のみもんもうないだろ、取ってくるよ。何飲みたい?」
「・・・ビール・・」
「へ?」
「あたしもビール飲みます・・。」
「いっ?でも・・」
「あたし、もう25歳です。ビールくらい飲めます」
「は・・はい。。」(お・・怒ってるぞ・・)
松田はそそくさとビールを取り出し柔に手渡した。
案の定クリスマスイブを忘れていた松田に少しむっとした柔は、松田から受け取ったビール
をぐびぐびっと飲んだ。
「いっ・・・!」(この光景、昔どっかで見たような・・・)松田は思った。
すぐに真っ赤になった柔。
「や、柔さん、風呂上りに一気飲みは・・」
「大丈夫です。松田さんこそ、毎日こんなもの飲んでたら、お体によくないですよ」
「・・・・」怒っている柔に松田は弱い。言い返せない。

カタ。。柔が立ち上がった。「・・・・お水もらいます・・」案の定酔ってしまった柔。かなり弱い。
「あ・・いいよ!俺とってくるから、座ってなよ」
「大丈夫・・自分で行けますから・・」真っ赤で目は虚ろ。ふらふらしている柔。
「きゃっ・・!」柔がふらついてつまづいた。
「柔さんっ・・」
松田が抱きとめた。一気に酔いが覚め、我に返る柔。
「ご・・ごめんなさいっ!」
「い、いや・・俺が取ってくるから・・座ってなよ・・」
松田は柔をベッドに座らせ、台所に歩いていった。

660名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 02:47:33 ID:Ir7MQXy0
乙!
ももも、もどかしい二人!
661名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 07:37:06 ID:YNaZvfsb
二人とも奥手だからねー。
でもこんな二人がいいんっすよw
662名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 20:26:31 ID:YNaZvfsb
おうえんあげ
663名無しさん@ピンキー:2005/07/15(金) 20:31:17 ID:trzefSXs
>640
まとめてみれるURLをおしえてくださーーーい!
わかんないよーー
664松田と柔:2005/07/15(金) 22:28:50 ID:OaAQLHKa
「はい、水・・。」松田が水の入ったコップを柔に手渡した。
「ありがとうございます・・」柔は少し気恥ずかしい。1人で怒り、結局松田に迷惑を
かけてしまった。元はといえば、大事な行事を忘れていた松田が悪いのだけれど・・・

1度はひいた酔いだったが、あまり飲み慣れていない柔。顔のほてりはなかなか治まらない。
その上松田に抱きとめられたこともあり、どきどきもなかなか治まらない。

 松田は柔の横に座り、そっぽ向いている。
(松田さん、怒ってるのかな・・・)柔は心配になった。
「あの・松田さん・・・・」

松田は黙っている。
「松田さん、あたし・・」

「・・柔さん、疲れたろ、ベッドで横になりなよ!」松田は突然こっちを向き、意を決したように
口を開いた。
「え・・?」
「俺はこっちのソファで寝るからさ!な?」
「でも松田さん・・」
「心配すんなって!俺、そういうの慣れてるしさ。」
松田は柔の体調を気遣い、ベッドでゆっくり寝るよう促し、俺はここにいるから、しんどくなったら呼んでくれ。と柔を説得して、
ソファに座り、寝転んだ。
(あんなに真っ赤な顔して見られたら、理性がふっとんじまうよ・・・)

松田なりの心遣いだった。
柔は言われた通り布団に足を入れ、上半身だけ体を起こして松田を見つめた。

「松田さん・・」

665松田と柔:2005/07/15(金) 22:46:08 ID:OaAQLHKa
「心配しなくていいよ。ゆっくり寝な!」松田は答える。松田は松田で、もういっぱいいっぱいだった。

松田がテレビを消した。

「・・・松田さん・・・あの・・」
「・・・ん?」松田は柔の方が見れない。

「・・一緒にいてください。」
「え。」
「・・・・あたし、松田さんに、一緒にいてもらいたいです。」
「え、でも・・・」
「だって、せっかく会えたのに・・避けないでください。」
「いや、避けてなんか!」やっと松田が体を起こし柔の方を向いた。
「じゃあ・・・じゃあこっちにきてください。。」
「あ・・・あぁ・・」やはり少し酔ってるのか、それとも本心なのか。近くにいてほしいとはっきり告げる柔。
対する松田は、照れくさくて、何も言えない。
柔のいるベッドに、松田がかなりぎこちなく入った。



666松田と柔:2005/07/15(金) 23:17:20 ID:OaAQLHKa
松田はまともに柔の顔が見られない。仰向けになり手を頭の下で組み、天井を見つめている。

一方の柔は、どきどきしているものの、松田が来たとたん不思議と、安心感に包まれた。

「松田さん・・・」
「うん?」松田は困ったような顔をして、ちらっと柔を見た。
柔は松田を見上げていたが、松田と目が合ったので、赤くなり、少しだけ目をそらした。
(なんなんだよぉー・・・)松田はどうすればいいのかわからない。

長い沈黙のあと

コトン・・・
柔の頭が、松田の肩に当たった。
「!!!」
ビックリする松田。
「や、柔さ・・・・・・・・・!ん?」

すぅーすぅー・・・柔の寝息が聞こえる。
柔は、今日1日の疲れと、かなりお酒がまわってしまったこと、そして松田がそばにいる安堵感から、
寝入ってしまったのだ。前にどこかであったような風景。

惚れた女の子が、自分の隣ですやすやと眠っている。
耳元で、時折「ん・・・」と、無防備な声が聞こえてくる。
(こ・・・・この状況で。。。俺にどうしろっていうんだよぉー・・・)



このあと松田がようやく眠りに付けたのは、柔が目覚める、1時間ほど前だった・・・
667松田と柔:2005/07/15(金) 23:23:56 ID:OaAQLHKa
ようやく初日終了・・・
結局何も進展なかったのかよー!と思われる方もいると思いますが、
超奥手な上、思いが通じ合って以来、初めて会う2人ということで、
これだけでも充分な進歩。。。と自分なりに解釈しました。
また暇見つけて2日目書いていきます。
668名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:27:54 ID:miYfKLT6
むしろ進展しすぎだと思うな。初日から同衾するなんて・・・・・・
669名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 01:57:55 ID:F9nlODmD
同じ布団に平気で誘うあたりむしろ処女っぽいけどね。
男の生理をわかってないゆーか。松田さんカワイソ。
続き楽しみにしてます。
670名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 07:42:30 ID:miYfKLT6
ちょっと待った!
同じ布団で平気に誘うのが処女っぽいってそんなべら棒な話があるもんか!
それじゃあただの天然ボケじゃ。
少なくとも俺の過去の経験からいけばだなあ、あーで、こーで・・・・・・・・・。
671松田と柔:2005/07/16(土) 09:14:27 ID:Cx3GGGvq
「・・・・」
柔が目覚めた。うとうととしていて、まだ頭がボーっとしている。
上半身を起こし、部屋を見渡すと、松田がソファで寝息を立てていた。
(あ・・・松田さん・・・)

柔は、徐々に昨日のことを思い出してきた。
(・・・やだ・・・あたしったら。昨日、松田さんにとんでもないこと言っちゃったような・・・)
ただでさえ弱いのに、昨晩はお酒を一気飲みした柔。以前は勢いあまって、松田を投げ飛ばしたこともある。
今回はそれ以上に大それたことをしてしまった。

松田は、そんな柔が横で寝ていることが、耐え切れなかったのだろう。
柔がおきる数時間ほど前に、そそくさとソファに逃げてしまっていた。松田らしい行動だ。
(どうしよう・・やだやだ・・あたしったら信じられない・・)真っ赤な柔。

そーっとベッドから起き、松田の顔をのぞいた。
少し寝息を立てて、子供みたいな顔をして眠っている松田。
(こんな松田さんの顔、初めて見た。。)
しばらく見つめる柔。

ジリリリージリリリー「きゃっ・・・・!」
松田のソファのそばで突然目覚ましがなった。
松田が、バンっっとたたき止め、「うー・・・あと5分んー・・・」といっている。
その目覚ましで柔より先に起き、柔にばれないようにベッドにでも戻るつもりだったのか。その作戦はあえなく失敗。

一瞬驚いてあっけにとられた柔だったが、はっとし、松田の起きる前に朝のトレーニングに行こうか、と、しばらく悩んだ。
ほんとは、せっかくアメリカにきてるのだから柔道のことは・・・と思っていたのだが、いま自分が来ているのは、自分をずっと応援してくれている松田のもと。
「少しだけ・・・、少しだけいってこようかな・・・」
そう言い、柔は音を立てないように支度をし、そっと部屋を出て行った。

672松田と柔:2005/07/16(土) 09:21:19 ID:Cx3GGGvq
やっぱり、進展が早すぎると思われる方もいらっしゃいますね。
確かにそうですね。
自分も正直、そう思っていました。

 自分としては、こういう状況では、意外と男より女の方が積極的に出ることもあったりするし、
しかも柔の天然&酒酔いも重なって・・・ということで。
松田をいじめてみました。

またしばらく滞るかもしれませんが、またよろしくおねがいします。

673名無しさん@ピンキー:2005/07/16(土) 10:16:29 ID:ovdToH1O
私はこういう柔もアリだと思う。
実際、似たような行動に出たことあるしな……(ボソ


>そそくさとソファに逃げてしまっていた。松田らしい行動だ。

ここ、愛らしくていいなー
674名無しさん@ピンキー:2005/07/18(月) 10:32:45 ID:SEzlBCYd
誠実な松田オツ

普通襲うがなー
675名無しさん@ピンキー:2005/07/19(火) 12:10:21 ID:/0Q/VQd7
意外と襲えないもんよ。いきなり泊まりにこられると…
676松田と柔:2005/07/19(火) 21:32:23 ID:16QRXy7A
長らくごぶたさしてました。。。
明日から復帰します。
読んでくださってる方、すみません。。
677名無しさん@ピンキー:2005/07/19(火) 23:08:28 ID:jYMwd3Rk
>>676
期待してます。
がんがってください
678名無しさん@ピンキー:2005/07/20(水) 00:34:57 ID:Savywtt7
>676
楽しみにしてます。
どれだけ空いても待ってますんで、お時間と気力のあるときには投下ヨロ。
679名無しさん@ピンキー:2005/07/20(水) 16:03:02 ID:xz5WhJzV
柔を襲っても
投げられちゃうでしょ。
腕力じゃ勝てないと思われ。
680名無しさん@ピンキー:2005/07/20(水) 19:03:32 ID:giHeBQaK
襲うったってほんとうに襲いかかる訳じゃないんだから・・・・
681松田と柔:2005/07/20(水) 19:06:50 ID:2e5HbuGf
カチャ・・・
柔が寒空の下でのトレーニングを終え、部屋に帰ってきた。ソファーに近寄り、そっと松田の顔をのぞいたが、
松田はまだ、死んだように眠っている。柔は、子供みたいな松田の寝顔を見て少し微笑み、松田を起こさないよう、シャワールームに向かった。
昨日のことを思い出しては、たびたび赤くなり顔をぺちぺち叩く柔。シャワーを浴びながらも、昨晩のことを思い出しては、(あーやだやだ・・・松田さんが起きたら、なんて言おう・・)と考えていた。

しかし、シャワーが終わり部屋に戻っても、松田は起きていなかったので、柔は台所で、コトコトと朝ごはんを作り始めた。

朝ごはんの支度を終えた柔。時計を見ると、7時半になっていた。柔は、休みの日でも早起きだ。

意を決してソファの横に、ちょんとひざをついて座り、松田の肩を揺らしながら、「松田さん、松田さん・・・」と声をかけた。
まるで反応がない。
(お仕事の時、寝過ごしたりしてないのかな・・・)少し心配になる柔。
それに今日は、松田と一緒に街を歩く予定だ。出来るなら早く起きて欲しい。
でも、ぐっすりと眠っている松田。

柔はしばらく考えたが、(きっと松田さん、疲れてるのね・・・せっかくのお休みだもの・・・)、と、起こすのをやめることにした。

ソファで肘をつき、しばらく松田の寝顔を見ていた柔だったが、だんだん眠気が襲ってきた。
「んー・・・」
ソファでうつぶせた柔。
松田の顔の近くで、そのまま、うとうとと寝入ってしまった。








682松田と柔:2005/07/20(水) 20:26:41 ID:2e5HbuGf
「・・・・」僅かな時間が流れた後、松田が、とろーんとゆっくり目を覚ました。
「・・・んー・・・?」まだ起ききれていない松田。何度かまばたきをした。
(・・・あれ・・・俺・・・)ボーっとして頭が回らない。
「んー・・?」ゆっくりと顔を横に傾けた。
目の前で寝息を立てている柔がいる。

・・・・・・。しばしの沈黙。
「どわあー!!!」「きゃっ・・!」
松田が、奇声を発し飛び起きた拍子で、うとうとしていた柔も、驚いて目を覚ました。
「や、や、やわ、柔さん!な、なんでこっここにっ・・」状況がつかめない松田。
「あ、あれ?な、なんでだ??お、おれなんでっ・・・」
「松田さん、あの・・・・」柔は赤くなり、少しはにかんだように苦笑いしながら松田を見ている。
ようやく状況だったのつかめた松田。
「・・・あ、ああっ!そおだよな、昨日柔さんがこっちに・・!あははっありがとう!そーだそーだ!いや、おはよー柔さんっ」
松田は混乱して、わけのわからない言葉しか出てこない。

「松田さん、あの・・」
「は・・・はいっ?」
「あの・・昨日は・・すみませんでした・・・・あたし、とんでもないこと・・」柔は真っ赤だ。
「とんでもないこと・・・?」ぽかんとした表情。しかしすぐに思い出した。
「あっ・・いや!謝ることじゃないさ!気にすることないよ!そう!気にすることなんてないんだ!」

「・・・俺の方こそごめん・・・」
「え・・・?」
「いや、その・・・ベッドから・・出てしまって・・」
「・・いえ・・そんな・・」
赤くなりまともに柔が見れない32歳男、松田と、真っ赤になりうつむく柔。
昨夜の出来事は、進展どころか、むしろこの2人を、より後退させてしまったようだ。
1歩進んで10歩さがる2人。先が思いやられる・・・


683松田と柔:2005/07/20(水) 20:27:37 ID:2e5HbuGf
訂正
状況だったの→状況が
失礼しました・・
684名無しさん@ピンキー:2005/07/21(木) 03:48:30 ID:HGVxBYJt
柔ってHのとき
どんな感じなんだろうね?
あの声は犯罪だよなー
685名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 00:35:30 ID:c/w/ZkDN
まあ、ふつうだろうな。
686名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 22:07:54 ID:eCV3NIJZ
柔タン応援あげ
687松田と柔:2005/07/22(金) 23:24:42 ID:5zgewZyN
「柔さん、そろそろ行くか?」
「あ・・はい!」
朝食の時は、2人は、まだ恥ずかしさがまだ抜けきれておらず、すこし(いや、かなり)ぎくしゃくしていた。照れあって会話が続かず、テレビを見ては話をつなげる状態・・・
しかし、そのテレビに、若手の女子スポーツ選手が出てきて、松田がその選手について熱弁し始めた際に、柔が案の定
腹を立て、少し口げんかをしてしまったのをきっかけに、2人の空気は幾分か元に戻っていた。今回は、松田がすぐ謝ってたので、仲直りも早かった。

アパートを出た。外はかなり冷えている。息も真っ白だ。
「さっむいなー・・・」といい白い息を吐きながら、松田は柔に、被りな、と、ヘルメットを手渡した。
そして手早くヘルメットを被り、柔より先にバイクにまたがりエンジンをふかしている。
柔は、実はひそかに、松田と共にバイクに乗ることを、とても楽しみにしていた。
昨日の空港で、松田が相変わらずバイクに乗っていることを知り、少しほっとしていたのだ。
日本にいるときにも、柔は、松田のバイクの後ろには、よく乗せてもらった。
1度目は高校生の時、記者が逃げるため。あれは風祭さんだと思っていたけれど・・
その後も、花園君たちの大会へ行くときや、北海道からかえってきた自分を松田さんが迎えにきてくれたとき、
試合を放棄した自分を迎えに来てくれた松田と、2人で遊園地に遊びにいったとき・・・
松田は、本当によく、自分のためにバイクを走らせてくれた。

バイクに乗っているときの松田さんは、なんだか、不思議と男らしく見えたっけ・・。

柔は松田を見つめ、少しだけボーっとしている。
「柔さん、どうした?早く乗りなよ!」考え事をしてる柔に松田は話しかけた。
「あ・・、はい!」柔は、はっとし、急いで松田の後ろに乗った。

ブーンブーーン  
「行くぞ!しっかりつかまってろよ!」
「はい!」
バイクが発進した。
柔は、振り落とされないよう、松田の背中をぎゅうっと抱きしめた。



688松田と柔:2005/07/22(金) 23:26:28 ID:5zgewZyN
いつも後から気づくんです。。。
記者が→記者から
ですね。
訂正します。すみません。
689名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 23:36:50 ID:FnFG3pn6
>688
もし間違いが気になるようでしたら、一度メモ帳や
ワードなどに文章を打って確認してからコピペするのも
一つの手ですよ〜
つづき楽しみにしてます!
690松田と柔:2005/07/22(金) 23:39:07 ID:5zgewZyN
あ、そっか!そうですね!やってみますね、ご親切にありがとうございます!
691名無しさん@ピンキー:2005/07/22(金) 23:43:31 ID:9rlZHiQw
何度確認しても何故か投下してから気付くんだよねぇorz
692松田と柔:2005/07/22(金) 23:53:10 ID:5zgewZyN
ほんとそうなんですよ。。投下してから、読み返して、あちゃー・・・って。
そう言っていただいて、かなり嬉しいです。。

693松田と柔:2005/07/23(土) 00:15:23 ID:cFrU4ALu
昼前、2人はニューヨークの街中にたどり着いた。街のイルミネーションはすっかりクリスマス模様。
人も多い。というよりカップルばかり。
「わあ。。。」柔は嬉しそうに街を見渡している。
こういうことにはかなり疎い男、松田にも、柔が喜んでいることはよくわかった。

「よし!柔さん、まずどこからまわりたい?行きたいとこ、あるか?」
「そうですね・・あ・・」
「ん?」

松田が柔の視線を追うと、男女のカップルが、日本では考えられないような熱いキスを交わしていた。
ここはアメリカ、しかもクリスマスイブである。
人目を気にせずいちゃつきまくるカップル達。熱烈なキス。

そんなカップル達をみた2人は、硬直。松田の目は点。
「う・・・あ・・・あはは!こっちの人たちはすげえよなー!柔さん、行こう!」
「はい・・」

あまりにも、あまりにもうぶなこの2人。
アメリカのこの土地で、明らかに浮いている2人であった・・


694松田と柔:2005/07/23(土) 00:23:33 ID:cFrU4ALu
いまじっくり読み返してみても、ものすごいスローペース。いまだ2日目の昼・・
そして「エロパロ」とは考えられないような話の進行。
こんなんでいいのか・・・とかなり思ってしまいました。

でも自分的には、こんな、ほんとに些細な事さえも大事件にしてしまうような天然級のうぶさが大好きな
もので。。みてくださってる方はゆっくり見守っていただけるとありがたいです。
では、また明日に。
695名無しさん@ピンキー:2005/07/23(土) 00:45:07 ID:z8caQrUr
大丈夫です!このほのぼの感に癒されてます。
続き、待っております。
696松田と柔:2005/07/24(日) 00:42:35 ID:9p8N2WEE
今日は書くつもりだったんですが・・
申し訳ないです。また明日に。
697名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 20:57:38 ID:eVEuMOCQ
職人さん
応援age
698 :2005/07/24(日) 21:45:27 ID:KeclppRU
積極的に作品を投下している職人さんがいらっしゃるというのに
途中で放置したままの自分は情けない限りです(恥
699名無しさん@ピンキー:2005/07/24(日) 22:47:59 ID:eP2ZAXwt
あのー、中断中の職人さんは
きちんと住人に説明すべきだと思うんです…
いつ頃投下できそうなのか、もう無理なのか。
21才以上の大人の職人ですから
時には仕事が忙しくてそれどころじゃなくなったりもしますし、
精神的にまいってたりすると、筆ものらないでしょう。
お気持ちはよく分かりますが、
読み手としては続きが気になって仕方がないんですよ…
どうしても書けないのであれば、
例えば別の職人が続きを書くなんてのも
アリかもしれません。
実際に書き手が名乗り出るかどうかは別として。
700松田と柔:2005/07/24(日) 22:51:26 ID:9p8N2WEE
ニューヨークの街並を並んで歩く2人。
周りは見事にカップルだらけ。熱烈なカップルたち。
柔は少し気恥ずかしかったが、横の松田の顔をちらっと見上げて見てみると、
松田は、自分以上に困ったような顔をして口をつぐんでいた。よっぽど気恥ずかしいのだろう。
そんな松田を見た柔は、少し気持ちがゆるみ、くすくすっと笑った。
気づいた松田。
「・・・なんだよ・・」松田は、何で笑うんだよ、と言いたげな顔をして横目で柔を見下ろした。
「・・・なんでもないです」柔は笑っている。柔の方が、ほんの少し、上手のようだ。

「どこいきます?」柔が切り出した。
「・・そーだなー・・柔さんは行きたいとこあるか?」

「・・・とりあえず・・ぶらぶら歩きたいです。」
「そうか?」
「はい・・」
「。。。そーだな、それでまずは昼飯だな!ぶらぶらしてていいとこあったらどっか入るか!」
「・・・・・」

相変わらずの松田。
701松田と柔:2005/07/24(日) 23:33:45 ID:9p8N2WEE
「松田さんは、おいしいものの事しか興味ないんですか?」
「いや、そんなんじゃないけどさー・・・」
案の定柔を怒らせてしまった松田。柔が少し前を歩いている。
無理もない。松田は、昼食を済ませるまでずっと、おなかがすいた子供のように、どっか入ろう、どこに入る?とそればかり
柔に問いかけていたのだ。その上、だからといって、おしゃれな店に連れていってくれたわけでもなかったようだ・・・・

「また怒らせしちまったよ・・・」ぽりぽりと頭をかき柔の1歩後ろを歩く松田。この状況、柔が渡米して以来いったい何回目であろうか。

松田はふと横を見て、店のウインドーを見た。
Merry Cristmas!の文字。
(メリークリスマスかあ・・・そういや今日、クリスマスイブなんだよなあ・・・ん?クリスマスイブ・・・?)
少し考え込む松田。
(あー!そういや俺、柔さんに、プレゼント、何も用意してねー!)
あまりの多忙さに、柔が来る日にイブが重なっていることさえ気づいていなかった松田。
しかも今日はイブ当日。今の空気のままだと、松田が何も用意していないことを知ったら柔はきっと・・・
鈍い松田にも、状況がなんとなく予測できた。
なんとかしなければっ・・・!でもいまさらどうすりゃいいんだー!
「や、柔さん!」とっさに柔を呼んだ松田。
「・・なんでしょうか・・」「ぅ・・・」柔は少し怒っている。
「あ・・あのさ、柔さん、クリスマスプレゼント、何か欲しいものあるか??」
「え?」
「なんでもすきなもの選びなよ!ほら、俺、何が欲しいかわからないからさ、柔さんが来たら、柔さんに選んでもらおうと思ってさ!」
必死な松田。
「・・・ほんとですか?」柔の顔が晴れた。
「へ?」意外な反応に驚く松田。
「ほんとにいいんですか?」
「あ・・・ああ・・・」
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑う柔。
そんな柔の反応に、松田はほっとした反面驚いた。
「あれ・・・今のでよかったのか・・・?」

初めて松田の苦し紛れの言い訳が、柔の気持ちをほぐしたようだ。




702名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 00:53:59 ID:aST7ld5f
松田と柔さん
応援あげ

楽しく読ませてもらてます
703名無しさん@ピンキー:2005/07/26(火) 01:28:59 ID:eYDYZthR
さあ、二日目の晩に期待しようか・・・・
704松田と柔:2005/07/26(火) 18:20:04 ID:/2KnWAOB
予想外の柔の反応の松田は驚いた。苦し紛れの、とっさの言い訳だったはずが・・・
こんなことがあるものなのか。
(女の子ってわかんねーな・・・)松田は横目で柔を見下ろしながらそう思った。柔は、嬉しそうな表情だ。
(あ!やばい・・)そのとき松田は何かに気づいた。
「や、柔さん、トイレ行ってもいいか?トイレ!」
「あ、はい、じゃあ私も・・」
2人は近くの店に入り、トイレへ向かった。松田は、じゃ、後で、と柔と別れ便所に入った途端、
せかせかと財布を取り出し、中身を調べた。
「・・・これだけかよぉ・・・」松田の財布事情は相変わらずだった。渡米してても安月給の日刊エブリー。
10分前に、プレゼントを買ってあげると約束したのに・・・
しかもわざわざ自分のためにアメリカまできてくれた、惚れている女の子に。
いまさら、「金がないから、安いの選んでくれよ、柔さん!」なんていえないぞ・・
「ぅー」松田はうなりながらトイレを出て柔を待った。

「ごめんなさい、待たせちゃって・・・」柔が遅れて出てきた。
「あ、いや!」柔が先に歩き出そうとしている。
「や、柔さんっ!」「は、はい?」松田が引き止めた。
「あ、・・・あのさ・・・」柔はきょとんとしている。松田は柔の足元と柔の表情を交互に見ている。
「俺、俺さ・・・あんまり金がなくてさ・・その・・いいもん買ってあげたいんだけどさ・・
あんましいいもんは買ってあげられないと思うんだ・・、ごめんな・・」
なんて率直な、情けない言葉だろう。もっとうまいこと嘘をつけばいいものを・・しかし、それが松田なのだ。
(・・怒ってるだろーな・・・)松田は、ちろっと柔の顔を見上げた。
柔の顔は、怒るどころか、穏やかな表情で松田を見つめ、にっこり笑っていた。
(い?)松田はきょとん。「・・・あ、あの、いいの?」「はい。」柔はにっこり笑って答える。
「あ、そっか。あはは、よかった・・・」柔も笑っている。
「行きましょっか、松田さん・・」
「あ、はい・・」柔はにこにこしながら先を歩く。
(な・・・なんなんだ・・・)
松田には、さっぱりわからない、微妙な女心だった。
705松田と柔:2005/07/26(火) 21:22:11 ID:/2KnWAOB
「松田さん・・ほんとにありがとうございます・・・」
「いや、ははっ。安物しか買ってあげられなくてごめんな。」
「いえ・・嬉しい・・」

長い時間いろんな店を巡り、ようやく柔は、お気に入りを見つけ、松田に買ってもらったようである。
シルバーのブレスレッド。決して高価なものではないが・・・

それにしても、松田にとってここまでいきつくまでの道のりは、それはそれは長いものだった。
寒い中歩き回り、ありとあらゆる店に入り、柔は松田に、「もう1回、さっきのお店行ってもいいですか?」「これとこれ・・・どっちがいいと思いますか・・?」と問いかけた。
松田は、アクセサリーやらにはまったく興味がない。興味がないから、どれがいいかなんてわかるわけがない。
(俺そんなのわかんねーよ・・)(どっちも同じに見えるぞ・・・)と思う気持ちを抑え、最後まで柔に付き合った。
もう午後の4時を過ぎた。足が棒の松田。喫茶店に入ろうと柔を誘い、近くの喫茶店に入った。休みたいのだ。

いすに座ると、松田はフヘーと、一息ついた。柔はニコニコ。嬉しそうだ。

お茶を飲みゆっくりする2人。
「夕食まで・・・まだ時間あるな。次はどこ行きたい?」松田が尋ねた。
「そうですね・・・・・」
「あ。」「え?」松田が、外の大画面テレビに顔を向けた。今晩の野球の予定が映し出されている。
「・・・今日この近くのドームであの試合やるんだ。すっげー!」
「そうなんですか。松田さん、よく見に行かれるんですか?」
「いや・・・・俺さあ、こっちきてから、仕事以外で、試合見に行ったことってないんだよ。仕事でだったら
何百回もあるんだけどさ。本場の野球・・・見に行くのがガキの頃からの夢だったんだけどさ。・・ははっなんか変な感じだよなー」
夢だった、大好きな本場アメリカの野球を、プライベートでは1度も見に行けていないという松田。

「・・・・見に行きます?」
「へ?」
「野球、一緒に見に行きます?」柔が試合を見に行こうと誘っている。
「え・・・いや、いいよいいよ。柔さん、野球なんか興味ないだろ?」
「でも・・・アメリカの野球って・・ちょっとみてみたいんです。」
柔には、松田がこの試合を見に行きたいと思っていることが感じ取れた。それに、柔自身も、柔道以外のスポーツ観戦を、
松田と一緒にしてみたかった。
「ほんとにいいの?」
「はい」柔はにっこり。

今晩は、2人で初めての野球観戦になりそうだ。

706名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 12:58:12 ID:XknkdjsE
おおー
続きがアップされてる
たしかに柔はブランドとかよりも
松田からの贈り物っていうだけで
すごい喜びそうだよねー
手袋もそうだったし
707名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 13:35:12 ID:17Eu6C5D
これって劇場版のシナリオか何かなの?
会話ばっかり続いてて、情景は読み手が自分で想像しなければいけないの
708名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 14:28:47 ID:jWLqjtVr
暗いと不満をいうよりも、すすんで灯りをつけましょう。
709名無しさん@ピンキー:2005/07/27(水) 15:24:59 ID:Giwum8Bl
いいねー
続きまってますよ
710名無しさん@ピンキー:2005/07/28(木) 21:44:16 ID:HDlsyx2F
期待あげ
711松田と柔:2005/07/28(木) 23:04:36 ID:+86k+puh
「うっおー!すっげー!すっげーよ!今の見たか柔さん!」
大歓声の、本場アメリカの野球試合。松田は大興奮だ。何度も立ち上がっては、大声で叫んでいる。
柔は、そんな松田の横にちょんと座り、そんな松田を見て笑っている。
「今のわかるか?柔さん!あれはな・・・!」「柔さん!今打った選手はさ・・!」
と、聞いてもいないのに、興奮しながら柔に説明する松田。柔は、はい・・はい・・そうなんですか!と相槌を打つ。
柔は、うれしそうにしている松田をみているのが楽しいようだ。

「ほら柔さん。食べなよっ!」
松田が、ハンバーガーとジュースを買い、柔に手渡した。今日の晩御飯だ。
柔がちらっと松田を見ると、松田はもう大口を開けハンバーガーにかぶりついていた。
くすくすっと柔が笑った。「・・・・ん?」松田ははぐはぐと食べながら、何?という表情で柔を見る。


「どうだい?野球もすごいだろ?!柔さん・・・」松田が口を開いた。
「あ・・・はい、そうですね・・」
「こんなにたくさんの人達が、選手達の一瞬いっしゅんに、大興奮してるんだ!柔さんもそうなんだよな・・柔さんも、こんな声援・・いや、もっと大きい、世界中の声援の中で柔道やってるんだもんなあ・・すごいよ・・」
そう。いままで柔は、この試合になど負けないくらいの歓声の中で、数多くの試合を勝ち進んできた。
そして、そこにはいつも松田がいた。
「そんな・・・・・・あたしは・・」柔は松田を見上げた。
「松田さん、あたしは・・」

「ん?何?」
「・・・・い、いえ・・・」
“松田さんがいてくれたから、ここまでがんばれたんです。”そう言いたかったが、歓声に負けない程の大声で叫ぶ
のが恥ずかしくて、柔は言うのを躊躇った。

          オオー!!突然の大歓声。
「ん?おーすっげー!柔さん!今の見たか?ホームランだぜー!!」
松田は、そんな柔の気持ちなど露知らず、再びグラウンドに目を向け、歓声をあげ始めた。
712名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 05:48:22 ID:OZd48iQb
あくまでも個人的感覚なんだけどね、夢中になってはしゃぐのは柔らの方で
松田の方はルールの説明に追われるとかそういう感じのような気が
するんだけどなあ。
713松田と柔:2005/07/29(金) 07:17:45 ID:mgQJv5mE
そうですね。確かに!
自分としては、柔ももちろん、野球を見て、うわあって驚いたり楽しんでるんだけど、その度に、
横で必死に説明したりものすごい歓声をあげてる、子供みたいな松田に目がいってしまう・・・ってシチュエーションが思い浮かんだので、
そうしてみました。自分も、いつもこうやって応援してもらってたんだ、って。
いろんなご意見があると思います。
では、また後日に。
714名無しさん@ピンキー:2005/07/29(金) 08:09:07 ID:+fcwuFwu



715名無しさん@ピンキー:2005/07/30(土) 22:02:52 ID:DIAB7HSr
応援あげ
716松田と柔:2005/07/31(日) 21:46:54 ID:Sidpt/Nx
ただいま夏ばてのため死んでます・・・
もう少しまってください。。
717名無しさん@ピンキー:2005/07/31(日) 22:21:34 ID:O29pwJ5M
>716
ちゃんと水分採るんだぞー
無理しないで良いから。
718名無しさん@ピンキー:2005/08/01(月) 00:56:36 ID:JkWw7I+M
脳の活性化のためにはカフェインと糖分も大事だぞ。

無理を止める気はないが・・・・
719松田と柔:2005/08/01(月) 19:32:38 ID:GAK6pP1i
ありがとうございます!
毎年この季節になると、ばてばてになるもので・・・ひ弱だ・・・
また、じき再開します!
720松田と柔:2005/08/03(水) 01:47:09 ID:iDH6lpzI
ドームは大いに盛り上がっている。2人が応援しているチームは、僅かの差で負けている。
松田は大きな歓声をあげ、逐一柔に説明をしている。
柔も、周りのアメリカ人達の声援の大きさに圧倒されながらも、拍手を送ったりしながら、
楽しく観戦している。そんな柔も、世界を驚かせたスーパースターの1人だ。こんなところで歓声をあげていたら、
すぐにばれてしまうものなのかもしれない。
しかし柔は、ひとたび柔道を離れると、小柄でかわいらしい、普通の女性だ。
母国日本ならまだしもここはアメリカ。現地の人たちは、そんな柔に、ほとんど気づかないようだ。

試合も終盤にさしかかっている。逆転しないと、松田と柔の応援するチームは負けてしまう。
しかし松田は、「大丈夫さ!次の選手は、いざという時に必ず打つんだ。彼なら必ず打つ!やってくれるさ・・・!」と柔に叫んだ。
どんな状況でも、あきらめず信じて応援する。それが松田だ。柔のときもいつもそうだった。といっても、柔は特別であったのだが・・・
柔も、そんな松田に感化され、ともに応援している。

みなが注目するラストの選手。「大丈夫・・必ず打つ!」松田が呟く。

カキ−ン!!打った。見事なさよなら勝ちだ。
ゥオーー!!ものすごい大歓声。
「打ったぞー!打ったぞ打ったぞ!さよなら勝ちだー!見たか柔さーん!」松田は大興奮。
「はい!見ました!うわー・・・すっごーい・・!」まさかの展開に、柔も驚いている。
とそこに、松田の隣にいたおじさんが、興奮し、「yeah-!!」と、喜びを分かち合おうと、松田に抱擁を求めてきた。
松田も、「イエーイ!やったぜー!」と返して握手をし、抱き合った。その後柔も握手と求められ、すこし照れ笑いしながら、おじさんと握手を交わした。
ともに応援した仲間同士、みなで嬉しさを分かち合っている。
と、そこに、近くにいた若い女性も松田の元に来て、手を差し出した。
松田は、当たり前のようにその手に自分の手をパーンと合わせ、「イエーイ!」と言い合い、柔に背を向け、軽く肩を抱き合った。
同じチームを応援したもの同士、喜びを共有しあったまでのこと。深い意味などない。
松田はそのまま柔のほうに振り向いた。
「いやー!楽しかったな、柔さ・・・・ぃ・・・?」
時すでに遅し。柔は、その少しむすっとした表情で松田を見ている。
アメリカで、軽く抱き合うなど、挨拶にすぎない。さすがの松田も、まさか柔が怒るとは思ってもいなかったようだ。
それにしても、この旅に来て、柔はいったい松田に、これで何度腹を立てただろう。しかしそれは、ただ怒っているのではなく、
まるで、今まで会えなかった、言葉にならない淋しさや、柔の素直な感情を、松田にぶつけてるようにもみえた。
・・・しかしこれはやはり、ただのやきもちなのかもしれない。。。
721名無しさん@ピンキー:2005/08/04(木) 00:03:43 ID:j0Q2/S+4
俺は松田さんのが柔たんよりも
熱くなると思うなー。
野球観戦の時とか。

松田さん、原作でも熱くなりやすいキャラだったし。
柔たんが松田さんの家に言ったときも
山下とか長嶋のポスターとかを
熱く語っていたような気がする。
柔たんは、どちらかというと
それを冷静に聞いてる感じだった。

なにわともあれ、職人さんオツです。
722松田と柔:2005/08/04(木) 23:47:20 ID:gN8QIDr3

2人が家に帰ってきた。
さっきまで少し膨れていた柔だったが、松田なりに、なんとかなだめたのか、今は機嫌を取り戻したようだ。
ささいな事で喧嘩をしては(というより柔が一方的にすねているのだが。)仲直りの繰り返し。
これが、仲の良い証拠なのだろうか・・・

もうすっかり夜である。
一息ついた途端昨日の出来事が思い出され、急に緊張する2人。

「・・あ!先にシャワーあびなよ、柔さん!な!」
「あ・・・いえ、今日は松田さん、先に入ってください・・・」
「え?」
「だって、昨日先に入らせてもらったし・・」
「いいよいいよそんなの、先に入りなよ」
そんな会話をしばらく続けた2人だったが、柔が、ほんとにいいですから・・というので、結局、松田が
先に入ることになったようだ。
松田は、何度も、悪いね・・、と言い残し、シャワールームに入っていった。

柔は松田がいなくなって少し緊張がほぐれたのか、フーと一息つき、座り込んだ。

しかし、じっとしていると、今が夜であることを実感し、カーっと赤くなってしまうので、
さっと立ち上がり、洗濯物のとりこみを始めた。
いつまでたっても、お互い、踏み込めそうで踏み込めない2人。なにせ、ずっと想いあっていたのに、6年近くも
互いに気持ちが言えなかった2人である。

柔の帰国はあさって。夜をともにするのは、今日を含めあと2回だ。


柔は洗濯物をたたんでいたが、気が気でなかった。

やがて松田がシャワールームから出てきて、柔に入るよう声をかけた。
ぎこちない2人。
柔は用意を済ませ、なるだけ松田の目を見ないようにして、シャワールームに入っていった。


723松田と柔:2005/08/05(金) 00:09:44 ID:cRLUwd5u
柔が、「ありがとうございました・・・」とシャワールームが出ると、松田がいない。


「・・松田さん・・?」
「あ!柔さん!こっち!こっちに来なよ!」松田がベランダからおいでおいでをし、柔を呼んだ。
松田は寒空の下、ベランダに出ていたようだ。
「?」きょとんとした柔を見た松田は、柔のもとに走ってきて、近くにかけてあった
ジャンパーを柔に背中に掛け、ベランダに出て行った。

「あっ・・・!」柔の表情が明るくなった。
しんしんと雪が降っている。日本とはまったく違う街並みに降る雪は、とてもきれいだった。
「きれいだろー?ここの雪は格別きれいなんだぜー・・見せてあげれて良かったよー!」
「ほんと。。きれい。。」
柔は、ホワイトクリスマスだ・・と感動していた。が、松田は、内心、ホワイトクリスマスに特に(むしろまったく)こだわりはなく、
このきれいさは柔も喜ぶだろう!と思い、ただ純粋に、この雪のきれいさを柔に見せてあげたかったようだ。
空を見上げる2人。

松田が目線を降ろすと柔が気づき、ふと、目が合った。

「・・・・・」しばらく目が離せない2人。
「・・・き、今日は楽しかったな!」松田が先に口を開いた。柔もはっとした。
「は、・・はい・・・あ、松田さん、あたし・・」
「ん?」
「ちょっと、待っててください。」
柔がなにかに気づいたように、部屋に入り、荷物の入ったバッグを探り始めた。
724松田と柔:2005/08/05(金) 00:37:14 ID:9iLWazes
「これ・・・」
柔が、緊張した顔で長細い箱のようなものを両手で持ち、松田に差し出した。
「?え、俺に?」松田は何がなんだかわからない。
「・・はい、あの・・・・クリスマスプレゼント・・」
柔は恥ずかしながらそう答えた。
「え?え、いやそんなの、悪いよ!」
柔からの思いがけないプレゼントに松田は動揺。自分は安物しかあげてないのに・・
「いいんです・・受け取ってください。。」柔はひっこみのつかない両手を、松田にむけている。

松田は、じゃあ。。と箱を受け取り、あけていいかな、と柔に尋ねた。
柔がうなずいたので、松田は箱をゆっくりあける。

腕時計だった。松田がいつも腕時計を身につけていることを、柔は覚えていた。
「え・・いいのかい?こんなものもらっちまって。。」
「はい・・でも、あの、もし気に入らないなら。。」
「いや、気に入ったよ!すごく!」
松田は何度もありがとう!と柔に伝えた。
柔は一安心したのかにっこり。

しばらくして、寒いから風邪ひいちまう、中に入ろう、と、松田は柔に、中に入るよう促した。
ベランダを閉め、部屋に入る2人。松田はプレゼントを机に置き、柔もジャンパーを脱いだ。
今日はテレビもついていない。静かな部屋の中。

お互い気持ちは一緒のはずなのだが、どうしたらいいかわからない。

「あ、あのさ、柔さん・・・俺・・」松田が口を開き、柔に少し近づいた。
「俺柔さんの事・・だから、そのっ・・」続きが声に出来ない。でも柔には何が言いたいか、わかる気がした。
「・・・松田さん、あたしも・・・」
松田は驚いたような顔をした。想いは一緒だった。
「じゃ。。。その・・いい・・かな・・」意を決して柔に問いかける。
柔は、こくんとうなずいた。








725名無しさん@ピンキー:2005/08/05(金) 23:25:00 ID:Ea1SeAuT
ももももどかしいぜ!!!!!!!!
726松田と柔:2005/08/06(土) 01:16:00 ID:P3wa14bc
松田がぎこちなく、柔の両肩をぎゅっと持ち、松田の体が柔にぐっと近づいた。
びくっとする柔。

慣れない2人に、今までにない空気が流れる。


「や・・・柔さ・・」
     トゥルルル・・・トゥルルル・・・
松田が何かを言おうとした瞬間、電話のベルが部屋に鳴り響いた。
はっ・・・と我に返る2人。
「ご・・、ごめん!」
「は・・はい・・」
松田は、ぱっと手を離し、ベッドの横の電話のもとに歩いていった。
柔はどきどきが止まらないらしく、下を向いている。

「んんっハ、ハロー?・・・・・・・・・あ、どうも、お疲れさまです・・・」
電話の相手は、日刊エブリー関係の人間のようだ。
「はい・・・いえ、はい・・」柔は椅子に座った。
電話が掛かってきて、内心、少しだけほっとしたようだ。

「・・・え?ちょっと、ちょっとまってください!そんな急な!」松田の声色が変わった。
お仕事の話だ。。。柔にも察しがついた。

なんとかしようとしばらく話し込んでいる松田。何かの説得を試みているようだ、しかし・・・
「はい・・はい・・・わかりました・・」
松田が、代わりのいない大変な仕事をしているということは、柔にもよくわかっていた。

カチャ・・電話をきった松田。大きなため息を1回つき、くるりと柔のほうを向いた。
「ご、ごめんな、柔さん!」
「いえ・・日刊エブリーさんからですか?」
「あ、ああ・・・」
「・・・お仕事のことですか・?」
「ああ・・・」
困ったような顔の松田。
「・・・ごめん!柔さん・・・その・・・」

「・・・明日・・・その・・急に仕事が入ってちまって。。」松田が申し訳なさそうに口を開いた。

「・・・そうなんですか・・」

 柔は、すでに察していたように、静かに答えた。。
727松田と柔:2005/08/06(土) 01:55:28 ID:P3wa14bc
「ほんとにごめん!せっかく来てくれたっていうのに・・・」
松田の仕事は、休みなど、あってないようなものだ。年末であれ連休中であれ、急に借り出される。
しかしまさか明日とは。。。

「いえ、そんな・・謝らないでください。。」

もちろん、一緒にいてほしい。柔は内心自分を優先してほしかったが、そんなことを口にしたら
松田が困ることはわかっていた。

「ほんとに気にしないでください・・」
「いや、しかし・・!」
さっきまでの空気が一変。沈黙が流れる。
「松田さん・・・明日、早いんですよね・・」
「え?あ、ああ・・・」
「ほんとに気にしないで・・ゆっくり・・寝てください・・」
「・・・いや、でも!」
松田は柔に何か言おうとしたが、何といえばいいかわからず、口篭ってしまった。
電話がかかるまでの雰囲気に戻すにはどうすればいいか・・不器用な松田にはわからなかった。
柔は松田に気を遣い、寝てくださいと伝えた。しかしそれが松田には、もうやめましょう、と言っているように聞こえたのだろう。
松田はしばらく黙っていたが、肩を落とし、柔に、「・・あ、ああ・・・」と答えた。


柔はベッドに入り、松田は悩んだ末、ソファに寝転んだ。何もせず同じベッドで寝れる自信がなかったのか。
しかしこの行動に、柔も困惑してしまった。松田が求めてきたならそれに答えたかもしれないが、
松田が柔の、松田を気遣う一言を重く受け止め背を向けてしまったので、なんともならなくなってしまった。



松田が「お休み・・・」と呟いた。
柔も答えた。「・・お休みなさい・・」

想う気持ちは一緒のはずなのに、せっかく近づいたのに、近づいたとおもった途端に遠のいてしまう2人の距離・・・。


もどかしい思いを募らせたまま、夜は更けていった・・・
728名無しさん@ピンキー:2005/08/06(土) 02:55:40 ID:zd7Dw/yB
えぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
夜は更けていってしまうのか!?

ワクテカしながら続きを待っております。
729名無しさん@ピンキー:2005/08/06(土) 05:56:10 ID:s4k8R3MM
ふけたっちゅう事は明けてないんだよね それはさておきクリスマスに試合?
730名無しさん@ピンキー:2005/08/06(土) 10:28:29 ID:OKvc8iQ0
えー、短いお話ですが書いてみました。
ちなみにエロはないです。すみません
731730:2005/08/06(土) 10:32:10 ID:OKvc8iQ0
体を抱きしめる、たくましい腕。
顔に触れそうなくらい近づく唇。
微笑む時の、温かい目。
耳元で語りかける時の、優しい声。

(ああ…)
その光景を見るたび、ため息をつく自分がいた。
(ばかみたい…)
羨望と嫉妬の気持ちを抱いていることにあきれ、自己嫌悪に陥る。
732730:2005/08/06(土) 10:45:26 ID:OKvc8iQ0
(赤ちゃんにやきもちなんて)
そう、相手はフクちゃんなのだ。
富士子も柔も稽古で忙しい時に、滋悟郎におしつけられた松田がフクちゃんをあやすことがある。
取材もろくにできず、それでも懸命にフクちゃんの相手をする彼を見て、
(いいお父さんになりそうね)
微笑ましく見守るうちに、気がつけばそれをうらやましく思うようになっていたのだ。
(私も、あんなふうに…)
抱きしめられたい、と思う。
と同時に、それがかなわぬ願いだということも知っていた。婚約者がいるのだ。
オリンピックが終われば、いよいよ松田と邦子は結婚するだろう。
自分は、それを黙って見守ることしかできない。
「邪魔しないでね」
邦子の言葉を思い出すたび、胸が締め付けられる。
それでも、バルセロナには邦子は来ないことを知り、安堵していた。
(今は、柔道のことだけを考えなくちゃ)
松田と自分をつなぐものは、柔道だけ。
バルセロナが終わるまでは、そのつながりを失いたくない。
少しでも長く、自分を見てもらいたい。
(よし、頑張ろう)
気合を入れて、稽古に打ち込む。しばらくして
「あー」
間の抜けた、松田の声が聞こえてくる。
見ると、フクちゃんが松田の顔をいじくり回し、キスをしそうなくらい顔を近づけていた。
「フクちゃん!」
思わず叫んでしまい、ハッとなる。
富士子を見ると、何か言いたげにニヤニヤしていた。
恥ずかしくて顔が赤くなる。そこへ、
「こらァ柔!集中せんかい!」
滋悟郎の怒鳴り声が突き刺さる。続いて
「おい日刊エブリー!フクちゃんにミルクを飲ませてやれ」
「ええー!」
松田はトホホといった顔で台所へ向かった。

733730:2005/08/06(土) 10:49:49 ID:OKvc8iQ0
(行っちゃった)
寂しい。それでも稽古に励まなければならない。

少したって、富士子が
「猪熊さん。松田さん一人じゃ心配だわ。様子見てきてくれない?」
と、ウィンクする。
「…うん」
返事をする顔がうれしさを隠しきれていないのは、自分でもわかっていた。
軽い足取りで台所へと急ぐ。
(何、話そう)
鼓動が激しくなる胸をおさえつつ、かすれそうな声で呼びかけた。
「…松田さん」
振り向いた松田の顔は、いつもどおりの優しい目。
柔の大好きな笑顔だった。
734730:2005/08/06(土) 10:56:12 ID:OKvc8iQ0
一緒にいられるわずかな時間。
ささやかな会話。
しかし柔はとても幸せだった。
とそこへ、松田が
「おーしフクちゃん、ミルクできたぞー」
フクちゃんの頬を優しくなでる。
その瞬間、またドキッとした。
(あーもう、ずるいフクちゃん)
これ以上松田を独り占めされるのはくやしい。
「あたしが飲ませます!」
そう言って松田の腕からフクちゃんを無理やり取り上げた。
「俺じゃ頼りないってさ、フクちゃん」」
松田は苦笑いをして、柔の腕の中のフクちゃんに言った。
「あ…ちが、そうじゃなくて…」
柔は真っ赤になって松田を見上げた。思わず近づいた顔に心臓が飛び出そうになる。
松田は、
「どうせ俺なんて…」
ちょっと拗ねた振りをして、
「いいんだ。君のほうが、フクちゃんも安心だろ」
自分に微笑みかける。その笑顔に、もうメロメロになってしまいそうだ。
735730:2005/08/06(土) 11:06:54 ID:OKvc8iQ0
ミルクを飲ませ終えて、3人は再び道場へ向かう。
「明日だな、出発…」
「…はい。松田さんは?」
「3日後。明日は空港まで取材に行くよ」
「はい」
「あー、ホントにわくわくするな」
「あたしは、なんだかドキドキしちゃって…」
「大丈夫だよ。今回は富士子さんもいるじゃないか。やっぱり心強いよな。友達がいるってさ」
「はい。それに…」
松田さんもいてくれるから、と言いたかったが、言葉が出てこなかった。
「ん?」
「あ、はい、ジョディも待ってますから」
「…そうだな」
松田はふと立ち止まった。
「…今日は」
「はい?」
「あ…いや、稽古はほどほどにして、んまいもん食って、ゆっくり休めよ!な!」
「…はい」
「んじゃ、俺帰るわ。また明日な!」
「…はい」
(松田さん…?)
何か他の事が言いたかったように見えた。
「フクちゃん、どう思う?」
フクちゃんに聞いたところで
「だあ」
わかるわけがない。
「はあ…」
思わずため息が出る。…が、すぐに気持ちを切り替えた。
とにかく、今は柔道を頑張ろう。
最高の舞台で、最高の試合ができるように。
松田さんに、喜んでもらえるように。

道場に戻った柔の顔は、とても輝いていた。
736730:2005/08/06(土) 11:13:34 ID:OKvc8iQ0
えー、以上で終わりです。
いつも楽しみにこのスレを見てますが、この間、久しぶりに漫画の後半を読んで、思いついた話です。
まあさすがにフクちゃんに妬いたりはしないでしょうけど、
本編では松田と柔のスキンシップってほとんどないし、でも柔としては触れてほしいって願望があるだろうなあと妄想しながら書きました。
ひまつぶしに読んでいただければうれしいです。
それでは「松田と柔」さんの続きを楽しみにしています。
737松田と柔:2005/08/06(土) 12:12:04 ID:P3wa14bc
いいです!いま、すごくたのしく読ませてもらいました!
柔の心情がすごくよく伝わりましたよ。やっぱりこの2人はいいですねぇ。。
自分の話は、まだまだおわりそうにもないですが。。。おつきあいください。
738松田と柔:2005/08/06(土) 21:02:37 ID:P3wa14bc
「・・・さん、松田さん・・・」自分をよぶ優しい声が聞こえる。
「・・・ん・・・」ゆっくりと目を覚ました松田。
目線の先には、柔が立っていた。少しかかんで松田を見ている。
「おはようございます。」
「あ・・お、おはよう・・・」松田は目をこすっている。
「起きれますか・・・?」
「あ、ああ・・・」
柔は松田の返事を聞くと、台所に歩いていった。
松田がゆっくり体を起こして部屋を見渡すと、柔は朝ごはんの支度をしていた。
柔はいつのまに起きたのだろう。そして自分はいつ寝てしまったんだろうか・・・。

(・・・あ・・・そういえば・・)松田は昨晩の出来事をふと思い出した。
柔は、自分の想いを受け入れようとしてくれていた。始めのうちは・・・
なのに、仕事の電話が急に入り、それ以上踏み込めなくなってしまった・・。
そしてソファに寝転び、長い間考え込んでいたが、明け方になり、うとうとと寝入ってしまったようだ。

(何でこうなるんだ・・・柔さんはここまで俺に会いに来てくれたっていうのに・・・でもあの状況でどうすりゃよかったんだよ。。
柔さんはどうしてほしかったんだ・・・?あーわかんねー・・)
「はあー。。。」松田は大きくため息をついた。
「松田さん・・朝ごはん、食べれます?先にお顔、洗いますか・・・?」柔が台所から顔を出し、問いかけた。
「あ、ありがとう!ちょっと先に顔洗ってきていいかな!」
そう言い残し、松田は洗面所に入りトイレを済ませ、冷たい水で、思いっきり顔を洗った。
739名無しさん@ピンキー:2005/08/06(土) 22:26:32 ID:f/pPq7Y/
>>730
乙です〜

>(私も、あんなふうに…)
>抱きしめられたい、と思う。

ぽつぽつと改行していくスタイルが
730さんの持ち味という感じで魅力を感じました。特に上のが好き!
気が向いたらまた投下ヨロ〜

>>737
二人の初々しさが表現できていてとても良い!
続き楽しみにしとります。
740名無しさん@ピンキー:2005/08/07(日) 17:41:43 ID:3HFPJkML
>730さん
乙ですー。
また気が向いたら
是非お願いします♪

>松田と柔さん
続きが楽しみですね♪
原作でも二人とも奥手だったからなー。
741名無しさん@ピンキー:2005/08/08(月) 16:24:55 ID:sWfW7BXg
age
742雪月花:2005/08/09(火) 22:32:15 ID:v7tQXAdx
「返事を書くのが遅れてしまって申し訳ない。こっちに来てからは風邪一つひいて
いないよ。スポーツの国の熱気というか元気というか、そういうものが俺にまで取り
付いているのかもしれない。柔さんこそ体調管理には十分気を付けてくれよ。君は今
や世界的なスターなんだ。帰国のことだけど、編集長の言葉通り、アメリカはスポー
ツで年中ドカンドカン盛り上がっている。それを俺一人で、飛行機で飛び回って取材
している毎日だ。デイリーは人手不足なんだ。でもとても充実している。毎日が夢の
ようだ。ともかく忙しい。だからいつとははっきり言えないし、当面は帰れないと思
う。それじゃあまた電話する。繰り返すけど、柔さんも体に気を付けて」

日曜日、東京駅内の喫茶店。猪熊柔と花園富士子は二人がけの席に対面で座っている。
743雪月花:2005/08/09(火) 22:34:58 ID:v7tQXAdx
「それで、これが?」
富士子は怪訝な表情で柔の顔と手の中のもの、今し方読ませてもらった松田から
の手紙、とを見比べた。
「これがって言われても」
柔は困惑と不満の混じった面持ちで富士子から手紙を取ると、テーブルに広げた。
「あんまり短すぎると思わない?」
「そう?」
富士子は首をかしげた。
「男の人の手紙なんてこんなものじゃない?」
「だって」
柔は口を尖らせた。
「私は便箋に四枚も書いたのよ? ハンズでレターセット買って、下書きもして、
三日もかけて書いたのに……レポート用紙に一枚、それもボールペンの直書き!
走り書き!」
744雪月花:2005/08/09(火) 22:36:25 ID:v7tQXAdx
テーブルを指でこつこつ叩き、柔は頬を膨らませる。
「それは、まあ」
確かにそうかもしれない。改めて字面を追いながら、富士子は思った。ペン先が
徒競走でもしたかのような筆跡に加えて、所々間違った字を修正液も使わずバツ印
で修正してある。
「確かにちょっと、雑ではあるけれど」
「ちょっとじゃないわ、それに」
「それに?」
「私のことほとんど書いてくれてない」
「そんなことないと思うけど」
「毎日が夢のようだ、なんて」
「それはそうよ、松田さんはスポーツ記者だもの。それに、仕事に熱くなるタイプ
でしょ? 大好きなスポーツを見て、一生懸命に記事を書いて、充実してるのよ。い
いことじゃない」
「私は充実してない。楽しくない」
柔は膝の上で拳を握り締め、すねたようにそっぽを向いた。何だか富士子を通して
、遠い異国に自分の不満を伝えようとしているみたいに見える。
745雪月花:2005/08/09(火) 22:37:44 ID:v7tQXAdx
「まさかアメリカのスポーツに嫉妬してるの?」
「そ、そうじゃないけど。他にも、体調管理に気を付けろって、もっと気の利いた
言い方があるでしょ? なんだか他人行儀。それに、いくら忙しいって言ってもち
ょっとこっちへ帰ってくることくらい」
「でも、それは会社の都合だから」
「それにおかしいわ。松田さん部屋の掃除なんて全然しないはずなのに、このレポ
ート用紙変に奇麗なんだもの。松田さんのいつも部屋で書いたらこの便箋? だっ
て、もう少し汚れているはずなのに」
柔は不意に声音を湿らせて、うなだれた。
「誰かが、きちんと部屋を掃除して、料理も作ってくれるような誰かが、むこうで
出来たのかもしれない」
「何を言ってるのよぉ」
富士子を少し吹き出しつつ、手もとのティーカップを持ち上げた。
「松田さんに限って、そんなことあるわけないじゃない」
「でも!」
「大丈夫よ、大丈夫。大方取材先のファーストフードか何かで、慌てて買ったレポ
ート用紙に書きなぐったのよ」
「書きなぐらないでよ。私はあんなに、一生懸命書いたのに」
746雪月花:2005/08/09(火) 22:38:48 ID:v7tQXAdx
「それなら、返事がこない方が良かった?」
「そうじゃないけど、松田さん、嘘付いてばかりなんだもの」
「嘘って?」
「電話する、なんて、向こうから電話してくれたことなんてほとんど無いんだから
一週間に一回とか、二週間に一回とか」
「かけてきてくれてるんじゃない」
「でも! 手紙はこんなに短い! 字も汚いし」
話が最初に戻ってしまった。
ふう、と、富士子は穏やかな呼気と共にカップをソーサーに収めつつ、
「でも手紙が来て、嬉しかったんでしょ」
柔は幾分どもりつつ,言った。
「そりゃ、でも、何て言ったら良いのか、うまく言えないんだけど……」
「会いたいのね」
「え?」
747雪月花:2005/08/09(火) 22:41:34 ID:v7tQXAdx
「猪熊さん、松田さんに会いたいんでしょ」
柔はきょとんとした顔で富士子を見詰めたが、やがてほんのり頬を染めつつ、
「別に、そういう訳じゃ」
「ほらまた、そうやって。ちゃんと素直にならなきゃ」
「素直だもん」
まるで駄々っこの物言いだった。
「会いたいのよね?」
「…………」
柔は富士子を見詰め、それから、恥ずかしそうに、うなずいた。
「恋愛の先輩から言わせてもらうと」
「言わせてもらうと?」
「言葉じゃないのよね、結局。その人が、隣りにいてくれるって言う事実が何より
大事なのよ、手紙でも、電話でも、読み終わった後、受話器を置いた後に切なさが
残ったりしてね。何だかその人の何もかもが、信じられなくなったりして。でもね、いざあって話してみると、分かるのよ、自分の勝手な妄想だったってこと。」
748雪月花:2005/08/09(火) 22:43:56 ID:v7tQXAdx
「でも、松田さんはアメリカだもの。海の向こうにいるんだもの」
そうねえ、と、ほお杖を突いて、富士子は天井を見て、それから又、柔を見た。
世界の度肝を抜いたこの親友が、人並みに、否、世間一般よりもずっとはかなく、
一途に、迷妄にとらわれて自分に相談をもちかけている。その事実に、ふと富士子
は誇らしいような、恥ずかしいような、不思議な気持ちがした。
「会いたくたって、会えないもの」
泣きそうな声だった。
「じゃあ、今度電話をした時に、お互いしばらく黙っていたら?」
「黙ってるって、どうして? せっかく」
「せっかくの電話なのに?」
「べ、別にそういう訳じゃないけど」
富士子は少し困ったように笑ったが、話を続けた。
「まあ、いいわ。猪熊さん、電話で話している時は楽しいけれど、切った後、すごく
寂しいでしょ? 聴いた直後は嬉しかったはずの
749雪月花:2005/08/09(火) 22:45:16 ID:v7tQXAdx
言葉にえんえん悩まされたりね。だから時々は何も話さずに、相手の息遣いに耳を
澄ませてみるのよ。思いあっているもの同士なら、退屈なんてしないものよ。時々
自然に、笑い出したくなるくらいだもの。言葉は信じられなくなる時があるけれど
、相手の息遣いと、優しい笑いは時間が経っても変わらないし、消えないものよ」
「へえ」
と、柔が素直な簡単の目をむけてくる。
「富士子さんって、何だか深いわ」
「そりゃ、もう!」
どん、と、富士子は自分の胸を叩き、
「なんたって一時の母ですもの! その手の話なら猪熊さんよりも上手よー。柔道
ではてんでかなわなかったけれどね」
にんまり笑って、富士子は言った。
「少しは元気になった?」
柔は顔の前に親指と人差し指を持ってきて、
「ちょっと、このくらいだけ」
微笑した。
「それならよし! 後は電話するなり来るのを待つなり、ところで渡し、そろそろ
帰らなくっちゃフクちゃんをお母さんに預けっぱなしなのよね。あんまりほっとく
と、将来誰がママだか分からない、何て言われちゃうかもしれないし」
「ウフフ、じゃあ、また今度にしましょうか」
言って柔は伝票を掴んだ。
750雪月花:2005/08/09(火) 22:49:00 ID:v7tQXAdx
松田と柔さん(作品名ですか? お名前ですか?)のお話に割り込んでしまう格好に
なってしまってごめんなさいです。駄文ながら書き込ませていただきました。感想
など聞かせていただけると嬉しいです。それでは失礼いたします。m(__)m。
751松田と柔:2005/08/09(火) 22:52:07 ID:m7BYNCgi
新しい作品でてますねー!ほかの人の作品見てると、楽しいです!
いま自分の話の続きを投下したら、雪月花さんの作品とごっちゃになってしまうかと
心配なんですが・・・書けるときに書いていきたいので、書き込みますね。
752「松田と柔」は作品名、名前はクローバーでよろしくで:2005/08/09(火) 23:12:36 ID:m7BYNCgi
「うー・・・さっみぃなあ・・・柔さん、もういいよ、中入ってなよ、風邪ひいちまう・・・」
「いえ、大丈夫です・・・」
2人は外にでた。
松田は今から取材に繰り出す。柔はその松田を下まで送りに出てきたようだ。
白い息を吐きながらヘルメットを被っている松田の後ろ姿をじっと見つめる柔の表情には、
淋しい気持ちがあふれているようにも見える。でも柔は松田に、淋しいとは一言も言わなかった。
松田が困ることはわかっていたから・・

ヴーンヴーン・・エンジンをふかす松田。
「じゃあ、行ってくるよ・・・なるだけ早く帰ってくるから・・・」
「はい・・・気をつけて・・・」

        ヴーンヴーンヴーン・・・
バイクが走り去っていき、柔は見えなくなるまで見送った。
 
「・・・・フー・・・」ため息がでる。
    ーさあ・・・今日1日どう過ごそうかな・・・ー
柔は、アパートの中に戻っていった。
753クローバーでよろしくです。:2005/08/09(火) 23:56:15 ID:m7BYNCgi
1人でアパートに戻り、一息つく柔。部屋には自分1人だけ。
ぽつん・・としている。
(松田さんて、いつもこんな思いしてるのかな・・・)

「・・・・・・」ベッドに座る柔。

      −松田さん・・・−

初めて会ったときは、大嫌いだった。いつもいつも取材の事で自分を追い回して・・・
風祭さんのほうがずっと、ずーっと素敵だとおもってた。
 でも、邦子さんが現れて・・・あの2人が一緒にいるとなぜか腹が立って八つ当たりしてしまって・・・
何回ケンカしただろう。。
いつも口うるさくて説教じみてるときもあって、無頓着で女の子の気持ちなんかわかってなくて。
でもおせっかいなくらいに優しくて、いつも自分を見ててくれていて・・・
気づいたら、すぐそばにいてくれないと不安なぐらい、存在が大きくなっていた・・
今はそんな松田さんを追いかけて、アメリカにまできている自分・・    
 
 (ほんと。。。いつのまにこんなに松田さんのこと・・・)

柔も、1人の女性である。恥ずかしながらも、この、アメリカでの滞在、つまり松田の家に泊まるということは、どういう意味を
示しているか・・ちゃんとわかっていた。もちろん、そうなることが目的なんて思ってはいないけれど。

でも、ほんとなら、昨日、松田さんとそうなれるはずだった。
松田さんとなら・・・そう思えた。
でも、なぜかすれ違ってしまった。
柔は、そうなれなかったことが悲しいのではなく、どこかで気持ちがすれ違ってしまったことが
ただ悲しかった。
(・・・・・)「・・あ・・・駄目・・・」涙が出てくる。淋しくて仕方がない。
「・・・少し出かけようかな・・・」
1人でいても気が滅入る。
柔は、外に出かけることを決め、支度をはじめた。
754クローバー:2005/08/10(水) 00:06:17 ID:m7BYNCgi
いまさら名前変更・・・
題名なんだか名前なんだか、やっぱりややこしかったですよね。いまさらですみません
(^^;)雪月花さんのお話、この流れは、アメリカ行きですか???
雪月花さん版のアメリカ話、自分とはまた違った話が見れそうで楽しみです♪
755クローバー:2005/08/10(水) 00:16:38 ID:d79pT6JT
今日はここまでです・・
やっと3日目。。いまさっき原作を読み返したんですが、
改めて天然級に奥手でうぶな2人に惚れ直しました・・
なるだけ原作の2人のイメーを崩さないよう。。。
あと2日。2日に何日かかるかわかりませんが。書き込んでいきます。
それでは・・


756クローバー:2005/08/10(水) 00:17:46 ID:d79pT6JT
イメーって・・・イメージです。しつこくすみません・・
757名無しさん@ピンキー:2005/08/10(水) 01:01:53 ID:6pfWONAn
おおーー
神が二人も降臨してる!!
もう昔の漫画なのになんか嬉しいですねー
758名無しさん@ピンキー:2005/08/11(木) 15:37:19 ID:egXl4Avs
応援あげ
759名無しさん@ピンキー:2005/08/13(土) 08:57:48 ID:2zjeRaEM
期待あげ
760クローバー:2005/08/14(日) 01:23:14 ID:1afsUYeu
(そっか、今日、クリスマス・・・)
柔は1人でバスに乗り、街にやってきた。特に用事があるわけではない。
ただ、松田の家に1人でいることが、淋しかっただけ。
街は昨日と変わらずクリスマス模様。
(ほんとは今日も松田さんと・・・)

(・・・駄目だめ・・お仕事なんだから。仕方ないんだから。)
柔は1人で、昨日松田と行かなかった店や、通りを巡りはじめた。

歩きながら柔はいろいろ考えていた。
今日仕事が入らなければ、松田さんはどこに連れて行ってくれたのだろうか・・・
昨日は街を歩いたからと、もっと別のところに連れて行ってくれたかもしれない。
(きっと松田さんのことだから、すてきなお店やおしゃれなお店には連れて行ってはくれなかっただろうな。)
(お店なんかよりも、きれいな景色の、お気に入りの場所に連れて行ってくれたかもしれない。)
松田のことだから、「すっげーいい景色だろー!これを柔さんにも見せてあげたくてさ!」なんていっていたかもしれない。
柔はそんな松田を想像し、くすっと笑いそうになった。

とあるお店のウインドーを見た柔。
土産を扱った店だろうか。いろいろなものが置いてある。
(あ・・・そうだ、みんなへのお土産!)
柔は皆へのお土産を選ぼうと、その店に入っていった。
761クローバー:2005/08/14(日) 01:52:40 ID:1afsUYeu
お土産を見ながら、柔は誰に買って帰るか、考えていた。
(えっと・・・お母さんと、お父さん、おじいちゃんと・・・おじいちゃんには食べ物ね・・・
あと、会社のみんなと、富士子さんとあと・・)

(・・・富士子さん・・)
そのとき、ふと富士子の顔が浮かび、渡米の数日前、富士子と交わした会話を思い出した。
富士子の家に訪問したときのことだった。



762クローバー:2005/08/14(日) 02:23:22 ID:1afsUYeu
「それにしても、猪熊さん、本当に楽しみね!」
「え・・・?」
「やだ、いまさらとぼけないでよ!松田さんのこ・と・よ!」
「あ・・・うん・・・・。でも・・」
「?でも・・・何?」
「・・なんだか不安で・・」
「?何が?」
「その・・・ほんとに松田さん、迷惑じゃないかなって・・・」
「・・やだ、猪熊さんたら・・、いまさらなに馬鹿なこと言ってるのよ!」
「え・・」
「松田さんが迷惑なわけないじゃないの!あなた、まだそんなこと言ってるの??」

「松田さん、ずっとあなたのことを、本当に大切に想ってたわ。いつだって・・
猪熊さんだって同じでしょ?私も花園くんも、ずっと前から勘付いてた。それなのに、
松田さん、迷惑なわけないわよー!」
「・・・・」
「せっかく想いが通じあったんだから、余計なこと考えず、思いっきり胸に飛び込んでらっしゃいよ!」
「・・・」
「もうっ猪熊さんっ!せっかく1年ぶりに会えるのよ?松田さんだって待ってるわ!ねっ。楽しんできて!」
「・・・うん・・・!」

富士子の言葉が頭に浮かぶ。そう・・・余計な心配なんてしなくていい。松田さんは、あたしのこと、
大切に想ってくれてる、きっと。いつでも。昨日のことも、嫌なふうにばっか考えちゃいけない。
せっかく会えたんだもの。松田さんに会えたんだもの・・。

そのとき柔の胸の中で、淋しさや不安が、少しずつ消えていった。

さっきまでよりも少しだけ晴れやかな気持ちでお土産をみて歩く柔。ふと視線が止まった。
(あ、これなら、松田さん、喜んでくれそう・・)手にとって見る柔。
(あ、これでもいいかな・・・)ほかのものにも目が行く。

(・・・?)
(あ・・やだ、あたしったら何で松田さんに・・)
アメリカにいる松田に、アメリカ土産を選んでいる自分に気づいた柔。
とたんに顔が赤くなり、ぺちん、と、自分で軽くほっぺたを叩いた。

763名無しさん@ピンキー:2005/08/15(月) 23:53:07 ID:zBFp6W2T
職人さん応援あげ
764クローバー:2005/08/16(火) 20:54:00 ID:iHQ14+dv
「ふー・・・」
松田が、ポケットに手に入れ、アパートのドアの前に立っている。
外はすっかり暗くなっている。ようやく仕事を終え帰宅したようだ。
(・・・中入ったら、まずなんていやあ言いかな・・・普通に、ただいま、でいいよな。)
朝の気まずさが尾を引いていないかと心配なようだ。
「・・・・よし」
カチャ・・・・ドアを開けた。
「・・・た、ただいま・・」松田はおそるおそる部屋を覗き込んだ。
「あ、おかえりなさい。」柔が台所から顔を出し、にこっと微笑んだ。
「あ・・・た、ただいま。」
「お仕事お疲れさまでした。」
「あ、ああ・・・」柔が、驚く松田の腕からかばんを下ろした。
「あ、ごめん。」
「いえ・・シャワー浴びます?」
「え?あ、ああ、そうだな。浴びるよ。」
(あれ・・・なんだ・・?)1日中ほったらかしにしてしまっていたというのに、
柔の表情がとても穏やかだったので、松田は少し驚いた。
松田が腕時計を外しながら台所を見た。柔は、夕食の準備をしている。
柔が視線に気づき、目が合った。
松田の顔が一気に赤くなった。
「・・・・あ、ご、ごめんな、柔さん!今日1日、ほったらかしにしちまって・・」
「あ・・いえ、そんな・・。あ。」柔が台所が出てきて、かばんから何かを出し、
松田の前に立った。
「あの・・・これ・・・」
「・・・へ?」手には、小さな紙袋。松田はわけがわからない。
「あの・・・今日、街に行ったんです。それで・・・」柔は結局お土産を、松田のために買ってきたようだ。
「え?これ、俺に?」何で俺に?と言いたげな松田の表情。柔は困ったような顔で照れくさそうに微笑んでいる。
開けていいかと柔に尋ね、かさかさと紙袋を開けた松田。
「・・・・?おー!万年筆だー!こんなの欲しかったんだよなー!」きょとんとしていた松田の表情が、
一気に明るくなった。
柔は、ほっとしたように微笑んだ。今、すぐそばにいるはずの、松田へのお土産が、1番に思いうかんだ自分の
気持ちが、柔にとって、少し嬉しくもあり、照れくさくもあった。
765名無しさん@ピンキー:2005/08/16(火) 20:59:11 ID:SsRJwD/f
>クローバー氏
メール欄に「sage」といれて書き込みしてくれないか?
766クローバー:2005/08/16(火) 21:22:32 ID:iHQ14+dv
申し訳ないです!了解しました。
767lala:2005/08/16(火) 23:16:53 ID:uGfxl8Dx
応援あげ
768名無しさん@ピンキー:2005/08/17(水) 08:01:53 ID:kb4vxSBV
俺も応援あげしとくか
769名無しさん@ピンキー:2005/08/18(木) 21:14:18 ID:xz2TN+sx
職人さん
再降臨希望あげ
770:2005/08/19(金) 23:21:44 ID:QyCRxDbf
ビーフストロガロフ
作ってあげる
771名無しさん@ピンキー:2005/08/20(土) 21:11:23 ID:tZxT8Gwy
ひょっとして過去ログと縮刷版きえた?
772クローバー:2005/08/20(土) 22:19:11 ID:M+UOei+X
「ふー・・・」松田がシャワーを浴び終え、出てきた。
「ん・・・?」
部屋では、先にシャワーを浴び終えた柔が、何かを読んでいた。
「柔さん、何読んで・・・あ!それ・・」
「あ・・」
柔が読んでいたのは、松田が集めていた、柔の記事だった。
「すみません・・・」柔はそのままの体勢で、少しはにかみながら謝った。
「・・・はー」(恥ずかしいいから見ないでくれよー・・)と言いたげに、ぽりぽりと頭をかく松田。
しかし、
「・・・・いいよ・・」松田は困ったような顔で少し笑った。

そして、タオルでくしゃくしゃと頭を拭きながら、台所に歩いていった。
パラパラ・・・・と、黙々と記事を読む柔。
「こんなに・・・・」柔が口を開いた。
「んー?」水道の水をコップに入れながら答える松田。
「こんなにたくさんあたしのこと・・・」
「ん?どうした?」松田がコップを手に、部屋に戻ってきた。
「・・・いえ・・・」
「・・・もういい・・・かな?」
「え?」
「え、いや・・・、なんか、自分の書いたもん、目の前で見られるのって・・なんかさ・・ははっ」
照れくさをぬぐいきれなさそうな松田を見て、柔も素直に、わかりました、とファイルを返した。
悪いね、と笑いながら、松田はそそくさと棚にファイルを戻した。
773クローバー:2005/08/20(土) 23:08:51 ID:M+UOei+X
「ふー・・・」椅子に腰掛ける松田。
「明日・・・・」
「え?」
「いや・・明日だよな、日本に・・その・・帰るの・・・・」
「あ・・はい・・」

明日は柔の帰国日。

「・・・何時発だっけ?」
「あ・・・14時23分です・・」
「そっか・・じゃあ、昼前にはここ出ないとな!」

沈黙が流れる。
(・・うー・・・何話せばいいんだよ・・・)松田は1人で困惑。
コップに入っている水を全部飲みきり、松田は立ち上がった。
「松田さん、あのっ・・・」柔が後ろから声をかける。
「・・・・もう、寝るか・・・?」松田は背を向けながら答えた。
「・・え・・?」
「柔さん、明日飛行機だろ?ちゃんと寝とかなきゃ、疲れちまう。」
「・・・」
「もう遅いしさ・・」そう言い、台所でコップを洗う松田。松田も男。どうにかなってしまいたい気持ちは
山々なのだが、そこにたどり着くまでの過程があまりに不器用。柔に背を向けられる前に先に背を向けてしまった。
こんな男がいるものか・・といいたいところだが、それが松田なのだ。

柔は何も返してこない。
(・・返事が無いぞ・・・?)
松田はおそるおそる、横目でちらっと部屋の方を見た。
柔は黙ってうつむいている。
「や、柔さん・・・・?」
ゆっくりと柔の元に近づいてみると・・・すこしだけ目に涙がたまっている。
「!!!や、柔さんっ・・」
「ごめん、ちがうんだ、俺、そんな気じゃ・・・」
「・・あたしが来たこと・・」
「え?」
「あたしがここにきたこと、迷惑でしたか・・?」

「な・・・何いってんだよ!そんなわけないだろ!」
松田の返答に、柔が少し上を向いた。
「そんなわけ・・・」


松田は少しうつむき、しばらく黙っていた。
自分の中途半端な態度が、余計に柔を悩ませている。それなら・・・

しばらくうつむいていたが、ふいに顔を上げた。
「柔さんっ」
「は、はい・・」
「俺は・・・」んんっっと1度咳払いをした。
「俺は柔さんが好きだ。だから、ここに来ないかと誘ったんだ。」
「・・・・!」
「迷惑なわけなんかない。迷惑なわけなんかないんだ・・だから・・柔さんがいやじゃなければ・・っその・・」
柔の肩を持った松田。柔はびくっとし、赤くなっている。
「・・・・その・・君を・・抱いてもいいか・・?」
それは柔にとって、今までに無い松田の言葉。そして恐らく松田自身も口にしたことの無い言葉だった。





774クローバー:2005/08/20(土) 23:29:42 ID:M+UOei+X
しばらく真っ赤になり固まっていた2人だったが、やがて柔が、
ほんの少しだけ、顔を縦に振った。
「え・・・」松田は少し驚いた。
「・・いいのかい・・?」
「・・・はい・・・あたしも・・」

「あたしも、松田さんのことが・・・好きだから・・」
「・・・・や、柔さん・・」


           「・・・・・・」
2人に沈黙が流れる。こういう、珍しくいいムードになったら、大概邪魔が入るのが2人のお約束だ。
日本にいるときは、邦子や滋悟朗、昨日は日刊エブリーからの電話・・・
今日もひょっとすると・・・
そんなことを考えている松田。
「・・・松田さん・・・?」
「ん?・・・あぁ、ごめん・・・」
「どうしたんですか・・?」
「え?いやぁ・・・今日はこないだろうなーと思って・・・」
「何がですか?」
「・・・・電話とか・・・滋悟朗さんとか・・・いろいろ。。」
きょとんとしている柔に、松田は少し苦笑い。

電気消すよ・・・と言い、松田は電気を消した。
775名無しさん@ピンキー:2005/08/20(土) 23:33:34 ID:ru/TxNnD
クローバーさん応援してます
ずっとROM専でしたがいつも楽しみにしとるんで!
776名無しさん@ピンキー:2005/08/20(土) 23:43:54 ID:TJheY+eb
やっ、
777名無しさん@ピンキー:2005/08/20(土) 23:45:47 ID:TJheY+eb
↑ごめんなさい。途中で送信してしまった。

やっとキター!!!
778名無しさん@ピンキー:2005/08/22(月) 11:07:24 ID:9a7eSBJ4
おー
新しいのがウプされてる
職人さん乙です
779クローバー:2005/08/22(月) 23:37:41 ID:1qTL12hK
応援してくださってる方、ほんとありがとうございます。
これからの描写には、期待しないでください。。。
780クローバー:2005/08/23(火) 00:14:36 ID:anXfdMhY
松田が電気を消し、部屋が真っ暗になった。
柔には、外の明るさの逆光で、松田の顔がよく見えない。

松田の手が柔の肩を掴み、自分の体に抱き寄せた。
「きゃっ・・・」  驚いて、小さな声をあげる柔。
「ま、松田さん・・・・」初めての経験に、緊張を隠せない柔。
柔さん、大丈夫だから・・・と、柔を、なるだけ安心させるようつぶやいて、松田は
少しぎこちなく、柔の唇にキスをして、そのままゆっくり柔を、ベッドに寝かせた。

松田は、柔の顔や首筋にキスをしながら、少しずつ柔の服のボタンをはずしていく。
「っん・・・」柔が、声が出そうになったが、口を閉じ、必死で抑えた。

そんななか、目が順応し、暗がりの中少しずつ、お互いの表情や体が見えてきた。
松田の表情が見えてくるにつれて、自分の体を、すべて見られてしまう。という
恥ずかしさが押し寄せてきた。
「待っ・・・松田さん、待って・・」
「どうした?」松田は、何か不快な思いでもさせてしまったのかと思い、動きを止め、すぐに答えた。

「・・・・・・」柔の顔は紅潮し、両手で胸のあたりを隠している。
     
       ここで松田さんに、やめてもらおうか・・でも・・・

「柔さん・・・?」
「・・ごめんなさい・・・・・・あの・・・」
「・・・・・?」

「あの・・あたし・・」柔は何か言おうとした。
しかし、言おうとした言葉を、一旦ぐっと飲み込み、表情を少し変えた。
「ちょっとだけ・・あの・・寒くって・・・」
2人は、ベッドの上にいたが、何もかけていなかった。
気づかなくてごめん!と何度も謝り、松田は2人の体の上に、毛布をかけた。
これで大丈夫かい?と松田がたずねると、柔は少しはにかんでうなずいた。
781クローバー:2005/08/23(火) 01:27:39 ID:anXfdMhY
柔は、着ていた衣服をすべて脱ぎ、松田からの愛無を受けている。
今までコンプレックスだった自分の体の全てを見られ、恥ずかしい反面、
そんな自分を受け入れてくれている人が自分のすぐ傍にいること、そしてそれが松田であることが、うれしくも
あった。不器用ではあるが、とても大事なものを扱うように、柔の体を愛無する松田。

「あ・・・・」
柔の口から、今まで1度も出したこともなかったような声が何度も漏れる。
声が漏れないよう唇をかみ締めていても、どうしても出てきてしまう声。
 (みんな・・・みんな、こんな経験をしてるのかな・・・)
今まで経験のなかった柔にとって、初めて知った事実だった。

「松田さん・・・んっ・・・」柔の口を、松田の口が塞いだ。
松田の手は、必死で自分の体を隠そうとしている柔の手を取り体から離し、柔の胸のあたりに顔をうずめた。
「やっ・・・」柔の口から、声が零れる。


「柔さん・・・・」松田も、決して経験の多い方ではなかったが、恥じらう柔を
いとおしく感じ、なるだけ柔に不快な思いをさせないよう、理性を保とうと
努めていた。









782クローバー:2005/08/23(火) 02:17:36 ID:anXfdMhY
(柔さん、きっと初めてだよな・・・これ以上は・・・どうだろうか・・)
松田の中で、少し迷いがあった。
自分はもちろん進めていきたい。しかし、柔さんはきっと今回が初めての経験であろう。
だからいきなりはちょっと・・・慣れている男なら、リードして気にせず進めるかもしれないが、松田自身も
決して慣れていはいない・・・柔をがっかりさせる結果になるかもしれない・・・
でも抱きたい・・・理性と本能の狭間にいる松田。

「あ・・・」「ん・・・」と、自分の傍で甘い声を零す柔に、理性が飛びそうになりつつも、必死で理性を保っている松田。
「や、柔さん・・・」
「・・・・・?」柔がゆっくりと目を開けた。
「あ・・・あのさ・・」何と言えばいいのかわからない松田。
柔はそんな松田を、緊張した顔つきで、見上げて見つめている。

「あ、あの・・・」

「あのさっ」

    
   トゥルルル・・トゥルルル・・・・

松田が何か言おうとした瞬間、お約束といわんばかりに、電話の音が、部屋に鳴り響いた・・・
783名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 00:36:10 ID:aS0WFAur
松田と柔の、というよりむしろ
職人さんの照れが伝わってくるような文章ですな
784クローバー:2005/08/24(水) 07:06:45 ID:KsiO5Rng
いや、かなりあたりです。
今ほんと、書いてたら、2人の照れがこっちに移ってしまったみたいになってしまってます。。
伝わってしまってますね、申し訳ない・・・また続きは後日に。

785クローバー:2005/08/25(木) 02:44:52 ID:6xrwMZEm
(何でこんなときにかかってくるんだよ・・・・)

しかしなかなか切れずに鳴り続けている電話。
「ま、松田さん、あの・・・・」柔も困った顔をしている。
「・・い、いや、いいんだ!今に切れるだろうから・・・!」
留守番電話に切り替わった。


『どーしたーもう寝たのか?松田ぁ!それとも、どこぞに遊びでもに行ってるのかあ?』
編集長の声だ。
「げっ。。編集長・・・」
『いやー今日はすまんかったな!せっかくの休みに駆り出しちまって。いやぁしかし、おまえな、あの字はなんとかならんか!急ぐのはわかるがもうちょっと丁寧に書け!
こっちのやつらが難儀するんだよ』

編集長の声がやいのやいのと延々と響きわたる中、静まり返る2人。

『じゃあな!明後日から、またしっかり働いてくれよー!・・・おっと、そういや今日はクリスマスだったな!まあ
おまえには縁のない話か。ははっ!じゃあな!』

プツッ・・・ツーツーツー・・・・

          「・・・・・・」

(・・・・・・・なんなんだよ・・・)松田はすぐに電話の、留守電の消去ボタンを押した。
ここまで来たら、もういっそ電話の線を切っておくべきだったのか・・とさえ思う松田。

「・・・」振り返ってみると、柔が、毛布を肩のあたりまで被り、すこし困ったような顔をして、松田を見ている。

「・・・ははっごめんな・・・編集長ときたら、いつもああで・・」笑うしかない松田。今までの雰囲気や自分なりの努力は何だったのか。。。


        さてどうしようか・・・

「・・・しばらく、話でもしようか・・・」
「・・はい・・・」

松田は柔に上着を渡して羽織るよう促し、2人で、しばらく、話をすることにした。
786名無しさん@ピンキー:2005/08/26(金) 02:07:32 ID:P9v4A64v
>クローバー氏
GJ!!GJ!!!!
読んでるこっちまで照れますなぁ〜ww
今度こそ本懐をとげさせてやってホスィけど、神の書きたいように
やって下され。ワクテカしながら待ってまつ。
787クローバー:2005/08/27(土) 01:41:02 ID:Xj5hiDxb
(・・・話をするたって・・・・)
話をしようと言ったはいいが、この状況で何を話せばいいのやら・・・
固まってしまった松田。上半身だけ体を起こして正面を向いたままの2人。
(・・・話たって、何話せばいいんだ・・?でも、「よし、続きを始めようじゃないか、柔さん!」
なんて言えないし・・・ああーわからん!)

「・・・あの・・・・」柔が先に口を開いた。
「は!はいっ?」
松田が横を向くと、柔は意外にも、穏やかな顔つきで松田を見ていた。
松田の取り乱しように、顔を赤らめて少し微笑んだ柔。
「・・・あ・・・ははっ」柔の表情を見て、頭をくしゃくしゃと掻き、照れ笑いを浮かべる松田。


「・・・何か飲むか・・・?取ってくるよ。」
「あ、いえ、あたしが・・」
「いいよいいよ!」
「でも・・・・」
松田はいいよ!と言い、ベッドを出ようと、足を布団から出しベッドから出ようとしている。
しかし・・
「あ・・・・・」自分が真っ裸だということをようやく思い出し、固まってしまった。
「あたし、とってきますから・・」
「ご、ごめん・・・」松田はごそごそと布団に足を戻した。
柔はベッドから出て歩いていった。
松田に貸してもらった上着を1枚だけ羽織っている。

冷蔵庫の前にひざをついて座り、飲みものを探す柔。
小柄な柔には、松田の上着は少し大きく、太ももらへんまで隠れてしまっている。
ぶかぶかの男物の服を着ている姿はやけにかわいらしい。
しかし、ちらっと見えている太ももあたりのきれいな肌は、やけに色っぽくも見える。

「・・・・・・」真っ赤になり、目が離せなくなっている松田。
飲みものを取り出し、冷蔵庫を閉めた柔。
目があいそうになったので、松田は急いで目線をそらせた。
788クローバー:2005/08/27(土) 01:42:21 ID:Xj5hiDxb
786さん、ほんとありがとうございます。
もうすこし、お付き合いください!
789名無しさん@ピンキー:2005/08/27(土) 03:40:30 ID:t/aIKuVU
奥手な松田さんいいねー。
GJですー。
続きたのしみっす。
790名無しさん@ピンキー:2005/08/27(土) 09:27:16 ID:+2+M4ctP
ワクワク
791クローバー:2005/08/29(月) 00:45:16 ID:tTRBRn0B
しばらく、2人の会話のやりとりが続くと思います。
2人にとって、大事な心の交流ということで・・・
しばらくお付き合いください。
792クローバー:2005/08/29(月) 02:06:13 ID:tTRBRn0B
「どうぞ・・」
「あ、ありがとう。悪いね・・・」
柔は松田に飲み物を手渡し、ベッドに戻った。

          「・・・・・」
缶を手に持ち、時々飲みながらも、互いの顔が見れず、正面を向いたままの2人。
(・・・・話をしようといいだしたのは俺だってのに・・・)言葉がみつからない松田。


「・・・松田さん・・・」柔がぼそっと呟いた。
「ん?な、何・・・?」
「松田さん・・・あの・・・・」
気が気でないのは柔も一緒だった。さっきまでのことを思い出すと、気が気でなくなるので、少しの間だけ、
しまっておこうと、柔なりに必死だった。

「松田さんは・・・・いまのお仕事、つらくないですか?」
「え?仕事・・・?俺の?・・」唐突な質問に少し驚く松田。
「あ・・はい、その・・・日本を離れて・・・淋しかったり、しんどかったり、とか・・」
「ああ・・・」

「そうだな・・・・」
松田は、遠くの方を見つめながら、手に持っていた缶ジュースを、少し口に入れた。

「毎日いろんなとこ飛ばされるし・・休みもあったもんじゃないし・・・ははっ、確かに
ハードだよなあー!」


「でも・・・」松田は続けた。
「これが、俺の夢だったからさ・・」
「夢・・・?」

「ああ・・・・俺さ、ガキの頃から、スーパースターってもんにあこがれててさ・・・
だからこの仕事就いて・・・なんていうか・・・・こう・・
自分のワクワクする気持ちや、感動する気持ちを、みんなに伝えたかったんだ・・」
「・・・・」柔は、黙って聞いている。こんな松田の夢の話を、松田の口から話すのを直接聞くのは、初めてだ。

「だからどんなにしんどくてもがんばれるっていうか・・・・・ははっなんか照れるなっこんな話!」
松田はふと我に返り、頭をかきながらすこし照れ笑いをした。そんな松田を見て、柔も、穏やかな笑顔を見せた。

「柔さんも・・・・」
「え?」
「いっいや、ごめんっなんでもない。」
         

        ー柔さんも、俺の夢だったんだ・・・−

スポーツ選手として描いていた自分の夢は叶った。
そして、同時に、1人の女性として、ずっと見守りつづけ、心にしまい通してきた夢も・・・

こういいたかったが、あまりに気恥ずかしく、松田には、到底いえない言葉だった。
793クローバー:2005/08/29(月) 02:29:40 ID:tTRBRn0B
「だからさ、こっちで、まだまだがんばろうって思うよ!しばらくは帰れないだろうけど。。」

「そうなんですか・・・・」柔は、松田の話を聞き、嬉しい半面、松田の帰国
がまだまだであろうことを察し、少しだけさみしくもあった。仕方のないことだとはわかっていても・・
「柔さんは?」
「え?」
「柔さんは、なんか夢とかなかったのか?」


        ーあたしの夢・・・ー

「いえ、あたしはなにも・・あたしはただ・・・」

いまの柔の脳裏には、松田と共に幸せな家庭を築く未来がぼんやりと浮かんでくる。
(やだ・・・やだやだあたしったら・・)赤面する柔。
「柔さん?」
「・・・また・・・思い出したら話します・・」
「え?ああ・・・」柔の心の中など知る由もない松田。
794名無しさん@ピンキー:2005/08/29(月) 23:28:02 ID:GDIti3fT
やっぱ柔ちゃんはいいね。
浦沢漫画の中でピカ一のヒロインだよねぇ。
SSでスピリッツを毎週楽しみにしてた当時を思い出しましたよ。

頑張ってください。毎回楽しく読ませてもらってます。
795名無しさん@ピンキー:2005/08/30(火) 00:10:14 ID:8mpx5vWn
柔タンもえ〜
職人さん乙です
796名無しさん@ピンキー:2005/08/31(水) 15:49:16 ID:ifSmDQZ5
職人さん光臨キボーン
あげ
797クローバー:2005/08/31(水) 23:40:27 ID:CRzQ8QUP
「・・松田さんのご実家は・・・?」恥ずかしさを紛らわし、柔はすこし話題を逸らした。
「?じっか?」
「あ、あの・・・今は東京に住んでらっしゃるけど、その前は・・」
「ああ、山形だよ。ど田舎。親父とお袋が民宿やっててさ。
・・・・もう長いこと顔見せてないなあ・・・」松田はそう言って缶ジュースを、
ベッドのそばの机に置いた。
「松田さんは兄弟は・・?」
「いないよ。俺ひとり。」
「・・・そうなんですか・・・」

こんな話は、いままでゆっくりとしたことがなかった。
今まで知ってるようで知らなかった松田のことを、今少しずつわかってきているようで、
柔は嬉しいようだ。
「おうちの方は・・・」
「ん?」
「淋しがってらっしゃいませんか?その・・・松田さんが、東京に出てこられて、そのうえ、アメリカにまで・・」

「いやあ・・・・・俺男だしもうこんな歳だしさ。淋しい・・のかなあ、どうだろーな!」
と言って、松田は笑った。こんなたわいもない話、しかも自分の話を、柔が真剣な顔をしてじっくり聞いているので、
妙に照れくさい松田。

「日本にいるときは、お休みの時は、よく帰ってらしゃったんですか?」

「そおだなー・・どうだろ。年末だろー・・6月くらいにも帰ったことあったな・・・あ、でもあれは
たしか加賀くんがいたから、仕事のついでだったかな・・。」

「・・邦子さん・・・?」
「・・・・・」
松田は、要らぬ一言を言ってしまったようだ。。。

798クローバー:2005/08/31(水) 23:49:43 ID:CRzQ8QUP
応援してくださってるかたにはほんと感謝です。
2人の、進んではさがりながらも少しずつ前進していける様子を、
まだもう少しがんばって書いていきます。長期戦になっていますが、どうか見守ってやってください。
799名無しさん@ピンキー:2005/09/01(木) 18:07:27 ID:aLRD984C
地雷を踏んだな…それも核地雷を…。
800名無しさん@ピンキー:2005/09/02(金) 20:51:21 ID:eZPwMUw7
800get!
801クローバー:2005/09/03(土) 23:59:56 ID:Fl1R2h+X
「・・・邦子さん、松田さんのご実家に・・」
「あ、いや、ちがうんだよっ。仕事のついででさ、加賀君はついてきただけでっ・・」
柔は松田から目を逸らしてしまった。松田はさすがに焦っている。
「別に深い意味も何もないんだ!」
「そうですか・・・・」
「・・・・・」

    邦子さん、松田さんの実家に行ったことあったんだ・・・ー

柔は、今となっては、2人の間に何もなかったということはよく理解している。
アメリカに発つ前にも、邦子の口から直接話も聞いた。
でも・・・
自分と松田の間にはない様々なことが、邦子と松田の間にはあるような気がして複雑だった。
実際、あんなに長い間パートナーを組んでいて、あんな積極的にアプローチされて、
ほんとうになにも無かったのか・・・不安がないといえばうそになった。


「・・・・・」
「・・やわ・・」
「松田さん、邦子さんのこと・・」
「え?」
「・・・・邦子さんのこと・・・・どう思ってたんですか・・・?」
「・・・え?どうって・・・・何が?」松田は質問の意味が今ひとつ理解できない。
「・・・だから・・・その・・・」
「どう思うって・・・・別になにも・・加賀君は5年近く一緒に組んでたパートナーだけど・・・。?」
「・・・・・・」柔は黙っている。
「?」眉をしかめる松田。
「何?どうした?」
「いえ、もういいです・・・」
「?え・・・」
きょとんとしている松田のよこで、柔は缶ジュースをごくっと飲んだ。
質問の意味をまったく理解してくれない松田。
仕方ないけれど・・・
(松田さんてば・・・ほんとにあたしの気持ち・・わかってくれてるのかな・・
ほんとにあたしのこと・・)

「・・・・・なに怒っているんだよ・・・」そんな柔に、松田は困ったように尋ねた。
 
 
802クローバー:2005/09/04(日) 00:38:57 ID:Q+q/gZUT
「そんな・・・あたし、怒ってなんかいません!」
「え・・」
「あたし、怒ってなんか・・」
「な・・怒ってるじゃないかよー・・」
「怒ってません!」
「・・・」

(何でこの状況で、けんかになっちまうんだ・・)松田はぽりぽりと頭を掻いた。
「松田さんは、邦子さんに・・」
「え?」
「邦子さんに・・・・好きって言われたり・・・したんですか?」
「え・・・俺??」柔は少しだけうなずいた。
「いや、好きっていうか・・・いや、まあ・・その・・」勘弁してくれよー・・・と、松田は心の中で
つぶやいた。

「・・・・・」柔は黙っている。
自分は知らない、邦子と松田のあいだの出来事。
積極的な邦子のことだ。きっといろいろあったにちがいない。
いまさらとはわかっていても、悲しいとも、腹が立つ、ともいえない、複雑な気持ちが行き来する。

「柔さんも・・」
「え?」
「いや、その、柔さんも・・・きっと・・いろいろあったんだろ?その。。
風祭と・・さ・・」松田の口から、“風祭”の名が出てきた。
「・・・風祭さん・・?」

「そ・・だって・・柔さん、ずっと好きだったんだろ?その、風祭のことを・・さ・・」
「・・・・」
803クローバー:2005/09/04(日) 01:14:19 ID:Q+q/gZUT
柔が風祭のことが好きだったことは、松田は痛いほどよく知っていた。
風祭のことを悪く言わないで、と泣かれたことさえある。
いったい、その気持ちが、いつから自分に向きはじめたのかは知る由もないが・・

「・・・あたしは別に何も・・」柔は小さな声で呟いた。
「・・・でも・・・好きだったんだろ?風祭のこと・・」
「・・・・・」 

そう、柔はずっと風祭のことが好きだった。
いったいいつから、こんなに松田のことが好きになってしまったんだろうか。
こんなに女心に鈍感で、どうしようもないほど不器用なひとを・・・

「あたし・・・」
「ん?」

「・・・あたし、風祭さんに・・」
「何?どうした?」

柔は少し迷ったが、口を開いた。
「あたし、風祭さんに・・・プロポーズされました。2年前・・に・・」
「・・・・えっっ!!プッ・・プロッ・・??!」
初めて聞く事実。松田は急な告白に、度肝を抜かれた。
「い、いつっ?」
「・・2年前、オリンピックの時に・・です・・」
「オ?オリンピック??」
「はい・・・」
「そ、それで??」
「え・・」
「い、いや、だから、あのさっ・・それでどうなったのかなってっ・・」
「・・いえ、何も・・何もありませんでした。。」
「な、なにも?」
「はい・・」
「・・そうだったんだ・・いやあっびっくり・・したなあ・・」
今この状況で初めて知ったことは、風祭がプロポーズしていた、という
驚きの事実だった。
柔は、言っちゃった・・というかのように、フー・・とため息をついている。
804名無しさん@ピンキー:2005/09/04(日) 03:09:43 ID:ivd+MTth
おお投下されてる!
職人さん乙です
まったり楽しみにしてます
805名無しさん@ピンキー:2005/09/07(水) 01:03:50 ID:KvsVS4GY
応援あげ
806クローバー:2005/09/08(木) 00:41:46 ID:Z4Csw5HZ
明日、続き書きます。!もう少しお待ちください・・
807名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 03:18:11 ID:zO40D4WE
応援してます
808クローバー:2005/09/08(木) 21:06:15 ID:Z4Csw5HZ
「・・・・何で・・」松田がぼそっと呟いた。
「え?」
「いや、さ。何で・・・受けなかったのかなって思ってさ・・・。その・・・・
プロポーズを・・さ・・・」


ーあれだけずっと慕っていた風祭からのプロポーズなのに・・・何故俺みたいな、しがない三流記者
を、柔さんは・・・ー松田にはわからない。
「・・・・・そんな・・なんでそんなこと・・」
ー何で受けなかっかのか、なんて・・・ー
柔は、声を詰まらせた。そんなこと、いまさら、わかりきっているはずのことなのに。


「・・・いいです」
「え?」
「もういいです。」柔は布団にもぐり、正面を向いていた体を横に向けた。
「もういいって・・なんでまた・・」
「・・・・・」柔は答えない。
「俺は・・俺はただ、君が・・・風祭のことあんなに慕ってたことを知っていたから・・・だから、その・・」

はー・・・
(何言ってんだ俺・・・)松田は大きくため息をついた。

「あたしはっ・・・・」
柔が口を開いた。

「あたしは・・松田さんのこと・・好きだったから、受けなかったんです。」


「あたしは・・・松田さんのことだから好きだから・・アメリカに来たんです・・」
「・・・っ!」
柔の表情は、松田からは見えない。
でもその声で、松田には。柔がどんな顔をしているのか、わかるような気がした。
809クローバー:2005/09/08(木) 21:26:38 ID:Z4Csw5HZ
しばらく静まり返る部屋。
松田は、何かを考えているように見える。

「・・・・行くか・・・?」松田が、うつむいたまま呟いた。
「・・・え・・・」
「日本に帰ったら、その・・一緒に・・・山形・・行くか・・?」

「・・・・」

松田からの突然の誘いに、部屋はまた、静まり返る・・・。

「・・・・って、何いってんだよな、いきなり!それに、あんななんにもないとこ、
行ったってつまんないよな!ははっ!」
松田はそう言って、ジュースを取り、ごくっと飲んだ。
「・・・・あたし・・」
そう言って、柔が松田の方を向いた。
「あたし、行ってみたい・・」
「え?」
「あたし、行きたいです。・・・松田さんと一緒に・・」


「そ・・・そっか・・・」
松田は照れくさそうに笑い、柔も、穏やかな笑顔を見せた。
「・・・じゃあ、俺が日本に帰ったら・・一緒に行こうな・・」

「・・はい・・・」

810クローバー:2005/09/08(木) 21:40:08 ID:Z4Csw5HZ

「柔さん・・・その・・抱いても・・・いいか・・?」
「・・・はい・・・」
遠回りこそしたが、気持ちを再確認しあえた2人。

      ー今度こそ・・・ー
柔の上に松田がかぶさり、上着のボタンを、ゆっくりと外し始めた。
811名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 23:30:00 ID:hwA/ewbc
世界柔道見ながら応援してます!
812名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 01:10:50 ID:NRXyIZAJ
>>811
やめれ。ちょっと萎えるw
813名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 01:31:19 ID:F7bxz71C
ふ〜。やっぱいいな、この二人。
つーか寸止めですかw
814名無しさん@ピンキー:2005/09/10(土) 11:46:20 ID:+MGgg4OG
職人さん乙ー
815名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 18:34:32 ID:Ue9mksXt
>812
まあまあもちつけ。
俵がいないんだからええじゃないかww
816名無しさん@ピンキー:2005/09/13(火) 08:55:13 ID:X5kMzzjw
age
817クローバー:2005/09/13(火) 23:57:39 ID:QxitSJRu
柔の服が脱がされた。
「あ・・松田さん、待っ・・松田さん・・」未だに恥じらいの気持ちが消えず、松田の手を振り払おうと
としている柔。
「・・柔さん、力抜いて・・」
松田は、振り払おうとしている柔の手首を握った。
松田の力の強さに、驚く柔。
(松田さんじゃないみたい・・・。)
今までとは違う松田に驚きながらも、今、松田に自分の体全てを預けている、と思うと、
柔は、感じたことのない、不思議な快感を覚えた。

今まで感じたことのないような快感の中で、柔は、少しずつ抵抗することをやめ、徐々に
松田に体を預け始めた。
松田も柔の変化を感じ、少しずつ、下の方に、体を降ろしていく。


818クローバー:2005/09/14(水) 00:30:49 ID:u55ApAAs
松田が、柔の太ももを持ち、両足を開かせた。
「・・・っ!」驚きと恥じらいを隠せない柔。
「柔さん、大丈夫だから・・・」そんな柔に松田がつぶやくと、柔はうなずいた。
松田の手が、柔の両足の股の間に、入っていった。
「あっ・・!」
「痛いか・・?」
「い、いえ・・」
初めての、なんともいえないような感覚・・・。
松田は柔の表情を確認してから、そのまま続けた。
「んっ・・!」我慢しようとしても、声が零れてくる。
(や・・・なにこれ・・・)
「やっ・・松田さん、やめてっ・・」
「あ、ごめん・・」痛い思いをさせたと思い、一瞬動きを止める松田。
「あ・・・・」

ーううん、ちがう、あたし・・やめてほしくない・・ー

「いえ、あの・・大丈夫です・・」そう呟く柔。
もっと松田に触れていてほしい、と思っている自分がいる。自分に、こんなにいやらしい気持ちがあったなんて・・
松田は、再び続けた。
819クローバー:2005/09/14(水) 00:53:54 ID:u55ApAAs
「やっ・・・あっ」
暗い部屋の中で、甘美な声が零れる。
柔は声を出してもなお、じっとしていられず、体を、小刻みに揺らしている。
松田の手の動きは、止まらない。



「あっ・・・!」
柔の体がびくん・・と一瞬大きく動き、次の瞬間、ゆっくりとしなだれた。
(え・・・まさか柔さん・・)松田は驚いた。自分はこういったことには、決して長けている方では
ないはずなのに。
柔が、人1倍敏感なのだろうか・・・?
もちろん、そうなれてよかったのだけれど。
一方の柔も、何が起こったのかわからない。
少し荒い息を吐きながら、松田を見つめている。
「松田さん、あたし・・・」
一瞬驚いていた松田が、はっとした。
「あ・・・柔さん、大丈夫だったか?痛くなかったか・・・?」
「・・はい・・・」
「そうか・・・じゃあ・・・いいかな・・・?」
「・・・・・?」
ー次って・・・?ー
初めての経験の連続。柔には、次になにが待っているものか、よくわからないようだ。
820名無しさん@ピンキー:2005/09/14(水) 15:57:27 ID:UwTg4lJ7
おおー、職人さん乙です。
原作を読む限り、柔は
経験ありそうに思ったけど、
ここの設定は処女みたいですね。

柔タンハアハア
821名無しさん@ピンキー:2005/09/14(水) 21:58:15 ID:t6t2SGwP

そぉかぁ?
822名無しさん@ピンキー:2005/09/16(金) 18:49:20 ID:VpMvv7OU
応援あげ
823名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 18:08:11 ID:ERMUdGsN
職人さん 続きを期待!!
824クローバー:2005/09/19(月) 00:29:44 ID:VbwjX8v2
「松田さん、あの・・・」荒い息の中、少し不安そうな柔。
「柔さん、大丈夫だから・・。なっ・・。」柔を安心させるように呟く松田。
柔は、コク・・と、少しうなずいた。
松田は、近くにあった大きなクッションを取り、柔の背中の下に敷いた。
柔が少しでも楽な体勢でいられるよう、松田なりの配慮であろう。
「大丈夫だから・・」
「はい・・」

「!」
その瞬間、柔には、松田が何をしようとしているのか、ようやく理解ができた。
「あっ・・!」苦痛とも快感ともいえない感覚が体中をよぎる。



825:2005/09/19(月) 02:14:11 ID:QFwHU4SC
 鶴亀トラベルの神保町支店に勤務する猪熊柔は、所用があって近くの郵便局を訪れた。
「うわぁ、結構混んでるなぁ」
 振り込み窓口にずらりと並んだ人の列を見て、柔は溜息をついた。
 しかし今日中に振り込みをしなければならないので、黙って順番を待つしかない。

 時計の長針が半周した頃のことである。
 背後のドアが荒々しく開かれたと思うと、数人の足音が響き渡った。
 何事かと思って柔が振り返る。
「強盗だ! おうっ!」
 そこには目出し帽を被った3人の男が立っていた。
 先頭の男が持っているのは狩猟用の散弾銃であった。
 天井に向けて散弾銃が発射され、室内の空気がビリビリと震えた。
 女の悲鳴があちこちから上がる。
「静かにしろぃ。ぶっ殺すぞ」
「全員、手を上げてろ」
 強盗の一人が客の列に銃口を向けて喚いた。
「さっさとバッグに金を詰めろ」
 柔も他の客同様に両手を頭の後ろで組み、ジッと反撃のチャンスを待っていた。
「こんなことに付き合っていられないわ。みんな待っているのに」
 早く振り込みを終えないと、あちこちに迷惑が掛かってしまう。
 幸い銃を持っているのは一人だけである。
 その一人さえ何とかすれば、後は簡単であろう。
 そう思っているうちに、銃を持った男が無防備で柔の真横を通り過ぎようとした。
「今だわっ」
 柔は男の手首を握ると、素早くねじり上げた。
「痛ぁっ」
 ポロリと落ちる散弾銃。
 電光石火の勢いで男の内懐に飛び込んだ柔は、腰の上に男を乗せるとバネを使って跳ね上げた。
「えぇ〜い」
 同時に男の上半身を思い切り引き込み、硬い床に叩き付けた。
 元五輪ゴールドメダリストの背負い投げが見事に炸裂した瞬間であった。
 男は仰向けに倒れたまま、泡を吹いて伸びている。
「なっ……?」
 信じられぬものを目の当たりにし、慌てふためく残りの男たち。
 精神的に立ち直らないうちにと、柔は次の男に飛び掛かる。
 ジャンパーの両襟首を握ると、右足を男のベルトバックルに掛けて背後に倒れ込む。
 その勢いをかって、男を蹴り上げる。
 タイトスカートの裾が捲れ上がり、白いパンティがチラリと見えた。
 巴投げがピシャリと決まり、男はコンクリートの壁に叩き付けられた。
「そっ、そこまでだ」
 最後の男が老婆の首筋にナイフを突き付ける。
 しかし完全に怯えており、手足が小刻みに震えていた。
 それを見切った柔は、ゆっくりと男に近づいていく。
「くっ、来るなぁ」
 柔の勢いに完全に飲まれてしまった男は、老婆を突き飛ばすと逃げ出した。
 ダッシュで男に追いついた柔は、腰に抱きつき上後方に持ち上げる。
 そのまま後ろ腰で、男の後頭部を床に叩き付けた。
826:2005/09/19(月) 02:14:55 ID:QFwHU4SC
「ふぅ〜っ、片づいた」
 柔は何ほどのこともなかったように、服に付いた埃を払う。
 ドッと歓声が上がり、室内が拍手で包まれた。
「お婆ちゃん、大丈夫だった?」
 柔が老婆の身を案じて近づいていった時であった。
 いきなり振り返った老婆が、手にした物を柔に突き付けた。
 至近距離から繰り出されたスタンガンは避けようがなかった。
「アァァァーッ」
 50万ボルトの電撃が柔の体を駆け巡る。
 随意筋を痺れ上がらせた柔が、力無く床に崩れる。
「おっ……お婆ちゃん?」
「余計なこと、してくれるでないよ」
 老婆はスタンガンを柔の首筋に突き付けると、更に電撃を加えた。
「うわぁぁぁ〜っ」
 高圧電流に撃たれ、完全に体が麻痺してしまう。
 そうしているうちに、柔に投げ飛ばされた男達がようやく起きあがる。
「いててぇ……」
「小娘一人に後れを取って。だらしない孫だよ」
 なんと老婆は男達の祖母であり、最初から仲間として客に紛れていたのであった。
 その時、非常通報を受けたパトカーのサイレンが接近してきた。
「こんの野郎っ。お前のせいで、段取りが狂っちまっただろ」
「こうなったら籠城戦に変更だ」
「幸い人質はゴマンといるぜ」

「無駄な抵抗は止めて出てきなさい。君たちの肉親は泣いているぞ」
 陳腐な常套句がスピーカーから流れてくる。
 しかしその肉親が犯人達の指揮官であるとは、警察も知る由がなかった。
 すっかり野次馬に埋め尽くされた通りは騒然としている。
 駆け付けたTVクルーが何台ものカメラを回し、上空にはヘリが遊弋していた。
「あっ、犯人の一人が出てきます。人質の女性を連れています」
 ワイドショーのレポーターがマイクを片手にがなり立てる。
「おぉ〜っと。これはぁ〜っ」
 なんと人質になった女性は、後ろから膝を抱えられてM字開脚の姿勢を強いられていた。
 その下半身にはパンティーはなく、剥き出しになった性器に男の黒ずんだモノが深々と突き刺さっているのがハッキリと見えた。
「モッ、モザイク……」
 ディレクターの指示も虚しく、全国ネットで昼下がりのお茶の間にノーカットのレイプシーンが流れてしまった。
「おいっ……あの女。どこかで見たことないか?」
 黒山の人だかりが騒然としはじめる。
「柔……猪熊柔だよ。あの女」
「柔だぁっ」
 バルセロナで金メダルを取った柔道少女の顔は、まだ皆の記憶から消えていなかった。
 辺りが地鳴りのような唸り声に包まれ、一斉にカメラ付き携帯のシャッター音が響いた。
 みんなの憧れのヒロイン猪熊柔。
 その最も恥ずかしい部分とアヌスが大衆に晒された瞬間であった。
 こうして柔にとって地獄の1日は幕を上げた。
827名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 10:33:41 ID:+lsBwZjr
強盗だ、ってあの伝説の?!
828名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 11:18:19 ID:XN/GnoeZ
クローバーさん、4さん
乙です
両方とも今後の展開が楽しみですね♪
829クローバー:2005/09/19(月) 21:49:09 ID:VbwjX8v2
4さん、乙です!
自分も、少しずつではありますが、書き込みんでいきます!
830クローバー:2005/09/19(月) 22:19:53 ID:VbwjX8v2
「んっ・・・!」歯を食いしばる柔。
「柔さん、力抜いて・・」
そういわれても、体に力が入る。
すがるように、松田の背中に、手をまわす柔。
松田の背中をぎゅっと抱き、目をつむっている。
力の強さに、背中に痛みを少し感じながらも、柔の気持ちを酌み、受け入れる松田。

「・・・あっ!」柔が声を上げる。

とまらない柔の声。顔を横に振り、開いた足も、落ち着き無く動いている。


しばらくして、松田は1度動きを止めた。

「大丈夫か・・・?やっぱり・・痛いか・・?」柔を気遣い、たずねる松田。

荒い息を吐きながら、柔は、しばらく松田を見つめている。

    ーここで、やめてもらうこともできる。でも・・・−

そして、息が少し落ち着いた頃、柔は、何もいわず、首を振った。

「・・大丈夫か?」
「・・・はい・・・」
「続けても・・・いいか?」
その言葉に、柔はうなずいた。
松田は、その返事を確認すると、柔の背中を少し持ち上げ、移動してしまっていたクッションの位置を
元に戻した。




831名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 23:24:01 ID:VKd/Gec1
>4氏
すまんが、陵辱ものなら予告入れて欲しかった…
せっかくの作家さまには申し訳ないのだけど、
オイラソレ系は苦手なもんで。
832:2005/09/20(火) 02:43:58 ID:jHsaRVVm
「……んんっ……うぅ〜ん……」
 吐き気を催すような気怠さと共に柔は眠りから醒めた。
「あたしどうしたんだろ……そうだ。道場破りに内股を喰らって……」
 意識を失う前の出来事がフラッシュバックする。
「はっ……イヤァァァーッ」
 柔はようやく自分が全裸に剥かれて、四つん這いに据えられていることに気づいた。
「くっ、くぅぅぅ〜っ……ダメだわ」
 如何に藻掻けど、体をきつく縛った荒縄はビクともしない。
 その時、柔は肛門に異物感を感じ、肩越しに振り返って背後を見た。
 そこに据え付けられていたのは鋼鉄パイプのスタンドであった。
 高みに据え付けられた1リットルサイズのガラス容器に薬液が満たされていた。
 逆さになった容器の口からビニール製のパイプが伸び、その終端が自分の肛門に突き刺さっているようであった。
「誰がこんなことを?」
 柔は助けを呼ぼうとして、自分が全裸であることを思い出す。
 身動きできない立場で、他人を呼び込むような不用意なことは出来ない。
「何なのこれっ? あたし何をされているの?」
 柔は薬液が肛門の中に注がれていることに気付く。
「点滴なの?」
 投げられた時に打ち所が悪く、医師の治療を受けているのかも知れない。
 その道の知識など無い彼女が『イルリガートル式浣腸器』などという語彙を知っているはずもなかった。
 柔の腹部がグルルッと泣き声を上げた。
 同時に耐えきれない便意が襲いかかってきた。
「かっ、看護婦さん……いないの?」
 全身に脂汗を浮かべた柔が歯を食いしばって身悶えする。
「うっ、ウンチしたくなっちゃった……看護婦さん、近くにいないの」
 柔は首を折り曲げ、股間の下に金属製の洗面器が置かれているのに気付いた。
「こっ、これにぃっ? うっそぉ〜。無理よぉっ……うぅっ」
 眉間に皺を寄せた柔のほほを、汗が流れ降りた。
833名無しさん@ピンキー:2005/09/21(水) 20:57:32 ID:NkIyiBCn
職人さん乙です
期待あげ
834:2005/09/21(水) 21:24:09 ID:sz+oWSwu
 猪熊柔は鶴亀トラベルを定時退社すると、一人暮らしを始めたばかりのマンションへ真っ直ぐ帰宅した。
 マンションのドアを開けると、留守番をしていたゴールデンレトリバーのアントンが飛び付いてくる。
「もう、アントンったら」
 アントンは前足を柔の体に掛けて立ち上がると、舌を長く伸ばしてハァハァ荒い息をする。
 無論ここはペットOKのマンションでり、誰に気兼ねすることもなかった。
 普通より少しばかり家賃が高いものの、気兼ねなくペットを飼える環境は、何ものにも代え難い。
「一人でお留守番してて、よっぽど寂しかったのね」
 柔は愛犬の上半身に手を回すと、愛おしそうにギュッと抱きしめてやる。
 大型犬、しかも成犬のアントンは後足で立ち上がると、柔と変わらないほどの巨体である。
「けど、寂しかったのはアンタだけじゃないんだから……」
 柔は後ろ手でドアに鍵を掛けると、アントンと連れだってダイニングに入る。
 そして汗ばんだスーツを脱ぐと下着姿になった。
「うふふっ、あたし綺麗?」
 柔は愛犬を挑発するように腰を振りながらブラを、そしてパンティを脱いでいく。
 低い唸り声を上げて見守っていたアントンは、我慢できなくなったようにご主人様に飛び掛かった。
 あっさりと仰向けに倒される柔。
「いやん。せっかちねぇ」
 メスの臭いに興奮したアントンは、股間のモノをはち切れんばかりに勃起させていた。
 表面には太い血管が浮かび上がり、ビキビキと音を立てんばかりに膨張と収縮を繰り返している。
 股間の怒張を、仰向けになった柔の顔の上に持っていくアントン。
「あたしに舐めろって命令してるの?」
 柔はムッとした表情になって愛犬を睨み付ける。
 しかし生臭いモノを口元に突き付けられると、それを両手で握りしめ、愛おしそうにキスをした。
 大型犬のペニスは、体に見合ったサイズを誇っていた。
 柔が両手で握っても、先端部はタップリと露出している。
「んぐぅっ……」
 先端部を舌先でチロチロと舐め回した後、柔は思い切り口を開けてそれにかぶりついた。
 直ぐに喉に突き当たり、柔が軽くえづく。
 柔は肉棒に吸い付きながら、顔を上下させて茎部を口で扱く。
 犬のペニスをフェラチオするという背徳的な行為が、柔の興奮に火をつけた。
 柔の股間が自然に潤みを帯びてくる。
 その臭いを嗅ぎつけたアントンが、ペニスを支点に体を180度回転させる。
「んごぉぉぉっ」
 先端部に喉の奥を掻き回され、柔を嘔吐感が襲う。
 柔の股間を、顔に似合わぬ黒々とした縮れ毛が覆い尽くしていた。
 腋の下と股間の手入れは禁じられているため、不必要なほど剛毛になっている。
 アントンはジャングルの奥にある秘密の泉に舌を伸ばすと、ピチャピチャと嫌らしい音を立てて舐め始めた。
835:2005/09/21(水) 21:24:51 ID:sz+oWSwu
 アントンは肉芽を執拗に舐め上げたかと思うと、ヌルリと割れ目に舌を差し入れる。
 奥深くをまさぐっていたかと思うと、今度はアヌスが責めを受ける。
「おごぉぉっ……おむぅぅぅ」
 どこをどう責めれば、どうのたうち回るか──犬は柔の泣き所をすっかり覚え込んでいた。
「んあぁっ……んごぉぉぉっ」
 獣とのシックスナインが、更に背徳感を煽った。
 軽く達した柔の股間で、熱いモノが煮えたぎる。
 興奮した膣口が、完全に開ききった絶頂相を示す。
「もっ……もう……ねぇ、お願い」
 アントンは勝手にペニスから口を放した柔に牙を剥き、フェラの継続を強制する。
 切なそうに眉をひそめながらも、柔は飼い犬の命令に従う。
 柔は先端部を喉の奥に導きながら、初めてアントンに犯された日のことを思い出す。


 それはある夏の、仕事帰りにふと立ち寄った神社の境内でのこと。
 すり寄ってきたゴールデンレトリバーの野良犬に、夕食のコロッケをあげたのが全ての始まりであった。
 最初は甘えてすり寄ってきたのかと思ったアタックが、実は本気だと気付いた時にはもう遅かった。
 圧倒的なパワーを誇る巨体の前には、柔の柔道など通用するはずもなく、あっと今に組み敷かれてレイプされてしまった。
 獣との交尾の味を知ってしまった柔が、実家を出てマンション住まいを始めるまで、さほど時間を必要としなかった。
 オランダ人柔道家の名を借りて、アントンと名付けられた犬は、柔の同居人としてマンションに迎え入れられた。
 夜には主従完全にところを変える秘密の関係は、今や柔にとってかけがえのないものになっていた。


 ようやく強制フェラチオに満足したのか、アントンは柔の口からペニスを引き抜く。
 そして柔に、屈辱的なメス犬の姿勢を強いた。
 柔は命令に従い、尻を高々と上げた四つん這いになる。
 アントンはその上にのし掛かると、腰を柔の尻に密着させた。
 そして2,3度入れ損なった後、ようやく探り当てた膣口にペニスを突き込んだ。
「おぉぅっ」
 獣じみた声を上げて、柔がオスのモノを受け入れる。
「ハヘッ、ハヘッ、ハヘッ」
 荒々しい息遣いと共に、アントンの腰がリズミカルに前後し、巨大なモノが柔の狭い膣道を擦り上げる。
 一杯に開かれた鏡台の三面鏡に、接合部分にペニスが出入りする様が映っていた。
 それをウットリと見詰める柔。
「入ってる……アントンのが入ってるわ……あぁ〜ん」
 自分が一匹のメス犬として扱われている現実を目の当たりにして、柔は瞬く間に登り詰めていく。
 もはや柔の頭の中には柔道のことなど一欠片も無かった。
 もはやオリンピックも金メダルも無関係の存在であった。
 ただ、この刹那的な快楽だけが、今の彼女の全てであった。
836:2005/09/22(木) 23:28:28 ID:irmgxlun
 バルセロナ行きも押し迫ったある日、猪熊柔は最後の調整に入っていた。
「ふぅ〜ぅっ。今日はここまでにしておこうかな」
 柔は今日も最後の一人になるまで練習を続けていた。
 柔は一礼して道場を後にすると、バスルームに直行した。
 そして誰もいないのを確かめて柔道着を脱ぎ始める。
 Tシャツを脱ぎ捨て下衣を脱ぐと、股間にきつく巻き付けられたサラシが現れた。
 フンドシ状に巻き付けられたサラシを解いていく。
 股間を飾る黒々とした縮れ毛が徐々に顕わになる。
 サラシが完全に解けた時、柔の股間に信じられないモノが出現した。
 そこにあったのは、本来なら男の股間に付いている棒状の肉塊であった。
「うふふっ」
 柔は締め付けられていたモノを、愛おしそうにさすると風呂場へと入っていった。
 曇りガラスの扉を閉めるのと、掃除具入れの中から物音がしたのは同時であった。


「ななな、なんなのよぉ〜、あれぇ?」
 掃除具入れから出てきたのは、日刊エヴリーのカメラマン、加賀邦子であった。
 彼女は柔から愛する松田を奪い取るため、ウィークポイントを探してストーカーまがいのことをしていたのである。
 そして遂に柔の最大の秘密を掴むことに成功したのだ。


 こっそりガラス戸を開けると、丁度柔が湯船から出てくるところであった。
 真っ正面に、ペニスをぶらつかせた柔の姿が見えている。
 邦子は細心の注意を払いつつ、手にした小型カメラのシャッターを切った。
 乾いた機械音を立てて、柔のとんでも無い姿がフィルムに焼き付けられていく。
 何も知らない柔は鏡の前に立つと、自分の全裸をウットリと見詰めた。
 そして嫌らしく体をくねらせて、扇情的なポーズをとっていると股間のモノがムクムクと膨張を始めた。
 邦子がゴクリと生唾を飲み込み、空間からその画を切り取る。
837:2005/09/22(木) 23:29:10 ID:irmgxlun
 柔はボディソープを手に取り充分に泡立てると、股間のモノを握りしめた。
「あんっ」
 一日中締め付けられて欲求不満に陥っていたペニスは、水を得た魚のようになる。
 泡にまみれて激しく脈打つペニスを、柔はなだめるように押さえつける。
 しかし、一旦暴れ出したペニスは自分の意のままにはならなかった。
「もうっ、ゆっくり楽しみたかったのにぃ」
 仕方なく柔は右手を激しく前後に動かしてペニスを扱いた。
 余った皮が亀頭の裏を擦り上げ、この世のものとは思えない快感に包まれる。
「うぅ〜っ、もうっ……もうダメェ〜ッ」
 柔の下半身が激しく震えたと思うと、ペニスの先端から白濁色の液がほとばしった。
「はぁぁぁぁ〜ぁぁっ」
 ビュビュッと勢いよく飛び出した恥ずかしい液は、正面の鏡にまで達した。
 夥しい量の精子を放った今も、柔のペニスは股間で激しく暴れている。
 柔は鏡に映った自分の姿をトロンとした目で見詰める。


 一部始終を目撃してしまった邦子は、その場にへたり込みそうになるのを必死で堪えていた。
「ややや、柔が……柔が……男……」
 邦子は震える手でそっとガラス戸を閉めると、足音を忍ばせてその場から立ち去った。
 背後では二戦目に突入した柔の呻き声が響いていた。


 日刊エヴリーに帰社した邦子が書いた、『猪熊柔が男だった』という記事がボツになったのは当然であった。
 その後、邦子の撮った写真がネット上に流れて物議を巻き起こしたが、質の悪いコラとして片付けられた。
 また騒ぎの元を断ち切るため、柔自身が申し出て行ったセックスチェックの結果、正式に彼女が女性であることが証明された。


 あの時、邦子がフタナリなる語彙を知っていたなら、その後の日本女子柔道の歴史は、今とは違ったものになっていたかも知れない。
838名無しさん@ピンキー:2005/09/23(金) 00:25:02 ID:NoYpjKXF
ワラタww
839名無しさん@ピンキー:2005/09/23(金) 22:44:50 ID:/9jtHNS4
なかなかでした。乙!
840名無しさん@ピンキー:2005/09/24(土) 09:45:36 ID:+jSdgZIR
最近、職人さん

増えていいですねー 乙です
841名無しさん@ピンキー:2005/09/25(日) 01:55:31 ID:31aGAgDD
クローバーさんの読み切り楽しみにしてますよ
842クローバー:2005/09/25(日) 09:04:48 ID:NWLhJqwv
ベッドが軋み、音が部屋に響いている。
初めての経験と感覚に戸惑いや不安を感じながらも、松田の広い背中に手を廻し、身をゆだねる柔。
そんな柔の気持ちを察して、不器用にも、優しく柔を抱く松田。

「あっ・・・やっ!」
       

      ーもうダメ・・・−そう告げそうになる柔。
「・・もう少しだから・・・」松田が囁いた。
柔は、荒い息を吐きながら、目を少しだけ開けて、うなずいた。

ーあたし、松田さんとなら・・・ううん、松田さんじゃないと・・−
服を脱ぎ捨て、股を開き、いままで出したことのないような声を出している自分。
でも、そんな自分を今、受け入れて抱いてくれているのは、ずっと好きだった、人・・ 
不安や緊張の中に、不思議と嬉しさと快感が芽生えてくる。まだ今は、不安の方が、大きいけれど。

ベッドの軋む音は、いっそう大きくなる。
「いやっ、あっ・・」上手く息ができない柔。

ぎしっぎしっと軋むベッド。


「あっ・・・!」 
その瞬間松田の動きが止まり、部屋に一瞬、静けさが戻った。
843名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 02:42:33 ID:g9UUMx92
おおー ウプされてる
乙です
844名無しさん@ピンキー:2005/09/27(火) 13:16:32 ID:G0mgxyWp
hosyu
845クローバー:2005/09/29(木) 00:10:12 ID:rKeP8YZr
「・・・松田さん・・」
「柔さん、・・大丈夫か?」
柔は、うなずいた。
「そっか・・良かった・・」松田は、安心したようにつぶやいて、フー・・
と、少し大きく息を吐き、息を落ち着かせた。

しばらくの間柔も荒い息を落ち着かせようとしたが、なかなか落ち着かない。
全身の力が抜けてしまったように思うように言うことを聞いてくれず、ただ、放心したような表情をしている。
「・・柔さん?」松田が柔に声をかけた。
「えっ?」
「いや、大丈夫か・・?」
「あ・・・」柔は、うまく松田と目が合わせられず、視線を逸らし、返答に困っている。
「あ、いや、ごめんな・・・」
柔は目を逸らしたまま、首を横に振った。
「・・・・」恥ずかしさで、松田の顔がまともに見れない柔。
松田も戸惑っている。

しばらくすると松田は、柔の顔のあたりを両手で抱き寄せた。柔の顔は、松田の胸のあたりに押し当てられた。
松田の表情は、まるで見えない。
「・・・っ!」
「・・・寝なよ・・明日・・・早いだろ・・?」
「・・・松田さ・・」
「・・寝なよ。・・な・・?」
柔を安心させるように声をかける松田。
柔は顔が真っ赤になっていた。
しかし、松田も同じような、いや、それ以上の表情をしているとは、柔は知る由も無かった・・
846名無しさん@ピンキー:2005/09/29(木) 02:31:10 ID:0E9nJOsF
クローバーさん乙です〜

私も触発されて駄文を書いたんで投下しても良いでしょか。
847846:2005/09/29(木) 03:01:55 ID:0E9nJOsF
松田×柔。まったりエロ予定。

〜〜〜〜

「いやー、あの場面で打てるのはやっぱさすがとしか言いようがないよなー!」
アパートの一室。二人っきり。すれた畳の上には布団がひとつだけ。
「あの時の球場の大歓声!どぅわー、って!すっごかったんだぜー!」
 “どぅわー”を大げさな身振りで表現する松田さんを、私は曖昧な笑みを浮かべて
見つめるしかない。
 さっきまでうるさかった胸の鼓動はなんだったんだろ?このまま、あー喋った喋った、
疲れた、さておやすみなさいって、この人普通に寝てもおかしくない。
「もう興奮うずまいててさ、耳ぶっつぶれるかと思ったよ」
 どうしてそんなに野球の話ばっかりするの?野球の話を夜中中聞かされるために、
今夜私は泊まるんじゃないでしょ?
 3週間ぶりなんだよ?
 
「それでさ、・・・・・・あれ、柔さん?」
 もう怒った。
 愛想笑いをすっかり消して、あからさまに不機嫌な顔をつくって見せる。
 頬をふくらませるくらいしないと、この人、わかってくれそうにないから。
 さらに背を向けて、さっさと布団をかぶって寝る態勢をとってみる。
「おやすみなさい!」
「え、お、おやすみって・・・・・・もう?」
どうくるかな?
848846:2005/09/29(木) 03:05:58 ID:0E9nJOsF
「野球の話、退屈だったか?」
 覗きこんでるのかな?目をつむっちゃったから、見えない・・・・・・
「そうじゃないけど」
「練習で、疲れた?」
「そうじゃないけどっ」
「いや、やっぱり疲れたんだろ・・・ハードだもんなぁ・・・・・・」
 勝手に決めつけてるし。心の中で大きなため息をつく。
「ごめんな、無理に泊まってけなんて言って」
「・・・・・・」

 心なしか目頭が熱くなってくる。
 もうガマンできない。がばっと飛び起きて、目の前の彼をにらみ付けた。
「わ!びっくりしたぁ!」
「どうしてですか?」
「へ?」
「どーしてそうなるんですか!」
「え?な、何が??」
「どうして私が、無理に泊まったことになるんですか・・・・・・!」
 目の前の彼が少しボンヤリしてくる。普段めったに泣いたりしないのに。
「柔さん・・・?」
 どうやら彼は、さっきより戸惑ってるみたい。
内心イライラしつつも、もうここまできたらしょうがない、正直に言ってしまおう、
と思った。
 素直に心をあらわせば、同じくらい、いやその10倍くらいの情熱で返してくれる。
 私が好きになったのは、そういう人なのだ。

「会いたかったんです・・・・・・泊まりたかったんです。なのに・・・・・・」
849846:2005/09/29(木) 03:09:10 ID:0E9nJOsF
 言ってしまってから、すぐうつむいた。顔がみるみる熱くなっていくのを感じる。
(「泊まりたかった」って・・・・・・もうちょっと他の言葉ないの!?・・・・・・うー、
恥ずかしすぎる!言わなければ良かった〜・・・・・・)
 ちらり、と涙目のまま彼のほうを見れば、なんだかまだ呆けた顔をしている。
いたたまれなくて、また急いで布団をかぶる。今度は、頭まで。

「柔さん・・・・・・」
「もう、いいです」
「柔さん、ごめんな」
 どうして謝られるんだろう。
「ほんとにもういいんです。おやすみなさい」
「寝ないでくれ、柔さんっ」
 ほんとに一大事のように呼びかけるものだから、ちょっと笑ってしまった。
 すこし間をおいて、顔を出してみた。困った彼の優しい目を見つける。心にほんわり、
あったかさが戻ってきた気がした。
「そんなにすぐには寝ないですけどね?」
 いたずらっぽく言うと、彼は心底ほっとしたような表情になる。
 ころころ表情が変わって、なんというか松田さん・・・・・・カワイイなあ。
 そんなことを考えながらくすくすっと笑うと、突然視界が暗くなった。
「松田さ・・・・・・」
850846:2005/09/29(木) 03:12:50 ID:0E9nJOsF
 3週間ぶりのキス。
 最初は少し押し付けるみたいにして、しばらくそのままだった。あ、
キスしてるんだ・・・・・・と頭のどこかで考えてる間、改めて、今度は唇を覆うようなキスをされた。
 途端、たまらない幸福感が胸の奥から湧き上がってくる。
 心から大好きな人に、ついばむみたいにキスされる。
 さっきまでの小さな駆け引きなんかいっぺんに頭から飛んで、ただもう夢中になって、
しがみついて彼のキスに応えた。
「ん・・・・・・ふぅ・・・・・・」
 何度も何度も角度を変える。やがて柔らかいものが侵入してきて、私の舌に絡まってきた。
(気持ちいいよ・・・・・・)
 どうして3週間も、これをガマンできたんだろう?
 熱くなっている口内と同じくらい、じんわりと、どこかが熱を帯びていくのを感じた。

 どれくらい時間がたったのかわからないけど、きっと30分くらいそうしていた。
 やがて、まるで溶け合ってしまったみたいな唇を離して、私と彼は見つめあった。
 松田さん、顔真っ赤・・・・・・多分私も。
「俺も・・・・・・ずっとこうしたかった。したくてたまらなかった」
 言ってから更に赤くなって、
「あ、いや、したかったって言うのはそう意味じゃ・・・・・・いや、そういう意味も
あるけど・・・・・その・・・・・・」
 もごもごしてるその様子が余りにおかしくって、私はぷーっと吹き出してしまった。
肩を震わせながら、彼の胸に寄りかかった。
「や、柔さん?」
「いいんです、言いたいことはわかってます」
 彼の胸に耳を押し付けてみる。あったかいそこからは、信じられないくらい早くなってる鼓動が聞こえてきた。

 再び、私の胸も早鐘を打ち始める。
「幸せ・・・・・・」
 もう一度、優しく唇を合わせる。ゆっくりとそのまま布団へ倒されて、
私はこれから彼がするがままに任せようと思った。
851846:2005/09/29(木) 03:20:45 ID:0E9nJOsF
とりあえずここまでで。
クローバーさんのお話とかぶって見づらいようでしたら
しばらく控えときます。
ちなみに設定は
アメリカから戻っても取材であいかわらず忙しい松田、
会社に練習にやはり大忙しの柔、
やっと一晩二人きりになれた、という感じでです。
アトランタから何年後とか、時間軸あまり考えてません・・・
とりあえず一線超えたてのまだ固い二人、これからだぜーみたいな
感じでw
あーレポ提出直前に私は何を。
852名無しさん@ピンキー:2005/09/30(金) 00:13:09 ID:nqMKBgjB
クローバーさん乙です
たくさんUPされてて嬉しいっすねー
今日は株で失敗したんで
癒されます。
853852:2005/09/30(金) 00:47:48 ID:nqMKBgjB
846さん 乙です
新作ですかー。
期待してますねー
854クローバー:2005/09/30(金) 01:00:37 ID:uTGD95PI
846さん、乙です。どんどん投下してください。楽しみに待ってます。
自分の方は、肝心なところなのに、最近忙しくなり、あまりにスローペースで
ほんと申し訳ないです。
855クローバー:2005/09/30(金) 01:13:59 ID:uTGD95PI
「・・・ん・・」
ゆっくりと、柔が目覚めた。目の前がぼんやりとしている。
“あれ・・・あたし・・・”
「きゃ・・!」声をあげる直前で、柔は自分の口をぎゅっと押さえた。
目線の先には、すぐ近くに松田がいた。すーすーと寝息を立て、眠っている。
柔は、松田の腕に抱かれたまま、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。
(そうだ・・・あたし、昨日の夜、松田さんと・・・)
思い出すと、顔から火が出そうになる。
(やだやだ・・・あたし・・)
真っ赤になりながら松田の顔を見上げた。
30歳をとっくに越しているとは思えないような松田の寝顔。

その表情を見ていると、柔の顔に、自然と笑みがこぼれる。
(あたし、松田さんと・・・・・。)
恥ずかしいはずなのに。
松田が愛しく思える。


「・・・んー。。。」
そのとき、松田が、ごそごそと起き始めた。
856クローバー:2005/09/30(金) 01:40:02 ID:uTGD95PI
柔の顔を見る前に、うー・・・と唸りながら、ごろんと体勢を変え、何かを
探そうとして手を動かしている松田。
「・・・いま・・何時だー・・・」
柔は、動けず硬直している。
腕時計を見つけた松田。
「・・・・・」寝ぼけ眼で時計をみている。
ふと、もう片方の腕になにかが乗っていて、自分が支えているということに気がついた。

「・・・?」
ゆっくり視線をかえる松田。

視線の先には、長年想い続けていた人が同じベッドの中に、しかも自分の腕の中にいる・・・。

「どわあっ!」まるで怪獣をみつけたかのような悲鳴。
「や、ややっや柔さん」ゴンッ・・・驚いた拍子に急に起き上がったので、頭を後ろにぶつけた。
「っつー・・・」
「ま・・松田さん、大丈夫ですか?」
「あ、いや、大丈夫っごめんっごめんなっ」

昨晩のことをようやく思い出してきた松田。
「あ、いや、その・・・」頭を掻きながら言葉を詰まらせる松田。
「ま、松田さん、あの・・・」
「んっ?」松田は柔のほうを見ずに答える。
「あの・・・お布団を・・・」
「へ?」
松田が柔のほうを見ると、松田が起き上がったせいで布団が持ち上がってしまったようで、
柔は、そのままにしていては見えてしまう胸のあたりを手で隠し、戸惑った表情をしてはにかんでいた。

「うわっ、ご、ごめん!」松田は急いで体を落とし、持ち上がってしまっていた布団を、柔にしっかりとかけた。


松田が一息つき、ゆっくり柔にほうを見た。
柔は、松田のあまりのあわてっぷりに、愛しさを帯びた表情で、少し微笑みながら、松田を見つめていた。

「あ・・ははっ・・」松田もつられて笑う。

「・・・おはよう、柔さん・・」
「・・おはようございます・・」
今日は柔の帰国日。
本当の意味で、2人で迎えた、初めての朝だ。



857名無しさん@ピンキー:2005/09/30(金) 13:23:17 ID:5gcOfG9g
846さん、クローバーさん乙!がんがれ!
いいっすね〜最近繁盛してますね〜
858:2005/10/01(土) 22:06:10 ID:8ACp1lRl
 観客など誰もいない道場の畳の上で、本阿弥さやかが大の字になって息を荒げていた。
 その傍らに立って腕組みをしているのは、彼女がライバルと目していた猪熊柔である。
「これで満足した?」
 柔はさやかを見下ろして冷たく言った。
 さやかは悔しそうな目で睨み返すが、実力の違いを身を持って知らされては返す言葉もなかった。
「じゃあ約束通り、さやかさんを好きにしていいのね」
 柔は舌なめずりでもしそうな表情になり、さやかににじり寄っていく。
「何をなさるのです」
 さやかは怯えたような顔で後ずさりするが、一気に飛び掛かった柔の手で帯を解かれてしまった。
 柔は上衣をむしり取ると、今度は下衣の前紐を解いてひっぺがえした。
「あれっ、なにを。無体なことはおよしなさい」
 さやかの悲鳴など無視して、柔はTシャツを引き裂いた。
 形の良いオッパイがボロリとこぼれ出す。
「何食べたらそんなに育つのかしら」
 柔がムッとした顔で愚痴り、さやかのパンティに手を掛けた。
「いやぁっ、これだけは……これだけは堪忍してぇっ」
 死に物狂いでパンティを押さえるさやか。
 柔はその脇腹に当て身を喰らわし抵抗力を奪う。
 そうしておいて一気にパンティを引き裂いた。
「うぅっ……」
 一瞬、失神したさやかの股ぐらががら空きになり、毛むくじゃらの股間が丸見えになる。
 その密林に紛れて、本来なら男の股間にあるべきモノがぶら下がっていた。
「はっ……イヤァァァーッ」
 息を吹き返したさやかが、悲鳴を上げて股間を手で覆った。
「ちゃんと見せなさいよ。負けた者が言いなりになるって約束でしょ?」
 柔が意地悪そうに言い放つ。
「……」
 痛いところを突かれて、さやかが黙り込む。
859:2005/10/01(土) 22:06:44 ID:8ACp1lRl
「なら遠慮なく」
 柔はさやかの手を掴むと股間を顕わにさせた。
「やっぱり嫌ぁぁぁっ」
 泣き叫ぶさやかを無視して、柔は観察を続ける。
「皮なんか被っちゃって、カワイイ。そのくせ黒ずんでるのはセンズリの掻き過ぎかな?」
 これまで秘中の秘として隠し続けてきたさやかの秘密が遂に暴かれてしまった。
 まじまじとペニスを見られ、さやかに羞恥心が湧き上がる。
「触ってもいないのに、なんでおっきくなるの。さやかさん、エッチなこと考えてるんでしょ?」
 さやかは図星を突かれて真っ赤になり、ペニスはますます硬く勃起する。
「はしたないオチンチンにはお仕置きが必要ね」
 柔は足の裏でさやかのペニスを踏みにじると、親指と人差し指の谷間を押し付けて激しく扱き始めた。
「あっ……なっ……やめっ……」
 生まれて初めて他人から受ける刺激は、強烈な快感となってさやかの脳内を駆け巡った。
「も……いいっ……イクぅぅぅ〜ぅぅっ」
 体中を激しく痙攣させて、さやかが絶叫を上げた。
 同時にペニスの先端から恥ずかしい液が噴出する。
「あんまり出ないのね。昨晩も我慢できずにセンズリしたからかしら?」
 柔はグニャリとなったさやかのペニスに白い目を向ける。
「けど、さやかさんがフタナリだって知っても、あたしが全然驚かないの、不思議でしょ?」
 柔は謎かけをするように問い掛け、自らも柔道着の下衣を脱いだ。
 そこにはギンギンに反り返った巨大なペニスがあった。
「実は、私も同じだからなのよ。さやかさんも知ってたんでしょ」
 さやかは真っ赤になって俯くことで、柔の質問に肯定する。
「うふふっ、さやかさん。私に勝ったら何をしようと企んでいたのかくらい想像付くわね」
 柔は打ちひしがれたさやかに追い打ちを掛ける。
「それじゃ、まずはお口でやって貰おうかしら」
 鼻先にペニスを突き付けられ、さやかはもの凄い分解臭に顔を背ける。
860:2005/10/01(土) 22:07:39 ID:8ACp1lRl
 しかし観念したように舌を伸ばすと、舌先でチロチロと尿道口を舐め始めた。
「あんっ、さやかさん上手い」
 徐々に興奮したさやかは、やがて激しく陰茎に舌を絡ませていった。
 そして大口を開けて全体を飲み込むと、口の粘膜全部を使って愛撫する。
「そっ、そんなにしたら……あたし……うぅっ」
 柔の小さいお尻がプルルンと震え、両足が突っ張った。
「ガハァァァッ」
 喉の奥に濃厚な精子をぶちまけられて、さやかが激しく咳き込んだ。
「ぜっ、全部飲んでぇっ」
 さやかは柔の命令に従い、口の中のモノを飲み下す。
 粘着質の液が喉に絡まり、再び咳き込んでしまうさやか。
「ありがと。今度はあなたを気持ちよくさせて上げる」
 柔はさやかの膝裏に手を掛け、両足を大きく広げる。
 そして睾丸の裏に隠れている女性器を顕わにさせると濡れ具合を確認した。
「ここもエッチなお汁で大洪水だわ。準備は万端ね」
 ニヤリと笑った柔は前戯も無しに、いきなりペニスを突き入れた。
「そっ、そんな……およしになっ……はひぃぃぃっ」
 狭い膣道を押し広げて、柔のペニスがさやかの腹の中を掻き回す。
「うくぅっ……さやかさんのアソコ、気持ちいい」
 バイブしか知らないさやかの純潔が、こともあろうに女に汚されていく。
「こっ……こんなのって……バイブより何倍も……イッ、イイ〜ッ」
 さやかも息を荒げて、不当に与えられた快感に溺れていく。
「もっ、もうイッちゃうよ。さやかさん、膣内に出すよ」
 体内を跳ね回っているペニスが小刻みな痙攣を始め、柔が発射態勢を整えたことを察知するさやか。
「ダッ、ダメェ〜ッ、柔さん。中で出しちゃ、いやぁぁぁっ」
 最後に残った理性がさやかに絶叫を上げさせた。
「あたしの赤ちゃんを産んでぇぇぇっ。はあぅぅぅぅ〜っ」
 体内で起こった大爆発を感じながら、さやかは暗闇の底に落ちていった。
 目を覚ましたさやかは、ペニスをティッシュで拭いている柔の姿を見て現実に引き戻された。
861:2005/10/01(土) 22:08:26 ID:8ACp1lRl
「夢じゃなかった……」
 夢オチの期待を裏切られたさやかは絶望感に包まれた。
「あら、もう起きたの?」
 柔が嬉しそうに微笑みかけてくる。
「じゃあ、今度はさやかさんが私を犯す番よ」
 柔が四つん這いになり、キュートなヒップをさやかに向けてくる。
「ねぇ、お尻に……して」
 柔が恥ずかしそうに頬を朱に染めながらおねだりする。
 黒ずんで具のはみ出た女性器の上で、開き気味になったアヌスがヒクヒクと開閉していた。
「してくれないと……さやかさんがフタナリだってばらしちゃうよ」
 失う物は柔道家としての名声だけの柔と違って、さやかの場合は余りにも背負っている物が大きすぎた。
 覚悟を決めたさやかは、柔の尻を左右に押し広げてアヌスを開く。
「あんっ……敏感なところなんだからぁ。優しく取り扱ってよ」
 柔の不平を聞き流して、さやかが亀頭の先端をアヌスに押し当てる。
 そして腰ごとぶつけるような勢いで、一気にアヌスを貫いた。
「きゃい〜ん」
 柔が嬉しそうな悲鳴を上げてよがり狂う。
「あぁ〜ん、中でさやかさんのが、どんどんおっきくなる。バイブなんかより断然イイッ」
 さやかもオナホールでは決して味わえない程の締め付けを楽しむ。
「あぁっ、腸壁が蠢いているわ。あなたのお尻って……なんて嫌らしいの」
 たまらないようにさやかが腰を使い、ペニスを腸壁に擦りつける。
 ペニスが肛門を出入りし、その度粘膜が何度も捲り上がった。
 目に火花が散りそうな快感に耐える柔。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……すっ、凄すぎぃ〜っ」
 柔が舌をダラリと垂らし、涎が流れ落ちる。
「ちょっ、腸だわ。腸が……痺れるぅぅぅっ」
 柔の下腹部ではペニスが暴れ回り、畳の上に何度も射精している。
「キッ、キンタマ……空になっちゃう……まっ、またイク……イクぅぅぅっ」
 さやかの手が伸び、柔のペニスの付け根をきつく握りしめた。
「いやぁぁぁ〜っ、さやかさん。いかせてぇぇぇ〜っ」
 絶叫を迸らせて柔が激しくイヤイヤをする。
 しかしさやかはそれを無視して腰を突き上げ続けた。
「むぐぐぐぅぅぅ〜っ」
 柔は白目を剥いて悶絶する。
 やがてさやかにも限界が訪れ、全身を硬直させる。
「柔さん……一緒にぃぃぃっ」
 さやかの手が柔のペニスを激しく扱き上げ、2人は同時に精子を放った。
「フタナリはフタナリ同士でしか、幸せになれないのかも……」
 再び暗闇の底に落ちながら、さやかはそんなことを考えていた。
862名無しさん@ピンキー:2005/10/02(日) 00:40:26 ID:FFWdKNIs
ワラタww
なんか柔がどんどんひどい方向に
行ってるようなきがするが、
さやかの口調とかを見る限り
結構原作を読み込んでる人っぽいね
863名無しさん@ピンキー:2005/10/02(日) 01:59:50 ID:oVo13isd
>「あれっ、なにを。無体なことはおよしなさい」

・・・言うか?
864名無しさん@ピンキー:2005/10/04(火) 13:16:43 ID:KIM17gzR
ほしゅ
865−1:2005/10/04(火) 21:16:19 ID:YPzineVi
「うふふっ、似合うぞ」
 柔は姿見の前で余所行きのスーツを着てクルリとターンした。
 今日は風祭進之介の誘いでレストランへ出掛ける予定が入っているのだ。
「風祭酒造の御曹司……か。絶対モノにしなくっちゃね」
 柔は鏡に映った自分の姿を見てほくそ笑んだ。

「う……うぅ〜ん……」
 肌寒さを感じて柔が目を覚ました。
「あたし、どうしたんだろ? ワインを飲んでて……」
 何故か頭がズキズキと痛んだ。
「風祭さんどこ行ったんだろ。風祭さん……痛ぁっ」
 柔はその時になって初めて自分が裸に剥かれて、柱に縛り付けられていることに気付いた。
「イヤァァァーッ」
 荒縄が亀甲縛りで身に食い込んでいた。
 両手はバンザイの格好で頭上に縛られ、足首は柱の横木に縛り付けられて肩幅に開かれた足が閉じられないようになっていた。
 そして秘中の秘とされているペニスまでもが、根元の剛毛と共にさらけ出されていた。
「柔さん、気が付いたかい」
 いきなり横手から声を掛けられ、柔はビクッと身を震わせた。
866−1:2005/10/04(火) 21:16:58 ID:YPzineVi
「風祭さんっ。どうして、こんな」
 柔はワインに一服盛られたと気付いて真っ青になった。
「だって、まともにやれば君に勝てっこないからね。悪いけど薬を使って眠ってもらったんだ」
 風祭が怪しげな錠剤の入った小瓶を振ると、カラカラと乾いた音がした。
「卑怯よっ。こんなことして恥ずかしくないのっ」
 柔が風祭を睨み付けて罵った。
「そっちだって、金目的で近づいてきたくせに。物欲しそうな顔をしてたぜ」
 心を見透かしたような風祭の台詞に、柔は言葉を失い黙り込む。
「と、とにかく縄を解いて。今なら無かったことにしてあげるから」
 柔が押し殺したような声で風祭を脅す。
 その実、柔は体が自由にさえなれば、直ぐに風祭を投げ殺す気でいた。
「そうはいかない。まだ死にたくないからね」
 そんな柔の考えなどお見通しの風祭はニヤニヤ笑いを止めない。
「解くのは君がSMの虜になってからだ」
 風祭は柔をマゾヒスト化する計画を打ち明けた。
「誰がそんな変態になんか……汚らわしい」
 柔は唾でも吐きかけないような勢いで、目の前の変態男を罵る。
「フン、汚らわしいのはどっちかな。薄汚いモノぶら下げてるくせに」
 風祭はアゴをしゃくり、柔の股間でぶらついている陰茎と睾丸を侮蔑した。
「いやぁっ、見ないでぇっ」
 秘密の部分をさらけ出している事実に気付いて、柔が真っ青になる。
 風祭を虜にするまでは、絶対見せるまいと隠し通してきた不浄の部分である。
「記念に撮っといてあげるよ」
 風祭はバッグからカメラを取り出すと、柔にレンズを向けて何度もフラッシュを光らせる。
「イヤァァァーッ。お願いっ、撮らないでぇっ」
 柔はレンズから逃れようと必死で身をよじり、顔を背けようとする。
867−1:2005/10/04(火) 21:17:38 ID:YPzineVi
「うぅっ、見られちゃった……」
 柔の脳裏に、絶望感とは別に理解不能の感情が湧いてくる。
 それと共に股間の陰茎にどんどん血液が流れ込み、海綿体が膨張してきた。
「あぁっ、大きくなっちゃう……?」
 柔は必死で平静を保とうと意識を別に逸らすが、意に反して勃起度は高くなる。
「柔さん。どうしておちんちん、おっきくしてんだい? 見られているだけなのに」
 風祭がペニスにからかうような視線を送る。
「やっぱり、柔さんにはマゾの素質があるんだよ」
「言わないでぇっ」
 柔は全てを否定しようと、大声を上げて激しく首を左右に振る。
「無理しなくていいんだよ。ちょっと楽にしてあげる」
 風祭は親指と人差し指中指の3本で柔のペニスを把持する。
「いやぁっ。触らないでぇっ」
 柔は腰を捻って逃れようとするが、荒縄の締め付けが身を切るような痛みを加えてくる。
 風祭はゆっくり、そして徐々に早くペニスを扱き始める。
 ペニスの皮が亀頭の付け根を刺激し、信じられないような快感が発生する。
「あぐぅ、すごい……すごいわぁ」
 ペニスを知り尽くした男のシゴキは、自分でするマスターベーションとは比べものにならない程の快感を生んだ。
「こっ、こんなのって……イクッ……イクゥゥゥッ」
 黒目がまぶたの裏へ入り込み、だらしなく開けられた口元から涎が垂れ流しになる。
 柔の両足がツッパリ、全身が激しく痙攣する。
 次の瞬間、信じられないような脈動と共に、先端の切れ込みから精子が吹き上がった。
 柔が生まれて初めて、男の目の前で射精した瞬間であった。
868名無しさん@ピンキー:2005/10/05(水) 03:28:49 ID:GYYCrXB1
ワラタ
なんか柔のキャラが変わっているのにワラタ・・・
サスペンス物みたいですねー
乙ですー
次はー2なのかな

クローバーさんは忙しいのかな?
869名無しさん@ピンキー:2005/10/05(水) 04:01:10 ID:GYYCrXB1
−1さんは
柔×松田はかかないんですか??
870クローバー:2005/10/05(水) 19:12:20 ID:atGlB7jI
台所で朝食を作る柔の横顔を、覗き見するような表情で見つめる松田。
照れくさいような、嬉しいような・・・・
松田の視線に気づいたのか、柔もこっちを向いた。
「!!」焦る松田。
柔の表情は穏やかで、くすっと笑い、微笑んだ。
「あ・・ははっ」
温かい空気が2人の間に流れる。

「・・・今日だよな。」
「え?」柔は手をとめ、聞きなおした。
「今日だよな、帰るの・・・」

「・・・・はい・・・」
「・・・そっか・・」

871名無しさん@ピンキー:2005/10/06(木) 13:31:22 ID:5qTiYVo/
おおー
クローバーさん乙です
もどかしい二人が萌えですー
872−2:2005/10/07(金) 16:33:10 ID:CbHD+1TS
「うっ、うぅ〜ん」
 明るい日差しが溢れた部屋で柔は目覚めた。
 ベッドの隣を見ると、松田がだらしのない寝顔で寝息を立てていた。
「えっ? あっ、そうか……私」
 土曜の夜を松田の部屋で過ごした柔は、日曜の昼前になってやっと目を覚ましたのであった。
 柔の気配を察したのか、ようやく松田も覚醒する。
「ん?……やっ、やぁ……」
 昨夜のことを思い出すと、照れ臭さで上手く喋れない松田。
 それでも数十センチの距離で互いに見つめ合っているだけで2人は幸せ一杯であった。

「お腹、減ったな」
 ようやく松田が口を開いた。
 そう言えば昨晩から、もう12時間以上何も食べていないことになる。
「松田さん。お昼、何食べたいですか?」
 柔が松田の目を見詰めたままで尋ねる。
「そうだな……」
「何でもいいはダメよ」
 柔が松田の機先を制する。
「じゃあ、カレーが食いたい」
 少し考えた上で、松田がリクエストを決める。
「いいわ、直ぐ作りますから。少し待ってて下さいね」
 柔はベッドから降りると、エプロンを身に着けてキッチンへと向かった。
873−2
「裸エプロンかぁ〜」
 松田は鼻血でも出さんばかりの顔で、柔を見送った。

 柔は米びつから3合の米を内釜に取ると、数度水を入れ替えて洗米する。
 そして『美味しんぼ』で通り丁寧に米を研ぐと炊飯器にセットし、スイッチを入れた。
 待つこと十数分、湯気を上げ始めた炊飯器がカタカタと音を立てる。
 ご飯が炊きあがると、柔は食器棚からお皿を取りだす。
「松田さん、ご飯が大好きだから」
 柔は大盛りにご飯を盛りつけ、お皿を床に置いた。
 そして皿の上にお尻が来るようにしゃがみ込むと、お腹に力を入れて力んだ。
「うっ、うぅ〜ん」
 ブリブリッというガスが抜ける音に続いて、真っ白なご飯の上を黄金色のカレーが覆っていった。

「柔さんのカレーかぁ。毎日食べれるようになるといいなぁ」
 部屋着に着替える松田の表情は幸せそのものだった。
 カレーが完成したのか、キッチンから寝室に向かうスリッパの音が聞こえた。
「松田さん、おまちどおさま。お口に合うか分からないけど」
 ドアが開いて柔の恥ずかしそうな顔が覗く。
 そしてお盆に乗せた柔特製カレーを松田の鼻先に突き出した。
「さぁ、召し上がれ」