SS投稿スレッド@エロネギ板 #8改め

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817名無しさん@初回限定:2005/07/20(水) 02:35:00 ID:FlMrWIQZ
>>811-813
比良賀視点ってのが珍しいけどいいっすね!
GJ!!
818名無しさん@初回限定:2005/07/20(水) 07:32:20 ID:aKhtzAq6
このあたりのシーン好きなんだよ。
裏ではこんな会話がされてたんだろうな。

>816
期待してる。
819名無しさん@初回限定:2005/07/20(水) 08:02:25 ID:Pbplb3Fm
>814-818
感想アリ。欲を言えば、批評が欲しいかなーとか。
習作程度なら2,3本くらいあるけど、こういう形で出したのは初めてなんで。

自分こういう「間を補完するもの」が好きだから、今後もこんなカタチで書くとオモ。
とりあえず、トーニャ萌えなんで、トーニャ関連書ければ、とか思ってる。
820名無しさん@初回限定:2005/07/20(水) 12:15:28 ID:d045jSYm
じゃあ言う。どうせなら、1レス目で徹頭徹尾シリアスで行って
2レス目は刀子さんのパンツ見えたお。のギャグ文にしてでオチつけてほしかったお

まぁやおいってやつだね
821名無しさん@初回限定:2005/07/20(水) 13:49:43 ID:HLw1HrLr
>>819
批評というか、単なるいちゃもんになるけど。
「それでも折れることのない肉厚の刀」と「それでも現状を把握していた」、
割と近い文章で同じ「それでも」が繰り返されているところが気になった。

あと最後の「結論から言うと〜」のあたりが若干テンポが悪いかと。
時制を先取りしないで普通に「比良賀の心配は杞憂だった」で良かったと思うし、
杞憂じゃなかった「心配の半分」というのが「必要ないはずの」「少し質は異なる」と二度も
否定的なニュアンスで語られているんで結局何なのか分かりにくくなっている。

全体は良かった。原作やった人なら光景が目に浮かぶと思う。
822819:2005/07/20(水) 17:34:28 ID:vMeJXuwi
>821
thxです。…推敲不足、かな。一晩くらいかけたつもりだったんですが。
注)本当に投下するか迷っていたヘタレとも言う。
>820
ギャグは……正直苦手。まぁ、課題ではありますが。
823パルフェショコラより クリスマス前夜:2005/07/21(木) 00:16:20 ID:y2W2NqXZ
 ガラガラッ…
 私は引き戸を開けると、ゴム草履をツッカケてベランダへと出た。
 12月23日深夜。雪こそ降ってはいないものの、冬真っ直中の風は冷たく頬を切る。
 もちろん風邪をひく訳にはいかないから、普段着の上から厚い綿の入ったどてらを着込んで私は外の冷気に備えた。
 問題なのは、そのどてらが私に全く似合わないものだということか。だけど別にどてらに責任がある訳じゃない。むしろ似合わない原因は私のほうにあった。
 頭の後ろでしっかりと結わえられた…仕事の邪魔になるのが嫌だからだけど…金色の髪と白い肌は、とても純和風の服装が似合うはずもなかった。まあ、それはフランス人の母方の祖父の遺伝であって、仕方のないことだし私自身それを疎ましいと思ってるわけじゃない。
 私の名前は花鳥玲愛。今年駅前に新設された巨大ショッピングセンター「ブリックモール」のに店を構える喫茶店「キュリオ」のチーフを務めている。
 いまは仕事を終えて帰ってきて、あくまで「いつも通りの日課」として夜風にあたりにベランダに出たところ。
 チン…
 隣のベランダから、仕切りのボード越しにオイルライターの蓋が弾かれる音が聞こえてきた。そしてそのまま煙草に「彼」が火を点ける気配が伝わってくる。
 私達二人の距離は、たぶん50cmも離れてはいない。「非常の際にはここを破って隣へ脱出できます」と書かれた、たかがそんな程度の仕切りが二人を分かってはいたけれど。
 「偶然ね」
 私は隣人に声をかけた。彼がベランダに出てきてたのは物音でわかってはいたけど、彼が出てきた時間に「偶然」私もベランダに出たくなったのだから、まあ、嘘ではないと思う。
 「そだな」
 彼は…隣人にして同じブリックモールでのライバル店「ファミーユ」の店長の高村仁は、そのあたりには突っ込むことなく返事を返してきた。
 「いよいよ明日ね…」
 私の言葉の一つ一つが、白い霧になって夜空に吸い込まれていく。明日は12月24日。クリスマス=イヴ。私や彼の店のようなケーキがメインの喫茶店にとって、一年で一番忙しい一日。
 「ああ。…花鳥も今夜は早く寝ておいたほうがいいぞ」
 彼は当たり前のようにそう答えた。
 「………」
 私の沈黙を、仁はどう受け止めたのだろう?
 「…おい?」
 訝しげな彼の声が聞こえてくる。
824パルフェショコラより クリスマス前夜:2005/07/21(木) 00:18:32 ID:y2W2NqXZ
 「…『花鳥』って、いったい誰の事かしらねぇ〜!ファミーユの店長〜!」
 私は声に目一杯険を含ませた。実は彼の店には私の義理の妹の花鳥由飛がいる。それが紛らわしいからと名前で呼び合うようにと約束したのが、ほんの一時間前のキュリオ店内でのこと。
 まあ、本当に「紛らわしいから」という理由以外のなにものでもないはずだから、どうでもいい事には違いないんだけど、さ。
 「…悪かった、玲愛」 
 仁は大人しく負けを認めた。以前とは違ってここから言い争いにならないのが、少し寂しいような気もする。
 「まっ、いいでしょ。許してあげる」
 ちょっと茶化して言ってみたけど、今の私は相当に意地悪な顔をしているに違いない。
 私達は帰りもずっと一緒だった。もちろんその間中喋り通してたし、名前でも呼び合い続けた。でも…互いの顔が見えるから話せないこと、互いの顔が見えないから話せることというのも確かにある。
 「…ねぇ…仁…」
 夜の闇に流れていく紫煙が鼻孔をくすぐる。煙草の匂いは正直好きじゃない。でもこの匂いが隣にあるのも、すでに今の私の日常の一つだった。
 「ん…?」
 煙を吐ききったタイミングで彼は答えた。
 「『あの人』のことだけど…」
 そこからは言葉が出なかった。私の視界では遠くを電車の明かりが時を刻むかのように右から左へと流れていく。
 仁は私の言う「あの人」が姉の由飛を指していることを知っている。なぜ私が「由飛」とも「姉さん」とも呼べないかということも…。もちろん私と由飛がそんな関係となるにはいろいろあったんだけど、一番の原因は、私自身。
 仁は…続きを促すようなことはしなかった。ただ黙って紫煙をくゆらす。
 「………なんでもない」
 私は今更何を訊くつもりだったのだろう?いや、逆に訊きたいことがありすぎたのか…。
 仁は由飛に魅かれてる。それは事実。だってさっき店内でそれを尋ねたときに彼は否定をしなかった。
 それは仕方のないこと。だって由飛は私なんかと違って他人を魅きつける魅力にあふれてたから。…昔っから!
 だから…私は、逃げてきた。逃げるしか、なかった!憎むこともできずに、ただそんな義姉が羨ましくって妬ましくて、そしてそんな自分が大っ嫌いだったから!
825パルフェショコラより クリスマス前夜:2005/07/21(木) 00:20:30 ID:y2W2NqXZ
 なのにこいつは…隣のベランダでのんきに煙草なんかふかしてるこの馬鹿は、私に逃げることを許さないのだ!
 眼下に点在する小さな灯り達が他人顔でクリスマスイヴの前夜を祝っている。遠い…それらは私からは酷く遠い…。
 「玲愛…寒くないか?」
 仁が声をかけてきた。たぶん、知らずに時間が経っていたのだろう。
 言いたかった。そう思うなら抱きしめてよ!って。由飛じゃなくて私を!って。
 …言えるわけがない。
 「寒いに決まってるじゃないのよ!」
 急くようにそれだけ投げつける。
 「なら、寝ろ。明日は倒れるわけにはいかないんだから」
 相変わらずの落ち着いた口調が、妙に小憎たらしくて…愛しい。以前私が風邪で倒れて看病してくれた時と変わらぬ物言い…。
 「…寝るわよ。おやすみっっ!」
 言い捨てて私は踵を返した。そして部屋に帰ろうとして…何故だか数瞬だけ躊躇う。
 「…ああ。また明日な。おやすみ」
 その言葉を聞いて初めて私の足は仕事を始めた。


 照明を消してベッドに潜り込む。…何も考えないようにと思えば思うほど、不安が胸の中に染み渡っていくようだった。
 明日、すべてが決まる。私と、由飛とそして仁の関係が明日変わってしまう。
 それは、逃げられない戦い。そして多分…ううん絶対、私の負け戦。
 それでも…。
 「仁ぃ…眠れないよ…」
 私は頭から布団をかぶりながら、漏れ聞こえないようにそれだけ呟いた…。


作:797  表題:クリスマスイブ前夜>>823-825
826超短編「我が主へと」(あやかしびとSS):2005/07/21(木) 00:20:33 ID:wrjVlTq1
貴様はどうするつもりだ?
我が問いに人は答えない。
主…元主と言った方がよいのか?ともかく、あの鬼はすでに悪鬼といえる範囲を超越しておるぞ。
それでも人は答えない、聞こえてはいるはずだ。
そうか、未だに悩むか。いや、悩むであろうな。
人を辞めるか否かの瀬戸際なのだから。あの鬼はすでに最強、倒せる個体は地上にはおるまいて。
だが人よ、貴様が妖に立ち戻ればあるいは勝機もあるであろうな。
まあいい。考えて答えのでる問いではあるまいて。
では我は眠るぞ、必要とするなら我が身を持って行くがいい。

──廃港

投げ捨てたか、悪鬼を目の前にして良くぞその行動をとれたものだな、貴様の覚悟しかと聞き届けたぞ。

さあ取り出せ、さあ振りかぶれ。我が名は貫く者カンフュール!!
悪鬼を貫き、我が主の元へと貴様の意志を届けてやろう!
さあ主よ、共に参ろう。残り少ない時間ではあるが、主の弟子が帰りを待っておるぞ。

…ふむ我が仕事は果たしたな、では先に逝っておるか。

最終決戦一幕。
827797:2005/07/21(木) 00:32:16 ID:y2W2NqXZ
いやあ、久しぶりの一人称でかなり手間取ってしまいました

>>819
んと、俺からは文句のつけようが無いです
むしろ「固定視点の三人称」の見本として保存すべきと思うくらい
俺がとある場所でカキコしたのを引用すると


>一人称は、描写が一方からの視点である程度固定されてしまうので、客観的な描写が難しいんですが、反面感情移入しやすく読みやすい
>三人称は、コツと言うかタブーを破らないようにするのが大事かな?
>例えば、一番やってはいけないのは、同じ現場にいる複数の視点をこまめに追ってしまうこと。これをやってしまうとゴチャゴチャしてわかりにくい文章になってしまいます
>AとBが例えば公園で話をしてたとします。この場合は両方の内面を表現するのは避けて、心理描写はあくまでAのみ。Bの心理描写は表情や態度などから表現します
>逆にAとBが喧嘩して別れた場合、文章の目的にもよりますが、場面を切り替えて心理描写するのも可でしょう
>まあ、小説だけじゃなくてむしろ映画的手法ですが…


これの理想形ですね
あと、やっぱり「読みやすい」ってのが一番でしょう
まあ、俺の評価基準もかなり偏ってるとは思いますけど
例えば話題になってるラノベがあって、それを本屋で開いてみた時に
「なにさ」
「なんだよ」
「けれど」
みたいに「かぎ括弧」が3つ並んでるのを見た瞬間に読むのをやめてしまう、そういう人間ですから、俺
828名無しさん@初回限定:2005/07/21(木) 00:38:28 ID:wrjVlTq1
うお、かぶってしまうとこでした。申し訳ナサス
ちゃんとリロードはしないとあかんね。
829797:2005/07/21(木) 00:42:53 ID:y2W2NqXZ
>>828
こちらこそ。引用先引っ張り出すのにかまけててリロード忘れてました…(汗

>>819
あ、あくまで上のは「ラノベ」に対する基準ね。SSでは他の板でもそうですけどそのあたりは気にせずに脚本形式のだって読んでますから
「まぁいいか。それじゃ---------死、ねぇっ!」
一奈の手から炎のツララが投擲された。
巨大な質量と凶悪な破壊力を秘めたソレは真っ直ぐに九鬼耀鋼の顔面へと吸い込まれていき・・・

グシャリ

九鬼の頭部が消滅した。
「アッハハハハハハ!終わり終わり、終わっちゃたねー、くきよーこー!!」
一奈は笑う。
先ほどまで自分を殺すと言っていた人間が、自分を息子の仇だと言っていた人間が、復讐のためだけに生きてきたと言った人間が、結局自分に傷一つつけることができずに力尽きたのだ。
これ以上の喜劇が存在するだろうか、と。
「フ、フフフフフフ・・・。全く本当に見かけ倒しだったわね!何が、殺すぞ、よ。殺されてるのはアンタじゃない。キャハハハハッ!!!」
笑う、笑う、笑う。
手が鉄板に溶接されているせいで、頭の無い九鬼の体は力なくそのまま機体にぶらさがっている。
それが余計におかしかった。
おかしくておかしくて涙が出そうだった。
笑うことに夢中すぎて、一奈はソレに気付かなかった。
鉄板に溶接された九鬼の手、そこにわずかな力が込められていたことに。
「キャハハハハ、・・・ぇ?」
笑いながら振り返り、その場を離れようとする。
その時、ベリッ、と溶けた穴から耳障りな音が響いた。
反射的に視線を下げた一奈は信じられないものをみたかのように凍りついた。
ベリ、ベリ、ベリ。
既に動かないはずの九鬼耀鋼の手が鉄板からはがされ始めているのだ。
そして・・・。
手は完全に鉄板からはがされ、頭の無い九鬼耀鋼の体が自らの力で機体の上に這い上がってきた。
「何よ・・・アンタ、人じゃなかったんだ?」
当初の衝撃からはすぐに立ち直り、心底おもしろそうに一奈が言う。
床に降り立った九鬼の体は、その手を頭部に持っていくと、自分の頭が無いことを確認する。
その体が震えたかと思うと、消失した部位からは肉が盛り上がり、骨が形成され、九鬼耀鋼は正に一瞬で再生していた。
「・・・そのようだ。なにぶんここ数年間は自分が人だろうと妖だろうが、そんなことはどうでもよくてな。成り行きに任せた結果とでも言おうか。」
「ふ〜ん、まあいいや。考えようによってはコレって結構面白いことよね。なんたって・・・何度でも殺せるんだから!!」
吼えて一奈が炎のツララを放つ。
しかし、次に一奈の顔に張り付いたのは驚愕だった。
九鬼は放たれたツララをかわそうともしなかったのだ。
ジュウジュウと、肉の焦げる音が聞こえる。
体を貫いたツララは決して溶けず、そのまま九鬼の体を炎で侵食しつづけている。
本来ならば激痛が襲うどころか即死してもおかしくない傷である。
にもかかわらず、九鬼耀鋼は笑っていた。
「ハ、ハハハッ!いいぞ一奈!!その殺意、どんな状況であろうと自分の勝利を確信し続けるその自信!!やはり復讐の相手はこうでなくてはいけない!!こうでなくてはオレが報われない!!」
体にツララを突き刺したまま九鬼耀鋼が前進する。
「さぁ、一奈・・・。もっと殺しあおうじゃないか!」
右手でツララをつかんで引き抜く。
右手は炎に侵されることもなく、そのままツララを投げ捨てる。
「行くぞ!!」
九鬼が鉄板を蹴った。
一奈はツララを形成しようとして、停止。
妖となって向上したのは身体能力だけではない。
瞬時に自分のツララを形成してから発射までの一連の動作が完了するよりも相手の間合いへの接触のほうが早いことを計算。
有効な対抗手段として近接戦闘を選択。
炎を纏った貫手を放つ。
「ハッ!!」
しかし相手は人間の身であったころからその身一つで妖を打ち倒してきた魔人である。
力任せに放たれた技など物の数には入らぬといわんばかりに、抜き手は容易に捌かれ、体勢を立て直すまもなく顎を狙った一撃が繰り出される。
とっさに首を後ろにそらすことで回避。
そのまま後ろへ思い切り跳躍する。
追撃。
九鬼耀鋼の動きは速かった。
一奈の足が地面に触れると同時に九鬼の右足が振るわれる。
回避は不可能、一奈はとっさに腕を交差させることでの防御を試みた。
まるで丸太で殴られたかのような衝撃が一奈を襲い、体は背中から壁に叩きつけられた。
「く、カハッ・・・!?」
衝撃で肺の中の空気が搾り出された。
目の前が一瞬真っ暗になる。
視界が戻ると同時に目の前からせまる巨大な圧力を確認。
体をひねり、そのまま壁を離れる。
寸前までいた場所には九鬼の掌が打ち込まれていた。
接近戦では分が悪いと判断した一奈は、距離をとって自らの間合いでの戦いに持ち込もうとする。
が、九鬼がそれを許さない。
もとより狭い機内での戦いである。
距離をとろうにも少し下がればすぐに壁に背をつけることになる。
「チィ!?」
いまさらながらに自分にとっての戦闘条件の不利を悟った一奈であったが、もう遅い。
間合いはとれず、苦し紛れに放つ攻撃は全て捌かれ、蛇のような一撃は致命傷にならないようにするのが精一杯だった。
妖となって爆発的に向上した身体能力と体力であっても、それは無限ではない。
九鬼の一撃が触れるたびに、その限界は近づいていた。
「ッ!?何よ、アンタ!しつこい男は嫌われるんだから!!女の子にはやさしくしなさいよ!!」
苦し紛れに一奈が叫ぶ。
九鬼耀鋼は唇を歪ませそれに答える。
833名無しさん@初回限定:2005/07/21(木) 05:00:11 ID:NTpxkAaT
何度目になるかわからない苦し紛れの攻撃。
それが九鬼のこめかみを掠めた。
衝撃が脳に伝わったのか、一瞬九鬼の動きが鈍る。
そこで一奈は距離をおくことを選択するべきだった。
しかし彼女は追撃を選択した。
思い出さなくてはいけなかった。
九鬼耀鋼は近接戦闘においては一奈の数段上に存在することを。
疑問を抱くべきだった。
今まで触れることすらできなかったはずなのにという問題に。
気付かなくてはいけなかった。
体勢を崩したはずの九鬼耀鋼の瞳に宿る獰猛な光に。
「アハッ!も〜らい!!」
そして一奈は無邪気に笑い
「阿呆が・・・。」
九鬼の双掌に腹部に食い破られた。
「九鬼流絶招 肆式名山 内の壱 焔螺子。」
両の掌から伝えられた衝撃は一奈の内部に響き渡り、その全体をすさまじい破壊で蹂躙した。
「ガハッ!?あ・・・グエェ・・・!!」
腹部を押さえその場に崩れ落ちる一奈。
目からは涙が、鼻からは鼻水、口からは血と涎がとめどもなく零れ落ちている。
そんな状態の一奈に上から声がかけられる。
かろうじて顔を上げた一奈の目に入ったのは九鬼耀鋼の顔。
そこに浮かんでいる表情は、この世のものとは思えないほどに歪んだ喜びだった。
一奈は初めてこの男を怖いと思った。
「さて、一奈。決めたのか?」
九鬼耀鋼はそういった。
しかし一奈はそれが何に対する決定を指しているのかわからなかった。
時折嗚咽をもらしながらも沈黙していると、再び声がかけられる。
「決めたのか、と聞いたんだ。最初に選択肢は示してやっただろう?」
そこで一奈は体に電流が流れたかのよう体を硬直させた。
最初、この男はなんと言っていたのか。
思い出したくない記憶を無理に探ろうとしたとたん、九鬼耀鋼が動く。
最初に投げ捨てたカンフュールを拾い上げた。
機内のとっかかりにひっかかっていたおかげで飛ばされずにすんだようだ。
「決めていないなら今決めろ。決められないなら一つずつ試してやる。」
そしておもむろに、一奈の太ももにその先端を突き刺した。
「ギッ、ア、アアアアァァーーー!!?」
機内に絶叫が響いた。
九鬼はそんなことは全く意に介せずに、突き刺したカンフュールに体重をかける。
ズブズブと先端が一奈の足に埋もれていく。
「ヒグッ!痛いいたいイタイイタイ痛い!!」
「これが刺殺だ。次は・・・。」
目の前で苦しむ一奈に九鬼はゾっとするほど穏やかな声でつぶやき、その喉に手を伸ばす。
「絞殺だな。」
グシャリ、と一奈の喉が握りつぶされた。
「カッ!?・・・ッ・・・ッ!!」
喉を潰された一奈は叫び声すらあげることができなくなった。
ビクビクと痙攣する一奈に対し、九鬼の破壊は続いていた。
「その次はなんだったかな・・・あぁ・・・。」
今度は一奈の背中から異音が響く。
上から思い切り拳を叩きつけられたのだ。
ハンマーのような拳は筋肉を断裂させ、肩甲骨を叩き割った。
「撲殺だったな。」
連続する激痛に、もはや一奈は明確な意識を保てなくなっていた。
目は白目をむき、口は何かを求めるようにパクパクと開閉を繰り返している。
「さぁ、選べ一奈。選択肢はまだまだあるぞ・・・!」
それでも九鬼耀鋼は止まらない。
裂き、潰し、抉り、毟り、砕き、貫き、千切り、穿ち、そしてまた・・・。
ありとあらゆる破壊が一奈の体に行使された。
九鬼耀鋼がその動きを止めたとき、もはや一奈の体はところどころが骨と筋と腱と皮でつながれた肉の塊と化していた。
「・・・?」
それを掴み、目の前まで持ち上げると九鬼は信じられない、といった顔をした。
「なんだ・・・一奈。もう終わってしまうのか!?」
床に叩きつける。
「おい!こんなに簡単に死ぬんじゃない!ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ!!お前はまだ死んではいけないんだよ!もっとオレを痛めつけなきゃいけないんだよ!オレに血を流させなきゃいけないんだよ!!」
叩き付けた肉塊を足で何度も踏みつける。
「お前は強くなくちゃいけないんだよ!そうじゃないとオレはなんのために生きてきたんだ!?これじゃあ、あんまりじゃないか!この程度の結果を認められるわけがないじゃないか!」

九鬼耀鋼は狂っていた。

機内の隅で一部始終を見届けていたすずは震えが止まらなかった。
人とは・・・これほどまでに壊れるものなのだろうか、と。




で、あとは最高にハイってやつだモードの先生が「こんな弱いやつが仇のわけがない、仇でいいわけがない」とか言いつつ一奈の死体をポイ。
乗り込んできた双七君に「もっと強いやつが仇でなくてはいけない。お前はどうだ?」とか言って悪鬼モードであとはゲームストーリーの通りという妄想でした。
836名無しさん@初回限定:2005/07/21(木) 07:28:21 ID:4WFBtlng
GJ。
双七君遅れて到着の巻、ですな。
とりあえず、突っ込み。どうでもいいっちゃいいんだが、中は?
確か、すずを抱えてたはずなんだが…
837名無しさん@初回限定:2005/07/21(木) 09:03:59 ID:FELkYHeI
GJ!個人的に足りなかった先生VS一奈を補完できたので嬉しいよ。

超蛇足だが
>「ヒグッ!痛いいたいイタイイタイ痛い!!」
で沙耶の唄(の瑶)がフラッシュバックしたw
838名無しさん@初回限定:2005/07/21(木) 14:48:00 ID:qOU/HyNR
面白かった。
双七に事故死させられるぐらいならこっちのほうが見せ場があていいな。

まぁ、零奈が悲しげに一奈に止めを刺したりしたら最高なんだが。
839797:2005/07/21(木) 15:54:33 ID:y2W2NqXZ
GJ!
なんか本編っぽい文章だなあと思ったら、「回避。」とか「確認。」みたいな動詞を名詞化した体言止めが共通してるんですね
840名無しさん@初回限定:2005/07/21(木) 18:44:05 ID:nRX/Jmtv
>797
続きが気になるがこれで終わりなのかな
841797@携帯:2005/07/21(木) 19:56:12 ID:DPXORepv
>>840
ごめん。おしまいですm(_ _)m
そのつもりで署名とアンカーつけました
続きはゲーム中でのみなさんの24日の選択次第で

蛇足ながら俺の選択は「ブリックモール外(玲愛)」ですが…
842797 パルフェショコラより エピローグ:2005/07/21(木) 21:40:23 ID:y2W2NqXZ
 「私は頭から布団をかぶりながら、漏れ聞こえないようにそれだけ呟いた…。 」
 男はダンボールの脇にしゃがんだまま、手に取ったノートを読んでいる。
 「仁っ!なにサボってんのよ!男手はあんたしかいない……って、ああ〜!」
 金髪の女性…高村玲愛(予定)は、大声で叫ぶと仁の持っているノートを取り上げた。
 「あんたっ!なに勝手に人の日記読んでるのよっ!」
 彼女は怒りと恥ずかしさで身を震わせながら、涙目で抗議した。
 「あ…いや、えっと…」
 仁は必死で言い訳を考えた。そして…諦めた。
 「……読んだわよね?」
 彼女の背中から、黒いオーラのようなものが立ち上る。少なくとも仁にはそう見えた。
 「………うん」
 げしっ!
 仁の顔面に、玲愛の靴底がめり込んだ。
 「さっさと荷物持ってくるっ!早くっっ!」
 今日は郊外に新規に立てた喫茶ファミーユ本店への引越しの日。仁と玲愛が手を取り合って必死で頑張って築き上げた夢の、その第一歩となる記念すべき日。
 玲愛は手に持った古ぼけたノートに視線を落とした。
 「…まだ捨ててなかったんだっけ、これ」
  でももういらない。私達はこれから一緒に新しいページを書き込んでいくんだから…。



せっかくだったので、即興でオチをつけてみました
でも一応>>823-825で完成には違いないので、あくまで付け足しと思ってください
843名無しさん@初回限定:2005/07/21(木) 22:12:53 ID:nRX/Jmtv
続きわざわざすまねっす。
やっぱ同名の主人公はいいね、こっぱずかしいー。
844797:2005/07/22(金) 22:15:06 ID:fyjLL+Lz
>>843
いえいえ。こちらこそ拙いものを…
ってか、久々に「書き込みフォーム直書き」やっちゃいました

同名って「高村玲愛(予定)」の部分?そういえばあれって(予定)で良かったんでしたっけ…?(汗
845名無しさん@初回限定:2005/07/22(金) 23:29:05 ID:uhOpQiGH
>843はひとし君、って事でわ?
846名無しさん@初回限定:2005/07/23(土) 04:49:32 ID:5L9DkEve
ボッシュートされるが運命(さだめ)?
847797:2005/07/23(土) 21:36:33 ID:PB5G9Bap
>>845
ああ!(ポンッ!
848819:2005/07/25(月) 21:14:56 ID:jtO0I5xP
トーニャルート補完書了。
投下したいんだけど、470KB越えちゃいそ。どうしませう。
849名無しさん@初回限定:2005/07/25(月) 21:23:11 ID:3sBuw/c2
……一瞬、470KB超のSSが来るのかと思ってビビった。
850名無しさん@初回限定:2005/07/26(火) 20:16:26 ID:U6jrcHV+
>830
ちと遅いがGJ
九鬼先生好きだからすずルートのあれは可哀想だったよ
まあ復讐が出来たから幸せって訳でも無いんだろうが
「ではさっそく。おでこのめがねででこでこでこりーん」
「えっと、あの…ぼくは…」
「やあ、自転車くん。今日も元気かい?」
「うん、きみが頑張って直してくれたから。ほんとにありがとうね」
「そうか、良かった。じゃあ、また今度一緒に走ろうな」
──物陰のすずとさくら「やっぱりキモイわね」
「ていうか、怪しげな呪文とめがねのせいでキモイさ爆裂ですね」
「あんたが勧めたんでしょうが…」
「あははは〜、あ、別のとこ行きますよ追いかけないと」

「おでこのめがねででこで(ry」
「…」
「やあ、こんにちは…?」「…」
「どうしたの?ちょっと話したかっただけなんだけど?」
「…黙れ、そして聞けっ!!我が名は斬妖刀文壱!!あやかしを断つ刀也!!!」
「え?あ、うん知ってる」「ならば斬らせろ」
「いやいやいやいや、俺妖怪チガイマース」
「ならアレを斬るから身体貸せ」
「え?」
──再び物陰のすずとさくら
「あれって会長の刀ですよね?」
「そうね、どうやって持ってきたのかしら」
「なんか慌ててますよ?」
「あっははは、片言になってる─あれ?」
「あ、こっち見ましたよ?見つかっちゃいましたね─なんか、ちょっと殺気が…」
「おおお落ち着きなさい、双七くんっ!えと、えと、あ、あいむゆあし
852名無しさん@初回限定:2005/07/26(火) 21:55:52 ID:C1fFnZ7V
>>851
モニタにポカリ吹いた
──自転車置き場

「ではさっそく。おでこのめがねででこでこでこりーん」
「えっと、あの…ぼくは…」
「やあ、自転車くん。今日も元気かい?」
「うん、きみが頑張って直してくれたから。ほんとにありがとうね」
「そうか、良かった。じゃあ、また今度一緒に走ろうな」

──物陰のすずとさくら

「やっぱりキモイわね」
「ていうか、怪しげな呪文とめがねのせいでキモイさ爆裂ですね」
「あんたが勧めたんでしょうが…」
「あははは〜、あ、別のとこ行きますよ追いかけないと」

──校庭の隅っこ

「おでこのめがねででこで(ry」

「…」
「やあ、こんにちは…?」
「…」
「どうしたの?ちょっと話したかっただけなんだけど?」
「…黙れ、そして聞けっ!!我が名は斬妖刀文壱!!あやかしを断つ刀也!!!」
「え?あ、うん知ってる」
「ならば斬らせろ」
「いやいやいやいや、俺妖怪チガイマース」
「ならアレを斬るから身体貸せ」
「え?」
──再び物陰のすずとさくら

「あれって会長の刀ですよね?」
「そうね、どうやって持ってきたのかしら」
「なんか慌ててますよ?」
「あっははは、片言になってる─あれ?」
「あ、こっち見ましたよ?見つかっちゃいましたね─なんか、ちょっと殺気が…」
「おおお落ち着きなさい、双七くんっ!えと、えと、あ、あいむゆあしすたー!!」
「駄目です、すず先輩。なんかフォースにでも目覚めないとそれは信じられません!」

校庭はさながら地獄絵図、木々は斬られ(すずが避けた)、グランドには穴が空き(さくらがかわした)、正しき姿を留めてる物はなにもない。

「きゃー、惣七くんのバカー、姉不幸ものー!!」

──一方会長室、刀に見ほれる愁厳と仕事する伊緒

「見たまえ伊緒君。やはり小烏丸の刃筋は見事だぞ、繊細ながらも心強さを感じる。双七君に代わりにと渡されたがやはり素晴らしいな。」
「どうでもいいですけど校庭の修繕費は自腹でお願いしますね。」

多分これも日常、日々は事も無し。おしまい
855名無しさん@初回限定:2005/07/28(木) 21:23:17 ID:W0v1qiB8
会長なにげにひでぇw
856名無しさん@初回限定:2005/07/28(木) 23:00:41 ID:mPhaqshb
あともうすこしで次スレなのだが
ネタを投入しようにも今一微妙だ
>854はGJ。しかし妖なら神沢市内全員では。
857名無しさん@初回限定:2005/07/28(木) 23:20:32 ID:o5AIdnAx
>>856
神沢市民は人妖
妖なのは鴉か烏かすずくらいなもんだ
858名無しさん@初回限定:2005/07/29(金) 00:48:21 ID:Pge3MfEZ
>>750

遅レスですまんが、大好き。テンポ良くて良いなー。
このノリのをまたキボリ。
859名無しさん@初回限定:2005/07/29(金) 05:54:55 ID:5Fe6NWj/
保管サイトがなくなってる…
860名無しさん@初回限定:2005/07/29(金) 15:37:02 ID:dwEOcuPm
>>859
ttp://yellow.ribbon.to/~savess/
でいけると思う

…言って良かったのかな、これ
861名無しさん@初回限定:2005/07/29(金) 16:49:15 ID:rozQLcRG
個人的にはありがたい。すきな作品があったから。
でも管理人さん大丈夫かな。
862へたれSS書き@保管サイト”管理”人:2005/07/30(土) 20:26:14 ID:6ISHSQAa
sir,
海兵隊で殺したり殺されたりする訓練をしております!!
sir!!

ってのはともかく、ご無沙汰してますが保管サイトの管理人です。
もうちょいで自由な時間もとれるようになるんで、サイトの更新も近いうちにできるように
なるかと思います。
 まあ、暇ができたらボチボチ自分もSSでも書こうかねぇ。……その前に、エロゲー自体
ここんとこやってないけどさ(w
 後、保管サイトの方は当然見てもらってナンボっすからばんばん誘導してやってください

ということで、本格復帰は近いうちに。今は血と鉄と硝煙の中で露助と殺したり殺されたり
してますんで
863名無しさん@初回限定:2005/07/30(土) 23:35:23 ID:7CJtdwYE
次スレ立ててきました
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1122734008/l50

>>862
乙です!
テンプレ変更しておきました
864短編「笑顔でさよなら」(あやかしびと):2005/07/31(日) 00:23:41 ID:PAbbpRWh
エロゲ作品別の「あやかしびと11」>>288-289が元ネタ


 ああ、嗚呼。もう嘆く事すら出来ない。もう涙も流れない。
 代わりに出来たのは殺すことだ。代わりに流れたものは血だ。
 ざぁざぁ、ざぁざぁ。
 豪雨。降りしきる雨の中で、彼らは、彼女らは戦っていた。
 ざぁざぁ、ざぁざぁ。
 雨音を切り裂くように嗤い声が響く。男の笑い声。雨のせいで垂れてしまっているが、普段はつんつんとした髪型の男の、嗤い声。
 彼の名は武部 涼一だった。そして如月 双七だった。今はただの妖。名もなきあやかしが笑っていた。

 それに相対するは四人の男女だった。
 一人は教師。眼鏡をかけたどこか人のよさそうな男だ。草臥れたスーツはところどころ切れており、身体は満身創痍に近い。
 一人は師匠。隻眼で白髪の大男。わき腹を何かで抉られたのかどろどろと血を流している。傘を支えに、彼は立っている。
 一人は老人。だが既にその身は戦える状態ではなく。血にまみれ雨にまみれ泥にまみれ、大地に臥している。
 一人は恋人。かつて如月双七であったものを愛し、今も彼を愛し、それでも、それでも――決意した、女性。

 その四人――正確には三人だが――を見据え、名もなき妖は疾った。その手に持つは螺旋双剣。狙うは、隻眼の男、九鬼 耀鋼。
「魔刃――」
「させんっ!」
 凶刃が九鬼を穿つ寸前、まるで疾風の如くその真横に教師――加藤 虎太郎が現れ、人妖の能力にて鉄板すら貫く拳をまっすぐに振りぬいた。
 軽く舌打ちしてそれを避ける妖。その動きは人にあらず。止まれる筈のない速度だったのだが、その足から奇怪に生える刀の刃が大地を抉り、止まった。
865864:2005/07/31(日) 00:24:36 ID:PAbbpRWh
って新スレ立ってた。
そちらに最初から載せます
866超短編「一言、物申す」(あやかしびとSS)
自「今日は僕たちが適当にしゃべっていいらしいよ」
ク「でも、なにしゃべっていいかわからないよ」
包「いいじゃないですか、私たちが喋れることなどそうないのですから。」
傘「それなら我は言いたいことがあるぞ」
包「なんですか?」
傘「うむ、我が主にだ。」
ク「ああ、あの怖い人ですか?」
傘「そうだ、我は常々考えておった。我はなんだ?」
自「なんだ?って、刺突武器じゃないんですか?」
ク「あとは耐火バリア?」
包「なんかいつも刺さりたそうにしてますよね?」
傘「我は傘だ!!なんだ揃いも揃って人(物)を危険物扱いしおってからに!」
自「といわれても、危険物ですよどう考えても。」
傘「それだ!何故危険物扱いされるのかというと」
包「使い手の問題ですね」
傘「だろう?我は傘らしく晴れの日の駅のホームでゴルフのスイング練習でもしてほしいのに」
ク「普通に雨の時にさされるんじゃダメなんですか?」
傘「濡れるのはイヤだな、錆びたら刺さり具合も悪くなるし」

全「やっぱり危険物ですよ。あなた。」

どこかの異次元での日常。おしまい。