SS投稿スレッド@エロネギ板 #7

このエントリーをはてなブックマークに追加
1へたれSS書き@保管サイト”管理”人
エロゲー全般のSS投稿スレです。あなたの作品をお待ちしています。
エロエロ、ギャグ、シリアス、マターリ萌え話から鬼畜陵辱まで、ジャンルは問いません。

そこの「SS書いたけど内容がエロエロだからなぁ」とお悩みのSS書きの人!
名無しさんなら安心して発表できますよ!!

  【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
 名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
 なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
 自分がアップしたところをリダイレクトする。>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
 恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が450KBを超えた時点で、
 ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。

過去スレ >>2-
前スレ【SS投稿スレッド@エロネギ板 #6】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1055686320/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #5】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1051721989/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #4】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1036495444/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #3】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1013/10139/1013970729.html
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #2】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1006/10062/1006294432.html
【SS投稿スレッド@エロネギ板】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/984/984064183.html
【SS投稿用スレッド@エロゲー板】
http://www2.bbspink.com/hgame/kako/979/979813230.html
3名無しさん@初回限定:03/12/16 21:40 ID:IvTnTO4I
保守
4名無しさん@初回限定:03/12/16 21:48 ID:kBdYsKIm
5名無しさん@初回限定:03/12/16 21:59 ID:G7fdAkLY
乙保守。
6名無しさん@初回限定:03/12/16 22:02 ID:jvA/yFty
あといくつくらい保守すればいいんだろう。
7名無しさん@初回限定:03/12/16 22:05 ID:qP4nIvUo
>>1
乙です。
8名無しさん@初回限定:03/12/16 22:10 ID:3ZLTQr5Z
>>1
乙果礼
9名無しさん@初回限定:03/12/16 22:12 ID:oUknucnh
      r ⌒ヽ
     (´ ⌒`) プシー シュー !
         l l
 カタカタ ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     (・∀・#)< 漏れはいつまで保守すれば
   _| ̄ ̄||_)_\  いいんですか!! 
 /旦|――||// /| \__________
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| . |
 |_____|三|/
10名無しさん@初回限定:03/12/16 22:29 ID:Mz8Y5Plw
>>1
                 ┌─┐  お疲れ様です
                 |日 |  新スレを立てた>>1への労いと新スレの繁栄を祝って
                  |本 |  日本ブレイク工業がDA DA DA!!と叫びながら
                 |ブ |   東へ西へと走ります
                 │レ│
                 │イ│
                 │ク | 
                 │工|
     ブレイク!! ブレイク!!    │業|
                 └─┤DA DA DA!!!
    ( ´_ゝ`)  ( ・∀・)   ( ゚Д゚)    ( `Д´)
    | ̄ ̄ ̄|─| ̄ ̄ ̄|─| ̄ ̄ ̄|─□( ヽ┐U
〜 〜  ̄◎ ̄  . ̄◎ ̄   ̄◎ ̄   ◎−>┘◎
11名無しさん@初回限定:03/12/16 23:27 ID:+wLtdIXI
            ヽ、    ヽ     ヽ 、   ヽ
   )ヽ、_,,,..._    ヽ、_,   げえッ───────!!!  
   iー-、::_: `、ゝ_,,-  ノ  (    ) 、     )  
   ノ::`ー_-_ノ ノ ノ_,-"イ /    ` 、ノ  `i  (   l
,-、 |::::.ヽ _。ヽ:: /_。フ' |ノ   ヽ、      i、   ノ
|6`i/:::. ,,-.―'' /i|.ー-、. |
ヽ ::: i ::    ⌒  : |  <・・き、恐怖新聞にこのスレの即死が予言されているッ!?
ヽ`l | ::    /ニ`i   /
 `|:. ヽ、   i_,,,、/  /     ,へ___ 
  ,|:::._ヽ___/   _//`ー--、ニ=--―,
  | ̄ ̄ ̄ ̄||| ̄|    / / / __     ̄ ̄`¬
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ヽ | // /   / 三三三  /

そうならないよう祈りつつ、保守。
12名も無き名無し:03/12/17 01:29 ID:LnGzfvwa
>>1
乙彼さまです。

さて、保守がてらに、SSまがいの埋め草レスを放り込みます。
またしてもアセリアものなのはご寛恕のほどを。

雑魚スピのニムントール主役のつもりでしたが、先にネリーとシアーの
双子ネタで思いつきましたので、その前振りのつもりで書いたものですが、
なんだかんだで8レスにも及んでしまいました。

題して「はじめてのおつかい・ラキオス編」、お目汚し失礼。
 先日の「ユート様と遊びたい事件」から数日後のこと。
 第二詰め所の住人たちとの間に、予想以上の隔意が存在していることを思い知らされ
た悠人は、さっそくレスティーナ王女に掛け合って、第二詰め所の空き部屋を「臨時隊
長室」に改装する許可を得た。これまでは第一詰め所に自室があることもあって、当然
のようにそこだけで起居を済ませていたが、これからは第二詰め所においても、日替わ
りで隊員たちと寝食を共にすることで、不要な垣根を取り払おうと考えたのである。
 本当なら、詰め所そのものを統合するのが融和の観点からは理想的なのだが、王城の
警備上、兵力の分散配置は不可避なために、悠人の方が身体を二つに割った次第。
 無論、このようなスピリット本意の処置は前代未聞であった。ゆえにその「奇行」を
「エトランジェの妖精趣味の萌芽」と揶揄する向きもあったが、上申した方もされた方
も、それを意に介することはなかった。
「そういうわけでぇ、ユート様が私たちの館にぃ、住むことになりましたぁ」
 第二詰め所での夕食後。デザートのヨフアルとお茶を楽しんでいた面々を前に、給仕
長を務める『大樹』のハリオンが、いつもの間延びした口調で報告するや否や、年若い
スピリットたちが俄然色めき立った。
「はいはいはーい、ユート様の部屋は、ネリーたちの部屋の隣にけってーい!」
 立ち上がり、手をブン回して手前勝手な部屋割りを叫んでいるのは、『静寂』のネリ
ー。「持って生まれてくる神剣を間違えた」とも、「神剣に間違えられた」とも言われ
る第二詰め所随一の元気少女である。
「ちょ、ちょっとネリーさん、そ、それは困りますっ! ネリーさんの隣の部屋は、私
の部屋じゃないですか……」
 ネリーの世迷い言を真に受けた『失望』のへリオンが慌てて立ち上がった途端、ネリ
ーの振り回した拳がきれいに鼻柱に入った。
「むぎゅーーーーーっ!?」
 目から火花を飛ばしつつへリオンは卒倒するが、撃墜数1を稼いだネリーも含めて気
に留めるものはいなかった。
「住むって言っても、こっちに移住する訳じゃないんでしょ? だったら、客間に寝泊
まりしてもらえば事足りると思うんだけど」
 挙手と同時に指名を待たず『赤光』のヒミカが疑問を呈した。今この詰め所の唯一と
もいえる空き部屋は、半ば物置と化していることを思い出したからだ。
「それはねぇ、ユート様がご自分は『お客様』じゃないから、客室は使えないっておっ
しゃったからなのよぉ」
「……ま、ユート様がそうなさりたいのなら、しょうがないわね。幸い空き部屋はある
ことだし」
 ヒミカはそれ以上異議を唱えることなく引き下がった。もとより、スピリットの分際
でエトランジェの意向に逆らうつもりもないのだが。
「……じゃ、あの部屋片づけなきゃなんないわけ? あぁ面倒…」
「もう、ニムったら二言目には面倒面倒って…」
 この話の帰結点を理解したニムこと『曙光』のニムントールが、食卓に突っ伏して見
せる。それを見咎めた『月光』のファーレーンがたしなめるような視線を送るが、ニム
は素知らぬふりを決め込んだ。
「はんたいはんたーい! ユート様のお部屋は、ネリーたちの部屋の隣がいいのっ!」
 話の雲行きが怪しいと察したネリーが、食卓に身を乗り出して異議を申し立てた。
「シアーも、そう思うよねっ!?」
「もぐもぐ……ほえ?」
 それまで一生懸命お肉と格闘していた『孤独』のシアーだが、突然呼ばれてきょとん
と小首を傾げた。口の周りをソースで汚したその表情から察するに、話を聞いていたと
は思われない。ネリーは片眉をつり上げて、シアーに詰め寄った。
「だ・か・ら! シアーもネリーの言うことに賛成でしょ?」
「えと……うん、シアーは、ネリーに賛成ですぅ〜」
 ネリーの迫力に圧倒されたのか、シアーはこっくりと頷いて見せた。姉さえよければ
それでいい、非の打ち所のないお姉ちゃん子である。
「……ところで、何のお話ですか〜?」
「ほら、シアーもそう言ってることだし、そうしようよっ!」
 妹の素朴な疑問などお構いなしに、ネリーは自分の主張をごり押ししようとする。
「そうは言ってもぉ、困りましたねぇ、ネリーとシアーの隣の部屋はぁ、へリオンの部
屋ですしぃ……あらぁ? そういえば、へリオンはどこにぃ?」
 へリオンの席に彼女がいないのを認め、ハリオンはきょろきょろと辺りを見回した。
彼女の席からは、床に大の字になっているへリオンは見えない。
「ん? さっきまで居なかったっけ?」
 ヒミカが今気づいたように見回すと、食卓の下からにょっきりと手が生えた。
「あらあら?」
 病的に震えるそれが、がしっと食卓の表面を捕らえると、その影から黒いツインテー
ルがサルベージされたではないか。
「あらぁ、へリオン。そんなところで寝てたらぁ、風邪引いちゃいますよぉ〜」
「ち、違いますっ。ふぇぇぇぇ……ひ、ひどいですよ〜、ネリーさん……」
 目尻に涙を湛え、鼻梁を手で庇いつつ立ち上がるへリオン。
 全く身に覚えのないネリーは、目をぱちくり瞬かせて、へリオンを眺め回した。
「あれ? へリオンいたの?」
「いたの、じゃないですよ、もう……とにかく、私の部屋は勘弁してくださいよ」
「えー? じゃあ、へリオンがユート様と一緒の部屋に住むってのはどう? うん、こ
れなら完璧じゃん、ネリーってあったまいいーっ!」
 一瞬不満げな顔をしたが、ネリーは突然閃いたアイデアに自画自賛を添えた。
「私の部屋にユート様を……? そ、そそそそそ、それは、こ、困りますよぅっ!! 
だ、だって、そんな、ユート様と一緒になんて、その……あわわわわ」
 一呼吸間を置いてネリーの戯言の意味するところを理解したへリオンは、耳まで真っ
赤にして狼狽えた。
「どうして? その方がユート様といっぱい遊べるじゃない」
「そ、それはそうかも知れませんけど、だったら、ネリーさんの部屋にユート様をお泊
めすればいいじゃないですかっ!」
「それはだめだよ、だって、ネリーは女の子だもん」
「わ、私だって女の子ですっ!」
 こうなってしまえば、誰かが止めない限りどこまでも脱線していくのが常である。
「もう、おやめなさい、二人とも。話が一向に進まないじゃないですか!」
 いつものようにファーレーンが仲裁に入った。ニヤニヤ見ているだけのヒミカ、おろ
おろするばかりのハリオンでは、使い物にならないのである。
「はぁーい」
「す、すみません……」
 一人は不承不承、もう一人は恥じ入りながら着席する。
「ハリオン、続けてください」
「え、ええ。そうですねぇ、やはりユート様のお部屋はぁ、あの空き部屋にしましょう
かぁ。それではぁ、明日の訓練が終わったらぁ、みんなでお掃除しましょうねぇ」
「ちぇーっ」
 ハリオンの裁定に舌を鳴らしたのはネリーだけだった。
「……わかりました」
 まるで覇気のない返事は、それまで気配がまったく感じられなかった『消沈』のナナ
ルゥのものだ。声だけでなく、全体から彼女の「自我」の存在を認めることは難しいの
だが、未だにハィロゥが黒く染まってないところを見ると、神剣に飲まれているわけで
はないようである。
「……話は、これだけですか?」
 ナナルゥ同様にいるのかいないのか分からない『熱病』のセリアが素っ気なく問いた
だす。彼女もナナルゥのように生気の薄い受け答えをする方だが、セリアの場合は、他
人との必要以上の関わりを謝絶する意志が滲み出ていた。
「ええ、これだけですぅ。他に何もなければぁ、お開きにしましょう」
 ハリオンが一同を見渡して告げると、幾人かのスピリットは席を立った。
「……それでは、私たちはパトロールに行ってきます」と、セリア。その後に無言でフ
ァーレーンも続く。
「それじゃぁ、ニムは片づけをお願いねぇ〜。私はぁ、お風呂に行ってきますからぁ」
「……はぁ、面倒」
 今度は一言目にぼやいてから、ニムは汚れ物を集め出す。そのあまりの多さに閉口し
て、視界の端に移った赤い髪の持ち主を目ざとく呼び止めた。
「ねえ、ナナ。手伝ってくれない? どうせ後は寝るだけなんでしょ?」
「……はい、わかりました」
 食堂から今しも退室しようとしていたナナルゥは、言われるままに踵を返した。ある
意味もっとも「スピリットらしい」従順な彼女を便利使いする向きは割と多い。そのこ
とを特に疑問に思うような者もいなかった。
 なにしろ、それはこのファンタズマゴリアでの「常識」だったのだから。
「シアー、お風呂行こうよ」
 自分の意見を退けられて腐っているかと思いきや、ネリーは何事もなかったかのよう
に笑顔だった。頭の中は、もう風呂場でシアーと何して遊ぶかというアイデアで埋め尽
くされている。
「う、うん。ちょっと待っててね…」
 シアーは、最後に残った肉の一切れを小さな口に放り込むと、もぐもぐもぐもぐ……
と丁寧に噛み砕く。すっかり冷えて美味しくないんだから、そんなの残せばいいのに…
…と、いつも一人だけ食事が遅い妹を、ネリーは焦れったそうに見守っていた。
「もう、早くしなよー……?」
 ふと、その目がテーブルの上に残されていた焦げ茶色の物体を捕らえた。今晩のデザ
ートのヨフアルである。もう焼きたてというにはほど遠いが、冷えたヨフアルもそれは
それで味わいがあるのだ。
 ネリーは、何の気なしにシアーの肩越しにそれを取り上げ、欠片をこぼしながらぺろ
りと平らげてしまった。
「うん、でもやっぱり焼き立ての方が美味しいよね……」
 汚れた指を服の裾で拭いながら一人合点に頷くと、ちょうど下げた目線が、振り返っ
たシアーの目とぶつかった。
 自分と全く同じ、深い藍色の瞳が、じんわりと潤み始めるではないか。
「し……シアーのヨフアル〜」
「え?」
「せっかく取っておいたのに〜、ネリーが食べた〜っ!」
 何の気なしの行動を責められて、ネリーは動揺してしまう。
「そ、そんなの知らないもん。だいたい、シアーがいつも食べるのが遅いのがいけない
んだよっ!」
「ふぇ〜〜んっ、ネリーがシアーの食べた〜っ!」
 ネリーの抗弁など馬耳東風、シアーは泣きながら姉の横暴を糾弾した。
「あんたたち邪魔よっ! ほら、あっち行った行った!」
 通りすがりのニムまで、あからさまに邪険にしてくる。ただでさえ面倒ごとが嫌いな
ニムにして見れば、後かたづけ以上のことはたくさんなのだ。
「そんなこと言ったって、ネリーのせいじゃないもんっ!」
「……っていうか、あんた学習能力あるの? 何回同じことすれば気が済むわけ? 前
もあんたがシアーのおやつを取ったの取らないのって…」
「うぐっ…」
 一度口を開けば、ニムは容赦というものを知らない。ぐうの音も出ないネリーは、仕
方なくシアーの腕を引っ張り、この場を退散しようとする。
 しかし、シアーは微動だにしない。椅子に根を生やしたかのごとく、頑張ってくる。
「シアーのヨフアル、返して〜っ!」
「もう、食べちゃったものはしょうがないでしょ!」
 すっかり駄々っ子のシアーは、聞き入れようとしない。さらに後ろからはご機嫌麗し
いニムにせっつかれと、俄にネリーの進退は窮まったかに見えた。
 丁度そのとき。風呂にいったはずのハリオンが、ひょっこり入り口から顔を覗かせ、
きょろきょろと辺りを見回した。
「あ、いたいたぁ。ネリー、シアー、ちょっといいかしらぁ〜?」
「え? あ、ちょっと待ってねっ!」
 ネリーの苦り切った表情がからりと晴れ上がったのは言うまでもない。シアーとニム
を置き去りにして、電光石火の足捌きでハリオンの元へ逃げ込んだ。
「はわわ……そ、そんなに急いでこなくてもいいのにぃ」
 いきなり間合いに飛び込まれてハリオンは目を白黒させる。どうも脱衣後に直行して
きたようで、裸身に巻いただけのタオルがはだけて落ちるが、ネリーはお構いなしに食
いついた。その剣幕と、泣きじゃくるシアーに気づいて、ハリオンは問いただした。
「ところでぇ、シアーはどうして泣いてるのぉ?」
「ううん、いいからいいから。それより、今日出たヨフアルって、余ってない!?」
「ヨフアル〜? えーとぉ、出したので全部だけど、どうかしたのぉ?」
 あごに人差し指を当て、小首を傾げるハリオンに、ネリーの瞳からは急速に希望の光
が失われていった。
「いいよ、もう…」
「そぉ? あ、そうそう。あなた達にぃ、頼みたいことがあるんだけどぉ、いい?」
 ネリーは、力無く頷いて先を促した。
「明日ね、ユート様のお部屋を整えるでしょぉ? でもぉ、いろいろ足りないものが
あるからぁ、おつかいに行って欲しいんだけどぉ」
「……おつかい?」
 その一言が、再びネリーの瞳に輝きを灯した。
「ええ。悪いんだけどぉ、お願いできないかしらぁ?」
「ってことは、市場に行ってもいいんだよね?」
「ええ。ちょっと量が多いんだけどぉ…」
「うん、いくいく! もうネリーたちにバッチリ任せといてよっ!」
 必要以上に意気込むネリーだが、ハリオンは満足げに目を細めた。
「それじゃ、詳しいことは明日ねぇ。もう遅いからぁ、明日に備えてちゃんと寝るんで
すよぉ?」
「は〜いっ!」
 元気のいい返事をするネリーの頭を撫でて、ハリオンはようやくタオルをまとうと、
風呂場へ戻っていった。ネリーは、小さくガッツポーズを決め、飛んでシアーの元へ舞
い戻る。
「ねえねえ、シアー! ネリーたち明日おつかいにいくことになったんだよっ」
「……ぐすっ……お、おつかい?」
 ひとしきり泣いて発散できたのか、シアーはもうぐずる程度まで治まっていた。
「うん、だからね、ごにょごにょ……」
「…………えっ、本当っ!?」
 辺り(と言っても、ニムとナナしかいないが)を憚ってネリーがシアーに耳打ちする
と、見る見るうちにシアーの泣き顔が晴れ上がっていく。
「へへー、ネリーにまっかせなさーいっ!」
 どんっ、とささやかな胸を叩いてみせる姉を見上げるシアーの瞳に宿る色は、全幅の
信頼を意味していた。
「うんっ、了解ですぅ〜!」
「じゃ、お風呂いこっ! もう終わっちゃうよ〜」
「あ、待ってよネリーっ!」
 いつもの快活さを取り戻した双子は、ウィングハィロゥを展開して矢のように部屋を
飛び出して行った。
「……何あれ?」
「……さぁ」
 すっかり置き去りにされたニムが訝しげに呟くと、ナナは律儀に答えて、皿集めを再
開した。

「……と言う訳なの。カオリのお兄さんって、おかしなことを考える人ね」
 今日悠人が上申してきた内容がよほど印象深かったのか、レスティーナはそのことを
佳織に報告した。兄の近況に飢えていた佳織は、一字一句聞き漏らすまいと全身を耳に
して聞き入っていた。
「おかしくは、ないと思います。だって、みんなお兄ちゃんのために戦ってくれてる、
大事な仲間なんですから。だから、それはお兄ちゃんにとっては当然のことなんです」
 言葉を選んで、佳織は自分の思いをレスティーナに伝えた。言葉の端々から滲み出る
兄への思慕の念は、レスティーナの心根にちくりと突き刺さった。
「そう。それが、あなた達の流儀なのね…」
「流儀……とは違うと思います。お兄ちゃんは、そう言う人ですから」
「……」
 その後、レスティーナが佳織の部屋を辞すと、夜風に流されて甘く香ばしい匂いが漂
ってきた。
「……いい匂い」
 レスティーナは、ふと回廊の外に目を向けた。すっかり夜のとばりが降りた王城の中
庭を、星明かりと、各所に点在するエーテルの常夜灯だけで子細に見渡すのは人の身と
して困難であったが、レスティーナには匂いの元の、おおよその検討はついていた。
「……また食べたくなってきちゃったな。明日は久しぶりに時間が取れそうだし…」
 もう一度、その希薄な香ばしい匂いを胸一杯吸い込んで、レスティーナは足取りも軽
く自室へと戻っていった。


(続く
21名も無き名無し:03/12/17 01:59 ID:LnGzfvwa
>>13-20
タイトルつけ終わってから気づきましたが、これで完結してるわけじゃないので、
前編と銘打つべきでしたね、もうね、馬鹿かと。アホかと。

それでは、続きは近いうちに。
22名無しさん@初回限定:03/12/17 07:03 ID:2scXHnIF
>>21
GJ!
今回もいい感じで雑魚スピ分が補充されました。
後編も期待してます。
23名無しさん@初回限定:03/12/17 08:00 ID:Npw0kLlw
雑魚スピ分キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
開始早々から乙彼さんまさん!
24名無しさん@初回限定:03/12/17 09:30 ID:dm/XFJZm
>>21
最高! アンタ最高だよ!
25名無しさん@初回限定:03/12/17 23:27 ID:BpbHCoyU
ところで保管サイトってどこですか?
>>25
まったく>>1くらい嫁……ってぎゃー。アドレス張ってなかったッスね。申し訳ない。
とりあえず、
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/
ここです。

張り直すも事もできないし、かくなる上は頻繁に更新してURL張るしか無いのか……
27名無しさん@初回限定:03/12/18 10:10 ID:wk8b99dU
前スレのアセリアSSと風評に押されて突貫一週プレイやってみれば・・・・・・

_ト ̄|〇  神ゲーだ。
サブキャラに萌えてエロゲー&ギャルゲー歴○年
東奔西走「立ち絵があるキャラ」、というだけでクリアできそーにもないキャラのケツを追っかけ回して○年・・・・・・
(つ∀`)こんなゲームが存在したとは

最初は戦闘パートの設定とボイスだけで脳味噌パンクするぐらいの妄想力が働いたのに・・・・・・
エロシーンですか、そうですか・・・・・・・・・



我が人生に一片の悔いなし!
28名無しさん@初回限定:03/12/18 12:38 ID:qYwFekfD
……いいSSですね
29名無しさん@初回限定:03/12/18 12:51 ID:5bMFaHbW
>>28
>>27のことか?
確かに「インパクトコンパクト」に忠実で魂の叫びが横溢する名文だと思う。

ただ惜しむらくは、これがスレ違いというのが画竜点睛を欠くことだろう…
30名無しさん@初回限定:03/12/18 17:48 ID:I1b/fOXR
取りあえず>>27は天に還った…と〆(. . )メモメモ
鬼瓦公康は体育用具室の近くで中を覗いていた。

数日前に青嵐学園の体育教師になったばかりである公康の男性のシンボルは今にも射精せんばかりに張りつめていた・・・。

それもそのはず彼が目を付けていた陸上部に所属している新城成美が体育用具室でバトンを使ってオナニーしているのだ。

巨乳に目がない彼は、校内でもかなりの巨乳である新城成美をモノにすべく彼女の周辺を嗅ぎ回っていたのだ・・・。

そしてついに彼は彼女の弱みを見つけたのだ。

このために青嵐学園の体育教師になった彼にとって彼女を脅せる弱みを見つけることが出来た彼は今至福の瞬間を味わっていた・・・。

公康は説明書をまだ読んでいない新しい携帯を取り出しシャッターを切った・・・。

彼女の淫らな姿をしっかりと、とらえて・・・。

「もうここに用はないな。今すぐバトンよりも素晴らしいオレ様のマラをブチこんでやりたいところだが今は我慢だ。」

公康はそう言うものの彼の下半身は言うことを聞きそうになかった・・・。

「どこかでガス抜きしてくるか・・・。これも次のお楽しみのためだ。待ってろよ成美、次はバトンよりもオレ様のマラの方が最高だということを教えてやるぜ・・・。」

公康は笑いをこらえつつガス抜きをすべく、いずこかへ去っていった・・・。
成美は快楽の余韻に浸っていたが、しばらくすると公康がいた場所に目を傾けた・・・。

「ちゃんと取れたかな・・・。」

成美はボソリと呟いた・・・。

そう成美は公康が覗いていたこと、そしてそれをネタに自分を脅してエロゲーの主人公と同じことを自分にやろうとしていることなど全てを見抜いていた。

成美はこれからされるであろう○○○なことや×××なことを想像して顔を赤らめた・・・。

「やだ・・・また濡れてきちゃった・・・。」

成美は男性のシンボルと合体し新たな命を作り出す女性のシンボルである自分のものに触れてみた・・・。

「グチョグチョになってる・・・。」

そして成美は自分が犯されてたら、公康の子供を孕み乳首から母乳が出てきてたくさん吸われる未来の自分の姿を想像しつつまたオナニーを始めた・・・。

「あっ・・・はぁ・・・気持ちいぃ・・・。」

成美はオナニーをしつつ覗かれているのを承知でオナニーをした経緯を振り返っていた・・・。
初めて公康に会ったとき成美は自分の好みのタイプである公康に一目惚れした。
しかし成美は同時に女の感で公康が女性を屈服させて興奮するタイプであり、無類の巨乳好きであることなどを瞬時に見抜いた。
校内でかなり巨乳である成美はその辺は問題ないと安心したが、どうやって公康を興奮させてやるか思案した。
このままストレートにいくのも良いだろうが、どうせなら避妊のことを考えられないぐらいに興奮させ既成事実を作って
卒業と同時に結婚という感じにしようと成美は考えた。

成美はそのためにはどうすればいいのかずっと考えていたが良い案が思いつかなかった・・・。
そんな時成美は下校途中に通る書店で[エロゲーの主人公を誘惑する方法:著者:江呂夏大好]という怪しげな本を見つけた・・・。
成美はあまりにも怪しい雰囲気をかもしだすその本を最初は購入するのに迷ったが値段のあまりの安さと自分の目的も加わり
購入を決意した。

成美は家に帰ると早速その本を読んでみた。
「なになに・・・エロゲーの鬼畜(中にはヘタレもいる)な主人公はターゲットを脅迫できる弱みを見つけると、それをネタに男の本能丸出しで
くるのでそれをうまく利用すること。そして既成事実を作って結婚するのが目的の方は、いかにも怖がっているかのように演技して下さい。
演技しているのがバレたら孕ませスキー以外逃げる可能性がかなり高いので注意されたし・・・。」

成美は一通り読み終えると何やら考え事を始めた・・・。
「私には特に知られたくない弱みなんてないし・・・。じゃあ学校でオナニーを見せつけるのはどうかな・・・。うまく先生を誘いだして・・・。」
成美は考えをまとめ終わると次に何やら探し始めた・・・。
「うまくバレないように陵辱のされ方を勉強しなくちゃ・・・。」
成美はよく見るエロビデオの中から女優の演技がうまいと思ったレイプモノを出して一心不乱に見始めた・・・。
そして成美は勉強しつつオナニーに励んだ・・・。
体育用具室で成美はまだオナニーをしていた・・・。

「・・思いぃ・・出しちゃぁっ・・た・・らぁ・・ま・・・たぁ・・コォウ・・・フゥン・・しぃ・・ちゃっ・・たぁ・・アァン・・・」

成美はバトンのスピードを上げラストスパートに入った・・・。

「・・オマ○コにぃ・・・バトンがぁ・・・入って・・るゥ・・せっ・・・せんせぇ・・イクゥ、イク、イチャウゥゥゥゥゥ!!」

新城成美はこれからの未来を想像しながら快楽の余韻に浸った・・・。

鬼瓦公康は自分の思い通りに進んでいるものとばかり思っていたが新城成美の掌の上で踊らされていることに

全く気づいていなかった・・・。
---END---
35江呂夏大好:03/12/19 02:36 ID:n5xrYQmA
どうも前スレで淫乳女子高生のSSをリクエストした者です。
我慢出来ずに自分で書きました。

初めてSSを書くので見やすくしようと思いましたが3/3で見にくくなってしまい
申し訳ありませんでした・・・。

3/3で終わらせるつもりが入りきらず急遽終章をつけて終わらせました・・・。
しかもエロ少ないし・・・。

こんな駄文でも楽しんで戴ければ幸いです。
次はもっとハードなものを書いてみます。
36江呂夏大好:03/12/19 02:39 ID:n5xrYQmA
>>31-34
すいません付け忘れました。
念のため>>35も。
37名無しさん@初回限定:03/12/19 17:21 ID:j48XTQRI
>>35
乙彼〜、と言ってみる。
反省点は自分で分かっているようだし、これにめげずにガンガレ。
38名無しさん@初回限定:03/12/20 02:09 ID:zEqD+krd
>そんな時成美は下校途中に通る書店で[エロゲーの主人公を誘惑する方法:著者:江呂夏大好]という怪しげな本を見つけた・・・。

このゲーム未プレーなんだが、ヒロインらはメタ的な(ゲームキャラが自分がゲームキャラだと意識した)視点を持ってるの?
だとしたら抜きには使えない気がするが…
39江呂夏大好 ◆tGJWnjCS9s :03/12/20 04:11 ID:qX4Hambg
わかりやすいようにHNを付けたのでトリップもついでに付けてみました。

>>37
ありがとうございます。

>>38
私の妄想なので安心してください(’▽`)
40(1/9):03/12/21 01:49 ID:e2F0alsH
 師走のメインイベント(大晦日のことですよ?)も近づいてきて、街もメディアもリビドー
わっしょいな空気につつまれるなか。大掃除のための道具の買出しの途中、一緒に買い物して
いるらしい雪村と青葉ちゃんとでくわした。
「ああ。せんぱい。これは奇遇です。いまからせんぱいの部屋に伺おうかと、青葉ちゃんと
 お話してたところなんですよ? それが、せんぱいのほうから雪村に逢いに来てくれるなんて。
 もう、これは運命の赤い糸がなせる業としか言いようがありませんね」
「おまえのその素敵思考は、その赤い糸とやらから流れてくるわけか? 大したもんだな」
「おにいちゃん、こんにちはー」
「ああ。青葉ちゃん。こんにちは。お買い物? もうすぐ大晦日だもんね。大掃除だもんね。
 いろいろと物入りでしょ?」
「対応にそこはかとなく差別を感じるのは、雪村の気のせいでしょうか?」
「赤い糸のなせる業だな。いや、まったくもって恐ろしい糸だな」
 俺の応えに一瞬不満げな顔を見せる雪村だったが、すぐにいつもの調子のテンションで
話し掛けてくる。
「せんぱいせんぱい、大掃除もいいですけど、そのまえにイベントがひとつありますよ。
 もうすぐクリスマスですよ。聖夜ですよ。この日ばかりは『え? なに? クリスマスって、
 恋人同士が過ごす日でしょ? あ、その日ってイエスなんとかの誕生日でもあるんだ。ふーん』
 というバカップルも、仏教徒であることをことさら強調するロンリーウルフも、皆で聖誕祭の
 お祝いです。さあ、せんぱいもしたり顔で日本人の節操のなさを説いてないで、追いつめ
 られた八月三十一日の小学生のごとく必死な駆け込みカップル即席カップルとともに陽気に
 はしゃぎましょー」
41(2/9):03/12/21 01:49 ID:e2F0alsH
「相変わらず無駄にテンションが高いな、雪村。つーか、おまえひょっとして、クリスマス
 嫌い?」
「いえいえ、とんでもない。せんぱいとともに過ごせるなら、クリスマスだろうとお正月
 だろうとマグロ漁船の船上だろうと、雪村は幸せいっぱいです」
「あのね。それで、おねえちゃんと一緒にクリスマスパーティをやろうっていうことになってね、
 おにいちゃんも良かったらどうかな?」
「うーん。クリスマスは予定がぎっしり詰まってるんだけど、可愛い妹分のお誘いとあっては
 断れないな」
 懐から手帳と取り出し、ぱらぱらとめくりながら考え込むようにして応える。
「うわー。まっさらな手帳を見ながらそこまでアドリブができるなんて、かっこいー。もう
 将来は銀幕のスターですね。青葉ちゃん、いまからサインもらっておいたほうがいいかな?」
「あいや。ご安心召されよ、お嬢さんがた。義理と人情の世界に生きるこの桜井舞人、下積み
 時代に支えられたご恩は、決して忘れませんですぞ?」
「演歌の世界だね。泣けてくらぁだね」



 そして。聖誕祭前日。
「で、だ。ここにおまえしかいないのはどういうわけだ?」
 時刻は午後五時。パーティ会場に指定された桜井舞人邸には、なぜか雪村しかいなかった。
「はあ。あの、青葉ちゃんが二学期で転校しちゃう友達の送別会が急に入って、来れなくなって
 しまいまして」
「は? 送別会? なんで、きょう? 天下無敵のクリスマス・イブですよ? イブといったら、
 日本国民総出でイエス・キリストを崇め称える日ですよ? 幼きころよりクリスマスには
 クリスマス会に出席するってことは、日本国民の義務ですよ?」
「うわー。ついこの間まで、日本人の節操のなさを説いていたせんぱいのお言葉とは思えない
 ほどの変わり身の早さ。雪村、驚嘆です。というか、クリスマス会兼送別会らしいですよ?」
「なんだそのやる気のなさは。面倒くさいから両方いっぺんにやっちゃおーってわけか? 
 抱き合わせ商法ってわけですか? 公正取引委員会に訴えるぞ」
42(3/9):03/12/21 01:52 ID:wQaoXnjT
「いえ。雪村に言われましても。懐事情の厳しい学生が生き抜くための生活の知恵かと」
「んなもの、忘年会と一緒にやっとけばいいだろ」
「あ、忘年会も兼ねているそうです」
「うわ。欲張りだよ。強突く張りだよ。懐事情が厳しい学生の分際で、クリスマスも送別会も
 忘年会もやろうってわけですか。若い時分から贅沢を覚えるとろくな人間にならないぞ。
 財布の中が万年空っ風ならどれか一つにするべきだろ」
「では、送別会だけだと考えたらいいのでは?」
「うむ。それならまあ、いいだろう。で、青葉ちゃんはまだ?」
「あの? せんぱい、雪村の話聞いてます?」
 流石に引っ張るのに限界を感じたのか、雪村が素で突っ込んでくる。
 いや、俺だって判ってる。判ってるんだが、状況が状況だけに。
 このままじゃ、雪村と二人でクリスマスを過ごすことになってしまう。
 相手はあの雪村ですよ? 意識することはない。ないはずだ。はずなんだが。
 くそう。
 なんかいつもと違う不安定な自分がいた。
「あの? せんぱい、ひょっとして送別会に、なにかトラウマでもあるんですか? こっちに
 くるときに送別会をしてもらえなかったとか。あれ? そういえば、雪村、せんぱいの
 送別会に参加した記憶が……」
「だ、だだだ、黙りなさいっ! シャラーップッ!! 口を慎んでもらおうか、雪村くん。
 それ以上の個人詮索は、お天道様が許してもこの桜井舞人が許しません」
「はあ。で、どうしましょうか?」
「どうしましょうかじゃないだろ。このままじゃパーティどころじゃない。おまえ、
 烏滸がましくも美少女を自称するなら、男のひとりやふたり引っ張って来いや。美的感覚の
 狂ってる牧島あたりなら、『ねえーん、きてーん。うふんあはんばかん』の一言で飛んで
 くるだろ」
「うわ。せんぱいに多少なりとも幻想めいたものを抱いている青葉ちゃんには聞かせられない
 台詞ですね。っていうか、せんぱい、麦兵衛くんを誘ったそうじゃないですか。教室で、
 行けなくてごめんって言ってましたよ?」
43(4/9):03/12/21 01:52 ID:wQaoXnjT
「ぐ……」
 そうだった。財布の負担を軽くするために、『雪村』の一言でホイホイついてくる
純情ボーイも誘ったんだった。
 それがあのバカ、こんなときに限って肉欲より義理を優先させやがって。おまけに俺が雪村に
変なことでも吹き込むと思ったのだろうか、告げ口みたいな真似までしてくれるとは。
 そのあと、山彦を誘ったら、変態でも見るかの目つきで断られた。つーか、はっきし『正気か、
舞人?』って言われたし。『おまえ、きょうがなんの日だか知らないのか? 俺なんかに声を
かけてる暇があったら、女の娘でも誘えよな。それでも振られたら、俺が慰めてやるからさ』
なんて怪しい目つきで言われたら、それ以上はなにも言えん。
「せんぱいこそ、パーティは大人数のほうがいいから、俺が二、三人かき集めてやろうって
 言ってたのはどうなったんですか?」
「…………」
 言えない。口が裂けても言えるか。そのふたりが牧島と山彦だとは。
 なんだ、これは。全てのベクトルが負の方向に向いているみたいではないか。
「いや、過ぎたことをぐだぐだ言っても始まらんだろう。いま、大事なのは、これから如何に
 前向きに生きていくかということではなかろうか?」
「そうですよね。ポジティブシンキングは大事ですよね。買いすぎた材料は冷蔵庫に入れて
 おけば、明日まで十分持ちますもんね」
「あ、いや……」
 やるのか? ふたり、で。
 ああ。もう。俺はなにを意識してるんだ。
 いいか、雪村がこの部屋にいるのは別に初めてじゃない。
 雪村とふたりでいるのも初めてじゃない。
 なんだ、日常茶飯事じゃないか。いつもと変わらん。
 俺がおかしいのは、きょう日本に蔓延している雰囲気オブクリスマスの所為に違いない。
 知らぬ間に侵食されてるとは。侮りがたしだな。
 ただ、原因は判ったんだ。きょうがクリスマスだからなんだ。
 相手が雪村だからじゃない。……よね?
44(5/9):03/12/21 01:53 ID:wQaoXnjT
「せんぱい。ペースが速いですよ? あんまり飲みすぎると身体によくないですよ」
 結局ふたりで始まったクリスマスパーティ。ビールに非常によく似た清涼飲料水の缶を傾ける
俺に、雪村が心配そうな声をかける。
「あははは。雪村は、バカだなぁ。清涼飲料水を飲みすぎて体を壊したなんて話は聞かないぞ? 
 ほれ。雪村も、ぐいといけ。ぐいと」
 雪村の言うとおり、ペースが速すぎたのだろうか。始まってそんなに時間が経ってない
ようだったが、結構酔いがまわっていた。いつものように飲んでたはずなんだが。
「うわ。思いっきり絡み酒ですね。もう、クリスマスのムードもへったくれもないところは、
 流石せんぱいです。まあ、最初からなかったような気もしますけど」
「ははは。そう誉めるな、雪村よ」
 酒の回りも手伝ってか、だんだんと心地よくなってきた。というか、段々いつもの調子に
戻ってこれたような。
「せんぱい、食のほうがあんまり進みませんね。せんぱいが受け狙いで買ってきた豚足は
 御自分で始末してくださいね」
「ほー。この桜井舞人が、メスブタ係のことを考えて買ってきたものが、気に入らないと?」
「いえ。お気持ちだけありがたくいただいておきます」
 そんな中身のないような会話をふたりでだらだらと続けて。
 気が付いてみれば、自分の周りには、空き缶の山ができていた。
 酔いも大分まわって、少しうつらうつらしてくる。
 雪村のほうを見てみると、多少顔は赤くなっていたものの、あまり酔ってはいないように
みえた。いや、酔っ払いの判断だけど。
 なんとなしに、自分の空けた缶を積み上げていると。
「せんぱい、きょうは、楽しいですか?」
 ぽつり、と呟くように雪村。よく、聞き取れなかった。いや、言語が意味をなさないのか? 
「ん? なに?」
「せんぱい。きょうは、いつもとちょっと違いましたよね。ひょっとして、つまらなかった
 のかなー、なんて」
 照れたように頭を掻く雪村。その口調はいつもと同じような、軽口を叩く感じで。
45(6/9):03/12/21 01:54 ID:jdjgO7zB
「はあ? 阿保ですか? おのれは? そう思ったのなら、面白いことの一つでも言って
 笑わせなさい。芸人たるもの、『俺ってつまらないよね』なんて言って、慰めてもらおう
 なんてムシがよすぎます」
「あ、あはは。そうですよね。あのときから、そうでしたよね」
「それにな。クリスマスに女の娘とふたりっきりで、素面でいられますかってーの」
「えっ……」
 雪村が、驚いたように目を見開く。
 あれ? なんか饒舌になって、余計なこと言ってますか、俺?
「あの。せんぱい、酔ってます?」
「あー? 酔っ払いは酔ってるかと聞かれて、『俺は酔ってない』と応えるわけだから、
 いま自分が酔ってると思ってる俺は、酔ってないわけで。つまり、俺は酔ってない、と」
 論理的に判断すると、俺は酔ってないわけだ。まあ、論理的思考ができるってことは、
まだそんなに酔ってないんだな。
「あ。よく判りました。これ以上ない、明快なご回答で」
 そう言って、居住まいを正す雪村。
「では、酔ってないせんぱいにひとつ話を聞いてもらいたいんですが」
「おう。アメリカンジョークでも、小噺でも、落語でもドンときなさい」
「あのですね。せんぱい、この前、雪村にクリスマス嫌いなのかって聞かれましたよね?」
「あん? そうだっけ?」
「せんぱい、口を挟んだらダメです。あくまで私の話なので」
「うい。了解」
「私、別にクリスマスは嫌いじゃないです。ただ、なんとなくいいイメージがないというか、
 私の性分と相容れないのかなって。って言っても、そんな風に思うのは比較的最近になって
 からなんですけどね。周りの友達に、クリスマスが近づくと彼氏の一人も作らなきゃって人が
 結構いるんです。どこか適当なところで男の人見繕って、取り合えずクリスマスを乗り
 切らなきゃって」
46(7/9):03/12/21 01:55 ID:jdjgO7zB
 雪村の話を聞きながら、ぐいと缶を呷る。
「そういう人たちにとって、誰かと付き合うってことは、クリスマスを過ごす為の手段でしか
 ないのかなって不思議に思ったりするわけです。私なんかから見れば、好きな人と一緒に
 いられるのなら、クリスマスでもお正月でも憲法記念日でも構わないんです。で、
 クリスマスにいいイメージがないって、話に戻るんですけど」
 そこまで言って、一旦言葉を切る。てか、漸く本題ですか。
「もし、男の人もそう考えてるとして。クリスマスを過ごすことが目的になってるとして。
 それが、もし自分の好きな人だったら、ちょっと悲しいかなー、なんて。手近に、
 自分の周りをうろちょろしてる女でも見繕って、クリスマスを乗り切るかな、なんて
 思われてるのかなとか。そんなことはないって頭では判ってるつもりでも、それで、不安が
 完全に拭えるわけじゃないんです。いえ、もちろん好きな人の傍にいられれば、それだけで
 嬉しいんですが。人って欲深いものですね。一つ手に入ると、もっと欲しくなってしまったり
 するわけで」
 あ、この話はあくまで仮定の、そんな事態になったらやだなーって話なんですけど、と最後に
補足するように付け加える。
 どうやら、これで話は終わりらしい。
 えーと、要するに、クリスマスにはしゃいでる奴らが気に入らないってことか?
 雪村の言いたいことは。
「あー、つまりだな。雪村。おまえは真面目すぎるな。おまえの周りの彼氏作らなきゃって
 言ってる奴のうち、どれくらいがほんとにそれを実行してるんだ?」
「たしかに、全員というわけではないですけど」
「要するにあれだな。周りの空気、雰囲気ってやつだな。そんなこと言ってる奴も、ほんとに
 そう思ってるのか、周りに流されてやってるのか、って違いはあるだろ。おまえも、んなこと
 真面目に考えないで、適当にあわせときゃいいんだよ」
「そう、ですか」
「それで、だな。おまえのいまの話のいちばんの問題点だが、ズバリ言っていいか? 
 ちょっときつい言い方になるかもしれんが」
「は、はい」
47(8/9):03/12/21 01:56 ID:jdjgO7zB
「そうか。そこまで覚悟ができてるなら、ズバリ言おう。おまえの話は、あれだ。オチが弱い」
「は?」
「最後に、仮定の話なんですけどって、つまり、実は夢オチでしたってことだろ? あまりに
 使い古されたネタだな。王道は別に悪くないが、使いこなすのがいちばん難しいんだ」
「あ、あははー。そうですか。ダメだし食らっちゃいましたねー。次はもっとせんぱいの
 お眼鏡にかなうような話をできるよう、雪村頑張りますね」
「それとだな。雪村、おまえは……」
 そんなに心配するな。って言おうとして言葉に詰まる。
 心配するな? なにを?
 あれ? なんだっけ。さっきの話を聞いてて思ったんだけど。
「あの。せんぱい?」
 雪村がそう訊きかえすと同時に、パパンッと部屋の中にクラッカーの破裂音が響く。

「おにいちゃん。おねえちゃん。メリークリスマース」
「こ、こんにちは」
 玄関に目をやると青葉ちゃんと牧島麦兵衛がいた。手にはすでに開いたクラッカーを携えて。
「あれ? 青葉ちゃん? 麦兵衛くん? どうしてここに?」
「あのね。送別会が終わって、おにいちゃんたちまだやってるかなーって急いで戻ってきたんだ。
 そしたら、途中で牧島さんと会って」
「ええ。そうなんです。せっかく誘っていただいたのに、申しわけないと思って。部の集まりの
 ほうはあらかた終わったので、まだ間に合うようでしたら、こちらに参加させていただこう
 かと思いまして」
 さわやか笑顔で語る牧島麦兵衛。相変わらずな奴だ。
48(9/9):03/12/21 01:58 ID:nsPo0MGR
「あー。おにいちゃん。もうべろんべろんに酔ってるでしょ。お顔が真っ赤だし、目の焦点が
 合ってないよ?」
「ああっ。桜井先輩、大丈夫ですか? よかったら僕が介抱しますよ」
 気持ち悪い気遣いの言葉とともに、俺の元に歩み寄ってしゃがむと、耳打ちする。
「(……おい、貴様。酔った勢いにかこつけて、小町さんに破廉恥な真似などしでかしてない
 だろうな?)」
 どうやら、こいつはこれが心配で途中で抜け出してきたらしい。ご苦労なことで。
 もう部屋の空気はすっかりいつものそれだった。飽きるほど過ごしてきた日常だった。
 その牧島は、俺の返事を聞くことなく青葉ちゃんに呼ばれて台所へ向かった。
「あの? せんぱい、先刻なにか言いかけませんでした? 雪村、おまえはって」
 またふたりになったテーブルの向かい、雪村が訊ねてくる。






「ああ。雪村、おまえはバカだなぁって」
「ほほほ。雪村はバカですから」
49名無しさん@初回限定:03/12/21 02:00 ID:nsPo0MGR
>40-48
『それは舞い散る桜のように』から。クリスマスネタで。
残念ながらちょっと遅れちゃいましたけど。約361日ほど。
50名無しさん@初回限定:03/12/21 02:10 ID:ZH77rW0X
>>40
誤爆乙〜
51名無しさん@初回限定:03/12/21 23:52 ID:krxRw73a
おぉ・・・まさか、アセリアのSSがあるとは。
クリアした後にこちらへきましたが、前スレからじっくり堪能させていただきました。
後半も楽しみにしてます〜

・・・ゲームでも雑魚スピのイベントがあったらなあ、と思ったり。
でもまあ、さすがにこれ以上の発売延期は出来なかったか。
52名無しさん@初回限定:03/12/22 00:05 ID:Toh8ArvL
>>40
乙果礼
53名無しさん@初回限定:03/12/23 16:27 ID:/7WMXHEa
封印していたアセリアのイービルルートをプレイしセリアに心奪われてしまいました。

そのままの勢いで書いたものですので
ところどころおかしかったりするかもしれません。
その辺は脳内変換でお願いします。
稚拙な文章ですのでお目汚し失礼・・

セリア嫌いは読み飛ばしてくだされ( *´Д`)ハァハァ

54心変わり(1/8):03/12/23 16:27 ID:/7WMXHEa
「・・・・・くだらない、あなたの事信頼していませんから。」
いつもの館の食卓・・・。
スピッリット隊隊長となった悠人が隊員との交流を図る為に強制的に始められた親睦会。
エスペリアの作った料理が食卓に並び、非常に和気藹々としたムードだったが
彼女のアイスバニッシャー級の一言によって一気に場の空気は凍結した。
あまりに突然すぎることに誰も言葉を発することが出来ないでいるなかで、
いち早く立ち直ったのはやはりスピリット隊副隊長こと『献身』のエスペリア。
「セ・・・セリア!!貴女、ユート様になんていう事を!!」
普段の慈愛に満ち溢れた物腰からは考えられないほど厳しい表情での叱責が飛ぶが、
当の本人『熱病』のセリアはどこ吹く風といった感じで
「・・・見回りに行きます」と一言残しさっさと出て行ってしまった。
後に残されたのは気まずい雰囲気とおろおろしているハリオン。
当事者が出て行ってしまった為二の句が告げなくなったエスペリア。
そんなエスペリアの叱責に驚いて瞳に大粒の涙を浮かべた『孤独』のシアー。
それを慰めつつも同じく半泣き状態の『静寂』のネリー。
隅っこで縮こまってガクブルしてる『失望』のヘリオン。
呆然としている『赤光』のヒミカ。何事にも無関心で呑気にお茶を啜っている『消沈』のナナルゥ。
「はぁ、面倒」といって動くことすら面倒くさがっている『曙光』のニムントール。
そして笑いかけた表情で凍結しているエトランジェ『求め』の悠人だった。
(『存在』のアセリア、『理念』のオルファ、『月光』のファーレーンは哨戒任務中)
55心変わり(2/8):03/12/23 16:28 ID:/7WMXHEa
誰も信じない、誰にも頼らない、誰の力も借りない、自分だけで生きていく。
熱病にうかされた病人のように彼女はただそれだけを繰り返してきた。
人との接触を極端に避け、自分の殻に閉じこもる。
最初は自分の脆い心を護るためだったのかもしれない。
しかし、何時の間にか人に接するということを忘れてしまった。
今、同じ部隊の人達に感じるのも仲間という感情ではない。
(ここにいるのも自分はラキオスのスピリットだから・・・)
今までも、これからもずっとそうやって他人を拒絶して生きていくと思っていた。
だけどエトランジェ・・・あの人が来てから感情的になってしまう自分がいる。
何気ないことでも気付けば冷たい言葉を浴びせてしまっている。
先程も昔の自分ならただ黙っているだけで誰かを傷つけるような事は言わなかった。
思い出して少しだけ罪悪感がこみ上げてくる、がすぐにそれを心の奥底に封じ込める。
必要以上の拒絶、あの人を見ると何故か嫌悪感に近いものが沸いてくる。
理由は自分でも分からない、ただ嫌いなだけなのかそれとも・・・
(・・・・・・わからない)
少しの間、眼を閉じて暗くなってきた考えを振り払う。
深呼吸をして心を落ち着けるとセリアは見回りを再開した。
が、半歩も行かないうちに立ち止まる。森の茂みから感じる微弱な気配。
(・・・・敵?)
そう考えるが敵にしては敵意を感じない、疑問に思いながらも四肢に力をいれる。
が、ガサガサと茂みを掻き分けて現われたのはハクゥテだった。
ひょこひょこと軽快にセリアの足元に跳ねてくるとその身を摺り寄せた。
警戒した自分がバカらしくなってフッと力を抜くとしゃがみこみで小さな頭を撫でてやる。
知らず知らずのうちに口元に笑みが浮かんでいるが自分でも全く気付かない。
ひとしきり撫でてもらうとハクゥテは満足したようにまたひょこひょこと跳ねながらもと来た森の茂みへと姿を消していった。
立ち上がりしばらくはその姿を追っていたが、また無表情に戻るとまた歩みを再開した。
しかし、またもや半歩もいかないうちに立ち止まる。
『熱病』からかすかに伝わってくる別の永遠神剣の気配。
味方のではない、気配と共に流れてくる明確な敵意。
彼女がウイングハイロゥを展開したのと同時に警鐘が高らかに鳴らされる。
56心変わり(3/8):03/12/23 16:29 ID:/7WMXHEa
時は遡って館の食卓こと親睦会会場。
ようやく全員落ち着きを取り戻していたがエスペリアだけはまだ憮然とした表情。
「セリアにはスピリットとしての自覚が・・・」とブツブツ言っている。
「エスペリア、俺は気にしてないから」
悠人は苦笑しつつなだめるように言うが、
「ユート様は甘すぎます!私達スピリットが主人に逆らうなどということはあってはならないことなのです!それにです・・・・」
と逆にエスペリアの愚痴を聞かされるはめになる。
その剣幕にさすがの悠人もうっと言葉に詰まってしまう。
さらにその余波は悠人の隣りに陣取っていたネリー&シアー姉妹にもろに直撃する。
またもや半泣き状態のネリー&シアー姉妹だが悠人に対するエスペリアの愚痴は止まらない。セリアのことが何時の間にか悠人自身のことになってきている。「大体ユート様は普段から・・・」やら「場に流されすぎです!」とか「だからリクェムが・・・」など様々。
さすがに悠人もリクェムは関係ないだろうと思ったがツッコミを入れればさらに説教が長くなるのは分かりきっている。大人しく聞いているほうが得策である。
そんな二人(四人?)の姿を見ていた残りのメンバーはというと・・・
やはりおろおろしているハリオン。「はぁ、面倒」と言ってさっさと部屋に引き上げていくニムントール。
微笑とも苦笑とも取れないようなニヤニヤ笑いをしているヒミカ。
お茶のお代わりをキッチンから取ってくるナナルゥ。やっぱり隅っこでガクブルしてるヘリオン。
実に代わり映えしない風景だった。
約三十分後、やっと愚痴を言い終わったのか肩で息をしているエスペリア。
「ユ・・・ユート様、分 か り ま し た か?」
「は、はい!」
止めの一発とばかりに放たれたエスペリアの言葉に即座に反応する悠人。
威厳などこれっぽっちもありはしない。
ようやく一段落ついてのほほんムードに戻りかけていた場に警鐘の音が響く。
聞こえたと同時に各々は横に立てかけてあった自分の神剣を取り悠人の指示を待つ。
苦笑してた悠人も顔を引き締めると『求め』を手にする。
『求め』の力で敵の神剣の居場所を特定すると全員に命令を伝え、鋭い動きで飛び出していった。
57心変わり(4/8):03/12/23 16:32 ID:/7WMXHEa
悠人達が辿り着いたのは城下町の一角。民家の所々が焼け焦げ、瓦礫と化している建物もある。
そして、上空ではセリアと敵スピリットの一人が相対していた。
「セリア、一度戻れ!!」
悠人が叫ぶが、セリアは一度ちらっとこちらを見ただけで敵に斬りかかっていく。
「くそっ・・・」と心の中で悪態をつきながら味方へと命令を飛ばす。
「市街戦だ!神聖魔法は控え、全員接近戦に切り替えろ!」
全員から了承の意が返ってくると再びセリアに目を向ける。
ちょうど敵の一人を金色のマナの霧に変えたところだった。
ほっとしたのは束の間レッドスピリットの放った火球がその背中へと迫っていた。
セリアは驚きに目を見開いたまま固まっている。
瞬時に、レジストオーラを展開するが時既に遅し三、四発目の火球は防いだ。
しかし、一発目、二発目の火球はそのままセリアへと吸い込まれていった。
小さな爆音と共に煙を上げながら落ちてくるセリアを地面激突すれすれで受け止める。
火球を放ったレッドスピリットはヒミカの『赤光』に貫かれマナの霧へと変わっている。

どれくらいたっただろうか、なんとか計8体全ての敵スピリットを消滅させた。
空へと帰ってゆく金色のマナの霧が幻想的な雰囲気をだしているがそれどころではない。
民家の壁にもたれさせたセリアの傷は傍目から見ても酷い傷だった。
「早く、回復しないと!」
顔を青くしたエスペリアが駆け寄ってくる。
しかし、エスペリアを見るセリアの瞳には拒絶の意思がありありと浮かんでいた。
その瞳に気圧されてか動きと詠唱を止めてしまう。
その間にセリアは、「・・・失礼します」と言い純白のウィングハイロゥを展開、傷ついた体のままで飛び立とうとする。
「セリア!待ちなさい!」
しかし、悠人はそんなエスペリアを片手で制止し動きを止めたセリアへと歩み寄っていく。
そして、彼女の前まで来ると歩みを止めた。
58心変わり(5/8):03/12/23 16:33 ID:/7WMXHEa
パンッ!と乾いた音を立てて悠人の平手打ちがセリアの頬に吸い込まれる
「・・・・・何をするんですか」
打たれて赤くなった頬を押さえもせずに若干の敵意を込めた視線で悠人の眼を見る。
が、その眼に佇む哀しみを見つけて動揺する。
殴られてそしてこんな眼で見られたのは初めてだった。
「俺のことは信頼しなくてもいい・・・」
ポツリと悠人が漏らす。
「・・・・・・・・・・・・」
「隊長なんて俺には向いてないし、そんな器はない。皆の足も引っ張ってる。
 そんな俺の下で戦うのは不満だろうし、信頼もできないと思う。」
「ユート様、そんなことは・・・」
エスペリアが否定しようとするが悠人は手を上げて制止する。
「だから、悲しいけど俺のことは信頼しなくてもいい。俺は皆のことを信頼してる。
 今はそれだけで十分だと思う。だけどせめて俺以外の皆のことは信頼してやってくれないか?」
「・・・・・・・・・・・」
「同じ戦ってる仲間だろ。一緒に暮らしてる家族だろ。俺はもう誰にも傷ついて欲しくない。
 死んで欲しくなんかないんだ。だからもう少し皆のことを頼って欲しい。頼む・・・」
そういって悠人は頭を下げた。その行為に周りが驚いている。
(どうして・・・どうしてこの人はここまでするのだろう)
スピリットは戦うための道具、そんな種族に頭を下げる人など見たことなどない。
いつものように「・・・くだらない」といって済ましてしまえばよかったのかもしれない。
だが、どうしてもそうすることができなかった。
心は言葉に迷っていたが口は知らず知らずのうちに動いていた。
「・・・・それは命令ですか?」
我ながら冷たい言葉だと思う。少しだけ罪悪感がこみ上げてくる。
案の定、頭を上げた悠人は少しだけ傷ついた表情をしたがすぐに苦笑した。
「いや、命令じゃないよ。俺からの求め・・・かな」
苦笑した顔とその言葉を聞いたとき胸の奥で何かが燻るような感じがした。
が、それも一瞬のことで肩の力を抜いて大きくため息をはくと少しだけ表情を緩めた。
59心変わり(6/8):03/12/23 16:34 ID:/7WMXHEa
「・・・・・わかりました」
「ありがとう、セリア」
そういって嬉しそうに笑う顔を見ると何故か頬が紅潮してくる。
そんな顔を見せられるはずもなく「し・・・失礼します」と少し焦った声で言うとウィングハイロウを展開してスピリットの館に戻ろうとする。
が、いざ飛び立とうという所で不意に目の前が真っ暗になり体から力が抜けた。
誰かの焦った声が聞こえるが意識はどんどん闇の底に沈んでいき、体は重力にしたがって前のめりに倒れこんでいく。しかし、地面にぶつかる前に誰かに支えられだ。
誰かと確認するひまもなく意識はそこで途切れた。

人の気配を感じて目を開けようとする。
が、瞼は鉛のように重くほとんど動かない。瞼だけでなく体も重かった。
体に掛かっている毛布すらも鉄のように重く感じる。
(・・・・・毛布?私は確か・・・・)
少し頭が混乱していて思考がまとまらない。
とにかく重い瞼に力を入れ薄っすらと目を開けると、
悠人の顔のドアップがあった。
「っっっ!!!!」
声にならない悲鳴をあげ体を起こそうとする。
当然、目の前に顔がある。二人の唇と唇は・・・くっつくはずもなく、
ゴツンッ!という鈍い音と共にセリアの頭突きが悠人の鼻にクリーンヒットする。
「っっっ!!!!」
これまたこちらも声にならない悲鳴をあげ鼻を押さえ床を転げまわる。
一方セリアはおでこを押さえているが鼻とおでこでは硬さも違い大して痛くはない。
ふと考える、何故自分はここにいて何故あの人の顔が目の前にあったのか。
考えるうちに一つの可能性に辿り着くと体を護るように両手で体を抱く。
60心変わり(7/8):03/12/23 16:36 ID:/7WMXHEa
「・・・・何をしてるんですか」
今までで一番冷酷ともとれる声で尋ねる。
転げまわっていた悠人もやっと痛みが収まってきたのか鼻を押さえながら立ち上がり困惑の表情を浮かべている。
が、冷酷な声とセリアが両手で体を抱くようにしていることから途方もない勘違いをされていることに気付き恐ろしいほど慌てる。
「い・・いや!違う!違うぞ!俺は倒れたセリアをここに運んできただけでやましいことは何も!
さっきも瞼が動いたから起きたのかと思って確認しようとしただけだ!!」
顔を赤くして早口で言い訳をならびたてる。
鼻血が出ているので説得力に欠けまくる。(これはセリアのせいだが)
しばらくは疑念の眼差しで悠人を見つめていたセリアだったがこのままでは埒があかないと思ったのか
「・・・・もういいです」と言ったきり黙りこんでしまった。
窮地は脱したが今度は気まずい沈黙状態に突入して冷や汗を流す悠人。
しかし、このままでは何も進まないので一応状況を説明することにした。
急にセリアが倒れたこと。
その後エスペリアにこっぴどく怒られたこと。
(「体力を消耗したスピリットにエトランジェが平手打ちなどすれば気絶ぐらいします!」だそうだ)
そのせいでセリアを館まで運んでいくことになったこと。
エスペリアや他の皆は親睦会の片付けに第一詰め所に言ってしまったせいで看病が俺しかいなかったことなどなど。
「・・・・とまあそういうことだけど」
「・・・・わかりました」
いまだに垂れ流しの鼻血のせいで信憑性に欠けるが仕方ないので納得することにした。
少しだけ頬を緩めたセリアに安心したのか悠人はため息をつく。
「それじゃあ、目も覚めたことだし俺も片付けを手伝いにいくよ」
そういって血の足跡を残しながらドアまで歩いていく。
と、ふと立ち止まり真剣な目をしてセリアを見る。
「俺の求め・・・・ちゃんと努力してくれよな」
61心変わり(8/8):03/12/23 16:37 ID:/7WMXHEa
「・・・・善処します」
真剣な声に少しだけ胸の高鳴りを覚えながらも極めて冷静な答えを返す。
しかし、心は「そっか」と言い笑いながら出ていく悠人を呼び止めてしまう。
「あの・・・・」
「・・・・・・・?」
「ウ・・・ウレーシェ」
「ははは、どういたしまして」
少しだけ頬を紅潮させながら言うセリアの姿を見つつドアの向こう側へと姿を消す悠人。
パタンというドアの閉まる音と共にセリアは大きくため息をつく。
そして、ベッドから降りようとするが辺り一面血の海と化していて降りることができない。
その後ハリオンが掃除に来るまでベッドの上から降りることができなかったという・・・。

一方、第一詰め所に戻った悠人はエスペリアを止めるのに苦労していた。
「ユート様に対してあの言葉遣い、それにあろうことが頭突きをするなど・・・ッ!!」
結局、アセリアやオルファが帰ってくるまで続いたという。
62名無しさん@初回限定:03/12/23 16:40 ID:/7WMXHEa
>54-61
セリアタン( *´Д`)ハァハァ
ほんと勢いだけの作品なんですけどね・・・・
というか最後に続く?を入れるのわすれました(´・ω・`)

次回予告!オルファ経由でバレンタインの話しを聞いたセリア・・・
この胸に燻る想いをはっきりさせるために奮闘する!
行く手に立ちふさがる幾多のライバル達!この想いをユートに伝えることができるのか!
こうご期待!!

       んなわけねぇだろ!!
63名無しさん@初回限定:03/12/23 17:11 ID:Gphv58tM
セリアたん(´∀`*

悠人のヘタレっぷりもw
鼻血出すぎにワロタ
64名無しさん@初回限定:03/12/23 18:01 ID:v93INIqv
ウウム
セリアを取るべきか、ネリシアを取るべきか…
65名無しさん@初回限定:03/12/23 21:08 ID:cK9T8Nxf
>>62
乙彼〜。
メイドというより、殆ど「爺」のエスペリアたんがごちそうさまでした。
次回作の大騒動も期待しております。

#さて、後編を近いうちにとか言っておきながら、大番長に
 はまってしまった漏れはどうすればいいんだ…
66名無しさん@初回限定:03/12/23 21:54 ID:RWEGr6zC
>>62
GJ!
セリアたんイイですな、と言うか雑魚スピ全部が(r
後編あるなら期待してます
ここのSS読んでヘリオンたんとヒミカたんへの愛着が一段と深まった漏れはどうすれば……
67風変わり:03/12/24 12:44 ID:J2Howi0b
感想頂いて感無量です(;´Д⊂
心変わりを書いたヘタレ小説家気取りです・・・
名無しさんいっぱいでわからなくなると自分が困るので作者名つけました、ごめんなさい(´・ω・`)

一応またもやセリアたんメインの続編鋭意製作中です
というかセリアたんメイン以外書く気が起こらないのが本音ですが
なんとか今年中には完成させてみせるぞー、オー!
68名無しさん@初回限定:03/12/24 23:11 ID:2Td064Rg
セリアタン ハァハァ
69名無しさん@初回限定:03/12/25 15:38 ID:lqI+ZlSq
(゚д゚)このままカキコがなかったら激しくマズーー!!!
70名無しさん@初回限定:03/12/25 18:35 ID:wziDJzv+
みんなエロゲやるのに忙しいんだろ
71名無しさん@初回限定:03/12/25 20:55 ID:lqI+ZlSq
((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
72(1/2):03/12/26 00:17 ID:vQEmB2lA
「♪きーよーしー、こーのよーるー、保ー守ーはー、ひーとーりー」
「そこ! 人聞きの悪いもん歌わないでくれる?」
「ごく普通のクリスマスソングですが何か?」
「嘘付くな! 大体ねぇ、今はクリスマスなのよ? 父親が何処の馬の骨かも分からない売女の息子
 が馬小屋で生まれておめでとう、おめでとう、僕は此処にいてもいいんだ、っていうめでたい日
 なんだから。このスレだって職人さんたちのSSで埋め尽くされてて、アンタみたいなROMの中の人
 は『( *´Д`)ハァハァ』で大忙しなんだから」
「やれやれ、これだから世間知らずのお嬢さんは…」
「何よ、ムカツクわね」
「いいか、SS職人だって霞(かすみ)喰って生きてる訳じゃねーんだ。コンビニで大量のコピーを
 取ったり、オフ会に参加したり、街に出てバカップルを呪い殺したりと、やらなきゃいけない
 ことは山ほどあるんだよ」
「う……」

73(2/2):03/12/26 00:20 ID:vQEmB2lA
「そんな訳でだな、『ホワイトクリスマスってレスが真っ白って事?』とか言われない様にする
 ためにも、お前さんの協力が…」
「却下!」
「ほぅ、dat落ちしてもいいと?」
「そ、そんなこと…」
「いやあ、聖なる夜に天に召されるスレひとつ。惨めだねぇ」
「き、きっと職人さんたちだってスグに…」
「マッチを擦るたびに、エロいSSやラブラブなSSが浮かんでは消えてゆくんだろうなぁ」
「わ、分かったわよ! やればいいんでしょ、やれば!」
「では、いってみようか」

「あ、あたしは、皆さんの、そっ、その…、皆さんのレス無しでは生きていけない、いっ、
 いやらしいスレッドです…。うぅ…。ど、どうか、めっ、メール欄をsageて、書き込み欄に、
 あなたの熱いレスを、い、いっぱいっ、注いで下さい!」

「よくできました♪」
「うぅ…」
「昔は処女雪のような真っ白なスレだったのにねぇ…」
「黙んなさい! ここまでやって、もし投稿が無かったら、アンタどうなるか分かってるんで
 しょうね?」
「ど、どうなるの?」
「今後このスレの『鬱だ氏脳』の隣には、AAの代わりにアンタのjpgが添付されるわ。
 もちろん、吊った状態で」
「((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル 」

と、いうわけで。SS職人の皆様、投稿お願いしますm(_ _)m
7472:03/12/26 00:33 ID:vQEmB2lA
_| ̄|○ モウ26ニチダッタ… イロンナイミデスマソ
75名無しさん@初回限定:03/12/26 00:47 ID:S8eem0cx
>>74
毎度保守乙。そしてワロタ。
SS職人が来ないとあんたのコントが見られるというこの矛盾!

……_| ̄|○
76名無しさん@初回限定:03/12/26 00:53 ID:M4icqOu4
>74
やあ、誤爆先から来たよベイベー。
77名無しさん@初回限定:03/12/26 01:07 ID:uPjJ+O0A
>>74
ハロー隊長、漏れも来たぜー
78名無しさん@初回限定:03/12/26 12:22 ID:S8eem0cx
沙耶の唄が出たことだし、デモベフィーバーの再来になるだろうと預言してみるテスト。
79名無しさん@初回限定:03/12/26 17:38 ID:x+ZRu6bx
え、もう出た?

>>74
コントワラタ
80名無しさん@初回限定:03/12/27 01:31 ID:2yR5Q04v
>78
ぶっちゃけた話
沙耶の唄をプレイした者として言わせてもらうと
あのエンディングでSSを書けと言うのは無理な話ではないかと
81名無しさん@初回限定:03/12/27 01:41 ID:j2YcmTAb
そうでもないだろ。
SSはエンド後の話だけしか書かないわけでもないし
クオリティで超えろとか無茶言ってるわけでもないんだから。
82名無しさん@初回限定:03/12/27 09:57 ID:2yR5Q04v
>81
なるほど
そう言えば物語の開始までにしばらく空白の時間があったな
ちょっくら書いてみますか
うまくできたら投下しますね
83名無しさん@初回限定:03/12/27 10:01 ID:s+CnnBa1
だが、ぶっちゃけ無理に書けと言ってる訳でも無いと思われ

SSとは山間に湧き出る岩清水のようなもの
誰かの心の琴線に触れたときに自然とうぷされるものだよ
84名無しさん@初回限定:03/12/27 12:21 ID:2yR5Q04v
>83
ゲーム的には俺の心の琴線に触れまくってるんだけどね
技術的に書き上がるかどうか・・・
85名無しさん@初回限定:03/12/27 13:45 ID:HsUN93SA
ガンガレ〜
86名無しさん@初回限定:03/12/27 17:12 ID:Lc+ZD+rx
>>74
前スレで書いてたのと別の人?
いや、なんとなくだけどさ
87名無しさん@初回限定:03/12/27 23:31 ID:IewfIfhZ
>>86
漏れもそんな気がした
8874:03/12/28 02:52 ID:IrF5XvPt
>>75>>79
 レスありがとうございます。
 自分の書いたものに ワロタ と書かれていると想像以上に気分がいいですw
 
>>76-77
 申し訳ありませんでした m(_ _)m
 未だにギコナビすら満足に使えない漏れって………_| ̄|○

>>86-87
 別の人です。自分では、「前スレの保守ネタには遠く及ばないし、わざわざ(偽)
 とかつける必要も無いだろう」と思ったのでそのままウプしたのですが、どうやら
 いらぬ誤解を招いてしまったようで… 申し訳ありませんでした。あと、結果として
 騙す事になってしまった>>75氏にも深くお詫び申し上げます。

「アンタってさぁ、ほんっとに他人様に迷惑を掛けないと生きていけないのね」
「いやぁ、重ね重ね申し訳ない。もう二度としません。
 まぁ、正月になって職人さんが帰って来れば、わざわざ保守してお目汚しを
 しなくても大丈夫だろうし」
「晴れてお役御免ってわけね」
「では、この曲を聴きながらお別れです。

 ♪お正月にはー、保守ageてー、山崎貼ってー、あそびましょー」

「やめんかいっ!」

89名無しさん@初回限定:03/12/28 03:12 ID:alYMMtyF
そ、その遊びは危険だっ!
90名無しさん@初回限定:03/12/28 12:25 ID:P/mTrCKy
デンジャーにスリルをキボンなお年頃なんだな
91名無しさん@初回限定:03/12/29 01:47 ID:ypaTo1L4
( ´∀`)б)З`)
92名無しさん@初回限定:03/12/29 01:49 ID:qwSQPt8r
いえーい!隊長!ここが今現在ネギ板のトップだぜ!
93名無しさん@初回限定:03/12/31 11:42 ID:/iMKvXc8
それでは藻前らよいお年を
94名無しさん@初回限定:03/12/31 12:41 ID:tgwWsmQh
>93
オマエモナー
95風変わり:03/12/31 13:59 ID:o/KNWwOv
すいません、すいません、また永遠のアセリアですいません
すいません、すいません、大晦日なのにすいません
すいません、すいません、時期外れですいません
すいません、すいません、自己満足ですいません

・・・・・これぐらい謝っておけば大丈夫かな
というわけでまたセリアたんメインの小説書いてしまいました。
もうね、私、アホかとバカかと
なんでこの時期にこれなんだと
もうこれ以上やってると回線切って首t(以下略

というわけですいませんがお目汚し失礼・・・(´・ω・`)
96ちょこれーと大騒動?1/6:03/12/31 14:00 ID:o/KNWwOv
「はぁ・・・・・」
小さい、けれどはっきりとした溜め息。
灯かりもない真っ暗な部屋の窓枠に腰掛ける一つの影。
漆黒の空に輝くは満天の星々、そして青白い満月。
月光に浮かび上がるのは少し憂鬱な面持ちの『熱病』のセリア。
風呂上がりなのか髪留めもせず腰まである深い青色の髪は風が吹くたびに揺れている。
月の光と相まって幻想的な雰囲気をかもし出しているが本人はそれどころではない。
「はぁ・・・・・」
もういちど深い溜め息をつく。
彼女が悩んでいるのには理由がある。
「皆と仲良くして欲しいという悠人の求め」だ。
もともと言われたことに素直に従うスピリットではないが、
この件では自分は既に了承してしまっている。
自分だけを信じて闘ってきた、だから自分の言ったことには従う。
が、いかんせん「自分だけを信じて」というのがいけない。
いざ実践しようとしても口から出てくるのは冷たい言葉。
皆は「悠人の求め」をなんとか成功させようと、
何かとセリアを誘ってくれるのだが口から出てくるのはやはり拒絶の言葉。
周りを拒絶して生きてきた時間が長すぎたせいで他人との接し方を忘れてしまっていた。
(どうして・・・私はあのことでこんなに悩むの?)
自分で了承したことだからというのは分かる、が何故了承してしまったのか。
今まで拒絶してきたのに何故受け入れてしまったのか。
どれだけ考えたとしてももやはり答えなど出ない。
仲間からはぐれた渡り鳥のように一人では何も分からない。
また小さく溜め息をついて空を見上げると先程まで真上にあった月が大分傾いている。
目を閉じて混乱した考えを振り払うと、真っ暗な部屋の中へ戻っていった。
97ちょこれーと大騒動?2/6:03/12/31 14:01 ID:o/KNWwOv
翌日、第二詰め所の食卓はちょっとした騒ぎとなった。

事の発端は『静寂』のネリーの「ばれんたいんでーしようよ!!」だ。
当然一同、ポカーン(゚д゚)なわけで・・・・・
その後ネリーの説明が入るがこれまた難解なパズルのように言葉がとびまくっている。
ネリーが話し終わった後世話役『赤光』のヒミカが要点をまとめた説明をしてくれた。
「つまり、その日は女が好きな男に『ちょこれーと』を渡して告白する日なのね?」
ヒミカが言うとネリーはうんうんと激しく頷いていた。
皆がネリーの首の心配をしている中食堂の片隅で小さく手があがる。
「ヘリオン?どうしたの?」
ヒミカが声をかけたのは『失望』のヘリオン。
「あ・・・あの、素朴な疑問なんですけど・・・」
皆の視線が集まっているせいか少し緊張しながら言葉を続ける。

「『ちょこれーと』って何ですか?」

一瞬、場が凍る。
「そ・・・それに私達が知っている男の人って一人しかいませんよ〜・・・」
ヘリオンが頬を赤く染めながらいってのけるが誰も聞いてない。
五分後、復帰したメンバーはネリーに説明を求めるが、
「え〜とね、茶色くて甘くて口の中で溶けるモノみたい」
と、なんとも曖昧な答えが返ってくるばかり。
一同が悩んでいる中、席を立つ二つの影。
『曙光』のニムントール、『月光』のファーレーンの二人だ。
「あ・・・あの私は別に好きな男性はいませんので失礼しますね。ほら、ニム」
頬に一筋の汗を流しながら「はぁ、面倒」と
ぬかしているニムントールの背中を押して出て行こうとする。
が、ドアの前まで来たときにネリーの声に止められる。
98ちょこれーと大騒動?3/6:03/12/31 14:02 ID:o/KNWwOv
「駄目だよ!『ちょこれーと』は好きな人だけにあげるものじゃなくて
 お世話になっている人にもあげるものなんだから!」

いきなりの新情報に全員が驚いた顔をしている。
皆が驚いているのを見て横の『孤独』のシアーに「おかしなこといったかなぁ」と聞く。
どうやらネリー自身は既に言ったつもりになっていたらしい。
が、肝心のシアーは目の前のワッフ・・・・失礼、ヨワフルを食べるのに夢中になっている。
答えを得られずちょっと泣きそうになっているネリー。
そんな姿に笑いを堪えつつ、ニムントールの背中を押して席に戻ってくるファーレーン。
もともと義理人情にはあつい彼女、そういう話ならば出て行くわけにはいかない。
しかし、頭の中では『ちょこれーと』(謎の物体)を渡して
悠人に喜んでもらっている図が浮かんでいるのか顔が緩んでいる
「そういえばぁ〜、その『ばれんたいんでー』の話〜どこから聞いて来たんですかぁ〜?」
のんびりと口調で話すのはメイド兼コック長『大樹』のハリオン。
「え〜とね、オルファからだよ」
ネリーがそういうと皆は納得顔。
オルファがそんな話しを聞くとすればユート様かユート様の妹。
→デリカシーのないユート様がそんな話しをするはずがない。
→ということはユート様の妹。
一瞬にして全員の頭に浮かんだこの考え、哀れなり悠人。
99ちょこれーと大騒動?4/6:03/12/31 14:03 ID:o/KNWwOv
ところ変わっていつもの館の食卓

「ヘックション!!」

大きなくしゃみをしている悠人。
ちょうどあの考えが全員の頭に浮かんだ瞬間ということはいうまでもない。
「ユート様、お風邪ですか?」
エスペリアが心配顔で覗き込んでくる。
「だ・・・大丈夫、大丈夫」
「そうですか、それならいいのですが・・・」
少し苦笑しながら言うと『献身』のエスペリアもあっさり引き下がる。
「ねぇ、パパー。『ちょこれーと』ってどんなのなのー?」
会話が途切れた瞬間を狙って『理念』のオルファリルが聞いてくる。
「オルファ・・・!」とエスペリアの叱責が聞こえる。
テーブルに身を乗り出しているせいだろが、それにしては頬を染めているのが気になる。
が、このままオルファをほっておくわけにはいかない。
「そうだなぁ〜・・・・」

この後、根掘り葉掘りチョコレートに関してのことを聞かれたのはいうまでもない。
100ちょこれーと大騒動?5/6:03/12/31 14:03 ID:o/KNWwOv
場所は戻って第二詰め所の食卓。
(何故、こんなにも熱心になれるのだろう・・・)セリアは思う。
絶対『ちょこれーと』目当てのネリー&シアー姉妹。
意外と熱心に考えているヒミカとファーレーン。(ニムは逃走)
何かよからぬ妄想をしているのか頬を上気させながら体をくねらせているヘリオン。
呑気にお茶を啜ってはいるが聞き耳だけはしっかりとたてている『消沈』のナナルゥ。
何か思うところがあるのか少し難しい顔で考え込んでいるハリオン・
現代世界の人がみたら間違いなくこういうだろう・・・。
「バレンタイン間近の女の子みたい」と・・・。
そんな中、一人セリアは窓辺に腰掛けていた。
どうにもこういう雰囲気はあわない。入っていけない。
人を好きになるとか誰かのために何かをするなど経験したことがない。
人によっては寂しい人生だなといわれるかもしれないがこれでいいと思う。
私は誰も認めない、誰も頼らない、自分だけで・・・
(だけど・・・)
一瞬だけだけどあの人のことを認めてしまった。
後悔というよりも驚きだった。自分の壁を乗り越えてきた人は初めてだったから。
冷たい態度をとれば相手も冷たくなる。拒絶すれば大抵の人は離れていく。
だけどあの人は違った、冷たくしても優しい、拒絶しても離れない。
ふと気付けば鼓動が随分と早くなっている。
(何故・・・?)
わからない、こんな感情は初めてだった。
「ふぅ」と小さく溜め息をつく。
部屋に戻るべく振り返ると皆がこちらを見ていた。
考え事をしていたせいで気付かなかったがどうやら呼ばれていたらしい。
そんな中ネリーが恐る恐ると言った感じで口を開く。
101ちょこれーと大騒動?6/6:03/12/31 14:05 ID:o/KNWwOv
「あ・・・あのセリア?」
「何・・・」
冷たい言葉がでてしまう。
ネリーは少しだけ言葉につまるが思い切って口を開く。
「ハ・・・ハリオンが『ちょこれーと』に思い当たるものがあるから一緒に作らないかって
あのセリアもよかったら一緒にどう?」
少しだけ驚く、これだけ冷たくしてもまだ皆はちゃんと接してくれる。
迷ったが、今はそんな気分ではない。断わろうと口を開くが・・・
「・・・・いいわよ」
口から出たのは了承の言葉。そんな自分自身に驚く、(何故・・・)と。
見ればネリーも断わられると思っていたのか口を半開きにして固まっている。
他の皆も同じような顔をしている。
少しだけ居心地が悪くなるがここで逃げてしまえばまた逆戻り。
しばらく待っていると、ネリーの顔に明らかな喜びが浮かんでくる。
「よ〜し!じゃあ、皆で一緒に『ちょこれーと』つくろぉ〜!
でも、こんなイベントやっぱりネリーやセリアみたいなクールな女にピッタリよね!」
セリアは認めるがお前のどこがクールなんだという空気が流れる。
あははは、とネリーの乾いた笑いが響くがヒミカがついに堪えきれなくなったのか笑い始める。
それにつられてみんなも笑い始める。
知らず知らずのうちに自分の口元にも笑みが浮かんでいる。


        はぐれた鳥もいつか仲間を見つける


                                     続く?
102風変わり:03/12/31 14:08 ID:o/KNWwOv
>96-101
・・・・・苦情は「おかしいですよ!セリアさん!」(byウッソ風)に言ってからどうぞ
あっはっは、一回でまとめようとしたけどくそ長くなってしまって結局別れてしまいました(´・ω・`)
一応、これで完結させることもできるんですけどね・・・

勢いだけで作るとろくなことにならないと身をもって知りました・・・
いや、もう、ごめんなさい!
それでは皆さんよいお年を〜〜!
103名無しさん@初回限定:03/12/31 15:37 ID:yyu6/3l7
>102
年明け前に素敵な萌えをありがとうございます(´∀`*
「ちょこれーと」の完成形がどうなるか楽しみだったり
104名無しさん@初回限定:03/12/31 18:04 ID:jimAWRlZ
>>102
お疲れ様です。あちこちムズムズしまつw
やっぱりネリータンはいいなぁ(をぃ

>>103
ウルカが猪の肝をまz、うわなんだなにをすr
105(1/1):03/12/31 18:54 ID:OzxoIarb
 陽のあたる草原に、男が一人、立っている。
髪と髭こそ純白ではあるが、鍛え抜かれた体躯と、精悍な顔つきを見れば、男を『老人』だと思う者は
居ないだろう。そして、明らかに人とは異なる金属製の右腕を見れば、人によっては彼を『化け物』
とさえ呼ぶかもしれない。
 男は、左腕に抱えていた花束を、目の前にある小さな石碑――おそらくは墓標であろう――の前に
供えると、まるで誰かに語りかけるように言葉を発した。
「……まいったよ。」
 無論、彼に答えるものは誰も居ない。が、彼はまるで誰かと会話を楽しむかの様に、言葉を続ける。
「こう言っちゃ何だが、まさか俺の方が置いて行かれるなんな。思ってもみなかった」
 外見からは想像もつかない様な、穏やかで、悲しみに満ちた声が、草原の風に乗って消えてゆく。
「良い所だろう?ここ。俺達は、少しばかり日のあたらない場所に居過ぎたからな。こういう場所が、
 良いんじゃないかと思って。気に入ってくれるといいんだが。」
 そう言って、目を細めながら空を眺め、しばらくの間沈黙する。

 どれ位そうしていただろうか。日が傾き、空がほんの少し朱くなり始めたころ、男はおもむろに
『会話』を再開する。
「………そろそろ、行かなくちゃな。夜は、奴等の時間、そして、俺達『狩人』の時間だ。」
 そう言った彼の顔は、まさしく『狩人』のそれであった。
「じゃあ、兄さんと仲良くな」
 最後にそれだけ言って、踵を返すと、彼は迷いのない足取りで歩き始めた。
 一瞬、彼をその場に押し留めようとするかの様に、強い風が吹く。が、結局彼の歩みが止まることは
無かった。
 男は歩き続ける。二人の約束が、彼一人の誓いになろうとも。かつて愛し、今なお愛し続ける少女が、
一握の灰に成り果てようとも。

―――― 灰 は 灰 に 、 塵 は 塵 に 。
     化 け 物 ど も を 、 一 匹 残 ら ず 地 の 底 へ ――――
10674:03/12/31 18:56 ID:OzxoIarb
>>105
「と、いう訳で。物凄い短いSS書いてみました」
「何が『と、いう訳』か知らないけど。あれじゃ、何のSSだか全然分かんないわよ?」
「ああ、それを当てて貰おうかと思ったんだが」
「(゚Д゚)ハァ?」
「だから、>>105 の元ネタが何かをクイズとして出題して、正解した人からリクを受け付ける、
 ってルールにしたら、スレが盛り上がるかなぁ、と」
「馬っ鹿じゃないの? そういうのはね、せめてSSを読んだだけで元ネタが分かる様な文章力を
 持ったSS職人にだけ許される遊びでしょうに。アンタにゃ百年早いわよ」
「いや、このスレの住人たちの灰色の脳みそなら、大丈夫。…多分」
「アンタの廃色の脳みそが問題なのよ」
「非道っ」

 …と、いう訳で。物好きな人は参加してみて下さい。
 やめろゴルァ(゚Д゚)/ という意見が出ればやめます。
107名無しさん@初回限定:03/12/31 19:05 ID:cUDoanoh
と、いうわけで推測をカキコしてみる。
恐らくは「吸血殲鬼ヴェドゴニア」のモーラED後だと思われます。隊長!
普段はROMってるので、これを機にカキコしてみるですよ〜
108名無しさん@初回限定:03/12/31 19:19 ID:b12DvLsz
>>102
乙カレー!
相変わらず素直になれないセリアたんイイですな
でも漏れはやっぱりヘリオンたん……雑魚スピちょこれーと楽しみだ

>>106
ヴェドゴニアでありましょう
アセリアのほのぼのSSも良いが殺伐SSもカコイイ
109名無しさん@初回限定:03/12/31 19:28 ID:CVSvIsFG
>>106
ヴェドゴニアのモーラエンド後の惣太話。

クイズ形式にするなら、最後の「灰は灰に…」あたりはバレバレになるんで
削ったりして、難しくした方がいいかも。
110名無しさん@初回限定:03/12/31 21:43 ID:nRxtMHjJ
>106
1.登場人物の内、右腕が義手の男性が出てくるゲーム。

2.登場人物の内、既に兄が死んでいる、
もしくは作中において兄が死んでしまう女性が出てくるゲーム。


上記の条件でヴェドゴニア以外のゲームを捜している俺は趣旨を間違っていますか?

とりあえず、「鬼哭街」劉豪軍の勝利後、内家駆逐SSか、
「ハローワールド」響一哉×友永遥香の人類駆逐SSと言ってみる。

111名無しさん@初回限定:03/12/31 21:51 ID:oncN7xV6
>>102乙果礼
11274:03/12/31 22:36 ID:OzxoIarb
 えー、しばらく見ない内に4件もレスが来ててうれしい限りです。74です。
で、>>107-109氏、正解です。まさかこんなにレス来るとは思ってませんでした。ありがとうござい
ます。>>110氏、間違ってません。漏れも探しました。ヒジョーにGoodJobなのですが、たった一つ
残念な点があります。

 漏 れ は 『 ハ ロ ワ 』 と 『 鬼 哭 街 』 を や っ て ま せ ん 。

と、いう訳で。>>107-109氏、リクエストがあったらレスください。持ってるゲームならSS書きます。

 …で、もう一つ、重要なお知らせが。前スレを読んでて気がついたんですが、

 本 物 の 保 守 人 さ ん に 謝 る の 忘 れ て ま し た _| ̄|○

本当に申し訳ありませんでした。m(_ _)m
113名無しさん@初回限定:03/12/31 23:51 ID:T/n2uHRl
>>102
サイコー!
勢いだけどころか、むしろ個人的に大ヒットですよー、このシリーズ。
なんとなくファーレーンの反応がイイ感じ。好み。

ではでは、お陰様でいい年明けが迎えられそうです。乙カレー
114名無しさん@初回限定:04/01/01 02:19 ID:wHT5T59q
左手じゃなかったかしらん?
11574:04/01/01 03:32 ID:uVzKtoAy
>>114
左腕でした _| ̄|○

碌なことしないな、漏れ…
116107:04/01/01 17:57 ID:K9z57weu
では「PRINCESS BRIDE」なんぞリクしてみまふ。元長サイコー(ぉ
117名無しさん@初回限定:04/01/01 18:35 ID:++VMd/K/
>116

 「その本の中になにかスポーツ出てくる?」
 「フェンシング、挌闘技、拷問、毒薬、まことの愛、憎しみ、復讐、大男、ハンター、悪人、善人、凄い美人、ヘビ、クモ、ありとあらゆる種類のけもの、苦痛、死、勇敢な男、臆病者、すごく強いやつ、追跡、脱走、嘘、まこと、情熱、奇跡」
 「よさそうじゃない」



……ちょっと古いか?
118名無しさん@初回限定:04/01/02 13:37 ID:O2l0e+bq
捕鯨
119107:04/01/02 16:58 ID:Xwr+sAjT
>>117
残念。確かにPRINCESS BRIDEではあるがエロゲじゃないなぁ………
でもうまいので座布団一枚進呈
120117:04/01/02 22:29 ID:Jcj0552D
>119
 座布団ありがとうございます
 というか、分かってもらえてよかった。>117を書き込んだ後でネタ元の
小説が、じつは三十年も前の、ちょっとどころでなく古い作品(翻訳版の
発売でさえ十八年も前)だと気がついて大慌てしました。
121名無しさん@初回限定:04/01/03 00:51 ID:WrtxlBJL
バルドフォースのSSはいかがでしょうか?透が来る前のFLAKの一日など。
要望があったら書いてみます。
122名無しさん@初回限定:04/01/03 01:30 ID:BESJJuYM
>121
キボン
123名無しさん@初回限定:04/01/03 02:35 ID:gb1WVkfT
>121
・ω・`)ノシ
ここにもいるよ
124名無しさん@初回限定:04/01/03 03:06 ID:xOIxST+/
>121
|ω・)ノシ キボン

ちなみにBBのレベッカSSはBALDR総合ネタスレにたまーに投下されてたりする。
125名無しさん@初回限定:04/01/03 03:21 ID:DVdf0fV9
>>121
お願いしまーす
126107:04/01/03 15:38 ID:5CDxbWBA
>>120
いや、まぁ読書好きですし。個人的にもオススメの作品ですね。

>>121
自分的にはバチェラの方が気になるデス。
127お留守番(1/3):04/01/03 17:23 ID:K89pUmH8
退屈な時間の過ごし方、好きな人のことを考える。

昔読んだ恋愛小説にそう書いてあった。
実践したことはない。だって私には好きな人なんていなかったから。
知識も欲求もあったけれど、どうにもならなかった。
好きな人、好きになれる人、好きになってくれる人。
それは私のことを受け入れてくれる人。
小説は物語で現実とは違う。
私にそんな相手はいなかった。そんな人はいなかった。

どれだけ求めても無駄だった。
誰一人、私を異性として受け入れてくれることはなかった。
この世界に来てパパと過ごした日々。
学習の結果、どこまでも人間に近しいパーソナリティを私は獲得した。
だから私は生殖行為の相手に人間を求める。本能が訴えるままに。
けれど駄目だった。
私の内と外は酷く食い違っている。誰にも交配の相手として認識してもらえない。
世界には私を愛してくれる人はいない。
この惑星で、私は一人ぼっちだ。

でも。
でも、でも、でも、今は違う。
具現する希望、氾濫する欲望。ようやく出逢ったのだ、それに。
私には好きな人がいる。
好きになれる人が、好きになってくれる人が。
見てくれる、呼んでくれる、聞いてくれる、触れてくれる。
そして、抱いてくれる。
彼が認識している私の貌は、驚くほど私のパーソナリティに近い。
つまり彼は、私を私として見てくれているのだ。
128お留守番(2/3):04/01/03 17:25 ID:K89pUmH8
だから私は考える。好きな人のことを。

ベッドに寝転がってシーツをかぶる。
彼の匂いに、彼の残滓に抱かれる。
目をつぶり、高鳴る胸をそっと押さえて彼を思う。
身体が熱くなって、胸が詰まる。まるで物語に出てくる女の子みたいに。
誰かをこんなにも愛しいと思える、そのことが嬉しい。
独りぼっちだった空虚な心が、あたたかなもので満たされる。

「郁紀」
愛しい人の名前をつぶやく。
鼓動が速まる。顔を思い出すだけでどきどきしてる。
私は本当に彼が好きなんだと分かる。
「好き」
小さく口に出してみる。
「好きだよ、郁紀」
なんだか恥ずかしい。
顔を枕にうずめてみたり、ごろごろと転がったりしてみる。
手足をじたばたさせてみたりもする。
何だろう、この感覚は。ふわふわ浮かんでいるみたい。
「ふふふふ」
そして急に笑いがこみ上げてくる。
いったい何をやってるんだろう私は。いてもたってもいられない気分。
興奮してような高揚しているような。発情している?
「郁紀好きー」
叫んでみた。かなり恥ずかしい。でも不快じゃない。
感情を制御できない。ほんとにどうかしてる。
恋って不思議だ。不条理で不可解。
129お留守番(3/3):04/01/03 17:29 ID:K89pUmH8
好き、好き、好き。
枕を抱きしめて彼を想う。眼差しを、温もりを。
彼だけが愛してくれる、私だけが愛してあげられる。
幸せ。
今、躍動しているこの感情は歓喜。
もしも私が人間なら、きっと唄を歌うだろう。
「郁紀」
ああ、私の頭の中は彼のことでいっぱいだ。
私を彼で、彼を私で満たしたい。
そして、そして――

玄関で扉の開く音がした。
時計を見て、もう随分と時間が経っていたことに私は気づく。
あの小説の通り、退屈な時間はあっという間に過ぎたみたいだ。
本に書いてあったことは真実で、私の恋も真実だ。今はそれでいい。
ああ、彼の声が聞こえてくる。
幸せだ。とても幸せ。
ベッドから降りて、私は愛しい人を出迎える。
「ただいま、沙耶」
いつもの優しい声に私は答える。
「おかえり!」
おかえりなさい、郁紀。大好きだよ。
130mera:04/01/03 17:32 ID:K89pUmH8
>>127-129
初めて書きました。
うねうね身悶える肉塊を想像して頂けると嬉しいです。
131名無しさん@初回限定:04/01/03 19:52 ID:NvkOD52d
おつ。
初沙耶ですな。
いい感じ。
だが一つ。

>うねうね身悶える肉塊
いや、暫し素敵な夢に浸らせておくれ
132121:04/01/03 21:02 ID:SuXHZS/H
皆さんレスありがとうござい鱒。しばしお時間をいただき鯛。
133名無しさん@初回限定:04/01/03 21:18 ID:uW+rSI35
>>105

最後に「灰は灰に、塵は塵に」と書いてあるんだから、「はにはに」でしょう。

つーわけで、書いてみてください、予告編の雰囲気で、はにはにSSを(笑
134そこ海支援(1/2):04/01/03 23:14 ID:6Lc5Nkch
 ある昼下がり。
 某島内のファーストフード店内の二階。
 四人掛のテーブルにつき、どこかギスギスとした雰囲気を醸し出す三人の少女の姿が
あった。
 その中の一人、眼鏡をかけた少女が片手を挙げる。
「三ヒロインかいぎ〜」
 少女――鮎川美奈萌の、ひどくやる気の感じられない声が店内に響いた。
 美奈萌の横に座っていた鰍山碧唯は、口の中のポテトを慌てて飲み込み、親友の顔を
見る。
「はぁ? 何よ、いきなり」
 先刻の声の調子に反して、碧唯が見た美奈萌の瞳は酷く切実な色を示していた。
「碧唯ちゃん。私たちは駄目なの。このままじゃ敗者になってしまうの」
 それまで、じっとハンバーガーの紙包みを見つめていた緒方夕凪が、正面の二人を無
表情に見ると、無感情に口を開いた。
「……歯医者?」
「緒方さんは、だまってて」
 そんな、夕凪を睨みつける美奈萌。憎しみで人を殺すことが出来る、そんな視線。夕
凪は、そんな美奈萌の瞳を十数秒見詰め返し、急に興味を失ったかのように視線をハン
バーガーの包みへと戻す。
「一体どうしたのよ、美奈萌」
 死合のような空気に慌てて、碧唯は話題を戻すように美奈萌に話しかける。
「今の私たちはひどく無力なの。このままでは、有象無象の塵の如く消え去ってしまう
の。そんなの、私は嫌なの。だから考えるの。私たちに足りないのが何かを、幸一君と
幸せになるために足りない何かを」
「で、何かって……何?」
「碧唯ちゃん。それを考える為に、こうして集まってるのよ」
 微妙な笑顔の美奈萌に、碧唯は、少しは自分で考えろよと言いそうになるのを必死に
我慢した。
135そこ海支援(2/2):04/01/03 23:15 ID:6Lc5Nkch
「いきなりそんなこと言われてもねぇ……そうだ、夕凪は何かないかな?」
「……幸一を喜ばせれば良い」
「喜ばせるってどうするのよ。あんたなんかに人間を喜ばせること出来るわけないじゃ
ない!」
 ヒステリックな声で叫ぶ美奈萌。
 碧唯は、美奈萌の横に座ったことを後悔しつつ、この時間を少しでも早く終わらせる
ために夕凪に先を促がした。
「えーと、具体的にどうするの夕凪?」
「前に私の歌を喜んでくれた……だから『夕凪の唄』というタイトルにして、全てを始
めからやり直すの」
 そんな、夕凪の言葉に美奈萌はビクリと身体を硬直させる。
「私と幸一の愛を邪魔する役に美奈萌。その親友に碧唯。ちょうど女医もいるし、私の
父と呼べないことも無い人は教授職くらいなら余裕でなれる」
 いつもの無表情のまま、その瞳だけを濁らせて淡々と話し続ける夕凪。
「それに、幸一の両親も交通事故で亡くなってる。なによりも、邪魔なものは私が全て
排除できる」
「ちょっと夕凪……」
 隣りでピクピクと痙攣を始めた美奈萌に焦りながら、夕凪の話を止めようとする碧唯。
「そうして、物理的接触を繰り返し、私は、幸一の唯一の存在になる。そして、幸一は
幸せに包まれるの」
 夕凪は、少し頬を紅く染めながら言い切る。
「……だったら、私は女医役をやる」
 なんだか、とても冷たい声で呟く。その視線は冷たすぎる故にとても熱く、−196゚C
くらいはありそうな勢い。
「なぜ? 美奈萌は胸だけは大きいから、幸一に片思いくらいはさせてあげる」
「バケモノのくせに。幸一君は正常だからあんたなんか見向きもしないわ」
 睨みあったまま、すくりと立ち上がり外へと出て行く二人。
 パインシェークを啜りながら碧唯は脱力する。
「……駄目じゃん」
 店の外からは、破壊音と悲鳴。そんな昼下がりの、なんでもない出来事。
136名無しさん@初回限定:04/01/03 23:16 ID:6Lc5Nkch
>134-135
『そこに海があって』ネタ。
昨年最後のプレイがそこ海で今年最初が紗耶唄でした。
いや、どちらも非常に面白かったデスヨ?
137沙耶の唄・耕司その後1/3:04/01/04 07:40 ID:8iHXtHuB
「――――!」
それは悲鳴ならぬ悲鳴だったのだろうか。
いつもの悪夢から覚醒すると、耕司は大きく息を吐き出しゆっくりとベッドから身を起こす。

時計を見る。午前4時。
決まって悪夢から醒めるのは午前4時だ。
(そういえばあの狂気の夜も午前4時だったっけ…)
買い置きの煙草を咥えながら
今更そんな事に気づいて苦笑する。
どうでもいいことだ。

「おや、今日は随分とご機嫌じゃないか。」
不意に声をかけられ振り返ると
肩口から切り下ろされた死体が、デスクトップチェアに腰掛けてコーヒーを啜っていた。
これもまた、いつものことだ。
「そういうんじゃありませんよ、先生。」
曖昧に答えながら煙草に火をつけた。
そういえば最近客人は自室にも現れる。症状が進行しているのだろうか?
「ふぅん…でもね、戸尾君。私は少し安心したよ。」
「安心―――?」
「そう。ああして自然に笑みがこぼれるということは、
 君はまだ狂気に覆い尽くされていないって事だからね。」
「それは医者としての見解ですか?それとも経験者としての感想?」
「おやおや、言うようになったねえ、君も。」
涼子は口元を歪めた含み笑いで耕司の問いに答える。
「俺は先生という前例を見ていたから、まだここで踏み止まれているというだけですよ。
 精神安定剤も洗面所にありますしね。―――先生、煙草もう一本吸ってもいいですか?」
「私の許可はいらないだろう。君の部屋なんだ。」
「そうでしたね。」
新しい煙草に火をつけて顔を上げると、もう幻影は消えていた。
138沙耶の唄・耕司その後2/2:04/01/04 07:41 ID:8iHXtHuB
居間へ出て腰を落ち着ける。
耕司も先ほどの客人との会話が欺瞞に過ぎないことは分かっていた。
まだ最後の一線を越えていない安堵と、いつか越えてしまうだろう確信とが
綯い交ぜになった、逃避。

―――それでも。
と耕司は思う。耕司や涼子は狂気に侵食されながらも、
上辺を取り繕って生きるくらいの余裕はあった。
―――ならば。
上辺すら取り繕えなかった郁紀は―――郁紀には一体何があったのだろうか。
そこまで考えた所で、郁紀に寄り添うように事切れた沙耶を思い出す。
次の思考に及ぶより先に、言い知れぬ悪寒に襲われて耕司は洗面所に駆け出した。

鏡の裏に隠してあった奥涯の拳銃を手に取る。
目を瞑ってしばらくすると、大分落ち着いた。
この無骨な銃だけが、耕司の理性を保障してくれている。
あの晩涼子は言っていた。
「銃は良いよ。相手にぶっ放すも良し。自分の口に突っ込んで撃つという選択肢もある。」
今ならあの時の涼子の気持ちが分かる。
幸いにして、たった1発しか買わなかった弾丸は、まだ自分に向けて発射されていない。
―――これもまた、逃避なのだ。
139沙耶の唄・耕司その後3/3:04/01/04 07:42 ID:8iHXtHuB
居間に戻ると夜が明けようとしていた。
火をつけた3本目の煙草を燻らせ耕司は肩を落とす。
思い出されるのは、透明な表情のまま斧に頭を打ちつけた郁紀、
前進を止めなかった沙耶と呼ばれたモノ、
肉塊に成り果てた津久葉、冷蔵庫のタッパに保管されていた青海。
―――そして悪夢の中での自分の姿。
襲い掛かるのは、真実が告げる絶望と狂気の片鱗。
朝陽の中、耕司は少しだけ、泣いた。

夜が明ける。
耕司は空虚な日常へ向かうべく、そっと立ち上がった。
140名無しさん@初回限定:04/01/04 07:43 ID:8iHXtHuB
>137-139
沙耶の唄。耕司エンドのその後を書いてみました。
名前欄のミスと乱文はご容赦を。
141名無しさん@初回限定:04/01/04 11:55 ID:mpQ6xyFJ
沙耶の唄のSSが出始めて今年も良い夢が見れそうです・・・・・・ありがとう食人さん。
やっとアク禁が説けたか。年末年始は規制を厳しくしたんですかねぇ。
というわけでSS保管サイト久々の更新です〜。
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/
更新内容は以下の通り

連載中
・はじめてのおつかい・ラキオス編

完結
・沙耶の唄・耕司その後
・そこ海支援
・お留守番
・ちょこれーと大騒動?
・心変わり
・『それは舞い散る桜のように』から。クリスマスネタで。
・エロゲーの主人公を誘惑する方法
・第二詰所
・遊びたいお年頃
・「それから…」
・曜子ちゃん寝る
・確認行為
・「挨拶回り・ライカ」

大分ためたなぁ。マメに更新しないと思いつつ
143名無しさん@初回限定:04/01/04 16:14 ID:WR+o4jel
>>142
乙彼っす。
最近お見かけしないと思ったらそういうことだったんですね。
てっきり年越し耐久エロゲ三昧だっ(ry
144風変わり:04/01/04 22:30 ID:zDLN1R7t
はっ!ちょこれーと大騒動?が完結に入ってる
一応続き書こうかなと思ってたりもするのですが
ん〜、まああれで完結でもいいですかね・・・・(゚∀゚)
145名無しさん@初回限定:04/01/04 23:57 ID:T5IsCguL
>>144
・・・・・・ぐは! そ、それはちょっと待ったコール。
是非とも後編をヨロシクお願いしますー 続きが気になりまくり。
146名無しさん@初回限定:04/01/05 00:21 ID:eoAg2NVy
>>144
続キヲ、求ム。
147耕司その後2 (1/4):04/01/05 03:52 ID:7e84gq1V
「じゃあな、戸尾君。元気出せよ。」

事件直後、猟奇殺人犯の親友だった耕司に対する周りの反応は冷たかった。
―――陰湿な嫌がらせや中傷もあったのだろう。
だが、当時の耕司は精神的に不安定な状態だったため、その時の事は殆ど覚えていない。
余裕が無かったのだ。

余裕があったとしても―――何も変わらないと耕司は考える。
嫌がらせにしろ、中傷にしろ、今の耕司にとっては恐れるべき対象ではないからだ。
それをするのは、ただのヒトだ。
そこには、面白半分の悪意と捻じ曲がった義憤はあっても、狂気は介在しない。
ならば、あの日の記憶も、耕司の内の狂気も喚起されることはない。
結局―――何も変わらないのだ。
もっとも、新しい「的」が見つかれば勝手に離れていく連中だ。
しばらく経つと耕司の周囲の喧騒は無くなっていた。
148耕司その後2 (2/4):04/01/05 03:53 ID:7e84gq1V
「戸尾君?」
「え?」
男は、やれやれとでも言わんばかりに肩を竦める。
上の空でキャンパスを歩いていた所、この男に声を掛けられていたらしい。
「ほら、元気出せって。」
耕司の背中を大仰に叩く。
顔と名前も一致しない学友からの激励。
ゴシップ趣味の連中の代わりに、今、耕司の周りに居るのはこういう連中だ。
それは、やはり好奇であったり
親友に恋人を殺された耕司への同情であったりするようだが、
耕司にとっては瑣末な問題だ。
「ああ、ありがとう。」
笑顔を作って見せる。
「少しずつ慣れていくさ。生活の事も、事件の事も、な。」
心の中では自分に毒づきながらそう答えると、男は安堵の表情を浮かべる。
「そうか。今日はもう帰りか?」
「ああ、またな。」
最後に軽く手を振って別れた。
149耕司その後2 (3/4):04/01/05 03:53 ID:7e84gq1V
『上辺だけ取り繕うのは、それほど難しいことじゃない。』
いつかの涼子のセリフを思い出す。
(まったくですね、先生。)
しかし耕司は、このような上辺だけの応答を大切だと思っている。
親友や恋人と同時に、涼子という理解者―――いや、狂気の共有者と言った方が正確だろうか―――
も失った耕司が、危うい均衡の上で何とか踏み留まれているのは
正気の人間との対話に因る所も大きい。
家に一人で居ると、自分はいつ最後の一線を越えてもおかしくない、という幻想に付き纏われる。
フラッシュバックする光景、寝ても呼び覚ます悪夢。
目を背けようとしても、一度照らし出された真実から逃れることは出来ない。
少なくとも他人と相対している間は―――そういう心配からは開放される。
これもやはり―――逃避なのだろうか。

信号待ちで車を止める。
運転も上の空だったが、どうやら帰路の半分くらいまで達しているようだ。
「いつまで…。」
誰に問いかけるでもなく、呟く。
「ああ………。」
直感。
「郁紀は……沙耶に縋ったのか……。」
思考の飛躍。
耕司は郁紀と沙耶がどのように出逢ったのか知らないし、
彼らがどのような生活を送っていたのかも知らない。
しかし、なぜかこの直感は間違いではないと思った。
150耕司その後2 (4/4):04/01/05 03:55 ID:7e84gq1V
これから自分はどうなっていくのだろうか。
昏い気持ちで、流れる風景を見つめる。
このまま緩やかに壊れゆく自分を、静かな気持ちで受け入れるのだろうか。
郁紀にとっての沙耶のような、縋り委ねることの出来る存在を待つのだろうか。
それとも、涼子のように偏執狂的とも言える潔癖さで隠れ棲む者を駆逐して精神の安定を保つのだろうか。
「…どれも碌なモンじゃねえな。」
乾ききった自嘲が車内に低く響いた。
どれも同じだ。
奥涯のように自分で自分を排除するか、郁紀や涼子のように他人に排除されるかの差異しかない。
あの事件で涼子は郁紀に殺されたが、
いつかは涼子も、自分自身も排除されるべき異端者であることに気付き自決しただろうと思う。
「今夜会ったら聞いてみようかな…。」
涼子の幻影は耕司の生み出す弱さだ。
聞かずとも答えは分かっていた。
分かっていたが、そう言わずにはいられなかった。

車を車庫に入れ、玄関まで歩いたところで、はたと足を止める。
「買い置きの煙草、切らしてたんだっけ…。」

近くの自販機で煙草を1カートン分だけ買う。
再び家路につこうと踵を返した耕司の眼に、眩いまでの夕陽が突き刺さった。
空を朱く染め上げる夕焼けに、
狂気に侵されていく自分が連想されて一瞬気分が沈みかけたが、
同時に、素直に美しいとも思った。
世界の残酷なまでの美しさに、何故か涙が出た。
しばし我を忘れて呆然としていた耕司だったが、
やがて、煙草を手に歩き出した。
151名無しさん@初回限定:04/01/05 04:01 ID:7e84gq1V
>147-150

沙耶の唄の耕司エンドの続きです。
>137-139書いた後、どうしても耕司が郁紀に対し
幾許かの理解を得られるSSが書きたくて投下してしまいました。

メーカースレ以外ではさして話題にならなかったようですし、
需要もあまり無いと思いますので、このネタは以上で完結とします。

どんなネタでSS書こうか迷ってるのでリクエストがあれば聞きたいです。
ウザかったらすみません。
152風変わり:04/01/05 12:26 ID:97j+KvFA
>>151
乙カレさまで〜す
いやはや、やはり職人さん〜
私とは段違いのうまさですな(゚∀゚)
153名無しさん@初回限定:04/01/05 14:40 ID:r/VCBzlK
(;´Д`)最近活気づいてきて激しくハァハァ
154名無しさん@初回限定:04/01/05 22:32 ID:n1XvCwUQ
ニトロつながりで、ファントムのハッピーな話が読みたいです。
エレンとキャルと玲二のどたばたとか。
155名無しさん@初回限定:04/01/05 22:37 ID:8cdaMpZj
>144
続き読みたいなー、とこっそり要望。
チョコ渡しても、なんかエスペリアに全て没収されそうですが(笑
156名無しさん@初回限定:04/01/05 22:39 ID:VVZh5c5y
>>管理人さん

前スレにも保守人氏が投下してる。
>>144
連載中に移動しておきましたので、安心して続きを書いてください(w

後、要望があるようなので保守ネタ各種の収録。それに「耕司その後」後編の
収録をついでに行っておきました。
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/

正月は色々忙しくって、結局「沙耶の唄」しかやれなかった……。
ああでも、「沙耶の唄」はいいですな。やっぱり世の中は純愛ですよトゥルーラヴ(w
158名無しさん@初回限定:04/01/06 01:55 ID:j2AmfoDG
>>155
でもやっぱり渡したコの気持ちも考えると没収もできず
全部きちんと食べるように言われるんだけど
その分の埋め合わせで、その夜に可愛がることを約束させられたりする。(エスペリアに)

いろんな意味で鼻血が出そうですが……。
159名無しさん@初回限定:04/01/06 04:53 ID:P+fhs8LI
チョコレート騒動の続きまだーチンチン(AAry

エスペリアに強制されてチョコレートらしき物体を食わされ悶絶するユウトたん
160名無しさん@初回限定:04/01/06 07:23 ID:9ZrKcO9z
>>151
いやこういう展開好きですよ。
探索者になるのも自殺も一緒という点で
激しく萌えました。
161姫君の帰還、王子の戴冠 (1/2):04/01/06 21:03 ID:3T0b/1se
「おかえり、お姫様」
「ただいま、王子様」

 本城家のリビングには、数ヶ月ぶりの2人きりに時間が流れている。
 ソファーに座って向かい合う理人と聖。2人の間にあるガラステーブルには、湯気を立てている紅茶と
お茶請けのクッキー、そして一枚の紙切れが置いてあった。一目で高級品と判る紙切れには、綺麗な
筆記体のアルファベットがびっしりと書き込まれている。ドイツ語で書かれている為、2人にその文章を
理解することはできなかったが、『貴女は姫君に相応しくない』という主旨の文であることは聞いていた。

「ごめんね、理人ちゃん」
 唐突に聖が口を開く。
「どうしたの?急に」
 理人が、いつものやさしい口調で問いかけると、聖は申し訳なさそうにうつむいて、
「あたし、お姫様になれなかったよ…」
と、喉の奥から搾り出す様につぶやいた。
 理人は少し間を置いてから、静かな声で
「…良いんじゃない、別に」
とだけ言った。その言葉が、聖には『どうでもいい』という風に聞こえて、たまらなく悔しくなる。
「よくない! よくないよ!!」
「聖ちゃん…」
自分でも驚くほど大きな声が出る。その勢いに乗るかの様に、感情が言葉を紡いでゆく。
「理人ちゃんにわがまま言って出てって、わたし、がんばらなくっちゃって思ったから、レッスンとかも
 凄く凄く一生懸命やったし、理人ちゃんに会えなくってさびしいのも我慢したのに、なのに、なのに…」
本当はこんなことが言いたいのではない、そう思っても言葉は止まらない。そうしてどんどん自己嫌悪に
陥ってゆく聖を、理人はやさしく抱きしめる。
「聖ちゃん…」
 暖かい胸、優しく自分の名を呼ぶ声、数ヶ月ぶりの理人の抱擁。それだけで、今まで張り詰めていた糸は
切れ、聖は子供の様に泣きじゃくった。
162姫君の帰還、王子の戴冠 (2/2):04/01/06 21:04 ID:3T0b/1se
「本当の事を言うとね…、少し怖かったんだ」
 しばらくして聖が泣き止んだあと、理人は彼女の隣に腰掛けて、そう言った。
「…怖かった?」
「うん。外国に行って、聖ちゃんが変わってたらどうしようって。僕なんかの全然手の届かない所に
 行っちゃったりしたら嫌だなって」
「理人ちゃん…」
「早智子さんは、『きっと帰ってくる頃には青い目になってるわよー』とか言って脅かすし」
「…もう、お母さんたら」
 そう答えた聖の声は、理人のよく知る彼女の声だった。
「だからね、聖ちゃんがここに帰ってきてくれたことが、僕にとっては一番うれしいんだよ。
 プリンセスになり損ねちゃったのは、確かに残念だけど。でも、僕のお姫様は聖ちゃんだけだから」
だから良いじゃない、と言って彼は優しく微笑む。
「…でもでも、ベアトリクスさんの遺産がもらえなくなっちゃったんだよ?」
「遺産なら、もうもらったよ」
「え?」
 訝しがる彼女の前に、理人は銀色に光る2枚のカードを差し出す。…あの日2人が交換した、プリンス
カードとプリンセスカード。
「お金とか学園よりも、この2枚のカードの方がずっと価値があると思う。
 ベアトリクスさんもきっとそう思ってたんじゃないかな?」
「理人ちゃん…」
そして2人は、もう一度抱き合って挨拶を交わす。

「おかえり、僕のお姫様」
「ただいま、わたしの王子様」

   ── それは、資格を持たない姫君の帰還と、何も持たない王子の戴冠の物語 ──
163蛇足:葛城の試練:04/01/06 21:07 ID:3T0b/1se
「おっす、オラ葛城!」

 ── 不合格 ──
16474:04/01/06 21:09 ID:3T0b/1se
>>161-163
「107氏からリク戴いたPRINCESS BRIDEのSSを書いてみました。…が、例によって物凄く短いです」
「っていうか、最後のアレは何?」
「聖ENDを見た時点で一番最初に浮かんだネタがアレだったんだが…。さすがにアレだけはまずいだろう
 ということで、聖のプリンセスの試練不合格SSを付け足した形で」
「何でわざわざ不合格なのよ?本編では合格っぽい終わり方だったのに…」
「いや、3章でコルヴィッツ家が試練云々を言い出した時点で、『ああ、こいつら遺産を渡す気無いな』
 と思ったので。きっと適当なクレーム付けられて『不合格』って言う落ちだろーなー、と」
「なんてひねくれた奴…」
「あ、でも、俺は聖ENDしか見ていないので、もしかしたら大きく間違ってるかもしれません。
 何か変な所があったらクレームを下さい。もしかしたら次回に反映されるかも知れません」
「アンタがアク禁くらう方が先じゃない?」
「(´-`).。oO(さもありなん)」

165名無しさん@初回限定:04/01/07 01:35 ID:OKpgST6H
PRINCESS BRIDEで
先人全ての思惑をぶち壊す、ハーレムEDなSSが読みたいなあ……
166107:04/01/07 13:01 ID:VB2Kq1Mm
>>74
えー、激しくGJ!!自分がひねくれてるせいか同じようなこと考えてましたし。遺産渡してもらえなさそうだなぁ、とか。
あえて言うならプリンセスカードは回収されてるかもです。学校は渡されなかったんだから次のプリンセスゲームに使う、とかね。
でもその場合は某彼女の家族に遺産がいくのかしら……?
とにもかくにも葛城がいいところを独り占めなのは言うまでもなくw
167風変わり:04/01/07 16:06 ID:Ol/V9XTt
>>74氏乙カレサマデ〜ス

さてさて、続き書いてみたのはいいのですが
総ページ10にも及ぶくそ長いものになってしまいました・・・
文章削ればいいんでしょうけど私の技量だと削ればわけわからなくなる可能性大(゚∀゚)
よってすいません、すいません、すいません

しかし、今回誰が主人公なのかサッパリです
とりあえず、そのお目汚し失礼します(´Д⊂グスン
168ちょこれーと大騒動?+ 1/9:04/01/07 16:07 ID:Ol/V9XTt
ある晴れた日の午後、スピリット第一詰め所の庭。
草木の生い茂る庭園の脇の広場にて無骨な剣を振り回す影が一つ。
エトランジェ『求め』の悠人である。
午後といってもまだまだ日は高い位置にある、気温もそれなりに高い。
風を切る音、一刀振り下ろすごとに飛び散る玉の汗。
―――むさくるしいことこの上ない。
しばらく『求め』を振るっていた悠人だったがふと視線を感じ辺りを見回す。
が、キョロキョロと辺りを見回すが何も見つからない。
頭に?マークを浮かべ首を傾げながらも素振りを再開しようとする。
しかし、小さな頭痛と共に聞こえてくる『求め』の声に中断させられる。
『契約者よ・・・・よいのか?』
「何がだ、バカ剣」
『午後から王女と会う約束があったのではないのか?』
もはやスケジュール帳と化している『求め』の言葉にハッと我に返る。
思わず、時計を探すが野外にあろうはずもない。
(遅れたりすれば何を言われるかわからないな・・・・)
先日、約束に遅れたときなど小一時間説教をくらったものだ。
その時の事を思い出し内心冷や汗を流しながら城へと一目散に駆け出していく。

そんな悠人の後ろ姿を見つめる一つの影。
先程悠人の感じた視線の張本人である。
「―――さすがはユート殿、手前の気配に気づかれるとは」
感嘆の吐息と共に頬を流れるのは一筋の汗。
「しかし、これでユート殿が戻られるまでしばしの時間があるはず・・・エスペリア殿にお伝えせねば」
そう呟くと、影は豹を思わせるような軽やかな動きで館の方へと消えていった。
そして、その影の動きを見つめる一つの影。
「・・・・・・」
肩で切り揃えたワインレッドの髪を風に揺られながらただ佇む。
どことなく無機質な表情、そして片手には湯呑み。
先程の影が完全に去ったのを確認するとこれまた軽やかな動きで消えていった。
第二詰め所の方へと――――――今、決戦の火蓋は切って落とされる。
169ちょこれーと大騒動?+ /9:04/01/07 16:07 ID:Ol/V9XTt
某時刻、第一詰め所、いつもの館の食卓。
テーブルを囲む四つの影。
『存在』のアセリア、『献身』のエスペリア、『理念』のオルファリル、『冥加』のウルカである。
カーテンは開けているのに仄暗い室内、どことなく秘密会議チックな雰囲気。
「ユート様が戻られるまで時間はあります、その間に『チョコレート』を―――」
「パパの為ならオルファ頑張っちゃうよ〜!」
「ん・・・・」
「承知」
やる気満々といった感じのエスペリアが言い終わる前にアセリア、オルファ、ウルカの声が重なる。
しかし、エスペリアは小悪魔的な微笑みを浮かべると続きを言ってのける。
「各自で作りましょう」
無言のアセリア、満面の笑みのまま固まるオルファ、目を見開いているウルカ。
初めに抗議の声をあげたのはオルファ。
「む・・・無理だよ!エスペリアお姉ちゃんとオルファならなんとかなるかもしれないけど
アセリアお姉ちゃんやウルカお姉ちゃんの作ったの食べさせたらパパ死んじゃうよ!」
興奮しているのかかなり失礼なことをいってのけるオルファ。
案の定、ウルカの顔がひきつっている。(アセリアも無表情に見えるが不機嫌そう)
それに対してエスペリアはというと―――
「ユート様に対する想いはそれぞれ違います。ですから、各自自分の想いを込めて作りましょう」
ある意味正論をかますが緩んだ顔を見れば魂胆は見えなくもない。
次に抗議の声をあげたのはウルカ。
「し・・・しかし、手前は何も知りません。情報もなしに作れというのはあまりにも―――」
「ん・・・茶色で甘いもの」
アセリアからヒントが出たので黙殺。
「てことは、お姉ちゃん達みんなライバルってことだね。オルファ負っけないよ〜!」
不適に微笑むエスペリアに宣戦布告をするオルファ。
女の修羅場、間には激しい火花が散っている―――気がしないでもない。
アセリアはすでに考えこんでいるし、ウルカは思い当たるものを必死で探している。
まさしく、バレンタイン聖戦である。
170ちょこれーと大騒動?+ 3/9:04/01/07 16:08 ID:Ol/V9XTt
一方、その頃第二詰め所の大して変わらない食卓。
「ナナルゥの報告だと向こうも動き始めたようね・・・」
陣頭指揮を取るのはやはり世話役『赤光』のヒミカ。
「それじゃあ、確認するけど各自で作る、でいいわね」
ヒミカの言葉に不安げながらも賛同する一同。
全員で作るという話だったのにどうしてこうなったかと言うと・・・
ハリオンが思い当たるものがあると言って全員で作っていたのだが、
各々が思い思いのものを入れたらなんというか―――竜が出来た。
幸い、キッチンの半壊程度で収まったがこれで学習したというわけである。
各自で作ればさらに被害がでそうな気がするが被害がでるのはただ一人。
食べるのも自分じゃないし、という思考である。
それにしても、走ってきたとは思えないほど落ち着いている『消沈』のナナルゥ。
いまだによからぬ妄想をしているのかくねくね中の『失望』のヘリオン。
『ちょこれーと』の完成型について議論している『静寂』『孤独』のネリー&シアー姉妹。
面倒くさがっている『曙光』のニムントールをなだめている『月光』のファーレーン。
そして、台所の後片付けをしにいった『大樹』のハリオンと『熱病』のセリア。
そんな代わり映えのしない風景の中で議論していたネリーが、
「そういえば、『ちょこれーと』って食べ過ぎると鼻血が出るみたいだよ〜」
ヘェーボタンがあったら全員が押しているだろう無駄知識を披露する。
しかし、その無駄知識を熱心に聴いている影が窓の外に一つ―――ウルカである。
さすがにあの程度のヒントだけでは何が何やらわからなかったので偵察にきたようだ。
新たに得た知識をどこからか取り出したメモ帳に書き込むと足早に立ち去っていった。
ちょうどその時台所の後片づけが終わったのかハリオンとセリアが顔を出した。
「皆さぁん〜台所の片づけが終わりましたのでもう大丈夫ですよぉ〜」
その言葉とともに全員が思い思い行動をし始める。
やはり誰かと一緒に作り始めるものから、街に材料を見に行くものなど。
その中でセリアは少し考えていた。
想いを込めて作ろうと言うが込めるべき想いが見つからない。
だけど、立ち止まっていては何も見つからない。
小さな悩みを抱えながらセリアは台所へと再び戻っていった。
171ちょこれーと大騒動?+ 4/9:04/01/07 16:12 ID:Ol/V9XTt
「はぁ・・・・」
誰にも聞こえないように小さく溜め息をつく。
謁見の間から少し離れた廊下を一人寂しく悠人が歩いている。
高価そうな絨毯により足音がほとんどしないがそのせいでその背中は幽鬼のようである。
何故、このように落ち込んでいるかと言えば―――遅れてしまったのだ。
その結果、ネチネチとレスティーナの愚痴を聞く羽目になってしまった。
(朝から、なんだか嫌な予感してたんだよな・・・・)
今更、後悔したところで後の祭り。一度下がった評価を取り戻すのは難しい。
どうやってレスティーナに機嫌を直してもらうか考えていたせいで悠人は気づかなかった。
彼の背中を見つめる熱のこもった視線に―――。

その頃『チョコレート』作りはというと・・・修羅場と化していた。
まず、第一詰め所の台所。
アセリアとウルカの姿はないがエスペリアとオルファによる壮絶なバトルが繰り広げられている。
さすがは我がテリトリーと言ったところかエスペリア、てきぱきと食材を見つけて鍋に入れていく。
一方、オルファも何度も来ている台所。少々迷いながらも華麗にこなしていく。
同じ戸棚を開けたり同じ食材を取ったりと視線が交わるたびに火花を散らしている。
二人とも人というのはここまで変われるものなのか・・・と考えさせられるほど豹変していた。
しかし、二人とも相手の行動が気になっているせいか鍋をみていない。
時たま鍋から「キシャーッ!!」とか奇声が聞こえるが気にしてはいけない。
さて、アセリアとウルカはと言うと・・・・
アセリアは自分の部屋のベッドに寝転がっていた。
明かりもつけず剣から漏れる淡い光に照らされた顔には小さな決意があった。
またウルカはとある山の中にいた。
目を閉じ、そして『冥加』に手を添え、ただひたすらに待つ。
心を無へ、傍を流れる小川のせせらぎにも耳を傾けず神経を鋭敏にする。
と、その時茂みが揺れ何かが飛び出してくる。
その影は一直線にウルカに向かってくるが全く動じず目を閉じたままだ。
しかし、距離が残りわずかになったときウルカは目を見開く。
「天壌無窮の太刀ッ!!」
澄み渡った空に獣の断末魔が響き渡る。
172ちょこれーと大騒動?+ 5/9:04/01/07 16:12 ID:Ol/V9XTt
次に、第二詰め所の台所。
まあ、なんだ・・・一言で言えば―――魔界?
某RPGの某主人公が「ここが魔界か!」とか言って探索を始めそうなぐらいヤバかった。
台所中に飛び散った得体の知れない黒い物体、なにげに脈打っている。
そして、その物体の大元と思われる鍋をかき混ぜているのはハリオン。
さすが存在自体が規格外のスピリット、造るものまで規格外だ・・・。
もはや魔女になりつつあるハリオンは置いといて他の一同は、と言えば
見かけは比較的まともなものを作り出している共同作業中のニムとファーレーン。
自分の作り出してしまったウネウネの触手を見て呆然としているヒミカ。
ヒミカの作った触手に手足を拘束され触手プレイされそうになっているヘリオン。
作り終わったのか綺麗にラッピングされた箱の横で呑気にお茶を啜っているナナルゥ。
そんな一同の姿を呆れながら見つつ作ったものを綺麗にラッピングしていくセリア。
そして、いまだに買い物から戻ってきていないネリー&シアー姉妹。
「んっ・・・いやぁ・・そこは駄目で・・・ぁん・・・す・・・ふぁぁ・・・」とヘリオンの喘ぎ声と共に時間は過ぎてゆく。

あれから大分時間が経過したとはいえ、夕暮れにはまだまだ程遠い時間。
館への道、照り付ける太陽のなか暑さから来る汗とは別の汗を流している悠人の姿があった。
(猛烈に嫌な予感がする・・・・)
先程から流れている冷や汗は止まることを知らない。
そして、体はなぜか館に向かうことを拒絶している。
と、また小さな頭痛と共に『求め』の声が響く。
『契約者よ・・・妙な気配がする』
「気配・・・まさか敵か?」
『いや、敵意は感じられない。しかし、この気配は・・・妖精とも人間とも違う。
いずれにせよ、気をつけることだ』
若干、困惑したような気配を残し『求め』の声は聞こえなくなる。
「何だってんだ・・・一体」
こちらも困惑を顔に浮かべるとまた歩みを再開した。
ふと館のほうをみるとどす黒いオーラのようなものが見えた気がした。
しかし、一瞬の後にはすでに見えなくなっていた。
こうして悠人は気づかずに地獄への階段を一歩一歩上っていくのであった。
173ちょこれーと大騒動?+ 6/9:04/01/07 16:13 ID:Ol/V9XTt
(どうしてこうなったのか・・・)
悠人は自問自答を繰り返す。
(あの時館に戻らず引き返していれば!)
精一杯の現実逃避を試みる。
目の前に並べられている綺麗なラッピングを施した箱を目に入れないように―――
悠人が第一詰め所、いつものスピリットの館に戻ってきた時そこは修羅場。
両陣営(第一詰め所VS第二詰め所)の間には激しい火花か散っていた。
何が何やらわからず呆然としている悠人をエスペリアは強引に食卓につかせた。
エスペリアの説明によると悠人の世界の行事をすることによって
「ユート様の心を少しでも癒して差し上げられたらと・・・」
と言う事らしい、エスペリアらしい心遣いに感謝はしたが・・・・。
何故よりにもよってバレンタインなのか・・・。
他にも色々とあったはずだ、クリスマスだとか節分だとか。
何せ、この世界にはチョコレートは存在しない。(いや、あるかもしれないが名前は知らない)
ということは何が出てくるか分からないということだ。
(すでにラッピングされた箱のいくつかはガサゴソ動いている。)
しかも、それを食べ比べして勝敗を決めろなどと((((;゚Д゚)))ガクガクブルブルものだった。
内心冷や汗を流しまくっている悠人をよそに包みの封印が解かれる。
第一詰め所よりオルファ、中身をグラスに注ぎ悠人の目の前に差し出してくる。
「・・・・オルファ、何をいれたんだ?」
目の前の紫色の煙を出しつつ溶解し始めているグラスを指差して言う。
しかし、「あははは・・・」という乾いた笑いが返ってくるのみ。
(というかそもそもチョコレートは固形のはずではないのか・・・判定不能)
対する第二詰め所よりナナルゥ、これまた茶色の液状のもの。
ただ見た目的にはオルファのよりもマシだと言えるが安心は出来ない。
恐る恐るだが一口、口に含んでみる。
ココアに似たような味がしてなかなか。
「比べるまでもないよな・・・」
その言葉と共に肩を落として落ち込むオルファ、そしてちょっと嬉しそうなナナルゥ。
そして、次なる戦いが始まる。
174ちょこれーと大騒動?+ 7/9:04/01/07 16:13 ID:Ol/V9XTt
第一詰め所よりウルカ、何やら皿を差し出してくる。
皿の上にデデーンと乗った茶色い物体、そして微かに香るハチミツの匂い。
「ウ・・・ウルカ、これ何なんだ?」
「猪の肝を甘辛く煮てみました・・・さ、ユート殿どうぞ」
ウルカの答えにひとまず変なものじゃなくてよかったと安心するが・・・。
ウルカの料理の実績を考えると不安になる、というかこれチョコから離れすぎ。
一口食べて思った、くそまずいと。まず、肝がほとんど生のままだ。そしてそこにハチミツ。
血生臭いやら甘いやらで食えたものではない。
早々に切り上げて、対するネリー&シアー姉妹に移る。
ちょこんと皿に乗った物体どこからどうみても―――黒く変色したバナナと黒砂糖。
彼女ら曰く「茶色くて甘くて口の中で溶けるものだよ〜」だそうだ。
食べるまでもない・・・が折角だから食べておく。
期待に胸膨らませているウルカには悪いが
「ネリーとシアーの方かな・・・」
ガックリと肩を落とすウルカにはしゃぎまわるネリー&シアーが対照的だ。

続いて第一詰め所よりエスペリア、対する第二詰め所は魔女ハリオン。同時出し。
そして、箱から出てきた物体を見て思う。
(誓ってもいい、食ったら間違いなく死ぬ。)
エスペリアの箱から出てきたのは「キシャーッ!」とか産声らしき奇声をあげながらのたくる物体。
(映画「エイリアン4」にてリプリーの腹から摘出されたアレを茶色くしたものだと想像してくれれば)
そしてハリオンサイド、皿に乗っているのは茶色ではなく真っ黒で脈打つ物体。
時たま触手を伸ばしては近くにあるものを手当たり次第に掴み自分の体に取り込んでいる。
『契約者よ・・・・』
いきなり『求め』の声が頭の中に響く。
『契約は魂の輪廻の果てまで有効であり、果たされ―――』
「不吉な事を言うな!バカ剣!!」
気合いで『求め』の声を断ち切る。
しかし、絶体絶命なことには変わらない。
目の前には微笑を浮かべたエスペリアとハリオンの姿。
手元にはのたくるチョコと触手を出して脈打つチョコ。
175ちょこれーと大騒動?+ 8/9:04/01/07 16:19 ID:Ol/V9XTt
何とか時間を稼ごうと試みる悠人。
「ほ・・ほら、これ食べると他の皆の食べれなくなりそうだから、あ、後で食べるよ」
「あらぁ〜、でも私たちの後は誰もいませんよぉ〜」
苦し紛れの悠人の一言はハリオンにて粉砕される。
「アセリアは作ってなかったみたいですし・・・・」
「ニムさんとファーレーンさんはぁ〜自分たちで食べちゃったみたいですしぃ〜
ヘリオンさんとヒミカさんはぁ〜色々と忙しかったみたいですからぁ〜」
ニムとファーレーンに目を向けるとファーレーンは赤面して縮こまっている。
ヒミカは隅のほうで泣いているヘリオンを慰めたり謝ったり忙しそうだ。
「さ、ユート様、食べてください」「そうですよぉ〜」
万事休す、仕方なく悠人はナイフでのたくる物体を切ろうとする。
が、ぬめぬめしているせいか刃が滑る。
なので、フォークでまずは突き刺す、そしてナイフで切るが・・・。
グジュッと言う音ともに出てくる緑色の液体。
しかも、その液体がナイフにかかった瞬間金属製のナイフが溶けた。
なんだか無性に泣きたくなった。
もはや逃げ道はない、フォークでその切れ端を刺し口へと運ぶ。
悠人がもはや死を覚悟した瞬間、ドアの開く音が聞こえた。
天の助け!と思いドアの方へ振り向いた、がそこで動きが止まる。
ドアを開けて食卓に入ってきたのはアセリア。
しかし、その場にいた全員が動きを止め呆然としている。
なぜなら彼女は―――全裸、いや正確には自分をリボンで包んでいるといった感じだが
何せ、隠している部分が少なすぎて全裸と言っても変わりない。
いわゆる、私をプレゼントパターンだ。
例のごとくエスペリアが口を開く。
「ア・・・アセリア、貴女その格好―――」
「ん、ユート、前に言ってた。バレンタインに自分をプレゼントする女の人もいるって」
その言葉に全員の視線が悠人へと向けられる。
しかし、当の本人はいまだに固まったまま。
「ユ・・・ユート様?」
エスペリアが声をかけるがまったく動かない。
176ちょこれーと大騒動?+ 9/9:04/01/07 16:19 ID:Ol/V9XTt
と、突如悠人の鼻から赤いものが流れ出る。
それは徐々に量を増し、決壊したダムのように流れ出す。
エスペリアの焦った声も悠人には届かない。
出血多量で貧血→死に向かう中悠人は考えていた。
(確かに寝堀り葉堀り聞かれたときに言ったけど冗談だったのにな・・・)
思い出が走馬灯のように甦る。
(俺、このまま死ぬのかな・・・でもアレ食べて死ぬよりマシか・・・)
そうしてブラックアウトしていく意識に身を任せる悠人であった。

(どうしてこうなったのだろう・・・)
下ろした髪を風に揺らめかせながらセリアは自問自答を繰り返す。
木陰にあるベンチ、照りつける太陽の日差しも幾分和らぐ。
彼女の膝の上には悠人の頭がある。ようするに膝枕だ。
顔にかかる髪を手でどけてあげる。針金のような髪質が少しくすぐったい。
悠人の鼻に詰められたティッシュは鼻血の終焉を示している。
あの後、悠人を少し外気に当たらせた方がいいと言ったのはセリアだ。
ちぎったティッシュを鼻に詰め込み、外へと運び出した。
エスペリア達も同行しようとしたが、あののたうつチョコと触手チョコが互いに戦闘を始めた。
自分の作ったものには責任を持たなければならないということで処分に負われていた。
その他の皆も自分の作ったものを片付けなければならない。
ということで何もなかったセリアだけがここにいるというわけだ。
ただ連れてきた当初はベンチにそのまま寝かせていたのだが、
枕がないと痛そうだったので自分の膝を急遽代用した。そして今この状態にある。
鼻にティッシュの詰まった顔を見ているとどうしても笑いがこぼれる。
今までほとんど笑ったことはなかった。だけどこの人が来てからどんどん自分の中の壁が壊されていく。
それは決して不快なものではなく、どちらかといえば心地よいもの。
この人のことを考えると胸が締め付けられるような想いになる・・・そして暖かい。
不可解な感情、でも答えを見つける気はない、今はこのままでいい。
セリアの顔が徐々に悠人へと近づいてゆく。
太陽と大樹の下で二つの影は一瞬だけ重なった。
この後、目が覚めた悠人に胃腸薬だと言って小さな箱を渡したのは二人だけの秘密。
177ちょこれーと大騒動?+ おまけ:04/01/07 16:20 ID:Ol/V9XTt
その夜、悠人の部屋にて、セリアから貰った胃腸薬のおかげか体調に変化はない。
(今日は散々な日だったな・・・)
ベッドに寝転びながら一日を振り返る。
レスティーナに説教をくらったり、得体の知れないモノを食わされそうになったり、
鼻血による出血多量で倒れたりと・・・・ついてないことだらけだ。
(こういう日はさっさと寝るに限る)
目を閉じて眠りの体制へと移行する。
が、ふと耳を澄ませば誰かが廊下を歩く足音が聞こえる。
徐々にその足音は大きくなり、ちょうど悠人の部屋の前で止まる。
一拍も待たずに控えめなノックの音が響く。
深夜といってもいい時間帯だ、悠人が訝しんでいると
「ユート様、いらっしゃいますか」
珍しい人物の声が響く、女性にしてはやや低く、しかし透き通るような声、イオだ。
「あ、ああ、開いてるよ」
「失礼します」
そう言って入ってきたイオに目を奪われる。
どういうわけかいつもの服ではなくシーツに身を包んだ状態。
そして、入ってくると同時にパサッという音共にシーツは床に白い波をつくる。
下につけていたのは布の下着のみ。
「な・・・ななななななな・・・!」
悠人が壊れたオモチャのように口をパクパク開閉していると、
「ヨーティア様がこの時間にユート様の所へ行くならこういう格好をしていけと・・・」
イオは魅惑的な微笑を浮かべ徐々に近づいてくる。
対する悠人は後ずさりしようとするが後ろは壁、逃げ場なし。
そういっている間にもイオは近づいてくる。
最終的に悠人が取った行動は気絶という実にヘタレな選択だった。
しかし、イオは気絶した悠人をベッドに寝かせると悠人の腕で腕枕をし、添い寝した。
翌日の朝、悠人がどうなったのかは想像に難くない。

           この勝負、イオの一人勝ち?
                              続く?
178風変わり:04/01/07 16:22 ID:Ol/V9XTt
>168-177

連投規制にひっかかりまくり(´Д⊂グスン
あはは、ちょっとネタを取らせてもらったりしましたがごめんなさい
いやはや、最後のほうにもなると急にペースダウンして来ました
う〜ん、やっぱりまだまだだなぁ・・・
179名無しさん@初回限定:04/01/07 17:39 ID:4GYwtXvO
Good Jobだ!!コニョやろうー

触手+へリオン
私をあげるっ、なアセリアたん

俺が鼻血ですよ?ハァハァ(*´д`*)


180名無しさん@初回限定:04/01/07 17:49 ID:Pp8Mu1e+
スケジュール帳な求めたん(´∀`*
181名無しさん@初回限定:04/01/07 18:37 ID:4500wrDV
アセリアたん(;゚∀゚)=3ハァハァ
182名無しさん@初回限定:04/01/07 19:24 ID:tPjB22C6
>>179
激しくGJ!
触手を作って呆然とするヒミカたん、不覚にも萌えたーよ
183名無しさん@初回限定:04/01/07 19:25 ID:tPjB22C6
179>178ね
間違い&連カキ、スマソ
184名無しさん@初回限定:04/01/07 21:22 ID:VNTivqfa
個人的に今までで一番のツボ!GJ!

この内容まんまの漫画でもいいから読みたくなった・・・
185名無しさん@初回限定:04/01/07 21:43 ID:4500wrDV
アセリア同人書く勇者は無いのか。
今なら独占状態だから一人勝ちですよ。
と言うかお願いですから書いて下さい。
186名無しさん@初回限定:04/01/07 22:16 ID:P/M3UZ53
>>178
乙彼です。
次々と得体の知れない生物兵器を作り上げる面々に笑いが止まりませんでした、
ていうか、どこをどう間違ってもチョコレートから「触手」はないだろう、「触手」は、と。w
既出ですが、触手攻めに合うヘリオン、思いあまって自分を「用意」したアセリアetc.
ツボを突かれまくりでした。
いやはや、ええもん見させてもらいました、次回作も期待してます。

#一応拙作の後編も出来てたんだけど、こりゃ来週に回した方がいい罠……

187名無しさん@初回限定:04/01/07 23:59 ID:BchP8MHV
もー、サイコー!(笑
一番まともそうなエスペリアとハリオンが危険だったのがなんともツボ。
いやいやいや、楽しかったです。感謝感激。
188名無しさん@初回限定:04/01/08 01:18 ID:F+XmXX0x
うむ、良い・・・。原作の持つ空気をそらさずに昇華している。マンガにして読みたいものだ。
しかし、ニムはやはりそのキャラクターが扱いにくいのかのう。萌え展開に持っていくには、セリア同様
主人公格に据えないと苦しいか。
次はニムあたりキボンヌ。あの娘もきっとイイところがあるはず・・・。
189名無しさん@初回限定:04/01/08 07:53 ID:zhmNsJLi
ここのSSを読むたびに思う。

……いい加減、積んでるアセリアプレイせねば。
190名無しさん@初回限定:04/01/08 17:45 ID:vOfs7FfV
>>189
言っておくが大まかなテキストは聖闘士聖矢をMMR調に解説し、戦闘表現がJOJOという
ほとんどお笑いゲーに近い感じなので萌えを期待してるとビビルぞ!
191名無しさん@初回限定:04/01/08 17:51 ID:K65kfE49
その説明で、凄くやってみたくなっちゃったヨ。
192名無しさん@初回限定:04/01/08 18:07 ID:rgGkXN+D
>>191ーっ!! メール欄の後ろ後ろっ!!
え? …ああ――っ!?
…ひどいよう、本気で信じたのに(※超マジ)
…騙されたよう (; ´Д⊂ヽ
194名無しさん@初回限定:04/01/08 21:18 ID:d1b2j+Rm
191よ、あんた幸運だったな。
俺は釣られて買ってしまったよ、出かける前にもっぺん見とくべきだったか・・
こうなったら例えノリが合わなくとも楽しんでやるーーーーー。
195風変わり:04/01/08 21:21 ID:7lby5th7
皆さんに喜んでもらえて感謝感激雨あられです
触手ヘリオンは急にエロが書きたくなって少しだけ書いてしまいました
たくさんの感想スレありがとう御座います

>>186
あははは、そこまで言われるほどいいものではないんですけどね。
実のところ、次回作は特に考えてなかったりするんです(´Д⊂グスン

>>188
確かにニムは扱いにくいですね〜
というか自分の中で「はぁ、面倒」という面倒くさがりキャラで定着してるので(´・ω・`)
ニムも懐けば実に従順なキャラなんでしょうが・・・・
196名無しさん@初回限定:04/01/08 21:21 ID:Ct/plpLT
おいおい、この時刻・時間帯でか
無駄に行動力があるのが仇になったかw
197名無しさん@初回限定:04/01/08 21:32 ID:F+XmXX0x
で。思うのだが。後にもしファンディスクなぞが出たら、あえて掴み所のないキャラを用いた
短編を発表して欲しいとオモタよ。そうすれば、もっと創作の幅が広がる。もっとスキになれるかも知れないしな。
ああ、全員分やればいいのか。
198名無しさん@初回限定:04/01/09 07:56 ID:3iY7y5iN
>>195
ニムたんはエチシーンでのメイド服とエロエロな性格は良かったし、ファーレーンを
慕ってるという設定があるから上手く生かせると良さそうだがたしかに難しいわな。
ただ、ファーレーンのことは「お姉さま」と呼んで欲しかったな…
199名無しさん@初回限定:04/01/09 19:56 ID:i15F+Su+
捕鯨
200名無しさん@初回限定:04/01/10 03:02 ID:WzKlbxNl
「大番長」の人間化後のカミラたんの和姦ぇちを誰か書いてくれんかのう・・・
201名無しさん@初回限定:04/01/11 19:24 ID:cr8OvF/m
保守
2026人一家、嫁5人 (1/2):04/01/12 13:28 ID:p1sKCNeH
 本城家のリビングでは、今日も今日とて6人の男女が夕食をとっていた。
 優柔不断気味ではあるが優しく、皆のまとめ役である 本城 理人。
 理人の幼馴染で、公私にわたり理人のサポート役でもある 嘉島 聖。
 幼い感じで、甘え上手の 姫史 愛生。
 いつも元気いっぱい、良くも悪くもムードメーカーでトラブルメーカーの 葛城 佳央。
 のんびり屋だが、葛城のツッコミ役で抑え役でもある 逢坂 遥奈。
 一見物静かではあるが、実は人一倍感情が豊かな 櫻見 枝絵留。
 数ヶ月前から変わらぬ面子での食事は、まるで絵に描いたかのように和気藹々…
「嘉島先輩、今日のお味噌汁、少し塩辛くないですか?」
「あら、ごめんなさいね、逢坂さん。はい、お酢」
 …とは正反対の雰囲気であった。

 そもそも、事の発端は理人の決意であった。
 5人の少女から1枚づつカードを受け取った後、彼は『5人の中から一人を選び、その人以外からは
 カードを受け取らない』と固く心に誓った。
 それは、彼の培ってきた倫理観からすれば当然の事であり、何より『断る』事によって、少女たち
を傷付け、自分自身も傷付く事に対しての覚悟の証でもあった。
 問題は、その『一人』がなかなか決まらなかった事にある。元々優柔不断気味な彼の性格に加えて、
5人の姫君たちはみな美少女ぞろい、しかも理人のことを愛している。誰一人選べずに、ただカードを
断るだけの日々が続く。
 少女たちは焦った。このゲームにおいて選択肢はただ一つ、オンリーワンかつナンバーワン。自分たち
の心に秘めた想いを諦めることなどできない。…だが、カードは受け取ってもらえない。それは、魔女の
いない灰被りにも等しい、プリンセスへの不渡り手形。
 ある時、一人の少女が気付く。自分のカードが受け取ってもらえないなら、せめて他人のカードを理人が
受け取らないようにすればいい。むしろ、しなければならない。
 そしてそれは、他の4人についても同じであった。
 …かくして、夢への階段を登るシンデレラストーリーは、他人を蹴落とし自分のみが生き延びるという
バトルロワイアルへと変貌を遂げたのであった。
2036人一家、嫁5人 (2/2):04/01/12 13:29 ID:p1sKCNeH
 …夕食は続く。
 聖から渡された酢を、遥奈は景気良く味噌汁に注ぐ。
 そして、匂いだけで酸っぱくなるようなそれを一口すすって、
「うん…、さっきよりは、だいぶ良くなりました」
と、完璧な笑みで聖にいう。聖もまた、完璧な笑みでもって、
「そう? 逢坂さんにはその位でちょうど良いんだね」
と返す。この程度は序の口であり、この家の人間にとっては日常茶飯事である。
 …だが、この空気に耐えられない者が一人だけ居た。
「あの…」
 理人は何とかこの空気を変えようと口を開き、そして即座に後悔した。
 少女たちの視線が突き刺さる。みんな顔は笑っているが、理人に向ける視線は獲物を観察する肉食獣の
それと比べてもなんら変わりない。
「どうしたの、理人?」
「言いかけたこと途中でやめたりしたら、ごっつ気になるやんなぁ」
少女たちの圧力に負けるような形で、理人は言葉を続ける。
「櫻身さんのお弁当箱が、まだ出てないんだけど…」
 言ってから、しまったと思う。このままでは、彼女が新たな標的となってしまう。
「あ、いや、その…。別に急ぐとかそんなんじゃないんだけど、明日のお弁当当番は僕だから、なんて
 いうか、ええと…」
話題を変えようと言葉を続けるものの、うまくいかない。
気持ちばかり焦る理人に、枝絵留はすまなそうな顔で
「ゴメン。後で部屋に持って行くから」
 空気が変わる。少女たちの視線は、獲物を観察する肉食獣から、仇を狙う復讐者の物へと昇華される。
「いや、洗い物をする時にキッチンの方へ持ってきてくれるとうれしいんだけど…」
 理人の呟きが少女たちに届く事はなかった。

 …時は夜。
 理人は自室のベッドに倒れこみ、ため息をついた。
 ドアの外には5人の少女。彼女たちは木の周りを回るトラの如くにらみ合い、ドアの中には入ってこない。
 もし、いま誰かからカードを受け取ったら殺人が起きるんじゃないかと半ば本気で心配しながら、理人に
できるのは、ただ眠ることのみであった。
 …心の中で、ベアトリクスへの呪詛をつぶやきながら。
204蛇足:嘘予告:04/01/12 13:30 ID:p1sKCNeH
 ── 20年前の惨劇 ──
「わたしはこれと共に生きこれと共に死す。その事に、いまさら何の躊躇いがあろうか!」
「止めろー! 逢坂を、止めろー!!」
 ── それが今、再び繰り返されようとしている ──

「本城君…、キミがプリンセスゲームに参加したような勇気が、ボクには無いんだよ…」
 ── 明かされぬ真実 ──

「わたしのコードネームは、遥かなる奈落と書いて遥奈。」
「みとれよ、遥奈姉ちゃん。うちらプリンセスが束んなれば、育葉学園の一つや二つ!」
「「「「「「直系の佳央様、まずは我らにお任せを!」」」」」」
 ── 次々と襲い掛かる刺客 ──

「恭ちゃん…。恭ちゃんは、そうやって黙っているだけですか」
 ── そして、少年の苦悩 ──

 PRINCESS BRIDE Episode5
  罪と罰 ── 全てはベアトリクスの為に ──
                      
                               ── 近日公開 ──
20574:04/01/12 13:31 ID:p1sKCNeH
>>202-204
前スレよりも寂れている現状をどうにか出来んものかと思い書いてみた「6人一家、嫁5人」+αで
ございます。急いで書いたのでいつにも増して乱文&尻切れトンボですが…。
まあ、本物のSS職人さんたちが戻ってくるまでの繋ぎということで。
206名無しさん@初回限定:04/01/12 23:28 ID:Z2sk3pn3
>>202-205
ワラタよ。Good Job!!
207風変わり:04/01/13 21:38 ID:BIfNczrL
74氏乙カレサマデース!
面白かったですヨー(・∀・)人(・∀・)

さて、私はそろそろ撤退時かな・・・
リクエスト通りニムたんの書いてみたりしてるんですがこのままだと全員分書いてしまいそうで・・・
あまり多く投稿するのも他の職人さんの邪魔になりそうですから( ・∀・)ノ
208名無しさん@初回限定:04/01/13 22:37 ID:PaRyDWnB
>>207
構わないから全員分書いて下さい。1週間に1つぐらいで良いですから。
209名無しさん@初回限定:04/01/13 22:48 ID:zqIxi8/x
このスレ埋めるぐらい書いても構わんから。
210S×S-01 01/03:04/01/14 04:20 ID:y9OPCjdZ
「先生、お久しぶりです」
 恩師に頭を下げられ、断るに断れなかった某大学での特別講義の後、そう言って話し掛けてくる
若者の姿があった。
「うむ、久しぶりだね、匂坂くん。君もこの講義を選択していたのだね」
 ええ、と涼子に笑いかける若者は以前のように陰鬱としたところが綺麗さっぱりなくなっていた。
 思わず、目を細める。正直のところ彼との遣り取りにはいい思い出がない。それでも、自分が関わった
患者の元気な姿を見ることは、無条件に嬉しいものだ。
「以後の調子はどう?」
「いいと思います。特に変わったこともないですし」
「そう」
 と口にして、郁紀の後ろに控える女の子の存在に気づいた。何気なく立っているだけなのに、注視
しないと気づけないとは。自分の感覚が鈍磨しているのか、女の子がそういう立ち方をしているのか。
「そちらのお嬢さんは?」
 そう言って促した。
 女の子が歩み出てきて、郁紀が肩を軽く抱く。随分手馴れているな、というのが涼子の印象だった。
「私は沙耶。今年からこの大学に通っているの。郁紀との関係は、そうだね、家族、かな」
 そういって笑みを交わす二人はとても幸せそうだった。
 腰を過ぎるくらいに長い髪、小さな顔に大きな目が黒々と輝いている。整った顔立ちは綺麗というより
可愛いといった方が良く、大学に通う年齢とは思えぬ程に幼かった。これが沙耶か、と細大漏らさず
観察しようかとも思ったが、目の前にいるのは無邪気に幸せを享受する普通の女の子に見えてならず、
その様子に中てられ、密かに嘆息して肩を竦めた。
「仲がいいのは結構なことだけど、避妊くらいはキチンとしなさいよ」
 涼子は脈絡なくそう言った。いや、彼女としての脈絡はある。二人の様子からごにょごにょな関係である
ということは分かるし、それならば沙耶という少女はまだ幼いのであって、体組織の発達具合からは孕むなど
といったことにはまだ早い。いや、まあ、この体では行為そのものが芳しいことではないのであって――――、
「否認? 何を否認するというんです」
211S×S-01 02/03:04/01/14 04:21 ID:y9OPCjdZ
 勘違いしているのか、惚けているだけなのか、郁紀が見当違いのことを言った。
 その横で身動きを取らないでいる沙耶は、涼子の言わんとすることを理解した上で、恥ずかしがった方が
いいのか、それとも分からないでいる振りをした方がいいのかを考えている。
「だから、避妊だよ。見たところ、まだ早い。そうなってしまってからでは取り返しがつかないよ」
「だから、何を否認するというのです。僕たちは何も否とすることはありませんよ」
 実のところ、涼子は気が短い。論理的でないことも嫌いだ。目の前の若者は自分の忠告を意に介さない
上に、自分を嘲弄しようとしているのではないか。そう思うに至っては、鉄拳で制してやろうかと拳を
上げて、その位置にて広げた。
「だから、孕ませないように気をつけろよ、と忠告しているんだ」
 震えるように呟いた。
「先生、公衆の面前で何を言い出すんですか、全く」
 この人は、デリカシーというものが、そもそも、と郁紀は涼子の質問を黙殺してブツブツと何か
口にしていた。
 黙殺された、という事実に涼子はブチ切れた。
「い・い・か、若僧」
 目ン玉を針の先の如く小さく細め、こめかみに血管を浮き立たせた涼子を見て、郁紀は思わず一歩下がった。
「貴様は理解力に乏しいようなので明確な物言いにて問い直してやろうじゃあないか」
「い、いや、その」
 涼子は蛇のように表情をした。二又に分かれた舌がチロチロと出てきてもおかしくない雰囲気だ。
その口を押し広げ、息を大いに吸い込んで、
「体も出来上がらない幼女を夜な夜なベッドに引きずり込んで、薄い乳房を揉みしだき、恥毛も生え
揃わない秘所にテメエの赤黒い剛直を突き込み、狭い狭い膣穴をゴリゴリと擦り上げて楽しんだ挙句、
その獣欲を完うさせる為に、亀頭を子宮に引っ付けるが勢いで精子をブチ撒けるような真似は止めて
おけよ。孕むから、と忠告したんだ」
 声は明瞭だった。大教室であり黒板前のやり取りだったが、そのフロアにいた全員の視線が自然と
集まった。郁紀は今にも死んでしまいそうな表情を青色にセメントして動かない。対するように沙耶は
赤い顔をして、俯いている。郁紀のズボンを掴む手が弱々しくて、さながら童女みたいであった。
ちなみに演技ではない。
212S×S-01 03/03:04/01/14 04:22 ID:y9OPCjdZ
 一方の涼子はというと、沈黙する郁紀を蔑むように見やり、この上なくサディスティックに唇を歪ませて、
「何だ、まだ理解できないのか、私としては大分砕いて言ったつもりだったのだが。仕方ないな、
まあ、要するに――、だ」
 涼子が続きを言わんとした途端、久しぶりにゼンマイを巻かれた人形みたいにぎこちない動きをして、
「先生、飯を、喰いに、行きませんか。奢りますよ」
 郁紀の喉は渇ききっているようだった。
「飯、ねえ」
 腕を組み、片目を瞑って、わざとらしく唸る。
「ここの学食は旨いんですよ。カツ丼の並でも親子丼の並でも牛丼の並でも、いや、A定でも
構いません、奮発します」
「膣、の話だったな」
「先生、寿司はお嫌いですか」
「いや、そんなことはない。中トロやウニ、イクラなどは私の好物だ」
「…そう、ですか、良かった。実はですね――――」

 当分の間、匂坂家では緊縮財政が敷かれたとか。
213松波:04/01/14 04:39 ID:y9OPCjdZ
「S×S-01」
…一応、沙耶の唄より。
パラレルワールドにて、沙耶を含めた彼らの話を幸せ風味に書こうと
していたみたいです。
いや、ご覧の通りに挫けてしまったんですけど。
214名無しさん@初回限定:04/01/14 05:11 ID:Bljk7mM+
素晴らしい仕事だ
それにしてもこんな時間からご苦労なことだ
215名無しさん@初回限定:04/01/14 16:07 ID:JWsuRFYr
パラレルワールドなのか……
沙耶の唄流れるあのエンド後の話なのかとガクガクプルプルしちまったよ俺
216名無しさん@初回限定:04/01/14 21:01 ID:mVZWvHEn
ごめん
吹いた
217名無しさん@初回限定:04/01/14 22:07 ID:ECcm0Ntp
俺もてっきり、沙耶ENDの後
沙耶が種蒔いても生きていた。って設定かと思った。
218名無しさん@初回限定:04/01/14 23:24 ID:LuD7z0/T
沙耶人間化ENDか…

問題はどうやって自己改造するかなんだよなあ。
青海タンを殺さないようにするのが序盤でのフラグになりそうだ。
219さやまんが大王:04/01/14 23:28 ID:k9Cyc8Ex
「あー、そんなわけで新しく君らと一緒に勉強することになった奥涯沙耶くんだ。
 先日定年退職された奥涯教授の娘さんになる」
「よろしくお願いしまーす。あ、郁紀ぃ〜。やっほー」(大きく手を振る)
「おいおい、こんな所で……」(困りながらも小さく振り返す)
「へぇ、あの娘がお前の言ってた沙耶って娘か。なかなか可愛いじゃないか」
「ホントね。まさか匂坂君がああいう趣味の持ち主とは知らなかったわ」
「……そう、ですね。(……好きな人がいるって、あんなに小さい娘だったんだ……)」
「いや、その、別にそういう趣味ってワケじゃあ……」

「医大生として有り得ない年齢と知能と髪型をしてるからといって虐めないでやれよ」

「「「「…………(アンタが一番虐めそうだ……)」」」」
「これで昼間も一緒にいられるね、郁紀〜♪」(聞いてない。そして泥沼発言)

----------------

>>210-212を見たら思わず。気に障ったらスミマセン
取りあえず丹保先生はこの日から魔法瓶と重たいハンドバッグを常備
220名無しさん@初回限定:04/01/14 23:36 ID:LuD7z0/T
>>219
「ええい、よるな人外!!」

こんな感じな展開だよな。
221カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:15 ID:vzJro61N
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1066290477/865-871
↑の続きです。お邪魔しますです。
222カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:16 ID:vzJro61N
 それからしばし、混沌とした状況は続き、いよいよ砕人がピクリともしなくなった段において、ようやく身を起こしたカミラが見たものは、呼吸すら止めたかに思える砕人のかばね。
「……さ、砕人君?」
 とりあえずカミラは、砕人の脇に手を差し入れ、仰向けにかえしてみる。
 ゴテン。
 目玉が点となった砕人の顔が、重力にひかれて横を向いた。
「え」
 浴室に聞こえるのは、ひとりカミラの呼気ばかり。
「ええと……じゃあ」
 意を決し、居住まいを正すカミラ。
「洗うわね」
 洗うんかい。
 元吸血鬼の宿業であろうか、持って生まれた資質であろうか、状況に対して極めてズレた反応を見せつつも、カミラは気を取り直し、タオルを握り直して、死にっぱなしの砕人の洗濯を始めるのだった。
223カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:17 ID:vzJro61N

 時がたつ。

224カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:18 ID:vzJro61N
 意図的に、あるいは無意識的に避けていた部位ではあった。
 しかし、他のあらゆる箇所をタオルは辿った。
 あとはそこに行くしかない。
 その部位へ対するためらいから、つい手が遅れたということもあり、もうできるだけ速やかにコトを済ませ、砕人の体を湯船へ入れてやらねばならない。
 わかっている。それはカミラにもよくわかっている。
 が、しかし。
「……」
 洗わずにそのままという選択肢も、なきにしもあらず。
 ではあるが、○学生の男子というものが、いかに清潔に関し頓着しないか、知らないカミラではない。
 時は過ぎる。
 この逡巡の間に間に、砕人の身は病魔を受け入れてしまうかもしれない。
 あきらかに大げさであるのだが、血縁でもないこの少年を、我が子か我が弟のように可愛がるカミラである。気が気ではない。
 ゴクリ。
 緊張から沸いた唾を飲み下し、カミラが動いた。
「えい」
「あひゃあっ!?」
 狭い室内に反響する桃色の嬌声。
 覚醒もしよう。実に敏感な器官であるのだ。
「わ、わわわわわわわわ」
 あふれる声は用をなさない。
「なんっ、なん、なん」
 それどころか、いま己がなにをされたか、それすら把握していない様子であった。
225カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:20 ID:vzJro61N
「砕人君、これが最後だから、ね」
「なにしてるんだよっ!?」
 めっ、と叱りつけるような、優しいようなカミラの表情を、砕人は凝視する。
「じじじじじじじじじじじじいじじじじじい……ジッ!?」
 ズルリと、泡にまみれたタオルが器官を滑る。
 おそらくは「自分でできる」と唱えたかったであろう形に口を開いたままで、砕人はのけぞった。
 関知せず、真面目ぶったというより、本人大真面目なのだが、眉を逆八の字にそらせた表情のカミラが、熱心にそこへタオルを這わせる。
 ペニスを比率で圧するような陰嚢ばかりが目立つ秘所を、カミラの手によるタオルが泡立てていく。
「や、はぁ、んぁ……」
 もう喘ぐばかりの砕人が視線を注ぐそこでは、雪のように真白く、また柔らかな肉質をもったカミラの手が蠢いていた。
 陰嚢を持ち上げ、裏側を。
 陰嚢と太ももの接地面を。
 そして、申し訳なさげにこうべを垂れた、桃色の包皮に包まれたペニス自体を。
 やわやわと、カミラの手とタオルが撫ぜていく。
「あ……はぁ……あ、ん」
 砕人の声帯から漏れ出る声は、いつしか聞くものの脳を侵す、怪しく艶めいたソプラノをあげていた。
 その効果は、慈母のようなカミラにさえ、いつしか変化をもたらす。
 白い頬が、首筋が、浴室に立ち込める温度のせいばかりではなく、上気させられていく。
 自覚もないまま、カミラの意識はぼかされたようにのぼせていった。
 それは、まさしく少年の奏でる淫声のため。
 そうとは気づかないカミラは、意識することなく、その申し出をしていた。
「……さ、……砕人、君」
「ふぁ……ん」
「剥いて、洗わないと、……ね」
 カミラよりよほど早く、心を快楽郷へと飛ばしていた砕人は、カミラの胸元、ゆらゆらと重そうに揺れるふたつふくらみへいつのまにか移した視線をそのままに、コクリと首を縦に振る。意味もわからないままに。
「う……ん」
226カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:21 ID:vzJro61N
「じゃ……あ」
 実際のところ、カミラにしても、了解を求めていたわけではなかった。
 たとえ拒否されていたとしても、無言のまま、手は自然に動いていただろう。
 すっぽりと、しかしシワ少なく、少年の陰茎を覆って隠すその皮を、ボディソープで濡れた手がなでつける。いよいよカミラの胸が高鳴る。
 ほんの少しの力を込めて、陰茎を挟み込んだ二本指が動いたその瞬間の出来事だった。
「あふぁ……!」
 色素の薄い包皮より、さらに桃色に光る頭部が暴かれたに見えたと同時。
 ひときわ大きな嬌声が、砕人の口から放たれ、わずかに膨らみ、それが弾けた。
「あ、あ……あぁ……ん」
 糸を引くようなか細さで、砕人の声が沈殿する。
 自失したカミラが最初に知覚したのは、春草のような青臭さだった。
 不快感などあろうはずもないそのもの――目前の愛らしい少年から放たれたザーメンが、濃いぬめりを保ちながら、カミラの玉肌を伝う。
(くさ……い……でも、嫌な匂いじゃ……ない。……ううん、むしろ)
 まだ淫夢から覚めやらぬカミラが、ゆっくりとした動作でその液体を、人差し指で救いとったときだった。
「え……?」
 平素勝気な、そしてついさきほどまでは淫蕩にかすんでいた砕人の目元が、ひきつる。
「う、うわ」
「……」
「わああああああ!」
 そんな声を出したら、喉が裂けてしまうのではないかと、カミラが正気に遠い思考のままぼんやり考えていると、砕人がガタンと椅子を蹴立てて立ち上がった。
「な、なんだこれ……なに……」
 恐怖が少年の顔を彩って。
「なんだよこれええええええ!」
 ひきつれた頬に、それを表す涙が伝った。
「え……え?」
 繰り広げられる狂態に、カミラの意識が急速に現実へと舞い戻る。
「ど、どうしたの砕人君!」
「ね、姉ちゃあん……おれ、おれ……病気になっちゃったよぅ」
227カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:22 ID:vzJro61N
また中途半端なとこで切って申し訳ないです。
ウルルカ出るのいつになるだろ。
228名無しさん@初回限定:04/01/15 00:31 ID:NNqXfQ7v
>>221-227
グッ……ジョブッ!!
天然おねえさんっぷりを遺憾なく発揮するカミラさんがすばらしい!
──んだが、一つ細かいチェックをば。
×砕人
○砕斗
なりよー。

これにウルルカたんはぁはぁが混じるのが楽しみですわい。
229カミ×砕人│←ウル:04/01/15 00:37 ID:vzJro61N
>>228
ゲエーーーーーッ!?
そういやそうだったああああああ!

指摘サンクス……
名前間違いって致命的すぎんだろ、俺……
230S×S-02 01/11:04/01/15 06:41 ID:ZUyIhKlV
「あの人が、匂坂さんの……。沙耶さん、って言ったっけ……」
 春の柔らかい陽射しが射し込むカフェラウンジにて津久葉瑶はコーヒーに
溶け込むミルクをぼんやりと眺めていた。しかし、目に捉えるものは全て
意味なく、取り留めなく去来するは先の大教室でブチ撒けられた匂坂郁紀
ロリコン疑惑のことだった。講義直後ということもあって、あのフロアに
留まっていた学生はかなり多い。あの手のスキャンダラスな話題は、遠か
らずして学内に広まるだろう。大学が高校までとは違って学部内の隔たり
が大きく、同じ学部内といえどもグループ以外の友人関係は往々にして表
面上のことだけ、といっても、ニュース性は高いだろう。そして、色々な
意味合いで自分の胸の裡も占拠された。
 ドキドキしていた。温かいコーヒーを口に含ませても、胸の鼓動は引いて
いかない。
 脳神経医学というまだまだ未知の分野でトップクラスの学識を誇り、最先
端の研究ラボを有するT大に所属する丹保涼子。彼女は一限を担当する佐々木
教授の教え子であるらしく、教授は本当に教え子を扱き使うのがお上手なの
で皆さんも気をつけてください、と冗談まじりに挨拶し、依頼されたという
特別講義を行った。彼女が語る細胞生物学や脳神経医学、一転して哲学的な
見地から生起する示唆に富む語り。どれもこれもがとても魅力的で、瑶は大
学に入ってから一番、といっていいほど真剣に耳を傾け、提示される情報や
思考法などを心に刻んで吟味した。難解な内容だったし、朝一番の講義だった
こともあって、疲労は大いに溜まったけれど、それにも増して充実感が体を
包んでいた。講義が終了しても興奮が冷めやらず、涼子を注視していた瑶の
視界には、歩み寄り談笑し始める郁紀と梳っただけの長い髪をぴょこぴょこ
と跳ねさせ、春先だというのに薄手のワンピースで幼い体を包んだ少女を捉
えていた。
231S×S-02 02/11:04/01/15 06:41 ID:ZUyIhKlV
 少女は大学の休みが開ける前に、郁紀に紹介された。瞬間、自分の恋が終
着したことを知った。泣かず、二人を祝福できるくらいには自分が保てて
いたことに驚き、その後、親友である高畠青海との対話の中で涙腺が壊れ
たように溢れ出る水滴が、郁紀を好きだったことは嘘じゃなかった、と教
えてくれた。
 そんな鬱々とした終末を経た長期休暇が明けて、最初の講義だった。単
純にも感化されて勉学に励もうかなとも思った。それなのに、幸せそうな
二人を見てしまった。自分が他者を妬みやすい俗物であることなどとうの
昔に受け入れてしまったので、胸の裡にわだかまるものが発生しようとも
驚きはしない。寧ろ驚いたのは、
「ロリコン、だったんだ……」
 そう匂坂郁紀がロリコンであり、あんなに幼い女の子を夜な夜なベッド
に引きづりこんでアンナコトやコンナコトをしている、そのことだった。
 瑶は、独りでに想像して赤くなり、気恥ずかしさを飲み込むように残り
のコーヒーを口に入れ、
「津久葉瑶さん、でいいのかしら」
 思わず、吐きそうになった。しかし、寸でのところで堪えきる。
「ケホッ、ケホ、ケ、ホッ」
「あら、御免なさい、驚かせてしまったかしら」
 言っていることはともかく、口調も態度も全く御免なさいなところは絶無
な涼子がそこにいた。
「……丹保先生、どうしてここに……。お寿司を食べにいったんじゃ……」
 涼子はあら、という表情を見せて、
「今は二限が始まったばかりよ。彼らはこのコマも講義を受けているわ」
「そうですね……」
232S×S-02 03/11:04/01/15 06:42 ID:ZUyIhKlV
 語尾に行くほど力がなくなる物言い。彼女独自の思考回路にてピンとキた
のか涼子は、
「ひょっとして、サボり?」
 級友の悪事を見咎めた底意地の悪い小学生みたいな笑みを浮かべる。
 瑶は少し驚いた顔をして、
「ええ、学期始めからいけないとは思ったんですけど、ちょっと気になるこ
とがあって」
「匂坂郁紀と沙耶、この二人ね。あなたの懸案は」
 瑶は大きく目を見開き、食い入るように涼子を見つめた。どうしてそのこ
とを、と唇を動かすも、声はでない。
「そんなに驚かなくてもいいと思うんだけど……。まあ、色々な噂を聞くこ
とがある、それだけのことよ」
「……はい」
 涼子は漸く運ばれてきたコーヒーをブラックのまま口にし、90分間の講義
で振るった舌を癒す。
 その姿は優雅で大人びており、不用意にも自分と比較してしまった瑶をさ
らに落ち込ませることとなった。
「丹保先生、…男の人は小ぶりで幼い胸が好みなのでしょうか」
 先の瑶同様、涼子の内心も大いに動揺した。確かに、乳房だの膣だの剛直
だのと卑猥な言葉を乱発し、大学当局から注意されそうになって行方をくら
まそうとラウンジに逃げ込んだ涼子であったが、いきなり小さいおっぱい夢
いっぱい? などと人生相談されるとは思ってもみなかった。しかし、抜群
の演技で切り抜け、内心の動揺など露ほども感じられない。
「そうだね、やはり各人の趣味にもよるが、日本人の初物大好きな民族気風に、
少女を自分の意のままにできるという征服欲、端的に言うとこの辺りが男を
ロリコンに走らせる因子の一つとして考えられるようだね。――――匂坂郁
紀のように」
233S×S-02 04/11:04/01/15 06:44 ID:ZUyIhKlV
「で、でも、私も、キ、キスをしたこともないし、当然、まだ、です」
 じろり、そう擬音がなりそうな視線で瑶を見る。沙耶のように虚乳でなく、
巨乳と明記可能なほどのボリューム。座っている為に他の部位をみることは
できないが、当然、それらも発達していることだろう。つまり、
「世の男どもはどう思うかねえ。それだけ胸がデカいんだ。揉みしだかれ、
吸われ、寄せられ、挟みも使用済み、そう思われても不思議じゃあないだろう
ねえ」
「そ、そんな、そんなことありませんっ」
 瑶は思わず立ち上がって叫んだ。周囲の視線を集めてしまったことからな
のか、それとも憤慨しているからなのか、顔が赤い。
「まあまあ、あなたを疑っているとかそういうんじゃなくて、世の男どもが
どう見てるかは分からないよ、というだけの話よ。ほら、立ってないで座りなさい」
「す、すみません」
「でも、まあ匂坂くんはもう無理だろうね。ロリコンがどうの、ってレベル
じゃなく、沙耶そのものにどっぷり浸かっちゃってるよ、あれは」
「――――――――」
 瑶は無言で涼子を見た。
「私の大立ち回りもそういった警告部分が少なからずあってね、あの沙耶って
女の子は外見こそ幼いけど、房術は歴戦の古強者だと考えていい。ま、これ
はただのオンナの勘ってやつなんだけどね」
「もう、どうにもなりませんか」
「匂坂くんを、かい?」
「はい」
 瑶は頷いた。
234S×S-02 05/11:04/01/15 06:55 ID:ZUyIhKlV
 涼子は足を組み直して、
「彼のことが好きかい」
「はい」
「本当に?」
 目を細めて尋ねる。その真剣さに気圧されることなく、瑶は頷いた。
「ふー、あることは、あるんだけどねえ」
 軽薄に笑い、ちらっと流し目を送る。瑶の言葉を待つかのように。
「大丈夫です。何でもしますから」
「彼に対して身を張る、つまり、かなり恥ずかしい真似をすることになるよ」
「大丈夫です。何でもしますから」
 自分に言い聞かせるように、繰り返す瑶であった。
 
 艱難辛苦の寿司地獄が終わり、大学に戻って四限を受けて、ようやっと家路
に就こうとした郁紀と沙耶に、瑶は何気ない振りをして話し掛けた。
「お久しぶりです、匂坂さん、それに、……沙耶ちゃん、でいいかしら」
 唐突に登場した瑶に呆然とする郁紀をよそに沙耶が反応する。
「一応、私も大学に通う年齢なんだし、ちゃんはやめてくれないかな」
「あ、そうだったよね。でも、そんな風には見えないよね、何歳なの?」
「18歳」
「そうなんだ、でも、ほんとそうは見えないよね。もっと若く見えるわ」
 いけない、と思いながらも冷ややかな空気を作り出してしまったと瑶は
反省する。しかし、あからさまに不機嫌な態度で反応する沙耶を見るに
つけては、自制などできる筈もない。
「ありがと。郁紀はロリコンらしいから、若いって言われるの、沙耶は嬉し
いんだ。えへへ」
235S×S-02 06/11:04/01/15 06:58 ID:ZUyIhKlV
 そういって、沙耶は郁紀に抱きつく。少女特有の愛らしさを纏って。しかし、
瑶に向ける視線だけは艶然としたオンナを感じさせるものであった。
 理性が軋む音がした。オーケー、そっちがその気なら容赦はしない。沙耶
が虚乳に訴えるなら、自分もまた巨乳に訴えよう。
 場を収めようと苦心する郁紀をよそに、女の戦いが、幕を開けた。
 
 事情を知らない者が端から見れば、随分と羨ましい光景である。片や人目
引く胸をさらに強調した白いドレスに身を包む美女、片や幼くはあるが、
整った顔立ちやスタイルを黒いドレスにてより完璧なる領域へ昇華させた美
少女。その二人を引き連れた郁紀は、ハイソエティな香り漂う空間、即ち、
クリスタルタワーの36階に出店しているイタリア料理店へと訪れていた。
 その店先で。
「しかし、本当に、先生が?」
「ええ、昼はムリヤリ奢らせてしまったから、そのお詫びとお礼にって」
 郁紀は信じられない、という表情を浮かべ、沙耶は子どものようにはしゃ
いでいる。

「それって、あの、その、む、無理矢理、ですか?」
「何を言ってるのよ、あなたみたいなキレイな女性とセックスできて嫌に思
う男なんかいないわ。合意なんて後づけで十分。それよりも間違えないでよ、
これが匂坂くん用の薬、こちらが沙耶用の薬。沙耶の方はただの睡眠薬だけ
ど、匂坂くんの方はちょっと特殊な薬だからキチンと彼に飲ませなさいよ。
まあ、少々効果のある媚薬、とでも思っておけばいいわ。あなたはその巨乳
で彼を悦楽へと導くことだけを考えればいいのよ。それから、イタリア料理
店で落とせなかったらその下の階にはバーも入っているから、そこで何とか
なさい。そのあとは手筈通りに31階のスイートルームでNTRよ。お金? 大丈
夫、私から出るわけじゃないから、好きに飲み食いしてくれて構わないわよ。
匂坂くんには私からのお詫びかお礼とでも言えば誤魔化せるでしょう、恐らく」
236S×S-02 07/11:04/01/15 07:00 ID:ZUyIhKlV
 問題は薬をどのタイミングで忍ばせるか、それに尽きた。まさか疑われて
はいないだろうが、二人の視線はあるし、テーブルはやけに大きいし、席は
離れているし、料理や飲み物を運ぶのはウエイターの仕事だし、チャンスは
中々訪れない。無難な会話に、料理を誉める声、それらが偶に行き交うだけだ。
 時間が刻一刻と過ぎる。料理はコースで予約されていた為に、初めての瑶
には今がどの段階かは良く分からなかったが、セコンドピアットなどと言わ
れたこの皿の雰囲気からしてメインのように思えてならない。食しているの
は本格イタリア料理だというのに、瑶は味も分からず、ただ機械的に口に運
ぶだけである。結局、チャンスは訪れず、そのままずるずるとデザートまで
食してしまい、瑶は自分の不甲斐なさに落胆のため息を漏らした。
 そんな時である。
「えへへ、トイレにいってくるね」
 沙耶が席を立った。黒いドレスをふりふり可愛らしく歩いてゆく。遅いよ、
と瑶は思った。もう、食事は済んでしまった。かくなる上はバーでなんとか
するしかないな、そう思った瞬間、
「ディジェスティヴォでございます」
 ウエイターがグラスをそれぞれ配置し、濃い紫色の液体を注いでいく。
どうやら食後酒、らしい。瑶の目に野心的な色が浮かんだ。辺りを見回す。
まだ、沙耶が帰ってくる気配はない。
 やるなら今しかない。覚悟を決める。
 ウエイターが離れた。言うまでもなく郁紀は沙耶が戻ってくるのを待って
いるようで、先に手をつけようとはしない。
 絶好の機会だ。今、薬を混ぜることができれば、それは、その直後に胃の
腑へと落とし込めるであろう。何とか郁紀の注意をそらして、グラスへ薬を
注ぎ込め。ほら、早く、これ以上引き伸ばせばあの忌々しい少女が戻ってく
る。そうなれば全ては水泡に帰す。今だ、夜景が綺麗だとか何とか言って郁
紀の注意を、
237S×S-02 08/11:04/01/15 07:02 ID:ZUyIhKlV
「あ、ああの、あああ、の」
 細く小さな、誰にも聞こえることのなかった声が瑶の口から漏れた。郁紀
は当然のように反応しない。それを見て、また、決して郁紀の注意を逸らす
などできないであろう自分に、暗澹たる気持ちになった。
 泣きそうだった。自分は肝心なところでいつもこれだ。なんて臆病なのか。
郁紀のことも、沙耶が現れる前にもっと積極的にアピールしておけば、こん
な汚い真似をしなくても彼と恋仲になれたのではないのか。いや、しかし、
自分の内面はこうも汚く醜い。こんな女なんて、何がどうであれ、結局、彼は
応じなかっただろう。もう、どうでも―――――、
「津久葉さんっ」
 郁紀の鋭い声に瑶は思わず顔を上げた。郁紀は瑶の少し前の辺りに目をやっ
ていた。釣られて見る。そこには、傾きかけたグラスがあった。反射的に手
を伸ばすが、遅い。グラスが床にまで落ちなかったが不幸中の幸い。しかし、
内容物まではそうはいかず、テーブルから床へと滴り落ちていた。
「ご、御免なさい」
 郁紀は大丈夫、と笑みを浮かべて、手持ちのハンカチでテーブルを吹き始めた。
 そして、しゃがんだ。床を拭く為に。
 テーブルの上へと注がれる視線は、瑶だけとなった。
 本能的な所作だった。
 無が支配していた、といっていい。
 全ては、濃い紫色が覆い隠した。
 瑶は一瞬だけ、悪魔のような笑みを浮かべた。
238S×S-02 09/11:04/01/15 07:03 ID:ZUyIhKlV
 その後は実に予定通りだった。郁紀は次第に落ち着かなくなり、沙耶は眠
いと言い出した。そこへ部屋を取ってあるとの瑶の一言。部屋は二つとって
あるので、郁紀と沙耶は一方で自分はもう一方で寝ればいいとの甘言の前に、
二人は一も二もなくあっさりと承諾した。前後不覚な二人は手渡された鍵が
瑶の部屋番号になっていることも気づかなかった。
 二人と別れた瑶は、自分に割り当てた部屋で興奮に打ち震えていた。節々が
軽い熱を帯びる。それはそう、小さいころ、かくれんぼで、隠れて鬼の動向
を窺うような、そんな昂揚感だった。
 5分くらいが経ち、そろそろ、と郁紀、沙耶ペアの部屋へと向かう。
 鍵を持つ手が一層震える。胸の鼓動も直に食い込んでくるように大きい。
知らず知らずの内に肩で息をしていた。震える右手を左手で押さえ込み、穴に
鍵を差し入れる。喉が鳴る。ゆっくりと回す。ガチャリ、と音がした。
 部屋は自室と同じ造りで、入って直ぐに視界が開けた。二人の居場所を確
認しようと入り口から動かず視線だけを彷徨わせる。郁紀はすぐに見つかっ
た。ベッドにうつ伏せで倒れている。しかし、
 沙耶が見当たらない。
 もう一度、視線だけを動かす。やはり、いない。浮かれていた気持ちの半
分は暗黒色に塗りつぶされた。急に膝の力が抜けてドアに凭れかかる。いや
いやと首を振る。それでも、前へと進んで、沙耶の現在状況を確保しなけれ
ばならない。それは自分の平安と直結する事柄だ。今度こそ逃げるわけには
いかない。
 ゆっくりと、足音を立てず、一歩を踏み出す。
 部屋は面積が大きい代わりに、付属のバス、洗面所、トイレを除いてほぼ
ワンフロアだ。要するにこの三つか、もしくは、ベッドの裏側、それが残さ
れた死角となる。その中で優先して確保しなければならないのが、ベッドの
裏側だ。ここは他の三方からも死角となるため、ここさえ確保してしまえば、
これを拠点とすることで自分の安全は保障される。
 瑶は祈るようにベッドの裏側を覗き込んだ。
239S×S-02 10/11:04/01/15 07:12 ID:ZUyIhKlV
 空、だった。
 欲を言えば、ここで寝ていてくれた方が良かったが、取りあえず、当面の
安全は保障された、と身を隠して息をついた。
「なーにしているの」
 瑶は動けなかった。恐怖に震えて、ではない。見えざる何かに強制的に体
を押さえ込まれているかのように動けないのだ。いや、その両者に境界など
あるのだろうか。当の瑶にはそんなことは関係なく、自分は動けずに、背後
には沙耶がいる、その事実だけが全てであり、絶対的な恐怖だった。しかし、
疑問が残る。何故。睡眠薬を飲んだではないか。眠いと言っていたではないか。
「勿論、見てたからだよ。トイレっていうのは嘘。瑶、何かしそうだった
し、それなら誘い出したほうが監視するのも楽だしね。郁紀が寝ているのは
私とキスしたから。その時に流し込んだの。ワインと一緒に睡眠薬を」
 瑶の心を読んだように、沙耶は言った。そして、瑶は慄然と震えた。
 
「私のこと怖い? でも、安心して。郁紀に手を出そうとしたのは憎いけど、
今の私には皆で仲良くっていう制約が存在するから、瑶が郁紀に抱かれ
たい、っていうのならそれを排除することはできない。皆で仲良くを遵守し
て3Pっていう程度かな。ま、私も我慢するから瑶も我慢して、としか言え
ないよ」
 さっきまでの金縛りが嘘のように瑶は振り返った。そこにはバツの悪
そうな沙耶がいた。
「胸、おっきいね」
 と沙耶。
「胸、ちっさいね」
 と瑶。
 そして、二人は郁紀へと向き直り、
「この幸せ者」
 キョ乳同盟成立の日、だった。
240S×S-02 11/11:04/01/15 07:13 ID:ZUyIhKlV
 翌日、痛む節々の違和感で目覚めた郁紀は、傍らに裸の沙耶が寝ている
ことはともかく、瑶までもが裸で寝ていたことに心底度肝を抜かれて、
進退窮まり、どうしようかと激しく悩んで、逃げようかとも思ったが、
腹を括った。
「土下座で済めば、いいなあ」


「あはははははははっ、あはは、あははははははっはっは」
 盗聴器で始終聴き通しだった涼子は最後の郁紀の科白で凄まじい哄笑を
上げた。所々で大笑いしていたが、それにも増しての爆笑であった。
「しかし、やるねえ、人外ロリ」
 息も絶え絶え、そう口にする丹保涼子は、玩具を買ってもらった幼児の
ようにどこまでも嬉しそうであった。
241松波:04/01/15 07:31 ID:ZUyIhKlV
「S×S-02」
>>230-240
沙耶の唄より。 

01を読んでくださった方、レスを下さった方ありがとうございました。

>215氏,217氏
パラレルというのも微妙なラインで、中途で放棄したSSというのが、
END後の世界をシリアス風味かつ幸せそうな話(全員が生きてる、
沙耶が構築した世界という向きで)を書こうとしていたのですが、
結局、断念したわけで。書けても整合性を取れなかったら放棄した
でしょうし、微妙ですが。それでもって、01と02はその後のオマケ
として思いついた話なので、ちょっと引きずっているのかも
知れません。今さらですねー。

>219氏
えー、気に障ったら、というのはひょっとすると私に対して、でしょうか。
もし、そうであれば、いえいえ、とんでもないです。大変嬉しいです。

ここまで書いて、沙耶の唄で最も気にいったのは涼子先生かな、
と思う次第であります。
しかし、仕事しろよ、先生。
242名無しさん@初回限定:04/01/15 09:14 ID:5A9AgU4O
オアー松波氏がフィバってるフィバってる!

24374:04/01/15 19:38 ID:HYPXaiSo
しばらく見ない内にSSフィーバーが (゚Д゚ ) ガーン
でも、沙耶も番長もやってない… orz

>207
風変わり氏、いつもレスありがとうございます。
>リクエスト通りニムたんの書いてみたりしてるんですがこのままだと全員分書いてしまいそうで・・・
ぜひ、全員分書いて下さい。 雛祭とかホワイトデートとか、イベントは多々ありますよー。
244カミ×砕斗│←ウル:04/01/16 00:16 ID:OwO/gLNx
>>222-226の続きです。
今回はエロシーンすらありません。すいません。
明日からはエロエロかしら。
245カミ×砕斗│←ウル:04/01/16 00:17 ID:OwO/gLNx
「え……」
 我に返ったばかりのカミラにはわからない。砕斗の不安がわからない。
「なん、なんか、白いの出て……変なの……」
 そこまで言ったところで、砕斗の血相が変わった。
「あ! ね、姉ちゃん! カミラ姉ちゃんにもかかって……うぇ……ご、ごめ」
「落ち着いて、砕斗君」
「ごめ、ごめっん、ねえ、姉ちゃんも病気になっちゃうよ! 姉ちゃんも病気になっちゃうよおおお!」
 叫び様伸ばされた手が、カミラの頬を乱雑に拭う。砕斗はまさに狂乱の極みに達していた。振り乱された涙が床やカミラの肌へと散り飛ぶ。
 カミラは思う。
 精通のことを知らない年齢ではないはずのこの少年が、こうまで取り乱す。
 きっと、それは、事実知らないからだ。
 他のなにもかもを打ち捨てて、ひたむきにジャイロのことだけを考えてきたこの子は、同年代の少年たちが興味を持って迎える知識に接する機会がおそらくはなかったのだ。
 だからこそ、こうもうろたえる。
 精液という、怪我から湧き出す膿のようにも見える液体が、生まれて初めて自分の体内から放たれたのだ。
 なにも怪我などしていないのに、それはおかしい。異常だ。
 幼い少年の世界が、そう結論づけたに違いない。
 カミラの胸を、痛ましい悲しさが占めた。
「大丈夫……」
「ひくっ、ひく、ぐふっ」
 鼻水まで垂れて顔をしわくちゃにするその子を、カミラはそっと、けして押し付けがましくないよう、優しく抱きしめる。
「ね、ね……ちゃ、さわっちゃ、駄目っだよ」
「大丈夫……」
 なんて優しい子だろうか。
 恐ろしくてたまらないだろう、これまでなんの問題もなく健康だった体に、突如訪れた異常。
 胸が裂けるほどの緊張と恐怖に苛まれて、余裕などまるでないはず、いまでもこうしてぶるぶると身をおののかせている。それでもこの子は、カミラを心配して、自分に触るなというのだ。
 心のほかほかとするような愛しさが、たちまちカミラの胸中を満たした。
246カミ×砕斗│←ウル:04/01/16 00:17 ID:OwO/gLNx
「なんでもないのよ……」
「ひく、うぇ、うっく」
「なんでもない、男の子なら、それはみんなあることなの……」
 安心させるよう、ますます深く砕斗を引き寄せ、ふくよかな双乳へとその顔を抱きとめる。
「大人になったら、みんな出るようになる。これはね、ザーメンっていうの」
「え……?」
 カミラの胸へ、鼻水や涙やこぼしながら、砕斗が顔をあげる。
 それを感じて、ほんの少し顔を引き、見上げた砕斗と視線を合わせながら、カミラは続けた。
「体がね、大人になったら、みんな経験することなのよ。病気なんかじゃない、どこも悪いことはないの」
「そ、それじゃあ、俺、だいじょうぶ……?」
「ええ」
 カミラの顔で笑みが咲く。
 それを見たとき、砕斗から震えが消えた。
「ずず」
 安心しきった雰囲気で、砕斗が鼻をすすりあげる。
 笑顔のままにその頭をなでて、カミラも安堵した。
「……うー」
 さわさわと、髪のうえからなでられるのはよほど気持ちよいのか、うっとりと目を細めながら、しかし少々不満げな言葉を砕斗はこぼす。
「俺……かっこわるいとこ、見せちゃった」
「そんなことないわ」
 ばっとばかりにおもてを弾けさせ、砕斗が抗議した。
「そんなことあるよ! ……あんな、あんなさあ」
「私は普通だと思うわ」
「……」
「誰だって、怖いことがあったら平気でいられないもの。砕斗君はザーメンのことを知らなかったんでしょう?」
「う、うん」
 納得できないのか、砕斗の頷きはぎこちない。
「それなら無理もないわ。いきなりあんなものが体から出たら、取り乱さないでいられる人なんていないと思う」
247カミ×砕斗│←ウル:04/01/16 00:18 ID:OwO/gLNx
「……狼牙兄ちゃんも?」
「……え」
「狼牙兄ちゃんも……そうなのかな」
 その疑問には、カミラも少々考え込む。
 狼牙君……誰よりも強い瞳をしたあの人。
 ときに射抜くような、ときに包み込むような、なにがあろうとそらさない、強い瞳のあの人なら。
「ちがう、よな」
「……」
「きっと、兄ちゃんだったら」
 このことに関して、砕斗とカミラの思いは同じらしかった。
 カミラもそう思う。狼牙という名のあの少年ならば、どんな事態に直面しようと、必ず逃げない。怯えない。
「俺……兄ちゃんみたいに、なりたいんだ」
「……それは」
「わかってる、わかってるよ。こんなことでおろおろしてる俺なんか、狼牙兄ちゃんには全然かなわないって」
「砕斗君!」
 狼牙のことを思い浮かべたそのときに、言いよどんでいたこと、恐れていたことを口にした砕斗に、ついカミラの声が高まる。
 それを恐れる様子もなく、砕斗は続けた。
「でもさ、でも……いつか、兄ちゃんみたいな男に、俺はなりたいんだ」
 少年の決意表明は、まるで狼牙を幼くしたような強い光をその目に宿していた。
「……なれるわ。きっと」
「……うん」
「いまの目、狼牙君に似ていたもの」
「え……。へへ、そっかな」
 そう言われた途端、照れてあっさり力を抜いた砕斗に、内心苦笑しつつも、カミラは改めてその髪に手を乗せる。
「大丈夫、砕斗君なら、……大丈夫」
 彼のなかのヒーローに、彼自身がいつか追いつくことができますように。
 また目を細める砕斗を見つめながら、カミラはひっそりと神に祈った。
248カミ×砕斗│←ウル:04/01/16 00:29 ID:OwO/gLNx
っと、今日はここまで。
249名無しさん@初回限定:04/01/16 06:32 ID:pZEjAHGC
グッジョブ!(AA略)
続き楽しみにしてます。
250名無しさん@初回限定:04/01/16 21:44 ID:kqhrcgYX
グジョーブ!

しかし、ふと思うが小説家として食っていけそうな職人さん結構いるよな〜
お題決めて人気投票とかすると面白いかもな(゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ
251名無しさん@初回限定:04/01/16 21:49 ID:oaVxr/g7
>>250
める欄の後ろでネタばらし、のイタズラは本気にしてアセリア買っちゃった
香具師とかもいるので……
252名無しさん@初回限定:04/01/17 06:54 ID:OOaliGIT
>>251
本気にされたとすると書いた張本人の漏れはなんだか人様のサイフを勝手に操ったような気がして
罪悪感が・・・・・・あのMMRとジョジョが云々って書いたヤシだよね? 

(´・ω・`)
253名無しさん@初回限定:04/01/17 18:19 ID:rStqdZN3
気にスンナ、ネタを見抜けんかったそいつが悪い












、、、いやまぁぶっちゃけ俺なんだけどね、でも歌がすごく気に入ったからいいよ。
254名無しさん@初回限定:04/01/17 20:46 ID:cMCGMEwv
>>253

抑えても抑えきれない揺れるこの想いは 止めどなく寄せる波のよう

とか?
255名無しさん@初回限定:04/01/17 21:21 ID:tn/+Lhsr
いいじゃないか、踊らされてようがなんだろうが、決してつまらなくない、むしろ高確率で「すばらすい」
と言える作品に巡り合えたんだから。
256名無しさん@初回限定:04/01/17 21:39 ID:NXRadX/h
SXSの作者の人は、確かにいい仕事してる。
でも、そんなご都合主義なシナリオだと沙耶の唄の
悲壮感やメッセージ性が失われると思った。

主観すまん。
257名無しさん@初回限定:04/01/17 23:04 ID:xMilHewf
>>256
それはその通りだが、でもそういった部分は本編で享受できるから
別にいいのでは、とも思う。
258大嘘予告 1/3:04/01/18 01:45 ID:WtU8UOgR
 ある運命が交わる話をしよう。

 場所は三咲町、遠野邸。
 琥珀の部屋

「雪の中の温泉か、いいな」
 この屋敷唯一のテレビを見ながら遠野志貴は呟いた。
「今は夏だからな・・・・・・」
「あは〜志貴さん、お任せください」
 遠野家の当主、志貴の妹の秋葉に仕える使用人の琥珀は志貴の呟きに答えた。
「琥珀さん」
「心辺りが一つありますよ」
「まさか海外じゃ・・・・・・ないよね?」
「いえいえ、国内ですよ」
「名前は確か・・・・・・」

「龍神村です」

259大嘘予告 2/3:04/01/18 01:46 ID:WtU8UOgR

 場所は変わりアメリカ、マサチューセッツ州アーカム。
 ミスカトニック大学。

「大十字九郎君、魔導書を得た後の君の活躍は聞いているよ」
 大学を卒業し探偵業を営んでいた九郎はある日、恩師であるヘンリー・アーミティッジによって大学へと呼び出されていた。
「とっくに卒業した俺に何の用事ですか?」
「うむ、秘密図書館の魔道書を一冊取り返して欲しい」
「魔道書を・・・ってあそこから盗まれたんですか!?」
「正確に言えば貸し出されたまま返却されていないのだが・・・・・・」
 アーミティッジは席を立つと棚にある名簿を取り出した。
「卒業生の一人なんだが、借りたまま卒業してしまってね」
「それで俺に回収にいけと。でも何で俺なんです? 優秀なのはほかにもいるでしょう?」
「優秀な卒業生でかつ自由に動けるものは少ない。そこで探偵の君に依頼をする事になったわけだ」
「相応の報酬を払おう。無論かかる経費はすべてこちらもちだ」
「で、場所はどこなんです」
 あきらめたのか、それとも報酬に釣られたのかは分からないが九郎は依頼を受けた。

「日本の龍神村と呼ばれる場所だ」
260大嘘予告 3/3:04/01/18 01:46 ID:WtU8UOgR

 そして舞台となる龍神村。
 そこは万年雪に覆われ、龍神伝説を伝える田舎の村。

「たいへんよ彼方ちゃん」
 村唯一の温泉旅館、龍神天守閣の女将佐伯つぐみは今日も微妙なモーニングコールで起こされたアルバイトの出雲彼方、彼の部屋に入るなり開口一番そう告げた。
「何?」
「遠野財閥の当主様がここに来るのよ」
「更に外国からのお客様も」
「な、なんだってーー!?」
 万年雪に覆われているとはいえ、地方の田舎であるこの村へそのような客が来る事自体彼方にとっては驚く事だった。

「大変だな彼方さん」
 彼方がいつものように水汲みに向かっていると、突然背後から声をかけられた。
「芽依子か」
「つぐみさんから聞いたよ」
「ところで前から気になっていたんだが」
「ん?」
「おまえがいつも持っているその本って何なんだ?」
「・・・・・・彼方さんには理解できないような難しい本だ」
 この後、いつものように彼方は芽依子にさんざんにおちょくられ、水汲みのために龍神の滝へと向かっていったのだった。
261大嘘予告 4/4:04/01/18 01:50 ID:WtU8UOgR
 本来は交わるはずのない三つの物語。
 何かに導かれるかのように龍神村へと集まる異能者達。
 死を見る魔眼をもつ退魔の血を引くもの。
 最強の魔道書の主となり世界を変えた魔術師。

 彼らが雪に閉ざされ悲しみに覆われた村で出会うとき、一体何が起こるのであろうか。


 斬魔大聖デモンベイン・月姫・SNOWクロスオーバーストーリー
 公開時期――未定
262:04/01/18 01:52 ID:WtU8UOgR
>258-261
大嘘予告
簡単に言うと・・・構築中に力尽きました。○| ̄|_
まあもったいないので、続きを誰かが書いてくれたらいいな、と
とりあえず投稿しました。

263:04/01/18 01:54 ID:WtU8UOgR
大嘘予告
>>258-261
簡単に言うと・・・力尽きました。○| ̄|_
まあもったいないので、続きを誰かが書いてくれたらいいな、と
とりあえず投稿しました。
264名無しさん@初回限定:04/01/18 03:59 ID:m8RY0AFn
そっち系統のクロスオーバーものって、アレとかソレとか、
最近3話が更新された香具師とか、いいもの多いよな。
265名無しさん@初回限定:04/01/18 04:48 ID:xURUYpAP
ああ、鏡の。
アレはいいもんだな
266名無しさん@初回限定:04/01/19 01:20 ID:qt6a0EBT
クロスオーバーか……

アセリアとKanonのクロスオーバーとか書いたら誰か読んでくれるかしら。
永遠神剣第三位『奇跡』とかなんとか言っちゃって〜



……_| ̄|○
267名無しさん@初回限定:04/01/19 02:21 ID:V+IoEBxR
>266
|∀゚) お待ちしてます。

|)))

|<アセリア積んでるけどねー
268名無しさん@初回限定:04/01/19 07:44 ID:ckaJqtAL
>>266
某スレ的発想でU-1かと思ってしまったんでなんか激しくイヤ
269名無しさん@初回限定:04/01/19 09:11 ID:0NEKIJIx
>>266
まじカンベン
270名無しさん@初回限定:04/01/19 10:13 ID:Xejxr8ST
>>269
シリウス好きハケーン
271名無しさん@初回限定:04/01/19 17:39 ID:KL3q5cEe
むしろ、永遠神剣『悪夢』で大暴れした後に
永遠神剣『絶望』でロウ・エターナル化する勝沼紳一様の陵辱SSをきb(ry
272266:04/01/20 00:30 ID:qgOWio1A
予想通りというか、むしろそれを期待しての書き逃げのつもりだったんだけど、
興が乗ってきたので本当に書き出してみたw

↓こんな感じの書き出しで。
 風もなく、耳に痛いほどの静寂の中、その巫女はとんっ、と軽やかに給水塔へ降り立
った。朱塗りの下駄が、ぐっと鳴って残雪に沈み込む。
 真に「巫女」であるかは定かではない。ただその装いが、白の単衣に緋の行灯袴と、
いわゆる巫女装束の要件を備えるが故に、仮にそう呼んで不都合はあるまい。
 もっとも、冬の夜の、人気の絶えた校舎の屋上の給水塔、という場所は、巫女が居るに
は少々自然さを欠く。かつその手には、古式ゆかしい装いに不似合いな茶色のコンビニ
袋が提げられていた。
 かすかに漏れる美味しそうな湯気が、冷えきった夜気に触れるそばから掻き消えていく。
 例えるなら一幅の絵画ならぬ、一幅の戯画。描き手の意図不明の落書き。
 巫女は、雲間から覗く冬の月に照らされ、陰影の濃くなった顔を眼下に向けた。
 真っ直ぐな眼差しの先には、向かいの校舎が月明かりと水銀灯を浴びて夜の底にうっ
すらと浮かび上がっている。その窓越しに伺える一階の廊下の片隅に、「悲壮」な雰囲
気をまとった少女が、一振りの剣を携えてぼんやりと立ちつくしていた。
 その構図もまた、意味不明である。
「ふうん…」
 巫女は袖の裡より蝙蝠扇を抜き出し、口元に当てて唸った。白い吐息が扇の骨に割ら
れて渦を巻く。
 そして。瞬き一つの間に、巫女の姿は湯気のように掻き消え、目を開いた時には、その
少女の傍らにいた。

……ちなみに、長編っぽいけど短編。懸案のU-1はゆの字も出てきませんが、
やっぱ「シャレ」で済ませられるほどにはKanonはイメージよくないっすかそうですか。
_| ̄|○
273名無しさん@初回限定:04/01/20 01:32 ID:/pimGXOT
>>272
おまえの文章が意味不明だ。
274266:04/01/20 01:41 ID:qgOWio1A
>>273
ああ、まだ続きあるんすけどねー、全部で8レスくらいかな。
ま、お蔵入りにしときますわ。んじゃ。
275名無しさん@初回限定:04/01/20 02:22 ID:GY3tyIJe
>>266
葉鍵がらみはここでは極めて賛同を得にくいからやめとけ
あと月もな
276名無しさん@初回限定:04/01/20 03:03 ID:0reGOydg
まあ葉鍵はいまや二次創作板と呼んで差し支えないような状態だから
クロスオーバーでもなんでもあそこなら受け入れられるよね
277名無しさん@初回限定:04/01/20 08:26 ID:f8SfbEm0
>>276
葉鍵には下手くそなクロスオーバー作家を叩くための専門スレが・・・・・・
278名無しさん@初回限定:04/01/20 15:54 ID:f3T7xphD
性格には痛いSS叩きの場所だけどな。
姉妹スレのU-1SS叩きスレも毎日大繁盛だ。
279名無しさん@初回限定:04/01/20 17:55 ID:0iX5ozg4
U−1はハマると凄いぞ。
「次はどんな糞が……」とワクワクドキドキ、胸弾む毎日です。
ちなみにどんな糞かというと、

金色か銀色の長髪で中性的な顔立ち(美形)の相沢祐一が
(ほとんどオリキャラ状態)
神とか魔王とかを殺せる力によって、女の子にちょっかいかける
チンピラを半殺しにする実に大人気ない話。


あと、「とらは」「月姫」とかはU−1SSの犠牲になりやすい。
とらはのヒロインが相沢祐一にべた惚れだったりする。

……合掌。
280名無しさん@初回限定:04/01/20 18:10 ID:VOPYRMGL
>>279
エロゲじゃないが、エヴァンゲリオンの二次創作でもその「糞」とまったく同じ
症例をたくさん見かけるのだが・・・いわゆる「スーパーシンジ」ものだが。

あれは集団無意識の為せる業なのか、それとも作者が共通なのか・・・
281名無しさん@初回限定:04/01/20 18:40 ID:ZCZg3pE3
まじスか…。
どっちも「幻想に浸るアホ」に人気のある誘蛾灯みたいな作品だからかなあ。
282名無しさん@初回限定:04/01/20 18:45 ID:0dih6cTx
好きにやらせておいてやれよ・・・
可哀想な子達なんだから。
283風変わり:04/01/20 18:57 ID:PRqvp+BV
むむぅ、少し怪しげな流れになりつつある?

さて、ニムたんの書くといってから一体何日たったのでしょう・・・・ごめんなさいごめんなさい
今回はなんだか少し真面目風味・・・・設定壊れてるかも(´・ω・`)
ニムたん・・・・やっぱり扱いづらいよ

とりあえず連投規制に引っかかりながら投稿します、お目汚し失礼〜
284別れと再開 1/9:04/01/20 18:58 ID:PRqvp+BV
雲一つない爽やかな青空、どこからか小鳥の囀りでも聞こえてきそうだ。
しかし、雲がないことを恨めしく思うものもいる。
何故なら今はコサトの月、ちょうど現実世界でいう夏にあたる時期だ。
照り付ける太陽、まだ午前だというのにそれなりの気温である。
ただ、洗濯日和なのはいうまでもない。
現にここ―――第二詰め所の庭にも幾つもの白いシーツが風になびいている。
そんな庭の片隅、樹齢何百年ともなろう大樹の下に暑さとは関係なしにダレている者がいる。
ラキオススピリット一の面倒くさがり屋『曙光』のニムントールだ。
木で作られたイスに座り、同じく木で作られたテーブルに上半身を投げ出している。
つい、先程『大樹』のハリオンに御使いを頼まれたのだ。
しかし、別に急ぐことではないのでこうやって涼しい所でダレているわけだが、
「はぁ・・・・面倒」
最早、彼女の決まり文句となった言葉を放つとゆったりとした動作で顔をあげる。
腕を交差させ、その上に顎を乗せる。そんな彼女の視線は一人の人物に注がれている。
白いシーツの波間を軽やかな動きで移動している影―――『月光』のファーレーンだ。
「〜〜〜〜♪」
鼻歌を歌いながら次々と洗濯物を干していく。
誰にでも優しく、そして親切であり義理人情に厚く戦闘能力も高い。
ニムの憧れであり、姉のような存在であり、そして唯一慕い、心を開いている相手でもある。
「〜〜〜〜〜〜〜♪・・・キャッ!!」
――――――ただ、ドジな所がたまにキズである。
ニムは小さく溜息をつくと洗濯物籠に躓き、転んだ姉の下に向かおうとした。
だが、それよりも先にファーレーンの下へと駆け寄る悠人の姿があった。
この大樹の下からは大分距離が離れているせいか詳しい会話はわからないが、
悠人は二声、三声掛けるとファーレーンの手を取って立ち上がらせ散らばった洗濯物を拾い始めた。
最初は悠人を止めようとしていた彼女だったが最後には諦め、手伝い始めた。
ふと、気付けば姉の下へ向かうはずだった足取りも止まってしまっている。
それどころか何時の間にか体は回れ右をして二人から離れていく方を選んでいた。
285別れと再開 2/9:04/01/20 18:59 ID:PRqvp+BV
嬉しそうな顔が目に焼き付いている。
手を取られた時の紅潮した表情、洗濯物を拾っている最中に何度も視線を向けては頬を緩めていた。
(分かってた・・・お姉ちゃんがユートに向けてる感情くらい)
ニムとて一応は年頃の少女、気付かないはずはない。
それは決して自分には向けられることのない、また向けられているのとは違った感情。
ずっと一緒だった、何をするのも、何をするにも。
(自分が後をついて行っていただけで、会話はほとんどなかったけど)
それでも良かった、お姉ちゃんと一緒にいられるなら。
でもユートが来てから一人の時間が多くなった気がする。
もっと甘えていたかった。もっと甘えさせて欲しかった。
もしかしたらお姉ちゃんには迷惑だったのかもしれない。
お姉ちゃんの心の中にはもうニムはいないのかもしれない、そんな焦燥感に囚われる。
だから、お姉ちゃんの視線がユートに向いているのがたまらなく嫌だった。
(別にユートのことが嫌いなわけじゃない)
ただ、お姉ちゃんにはずっとこっちを見ていて欲しかった。
子供じみた独占欲、大人げないのは分かっている。

だけど、納得できない。納得したくない。

(ユートなんかのどこがいいのだろ・・・お姉ちゃんは)
優柔不断、場に流されやすい、妖精趣味、ハリガネ頭、シスコン、etc,etc
エスペリアがいれば目くじらを立てそうな事からウルカがいれば、
「ほう、ユート殿の事をよく見ておられる」と感心されそうなことまで、
挙げ始めればキリがない。確かに優しいところもあるけど、でも――――

(なんか・・・・ムカツク)

ハリオンの頼まれた御使いの途中での考え事だがさすがはプロか体は着実に御使いを済ませていく。
だが、苛立ち紛れに御使いとは関係のないリクェムを大量購入している。
後にこのリクェムはエスペリアへと流されたという――――――――アーメン、悠人。
そうして御使いを終えて帰路についた頃には先程考えていたことなどすっかり忘れているニムであった。
286別れと再開 3/9:04/01/20 19:02 ID:PRqvp+BV
悠人達スピリット隊に召集が掛かったのは午後になって間もなくの事だった。
しかし、謁見の間に集まったスピリット隊は悠人、ニム、ファーレーンの三名のみであった。
他の隊員はそれぞれ別の任務があり手が空いており直ぐに行動できるのは彼等だけだったのである。
玉座に鎮座するレスティーナは集まりの悪さを気にした様子もなく口を開く。
「最近、リクディウスの森近辺で正体不明のスピリットによる被害が相次いでいます。
 できれば正体を確認後、敵であるならば速やかに迎撃を。三名しかいませんがエトランジェがいれば
 ある程度の事態には対処できるでしょう。」
貴族達が見ている中レスティーナはあくまでも事務的に告げる。
ラキオス王が死にレスティーナが政権を握って以来、待遇は比べ物にならないほど良くなった。
だが、まだ貴族の中には少数ではあるがそれを面白く思わない輩もいる。
それ故、王族としての威厳を見せる為貴族がいる時は事務的に命令するのであった。
こちらも事務的に頭を下げ「ハッ!承知しました」と返し謁見の間を後にする。
と、謁見の間を出たところでばったりとヨーティアと出くわした。
「ヨーティア、レスティーナに用事か?なら今は止めておいたほうがいいぞ」
そのまま謁見の間に突っ込んで行きそうなヨーティアを呼び止める。が、
「なぁに、貴族連中なんざ追い出してやるよ。それよりもう少しで世紀の大発明が完成しそうなんだよ。
 レスティーナに後少しエーテルを回してもらわないとねぇ〜。」
止まりもせずに重々しいドアを開けツカツカと謁見の間へと踏み込んでいく。が、ふと立ち止まりドアの隙間から顔を出すと、
「完成したらボンクラで人体実験させてもらうからね〜。感謝するんだよ」と不吉な事を言う。
悠人が唖然としている姿を見ると満足したのかニヤニヤ笑いながらドアの向こう側へと消えていった。
「ユ・・・ユート様、大丈夫ですか?顔色が・・・・」
ファーレーンの困惑気味な声に我に返る悠人。背中には嫌な汗が流れている。
とりあえず「だ・・・大丈夫」とだけ答えると覚束無い足取りで進み始めた。
その後を心配そうにしながらもついて行くファーレーン。
そんな二人を少しだけ後方から見つめているニムントール。
少しだけ嬉しそうな顔と不機嫌そうな顔が対照的であった。
287別れと再開 4/9:04/01/20 19:10 ID:PRqvp+BV
張り詰める空気、刺すようなプレッシャー、神剣の気配。
ちょうどリクディウスの森の中心部辺りで出くわした。
『求め』を通して神剣の気配は伝わってくる。かなり近い、数は三。
『この力・・・何かおかしい。『誓い』の下にもこれほどの力を持つものはいないであろう』
言葉と共に困惑した『求め』の気配が伝わってくる。確かに何か異常だ。
ニムントールとファーレーンも気付いているのか身体を硬くしている。
と、感じていた気配の三つのうち一つが唐突に消える。
(退いたのか?)と思った瞬間、いきなり頭上に気配が現れる。
顔も上げずに瞬間的に横に飛ぶ。同時に先程まで立っていた場所に黒い影が降り立つ。
が、影は着地した瞬間には一瞬の淀みもなくこちらへと踏み込んでいる。速過ぎる踏み込みだ。
目の前に死の影が迫る、が運良く足が石に引っかかりバランスを崩した為肩を掠る程度で済んだ。
傷は大して深くないのか血もあまり出ていない。先程の影は少し開けた平地に悠然と佇んでいる。
鞘に納まっている細身の神剣、漆黒の髪、黒ずくめの服装、そして先程の神速の居合いを考えれば当然ブラックスピリットだ。
信じがたいことに一度『求め』の索敵範囲を離れた後瞬間的に間合いを詰めたとしか考えられない。
とすれば、尋常ではない速さということになる。ウルカかそれ以上か・・・・・。
言い知れぬ戦慄を感じている中、ファーレーンが無謀にも飛び出す。
敵は悠然と佇み刀を構える素振りすら見せない。一気に間合いを詰めたファーレーンの神速の銀光が敵の首筋へと迫る。
が、キンッ!と言う甲高い金属音と共に流れは止まる。銀光を纏いし刀を受け止めたのは一条の槍。
ちょうど首筋と刀との間に滑り込むように地面へと突き立っている。
一瞬の停滞。と同時に槍の下へと降り立つ緑の影。降り立った勢いのまま槍を掴みそのままファーレーンの方へと神速で突き出す。
瞬間的に刃を戻し防いだが勢いを殺しきれずそのまま後ろへと吹き飛ばされ木へと背中から激突する。
肺の空気を押し出され苦悶の表情で喘いでいるファーレーンの下へ
すぐさま駆け寄ると瞬時にレジストオーラを展開する。
ほぼ展開し終わったのと同時に特大の火弾が炸裂した。
嫌な音共にドーム状に展開したレジストオーラにヒビが入る。
288別れと再開 5/9:04/01/20 19:13 ID:PRqvp+BV
が、辛うじて火弾が先に威力を失った。
展開した一帯は草木が残っているが周辺は焼け野原へと変貌を遂げている。
荒い息を尽きながら敵を見据える。最早、荒地と化した平野部。
先程のブラックスピリットに加え、二つの影が佇んでいる。
青緑の髪、緑の戦闘服、そして一条の槍、グリーンスピリット。
燃える様な真紅の髪、紅の戦闘服、そして一振りの双剣、レッドスピリット。
どちらからも共に有り得ないほどの力の奔流を感じる。
だがそれよりも三人のスピリット達に共通することがあった
――――――――――――――――――瞳に光がないのだ・・・・・

イースペリアで起きたエーテル変換施設の暴走、それにより引き起こされたマナ消失。
元来、神剣は宿主のマナ、そして周辺のマナを少量取り込むことによって機能している。
だがマナ消失により一帯のマナが消えた。これにより神剣はマナ枯渇状態に陥る。
そして神剣のマナ枯渇のしわ寄せは――――――全て宿主へと向かう。
神剣による急激なマナの吸い上げ、それに耐えられなかったスピリットは消滅。
耐えられたとしても待っているのは神剣に取り込まれ自我を喪失した人形。
もちろん神剣も急激にマナを吸収したことにより許容量限界まで逝き臨界状態となる。
しかし、それでも神剣のマナ枯渇は収まらない。他者を殺し、マナを奪え。この世の全てを破壊しつくせ。
自我を失った彼女達は神剣の声に従って行動する。ただ殺戮の為だけに―――

『ふむ・・・契約者よ。妖精達の神剣は暴走状態にある、並のスピリットとは比べ物にならないぞ。気をつけることだ・・・』
「言われなくても分かってる・・・ッ!!」
言葉を返すのと同時に、飛んできた槍を『求め』で弾き返す。
丸腰の敵に駆け寄ろうとするが突如上がった火柱により断念させられてしまう。
先程からずっとこの調子だ。一方ニムは後方で神剣魔法による援護に徹している。
復帰したファーレーンは上空で敵のブラックスピリットと斬り結んでいる。
断続的に響く鋭い金属音、それと共に振ってくる紅い血。もちろんファーレーンの傷から滴り落ちたものだ。
斬り結ぶたびに傷を負っている。なんとか一進一退の攻防を続けているが明らかにこちらが不利だ。
こちらは満身創痍なのに対し敵はほぼ無傷、力の差が歴然としている。疲労した様子もない。
289別れと再開 6/9:04/01/20 19:14 ID:PRqvp+BV
(このままじゃまずいな・・・・)
悠人は疲労した体で打開策を考える。絶望にも似た焦燥感に囚われる。そして焦りはいつも隙を生み出す・・・。
それは一瞬の事、目の前の火柱を潜り抜け緑の影が突如飛び出してくる。
疲れた体は咄嗟には反応できない。驚きに見開らかれた眼が映すのは感情のない人形の顔。
そして、突き出された槍。ズレもなく心臓に狙いが定められている。世界がひどくゆっくりに感じられる・・・。
肉を貫く音と共に顔に掛かる血飛沫。が、次に眼に飛び込んできた光景に絶句する―――
「ニム・・・・・ッ!」
辛うじて絞り出した声はひどく掠れていた。
ニムの『曙光』は寸分違わず敵のスピリットの心臓を貫いている。
しかし、ニムの脇腹から突き出た鈍く輝く刀身が最悪の状況を物語っていた・・・・

金色のマナの霧へと変わって逝くスピリット、同じく溜め込んでいたマナを放出し消えて逝く永遠神剣。
崩れ落ちるニム、地面に激突する前に慌てて支える。
開いた傷口からはおびただしい量の出血、一瞬にして緑の衣を真紅へと染め上げてゆく。
か細い呼吸のニムに「どうして・・・どうしてだ」と最早言葉にならない質問を投げかける悠人。
軽く咳き込むと血の塊が喉にせり上がって来る、けれど少し表情を崩して笑うニム。
「スピリットが・・・主人を守るのに理由がいる?」
スピリットらしい言葉を聞き思わず激昂しそうになる悠人だが、次の言葉で困惑することなる。
「・・・なんてね・・・だってユートが死ぬと・・・お姉ちゃんが悲しむ・・・もの・・・・・・」
「ファーレーンが・・・?」
「うん・・・だから、お姉ちゃんのこともっと見てあげて・・・」
わけが分からないといった悠人に小悪魔のような微笑を投げかけるニム。
だが、その顔色は刻一刻と悪くなって逝く、既に脇腹の傷からは金色のマナの霧が立ち昇り始めていた。
極力、それを視界に入れないようにしながら口を開こうとしているニムを制する。
「もういい、喋るな」
悠人の言葉を聞きながらニムは思い出の中を駆け巡っていた。
死ぬ間際に見ると言われている走馬灯、その中でふと気付いたことがある。
もしかしたら自分はユートをお姉ちゃんに取られるのが嫌だったのではないかということに。

290別れと再開 7/9:04/01/20 19:16 ID:PRqvp+BV
今まではお姉ちゃんをユートに取られるのが嫌なんだと思っていたけど逆も有り得るのだ。
しかし、意識的に考えないようにしてきた気がする。お姉ちゃんの幸せの為に・・・・
優しい姉は自分を犠牲にしてしまう所がある。自分がユートの事を好きだと分かれば諦めようするだろう。
(いつだってお姉ちゃんはニムの為に色々してくれた・・・)
けど、そろそろ自分の幸せを見つけて欲しい。だからあのことを考えないようにしてきたのかもしれない。
でも、本当に自分はユートに恋心を抱いていたのか、もう少し考えていたかった。
だけど、もうあまり時間は残されていないみたいだった。薄れ逝く意識、ぼやける視界。
(ごめんね、お姉ちゃん・・・最後くらい素直になるよ・・・)
気力を振り絞ってユートに眼差しを合わせると精一杯の笑顔を作る。

「でも・・・本当はね、ニム・・・ユートのこと・・・お姉ちゃんと同じくらい・・・・・好き・・・だっ・・・たよ―――」

始めて自然に笑えた気がする、そうしてニムの意識は白一色に塗り潰された・・・・

弾けるようにして消えた身体、カランという音共に地面に転がるのは主を失った『曙光』
重さの無くなった腕を呆然と見つめる悠人、不思議と涙は出てこなかった。
それはまだ現実を受け入れられないからかもしれない。と、悠人の肩に手が載せられた。
「ユート様・・・戦闘中です・・・・」
普段と変わらないファーレーンの声が聞こえる。思わず激昂しそうになり振り向くが絶句してしまう。
プロテクターのせいで表情は分からないが、頬を伝う雫を見れば分かる。
必死に哀しみを押さえ込んでいるその姿はさすがとも言える。止めど無く溢れる涙は止まらない。
そう、目の前の敵を倒さなければ哀しむ暇すらないのだ。
だが、ふとおかしな事に気付く。ニムとの会話の最中、絶好の機会だと言うのに全く攻撃がなかったのだ。
しかし、敵に眼を向けた瞬間その疑問もすぐに解決することとなった。
散った仲間の神剣から放出されたマナを貪るようにして吸収しているのだ。
空中を漂う金色のマナの霧が神剣へと吸い込まれてゆく。それと共に膨れ上がる力の奔流。
(まずい・・・このままじゃ負ける・・・)
撤退しようとしても逃がしてはくれないだろう、絶体絶命。だがそんな中『求め』の声が響く。
291別れと再開 8/9:04/01/20 19:17 ID:PRqvp+BV
『契約者よ・・・まずいことになった・・・・』
珍しく『求め』の焦っている気配が伝わってくる。
「まずいことって、十分今もまずい――」
『いや、そうではない・・・妖精達の神剣が完全な暴走を始めた』
困惑している悠人だが、肉を貫く音が聞こえ思わず振り向く。そしてその光景に我が眼を疑う。
新たなマナを得た神剣はさらにマナを欲しがる。そしてあろうことか宿主を突き刺したのだ。
自らの神剣に自らの肉体を貫かれたというのに人形たちの顔には驚愕も苦痛も浮かんでいない。
そして、立ち昇るはずのマナの霧は全て神剣に吸収されている。それと共に金色に輝く神剣。
宿主のマナを完全に吸収し切った神剣は金色の光を纏いつつその場に浮かんでいる。
有り得ないほど膨れ上がる神剣の気配、そして背筋を流れる嫌な感覚。
「この感覚・・・・まさか――」
『そう、マナ消失がくるぞ・・・・』
『求め』の声に瞬時にオーラを展開する。だがこの程度では防げはしないだろう。
「おい!バカ剣、力を貸せ!!!!」
その言葉と同時に何かが割れる甲高い音と共にどす黒い力の奔流が流れ込んでくる。
そして、臨界を迎えた神剣は完全なる破壊を開始する。
辺りは白い光に包まれた―――――。


手足の感覚はある、手には『求め』の質感、一時的に支配されたせいか少し頭が重い。
なんとか生きているようだ、吹き飛ばされたのか頬に地面の感覚。目の前は真っ白で何も見えない。
だが、しばらく休んでいるうちに目も慣れて来たのか徐々に視界が戻ってくる。
まず、目に入ったのは半径数百Mに渡り抉れて赤黒い土を露出させている地面、木々は残らず吹き飛んでいる。
そして自分の傍らで倒れているファーレーン、その胸元には『曙光』が大事そうに抱かれている。
ほぼクレーターの中心地にいた。二本の永遠神剣の暴走でこの程度で済んだのは幸いだったのかもしれない。
周辺のマナがかなり希薄になっているせいか節々が痛み、傷も治癒しづらい。
いつまでもこんな所にいるわけにもいかず、まだ起きぬファーレーンを担ぐと歩み始めた。
吉報と凶報、それをラキオスへと届ける為に―――。
292別れと再開 9/9:04/01/20 19:19 ID:PRqvp+BV
王座に鎮座しているレスティーナの前に跪いて報告を終える。
「―――――――――となりました」
「ご苦労でした、後の処置はこちらでやっておきましょう」
本来ならばこの後は謁見の間を退室するだけなのだがまだ伝えていないことがある。
「女王陛下・・・・」
「どうしたのです?」
首を傾げたレスティーナに少し言い辛そうにしながら報告する悠人。
「我が隊の・・・『曙光』のニムントールが戦死しました・・・」
その言葉と共に傍らのファーレーンが『曙光』を強く握り締める。思い出さないように。
だが、レスティーナは少し表情を和らげると意外なことを言う。
「その事なら心配いりません。後でヨーティアの研究室によって御覧なさい」
思わず「は?」と素で返してしまう。困惑しているのは横のファーレーンも同じなようだ。
だが、レスティーナは軽く頷いただけで何も詳しいことは話してくれない。
仕方なく、憮然とした表情のまま謁見の間を後にする。
そのまま言われた通りに二人でヨーティアの研究室に向かうが疑問は付きまとう。
言葉にならない疑問、だがそれもヨーティアの研究室に入るとおのずと解決した。
唖然とした二人が眼差しを向けているのはニヤニヤ笑いのヨーティアでなく、お茶を入れているイオでもない。
片隅に申し訳程度に置かれたベッドの上で焼き立てのヨフアルを頬張る人物――――――ニムにであった。

「で、どういうことなんだ?」

プロテクターを外し素の表情で安堵の為ニムに抱きつき泣きじゃくるファーレーン。
そんな姉のセルリアンブルーの髪を撫でながら面倒くさそうに、けれど嬉しそうにあやしているニム。
そんな二人を視界の隅に収めながら目の前のヨーティアに質問をぶつける。
「なんだい、そんな事もわからないのかい、さすがボンクラだね〜。新発明の実験に使ってやるっていったじゃないか
 まあ、いいよ。説明してやるから良く聞くんだよ。従来の物よりさらに小型のエーテルジャンプ装置の研究をしててね
 ちょうど完成したわけだ。まあ、今の所、対象を強制的にこちらに戻すぐらいしかできないけどね。将来的にはクライ
 アントなしで自由に飛べるようにするつもりだよ」
293別れと再開 10/9:04/01/20 19:21 ID:PRqvp+BV
「ちょっと待て、対象って俺は飛ばされてないぞ」
部屋の隅に置かれているガラクタらしき物を指差しながら語るヨーティアに素朴な疑問を尋ねる。
「ま・・・まあ、天才にも失敗は付き物さ。ボンクラを飛ばすつもりが間違ってあの子を飛ばしちまったんだよ。」
頬に一筋の汗を流しながら乾いた笑いでなんとか場をしのごうとするヨーティア。
しかし、またもや別の疑問が湧いてくる。
「けど、ニムはなんで・・・・?あの傷は致命傷だったと思うけどマナの霧も昇ってたぞ」
「はぁ、やっぱりボンクラはボンクラだねぇ。死なない限りマナの霧にはならない。大方傷口に敵の返り血が着いたんだ
ろ。それに急所は外れてた、出血で一時は危なかったみたいだけど命に別状はないよ」
「それなら良かった。って、ニムの傷もう治ってるみたいだけど・・・」
「あ〜・・・転送された時、再構成するマナの比率が狂って通常より多く取り込んじまったんだ。
で、傷はほぼ完治ってわけだ。ちなみに、神剣はマナの構成が違うせいで転送できなかったんだよ」
大まかな説明を終えたヨーティアは目の下の隈を擦りながら奥の部屋へと消えていった。
後に残されたのは未だに泣いているファーレーンと眠そうなニムントール、そして微妙な表情の悠人。
(ま、とりあえずここは二人だけにしてあげるか・・・)
悠人らしからぬ考え、気をきかせてそっとドアを開け出て行く。

その背後から聞こえる小さな「ありがとう」の声は悠人に向けられたものかは定かではない。


後にこの装置はレスティーナによって研究中止となる。
理由は隊を混乱させるためだが、ちょうどこの時期にあの装置はレスティーナが悠人を独り占めするために
作られたとかいう噂が流れていたとかいないとか・・・・・
                                        
                                               続く?
294風変わり:04/01/20 19:23 ID:PRqvp+BV
>284-293
連投規制より強敵・・・本文の長さ規定(´・ω・`)
ちゃんと区切れていたんですが、長すぎ長すぎと言われバラバラに・・・
ま、仕方ないから諦めます・・・

次は誰の書こうかな・・・と悩み中の風変わりより中継でお伝えしまた( ・∀・)ノ
295名無しさん@初回限定:04/01/20 20:57 ID:qq+wGXzy
>>283-294
GJ!
途中から、たしかスピリットって死んだら剣も消えるんじゃなかったっけ?
(ユート転送時に赤スピに犯されたの参照)と思ってたけど、こういうことだったのか・・・
296名無しさん@初回限定:04/01/20 21:02 ID:Yoq5BZjB
イイモノをかきやがりますたね(゚∀゚)
おけーおけー。ニムをうまく扱えていると評価しよう。やはりナマイキな娘はこういうキャラだねぇ。
297名無しさん@初回限定:04/01/20 22:50 ID:+3lDNTb/
>>284-293
ニムたん(;゚∀゚)=3ハァハァ
29874:04/01/20 23:59 ID:8XYgzlZY
アセリアのSS書き終わってうpしようと思ったら、先に風変わり氏が…
よりにもよってあんな良い物を…

うpやめようかな?( ゚Д゚)

;y=( ゚д゚)プシュ

(゚д゚)まぁいいや、うpしちゃえ。
299秘めたる恋・古代編:04/01/21 00:01 ID:5kBJcEy9
 秘めたる恋。
 言葉にしてしまえば、たったの一言で済んでしまう。そんな、ありふれたモノ。
 だが、当人にとっては、もちろん一生の大事なわけで。
 諦めることはできない。だが、決して明かす訳にはいかない。
 辛く、切なく、だが、決してそれだけではない。そんな気持ち。
 …彼女はいま、恋をしているのだった…

「はぁ…」
 先刻から、口から出るのは、詮の無い愚痴かため息ばかり。
 自分でも鬱陶しいとは思うが、止めることはできない。
 原因は判り切っている。
「はぁ…」
 ため息と共に暦を見上げる。
 今日は、彼の誕生日である。
 だが、自分は何もできない。自分の気持ちを伝えることはおろか、祝いの言葉を贈る事も、
彼に、一目会う事すらも。
 …会えば、彼に迷惑がかかるだけでなく、彼の運命すらも狂わせてしまう。それが、現実だった。
「…はぁ」
 この気持ちを知らない頃は、恋など、愚か者のする物と思っていた。
 所詮、生まれてから死ぬ時まで、自分は、ひとりでしかない。他人の為に心を悩ませるなど、現実を
見ない者達の戯言でしかない、と。
 そんな昔の自分が、滑稽で、同時に愛しくもある。
「はぁ…」
 先刻から、口から出るのは、詮の無い愚痴かため息ばかり。
 言っても何も変わらないと知りつつも、言わずにはおれぬ。

「悠人さんが生まれるまで、あと1100年かぁ…」

 倉橋 時深 (検閲削除)歳。
 高嶺 悠人 −1100歳。
 二人の恋は、まだ始まってもいなかった。
300時を翔る少女・一人相撲(1/2):04/01/21 00:03 ID:5kBJcEy9
 夕暮れの中を、小さな小さな少女と、少女より少しだけ大きな少年が、手をつないで歩いていた。
 少女は、身も世も無く泣きじゃくり、少年の手を力いっぱい握り締める。
 少年は、少女の泣き声と歩く遅さに辟易しながらも、手を離すことも、歩くのを促すこともしない。
ただ少女の手を握り返して、あさっての方向を向いてつまらなそうにしているだけだった。夕日の所為か、
心なし顔が赤くなっていたが。
 子供の足でも、走れば10分ですむ帰り道を、ふたりは、40分以上かけて帰ってゆく…。

「はぁ…。小さい頃の悠人さんも素敵…」
 そんな二人を、物陰から見守る影一つ。
 白単衣に紅袴という典型的な巫女装束。そして腰に佩いた、三鈷剣にも似た上位永遠神剣と巨大な扇。
 混沌の永遠者にして倉橋の戦巫女、倉橋 時深 その人である。
 もっとも、物陰から幼い兄妹を見つめており、しかもその頬は上気し、瞳は潤んでいるとあっては、もはや
変質者以外の何者でもないが。
「あぁ…。やっぱり見に来て良かった」
 悠人に恋焦がれてはや百余年。待つに待ちきれず、こうして姿を見に来てしまった。
 来る前は色々と禁忌を気にしていた気もするが、こうして悠人を目の前にすればそんな気持ちも吹き飛んで
しまう。…唯一つ、気になることを除いては。
 それは『敵』の事。自分がここにいるというのは、どう考えても起こり得ない『不自然』である。
そこを『敵』に見咎められたら。いや、自分が見付かるのはまだいい。もし、悠人が見付かったりしたら…。
 時深が最悪の想像に行き着いたとき、奇しくも『時詠み』が、上位永遠神剣の気配を察知する。
「この気配は…、どうやら、間違いない様ですね…」
 『敵』が来たのだ。上位永遠神剣の中でも数少ない、時を操る能力を持つ神剣。
 自分と同じ永遠者。
 覚悟と、憎しみを込めて彼の者の名を呟く。

「来ましたね…、倉橋 時深!!」
301時を翔る少女・一人相撲(2/2):04/01/21 00:05 ID:5kBJcEy9
「来ましたね…、倉橋 時深!!」
 呟きながら、時深には苦々しい記憶が呼び起こされる。
 忘れもしない、1年前。今日と同じく、悠人の姿を見に来たときの事。
 年に一度だけの贅沢。と、自分に言い訳をしながら時を越えた先には、倉橋 時深、自分がいた。
しかも、その 倉橋 時深は、あろう事か訳のわからない難癖を付け、自分が悠人の姿を見るのを邪魔して
きたのだ!
 結局、その後次々と邪魔が入り、その年は悠人の姿を少しも拝む事無く帰るはめに。
 あの時の事は、今思い出してもはらわたが煮えくり返る気分だ。
「今日という今日は、貴女と決着をつけて差し上げます!」
「…何を言っているのです?貴女は」
 冷静に返して来る所が、また癇に障る。
 どうやって言い返してやろうかと考えていると、向こうの時深が、先に口を開いた。
「私は、悠人さんを見に来ただけです。貴女に用はありません」
 自分ひとりに迷惑を掛けるだけならまだ許せるが、よりにもよって悠人さんを狙ってくるとは!
 なんて卑怯な!絶対に許すわけにはいかない!まさに憎さ30テムオリン(時深調べ)!
「くっ…。少しばかり顔が可愛いからといって、図に乗るんじゃありません! 胸も無いくせに!」
「なっ…、余計なお世話ですっ!」
 一触即発の空気が充満してきたところに、新たな気配が現れる。
「おやめなさい、自分同士で。貴女達は、もう少し落ち着きと言うものを学ぶべきです」
 闖入者── やはり倉橋 時深 ──は、諭すように二人の時深に呼びかけるが、
「「おばさんは黙ってなさい!!」」
「なんですってぇ!」 
 あっさりと争いの当事者へと変わる。
 その後も、新たな時深が加わっては争いがより深刻化するという泥沼へと陥ってゆく…。

 …千年近く続く争いの火蓋は、こうして切られたのだった。
302蛇足:幼年期の終わり:04/01/21 00:07 ID:5kBJcEy9
 少年は走っていた。
 比較的恵まれた環境で育ってきた少年にとって、これほど必死になったのは、初めてだった。
 きっかけは、些細なこと。
 いつも遊んでいた少女が、別の少年と遊んでいた。…ただそれだけの事だった。だが、それだけ
のことが、少年には我慢ならなかった。そして、少女を責めた。
 あぁ、自分はなんと心が狭かったのだろう。なんと愚かだったのだろう。後悔の念に押しつぶされ
そうになりながら、走る。
 少女は泣きながら、もう一人の少年に手を引かれて帰ってしまった。
 もうだいぶ時間がたってしまったが、今ならまだ間に合うかもしれない。少女に一言、「ごめんね」
を言いたい。いや、言わねばならない。そして、これからも少女と共に在り、少女を守り抜く。
それこそが、自らに課した使命。それこそが、自らの誓い。
 そうして、走って走って、いくつ目かの角を曲がった時、惨劇は起きた。

 どんっ!
 何か柔らかい物にぶつかり、少年はあっけなく弾き飛ばされる。
「なにするんだよ! いたいじゃな…い…」
 自分勝手な怒りから発せられた言葉は、次第に尻つぼみになってゆく。
 少年の目の前に現れたのは、見渡す限りの巫女、巫女、巫女…。
 思わず、呟く。
「ワン・オー・ワン?」
「だれがダルメシアンですか!!(×128)」
 鼓膜が破れるかと思う程の大合唱が返ってきた。

 …一時間後、帰りが遅いことを心配した屋敷の者によって、少年は保護された。
 少年は家を出た後の事を一切覚えていなかったが、よほど恐ろしい目にあったのか、髪は老人のように
白くなり、その日を境に極度の人間不信に陥ったと言う。
303名無しさん@初回限定:04/01/21 00:13 ID:aBx0J9hZ
>>299-302
ハゲワロタ
そりゃシュンも歪むわなw
30474:04/01/21 00:15 ID:5kBJcEy9
>>299-302
えー、そんな訳だったんですが。
アセリアSSと言っておきながら、スピリット率ゼロです。
しかも、自分がアフォな所為で、何を書いているのか、いまいち伝わりにくかった気がします。
まぁ、74の脳内では時深はこんな奴だ、というだけの話です。
305名無しさん@初回限定:04/01/21 01:24 ID:YcTo9Sol
蛇足が
笑いすぎでハライタイ

ご馳走様でした(´∀`*
306名も無き名無し:04/01/21 02:30 ID:e8z9QSe5
風変わりさんに74さん、乙彼さまでした。
いろいろな意味で74さんよりもさらに肩身の狭い私ですが、
多分忘れ去られている可能性の方が大きいと開き直って、
何事もなかったかのようにアセリアSS投下します。

今回は趣向を変えて、小出しの連載風に。
307はじめてのおつかい・ラキオス編9:04/01/21 02:33 ID:e8z9QSe5
「ふ、ふにゃあああああっ!? むぎゅっ!!」
 何やら素敵な怪音が上がったと同時に、どんがらがっしゃーんと豪快な崩壊音が第二
詰め所中に轟き渡った。鼻歌交じりに廊下を掃き清めていたヒミカは、すわっ、敵襲か
!?と血相を変え、手にしたほうきを永遠神剣よろしく構えて現場に急行する。

 そこは、一階の奥向きで半ば物置として使われていた空き部屋だった。今日より悠人
を迎え入れるべく「リフォーム」と言う名の突貫工事の最中だったはずだが、今や開け
放たれた戸口からは盛大に粉塵が吐き出され、部屋の中の惨状を十二分に想像させた。
「……」
 ヒミカは手で口元を覆い、躊躇うことなく部屋に踏み込んだ。
 薄暗い室内に充満する埃と黴の匂いに眉をしかめながらも見渡すと、部屋の中にあっ
たと思われる一切合切の家具荒物の類が、瓦礫の山へと変わり果てていた。
 ふと違和感を覚え足元を見やると、瓦礫の隙間から白い手がはみ出していた。ぴくり
とも動かないそれは、武運拙き犠牲者のものであろう。
 ヒミカは爪先でその手を突っつき、何も反応がないのを確認すると沈痛な面持ちで瞑
目した。
「……さすがにこれは生きてないわね。戦場に斃れるならまだしも、部屋掃除の最中に
果てるなんて、故人もさぞかし無念だったことでしょう…」

 と。
 突然、手が動きだし、ヒミカの足首をがっしりと掴んできたではないか。
「うわあっ!? 離してよ、こら、迷わず成仏しなさいヘリオンっ!」
「わ、私は生きてますよぅ、ヒミカさぁんっ! え、縁起でもないこと言わないでくだ
さいっ!」
 瓦礫の下から半ベソの抗議が上がる。ヒミカは「冗談だってば」と肩をすくめて、瓦
礫の山を発掘にかかった。
 ほどなくして、埃まみれ生傷だらけの黒いツインテールが出土した。
「あ、あうう……要らないものを選別しようとしてその辺をいじったら、山が崩れて来
まして……その、助けてくれて、ありがとうございます」
 涙目をこすりこすり、バツが悪そうに頭を下げるヘリオンのつむじを、ヒミカはニヤ
ニヤ笑いながらなで回した。
「そうよね、貴女がユート様にその胸の奥に秘めた想いを告げるまでは、何があっても
マナの霧になるわけにはいかないものね」
「なっ……な、なんですかそれはっ! 他人の胸の奥を勝手に捏造しないでください
っ!」
 さっきまで泣いたカラスが猛抗議。顔を真っ赤にして詰め寄るヘリオンをいなすかの
ように、ヒミカはガラリと話題を変えた。
「ところでネリーとシアーとニムはどこにいるか知らない? 仕事は山ほどあるってい
うのに、さっきからあの子達の影も形もないんだけど…」
「へ? ああ、お二人ならハリオンさんに頼まれて、町へ買い物に行ったみたいですけ
ど。ニムントールさんは、私も見てません」
 と、小首を傾げるヘリオンの前で、ヒミカは思わずこめかみを抑えて見せた。
「うーん……」
「あの、それがどうかしたんですか?」
「あの双子、確か今まで一度も買い物担当したこと無いはずなんだけど。ま、何が起こ
ってもハリオンの責任だし、わたしゃ知ーらないっと」
「は、はぁ…」
 ヘリオンは曖昧に相づちを打った。第二詰め所において、ナナルゥと双璧をなす「使
い走り」の達人である彼女には、たかが買い物程度のことで大袈裟な、としか思えなか
ったのも無理はない。
「じゃ、後かたづけ大変だろうけど、しっかり頑張ってね。あ、これ差し入れ」
 ヘリオンの肩越しに部屋の中を改めて見回していたヒミカは、持参していたほうきを
ヘリオンに押しつける。
「え? あ、どうも……」
 思わず受け取ったほうきを不思議そうに眺めていたヘリオンは、はっと気がついて自
分の背後を振り返った。気のせいか、崩落事故直後より室内のエントロピーはさらに増
大したように見える。その見事なまでのカオスっぷりは、どこから手を着けて良いのか
の見当すらつかない。文字通り「目を覆いたくなるような惨状」であった。
「あ、あの、これどうしたらいいんで……」
 しょうか、と助けを求めて向き直った先で、ドアが軋みを上げて閉まった。
309はじめてのおつかい 次回予告:04/01/21 02:43 ID:e8z9QSe5
「どうしたの、ネリー? さっきから変な顔してるけど」
 穏やかな陽光の下、殷賑を極めるラキオス城下町の往来を物珍しげに見回していたシ
アーだったが、同行する姉の異変に気づいて、心配そうに顔を覗き込んだ。
 下からの視線に気づいたネリーは、ぎょっと飛び退いて頬をふくらませた。
「へ、変な顔ゆうなっ! ちょ、ちょっと気分が悪いだけだよっ」
「それは大変だよっ! 早くお城に戻ってお医者さんに診てもらわないと〜」
 真に受けたシアーは、今にもウイングハイロゥを広げそうな勢いでネリーの手を取る
が、ネリーはブンブン腕を振り回して、それを払いのけた。
「お、お城はだめっ! ほら、もう大丈夫、元気になったからっ! ね?」
「……そお? ならいいけど、無理しちゃだめだよぉ?」
「う、うん! じゃ、時間もないしお店に行こっか」
「りょーかいですー」
 元気いっぱいに敬礼して、シアーは人混みの中に飛び込んでいった。引っ込み思案に
見られがちだが、彼女も年相応には好奇心が旺盛なのである。
 そんな妹の後ろ姿を見やりながら、ネリーはこらえていた溜息を一気についた。
 ハリオンに大見得を切った手前、今更のこのこと城に戻るなんて負け戦も同然だ。

(どうしよう……買い物のメモを無くしたなんて、格好悪くて言えないよう……)

風雲急を告げるラキオスの城下町。(違うだろ)
幼く可憐なブルースピリットの双子の運命やいかに?
310名も無き名無し:04/01/21 02:49 ID:e8z9QSe5
>>307-309
通し番号は前編の続きから。全レス数表示がないのは、微調整を考慮してます。
予告は、本編には含まれません。
風変わりさんのように一気に読ませるような内容もないし、74さんのような切れ味
もないので、見せ方を変えてみたのですが……果たして上手くいくのやら?

続きは明日ということで。
311名無しさん@初回限定:04/01/21 08:30 ID:fQv4p8Db
んあー、こんなことを言うのは失礼かもしれないけど、気になったので一言。
SS投下する前に言い訳するのはやめてほしい。読む気がかなり減退する。
「お目汚し」とか「つまらないかも」とか先に書いた本人に言われると
たとえ自分がどんなに面白く思っても、素直にそう褒められなくなる。
同じことがあとがきにも言えるけど。気にしすぎだと我ながら思うが、
そういうの気にする人もいるんですよ。
312名無しさん@初回限定:04/01/21 09:48 ID:vvdIhvAK
言い訳ではなく謙遜だと思っていたが…?
313名無しさん@初回限定:04/01/21 10:22 ID:mDoA6S5O
謙遜は日本人の心ですよ
314名無しさん@初回限定:04/01/21 11:05 ID:Mqi3sms1
日本人に謙遜をするなってのは、自慢するなってのより無理。
とか言ってみるテスツ。
とりあえず気にしすぎですよ>>311
31574:04/01/21 11:43 ID:5kBJcEy9
>>311-314
人によって色々意見はあると思いますが、そもそも謙遜というものが他人様を不快にさせない為の
思い遣りの心である以上、>>311氏が気になったのなら、スレ住人としては気をつけるべきかと思いました。
だからといって、
>>299-302
>秘めたる恋に悩む少女の淡く切ない想いを描いた短編二本と、大人への階段を登る少年の
>心の成長を鮮やかに描き出すハートフルストーリーの豪華三本立て!
とかだとまるっきり嘘吐きになる罠。

…難しいなぁ、いんたーねっと
316名無しのrom野郎:04/01/21 14:20 ID:3dSTLgrS
んなもんかねえ?

とはいえ、万人に100%受け入れられる事なんざねえしなあ。
普通に謙遜して挨拶しているもんだと思うんだが・・・それで不快になる方もどうかと思うぞ。
まあ人それぞれだし、しゃあないなあ・・・。

わしなんざ挨拶だと思ってるし、(わし的に)外れなら「まあしゃあねえか、こういう話もありかなあ」
当たりなら「ラッキー!なんだおもしろいやん。次書いてくれないかな〜」なんて思っちゃいますけど。
(思ってるだけ<書けよ自分)
つーか書いてupしている人達が偉く、romってる人間こそ謙虚になろうや<他人事じゃないけど。
317名無しさん@初回限定:04/01/21 15:24 ID:P9oGFrfP
行き過ぎた謙遜は卑屈ととられることもあるかもしれんが、あまり気にせんでいいだろう。
謙遜に不快になる奴は、その逆よりもはるかに少ないと思うし。
つまらなかったときの予防線を張るなって言いたいのかもしれんが、評価は人それぞれだし
オレらがそれを主張するのは筋違いだしな。

まあ要するに、いつもSSを投下してくれる職人さんたちに感謝です。
318風変わり:04/01/21 15:51 ID:ibtBDVYE
ふむ・・・なんだか難しいですね
でも、一人でも不快になる人がいるなら変えるべきかな・・・
ということで次回からはできるだけ謙遜しないように努力してみます・・・・アレ?(゚∀゚)

あ、74様、名も無き名無し様。共にお疲れ様です〜
十分すぎる程に面白かったですよ( ・∀・)ノ
皆さんやっぱり文章表現上手いですよね〜、中々言い回しとか思いつきません(´・ω・`)

次は節分の話でも書こうかな・・・・
弾丸のような豆に怯える鬼役の悠人君・・・・
身を持って悠人の盾になろうとするが尻込みしてしまうヘリオン・・・
う〜む、微妙!
319名無しさん@初回限定:04/01/21 18:36 ID:mDoA6S5O
>>316
ラスト1行に同意
書き手あってのSSスレだからね
320名無しさん@初回限定:04/01/21 22:58 ID:aBx0J9hZ
>>318
謙遜もいいが、堂々としていてほしいとも思わなくもないわけでも(ry
特にここ2chなわけだしw

まぁ、がんがってくだされ。
良SSに期待してますよ。
321名無しさん@初回限定:04/01/21 23:58 ID:Djj7MmAF
おおおおおおっ! 何時の間にやらアセリア祭り?!(違
 
>>283-294
これはまたシリアスな感じで読後感良しです。
ニムをがインなのだ思いつつ、ファーレーンの描写が色々とイイ感じ。
途中まではどうなる事かと。大丈夫と楽観しながらも、はらはら。
ご馳走様でした。
 
>>299-302
あっはっはっは! ……って、シュンが歪む原因作ったの時深かよ!(笑
なぜか「憎さ30テムオリン(時深調べ)」と言う単語が個人的にツボ。
 
>>307-309
相変わらずヘリオンはオチ要員と言うことで(笑
次回を楽しみにしていますー あ、そう言えばスピリット達が街へ出た時の
反応ってどうなんでしょうね。本編ではあんまり描写されていなかったけど、
あんまり好意的じゃないのかな。

あと、謙遜しすぎはイヤンと言うのは特別気にせずでも。確かにここ2chですし(笑
いやはや、職人様たち御疲れ様でしたー!
322名も無き名無し:04/01/22 00:00 ID:K7VWq2TH
帰ってきて見れば、思わぬ波紋を投げかけちゃってたんですね、ワシ_| ̄|○
言われてみれば、言葉足らずというか、変な誤解されても仕方の無いような
ことを書いてましたし、お騒がせしてすみません。

しかし「これ」と言った正解のなさそうな微妙な問題ですし、自分の中でも
どう折り合いをつけていいのやらよーわかりませんので、ここは当面、
かの文豪ゲーテに倣って、語らずに黙々と創ることにします。

……って、このレス思いっきり語ってるじゃん_| ̄|○
もうね、(ry

あと、アレの続きは今調整中ですが、夜明けまでに投稿できるかはちょっと微妙かもです。
323名無しさん@初回限定:04/01/22 19:03 ID:XwoOGv/U
職人の皆様いつも乙であります!
あぁ、スピリットSSの作者タンは俺にとって皆神様ですよ(#;´Д`#)ハァハァ…
ツンデレ派の俺にはナナルゥがたまらんです。

ところでスレ違いなので恐縮なのですが、>307の文中にある
>鼻歌交じりに廊下を掃き清めていたヒミカは、すわっ、敵襲か
という一文の「すわ」というのは、どういう意味なんでしょうか?

ちょうど昨日、アニメに感化され某百合小説を読んだばっかりなんですが
そこでも出てきたので気になってたんです。
どなたか無学な私に御教示下さい。
324名無しさん@初回限定:04/01/22 19:08 ID:NvE9u8Cl
325名無しさん@初回限定:04/01/22 19:26 ID:XwoOGv/U
>>324
即レスありがとうございます。
不思議な日本語ですね。日常生活では絶対使いそうもない言葉だ。
一つ賢くなれました。  

もう一度読み返そう…
326名も無き名無し:04/01/22 19:36 ID:K7VWq2TH
あ、>>324さんが答えてくださってましたか。ご苦労様です。

>>325
「すわ鎌倉」という故事成語で使われるくらいでしょうかね。
古くさい文語なので、日常生活では確かに滅多にお目にかかれません。


#すわ、飯を食らい次第急ぎアレを仕上げん…
327名無しさん@初回限定:04/01/22 22:39 ID:hG6c7v3Z
職人の皆さんいつもお疲れさんです
怒涛のアセリアラッシュっすね

(´-`).。oO(アセリア書きがあと一人いればアセリア職人四天王・・・)
「それじゃぁ、買う物とぉお店はここに書いてあるからぁ。町の中はぁ、危ないから気
をつけてねぇ〜」
「わかってるわかってる」
「うー、町にこわい人とかいたら、やだなぁ〜」
「だいじょうぶだいじょうぶ、ネリーがいる限りそんなやつらやっつけちゃうから。じ
ゃ、行ってきまーす」
 何も考えてなさそうに手を振るハリオンの見送りを受け、不安げなシアーの手を握り
お城を出たのが半時ほど前のこと。
 今では、その明暗はすっかり逆転していた。

「うわー、人とお店いっぱいです〜」
 純度の高いマナ結晶のように蒼い瞳をキラキラさせて快哉を上げるシアー。戦時下に
ありながら、まるで別天地としか思えないほど活気に満ちたラキオス城下を物珍しげに
眺め回しているその浮かれ姿は、まさしく田舎出身のお上りさんである。
「うー、うー、あの店とあの店で何か買うのは間違いないんだけど…」
 黒く染まったハイロゥのようにどんよりどよどよと塞ぎ込むネリー。ハリオンから預
かり、そしてうっかり落としてしまったリストを懸命に思い出そうと唸ってはみるもの
の、出がけには町に行ける嬉しさで頭がいっぱいだったおかげで、ろくに内容を確認し
なかったのが命取りとなっていた。
 そんなスピリットの姉妹を気に留めるような暇人は、ここにはいない。物を作り、売
り、買い、運び、と、みなそれぞれの生業に没頭して、日常に紛れ込んだ非日常に気づ
く余裕などなかった。
「あ、あれなんだろう?」
 シアーの足取りは羽のように軽く、ネリーのそれは鉛のように重い。対照的な二人の
足運びの違いが、いつの間にか双子の距離を大きく引き離してしまった。
「あー、もういいや! お店に行ってから考えよう……って、あれ?」
 我に返ったネリーは、傍らにおかっぱ頭の妹がいないことに初めて気がついた。
 慌てて前方の人波に目を配るが、どこにも見慣れた後ろ姿は見あたらない。大方珍し
いものでも見つけて、ふらふらと釣られて行ったのだろう。
「もーしょうがないな、神剣の気配で……」
 腰に手をやり、その手が空を切った。
「……そうだ、町に行くから、『静寂』は置いてきたんだっけ」
 神剣は町の人に余計な恐怖を与えてしまうから、そうするように言われていた。
 あるはずのないものがそこにない不安。途端に、ネリーの心の中が小波立つ。
「シアーに何かあったら…」
 そう思うと、心臓が握りつぶされたように苦しくなる。ネリーはウイングハイロゥを
広げようと気を高めた。ハリオンに止められていることもすっかり忘れて。
 と、その視界の端に、何やら青い色がひらめいて消えた。青と言えば、無論自分たち
ブルースピリットのシンボルカラーに違いない。
「し、シアーっ!?」
 ネリーは心急くままに、青色がよぎった辻へと駆けだしていった。
「し、シアーっ、どこっ!?」
 雑踏の彼方、辻の片隅で黒いマントをまとった旅姿の青年が、動物を使って大道芸を
披露していた。シアーは見物客に紛れ、無邪気にそれに魅入っている。
 ネリーは安堵の溜息をつき、そしてキッと眉をつり上げてからシアーに近づいた。
「あ、ネリー、見て見て、これかわいいよぉ?」
「あのねぇシアー。ネリーたちは、お使いに来てるんだよ? これは大事なお仕事なん
だから、遊んでる場合じゃないの」
 姉からの予想外に厳しい返事に、シアーの顔がみるみるしょぼくれる。
「で、でも〜、あれ、かわいいんだもん。ね、ちょっとだけ?」
 青年の演奏に合わせて宙返りを繰り返す小動物をちらちらと見やりながら、シアーは
食い下がろうとする。その哀願するときの妹の顔にネリーはとても弱いのだが、無意識
に「いいよ」と開きかける口を、きゅっと結んだ。
「だ……ダメったらダメなの! ほら、さっさとお店に行くよ」
「う〜、ネリーのいじわるぅ〜」
 シアーは、今にも泣き出しそうに顔をくしゃくしゃにするが、ネリーはわざと素知ら
ぬ顔で歩き出した。自慢の長く蒼い後ろ髪を引かれながら。
(うー、かわいかったなー、ネリーだって見たいよう〜)
 でも、今はそれどころではない。無事に買い物を済ませ、そしてその後シアーのため
に…
「……あれ? そう言えば、なんの買い物するんだっけ?」
 あれこれ考えすぎて、当初の目的を一瞬見失ったのか往来の真ん中で首をひねる。
 と、その手首がいきなり掴まれ、抗う間もなくぐいっと引っ張られた。
「え? あわわわわっ!?」
 バランスを崩してたたらを踏むが、柔らかい何かに抱き留められる。
「し、シアー?」
 相手のあるかないか微妙な胸から顔を上げてその名を呼ぶと、シアーはいつにない厳
しい表情を崩さずに、ネリーの背後をキッと睨め付けている。
「?」つられて肩越しに振り返った刹那、その鼻先を一陣の突風が横合いからしたたか
に殴りつけた。
「わっ!?」
「死にてえんか糞ガキっ!! 気ぃつけえやっ!!」
 目の前を怒濤の勢いで通り過ぎていく黒い影。すなわち幌を掛けて何やら荷物を山と
積んだ荷馬車の御者台から、ゴロツキ然とした風体の男が胴間声でどやしつけてきた。
「……」
 あわや往来で人身事故! という騒然とした空気が辺りを包む。
 神剣を佩いていたなら、この程度の「事故」など未然に察知できるのに、今はそれが
できなかった。人々の注視が集まる中、驚きと恐怖のあまり真っ青になって声もないネ
リーのつむじを、シアーの小さな手が優しく撫でた。
「し、シアー…」
 ネリーは、震える声で妹の名を呼んだ。
 いつも頼りないと思っていた妹が、こんなに頼もしく見えたのは初めてではないか。
 そう言えば。初陣の頃は泣いてばかりいたシアーが、最近はほとんど泣き言を言わな
くなっていたような気がする。
「こ……」
 優しげな笑みを浮かべたシアーが、ネリーを見下ろして口を開いた。
「……こ?」
「こわかったよぅ〜」
「へ?」
 それまで気丈にネリーを抱き留めていたシアーの緊張の糸がぷっつりと切れた。ネリ
ーの身体を伝ってずるずるとその場にへたり込み、今度は呆けたように姉を見上げる。
「し、シアー?」
「ううっ、ひっく! ネリーが、ネリーがぁ〜」
 今頃やってきた恐怖にしゃくり上げる妹を、ネリーは口をぱくぱくさせ、何とも言い
難い複雑な表情で見下ろした。
「もう……シアーったら、しょうがないな〜。ほら、立ちなよ」
 すっかりお姉ちゃんの威厳を取り戻して、ネリーはシアーを励ました。

「お嬢ちゃん達、怪我はないかい?」
 二人の近くにいた太めの中年女性が、人の良さそうな声を掛けてきた。
「あ、いえ……平気です」
 シアーを立たせながら、ネリーが行儀よく答える。
 エプロンの上から腰に両手を当てた女性は、「ならよかった」と頷いてから荷馬車が
去った方角を睨み付けた。
「まったく、最近ダーツィを占領してからっていうもの、ひっきりなしにああやって乱
暴な荷馬車がすっ飛んでくるんだよ。軍の輸送隊って話らしいけどね、事故が起こって
からじゃ遅いから、今度役人見かけたら、文句言ってやらなきゃ。あんたたちも、道の
真ん中は危ないから、端っこを歩きなよ」
「はい、ありがとうございます。お騒がせして、済みませんでした」
 と、折り目正しく頭を下げたネリーの斜めから、どよめきがあがった。
「おい、こいつらスピリットじゃないのか……」
「……!」
 その声が触媒となって、場の雰囲気が一気に硬く、冷たくなる。
「ね、ネリー……」
 それを敏感に感じ取ったシアーが、恐る恐るネリーの背中に隠れた。
 ネリーは、頭を上げたものの目を伏せて唇を噛んだ。そしてシアーが不安げに触れて
くる手を、きゅっと握りしめた。
「それでは、これで……」
 会釈をしてその場を離れようとすると、二人の背中を先ほどの女性の声が追い討ちを
かけてきた。
 もうその声には、温かみも気遣いも残ってはいなかった。
「バカだね、城から出なきゃいいんだよ、この疫病神ども」
 ネリーは、シアーの手を引いて振り返ることなくその場を逃げ去った。
332名も無き名無し:04/01/23 23:03 ID:FUVqAYJY
>>328-331
1日遅れになってしまいましたが、続きをお届けします。
いろいろいじってたら、収拾着かなくなってしまいまして、面目ありません。
んで、予告のことは考えてなかったので、また後で張りに来ますです、ハイ。

#四天王ですか。なんかカコイイですね、口ほどにもなく倒されそうで_| ̄|○
333名無しさん@初回限定:04/01/23 23:51 ID:InPMRvwo
>>328-331
乙!
って、いきなりシリアスっぽい展開に?!
うーむ、ヨフアルを買い食いするどころではなくなってきましたな。

>#四天王ですか。なんかカコイイですね、口ほどにもなく倒されそうで_| ̄|○
やっぱり、塔に立てこもって1階ごとに1人ずつ倒していかなきゃ
いけないんだろうなあ・・・懐かしきジャンプのようなテンカイ。
334はじめてのおつかい 次回予告1:04/01/24 00:56 ID:Ki+6KbY1
「お国のスピリットが『白い』ままとは、まったく意外でしたな。バーンライトはとも
かく、北方五国のうちでは最強と目されていたダーツィを平らげたラキオスのスピリッ
トはどれほど『黒い』手練れかと思えば……と、これは失礼」
「構いません、剣士ジャドー・ロウン殿。事実を事実のまま述べたからとて、何の不都
合がありましょう」
 いやしくもラキオス王家の一員である自分の前で、忌憚どころか遠慮会釈もない見解
を述べ立てる壮年の男に、振り返ったレスティーナは優雅に微笑んで見せた。
「恐れ入ります、殿下。それで、ダーツィの禄を食んでいたこの私をお召しになられた
からには、お国はさらなる壮図を企てておられる、と解釈してよろしいか?」
 ジャドーは直裁な質問とともに、剣呑な眼差しを年若い王女にぶつけた。大胆不敵に
も人物を試そうという魂胆であるが、レスティーナは、身じろぎもせずそれを受け止めた。
「バーンライト、ダーツィの二国は、我らが龍の魂同盟の積年の怨敵。ラキオスは盟約
に従い、それを討ち果たしはしましたが、未だ平和の兆す気配もありません。我々は、
今後もせいぜい寝首を掻かれないために、軍備の弛みを戒めるのみです。座して滅亡を
待つ国家などどこにありましょう。生き残るために剣士殿のような人材が必要とあらば
それを求めること貪欲であって当然のはず。是非とも当家、いえ、ラキオスの国民のた
めにお力添えを賜りたく存じます」
「……教科書通りの模範解答ですな。いや、お若いのに大した胆力だ。殿下は、いずれ
史書に名を残す名君におなり遊ばすに違いない」
「痛み入ります」
 レスティーナは、深々と頭を下げた。この人を食ったような男は気にくわないが、王
国のために資する人材であれば、この程度の芸当なぞ造作もない。
「これは恐れ多い。私は一介の剣士に過ぎません、頭をお上げくだされ。そこまでされ
ては否やは申せません。どうぞこの武骨を、お国のためにお使いください」
「感謝いたします、ジャドー・ロウン殿」
 頭を上げたレスティーナは、洗練された笑みを作りながら心の中で呟いた。
335はじめてのおつかい 次回予告2:04/01/24 00:59 ID:Ki+6KbY1
(もう、さっさと帰れくそじじい! 早く行かないと、売り切れちゃうじゃないの!)

風雲急を告げるラキオスの城下町。(またかよ!)
若き聡明な王女レスティーナの運命やいかに?

続きは、日曜日を目標に…

>>333
いえ、基本的にはホノボーノですので、シリアスは3分しか保たない
どこぞのスイーパーと同じですからご安心を。
3361/3:04/01/24 04:04 ID:lgVqFrpz
私はバルジア王国王女、リン・ファラ=バルジアーナ。
今はメンフィル国軍の一員として日々努力している。
…しているのだが。
なぜか今私はメンフィル国王、キウ…リウイ王に珍妙な兜を手渡され、その着用を強要されている。
彼が言うには「戦士としての成長に必要不可欠な儀式」との事。実際、メンフィル王自身も(怪しげな)仮面を常に着用している。
しかし、玉座の後方に飾られた珍妙としか言いようのない兜の数々を見ると、これはただのキウ…リウイ王の趣味なのでは…
そんな私の疑念を裏付けるかの様な王の視線が腕の中の兜に集まっている…
3372/3:04/01/24 04:07 ID:lgVqFrpz
…結局私は珍妙兜を(半ば強制的に)かぶらせられて王の間を後にした。
正直、国王の真意はわからない。ただ、イリーナ王妃から直接魔法を教えていただけるとは予想外だった。
これを期待の現れだと私は思うことにした。王妃にご教授頂いている間、王のうっとりした視線が兜に集中していた様な気もしたが…
私が気持ちも新たに持ち場に戻る途中、正面から釣り目の女性が歩いてきた。フレスラント王女、リオーネ・ナクラ。
彼女には以前嘲笑とも侮蔑ともとれる冷たい目を向けられた。このような姿の私を見て彼女はどのような視線を投げかけるのか…
3383/3:04/01/24 04:09 ID:lgVqFrpz
私は笑われるのを覚悟した。
「見違えたわね、リン王女。ふふ、胸をお張りなさい。」
うつむいた私にかけられた言葉には嘲りも侮蔑もなく。
はっ、と顔を上げた私の目に映ったのは、初めて見るリオーネ王女の柔らかな笑顔。
その笑顔のまま、彼女は王の間へと消えていった。

その後ろ姿を見送りながら、かぶっていた兜を脱いだ。
さっきまで珍妙で、異様にしか見えなかったそれが、ひどく雄々しく、誇らしいものに思えた。
339名無しさん@初回限定:04/01/24 04:14 ID:lgVqFrpz
アセリアの流れをぶったぎる形になってスマソ
SSは初&携帯からなんで1レスごとが短くて読みづらいし
あまりにリンタソが不器用なかわいさをみせるもんだからちょろっと書きたくなった次第
340名無しさん@初回限定:04/01/24 23:13 ID:lotmRX2I
341名無しさん@初回限定:04/01/24 23:57 ID:6bzxN2yG
おお、スレが異様に進んでいる。何時の間に。
職人さんのSS、楽しませてもらいました。お腹一杯でございますー
「おつかい」も続きに期待大です。

・・・そう言えば、アセリアはウルカだけクリアがまだだなー
まあ、いいか。彼女、なんか印象薄いし < 酷
342名無しさん@初回限定:04/01/25 03:07 ID:X83h7pDp
>>341
そんなこと言わずにやってくれ…(;´д⊂ヽ
エピローグを見れば認識は180度変わるはず。
343名無しさん@初回限定:04/01/25 11:06 ID:Xymsipv/
>>336-339
アホなリンたんさいこー
お待たせしました! SS保管サイトの更新です
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/

今回の更新分は以下
連載中
○別れと再会
○はじめてのおつかい・ラキオス編

完結
○幻燐の姫将軍2 SS
○秘めたる恋・古代編
○大嘘予告
○S×S-02
○カミ×砕斗│←ウル

「カミ×砕斗│←ウル」に関しましては、「大番長キャラ!…(;´Д`)ハァハァ 〜その1」
からの分も掲載しました。
で、ちょっと生臭い話になりますが。
今月末は例のブツの発売日になります。
発売後はエロゲー板、エロネギ板が荒れる可能性もありますし、
何よりこのスレの人口が急速に増加する事が予想できます。

何事もなければいいのですが、スレ移行時などにスレッドを見失うなどの可能性が
高くなると予想できます。
 保管サイトの方で現行スレへのリンクを行いますので、念のためブックマークをお願いします。

 また、連絡、その他のために用に掲示板もありますので、そちらも利用してください
何かあった時にはそちらにも現行スレを張ります
http://www3.realint.com/cgi-bin/tbbs.cgi?seves2

避難所にスレでも立てておいた方がいいかなぁ……。何か案があったらお願いします。
346名無しさん@初回限定:04/01/25 17:37 ID:JVZdQZHS
アレに関してはファンサイトも多いし、そんなに警戒する必要も…あるか…
347名無しさん@初回限定:04/01/25 17:45 ID:0SwzttFa
専用SSスレを建てて、そっちに誘導とかはダメなんだすか?
いずれにしても、完璧な対応策ってのはムズカシイと思うんですが。
348名無しさん@初回限定:04/01/25 18:22 ID:QOQfPtqj
例のブツって何?
349名無しさん@初回限定:04/01/25 18:33 ID:MbFQgj+c
長らく難民だった人達がようやく定住できそうなことになりながらも、
それまでの行状などから肩身が狭かったりする、そんな所のブツ

ネタバレないよう新作は発売から1ヶ月ほど待つ、とか
1月経てばある程度熱も冷めるだろうし、冷めてない/待てない連中は他に行くだろう
350名無しさん@初回限定:04/01/25 18:37 ID:SJ65ves3
間違いなくスレ乱立のオカン。ただ職人さんが書き始めるとしても発売後1週間程度はたってるだろうし
その間様子見てからでも遅くはないのでは?

>348
メーカースレとして全く機能していないところの第二弾作品
 とりあえず、現状目に見えて暴れているのは煽りや祭りにしたがる荒らしなので、
少なくとも目に余る行状が無いかぎりは隔離、他の扱いはしたくないなぁ。
と、私は思っています。
多分、隔離スレができたら出来たで対立を煽るような荒らしが出てくるでしょうし。
 もちろん、大量に入ってきた人たちの雑談でスレが占拠されるなどが起きた場合、
何らかの方策をとる必要があるかと思いますが。
(感想スレを立てる。隔離する。など)

 心配なのは、例の爆撃の標的がこのスレになった場合で、その対策としてスレの
位置を把握できるようにしておきたい。というのが>>345の意図です。

>>349
ネタバレ禁止に期間を置くのはいいかもしれませんね。
他の作品に関しても、ネタバレの議論が何度かありましたし。
352名無しさん@初回限定:04/01/25 19:17 ID:qBzS7+UR
普通のファンが入ってきても、粘着アンチが自演で相当荒らすし。
数ヶ月は隔離の方が良いと思われ。
353名無しさん@初回限定:04/01/25 19:33 ID:9Yqy9aZN
どちらにしろ過剰に反応すればするほどスレは荒れるので
タブーなしでfateを語るスレ
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1074699263/
とか適当なところに投下して貰った方がよさげ
354名無しさん@初回限定:04/01/25 23:22 ID:kxIAxB6H
ああヤダヤダ
考えるだけで欝だ・・・・・

何事も起こらずに済んでくれないものだろうか・・・・・・
355名も無き名無し:04/01/25 23:35 ID:SlXseHWS
|ω・`) ……

お話の最中水を差して恐縮ですが、
何らかの結論がでるまで、しばらく大人しくしていた方がいいっすかね?
>>355
あ、スンマセン。気にせずどうぞ。

とりあえず、ネタバレ期間を一ヶ月ほどつくる。その間の状況を見ながら対処。ですかね。
アイデアある人は掲示板の方にでもよろ
「ネリーとシアーを買い出しに行かせた……って、ハリオン、どうしてそれを先に私に
報告しないの!?」
 第二詰め所のハリオンの部屋に、紙切れを持ったエスペリアが血相を変えて怒鳴り込
んできた。戦闘服の繕いをしていた部屋の主は、それに動じた風も見せず、いつものの
ほほんとした雰囲気を崩さないまま迎え入れた。
「あらぁ、外出許可願いはちゃんと出してありますよぉ? それとも、届いてませんで
したかぁ?」
 あからさまに人を食った物言いにしか聞こえないが、ハリオンはこれが普通である。
エスペリアは、声のトーンが1オクターブ上擦りそうになるのを、咳払い一つで抑えた
が、それでも滲み出る不機嫌さを完全には隠しきれなかった。
「……ええ、ちゃんと届いたわよ、つい今さっきね! ニムントールが他の報告書と一
緒に混ぜてたから危うく見落とすところだったわ! 予定日時を見たら、今から一時間
も前になってるからびっくりしたわよっ! これは明らかに隊規違反だし、だいたいま
だあの二人には情操教育が済んでないんだから、人間のいる場所に行かせ……けほっ」
 一息にまくし立てようとしたものの、エスペリアは息が続かなくなって咳き込んだ。
それを見て、ハリオンは縫い物を放り出し、脇机から水差しを取り上げグラスに注ぐ。
「はい、どぉぞ。あんまりぃ、慌てないでくださいなぁ」
「んんっ……あ、ありが……」
 喉を押さえて顔をしかめていたエスペリアは、ハリオンの差し出す涼しげなグラスを
ひったくるようにして、一息にあおった。こくこくと水を飲み下すエスペリアの白い喉
元を、ハリオンは笑みを絶やさずに見守っていた。
「……ふぅ……で、どこまで話したかしら?」
 グラスをハリオンに返しながら、エスペリアはすっとぼけたことを言う。
「はい、えぇとぉ……ニムがぁ、報告書を持って行ったぁ、の辺でしたかぁ?」
 ハリオンは、真面目な顔でとぼけ返した。
「ニム、ニム……? いえ、そこはもっと前だったはず……」
 と、はたと何かに気づいたように、エスペリアは口をつぐんでハリオンを凝視した。
「?」
「ねえ、ハリオン……あなた、書類をニムに渡したのは、いつ?」
「そうですねぇ、今朝でしたけどぉ、それがどうかしましたかぁ?」
 それを聞いた瞬間、エスペリアは顔を両手で覆いたくなる衝動に駆られ、かろうじて
それをこらえた。あのものぐさ太郎のニムントールが、緊急事態ならともかく、今朝受
け取った雑務をたった数時間かそこらで果たすはずはない。それはラキオススピリット
隊の関係者なら、誰もが知ってる事実である。
 問題は、ハリオンが届けをなぜ、よりにもよってニムに預けたか、それに尽きた。
 エスペリアは、無意識に手にしていた書類をぎゅっと握りつぶした。
「……ハリオン、あなた、わざとやったわね?」
「はい? なんのことですかぁ?」
 私は潔白ですよぉ? とばかりにハリオンは小首を傾げてみせた。形式上、ハリオン
には直接の責任はなく、これ以上の追求は職分を越える。
 エスペリアは、理不尽から来る苛立ちを覚えつつも敗北を悟って深く溜息をついた。
「第二詰め所について、あなたにはあなたの考えがあるのでしょうけど……万が一、そ
んなことはあって欲しくないけどネリーとシアーに何かあったら、監督責任を問われる
のは覚悟しておいてね」
「大丈夫ですよぉ、ネリーもシアーも、いい子ですからぁ」
 エスペリアの疑念は、その台詞と笑顔で確信に変わった。呆れて言葉も出ないので、
代わりにせいぜい面当てをひっかけることにした。
「それと。以後、書類の提出だけは、ナナルゥに担当させるように。いいわね!」
 まるで捨て台詞のように口頭での戒告を垂れて、エスペリアは部屋を後にした。この
後、ニムントールの捜索を開始するであろう事は想像に難くない。
「はぁい、以後気をつけますぅ」
 既にいなくなった上役に対し、ハリオンは、彼女なりに真摯な反省の辞を返して繕い
物を再開した。

「ね、ネリー、どこまで行くのぉ?」
 シアーの不安げな声を聞いて、ネリーは初めて歩みを止めた。そして辺りをきょろき
ょろ見回し、人目をはばかって建物の陰に飛び込むと、冷や汗を拭って大きく一息つい
た。
「……ふぅ、ここまでくれば大丈夫」
 先ほどの野次馬が尾行していたのを巻いた、とでも言いたげにネリーは安堵してみせ
る。人間がスピリットに冷たい仕打ちをするのは今に始まったことではない。要はそれ
を回避できなかった自分たちの不手際が不味かったに過ぎない。シアーもそのことは
心得ているから、敢えて振り返ろうとはしなかった。
「ここまで……って、ここ、どこぉ?」
「どこって、そりゃ……」
 右見て、左見て、もう一度右を見て。
「……あはは、細かいことは気にしない気にしない」
「全然細かくないよ、大事なことだよぅ」
 シアーは、ますます心細げにぼやいた。
 ラキオスの城下町は、かつて人間同士が戦争していたころの名残で、街路が複雑に入
り組んだ半迷路状になっている。羽根を持つブルースピリットの二人なら、その気にな
ればいくらでも「ずる」が出来るのだが、さきほどの騒ぎのせいもあって、人目を引く
ような行動はできるだけ避けたかった。
「……はぁ、しょうがないか。シアー、ハイロゥを使うよ」
「え……でも」
「このまんまだと、お使いどころか城に帰れるかも判らないし。緊急避難ってことで、
エスペリア様も許してくれるよ、うん」
「うーん、いいのかなー」
 何か間違えていると言いたげなシアーのじと目をモノともせずに、ネリーはまず頭に
ハイロゥを展開した。
「あら、あなたたち迷子なの?」
「えっ!?」
 あらぬ方から声を掛けられ、二人はウイングの力を借りずに10cmは飛び上がった。
 声のした方向は建物の合間の陰になっていて、そこの暗がりから、ぬっと人影が浮き
上がった。進み出てきた人影は、光を浴びて若い女性の正体を現した。ネリーたちより
頭一つ以上高く、白い貫頭衣のような衣装をまとっていて、髪の毛を両側でお団子に結
っている。まったくの軽装だが、その身軽さはどことなく不自然だった。
「へー、あなたたちスピリット? こんなところで会うなんて珍しいわね」
「あっ!?」
 女性の目が興味深げに、ネリーの頭の上を眺めていた。
 咄嗟のことで、ネリーはハイロゥを消す暇がなかったのだ。
360はじめてのおつかい 次回予告:04/01/26 04:40 ID:6vVZe4v4
 怒髪天を衝く勢いのエスペリアは、手にした『献身』をりゅうりゅうとしごきながら、
目の前に必死の形相で立ちはだかる『月光』のファーレーンに言い放った。

「ファーレーンどいて!そいつ殺せない」

風雲急を告げるラキオスの城下町。
自業自得のニムントールの運命や如何に!?



……って、これ予告になってねー_| ̄|○
361名無しさん@初回限定:04/01/26 06:27 ID:8Tpnuycf
裏路地の支配者レムリアキター

次回も楽しみに待ってまつ(ニム地獄編を)
362名無しさん@初回限定:04/01/26 21:43 ID:31MhmOww
レムリアたんキター
住民粛清編まだ〜?
363名無しさん@初回限定:04/01/27 20:40 ID:17CL0dOM
オンドゥルルラギッタンディスカー!!
364名無しさん@初回限定:04/01/27 20:42 ID:hEl+kTxi

特板に(・∀・)カエレ!!
365名も無き名無し:04/01/27 22:18 ID:R7YSx+cN
うわー、ネタバレは勘弁してくださいよー……ってバレバレですかそうですか。
しかし、ニム地獄編はいいとして、住民粛清編……って、どう書けばいいんでしょうかね?

あ、例の続きは、何事もなければ一応日付が変わってからの予定です。
次回予告に書き忘れてました、ハイ。
366名無しさん@初回限定:04/01/27 23:58 ID:RH+S2GyG
ユートの出番が微妙に少ないのは気のせいか……?
いや、いっつも最後においしい所さらっていくけど(笑

レムリアたんゴーゴー!
367名無しさん@初回限定:04/01/28 09:58 ID:tF+B9jhc
そろそろアセリア以外のSSが読みたいと思いますた
368名無しさん@初回限定:04/01/28 20:27 ID:MUrddIm3
まあ、職人さんが書いてうpしてくれない限り、どうしようもないことではあるのだが。
369名無しさん@初回限定:04/01/28 23:58 ID:LyUP5k6C
と言うか、レムリア公務終わって直ぐに抜け出してきたのか?
ネリー達に追いつくの早すぎ(笑
  
そー言えば、今週末には専用スレが一杯たってそうだなぁ・・・
「あっ、えーと、その、こ、これはっ、ちが……」
 女性から後ずさりながら、ネリーは弁解の言葉を探したものの、髪の毛や瞳の色なら
ともかく、ハイロゥはさすがに言い逃れできそうもない。
 万事休す。また騒ぎを起こされ、衆目の中心に引き立てられ、冷たい視線を浴びせら
れ、自分たちの存在に起因する居たたまれない気持ちを味わわねばならないのか。
 風は凪いでいたが、ネリーの背筋をおぞましく一撫でしていった錯覚を覚えた。
 いっそ強引に振り切ろうかな、と観念した矢先に、シアーが思いも寄らないことを口
走った。
「こ、これは……えーと、そう、そうです! お皿かぶってスピリットごっこして遊ん
でたら、その、取れなくなったんですぅ〜」
「へ?」
 すっかり動転したシアーは、証拠隠滅とばかりにネリーのハイロゥならぬ、「輝き浮
かぶお皿」を掻き消そうと手をバタバタさせ始めた。それは実体化する前の状態にある
ハイロゥをすり抜けて、ネリーの頭を直接しばくことになる。
「ちょ、ちょっとシアーっ!?」
「お皿よお皿、飛んでいけ〜っ!」
「イタタタタっ、い、痛いってばっ!」
「わっ!? ご、ごめん、ネリーっ!」
 姉の悲鳴に驚いて、シアーは咄嗟に手を引っ込めた。ネリーが頭を抱えて逃げ出す間
に、ハイロゥはようやく消えて無くなった。
「あ、お皿がやっと取れたよぉ、よかったね、ネリー」
「……うー、まだ言うか」
 そんなドタバタの一部始終を見届けていたお団子頭の女性は、しばし呆気に取られた
あと、当然のようにぷっと吹き出した。
「あははははっ、そ、そこまでビックリしなくても、いいのにっ、あははは」
 よほど姉妹の周章ぶりがツボに入ったのか、女性は身体をくの字に折り曲げて大笑い
する。ひとしきり笑って目尻の涙を拭うと、双子が同じようにぽかーんと口を開けて自
分を見守っていることに気づき、ようやく真顔になった。
「……コホン。ごめんね、あなたたちがあまりにも可愛らしくて、つい」
 つい、で爆笑された方はいい迷惑だが、そんな人の気も知らずに、女性はなおも言い
募る。
「じゃあ、こうしましょう。あなたたちはスピリットじゃなくて、お皿を頭にのっけて
遊んでいて取れなくて困っていた、単なる迷子の姉妹。それでいいでしょ?」
 そっちの方がもっと嫌だ、とネリーは思ったが口には出さなかった。
「はい、それでいいですぅ」
「……右に同じ」
 シアーはなぜか得意げにささやかな胸を反らした。一方のネリーは、爆笑の後遺症で
顔面の締まりが怪しい女性に、ふて腐れた眼差しを向ける。
(なんか、調子の狂う人だな…)
 憮然としたまま、ネリーは屈託なさげな笑顔の女性をそう値踏みした。普通の人間な
ら、ネリーたちを見て露骨に嫌がるものだが、この人はむしろ平然としている。
 露骨に怪しい。何か裏があるに違いない。関わり合いにならない方が良さそうだ。
「それじゃ、そういうことで……」と切り出した声に、女性が被せてきた。
「ところで、あなたたち……名前は、シアーちゃんにネリーちゃんでいいのよね?」
「はいっ、シアーは、シアーって言いますぅ。シアー・ブルースピリットが本名なんで
すけどぉ、長いからシアー、でいいですよ〜。ネリーは、シアーの、双子のお姉ちゃん
ですぅ」
「あちゃー……し、シアー…」
 ネリーは舌打ちした。せっかく打った猿芝居を、シアーは自己紹介で吹き飛ばした。
パン屋が「べーカー」で鍛冶屋が「スミス」なくらい、ブルースピリットは「ブルース
ピリット」。なんとも明快極まりない、よろしき名字だ。
「はい?」
「……いや、もういい」
 もっとも、女性はそんな「失言」など気にした風もなく、
「シアーにネリー……ね。うん、とても可愛い名前だね。あ、私のことはレムリアって
呼んでちょうだい」
「はい、レムリアさんっ」
「それで、どこから来たの……って、これは聞かない約束になるわね。じゃあ、こんな
ところで何してたの?」
「えっと、ユート様のためのおつかいに来たんですけどぉ、町に出るの初めてだからぁ
迷子になっちゃったんです〜」
「そうだったの……って、ユート様?」
「はい、ユート様はぁ、シアーたちのご主人様なんですよー、とっても強くてかっこよ
くて、優しいんです〜」
「へえ。じゃあシアーちゃん、その人のこと好き?」
「もちろん、大好きですぅ」
 などと姉の与り知らぬところで、ひとの妹と勝手に交流を深めていた。もう、自分た
ちがスピリットであるかどうかは、すっかり埒外に押しやられていた。
 そんなレムリアを見るネリーの蒼い瞳は、ますます猜疑の色で曇っていく。ネリーの
知る限り、このような例外的な態度で接してきた人間は、大好きなユート様くらいだ。
そして、ユート様はネリーの身内で、レムリアなる人物は見ず知らずの他人である。
 それにしても……ネリーはシアーを横目で盗み見た。レムリアに対するシアーの無防
備っぷりはどうしたものか? ネリーは唐突にシアーの耳を引っ張り、レムリアからひ
っぺがした。
「い、いたいよぉ〜」
「いいから、こっちに来る!」
「ん? なになに?」と物欲しそうに寄ってくるレムリアを噛みつきそうな目で牽制し
つつ、ネリーはひそひそと小声で耳打ちした。
「ねえ、ちょっとシアー、よく平気で人間なんかと仲良くできるわね」
「え? どうして?」
 シアーは、心外だと言わんばかりに目をぱちくりと瞬いた。ネリーは、凄みを加えよ
うと表情を「厳しく」したつもりになったが、端からは口を尖らせたようにしか見えな
かった。
「だって、普通人間はネリーたちを見て逃げ出すもんだよ? でもこの人、物陰から突
然湧いて出てきたし、ネリーたちのことスピリットだと知っても平気だし、髪型は奇妙
だし、ええと、ええと、とにかくなんか変だと思わないの?」
「変かなぁ? そうかなぁ?」
「そうだよ、変に決まってるじゃない。きっとこの人、ネリーたちを捕まえて、見せ物
とかにしちゃうつもりなんだよ!」
 察しの悪い妹に、ネリーは鼻息も荒く教え諭す。半分は言いがかりで、半分は創作だ
が、ことさら悪し様に言うことで、シアーの警戒心を煽ろうという可愛らしい魂胆だ。
 ところで、「シアーの警戒心」といえば。かつてバーンライト攻略戦の折、サモドア
近郊の交戦区域での威力偵察中に、所属不明のスピリット部隊と遭遇した時のこと。
 まだ初陣を踏んで間もないシアーは、出会い頭に
「あ、人がいる。こんにちはー」
 と、素で挨拶してのけたことがある。
「あれはシアーのシアーたる所以よね」と、そのとき分隊長だったヒミカに後でさんざ
ん笑われて、姉としては当人以上に恥ずかしい思いをしたのを今も鮮明に覚えていた。
「考えすぎだよ、ネリー。レムリアさんは、そんな悪い人じゃないよぉ」
 シアーのその反論を聞いたとき、軽い立ちくらみを覚えたネリーは、そんな過去の心
象風景を垣間見た気がした。
「……どうしてそう思うの?」
 力無く問い返す姉に、シアーは自信たっぷりに即答した。
「だって、レムリアさん、ユート様と似てるんだもん」
 経緯は違えど、姉妹の導き出した帰結点は一緒だったようだ。
「ねー、もうそろそろいいでしょー? お姉さん退屈だよー」
 蚊帳の外に放置されていたレムリアが、ついに痺れを切らせて乱入してきた。
角突き合わせて密談中の姉妹の間を割って身体をねじ込んだ。
「うわっ!?」
「へへー、お姉さん今日はちょっと暇なんだ。ネリーちゃんシアーちゃん、一緒に遊ぼ
う」
 独り決めに宣言すると、レムリアは有無を言わせず、双子を拉致していった。

「あ、あの、ネリーたち、おつかいが…」
「そんなのあとあと。お姉さんがおいしいものごちそうしてあげるから」
375はじめてのおつかい 次回予告:04/01/29 00:30 ID:QS4KAj1S
「いてて……あのジャドー・ロウンとかいう新入り訓練士、デタラメだ…」
 湯船に浸かりながら、悠人はあちこちの打ち身を恐る恐るさすった。
 しかし、へばったのは悠人一人で、隊員達は疲労などおくびも見せずに、所用が
あるからと、早々と引き上げていった。
「みんな元気だよなーって、隊長の俺がそんな弱音吐いてちゃ、この先やってら
れないよな…なあ、ニム?」
「んー、めんどう」
「……そうか、まあ、お前ならそう言うよな」
 悠人は、自分の頭の手ぬぐいを、ニムの頭に載っけかえた。
 湯気がはんなり立ち上る中、二人のデタラメな鼻歌が不協和音を奏でていた。

「……ん?」

風雲急を告げるラキオスの城下町。
エスペリアの魔の手が迫るっ!!(違うって)

#次回は都合によりちょっと伸びそうですので悪しからず。 
376名無しさん@初回限定:04/01/29 00:30 ID:PbJGIIOq
支援?
377名無しさん@初回限定:04/01/29 00:56 ID:kt2Agt8/
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
レムリアたん(;゚∀゚)=3ハァハァ
378名無しさん@初回限定:04/01/29 05:37 ID:ibEsiLEj
>「あ、人がいる。こんにちはー」

ワラタ
あったなぁ、そんな台詞。
379名無しさん@初回限定:04/01/29 14:56 ID:rh8FxvFl
乙です。次回予告がすっげー気になる。ニムフラグですか?

って書いて思った。ニムフラグってニフラムみたい。
380名無しさん@初回限定:04/01/29 16:20 ID:yYJEVR1V
>>379
ユート「ギャアアアァァァ」
アセリア「ん、ユート、性根…腐ってるから」
381名無しさん@初回限定:04/01/29 18:51 ID:rh8FxvFl
>380
素晴らしい返しをありがとう。

ところでやっぱりアレのおかげで各所でエライ事になってるな。
382名無しさん@初回限定:04/01/29 18:58 ID:sQNizON7
>>380
衛藤ヒロユキだかのドラクエ4コマでそんなネタ見たなw

>>381
何も言うなw

ゲーム自体は普通に面白いのにね( ´・ω・`)
383名無しさん@初回限定:04/01/29 19:06 ID:YEWmJfI4
今ちょうど来たよw
まぁ、騒ぎは無視して静かに楽しむのが吉かな
384名無しさん@初回限定:04/01/29 19:16 ID:QS4KAj1S
>>380
ワロタ

最近は「次回予告」とかいいながら全然予告になってないんですけどねw
悠人の出番が少ない、というレス見て思いつきで書いただけなんですが…

「ニムとお風呂」編を番外で書いてみるか、挿話にしてみるか検討してみまひょ。
ちなみに例のアレは入手予定ないので、連載ペースはほぼ変わらないはずです。

#ひょっとしてエロゲ板dでます?
385名無しさん@初回限定:04/01/30 13:51 ID:o1aDo/fc
O.K. アセリア以外の何が読みたいんだね? ん?
386名無しさん@初回限定:04/01/30 15:33 ID:jISu3t07
fa(ry
387名無しさん@初回限定:04/01/30 15:38 ID:o1aDo/fc
Faxanaduか……君の見識の高さには敬意を払いたいが、
あいにくそれはエロゲじゃないな。
388名無しさん@初回限定:04/01/30 15:49 ID:xjhyWsTa
>386がいってるのはFakeだろ
389名無しさん@初回限定:04/01/30 16:40 ID:tev0wrv/
shuffleのカレハ先輩でハァハァしてぇ
390名無しさん@初回限定:04/01/30 17:25 ID:uGKFmfT/
アセリアでも番長でも誰でも何でもウェルカム!

今年出た分だとパラダイスロストが結構面白かったので、
誰か書かないかと期待してみる。
391風変わり:04/01/30 19:10 ID:ZYwzDZEc
ぼー・・・・はっ!名も無き名無し様、毎日お疲れ様です〜

私も例のアレは入手予定ないのですが他のいくつか買う予定・・・・
もうアセリアは名も無き名無し様にお任せして私は別のものでも書くとしましょう( ・∀・)ノ
Shuffleでも書こうかな・・・「神にも魔王にも凡人にもなれる男」
392名無しさん@初回限定:04/01/30 22:05 ID:tev0wrv/
ヽ(´д`)ノ カレハ先輩か麻弓がイイー  イイのー イイったらイイー!
393名無しさん@初回限定:04/01/30 22:17 ID:oqawbwn1
取りあえず、「ネタバレ期間」に配慮してちょーらいな、しゃっほーの人たち。
ていうか、今日発売の人たち。たちたち。
394名無しさん@初回限定:04/01/30 22:26 ID:tev0wrv/
ぶっちゃけた話ネタバレて内容が損なわれるようなタイプのゲームじゃあない罠
しかしネタバレは(・A・)イクナイ
395名無しさん@初回限定:04/01/31 23:46 ID:XDS0VyLd
早速本スレ>386が楓ネタバレをしてくれやがりました。
396名無しさん@初回限定:04/02/01 01:59 ID:ipYXyFLY
以前、バルドフォースのSSを書くと宣言した者ですが、個人的な事情で
書き上げることができませんでした。期待をしていてくださった方々に
お詫び申し上げます。
397名無しさん@初回限定:04/02/01 03:55 ID:f+4qrV0n
>>396
あんた律儀な香具師だな。
これにめげずにガンガレ。
次はリクエスト取らずに、出来てから張りに来ればクールだ。
398名無しさん@初回限定:04/02/01 17:09 ID:IBr89kWy
昨今では珍しい、立派なお人や。エロゲーメーカーの連中は>>396さんを見習いなさい。
399名無しさん@初回限定:04/02/01 20:43 ID:wgrK2mYJ
>>398
ちょっと待った。


その・・・あまり見習われても困るんじゃないのか?
400名無しさん@初回限定:04/02/01 23:02 ID:COfxjdTM
>>400ゲット。この400は漏れの愛するそれ散るへ捧ぐ

>>399
誠に申し訳ありませんが本社が制作中のソフト○○○は都合により開発中止とさせていただきます(ry
((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
401名無しさん@初回限定:04/02/02 00:01 ID:e1Lg9eBX
まあ、無駄な期待を抱かせ続けるよりはマシかもしれんが……
「おーっ! ……もうヤケだ」
 一行は時折目についた店に飛び込んでは、そこでなにがしかの菓子や料理を見繕い、
レムリアの軍資金で買い漁っていた。今も香ばしい匂いと煙を振りまいている、怪しか
らん串焼きの屋台を見つけ、攻撃命令を下したところである。
「おじさま、私たちの可愛さに免じて3本おまけしてっ!」
「たはー、そう来るかい! まぁ、三人ともオレ好みの別嬪さんだし、ほれ今日は特別
だっ!」
 屋台の司令官はひとたまりもなく白旗を掲げ、焼きたての肉汁したたる串を六本ばか
り恭しく献上した。レムリアはお礼と共に三本分の代金を払い、戦利品を分配する。
「うん、焼き加減はまあまあね。もうちょっと味が濃い方がいいけど」
 食べ歩きながら、レムリアは生意気な論評を加えた。
「でも、おいしいです〜」
 シアーも、口の周りが脂でべっとり汚れてるのも気にせずむしゃぶりつく。
「ネリー、これ前から食べたかったんだ〜」
 骨までしゃぶる勢いで串をきれいにしたネリーも、すっかりご満悦のようす。最初は
いろいろ渋っていたのに、胃の腑が充実して来るにつれて「おつかい」のことなどすっ
かり忘れてこの状況を楽しんでいた。
 路地裏より出てきてからの時間は、殆ど買い食いに費やされていた。こうやって食べ
歩くのがストレス解消だ、とレムリアは言い、どこの店が美味しいか、姉妹は何が好き
かなど、食べ物の話に花を咲かせていた。スピリットにしろ人間にしろ、年頃の少女の
興味が向かう先は不思議と一致しているようである。
403名無しさん@初回限定:04/02/02 00:38 ID:HkIrXC2o
げ、すんません、上のはなかったことにしてください、
変なところで切れてる_| ̄|○
 風変わりな町娘、レムリアに引きずられるままに、幼いスピリットの姉妹は昼下がり
の街路を練り歩いていた。機嫌も上々なレムリアが先に立ち、困惑気味のネリーと喜色
満面のシアーの手をそれぞれの手で繋いで先導する様子は、微笑ましくもあり、どこか
滑稽でもあった。
「たいちょー、前方に敵の砦を発見しましたぁ〜。たくさんの木串で武装していて、あ
などれません〜」
「ふふふ、臆するでない。我がラキオス買い食い部隊の底力、見せてやれ。全軍突撃い
ーっ!」
「お〜っ!」
「おーっ! ……もうヤケだ」
 一行は時折目についた店に飛び込んでは、そこでなにがしかの菓子や料理を見繕い、
レムリアの軍資金で買い漁っていた。今も香ばしい匂いと煙を振りまいている、怪しか
らん串焼きの屋台を見つけ、攻撃命令を下したところである。
「おじさま、私たちの可愛さに免じて3本おまけしてっ!」
「たはー、そう来るかい! まぁ、三人ともオレ好みの別嬪さんだし、ほれ今日は特別
だっ!」
 屋台の司令官はひとたまりもなく白旗を掲げ、焼きたての肉汁したたる串を六本ばか
り恭しく献上した。レムリアはお礼と共に三本分の代金を払い、戦利品を分配する。
「うん、焼き加減はまあまあね。もうちょっと味が濃い方がいいけど」
 食べ歩きながら、レムリアは生意気な論評を加えた。
「でも、おいしいです〜」
 シアーも、口の周りが脂でべっとり汚れてるのも気にせずむしゃぶりつく。
「ネリー、これ前から食べたかったんだ〜」
 骨までしゃぶる勢いで串をきれいにしたネリーも、すっかりご満悦のようす。最初は
いろいろ渋っていたのに、胃の腑が充実して来るにつれて「おつかい」のことなどすっ
かり忘れてこの状況を楽しんでいた。
 路地裏より出てきてからの時間は、殆ど買い食いに費やされていた。こうやって食べ
歩くのがストレス解消だ、とレムリアは言い、どこの店が美味しいか、姉妹は何が好き
かなど、食べ物の話に花を咲かせていた。スピリットにしろ人間にしろ、年頃の少女の
興味が向かう先は不思議と一致しているようである。
「それにしても、シアーちゃんって食べるのゆっくりなのね」
 早々に串二本平らげたレムリアが、ようやく二本目に取りかかったシアーを横目で見
た。シアーは、小さな口で少しずつ噛み裂いては、ゆっくり味わうように咀嚼する。
「シアーは昔からそうなんです。この子トロいから、みんなが食器の片づけ始めても一
人でもぐもぐやってるんですよ、ホント世話が掛かるんだから」
 ネリーの妹をからかう口調と眼差しには、どこか自慢げな気配があった。
「うー、シアー、トロくないもん。お料理、ゆっくり味わってるだけだもん」
 シアーは口を尖らせる。
「多すぎたの? なんなら、お姉さんが片づけようか?」
 と、手を差し出しかけるのをネリーが遮った。
「ああ、大丈夫です、シアーは食べるのは遅いけど絶対に残しませんから」
 確かに食べる速さは遅いが、シアーが料理を残したことは殆どない。緊急時に強制的
に皿を下げられてしまうことは何度かあったが。
「へえ、シアーちゃん出されたモノはちゃんと全部食べるんだ。エラいな〜」
 その話を聞いたレムリアは、どこかここではない遠くを見つめてうっとりと呟いた。
そして何やら名案を思いついたらしく、ぱんと両手を打ち鳴らす。
「それじゃ、今度お姉さんが料理を作ったら、是非シアーちゃんに食べてもらわなきゃ
ねっ。楽しみだわー」
「はい、楽しみです〜っ」
 打てば響くように追従するシアー。だが、このときネリーの背筋をうぞぞぞぞ、とい
うおぞましい感覚が走り抜けた。その直感するところが正しければ……
(レムリアさん、多分料理下手だ……)
 強いて言えば、根拠はレムリアの笑顔が微妙に不自然だから、である。
 と、レムリアがふと足を止めた。よからぬ事を考えていたネリーは心を見透かされた
気がしてぎくりと立ち止まるが、レムリアはすっとシアーのそばに近づいていく。
「口の周り、汚れてるわよ。女の子なんだから、きれいにしなきゃ」
「ほえ?」
 レムリアは懐からハンカチを取り出して、ようやく食べ終えたシアーの口元を優しく
拭う。
「んむっ……」
 くすぐったそうに身じろぎするシアーと、その口の始末をするレムリア。それを傍目
で見ていたネリーは、なんだか面白くない気分がこみ上げてくるのを感じた。
「はい、きれいになった。……ほら、ネリ……」
 と、レムリアが標的を変えようとした矢先に、ネリーは自分の服の袖で乱暴に口周り
を拭う。差し出されたハンカチが、しばし宙に浮いていた。
「……さて」
 気を取り直してハンカチをしまいながら、レムリアが切り出した。
「そろそろ本日のメインイベントと行きましょうか」
「メインイベント?」
「イベント〜?」
 期せずして唱和する双子に向かい、レムリアは得意満面の面持ちでもったいをつける
ように指を振って見せた。
「そう。これまでの買い食いはあくまで前哨戦に過ぎないのよ。それも全て、どんじり
に控えた真打ちのための地均し、下準備と言ったところかな」
 一本気なところのあるネリーは、こういう回りくどい物言いが苦手である。地団駄を
踏むように先を急かした。
「前置きはいいから、早く教えてくださいよー」
「もう、せっかちね、ネリーちゃんは。それはね、甘くて香ばしい、焼き立てのヨ・フ
・ア・ルよ」
「よ、ヨフアルっ!?」
 双子ならではのハーモニーで驚きの声があがり、その反響の大きさにレムリアは満足
げに頷いた。
「そ。私の行きつけの屋台があってね、そこの焼き立てのヨフアルがものすごく美味し
いの。本当は誰にも教えないんだけど、特別に連れてってあげる」
 レムリアはウインクしながら、小声で大事そうに囁く。それを聞いて、シアーは飢え
た野犬のように瞳を輝かせた。
「わー、ネリー、ヨフアルだって! やっと食べられるねっ!」
「う、うん……」
 ネリーの返事は歯切れ悪く沈んだ。その単語は、ネリーが忘れていた別件をまざまざ
と思い出させてしまったのだ。
「……どうしたの、ネリーちゃん」
 あからさまに落胆したネリーに気づいて、レムリアが声を掛ける。
「ネリー?」
 シアーも、心細げな眼差しをよこしてきた。二人に見つめられて、ネリーは訳もなく
顔を赤らめた。
「……お、おつかいのこと、忘れてた」
 ふて腐れたように目を反らすと、レムリアは何を思ったかわざとらしく笑い立てた。
「あっはっは、もう、そんな細かいことは気にしない気にしない、今日はせっかく二人
に出会えて楽しい日なんだから、そんな暗い顔してないで、大いに飲んで食べたまえ」
「たまえ〜」
 ネリーは思わず天を仰いだ。シアーはすっかりレムリアに懐いてしまっている。大い
なる永遠神剣『再生』よ、ネリーには味方はいないのでしょうか?
 何かが、気に障る。その障りをはねのけたい衝動がわき上がった。
「……はぁ? あのさ、飲んで食べて場合じゃないでしょ、シアー。おつかいはいった
いどうするのっ!?」
 ネリーは意図的にレムリアを無視して、シアーをなじる。スピリットは人間には反抗
できない。それ以前に、人の気も知らないでゴキゲンな妹がちょっと憎かった。
「おつかい……?」
 シアーは、目に微かな怯えの色を浮かべて、聞き返した。
「でも、シアーはわからないもん……」
 言い訳された。それが、ネリーの苛立ちをさらに駆り立てた。
408名無しさん@初回限定:04/02/02 00:42 ID:b7ttbEaZ
態度だけ見習って、行為は見習わないということで一つ。
「ちょ、ちょっと二人ともよしなよ……」
 雲行きが怪しくなってきたのを感じ、レムリアが間に入ろうとする。
 しかし、ネリーの暗い情念は止まらなかった。本当は「ネリーが」、シアーにヨフア
ルをごちそうするはずだったのに、何でこの人は余計なことをするのだろうか?
「わからないはずないじゃん! おつかいを済ませて早く帰らないと、エスペリア様に
怒られちゃうんだからっ。もしそうなったら、シアーのせいだからねっ!」
 言い終えて、そのあまりの語気の鋭さに自分でも驚いた。はっとしてシアーの方を見
やると、果たしてシアーは冷や水を浴びせられたように目を見開いて凍り付いていた。
「で、でもぉ……し、シアー、何すればいいか、知らないんだもん。ネリーが任せてっ
ていうから……ひっく」
「う……」
 ネリーは、図星を指され血の気を失って後ずさった。
 シアーに落ち度はない。おつかいの殆どはネリーが請け負っていたのだから。
 またやってしまった……後悔の念が羽虫の固まりのように騒ぎ立てる。もとはと言え
ば自分のミスが原因なのに、それを無実のシアーに八つ当たりしてしまった。それより
も、またシアーを泣かせてしまったことに、ネリーは愕然としていた。
 今日の「おつかい」だって、シアーのヨフアルを横取りした埋め合わせも兼ねてのこ
となのに、昨日の今日でまたシアーを泣かせてしまうなんて……
 心の中に湧いた羽虫の群れが、迂闊なネリーを責め立てるように飛び回る。その一匹
一匹が、あの不機嫌そうなニムの顔になり口々に囃し立てた。
「あんた学習能力あるの? 何回同じ事をすれば気が済むわけ?」

「……くっ!」
「あっ、ネリーちゃんっ!?」
 レムリアが呼び止めるのも聞かず、ネリーは踵を返して雑踏に飛び込んだ。
410はじめてのおつかい 次回予告:04/02/02 00:48 ID:HkIrXC2o
「うー、体中埃まみれだよぅ……」
とぼとぼと湯殿へ向かう小柄なツインテールの少女。
脱衣所に入ると、かごに脱衣が入っていて先客の存在が知れた。
「誰か入ってるのかな……」
汚れた服を脱いで、一刻も早くさっぱりしたいヘリオンは、大して気にもとめずに
浴場の戸を開けた。

「ゆ、ユート様っ!?」

そして、そこでヘリオンの見たモノはっ!?

風雲急を告げる、詰め所のお風呂場。
どじっ子ヘリオンの運命や如何に!?
411名無しさん@初回限定:04/02/02 00:52 ID:ZZ/JkffR
>>404-410 毎度毎度GJ!!そして乙です。
412名も無き名無し:04/02/02 00:53 ID:HkIrXC2o
>>404-407,409
が、今回分です。>>402はアップミスです、面目ない……OTL

ときに風変わりさん。わたくし、「節分編」をものすごく楽しみにしてますので、
そ こ の と こ ろ よ ろ し う お た の も う し ま す 。

では、続きは2,3日後に。
413408:04/02/02 02:25 ID:b7ttbEaZ
みょーなレスはさんでしまってすんません。
更新してから書き込もうと思って忘れてたんで
アップされてるの気づきませんでした……申し訳ない。
414名無しさん@初回限定:04/02/02 05:46 ID:C6uNGvGs
正直風呂のほうが気になる!
気になる!
なにはともあれ乙。

毎度毎度イイ仕事。
415名無しさん@初回限定:04/02/02 12:53 ID:Yq0kSNlX
乙。・・・アセリア同人出ないかなぁ。
416名無しさん@初回限定:04/02/02 14:16 ID:KGADbH03
>>415
烈しく同意!
今日子の監視がないマロリガン戦前とかにいろいろやってホスィ。

改めて考えると悠人って幸せすぎるやつだよな、むかつくほどに。
417名無しさん@初回限定:04/02/02 21:23 ID:CQKNmxGW
>>416
>改めて考えると悠人って幸せすぎるやつだよな、むかつくほどに。

なのに本人は頭蓋骨命だからなあ。漏れなら頭蓋骨なんぞ瞬にくれてやって
スピリット達と暮らすのを選ぶぞ。
418名無しさん@初回限定:04/02/03 18:03 ID:ZyXEk1F0
ひょっとしてこれは、俗に言う「嵐の前の静けさ」なんだろうか・・・
((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
419名無しさん@初回限定:04/02/04 01:16 ID:Jr3mD0cO
皆、ここのスレを忘れてるだけだと思われ。
420名無しさん@初回限定:04/02/04 02:16 ID:7oq52NeS
漏れは(同意を得たわけではないが、言い出しっぺとして)1ヶ月我慢してるだけだが
せいぜい推敲するか…
421名無しさん@初回限定:04/02/04 06:30 ID:jDphVG62
まだプレイ中なだけなんじゃ?
422名無しさん@初回限定:04/02/04 19:46 ID:Z1lSd9sU
まあ誰かが最初に書き出すまで我慢してるんでしょ。
最初と言うのは何かと難しい物だ。
>>420
とりあえず、一ヶ月くらいは様子を見て下さい。ネタバレの問題もありますし。
 ただ、現状思ったほど荒れている様子も無いので杞憂に終わったかなと思いたい気分で
一杯です(w
 まあ、まだまだ予断は許しませんが。

あー。しかし見直してみると自分、今まで三作しか投下してないんだなぁ。
しかも二つはニトロ作品。
……レベルジャスティスあたりで何か書くか
424風変わり:04/02/05 22:42 ID:i2LHhce+
・・・・・とりあえずごめんなさい
またもやアセリアで書いてしまいました、あははは・・・・
前に言った通りSHUFFLE!書こうとしたのですがネタバレ禁止期間もありますし・・・

   |-`).。oO(・・・誰もいない投稿するなら今のうち)
425『血飛沫の舞う空で』前編 1/6:04/02/05 22:43 ID:i2LHhce+
深夜、夜空を照らす月の光は分け隔てなく地上へも降り注ぐ。
その月光に照らされて浮かび上がる幽霊屋敷―――もとい妖精達の館。
怖ましいような神々しいようなそんな雰囲気を醸し出している。
そんな屋敷の二階、窓枠に腰掛け夜空を眺めているエトランジェ『求め』の悠人の姿があった。
ただ無言で眺めているその姿、本人はどう思っているか知らないが似合わない。
と、静寂につつまれていた屋敷に小さな足音が響く。
それは徐々に大きくなり悠人の部屋の前でピタリと止まる。
そして、一息と待たずに響いてくるコンコンという控えめなノック。
思わず身構えてしまう悠人・・・なぜなら似たような事が前にあったからだ。
朝起きた時、隣に下着姿で寝ていたイオ、しかも自分が腕枕をしていた。
わけがわからず混乱しているうちにエスペリアが入ってきて・・・・・その後は想像に難くない。
とりあえず悠人にも人並みの学習能力はあったようだ。
「あ・・・あの、ユート様?寝てらっしゃいますか?」
どう声を掛けようか迷っていると先にドアの向こうから掛けられてしまう。
「え、あ、ああ、起きてるよ。」
咄嗟の事に寝たふりでもしていればよいものをバカ正直に答えてしまう悠人。
「し、失礼します」と控えめな声を出し入ってくる来訪者。
艶やかな黒髪のツインテール、少々幼い顔立ち、『失望』のヘリオンだった。
スピリット全員に配布されているのかニムと同じような黒のメイド服を着ている。
髪と同じく黒の瞳には確かな決意の色が見え隠れする。
だが、そんな事に悠人が気付くはずもなくひとまずヘリオンだった事に安心していた。
と、突然溜息をついて安心している主に声を掛けるヘリオン。
「ユ・・・ユート様ッ!!あの・・・」
「えっ、なななな・・・・なに?」
「あの・・・です・・・その・・・あの・・・」
最初の勢いはどこへやら、切羽詰ったような声も徐々に尻すぼみになりどもり始める。
そんなヘリオンの姿を不思議そうに見つつまたもやあがった心拍数を落ち着けるべく深呼吸を始める悠人。
だが、それもまた唐突に破られ心拍数はさらに跳ね上がることになる。
426『血飛沫の舞う空で』前編 2/6:04/02/05 22:43 ID:i2LHhce+

「あの・・・その・・・ユート様・・・私・・・ユート様のことが好きです!」

時よ止まれ、ザ・ワー○ド!
跳ね上がった心拍数と共に頭の中が一瞬スパークしたように真っ白になる。
今まで人を好きになったこともなければ告白されたこともなく告白したこともない。
そんな人間がいきなり異性(しかも可憐な少女)から告白されたならばこうなるのが道理。
意識は飛んでしまっても目は確かにヘリオンを観察している。
上目遣いにこちらを見てくる潤んだ瞳、上気した頬、メイド服の裾をぎゅっと握り何かに耐えるようにただ待っている。
しかし、元々がヘタレなだけに意識は戻ってくるどころか果てしない大地の向こうに行ってしまう。
そんな悠人にしびれを切らしたのかいきなり悠人の胸に飛び込んでくるヘリオン。
普段のあの消極的な態度からは考えられない積極性だ。恋する乙女は変わるのか・・・。
それがきっかけになったのか果てしない大地の向こうから音速を超えて意識が戻ってきた。
「ヘ・・・ヘリオン!?」
悠人の動揺した声、だが彼女は離れない。
ぎゅっと悠人の服を握り顔を胸に押し付けている。
「私・・・私・・・ユート様が誰かにとられるのはいやです・・・」
顔を押し付けているせいか少々くぐもった声だがはっきりと耳朶に入ってくる。
これまた意識が盗んだバイクで走り出そうとするが辛うじて拘束する。
と、ヘリオンが少しだけ顔を上げ悠人の顔を見つめると止めの一撃を放つ。
「私じゃ・・・駄目・・・ですか?」
上目遣いの潤んだ瞳、大抵の男はこれで撃沈することとなる。
妹命の悠人とて例外でなく、さらに思春期真っ只中の青年である。オプションがついて・・・
「・・・・・ヘリオンッ!!」
ぎゅっと抱きしめるとそのままベッドへと押し倒す。
「キャッ!」というヘリオンのかわいい悲鳴が響く。
ちょうど上に覆いかぶさるようになった悠人にヘリオンが赤面した顔を向ける。
「あ・・・あの、ユート様・・・初めてなので優しく・・・してください」
消え入りそうな声も恥ずかしそうな仕草も全てが・・・・・
簡単に「わ、分かった」と応答を済ませると発育途上ながら布の上からでもわかるふくらみに手を伸ばす。
427『血飛沫の舞う空で』前編 3/6:04/02/05 22:44 ID:i2LHhce+
が、突如腹部に圧迫感と激痛を感じ飛び起きる。
――――――飛び起きる?
不思議に思い辺りを見渡せば窓から差し込む朝日、鳥の囀りが聞こえる。
そして腹部にはニコニコと満面の笑みで鳩尾にニーキックを入れているオルファの姿。
「パパぁ〜、もう朝だよ!早く起きないとエスペリアお姉ちゃんに怒られるよ〜」
混乱している頭にオルファの能天気な声が重なりますます螺旋を描いてゆく。

しばらく立つとようやく思考が落ち着いてきた。いまだにオルファは腹部に乗ったままだが・・・
ようするにあれは夢だった・・・ということになる。
思い起こせば昨日の夜は訓練からの疲れでまだ日も沈まないうちに床についたのだった。
が、その事実を突きつけられた時とてつもない自己嫌悪に陥ることとなる。
まだ、「行為前」で起きたから良かったものの「行為後」で起きた場合自殺していたかもしれない。
朝からズーンと沈んでいる悠人、そして朝から元気なオルファ、実に対照的だ。
「ねぇ〜、パパ〜!早く行かないとご飯食べられなくなっちゃうよ?」
心の中で自分を罵倒していた悠人だがオルファの声にとりあえず反応する。
「あ・・・ああ、分かったからオルファ・・・腹からどいてくれ、重い」
「あ〜、パパ!女の人に重いとか言っちゃいけないんだよ!」
「うっ、分かった分かった。分かったから腹の上で跳ねるのやめてくれ!」
ぶ〜、と顔を膨らませながらしぶしぶ降りるオルファ、そしてそれと同時に明らかになること。
今は朝だ、これを言えば男性諸君には分かってもらえるだろう。
腹部を押されたせいかいつもより血流が下にいっているらしい。見事なテントだ。
(って感心してる場合じゃない!?)
急いで飛び起きると素早くシーツを折りたたみそれを下半身へと乗せる。
「あれ、パパ、シーツは畳まなくてもオルファがやってあげるのに」
「あ・・・あははは、いいのいいの。まかせっきりじゃ悪いから」
「パパぁ〜・・・・」
オルファのちょっと感動したような目が痛い。
「と・・・とりあえず着替えるから、ほらオルファ外に出て!」
こうして一人になったあとますます自己嫌悪に陥る悠人であった。

428『血飛沫の舞う空で』前編 4/6:04/02/05 22:45 ID:i2LHhce+
「ユート様、気候が良いからといって寝坊は駄目です。体にも良くありませんし・・・・」
オルファより幾分遅れて朝食の席についた悠人にエスペリアの注意がとぶ。
「ほ・・・ほらエスペリア、とりあえず冷めないうちに食べないと。いただきます」
なんとか話を逸らそうとするが全員が「いただきます」と言った後また愚痴が始まる。
「昨日も訓練で疲れてらっしゃるのは分かりますがお休みになるならそう言ってください。
 食事の用意もありますし・・・それに―――」
アセリアもウルカもオルファも我関せずを貫き通している今、愚痴が始まれば止まることはない。
こういうとき愚痴を止める手段はただ一つ、謝りながら待つだけだ。

「ユート様、分かりましたね?」
「うっ、はい・・・分かりました・・・・もうしません」
数十分にもわたる長き戦いののちよろしいとでも言いたげな顔になると手元の食事に手をつけ始める。
今日の食事は豆(のようなもの)とトマト(のようなもの)のスープだ。
(ん・・・・豆・・・豆・・・・豆・・・・あっ)
ふと思い出す――――――がのちに悠人はこの事を途方もなく後悔することとなる。
「そういえば今って、確かエハの月の青の週だったよな・・・・」
「え?ええ、そうですけど。それがどうかされましたか?」
「いや、俺の世界だとこの時期、節分やってたからな・・・・」
「セツブン・・・・ですか?」
聞いたことのない言葉に首を傾げるエスペリア。
ふと視線を感じて周りを見てみるとアセリア、ウルカ、オルファ、三人共にこちらを注視している。
(ハイペリアの話となるとこれだからな・・・・)
やはり異世界というのはどの人にとっても興味があることなのだろう。
特にファンタズマゴリアでは「人」は死ぬと魂がハイペリアと行くといわれている。
彼女達は「人」ではないが気になるものは気になるのだろう。
(スピリットは死んだら再生の剣に戻ってまた再生されるんだったかな・・・・)
段々と思考がずれてきている悠人、それに痺れを切らしたのかオルファが声をあげる。
「ねぇ、パパ!セツブン?ってなんなの〜?」
「あ、うん。そうだな、節分ってのは・・・どう説明すればいいのかな。
 太巻き寿司食べたりするんだけど・・・・」
429『血飛沫の舞う空で』前編 5/6:04/02/05 22:46 ID:i2LHhce+
「フトマキズシ・・・ですか?それはどのような食べ物なのでしょう?」
「あ〜・・・色々な具をご飯とのりでつつんだりするんだけど・・・・はっ!!作らなくていい!作らなくていいからな!」
太巻き寿司の説明をしていた悠人の脳裏にあの惨劇が甦る・・・・そうバレンタインの・・・
「え?あ、そうですか・・・?」
少し残念そうなエスペリアが可哀想だが諦めてくれたことに安心する。
「後、節分には豆・・・大豆を撒くんだよ。鬼を追い払うというか厄を祓うというか・・・
 小さい頃は父親が鬼の格好してそれに豆ぶつけたりしたな」
今は亡き父親との思い出の一ページ、泣きながら鬼に豆をぶつけていた。
しかし、回想にひたる間もなくオルファから質問をなげかけられる。
「オニ?パパ、オニってなに〜?」
「ん、そうだな・・・こっちの世界でいう龍・・・みたいなものかな」
「ふぅ~ん、パパの世界にもそういうのいたんだ」
「いや、実際にはいないよ。ほぼ伝説みたいなものかな・・・」
納得したのかふむふむとしきりに頷いているオルファ。
聞き耳を立てていたアセリアも似たようなことをしている。
「豆を撒いた後はこれからの健康を願って自分の年と同じだけ、それか一つ多く豆を食べるんだけど・・・
 まあ、節分の話はこれぐらいにして・・・」
嫌な予感がしてきた悠人が話題転換を狙うが、時既に遅し。
「じゃあ、皆でセツブンやろうよ!オルファ、皆にも伝えてくるね!」
と言ってオルファは止める間もなく館を飛び出し第二詰め所の方へ駆けていった。
嫌な予感が的中して凍り付いている悠人、冷静に食器の後片付けを始めるエスペリア。
そして、いつの間にか食卓から姿を消しているアセリア。
数秒して硬直が解けた悠人がオルファを止めに駆け出そうとした。
だが、今まで目を閉じ話に聞き入っていたウルカが突如口を開く。
「ユート殿、良いではありませんか。皆、戦闘続きで精神的に疲れております。
 たまにこういう遊びも良いかと・・・・少なくとも手前は賛成です。」
こう言われてしまえばどうしようもない。しぶしぶ席につくがつい愚痴を漏らす。
「こういう時・・・・一番被害受けるの俺なんだよな・・・」
そんな悠人の姿を少し同情の入った瞳で、しかし含み笑いをしつつ見るウルカ。
そして悠人の嫌な予感が現実のものとなるのは数日後のことであった。
430『血飛沫の舞う空で』前編 6/6:04/02/05 22:47 ID:i2LHhce+

「これは・・・遊びなのか!?」
―――――― 銃弾の飛び交う戦場 ――――――

「ユート殿、お覚悟を!!」
「ごめんなさい、ユート様!」
―――――― 信じたものの裏切り ――――――

「危ない!ユート様!!」
―――――― 果てしないラブロマンス ―――――

「俺・・・豆で死ぬのか」
―――――― 情けない死の中で悠人は何を残すのか ――――――

      『血飛沫の舞う空で』後編
                    
まあ、そのうち・・・
431風変わり:04/02/05 22:51 ID:i2LHhce+
>425-430
と言うわけで・・・・その前編、後編にわけてしまいました
基本的に今回のヒロイン役の座はヘリオンということになりそうです。
セリア命に変わりないですがあの子、もう三作のヒロイン独占ですから・・・・
・・・・その末永く見守ってください(´・ω・`)

名も無き名無し様のお邪魔にならないよう早々に退散ウワァァァァァァヽ(`Д´)ノァァァァァァン!
432名も無き名無し:04/02/05 23:02 ID:FuJhmuYh
>>431
|ー゜)
リアルタイムで遭遇してましたが何か?

何はともあれ乙彼です。
ヘリオンたんでハァハァできるかと思いきや、肩すかしくらってちょっと残念。
ユート様の前途多難を祈念しながら、後編楽しみにしてますんで。


さて、2,3日後と予告してた例のアレですが、最近書く時間が厳しくなってきた
こともあって、スレ上での連載形式は勝手ながら断念します、すみません。
書き上げてから、テキスト形式でどこかのうぷろだにでもあげようかと考えてます。
433名無しさん@初回限定:04/02/05 23:59 ID:62x80i2/
>>431
と、とうとうあのヘリオンがヒロイン待遇?! や、ボケ役から出世しましたね。
でも、あっさり自己主張強いニムやらヒミカに出番を取られそうな気が。

>>432
おお、うぷされた時はぜひともこちらでもアドレス御教え下さいー
楽しみにしてますので……特に混浴の場面とか < マテ

そー言えば、Fateを先程クリアしたのでこちらへ来る事が出来た訳なのですが、
月姫と比べるとSS書く人は減るようなヨカン。いや、とても面白かったですけど。
434名も無き名無し:04/02/06 01:14 ID:YEQoenE7
>>433
あ、もちろんここで掲載させてもろてましたんで、こちらに貼りに来ます。
そうでないと意味ないですしね。

混浴というか、お風呂編は単品でこちらに投下する予定はあります。
たぶん18禁になるやも?

ただ、アセリア濃度が低下した頃になりそうですけども。
435名無しさん@初回限定:04/02/06 14:24 ID:fM2d9+Xh
それ散るSSねーかな〜
436名無しさん@初回限定:04/02/06 21:29 ID:TU//BE+M
>>435
ageてまで主張するとは貴様も大した男だ。
ある無しを問うてるだけなら保管庫にあるガナー

>>431−他
乙。そしてガンバレ!
毎日専用ブラウザから兄弟達のカキコを待ってる男がここにいるぞ!
437名無しさん@初回限定:04/02/06 23:53 ID:CxPw5FZ0
うむ、アセリアSSが大漁で大満足です、ハイ。
多難なユートに合掌。

FateSSは今月下旬くらいには読みたいなー、と個人的に思ったり。
438名無しさん@初回限定:04/02/07 09:20 ID:pzVOq3/o
いた彼女SSキボン。
439名無しさん@初回限定:04/02/08 13:17 ID:ZQigYIPP
革新
440なんとなく、アモルファス 01/19:04/02/09 00:24 ID:fgViX0ZB
「あ……そ、その、拓巳くん?」
 おずおずとした少女の声。
 日は高く南に昇り、燦々と陽光の降り注ぐ正午。
 場所は校舎の屋上。温い風が吹き渡る、無意味に広い空間。
 俺たちは給水タンクの影に入って熱をやりすごしていた。
「なあ、ほのか」
 ぴくっ
 小さく首を傾げていた少女が、はっきりと分かるくらいに肩を震わせる。
 一瞬だけ、つぶらな瞳が見開かれた。
 おまけに口元まで若干緩く開いた。
 まったく──大した反応もあったもんだ。
 溜め息をつきたくなる。
 下の名前を呼ぶくらい、もうお互い慣れっこになったはずというのに。
 それでもこいつは不意打ちに弱いらしい。
 日陰に入っておきながら、頬を紅潮させている。相変らず熱効率の悪そうな女だ。
「は、はい──な、なに……かな?」
 しどろもどろの返事。今更照れ合う仲でもないだろうに。
 内心呆れながら、手元の箱を引き寄せた。
「以前言っていたよな」
「え? えっと……?」
 ひとしきりまばたきをした後、考え込むほのか。
 思い当たる節がないからか、うんうん唸って頭を抱え出した。
 いや、さすがに俺もこれだけで通じるとは思ってないから。
 ただでさえ打っても響かない鈍度100%のおまえに当意即妙を期待しちゃいない。
「ほら、マス・バーガーに連れて行ってやったとき──」
 箱を開けるタイミングを見計らいつつ、記憶を刺激してやる。
441なんとなく、アモルファス 02/19:04/02/09 00:25 ID:fgViX0ZB
「チーズが好きって、言っていたよな?」
「あ……は、はい、なの……」
 こくこくと頷いた。
 ややぎこちない動作。
 こいつと会話しているとなんだか、人形とか、子供の玩具をいじっているような感覚を味わう。
 たぶん、首のあたりがブリキで出来ているんだろう。
「そうか──良好だ。
 もしそこで『ち、違います……なの』とか言って否定された日には俺かお前が死ぬハメになっていた」
「し、ししししし死ぬって!?」
 絶叫が四方に拡散する。
 ほのかはマジでビビっていた。
 がたがたと大袈裟に身体を震わせ、こぼれんばかりに目を見開く。
 俺なら時限爆弾でも発見しない限りここまで動揺はしない。
「屋上に残された変死体──最後に接触したはずのクラスメイトは行方をくらまし、
 白昼堂々の怪事は真相不明のまま闇に葬られていく。そんな筋書きが頭に浮かぶようだ」
「へへ、へんし、たい……!」
 ほのかの脳内辞書に「変死体」が如何なる項目として登録されているのか興味はあったが、
いやぶっちゃけないんだが、とにかく面倒なので訊かないことにする。
 そろそろ箱も開けないとな。あんまり勿体つけていると昼休憩が終わる。
「まあ、大丈夫だ。今やその可能性はなくなった。だから安心してこの箱を開けろ」
 言いつつ、持っていた箱を差し出す。
 ざっと30×30×30の白い紙製の箱。
「………?」
 怪訝な表情を浮かべていたが、条件反射のように手が伸びて受け取った。
「……わ、わわっ」
 予想していたよりも重かったらしい。
 手渡した途端、落としそうになりやがった。
442なんとなく、アモルファス 03/19:04/02/09 00:26 ID:fgViX0ZB
「おっと」
 すかさず支える。程好いタイミングで押さえて落下を防いだ。
 箱の中でガシャガシャと金属のぶつかり合う音が鳴った。
「あ、ありがとう……なの」
 申し訳なさそうな顔つきで礼を言う。ちぐはぐだ。
「はぁ、なんだかな──」
 こいつと一緒にいると、日頃の反射速度に磨きがかかってしまう。
 もはや、宿命。
 ヘマを打つほのかと助ける俺。
 どうやら俺とこいつは補完関係を免れないようだ。
「ん……んしょ」
 バランスを取り戻したほのかが片腕でしっかり箱を抱えつつ、その蓋を開けた。
 のさのさ、のさのさ……
 実にもっさりしたモーション。
 要するに、トロい。
「おい」
「ふぁ?」
 間の抜けた顔と返事。
「箱開ける前に昼休憩終わっちまうぞ、アホ」
「は、はい……! い、いそ、急いで開けます、なの!」
 慌てて箱を地面に下ろし、両手で開けにかかった。
(最初からそうしていれば良かっただろう)
 思ったが、わざわざ言うこともない。腕を組んで見守った。
 そうこうするうちに、蓋は開いて、ようやく中身が晒されたわけだが。
 ……で、昼休憩終了まであと何分だ?
443なんとなく、アモルファス 04/19:04/02/09 00:27 ID:fgViX0ZB
「えっと、」
 腕時計を覗き込む。
 そのとき俺の耳に「ふぇ?」と腑抜けた声が飛び込んできた。
 思わず顔を上げた。
 地面にぺったり座り込んだほのかが、呆けた顔つきで箱の中を眺めている。
「……なんなの?」
「何だと思う?」
 逆に訊いてやる。
「え、えっと……」
 ガサゴソと中を漁り、一つ一つ掴み出して行く。
「鍋なの」
「ああ」
 陶器製で、ずんぐりした取っ手が付いている。
「ランプなの」
「そう」
 四足のスタンドに内包されたアルコールランプ。
「トレーなの」
「だな」
 鈍く光る円盤。
「フォークなの」
「ほう」
 黒いグリップが付いた細身のフォーク。
 いざというときはそのまま凶器に使えそうだ。殺傷力は低いだろうが。
「以上四点、なの」
 空であることを示すため、わざわざ箱を逆さにして振るほのか。律儀なやつだ。
 箱からは細かい屑がこぼれるだけだった。
 思う存分「もう中は空っぽ」という事実を表すことができて満足なのか、微笑みながら箱を置く。
444なんとなく、アモルファス 05/19:04/02/09 00:27 ID:fgViX0ZB
「じゃあ、もう言わなくても分かるよな?」
「え……えぇっ?」
 笑みが凍り、即座に反転。
 唐突に理解を要求され、ほのかは焦り出した。
 上向いた顔の全体から救難信号が発信されたが、無視した。
「はう……っ」
 スルーされたショックに言葉をなくしたようだった。
 ここまで分かり易いと逆に観察し甲斐がない。
 瞳の動きだけでもわたわたと惑う様子が見て取れた。
 ごくごくいつも通りの反応。
 物凄くストレートに、ほのかは混乱している。
(こいつ一生、ポーカーフェイスは会得できないだろうな)
 ここまで過剰に反応していちいち動揺を顔に出すようでは、きっと駅前あたりで
複数の男女から「手相の勉強」相手をさせられまくっていることだろう。
「あーっ、生命線切れてますね」
 と言われて「ふぁ、ふぁあああ!?」と驚愕するこいつの顔が目に浮かぶ。
 物凄くクリアーに。
「あ、あうぅ……そんなぁぁ」
 情けない声を出すほのか。心なしか涙目になっている。
 俯くと、考え込むように押し黙った。
「……ええと……ええと……」
 穏やかとも言える時間が風の中へ溶けていく。
 たっぷり数分が経過するなか、俺は遠くの町並みを見遣って思いに耽った。
 これはたぶん、間に合わないだろうな──と。
445なんとなく、アモルファス 06/19:04/02/09 00:29 ID:fgViX0ZB
「あ……っ」

 空気を震わせるベルの音。昼休憩の終わりを告げる響きが、辺りを漂った。
 ほのかはのろのろと、なめくじの歩みにも似た速度で立ち上がる。
「拓巳くん、きょ、教室……行かないと……」
 おずおずと。ひどく遠慮の混じった声で言う。
 注意なのか、提案なのか。それすら判然としない。
 苛立ちを誘う。「自分」というものが喪失しているのか、いないのか、曖昧模糊としたこいつの言葉に。
 噴き出しそうになる暗い気持ちを奥歯で噛み殺しつつ、背を向けた。
 ──校舎への出入口に。
 自然、顔はほのかと向き合う。
「た、拓巳くん……? 行かなくて……いいの……?」
 自分の意見を一切匂わせることなく、怖じの入り混じった、それでいて透明な口調で訊く。
 生温い風が吹いて、片方だけ結んだ彼女の髪房が揺れた。
「言ったろう──」
 立ち上がったほのかとは反対に、腰を下ろしたままの俺。
 威圧的な口調も、顔を見上げながらでは間が抜けていて、普通なら効果なんて期待できない。
 それでも俺は、立ち上がる必要がない。
「否定したら、俺かお前が死ぬハメになるって」
 罅割れた言葉。
「───っ」
 少女が息を呑む。
 言った本人でさえ、不安定とはっきり読み取れる響き。
 視線は依然として彼女を捉えたまま。
 憐れむほどに可愛らしいほのかの貌を、斜め下から見上げたまま。
 俺は彼女の心中に残る僅かな躊躇いを憎んで、目を細める。
 こんな場所で。こんな状況で。まるで冗談みたいなのに。

 俺はどうしようもなく本気で殺意を忍ばせてほのかを見つめている。
446なんとなく、アモルファス 07/19:04/02/09 00:30 ID:fgViX0ZB
 何よりも俺自身が笑いたい気分だった。
 とても愉快だったから。
 ほのかの返答次第で、地面に転がるフォークを掴んでどうにかしてしまいそうな自分が滑稽だったから。
 そんな殺傷力の低い食器で何をしようというんだろう。
 くだらない。
 踏ん切りがつかなくて、なかなか切り出せなかっただけなのに。
 ほのかがもたついて、昼休憩のタイムリミットが来ることは半ば想像していたのに。
 どうしてこう、いざほのかが抵抗の兆しをチラつかせるだけで、暴走しそうになるんだか。
 狂いかけている自分を、笑い飛ばしたい自分。更に外部からそれを冷めた視点で観察している自分。
 入子構造の精神。
 こんな見方をすること自体、俺が壊れていることの証左と言える。
 ほのかという存在を大切にしたいから、わざわざ商店街まで寄って一式を買い揃えたくせして、
いざ本番になると柄にもなく羞恥が湧いて、持ち出すのが遅れた。
 それが原因で昼休憩を浪費し、食事も取らず屋上に佇むって状況に戸惑ったほのか。
 彼女が迷いに迷った末、消え入るような声で訊いてきて初めて切り出すことができた。
 原因は己の羞恥。救ったのは彼女の歩み寄り。
 なのに、なぜ、俺は今こんなにも彼女を壊したがっているのか。
 優しくすることより、優しくしないことがそんなにすきなのか。

 ──もうどうでもいい。
 あらゆる理屈は捨ててしまえばいい。
 早くこの場でほのかを組み伏して、犯せ。

 勃然と込み上げる欲情が、全身の血と肉を支配しそうになる。
447なんとなく、アモルファス 08/19:04/02/09 00:31 ID:fgViX0ZB
 手綱を渡せば元通り、俺は彼女の身体を弄ぶことでしか気持ちを伝えられない低能に成り下がる。
 別にそれは構わない。俺の故障は修復不可能な以上、どう足掻いたってごまかすことはできない。
 今、この欲情を押し殺したところで、いずれ俺がほのかを蹂躙し、征服することを願う衝動に負ける。
 今夜か、明日か。いつとは知れないが、俺は確実に彼女の柔らかな肉を求め、襲う。
 そして彼女もそれを受け容れる。拒否する機能が元よりない。彼女も俺と出会う前から壊れている。
 欲しがる俺と与えるほのか。何の問題もないふたり。
 今すぐに押し倒してしまっても何も損なわれることはない。そういう関係だ。
 俺が気紛れに壊し、ほのかは壊されながらも服従し続ける。
 まったく問題のない俺たち。
 それでも、俺は──
 ──ほのかとの、壊れていない時間がほしい。
 無駄と知りつつ、胸の奥と下腹部に沈んだ劣情を、もっともっと深いところに押し込んで封殺した。
 どうせ間をおかず甦ってくる。また出会うだろう。
 一方で立ち竦んでいたほのかも、ようやく行動に出た。
「……はい」
 ゆっくり、羽根が舞い降りるように。
 スカートを撫で折りながら、しゃがみ込む。
 服従こそ彼女の意義。
 他人の命令に隷従することが楽、と言い切るほのかにとって至極当然の結果だった。
 全身から力を抜いて、構えを解く。
 従うと分かっていても、不安でならない。
 ほのかが俺の道具であることをやめ、自分の足で立って自分の考えに沿ってのみ、
行動するようになる日が来るのではないか。
 根拠のない怯えが密かにある。
 そんなときが来たら、俺にはもう、一つしかコミュニケーション手段が残されていない。
 殺すことしか。
448なんとなく、アモルファス 09/19:04/02/09 00:31 ID:fgViX0ZB
「ほら、組み立ててみろ」
 トレー、鍋、ランプを手渡し、フォークを掻き集める。
「は、はいなの」
 ほのかは真剣な顔をして、三つのパーツを合成する。
 じっ、と鋭い──こともない視線と、慎重な──つーか、とろ臭い手つき。
 傍から見ていると、積木遊びをしている幼児みたいだ。
 さすがにこればかりは手間取ることもなく、十秒足らずで完成させた。
 トレーの上に乗ったスタンド状のランプ、更にその上へ配置された陶器製の鍋。
 理科の実験器具に見えないこともないが……俺の持っているフォーク群を鍋に放り込めば、
一瞬にして調理器具以外の何物にも見えなくなった。
「こ……これって……」
 ほのかは──絶句した。
 頭の回転が手動レベルのこいつでも、さすがに理解したようだ。
 もはや授業をサボったことさえ念頭にないだろう。
 とてものんびりとした仕草で俺を見上げるほのかの目は、一点の曇りもなく輝き、
見ているこっちが眩しくなるほどだった。
「ち──チーズ、ほ、ほ、ほんでゅ──っ!」
「おい、今『フォンデュ』って言えてなかったんじゃねぇか?」
 俺のツッコミも耳に入らないといった風情で、急激に度を失っていく。
「ち、ちちちちちチーズが、ここ、これって溶け、溶け、溶けっ!?」
「確かにチーズを溶かすのは正解だが、まずは落ち着け」
「で、でも、でも、ち、チーズがなな何人も、何人もっ!
 溶け、溶けて、パンとかに、くるくるって……!」
「だからチーズは人じゃないと何回言えば」
 たぶん、何回言っても無駄なのだろう。
 今まで注意しても直る気配はなかった。
449なんとなく、アモルファス 10/19:04/02/09 00:33 ID:fgViX0ZB
「ほ、ほ、ほんでゅっ!」
「言えてない、言えてない」
 やはり発音が怪しい。ほのかは興奮するので精一杯みたいだった。
 揺れる身体が足元のチーズフォンデュセットを薙ぎ倒さんばかりで、なんとも危なっかしい。
 ひとしきり興奮した後で、ようやく平静を取り戻したほのかが訊ねる。
「拓巳くん、それで──ち、チーズは?」
「あん?」
 首を捻ってみせる。
 ほのかは必死になって両手を広げたり閉じたり、謎のジェスチャーを繰り返す。
「あの、その……ね? な、鍋とかだけあっても、その、つくれないの」
「まあ、当然だな」
 賛同の意を示す。
「そ、そうなの!」
 自信を得たように勢い込み、身を乗り出すほのか。
「ああ、そうだな」
「えへ、えへへ……」
 その顔は明らかに俺がチーズを用意しているものと信じて、微笑みにきらめいていた。
 ふいっ
 俺はほのかの視線を避けて、よそを向いた。
「?」
 にこにこしながら疑問符を浮かべるほのか。
 笑顔がだんだんと、俺の沈黙に合わせて曇っていく。
「え、えっと……」
 戸惑いを孕んだ声色。恐る恐る、怖々と、訊ねてくる。
「もしかして、拓巳くん……?」
「ああ、そっか──」
 遥か遠くをぼんやりと眺めて、呟いた。

「チーズも要るんだったなぁ──」
450なんとなく、アモルファス 11/19:04/02/09 00:36 ID:fgViX0ZB
「え?」
 硬直した。
 物の見事に、固まった。
 生命活動を停止したのではないかと疑うほど、一分の隙もなくほのかの全身がフリーズした。
「えぇ?」
 ──嘘だと言ってください──
 瞳はそう訴えかけてきた。
「ごめんな、ほのか」
 返答は残酷なほど端的で。
 ほのかはぽかん、と口を半開きにした。
 傍らを吹き抜けていく微風が、髪をゆらゆらと揺らす。
 俺は黙って見守り。
 長い、長い──それこそ、口からエクトプラズムが出てきそうなほどの沈黙を経て。
「ふぁ……」
 彼方の水脈からやってきた奔流が。
「ふぁああ……」
 ドップラー効果を演出して。

「ふぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」

 全米を震撼させる迫力で炸裂した。
 音響爆弾と化した悲鳴が鼓膜の中で嵐に変じて荒れ狂う。
「ぎっ!?」
 想像を易々と越えた脅威に、背筋が凍りつく。
 慌てて両手を使って耳を塞いでも遅い。音の鈍器は掌のガードを突き破って鼓膜を乱打し、
終いには三半規管まで侵蝕して平衡感覚を錯誤させる。吐き気までしてきた。
451なんとなく、アモルファス 12/19:04/02/09 00:36 ID:fgViX0ZB
「や、やめ……!」
 制止の声も届かない。そもそも俺自身、自分の声が聞き取れない。
 大絶叫の調べが他のありとあらゆる音を殺し、聴覚の隅々までを陵辱する。
 ──パリーン
 どこかでガラスの割れる音がしたのは幻聴か。
 それともこれが鼓膜の破れる音だった……ってオチか?
「ふぁあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
 遠ざかっていく鬼神の咆哮──いや、錯覚だ。
 ほのかはその場に残ったまま、ただ叫びだけが緩やかに収束していく。
 雨が止むように。
 気づけば、心臓を驚かす悲鳴は消えていた。
 なおも鼓膜はじんじんと痛み、鼓動もばくばくと慄いていたが、
両手を離しても無事が保証される瞬間が訪れ、俺はようやく平和を奪還する。
 口から躍り出そうになる何かを飲み下しつつ、バカでかい声で泣き叫んでいた女を見遣った。
 声帯を傷めていてもおかしくないくらいの声量で吼えたほのかは既に
声をなくし、ぐずぐずと泣き崩れている。
「うっ……はうっ……ううっ」
 呼吸音を操り、不器用に泣き続け、湧き上がりこぼれ落ちる涙を拭こうともしない。
 さすがに何も言えなくなった。
 昔、大型台風が過ぎ去っていった後の光景を見て、言葉を失ったものだが──こいつはそれ以上だ。
 今や言葉どころか、思考さえ失いかけている。
 呆然とほのかの泣き顔を見守る自分に意識が戻るまでどれだけの時間を要したのか、まったく分からない。
 完全に自失していた。
「う、ううっ……ひくっ……ひうっ」
 止め処なく涙を流すほのかに手を出しあぐね、どうしたものかと思案する。
「ぐ……ず……」
 泣き声に濁点が混ざってきた。洟が出てきたのだろうか。
452なんとなく、アモルファス 13/19:04/02/09 00:37 ID:fgViX0ZB
「ったく」
 制服のポケットをあちこち掻き回し、見つけたティッシュを二、三枚抜いて手渡す。
 最初はなかなか気づかなかったが、何度も差し出していると、ついに認識したのか素直に受け取った。
 ずびっ、と洟をかむ音が篭もる。
 うん、ハンカチを渡さなくてよかった。
 どうでもいいことを思いながら、立ち上がる。
「た……たく、たくみ、っくん?」
 しゃくり上げるほのか。俺の動きを注視している様子だ。
 てくてく、緩い足取りで地べたに座り込むほのかの横を潜り、奥へ向かって行く。
「………」
 たぶん、あいつは不思議そうな顔で俺の行動を眺めてるんだろうな。
 振り返らなくても分かった。
 分かったから、しゃがみ込んで、給水タンクと地面の隙間──僅かな空間に隠していたものを取り出す。
「こんなこともあろうかと」
「……あ」
 ほのかの目が丸くなった。
 俺の手に握られているものが何なのか──包装されていても、直感で悟ったに違いない。
 なぜなら、俺とこいつはそういう仲だ。
「ほ、ほんとう……?」
 それでも、まだ容易には信じがたいといった顔をする。
「もちろん」
 スライスして牛乳に浸し、水気を拭いたフォンティナチーズ。牛乳や卵黄、
バターまでパックして用意していた。無論、ひと口サイズに切ったパンも。
453なんとなく、アモルファス 14/19:04/02/09 00:37 ID:fgViX0ZB
「ふぇええ……」
 ほのかの返答は言語を成してなかった。
 感心というより、放心の響きが濃い。
「じゃあ、やろうか。このままだと放課後になっても終わらん」
 優しさとも温かさとも程遠い、素っ気ないセリフ。
 ほのかは──
 近づいてくる俺に向かって、涙を拭き拭き、言う。
 笑いながら。
「──ひどいよ、拓巳くん」
 そこにぎこちなさはない。
 天然で無色の、透明な発言。ひどく心地良い。
「それが俺だ」
 嬉しさは噛み潰し、笑わずに、笑わずに。
 ただ静かに言葉を返す。
 材料一式をセットの横に置くと、懐からライターを取り出した。
 親指を滑らせ点火。
 そういえば以前、ほのかにライターを渡したら、
どうやっても火花が出るくらい早く回すことができなかった。
 まったく、芸術的なとろ臭さだ。
「火は俺がつける。ほのかは、あれだ──火遊びをすると、後でおねしょをすることになるからな」
「し、しないのっ。わ……私、こどもじゃないもんっ」
 笑みを引っ込め、半泣きで抗議をしてくるほのかだった。
454なんとなく、アモルファス 15/19:04/02/09 00:39 ID:fgViX0ZB
 確かな形が崩れ去り、不確かな塊となって溶けていく──
「ふぁあああ……」
 いや、むしろこっちの方が激しく溶けてるんじゃないか?
 その表情を見るにつけ、思わざるをえない。
 とろけるチーズが発する香ばしい匂いに、ほのかの理性は限りなく薄くなっていた。
 ただひたすら食い入るように鍋の中を見つめている。
 あたかも視線だけで食事をしているかのよう。
 料理番組を視聴して飢餓を埋めんとする試みにも似ていた。
 ああ、そういえば──考えてもみれば、俺たちふたりとも昼飯を抜いていたんだ。
 空腹も重ねれば、弥が上にも理性は矮小化する。
 こいつに尻尾が付いていたら、きっとちぎれんばかりに振っているだろう。間違いない。
 かく言う俺も、今はチーズの溶け具合ばかりが気になっているわけだが。
「そろそろ、か?」
 先端にパンのかけらを刺したフォーク──チーズたっぷりの海へ変貌した鍋に突き入れ、潜らせ、充分に絡める。
 横でほのかはじっくりとその動きを観察していた。
 フォークを引き出す。柔らかいチーズが尾を引いて垂れる。
 口元へ運び──素早く食んだ。
「ど、どんな……味?」
 おずおずと。しかし、興味津々といった風に訊ねる。
 軽く咀嚼して飲み込んだ。
「何をしている──おまえも食えよ」
「あ──はい、なの」
455なんとなく、アモルファス 16/19:04/02/09 00:40 ID:fgViX0ZB
 わくわく。こわごわ。
 相反する心情を垣間見せる手つきで、フォークをチーズの沃野に沈ませる。
 丁寧に、繊細に、針に糸を通すような精密さで混ぜ合わせ、絡め合わす。
 動作の目的は俺とまったく一緒なのに、その手法はまるで違っているみたいに見えた。
 俺が真似できない──真似しようとも思わない、ちまちました所作が、
不思議なくらいにほのかが「少女」であることを意識させる。
 その少女性に触れても、性欲は湧き上がってこない。今はまだ眠っている。
 壊れた俺たちが、壊れていない時間を楽しめるように。
 薄気味悪いくらいの穏やかさ。
 そして、「いただきます、なの」と呟きながら食べたほのかは、
「お」
 と一旦区切った後。
「おいひぃ……」
 目を見開きながら泣くという器用な技を見せて感想の代わりとした。
 もうそれだけで、俺たちは語るべき言葉を必要としなくなった。
 ほのかは口を閉じずに「おいしい」を連発。たまに呂律が回らなくて「おいひぃ」に。
 ハンバーガーのときは単に口が塞がっていたからだと思ったが、案外こいつの癖なのかも。
 けど、ツッコミを入れるのも億劫だったので黙っていた。
 歳相応の食い意地を発揮して、交互に貪り食った。
「もちろん、おかわりもありだ」
「───!」
456なんとなく、アモルファス 17/19:04/02/09 00:41 ID:fgViX0ZB
「え、えと、えとね……拓巳くん?」
 食事を終え、片付けの最中。
 南天に掲げられていた日も西に傾き、放課後が近づいた頃。
 ぽつりと、彼女は言葉を漏らした。
「なんだ、ほのか」
「あ……」
 名前で呼んだら、懲りずにまた照れて赤くなった。
 やっぱり不意打ちに弱い。
「いい加減慣れろ」
 小突かれているというのに、「え、えへへ」となおも照れ笑いする。
 なんというか──どうしようもない彼女だな、こいつ。
 本当に。
「……でね。なんで、しようと思ったん……ですか?」
「あん?」
「その、えと、ち、チーズ、ほ、ほ……」
 相変らず言えてない。
「──フォンデュ」
 あ、言えた。珍しいこともあるものだ。
 それはともかく、動機だって?
「理由なんてあるか、バカ」
「あ……ご、ごめんなさい……なの」
 謝る必要のないところで謝罪をする。それは本来、俺の嫌う行為だが──構わない。
 だって、こいつは俺の──
「わ、私、て、テレビで、料理番組とか……よく見る、けど……」
 言いながら、ほのかはまだ赤い顔をしている。
 夕が近づき、穏やかになった気候。少し冷たさを含んだ風が吹く。
「何度か見たことがあって……一度も食べたことなかったから、う、嬉しかった」
「そうか」
 笑うほのかに背を向けて、西を見遣る。
 沈みゆく陽光は、それでもまだ目に痛かった。手庇をかざして遮光する。
457なんとなく、アモルファス 18/19:04/02/09 00:42 ID:fgViX0ZB
「拓巳くん」
 いつにないシャープな声色が背中を刺した。
「──今度は私が拓巳くんの」
 望みを叶える番だと。
 続けられなくても分かった。
 俺たちの会話は最適化されている。
 呼吸だけで通じる想いすらある。
 言葉は──強いて、要らない。
 彼女がどんな顔をしているのか、脳裏に描きながら振り返り、そのイメージと現実を重ね合わせる。
 ピッタリと。一切の無駄なく、符合した。
 それは、彼女も俺の表情を想像して一致させようとしていることを条件に咥えたうえでのカルキュレート。
 互いが互いに読み合った結果。
 壊れているのに。
 こんなにも精密に、正確に、容赦なく分かり合えるということ。
 たぶん、それが一番の問題なんだろう。
「………」
 ずっと背後で、グラウンドを駆け回る運動部の掛け声が聞こえてきた。
 もうとっくに放課後。
 まったく、俺たちは揃って何をしていたんだか。
 ──いや、「俺は」何をしていたんだろう。
 溜め息が出そうだ。
 こいつとの関係が壊れ切っているなんて、承知の上だったのに、それでもまだ、
壊れていない部分があって、それに適応できる自分がいるんじゃないかと──縋りたかったのか?
 振り切れぬ疑問を抱えたまま、まっすぐほのかに向かい、歩を進める。
 微笑みを湛えているほのか──瞳は、静まり返った湖畔のよう。穏やかに光を反射する。
458なんとなく、アモルファス 19/19:04/02/09 00:43 ID:fgViX0ZB
 抑えつけたはずの欲情が心のどこかで軋んだ。
 俺の欠陥を拠り所にして、大切な人を虐げたいという歪んだ気持ちが根を張る。
 あるがままに愛することできない。
 大切な人を傷つけることが、自分自身を傷つけることだと知っていても。
 俺は、ほのかをいびつな形で求めずにはいられない。
 求めなくなったときは、そのまま俺かこいつが死ぬハメになる。
 そう、死がふたりを別つまで。
 心の奥から昏い悦びが溢れ出してくる。
 詰まる距離。接触寸前まで行って立ち止まる。
 くしゃり、と栗毛色の髪を撫でて、耳元にそっと囁いた。
「とりあえずこの屋上を三遍走り回って『わん』と鳴け」
「……ふぁ?」
「いいから、回れ」
 呆然と見上げてくるほのかを突き放し、命令に従うのを待った。
 ──無駄に広い屋上を三周するのに、ほのかは五回もコケた。
 「へ、へーきっ!」と宣言して立ち上がった途端に目にも止まらぬ早業で転倒したときは、
慣れているはずの俺でもビビってしまった。侮れない女だ。
 割とボロボロになりながらノルマを終え、「わ……わん」と弱々しく鳴いたほのかがあまりにも愛しく、
そんなことを強要した己の愚かさまで愛してしまった。
 そう──愚かな自分さえ愛せるのだと実感しておこう。
 でないと、俺たちはあっさり砕けてしまう。
 弱さを弱さとして、故障を故障として受け止め、見据える必要がある。
 俺たちはもっとアモルファスにならなくては。
 それが束の間の延命措置だとしても、騙し騙しに生き延びて、叶うものなら……
 こいつと、添い遂げたい。

 夜。俺たちは自他の区別がつかなくなるまで無定形に愛し合う。
 見えない傷は一層深くなっていく。
459空ラ塗布:04/02/09 00:46 ID:fgViX0ZB
>>440-458
リクエストがあったので「いたいけな彼女」SS。
あんまり整合性は取ってませんから、鬼畜ルートとも純愛ルートとも言えません。
タイトルの元ネタは田中康夫……だけど、直接的には森博嗣。
基本的にギャグのノリで書きましたが、思ったほどはっちゃけることなく終了。
ほのかのエロ可愛さをうまく表現できなかったのが何よりもの痛恨事。

いたかの、個人的にはかなり好きな一作です。ZERO作品としては完全に意表をつかれた。
感動要素高めの純愛ルートもイイし、「オンドゥルルラギッタンディスカー!!」な鬼畜ルートもヨシ。
七瀬ほのかの萌え指数はもはや危険水域に差し掛かっており、当方はただ溺死するのみ。
460名無しさん@初回限定:04/02/09 13:44 ID:FsjIYkGy
いたカノってオモロイですか。
SS見た感じは(*゚∀゚)=3ハァハァな感じがする

ヽ(´ー`)ノ調べてみよん
461名無しさん@初回限定:04/02/10 12:33 ID:rQh4jHS5
>>459
GJ!!乙カレサンデス!
傷ついても健気に信じ続けるほのか殿萌え(゚∀゚)


ところで一つ気になったのだが
書く人いるかどうかわからんがSHFFLE!のネタバレ禁止期間ってどうなるんだろな
初回限定はもう発売されてるが通常版は27日・・・
初回買えなかった人は27日になるわけだが、この場合27日から一ヶ月になるのか?
462名無しさん@初回限定:04/02/10 15:27 ID:Q0imacO+
気がつくと女がいた。
そいつは俺を見て楽しそうに笑っていた。
「なかなか美しい世界じゃないか、君」
明瞭な音声で女が言う。
眼鏡をかけ、髪を後ろで纏めている。豊満な肉体にラインがはっきりと分かる衣装。
そう、見えた。
「何者だ?」
俺は訊く。
「こんなところにまで繁殖するなんて、彼女たちの貪欲さは敬服に値するよ」
問いには答えず、女は呟いた。
「まあ、僕が最も尊ぶのは人だけどね」
真っ赤な唇から、からかうように言葉が零れる。
嘘だ、と瞬間的に俺は思った。
「何をしに来た?」
俺は質問を変える。
「大したことじゃない」
今度は回答が返ってきた。
やはり軽い口調は変わらないが、今の言葉は真実のように思えた。
「ふらりと立ち寄ってみただけだよ。退屈しのぎにね」
「……こんなに遠くまで?」
「ちょっとした散歩さ。僕には距離とか空間とか、あんまり関係ないんでね」
カマをかけた俺に、女は何でもない、といった様子で答えを返した。
「まあ、散歩とはいえ、目的もなく来たわけじゃない」
女の笑みが深まる。より昏く、より鮮やかに。
そして、奴は言った。
「匂坂郁紀くん。彼女の遺体はどこだい?」
久しぶりに聞いた俺の名はまるで呪詛のようで、
魂が、軋んだ。


何となく、沙耶エンド後。
463名無しさん@初回限定:04/02/10 22:00 ID:9b1RJJO8
ナイア?
464名無しさん@初回限定:04/02/11 12:56 ID:X6RI16Qx

465名無しさん@初回限定:04/02/11 17:29 ID:da6y/rBp
>>462
なぜか漏れの脳内ではナイアさんが沙耶たんを称して、

「千の仔を孕みし大いなる黒山羊」

と…………
466名無しさん@初回限定:04/02/11 19:47 ID:u/dPYKJ/
>>465
ジンギスカン食いに行くか?いあ、しゅぶにぐら
467名無しさん@初回限定:04/02/11 19:50 ID:wPVFHYxj
正直箱ユーザーがまともなサポートを気にしてるというその事実そのものがマトモじゃない。
箱ユーザーたるものもっと 堂 々 と 投 げ や り であるべきだ
わかるかね若人?
468名無しさん@初回限定:04/02/11 20:37 ID:wPVFHYxj
しまった超恥ずかしい誤爆しちゃったヨ
469名無しさん@初回限定:04/02/12 00:35 ID:gmG3FY9Z
郁紀の一人称って俺じゃなくて僕じゃなかったっけ?
470名無しさん@初回限定:04/02/13 13:17 ID:8gg/cTw3
アレのSS投稿待ちの人挙手!ヽ(`Д´)ノ
471名無しさん@初回限定:04/02/13 15:49 ID:SpNJnioz
昨日寝付けなかったんでソレのSS漁ってたんだけど、もうかなりの量がうpされだしてるよ
待ち切れなければリンク辿ってみては?
472名無しさん@初回限定:04/02/13 22:04 ID:BhMrQz9X
まぁ正直2ch内じゃF関係の話題は見なくていーや、って気がするのは漏れだけか。
探せばいくらだって出てくるし

それよりシャフールSSキボンヌ
473名無しさん@初回限定:04/02/13 22:26 ID:21DuuM/Q
ヽ(`Д´)ノ

474名無しさん@初回限定:04/02/14 02:19 ID:q4fBCecA
そうだね。ここは突発的にジャンル自体がレアな良ssが読めるのが存在意義だと思うし。
アレはイラネ
475名無しさん@初回限定:04/02/14 05:58 ID:rFGyUXy/
ヽ(`Д´)ノ
476名無しさん@初回限定:04/02/14 06:00 ID:EM1N9h+g
ファテなんて糞ゲー関連はどこでも存在抹消でいいでつ。
477名無しさん@初回限定:04/02/14 07:32 ID:za0xOTNQ
こういうスレで
478名無しさん@初回限定:04/02/14 09:58 ID:Sh2DgESb
アレっててっきり保守SSの事かと思ったんだが…
;・ω・)っ
479名無しさん@初回限定:04/02/14 11:11 ID:rFGyUXy/
一時期は頻繁に来て職人さんたちもなんか来なくなっちゃったし、
これは保守SSを待望する流れかとヽ(`Д´)ノ
480名無しさん@初回限定:04/02/14 20:08 ID:cDPZY1S8
ネタの仕入れに忙しいのかも
ゆっくり待ちましょうや
481名無しさん@初回限定:04/02/16 00:35 ID:w7BdcC7e
干す
482名無しさん@初回限定:04/02/16 15:47 ID:NRC6S/cg
テンション高いとき

SS書く→時間経過→テンション落ちる→書けなくなる→放置→気が付けば削除……


一生書き上がらないだろうな……
483名無しさん@初回限定:04/02/18 01:18 ID:kgc4Rb/n
やはりネタバレ解禁は最低一ヶ月かね。

なんてこの板の要保守度がよくわからんので
質問っぽく保守してみたり。
484名無しさん@初回限定:04/02/18 01:22 ID:3+h540oz
カラハト読んでみたいけど、解禁待ちか・・・
485名無しさん@初回限定:04/02/19 01:02 ID:4e5Wsoc1
アセリアかアレくらいしかネタが浮かばない漏れは負け組_| ̄|○
486名無しさん@初回限定:04/02/19 01:08 ID:3M1RyJYs
アセリア、カモン!
487名無しさん@初回限定:04/02/19 01:22 ID:Ti5uCrIS
>>484
その望み、叶えてやろう。
http://that.2ch.net/test/read.cgi/gline/1069757056/l50
488484:04/02/19 01:24 ID:3M1RyJYs
メル欄みてから飛んだがワロタ
489風変わり:04/02/19 19:17 ID:zQmtWaPX
|-`).。oO(早くSHUFFLEのネタバレ禁止期間終わらないかなぁ・・・・)
490『血飛沫の舞う空で』後編 1/13:04/02/20 17:35 ID:Ck/TZ9dq
「くっ・・・はぁはぁはぁ・・・ここまで・・・うくっ・・・くれば大丈夫・・・はぁはぁ・・・だろ」
節くれ立った木の幹に手をついて身体を休める、噴き出す汗が地面へと滴り落ちてゆく。
手を離し根元へと腰を落ち着けると今度は荒くなった息を整え始める。
「はぁはぁはぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」
踊り狂っていた心臓も徐々に落ち着きを取り戻す、だが周囲への警戒も怠らない。
『あの程度の距離を走っただけで息が切れるとはな・・・』
と嘲笑交じりの声が頭の中に聞こえてくる。
額に張り付いた前髪を手でどかしながら手元の青い無骨な剣を睨み付ける。
「うるさいぞ、バカ剣・・・しょうがないだろ、ここの所寝たきりだったんだからな」
『それは汝の自業自得というものであろう』
少々、憮然とした声が頭痛と共に見苦しい言い訳を封殺する。
「あ〜、もううるさい!黙ってろ!」
これ以上話していても百害あって一利なし!
意識を強く持つと少しずつだが声の気配が遠ざかっていくのを感じる。
だが、完全に消えたわけではなく、心の片隅にしこりのような感じに残っている。
とりあえずは『求め』の声が聞こえなくなったことに安心する。
辺りを包むのは木々のざわめき、そして小さな小鳥達の囀りだけとなる。
葉の間から覗く太陽、木漏れ日と共に踊る優しい風。
「はぁ・・・他の皆は大丈夫かな・・・」
小さな溜息と共に漏れる呟き、疲労が押し寄せて来てどっと力を抜く。
が、それを待っていたかのように突如として頭上に現れる神剣の気配。
瞬時に警戒態勢に身体を移行させると頭上へと顔を向ける。
木々を切り裂くように現れた漆黒の影、そして太陽を覆い隠すように広がった漆黒のウィングハイロゥ。
「ウルカ!?」
口から漏れるのは驚愕の声、だがそれに対する答えはない。
ウルカと呼ばれた影は真下にいる標的を見つめるとただ静かに言葉を紡ぐ。
「ユート殿!お覚悟を!」
まさに神業とも言える動きで木々を避け迫る一人のスピリット。
ただ呆然と立ち尽くす一人のエトランジェと呼ばれし者。
狂宴の舞台の幕は今、静かに上がる。

491『血飛沫の舞う空で』後編 2/13:04/02/20 17:36 ID:Ck/TZ9dq
時は遡り、スピリットの館第一詰め所。
いつもの食卓にいつものメンバーがいる────はずなのだが、何故か今日はハリガネ頭一人だった。
?マークを大量に浮かべ何度も首を傾げながらも目の前の一人分の食事を見続ける。
その頭が不意に壁に掛けられた時計を見る、だがこの行為も先程から何度も繰り返されたことだ。
午前八時、いつもの時間だ。別に寝過ごしたわけではない。
幾度となく顔を往復させながら悩み続ける。何故、自分ひとりなのか・・・
(今日は何かあったか・・・?)
尋ねるような思考を浮かべた後、いつもの定位置──隣のイスに立てかけられた無骨な神剣に目を向ける。
『・・・いや、何もなかったはずだが』
スケジュール帳がこう言っているのだから本当に何もないのだろう。
『求め』は嘘を言うような神剣ではない、本能だけで生きているバカ剣だからな。
『契約者よ・・・聞こえているぞ』
珍しく怒ったような気配で憮然と声を返す『求め』に慌てて思考をカットする。
(とは言ったものの・・・・)
やはり納得できない・・・何故皆いないのだろうか。
う〜ん、と悩んでいると突如ぐぅ〜と鳴る腹の虫。
頭は説明を求めていても体は正直だ、目の前の食事に反応している。
「まっ、仕方ないか・・・折角の料理が冷めたらなんだしな・・・」
一人で食べる食事は味気ない、だけどそれでも美味く感じるのはやはりエスペリアと言った所か。
黙々とひたすら食べ続け、およそ十分で完食。誰も居ないがとりあえずごちそうさまのポーズ。
とそのタイミングを狙っていたかのように玄関へと続くドアが開き慈愛に満ちた女性が入ってくる。
「あ、ユート様、おはよう御座います。もうお食事は御済みになられましたか?」
「え、ああ。終わったけど・・・・え〜とエスペリア、皆は?」
「えと、皆さんでしたら第二詰め所の方に。あ、ユート様も出来ればお越しください、
 もうすぐ準備も終わると思いますから」
「じゅ・・・準備・・・?」
嫌な汗が背中を流れるがエスペリアはその問いに答えることなく食器を片付けると一礼して出ていった。
しばし呆然としていた悠人だったが、ふと重い腰を上げ歩き出す。
行かないという選択肢はない、というか選びたくても選べない。
大きく溜息をつきながらまたもや地獄(第二詰め所)への道をとぼとぼと歩いてゆくのだった。
492『血飛沫の舞う空で』後編 3/13:04/02/20 17:36 ID:Ck/TZ9dq
出来ることならこの現実から逃げてしまいたい・・・何度そう思ったことか。
目の前に聳え立つ山、それはまさにこれから崩れ行くバベルの塔のようだ
「・・・ト・・・・ト・・・ッ・・・!!」
ああ・・・声が聞こえる、地獄からの呼び声か・・・
「・・・・・ト・・・・ト様・・・ッ!」
ハッ!これは現実世界からの呼び声か!頼む、俺を戻させないでくれ・・・・
「・・・・−ト様、ユート様ッ!どうしたのですか?」
その願いもむなしく意識は現実へと引き戻される。
大きく溜息をつく、出来ることならあのままいたかった・・・・
ふと視線を感じ周りを見渡すと不思議そうな顔でこちらを見ている少女達。
「いや・・・なんでもないよ」
心配させまいと笑いながら言葉を紡ぐ・・・がものすごくぎこちない笑いになってしまったらしい。
皆、一様に怪訝な顔つきになる。
照れを隠すために幾度か咳払いをするととりあえず疑問をぶつけてみる。
「で、その・・・これ何だ?」
目の前に聳え立つ山を指差す、分かってはいるのだが分かりたくないというのが心境だ。
「何って、見ての通り'豆'ですが・・・」
ウルカが心底不思議そうな顔をして答えてくれる。
ああ・・・やっぱりか・・・そしてこの次に起こりえる事も分かっているのだがあえて聞く。
「で・・・その'豆'で何をしようと──」
「「「「「「「セツブンです」」」」」」」
ほぼ全員の声がハモる──と同時に肩から崩れ落ちる悠人。
だが、なんとか踏みとどまると最後の抵抗を試みる。
「でも、ほら・・・セツブンって結構スペース使うから城の敷地内じゃ許可されないんじゃないか?」
「それならレスティーナ女王陛下から直々に許可を頂いているので心配はいりません。
 模擬戦闘の練習にもなるだろうからと・・・ルールも考えてくださりました。」
最早ぐぅの音も出ない、最初からやるしかないのだ。
後に悠人はこう語る・・・
「あの時ほどレスティーナを恨んだことはなかったよ」と──
493『血飛沫の舞う空で』後編 4/13:04/02/20 17:37 ID:Ck/TZ9dq
「では、ルールですが制限時間は夕暮れまで、オニ五対追跡者九となります。
オニは夕暮れまで逃げ切れば勝ち、追跡者はオニを全員撃退できれば勝ち。
勝った方にはヨフアル食べ放題の権利が女王陛下から授与されます。」
最後の一言に俄然やる気を見せる一部の少女たち、言わずとも分かるというものだ。
撃退・・・・かなり危険な響きだ、背中を嫌な汗がひっきりなしに流れていく。
「神剣による攻撃は駄目ですが、神剣魔法での援護なら良い・・・そうです。」
なんでもありだな・・・結局、そう思うと溜息が自然に出てくる。
周りを見渡してみれば既に5対9に分かれている。
それもそうだ、先程くじ引きで決めたのだから。
鬼陣営は悠人、ヘリオン、ヒミカ、ニムントール、ファーレーン。
追跡者側はこれ以外の面々だ。
まだ日は低い位置にある・・・夕暮れまではかなりの時間があるだろう。
また小さく溜息をつくとメンバーに向き直る。
赤面している顔、不安そうな顔二つ、面倒臭そうな顔・・・大丈夫だろうか。
「あの・・・ユート様────」
不安そうな声をあげたファーレーンを手を上げて制止し言葉を引き継ぐ。
「分かってる・・・作戦だけどとりあえず固まっているよりはそれぞれ別々に逃げた方がいいと思う。
 何せ、鬼は反撃禁止だ。固まっていたらすぐ潰される。相手の戦力を分散させれば逃げやすいからな」
神剣を持っている限りは隠れても無駄だ、とにかく逃げ続けなければならない。
全員が頷いたのを確認すると(一人ファーレーンに無理やり頷かされていたが)前へと向き直る。
「────、オニが逃げ始めてから半刻後に追いかけ始めます。
 それでは、皆さん頑張ってくださいませ」
オー、とかいう掛け声が向こうの陣営から聞こえてきたが恐ろしいことこの上ない。
豆山の上に立っていた訓練役兼伝令役のイオがこちらを見て頷いたのを確認すると号令を掛ける。
「じゃあ、各自の健闘を祈る。散開ッ!!」
言葉と共にそれぞれが別々の方角へと走り始める。
草原の方へと走るもの森の方へと走るもの、館の方へと走るもの、動かないもの・・・って動けニム!
とりあえず面倒くさがっているニムを無理やり走らせると自分も森の方へと逃げ込む。

半刻後、やけに嬉々とした悪魔たちが動き始めた・・・・

494『血飛沫の舞う空で』後編 5/13:04/02/20 17:39 ID:Ck/TZ9dq
「ユート殿!お覚悟を!」
咄嗟のことに動くことが出来ない身体、そしてまとまらない思考。
(こんなに早く見つかるなんて・・・ッ!!)
迫る漆黒の影に畏怖を覚える、と突如として目の前に上がる火柱。
僅かに見える隙間から炎の直前で急制動を掛けるウルカの姿が見えた。
「ユート様、いきなり脱落されるようでは隊長失格ですよ」
続いて聞こえる涼やかな声、そちらに顔を向ければ炎に照らされた木の枝に立つ一人の少女。
「ヒミカか・・・助かったよ、恩にきる!!」
「礼を言うのは後でもいいですから早く逃げてください。私は神剣魔法あまり得意ではないので・・・」
心持ち頬を染めながら言うヒミカに手を合わせてゴメンのポーズを取るとまた走りだす。
後ろに感じる熱風も徐々に弱くなっていく。
ふと後ろを振り返れば既にヒミカの姿はなく、丁度弱くなった火柱を突きぬけウルカが出てくる所だった。

どれくらい走ったのか、後方に感じていたウルカの気配もなくなっている。
と、神剣に小さな振動が走る────確か神剣同士の通信だったか。
走りながら『求め』に耳を当てると少しくぐもったイオの声が聞こえた。
『ユート様、誠に残念なのですがニムさんが────』
「脱落したのか・・・・?」
『いえ、そうではなく・・・その──』
言いづらそうなイオの声に首を傾げる、と急に開けた視界の先にその問題のニムが立っていた。
「なんだ、ニムは大丈夫じゃないか」
ほぅ、と安心の溜息をついて耳から『求め』を離した為イオの次の言葉を聞くことは出来なかった・・・
喜び勇んでニムの元に駆け寄ろうとした悠人だったが振り向いたニムに左手に持たれたモノに言葉を失う。
そう・・・それは通称、豆袋。追跡者のみに与えられる鬼撃退必須アイテム。
取り出しても取り出してもなくなることはなく四次元空間と繋がっているのではないかという説が流れている。
そして、それを鬼役のはずのニムが持っていると言う事は────
「まさか・・・ニム!裏切ったな!!」
驚愕の言葉と共に一歩下がる、だが不適に笑うニムはそれに伴い一歩前に出る。
「ふふふ・・・お姉ちゃんの為にユートには死んでもらわなきゃ・・・・」
もはや目的が鬼撃退ではなく悠人抹殺になっているニム。
後ろに逃げるにも神剣の気配が近づいている、もはや万事休す・・・
495『血飛沫の舞う空で』後編 6/13:04/02/20 17:40 ID:Ck/TZ9dq
と、突如ニムの表情が凍りつく。そして徐々に青くなっていく・・・。
その視線は悠人────を通り越してその後ろに向けられている。
何事かと振り向けばそこにあるのはプロテクターに隠された顔。
表情は見えないがどうやら怒っているというのだけは分かる、それもかなり・・・
「ニム・・・これは一体どういうことですか?」
必死で憤激を押し殺しているのかいつもより機械的な音声だ。
「こ・・・これはその・・・おねえちゃんの為を思って・・・」
青ざめたニムが一歩後ろに下がるとファーレーンも一歩踏み出す。
「言い訳は聞きたくありません、私が裏切りなど大嫌いなのは知っていますよね・・・・」
徐々に間合いを詰めていくファーレーン、背中が幹に当たり下がれないニム。
「お・・・お姉ちゃん・・・ごめんなさいッ!!!」
急にニムが叫んだかと思うと身を翻し脱兎の如く駆け出した。
もちろんファーレーンも見逃すはずもなく──
「こらぁーーー!!!待ちなさい!ニムッ!!」
と同じように追いかけ木々の陰に消えていった。最早鬼と追跡者が逆転している。
またもや大きく溜息をつくと『求め』を耳に当てる。
「聞いてたと思うけどイオ・・・悪いけどファーレーンとニム・・・脱落で・・・」
しばらくの沈黙の後答えが返ってくる。
「はい・・・分かりました、皆さんにも伝えておきます」
『求め』から耳を離すと思わず天を仰いでしまう・・・。
これで残りは三人、悠人、ヘリオン、ヒミカ。
木々の隙間から見える太陽は丁度真上に来た辺りまだまだ夕暮れにはほど遠い。
逃げ切れなければ逃げ切れないでもいいのだが一応は逃げ切りたい。
例え遊びだとしてもやはり負けるのは悔しいものがある。
それに遊びといっても訓練とほぼ変わらないような内容だ。
ならば手を抜くわけにもいかず真面目にやるしかないだろう。
少しだけだが覚悟を決めるとまた走り出す。
近づきつつある神剣の気配から遠ざかるように・・・。
ファーレーン、ニムントール脱落・・・・・残り三名
496『血飛沫の舞う空で』後編 7/13:04/02/20 17:42 ID:Ck/TZ9dq
所変わって悠人のいる場所から遠く離れた森の中。
草木の陰にポヨポヨと上下しながら進んでいく二つの黒い物体。
と突然、華奢な手が伸びその物体を下に押し込んだ。
ごにょごにょと小さな声が聞こえる。
「ヘリオンッ!ただでさえ貴女のツインテールは大きいんだからもっとしゃがんで歩きなさい!」
「あわわわ・・・ごめんなさい、ヒミカさん・・・」
怒られたヘリオンの小さな身体は更に縮こまってしまう。
そんな姿にヒミカはふっと口元を緩めると先に行くように促す。
「えっ、でもヒミカさん・・・?」
「ほら・・・早く行きなさい、ユート様が待ってるわよ」
「ユート」の部分で一気に顔を茹で上がらせたヘリオンは抗議の声をあげようとするが──
「ヘリオン、早くッ!」
思いのほか鋭いヒミカの声に反論を押さえ込まれ慌てて先に進み始める。
そんな妹のような存在を見つめながらゆっくりと後ろを振り返る。
そこにはいつの間に来たのか全く存在を感じさせない、同じワインレッドの髪を持った少女がいた。
「待たせて悪かったわね、でもまさか貴女が来るなんて・・・」
語りかけるも反応はなし、虚ろな目でこちらを見る。
「目標確認・・・・」
デデンデッデデ〜♪デデンデッデデ〜♪とか言う音楽がどこからか流れてくる。
「相変わらずね、貴女は・・・・」
ヒミカとナナルゥまさに対なる存在。
神剣魔法は全く駄目だが剣の腕に関してはブルースピリットにひけを取らないヒミカ。
逆に剣はからきし駄目だが神剣魔法に関しては並ぶものなしのナナルゥ。
この二人が戦うことは運命、はたまた必然なのだろうか・・・。
「とりあえずヘリオンが逃げるまでの時間稼ぎはさせてもらうわよ!」
バックステップで間合いを取ると詠唱を始める、対するナナルゥに動きはない。
「全ての力の根源たるマナよ、その身を業火に変えて敵を焼き尽くせ、ファイヤーボ────」
「紡がれし言葉、マナの振動すらも凍結させよ!アイスバニッシャー!!」
周囲の急激な温度変化、身を切るような絶対零度の寒さに集中が途切れる。
「くっ・・・」
497『血飛沫の舞う空で』後編 8/13:04/02/20 17:43 ID:Ck/TZ9dq
思わず体勢を崩したところに襲い来る────豆
「いたたたたたた!ちょっ・・・痛い痛いって!」
戦時下の日本の如く上空からばら撒かれる焼夷弾──ではなく豆
「痛い痛い、分かった分かった!降参、降参するわよ!」
その言葉と共にやむ豆の嵐、思わず安堵の溜息をつく。
「卑怯じゃないの・・・?一人を複数で攻撃するなんて・・・」
髪の毛に乗った豆を手で払い落としながら悪態をつく。
「卑怯じゃないよ〜!エスペリアお姉ちゃんも作戦だ、っていってたもん」
少々舌足らずな声で木の陰から姿を現すオルファ。
どうやら先ほどの豆攻撃はこやつの仕業らしい。
「作戦ね・・・まあいいわ・・・降参しちゃったし・・・」
諦めの溜息をつくとその場に腰を下ろす。
「はぁ、ヘリオン・・・大丈夫かしら」
ヒミカ脱落・・・・・残り二人

一方、未だに逃げ続けている悠人はと言えば・・・・
「ウルカーッ!!ちょっとは手加減してくれ!」
かなり絶体絶命の危機に瀕していた。
全速力で木々を避け逃げ回る悠人に飛びながら豆をぶつけようとしてくるウルカ。
「しかし、ユート殿。手を抜いては訓練にはならないではありませんか!」
ウルカの答えは正論だ・・・だが納得できないことが一つある。
「けど、もうそれ豆じゃないじゃないか!!」
「何を仰っているのですかユート殿、どこからどう見ても豆ではありませんか」

「どこの世界に豆で木を貫通させる奴がいるんだーーー!!!!」

悠人の叫びは誰にも届かない。
今彼に「豆で人は殺せるか」と聞いたら即座に肯定してくれるだろう。

498『血飛沫の舞う空で』後編 9/13:04/02/20 17:43 ID:Ck/TZ9dq
その後なんとかウルカの殺人豆から逃げ切った悠人であったがまたもや危機に瀕していた。
「こらー!ユート様、おなしく出てこーい」
「そ・・・そうだぁ〜・・・出てこーい・・・」
舌足らずな声で叫んでいるのはネリー&シアー姉妹。
と、先程今隠れている岩の陰から覗いたところセリアの存在も確認できた。
「逃がしてくれるなら出ていってもいいぞ」
「・・・それは無理です」
最後の抵抗も冷たい声に遮られる・・・ヤバイ
背中に当たる岩の感触が痛い、目の前に立ちはだかる崖も圧迫感を与えている。
膠着状態が続いているが仲間を呼ばれればそこでチェックメイトだ。
なんとか逃げる手はないか、必死で考える・・・とやりたくはないが一つだけ可能性が浮上してくる。
「おい、バカ剣」
手元の無骨な剣に語りかける、と数秒もしない間に答えが返ってくる。
『何用だ、契約者よ』
「しばらく身体を貸してやってもいいぞ」
『何・・・?』
『求め』のいぶかしむような気配が伝わってくる。
本当はやりたくないがここから逃げ出せるな藁にも縋りたい思いだ。
『よいのだな、契約者よ。身体を返すかどうかは分からんぞ。』
「はっ、無事終わったら意地でも取り返してやるよ」
徐々に悠人の意識は薄れてゆき『求め』の意識が浮上してくる。
「ふむ・・・久しぶりの外だ。この開放感・・・、マナを・・・」
手始めにすぐそこの妖精達を犯して手に入れるとしよう。
そう考え、すっと立ち上がる────と同時に後頭部に襲い来る衝撃。
「〜〜〜〜〜ッ!!」
どうやら表に出てきたせいで痛覚も感じるらしい、後頭部を押さえて座り込む「求め」
「やった〜、当たった!」とか言う声が聞こえているが知ったことではない。
「契約者よ・・・今のはなんだ」
『・・・・豆だろ』
「求め」の問いかけに笑いを噛み殺した声で答える悠人。
499『血飛沫の舞う空で』後編 10/13:04/02/20 17:44 ID:Ck/TZ9dq
「豆・・・・だと・・・」
後頭部を押さえていた手を目の前に持ってくると血と共に着いている粉。
ぶつかった衝撃で粉状に変化したらしい・・・・。
「・・・・・・・・・・・」
どうやら言葉も出ない「求め」に必死で笑いを噛み殺している悠人。
と「求め」が突然呟く。
「契約者よ、どうやらマナ不足で力が出ないようだ。今は身体を返そう」
珍しく弱気な「求め」の声に焦る悠人。
『なっ!!このヘタレバカ剣!戻ってこなくていいからこの場を切り抜けろ!』
だが、悠人の声に反応することなく『求め』は強引に人格交替を図る。
もともと『求め』の力の方が強いのであっという間に悠人は表に引きずりだされてしまう。
「ちょっ!おい、こら!待て、バカ剣!」
必死で語りかけるも最早反応なし、接続を断ち切ったようだ。
と、襲ってくる後頭部の鈍痛。かなり痛い。
悠人が頭を押さえて狭いスペースを転げまわっていると岩の向こうで動きがあった。
「む〜・・・ユート様!出てこないんだったらこっちから行くよ〜!シアー、準備いい?」
「えっ・・・あ、うん・・・大丈夫だよ、ネリー」
何か不吉な予感がして悠人が動きを止めたのと共に高らかに姉妹の声がハモる。
「「エーテルシンク!!」」
エーテルシンク?何故にまた────とその疑問もすぐに解消されることとなる。
ガガガガガガガガガガガガッ!!という音と共に削られてゆく岩石、頭に粉状になった岩が降りかかる。
エーテルシンク・・・そして豆・・・・とくれば辿り着く結論は一つ

「・・・冷凍豆!?冷凍みかんより凶悪じゃないか!!」

というか冷凍みかんで岩は削れない。
と言ってる間にも狭いスペースがさらに狭くなっていく。
豆で死亡!?という言葉が頭を掠めるが始まったときと同じように唐突に止む攻撃。
500『血飛沫の舞う空で』後編 11/13:04/02/20 17:45 ID:Ck/TZ9dq
「あっ・・・豆切れちゃったよ、ネリー・・・」
「むぅ〜、もう少しだったのに!こらー!ユート様、諦めて出てこーい!」
思わず安堵の溜息をついた悠人だったがもう一人の存在を忘れていることに気がつく。
と、突如頭上から降り注ぐ豆。慌てて『求め』を盾にして防ぐがふと地面に落ちた豆を見て驚く。
「なあ・・・セリア・・・・」
言葉と共に止んだ豆攻撃、崖の上に立っているセリアを青ざめた顔で見据え尋ねる。
「・・・・・なんですか?」
「俺に何か恨みでもあるのか?」
「・・・・・・・なんのことでしょう」
あくまでシラを切り通すつもりらしい、地面に一つ落ちた──ではなく突き刺さった豆を掴むと頭上に掲げる。

「冷凍豆は百歩譲って許そう!だが冷凍豆の先を尖らせるのはやめなさい!!」

気付かれたとばかりに「チッ」と小さく舌打ちするセリア。
どうやら本気で殺すつもりだったらしい・・・俺が何かしたか?
「でも・・・バレてしまったからには仕方ありません」
冷たい言葉と共にセリアの周囲に浮かぶ無数の殺人冷凍豆。
わあ、ファン○ルみたい────じゃなく、その容姿と相まって宛ら冷気を纏う雪女のよう・・・。
「今度は本気でヤバいかも知れない・・・ていうか死ぬ!」
断末魔の叫びもセリアには届かない、振り下ろされた手に従い落ちてこようとする豆。
が、突如として向きを変えると真横に飛んでゆく。
どうやらこの世界のご都合主義が好きな神様はまだ悠人に生きてもらいたいらしい。
飛び出して来た影、そしてその影の頭にはトレードマークのツインテール。
キンッ!キンッ!という鋭い金属音と共に弾かれていく冷凍豆たち。
神速の居合いは何者も間合いに入ることを許さない。
だが無数の豆は留まることなく怒涛の勢いで押し込んでくる。
と、突如ツインテールが下に下がり────「ダークインパクトッ!!」
無数の闇の手が一瞬だがセリア、姉妹の動きを封じる。

「ユート様!今です、逃げてください!」

501『血飛沫の舞う空で』後編 12/13:04/02/20 17:46 ID:Ck/TZ9dq
唖然としていた悠人も強く頷くと森のさらに奥へと走り出す。
そんな悠人の後姿を見送りながら目の前のセリアへと視線を向ける。
既に拘束は失っており冷たい表情も戻っている。
「ヘリオン・・・覚悟はいいわね?」
冷笑を浮かべたセリアの言葉に足が震えるがそんな自分を叱咤する。
「こ・・・怖くなんかないんですから!行きます!」
と一歩踏み込む──が肝心な事を忘れている。
今地面は、はじき落とした豆でいっぱいだ。冷凍豆といっても氷・・・ということは。
「はうっ!!」
見事に滑って転んだ。
いいとこどりをしてもやはりそこはヘリオン、ドジな所は抜けない。
ぶつけた鼻を押さえながら顔を上げると目の前に雪女────ことセリア。
「・・・・・さよなら、ヘリオン」
その時見た絶対零度の微笑を彼女は一生忘れることはないだろう。
ヘリオン脱落・・・・残り一名

背中に響く悲鳴はヘリオンのものか、はたまた別か・・・
どちらにしても戻る気はない、戻ったらヘリオンの死を無駄にしてしまうから・・・
(本音を言えば怖いから)
夕暮れまでもうすぐ!とにかく走る、走り続ける────と森の終わりが見えた。
このまま飛び出すべきか、飛び出さざるべきか────迷っている間に飛び出した。
と、一面広がる草原に見知った顔を発見する。
艶やかなビリジアン色の髪を両側でお団子に結っている危険人物。
「レ・・・レムリア!?」
キキーッと急制動をかけつつ言葉を掛けるとその人物は弾けるような笑みを浮かべた。
「あ、ユート君!やっぱり来てくれたんだ!折角お弁当作ったのに来てくれなかったらどうしようかと思ったよ!」
唖然としている悠人、ついでに言えばまだスピードは落ちていない。
「もうそんなに急いで来なくてもいいのに・・・そうだ、口開けて?」
正常な思考が働いていないのか言われた通り口を開ける悠人──と同時に飛び込んでくる物体。
租借して飲み込んだ瞬間、悠人の意識は闇に沈んだ。
502『血飛沫の舞う空で』後編 13/13:04/02/20 17:48 ID:Ck/TZ9dq
「結構ぉ〜最後はあっけなかったですねぇ〜」
のほほんとした声で泡を吹いて地面に沈んでいる悠人をつついているハリオン。
伸びきっている悠人の周りにはいつの間にやら全員が勢ぞろいしている。
レムリアの姿はなく、あるのは気品漂うレスティーナの姿。
「たったいま夕暮れということで・・・勝負ありですね」
やったーヨフアル♪ヨフアル♪と喜んでいるネリシア姉妹が微笑ましい。
「折角ですから、鬼だった皆さんもどうですか?」
もともと女王陛下の誘いを断れるはずもないので鬼側の面々も戸惑いながら頷いた。
「ところでぇ〜ユート様はどうしますぅ〜?」
今の今まで悠人をつつき続けていたハリオンが声をあげる。
「ん〜・・・そうね、このまま放って置くわけにはいかないし・・・ヘリオンにでも見ててもらいましょうか」
ヒミカがパチッと指を鳴らすとナナルゥが何かを運んでくる。
「ふえええ〜〜〜〜ん・・・・セリアさ〜ん・・・・もう許してください〜!ひどいですよ〜寒いです・・・・」
ドカッと地面に下ろされるとその物体はヘリオンの声をあげる。
ひょうたん型の物体────雪ダルマならぬ豆ダルマ。
頭の部分だけが露出してツインテールがポヨポヨ揺れている。
対するセリアは素知らぬ顔で「・・・・反省しなさい」と突き放す。
「セリア・・・いくらユート様を気絶させて連れ去り二人きりになる計画が失敗したからって八つ当たりは良くないわよ」
ヘリオンの泣き声が響く中、ニヤニヤ笑いのヒミカが言う。
途端に真っ赤になったセリアが「・・・・勝手にそんな計画作らないでください!!」と怒る。
逃げるようにして走り出すヒミカを追って走るセリア、他の皆も続いて町の方に歩き始める。
実に微笑ましい光景であった・・・・二人を除いては。
「うう〜・・・・ユート様、早く起きてください〜」
置き去りにされたヘリオンはただひたすらにユートの目覚めを願う。
だがその願いが叶い、やっと豆ダルマから開放されたのは夜も更けたころだった──。


後日、ヘリオンは風邪をひいたと言うがそれはまた別のお話・・・・


503風変わり:04/02/20 17:50 ID:Ck/TZ9dq
>490-502
とりあえずは・・・・他の方々が書き終わるまでの繋ぎと言うことで──
えっ、繋ぎにならないって?ごめんなさいごめんなさい。
立春を過ぎた最近は徐々に気温も上がってきて脳が溶けてるのかもしれないです

また活気が戻ることを祈って合掌(・∀・)人(・∀・)
504名無しさん@初回限定:04/02/20 18:00 ID:T2miuByp
アセリアキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
雪女セリア(・∀・)イイ!!
505名無しさん@初回限定:04/02/20 19:00 ID:rbmMN6VA
豆まきキター!
ドタバタ感が良く出てて非常にGJですた!
506名無しさん@初回限定:04/02/20 21:18 ID:NErDQXjg
>動かないもの・・・って動けニム!
わらた
507名無しさん@初回限定:04/02/20 23:07 ID:OFdEFSj4
「求め」弱っ!
むちゃむちゃ笑わせてもらいました
508名無しさん@初回限定:04/02/20 23:59 ID:Ks1MUTdD
おーーーーーーー、久々にアセリアで嬉しい。
しかしニム、諦め早っ。同じくらい、ヘリオンの輝きもほんの一瞬だったが。
だんだん、ファーレーンのキャラが強くなってきてイイ感じ。

いやいやいや、大物おつかれさまでしたー!

509名無しさん@初回限定:04/02/21 01:39 ID:mk0ayhwX
(゚∀゚)久々SS投下ー!

(*゚∀゚)=3 雑魚スピ分補充しますた!
510名無しさん@初回限定:04/02/21 01:48 ID:RNViWKrm
GJ!

求めたん最高ですよ(・∀・)!
511名無しさん@初回限定:04/02/21 07:28 ID:GCVhMhPC
読んでたら「お姉ちゃんどいて!そいつ殺せない!!」という台詞が頭に
512名無しさん@初回限定:04/02/23 23:55 ID:pWiZZyza
ぐはっ、何時の間にやらアセリアSSが?!

相変わらずユートはやられまくり(w あ、求めの軟弱さもグッド(笑
風変わり様おつかれですー、感謝!!
513風変わり:04/02/25 11:19 ID:Qn2Q1IjP
皆さんに楽しんで頂けたようで何より、感想レス感謝です(゚∀゚)

そういえば、もうすぐネタバレ禁止期間も終わりですね〜・・・
またいつぞやのような活気が戻ってくれる事を祈ります
では、SHUFFLEのSSの見直しでもして来ます(´・ω・`)
514名無しさん@初回限定:04/02/26 23:53 ID:0JiMobhm
ああ、こちらのアセリアSSはいいなあ。ほっとする。
ごちそうさまです。
でも、ここ以外の他の所で楽しいアセリアSSは一個くらいしか知らないから、
やっぱり一般的にはマイナーなんだろうなあ、残念無念。


そう言えば、そろそろFateがここにも出て来るのかな。一ヶ月経つし。
515名無しさん@初回限定:04/02/27 13:35 ID:pZi+x90y
FateとかSHUFFLEとかが来る前に貼っておく。


永遠のアセリア・雑魚スピ分補充スレッド
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1077756526/l50
516名無しさん@初回限定:04/02/27 18:06 ID:hhSaV4pB
>>514
アセリアSSでぐぐって一番上に出てくる香具師のですな。
あれ漏れも好き。

にしてもFATESSが意外と少ないのはちょっと意外。
ストーリで大体補完されてるから妄想の余地が無いのかな?
517名無しさん@初回限定:04/02/27 18:32 ID:nrnMY92E
2chから出れば山ほどある
ttp://feena.jp:81/typemoon/
この辺から探すと良いかも
外部板でもいくつかみつけた
(´-`).。oO(アンチが湧くから投下するか悩むしなあ)
518名無しさん@初回限定:04/02/27 18:49 ID:ieg2L0xL
その内くれそんでも書こうっと。
アセリアはもう専用スレも立ったし食傷してる人もいそうだし。
519名無しさん@初回限定:04/02/27 19:34 ID:9UU0IrPH
>保管サイト管理人様
まだ未完だが、下のこのスレのSSもそのうちで良いので保管庫に収蔵しては貰えないだろうか。
保管されずに消えてしまったりしたらもったいない出来のものだと思うので…。

朝起きたら妹に、
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1076726246/
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1076726246/140
まとめのここあたりから前半参照のこと。
520名無しさん@初回限定:04/02/28 02:06 ID:86zOwV4l
>>516
あれはストーリーで補完というよりは説明文で補完といったほうが正しいw
キャラと設定に一貫性が無いから妄想はし放題だよ。
金ピカやアンパンマンやマーボーや欠食王なんてギャグネタの宝庫。
521名無しさん@初回限定:04/03/01 00:38 ID:yTxvSgMe
解禁かな?
とりあえず、前スレ埋め立てにSSが投稿されてたので保守がてらリンク

 ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1055686320/803-812

解禁の時期はまあ、2月の第三週に出たら、3月の4週目から解禁。でいいかと思う。
保管サイト更新は、今月中……くらいのつもりでよろしく
523名無しさん@初回限定:04/03/04 23:18 ID:g6yD2zUn
落ちる?
……さて、一気に書き込みが減ったな。
というか、#6の方が書き込みがあるというのは一体……。
そしてレベルジャスティスSSを書くと良いながらガッツの資料を探している俺……。ドナイシヨウ

後、保管サイトの方はリアルで忙しいんで来週末にでも。
525名無しさん@初回限定:04/03/10 06:29 ID:4ff9qKr2
526名無しさん@初回限定:04/03/10 12:07 ID:t67C9FyZ
527名無しさん@初回限定:04/03/13 02:21 ID:2GPqcqU5
・・・もしかして皆さん実はネタ切れフレーバーなんですか?
52874:04/03/13 06:15 ID:mqF01XFV
2月がリアルで忙しくて1本もエロゲをやってません…
よって、ネタ出ししようとすると正月にクリアしたプリブラ位しかない罠
529名無しさん@初回限定:04/03/13 07:19 ID:u7wWgu4o
1ヶ月のネタバレ禁止期間の為にプレイ後の熱が冷めてしまったのでは。
一番ネタになりそうなFATEは外部にも投稿出来る場所が沢山あったわけだし。
2月は・・・あまりネタになりそうな話題作が無かったような。
530名無しさん@初回限定:04/03/13 13:52 ID:O+9qiRuH
一ヶ月の投稿禁止期間なのか、ネタバレ禁止期間なのか、どっち?
両方とも投稿する前に断ればそれでいいんじゃないのかと思ってしまうんだが。
荒れる可能性のあったfateは別にしてさ。
531名無しさん@初回限定:04/03/16 00:38 ID:RGah+U4r
>>530
一ヶ月のネタバレ禁止期間だと思う。
投稿前に一言添えるには俺も賛成なんだが、
そのあたりのルールも簡単なヤツを作ったほうがいいのか?
一人で勝手に決める事じゃないんで皆の意見を聞きたいのだが。
自分としては投稿禁止くらいのつもりだったけど、ネタバレ禁止の方がいいかもしれんなぁ。
ネタバレの範囲は「OHPで公開されている情報」くらいで。
発売一ヶ月過ぎてもSS書きたい熱が残っているとは限らないしなぁ……

後、リアルの方がのっぴきならない程忙しくなっているので、保管はマターリ待っていてくだせえ
533風変わり:04/03/16 23:30 ID:rKFb5ImT
あははは・・・・すっかり寂れてますね・・・・
私もリアルで忙しくなったせいで書く時間が・・・
それに>>529さんの言うとおり、一ヶ月の間に熱も冷めてしまいまして(;´Д`)
SHUFFLE SSも不完全なまま滞ってます・・・消そうかな

>>531
私は皆さんの決められたことに従います〜
534名無しさん@初回限定:04/03/16 23:43 ID:HwluJWZ5
笛は状況が特殊すぎただけだし
基本的は最初に断ってれば問題無いかと
ってか、規制で場が滅ぶのは本末転倒だぜ
535名無しさん@初回限定:04/03/17 00:34 ID:jkUlThPM
規制してた所為かどうかは知らんが、笛はもうここには投稿されないだろ。
別に型月関係の未発表SSスレとか有るし。
536名無しさん@初回限定:04/03/17 07:31 ID:82L8PTLB
この寂れっぷりを見てるとネタバレ規制もしない方がいいと思う。
体験版や事前情報だけでSS書くならともかく、
プレイ直後で盛り上がってる状態でネタバレ無しってのも難しいだろうし。
最初にネタバレの有無とか断っておけば良いんじゃないか?
○○ルートネタバレみたいにネタバレの範囲も書いておけばなお良し。

結局のところ、見る側もネタバレが嫌なら自衛する必要があると思うけどな。
537名無しさん@初回限定:04/03/17 08:12 ID:28T9oZde
ネタバレ云々言う前から、ここは結構寂れてたと思ったけどな。
結局は、ここに書いてくれる作家が来てるかどうかに尽きる訳で。
自分のサイト持っちゃうと、中々こういうとこに書いてくれる人なくなるしなあ。
538名無しさん@初回限定:04/03/17 11:21 ID:ByhPyiWX
それはあるね。
ここ最近のラッシュ(主にアセリアか?)のおかげで賑やかになってはいたけど、
1週間2週間SS投下無しってのもここでは異常なことではないし。
539名無しさん@初回限定:04/03/17 19:50 ID:0tY4s5yS
「あれ・・・この部屋ってこんなに広かったっけ・・・」
540てんきあめ(1/4):04/03/19 08:32 ID:6nOaNuf3
先刻まで曇っていた空は今は晴れ、午後の太陽がアーカムを優しく照らしている。
立ち並ぶ高層ビルの一つ、とあるアパートの一室に二人の人影が居た。
一人はベッドに横たわる老人、もう一人はその傍らに立つ少女だ。
「そろそろか?」
少女が老人に問うた。
「ああ」
老人が答える。
「そうか」
少女はそう言って目を伏せた。
「結局、お前を置き去りにすることになっちまったな。アル」
許しを請う様に老人は少女に言った。
「何を今更、こうなることは覚悟しておったよ。九郎」
少女は微笑みながら輩に答えた。
541てんきあめ(2/4):04/03/19 08:34 ID:6nOaNuf3
「九朔は?」
老人は息子のことを問うた。
「こっちに向かっておるとは連絡は来たが…… 全くあの親不孝者めが」
少女は息子は間に合わぬ事を告げた。
「そうか」
少女のいつもの調子に老人は笑いながら答えた。
「なぁ、楽しかったか?」
少女はさらに問うた。
「子育てに、探偵業にお前との生活。月並みだけど良い人生だったぜ」
老人はこれまでの人生を回顧して断言した。
二人の話は尽きせぬ。二人は夫婦、比翼の鳥、その今生の別れに話が尽きることなど有ろう筈もない。
542てんきあめ(3/4):04/03/19 08:35 ID:6nOaNuf3
「そろそろみたいだ」
老人は静かに自らの生の終わりが間近であることを告げた。
「そうか」
少女は素っ気なく答える。
「アル」
今一度、老人は最愛の者の名を呼ぶ。
「何だ?」
少女が問うた。
「ありがとうな」
老人はそう言って優しく微笑む。
「それは妾の台詞だ、莫迦者」
少女も微笑みを浮かべた。
不意に老人は少女の頭を撫でた。ゴツゴツとした大きく、温かい手。
幾たびこの手に撫でられたか少女は数えることも出来ぬ。
微笑みを浮かべたまま、老人は逝った。少女もまた、微笑みを浮かべていた──浮かべていられた。
543てんきあめ(4/4):04/03/19 08:36 ID:6nOaNuf3
老人が息を引き取った直後、少女の頬を一筋の涙が走った。
─良かった。
少女は思った。
九郎の最期には微笑みを浮かべていようと決めていた、それを果たすことが出来たのだから。
「うっ、ううっ」
涙は止め処なく二つの瞳より溢れ、嗚咽が漏れる。
「九郎、九郎、九郎、九郎!」
愛しい者の名を何度と無く繰り返し、亡骸に縋って少女は泣いた。
判っていたこと、人のみで得るのは稀な死を越えた存在となった者を再び死すべき定めへと戻したのは彼女自身。
太陽の下で真っ当な人生を送る彼を望んだのも、その傍らにあり続けることを望んだのも彼女自身。
だから彼の死もまた不可避、永久に共にあり続けることを言えば無かった彼女の選択が招いた結果。
魔導書の身でありながら人を愛した彼女の誇り高い結果。
涙は尽きることなく、さめざめと降りしきる。
窓の外では、天気雨が降っていた。
544名無しさん@初回限定:04/03/19 08:44 ID:a7fQ/QeY
久しぶりにデモベキタ-(゚∀゚)

「九朔、アルに会ったらちゃんと『アルおばちゃん』って挨拶するんだぞ」
545今更な名無し:04/03/19 08:47 ID:6nOaNuf3
>>540-543

思いっ切り今更デモベSS書いてみました。
アルトゥルーエンド後です。

って誤字発見、4/4の11行目
×言えば無かった
○選ばなかった

やっちまったよ…… こんな短い奴で…
546今更な名無し:04/03/19 08:59 ID:6nOaNuf3
うが、また誤字

4/4の9行目
○人の身
×人のみ

誤字ぐらいちゃんとチェックしようよ……

>>544
連投規制で545を書けなかったんで助かりました

●入れようかな……
547名無しさん@初回限定:04/03/20 15:43 ID:61YVomEx
GJ。
やっぱりED後はこういう感じになっちゃうんだろうなぁ。

>>544
アセリアかよ!w
548名無しさん@初回限定:04/03/22 10:45 ID:LlkAQqkm
ヒジョーにマターリしとしたペースでスレが進行しています
549名無しさん@初回限定:04/03/25 21:32 ID:057DpLUk
ほ(ry
550無聊の夜:04/03/26 00:20 ID:7Q/VP4Dc
 寛永の暦。
 暮れも暮れ、長月に墨雲がかかる宵の頃。
 静と凪ぐ池の水面に、落ちる人影がひとつ。
 影は女であった。
 細く白く、冷涼なその面。けれども表情には蔭が落ち、着物の衿は真っ黒で、
顔につけた白粉はところどころが剥げ落ち、雪の消え残りのように見える。
 その女が唇をきりと咬む。逡巡はわずか。二つの吐息の後、女は池の淵から

 かさりと草が鳴り、女は山猫のように身を弾ませた。
 転じた視線の先。老いた大樹の根に身を預ける男がいた。
 なぜ今まで気づかなかったのか不思議なほど、存在感のある男だった。
 目深な編み笠、寝かせられた錫杖、山伏の浄衣。顔はよく見えない。
 視線を返し、どこか乾いた声で男は問う。
551名無しさん@初回限定:04/03/26 00:21 ID:MtqTxxtn
 ――身投げか?

 情のない問いに、女ははいと頷いた。理由はと問われ、女は口を噤んだ。
 男が編み笠を上げる。
 赤い瞳で視線を返し、どこか乾いた声で男は問う。理由、は?
 振袖新造から座敷持となったばかりのその遊女は、ぽつりぽつりと言葉を
つなぐ。情夫が出来たこと。足抜けを図ったこと。情夫に自分だけ逃がされた
こと。あの人が、あの人だけが苦界に取り残されたこと。

 途端、男は興味を失い、編み笠を下げる。さほど珍しくもない話だった。
もはや目を向けることもなく、再び大木に身を預ける。が、
552名無しさん@初回限定:04/03/26 00:21 ID:+DSZ6fL7
 ……、…………、

 本当にささやか。呼吸と判別もつきさえしない、解けた言葉。暗い言葉。
 我が身と恋人に対する悲哀よりもはるかに深い、憎悪の紛れた音の韻。
 わずかだけ覗いたそれに、再び興味を持ったのか、男が再度、口を開く。

「一つの選択を、お前にやろう。その憎しみが真のものならば、私がお前に
変わり恨みを晴らそう」

 女は眼を見開き、続く、代価として命をもらうが、との言葉に息を呑む。
 けれども逡巡はわずか。二つの吐息の後、女は頷く。
553名無しさん@初回限定:04/03/26 00:21 ID:Z+jBJhZw
 八徳を残らず忘れた無頼の徒。その彼らが、残らず板間に倒れている。
 惨劇は一瞬、気づけばすでに、浄衣の男の両手は血で濡れていた。
 だが女の恐怖もまた一瞬。常軌を逸した殺戮よりも、柱に縛り付けられて
いる情夫に意識を奪わた。
 休みなく打擲を受けていたのか、頬は切れ唇に血は滲み、まぶたは腫れ
塞がっている。
 よほど暴れたのだろう。硬くなっていた縄の結び目をようよう解き、
彼らは比翼の鳥の如く身を重ねる。

 その、背後。赤い瞳の男が静かに立つ。

「約定は、覚えているな?」

 はいと女は頷き、亡人の穏やかさで死を迎える。
 健気にも目を閉じず、最後を見届ける眼差しの中。
 ひるがえる繊手はこの上もなく正確に、

 ――男の首を断った。
554名無しさん@初回限定:04/03/26 00:22 ID:gr4Rfe0o
 見惚れるほど綺麗な弧を描いて、首が落ちる。
 重く湿った音が一度だけ。

 女の目が移ろう。
 自失から理解。理解から激情へと。
 切れ目などない。だがはっきりと判ずるほどの心の流れ。
 それは何よりも、この無聊に犯された身を慰める甘露であった。
 いまだに飽いることのない、私に許された唯一の娯楽。

 初めて、男は表情と呼べる程度に頬を緩め、女の憎哀を受け止めた。
555名無しさん@初回限定:04/03/26 00:22 ID:2ahrQcp+
「憎いか?」

 女は首ではなく、瞳の陰火で頷いた。

「私を殺したいか?」

 女は言葉ではなく、躯を抱く指で答えた。

「ではその手段をやろう」

 男の掌にのる、一匹の蜘蛛。小さな銀の子蜘蛛。

「人の子よ。お前に理由をやろう。手段をやろう。この妖を討ち果たす
力をやろう」

 壇、壇。あるかなしかの足音が、ゆるゆると女に近づく。
 男の背から影が伸びる。色紙で囲われた蝋燭に追われ、伸びる影は
八足の異形。

 編み笠の男。錫杖の男。浄衣の男。そして八足の影を持つ男は、
はっきりと女に微笑み、

 ――お前に、一つの選択をやろう
556名無しさん@初回限定:04/03/26 00:22 ID:pMTpillB
 長月に墨雲がかかる夜。錫杖を弄びながら男は歩いていた。

「ふむ。同族を作る。悪くない思い付きであったのだが」

 結局、あの遊女は人の身のまま、情夫の亡骸を置いて独りで逃げた。
 身投げする前の決心が偽りであったとは思えないが、さて、女心を
秋空に喩えたのは人であったか。

 恋を交わした相手であれ他人は他人。契機となるのはやはり他者では
なく、自己であるべきかもしれない。次に機会があれば、心得ておくと
しよう。

 次の機会。蜘蛛神たるこの身、待つ時間だけはいくらでもある。
557ボブ・サップの中の人:04/03/26 00:23 ID:qE25bt9R
>>550-556
Fateの神父さんは、アトラクの銀に似てる気がします。
558名無しさん@初回限定:04/03/26 02:49 ID:OTKsvslV
初音ねえさま〜
559名無しさん@初回限定:04/03/27 04:48 ID:fu8QhJyu
キョー!
久々にSS投下どぅわー

アトラクはイイヨネ。
560CROSS × OVER:04/03/27 12:00 ID:7/halqte
太一はゆっくりと体を起こした。
「んっ・・・おはよう。」
一人になると言葉は価値がなくなる。それはそれが彼の人を傷つける弾丸だったり・・・・・・。
心をつなげるCHANNELだったりするからである。

言葉は虚しく空に解けていった。
まるで人々がきえてきたのと同じように。

「さあ。今日も放送をしなきゃ。」
何回目になることだろう。いや何回目でも本当はかまわないはずだ。
放送の最後にはみんなが出てきて。
今までやってきた馬鹿なこと
恥をかいてしまったこと
罵り合ったことを。
思い出して笑ってそしてなぜか泣くと相場が決まっているのである。
それまで人間らしい心はお預けだと思っている。
鶉の卵を残しておくように
そう思うとなぜか笑いがこみ上げてくる、しかもそのなかに点のように哀しさがある。
ああ今はとてもいい気分だ、とても。
よし、放送だ。
「こちら、CROSS†・・・・・・っ!!」
「こちら、CROSS†・・・・・・っ!!」
自身を驚かせたのは自分の声だった。

561CROSS × OVER たったひとつのもの:04/03/27 12:19 ID:7/halqte
「やばいな・・・俺アンテナ直せるかな。いやそれともついにおれは神に近い存在になったのか!!」
奇跡は起きないこの世界は繰り返していて、観測者の俺が帰れるはずなくて・・・。
「まだ寝ぼけているんですか先輩。」
それは空に解けて、心に帰ってきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
世界がざわめいてまた繋がった。

「夢?オチカヨ!!!」

「このピッパラリー!!!!!!!!
「夢は眠っているときに見るものだ太一。」
「太一、きずくの遅い。」
「ぺけくんお帰りなさい。」
「や、みんないっぺんに言わなくても。」
「あの・・・先輩おかえりなさい。」
いわゆる揉みくちゃにされる。
そうきっと俺は生まれて二度目の涙を流している。
「ちょっとまっててくださいね先輩」
そう言うと美希はアンテナに向かって行く。
「すみません。DJが突然たおれてしまい放送が途切れてしまいました。
それではCROSS†CHANNEL最終回をお送りします。」
562CROSS × OVER パズルのように:04/03/27 12:44 ID:7/halqte
「すべての生きている人に、今ありがとうの言葉をささげます。人はどんなにあがいても一人です。でも私達はそれぞれで一人ですが
この世界(空)はみんなで一つですあなたがそこにいてくれるからわたしは世界の一つになれます。たとえ遠く離れていても。」
冬子に変わる。
「自分達が今居ること、居たこと、かかわりあったこと、傷つけあったことを心の中に刻んで。」
桜庭に
「その思い出の中で今を生きつつける。」
陽子ちゃんへ
「きっとまた会えることを信じて。」
みみ先輩へ
「その人に恥じぬよう、再会したとき誇らしく胸を張れるように。」
インモラルへ
「そいつと会ったときすぐ笑えるように。」
霧チンへ
「心の中では繋がっているから。」
また美希へ
「一人かけてもだめなんです。この世界はみんなで一つだから。
あなたが生きているから、誰かが生きている。あなたは誰かを傷つけているでも
だれかと一緒に生きるということは本当にいいものです。そう思いませんか?」
そして自分へ
「さっき倒れたDJです。最終回なので自分にメッセージを送ります。
生きていて本当に良かった。」
生まれて初めてうれしさだけで泣いている。
「いままで生まれ生きた命すべてにあろがとうのメッセージを送ります。」
みんなが笑っている
「CROSS†CHJANNNE最終回でした。
新しい放送をよろしくお願いします。群青学園放送部より、また会えることを願ってすべてを終わります」

スッ・・・・・・。
その名のとうりTVをきったように電力が落ちた。

「ただいま、みんな。」
おれはすべてがまた、始まる前にそう言った。

Airwaveへ
564昼休み中の黒いトト(便器):04/03/27 13:04 ID:7/halqte
>>560−564
はじめまして
CROSS†CHANNELのアフターです。
SSを書く上でC†Cは絶対書かないと思っていました。
次回の放送は最果てのイマと書こうとするすんぜんでした。
太一は幸せになれると思います。泣いたことが一回しかない(作中で)彼ですが・・・。
565昼休み中の黒いトト(便器):04/03/27 13:22 ID:7/halqte
失礼、※パズルのようにの下から4弾めあろがとうではなくありがとうです。
・・・・・・仕様です。
566名無しさん@初回限定:04/03/27 14:25 ID:WZDqvQLd
インモラルへかよっ!
567昼休み中の黒いトト(便器):04/03/27 14:34 ID:7/halqte
すみません
それぞれのキャラがいっていると思ってください。
568『冬休みの憂鬱』 1/8:04/03/28 20:08 ID:Pr5y6Toi

「稟ちゃん・・・・山に行こうじゃないか!」
「山に行こうぜぇ!」

掃除当番の為、いつもより遅くなった帰宅。
季節も冬に移り変わり日が暮れる時間も早くなった。お陰で今は真っ暗だ・・・
そんな中いつぞやのように家の前に陣取っていた危険人物二人組の放った言葉に肩から崩れそうになる。

夏休みが過ぎ、何故か積極的になったプリンセス三人組のせいで散々な学校生活。
親衛隊からの襲撃、周辺男子どもの嫉妬、羨望、憎悪、殺気など入り混じった視線と怨嗟の声。
精も根も尽き果て帰りつく頃にはボロ雑巾に成り果てる、そんな毎日。
しかし、今日はさらにそれに追い討ち・・・
ああ、神はなんと無慈悲なのか─────いや、目の前にいたよ・・・・
「ん?稟ちゃん・・・どうしたんだい?顔色が悪いじゃないか」
黙れ、悪魔──いや魔王。あんたのせいだよあんたの!
「おいおい、まー坊。稟殿が怯えてるじゃねえか」
怯えてるんじゃない呆れてるんです、というかあんたも共犯者だろ!
そういえば、某宗教の信者が激減し続けているとかいう噂が────
「はぁ・・・・」
大きく溜息をつくと頭痛を催してきた頭を静かに振る。
「あの・・・またですか・・・?」
心底嫌そうな声を出してみるもののこの二人にそんなことで効果があるはずもなく・・・。
先程の心配顔はどこへやら二人とも満面の笑み──というか不適な笑みを浮かべ、
「冬と言えば雪、雪と言えばスキー、スキーと言えば山、山と言えば温泉じゃねえか!」
何故にたどり着くのはそこですか・・・おじさん達、歳なんだったら早く自分の世界に帰ってください。
「さあ、稟ちゃん!山に行こうじゃないか!」
満面の笑顔でこちらの両肩を掴んでくる魔王、異様に力が込められているのはこの際忘れよう。
「稟殿、行きたくないなら行きたくないとはっきり言ってくれていいんだぜ・・・」
・・・限りなく殺意に近い気迫を込めて言われても───
もともとこの二人相手に選択肢などないのだ、一種の命令かも。
569『冬休みの憂鬱』 2/8:04/03/28 20:10 ID:Pr5y6Toi
そんな訳で断れない、断ったら何が起きるかわからない・・・世界一個ぐらいなくなるかも知れない
せめてもの抵抗は深く溜息をつくことだけだ。
「はぁ〜〜・・・・で、いつ行くんですか?冬休みまでまだありますけど・・・」
この返事を了承と取ったのか二人の笑顔が怪しげ──ではなく見る間に輝きだす。
「稟ちゃんが行きたいっていうのなら今すぐにでも。ネリネちゃんとシアちゃんの了解は取ってあるから」
「何、休みなんざいくらでも作れらぁ!なんなら今すぐにでもこの国の王と掛け合って────」
「冬休みに入ってからでお願いします!」
今すぐにでも国会議事堂に乗り込んで行きそうな神様を慌てて引き止める。
それに、あんたの場合は掛け合ってじゃなくて睨み合って、もしくは殴り合ってでしょうが・・・
「ああ、それと稟ちゃん。出来ればまた綺麗なお嬢さん方を大勢呼んでくれたまえ」
「海でも山でも綺麗どころが多いに越したことはねえからな」
海はともかく山はさほど関係ないような気がするが・・・言えるはずもない
「いや〜、良かったよ・・・稟ちゃんが承諾してくれて、断られたらロープでぐるぐる巻きにして拉致しようかと思ったよ」
「そうだそうだ────っと、ところでまー坊。アレの事なんだが・・・」
「ああ神ちゃん、それなら問題ないよ。ネリネちゃんやシアちゃんの為に必死に探したからね
 なかなか条件に合うのがなくてね〜・・・いっそ作ってしまおうかと考えたよ」
「ということは見つかった、てぇことだな。なら────」
何やら話し込み始めた二人、何かよからぬ事を企んでいるのは明白だが追求する気力もない。
この先いつか起こりうる光景に頭の芯に響くような頭痛を覚えながら二人の間をすり抜け我が家へと帰還する。
一歩一歩確かめるようにして来た玄関を開ければそこには成績優秀、家事万能、容姿端麗の幼馴染の姿。
「あ・・・稟君、お帰りなさい」
「ただいま・・・・」
眩暈まで催してきた意識を振り絞り、適当に返答を返すと靴を脱ぐ。
「・・・稟君、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」
「ああ、たぶん・・・大丈・・・夫・・・」
そう言うと酷くなってきた頭痛と共にさっさと意識を手放した。
前のめり倒れていく視界の中で青ざめた楓の顔が見えたがすぐに闇に閉ざされた。
どうやら波乱万丈の日々はまだまだ稟を手放してはくれないようだ・・・・・
570『冬休みの憂鬱』 3/8:04/03/28 20:11 ID:Pr5y6Toi
「雪だな・・・」「雪だね・・・」
真っ白なベールに包まれた世界。
「雪だな・・・」「雪だね・・・」
滑走するスキーヤーやボーダーで埋まったゲレンデ。
「雪だな・・・」「雪だね・・・」
そんな中明らかに周りと違う雰囲気を醸し出している二人。
「「ユーーーキーーー!!」」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ、グチャッ。

「・・・・・埋まったな」
「そりゃ何万ホーンにもなりそうな声を出せば雪崩の一つや二つはおきるね」
遠くから眺めていた為全く被害なしの一同。
「で、どうするんだい稟?」
「どうするもなにも・・・アレは無理だろ」
うん、確かにと相槌をうつのは緑葉樹。その他の面々頷いている。
「とりあえず、前の時と同じようにあの二人の荷物は別の所に避けておくわね。
 仲間だと思われたくないし・・・・」
これまた一同、頷く。

いつものように紅女史と樹の漫才があったHRも終わり、遂に冬休みに突入した。
そんな矢先の冬休み二日目、自宅で楓と談笑しながら時を過ごしていると―――催涙弾が投げ込まれ
パニくっている俺たちを余所に次々と突入してくるSWAT部隊。
ロープで簀巻きにされ運ばれていく俺、楓だけは丁寧にエスコートされていた。
そこらへんで意識を失ったが、気付けば何やら無駄に豪華なバスの中。
そこにある二人の顔を見つけた時、とりあえず泣きたくなった。
その後ネリネやシア、それに他の面々も回収してスキー場へ発進。
途中でトンネルを抜けるとそこはジャングルでした。とかいう訳の分からん状態になったりしたが・・・。
そんなこんなで夕方には無事スキー場に着いた。

(思い出したら頭が痛くなってきた・・・)
571『冬休みの憂鬱』 4/8:04/03/28 20:13 ID:Pr5y6Toi
「あの、稟様?体調でもお悪いのですか・・・?」
こめかみを押さえて難しい顔をしているとネリネに心配させてしまったようだ。
「ああ、大丈夫大丈夫、ちょっと人生について考えていただけだから」
「はぁ・・・人生・・・ですか・・・」
今いちよく分かっていないような顔で苦笑を浮かべながら引きさがるネリネ。
「稟・・・それはいけないね、この歳から人生を考えるようになったらおしまいだよ。
 もっと人生は楽しまなく―――そこのお嬢さん、俺様と夕闇のゲレンデを滑走しないかい?」
・・・・・早々にナンパをし始めた、樹はほっておこう。ストッパー役の紅女史もいないし。
「じゃあ、どうしようか・・・シア、ホテルの鍵は貰ってるのか?」
普通な事を普通に聞いたはずなのだが言いにくそうにしているシアを見て不安が募る。
「ま・・・まさか・・・」
「あははは・・・違うの、ホテルの鍵っていうか・・・ホテルを借り切っちゃったというか・・・・」
ぐわっと後ろを振り返る。夕闇に照らされたホテル。
一見すればログハウスみたいだが百人も泊まれるホテルだ。
(あ・・・・有り得ない)
思いっきり脱力して雪の上に突っ伏した俺に慌てて駆け寄ってくる楓。
が、その前にすっと立ち上がる―――もう受け入れたもの勝ちだ!
「はぁ・・・とりあえずもう遅いし、疲れたし、さっさと行こう・・・・」
「そうね・・・じゃ、ちゃっちゃっと行きましょう。カレハ、手伝って」
「あ、はい。亜沙ちゃん」
「すみません・・・稟様」「ごめんなさい・・・稟君」
「あ、違う違う、シアやネリネが悪いわけじゃないから―――あ、麻弓!悪いけど樹頼むわ」
「はいは〜い、この麻弓様にお任せですのよ〜」

「そこの彼女!俺様と一緒に―――ぐあっ!ま・・・麻弓か!!」
「はいはい、雪男になるのはまた今度にしましょうね〜」
「失敬な!この世界の婦女子の恋人言われた俺様を雪男などと―――はうあっ!」
「さっさと歩けー!」
・・・・・・これからも樹の扱いはアイツに任せるとしよう。
心に刻み込むと周りの痛いほどの視線を受けながら目の前の建物へと入っていくのだった。
572『冬休みの憂鬱』 5/8:04/03/28 20:14 ID:Pr5y6Toi
ベランダを一歩出れば外は闇に包まれた深淵、雪を踏みしめる感触さえも危うい。
太陽の光を浴びてあれほど美しく輝いていた銀世界も夜ともなれば灰色の薄汚い世界に変わる。
吐く息さえ凍りそうな寒さ、だが火照った体に今は丁度いい。
危険人物二人が救助され(貸し切った)ホテルに戻った直後、急に始まった宴。
どこから持ってきたのやら大量の酒が並べられ、そしてすぐさま空になっていった。
そんな酒宴は未だに続いているのか背中のほうが実にうるさい、窓一枚隔てたおかげで大分マシだが。
最初のうちは良かったが酒のペースが上がり始めた時からおかしくなった。
思い出すのも嫌だ・・・ただ酒は人を壊れさせていくのだとつくづく実感できた気がする。
ほぅ、と思わず出た溜息は白い靄となって空気中に漂う。
積もった雪を踏みしめながらテラスの端まで行くと手すりに身体をもたれさせ夜空を見上げる。
ひんやりとした冷気を纏った風が優しく頬を撫でてゆく。
冬場は大気の乱れが少なく、空気が澄んでいるから星がよく見えると誰かが言っていた。
実際その通りらしい、夜空に広がる無数の光の粒子は透き通るような輝きを放っている。
一つ一つが個性的に輝き、自らの存在をアピールしているようだ。
思わず感嘆の溜息、そして夜空に吸い込まれそうになるが────

「あら、稟さん?こんな所にいらっしゃったのですね」

おっとり、のほほーんとした声に現実に引き戻された。
苦笑しつつ振り返ると金髪淑女と名高い予想通りの人物がグラス片手に立っていた。
「カレハ先輩こそ・・・どうしてこんな所に?」
「少し・・・飲みすぎてしまいまして・・・気分が悪くなったものですから・・・」
風に当たろうと、と言葉の後を取ると小さく頷き頬をほんのり桜色に染めながらゆったりと歩いてくる。
「お隣・・・よろしいですか?」と聞いてくる辺りは実にカレハ先輩らしい
麻弓辺りなら問答無用で俺を突き落として場所を占領しそうだ、亜沙先輩も・・・
想像して恐怖に身震いする───ふと隣を見ればこちらを見て笑っているカレハ先輩と目が合う。
今だけは紅に染まる頬を隠してくれる闇に感謝する、とそこでふと気付く。
「あの、カレハ先輩・・・寒くないんですか?」

573『冬休みの憂鬱』 6/8:04/03/28 20:15 ID:Pr5y6Toi
見れば緑のチェック模様のフレアスカートに薄い緑のキャミソールといった格好。
肌の露出が多く夏真っ盛りでもなければお断り願いたい、この極寒の地では少々無謀というものだろう。
「酔っていますので熱いくらいですが・・・ここは少々寒いかもしれませんね」
本人は無自覚のようだが見ているこっちが寒くなってくる格好は勘弁して欲しい。
会話を打ち切るが如く、ほぅと小さく息を吐くと夜空を見上げてしまうカレハ先輩。
が、その小さな肩が寒さ故か震えているのを見逃す稟ではなかった。
小さく苦笑するとベランダに出る前に羽織ってきた紺のジャケットをそっと隣の少女の肩へと掛ける。
突然自分を包み込んだ暖かさに驚いたのか目をぱちくりさせながらこちらを見る少女。
「り・・・稟さん?」
カレハ先輩の戸惑う声に少ししどろもどろになりながらも応える。
「え〜と・・・その、ほら女性は身体を冷やしちゃいけないって言いますし・・・」
「でも、これでは稟さんが・・・」
「大丈夫ですよ、下に何枚か着てますから。カレハ先輩こそ外に出るならもう少し着てきたほうがいいですよ」
安心させるように笑みを浮かべると戸惑っていた顔に笑みが浮かんでくる。
「・・・・では、お言葉に甘えさせて頂きます」
そっと胸に何か大事なものを抱きしめるかのようにジャンパーの掛けられた肩に手を添える。
少し潤んだ透き通った瞳、そして見るものを癒すような微笑を浮かべた顔でこちらを見つめる。
その微笑は反則でしょう・・・赤くなっていく頬を隠すように夜空へと顔を向ける。
動悸が早まり少し息苦しくなる、隣から視線を感じるがひたすら前を見続ける。

「ふぅ・・・でも・・・綺麗ですよね」
澄み渡る漆黒の夜空に輝く星、星、星、これを綺麗に言わずしてなんというか・・・なのだが───
「まあ♪綺麗だ、なんてそんな・・・稟さんったら♪」
頬を桜色に染めて少し恥ずかしそうに俯いてしまう。
どうやら物凄い勘違いをされてしまったようだ・・・というかスイッチ押してしまいましたか?
「は!?いや、その夜空が綺麗ということで・・・・」
「あら、そうでしたの・・・・」
「──────いえ!そのカレハ先輩も綺麗ですけど!」
「まままあ♪」
物凄く悲しそうな顔から一変瞳を輝かせた嬉しそうな顔へと・・・

574『冬休みの憂鬱』 7/8:04/03/28 20:17 ID:Pr5y6Toi
駄目だ、一生この人には敵いそうにない
大きく溜息をつくと真っ赤になった顔を隠すように再び夜空へと顔を戻す。
星々の輝きは衰えることなく祝福するかのように夜空を彩る。
しばし続く、気まずい沈黙。どちらも口を開かない。
だが、気まずいはずなのにどこか心休まる沈黙、心温まる沈黙。
どうしてなのか・・・・──────ハッ!!これが「癒しのカレハ」の力か!
この世界に生まれいずるまでいた母の胎内、安息の空間、
神の住まう教会のような慈愛に満ちた空間・・・・
思えばこんな疑問を抱いてしまったことに対する懺悔の気持ちがあったのかもしれない。
あるいは何を言っても酒に酔っていたと言う事で済ませようとしていたのかもしれない。
気付けば口から言葉が漏れ出していた。

「どうして・・・なんでしょうか・・・」

「え・・・?」
「どうしてシアやネリネや楓・・・は俺に好意を向けてくれるんでしょうね・・・。
 自分で言うのもなんですが甲斐性なしですし、取り柄と言ったら我慢強いことだけですよ・・・」
少し自嘲気味に呟く俺をじっと見つめるカレハ先輩。
誰しもが持つ疑問、誰もが持たない疑問、形のない答え、形のある答え。
自分という存在に対する疑惑、他人という存在に対する困惑。
自分は一体何を求めているのだろう、どのような答えが欲しいのだろう。
これは自分で見つけなければいけない答えではないのか、人に頼ってはいけないのではないのか。
葛藤の最中に顕れるのは言ってしまったことに対する後悔、言ってしまったことに対する安堵。
ぐるぐると廻り始めた苦悩を振り払うかのようにもう一度夜空を見上げる。
一方カレハ先輩の方は片手を頬に当てて真剣に考え込んでいるようだ。
そういえば悩んでいるカレハ先輩って見たことないような・・・いつも能天気そうだから
「稟さんは・・・・皆さんのことを信じていらっしゃらないのですか?」
「・・・え?」
突然返された予想外の答えにただ反射的に聞き返すことしか出来なかった。
「稟さんの事は信じています、ですけど先程の問いは皆さんの好意を疑っているように聞こえますわ・・・」
「そんなことは・・・!」
575『冬休みの憂鬱』 8/8:04/03/28 20:18 ID:Pr5y6Toi
本当にないのだろうか?
一度として彼女たちの好意を疑ったことがなかったと言えるのだろうか。
「そう・・・なのかもしれませんね」
深く溜息をついて出てきたのは肯定の言葉。
「自分の事ばかり考えて・・・どこかで彼女達の好意を疑っていたのかもしれません・・・」
「稟さん・・・」
「ふぅ、やっぱり俺って最低ですね」
「いえ、そんなことはありませんわ・・・」
自嘲気味に呟いた俺の言葉を遮るようにカレハ先輩の声が響く。
気遣わしそうな、どこか安心したような、そんな響きが込められていた。
「試すような真似をして申し訳ありません、やはり稟さんは素直な人です」
「え?」
「きっと稟さんがそのような事を考えたのも皆さんの気持ちに素直に答えようとしているからですわ・・・」
クスクスと小さく笑うカレハ先輩。困惑している俺は置いてけぼりだ。
と、ふと拗ねたような問い詰めるような顔になってこちらを見る。
「それと稟さん、プリムラちゃんや亜沙ちゃん、それに・・・私も稟さんの事を愛しているのですから忘れないで下さいね」
突然の告白に驚き身動き取れない俺が何か声を掛ける前にふわりと手すりから離れるカレハ先輩。
そのまま部屋の方へと歩いていく、辺りを包むのは静寂と雪を踏みしめる音。
と、窓の二、三歩手前で立ち止まるとくるりとこちらに身を向ける。
「稟さんには人を引き付ける何か不思議な力があるのかもしれませんわ♪」
ふわりを笑ったその顔は今までみた笑顔よりも綺麗だった。
では失礼しますね、と言って修羅場へと戻ったカレハ先輩、一人取り残された俺。
呆然としつつも笑いがこみ上げてくる、小さく吐いた息は白い靄となって星空に昇っていった。


                                 ( ´Д`)「続くの?」
                                 (´・ω・`)「分かんない」
                                 (;´Д`)「分からんなら初めから書くな」
                                 (´・ω・`)「ショボーン」
576風変わり:04/03/28 20:18 ID:Pr5y6Toi
楽しんで頂けたら何よりです、楽しめなかった人は石を投げてください(´・ω・`)

さて・・・SHUFFLE! SS何とか書き上げて見たものの・・・どうなんでしょうね?
夏休みに誰とも何もなかったと仮定して書いてみたりしました・・・ハーレムEND?
実際続き書くかどうか激しく迷ってたりするところです―――設定壊れてますしね・・・
書くとしても大分掛かるんですけどね、あはは〜

頑張れ、私!
577名無しさん@初回限定:04/03/28 21:12 ID:QS8gbLA2
しゃっほ〜キタ━━川 ゜〜゜)II ● ´ ー `) `.∀´) ~ ^◇^) ´ Д `) ^▽^) 0 ^~^) ´D`) ` д`) 'ー'川 `▽´∬ o ・-・)ノ ・e・)━━!!
578名無しさん@初回限定:04/03/29 16:06 ID:aLQMhxz9
キタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!

カレハ先輩キタwwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!

579世界で、ひとつ (1/6):04/03/31 23:29 ID:LHYo0YoG
 あの日あの時、二人の愛は成就した。
 沙耶。僕のいとおしい人は、その小さな身体を莢にして、世界でたった一つだけの花を
咲かせてくれた。
 本当に、美しい花だった。
 あの薄汚い世界の中で、たった一つの優しい光。災厄の箱の中、最後に残った、ちいさ
なちいさな希望。花のようにその身体を開き、虚空に向かって光を振り撒く彼女は、この
世のものとは思えないほど神々しく、美しかった。
 寂しくはない。世界は、沙耶で満ちているから。
 大気の匂いに沙耶を感じられた。
 風がそよぐたびに沙耶の囁きが聞こえた。
 空を覆う幻想的な色彩は、花開いた沙耶の色だ。
 悪臭を放っていた大地も、街も、生き物すらが、美しく生まれ変わっていった。
 すべてが終わり、そして始まったあの廃屋。そこから僕は見つめ続けていた。世界が、
沙耶の世界に変わる様子を。
 醜悪な町並みを、汚れた大気を、うごめく肉の塊どもを、それらすべてが浄化されゆく
その様を。
 一人、で。


  『世界で、ひとつ』


 寂しいと思った事は無い。
 ただ、ひとりで有り続けるには時間は永すぎた。
 世界がかつての面影をすべて失って、僕たちが住んでいた廃屋も倒壊し、記憶の中の沙
耶の顔すらぼやけるほどに時間が過ぎて、それでも僕には時間が残っていた。
 寂しいと思った事は無い。
 ただ、ふと足が街の方に向いただけだった。
580世界で、ひとつ (2/6):04/03/31 23:31 ID:LHYo0YoG
 街への道はまさに驚嘆すべき光景だった。
 清流が流れ、緑輝く森の木々。大気には神秘的な靄がかかり、時折差し込む優しい日差
しに浮かび上がるような光を発する。
 林間から響く妙なる音楽はどんな鳥の鳴き声か。地から沸き上がる虫の音色を従えるよ
うに朗々と響き渡る。
 すぅ、と空気を吸い込むと、優しく愛しい匂いが肺を満たした。沙耶の匂いだった。
 僕の記憶に有るどんな光景よりも美しい景色。人間には作りえない風景だった。
『地球が泣いている』
 世界が人間のものだった時、そんな傲慢な言葉が使われたことがある。地球と言う天体
が人類のものでは無いのだから、少しばかり人類にとって不都合な環境に変わったところ
で地球は痛痒ともしない。それを敢えて擬人化し、歪曲し、矮小化して『泣いている』と
表現した事に、当時は吐き気すら覚えたものだ。
 だけれども、この世界の美しさを見るとはっきりとわかる。あの時代、きっと地球は泣
いていた、と。
 丘を下る足取りは軽い。
 自動車で数時間かかる道程を、二本の足がしっかりしっかり進んで行く。かかる靄のせ
いか、不思議と喉は渇かない。空腹を感じれば木々になる果実に手を伸ばせばよかった。
クッションがきいた感触の良い道はどれほど歩いても疲れを感じないほどだった。
 三日か四日は過ぎたと思う。
 輝くような靄に包まれた世界では、時間の間隔ははっきりしないが、おそらくそんなも
のだと思う。ともかく、三、四日ほどで特に大した苦労も無く麓にまでたどり着いた。大
した苦労も無かったから、大した感慨も沸かなかった。
 そうであっても、壮麗な町並みは大いに驚嘆するに値するものだった。天を衝くほどに
聳える建造物は、ビルディングなぞとは比較しようも無い美的感覚によって造られている
。かくて、記憶にあった雑然とし、調和を失ったコンクリの墓石たちは、美しく区画し、
調和された巨石建造物へと姿を変えた。
 調和といえばそうだ。大気に流れるこの匂いだ。大気に満ちたこの匂いは、間違いなく
森で感じたそれと変わらない。むしろ、より多くの生命を感じさせる生気に満ちてすらいた。
581世界で、ひとつ (3/6):04/03/31 23:32 ID:LHYo0YoG
 かつての街といえば、胸がむかつく有毒なガスの臭いで満ちていた。自然と言えば、囲
いに作られた人工的な緑が精々だった。だけれども、この街はどうだろう。紛うことなき
文明社会だというのに、そこに自然が息づいている。自然と人工の絶妙な調和――いや、
もともとそれは対立概念ですらなかったのかもしれない。単に、人類が愚かでありすぎた
だけで。
 驚くべき街の風景の中、僕はふと疑問を覚えた。 
 街の中を散策してしばし、いまだに人間に出くわさない事だ。これだけ壮大な町並みな
らば、文明が存在しない訳は無い。それでも誰にも出くわさないのは、どんな理由がある
のだろうか?
 首を捻りながら見上げると、霧深い大気に紅みがかかっていた。森に比べて靄の少ない
街の中では、朝晩の区別があるようだった。
 鮮血のような色を帯びた空は、見る間に闇色に塗り変わり、夜の帳が全てを覆う。ねぐ
らを探さなくてはいけないなと、そんな事を考えながら、夜の街を一人歩いていた。
 かたん、と何かの音がした。
 振り向くとそこには、僕が初めて見るこの街の住人がいた。
 少女だった。白い肌に翠の髪、愛らしいつくりの顔が驚いたように僕を見ていた。
 似ている特徴は一つも無かったけれど、その顔には沙耶の面影があった。それに、ああ
。鼻梁の作りは僕に似ている。間違いなく、彼女は僕と、沙耶の娘だった。この世界に生
きるすべてのものが、僕と、沙耶の子供たちなのだと、その時初めて確信できた。
「こんばんわ。いい夜だね、お嬢さん」
 僕たちの娘に、僕はそう言って微笑んだ。
 長いこと使っていなかった喉が、ちゃんと声を発してくれるか心配だったけれど、なん
とか上手く喋ることができた。
「――ぁ」
 少女は、一瞬だけ僕と視線を合わせ、それからすぐに引っ込んでしまった。
 ひどく奇妙な話だった。夜半にはまだまだ時間はある。にもかかわらず、これほど大き
な街に人間の姿が見られない。やっと発見した少女は追い立てられるように逃げ去ってし
まう。まるで、街全体が、息を潜めているようだった。
582世界で、ひとつ (4/6):04/03/31 23:33 ID:LHYo0YoG
「なんなんだろうか。いったい」
 言葉を思い出す意味も込め、思うことを口に出す。がらんとした街並みに響く言葉は、
幾度も反響してまるで聞き覚えの無い声に聞こえた。
「誰かいないのか? おぉい」
 問いには、静寂ばかりが返ってくる。
「仕方ないな。こちらから探すか」
 そう決意して、手初めに近くの建造物に足を踏み入れた。
 部屋という部屋を虱潰しに当たって、そこに人が居ない事を確認し、そして次の建物に
入る。そんな事を何度か繰り返した後だった。
 かたん、と何かの物音がした。
「ははぁ、探しても見つからないわけだ」
 それは、地下への入り口だった。簡単な仕掛けだが、あらかじめ知っていないと普通の
床と区別がつかないようにできていた。先程の音は恐らく、中にいる人々が上の様子を伺
ったのだろう。
「それにしても、どうして隠れたりしなくてはならないんだ?」
 入り口を下ると、すぐにかぐわしい匂いがした。草原に吹く風のような爽やかな匂いだ。
久しく忘れていた、沙耶の匂いに似ている。
 人の声が聞こえたのはそのすぐ後だ。心休まる懐かしさがそこにはあった。思わず、走
りだしていた。階段を降りきると明かりの差し込むドアが待っていた。扉を通してすら、
その先の人の気配を感じる事ができた。
 そっと、透き間から中を覗き込む。ずっと探していたものがそこにいた。人間だ。清潔
な衣服をまとい、心温まる表情で談笑を交わす。その、一つ一つの顔に僕は見覚えがあった。
 遠い記憶の向こう側。僕の事を好きだと言ってくれた女性によく似た女性がいた。辛い
時には叱咤してくれた人の面影を持つ初老の人物がいた。ああ、あの腕白小僧は僕の親友
だった。僕がどれほど変わろうとも、最後まで僕のことを考えていてくれたあいつに――。
 彼らはすべて、遥か過去の隣人たちの子孫なのだろうと直感できた。何より、彼らはす
べて僕と、沙耶の特徴を兼ね備えていた。彼らは皆、隣人たちの子孫であり、僕と、沙耶
の子供たちでもあるのだ。
583世界で、ひとつ (5/6):04/03/31 23:34 ID:LHYo0YoG
「おぉい。君達――」
 ドアノブを捻ったのは中ば無意識だった。暗闇の中から、明かりの下へと足を踏み入れ
る。その瞬間だった。

―――きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 誰かが引き裂くような悲鳴を上げた。煌々とした光は瞬時にすべて消え去った。ばたば
たと、慌てて走る去る音が、闇の中に響いていた。
 その乱痴気騒ぎの元凶はすぐに知れた。扉を開けた僕の正面に、それはいた。糜爛し、
腐敗し、汚らわしい臭いすら発している汚泥の塊。この、僕と沙耶の世界には存在しては
ならない醜悪なる汚物。何より我慢ならないのは、闇の中んからこちらを伺うその動作が、
明らかに人間を――正面に立つこの僕を――涜神的に真似ている事だ。
 これを、存在させて続けてはいけない。
 沙耶がその小さな体を犠牲にして創り上げたこの世界。その美しさを守るためには、こ
れは存在してはいけない。そう思った時にはもう、僕は弾けるように飛び出していた。
 歯を食いしばり、拳を握り、迎え撃とうと構える化け物目がけて走り出す。たとえこの
命を失おうとも、この化け物を殺せるならばそれでよかった。
 瞬く間に、息が届くほどの距離に達した。息が詰まるほどの悪臭が周囲に漂う。目を向
けるのも憚られるような醜い腕が、僕を捕らえようと振り上げられる。委細構わず、僕は
体ごと拳を叩きつける。確かな手ごたえが手の中に返ってきた。

 ガシャンっ! と、ガラスが砕ける音がした。

584世界で、ひとつ (6/6):04/03/31 23:35 ID:LHYo0YoG
 それからすぐ、僕は再びあの丘に帰っていった。
 きっとそれからは、永劫の時を一人で過ごす事になるだろう。
 寂しくはない。世界は、沙耶で満ちているから。
 大気の匂いに沙耶を感じられる。
 風がそよぐたびに沙耶の囁きが聞こえる。
 空を覆う幻想的な色彩は、花開いた沙耶の色だ。
 この世界は沙耶そのもので、全ては僕のものだった。

 ただ、たったひとつ。
 そう、ただひとつ。僕だけが、沙耶のものだった。それだけだ。

 砕けた鏡に映った己の姿が、それを教えてくれた。

                      ――終――
>>579-584
タイトル:『世界で、ひとつ』
ジャンル:「沙耶の唄」(ニトロプラス):沙耶END後日談

ニトロ以外のSS書こうとして、結局自分が虚淵信者であることを思い知らされた。
ということで、「沙耶の唄」SSアウトサイダー風味で行ってみました。
今後は開き直って、ニトロ専門SS書きにでもなるかー

保管サイトの更新は……後日
586名無しさん@初回限定:04/04/01 00:56 ID:DnZIK9MK
・゚・(つД`)・゚・
587名無しさん@初回限定:04/04/01 11:25 ID:I/ZntW0L
GJ!マジでよかった。あの独特の世界観をうまく表現できてたのには驚きました…
一応ハッピーエンドみたいですし、こんな終わり方は好きですね。
588名無しさん@初回限定:04/04/01 17:54 ID:dO/L5pi9
神!
そうだよな、沙耶と違って以前の人間の価値観知らないなら、
そういう反応になるよな。
切なくて泣ける…
589名無しさん@初回限定:04/04/01 20:05 ID:JjnQj4zU
yes!
GJ!
590嘘予告:04/04/04 13:36 ID:v6D3VBzU
眼前に屹立するそれは、見まごう筈のない鋼の巨体。
たなびく光の鬣、鋭く輝く瞳、巨大な二基の脚部シールド。
悪趣味な装飾にまみれていても、それは確かに彼らの信じたデモンベインだった。
対するは大十字九郎、そして衛宮士郎。

ただふたりの魔術師で、鬼械神に立ち向かう無謀―――
彼らを識らぬ者が見れば自殺行為と咎める者も居るだろう。
だが彼らはただの魔術師ではない。
更に、彼らには秘策があった。
591名無しさん@初回限定:04/04/04 13:37 ID:v6D3VBzU
―――撃鉄のイメージ。
二十七つの撃鉄が、
ガギン、と音を立てて、火花を上げて、一斉に叩きつけられる。
回路に魔力を流し、脳裏にはその雄姿。
鋼の神の姿を、寸分の狂いもなく映し出すために。

「―――投影、開始」

その名、デモンベイン。

「憑依、経験開始」

その名、魔を断つ剣。

「経験、共感開始」

その名、無垢なる刃。

「憑依経験、共感終了」

その名、デモンベイン。

「―――全工程、投影終了」

彼の心象風景から一振りの剣が引き抜かれ、この世へと現れた。
その剣はあまりにも巨きく、そして力強い。
大十字九郎が搭乗し、いまや相対する本物すら圧倒する剣気を放つ巨体。

―――その名、デモンベイン。

そう、この世に
衛宮士郎の投影れぬ剣など、有りはしない―――!
592名無しさん@初回限定:04/04/04 13:38 ID:v6D3VBzU
―――圧倒的な力の波が、シエルを襲う。
予期せぬ方向からの不意を打つ一撃に、彼女の身体は一瞬硬直する。
だがその一瞬の結果に死が待つなら、それは永遠と同義―――!

シエルは動けず、
志貴の四肢は動かず。
力の限りに伸ばしたアルクェイドの手は届かなかった。

それでも。
ただひとり、シエルの前に立つ者が居た。

光の奔流が激突する。

「セブン―――!!」
叫びは、光の中にかき消えた。
593名無しさん@初回限定:04/04/04 13:39 ID:v6D3VBzU
「ふはははははははは、見るのであるエクスキューター・シエル!
 これぞ正に芸術! 美術! 美学の極致である!!」
ガレージに鎮座するその形に、大十字九郎には見覚えがあった。
超の付く大型のバイク。ハンティング・ホラーという銘すら、その姿のまま。
しかしその核があの深淵の闇をインクに書き上げられた忌むべき魔導書ではなく、
柔らかな光に包まれて眠る一角獣の精霊である事が、この機械の本質を変えていた。



三台のバイクが轟音を立て疾走する。
デスモドゥスが、サイドバッシャーが、ハンティングホラーが。
伊藤惣太の、草加雅人の、シエルの、それぞれの思惑と共に。
立ちふさがる全てを薙ぎ倒しひた走る。
目指すは、スマートブレイン本社ビル―――!
594名無しさん@初回限定:04/04/04 13:41 ID:v6D3VBzU
ごきり、と嫌な音を立てて。
草加雅人の首が、曲がるべきでない方向へと曲がる。
次の瞬間地面に投げ出された彼の身体は、
一拍の間をおいて白い灰へと姿を変えた。
一枚の写真だけを残して。

―――同時刻、某所。
青崎橙子の工房に無造作に置かれた棺の蓋が持ち上がる。
起きあがった男は、草加雅人。
「おはよう、草加君。身体の調子はどうだね?
 問題ないか、それは良かった―――
 ―――それでは契約通りに、その躰の料金を払いたまえ」
人形師・青崎橙子は紫煙を吐き出し、にやりと笑った。
草加雅人もまた、その自信に溢れた独特の笑みを浮かべて
青崎橙子への返答とした。
595名無しさん@初回限定:04/04/04 13:42 ID:v6D3VBzU
第三次世界大戦の混乱に乗じて、「進化」した吸血種は
日本という国を乗っ取った。
その種は、オルフェノクと呼ばれる―――



世界中が痛み分けとなった大戦において、
唯一、軍需産業でその業績を伸ばしたエリアがある。
中国・上海。
彼らのサイバネティクス技術は、軍需産業へと転ずることで
多大な利益を得、その利益を投入し新技術を開発する循環を手に入れた。
その結果として、電子の魔都へと姿を変えた上海に。
ひとりの復讐鬼が舞い降りた。
596名無しさん@初回限定:04/04/04 13:43 ID:v6D3VBzU
WWIIIから三年。
わずか三年で、完全なる平和国家を目指したリブリアは滅んだ。
だが、後に残る者達がいる限り、彼らの希望は潰えはするまい。
だから、もはやあの国に必要ないグラマトン・クラリックには。
今この場で、「後に残る者達」を守る事こそが使命である。
彼は、そう確信した。
音を立てて、ケースが開く。
明鏡止水の境地に達した今、銃を振るうのにもはやプロジウムは無用。
ただ、銃を手に執る覚悟さえあれば良い。
己の身すら食らいつくす銃を。

その銃の名は、「帝王」―――

「ヘン―――シン」

男はひとり立ち向かう。
眼前には、雲霞のごときライダー部隊。
右手でブレイガンを抜き、コッキングレバーを引く。
左手でカイザフォンを抜き、106のコードを入力する。
完成された二丁拳銃、ガン=カタを振るい、
最強のグラマトン・クラリック、ジョン=プレストンは
ただひとり、戦場に躍り出た。



「Blood on the Edge」
    ―――故に、我が剣に意味は不要ず。
597:04/04/04 13:49 ID:v6D3VBzU
>>590-596
タイトル:嘘予告「Blood on the Edge」
ジャンル:ごった煮嘘予告
出演予定?作品:
吸血殲鬼ヴェドゴニア(ニトロプラス)
鬼哭街(ニトロプラス)
斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス)
月姫(TYPE-MOON)
空の境界(竹箒)
Fate/stay night(TYPE-MOON)
リベリオン
仮面ライダー555

beaker氏などの嘘予告に凄い勢いで影響を受けてやってみました。
熱いシーンだけ抜き出して作るから予告って面白いのだ、と(言葉は悪いディスが)
作ってみて悟った次第。

余裕があれば嘘の文字取っ払ってみたいなぁ、と……思う。思うだけ。
598名無しさん@初回限定:04/04/04 14:53 ID:+yk4lkBW
>>597
すげぇ・・・デモンペインの剣製なんて考えたことも無かった・・・。
GJ!
599名無しさん@初回限定:04/04/04 20:01 ID:WzI/oodv
黄色いサイトからのインスピレーションだということは一発でわかったが
もう少し順序立てて作ったほうがわかりやすい気がする
600名無しさん@初回限定:04/04/05 10:42 ID:qtRmeUPI
某同人ネタ出すと五月蝿いのが寄ってきそうなんで、
他所でやってもらいたいような。
読んでみたいとは思うんだが。
601名無しさん@初回限定:04/04/06 02:14 ID:7mwlN0mQ
GJ!
最近流行ってるな嘘予告。
出来ればサイト作ってソノウソホントにしてください。
602名無しさん@初回限定:04/04/08 21:05 ID:l549GCcY
>デモンペインの剣製
経験とか年輪とか「時間」関係の辺りで、脳が焼き切れて死ぬような気がする。
アレはニャー様曰く「数えてるだけで3000回」ループしてるわけで、
下手するとギルっちの収蔵品を全部足しても追いつかないかも。
年代測定かましたら、さぞ愉快な数字が叩き出されるんだろうなあ。
603名無しさん@初回限定:04/04/08 22:24 ID:EvL7ek86
剣製で自滅することだけはないと自己申告はしてるが、
複雑になればなるほど時間はかかるようだしな……
まあその辺はノリでどうとでもって気はするが。

あと、デモベ投影したはいいが魔導書どうすんだろうな(w
魔術師は自分か凛で良いとして。
604名無しさん@初回限定:04/04/08 23:46 ID:s4y0nC9o
九郎が乗るんちゃうの?<複製デモベ

>>597
デモンベイン剣製とか第七聖典のHHとか(・∀・)イイ!ですね
クロスオーバーの醍醐味ですねぇ
605名無しさん@初回限定:04/04/08 23:55 ID:UexbIQnF
複雑な機械は投影できないって突っ込み入れないあたり、
みんな粋って物を判ってるな(w
606名無しさん@初回限定:04/04/09 00:50 ID:pM9mcPpo
>>605
複雑な部分抜きで内蔵武器の類一切無し、
最低限の装甲や骨格・駆動系のみ投影複製、
後は継ぎ接ぎで無理矢理動かすとか、必死な感じだと燃えるね。

制御系は凛。量子コンピュータの如く、平行世界の自分の処理能力を拝借。
機関部に桜。ありあまる聖杯の魔力をエンジンがわりに。
操縦者にセイバー。内蔵武器がことごとく使用不能故、バルザイの偃月刀だけで戦う!


士郎? 作る者にすぎない彼は見物です。
おうちでご飯の用意でもしてましょう。
607名無しさん@初回限定:04/04/09 01:00 ID:auqmVxod
「デモンベインの中の人も大変であるな」
608名無しさん@初回限定:04/04/09 15:02 ID:DMVI2nw8
あー、何故か士郎がデモベそっちのけで馬鹿でっかいバルザイの偃月刀ブン回すの
想像しちまった……

ん? それはそれで燃え……か?
609名無しさん@初回限定:04/04/10 00:28 ID:LbKTDtnZ
ビルの上から飛び降りながら、デモベサイズのバルザイの偃月刀で斬りかかるとかな。
610名無しさん@初回限定:04/04/10 03:21 ID:v4M3jPsC
デモベ剣製ならきっとアレだ。アーチャーみたいに撃ち出すんだ
運動エネルギーを利用するのはギレン閣下以来の常套手段だし
611名無しさん@初回限定:04/04/10 07:09 ID:qaUwfZTw
デモンベインの核さえあれば残りは全部魔術で再構成できるだろ
問題は九郎のチンコの鞘が無いと、顔の欠けたアンパンマンの如く弱いわけだが
612名無しさん@初回限定:04/04/10 08:30 ID:AjKEocOx
そーいやどっかに、ニャー様*2(片方ナイア、もう片方は朝夜主人公の中の人)の
陰謀で封印されちまった旧神の代わりにぶっ壊れたデモベを士郎がネクロノミコン新釈で
ひいひい言いながら動かして戦うクロスオーバーSSがあったな……
613名無しさん@初回限定:04/04/10 22:58 ID:yCN5zjFs
>>612
tp://www.breezekeeper.com/zion/
ここかいな
614名無しさん@初回限定:04/04/11 00:53 ID:w19BeBks
既に紫だった罠。
正直アレにはゾクゾクきた。
615名無しさん@初回限定:04/04/13 20:27 ID:54HaIt/G
ん?
616ハリオンルート3:04/04/16 16:11 ID:6mKKVzR8
もう雑魚なんていわせない!
エロ満載のハリオンルート!
妖精趣味の貴族達による陵辱シーン、悠人とのらぶえっちシーンの両方完備!

「ユ〜トさまぁ〜、子供はいっっぱい欲しいですねぇ〜〜♪」
(俺、腹上死するかも・・・・・・)

ハリオンの責めに、悠人は耐え切ることが出来るのか!?
617名無しさん@初回限定:04/04/16 16:17 ID:6mKKVzR8
投稿間違いでした>616
どうもすみません
618名無しさん@初回限定:04/04/16 21:29 ID:FJmtlsDE
>616のSSまだー?(AA略
619名無しさん@初回限定:04/04/16 21:55 ID:FoKjrNdW
>>618
雑魚スピスレにGO!
620嘘予告:04/04/17 00:48 ID:XKrX3qAh
「まいったなぁ……どうするよアル?」
「妾に聞くな」

「この姿では初めまして、だな。衛宮士郎、遠坂凛」
「だ、大十字先生、貴方は一体!?」
「成る程ね、魔術師なのは判ってたけどよもやミスカトニックの魔術師とは思いもしなかったわ」

「紹介しよう、俺のサーヴァント『ワイズマン』だ」
「ワイズマン? なによそれ、そんなサーヴァント聞いた事がないわ!」

「はぁ、まさか初期段階でキャスターにアップグレードされた幻のサーヴァントとはね」

「汝はつくづく役に立たぬな、父上」
「そう言うな、お前と彼がいれば他のサーヴァントなど恐るるに足らぬ」
「当然だ」

聖杯戦争の監視のためにミスカトニックが送り込んだ最強の魔術師大十字九郎。
あまりに強すぎるその魔力はやがて聖杯戦争そのものを狂わせてゆく。

九郎が呼び出した八人目のサーヴァント「賢者(ワイズマン)」
サーヴァントをも屠るに足るマスターと並のマスターより弱いサーヴァントという逆転したペア

果たして聖杯の行方は……

「祈りの空より来たりて、正しき願いを胸に、我らは明日への道を拓く!」
621名無しさん@初回限定:04/04/17 00:52 ID:XKrX3qAh
>>620
タイトル:嘘予告「Another Possibility」
ジャンル:二作品クロスオーバー嘘予告
登場作品:Fate/stay night(TYPE-MOON)
       斬魔大聖デモンベイン(Nitro+)
622名無しさん@初回限定:04/04/17 03:50 ID:+5QGlkSF
いかにもつまらなそうな予告編ですね!
623名無しさん@初回限定:04/04/17 04:05 ID:IiLySGoj
雑魚スピスレ大盛況だな、、、
624名無しさん@初回限定:04/04/17 13:30 ID:Ef3G0cXV
雑魚スピスレが出来てからこっちにアセリアSSがあがらなくなり、そして寂れたように見える?
アセリアSS一色でも不平があがったことだし、そのへん上手くいかんもんやね…
625名無しさん@初回限定:04/04/17 16:32 ID:avHjlUAB
雑魚スピスレも最初から盛況だったわけではないのだよ…
626名無しさん@初回限定:04/04/17 21:49 ID:F5+GRGUi
>>620
うわ駄目っぽい。
某SSリンクの掲示板のやつと殆どかわらん痛さを感じる。
真似すリャいいってモノじゃないんだなと思い知らされたYO
627名無しさん@初回限定:04/04/20 14:35 ID:+wsHXOzK
ようやく前スレが沈んだな、スレ移行してから4ヶ月の命脈を保ったか……
とか言ってるうちにこのスレも残り100KBに突入したけど、
移行タイミング見直した方がよくね?
>>627
480KBくらいまでは余裕みたいですな。次スレでは修正しておくか。

廃れたか……ここは自分がいろんなスレと交友を持ったりするべきなのだろうか。
いや、実際そんな時間は無いけれど。

保管サイトはGW中になんとか
629新月夜話(1/5):04/04/28 22:52 ID:XdNF5bo+
柔らかな女声のアナウンスが、目的の駅への到着を告げる。
僕は荷物とともに席を立ち、デッキに向かった。
扉の前に立ち、車両が停止するのを待つ。やがて扉が開き、僕の他に数人の乗客が
ホームに降り立った。
 人影も疎らなコンコースを抜け、噴水の設けられた広場を臨む。見上げた夜空に星影は
見えない。今夜は新月のようだ。
「さて…と」
 次の目的地に向かうための夜行バスの切符を確保しておかなければならない。駅前交差点の
左手角のバスターミナルに僕は足を運んだ。
 GW明けの平日ということもあり、ほぼ希望の座席で予約することができた。ひとまずの足と
宿がこれで確保された。

 バスの発車時刻までには、まだ3時間以上の余裕があった。どこかで暇をつぶす必要が
ある。
いつもならば本屋かゲーセンに足が向いているところだが、ふと、この街は海が近く、
駅からそれほど遠くない場所に臨海公園があることを思い出し、そこに行ってみることにした。
 街の人々で賑わう昼間とは、また違った雰囲気の光景が照明に照らし出されている。
イルミネーションをまとった観覧車も遠くに見える。典型的なウォーターフロント、といった
ところだろうか。
「…誰もいないな」
 独り言を呟きつつ無人の広場を歩き続ける。大き目の木立ちにさしかかったその時だった。
「こんばんは」
 抑え目のソプラノを思わせる声が僕の耳に聴こえてきた。
 声のしたほうに顔を向けた瞬間、僕は目を瞠った。上品な印象を与えるスーツに身を包んだ
若い女性がそこに佇んでいた。
630新月夜話(2/5):04/04/28 22:53 ID:XdNF5bo+
 よく見てみると、スーツから上も相当のものである。整った目鼻立ち。後ろで束ねられた
長い黒髪。雅やかな雰囲気を漂わせる瞳。おそらくは上流階級の人間だろう。
「あの、何か用ですか?」
 予期しなかった遭遇に少し驚いたが、とりあえず僕は問いかけてみた。
「車が動かなくなってしまったもので、どなたか人を探していたんですの」
 声と視線には人を欺こうとする意志は感じられない。
「動かない?良ければ僕が見ましょうか?」
「見ていただけるのですか?助かります…どうぞ、こちらですわ」
 その女性に案内され、僕は木立ちの奥へ進んだ。

 林の中にある道の脇に1台のスポーツカーが停められている。どうやらそれが彼女の
愛車のようだ。
 鍵を受け取った僕は運転席のコンソール下のレバーを引き、ボンネットを引き開けた。
各部を調べていくうちに、この車の始動を阻害している要素に辿り着いた。
 僕はひとまずボンネットを閉じ、再び運転席に回った。キーを挿し、始動位置までひねって
みると、すぐにイグニッションが作動した。
「よし、動いた。…プラグヘッドがはずれかけていたんですよ」
「まあ…ありがとうございます」
 あとはひとりで帰れるだろう。そう思って立ち上がりかけた僕の肩に、細い手が伸びてゆく。
「お待ちくださいまし。…まだ、お礼も済んでおりませんわ」
 心なしか、瞳になぜか情欲めいた色が浮かんでいるように見える。
「え?そんな、いいんですよ、お礼なんて……んう!?」
礼という形でのほどこしを断ろうとした僕の頭に女性の両手が回され、おもむろに僕の唇に
 熱を帯びた柔らかな感触が覆い被さってきた。
631新月夜話(3/5):04/04/28 22:55 ID:XdNF5bo+
「んっ……ん…」
「……ふ………うっ……んん……」
唇が深く強く押し付けられる。そして、そこにさらに湿った刺激が加わる。舌が僕の唇を割って
口腔に進入しようとしている。少しの間だけ抗っていたが、歯茎を刺激されて力が弱まって
しまった。
「んんっ………んっ…ふ………はふぅ……っ…ん……」
「くっ……う…んんっ……ふ…」
 さらに深く舌が挿しこまれ、互いの舌が絡み合う。唇にできた隙間からちゅっ、ちゅっという
音が息使いに混じって漏れてゆく。
「…っ……く………はぁ」
 漸く僕の唇は彼女のそれから解放された。疑問符と快感の化合物が頭の中を跳ね回る。
「ん…っ……ど…どうしてこんなことを…?」
 運転席に腰を下ろした僕の上に、彼女の身体が近づいてくる。
「今のわたくしにはこれぐらいしかできませんの。どうぞ、もっとごゆるりとなさってくださいな。
…ほら、こちらのほうはもう、こんなに…」
彼女の手が下に伸び、すでに昂っている僕の股間を捕らえる。その瞬間、そこを中心に
強烈な快感が全身を走りぬけ、僕は動けなくなってしまった。
「くっ…!」
「でも、それはわたくしも同じですわ。…ご覧くださいまし、わたくしの、ここ…」
いつの間にかスカートが下ろされ、ストリングタイプのショーツが見えている。その片方の
紐がゆっくりと解かれ、布地の下から濡れそぼった秘苑が姿を現した。
「あ…」
細い指がスラックスのジッパーを摘み、引きおろしてゆく。
「あなたさまはどうかそのままに…後はわたくしが動きますわ」
 熱を含んだ息使いを伴って、彼女の身体がさらに近づいてきた。
632新月夜話(4/5):04/04/28 22:56 ID:XdNF5bo+
「んっ…」
「…う」
 外気に引き出された僕の陽根に、熱を伴った感触がもたらされる。それがそのまま陽根の
表面をなぞるように上下に動き出した。
「…っ……ん……んっ……ん……んんっ……っ……あっ……は……ああっ…」
 彼女のその動きによって次第にぼくの陽根に愛液がまとわりついてゆく。それを受ける
僕の呼吸も、快楽の波に呑まれてだんだん荒いものに変わっていった。
「…あっ……ん……っく………い……いかが…ですか…?」
吐息のあい間から彼女が訪ねてきた。
 「…気持ち…いい…です。とても…」
 「うれしい…ですわ……今度は…こちらに…くださいな」
  そう言って彼女は身体を起こし、僕の陽根を、秘苑の奥に息づく花弁の、さらにその後ろに
 導いてゆく。
 「くぅっ……っ……あ…はああっ!」
  次の瞬間、体温を伴った強い圧迫感が僕の陽根を包んだ。
「…っ……ん……く…っふ……んっ……ん……あっ……あっ……んあっ…」
  蜜壷ではなく、菊門で受け容れている。それがゆっくりと上下に動く。次第に上昇してゆく
彼女の声のヴォルテージに誘われるように、抑えようのない快感が僕の背筋を突き抜けて
ゆく。
「…くっ…あ……う…ううっ……ぼ…ぼくも……もう…」
熱を帯びた奔流が下腹部に集中してゆくのを感じる。
「…う……あ…ああっ!…わ……わたくしも……イきそう…ですわぁ……どうぞ…んっ…
このまま…あっ…なかに……おだしくさいぃ!」
  締め付けに脈動が加わり、さらに放出を促す。もう限界だった。
「くっ…う………ぐううう………っっ!!」
 熱い精が陽根を駆け抜け、彼女の体内に注ぎ込まれてゆく。
「あっ…あ……んああっ!!………はっ……はあ……はぁ…」
 射精と同時に彼女の花弁からおびただしい量の愛液が噴き出した。
633新月夜話(5/5):04/04/28 22:58 ID:XdNF5bo+
「満足して…いただけましたか?」
シートに身体を横たえた僕の胸の上に彼女の上体がある。それが話しかけてきた。
営みを終えてから10分程過ぎている。
 「ええ、僕は満足できました。…あなたは?」
 「もちろん、わたくしもですわ」
 「それはよかった」
 ふと手元の時計に目をやる。デジタル表示は、バスの発射時刻の15分前を指していた。
 「失礼、身体をのけてもらえますか?」
 「…どうなさったのですか?」
 「夜行バスの発車まで時間がないのです。急がなきゃ」
 「あらあら、それは仕方がございませんわね。…もう少しこうしていたかったのですが…」
 別れ際、彼女と僕は軽く口づけを交わした。そのとき、シャツの胸ポケットの彼女の手の
気配を感じた。

 振り返らずに走り続け、バスターミナルには発車5分前に辿り着いた。急いでコインロッカーの
荷物を取り出し、バスに乗り込んでしばらく経ったとき、胸ポケットの紙片の存在にようやく
気付いた。
 二つ折りのメモ用紙大の紙片をゆっくりと開いてみる。

  今夜はありがとうございました

       [email protected]    紗綾

 ここで僕は始めてあの女性の名を知った。

 この日以来、あの街は僕の旅の密かな定番コースとなっている。
                                             (了)
634 ◆yywMOTOxI6 :04/04/28 23:06 ID:XdNF5bo+
>>629-633 『新月夜話』

…というわけで、CANVAS2より紗綾お姉様です。
一応、前のほうはまだ処女、という設定で話を進めております☆

まあ、今回はエロエロ路線、ということで…(汗
この後すぐに例の宿題にとりかかる必要がありますね。

これからC2のインストです。それでは。

※訂正(5/5)

 誤:ここで僕は始めて

 正:ここで僕は初めて
635名無しさん@初回限定:04/04/30 15:00 ID:Rxb5OAeF
グレ修正来た
636名無しさん@初回限定:04/05/01 09:22 ID:M/klQwD7
>>635
JMスレの誤爆か?
保管サイト久々の更新〜
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/
更新内容は以下の通りです。

連載
はじめてのおつかい・ラキオス編 (永遠のアセリア/名も無き名無し)

完結
新月夜話(CANVAS2/◆yywMOTOxI6)
嘘予告「Another Possibility」
嘘予告「Blood on the Edge」
世界で、ひとつ(沙耶の唄/へたれSS書き)
冬休みの憂鬱(SHUFFLE!/風変わり)
CROSS × OVER(CROSS†CHANNEL/昼休み中の黒いトト(便器))
無聊の夜(アトラク=ナクア/ボブ・サップの中の人)
てんきあめ(斬魔大聖デモンベイン/今更な名無し)
沙耶エンド後(沙耶の唄/)
なんとなく、アモルファス(いたいけな彼女/空ラ塗布)
血飛沫の舞う空で(永遠のアセリア /風変わり)
interlude 11-0(Fate/stay night/)


しかし、リアライズをやるや否や、そそくさと邦博SSを書き出す高彦信者の漏れ。
……はい、葉鍵板に帰ります orz
638名無しさん@初回限定:04/05/03 17:46 ID:hmVtlFSH
>>637
乙です。

誰か蒼色輪廻の馬鹿テキスト(褒め言葉)をSSで再現キボン。
639名無しさん@初回限定:04/05/03 19:35 ID:apkknEdg
>637

ところで、リアライズならココでいいんじゃないのか?と思う俺はまだケツが青いのか
640名も無き名無し:04/05/03 19:53 ID:7LKn5GQy
>>637
更新乙です。

ところで、「はじめてのおつかい〜」ですけど、こちらでの連載は取りやめましたし、
さらに雑魚スピスレも出来たことなので、完成した暁にはそちらで扱ってもらった
方が適切と思われますので、保管庫での掲載を取りやめてもらっても構わないでしょうか?
勝手な言いぐさだとは思いますが、上記の件ご一考下されば幸いです。
641nayukifan:04/05/04 13:01 ID:ygOvAffy
「初pon」
(初恋 小桃エンド後)
642nayukifan:04/05/04 13:02 ID:ygOvAffy
「初島先生、じゃあ行きましょうか?」
「ええ、そろそろ時間ですし、行きましょうか」
 心にもない敬語をお互いに使う俺と西村。
「お先に失礼します」
 同僚の先生達に挨拶をして、俺たちは職員室を出た。

 部活をしている生徒がまばらにみえる校庭を、俺たちは昔話をしながら校庭を横切る。
「久しぶりよねえ、杏と会うのも」
「うん、俺もだよ」
 母親と共に杏が日本に戻ってきた。まあ仕事の都合とかで、帰ってきただけで
一時的なものなんだけど。

 ……あ、校門の前にいるのは、小桃だ。
「!?」
「せんせい〜」
 俺に気づいた小桃がパタパタと走ってくる……門の前に居れば、こちらから近づくって
いうのに。
「ハアハア……ハァ」
 ……全力疾走に必然性はあるのか?
 荒い息をようやく整えた小桃は俺の顔をみてにこっと笑う。
 可愛いぞ、おい。

 いや、まあ……小桃が小桃「先輩」の生まれ変わりってことを杏に言うつもりはない
けど。杏には会わせてあげたいし。そう思って、今日俺は、西村と小桃を実家に誘った
わけだ。
「大丈夫、桜井さん?」
「うん、大丈夫だよ、西村先生」
「そう……。あんまりいたいけだと、変態が喜んじゃうから注意してね」
「はあ?」小桃がきょとんと首を傾げる。
 ……非公式の場だと、俺酷い言われ様だな、相変わらず。
「じゃあ、行こうか。桜井さん」西村が小桃の手を取り言った。
「は〜い!」
643「初pon」2:04/05/04 13:03 ID:ygOvAffy
「ふんふんふ〜んふふんふ〜ん♪」
 西村と手を繋ぎ、俺の前を歩く小桃。鼻歌まじりで上機嫌。
「何か、いいことあったのかな、桜井さん?」西村が尋ねる。
「うんっ!」そう言って、小桃は俺の方をいたずらぽく見る。
「え、何々? 教えて?」
「うふふ……」
 西村が聞くと、小桃はうれしさをこらえるように俯いた。
「あー……、俺も知りたいなあ……。桜井さん」
「えへへ、やっぱり?」
「うん」「うん」俺と西村は同時に頷いた。

「じゃあ……教えてあげるっ!」にこっと微笑む小桃。
 ……なんだかんだといっても、やっぱり子供なんだよなあ。
 俺と西村は顔を見合わせて、くすりと笑った。

「あのね、先生……」
 小桃が、もじもじと俺に話し掛ける。
「うん。おめでたい話なんだよ」
「おお、そうか。どんな」
「だから、おめでたいことなの」
「ふんふん、それで」
「だ〜か〜ら〜、おめでたなの?」
「何が?」
「おめでた、なの」
 ………………わからない。
「誰に?」
「桃に」
「どんなことが?」
「おめでたなことが」
644「初pon」3:04/05/04 13:04 ID:ygOvAffy
 うーん、話が進まない。設問と答え形式で聞いてみる。
「どのような、因果関係によって小桃にそのおめでたなことが生じたのか30字以内で答えなさい」
「え、あの……その……」考え込んでから小桃が答えた。
「稔先生がいっぱい愛してくれたので、小桃におめでたが生じました。」
「いち、に、さん、し……三十一。ぶーっ、句点を入れて31文字だから、桜井君、不正解」
「えーっ!! 先生厳しいよぅ〜」そう言って俺の胸をぽかぽかと叩く……痛くないけど。
「だめです、マルはあげられません」偉そうな俺。
 西村だけが一人、こめかみをもんでいた。

 そして、西村が口を開いた
「あー……、桜井さん?」
「はい」
「赤ちゃん、できたんだ?」
「はいっ! ……うふふっ」そう言って小桃が笑う。
「あははっ」小桃の笑顔につられて、俺も笑う。
「あはははははははははは」西村は腹を抱えて笑って、それから。

「ていっ」俺を地べたに蹴り倒した。
「このバカ稔ーっ!! こいつっ、こいつめっ!!」
 倒れてる俺に追い討ちを掛けて蹴りの連続。
「痛っ……あうっ……げふぅ……」
「ぜいッ……ぜい……。あんた何したかわかってるの? ええっ?」
「……今、よーく分かりました」地を這ったまま、俺は呟いた。
645名無しさん@初回限定:04/05/04 13:08 ID:ygOvAffy
>>642-644
『初pon』
646CloverHert'sifSS:04/05/08 19:15 ID:WoLKHWJ2
このSSはCloverHert'sのif物です
白兎と夷月の仲が本編より何年か早く修繕した場合のお話
 南雲家の朝は……早すぎもせず遅すぎることもない。
「おはよう、夷月」
「おう。おはよ」
 眠たげな顔に、ボサボサの髪で白兎が下りてきた。
 夷月はというと既に身支度を終え、新聞を広げている。
「とっとと朝飯食え」
「うん」
 夷月が先に起きているのは、今日が朝食当番だからである。
 ちなみに白兎を急かすのは、当番は後片付けまでも含んでいるためである。
 ノンビリされると、それだけ後片付けが遅くなる。
「朝ごはんは……まあ、わかってはいたけど……」
 チラッとテーブルを見て、何とも切なげな顔になる。
「うるせえなぁ。文句があるなら食うな」
 所謂、シリアルなフレークと牛乳が無造作に置かれているだけなわけで。
 白兎は深い深い溜息をついた。
「たまにはちゃんとした朝ごはんが食べたい……」
 それに対する夷月の返事。
「自分が出来ない事を人に勧めるものじゃないな」
「う……」
 白兎とて真っ当な料理なんぞ作れないのである。
「無駄話してないで、とっとと済ませてくれ。
 それとも片付けはお前がしてくれるのか?」
「ああ、分かった分かったって」
 白兎が慌てて洗面所に向かう。
 やれやれ、と夷月がインスタントコーヒーを啜った。
 白兎が身支度から朝食までを終え、夷月が後片付けを終えるまで二十分と少し。
 時計を見れば家を出るのにちょうどいい時間。
「行くか」
「そうだね」
 白兎が少しだけ未練そうに読みかけの新聞を見つめたが、夷月とともに席を立った。
 玄関にはすでに、執事のロベルトが控えていた。
「では坊ちゃま方、いってらっしゃいませ。
 ……ところで、例のお話の件ですが」
「分かってるよ」
「……ああ、約束の時間には戻る」
 そう言って、二人が家を出た。
 冬の日差し、そして刺す様な冷たい空気。
 夷月が寒そうに顔を顰めた。
「走るか? 白兎」
「え? ……え、ちょっと!?」
 白兎の答えも聞かず、夷月は走りだした。
「もう、夷月ってば」
 苦笑しつつ、白兎も走りだす。
 走るといってもジョギング程度の速さ。
 大体、夷月が全力で走ったら白兎なんぞ置いてけぼりである。
 息を弾ませながら並んで走る二人。
「……今日、来るんだよね」
「そうだな」
「どうしよう……やっぱ歓迎の準備とかした方がいいのかな?」
「ロベルトは普通で良いっていってたぞ」
「で、でもさあ、女の子が来るんだから……」
「ふうん……良い格好見せてモノにしたい、と……」
「夷月っ!!」
 白兎が顔を真っ赤にして怒った。
 夷月がニマニマと笑っている。
「そんなんじゃないってばっ!
 大体僕は本当の事言うと反対なんだからねっ!!
 そもそも、同い年の女の子と一緒にくらすだなんて……」
 言いながら、あらぬ妄想でも浮かんできたのか白兎の顔が真っ赤になっていく。
「んな、赤い顔で言っても説得力ねえよ」
 よっぽどそう言ってやりたかった。
 だが、口をついて出てきた言葉は
「そうだな。家にはむっつりすけべぇがいるから、危なっかしくて仕方ないな」
 よりひどいモノだった。
「い、夷月ぃっ!!」
「おや? オレはお前のことだなんて一言も言ってないが?」
「う……うわあああああああああああああああああんっっ!!」
 白兎が涙目で腕を振り回す。それを片手でヒョイヒョイとあしらう夷月。
 ジョギングしながらそんな事をしているのだから二人とも器用なもんである。


 先週のことである。
 夕食を終え、二人がリビングでくつろいでいると、ロベルトが真面目な顔で言った。
「坊ちゃま方にお話があります」
 と。
 南雲家で女の子を預かる、と。
「え、えっとぉ……幾らなんでもそれはマズイんじゃ……?」
 血縁でも何でもない、その上年の変わらぬ女の子と同居というのは……
 と、白兎が常識論を口にした。
 ただ、表情が言葉を思いっきり裏切ってはいたが……。
「これはすでに、決定したことでありますので」
 こうなると、ロベルトは頑固である。
「……」
 夷月は沈黙している。
 ロベルトの様子で、変更はすでに不可能と悟ったからだろう。
 一通り話を聞いてから、真面目な口調で言った。
「ロベルト、一つ良いか?」
「なんでございましょう?」
 夷月は、重々しげに問いた。
「……美人か?」
「美人でございます」
 即答だった。
「夷月っ、それにロベルトも!」
 呆れと怒りが半々の白兎。
「何だよ。白兎はブスの方が良いのか?」
「それは嫌だけど……ってそうじゃなくって。
 今はそういう話をしてるんじゃないだろっ!」
 夷月は肩を竦めた。
「諦めたほうが良いみたいだぞ、白兎。
 まあ、未来永劫ここで暮すと決まったわけじゃないし、
 どうしても気に食わなければアパートなり世話して移ってもらえば良いじゃねえか」
「……夷月様」
 言いかけるロベルトに
「それぐらい言う権利はオレ達にだってあるぞ。……まあ、その判断は白兎に任すけど」
「僕がっ!?」
「当たり前だ、南雲家家長。
 ……まあ、オレとしては相手が美人で、あと家事能力も完備してくれてたら無問題だが」


 と、そんな事があった。
 結局のところ拒否権は無いわけであった。
 そういう次第なものだから『もう、なるようになれ』というのが白兎と夷月の結論だった。
「「はあ……」」
 同時に溜息をついた。
 今は、身体も程よく暖まったので歩いている。
「……気だるい吐息ね、お二人さん♪」

 途端、白兎の顔が引きつり、夷月が心底嫌ぁ〜な顔をした。
 キラ〜ンという効果音が何処からともなく聞こえ、腐れ縁の飛鳥凛が現れた。
「おはよう、白兎君に夷月君」
「おはよう、凛ちゃん」
「うっす」
 凛の、何とも言えぬイヤラシイ舐めるような視線。
 どうやらセクハラモード全開のスイッチが入ったっぽい。
「うふふ……二人とも、とうとう一線越えた?」
「おい!」
「越えるって何をさ!!」
 凛の瞳が爛々と輝いている。
「こんな朝も早いうちから、二人して頬を火照らせて、息なんてハアハアしちゃって……
 よっぽど昨夜はお楽しみだったのね。
 で、で? 攻守はどっち? お姉さんに話してみ♪」
 ものすごく嬉しそうである。
 何となく冗談だけではない成分が含まれてるよーな気がしてならないくらい。
「白兎……前から思ってたんだが……コイツ、一遍殺そうぜ。
 絶対一度、完全消去したほうが良いって」
 夷月、かなり本気が入っている。
 白兎はというと、疲れた口調で言った。
「ダメだよ、ダメだよ夷月。
 絶対枕元に立たれるよ。
 毎夜毎夜、エゲツナイ祟りをしてくるよ、凛ちゃんのことだから……」
「うあぁ……」
 その様を想像したのか、夷月は頭を抱えた。
「……二人とも、言うようになったわね。お姉さん嬉しいわ〜」
 きら〜ん、と挑戦的に笑う凛。
 そして
「ま、朝のお茶目なスキンシップはこの程度にして」
「「……」」
 どこらへんがお茶目なのか突っ込みたかった。
 まあ、凛にそんな二人の心の声が届くわけもなく
「女の子と一緒に暮らすってどういうこと? 詳し〜く教えて♪」
「……凛ちゃん、どこら辺から聞いてたの?」
「え? 二人の回想シーンのところからよ」
「妖怪サトリか、お前はっ」


「おい、お前ら。女の子と同棲するって本当か?」
 席で読書をしていた夷月が、『やっぱり来やがった』という顔をした。
 朝に絡んできた飛鳥凛と同じ腐れ縁、葉山雄基である。
「おはよう雄基。やっぱり凛ちゃんに聞いたんだね」
 ため息混じりに応対する白兎。
 HRの始まらない時刻、教室に入って二人の姿を認めるや
 挨拶もそこそこにこんな台詞を吐かれたのではため息も出る。
「こんな羨ましい話を黙ってるなんて、ったく水臭えなぁ」
「オレも白兎も、ちょっと前に聞かされたばかりだよ」
 本に視線を向けたまま、夷月が言った。
「そ、本当ロベルトって突然なんだから……」
 白兎が、苦笑いを浮かべている。
「そうでもしねえと、拒絶されるって思ったんじゃねえの?
 ロベルトのおっちゃんのことだし。
 ……ところでさ、その女の子って美人?」
「し、知らないよ。写真も何も無いんだから……」
「ロベルトの言を信じるなら美人だ」
「……」
 雄基、しばしの沈黙の後、窓を開けて
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」
 吠えた。
 つくづく馬鹿である。
 白兎と夷月と合わせて馬鹿トリオ(命名者、凛)と言われるだけある。
 当人たちはそう呼ばれることを力一杯否定してるが。
「お、おおお、お前らぁっ! この歳でもう人生の勝ち組たぁどういう料簡だっ! この裏切り者ぉ!!」
 南雲兄弟、もう言われ放題である。
「お、落ち着いてよ、ロベルトがそう言ってるだけで……」
「いいや、ロベルトのおっちゃんが言うからには間違いねえ!
 お前らなんて呪ってやるううううううううううううううっっ!!」
 やれやれと夷月が本を閉じて、吠える雄基に応じた。
「そうだな、本当にすげえ美人だったらお前の耳元で高笑いして自慢してやるよ」
「夷月!」
 何だってこう、火に油をドバドバ注ぐような事をいうのだろうか。
 暴れる雄基を抑えながら、そんな事を思う白兎。
「白兎ぉっ! お前、もっと、ちゃんと、こいつを躾けろ!」
「あ、あははは……」
「ふん」
 この三人、いつもこんなノリである。
 夷月と雄基がポンポン言い合いをして、白兎がその間でオロオロして
 でも決して仲が悪くなる事は無い、そんな三人だった。
 ……………………………
「ったくよぉ。この分なら心配はいらねえか」
 しばしのじゃれ合い(?)から一転、雄基の口調がふっと真面目なものになる。
「……心配、してくれたんだ」
「まな。俺だっていきなり、今日から知らねえ奴と一緒に暮らせ、
 なんて言われたらブルーっていうか不安入るわ。
 相手の女の子もそうなんじゃね?」
 雄基の何気ない一言にはっとなった。
「……そっか、そうだね。相手だって不安なんだよね」
 こういう時、自分はまだまだ未熟だと思い知らされる。
「お前の方はどうなんだよ、大丈夫なのか? 夷月?」
 雄基は夷月に話しかけた。
「別に。顔も何も知らない相手に不安になったってしょうがない。
 来て見て、それから考えればいい」
「……お前らしいわ」
 夷月はクールというか現実的だった。


 放課後。
「夷月、それじゃあ帰ろっか」
「悪い、白兎。ちと人と会う約束がある。先、帰っててくれ」
「え〜」
 白兎の顔が不安げに揺れた。
「ホント、悪い。先方が今日じゃないと都合つかないって言うもんだから。
 約束の時間には必ず家に着くから」
「ちょ、ちょっと夷月」
「用事はすぐ済むから。じゃな」
 白兎の返事も聞かず、ものすごい勢いで夷月は教室を飛び出していった。
「……はあ」
 白兎が溜息をついた。
「……時々あいつ、鉄砲玉みたいなとこあるよな」
 いつの間にか雄基が隣にいた。
「あの勢いは見習いたいって時々思う……」
 そういう白兎の目は、どこか優しげだった。
「夷月の奴、用事があるってことだし、どうだ、ゲーセンでもよってかね?」
「えっと……そこまで時間に余裕があるわけじゃ……」
「まあまあ、一戦だけだって」
「わ、たっ、ちょっと雄基っ……」
 そうして、強引に白兎は引きずられていった。
 夷月の向かった先。学園の裏門の脇。
 あまり人通りの無いそこに、目的の人物がいた。
「よ」
 かなりの美形である。
「来たか、南雲夷月」
 ただし、男だが。
 夷月が挨拶も無く、いきなり用件を切り出す。
「つーわけで、早く約束のブツよこせ、賢治」
「……」
 不機嫌そうだった男の顔がさらに不機嫌なものになった。
「貴様……年長者に対する言葉遣いというものを……」
 付属校生徒である夷月に対し、目の前の男は本校の制服である。
 要するに、同じ学園の先輩に夷月は平然とタメ口をしてるのである。
 夷月は臆した風も無くニヤリと意地悪げに笑った。
「守るさ、年長者に相応しい相手に対してはちゃんと……」
「ぐっ」
 男が言葉を詰まらせた。


 この男の名は榊賢治。
 この二人の奇妙な関係のそもそもの原因は、出会った経緯にある。


 その日
「うっわ、ヤバ」
 夷月がゲーセンを出ると、結構な時間だった。
「白兎の説教かな、こりゃ」
 夷月の肩が落ちた。
 今日はつくづくついてない。
 ゲーセンでとんでもなく強いゲーマーにかち合い、つい意地になって挑戦し続けた。
 で、結果は惨澹たるもの。
 こづかいの大半はパア。
 その上時間も、良い子ならば決して出歩かない時間。
(今日の夕食当番、オレなんだよな〜……)
 白兎のことだから自分が帰るまで律儀に待つか、それとも代わりに用意してくれているか……。
「はあ……」
 溜息をつきつつ、足取りも重く歩き出し……
「……」
 立ち止まった。
 何度か身に覚えのある物音が聞こえた。
「……」
 チラッと路地を覗き見ると案の定、複数の人間に取り囲まれてる何者か。
 カツアゲというやつだった。
「……」
 いつもなら相手にしないのだが、その日は違った。
 散々な目にあって機嫌が悪かったのかもしれない。
『人助けをしてた』という口実を作って白兎の説教をかわす
 という下心もちょっとあったのかもしれない。
 気付いたら
「おい、お前ら」
 声を掛けていた。
 ……………………………
 結論を述べると、夷月の圧勝だった。
 三分もかけずにチンピラ達を追い散らすと、蹲って呻いている男に声をかけた。
「だいじょぶか、おい」
「……」
 そのヘタレが、この榊賢治だった……。


 出会い方がそんなものだったから、夷月は全然恐れ入らない。
 不機嫌そうにチッと賢治は舌打ちすると、鞄から紙袋を取り出した。
「ほらよ」
「ども」
 夷月のいつものクールな顔が、年相応の『悪ガキ』な顔になっていた。
 中身はまあ……男なら誰もが一度は目を通すメディア、と言えばお分かりだろう。
 いそいそと鞄にブツをしまう夷月に、賢治が腹立たしげに言った。
「危うく姉さんに見つかるところだったんだからなっ! もし見つかっていたら何て言えば……」
「それはそれは……」
 面白いことになってただろうなぁ、とは流石に言わなかった。
「こんなろくでもねえ物を頼みやがって」
「良いじゃねえか。友達の頼み、なんだから」
 夷月がニヤニヤ笑い
「けっ!」
 賢治が吐き捨てた。
 言うまでも無いが、二人とも互いにお友達だとはこれっぽっちも思っちゃいない。
 利用し合う相手、としか認識していない。
 あの日以来奇妙に縁があり、何かあった時力を貸しあう関係になっているのである。
 このブツも、賢治の依頼に応えた報酬である。
 依頼と言うのは

『友達のフリをしてくれ』

 だった。
「はあ?」
 夷月は耳を疑った、というか引いた。
 賢治が苦しげな表情をして言った。
「姉さんが……その、な……」
 友達はいないわ、女遊びは激しいわ、の賢治を滅茶苦茶心配してる、と言うのである。
 で、せめて友達はいることにしたい、と。
「お前が真っ当に生きればすむことじゃねえか。
 ……つか、友達いねえのかよ」
 夷月の返事は至極当然のものだった。……夷月も友達少ないほうだが。
 結局、賢治が物凄い気迫で頼み込むものだから、頷かざるを得なかった。
 で、ついこの間、榊家に夷月はお邪魔した。
 賢治の姉、円華はどエライ美人だった。
 その上、賢治と血が繋がってるとは思えないほど人の良い少女だった。
 それはともかく、その報酬として賢治のツテを利用してのエロメディア、なわけである。
 別に雄基に頼むと言う手もあるのだが、そっちは白兎が使っている。
 雄基の事だから頼めば都合してくれるだろうが……
 兄弟そろって同じ男にエロ本を頼む、というのは凄く嫌なものがあった……。
「んじゃ、毎度」
「もう、こんなモノの調達は二度とごめんだからな」
 女遊びがヒドイ、というわりに変な奴である。
 それとも、姉に見つかりそうになったのが気になってるのだろうか?
「じゃあな、シスコン重症者」
「消えろ、女顔」
 ろくでもない挨拶を交わし、二人は別れた。


 急いでいた夷月がチラッと時計を見た。
 約束の時間に十分間に合う。だから歩くことにした。
「やれやれ」
 鞄を軽く揺さぶった。
 これから女の子との待ち合わせ(?)を前にしてエロ本を手にする。
 はっきり言って良い気分ではない。
 本当を言うならばもう少し先延ばししたかったのだが……。
「あの野郎……」
 賢治がすぐ取りに来い、と強行に主張したのである

『今日中に来ないと、焼却炉にコレをぶちこむぞ、ゴルァッ!!』

 とまで言われたのでは行かざるを得ない。
 あの男、姉に見つかることをそれほど恐れているようだった。
「そんなにお姉ちゃんの前では良い弟でいたいのかねぇ……」
 呟いてから夷月が顔を少ししかめた。何となく自分と重なるものを感じてしまったのだ。
 ただ……あの男、賢治の場合、それだけではない何やら病的なモノも感じるのだが……。
 と、考え事をしていたせいだろうか。
「あ……」
 すぐ近くで、そんな柔らかな声がして、そして衝撃がきた。
「うおっ!?」
 そのまま、縺れるように倒れてしまう。
 どうやら人にぶつかり、そのまま一緒に倒れてしまった、そう気付くのに三十秒ほどかかった。
「てて……おい」
 夷月が不機嫌そうに、自分を押し倒したままである人物に顔を向けると、
「……」
 美人だった。いや、まだ幼い風貌からすると美少女、というべきか。
 異国人なのか、青いリボンで二つに分けられた金髪が、夕陽を受けて輝いている。
 少女はキョトンとした表情で夷月を見下ろしている。
「どいてくれ」
「ぁ……」
 言っても、一向に少女は動く気配が無い。
 言葉が通じないのか? そう思いつつ、夷月は何気なく視線を下げた。
「……げっ!?」
 自分の手が、思いっきり少女の胸を掴んでいた。
 道理でさっきから、妙な感触を感じていたわけである。
 フニョッと今まで触れたことのない、何ともいえぬ極上な感触……
「って、違う違うっ! これじゃ、変態痴漢野郎じゃねえかっ!!」
 思わず夷月はそう叫んでしまい、
「……ん?」
 その言葉と夷月の視線に、少女も視線を下げて……
「……え」
「あ、ああ、その……」
 少女の顔が見る見ると涙目に歪み
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!」
「違うっ、落ち着けっ!!」
 弁解しようとした夷月の背後から
「莉織に何するかああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!」
「なぅぁっ!?」
 別の声が聞こえたかと思うと、夷月の後頭部に衝撃が走り、そのまま気を失ってしまった……。
661名無しさん@初回限定:04/05/08 19:39 ID:WoLKHWJ2
とりあえず前半部分はこれで終了
続きは明日っす
 ……………………………………
「……あれ?」
 目が覚めたら、そこは自室であった。
「……夢遊病のケなんて、あったっけ?」
 妙に頭がズキズキする。
 軽く首を振って身体を起こすと、机の上に書置きがあるのを見つけた。

『リビングでお待ちしております』

 ロベルトからだった。
「やれやれ」
 まだ痛む後頭部を擦りながら、夷月は部屋を出た。
 夷月がリビングの前に立つと
「……ん?」
 中からは、聞いた覚えの無い複数の女性の声。
 ちなみに、先に帰っているはずの白兎の声は聞こえない。
「預かるのは一人じゃなかったのか?」
 夷月はそっとドアを開けた。

「「……あ」」

 中には見知った人と、見知らぬ人達。
 見知った人というのは当然
「お目覚めですか、夷月様」
 執事のロベルト。
 見知らぬ人達は三人。
「……」(にこ♪)
 一人はメイド服を着た女性だった。
 このご時世にそんな物を着るのがいるのもかなりの驚きなのだが
 あとの二人。
「……あの、先程はすみません」
「……さっきはごめんね」

 双子だった。
 その上着ているものから髪型までそっくりという、同じ人間が二人いるとしか思えない。
 区別がつくのは、髪を結んでいるリボンの色が青と赤で違う、それだけだった。
「……」
 部屋を見渡したが、やはり白兎の姿は無かった。
 とりあえず客を無視して、夷月はロベルトに訊いた。
「白兎は?」
「まだ帰られてはおりませんが……ご一緒ではなかったのですか?」
「ちと野暮用があったんで別行動をしたんだが……」
 夷月は三人の客人たちを見つめ、渋い顔になった。

 夷月は人見知りが少し強いのである。
 初対面の人とはまず、円滑なコミュニケーションが取れない。
 で、どうすれば良いか分からず不機嫌そうな顔で黙り込んでしまうため、
 他人から誤解されやすいのである。
 こういう時、人当たりの良い白兎や雄基、凛がフォローしてくれるのだが、
 その彼らがいないと、夷月はまったくの役立たずである。

「……」
 不機嫌そうに(実は途方に暮れて)ソファーに座る夷月。
 部屋の空気がちょっと重くなった気がする。
 ジロリ、と視線を向けると、少女たちがビクリと身体を震わせた。

「……どうも、初めまして」

「「……え?」」
 少女たちが目を丸くした。
「……な、何だよ」
「あ、あの、えっと……さっき……」
 青いリボンの方が何か言いかけ……
「さっき? そういやお前らさっきから何か言いかけてたが……何だ?」
「そ、それは〜……」
 夷月、本気で先程の加害者達の顔を覚えていないらしい。
 強く殴られたショックで記憶が一部、吹っ飛んだっぽい。
「ううんっ、何でもないよ〜。こちらこそ初めまして♪」
 赤いリボンの方がニコヤカに言い切った。
「ちょっ、玲亜!?」
 何やら二人が揉めはじめた。
 覚えてないみたいだしだの、そういう問題では……だの、何やら不穏当な発言が聞こえてくる。
「……おい?」
 夷月が怪訝な表情で二人に問いかけようと思ったその時

 ドアベルが鳴った。

「おや?」
 ロベルトが対応し、それが白兎だとすぐに分かった。
「白兎君、帰ってきたんだっ! 久遠、行こっ♪」
「かしこまりました」
「ちょっと玲亜っ。話はまだ……」
 あっという間も無く、赤いリボン、玲亜というのが玄関へと走り去っていった。
 その後を、先程から静かに控えていたメイドがついて行く。
「……」
「……」
 部屋には夷月と少女と、ロベルトが残された。
 何とはなしに気まずい雰囲気。はっきり言って間が持たない。
「あの……」
 少女がおずおずと話しかけてきた。
「自己紹介とかなら、全員そろってからまとめてやる。
 その方が面倒で無くていい」
 そう言って夷月は目を閉じてしまった。
「あ……」
 何となく少女がシュンとしたように見える。
 と、夷月が目を開けて、まじまじと少女を見つめだした。
「……初対面、だよな?」
「……え?」
「他で会ったこと、無いよな?」
 夷月はどうも引っかかるものがあるらしく、訝しげに少女を見ている。
「……」
 少女の背に、冷や汗が流れた。
「ナイデスヨ」
 思わずこういってしまった。
「……そうだよな、そのはずだよな……」
 釈然としないものの、夷月は納得した。


 ―――――神様、ごめんなさい。私は嘘つきです―――――


「何か言ったか?」
「いえっ」
 そんな漫才空間になっているリビングの外から、賑やかな一団の声が聞こえてきた。
「やっと来たか……」
 夷月が呟いた。内心、相当にホッとしている。
 そして合わせ鏡のように瓜二つの兄、白兎と例の二人がリビングに入ってきた。
「ただいまっ!」
 挨拶もそこそこに、部屋に入った白兎は真っ先に夷月に向かい
「夷月、ごめんっ!!」
 手を合わせて謝った。
「……何で用事のあったオレより遅くなるんだよ」
 睨みつける夷月。
 ちなみに、この怒りは相当に心細かったことの裏返しである。
 白兎はそれが分かるものだから
「ああ〜、ごめん。本当ごめんっ! 必ずお詫びするから……」
「……ふん」
 夷月はそっぽを向いた。
 というか、客人たちの前で恥ずかしいことこの上ない。
 メイドが何やらニヤニヤしながら見てるし、双子少女達は興味深げに見てるし……。
「もう、いいから座れ。……恥ずかしいじゃねえか」
「あ、うん……あれ?」
 やっと、白兎は夷月の前に座る青いリボンの少女に気付いた。
「あれ? あれ……?」
 で、自分の隣にいる玲亜を見た。
 交互に少女達を見つめ
「え? えええええっっ!?!?」
 実に白兎らしい反応であった。


 そして、とりあえず自己紹介。
「えっと……改めて初めまして。南雲白兎です。で、こっちが……」
 肘で夷月を突っついた。
「ん、ああ。南雲夷月」
 夷月は本当に素っ気無い。
「こっちも改めて、あたしは御子柴玲亜。二人ともヨロシクね♪」
 で、玲亜の後を受けて青いリボンの少女が
「玲亜の姉で、莉織と申します」
 かたや明るく朗らかに、かたや柔らかな微笑みを浮かべて。
 顔立ちは瓜二つなのに、中身はかなり違う少女達だった。
 それから歓談というか雑談になったのだが、
 白兎とて初対面の女の子と楽しくお話できるほど器用ではない。
 器用ではないのだが、夷月がそれ以上にダメダメなのだから白兎がやるしかないのである。
 で、お互いに一卵性双生児なのだとか、御子柴姉妹はハーフでロシアから来日したのだとか、
 そんな他愛も無い事を話していると
「……」
 夷月がすーっと席をはずした。
 白兎はチラッと見ただけで別に何も言わなかった。
 夷月がリビングを出ると、その後を音も立てずに、メイドも出ていった。


 数歩歩いて、夷月は振り返った。
「……別に、トイレに行くだけだが……」
「ええ、分かってますよ」
 だから白兎は何も言わなかったのである。
 で、メイドは表情の読みづらい笑顔を浮かべたままである。
 なぜだか気圧されるものを感じる夷月。
「……な、何か用か?」
「夷月さんにはまだ、自己紹介してませんでしたから」
「……」
「本日付けで、この家に配属されました乃木坂久遠、と申します。
 食事を含む、この家の家事全般はこれより私の担当となりますので」
「……そっか」
 夷月の顔に喜びと安堵が混じったものが浮かぶ。
「そっか……それはすごく助かる。よろしく頼む」
 これで白兎と交代で家事をやる必要が無くなるのだ。
 嬉しくないわけが無い。
 何せ二人とも、どういうわけか家事能力だけは低いものだから……。
「ええ、こちらこそ」
 にっこりと久遠が笑った。
「それだけか?」
「ええ」
「じゃ」
 夷月が歩きだすと
「夷月さん」
「ん」
 振り返ると、久遠がニヤリとからかうような笑みを浮かべている。
「意外と、恥ずかしがりやなんですね」
 人見知りの事を言ってるらしい。
「……うるせえよ」
 夷月が睨んだ。顔が少し赤い。
 クスリと久遠が危険な笑みを浮かべた。
「……弄りがいがありそう……」
「……」
 ゾクリと背筋に冷たいものが走った。
「冗談よ、冗談♪」
 そういうと、流れるような歩みで音も立てずに、久遠はリビングに戻っていった。
「……」
 暫くして、夷月は一言。
「何者だよ、アイツ」


 一方リビング。
 夷月が静かに出て行くのを
「あの……」
 莉織が躊躇いがちに訊いた。
「夷月ならたぶんトイレだよ」
 白兎は何でもない口調で言った。
「はあ……」
 自分達が気に入らなくて出て行ったのではないか、と莉織は思ったようだ。
 先程からほとんど喋らず、機嫌悪そうだった夷月の態度を見てれば、そう思ったとしても無理は無い。
「う〜……何だか白兎と夷月って性格が全然違うね」
 玲亜が不満気に言う。
「玲亜」
 莉織が窘めるのだが
「……」
 白兎は苦笑している。
 どう考えてもその点はお互い様だと思うのだが。
「何だか夷月って……その、感じ悪い……」
「こらっ、玲亜!!」
 流石に莉織が、妹の非礼を叱りつけた。
「だ、だってぇ〜」
 玲亜が泣きそうな顔をしている。
 白兎が苦笑混じりに言った。
「夷月は、いい奴だよ。
 ただちょっと人見知りが強くて
 初対面の人には大体いつもあんな感じになっちゃうんだけど……。
 それで嫌な気分になったならごめん」
 白兎が頭を下げた。
「いえ、そんな」
「は、白兎が謝る事じゃないよっ」
「うん、まあ……でも夷月は本当にいい奴だから。
 慣れてくれば普通に接してくれるはずだから、
 だからその……気長に見てくれると助かるんだけど……」
 そう言って頭を下げる白兎を玲亜と莉織はじっと見つめ、
「うん、分かった。白兎がそういうなら信じる」
「良いお兄さんなんですね、白兎さん」
 莉織が目を細めて微笑んだ。
「そう、かな? ダメなアニキだよ、僕は」
 白兎が照れくさそうにしている。
「夷月は僕と違ってすごく器用だし、そんな夷月にいつも助けてもらってばっかで……。
 あいつがいないと僕は何にもできないんじゃないかな。この間だって……」
 白兎は物凄く喜々として夷月の事を話し出したのだが、急に口をつぐんだ。
「「……?」」
 玲亜と莉織が不審に思う間もなく、
「……」
 夷月が出たときと同じように、すーっと入ってきた。
「「……」」
 顔を見合す少女達。
 夷月の足音、というか気配を全然感じなかった……。

 からである。
「……なぁ」
「なに?」
 ソファーに座るなり、夷月が初めて自分から口を開いた。
「……何の話をしてたんだ?」
「ん? 世間話だよ」
 平然と答える白兎。
 夷月は疑わしげに訊いた。
「……オレの名が聞こえた気がしたんだが?」
「空耳だよ」
 涼しい顔で答える白兎。
 玲亜と莉織が何か言いかけたのだが、
 先程からずっと黙って控えているロベルトが目顔で制するので、結局何もいわなかった。

 後になって、
 夷月は、白兎の手放しで弟自慢をする兄バカっぷりにすごく閉口しているのだ
 という事をロベルトから聞かされることになる。
「ですから、夷月様の前ではそういう話はなさらないのですよ」
「……でもそれって……あまり意味が無いんじゃ……」
 他所で弟自慢を散々してたら嫌でも当人の耳に入ると思うのだが……
「まったくですな」
 何て、ロベルトは言ったものである。

 それはともかく、
「ふーん」
 夷月はそれ以上訊くことはしなかった。
「はいはい、皆さん。そろそろ夕ご飯ができますよ」
 何時の間にやら久遠がキッチンにいた。
「あれ、もうそんな時間? っていうか、何時の間にご飯作ってたんです?」
「下拵えでしたら白兎さんたちが帰られる前にすでに」
 美味しそうな匂いがほのかに漂ってきた。
「それじゃあ……」
「一旦、部屋に戻るか?」
 夷月が伸びをしつつ言った。
「そうだね……そういえば、彼女たちの部屋って、どうなってるの?」
 白兎が執事であるロベルトを見た。
「皆様が来られる前に、大方の荷物は業者に運んでもらいました」
 さすがロベルト、手際が良い。
「じゃあ、部屋割りとかはもう済んでるんだね」
「さようでございます」
 玲亜と莉織も同じくソファーから立った。
「えへー、実はまだ、あたし達も自分の部屋見てないんだよ」
 何が嬉しいのか、玲亜はにこにこしている
 たぶん、どんな事にでも楽しみを見出すタイプなのだろう。
「そうなんだ。部屋の整理とか、僕たちで手伝える事があったらなんでも言ってね」
「うんっ」
「あの……よろしいのですか?」
 莉織が、何故か夷月に訊いた。
「別に、オレで出来る事なら構わんが」
 夷月はあっさりと答えた。
 そうして、双子たちがリビングを出ようとしたとき、
「あ、そうだ」
 ドアに手を掛けた白兎が、何かを思い出したように言った。
「二人に、言い忘れてた事があった」
「なに?」
「何でしょう?」
 白兎が玲亜と莉織を交互に見つめ、
「……まあ、こんな広いだけでたいして取り柄のある家じゃないんだけど……」
 白兎が微笑んで

「ようこそ、南雲家へ」

「……」
「……」
 しばしの無言の後、
「うんっ」
「はいっ」
 満面の笑顔を浮かべて、少女たちは答えた。
673名無しさん@初回限定:04/05/09 17:10 ID:oKOB0fMV
とりあえずこれで終わりでございます
続きは書くかどうか……ちと不明っす

CloverHert'sifSS
Twins meet twins

でした
674名無しさん@初回限定:04/05/11 03:33 ID:3oSY3ag8
>646
乙です
続き期待して待ってまつ

しかし、このスレ過疎ってるなぁ…
675名無しさん@初回限定:04/05/12 00:44 ID:bZmu5RGQ
>>674
アセリアSS書きが別スレに逝ってしまったからでは?
676名無しさん@初回限定:04/05/12 17:00 ID:j86A1Zcs
ここも割とコンスタントにSSは投下されてると思うが……

ほぼスルーされてるから、職人のモチベーションがあがらないのかもね。
677名無しさん@初回限定:04/05/12 17:13 ID:AFBYDy+R
SSの感想を出したいのはやまやまだが、
いかんせんプレイしてないゲームばっかりでコメントしようが無い。

今ひとつ盛り上がらないのは共通の話題になるようなゲームがあまり出てないからか?
678名無しさん@初回限定:04/05/12 20:16 ID:6JJUeMuh
共通の話題になり得るゲームはそれ故
他所とのネタ被りが怖かったり。
679名無しさん@初回限定:04/05/12 21:11 ID:BMct5w83
ここ、作品の出来というよりは、何のSSかで結構レスのつき具合違うしね。
今までからみると、比較的レスのつきやすいのは
ニトロ系、アセリアあたりかな?

ま、ジャンルが広いからしゃあないね。
レスがないからって決して出来が良くないとかではないと思われ >書き手の方々
680名無しさん@初回限定:04/05/13 08:37 ID:+MS6GeE4
age
681名無しさん@初回限定:04/05/14 15:44 ID:6OWoP1Wa
そもそも最近のゲムやってないし
Fateもクラナドも知らん
682Age Of Inferno:04/05/21 23:46 ID:wMeufU1u
 子供の頃、世界は黄金色に輝いていた。
 善は正しく、悪は糾され、純粋に白と黒とに分かたれた世界は、いつだって最後に勝つ
のは正義だった。
 あの輝きはどこに行ったのだろうかと、周囲を照らす光を探す。
 燃えていた。
 ”インフェルノ”が燃えていた。
 万魔殿を嘯くその邸宅が、地獄を名乗るその組織が、自らの炎に焼かれて燃え落ちよう
としていた。
 ごうごうと、天すら焦がそうと燃え盛る地獄の炎。
 世界を照らすのはその炎だ。赤暗い、血のような炎だ。
 かつて、世界は黄金の時代(ゴールド・エイジ)と呼ばれていた。
 今は、そう。炎獄の時代(エイジ・オブ・インフェルノ)だ。
683Age Of Inferno:04/05/21 23:47 ID:wMeufU1u
 逃げ道はもはやどこにも残っていなかった。
 無数ある秘密の抜け道は、真っ先に爆破した。燃焼剤入りのタールが吐き出す炎は、邸
宅中をくまなく覆い、すべてを焼き尽くそうと舌を伸ばす。よしんば生きて出られたとし
ても、外には十重二十重に構成員たちがひしめいている。今この瞬間、神の息吹がすべて
を二つに引き裂きでもしない限り、死は確定的であった。
「こういう終わり方も、いいさ」
 まるで映画のラストシーンだと、”ツヴァイ”と呼ばれた少年は自嘲した。足元には、
かつて彼のボスであった男の死体が転がっている。南米において、国家すら上回る力を持
っていた男も、脳天に撃ちこまれた鉛弾の前では、普通の男と何ら変わることは無かった。
 邸宅内で生きているのは彼一人だ。他は死んだか殺すかした。
 ”インフェルノ”。地獄を名乗るその組織も、もはやがらんどうの器に過ぎない。絢爛
と飾り立て、世界の端々からかき集めた力も、富も、何の役にも立たない空ろな殻に成り
果てていた。全てを燃やす炎ですら、明日にはもう灰に消えているだろう。
 すべて、たった一人の少年が行った事だった。
 少年の名は”ファントム”。かつて、平凡な旅行者でしかなかった少年は、過去を奪われ、
未来を閉ざされ、一つの殺人兵器に作り変えられた。その、たった一人の裏切り者が、
全米を裏から支配した組織を消滅させたのだ。
 まるっきり、映画だ。スクリーンの向こうに観客がいるなら、ポップコーンを片手にハ
ンカチの用意でもしてるだろうか。
「俺にふさわしい終わり方だ」
 ”ファントム”の物語は、今まさに終わろうとしていた。
 地獄(インフェルノ)は滅び、地獄の悪霊もまた自らの炎に焼かれて復讐の旅を終える。
アンチ・ヒーローには相応しい終わり方だ。
「だが、ハッピーエンドではないね」
 声がした。
 瓦解する邸内であっても良く通る、明瞭な声だった。明確な使命感と限り無い慈愛、
それに少しのユーモアを振りまいたような声だ。政治家にでもなれば瞬く間に大統領に
なれるだろう。
「物語は、いつだってハッピーエンドにならなくてはいけない。ボクはそう思っている。
そのために決して諦めない。全力を尽くして、生きて帰る。ボクを待つ全ての人々と、そ
してボク自身のために」
684Age Of Inferno:04/05/21 23:47 ID:wMeufU1u
 馬鹿な、と思わず声が漏れた。
 燃え盛る地獄の邸内。そこに、ずっと昔に死んだはずの人間がいた。
 あの”終末の日”(ドゥームズデイ)にその身を投じ、死を持って正義を示したその男。
 大統領が政治の為でない涙を流し、その肩を書記長が叩いて慰める。あの奇跡のような
葬儀を、世界中の人間が見た。
 ”彼”は死に、そして黄金だった世界は終わった。
「……スーパー・オフビート」
 炎よりもなお赤いコスチュームに身を包んだその男は、かつてと同じように颯爽とそこ
にいた。
「そう、お馴染み調子外れ(オフビート)のヒーローさ。ところで、ここはどこで今は何
時なのかな? 道に迷った上に時計を無くしてしまってね。とりあえず、ホワイトハウス
ではないようだけれど」
 ごうごうと燃え盛る炎の中、二人の男が立っていた。
 一人は殺し屋。ツヴァイと呼ばれ、ファントムと呼ばれ、この世界の誰よりも人を殺す
ことに長けた人類。
 一人はヒーロー。オフビートと名乗り、英雄と呼ばれ、この世界の誰よりも人を救った
人類。
 まるで対照的な二人だった。
「俺に、待つ人なんていない。全てを失った。俺は亡霊(ファントム)だ」
「復讐の念だけで生きる地獄の亡霊、か。悲しい話だ。それでは、どうやってもハッピー
エンドにはならない」
「時代が違うんだ。白と黒だけでは割り切れない。それよりも、もう疲れたんだ。休ませ
てくれ」
 どっか、とツヴァイはソファに腰を下ろす。少し前までマグワイヤが座っていた場所だ
。気付けのつもりだろうか、琥珀色した酒瓶が、クリスタルのグラスとともに置いてあった。
「死んでも大切だった人には会えないぞ」
「分かっている。俺は地獄がお似合いだ。彼女たちの所には行けないさ。呑むかい?」
 なみなみとグラスにバーボンを注ぐ。宝石のように済んだ色の液体に、赤黒い炎が反射
してきらきらと輝いていた。
685Age Of Inferno:04/05/21 23:48 ID:wMeufU1u
「この組織が崩壊することで、裏社会は再び戦国時代に戻るだろう。多くの罪も無い人々
が巻き込まれる」
「分かっている」
「原因を作ったのはキミだ。ファントム」
「知ったことじゃない」
「だが、キミには責任がある」
「だから、責任をとって死ぬ」
「違う。それは臆病者のやることだ。キミには力がある。勇気もある。心の中に、かけが
えの無い良心がある。ファントム、いや、レイジ・アズマ。キミは責任を果たさなくては
いけない。力あるものとして。弱者を守るものとして」
 生のままのバーボンに、真摯な瞳の赤い仮面が浮かび上がる。
 どこまでもまっすぐで、決して折れない、曲がらない。正義を、自らの良心をどこまで
も信じるその瞳が、ツヴァイと呼ばれた少年を射抜いていた。
「だったら! だったらどうしろと言うんだ! 周りを見ろ。屋敷は爆弾と火災で崩壊寸
前。逃げ道はすべて塞がれ、見渡す限り炎の海だ! しかもその外には一千人近いマフィ
アどもがてぐすね引いて待っている。責任を取れ? だったら俺を生かして帰してみせろ。
今すぐここから飛び出して、マフィアどもをなぎ倒せ! この炎を全部吹き消して、瓦
礫の山から俺を引きずり出してみろ! さあ、やれ! 今すぐだ!!」
 ぱぁん、ぱぁん、ぱぁん
 電光石火の早撃ちだった。手放したグラスが絨毯に落ちるよりも早く、手の中に出現し
たデザート・イーグルは三発の弾丸を吐き出していた。開放された50AE弾はそのまま直進し、
壁に弾痕を穿って止まった。
「あ……れ?」
 気づくと、そこに居るのは彼一人になっていた。
「なんだったんだ。今のは」
 スーパー・オフビート。
 子供の時に読んだ事のある、コミックヒーローだった。かつて、黄金世代(ゴールドエ
イジ)と呼ばれた時代に、コミック界を代表した人気作のヒーローだ。こんな所に現れる
はずがない。実在すらしない。当たり前だ。
「幻覚か。俺もヤキが回ったな」
 そう呟いた時、遠くから地鳴りのような音がした。とうとう、屋敷の崩壊が始まったらしい。
686Age Of Inferno:04/05/21 23:49 ID:wMeufU1u
 音を立てながらモルタルの壁に亀裂が入る。熱変性と自重に耐え切れずに柱は砕け、増
した荷重に屋敷全体が潰れ始める。始まってしまえば、終末まではあっという間だった。
 最奥部のこの部屋にも、崩壊は足早にやって来る。なによりもまず、壁が砕けた。丁度、
デザート・イーグルを撃ち込んだ弾痕を中心にして亀裂が広がる。
 真っ暗なその亀裂から、ひゅうと冷たい風が吹き込んだ。
「風?」
 見る間に壁が崩れ落ちる。だが、見えたのは炎吹き上げる地獄の光景ではなかった。黒々
とした、それこそ地の底にまで続くかのような抜け道が、そこに口を開けていた。
 冗談みたいな話だ。”ファントム”ですら知りえない秘密の抜け道がまさかこんな所に
あろうとは。ご都合主義にも程がある。スクリーンの向こうの観客は、怒号を上げてポッ
プコーンを投げつけているだろう。
「責任を、果たすんだ」
 炎の音にまぎれて、そんな声が聞こえた気がした。
 一つ、わかった事があった。
 これが、”ファントム”という物語のラストシーンでは無いらしい。
 闇に向かって駆け出した玲二の視線は、どこまでも真っ直ぐだった。
687Age Of Inferno:04/05/21 23:52 ID:wMeufU1u
 噂がある。
 ある、ヒーローの噂だ。
 なんでもそいつは、東洋人のガキで誰にも知られていないカンフーの達人らしい。
 なんでもそいつは、千ヤード向こうの針穴を拳銃で打ち抜けるほどの凄腕らしい。
 なんでもそいつは、魔法の言葉を唱えると、身長2mのマッチョマンになって、銃弾を
はじき、ビルすらひとっ飛びにするらしい。
 なんでもそいつは……。
 馬鹿げた噂だ。みんな面白がって尾ひれをつけて広めていく。本気にする人間なんて一
人もいない。
 でも、そいつは実在した。
 車上荒らしをしていた奴の話だ。いつも通り仕事をしていると、突然東洋人のガキが現
れた。そいつは、荒事で鳴らした一人をあっという間に地面に叩き伏せ、逃げた相棒の足
を馬鹿でかい拳銃で吹き飛ばした。そして、サムライ・ソードみたいな鋭い目でにらみつ
けるとこう言った。
「さっさと失せろクズども。俺は今から仕事がある。邪魔したら殺す」
 身長2mの大男には変身しなかったらしい。
688Age Of Inferno:04/05/21 23:53 ID:wMeufU1u
 ともかく、その直後にとあるマフィアグループが壊滅の憂き目にあった。幹部連中は全
員墓場か病院か牢獄に送られた。多分絶対一生娑婆には帰ってこない。あくどく集めた金
やらなんやらは全部消え、代わりに匿名の寄付金が様々な援助団体や基金に送られた。皆
言っている。奴の仕事というのはそれだろうと。
 皆が彼を”奴”って呼ぶのに飽きたころ、警察はこんな発表をした
「昨今頻発している連続襲撃事件を同一犯と断定。以後、容疑者を『No.102860』と呼称する」
 まったく、センスの無いネーミングだ。おかげで皆が適当に”奴”の事を呼び始めた。
 都市の暗殺者「クライム・アサシン」、ガンとカンフーを使う誰かさん(Who)「Gun・Who」、
彼が変身する魔法の言葉(多分ウソだ)「ザシャム」、他にも「マフィア・バスター」
とか「ガンナー・エンジェル」とか「ブラッディ・ジョー」とか色々だ。悪人どもに
天罰を! ってんで「パニッシャー」って呼んだ奴は、あの会社に呼び出されて馬鹿みた
いな金を請求されたらしい。
 なんか、少し前に噂になった暗殺者にちなんで「ファントム」って呼んでる奴もいる。
正式名称は「ファントム・オブ・インフェルノ」。地獄からの怨霊が、悪人どもを焼き尽
くすんだ。
 気の早いどっかの会社はコミック化を進めているらしい。訴訟合戦にならなきゃいいけど。
 ともかく、今日も奴は戦っている。
 ビルの間のゴミ溜めや下水溝の下、それよりもっと汚いところで。
 なんのためかは分からないけど、悪をぶっ飛ばす戦いを続けている。
 って、カメラマンのピーターと新聞記者のクラークが言ってた。
689Age Of Inferno:04/05/21 23:54 ID:wMeufU1u
 噂がある。
 ある組織の噂だ。
 なんでもその組織は、とんでもない凄腕の殺し屋を雇っているらしい。
 なんでもその組織は、全米中の裏組織という裏組織を影から操っているらしい。
 なんでもその組織は、大統領直属の超法規的なスパイ組織で、秘密を知った人間はエー
ジェントが持つ洗脳装置で記憶を消されるらしい。
 なんでもその組織は……。
 馬鹿げた噂だ。みんな面白がって尾ひれをつけて広めていく。本気にする人間なんて一
人もいない。
 だが、その組織は実在した。
 例の”インフェルノ”が崩壊してすぐの事だ。抑えの効かなくなった馬鹿が戦争を始めた。
 抗争ではなく、戦争だ。当然、大規模なハジき合いになった。巻き込まれた堅気も何十
人と死んだ。暴力が暴力を生み、戦争は泥沼化すると、誰もが思った。
 それが、たった二日で終結した。
 手を出した馬鹿は、事務所に仕掛けられた爆弾で消し飛んだ。追随した連中も漏れなく
死ぬか殺すかされた。
 仕掛けられた方には、奴らのシマの権利書と、一枚のメッセージカードが残された。
”インフェルノ”
 カードにはそれだけ書かれていた。
 奴らが、帰ってきたらしい。
 一度地獄に落ちて、前よりもさらに巧妙に、前よりもさらに凶悪に。
 まさに悪魔の化身となって、奴らは帰ってきたらしい。
 奴らは監視している。
 ビルの間のゴミ溜めや下水溝の下、それよりもはるかに汚いところであろうとも。
 何のためかは分からないが、裏組織の全てを監視している。
 その裏には、まさか大統領が本当にいるんだろうか?
690Age Of Inferno:04/05/21 23:55 ID:wMeufU1u
 噂を流した。
 現実の事件に引っ掛けた、他愛も無い噂だ。
 噂は瞬く間に広まった。ついた尾ひれは元の噂を覆い隠し、さらに大きな噂に変えた。
 噂に合わせて、いくつかの事件を起こした。
 噂は、全米を震撼させるほど、広まった。
 タブロイド誌は噂の真相をまことしやかに語り。
 犯罪者は噂に汲々としていた。
 噂のヒーローが表紙を飾るコミックも創刊された。
 ”エイジ・オブ・インフェルノ"
 そうタイトルされたシリーズは好評を博し、第四期シリーズまでの発刊がもう決定した
らしい。
 何気なく捲ったページに目が止まった。
 奇妙なくらいに自分に似た東洋人が、コミック片手にほくそえんでいる。本を持った左
手には、花束まで抱えている。
 タイトルは”エイジ・オブ・インフェルノ”。描かれているのは主人公のレイジだ。
 ふと、どちらが現実だったかと、吾妻玲二は考えた。考えて、やめた。意味が無い。
 平凡な日常の住人の筈だった自分が、いつの間にやら地獄(インフェルノ)の亡霊にな
っていたのだ。あの炎の中、死んだはずのスーパーヒーローに出会った後、それからの時
間が全てコミックの中の出来事であっても、別におかしくはない。
 そんなことより、今日は墓参りだ。
 スーパーヒーローの死を悼んで建てられた碑には、毎年何千何万人もの彼のファンが追
悼にやってくる。それでも、イベントの無い平日の昼はまばらに人がいるだけだった。
 左腕に花束を抱えて、玲二は追悼の碑へと歩を進めていった。記念碑には、先客がいる
ようだった。
691Age Of Inferno:04/05/21 23:57 ID:wMeufU1u
 今年も、その碑の前に追悼に日向燦はいた。
 彼女にはもう一つの名があった。フレア。日本を拠点とするオフビートチームの一員と
しての彼女。しかし今日は、普段の白いコスチュームではない。着慣れない黒のワンピー
スは少し違和感があった。
「これが、フレアのお父さんなんですね」
 わざとらしいくらいに爽やかな笑みを浮かべる石像を見上げ、ローズデバイスは呟いた。
「お父さん、なのかな。彼は、母さんの恋人だけど、私は会ったことも無いっていうのに」
 普段と違う少し頼りない仕草で燦は呟く。
 燐自身とスーパー・オフビートとの接点は無い。ただ、彼女の遺伝子設計上の母(ジー
ニアス・マザー)であり、育ての母でもある女性が、彼と恋人であったというだけだ。
 それだけのことで、娘だと言い張るなど、燦にはできそうもなかった。毎年一回だけ、
イベントの無い日を狙ってフレアがここに墓参りに来るのも、そうした理由からだ。ただ、
ひっそりと、母の愛した人の冥福を祈れればよかった。
692Age Of Inferno:04/05/21 23:58 ID:wMeufU1u
「それでも彼は喜んでくれますよ。ハッピーエンドが好きな男ですから」
 気づくと、背後に男がいた。背が高い、鋭い目をした東洋人だった。左手には花束を抱
えている。
「あなたは?」
「失礼。昔、彼に命を救われた者です。貴方たちも彼の追悼に?」
「はい。……あの、日本から来られたのですか? 日本語がお上手ですが」
「いえ。残念ながらニューヨーク在住ですよ。日本にはもう、何年も行っていません。実
は何年かぶりに日本語を聞いてね。つい懐かしくなって声をかけてしまいました」
 遠いものを見るように、男は言う。
「日本に戻ったりはしないんですか?」
「まだ仕事が残っているのでね。すべて落ち着いたら、戻りたいですね。いつの日か」
 暫し瞑目し、左手の花束を碑に供える。右手は一度も使わなかった。
「それでは、お先に」
 残された花束が風に吹かれてゆらゆらと揺れる。それだけが、男がそこにいた証拠だっ
た。幾度かの修羅場を潜り抜けてきたはずの二人にすら、気配を感じさせずに、男は現れ
、そして消えていった。
「……”ファントム”」
 ふと、フレアはそんな言葉を呟いていた。

      ”Age Of Inferno”のセールスは好調を博した事を受け、今期株主総会にて
                     第四期シリーズ終了後の続刊が決定された。
                             オフビート・コミックス社
>>682-692
タイトル:「Age Of Inferno」
ジャンル:クロスオーバー(Phantom of Inferno、サンダークラップス!)

保守ついでにSS投下〜。
かなり自分勝手な内容になったから埋め立てようと思っていたモノだけど(w

って、容量的にスレ移転しないといかんな。
>>1に追加してテンプレに何か要望があるならお願いします。
スレ移転の目安の容量は470KBに増やしておきます。

スレ立ては明日の夜の予定〜
694名無しさん@初回限定:04/05/22 01:01 ID:olO2h01n
>693
乙でした。…あの世界のヒーローですかぃ。
695名無しさん@初回限定:04/05/22 09:56 ID:2VX9HIUd
>>693
君に送る言葉は唯一つ

GJ!
696名無しさん@初回限定:04/05/22 23:27 ID:rPNT9FNT
ナイス!
山蔵は原作からのファンで、
時折入るオフビートの逸話がすげー好きなんで、
激しく萌えた、GJ!
次スレ立てましたんで、移転よろしく〜

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1085237255/
698名無しさん@初回限定:04/05/23 00:00 ID:U6fRRrye
まだ30KBほど残っているようだが……
699名無しさん@初回限定:04/05/24 12:25 ID:j6uMPBa4
くそ、女に惚れた事のねー男が恋愛モノなんざ書けるかッ



ド難産なのの言い訳('A`)
700名無しさん@初回限定:04/05/24 13:57 ID:GsB5To6c
>>699
その理屈だとバトル物書く奴は戦場帰りになっちまうな。

まあ、恋愛でもバトルでもギャグでも何でもOKだから気楽に書いてくれ。
701名無しさん@初回限定:04/05/24 19:42 ID:5TN+6rGV
俺触手物書くためにこの前生やした
702名無しさん@初回限定:04/05/24 20:57 ID:j6uMPBa4
言い訳だっつってるだろヽ(`Д´)ノウワァァァン
703名無しさん@初回限定:04/05/26 02:41 ID:T/aakY39
>>702
なあ・・・アンタさあ、言い訳なんてしちゃって・・・い い わ け ?



・・・逃げろッ!!
704名無しさん@初回限定:04/05/26 03:09 ID:VO4E2QuZ
さて、次スレが落ちてしまいました
705名無しさん@初回限定:04/05/26 03:22 ID:nszcfWaN
そんなことがあって良いのか…_| ̄|○

ファントムのSSは良かった!GJ!
あのエンドも好きなんだよな〜
サンクラはやってないから、最初リアルの奴かと思ったw
次スレマジで墜ちとる……_| ̄|○

えーっと、ログは残っているので#8に投稿された作品の保管は出来ます。
明日の10時くらいに次スレを立て直すので、皆さん保守願います
707名無しさん@初回限定:04/05/28 08:15 ID:lzJEv8ip
>>693
GJ!

俺もサンダークラップスやってねえから一瞬本物の方かと思ってしまった。
玲二がニューヨーク住まいってことは、
スパイディーやパニッシャーやデアデビルなんかとクロスオーバー物が出版されてそうだ。
続きがすげえ気になってしまう。
次スレ立てられん… orz
テンプレを貼っておくんで、誰かスレ立て願います

エロゲー全般のSS投稿スレです。あなたの作品をお待ちしています。
エロエロ、ギャグ、シリアス、マターリ萌え話から鬼畜陵辱まで、ジャンルは問いません。

そこの「SS書いたけど内容がエロエロだからなぁ」とお悩みのSS書きの人!
名無しさんなら安心して発表できますよ!!

  【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
 名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
 なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
 自分がアップしたところをリダイレクトする。>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
 恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
 ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。

保管サイトはこちら
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/

過去スレ >>2-
709へたれSS書き@保管サイト”管理”人:04/05/28 22:12 ID:1e28/vKV
テンプレ続き

前スレ【SS投稿スレッド@エロネギ板 #7】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1071577546/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #6】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1055686320/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #5】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1051721989/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #4】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1036495444/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #3】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1013/10139/1013970729.html
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #2】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1006/10062/1006294432.html
【SS投稿スレッド@エロネギ板】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/984/984064183.html
【SS投稿用スレッド@エロゲー板】
http://www2.bbspink.com/hgame/kako/979/979813230.html


710名無しさん@初回限定:04/05/28 22:57 ID:sEjUizpC
SS投稿スレッド@エロネギ板 #8改め
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1085752559/l50

換わりに建ててみた
711名無しさん@初回限定:04/06/16 19:18 ID:JrXe/f0V
こっちは中々落ちないね落ちないね。
712名無しさん@初回限定:04/06/16 23:34 ID:M7aPiXzs
1年ほどほっといても落ちないと思ふ。
713名無しさん@初回限定:04/06/27 23:11 ID:kkFuxeiN
>693
Phantom of Infernoやってないけどフレアでてくるだけでハァハァでした。
GJ!
読みにきてよかった。
714名無しさん@初回限定:04/06/29 18:47 ID:fQAmUqYA
>710
乙ー。
でもここもうまらんなw
715名無しさん@初回限定:04/07/04 09:51 ID:PkZ8VwCw
ほしゅ
716名無しさん@初回限定:04/07/12 01:09 ID:nyF5N+Vu
まだ30KBもあるじゃないか……
717名無しさん@初回限定:04/07/19 22:40 ID:DF1v5Pg+
埋めるために一筆。エロゲネタじゃないが、許せ。

むかし、むかし、ある所に鳴海孝之と言うヘタレ青年が住んでいたそうな。
鳴海孝之には、大親友のデブ専獣姦大魔王がいたそうな。
鳴海孝之は、ある日、女の子に告白されたそうな。
その女の子の姓は、アフロ。名は、ジョイ。といったそうな。
ジョイは、とてもファンシーな女の子で、腕は細いが筋肉質。数年前まで割れていた腹筋は、今やビール腹。顔は濃いが中々の男前。髪はアフロで脱着自由。趣味は、コスプレと(大人の)絵本集めだったそうな。
孝之は、ジョイと触れ合う間に、ジョイを好きになってしまったそうな。
そして、相思相愛になった頃、二人を不幸が襲いました。
孝之が、ジョイが前々から欲しがっていた(大人の)絵本「マヤ・ルーの贈物初版(全編消し忘れ)」を探して、待ち合わせに遅れてしまいました。
孝之が、待ち合わせの場所に行くと、凄い人だかりがありました。
孝之は、人混みを掻き分けて最前列にいきました。そこで孝之が見た物は、衝撃的なものでした。
バスが人混みに突っ込んだ悲惨な現場でした。
よく見るとバスが浮いていました。
718名無しさん@初回限定:04/07/19 22:46 ID:DF1v5Pg+
なんと、ジョイがバスを持ち上げていました。
ジョイの足元には、子犬がいました。ジョイは、この子犬を助けるために踏ん張っていました。
そこに、孝之はこう声をかけました。
「ジョイ〜」
ジョイは、振り返りました。その瞬間、力が抜けてジョイの体は変な形に折れ曲がり、子犬を巻き沿いにしてバスの下敷きになりました。
そして、帰らぬ人になったとさ。
めでたしめでたし。
719名無しさん@初回限定:04/07/19 23:35 ID:avfIS+4v
埋めるためにしてももう少しこう…w

SS作者が没にしたプロットでもあげる事にすれば埋まるかな?
720名無しさん@初回限定:04/07/19 23:57 ID:MRIIXeNg
みんなでこのスレのSSの感想を書けばあっという間に埋められると思う。

と、無理難題を吹っかけてみるテスト
721一筆:04/07/26 21:01 ID:n7xU4Ffr
オレはジャイアンと言います。どこのジャイアンかって?オレをしらねぇの?業界bPのジャイアンですよ?知らないの?マジですか?頭大丈夫ですか?

知らん。お前など知らん。何が業界bPだ!単なるでっちあげじゃねぇの?

あっ、今、侮辱したな!糞野郎!オレがエログ潰したの根に持ってんな!

はぁ?ありゃ会社の方針だろ。エロゲ誌二つはいらねぇからな。

なんか、アレか、ウイン潰したの根に持ってんな!

はぁ?あれは、期刊誌にするのは、会社の方針だろ。赤字っぽかったし。

…アレか、エロゲメーカーに圧力かけてるからか!

あぁ、そうさ、お前のせいであいつが死んだんだ。ジャイアン!お前が殺したんだ!

超先生は殺してない!

誰も超先生と言ってねぇよ!お前が殺したんか!
722名無しさん@初回限定:04/07/30 19:52 ID:BszeSfYv
ジャイアンってまさか、○ックジャイアン!?
723名無しさん@初回限定:04/08/04 17:20 ID:LH5uLFdt
おちないねぇ
724名無しさん@初回限定:04/08/19 18:02 ID:ocR+vYVq
 
725名無しさん@初回限定:04/08/28 01:49 ID:r3wLgUR/
まだ終わらんにょ?
726名無しさん@初回限定:04/08/28 11:21 ID:6UNyA01Z
誰か28KBのSSを投下すれば終われる
727へたれSS書き@保管サイト”管理”人:04/08/28 17:47 ID:lkpgPyjH
>28K
穴埋め用にそれくらいのSS書いていたんだが
……PDAが、PDAが! orz
728名無しさん@初回限定:04/08/30 06:28 ID:753PwIcJ
4月14日
今年から晴れて大学生。
一人暮らしのためアパートに入居する日。
一通りの荷物を部屋に運び一段落していた。
お隣さんとの仲を円滑にするため贈り物用のお菓子をおすそ分け。
驚いたことに、お隣さんは幼女だった。
一人暮らしをしているという。
きっと複雑な事情があるのだろう。
私に出来ることはなんでもしようと思った。

4月15日
隣が気になる。
普段どういった生活をしているのだろうか。
授業は明日からなので、一日家に篭り
彼女の生活を調べてみようと思った。
だが今日は彼女も外出せず、ずっと家に居たようだ。

4月16日
朝、隣からの異音で目が覚めた。
取り立てて大きな音ではない。
普通なら気にならない程度のものだ。
だがその音は、じっくりと聞くとあるリズムを刻んでいるようだ。
気になったが、朝の授業が始まる。
急いで学校に向かった。
家に帰ると、変な物音はしなくなっていた。
729名無しさん@初回限定:04/08/30 06:47 ID:753PwIcJ
4月17日
新入生歓迎会があったが、そんなものに出るはずもなく
今日もまた隣の壁に聞き耳を立てていた。
今は彼女の生活よりも、その異音が気になった。
そして今もその独特のリズムを刻んだ音は聞こえてくる。
あまりに気になるので、用事があるフリをして隣の部屋のチャイムを押した。
レオタード姿の幼女が出迎えてくれた。
「一緒に踊りませんか?」と警戒心の欠片もない言動は私を驚かせた。
楽しそうなので一緒に踊った。
エアロビの心地よいリズムは楽しかった。

4月18日
今日は学校が休み。
午後3時丁度。隣の部屋の玄関のドアが開けられた。
ついで、鍵をかける音が微かに響く。
外出するようだ。
4日間待ち続けた好機。
早速ばれない程度に後をつける。
歩いて近所のスーパーに入っていった。
慎重に後をつけ、彼女が何を買ったのか観察した。
卵にニンジン、とうもろこしとりんご。それと冷凍食品。
それだけ買うとすぐにアパートに引き返していった。

4月20日
友達が遊びに来た。
隣に幼女が一人暮らしをしていると漏らすと
友人はそっけなく「へぇー」とつぶやいただけだった。
730名無しさん@初回限定:04/08/30 07:30 ID:753PwIcJ
4月21日
また彼女が外出した。
あまり元気がなさそうである。
今度は薬屋に入っていった。
狭い店なので、自分まで中に入る事は出来ない。
5分ほどして店から出てきた。
風邪薬でも買ったのだろうか。
それとなく何か滋養のあるものでも作って差し入れしようと思った。

4月22日
滋養のある物といっても何も思いつかなかった。
とりあえずベタではあるがおかゆを作ろうと思った矢先
玄関のドアがノックされた。随分弱々しい音だった。
予想通り風邪をひいたらしい。
風邪薬を買ったけど座薬が入れられないので入れて欲しいそうだ。
喜んで引き受けた。入れてあげた時の微かなうめき声がかわいいものだった。
その後、不自然な足取りで彼女は自分の部屋に引き返していった。
731名無しさん@初回限定:04/08/30 11:29 ID:753PwIcJ
4月23日
あの一件以来どうも懐かれたようだ。
大変に喜ばしいことであるが、
未だに彼女がどんな生活をしているのかわからない。
聞いてみようとは思うが、今の雰囲気を壊したくない。
だからまだストーカー紛いの行為を続けている。
732名無しさん@初回限定:04/09/05 11:23 ID:aK1YpwNB
hosyu
733名無しさん@初回限定:04/09/28 19:29:18 ID:holXffvG
ホシュ
734728:04/09/29 02:43:23 ID:W8c7orvu
まだあったんだ……恥ずかしい。
なんで消えないのかな?
735名無しさん@初回限定:04/09/29 03:10:37 ID:5KdQm+js
続きは無いのか?
736名無しさん@初回限定:04/09/29 11:56:41 ID:mGdyS2XX
>>726-727
↑を見て、適当に即興で書いただけだから。

って、よく見たら後28KBか。
消えるわけないや。
続きはめんどくさい。気が向いたら。
737名無しさん@初回限定:04/09/29 20:49:55 ID:eee7MRpl
即興でそれだけ書けるならすごい。読み辛くもないし。
738名無しさん@初回限定:04/09/29 22:22:41 ID:mjWBBdbn
>>735-737
自演で自分の作品誉めてて悲しくならないか?
739名無しさん@初回限定:04/09/29 22:36:10 ID:Ff4Z7No5
>>738
そして自演で煽って印象を中和しようってのか?
740名無しさん@初回限定:04/09/29 23:06:11 ID:eee7MRpl
おいおい残りを罵倒で埋めるには容量ありすぎるだろ。点呼でも取るか?
741名無しさん@初回限定:04/09/29 23:35:23 ID:mjWBBdbn
734 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:04/09/29 19:05:37 ID:mGdyS2XX
ラノベ業界よりこっちの業界のほうが儲けられそうだと判断してはや4年。
実際に年収は数倍になったけど、何かを失ったような気がする。
いい年して彼女いない暦=年齢 親には嘆かれる。

ちょっと人生を見つめなおそうと思った
742名無しさん@初回限定:04/09/30 01:24:01 ID:veCKEChW
>>740
え〜っと、じゃあ3.
743名無しさん@初回限定:04/09/30 01:25:19 ID:xm+dJwn9
(つдT)

しかし数倍って…エロゲライターが儲かるのかラノベが儲からないのか…
744名無しさん@初回限定:04/09/30 01:35:51 ID:osDrEcDw
ラノベはあんまり儲からないらしい。
どうにも色々面倒ばっかりだとか………
745名無しさん@初回限定:04/09/30 10:19:15 ID:fQB2Zd6+
だからと言ってラノベもモテなさそうだが…
業界の女性率は上だろうが
746名無しさん@初回限定:04/09/30 22:25:22 ID:cS7om1jj
いざ当たったならラノベのほうがもてると思われ。
なんといっても購買層の女性比率が違うよ。(まあエロゲと比べるのが間違いだが)
年齢層が低くなる分、痛い読者も増えるみたいだけど、
エロゲのほうもユーザーの(精神的含めて)低年齢化が進んでるから変わらんかもねえ。
747穴埋め用てけとーSS:04/10/03 01:58:47 ID:Ls393sVL
彼女と結婚してはや3ヶ月。
僕らは新婚と言う名の幸せなつがいである。
だけど、普通のつがいじゃない。



今時、新婚初夜というのは二人が初めて交わる日だというのは
古代の習わしのようなものだ。
性におおらかな時代。
遊びでズンパンするのはもはや常識である。

だけど、いつの時代だって例外は居る。
僕たちが、まさしくそれだ。
中学生の時に初めて出会い、それから15年も交際を重ねてきたが、
その間、一度としてお互いの性器を見せ合うことさえもしなかった。

僕に勇気がなかっただけかもしれない。
雄としてメスである彼女を求めるという勇気が。



これだけでも十分普通じゃないかもしれない。
だけど、そういう事じゃないんだ。

それは新婚初夜の事。
さすがの僕も、ここで彼女に言い出さないわけには行かなかった。
748穴埋め用てけとーSS:04/10/03 02:05:22 ID:Ls393sVL
僕だって、結婚=幸せな家庭 という常識は知っていた。
そして、幸せな家庭とは、子供の笑顔が必要不可欠で、
その子供の作り方も、よく知っていた。

それに……彼女のいつも艶を帯びた肌を
自分の物にしたいという欲求もあった。

その欲求を正当化するだけの環境も今は整った。
結婚して、パコパコしないつがいなど、論外である。


だから僕は求めた。

だけど。

彼女は。

やんわりと。

消え入るような、自分を苛む様な顔で。

「ごめんなさい」って言ったんだ。


ショックを受けたというのは否定できない。
だけど、それ以上に彼女の、苦しそうな泣き顔に負けてしまっていた。
749穴埋め用てけとーSS:04/10/03 02:19:52 ID:Ls393sVL
自分の事なんてどうでもいい。彼女を救いたい。
その一心だった。

どうして? という僕の問いに彼女はただうつむくばかり。
うつむいた彼女に僕は何もしてやれなかった。
ただ、エロゲの主人公ならここでどうするかを考え、
彼女をしばらく一人にしておこうと思った。
無理に言わなくてもいいんだよ。 と無理に明るい声で背中を向けた。

背中を向けただけで、彼女から離れることはできなかった。

後ろから抱き寄せられてる。行かないで欲しいという懇願の表れなんだろう。
エロゲーの主人公なんかを参考にした自分が馬鹿だった。

すぐに、後ろから回されたか細い手を掴んだ。
はなさ〜れぬ〜よう〜ながさ〜れぬ〜よう〜ぎゅっと〜掴んだ。
今はただ彼女を安心させる事に努めた。

750穴埋め用てけとーSS:04/10/03 02:36:50 ID:Ls393sVL
長い間そうしていた。
それだけで幸せだった。
セックルだのズッコンバッコンだのはどうでもよくなりつつあった。

たおやかな時間が流れるなか、動きを取り戻したのは彼女だった。

僕の手を握り、「来て」と呟いてベッドルームにまで僕を引っ張った。
さっきまでとは違う、まるで戦いに赴く毅然とした表情で。


ベッドルームに二人きり。
僕はただ突っ立っていた。
彼女も、僕の目を見据えるばかりで何も言わない。

また時間だけが過ぎる。
先ほどとは違い、戦場の様なふいんきの中、唐突に彼女の唇が開いた。

「ごめんね」

確かにそう聞こえた。
その言葉が何を意味するのかわからなかった。
751穴埋め用てけとーSS:04/10/03 02:48:53 ID:Ls393sVL
「ごめんね。……ごめんね」
そう何度も繰り返していた。

抱き寄せてやろう。
僕が慰めてあげよう。
自分に出来ることなんてそれくらいしか無いと思った。
だから僕は彼女の視線を正面から受け止め、安心させるように手を伸ばす。

だけど。
僕の手が届く前に彼女は。

自分の着ている服のボタンに手を掛け。

ゆっくりと上着を脱ぎ始めた。


彼女の勇気ある行為に心が痛んだ。
それに報いようと、思った。

「いいんだ。もういいんだよ。僕が悪かった。ごめん」
そう言いながら強引に彼女の抱き寄せた。
服が脱げないように。
彼女を包み込むように。




752穴埋め用てけとーSS:04/10/03 02:59:29 ID:Ls393sVL
だけど彼女は振り払った。
強引に僕の手を振り払った。

それは、彼女の僕に対する償いなんだろうと思った。
僕を否定した事への償い。
彼女は必死なのかもしれない。
僕に嫌われないように。つがいが離れないように。

「本当にもういいんだ。君がそんな事しなくても」

そうゆっくりと諭した。

どんな理由で彼女が僕を拒んだのかわからなかったけど、
僕はもう彼女を無理に求める気は無い。

互いが互いを想いあう故のすれ違いだった。


僕の言葉に、彼女の手が止まる。
ようやくわかってくれたんだな、と安堵のため息を漏らした。

だが彼女は、手を止めたまま僕と距離を置くように数歩後ろに下がった。
意図が掴めない。一体何がどうしたっていうんだろうか。

部屋に漂う重苦しい雰囲気が深まっていた。
753500KBまだー?:04/10/03 03:11:30 ID:Ls393sVL
「止めないでください」
凛として彼女はそう言った。

「やめていいんだ。もう……やめろよ。お互いこんな事望んじゃいないだろ」

馬鹿馬鹿しい話しだった。
世間じゃちょっと気があった男女はすぐに腰を振るもんだ。
一種のスポーツと言える位気軽に。
意図せず子を孕む危険性が皆無という時代がもたらした、現実。

でも、例外は常にある。

本当に馬鹿馬鹿しく思っていた。。
僕たちつがいは何でこんな事をしているんだろう、と。


「駄目なの!やっぱり言わなくちゃ駄目って気づいたの!」
凛とした声はどこへ消えたのだろうか。
いきなり彼女は大声でそう叫ぶと、上着を脱ぎだした。

止める暇も無かった。
754500KBまだー?:04/10/03 03:22:06 ID:Ls393sVL
言わなくちゃ駄目なのという言葉を反芻していた。
彼女の目的が一体なんなのかまるでわからなくなっていた。

償いじゃないのか?

考える間に彼女の美しい上半身が露になった。
綺麗な肌をしていた。

肉欲を覚えることも無かった。
そして彼女も、露になった胸を隠そうともせずまたこちらを見据えていた。
その様子に恥じ入った様子はまるで感じられない。


確かに僕らはつがいだ。恥じ入る必要など無いのはわかっている。
でも初めてなんだ。僕らは。
普通、恥ずかしがるものだろう。

「止めないで」
彼女はそう叫んだ。

止められなかった。
彼女の目的がわからず混乱していたせいもあったのかもしれない。
黙って彼女を眺めていた。
755500KBまだー?:04/10/03 03:29:44 ID:Ls393sVL
動きを止めたまま彼女は動かなかった。
いや、動けないんだろう。なんとなくそう思った。
だが、すぐに何事か決意したように、スカートのホックに手を掛けた。

そこで、僕はわれに返り、止めようとした。
止めようとしたが、止められなかった。

彼女の決意があまりにも強いと、感じていたから。
止められないと、直感していた。

だけど。
僕に抱けるのか。
彼女がその全てを僕にゆだねたとして、僕は受け入れて上げられるのか。
彼女を想うが故に抱けないのでは。
否定した彼女をいたわるために……。

756500KBまだー?:04/10/03 03:39:52 ID:Ls393sVL
やはり止めるべきなんだろう。
そう意を決したその瞬間だった。
僕が今まで抱いてきた世界の常識が崩れたのは。


彼女は躊躇っていた手を動かしスカートのホックを外した。
そして、わずかばかりの間を置いて、その手を話した。
y=gt^2の法則は漏れなくスカートに適用され
地球とスカートは万有引力でお互いを引き合った。

彼女はスカートと分離され、その下半身を覆うものは無くなった。



僕はただ呻くしか出来なかった。
そのまま動けずにいた。
目の前の物を否定したい自分がいた。
あれは違う、あれは現実じゃない。
あんなのが彼女であっていいはずがない。
ありえない。絶対ありえない。世界がどこか狂ってるんだ。
僕がどこか狂ってるんだ。
何かがおかしいんだ。


彼女は何をするでもなく、ただ僕を見つめていた。


僕は何をするでもなく彼女の下半身を見つめていた。
757500KBまだー?:04/10/03 03:45:22 ID:Ls393sVL
気持ちを強引に落ち着けた。
確かめたかった。
現実を確かめたかった。
だから僕は彼女に近づいた。

近づいき、彼女の股間に手を宛がった。
ゆっくりと撫でた。彼女の股間を。
肌触りの良い、心地よさだった。
手入れを欠かさない彼女の肌だった。



彼女の股間には本来あるべきものがなく、ただ手入れの行き届いた艶やかな肌があるのみだった。




保険の教科書ともエロ本とも違った現実だ。
僕の抱いていた当然は静かに崩れ去っていった。
758500KBまだー?:04/10/03 03:51:22 ID:Ls393sVL
股間をさする僕の手のひらを彼女はじっと見詰めていた。
泣きながら見つめていた。


彼女の泣き顔を見ていると、
現実を受け入れざるを得ない事に嫌でも気づかされた。


「ごめんね」
そう何度も呟きながら彼女はじっと佇んでいた。


彼女にはマムコが無い。
たったそれだけ。
この広い宇宙でたったそれだけの事だ。
僕が誰かにしゃべらない限り、ひっそりと消えてゆく事実だ。

759500KBまだー?:04/10/03 04:01:24 ID:Ls393sVL
パクリ論争で荒れ気味のようなので
いい話題置いときますね

|∀・)つ【エステル萌え】
760500KBまだー?:04/10/03 04:03:18 ID:Ls393sVL
誤爆失礼
761500KBまだー?:04/10/03 04:12:01 ID:Ls393sVL





ベッドに身を放り投げ、天井を見つめながらただただぼーっとしていた。
考えるのが面倒だった。
だから、ただただぼーっとしていた。


そっと、彼女が身を寄せてきた。
さっきから服を着るでもなく、ただ僕の横でじっとしているだけの彼女。

そうして二人、じっとつがいの幸せを満喫していた。


そうして落ち着きを取り戻しつつあった僕はまた、
現実を受け入れようとした。
ちっぽけな事なんだ。
そう割り切ってしまえば気が楽だった。



だけど、横でじっとしていた彼女は。
そんな僕の思いを裏切るかのようにまた話し始めた。


人が到底受け入れられることのできないような話しを。
762500KBまだー?:04/10/04 04:27:10 ID:0c/t0C7k
「ごめんね」
まただ。
また彼女が僕に謝る。
もういい、という言葉はむなしく響くだけだった。

「あのね。聞いて欲しいことがあるの」
生返事を返し、彼女がまた喋り出すのをじっと待った。
また鼓動が早鐘を打つ。

「どうして付いてないか。聞いて欲しいの」


ちっぽけな事だったのに。どうでもいい事だったのに。
彼女は語りだす。
でも……聞いてあげることが救いになるかもしれなかった。

「すごく不思議な話しなの」
返事をする事無く黙って聞いていた。

「3次元って聞いた事ある?」
頷く。あまりに突飛な質問だと言うことは分かっていたが、何も言わずに頷く。

「縦と横と時間。この三つで三次元だよね。私たちの世界だよね」
そうだ。確かにこの世界は三次元らしい。数学者なんかがそう表すだけだが。
763500KBまだー?:04/10/04 04:57:05 ID:s9UP586z
「三の次は四だよね。だから四次元っていうのもあるの」
よくわからなかった。理解できたのは、3の次は4だと言うことくらいだった。

「縦と横と時間。この三つに更に何かが加わるらしいの」
縦と横と時間に加わるもの? 想像できるはずがない。
あまりにも不可解な話しだったが、僕の心の奥底には興味が湧き始めていた。

「それでね。私たちはどうやって産まれてきたかわかる?」
答えるまでも無い。母親の卵子が受精し発生した。それだけだろう。
僕は簡潔にそう答えた。

「本当に? 本当にそんな産まれ方だって言える?証明できる?」
証明はできないかもしれないけど、そうに違いない。揺ぎ無い事実のはずだ。

「ごめんね」
まただ。彼女は話の続きを話すのを止めてしまった。

それに、何を言いたいのかまるでわからない。
伝えたい事が一貫していない。次元の話しや産まれてきた事の問いかけが何故。
何故彼女の異常性を解説する事なのだろうか。

わからない。わからない。だから僕は続きを促した。
764500KBまだー?:04/10/04 05:03:59 ID:s9UP586z
「私たちはね。創られたの。創造主が私たちを作ったの。神様みたいなもの」
今度は宗教の話題だ。

「神様って言ってもね、実際は何でもないんだ。普通の人とまるで同じみたいなものなの」
意外だ。神様はいかに素晴らしいかの説法が始まるのかと、思い込んでいた。

「お酒を飲んで酔いつぶれたり、徹夜をしてへとへとになったり。上司に気を使ったり。本当に普通なの」

「そりゃー随分しょぼくれた神様だなー。それに上司って」

クスッと笑い、彼女は続ける。

「でもね。やっぱり神様なんだ。だって、私たちには無いものを持ってるから」
無い物。それは何か。

「その、私たちには無くて神様にはある物が、さっき話したあれなの。三の次」
三の次。縦と横と時間の次にあるものか。
765500KBまだー?:04/10/04 05:19:56 ID:s9UP586z
「四次元の人たちが私たちを創ったの」
楽しい。彼女の話を聞くのは楽しかった。
不思議の国のアリスを親に聞かされた時の様な気持ちの昂ぶりだ。

「四次元の人は私たちの存在を自由に覗き見れるの。というより、創造するの」
覗き見?存在を創造? 少し難しくなった。

「でも私たちには四次元の人なんて絶対わからない。これはしょうがないことなんだけどね」
それはそうだ。今まで気づかなかったんだから。

「それでね。私にあなたを受け入れる穴が無いのは、創造主がそう創ったからなの」
突然現実の話題とおとぎ話の線が結ばれた。
アリスは決して僕たちの生活に踏み入ることは無かったというのに。

「どんな風に私を創ろうと、神様の自由だから仕方ないよね」
楽しい気分が、ほんのちょっとだけ消えうせた。
彼女の現実を再認識させられてしまった。

766500KBまだー?:04/10/04 05:51:54 ID:s9UP586z
「両親から生を受けたわけじゃないの。ある日突然私たちは産まれたの」
どうやらアリスは帰っていったようだ。これで安心できる。


「神様もね。Hなんだ。女の子の裸が好きなの。だから私たちは産まれたんだ」
ちょっとした疑問が浮かんだ。自問する事無く口にした。

「女の子の裸が好きな神様なのに、どうして君の大事な部分がないんだ?そこは一番大事な気がするんだけど」

「あのね。これはすっごくふくざつなじじょうがあるの。神様もたくさんいてね、とっても偉い神様もいるの。
その偉い神様がね、普通の神様に命令するんだ。『女の子の裸を創造する時は、マムコを隠しなさい』って」

意味が理解できない。 神様が複数?上下関係?そういえば上司がいるとか言っていたが
それに女性器を隠す?なんて人間くさい神様なんだ。


「なんだかさ、神様って随分人間くさいんだね。」

「だって神様はね。自分たちを基にして私たちを創造するの。似ていて当然なんだ」
そっか。そういう事か。 素直に理解できた。でも素直に理解できた自分が少し不思議だった。

「それでね。私たちが創造される時ってよく隠されるものなの。でもね、わざわざ隠すのってちょっと面倒な事なの」
隠すのが面倒。神様側の都合か。

「だから、初めから描かない事もあるんだ。」
初めから描かない。女性器の事か。

「神様は都合のいい様に創造できr」
「ちょっと待って! 初めから描かないって……それが君に付いてないって事の理由なのか!?」
767500KBまだー?:04/10/04 06:10:27 ID:s9UP586z
アリスは帰ってなど居なかった。
こちらの隙を付いて、僕らの生活に溶け込もうと画策していた。

「一体なんなんだい!? 君の話はわけがわからないよ!」
おとぎ話が現実にあった出来事だと、何度も何度も説得されている。

「創造主は私に性器を作らなかったの。都合がいいから」
創造主?そんな物があってたまるか。

「神様はね。貴方にも細工をしているの」
僕に……何が?30年生きてきて自分の身体に異常を見出したことなんて無い。

「鏡に映った自分の顔を見て」
言われたとおりに鏡を覗き込んだ。恐る恐る。
そこに映っていたのは平凡な自分の顔。

「目がないの。貴方には」
め?めってなんだ?【め】で聞き覚えのある物と言ったら植物くらいしか。

「私の顔をよく見て。これは何?」
彼女は自分の顔に向けて指を指し、僕にそう尋ねた。
その指の先には瑞々しく潤った白と黒の物体がある。すごく不思議な見た目をしていた。


「これは何?」

彼女はもう一度尋ねてきた。

だけど僕はそれに答えられなかった。

768500KBまだー?:04/10/04 06:24:53 ID:s9UP586z
言われてみれば不思議なものだ。
ずっとずっと見てきた物なのに、まるで違和感を感じなかった。
違和感を感じること出来ないようにされていたような気さえする。
自分には無くて彼女にはある。


自分には無くて彼女にはある?


僕は確かに彼女の股間を見た。そこにはなかった。何も無かった。


僕には【め】が無いんだろう。きっと。そして彼女には性器がないんだろう。きっと。


なんでだろう。
それも創造主とやらが決めたことなのか?
創造主ってなんだ?
神様?
そんな物が存在するはずないじゃないか。
でもどうして?
馬鹿らしい。
神様なんて馬鹿らしい。
きっと彼女は自分の身体の異常性を説明するのがつらかったんだ。
だから神様のせいにしたんだ。きっとそうだ。
彼女はつらいはずだ。
奇形のようなものだろうか。生まれつき指が6本だったりする。
だから彼女には生殖器官がなかっただけだ。
でも彼女はその現実が受け入れられず、【神様】を自分の中で作り出したんだ。
自分の身体の異変を正当化するために。
心が壊れてしまわないように。
769500KBまだー?:04/10/04 06:34:16 ID:s9UP586z
「君の考えている考えは精神的異常の一つだ。直し方を俺は知らないが俺に任せろ」

「神様なんて言われても、すぐには理解できないのは当然ですよね」



それはそうだ。仮に神様が存在すればだが。
彼女を救ってあげないと。つらいかもしれないが、現実を見つめてもらわないと。

「どうして今まで生きてきて『目』という存在に違和感を持たなかったの?」

また【め】だ。またその話しだ。違和感だって?
よくわからないが、そんな物はどうだっていいはずだ。





いや、よくない……か?

あって当然のものが自分には無い。
それがなんなのかわからなかった。
違和感一つ覚える事無く生きてきた。
どうしてなんだ?
僕は神に、そんな風に創造されたとでも言うのか?
馬鹿馬鹿しい話しだ。
何が神だ。
きっと僕の【め】にも理論的な説明が付けられるはずだ。

770500KBまだー?:04/10/04 06:45:33 ID:s9UP586z
「何か理由があるはずだ」
怖かった。彼女の語る言葉が。
必死で否定した。

「もちろん、それでもいいの。ただ、事実は変わらない。」

「事実って。それはありえないよ」
僕はまた否定した。

すると彼女は僕の目の前でピースサインをした。

「どうしたの?突然」
穏やかに尋ねた。

「私が今何をしているか、わかる?」

「ピースしてるだけ……何かいい事でもあったのかい?」

「どうして私がピースしているってわかるの?」

どうしてわかるのだって?わかるから、わかるという答えじゃ駄目なのか?
うまく言葉にできない。彼女が目の前でピースをしているから、わかる。それだけの事だ。

「私の手が見えてるんだよね。ピースをしている私の手が」

「もちろん」

「どうして?貴方には目が無いのよ。見えるはず無いじゃない」
771500KBまだー?:04/10/04 07:00:51 ID:s9UP586z
見えるはずが無い?【め】が無いと見えないというのか?何もかも?
でも僕は見えている。確かに見えている。彼女の手が。ピースサインが。

「見えるっていうのはね。目からの情報を脳が処理することなの。貴方には物を見ることが出来ないの。本当はね」
【め】だ。また【め】だ。自分を否定される。自分の存在自体が否定される。

「貴方は錯覚しているだけ。見えているって。それは神様が貴方に情報を直接送り込んでるからなの」
また神様。自分の存在を否定する神様。今までの常識をぶち壊す神様。
嫌いだ。神様なんて嫌いだ。平凡な生活を奪う神様なんて嫌いだ。

「そういうものなの。貴方は神様が創造した一人の人間。」
772眠いので終わり:04/10/04 07:02:34 ID:s9UP586z
「じゃあ……じゃあ君はなんなんだ?どうして神が居るって知ってるんだ?」
少しだけ混乱し始めた僕は彼女にそう疑問を投げかけた。














「ごめんなさい。そこまで設定してなかった」
「 マジかよΣ(゚Д゚)ガーン」
773眠いので終わり:04/10/04 07:03:30 ID:s9UP586z
            / |  ||ヽ { ,r===、   \| _!V |// //  .!   |
            | ||   |l |ヽ!'´ ̄`゙   ,  ==ミ、 /イ川  |─┘
            | ハ||  || | """ ┌---┐  `  / //  |
            V !ヽ ト! ヽ、    |     !    / //| /
               ヽ! \ハ` 、 ヽ、__ノ    ,.イ/ // | /
    ┌/)/)/)/)/)/)/)/)/)/)lー/ ` ー‐┬ '´ レ//l/ |/
    |(/(/(/(/(/(/(/(/(/(/│||      | \  〃
  r'´ ̄ヽ            | |.ト      /  \
  /  ̄`ア             | | |  ⌒/     入
  〉  ̄二) 知ってるが     | | |  /     // ヽ
 〈!   ,. -'               | | ヽ∠-----', '´    ',
  | \| |  上からの圧力で  | |<二Z二 ̄  /     ',
  |   | |               _r'---|  [ ``ヽ、      ',
  |   | | 教えられない   >-、__    [    ヽ      !
774眠いので終わり
                       /,. "    __         \
                     /   ,.、-‐''" ゙ヽ、 ''"´ ,.    \
                      |  _,.-'"      ´ヽ. ´´      、 ヽ
                     Y'"           l        ヽ. 、!
                     l             /          ゙、l
                        l   __,,......,,__    ヽ,     ,,...,,_  ゙,l
                    l´゙、zr''"´_ ̄``'''''‐-、―‐゙,---,r'",.-‐.,l   !
                       !:.:.:}:.:.:.:.:.:lj ,`:.:.:.:.:._,.ノ    l/´ 'r-、 !l  ./
                     l:.:ノ:.:.:.:.:.`´:.:.:.:;r'"        <'‐,/.!  l
              ,.-、      r''゙ ヽ、_:.:.:.:.:/        ,.--‐''゙ /  |    教えてあげません
     ,.-、.,_      /  l!    ヽ、_   ̄´´         r---‐'゙   .j
     /  ヾ`'''‐-、. ゙、  .l!      '=、.___,,...ヽ      l  \、._ ヽ、
     ヽ、   \ノ_,.,ヽ.l   ヽ       r=ァ''"´/        / ,,..-'゙::;:/ヘ-、゙''‐、
   _,,,..r‐゙ヽ、  ヽ‐'゙ /`  ゙、     ヽ,` ̄´     _,.r‐'゙,. ''゙:::;:-'" /   ゙,ヽ
-‐'''"_,,.、-‐'''"\.__ノ  l.     ゙,       / `     ,.、 ''"‐''"´,.-''"   /    〉、
‐'''"´   ヽ、.   ゙ヽ、  '、    ノ     ヽ、_,,..->:::::::::::;::-'''゙    /    /:::::::
       〈`ヽ、.   `ヽ.  、/           /"゙、r''"     ./    /:::::::::::::
      /! _ ``''‐、._,ノ-、.l         _,.z'゙/,.., ´     /    /:::::::::::::::::
      /:::l、.\.,____/:l      ,,. ''゙;::'゙ /´::::!   ./    /:::::::::::::::::::::
     /::::::::::`ヽ、,,,. -'":::/-‐‐‐'''''''"´::/ /!:::::::::l  /    /:::::::::::::::::::::