>>1乙カレリン
スレ立て人が前スレもハモリストっぽかった気がする
>>1 乙ー。
しかし、気がついたら随分と進んでたんだね、前スレ。
今スレもまあ、ぼちぼちのんびり行きますか……
なんでスクランのスレがこの板に・・・と思っていたら前スレもこの板にあったのかよ
7 :
1:04/03/10 00:39 ID:5FOVs7y2
>>2でコピペにミスった..._| ̄|○
旅に出ます 探さないでください
test
>>1 乙かれん。
ちょっと見てない間にもう次スレですか。
あの動乱期を乗り越えて、職人の皆様方よく頑張った。
>1
乙かれん。
>11
しみじみ同意。
ところで前スレ、じつはむちゃくちゃ神がかってたような気がしたのは漏れだけか。
ラストのサブキャラSS連発には正直降参した。
ラウンジにしてほんと良かったな・・・
一時はもうSSが読めなくなるかと思ったくらいだしな
職人の方々にはほんと感謝してます
久々に書き込んでみるテスト。
14日までにちゃんとSS書き上がるかなぁ……。
あの激動の時代を経て戻ってきてくれたSS職人さん達に
大きく感謝したい。
ハリーとプリキュア似の2人組のSS書こうとしたけど挫折しました、
やっぱ凄いねここのSS職人、モブであんなに書けるなんて
俺には無理だ。
>>14 ここにもホワイトデーを狙う輩が一人…
新スレの施行式は14日になりそうな予感。
各々方、刮目して待て!
いつもの分析ネタやる人いなくなったのかな
分校から飛べるページでやってますよ。
直リンはできないので、行き方だけ。
過去絵置き場→どうでもいい近況報告→俺とスクラン→BBS
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
28 :
おびた:04/03/12 23:33 ID:1mrurvJU
乙カレ
あぼーん
あぼーん
あぼーん
32 :
おびた:04/03/12 23:36 ID:1mrurvJU
乙カレ
あぼーん
あぼーん
35 :
おびた:04/03/12 23:39 ID:1mrurvJU
お疲れ
なんだかNA
SS管理人様、
上のは保存しなくて良いからね、
てか、保存しないでください。
38 :
Classical名無しさん:04/03/13 08:25 ID:sRH5raw6
>>37 何で?文章も上手いし内容もいいと思うのだが・・・。
まあ他作品のキャラクタとの絡みが気に入らないと
いうのは分かるのだが。
>>38 マジレスするなら、まず板違い。
内容的に明らかにエロパロスレ。
次にオーバークロス作品のつもりかもしれないが
登場キャラの名前を変えても全く違和感がない。
つまりSSとして既に破綻している。
また、この話の前後も投げっぱなしで、一体どういう経緯なのかさっぱり分からない。
設定も所々おかしい。
特に
>決して大きいとはいえない二つの柔らかな膨らみ
これでは沢近が貧乳のようだ。
文章は確かに下手じゃない、エロとしての内容も悪くない。
だがこのスレでは両作品に対する冒涜としか見られない。
本当に両作品が好きならば、このスレではなくエロパロの該当スレへ移ってやるべきだ。
>>38 それはね、こいつがただの荒しだから。
しかもいろんなスクランスレにマルチポストしてるから
>33-34のSSはあえて沢近である必要性がまったく無いような気がする。
普通のエロ小説の登場人物の名前を沢近と入れ替えただけっぽい。
>>40 前スレで彼のIDを見てみな
荒らしはスルー汁
43 :
Classical名無しさん:04/03/13 22:21 ID:SNYWEElM
つーか読んでるのかおまえらw
>>42-43 IDカコイイな
正直NGワードに引っ掛かって透明あぼーんされてるんで読んでない。
つーかNGに掛かるようなSSは読みたくない。
「……ところで拳児君」
食事を取り終えた刑部絃子が、台所の播磨拳児に声をかけた。
「あ?何だイトコ」
「さんをつけろ」
台所から、かちゃかちゃと食器のこすれる音が聞こえてくる。お決まりのやりとりの後、
絃子は思い詰めたように話を切り出した。
「洗い物が終わったら、早急に台所を空けて欲しいのだが」
「はぁ?別に構わねぇけどよ、何すんだ?銃の手入れか何かか?」
「……料理だ」
その瞬間、マンション内に盛大な音が響き渡った。エプロン姿の播磨が、慌てて居間へと
駆け込んでくる。
「どどどどうしたイトコ!?熱でもあんのか!?」
「……君はとことん失礼なヤツだな」
「いや、だって、お前が自分から料理するなんて言い出すわけねーじゃねーか!熱でおかしくなったか、
さもなきゃ明日日本が沈没するとしか思えねぇ!」
播磨が真剣そのものの表情で力説する。確かに絃子は普段ほとんど料理などすることはない。
しかし、本人にしてみれば腹立だしいことこの上ない言葉である。絃子は深い溜め息をつくと、
無言で愛用のモデルガンを取り出した。
「……ほう、そんなに私が料理するのが珍しいか、そうか」
独り言のように言うと、そのまま安全装置を解除し、引き金に指をかける。般若の表情の絃子を見て、
播磨は思わず後ずさった。
「い、いや、そういうことじゃなくてだ、な?イトコ、だからその銃をイデデデデデデデデ!
分かった、すまん!頼むからやめてくイデデデデデデデデ!」
「分かればよろしい」
たっぷり一弾倉を撃ち込んだ後、ようやく絃子は引き金から指を離した。播磨は哀れにも
傷だらけで床にうずくまっている。それを見ると絃子はモデルガンを下ろし、誰に言うとでもなく
ぽつりとつぶやいた。
「まったく、どうしてこんなことに……」
事の始まりはちょうど一月前、バレンタインの日だった。
「絃子先生!これ、受け取ってください!」
女子生徒が、満面の笑顔で絃子にチョコレートを差し出す。「またか」と心の中で愚痴をこぼし、
絃子は無表情でそれを受け取った。
「ありがとうございます!ちゃんと食べてくださいね、腕によりをかけましたから!」
そう言うと、女子生徒は元気に職員室を走り去っていった。職員室の外では、順番待ちの生徒が
大挙して絃子の方を見つめている。机に積まれた大量のチョコレートを眺めながら、絃子は
一つ大きな溜め息をついた。
「……これでも私は女なんだがな」
普通バレンタインと言えば、女性が意中の男性にチョコレートを贈る行事である。この場合
絃子が魅力的なのか、はたまたこの高校の男に魅力がないのか。ともあれ朝からのチョコレート攻めで、
絃子は完全に疲れ切っていた。
「毎年恒例とはいえ、刑部先生も大変ですね」
同僚の笹倉葉子が、絃子にねぎらいの言葉をかける。屈託のない笑顔が、絃子には何だか
とても憎らしく感じられた。
「……内心面白がってるくせに」
「何か言いました?」
「い、いや、何でもない」
慌てて絃子は発言を取り消した。下手なことを言って機嫌を損ねたりでもしたら、いったい
どんなことになるかわかったものではない。彼女と旧知の仲である絃子は、それを痛いほど
よく理解していた。
「昔からですよね、こうやって女の子からチョコもらうのも」
「それは忘れて……」
「いいじゃないですか、魅力がある証拠ですもの。はい、私からも」
笹倉が笑顔でチョコレートを差し出す。先程よりも大きな溜め息をつくと、そのまま絃子は
頭を抱えてしまった。
「……あのね、いくら何でも冗談が過ぎるよ」
「あら、私本気ですよ?普段お世話になってる刑部先生に、感謝と愛を込めて」
「……お世話になってるなんて、かけらも思っちゃいないくせに」
「何か言いました?」
「何でもないよ。とにかくそれは受け取れない」
少し乱暴に、絃子はチョコレートを突き返した。予想外の出来事に、笹倉が驚きの表情を
見せる。
「……ひどい。刑部先生のために、一生懸命作ったのに……」
「いや、教師が同僚の、しかも女性からチョコレートをもらうなんて生徒に示しが……」
「言い訳はいいです。刑部先生は私のことが嫌いなんですね……」
笹倉はうっすらと瞳に涙を浮かべ、言葉を詰まらせた。同僚の教師たちが、あっけに取られた様子で
二人を見つめている。さらに悪いことに、騒ぎを聞きつけた生徒たちが続々と職員室の外へ
集まり始めていた。絃子にとっては、非常にまずい状況である。
「わ、わかった!わかったから!」
結局絃子はチョコレートを受け取り、その場ですべてを食べ尽くした。
「……これで満足か?」
「ええ、ありがとうございます」
笹倉が感謝の言葉を述べる。その眩しいくらいの笑顔からは、先程までの悲哀はまったく
感じられない。
「じゃあ刑部先生、お返し楽しみにしてますから」
「ちょ、ちょっと!?」
絃子の叫びを無視し、笹倉が職員室を出て行く。ドアの所で思い出したように振り向くと、
最後に彼女はこう言った。
「そうそう。もし忘れたら、どうなるかわかってますよね?」
「!!」
絃子の表情が恐怖一色に染まる。硬直する絃子を尻目に、そのまま笹倉は笑顔で職員室を
去っていった。
「ったく、何考えてんだあの女は……」
傷だらけの腕をさすりながら、播磨が愚痴をこぼした。数時間ほど前から、絃子は台所に
籠もりっきりである。時々がちゃがちゃと音が聞こえてくるが、播磨のいる居間からでは
その詳細を知る術はない。
「まあ、大丈夫か。なんだかんだ言ってあいつ器用だしな」
播磨の脳裏に、絃子がリンゴの皮を剥いている姿が思い出される。入院という非常事態だったとはいえ、
女らしい一面もあるんだなと感心したものだ。それに加え、以前は家事をすべて一人でこなして
いたという実績もある。例え何を作るにしろ、それなりに上手くやるだろうと播磨は結論を出した。
しかし、
「……何だ、このニオイは」
予想に反して、台所から鼻を突く異臭が漂ってきた。悪い予感を胸に、播磨が台所へと向かう。
「やっぱりか!火ィ止めろ火!」
コンロにかけられた大鍋は、見事に黒煙を上げていた。
「まったく、出来もしねぇことをやるんじゃねぇ」
「……すまん」
「それ以前に、チョコレートを湯せんで溶かすってのは常識だろジョーシキ」
「……申し訳ない」
普段この家において説教をするのは、いつも絃子の方である。しかし今度ばかりは立場が逆転し、
播磨が絃子に説教をすることとなった。
「だいたいわざわざ自分で作らなくても、そこらへんで出来合いのヤツを買ってくればいいじゃねーか」
「いや、今度ばかりはそういうわけにはいかないんだ。頼む!拳児君、誰でもいいからお菓子作りに
長けた友人を紹介してくれ!」
絃子が深々と頭を下げる。鈍感な播磨ではあるが、絃子が何か非常にせっぱ詰まった状況に
あることだけは理解できた。それに、普段虐げられているとはいえたった一人の同居人である。
播磨は仕方なく携帯電話を取りだし、連絡が取れる友人を調べ始めた。
「チッ、んなこと言ったってお菓子が作れるヤツなんざ誰も……」
不安げな表情で播磨が携帯電話を操作する。そして数十秒後、ぴたりと播磨の動きが止まった。
「いた」
「じゃあ、そこで小麦粉を加えてかき混ぜてください」
「ああ、わかった」
言われた通りに絃子が手を動かす。出来上がった生地を冷蔵庫に入れると、絃子は「お菓子作りの先生」に
頭を下げた。
「ありがとう、塚本さん。助かったよ」
「いえ、私でお役に立てるのなら……」
髪を束ねた塚本八雲が、頬をかすかに赤く染める。播磨の言った通り、八雲の腕前は見事な
ものだった。汚れた手を洗いながら、絃子が自嘲気味につぶやく。
「その年で大したものだな。私も見習わなきゃいかん」
「そ、そんな……」
謙遜する八雲に対し、絃子は優しく微笑みかけた。以前絃子は八雲を「今どき珍しい娘」と
表現したことがあるが、どうやらそれは当たっていたらしい。学校における八雲の人気ぶりも、
何だか分かる気がした。
「それにしても、まさか君とはね……」
「え?」
「ああ、何でもない。こちらのことだ」
正直な話、絃子はまさか八雲を紹介されるとは思っていなかった。学校一の不良である播磨が、
学校のアイドルである八雲の電話番号を知っているなどと誰が予想しようか。呼び出すこと自体は
「担任」として絃子が行ったのだが、この事実は少なからず彼女に衝撃を与えた。
「まったく、拳児君も隅に置けないな」
「あ、あの……」
「何でもないよ、気にしないでくれ。さあ、続きをやろうじゃないか」
絃子が冷蔵庫から生地を取り出す。かくして八雲の指導の元、何とか絃子はホワイトデー用の
お菓子を完成させることができた。
「刑部先生、おはようございます」
職員室に到着した絃子に、笹倉が声をかけた。
「じゃあ、約束のものをいただきましょうか」
「分かってるよ。ほら、これ」
少し不満げに、絃子がラッピングされたお菓子を差し出す。笹倉はそれを眺めると、驚いたように
声を上げた。
「わぁ、手作りですね」
「……まったく何が『わぁ』だ。白々しい……」
「何か言いました?」
「何でもないよ、それで満足か?」
「ええ、大満足です」
満面の笑顔で、笹倉はお菓子を受け取った。緊張の糸が途切れたのか、ふっと絃子の表情が緩む。
その時、
「じゃ、私からも」
素早く絃子の死角に回り込むと、そのまま笹倉は絃子の頬に口づけをした。絃子の顔が、
瞬く間に赤一色へと染まってゆく。
「な、な、何をする!」
さすがに今度ばかりは絃子も黙っていない。今までの恨みつらみも重なり、絃子はものすごい勢いで
笹倉に食いかかっていった。
「どうしたんですか?ただのお礼ですよ、お菓子の」
「ふざけるな!ただ単に私をからかって楽しんでるだけだろう!」
「あら、照れなくてもいいじゃないですか。女同士ですし」
「これのどこが照れてるように見える!?」
「ふふ、昔からそういうところは変わらないですね。あの時も……」
「昔の話はいい!頼むから忘れてくれ!」
「そうですか?じゃあ、三日前の中華料理のお店でのことを……」
「だから何でそのことを知ってるんだ!もういい!バレンタインなんかこりごりだ!」
絃子の叫びが朝の職員室へとこだまする。結局絃子には、笹倉の手の平から抜け出すことは
できそうにないのであった。
というわけでホワイトデー記念笹倉先生×絃子先生SSを一つ。
何かもう、趣味丸出しで申し訳ないですm(_ _)m
絃子先生をおもちゃにする笹倉先生というシチュエーションが大好きなんですよ、ええ。
あからさまな百合でなくてもいいから、もう一度この二人の絡みが見たいですね。
ぐっじょ! お疲れ様でした。
笹倉先生が黒い・・・(w
なにげにおにぎりのスパイスまで利かせるとはやりますな。
待っててよかったー!GJです。
今日一日 このスレすごいことになりそうな予感。
なんか違う
GJ!普通に面白かったです。けど絃子先生は料理できそうなイメージが
58 :
54:04/03/14 19:31 ID:qU0wDsjc
_| ̄|○
59 :
Classical名無しさん:04/03/14 22:40 ID:zTo1drnw
いいです。笹倉先生に絃子さんが翻弄されるとは・・・怖い女性です。
お疲れ様でした!Good Job です。
お疲れさまッス&一番槍おめでとーございます。
程良く黒く、それでいてキュートな笹倉先生、堪能させてもらいました。
取り乱したり、大声を出したり、普段見られない絃子先生の醜態が
面白おかしく描けていて、氏らしい作風に仕上がっていますね。
あと、なによりも播磨が絃子さんを叱っている姿がとても印象深かったです。
さて、こんな文章を書いている時点で
>>54すいませんです。
間に合いませんでした。
がんばって今週中には何とかしたいです。はい。
最後に
>>52氏、お体の方はもうよろしいのでしょうか?
くれぐれもご自愛くださいな。
「じゃあねー、○○ちゃーん…」
「…あ」
「!!!や、やぁ一条」
「ホワイトデーのお返しですか…今鳥さん結構いろんな方からチョコ貰ってらしたんですね」
「ま、まーね」
「……」
「ヤベエソウイエバコイツニモムリヤリワタサレタンダッタコイツノブンヨウイシテネーヨマズイコロサレル」
「…どうかしましたか今鳥さん?」
「いやいや何でもねーって…はいよこれ一条の分な」
「!!!ありがとうございます!…あ、ごめんなさい何か催促したみたいになってしまって」
「あー、いや別に…」
「いいんですか、こんな立派なの頂いて」
「…そりゃミコチンのために用意したやつだからな(貰ってないけど)」
「?今鳥さん?」
「いやいやだから何でもないって…ほら、何かすごく気合の入ったのくれたからさ」
「……////」
「…あー、だから特に深い意味とかねーからあんま気にしねーでくれよ。んじゃな」
「あ、今鳥さん!…ホントにありがとうございました」
「あ、あぁ…ったく、どうも一条相手だと調子が狂うな…」
(振り返る。満面の笑みで手を振る一条)
「…ってかますますヤバイ状況に追いこまれてないか、オレ?」
おしまい。
「さて、今日のホームルームだが――」
ぐるり、と教室を見回す花井。
そして。
「都合によりなしだ」
「……は?」
突然のことに何を言っているのかわからない、という舞を尻目に、では僕はこれで、と教室を出て行こうとする花井。
「ちょっ、待ってよ!」
「すまない、舞君。僕はこれから大事な用事が……」
「ホームルームも大事な仕事でしょっ!」
困惑から一転、順調に怒りゲージが溜まりつつある舞に、仕方ない、という様子で表情を改める花井。
「今日は何月何日かな?」
「……三月十四日、だけど」
「そう、その通り。そして三月十四日と言えば、だ」
「……ホワイトデー?」
「ということで、だ。僕は今すぐ――」
と、そこで何かを思い出すように黙り込む。
「あの、花井君?」
「いや、すまない。僕としたことがずいぶんと気が動転していたようだ」
「別に、私はわかってくれればいいんだけど……それじゃ」
始めようか、と言いかけた舞に。
「君の分もちゃんと作ってきたのをすっかり忘れていたよ。受け取ってくれ、舞君」
「そーじゃなく……え?」
またしても突然のことに思考停止状態の舞に、遠慮することはない、と花井。
「……あ、ありがと」
「うむ!ではいささか遅くなってしまったが、僕は八雲君のところに行かねばならない。後のことはよろしく頼む」
「え、あ、うん……って!」
我に返っても時既に遅し、花井の姿はとっくに教室の中にはない。
「……」
「あの、舞ちゃん……?」
心配そうな友人の声に、なんでもないよ、と笑顔で答える舞。その表情が若干引きつっているのは、まあ、なんと言うか。
「はいはい、それじゃぱっぱとやってさっさと終わらせちゃうからね!」
言いながら、黒板に叩きつけるようにして走らせるチョークが。
少し、欠けた。
私事でしばらく楽隠居でも、とか思ってたんですが。
なんかもう、
>>58とか見てしまったら……いやはや。
さて、ここで終わっておくのもいつもみたいにだらだらーっとしなくていいかと
思ったんですが、やはり播磨とか沢近とか播磨とか播磨とか必要デスカ?
要らんと思う
66 :
:04/03/15 14:54 ID:En9jNKrU
>>64 沢近とか沢近とか沢近とか播磨はトテモヒツヨウデス
いちさん分(というより今鳥分か)は
>>61氏に補給させていただきました
ぜひとも沢近分の補給を
沢近分の補給をおねがいします
沢近分きてほしいワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
お前ら
>>63の「実は舞ちゃんも花井にチョコあげてた」
というシチュエーションに萌えないというのか?
沢近を
いっちゃあなんですが14日は日曜日だから
ホームルームなどないんですよー
・・・何故スクランの世界が平成十六年と決め付ける?
73 :
64:04/03/16 01:42 ID:YQ5.p6rQ
>>67>>70 落ち着け。
>>71 むしろ突っ込むべきは高校生にもなって律儀に普通の日にHRやってるところで……
さて、またいつものように暴走気味になったので、なんか性格がいろいろアレですが。
あと花井と播磨はバトル状態のままだとヤヤコシイので和解状態で。
宣言通り瞬殺された――なら最初から、という話ではあるのだが、そこはいろいろとあるわけで――ホームルーム後。
「――やるわね、花井君」
「いや、ありゃ違うだろ。絶対」
恋する乙女心を利用してうまく逃げたのよ、と言う沢近に呆れ顔の美琴。
「アイツがそういうのに頭回ると思うか?」
「……それもそうね」
「だいたいさ、その恋する乙女心ってのから間違ってないか?」
「あら、そんなことないわよ……いいの?美琴」
「……なんでそこで私に振るんだよ」
「だってバレンタイン――」
「だからあれはっ!」
「はいはい、そうね、そういうことにしといてあげる」
沢近のその態度に、実は今朝もうお返しはもらっただとか、少し――ほんの少しだけそれが嬉しかっただとか、そういう
ことは決して言うまい、と固く誓う美琴。
「ま、とにかく、よ。あれは絶対間違いないわね」
妙に自信満々の沢近に、晶が一言。
「愛理もそうだからわかるんだよ、きっと」
「そうなのか?沢近」
「なんでそうなるのよっ!私はね、もっと……」
「……もっと?」
「……なんでもないわよ」
「なになに?愛理ちゃんがどうかしたの?」
「別にどうもしてないわよ……それにしてもどうしたの?天満。ずいぶん嬉しそうだけど」
沢近の言葉にえっへん、と胸を張る天満。
「実はね――」
「ああ、もうなんとなくわかったからいいわ。烏丸君にもらったのね、お返し」
「う、そうなんだけど……自分で言わせてよ、愛理ちゃん……」
「いいじゃない、減るもんじゃなし。でも、確か渡せなかったとか言ってなかった?あなた」
「うん、あの日はそうだったんだけど、いろいろあってね」
「いろいろね……で、何もらったんだ?」
尋ねる美琴に対して天満が取り出したのは。
「……ソコイチのタダ券?」
「……そうね、私にもそう見えるわ」
「それ以外には見えないけど」
呆れ顔の二人――晶は相変わらずいつも通り――だったが、当の天満はこれでまた烏丸君と、と浮かれている。
「……まあ、本人がいいならいいんだよな、多分」
「カレー、ね……」
ぽつりと言ってから、ちらりと横を見やり――
「――播磨君ならいないよ」
「……あ、そう」
――不意打ちのような晶の一言を受け流す沢近。
「ん?そう言えばそうだな。さっきまでいたような気がしたけど……」
「ホームルームの前に出て行っちゃったよ、播磨君」
「どうせまたその辺ほっつき歩いてるんでしょ。さ、帰りましょうか」
そう言って立ち上がり、鞄と机の横にあったちょっと大きめのトートバッグを手に取る。
「ちょっと待て、まさかそれ全部……」
美琴の問いに、そうよ、全部お返しだけど、となんでもないように答える沢近。
「すごいね、愛理ちゃん」
「どうやって脅したの?」
「……晶、あなたね」
げんなりした顔で晶にそう言ってから、もういいわ、先帰る、とすたすた歩き出す。
「あ、おい!……ったく」
「愛理ちゃん……」
「愛理もいろいろ苦労してるんだよ」
「いや、お前がさせてるように見えるぞ、高野」
「気のせい」
しれっと言ってのける晶に、いいけどさ、と肩をすくめてみせる美琴。
「それじゃ行くか。沢近にゃ追いつくだろ、どうせ」
「うん」
「そうね」
かくして、三人も席を立ち、教室を後にした。
――さて、播磨はと言えば、ということで時間を若干戻す。
(どうせまた長引くしな、悪ぃが抜けさせてもらうぜ)
実際のそれは舞の手により五分とかからず終了することとなったのだが、そんなことは知るよしもない播磨、
授業が終わるとそそくさと教室を抜け出してきていた。
(まずは、と……)
段取りを考えつつごそごそと荷物をあさっているその横を。
「八雲くーん!」
花井が駆けていった。
「……んだよ、おい」
と呟いてからはたと気がつく。
(ってことはあれか、目的地は同じじゃねぇのか?)
げんなりしつつも、むしろやるべきことはその後に控えているため時間は浪費できない播磨。しゃーねえ、と
言いつつ足を進める。
そして。
「八雲君!僕の気持ちだ、受け取ってくれ!」
「……あー」
予想通りの展開に、茶道部の前で若干頭を押さえつつも、とりあえずドアをノックする。
「あ、先輩。どうしたんですか?」
ドアから顔を覗かせたのはサラ。室内の窓際では、全身からなんだかよくわからないオーラを立ち上らせている
花井と、少しおろおろしつつも向き合っている八雲。
「ん、ああ……」
取り込んでるとこ悪ぃな、と頭を後ろ手でぽりぽりとかきながら、袋の中から小さな花束と小袋を二つ取り出す。
「先輩、これ……」
「なんつーかな、ほらあれだ、礼はきちんとしねえとな」
相変わらずこの手のことを苦手とする播磨、傍目に見てわかるほどに真っ赤である。
「こっちは八雲の分ですよね。今ちょっと立て込んでますけど――」
見れば、出来れば感想を聞かせてほしいのだが、という花井に、おずおずとそのクッキーを口に運んでいる八雲。
「――直接渡した方がいいですよね?」
「いや、構わねぇよ。よろしく言っといてくれ、いろいろ世話になってるしな」
「そうですか?八雲もその方が喜ぶと思うんですけど……」
「……なんでだ?」
聞き返す播磨に、そういうところが先輩らしいです、と微笑んでから、それじゃ確かに、と受け取る。
「頼むぜ。んじゃな」
そう言って立ち去ろうとする播磨の背に声をかけるサラ。
「ありがとうございました、先輩」
満面の笑顔。
「……お、おう」
その一言に先ほど以上に真っ赤になりつつ、播磨はその場を離れた。
(ここからが本番だぜ……)
一息ついて動揺を振り払い、気合を入れ直す播磨。なんとなれば、その目的は。
(――天満ちゃん)
そう、肝心要の天満にまだお返しを渡せていない播磨だった。教室で堂々と渡す度胸などあるわけもなく、さり
とて話しかけようにも。
(アイツ、絶対俺に恨みかなんかあるに違いねぇ)
……誰が何を、は言わずもがなである。
ともあれ、そんな状況下で播磨が取った作戦とは、古典的な手段――下駄箱利用、というヤツである。既に大ポカ
で一度失敗している手ではあるのだが、失敗を乗り越えるのが男だぜ、ということらしい。
むしろ、世の真理は二度あることは、というやつなのであるが。
さておき。
「……まあ、一応な」
昇降口に到着した播磨、そう呟きながら最初に手をかけたのはその沢近の下駄箱である。その妙なところでの義理
堅さや、余計なところで気を回して実行するフォローが自身の問題を引き起こしているのには当然気づいていない。
そして。
「天満ちゃん……」
本命たる天満の下駄箱を開け、お返しであるところの小物入りの袋を入れ、さらに後で屋上に来てくれる旨を記し
た手紙を置こうとしたその時――
「何してるのよ、アンタ」
「ッ!!」
例によって例の如く、最悪のタイミングで最も聞きたくなかった声――沢近のそれを耳にする播磨。慌てて振り返り
後ろ手で下駄箱を閉じる。
「な、なんでもねぇよ」
「……そう。ならどいてくれない?」
「へ?」
「あのね、そこは私の」
「お、おう。そそそうだな、悪かった、じゃあなっ」
言うや否や、速攻でその場から逃げ出す播磨。
「……何よ」
ご機嫌ナナメの表情でそう呟きながら下駄箱を開ける沢近。
「――――」
中にあったソレを取り出して手に取った表情が、なんとも言えない複雑なものに変わる。何かを言おうとするも言葉
にならず、そのもどかしさに視線を下に落として。
「……?」
そこに落ちている紙切れに気がついた。拾い上げてみると、話があるから屋上に来てくれ、という内容の文面。
「……これって」
それが意味するところを考えようとした矢先に。
「ん?何やってんだ、沢近」
「っ……なんでもないわよ、別に」
こちらも絶妙のタイミングで声をかけられ、一瞬呼吸の止まる沢近。幸か不幸かその動揺に気がつかなかった美琴が、
もらいすぎて重くて疲れたんだろ、などと茶化してくる。
「美琴、あなたね……」
「はいはい、と。んじゃ帰るか」
ぽんぽん、と肩を叩きながら言う美琴に、ごめんなさい、と沢近。
「ちょっと用事思い出しちゃったから……」
「あ、私何か手伝おうか?」
「ありがとう、天満。でもいいわ、頼んじゃうのもなんだか悪いし」
「遠慮しなくてもいいんだけど……そっか」
「ごめんね。それじゃ」
空いている方の手を軽く振り、廊下を戻る沢近。
「ああ、じゃあな」
「また明日ね、愛理ちゃん」
そして、最後まで沈黙を守っていた晶は。
「――がんばってね」
「……何をよ」
「さあ?」
「……」
「それじゃ」
「……それじゃ」
――で、屋上。
「……」
独り風を受けて――それに特に意味はない――立つ播磨、事態の展開など知るよしもない。
「――天満ちゃん」
呟いたその時、階下からのドアが開いて――
「……ほんとここが好きよね」
――沢近が立っていた。
当然と言えば当然のことなのだが、播磨にしてみれば何がどうしたのかわからない、というところである。
「お前にゃ関係ねぇだろ」
「――これ、アナタでしょ?」
その言葉には答えず、小さなブローチを見せる沢近。
「……」
「……なかなかいいセンスじゃない」
ありがとう、と聞こえるかどうか、というくらい小さな声でそう言った。
「……お、おう」
実際のところは散々絃子に連れ回された代償として、手の届くところで何点か見つくろってもらったのだが、
雰囲気に押されて頷く播磨。
「それだけよ。じゃ、アンタもさっさと帰りなさいよ」
誰も来ないんだし、と言って階下に戻ろうとする沢近。
が――
「誰もって、なんでお前……」
「あ……」
しまった、と思うものの後の祭り。なんとなくよ、と言ってみるものの、それで納得する播磨ではない。
「待て、お前まさか……」
「何よ!全部アンタが悪いんじゃないっ!」
バッグから取り出した手紙を叩きつけ、そのまま屋上を飛び出す。
「……!…………!」
閉まる分厚い鉄扉の向こう、それに激突したと思われる播磨の声を背に、一段飛ばしで一気に階段を駆け下りる。
「……何よ」
ようやく昇降口まで辿り着き、私は全然悪くないじゃない、と思う沢近。なら逃げなければいいのだが、そこで
そうしてしまうのが自分、というのは重々承知であって――
「――ああ、もう」
考えていてもどうしようもない、と下駄箱を開け、今度こそ靴を履き替えて外に出る。
「……」
そして、そこで屋上を振り返ろうとして――やめた。
「……バカみたい」
呟いて早足で歩き出す。
――掌にはその小さなブローチを握りしめたままで。
……よく考えたらバレンタイン話の続きになってる、という致命的な欠陥に今気がつきました。
なんか話がわかんねぇよ、という方スミマセン_| ̄|〇
・・・・これはいいものだ。
84 :
Classical名無しさん:04/03/16 06:19 ID:zTo1drnw
同感、いいものです。いいスクランです。
食べてイイ?
「で、拳児君」
「なんだイトコ」
「これは何だね?」
「何って見りゃわかんだろ…ホワイトデーのお返しって奴だ」
「…はて、拳児君に何かあげたかな?」
「すっとぼけんなよイトコ!どうせ塚本君には貰えなかったんだろうとか
余計なこと抜かしながら恩着せがましく恵んでやるとか言ってくれただろうが!!」
「あぁ、あれか…あんな単なる冗談にちゃんとお返しをするとはキミも律儀な奴だな」
「…まぁんなこったろうとは思ったがな。一応貰ったという事実に変わりはねーし」
「そうか。有難く頂くよ拳児君」
「おう」
「…しかしこれキミが選んだのか?」
「いや、オレそーいうのさっぱりわかんねーから妹さんに見立ててもらった」
「ほう…」
「あー心配すんな、イトコにだとは言ってねぇから」
「そうか。じゃあ私の好みだけ伝えて見立ててもらったというわけだな」
「そんなところだ」
「…しかし彼女はどう思っただろうな」
「???」
「誰にかは言わずにただ『ホワイトデーのお返し』を見立てて貰ったのだろう?」
「あーそいつは大丈夫だ。別にイロコイじゃなくて単に日頃ちょっくら世話になってる人への
まぁお礼みたいなもんだって話はちゃんとしてあるぜ。もし天満ちゃんに伝わってもあらぬ誤解をされる心配はねぇ」
「…そうか。いや私は姉にどう伝わるかよりも彼女自身がどう思うかを心配したのだが」
「妹さんが?ちゃんと付き合ってもらった礼はしたぜ?」
「ほお」
「いや妹さんがえらく気に入ったのがあってな。イトコの好みじゃないっぽいんで却下したけど
なんか残念そうにしてたんで付き合ってくれたお礼として妹さん本人にあげりゃいいかなと思ってな」
「またキミにしてはえらく気の利いた真似をしたもんだな」
「そうか?いや一応嬉しがってはくれたんだが何しろあーいう娘さんだろ?本当に喜んでくれたかイマイチ自信がなくてな」
「しかしとことん鈍感な上に天然だな…姉の前でそれができれば苦労しないだろうに」
「ん?何か言ったかイトコ?」
「いや別に」
おしまい。
>>86-87 当の八雲が出てこない故に、読み手が好き勝手に想像できる、というのがいいなあ……
しかし、この調子で行くといつのまにか付き合ってそうなんですが、八雲。
89 :
Classical名無しさん:04/03/17 00:23 ID:zTo1drnw
彼女には、幸せになってもらいたいですね〜。
>>86-87 毎度、毎度見事な手際です。お疲れさまッス。
今回は偉そうに注文を一つ。
「読点をつけた方が読みやすい」
会話のみでのSSですから、読点は氏の考えている流れを切ってしまう恐れもありますが
つけることにより、よりテンポの良い作品に仕上がると思います。
説明的な台詞は特に、ですね。
それにしても播磨と絃子さんの絡みはイイですねぇ。
スクランのツーショットの中でも特に好みかも。
>>86-87 お疲れ様です。八雲が出てないのに八雲に萌える話っすね。
これからもこの路線で進んで貰いたい(*´д`*)
美琴はいつも1人で学校へいくのだが、今日は偶然花井と出会ってしまった。
「ふっふっふっふっふっふっふっふ」
「・・・・どうしたんだよなんだかいやらしい顔をして。」
「おう周防ではないか、とうとうできたんだよこれが!」
手に持っていたものを高らかに上げた、よくみると子瓶の中にアメだまが沢山入っている。
「アメ・・・?どうしたんだこれ。」
「ふふふ、、これはだな僕が手作りで作ったアメだ!」
「手作りって・・・アメをか?」
「聞いて驚くな!これは僕特製の香料を使って匂いをよくし、工場のおじさんから原料を貰い〜」
あめを自家製なんて聞いた事がない、どうやって作ったのだ、花井が説明しているが
耳には入ってきていない。聞けばわかるかもしれないが説明が長すぎるのだ花井の説明というのは。
「〜やって作ったのである!!そう!そしてこの入ってる子瓶も僕特製だ!!!!」
「やりすぎだーーー!!!!!」
思わず叫んでしまう美琴。
「それでな子瓶の作り方は工場のおじさんに弟子入りして〜」
「ああ!!もういい!話が長くなりそうだし、お前の話全部聞くと学校におくれちまう。」
「ん?それもそうだな、僕も早く八雲君にこのアメを届けなければ!!!!」
「八雲さんに?どうして?」
「どうしてもなにもホワイトデーだろう!!!!ホワイトデーのお返しと言ったらアメだ!!!
今日お返しをせずにいつすると言うんだ!!!!」
鼻をフーフー吹かせながら力説する、彼をみているとこっちが頭いたくなってくる・・・。
「・・・・・・・・」
「さあ張り切って今日も学校へ行くぞ!ん?どうした周防頭抱えて、お前らしくないぞ。」
「あのさ、今日何日か知ってるか・・・」
「うん?そんなこと知ってるとも!!!今日は3月17日だ!!!!」
「ならわかるだろ・・・ホワイトデーはとっくの昔に過ぎてるぞ・・・」
「はっ!アメ作りに熱中する余り時間を忘れていたあああぁぁぁ・・・」
花井がその言葉を境にガクとその場にへたりこんでしまう。
「・・・・花井?」
「なんで僕はいつもこうなんだ・・・肝心な時にいつも・・ブツブツ・・・。」
「あのさ・・・落ち込むのは渡してからでいいんだと思うんだけど・・・」
「いやだがホワイトデーのお返しとはその日にあげるものであって、違う日にあげたらただのプレゼントだ。」
「違うぞそれは、気持ちの問題なんだよ気持ちの!!八雲さんにバレンタインデーのお返しと言えば八雲さんだって
笑顔で受けとってくれる、あたしが太鼓判を押してやる!!」
パンと胸を張って美琴が力説をする。その言葉に感動したのか
「そう・・・そうか!そうだったな、ありがとう周防よ、はっはっは!!!!!」
その言葉で復活を果たした花井。
(まったく・・・調子いいんだから・・・)
まだ笑ってる花井を見てるとちょっと嬉しくなってしまう。
「周防よ。」
「うん、なんだ。」
「バレンタインのお返しだ、ほれ。」
花井は鞄の中からガラスの子瓶(あめだま付)を周防に渡した。
「いいよあたしは、チョコあげたのだって・・・ほらっ残り物だし、いらないから。」
「はっはっは、てれるなてれるな。」
「照れてない!!!」
顔が赤くなってるのが自分でもわかる。時々花井は恥ずかしいことをいってくれるからその・・・困る。
「あそこにいるの八雲君!さっそくこの愛のアメを届けなければ!!!じゃあな周防、またクラスで会おう!!!」
「おい、これ!!!!!」
言うのが遅く花井はすでに八雲の射程内まできている。
「八雲くーん!遅くなったがホワイトデーのお返しだ!!!!快く、受けとってくれ!!!!」
サラと一緒にいた八雲がビクついている、だがそれも全然気にせず花井は八雲君に話かけまくる。
(あれじゃあ怯えるに決まってるだろうが・・・)
あれでは感情もへったくれもない、少しはもっと愛情ってもんが・・・
「ミーコートーちゃん!」
「痛ぁあ!!!塚本!!!!後ろから抱き付いてくるなよ!びっくりするだろ!」
後ろから抱き付いてきたのは天満だった。
「えへへーまあまあ美琴ちゃん怒らないで・・ってあれーどうしたのーそのアメだま?」
「え?これか?」
美琴が手に持っていたガラスの子瓶に入ったアメだまがきらりと光る、それはとても綺麗だった。
「いいなあー綺麗だなー美琴ちゃんそれどうしたの?買ったの?」
「・・・・・さあ、どうだろうね?」
美琴は天満に笑いながら答えた、?とクエスチョンマークを浮かべている天満。
「あ!わかった!彼氏からのプレゼントだな〜このこの〜美琴ちゃんもすみに置けないんだから。」
「ば、馬鹿!違うって!!これはだな、ただのお返しで全然関係ないかr〜」
2人でじゃれ合いしてるとキーンコーンカーンコーンと予鈴のチャイムがなる。
「やべ、塚本、早くクラスに行くぞ、遅刻しちまう!」
「あ、待ってよ美琴ちゃんー」
手に持っていた小瓶を大事に鞄の中にしまう。
今日はなんだかいい日になりそうだ。
美琴はそう思いながらクラスまで走り抜けた。
ホワイトデーSS書こうとしたんだけど書いてるうちに日が過ぎてしまったのでお蔵入り
急遽いつでも書けそうなホワイトデーSSにしました。
まあつまり・・・やっつけ万歳。
Good job!
しかしながら、漏れも縦笛のホワイトデーSS投下するつもりだったが
もうムリぽ
>>86-87 拳児君なんだイトコおにぎり風味シリーズ(自分の中で勝手にそう命名してます)、いつもおいしく頂いてます
ヤクモンにも絃子さんにも萌えられる話の作り方がうまいっすね
、、、ってかこれとか分校オエビのNo.950見てて思ったんだけど
沢近が八雲に絡んだり沢近が絃子と播磨の関係を誤解→「俺のイトコ」コンポやるより
八雲で同棲疑惑→俺のイトコネタやるのが絃子さんとの関係が強いぶん
少なくとも話の広がりは確実にありそうなんだよなぁ・・・
しかしそう考えると旗派っていつのまにか何気に苦しい立場に追いやられてるんだな
おにぎりのが普通に良好な関係を築いてるし八雲のが播磨を正しく理解してる
ツンデレが旗の醍醐味だから旗派にとってそれは必ずしも弱点じゃないけど
播磨→八雲の感情と播磨→沢近の感情の差は少なくとも現時点では雲泥の差がある
髭剃りの話をやった以上原作サイドは旗を有力な選択肢の一つとして残してるんだろうけど
体育祭でジャージイベントが起こらなかった場合耐え切れずに脱落する旗派も出てきそうだな
まぁぶっちゃけ沢近にしろ八雲にしろ恋を知ることそれ自体に意味があるキャラ設定だし
「播磨拳児という男と出会ったことで成長した」って方向に持っていけば
播磨と結ばれなくても必ずしもバッドエンドってことにはならないわけだから
旗エンディングもおにぎりエンディングも正直期待薄かな、って気もするんだけどね
長い
長いね。
しかし旗派というのは「播磨は沢近とくっつくよ」じゃなくて単に
「沢近に萌えるよ」だと思うんだけど。俺だけか?
私的意見は、堕ちる(マテ)までの工程が好きだね。
くっついた後はシラネ(;゚听)
初々しいのがいいんだよ!(ダメ人間
基本的には
>>101に同意するものの、くっついたらくっついたで
「……ほらよ」
「何よ、コレ」
「な、何ってお前な……言ってたじゃねぇかよ、誕生日に欲しいモンがあるって」
「っ……あなた、まさかホントに……あれはその」
「……悪ぃ、気に入らなかったか」
「ちょっ!そんなこと言ってないじゃない!」
「ならいいんだけどよ」
「……と」
「ん?」
「……がと」
「なんだよ、らしくねぇな」
「だからっ!……ありがと、って言ったの」
「お、おう。そうか」
「……もう、バカ」
などという、お前ら誰だよ的なバカップルぶりが、こう――ってこれも初々しいに入るのか。
ダメ人間の数→2
>>100 それは若干違うな
正確には「播磨絡みで良くも悪くも意識してるだろう沢近を妄想して萌えるよ」だろう
………ながいな
3月14日、ホワイトデー。
バレンタインデーに比べると幾分忘れ去られやすい一ヶ月遅れのイベントである
しかしそこは真面目が服を着たような男、花井春樹。抜かりは無い。
話は前日の13日から始まる。
「ふっふっふっふっふ、とうとう明日か・・・、これを渡して塚本君と・・・」
台所にて怪しく笑い続ける花井。
「お前、何やってんだ?」
背後から声をかけられ振り向くと、そこには同門の幼馴染、周防美琴が立っていた。
言動や表情から、花井の様子にあきれているようだ。
「これ・・・、マシュマロか。何でこんなもん作っ・・」
そこまで言って気が付く。
(そっか、明日はホワイトデーだったっけ。塚本の妹さんにあげる為に作ってたのか)
そんな美琴の様子に気付いて言葉を発する花井。
「うむ、バレンタインデーにチョコレートをいただいたからな。お返しをせねばなるまい。
このマシュマロを彼女に渡し、お互いの愛を深めるのだぁ!」
「愛を深めるって・・、向こうはお前のこと何とも思ってねーだろ」
熱い答えに冷たい反応。
「ふ、甘いな周防。僕はバレンタインデーに彼女からチョコレートを貰っているのだ!
望みはある!それどころか悲願達成なるやもしれんのだ!!男・花井春樹――」
「あーもう、分かった分かった!」
いつもの如く、長くなりかけた花井の話を遮る美琴。
「気張るのはいいけどさ、本番は明日だろ?今からそんな調子でいざ渡すときにエネルギー切れてたらどうすんだ?」
「む・・・、確かにそうだな。よし!今日は英気を養うために早めに就寝するとしよう。
では周防、明日学校で会おう!」
もう寝るのかよ、と呆れる美琴を台所に残し花井は早々に自分の部屋に入っていった。
「お返しか・・・」
独りそう呟く美琴。
八雲にお返しをすることに頭が一杯で、自分が渡した分は忘れ去られたのだろうか?
そう思うと、胸のざわつきが止まらなくなる美琴だった。
――――――で、翌日
「塚本君!今行くぞぉーーーーーー!!」
早めの就寝が効いたのか、朝から八雲への想い、テンション、心構えその他諸々がMAX状態な花井。
低血圧な方が見ると、鬱陶しい事この上ない。
「塚本君!!僕の気持ちがこもったこのマシュマロを受け取ってくれたまえ!!!」
八雲の教室、1−Dに現れるなり吼える花井。が、そこには八雲の姿はない。
「む・・・、まだ登校してないのか。早く来すぎたな」
そう言い教室を後にする。
・・・・・
「八雲、花井先輩行ったよ」
サラがそう言うと、教室の陰からひょっこり八雲が姿をあらわす。
「ふう・・・・・」
「相変わらず花井先輩が苦手なんだね。」
「そ、そういう訳じゃ・・・・」
いつも以上に気合が入ってる花井に元々男性が苦手な八雲はいつも以上に敬遠しているようだ。
加えて八雲は自分に好意を抱いている異性の心が読める。
つまり、花井がどこでどう行動するか読まれてしまうのだ。
そのせいで花井は八雲にホワイトデーのプレゼントを渡せないまま、とうとう放課後になってしまった。
「くうぅぅぅ!何故だ!?今日に限って何故、塚本君に会うことができんのだぁ!!」
落ち込む花井。でもテンション高い。
(やっぱりヒサンな奴・・・)
昨日抱いた気持ちはどこへやら、美琴はそんな花井の様子を見て同情めいた溜息をつく。
「おい花井、渡せなかったモンはしょーがねーだろ。これから道場で稽古があるんだし――」
「すまないが休む」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
花井が何を言ったのか理解するのに時間がかかった。
休む?あの花井が?真面目だけがとりえみたいなヤツなのに?
「
「八雲君にこのマシュマロを渡さん限り、僕は帰らん!父と道場の皆にはそう伝えてくれ!」
「はぁーーーー、お前な、いい加減諦めたらどうなんだよ?」
「諦めたらそこで試合終了だ!」
どこぞのバスケ部監督のような台詞を吐く花井。おまえ、武道家じゃないのか。
「そーかよ。じゃ、勝手にしな」
心底疲れた様子で美琴は言葉を紡ぐ。
「言われなくてもそうさせてもらう!塚本君、どこにいるんだぁぁぁぁ!?」
そう言って、校門から砂煙をあげながら出て行った。
「あいつ、町中を探すつもりかよ。ま、ほっときゃいいか。稽古、稽古」
そう言いながら美琴も校門から出て行く。
――――――――-一方、こちらは下校途中の八雲とサラ
いつも以上に鬱陶し・・、もとい、テンションの高かった花井が話題の中心だ。
「よくよく考えたら今日ホワイトデーだったんだし、花井先輩、お返しを渡そうとしただけだったんじゃないかな?」
「あ・・・」
「確か、私も八雲もあの人に義理チョコあげたし。花井先輩、お礼とかそういうのちゃんと返すタイプっぽいし」
「・・・・・・・(き、気付かなかった)」
あんなに強烈に迫られようものなら、気付かなくて当然かもしれない。
二人がそんな会話をしていると、八雲は突然、足元にくすぐったさを感じた。
「野良猫・・・・・?」
汚れた猫が八雲に擦り寄っている。
「へぇ、野良猫って警戒心強いから人には懐かないのに。さすが八雲!」
「そ、そんなこと・・・・・」
感嘆するサラにどもる八雲。そんな二人にかまいもせず野良猫はなおも八雲に擦り寄る。
その様子をしばらく二人は眺めてたが、やがて八雲はおもむろに猫を抱き上げた。
八雲がその猫に話し掛けようとしたまさにその時、
「見つけたぞぉーーーーーーー!塚本君!!」
後方からやって来る、正々堂々としたストーカー、もとい、男・花井春樹。
ズザザザザザザッという効果音と共に八雲とサラに追いつく。
「やっとこれを渡せる。塚本君!バレンタインデーのお返しだ!僕の気持ちのこもったこのマシュマロを受け取ってくれたまえ!!」
「あ、あの・・・」
「遠慮をすることはない!ホワイトデーのお返しは男として当然の事だ!」
「もしもーし、花井先輩?」
「おおっ、サラ君!確か君にもチョコを貰ったな。心配することは無い、君の分も用意してある!」
そう言って、マシュマロの入っているラッピングされた透明のビニール袋をもう一つ鞄から取り出す。しかし、八雲に渡すものよりは幾分小さいようだが。
「はぁ、ありがとうございます。」
「どういたしまして。さあ、塚本君も!」
「え、あの・・・・」
突如現れた花井のテンションについていけない二人。そんな雰囲気を感じ取ったのか、八雲の腕の中に収まっていた猫が急に暴れだし、飛び跳ねた。
「あっ!」
珍しく感情を表した八雲の声。それもそのはず、猫は車道に向かって飛び跳ねたのだ。
しかもタイミングが悪いことに、車が近づいてくる。
(危ない――――――――――)
そう思い、猫を助け抱える八雲。しかしその結果、車の前に飛び出す形となった。
八雲が車に轢かれる―――
サラはそう思った。助けようにも一瞬すぎて体が反応できない。その時、横から飛び出す影がサラの視線に入った。
「うおおおおっ!!塚本君、危なーーーーーーーーい!!!」
花井が八雲と車の間に飛び出したのだ。そのまま花井は猫を抱いた八雲を歩道側に突き飛ばす。
その直後――――
花井の体は宙を舞い、アスファルトにたたきつけられる。彼がかけていた眼鏡が後から落下し、辺りに乾いた破裂音が響いた。
――――――――――そしてこちらは道場で稽古中の美琴
(あいつ、おせーな。まだ塚本の妹さん探してんのか?本当に稽古まで休みやがって)
稽古をしながらイライラする美琴。普段は「ミコ姉ちゃーん!」と話し掛けてくるチビッコ達も、そんな美琴の様子に話し掛けれずにいた。
そこへ急になり始めたコール音。かかってきた一本の電話。弥三郎がいないため、代わりに年配の門下生が応対していたが、急に「えぇ!?」と大声をあげる。どうしたんだろう?美琴はそう思った。
「どうしてんでぇ梅さ―」
同年代の門下生が声をかけようとすると、
「た・・・大変だ!春坊が・・春坊が車にはねられた!!」
(!!!――――――――)
一瞬、息が止まったような感覚に陥った。あいつが?なんで?冷静でいられなくなり頭が混乱する。
次の瞬間、美琴はこう口走っていた。
「何処の病院に担ぎ込まれたんだよ!?」
――――――――――――美琴は花井が担ぎこまれた病院に駆けつけた。
受付の看護師に話を聞くと治療は終わり、ベッドで安静にしてるらしい。
病室を聞き、急いでその部屋に向かい、ドアの前に立つ。
(無事でいてくれ―――――)
そう願いながら、扉を開ける。すると―――
「む?周防か。どうした?そんなに息を切らして。」
そこにはピンピンしている花井の姿。下半身はベッドに沿える形で座っているが、上半身は体を起こしている。
そんな花井の様子に美琴は口をパクパクさせる。
「な・・・」
「な?」
「なんでそんな元気なんだぁーーーーーーーーーーーーー!!!!」
病院中に美琴の怒号が響いた。
「ふん、この僕がそう簡単に車に轢かれてたまるか。」
本人談だと、どうやら車と接触する直前に飛び、車体に合わせて体を滑らせて危険を回避したらしい。スタントマンか、おめーは。
怪我は車体に当たった際の打撲と、地面に落ちた時による擦り傷だけである。
「あの・・・、すみませんでした。」
謝る八雲。傍にいるサラも沈痛な表情をしている。
「気にすることはない、塚本君。僕は君を守れただけで満足だ。」
「そ、そんなわけにはいきません・・。お詫びになんでもしますから」
「いや、本当に気にしなくていいんだ。」
「で、でも・・・・・」
そんな会話が何度も続く。キリが無いと思ったのか、花井は大きく溜息を一つつく。
「それなら・・・・・・、一つ言うことを聞いてもらおうか。」
「は、はい・・」
どんな事を言われるのか?自分から言い出したこととはいえ、八雲は不安げな顔になる。
「このマシュマロを・・・・受け取ってもらえないかな?」
傍においてあったマシュマロの袋を掴み、彼女に差し出す。
「・・・え・・、それだけで・・・いいんですか・・?」
「充分すぎるくらいだよ。」
「充分すぎるくらいだよ。」
それが本心であることが八雲にはわかる。それに彼は常に、発する言葉と本心が一致している。
しばらく黙ってた八雲だったが、やがて「・・・・ありがとう・・・・ございます。」という言葉とともに、それを受け取った。そんな様子にサラも安堵する。
それと同時に、サラは美琴の様子に気付く。
唇を噛み締め、小刻みに震えている。そんな様子を察したサラは花井に話し掛ける。
「あの・・、花井先輩」
「ん?どうしたサラ君。」
「帰るのが遅くなってしまったので、八雲と家に電話してきます。」
「分かった。行ってきたまえ。」
「ありがとうございます。行こ、八雲。」
「あ・・・」
そう言うなり、サラは八雲の手を引き二人は病室から出て行く。
個人部屋ではないが、他のベッドは空席である。よって病室には花井と美琴の二人きり。
しばらく沈黙が保たれたが、美琴がそれを破る。
「本当に―――――――――」
声は既に涙声。
「本当に・・・心配したんだからな・・・・」
そう言いながらベッドの傍の床に膝をつき、両腕をベッドにのせる。シーツをギュッと掴むも、顔はうつむいたまま。花井からは表情が見えない。
だが、彼女がこれまで見たことも無いくらい弱弱しく見えた。
そんな彼女に言の葉を返す。
「・・・・・・・スマン。」
静寂なはずなのに、ピーンと張った空気がうるさく感じる。
「ビックリ・・・・・・させるなよ・・・・」
「・・・・・・・スマン。」
何を言われようとこの言葉しか返せない。申し訳なく思っていると―――
ポタッ
水滴がシーツに落ち、シミを作る。
「周防・・・・・・・」
泣いている、周防が。自分を変えてくれたヒーロー、ミコちゃんが。
自分のせいで。
「周防・・・済まなかった。」
そう言ってすぐ近くにある彼女の体を抱きしめる。
美琴は抗わない。抱きつきもしない。ただ、さっきと同じように手だけにギュウッと力をこめた。
「今度心配かけさせたら・・・許さないからな・・・」
「ああ・・分かっている。」
幼馴染だからこそ、最小限の言葉で互いの気持ちを最大限に分かり合える。
今の二人はそんな感じだった。
しばらくその状態でいた二人だが、やがて、
「そうだ、周防。お前にも渡すのを忘れていた。」
そういいながら、花井はゆっくり体を離す。
「・・・・・?」
「稽古が終わった後で渡せると思っていたんでな。」
言いながら、鞄の中から取り出したもの―――――――――――それは勿論
「・・・マシュマロ・・」
「貰った礼はしないとな。男・花井の名がすたる。」
自分が渡した分は忘れられたと思っていた美琴にとって、それは驚きだった。
当然ながら、さっきとは違った嬉しい驚き。耳と頬がうっすら朱色に染まっていく。
受け取ると、かさりとビニール袋の音が部屋に木霊する。
「あ・・・ありがと・・。」
もらった袋を胸元でギュッと抱きしめる美琴。そんな様子に花井が笑顔を返す。
「気にすることはない、男として―――」
「当然のことなんだろ?」
美琴が花井の言葉を遮り、後を紡ぐ。そんな彼女に花井は「ああ。」肯定を返した。
「・・・・・・あの、さ・・花井。」
「何だ、周防?」
「今・・・・食べてもいいか?・・これ。」
「勿論だ。」
そう花井が言うと、美琴は口の端えをわずかに上げながら袋を開ける。
そして、マシュマロを一つ掴み、口に放り込んだ。
「美味いよ、よくできてるな。」
「僕が作ったんだ、当たり前だろう。」
そんな何気ない会話。しかし二人には、それが随分懐かしく感じられた。
――――――――――その頃、部屋から少し離れた廊下では
「おい譲ちゃん達、そこ通してくれよ。」
「春坊は無事なのか?」
「見舞いにきた意味なくなるじゃねえか。」
道場の門下生達がやってきてるのをサラと八雲が食い止めていた。
「花井先輩は無事ですから!ちょっとの間待ってください!」
二人の時間を作ってあげようとしての行為である。
事情を知らない彼らには迷惑な行為だが、彼女達の必死さに強く言えないでいた。
八雲もサラ同様、門下生達を食い止める。
そして八雲は気付いていた。自分達が病室を出てから、いつかの時みたく、花井の心の声が聞こえないことに―――――
―完―
いいよいいよ〜
以上です。
97であんな事書きましたが、処女作だったこともあり、皆の評価を聞きたくて
投下してしまいました。
そしたら、よくある内容、読みづらい、無駄に長い、所々投下失敗と
今更気付いた_| ̄|○
お目汚しスマソ
>119
正攻法で書けてていいと思います。投下時間帯も含めて乙。
2・3回書くと慣れてきて書き手の味が出るらしいので一度きりでやめちゃやだよ?
でもって。
マッケンジー登場記念の体育祭SS完成。
途中で『FF5』未プレイの人は置き去りにされるネタ仕様なのでご了承のほど。
《投下》
「ふぅ。まさか、隣りのクラスと最優秀クラス賞を争う事になるとは」
「ああ、そうだな。苦戦するなら上級生相手だってあたしも思ってた」
体育祭の華である騎馬戦を前に、2−Cと2−Dの獲得ポイントはほぼ同等。
総合では彼らのクラス、2−Cが所属する赤団が一歩抜きん出ているのだが、
この武闘派ふたりは超人揃いのこのクラスが接戦止まりなのが我慢できないらしい。
「じれったいわね…… 何か秘策でもないの? 晶」
「秘策? あるよ。でも放っておいても花井君がどうにかしそうだから教えない」
「また目の敵にしてるし…… そこまで嫌うほどイヤな奴には見えないけど?」
沢近絵理にはクラスの勝利を真剣に願っているようにしか思えない。ウザくはあるが。
「それより次の騎馬戦、愛理は上でしょ。ハチマキはきつく締めた?」
「ぬかりはないわ。2回戦のD組との直接対決で一気にかたをつけてあげる」
騎馬戦を得意と公言した理由が「乗馬には慣れている」というあたりが不安材料だが、
沢近の陸上での運動センスには定評がある。コツさえつかんでいれば活躍は間違いない。
次の騎馬戦でも美琴と並んでクラス内のポイントゲッターとして期待されている。
しかしまた、このクラスには運動センスの無さが超人的な生徒もいたわけで……。
「いいかい塚本さん、僕たちは最初から最後まで逃げ回る。
バックアタックの囮になれれば上出来、さらに生き残り人数に加われば完璧らしいから、
相手のハチマキを取ろうなんて考えずにとにかく自分のを死守。いいね?」
「うん、りょーかい。進む方向もだいたい冬木くんに任せるよ」
塚本天満。クラス対抗騎馬戦唯一の逃げキャラ。
ほぼ全員参加、かつ男子2人・女子2人で組むというルールの都合上、
手が滑って騎馬を崩したり何もないところで転んだりする天満に騎馬は組ませたくない。
ならばいっそ軽いのだから上に乗せて逃げ回っていれば役に立つかもという発想である。
ちなみに発案は花井。意外と冷血なのかもしれない。
そして二年生全員が入場門の前に集合して直前の点呼。決戦は間近だ。
「おや? 今鳥がいないが、トイレか?」
「彼、物騒な競技はパスとか言ってどっか行っちゃったらしいの」
「なんだと! それでは騎馬を再編成しないといけないではないか」
「今鳥さんが? わ、私、探してきます!」
「おい、一条くん! 今から探しに行っては君まで参加できなくなってしま」
―――呼び止める間もなく消えてゆく小さな人影。これで2名脱落。
「……で、他にいない奴はいるか?」
「播磨がいないな」
「よし、人数が足りなくなっているチームは再編成するからこっちに来てくれ」
「あ、あいつ、播磨の事スルーしやがった。いったい何があったんだ?」
美琴の疑問に答えられる者はいない。
そして数分後。4の倍数に合わせた再編成の結果、女子2名の不出場が決まった。
「いいなー。私も応援席で見てるだけのほうが良かったのに」
と言う天満の視線の先には、軽そうだからという理由で騎馬の上に乗る事になった烏丸。
「お祭り好きの塚本さんなのに珍しいね。やっぱり運動は嫌いなの?」
「好きだよ? ただ運動音痴だから、あんまり集団競技には向いてないのかも」
冬木の気遣いも脳内で烏丸が大活躍する妄想に勤しむ天満にはあまり届かない。
「ところで晶、あの2−Dにいる外人。名前からして気に入らないから最初に狙っていい?」
「指揮力も個人の力量もただごとじゃないから最初に潰しておきたいんだけれど、
練習を見た限り誘いに乗ったら囲まれて各個撃破されるわ。愛理だけ突出しないで」
ハリー・マッケンジー。下馬評が並だった2−Dを最優秀クラス争いに導いた留学生。
そのカリスマ性と清濁併せ持つ性格から『乱世の奸雄』と呼ばれている。
「そうなの? それにしても練習まで偵察してたなんて…… ほんと晶って謎ね」
「ありがと。もちろん誉め言葉だよね?」
一方そのころ、播磨は屋上入り口の屋根でひなたぼっこをしていた。
「けっ。天満ちゃんの騎馬にもなれねえし、上に立って活躍できる可能性もねえ。
しかも乗せるのが奈良だと!? やってられるかそんなもん」
体格が良すぎるが故に女子2・男子2というルールでは支える側にしかなれない宿命。
同じ境遇の花井と違って美琴のような信頼できる相方もいないためサボるつもりらしい。
と、そこへ扉の開く音。とりあえず気配を殺して上から覗いてみる。
「俺、舞ちゃんに嫌われてたっけ? あれが嫉妬なら見込みのあるCだから嬉しいけど、
あんな燃えも萌えもしない女子連中と組まされてもやる気出ねーや。……寝よ」
上からなので髪型しか見えないが、おそらく今鳥。
委員長が決めたチーム編成が気に入らなかったのか、出場する気をなくし昼寝に来たらしい。
そのまま床に横向けに寝転んで目を閉じ、すぐイビキ。やけに寝相がいい。
と、そこへもう一度扉の開く…… いや、外れる音。
「今鳥さん、ここだったんですね。探したんですよ」
「う、うわぁっ! とりあえずドアは置いとけ、いや置いておきましょう一条サン」
生命の危機を感じて飛び起きる今鳥。
「あ、そうですね。あとで直しておかないと」
外れた鉄製の扉を片手で柵に立てかける一条。1000万パワーは伊達じゃない。
「それでですね今鳥さん」
「みなまで言うな。俺が悪かった。次の種目からはちゃんと出るから」
会話終了。
「……えっと。ありがとうございます」
「で、これからどーすんだ? もう今からじゃイチさんも間に合わねーだろ、騎馬戦」
「あ……」
はるか下方では1回戦が始まろうとしている。
播磨は懐から双眼鏡を取り出した。目的はただひとつ、天満の晴れ姿を鑑賞するため。
騎馬戦1回戦は2−Eとの対決。―――2−Cの圧勝。
「大活躍だったね愛理ちゃん! それに美琴ちゃんも。すっごく目立ってたよ!」
ピコピコ飛び跳ねて喜びを表現する天満。
「ありがとう。あなたも目立ってたわよ? いい標的なのに何故かとどめが刺せないって」
「いや〜、照れちゃうな〜」
「塚本。沢近のやつはたぶん誉める意味で言ったんじゃないと思うんだが……」
なんて勝利を喜び合っていると、直後の試合で全校生徒の大きなどよめき。
「なんなのさ、あれ!?」
2−D、留学生ハリーを中心とした独特の隊形で時間内に2−Bを殲滅し、完全勝利。
「……くやしいけど、チームワークは彼らのほうが上みたいだね。どうするの?」
「どうするもなにも、僕達に作戦など不要! 個々の能力を活かして全力で戦うのみ!」
言い換えれば策はないらしい。晶も花井の発言を予想していたのかつっこまない。
そうした動揺の中、話題の主である留学生がこちらに歩いてきた。
「2−Cのみんな、こんにちは。次は私のクラスとの対戦だね。おてやわらかに頼むよ」
完勝したあとでそんな事を言っても普通はイヤミにしか聞こえないわけだが、
美形なためかそこそこ好印象を持った女子もいる。見た目って重要だ。
「それにしてもこのクラスは美人が多いね。思わず見とれてしまいそうだ」
そう言ってハリーがつかつかと近寄った先にいた女生徒は、塚本天満。
「美しい……。艶のある長い髪、古い日本の言葉では『緑の黒髪』と言うんだったかな。
君のような女性がこの高校にいただなんて、私は本当に運がいい」
「緑? 黒髪なら緑じゃないような……」
留学生に国語力で負けるな、天満。
「で、2−Dの司令塔が何のご用? 命乞いなら受け付けてあげるわよ(※以下英語)」
「ははは、これは頼もしい。君も留学生かい?」
「おあいにくさま。私は沢近愛理、日本人よ。ハーフではあるけれど」
「ところで、このクラスには私と似た名前の生徒がいると聞いていたんだが、どこかな?」
「さあ? ガセネタでしょ? 次の試合だからもう戻ったほうがいいんじゃない?」
ふたたび舞台は屋上。
騎馬戦 ――というより天満を見続けていた播磨は怒りに震えていた。
「あの外人! 天満ちゃんに言い寄ろうなんざ未来永劫早い! 即潰す!」
もちろんそのあと沢近と会話していたあたりまでは見ていない。それがお約束。
すぐさま屋根から降り、ぼんやりしていた今鳥と一条に喝を入れる。
「そこの二人! 騎馬戦に出るぞ。付いて来い!」
「はぁ?」
「え? 播磨さん、いつからそこにい」
反応が鈍いのにしびれを切らして、今鳥と一条を抱えて運動場まで階段を疾走する播磨。
愛ゆえに人はどこまでも強くなれる ……のか?
そして運動場では、直接対決寸前。
「あの優勝旗、君たちには渡さんぞ!
この四騎の協力によって、無敵の陣形を手に入れたのだから。……倒せるかな?」
先程と同じ、ハリーの四方を囲む布陣を組んだ2−D。
周りの4人+ハリーの騎馬に精鋭を固めているのか、残りは適当な戦力のようだ。
しかしだからこそ、それで2−Bを殲滅したあの隊列を恐れるべきなのかもしれない。
そんな皆が騎馬別に待機している運動場へようやく到着した播磨たちはというと。
「しまった! よく考えたら騎馬戦に出るには女子があと一人必要じゃねーか!」
「おいおい、何も考えずに俺たちを連れてきたわけかよ」
正解。深く考えずに何事も行動から入るのが播磨の長所であり短所です。
「しょうがねぇ。誰かうまい具合に余ってくれてりゃいいんだが……」
クラスの待機場所を見回すと、都合のいいことにクラスメイトらしき女子がふたり。
(瓶底メガネのひ弱そうな女と、なにか見慣れた感じのする女か。よし、こっちだ!)
見慣れたほうの女子の腕をいきなりしっかと掴んで真剣な表情で嘆願する。
「頼む! 一緒に騎馬戦に出てくれ! お前しかいねえんだ!」
「!?」
で、返事も聞かずに拉致。今の播磨にはもうあの外人を倒す事しか頭にない。
だが、少し遅かったのか号砲が鳴る。2−Dとの騎馬戦がついに開始された。
「これ以上もたついてるわけにはいかねえな。今鳥! やっぱりお前が騎馬の上だ。
俺の体重を支えて速く動くのはお前等3人じゃ少々不安が残る!」
「お、おう。ここまできたら何だってやってやるよ。あとでアイスくらいおごれよ?」
「で、俺が先頭。女子ふたりは後ろだ。行くぞ!」
「おや? うしろで今鳥や播磨の声が聞こえたような」
「花井っ、試合中は前に集中しろ! そうでなくても狙われてんだからな!」
上から美琴の激が飛ぶ。なるほど、確かに包囲されそうだ。
「ふん。性能の差が戦力の絶対的な差であることを、教えてやる!」
「こっちはあの固まってる連中は無視して、先に雑魚を一掃するわよ!」
「了解。時間切れ判定でも勝ちは勝ちだものね。愛理には似合わない勝ち方だけど」
「何言ってるのよ。メインの獲物は最後に取っておくのが狩猟の醍醐味でしょ?」
相手の主力に突っ込んだ美琴たちと、迂回して撃墜数を稼ぎにいった沢近たち。
どちらもやる気充分ではあるが、個人の能力にも限界というものがある。
たちまち隊列の一部に挟まれて凌ぎきるのが精一杯という状況に陥ってしまった。
「くっ、大丈夫か周防!」
伸び寄る複数の手を払うのが精一杯の美琴と、下で懸命にバランスを保とうとする花井。
「まだ大丈夫だ! 塚本でさえまだ脱落してないのに、先に私がやられてたまるか!」
顔にときどき振ってくる汗の雫が厳しい状況を如実に示しているが、
花井がいまさら作戦ミスを悔やんでもどうにもならない。美琴を信じて支えるだけだ。
そんなとき、後ろから騒々しい足音が聞こえてきた。播磨たちである。
「播磨! それに今鳥も!」
「む、お前はいつぞやのサムライ?」
「間に合った! あのままサボってちゃ、カッコ悪ぃまま歴史に残っちまうからな!」
「フッ…… 何をごちゃごちゃと…… お前もこの隊列の餌食になるがいい!」
「上等だぜ! この播磨拳児様が、倒せると思うなよ!?」
「発音が違 ……いや、君がそうだったのか、実に楽しませてくれるじゃないか。
気が変わった。先に他の生徒達から排除させてもらおう」
そう言って自分を取り囲む陣形に向かって何かを指示。一団になって下がってゆく。
「くそ、逃げんなこの野郎!」
「沼淵! 生き残りを各個撃破していく。まずはあのおかっぱを挟み打ちだ!」
「済まんなー烏丸。おいの足じゃ逃げ切れんしよ、ここで諦めるか」
下で支えている西本の言葉が届かなかったのか、標的になった烏丸は微動だにしない。
そしてそのまま沼淵と呼ばれた2−Dの生徒にハチマキを奪われてしまう。
それでも変化のない烏丸の表情。しかし、その手には沼淵のハチマキが握られていた。
「なっ!? 一体いつの間に?」
「まだ一人やられただけだ! 次は少々心苦しいがあの大和撫子に退場願おう!」
「ほへ? ひょっとしてそれって私のこと? 逃げなくちゃ冬木くん!」
「ちょっと塚本さん、そんな急に上で暴れないで! バランスが崩れ…… あぁぁぁ!」
崩れた拍子に背後からハチマキを狙っていた騎馬一つを巻き込んで、結果的には相討ち。
「いたたた…… ごめんねー、2−Dのひと」
「ねえ船橋くん、ここで私にハチマキを取らせてくれたらデートしてあげても……」
「え、デート! 愛理ちゃんとかい? うーん、どうしようかな……」
こちらは試合中に怪しげな交渉を行う沢近。が、その最中に沢近の右手が疾る。
「なーん嘘よ! 私は変わったの。もう軽い女だなんて誰にも言わせないわ!」
騙し技一本。沢近の手首に3本目のハチマキが飾られる。
が、その直後金色の疾風が沢近の頭にあったハチマキを奪っていた。
「試合中に巧言令色に乗るバカがいるか! 主力が私ともう一騎だけじゃないか!」
「よし、今ならあの金髪本人も狙える! 行くぞ周防!」
「その前に、さっきまでさんざ苦労させられたこいつも倒す!」
手をめいっぱい伸ばして、ハリーの四方を固めていた最後の一騎からハチマキを奪い取る。
が、その美琴の「外側へめいっぱい手を伸ばす行為」が良くなかったらしい。
超人ではない後列の2人が負荷に耐え切れず、クラス内最強の騎馬は、あっさり潰れた。
結果的に残ったのはハリーの騎馬と今鳥(播磨)の騎馬のみ。全校生徒の視線が集まる。
「無、無敵の陣形が…… 仕方あるまい! 私の力、思う存分味わうがいい!」
「おい播磨、さすがにあんな完璧超人とタイマン勝負じゃ勝てる気しねーよ」
「安心しな今鳥。負けそうになったらお前をあいつらに投げ飛ばして相討ちにしてやる」
「うわ…… 俺に助かる選択肢はないってわけかよ……」
「が、頑張って下さいね、今鳥さん。私も応援してますから」
あとは真っ向から一対一の勝負をするだけなので、先に功労者に声をかけてゆく播磨。
「お嬢! お前のパパさん、何度動物たちに占ってもらってもやっぱり好物はカレーだ!
少しくらい下手でもいいじゃねえか。愛情込めて自分で作ってやんな!」
「……あいつ、そこまで真面目に占ってくれてたの?」
「それから周防! 花井の野郎を尻に敷くのはもうちょい先のことにしといてやれ!
早くどいてやらねーと、そろそろ息ができてるかどうかも怪しいぞ!」
「さ、先のことってあのなぁ…… って、どく? ……あ゛」
崩れてからそのまま、地面だと思って座っていた場所に花井がいた。急いで飛び退く。
「でもって天… 塚本! 敵だったクラスも心配してやるその優しさ、感動したぜ!
いつまでもそんな優しさを持った女性でいてくれ!」
「もー、播磨くんったらおせじが上手いんだから…… はっ! お猿さん再び?」
「ついでに烏丸! お前とも一度勝負をつけなくちゃいけねえが、それは後だ!
すぐにでも同じ舞台に上りつめてみせるから、それまで待ってやがれ!」
「…………」
【ぬすむ】 ―――けんじのよろいをぬすんだ
「あれ? 烏丸くん、今何かしなかった?」
「愛理にはわからなくて当然ね。『お約束』だから気にしなくていいわ」
「はぁ? 晶ってときどきワケわかんないこと言うわね」
「もう済んだかね? 似た名前は目障りだ! 消えろ! 播磨拳児」
「それは、こっちの台詞だぜ!」
「で、カッコつけといてこのざまね。あんたにちょっとでも期待した私が馬鹿だったわ」
「るせぇ! 俺だってそんなルールがあるなんて知らなかったんだよ!」
直接対決の結果は多くの観衆が予想しえなかったものであった。
【どうぶつ】―――むささび に一瞬気を取られて隙ができたハリーを相手に、
子供の頃スカートめくりで鍛えたといわれる今鳥の閃光の右腕がハチマキを奪取。
値千金の勝利かと思われたものの、一分後のアナウンスが非情な結論を述べた。
『ただいまの勝負、2−C側の騎馬が開始時に騎馬を組めていなかったため失格です』
「試合には負けちゃったけど、勝負には勝ってるんだからそうカッカしなくても……」
「そうだよな。塚本の言う通り! 今鳥も播磨もよくやってくれたじゃねーか。
そりゃ、ポイントで逆転されちまったのは痛いけどさ。午後から取り戻せば済む話だろ?」
「あ、ミコちん俺のこと誉めてくれるの? だったらその大きな」
「調子に乗るな」
最後まで言い終わらないうちに拳骨を浴びる今鳥。
「さて、もうお昼休みだしみんなもおなかすいてるよね! お弁当にしよっか!」
「そうは言っても塚本。あたしには手ぶらにしか見えねーぞ?」
「ふふーん。今日は八雲がお重箱に詰めて持ってきてるんだもんね。みんなで食べよ?」
「うちもシェフが張り切っちゃって。こんなに沢山女の子だけで食べきれるかしら」
「じゃあ、クラスの男子でも呼ぼうか。播磨くん、ちょっと」
「ん、何だ?」
「ちょっと晶! なんでよりにもよってこんな奴を呼んでるのよ!」
「たくさん食べそうだったから、残飯処理としては完璧だと思っんだけど」
「なにげに失礼な奴だな、てめえ。でもすげえ美味そうなんだよなー」
「ふーん。ちょっとだけなら分けてあげてもいいけど?」
「いや、お嬢のなんてどうでもいい。妹さんが今持ってきて開けた重箱の中身がな」
「ちょっとそこに座りなさい。……ほら、あーんして。これでもどうでもいいとか言える?」
いたくプライドを傷つけられた沢近の、周囲が全く見えていないとしか思えない反応。
せっかく天満と一緒のお昼に誘われたのに、今日も播磨は天満に近づけないらしい。
《おわり》
130 :
120:04/03/18 06:26 ID:1vSQ3rkY
実は行数制限未確認。最大30行だと仮定して削った部分もちらほら。
「けんじのこて」というどうしようもないダジャレを思い付いたのが最初で、
そこから播磨のギルガメッシュ化・敵役としてハリーを構想という流れ。
タイトルも当該ゲームの中ボスの名前なので物騒極まりない意味だったり。
ネタに至る過程が長くなりすぎたのと、花井がいいとこなしだった事が反省点です。
なお、このSSに隣子が登場した証拠はありません(笑)
けんじのよろいをぬすんだでワロタ
あの懐かしいムササビの滑空が脳裏に浮かんだYO
133 :
Classical名無しさん:04/03/18 10:42 ID:JZmhiykM
おいおい、数日留守にしただけで何本のSSが投下されてんのかと。
ワラタ、かなりワラタ
「けんじのよろい」がサイコー
135 :
Classical名無しさん:04/03/18 14:21 ID:NajGwtfE
>>119 いい話だが、猫の件はそもそも花井が悪いんじゃ・・・と思ってしまう。
>>120 ギルガメ○シュネタキタ━━━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━━━━!!!!
n n
(ヨ ) ( E)
/ | _、_ _、_ | ヽ
\ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/ / good job!!
\(uu / uu)/
| ∧ /
>>125 “メガネのひ弱そうな女”と一緒にいた、播磨の“なにか見慣れた感じのする女”キタ━━━━!
それはさておきGJ!話の展開具合と豊富な萌え材料に感服致しました。
138 :
120:04/03/18 20:46 ID:hatakeV2
清濁は併せ呑むものですよ、私。
読み返したときに台詞がわかりにくすぎて泣きたくなりました。
今週のマガジン読んでなかったからハリーがまともな言葉使ってるし……
(でもちゃんと「戦力の絶対的な云々」のセリフは間違えている)
>137
セリフも名前も出ていませんが、何か?(笑)
腕を掴んで「お前しかいないんだ!」は威力抜群だったかもしれません。
139 :
Classical名無しさん:04/03/18 22:44 ID:EPQaHsOQ
オンドゥル終わらないでぇ・・・!!
140 :
119:04/03/19 00:22 ID:NLF5glp6
>>135 八雲だったら相手が悪くても、花井が事故ったという結果で謝るんじゃないかな?
とオモタんであんな感じにしてみました
しかし、やっぱ縦笛は萌える
また書いてみます。駄作だろうけどw
>139 どゆこと?
>>139 あのクソ寒い駄文なら別のトコでやってるよ。
あいつと奈良厨はマジでうざい。
143 :
52:04/03/19 18:12 ID:KE6l.l.U
ちょっと留守にしてる間に、凄い勢いで伸びてる……。
活気があっていい感じですね。自分も負けないようにがんばっていきたいです。
あと
>>60氏、心配してくださってありがとうございます。
実はまた身体をおかしくしまして、再検査行ってきました。
結果は胃炎+風邪だということでとりあえず薬漬けの毎日ですw
だいぶ調子も良くなってきましたので、何とか大丈夫そうです。
最後に、4巻読んで一言。
笹倉先生のカードキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
生徒人気の高さと特選二回、そして体力の無さは予想範囲内でしたが
まさかリボ払いでくるとは……やられました。
でも、そんな浮世離れしたところも(・∀・)イイ!!
ここ書き込むの初にして即興で一つ
「まあいいわ、で許してあげる条件だけど・・・」
そこで沢近は少し言いよどみ
「今日一日私の下で働きなさい」
そして彼女の家であろう大きな屋敷の前でやっぱりおかしな事を言い出した。
「で今にいたるわけか、」
彼が着ているのは今まできていた学ランではなく使用人の着るであろう整ったスーツ
何着もその服は用意されていたのだが
「何でこの屋敷には誰もいねえんだ?」
そう屋敷の中にいるのは彼とこの館の主人の娘である彼女だけ
「いや、だから連れてこられたのか、全くわがままな」
「なんかいった?着替えたならこっちきなさい、早速仕事なんだから」
ぎくりとして振り返るとそこには彼同様制服から着替えた少女が立っている
そして連れてこられたのはその少女の自室
彼女がベッドサイドに歩いていくのに彼も続いて歩いていく
しかしおかしい、それは何がおかしいのか?気づいたときにはもう遅かった
彼女が振り返った瞬間、驚いた播磨には全く反応が出来なかったが
その少女の行動は世間で言うキスというものではなかったか
そしてもつれこむようにベッドに倒れこむ播磨
その時間はほんの数秒か数分か?それさえわからない混乱の中
ただ目の前の少女が潤んだ目でささやく
「噂だけじゃやなの、だけどあんたが本当は別のヤツを好きなのは知ってる、だから」
その少女は少なくとも彼、播磨拳児が知っているどの彼女とも違う
「仕事と思ってくれてもいい、だけど今だけは」
そんな呟きに彼は自分の理性が溶けていくのを感じ
ただ、――――その与えられた仕事に精を出した。
>>144 ムハー!続きをエロパロスレできぼんぬ!
>>144 >その与えられた仕事に精を出した
ここが笑うところですか?
現在屋上にて播磨がマンガのことについて相談中
「ここでキスしちゃってもいーかな?」
「え!?」
なぜか驚く八雲
「えと……あのここでですか?そのキ、キスを?」
オロオロしながら播磨に対して質問する
「ああ、ここでだけどダメかな?」
播磨はソワソワしている八雲を見て少し不思議に思いながらも
あっさりとした口調で言う
その間八雲はというと顔をうつむかせて頬を赤く染め
上目遣いで播磨の顔をチラチラと盗み見る
「えと…その…播磨さんは本当に?」
「俺はそうしたいけどなー」
「しっ、したいいんですか!?」
(えと、どうしようこういう時って…)
八雲は校内でも美人で有名で告白も何度もされたが、さすがにキスしよ?
とわ言われたことがないのでとまどった。
しかも少なからず好意を抱いてる男の人に
「あの…その…でも、私まだ//」
播磨の顔をしっかり見て言った
「う〜ん、そうか、この二人には早いか…」
(この二人?…あれ?…あっ…//)
「あ…いや、今のは私の勘違いで、えと…この二人の場合はもう、その…キスをしても良いと思います」
この二人の場合はという言葉には引っかかるが混乱しながらも何とかその場を乗り切った
だが数秒後播磨お猿さん疑惑浮上!!
「勘違い…?」
「ハ、ハイ…少し勘違いを…」
その時、播磨はサングラスをおもむろにはずし胸ポケットにそれを納めた
八雲からもその意外に澄んだキリッとした瞳が見えドキッとした
(きれいな瞳…でもなんでいきなりはずしたんだろ?)
すると突然思いもかけないことが
ガシッ
両手で八雲の肩に勢いよくつかみかかってきたのだ
八雲は突然のことでビックリ
「勘違いじゃないな…」
(えっ!でもさっきのは私の勘違いで…マンガのことだと思ったんだけど…
でも播磨さんが私の肩を両手でつかんで…サングラスをはずして私を真剣な
表情で…どうしよう、いいのかな…?)
「あの、私…播磨さん…」
そして八雲は優しく目を閉じた
………
「んっ、播磨さん?あれ、私、確か屋上で…」
「ああそうなんだよ、やっぱり俺の勘違いじゃなかったみたいだな、カゼでしょ?きっと、途中から様子が気になって
サングラスをはずして確かめてみたら顔も真っ赤でさ、そしたら急に目を閉じたと思ったら眠りだしちゃったからさ、
それで今俺がおんぶして家まで送ってる最中なんだよ」
(え!…おんぶ…//)
やっぱり顔を赤くして
「播磨さん…あの、ありがとうございます」
播磨の耳元で礼を述べる。播磨も顔を赤くして照れている
そこで八雲はふとサングラスをとった時の播磨の顔を思い出した
「あの、そのサングラスっていつもかけているんですか?」
「これはちょっとした因縁があってな、これをかけてからは俺の素顔はほんの数人にしかみられてないな、
まあ、今回は特別ってやつだな」
「特別……ですか」
「おっ、着いたな」
そう言うと八雲を背中から降ろし
「また、今度相談にのってくれよ?八雲ちゃん」
「え?あ、はい…あの、今名前で…私のこと」
「あ、いや、その、なんだ妹さんじゃちょっとあれかなと思ってよ、
それに寝言で…」
「寝言…?」
「あ、いやなんでもねえ、そろそろ俺も帰るは、それじゃあな」
「あ、はい、また明日」
その時、八雲に播磨の心が一瞬みえた、しかも八雲にとってものすごく恥ずかしい内容が
(う〜ん、寝言で俺にこれからは名前で呼んで欲しいって言ってたことは言わない方がいいんだよなこの場合)
八雲また顔が真っ赤に…(私、そんなこと…//)
(今日眠れるかな?…私)
えっと初でした
ボケボケな二人という設定です
いろいろはしょりました
ゆっくり進んでいくさまを眺めておりました・・・イイね。
過激派の同志や旗派がオニギリに傾くのもわかる・・
153 :
:04/03/21 11:53 ID:En9jNKrU
なんか2人の世界って感じでほのぼのですねー (*^ー゚)b グッジョブ!!
しかし本誌でもマガスペでもSSでも存在しなくなったサラは烏丸2世?
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
道場に響くどんよりとした溜息が響く。今に始まったことではない、さっきから何度も何度も聞こえてくる。
「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
落胆し続けている男、花井春樹。
理由はともかく播磨と八雲が「あいびき」していたことに多大なダメージを受けてるようなのだが・・・
「おーい春坊、なんかショックなことでもあったのか?」
「悩み事なら相談しねえと解決しないぞ。」
「ハナイー、元気出せー!」
周りの皆が声をかけるが、白一色になっている花井には上の空のようだ。
「周防、あいつ学校でなんかあったのか?」
埒があかないと思ったのか、彼らはそのまま美琴に話し掛けてくる。
「なんとなく理由はわかるよ。」
(塚本の妹さんがらみだな、きっと)
さすがは幼馴染、見抜いていた。花井が分かりやすすぎるだけなのかもしれないが。
「しっかし春坊があんな感じだと、やる気が出ねえなぁ。」
「いやはや、まったく。」
「そういう時は、これだろ?」
傍にいた中年の門下生がニヤッと笑いながら手で杯を作り、口許で傾ける仕草をする。
「おおっ、いいねぇ〜!」
「久々に行きますか!春坊を励ますためにも!」
盛り上がるおっさん達。やっぱりこの年代には酒好きが多いのか。
「おいおい、花井は未成年だぜ?いいのかよ。それに師範も許さないだろうし」
たまらず話に加わる美琴。
「弥三郎にゃ、黙ってとくに決まってるだろ!」
「それに周防、お前親父の晩酌によく付き合ってるんだろ?そんなこと言えるのか?」
「うっ・・・・・・・・」
何も言い返せない、当たり前だ。事実なのだから。
「よぉし、じゃあお前も参加決定だ!」
「あ、あたしも行くのか!?」
「当たり前だろ、酒ってのは大勢で飲んだ方が楽しいからな!」
「でも、花井が行くと決まったわけじゃ――――」
「春坊は俺達の誘いを断らねえよ!」
本人の意向、まるで無視。
「よぉーし、決まりだ!楽しみだなぁ!!」
はっはっは、と笑いながら稽古に戻るおっさん連中。そんな彼らを見て美琴は
(ただ楽しく飲みたい理由が欲しかっただけなんじゃねえのか?)
と勘繰ってしまうのだった。
それから二時間後、商店街の一角にある少々古びた居酒屋を貸し切り、「春坊を慰める会 〜酒の力を借りればいいじゃないか!〜」は開始されていた。
(わ民じゃなくて良かった・・)
心の中でひっそり呟く美琴。
わ民―――――――――神津先輩に対する想いが終わりを告げた場所。行けば、また思い出してしまう。
あれから少々時も経ち、髪も切った。表面上は立ち直れたと思っている。
しかし、一年以上も心に留めておいた気持ちなのだ。そう簡単に踏ん切りをつけることなどできない。
ましてや忘れ去ることなど不可能だ。自分の力で過去の思い出にしていくしかない。
恋愛が苦手な美琴には難しいことではあるが・・・・
「――――う、オイ周防。」
頭の端から聞こえてきた声に、美琴は我に返る。
「ゴ、ゴメン。えーっと、何だっけ?」
「なんかボーっとしてるみたいだったから、話し掛けただけだよ。それよりあっちに参加しねえのか?面白いことになってるぜ。」
「あっち・・?」
示された方向にいるのは、一応の今日の主役、花井。
酒が注がれると、それを一気で空け「これは・・・・・恋の味だぁーーーーーー!!」とかなんとか叫んでいる。
そんな花井の周りにいる連中は
「はっはっはっは!コイツは面白ぇ!」
「春坊がこんな酒に弱いとはなぁー」
と、口々に煽っている。いきなり日本酒から飲んでいるようだ、ありえねえ。
「あっちゃ〜〜、アイツもうできあがってんのか。」
美琴の言うとおり、花井はもう完全にブレイク状態だ。心の中を覗けば、八雲のことを「ヤクモン、ヤクモン!」とのたまっているに違いない。
見かねた美琴は花井の傍に席を移動させる。
「おい、花井!お前飲みすぎだぞ、その辺でやめとけって。」
「何ぃ、やはり僕も八雲君のために禿げにするべきなのか!?」
支離滅裂です、我らが2−Cの学級委員長。
「ううぅ、僕は・・・僕はどうすればいいんだぁーーーーーー!!」
その言葉とともに花井は、コップ一杯に入った酒を一気にグイッと開ける。
そしてそのまま、仰向けにバターンと倒れてしまった。花井、KO
○日本酒VS花井春樹●(決まり手:自爆)
「あ〜あ、どうすんだよコイツ。」
倒れた花井の頭を小突きながら美琴がぼやく。
「おい春坊、もう潰れたのか!俺ゃまだ注いでねーぞ!?」
「いいじゃねーか、見てて面白かっただろ?」
「いーや、まだ見足りねえから起こせ!」
・・・どうやら花井を本当に心配しているのは美琴以外いないようだ。
やはりこの連中、飲みたい口実が欲しかっただけらしい。
(こいつらわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜)
拳を握り締め、一人、苦労を味わう美琴であった。
やがて宴もたけなわ、主役がいなくなっても問題が無くなったらしく、潰れた花井を放置して皆はそれぞれの机で盛り上がる。
美琴も話には加わっていたものの、花井の傍からは動かなかった。どうやらこの後も面倒をみるつもりのようだ。
(表面上は変わってても、本質は変わってないのかもな)
眼鏡がずれたままの花井の顔を見ながら美琴は思う。
昔はよくコイツの面倒を見たもんだ。もっとひ弱そうな顔立ちで、よく「ミコちゃん、ミコちゃん」って言いながらあたしの後をトコトコついてきてた。
困った奴、って思うことはよくあったけど、嫌だとか鬱陶しいと思ったことは一度も無かったな。今考えるとありえねえけど。
あたしの傍にいたせいか、だんだん口調も変わってきた。
背の高さもいつの間にか抜かれてたし、呼ばれ方も「ミコちゃん」から「周防」に変わってた。中学生の頃だったかな。
それに気付いた時、一抹の寂しさはあったけどやっぱり嬉しかった。
あたしがコイツをちゃんとした男にしたんだって実感があって。逆に頼れる時もあったりした、あたしが溺れた時にすぐ助けてくれたりとか。
・・・って、べ、別に変な意味で言ってるんじゃないからな!勘違いすんなよ!
「じゃあ、今日はお疲れっしたーーー!!」
「おーい、春坊!帰るぞ、起きろ!」
「え?」
どうやら美琴が昔の思い出に浸っている間に飲み会は終わりを告げたらしい。
唯一潰れた花井を皆で起こしている。
すると、
「あたしが面倒見るよ。」
さっきまで思い出に耽っていた美琴は自然と口を開いた。
「皆、社会人だから明日仕事だろ?あたしは明日、土曜日だから学校休みだし。花井も自分で立てるみたいだから。」
そう答えるその顔は、笑ってるように見えた。
「おいおい、何言ってんだよ。そんな心配、無用だよ。」「水臭いな、そのくらい手伝うよ。」「一人じゃ大変だろ?」
そう口々に言うが、そんな皆の言葉を美琴は口許の笑みを絶やさぬまま首を横に振る。
髪が左右にサラっと揺れる様が、やけに女性らしく見えた。
「あたし一人で・・・コイツの面倒を見たいんだ。」
そう言いながら美琴は花井の腕を取り、肩を組ませる。そんな様子を周りは何も言わずに美琴の行動を見守った。こちらも笑みを湛えて。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするか。」
そう言葉を返す。そしてそのまま花井の頭を軽くポンポン叩いて、話し掛けた。
「よかったなー、春坊。嫁の心配は無さそうだぞ。」
「なっ!?」
「これで道場の将来は安泰だな!」
「おっ、おい!」
「結婚式には呼んでくれよ?」
「ちょ、ちょっと待てって!」
急におかしな方向に向きだした話に、美琴は動揺を隠せない。
「どうした、花嫁?」
誰もが先ほどと違った意地の悪そうな笑みを浮かべている。
「誰が花嫁だ!」
自分の顔が真っ赤になってることに美琴は気付いているのだろうか?
そんな様子に周りの連中は、更に笑みを深める。
「なんで急にそんな話になるんだよ!!」
「はっはっは、照れるな照れるな。」
「照れてなんかねえ!あぁ、もう!さっさと帰りやがれ!!」
その一言で、皆は蜘蛛の子を散らすように散らばり帰っていった。
「お幸せにー」なんて言葉も時折飛んでくるが、美琴はその一つ一つに「うるせー!」と言葉を返す。
やがて、とうとう二人きり。
「ったく、全員でからかいやがって。あたしとコイツはそんな関係じゃねえってーのに。おい花井、帰るぞ!ちゃんと歩けって!」
「う〜〜〜、八雲くん〜〜〜」
フラフラしながらもようやく二人も帰路についた。
(―――――――――――――よく考えたら、)
花井の家の前に着いて美琴は一つの不安に思い当たる。
(家にこんな状態になったコイツを連れて帰った時点で、師範にバレるんじゃねえのか?)
その考えは当然ながら、当たっているわけで。
インターホンを鳴らし、玄関の扉を開けると「春樹!?」とおばさんが血相を変えて出迎えた。
(花井の奴、何も言わずに来たみたいだな。)
おばさんに飲み会でつぶされたことを説明する。
おじさ・・・じゃねえや、師範は奥から出てこない。きっと怒ってんだろうなあ。コイツ、明日は二、三時間は正座させられるんじゃねえか?
「美琴ちゃん、わざわざゴメンなさいね」と謝ってくるおばさんを制し、コイツの部屋へ連れて行く。
おばさんも手伝おうとしてたみたいだったけど遠慮してもらった。ここまで来たら、自分一人で面倒を見たかったから。
「よいしょっと。」
肩を組んでいた花井をベッドに寝かせる美琴。その拍子に、眼鏡が花井の顔からずり落ちた。
美琴は、その顔をまじまじと見つめる。
(眼鏡外して黙ってたら、ちったぁ格好良いんだけどなぁ)
眼鏡を外した状態の寝顔を見ながら、美琴は花井の外見の印象を頭に浮かべる。
分厚い眼鏡と変な髪形、そして熱すぎる性格が災いしているが顔立ちは悪くない。周りの女子生徒がそう噂しているのを何度か耳に挟んだこともある。
(損してるなぁ、コイツ)
そんなことを考えていると、花井の口が微かに動き出した。何か言葉を発するようだ。
「まぁーた、塚本の妹さんの名前でも呼ぶのか?おいっ。」
なんとなくおもしろくない気分になる。鼻でもつまんでやろうかと腕を動かす。
しかし、花井の口から放たれたの言葉は懐かしい響きだった。
「ミコちゃん・・・・・」
「・・・・・・・・・・。」
一瞬、花井の顔が随分幼く見えた気がした。花井だけじゃない、自分自身も子供になったような錯覚に陥った。
鼓動が少し、速くなる。
「・・・・・・・・・。」
再びしゃべらなくなる花井。
「おい・・・・、急に何言い出すんだよっ。」
悪態をつきながら、寝ている花井の前髪をかきあげる。その行為が間違いだった、とは言わないが。
美琴の鼓動がトクンッとさっきよりも大きく跳ねた。
前髪をかきあげた彼の顔は幼馴染の彼女であっても、今まで一度も見たことのない表情だった。
普段の彼とはまるで別人に見える。それに、つい先ほどまでこの顔がとても幼く見えていたのだ。
先ほどから何一つ変化してない、花井の顔。しかし美琴にはそう見えなかった。
初めて花井を幼馴染ではなく、一人の男として意識したせいなのか。
もしかしたら、美琴も酔っていたのかもしれない。
神津先輩への気持ちを断ち切れてなかったこともあったのか、美琴は衝動的に考えるという行為を止めた。
――――――――――前髪をかきあげていた手を離し
――――――――――その腕をそのまま、花井の頬に添えさせる
――――――――――自分の顔を、ゆっくりと花井の顔に近づけて
―――――――――――――――――――――――――――――目を閉じた
その間、美琴は無意識だった。そして距離があと10センチ程度となったその時、
「・・・ん・・・・?周防、どうした?」
「!!?」
意識を取り戻す花井。少々寝ぼけたまま、自分の目の前で両眼を閉じていた美琴に話し掛けた。常にタイミングの悪い男、花井春樹。
話し掛けられた美琴はズザザザザザザッと壁際まで後ずさり、これ以上ないくらい顔を赤くして言葉を失っている。口許を隠して。
「・・・・?一体どうしたんだ?おい、周防?」
「な、ななな、何でもねえよっ!!!お前、これからは無茶すんなよ!じゃあな!!!」
そういい残し、光のような速さで部屋を出て、玄関に向かい、靴を履き、家を出て行く。
「なんだったんだ・・・?」
思った疑問を口にする花井、そのまま考え込む。美琴は自分に何をしようとしていたのか。
眼を閉じて、顔を近づけてきていた。花井の知りうる限りでは、そんな動作を必要とする行為は一つしかない。
「まさか周防が僕に・・・?いや、しかし・・・」
一方、そのまま走って帰宅途中の美琴。
(なんで、あたしあんな事・・・・・)
さっきまでの自分の行為を思い出し、その先を考えようとしてまたハッ、となる。
「あーもう、忘れろあたしぃーーーーー!!」
言いながら、自分の髪をくしゃくしゃにする。
結局、この日は一睡もできなかった二人だった。
――――――翌日の道場
弥三郎に命じられていた正座三時間を終えた花井は、昨日の疑問を解消するため美琴に話し掛ける。
「なあ、周防。」
「な、なな、なんだよ!お前と話すことなんて何もねえぞ!!」
「いや、昨日寝ていた僕に一体何をしようと―――――」
その先を言うことはできなかった。美琴に襟首を掴まれ、物凄く恐い顔で睨まれたからだ。
その衝撃で、また眼鏡がずれる。
「・・・・・・・・忘れろ。」
「わ、分かった。も、もう聞かん。」
すると掴んでいた手を離し、花井に背を向けて離れていく。こんなによそよそしい態度の美琴は初めてだ。
そんな二人の様子に、昨日飲み会に参加したメンバーは全員、同じ考えにたどり着く。
(あの後、なにかあったな。)
まだまだからかうことができそうだ、と、またもや底意地の悪い笑みが浮かんでくる。
一方美琴は、どうやら、まだ気持ちを抑めることができていないご様子。
(ったく、なんであたしがこんなドキドキしなきゃいけないんだ!)
そう心の中で毒づきながら、ちら、と一瞬、花井の方を向く。
そのタイミングが良かったと言うべきか、悪かったと言うべきかは分からないが
その時花井は、ずれていた眼鏡を一旦外し、その時邪魔になる前髪をかきあげ、またかけ直している最中だった。
(―――――!?)
それを見た美琴は、昨日のことをまた思い出してしまった。顔がまた赤くなる。
どうやら、本人が思っている以上に花井に対して敏感になってるようだ。
「先生ぇー、顔が赤くなってる。」
「熱でもあるのか?」
「無理は体によくないぞ!」
事情を知らない児童部の門下生達が話し掛けてくる。
それを「うるさい、なんでもなーーーーーーい!!」と一喝する美琴。
そんな様子の美琴を見て「やっぱり、あれは・・・・・」と、また勘繰ってしまう花井。
幼馴染によくある「友達以上、恋人未満」という関係は、どうやらこの二人にもあてはまるようだ。
それが「恋人」になるかどうかは分からないが・・・・
――終――
以上です。
縦笛SSを立て続けに投下しましたが
前のSSと展開がよく似てることに今更気付いた
ワンパターンで非常にスマン
漏れにはSS書く才能がないな・・・・・_| ̄|○
>>154-164 イイヨイイヨー!!
この2人は数年後マジで結婚すると俺も思ってます故。
(高校時代の友人があらかた所帯持ってからでしょうけど・・)
イイネ!!良い仕事してくださるSS職人様だ!
晶(等の第三者)が絡まないと萌え展開にならない沢×播SSに対して、
この二人はピンでできますからねえ。
乙です。
おいしく食べさせて頂きました。美味美味(^^)
こういう話、大好きです。次も期待してます。
萌え死にますた。
「八雲ー、愛理ちゃんから聞いたんだけど最近播磨君と仲いいんだって?」
「え?あ、いや…たまに学校の屋上とかバイト先とかで話すくらい…」
「そうなんだー…でも八雲が男の子とそんな風にするのって今まであんまなかったよね」
「そ、そうかな…」
「…ねぇ八雲、ホントのところ播磨君のことどう思ってるの?お姉ちゃんには本当のこと話して」
「ど、どう思ってるって…」
「播磨君のこと好きなの?」
「!!!」
「もしそうならお姉ちゃんは応援するから遠慮無く言ってね」
「い、いや…それに播磨さんには好きな人が…」
「八雲播磨君の好きな人知ってるの?教えて教えて!やっぱミコちゃん?それとも愛理ちゃん?」
「……ごめん姉さんそれは言えない」
「それは播磨君と八雲だけのヒミツ?」
「う、うん…」
「そうなんだー。いやもし八雲が播磨君とちゃんとお付き合いするつもりだったら
播磨君が愛理ちゃんやミコちゃんと前にいろいろあったのも話しとかなきゃいけないかなーと思って」
「いや…姉さん、それは多分勘違いとかだと思う」
「勘違い?」
「播磨さんは、ねes…その人のことだけをずっと大事に思ってきたみたいだから…
沢近先輩とのことはもともと人違いだったみたいだし…あ」
「なるほどー、やっぱ播磨君が好きなのはミコちゃんだったんだー♪」
「い、いや、ちが…」
「じゃあ誰?」
「……」
「ふっふっふ、八雲はまだまだだな〜。でも播磨君愛理ちゃんに告白したのミコちゃんと間違えてだったんだ。
それで愛理ちゃん播磨君のこと怒ってたんだね…でも良かったよ播磨君お猿さんじゃなくて」
「姉さん…」
「あ、わかってるよ八雲。勿論播磨君の好きな人は皆にはナイショね。
でも八雲が協力してるんなら私も播磨君のこと応援…あれ、でもミコちゃん
今鳥君とも良い雰囲気だしカレリンが今鳥君のことが好きだから…あーもーどーしたらいいの」
「……」
おしまい。
GJ!
天満が勘違いっぷりを発揮しまくってていいですな。
人一倍の妹想いで随所にお姉ちゃんパワーを発揮しつつ
どっか根本的なとこが間違ってる天満が実にらしいですな(w
個人的に八雲が播磨の為に天満の誤解を解く展開キボンヌな
「姉さん違う、播磨さんそんな人じゃない派」なので実にハァハァですた
つーか一連の会話形式SSS書いてるのって一人の職人さんなのかな?
一粒で二度美味しい感じがいつもの播磨イトコものを彷彿とさせるんだけど
グッジョブ!
勘違い大王一人突っ走ってますね。
妹を思うがための暴走良いです。
次もテンポのいい会話形式SSを勝手に期待しておきます。
175 :
Classical名無しさん:04/03/23 09:33 ID:aAgfbFHA
マズイ…
播磨の財布の中には五百円玉が一つ。次の給料まで五日。それはまだ良い。
問題はお腹が空いていた天馬ちゃんをカレー屋に誘って、しかも奢ると言ってしまった。
今の事態だ。一番安いので、270円。半カレーはメニューには見あたらない。
「播磨くんは何にするの。」
何もいらない。君だけが欲しい。金は二の次だ。何でも好きなモノを選んで欲しい。
俺はいらない。飢え死にしてしまっても君が美味しくカレーを食べてる所を見ただけで。
「俺、やっぱ腹空いてなかったわ。」
「えっ、本当に?」
「いいぜ塚本。なんでも好きなモノ食えよ。だけど…五百円までな。」
「ゴメンね播磨くん。」
いいってコトよ。五百円までっていうフレーズはちと情けなかったが、もうこれは…
デートだ。男と女が向き合ってテーブルに座り、普通の話をしている。
「本当にいいの?」
君は優しい子だ。どんと来てくれ。
「すいませーん。シュリンプカレー大盛りお願いします。」
470円か。容赦ねぇな。
↑ageてしまった。ゴメン。
まだ終わりじゃないですよ。
それにしてもアレだ。天馬ちゃんは本当に美味そうにカレーを食う。カレーになりてぇ…
天馬ちゃんはスプーンの上に小さいカレーを作るタイプか。俺は混ぜる派だがな。俺も今度からそうしよう。
……待てよ。これはまずいんじゃないのか…?
さっきから俺は天馬ちゃんの口元ばかり見ていた…天馬ちゃん嫌がってるんじゃねぇのか?
いけねいけねっ!ちょっとひとまず外を眺めとくか。ああー良い天気だなー。
こんな天気の日は、よく金髪の女の子がガラス越しに見える…ってお嬢かぁぁぁっ!!
いや!大丈夫だ。気付いていない。間違っても入ってくんなよ。
お前が来るとややこしくなりそうだからな。そうそう、そのまま…良し!言った!
ぐぅぅぅぅ〜。
「?」
しまった。腹の虫が…ヤバイ。めちゃめちゃ恥ずかしいじゃねぇか!くそったれ!
天馬ちゃんに笑われちまう!うおっ!こっちめちゃめちゃ見てるよ!あり得ない!クソ!恨むぜお嬢!
「播磨くん」
ん?どうしたんだ?天馬ちゃん。スプーンを俺の方に向けて…なんだコレは?何かの合図か?
「播磨くんも食べなよ」
「え?」
「その為に大盛り頼んだんだよ。ね?」
天馬ちゃん、俺は君を好きになって良かった。俺のコトを考えてくれているんだな…
優しい君を好きになって本当に良かった。今日、シュリンプカレーが大好物になった。
スプーンで口に入れるたびに涙をぬらす播磨。しかし、折角の間接キスだという喜びには全く気付かなかった。
そして天馬も、今度は烏丸くんを誘おうと全く別のことを考えているのだった。
カレーを混ぜない慣れない食べ方にギクシャクする播磨だった。
fin
天満はやっぱり烏丸なのね。
異性としてまったく認識されていない播磨、報われないなー(笑)
まぁ、播磨本人としては幸せそうだけど。
そのまんま本編で出てきそうなシチュエーションですね^^
ご馳走様です♪
〜二人の屋上。
「いつまで寝てんのよ …いちおー、謝っとこうと思って… ごめんなさい」
夕焼けの屋上でちょっと照れ拗ねたように目線を外してはいたが、それでも沢近(あいつ)が本気で謝っているのはわかった。
ふわっと屋上に風が吹く。
さらさらとした金色の髪が夕日の照り返しできらきらと流れる。
そんな沢近を見て、不覚にも「綺麗だ」と思ってしまった。
「い、いーよ、別に…! おめーに怒ってもしゃーねェべ…」
なんとなく沢近のほうを見ることができなくなって横を向いてしまう。
くそっ、普段が普段でムカツク分、今の不意打ちは効いた。
自分でも何でか判らないが顔が赤くなっていくのを感じる。
きっと今の俺は真っ赤になっているんだろう。
ここが夕焼けの屋上でよかった、などと心の背景で思ってしまう。
そんな俺を見て何を勘違いしたか、
「あー、もう! 素直じゃないわね! そもそも…なんでヒゲにそんなにこだわるの? ないほーがいいわよ、フツー」
なんて、フォローらしきものを入れてくる沢近。
一瞬、俺の時間が止まる。
今の自分を形作った始まりの日を思い出す。
無敵だったはずの俺が綺麗に投げられ、背中から胸に抜ける痛みと、それとは別の胸のドキドキを知ったあの日。
そして、それからの日々を回想する。
それが空回りの日々だったのは、自分でもなんとなく判っていた。
天満ちゃんは烏丸が好き。
烏丸に誑かされた訳でも、弱みを握られているわけでもない。
他でもない天満ちゃん自身が烏丸の事を好きなんだ。
認めたくはないが、この2年間人一倍天満ちゃんを見続けてきた俺自身だからこそ判る。
俺が天満ちゃんに抱く想いと、まったく同種の想いを天満ちゃんは烏丸に向けている。
だからこそ、それがどれだけ純粋でストレートな想いなのかも、判ってしまう。
そういう娘だからこそ俺は本当に好きになったんだと思う。
そこで、ふっと力が抜けた。
判ってはいたけど、どうしても認めたくなかった事実を自分の中で認めてしまい、気付いたら
「そろそろ、潮時なのかもな…」
と、呟いていた。
「そろそろ、潮時なのかもな…」
なんて、播磨君(あいつ)は言った。
夕焼けの照り返しの所為なのだろうか。
そう言ったあいつの顔は、いつもの馬鹿っぽいあいつじゃなくて、なんだか、少し年上の男の人って感じで、不覚にもドキッっとしてしまった。
あいつ、こんな顔も出来たのね…
そんな私の動揺にはまったく気づかず、あいつは自分の世界に入っている。
それがどうしても気に入らなくて、私は発作的に口走っていた。
「ねぇ、確認するけど、私は播磨君の舎弟ってやつなのよね? で、舎弟ってのは子分の事なのよね?」
「ああ、そうだが…」
と、急に自分の世界から引き戻され、私が何を言おうとしているのか判らず、不思議そうな顔でこちらを見るあいつ。
「だったら、今日から私のことはちゃんと愛理って呼んでっ! 」
「なっ…!」
私の発した言葉が、あいつには余程予想外だったのだろう。
びくっとなった弾みで、かたたたっ、と音を立てて屋上にサングラスが転がる。
夕焼けを映し、ちょっとだけオレンジ色をした澄んだ目を見開いたまま、あいつは硬直する。
ふーん、今までサングラスでわからなかったけど、素顔のあいつって表情がくるくる変わってかわいいところもあるのね、などと心の背景で思ってしまう。
言うのは恥ずかしかったけど、一度言ってしまえばあとは開き直りだ。
私の顔は真っ赤だろうし、それを硬直したあいつに凝視されているのも判っているけど、今はこの弾んだ心がとても嬉しいから気にならない。
そっか、私、きっと恋してるんだ。それも、とびっきりにドキドキする恋。
硬直の解けたあいつが、
「そそそ、そんなのダメだ、せせせ、せめて沢近…さんぐらいで勘弁してくれ、いや、それ以前にアレはちょっとしたキャンプの復讐で…」
とバタバタもがいているが、許してやらない。
「むーっ、 親分が子分にお嬢なんて絶対に言わないんだからっ!」
これは、私の精一杯の照れ隠しだ。
「あー、そー、でも私は既にお茶買って来てあげたわよね、あの時点で契約は成立したのよ! 勝手に破棄するなら契約違反の代償として一生アンタは私の舎弟よ! 」
我ながら無茶苦茶言っているのは判っている。
でも、もう火はついてしまったのだ。
今更消す事なんて出来ない。
あいつが本当に好きだったのが誰か、なんて、もうどうでもいい。
全部私を本気にさせたあいつが悪い。
私のほうを向いていないのなら、絶対に向かせて見せる。
沢近愛理には敗北の二文字は似合わないのだから。
〜その後の二人。
キーンコーンカーンコーンと鐘が鳴り、午前の授業が終わる。
教室は喧騒に包まれ、購買に昼食を買いに行く者、ガタガタと机を動かし仲の良いクラスメイトとお弁当を広げる者等、皆、思い思いに行動をはじめる。
そんな中、2-Cの窓近く後ろのほうにある彼の席では…
「ほらっ、拳児君! 早起きしてお弁当作ってきたんだから、一緒に食べるわよ!」
「ぐっ…」
「なによっ! そんな目で見たってダメなんだから! 私は拳児君の舎弟なんだからね。舎弟が親分のお昼を用意するのは当たり前でしょ! 」
沢近愛理、変われば変わるものである。
いや、彼女の中での好き嫌いの方向性が変わっただけで、元から彼女はこんなものなのかもしれない。
噂では、「出席日数の足りない播磨をこれ以上サボらせないのは舎弟の努め」という至極まっとうに聞こえるお題目を振りかざし、毎朝高校生の播磨が住んでいるとは思えない高級マンションまで迎えに行っているらしい。
…なお、その際、ありえない同居人と出くわし、一騒動あったのはまた別のお話。
あの夕方、播磨はトレードマークとも言えるヒゲを剃った。
サングラスもバイクに乗るとき以外かけるのを止めた。
彼の中でも何かが変わったのだろう。
彼が変わった次の日から、校内ではちょっとした播磨フィーバーが巻き起こった。
そう、今までヒゲとサングラスという高校生にあるまじき特殊な容貌だった為、近寄るものが殆どいなかった播磨だが、意外にも素顔がイケメンだったため、1、2年の女子を中心としてファンクラブまでできる有様になってしまったのだ。
なんでも、ワイルドかつストイックな感じがいい、のだそうだ。
校内で男子のファンクラブができるのなど、2-Dのハリー・マッケンジー転入以来のことである。
そんな状況が面白くなかった沢近愛理嬢。
ブチ切れてついつい宣言してしまったのである。
「拳児(これ)は私のなの! 近寄る女はブッ殺すっ!」
と。
容姿は校内一と言ってもいい愛理のその狂気の宣言と、それを慌てて否定しようとしたものの、ギロリと睨まれた播磨自身が結局否定しなかった(出来なかった)事もあり、当人たちは親分だ舎弟だと言っているが、現在、播磨と愛理は校内の公認カップルのような扱いを受けている。
まー、親分舎弟にしても、皆の認識ではどちらが親分なのかは言うまでも無い。
「しっかし、以外だったよなー、愛理があそこまで変わるなんて…」
ずじゅーとパックのカフェオレを飲みながらのたまうのは周防美琴。
「播磨君にはテイマーのアビリティーがあるからね」
ちゅどーんという音と画面に現れるGAME OVERの文字を見ながら返事をする高野晶。
「でも、播磨君と愛理ちゃん、幸せそうだね。私もがんばらなくっちゃ!(烏丸君と…ごにょごにょ)」
両腕にぐっと力を入れつつ、八雲謹製サンドイッチをはむはむしているのは、全ての原因であり、今でも播磨に想われていた事など、まーったく気付いていない塚本天満。
「言い出しっぺは拳児君なんだから、自分の言葉にちゃんと責任持ちなさいよね! ペットだって舎弟だって一度飼ったら最後まで"一生"面倒見るのが社会のルールなんだからっっ!」
沢近愛理のとんでもない言葉が教室に響き渡る。
「わーかった、わかったから落ち着け。…愛理(// //)」
「〜〜〜っ!!(// //)」
クラスメイトも、またかと苦笑しつつ微笑ましく二人を見守る。
騒がしくも楽しい黄金の日々。
それはこれからもずっと続いていく。
<了>
はー、連続投稿規制喰らって焦りました。
最後だけID変わっているのはそのせいです。
駄文へのお付き合いありがとうございました。
それでは。
GJです!
最近旗派としての自信を失いつつありましたが
やっぱり沢近ですね。
GJ!
強引な沢近がイイです
本編でも学校のみんなが播磨の素顔を知る日が来ると良いなあ
「おい、ヒゲ」
「もう俺はヒゲじゃねぇ」
「じゃーハゲ」
「てめぇ…、誰のせいでこうなったと…」
「…何か言ったハゲ」
「いえ何も言ってません。それで何用ですか?」
「ちょっと寒いからあなたのジャージ貸して」
「……?」
「…だからジャージ貸してって言ったの」
「…自分のはないんですか?」
「忘れたの」
「なんで俺なんだよ。違うやつに借りればいいじゃねーか…」
「何か言った?」
「いえ何も言ってません。私めのでよろしければぜひお使いください」
「ふんっ、最初からそうやって素直に貸せばいいのよ、まったく…」
「くそー…」
「…ありがとう…」
「あー、何か言ったか?」
「ううん、なんでもない…」
おわり。
190 :
Classical名無しさん:04/03/23 17:45 ID:kczMw2dY
はじめてif読みました。
とても読みやすそうだったので活字嫌いの身なのに気が付いたら読んでました。
おもしろかったです。
「おせ−な妹さん、何かあったのか?」
屋上で独り呟く、ベレー帽を被りサングラスをかけた男、播磨拳児。
右脇には原稿を誰にも見られぬように抱えている。
どうやら、八雲にまた漫画の感想を言ってもらいたいようだ。
十分程前にメールは送ってある(初めて漫画の感想を聞いたときときに、メルアドを交換したらしい)のだが、今のところ応答がない。
と、その時プロジェクトAのテーマソングが流れ出す。播磨の携帯のメール着信音だ。
「ん?妹さんからか?」
そう言いながら送信されてきたメールを開く。
『今日は熱を出して学校を休んでいるので、拝見できません。本当にごめんなさい。』
「そうか、妹さん、今日学校を休んでいたのか。」
そう言いながら、携帯をポケットにしまいこむ播磨。少し残念そうな表情をみせる。
「仕方ねーな、今日はあきらめ――――――」
その時!播磨の脳内が突如フル回転を始める。常にポジティブシンキングなこの男のことである。また都合のいい妄想が浮かんだに違いない。
――――――――――――
ピンポーン、と塚本宅のインターホンを押す播磨。
「はーい!あれ、播磨君どうしたの?」
「おう塚本、妹さんが熱で倒れたって聞いたんで見舞いに来たんだよ。」
「えっ、でも、そんなわざわざ・・・・・」
「何言ってんだよ。人が人を心配するのに理由なんていらねえだろ?」
「播磨君・・・・・・・、なんて優しいの。」
「できればこの優しさを・・・君一人に使いたい。」
「播磨君・・・・・」
「塚本・・・・」
――――――――――――
(オイオイ、ヤベ―よ俺。パーフェクトすぎるぢゃねーか。)
指でサングラスを抑え、やや斜め上をむきながら妄想に浸る播磨。顔は既に劇画調。
「よぉーし、そうと決まったら放課後を待つのみだ!」
屋上で高らかに宣言する播磨だった。
――――――――そして放課後
塚本宅に愛車のバイクで向かう播磨。
(えーと、確かあそこの角を曲がればすぐだったよな。)
ハンドルをきり、バイクを停める。
「さぁ、ここからが本番だぜ・・・・・・!」
しばらくインターホンの前に立ち、心構えをする播磨。そして、
「よし!」
と、手を動かす。
その時だった、播磨は自分が先ほど来た道から人の気配を感じたのは。
「な・・・、なんでアナタがここにいるのよ!?」
声のした方へ振り向く。
そこに立っていたのは、対播磨専用最強人型兵器ゴールドツインテー・・
「なんですってぇ!」
もとい。
彼と同じ2―Cのクラスメイトで、この世の言葉では形容できない容姿を備えた美少女、沢近愛理様。これでいいでしょうか?
「それならまあ、許してあげるわ。」
ドウモアリガトウゴザイマス
「誰と喋ってんだよ?」
「うるさいわね、アナタこそさっきの質問に答えなさいよ。」
「俺か?俺は妹さんの見舞いに来たんだよ。って何だよ、その目は。なんか文句あんのか?」
播磨の答えが気に入らなかったのか、ジト目で返す。
(なんでわざわざコイツが、天満の妹さんの見舞いになんて来るものかしら―――――)
なんとなく不機嫌になる沢近。
そんな疑問を抱いてると、「てめーこそ、何しに来たんだよ」と同じ質問を返される。
「アンタと同じよ。」
キャンプで肝試しをして以来、個人的に親しくなったらしい。「盗み聞きした仲」というわけですか。
「・・・なんか言った?」
いえ、何も申しておりませんです、ハイ。
とりあえず、二人ともがここにいる理由を話したので、インターホンを押す。
(天満ちゃんと仲良くなれるせっかくのチャンスが―――――)
(なんで学校終わってからも、このヒゲと顔あわせなくちゃならないのよ――――)
お互い、不機嫌な顔になってはいるが。
「二人ともありがとう、八雲も喜ぶよ!」
満面の笑みで二人にお礼を言う天満。本編の主人公なのにSSでは脇役。
「今、八雲寝てるんだけど・・・どうする?」
小首を傾げて播磨に尋ねる天満。
「あ、あぁ、起きるまで待つよ。」
そう答える播磨。しかし、心の中では・・
(くぅあっはぁ!!かわいい、かわいすぎるぜ!天満ちゃん!!そうやって君はいつも俺を虜にする・・・)
随分ギャップがあるな、オイ。
一方、沢近も播磨と同様の答えを返す。
(このヒゲ、また何かやりかねないものね。あの時は何もなかったけど)
どうやら、キャンプで覗き見したことで播磨に敏感になっているようで。
はぁ〜あ、これだからデバガメは・・・
「・・・殺されたいの?」
申し訳ございませんでした。
(コイツ、さっきから誰と話してんだ?)
そう思うのはもっともだが、疑問をもたないでいただきたい、播磨君。
「さてと・・・続きをしなくちゃ」
「どうしたの天満?」
すくっと立ち上がった天満に問い掛ける沢近。
「八雲に栄養になるもの作ってたんだ。」
そう言いながら台所に行き、机の上においてあるすり鉢を掴む。何かを擂(す)っているようだ。
「へぇ〜、どんなの作ってん・・・・・」
その先を言えなくなり、固まる沢近。
「ん?どうしたお嬢・・・」
そう言いながら近付き、すり鉢の中身を覗いた播磨も固まる。
「?どうしたの、二人とも?」
顔にハテナマークが浮かぶ。それに沢近がなんとか答える。
「あ、あの・・・天満、これは・・・・・何?」
「だ・か・ら!八雲を元気づけるものだってば!」
自信満々に答える天満。
「・・・・・どうやって作ったの?」
「えっとね、まだ作ってる途中なんだけど。
イモリとバラとローソクを、焼いて潰して粉にしてるんだよ。これを舐めれば誰だって元気になるんだから!
って、・・・・・・あれ?どしたの二人とも?」
(つっこむ気にもなれないわ・・・)
急にげっそりとする沢近。
(スゲえ・・・、天満ちゃんスゴすぎるぜ・・・・・)
何故か泣きながら燃え尽きている播磨。
塚本天満、マニアックすぎるぞ、誰がこんなネタ分かるんだ?
「あ〜もう!こんなの駄目に決まってるでしょ!」
そう言いながら、問答無用でそれを捨てる沢近。
「あぁ〜酷いよ、愛理ちゃん!」
「酷くない!あんた、妹を殺す気!?作るのなら、おかゆとかでいいでしょ!」
「今、お米きらしてるんだ・・・」
だから栄養になるもの作ってたんだけど、と付け加える天満。
「だったら買ってくればいいじゃない。」
「ん〜、でも、八雲を置いていくわけにはいかないし・・・」
困りはてる天満。こうなると本当は優しい沢近愛理。つい、こう答えてしまった。
「じゃあ、私が買ってきてあげるわよ。」
言ってから若干後悔したものの、顔には出さない。天満が純粋に「え、いいの?」と喜んでいるからだ。
しかし次に天満の口から発せられた言葉は、沢近にとって恐るべきものだった。
「でも、お米って重いから一人じゃ無理だよね・・・・。あ、そうだ!播磨君もついて行ってあげて!ね、お願い!!」
「・・・・なんでアナタと二人で買い物に行かなきゃならないのよ。」
「その言葉、そのままそっくり返してやるよ。」
結局、スーパーに来ている二人。天満の提案を退けることができなったようだ。
(ちっ、このアマ苦手なんだよな)
心の中でそう呟く播磨。
米は既にカートに入れてある。しかし、「もっと栄養のあるもの、買っていってあげないと駄目じゃない!」という沢近の言葉で買い物は延長している。
(コイツ、俺のこと嫌ってるはずだよな?買わなきゃいけねー物買ったんだし、さっさと帰りゃ―良いだろうが)
沢近の顔を見ると、嬉しいんだか、嫌なんだか良く分からない表情をしている。
とりあえずカートを押しながら、沢近の後について行く。
その時、「ニラとかも買っといた方がいいわよね。」と沢近が呟くのが耳に届く。
(取ってやるか。)
唐突に、何故か播磨はそう思った。そのまま自然に手を伸ばす。しかし、手にはニラとは違った柔らかい感触。
「ん?」
「!!」
沢近を見てみると、頬をうっすらと染め、手をもう片方の手で隠しながら播磨を軽く睨んでいる。
どうやらニラを取ろうとして、お互いの手が当たったらしい。
「何だお嬢、自分で取るつもりだったのか。」
「・・・・・・・・・・るのよ。」
何を言ってるのか聞こえなかったので、とりあえず聞き返す。
「あ?なんだって?」
すると、さっきとは違った大きな声で言い返してくる。
「なんでアナタが取ろうとするのよ!手が当たっちゃったじゃない!!」
あまりむちゃくちゃな理由で播磨に怒鳴る沢近。女性には暴力をふるわない播磨だが、理不尽に怒られては腹も立とうというもの。
「手が当たった位で何怒ってんだよ。いちいちそのくらいで突っかかってくるか?普通。」
「何よ、偉そうに不良が格好つけてんじゃないわよ!」
そう言いながら播磨の体をドンッ、と押す。
予想外の行動に播磨は「うおっ!?」という言葉と共に体制を崩し、床に倒れる。
そんな播磨をみてフン、と顔を逸らす沢近。左右に束ねてあるツインテールが遅れて揺れ動く。
(このアマァ・・・)
流石に播磨の怒りも頂点に達し、すぐに起き上がろうとする。しかし、視界の端にあるモノを捉えたことで「あ。」と言葉を発し、動きをとめる。
そんな播磨を不審がる沢近。
「ちょっとアナタ、何処見てるのよ?」
播磨はサングラスをかけているので目線が分からない。したがって、顔の向きや角度で何処を見ているのか何処を見てるのか考えるしかない。
そうして仮定して彼の視線を辿っていくと・・・自分のスカートの―――
「・・・・・ピンク」
「!!?」
思わず口が滑る。よくやった播磨拳児!お前も男だ!!
頬が微かに染まっていた程度の沢近の顔が、一気に真っ赤になる。
上半身だけ体を起こした播磨に、シャイニングウィザードが決まるまであと三秒―――
「〜〜〜ってーなぁ。」
膝を喰らった部分をさすりながら、米を抱えて塚本宅へ向かう播磨。
沢近はというと、「最低!」と彼を罵った後、スーパーを出て行った。あまりの怒りでおつかいに来ていたことを忘れ去り、そのまま帰宅してしまったようだ。
(フン、まあ良い。過程はどうあれ邪魔者はいなくなった。これで天満ちゃんと――――)
――――――――――
「ありがとう、播磨君。お米、重かったでしょ?」
「別に大したことねーよ、お前のためならこれ位当然さ。」
「ううん、そんなことない。腕とか疲れてない?」
「塚本・・・・・、違うんだ塚本!」
「え?な、何?」
「俺の腕は米を運ぶためにあるんじゃない!お前を守る為に、抱きしめる為にあるんだ!!」
「播磨君・・・・、そこまで私のことを・・・・」
「塚本・・・」
「播磨君・・・・」
―――――――――――
(Yes I am!)
親指を立てながら、また斜め上を向きながら劇画調になる。
誰もお前に質問なんかしてないぞ、気をしっかり持て、播磨。
途中、
「ママ―、おのお兄ちゃんなんかニヤニヤしているよー。」
「あんなの見ちゃいけません!さ、行くわよ!」
と、変な目で見られているのにも気付いていない。妄想の世界にどっぷりと浸かっているようで・・・・・
そんなこんなで塚本宅に到着する播磨。
(よし、今度こそキメてみせるぜ・・・・・・)
そう心に決め、玄関を開ける。
「塚本ー、米買ってきたぜー!」
パタパタという音とともに、天満が出迎える。
「わざわざありがとう播磨君。あれ?愛理ちゃんは?」
「あ、あぁ。急に用事が入ったんで、塚本に宜しくってよ。」
もっともらしい理由付けをして、その場を取り繕う播磨。本当のことなど言える筈がない。
「ふーん、そっか。あ、そうそう播磨君。八雲が目覚ましたよ。」
「お、そうか。じゃあお見舞いしねえとな。」
一応、表面上の目的は忘れてはないようだ。
―――――――――――コンコン。
「邪魔するぜ。」
音を立てないように、八雲の部屋を訪れる播磨。
「あ・・・播磨さん、・・どうして・・・?」
驚きを隠せない八雲。
「いや、熱出してるって言ってただろ?それでちょっとな。」
「・・・・・・・・」
「悪かったな。病気なのに、わざわざメールまで送ってくれてよ。」
「あ、いえ・・・・そのくらい・・」
体を起こそうとする八雲。それを制する播磨。
「おいおい、病人はちゃんと休んでろよ?」
「あ、でも・・・・」
「いいから寝とけ、寝とけ。」
そう言って、起き上がろうとした八雲を元の体勢に戻す。
八雲にとって播磨は心を読むことができない男性である。相手の本心がわからない分、普通に接することができる唯一の異性だった。
(どうして、わざわざお見舞いに来てくれたんだろう・・?)
八雲は普段、心を読むことができる自分の能力を敬遠している。しかしこの時は、その力が発揮されないことにもどかしさを感じた。
と、八雲が考えに浸ってる時だった。
「!?」
急に自分の額に感覚が走る、何かに覆われたような。
額を覆ったもの、それは播磨の手だった。そして、播磨はその状態のまま八雲に問い掛けてきた。
「もう熱は下がったのか?」
「え・・・・、あ、あの・・・・」
反応できない八雲。男性に触れられたのはこれが初めてだからだ。みるみる紅潮していく顔に播磨はうろたえる。
「うおっ、妹さん大丈夫か?熱が急に上がってきたみたいだけどよ。」
「あ、あの・・・、大・・丈夫です。」
「いや、しかしよ、そうは見えねえぜ?」
「ち、違うんです・・・、そうじゃなくて・・、これは・・・」
理由を言おうとしたが言えない。「触れられて恥ずかしいから」と。八雲には言える訳がなかった。
どうしようか困ってた八雲に天の助け(?)が届く。
「やった、出来た!」
そう響いたのは、八雲が一番好きな姉の声。八雲に食べさせるおかゆが完成したようだ。
「お、お姉さんの料理できたようだな。」
そう言いながら、八雲の額から手を離す。口許を布団で隠しながら、安堵の溜息をつく。無論、嫌だったわけではないのだが。
「八雲〜!おかゆ出来たよ!!」
そう言いながら扉を開ける天満。
「播磨君、八雲の様子はどう?」
「おお、あんまり熱は下がってないみたいだぜ。」
その一言に、顔を更に隠す八雲。当然、顔は赤いまま。
「うわぁ、本当だ。八雲、大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ。姉さん・・・」
「そう?なら早く元気になるようこれ食べてね!」
持ってきたおかゆを傍におく天満。そのまま播磨に話し掛ける。
「播磨君、あんまり長くいると八雲が疲れちゃうから、そろそろ行こ?」
「お、おう、そうだな。じゃあ妹さん、お大事にな。」
そう言いながら、二人は部屋から退散する。部屋に残るは八雲一人。
(・・・・・どうしよう、寝れない)
額がさっきよりも熱い、それもかなり。理由は分かっている。だが、この状況を打開する術を八雲は知らない。
(・・・・・気持ちを切り替えよう)
そう思い、姉が自分のために作ってくれたおかゆに手をのばす。が、中身を見て八雲の手が止まる。おかゆのはずのそれは、何故か緑色に変色していた。しかもかなりドロドロしている上、なんかボコボコ泡立っている。
(姉さん・・・、どうやって、これ作ったんだろう・・・)
姉の料理音痴っぷりを失念していた八雲だった。
一方、播磨。
(来た・・・、いよいよ天満ちゃんと二人っきりだぜ!!)
ようやく目的としていた状況を作り出せたようだ。
「今日はわざわざありがとう、播磨君。」
「イヤ、別に大したことじゃねーよ。」
といっても、ここは玄関先。どうやら天満はお見舞いを終えた播磨はそのまま帰ると思ったらしい。
(よし・・・、告白するのは今しかねぇ!)
「塚本・・・、実は今日来たのにはもう一つ理由があるんだ。」
「そうなの?一体何?」
聞き返してくる天満。そんな天満の様子に心を決める播磨。
(俺はこの一言に全てをかける!太陽よ、俺に力を!風よ、俺に勇気を分けてくれ!)
ちなみに言っておくが、今天気は曇りで無風状態だ。
そして意を決したように、口から言葉を弾き出す!
「塚本、俺はお前が好――――――――」
ガリガリガリガリガリガリガリガリッ!!
急に変な音がする。
二人が振り向いてみると・・・
「あー!ダメじゃない伊織!!」
「お、俺のバイクが!!」
八雲が飼っている黒猫、伊織が播磨の命同然に大事にしているバイクに爪を立てたのだ。
(このクソ猫がぁ〜〜〜〜〜!!)
伊織に鉄拳制裁かまそうとする播磨。しかし・・・
「ごめんなさい、播磨君!許してあげて!!修理代は弁償するから!!!」
涙目で謝る天満。
それを目にした播磨の脳内
天満の涙>>>>>>越えられない壁>>>>>>>猫に対する怒り
チーン
「・・・・・別にたいしたことじゃねえよ。」
また斜め上を向きながら劇画顔になる播磨。
「で、でもこんなに傷が・・・」
まだ涙目の天満。
「俺の愛馬は凶暴だ、その位なんともねえ。だから弁償しなくてもいいぜ。」
結局言わなくてもいい一言まで付け加えてしまう播磨。
「じゃあな、明日また学校で・・・・」
渋く決まってるぜ!兄貴!!
「播磨君・・・」
その一言を背に受け、愛車を走らせ始める播磨だった。
――――――――――が、後悔は後からやってくるもの。
(ぐぞぉ〜〜〜〜〜〜〜、どうすりゃいいんだ明日から!)
結局、そのときの感情に流されっぱなしで全く播磨の思い通りにいかなかったのであった。
いつものことではあるのだが。
負けるな播磨!お前にもいつか幸せな時は来る!!
――――――終―――――――
以上です。
旗派、おにぎり派、王道派が楽しめるような作品を目指したんですが・・・
難しすぎました
あと、天満と沢近の性格がちょっと変わってしまってるような・・
色々申し訳ないです
お疲れ様でした。
こういう地の文の形は初めてですかね?読んでてとても楽しかったです。
ホロレチュチュパレロには笑わせて頂きました。
あと、三点リーダは・ではなく…を使うそうです。
自分も以前注意されたのですが、たいてい……のように二つ続けて使うのだとか。
細かいことですが、一応。
次回も期待してます。
「…」についての指摘ってよく見るけど、そこまで神経質にならんでもいいんじゃないか?
そんなとこ気にするくらいなら、もっと内容に気を使うべき。
しばらくぶりに来てみたら神大量降臨じゃないですか嬉しすぎるぜコンチクショー
あと漏れも「姉さん違う、播磨さんそんな人じゃない派」とやらに入れてくれ(w
実際天満の誤解を解けそうなのは八雲しかいないと思うし
>>206 ごもっとも。SS書きとしては耳が痛い限りです。
職人の方も増えてきましたし、自分も負けないように精進しなきゃいけないですね。
関係ないですが、ついにIDカワッタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
微妙にかっこよくて満足です。
209 :
Classical名無しさん:04/03/24 02:08 ID:MRYUerYA
>>204 GJ!
全派閥が共存できる作りは良いですね。
欲を言えば沢近ともうちょっと良い雰囲気でも。あれじゃちょっと単純に嫌な奴な気も。
次回も期待してます。
「ところで拳児君、今の成績のままでは3年生に進級できないかもしれないがそれでもいいのかね」
「ふん、俺が留年を恐れているとでも思っているのか?」
「ふむ、そうは思わないが、もし留年したら塚本天満君の後輩になってしまうのだぞ」
「なにっ、そうなると来年は天満ちゃんのことを塚本先輩と呼ばないといけないのか。
それはそれでいいかもな。いや、むしろ播磨先輩と呼ばれてぇ……」
「なかなかポジティブな思考だな……。だが、留年してしまうと塚本君と一緒のクラスになる可能性は
決してないのだぞ」
「なっ、それはまずいな。俺はどうしたらいんだ?」
「2年に上がる時は私が無理に押し込んだおかげで特例として進級できたが、今回はさすがに
無理だろうな。となると、やはり勉強するしかないだろう」
「とはいっても俺は勉強が苦手だしな……。そうだ絃子、俺に勉強を教えてくれ」
「『さん』を付けろ、『さん』を。ふむ…、まーかわいい従兄弟の頼みだ、私が一肌脱いであげようではないか」
「ありがてー、って何モデルガン出してるんだよ!?」
「君の場合は体に覚えさせた方が効果的だと思ってね、ふふっ。さあ早速勉強を始めようではないか」
・・・・・・・・・
「今日はこれ位にしておいてやろう」
「くそっ、本当に撃ちやがって。体中傷だらけだ。ずっとこの調子でいくつもりか?」
「ふむ、君はどうやら忘れているようだが、塚本君も留年する可能性があるのだよ。
君は夏休みに一緒に補講を受けてたではないか?」
「あっ……。というこは、てめぇ俺をおもちゃにして遊びやがったな」
「ふっ、人聞きが悪い。ちゃんと勉強は教えてあげたではないか」
「くそっ……」
おわり。
おい
ところで第1回歴代SS人気投票の
開催はまだかよ
その人気投票は名を借りただけの派閥争いになる予感が・・・
>>186 なんか沢近のキャラが違いすぎる気が…
「だったら、今日から私のことは〜」のあたりから。
215 :
186:04/03/24 05:11 ID:ChXRWwy6
>>187 188 214
読んで頂いた上、お言葉まで頂きましてありがとうございます。
やっぱ、ああいうのは沢近のキャラクターじゃないですよねぇ…
確かになんか別のキャラになっちゃっていると思います。
元のキャラクター観と自分脳内のこういう風になって欲しいなーという部分を、
うまく折り合いつけるのって難しいですね。
元々後半の3人称のお昼食べてる部分が書きたくて、
あの状態に持っていくために強引に付けたのが今回の前半の1人称部分なんです。
ほんとは沢近泣かせてみたり、ヒゲ剃らせてみたり、髪の毛カットさせたり、
もっと色々イベントっぽいことさせて段階を踏んで強引じゃなくしていくつもりだったんです。
でも、部分部分は書けるんですけど、書いても書いてもどうしても繋がってくれなくて、
なかば投げ出すのに近い形で投稿してしまいました。
反省してます。
お目汚しな物を投下してしまい申し訳ありませんでした。
職人さんは神様です
職人さんと住人、ROMの良い関係を築く為の鉄則
・職人さんが現れたらまずはとりあえず誉める。
・その職人が凄腕、もしくはあなたの気に入ったなら「神」「ネ申」と呼んでみよう。
・「神キタ━━(゜∀゜)━━!!!」には時折AAも織り混ぜつつどこが良かったとかの感想も付け加えてみよう。
・上手くいけば職人さんも次回気分良くウp、住人も作品を見れて双方ハッピー。
それを見て漏れも、と思う新米職人が現れたらスレ繁栄の良循環。
・新米やいまいちな職人さんには出来るだけ具体的かつ簡潔に扇りだと思われないように注意しつつその理由をカキコ。
・それを踏まえての作品がウpされたら「良くなった」等の言葉を添えて感想をカキコ。
・それだけやっても投稿がしばらく途絶えた時は「神降臨期待」等と書いて保守。
・住民同士の争いは職人さんの意欲を減退させるのでマターリを大切に。
<これから職人になろうと思う人達へ>
・いきなりスレを立てたりせずにまずはスレタイ一覧をチェック、気になるスレは最低限>1を見ておこう。
>1とは違う流れのときも多いから自分が投稿しようと思うスレは一通り読んでおくのは基本中の基本。
・下手に慣れ合いを求めずにある程度のネタを用意してから継続してウpしてみよう。
・レスが無いと継続意欲が沸かないかもしれないが宣伝、構って臭を嫌う人も多いのであくまでも控え目に。
・職人なら作品で勝負。下手な言い訳や言い逃れを書く暇があれば自分の腕を磨こう。
・扇りはあまり気にしない。ただし自分の振る舞いに無頓着になるのは厳禁。レスする時は一語一句まで気を配ろう。
・あくまでも謙虚に。叩かれ難いし、叩かれた時の擁護も多くなる。
・煽られたりしても興奮してカキコ、自演する前にお茶でも飲んで頭を冷やしてスレを読み返してみよう。
扇りだと思っていたのが実は粗く書かれた感想だったりするかもしれない。
・そして自分の過ちだと思ったら素直に謝ろう。それで何を損する事がある?
喪前が目指すのは神職人、神スレであって議論厨、糞スレでは無いのだろう?
四巻発売のあおりか、新規の職人さんも現れるようになってきたのでコピペ。
いやぁ、古参職人としてはそろそろ引退時かなぁ。
>>215 確かにキャラは違うと思った。
でも萌え転がった時点で私の負け。次回作にも期待。
萌えますた。
旗とおにぎりの間で揺れ動いてしまう私。
でもここらでどなたか王道派のシリアスな話をキボン。
そういえば一度でも播磨×天満のSSってあったっけ?
王道は脳内補完の必要がないからこそ王道なのだ、と主張してみる
今オンドゥルどこでやってるの?
>>222 「俺とスクラン」サイトに移ってやっていたが、
それでも何か言う香具師がいたようで、
他のSSもまとめて永久停止だってさ。
このスレの
>>142だな
奈良厨と同列に扱われたのが相当ショックだったようだ
そいつは残念だ
223、224情報ありがとう
オンなんとかってのが終わっちまうのは
一向に構わんが、
保管庫から名作の数々が削除されてしまうのは
シリアスプロブレムだぜ
227 :
Classical名無しさん:04/03/25 22:02 ID:/yoj4Hyg
オンドゥル否定派の方々に聞いてみたいのですが、どの辺が気に入らなかったのですか?
自分には打ち切りに追いやるまでオンドゥルを否定する理由が今だわかりません。
一つ心当たりがあるとすれば・・・サラの扱いですか?
>>227 スレ違い、雑談いけ。
わざわざあげてまで話題にすることか?
229 :
Classical名無しさん:04/03/26 00:43 ID:o5lIWQHE
>>228 SSスレなんだからここで話すべきだろう。
というより、お前のID変わってないぞ。お前が暴言吐いた張本人だろうが。
お前のSSスレの雰囲気を悪くする発言自体がスレ違い。
というより、お前がスレ違い。お前こそが奈良厨だろうが。
これからID:xfSdYWgIのような、単なる悪意から
他者の作品を貶めるような発言を好む春厨が沸いてくるかもしれませんが、
SS職人さん達はスルーしてください。
・・・最後にもう少し。
一番最初に考察SSを叩き出したのは
スレ違いの奈良厨のエロキチガイ文章に自作自演マンセーレスしていた厨。
それ以降もその厨はことあるごとに同じ文体で考察SSを叩いている。
そして、IDが変わった後、
あの
>>142でわざわざ奈良厨の名前まで出して自作自演している。
要するに、自分が他者を奈良厨扱いすることで、責任逃れ&SS荒らしをしているということ。
結論 【ID:xfSdYWgI=奈良厨本人】
沢近の名前を語ったキチガイ文章へのレス
320 名前:Classical名無しさん[] 投稿日:04/02/25 22:09 ID:WDJtt4f.
凄い面白かったです
ずっとここにいてSSを書いてくださったら
皆さんの元気の源になるでしょうね
頑張ってください沢近さん
考察SSへのレス
339 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:04/02/26 00:57 ID:WDJtt4f.
もうSSじゃあねえじゃん
死ね
さすが厨ですね。
234 :
千石:04/03/26 02:13 ID:6v6uNx.Q
「あー、もう!何で日本語ってこんなにややこしいのかしら!」
現国のテストが返却され沢近はご機嫌斜めのようだ。
「またあたしの勝ちだな、約束どうり十七茶おごれよな♪」
「なによ、美琴だって数学で私に勝ったことないじゃないの」
「どっちも私の方が上」
高野がそう言ったところで天満が止めに入った。
「まあまあ二人とも。愛理ちゃんも美琴ちゃんも私より良いんだからいいじゃない」
「まあ天満より成績悪い子なんてそうそういないもんねー」
「ひどい、愛理ちゃんったら」
「冗談よ。でもこのクラスの男子で一番成績良い男子って誰なのかしらね」
「そう言われるとあんまり考えたこと無かったなー、花井じゃねーの?あいつ昔っから勉強ばっかしてるからからなー」
「でもたしかこの前のテストのトップは烏丸君よ」
(さすが烏丸君、成績も良いのね。やっぱり素敵。でもなんで晶ちゃんが私の知らない烏丸君の情報を…」
それを聞いていちだんと烏丸を好きになった天満であった
「へー、彼って成績いいのねー、ちょっと意外かも。じゃあ一番成績悪いのは誰なのかしら?」
沢近が言い終わると播磨が教室に入ってきた。
「やっぱり一番は播磨君じゃないかなー(いつも補習に来てるし。私もだけど…)」
これを聞いた播磨が勘違いしないわけが無い。
(聞いてしまった!天満ちゃんが俺のことを一番好きだとは感激だぜ。きっと恥ずかしくて俺に告白できないでいるに違いない!)
思わず口元がにやけてしまう。しかしそれもつかの間のことだった。
「でも今鳥君もおんなじくらいかも(今鳥君もよく補習に来てるし)」
これを聞いた播磨に怒りの炎がともった。そうとう怒っている。
「何〜!?天満ちゃんがあんなちゃらちゃらした野郎のことを!許せねー、味噌汁だけじゃ警告不足だったか…こうなったら体で教えてやるぜ」
235 :
千石:04/03/26 02:14 ID:6v6uNx.Q
一方廊下で一条と今鳥が何か話している。
「あの…今鳥さん、ドジビロン好きですよね…良かったらこれどうぞ」
一条が今鳥に渡したのはドジビロンピンクの限定カードだった。今鳥の目が光る。
「これは幻のカード!一条さんきゅ〜!」
まんざらでもない様子で子供のようにはしゃぐ今鳥を見て一条もうれしそうだ。
そこへ播磨が現れた。
「探したぜ、今鳥。前からお前のことが気にくわなかったんだ、成敗させてもらうぜ。くらえ、播拳キッ…」
「だ、だめー!」
今にも今鳥を播拳蹴が襲うかというところで一条が播磨をその勢いごと投げ飛ばした。
さすがの播磨も突然のことに受身をとれず頭を強く地面に打ち付け気が遠くなっていった。
今鳥はしばらく呆然としていたが照れくさそうにこう言った
「その…ありがとう…な、一条」
「う、うん(どうしよー、乱暴だと思われちゃったかなー)」
「えーと、その…今日、いっしょに帰らねー…?」
この言葉が不安そうな一条の顔に満面の笑みを浮かばせた。
「うん!」
薄れていく意識の中で播磨は「なんで最近俺こんな役なんだ」と思っていた。
236 :
千石:04/03/26 02:14 ID:6v6uNx.Q
「気が付いた、播磨君?」
「ん…ここは?…」
気が付くと播磨は保健室のベッドに寝ていた。目の前には播磨の最愛の人がいた。
「天…塚本、どうして…?」
「もー、播磨君ったら廊下に倒れてるからびっくりしちゃったよ。美琴ちゃんに手伝ってもらって運んだんだけど、苦労したんだからね」
微笑んでそう言った天満が播磨にはまるで天使のように見えた。
「そうか、すまなかったな塚本…」
言うと同時に起き上がろうとした播磨は天満の方へ倒れこんでしまった。
思いがけないことに天満は頬を赤らめた。
「すっ、すまねえ!ちょっとふらついてな…」
「う、うん。まだ起き上がらないほうがいいよ。じゃあ私は次の授業があるから行くね…」
そう言って天満は保健室から出ていった。
(変だな、心臓がドキドキしてきた…まるで烏丸君のことを考えてるときみたい…)
播磨にとっては今日の出来事は大事な一歩となったようであった…
237 :
千石:04/03/26 02:16 ID:6v6uNx.Q
初投稿です、王道派が無いようなので書きました。
お手柔らかに良い点と悪い点を言っていただけたらうれしいです。
>>237 GJ!
王道派のSSは少ないので嬉しいです!
キャラの特徴もなかなか上手くつかんでいて、いいと思いますよ。
気になったところは、もう少し「、」をいれた方が読みやすいかもしれません
これは個人差が大きいのでしょうが。
現国のテストが返却され沢近はご機嫌斜めのようだ。
→現国のテストが返却され、沢近はご機嫌斜めのようだ。
「なによ、美琴だって数学で私に勝ったことないじゃないの」
→「なによ!美琴だって、数学で私に勝ったことないじゃないの!」
えらそうにいって申し訳ありません
>>237 王道派のみとしてこれ以上の幸福は無いです いい仕事です!!
ありがとう・・・・ おにぎりやら旗やらありますが私は王道派を支持します!!概ね、(最近おにぎりもいいかと)
>>237 乙です。王道派と言いながらイマイチ派でもあったり。
そうかー王道無かったのかー。これから増えるといいなー。
>>233 日付、又いでますが…?
>>237 良いと思われた点は、ストーリーです。
萌え所はしっかり押さえつつも、無駄を省き、
簡潔にまとめあげられているな、と思いました。
気になった点は文章が短調なところです。
説明的な文が多かったので、もっと描写的表現が
あればさらに、素晴らしいものになったのではないでしょうか。
お疲れ様でした。次回作も期待しています。
>>240 たしかラウンジクラシック板は
日が変わろうがそうそうIDが変わらないと聞いた。
>>237 王道の筈なのに新鮮に感じてしまった・・・
>>ああ、そうだったんですか。教えてくれてありがd。
――卒業式。
「塚本……いや、天満ちゃん。俺は――」
「播磨、君」
「――君のことが好きだ」
「っ……」
「……」
「……播磨君、あの、私」
「……そうか」
「え?」
「そうだよな……いや、悪ぃ、忘れてくれ」
「そうじゃなくて……あ、待って播磨君!」
それは別れの季節であり、そして――
「――で、部屋に閉じこもって丸一日、というわけか」
片膝を立て、部屋のドアにもたれかかるようにして廊下に座っている絃子が、やれやれ、と溜息をつく。
「まあ、理由が聞けただけでも一晩付き合った甲斐があったのかな?」
「……」
部屋の中から返事はない。まったく、ともう一つ溜息。
「拳児君、完全にとはいかないが――なにせ必要以上に思い詰めるタイプだからね、君は――気持ちはわかるよ。
だがね、いつまでもそうやっているわけにもいかないだろう?」
相変わらず反応のない室内に向けて、目蓋を下ろしたままさらに言葉を重ねる絃子。
「それにね、君のことだから二食や三食抜いたところで平気かもしれないが、このままでは遠からず健康の方にも
影響が出る――なあ、拳児君。私は心配してるんだよ、君のことを」
「……うるせぇ」
ぼそりと呟くような、けれど確かに播磨の発した声。その声にようやくわずかに表情を崩す絃子。
「うるせぇ、か。ようやく聞けた君の台詞がそれとは、いささか残念だが……まあ、よしとしようか」
さて、と言いながら、いつになく慎重に考えをまとめる絃子。この先口にすることは今までわざわざそうする
ことはなかったことで、また、したとしても冗談の中に織り交ぜることしかしてこなかったこと。
「――さて、拳児君。君と暮らすようになってもうそれなりになるね。誰よりも、などとは間違っても言えないが、
これでも君のことはきちんと見てきたつもりだ。『保護者』だし、ね」
頭の中で蘇る、播磨にまつわる幾つかのエピソード。それは大抵の場合ロクでもないことで、馬鹿げたことばかり
だったが、楽しかった、と絃子は思う。
「君は……そうだね、どうしようもなく馬鹿なヤツだったかもしれないがね、『いいヤツ』だと思っているよ」
「……絃子」
その播磨の声が聞こえなかったかのように、そう、決して嫌なヤツじゃなかった、と呟く絃子。その表情は、今
まで彼の前では一度たりとも見せたことがなかったような優しいもので。
「拳児君。私はね、君のことが嫌いじゃなかったよ」
まあ、だからこそウチにおいてあげてるんだけどね、と小さく笑う。
「絃子、お前何言って……」
「やれやれ、君のそういうところが……まあいい。折角の機会だしきちんと言っておこうか」
あまり女性にこういうことを何度も言わすものではないよ、と彼女にしては珍しく、若干ためらいがちに言葉を紡ぐ。
「拳児君。私は君のことが――」
かちゃり、と鍵を開ける音。
「――おや、出てきたね。ずいぶんと久しぶりだ」
いつもの皮肉めいた口調とともに絃子が振り向いた先には、部屋のドアを開けた播磨の姿。
「絃子」
「何かな?君がそこから出てきてくれたなら私の話は終わりだよ、綺麗さっぱり忘れてもらって構わない。もっとも――」
覚えてくれていても一向に構わないよ、と悪戯っぽく笑う。
「けっ、お断りだ」
少し恥ずかしそうに目線をそらす播磨に、やれやれ、と何度目かの溜息をつく。
「まあそれはともかく、だ。早速で悪いんだけどね、君にお客さんが来ているんだよ」
「は?客?」
怪訝そうなその様子に、ああ、大事なお客様だよ、と絃子。
「気がつかなかったかもしれないけどね、本当は昨日君が帰ってきてすぐに来てくれたんだよ。状況が状況だったから、
また明日来てもらうよう頼んだんだが……まあ、少々待たせてしまったけれどこれくらいなら許容範囲かな」
「……で、誰なんだよ」
どこか面白そうな絃子の様子に、不信感を抱きつつ尋ねる播磨。
「すぐにわかるよ。さあ、お待ちかねだ」
そう言って、リビングのドアを開ける絃子。
そこにいたのは――
「なっ!?て、て、てててて」
「あ、播磨君」
お邪魔してます、とぺこりと頭を下げたのは、塚本天満その人だった。予想だにしなかった事態に狼狽えている播磨に、
おいおいしっかりしてくれよ、と絃子。
「な、なななななんで」
「……悪いね、塚本君。ちょっと時間をもらうよ」
溜息混じりに言って、壊れたおもちゃのようにがたがたしている播磨を引きずり、再び廊下に戻る絃子。
「どうなってんだよ絃子!」
「どうもこうもないだろう。見たままだよ」
「だから!」
「つくづく物分かりが悪いね、君は。なんでも彼女の返事をロクに聞きもせずに逃げ帰ってきたきたらしいじゃないか。
まったく、そういうところが……」
「……おい。まさか、ってことは」
「さあ、どうかな。その先はきちんと自分で聞きたまえ。それじゃ、私はちょっと出てくるよ」
「なっ!おい、ちょっと待てよ!」
「……あのな、馬鹿か君は。私が一緒にいて話が出来るわけないだろう」
「いや、そうなんだけどよ……」
そんな所在なさげな播磨に、絃子は。
「拳児君。君は仮にも私が見込んだ男だよ、しっかりしたまえ」
そう言って、ではがんばるといい、とその返事は聞かずに表へ出る。
「まったく、世話の焼ける……」
寂しさと嬉しさの入り交じったような表情で苦笑しつつ、携帯を手に取り、馴染みの番号へ電話をかける。
『はい、笹倉です』
「ああ、私だ。急な話で悪いんだけど、今から出てこられるかな」
無理にとは言わないが、という絃子の言葉に、笹倉は電話口の向こうで少し考えてから答える。
『構いませんよ。ただし』
「ただし?」
『貸し一つ、です』
「……わかったよ。まったく、相変わらずなんでもお見通しかな?」
『さあどうでしょう。それじゃ駅前で』
「ああ、それじゃ」
電話を切ってから、その喰えない――けれど大切な友人に、ありがとう、と一言。
「……」
そして、一度だけ自分の出てきたその部屋を振り返り――
「……やれやれ」
もう一度だけ、嬉しそうにそう呟いた。
「あのね、播磨君」
「お、おう」
「昨日は急だったから何も言えなかったんだけど。私は――」
――卒業式。
それは別れの季節であり、そして――出逢いの季節。
なお、烏丸君は既に転校なさっているということで。合掌。
ID変わった記念……と言うのは嘘ですが、久々に。
件の某氏が筆を折られてしまったことには思うところいろいろありすぎるくらいあるのですが。
結局、自分に出来るのは変わらず書き続けることしかないのかな、とかなんとか。
251 :
千石:04/03/26 18:38 ID:5oOOMCKQ
>>みなさまいろいろと意見くださってどうもです。特に描写的表現が少ないのは
自分でも気にしてます。精進しますね。
>>250 お疲れ様でした。
絃子先生にじーんときてしまいましたよ。なんだかんだ言っても二人の間には
強い絆があるんだなと感じました。
笹倉先生のセリフも個人的にツボですw
自分もかの一件では考えされられてしまいました。
いつかまた氏のSSを読むことができる日を心待ちにしつつ、
自分も精進していきたいと思います。
253 :
クール:04/03/26 19:56 ID:BX57SkC.
250の続き、書きます・・・
「昨日は急だったから何も言えなかったんだけど。私は――」
「私は、やっぱり播磨君の気持ちは受け取れない・・・ごめんね・・・。」
「でも、いつかきっと播磨君は私よりもっと素敵な女性に出会えるって私、信じてる」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「播磨君、一応返事だけはしておきたいって思ったから、お邪魔したの・・・」
「ごめんなさい・・・私、もう帰るね・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
この日以来、播磨はショックのあまり1週間部屋に閉じこもった。
「拳児君。いいかげん部屋から出てきたらどうかね?」
この1週間というもの、播磨は深夜、絃子が寝ている間に
軽い食事とシャワーを浴びる時しか部屋から出てきていないのである。
だが・・・
「カチャリ」というドアノブの音と共に、播磨が部屋から出てきた。
絃子の前に現れるのは実に1週間ぶりである。
髪を前におろし、髭をそり、グラサンをはずした素顔の播磨。
幼さが残るものの、その素顔の播磨は凛々しく、なかなかにイイ男である。
「なぁ、絃子。今から飯でも食いに行かねぇか?奢るぜ」
「なんの風の吹き回しだ、拳児君?」
「なんでもねぇよ。行くのか、行かないのか?」
「まぁ・・・かわいい従兄弟の誘いを無下に断る理由もない。」
果たして播磨と絃子は夜の繁華街へ一緒に出かけることになった。
254 :
クール:04/03/26 19:56 ID:BX57SkC.
「なぁ絃子。彼氏とかいねぇのか?」
「いや、別に居ないが、どうして突然そんな事を聞くのかね、拳児君。」
「なに・・・おめぇは凄くイイ女だからよ、居るかと思ってたぜ・・・」
「ほぅ・・・」
「おめぇが従兄弟じゃなかったら、俺は・・・」
播磨はだいぶ酔いが回っているらしい。
「従兄弟じゃなかったらどうなんだね、拳児君」
「・・・なんでもねぇよ・・・」
しばらく訪れる沈黙。そして・・・
「拳児君。私は君のことが好きだ・・・愛していると言っても良い・・・」
「・・・マジか?」
絃子の瞳が優しく、そして柔らかく崩れる。つまり、無言で肯定しているのだ。
「絃子、もし俺が朝まで付き合えといったら、どこでも付き合うのか?」
「そうだな・・・今夜は無礼講だ。付き合うが?」
「いいんだな?もう後戻りはできねぇぜ」
「キミにそんな度胸があるのとは思えないが?」
「言ってくれるぜ。断るのか、断らねぇのかはっきりしてくれ」
「おもしろい・・・。拳児君、付き合ってやるよ」
その後二人は・・・ブティックホテルへと・・・消えていった・・・。
255 :
クール:04/03/26 20:00 ID:BX57SkC.
3年後
播磨は動物の心が読める特技を生かし、獣医になっていた。
動物の心が読めるので、播磨の診断は正確かつ適切で、近所ならず
遠方からやって来る客が居るほどの評判の獣医になっていた。
もちろん、絃子が付きっきりで猛勉強したのは、言うまでもない。
「ただいま、拳児。結果が出た。今日も忙しかったようだね・・・」
「まぁな。で、絃子。結果はどうだったんだ?」
現在、二人は「呼び捨て」でお互いの事を呼び合っている。
絃子もかつてのように「さんをつけろ」などとは決して言わない。
そして・・・
絃子は無言で母子手帳を拳児に見せる。
「やっぱりか・・・。で、今何ヶ月だ?」
「3ヶ月だそうだ・・・。それと拳児。これに名前を書いて印鑑を押してくれ」
そう言って絃子が差し出したのは「婚姻届」。
日本国憲法では、兄弟同士では結婚できないが、従兄弟なら可能なのである。
「後悔しねぇな。おろすなら今だぜ」
「私がそんな事をすると思っているのかね、拳児?」
「わーったよ・・・」
かくして拳児は婚姻届に自分の名前を書き、印鑑を押した。
後日、この事が絃子の学校中の噂になった事は言うまでもない。約1名の
美術教師を除いて・・・。
その美術教師曰く、「解っていたわ」だそうだ。
どこまで解っていたかは、未だに謎である。
すんまそん。駄文失礼しますた。
「なあ花井」
「なんだ周防」
「その…なんつーかそんな落ち込むなよ、塚本の妹だけが女じゃねーんだしさ」
「……」
「…ま、先輩のことまだ完全に吹っ切れたわけじゃないあたしが言えた義理じゃないんだけどさ」
「周防…」
「……」
「…すまない」
「気にすんな、こういうときはお互い様だろ」
「そうか…しかし昔からいつもこうだな」
「だからそれもお互い様だって」
「…なあ周防、覚えてるか?」
「なんだ?」
「小学校のときの縦笛のテストのことだ」
「ん?…ごめん何だっけそれ」
「僕がクラスで完全に無視されて学校に行かなくなった―――」
「……あぁ、あれか。あんま思い出したくないから忘れてたよ」
「思い出したくなかった…まあそうだな、あの時は恥ずかしい思いをさせてすまなかった」
「あーいや、そういうんじゃなくてさ」
「???」
「なんつーか、止められなかったのが悔しくてな」
「……」
「しかもアンタ学校来なくなっちまうし…今にして思えばずいぶん傲慢な話だけどさ、
あの頃はあたしが花井を守ってやんなきゃいけないんだって思い込んでたっていうか」
「まぁ実際そうだったからな…あの頃の僕はただ周防の後ろをくっついていくだけの弱虫だった」
「…でも今は違うじゃないか」
「いや、だからあの時決心したのだよ。すお…『ミコちゃん』みたいに強くなろう、
いつかミコちゃんが困っている時に今度は自分が助けてあげられる自分になろうとな」
「いまさら『ミコちゃん』はやめてくれよ、恥ずかしい…」
「だが未だにこうして何かあると周防に慰められてる僕がいる。
僕は本当に変われたのだろうか、こんな弱い僕だから八雲君も…」
「…あーもうストップストップ。だからそれはお互い様なんだからそれでいいじゃねえか。
少なくともあたしは花井は強くなったと思ってるし頼りにしてるよ」
「周防…」
「…なぁ、それじゃあダメか?」
「いや、ありがとう…」
「じゃあお互い頑張って早く立ち直ろうぜ。あたしも一人じゃ大変だけど
花井と一緒なら先輩のこと完全に吹っ切れそうな気がするし」
「???」
「…あ、いやいやいやそーいう意味じゃなくてだな…つまりお互い励ましあいながらその…」
「あぁ、そういうことか」
「……」
「……」
おしまい。
GJ!!
これを見て悶えた漏れは、やっぱり縦笛派なんだなぁ
とつくづく思った
つーわけで続けて投下いたします
「はぁ……」
何度目になるかも分からない短く、小さな溜息をつく。
今は授業中だ。教師の声と、ノートとシャーペンの摩擦音がひっきりなしに聞こえる。
しかし、ほおづえをつき、利き手でシャーペンをくるくる回してる彼女のその様は、黒板に引かれる白い文字にまるで関心がないことを如実に表している。
心ここに在らずと言うべきか。考え事をしているのか。
(あたし…、何であんなことしようとしたんだろ……?)
頭の中で題材を、何度も何度も繰り返す。しかし当然、答えは出ない。
チャイムが教室に鳴り響き、昼休みになる。皆が昼食の準備を始めるが、彼女は机にボーッと座ったまま動かない。
そんな様子を訝しがって、彼女の友人が傍に集まってくる。
「ねえ美琴、アナタ何かあったの?」
その中の一人、沢近愛理が彼女に尋ねる。
――――――――――そう、彼女、周防美琴は悩んでいた。
学校が終わり道場へ向かう美琴。
昼休み、心配してくる天満や愛理をやりすごすのは大変だったが、何とか口を割らずにすんだ。
今回の悩みは親友と呼べる彼女達にも明かせるものではない。
が、口を割らずにすんだ安堵感と、悩み事が解決しない焦燥感が彼女の心内で渦巻く。その感覚はとても耐えがたいものであった。
「ふぅ……」
また溜息が口から漏れる。
天満に「溜息をつくと幸せが逃げちゃうんだよ!?」と言われていたが、溜息をつくことを止めると、自分が狂ってしまいそうで怖かった。
―――――――その時、背後から声をかけられる
「美琴さん、まだ溜息ついてるのね。」
「高野…」
高野晶、彼女の親友の一人。昼休みに天満や愛理と一緒に美琴の傍にいたのだが、その時は、他の二人と違い一言も言葉を発しなかった。
「お前の家ってこっちだったっけ?」
「これからバイトがあるの。」
端的に明確な答えを返してくる。
何か自分に言いたいことでもあるのだろうか?晶に対して抱いた気持ちを隠しながら、あくまで普段の自分を装う。
「あっそ。」
そこで会話が途切れる。靴が地面を蹴る音がやけに大きく聞こえるのは気のせいなのだろうか。
しばらくそのままの状態が続いたが、やがて晶が口を開く。
「そんなに花井君が気になるの?」
「!?」
いきなりの晶の言葉に、美琴は動揺を隠せなかった。
「な、何言ってんだよ高野。急に花井の名前なんか出しやがって。」
急いでそう言い返す。しかし顔の強張りを隠しきれなかったことで、逆にそれが美琴の悩みの原因だという事がバレてしまった。
「どうやら図星みたいね。」
「…………」
これ以上は誤魔化せない、そう判断した美琴は無言の肯定を返した。
そして、今度は美琴から晶に話し掛ける。
「なんで…分かったんだ?」
「ここ数日、あなた花井君としゃべるどころか目も合わせようとしないでしょ?」
気付かれてたのか、と美琴は心内で思う。
晶は洞察力に長けている。彼女にはいつかは気付かれるかもしれない、とは思っていたがまさかこんなに早く気付かれるとは予想外だった。
鞄を持ってない左手で頭を抱える。
しかし、美琴は晶をまだ甘く見ていた。
「でも、恋愛に慣れない美琴さんなら……」
「?」
更に何を言おうとしているのか?そう考えていた美琴の耳に届いたのは、彼女自身の悩みの核心。
「キスしようとした相手に過敏になるのも仕方ないわね。」
「なっ!!??」
衝撃的すぎるその発言に、美琴の思考が停止してしまう。その場に立ち止まってしまった程だ。
(まさか、ここまで面白い反応を示すとはね)
固まった美琴を目にして、心の中でほくそえむ晶。
「この前、バイトから帰る途中に花井君に肩を組ませて帰っているあなたの姿を見かけてね。面白そうだったから、後をつけたの。」
知っている理由を問われる前に、自ら語りだす。もっとも、今の状態の美琴の耳に届いているかどうかは分からないが。
そんな彼女に構わず、晶は話を続ける。
「花井君の家から出てきた時、あなた顔真っ赤にして物凄い速さで走っていったから。そうじゃないかと思って。」
そこまでいって、ようやく美琴が元の状態に戻る。と同時に、とても焦った様子で
「だ、だからって部屋の様子見てないなら分かんねえだろ?」
と言葉を返す。しかし、その質問にも冷静に答える晶。
「少し考えれば分かることよ。」
「へ?」
何が何だかわからない、といった感じの美琴に晶は、何故自分の仮定が的を得たのか説明を始める。
「出て来た時のあなたの顔は赤かった。加えて花井君は酒で潰れてた。そして、家に入ってから出てくるまでの時間は結構速かったわ。
理由までは分からないけど、あなたは花井君にキスしようとした。すると、そこで彼が目覚め、ビックリしたあなたはそのまま帰ってしまった。
もし、キスしてたのなら家から出てくるのはもっと遅かっただろうし。
顔が赤かったのは、自分の行動が理解できなかったからってとこかしら?」
寸分も違わない晶の推理。
夏休みに皆で海に行き、裸のまま沢近を羽交い絞めにしていた播磨を見たときも、本当の状況を一瞬で当てて見せたのだ。
彼女にとっては造作もないことなのかもしれないが。
再び二人の間に沈黙が訪れる。
そして今度は、美琴がそれを破った。
「あいつとどう接していいか分からないんだ……」
とうとう悩みを口にする。
あの夜の翌日に道場で話して以来、ほとんど言葉を交わしてないんだ、と寂しく笑いながら晶に打ち明けた。
(小学生みたいな悩みね……)
それを聞いた晶の感想。そう思うのも無理はないかもしれない。
しかし本当に悩んでる様子の美琴に、それを言うのは酷だ。かわりに彼女は助言を与えることにした。
「別に意識することないんじゃない?花井君のほうは、そんなに気にしてないみたいだし。いつも通りに接してあげたら?きっと彼、普段の様子と違うあなたのことを心配してるわよ。」
その言葉に、弾かれたように晶の方へ顔を向ける美琴。
「じゃあ、私はこっちだから。」
そう言って、バイト先へ向かう晶。一人になった美琴はしばらくそこで佇む。
――いつも通りに接してあげたら?きっと彼、普段の様子と違うあなたのことを心配してるわよ――
今しがた言われたばかりの言葉を反芻する。
(いつも通りか…、それが難しいんだよな。)
少々憂いを含んだ表情のまま、彼女も道場に向かって歩き出す。それでも悩みを打ち明けたことで、足取りは幾分軽くなったようだ。
(いつまでもウジウジしてたって仕方ねえ、頑張ってみるか!)
両手でバシッと顔を叩き、気合を入れる美琴。
自分らしくあるため、いつも通りの自分になるために「よしっ!」と更に声をあげた―――
一方、こちらは花井春樹。
晶の指摘通り、彼は美琴のことを気にしていた。
付き合いは長い二人だが、花井はあんなに沈んだ表情をみせた美琴を見たことがなかった。
それもそのはず、今までの彼女はどんなに辛いことがあろうと、それを表に出すことはなかった。いつものように明るく振舞い、いつものように笑い声を上げる。
だからこそ、花井は相談に乗ってやりたかった。自分を変えてくれた恩人の力になりたかったのだ。
しかし、あからさまに自分を避ける美琴の態度が、花井には理解できなかった。
自ら話し掛けても生返事を返し、すぐ自分の傍から離れていく。今までされたことない応対をされ、困惑の色を隠せなかった。
(何か、周防に嫌がられるような事をしたのだろうか?)
さすがに、自分が原因だということは分かっている様子。かといって、理由をストレートには聞けない。
学校では一直線な彼だが、美琴にだけは冷静な面を見せている。それが災いしてしまっているのだ。
まるでいじめられていた頃の自分に戻ったみたいな感覚が彼に襲いかかっていた―――
「ありがとうございました!!」
今日の稽古が終わる。だが、花井は稽古が終わっても練習を続ける。
筋トレ、素振り、型の練習―――――汗まみれになってもやめようとしない。
それは、何一つ変わることのない現状を忘れようとしてるようにも見えた。
そんな彼の心情を知ってか知らずか、他の門下生は着替えを済ませ、靴をはき一人、二人と帰路につく。
そして残るは花井と美琴の二人だけ。
「まだ続けるのか?」
道場に花井の胴着と肌が擦れる音だけが響いていたが、美琴の勇気を振り絞って放った言葉がそれをかき消す。
それを聞いた花井は動きを止める。
そしてこちらも勇気を振り絞り、美琴に話し掛けた。
「周防、僕はおまえに…何か嫌がるようなことをしたか?」
花井の言葉に、壁際に座り込んでいた美琴はビクッと大きく肩を揺らした。
その様子に花井は、もう一度同じ質問をぶつける。
「なあ、答えてくれ、すお―――――」
「別にお前は何も悪くないよ。ただ……、あたしがおかしいだけさ。」
自分の気持ちを素直に吐露する。
一方花井は、美琴のそんな答えの意味が分からなかったらしく、眉間にしわを寄せている。
花井が練習を止め、二人の会話が中断したために、音が無くなり耳が役割を失う。
その状況を打破したのはやはり美琴
「花井……、今度はあたしの質問に答えてくれないか?」
「…なんだ?」
花井の顔に緊張が走る。
「どうして………………そんなこと聞くんだ?」
「それは…」
口篭る花井。しばらく言いよどんでいたが、やがて意を決したように口を開く。
「お前が……心配だからだ。」
恥ずかしかったのだろうか?言い終わると同時に花井は目を逸らす。
そんな様子を目の当たりにした美琴は目を見開く。そしてうずくまるように頭を垂れ、膝に乗せる。
「お、おい周防!」
そんな彼女の様子に焦る花井。急いで彼女のそばに寄ると、彼女の肩が震えている。
「周防、どうした?」
声をかける花井。
「…………………ふふっ」
「?」
「あっはっはっはっはっは!!」
急にお腹を抑えて笑い出す美琴。花井はそれを見て、訳のわからないといった表情を見せた。
(まさか、コイツも高野の言うとおりのことを思ってたとはね。)
心の中で、笑い声をあげた理由を答えた。
「なんで、さっきあんなに笑ったんだ?」
「別にいいだろ、もうその事は。」
しばらく経ち、普通に会話をする二人。どうやらいつもの状態に戻ることができたようだ。
花井は今、美琴のすぐ隣に腰を落とし、同じように壁にもたれかかっている。
「なら、ここ数日僕を避けてた理由を教えてもらおうか。」
不機嫌な声で話し掛けてくる花井。美琴の悩みが心の中で自己完結してしまっていることに、少々苛立っているようだ。
そんな彼の様子に、昔の面影を思い出す。いじめられていて、泣き虫だった頃の彼を。今と昔の彼のギャップに、ついつい微笑んでしまう。
そして彼の質問に質問で返した。
「なあ花井、あの時あたしがお前に何をしようとしたか知りたいか?」
「あの時……?」
疑問が増えてしまったことに、更に不機嫌になる花井。そんな花井を見ても、笑みを絶やすことのない美琴。
今、二人の表情は対照的だった。
「お前が酔い潰れた時のことだよっ。」
「僕が潰れた時…?」
思案顔になり、記憶を探る花井。確かあの時美琴が自分にしようとしたことといえば、目を閉じて、ゆっくり近づいて―――
「知りたいか?」
「そりゃ、教えてくれるならな。……だが、僕が翌日聞いたときに随分怒ってなかったか?」
そんな花井の反論に答えず、彼の眼鏡を外す美琴。
「あ、おい!」
「いいから。あと、目を閉じてくれねえか?」
構わず言ってくる美琴に、花井は観念した様子で大人しく目を閉じる。
そんな花井に満足したのか、美琴は更に笑みを深め、手で彼の前髪をかきあげる。
(この顔だよ…あたしをおかしくしたのは)
そう心の中で呟く。そして、彼の方にもう片方の手を置き、顔を近づけた。
「おい、周防、一体何を――――――」
しようとしてるんだ?と言おうとした花井だが、最後まで言うことはできなかった。
今まで一度も感じたことの無い、柔らかい感触が頬に走る。
「!?」
その感触に弾かれたように目を開け、美琴の方へ向く花井。美琴は悪戯っぽい笑みを浮かべている。
その美琴の表情を見たと同時に、花井の心臓は大きく跳ねた。顔が赤くなるのが自分でも分かる。
この感覚は以前も感じたことがある。彼が今、想いを寄せる塚本八雲を初めて見たときと同じ感覚。
「お前、今―――」
「これで分かったか?あたしがしようとしたことが。」
呆気にとられた花井に声を得意げにして美琴は言葉を放った。その時の彼女の顔ももちろん、赤く染まっていたのは言うまでも無いが。
「じゃあそろそろ帰ろうぜ、ちょっとばかし遅くなってきたし。」
そう言いながら、美琴は花井から離れ、着替えるために道場から出て行く
そして花井も美琴同様、着替えるために道場を後にする。
その時、恥ずかしそうに鼻を擦ったが、口許はほころんでいた。
明日になれば二人の関係は幼馴染に戻っているだろう。
だが、美琴が花井に口付け、花井が美琴に心を奪われていたその一瞬、彼らは確かに恋人同士だった。
花井には塚本八雲という、片想いの相手がいる。美琴にも将来、別に好きな人ができないとは限らない。
彼らの人生は、始まって少ししか経っていないのだから。
やがて二人は別々の道を歩んでいくのかもしれない
その時二人は笑顔で互いの幸せを願うだろう
今日の事がなかったかのように
幼馴染なのだから
だができることならば
今日の出来事を縦笛の記憶のように色褪せてしまわぬよう
一生胸に留めておいて欲しい
一瞬とはいえ二人が
心を通い合わせたのは
紛れもない事実なのだから
そして近い将来二人が
黒いタキシードと白いウェディングドレスに身を包み
至福の笑顔を絶やさんことを願って
―――――――――終―――――――――
言い忘れてましたが、「I can not forget 」の続きです。
支離滅裂な文章でスマソ
ただ、268の文を書きたかっただけなんで・・・・
それでも、喜んでいただけたら幸いです
実に素晴らしい。
いつもは途中まで読んで、花井と美琴の話だとわかると
適当に読み流す幼馴染嫌いの俺が、最後まで読んでしまった。
出だしからガッチリと掴まれてしまう、見事な文である。
今から前作もしっかり読んでみることにする。
271 :
Classical名無しさん:04/03/27 05:50 ID:zTo1drnw
>>234 より全てのSS書きサンにありがとうと言いたい。
SSって良いものですね。心が暖まりました。これからも応援していきます。
頑張ってください。お疲れ様でした。
>>255 楽しませていただきました。
なにげに好きです、播磨×絃子SS。
274 :
Classical名無しさん:04/03/27 13:07 ID:kukQfe0c
275 :
Classical名無しさん:04/03/27 16:36 ID:PIbk5vz6
播磨はその日、体育館裏に呼び出されていた。下駄箱に手紙が入っていたのだ。それは間違っても天王寺のものではなかった。
「この手紙の文字、、、きっと天満チャンだ、間違いない! よし!今日こそ言うぞ!俺の方から先にだ!!」
「何やってんのよヒゲ」
播磨の勢いむなしく、背後から現れたのは沢近だった。
「あれ?もしかしてこの手紙、オ前が、、?」
播磨の問いに沢近が小さくうなずくと、途端に播磨はやる気をなくし帰ろうとした。
どうせまたパシられるのだろうと。
「まって!!、、、播磨君」
沢近は思わず、振り返る播磨の手を握ってしまった。
体育館裏にはもちろん誰もいない。聞こえるのは風のざわめきだけ。
今まで感じた事のない、その異様な雰囲気に、播磨は心を構えた。
「何か大事な用があるようだな、、。」
「今まで色々、イジわるな事してごめんなさい。最後に一つだけ頼みごとがあるの、、」
「いや、悪かったのは俺の方だ。無理して謝る程じゃねえ。 で、その頼み事とは、、?」
播磨は自分のサングラスをくぃっと上げると共に、沢近の手を握り返した。
「、、。播磨君はいったい誰が好きな、、、の?」
「い、今、そんな事関係ねーだろ!」
しかし、沢近は真剣そのものだ。
か、関係あるのかーーー!!
も、もしかして、天満チャンに何かあったのか?! はっ!! 天満チャンは俺に恋煩いをして、食事も喉に通らず、その華奢な体は壊れてく一方。もぅ、一刻の猶予もないのか、、!!
スマなかった、塚本! ありがとう沢近!!お前はいい奴だぜ!!
「俺は、、、」
播磨が意を決し、「塚本」と言おうとした瞬間、沢近の無理矢理な明るい声で続く声がかき消された。
「い、今、そんな事関係ないわよね!! えっと!あのー、ここじゃなんだから、今度の日曜デートしない?朝8時駅前ね!」
そう言うと沢近は、播磨に握られた手を大事そうに抱えながら走り去っていった。
「私のバカ、、、逃げてばっかりじゃないの、、、」
「関係ないの、、?」
第一部 完。
276 :
あずまゐ:04/03/27 16:38 ID:PIbk5vz6
上のやつ、名前書き忘れ。「あずまゐ」でした。
二部製作中。
イイ!早く続きキボン。
278 :
あずまゐ:04/03/27 20:15 ID:PIbk5vz6
えぇーー、、っと。
「沢近よ、素直であれ」って感じで書きたいと思います。
沢近クル━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━!!!!(*゚∀゚)=3ムッハー
280 :
Classical名無しさん:04/03/28 02:12 ID:JLJlpnl2
超期待age
281 :
あずまゐ:04/03/28 11:13 ID:PIbk5vz6
今まで何回も男に誘われてデートしてきたけれど、自分の方が30分も早く着くなんてはじめてだわ。
今日は播磨君とのデート。決してデート日和だとはいえない天気だけど、きっと晴れてくれるはず。
沢近は再び時計を見た。駅前に着いてからもぅかれこれ10回は腕時計や駅の大時計を見ている。しかし、一向に針は指さない。
「おしゃれまでしてきたのに、、、バカみたい」
日曜と言えど、改札では人が出たり入ったり忙しい。そんな中、ただ一人立ち止まっている自分自身に沢近は焦りと不安を募らせていた。
「あー、もうヤメヤメ!」
なんで、女の私が待ってなくちゃいけないのよ!どこかで時間潰してこよう!
沢近は持って来たお気に入りのミニバッグを威勢良く振り回して駅前を離れると、突然後方からゴツッという音と共に肩を掴まれた。
「あっ、スイマセンっ!!」
沢近が振り返った先には背の高い、黒いスーツを着たヒゲとサングラスの男、、。
「播磨、、?」
「そうだよ。 いてーよ」
それが播磨だと分かると、沢近は自分自身、期待を膨らませているのを感じた。
「ぷ。 何そのカッコ。 どこのスパイよ」
「いやぁー、イトコがよー、デートにはこれだとか言ってよー。 へ、変かな?」
「うん。 いつもの不良っぽくなくて変。 で、これからどこ行くの?」
沢近と播磨の身長差は15cm。沢近の首が痛くならないように、会話する時、ハリマは少し身をかがめる。
その優しさに沢近は気づかないわけがない。
「お前、動物園好きか?実は今日、動物園に寄る日でさ。嫌なら他のトコでもいいんだが、、、」
「ううん。動物園大好きなの!!」
播磨は一つしかないヘルメットを沢近にかぶせると、バイクにまたがった。
「後ろ、乗れよ」
「うん、、、」
こんな近くに播磨君がいる。心臓と同じ音のするエンジン音。風を切って走るバイク。しかし、空は太陽を見せてくれそうにない。
、、、デートに誘った時の播磨君の口、、、播磨君は「塚本」って言おうとしてた気がする、、。
播磨君、私それでも、、。
第二部 完
次号、デートにあの人が!?号泣する沢近、混迷する播磨。 乞うご期待!
282 :
あずまゐ:04/03/28 11:19 ID:PIbk5vz6
沢近って、動物園好き。なんですよねぇ、確か一巻で、、。
そーゆーからみもありだなぁ、、、なんて。
細かいことを言うと、
「、、、」はいくら何でも無しにしてほすぃ。
「・・・」か、さもなくば「……」で。
まったくだよなぁ、、。
、、、でも・・・でも・・・でもどれでも別にいいんだけど
別に普通に読めるからいいじゃん。脳内変換しとけ
sageた方がいいんじゃないでしょうか
287 :
あずまゐ:04/03/28 18:46 ID:PIbk5vz6
…。
おぉ!「てん」で出るのか!この記号!!
スミマセン、パソ下手なんです。sageも今日知りました。
この一週間、一日一回づつ文載せるので悪評お願い致します。
沢近に涙を…!! 八雲に強い口調を…!!を目指します。
乙ー。 一日一作ですか。
キャラがいい意味で違うのでイイですね。
あと、sage知ったなら、その時点でsageましょうね
悪評の使い方がおかしいと思う。
流れるもんではあれ、するもんではないからなぁ…
ま、用法がおかしいくらいならかまへんと思うよ。
一日一作も書けばスキルは上がるやろうし。
291 :
あずまゐ:04/03/29 11:15 ID:PIbk5vz6
こうやって播磨君と動物園にいると、昔お父さまと動物園で過ごしたときを思い出すわ。
でも、楽しかったのはその時だけ…。お父さまはいつも仕事ばかりして、私なんて構ってくれない。今でもそう。
「おぃ、沢近。ピョートル見に行くぞ」
「ピョートル?」
「あぁ、キリンのピョートルだ」
私のミニバッグは播磨君が持ってくれている。播磨君はお父様と姿は似ていないけれど…。私は、いつも私に構ってくれるお父さまの様な人を待っていたのかも知れない。
違う、待ってちゃいけないんだ。私から言わないと、私から何かしないと…。
「播磨君…播磨君は誰の事が一番好き…なの?」
沢近はサングラス越しに播磨の目を直視した。現実から逃げない為に。
「またそれかよ。だからこの前も言ったように、俺は…塚…本ーー」
その時だった。播磨が、沢近の顔の横から、同じく播磨の動物を見に来ていた塚本八雲の姿を見つけたのは。
「妹さん…」
沢近は播磨の目線を辿った。それは沢近の耳をかすめ、すぐ後ろの可憐な少女へと辿り着いた。今、沢近の頭は真っ白。ただ、八雲の姿のみ見える。
八雲…なんて細い体なのかしら、細い割に胸もあるし、その綺麗でサラサラな黒髪も、更には性格も良くて料理もできる。私だって自分の事かわいいと思うんだけどなぁ…でも八雲にはかなわない…。
「ゴメン、播磨君!今日は最後の思い出ありがとう…!」
沢近は走った。耐え切れなかったのだ。
なんか喉の奥が痛い、目が熱い。私、走りながら泣いてるの?バカみたい…。
292 :
続き:04/03/29 11:41 ID:PIbk5vz6
どのくらい走ったのだろうか、沢近は二人の姿が見えなくなっても走り続けた。沢近は二人から逃げたいわけではなく、瞳からこぼれる大粒の涙から逃げたかったのだ。
男にフラレて、泣いて、なんてみっともないんだろう私…。
偶然にも街中に美琴の姿を発見すると、沢近は「美琴!」と声をかけようとした。しかし、その声の前に大粒の涙が沢近に襲いかかってきたのだ。
そして、美琴が振り返る時には、もぅ声を上げて泣いていた。
なんて、なんてみっともないんだろう。こんな街中で、大泣きして。でも逃げられない。この涙からは逃げられない。
今日くらいは意地張らないで泣こう。涙が止まるまで泣こう。
第三部完
次号、まさかの関係急転!あの人がこんな事になろうとは!!
改行のタイミングが悪くて読みづらい
近頃、播磨さんと話すのが楽しくて嬉しい…。
クーラーの修理をしに来てくれた時から今まで、播磨さんの心が見えたことは無いけれど…。
他の男の人みたいに心が見えないから、だから余計にちゃんと話して何を思ってるのか知りたくなる…。
伊織と初めて会ったのに、すぐに仲良くなってしまった不思議な人…。
動物たちを守るために、泣きながら銃を撃った強い人…。
別れ際、動物たちを抱きしめて泣いていた優しい人…。
ふとしたきっかけで、播磨さんの漫画にアドバイスすることになって…私なんかで本当にいいのかな、とは未だに思ったりもするけれど…。
でも、播磨さんと漫画のことだけじゃなくて、色んな事を話せる時間が増えて嬉しい…そういえば播磨さんも万石さんが好きだって言ってたっけ…。
屋上で「ここでキスしちゃってもいーかな?」って訊かれたとき、漫画についてのアドバイスを求めてってことは解ってはいたけど、頬が熱くなるのを止められなかったし…。
播磨さんは「誤解させちまうかも」って気遣ってくれたけど…私は誤解されても構わないと思ってた…。
今までこんな気持ちになったことってなかったな…。
サラ、これが「男の人を好きになる」っていうことなのかな…。
播磨さんが姉さんのことを好きなのは知ってるけど…いつか播磨さんの心が見えるときが来るといいな…。
偉そうな批評厨が湧いてくるようになりましたね。
>>294 GJ!
やはり八雲→播磨は萌えます(#´Д`)
>>295 批評がないことには、書き手は次にどこを改善すれば良いのか分かりません
それに本人も批評して欲しいみたいですし
ま、批評を書く人≠偉そうな批評厨なわけだが
>>298 確かに・・・「いきなり次回予告」みたいで
せっかくのシリアス展開な雰囲気を壊してしまうかも。
「…ありがとよ妹さん」
「あ、いえ…」
「いつも付き合ってもらって済まねぇ…いつかこの礼は必ず!」
「いや、そんな…」
その時彼女にある考えが浮かんだ。
「妹さんのためだけの漫画を描いてくれ?そんなもんでいいのか?」
それは、人の心が読める女の子のお話。
「プロの漫画家ってのは編集者がこうこうこういう話を描いてくれって
依頼してくるもんらしいからな。いい練習の機会かもしれねぇ」
自分に向けられた好意を読めるその女の子は、恋をした。
「…描いてみたぜ妹さん。どんなもんだ?」
その人は強くて、優しくて、そして…心が見えなかった。
「…そうか、面白かったか。そいつはよかったぜ」
それはとても悲しくて、苦しくて、悔しくて、それでも…
「しかし面白い設定の話だったな…これ妹さんが考えたのかい?」
そんな女の子のお話。
「…ま、正直二人をくっつける展開に持っていくのに苦労したけどな」
そして私だけのためのお話。そう、誰かのためでなく私のための。
「…ありがとよ妹さん」
「あ、いえ…」
「いつも付き合ってもらって済まねぇ…いつかこの礼は必ず!」
「いや、そんな…」
その時彼女にある考えが浮かんだ。
「妹さんのためだけの漫画を描いてくれ?そんなもんでいいのか?」
―――それは、人の心が読める女の子のお話。
「プロの漫画家ってのは編集者がこうこうこういう話を描いてくれって
依頼してくるもんらしいからな。いい練習の機会かもしれねぇ」
―――自分に向けられた好意を読めるその女の子は、恋をした。
「…描いてみたぜ妹さん。どんなもんだ?」
―――その人は強くて、優しくて、そして…心が見えなかった。
「…そうか、面白かったか。そいつはよかったぜ」
―――それはとても悲しくて、苦しくて、悔しくて、それでも…
「しかし面白い設定の話だったな…これ妹さんが考えたのかい?」
―――そんな女の子のお話。
「…ま、正直二人をくっつける展開に持っていくのに苦労したけどな」
―――そして私だけのためのお話。そう、誰かのためでなく私のための…
…やっぱ慣れないことはするもんじゃねーや
おとなしく会話SSSだけ書いてます
いや、文句なしに素晴らしかった
個人的には会話よりこっちの方が好きです
305 :
あずまゐ:04/03/30 10:30 ID:PIbk5vz6
周防宅。美琴部屋。
「私、なんで告白もせずに逃げちゃったんだろぅ…。ホント私って臆病なんだから…」
一つの部屋に美少女が二人。
しかし、床に散らばった酒瓶は乙女のものとは創造もつかない程転がっている。
それと同時に沢近も、普段とは別人の様に泣いていた。
「沢近、本当に播磨の事が好きだったんだなぁ」
「…ぅん。でも私、何も…何もできなかっ…た…」
突然、部屋に曲が流れ、二人の会話を止めさせた。
美琴は沢近の顔を怪訝そうに見ながら携帯を手に取ると「あぁ、今替わる」と言って沢近に携帯を向けた。
「誰?」
「播磨だ」
沢近は携帯を取ろうとした手を引っ込めた。
「私、な、何も言う事なんて…」
「沢近、お前、播磨に携帯預けっぱなしだったろ」
沢近はまだ手を引っ込めたままだ。
「で、でも私、今、こんな声だし…」
「ほらっ!未練が残らない様に今言っちまえ!沢近!」
そう小声で言うと、美琴は携帯を直接、沢近の耳に付けた。
それと同時に赤くなる頬。耳の中に播磨の声が広がる。沢近はやっと美琴の携帯を握りしめた。
「ーーあのっ!私。 私、播磨君の事が好きだったの! 播磨君の気持ちはわかってる…けど、私、どうしてもあなたに私の気持ち言いたくて…」
命短し、恋せよ乙女。
306 :
あずまゐ:04/03/30 10:43 ID:PIbk5vz6
「なんとなく思いつき」さん、よかですよ、アレ。
確かに何度も書けるスタンスじゃないけど、10に1は欲しいっ!!
自分のは長すぎて障害がでるので、予定の半分にしました。
次号〜もやめてみました。
(・∀・)イイと思うよ。
ただ前の見ないとどんなだったか忘れてるのだけが難点かな
お前らその腫れ物に触るような微妙なレスをやめろw
悪いものをきちんと悪いって言うことも大切だぞ。
書いてるうちに上手くなることを期待してる
名無しに戻ったほうがいいと思うよあずまゐさん
特定されると荒らしの的にされやすいからね。
別に貶してるわけじゃあないから気にしないでね。
今連載してるSSが終わるまでは特定されるもへったくれもないだろ(w
でもまぁ確かに特定されやすいと不都合が多そうではあるな
漏れも実は沢近モノをほとんど書いてないってのがバレちゃうし
それに文体とか作風とかで誰が書いてるかはだいたいわかるもんだしね
314 :
あずまゐ:04/03/31 10:21 ID:PIbk5vz6
荒らしさんの話題になるんだったら喜んで名前書きますさ!!
図星でも理不尽でも、叩かれる事が成長の素!
では今日(は少し失敗…?)も朝から打ち込みます。ひとさし指で…。
315 :
あずまゐ:04/03/31 10:44 ID:PIbk5vz6
美琴の部屋で一夜を過ごした翌日の放課後。
沢近は例によってデートに誘われていた。
「ね、沢近さんちょっといい? 俺A組の佐野ってんだけどさ。よかったら今度一緒に…」
「ごめんなさい」
「ちょ…ちょっと待ってよ!まだ話も終わらない内に…」
前回の秒殺を踏まえた上での秒殺は、やはりこたえるものがある。
「ねぇ、私と二年の塚本八雲、どっちが好み?」
「え? そりゃあ沢近さんだよ」
「それじゃあ何の参考にもならないわ。 それと、私をデートに誘うなら、もっと強くハッキリ告白して、私があなたに恋してから。 私は気の大きい人が好きなの」
沢近は素敵な笑顔を浮かべ、その場から立ち去ると、フラれ男にスタンバイしていた男達が群がってきた。
「沢近さんは全校生徒のアイドルよー!独り占めは許されな…って、佐野? おーい?」
「沢近さん、この前より、ずっとずっとキレイになった気がする…」
一方。周防は花井の眼に止まっていた。
「おい周防!なんか今日一日、足がもたついてるぞ、お前」
「あぁ、痛いんだよ… っと、ヤベ…」
「また二日酔いか!お前、いくら酒豪とは言っても未成年なんだぞ!!わかっているのか!?」
…酔った沢近に奪われたなんて言えねぇ…。
そして、更に動物園では。
「あの…播磨先輩。私、男の人と付き合った事なんてないので色々分かりませんが、それでも良いなら私、付き合います…」
「…えっ〜〜〜とぉ……」
第五部完
・・・えっと、偽物荒らしが現れるかもしれないんで、トリップつけては如何?
317 :
あずまゐ:04/03/31 11:10 ID:PIbk5vz6
トリップ? …ってどうすれば…。教えて先生!
トリップとは、名前の欄に#好きな文字列と打ち込むことで
ランダムにその文字列が変換されるものです。
偽物防止に役立ちます。
ちなみに↑のトリップは、スクラン#スクランと入れたものです。
#のあとは、できる限りわかりにくい言葉にすることを勧めます。
あと、メール欄に半角英数でsageと入れるとスレが上がりません。
今度からはメール欄にsageと入れるようお願いします。
本当、有難う御座います!!
感謝感激雨嵐です!!
・・・
荒れるの覚悟でビシッと言ってやったほうがよくねえか?
ビシッ
ビシッ
>>319 SSはともかく
とりあえず厨っぽい言動は控えて欲しいです・・・
>>319 SSはGJですよ。沢近も八雲も変わった味が出ていていいと思います。
次回作も期待しています。
ただ、言葉に少し気を配って欲しいです。
別に「丁寧語で書け」と書きたいわけではないんですが…。
SSに関してももう少し文章力を上げた方がいい気がします
いろいろな本を読んで表現を真似してみるとか・・・
後の八雲日記から抜粋。
2005年6月12・13日。人の心が視えなくなってから一ヶ月。
昨日、気晴らしに行った動物園で、偶然播磨先輩の本心を聞いてしまった。
私、播磨先輩なら心が視えなくても信じられる。
播磨先輩ならなんでも話せる。
「あの…私、昔から私の事好きでいてくれる人の心が視えてたんです。でも最近、播磨先輩の事好きだと思うようになってから、心が視えなくなってきて不安なんです…」
「そうか、でも、人の心なんて視えない方いいだろ」
八雲は小さくうなずいた。
「で、でも、花井先輩とか、どう対処していいのか…」
「あのメガネからはちゃんと俺が守ってやるよ。 ところで、俺の心は視えていたのか…?」
「それが…自分の一番好きな異性の方には視えないらしいです。 それとも、もしかして、播磨先輩は私の事…好きじゃない…ですか…?」
八雲の今までにない、細く強い声に播磨の心はかき混ぜられた。
「え、や…妹さん…ちょっと待っ…」
「やめてください! 私…播磨先輩には姉さんの妹としてじゃなく、ちゃんと塚本八雲として見て欲しいんです!」
なんてエゴなんだろう…。
八雲は八雲でない気がした。
こんな強い言葉が私に出せたなんて…。
その強い力が恋によるものなのかは初恋の八雲には分からず、ただ、播磨の答えを待っていた。
お願い!一度だけでいいから播磨先輩の心を視せて!!
八雲は目を閉じた…。
第六部完
>>326 自分もそう思います。
文章力というか「表現力」のなさに書いてて痛感してます。
ただ、ココで書く場合、キャラの性格や見た目、背景がわかってますからねぇ…そこらは割愛という事で。
明日はジブリにいくので、明日の分を今載せました。
次回で完結です。
>>あずまゐ殿
できれば作品タイトルをお教えください・・・
あのタイトルで本当にいいのか疑問で・・・
あと文章力は他のSSを読むとかなり勉強になります・・・
・・・(3点リーダ)もいいとは思いますが、マガジンは・・・・(2点リーダ2つ)なので俺はそっちもあってもいいと思うぜ・・・・!?
GJ。
八雲が積極的なところが新鮮。
播磨はやっぱり鈍いんですね
GJです。
八雲が大胆な行動に出ていますね。
こういうSSは珍しいので読んでいて楽しかったです。
次回、どういう展開になるのか期待して待っておきます。
332 :
:04/03/31 22:41 ID:2QygdBVM
後一回ですか、収拾つけるの大変そうですね
長めの文章キボン
5部と6部のつながりがよくわかんないんだけどどういうこと?
正直NGワードに設定した
深夜だからって正直すぎ
表現力ってのは書いてる内につくもんだ。継続が大事。
継続は力なり
どっかで聞いたような言葉だ。
誰かお姉さんスキーはいないのかー
これからの成長に期待age
昔々、浦島拳児と言う男がおったそうな。
ある日、拳児がいつものように漫画を描きに浜へ行くと、少年達が群がって何かをしていました。
「おい、お前ら、何してんだこんな所で」
拳児が様子を見に近づくと、少年達の真ん中に一匹のカメがおりました。
「八雲ガメに告白してるのさ!」
「あの…えっと…その、私…」
「困ってるじゃねーか! 播拳蹴!」
グワッパ!! 見事、拳児は八雲ガメを少年達から守りました。
「あの、本当にありがとうございました。 ところで、そのコマ、構図変えた方がいいですね…あとセリフも…」
「おっ!そうか!サンキュー」
ホント、いつの間にか仲良くなった拳児と八雲ガメは正味一時間、漫画について話し合いました。
そして八雲ガメは言いました。
「ところで、竜宮城来ませんか?助けたお礼にぜひ、いらして下さい。姫様も喜ぶと思います」
「そ、そうか? なんか悪いなぁ、漫画のアドバイスまでしてもらったのに…」
「あの…私の背中に乗って下さい…」
「大丈夫か?」
「た、多分…。海は浮力があるから…」
八雲ガメに言われる通り、拳児は背中に乗ると、八雲ガメはスイスイと海の奥の奥の奥まで拳児を連れて行きました。
そこには、絵にも描けない美しいお城に、たいそう美しい姫様がおられました。
「ここが竜宮城です。 えっと…紹介します。この方が愛理姫様です」
!!!!! ・・・・。
「ヒゲ、あんた、今度は八雲にもちょっかい出したの?」
「あ、あの、本当に拳児さんは私のこと助けてくれて…」
「えっ〜と、玉手箱渡すんだっけ? ホラッ、持って行きなさいよ、バカ」
愛理姫様と面会したのもつかの間、すぐに竜宮城を追い出されると、拳児は再び八雲ガメの背中に乗って、元いた浜へ帰りました。
「あのっ、本当にスミマセン!まさか愛理姫様があんなに嫌うなんて…」
八雲ガメは一通りの謝辞を述べ、海へ帰ると、拳児はためらいもなく玉手箱を開けました。
「う、うわっ!! 髪が! ヒゲが!! 無ぇ・・・」
玉手箱の白い煙をあびて、頭髪とヒゲを亡くした拳児は、箱の底の手紙を読みました。
「ゴメンネ☆ by Erihime。 ヌガー!! ってゆーか、俺の原稿ビショビショじゃねーか!!」
めでたし めでたし
「期待」とか言われると、書かずにはいられず。ちょっと時間があったので外伝。
あんまり甘〜いのばかりだと脳がとろけるので…。たまには趣向を変えて。
連載の題名は倉庫に名付けられてる通りでいいんでないでしょうか?何か気の利いた題を付けて下されば、ありがたい限りです。
皆さん何故かマンセーしておられるようですが、本当にそれで良いのでしょうか?
これでは他の作家さん達まで「なんだ、結局書けば何でもマンセーされるのか」
と思われてしまいそうで不安でなりません。
ここのところ異様な雰囲気だったもので・・・
もしも本気でマンセーしていたならば申し訳ありませんでした。
>>339 とりあえず、内容・文章力ともに人に見せられるレベルではないような気がします。
一度自分のSSを客観視してみるのがいいのではないでしょうか。
ホントにそう思う
俺には無理だ
保健の先生として、今日から赴任。
早速、怪我人の手当てに追われる。
一段落したとき、気が付いた。
「あ… ベッドの窓、開けっ放し!」
閉めようとして、一人の生徒が寝ているのに気付く。
「あら… 寝てるコいたのね」
生徒の寝顔を見て、「え?」と気付く。
誰だろう… 会ったことあるような気がする…
もしかして…彼?
でも、ヒゲがあったはず…と、マジックで生徒の顔にヒゲを書いた。
するとそこにあったのは… 忘れもしない、彼の寝顔だった。
やっぱり! 彼だ!
私は思わず、彼を抱きしめていた
「ハリオー!! ひっさしぶりー」
ベレー帽をかぶって登校。
教室の前まで来て、逡巡する。
(クソ……! 入りにくいぜ…)
(クラスのやつら全員俺のハゲのこと知ってんだろうな…)
ドアをそーっと開けて覗くと、エロ・ミーティング開催中。
「う… 何か噂話してる? お 俺の話なのか?」。
「やめだ やめだ! 保健室行って休もう」
保健室には、誰もいなかった。
「また使わしてもらうぜ」とベッドにもぐり込む。
やがて軽い寝息を立て始めた。
いきなりの衝撃で目が覚める。
「ハリオー!」
「うお!!?」
いったい何が起きたんだ?
目の前には、女が抱きついている。
その向こうには、沢近と周防がいた。
「え」 視線を窓辺に移すと、同級生の姿が。
「え」
友達と話していると、播磨が顔を覗かせてすぐにいなくなった。
「今の…播磨だよな」
「ええっ? もう帰っちゃったの? なんでかな?」
「ダメな女子高生みたいだね…」
「頭がスースーして 落ちつかねえんなーの?」
「あるいはツインテール恐怖症とかさ」
友達は私が播磨に悪いことをしたような口ぶりで言う。
「…何よ」と言うと、
「いや… 謝ったほうがいいんじゃない?」
私は反論した「なんで? この前、謝ったじゃない!」
「より悪化したけどね」
「もう一回謝っておけばカンペキだって!」
「絶っっっ対イヤ!!」と私は反発した。
「っかー! アッタマかてーヤツだな!」
「カワイイ女は素直なものよ」
「そうだよ 謝っちゃえ愛理ちゃん!」
私は決断した。
「あーもう! わぁかったわよ」
「ちょっとそこのアナタ! ハリマ君見なかったかしら?」と同級生に尋ねる。
「播磨なら、保健室へ…」
「そう! ありがと」
「ヘイ! ワシらも一緒に行くダス!」と男子が言い出した
「は?」
「ちょーどいい!皆で謝りに行くかー!」
「おーー!」と勝手に決めてしまう。
「な なんでついてくんのよーっ」
「いーから いーから」とぞろぞろついてくる。
保健室前まで来ると、ゴリ山に見つかり、皆ちりぢりになってしまった。
謝るには、少人数のほうがいい。
でも、新しい保健の先生に謝っているところを見られるのもイヤだし…
迷っている所をせかされ、保健室に入ることにした。
ドアを開けると、そこには…
今週はこんなかんじでしょうか?
>>341 ありがとうございます。
確かにネ。図星です。
客観視していたとは、今、自分自身はっきり断言できません。前から文章を書いてきたという驕りがあった部分もありました。
文章力以前に、それが読まれて楽しいか。というのも疑問があります。
これから、いろんな本を見て吸収し、もっと推敲します。批評ありがとうございます。
よーし!もっと修行するぞー!
>347
頑張れ。めげるな。
努力さえすれば、プロにはなれなくともアマチュアにはなれる。
349 :
:04/04/01 20:08 ID:1y16rTQw
>>347 落ち込んでなくてよかった(ホッ
2次創作の場合、メインキャラの性格を変えるのは結構地雷ですからねー
サラとか佐倉先生とか麻生君なら結構自由に動かせると思いますよ
後余計なお世話かもしれませんが、文章力を上げたければスクランの漫画そのものをSS化してみるのもひとつの手だと思います
ネタバレすれでネタバレを投下してくれる人の文章なんか短いのに要点をつかんでいてとてもわかりやすく、本編より面白かった回もある位です
では最終回頑張ってください
>>347 文章力・表現力を上げるには
>>346氏みたいに
本編をSS化させてみたりするのも練習になるんじゃないでしょうか
まあ素人の俺には分からんがなー
>>346 GJ!
文章で読むと漫画とはまた違った味があって良いですね
Σ( ̄□ ̄;)7分遅れで被ってしまった
頑張って文章力を磨くべし
表現力がないから会話SSSでごまかす漏れみたいなヘタレになっちゃダメだよ
「お疲れ様です、先輩」
「お疲れ」
フロアの掃除を終えたサラ・アディエマスが、厨房へと入ってきた。中華鍋を洗っていた
麻生広義が、ねぎらいの言葉で彼女を出迎える。洗い物が一段落すると、麻生は大げさに
溜め息をつき、近くの椅子へと座り込んだ。
「ったくあの店長は。人を何だと思ってやがる」
「いいじゃないですか。お客さんも喜んでたことですし」
愚痴をこぼす麻生を、サラがなだめる。いつかの時と同じく、今日も厨房に店長の姿はない。
しわ寄せを喰う形になった麻生の表情には、不満の色がありありと浮き出ていた。
「お前、やっぱ変わってるな」
そう言って、麻生がもう一度溜め息をつく。そんな麻生の姿を見て、サラはクスリと笑った。
「そうですか?でも、それを言うなら先輩もですよ」
「?」
「だって、何だかんだ言って厨房に入ってくれたじゃないですか。シフト外なのに」
「……ほっとけ、単なる気まぐれだ」
サラから目を背けるように、麻生は厨房の外へと出て行った。楽しげな表情で、サラが後ろから
声をかける。
「あれ?もしかして先輩、照れてます?」
「んな訳あるか。ほら、とっとと上がるぞ」
「そうですか。じゃ、そういうことにしときましょう」
微笑みを浮かべながら、サラは麻生の元へと歩いていった。すでに他の従業員たちはすべて
上がってしまっており、店内に残っているのは彼ら二人だけである。閑散とした店内に、
二人の会話が響き渡った。
「そう言えば先輩、次の日曜はヒマですか?ヒマだったら……」
「断る」
「ひっどーい!まだ何も言ってないじゃないですか!」
「お前が絡むとろくな事がないからな。それに、休日は家でゴロゴロするって決めてる」
「そんなの予定でも何でもないですよ。そんなこと言って、この前も私の頼みを断ったじゃないですか」
「あれは先約があるって言っただろ」
「それはそうですけど、女の子の頼みを断るなんてエレガントじゃないです」
「エレガントじゃなくて結構。俺は昔ながらの日本人なんだ」
むくれるサラに対し、麻生はあくまでそっけない。サラが何を言おうとも、無表情でそれを
受け流していく。そして、そんなやりとりがしばらく続いた後、
「そうですか。なら、こっちにだって考えがあります」
サラがポケットから一枚の封筒を取り出した。封筒の表側には、下手な字で「給与」と書かれている。
麻生の表情が、瞬く間に青ざめていった。
「てめっ、俺の給料!」
「店長から預かってたんです。お仕事がすべて終わったら渡すように言われてたんですけどね」
「返せ!」
「おっと、ダメですよ。心ない先輩の言葉で私は傷つきました。このお金は慰謝料として
もらっておくことにします」
「ふざけんな!だいたいそんな日本語どこで覚えやがった!」
「ヒミツです。……で、どうします?先輩」
サラがヒラヒラと封筒を揺らす。結局麻生は、無理矢理サラの「デート」の誘いを承諾させられる
こととなった。
「お待たせしました、先輩」
待ち合わせの時刻を一時間ほど過ぎたところで、ようやくサラが姿を見せた。不機嫌な顔で
ベンチに座っていた麻生が、視線を合わせずに文句を言う。
「遅い」
「こういう時、女の子は遅れてくるものですよ。さ、むくれてないで出発出発」
笑顔で言い放つと、そのままサラはどこかへ歩いていってしまった。遅刻してきたにも関わらず、
悪びれる様子はまったく見られない。麻生は仕方なく立ち上がり、その後を追った。
「おい、待てって。だいたいどこに連れてくつもりだよ」
「ふふ、それは着いてからのお楽しみです」
麻生の問いをさらりと受け流して、どんどんサラが先へと進んでいく。そうして数十分歩いた後、
長い石段の前でサラは歩みを止めた。
「ここです」
「……なあ」
「あれ?どうしました、先輩?」
「とりあえず、俺の目の前にある建造物について説明して欲しいんだが」
「見ての通りの神社ですけど。ほら、あそこにも書いてあります」
サラの指差した石碑には、確かに「矢神神社」と書かれている。麻生はがっくりと肩を落とし、
呆れたような声でつぶやいた。
「……俺の記憶が確かなら、お前は教会に出入りしていたと思うんだが……」
「細かいことは言いっこなしです。それに、神社自体に用事があるわけじゃないですから」
「?」
「ああ、こちらの話です。さ、悩んでないで行きましょう」
サラが軽やかな足取りで石段を登っていく。麻生は少し疑問に思ったが、とりあえずサラの
後ろをついて行ってみることにした。サラは社の横を通り抜け、どんどん林の奥へと踏み込んでいく。
「おい、どこまで行くつもりだよ」
「もう少しです。まあ、騙されたと思ってついてきて下さい」
そう言って、サラが微笑む。「そもそも今ここにいること自体が騙されたようなものだ」と
麻生は思ったが、口には出さなかった。その時、
「――――――!?」
突然、視界が開けた。
「どうですか?いい眺めでしょう」
満面の笑顔で、サラが麻生に語りかける。麻生の眼前には、彼らの住む町の全景が広がっていた。
水平線の彼方で、空と海とが一つになる。その雄大な景色に、麻生は思わず見とれた。
「私、悩んだり悲しいことがあったりするとここに来るんです。何て言うか、心の中のもやーっと
したものを、すべて吹き飛ばしてくれるような気がして」
「……そうか」
「あれ?どうしました?……日本語、ひょっとしておかしかったですか?」
「いや、何となくわかる」
そう言うと、麻生はその場に座り込んだ。心なしか、いつもよりも表情が柔和に感じられる。
サラはもう一度笑顔を見せると、自分も麻生の隣りに腰を下ろした。
「先輩、いい顔してますね。普段もそれくらい愛想があればいいのに」
「……ほっとけ、こういう性分なんだよ」
「ええ、わかってます。先輩は、無愛想で、不器用で、ぶっきらぼうで……」
「……」
「でも、とても優しい人です」
サラの言葉に、麻生は頬を掻いた。吹き上げてくる秋の風が、二人の髪を揺らす。
「そりゃ買いかぶりだ。ほら、景色も堪能したことだし、さっさと帰るぞ」
照れ臭いのを押し隠すかのように、麻生は立ち上がって林の方へと歩いていった。その態度が
気に入らなかったのか、サラの頬がぷくっと膨れる。
「……おい、早くしろよ。日が暮れちまうぞ」
「私の名前は『おい』とか『お前』とかじゃありません。私の名前はサラ、サラ・アディエマスです。
ちゃんと名前で呼んでくれるまで、私は帰りません」
それを聞いて、麻生は苦虫を噛み潰したような表情になった。長いこと同じ中華料理屋で
アルバイトをしているとはいえ、今更改まって名前を呼ぶのは気恥ずかしい。麻生のような
性格の男であれば、なおさらのことである。麻生は頭を激しく掻きむしると、ぼそぼそ何かを
つぶやきながらサラに歩み寄った。
「……くぞ」
「聞こえません、もう一回」
「あーもう!行くぞ、サラ!」
麻生が顔を真っ赤にして叫ぶ。その姿を見て、サラはようやく笑顔を見せた。
「はい、麻生先輩」
心地良い秋の空気が、二人の身体を包み込んでいく。いつもよりもほんの少しだけくすぐったい
ような、そんな日曜日だった。
というわけでサラ×麻生を一本。
>>153を見た時から書こう書こうとは思ってたんですが、いかんせんネタが……。
頭の中でネタが発酵するまでかなりの時間がかかってしまいました。うーん、すみません。
腹黒キャラは大好きなので、本編でサラが活躍する日が楽しみです。
360 :
Classical名無しさん:04/04/01 23:50 ID:/yoj4Hyg
上手いです!
キャラを生かしきった素晴らしいSSでした。
GJ!
腹黒サラに翻弄される麻生、見ていてニヤニヤしてしまいました。
凄く気持ちよくスラスラと読めました。
グッジョブ!
いやーサラは良いな〜
その日、職員会議は騒然となった。
新任の先生が、播磨に押し倒されたというからだ。
「で、本当のところはどうなのですかな?」と校長が問い掛ける。
「押し倒されてなんかいません! 本当です!」
「ただ…」
「ただ、何だね?」
「彼に会えて、嬉しくて抱きついてしまったんです。」
「君、教育者として不適切な行動はいかんね。」
「はい、すみません…」
「だがね、播磨の方は、そうは言っていないのだよ。」
「え? どういうことですか?」
「自分がやったとね、言ってるんだ」
「そんな…」
一方の播磨は、生徒指導室で事情を聞かれていた。
「ぼちぼち、本当のことを言ったらどうだ?」と絃子。
「だから、本当のことをいってるじゃねえか! 俺がやったんだよ!」
「なあ、拳児君。 君はそんな事が出来る人間じゃない。 正直にいったらどうだ?」
「いいんだよ! 俺がやったんだよ! そうすれば、お姉さんはお咎めなしじゃねえか!」
「ま、落ち着いて、これでも飲め」とコップを差し出す。
ゴクゴクと一気飲みする播磨。
「おい、絃子。 なんだこれ?」
「これか? ウオッカだ」
「な! なんでそんなモンを飲ませやがった!」
急速に酔いが廻り始める播磨。
「酔わないと正直に話してくれないからな、君は。」
酔っ払った播磨は、観念した。
「わかった、話すよ…」
播磨は語り始めた。
お姉さんとの出会い、生活、そして別れ…それは、世話になった人を守りたいという、播磨の気持ちだった。
「らから、俺はおねえしゃんを…」酔った播磨は泣き上戸になっていた。
絃子がポンと肩をたたく。
「わかった、もういい…」
「…と、言うことです。 校長。」
絃子手製の通信機が、校長の手元にあった。
「わかりました。 ご苦労様、刑部先生。」
校長はお姉さんに向き直った。
「いい生徒に出会えましたな。 でも、言動は控えてもらいますよ?」
お姉さんは感激して涙を流す。
「はい、ありがとうございます。」
「お礼なら、播磨に言ってください。」校長はにこやかに言った。
「それでは、これで一件落着。 でも、飲酒の播磨君は、停学2週間。いいですかな?」
「異議なし!」と職員一同。
「もう、学校に行けねえ」と泣きながら酔っ払う播磨であった。
最後の一行は、今週のラストのコマ風にしてみました。
GJ!
お姉さんを庇う播磨(゚∀゚)カコイイ!
播磨を庇うお姉さん(;´Д`)ハアハア
これからお姉さんSSが増えそうで嬉しいです
それから一年。播磨と八雲は動物園にいた。
「あれから八雲は少し変わったな」
播磨は茂みの中に隠れている猫を見つけ、付き合う以前の八雲を思い出した。
姿形や礼儀正しい所、世話焼きで人の奥を見ようとする所。何一つ変わっていない。播磨も同じえある。
「姉さんは烏丸さんに恋をしてから、少しづつ積極的になっていきました。多分私にも、それと同じ力が働いたんだと思います…」
それは、友達や家族には気づかない、一歩一歩の成長。
播磨は手すりにもたれかかって空を見上げた。雲一つない青空に、白い鳥達が舞っている。
「あの時、俺の心の声が視えたんだろ?」
播磨はこの質問を一年間に幾度とした。もちろん八雲は同じ答えを何度も言う。
播磨は八雲が嘘をついてるとは思わないし、播磨自身そう心の声が言った事は認めている。今でも心はそう言っている。
「どうやらあれが最後の力だったようです。もうあれから完全に人の心は視えません」
播磨は優しく八雲の肩を抱きながらサングラスを取った。
「不安か?」
八雲は肩に回した播磨の大きな手に触れると、首を横に振って静かに答えた。
「あの時から、私の側には拳児さんがいたから…」
結局、あの告白は八雲の反則勝ちだったように思える。
一年前までやってきた天満への告白の努力が八雲に対してなかったからだ。
だから播磨は一年間「好き」と言わずに、八雲に全力の愛を注いだ。
その努力はもはや天満以上のものになっている。
「ところで、今日は〆切りだったんじゃ…」
「そんな事より、今日は特別な日なんだ。 よく聞けよ。俺はなぁ、八雲の事が───」
飛び遅れた白い鳥がまた一羽、青空に舞った。
最後に、
夢に出てきたピョートルのお告げから一週間。
無駄が多く、ネット下手で、煩わしい状態だった事をお詫びします。
当初、最終回は八雲中心でしたが、やはり播磨に締めてもらいました。
実は、絵を描く方が本職なので、今度はそちらでも頑張ります。
本当の事言うと、自分は「播磨は誰ともくっつかず、結局、沢八成長の土台になる・うさぎさん派」です。
エロパロ板で奈良とサラのSSを書いて欲しいと言っていた方がいましたので
ご希望におこたえしまして・・・。ちなみに舞台は一月です。
始業式の朝、奈良はいつものようにウォークマンを聞きながら川の土手を歩いていた。
一月の朝は寒く、手袋をし損ねた奈良はかじかむ手に白い息を吐きかけながら歩く。
いつも孤独で、登校時も下校時もウォークマンだけが奈良の友だった。
その時、サラ、八雲、花井たちにぶつかった。
「キィィィィィ!」
知恵の輪がもう少しではずれそうだったのか、花井がいきなり叫びだした。
「花井先輩・・・ちょっとぶつかったくらいで興奮しないで・・・下さい」
八雲はそういっていつものように花井の手をぎゅっと握り締めた。
「・・・なんだよ。僕には甘えられる奴もいない。手を握ってくれる奴もいないのに・・・」
奈良は花井と八雲を見てうつむきながら吐き捨てるように言った。
その言葉にサラは気づいてしまった。奈良の目をじっと見つめるサラ。その視線に奈良は
つい口走ってしまった。
「あ・・・・サラ・・・」
奈良のその言葉と視線にサラは麻生に見つめられた時とは違う感触を覚えた。
「奈良先輩・・・」
しかしサラの見つめるような視線に奈良は耐え切れずその場を立ち去ろうとした。
その瞬間、サラは奈良の手を握った。奈良は温かいサラの手の感触に、そしてサラは
奈良の手を握ってしまった事に胸が高鳴るのを感じた・・・。
「何か悩んでるなら、力になりますよ・・・?先輩」
サラは奈良をまっすぐ見つめながら言った。
「なんでもないって・・・」
奈良は視線を逸らした。
「・・・ホントに?」
「ホントだって!平気だよ!僕はいつでも元気だよ!」
奈良はぎこちない笑顔でそれだけ言うと、土手を走り出した。
サラは心配そうな眼で見ていたが、すぐに走り去る奈良の背中に向かって、
「話、聞いてあげますよ…!?放課後屋上で待ってますから・・・!」
その声は、奈良の耳に届いた。
つい先日、麻生の童貞を奪った、サラは、あの時の激しいSEXを思い返し下半身を熱く
した・・・パンティーが少し濡れてくるのがわかる・・・。
(私って、童貞キラーなのかしら?)
奈良の後姿を見ながら、サラは、放課後が待ち遠しく感じた。
給食時間のあいだ、サラは冬木たちとたのしく話す奈良をじっと見つめていた。
「奈良先輩が時々悲しい目をしているのは何でだろう・・・いつもはあんなに明るく振舞っ
てるのに。そんな奈良先輩をぎゅっと抱きしめてあげたくなるのって・・・やっぱり私って
変なのかなぁ」
この前も麻生の童貞を奪ったサラは、細身の奈良の裸体を想像した。
麻生とは対照的な奈良の裸体を私の豊満な体で束縛したい・・・
純白のパンティーがじわりと濡れてくるのをサラは感じた。
放課後。
奈良は屋上へ行った。 サラは柵をつかんで土手を見ていた。
「サラさん」
奈良が呼ぶと振り向き、微笑んだ。
「今朝、元気なかったから、気になって・・・」
「・・・」
サラはまっすぐ奈良を見つめている。
奈良は目を逸らす事が出来ないで黙っていた。
「悩んでいるんだったら、力になってあげますよ・・・?」
「・・・」
奈良がなおも黙っていると、突然サラは奈良にキスをした。
「・・・!?」
一秒・・・二秒・・・三秒・・・。
サラの手が奈良の股間を愛撫しはじめた。
サラは口を離すと、
「私が・・・、慰めてあげます・・・」
と言い、ひざまずくようにし、
慣れた手付きで奈良のズボンのベルトを外しチャックを下ろした。
サラは、奈良のペニスを露にすると、激しく擦り出した。
「奈良先輩・・・私でオナニーしたことあります?」
「・・・」
「ねえ・・・?」
「・・・あるよ」
「もう」
サラは少し嬉しそうだ。
「麻生くんが羨ましかった。いつもサラさんに優しくされてて。僕なんかいつも影薄いから」
サラは摩擦運動をやめない。
「それで僕、いつも寂しかったんだ・・・!学校や中華料理店で麻生くんとサラさんを見て、
僕には誰も優しくしてくれない、僕はひとりぼっちだ、そう思ったら・・・!」
奈良は泣いていた。
「・・・私は、何処へも行きませんよ・・・?」
そういうと、サラは奈良のペニスをくわえた。
>>368 完結お疲れさまです
最初の頃より確実に上手くなってると思いますよ
絵の方も頑張って下さいね
お姉さん×播磨の甘々なSSが読みたい!
・・・無茶言ってスマソ(´・ω・`)
今更ながら、いや、今だからこそ、過去スレで投下された「DEEP to you」の続きが読みたい…
- The world is not beautiful. Therefore, it is. -
「あれ……?」
「……」
「あ!やっぱりそうだ。久しぶりだね、どうしてこんなところにいるの?」
「あなた――私と話してるつもり?」
「へ……?だって他に誰も……」
「……そう。ならいいわ――久しぶりね」
「うん、そうだね。でもよかった、人違いじゃなくて」
「……声をかける前に確認するんじゃない?普通」
「でもそうだったんだから問題なしだよね」
「相変わらずね、本当に……」
「ただいまー」
「おかえり、姉さん」
今日は遅かったね、と言いながら台所に向かう八雲。
「ごめんね、久しぶりに会った子とおしゃべりしてたらこんな時間になっちゃった」
でも面白かったよ、と笑う天満に、よかったね、と微笑む八雲。
「どんな話してたの?」
「いろいろだよ。んっとね……」
「――ねえ、生きてるのって楽しい?」
「うん、楽しいよ」
「……即答ね」
「でもそう思うよ、私」
「本当に?」
「うーん、そうじゃないことだってもちろんあるし、私一人だったら嫌になっちゃう
かもしれないけどね。でもいろんな人がいてくれるから、近くに」
「……」
「友達とか家族とか、みんながいてくれるからやっぱり楽しい、って思うんだけど……
違うかな」
「そう……」
「私はそう思うんだけど……あなたはどう?楽しい?」
「……私は」
「……ずいぶん難しい話したんだね」
「私もちょっと困っちゃったけど……でも、やっぱり楽しいと思うよね、八雲も」
「うん……でもその人って少し……」
「変わってる、かな。でもとってもいい子だよ」
まだ小さいのにしっかりしてるしね、と笑う天満。
「え……?そんなに小さな子と……」
少なくとも、天満の話を聞いている限りはとてもそうとは思えず、訝しげに
聞き返す八雲。
「それがね、見た目よりずっと年上なんだって」
「――姉さん」
もしかして、と八雲が言葉を続けようとしたその瞬間。
「久しぶりね、ヤクモ」
ふわりと舞うように、何もない空間から彼女は現れた。
「分からないわ……」
「え?でも……」
「あなたが持っているようなもの、私は持っていないもの」
「……ごめん、変なこと訊いちゃったね」
「いいわ、私は別に……」
「ね、じゃあさ、友達になろっか、私と」
「え……?」
「私一人じゃダメかもしれないけど、私の友達だっているし、八雲――あ、妹だよ、
私の――もいるし……きっと楽しいって思えるよ」
「……本当に変わってるわね、あなた」
「うん、よく言われる」
「そういうところが変わってるのよ……」
「……やっぱり」
「あれ?八雲のこと知ってるの?」
「前にちょっと、ね……」
そう言ってから、八雲の方に向き直る少女。
「あなたが他人を信じる理由が分かった気がするわ」
「え……?」
「無条件の信頼、それに――そう、これが愛情なのね。確かにそんなものが
身近にあれば、誰かを嫌いになんてなれるわけがないわね」
「私は……」
「え?え?どういうこと?」
会話の内容についていけず戸惑う天満を、あなたは分からないままの方が
いいのよ、と軽く一蹴。
「……それだけよ」
じゃあまたね、と少女は瞳を――
「……そう、後一つだけ言っておくことがあったわね」
――閉じようとして、その前に何かを思い出したように呟く。
「それじゃ後一つだけ訊かせて」
「いいよ、何?」
「あなたは『友達』のことが――好き?」
「うん、みんな大好きだよ」
「そう――それじゃ」
「……悪くはないわね」
『友達』というのも、と。
少しだけ――ほんの少しだけ恥ずかしそうに、小さく笑って――
「――ありがとう」
世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい
html形式じゃないとロクなことにならない、とか、趣味に走ってニーズに応えないと
こうなります、という悪い例です……じゃなくて。
天満の匙加減は難しい、というそんな話です。
ちなみに冒頭・末尾の出典は言わずもがなで。
>>382 グッジョーブ!! 幽霊ちゃん登場有難う。そして南〜無〜?
BGM付のFlashとかで表現するとイイ!!テキストかもしれんな〜とも思ったり。
GJ!
全体に流れるシリアスな雰囲気がいいなー
本編にまた幽霊の女の子は出てくるんでしょうかね
エロパロに投下したら荒しにならないからって
わざわざこっちに投下する所に凄い執念を感じるな
いいと思います。
シリアスな雰囲気は難しい物ですが、これほどの文章力はスゴイです。
まあ、本音を言うなら・・・ 幽子(゚∀゚)キターーーー!!
HAHAHAHA
一度目はデータが消えて鬱。
二度目はHDDが飛んで鬱。
三度目は……なんだろうなぁ。
書きかけの文章…書く気力がなくなってきたよ。
みんなの元気を分けてくれ〜
頑張ってくれ、としか言いようがないな
俺の元気でよかったら分けますよ。
まぁ、頑張れ。
390 :
382:04/04/02 23:23 ID:DSxhjImQ
一行目も本当は中心寄せなんですよ(負け犬の遠吠え
>>383 この後は塚本家にも普通にお邪魔するようになったりしたり。
いつものようにボケ全開の天満の横で、
「……ヤクモ、あなたからも何か言ってやりなさい」
「え……でも姉さんは姉さんだし……」
「……そうね、あなたに期待した私が悪いのよね」
「ん?なになに?」
とかそんなやりとり。それなりに楽しそう。
>>384 きっと忘れた頃に……多分……おそらく……
>>386 実はネタ物よりシリアスの方が格段に楽だったりします。
故に自分はいつもそちらに逃げる一方で、本当はバランスよく行きたいのですが……
>>387 強くイ`
俺も途中で製作意欲喪失。
いきあたりばったりで書いてたら、すごいテンポの悪くて
無駄に長いのができちまった。。
序章、第1章で20P超。
だいたいのストーリーは構築されてただけに
ここでやめちまうのもなんだかな。
392 :
Classical名無しさん:04/04/03 00:50 ID:lUVI46x.
質問ですがSSってどのくらいの長さの話まで許されるんですか?
>>391 ワードで20P超ですか?それはちと長いですね……。
意欲が湧かないと言うならしょうがないですが、書き上がったら一度にすべて投下せずに
何日かに分けて投下してみてはどうでしょうか。
>>391 自分の最高は15レスです。
最近はできる限り7〜8レスくらいまでに納まるようにしています。
まあ、10レス超えるようなら少々考える必要があるのではと思いますね。
そう。ワードで20P。しかも2部作のうち、第1部序章と一章で。
もし書き上げたならの話だけど、小分け投下のほかに
俺とスクランのBBS借りてスレ立てさせてもらって、
てのも考えてた。勝手な話。
獲らぬ狸の皮算用とはこのことだな。
>>395 自虐的になるのは良くないですよ。
それに骨子ができてるならやめてしまうのは勿体ないです。
気が向いたらでいいですから、ちょこちょこと書いていけばいいと思います。
やっぱり人に読んでもらってなんぼのものですからw
398 :
392:04/04/03 01:42 ID:lUVI46x.
あげてしまってすんません。
>>393 返答ありがとうございます。
自分もSS考えているのですが、最低15レスはいきそうで。
話に矛盾や突飛な部分がでないようにするとどうしても長くなってしまって。
章立てして分けて投下すれば許してもらえますかね?
個人的には50だとか100だとか、そういうぶっ飛んだ数じゃない限りは何レスいってもいいような。
本当に大長編なら、それこそ適当な無料スペースでも取って自分で上げるのも一つ手。
……と言うかぶっちゃけてしまえば読み手としては読めれば満足です、はい。
あくまで個人的な見解ですが。
>>398 うーん、内容次第ですね。
ものによってはちと長くなってもそのまま投下した方がいいかもしれませんし。
まあ、そんなに悩むことはないですよ。↑の方もああおっしゃってくれてることですし、
一度に投下して構わないのでは?
俺自身は、SSは(ショート・ショート)のことだと思ってるけど、
(サイド・ストーリー)と認識してる人もいるでしょうに
だから長さは考えなくていいんじゃね?
ただあまりに長過ぎると、何回も推敲しすぎて
悪いとこわかんなくなってくるだろうから、
連載ってな形もアリだと思う
でもそれだとストーリー忘れたり、スルーしてる人や
他の作品の邪魔になる可能性があるよなあ
とあるスレで、150レスぐらい使って大作SSを投下した神職人もいたから、長いのもOKだと思う。
>>391と
>>398、期待してますよ〜(゚∀゚)ノシ
お姉さん抱きつき事件の後、播磨はこっぴどく怒られた。
謹慎1週間になったのは、播磨がお姉さんを庇ったからである。
校門を出ると、女性の声がした。
「待って、ハリオ」
お姉さんだった。
「どうして…どうして私を庇ったの?」
「…お姉さんには、世話になった義理があるし、迷惑かけたくなかったんだ」
「あたしの…ために?」
お姉さんは、播磨の胸に飛び込んだ。
「バカ…バカバカ…ハリオのバカァ!」
お姉さんは、泣きじゃくった。
「あたし、ハリオにそんな事してもらう人間じゃない!」
わんわん泣き続けるお姉さんを、播磨はそっと抱きしめた。
「いいんだ…お姉さんは、大事な人だから…」
「ハリオ…」
夕暮れの校門前で、二人は抱きしめ合った。
その様子を、沢近が見ていたとも知らずに…
「あら刑部先生」
「…うちの拳児君が以前お世話になったようですね」
「拳児君?」
「2-Cの播磨拳児ですよ」
「あぁハリオのことですか…えぇ、以前彼が家出をしてた時にうちに泊めてあげてたんですよ」
「…失礼ですがお一人でお住まいで?」
「ええ、そうですけどそれが何か?」
「いや保健室で先生と拳児君が何やら良からぬ事をしていたという噂が流れてまして…二人はどういう関係なのかなと」
「あぁ、そういうことですか…別になーんにもありませんでしたけど?この間保健室で彼が寝てて
こんなところで再会するなんて思ってもみなかったから思わず嬉しくて抱きついてしまったのを
生徒達に見られてしまって、それでそんな噂になったんだと思いますが」
「なるほど…そういうことですか」
「ええ」
「…とりあえず校内で誤解を招くような行為は慎んだほうが賢明かと」
「そうですね、以後気を付け…あれ?刑部先生確か2-Cの担任じゃありませんでしたよね?何でわざわざ…」
「あぁ…実はちょっとした事情で彼を私の家で預かってましてね」
「そうなんですか…じゃあ今も彼は刑部先生のお宅に?」
「えぇ、まぁそういうことになりますね」
「失礼ですが刑部先生もお一人でお住まいなんですか?」
「一応そうですが、まぁ間違いが起こる心配がないというのは先生が一番よくご存じでしょう」
「…なるほど、それもそうですね」
「でもまぁ誤解されると面倒ですし、このことは他言無用ということで」
「そうですね」
「…では」
「…じゃ」
おしまい。
あの〜。お聞きしていいでしょうか。
衝動的に初SS書いてみたんですけど、7回分連続投稿ってできるんでしょうか。
一行一行は短いのですが、改行が多いので7個に分かれてしまいました。
他の人が投稿中だとか、希望しない場合は去ります。
>>405 お疲れ様です。
何だかんだ言って絃子先生は播磨のことが気になるわけですねw
今後本編ではどう出てくるか、楽しみです。
>>406 投下どうぞ。クラウンの連投規制は5つですが、こっそり過疎スレで
支援してきますので。
408 :
恋の悪寒:04/04/03 18:23 ID:kczMw2dY
ハリー・マッケンジーは追われていた。
学校一のナイスガイとの噂が広がり、今ではファンクラブまでできる始末。
「いたっ!あそこよっ!」
「キャー!ハリー様ぁ!」
ドドドドッ………
…
………
………………
ハリーは疲れていた。
逃亡の日々に。
現在も、なんとか逃げきって校舎裏の日陰で一休みしているところだった。
「意外と速いものだナ…」
女の脚力も侮れないということだろう。
「?…あれは?」
ふと、金髪の女生徒が目に止まった。
ここからでは後ろ姿しか見えないが、綺麗なブロンドの髪。
彼女も自分を追いまわすファンの一人かも知れない。
しかし、疲れきっていたためだろうか。
彼は、遠い故郷を思わせるそのブロンドに安らぎを求めるように、フラフラと引き寄せられていった。
409 :
恋の悪寒:04/04/03 18:26 ID:kczMw2dY
「モシ、そこのお嬢サン…」
「え?」
深紅のリボンで髪を両脇に束ねた、どこか芯の強そうな女生徒。
付け加えるなら、とびっきりの美少女だ。
「(オー、デリシャス…)」
やはりハリーも男。
花のような乙女に見えるのだった。
まあ、実際は疑わしいものだが。
「あの?もしもし?」
「(ハッ、イケナイ…)エー、私は君に話がありマス。ちょいとこれから…」
言いかけた時だった。
「いたっ!あそこよっ!」
「キャー!ハリー様ぁ!」
一字一句違わぬいつもの奇声。
ようするに見つかってしまったのだ。
ハリーは一度深くため息をつくと、
「すまないお嬢サン。私は君にイロイロ話したいことがありマス。続きは放課後にてこの場所でっ!」
そう言うと、彼は颯爽と去って行った。
「ちょ、ちょっとっ!」
…大量の黄色い声と地響きを伴いながら。
「スゴ…」
呆気にとられる沢近であった。
「………これって…、告白?」
実際、度々告白されている沢近である。
彼女がこのような結論に達してしまったとしても誰も責められまい。
410 :
恋の悪寒:04/04/03 18:32 ID:kczMw2dY
昼休み。
「はぁ…」
沢近愛理は悩んでいた。
ゾクゾクする恋を探して幾年月。
2年生ももう2学期。
勝負時である夏休みなど既に終わってしまっている。
そこで、先ほどのハリーからの電撃告白(予定、女生徒の取り巻き付き)である。
「どうしたの?恵理」
晶が来た。
「ん〜、なんだかね…」
ザァーーーッ
「…それにしてもひどい雨ね。(こんなので、放課後大丈夫かしら?)」
「にわか雨らしいし、じきに止むみたいだよ。」
「そう。だといいんだけど。(…ん〜、いいのかなぁ?むしろ止まないほうが…)」
ザァァーーーーーーッ
「…クチュン」
「濡れてるわね、恵理。」
「ん〜、いきなり降り出したからね。まあ、この程度ならすぐに乾くわ。」
「そう、風邪ひかないようにね。」
ザァァァーーーーーーーーーッ
「ところで…愛理、あなた悩んでるわね。」
「え?な、何でわかるの?」
「悩みのタネは、ズバリ、放課後のことね。」
「え?えっ?ええ〜っ!なっ、何でわかるの!?」
「さっき声に出してた。」
カックン
「そ、そう。出してたんだ。」
「よかったら話してみない?楽になるかもしれないし。」
悩んだ末、事のいきさつを話すことにした。
「ん〜、実はね…」
411 :
恋の悪寒:04/04/03 18:35 ID:kczMw2dY
………
「どう思う?」
「それは、恋ね」
「やっぱり?」
「いや、そうじゃなくて、あなたが恋…。沢近愛理がハリー・マッケンジーにアイ・ラヴ・ユー、よ。」
「ええっ!どうしてそうなるのよ!」
つまりこういうことらしい。
沢近愛理が普段しているデートとは卓球。
そう、風呂上がりにする卓球である。
つまりリフレッシュするだけではあき足らず、かけ引きからのみ味わえるスリルをも味わう。
よく分からないがそういうものらしい。
しかし、沢近愛理とは基本的に恋愛不感症であり、ゾクゾクするまでスリルを高めることができない。
そんな彼女が、ため息をつきながら悩んでいる時点でもう既に恋なのだ…と。
…ゾクゾクッ
「あれ?今、『ゾクゾク』って…。」
「そう、やっぱりね…。」
「…クチュン」
そう言われてみれば、彼はナイスガイ。
話してみても態度はあくまで紳士的。そこに軽薄な印象はなかった。
追っかけができるほどの人気者でもある。
「…クチュン」
付け加えれば、見てくれも、いわゆる長身・美形。
なによりも金髪同志ゆえ、近親的な同族意識が生まれるのも無理はなかろう。
「そう、これよ。きっと、私はこの時を待っていたのよ。」
いつのまにか、沢近はやる気になっていた。
「恋の悪寒」の著者です。
すみません、連続規制にひかかりそうなので、ご要望があればまた時を置いてから書き込みます。
413 :
恋の悪寒:04/04/03 19:33 ID:kczMw2dY
そして放課後。
気合は十分。
今まで感じたことことのない、恋の予感。
それはもう、「ゾクゾク」するほどの。
「晶、さっきはありがと。私、がんばってみるわ!」
金髪ツインテールをなびかせながら、少女は走り出した。
風圧でリボンがほどけんばかりの勢いで。
廊下、階段、廊下、中庭…
ものすごい勢いで流れていく。
もう誰も彼女を止められない。
しばらくすると、目的地である校舎裏が見えてきた。
そこには一人の男子生徒の姿があった。
彼だ。
ゾクゾクする恋!もう目の前!
興奮冷めやらぬ乙女は校舎裏へ飛び出した。
ザンッ(←着地した音)
(少し気取ったポーズを取ってから)
「フフッ…。今朝の話なんだけど、わかったわ。つきあってあげる。」
「…あ〜?」
………………………!?
そこにいたのは…
ハリー・マではなく……………ハリマだった!
414 :
恋の悪寒:04/04/03 19:34 ID:kczMw2dY
「……つきあって、あげ…る…。」
「何?」
「…つ、つき…」
「ナ・ン・だっ・てぇ〜?」
「〜〜〜っ!!!」
沢近愛理、ゆでダコ状態。
「………イチ……」
「位置?」
「ちっ、ちがうわよっ!…ソコイチ…」
「ソコイチが何だよ?」
「そっ、ソコイチに『つきあって』あげるって言ってんのよ!
あ、あんたいつもお腹すかせてるじゃない!だからっ…ケホッケホッ(←むせた)」
「あ〜…、どうせまたろくでもないこと考えてんだろ?いらね。じゃあな。」
そう言うと播磨は去って行った。
「…」
「…なによ…」
「なによ…ヒゲのバカ」
夕日に向かって歩き出す沢近。
肩を落として、心なしか前のめり姿勢で。
その姿は縄張り争いに敗れた犬のよう。
垂れ下がる大きなツインテールは、まさに負け犬の「耳」であった。
415 :
恋の悪寒:04/04/03 19:36 ID:kczMw2dY
トボトボ…。
ひどく落ち込む。
それはハリーのこと?それとも…
ガシッ
突然肩をつかまれた。
「あ〜…、なんだ、その、やっぱ『つきあって』もらうことにするわ」
「えっ…?な、なんで?」
「ほれっ、このとおり」
グゥ〜(腹の音)
「!!! も、もうっ!はしたないわねっ!女の子の前で!」
そう言いつつも、彼女の顔には涙の跡と満面の笑顔。
「こうなったら牛しゃぶカレーでも1300gでもどんときなさいよ!も〜、あんたってホンッとに…」
かたわらであれこれはやし立てるツインテールの少女を見て、播磨はつぶやく。
「まっ、しゃ〜ねぇわな…。(あんなに落ち込まれちゃなぁ)」
ある日の出来事。
夕暮れに響く、何気ないやりとり。
空には大きな虹がかかっていた。
〜 完 〜
GJ!
久々に旗(゚∀゚)キター。ツインテールが耳ですかw
結局ハリーはどうなったんでしょうかね?
恵理→愛理
間違いには気をつけましょう。
でもこういう展開のSSは好きです。GJ!
418 :
恋の悪寒:04/04/03 20:13 ID:kczMw2dY
ホントだ…誤字がたくさん…。
以後、気をつけます。指摘ありがとうございました。
ハリーは追っかけられてて遅れてしまったということに…しておきます。
最後に、
ゾクゾクする 恋の予感 と、
ゾクゾクする風邪の悪寒
をかけてみましたが、わかりにくかったですよね…。すみません。
読んでいただき、ありがとうございました。
風邪が伏線だと思ってたのにそれが全く生かされなかったのが残念かな。
風邪引いていたからゾクゾクしてたっていうことじゃないの?
>わかりにくかったですよね…
一瞬でわかった
漏れはハリーが「あなたとは長い付き合いになりそうな悪寒がするのデス…」とか言ってシャイニング食らうオチかと思った
>>420 そのフラグの回収が出来てない(表現されてない)って事じゃないの?
あえて書かない手法とも考えられるけど、少々わかりづらいかな。
んー、姉ヶ崎先生(おねえさん)と播磨で書きたいんだけど、ネタが思い浮かばない…
あと、横線みたいなヤツってどう入力するんですか?
>>424 ネタはもう、天から舞い降りてくるのを待つしか……w
横線は「だっしゅ」で変換してみて下さい。
ダッシュ、だっしゅ、奪取、´ …あの、一やーのような横線をさがしてるんですが。
あれ、出ませんか?
――――――
↑みたいなやつですよね?ワードだと出るんですが……。
まあ出ないなら最悪↑からコピペしてください。
――――――
これか?2個づつ繋げてけ
かぶった……
しかも長さまで一緒だ……
ありがとうございます。 多謝。
せん、よこせんで単語登録しました。どもでした。
ちなみに私の作品は、363 364 403 です。
ホントは下の方が
ちょびっと長いんじゃねーのかあ?
あぼーん
あぼーん
あぼーん
>>408 沢近キタ━━━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━━━━!!!!
マッケンジーがいきなり出たときは読むの止めようかと思ったけど
最後まで読んだら播磨×沢近GJ!!!
お姉さん抱きつき騒動のあと、播磨は不登校になっていた。
寝ている所を抱きつかれたとはいえ、現場を同級生に目撃されたからだ。
(もう、学校に行けねえ)
(お姉さんにも、悪いことしちまった)
今後を思案していると、チャイムが鳴った。
「ハリオ、あたし」 お姉さんだった。
驚きつつも、部屋に招き入れる播磨。
「クッキー焼いてきたんだ 食べる?」
「あ、ああ…」
クッキーを口にする。 懐かしい味がした。 居候していたころの味だった。
「ね、ハリオ。 学校に来てないんだって?」 お姉さんが問い掛ける。
「お姉さんにも迷惑かけちまったな、すまねえ…」
お姉さんは、播磨の腕にしがみついた。
「ううん、いいの… 悪いのはあたしなんだから」
「久しぶりに会えて、嬉しくって…」
「職員会議でね、怒られちゃったけど、ハリオは無実だって言ったから」
「だから、明日から学校にいこ? ね?」
黙って播磨は頷いた。 そっと、お姉さんを抱きしめる。
「ハリオ… ――もう少し、もう少しだけこのままでいさせて…」
抱き合う二人を夕日が包んでいた
ネタバレを参考にして創作してみました。
イマイチですね。 今週号発売後、また投下しようと思います。
「……また今日も随分な戦利品だね」
「大丈夫ですよ、これがありますから」
「……あのね。だからそれが心配だと言ってるんだよ、私は。だいたいこの間の支払いもまだ済んではいないんだろう?」
「だから大丈夫ですよ、ちゃんと考えてます」
「その自信がどこから来るのか、一度説明してもらいたいよ……まったく、君もそろそろその辺しっかり管理してくれる
相手を見つけたらどうかな?君ならちょっと探せば相手の一人や二人――」
「まだ早いですよ、そんな話。それに」
「それに?」
「刑部さんがいてくれますから」
「……」
「そう言えば、刑部さんもそういう話全然聞きませんね」
「私?私は家に手のかかる居候がいるからね、あれの面倒を見る必要がなくなるまではとてもじゃないがそんな余裕はないよ」
「あら、そうなんですか?」
「……どういう意味かな、その表情は」
「いえいえ、なんでも」
……会話モノは難しいということがわかりました、まる
激しく遅いレスだが
>>212よ
某所某掲示板で人気投票ではないが
過去SSの推薦所があるぞ。一票入れてきたらどうよ?
はじめまして
突然ですが、筆のリハビリにSS投下させていただきます
縦笛で恋にもなってないような感じですが
どうぞー
I'm knockin'on your door
いつもすぐせめぎあう lonely
You're nothing but a girl
君だけの夢に出会いたい
何が変わってゆくだろう。何を見つめていただろう。
僕の憧れの人。ずっと、目標にしていた英雄。
いや、ヒーローなんて言ったりしたら彼女に悪いか。そう、彼女は女の子だ。
……女の子、なんだよな。
最近、彼女がとても調子が悪いように見えた。心配して聞いてみたら
好きな人に振られたと言った。冗談めかして、笑顔で。
その笑顔があまりにも悲しそうで、僕は何も言えなかった。
なんだかそれ以来、顔を会わせづらくなってしまった。
何を言いたかっただろう。何を信じていただろう。
彼女はいつだって元気だ。少しくらい落ち込むことはあっても笑顔でみんな吹き飛ばしてしまう。
強くて、凛々しくて、カッコよくて――
それが、今まで僕に見せたことのなかった表情。彼女らしくも無い。
とても傷ついているのだと思う。ずっと一緒に居たんだ、それくらいわかる。
このままではいけない。僕に何か出来るのだろうか。
やはり、もう一度話をしてみよう。小さい頃から彼女には世話になった。
励ましてもらった。勇気をもらった。元気をもらった。
今度は、僕が元気をあげる番だ。男、花井 春樹、今こそ力を見せる時。
「……うむ」
果たして僕は、君に胸を張れるような男になれただろうか?
「周防、いいか?入るぞ」
そして僕は扉を叩く。ほんの少しの勇気を出して。
今、言える言葉は――
fin
BGM『KNOCKIN'ON YOUR DOOR』by L⇔R
短いですが、以上です。元ネタは古い曲ですなー
久しぶりに書いたので悩みましたね。イメージからすると、花井の告白とか
そういうシーンで使いたかったなぁ、ホントは
まだ未熟者ですがよろしくお願いいたしまする
G(・∀・)J
花井の決意がカッコ良かったですー。
扉を開ける手前でfinにしたところが自分的には満足です。
(シリアス展開・ギャグ展開どちらも妄想できますからね)
遅レスですが
ID:6gWpwnUIさん・・・・
なるべくその手のネタは“発売日”以降にしたほうがいいと思いますよ・・・・?!
護身中の方、注意
お、エチャで話してた人ですね。
縦笛はいいですね。
続きはあるのでしょうか? 激しく期待!
>446
喜んでいただけたら何よりです
私としての心残りはもっとラヴっぽくしたかったですね
原曲の「今言える言葉は」に続くフレーズがなんたって「Just say I love you」ですし
この曲の歌詞だと花井はヤクモンに振られそうですが。縦笛だから、ま、いっか
曲をイメージしながら作ったので聴きながら読むと雰囲気でるかなー、と
>448
絵茶ではどうもー
続きはー・・・実は考えてませn(パケロス
なんか花井は一生懸命に周防に語りかけるのだけれど、やっぱどこかトンチンカンで
周防にクスッっと笑われてしまう。んでも、最後は
「・・・・・・ありがとよ」
なんて言われちゃったりして。個人的にはベタベタな付き合いより淡い感じがイイ(・∀・)!!と思うのです
曲のイメージに合わせて作るのはなかなか面白かったです
シリーズ化したいですね(自分の首絞めそうな予感
旗派のヤツとか。黒サラとか。ああ、なんか首絞まってきたのでこれにて
GJ!
長い内容ではないが、長編に匹敵するような濃厚さを
堪能させてもらえました。
美琴は花井に弱みを見せないような気がするけど
詩との組み合わせが良かったです。GJ!
ありゃ?うざかったのがあぼーんになってる
454 :
:04/04/07 15:33 ID:gKUXn2i6
わろた、透明アポーンが普通のアポーンになってる
#74
美術室で絵を描く絃子。
笹倉先生が尋ねると、緊急避難してきたと言う絃子。
絵の隅には、昔の絃子と播磨か、2人連れの姿があった。
一方、保健室へ向かう教師二人。
2−C担任の谷と、2−D担任のマクベ顔・加藤だった。
播磨を非難するマクベに対し、何かの間違いと庇う谷。
そんな姿勢では困るとマクベが言っている間に保健室に到着。
おねえさん(姉ヶ崎先生)は、お昼寝中だった。
事情を聞くと、彼女は播磨を庇った。
「悪いのはわたしなんですっ 彼は悪くありませんっ」
「それよりクッキー焼いてきたんですけど こーゆーのって渡しちゃってもいいんですか?」
職員室でクッキーを食べた谷。
脳裏にある思い出がよみがえってきた。
それは、学生時代の思い出。
防波堤沿いを自転車を押している谷。
そこへ女の子が谷を呼び止める。
「谷サ、待ってけろ」
幼馴染で同級生の百合だった。
「た 谷サ、東京さ行ぐってホント?」
「――んだ、東京の大学に行って、先生になるだ」
「オ オラ 谷サに渡したいモンが…」
百合が取り出したのは、きれいにラッピングされた袋だった。
「オラが焼いたクッキー どんぐり入り」
「百合っぺ… ありがとう」
クッキーを食べる谷。
「うん、おいしいよ 百合っぺ」
「東京さ行っても、オラの事忘れないでけろ」 百合の精一杯の告白だった。
「わかったよ、百合っぺ」 谷は、笑顔で応えた。
―――切ない思い出だった。
が、すぐに現実に引き戻された。
同僚がクッキーを寄越せというのだ。
百合との思い出を汚されたくない谷は、慌てて断った。
(2−Dの授業の後にクッキーを食べて、癒されよう) 谷はそう思った。
そして、2−Dの授業は予想通りだった。
意訳が完璧なハりー、2−Cを敵視する東郷とララ、そして喧しい2−C.
肩が懲りつつ職員室に戻り、クッキーで癒されようとした谷。
が、机の上には何もなかった。
探しまくる谷。 恐竜フィギュアがぞろぞろ出てくる。
そこへマクベがやって来た。
体育祭で競うことになったとか言っているが、谷はクッキー探しでそれどころではない。
そしてマクベは言った。
「机の上のクッキーは私が頂きましたよ いつまでも置いてあるからいらないと思いましてね」
ショックを受ける谷。
思い出を汚された。
癒されなかった。
谷に怒りが込み上げてきた。
次の授業、自分のクラス。
生徒たちはサッカーのゲームをしていた。
谷の怒り頂点に達した。
バン!と教卓を叩く谷。 ひとコマで着席する生徒たち。
谷は、ティラノサウルスのオーラをまとい、言った。
「体育祭、勝て!」
「今日の授業は体育にしよう ジャージに着替えて! ガッツリ練習だ!」
「え゛?」と戸惑う生徒たちに更にこう言った。
「打倒2年D組 目差すは学年優勝だ!」と。
訳がわからないままランニングする生徒たち。
「クッキー……」谷はぼーっとしていた。
今週にちょっと谷先生の回想部分を付け足してみました。
加藤先生はどうしてもマクベに見えるので、マクベとしてみました。
マクベって何だ?それって食えるのか?
言われてみれば、マクビティ(ビスケット)に似てないこともない>マ・クベ
>>455-457乙!
あともうチョット情況描写の文を足してもいいかも
「ま、適当に上がってくれ。」
「…ほう、家主に断りもなく女性を連れ込むとは中々やるじゃないかケンジ君。」
「げ、イトコ。」
「げって何だ。それとさんをつけろ…ん? 貴女は確か新しく来た養護の…。」
「あれ、刑部先生じゃないですか?」
その日、帰宅した播磨拳児は女連れだった。
「なるほど、しばらく前に帰って来なかった時にケンジ君が世話に。
面倒をお掛けしました。」
「いいんですよ。私がそうしたかっただけですし。」
紆余曲折を経て再会したお姉さんこと姉ヶ崎先生は、播磨拳児が自身の
漫画がどの程度成長したのかを見せるため、そして一読者としての感想や
意見を聞くために刑部宅に招かれていた。リビングで頭を下げようとした
彼の従姉を制しつつ、彼女は微笑を絶やさずにいる。
「それにしても、刑部先生がハリオと同居してるなんて知りませんでしたよ。」
「まぁ、従姉ってだけの話ですけどね。」
不意に訪れる沈黙。学校に赴任したばかりの彼女と絃子に共通の話題なぞ
ひとつしかある訳もなく。
「ケンジ君は」「ハリオは」
声が重なった。
「…あ、刑部先生からどうぞ。」
「では。ケンジ君が姉ヶ崎先生に世話になっていた頃、まぁ彼に限って何も
しなかったとは思うのですが、万が一という事もありますしね。
で、ケンジ君は貴女とは…?」
「残念ながら、何も。」
「そうですか。」
絃子の微かな溜息は、保護者としての安堵以外の感情が含まれていた。
かどうかは傍目には分からなかった。
えーと、昨日の今日でまたSS書いてみました。
旗派分、追加ですー
「…残念ながら?」
「ええ。」
そう答える彼女は微笑を絶やさぬまま。その様子は絃子のどこかをやすりの
ようなザラついた何かで摩擦したのだろうか。
「まぁ当然でしょう。何せ彼は従姉とはいえこんな美人に触れようとも
しないのですから。」
常にあった微笑は僅かな痙攣の後に固まったような気がする。
「ええ、でも傷ついてる時に傍で支えてあげられるのは大きいと思うんですよ。」
「…何もされませんでしたけどね。」
既にお互いにカップの紅茶に手を付ける事もなく、重苦しい沈黙だけが
リビングを支配していた。
「漫画持って来た…ぞ?」
「やあケンジ君。」
「あらハリオ。」
何故か二人とも微笑んでいた。この時播磨が、尊敬する漫画家の一人である
荒本先生の作品「ジュジュの珍妙な探検」に於ける『ゴゴゴゴゴ』という
荒本フォントとも呼ばれる独特の擬音を「視覚」したかどうかは定かではない。
とにかく、リビングにいた二人がそんな素振りは全く見せないにも関わらず、
妙に空気が重かったのだけは確かだった。
「じゃ、じゃあ早速読んでみてくれよ。」
何気なくお姉さんの隣に座る播磨。
「…私も読ませてもらっていいかな?」
「あ? いやでもイトコ俺の描く漫画なんてくだらないとか言ってなかったか?」
「なに、それはそれとして従姉として協力してやろうと思ってね。むしろ
あまり漫画に興味のない人間の方が、忌憚のない意見が聞けると思うのだが
どうかね。」
「…まぁ、いいけどよ。」
そして絃子も播磨の隣に移る。3人掛けソファの真ん中に播磨は挟み込まれる
形で漫画の解説を始めた。ちなみにこの漫画、モデルは播磨と(播磨にとって
都合の良い)周囲の状況であり、関係者ならばよほど鈍くなければそれが分かる
代物であった。
「ふむ、(思ったより)悪くはないが話の幅に厚みがないな。」
「そうね。良く言えばシンプルなんだけど、少し捻りが足りないかしら。」
「ん〜、そうか〜。」
頭を掻きながらも視線は自分の原稿から離れずにいる。播磨の頭の中では
指摘された部分の改善案を協議中だった。が、答えは意外な方向からやってきた。
「こういう時はキャラを追加してみるのよ。」
「おお、なるほど。例えば?」
「そうね…主人公の男の子が傷ついた時に何も言わずに傍で支えてくれる年上の女(ひと)とか。」
「それならば…主人公を普段から見守りいざという時に手を差し伸べる姉の方がお勧めだな。」
衝突する視線。そして空気は更に重くなったような気がした。
だが、真剣に漫画の構想を巡らす播磨には空気の事などさっぱり
気づかぬままで、考えた末にこう言った。
「んー、別にどっちも好みじゃないしなぁ。」
「あれ? ヒゲ、って言うかハゲは?」
「何でも重度の打撲で入院したんだって。」
コミックス1〜4巻を購入し、モチベーションが上がった所に突如電波だか
何かが振ってきて一気に脳内で完成したらしい。
皆もコミックスを買おう。
>466
投下中にゴメンなさい。投下前の更新忘れてました。
マジですんません orz
そして
女の戦い、お姉さん編 キタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!!!
はぐれた時の隙間ならきっとすぐ埋るよ――
「久しぶりね、こんなわがまま言うのも」
そう、あいつがつぶやく。突然、海が見たいと言い出したあいつを連れ出し、
俺達は海辺の通りをバイクで走っていた。初夏の潮風が心地いい。
「いいってことよ。さ、ついたぜ」
路肩にバイクを止めると、あいつは砂浜に駆け出していく。
――あれから3年。高校の頃のバカ騒ぎが夢みたいだ。
長い髪を風になびかせて行く後姿を見送りながら、ふと思う。
あの頃の俺は馬鹿で、我武者羅で。あいつとは違う女(ひと)を追いかけていた。
自分勝手な、独りよがりの恋。実るわけがないよな。
見事に振られて、どん底まで落ち込んだ。そんな俺を救ってくれたのは――
「何ボケっとしてるのよ」
きらめく夕日に照らされて、波間で踊るあいつ。純粋に、キレイだと思った。
透き通るような柔らかな金髪に微笑を乗せて。ズルイぜ、そりゃ反則だ。
誘われるようにあいつに近づくと、有無を言わさず抱きしめる。
「ちょ、ちょっと!いきなり何よ」
照れて頬を染める姿が眩しい。夕日が目に入ったんだ、きっと。
今、俺はあの頃、惚れた女を見ていた瞳で、いや、もっと熱い心であいつを見てる。
「愛してるぜ」
生真面目な顔で俺が言う。
「……バカ」
そっと瞳を閉じてあいつが言う。
そして、二つの影は重なり夕闇に溶けていく。
波音はくちづけの吐息消して――
俺は今、あいつに恋してる。ずっと、時が流れても。
Don't chenge your heart, and keep loving you.
fin
BGM 『Replay』 by Mr.children
またしても短いですが旗話です
都合により、設定は3年後。天満ちゃんにも振られちゃってます
曲をテーマに持ってくると色々と縛りが多いので細かいところは勘弁して下さい
夏の出来事とか、回想シーン入れたかったんですけどね
無駄に長くなりそうなんで削りました。見易さとテンポ重視です
今回はこの曲聞いてたら「旗しかない!」とΣ(゚∀゚)キュピーンときてしまったので
オニギリ話もその内やりたいですね
それではこんなところで失礼します。◆K0PnGiioさん、ホントすいませんでした
かっぱ氏、乙です。
なんだろう、読んでるうちにやけに気恥ずかしくなってきましたよ…
播磨の独白に身もだえしまくり。
懐かしくて切なくてでも青春は今も続いてる、こういう雰囲気は大好きです。
GJと言わせてください。
本スレ見てたら突然俺の妄想に火がついた。
播磨は覚えてないが子供の頃イトコは播磨と仲良く遊んだりしてた。
なのに播磨は中学上がると喧嘩三昧の日々、
イトコが教育実習生の頃のイロイロなんか覚えていない。
イトコもいい加減大人になって若い頃の幻想は捨てた
…と思いながらも同居人として生徒として再び身近にいる播磨を
ささやかながら気にかけている。
……どこかで見た話のような気もしますが。
「…じゃあな。いつもありがとよ妹さん」
「あ、あのっ、播磨さん!」
「ん?どうした妹さん?」
「前からずっと気になってたんですけど、このヒロインって、その…姉、ですよね」
「…あーやっぱ見てわかるか。まぁ実はそういうことなんだ妹さん。お姉さんにはこのことは秘密で頼むぜ」
「え、えぇ、それは勿論わかってますけど…それじゃ何でわざわざ妹の私に漫画を?」
「痛いトコ突いてくるなぁ妹さん…いやお恥ずかしい話なんだがオレはまぁ見ての通りのワルなわけで
他に漫画を見せられそうな友達とかあんまいねぇんだよこれが」
「あ、そうなんですか…じゃあ姉とのことで相談する相手も?」
「…いねぇな」
「じゃ、じゃあよろしかったら私がそっちの話も…」
「あーいや、気持ちはうれしいんだがそれはできねぇ」
「え?…あの、私そんな信用できませんか?」
「いやいやそういうことじゃねぇんだ…その、なんだ。そこまでしてもらったら
まるでオレが妹さんを味方に付けるために近づいたみたいでなんかアレじゃねーか」
「播磨さん…」
「それにあれだ、妙に貸しを作りたくねぇんだよ…その、将来家族になるかもしれねーわけだしさ」
「家族?」
「そ、そりゃそうだろ…オレと天満ちゃんが、その、ケッコン、したら、妹さんと義理の兄妹になるわけだからな」
「兄妹…播磨さんと…」
「…やっぱイヤか?こんなのが身内になるのは」
「い、いえ…まぁこれは姉が決めることですけど、私個人としては、その…心強いです」
「ウレシイこと言ってくれるじゃねーか妹さん…じゃまあそうなれるように頑張るぜ」
「え、えっと、それだったら!」
「???」
「将来家族になるつもりだったら、遠慮無く話してください…貸しとか借りとかそういうのって何か違うような気が…」
「なるほどな…こいつぁ一本取られたぜ。じゃあそのうち折を見て話すわ。じゃあな」
「あ…はい…」
ガサッ
「伊織?」
ニャー
「…これで、いいんだよね。きっと」
Fin。
・・・あー、ほのぼのしたおにぎりSS書くつもりが
なんか出来上がったらヤクモンが可哀相なことになってるし
やっぱSSって難しいわ
将来、「播磨さん、それは違…」とか言ったりして
それは、全身黒ずくめの少女だった――――――
髪の毛、ジャケット、アームウォーマー、スカート、ロングブーツ――――――
特徴的な大きな目、小柄な体躯――――――
「あ、あれ?」
播磨はふと我にかえる。降りしきる雨、ベンチに腰掛けている自分、そして目の前にいる少女。この状況は一体―――
少女は無言で播磨のほうへ近づいてきて、突然、ジャケットを脱いだかと思うと播磨の頭に被せた。
「ぶわ!」
播磨は突然のことに狼狽するが、体は金縛りにあったかのように動かない。
「(な、なんだこりゃ!?)」
ジャケットを被ったままで目を白黒させる播磨をよそに、少女は播磨の両太腿を跨ぐような格好で播磨にそっと体を預けた。少女の小さな胸が播磨の胸に『ぷに』とあたる。その感触に播磨は顔を紅潮させる。
「わ、わ、わ、一体何なんだ!?つーか誰だアンタ!?」
「私は……あなたに恩返しに来ました。」
「恩返し?うーん……人違いじゃ…」
『ないか?』と続けようとした播磨の口を少女は自分の唇でそっと塞ぐ。
「!!!!!!!!!!!!」
播磨は目をくわっと見開き、ますます顔を紅潮させた。
「これに見覚えはありませんか?」
少女はそっとせまい額にかかる前髪を上げる。するとそこには大きな傷跡がある。
「これは……(確かに見たことあるような……)」
「あなたには2回も助けられました。私達、恩をすぐ忘れるって言われますけど、本当はそんなことないんですよ。本当にお世話になった人のことはずっと忘れないんです。」
少女は微笑みながら言った。
「うーむ?」
播磨は何が何やらわからず、心の中で首をかしげる。
「お迎えが来たみたいです。私の役目はここまでです……」
そういうと少女は播磨の視界からぼやけて――――――
「あ、あれ?」
播磨はふと我にかえる。降りしきる雨、ベンチに腰掛けている自分、そして目の前にいる少女。この状況は一体―――
少女は無言で播磨のほうへ近づいてきて、突然、傘を播磨の頭の上に差し出した。
「播磨さん……大丈夫ですか?」
「あ、妹さん。」
播磨の目の前にいるのは八雲だった。体も動く。これは現実のようだ。
「(そう言えば……)」
播磨は記憶を辿ってみた。
「(確か、昼休みに腹へって仕方なくて空腹を紛らわすために散歩をしていて……)
(それで天気が良くて気持ちよさそーだったから外に出て……)
(校庭のベンチに座って……そのまま眠っちまったんだな……)
(それにしてもこの天気、そういやお天気キャスターが『女心と秋の空』とかいってたっけ……)」
「播磨さん……風邪を引きます……帰りましょう。」
八雲は呆けている播磨にもう一度声をかける。ふと播磨が改めて八雲をみるとその腕には黒い猫が抱かれていて、じっと播磨を見つめている。播磨は立ちあがって八雲の傘の中に体半分入れながら八雲に尋ねる。
「その猫は……」
「あの……この子、伊織っていって……ウチで飼っているんです。一度、播磨さんに脚の刺を抜いていただいたこともあります……それでひどい雨だからこの子を探していたら、その……ここで播磨さんに包まっていたんです……」
「なっ!!!!!!」
播磨は絶句する。
「(まさか、それじゃあさっきの少女は……)」
「……播磨さん?」
「……いや、まさかな。いや、なんでもないんだ。」
急に大声を上げたかと思うと、眉間にしわを寄せる播磨を、八雲は不思議そうに見つめる。そして、八雲が何かに気付いて播磨に話しかける。
「でも、不思議です……こんな雨の中にいたのに……播磨さんの体がそんなに濡れていない……」
それを聞いて播磨はハッとする。そういえば確かにほとんど服が濡れていない。それに、少し肌寒い空気にもかかわらず、上半身には温もりが残っている。いくら伊織が包まっていたといっても、この小さな猫からこれほどの温もりを得られるだろうか。
「(あれは幻だったのか……それとも……)」
播磨が伊織に目を向けると、目が合って―――次の瞬間には、我関せずといったように視線を逸らされた。播磨は八雲に疑問をぶつける。
「妹さん、この猫は男の子?それとも女の子?」
「それは……本編をちゃんと読んでないのでわかりません……」
「は?本編?」
「……いえ……何でもありません。」
晴れない空、晴れない疑惑――――――
眉間にしわを寄せている播磨、少し頬を染めている八雲、つんと済ましている伊織――――――
眩い光と滾るような熱を放っているのは、太陽ではなく――――――黒塗りの車の中から2人と1匹を睨みつける少女の頭――――――
そんなある秋の一日だった。
烏丸転校まであと150日――――――
職人のみなさん、乙です。
今夜は八雲祭りだようつд`)
>>473-474 会話が小気味よくまとまってて読みやすかったです。
最後が切ないっす。いいのか八雲!それでいいのか!
可能なら彼女が自分の決意にゆれる続編などもキボンヌ
>>476-478 終わり方も含めて、♭のまったりした雰囲気をよく出してると思いました。
播磨は不良のくせに善行しまくってますよね。そのリターンがこれか。
毎度うらやましい言われてる彼ですがこれは新しいうらやましさ。
あと『ぷに』に萌えた。ほんのりエロス。
ピンポイントで楽屋落ちな台詞もワロタ
480 :
Days:04/04/08 18:51 ID:DSxhjImQ
「八雲、明日時間ある?」
「大丈夫だけど……」
「よかった。それじゃお花見に行かない?」
「え……?でもこのあいだみんなで……」
「うん、だから今度は二人で。どうかな」
――と、言うわけで。
教会近くの公園に来ている八雲とサラ。一週間ほど前までは花見に訪れる人が耐えなかったもの
だが、花が散り始めた今はずいぶんとその数を減らしている。
「ここがいいかな」
サラがそう言って腰掛けたのは、公園の片隅にひっそりと設置してあるベンチ。そこかしこに
桜が植えられている都合上、出来るだけ人が少ないところを、という選択らしい。
そんなサラの隣に腰掛けた八雲、彼女が何を言うでもなく桜を見上げているのを見て、同じように
してそれを見上げる。
盛りを過ぎた桜は、風に吹かれるでもなくその花を静かに散らしている。
「……」
「……」
しばらくそのまま静かに桜を見上げた後で、サラが口を開く。
「この間ね、たまたま帰り道に見て思ったんだ。桜って散るために咲いてるのかな、なんて」
「散るために……?」
「うん。だってキレイだと思わない?これ」
満開のときとはちょっと違うと思うけど、というその言葉に、改めて桜を見上げる八雲。視界の
中では、はらはらと舞い落ちる雪のような白。地面を覆い尽くすほどの花が既に散っていると
いうのに、それが途切れることはない。
481 :
Days:04/04/08 18:52 ID:DSxhjImQ
「……そうだね」
見れば見るほど、ただの公園がどこか違う世界のように彩られているその光景に頷く八雲に、
言葉を続けるサラ。
「それにね、もう枝に新しい芽が出てるんだ。これを見ちゃうと、今度はまた来年咲くために
散ってるのかな、なんて思っちゃうし」
不思議だね、桜って。そう言って笑う。
「向こうじゃあんまり見ないから、こういうのすごく素敵だなって。それでね」
そこでちょっと言葉切って、少し恥ずかしそうにしてから続ける。
「だから八雲と一緒に見たいかな……って」
ごめんね、付き合わせちゃって。そう小さく頭を下げる。
「ううん、そんなことないよ。素敵だと思う、私も……」
初めて桜を見たときのことを思い出しながら返事をする八雲。年を重ねるごとにそれは
当たり前の光景になっていって、あの頃の気持ちを忘れていったことを思い出す。
「よかった。迷惑だった、なんて言われたらどうしようかと思っちゃった」
冗談めかして言って、舌を出してくすりと笑うサラにつられて八雲も微笑む。
そして、またそのまま静かに桜を見上げる二人。
静寂の中、夏のそれにはまだ低く、けれど冬のそれよりは高い空を背に舞い落ちる桜。
緩やかに時間だけが流れていく。
482 :
Days:04/04/08 18:53 ID:DSxhjImQ
「――八雲?」
どのくらいそうしていたか、いつのまにか自分の肩に身を預けるような格好になっている
八雲に気がつき、声をかけるサラ。
「……八雲らしいね、ホントに」
すっかり寝入ってしまっているその姿に、優しげな笑みを浮かべる。
「伊織もそう思うよね?」
いつのまにやらそこにいて、同意を求められた黒猫は、いつも通りの無愛想な様子でちらと
サラの方を向いてから――
「――あ」
その膝の上に飛び乗ると、そこが自分の場所だと言わんばかりに丸くなる。
「初めてだね、触らせてくれたの」
言いながら背中をなでるその手にも嫌がる素振り一つ見せない伊織。本当に眠ってしまった
のか、それともただの狸寝入りか。
「どっちでもいい、か」
陽溜りの中、こうしているのはなんだかとても幸せな気分がして、微笑むサラ。
「うん、来てよかったな」
その呟きを包み込むように。
穏やかな春の風に吹かれて、白い花が緩やかに青空を舞った。
483 :
Days:04/04/08 18:55 ID:DSxhjImQ
……これで40、と(謎
満開の花の下、オールキャストで大宴会――というのは誰かにお任せするとして、とかなんとか。
腹黒くないサラを応援しています。
いや本当に。
気がついたらSSたくさんキテル━━━(゚∀゚)━━━ッ!!!
どれもレベルが高くて凄いですね
>>483 こういうほのぼのな雰囲気は大好きです
やっぱりサラは純粋なキャラが良いですよね
けど腹黒いサラも好(ry
あの騒動から数日。
播磨は登校してこなかった。
(会えないんじゃ、謝る事が出来ないじゃない)
愛理は苛立っていた。
友人たちに急かされ、謝る事を決意した愛理。
保健室で見た光景は、保健の先生が、播磨に抱きついていた場面だった。
なぜか、ウワサは事実とは異なって流れていた。
播磨が先生を襲ったというのだ。
(ウワサなんて気にしないで、学校に来ればいいのに…)
(本当の事なら、あたしが皆に言ってもいいのに)
(なんで来ないのよ、あのバカ…)
そんな事を思っている愛理に晶が言った。
「行動しなきゃ、なにも始まらないよ」
「な、なんのこと?」
「さあ?」
「―――っ」真っ赤になる愛理。
「わ、わかったわよ いってくるわよ!」
愛理は播磨に会いに行く決意をした。
播磨宅前。
ドアの前で、愛理は逡巡していた。
(なんて声をかけよう…)
(べ、別にあいつが心配で来たんじゃないものね)
(そうよね、一言謝ればいいのよ!)
よしとチャイムを押す。
「はーい」と、若い女性の返事がした。
(あれ? お姉さんいたっけ?)
ドアを開けたて出てきたのは、絃子だった。
「え? 刑部先生? ここ、播磨君ちじゃ?」
混乱する愛理に絃子は立ち話もなんだからと、部屋に招きいれた。
「ま、お茶でも飲んで落ち着け 話はそれからだ」
絃子はカモミールティーを愛理に淹れてくれた。
「――拳児君の事でなにかあるのかい?」
「け、拳児君って…先生はいったい…」
「ああ、悪い。 彼は私の同居人で、イトコでもあるんだよ」
「そ、そうだったんですか…」
胸をなでおろす愛理に絃子は続ける。
「折角来てくれて申し訳ないんだが、拳児君はココにはいないんだよ」
「じ、じゃあ何処にいるんですか?」
「たぶん、動物園だろうな」
「動物園…ですか?」
意外な気がした。
絃子の説明によると、播磨には動物と意思の疎通が出来るという。
そんな馬鹿なと思う愛理に絃子は言った。
「百聞は一見にしかずと言うじゃないか。 自分の目で確かめてごらん」
半信半疑で動物園に来た愛理。 播磨を探す。
「あ、いた…」
播磨はキリンに話し掛けていた。
キリンは、播磨に甘えるような仕草をしていた。
(本当だったんだ…すごい…)
愛理は播磨に近づいていった。
「なあ、ピョートル。 俺、どうしたらいいのかな」
「?」首をかしげるピョートル。
「学校、辞めちまおうかな…」
「ダメ!」愛理は怒鳴った。
「そんなの許さないわよ! どうして辞めるなんて言うのよ!」一気にまくし立てる愛理。
「お、お嬢? どうしてここに…」
「そんなの、どうだっていいじゃない! 辞めちゃダメ! 辞めちゃ…辞めちゃダメだよぉ……」
愛理は、涙声になっていた。
「播磨君、私が皆に説明するから! アンタは無実だって!
だから、だから学校を辞めるなんて言わないで!」
播磨は愛理をそっと抱きしめた。
腕の中で泣きじゃくる愛理にわかった、辞めねえという播磨。
「ほんと? 本当に辞めない?」
「ああ、約束するぜ」
夕暮れの動物園。 抱き合う二人をピョートルが優しく見守っていた。
初めて旗派ネタをやってみました。 むずかしいですね、この二人。
(´・ω・`)
某ニュース見てたら随分時間かかっちゃいました。よそ見してたらダメですね。
そして怒涛のSSラッシュ。はらしょー、スンバラスィ
何か自分のが恥ずかしいのでこっそり置いておきます。旗分で被っちゃいますけど
昨日投下した分の続きではなく、それ以前の事。播磨が天満ちゃんにフラれる話――。
ちょっぴり自惚れてた僕も、ついにフラれた
いい事ばっかある訳ないよ、それでこそ my life
恋の終わりは驚くほどあっけなかった。下駄箱のラヴレター、校舎の屋上。
覚悟を決めて、準備は万端。完璧な作戦――。そう、完璧だったはずだ。
「……ごめんなさい」
その、たった一言で、俺の努力は木っ端微塵に砕け散った。
彼女には好きな人が居る。んなこたぁ、とっくの昔にわかってたさ。
それでも、俺に気づいて欲しかった。ただ、俺だけのことを見て欲しかった。
けど、現実ってヤツは厳しい。俺は彼女を振り向かせることが出来なかった。……出来なかったんだよ。
彼女は優しい。とても。馬鹿で、阿呆で、どうしょうもない、こんな惨めな俺を慰めてくれたんだ。
泣ける話だろう?少し悲しそうに微笑んでさ。『きっといい娘が見つかるよ』なんて。
お前以外に居るかってぇの。お前しか見てなかったんだから。
今は、それが苦しい。何か疲れちまった。もう、わけがわからねぇ。
ちっ、雲も無いのに雨が降ってやがる。天気雨かよ、チクショウ……
――――――――――――。
「なんて顔してんのよ、まったく。見てるこっちがイライラするわ」
雨に打たれ、風に吹かれ、波に飲まれても――
「お父様にカレー作ってあげたんだけど、余っちゃったから。あなたにご馳走してあげるわ」
自惚れたり、落ち込んだり、おだて上げられて――
「カレー、好きって言ってたでしょ?だから、その……つ、ついでよ!そう、ついでなんだからね!」
ドラマみたいな旨い話は滅多に無いけれど――
「男ならシャキっとしなさい!ほら、行くわよ」
その日、食ったカレーはやたらしょっぱかった。でも、今まで食ったどんなカレーより、美味かった。
――それでも my life
fin
BGM 『my life』 by Mr.children
以上、短く。Replay書いてるときから頭の中にありました。ちょっとやってみたかったんだよぅ・・・
前半と後半で空中分解してる気がしますが皆さんの妄想力で何とかして下さい(´・ω・`)
ラヴ分も足りないかも知れません。力量不足です。ヘタレでスマソ
旗分連続したので次は気分を変えて違うの行ってみようかなー。もっと自由に書いてみたいと思います
それではっ
SSたくさんキテルー(・∀・)
どれもレベル高くて本当に凄いです
やっぱり旗はいいなぁ(;´Д`)ハァハァ
あらすじ:播磨とお姉さんとの一件で緊急職員会議が開かれている間の美術室での絃子と笹倉がした会話の続きです。
「ところでこれ何の絵なんですか?」
笹倉は絃子の後ろからひょいと覗く。
元々は笹倉が描いた小さな家の絵であった。今は絃子によって雲一つない空に輝く太陽、家の横には大人と子供が付け加えられている。正直に言って絃子はそんなに絵心はないようだ。
それよりも笹倉が気になるのは子供の絵である。よく見るとサングラスをかけているようにも――――――
「あ、この絵ってもしかして……」
「ふふふ……」
絃子は自嘲気味に笑う。
「このサングラスをかけているのはあなたの従弟の播磨拳児君、隣にいる白い服を着ているのは刑部先生、あなた自身ね。」
「ああ……」
「播磨君があなたより小さく描かれているのは、あなたにとっては今でも頼りなくてそれでいて愛しいから……」
その言葉を絃子は表情と目線で肯定する。
「そして、この小さな家は2人の棲家……雲一つない青空と太陽は2人の生活を象徴しているのかしら?それとも、これからの理想?」
「さあ、どっちかな……どちらとも言えるというのが答えかな……」
絃子は絵を見つめたまま嬉しそうなそれでいて寂しそうな表情で応えた。そして笹倉のほうを振り返った。
「笑うかい?」
「いいえ……とても笑えないわ。だけど……」
笹倉は微笑を湛えそっと首を振る。が、何かに気付いたようにくすくすと笑い出した。
「ふふふ……いつまでたっても……素直じゃないところと健気なところだけは変わらないんですね。」
「君のそういう遠まわしに優しいところも変わっていないよ。」
2人は顔を合わせてクスクスと笑った。それはまるで“school rumble”していたあのころにに戻ったような無邪気な笑顔で――――――
今週号の1ページ目の絃子の絵。
自分は絃子の健気さに涙が出てしまいました。
>>476-478 いいですね。
>>480-482 こういう激しい展開のない話で最後まで読ませるのは高度な技術だと思うのですよ。
いいです。
>>485-487 途中までは良かったけど最後だけ急展開過ぎてついてけなかった。
個人的に歌ネタはつまらないです。
元ネタ知らんとおもろないし、元ネタ知っているとイメージの違いとかあったり、無理矢理
内容あわせんなよとか思ったり。
あと本編の数年後ネタもSS作者の妄想入り過ぎで萎える。
エピローグ的に匂わせる程度に使うんならともかく、メインで設定とか状況改変しまくりで
やられると完全オリジナルSSとなんら変わらなくなる気がするんだがなあ。
まあ一読者の勝手な意見なんで無視して続けて下さい。
放課後の茶道部部室。その部屋からは今日も楽しい会話が繰り広げられていた。
「それでですね部長、八雲ったら先週の日曜日も播磨先輩とデートしてたんですよ。」
「サラ、それは違う……先輩とは一緒に動物園に行って来ただけで……」
「あら、それは立派なデートよ塚本さん。」
「高野先輩まで……」
今日も茶道部女子部員である晶、サラ、八雲は楽しい会話を繰り広げている。
話の内容は他愛も無い恋愛話。どうやら今日の被害者は八雲のようだ。
「ふふっ八雲ったら照れちゃって可愛い。」
八雲は顔を紅潮させて必死に違うと首を振るっている。
そんな中、晶はは思い出したかのように手をポンと叩いた。
「そういえばこの頃、花井君塚本さんに会いに来ないね。塚本さん、もしかして彼と何かあった?」
そういえば、とサラも頷いた。
「あの…特に何も無いと思います…。」
ふーんと頷く晶にサラは話題を晶の方に向けた。
「ところで、部長には付き合ってる人っているんですか?」
「あら、ずいぶんと突然ね。どうしてまたそんな事を聞くのかしら?」
「だって部長いつも恋愛の話になると他の人に話させるだけで自分は話さないじゃないですか。」
「そうだったかしら?」
とぼける晶。八雲も、言われてみれば、という顔をしている。
「そうですよ。だ・か・ら・たまには部長の恋愛話を聞いてみたいな〜って。ねっ、八雲も聞いてみたいよね。」
「えっ……あ、あの……ハイ。」
そういうと二人とも熱い視線を晶の方に向ける。どうやら何か大きな期待をしているようだ。
二人の熱い視線を受けた晶はどうやら今回は諦めるしかないみたいだと悟った。
「まったく…しょうがないわね。」
「ふふっありがとうございます部長。じゃあさっきの続きです。部長には付き合ってる人は…」
「いないわ。」
いつもと変わらないクールな表情で即答した。
しかしサラは負けじと質問を続ける。
「じゃあ好きな人はいるんですか?」
「それならいるわよ。」
意外な答えが返ってきたので二人は驚きの表情を見せた。
「もう…その……告白はしたんですか?」
「全然。」
「え〜なんでですか?」
「彼には他に好きな人がいるから。」
「「えっ、」」
不味い事を聞いてしまったかなと二人は同時にそう思った。
そんな二人を見た晶は別にいいわと話を続けた。
「それに私って不器用だから好きな人に優しく出来ないで逆にイジメちゃうのよ。だから余計に言いづらくてね。」
「へぇ〜そうなんですか。」
晶の意外な一面を聞いて二人は感嘆の声をあげた。
晶は少し喋り過ぎたかなとバツの悪い表情を一瞬だけ浮かべた。
「あの…先輩…それで先輩の好きな人って誰なんですか?」
「秘密。」
「じゃあどんな人なんですか?」
どうやらさっきの話が二人に火をつけてしまったらしい二人は積極的に晶に詰め寄って質問してくる
その目は興味津々と言った感じだ。ふうっ、とため息を一つつく。どうやら今ので本当に観念したようだ。
「そうね……一言で言うなら『色ボケでおせっかいでバカでいつも騒がしい人』かな。」
「えっ、それって…」
「でも……」
個人的には本編の数年後ネタは激しく好きなんでどんどんやって欲しい
晶が何か言いかけた時、「失礼する。」という言葉と共にガラガラガラと部室のドアが勢いよく開いた。
ドアを開けたのは本来この部屋に立ち入り禁止の男、花井春樹であった。
「む、八雲君……」
「花井先輩……」
いつもなら真っ先に八雲にちょっかいを出す花井だが何のアクションも起こさない。
むしろなにかばつが悪いようにすら見える。
「あら、花井君、また塚本さんにちょっかい出しに来たの?」
晶はいつもどおりイヤミ全開で花井に尋ねた。が、返ってきたのは意外な答えだった。
「ん…いや今日は高野に話があってきたんだ。」
「私に?」
サラは何か思いついたように「あっ」と声を上げ鞄を手にとった。
「なんだかお邪魔になりそうですね。部長、私と八雲はもう帰りますね。行こっ八雲。」
「あっ、待ってサラ……。それじゃ高野先輩、花井先輩失礼します。」
「あ…うむ。」
そういって二人は軽く会釈をして部屋を出て行く。
その時、晶は八雲に向いた花井の視線が何故か儚げなものに見えた。
「ぼーっとしてどうしたの花井君。私に用があるんじゃないの?」
「あ…うむ、実はだな来週の体育祭の事なんだが、高野にリレーに出てほしいんだ。」
「なんで私なの?大体、リレーのメンバーはもう決まっているはずでしょう?」
「うむ、実は円君が足を捻挫してしまってリレーに出れそうに無いと言ってきたんだ。そこで、クラスの女子の中で足の早い者を周防と沢近君に聞いたら高野の名前が出てきたというわけだ。」
晶は「そう。」と呟いて紅茶に口をつける。
「お願いだ高野、リレーに出て2−Cを共に優勝に導こうではないか!」
やる気マンマンの花井を見て晶は疲れたような表情をを見せる。が、
「そうね出ても良いけど条件があるわ。」
それは直ぐに悪魔のような微笑に変わった。彼女の出す独特の雰囲気に花井は負けそうになったがここで引く訳には行かないと、何とか反撃を試みた。
「くっ、いいだろう何でも言ってくれ!」
じゃあ…と右手を顎をかかえて思考をめぐらせるポーズを取る。
今度はどんな方法で花井を困らせてやろうかと考えると口元が緩む。
どうやら何かいい案が浮かんだようだ
「そうね…『花井君が八雲から身をひく』なんてどうかしら?」
「なっ!」と驚きの声を上げる花井とは対照的に晶は「ふふっ」と意地の悪い笑顔を浮かべていた。
「(さぁ、頭を抱えて悩む姿でも見せてもらおうかしらね。もっとも彼が出す答えは決まっているのだけれども。)」
と、晶は思って花井の姿を見る。がそこには下を向いて暗い表情を見せている花井の姿があった。
なにやら様子がおかしい。と思って声を掛けようとした瞬間、意外な答えが彼の口から語られた。
「……分かった。」
その言葉を聞いた瞬間、晶の頭は混乱した。今、彼は何と言ったのだ?「わかった。」と言ったのか?
なんでそう答えるのだ?ありえない答えが返ってきて晶は戸惑った。だってそうだろう、いつもの彼なら
「そんな条件がのめるか!」とか「そんな事で僕が八雲君から身をひくはずが無いだろ高野」
とか言うはずなのに。なんで……
戸惑う晶をよそに花井は話を続けた。
「……僕はおとなしく八雲君から身をひく……その代わりリレーには出てもらうからな高野。」
そう言った彼の言葉にはいつもの様な力強さは無かった。花井はそのまま落ち込んだように下を向きながらとぼとぼと足を出口に向かって歩き始めた。そこで晶ははっと我に帰った。
「待って花井君。あなた本当にそれでいいの?」
そう言われて花井の足が止まる。
「……が無いだろ……」
花井は下を向きながら小さく呟く。えっ?と晶が聞き返すと
「それでいいはずが無いだろ!」
と下を向きながら吼えた。晶はビクッと体を震わせた。
しかしいつもの冷静さを取り戻すのにはそんなに時間はかからなかった。
「じゃあなんで…」
「言い出したのはお前だろう。」
「確かにそうね…でもまさかこんな答えが返ってくるなんて思ってもみなかったから…」
花井は晶に背を向けてどこか遠くを見つめるかの様にして話を続けた。
「僕だって自分の事ぐらいは少しは分かっているさ。八雲君が僕の事をどう思ってるかもね……」
ハハッと力なく空笑いをする。そんな彼の背中はいつもと違って小さく見えた。
「それに……八雲君には僕がいなくてもアイツがいる……悔しい事だが八雲君が必要としているのは僕では無くアイツなんだ。僕はアイツの代わりにはなれない…だから……」
花井の脳裏に屋上で楽しく恥ずかしそうに話していた八雲とアイツの姿が思い浮かぶ。
「だから僕は潔く身をひこうと思う…それが八雲君のためになるならば。」
「そう、最近八雲にちょっかい出してないと思ったらそんな事考えてたのね。」
そう言うと晶は席を立ち花井の正面に立った。
「分かったわ。なら約束どうり私はリレーにでるわ。でも、」
下を向いていた花井が顔を上げる。
「その前に一言だけ言わせてもらうわ…今のあなた凄くカッコ悪いわ。」
その言葉に花井は身を振るわせた。
「あなたまだ何もしていないのに自分じゃダメだなんて勝手に決めつけて下を向いて、卑怯にも他人の言葉を利用して自分を無理やり納得させようとしてる!」
晶は珍しく声を上げて花井に語りかけた。
「それで好きな人の事を諦るなんていつもの花井君らしくないんじゃないの。それとも花井君の思いはその程度だったの?」
「…僕らしく…」
「少なくとも私の知っている花井君はたとえそれがどんなに困難な事でも最後まで諦めない強い人だと思ってたけど……どうやら違うみたいね。」
「……僕は……」
花井はぎゅっ!と拳を握り締めた。
「最後にもう一度だけ聞くわ。あなた本当にそれでいいのね?」
「高野………」
晶は花井の目を真剣に見つめる。そして花井もそれに答えるかのように見つめ返す。
「高野…スマン!さっき言った言葉は忘れてくれ!」
顔の前で手を合わせて頭を下げた。
「高野の言ったとおりだ。僕はまだ何もしちゃいない!それなのに勝手に駄目だと決め込んで彼女の事を諦めようとしていた……そんなの僕らしくないよな。」
「だから僕は僕の思いが伝わるように最後まで諦めない!」
「そう、それじゃあ八雲がかわいそうね。」
「そんな事は無いさ、ハッハッハ!」
いつもの軽口を言い合う2人。もう、大丈夫なようだ。
「ありがとう高野。高野のおかげで僕は自分を取り戻せた気がする。」
「そう、良かったわね。」
「でも、なんで今回に限って僕の……」
「別に…ただ貴方がそんな調子じゃこっちの調子まで狂っちゃうから、『しょうがなく』よ、それにいつまでも私の前で辛気臭い顔されたらこっちがたまらないわ。」
「そっか。」
「そうよ。」
花井は多分これが彼女なりの優しさの照れ隠しなんだなと見抜いた。
そして心の中でもう一度感謝した。
「じゃあ、私は帰るわね。」
そういって鞄を持って帰ろうとすると花井が両手を広げて晶の行く手を阻んだ。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ高野。」
「何?」
「リレーの話だ。さっき言った通り高野が言った条件は飲めない。でも、僕は高野にはリレーに出てもらいたい。それに僕自身何だか高野と一緒に走ってみたくなってな。」
「だったらどうするつもりなの?」
「さっきのお礼を込めて僕にできる事なら何でもやらせてくれ。もちろん先程の条件以外でな。」
そう言った花井の目にはもう、曇りは無かった。
「何でも?」
「あ、ああっ。何でもだ。」
「ふ〜ん。じゃあ……」
悪戯そうな顔をする晶に花井は自分の言った事を少し後悔した………
「なぁ、本当にこれで良いのか高野?」
「ええ。それとももっと別のほうが良かった?例えば…」
「イエ、イイデス。」
公園のベンチに座っている一組のカップル。男の横には大量の荷物が置かれていた。
晶があの時出した条件それは「今度の日曜、私に付き合ってもらう。」であった。
そのため花井は朝から色々な所を回らされ荷物持ちをさせられていてやっと休憩にありつけたのだが……
「午後からは商店街の方を見て、一旦家に帰ってから映画を見に行くわ。もちろんオゴリでね。」
どうやらまだまだくたびれそうだ。。
「(でも、コイツといると不思議と疲れないんだよな。そうだ…)なぁ高野。」
「何?」
「高野…この前は本当にありがとう。」
「別にいいわよそんなに気にしなくても。」
「それでだ高野、話に聞けば何やら好きな人がいるそうじゃないか。」
晶はビクッ!と驚いて持っていたジュースをこぼしそうになった。
そしてすぐさま冷静な思考を張り巡らせ答えを導き出した。
「……サラね。」
「ウム。高野に恩を返したいと思ってサラ君に聞いてみたら
『じゃあ、恩は恩で返すという事で、今度は先輩が部長の恋を応援してあげたらどうですか?』
と言われてな。」
やっぱりと、晶はため息をついた。してやられたわね。
「だから高野の恋を応援させてくれ!」
「遠慮するわ。」
「そんな事を言わずになんでも相談してくれ高野!」
「いいわよ。それにサラから聞いた通り私、思いを伝えるのが下手だから…」
そう言いきる前に花井に両肩をガシッと掴まれ言葉を遮られる。
「例え下手でも思いは伝えた方が言いに決まってる!最後まで諦めちゃ駄目だ!そうだろ高野?」
「……そうね。」
「だから僕にその手伝いをさせてくれないか?」
「好きにすれば…」
晶はプイと横を向いたが。花井はそれを了承と受け取り話を進めた。
「ところで、どんな奴なんだ。」
そう言われて、晶は花井の顔を真剣に見つめて話し掛けた。
「そうね…『色ボケでおせっかいでバカでいつも騒がしい人』でも…」
「でも?」
「でも…『いつも素直で正直でどんなにつらい時でも明るく笑っている強くて優しい人』よ。」
そう言った晶は優しく微笑んでいた。その笑みはそう、まるで天使が微笑んだかのような錯覚すら花井に感じさせた。いつしか花井は初めて見る高野晶の本当の笑顔に見とれてしまった。気づかないうちに顔は赤くなり胸の鼓動も速度を上げていった。そう、この感じはまるで……
「どうしたの花井君?」
その言葉に花井はハッと我を取り戻した。
「イ、イヤ何でもない。ハハハハ。そ、それにしてもそんな風に高野に思われてる奴が羨ましいなぁ。なんて」
そう言って花井が晶の方を見ると先程とは一変して不機嫌な様子が伺えた。もしかして何か気に触るようなことでもししたのかな〜と。心配になった花井に晶がいつも通りのクールな表情を見せた。いつもと同じはずなのに何故か怖いと感じられる怒りと圧迫感が感じられた。
「あ、あの…高野……サン?」
「そう言えば彼について言い忘れた事が一つだけあったわ。」
「へ?」
「『鈍感』」
そう言うと晶はベンチから席を立って歩き始めた。
「お、おい、まてよ高野。」
花井は何がなんだかわからないまま荷物を持って慌てて席を立って晶の後を追っていく。
曇り空一つない秋の青空の下ずっと……。
というわけで晶→花井でした。今のトコ好きな相手が不明な晶ですが
花井とのからみが好きなのでくっついたら面白いんじゃないかなと思って書き始めました。
そしたら話が長くてぐだぐだな上に晶が別人の様になってしまったのでいろいろ反省です。
次は短く綺麗に纏められるようにしたいなと思います。
509 :
Classical名無しさん:04/04/09 17:17 ID:wSBQUupw
オレもその一人だってのはここだけの秘密だ。
510 :
Classical名無しさん:04/04/09 17:18 ID:wSBQUupw
誤爆スマソ
コードで吊って逝きます
>497
根拠のある指摘はありがたいですょ。だもんで無視はしません
歌ネタについて
ご指摘のとおり、曲を知らなかったり読者のイメージとのズレは理解して書きました
元々、曲をテーマにして書いてみよう、というのが目的だったので、
コレに関しては目をつぶってやってます。あくまで自分が書きたかったから、なので
まぁ、自己満足の世界ですね
数年後ネタについて
私自身、こういう書き方が好ましいか否か、と問われると、あまり好ましくないんじゃないかと思います
原作のイメージを破壊する恐れがありますし。仰るとおり作者の妄想入りまくりですから
ただ、先にも書いたとおり、曲をテーマにするというのを最優先にしましたので。ご理解頂きたい
以上2点とも、私のわがままですがw
一連の作品は私個人も実験的に書きました。けっこう手探りだったので評価は気になります
面白いと言ってくれる人も居れば、つまらないと言う人も居る。人の好みは様々ということで
万人を満足させるのは難しいですなぁ。精進します
続いてしまいますが
私はプロじゃないし、好きで書いてます
だからまぁ、どう言われようと深刻に捉えるつもりはありません
けど、やっぱ、面白い、って言われれば嬉しいし、
つまらない、って言われれば凹みますw
読者が居て、見てもらってナンボのSSですから
ノーリアクションてのは寂しいです。まぁ、嫌いだからスルーするってのはアリでしょうが
ダメ出しも歓迎です。ただ、こうすれば良くなるとか、やんわり言って欲しいなぁ、と
気弱な私(´・ω・`)ヤサシクシテネ
とりあえず今後のこと
今日はお休みして、ちとネタを練り直してみようと思います
次は普通に書いてみようかな、と。実際、テーマを絞ると縛りが多いので大変だったり
歌ネタはタイトルの部分でだけ踏襲させて下さいな。好きなんですよ
何はともあれ生暖かく見守って下さると嬉しいです
それではこれにて。お邪魔しました
>>508 お疲れ様でした。
晶の動揺する姿が印象深いですね。
あと、文章は適当なところで読点を打った方が読みやすいのではないかと思います。
次回も期待してます。
>>512 旗を書くのは難しいですよね。
自分も旗は一作だけです。沢近の性格のいじりかげんが難しい……。
がんばりましょう、お互いに。
長かった…
サイズもテキストで40kb越え。
一気に行きます。内容的には♭+王道ということで。
画材というものは思っていたよりも高かった。
慰みに書き始めた漫画に私財をつっこむのは、自分でもどうかしているとは思う。
ましてや常に貧困にあえぐ苦学生の身であるというのにだ。
やらねばならないことはあるし、このまま描き続けるつもりなのかも分からない。
最近は自分でもどうして漫画を描いているのかと自問してしまう。
だが、面白いと言ってくれる人がいる。
才があるといってくれる人がいる。
ならばもう少し描き続けてもいい。
自答は決まってそれに落ち着く。
画材を専門的に扱う店、そのバーゲンセールのトーンを睨みながらそこまで考え終わると
いくつか見繕ったものと消耗品を手に彼はレジで会計を済ませた。
長身で筋骨も隆々、いかにも不良のレッテルを貼られている風貌でドアからくぐってきた男。
播磨拳児はぐずつく曇天をサングラス越しに見上げた。
(チッ、こりゃ一雨降ってきそうだゼ)
店にはいるまでは割と天気は良かったはずだと思い返す。
つまり自分はそれだけ長時間、店にいたということだろうか?
店に入った時間など確認していないが、滞在時間は精々十五分から三十分といったところだろう。
ポケットから携帯電話をとりだし時刻を確認してみる。
(やっぱ、そんぐらいだな。しゃーね、さっさと帰るか)
家を出たときの天気から傘を持っていない拳児は、そう判断すると少々早足で帰路についた。
住宅街はこの天気を見てか、洗濯物なども見られず行き交う人も少ない。
歩いている人たちもいるにはいるが、皆どこか急ぎ足のように見える。
暗雲といえるまでに日を遮り始めた雲は今にも落ちてきそうな気配だ。
紙袋を片手に歩く拳児もその例に漏れずそそくさと道を行く。
そこで突然、くっと抵抗を感じた。
まるで枝に服が引っかかったかのように後ろに引っ張られる。
「おっ」
疑問に思いながら拳児は振り返った。
(………………)
だが、振り返ったその先には何もない。
服が引っかかるような突起物も、漫画のように誰かが引っかけた釣り針や糸も存在しない。
(……気のせいか?)
腑には落ちないが、ないものはない。
拳児は気を取り直して再び歩き出す。
くいっ
足を止める。
再度振り返ってみる。
やはり何もない。
(そういや、最近徹夜を続けたりしたなー)
インスピレーションに任せて書き殴った自分の漫画を思い出す。
そのせいで疲れでも溜まっているのだろうか、どうにもさっきから視線も感じている。
その場で一つ深呼吸をする。
うし、と一息つくと拳児は帰投を再開した。
くいっ
(………………)
僅かに感じる抵抗と視線。
それは無視できないものではない程度の微弱さだ。
拳児は振り返ることもなく、歩み続けた。
くいっ
(………………)
くいっ
(………………)
くいっ
「だぁぁぁっ!」
辛抱と無視の限界を超えた拳児はその場で急反転、フィギアスケートも真っ青な高速回転を
してみせた。
しかし目の前にはやはり何もない。
歩いてきた道が繁華街へと続いているだけだ。
いや、違う。
目の前には確かにないが、腰のあたりに何かいる。
黒髪に褐色の肌、黒いワンピースにスパッツ、目鼻立ちは整っているが前髪が少々長い女の子。
そんな全身真っ黒な女の子がチョットおびえた表情でこちらを窺っている。
「……あー、さっきから引っ張っていたのはオマエか?」
「……(コクリ」
「………………」
当然だが見覚えのない子供だ。
年の頃は弟の修治に近いとは思うが、言うまでもなく拳児にそんな知り合いなどいない。
「で、何の用だ、嬢ちゃん」
「………………」
よく見れば、顔の造形が日本人離れしている。どちらかといえばあの金髪女、沢近愛理のような
欧米型の顔作りだ。手荷物も見あたらない、空手のようだ。
表情はよく見えないが先程の怯えているような、驚いたような気配は既にかき消されている。
しばらく待ってみたが、女の子はいっこうに喋り出す気配がない。
やれやれと頭を掻きながら、女の子に目線を合わせるため拳児はしゃがみ込んだ。
「迷子か?誰かとはぐれたのか?」
「……(フルフル」
「んじゃ、友達の家でも行くのか?それで道が分かんなくなったとか」
「……(フルフル」
どうにも要領を得ない。
あれやこれやとこちらから質問しても、答えは全部「NO」または「?」
かといって具体的に聞くと口を閉ざして喋ろうとしない。
そのくせ彼女の顔は拳児に向けられたまま、反らさない。
元々我慢強い方ではない拳児はついに切れた。
「うがぁぁ!いい加減何か喋れ!それとも何か?喋れねーとでも言うのか!?」
その怒声に一瞬ビクッとするものの女の子は、暫し間をおき
「……(コクリ」
しっかりと頷いた。
挑発じみた大声は、発した本人も予想外の肯定を得ていた。
てっきり怯えて逃げ出すかも、と考えてた拳児には、それこそ声も出なくなるような結果だ。
しかし、この肯いはまた納得できるものでもあった。
こちらからの質問には是か非か、はたまた疑問符を浮かべるしかしなかった女の子。
その理由が口が利けないことにあるというのなら理解できる。
「わりぃ、悪気はなかった。……怒鳴っちまってすまねーな」
「……(フルフル」
幸い女の子は気を悪くしていないようだ。
女という生き物はとりわけ扱いが難しい、と日々痛感させられている拳児にとって
この場で泣き崩れられるようなことになれば、一体どう繕えばいいのか悲嘆にくれてしまうだろう。
(しっかし、どーすっかなーこの状況……)
道には自分と腰元の女の子、二人だけ。
頭上で停滞している雨雲は進行形で濃度増加中。
意志の疎通は一方通行。
そして、何故か女の子は未だ自分の服を掴み、離していなかった。
数多の選択肢が脳裏を駆けぬける。拳児はその中で最も妥当なものを選んだ。
「いいか、嬢ちゃん。この道を真っ直ぐ行ったところに交番がある。わかるか?お巡りさんだ。
そこに行けば嬢ちゃんの悩みも解決する。なんてったって国家公務員だからな。いや、地方公務員
になるのか?ま、どっちでもいい。とにかく向こうへ行けばオールOKだ」
掴んでいた手を離させて、女の子を180度方向転換させる。
何かもの言いたげな表情でこちらを見つめる女の子をよそに、拳児は話を進めていく。
「雲行きも何か怪しいし、急いだ方がいいぞ。俺も帰るしな」
「………………」
話し終えた空間に漂うものは(当然といえばそうだが)沈黙だった。
拳児の言っていることを理解はしているようだが、その言に対する同意はない。
女の子は一向に動き出す気配がなかった。
「……じゃ、俺は行くぞ」
短くそう言い残し、拳児は歩き出した。
もう、服に抵抗感は感じない。
視線は感じるものの、そこの角を曲がればそれも解決するだろう。
背後に動く気配は感じられない。おそらくこちらをじっと凝視しているのだろう。
それが気にならないと言えば嘘になるが、これ以上他人である自分がとやかく言うことでもない。
拳児はそう自分に言い聞かせ、これまでのように足早に帰途に戻った。
我が家がそろそろ視界に入るかというところで、ぽたりと冷たい感触が頬を伝った。
思わず空を睨みつける拳児。
(くそっ、振ってきやがった……)
ぽたり、ぽたりと落ちてくる雫は大した時を経ずしてその量を増やしていく。
買ってきた画材を懐に忍ばせ、拳児は走り出した。
せっかくなけなしの金で買ってきたというのに、雨でおじゃんはあんまりだ。
自然現象に悪態をついても仕方がないが、間の悪い降水に怒りをぶつけずにはいられない。
リズミカルな呼吸で四肢を動かし、足音に水気が含まれる寸前で拳児はマンションへ到着した。
「ふー、もう少し早く降り始めていたらやばかったな」
画材を懐から取り出し、濡れていないことを確認すると、拳児は鍵を開け玄関戸をくぐった。
自室に紙袋を置き、雨に濡れた衣類を変えるため箪笥から適当に服を見繕う。
ぱたんと箪笥を閉じ脱衣所へ向かおうとする拳児に、しかし強い抵抗感。
「おっ」
体を後ろに引っ張られる、その感覚の原因は箪笥に挟まっている服の裾だった。
箪笥を再び開けながら、ふっと先程の女の子を思い出す。
(……まさか、もうあそこにいるわけねーよな)
外は既に結構な雨だ。天気予報などで言えば強い雨と言われる程度に降っている。
あの場所から動いていなければ当然びしょ濡れだろう。
加えて雨は止む気配がない。
おそらくこれから一両日中、短くとも明日までは降り続けるに違いない。
(………………)
着替えを片手にぼうっと窓の外を見ながら、拳児は物思いに耽っていた。
自分が彼女に言ったことは正しい。
交番は存在するし、仮に駐在していなくても雨を凌ぐことはできるだろう。
それに自分以外にも誰か他の人が気にかけるかもしれない。
客観的に考えても自分の行動は一般的で、公序良俗に反していることはない。
「……それがなんだってんだよ、俺は…不良だぜ。くだらねぇ、何がコウジョリョウゾクだ。
気になるなら見に行けばいい。それだけだ」
自らにそう言い聞かせるように一人ごちると手に持つ着替えをベッドに投げ捨て
拳児は玄関へと向かった。
自らの傘を持ち、鍵をかけることもなくマンションを後にする。
ぴちゃ、ぴちゃと足音を立てて歩く人影は己のみ。
動くものは他に見えない。驚いたことに車一台も通らない。
黙々と拳児は目的地へ邁進していった。
だが、そこには誰もいなかった。
あの女の子と出会った道はざーざーと雨が降りしきるのみ。
人影どころか猫の子一匹として見あたらない。
「……帰るか」
くるりときびすを返し、拳児はやって来た道を戻り始めた。
不思議と気分はそんなに悪くない。
もやもやとしていた気持ちが無くなったからだろうか。
予想通り道路には誰もいなかった、そう結論づけられる事実が確認できたことが重要なのだ。
拳児はそう思うことにした。
くいっ
ぴたり、と足が止まる。
この控えめながらも意志を感じさせる引っ張り方は、今のところ一つしか思い当たらない。
ゆっくりと振り返る。
果たしてそこには、頭のてっぺんからつま先まで水浸しの女の子の姿があった。
「………………」
じっとこちらを見つめてくる瞳は真摯だ。
怒りも喜びも悲しみも、その双眸からは感じられない。
「ずっと、ここにいたのか?」
「………(コクリ」
疑う余地はなかった。
ずぶ濡れの格好は少し前から地を潤すこの雨のせいだろうし――
「交番には行かなかったのか……」
「………(コクリ」
――なにより拳児自身も薄々感じていたことだ。
あの女の子はずっとあそこにいるのではないだろうか、と。
「家は、どこだ?」
「………………」
出会ったときからのコミュニケートで分かったことがある。
彼女には言いたくないことを聞かれたとき、決まって視線を右下へ逸らす癖がある。
今の彼女の視線がそれだ。
「親は?兄弟はいないのか?」
「………………」
端から見れば幼女へ詰問している不審者に見えたかもしれない。
拳児の声色は、お世辞にも柔らかいとは言えないものだからだ。
「………………」
「………………」
はぁ、と誰から見ても分かるほどの大きなため息を拳児はついた。
彼女の頑なさは、今の彼女の状態が明らかにしている。
おそらく交番に連れて行ってもダメだろう。離してくれそうな雰囲気ではない。
「……ウチに、来るか?」
「………(コクリ」
「いっとくが、雨が止むまでだぞ?」
「………(コクリ」
ぼりぼりと頭を掻きながら拳児は女の子に近づいた。
「ほれ、傘に入れ」
ぐいっと女の子の身を寄せる。
抗う力もなく、最初の出会いの時のように彼女は拳児にまとわりついた。
(体が、かなり冷えてやがる……)
服の上からでも分かるほど、彼女の体は冷え切っていた。
無理もない。夏も終わり、秋の訪れを感じる中、長時間とまでは言わないにしろ
雨中で一時濡れ続けたのだ。
これで体が冷たくならない方がどうかしている。
既に二人の足は動き始めていた。
彼女と歩調を合わせるため、歩幅を小さくし速度も落として一緒に歩く。
(帰ったら、まず風呂かな)
相変わらず服の端を掴みながらついてくる女の子を流し見て、拳児はこれからの行動を
頭に描いた。
「ちょっとそこで待ってろ!」
そのまま風呂場へ直行しようと思っていた拳児は、玄関口で女の子を待たせて一人
脱衣所へ急いだ。
彼女は自分が予想していた以上に濡れていた。
それはいい。
これから風呂へ入れるのだから、どの程度濡れていても大差はない。
だが突然体を振り、雨滴をとばして、玄関を水びだしにされるとは思わなかった。
途中で止めなければ、玄関はスプリンクラーでも作動したかのような有様になっていただろう。
目的のバスタオルを掴み、玄関口へ戻った拳児は言いつけ通りぽーっと待っていた彼女に
タオルをかぶせると有無を言わさず、ごしごしと拭き始めた。
「ったく、何で俺がこんな事まで……ほら、後は自分でしろ」
その乱暴な拭い方に文句も言わず(言えないのだが)女の子は渡されたバスタオルで
体を拭き始めた。
靴を脱ぎ、足の先から綺麗に拭いていく姿は、幼いとはいえやはり女の子なんだな
と感心させられる。
「今、風呂沸かしてる。着替えは……乾くまで適当なものを貸してやる」
オマエのサイズに合う物はないけどな、と続く言葉は語尾を途切れる。
理由は目の前にあった。
今まで出会ってから、ろくに感情らしき物を見せなかった彼女だが、ここに来てその瞳と表情に
はっきりと分かるものが浮かび上がる。
それは厭悪。
心なしか手に持っているバスタオルをぎゅっと掴み、自分から距離を取り始めている。
何気なくすぅっと手を挙げると、彼女はびくっと身を緊張させる。
「……どした?俺、何かやったか?」
「………(フルフル」
「……風邪でもひいたのか?」
「………………」
上げた手をそのまま彼女の額へ当てる。驚くほど冷たい。やはり早急に風呂へ入れる必要がある。
しかし、こうやって直に触れても大きなリアクションは無い。
嫌がる素振りもなければ、我慢している様子もない。
先程のアレは何だったんだろうか?
(俺の言葉に反応したような…………着替え、か?)
確かに着る物がないからとはいえ、異性の服を借りるのは少々抵抗があるかもしれない。
逆の立場だったら、拳児は真っ向から異を唱えているだろう。
じっと目の前の女の子を見つめてみる。
女の子は色気づくのが早いというが彼女もそんな年頃なのだろうか?
「あー、服だったらウチには一応女物もある。もちろん、俺のじゃないぞ。俺の従姉妹のだ。
そいつを貸してやる。これで問題ないだろ?」
「………………」
彼女の反応は乏しい。
どうやら服のことではないようだ。
(つーことは…………何なんだ?)
他に思い当たることはない。
強いて上げるとすれば――
「風呂……か」
「――!?」
誰に言うわけでもない呟きだったが、面白いほどに過剰反応する女の子。
腰を引きながら小さく嫌々をする姿は、可愛い物好きの人ならば抱きしめているかもしれない。
「風呂、嫌いなのか?」
「………(コクコクッ」
今度もじっと彼女を見つめてみる。
先程までの彼女とはうって変わって真剣な瞳だ。真に迫っている。
よほど嫌いなのだろうか、流れる蛇口の音にすら反応しているように見える。
「あー、でも風呂入らねーと風邪ひくぞ?」
「………(フルフル」
謎の否定。
彼女の体温が下がっていることは、彼女自身が一番よく分かっていることだろう。
それならば体を温めなくてはいけないこと理解しているはず。
なのに「大丈夫です。問題ありません」と言わんばかりの否定は自信満々だ。
疑問に思う拳児をよそに、てててっと女の子は傍によってくると、おもむろに腰元に
抱きついてきた。
ぴたりと体を密着させ、濡れた服同士を重ね合わせる。
「……何やってんだ?離れろ」
「………………」
「離れろ」
「………………」
ひっついた方の足をぶんぶん振っても一向に離れる様子はない。
それどころか離されまいとますますしっかりと抱きついてくる。
「……まさか、引っ付いていたら暖かい、とか考えてんじゃねーだろーな?」
「………(コクリ」
「………………」
本人は悪気はないのだろう。
むしろグッドアイディアと思っている節がある。
笑みこそ浮かべていないが、その瞳には自身が満ちあふれていた。
だんだんとこういう事には疎い拳児にも、この女の子の扱い方がが見えてきた。
(こいつは甘くしてたらどんどんつけあがるタイプだな)
ならば接し方を変える必要がある。
「じゃ、このまま風呂へ行くかな」
ばっとそれまでしがみついていた拳児の足を突き放し、咄嗟に距離を稼ぐ女の子。
先程までの態度は豹変して瞳に不安の色を織り交ぜ、こちらを見ている。
「……そんなに風呂がイヤか?」
「………(コクコクッ」
「そうか、だったら仕方ねーな……」
ほっと女の子は安堵の気配を漂わせた。
フラットな胸をなで下ろす姿は、これから拳児が行おうとしていることに
少しだけ罪悪感を感じさせる。
とはいえ、他に方法も思い浮かばない。
「仕方ねー……」
そう言いながら拳児は彼女へと近づいていく。
むんずっと襟首を捕まえると、疑問顔の彼女に告げた。
「無理矢理にでも入れる」
「――!?」
その言葉を聞くや否や、女の子は途端に暴れ出した。
襟首が捕まれてはいるが動ける範囲でポクポクと拳児の腕や足、胸を叩く。
けれどもその肉体には一向にダメージらしき物を与えられない。
「暴れるなって、おい。湯船にドボーンとつかるだけじゃねーか」
制止の言葉はその力を発揮せず、逆に彼女の勢いを増すだけとなった。
手数も増え、足までばたばたさせている。
もちろん、喧嘩無敗は伊達じゃない。拳児には全く通用しない。
ある一蹴を除いて。
キーンッ
「――!!っぉぉお!そ、そこは…、そこだけは……ぐっ!」
がくりと膝をつく拳児。
と、同時に掴んでいた襟首も放してしまう。
男という生き物なら避けることのできない弱点を両手で押さえ、突如訪れた痛みの波を
どうにかこうにかやり過ごそうとする。
女の子の方はというと、解放された瞬間は間合いをとったものの、拳児のあまりの痛がりように
おずおずと近づいてきて様子を窺っている。
「………(?」
「『?』じゃねぇ!くそっ!このガキ……絶対風呂に入れてやる!」
ぶんっと振り回す手もむなしく空を切る。
まだ回復しきってない体では、今の発言で再び距離をとった彼女が遠すぎたのだ。
痛みにこらえながら拳児はゆっくりと立ち上がった。
対して女の子はじりじりと後ずさりを始める。
「待て!テメエ、逃げんじゃねぇ!」
「――!」
剣呑な雰囲気を感じたのか、女の子は廊下の奥へと逃げ出した。
それを追う形で、拳児も続く。
まるで狡猾なネズミと、愚直なネコの追い駆けっこのような騒ぎがこの家で始まった。
「へっへっへ、ようやく追いつめたゼ」
「………………」
マンション一室での限定鬼ごっこは、紆余曲折を経て終点を迎えようとしていた。
自室の隅に女の子を追いつめた拳児は、しかし油断することもなく間合いを縮めていく。
「散っ々、手間取らせてくれたな。あー?」
「………(フルフル」
「今更嫌がっても、遅せーんだよ。今度という今度はもう逃さねー。絶対捕まえてやる!」
「………(フルフル」
彼女まで残り数歩といったところ。
じり、じりとすり足でにじみよる。
前回はこの距離から飛びかかって、紙一重で避けられた。
拳児が思っていた以上に彼女の身体能力は高かったのだ。
その反省を生かし、相手が動き出すまで拳児はできるだけ近づいていた。
カチリッ
ぞくっとイヤな予感が背筋を駆け上る。
拳児は音の発信源を確認することもなく、すぐさまその場を飛び退いた。
時を同じくしてさっきまで自分がいたところに、パパパパパパと飛礫が舞う。
拳児と女の子、対峙していた拮抗が崩れる。
その機を逃さず、女の子は駆けた。
部屋の角から入り口に佇む救いの影に、わき目もふらず。そして彼女はしがみついた。
秋物のコートで身を包み、パンツスタイルの足をすらりとのばす、片手にはハンドガンの
解語の花。刑部絃子の腰元に。
「この、イキナリ何しやがる絃子!」
「見て分からないのかね?撃ったのだよ、拳児君めがけて」
拳児の抗議もどこ吹く風。
絃子は能面のような面構えで拳児を睨みつける。
「チッ、折角追いつめたつーのに。まぁいい。絃子、そいつを捕まえてくれ」
その言葉にびくっと体を震えさせ、不安げな瞳で女の子は絃子を見つめた。
絃子はその様子を察し、視線を変えることもなく拳児に言い放つ。
「君が不良だということは分かっているつもりだった。だが、外道にまで墜ちていたとはな……。
まず、君を救えなかったことをここで詫びよう」
「……はぁ?何言ってんだ?」
「別にPygmalionやPedophiliaが悪とは考えていない。趣味や趣向は個々人の問題だ。
それに対してとやかく言うつもりはない」
「ピグ、ペド……、あ?何だそりゃ?」
「しかし、その欲求を現実に投影し、罪もない子供に手を出すというのならば話は別だ」
「…ぉぃおいおい、ちょっと待て絃子!」
「保護者として、教師として、一人の人間として、事に対処せねばなるまい」
今までコートのポケットにつっこんでいた片手を外に出し、絃子は掌を開いた。
僅かな間をおいて袖口からもう一丁、シャカッと拳銃が射出される。
ごくりっと拳児は息を詰まらせた。
何度か彼女を本気で、または本気に近い状態まで怒らせたことがあるが
そのときの仕置きは決まって二丁拳銃(ツーハンド)だったことを思い返す。
「待て!いや、待ってください絃子さん。ただ俺はそいつを風呂に入れようと……」
「問うに落ちず語るに落ちたな拳児君、震える小さな女の子とそれを追いつめる男の図。
その因果の先はソーププレイ、か……」
「違う!誤解だ。そうじゃない、つーか何でそうなる!?」
「もう喋るな――」
くるりと掴んでいた二丁のグリップを反転させ、絃子は銃身を掴んだ。
何らかのギミックが仕掛けてあるのか、掴んだ瞬間、銃底からスパイクが現れる。
すうっと奇妙な構えを取り、彼女は静かに宣言した。
「――散華(ざんげ)しろ」
「ふむ。なるほど……。そういった事情があったのか」
「………………」
「………(コクコクッ」
「私は最初からそうじゃないかと思っていたよ」
「嘘つけー!!メチャ本気だったぞあの目は!」
「………(コクリ」
場所は変わらず拳児の部屋だが、漂う気配は先程とはすっかり変わっている。
殺気立ったものは霧散し、いつもの賑やかで和やかな空気が三人を包んでいた。
「大体、俺が天満ちゃん一筋なのは知っているだろうが!」
「ああ、悪かった悪かった。だからそんなに怒るな拳児君」
襲いかかってきた絃子(拳児から見ればだが)が数手放ったところで動きを止めたのが先程。
原因は彼女の足にしがみつく女の子だった。
「しかし、誤解を招くような状況を作った君にも問題があるぞ」
「うっ………」
「こんなに可愛い女の子を部屋の片隅の追い込み、せせら笑う不良然とした男を見かければ
誰だって、そう推測してしまうものだ」
「へー、へー、俺が悪かったよ。悪ぅござんした」
はんっ、と悪態をつくと拳児はベッドに散らかした着替えを持って部屋を出ていった。
そんな彼を見送る形になった絃子は小さく息をつく。
「やれやれ、まだまだ子供だな拳児君も……」
結局ろくに殴打することもなかった拳銃を、脇下のホルスターに収めていると
くいっ、くいっ、と女の子がコートを引っ張ってきた。
「ん?どうかしたかい?」
「………………」
気持ちを口に乗せることのできない女の子は、その瞳で絃子に問いかける。
言い過ぎではないのか、自分なら大丈夫だ、と。
その非難とも、不安ともとれる瞳の色を見て、絃子は話しかけた。
「何いつものことだ、君が心配するほどのことではないよ。アレはああ見えて、根は優しい男
だからね。だから君もついてきたんだろ?」
「………(コクリ」
「それにあの程度の打撃なら大して効くこともないだろう。頑丈さは数少ない彼の美点だ」
「………………」
「あと、ああいった無茶は良くない。私じゃなかったら今頃蹴飛ばされていたところだぞ」
「………………」
さながら暴走列車といった勢いを身を挺して止めた女の子に絃子は注意を促す。
だが、あのときはそれしか場を収める手段はなかっただろう。
絃子の気迫はそれだけ鬼気迫るものがあった。
「さて、こうやって拳児君の話をするのも悪くないが……」
絃子はぺたぺたと女の子の体を触っていく。
「疑うわけではなかったが、少し体が冷えているね。これはやはり何らかの手を打たないと
いけないな」
嫌がる様子もなく彼女はされるがままに絃子の触診を受けている。
拳児と走り回ったため、家へ訪れたときと比べれば体温自体は上がっているが
放って置いてはやはり風邪をひきかねないだろう。
「やはり、一度入浴して体を芯から温めないとな」
「――!?」
その言葉を聞き、女の子は拳児の時同様すぐさま絃子の手元から離れようとした。
されども体を触っていた絃子が、彼女の動きをがっちりと固定する。
「あまり手間をかけさせないでくれ、入浴できない理由がある訳じゃないんだろ?」
「………………」
「私も一緒に入ろう」
「………………」
押さえつけられた女の子は暴れはしないが、だんまりを決め込んでいる。
一つ嘆息をつくと絃子は続けた。
「……ふぅ、こういった手段は好みではないのだが」
「………(?」
「非難なら後で聞こう」
そう言うや否や、絃子は女の子の首筋にドッと手刀を打ち込んだ。
狙い違わず頸椎を打ち付けられた彼女は、その場に崩れ落ちる。
完全に床に倒れ込む前に絃子は彼女を受け止め、抱き上げた。そして何も言わず部屋を出ていく。
と、ちょうどそこに着替え終えた拳児がやってきた。
「お、絃子……って何だ!?何かあったのか?」
「何もないよ拳児君。これからちょっと入浴するだけだ」
「いや、何もないって何でぐったりしてるんだよソイツ」
「君と同じ過ちを繰り返していては進展しないからね。彼女のためでもあるし、少々乱暴な方法で
お風呂に入れてあげることにしたんだよ」
「………………」
呆然とする拳児の横を抜け、絃子は風呂場へと向かう。
「それと一応言っておくが、彼女が心配だからといって出歯亀のようなことはしないように」
「だっ、誰が覗くか!」
君以外にこの家に誰がいると軽口を叩きながら彼女は歩いていった。
占いはしても、されるのはごめんだ。
八卦だろうが、タロットだろうが、手相、人相、その他占いと名の付くものは
一切合切見ないようにしている。
特に運勢についての占い。
金運、恋愛運、健康運、 etc etc 。
自分のこれからの運勢を占っているものはことさらに最悪だ。
リアル動物占いをしたこともあるが、決して自身の運勢を占ったことはない。
なぜなら、占いは総じてよく当たるからだ。
それも、なぜか悪いことばかり。
そして拳児は思う。
きっと昨日の自分の運勢は最悪だっただろう、と。
そう思わせる理由は言わずもがな、今日も今日とて服を引っ張るこの女の子だ。
眉間にしわの寄った拳児など、気にもしないのだろうか。変わらず表情には出ないが
楽しげな雰囲気をまとっている。
そんな女の子を連れて、拳児は朝日を反射させる乾ききっていない道路を歩いていた。
結局あの後、女の子は一晩泊まることとなった。
風呂から上がった彼女はだぶだぶの白いワイシャツ(絃子のものだ)を着用し
何故か無言の抗議を拳児に送り続けてきた。
風呂に入れたのは絃子だというのに、風呂場で何を吹き込まれたか分からないが
食事の時までじぃっと睨みつける瞳は恨みがかったものが含まれていたように見えなくもない。
しかも、隙あればポカポカと殴りつけてくる始末。
鬱陶しいことこの上ない。
珍しく絃子のお手製の夕食を摂りながら、彼女を泊めることにする、と言ってきたときは正直
絃子の正気を疑ったものだ。
確かに外はまだ雨。
約束してしまった以上、いまさら警察に突き出すわけにはいかない。
かといって、彼女をこのまま家に留めておくのもどうかと考えていた矢先に
この絃子からの提案であった。
益々、風呂で何があったか問い質したくなったが絃子のニヤニヤした視線を感じ、取りやめる。
(あの性悪従姉妹があんな目をしているときは、決まってロクでもないことを言いやがるからな)
そんなことまで考えていなかった若き頃の数々の苦い思い出が脳裏をよぎり、拳児は
了解の旨だけを伝えた。
「一つ、言っておきたいことがある」
「………(?」
目的地の決まっていない散歩ではない。
現在拳児は、この女の子の家族の元へ送り届けている最中だ。
絃子によると、女の子に親兄弟はいないそうだが家族と呼べる人たちはいるらしい。
自分が聞いたときは黙っていただけに、その話を聞いたときは少しむかっときた。
「俺は男、オマエは女の子、それは分かるな?」
「………(コクリ」
「だったら、今朝のようなことはしちゃいけねぇ」
「………………」
「ああいうのはだな、ほら、そのもっと親しい人、つーか、好きな人にというかえっとなんだ……」
「………(?」
「ともかくだ。好きな人ができるまでやっちゃいけねぇ。分かったか?」
「………………」
言葉を濁し、要点を話さない拳児には訳があった。
今日の朝、夢見悪く目が覚めた横にどういう訳か彼女が寝ていたのだ。
頭を振り夢でないことを確認するため頬をつねってもみたが、返ってきた痛みはリアルそのもの。
昨晩は彼女が絃子の部屋で寝ることを伝えられていたため、パニックになりかける頭を
沈めさせること数分を要した。
とりあえず彼女を起こさないようにそっとベッドから出てはみたが
どうすれば絃子に誤解されず、この状況を受け入れてもらえるか。拳児が試行錯誤したことは
言うまでもない。そしてもちろん彼の浅知恵は通用しなかった事も記しておく。
そんな彼の苦悩を包み隠さず、かつ簡潔明瞭に目の前の(拳児曰く)不条理の権化である女の子に
話すことができるだろうか?
「………………」
「………………」
――できるわけがなかった。
しかし拳児の発する不機嫌の気配を察したのか、それともただ納得したのか
女の子は判断しかねる微妙な間を置き
「………(コクリ」
しっかりと頷いた。
途中の間が期にはなったがその返答によし、と少し気をよくした拳児は止めていた足を
再び動かし始める。
てくてくと歩むスピードは普段よりも若干遅い。
別に引っ付いてくる女の子のために歩みを遅くしているわけではない。
ただ、彼女が服の裾を引っ張るものだからどうしても遅くなるだけだ。
そして気がつけば、もうそれなりに歩いていた。
二人は黙々と橋を渡っていく。
視界に入った河川は昨日の雨で水かさが増し流れも速い、色もかなり濁っている。
(そういや……)
何とはなくこの川で塚本家の黒猫を助けたことを思い出す。
あのときは我を忘れて飛び込んだ川だが、今同じ事をすれば間違いなく溺れてしまうだろう。
泳ぎのうまさとは無関係に橋下に流れる水量とその勢いは圧倒的だ。
(だが天満ちゃんが再び助けを求めてきたら……俺はやるぜ!どんな激流だろうと
俺の愛は止められねぇ!我が生涯天満ちゃん一筋!)
あさっての方向を向き拳児は決意を新たにする。
引っ付いている女の子も拳児と同じ方向を見るが当然そこには何もない。
疑問顔で下から顔を見上げても、足を止め脳内で展開されるドキュメンタリーに感を極めたか
涙すら浮かべているその男の眼中には全く入らない。
全く入らないが彼の耳だけは予想していない人物の声を聞き取っていた。
「あ、播磨君」
その声を聞き間違える拳児ではない。
急がず焦らず、だけど猛烈な勢いで振り返る。
長い黒髪にトレードマークの左右のアンテナ髪、秋物のワンピースは陽光にまぶしい。
朗らかな笑顔と柔らかな空気を併せ持つ小柄な女の子。塚本天満がそこにいた。
「て、天……塚本」
「………………」
「おはよー、ってそろそろお昼だけどね」
学校での彼女とこうした日常での彼女。
普通の学生ならその雰囲気に差異が見られるものだが、彼女は違う。誰であろうと
どこであろうと普通然としている彼女の姿。塚本天満の最大の魅力の一つがこの自然体な姿だろう。
拳児風に言うと
(くぅぅ〜、今日も可愛いぜ天満ちゃん)
の一言に集約されるのだが。
「お、おぅ。そうだな、どっちかっつーと『こんにちは』だな」
今日も稼働する播磨アイと対天満ちゃん用高速思考(本人曰く)。今の状況も忘れ、瞬く間に
頭の中はお花畑が広がっていく。
(これといって今日は予定もない。天気も昨日と違っていいしな。まさにデート日和!)
現状を確認した拳児は紫電のごとく走るポジティブシンキングをさらに加速させる。
(この偶然の出会い……これはまさしく運命!空が、大地が、天満ちゃんをデートに誘えと俺を
焚き付けている!ここで誘わず、いつ誘うんだ播磨拳児!うぉぉぉぉぉぉー!)
「あ、あの……よ。塚本……。きょ今日は――」
「あれ?その子は?」
そんな拳児の思惑など知るよしもなく、天満は先程から拳児に引っ付いている女の子に
興味を持ったようだ。
「おっ?……えー、あー、その…なんだ。アレだ」
「え?」
(クソッ!すっかりこいつのこと忘れていたゼ。どうする、どう説明する……)
興味津々の様子の天満に有りの儘を話す。
一瞬その選択肢が思い浮かんだが拳児はすぐにそれを取り消した。
彼女の鈍さは彼も重々承知している。事実をそのまま話してあらぬ誤解を与えてしまう可能性は
高いどころか必定だろう。
ならば少々胸が痛むが、ここは適当な嘘を言って誤魔化すのが正解だ。
「俺の従姉妹だ。今夏休みだからウチに遊びに来てんだよ」
「へぇー、そうなんだ」
「………………」
僅か一秒で思考を収束させた拳児の苦労の甲斐あってか、天満は何ら疑問を抱くこともなく
裾を握る女の子の説明を鵜呑みにする。
そして先程から視線を送る女の子に気がついたのか、天満は膝を折り、視線を合わせて
話しかけた。
「私は塚本天満。播磨君とは同じクラスなんだ。よろしくね」
天満お姉ちゃんって呼んでイイよ、と続ける天満は妙に自信に満ちあふれている。
(嗚呼、やっぱり天満ちゃんは可愛いぜ。その上この優しさ。妹さんもちゃんと育つわけだ……)
私服姿の天満をもう何度も見ている拳児だが、学校では見ることのできない所作は
私服の彼女を見飽きるなどということを起こさせない程、魅力的だった。
「あなたのお名前は?」
「………………」
拳児と出会ってから一言も発していない彼女を気遣うように、天満は優しげに返答を促すものの
答えは一向に返ってこない。
「………ん?」
「………………」
可愛く小首を傾げてみたが、女の子はその天満の動きを真似するだけ。
妄想の翼をはためかせ、ネバーランドへ旅立っていた拳児がようやくこの妙な間を感知したのは
いつの間にか二人がにらめっこ状態になっていたころだった。
「あ。塚本。こいつちょっとワケありでな。喋れねーんだワ」
「えっ?そうなんだ……。ごめんね」
「………(フルフル」
柔らかく首を振る女の子。
拳児の時もそうだったが、彼女は喋ることができないという事実に対してさほど重きを置いて
いないようだ。諦めでもなく、悲嘆でもなく、ただ唖者であるということを受け止め
受け入れている節がある。
「ところで塚本は何やってるんだ?」
心もち重くなった空気を払うように拳児は話を変えた。
最も本心では天満の予定が知りたくて話を変えただけなのはいうまでもない。
「あっ、そうそう。播磨君、伊織見なかった?」
「伊織?確か塚本が飼っているあの黒い猫か?」
あごに手を当て暫し思い返してみるが、それらしきに猫を見かけた記憶はない。
「んー、見てないなぁ」
「そっかー……」
語尾を小さくする天満。
落胆とまではいわないにしろ、残念そうな気配がないわけではない。
「伊織がどうかしたのか?」
想い人にそのような雰囲気を出されては、放っておく訳にはいかない。拳児は当然言及する。
「うん、あのね。伊織が昨日から帰ってこないの。いつもならご飯の時には必ず帰ってくるのに」
「むぅ……」
猫なんだからそんな気まぐれもあるだろう。
相手が天満じゃなく、場所が件の橋の上じゃなければ拳児はそう答えていただろう。
「私はそんなに心配していないんだけどね、八雲がね……」
あぁ、と拳児は相づちを打つ。
電器屋のバイトで塚本家を訪れ、失意のどん底に落とされたあの日。
足に棘が刺さっていた伊織を心から心配していた天満の妹、塚本八雲を思い浮かべる。
(あの妹さんなら……今頃探し回っているだろうな)
あたふたと猫が集まりそうな場所を駆け回っている姿は想像に難くない。
そんな彼女の姿を見れば妹想いの天満が心配しないわけないだろう。
そこまで考えれば後は即決だった。
「よし、じゃ俺も探すの手伝うぜ」
「えっ?いいの播磨君?」
「ああ、今日は特に予定もないしな。それに――」
「それに?」
「……いや、何でもねぇ。とりあえず移動するか」
「うん。ありがと」
『君が心配している姿を見たくない』とはやはり恥ずかしくて言えなかった拳児であった。
UPの途中ですが、急用が入りました。
まことに申し訳ありませんが、ここで中断させていただきます。
残りは後日、UPしますんで。
ほんとすいません。
ってこれじゃまるで嵐だよ……吊ってきます。
絃子先生のしゃべりに惚れました。
先生好きの自分にはもうたまらないです……って、あれ?
何か言うべき事がずれてるような……。
えーと、続き期待してます。
いやいや、イイですよー(・∀・)
素晴らしい文章力ですね。特に状況描写、映像が頭に浮かびます
続き、期待して待ってます。
ながー
個人的に長くても内容があれば全然OK
だらだら長いだけってのは嫌だけどね。
これは凄く上手いし。GJ!続き待ってます
>>547 ぐわーこれじゃ蛇の生殺しだー。
続き早いとこ頼みます。
まあオチというかアレはナニなんでしょうけど・・・(昨日の某SSと被ってる?)。
>>508 一部で囁かれている「晶は天邪鬼だから実は花井を・・・」説に基づいたSSですね。
原作の晶のイメージを崩さずに上手くまとめてると思います。グッジョブ!
553 :
浮舟:04/04/09 23:45 ID:kEYbWFz.
>>508 嗚呼…SSスレが出来てからというもの花井・晶のSSが来る事をどれほど待ちわびた事か…
GJですー。晶と花井の絡みは自分もイイ!!と思います。
晶の微笑み……まるで天使が微笑んだかのような#笑み…
.。.:*・゜゚・(´ー`).。*・゜゚・*:.。.…いい……
ところでアイツ絵は上手かったんだな
体育祭直前の駆け込み供給に期待。
まだ誰も書いていない種目はいっぱいあるぞ!
綱引きとか玉入れとか(w
556 :
Classical名無しさん:04/04/10 13:01 ID:kczMw2dY
体育祭や演劇(文化祭)を、読者を照れさせることなくおもしろおかしく表現するのは至難の技。
修学旅行や年末恋愛イベントは比較的簡単。
…と漫画暦20年の人が言ってた。
557 :
556:04/04/10 13:12 ID:kczMw2dY
誤爆スマソ
昨日は本当にすいませんでした。
ということで残りを投下です。
「でもいいの?」
「ん?何がだ?」
猫がいそうな場所ということでうろうろと歩き回った結果、二人と一人は商店街の近くまで
やってきていた。
「その子と一緒にどこかへ向かっていたんじゃないの?」
「あー……」
思わず『すっかり忘れていた』と続けそうになる口をふさぐ拳児。
ちらりと天満と逆の方向、変わらず裾を握って着いてくる女の子を見やる。
「………(?」
その表情から喜怒哀楽は読めない。嫌がっているようには見えないのが幸いだ。
半ばデートのような状態になったというのに、いまさら絃子に言われたとおりに女の子を家に
送り届けて天満と別れるなど拳児にできるはずがなかった。
ということで拳児は女の子を見つめながら
「全然大丈夫だよな?」
天満に気がつかれないように凄味を掛ける。
小さな子供だと泣き出し、そして泣くのを止めてしまうような威圧。
無言だが言葉以上に説得力のある(?)彼の行動は正しく彼女に伝わったようだ。
「………(コクリ」
大した間もなく彼女は頷いた。
「つーわけで問題なしだ塚本」
振り返った拳児の顔は爽やかさ満点。きらりと歯でも光るぐらいの勢いだ。
そんな拳児を見てか、天満もにこやかに微笑みを浮かべる。
「ねぇ播磨君ってさ、兄弟とかいるの?」
「お?ああ、弟が一人いるがそれがどうした?」
「なんかね、とっても『お兄ちゃん』しているように見えたから。播磨君が優しいのって
やっぱりそういうのも関係あるのかな?」
身長差も手伝って見上げるような形で拳児に問いかける天満。無垢な瞳はとても同い年には
見えない。そして今、そのあどけない顔には羨望と尊敬の念が表れている。
(い、いかん!可愛すぎるぜ天満ちゃん!)
気を抜けば震えだしそうになる膝にぐっと力を入れ、ついでに丹田にまで力を入れ
拳児は常日頃から思っていることを話した。
「くっ……そ、そういう塚本も妹さんがいるじゃねーか。オマエも、その、優しいヤツだと……
思うぞ」
視線を逸らし最後は呟くように、だがはっきりとそこまで拳児が口にする。顔を真っ赤にさせた
その表情は天満には見えないが、逸らした方向にいる女の子からはとてもよく見える。
「………………」
「……ありがとう、お世辞でもうれしいよ」
天満は一瞬きょとんとした顔を見せ、至極の笑みで切り返す。
拳児がちらりと見たその表情に目眩を起こしたことは言うまでもなかった。
危うく意識が飛びそうになった拳児は咄嗟に話を変える。
「と、ところでよぉ塚本。伊織って結構頻繁にいなくなったりするのか?」
「んー……、そうでもないけど」
それがどうしたの、と天満は話を促す。
「こうやっていなくなったときのためによ、首輪とか付けちゃぁどうかなってな」
その一言に喜色満面、ぽんっと手を打ち天満は
「それ!それいいね播磨君。さっすが動物好きー」
そう言ってぱんぱんと拳児の背中を叩く。
(だはー!イイ!いいぞこの感じ!これぞデート、まさしくデート。うははははははっ)
その拳児は、にやついてしまう顔を無理矢理に矯正して
「いや、別に動物好きってわけじゃねーけどな」
心中とは真逆の言葉を紡ぎ、気にしてない風を装っていた。
非常に疲れることだが今は伊織探索中、ここで浮かれている様を見せては男が下がる
というものらしい(本人曰く)
「でもどうせだったら鈴とか付いている方がいいかなぁ」
「そうだな、そうすりゃ見つけやすいしな」
歩くたびに鈴が鳴り響く、それを鬱陶しいと思うか可愛いと思うかは個人の判断だが
どうやら塚本天満は後者のようだ。早速鈴付きの首輪を買う算段を始めている。
「ちょうど商店街まで来たんだし、播磨君ちょっと付き合ってくれない?」
「お、応!」
「………………」
鼻歌交じりの天満はかなりご機嫌の様子。もしかしたら伊織を捜していることまで
忘れているのでは、と一瞬考えてしまう。
(馬鹿野郎!天満ちゃんがそんな薄情な女なワケねーだろうがッ!)
自身に一喝。きりりと心を引き締める。
だが頬は際限なく緩む。
(しかし……これがショッピングってやつか……。デートの基礎にして王道ッ。俺は、俺はぁ!
人生の新たなる一歩を今踏み出そうとしているッ!)
「……君。…磨君?播磨君〜、おーい」
「…………はっ!どうした塚本?」
「どうしたのはこっちの台詞。ぽけーっとしちゃって、何かあった?」
迸る夢想がリミットブレイクしていたようだ。
時を忘れ、歩みを止め、拳児はこれから入ろうとしている店の前で突っ立っていた。
「いや、なんでもねぇ。だが天……塚本。鈴の話だがな」
「うん」
「首輪だけをこのペットショップで買って、鈴自体は別の店ってのはどうだ?」
「え?どうして」
「まぁこういう店のものが悪いってワケじゃねーけどよ、首輪の鈴なんてどれも似たり寄ったり
だろ?やっぱよう、どうせ買うなら伊織に似合うヤツの方がいいだろうし、そっちの方が
聞き分けやすいと思ってな」
「あ、そうだね!今日の播磨君は冴えてる〜。やっぱり動物のこととなるとひと味違うね」
そう言って向けてくる極上の笑みは拳児ではなくとも頬を染め上げてしまいそうだ。
例外なく拳児もしかり。
天満と出会ってからまだ30分程度しか時間が経っていないというのに、拳児の精神は
イイ意味でぼろぼろにされていた。
「と、とりあえず……、首輪買うぞ」
「あ、待ってよー」
このまま話し続けていてはあまりの幸せぶりに身が持たないと感じた拳児は
天満から視線を逸らし、店の自動ドアをくぐっていった。
緩やかに日は滑り落ち、あたりは茜色に染め上がりつつあった。
伊織を捜し始めてから既に6時間。途中、買い物や食事をとったとはいえ結構な時間が
経過している。だが二人と一人の足取りは重くはなっていなかった。
向かい先は塚本邸。
伊織が帰ってきているかもしれないと言う拳児の発言で一行は住宅街を歩いていた。
「ふふふっ」
「ん?どうした塚本」
「なんかねー、こうやっているとまるで親子みたいだなって」
「………………」
「………………」
ちりんっ
それぞれの身長より長い影法師が3つ、目の前に凸凹と並んでいる。
右から順に拳児、女の子、天満。
なるほど、確かに彼らを遠目から見ればそのように映っても仕方ない。というよりも十中八九
そう見られるだろう。彼ら自身を知らない人から見ればなおさらだ。
「………………」
「………………」
「……あれ?私、何か変なこと言っちゃったかな?」
喋れない女の子はともかく、拳児まで黙ってしまったことに天満は少しばかり不安を覚えた。
彼女の一言で場が変わってしまったことを察したようだ。
「…………いや、突然だったからな……少し、驚いただけだ」
ようやく口を開いた拳児の言葉は実は嘘だ。
驚いたどころではない。比喩でも何でもなく彼は一瞬意識を失っていたのだ。
天満の言葉を両の耳がとらえた瞬間、彼の魂魄は遊離しかけていた。
歩みも止めず、倒れもしなかったことは偏に幸運としか言いようがない。未だもって思考が
定まらないほど彼女の一言はタフで知られる男をめった打ちにしていた。
「よかったぁ。八雲がよく言うの『姉さんは時々変なことを言うね』って。それをね、絵里ちゃん
達に相談したら『まぁ天満だからね』って納得するのよ!?失礼しちゃうよねー」
本音としては同意したいところだが、可愛らしく頬をふくれ上げさせる姿を見せられては
二の句も続けられるはずがない。
拳児は少々黙って歩き続けて、だが思ったままのことを口にした。
「それだけ……塚本が妹さんや友達から理解されているってことだろ。そう言うことを言われる
ときってよ、大抵みんな笑ってねーか?」
「え、よく分かるね」
もしかして見てた?などと拳児に視線を合わせようとしながら天満は続けてくる。
「んなもん、見なくてもわかるぜ。なぁ?」
「………(コクリ」
ちりんっ
話を振った拳児に同意する女の子。
彼女の頭が動くことでその首元のチョーカーが涼やかな音色を奏でる。
伊織の鈴を買うときに天満が見立てて買い与えたものだ。黒でまとめられた彼女にその銀色の
鈴はよく似合っていた。
「え〜、なんでー、どうしてー?」
唯一分かっていないのは天満のみ。自身の人柄の良さはやはり自分では分からない
ものなのだろう。左右の髪をピコピコと動かしながらなおも拳児に食い下がる。
このように迫られれば、今までの拳児ならあっさりと陥落していたことだろう。
だがしかし、今日本日天満と過ごした数時間で拳児は男女の機微のなんたるかを彼なりに
理解しつつあった。
(ここは焦らしだ。焦っちゃなんねぇ。次の機会を作ればまたデートできるって寸法よ)
「あー、そういうものは自分で考えるもんだぜ。まぁどうしても分からなかったら
今度教えてやるよ」
今まさに播磨拳児の浅知恵がワンランク昇格して、駆け引きというものを学んだ瞬間であった。
「あ、ここまででいいよ。今日は色々とありがと」
「いや、気にすんな。俺も結構楽しかったし。伊織が見つからなかったのが気になるがな」
あれからも雑談に花開かせ、天満の好きなTV番組(万石ファンというのは大きな収穫だ)や
かなりの漫画好き(これも要チェックだ)だというプライベートな情報も手に入れることができた。
そして三人は例の橋も渡りきり、塚本家はもう間近に迫っていた。
「大丈夫、きっと帰ってきてるよ。播磨君と一緒にいてそう思った」
うん、と大きく頷く天満はこちらが呆れ返るほど確信しているようだ。
「そか……じゃあまた何かあったときは連絡くれよな。いつでも駆けつけるぜ」
「うん。本当にありがとう。あとあんまり拳児君を困らせるんじゃないぞ?じゃあーね〜」
そう二人に言い残して天満は坂道となっている道路を歩いていった。
途中何度も振り返り、女の子に手をぶんぶん振っている姿はとても彼女らしい。
そうして天満の姿が完全に視界から消えた後、拳児はその場で今まで呼吸を止めていたかのごとく
とても大きな息を吐いた。
「はぁぁぁー、…………疲れた」
天満との突然の出会い以降、拳児は自身の一挙一足に至るまで細心の注意を払い、彼の理想とする
播磨拳児を演じ続けていた。それはもう、買い物の時や食事の時、果てはトイレで用を足す
ときまでほぼ100%の再現率で拳児は天満にいいところを見せ続けた(と本人は思っている)。
よって今まで蓄積されていた精神的な疲労はかなりものだ。
思わずそこらの壁に身を寄せかけるぐらいに拳児は疲れ切っていた。
「………………フッ」
「………………」
「……フッフッフッフ」
「………(?」
「なははははは。どうよ?見たか、今日の俺様!もう完っ璧、パーフェクト!きっと天満ちゃんの
中でも俺様バリバリの好印象&ナイスガイ。ぬっはー!よいよ告白か、次は告白か!?」
俯くように笑っていたかと思えば、突如オーバーアクションで騒ぎ始める拳児。
切れた緊張の糸と予想以上の好感触が脳内麻薬をドバドバたたき出している。
「だっはっはは。いやそれにしても、今日はよくやった。オマエのおかげで色々上手くいったぜ」
「………………」
一頻り騒いだ後拳児は女の子に向かい労いの言葉を掛ける。
最初は邪魔だと思っていた拳児だったが、彼女の存在が二人の鎹となり
終始会話が途切れるようなことがなく、和気藹々と過ごせた事実は感謝しても足りないほどだ。
ファーストフード店では女の子が猫舌だったことを忘れていたため
熱い紅茶を飲んであわてる彼女を天満が介抱したり(彼女が暴れたため店内もちょっとした
騒ぎになった)、雑貨屋では伊織の鈴の選別に、天満はなぜか女の子を比較対象にして
アレだこれだと様々な鈴を手にくるくると店内を回っていた。
「しかし、妹さんはやっぱり俺のこととか話すんだな。これからは妹さんの前でも油断できねーゼ」
伊織から棘を抜いた、キリンを飼っている、など天満が今日話した内容は八雲しか知り得ないもの
も多数含まれていた。それはつまり拳児のことが塚本家の話題に上がっていると言うことだろう。
「っと、そうだな。こんな時間になっちまったがオマエもちゃんと送らないとな」
「………………」
天満とのデートも終わり、有頂天になっていた頭もようやく鎮火してきた拳児は
本日の最初の予定を思い出す。
「わりぃーな、無理矢理付き合わせちまって」
「………(フルフル」
気のせいか不思議と空気が柔らかく感じる。
それが彼女の発する気配だと拳児は理解した。一度も笑うことのなかった女の子だが
楽しいと感じている雰囲気だけはなぜか察することができるようになっていた。
「じゃ、いくか。こっちでいーんだよな?」
「………(コクリ」
そして二人は歩き始めた。
「ちゃららーららーらら〜ら♪ら〜ららー♪」
「………………」
拳児の足取りは軽い。今にもスキップしそうなほどだ。
普段から口ずさむ鼻歌も音量が大きめだ、ほくほくと歩いていく。
「むふふふ、今日は最高だな。天満ちゃんの携帯番号も教えてもらったし、万石の話で盛り上がった
し、いいことずくめじゃねーか」
「………………今日は楽しかった?」
「おう!そりゃ当然だぜ。なんてったって…………っておいっ!オマエ……いま」
小さな、とても小さな声だったが、拳児は聞き逃さなかった。
そして同時にぐっと体に負荷がかかる。
天満とのデート中、いつの間にか服の裾を握ることを止めていた彼女が再び
拳児の服を握りしめ、足を止めたためだ。
「オマエ、本当は喋れるのか!?」
驚きとともに振り返る拳児。
彼女と出会ってからまるまる一日以上が経過していた。
その間、意味のない言葉どころか声そのものを全く聞くことがなかったのだ。
喋ることができないと自称していたこともあって、拳児の驚きは相当なものだった。
だが女の子は拳児の驚愕も質問にも答えることもなく淡々と話を進めていく。
「……よかった、どうすればいいかずっと分からなかったから」
にこり、と愛しの天満ちゃんを彷彿とさせるような慈愛の笑みを浮かべる。
天満一筋の拳児でさえも一瞬惚けさせるほどその笑みは神秘的なまでに美しかった。
「…………ぁ、じゃなくて!なんで今までずっと――」
ちゅっ
拳児が言葉を続けることはなかった。
腰元までしかない身長の彼女が一足で拳児の首にぶら下がり、彼女自身の口をもって
拳児の口をふさいだためだ。
「………………」
「……バイバイ」
すたっと華麗に着地すると彼女は拳児にそう言い残し走り去っていった。
ちりんっ
流麗な一音をその場に響かせて。
日は昇り、そして落ちていく。
一日はそうして始まり、そうやって幕を閉じていく。
だが、時間にして僅か。朝でもなく、昼でもなく、夕方でもまして夜でもない時刻が存在する。
逢魔が時。
現世と彼の世の狭間、幽世が覗ける瞬間。
そこには少女が存在していた。
「……分からないわ、あの子結局何がしたかったのかしら?」
儚げで幻想的、夢か幻か現実感を伴っていない少女が呟く。
「『好きな男の人がいるから協力して欲しい』、そう言ってきたときはあんなに真剣だったのに」
眼下には一軒家、ただいま〜と元気な声が玄関口から聞こえてくる。
「最後には自分から喋って……」
夏場故か一軒家は窓という窓が開いており、屋内で話す姉妹の声が聞こえてくる。
「条件は先に言っていたから、どうするのかとても興味があったのに……」
二つの声は対照的だ、まるで太陽と月。明るくはきはきと話す姉と淑やかにつやつやと話す妹。
「……でも不思議。なんで記憶もなくなったはずなのに――」
姉妹が縁側に出てきた。妹の指さす先には蹲って寝ている一匹の黒い猫。
「――あんなに幸せそうなのかしら……」
擡げた首からちりんっと鈴の音が聞こえてきた。
ほんとにすいませんでした。
自分がこのような中途半端なことをしたせいで
スレに投下できなかった人がいるかもしれないと思うと自責の念にかられます。
以後このようなことを起こさないよう心がける次第です。
乙。
ここのところ私的にこれぞ、という作品に巡りあえていなかったのですが、久々に。
四の五の言うのは野暮ってなもんでしょう。
いい物読ませていたただきました。
次作以降も楽しみしていますので。
お疲れ様です。
伊織の言動が可愛く書けてると思いました。
好きな人といられて、きっと伊織は満足だったんでしょうね。
次回も期待してます。
乙でした
とても良い物を鑑賞させていただきました
コメントがかぶるようですが次回作以降も楽しみに待っています
(*゚∀゚)播磨×伊織派誕生か?
え?どういうこと?
まあおもしろかったけど
伊織が播磨に恩を返したい
↓
幽霊の女の子が伊織を人間にする
↓
条件は言葉をしゃべると猫に戻る
↓
伊織自分からしゃべる
↓
猫に戻る
↓
人間の時の記憶をなくす
の流れだと俺は思ったのだが、作者さん違ったらごめんなさい
後、GJ!とても面白く読むことができました。今後も頑張ってください
というわけで伊織幼女促進SSでした(ぇ
実は最後まで性別をあやふやにして「伊織は男だった」というラストで
幼女視するものたちへのアンチテーゼとなる予定でしたが
伊織の怒りか、伊織幼女説推進派の罠か、データは消える、HDDは飛ぶ、ネタはかぶる
と散々な目に遭い「わかったよぅ、伊織は幼女だよぅ」と泣きながら書き上げました(笑)
ネタ元はいわなきゃ分からないと思うのでタイトル通り(?)人魚姫。
リスペクト効かせてスクラン風味に仕上げてみたかったのです。
>>577 はい、そんな感じです。
やっぱり気付かない人もいますよね。力不足ッス。
不足ついでに補則。
条件は3つでした。
・喋ってはいけない。
・元に戻ると記憶が無くなる。
・嘘を付いてはいけない。
最後は泡にしてしまおうかと一瞬考えたのは秘密です。
最後に
>>388,
>>389>>390をはじめ元気をくださった方、本当にありがとうございました。
そしてこんな長い文章、しかも中途半端な投下に最後まで付き合ってくださった
住人の方々にも感謝です。
嗚呼、このスレはいいスレだなぁ。
新しくSS書いてみました。よろしければどうぞ。
矢神高校の体育祭がついに始まった。
開会式にて加藤先生のくどい挨拶の後、姉ヶ崎 妙(たえ)先生の紹介。。
怪我をしたら診てもらえるということで、生徒たちも思う存分怪我をするぞと沸いていた。
まず第1戦、玉入れ。しかし、C組とD組は互いにボールをぶつけ合っていた。
ハリーと東郷に至っては、華麗にボールを避けることにのみ集中している模様。
「フッ、当たらなケレバ、ドウということはナイ!!」
「いや、コレ玉入れだから!!」
次にチアガールによる応援合戦。
「うおおお!! 美人度は2-Cがダントツだ!!」
沢近、美琴をはじめとする応援が華やかに行なわれていた。
競技を終えて戻ってきた男子生徒をちやほやと迎えるチアガールを見て、次は僕の番だと期待に胸を膨らませる下っ端。
しかしアイスを差し入れに持ってきた今鳥にその野望を阻まれてしまった。
D組のチアガールにはララも参加していたが、どうにも表情が硬い。
東郷に無理やり参加させられたらしい。その様子を見て、イヤならやらなくていいんだぞとハリー。
一方保健室では、播磨が原稿を執筆しようとしていたが、
吉田山次郎(変な髪形の舎弟)が同席していた為に漫画を描けない状態だった。
「なんで播磨さんは保健室に? いつもは屋上でしょ?」
「あ、ああ、まあたまにはな・・・」
妙ちゃんが目当てなんでしょう? と下品に笑う舎弟に、適当な生返事を返す播磨。
そこへ天満が播磨を呼びにやってきた。
「播磨くーん! 出番だよーー!!」
そんな天満に吉田が、俺たちは体育祭に出てる暇なんてないと返すが―――
「あるに決まってるだろーが!!」
播磨に殴られた。
グラウンドでは陸上競技が行なわれていた。
麻生、沢近共に1位。それを見て天満もがんばるぞーと意気込むが、競技は何と3人4脚。
「オイッ、わかってるだろーな!!(天満ちゃんに捧げるのは1位!!)」
「君と組むのは不満だが・・・全力で行く!!(八雲クンのことは一時保留だ!!)」
「ひゃあああああああ!!」
播磨と花井に挟まれ、宙に浮いたままダッシュすることになった天満。結果は1位だったが、後日筋肉痛に。
次の競技は女子による綱引き。ここでもC組とD組の力は拮抗していた。
しばらく膠着状態が続いたが、なんと綱が切れてしまった。
堪らず尻餅をつく女子達だったが、、一条とララだけは転ばずにそのまま互いの手を合わせ力比べに。
そして昼休みへと突入。現時点でC組は学年トップとなっていた。
しかしD組もたった1点差で2位につけているので予断を許さない状況であった。
そのころ、校舎の影ではポンポンを振るララの姿が。
通りかかったハリーに、実は気に入ってるんじゃないのか?と突っ込まれて照れていた。
そしてそのまま午後の競技へ。残り種目は騎馬戦とリレーのみ。
「東郷、この花井春樹・・・次の騎」
「騎馬戦で勝負だ!!!」
『また先に言われたーー!!!』
顔に縦線が入る花井であった。
以上。感想をお願いします。
>>578 GJ! なんだけど
>というわけで伊織幼女促進SSでした(ぇ
この一行目で「神」から「俺」に格下げされたw
GJでした。
播磨×伊織って刺派?ってことになるんでしょうか
沢近は「愛理」ですね うちのでは変換候補にありませんでした。
めちゃイケで岡村が坊主頭になったのを見て、播磨も…と想像してしまいました。
スルーが正しいのだろうが一言だけ言わせてくれ
ネタバレを自分が書いたみたいに言うな
以上、気にしないで後続けてください
職員会議をサボった放課後、刑部絃子は美術室を訪れた。辺りに漂う絵の具の香りが、絃子の
嗅覚を刺激する。キャンパスに向かっていた笹倉葉子を一瞥すると、絃子は手近にあった椅子に
腰掛けた。
「……邪魔するよ」
「はい」
キャンパスから視線を動かさないまま、笹倉が答える。職員会議をサボったことを聞かれなかったのは、
絃子にとって有り難いことだった。絃子が見つめる中、笹倉はどんどんキャンパスに筆を走らせていく。
「……どうしたんですか?私でよければ相談に乗りますけど」
長い静寂の時間の後、笹倉が不意に口を開いた。笹倉の視線は、あくまでキャンパスに向いた
ままである。
「……いいよ」
気のない返事をすると、絃子は窓の外へと視線を移した。二人の間に、再び静寂の時間が訪れる。
虚ろな絃子の瞳には、ただ秋空だけが映し出されていた。
絃子がこのような調子なのには、もちろん理由がある。播磨拳児――――学校一の不良にして、
絃子の従兄弟でもある――――が、事もあろうに新任の養護教師を押し倒したというのだ。幸いにして
大事には至らずに済んだものの、この事件は絃子の心に深いショックを与えた。
絃子と播磨は、現在同居人の関係にある。不良ではあるが、播磨は今時珍しい「一本筋の通った男」だった。
毎月生活費を家に入れてくるし、絃子が忙しい時は家事もこなす。そして、同じクラスの塚本天満に
対する愚直なまでの想いは、天の邪鬼な性格である絃子にとっても応援したくなるものだった。
その播磨が、女性を押し倒したのだ。それも、天満以外の女性を。
新任の養護教師は、絃子から見てもなかなかの美人だった。どことなくではあるが、天満に
似たような雰囲気も感じられる。播磨が衝動に駆られたとしても、無理からぬ事かもしれない。
そう思いこむことで、無理矢理絃子は自分を納得させようとした。だけれども、
――――――無性に悲しくて、悔しかった。
「……ひょっとして、播磨くんのことですか?」
「!」
突然声をかけられて、絃子は思わず慌てた。予想通りの反応に、笹倉がクスリと笑う。
「……どうやら図星のようですね」
「ち、違う!彼はただの……」
「ただの?」
「う……」
絃子は何とか誤魔化そうとしたが、結局余計に状況を悪化させてしまった。こういった駆け引きに
おいては、笹倉の方が一枚も二枚も上手である。しかたなく絃子は、播磨が自分の従兄弟で
あることと、とある事情によって現在同居していることを打ち明けた。
「……なるほど、そういうことですか」
「……ああ」
笹倉は絵筆を置くと、そのまま絃子の方に身体を向けた。窓から差し込む夕日が、二人の顔を
金色に照らし出す。
「……何だかんだ言って、拳児君もそこらのロクデナシどもと変わりなかったってことさ。普段は
誰々さん一筋だなんて言ってても、ちょっと可愛い女がいれば簡単にそっちに転ぶ。まったく、
最低の男だよ」
絞り出すような声で、絃子がつぶやいた。「最低」と言ってはいるが、その言葉は絃子の本心では
ないだろう。絃子と長い付き合いの笹倉には、それが痛いほどよくわかる。
「……少しの間、独り言を言ってもよろしいでしょうか?」
長い沈黙の後、笹倉が静かに口を開いた。
「……ああ」
うつむいたままで、絃子が答える。その姿を見て、笹倉は黙って席を立ち、窓の方へと歩いていった。
どこからか吹き込んできた風が、笹倉の髪をふわりと揺らす。
「……刑部先生って美人ですよね。それこそ、どんな男の人でも見とれちゃうくらい」
「……お世辞はいいよ」
「お世辞じゃないですよ。……だから、今まで刑部先生になびかない男の人なんていなかった。
そう、たった一人を除いては」
「……」
「悔しかったんですよね。いくらその人が、実の従兄弟だとしても」
笹倉の「独り言」は、いつの間にか絃子へのメッセージへと変わっていた。二人きりの美術室に、
笹倉の声だけが響いてゆく。
「でも、彼が塚本さん一筋だからこそ許せた。応援してあげようという気にもなった」
「……」
「今回のことで、その支えがなくなっちゃったんですよね。だから、どうしていいかわからなく
なってしまった。播磨くんのことを、大事に思うがゆえに」
絃子は何も答えない。優しい口調で、笹倉が言葉を続ける。
「意地を張らないで、自分のキモチを吐き出してみましょうよ。そうすれば、きっと彼だって
わかってくれるはずです。ね?」
そう言って、笹倉はにっこりと笑った。閉ざされていた絃子の唇が、ゆっくりと開かれる。
「私は、拳児君のことを――――――――――――」
その時、タイミング良く美術室のドアが開いた。ぱたぱたと足音を立てて、件の養護教師――――姉ヶ崎が
美術室へと入ってくる。
「あ、刑部先生ですよね?初めまして、姉ヶ崎と申します」
「……どうも」
姉ヶ崎に深々と頭を下げられ、絃子は仕方なしに軽い会釈をした。色々と思うこともあったが、
ここは相手の話を聞くことが第一である。大人の態度で、絃子は姉ヶ崎に尋ねた。
「……それで、何の用でしょうか?」
「あ、はい、実は……」
その後姉ヶ崎は、播磨が起こした事件について事細かく絃子に伝えた。姉ヶ崎と播磨は以前からの
知り合いであり、今回久しぶりに播磨と再開を果たしたことで、嬉しさのあまり抱きついて
しまったのだという。それを一部の生徒に目撃され、真実がねじ曲がって伝わってしまったというのが
事件の真相であった。
「……というわけで、彼は何も悪くないんです」
「……」
「他の先生方には職員会議でお話ししたんですけど、刑部先生だけ職員会議にいらっしゃらなかったので、
一応伝えておいた方がいいかと思いまして」
「……」
「……あのー、刑部先生?」
「……一つ聞いていいか?」
「はい、何でしょうか?」
「職員会議には、当然笹倉も出ていたんだよな?」
「ええ、そうですけど」
「そうか、安心したよ……なあ、笹倉?」
その言葉に、笹倉の肩がびくっと震える。笹倉の表情は、先程までとはまるで別人と思えるほどに
蒼白だった。半笑いの絃子が、笹倉の肩をポンと叩く。
「笹倉、ちょっと話があるんだが」
「す、すみません。ちょっと突然急用を思い出しましたので、今日はこれで失礼しますね」
「……ほう、描きかけの絵はいいのかい?」
「え、ええ。明日またやりますから」
「そうか。すぐ終わる話だから、今聞いてくれると有り難いんだがね」
「そ、そうですか?私的には何だかとっても長くなりそうな気がするんですが」
「……」
「……」
「わかってるならさっさと来い!この性悪無駄遣い女!」
「きゃあ!」
どうやら笹倉は、絃子を本気で怒らせてしまったようである。笹倉は必死にその場から逃げようと
したが、あえなく絃子に捕獲されてしまった。恐れおののく笹倉の両頬を、般若と化した絃子が
力任せに引っ張る。あまりの痛みに、さすがの笹倉も悲鳴を上げた。
「いひゃい!いひゃいれす!」(「痛い!痛いです!」)
「黙れ!今日という今日は絶対許さん!」
「おひゃひゃひぇひぇんひぇいひゃひゃひゅひぃんひぇひゅひょ!ひひょひょひぇひぃひゃひゅひゃひ
ひゃんひぇひゅひゅひゃひゃ!」
(「刑部先生が悪いんですよ!人の絵に落書きなんてするから!」)
「それとこれとは話が別だ!もういい、このままピカソの所へ旅立たせてやる!」
「ひひゃー!」(「いやー!」)
放課後の校舎に、笹倉の叫びが空しく響き渡る。かくして今回の騒動は、全者痛み分けということで
解決を見たのだった。
なお、この数日後に笹倉は一枚の水彩画を描き上げた。
その絵は彼女得意のキュビズムではなく、手を取り合って歩く二人の男女を描いた物だったという。
それを見て絃子がどんな反応をしたかは、また別の話である。
というわけで、今回も先生たちのお話です。
いや、ホントこの三人は大好きなんですよ。ガチで。
でも今週の話で、ひょっとしたら笹倉先生は同居のことを知らないのかなーなんて思ったり。
今後の展開が楽しみですね。
本当は絃子先生がショック受けて飲んだくれて笹倉先生とケンカして……みたいな話を書いてたのに、
マガジン読んで慌てて路線変更したのは内緒です。
ある日の矢神高校での朝のHRでのことである。
「今日の午後の授業は、他の学校から高校生が来て講演するので
お休みにするぞー。ちなみに場所は体育館だ」
担任の谷先生がそう言ったとき、教室の声がどよめいた。
「やったー!午後の科目、俺の嫌いなもんだったからよー!!」
「こら!静かに!そういうことだ。わざわざ他の学校から講演に来て
くれるのだからな。講演のときは真面目に聞けよ」
「他の学校から講演に来てくれる高校生って誰なんだろ?」
天満が上目遣いに天井を見ながら言う。
「うーん・・・この学校にわざわざ講演に来てくれる高校生って・・・
珍しい気もするわね」
と晶。
「まさか、迫水くん・・・なんてことはないわね。アハハハ」
沢近が笑いながら言う。
「迫水?あいつなんかにロボットのことを講演されても私達には退屈
なだけだろー?」
美琴が言う。
「それは言えてるわね。ロボットのことなんて私達はチンプンカンだし」
沢近がいつものスマイルを返す。
−そして、午後。全員が体育館に集まった。保健室の姉ヶ崎先生が
「それでは、今日、他の高校からここへ講演に来て下さった高校生の
方を2人紹介します。それでは、前に出て下さい」
と言うと、2人の影が舞台裾から出てきた。その人影を見て沢近の顔が
一瞬、こわばった。
「御川高校2年生の工具楽我聞くんと國生陽菜さんです。工具楽くんは
工具楽屋という解体会社の社長をされていおり、國生さんはその秘書を
されています」
姉ヶ崎先生のその言葉も沢近の耳に入っていなかった・・・。
(まさか、今日、講演に来る人が工具楽くんだったなんて・・・寝耳に水だわ)
工具楽と國生が前に出てくる。工具楽がマイクを手に持って
「どうも、今、紹介してもらった工具楽です。今日は皆さんにオレの拙い
講演を聞いて下さることを嬉しく思っています」
と周囲を見回しながら話した。そして・・・その中の沢近と目があったとき・・・
工具楽の表情が強張った。
(おいおい・・・ここ、沢近の高校だったのかよ・・・初耳だったぞ)
「どうしました?」
「・・・あ、すいません。何でもないです。ちょっとどもっただけで・・・」
そして、工具楽と國生による講演が始まった。テーマは「高校生の社長と家長」
で、工具楽の苦労話が淡々と語られた。それに涙を流す生徒もいた。
約1時間にわたる講演が終了し、皆が解散したときである。
沢近がそっと、工具楽の後ろに忍び寄る。
「・・・ビックリしたよ・・・まさか、工具楽くんが私達の学校へ講演しに来るなんて」
「オレもだよ。沢近さん。まさか、ここが沢近さんの学校だとは思っていなかった」
「でも、何で、今回の講演を引き受ける気になったの?」
「単純に言ってしまえば・・・講演料が欲しかっただけなんだ。ほら、うちの会社、
赤字だから」
すると沢近が吹き出して
「あははは。そこが工具楽くんらしいな。でも、講演、とってもよかったよ・・・。
工具楽くんの苦労している話、きっとみんなに伝わったと思うよ」
「沢近さん・・・ありがとうな。実は、オレも自信なかったんだけどさ。沢近さんに
そう言ってもらえるととても嬉しい。講演した甲斐があったよ」
まだ春の暖かいそよ風が2人の間をすり抜けた・・・。
>>594-596 (・∀・)イイ!!思わず拍手してしまいました!!!
スクランスレのためにわざわざ出張してくれるなんてもう大感激です!
六商さん!削除依頼出さないで下さいね!今回はどこからもコピペされて
いないし、エロも入っていませんからね!他作品のキャラクタを出しては
いけないともルールに書かれていませんからね!もし出したら威力妨害で
貴方専用のスレを最悪板に立てますからね!
とりあえず、阿呆には構わない様にしようと思っていたんだが
>>597よ、ここは「スクラン」のSSスレであって
「ごった煮」のSSスレではない
他作品のキャラを出さないという事は、暗黙のルールだという事を知れ
コピペだろうと、エロが入っていようといまいと
スクランスレのためにわざわざ出張してくる必要など皆無だ
煽られてちゃ俺も厨か・・・
エロパロ神のSS様がついにここに降臨なさった・・・!!!
みんな祭りだ!俺の待ち望んでいたSSが今ここに生誕!!!
いいなあ!まじで良すぎだアアアア!!!!!
見えないものにはレスしようが無いぞ、同志
登録しなさい
すまない、同志よ
これからは登録する事にするよ
確かに・・・スレ違いだとは思うが・・・
せっかく、こういういいSSを考えてくれたんだから少しは
柔軟に対応してもいいのでは?
時間をかけてこういう内容を考えてくれた職人さんの苦労を
配慮することくらい六商さんでも出来ると思うが。
彼が血も涙もない人間でないということを心から祈るよ。
606 :
Classical名無しさん:04/04/11 05:49 ID:zTo1drnw
Dark Blue Moon を書いた方へ
長編SS、お疲れ様です〜。いいですね〜。おとぎ話を題材にしていても
ちゃんとスクランしていますし、結末も少し切ないけれど伊織は満足だった
ように終ったので私は良かったと思いますよ。SS投下、ありがとうございました♪
気が向いたらまたこのスレにSSを投下して下さいね。
607 :
Classical名無しさん:04/04/11 06:28 ID:zTo1drnw
Love is Blindness を書いた方へ
絃子先生 キタ―――(゚∀゚)―――!!!! 笹倉先生 キタ―――(゚∀゚)―――!!!!
お姉さん キタ―――(゚∀゚)―――!!!! 先生SS キタ―――(゚∀゚)―――!!!!
最高です♪ 彼女達のからみ。笹倉先生のプチ腹黒や、絃子先生がじつは播磨を・・・
の設定に激しく賛成です!! SS作成、お疲れ様です♪機会があったらまたSS書いて下さいね。
>>578 長編ごくろうさまでした。
長いのに飽きずに読ませたのはさすがです。
最後に霊子ちゃん(仮名)と絡ませたのも捻ってあって上手いと思いました。
>>580 一言で言うと「SSになってない」です。
シナリオのト書きを書きなぐっただけで内容がありません。
>>593 腹黒笹倉の本領発揮と言う感じで良いです。
本編でのお姉さんズの絡みも期待させる内容ですね。
609 :
608:04/04/11 11:43 ID:xvBQ9CvE
つーかアレはネタバレのコピペかよ・・・真面目に感想返した俺がバカだった。_| ̄|○
>>593 GJ!
やはりイトコ先生は最高だと再認識しました(#´Д`)
>>593 サイコーです
播磨もイトコ先生に播磨アイが発動したところを見ると
まんざらでもない気がするのです
拳児君は小っちゃいころイトコお姉ちゃんが大好きだったのです、と言ってみるテスト
読んで下さった方々ありがとうございます。
急遽内容を変更したものなのに、結構評判が良くて驚きましたw
次もがんばります。
614 :
Classical名無しさん:04/04/11 22:24 ID:zTo1drnw
>>612 激しく同意。なんたって修治の兄貴だしなぁ〜。
小さいころは絃子さん(当時高校生?)が大好きだったんだと思いますよ。
だから頭もあがらないだろうね。迷惑もかけたんだろうなぁ・・・。
>>613 俺、アンタのファンだ
いくつもの素晴らしい作品をありがとう
ネタバレ読んだらわずかに被ってました。気になる事はないと思うのでそのまま。
《投下》
年に一度の健康診断が予定より早く済んだ、今は女子しかいない2−C教室。
男子がまだ戻ってきそうにない事を確認したのち、晶が壇上に立っていきなり述べた。
「みんな、聞いて。今からこの袋の中のお金を分配するから」
その小さな袋の中には、いっぱいに詰まった紙幣とじゃらじゃら音をたてる銀色の硬貨。
紙幣全てが千円札だとしても五万円近くあろうかと思われる大金だ。
理由も説明せずにいきなり分配を始めようとする晶に、とりあえず美琴からのツッコミ。
「高野ー。さっぱり経緯がわからないんだけどさ、その金はいったいなんなんだ?」
「みんなのモデル料。冬木君が少々潤いすぎてるようだから交渉しておいたの」
騒然とするクラス内。冬木のそういう撮影趣味はもはや皆の知るところなのだが、
誰も撮った写真を売ることで大儲けをしているとは思っていなかったようだ。
「でも彼、堂々とカメラを手に正面から撮影してる事が多くなかった?
私の知る限りではきわどいアングルを模索している時はあってもそこまでよね。
それでこんなにも利益が出たりするものかしら? それとも盗撮でもしてたの?」
沢近の疑問に晶が澱みなく答える。
「大丈夫。周辺への聞き込み調査・記憶媒体押収によるデータ復元、どちらでもシロ。
クラスメイト相手に盗撮までするほど腐った性格だったら友達にはなってないしね。
ちゃんと彼の写真の腕前と価格設定の才覚の賜物だよ。誉めたいとは思わないけど」
「押収? そこまでやったの晶。相変わらず謎の多い生き方してるわね……」
クラスの隅のほうではこんな会話も。
「あちゃー。あたしその売上げに貢献してるよ」
「どうしたんですか? 写真ならクラス全員撮られた経験があるそうですけど」
心配げに友人を気遣う一条。
自分の写真を欲しがる人なんていないと割り切っているため精神的にまだ余裕がある。
「違う違う。廊下で冬木くんが色々売ってたから買っちゃったのよ、高野さんの写真」
「!? それって……」
「一条、勘違いしすぎ。学業のお守りとして持ってる人多いけど、知らんかった?」
妙な想像をしてしまっていたためか、顔を赤くしてうつむく一条。
なにがどうなってこんな箱入り娘が灰色熊並の怪力を持つようになったのやら。
壇上で晶は説明を続ける。
「本当はクラスのみんなで食事会に行く費用にしたりしたほうがいいんだろうけど、
個人ごとにものすごく差があったから、あえて売上表に応じて分配するよ」
「まあそうよね。人気が違うのに同じ額の分配じゃ不公平だもの」
「それを愛理ちゃんが言うのってずるい〜。たぶんぶっちぎりの一番人気なのに。
私は…… どうなんだろ? 告白された事なんて一度しかないしなぁ」
自分を客観的には「並」だと認識しているので人気のほどに気付いていない天満。
クラスでも何人かに好意を寄せられているのに、驚異的な鈍さで悉く粉砕している。
ちなみに告白して玉砕の憂き目を見たその唯一の男の名は『天王寺昇』とか。
「じゃあそんな塚本さんから」
天満の机に積まれるかなりの額。諭吉っつぁんが複数人いるようにも見える。
「……へ?」
「天満、アンタなんでそんなに?」
驚きを隠せない沢近。いきなり自分が一番だという確信が揺らいだらしい。
「あ、そうそう。こっち側が八雲の分だから渡しておいてくれるかな。
今日は茶道部の活動がないから直接会えないかもしれないし」
そう言って机に積んだ金額を器用に約3:7に分割する晶。もちろん7が八雲。
「あー、びっくりした。そうだよね、八雲なら確かにもてるもんね」
「いや、塚本の妹のその額は凄すぎるけど、塚本もそれなりに良いんじゃないか?
ひいふうみい…… ほら」
「あ、ほんとだ」
美琴に指摘されて気付いた天満。写真の売上げの一部だと考えれば確かにかなり多い。
食費を限界まで削って全種買った播磨の貢献度も大きいが、一般購買層もそこそこのよう。
「売れてるってことは、最低でも何人かは『想ってくれてる男子がいる』んだから、
校内であんまりみっともない姿を見せてちゃだめだよ。これは全員に言える事だけど」
晶に言われて急に気を引き締めるクラス一同。効果は覿面のようだ。
「それじゃあ分配を続けるよ。みんなが気になってそうだから、愛理いってみよ〜」
「はいはい。どうせ帰国してからこのかたずっと注目される運命ですよ。
晶もわかってるならこっそり渡してくれればいいのに、気が利かないわね」
「こっそり渡しても愛理『目立たなかったじゃない』って文句言うよね。はい」
渡されるどぎつい金額。周囲から感嘆の声があがる。
「あら、予想していたより多いわね。遊園地の年間パスポートくらい買えるかしら」
「……すごいな。他のクラスにはまだ化けの皮が剥がれてないんだとしても」
「美琴。その『お化けの川』ってひょっとしてあんまり良くない意味?」
「気にするなって。沢近がいい女だってことを客観的に表現しただけだからさ」
「…………本当?」
「嘘なんて付かないって。あたしは沢近の事、けっこうわかってるつもりだぜ?」
美琴にとって沢近は“からかいがいのある”良き友人である。
「はい、そんな美琴さんも」
「サンキュ。……お、おい、マジか? なんでこんなに」
諭吉っつぁん、美琴にも降臨。いったいどれだけ売れたのやら。
「スタイルもいいし男子生徒の面倒見もいいし、あと…… いや、これは言わない」
わざとらしく口をつぐむ晶。
「あー、言ってくれないか? 高野。詳細を知ってるのはお前か冬木なんだろうけど、
あたしの悪い予感が当たってるなら、冬木に聞くのはマズい。多分怪我人が出る」
「それもそうだね。じゃあ言うよ。『隙が多いからサービスカットが』」
「―――ストップ。これからは用心するよ」
諦めに似た表情を浮かべ、渡された金額とにらめっこを始めた美琴。
過ぎた事は忘れてこの諭吉さんで何を買いに行くか熟考するつもりらしい。
一種の現実逃避だとも言えなくはないが、荒れる心情を鎮めるには適切だといえよう。
「以上が売上ベスト3。以降はプライバシー尊重で金額が見えないように渡すよ」
「「なにぃっ!!」」
晶が袋の現金を配り歩く中、当然序盤に受け取った天満たちは暇になる。
寄り集まっての雑談の話題は、もちろんこの臨時収入の額について。
「美琴ちゃんも愛理ちゃんも凄いよねー。さすが学年トップクラスの美人!
これだけモデル料がもらえるって事は、写真を持ってる男の子達がすごく多いんだよね?
モテモテでいいなぁ…… 私もせめて八雲と同じスタイルだったら良かったのに」
この短絡的な意見には沢近も少々気分を害したもよう。
「天満、あなたはあなたなりの良さがあるのにそれを否定してどうするのよ。
それに、どうでもいいような男にいくら好かれたってそれにどれほどの意味があるの?」
いつになく正論。
少し前まで誘われれば誰とでもデートに応じていた沢近にも何か心境の変化があったらしい。
もっとも、発言中にあることに思い至って思考はフル回転していたのであるが。
―――そういえば、あの金額から考えて相当数の男子が私の写真を持ってるのよね。
アイツは持ってるのかしら? なにしろ私に告白してきたくらいだし持ってるわよね。
でも、あんな変態が私の写真を買って何するの? やっぱり… まさか… ナニ?
ぶんぶんぶん。
脳内に生じた暗雲を掃うかのように頭を振り、ツインテールをなびかせる沢近。
「どうしたの? 愛理ちゃん。突然顔が真っ赤になっちゃってるけど」
「ああ。きっとコイツ、『どうでもよくない特別な男』の事を思い浮かべてたんだよ。
不器用なヤツだと思ってたけど、ようやくまともな恋ができるようになったか」
「なっ! 何を言ってるのよ美琴! あんな奴本当にどうでも」
墓穴。
「ま、沢近にゃ借りもあるしな。応援してるからうまくやれよ?」
「え? 美琴ちゃん、愛理ちゃんの好きな人知ってるの?」
天満にあの態度で理解できるはずもない。だって、まあ、あれだ。
「塚本に教えると勝手にお節介を焼いてぶちこわしちまいそうで怖いんだよなぁ……。
本当はもうちょいからかって遊びたかったんだけど、話題変えたほうが良さそうだな」
「な!? 覚えてなさいよ、美琴……」
自滅して勢いを失った沢近をよそ目に、ふたりは会話を続ける。
「これだけ売れてたってことは、男の子でも好きな子の写真は持っておきたいんだね〜。
私も烏丸君のきれいに撮れてる写真があったらいつでも持っておきたいけど、
逆に烏丸君はどうなんだろ? 生徒手帳に誰かの写真入れてたりするのかな?」
不安と期待の入り混じった表情で美琴に尋ねる天満。
「それこそ本人に聞きゃ済む事だろ? 烏丸と一番仲がいい上に前の席なんだから。
まあ、烏丸は女の子の写真なんて買いそうな奴には見えないけどな」
それができないとわかっていて言う美琴。からかいの対象は天満に変わったらしい。
「あと私、このお金の事どうやって八雲に説明したらいいんだろ?
うまく説明できないとあの子、いわれのないお金だからって返しに来ちゃいそうだし」
「あー。『男子どもに生写真が高値で売れた結果』ってのは確かに伝えにくいよな。
しかも金額が金額だけに、あんな塚本に似ず真面目そうな子だとそうなっちゃうか……」
「むっ。私に似てるから八雲は真面目なの!」
そんな凶悪なボケに誰が突っ込めるというのか。しばし会話が途切れる。
―――真面目かぁ。そういやあの堅物も八雲が絡むと豹変するんだよなぁ……。
前に写真とか買ってたみたいだけど、あれ見て一人でにやついてたりするのか?
確か十枚一万円とか言ってたよな。あたしならタダで撮らせてやるものを。勿体ない。
……って、おい。あいつが私の写真なんて欲しがるわけないだろ。何考えてんだあたし!
ぶんぶんぶん。
脳内に突如生じた蚊柱を散らすかのように頭を振り、遠心力で何故か胸が揺れる美琴。
「あれ? 今度は美琴ちゃんも頬が赤くなってる。風邪ひいた?」
「違うわよ天満。『写真を持っていて欲しい彼』について考えてたのよね、美琴」
「なっ! 何言ってんだ沢近。あいつはそんなんじゃねぇって何度 ……あ゛」
これまた墓穴。沢近の反撃成功といったところか。
三人中二人が自滅して会話が続かなくなっているうちにも、分配は進んでいく。
こちらは緊張しきった表情で握り締めた紙幣を凝視している一条。
「こんなに戴いてしまって、いいんでしょうか」
「どれどれ…… あん? これじゃあ私が思ってたより少ないよ一条。
こんなに美人になったのに、男子どもも見る目ないねー。そう思わない? 高野さん」
「注目され始めたのが二学期からだったし。他のクラスでは人気らしいよ」
そう言いながら傍の二人にも手際良く現金を渡してゆく晶。
「『他のクラスでは』か。そうですよね…… クラスの男子は女の子扱いしてくれないし」
ネガティブモード突入寸前の一条に、その友人二人から必死のフォローが入る。
「落ち込む理由なんてないって。クラスの男子なんてどうせろくなのいないんだし。
一条なら怪力だって事さえばれなきゃ彼氏の一人や二人、すぐできる! 保障する!」
しかし、その発言の後半はともかく前半部分は彼女にとって否定すべきもので。
「でもクラスの男子にも、いい人はいますよ? 例えば…… えっと……」
<その人の名前を口に出すのが恥ずかしい>という思春期特有の照れ。
あまりにわかりやすい反応に、二人もニヤニヤを止めきれず苦笑いするほかない。
「わかったわかった。じゃあ今日は部活なかったよね。私達が奢るから喫茶店行こうか。
色々と聞きたいこともあるしね。いいっしょ?」
「え? ええ……」
はい、尋問確定。
「さて、もうそろそろ男子が戻ってきそうだね。渡してないのはあと一人だけど」
晶は軽くなった袋をくるくる振り回しながら飄々とつぶやく。
すると、金額を確かめもせずに財布に収め暇そうにしていた委員長から指摘が入った。
「自分自身を忘れてない? 忘れてたならあと二人。高野さんも結構あったんでしょ?」
「私はいいの。つまり袋の中身はあと一人分。袋ごといくよ〜」
そう言って、振り回していた袋を沢近が勝手に占領している席の右隣へとロングパス!
「んっ。……え?」
キャッチして内容量に戸惑う彼女の表情は、その紙幣の枚数に相応しかったといえよう。
放課後。
体育館裏に一組の男女がいた。女は高野晶、男は冬木武一である。
「全員に渡しておいたよ。少しの間撮影がやりにくくなると思うけど我慢してね」
「それくらい平気だって。確かにしばらくはカメラを必要以上に意識されそうだけど、
被写体に何のお礼もしないというのも僕の信条に反するからね。感謝してる」
あれだけの臨時支出が痛くないはずはないのに虚勢を張る冬木。漢だ。
「とまあ、それはそれとして。例の報酬」
冬木に突き出される細い掌。
「……容赦ないね高野さん。こんな財政危機の時にさらなる出費を要求するなんて。
デジカメ愛好仲間のつもりで接してたけど、僕ってビジネスの相手でしかなかった?」
「冬木君はいい友達だよ。ただ、ビジネスに私情は挟まない主義なの。
モデル代まで併せて貰おうとは思わないけど、仕事した分の報酬だけはきっちりとね」
「とほほ……。高野さんにはかなわないや」
そう言って数枚の高額紙幣を晶の右手に恭しく捧げる。
海やキャンプなどで晶が撮影していたデジカメのメモリーカードと供に。
「やっぱり水着写真は売れ行きが凄かったね。特に沢近さんの食い込みを直してる写真。
あれだけのベストショットを狙って撮れる高野さんの腕前には畏れ入るよ」
「ふーん。じゃあ着替えとかお風呂の写真も撮っておけばよかったかな」
そんな過激な返答に、ちょっと迷った末に冬木が一言。
「……ひょっとして、彼女たちとはうわべだけの付き合いなの?」
「まさか。冗談だよ」
滅多に表情の変化を見せないだけに、どこまでが本気の発言なのかさっぱりわからない。
「またこちらから商談を持ちかけるかもしれないけど、その時はよろしくね。じゃ」
彼女はいったいどういった目的で、これほどまでに蓄財に励んでいるんだろう。
バイトのために足早に去ってゆく晶の影を見ながら、冬木は漠然とそんな事を考えていた。
そんな二人を体育館の角でこっそりと眺めていた人影がひとつ。
「た、体育館の裏で男女が二人っきりってことはやっぱりあれだよね。
晶ちゃん、冬木くんと隠れて付き合ってたんだ! 今まで全然気が付かなかったけど。
モデル料を晶ちゃんが受け取らなかったのもそういう理由だとすれば納得できるし」
塚本天満、いつも通り一人合点。
旅行で撮っていた写真の報酬を晶が受け取っていたことすら角度の関係で見えていない。
「でもどうしよう。八雲に頼まれてこのモデル代を返しに来ただけなのに、
このタイミングで出て行ったら絶対『見られた!』って気付くよね。やっぱり。
ここはいっそ八雲にさえ黙っていれば私がお金を返していないことはばれな……
だめだめ。私があの子に嘘がばれなかった事なんてほとんどないんだから」
心が視えているのだから見破られて当然。視えていなくても多分天満の嘘ならばれる。
そうこうしているうちに、用件を終えた冬木も体育館裏から立ち去ろうとしていた。
「うーん……。今見つかるわけにはいかないし、ここは一旦退散よ!」
塚本天満、八雲に頼まれた返金もとりあえず忘れて、帰宅。
その夜に誰かに教えたい衝動を抑えきれず、沢近に電話をかけたとかかけなかったとか。
―――翌日の朝。
冬木は教室の引き戸を開けた途端、見慣れた男子の集団に取り囲まれた。
「義兄弟の誓いを忘れたか、冬木! こっそり彼女を作るとはもってのほか!」
西本たちエロ軍団の結束は固く、『彼女を作る奴は裏切り者』という掟は絶対だ。
だが、冬木には身に覚えのない嫌疑である。当然こう主張する。
「じょ、冗談だろ? みんな何勘違いしてるんだよ。落ち着けって」
「悪事千里を走るとはよく言ったもの。すでに貴様の蛮行は周知の事実だっ!」
どういう順路を経たものか、すでに冬木×晶の噂は歪曲されて広まっているらしい。
「誤解だっ! 諸事情で全ては明かせないけど…… あー、弁護士を呼べぇー!」
「天網恢恢疎にして漏らさず! 神妙に我々の裁きを受けるがいい! うりゃっ」
女子の中での晶の立場を慮って真実を口にできず、責められ放題になる冬木。
天満があらゆる揉め事の元凶になるのは、もはや宿命? なのかもしれない。
《おわり》
別の日の放課後。校門の近くを歩いている帰宅予定の塚本姉妹。
「姉さん、今日の晩御飯は何にしようか?」
「んっとね。チラシでひき肉が安かったはずだから、ロールキャベツ!
それにしても今日は風が強いねー。目に砂が入らないようにしないと」
「うん。本当に…… きゃっ」
突風に煽られ翻る二人のスカート。その風音に《カシャッ》という僅かな音が混じる。
「??」
靴箱の陰に隠れていた冬木だが、数分待った後に警戒を解き、喜びの声をあげる。
同じ頃に靴を履き換えようとしていた二人の男、播磨と花井に気付かぬままに。
「念願の 塚本姉妹のパンチラ写真を デジカメに撮ったぞ!」
:そう かんけいないね
→ → :こわしてでも うばいとる
:ゆずってくれ たのむ!!
「な 何するんだよ お前らー!」
播磨と花井が他の奴に見られるくらいなら破壊するという覚悟で繰り広げた争奪戦。
結果、この二人の争いに勝敗がつく事はなかった。……しかし、別に敗者ならいた。
壊されたデジカメは、光学12倍ズームのプロ仕様。冬木の財政難の根は深い。
626 :
616:04/04/11 23:19 ID:KWHtidQ6
「クラス全員分あるよ〜」と昔言っていた冬木くん。ならば私にも隣子を一枚。
などと妄想した結果の売上配分話。多額の出費+理不尽な制裁と冬木がとっても不幸です。
あと、前回の反省を踏まえアイスソードなネタは本文から隔離してみ…… ズレてる(涙)
私的にファンである方々の作を立て続けに三作読めて何やら幸せ。
>>616様
様づけしていいかな? いいよね?
マ ジ で あ り が と う 。
面白かったです。
売り上げの分配というシンプルなネタに絞ったことで
女の子たちのそれぞれの反応が際立ってて
読んでてニヤニヤしました。
あとさりげに隣子ファンにサービス感謝。
拳児は小学校中学年、絃子は中学生位の時の頃だったろうか。
「絃子姉ちゃん見てくれよ!」
「なんだい拳児君?」
「夏休みの宿題だよ」
拳児は嬉しそうな顔をして絃子に一枚の絵を差し出してきた。
その絵には雲ひとつない鮮やかな青空に、まぶしく輝く太陽。
そして、少女とその少女より背の小さい少年が手を繋いで仲良く歩いている絵が描かれていた。
「これはもしかして私と君かい?」
絃子がそう尋ねると拳児は頷きながら、その顔には感想を求めていた。
「ふむ、なかなかうまいじゃないか」
その言葉は拳児を大変喜ばした。
当時、拳児は勉強が全然できない悪ガキで周囲から問題児とみなされていた。
対して絃子は頭も良く運動もでき、そつなく何でもこなす優秀な子であると評価されていた。
だから、絃子は拳児にとって憧れの存在であり大好きな人物であった。
その絃子に絵がうまいと褒められ、そして認められたことは拳児にとっては
とても嬉しいことなのである。
「だがな、拳児君。私はもう少し美人だと思うけどな」
絃子は意地の悪い笑みを浮かべて、そう言った。
「う……。」
確かにその通りであることは拳児にも分かっていた。
自分の今の画力では絃子をきれいに描ききれていないということを分かっていたのである。
「よし、それなら今度は本物の絃子姉ちゃんより綺麗に描いてやる。
そして、絃子姉ちゃんを驚かしてやるからな!」
「そうか、では楽しみにして待っているよ」
絃子はやさしい笑みを浮かべながらそう言った。
拳児は漫画を描きながらそのようなことを思い出していた。
あの後、拳児は播磨アイを発動して何枚も絵を描いては絃子の所に持って行った。
そのたびに褒めたりけなされたりしたものだった。そのやり取りは本当に楽しかった。
だが、宿題の絵が完成し提出した後、絵を描くことはなくなってしまった。
ケンカに夢中になってしまったからである。
当時、ケンカは絵を描く以上に夢中になれるものであった。
やるかやられるかのスリル、一瞬の間に決まる駆け引き、この血を躍らせるものは拳児にとって
すごく魅力的なことであった。
だが、天満の一件を通じて現在また絵に関わることとなった。
最初は愛しの天満と烏丸が仲良くしている所を見て、
その現実から逃れるために漫画を描き始めた。
そしてその漫画を編集社に持って行った時、才能があると褒められた。
そう、また絵で自分という存在が認められたのである。不良であるこの自分が。
そのことが素直に嬉しかった。しかし、そこで自分の尊敬する二条先生が
烏丸であることを知りショックを受け、一度は漫画を描くことを止めようと思った。
だが、お姉さんと出会い励まされ、自分の漫画が面白いと言われたことが嬉しく、
また漫画を描く気がわいてきた。そして、漫画を描き続けることを約束した。
今考えると、こうして漫画を描き続けられるのは絃子のおかげかもしれないと思う。
あの時、自分という存在を認めてくれた絃子、そのことの嬉しさ。
絵を描き続けるうちに気づいた絵を描く楽しさ。
そのようなことを知るきっかけをくれたのが絃子である。
あの時のことがなければ自分は今漫画を描いていなかったかもしれない。
(そういえばあの絵はどうしたっけ……)
絃子は拳児が漫画を描いているところをこっそりドアのすき間から見ていた。
そして、拳児と同じように絃子も昔のことを思い出していた。
当時、自分は周りから優秀だとみなされていた。
そのことに加えこのような性格のせいか、あまり親しい友達はいなかった。
だか、拳児は違い自分になついていてくれているのが嬉しいものだった。
(あの頃はお互いもっと素直だったと思うのだがな……)
そんなことを考えながら少し嬉しそうに拳児のうしろ姿を見ていた。
あの後、拳児は何枚も描いて自分のところに持ってきた。
そのたびに褒めたりけなしたりしたものだった。
そして、画力はだんだんと上がっていった。
お世辞抜きに絃子は拳児に絵の才能があると思いもした。
だが宿題が完成した後、拳児が絵を描くことがなくなった事をひそかに残念がっていた。
しかし、今は漫画とはいえまた絵を描き始めたことが素直に嬉しかった。
一時はケンカばかりしていたが、今はそれよりも夢中になれることを
見つけられて良かったと思う。
ふと、当時完成した絵がまた見たいな、などと思った。
それから数日後、絵が完成した夏休み最後の日と偶然にも同じ日……
「絃子見てくれよ!」
「なんだい拳児君?」
――Fin.
播磨と絃子の組み合わせは自分も好きなのでSSを書いてみました。
SSを書くのは初めてなのでアドバイスをもらえたら嬉しいです。
>>629 いいしごとしてますね〜
他の人はどうか知らないが私はこれでいいと思いますよ
>>616 GJ!久々に隣子SS読みたくなってきた
誰か作っていただけたらなーと思う所存
職人さんの都合もあるでしょうしスルーしてくれても一向に構いませんよ
>>629 GJ!初めてでこれは素晴らしいと思います
これからも精進して下さい
638 :
Classical名無しさん :04/04/12 00:22 ID:zTo1drnw
>>629 いいです♪ よく出来たSSだと思いますよ〜。普通に上手いっすよ。
播磨と絃子先生の過去がこんな感じかもって思えましたし。
なにより、このように考えると播磨の漫画が、ただの笑いネタでなく感じられて良いなと。
作者もここまで考えていないかもなぁ〜・・・。播磨×絃子先生SSをありがとう!!
>>629 よく書けてると思うです。てか、はじめてですか。すげー。
無駄な描写とかないぶん、二人のやりとりの情景が目に浮かんできます。
播磨の成長とイトコの彼への気遣いが見れてGJ。
文体が硬い感じがしますが(「である」「こととなった」など)
それはそれで
>>629さんの芸風という気もしますんで、今後に期待してます。
あとこの文体でいくなら地の文に「すごく」って言葉は少し幼い気がするので
「たいへん」「とても」のように、言葉の雰囲気をそろえるといいかと思います。
などと、つらつらと。なにかの参考になれば幸いです。
>>616 お疲れさまッス。
随所のネタや言い回し、流石ですな。
しかしやはり晶は難しい。
はっきり言わせてもらえば、喋り方や思考に違和感を感じました。
というか晶というキャラそのものが、各人によってイメージがだいぶ違う
トンデモナイやつなので仕方がないというか何というか……
仁丹、晶も掘り下げてくださいな。
あとロマサガネタはかなりツボ。
壊れたデジカメが一眼レフじゃなかったのが不幸中の幸いか冬木(笑)
>>629 新たな職人誕生の瞬間か!?
何はともあれお疲れさまッス。
文章力そのものは高いように感じました。
惜しむらくは可もなく不可もない感じに仕上がったことでしょうか。
それはそれでいいと思いますが、できれば作者さんのカラーを作品に反映させた方が
よりいっそう面白い作品になると思います。って初投稿でしたね、失敬。
後は本誌ではっきりと「播磨が絃子さんに見せるのは恥ずかしい」と言っていただけに
最後の展開が素直に納得できません。
もう一つ何かが欲しかったなと感じました。
色々手厳しいことを言ってしまいましたが
次回作期待ageです。
体育祭終わったらもう体育祭SS投下されないのかなぁ(´・ω・`)
>>641 じゃ、俺がご希望にこたえて体育祭のSSでも投下するか。
「奈良君の災難〜体育祭編〜」
今年もやってきた。奈良健太郎にとって一年の中で一番、憂鬱なイベントである。
いや、別に奈良が体育が嫌いとかそういうわけではないのだ。
「なー、奈良っち、今年の体育祭もブリーフはいてくるんだよね」
冬木のそのセリフを聞いたとき「またか」と奈良は心の中でため息をついた。
「去年もそうだったんだけど、奈良っちのブリチラの写真、結構、高く売れるんだよ!」
そうなのだ。このような余りにも馬鹿馬鹿しい理由で、奈良は体育祭とか体操服を
着用するイベントのときにブリーフをはくように強要されることが多いのだ。しかも
クラスの下っ端だからクラスメイトの命令には必ず従わなければならない。
「うむ。奈良は、体育祭当日、必ずブリーフ着用だ!いいな?」
委員長の花井の声が教室の中に響き渡ったとき、奈良は思わず机に顔を伏せた。
どっと笑い声が起こる。
「・・・もうやめてくれ。塚本も他の女子生徒もいるじゃないかー」
そう言いたかったが、声に出せなかった。
「奈良にはブリッジもやってもらおう。そしたら短パンの中からパンツ丸見えだからよ」
播磨が嬉しそうな表情で言う。
「いやーっ、播磨くんったらスケベ!変態!」
「何を言うか!俺は奈良ファンの生徒のことを思って進言しただけだ」
もう涙が出てきそうだった・・・。
どうして、僕はこんな不幸の星の下に生まれてきたのだろう。影法師の如く、目立た
ない存在、クラスの下っ端、ああ死んで今度は花井くんか播磨くんのように生まれ変
わりたいよ・・・。奈良は机をじっと見つめたままそんなことを考えていた。
そして、待ちに待った体育祭当日。朝の教室の中へ入って来た谷先生が元気良く
はっぱをかける。
「いいか、今日は必ずD組に勝て!学年優勝を目指せ!負けることは許さん!」
「はーい!!先生!!」
そして、谷先生が出て行った後、女子生徒全員が出て行き、男子生徒の着替えに
なった。冬木が奈良に歩み寄り
「奈良っちー。約束どおり、はいてるよね?」
と嫌らしい目つきを浮かべながら聞いた。
「あ・・・うん、ちゃんとはいてきたよ」
本当は泣きたいところをぐっと堪え、奈良は答えた。播磨も奈良に近寄り、彼のズボン
を少し引っ張って
「うん、確かにはいてきているな。偉いぞ。見直したぜ!えーっと奈良よ。て・・・いや、
塚本に手出さねえ限りは俺とお前はよきダチだからよっ!」
と奈良の肩に手を回してきた。
嘘だ!良き友達なんて・・・本当は僕のパンチラを見たいだけのくせに・・・。
奈良は唇を噛み締めて黙っているだけだった。
ここでネタ切れ。誰か続きを書いてくれ!(藁
さて本スレから流用ですよ
9 浮舟 sage 04/04/09 01:40 ID:JrkPH2m7
【スクランスレ初心者の方へ】
スクランスレには固定荒らしが張り付いています
荒らしに反応する人も荒らしなので荒らしにはスルーで
削除依頼を通しやすくするためにも放置を覚えましょう
2chのガイドラインで共通なのでなぜ?と言われても困ります
納得がいかない! 荒らしを叩きたい!
という方は以下のスレでどうぞ
スクールランブルのコテハン等を叩いたり引張ったりするスレ3
http://tmp2.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1080911632/
645 :
629:04/04/12 02:28 ID:Ji.f0ClU
みなさん感想ありがとうございます。
>>639さん
639さんの言う通り、私も文体が硬いかなと思っていました。
あと確かにこの文体でいくなら「すごく」という言葉は少し幼いですね。
今後いろいろな語彙の勉強をしていきたいと思います。
>>640さん
確かに自分自身のカラーが出ていませんね。
これは今後の課題として、これから自分自身のカラーを作っていければと思います。
あと、最後の展開についてですが、これは私の書き方が悪かったと思います。
私も指摘されたことが気になっていたので、一応ここでは数日後に
昔に描いた絵を探し出し、それを見せに行ったといところまでを今回書き、
その後それをきっかけに播磨が漫画のことについて絃子に話したかは皆さんのご想像にお任せ、
という感じで書いたつもりでした。複線として二人とも当時の絵を気にしている描写を
いれましたが、最後を少しぼかして書きすぎたために分かりづらかったですね。
最後の詰めがが甘かったです。書き方が悪くてすいませんでした。
今後注意したいと思います。
みなさんのアドバイスを元に次回作もがんばりたいと思います。
その時はまたアドバイスをお願いします。
>>644 はあ?
>>642-643のどこが荒らしなのか理解できないが。
それとも奈良のSSを出せば即、荒らしになっちゃうのかな?
ずいぶんとご都合主義な社会ですね・・・。
647 :
Classical名無しさん:04/04/12 09:56 ID:.KKhM2kw
職人の皆様、旗派SSお願いします。
おちんちんが小さいのはだあれ?
やっぱ絃子→播磨とかサラ→播磨が好きだなー。
播磨×絃子とか播磨×サラじゃないところが大事。
650 :
616:04/04/12 21:44 ID:JgoAza6U
>640
ご意見ありがとうございます。
確かに表立ってお節介を焼く時点でやる気ゼロなはずの晶とはかなり違う雰囲気。
おちゃめな言動は譲れぬ一線として、晶らしい描写に近づけるよう精進します。
>637
私も読みたいです。誰かが書いてくれる事を共に期待しましょう(笑)
(笑)←
人イナイし……。
投下します。初投稿ですんで、よろしくお願いします
時期は二月上旬。
冬真っ盛りの頃、矢神高校では、あるイベントが催されていた。
マラソン大会。
ある者は名誉のため全力で走り、またある者はだらだらと走る。
この日のために、数日前から風邪のフリをする生徒まで現れる。
校庭では全校生徒が集まり、体育担当の教師の話を聞いていた。
「えー、途中で歩いたりせずに、完走するようにぃ……」
教師の話はまだまだ続く。
そんな中、播磨拳児は異様な雰囲気をかもし出していた。
それはまるで、猛禽類が小動物を狙うが如く、鋭く恐ろしい物だった。
まあ、彼の事だ、恐らく塚本天満にいい所を見せようと意気込んでいるのだろう。
靴紐を固く縛り、トレードマークのサングラスをかける。
(完璧だ……。天満ちゃんに優勝を捧げるとするか!)
花井春樹はそんな播磨を見て、やる気を出していた。
(あいつがやる気を出しているのだ、僕もやらねばな)
要は二人共いい所を見せたいだけだ。
しかし哀しいかな、優勝は当たり前の如く一人だけに与えられた権利。
誰もがこの二人の衝突を予想した。
パン!
スタートの銃声が鳴る。
今回は男子、女子共に同時にスタートし、同じコースを走る事になった。
今までは男子10キロ、女子5キロだったのだが、今年は間を取って7.5キロとなった。
よって男子に余裕が生まれ、女子に余裕が無くなる。
その被害を一番受けるであろう女生徒が一人。
塚本天満である。
最後尾でふらふらと走る天満。
本来なら、播磨が放って置かないのだが、スタートと共に猛ダッシュしていったため、播磨は遥か前方。
沢近達三人娘も先に行ってしまい、天満は一人だった。
……と、思われたのだが。
「む、塚本君ではないか」
「ハア、ヒイ……花……井くん?」
何故花井がここにいるのか?
彼も猛ダッシュしようと思っていたのだ。
しかし、彼はある任務を任されていたのだ。
最後尾からサボりがいないか見張りながら走れ。
そう教師に言われたのだ。
八雲へのアピールは泣く泣く諦め、この任務についていたのだ。
「安心したまえ、僕がいるから一人で走るという事は無い」
「あ……ありがと……ハア、フウ」
一方こちらはトップ集団。
播磨は当然トップを走る。
大分走り込んだのだろう、体力の心配もいらないみたいだ。
播磨を先頭に、陸上部を中心とした生徒達が走っている。
その少し後方を走る女生徒がこれまた一人。
(播磨さん……だ)
塚本八雲である。
トップ集団に楽々とついていく八雲。
本来なら、姉を気遣い一緒に行くのだが、クラスの期待を一身に負ったため、現在トップ集団。
サラも後方にいるため、八雲は一人で走っていた。
……と、その矢先に播磨を発見。
(動物の話がしたい)
と、思った八雲、今が絶好のチャンス。
徐々に播磨との距離をつめる。
播磨も視線を感じた。
なんか背中がむず痒い。
ふと、後方を見る。
「あれ、妹さんじゃねーか」
「ど、どうも」
「最近ね、八雲がハア、ヒイ……ね、播磨君の事よく話すの」
「なに、ヤクモン…いや、八雲君が」
天満は息苦しい中、自分の妹の話を続ける。
とても嬉しそうに。
「播磨君……のね、話をする時の八雲はとっても嬉しそう……」
花井は天満の話を聞いていて、二つの事を思った。
一つは八雲の事。
何故、播磨の事を?
そんなに嬉しそうに話すのか?
自分の事はどうなのだろうか?
そして二つ目。
塚本天満の事である。
妹の話をする時の天満はとても嬉しそうだ。
おそらく八雲も、播磨の事を話す時、同じくらい嬉しそうな顔をしているのだろう。
こんな所で姉妹の共通点を見つけた気がした。
「……ふう……」
深い溜息をついた。
「伊織は元気かい?」
唐突に播磨が口を開いた。
何から話そうか悩んでいた八雲、これは渡りに舟。
「元気です。とっても」
「そりゃ良かった。また怪我しねーか心配なんでな」
「あ、あの時はどうも……」
走りながら頭を深く下げる八雲を見て、播磨は少し笑った。
そして……あの日を思い返す。
――最低だよ……播磨君!――
(あの時ゃあ地獄だった……。やけにおにぎりがしょっぱかった)
「播磨……さん?」
右斜め上を眺めながら目に涙を浮かべている播磨を見て、八雲は首を傾げる。
八雲の声も聞こえていないようだ。
天満の事となると、こうまで人が変わる播磨。
八雲はそんな所にも興味を持ったに違いない。
5キロ地点を通過した。
現在播磨が一位で八雲が二位。
いつの間にかトップ集団からも抜け出していた。
景色が流れていく。
少しずつ切れ切れになっていく息。
足は重くなる。
汗もべたべたして気持ち悪い。
だが八雲は苦にならなかった。
(かー、走り込んだとはいえ7.5キロはきつい……。)
あと2キロも無い。
数分もすればゴールだ。
(スパートかけるとするか)
播磨は急に速度を上げた。
それに気づいた八雲、同じく速度を上げる。
少しの間でも側で話していたいから。
少しの間でも彼を理解したいから。
恋愛感情ではない。
それは八雲自身、わかっているのだ。
これは恋愛感情ではない……。
播磨達に5分遅れで5キロ地点を通過した花井と天満。
「さあ、あと2.5キロだ塚本君。頑張りたまえ!」
「ふあーい」
天満は重くなった足を懸命に動かす。
花井は天満の背中を軽く押す形で走っている。
「……あ、それでさっきの話の続きだけどねー……キャッ……!」
花井に軽く押されている状態なだけに、少しつんのめってだけで、転んでしまった。
「つ、塚本君」
慌てて天満を抱える花井。
「怪我はないか」
天満はコクコクと頷く。
「だいじょーぶ、これ位平気だよ」
明らかに平気ではないのだ。
どうやら足をひねったらしい。
(…………)
しばし考えた花井。
結果、一つの結論に達した。
「僕に負ぶさりたまえ」
「え、でも……」
花井の真剣な声を聞き、天満も悩む。
…………
パン!
ゴールの銃声が鳴る。
結果一位は播磨、二位は八雲。
栄光の優勝は播磨に輝いた。
(いよっしゃー! これで天満ちゃんに優勝を捧げる事が可能に!)
一人浮かれる播磨。
八雲はそんな播磨を見て(話かけずらい……)と思ったらしく、またの機会に話す事にした。
続々と生徒が帰ってくる。
三人娘達もかなり上位に位置していた。
播磨は天満の帰りをただひたすら待つ。
待つ。
(待ちきれねえ……)
この短気さ、どうにかならない物だろうか。
いてもたってもいられずに、外まで見に行く事にした。
その頃天満と花井。
花井の背中に負ぶさり、少し顔を赤らめている。
「足はまだ痛いか塚本君」
「あ、大丈夫だよー」
残り数十メートルといった所。
角を曲がればもう学校だ。
「あ、ここでもう降ろして……」
「む、しかし怪我をしている」
「で……でも、恥ずかしいし……」
仕方ない、と花井が天満を背中から降ろす……一歩手前に見つかってしまった。
「……天満ちゃん……? メガネ……?」
あぁ、なんという事だ。
播磨の目の前には天満を負ぶる花井と、顔を赤らめている天満。
先程までの嬉しさは一体どこへ。
「お前との友情もこれまでだ。死ぬしかねえぜメガネ!!」
「……なんだかよくわからんが、貴様に言われるとなぜか腹が立つ!」
勝手にヒートアップしている二人。
おろおろする天満。
なんだなんだと、かけつける野次馬。
それを傍観する教師陣。
矢神高校は今日も平和だ。
え?終わり?
これからってとこじゃんか
ここに投下するのは初めてなので、批判、ご意見よろしくお願いします。
花井→八雲→(?)播磨→天満にしてみました。
オチが微妙になってしまいましたm(_ _)m
花井・天満って今までどこでもありええなかったコンビ。(・∀・)イイ!
GJ!とても上手いと思います。特に八雲が可愛いです(・∀・)
ただ、確かにオチがちょっと弱いかも、と思いました
次回作期待してます!頑張って下さい
そう?自分は王道的にオチたなと思ったけど。
まあ人によって評価も違うし自分はよかったってことで
名作とまではいかないにしても俺は結構好きかな。
>「いひゃい!いひゃいれす!」(「痛い!痛いです!」)
>「黙れ!今日という今日は絶対許さん!」
>「おひゃひゃひぇひぇんひぇいひゃひゃひゅひぃんひぇひゅひょ!ひひょひょひぇひぃひゃひゅひゃひ
>ひゃんひぇひゅひゅひゃひゃ!」
>(「刑部先生が悪いんですよ!人の絵に落書きなんてするから!」)
>「それとこれとは話が別だ!もういい、このままピカソの所へ旅立たせてやる!」
>「ひひゃー!」(「いやー!」)
みさくらなんこつを思い出してしまった・・・・
ふたなりでザーメン汁でエライ事になるな<みさくらなんこつ
感想、意見 ありがとうございます。
とても力になりました。
自分の作品を読んでいただいて、「好きだな」、「よかった」
「イイ」、「頑張って」などの非常に嬉しい意見を聞く事が出来、
非常に嬉しいです。これからもよろしくおねがいします。
オチをもう少し磨きたいと思います
体育祭ネタ考えたんだけど、ジャージイベント後の落ちがうまくいかない…
旗は難しい
>>673 同感です。
個人的にはネタ云々より沢近のいじり加減が難しいですね。
下手すると旗派の方々の沢近イメージを壊してしまうことにもなりかねないですし。
まあ腹黒ばっかり書いてるのもアレなので、自分も次は旗でいくつもりです。
マガジン読み次第ネタを考えたいと思います。お互い頑張りましょう。
しかしあんたほんとID変わんねーな
ぶっちゃけもうIDに関しては諦めました。
文体で丸わかりな気もしますし、今のIDは微妙に格好いいので
個人的には満足してます。
とりあえずもう寝ます。おやすみなさい。
超鈍足でレスを返してみる試み。
>484
なんかもう、サラはそういうイメージがついてしまってどうしたものかと。
……振り返ればそういう話を自分で書いた気もしますが。
これからは白サラ白サラ。
>497
実はこういうのしか書けないとかなんとか。
びしっと決めるのとか、ふにゃっと落とすのとか、書けるようになりたいです。
>676
IDはお互い……いやまあ、本来の識別、という意味ならこれ以上ないって
くらいその役目を果たしてくれてますが、ID。
コンスタントに書かれる方や新規の方も増えてきた今日この頃。
文章が粗いな、と思っている方、逆に言えばまだまだ良くなる余地が山ほどある、ということ。
期待してます。
そしてロートルも頑張らにゃなー、とかなんとか。
俺としては播磨に八雲を絡ます時、「動物の話したい」ネタがスタンダードに
なりつつあるのが寂しい。多少無理があってもSS職人さん毎に特色があっても
いいんではないかな、と。
播磨→八雲 「漫画を見てもらう」
八雲→播磨 「動物の話がしたい」
お約束に変化を求めるとやっぱり無理が出てくるんですよ。
もう「友達」なので、話をするのに理由なんていらないとも思うんですけどね。
>>678 そーですねー。同感。
あくまで「スクラン」の世界で、でも職人さんの世界観・やりたい事をハッキリさせて…。
・・・それが出来る奴は大した奴だよ。
更に言えば、「NON色恋沙汰」のSSを書く人はとてもスゴイ。
俺は今までのまんまでも好きだな
職人さんたちも「スクラン」の世界をドコまで自分色に染めていいのか分からない
状態に追い込んでもねしょうがないしね!あくまで基準は人それぞれだから!
変える人は変えてると思うしね!
おだてられておにぎり一個目。動物の話でいいじゃないか。
《投下》
塚本八雲の朝は早い。いつも朝六時には起きて二人分の朝食の準備にかかる。
が、今日は少々早すぎた。側の目覚し時計の針はまだ五時少し前を示している。
「起きようかな…… もう眠くないし」
足音を立てないよう起きて私服に着替え、郵便受けの新聞を取るため玄関を開ける。
するとたちまち飛び込んでくる清涼な空気。今日もいい天気になりそうだ。
わずかに顔を覗かせる太陽に朝露も輝きを取り戻し始める、そんな早朝。
「散歩する時間くらい、あるよね……」
伊織もまだ寝ていたし、朝食の下準備は昨夜のうちに済ませてある。
八雲は心地よい朝の風を浴びに、散策に出かけることにした。
普段の朝と違い、これだけ早いとほとんど町にも人がいない。
自転車で川へ釣りに行くのであろうおじいさんを見かけたほかは、野鳥と木々ばかりだ。
だが、八雲にはそれが楽しい。季節ごとに彩りを変える観葉樹、楽しそうに囀る鳥たち。
自然の癒し、というやつであろうか。気分も晴れやかになってくる。
と、舗装された道の向こうから何か…… 大型犬が駆けてくるのが見えた。
思わず身を竦ませる八雲。彼女はどうしても犬に慣れる事ができない。
小さい頃に一度愛玩犬に噛まれただけのはずなのだが、どうしても苦手なのだ。
大抵の苦手な事は努力で克服している八雲の数少ない弱点のひとつ。それが犬。
その大型犬(セントバーナード)は八雲の足元まで来て、膝元で鼻を利かせている。
自分よりも重いであろうその巨体に詰め寄られ、恐怖のあまり硬直する八雲。
直後、飼い主らしき体格のいい男の影が走り寄り、その犬の頭を押さえつけた。
「すいません、こいつでかいのに人懐っこすぎて…… あれ? 妹さんじゃねーか」
「は、播磨さん?」
八雲はほっとした。犬が頭を抑えられて動きを封じられていることより何より、
そのセントバーナードが動物と仲の良いあの播磨が連れている犬だとわかったから。
「あの…… おはようございます。その犬……」
「ああ、おはよう。妹さんも早起きなんだな。こんな時間から外を歩いてるなんて。
それより、驚かせちまったようですまねぇ。いきなりこんなのが突っ込んできたらな」
犬に謝るよう促す播磨。すると犬は姿勢を正して最敬礼をし、その後腹這いに。
「こいつも悪気があったわけじゃねえんだ。これで許してやってくれねえか?」
「あ、はい。もちろんです。……ところで、播磨さんが飼っているんですか? その犬」
「んー。そういうことになるのか? 動物園に行く必要のなかった奴等だから」
その一言にはっとする八雲。あの時播磨は犬猫、兎などは野に帰していたのだ。
首輪が見当たらない時点で野良だとわかるのだから気付くべきだったと悔やむ。
「すいません。辛い事を聞いてしまって……」
そんな心配そうな表情で言われても、播磨にははぐらかす事くらいしかできない。
「そういや紹介がまだだったな。こいつの名前はネロ。ぴったりの名前だろ?」
「……ネロ?」
歴史上の暴君を見るような目で、おそるおそるその犬にもう一度視線を送る八雲。
そしてその態度を訝しげに見つめる播磨。
「『世界名作劇場』のあの犬と同じ名前にしたつもりだったんだが…… 世代の差か?」
一年しか違わない後輩にそんな世代の差があると思う播磨。どうかしている。
が、その言葉に八雲はさらに困惑の度合いを強めた。
(あの作品…… だと思うけど、犬はパトラッシュで飼い主がネロだったような……)
八雲の感覚は正しい。だが、純真な播磨にそれを告げる勇気は八雲にはなかった。
播磨は何かを思い出したかのように、八雲に質問をぶつける。
「そういや、妹さんも塚本もいつもこんな時間から起きてるのか?
いや、……お姉さん教室で寝顔を見せてる事が多いからよ。寝不足なんじゃねえかって」
かあぁぁっ。
姉の恥が自分の恥であるかのように真っ赤になる八雲。
「……いえ、今日はたまたまです。私も姉もいつもは6時過ぎに起きます」
本当は天満が起きるのは八雲の一時間以上後なのだが、そんな事は口にできない。
姉の不名誉から話を逸らすために、播磨にも同じ質問を返す。
「播磨さんは、いつもこんな早朝から犬の散歩を?」
「ああ、人通りの少ないこんな時間帯じゃないと一緒にいてやれねえからな。
野良になっても逢いたがってくれるこいつらに恩返しするには早朝しかねえんだ。
犬猫・リス・兎なんかでも、人通りの多い夕方に不良が引き連れてたら怖いもんだろ?」
―――それは、何となく、わかる気がして。
「……あの、でしたら今日は私もその散歩にご一緒してもかまいませんか?」
「ん? でも、いいのか? ……犬、苦手なんだろ?」
驚く八雲。播磨はあの短時間の出来事の中でそのことに気付いていたらしい。
校庭で野犬に襲われそうになったのに周囲には静観されていた時の不安感を思い出す。
あの時の彼らとは違う播磨の洞察力とその優しさに安堵し、感謝すると共にこう述べる。
「いいんです。播磨さんの犬なら、きっと優しいから……」
「まあ、ネロは確かに優しい奴だけどな。……じゃあ、一緒に行くか」
そう言って襟元から文鳥をつまみ出し、肩に乗せ直して歩き出した播磨。
少しうしろを付いて歩く八雲。その隣りには首輪も紐もつないでいない大型犬のネロ。
しかし、自分でも不思議に思うほど、八雲の心にまったく犬への恐怖はなかった。
(帰りがきっと少し遅れちゃうな…… 姉さんには悪いけど、お昼は学食にしてもらおう)
朝焼けに伸びる影が、後方で播磨と八雲を重ねていた。
《おわり》
686 :
682:04/04/15 20:17 ID:6t4CSsNE
誰かが書いていそうに思った伏線が何故か残っていたので遠慮なく浪費。
あの3巻にいた犬の名前はネロだと私だけが確信しています。
なごみますわ〜
みんな動物園だと思っていた。言われてみて初めてきずいた!
アレクサンダーとかもどうしてんでしょうかねー?
間違えた
×きずいた
○きづいた
メル欄にsageって入れろ
乙。お約束だとか王道だとか、そういうのはやっぱり面白いからそうであると思うのですよ。
捻らなくとも味付け次第で甘々なのからこういうほのぼのまで、やりようはいくらでも。
でも、伏線と言うより実は中の人が何も考え(ry
ネーロー
「っ…」
離れた唇に残る、彼女のそれのやわらかい感触が名残惜しい。
はじめて「それ」をしたときに心に広がった大きな苦みは、
まるでブラックのコーヒーのようにむしろ中毒になっていった。
「また…しちゃった…」
二人きりの教室──
傾き始めた太陽の光に照らされて眠る春の女神を前に、
わたしはまた、この背徳に自己嫌悪していた。
嘘だ。
本当は、この時間がずっと続けばいいのに、と思ってる。
何も知らない眼下の姫君は安らかな寝息がつづく。
同性のわたしから見ても綺麗な──綺麗すぎる寝顔。
この顔にたくさんの男の子が惹きこまれたんだ。
もちろん顔だけじゃない。
お姉さん思いで、友達思いで、動物のことが大好きで、
料理が得意で、勉強もできて、運動もできて、
あと、みんな彼女が引っ込み思案だと思ってるけど、
みんなが思ってるよりずっとずっと強い、
わたしが出会ったなかで最高の女性。
……でも、今は、今だけは、わたしだけの彼女。
「わたしだけの、八雲」
693 :
692:04/04/16 01:29 ID:gYrQd.O.
はじめまして。
まず、百合ネタお嫌いな方はごめんなさい。
ちょっと思いついたので突発的にシチュエーションだけ書いてみました。
ほんとはもうちょっと続けられそうだったんですが
こういうのアリかどうかわからなかったので
お試しで投稿してみました。
感想苦情などありましたらぜひお願いします。
エロパロ行くとハァハァというレスが大量に付くと思うよ
>692
逡巡するサラの心理描写が洗練されていて素敵だなと思いました。
百合は苦手だけど、エロパロの域じゃなさそうだからこっちですね。
随分と間が空きましたが、また書いてきたのでよろしければどうぞ
八雲とサラのお話です。普通っぽく。
雨は私を少し憂鬱にさせる――。
「困ったな……傘、持って来てないや」
窓の外を見上げ、物憂げに呟く少女。名を、八雲という。
仰いだ空は泣き崩れ、しとしとと恨みがましく涙を零す。
季節は、梅雨。じっとりと湿った空気が重たい。
この時期、雨の心配をしないのは無用心と言わざるを得ないが、
手元に無い物はどうしようもない。
(姉さんも困ってなければいいけど……)
曇天模様の空を見上げたまま、同じ高校に通う姉のことを思う。
そういえば今朝、寝坊した姉に追われ、慌しく家を出た時
傘を持ってくるのを忘れてしまったのだ。せっかちな姉のことだろう、
すっかり忘れているに違いない。友人の多い姉は、恐らく大丈夫だとは思うが。
「伊織も……大丈夫かな」
ふと、懐いた猫の名を口にする。自由気ままに生きる彼(彼女?)はこの雨の中、
ずぶ濡れで凍えているのだろうか。それとも、何処か暖かい場所で雨宿りをしているのだろうか。
梅雨寒なのだろう、背筋がぞくりとした。気にしすぎなのだろうが、言い知れぬ不安がこみ上げてくる。
「どうしたの?八雲」
「……サラ」
いつの間にか傍らに居た金髪の少女。八雲の数少ない友人の一人、サラである。
彼女には華がある――。なんとなく、そんな事を思った。ただ、そこに居るだけで
その場の雰囲気が和らぐような。事実、先ほどの不安感が拭いさられていくのを感じた。
「ううん…なんでもない…」
憂鬱を振り払うかのように頭を振る。友人に要らぬ心配はかけたくない。
「うーん。八雲の悪い癖だな、あんまり自分を押し込めてもいいことないよ?」
人差し指を顎にかけ、うかがうような仕草。からかっているわけではない、
彼女の優しさを八雲は誰より知っている。
「私たち、友達でしょ」
そう言って微笑むサラの心遣いがありがたかった。
「……ナルホド。お姉さんや伊織の事が心配なんだね」
小さく首を縦に振る。結局、思った事をみんな話してしまった。
「この雨でセンチな気分になっちゃったとか」
「…………」
サラの言葉に、思わず恥ずかしそうに縮こまる。多分、耳まで赤くなっているに違いない。
「伊織なら、きっと大丈夫だよ。あの子、賢いもの」
「……そうだね」
サラが言うと本当にそんな気がしてくるから不思議だ。
「それから、お姉さんも大丈夫だよ」
なんだか呆れてるような、おかしいような、複雑な表情。何事かと見ていると、サラは慌てて先を続ける。
「えっとね、さっきお姉さんが変なカッコ…って言ったら悪いか」
「アレは何だったのかしら…確か、お酒のCMで見た覚えがあるような……」
なんだか聞き覚えのある話だ。
「……カッパ…」
話の途中で考え込んでしまうサラを上目遣いに見上げ、ポツリと呟く。
「そう、河童よ河童。河童の格好をしてたのよ。…兎に角、それで帰るトコを目撃したの」
「随分、嬉しそうにしてたから。声、かけそびれちゃった」
「……そう…」
舌を出して笑うサラを眺めながら安堵の息を吐く。意外な盲点だった。
姉は思っていたより行動派だったらしい。
意中の人に雨具(?)を貸してもらったのだろう、小躍りしてる姿が容易に想像できた。
(でも、姉さん……やっぱりそれは違…)
「さて、これで八雲の不安は解消されたわけだ。私の傘で一緒に帰るって手もあるけど…」
姉への思いにはるか遠くを見つめる八雲をさえぎるようにサラが言う。
「部室でお茶していかない?もしかしたら雨、止むかも知れないし」
「八雲ってさ、雨…嫌い?」
ティーカップを用意しながらサラがそんな事を聞く。
「そんなこと…ないけど……」
八雲は躊躇うように呟く。実際、雨が嫌いなわけではないのだ。ただ、気分がもやもやしただけ。
「私はね。雨、そんなに嫌いじゃないよ」
ケトルが蒸気を吹き上げる。カップにお茶が注がれると、ハーブティーの心地よい香りが部屋に広がった。
「雨が振るとね、校庭の、土の匂いがするんだ。それがなんだか気持ちよくて、ね」
「生きてるんだナァ、って感じるの。よくわからないけれど」
変な話よね、と笑ってサラが言う。
「それにね、雨って必ず止むものよ。晴れの日ばかりじゃつまらないって言うか…」
「そう、雨の日があって、晴れの日もある。だから、楽しいんじゃないかしら」
そう言って微笑むサラの笑顔が眩しくて――。
「何いってるのかしら、私ってば。あー、もー、恥ずかしいっ」
頬を染めて何やら悶えているサラを見ていると、今までの不安や憂鬱が嘘のように思える。
「…ありがとう」
自然と、笑みが毀れた。八雲を知る人でも気づくか、気づかないか。そんな、かすかな微笑み。
それから二人は、時が立つのも忘れて話し合った。学校の事、動物の事。そんな、他愛も無いおしゃべり。
たった、二人だけのティータイム。
「雨、止んだみたいだね」
「…そうだね」
気が付けばいつの間にか雨は止み、雲間からキラキラ光る夕日が遠くに見える。
「……あ」
「虹だ…綺麗だね」
空を見上げ、小さくうなずく。水滴に塗れた世界が、二人には輝いて見えた。思わず、見惚れてしまう。
(こういうことなのかな、サラの言っていた事って…)
ふと、横に居る友人をうかがう。そこにはいつもと同じ柔らかな笑顔。
「梅雨明けも近い、かな?」
「…………」
茜さす夕日に照らされて、並んで歩く帰り道。
雨の日も、悪くない――。そう、思える気がした。
<了>
以上、ちょっと長くなりましたが。読み辛かったらすいません
最初はオニギリ書こうとしてたんですけど・・・そういや二人が出会うのって
夏休みの話だよなぁ、と気づきまして。あえなくボツに
他にも無茶したせいかバランス悪いかもしれません(´・◇・`)
♭風にマターリになってるといいのですが
ところで伊織の声が聞こえたってことは♂なんでしょうかね?
ピョートルの心の声が日本語と言うのも謎ですが
まぁ、キリンの鳴き声なんぞわからんしナァ・・・
GJ!
マターリで良いです(・∀・)
和んだ
704 :
Classical名無しさん:04/04/17 02:07 ID:N3TqoGk.
>>702 和ませていただきました。GJですー。
あと、キリンの鳴き声はモーです。
・・・上げてしまいました。すみません_| ̄|○
大丈夫、動物は人間の性別を理解してないから
人間がパッと見て動物の性別が分からないように
イオリはオスメスどっちでも問題なし
:. : . : . : .. .:. : .:: . : .. : .:. : :. : .: )
:. : .: :. : :..: /\: : . : .. : :. : (
>>697-701ヨマセテモラッタニャ!
:. : .: : .. . ..: / \: :. ..:. : .: ) ナゴムSSアリガトウニャ!
:. : .: : .. ..:: / \: .:. : .::(
..:.. :. : ..: ⌒⌒⌒|⌒⌒⌒: .. :. : :)ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒
:. : .: ∧,,∧ | : .: :. : .:: .:: .. : .:. : :. : .: :. : .
:. : .: :.::. 〃/ハ)ヽ)| : .. :. : .: : .. : .:. : :. : .: :. : .::. :
: : .: : ミゝ゚ー゚) |.∧x∧ .. :. : .:: .. : .:. : :. : .:: :. : .: :. :
/つy|つ ( ,,゚д゚)
|__|_| / |
,.,.,.. ,.... ,,,.,.,., (/ ∪..ヽ(,,UU),.,.,.. ,... ,, ,,.,.,..,....,,,..,.,.. ,.... ,,,., .,.,..,....,,,..,.,.. ,..
おちんちんが小さいのはだあれ?
とりあえず書いてみた。
八雲と天満。
序章だから微妙に尻切れ
SS初書きはスクランになったようだ
姉ヶ崎先生抱きつき事件の夜。
塚本家の食卓の話題はやはり播磨のことであった。
いつもの通り話すのは主に姉である天満の役目で、
妹の八雲は姉の話に相槌を打つだけである。
が、先程からどうも八雲の様子がおかしいと天満は感じていた。
「それでね、播磨くんはその後そのまま帰っちゃったの。
クラスメートだしあんまりこういうこと言いたくないけど
よりによって先生に襲い掛かっちゃうなんてサイテーだよ。
そう思わない?って、八雲?」
気が付くと八雲は箸を置いていた。
どこかおかしい。妹のただならぬ雰囲気に天満は少し気圧される。
「姉さん、それは多分勘違いだと思う」
「えっ?」
「きっと姉さんは何か誤解してる」
「誤解な訳ないよ、だって目の前で「それでも」」
「きっと何か事情があったんだと思う」
妹の突然の反論に天満は面をくらう。
天満が見る限り八雲の機嫌は明らかに悪かった。
普段から穏やかな八雲が感情的になるのはあまり見られない。
付き合いの少ない者から見れば普段どおりの表情で八雲は続ける。
「播磨さんはそのとき反論しなかったの?」
「え、それは―――――」
思い返す。あの時は周りが動転して播磨を口撃していた。
それは主に自分と美琴ちゃんとで男子はお祭り騒ぎ。
播磨くんは私たちが詰問しだした瞬間からこの世の終わりみたいな顔して、
無言で笑顔を浮かべたままの愛理ちゃんに蹴り飛ばされて命からがら逃げ帰った。
ガイシャである先生はにこにこ笑ってて言質も碌にとっていない。
つまり、そんなものが入る余地は微塵もなかった。
そのことに気づいて一筋冷や汗を垂らす天満。
八雲はひとつ溜息をついてもう一度口を開く。
「明日一緒にその先生に確認しに行きましょう」
「う、うん。わかった。そうだよね。
もしかしたら躓いて倒れこんだだけかもしれないもんね」
天満がそういうと八雲はまた箸をとる。
一応は機嫌が直ったように見えるが、今度は一人で何か思案に耽っているようだ。
その様子に天満は安堵する。
しかし疑問がひとつ。
「ねぇ、八雲〜?」
「なに?姉さん」
「八雲は播磨くんと仲良かったっけ?」
「え?」
確かキャンプの時に何か話してたのは覚えてるけど、それ以上は特にこれといった接点は見当たらない。
その時だって『お姉ちゃん命令』まで発動して播磨に近付かないように言い聞かせたのに………。
そんな八雲が播磨を庇ったことが天満には不思議だった。
「あんまり接点ないように思ってたんだけど。播磨くん男の子だし」
その質問に八雲は困惑した。
何と答えるべきか、確かに播磨は男性で八雲にとっては苦手のはず。
だが播磨は例外的に心が読めなかった。それ故気負いなく接することができるのだが―――――。
それは今まで誰にも話さなかったことで、きっとこれからもそうだろう。
そんな八雲が何も反応を返さないのでしばらく妹の顔を見つめていた天満だったが、
何か思い当たったらしく、渋い顔をつくって、その後ににんまりと微笑んで、宣言した。
「八雲、とりあえず播磨くんの疑惑が晴れるまでは不用意に近付いちゃだめだからね」
「え、姉さんそれは違……」
「だ〜いじょ〜ぶ!!わかってるって、お姉ちゃんにまっかせなさい!!」
「いや、そうじゃな………」
とまあ、そんなこんなで、塚本家の食卓であった。
とまあこんな感じなんだが
八雲のそれは違……が大好きですw
>>715,
>>702 お疲れさまッス。
自分も伊織は雄だと思うんですが、もうスクランスレでは
伊織幼女化の波が止まらない勢いのようです。げに恐ろしきは住人達の妄想力…
綺麗な地の文、穏やかに進む話。
センスの良さを感じます。
そして気になったことを少々。
キャラの台詞で改行毎に「」を新たにつけると別のキャラの台詞と
混同してしまいがちです。地の文じゃないことをはっきりさせたいのかもしれませんが
改めた方がいいと思います。
新規の職人さんがしょっぱなから高いLvなのは、この板の仕様なのか(笑)
もう、まさにこれからっていうところで話が終わっていますな。
是非とも続編を希望します。序章って言われていますしね。
文章もきちんと書かれていますし、益々もって期待ageです。
GJです!
ここからおにぎりに発展していくんですか?
それとも意表をついて王道かも
どちらにしろ続き期待してます!
これから、SSを投下しようと思います初めてSSをかいてみたので
少々どころか大変見苦しいと思いますが付き合ってくれると嬉しいです
春、それは始まりでもあり終わりでもある季節・・・
あの始まりの季節から一年が経とうとしていた・・・
「やっくもー!たっだいまー!」
「どうしたの、姉さん・・・なんだかいい事でもあったみたい」
「えへへー、それがね八雲、今日は烏丸君といっしょに帰ってきたんだー」
そんな姉、塚本天満の話を聞いて、
「良かったね、姉さん」
と、さも自分のことのように喜ぶ八雲
「うんっ!ありがとう八雲!でも、八雲だって最近楽しそうだよねー」
急に自分のことに話題を振られて
「え、どういうこと・・・姉さん?」
八雲は何のことだかわからないというように姉に尋ねた
「とぼけちゃって、播磨君のことに決まってるじゃない♪最近、家によく来るものねー」
「そ、そんな・・・あれは違っ」
そう、八雲はここ最近播磨にいつもいつも外で原稿を見させてもらっていては、そのうち風邪をひいてしまうということで播磨を家に招いていたのだ。
もちろん播磨はというと、
「やったぜー!これで天満ちゃんの家に正々堂々と行けるぜー」
などと播磨が大喜びしたのは言うまでもない・・・
「ねえ、八雲はやっぱり播磨君のことが好きなんでしょう?お姉ちゃんは八雲の事ならなんだってお見通しなんだから」
「姉さん、それは違っ、播磨さんとは何も」
「無い」という言葉を出そうとして八雲は自分が躊躇していることに気づいた、
そして、その二文字がどうしても口から出したくないということも・・・
顔を真っ赤にしてうつむいてしまう八雲を見て、天満は、
「うん分かった八雲もう二年生だもんねー恋くらいしてもいい年だし、なんてったって私も去年は烏丸君が転校しちゃうと思っていろいろ頑張ったものだもの。」
と、言った直後、天満が何かを考え込む
「あれ、去年?転校?・・・何かすっごく大事なことを忘れている気がする・・・」
「どうしたの、姉さん・・・?」
と、悩む姉の顔を覗き込む八雲、すると直後
「烏丸君の転校忘れてたーーーーー!!!!!」
と、まるで雲を突き抜かんばかりに発せられたその声、とたんに
「どうしようどうしよう私すっかり忘れてたけどそういえば烏丸君もうすぐ転校しちゃうじゃない!」
その日、塚本家には泣き叫ぶ姉の声とそれを静めようとする妹の声が鳴り止まなかったという・・・
翌日、一睡もしなかった天満は休み時間に平成を装って(もっとも、ほかの人間には同様しているところが丸分かりだったそうだが)烏丸に尋ねた
「ね、ねぇ烏丸君?」
「どうしたの塚本さん?」
「あ、あのね、烏丸君ってあの、もうすぐ、転校しちゃうんだって?」
「そうだよ」
予想以上に速い烏丸の答えに、たじろぎつつも天満は
「あ、あのね、それでいつ転校しちゃうのかなー?なんて、い、いや別に答えなくてもいいんだよ、うんっ」
「明後日の日曜日だけど」
またしても異常に早い烏丸の答え、しかし、今度は覚悟していなかったためか天満には衝撃が強かった」
(え、何、今なんて言ったの?烏丸君は?あ、明後日?嘘だよそんなの、きっと私の聞き間違いに決まってるよ、うん、よ、よしもう一回聞いてみよう)
「あのね、烏丸君、よく聞こえなかったからもう一回言ってほしいなぁーなんて、はは」
「明後日の日曜日」
またしても即答する烏丸
(聞き間違いじゃない!!どうしよう、朝手なんて早すぎるよ、明日はお休みだから烏丸君に会えるのは今日で最後じゃない!どうしよう、まだ手作りのカレーだって食べてもらってないし、なにより告白だってしてないし、どうしようどうしよう。カレー、告白、カレー、告白)
そうしてフリーズが解けた天満が最初に放った一言は、
「烏丸君!カレーと私どっちが好きっ!?」
とたん、クラス中が凍りついた、かってこんな告白をした人物がいたであろうか、
いや、後にも先にも塚本天満ただ一人であろう。
だが、その必死な告白にも烏丸は即答で
「カレー」
と答えてしまった。
(終わったー!!)
直後、泣きながらクラスを走って後にする天満、そしてその光景を見ていた沢近が、烏丸の態度に怒りを抑えきれなくなったのか
「烏丸君!今のは何!」
と、烏丸のもとに行こうとしたその時、
「烏丸、ちょっとツラ貸せ」
と、普通の人間ならば見るだけで逃げ出してしまうような形相で播磨が烏丸に掴みかかっていた、
そのまま、教室を後にする二人、クラス中の生徒はあまりの威圧感に何も言い出さずじっと去っていく二人を見続けていた。
もちろん不良としての播磨にあまり接していなかった沢近も、その場を動けずにいた。
「な、何?今の播磨君の顔、あんな顔なんて私見たこと無い・・・」
沢近は始めて見る播磨の顔に不良、播磨の話を思い出していた、
(そういえば、播磨君って不良だったのよね、いつもあんなにヘラヘラしてるから忘れてたけど・・・そんな事より!早く二人を追いかけないとあの様子じゃ烏丸君何されるかわからないじゃない!)
われに返った沢近は二人を探しに駆け出していった。
教室に残った仲良し4人組の残り二人はというと
「なぁ、高野」
「なに?」
「あたしらは追っかけなくていいのかな?その、あいつら」
「追っかけたいの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、ちょっとな・・・」
と、心配そうな美琴を見て晶が
「ああいうことは本人たちが解決するしかないの、塚本さんのことは今私たちがどうこう言うよりもそっとしておいたほうがいいわ、あなたもわかってるんでしょ?失恋したとき人がとても脆くなってしまうことを」
「・・・ああ、そうだな、あたしらが人の恋路にどうこう言う権利なんてないもんな、でも、いいのか?」
「今度は何?」
「何って沢近だよ、あいつ塚本を追っかけて行ったんじゃないのか?」
「大丈夫、愛理なら播磨君達の方へ行ったはずだから」
「なんだ、それなら・・・って!それじゃもっとやばいじゃねーかケンカなんかあってあいつ巻き込まれたらどうすんだよ」
「大丈夫よ、そんな危険なことにはならないわ、きっと、ね」
そのころ、校舎裏では、
「はぁ、はぁ、やっと見つけた・・・もう何か話しているみたい、いったい何を話しているのかしら?」
「おい、烏丸、一度ならずに二度までも、天満ちゃんを泣かせやがって、お前だけは許しておくにはいかねぇ!」
と、殴りかけた腕を止める播磨
「ここでお前を殴るのは簡単だ、だがな、その前に本当のこと言ったらどうだ?」
烏丸を殴らない播磨を見て沢近は、
「え、播磨君殴らないのかしら?でも、今は私が入っていい雰囲気じゃないわね、もう少し様子を見ようかしら・・・それにしても播磨君がこんなに怒っているなんて、それに天満ちゃんなんていったいどういうこと?」
「播磨君、本当のこととは?」
「とぼけるな、お前が天満ちゃんのことをどう思っているかだ、お前は前もそうやって天満ちゃんを泣かしたときに俺に追っかけるようにいったよな?今度もそうなのか?」
「ああ、僕は塚本さんをカレー以上に思うことは出来ない、塚本さんは君が幸せにしてあげるといい」
「そうか、分かった・・・それがお前の答えか」
「ああ、だから播磨君は早く塚本さんを追っかけてあげるといい」
直後、
「ドガッ」
播磨のこぶしが烏丸の顔面を直撃していた
「ふざけるんじゃねぇ!お前はそれでいいかもしれないがな、天満ちゃんはどうなるんだ!あんな言葉で天満ちゃんをふりやがって、お前をちょっとでもいい奴だと思った俺がどうかしてた!俺は言えるぞ・・・俺は地球上の誰よりも天満ちゃんが好きだってな!!!」
「・・・」
「わかったか、烏丸、天満ちゃんは必ず俺が幸せにしてやる。だがな、それは天満ちゃんが完全に俺に惚れてからだ。
だが、天満ちゃんはまだお前に惚れている。その分はきっちりとけじめとるのが男ってもんだろが!・・・
これで全部だ俺がお前に話すことはもうねぇ、じゃあな、烏丸もう二度と会わねぇだろうよ」
と、去っていく播磨、しかし
「おい、烏丸、最後にひとつだけ答えろ、明後日いつ出発する?」
「それは・・・」
会話が終わったあと沢近は一人立ち尽くしていた
「何よ・・・播磨君の好きな人って天満のことだったんだ、そんなことも知らずに私ってば一人で播磨君に突っかかって馬鹿みたい・・・
まぁ私にはあんな奴のことなんてどうでもいいんだけどね、そうよ、どうだって・・・
あれ、なんでよ、なんでこんなにも涙が出てくるのよ、止まりなさいよ、なんで私があんな奴のことで泣かなきゃいけないのよ」
ひとしきり泣いた後、沢近は
「そうか、私こんなにも播磨君のことが好きだったんだ、何よ晶ったら私にだってちゃんとできるじゃない、
恋ってやつが・・・気づいた瞬間には終わってるってとこが普通と違うところだけどね。そっか、恋ってこんなにも痛いものだったんだ・・」
「ちくしょう!どうすりゃいいんだ!」
家に帰った播磨はというと・・・
「この方法なら確かに天満ちゃんは幸せになれる、だが俺は・・・」
播磨は悩んでいた、自分が今何をするべきなのかを、そぢて・・・
「だー!こんなこと悩んでても、らちがあかねぇ、こんなときはもうあれしかねぇ」
そうして播磨は白い紙を取り出し漫画を書き始めた、まるでやり場のない思いを書き表すかのように・・・
翌日
塚本家では
「姉さん、ご飯できたよ・・・」
「ごめん、八雲一人で食べて、私、今食欲無いから・・・」
「そんなこといって姉さん昨日も食べてない・・・」
「お願い、八雲、しばらくそっとしておいてくれる」
「分かった、でも、ご飯だけは置いておくからね」
(姉さん・・・)
(烏丸君・・・私はカレーにも勝てなかったことよね、でも嘘でもいいから塚本さんって言ってほしかったなぁ・・・)
一方播磨家では
播磨は未だ原稿を書き続けていた。
食事も睡眠もとらず黙々と書き続けている播磨の姿に何も言わず立ち去っていく弦子。
彼もまた、部屋に閉じこもりの一日を過ごしていた
そして、物語の終わりを告げる日が訪れた
(あれから、姉さん食事はとるようになったけど、部屋からはまだでてきてくれない・・・)
八雲は苦しんでいた、姉が悩んでいるにもかかわらず、何も出来ない自分に
そのとき、
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る音がした。
(誰だろう?こんな朝早くから・・・)
玄関を開けるとそこには
「おはよう、妹さん」
「は、播磨さん!どうしたんですか?こんな朝早くに」
八雲が驚くのも無理は無い、播磨はこれまでこの家に来るときは必ず八雲に連絡をとるようにしてきたからだ
「わりぃな、妹さん、ちょっと見てもらいたいもんがあってよ」
そうして播磨、昨日一日書き続けた漫画を手渡した
「これは、漫画?」
「ああ、どうしてもこれを妹さんにみてもらいたくてよ、頼む!今読んで感想を聞かせてくれ!」
「分かりました、じゃあ読ませてもらいますね」
そうして、八雲は漫画を読み始めた、彼女は驚いたに違いない、何故ならその漫画には今までとは決定的に違うことが描かれていたからだ。
そして、八雲は読み終わった
「播磨さん、これは?」
「妹さんに3つ質問がある」
「3つ、ですか?」
「ああ、3つだ。じゃあ最初の質問この漫画は面白かったか?」
「はい、とても面白かったです・・・」
「よし、じゃあ2つ目だ、この話に出てくる女の子は幸せになったと思うか?」
「はい、とても幸せそうに見えます。いえ、幸せになったと思います・・・」
「分かった、これが最後だ、・・・主人公の男のやったことは正しいといえるか?」
「はい、正しいことだと思います」
「そうか、これで決心がついた。ありがとよ妹さん」
「でもっ!」
突然八雲が大声をあげた。播磨が八雲を見ると
八雲は、泣いていた・・・恐らく泣くことなどめったにないであろうろう八雲が泣いていたのだ
「でも、でも、これでいいんですか?この男の子は、いえ、播磨さんは本当にこれでいいんですか?こんなにも思い続けてきたのに・・・こんな終わり方で本当にいいんですか?」
「妹さん・・・ああ、これでいいんだ・・・この男の子はな女の子には何があっても幸せになってもらいたんだ。だから、これでいいんだ・・・」
「播磨さん・・・分かりました。じゃあ、わたしはもう何も言いません。播磨さん、姉の部屋は二階の奥にあります。姉を宜しくお願いします・・・」
「分かった、すまねぇな妹さんにもいろいろ迷惑かけちまったみたいだからな今度お詫びもかねて飯でもおごらせてくれや」
「はい、楽しみにしています」
「よし、やっと笑ってくれたな妹さん、妹さんは普段の表情よりも笑っている顔のほうが似合っているぜ!それじゃ、行って来る」
こうして、播磨は天満のいる二階へ上がっていった・・・
残された八雲は播磨の最後の言葉でフリーズしていた
「私、笑ってた?そっか、播磨さんの前だと私笑っているんだ・・・」
そのころ、天満はというと・・・
「今日は、烏丸君が転校しちゃう日・・・でも、私は・・・」
自室にこもったまますでに3日目に入っているというのに未だショックから立ち直れないでいた。
「もう、何もする気力がわいてこないよ・・・」
そのとき、
バンッ
不意に開くことが無かった扉が開かれたそして、
「天満ちゃん!!」
「は、播磨くん!な、どうしてここに、っていうか八雲は?何がどうなってるの?」
「そんなこたぁ、どうだっていい!今大事なのは、天満ちゃん!烏丸を追っかけろ!あいつは、昼の新幹線で行っちまうんだ!今追っかければまだ間に合う!」
「え、播磨君何言ってるの?私はもうふられてるんだよ?今更追っかけたって何をするって言うの!」
「天満ちゃんこそ何言ってんだよ!烏丸の野郎が好きなんだろ?だったら、今追っかけないでどうしようってんだ!」
「でも、播磨君、私・・・だめだよ」
「何が駄目だっていうんだ!いいか、ふられるにしてもだ、好きなやつにもう二度と会えなくなるんだぞ、本当にこんな終わり方でいいのか?」
「まって、播磨君どうしてそんなこと私に言うの?それにさっきから変だよ、いきなり天満ちゃんなんて言い出すし・・・」
「なんでだって?そりゃ決まってるじゃねぇか、俺が天満ちゃんのことが好きだからだ!」
「え!?」
「いいか?何度だって言ってやる!俺は天満ちゃんが好きだ!大好きだ!正直ほかのだれにだってわたしたくねぇ!
だがな!!俺はそんな苦しんでいる天満ちゃんなんて見たくねぇんだ!だから、」
「うそ、播磨君が私を?美琴ちゃんでも愛理ちゃんでもなくて?」
「いいか、ふられるってわかっててもこんなにも言いたいことがあるんだ!天満ちゃんだって本当は烏丸の野郎にたくさん言いたいことがあるんだろ?」
(言いたいこと、私が烏丸君に今言いたいこと・・・)
「うん、ある、あるよ1言いたいこと私、烏丸君にいっぱい言いたいことがある!」
「そうだ、それでこそ、俺が惚れた天満ちゃんだぜ、じゃあ早く行きな!出発の時間までは二時間もある、ここから駅までは歩いてでも1時間で着く十分間に合うぜ!」
「え、播磨君?お昼に出発だって言ってたけど、お昼までもう一時間もないよ?」
「そんな馬鹿な?俺の時計は確かに・・・」
そのとき、播磨は時計を見て固まった
「と、止まってるーー!!」
「ええー!ど、どうするの?播磨君!烏丸君行っちゃうよー」
「しかたねぇ、天満ちゃん!俺のバイクに乗れ、駅まで最速でたどり着くしかねぇ」
「分かった!じゃ、早く表へ・・・」
こうして、二人は烏丸の待つ駅へと走り出したのであった・・・
キキー、ドンッ
「着いたぜ、天満ちゃん!さぁ、早く!」
「うんっ、ありがとう播磨君!」
「いいってことよ、じゃあバッチリ決めてきな!」
そして、天満は駅のホームへと消えていった・・・
後に残った播磨は
「終わっちまったか・・・ありがとう、天満ちゃん、いい夢みさせてもらったぜ・・・」
播磨の書いた漫画のラストシーンは主人公の男が好きだった女が最後に別の男に思いを告げて幸せになるというシーンだった・・・
「われながら、今までで一番いい出来だった気がするぜ」
そう、それは独りよがりだった男が女のために自分の思いを犠牲するという、とても悲しく、そして感動的な作品だった・・・
天満は走っていた、播磨の思いを無駄にしないよう、そして、この恋に決着をつけるために・・・そして、
「烏丸君!」
「塚本さん?」
「あのね、私、烏丸君に言いたいことがあるの、だから」
「わかった、塚本さん」
「あのね、私ずっと前から烏丸君のこと好きだったの!そう、本当にずっと前から!一年前に烏丸君の下駄箱に巻物入れたのも私!
それから、烏丸君の前の席に座れて嬉しかった、あと、烏丸君の似顔絵書いたときも緊張しちゃって、烏丸君の顔ずっと見れなったし、
そうそう、烏丸君にもらったカッパまだ大切に持ってるんだよ!それにね、それに・・・」
「塚本さん・・・」
「だからね、私ちゃんと聞きたいの、烏丸君が私のことどう思ってるか!」
そして、しばらくの沈黙の後、
「僕は・・・やっぱり、塚本さんをそういふうに見ることは出来ない、悪いとは思うけど、ごめん・・・」
結果はやはりノー、しかし
「うんっ!わかった、それが烏丸君の気持ちだね、でも、私この一年あのたと過ごせて楽しかった!私は・・・あなたのおかげで幸せだった!」
そういった、天満の顔は笑顔だった・・・そう、今まで見せたことの無いくらい素敵な笑顔を・・・
こうして、烏丸は去り、そして
「播磨君・・・ずっと待っててくれたんだね?」
「ああ、で、どうだった?」
「えへへ、ふられちゃった」
「そうか・・・」
「でもね、私なんだかスッキリした!もう落ち込んだりしないよ。それにね・・・」
「それに?」
「私、播磨君の気持ちにはまだ応えられないけど、でもね、友達にならない?」
「友達?」
「そう、友達!駄目かな?」
「い、いや駄目じゃねぇ、むしろ大歓迎だ!」
「そう、良かった。じゃぁこれからもよろしくね、播磨君!」
「ああ、よろしくな!天、いや塚本」
ひとつの物語が幕を閉じた・・・
だが、
「よっしゃー、天満ちゃんとの関係がレベルアップしちまったぜー、こりゃ、やっぱり天満ちゃんにふさわしいのは俺ってことかー」
「よしっ、これから3年生、気をとりなおしてまた、頑張るぞー!」
「はぁ、これから、播磨君にどういう顔して会えばいいんだろ・・・ってちょっと待って、二人はまだ両思いじゃないんだから私に播磨君を振り向かせれば・・・
そうと決まれば話は早いわ、覚悟しなさい、播磨君!絶対に私のこと好きになってもらうんだから!」
(播磨さん・・・また漫画持ってきてくれないかな・・・)
「どうしたのー八雲?もしかして播磨さんのことでも考えてたんでしょ?」
「ち、違っ、そんなこと・・・」
「あいつら、元気になったみたいだな」
「そうね、でも本当に面白くなるのはここからよ・・・」
「ん、そりゃどういうことだ?高野」
「秘密・・・」
これからまた新しい物語が始まる・・・
そう、春は終わりでもあり始まりでもある季節なのだから・・・
739 :
718:04/04/18 19:27 ID:GeppD7Zw
急用ができて後書きを書く暇がありません(車でこれ書いてます)感想暮れると嬉しいです
>>718 平成 同様は、わざとですよね?ほんとに動揺してる感が出ててワラタ。
話は良かったです。最終回はこんな感じになるのかな〜と思えたし。
ただ文が少々読みにくいので改行を使うといいと思います。
そんな感じでこれからがんばってください。
741 :
710:04/04/18 21:39 ID:WiBE5f36
742 :
710:04/04/18 21:39 ID:WiBE5f36
After #73
次の日、塚本姉妹は渦中の人である姉ヶ崎先生を訪ねて保健室にきた。
天満は後ろの八雲に視線を送って自分も一度深呼吸をして、ドアを3度叩いた。
「は〜い、どうぞ〜」
「失礼します、あれ、刑部先生」
「おっ、塚本じゃないか。どうしたこんな時間に、慌てて滑って転んだか?」
そういって天満を茶化すのは八雲の担任である刑部絃子だ。
美人で頼れる先生と男子女子問わず人気を博している。
その刑部先生と向かい合って話していたらしい女性が昨日から保健室の主となった姉ヶ崎先生だ。
昨日見たときも感じたが、柔らかい雰囲気をもった人のようで今もにこにこと笑みを絶やさない。
「いえ、怪我をしたわけじゃなくてですね、播磨くんのことで聞きたいことがあったので」
「ああ、播磨、播磨ね。君もそうだが全く、アイツも結構なトラブルメーカーだよ」
「今ちょうどその話をしていたんですよ」
そう返す姉ヶ崎先生の顔は穏やかで確かに襲われた人の話をしていたとするには不似合いだ。
「安心しろ。とりあえずアイツは潔白だよ。なんでも顔見知りだったらしくてね、抱きついたのは姉ヶ崎 先生からだそうだ」」
「そうだったんですか、よかったね、八雲」
「久々だったのでつい抱きついちゃいました」
抱きついちゃいました、じゃないだろと心の中で突っ込んで絃子は言葉を続けた。
743 :
710:04/04/18 21:40 ID:WiBE5f36
「これで解決、といいたいところだが、火のないところに煙は立たないと考える連中も多いだろう?
それに疑われたのが結構ショックだったらしくてね。
アイツの様子を見てみたんだが、今日は登校しそうになかったな」
「え、播磨さん今日は学校に来てないんですか?」
「ああ、姉さんの方は確か同じクラスだったな。そろそろ教室に行ってみればわかると思うが今日は一日空席だろう」
ああ、八雲がちょっと怒ってる。
それとなく伺った妹の様子はまさしく微妙で、心配半分呆れ半分で天満としてはどこにも立つ瀬がない。
元はといえばなんでもないことを大事にしたのは自分で、醜聞を吹いて回ったようなものだ。
今となっては申し訳なさと恥ずかしさで穴があったら入りたい。
744 :
710:04/04/18 21:41 ID:WiBE5f36
「そうか、そういえば現場で騒いだ一人が君だったな」
「あ〜真に遺憾であり申し訳なく思う次第であり〜」
「姉さん、播磨さんに謝らないと」
「ん、そうだな。悪いことしたら人間素直に謝らないとな」
そういって絃子は二人に向き直る。
「と、いうわけだから。君たちは学校が終わり次第播磨のところへいくこと。
塚本、姉さんに付き添ってやれ」
「「はい」」
「よし、いい返事だ。私も後で行くつもりだ。これが住所。先に行くといい。
それじゃ、そろそろ授業にいきなさい間に合わなくなるぞ」
「またね〜、ふたりとも」
「「失礼しました」」
戸が閉まる直前に見た姉ヶ崎先生の笑顔に先生にも責任あるのにと思いつつ、
憎めないなぁと思った二人だった。
745 :
710:04/04/18 21:43 ID:WiBE5f36
最初はハンドルにタイトルをいれてたんですが
なんかトリップついて読めなくなったので修正
次は播磨だす予定です
ハァ、ラブ米書いてるなんて学校の連中にゃ言えないわw
久々に書き上げたので投下します。まあ、誰かはわからないだろうけどw
時間設定に無茶があるかもしれないんで、読みたくない人はスルーを。
NGワードは、Peepingです。
自分の力――自分に好意を持つ異性の心が読める――は何のためにあるのか。
そのような益体もないことを考えるのは、八雲にとって珍しいことと言えた。
それでも、今日はそのことについて考えなければいけないような気がしていたのだ。
もしあの不思議な少女に再び出会ったとき、満足のいく答えを見つけておきたいから。
「でも、考えてもわからないよね……」
そう呟いて、八雲は寝返りを打った。
普段考えないのにはわけがある。考えても仕方ないとわかってしまっているからだ。
もし深く考えてしまうことがあっても、彼女の傍には姉がいた。
優しくて自分だけでなく人も明るくしてくれて……普段はちょっと鈍いけど、
肝心なところでちゃんと察してくれる頼りになる姉が。
そんな姉がいるから、今まで八雲はやってこれたのだ。
「姉さんだったら、どうするんだろう」
考えるまでもない。 きっと、今と変わることなど何一つなく、
そして何も変わらないまま想い人のためにその力を使うのだろう。
八雲にできないこと、それをきっとあの姉は笑いながらやってのけるはずだ。
烏丸と言う先輩の心が見えぬのなら見えるまで好かれようと努力をし、
見えるのなら、その思いに答えようとまた努力をするのだろう。
何のためにその力があるのかと問われれば、その想い人と結ばれるためにあると、
あの強い姉は言い切るに違いない。
「でも、私には無理だな」
そうかすかに自嘲して、再び寝返りを打つ。
あの少女には「きっと誰かを好きになる」と答えたが、もしかしたら
自分にはそれはできないのかもしれない。
そう考えて、それ以上考えるのが怖くて、布団を頭から被りなおして、もう寝ることにする。
頭の中で少女が、「それでいいの?」と問い掛けてくるのを無視して。
だが、結局、いつ寝入ったのかわからなくなるまで八雲の頭から考えが消えることはなかった……
「八雲、大丈夫なの。ここ最近、少し顔色が悪いよ」
あれからしばらく寝不足が続いていたせいだろう。
友人のサラが八雲の様子を心配して問いかけてきた。
「……うん、大丈夫、最近授業中に眠っちゃった部分の復習を夜してるだけだから」
「そう、ならいいんだけど……」
心配してくれた友人に嘘をつくのは躊躇われただけでなく、心が痛んだ。
それをごまかすように、八雲はサラに新しい話を振ろうとする。
そのような八雲を不審に思いながらも、再び問いただすことができず、サラは
稚拙な八雲の話題の転換に乗らざるを得なかった。
そのような状態でうまく話せるはずもなく、会話は終始ぎこちないままで、
どことない後味の悪さを残しながら、二人は帰路を別とした。
「ただいま……」
「おかえりー、今日のスーパーの特売、行っておいたよ」
家に着いた八雲を待ち構えていたのは、かすかに鼻腔を刺激する何かと忘れていた特売品、それに姉の笑顔だった。
「ごめん……」
「ダメだよ八雲、こういうときは、ありがとうって言わなきゃ」
思わず謝罪した八雲に、天満は笑顔のままそれをたしなめる。
そんな姉の優しさに、沈んでいた八雲の心が幾分引き上げられる。
「ほら、こんなところで立ってないで早く上がりなりなよ」
その言葉に従い、八雲は玄関をあがり、自分の部屋へと足を進めようとする。
だが、二階に差し掛かろうとしたところで、低いのか高いのか判断しがたい、
それでいてよくよく耳にする音が八雲を引きとめようとした。
伊織の、飼っている猫の声ではなく、八雲が苦手としている犬の声でもない。
いわんや、ねずみや、爬虫類の鳴き声では決してなかった。
音源の方に目を見やると、手を頭の後ろに回しつつ、照れ笑いをしながらこちらを伺っている姉の姿が見えた。
そこでふと八雲は思考し、合点が付いた。
普段、あまり買い物に行かない姉が今日に限ってなぜか買い物に行き、
話すのが大好きな姉が、今日に限ってなぜか途中でそれを切り上げたそのわけを。
「……ご飯の準備、早くするね」
少し呆れた、それでいてどこか安心した風な響きを声に含ませて姉のお腹の音に返事をし、
早く準備に取り掛かろうと、足早に八雲は自分の部屋へと去っていった。
「……え?」
目の前の光景が信じられない。
姉はお腹がすいていた。だから、わざわざあまり行かないスーパーに行ったのだ。
早く夕食の準備を八雲にしてもらうために買い物をした、そうでなければ辻褄が合わない。
なら、なぜ、目の前に夕飯、カレーライスが用意されているのか。
「ふふん、私だって、ちゃんとやればこれぐらいできるんだから」
呆然とした八雲に笑いかけるように薄い胸を反り返らせて姉が言う。
「驚いたでしょ」
そう、確かに驚いた。声も出ない。
料理をすれば小火を出すような姉が、ただの一度だけ友人に習った程度の料理を完成させるなんて、
姉のことを一番理解していると自負しているとしている八雲にとって、この光景は不思議以外の何物でもない。
「最近八雲が元気ないみたいだからさ、お姉ちゃん、頑張ったんだよ?」
照れくさそうに言ったその内容にまた驚いた。迂闊だった。こういう時の姉が
鋭いのはわかっていたはずなのに、隠しとおせなかった。
八雲の心の内を悔恨が染め上げようとする。だが、それを打ち消すかのように、いや、実際すごい勢いで
そんな暗い心をねじ伏せ、叩き潰し、その上を姉への思慕が満たしていく。
「心配かけちゃったかな、ごめ――」
「ストップ」
八雲の口上を、強い勢いで天満が遮る。
思わずその口調のきつさに八雲が驚くが、天満の表情はそれに反して和らいだものだった。
「八雲、さっき言ったこともう忘れたの?」
できの悪い妹にいい聞かせるように――実際自分はできの悪い妹なのだろうが――姉は笑いかけてきた。
「あ……」
「さっき」、この言葉で、玄関前でのやりとりが思い出された。
「『こういうときは、ありがとう』だったね……」
微笑みながら返したその言葉に、姉は満足そうにゆっくりと頷いた。
「「ごちそうさまでした」」
今日はなんと驚かさせることが多いのだろう、八雲は思わず心中で唸った。
姉の作ったカレーライスは、その中に大福を入れるなどといったエキセントリックな
思考回路を持つ姉の手から作り出されたとは思えない、普通のもので、とてもおいしいものだった。
食べる直前、恐々としていた分を差し引いても、十分おつりは返ってきているだろう。
「じゃあ、今日は後片付けも私がやるね」
「姉さん、それは私がやる」
以前の小火を出したときの惨状が思い出され、思わず立ち上がろうとした姉を引き止める。
仕方がないと言えるだろう。まだまだ十分ある余生を強制的に打ち切られるのは
食器にとっても不幸と呼べるに違いない。妹としても、姉が殺食器犯になるのは忍びない。
「そっか、じゃあ、八雲にお願いするね」
その返事に、八雲は安堵をつく。そんな八雲の心も知らず、言葉どおり後は任せたとばかりに
天満の上体がテーブルへと吸い寄せられる。
そんな姉を姿を背中へと送り出し、食器を流しへと持っていく。
その際に手元の方を見やると、食器たちはどことなく嬉しそうに見える。これは自分の幻覚だろうか。
なんとなく判断に困っていると、自分の力で食器の心は何とか見えないものかとふと思う。
「伊織のときは鳴き声だったけど、もしこのお皿が心をもってるのなら、なんて見えるのかな」
そう小声で呟いてから、八雲は自分の力のくだらない使い道についてあれこれと考え始めた。
「悩んだ結果がずいぶんと変わった考え……あの姉にしてこの妹あり、ね」
ここ数日八雲の様子を眺め続けていた少女は、空に浮かびなら思わず苦笑する。
永い時の中にありながら、自分には程遠いと思っていた「笑う」という表情、
その一番最初を彩るのが苦笑とは……そんなことにまた苦笑してしまう。
少女は気がつかない。自分が浮かべているものは、傍から見れば見れば決して
苦笑と呼べるものではないことを。その表情を浮かべるための感情が
「笑み」と同じくらい縁がないと思っていた感情だということを。
それを知っているのは、八雲の不調と少女の存在にずっと気がついていた黒猫だけだが、
猫らしくただ眺めているだけで、決してそのことを誰にも告げようとすることはなかった。
眺めているばかりだと、存外自分が見られていることにも気が付かないものということで……
――END――
「八雲←天満←(この二人を)幽子←(全員を)伊織」って感じです。
作品に解説つけるのは無粋だろうけど、わかりにくいかもしれないので一応。
しかしだいぶ最初と形が変わった。
初めは、落ち込んだ八雲と天満が二人で電車に乗ってお出かけ→天満寝る→スカートの中を覗くやつがいる→そいつの心が見えて、八雲が注意
という流れで、八雲が自分の力に自信を持つってもんで、幽子とか全然出てなかったw
755 :
710:04/04/18 22:05 ID:WiBE5f36
乙です
幽子は扱いが難しいですね
いい感じだと思います
自分にはこんな雰囲気書けないなぁ
「今日はどうかな、と」
質素ではあるものの、決して手抜きではない意匠の施されたティーポットの前で誰にともなく呟くサラ。
これといった活動内容もなければ実績もない部活にもかかわらず、不思議と本格的な茶器は一揃いに各種
茶葉もよりどりみどり、コーヒーもインスタントから手挽きまで、緑茶日本茶なんでもござれ、という充実
ぶりである。一説に因ればそこには顧問の教師が関与しているという話だが、真相は定かではない。
ともあれ、紅茶の消費量で一、二を争う英国出身のサラとしては、理想的な環境ということになる。茶葉
によっても飲み方によっても、その蒸らし時間は千差万別、ベストな入れ方を追求するのはなかなかどう
して『部活動』である。
もっとも、彼女自身はそんな素振りを周りに見せることはない。
『こういうのってやっぱり楽しいし、誰かに美味しいって言ってもらえたらそれで十分だよ』
とは、彼女が八雲に語ったところである。
さておき、今日も今日とてそんな風に新しい入れ方を試しているところに、とんとん、とノックの音。
はいどうぞ、という返事にドアから顔を出したのは。
「あ、周防先輩」
いらっしゃい、という声に邪魔するよ、と答えて部室に足を踏み入れる美琴。部員ではないとは言え、
部長が晶、キャンプにも行った、ということでそれなりに馴染みの場所である。
――もっとも彼女の場合、ここを訪れる理由は他にもあるわけで。
「花井のヤツ、来てない?」
「いえ、今日は見てませんけど」
どうかしたんですか、というサラに、ちょっとね、と言葉を濁す美琴。実際のところ、昨日から様子が
おかしくて、笛を吹きながらネズミを引き連れていて、今朝は学校にも来てない、などという説明はあまり
したくなかったというのもあるのだが。
「ったく、どこ行ったんだか……」
ぼやきつつ、邪魔して悪かったね、と出ていこうとするその背中に声をかける。
「あ、先輩。折角ですからお茶でもいかがですか?」
「いや、わざわざいいよ、そんな」
「ちょうど入れるところでしたし、それに……」
「それに?」
一人より二人の方が楽しいですから、と微笑むサラ。つられるようにして、そりゃそうだ、と美琴も笑った。
「どうですか?」
いつもとは違う入れ方をしていた手前、それとなく尋ねてみるサラ、美味しいよ、という美琴の言葉にふう、と一息。
「ん?どうかした?」
「いえ、最近いろいろ入れ方を試してるからどうかな、って思ってたんです」
でも気に入ってもらえたなら嬉しいです、とサラ。
「そっか。なんか紅茶っていろいろあるし、大変そうだね」
「その代わり楽しいですよ。先輩もどうですか?茶葉ならいろいろありますし」
その言葉に、んー、と思案顔の美琴に、先輩ってこういうの得意そうですし、ともう一押しするサラ。
「人並みには、ね」
家事全般をそつなくこなす美琴、この『人並み』もそれなりに高レベルな話だったりするのだが、それはさておき。
「そうだね、折角だし」
もらっておこうかな、というその言葉に笑顔を浮かべるサラ、紅茶仲間の地道な布教中だったりもする。
「それじゃ後でお渡ししますね」
そう言って自分の紅茶に手をつけてから、それで、と改めて口を開く。
「花井先輩、どうかされたんですか?」
お話なら伺いますよ、と言って返事を待つ。
「あー……」
話すべきかどうか、話すならどう話すか、そんなことを少し考えてから、結局要点だけを話すことにする美琴。
「いろいろあったことはあったんだけどね。要はさ、アイツが何考えてるのか分かんなくなった、ってとこかな」
大抵のことなら大丈夫って思ってたんだけど、と続ける。
「伊達に長い付き合いじゃないしさ、バカなところだってそうじゃないところだって、十分すぎるくらい見て
きてるんだけどさ、今回はなんだか、ね」
そこで一度言葉を切って。
「他人は他人、なんて言っちゃえばそれまでだけどさ」
なんからしくないね、と苦笑いとともに溜息をつく。
「……ま、そんな話。大したことないって言えば大したことないかな」
「周防先輩、花井先輩のことってどう思ってます?」
ひとしきり聞き終えた後で、サラはそう尋ねた。
「どう、って訊かれると……」
ちょっと困り気味の表情をする美琴に、そういうことじゃなくて、と言い直すサラ。
「少なくとも、間違ったことをする人じゃない、って思ってますよね」
「ん……まあそうだね、なんだかんだで結局マジメなヤツだし」
あんまりおかしなことをするヤツじゃないよ、と頷く美琴。
「だったら、今度もきっと大丈夫ですよ。一番長く見てきた先輩が言うんですから。だから」
一息入れて。
「だから、信じてみたらどうですか?」
「……信じる」
「そんなに大袈裟なことじゃないかもしれませんけど……でも、そういうものじゃないですか?その、」
友達って、と恥ずかしそうに付け加える。
「友達、か。そうだね、私くらい信じてやらないとさすがにかわいそうだな」
他のヤツらなんて気にもしてないし、と先ほどの自嘲気味の表情とは違って、明るく茶化して言う美琴。
「ありがと、なんか話聞いてもらっちゃった上に大分楽になったよ」
「いえ、どうしたしまして。それに私、これでも教会でシスターの真似事なんてやってますし」
子供たち相手ですけどね、と言うサラに、なるほどね、と頷く美琴。
「子供ってあれでけっこう厳しいからね、相手してれば自然とそうなる、か」
「いい加減な答じゃ納得してくれませんし、なかなか大変です」
「だね。私もそういうの相手にすることあってさ、苦労するよ。ま、楽しいけどね」
そう言って笑って見せた美琴に、ええ、とサラも微笑んだ。
そんな話を終えた後は、紅茶を片手に他愛のないおしゃべり。それにも一段落ついたところで、
「じゃそろそろ行くよ」
助かったよ、ありがと、と席を立つ美琴に、お土産です、と紅茶を渡すサラ。
「そのうちここでお披露目して下さいね」
「分かったよ。あ、でもあんまり期待しないように」
それじゃ、と部室を出て行く美琴。その背中を笑顔で見送ってから、よし、と立ち上がるサラ。
「周防先輩で様子を見たわけじゃないんだけど……」
そうなっちゃうのかな、これ、と言いつつ、もう一度紅茶を入れる準備を始める。味と香りは先ほど美琴に
出した時間で上々、それなら今度もそのままで問題はない。
「やっぱり美味しいのを飲んでもらいたいから、ね」
誰にともなくそう言ったとき、とんとん、とどこか控えめにノックの音がする。その様子に、遠慮なんて
する必要ないのに、相変わらずだな、と思いながら。
「――いらっしゃい。今ちょうどお茶入れるトコだよ」
そう言って、サラは八雲を出迎えた。
『やっぱり美味しいのを飲んでもらいたいから――友達には、ね』
そんな、言葉にしない呟きとともに。
芸風をちょっと変えてみる試みにあっさり失敗したような。
どうでもいい話として、サラの相談スキルを活かして学園祭は茶道部で懺悔兼相談部屋、
当然2-Cの面々が、という果てしなく微妙なネタがありましたが却下されました。
たまにはネタ物も書きたいなあ、などと思いつつ。
即興で作ったSSです。
八雲が最近多いので八雲SS(?)です。
どぞ
・・・・・さ・・・・・・
・・・起・・・な・・・い・・
・・・・・起・・き・・さ・・い・・・
―――――起きなさい!
奇妙な呼び声で目を覚ます。
起き上がると一人の少女が見つめていた。
容姿は10〜12歳の小学生ぐらいで自分の好きな女性に似てなくもない。
ただ、その女性の持つ雰囲気は自分よりも年上のように感じられた。
神秘的と言い表せばいいのか、その少女には今までに感じたことのない幻想的な印象を覚えた。
「起こしたのは、お前か?」
「・・・そうよ」
「何か用か?」
「・・・そうよ」
本当に奇妙な少女だった。
話している感じがしない。
ただ与えられた仕事を坦々と終わらせていく機械を相手にしているようだ。
ふと、疑問に思う。
ここはどこなんだ?、と。
周りを見ると、何もない真っ白な世界が永遠と続いていた。
「ここは・・・・」
急に少女が語りだす。
やはり感情と呼べるものが篭っていなかった。
「・・・夢と呼べる物に近い世界」
「・・・・・これは夢なのか?」
「夢に限りなく近似しているけど、夢ではないわ。夢というのはその人の中の世界。ここは現実よ。」
「え〜と、つまり夢っぽい現実?」
「・・・もう、それでいいわ。」
初めて感情らしきものが感じられた。
といっても、それは落胆であったが。
「あなたは・・・あの子の事をどう思ってるの?」
「あの子?」
「塚本八雲よ」
「なんで、お前が知ってんだ?・・・妹さんがどうって言われても・・・・・。ん〜〜〜〜・・・・いい子だぜ。相談とかに乗ってくれるし」
「・・・やっぱりその程度なのね」
「・・・話が見えないんだが」
「あの子は・・・・とても特殊な環境で育っているわ。」
「特殊?」
「人の心が視えるの」
「心が?・・・んなわけねぇだろ」
「心が視える条件があるわ。安心して・・・・。あなたはその条件に入ってないわ」
「安心も何も、んなの信じてねぇよ」
「信じなくてもいいわ。ただ、頭の片隅には置いて。心が視えるということはとても危険なの」
「そりゃ、ウソとか丸分かりだしな」
「そうじゃないわ。他人の心を視るのは、人間に大きな負担がかかるわ。あの子の魂は、本来繋がらない場所に繋がってしまっているの」
「だんだん、わけ分からなくなってきたぞ」
「アカシックレコードって知ってる?」
「ア・・・アカ?」
「アカシックレコード。これはあなたの世界でつけられた名前。地球から全宇宙までがこれまで経験し、そして、これから経験する行為、思考、出来事、個人的経験・想念・情動
の記録がすべて歴史的に超物質的方法で記され保存されている、云わばデータバンクよ。そこにあの子の魂が繋がっているの。」
「それが、なんで負担がかかるんだ?」
「それは、人間には備われていない能力だからよ。あなたが100mを5秒で強制的に走らされたらどうなると思う?」
「疲れるだろうな」
「それで済めばいい方だわ。筋肉が千切れ、骨は砕け、血管が破裂する。」
「うげっ!」
「あの子はそんな世界を過ごしているの。現に良く睡眠状態になってしまうわ。これは、危険信号なの。このままだと、あの子の身体が耐えれなくなって死んでしまうわ。」
「心を視るのを止めればいいんじゃねぇか?」
「無理だわ。情報が一方的に流れ込んできて遮断する事ができないの。嫌でも相手の心が視えてしまう。」
「じゃあ、どうすれば妹さんを助けれるんだ!?」
「もともと、この能力は罪滅ぼしの為に神様が備え付けたモノ。」
「罪滅ぼし?」
「ええ・・・・前世でね。内容は言えないわ。言えば掟を破った事になり、私が消されてしまうわ。もちろん、知ったあなたもね。」
「それで・・・」
「あの子を助ける為に神様は条件を出したわ。この条件をクリアすればあの子の能力が消え去り、あの子を助けることができる。」
「条件はなんだ!?言えっ!」
「残念ながら・・・言えないわ。言ってしまえば、条件をクリア出来なくなってしまうの。ただ・・・ヒントは教えれる。」
「ヒント?」
「ええ・・・その為にあなたがここにいるのだから・・・。ヒントは・・・・・あなたよ。」
「え?・・・俺?」
「これからの播磨拳児の行動によって、塚本八雲の罪が消えるわ。正確には、現在あなたが一番あの子を助けれる位置にいるの。」
「おい!それだけじゃわかんねぇだろ!」
「本当にこれ以上言えないわ。これでも、教えれる限界のヒントなの。」
「・・・・そうか。」
「私が伝えたいのはこれだけよ。じきに元の世界に戻れるわ。あの子を・・・よろしく。あなたならきっとあの子を救えるわ。」
「妹さんの為だ。やれる事やってやるさ」
「・・・ねぇ・・・あなた・・・・あの子の事、名前で呼ばないの?」
「ん?なんでだ?」
「あの子にだって名前がある。そっちの方が嬉しいはずよ。例えば・・・・・あなたがグラサンって呼ばれるより拳児って呼ばれる方がいいでしょ?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「八雲ちゃん・・・って呼ぶのは変じゃねぇか?」
「いいえ。あの子はきっと喜ぶわ。」
「そうか。」
「もうそろそろ時間だわ。」
「・・・お前の名前は、何ていうんだ?」
「え?」
「名前だ。名前。自分で名前で呼んだ方がいいって言ったろ。」
「私には・・・・・名前がないわ・・・。自由に呼んでいいわ。」
「なら、・・・・ん〜〜〜〜。・・・・・・伊織な。」
「・・・・・・・・なんで伊織なの?」
「なんとなくだ」
「あなたって変な人ね・・・。」
「よけいなお世話だ!」
「本当に時間だわ・・・。また会えたらいいわね。・・・・さようなら。」
「じゃあな。」
徐々に視界がぼやけていく。
眼に映る全てが真っ白になるまで不思議な少女をずっと見つめていた。
(なんだよ・・・ちゃんと笑えるじゃねぇか・・・・)
「播磨さん・・・・」
「ん・・・・」
「起きて下さい・・・・」
「ん〜・・・・ふぁぁぁぁぁ〜〜〜。あ、八雲ちゃん。」
「この原稿ですけど・・・・・え?」
「ん?・・・いつの間にか寝ちまってたか!スマン!」
(なんか重要な夢見てた気がしたんだが・・・思い出せん)
「あ・・・・いえ・・・別にいいんですけど・・・・。えと・・・私の事・・何て呼びました?」
「あぁ、原稿の相談に乗ってくれてるのに、妹さんじゃあ他人行儀だしな。八雲ちゃんって呼ばせてもらうぜ。」
「あ・・・・はい!・・・・その・・・・ありがと・・・・ございます・・・・」
「にゃ〜」
「あ・・・伊織・・・」
「コラ!俺の膝に座るな!」
「にゃ〜〜」
「動く気0だな・・・・」
「ごめんなさい・・・播磨さん・・・」
「ま、たまにはいいか・・・・・」
そう言って、伊織を撫でる。
日光もちょうど良い暖かさで、その二つが非常に至福感を伊織に与えてくれた。
ほのぼのとした、時間が過ぎて行き、急に肩の重みが増す。
「八雲ちゃん?」
「すぅ・・・・・すぅ・・・・」
「まいったな・・・・・・」
END
三点リーダ使い過ぎ。
漫画じゃないんだから、地の分でもう少し表現の幅つけないと。
あと、アカシックレコードとかスクランの色じゃないの出されると少し萎える。
どうせ説明するなら、京極堂の榎木津みたいに「よくわからないもの」程度で十分。
769 :
718:04/04/18 22:54 ID:Kvc4OtUs
おおっ!帰ってみたらSSがいっぱい増えてる!
しかも全部俺より断然上手いし・・・_| ̄|○
とりあえず、あのSSは烏丸が最近でてこないんで
最終回どうするんだろう?と思って書いたSSです
最終回っぽくするために花井や今一もだそうと思ったんですが力及ばず・・・
美琴と晶も最初いなかったのに無理やり入れちゃったし
やはり、高2のガキにはまだ早いってことでしょうか・・・
>>740 わざとじゃありません・・・昨日の深夜に書いていたもんで
頭が回ってませんでした_| ̄|○
あと、すげぇ読みにくいですね、万が一次に書くときは気をつけます
職人、住人の方々お目汚しすみませんでした
という事で、下手ながら載させていただきました。
書いてて思うことは、播磨の返答の仕方がわからないという_| ̄|○
播磨ってあんまり返答しないんですよね。先に自分が話しちゃうし、返答は話噛み合ってないし・・・・
次に、「幽子=伊織説」です。
これは、自分の妄想。相手にしないでください・・・・。
最後に、八雲の能力について。
天満もスプーン曲げができる事から、塚本家は霊的感覚が強いと思われます。
で、思いついたのがアカシックレコードです。
アカシックレコードを知らない人は検索してください。
まぁ、平たく言えば全部妄想なので・・・少しでも楽しく読んで頂ければ幸いです。
検索しながら読まなきゃいけない文章ってのもちょっとなぁ……。
これだと自己満足小説に過ぎない感がある。
とにかく、読み手のことを考えて書くのは基本かと。
職人さんが増えてますね。いいことです。
以前のように活気あるスレに戻ってきてるということでしょう。
>>739 お疲れ様です。
上でも出てましたが、まさに最終回って感じですね。
ただ一つ一つの台詞がちと長いかなーと感じました。
適度に地の文を挟んでやるといいと思います。
>>745 キャラがよく動かせていると思います。
ま、匿名掲示板ですから悩まずにいきましょうw
>>754 塚本姉妹の何気ない日常、楽しませて頂きました。
形が変わるのはまあよくあることですよ。面白ければよし、です。
とりあえず、長くなったので一回切ります。
>>770 GJです!
私はとても良いと思いましたよ
次回作期待してますよ
>718
勢いがあって俺のより面白いでしょw
ただ、惜しくらむは、駅に着くまでの描写がないことと擬音が多いことかな(^^;
間に合うのがわかっていても熱い展開が欲しいんですOTL
たとえば、(バイクだけど)渋滞でスピードが出せない状況で走り始めたりねw
あと、擬音に関しては、語彙を増やしていくことが重要でしょう。
本をいろいろ読めば自然と増えるから、時間のある学生のうちにGO!!
>770
主点をどこに置けばいいのかわからない。
「八雲の能力の説明」と「幽子=伊織説」が喧嘩しちゃってる。
それと、三点リーダの使い過ぎと、既出だけど地の分が少ないってことに注意した方がよろしいかと。
地の文増やせば、台詞以外の返答がいくつかできるよ。
続きです。
>>760 白サラ、いいですねw
珍しい組み合わせでしたが、きちんとキャラを動かせているのはさすがです。
>>770 幽霊の女の子=伊織ですか。
猫は一歳で人間の二十歳に相当すると言いますし、あながち「ずっと年上」っていうのも
間違いじゃないようなw
個人的には、神秘的な雰囲気が出せていて良かったと思います。
あとはやはり地の文ですね。ちょっと少なすぎるかなーと。
それにしても、皆さんレベルが高いですね。
自分は大学の関係でちと完成が遅れそうなのですが、これならむしろ自分なんか
いなくても心配なさそうですw
あと、もう480KB超えてますね。というわけで、↓の方スレ立てお願いします。
順番が変わったけど>760
GJ!! 日常の雰囲気がすごい出ているだけじゃなく、文章がすごい滑らかで読みやすかったです。
ところで、題名無しってものすごい少数派なんだよなOTL
題名つけるの滅茶苦茶苦手な俺には、結構深刻な問題だ。
参考までに、どういった風に題名つけるか教えてもらえないだろうか?>ALL
>>776 以前自分はGLAYの曲名から取ってました。
今はミスチルから取ってますね。
そろそろネタが尽きてきてるので、他を探さないと……。
あと、悪いですがスレ立てお願いします。
おつです。
まあ深く考えすぎるとドツボにはまるので、適当に付けて構わないと思いますよ。
きっちり洋画から持ってきたら、それはそれですごいことですけど。
最近は伊織・幽霊さん・八雲フィーバー。
加えて日常系の作品が好きなので、個人的に嬉しい限り。
テクニカルな面は我流でごーごー、でいいと思うのですが、地の文の話題が多いのでちょっとだけ。
もう少し繋げて書いてもいいんじゃないかな、とか。
短い一文ずつ途切れるよりは、適当に接続詞なりなんなりである程度の長さを持たせた方が
読みやすい気がします。
余談として、自分は実際口に出してみてどうか、というのを気にしてみたりしてます。
それがいいか悪いかはさておき。
>775
白サラ布教中ですから(何
サラはポジション的に頑張ればほぼ全員と絡めるかな、とか。
>776
ぶっちゃけタイトルは適当です。
書き終えてからそれっぽい単語を辞書から引っ張ってくるという……いやはや。
>>776 タイトルは全部JOJOのスタンド名から来ています。
おそらく誰も気付いていないでしょうが(笑)
一応、内容とタイトルに関連性を持たせるように
しているつもりですが、そろそろ苦しくなってきたかも…
つまりタイトルは存外適当ということです。
THX>ALL
そっかーみんな結構適当なのかw
じゃあ、適当な題名で747-753は「華麗なる非日常」とでもしておきますw
783 :
718:04/04/19 00:39 ID:Kvc4OtUs
なるほど、とても参考になりました
注意された点を参考に頑張ってみます
でも、俺文章読むのすごい苦手だ_| ̄|○ 書いたのもあれが初めてだし
それと719-738のタイトルは「ある一つの終わり方」にしておいてください
センスねぇなぁ俺・・・
>>770 とりあえずら抜き言葉は見苦しいと思います。
教えれる、助けれる、なんて言葉遣いだけで、喋っているキャラの頭悪そうで
一気に萎えてしまうなあ。
>>760 サラはいいねえ・・・。
>>754 八雲もいいねえ・・・。
>>718 プロットは良いと思うんだが、いかんせん急ぎすぎの感じが。
特に
>>726の辺り、沢近の独白があまりにも長過ぎというか喋らせ過ぎというか。
全部書こうとせず、もうちょっと読者に下駄を預けても良いんじゃないでしょうか。
>三点リーダ使いすぎ
間を置くのはやっぱ「・・・」でしょ。と確信していたので。
次は違う方法でやってみます。
>地の文が少ない
すみません。これ、わざとです。
動きの文を書かない事で動きを個人個人で想像して欲しかったのですが、
自分の表現力が足りないばっかりに自己満足に終わってたみたいです。
>読み手のことを考える
考えてはいるんですが、ボキャブラリーや表現能力などが少なく
読みにくい文になってしまっているのは、自分でもわかります。
ので、頭悪そうに見えるのは必然かと^^;
主点がわからない点も同じ理由だと思われます。
善処することで赦してください。
少ないながら面白く読んで頂けたお方に感謝します。
漏れだけかもしれんけど活字を読む際のら抜きは気になる。
キャラ付けとかならいいけどそうでもなさそうだし。
あと幽霊の女の子のセリフが「…わ」ばっかなのもちょっと違和感有りと思った。
>>718 面白いと思いました。
話の流れ的にはいいと良かったです。
ただ、一部読みにくい部分があったような気がします。
上のかたもかいておられますが、長い台詞のときには、
少し地の文を挟んで、二つにわけるなどしてはどうでしょうか?
>>746 上手いと思いました。
個人的には、八雲をSSにするのは難しい(欠点があまり無いキャラクターなので、
特徴を出すのが難しい)と思っていますが、
上手くキャラの特徴を捉えていたと思います。
文書も読みやすく、参考になりました。
>>756 個人的に気に入った作品です。
キャラクターの特徴、台詞と地の文のバランスなど、読みやすく上手だと思いました。
次回作、楽しみにしています。
>>762 アカシック〜のくだりは、個人の好みもあるでしょうし、とりあえず文章的なことを。
間の取り方ですが、漫画やゲームなどと、小説とでは、間の取り方が違うと思います。
よく漫画などでは、…を多用しますが、文字だけの世界で、これをやると、読みにくくなることがあると思います。
私の場合は、間をおきたいときには、少し長めの地の文(風景描写など)を挟むことにしています。
頑張って下さい。
簡単ですが感想でした。
職人の方々頑張って下さい( ´∀`)
感想サンクスです。
料理教室と幽子の話の時系列がそんなに突っ込まれなくてほっとしてますw
今度はもう少し設定を確認してからプロット作ります。今回は確信犯だけどなw
>>785 説明しないと全くわからないっていうのは試みとして失敗している証拠。
説明したくなる気持ちもわかりますがね。
それと、小説自体が想像による部分があるから、それを意識したほうがいいよ。
789 :
710:04/04/21 03:01 ID:WiBE5f36
次スレで連投規制に引っかかった………
790 :
Classical名無しさん:04/04/23 22:53 ID:D.qBONUc
保守あげ
ていうか皆さん読んだら感想を書きましょうね。
俺は職人じゃないから分からないが、感想こそ次回作への意欲になるんだと思うよ
SSが増えてるのは嬉しいが、感想の数がそれに反比例してるのはどうかと思う
かく言う俺も毎回書いてる訳じゃないんだがな
感想の数がというか、感想書く前に新たなSSが出るから無理なんだよ。
少しは自重してほしいですな。
レスアンカー付ければいいんでない?
確かに連続で作品が投下されると
うれしい反面、対応にも困ったりしますな。
職人サイドから言わせてもらえば、感想は確かに意欲になります。
確かな根拠の上の感想ならばGJでも叩きでもどちらとも(個人的には)ありがたいです。
また感想が付かないときは、付かない理由を考えたりもします。
ネタがかぶっていたり、時間帯が過疎時間だったり、単純に琴線に触れるようなSSが
書けなかったり、と色々あると思いますし……
とりあえず、読んで少しでも何か思うことがあれば一言書いてみてください。
職人という生き物(特に自分)はたったそれだけでもうれしいものですから。
絨毯爆撃断念。
IF06用の感想をまた2行ずつで書いてたらメモ帳内で8KB越えました。無念。
街中で播磨さんが、花井先輩たちと揉めていた日の夜、
播磨さんからメールが来た。
『今日は巻き込んじまってすまねえ。 今度はバイト先に持っていくからよ』と。
播磨さんの気遣いが嬉しかった。
『今度の日曜日、お待ちしています。』
メールの返事をして、眠りについた。
播磨さんとの会話を思い浮かべながら…
そして、日曜日。
播磨さんから再びメールが来た。
『バイトが終わる頃に行くぜ』
初めて原稿を見た日、バイトを中断させたのが気になっているようだ。
気にしなくてもいいのにと思いつつも、
『わかりました。 おいしいコーヒー用意しておきます』
そう返事をして、バイト先に向かった。
夕方5時を過ぎた頃、播磨さんがやってきた。
「よ、待たせちまったかな?」
「いえ、大丈夫です」
コーヒーを一口すすり、播磨さんは原稿を取り出した。
「じゃ、見てくれ。 新キャラを加えてみたんだ」
「はい、それじゃ」
前回怖がらせたせいか、播磨さんは後ろを向いている。
原稿を目にして、思わずつぶやいた。
「え? これは…」
前回と登場人物は変わらなかった。
一人の見慣れない女の子の除いて。
悩んでいる主人公にアドバイスをする女の子。
悩みが解決した主人公は、再びヒロインにに対して思いを強くする。
そんなストーリーだった。
以外に感じたのは、アドバイスした女の子の表情だった。
拳児君、がんばれ=@女の子は主人公にニコッと笑っていた。
どう見ても、自分がモデルになっている。
でも、自分はこんな表情は出せない。
戸惑っていると「妹さん」と呼ばれた。
顔を上げると、面白い顔をした播磨さんがいた。
思わずブッと吹き出し、笑い出す。
「な、なにやってるんですか、播磨さん」
「ほら、その顔だよ」
「え?」
「そんな笑顔も出来るじゃねえか。 自分じゃ気付いてねえだけなんだよ。
悩んでる時や、落ち込んだ時は、ニッコリ笑って貰えると元気が出るんだぜ」
意外だった。 自分にも、笑顔が出来るんだ。
「だからよ、すこしづつでも笑っていこうや、この女の子みたく。な?」
播磨さんは、真っ赤になって俯いてしまった。
私にも、見ててくれた人が居たんだ…そう思うと嬉しかった。
原稿を見て、感想を述べた後、雑談になった。
「いつもワリイな。 なんか礼がしたいんだけど…」
「いえ、そんな」
断りつつ、はっとする。 そして、播磨さんをじっと見つめて言った。
「ひとつだけ、お願いを聞いてください」
「オウ、なによ?」
「わたしを『妹さん』じゃなくて、『八雲』って呼んで下さい」
「なっ? そ、それは…」
「わたし、もっと笑えるようになりますから…お願いです、名前で呼んで下さい!」
「わ、わかったぜ。 や、八雲…ちゃん」
「はい!」
播磨さんの前では、笑顔でいられるようにしよう。
そう思った八雲だった…
支援するけどSSは新スレの方に投下して欲しい
>>802 あえてこっちに投下した気持ちもわからんでもない。
見て欲しいけどあんまり大勢の人には見て欲しくない、みたいな。
新しく投稿する人とか自信ない人はこっちでもいいんじゃないの?
ひっそりこちらで進行するSSがあっても良いと思うよ。
ということで、
>>796-801乙。
いや、やっぱり前スレに投下して気づかない人がいるのはもったいないよ
雑談で埋めればいいんじゃない
>>796-801 新スレに、こっちに投下したって書いてあったので来ました。
八雲視点のSSですね、いい感じです(^^)
ただ、八雲らしさを出すために彼女の台詞には「…」を多用したほうが良いですよ
感想なんぞ、ないと思って投下するのが基本。
2chの方がやさしい人が多いってどういうことよw
こんなことを言ってしまった手前、素直に感想をつけにくかったり……
というわけで
>>805に焦点を絞ってみる。
三点リーダは、八雲といえどあまり使わないほうがいいかと。
今回ぐらいでちょうどいい。これ以上多いと、何のために使っているのかわからなくなる。
もし間を取りたいのなら、地の文とかで間接話法を使ってみるのも一つの手だと思う。
いい雰囲気の作品だから、無理する必要はないはずだけどね。
みなさん、批評どうもです。
今後の作品に生かしていきたいと思います。
_.. - .._
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lハ:.l:.l. , '"` r‐-、l:.リ、l:.l
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