もっとスクールランブルの奈良くん萌えスレッド

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スクールランブルの奈良くん萌えスレッド
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1060335566/
2名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/27 23:40 ID:lXi70id6
ういうい
33ゲッター ◆vT3Get2BrU :03/12/27 23:42 ID:AVKP7Km2
4名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/27 23:43 ID:dnyuoViD
次スレここ?
1さん乙
5名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/27 23:45 ID:GHehh33+
華麗に5ゲトー
6名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/27 23:45 ID:e965/hle
保守
7名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/27 23:46 ID:hM+ZrZsE
7
8名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/27 23:51 ID:dPht4Xhf
あくまで奈良君萌えなのか
9名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/28 00:02 ID:HP/yg+S7
なんかもう「SSスレ」ってしたほうがえがったんでねえの?
奈良の話なんてほとんどでてこねーし。(というか奈良の知名度低いような…)
>>1は責任持って埋めること。
>>1はどこ逝った?
School Rumble SEED

『コズミック・イラ70…。「血のバレンタイン」
の悲劇によって、地球・プラント間の緊張は、
一気に本格的武力衝突へと発展した。』
地球軍のモビルアーマーや戦車、次々と撃破
していくモビルスーツ群。「だれもが疑わなかった
数で勝る、地球軍の勝利。が、当初の予測は大きく裏切られ、
戦局は疲弊したまま、11ヶ月がすぎようとしていた。」
<再会の時>
花井「どうして播磨!お前が地球軍にいる!」
播磨「ここには!ここには俺が守りたい人
(天満ちゃん)がいるからだ!」
<確執>
沢近「ヒゲ!アンタ、自分もコーディネイターだから
本気で戦ってないんでしょう!?だからパパは!」
美琴「沢近!あんた、言いすぎだぞ!播磨は本気で
戦ったじゃねえか!」
<大気圏突入>
天王寺「播磨は!播磨はどこだ!でないと傷がうずく
だろうがあああ!!!」
播磨「天満ちゃんは…天満ちゃんは!やらせはしねーぜ!」
<闇の胎動>
今鳥「それとも〜、バカなナチュラルの彼氏でも死んだか?」
美琴「あんたが生き残ってるのに!なんで先輩は死なな
きゃならなかったのよ!!!」
<立ちはだかるもの>
麻生「へえ、随分若い子が艦長さんなんですね。」
連邦軍上官「彼女は、若いですが有能で、ここに転属される
までアークエンジェルで戦闘指揮官を担当していまして。」
麻生「そうですか。ふふ、それなら好都合だ。これから我々
が討ちにいくのは、アークエンジェルなのですから。」
晶「アークエンジェルを?!!…」
全ての行き着く先に彼等が見るものは…。2004年春、スクールランブルSEED公開。
さて、足跡。
すいません、今回は完璧なまでに捏造です。
こんな設定全くありません、ただの妄想であり捏造で、下手すると二次創作
ですらないことをお断りしておきます。
15「Let It Ride」1/14:03/12/28 02:11 ID:iHCAGWaB
 子供と大人の価値観というものには天と地の隔たりがある。例えば、子供に
とって「異性」というものは、通常たった一つの能力値でそれに対する態度が
決定付けられる。
 つまり、「面白いヤツ」か「面白くないヤツ」か。
 その点からすると、塚本天満と塚本八雲という二人の子供は「面白いヤツ」
と「面白くないヤツ」というカテゴリに分けられる。
 塚本天満は、明るかった。誰に対しても親しみやすく、いつでも笑顔で、周
りの人間を幸せにできる少女だった。これはいわゆる「モテる」というものと
は多少違うが――いや、違わないか――ともあれ、塚本天満は老若男女問わず、
誰もでも受け入れられる少女だった。
 塚本八雲は、決して暗いと言う訳ではなかった。ただ、生来的に引っ込み思
案だった。なるほど、八雲は年上の人間には評判が良かった。
「大人しくていい子」「めんこい子」「将来美人になるぞ」、賞賛の言葉が惜
しみなく彼女に注がれた。
 しかし、そんな事は子供達には関係ない。繰り返して言うが、子供達にとっ
ては「面白い」か「面白くない」かが問題なのだ。
 その点からすると、塚本八雲は遊び相手としては大層つまらなかった。まず、
表情が硬い。おままごとをしても、鬼ごっこをしても、楽しんでいるのか、楽
しんでいないのか、全く判らない。
 必然的に子供達は自分達のやっていることが「つまらないもの」と考えてし
まう、だが「鬼ごっこ」も「おままごと」もいつも楽しいのになぜだろう?
 子供達は残酷な結論に達する。
「八雲がいるから、つまらないんだ」
 そうなると、子供達は躊躇なく彼女を弾劾する。
「お前と遊んでいるとつまらない、だからあっちいけ」
 ……塚本八雲には、決して悪気があった訳ではない。なかなか笑顔を作れな
いのは、生まれついてのことだし、本人としてはとても楽しんでいたのだ。そ
れを伝える術を、まだ幼い八雲は体得していなかった。
 その点、姉である塚本天満はそれを――つまり、楽しいことを楽しいと思わ
せてくれる笑顔を――生来的に体得していた。だから、彼女の周りはいつでも
人が集まった。
16「Let It Ride」2/14:03/12/28 02:12 ID:iHCAGWaB
 そして天満は、妹である八雲にとても優しかった。これは、「姉は妹を護ら
なくてはならない」という両親の教えを忠実に実行した結果である。
 八雲を遊びに混ぜなければ、姉である天満も決して遊ぼうとしなかった。ゆ
えに、子供達は塚本天満と遊ぶのではなく、塚本姉妹と遊ぶことを余儀なくさ
れた。
 これはこれで面白くないが、子供達は塚本八雲をこっそりと「マメ」扱いす
ることで納得した。「マメ」扱い、つまり「本気」で遊ばないオマケ扱いの相
手である。
 だから、「鬼ごっこ」をやっても「かくれんぼ」をやってもをやっても、い
つだって八雲は生き残った。「鬼ごっこ」をやれば、彼女を追い回してくれる
人間は誰もいなかったし、「かくれんぼ」では見つけても知らんぷりをされた。
 いくら子供とはいえ、塚本八雲はその悪意に敏感に気付いた。もっとも、当
の子供達からすれば、それは「ゲームを面白くする」ための防御策であり、自
分達にとっては当然の権利だと思っただろう。
 塚本天満は、姉ではあるものの、さすがにこの隠れた悪意に気付けというの
は酷だったろう。何しろ、ようやくランドセルを背負って一年経った程度なの
だ。
 姉の楽しげな様子が、八雲は嬉しかった。同時に、自分が楽しめないことが
八雲は辛かった。
 ある日、八雲はとうとう根負けした。
「ひとりであそぶ」
 塚本八雲は、姉にそう宣言した。天満はきょとんとした顔で、
「どうして?」
 と尋ねた。当たり前の話である。いつも遊んでいるのに、今日に限ってどう
して自分一人で遊びたいと言うのか。今の八雲ならば、嘘をつくことができる
だろう、姉に気を遣う、ということができただろう。
 だが、当時ランドセルを背負ったばかりの八雲には、そんな芸当は不可能だ
った。
17「Let It Ride」3/14:03/12/28 02:12 ID:iHCAGWaB
「どうしても」
 と八雲は言った。当然、天満は引き下がらない。
「どうして?」
「どうしても」
「どうしてどうしても?」
「どうしても、どうしても」
 埒が明かない。天満はますます疑問を感じ、さらに問い詰めようとする。が、
ここで八雲を救った(と言うべきかどうか)は、くだんの子供達だ。
「あそびたくないっていうんだから、しょーがないじゃん」
 天満の手を、子供達が強引に引っ張った。
「いこーぜ、てんま!」
 さらにもう一人が加勢した。天満になす術はない。それでも彼女は必死に抵
抗し、振り返ってこう言った。
「しらないおじさんについてっちゃダメだよ!」
 いつも二人が母親に言われていた言葉だ。八雲は承知した。
 天満が去って行った。きっといつもの公園に向かうのだろう。ならば、自分
は公園以外のところへ行けばいい。迷った末、八雲は駄菓子屋に向かうことに
した。彼女の手元にあったお小遣いで、何か食べようかと考えたが、すぐにそ
の考えは打ち消した。
「くじびき」
 彼女は天満の真似をして、駄菓子屋ではいつもお菓子を購入するのが常であ
ったが、実のところ駄菓子屋店内左隅にある「くじびき 10円」という存在
が気になっていた。
 駄菓子屋のおばあさんに、こっそりと尋ねてみたことがある。
「あのくじのどれかにね、『あたり』があるんだよ。はずれはガムだけどね」
 ガムは一枚5円、つまり10円でくじを引いて外れると5円の損である。
 それだけに子供達は悩み、自分の数少ない小遣いをそれ相応の価値があるも
のに回すか、思い切った投資を行うかの選択を迫られていた。
 ――きょうはおねえちゃんがいない、だからくじをひいてみよう。
 前々からの密かな願いを叶えようと、八雲は割とうきうきした気分で歩き出
した。
18「Let It Ride」4/14:03/12/28 02:13 ID:iHCAGWaB
 店内は、ひっそりと静まり返っていた。店の奥に猫を抱いて座っている置物
のような婆さんが、八雲の姿を視認して、声を掛けた。
「おやまあ、今日はお嬢ちゃんだけかい?」
「うん」
 八雲は色とりどりのお菓子の誘惑を必死で振り払いながら、店の奥のくじび
きに手をかけた。
「おばあちゃん、これください」
「あい、10円だよ」
 八雲の軍資金は30円だ。つまり、チャンスは最大で三回あることになる。
 彼女はポケットからそっと10円玉を取り出し、ゆっくりと店主の差し出さ
れた手に置いた。婆さんは10円を確認して頷いた。
「はい、一回引いていいよ」
 八雲はドキドキしながら、長いハエトリ紙のようなくじを引いた。するする
と八雲の手に紙が巻きついていく。赤いくじひきの紙は先端だけ色が変わって
いた。色は青だった。
 おずおずと、八雲はそのくじを差し出した。婆さんは、
「はい、残念ハズレ。ハズレ賞のガム」
 と言って、5円のガムを八雲に手渡した。八雲は当然ながらガッカリで、し
ょんぼりで、落胆した。
 いや、と八雲は考える。まだ手元には20円残っている。つまり、後二回チ
ャンスがあるということだ。ここで引く訳にはいかない。
(※これは、ギャンブラーならば大小問わず常に起こり得る心理状態である)

 八雲は、もう10円を渡した。
「くじびき、やります」
「はいよ」
 婆さんは、頷いて小さいギャンブラーにチャンスをやった。一回目の気楽な
気分と違って、「これに失敗したら、後がない」というプレッシャーが、八雲
の小さな体に襲いかかる。
 ごくり、と生唾を呑んだ。するすると紙が巻きついていく。先端は、先端は、
先端は――。
19「Let It Ride」5/14:03/12/28 02:13 ID:iHCAGWaB
「はい、ハズレ。ガム一枚」

 人生は常に無情であるとは言いがたいが、ギャンブルは間違いなく無情なも
のである。八雲は差し出されたガムを、黙って先ほどのガムを収納したのと同
じポケットに詰め込んだ。
 今、八雲はわずか六歳にして人生とギャンブルの悲哀というものを味わって
いた(あまり六歳の少女が味わっていいものではない)。
 しかし、引けない。引けないのだ。姉と一緒にいる八雲ならば引いたかもし
れない、諦めたかもしれない、姉にしょんぼりと報告して、共にその場を立ち
去ったかもしれない。
 だが、今彼女は一人であり。つまるところ、彼女は武器が欲しかった。
 持っているだけで、心に勇気が湧いてくるようなものが欲しかった。
 だから、八雲は――半ば叫ぶように言った。
「くじびきやります!」
 震える手で10円玉をお婆さんに差し出した。心臓の高鳴りは二度目以上だ。
 視界がぐらつく、どれを引けばいいものか、どれを引けば当たりなのか、必
死で考える。もちろん答えなどない。どんな天才ギャンブラーでも、数十枚あ
る全く同じくじから、当たりを探すことなど不可能だ。
 八雲は、ゆっくりと真ん中のくじを手に取り、巻き付け始めた。くるくると
手にくじが巻きついていく。恐怖に目をつむる、結果を見たくて仕方ないと同
時に結果を見たくなくて仕方がない。
「あら」
 と遠目に見ていた婆さんが声を上げた。え、と反射的に八雲は目を開いてし
まう。
「あおく……ない?」
 先端が、黄色だった。混乱する。「青」であると思い込んでいたせいで、こ
れがどういう意味なのか理解できない。
「あの……これ……」
 混乱したまま、八雲は婆さんにくじを差し出した。婆さんは、淡々と告げる。
「はい、あたり。おめでとう、お嬢ちゃん」
 そう言って、コンパクトを差し出した。
20「Let It Ride」6/14:03/12/28 02:14 ID:iHCAGWaB
「……」
 驚いて、ぼんやりと口を開いたまま、八雲は差し出されたコンパクトを受け
取った。もちろん、本格的なコンパクトではない、ただのおもちゃだ。しかし、
おもちゃとは言っても、それは当時大人気だったアニメのヒロインが使用して
いた、魔法のコンパクトだ。
 もちろん、八雲も、天満もそれを知っている。二人がこの駄菓子屋に来るた
びに、「いつかは」と願い続けたそれが、八雲の手元にある。
 恐らく生まれて初めてであろうが、八雲は飛び上がって喜んだ。
「やったーーー!」
 婆さんは、にこにこと笑っている。子供が、素直に感情を表現しているとき
ほど可愛らしいものはない。
 スキップしながら、八雲は駄菓子屋を出た。胸に、大切なコンパクトをしっ
かりと抱き締めて。

「あ、やくもだー」
「こんなとこでなにしてんだよ、おまえ」

 ――そして、八雲はこの時もっとも出会いたくない人間に出会ってしまった。
「あ……」
 ぴたりと動きが止まる。思わず、後ずさってしまう。二人は、遊び相手では
あったものの、八雲をあまりに苛めようとするので、天満が「この二人がいっ
しょならわたしはぜったいにあそばないっ」と宣言した男の子たちだった。
 八雲の怯えた顔と、胸にかき抱いたコンパクトが二人の目に留まったのは、
彼女にとって最悪だったと言わざるを得まい。
21「Let It Ride」7/14:03/12/28 02:14 ID:iHCAGWaB
 ここで話は一人の少年に移る。
 少年は、当時小学校低学年の間――と言っても、塚本天満や八雲が通ってい
る小学校とはまた別の学校――で噂の暴れん坊だった。
 とにかく男子ならば、誰彼構わず喧嘩を吹っかける。その癖、ガキ大将では
ない。まさに一匹狼という名に相応しい――実際、少年は「一匹狼」という称
号に憧れていた――バラガキ≠セった。
 そうこうしている内に、喧嘩相手がいなくなった。
 何しろ、顔を見れば誰でも逃げ出すのである。そうなるとフラストレーショ
ンが溜まる。この状態こそが文字通りの一匹狼であるが、その称号の響きの良
さのみに憧れていたバラガキには、そんな事は関係ない。
 そこで、少年は遠出をすることにした。
 初めて歩く道、初めて見る公園、初めて見る駄菓子屋。不安を感じる子供も
いるだろうが、そのバラガキは平気の平左だった。
「……ん?」
 初めて見る駄菓子屋に、二人の男の子と一人の女の子が遊んでいた。
 ……いや、遊んでいるのではない。二人の男の子の間で、女の子はおろおろ
している。
「かえして、かえして、かえして」
 女の子は必死でよたよたと、男の子の間を行ったり来たり。男の子は何やら
小さいおもちゃを投げて、女の子をからかっているようだ。とは言え、からか
われている女の子にとってはただ事ではないだろうが。
「……うーし」
 腕をぶんぶん振り回す、爛々と目が輝く。足にバネを溜めて一気に走り出す。

「こっこまでおいでー!」
「やめて、かえして……!」

 八雲は懇願した、だが男の子はコンパクトを相手に投げては八雲があっちへ
こっちへとふらふらと歩くのを見て、愉快そうにげらげらと笑う。
 悲しい、と八雲は思った。どうして、と八雲は思った。目から涙が溢れて止
まらない。
22「Let It Ride」8/14:03/12/28 02:15 ID:iHCAGWaB
 バチが当たったのだ、と八雲は思った。自分一人で、自分勝手なことをした
から、神様がバチを当てたのだ、と思った。
「おねぇちゃん……ひっく」
 泣いても、八雲の正義の味方である天満は現れない。けれど、泣く以外にど
うしようもなかった。
「きーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっく!」
 甲高い少年の声が響き渡ったのは、そんな時だった。
 コンパクトを投げた少年の頭に、凄まじい衝撃が走った。
「いってぇぇぇぇ!」
「な、なんだよオマエ!」
 突然現れた、見も知らぬ少年。二人は混乱した。知り合いではない、少なく
ともいきなり人の頭を蹴り飛ばす少年など、知り合いには存在しない。
 少年は、「だれか?」などという質問に答えず非常にウキウキとした顔で、
コンパクトを手に持つ少年に殴りかかっていった。
 八雲は、ぽかんとその光景を眺めていた。突然現れた名も知らぬ少年が、い
きなり自分を苛めていた子供たちに喧嘩を仕掛けている。
 自分を苛めていた二人は、ようやく混乱から立ち直って反撃し始めた。だが、
それでも先制攻撃のせいで、少年の優位は揺らがない。八雲は、地面に転がっ
たコンパクトに目を留めた。
(ひろわなきゃ……!)
 八雲は、三人の喧嘩に怯えながらも必死で地面に落ちたコンパクトを拾おう
とする。だが、その度に三人に弾き飛ばされる。半べそをかきながら、八雲は
何とかコンパクトを拾い上げた。
 が、乱入してきた少年がバランスを崩して八雲を派手に突き飛ばしてしまっ
た。その拍子に少年は、そのまま地面に倒れこむ――その先には。
「あ」
「あ。」
「あ――」
 派手な音がした。バキンと、硬いものが割れる音だ。少年が、顔をしかめて
立ち上がる。
23「Let It Ride」9/14:03/12/28 02:15 ID:iHCAGWaB
 コンパクトは、蓋の部分が真っ二つに裂けていた。

 それは、八雲の涙腺を完全に決壊させるのに十分な破壊力を持つ映像だった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! あぁぁぁぁぁぁぁん!」
 唖然とする三人をよそに、八雲はひたすら泣きじゃくった。八雲を苛めてい
た二人の少年はお互いに顔を見合わせ、逃亡を選択した。
 だが、残った一人の少年は八雲の泣きっぷりに狼狽して、逃げることも忘れ
ていた。
 八雲は壊れたコンパクトを抱き締めて、ひたすら泣き続けた。少年は、喧嘩
の興奮も忘れて、困り果てた。
「えっと……おい!」
「あぁぁぁん!」
「おいって!」
「うわぁぁぁぁぁん!」
 取りつくしまもなく泣き続ける八雲。少年はひたすら八雲に声を掛け続けた。
 そうして、何分、何十分か経過しただろうか。
 泣くのに疲れたのか、八雲は横隔膜の痙攣による「ひっく、ひっく」という
嗚咽に移行しつつあった。
「……なあ」
「ひっく」
 しゃっくりを繰り返しながら、ようやく八雲が顔を上げた。
「それ、そんなにだいじなのか?」
「ひっく」
 しゃっくりをしながら、八雲は頷いた。
 大切なものだったのだ、とても大切なものだったのだ。大切になるはずのも
のだったのだ。
「どこでかった?」
「……ここ」
 八雲は駄菓子屋を指差した。少年は、八雲の胸からコンパクトをひったくる
と、ずんずんと駄菓子屋に入っていく。
24「Let It Ride」10/14:03/12/28 02:15 ID:iHCAGWaB
「あ……」
 慌てて八雲は彼の後をついていった。婆さんに向かって、少年はコンパクト
を突き出し、迷わず宣言する。
「コンパクト、こわれたからこーかんしてくれ」
「だめ」
 婆さんは、まことにビジネスライクだった。
「じゃ、かう」
 ポケットから小銭を取り出そうとした少年は、婆さんに止められた。
「くじ、引きな」
 壊れたコンパクトを握り締めていた少年は、うんうんと唸りながらくじを見
て、それからまだ涙が目じりに残っている八雲を見た。
「ええい、男はどきょうだ!」
 ポケットの小銭、合計136円を少年は婆さんに叩きつけた。婆さんは、冷
静に金を数えて6円を返す。
「13回引きな」
 13回立て続けに少年は引き、見事に全てハズレの青を引いた。
 13枚のガムが手渡される。少年は、無言でそれを八雲に渡した。
「うーーー……」
 歯軋りしながら、少年は唸っている。八雲はようやく落ち着きを取り戻して、
少年に話しかけた。
「あの……もういい……」
 少年は八雲を睨みつけた。その視線に八雲は怯える。
「よかねぇよ」
 そう言って、少年は壊れたコンパクトを八雲に手渡した。
「ちょっとまってろよ、ぜったいにかえってくるから!」
 八雲はその勢いに思わず頷いてしまった。それと同時に、少年は駄菓子屋か
ら凄まじいスピードで飛び出して行った。
25「Let It Ride」11/14:03/12/28 02:15 ID:iHCAGWaB
 ――で、二十分は経っただろうか。
「……まだ今の坊やを待ってるかい?」
「……ええと……」
 八雲は迷っていた。「まってろ」とは言われたものの、それは彼の一方的な
約束であり、自分は承知した覚えはない。だから、今すぐ帰っても別段構わな
いと思う。
 思うのだけれど。
「……もーすこし」
「そーかい」
 八雲は待つことにした。あの少年の必死な表情は、本気だった。嘘はついて
いなかった。
 だから、多分今、あの少年は必死になって走っているのだろう。だったら、
自分もできるだけ待ってあげるべきだ、と八雲は思った。
 それからさらに十分が経過し、息を切らせて少年が戻ってきた。
「あの……」
 だいじょうぶ、と声をかけようとした八雲を無視して、婆さんの手に小銭を
ありったけ差し出した。
 合計538円。53回くじが引ける。
「全部くじびきだ」
「あいよ」
 婆さんは8円を差し出した。八雲は茫然とその光景を見ていたが、はっと気
付いた。
「だ、だめ……!」
 あん? と少年は八雲に顔を向けた。
「でも、だって、そんな」
「いぃんだよ。……ごめんな、それこわしちゃって」
 そう言いながら、少年は次々とくじを引き始めた。
 八雲には止められなかった。ただ、茫然と少年が機械的にくじを引いていく
のを見守るしかなかった。

 果たして47回目で、再び少年は黄色のくじを引き当てた。
26「Let It Ride」12/14:03/12/28 02:16 ID:iHCAGWaB
「ん」
 先ほどのコンパクトを、八雲に差し出す。八雲は受け取りを拒否した。
「も、もらえません」
 そんな事を言った。赤の他人から物を貰ってはいけない、と言い聞かされて
いたからだ。
「だめだ」
「いや」
「あげる」
「いらない」
 そんな押し問答の末、少年は八雲の腕から強引に割れたコンパクトを奪い取
り、自分が獲得したコンパクトを押し付けた。
「こーかんする、それと、これを」
「……で、でも」
「それなら、もんくねーだろ」
 話はついたとばかりに、少年は歩き出す。八雲は慌てて追いかけた。
「だめ!」
「なんでだよぅ!」
 さっきから「くれてやる」と言っているのに何故こんなに逆らうのか。
 苛々しながら少年は八雲の方を向いた。八雲の表情はひたむきだった。
「……だって、しらないもの」
「あん?」
「しらないひとから、ものもらっちゃだめだもの」
「……ったく」
 少年は、八雲に指を突きつけた。
「オマエのなまえは?」
「……やくも」
「オレのなまえは――――――」
27「Let It Ride」13/14:03/12/28 02:16 ID:iHCAGWaB
 そこで覚醒した。
 情報の急速展開、論理的思考の起動、視界情報がクリアになり、映像が映し
出される。
「朝…………」
 八雲は目をこすりながら、つい今しがたまで見ていたと思われる夢を回想す
る。久しぶりにあの夢を見た。あれは現実だったのか、夢だったのではないか、
と時々思うが、机の奥に今だひっそりと置かれているコンパクトは、紛れもな
い本物で、思い出の品だ。
 子供時代にあれだけ泣いたことは記憶になく、あれだけ変てこで面白い思い
出は、他にない。
 ただ一つ残念なことがある。八雲は、確かに聞いたはずの彼の名前を綺麗さ
っぱり忘れてしまっていた。半年――いや、一年くらいは覚えていた気がする
のだけれど。
 何かの拍子にふっと忘れてしまって、それっきりだ。ずっと覚えていようと
思ったのに。とめどなく思い出は上書きされていく、楽しい思い出も悲しい思
い出も。だからこそ人間は生きていけるのだが――。
「名前くらい……思い出せないかな」
 数年来の難問だった。少年の顔はおぼろげに覚えている、甲高い声も覚えて
いる、自分のために何をしてくれたかも。
 あのお金はなんだったのか。親のお金だったかもしれない。……けど、それ
にしては小銭ばかり多かった気がする。だから、ひょっとすると、あの少年は
何かしらの貯金をしていて、それを一気に持って来たのかもしれない。
 だとすると申し訳ないことをさせたと思う。
 だからこそ、八雲はあのコンパクトを未だに大切に持っている。在りし日の
大切な思い出として。
 だからこそ、八雲は彼の名前を何としてでも思い出したかった。
「なんか……思い出せそうな気がするんだけど」
 つい最近知り合った一歳年上の先輩。動物好きで、伊織の恩人で、心が視え
ない面白いヒト。
28「Let It Ride」14/14:03/12/28 02:17 ID:iHCAGWaB
「はりま……けんじ……」
 八雲は何となく、パズルのピースがピッタリと合わさるのを感じた。だが、
その思考はそこまでで急停止し、代わりの差し迫った問題を伝える。
「いけない、朝ご飯作らなきゃ……」
 八雲はベッドから体を起こした。窓からは素晴らしい陽光が差し込んでくる。
 今日もいい天気だ、明日もいい天気だろう。

 ところで、既にお分かりかと思うがその少年は、あの事件以後も懲りること
なく喧嘩を繰り返し、その挙句にか細い少女に思い切りブン投げられて一目惚
れし、彼女に会うためだけに高校に入った。
 そして、それからさらに紆余曲折あって、かつてコンパクトを渡した相手で
ある少女と知り合っているのだが、残念ながらそんな事を、この男の脳味噌は
欠片も覚えていない。
 ただ、彼の訳の判らない本やら木刀やらスプレーやら三国志の漫画やらが山
積みされた、机の奥のそのまた奥。
 ガムテープで補修されたコンパクトがしっかりと存在することだけは、間違
いのない事実である――――。
                                           <おわり>
29「Let It Ride」14/14:03/12/28 02:18 ID:iHCAGWaB
>15-28
なぜギャンブル心理で行を消費する、俺。
どこのマルドゥックスクランブルか。

あ、原題は「のるかそるか」っつー映画の原題でやんす。
GJ!
起きてて良かった
御馳走様でした
マルドゥックスクランブルでバラガキな神に乾杯。
夜更かししてて良かった。
ほのぼのした、いいお話でした。
深夜までSS投下を待ち続けてた甲斐があったってもんです。

ヤクモンには名前を出させなくてもいいかなという気もしましたが、
おにぎり派のおいらには無問題でした。
GJ! 幼い日の思い出というのはエエモンヤナー。
幼き日の八雲が号泣してる様が目に浮かばない。


……俺の妄想力にも限界があったようです。あの八雲がどんな顔で泣くのか想像も及ばん。
内容もさることながら、文章が非常に丁寧で読みやすかったです。

グッジョブ!
久々のSS投下(*゚∀゚)キター
捏造云々言ってましたけどこれは十分許容範囲ですよ。ご馳走様でした
流れ切って悪いけど、注文してた単行本が明日クル━━(゚∀゚)━━!!!
今まで妄想だけで過ごすのは辛かったが、これで思う存分萌えられるよ!

                        _.. --  .._
                    ,、 '":.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:` ‐‐ 、
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              !:.:..l { || ` ヽ ....ノ  |l.   ||  ゝ....ノ .ノ! 〉 |:.:.:l < ここが新しい
                ,':.:.:.{ ヽヾ ========ソ l  ヾ=======ソ,'  /:.:.:..l  | SSスレね!!
             /:.:./:.iヽ、 ',       〈!        ,' /!:.:l:.:.:!  \_______
             /:.:イ:.:l.l:.:.:.:丶',                  /'":.:.|:.:.:|l:.:.゙,
             /:./ !:.:l.|:.:l:.:.:.:.:l\     r -、     /:.ハ:.:.:ト、:.リ:.:i:.' ,
             〆  l:.:l/:.ハ:.:.:.:.l |:.l\     ̄    /:./:.| l:.:.| ヽl:.ノヽ:.ヽ
          ,"   l/:./ ',:.:.:.:! l:.:.:/l`  、    / |:./ |:l  ',.:.l  ソ   ` `.,,
             , '/   ヽ:.:| ヽ' l   ` ‐‐ '´  l/ リ  ヽl
                       _l         |__
                      r<. l         l ` 、
                   ,、 ソ V         〉  |ヽ
               ,、 '"/: : /  ',        /   l: | ̄ヽ、
            ,、 '": : : : /: : /   ',        /     !: l : : : :` 、
       _.....、 '": : : : : : : : /: : /    ',      /___    l: :l : : : : : : : ` ‐- .._
      i: : : : : : : : : : : : : :/: : :/  ィ^i  ',    / l  〉、  { : l: : : : : : : : : : : : : : /ヽ
      /: : : : : : : : : : : : :/: : : レ' : l  `‐- ',  /,、 '´ /: : \ |: : !: : : : : : : : : : : : :/ : : i

>>1乙!

>>22
非常にGJ!!感動しますた。・゚・(ノД`)・゚・。

>>38
おめでとう、俺。これで二週間耐え切れるな。
まぁ、立てちまったもんはしょうがねぇ
流れも微妙だった
だが、これだけは言わせてくれ

なんでここに立てんだよ?
板違いだろうが
前スレはSSスレとして再利用したんであって
SSスレとして立ったんじゃねぇよ

>>1
死ね
>>29
グレイト
お子様ランチ派からおにぎり派に変わりそうです
なんか、このスレに書かれるSSに違和感があるな
特に八雲あたりは
微妙だ・・
>>43
今の時点で八雲SS書こうと思ったら妄想で書くしかないから仕方ないだろ
気に入らないなら見にくるな
SS書きにとって必要な才能とは何か?

それは、自分の作品にイチャモンをつける厨を軽やかに無視する才能だ。
自分の作品にイチャモンをつけられた。どうする?

@イチャモンも一つの意見。それも参考にしつつ新しい作品を書く
Aイチャモンを無視して我が道を行く。
B書くのをやめる
八雲のキャラ

・自分に好意を示す異性の思考が読める
・姉の考えも読み取れる
・口数が少なく、引っ込み思案
・無表情
・友達が少ない
・優等生
・異性への関心を示さない
・姉が第一

こんなところだろう、何が違うのかSSを読んでないからわからないが
違うと感じるのなら、ここはこうじゃなくこうしたほうがいいんじゃないか、と
わかりやすい意見を出して書き手にもう一工夫させる努力をしてみたらどうだろうか
そうすることによってよりいいものが生まれてくるかもしれないし
>>1
マロンに次スレ立てろっていっただろ
>48
恋愛オンチが抜けてる
オフィシャル設定だし
>>1
スレタイを、なぜSSスレに変えなかったの?
>>48
動物が好きだが犬が苦手
まぁマロンに立てたほうがいいのは確かだが
そこまで怒ることじゃない。
もうちょっとマターリヽ(´ー`)ノ しようや
>>51
週刊少年漫画板だとキャラスレは認められてもSSスレは認められないから。
播磨に好意まではいかないけど興味をもってるのはオフィシャルかと
その設定を脳内補完してSSかいてるんでしょ?
>>53
削除依頼出されたら止められる可能性大だと思う
>>54
合法と非合法の狭間という訳か納得
だから法の目をかいくぐる為にSSが入っていないわけだ。
俺も納得。
まあ次スレはマロンに立てるってことで、そろそろマターリしないかい?
タイトルは塚本八雲萌えのほうがこのスレの趣旨にあっている
消えたらその時はその時ってことでマターリしよう(´∀`)
奈良クン(*´Д`)ハァハァ



自己嫌悪_| ̄|○
>>47
機種依存文字はやめれ
>>63
モナーフォントでがんがろうぜ、俺。
今宵も神の光臨を祈り夜更かしします
このスレはほのかな恋心段階オンリーですか?
18禁は禁止です
禁止じゃないです。ただエロパロ板のほうに投下をお願いします。
じゃあたとえば沢近が泣きながら「好きなんだからぁっ! しょうがないじゃない! そんなヒゲ……見たくもない……はずなのに――!」
なんて気持ちをぶつけてるシーンまで妄想が暴走している漏れが書いてもおけー?

いや、あくまでたとえですが。
>>69
SSなんてほとばしる自分の妄想をたたきつけるモノですよ?

というわけで、お願いしまつ。
途中で挫折する気満々だけどがんばってみる……
あぁ駄目だ書けない……
妄想のパーツパーツだけが迸って一つの話を成さないよママン……(´Д⊂
>>72
とりあえず、妄想をつながりも何も考えずぶちまけろ
文章にするのはその後でいいから
奈良スレのSSってかなりレベル高いから、安心して読めるよな。
スクランのキャラをきっちり理解しているからなんだろうけど。

いや何がいいたいかってーと、有名な某HPのSSを読んだときに、
そのあまりのイタさに思わず眩暈がうわなにをsrkdえvhs
書けるかな?
ラブラブじゃなくて済まん。
思い切り乗り遅れて済まん。
なんでこのタイミングでこのネタが浮かんだんだろう。
“「メリークリスマス」が言えなくて”

 はぁ。
 もう、何度目か分からないため息が漏れる。
「こら、何ぼーっとしてるんだ?」
「そーだぜ、先生ぇ。ぼーっとしてんじゃねーよー」
「あ、ああ、ゴメンね」
 っと、そうだ。
 あたしは彼――花井春樹の差し出したタオルを受け取りつつ、そう答えた。
「周防。あんまりやる気のない姿をこいつらに見せるな。教える側が楽しくな
いと思われちゃ、こいつらだって稽古に身が入らんからな。考え事なら後にし
ろ」
 至極もっともな正論だが、やはりこいつに言われると腹が立つことに代わり
はない。あたしだって、身が入らないこともあれば考え事をすることだってあ
る。
 もっとも、花井が問題にしているのは、あたしが今、この場における自分の
役割を忘れていることだ。公私混同するな、つまりはそういうことだ。
「ん、そうだね、悪かったよ」
 だから、あたしは今回は素直に折れてやる。
 いつもだったらむかっ腹に任せてそのまま口論に突入してることだ。少しは
あたしも大人になってやらないとな。いつまでも中学生気分のままだなんて思
われちゃたまらない。
「おっし、お前ら、一休みしたら相手してやっぞ」
「えー、先生ぇ手加減しねーからやだよー」
「そーだよ、オレたち勝てないの分かってるくせに。少しは子どもをいたわれ
よー」
 あたしだって、こんな子ども達に本気になるほどバカじゃない。
「ばーか、何甘えたこと言ってんだ。そんな気持ちじゃ強くなれねーぞ? 武
道ってのは身体だけ鍛えればいいってもんじゃねーんだぞ? 強くなりたかっ
たら頭も使え。それに負けたくないって気持ちがなくてどーする。そんなんじ
ゃあたしを負かすなんていつまで経ってもできねーぞ」
「うむ、こいつの言うとおりだ。常に鍛錬を怠らなければ、努力は必ず実るも
のだ。この僕を見たまえ!」
 はっはっはっ、とさも自慢げにいう花井。
  文武両道・品行方正・質実剛健、でもちょっとバカなこの幼馴染みのこと
 はとりあえず置いておくとして、
「ほら、じゃいつも通りで行くからね。あたしは攻撃しないから、好きなだけ
攻めていいぞ。あたしがガードできなかったらお前らの勝ち。時間切れならあ
たしの勝ち」
「うし、今日こそは一発当ててやるぜ、覚悟しろ、先生ぇ!」
「あはは、できるもんならやってみな! それじゃ花井、審判お願いね」
「分かった。それじゃ両名、位置に着け」
「おー!」
 元気だけは一人前なんだから。
 あたしも気を抜いてなんていられないね。
「うっし!」
 ぱちん、と軽く両手で頬を叩き、気合いを入れる。
 余計なことを考えるな。今は稽古に集中しなきゃ。
 あのことで悩むのは今じゃない。
 あたしは思考のスイッチを切り替える。
「さぁ、いつでもいいよ!」
 気合いを入れたあたしの言葉に、一瞬だけ道場内の空気が緊張感を持つ。う
ん、いつもながらこの感じは悪くない。
「始め!」
 開始の合図と同時に向かってきた小さな生徒の突きを捌きながら、あたしは
この緊張感に身を任せていった。
「ありがとうございましたー!」
「ましたー!」
「こら、『ありがとうございました』くらいちゃんと言え!」
「へへへ、またねー、先生ぇ〜!」
「ああ、気を付けて帰るんだよ」
「僕のことは無視か!?」
「あ、ハナイもバイバイ〜!」
「先生と呼ばんかーーー!」
 毎度毎度、懲りもせず同じことを叫ぶ花井。
「花井〜、アンタが嘗められてどうするんだよ」
「うるさい」
「さーて、今日の稽古はこれまで、っと」
 軽く伸びをして冬の空気を吸い込む。
 まだ火照った身体にはこの冷たさが心地よく感じられた。
「そうだな、お疲れ」
「お疲れ」
「さて、それでは僕は道場の掃除をするとしようか」
「あ、あたしも……」
「いや、今日は僕一人で十分だろう。半日しか使っていなかったし」
「え、でも」
「それに言っただろう、考え事は後にしろと。今日の稽古は終わり。後かたづ
けは一人で十分。だったら特に用事もない僕がするのが妥当だと思うが?」
「何カッコつけてんだよ、花井のくせに」
「ふん、気を利かせたつもりだったが余計なお世話だったようだな。それなら
周防一人に任せていいのか?」
「あー、うそうそ、ゴメン、今のなし。ありがと、花井サマ。ありがたくお言
葉に甘えさせていただきます!」
「最初からそう言え。せっかくの人の善意は無駄にするものじゃない」
「悪かったって……」
「うむ」
 そう言って花井は背を向けて道場に向かう。
 なんか悔しい。
 恩着せがましい物言いがカンに障るわけじゃない。こいつはこんな言い方し
かできないけど基本的にいいヤツだ。ちっとばかし熱くなると周りが見えなく
なって暴走しがちなところが玉に瑕だけど、お人好しを絵に描いたらきっとこ
んなヤツになる、と思う。
 でも、昔はもっと……。
 もっと?
 なんだっけ、もっとガキの頃はこいつもこんなんじゃなかったような気がす
るんだけど。
 ……そんなことはどうでもいいか。
 ただ、あたしのことを何でも見透かしたような発言は、やっぱり悔しい。付
き合いはそりゃ、長いけどさ。
「花井」
 一応、この言葉だけは言っておこっか。
 悔しいけど、気を遣われて悪い気なんてしないから。
「ん?」
 振り向くこともなく気のない返事。
「ありがと」
「何を今さら。気にするな」
「うん」
「……困ったときはお互い様だ」
「はぁ〜」
 疲れた身体にお湯の熱さが染み込んでいく。
「気持ちいいな、と」
 思わずそう呟いてしまう。うわ、なんか年寄りくさいぞ、あたし。
 お風呂につかったまま、筋肉をほぐす。ふくらはぎから太ももまで両手でマ
ッサージを繰り返し、ほどよくほぐれたら次は両腕。心地よい気怠さについう
とうとしたくなる。
 ほとんど日課となっている稽古も、決して楽なものではない。小さい頃から
ずっと続けてきたことだからこそ、甘えで手を抜きたくなる部分もときにはあ
る。でも、その辺は花井と一緒にいる限り許してくれそうにない。自分にだけ
じゃなくて他人にも厳しい性格だから、融通が利かないったらありゃしない。
 ぶくぶくぶく……。
 はっ!?
 湯船に顔まで浸けてあたしななんであいつのことを考えてるんだ!
 だいたい、あたしが悩んでいたのはもっと別のこと……。
「あ……」
 そう、多分考えないようにしていたこと。
「明日、どうしよ……」
 今月に入ってからずーっと考えてきたこと。まだまだ時間はあると思ってい
たのに、その日は目前に迫ってきてしまっている。
 ぶくぶくぶく……。
 いや、今さらになっても結論が出ないあたしが悪いんだけど。
 生きるか死ぬか。
 to be or not to be。
 え〜い、いつまでもうじうじ悩むな、情けない!
 こうなったら覚悟を決めるしかないだろ、美琴!
 そう、悩んでもしょうがない。
 こうなったら当たって砕けろだ!
 勢いよく湯船から立ち上がって浴室を出る。
 この覚悟が消えてしまわないうちに……。
 少しだけ急いで、あたしは着替えを済ませ、部屋へと向かった。
「え……?」
 一瞬、我が耳を疑う。
「あ、はぁ……。そうだったんですか」
「ごめんなさいね、美琴ちゃん。せっかく電話いただいたのに」
「あ、いえ、そんなことないです」
 慌てて言いつくろう。心中の失望を表に出さないように。不自然に思われな
いように。
「正弘もこんな師走の忙しいときに、わざわざ東京の模試を受けに行かなくて
もいいのに。無理はしないように言ってるんだけど、言うこと聞いてくれなく
て」
「いえ、神津先輩の志望校、レベル高いですから。きっと少しでも本番に備え
ておきたいと思ったんじゃないかと思いますっ」
「そうかしら……」
「はい」
「でも、せっかくお電話いただいたのに……。何か大事な用事なら、あの子に
伝えておくけれど?」
「えっ?」
「ほら、道場のお稽古も行けなくなってしばらく経つし、そっちの関係のお話
なんでしょ?」
「あ、ええ。で、でもいいですっ。そんなに急ぎの用事でもないですしっ」
「そう?」
「はい、ありがとうございました」
「えぇ。あの子には美琴ちゃんから電話があったって伝えておくから」
「すみません……」
「いいのよ。あの子のこともっと鍛えてあげて欲しかったくらいだし」
「はぁ……」
「運動苦手だった割には頑張ってたから、きっと楽しかったんだと思うわ。美
琴ちゃんや道場の皆さんに感謝してるってよく言ってたもの」
「あ……」
「だから、ごめんなさいね」
「いえ、そんな……。それじゃ、すみませんでした」
「また、電話してちょうだいね」
「はい。失礼します」
 無機質な切断音が受話器から漏れる。
 震える指で電話のスイッチを切る。
「そっか」
 確かにその可能性はあった。
「先輩、東京なんだ……」
 失念していたのはあたしのミスだ。
 何よりも、今まで先輩のスケジュールを確認しようとしなかったうかつさに
泣きたくなる。
 ……でも。
「でも、クリスマスくらいはこっちにいてくれたっていいじゃねーかよっ!」
 八つ当たりは百も承知。
「もうっ、先輩のバカヤロウ」
 ベッドにうつぶせになって枕に顔をうずめる。
 そのまま枕を抱きしめて、目を閉じた。
 どうせ、あたしの気持ちなんて知らないんだろうけど、これは堪えた。
 本当に、涙が出てきた。
 神津正弘。
 生真面目な性格と柔らかな物腰で、とても二コ上の男とは思えないくらいの、
おとなしい先輩。
 あたしの高校受験を機に短い間だけど家庭教師をお願いしたことが縁で、な
ぜかウチの道場にまで入門してしまった。
 思い返せばホントにムチャクチャな理由であたしが強引に引っ張り込んだん
だけど、イヤな顔もせずに稽古に顔を出したときは正直驚いた。
 ゼッタイ長く続かないと思った。あたしも無理に続けて欲しいなんと思って
いなかったし、そもそもあたしの発言自体イライラから来る嫌がらせに近いも
のだったのだから。
 でも、結局一年近く、受験のために道場に通い続けることができなくなるま
で、先輩は休むことなく顔を出し続けてしまった。
 なんで、って訊いたことがある。
「ねね、先輩? 無理に稽古出なくてもいいんだぜ。学校の勉強だって大変だ
ろ」
「うん、そうだね」
「もともとあたしが強引に入門させちゃったんだし」
「でも、美琴ちゃんの言うことも一理あったし。少しは鍛えられたと思うんだ
けどどうかな?」
 力こぶを見せるポーズを取った先輩は気持ちよく笑った。
「まだまだだよー。せめて花井くらいにならないと強そうに見えないよ」
「そりゃ無理だよ。春樹くんみたいになろうと思ったら何年かかるか」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと続ければ強くなるって!」
「う〜ん、そうかな」
 気弱に笑う先輩の、そんな笑顔があたしは好きだった。

「あ、美琴ちゃん!?」
「先輩、これからよろしくねっ」
 驚いた先輩が次の言葉を探しているうちに、あたしは機先を制すべく矢継ぎ
早に言葉を紡いだ。
「あー、でも先輩今年受験だもんねぇ、せっかくいい家庭教師がいたのに、も
うお願いできないと思うと残念だな。ま、分かんねーとこあったら訊くから、
そんときはよろしくね」
「う、うん。あの、美琴ちゃん?」
「何? あたしの制服姿、どー?」
「あ、それは、うん、似合ってると思うけど、その……」
 おそるおそるといった感じで、先輩は訊いた。
「髪の毛、切っちゃったの?」
「あー、これ? 別に大したことじゃねーんだけどさ」
 まだ慣れない髪型がくすぐったくて、指先で遊びつつ答えた。
 ホントは大したことある。だって、髪切ったのだって……。
「どう……、かな?」
「うん、似合ってると思う。大人っぽくなったんじゃないかな」
「へへー、あたしだってもう高校生なんだからね」
 先輩に、そう言って欲しかったからなんだから。
 生徒と先生じゃ、あたしはイヤだった。
 本当は女の子として見て欲しかった。
 ガサツで全然女らしくないあたしだけど。
 先輩には女の子として見て欲しかった。
 小さい頃から変えたことのなかった髪型を変えたのだって、少しは女らしく
なれるかと思ったから。
 先輩が褒めてくれるのが嬉しかった。
 いつからそう思うようになったのかなんて忘れちゃってた。
 ただ、先輩と同じ場所で同じ時間を過ごせたことが嬉しかった。

 これからも一緒にいられればいいなんて、そんな甘い夢を見ていた。

「え? あ、そうなんだ……先輩やっぱ頭いーね」
 東京、か。
「そんなことないけど。でも、勉強したいことがあるんだ」
「へー、あたしはまだ大学受験なんて考えたくないなー。だって、高校受験で
あんな苦労したんだよ? しばらくは忘れさせてよ〜」
「あはは……美琴ちゃんなら今からしっかり勉強してればそんなに慌てなくて
も大丈夫」
「えー? あたしこの学校入れたのだって最初は信じられなかったんだよ? 
はっきり言ってバカだよバカ」
「ううん、そんなことないよ」
「なんか信じらんないなー」
「大丈夫、僕が保証するよ」
 どきり、とした。
 まっすぐな眼。
 疑いすら入り込む隙のない言葉。
「あ、ありがと」
 あたしの方が先輩を見てられない。
 自分の気持ちを持て余してしまうなんて、初めての経験だった。
「それじゃ、あたし、次の時間の準備あるから行くね!」
 少し朱に染まった頬を見られたくなくて、あたしは先輩の前から逃げるよう
に駆け出していた。

 先輩が好き。
 あたしには先輩が必要なの。
 言いたい。
 この気持ちを言ってしまいたい。
 こんな苦しい思いさせないでよ。何とかしてよ。
 先輩はあたしのことどう思ってるの……?
「──って言えたらどんなに楽か……」
 ごろりと半回転して天井を見つめる。
 なんだか昔のコトばかり思い出してしまった。
「ホント美琴さんらしくないったらありゃしない」
 せっかく意気込んで、覚悟決めて電話したのに、ホント肩すかし。
 先輩も家空けるならちゃんと言ってから出かけろってんだ!
 明日が何の日か知らないんじゃねーのか?
「あ〜……、ありえる。あのヒトなら」
 一層、気持ちが重くなった。
「ったくさ、せっかくあたしも気持ちの整理付けて頑張ろうと思ったのに、こ
れじゃ」
 一人でバカみたい。
 さっきまでの意気込みもどこへやら。
 もう、どうでも良くなった。
 勝手にしろ!
 東京でもどこでも勝手に行っちまえばいいんだ。
 人の気も知らないで。
「バカヤロウ……」
 その言葉は、あのヒトに対してなのか、それともあたし自身に対してなのか。
 自分でも分からなくなっていた。


「やべっ、寝ちまった!?」
 慌てて跳ね起きる。
 携帯電話に着信通知。
「ん?」
 見慣れた名前。
 でも、珍しーな、こいつから電話なんて。
 とりあえず、電話をかけてみる。何回かのコールの後、
「もしもし?」
「あ、美琴?」
 聞き慣れた彼女の声。
「おう、どしたの? アンタから電話なんて珍しーよね」
「そう? ま、それはどうでもいいんだけど。アナタ明日は何か予定ある?」
「うーん……」
「あ、何かあるならいいの」
「まだ何も言ってねーだろ」
「だって、悩むくらいなんだから何かあったんじゃないの?」
 何かあるつもりだったんだよ、とは言えない。
 だいたい沢近には先輩のことなんて欠けらも話したことねーんだから。
「ん、別に何もねーよ。いつも通り稽古やって午後からはフリー」
「そ、じゃ、付き合えるわね?」
「あ、あぁ、別にいいけど……」
「わたしも予定が空いちゃって困ってたところなの」
「へぇ、アンタん家はパーティくらいするもんだと思ってた」
「いいでしょ、お父様の都合が付かないんじゃパーティどころじゃないもの」
「ふーん」
 何とはなしに聞き流して、逆にあたしから問いかける。
「んじゃ、どーする?」
「そうよね……わたしたちだけってのは寂しすぎるわよね」
「あー……、そんじゃこーする? ウチの道場の連中集めてクリスマスパーテ
ィ! 野郎ばかりで悪ぃけど、盛り上がるんじゃね?」
「え?」
 あ、少し引きやがった。
 前のことを根に持ってやがるな?
「あ、前みたいに絡まれたりはしないと思うから心配しなさんな。ガキどもも
結構いるからやかましいかも知れないけどね」
「それは別に、かまわないけど」
「んじゃ、そーいうことで」
「ええ、じゃ、明日適当な時間にそっち行くから」
「ん」
 簡単に答えて電話を切る。
 勢いで約束しちゃったけど……。
「ま、いっか」
 しょうがねーもんはしょーがねー。
 だいたいあたしがいつまでもうじうじしてるなんて気持ち悪いよね。
 道場のみんなと過ごすクリスマスだって、決して悪くはないはずだ。
 うん、きっと楽しい。
 それに沢近だって来てくれる。
 お嬢さま然としてるくせに、地は結構あたしに似てる変なヤツ。でもいいヤ
ツだ。
 そうと決まれば早速準備をしておかなくちゃ。
 どうせだから花井に任せちまおう。
 アイツならこういう仕切はうまいだろうし、どうせ道場を借りるお願いもし
なきゃいけない。
 花井の携帯の番号を呼び出す前に、先輩の名前が一瞬表示され流れ去った。
「神津先輩もいればよかったのにね……」
 あきらめが悪いと思う。
 伝えたい言葉があった。
 きっと明日なら言えたと思うのに、あのヒトがいないなんて、何かの嫌がら
せみたい。
 でも、先輩が帰ってきたら勇気を出そう。
 言えるかどうか分からないけど、この気持ちに決着を付けなきゃ多分あたし
はダメになる。
「あ、花井? 今いい?」

 ね、直接は言えないけど、心の中だけでも言わせて。
「メリークリスマス」
 この言葉といっしょに、あのヒトへの想いを。
「好きです」
 ね、先輩。
 他には何も要らないから。
 そう言える勇気だけ、あたしにください。

-了-
ミコちん派の方はあんまりいないのかな。
つか、クリスマスネタ出すには遅すぎですね、すみません。

ミコちんにはちょっと痛いお話ですね、これまたすみせん。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
こんな時間まで起きてて良かった(;´Д`)
ミコちん切ないなー。ってか途中まで花井と絡むんかと思ってたよ
とにかくお疲れー
保田
全裸
>>76-83
本編で決着?ついてるだけに、職人さんがおっしゃる通り
痛い、つーか切ないッスね〜。
でも。でも、こういう話も胸にきてイイッスね!
職人さま方、よいお年を〜。
なんかこのすれはマンセーしかいないのがすごい。
>>88
神が降臨しやすい雰囲気を必死に作ってるんだよ
>>89
なるほどな…ヨイショも混じってるわけか…。
>>90
・マンセーのみ
投稿率があがるかもしれないが、質が落ちる可能性もある。
・叩く
おそらく、誰も書かなくなる。
・批評を交える
一番いいと思うのだが、これは難しいかと。
@(現状⇒)マンセーのみ。 批評を交えないと質が落ちる。でも書いてほしい連中は批評家を叩くから
時間が進むにつれ質が落ちてく。
A叩く奴続出⇒だれも書かなくなりこのスレが存続しなくなる。
B批評を交える⇒批評が厳しいとだれも書かなくなりAへ。

意外と投稿に褒めすぎてる感じがあるね。
つうか最近一日一つはSS上がってるね
俺としてはそのことがかなりうれしいよ
余計なこったが、今思ったんだけどSS関係スレってこの板じゃなくて漫画サロンあたりが
推奨なんじゃねえのか???
>>92
妥当案としては、
1・基本はマンセー、ただし本当にそう思ったときのみ。無闇やたらに褒めない
2・叩きはナシ
なのかな? 良くもないけど、悪くもない状況
質より量か量より質かってのはどっちも捨てがたい。
いろんな話があっていいと思ので、やたらと長いのよりは
テンポよく読める短編の投下が増えると嬉しいんだが。

マンセーばかりって印象はあるよね〜。
職人的にはべた褒めオンリーか、批評もアリかどっちがいいんだろ。
叩きはだめだが、「こうしたらいい」みたいな評価は必要。
無闇にマンセーする必要はない。本当にいい作品みたいなら、厳しく評価していけば
自信あるやつしか残らなくなりいい作品のみが読めるけど、
スレ荒廃につながる可能性があるからどうしたもんかねえ。
まあ俺は今まで通りで良いと思うがナー
SSスレは──┬─ マンセーばかりではダメだよ。
            │      ├─ 無闇なマンセーはよくないよ(穏健派)
            │      └─ 駄作はいらないよ(良作のみ指示派)
            ├─ 叩きも交えるべきだよ(駄作自然淘汰派)
          │      └─ とにかく叩くよ(スレ荒廃派)
            ├─ 今までどおりでいいよ(保守派)
            │      └─ だけどよりよい作品がよみたいよ(贅沢派)
            └─ なんでもいいからマンセーしとけよ(なんでもいいから読みたい派)
俺も今まで通りで、って思ふ。
無論、意見のほしい職人さんもいるだろうが、下手に色々評価し過ぎると
荒廃の予感。
意見とかほしいな、と思われる職人さんが作品前にカキコしとくのが吉かと

しかし、難しいよな、こういったものって。
職人以外カキコしないってのはどうだろう。
SSスレは──┬─ マンセーばかりではダメだよ。
            │      ├─ 無闇なマンセーはよくないよ(穏健派)
            │      └─ 駄作はいらないよ(良作のみ指示派)
            ├─ 叩きも交えるべきだよ(駄作自然淘汰派)
            │      └─ とにかく叩くよ(スレ荒廃派)
            ├─ 今までどおりでいいよ(保守派)
            │      └─ だけどよりよい作品がよみたいよ(贅沢派)
            └─ なんでもいいからマンセーしとけよ(なんでもいいから読みたい派)
ズレ修正。
>101
ワラタw
いっそのこと、分校の方にSS投稿掲示板を設置していただくとか…。
スマン、難しすぎることでしt
>>103
それは前考えたことある。どっかにSS投稿専用のページでもつくるか。
分校のほうはRPG・お絵かきスレとか忙しそうだし。
SS職人は──┬─ マンセーばかり
            │      ├─ わーい、もっと書こう!(ワショーイ派)
            │      ├─ 仕方ねえな、ホラよ!(神気取り派)
            │      └─ この感想、ホントなのか?(懐疑派)
            ├─ 叩きも交える
            │      ├─ むかつく、もう書かないよ!(ぷっつん派)
            │      └─ なにくそ、納得させてやる!(挑戦派)
            └─ 批評を交えてみる
                   ├─ なるほど、そうだね!アリガd(パワーアップ派)
                   ├─ なんとなく、書きづらくなっちゃった(いつの間にか読む方派)
                   └─ そうか…漏れはダメダメなのか。今までゴメン!(落ち込み派)
>>104
2ch 外部になったら、一気に人が減る悪寒
俺も今までどうりがいいな
108このスレでは初投稿:03/12/30 04:18 ID:lbLrMokr

 作者・注
 これは勢いで書いたもの。冗談です、ですが、人によっては不愉快にな
る可能性が高いです。というか、花井ファンなら絶対に見ないで下さい。
 イチさんファンも…見ないほうがいいのかな?
 ともかく、シャレをシャレと分かり、冗談を受け止められる人のみ、
ご覧下さい。なお、忠告を無視した方の苦情はうけつけませんが、作者は
ヘコみます。

 この作品は、お絵かき掲示板にあった私の好きな絵をモトネタに、勝手
につくったものです。絵師さんとは一切関係ありません。
 どうでもいいことですが、絵師さん、つづきをお早くw

 僕が言ったとおり、皆教室に集まってくれたようだ。
 
 この中に犯人がいるのは間違いない…。それは、一体誰なのか?
もう一度、事件のあらましを思い出そう。

 ことのおこりは、八雲君が姉の天満君に相談したことだ。
「私の…ブルマが…」
 そう、どこかの誰かが八雲君のブルマを盗んだのだ。

 許せんっ!

 ともかく、犯行が可能だったのは、その犯行予想時間にアリバイのない6人
だけ、播磨、麻生、奈良、今鳥、冬木、烏丸…そして、僕だ。
 僕が犯人ということはないのだから、容疑者は実質は5人か…。

 まず播磨。不良、というわけで怪しまれている…が、コイツはそんなタイプ
じゃない。しかし、姉の天満くんのと間違えた可能性があるな。

 次は麻生。これはないだろう、犯人から一番遠い。しかし、彼は切れ者だ。
そういうことを予想して、まんまとほくそえんでる…のだろうか?

 奈良…彼でもない気がする。しかし、彼も姉の天満君と間違えて…?それに、
一見普通の人ほど凶悪犯罪を…ううむ。

 今鳥。怪しいな、なにせコイツは夏に平気で着替えを覗こうとしたヤツだ
犯人候補の一人と見て間違いない。

 冬木。いつもお世話になっているわけだが…写真だけでなく、服も販売する
のだろうか? 果たしてそこまでするか、そこだな。

 烏丸。彼については…よく分からん。まあ、一応呼んだだけだからな。
 いま、教室には容疑者5名と僕。そして、被害者の八雲くん、姉の天満くん。
そして、犯人取り押さえのための美琴、一条くん、なぜか晶くんと沢近くんが
いるのだが、まあ、彼女たちは天満君の付き添いだろう。

 彼らをここに集めたのは、もちろん理由がある。僕なりに捜査と推理したつ
もりだ。そして、一つの答えを導き出した。
 そう、僕は犯人の正体が分かったのだ!

 …やはり、何度考えても、犯人は彼しかいない。委員長としてははっきり
犯人を暴くべきだろう。たとえ、それがクラスメイトだとしても…

「おい、なんか用なら早くしろよ」

 播磨が文句を言い出した。そうだな、もういいだろう…

「僕は、…犯人が分かった」

 みんなが驚く、それもそうだ…。

「だ、誰なんだ!? 花井!」
「落ち着け、美琴、ちゃんと話す。それより、犯人の取り押さえを」
「ああ、任せろ」

 僕はゆっきり皆を見回してから、一回、深呼吸をする。そして
「八雲くんのブルマを盗んだのは…」

A 播磨、お前だ! ⇒113

B 麻生、君だよ ⇒115

C 奈良、君だ ⇒117

D やはりキサマだ、今鳥! ⇒119

E そう、冬木、君だ ⇒121

F まさか、烏丸くんだったとはな ⇒123

G 実は僕でした〜! ⇒125

H ここにいる男性の中にはいない ⇒そのうちに

「播磨、お前だ!」

 その発言に一気に場の緊張が上がる。そして、全員が播磨を見つめる。
播磨は…かなり慌てていた。

「おおおおおいおい、おおお俺じゃねーよよよ!」
「調べれば分かることだ、カバンを出せ」
「ああ、いいゼ?」

 播磨はやけに自身満々だ。…まさか、間違えたか?

「あの…私が…」

 八雲くん自らが播磨のカバンを調べる。…ん? 気のせいか?

「ど、どう?八雲?」
「…あの…ありました…」

 その後、播磨はそこにいる全員に見限られた。とくに、女性陣の彼への非難
はスゴかった。しかし、それもアイツが自らねいたこと、僕は知ったことでは
ない。
 結局、全員一致で播磨は八雲くんの召使い、という罰を言い渡した。まあ、
警察に突き出されるよりはマシだろう。
 現在、播磨は、真面目に召使いをやっているようだ。八雲くんの言うことに
絶対服従…なのだが、彼女の命令は変なものばかりだ。
 いっしょに登校、いっしょにご飯、いっしょに旅行…まあ、彼女の荷物もち
などをしているようなのだが…二人の姿は恋人のようだ。

 僕は悪寒がした。もしかしたら、これが真犯人の狙いではなかったのか?彼
を召使いとして、そばに置く…。そう思えてならない。
 なぜなら、僕は見てしまったのだ。あの時、播磨のカバンを検査したとき、
彼女が播磨のカバンに、何かを入れるのを…。
 だとすると…いや、そんなまさか。

 僕の疑問のことなど知らないように
 八雲くんは、今日も播磨と登校してくる…。

 終 

END『自作自演?』

「麻生、君だよ」
「おいおい、何言ってんだよ」

 むう、とぼけるか。それならば…

「あの…」

 八雲くんが突然尋ねてきた

「…この人…誰ですか?」

 全員がずっこけた。むむ、そうか、八雲くんは彼とは初対面なのか。
 麻生が、やれやれといった感じで単行本を取り出し、見せてあげた。

「俺は…ここ、2巻のこのページに乗ってる」
「あー懐かしい! ホッケーのころだ!」
「おう、こりゃあスゲェ」
「アラ、懐かしいじゃない」
「私の出番、まだのころですね…」

 おいおい、みんな…
 みんなは麻生が出した単行本にみらがって、懐かしそうに見ている。

「おーい、お前ものってるぞー」
「む、本当か?」

 ううむ、僕もちょっと見たいな。まあ、少しぐらいなら…

「じゃあなー花井ー」
「またねー」
「楽しかったよー」

 けっきょく、夜遅くまで昔話、まあ、そんなに古くはないが、してしまった。
もう、真っ暗じゃないか。
 皆帰りだして、残ったのは僕と麻生だけになった。

「それじゃあ、俺も帰るぜ」
「ああ、戸締りは僕に任せてくれ」

 彼は、ニヤリ、と笑って出て行った。
 その表情は、ひどく陰惨で――

 …しまった! 僕はなんてバカなんだ! いつの間にか話題が摩り替わって、
ブルマ窃盗犯探しが、なつかし話になってしまった。
 そう、結局彼を十分に検査しないまま…。
 僕は急いでクラスを出たが、すでに姿は見えない。なんということだ。
 まさか、これも彼の計算なのか…? さりげなく、なつかし話に誘導する…。
いや、彼なら可能だろう。そして、事実われわれは罠にはまってしまったのだ
から。
 明日、彼のカバンを調べても無駄だろう。彼はそんなマヌケではない。そし
て、いつしか全員が今日の事件を忘れる…。

「完敗…だ」

 カラスが、僕をあざ笑うかのように鳴いていた。

 終

 END『その男、全て計算済み』

「奈良、君だ」
「え、ちょっと待ってよ!」
「奈良くん…ホント?」
「ち、違うって、ホラ、カバンでも何でも調べてよ!」

 ふん、今更強がったって…僕は彼を調べつくした。

 が

「出てこない…? そんな馬鹿な!」
「ほ、ほら! 僕は無実だ!」

 いったい、僕の推理にどんな間違いが!?

「ちょっと、どうゆうこと?」
「オメー、このチビに無実の罪を着せたのかってのかよ」
「えーマジでー?」
「え、いや、そんなわけでは…」

 や、ヤバイ! このままでは僕が一番カッコ悪い。
 は、八雲くん…君ならば僕のことを…

「…」

 う、あの眼はダメな眼だな…。

「帰るぜ、俺は」
「あたしもー」
「あ、僕も」

 そう言って、全員が帰っていく。待ってくれ、もう一度僕にチャンスを!
 そのとき、ポンと誰かが肩に手を置いた。誰だ?
 高野晶だった。

「あなたには、名探偵は無理よ」
「た、高野くん…」

 静かに教室を出る彼女…。
 ただ一人、教室に残された僕。
 く、やはり僕は三枚目キャラなのか!?
 カラスがまぬけな声で、かぁーと鳴く。
 ああ、僕も泣きたい…。

 終

 BAD END『やっぱり花井は迷探偵』

「やはりキサマだ、今鳥!」
「え〜なんで〜?」
「なんでだと? それは…」

 僕が華麗な名推理を披露しようとした瞬間、一人が今鳥に近づいた、そして

 ドゴォ!

 !? い、一条くんがいきなりスライディングを今鳥にくらわした!そして
バ、バベルクランブル!? つなげてスープレックス…さらにジャイアントス
ウィング! 投げた今鳥をつかんで…さらにスープレックス!
 いったい、なにが起きているんだ?

「私に…あれだけのことをさせといて…他の女の子にまで…!」
「…ちが…ごか…い…」

 二人の声が聞こえるが、何を言っているかまでは理解不能だった。二人には
いったいなにが?

「今のはDSC…!!」

 美琴がなにかを叫んでいる。それはともかく、やりすぎだ。彼女を止めなけ
れば…って、何ィ!?

「来ないで下さい…」

 彼女の手には、いつのまにかライターが…。そしてこの匂い…ガソリン!?
まさか、二人は…

「私たちは…ここで死にます」

 な、なんとっ!

 逃げるように、僕らは学校から逃げ出した。
 なんとか止めようとしたのだが、最後は彼女は涙を流しながらも、笑って火
をつけた。そうなったら、僕たちには逃げるしかない。

 小さかった火の手が、あっと言う間に校舎に広がっている…。まさか、彼女
は最初からこうするつもりで…?
 おそらく、一条君は、僕と同じように彼が犯人だと思い、一緒に自殺を…
しかし、なぜ彼女が?

 その答えは僕には分からなかった。ただ、呆然と焼け落ちていく校舎を見る
ことにしか出来なかった。

 その後、たくさんの事があったのだが、覚えていない。あまりにもことに、
僕自身が呆然としている。まだ謎は残っている。一条さんの謎の行動、なによ
り、いまだ八雲くんのブルマは見つかっていない。

 …でも。事件は終わった。それでいいじゃないか。僕は、今日も茶道部の扉
を叩く。

 終

END『謎は全て業火の中』
「そう、冬木、君だ」
「ええー、ちょ、ちょっと…」

 全員が彼をにらむ。それはそうだろう。今までは写真だけで済んだのだが、
服までとなると話は別だ。まあ、袋叩きぐらいは覚悟してもらおう。

「ちょ、ちょおぉっといいかな?」

 そう言うと、ステステと冬木が僕のほうに近づいてくる。なんだ、彼らを
止めろなどと言うのだろうか? さすがに僕でもそれは無理だ。

「この場を何とかしてくれたら…ゴニュゴニョ」
「…むむむ」

 これは…仕方がない。

「スマナイ、彼が犯人というのは嘘だ!」
「ちょっと、なんだよそれ!」
「いや、美琴、僕にだって間違いはある」
「じゃあ、真犯人は誰なの?」
「たぶん、外部犯だろう。よくよく考えれば、自分に疑いのかかるようなこと
はしない、それに、クラスメイトが犯人なワケがないじゃないか!」

 皆が、うーん、それもそうだな、と納得しだした。よし、これでいい。
 冬木に視線を送ると、彼は頷いた。

「これ、約束のブツ」
「うむ、分かっているとは思うが、このことは内密にな」
「分かってるよ、ボクだって流石に警察沙汰はね…」

 校舎の片隅で、僕は彼からブツを貰う。こ、この中に八雲くんの…!

 やはり犯人は冬木だった。なんでも、写真だけでは飽き足らず、美人のもの
ならなんでも売ることにいたらしい。こっそり見せてもらった倉庫には、ぎっ
しりと下着やら体操服やらがあった。
 僕は彼を見逃す代わりに、僕は八雲くんのブツを優先的に流してもらえるよう
にした。良心は痛むが、これも彼女への愛ゆえに!
 さあ、とにかく早く帰ろう…。

 しかし、僕は気づいていなかった。さっきの場面の一部始終を二回のベラン
ダから見ていた彼女の冷たい視線を…。

 END『悪夢はこれから?』

「まさか、烏丸くんだったとはな」
「え、そんな烏丸くんが!?」

 天満君が悲鳴を上げる。そうだろう、クラスメイトが妹のブルマを盗んで
いたのだから。しかも、あの烏丸くんが…
 って、ん?

「おい、アイツがいねーぞ!」
「彼なら、さっきカレーを食べに行った…」

 イカン、逃げたか!

「みんな、追うんだ!」
「「「おう!」」」

 で、なんでこうなってるんだ!?

「ロースカツ、チーズミックス300g! 辛さは甘口でー!」
「天満ちゃ…ごほん、塚本と同じものを頼むぜ」
「じゃあ、それふたっつー」

「ふーん、今のカレー屋さんってこうなってるのね」
「まーな、お前、初めてか?」
「私はポークの9辛」

「あのー私は1300gで」
「さ、さすが宇宙人…」

「麻生君はどれにする?」
(…なんで俺はコイツとセットなんだ?)

 だー!!
 みんなのんきにカレーを頼んでんじゃない! ブルマの犯人を…

「まーまー、腹が減ってはなんとやらだ、お前はなんにする? いつものか?」
「うーむ、そうだな、やはり野菜に納豆…って」

 違う!

「あ……私も…同じのを…」
「や、八雲くんが僕と同じものを…!」

 なんと、彼女もこれを選ぶか…これお愛のなせる業なのか!?

 その後、みんなでカレーを食べたのだが、なんとも美味しかった。しかし、
何かを忘れている気がする…はて? なんだったか、大切なことだった気が
する…あれは確か…。
 僕の頭が閃いた!
 そ、そうだ、烏丸くんだ! そう、彼は…彼は…

 カレーのお金を払っていない…!

 終

 END「ヤツだけ無料券を持っていた」

「実は僕でした〜!」

 なーんてな、と言おうとした僕の後頭部に、鋭い痛みが走る。僕は何もいえ
ずに、地面に突っ伏していた。い、いったい、なにが…?

「やっぱり、お前だったか…」

 み、美琴!? この衝撃はお前か? おそらく、延髄蹴りだろう。なんと危
ない技を。しかし、やっぱりとはなんだ!

「それじゃあ…やっぱり花井君…だったのね」

 さ、沢近君まで。

「やっぱり−」
「やっぱなー」

 その後、みんなが納得してしまった。そんな、僕はそんな眼で見られていたの
か!? ショックだ…、な、泣きたい…。

「とにかく、自首したから許してやるってさ、天満の妹さんも」
「…」

 違う、僕じゃない、と今更いっても皆聞いてくれないだろう。唯一の救いは
八雲くんがあまり怒っていなかったことだろうか…。
 どうやら、純粋な好意の先のことだからなのだそうだが…それでも哀しい。

 家に着いた、なんだか疲れてしまった。もう寝よう。僕がいそいそとカバン
を片付けようとしていると

 ぱさり…

 !?

 そんな馬鹿な! なぜ八雲くんのブルマがここに! これは一体…

 さっき、僕は自分では違うと思っていたが、本当はどうだろうか? 本当に
盗んでいないのだろうか? 事実これはここにある…。まさか、僕は無意識に
彼女のブルマを…!?
 なんということだ、自分のことながら恐ろしい。ともかく、これは洗って返
さなければいけないな。できれば今日中に…。
 そう思い、僕はそれを手にとる。
 ドキリ、と僕の心臓が跳ね上がる。…こ、これが彼女の!
 僕は周囲を見回した…。

「…」

 返 す の は 明 日 で も い い か

 と り あ え ず 今 は ・ ・ ・


 終

 WORST END『…(*´д`*)ハァハァ』
127前スレではそれなりに書いていた:03/12/30 04:40 ID:lbLrMokr
 八雲たちの学校がブルマではないことは分かってます。
 まあ、雰囲気で。花井も微妙どころか変わりまくっています。
 それも雰囲気ということで(オイオイ)。

 完のエンディング(真のエンディング)
 は考えていますが、それはまた後日公開。
 というか、題名で分かる人は分かるという罠。

 最後に、これはフィクションです。そして、ゴメン、花井。
128名無しさんの次レスにご期待下さい:03/12/30 04:43 ID:/oB2uX3f
(・∀・)イイ!(w
ネタと割り切りゃおもろい。今後もがんがってくれい。
ageてもた。スマソ。
130前スレではそれなりに書いていた:03/12/30 04:59 ID:lbLrMokr
上で話題になっていた批評ですが
「このエンディングがイイ!」
「このエンディングだダメ!」などは言ってくれると嬉しいです。
とくに、ダメ出しは、こんなエンディングの方がよかった、
などと意見を出してもらえるとなお嬉しいです。

発想のくだらなさ、文章の稚拙さ、花井のキャラの不自然さは、重々承知してますので
そこはどうかご勘弁を…。
131前スレではそれなりに書いていた:03/12/30 05:05 ID:lbLrMokr
さらに追記〜
一応、全てのエンディングに「かまいたち」っぽさを入れたつもりです。
上手く出せたでしょうか?
言って(・∀・)イイ!と言ってくれてるので言いますが今鳥エンドが不自然過ぎかな?播磨エンドも少し。
ギャグだからキャラを崩すのは構わないしそれでいいのだけれど、別のキャラのような振る舞いをしてしまうのは個人的にはどうかと思いますた。
でも播磨エンドが一番好きです。
積極的な八雲タン(*´Д`)ハァハァ花井と一緒にブルマで(*´Д`)ハァハァ
言いたい事言うだけでスマソ
>>130
花井エンドで、花井がブルマを返してないと皆が不自然に思うと思うんだけど・・・
いいよいいよー。おもしろかった(゚∀゚)
一条こえーな・・・でも、そんな感じのキャラだな。

ダメ出しだけど、烏丸のエンディングは麻生とかぶってる気がした。
もっとヤツの基地外っぷりをださせてっやってくれ。

あと、お子様ランチ派の俺は、播磨が犯人のとこで、
『沢近が八雲×播磨に嫉妬して、まえもって播磨のカバンにいれていた』
と妄想してしまったよ・・・(´д`*)ハァハァ
はないたちの〜 って元ネタがわからないんだけど。
>>135
かまいたちの夜。

>>108-127
GJ!!
漏れは両作品とも好きなんで、楽しませてもらいました。
カレー屋でのやり取りがなんか(・∀・)イイ!!なぁ。

でも、花井は美琴を周防って呼ぶ罠。
かまいたちの夜ってのがわからん。
>>137
サウンドノベル。
選択肢を選んで、物語を進めていくタイプのゲーム。

ってか、元ネタ分かる必要なんてないだろ?
>>108-127 good jobです!thanks!
お絵かき掲示板で『はないたちの夜』を描いた浮舟です。
SS書いてくれてどうもありがとうございますm(,,)m
>>127 自分も一応金のしおり出現後、スクールランブル本編の謎を
交えた真犯人を考えているんですが…同じだったらどうしょう…

そんな内輪受けするようなもの乱発されても困る…
たまにはいいんじゃない?今はネタ不足だし。
まあ殆どの人は何も困らないどころか、どんどん投稿して欲しいと思っているわけだが。
イチさん・・・・しつこい投げですか・・
>>140
大丈夫。あんまりあのゲームを知らなくても楽しめるように出来てるから。
つーか、かまいたち らしさ が少しあるだけだし。
145前スレではそれなりに書いていた:03/12/30 12:29 ID:Oc3AdaqU
みなさん、感想サンクス。
やっぱりキャラクターの問題が多いですね。特に八雲と一条…
この二人に関しては、たしかにやり過ぎの感がありますが、話の都合ということで一つ
(かまいたちの夜のエンディングがこんな感じなので)
でも、私的にイチさんはこんな性格かもしれない、と思っています。

内輪向けという意見に感しては、スイマセン、という他ないです。
つい、思いついてしまったもので…申し訳ありません。

烏丸に関しては、彼って動かしにくくて…。しゃべらないし、
行動に統一性がないし…と言っても、自分の力不足ですね、精進します。

>>143
おお、分かってくれる方が!
146前スレではそれなりに書いていた:03/12/30 12:33 ID:Oc3AdaqU
追記
周防の呼び方は当方の完璧なミス&勘違いです。申し訳ありません。
次回から訂正させていただきます。

>>139
期待してますw
唐突に前の話を蒸し返させてもらうが。
マンセーばかりではダメだという話だが、現時点では大して問題ないと思う。
今までのSSはかなり質がいいものばかりだし。
分校からいける共和国のSSのレベルの質のものが投下されてもマンセーなら
それは、明らかに間違いだと思うが。
>>147
その程度の意見ならわざわざ蒸し返すな
149前スレではそれなりに書いていた:03/12/30 20:41 ID:Oc3AdaqU
>>147
というか、サイト名を出すな
>>148
蒸し返すなの理由がわかんないな。ただそうだっていってるだけじゃん。
今鳥バッドエンドすぎw
152147:03/12/30 22:16 ID:58rZNf2z
>148〜150
すまん。蒸し返すべきではなかったようだ。
サイト名は正式名称じゃないしいいかなとか思ってた。以後気をつける。

はないたちの夜、どれを選んでも完にはいけないのな。
つまりこれより以前の選択肢ですでに間違えてしまっているのか…
>>152
こちらこそ、言葉使いが荒くなってしまった。すまん。
修羅場になるかと思ったが、さすがスクランスレ!
最後は和解出来る良スレだ!
来年も、このスレが盛り上がることを祈ってます。(奈良は関係無し)
 \  /       
  (⌒)      
/ ̄ ̄|        ∧_∧    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ||.  |     旦 (・∀・ )  < 新年もスクランスレでマターリ
\__|     ========  \  \_______________
 |   |   /※※※※ゞノ ,_)
   ̄ ̄   ~~~~~~~~~~~~~~~~   
156963:03/12/31 00:01 ID:r0RSHhHU
これからSS投下する香具師に注意。刑部絃子先生はあきらかに物理教師だ。
「プランク定数好き」とか,花井に対する質問での花井の答え方からそんぐらいは
 分かって欲しい。たまに彼女を数学教師と勘違いしているヴァカな椰子もいる
 んで・・・・・・。
きっと五桁の掛け算を五秒以内(だったか)で出来るというところで数学と間違えてるのだろう
雰囲気は保健の先生なんだけどね。
白衣をきてるからか?
白衣を着てる物理教師なら内の高校にもいたぞ、野郎だったけれど
おまけに三十分に一度精神安定剤を飲みに洗面所に走っていく
一年生で初めて見た時はビビッた

ちなみに半年で療養生活に入って高校在籍中は二度と目にしなかった
俺的に音楽教師
というか絃子先生だけ時々左右の目の色が違うのは何故だろう。金銀妖瞳?
片目は義眼だから。
163お絵かき板No.257参照:03/12/31 00:20 ID:Ul8uvrz9
1時間かかってない手抜き作ですが、思わず書いてしまったので(;´Д`)
164お絵かき板No.257参照:03/12/31 00:21 ID:Ul8uvrz9

「何やってるの」
 どうして私はこんなに不機嫌なんだ、と沢近愛理は思った。理不尽だ。不可解だ。
しかし彼女の表情は何故か明るく、微笑んでいた。作った顔。
「……」
「?」
 彼女の目の前では一組の男女がたじろいでいる。
「何やってるの、って聞いてるんだけど」
 再び愛理は言った。努めて明るく。
「何ってよ……話してるだけじゃねえか。なあ妹さん?」
「……はい」
 塚本八雲は頷いた。
>>156
はぁ〜い。馬鹿な香具師で〜す。
でも、前もって釘を刺すほど重要なことでもないと思いま〜す。
166お絵かき板No.257参照:03/12/31 00:22 ID:Ul8uvrz9

 愛理が二人を見かけたのは、下校中だった。
(何やってるのかしら)
 以前、あんなものを一緒に見ていただけに妙な共感が沸き、愛理は八雲を追いかけた。
あんなもの、の当人と何故いるのか。それも親しそうに。
 失神坂を通って、神社へ。
 二人は境内に入り、社の階段に座り込んで話し始める。
「……仲よさそうじゃない」
 遠目に二人を見ながら、愛理は独り呟いた。
(別にいいわよそんなこと)
 そこで、彼女はふと思う。
「あれ、これって――」
 以前、天満に借りたマンガ――少女マンガというジャンル――に出ていたヒロインの
行動に似ていないだろうか。
(そうよね)
 確か主人公に素直になれない性格で、別の娘と親しくしていた主人公の後を付け回し
て――。
「変なこともあるものね」
 自分は八雲の事が心配なだけなのだ、と愛理はそのヒロインを嘲笑った。
「さあ」
 もうそろそろ帰らないと、中村が心配してしまう。愛理はその場から離れようとした。
 その時。
 八雲が、微笑ったのだ。
「え」
 その瞬間を見てしまった愛理は、固まった。
 ほんのわずかな変化だったが――しっかりと彼女の頭にそれはこびりつく。
(あの子が笑う?)
 少なくとも愛理の覚えている限りでは、彼女が自分の前で笑ったことはないはずだ。
顔貌はとても綺麗だが、いつも憂いを帯びている、天満とは対照的な妹。何度も会った
事はあるが、明るい表情であることさえ少なかった。それに、言葉も何かぼそぼそして
いる。
 そんな八雲が、微笑んでいる。相手が何を言ったのかはわからないが、そんな表情を
出来るほどに親しいのだ。
「……」
(何なのよ)
 何か、心の奥で黒いモヤがある、と愛理は思った。
167お絵かき板No.257参照:03/12/31 00:23 ID:Ul8uvrz9

「何、話してたの?」
 愛理はなおも問い詰めた。
「オメーには関係ないだろーが?」
 そうだ、関係ないはずだ、と愛理は自分に言い聞かせるが、止まってくれなかった。
「……ねぇ?」
 わざと、八雲に話を振る。
「え……」
「私にも教えて?」
「あの……」
 愛理の予想通り、八雲は言いよどんだ。
「……」
 男は二人の間に立って、八雲を庇い始めた。
「お嬢さんよ、意地悪いんじゃねーか、オイ?」
「……この子のこと良く解ってるような言い方ね」
 段々と自分の声が険悪になっているのを感じながら、愛理は男に言った。
「そういう問題じゃねえだろ」
「そういう問題なのよ」
 愛理は一歩近寄って、男の目の前に立った。
168お絵かき板No.257参照:03/12/31 00:24 ID:Ul8uvrz9

「アンタみたいなのがこの子と親しく出来ると思ってるの?」
「意味がわからねえな……もうちっと簡単に言えや。俺は馬鹿なんだよお嬢さん」
 男の言い方に、愛理はカチンと来た。そして酷く冷淡な声で言う。
「消えなさいよ」
「あん?」
「さっさとどこかへいってよ!」
 どうして自分の声は震えているのだろう、と愛理は思った。
「ったく……じゃあな、妹さん」
 男は頭を掻きながら、神社を出て行った。
 八雲は男をしばらく見送って、そして沈黙した。
 愛理も何も言わない。ただ、彼女を睨んでいる。
 しばらくの間、静寂が訪れた。
「……動物園に」
 突然、八雲が話し始める。
「え?」
「……今度、私の友達と一緒に行こうと……」
「――ど、どうしてそんなところに行くのよ」
 自分の好きな場所を出されて、少したじろぎながら愛理は言った。
「動物達が……」
 再びそこで八雲は言いよどんで、しばらくして「よく、言えません」と言った。
「ああ、そう。それじゃあね」
 もう用は無い、と言わんばかりに愛理は踵を返した。
 実際にまだ言いたいことはあった。しかし、もう何もいえなかったのだ。
「……あの!」
「――何?」
 珍しく大声をあげた八雲に驚いて、立ち止まる愛理。振り返らずに言う。
「……私が、誘ったんです」
「そう」
 何故か、その言葉を聞いて愛理は少し落ち着いた。
「またね」
「……はい」
(何やってるんだろう、私)
 少し泣きそうになりながら、愛理は階段を降りて行った。
ダメだ…絵に合うだけの作じゃない_| ̄|○
お目汚しスイマセン。吊ります。
こ、心が痛いよママン(;つД`)
あれ?何だろ涙が出てきた・・・
17175:03/12/31 00:39 ID:KzeiNe2r
ぐは、出遅れた。
あのシチュで書こうと思ってた香具師の一人でつ。
同じテーマのSSだとうざいかなぁ……。
>171
職人さんが違えば同じシュチュでも雰囲気も変わってくるだろうから
俺は見せてほしい。
うざいとかはなしにしてw
>>164-168
GJ!切ないな…
>>171
気にすんナ。
うざいという意見は、全て脳内あぼーんすれば大丈夫だ。
>>174
すげえ考え方だな。w
ぜひ書いてください
オネガイシマス
177963:03/12/31 01:10 ID:x8/W70IM
>>165
開きなおってるとこからスクランへの思い入れの程度が知れますよ。
知識をあたへたのでこれからは注意しろってことなんだけど,君には
難しかった?
まま、マターリしましょうよ(;´∀`)
沢近の険悪さが心に突き刺さりました
180963:03/12/31 01:15 ID:x8/W70IM
>>178
スマソ
沢近氏ね。
ここの八雲マンセーっぷりが病的でちょっと嫌だったりする大晦日の夜
183164:03/12/31 01:22 ID:Ul8uvrz9
ちょっと沢近の性格とりちがえたかと後悔(つД`)
少しキツイ話なのでとことん悪者でもいいかと思ったのですが。
>>177
だからどうでもいいことで〜す。
トリビアで言うと0へぇ〜ってとこで〜す。

間違った人に対して注意しても遅くないと思いま〜す。
いちいち先回りして注意しててもキリがないで〜す。
>>183
悪役ってのはどうかねぇ……
他のキャラ目立たせるために誰かを黒くするってのは好きになれんな
186963:03/12/31 01:33 ID:x8/W70IM
沢近のきつさは時々見せる女らしさを引き立てるから漏れは良いと思う。
>>184 わかったわかった それでいいんじゃない?
そう思うと天王寺は
悪役最適キャラだ!悪役だがどこか憎めない、
それでいてナンパ三人をフェードアウトさせ、時にはメカ化も出来る
悪役商会キャラ!ビキニ万歳?
>>186
はい。マターリしましょうか。

沢近はそういう黒い部分も含めて、人間味があるところが魅力だと思ってるので、
>>166さんはそんなに外してなかったと俺は思った。
このスレは八雲派の人が楽しむオナニースレということでFA?
というか脳内設定暴走しすぎ
ただ書き手の解釈が自分と違ったってだけだろ。
喧嘩腰やめれ。
>>189
元が少ないからな
脳内設定で補わんとネタにならんのだろう

だが、脳内設定で補いやすいからこそネタが出やすいという考え方もできる
SS書きがおにぎり派つーだけではないか?
ただ今は旗派その他はあまり投下していないというだけで。
書き手としては自分が萌えるものを書きたいわけで。
暴走気味で気に入らんという方にはゴメンナサイ。
そういう場合はなま暖かい目で一つ。

大晦日だってのに仕事だよ。
そろそろ寝よ。
>>192
旗派その他は補完しなくても本編で充分萌えれるからな
むしろ補完しなければ萌えれないおにぎり派を哀れと見るべきか・・・
とりあえず>184>と186あたりは百害あって一利無しなので失せればいいと思った。
ってゆーか、SSって脳内設定を叩きつけるものだよなぁ?

「八雲派しかいない!」と不平をもらすより、
進んで他のシチュのSSを投下しましょう。
197I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:38 ID:+2ixxsss


 申年の元旦。午前一時。ちょっと過ぎ。
普段は不埒なカップルが酒飲んでたり、動物がかくまわれてたり、
『とんでもねアタシャ神様だよ』とばかりに播磨が出てきたりするくらいで
閑散としている矢神神社も、盆暮れ正月は人いきれに包まれる。
 出店があれば、踊りも奉ずる。神主唸れば巫女走る。
 おめでとーございますありがとーございますギャラはひとりじめでございます。
 やかましくって楽しげで、騒々しくて華々しくて。
 なにやら名状しがたいが、とにかくお祭り騒ぎな訳で、そんな所に出かけてみれば
「あ」
「お」
 珍しい顔に会うこともある。沢近愛理と播磨拳児。
198I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:38 ID:+2ixxsss

「何であんたがこんなとこにいるのよ」
「何でとはなんだ。初詣に決まってんじゃねえか」
「えーと、不良の集会?」
「あるかそんなの!初詣だっつってんだろ」
「じゃあ、お祈りとかしたの?」
「そりゃするだろ」
「おみくじも引いたりなんかしちゃったりなんかしたりして?」
「そりゃ引くよ。つーか誰のマネだそれ?」
「よもやと思うけど破魔矢なんか買わないわよね?」
「俺が手に持ってるの見ながら言うかそれを」
 腕を組んで唸る。うぅむ。
「何で?」
「さっきも聞いただろそれ。俺がここにいるのがそんな不思議かよ?」
「不思議って言うか、来ちゃ駄目でしょアナタ」
「何でいきなり駄目とかいう話になるんだよっ!」
199I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:39 ID:+2ixxsss

「だって初詣って真っ当な人用のイベントだもの。アナタ違うでしょ?」
「さり気にレイシスト発言かよ!KKKかテメェは!」
「女の子になんてこというのよ!大体厚かましいわよ本来なら
放送禁止用語で罵られるべき不確定名ヒゲグラサンの癖に!」
「不確定名ってなんだよ名前知ってんだろが!つーかこないだのこと
根に持ってるだろオマエ!」
「当ったり前でしょそんなのっ!口聞いてもらえるだけありがたうわひゃっ」
 今日の沢近愛理は和服だ。
 赤の晴れ着と銀のかんざし。髪は纏めてうなじを見せる。
 鏡に向かって「よし」と頷くほど気合を入れてめかしこんだ。
 で、もちろん下駄履きだ。バカボンのパパじゃあるまいし和服に靴なんか履かない。
 慣れてない上に言い争いながら歩いてるもんだからけっつまづいた。
可愛げな悲鳴をあげて転ぶ。
「・・・」
「・・・」
200I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:39 ID:+2ixxsss

 もとい、転ばなかった。播磨が肘をつかんで支えている。
「・・・で?」
「・・・・・・・・・・・・・・・アリガト」
 悔しげに礼を言う愛理。播磨は得意げに鼻を鳴らして
「ま、あれだ。人をどうこう言う前にテメェの足元をおおおおおぉぉぉぉおぅおぅ
おぅおぅいだだだだだだいてぇいてぇいてぇいてぇいてぇーーーーーーーーーっ」
 足を踏み外して神社の長い階段を転がり落ちていく播磨。
 はぁ。呆れ果てた、という風なため息をついて、でも少し楽しそうに
「夜なのにサングラスなんか掛けてるからよ。馬鹿ね」
 転ばないように気をつけて、でも急いで播磨を追う。手当てくらいはしてやろう。

「・・・で?」
「・・・・・・・・・・・・・・・アリガトヨ」
 悔しげに礼を言う播磨。ばつの悪さをごまかすように伸びをして首を回す。
 ぎしぎしぎしぎし。痛む身体を無理に抑えて歩き出す。
201I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:40 ID:+2ixxsss

「じゃあな。気ぃつけて帰れよ」
「え? あ。ちょっと待ってよ」
 しまった。つい追いかけてしまった。いきなり別れの言葉を聞いたから。
 どうしよう。まあいいや。ついていこう。予定があるわけでもないし。
「アナタ、これからどうするの?」
「行くとこがあんだよ」
「・・・不良の集会?」
「あるかそんなの! 動物園だよ!」
「ものすごく意外・・・でもないか。動物占いしてたしね。元旦から開園してるの?」
「やってねぇ」
「不法侵入・・・」
「するかっ!」
「珍しい動物をさらってきて売り払うのね。なんてこと。動物に好かれてるのを
逆手に取るなんてとんでもない外道だわ。鬼畜の所業よ」
「聞けよいいから俺の話をっ! バイトしてんだそこでっ!これから挨拶に
顔出すんだよ! 判ったか!? つーか判れ! 人聞き悪ぃこと口走んな!」
202I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:40 ID:+2ixxsss

「そんなの最初から判ってるわよ。軽い冗談も解しないなんて、面白味のない男ね」
「この女・・・」
「にしても、動物園か。うん、いいわねそれ」
「・・・ついて来る気か?」
「行った事ないんだもの。別にいいでしょ?」
「やれやれだぜ」
「あ、なによその態度。元旦に女の子が一緒にいてくれるんだから嬉しそうになさい」
「うわあいやったあー」
「心がこもってなーい! やり直し!」
「リテイクかよ!? 2回もやるかっ」
 なぜだろう、楽しい。
 いやな男のはずなのに、ものすごく楽しい。
 動物園に、行くからじゃない。それもあるけど、それだけじゃない。楽しい。
 デートだって、初めてじゃない。なのになんだろ、すごく楽しみ。
203I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:41 ID:+2ixxsss



   ・  ・  ・


 がこ がこ がこ がこ
 すた すた すた すた
 蹴り付けるように歩くせいで下駄がいやな足音を立てる。うるさいわね。
「なあ、おい」
「なによ」
 播磨が話し掛けてくる。今は聞きたくない。なにを聞かれるかは判ってる。
「なに怒ってんだオマエ」
「怒ってなんかいないわよ。何であたしが怒るのよ」
 ほらみなさい。当たったでしょ。でも嬉しくなんかない。不愉快。
204I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:41 ID:+2ixxsss

「現に怒ってんじゃねぇか。途中まで喜んでたのに」
「えぇ、えぇ、喜んでましたとも。動物達が可愛くて」
 そう、楽しかった。途中まで。動物達は播磨にとてもなついてて、
私に芸も見せてくれた。すごく、すごく、楽しかった。
「それが何で怒り出すんだよ」
「怒ってないって言ってるでしょう。まったくホントにしつっこいわね」
 播磨と一緒に、宿直室に顔を出した。そこには当番の職員さんと、
播磨の弟と、そして塚本八雲がいた。
 彼女はおせちを作って来ていて、それを皆で食べてきた。おいしかった。
「理屈に合わねえだろうがよ。怒る理由がなんかあったか?」
「理屈はちゃんと合ってるわよ。私は怒ってないんだから」
 今は帰り道。播磨に送ってもらっている。いらいらする。
 行きはあんなに楽しかったのに。帰りは腹立たしいばかり。
「だから女は判らねぇ」
「えぇ、えぇ、そうでしょうともよ。アナタに判るはずないわ」
 播磨に判るはずがない。私自身に判らないのに、この鈍感に判るもんか。
205I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:42 ID:+2ixxsss

 そう、怒る理由なんかない。だから怒るはずがない。
 なのに、いらいらする。
 なんか知らんがついて来た。そう言う播磨の言葉と、それを聞いて
あからさまにほっとした八雲にむっとした。
 皆でおせちを食べる時、八雲が当たり前の様に播磨の隣に座ったのが
なぜか不快だった。
 かいがいしく播磨の世話を焼く八雲がとても幸せそうな顔をしていて、
訳もなく癇に障った。
 帰るとき、弟に送っていくと言いだされ、播磨に送って貰いたそう
にしている八雲に胸が軋んだ。
 何より腹に据えかねたのは、私が何も知らなかった事。
 播磨に弟がいた事、一緒にいた動物達が今は動物園にいる事、
そうなるに至ったいきさつの事、動物園でバイトをしている事、
休日ごとに八雲が動物園に来ている事。何も、何も知らなかった。
 当たり前だ、知らされてないんだから。だって私は何も関わってない。

   私は何の関係もない他人だから、何を知らされる訳もない。
206I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:45 ID:+2ixxsss


「・・・なあ、おい」
「・・・今度は、何よ」
「なんでいきなり泣き出すんだよ」
「泣く? 私が? 馬鹿言わないで。私が泣くわけないじゃない」
「現に泣いてるだろ、今」
「泣いてないわよ。それこそ理由がないじゃない。どうして、私が、
泣いたり、なん、か」
 なんで? 悔しい。
 どうして? 悲しい。
 すごく、辛い。
 判らない。でも、嫌。今日知った色んな事が、みんな嫌。
 そんな嫌な事でも、今日偶然知らなければ恐らく一生知ることが
出来なかったろう事実が、すごく嫌。
「ひっ うぇっ ぐす・・・」
 どうして、こんな、嫌な思いを。今日はめでたい日のはずなのに。
207I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:46 ID:+2ixxsss

 ぽすっ
「・・・え?」
 播磨の大きな手が、頭の上に載せられている。
「泣くなよ。泣くな」
 さら さら
 優しく撫でてくれている。
「・・・なによ? それ」
「なにって、何がだよ?」
 さら さら
 撫でる手は止まらない。
「こんな、子供みたいな扱い」
「しょうがねぇだろ。泣いてる奴をあやす方法なんてこれしか知らねぇんだから」
 そっぽを向いて、恥ずかしそうに唸っている。
 さら さら
 ずっと、撫でてくれている。
 ・・・気持ちいい。
「もう、これじゃ私、馬鹿みたいじゃない」
208I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 11:46 ID:+2ixxsss

「お、泣き止んだな。よしよし」
 手が、離れてく。
「・・・あ」
 きゅ
 ・・・
「・・・」
「・・・」
 ・・・どうしよう。袖、掴んじゃった。
「なんで?」
「ええと、その、なんていうか、その」
 なにか、言い訳。なんでもいいから。
 やめないで。違う違う。
 もっと撫でて。そうじゃないでしょ。
 うぅ。ホントにどうしよう。
「・・・勘弁しろよな」
 ぽす
 さら さら
「・・・・・・・・・・・・・・・アリガト」
 さら さら
 なぜだろう、嬉しい。
 いやな男のはずなのに、ものすごく嬉しい。
 子供みたいに、あやされてるのに。恥ずかしいけど、それだけじゃない。嬉しい。
 優しくされるの、初めてじゃない。なのになんだろ、すごく嬉しい。
 さら さら
「・・・・・・・・・・・・・・・アリガト」
「・・・ふん」

 これってもしや。まさか、まさかね。
 この気持ちって。そんな、まさかね。

 ・・・まさか、ね。




    おわりー
209I_just_can't_stop_loving_youの中の人:03/12/31 11:55 ID:+2ixxsss
ども。前スレ813です。

実は話そのものを一辺書き直してます。
最初は上で169氏が書いてたような話だったんですが
絵板の257で先を越されてしまいまして、ネタ的にかぶりやすい
シチュだと言うのを思い知り、新年話として全直ししてしまいました。
3時間もかかちゃったよ。

で、新年話なんでもちろん元旦に上げようとしてたんですが、
jcomのアクセス規制が雲行き怪しかったんで
上げられるうちにって事でフライング気味に上げさせてもらいました。
210Sometime:03/12/31 12:02 ID:9Q3KmsEP
「そんな顔をしないでくれたまえ、八雲君」
「先輩……」
「君は何も悪いことをしたわけではないよ」
「でも……」
「ふむ。そこまで言うのであれば……そうだな、僕の友人になってはくれないだろうか」
「え……」
「もしそうしてもらえるなら、僕はとても嬉しく思うのだが」
「……はい」


「……とは言え、だ」
 やはりなかなか辛いものだな、と昼間の出来事を思い返しながら呟く花井。さほど長時間
動かしていたわけでもないのに気だるい身体とあわせて、改めて塚本八雲という少女の存在
の大きさを思い知る。
「これじゃあ周防に笑われる、か」
 ついこの間偉そうに語ったばかりなのに、と苦い笑み。
 と。
「だーれがなんだって?」
「ん?……ああ、いたのか」
「まーね」
 けっこう前からね、というのは心の中にしまっておく周防。そうしないと、と思わせるほ
どに今の花井の姿は弱々しく見えた。
 ちょっと休めば、という周防の言葉に、ああ、と花井も答え、二人で並ぶようにして道場
の壁にもたれかかるようにして座る。
 話すべきか、と考える花井。付き合いの長さから、何かあったのはお見通しだろう、と。
 聞くべきか、と考える周防。付き合いの長さから、何かあったのに違いない、と。
「今日、八雲君に断られたよ」
 静寂を先に破ったのは花井の方だった。
「……そっか」
掛け合いが(・∀・)イイ!
お疲れ様です。
212Sometime:03/12/31 12:03 ID:9Q3KmsEP
 なかなか辛いな、これは、ポツリとそう呟く花井。
「あたしもね、そうだったよ」
 しばらく言葉を選んでから周防はそう言った。
「自分は絶対大丈夫、なんて思っててもさ、そうはいかないよ、やっぱり」
 おかげで人には余計な心配かけちゃうしさ、と先ほどの花井と似たような笑みを浮かべる。
「いろいろあって吹っ切れたとは思ってたんだけどね、それでもまだ心のどっかでうじうじ
してたんだ、しばらく。そしたらさ」
「……そうしたら?」
「思いもよらなかったヤツから思いもよらなかったこと言われてね」
 助かったよーあれは、とおどけたように言う。
「だからさ、なんて言うか……花井にもそういうこと、あるかもしれないよ」
 聞きながらちらりと横を盗み見る花井。周防は彼ではなく少し遠くを見つめていて、それは
自分に対しても言っているように見えた。
「かなわないな、まったく」
 先ほどとは違う微笑み。
「僕はね、ミコちゃんみたいになりたい、って思ってたんだ、昔」
 彼女のことをそう呼ぶのはいつ以来だろう、そう考えながら花井は言った。いつのころから
か気恥ずかしくて言わなくなったその呼び名を、今はすんなりと言えた。
「あたしはコイツを一人前にするんだ、なんて思ってたよ」
 昔って今はどうなのさ、と茶化してから周防は言った。
「ふん……」
「あはは……」
 どちらともなく笑みがこぼれ、しばらく笑いあった後で。
「なあ……キス、しよっか」
 唐突に周防はそう言った。
213Sometime:03/12/31 12:04 ID:9Q3KmsEP
「……は?」
「あーいやだからさ、いつかまた誰かに出逢ったときのための練習っつーか……」
 さすがに言いながらもその顔は赤く染まっている。
「……もし見つからなかったらさ、責任取ってもらえるだろ?」
「……お前、馬鹿じゃないのか?」
「さあ、どーだろ」
 言って目を閉じる周防。
「……」
 そして――
「するわけないだろ、馬鹿」
 その頭を小突いて立ち上がる花井。
「っつ……冗談だよ、冗談」
 さて、と周防も立ち上がる。
「元気も出たところで一勝負、どう?」
「仰せのままに」
 珍しくおどけた受け答えの花井。
『いつか、その隣に並んで歩く時が来るんだろうか』
 一瞬、そんな思いが二人の胸を去来する。
 けれど。
『今だって一緒に歩いてる』
 つかず離れず、相手を感じていられる距離。それで十分。
「手加減は――」
「――当然なし」
 間合いを取って一礼。
 そして。
「「哈っ」」
 気合の一声とともに始まるのは、その間だけは何人たりとも立ち入ることのできない、
二人だけの時間――
冬のお祭りにはスクラン本がなかったなあ、とかなんとか。
前スレでもうちょいラブを、という話があって書いてみましたが……
どうもこの二人はやっぱり適度な距離感が魅力かな、と。


>>209
相変わらずGJです。
いじられる播磨が萌え。
>>210-213
これだこれだこれだああああ!!!
ミコちん × 花井 は、こうでないといかん!
ちょっと前のミコちんのSSは、正直納得いかなかったが、今回のSSは素晴らしい!

GJです!
>>210-213
よすぎ…。今までSSのことちょっとあなどってたかもしれん…。とりあえずすごいよかったよ…。
花井・美琴展開最高。
やっぱこの二人は、ピンでなくてペア萌えだな。
二作ともイイ!
>>197-208は前半の掛け合いが面白い
>>210-213は二人の関係と性格を上手に表現したかと
神が連続でキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
どちらも素晴らしい!
220I_just_can't_stop_loving_youの中の人:03/12/31 13:51 ID:+2ixxsss
飯食って帰ってきたら投下されてるー!
>>214
そちらこそGJです。
花井って大時代な喋りのせいで扱いやすくって
俺が書くとどうしても脇に回りやすいんですよ。
いいなあマジな花井。
221963:03/12/31 13:53 ID:r0RSHhHU
KKKって何?あと2作ともGJ!!!
>>221
要約すると、黒人(有色人種)ダメ、白人マンセーな集団。
>>221
ttp://d.hatena.ne.jp/keyword/%a5%af%a1%bc%a1%a6%a5%af%a5%e9%a5%c3%a5%af%a5%b9%a1%a6%a5%af%a5%e9%a5%f3

クー・クラックス・クラン

Ku Klux Klan.

一般に“KKK”として知られている。白人至上主義・反外国人主義を唱えるアメリカ合衆国の秘密結社。その名称はギリシア語の「車輪・円」を意味する“クークロス Kuklos”に由来する。

1970年代以後,初めて女性を会員に認めるなどした結果,第3回目の隆盛期を迎えている。しかし白い頭巾をかぶり白い布をまとって集会を開くクランズマン(会員)の姿は,以前もそうであったが今日においても,アメリカにおける不寛容主義の一つの表れとしてみられている。
224I_just_can't_stop_loving_you:03/12/31 14:21 ID:+2ixxsss
>>221
白人至上主義を信奉するアメリカのカルト集団です。
正式にはクークラックスクラウンだったかと。
225sage:03/12/31 14:25 ID:bxQWzYEq
スクラン至上主義
ごめんなさい間違えましたm(。。)m
名前とアドレス欄を間違えてしまうとは…許してください
_| ̄|○
227214、あと前スレいろいろ:03/12/31 14:34 ID:9Q3KmsEP
萌え路線ではないのでどうかな、と思っていたのですが。
どうもです、皆様。

>>220
こいつは実はいいヤツに違いない、という俺式妄想の果ての産物です。
本編でもいつか……そんな展開になりそうにもありませんが。
ヤクモンヤクモン。
>>210-213
久々に転がりました
今年最後のスクラン分補給になるか?
>>210−213
こういう男女の友情の関係はいいね。付かず離れず。

しばらく来てなかったけれど何気にこのスレ危なかったんだね。住人もナイススルー。
煽りとWJだけは勘弁して下さい
230963:03/12/31 16:30 ID:BvuLiY2o
播磨って結構語彙が豊富だからそのKKKのこともホントに知ってるかも。
>>222.223.224 あんがと
>>225 これから漏れはKKKをそう解釈して使って逝こうと思う
(・∀・)イイ!
>>230
使うなよ(;´Д`)
ちょっと来なかった間に神がたくさん光臨してますね
職人さん達のおかげで年末はお腹いっぱいになりました
みなさんよいお年を
良いお年をm(・∀・)m
つーかKKKは知ってて然るべき知識なのでは・・・
>>209
お疲れ様です。ただ播磨がちょっと喋り過ぎな気もしました。

>>214
上手いですねー。実際ありそうで良い。
>>235
世界史選択者ならしらなきゃまずいかも。
年末にこんな神の業を二つ連続で見れるとは!
職人さん、GJでした!!
>>197-213
>>210-213
大晦日最後のGjでした!

新年明けましておめでとう俺達。
新年明けましておめでとう職人さん。
今年はきっと本スレが100を超えるスクラン年になるだろうな。

さっそくですが職人さん方、どうか俺達にお年玉(もへSS)をくださいw
240963:04/01/01 01:11 ID:PAz+wGkp
KKKは常識範囲なのか・・・・。物理教師の指摘をしている場合ではナカタ。
先日は軽く荒らしてスマソ。184もスマソ
241Ordinary Days:04/01/01 02:20 ID:cOYPWDU5
 ごーん、と鐘の音が響く。
 時計の針はじきに重なろうとしている、新しい年の始まる少し前。
「なんだかわくわくするよね」
「そうかしら?日付が変わるだけ、何も特別なことじゃないと思うけど」
「えー、そうかなあ……」
「気にすんなって、塚本。わざわざ出てきたってことは沢近もホントは楽しみなんだよ」
「あれ?愛理ちゃんそうなの?」
「それは……だって誘われたら受けるのが礼儀でしょう?」
「恥ずかしがり屋さん」
「っ……」
 天満、愛理、美琴、晶。いつもの面々は矢神神社に来ていた。
「でも本当にあまり人がいないわね、ここ」
 気を取り直して言う愛理に、昔っからそーなんだよな、どういうわけかさ、と答える美琴。
「変な神様でも祀っているのかしら」
「晶ちゃん、さすがにそれは……」
(変な神様、ねえ……)
 そのやりとりを横目に笑いをかみ殺す美琴。実際祀られているそれはともかく、彼女の出会った
『神様』は確かに変なヤツだった。いろいろ苦労してるんだよな、頑張れ、と心の中で応援しておく。
「でも今年ももう終わりなんだよな……」
 その辺りの諸々はさておいて、一年を思い返しつつそう口にする。
「そうね、なんだかいろいろありすぎてずいぶん早く感じたわね」
「いろいろって何かしら」
 大抵の『いろいろ』は知っているのにあえて訊く晶。
「……あれよ、旅行とか、林間学校とか」
「そうだよね、楽しかったよね」
 言外の意味をくみ取る、などという発想のない天満。ちなみに晶は、ふうん、といつものポーカーフェイス。
「私はみんなと仲良くなれてよかったよ」
「まあ、そうね」
「そうだな」
「ええ」
 裏表のない言葉に頷く一同。
242Ordinary Days:04/01/01 02:21 ID:cOYPWDU5
 そうこうしている間に。
「そろそろね」
「ん?もうか。にしても時計も見ずによく分かるな」
「鐘」
「……まさか数えてたの?晶」
「当然」
「うわ、凄いね」
 そして。
 ごーん、と鐘の音が響く。
 百八つ目、年の移り変わりを告げる音色。
「おめでとうっ!」
 四人の声が重なる。
「さて、それじゃ早速願い事、と」
「私は奮発しちゃうもんね!500円!」
「また凄いのか凄くないのか分からないわね」
「大事なのは気の持ちよう」
 一列に並んで目を閉じる。
「――――――」
 それぞれがそれぞれに願い事。
 例えばそれは今一つ掴み所のない想い人のことだったり。
 なかなか会えない父親のことだったり。
 いつでも近くにいた幼馴染みのことだったり。
 大切な親友達のことだったり。
 そんなそれぞれの願い事。
「――よし、と」
「ねえねえ、何をお願いしたの?」
「企業秘密」
「誰が企業よ……まあ、教えたら面白くない、っていうのも確かよね」
「うーん……そうだね」
 どっちにしろ聞かなくても天満のは分かるけどね、という美琴の言葉にあたふたする天満。
その仕草に誰ともなく笑みがこぼれる。最初はむー、などと言っていた天満も、いつしか
その温かな笑みの輪に加わって。

 そんな風にして。
 彼女達のごく普通の、だからこそかけがえのない日常がまた、幕を開ける――
わはー。新年1発目わはー。
244Ordinary Days:04/01/01 02:23 ID:cOYPWDU5
新年最初なので無難にほのぼの。
大丈夫、全国の俺達が望んでいるようなもへ話はきっと誰かが書いてくれます。
……ますよね。
冗談はさておき、本年も素晴らしい作品に出会えることを、そして各々登場人物
の上に幸せな日々が訪れるのを願いつつ。
あの日からすべてが変わってしまった。
全然タイプじゃ無いのに。
播磨拳児。私の心を奪った男。
きっかけは何だったのかな?
たしか、雨の日に傘を差してくれた事。
何て事の無い世間話。あなたはカレーが好きだと言った。
その時私は気付かなかったけど、あなたは私が濡れないようにとても気を配ってくれた。
あなたが時折見せるやさしさ。それに気付く度に私はあなたのことが好きになっていく。
でも、私はとても不安になっている。
あなたの好きな人は誰なの?私なの?それとも…
日々募る思い。
それでもあなたは気付かない。
私も人にこの気持ちを明かすつもりは無い。
あの人は誰?綺麗な大人の女の人。あなたの好きな人なの?直接聞きたい。
あのとき私は頭が真っ白になってしまった。
初めて人恋しくてベッドの中で声を殺して泣いた。
翌日は顔も見れなかった。
この時私は自分の気持ちに気がついた。
気が付くといつもあなたを探してる。今はまだこの気持ちを抑えていられる。
でも…いつか…きっと…そのときが怖い。
あなたはどんな顔をするかしら。
あなたが好き。この気持ちに嘘は無い。
でも。まだその時はまだ先。 fin
249For you:04/01/02 00:04 ID:V3BvRsM+
「よし、と」
 数時間をかけてようやく書き上げた年賀状を前にして、修治はそう呟いた。
 あとは――
「修治、ほれ、お年玉じゃ」
「っと、なんだ、じっちゃんか」
 慌てて机の上のそれを隠しつつ振り返る修治。
「ありがと。でもいいよ、じっちゃんにはいつも世話になってるし、気持ちだけでじゅーぶん」
「ほ!お前も言うようになったなあ……まあ、昔から言い出したら聞かんしな、それじゃあ
とりあえずワシが預っておくぞ」
「ごめんな、じっちゃんが嫌いになったわけじゃないんだけど……」
「構わん構わん、それだけお前が大人になったっちゅうことじゃ」
「……ありがと」
 それじゃちょっと出かけてくるから、そう言って駆け出すようにして玄関に向かい、靴を
つっかけて飛び出していく修治。
「だんだん拳児に似てきたのう……」
 孫を見送る祖父の視線はとても温かいものだった。


 一方絃子のマンション。
「拳児君、あけましておめでとう」
「んー、おめでとう」
 やれやれ新年早々覇気がないね、君は、と呆れ顔の絃子。
「まあいい。ほら、君の分の年賀状だ。今年はなかなか面白い面々から届いているようだよ」
「面白い……誰だ?」
「コレなんてどうかな?天」
「どうせ天王寺のバカだろ。だいたいそのオチはもう……」
「ほう、じゃあこれはいらない、と。私の目にはどう見ても塚本さんからの年賀状に見えるがな」
「……………………ハイ?」
「まあ、彼女の性格からするとクラス全員に出していると思うがね」
「今すぐお渡し下さい絃子サン」
 やれやれ、極端だね、と言いつつも手渡す絃子。受け取った播磨は、
「――――――――――――」
 声にならない歓喜である。
「まったく……そうそう、何やら妹さんとの連名のようだったからね、ちゃんと返事は書いておくように」
「当たり前だ!ここで出さなきゃ男が廃るぜ!」
「そこまで大仰なものでもないだろうに。あとは……そう、これもなかなか面白いな」
「まだあるのか?俺としてはもうこれ以上は何もいらねェよ」
 これだよ、と意味深な笑いとともに手渡されたのはシンプルな年賀状。
『Happy New Year』
 流麗な文字でそう綴られているだけ。差出人の名前もない。
250For you:04/01/02 00:05 ID:V3BvRsM+
「……誰からだ?これ」
「自分の胸にでも訊いてみるといい」
 ちなみに私は生徒の筆跡はだいたい把握しているからね、と絃子。
「分かってるなら教えろよ」
「それでは面白くないだろう。まあ、せいぜい考えることだよ」
 そんなやりとりをしていると。
「兄キ!」
 チャイムの音もそこそこに、駆け込むようにして現れた修治。
「おう、どうした修治、年明け早々」
「やあ修治くん。あけましておめでとう」
「あ、おめでとうございます、絃子さん」
「やあ、修治くんは誰かと違って礼儀正しいねえ」
「……うるせェ」
 それで、と気を取り直す播磨。
「何の用だ?」
「ごめん、金貸してほしいんだ」
 祖父にはああ言ったものの、修治には今どうしても買いたいものがあった。自分の力で何とかできれば
それに越したことはなかったのだが、如何せん年齢的に限度はある。
「ちゃんと返すからさ、頼むよ」
「お前なあ、いきなり押しかけて……」
「お願いします」
「……修治」
 土下座をして額を床にこすりつける修治。その姿にさすがに何も言えなくなる播磨。拳児君、そう絃子に
目で促され、静かに立ち上がる播磨。
「ちょっと待ってな」
 奥に下がってから適当な袋を見繕って戻ってくる。
「お前を男と見込んで渡すぜ。ただしな」
「……ただし?」
「コレは俺からの『お年玉』だ。返そうなんて考えるなよ」
「え……」
「あー、あれだ、たまには兄貴らしいことぐらいさせろ。な」
 明後日の方向を見つつぶっきらぼうに言う播磨。
「ありがと、兄キ!」
 ぺこり、と頭を下げて、やってきた時と同じくらいの勢いで飛び出していく修治。
「オトコというのはなかなか大変だね」
「そんなんじゃねェよ。だいたい、アイツのあの目を見たら断れねェだろ」
「恋する瞳、かな?」
 君にそっくりだったよ、と言う絃子を無視して、さあ天満ちゃんに年賀状年賀状、と言いながら部屋に
戻っていく播磨。
「……なかなか大変だね」
 口調とは裏腹の表情で絃子はそう呟いた。
251For you:04/01/02 00:06 ID:V3BvRsM+
「おっちゃん!」
 またしても駆け込むようにして修治が飛び込んだのは、街の小さな骨董屋。合法快楽で風変わりな店主が
年がら年中、朝から晩まで開けている店である。
「おう、坊主。ほんとに来たのか」
「オトコとオトコの約束だからな!あれ、まだあるよな」
「ああ、ちゃんとオメェのためにとっといてある」
 それは小さな細工物。ある日店の前を通りかかった修治は、ウィンドウの中のそれに魅せられてしまった
のだった。もちろん自分で手に入れたいわけではなく、あこがれの人へのプレゼントとして。
 持ち前の行動力で店に飛び込んで聞かされた値段は、とんでもなく高いわけでもなく、けれど修治にはすぐ
手を出せるようなものでもなかった。
『おっちゃん、俺絶対コレ買いに来るから置いといてくれよ!』
『そいつは嬉しいがな坊主、コイツも売りもんだぜ?』
『頼むよ!』
 その瞳に播磨と同じものを見たのか、店主は結局それを承諾した。
『ただしコイツは男と男の約束だ。破るようなこたぁ……』
『とーぜん!』
 いい顔しやがる、そう店主は修治の頭をくしゃくしゃとなでたのだった。
「代金は確かに受け取った。ほらよ」
「ありがとっ!」
 そう言ってまた駆け出そうとする修治の背中に店主が声をかける。
「待ちな坊主、釣りを忘れてるぜ」
「え……でもあれでちょうど」
「いいか、ものってのはな、それを大切にしてくれるヤツのところに行くのが幸せなんだ。オレたちゃその
手伝いをしてるようなもんだ」
 それで、だ、とにやりと笑う店主。
「坊主、オメェなら大丈夫だとオレは見たわけだ。そういう相手からはほんとは金なんて取りたくないんだがな」
 ま、こっちも一応商売だ、と今度はくっくっく、と笑う。
「じゃあな、坊主。しっかりがんばれよ」
「がんばるって……」
「プレゼントだろ?それ」
「え、あ、いや、まあ」
「大丈夫、気持ちってのは伝えりゃ伝わるもんだ。行ってきな」
「……そっか、そうだよな。ありがとな、それじゃ!」
 暇だったらまた来いよ、と修治を見送る店主。
 その日一日、彼の顔から笑みが消えることはなかった。
252For you:04/01/02 00:07 ID:V3BvRsM+
 そして塚本家前。
「……」
 家の様子を窺ってみたところ、どうやら留守中、修治は迷っていた。
 さすがに直接手渡す、という選択肢は最初からなかったものの、いざとなるとその辺りに置いていく
わけにもいかない。とは言えうろうろしているだけ、というわけにもいかず。
「……どうしたの?」
「いやちょっと……え?」
 振り返れば。
「ややや八雲姉ちゃんっ!?」
 振り袖姿の八雲がいた。
「えーとあのそう、なんか偶然と言うか」
「遊びに来てくれたのかな……?」
「……似たようなもん、かな」
(本 当 はそうじゃ なくて)
 修治の『声』は聞こえていたが、思っていることと口にすること、本当に伝えたいのは思っていることかも
しれないけれど、それが綺麗に割り切れることではないと知っていたから、八雲はそう、と答えただけだった。
「もうすぐ姉さんも帰ってくるし、一緒に何かしようか」
 代わりに、彼女にしては珍しく自分からそう切り出した。
(嬉し い  やっぱ り八雲姉 ちゃん は)
「……いいよ。俺……俺ただコレ……!」
(どうし よう  もらっ て くれな かったら  で も俺 は)
「あ――」
「……ありがとう」
 そう言って、八雲は修治の頭をなでた。やさしく、ゆっくりと。
「――えと、それじゃ俺、もう行くから!」
(会 いたい  また)
「また来るから!」
 最後に『声』と声を重ねて、八雲の返事も聞かずに修治は駆けていった。
「シュージ君……」
 見送る八雲の後ろから、ようやく天満が追いついてきた。
「寄り道しちゃってごめんね……ってあれ?それどうしたの?」
「うん……もらったの」
「そっか。なんだかよく分からないけどよかったね、八雲」
 誰に、とも聞かずににこっと笑う天満。この姉のそういうところが好き、と八雲は思う。
「……うん」
 それじゃおせちおせち、とドアに向かう天満の後に着いていこうとして、その前にもう一度道路を見やる。
風のように駆けていった修治の姿は、もうそこにはない。
(ありがとう……)
「また、おいでね」
 そこにはいない小さな友人に、八雲はそう言った――
253For you:04/01/02 00:09 ID:V3BvRsM+
合法快楽って何だ……_| ̄|●
豪放磊落です。
そして播磨君ちの家庭の事情が不明なので勝手に二世帯住宅です。
修治はまた出ないかな、と思いつつ。
以下蛇足のおまけ。
254For you:04/01/02 00:09 ID:V3BvRsM+
 さて、正月休みもあっというまに過ぎ去り、学校初日。
「みんな久しぶりー」
「……正月に会ったばっかりだろ」
「でもほら、学校だと違った感じがするよ、ねえ愛理ちゃん」
「まあ、そう言われればそうだけど……」
「今年も塚本さんは相変わらずね」
 いつもの面々がいつものように顔を合わせる。
 そこに。
「……悪ぃ、ちょっといいか?」
「あ、播磨君。あけましておめでとー」
「オ、オメデトウ」
 相変わらず免疫ゼロ。
「珍しいな、お前の方から用事なんてさ」
 美琴に言われて本来の用事を思い出したのか、こほん、と咳払いをひとつ。
「あーほら、年賀状だ」
 天満に返事、というそれだけで丸一日を要するような年賀状を制作してしまった播磨だったが、
ああ見えて基本的に義理堅く、一枚だけそうするわけにも、と結局すべて大作にしてしまったために
手渡しする羽目に陥っていた。
「塚本は妹さんにもよろしくな」
「わあ、すごいね!ありがとう」
 ちなみにこの時当然視線は明後日の方を向いている。
「あとは周防、高野、と……」
「お前もマメだね……」
「ありがとう」
 そして。
「ほらよ」
「え……?」
 沢近にも差し出す。
「ん?いや違ったならスマン。なんか名前の書いてないのが一枚あってな」
 はっぴーにゅーいやー、ってそれだけのヤツだ、と説明する播磨。
「私、だけど……」
「なら問題ないだろ。ほらよ」
「……………………ありがと」
「おう」
 用事は済んだとばかりにそそくさと引き上げていく播磨。できればそのまま天満ちゃんとお話を、と
思ったりもするのだが、そうもいかないのが世の中というヤツで。
「……」
 ぼう、と年賀状を見つめる沢近。
(本当に相変わらず)
 それを見ながらそんなことを思う晶がいて。
 それぞれがそれぞれの想いを胸に、新学期が始まる。
>>253
ぐわ、ネタが被った・・・_| ̄|○
それはともかく、GJです!
両者ともGJです!

>>245-248
何か心のポエムって感じですな(*´∀`)
>>247
>翌日は顔も見れなかった。
確か思いっ切り睨んでたような・・・w

>>249-254
おまけが蛇足だなんてとんでもない。素晴らしかったでつ。
>合法快楽
ちょっといかがわしい所を想像したりw
だめだ、合法快楽でコーヒー噴いた…w
合意の上で気持ちよくなるんですか
259253とか227とかのお猿さん:04/01/02 09:35 ID:V3BvRsM+
正月早々お猿さんです。
気がついた時はもうね、アホかと(省略
みーのーがーしーてー。
>>255
初詣ネタはそれこそ被ると思って回避したのですが……
どこがどうなったのやら。
>>256
おまけは想像の余地も残しておく方が、というのもあったので。
誤字は……誤字は……っ
素顔の播磨を見て沢近がドキリとする,そんなシチュエーションのSSきぼんぬ
>>256
翌日は確か播磨がラブレター渡した日だから睨まれた日はまだ先ですよ
>>261
(;´Д`)ソウデシタカ 失礼しました・・・
SS分が不足してきた
神様、なにとぞ・・・
今日1巻から読み直してたら、播磨留年危機があったんだっけ。
八雲と同級生になる可能性もあったのかも。
  ズズ〜

 音を立てて紅茶を啜っている事に気付いて、慌てて播磨拳児はカップから口を離した。
 いくら彼でも音を立てるのが作法にもとる事ぐらいは知っている。知ってはいるもの普段彼が飲んでいるのは基本的に番茶や玄米茶などの日本茶であり、紅茶ではない。

 そう紅茶。
 紅茶である。
 従姉にして同居人(家賃諸々が折半)、そして彼の学校の教師でもある刑部絃子はよく飲んでいるようだが、播磨には紅茶を飲む習慣がない。
 時代劇ファンだというのも理由の一つだが、以前に絃子のティーサーバーを割った際にモデルガンによる制裁を喰らった上、弁償で財布が非常に軽くなったのが軽いトラウマになっていたりする。
 それなのに今、播磨の目の前で湯気を立てているのは紛れもなく紅茶である。無論彼が淹れたのではない。淹れた人物は今も播磨の斜め後ろで直立不動で立っている。
 チラリ、と視線をやると最後に見たときと全く同じ姿勢で立っていた。執事だそうだ。名前は、
(たしか……中村だよな。アイツがそう言ってたし………)
「播磨様、お気に召さないのでしたら代わりのものをお持ちいたしますが」
 播磨の視線にすぐに気付き、執事―中村が言ってくる。
「………イエ、結構デス」
「さようでございますか」
 中村の言葉を最後まで聞かず視線を戻した、これ以上何か言われては堪らない。

 視界に華奢な白磁のカップに入った紅茶が入る。所々に金があしらってあり、藍色の顔料で植物の絵が描かれている上品な、そして高そうなカップだった。
 間違っても播磨の私物ではない。どうにも、こういう少し力を入れただけで壊れそうなものは扱いにくくて苦手だった。
 自分がこういうものを使うのはどうにも違う気がする。
 しかしカップは播磨には兎も角、それの置かれているテーブルとは少しも調和を乱していない。部屋にある調度品はどれも落ち着いた、それでいてどこか上品な雰囲気を醸し出している。
 そう言えば座っているソファーもやけに柔かい、散らかりまくった自室のセンベイ座布団とはえらい違いだ。

 つまるところ………
 播磨が今居るのはクラスメートである沢近愛理の家だった。
(だいたいなんで俺はこんなトコに居るんだ………?)
 状況についていけず停止していた脳がやっと回転を始める。
(今日は……動物園に行ったんだよな。妹さんともう一人と一緒に………)
 そう今日は学校帰りに後輩二人と一緒に動物園に行った。そのうち一人は愛
 しの天満ちゃんの妹、塚本八雲。
(そうっ!妹さんから俺の話が伝われば、そのうち天満ちゃんも俺のことを…
 ……っていかんいかん)
 別にそれを望まないわけではない、いやむしろ切望しているが別にそれが目
 的で動物園に行ったわけではない。脱線しかかっている思考を引き戻す。
(動物園から出て…二人と別れてから………そうそう、夕飯をどっかで食おう
 とブラついてたんだよな)
 今日の礼代わりに二人も誘えばよかったと、後から気付いたのを悔やんだ覚
 えがあるので間違いないだろう。しかし播磨拳児は前向きだった、また次の
 機会にすればいいと、さっさと気持ちを切り替え、駅前の繁華街に歩いていった。
(そうそう、思い出してきたぜ)
 立ち並ぶ店を見比べながら、味と食いたくなったのと財布へのダメージが比
 較的少ないという理由でソコイチのカレーにしようと店に向かって歩き出したところで…、
267カレー曜日:04/01/03 04:34 ID:8wdxbmRp
タイトルはやっぱり名前欄に入れとく。



「あ……、ヒゲ?」
「ああん?」
 聞き覚えのある声に振り返ると、クラスメートの沢近愛理が立っていた。
 手にスーパーの袋を持っている。

「……よう」
 一応挨拶をする。なんと言っても彼女は愛しの天満ちゃんの友達でもあり、
 播磨自身にも彼女にいくつか負い目がある。なにより無視をしたりすれば後が怖い。
「カレー……食べるの?」
「そりゃ、カレーの店に入ってスパゲティ・ボロネーゼ注文するほど俺は馬鹿じゃねえからな」
 播磨はあまり沢近にいい感情を持ってない。
 最近では茶を買いにパシらされた、しかも二度も……自分に原因があるのでなん
 とか抑えていたのだが、やはり鬱憤が溜まっていたようで少し皮肉った言い方に
 なってしまった。が、当の沢近本人は播磨の言い様に反応もせず、口元に手をあて考え事をしているようだった。
268カレー曜日:04/01/03 04:36 ID:8wdxbmRp
「おい、用が無いんなら行くぞ」
「え? あっ、ちょ、ちょっと待って」
 今度こそ店に入ろうとする播磨に、沢近が慌てた様子で声をかける。
「……んだよ。用があるならさっさと言ってくれ、それなりに腹が空いてんだ」
「待ってって言ってるでしょ。ちょっと考えまとめるから……」
 再び考え事をするような仕草の沢近、考えをまとめると言っていたから実際
 そうなのだろうが、ここは大通りの真ん中である。
 沢近愛理、ハーフで金髪でツインテールでスタイルがよくて美人。
 播磨拳児、ヒゲにグラサンでガタイがよく見るからに不良。
 そんな二人が繁華街の大通りで向き合っている。
 当然目立った。野次馬が集まってくる。
 大半の野次馬が播磨が少し睨んだだけで逃げ出したが、いかんせん数が多す
 ぎるし、野次馬がさらに野次馬をつくる状況になっているので数としてはむしろ増えてきた。
 最初は4・5人だったのが今は既に20人を越している。
(ちっ、ウザってぇ奴等だな。暇人ばっかかよ)
 野次馬の一角を睨むと―と言ってもサングラス越しでだが―そこの何人かが散るように播磨の視界から逃げる。
 その時、風のせいか、それとも声が大きかったらからか野次馬の声が播磨の耳に届いた。
269カレー曜日:04/01/03 04:37 ID:8wdxbmRp
『うわ、マジこえー』
『きっとフられたんだぜアイツ。じゃなきゃあんな顔してねえよ』
『あのコ、ムッチャかわいいじゃん。身の程をわきまえろよな』
 等々

(クソ、影でこそこそ言いやがって、だいたい何で俺がこの金髪お嬢なんかに
 告るんだよ、そんなワケねー………)
 叫んだりすれば野次馬が喜ぶだけだと声には出さず罵っていたが、その最中
 に夏休み前に沢近愛理に愛の告白をしたことを思い出してしまった。
 チラリ、と目の動きだけで沢近を見る。幸い、まだ考えている最中のようだった。
 さっきのは聞こえていなかったらしい。
(そういや、コイツはあのことどう思ってるんだ?)
 別に沢近自身にはあまり関心が無いが、彼女の口から天満に伝わったら事である。
 今更ながらに気付いたその事実に、播磨の顔から一気に血の気が引いた。

 『ねえ、天満』
 『ん、何? 愛理ちゃん』
 『私ね、夏休みに入る前に播磨君に好きだって言われたんだけど…』
 『ええっーーーー!』
270カレー曜日:04/01/03 04:38 ID:8wdxbmRp
(誤解なんだっ!天満ちゃん、俺は別にこのお嬢に告るつもりなんかなくて、
 その、お、俺は君にっ!)
 下手をすると、もう既に現実になっている可能性がある。
 自ら想像した内容に播磨は頭を掻き毟った。
 そんな播磨の様子を見て、さらに集まる野次馬たち。
(まずい、まずい、まずい、まずいまずいマズイまずいマズイ拙い不味い
 マずいまずイ………………………ん、待てよ)
 頭を掻き毟っていた手がピタリと止まる。
(告ったあと、お姉さんが来たんだよな)
 一時期、播磨を保護してくれたお姉さんだ。恋に破れ、夢も破れ、落ち込ん
 だ播磨を励まし、元気付けてくれた。
 告白の後、お姉さんが来たのだ。播磨に抱きつき、連れて帰ろうとしてくれ
 たところで、沢近からシャイニングウィザードを喰らったのだ。
(そうか!よくわからんが、お姉さんは俺が違う相手に告白したのを見抜いて助けてくれたんだなっ!)
 そうでなければ告白してきた相手にいきなりシャイニングウィザードを喰ら
 わせるはずがない。きっと俺にはよくわからない方法でお姉さんが誤魔化してくれたに違いない。
 播磨は確信した。
(ううっ、お姉さん。俺は俺が知っている以上に面倒をかけてたんだな。それ
 なのに俺は恩返しに漫画を描く事しかできねえ……)
 新たなる漫画への決意を胸に播磨は泣いた。
 夕暮れの中、その涙は熱く、赤く輝いていた。男泣きだった。
 野次馬は更に増殖中。
271カレー曜日:04/01/03 04:42 ID:8wdxbmRp
 一方、沢近愛理。
(べつにヘンじゃないわよね。カレーが好きだって言ってるんだから、きっと
 カレーにも詳しいだろうし………
 そうそう別に私の料理をコイツに食べさせてあげたいとか思ってるんじゃな
 いの。お腹減ってるみたいだし、昼に水でお腹減ってるのを誤魔化してるら
 しいし………………そう、ボランティアよボランンティア。餓えている学生
 に食べ物を提供してるだけなのよ。ただ、それが私の手料理ってだけで……
 って別に問題ないわよね?問題は………………ないわね、そうに決まってる。
 クラスメートなのよ、食事を奢るなんて大したことじゃないわよね。それが
 たまたま私の手料理ってだけで何の問題もないわ。
 お父様に食べてもらうカレーの練習なんだから、ちゃんと評価してくれる人
 が欲しいのよ。家の人間じゃないほうが都合がいいのよね。そう、全部都合
 がいいのよ。コイツはお腹が減ってるんだし、私は私の料理を正しく評価し
 てくれる人間が欲しいの。それだけなのよ。
 だいたいお父様がカレーが好きだっていうのも、コイツの占いからなんだし
 責任取ってもらわないと……………って、そうそう責任よ責任。責任は大事
 よね、責任は………責任があるからコイツは私のカレーを食べなきゃいけな
 いのよ。それで、できたら美味しいって言ってくれたら………って違うでし
 ょ何考えてるよ私………………)
272カレー曜日:04/01/03 04:44 ID:8wdxbmRp
 という内容が先程から延々と頭の中をループしていた。
 本人が自覚しないうちに頬が赤く染まる。幸いと言うべきか、夕焼けの中で
 それに気付くものはいなかった。


 沢近がようやく、と言っても本人は少しの間のつもりだったが、考え(?)を
 まとめ播磨に話し掛けようとした所で、異変に気付いた。

「ちょ、ちょっとっ、何泣いてるのよ」
 沢近が思わず狼狽した声を上げる。
 播磨は涙を流していた。その上何故か髪が前衛的なオブジェのような奇怪な形になっている。
 その上、沢近は気付いてしまった。
 今や50人に迫る、もしかすると既に越えているかも知れない人々の視線が沢近と播磨に向けられていた。
「ちょっと、播磨!ヒゲ!」
「ん、おう」
 近付いて、軽く胸を叩いてやっと播磨は沢近に気付いた。すぐに野次馬にも気付く。
「一体どうなってるのよ、コレ」
「俺が知るか」
 実際播磨にもわからなかった、何故いつの間にか増えてるんだと思うばかりである。
 無論、髪を掻き毟ったり、男泣きに泣いてる間に増えたのだが………
273カレー曜日:04/01/03 04:46 ID:8wdxbmRp
「とにかく、ココを離れましょ。これじゃ話もできやしない」
「おい待てよ、俺はメシを食いに来たんだよ。なんでお前にそこまでして付き合わなくちゃならねえんだ」
「あの数の野次馬引っ付けて店に入る気?」
「ぐっ……」
 まさか全員は付いて来ないだろうが、下手をすると何人かは一緒に店に入って
 くるかもしれない。普段世話になっているソコイチ(チェーン店)に迷惑は掛けたくなかった。
「ちっ、しょうがねえな。付き合ってやるよ」
「そうそう、付き合ってくれるならついでに食事も奢るわよ」
 ホントはそれがメインだけど、という科白は口に出さない。
「ヤケに気前がいいじゃねえか」
「たまにはね」
 そう言って誤魔化し、播磨の手を取って野次馬の一角へ向かう。
「お、おい」
 後ろから何か言ってくる播磨を無視し、沢近は、ギラッ、という擬音表現が
 ピッタリな眼光を野次馬たちに叩き付けた。たちまち人の波が割れ、できた
 スペースを通って沢近と播磨は野次馬の人垣を突破した。
274カレー曜日:04/01/03 04:47 ID:8wdxbmRp
(うお)
 黒塗りの高級車が繁華街を出て少し歩いた所に止まっていた。
 最初に二人に声を掛けてきたのはその車に乗っていた男だった。正確には沢近にだが、
「お嬢様」
「中村、どうしたの?」
「どうしたではありません、お帰りが遅くなっていたのでお迎えに参ったのです」
「え?だって今………アレ?」
 播磨の手を掴んでいるのと反対の腕にしていた腕時計を見て、沢近が不思議そうな声を上げる。
「え?なんでこんな時間なの?」
「お嬢様、それはこちらがお聞きしたいことなのですが」
「えっと、特に何かしてたわけじゃないんだけど……」
「そうですか。この中村、お嬢様の身に何かあったらと思うと………」
「………ごめんなさい」
「いえ、ご無事で何よりです。そちらの方は?」
 中村が播磨のことを聞いてくる。
「えっと、クラスメートの播磨君」
 沢近が播磨に向き直る。
「こっちは中村、うちの執事なの」
 中村が播磨に頭を下げて一礼する。慌てて播磨も頭を下げた。

「それで播磨君………時間ある?」
「今日はもう暇だな、用もないし」
 播磨がそう言った途端、沢近の顔が華やいだ。
「よし。それじゃ車に乗って」
「?………なんでだ?」
「夕食を奢るって言ったじゃない。家に招待するわ」
275カレー曜日:04/01/03 04:48 ID:8wdxbmRp
(そうだった、そうだった)
 あの後ワケもわからず車に押し込まれ―車に乗り込む時に沢近が播磨の手を
 掴んだままだったことにやっと気付いて一悶着あったが―こうして今、播磨は料理ができるのを待っているのだが、
(なんか変なこと言ってたよな。私が作るとか、海老カレーは好きかとか、毒見役とか………)
 海老カレーはともかくとして他はなんか不吉だ。慌てて問い質したが

「言葉のアヤってやつよ。ほら日本語って難しいし」

 と言われて誤魔化された。よく考えると追求していたほうがよかったかもしれない。
(まあ、いいか。何だろうが食えるもんが出りゃ文句はねえ)


 それから更に、ずいぶんと待たされて沢近が持ってきた料理はカレーだった。
 腹が減っていて料理しか目に入ってなかった播磨は気付かなかったが、沢近は播磨が食べるのを嬉しそうにずっと見ていた。
276カレー曜日:04/01/03 04:50 ID:8wdxbmRp
 余談になるが、
 食後、沢近の「味はどうだった?」の質問に、カレーにこだわりのある播磨が
 正直に答えたため食堂の雰囲気は一変したがそれはまた別のお話。

 その一部として
 「何よ、ヒゲのくせにっ!」
 「テメェ、このヒゲを馬鹿にするんじゃねえ!」
 という会話があったことを此処に記しておく。




洋楽に詳しくないのでタイトルは適当に付けてみました。
感想など聞かせて戴ければ幸いです。
いいですな。野次馬などの状況描写とその要因にも嘘がなく、またきちんと
原作を踏まえたキャラの心理の動きも秀逸だと思います。
変に二人がベタベタする展開じゃないのがいいですね。この二人は、これぐらい
の距離感でいる方が一番萌えるかもしれません。
キタ━━━━━━━━━━━━┌(_Д_┌ )┐━━━━━━━━━━━━!!!
いいですね、こういうほのぼのした話。
>>277にもありますが、踏み込みすぎずなのがまた良き哉。
280As it happens.:04/01/03 10:47 ID:dJOH9m14
「まったく、なんでよりにもよってアンタとなのかしら……」
「……」
 こっちのセリフだ、とは言えずに、背後の突き刺さる視線から逃げるようにして
ずんずんと足を速める播磨。
(ま、ちゃっちゃと終わらせちまえばいいんだけどな)
 そう考えて少し気を取り直す。
 ことの起こりは、と言えばそうたいしたことでもない。

 日直
 播磨拳児
 沢近愛理

 そう黒板に書かれていただけのことである。
 そんなわけで、授業に使うプリントとやらを取りに来た二人だったのだが、
『……張り切り過ぎじゃないの、これ』
 実物を見た時の沢近の第一声である。
 ダンボール三箱。
 学期内に配るべき分をすべて一度に、と言わんばかりの量に呆れ顔の沢近だったが、
播磨はひょいひょいとそれを抱え上げてさっさと出て行ってしまう。
「あ、ちょっ、待ちなさいよ!」
 それに慌てて追いすがる沢近、というところで話は冒頭へと戻る。
(でもこういう時ってやっぱり手伝うものよね)
 口では不平をこぼしつつもそんなことを考えている沢近。
(だいたい二人いるんだから二人で仕事するのが当然よね。確かに肉体労働なんて
あの馬鹿に任せておけばいいけど、常識的には、ね。よし)
 そこまで考えてから声をかけようとしたのだが、早足の播磨はとうに遙か前方を歩いている。
「あーもうっ!待ちなさいよっ!」
 対する播磨はまた後ろから聞こえてきた声を、どうせロクでもないことだろ、と聞き流して
いたが、それが自分を呼び止める内容であることに気がついて振り向く。
 その瞬間。
「「っ!?」」
 やたらと早足の播磨に追いつくために駆けてきた沢近。
 その早足を急に止めた播磨。
 車は急に止まれない。
 お約束のように二人はぶつかった。
281As it happens.:04/01/03 10:48 ID:dJOH9m14
「つっ……おい、大丈夫か?」
「あ……うん……」
 答えてから自分の状況に気がつく沢近。
 体当たりをした自分。
 荷物のせいでバランスを崩した播磨。
 結果としてあるのは、床に倒れ込んだ播磨の胸に飛び込むような形になっている自分の身体。
 そして。
「あ――」
 倒れた時に外れたのか、目の前にはサングラスをかけていない播磨の素顔があった。
「……」
「……」
 何故か見つめ合う二人。
「……あー、なんつーかどいてくれると嬉しいんだけどよ」
 よく分からない沈黙を打ち破ったのは播磨だった。
「ご、ごめんなさい……」
 その声に我に返ったのか、珍しくしおらしい声で身体をどける沢近。気を取り直して周囲を
見れば、幸か不幸か物音に気づいた数人の生徒がいるだけで、荷物の方もしっかりと封がして
あったために箱が転がっているのみ。
 とりあえずはなんでもない、という顔をして笑顔を振りまきつつ、ダンボールを一箇所に
集め始める。 

「……で、何だったんだ?結局」
 転がったダンボールも集め終わり、サングラスをかけ直した播磨が尋ねる。
「ん……一人に仕事させるのもなんだしね、私も手伝おうかな、って……」
 お前が?、と眉をひそめる播磨。
「別に構わねェよ、これくらい。だいたいお嬢様がやるような……」
「……お嬢様?」
 その言葉にカチンとくる沢近。
「いい?私はね、そういう特別扱いが大嫌いなの」
「そ、そうか」
 低く押し殺したような声に、逆に恐怖を覚える播磨。
「分かった?なら貸しなさい」
 多くは語らない、その雰囲気に呑まれそうになるのを、なけなしのプライドにかけて
押し返そうとしたが、
「い・い・か・ら!」
「お、おう……」
 居直り強盗か何かのようなその剣幕に押されて、結局承諾してしまう播磨。
「……じゃあコイツ、頼むぜ」
「ええ、分かったわ」
 妙に嬉しそうな沢近に疑わしげな視線の播磨だったが、いつまでもそうしている
わけにもいかず、とりあえずまたダンボールを抱えて歩き出す。
282As it happens.:04/01/03 10:50 ID:dJOH9m14
 が。
「おい、重いんじゃねェのか、やっぱり」
 振り返りつつ尋ねる播磨。一応さり気なく一番軽い箱を渡したが、やはりその目からは沢近
の姿は危なっかしく見えてしょうがない。
「大丈夫よ、このくらい」
「……ならいいけどよ」
 心なしかふらついているその足取りには気がつかないふりをして答えつつも、いざという
時のために歩調をゆるめる播磨。
 一方沢近は、
(……よくこんなの三つも持てるわね。こういう時男の子って便利よね……)
 などと思いつつ、いつのまにか播磨が隣を歩いているのに気がついて、その様子を
そっとのぞき見る。
 サングラスにヒゲの不良男。
 何故かその姿が不思議と頼もしく見えてしまって、慌てて視線をそらす。
「アンタさ、そのサングラス外してみたりしないの?」
 あくまで播磨の方ではなく正面を見つつ尋ねる沢近。
「……?なんでだ」
「別に。なんとなくよ、なんとなく」
 ワケありでな、とそれだけを答える播磨。本当のことなど口が裂けても言えないし、言ったら
最後どうなることか想像もつかない。
 ふうん、と返しながら、どういうわけか頬が熱くなっているのに気がついて、足を速める沢近。
(どうしてかしら、やっぱりコイツといると調子狂うわ……)
 そんな原因不明の動悸も落ち着いた頃に、ようやく教室に到着する。
「っしょ、と」
 ダンボールを持ち直し、ドアに手をかけた沢近の動きが一瞬止まる。
 それを開けてしまえば。
(この馬鹿と二人で話すこともそうそうないのよね……)
 そんな他愛のないことが、どこか名残惜しく感じられたりもして――――
「……馬鹿みたい」
「あん?なんか言ったか?」
 なんでもないわよ、沢近はそう答えて教室のドアを開けた。
283As it happens.:04/01/03 10:50 ID:dJOH9m14
ベタベタのお約束。
たまにはこういうのも、ということで……
>>283
(・∀・)イイ!
最近、旗派が盛り返してきたなー。いいことだ。
    ∧_∧        ∧_∧        ∧_∧       ∧_∧ 
   ( ・∀・)/ヽ    ( ・∀・)/ヽ    ( ・∀・)/ヽ    ( ・∀・)/ヽ
    ノ つつ ● )     ノ つつ ● )     ノ つつ ● )     ノ つつ ● )
  ⊂、 ノ   \ノ   ⊂、 ノ   \ノ   ⊂、 ノ   \ノ   ⊂、 ノ   \ノ
    し'          し'           し'          し'
>>283
せっかく播磨の素顔を見た割に反応が薄いね。
そこでなんかあると面白いのにな。
まあ、なにはともあれGJ!!
>277
続編として、播磨がお礼をする話なんてあったらいいな〜
>>287
あえてあの場面で何も喋らせずただ黙って見つめ合わせたのが良い。
そこに読者の妄想が生まれるのだ。
妄想に勝る描写はない。
何でもかんでも過剰な反応させりゃ良いってもんじゃないと俺は思うぞ。
290283とか誤字とかの人:04/01/03 17:56 ID:dJOH9m14
どこまで書いちゃうか、というのは難しいですね、やはり。
受け取り方も人それぞれなので、その辺の匙加減も要研究かな、とか。
……まあ、実を言えば一番気にしてたのは、コンドハゴジナイヨネ、ということだったりしますが。

にしても、クリスマス前のペースが異常だったせいか、ちょっぴり寂しい今日この頃です。
>>290
あの時が異常なんだろう。一日に数作品なんて尋常ではない
職人も、ネタをなんとなくもっていて、流れに乗ったり、作品を見て書きたくなったり・・・そんな感じかと
それに世間では正月なので、ネットにつながらない人もいたりするし
ここの熱気に当てられSSなるものを書き始めた素人物書きですが
あげるべきか否か…
まだ完成もしていない上にやたらと長くなりそうなので
筆を置こうかと考えています。
しかも、表示される文字数とかがよく分からないので
どこで改行すべきかも分からない始末…
そんな自分は無所属派、どうすべきでしょう。
293名無しさんの次レスにご期待下さい:04/01/03 19:31 ID:wq+l/YJO
>>292
キボン!!
>>292
自分のサイトに上げるときもそうですが、読む人の目線の動きを考えましょう。
横長は嫌われます。
メールの作法とかでも習うことがありますが、基本的に原稿用紙と同じ、1行40文字
か、それ以下(〜36文字)で改行するのが普通です。

それと、完成する前から色々言っていると雑念が入ってしまうので、自己評価その他
は書きあがってからするのがよいでしょう。
295293:04/01/03 19:33 ID:wq+l/YJO
スマソ
下げ忘れ

>>293
分校のSS見て参考にすればいいんじゃないかな?
>>292
筆を置くって書くの止めるってこと?
せっかく書いたんなら、あげるべきだと思う。
でも、未完成より完成品のほうがいいのは言うまでもないけど。

改行とかは、今までの諸先輩方のを見れば大体分かるっしょ。
このスレッドって、ラノベ板よりもSSが充実してるよね。
創作意欲が凄すぎる!
298290:04/01/03 19:47 ID:dJOH9m14
>>291
そうですね。やはりまったりしているくらいが普通です。
>>292
自分もここへの投下は同じような理由で始めたクチなので、
書いたのならあげてみれ、かな。
改行は不自然にならない程度にアバウトでいいんじゃないかと(あてにならない経験談
299元209:04/01/03 20:25 ID:cxZ5aJgf
>>292
とりあえず書きましょう。文章なんていうものは9割方約束事と
経験の蓄積で書くものです。悩むのは書き上げてからでも十分です。
後SS書き限定の心構えとして転んでも、じゃなくて叩かれても泣かない。

がんばってー。
300292:04/01/03 20:44 ID:X0/pUfq0
みなさんの暖かい声援(?)に勇気づけられました。
書き上がった暁には必ずやこの板にあげようと思います。

と、頑張れば頑張るほど長くなるMySS…

そして今日も夜勤。
嗚呼、時間が欲しい(´・ω・`)
301276:04/01/03 22:02 ID:8wdxbmRp
感想をくださった皆さん、ありがとうございます
お姉さん待望派なのでお姉さんSSも書きたいんですが
如何せん登場回数が少ないせいでどうにも情報不足です
今は八雲のSSを書いてます


お姉さんカムバッ〜〜ク!
302単行本派:04/01/03 23:04 ID:R6dI5Y6N
※注意
今から奈良SSを初投下します。(←初なのに奈良かよ!)
沢近や八雲はおろか美琴すら登場しない萌えなさぶりなので、
奈良に関心のない方は以下8レスほど読み飛ばして頂ければ幸いです。

《投下》
303塚本退屈男 1/7:04/01/03 23:05 ID:R6dI5Y6N
2−Cの教室には、数学の時間前に人が密集する区画がある。
教室の中央より少し廊下寄り。そう、そこは確かクラス委員である花井春樹の席。
そこには「宿題の答えを写させてもらうためだけに集まる」男子数名と、
「答えそのものを見ないと解き方の見当がつかない」塚本天満がたいていいた。
そして今日もいる。
 「いつもごめんねー。私ってどうも要領が悪いみたいで」
 「なあに、努力を放棄しないのは立派な事だ。周りの写すだけの男子共と違ってな」
 こんな関係がいつのまにか出来上がっていたのは、
男子とも気軽に話のできる天満だからこそなのか、それとも
天満に義姉になるかもしれない女性として特別優しく接している花井だからこそなのか。
 まあたぶん両方。女友達が「自分でやれ」って放置しすぎたのも原因なんだろうけど。
 「しかし、何故教科書の問題でここまで苦戦するんだ?」
 「うーん。だって難しくない? 最近の数学。
ほら、この式なんてaとcの実数を求めるのに何行も計算しなくちゃいけないし」
 「まあ、難しくないわけではないんだろうが、高校生なら解ける問題だろう?」
 この程度の公式を当てはめていくだけの問題を「難しい」と言われることが
うまく理解できない秀才型の花井。
 「うぅ、ひょっとしてまた私中学生扱いされてる? 『高校生なら』って」
 天満の髪の束ねた部分が感情の変化によってへなへなと形を変える。原理は不明だ。
 「悪い悪い。そういうつもりじゃなかった。なんとなく妹の八雲くんなら
すらすらと解いてしまうんじゃないかってイメージがあったもんでな」
 図星である。
この前天満がどうにもならなかった問題をこたつの上に置きっぱなしにしてしまった時、
翌日の朝見ると八雲の字で解法が書き添えられていた。親切心ゆえの行動なのだろうが、
自分の妹にこういうことをされると姉の立場としては心理的ダメージが非常に大きい。
304塚本退屈男 2/7:04/01/03 23:07 ID:R6dI5Y6N
話題を変えるために天満は花井に訊いてみた。
 「で、いつも一方的にお世話になっちゃってるのもなんだから、
反対に何か私にできることってない?」
 「そうだな…… 普段は善意に見返りなど求めるつもりはないんだが、
今日はその言葉に甘えさせてもらおうか。
君なら知っているであろう知識を少々僕にも分けてくれないか?」
 「ほぇ?」
 天満は驚いた。花井が天満に教わる科目などあるはずはない。レベルが違いすぎる。
 
 「八雲くんの趣味を教えてくれないか? 共通の趣味があれば話も…… ゴホン」
 
 ……そういうことか。八雲に男子のファンが多いのは天満も知っていたが、
これほど正直に姉である天満にこういうことを聞けるのは花井くらいのものである。
 周囲でノートを丸写ししていた男子たちも話の流れに興味津々のようだ。
このクラスでは確か前に男子の半数以上が、花井を中心に
八雲の話で盛り上がっていた事があったことを天満は思い出した。
ひょっとすると私設ファンクラブでもあるのだろうか?
 「えーと、そういうのはプライベートなことも含まれるわけだし」
 「話せる範囲でいいから頼む。断られたらショックで宿題もできなくなりそうだ」
 脅し方がなんだか子供っぽすぎるぞ、花井。
 「まあ、共通の話題を持ってる人のほうが八雲も話しやすいだろうから、いいよ!」
 「おお、教えてくれるのか! ありがたい」
305塚本退屈男 3/7:04/01/03 23:07 ID:R6dI5Y6N
「じゃあ用意したいものがあるから明日の放課後、いける? 
できればビデオの使える視聴覚室を確保しておいて欲しいんだけど」
 「お安い御用だ。無理だった場合は同じくビデオのある社会化準備室を借りておこう。 
しかし、視聴覚室なんて借りて何のビデオを見せてくれるつもりなんだ?」
 「へへへー。それは当日のお楽しみだよっ!」
 そこへ周囲の男子たちがそれぞれに花井に詰め寄る。
 「春樹ー、俺たちも参加していいんだよな?」
 「それは塚本に聞いてくれ」
 「もちろんだよ。来るもの拒まず!」
 歓喜の声があがる。漏れ聞こえる声を拾った限り、八雲に話し掛けても
会話にならなかった経験を持つ生徒も何人かいるようだ。
天満は妹のそんな引っ込み思案なところが昔から心配でたまらない。 

 「さーて、そうと決まれば明日に備えて準備しとかないとね! うん!」
 そして始業のチャイムが鳴る。
 花井のノートを写し終え満足した表情の面々はそれぞれ自分の席へと散っていった。
306塚本退屈男 4/7:04/01/03 23:08 ID:R6dI5Y6N
奈良健太郎は数学のノートをぼんやりと眺めながら、
先程聞こえてきた花井と天満のやりとりを反芻していた。
 (つまり、明日の放課後に視聴覚室に行くと塚本が色々な話をしてくれる?)
 間違ってはいないが、少々歪曲のかかった認識ではある。
 しかも妹について教えるということは、言い換えれば今まで同様に謎の多かった
家庭内の姉(天満)の様子を知る数少ない機会なのではと奈良の中で思考が固まってゆく。
 「チャンス…… なんだよな。うん」
 すでに教師もとっくに来ていて授業中である事も忘れてつい口から漏れる言葉。
そして案の上注意されて黒板の問題を解かされた奈良。
 が、そんな悪い意味で目立っていた奈良を、天満は見てもいなかった。
天満にとって常に気になっているのは背後の烏丸だけなのである。不憫な。

 なお、播磨は数学などどうでもよいので前の時間からずっと自分の席で寝ていた。
こんな『天満ちゃんによる特別授業』があると知っていれば
あらゆる障害を排除してでも参加したであろうに、当日も何も知らぬままに
隣町の画材屋に寄ったあと動物園のバイトへ向かっている。つくづく運のない男である。
307塚本退屈男 5/7:04/01/03 23:09 ID:R6dI5Y6N
そして翌日の放課後。
 どこから話が広がったのか学年の違う男子までもが視聴覚室の前へ集まっている。
その中にはごく少数ではあるが女生徒の姿も。ただしもちろん八雲本人はいない。
 そんな中を、奈良は浮いた存在であることを自覚しながら歩き回る。 
(塚本さん、まだ来てないのかな? 播磨くんもいそうに思ったけどいないし……)
 「あれ? 奈良くん。奈良くんも八雲の事が気になる人の一人?」
 いきなりの天満の登場。今までどこにいたのか、鞄のほかに
大きなスポーツバッグを抱えて入り口前でふらふらしている。奈良は動揺した。
 「違…… いや、うん。塚本の妹って奇麗だなーって思って。ちょっとした興味で」
 「そうなんだ。それじゃ、楽しみにしててね!」
 満面の笑みをたたえて視聴覚室に入っていく天満。奈良が楽しみにしているのは
天満の話を聞くことであって八雲の趣味を知りたいわけではないのだが、鈍さにおいて
他の追随を許さない天満にそんな意図があの程度の素振りで伝わるはずもない。

 「お、ようやく来てくれたか塚本。大盛況のようだな。さっそく始められるか?」
 「あ、花井くん。もう着席してくれてる人もいるのに悪いんだけど、
もうちょっと待ってー。着替え終わったらすぐ始めるから」
 押しが弱いせいか中央列に座っていた奈良だが、その言葉だけははっきり聞こえた。
(あの大きなバッグの中身は着替え? だったら妹さんの趣味って着ぐるみか何か?)
 かなり違うがある意味惜しい。その予想は、たった一分後に覆される。
308塚本退屈男 6/7:04/01/03 23:10 ID:R6dI5Y6N
「お待たせー」
 機材室から出てきたのは、二刀を手挟んだ着流し姿の天満であった。
視聴覚教室内は一気にざわついた。塚本八雲の趣味とその格好がどう関係するんだ? 
そしてなにより、どうやったらたった一分で制服から侍装束に着替えられるんだ? 
 「えっと、誰かこれがわかる人はいるかな? ヒントは『三つみんなの人気者』ね」
 左手に持っていた小道具の般若面を指でくるくると回しながら質問する天満。
 その問いにまっさきに答えられたのは、なんと奈良健太郎であった。
 「……それ、もしかして『桃花楼侍』?」
 「うわ、すごーい奈良くん。わかってくれたんだ! 
八雲も時代劇見るの大好きだからきっと喜ぶよ!」
 そして奈良に視線が注がれるのとほぼ同時に場内のあらゆる席から驚きの声があがる。
 「八雲ちゃん、時代劇が好きなの? さすが渋好みだねー」
 「そっかー。だったら俺もこれからは『水戸訪問』や『暴れん坊暴君』見ようかなー」
 
 「本当なのか? 塚本。八雲くんの趣味が時代劇鑑賞だというのは」
 詰め寄ろうとしてから落ち着きを取り戻し、挙手してから発言する花井。
 「もっちろん! 毎週私と一緒にいろんな時代劇を欠かさず見てるんだから!」
 嘘、ではないかもしれない。確かに八雲は毎週天満と一緒に時代劇をよく見ている。
だが、それは天満が時代劇が好きだから八雲も一緒に見ているだけであって…… うーん。
何故か天満の脳内では「八雲は時代劇が好き」ということになってしまっているようだ。
 
 (塚本も一緒に時代劇見てるんだ…… なんか話が合いそうで嬉しいな)
 奈良は八雲には関心がないので天満に誉めて貰えただけで幸せらしい。
 そういう役回りとはいえなんとも場違いな奴である。
309塚本退屈男 7/7:04/01/03 23:11 ID:R6dI5Y6N
 そして勘違いを正す人間もいないまま天満の時代劇講座が始まった。
「あんまり深刻な復讐劇とかになっちゃう『滅殺仕掛人』みたいな作品は
好きじゃないみたい。コメディタッチの『献花屋右近』とか
『御家人残苦労』なんかだと安心して見られるって言ってたから」
 これ、おじいちゃん子の奈良にとってはどうということのない作品知識だが、
他の男子生徒には少々難解な話題だったらしい。
熱心にメモを取っている花井は別にして大半は戸惑ったような顔をしている。
 「塚本のお姉さーん。俺、『剣客生涯』だけは見てるんだけど、あれはどうなの?」
 後方の席から質問が飛ぶ。
 「えーと、面白いんだけど出演者が替わるごとに同じ話をするのが残念って言ってた」
 熱心に見ているはずの天満は八雲にそのことを指摘されるまで気付かなかったらしい。
 「でね、話を元に戻すけど、いま一番気に入ってるのが木曜の夜にやってる
『続・三匹が斬られる!』。主役の万石がすっごく格好いいの。ほんと大好き!」
 視聴覚室が再度大きくざわめく。
ノリノリの天満はもはや完全に自分の趣味で語ってしまっているのだが、
聴衆である八雲ファンはこの「大好き」を八雲の好みとして誤認してしまっている。
 果てしない誤解が生まれていることに誰も気付かないまま、天満はビデオを取り出した。
 「それじゃあ、これからその無印の『三匹が斬られる!』第一回を上映しちゃいまーす」
 そう言って機材室に戻る天満。視聴覚室の照明が消え、正面のスクリーンに光が灯った。

 「うむ、実に有意義な講義だった。しかし奈良、お前時代劇に詳しいのか?」
 天満の特別講座終了後、奈良は妙にハイテンションな花井に絡まれていた。
 「そうかな? 今見てるのは『続・三匹が斬られる』と『子連れ女将』だけだけど」
 「それだけ見てれば充分詳しいって言えるんじゃないか? 今度色々教えてくれ」
 「あ、うん」
 そうして奈良はささやかな幸せを胸に帰路へついた。
 ……天満とは二言しか話せてないわけだが。いいのかそれで! 
【終】
310単行本派:04/01/03 23:13 ID:R6dI5Y6N
《あとがき》
「やっぱり『桃太郎侍』といえば衣装の早替わりだよな! 殺陣の途中にやったりするし」
なんて言ってくれる時代劇大好き住人はいるのかな? いないだろうけど。
とりあえずニブチン天満と可哀想な奈良を書くつもりが花井が絡みすぎたのが誤算です。
『塚本には退屈な男』のタイトル通りじゃないか奈良よ……。

しかし、脳内設定全開で書いてはみたものの、次の日から八雲はどうなるんだ?
……長々と駄文失礼致しました。
八雲は
1巻の塚本家お泊りの話で、隣の部屋で待機してた時に時代劇を見ていたから
八雲も時代劇好きでよろしいのでは?と無粋な突っ込み
>310
一回一回メル欄まで変えて・・・凝ってるなぁ。
ちなみに、俺は時代劇好きな住人だ。
俺は万石よか殿とかイカのが好きだなぁ
後、天満紹介の時、「私と一緒に時代劇見ます」と言ってたよね、八雲
でも、話が通ってるから良作品(≧∀≦)
時代劇はまったくわからないのでノータッチで逝きます。

花井なら八雲の趣味は本人に直接訊くはず。
花井はあまり婉曲表現を使わない。
奈良が主役(?)な割には出番が少なすぎ、花井の性格が掴めていない。
自分が書いた話を駄文などと呼ぶべきではない。

批判ばかりでスマヌ。
>>自分が書いた話を駄文などと呼ぶべきではない

俺もそう思う。謙遜してるんだろうけど、
そんなこといわれるとなんとなく後味悪く感じてしまう。
って俺は読んでないんだけどね…奈良が苦手で…スマソ
>314
そーか?俺は特別おかしいとはおもわなんだが。
何にしても『性格が掴めていない』と断言するのはどうかと思うぞ。
「花井が天満に八雲の事を聞く」エピソードが100%ありえないとも言い切れまい?

>自分が書いた話を駄文などと呼ぶべきではない。

これは同意。謙虚なのは美徳だが、これは卑屈すぎます。
317Dear friends:04/01/04 01:31 ID:OjLQObFY
「こんにちは」
「あ、部長」
 しー、と指を口に当てるサラ。その仕草だけで状況を理解した晶が視線を奥へと
向けると、案の定テーブルに突っ伏すような姿勢で眠りに落ちている八雲がいた。
 所は茶道部の部室、開けた窓からは穏やかな春の風が吹いてカーテンを揺らしている。
「またお昼寝?」
「はい、ついさっきまでは起きてたんですけど」
 そう言って苦笑めいたものを浮かべるサラ。
「でもこうしてる時の八雲の顔、いいなあ、って思うんです」
 今度は柔らかく微笑む。
「どう言えばいいんでしょう……カドが取れてる、と言うか……」
 険のない?、という晶の言葉にそれです、と頷く。
「八雲ってキレイだけど余所行きの雰囲気がどこかあるんですよね。でもそれが
こうしてると」
 見ているこっちが優しい気持ちになれますから、と結ぶサラ。
「そうかもしれないね……」
 答える晶の表情にも穏やかな笑み。もっとも、こちらは慣れないと見分けられないもの
だったりもするのだが。
「最近は私の前でもこういう顔、見せてくれるようになってきたんですよ」
「それは塚本さんがあなたの事を友達だと思っている証拠だよ」
 そうだったら嬉しいです、と今度は照れたような表情。
「それに私以外の人の前でも。やっぱりあれがきっかけなのかな」
「……播磨君?」
 あれ、という言葉に晶が連想したのはとあるクラスメイトの姿だった。そうです、と答えて
から言葉を続けるサラ。
「八雲は下心……とまでは言わないですけど、そういうのに敏感だから。それが播磨さんは
ストレート――じゃないかな、そう、素直に接してくれる人ですから」
318Dear friends:04/01/04 01:32 ID:OjLQObFY
 だから安心できるのかな、と思案顔をしてから、一転して今度は声をひそめて。
「……部長はどう思います?」
「どうだろう。やっぱり塚本さんに訊かないと分からないよ、それは」
 そう答えた後で付け加える晶。
「でも播磨君、基本的にいい人だから大丈夫だよ。どうなっても」
「どうなっても、はないですよ」
 それが高野晶流の冗談と分かっていても、一応抗議するサラ。
「塚本さんはどうだか分からないけど、恋をすると変わるのは本当だよ」
 さらりと受け流してそんな事を言う晶。
「そうなんですか?」
「うん、そう」
 私にはまだよく分からないです、そう言った後でなんとなく尋ねてみる。
「高野先輩の経験談?」
「さあ、どうだろう」
 あえて部長、と呼ばずに訊いてみたその問も、あなたにも分かる時が来るよ、とやはりさらりと受け流す晶。
「ふふ……」
 その様子がなんとも晶らしくて思わず笑みがこぼれるサラ。
 と。
「――――ん」
「あ、おはよう、八雲」
 目をしばたたかせて身を起こす八雲。つい先ほどまでその頭上で交わされていた会話の
内容は、もちろん知るよしもない。
「お茶入れようか」
「え……あ……うん」
 どこかまだ寝ぼけ眼の八雲に、ちょっと待っててね、と紅茶を入れに立つサラ。
 その様子を微笑みつつ見つめる晶。
 うららかな春の午後、茶道部の部室には穏やかな時間が流れる。
319Dear friends:04/01/04 01:36 ID:OjLQObFY
晶とサラ、脇でありつついい味出してる二人。
活躍、と言ったら変ですが、軸に据えてみたら、というそんな話。
キャラの性格とかは、明らかに反していない限りSS書きさんの自由のように思う。

脳内設定ってのは、個人個人で違うものなわけだし、
このキャラはこんな行動はしない!
ってのは批判にならないよ。
いや、確かに気にするしないは本人の自由だけど、
そう感じている人もいるって事は知った方がいいと思う。
キャラが暴走し出すと途端につまらなくなるしね
>>317
(・∀・)イイヨイイヨー

なんつーか、まさにSSって感じ。
>>320
明らかに反してるかの判断も個人個人で違うという罠
>>317
GJ!やっぱりサラはいいですね
>>324
とりあえず>>303氏のSSは明らかに反してはいないと思う。
俺は何の抵抗も無く読めたし。
逆に>>314の言う「花井」の方が型に当てはめすぎかと。

>>駄文
作者は腰を低くした姿勢を見せたかっただけなのだから、そんなにみんなでとやかく言わなくても…。
327WITH HONORS 〜きっと忘れない〜:04/01/04 02:46 ID:A+XimOBG

放課後にも関わらず、教室には佇む男が一人。

窓際の席に座る彼の意識は、窓の向こう、青空の彼方にあった。


流れる雲、傾いていく太陽―――なんて世界は途方も無い


この壮大な景色に比べれば、自分の悩みなどちっぽけに思えた。

そう、彼―――――播磨拳児は悩んでいた。
328WITH HONORS 〜きっと忘れない〜:04/01/04 02:47 ID:A+XimOBG


高校二年になってからの事を回顧してみる―――――


失恋したと思い込み、グレてお姉さんのヒモとなった事、

天満と間違えて沢近(下の名は知らない)に告白してしまった事、

再度告白しようとしてラブレターを渡すはずが、退学届けを渡してしまった事―――――


…思い出せば出すほど、自分が滑稽に思えてくる。


天満と一緒に旅行に行くも、生粋の鈍感さを発揮した天満には想い通じ無かった事、

よく分からんうちに天満に「サイテー!」と言われた事、

さらに天満と一緒に旅行に(ついて)行くも、後(自分的には)一歩で沢近に邪魔をされた事―――


―――――こういったことが日常となりつつある事

329WITH HONORS 〜きっと忘れない〜:04/01/04 02:48 ID:A+XimOBG


…このままルーチンワークのごとく日常を過ごして良いのだろうか。

否。 それは断じて否だ。 日常は安らぎをくれるが、現状を変えてはくれない。


「…播磨君? もう放課後だよ?」


このまま日常を享受するのはさぞかし楽だろう。 だがしかし、それは止まっているのと同義だ。

俺は進まなくてはいけない。 そう、あの人(お姉さん)と約束した―――――


「お〜い、もしもし。 やっほ〜」


故に俺は―――――


「―――グダグダ考えても仕方無え、 明日、告白するぞ!!」

「へ? ……えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


隣の女の子(天満に非ず)の叫び声を完璧に無視して、播磨拳児は―――――決意した。

よく晴れた、曇り一つ無い青空の日の事だった―――――

330WITH HONORS 〜きっと忘れない〜:04/01/04 02:50 ID:A+XimOBG



翌朝―――――



髭を剃り、サングラスを外し、髪を下ろす。

髭を生やし、サングラスをして、髪を上げて―――別人を装ってきたが、そんなのはもう止めだ。

在りのままの自分を見てもらう。それが相手に対する誠意でもあると思うから。

思えば随分と女々しい奴だと思った。

相手が話を聞いてくれそうに無いのなら、聞いてくれるまで話し続ければ良いだけのことだというのに―――


「―――と、天満ちゃんの友達に伝えてもらう、って手もあったんじゃねぇか…?」


今更ながら気付いた、自分の鈍感さと不器用さに播磨は自嘲の笑みを浮かべた。

その鈍さと不器用さは致命的ではあったが、彼の魅力でもあったのは皮肉だろうか。

331WITH HONORS 〜きっと忘れない〜:04/01/04 02:51 ID:A+XimOBG


いざ、ゆ(行/逝)かん―――――


着飾らぬ程度に小奇麗な格好をして、播磨は決意を胸に、みち(道/途)をゆく。


(今日こそ告る…!)


道行く幾人かの女性が播磨を見、振り返る。

ハッキリとした目、閉じられた口元、それでいて笑みを浮かべているかのような穏やかな表情。

凛とした中に穏やかさが共存した、そんな雰囲気を醸している。

強い意志を持つ人間は非常に魅力的である。何と言っても、雰囲気が違うのだ。

332WITH HONORS 〜きっと忘れない〜:04/01/04 02:55 ID:A+XimOBG


前方に自分の想い人を見付ける。 

心臓は破裂しそうなほどに鳴り、頭は沸騰する―――――かと思っていたが、そうはならなかった。

自分でも驚くほど冷静に、前方の彼女に声を掛けた。


「―――待ってくれ」

「え…?」


俺の本心を知って、君はなんと答えるだろう

君はどう想うだろう 俺はどうなるのだろう


「聞いて欲しい、事があるんだ」


伝えてしまったら、戻れない けれど―――――


「貴女が、好きだ―――」


―――伝えなければ、進めない


振り返った少女は―――――


 fin

##### あとがけ! #####

#35 LIFE IS BEAUTIFUL 見て、「ヤベェ、播磨格好良すぎ…!」と思って書いてしまいました。
違和感あっても見逃してやってくださいw

##########
リアルタイムで見ちゃいました。GJ!!
最後オチあるのかと思ってたら曖昧に、しかし綺麗に終わってると
思いました。
しかしラブコメでこれほどの人気を誇る男性キャラがかつていただ
ろうか。。。
ヤツがグラさんとって髭剃るわけがない。
と思うが、天満にフラれたらそうなるだろうな。
やっぱ播磨かこええな。

オチは、振り返った少女は沢(ry 

沢近には髭播磨がいいなぁ。何となく
>>333
>しかしラブコメでこれほどの人気を誇る男性キャラがかつていただ
>ろうか。。。

魅力のない優柔不断な情けない系主人公が多い中、
「カッコイイ」「強い」「一途」と3拍子揃ってて、男からみても魅力あるからな、播磨は。


あと、奈良はイラネ。

>>336
奈良萌えスレでそれはないだろう(w
338310:04/01/04 13:08 ID:1PmNG55J
OK。無事批判ももらえたので反省カキコ。

>八雲も時代劇好きでよろしいのでは?
姉よりちゃんと見てますし(笑) 好きだけど趣味ではないように思います。

>花井なら八雲の趣味は本人に直接訊くはず。
あれだけ避けられていては訊いてもまともな返答はもらえないだろうと考えました。
>花井はあまり婉曲表現を使わない。
似た顔の友人がいるのでどうしてもそっちに似ちゃうんですよね。
本編ではページ数の都合で簡潔な物言いなんだと勝手に想像。ごめんなさい。
>奈良が主役(?)な割には出番が少なすぎ、花井の性格が掴めていない。
特徴がないせいか出番をうまく用意できませんでした。
恐るべし背景以下の存在感(をい)。花井の性格もまだ掴みきれないようです。
>自分が書いた話を駄文などと呼ぶべきではない。
萌えシチュが期待されてるSSスレに奈良ネタで割り込んだわけですし……。
客観的に見ればそんな扱いかなと。

>あと、奈良はイラネ。
実は同意。でも初投下だけはスレタイに合わせたかったので。次は何書こう。
幽霊少女でGo!
340monologue:04/01/04 21:09 ID:OjLQObFY
 あの日から私は彼女を見つめている。
 ツカモトヤクモ。
 枷をはめられた少女。
 彼女は知っている。この世には純然たる好意など、稀にしか存在しないことを。
 それ故に、彼女は他者と距離を置く。
 好意とその向こう側にあるものを視てしまうがために。
 親しかった者たちと別れて始まる、新しい環境。
 その中で戸惑う姿を見て、私は幾年かぶりに人の前に現れることを決めた。
 為すことはただ一つの問。
 好きか、嫌いか。
 問はずっと変わらない。
 答もずっと変わらない。
 そのはずだった。
 けれど。
 彼女は初めて私にとって予想外の答を返した。
 それが私を揺さぶり、永劫の時をさまよい続ける心を捕らえた。
 己の枷に囚われることなく、否定でも肯定でもなく、ただ在るものとして歩んでいく。
 模範解答ではおそらくない。
 保留に過ぎないと言う者もいるだろう。
 ただ、私は興味を持った。
 それ故に、彼女を見つめている。
 その視線の向こうで彼女は変わっていく。
 新しい友と出会い。
 好意ではなく、親意とでも呼ぶべきものを持つ人と出会い。
 私が出来ないと言った表情を、それと知らず見いだしていく。
 枷を抱えたままで。
 だから最近、ふと思い浮かべてしまうのだ。
 いつか私もこの無限に続く枷を解き放つ日が来るのではないか、と。
 目の前で透き通るように微笑む、この少女のように。
 いつの日か、自分の手で。
>>337
いっそのこと、次から播磨萌えスレに変えようぜ。
>>341
いいね、それ。
俺は播磨がダントツ萌える。
んじゃ次スレはサロンに播磨萌え&SSスレとかで立てる?

まあ、まだまだ先の話だけどさ。
播磨萌えとかかくと婦女子臭がでそうだから、普通に「スクランキャラ萌えSSスレ」みたいな感じで
サロンいけばいいんじゃないの?
スクールランブルの播磨燃えスレッド
に一票。
むしろ
スクールランブルのキャラ萌え燃えスレッド
でお願いしたいところ。
スクールランブルの八雲萌えスレッド
に一票。
漏れはサロンにさえ立てば、スレタイはなんでもいいや。
播磨がラブコメの男主人公なのに人気の理由がわかった!
彼はウルヴァリンキャラなのだ!という訳で播磨の不幸SS希望w
SSがよければスレタイはなんでもいいや。
ここは意表をついてスクールランブルの麻生萌えスレッドに…
テスト
えーどうもアク禁に巻き込まれたみたいなんで、これからあまり書き込めない。(おそらく1ヶ月規制)
串が使えるうちにSSを投下しておきます。

上のほうでも書かれてたけど言いたいことをいってください。
―――夏の残暑が厳しい9月。矢坂高校のある場所は華やいだ少年少女の歓声に包まれていた。
興味を覚えたのか、小動物たちもその周辺に集まっている。
ある場所とは―――プールだった。

矢坂高校ではプールの授業は男女合同らしく、半分を男子、もう半分を女子と言う風に
区切って使っている様だ。
今そこで授業を受けているのは2−C。つまり天満達のクラスだ。
きらめく陽光の中、若い肢体を惜しげもなく晒し無邪気に笑っている。
少女たちを眺めていると、中でも一段と目立つ集団があることにすぐに気が付くことだろう。
天満、美琴、晶そして愛理の4人だ。性格はともかく外観は十二分に秀でている彼女らに
熱い視線を投げかける男子生徒も多くいる。
『天満ちゃん。相変わらずかわいいな。君の魅力の前には9月の太陽も翳って見えるぜ』
ヒゲとグラサンで有名なある男が、顔を緩めながら他の男子生徒と同じ方向を見つめている。
唯一つ、彼が他の生徒と違っていたのは、その視線がただ一人の少女に向けられている事だ。
ただし、その顔にはやはりグラサンが掛かっているのだが。
彼女達はそれぞれ夏休みの思い出話をしていた様だがその中の一人が、ふっと視線を感じ
金髪のツインテールを揺らし振り向くとその視線の先には例のグラサンがいた。
「ちょっと、ひげ!あんたプールの授業をサングラスのまま受けるわけ?」
その台詞に一瞬にして闘争本能剥き出しの顔になり文句をいおうと口を開きかけた瞬間
「あーほんとうだー。播磨君、外さなきゃだめだよっ」
追い討ちを掛けるように非難の声をかけた少女に気付き元の表情に戻る。
その表情の瞬間的な移り変わりを確認できたのはおそらく晶ただ一人だけだろう。
そこへ教師と思われる男性も遠慮しがちに同様なことを言ったので彼は「しょーがねーなー」
とつぶやきグラサンを外す。
先ほどのやり取りから必然的に注目を浴びていた彼が振り向くと今度はプールの反対側から
声にならないざわめきがおきた。
彼は本人が自覚して無いだけでかなりの男前である。なおかつ、その素顔を知る者は
クラスでは天満しかいない。
女子の中で一番の衝撃を受けたのは先ほどの金髪の少女、愛理である。
彼女は紆余曲折の経緯をたどり、播磨が彼女に好意を持っていると思っていたのだ。
そのこと自体は不快に思うことは無く、むしろ快く思っていたのだが…彼女は…播磨の素顔を
見たことが無かったのだ。
『ひげってあんな顔してたの!?ちょっといい男じゃないの!』
今まで意識の下に押し込んでいた感情が愛理の心の奥底からじわじわと浮き上がってくる。
彼女自身はその見かけに関わらず恋愛経験が無く、好きという感情がまだ理解出来ていない。
ただ心の奥に理解不能な「何か」がある事は理解している。
…授業が本格的に始まり、愛理は天満とペアを組むことになった。播磨ペアは省略させて貰う。
二人は教師の指導の通り授業を受けているが、待ち時間と云う物が存在し、なおかつ先程から
妙に播磨を意識している愛理は、時間が出来るたびに播磨の方へちらちらと視線をなげる。
『また…みてる…』
そう。彼女が視線を投げる度に播磨も愛理の方を見つめているのだ。
視線を確認するたびに彼女の心の中の感情が具体的になっていくのを愛理は不思議な気持ちで
受け入れていった。
『これが人を好きになるってことなの?』
『でも…わからない』
―――キーンコーンカーンコーン
授業が終わり、教室に戻る途中で天満が楽しかったねーなどと話し掛けてくるのを、
「ええ、そうね…」と上の空の返事で流していると廊下の先に播磨の姿が見えた。
愛理が相手をしないものだから天満はつまらなそうな顔をして美琴達のほうに歩いていった。
そのとき播磨は授業とはいえ天満のスクール水着を見れて満足そうな笑みを浮かべていた。
「播磨君…ちょっといい?」遠慮がちに愛理が話し掛けると播磨は水泳の授業の恨み
(グラサンの件ね)を思い出したのか再び険しい顔になりぶっきらぼうに言い捨てた。
「ナンデゴザイマショウカ?お嬢様。さっきはよくも要らん事いってくれたな。
それにチョロチョロ動いてせっかくのてんま…いや、なんでもない」
「んで?なんの用?」



…数秒後にはシャイニング・ウィザードを喰らった播磨がそこに倒れていた。

                fin
以上でおわりです
リアルタイムで見させてもらいました・・・GJ。
ってか体育でプールって描写がないのは何故だろう。
>>360
確かに不思議だよね
いつかスレで上がってたと思うけど播磨たちがプールを破壊したからじゃないの?
362帰ってきた292:04/01/05 01:18 ID:Y1Qbxx1c
>353
お疲れさまです。
ちょうどSSが書き終わったところなのでUPしようかと思います。

滅茶苦茶長いし、萌えない可能性が大ですが…
ドキドキするなぁ(*゚∀゚)
363Moody Blues:04/01/05 01:24 ID:Y1Qbxx1c
時は放課後。
 明後日からの連休に思いを馳せて、帰路につく生徒達も活気に満ちあふれていた。
 いつもの四人もご多分に漏れず、下校の途についていた。
「今度の休み、どこ行こっか?」 
 周防美琴は開口一番そう切り出した。
 せっかくの休みだ、道場だけで過ごすのはもったいない。
 この四人なら何をやっても楽しい。今までの付き合いでそれはよく分かっていた。
「私はバイト…」
 その言葉に最初に応対したのは横に並んで歩く高野晶。
 クールビューティーといわれている彼女は、仲間内では既に知れ渡っているが
多くのバイトを掛け持つ多忙な生活を営んでいる。
 その殆どが接客業という事実は、多少なりとも彼女たちを動揺させることには十分だった。
 ということで、当然世間が連休ならば彼女へ仕事が回ってくることも頷ける。
「えー、ザンネン!!」
 美琴の言葉を聞いて二の句もなく賛同しようとしていた塚本天満は
心底残念そうな声を上げた。
 生来引っ込み思案な妹、塚本八雲が部活動(それも晶が部長の茶道部)に参加したことにより
それまで知り合い程度だった八雲の友人、サラ=アディエマスと共に行動する機会も増え
自然と四人+二人の大人数で休日を過ごすことも珍しくなくなっていた。
彼女としては明後日の連休も六人で行くことを想定して、目的地の思案に明け暮れていたところだった。
「そうね。で、今度はどんなバイトなの?」
 優雅な佇まいで沢近愛理は訪ねた。
 自他共に認めるお嬢様である彼女はバイトなどしたこともなく、晶が多種多様なバイトを
こなしている姿に興味を引かれるのだ。
「……宅配、…配達業かな」
 彼女にしては珍しく、口切れが悪い。心なしか雰囲気も硬く感じられる。
 あまり知られたくない仕事なのだろうか?
 愛理はそれ以上詮索することを止めた。
「じゃ、今日はちょっと用事があるから」
 そういうと晶はいつもの下校路からはずれた道――繁華街――へ向かって進行方向を変えた。
 程々にしないと体を壊すわよ、また今度一緒に遊ぼうね、全くバイトばかりで大変だな。
 三者三様の気遣いを受け、別れの挨拶を済ませた彼女は小さな嘆息をついて歩き始めた。
「配達業か…我ながら皮肉な物言いね」
ぽつりと、誰にも聞かれることのない独り言をつぶやきながら……
364Moody Blues:04/01/05 01:25 ID:Y1Qbxx1c

 場所はファミレス。
 ウェイトレスの衣装に身を包んだ晶はフロアに出ることもなく店長室に呼び出された。
「明後日から連休だというのにわざわざ来てもらってすまないね晶君」
 朗らかな笑みを浮かべながら店長――名前も覚えていない中年男――は一枚のチケットと
見慣れた赤い手帳をよこした。
「さっそくだが明日、向こうへ飛んで欲しい、詳しいことは向こうで話すことになっているから」
 これには鉄面皮の晶も表情を変えた。
 普段なら、この場で詳細の記載してある資料が手渡されたり、概略が説明され
自分のメールアドレスに綿密な計画が書きつづられているメールなどが送信されるのが常だったからだ。
 そしてその内容の多くは、ハッキングや情報操作、クラッキングであり自分が現地に直接行くことは
今まで一度もなかった。
 それらの前提故に晶は訝しんだ。
「なに、危険な仕事ではないよ。至極簡単な…そう、パーティーみたいなものだよ。我々の組織のために
身を粉にして働いてくれた晶君に対してのささやかなお礼。日本は明後日から連休なんだ、君ばかりが
働く必要はないよ。存分に楽しんできてくれ」
365Moody Blues:04/01/05 01:25 ID:Y1Qbxx1c

 場所はファミレス。
 ウェイトレスの衣装に身を包んだ晶はフロアに出ることもなく店長室に呼び出された。
「明後日から連休だというのにわざわざ来てもらってすまないね晶君」
 朗らかな笑みを浮かべながら店長――名前も覚えていない中年男――は一枚のチケットと
見慣れた赤い手帳をよこした。
「さっそくだが明日、向こうへ飛んで欲しい、詳しいことは向こうで話すことになっているから」
 これには鉄面皮の晶も表情を変えた。
 普段なら、この場で詳細の記載してある資料が手渡されたり、概略が説明され
自分のメールアドレスに綿密な計画が書きつづられているメールなどが送信されるのが常だったからだ。
 そしてその内容の多くは、ハッキングや情報操作、クラッキングであり自分が現地に直接行くことは
今まで一度もなかった。
 それらの前提故に晶は訝しんだ。
「なに、危険な仕事ではないよ。至極簡単な…そう、パーティーみたいなものだよ。我々の組織のために
身を粉にして働いてくれた晶君に対してのささやかなお礼。日本は明後日から連休なんだ、君ばかりが
働く必要はないよ。存分に楽しんできてくれ」
366Moody Blues:04/01/05 01:27 ID:Y1Qbxx1c
いまさら語るまでもないが、
 これが高野晶が従事しているバイトの一つだ。
 内容を端的に言えば、それはエージェント。
 基本的にはフリーランスな彼女が、ふとしたきっかけでこの組織に関わり始めたのは
なにも、表向きはファミレスとして機能していて、その制服――胸を強調したデザインで
スカートの丈も短く男性陣垂涎もの――が気に入ったわけではなく、いや、むしろ彼女は
この制服が嫌いなのだが…
 少々脱線してしまったが、ともかくひょんな事から受け持つことになった
この組織の仕事はリスクや内容の割には報酬もよく
晶の情報網で裏を取っても事前調査は確かなものが多かった。
 仕事の頻度も多いわけではなく、内容の上辺だけを聞いてこちらが断っても
問題がなかったのも不気味なぐらいに好都合だ。
 ここまでの好条件だと逆に疑いたくもなる、そんな業界ではあるが
もちろん晶には抜かりがなかった。
 いつでも痕跡を残さず逃げ出せる準備は整えてあるし、何せ彼女の担当はデスクワーク。
 彼女が最も得意とする分野でこの条件、後はいうまでもなかった。
367Moody Blues:04/01/05 01:27 ID:Y1Qbxx1c
「話はそれだけですか?」
 この部屋に来て晶は初めて口を開いた。
 彼女をよく知る者でない限り、そのときの彼女の言葉に不快感が織り混ざっていた事には
気がつかなかっただろう。
「ああ、話はこれで終わりだ。残りの時間はフロアに出てもらってもいいし
早退してもらっても構わないよ。明日のこともあるだろうからね」
 ここのファミレスには仕事の斡旋だけをしてもらっているわけだが
どうゆうわけか晶は接客業が好きだった。
 仕事を承ったときも必ずフロアに出てから帰宅している。
 それは人と接することにより、より彼女自身を冷静にするためなのかもしれないし
純粋に好きだからなのかもしれない。真相は彼女のみ知る。
 少なくとも、一見すると穏やかで、人当たりの悪くない、人相のいい、この中年男と
同じ時間を過ごすためにここまで出向いたと考えるより、フロアに出るために来たと考える方が
何倍もましだ。と呼び出されるたびに考えているのは確かだった。
「では、失礼します」
 男の言葉に返事もせず、手帳とチケットを手に取ると、晶は軽く会釈をしてさっさと部屋を出た。
 すでに時間は夜といっても差し支えのない時間帯になっていた。
 晶は緩やかに、だがしっかりと深呼吸をすると小さく気を入れてフロアに向かっていった。
368Moody Blues:04/01/05 01:28 ID:Y1Qbxx1c
チケットと一緒に入っていたものは簡略された地図と住所が書いてある紙だった。
 その紙が示す場所はオフィス街。それも区画整理された新規開発エリアだ。
 事前に調べてみたところ、どうやら名前も聞いたこともない総合商社の持ちビルのようだ。
 さらに突っ込んで調べてみると、やはりというか、あのファミレスの親会社だった。
 薄々感じてはいたことだが、そろそろ来るだろうと思っていた。
 チケットをもらったときから思い描いていたことの一つがまさに残り1ピースのパズルのごとく
ぴたっと合わさり、一つの絵を表した。
(なるほど、ね…)

 そして、現在彼女はこのビルの目前まで来ている。
 彼女がビルを見上げて、まず気がついたことはあたりの静けさだった。
 人通りも車の往来もある、が、妙に不自然な気がする。
 それは時間も夜になっていることが関係していることなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない
ハッキリとは分からないが何かが起こりそうな予感、そんなものを漠然と感じていた。
369Moody Blues:04/01/05 01:30 ID:Y1Qbxx1c
 晶は大きなスポーツバッグを肩に提げ、正面玄関に足を踏み入れた。
 自動ドアをくぐると、まず目に付いたのが二階まで続く吹き抜けのロビー。
 シンプルながら豪奢な作りは新鋭企業を感じさせるものがあった。
 そして目の前には畏まっている女性二人がいる受付と左右対称の長いエスカレーター。
 なんてことはない、ここら辺の界隈では珍しがる点のない一般的なオフィスビルだった。
 金属探知器の類も警備員も見あたらない。そんな一点を除く限り。
 晶が入り口から足を進めるとこれも一企業通りに声が飛んできた。
「いらっしゃいませ高野晶様、お待ちしておりました」
 見たところファミレスと同じように一般人も雇っているようだ。
 女性二人の所作に素早くそう判断をつけると、彼女はストレートに用件を言った。
「ここの社長に呼ばれてやってきたのだけれど何階?」
 私の姿を見てすぐにフルネームを呼んだのだ、話は通っているはず。
 彼女の考えは的を射ていた。
「はい、左手のエスカレーターより二階に上がりまして、突き当たりのエレベーターにお乗りください
後は、自動で目的の階で止まるようになっております」
 流れるような受け答え、彼女たちもまた分かっているのだろう。
 こんな時間にジーンズ、デニムシャツ、肩には大きなスポーツバッグの出で立ちでやってきた
初見の女に、アポイントメントも聞かずにフルネームで呼びかけ、淀みもなく目的の階を教える。
 普通の企業では考えられないことだ。
 これから起こるであろう事柄までは思いつかないであろうが、彼女たちにも幸が訪れることを
晶は心の中で少し祈った。
370Moody Blues:04/01/05 01:31 ID:Y1Qbxx1c
 短い会話を終わらせると彼女は早速エスカレーターへ向かった。
 無駄に長い(と感じてしまう)エスカレーターを上り、エレベーターのスウィッチを押す。
 すぐに目の前の扉が開いた。
 どうやら専用エレベーターらしく、二階に止まっていたその金属の箱には扉の開閉スウィッチと
緊急用の電話しか備え付けられていなかった。
 晶は特に感慨もなく乗り込むとすぐさまドアが閉まった。
 体に加速度がかかるのを感じる。
 長いような短いような、時計を着けていなければいかようにも感じ取れる時間が過ぎていく。
 やがて解放される荷重。
 どうやら目的の階のようだ。
 チーンとこのビルには似つかわしくない古めいた音を立ててドアが開く。
 
 そこはただただ広い、フロアが広がっていた。
 テーブルと椅子、左右には外から見えたビルウィンドウ。
 最奥まで続く青地の絨毯。それ以外なにもない。
 一人の見慣れた男とその周りにいる4人の男達を除いて、だが。


「ようこそ晶君、待っていたよ」
371Moody Blues:04/01/05 01:32 ID:Y1Qbxx1c
 椅子に座っていたその中年男はまるで
場所がファミレスからこのフロアに変わっただけのような、そんな錯覚を覚えさせるぐらい
いつもと変わらない調子で話しかけてきた。
 そんなことを気にかけることもなく、晶は既にエレベーターから降りて
数歩ほど歩いていた。しかし、目の錯覚かどうにも男との距離感を測りかねていた。
「今日ここに来てもらったのは他でもない」
 周りの男達と目配せをする男。
 後ろではエレベーターのドアが静かに閉まり、階下へと動く気配がする。
「我らの組織への正式な所属、それを了承してもらいたいのだよ」
(ふぅ…)
 晶は心の中で小さなため息をついた。
(まさかとは思ったけど、ここまで予想通りとは…)
「私たちは君の能力を高く買っている。特にその情報収集と処理能力は私が会ってきた愚鈍な奴ら
と比較することすらおこがましいと感じるよ。その能力をあんな島国で腐らせておくのはもったいない!」
 熱弁をする男は自分自身に酔ってきたのか、いつもの調子よりも興奮気味に話を続ける。
 それとは対称的に周りの男達は好色、疑心、興味の視線を晶に注ぎ続ける。
 晶の嫌悪感はそろそろピークに達しようとしていた。
「――さぁ私たちと共に歩もう!永遠の安心と生涯をかけても使い切れない巨万の富を約束しよう!」
 はぁ…
 と、今度は誰の目にも分かるように晶は大きな溜息をついた。
372Moody Blues:04/01/05 01:33 ID:Y1Qbxx1c
「なんとなく、そんな話じゃないかと思っていました」
 嫌悪感を抑えながら晶はそれでも”元”上司に丁寧な言葉遣いで応対した。
「一つ、質問があります」
 男にしてみれば突然招いて是非を聞いていたわけなので、鉄面皮の晶でも驚くだろうと思っていた
内容だったのでこの言葉に少々面食らっていた。
「なんだね、晶君」
 男から一番左に座る――最もいやらしく視線をまとわりつかせた――男が聞き返してきた。
「疑問に、思わなかったのですか?私の態度に」
 場が静まる。
「普通なら驚くと思います」
 先ほどまでの昂揚とした雰囲気は霧散して、あたりに夜のオフィスらしい静寂さが漂ってきた。
「なんのことをいっているのだぁ〜、晶君」
 男の右横に座る――醜く膨れあがった腹で、だらしなくスーツをぱんぱんにさせている――男が
いらいらした口調で問いただした。
「日本のファミレスで店長をしていた男を目の前にして、全く動揺することもなく平然としている
そんな不自然な姿に、ですよ」
 直立不動の姿勢を保っていた晶だが、ここの時点で少し足を広げ肩の荷物を床に置き
今まで負担がかかっていた右肩の強張りを解きほぐした。
「ふふふふっ、なんだそんなことか。君にとっては造作もないことだろう晶君。ここにやってくる前に
大体のことは調べ上げたのではないかね?アイアンフェイスの名は伊達じゃないだろ?」
 男から一番右端の――この五人で最も冷静そうで唯一眼鏡をかけている――男が馬鹿にするような
嘲りを交えてそう答えた。
「…確かにそうです。だが調べるまでもないことが一つありました。
それはあなたがこの組織の幹部クラスの人だということです」
 すっと男に指を指し、晶はそう断言した。
「…いつから気がついた?」
 男の左横に座る――最後までしゃべり出す雰囲気のなかった寡黙な雰囲気を出している――男が
口を開いた。
「一ヶ月前です。あのファミレスに勤めてしばらく経っていますが、ある日を境に
”店長が替わらなくなった”それが理由です」
 ゆっくりと五人を睨みつける晶。
 五人もまたその視線を受け止め送り返す。
「あっはっはははは、流石だ!流石晶君。うちの変装には自信があったんだがね〜。中間管理職
ってやつはストレスが貯まるらしくてね。次から次へと行方不明になっちゃうんだよ。」
 最後に中央の男――説明するまでもない”元”店長――が大笑いした。
「で、最後は僕直々にあの店に出向いたってわけ。結構楽しかったよ。晶君のウェイトレス姿も
見れることだしね」
 ひとしきり男が笑い終わると、あたりにまた静寂が舞い戻ってきた。
「では、疑問も晴れたことだし、そろそろ返事をもらえるかな?」
 確かに、これではっきりした。
 晶は得心した。答えは既に決まっている。
 小さく深呼吸。自らに気を入れる。


「答えは、これです」
373Moody Blues:04/01/05 01:34 ID:Y1Qbxx1c

 まるでオーケストラの指揮者が厳かに指揮棒を掲げるかのごとく腰のホルスターから
既に装弾済みの愛銃”Cz75カスタム”を引き抜き、視線と照星、照門を一直線にした。
 迅雷のような速さと精密機械のような正確さで5発の銃声を室内に響かせた。

 タタタタターン!

 上がる硝煙、まばゆいマズルフラッシュ、ちりんちりーんと小気味よく鳴る薬莢。
 そのあとに彼女が見たものは――
 床一面に脳漿をぶちまけた取るに足らない五つの死体

 ではなく、不自然に空中に止まる9mm×19の五つの弾丸だった。
 ”Iron Face”の異名で名高い彼女、高野晶もこれには少々面食らった。
374Moody Blues:04/01/05 01:35 ID:Y1Qbxx1c
「ふぅー、ザンネンだよ晶君」
 大げさともとれるオーバーアクションで”元”店長は嘆いた。
 周りの四人もこうなることが分かっていたかのように全く動揺を見せていない。
「何が不満なのか分からないが、この返事は如何な物だろう」
 ゆっくりと、テーブルを回り込み男は近づいて来た。
 そう、”近づいてきている”はずだ。テーブルを回り込んだのだから。
 なのに、何故か距離が縮まっているように見えない。
 まるで空間でも歪曲したような錯覚。
「――!!」
「気がついたようだね、晶君。」
 余裕のある態度を崩すことなく、男は話し続ける。
「これが君に依頼した仕事の一つ。某所の開発データによる成果だよ」
 男は弾丸の目の前まで近づいてきている。
 この距離になるまで、弾丸の目の前にたたれるまで
晶には男が近づいているという実感が伴わなかった。
「どんな硬いものよりも壊れにくいもの、その研究の一つの結果がこれだ。発想の転換。
”柔らかく”するのだよ。理論上ではこのビルに航空旅客機が突っ込んできても
このガラスは壊れることがないそうだよ。もっとも、生産コストが洒落にならなくてね。
豪華客船を一隻作るぐらい気合いを入れたのに製造できたのはこの面積だけだったよ」
 男はしゃくに障るぐらい身振り手振りで話を進める。
 いつの間にか弾丸は絨毯に落ち、蒼い草原に五つの小さなシミを作っていた。
「しかも、屈折率がそこらのガラスに比べると極端に違うと来ている。私達から見ても
君が遙か遠くにいるように見えてしまうのは大きな欠点だね。」
 よくよく観察してみると、男の声は正面よりやや上。天井付近から発しているように聞こえる。
 スピーカーの類が仕込まれているのだろう。
「さぁどうする晶君?そのバッグに何が入っているか知らないが、このガラスを突破することは
先もいったようにほぼ不可能。エレベーターは地下まで降りている、この階まであげても構わないが
私設警備員という素敵なオプションが今度はついているぞ?」
 晶は一瞬逡巡すると銃をホルスターの納め、おもむろに足下のバッグを漁りだした。
「今ならまだ間に合う」
 今度はメガネの男が喋りだした。
「考えを改めて組織につきなさい」
「まぁ、この返事についての罰は追々受けてもらうことになるだろうがなぁ」
 太った男が顔をにやにやさせながら後に続く。
「それと他にも武器を所持していないか確かめるためにストリップ劇をやってもらおうかね。
スレンダーなその体をイヤらしくくねらせて男を誘うように舞ってくれたまえ」
 表情は変えず、だが視線だけは舐めるように晶に絡めて、左端の晶が最もいらつきを覚える男は
そう口にした。
 それは悪くないなぁ、面白い余興になりそうですな、等と話し合う席に着く男達。
375Moody Blues:04/01/05 01:35 ID:Y1Qbxx1c

 そんな中、晶は表情を変えることもなく目的のものをバッグから取り出すと
おもむろに走り出した。
 男から見て左側に。
「何をするつもりか知らないけど、一つだけ言えることがあるよ。晶君」
 走る速度を落とすこともなく、再度ホルスターから愛銃を引き抜く晶。
「このガラスは絶対に壊せない」

 タンタンタンターン!
 
 四度の銃声。それが意味する先はビルウィンドウに入るひび割れだった。
 ぎりぎり割れずにとどまるウィンドウを晶はそのスピードに乗った健脚で跳躍、蹴り割った。

 ガッシャーン!

 その行為が意味すること、それは――落下だ。
 重力の鎖に絡め取られ、晶は地上へと墜ちていった。
 フロアに吹き込む大気、だが特殊ガラスに阻まれた男達には感じることもない。
 残された五人の男達は予想外の展開に一瞬驚きを禁じ得なかった。
「抵抗するとは思っていたが、まさかこんな落ちが付くとは」
 メガネのずれを直し最初に口を開いたのは、冷静に事態を受け止めた男だった。
「ということは、賭は俺たちの勝ちということになるなぁ」
「そうなるな」
 太った男と無表情な男は少々残念な結果に落胆しながらも、自分たちの勝利を確信した。
「ん〜、まだ賭は終わっていないと思いますよ」
 自分の席に戻った中年男は軽く机を叩いた。
 机の一部がせり上がっていき、大きなモニターが現れた。
「屋上のカメラがとらえているみたいですね、繋いでみましょう」
 同時に現れた手元の操作パネルで屋上に備え付けていた望遠カメラを操作する。
 オートフォーカスでカメラがとらえた映像は小さなパラシュートで空中遊泳している晶だった。
376Moody Blues:04/01/05 01:36 ID:Y1Qbxx1c
 事前に調べていた近隣の公園に三点着地を決めた晶はすぐにパラシュートを放棄した。
(おそらく、これだけでは終わらない…)
『飛行機で移動するときはお守り代わりにこれを持っていきなさい』
 このパラシュートをもらったときには笑えない冗談だと思っていたが
こうして使うことになるだろうとは…帰ったらお礼の一つでもいうべきだろう、少々の嫌みと共に。
 携帯性と簡便性を追求した代わりに、耐久重量が極端に低いこのパラシュート。
 バッグを残すハメになったが、あの状況下にいることに比べればましだろう。
 既に移動を開始している晶に再びあの朗らかな声が聞こえてきた。
377Moody Blues:04/01/05 01:37 ID:Y1Qbxx1c
「まさか、飛び降りるとは思いませんでしたよ晶君」
 同時に聞こえてくるローター音。
「せっかく待機していた警備の人達もザンネンだと嘆いていましたよ、あなたは美人ですからね」
 場所は既に公園の林を抜け、再びビル街に戻っているというのに。
「いやはや、デスクワーク派だと思っていたのになかなかどうして」
 その機体は何ら不自然さを出すことなく宵闇の摩天楼に浮かんでいた。
「でも、そんな勇ましいあなたも素敵ですよ」
 ボーイング社製、AH-64D アパッチ・ロングボウ。
「おかげでこのようなものまで動かすハメになってしまいました。経費削減が今月の目標
だったんですがね〜」
 いや、あのデザイン。ご丁寧に改造済みか。
 見慣れぬ機銃がコックピット下についている。
 本来なら複座型のヘリだがパイロットは一人しか見あたらない、ガナー席は
ヘリと同じような装甲に包まれている。
 さっきから聞こえてくる声も機体下あたりに見える拡声器らしきスピーカーからのようだ。
「しかし、どうあっても組織には加わってはくれないみたいですね、とてもザンネンです」
 表面的には残念そうに聞こえる声がローター音と共に聞こえてくる。
 まだこちらの場所はとらえきれていないはず。先手を打たなければ…
 先ほどから垂れ流しになっている声を無視して
晶はビル街に隠れ、とあるビルの非常階段を上っていた。
 程良い高さまで来ると愛銃Cz75カスタムを再び抜きスライドを引いた。
 キンッと弾き出される真鍮色をまとった弾丸。
 代わりにポケットからつまみ出した黒い弾丸、それを薬室に入れる。スライドを戻す。
「――を無事帰すわけには行かないのですよ。あなたの仕事ぶりは分かっていますからね、
敵に回したままにはできません」
 狙いは一点、弾も一発。ワンショットワンキルのあの人を再び思い出す。
 あの人ならこんな時にも不適に笑うだろうか?
 片膝を付き、肘を膝に固定する。
 この距離、この角度、どれをとってもぎりぎりだ。
 ぴたっと手に吸い付くグリップに汗がにじむ。
 落ち着け。決して不可能な射撃じゃない。
 心を収束する。
 ぴたりと、狙いが定まる。
 晶はゆっくりと、絞り込むように引き金を引いた。
378Moody Blues:04/01/05 01:38 ID:Y1Qbxx1c
 ガーンッ!

 ローター音は、止まらなかった。
「やっぱり狙ってきましたね。パイロット席を」
 予想通りといわんばかりの声、あのビルからここは死角のはずなのに
まるで撃つ様を見ていたかのような発言。いちいちしゃくに障る。
「危ないところでした、急ぎ換装したばかり何ですよ”ガラス”を」
 座射の姿勢を解いて晶は立ち上がった。
「ふふふ、9パラ程度ならば換装するまでもなかったのだが、なにやら君には”切り札の弾丸”が
あるそうじゃないか?」
 くくくくく、嫌みな笑い声も聞こえる。
 階段を下りる、愛銃はおそらく分解整備しなければならないだろう。
 ホルスターにそっと戻す。
「情報源は何も君だけではないだぁ〜、飛び込みのリーク情報だったがなぁ、
顔が広いのというのも我らが組織の美点の一つなもんでなぁ」
 くっちゃくっちゃ、と何かを租借する音が小さく聞こえる。
 食べながら喋るなと親から教えられなかったのだろうか?
 嘆息しながら階段を下りきった。
 レーダーに捉えられるであろう場所に向かって歩いていく。
 彼女の位置を捉えたのだろう。
 機体がホバリングしながら向きを変え、機銃のみならず
必殺のヘルファイヤーまでもが今すぐ火を噴く、そんな剣呑な雰囲気があたりを包む。
「…言い残すことはないか?」
 久しぶりに口を開いたかと思えば仁のある言葉を言う。
 あのメンバーの中で彼だけは不快感を感じなかった。
 とはいえ、見逃すわけにはいかない。日常に彼らを招くわけにはいかないのだ。
「私のバッグ、どうしました?」
 この程度の声量で聞こえるかどうかは分からないが、晶は先ほどのビルでの会話と同じ
声の大きさで尋ねた。
 一瞬の沈黙。
 ついで訪れる大きな笑い声。
「あっはっははははは、君も女の子だね晶君。安心して構わないよ。大切に預かっているから。
ほら、こうして机の上に」
 パンパンと繊維を叩くような音が聞こえる。
「ついでに中身も見せてもらった。んふふふ、ピンクとはね。てっきり下着は全部白だと思っていた。
これは大切に預かろう。額縁に入れて応接間に飾るのもいいな。もちろんこちらのワンポイント入り
は私の寝具として活用しよう。君も本望だろう」
 もはやこの男については何も言うまい。
 私の人生の中でも最低ランキングに殿堂入りする事だけは確かだ。
「可愛いキリンのぬいぐるみまで出てきたよ。やっぱり抱いて寝ちゃったりするのかな?
妙にずっしりするのは君の寝汗だったりね。おっと、こりゃセクハラだったかな?」
 また起きる談笑。
 そのあと、どの私物が誰の者だとかくだらない会話が続く。
 考えることも煩わしくなり、彼女はゆっくりと両手をあげた。
 それを見て今までホバリングのみを行っていた(正直退屈していた)パイロットに動揺が走る。
 指示を仰いでいるのだろう、相手は降参の意思表示を見せているのだ。
379Moody Blues:04/01/05 01:39 ID:Y1Qbxx1c
「3つ」
 彼女は間をおかずそう言った。
「あなた達は3つのミスを犯した」
 表情は相変わらず無表情、しかしその瞳は決して絶望した者が見せる光ではなかった。
「1つ、あなた達は私を名前で呼んだこと」
 ゆっくりと振り返り、自分が飛び降りたビルをにらむ。
「2つ、あなた達は私を調べ始めたこと」
 再びヘリに向き直り、いつの間にか手に持っていた小さな携帯電話らしきものを片手で操作する。
「3つ、あなた達が救いがたい変態でどうしようもない愚か者だったこと」
 そして、両手を下ろしながら最後のボタンを晶は押した。

 カッ!

 一瞬の閃光。送れて響く轟音――

 ズズーン!!
 ザッザザー!

 加えて聞こえるスピーカーからの小さなノイズ。
 彼らが喜んでいたぬいぐるみ、これこそが晶の最後の切り札だったのだ。
 一部猛る炎と煙が出ていない面が見える。
 どうやらあのガラスだけはあの部屋で”唯一”まともなものだったようだ。

 それまで目の前をホバリングしていたヘリは状況を理解するとすぐさま転進した。
 いくらこの国とはいえ、ここまで大騒ぎすれば直に警察もやってくるだろう。
 上司が馬鹿でも部下まで馬鹿とは限らないものだ、晶は改めてそう思った。

 さて、帰るか。
 彼女も煙を上げるビルを背に歩き始めた。
 とんだ休みになったが、これで一つ問題が解決した。
 数学の難問を解いたかのような開放感に包まれ、彼女も帰国の途についた。
380Moody Blues:04/01/05 01:40 ID:Y1Qbxx1c
 時は昼休み、場所は教室。
 食事も済み、いつものメンバーはいつものように談笑していた。
「あー、面白かった!」
 喜色満面で頬杖を付きながら天満は周りも楽しくなるような笑みを浮かべた。
 先日の休みに遊びに行っていた先の内容が話題の中心となっていた、当然晶は話題に入れない。
 それでもこうして話を聞くことは好きだ。
 個性豊かな彼女たちが、何をして、何に驚き、喜んだのか
 説明が上手とは言えない天満の話だけを聞いても手に取るように想像できる。
 今度の休みは是非とも一緒に遊びたいものだ。
 そんなことを考えながら話のクライマックス(?)を聞きおえると
突然、愛理が晶に水を向けてきた。
「そーいえば晶のバイトって何なの?」
 確か配達業とかいってたわよね?、そんな風に会話を繋ぐ愛理を見て
 やっぱりこいつは馬鹿じゃないのか?
 美琴は心の中で嘆息した。
 休みに入る前の会話をもう忘れたんじゃないだろうな?
 あのときの晶の厭そうな態度を。

 当然、愛理が忘れているはずがない。
 彼女がこのように話しかけたのは、先ほどから会話に入れない晶を思ってのことでもあり
 普段見せない晶の表情を見たからでもある。
「ヒミツ」
 いつもの無表情に戻った晶は、いつもの彼女のように素っ気なく言い放った。
 愛理が見たその表情は――
 あのファミレスの制服――晶の服だけ特別に胸にパッドが縫いつけてある――を着る
 必要がなくなったタメなのかもしれない、天満の話す内容が面白かったからかもしれないが
 一つだけ確かなことがある。
 彼女はこの日常を望んでいるということだ。
 ――柔らかな笑顔だった。
Cz75を愛用とは・・・・やるな高野。
382帰ってきた292:04/01/05 01:43 ID:Y1Qbxx1c
正直スマンカッタ_| ̄|○

やっぱり自分には萌え話なんて無理です。
しかも長すぎます。
ラストの笑みを見せるためにこの長さ…やっぱりROMに回っておきます。

ちなみにタイトルは某有名アーティスト、説明の必要はナシですな。
おわり?
384帰ってきた292:04/01/05 01:47 ID:Y1Qbxx1c
>>383
終わりです。

二重投稿したときには本当に吊りたくなりました(;´Д`)
お疲れさんです
CZ-75はガンスミスキャッツで知ってるけど後の武器は良くわかんない
あと俺は長編が逆に書けんのでうらやましい
>292
いやいやいや、すっげー面白かったぞ。
晶SSで、満足させられるとは思わなかったよ!
クライマックスの、晶の決めが超かっこよかった
>>384
30秒規制の関係?
388帰ってきた292:04/01/05 01:58 ID:Y1Qbxx1c
>>387
はい、多分そうかと。

面白いといってもらえると嬉しいデスなぁ。
叩かれるのを覚悟であげましたから、面映ゆいです( *´ー`)
5日から仕事なんでもう寝るけど明日もカキコできますように。
規制中はまた俺設定のSSでも書いとくか。
あの絵から良くここまで考えられましたなー。乙!
次スレはマロンに「スクールランブルSSスレ」で立ててくれればいいよ・・・・
いや気が早いよ旦那
でもまあそっちの方がベターだな
同意。SSスレ立てられないから、偽装スレ立てて隠れキリシタンな気分だw
いやー晶かっこいいですな
GJ!
395Black_or_white:04/01/05 19:59 ID:ElScPe5m



 こんな夢を見た。





 俺の名は播磨3世。一部で名高きハリー・マッケンジーに名前が似ている男だ。
 世界中の俺達が俺に血眼。ところがこれがままならないんだなぁ。



396Black_or_white:04/01/05 20:00 ID:ElScPe5m

 がばっ
 真っ黒な闇の中から真っ白な光に向かって昇っていくような目覚めのさなか、
沢近愛理は夢を見たと思った瞬間に飛び起きた。夢の内容からして無理もないが。
「なんて夢見てんのよ私ったら」
 自分に呆れてため息をつく。しかもあのヒゲの夢なんて、と唸るように呟く。
 安っぽい窓から射しこむ朝日に目を細めながら枕もとのベルを探す。中村に
眠気覚ましの紅茶を頼もう。
「・・・安っぽい窓?」
 変だ。豪華絢爛とまでは行かないが自室の調度はそんな酷い物を使っていない。
 訳がわからないままベルを探そうと伸ばしていた手元を見る。漫画雑誌と
週刊誌。ひびの入った目覚し時計と、茶渋でくすんだマグカップと、薄っぺらい
財布。どれも自分のものではない。
「・・・えーと」
397Black_or_white:04/01/05 20:01 ID:ElScPe5m

 部屋を見回す。長く使っていないらしく埃の浮いた学習机、その上に放り出された
潰れた学生鞄、壁に貼られた三匹が斬られるのポスター。開けっ放しの押入れから
覗くガラクタの山。床に放り出された、べたべたに濡れている男物の学生服と、
同じく濡れている恐らくは自分のものらしい女物の学生服。
「え?」
 自分の身体を見下ろす。下着しか身に着けていない。
 朝。知らない部屋。下着姿。
「これって、まさか。この状況って・・・」
 絶望的な気持ちで呟いたその瞬間。

 のそ
 沢近のすぐ隣で何かがうごめいた。ううぅ、とうめきながら起き上がる。
「だ、誰?」
「うるせぇなぁ。なんだってんだよ朝っぱらから」
398Black_or_white:04/01/05 20:02 ID:ElScPe5m

 その覚えのある声を聞いた瞬間、沢近は硬直した。頭が真っ白になる。
 頭をかきむしりながら起き上がったトランクス一丁のその男は、
掛けっぱなしだったサングラス越しに沢近を見て硬直した。
「・・・」
「・・・」
 たっぷり30秒程見つめ合ってから
「なにいぃぃぃぃぃぃ!?」
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!」
 ごん めき ぐしゃ
 向こう三軒両隣に響くような大声で叫びあった。


   ・  ・  ・


『ジョンデース』
『チョッパーデース』
『大塩平八郎で御座います』
 ぱんぱーん
399Black_or_white:04/01/05 20:02 ID:ElScPe5m

『いったいなぁ毎回毎回』
『お約束お約束』
『しかしこれ露骨にパクり過ぎとちゃうか?』
『パクり言うな! パクりと言うてはいかん。マージュと言え』
『マージュ?』
『そう。おフランス語でお上品に言うならおマージュだ』
『ネタ的に無理がありすぎるような』
『それに語尾はザマスだろその場合』
 ・・・
 点けっぱなしのテレビから流れる漫才が虚しく部屋にこだまする。
 ガラステーブルに向かい合って座り、古い小説で泥水と評されそうな
安物のコーヒーをすすっている播磨拳児と沢近愛理。
 播磨は黒ジーンズを穿いて殴られた個所をさすっている。
 沢近はそんな播磨を威嚇するように睨んでいる。
 あの時床に散らばっていた学生服はやはり二人のもので、酒でべたべたに
濡れていた。ので沢近は播磨のワイシャツを分捕って着ていた。
「・・・」
「・・・」
400Black_or_white:04/01/05 20:03 ID:ElScPe5m


 二人とも口を開かない。射し込む朝日が部屋を漂う埃を白く浮き上がらせ、
壁掛け時計がかちこちと音を立てる。
 コーヒーが飲み干され漫才が終わりを告げる程度の静寂が過ぎたころ。
「それで、そこのヒゲ」
「だれがヒゲ・・・あいや何で御座いましょう沢近サン」
「これってどういう事?」
「ああ、こいつら最近出てきた若手の芸人でな。毎回有名な漫才師を
パクってコントやってんだ」
「播磨君?」
「いえワタクシめの事などヒゲとお呼びください沢近サン」
 爽やかで明るい、しかし凄まじい恐怖を呼び起こす素敵な笑顔で微笑まれ、
がくがく震えながら卑屈な言葉を口走ってしまう播磨。それでも不良か。
 誤魔化すのを諦め、まじめに考える。
「・・・ええと、これは、なんと言うかその・・・夢?」
401Black_or_white:04/01/05 20:04 ID:ElScPe5m

 ぶんっ ごわしゃ
 笑顔のままマグカップをぶん投げる。播磨の顔に命中したそれは朝日に
照らされながらぱらぱらと美しく散っていった。
「目は覚めた?」
「ハイ。夢じゃありませんでしタ」
「全く・・・なんだってこんなことにならなきゃいけないのよ」
「それだ」
「なにが『それだ』なのよ」
「だからよ、何でこんなことになったんだ? つーか昨日何してたんだっけ俺ら」
「えぇと・・・昨日は・・・」
 二人して頭をひねり考え出す。
 沢近はとある男子(もう名前も覚えていないが)に誘われて学校帰りに
デートをしていた。
 もっとも、男子の払いなのをいい事に好き放題に飲み食いした挙句、
相手に『愛理ちゃん』と馴れ馴れしい呼び方をされたのに気を悪くして
思い切り飲ませて酔い潰させた上、そのまま置いて帰るようなのをデート
と呼んでいいのかどうかは微妙だが。
402Black_or_white:04/01/05 20:05 ID:ElScPe5m

「・・・それで、それから・・・」
 帰り道で偶然播磨を見かけた。
 播磨は年上らしい女性・・・『あの時のお姉さん』とはまた違う人と一緒に
歩いていて、もの凄く頭に来て、一言言ってやろうと二人を追いかけて・・・
「・・・」
 なぜ頭に来たりするのよ。なぜ一言言ってやろうと思うのよ。
なぜ追いかけたりするのよ。・・・酔ってたのよ。私は酔ってたの。そうよ
そうに決まってる。そうでなくちゃあんな真似する訳がない。

 眉をひそめて不機嫌そうにしている沢近の向かいで播磨も懸命に記憶を
たどっていた。
 播磨は、めでたくバイト代が出たという事で、弦子と連れ立って外食に
出ていた。
 今日くらいは贅沢をしようと思い、ラーメンとチャーハンとギョーザと
カラアゲを食って・・・
403Black_or_white:04/01/05 20:05 ID:ElScPe5m

「・・・そんで、そっから・・・」
 生中を飲んで紹興酒を飲んであんずサワーを飲んだ辺りで天満ちゃんと
あったような・・・
「・・・」
 そうだ、そうだよ。天満ちゃんに会って、一緒に飲んだんだ。
跳ねたように両サイドで止めた髪の房がいつもより大きかったり、なんか
いつもより吊り目がちだったり、いつのまにか脱色して金髪になってたけど
やっぱり天満ちゃんは可愛くて・・・あれ?
 播磨はゆっくりと顔を上げて沢近を見た。
 ツインテールで、吊り目がちで、金髪の沢近愛理。
「なあ、おい」
「なによ」
「もしかして俺ってもの凄く馬鹿なのか?」
「もしかしなくてもアナタはもの凄く馬鹿よ」
 お互いいらん記憶を掘り出してしまい鬱が入る。しかも、肝心なその後
の記憶はさっぱり思い出せない。
404Black_or_white:04/01/05 20:06 ID:ElScPe5m

「・・・うぅ」
「・・・ぬぅ」
 唸ってみても思い出せない。手詰まりになりかけたその時、救いをもたらす
感情薄めの女神が帰ってきた。
「ふむ? 二人とも起きていたかね。まあ、よい目覚めではなかったようだな」
「刑部先生!?」
「弦子! どこいってたんだよ!?」
「薬局だよ。二日酔いの薬がいるかと思ってな。だが、様子を見るに二日酔い
どころではなかったようだが?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。どういう事? 何で刑部先生がここにいるのよ」
「ここは私の借りている部屋だからな」
「え? ええ? じゃ、じゃあ隣の汚い部屋は?」
「悪かったな汚くて。俺の部屋だよ」
「端的にいうと私の同居人なのだよ。拳児君は」
「な、なん、なんで。なんで?」
「あー、つまり。俺の従姉弟だよ。ガッコじゃ秘密にしてるけどな」
405Black_or_white:04/01/05 20:06 ID:ElScPe5m

「その縁で彼に頼まれてね。一部屋提供しているんだ。出来れば内密に
してくれると有り難いね。沢近さん」
 沢近は突然の、しかも予想外の乱入者に混乱していたが、弦子の何かを
含んだような笑顔に一つの記憶が不意に思い出された。

  − 播磨と一緒に歩いていたのは刑部先生だ −

「・・・なるほどね。『俺の弦子』か。なるほどね」
 うつむいて、食いしばった歯の隙間から言葉を漏らす。
「おい?」
「馬鹿みたい。私ってば、まるで馬鹿みたい」
「あー、沢近サン?」
「とんでもないことになったなんて思って。少しだけ、それでもいいかな
なんて思って。少しだけ、ほんの少しだけ嬉しいなんて思って。
まるきり道化みたいだわ」
406Black_or_white:04/01/05 20:07 ID:ElScPe5m

「えーそのー、聞いてます?」
「聞きたくない。私帰る。さよなら」
「まあ待ちなさい。誤解があるようだし、それは解いておきたいのだがね」
「聞きたくありません。失礼します」
 吐き捨てるように言って、のしのしと玄関に向かって歩いていく沢近。
弦子はその背中に向かって、
「その格好で帰るのかね。正直、お勧めしないな」
 立ち止まる。沢近は下着にワイシャツのままだ。振り向いて、播磨の部屋に
のしのしと歩いていく。
「制服は酒まみれなままだろう。あれを着て帰るのもどうかと思うよ。
よければ私の服を貸すが、そのついでに話を聞いてはくれないかね?」
407Black_or_white:04/01/05 20:08 ID:ElScPe5m

 また立ち止まる。結局もとの位置に戻った沢近は、弦子を見て、播磨を
睨みつけて、自分の格好を見下ろしてから、大きく息を吐いて座り込んだ。


   ・  ・  ・


 ずず ずずず
 新たに入れなおしたコーヒーを3人ですする。泥水のようだと思っていた
それは、弦子の手によって入れられた途端、嘘のように美味しくなった。
 サングラスの奥から涙を流し、良かった、ホントに良かった。と何度も
呟く播磨の横で、沢近は羞恥に頬を染めながら両手で包み込むように持った
カップを覗き込んで唸り続ける。

 弦子の説明は端的だった。『従姉弟』同士で飲んでいたら、級友(?)であり
教え子である金髪の酔っ払いが闖入してきて播磨と言い争いになり、なぜか
意気投合して三人で飲み始め、そのうち二人が悪酔いしてげらげら笑いながら
酒をぶっ掛けあい始めた。
408Black_or_white:04/01/05 20:09 ID:ElScPe5m

 あまりの騒ぎを見咎めた店員が三人纏めて店を追い出し(ついでに出禁も
言い渡された)。飲み床を失った酔っ払い共は河岸を変えて飲みなおすべく
弦子のマンションに向かい、着くなり同じベッドで寝入ってしまった。
「と、まあそんな訳だ。ああそう、服を着ていないのはべたべたするから
と言って二人して脱いだからで、一応寝静まるまで見ていたがやましい事は
していなかったように思うよ」
 と、そう弦子は話を締めた。

 ずず。コーヒーをすすりながら弦子の言葉を反芻する。安堵で心が静まり、
今度は先ほど自分が自棄気味に口走った自嘲の言葉を思い出す。

  ほんの少しだけ嬉しいなんて思って。

 うぅ。恥ずかしさにうめく。ちらりと播磨に視線をやると、サングラスを
外して涙をぬぐっていて、その意外なほど整った顔立ちに目を丸くする。
409Black_or_white:04/01/05 20:10 ID:ElScPe5m

 なんだ、素顔は結構いい男なんじゃない。少し、心が昂ぶる。と、思いきや
「安心したぜ。俺はまだ清い身体のままなんだな」
 むか
 ばしゃ
「どぉわっちゃーっっっっ!!」
「・・・ふん」
 コーヒーを掛けられて熱さにのた打ち回る播磨。怒りもあらわに立ち上がり
びし! と沢近を指差し、
「いきなり何しやがるテメェっ! あっちいだろがっ!」
 沢近もがば、と立ち上がり挑みかかるように播磨を睨み
「何よ! むさっ苦しい男が清い身体だなんて薄ら寒い台詞吐くからじゃない!
大体何よ勘違いとはいえこの私が相手なのよ! むしろ光栄に思いなさい!」
「寝ぼけてんのかテメェは! さっきあんなに嫌がってただろうが!」
「当ったり前でしょそんなの! アンタが相手だなんてぞっとしないわよ!」
「だったらなんで光栄になんぞ思わなきゃいけねぇんだよっ!」
「それとこれとは話が別だって言ってるのよ!」
410Black_or_white:04/01/05 20:11 ID:ElScPe5m

「・・・!・・・」
「!!・・・!」
「ふむ」
 弦子はどこぞの猫と鼠のように仲良く喧嘩している二人を見ながら実に
楽しげに頷いた。


 しかしまぁ、昨日の帰り道で聞こえた、『なんでアンタなんか好きに
なっちゃったんだろ』という誰かの台詞は教えない方が良いのだろうかな?




    おわりー
お疲れさんです
412Black_or_whiteの中の人:04/01/05 20:15 ID:ElScPe5m
 ども、209です。
 ・・・えーそのー。

   すいません反省してます。

 魔が差したんです! 裸ワイシャツ(しかも播磨の)沢近タンハァハァ
とか思っただけだったんです! それがなぜかこんなことに・・・

 しかしまた播磨を喋らせすぎてしまった。せっかく意見を頂いたのに
まるで身になってない。情けなー。


P.S.
次はヤクモンで書きたいけどなんかネタ切れ中。どなたかお題ください。
危なくほぼ同時に上げてかちあうところでした、というのはさておき。
最初はネタで最後までいくのか、と思わせてキレイにまとまっているのはさすがだなあ、と。
沢近といる時の播磨は売り言葉に買い言葉、のノリでそんな感じじゃないかな、と個人的には思います。
414Calling you:04/01/05 20:23 ID:Q5snYgYX
「ごめんね、付き合ってもらって……」
「気にしない気にしない。それに私好きだよ、八雲の描く絵」
 ありがとう、と赤くなって恥ずかしそうに言う八雲。最後の授業だった美術の時間、もはや
恒例と言えることだったが、彼女は人一倍時間をかけて描いていた。
 ともあれその日も納得がいく所まで絵を仕上げ、見守るように残っていたサラと一緒に教室
へ引き上げてきたところである。時刻はもう夕方、辺りは夕陽の色に染まっている。
「でもホント、集中してる時の八雲はすごいよ」
「そんなことないと思うんだけど……」
「私はうらやましいよ、八雲のそういうところ」
 微笑むサラ。
「それじゃ帰ろうか」
 そう言って八雲の先に立つようにして教室を出る。
「……うん」
 その後に続こうとした八雲だった。
 その時。
(…………)
「っ……」
 どこか遠くでささやくような声とともに、不意に違和感が彼女を襲った。
「これは――――」
 それは初めての感覚ではなく、かつて一度だけ美術室で感じたものと同じだった。
「……いるの?」
 誰もいない空間に呼びかける八雲。
「――驚いた」
 すっ、と。
 音を立てることもなく、長い髪をした少女の姿が沈む陽を背にして浮かび上がった。
「あなたの方から気がつくなんて」
 私はずっとあなたを見ていたのだけど、とあの時と変わらない淡々とした口調で言う。
「どうして……?」
「そうね……面白いから、かしら」
 疑問への答に、また疑問を重ねる八雲。
「私が面白い……?」
「そう。あなたの答は私が今まで聞いたどの答とも違っていたわ」
 もちろんまったく同じ人間なんていないのだけれど、と小さく呟いてから、今度は
彼女が聞き返す。
415Calling you:04/01/05 20:24 ID:Q5snYgYX
「どうして私がいると分かったの?いくらあなたでも見えるわけはないのに」
「……『声』が聞こえた気がしたから」
 少し迷ってから自信なさげに答える八雲。
「……え?」
 一瞬その言葉の意味が分からずにきょとんとする彼女。
(私の『声』……)
 しかし、次の瞬間にはそれが意味することに気づき、そして。
「……ふふ」
「……?」
「ふふ、あははははっ」
 笑い声を上げていた。何がどうなったのかを把握できずに戸惑う八雲の前で、なおも
彼女は笑い続ける。
(いつ以来かしら、笑うのなんて)
 思い返す記憶は時間の流れの中に埋もれている。もしかすると、今まで笑ったことなど
なかったのかもしれない。
 けれど、今大事なのはそんなことではない。
(そう。つまりこういうことなのね)
 誰かを好きになる、ということ。
 同性であれ異性であれ、好意というのはそうして気がつかないうちに生まれていくものだと。
八雲のその一言で、彼女は一つの解答を得たように思った。
「あなた面白いわ、本当に」
 ひとしきり笑い終えた後で、今まで見せたことのない穏やかな表情で言う。
「……ありがとう」
 その返事に、そういうところもね、と今度は控えめに微笑んでみせて。
「また、があるといいわね」
「あ……」
 それじゃあ、と。
 呼び止める間もなく、現れた時と同じ唐突さで姿を消す彼女。
 そして。
「もう、またぼーっとしてるよ」
 はっとして振り返れば、ちょっと呆れたような笑顔でドアの向こうからひょこっと首を
突き出しているサラの姿。
「サラ……」
 その声に我に返ってみれば、そこにあるのは夕焼けに染まったいつもの教室で、先ほど
までの違和感はもうどこにもない。
「おいてっちゃうよ」
「ごめん、今行くから……」
 冗談めかして言うサラを追いかけて教室を出ようとしたその時。
(……あり が とう)
「――――え?」
 小さなささやきが聞こえたような気がして、思わず足を止めて振り返る八雲。
 その視線の向こうで。
 まばゆい赤光の中で舞う小さな白い影、それが確かに見えたような気がした。
「……またね」
 そう言い残して八雲も教室を出る。
 後に残るのは無人の空間。
 その中でふわり、と。
 風もないのに緩やかにカーテンが舞い続けていた――――
416Calling you:04/01/05 20:26 ID:Q5snYgYX
なんとかなるもんだな、という幽霊子さん(仮名)のお話。
……いや、結局八雲なんですけども。
417353と他のも少しの人:04/01/05 20:27 ID:N2f2Vg3P
>>414
>>412
・ピョートルが怪我
・播磨パニック
・八雲&サラ登場
・播磨事情説明
>>412
・サラ対処法考案
・播磨乗り気
・消極的な八雲をサラが無理やり連れ出す
・行った先では八雲活躍
・播磨感謝
・八雲テレる
・(゚д゚)ウマー
でお願い

ん?なんじゃこら。
つー訳で訂正
>>417
途中のアンカーは気にしないで
>>Black_or_white

むしろ絃子さん、やましい事をするの期待して見てたろ。
420cat meets girl:04/01/05 21:00 ID:OqVpVshR

「あ…」

 それは一瞬のスキだった。
 彼女、塚本八雲の腕からスルリと抜け出した黒い物体。人間とは違う
俊敏さと柔軟性で、彼はすたりと着地してのけた。そして、一目散に駆
けていってしまった。
 取り残された八雲が見つめる先で、飼い猫もどきの伊織はスタコラさっ
さと逃げている。そして、数秒もしない内に視界から消えうせてしまっ
た。
           ___
           ヽ)∵)ノ
幽霊少女キタ――(  (―――!!
           )  )

422cat meets girl:04/01/05 21:01 ID:OqVpVshR

 刑部絃子がぐぐっ伸びをする。ついで首をゴキゴキと。ふう、という
ため息と共に疲れを追い出そうとしたが、体から出て行った気配はない。
やれやれ、どうやら気に入られてしまったらしい。
 机の上に視線を送る。そこには山とつまれた書類がどっさり。昨日か
らしているのだが、なかなか終わらない。いい加減、書類を見ると気分
が悪くなりそうだった。
 まあ、それでも半分は終わった。残りの半分のメドも立っている。し
ばしの休憩としても誰も怒らないだろう。

 ふと見ると、窓のヘリに見覚えのある猫がいた、確かあれは

「塚本…八雲くんの猫だったか」
423cat meets girl:04/01/05 21:02 ID:OqVpVshR

 こちらの視線にお構いナシに、くわぁ、とあくびを一つ。そして、こっ
ちの状況を知ってか知らずか、気持ちよさそうにうずくまりだしてしまっ
た。
 思わず笑ってしまった。

「フフ、うらやましいかぎりだな、君は…。ふむ、どうだい、私と変わっ
てくれないかな?」

 やだよ、とばかりに伊織は大きなあくびを一つした。これには絃子も
苦笑するほかない。

「飼い主はどうしたのかね?」

 知らない、という感じでにゃーと鳴いた。

「眠そうじゃないか、実は私も眠くてね」

 あ、そう、という意味なのか、伊織はふいと横を向く。
 どうにも彼は自分に興味がなさそうだ。まあ、猫として普通なのだが…
424cat meets girl:04/01/05 21:05 ID:OqVpVshR

 こちらの視線にお構いナシに、くわぁ、とあくびを一つ。そして、こっ

「…ふむ、君はつれないね。そうだ、なにかあったかな…?」

 ごそごそと、机の中やら周りやらを漁ると、なぜか煮干が出てきた。
自分でも、なぜここにあるのか理解に苦しむのだが、まあいい。せっか
くのお客様に、一品ぐらいお出ししたほうがいいだろう。

「ほら、…ん?」
 
 左右に首を振る。そこに猫の姿はなく、ただカーテンが風に揺れてい
るのみ。

「…残念、振られてしまったか」

 ひとつ伸びをすると、むんと気合をいれ机に向かう。なかなかいい休
憩だった。猫が運んだ安らぎのひと時。さしずめ、一休みならぬ猫休み。

 再び机に向かう。心なしか、さっきよりも仕事がはかどっている気がする。
それは多分、気のせいではないだろう。
 どこか遠くで、猫の鳴き声が聞こえた―――。

 cat meets girl,Tommrow girl is …Sala.
425Black_or_whiteの中の人:04/01/05 21:26 ID:ElScPe5m
>>416
・・・イイ
なんかこー。癒されますな。やっぱ八雲萌え

>>417
怪我するきっかけさえ思いつけばなんとかなるかな。
頑張ってみます。

>>419
モチロンデス。
でもやましい事しちゃうとエロパロスレ行きなんでぐっと我慢。
>>424
> こちらの視線にお構いナシに、くわぁ、とあくびを一つ。そして、こっ
なんかここおかしくありませんか?
おお…マタキテル
>>420
お疲れ様です

>>426
>こちらの視線にお構いナシに、くわぁ、とあくびを一つ。そして、こっ



こちらの視線にお構いナシに、くわぁ、とあくびを一つ。そして、こっちをみることも無く
丸くなり目を細める。

に脳内変換して読ませてただきました。
DVDが発売されてタイムリーかなと思ってやってみた
元ネタ知らなきゃ意味ないけど
SSじゃないし 萌えないし

ごめん
♪エキセントリック エキセントリック エキセントリック不良ハリマ〜

ここまでスクラン人気あるのは エキセントリック(ヤンキー!)ハリマがいるからさ
キツイぜ キツすぎるぜ 矢神坂の傾斜
やることなすこと 空回り
仕置きの手段さ 「播拳蹴!!」

呼べばこたえる腐れ縁 ただれた仲間だ 人畜無害の人材〜
「獅子ヤクモ!」「が、がお・・・」

「熊猫サラ!」「ドーモー!」

「アキラキリン!」「あ バイト行かなきゃ」

「さあ、みんな逝くぞ!!」

同棲相手は失恋直後 今はフリーのワケあり お姉さん
「ハーリオ♪」

敵か味方か 二条丈
「・・・・・・カレー」

だけどさみしい こともある
「アイツら元気にやってるかな・・・」

怖いぞ沢近! 怖いぞ沢近! 毎晩うなされるー

何者だ 早く出演(だ)せ 俺も知らない謎の外人Mrマッケンジー

エキセントリック エキセントリック エキセントリック不良ハリマ〜
>>429
(苦笑)
他にもいっぱい作ってみよかと思った
でもSSの邪魔になるのもアレだし
DT好きな人ばっかじゃないだろし
そもそも、DTがタイムリーなのかがまず疑問だ。ワラタけど。
>>429読んでて八雲達が出てきたところで吹き出した。爆笑W
>>395-410 GJ!
「ところがこれがままならないんだなぁ」 に吹いたw
>>429
ワラタ
こういうネタもありだと思ってるんだけど
ここに書いていいものかどうか悩むよね。
>>422
細かいこと言うようですが、タイトルの「girl」は無いんじゃないか?
とでも言ってみる。
エキセントリック不良ハリマ〜って言いにくいな('A`)
エキセントリックヒゲハリマ〜の方が俺は言い易いな。
ハリーマッケンジーなんて、どうでもいいじゃん
て思ってるのもしかして俺だけ?
播磨の天満に対するものが一切入ってないから
マッケンジーの代わりに天満ネタを入れるべきだ
…注文ばっかですまない
ハリーマッケンジーは1話で播磨のキャラを立たせると言う大事な役どころ。
彼がいなかったら今の播磨はいないと言っても過言ではないでしょう。
442恋の魔法(プロローグ):04/01/06 14:37 ID:qrkxrDwS
塚本八雲には、誰にも打ち明けられない秘密がある。それは、人の心が見える
こと。ただし、自分に好意、あるいは下心を持っている人に限定される。例外
は姉の天満。姉妹であるが故か見えるのだ。見えるのだが、時折それすら覆す
行動をするので、中々に侮れない。そして、最近できたもう一つの例外。それが
播磨拳児。姉の同級生で、先輩にあたる。優しくて面白くて、何より行動力のある
初めて親しみを持てた男性である。彼は動物に好かれる、動物の気持ちがわかる
という特質があり、伊織(猫)も彼には懐いた。不思議なことに、彼の気持ちだけ
は、どうしても見えてこなかった。非常に新鮮だが、少し寂しかった。
それは、彼が私のことを・・・
443恋の魔法(回想):04/01/06 14:51 ID:qrkxrDwS
一枚の写真がある。播磨と八雲とサラ、そしてピュートルノ(キリン)と一緒
に写った写真。動物園に行ったとき、サラが用意したカメラで、仲良くなった
飼育員の人に頼み、撮影したものだ。そしてもう一枚の写真。播磨と八雲のツ
ーショット。照れる八雲に取り合わず、強引に撮ったのだ。
「もう少し笑いなさいよ」
茶化すサラの声はひどく優しかった。その時の光景を、風を、音を、彼の横顔
を、写真より鮮明に記憶している。少しずつ、胸の中が誰かのことで埋まって
ゆくのを、八雲は知った。
(姉さんだけしかいなかったのにね)
薄れてゆく寂しさとともに、沸き上がる想いもある。
(播磨さん)
写真の中の少女はひどく照れくさそうな顔をしている。
「こんな顔もできたのね」
彼が姉に対し、一途で一生懸命なのは理解できる。そしてそれは、ひどく辛い
ことだった。
地震があああああ
しかも長いぞ!!!
誤爆スマソ
つ・・続きは・・・
>>444
敢えて狙っただろ?
このスレと地震スレかけもちなところまで一緒とはさすが俺
448444:04/01/06 15:05 ID:dixqBlA5
しかも震源地は奈良だった・・・・・・_| ̄|○
449恋の魔法(スタートライン):04/01/06 15:15 ID:qrkxrDwS
放課後。八雲は矢神神社にて、播磨と話をしていた。サラ気を利かせたらしく
「ごめんね。今日は用事があって」
つまりふたりきりだった。
「犬が?」
「はい、吠えられるのが苦手で・・・」
ふぅむ、と思案顔の播磨。彼は言う。犬は人間から影響を受けやすいと。初めから
悪い犬はいないと。
「優しくされれば嬉しいぜ、人間だって犬だってな」
父親が娘に御伽噺を聴かせるような語り口調。決して押し付けがましくなく、心の
深い部分に染み込むようだった。
彼の話を聴きながら、思い出すことがある。とある少女のこと。
あなたは枷に嵌められた存在だと。八雲は言った。誰にでも枷はあると。
だから、男の人が嫌いには思えない。むしろ・・・
「どうした?」
「播磨さん・・・」
昨夜、いけないことをした。彼のことを想いながら。何度胸の中で彼の名を
呼んだことだろうか。はしたないと思うし、浅ましいと思う。
そっと手を伸ばし、彼の頬に触れた。
「妹さん?」
「八雲です」
静かに、声に力を籠めて。私はふしだらな女。だから誰かを非難する資格など
ない。
「私は八雲です」
サングラスを外す。露わになった彼の双眸。とても綺麗な眼だ。
「こんな眼、してたんですね」
「何を・・・」
うろたえる彼に構わず、宣言する。
「私を見てください。姉さんじゃなくて、私を」
これは宣言。自分自身と彼に対する決意表明。ようやく、スタートラインに立て
た。そして走り出すことに躊躇いはない。

(いつか、私に心の声を届けてください)

 
ヤクモンのお話です。かなりとりとめがない話です。
愛理タンエロパロ目指して構想の練っていたはずがこんな話に。
こんなの俺のヤクモンじゃない、という方もいるとは思いますが
平にご容赦のほどを
GJ!
積極的な八雲イイ!
すばらしい・・!おにぎり派の俺にとっては神です!
幕張って既に完結していなかったっけ?
……マガジン連載・スクールランブル関連スレッドDEATH
ムッ!SS投下中じゃない ネタかくなら今のうち・・・

昨日ここにネタかいてもあんま批判なかったので
元ネタしらなきゃ意味ないけど
456mix:04/01/06 19:02 ID:Ipg6cxQa

サラ「ふぅ 美味しいですね このお茶」
高野「そうね」
   ドタドタドタ!ガチャ!
修治「助けて!晶ねーちゃん助けて!サラねーちゃんも助けて!」
サラ「ちょっ、どうしたの?修治君」
修治「兄貴と愛理ねーちゃんがっ!」
高野「またか…」
サラ「よし!まかしといて!」


播磨「フザケんな!やってられっか!」
沢近「なによ!アンタがカレー食べたいって言うから
   アタシこうやって作ってんじゃないの!バカ!」
播磨「だから1人じゃ大変だと思って手伝ったんじゃねーか!」
沢近「どうせ食うなら愛情タップリのほうがいいって言うから
   一生懸命作ってんじゃない!」」
播磨「愛情タップリのわりには底のほう焦げついてんじゃねーか!」
沢近「あぁ分かった!よっし!ねぇちょっと聞いてちょうだい
   焦げてんのはアンタがかき混ぜてたほうの鍋じゃないのバカ!」
播磨「オマエがかき混ぜてたヤツだっつってんだろ!」
沢近「アンタがかき混ぜる時に底のほうから混ぜなかったからじゃない!」
播磨「フザけんな!オマエの愛情が足りなかったんじゃねーのかよ!」
沢近「なんですってぇ!?!今日はアンタの誕生日だからコッチはアンタ
   一生懸命やってるんじゃないバカッ!」
播磨「!・・・・・・」

457mix:04/01/06 19:03 ID:Ipg6cxQa

サラ「ま、まぁね、ほら・・・」
高野「もうやめといたほうがいいよ」
播磨「・・・何人前作ってんだよ!」
沢近「うるさいわね!アンタがいろんな種類のカレー食べたいって言うから
   今日はいっぱい作ってんじゃない!鍋三つぶん作ってんじゃない!」
播磨「うち3人なのに鍋三つぶんは多いじゃねーか!」
沢近「多いぐらいのほうがいいじゃないの!」
サラ「やめてくださいよぉ」
高野「修治君が見てるよ」
沢近「なによ!」
播磨「なんだよ!」
沢近「アンタを誰にも渡したくないと思ってるんじゃないの!?バカ!」
播磨「!・・・・・・」
サラ「じゃあ、もう・・・」
高野「そうね」
播磨「・・・俺はお前、火使うからカワイイお前が火傷したら
   かわいそうだと思って手伝ったんじゃねーか!」
沢近「それが仇になってんのがわかんないの!?」
播磨「なんだとコノヤロウ!」
沢近「なによ!アンタの事を誰よりも愛してるんじゃないの、
   アンタの事を誰よりも愛してるんじゃないの!バカ!」
播磨「・・・・・・」
458mix:04/01/06 19:03 ID:Ipg6cxQa

サラ「もうイイじゃないですか・・・」
高野「そうだよ 修治君泣いてるよ」
サラ「もう泣かないで、ね?」
修治「うん・・・」
沢近「・・・かき混ぜ方が悪かったんじゃないバカ」
播磨「そう思うんなら自分でかき混ぜればイイだろ!
   焦げてきてんじゃねーか!早くかき混ぜろよソレ!」
沢近「アンタの事だけが好きなんでしょ!
   コッチはアンタ、アンタの事だけが好きなんじゃない!」
播磨「早くかき混ぜろよ!」
沢近「このヒゲ・・・オルアァァァアァッ!」(包丁を手にとる)
高野(ビシッ) (包丁を叩き落とす)
播磨「なんだよコオルアァアァァッ!」
澤近「なによ!」
サラ「もぉやめなさぁいッ!」
高野「ホントもういい加減にしなきゃね」
沢近「・・・後で覚えときなさいよ」
播磨「・・・ウルセーよ」
459mix:04/01/06 19:04 ID:Ipg6cxQa
 ムシャムシャ パクパク

播磨「・・・こっち貝入ってんじゃねーか」
沢近「・・・」
播磨「おい こっち貝入ってるじゃねえかよ」
沢近「・・・なにがよ?」
播磨「何がじゃねーよ 貝入ってるじゃねーか」
沢近「こっちの鍋がシーフードでこっちのがチキンじゃない」
播磨「ワケわかんねーこと言うな! オマエがこれがシーフード
   っつーから俺はこっち食ってんじゃねーか」
修治「あ、兄貴・・・」
沢近「・・・こっちのがチキン これがシーフード こっちのはミックス」
播磨「・・・ミックスって何だよ?」
沢近「チキンとシーフードの」
播磨「・・・ナニソレ」
沢近「アンタの安い稼ぎでね、カレー3種類作ろうと思ったら
   ミックスも取り入れていかなきゃならないでしょ!!!」
播磨「なんだとテメー!」
沢近「なによ!」
修治「いやだ!もういやだー!ウワ〜ン(泣)」
元ネタ知らない・・・
本誌で沢近分が足りなくてもこちらで補給できるな
462cat meets girl:04/01/06 21:00 ID:F9xqehSr

「あ」

 公園のベンチでのんびり座っていたサラは声を上げた。
 目前にいるのは、間違うはずもない伊織である。先ほど八雲からの連
絡で、行方不明と知らされたが、彼の人、いや彼の猫は悠々と目前を歩
いている。

「伊織〜ほ〜ら、おいで〜」

 くいくいと手招きすれば、なに? と言いたげな眼差しでひょこひょ
こ近づいてきた。そして、ぴょんと膝の上に乗っかると、ふてぶてしく
も膝の上にうずくまる。

「もう、相変わらずなんだから…」

 そうは言っても、自然と許してしまう。これが猫特有の性質からなの
か、それとも伊織の人徳、ならぬ猫徳なのか。
 なでなで、と背中あたりをなでてやると、気持ちよさそうに反応する。
そして、もっともっとと背中を動かす。ウ〜ム、かわいい。
463cat meets girl:04/01/06 21:00 ID:F9xqehSr

「…そういえば、八雲の最初の友達は伊織だったね」

 サラの自然な独り言に、一瞬ピクリと耳を動かしたかが、すぐに知ら
ないふりをする。この行動は、伊織流の続けろの意味だな、と勝手に解
釈して、サラは続けた。

「そして私と仲良くなって…最初のうちはお互いだけが友達で…」

 そこで、にゃーと伊織が鳴いた、非難の色が入っているようだ。

「あ、そっか、伊織もいたね、ゴメンゴメン」

 伊織はそうそう、といった風に再び顔をうずめる。

「3人だけだったのが、最近ちょっとずつ他の人も入りだして…なんで
かなー、そうしようとしてたはずなのにね。最近、八雲とキミだけの時
の方が楽しかったかなー、なんて…」

 ふう、とため息をつく。こんな考えはダメだ。二人だけの時の楽しさ
はいい思い出だけど、これからは二人以外の思い出もつくらなきゃいけ
ない。
464cat meets girl:04/01/06 21:02 ID:F9xqehSr

「でも…いつか八雲がみんなのもになったら、私はいらなくなっちゃう
かな…」

 なんともネガティブな考えである。あの八雲がそんなわけがない。し
かし、八雲は頭がいいし、優しいし、かわいいし、スポ−ツ万能だし…
 ふと見れば、伊織はこちらを見上げている。そして、にゃあと鳴いて、
てしてし、と膝を叩いてくれた。

「…なんて言ってるの?」

 答えは当然、にゃあという泣き声のみ。それでもサラは猫がなにかを
言っている気がする。そう、心配するな…みたいな感じ?

「…ありがと」

 ぐりぐりと頭を強くなでる。少し痛そうだが、いやがってはいない。
つづけてやることにした。
 自然と顔が笑っていくのが自分でも分かった。

 突然、ぴくっとしたかと思うと、伊織は一点を見つめだし、そして急
いで膝から降りようとした。
 もしや、八雲の気配でも感じたか?
 一応、捕まえておこうかな、と思ったが、伊織の強い眼差しが眼に映
る。それはまるで、グチを聞いてやったから、今回は見逃せ、と訴えて
いるようだった。

「…仕方ないなー、今回だけだからね?」

 パッと離すと、勢いよく駆け出した伊織を見つめる。彼を追って
いる少女が近づいてきた。彼女にしては珍しく、息を切らしながら。

 さてさて、なんて言い訳をしようかな―――。

 cat meets girl,Tommrow girl is …Eri.
>>462-464
ほのぼの、のんびり感がイイですね。

サラの次はEri…沢近、猫の伊織に自分の気持ちを吐露するんだろう
光景を思い浮かべると…やべぇ、にやけが止まりませんw
最後は八雲で、逃げた伊織を抱いた播磨が登場って感じだったら……ハァハァ
↑ほぼネタバレじゃねーか
>>465俺の妄想なんだが、バレになってしまってるなら…
スマン、まじ吊ってくるョ
>>466
ひょっとしてマガスペの?
いくらなんでも、マガスペバレはまだ来てないだろ。
何のネタバレなのか謎だw
ありえる展開だからじゃないの?
471rainy day:04/01/07 00:26 ID:wi2TDzJm
「もう、ツイてない……」
 そう呟きつつ、雨粒の落ち始めた路上を走る沢近。
 確かに天気予報では夕方から雨、と言っていたけれど、そんなに遅くはならないから、
と甘く見ていたのが運の尽き。スーパーで買物をして出てきた時にはまだまだ見えていた
晴れ間もいつの間にかどこかへ消えてしまい、今に至る。
(あそこ……)
 前方に見えた煙草屋の軒先に駆け込んで、ようやく一息。この状況を思えば、スーパーで
一本百円のビニール傘を手にしなかったことが悔やまれる。
「止まない、わよね……」
 恨めしそうに見上げる空からの雨足は次第に強まってきている。季節柄通り雨でもない
だろうし、運悪く煙草屋はシャッターを下ろして休業している。こうなると、雨宿りなど
したのが却って失敗だったようにも思えてくる。
(いつもと同じにすればよかったのかしら)
 そう思ってみるのは、手に提げたビニール袋。中に入っているのはカレーの材料。
 結局まだ父に食べてもらう機会を得てはいないものの、それならそれで、と練習を重ねて
いる沢近。それでもなかなかこれは、という味を出すことが出来ないために、たまたま今日は
いつもと違う材料を見繕っていて、余計な時間を取られていた。
「……しょうがない、わよね」
 誰が悪いかといえば結局自分しかおらず、そのまま待っていても雨に濡れた身体は冷える
一方で、仕方なく溜息混じりにもう一度駆け出そうとした時。
「あ……」
「……ん?」
 目の前を見知った顔が通りすがる。
 ヒゲにグラサン。
 当然と言えば当然のように、そんな知り合いは沢近には一人しかいない。
 播磨拳児である。
「……」
 何故か恥ずかしいところを見られたような気がして、顔を背けてしまう沢近。対して播磨は
参った、という表情をしている。
(ったくよりにもよってコイツか……)
 無視して通り過ぎる、というのがシアワセな選択肢と言えばそうだろう。しかし、いくら
なんでもびしょぬれで、女の子で、加えて手には重そうな荷物、とくればそうもいかない。
(しかしどうしたもんかな)
 一緒に入れ、などとはさすがに言えない。以前に一度似たようなことはあったが、それから
互いの間にいろいろと――本当にいろいろとありすぎたので、どうにも関係は微妙になっている。
(ちっ、しょうがねェな……)
 播磨がそんなことを考えつつ声をかけようとしている間、沢近の方はと言えば。
(もういつまでいるのよヒゲさっさと行っちゃいなさいよ馬鹿こんなとこ見られたくないのよああもう)
 恥ずかしいやら腹立たしいやら、なかなか複雑な精神状態で。
「……おい」
「何よ!」
 ――と怒鳴り返してしまったのも無理はない、と一応弁護しておく。
472rainy day:04/01/07 00:26 ID:wi2TDzJm
「……あー、そのですね」
「ごめん、なさい……」
 一喝されて畏まってしまった播磨と、またやってしまった、とただただ後悔の沢近。いつもと
同じ微妙な空気が流れかけるのを、気を取り直した播磨が押しとどめる。
「ちっと待ってな」
「え?」
 そう言い残して走り出す。残された沢近は意味も分からず戸惑うだけ。
「理由を言いなさいよ、理由を」
 呟いてみても、返事をするべき人間はそこにはおらず、ただ雨の音だけが聞こえる。
 帰っちゃおうかしら、そう思ったりしたものの、結局待っている沢近。
(さすがにそれは、悪いわよ、ね)
 誰に対しての言い訳か、そんなことを考える。
 しばらくして。
「……」
 播磨が戻ってくる。しかし、その表情はひたすら暗い。
「ちょっと、どうしたの?」
「その、なんだ……スマン」
 だからアンタはいつもワケが分からないのよ、と問いただす沢近に、顛末を話す播磨。
 曰く。
『傘を買ってきてやろうと思ったんだよ、コンビニで』
 ……それで?(まあ、コイツにしては上々よね)
『そしたらよ』
 そしたら?(……なんだか分かった気がする)
『……金が無かった』
「……あのね、前々から思ってたんだけど」
「言うな。頼むから」
 背中を丸めて縮こまるその姿に、さすがの沢近も何も言えない。
「もういいから……それでどうするの?」
 放っておくとどこまでも沈んでいきそうなので、とりあえず無罪放免ということにして
話題を元に戻す沢近。こうなった以上、自分が走って帰るしか、と思っていると。
「……送ってやるよ」
「え――?」
 思いがけない言葉にまたしても戸惑う沢近。
「ホレ、行くぜ」
「……ありがとう」
 そしてそれに素直に従ってしまっている自分にまた驚く。さすがにこれを断ったらね、と
また誰かに対して言い訳。播磨はと言えば、
(ここで傘だけ渡して帰ったら恰好もつきそうなもんだけどな)
 俺だって濡れたくねェし、何より相手がコイツだからな、などと考えていたりする。口に
出したら即刻地獄行きである。
473rainy day:04/01/07 00:27 ID:wi2TDzJm
「……」
「……」
 ともあれ、結局一つ傘の下に、ということになった二人だったが、これまたいつも通りに
会話は一切無し。流れる微妙な空気、なんとはなしに感じる気恥ずかしさ、そんなものから
下を向いて歩いていた沢近だったが、ふと顔を上げて気がつく。
「止みそうじゃない?雨」
「そうみてェだな」
 いつの間にか雨足は弱まり、空も明るくなり始めている。やがて名残を惜しむように降って
いた小雨も上がり、晴れ間が雲の合間に顔を出す。
「止んだな」
「……そうね」
 傘を閉じる播磨。
 二人の距離が少し離れる。
 そして。
「――――虹」
 雨上がりの空には大きな橋が架かっていた。
 思わず立ち止まってしまった二人は、並んでそれを見上げる。
 遙か遠くを始点にして、また遙か遠くの対岸に渡る七色の橋。
「――――」
 無言、けれど流れる空気は先ほどまでとは違う穏やかなもの。心地よい沈黙。
「……帰るか」
「……うん」
 どれくらいそうしていたのか、日はずいぶんと傾いて、虹は消えつつあった。空を見上げるのを
やめた二人はまた歩き出したが、その雰囲気は変わらず穏やかなままだった。
 やがて播磨の家に着く。
「もうちょっと待ってりゃよかったのかもな」
「でもそうしたら虹は見られなかったかもしれないわよ?」
 久しぶりに軽口をたたきあうような会話。
「じゃあな」
「ええ、またね」
 そう別れようとしたが、あーそうだ、という播磨の声に呼び止められる沢近。
「何?」
 振り返って尋ねた彼女に、どう言うべきをちょっと考えてから。
「がんばれよ」
 播磨はそれだけを言った。
「……?」
「ソレだよ、ソレ。親父さんに作ってやるんだろ?確か」
 沢近の提げる袋を指して言う。
「っ……」
 予想もしていなかったことに、またしても言葉につまる沢近。目を白黒させているその姿に、
「悪ぃ、妙なこと言っちまった」
 そう言って背を向ける播磨。
「……ありがとう」
 その背中に届くか否か、そんな小さな声で呟く沢近。播磨の方は聞こえているのかいないのか、
そのままふらりと家の中に消えていく。
「……ふう」
 急に肩の力が抜けたような感覚に一息つく沢近。なんだかずいぶんと二人ともおかしな感じだった
気がする。
(ま、雨のせいよね、きっと)
 何度目かの言い訳をしてから歩き出す沢近。
 濡れて気持ちが悪いはずの制服が、その身に不思議と心地よい冷たさを与えてくれているような、
そんな気持ちとともに。
474rainy day:04/01/07 00:29 ID:wi2TDzJm
播磨がらしくないこと口走ってるのは……酒でも呑んでたんです、きっと。
GOO GOO GOOOOOOOD JOOOOOOB!
妙なところに鋭い播磨、(・∀・)イイ
しかし、肝心なところには鈍いわけだが。報われない奴だ。
476 :04/01/07 00:35 ID:M9RkgWze
 俺、旗派に転びそう・・・
まーた性懲りもなくネタ書いちまった
これで最後にするから許してくれ
ホントはまだあんだけど
478イトコとケンちゃん:04/01/07 01:21 ID:DeKgHSpb
播磨んち

天満「お邪魔しまーっす」
播磨「ど、どうぞ 入ってくれ」
天満「そいえばさ、播磨君と刑部先生って従姉弟なんだよね
   八雲に聞いたよ ねー刑部センセ今いないの?」
播磨「いねーよ まだガッコだろ だ、だからてん・・塚本!」
天満「ん?」
479イトコとケンちゃん:04/01/07 01:22 ID:DeKgHSpb

絃子「ただいま 拳児君 拳児君いるのか?」(ガラガラ)
播磨「チッ…」
絃子「なんだいるんじゃないか…ん?」
天満「こんにちわー」
絃子「ああこんにちは なんだ拳児君付き合ってるのか?」
播磨「そんなんじゃねーよ」
絃子「全然知らなかったよ こういうことは言ってくれないと」
播磨「もういいから出てけよ!」
絃子「君、彼女が来てるのにもっと髪ちゃんとならないのかな?」(サワサワ)
播磨「さわんな!」
絃子「さわるなとは…こういうこと言うんだよ どう思う塚本君?」
播磨「出てけよ!」
絃子「…私は具合が悪いんだぞ?」
播磨「じゃあ部屋で寝てりゃいいじゃねーか!」
絃子「病院に行こうと思って1回帰ってきているのに…なぜそんなにケンケン言うのかね?」
播磨「じゃあ早くいけよ!」
絃子「見てみろ 塚本君に笑われてるじゃないか」(ベランダに向う)
播磨「なにしてんだよ!」
絃子「洗濯物を取りに来たんじゃないか ケンケン言いなさんな」
(洗濯物を取りこむ絃子)
480イトコとケンちゃん:04/01/07 01:23 ID:DeKgHSpb

絃子「すまんな塚本君 お愛想なしで」
天満「いえいえ だいじょぶですよ」
絃子「塚本君は兄弟はいるのかね?」
播磨「…聞かなくても知ってるだろ」
天満「はい 妹がいます」
絃子「そうか みてみろ拳児君 一人っ子も寂しいもんだぞ」
播磨「妹がいるって言ってんだろ!」
絃子「勉強はできるほうなのかね?」
播磨「オメー俺らの物理の担任だろ!」
天満「えーと…それは…」
絃子「よっこいしょ…と」(座りこむ)
播磨「なにしてんだよ!」
絃子「洗濯物をたたむんじゃないか」
播磨「他いってたためよ!」
絃子「いいじゃないか ヤングとしゃべりたいんだよ」
播磨「学校で好きなだけしゃべれるだろが!」
絃子「いやー拳児君 腰がホント痛いんだよ この前もCTスキャナ?というのか?あれ
   あれが出てきたんだぞ 怖かったよ 正直ドキドキした」
481イトコとケンちゃん:04/01/07 01:24 ID:DeKgHSpb

絃子「……拳児君 君、パンツちゃんとかえてるのか?」
播磨「!!! 出すなよオメー!」
絃子「君、いつもウンコつけてるじゃないか」
播磨「オメー殺すぞ!」
絃子「この間は前がカピカピになってたぞ あれはどういうことだ 
   私がカッコ悪いじゃないか」
播磨「オマエ絶対殺してやるからな!」
絃子「なぜ殺されなきゃならないんだ」
播磨「もう早くいけよ!」
絃子「わかったよ いくよ 全く君はチンピラだな言うことが
   それぐらい学校でも発言権あればいいんだがな」(服を脱ぎ始める)
天満「!」
播磨「なにしてんだよ!」
絃子「下着かえるんじゃないか 見ないでくれたまえ」
播磨「見るか!」
絃子「…塚本君はこういうのはどうかな」(天満にブラをあてがう)
播磨「なにしてんだ!オメーホントに殺すぞ!おい!」
絃子「そんな目で睨まれても私は全然怖くない 怖くないぞ私は!」

播磨「……オネガイシマス モウデテッテクダサイ イトコサン」
天満「・・・・・・・・・」
オカンとマー君かよw
播磨、全会話突っ込み役だな…息もたんぞ。
484436:04/01/07 02:00 ID:yYUgaIj0
「cat meets girl」書いてる人、
正直俺の読みが甘かった。参った。
・・・でもせめてgirlsにしてくれれば・・・
塚本姉妹+烏丸でやってもオモロかったかも

八雲「・・・姉さん、ちゃんと下着替えてる?
   こないだなんて血がもれて股のとこパリパリに
   なってたよ?私がかっこ悪いじゃない」
>>485
  _, ._
(;´Д`)
昨日冷え込んだから、体が何かだるくてさー。
(゚ν゚)ヲハナムズムズーだから塩水を鼻から飲もうとしたんだよ、
そしたらさ砂糖水だった。

飼い犬に舐められるし、何かね寝てたら蟻が鼻の穴に入ってきた。
もうだめ、死んじゃう。
鼻に蟻んこ詰まらせて、死んじゃう。

そんなおいらに愛情を下さい。
>>485
そんなのヤクモンじゃないやい。
>>442
いけないことしてるヤクモン・・・

エロパロ板にて、詳細希望・・・w
伊織にマジックでヒゲを描きました
なんてイケナイことをしてるんだヤクモン・・・!
だから伊織によく逃げられるんだよ。
播磨の名を呟きながら、伊織にマジックでひげを書くヤクモン。


だめだ・・・ワライガトマラン
493cat meets girl:04/01/07 21:00 ID:YWxYmVVS

「あら」

 昼下がりのラウンジで、ゆうゆうとと眠っていた伊織に声を投げかけ
たのは、沢近愛理嬢であった。

 彼女は、たまにはのんびり一人で昼食を食べてみよう、とラウンジに
赴いたのだが、さすがはカップル達の人気スポット、見事に空いている
席が見当たらない。
 やっとの思いで見つけたスミっこの座席には、悠然とうずくまる黒猫
が先客としてう居座っていた。

「相席してもいいかしら?」

 そう尋ねる沢近にも、伊織は目もくれない。
 無視は消極的了承と判断し、猫と相席でお弁当を食べ始める。

  lunch time… 

 食事はゆっくり食べることが染み付いてしまった沢近、食べ終えたこ
ろには、まわりはがらんとしていた。
 ふと見れば、猫は依然とそこにいる。立ち去らないところを見ると、
どうやらここは彼のお気に入りらしい。

 気持ちよさそうに眠っている猫を見て、ふと、撫でてみたくなった。
こういうものは、一度考え出すと止まらないもので、自然とウズウズ
してきた。
 そして、ついに我慢できずに、そろりそろりと手を伸ばす。が

 スカッ
 伊織はかわした。

「……」

 もう一度試みるも・・・
 スカッ
 見事に伊織はかわした。

「………」

 再び試みるも…
 スカッ
 華麗に伊織はかわした。

「…………かわいくない猫ね、素直にならないと嫌われるわよ?」

 これには沢近愛理もきれいな顔に、への字の口。それにしても、その
セリフはなんともはや――いや言うまい。
 しばしの思案のあと、どうやらこの猫は人間に触られるのがキライら
しい、きっと、そうなのだろう、と勝手に納得して、沢近は席を立った。
そろそろ授業が始まる時間だ。

 少し離れて、なんともなしに後ろを振り返ると、先ほどの猫の前に男
がいた。

「…ヒゲじゃない」

 ヒゲこと播磨拳児は、猫と正対し、じっと見つめている。まさか、あ
の男、猫を食べるんじゃないでしょうね、などと大変失礼なことを考え
る沢近。
 播磨はしゃがみこみ、チチチ、と黒猫を誘う。
 それを見ていて、プクク、と笑ってしった沢近。
 あのヒゲが動物を可愛がろうとするとは、なにかの間違いかギャグで
はないか、それにその猫は人に触れられるのが――
496cat meets girl:04/01/07 21:03 ID:YWxYmVVS

 シュバッ!
 まさしく猫まっしぐら。

「…」

 言葉が出ない沢近。
 それではなにか、自分はあのヒゲよりも動物に嫌われると。あのヒゲ
よりも?あのヒゲよりも?
 なかなか播磨に失礼だが、沢近にしてみれば、現在、負けたくない男
銀河ギリギリブッチギリbPの播磨である。これは痛恨のダメージだっ
たらしい。

 一方、播磨といえば、少々の雑談(?)の末、現在逃走中との彼を引き
止めるワケにもいかず、さっさと別れを済ませる。
 そして、教室に戻ろうとすると

 目の前に、えらく目つきの怖い美人がいた。
497cat meets girl:04/01/07 21:04 ID:YWxYmVVS

「な、なんだよ…」
「なんでもないわよ!」

 なんでもないなら、なに怒ってんだ、と言いたい播磨拳児だったが、
こういうのに慣れたのか、賢しく何も言わなかった。
 しからば教室に帰ろうとすると

「…ちょっと、なんでアンタもこっちに来るのよ」
「オレも教室に戻んだよ」
「なんで不良のアンタが…!……!?…!」
「ざけんな! あのな…!…!……!?」

 その後、喧々囂々と口げんかしていたら、二人仲良く遅刻してしまっ
たのだから笑い話である。
 黒猫はそんな二人をじーっ、と見たかと思うと、仲がいいなあ、と
言っている様に、嬉しそうに一鳴きした。
 ニャ〜オ。

 cat meets girl,Tommrow girl is …?
>>493-497
前半の間がなんとも絶妙。
個人的には沢近の笑い方がかわいいなぁって思ったり。
>493-497
上手いですねぇ。沢近と播磨の掛け合いが実にg
しかし、銀河ギリギリブッチギリbPって、DBかよ、と小一時間w
500DEEP to you:04/01/07 23:01 ID:AODqW+Uw
「お前、うざってーんだよ」
なんで…、だって私…
「俺はお前のヒモじゃねーんだ」
ちがう、私そんなこと思ってない。ただあなたが…
「鍵、ここに置いていくぜ」
まってまってまって……

何も言葉に出せず彼は静かに店を出た
501DEEP to you:04/01/07 23:02 ID:AODqW+Uw
なんでこんなことになったんだろう。雨の中ひとり傘をさして歩く
この人こそはと思った、私の永遠の人になるのはこの人しかいないと
でも、いつも私は拒絶される。
そのひとを好きになればなるほど自分自身が止められなくなるのだ
『私だけを見つめてほしい』
その思いは相手を愛の鎖で縛ってしまう。身動きが取れなくなった人は疲れ私から離れていく
…わかっているのだ、私がもう少し引けばお互い幸せになるということを。
でもだめ、恋をすると自分が止められない燃え尽きてもいいと思えるほどに
依存?…そうかもしれない私は燃やされたいのだ
愛という煉獄の炎に

マンションの近くの公園に差し掛かかり、コンビニで何か買おうかと考えたとき
ふと見たブランコに人がいた
降りしきる雨の中すべての悲しみを背負ったような雰囲気が彼にはあった
(……あの人も何かつらいことがあったのかな)
しばらく眺めている彼女の心には同じように悲しむ男がとても身近に感じられた
(……声、かけてみようかな)
それは親切心から出た言葉ではなく、ただ誰かにそばにいてほしかったから。
たった今彼と別れた自分の心を誰でもいいから癒してほしかったから。
誰かと繋がっていたかったから
だから

「ねぇ あなた 何してるの こんなトコで?」

はじまりは愛じゃなかった それはわかっていた
502DEEP to you:04/01/07 23:02 ID:AODqW+Uw
彼との生活は楽しかった。あまりしゃべるほうではなく乱暴者に見えるが思いやりを持っていた
6人目の彼と別れたその日のうちに、高校生のコと暮らすのはどうかとも思ったが
彼の澄んだ眼と自暴自棄な態度に母性本能がくすぐられ一緒に住むことにした
最初に会ったときは迫ってみたりしたのだが、まだ前の彼女に未練があるようで逃げられた。
おそらくまだ経験が無いだろう。意外とうぶらしい。それ以来まだなにもしていない
でも私には仕事から帰ってきたとき、部屋で待っていてくれている彼がとてもうれしかった
いつも一ヶ月は落ち込む私がほんの数日で立ち直れたのも彼のおかげだろう
一緒に食事したり、TVを見たり、話をするだけで私は満足だった
一方、これは愛ではないともわかっていた
愛ならばキスしたいと思うだろう、繋がりたいと思うだろう。でも彼とはそう思えなかった
『これはお互いの慰めの行為、恋愛関係ではない』
だから、このままでいい。この心地よい関係のまま生活していきたい。
いつしか私はそうおもうようになった。
そして彼と出会ってから十日が過ぎ、あの日が来た
503DEEP to you:04/01/07 23:03 ID:AODqW+Uw
(ふふ…、ハリオ喜ぶかな…)
珍しく仕事が早く終わった私はスーパーで買い物をしていた
これども料理は得意なほうだ特に男性の好きなものはしっかり身についている
(やっぱり肉じゃがよねみんなスキって言ってるし)
じゃがいも、糸コン、人参、玉ねぎ、肉、etc……
ついつい鼻歌を歌いながら食材を選んでいく
…………
「うーん、ちょっと買いすぎちゃったかなー。まぁ育ち盛りだからだいじょぶか」
2人分にしてはちょっと多めな食材を片手にもち家路を急ぐ
「ふふっ、びっくりするだろうなー」
彼の喜ぶ顔を思い浮かべ足取りも軽く歩く

ふいに世界から音が消え
そして見てしまったものは
彼が、女と、見つめあい、手を繋ぐ、風景

そのとき私の心に、再び、煉獄の炎が渦巻いた
504DEEP to you:04/01/07 23:06 ID:AODqW+Uw
3巻のお姉さんをみて自分なりに妄想した結果こんなのができました
後編も考えてます。ハッピーにするか、鬱にするか、どうしよう
お姉さんの視点からみた話は新鮮でヨカッタです(≧∀≦)
ハッピーエンドでも鬱オチでも 良い話になりそうですが、自分としては
どちらにしても、最後は前向きな感じがでてて欲しいですね。
506「LAST SAMURAI」 ◆Eri//qLXXY :04/01/07 23:33 ID:qSAjRQlK
エロパロ板から来ました。播磨&沢近です。
タイトル先にありきで苦しいネタですが、しばしお付き合い下さい。
507○沢近 愛理。手には剃刀。○:04/01/07 23:35 ID:qSAjRQlK

「待ちなさい、そこのヒゲ!いいかげん剃りなさいよ!」
「だーっ!しつけーよ沢近!なんでテメーに指図されなきゃなんねーんだよ。」
「見ててヤなのよ。うっとうしいったらありゃしない。」
追い詰められた播磨。対峙する二人。最近よく見かける風景だ。

背後から両腕を掴もうとする人影。すんでのところで身をかわす。
「ちッ──。」 美琴と晶が姿を現した。その後ろには天満もいる。
「俺サマを見くびんなよ。オメーらの行動パターンなぞ、全てこのアタマにインプラントされてんのよ!」
「…インプット、でしょ。」
「おう、そうとも言うな。」
「そうとしか言わないわよ。」
「つーか、埋め込まれてたら怖ぇーよ。」

「いい加減にしとけよ!だいたいなあ、なんでお前らまで一緒になってんだよ。」
「いや……なんか面白そうだから。」
「剃り甲斐がありそう。」
「てへへ、播磨くんの素顔、私も見てみたいかなー…って。」
「て…塚本までそんなこと!」
ダーーッと溢れる、滝のような涙。
「キミだけは、キミだけは違うと思ってたのによ!」
プチン。
「ん?」 殺気を感じ、とっさに身構える。ケンカ慣れした本能が、危険を告げている。
立て膝をついた播磨に飛び乗る沢近。鼻面を膝小僧が襲う。
だが、播磨はすかさず顔面をブロックし、膝の直撃を免れた。
「はっ!甘ぇーーよ!テメーの攻撃は既に見切って…」
得意げに振り返ると、一旦播磨の眼前を通過した沢近は、すぐに切り返してきていた。
全走力で駆け抜けざま、播磨の鼻先に膝を食い込ませる。
みしいっ。
「美琴ちゃん…あれって愛理ちゃんの新技?」
「ああ、"葉隠れ"だな。なんか懐かしーな。」
「なんで?…キレどころがわかんねー…よ…。」
播磨 拳児、TKO。
508○周防 美琴、友達想い。○:04/01/07 23:37 ID:qSAjRQlK

「なあハリマ。お前最近、沢近となんかあった?」
椅子に寄りかかり、上を向いて鼻を押さえる播磨に話しかけたのは、周防 美琴。
「あぁ?急になんだよ。つーか何で俺に訊く。」
「だって、お前らつきあってんだろ?」
ブーーーーーッッ!!止まりかけていた鼻血が噴き出す。
「な、な、な………?」
なんで知ってんだって顔。耳まで真っ赤にして。
「いや、見りゃわかんだろ。海以来、なんか雰囲気が違うってゆーかさ。」
「べっべっべっ別に何もねーよ。なんにもよ!」
みんなで海に行ったあの日、二人は単なる級友のラインを越えた。それは本当。
しかしここ最近二人の間にはとりたてて何もない。それも本当。
逆に何もないのが問題なのかも知れない、とふと思う。
「……アイツがどうかしたのかよ。」
「んー…ここんとこいっつもイラついてるって感じでさ。よく周りに噛み付くっての?
まあ、毎日播磨とバトるのは置いとくとして、」
「置いとくのかよ!」
「特に塚本には何かと食ってかかるっていうか。ほら塚本はさ、なにせあんなんだから
何かとボケ倒すんだけどよ、そこに入るツッコミとかがとにかくキチぃんだよ。」
「……」
「ハリマに聞けば何かわかるかと思ったんだけどな。」
「俺にゃあわかんねーよ。女の…お嬢の気持ちなんかよ。」
「わかった。わかったからさ。とりあえず…ティッシュ詰めとけ。」
「おお?」
気がつくと放課後の教室が、血の海になりつつあった。
509○播磨 拳児、悩み多き年頃。○:04/01/07 23:39 ID:qSAjRQlK

お嬢の気持ちなんか、わからない。 それは播磨の、偽らざる本音だった。

一度、突然夕食を作りに押しかけてきたことがあった。献立は、肉じゃが。
二択で、カレーが好きと言ったのにも関わらずだ。
”あの人には、『特製』肉じゃが作ってもらってたクセに。”
間違って告白されたあの日に会った、ナゾのお姉さんの言葉が引っかかっていたらしい。
彼が紘子先生の家に居候していることを知らなかった彼女は、部屋で出くわした時
大きく取り乱した。
”播磨くんとは──どういう関係なんですか!?”
”……ここで一緒に暮らしている。学校では秘密だがね。”
紘子先生はこういう時、相手の反応を楽しむかのように、わざと誤解を招くようなことを言う。
案の定、二人の『同棲』にすっかり激昂した沢近は、播磨に顔面蹴りを見舞った。
その後なんとか説明して誤解を解き三人で夕食を食べたのだが、
”紘子=イトコって、つまんないシャレじゃない!” と、なかなか聞く耳を持ってくれなかった。
沢近は、播磨が天満に抱いていた想いを知らない。
紘子先生に冗談半分でバラされたら…と思うと、針のムシロに座るような気分で──
正直あまり飲めない酒も、飲まずにはいられないような夜だった。
肝心の料理の味も、よく覚えていないほどに。それはそれで、後々ケンカの種となっている。
ジェラシーもほどほどなら可愛いが、度が過ぎると…ちょっと重い。

最近はとみに、外見にとにかくダメ出しされる。
いわく、サングラスは学生らしくない。いわく、ヒゲは汚らしい。
あろうことかブショウヒゲなどと言い放つ。こだわりのこのヒゲを。
お嬢に相応しく、王子様らしくなさいってことか。気に入らねえ。

お嬢の気持ちなんか、わからない。つまらない型には、はめられたくない。

バイトを終え家に帰ると、玄関の靴がいつもより一足多かった。見慣れた、女物の靴。
「まさか────。」
居間にいたのは、やはり沢近。紘子と食卓を囲み、すっかり意気投合してしている。
「ハリマーーーー! 遅えぞおっ!」
相当に酔っ払っているようだ。ビールの空き缶やワイン、日本酒など、種々雑多な酒の瓶が散乱している。
「沢近、お前何しに来たんだよ?」
「何しにきたとはご挨拶らなあ?おまえがこないだ味わわなかったアタシの手料理を喰らわせに来たんらよお。」
既に、ろれつが回っていない。
「喰らわせって……。」
昼間はそんな素振りも見せなかったくせに。少し情緒不安定にも見え、心配になる。
「紘子よお、自分トコの生徒にこんなに酒飲ますなよ……。」
「拳児クンよ。彼氏に放ったらかしにされて、寂しい彼女がまた訪ねてきたようだぞ。
なかなかに健気だとは思わないか?」
「余計なお世話だよ!オメーが絡むと話がムダにややこしくなるんだよ!」
「おっと、酒が切れたようだ。ちょっと買ってくるから、適当にやっていてくれ。」
「お、おい紘子!二人っきりにすんなよ!頼む、お願いだから待って!」
「私がいると話がしづらいだろう?うまくやるんだな。」
「意地悪言うなって!ちょっと、紘子サン?おいちょっと待──」
ガチャン。
無情にもドアは閉められた。

「…ええと……。」
いつも上品に飲んでいる沢近が、こんなにベロベロになるのは極めて珍しい。
「ハリマっ!座れ!とりあえず飲め!」
「飲めってもよ…酒がねえよ、酒が。」
「あーん?アタシの酒が飲めねーってかあ?」
「それは醤油だろうがよ!塩分高ぇーよ!死んじまうよ!」
「んじゃあ、肉じゃが食え!ほれ食え!早く食え!」
「わーった、わーったから自分で食うからモガ…ウプ…」
「ハリマーーー!頬張ってんじゃねえ!ちゃんと味わって食えよ!」
「お前がやったんだよ!お前が!」
「さあさあ美味しく食べたらいよいよ本日のメインイベントれす。」
「人の話を聞けよ…。」
511○正しくは、『不精ヒゲ』。○:04/01/07 23:42 ID:qSAjRQlK

「じゃ〜〜〜ん♪」
高く掲げた手に鈍く光る剃刀。
「今日は、今日こそはそのヒゲを剃りに来ました。それが本題れす。」
「またその話かよ!物騒なモン持ち歩いてんじゃねーよ!」
「ブショーヒゲなんか、格好悪いろ!」
「ちゃんと毎朝手入れしてんだよ!どこがブショウだってんだよ!」
「思いっきりブショーらろ! まるで昔のサムライみたいに!」
「………」
武将…ヒゲ。
「…面白すぎんぜこのヤロー。日本語もっと勉強しやがれ!」
「うるせえろ!切り落とすろ!」
一閃。
「あっあっあっ!危ねえーっっ!!」

「……なんで剃らないのよ?」
口調が普通に戻った。思い詰めたような声音に、ハッとする播磨。
「なんでって、そりゃあお前──」
「まだ忘れられないんじゃないの!未練タラタラなんじゃないのっ!!」
「な…お前、何言って──」
「まだ…あのコのこと見てんじゃないの?アタシは代わりなんじゃないの?どっかで…比べてんじゃないの?」
「!!」
「同じクラスで、アンタの気持ちも知らないで、自覚もなくて愛理ちゃん愛理ちゃんって、
アタシなんかメじゃないって言われてるみたいで悔しくて、いいコだってのはわかってるのに
わざときつく当たる自分がイヤでイヤで……」
「沢近…?」
「アンタといると…疲れる。もうクタクタ…。なんで、なんでアンタなんか──」

(なんでアンタなんか好きになったんだろう……)

彼女は知っていた。サングラスと、ヒゲに込められた想いを。想いが向けられた人を。
知っていたから、断ち切って欲しかった。自分の手で、断ち切りたかった。

「もうちっと…待っててくれや。俺ぁ見かけによらずバリケードなんでな。」
「………デリケート、でしょ。」
「おう、そうとも言うな。」
「ツッコミにくいったらないわ…。」
「とにかく──絶対、きっちりフッ切るからよ。自分で…。」
「───うん───。」
張り詰めたものがプツンと切れたかのように、程なく寝入ってしまった。
テーブルについた自分の両腕を枕にして穏やかな寝息を立てる沢近に、そっと布団を掛けてやる。


「ただいま……眠ったか。」
「紘子。てめぇ、コイツに天満ちゃんのこと…」
「私は何も言ってない。キミが教えたんだぞ。」
「俺?俺が…?」
播磨は覚えていなかった。以前夕食を共にした夜のことを。
あの時は播磨が酔いつぶれ、天満との馴れ初めから今に至る経緯を、全て話していたのだ。
「彼女、悲しそうな顔をしていたな。」
「そうか…俺が…俺かよ…。」

ツラかったんだな。言えよ、全くオメーはよ。
頬を伝う涙を拭い、髪を優しく撫でる。似合わないとは言ってくれるな。
513○『週刊少年漫画板』だしね。○:04/01/07 23:47 ID:qSAjRQlK

「しかし無防備な女の子と部屋に二人きりで、しかも自分の彼女なのに、指一本触れぬとは…不可解だな。」
「…俺ぁ──サムライだからよ。」
「?」
「武将なんだってよ、俺は。」
「ブ…ショウ。」
イヤホン越しに聞いた、先程のやり取りを思い出す。ああ、アレか。
フッと、思わず表情が弛む。ほんのわずかではあるが、学校ではまず見せない微笑。
「つくづく──キミといると飽きないな。」
「あぁ?」
「何でもない。で…サムライとこれと何の関係が?」
「ほら、言うじゃねえか。『武士は食わねどツマヨウジ』って。」
「……キミも一緒に、日本語を勉強するといい。」
「あぁ?なんだよそりゃ……!!てめー、やっぱり盗聴してやがったなッ!?」

朝。
いつものように播磨に駆け寄る沢近。
播磨は横に転がり、ガードレールを背にする。
「ほら来いよ金髪お嬢!壁を背にすりゃあ"葉隠れ"はできまい!」
勝ち誇る播磨の視界一杯に、靴底が広がった。
ぐわしっ。ぐわしっ。
「あ、顔面ウォッシュだ。」
「…しっかし、ヤツらの攻防も日々進化してやがんな。」
「毎日、飽きもせず……。」
播磨、リベンジならず。一見、いつもと同じ調子のやり取り。いやいやいや。同じじゃない。
「調子に乗んじゃないわよ!どんな些細な勝負も──私がアンタに負けるワケないでしょ!」
久しぶりに見せる、晴れやかな笑顔。やっぱコイツはこーでなくちゃな、と美琴は思う。
「It's true! It's true!」

 〜fin〜
(=゚ω゚=) ィィ!
GJ!
しかし、最近は沢近派がにわかに元気を取り戻しているようで
嬉しい限り。初期の八雲萌えSS連発も、あれはあれでステキだったけど。
二人が付き合いだした後のSSというのも逆に新鮮で良いですね!
GJです。萌えました
エロパロ板読まんと話の流れがわからんわな
518As usual:04/01/08 00:29 ID:NNej5Ykw
「なんだかサラ、ここに来るときいつもすごく楽しそう……」
「そう?私には八雲の方が楽しみにしてるように見えるんだけどな」
「そんなことない、と思うんだけど……」
 そう見えるかな、小声で訊く八雲に、私にはね、と悪戯っぽく答えるサラ。
 二人が訪れているのは休日の動物園。気候が穏やかになった秋、ということもあり、
なかなかのにぎわいを見せている。
 サラに言わせるとデート、ということなのだが、女の子二人でそれは違うんじゃない
かな、と思っている八雲。ちなみにそう言ってみたところ、私は八雲のこと大好きだよ、
などとあっさり返されてしまっている。
 もちろん八雲もサラが嫌い、などということは全くなく、この時間を楽しみにしている
ことに違いはない。ただ、彼女にはもう一つ思うところがあって――
「あ、いたいた。せんぱーい!」
 サラの声にのそっとこちらを向き、ん、と片手を挙げて応えるのは播磨。思い入れの
ある仲間たち、その顔を見る散歩はまだまだ継続中である。
「久しぶり……でもねえな」
 つーかよく会うよな、俺たちココで、と疑問符の播磨を、偶然ですよ偶然、と受け流す
サラ。異国の地で暮らすと人の扱いも上手くなる……とはどこかの帰国子女を見ると一概
には言えないところ。
「そうか、まあ別に二人なら構わねェけどな。それに比べて俺のクラスの連中はこう、
やたらとアグレッシブだからな……」
 珍しく人前でぼやくその表情は、なかなか深刻そうな様子。確かに彼の周りにはよく
言えば個性的、悪く言えば我の強い女性陣がそろっている。
「そうですね、姉さんも」
「ああいやいやいやいや、お姉さんはそんなことないぜ。うん。むしろだいかんげ……」
 八雲の呟きを遮るようにして、フォローだかなんだかよく分からないことを言いかけた
播磨だったが、その様子をくすくすと笑いながら見ているサラに気がついて途中でやめる。
「あー……スマン」
「そんな、謝るようなことじゃ……」
 こういう場合にほかに思いつかない播磨、ぺこりと頭を下げるのだが、それに八雲も慌てて
しまい、二人してぺこぺことお辞儀をしている。
「二人とも、周りを見た方がいいですよ」
 苦笑めいた顔のサラに二人が周囲を見回せば。
「ぐ……」
「あ……」
 辺りの視線の中心部にいるのは当然ながら自分たちなワケで。
「場所、変えましょうか?」
 その提案にもこくこくこく、と二人して頷く。それがどこか和やかな空気を呼んだりして、
両親に連れられた子供が手を振ったりしてくる。
「「……」」
 照れたような表情でそそくさと歩き出す二人と、こちらは笑顔でその後に続くサラ。傍目に
見れば、やはり微笑ましい光景である。
ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1070069061/276-285
↑これの続編ってことでおけ?
520As usual:04/01/08 00:30 ID:NNej5Ykw
 ともあれそこから遠ざかることしばらく、空いているベンチを見つけて三人で腰をおろす。
「やれやれだぜ……」
「……ふう」
 疲れ気味のその顔に、飲み物買ってきますね、とサラが立ち上がる。
「いや、俺が……」
「気にしないで下さい、先輩。たまにはおごらせてもらいます」
 それに、とここから先は声ではなく目で話す。
(月末ですから、ね)
(……スマン)
 そんなアイコンタクトには気がつかず、自分も、とサイフを取り出そうとしていた八雲
だったが、いいからいいから、といつものようにサラに押し切られる恰好。
「それじゃ行ってきますね」
 ごゆっくり、と言い残して売店へと向かうサラ。
 残された播磨と八雲。
「……」
「……」
(どうしていつもこうなんだろう……)
 決して播磨のことは嫌いではないし、頼りになるいい人だと思っている。けれど、いざ話すと
なると何を話していいか分からない。そんな自分を少し情けなく思う八雲。
「……サラってすごいな、そう思うんです」
 そして呟いたのは、友人の名だった。
「いつも待ってるだけの私をいろんな所に連れて行ってくれて、いろんなものを見せてくれて」
 心の中にあったものを言葉にしていく八雲。
「羨ましい、と思うんです。サラは私よりずっと、ずっと……」
「俺はな」
 黙って聞いていた播磨が口を開く。
「八雲ちゃんがダメなヤツだなんて思わないぜ、全然」
「え……」
「確かにちっとばかし消極的だ、とは思う。でもな、それだけだろ?」
 なんてことはない、という口振り。
「なんだかんだ言ってもやっぱり向き不向きがあるんだよ、人にゃ。俺が真人間になる、とかな」
 その言葉にくすりと笑みがこぼれる八雲。それを確認して播磨は続ける。
「全部一度になんてそりゃ無理だ。出来るところから変えていけばいい。それにな」
 一旦言葉を切る。
「変わりたいと思ってるなら絶対変われると思ってる、俺は」
521As usual:04/01/08 00:31 ID:NNej5Ykw
「播磨さん……」
「――なんてのが言えたらいいんだけどな。悪ぃ、受け売りなんだよコレ」
 誰の、という表情の八雲に、あまり見せない穏やかな表情で答える播磨。
「サラの、だ。もちろん俺も同じ意見だけどな」
「――――!」
「いやな、私が言うより先輩が言った方がいいんです、こういうことは、とか言われてな……」
 どういうわけか断れねェんだよな、と呟きつつ、さすがに恥ずかしかったのかぽりぽりと頭を
かきながら明後日の方を向いている播磨。
「機会があったら、ってことだったんでな。まあちょうどいいか、と……」
「そう、ですか……」
(あー、らしくねえな、やっぱりこういうのは)
 そうぼやく横顔は口を真一文字に結んで決めようとしているけれど、隣の八雲には真っ赤に見え――
(――――――え?)
 口を真一文字に結んで。
 播磨は喋っていない。
 それはつまり――
「お待たせっ……と、もしかしてタイミング間違えたかな……」
 赤くなっている播磨とその顔を見つめる八雲。
 確かに見ようによってはいろいろと考えられる状況。
「別になんでもないぜ。……なあ?」
「はい……」
 その顔で言われても説得力ないですよ、と言うサラにいやだから、と食い下がる播磨。それが
逆にサラに食いつかれることとなり……
(これが楽しみだから)
 それを見ながらあらためて思う八雲。
 この三人の――もちろんもっと増えたっていいと思う――時間こそ、自分が大切にしているものだ、と。
 そんなことを思いながら空を見上げる。
 やりこめられた播磨の唸るような声、そしてサラの笑い声が秋晴れの空に吸い込まれていく。
 どこまでも高いその空の下で、会話に加わろうと八雲も口を開いた――――
522As usual:04/01/08 00:33 ID:NNej5Ykw
 帰り道。
「それで、八雲」
「……何?」
「先輩と何を話してたのかな、って」
「……」
「やーくーもっ」
「……秘密」


むしろどちらも選べない俺はどうしたら、と思いつつ流れを無視して八雲。
すまねぇ……
以上って事でOK?
終わり?割り込んでスマソ

>>519はLAST SAMURAIのことね
GJ!
今日は奈良祭りでつね
>>521
>口を真一文字に結んで。
>播磨は喋っていない。
>それはつまり――

キ、キ、キ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
上手いッス、最高ッス、おにぎり派ヽ(´ー`)ノバンザーイですよ。
奈良がいなくても奈良祭りw
ここの職人さん達のおかげで荒んだ心が癒される
アリガトゴザマス
>506
俺の中で旗派が再燃しました!
530旗派:04/01/08 09:54 ID:qSd8cxtk
実は沢近と美琴がケンカを始めてから収束するに至るまでのマガジンを風邪をひいてて
買ってないんですよ。ってことでだれかSS風にその話を投下して欲しい。もちろん内
面描写ありできぼん
>>530 【「大丈夫だよ」と彼女は言った】
で描写されてますよ 
532旗派:04/01/08 10:36 ID:gJmdJpBt
忠実にマンガに沿った形で表現して欲しいんだよなあ。そういうのをきぼ=ん
一つ質問だが
読み手としてはネタがかぶったような話が連続で投下されてもOK?

壱へたれ書き手としては、なるだけありのままに評価して欲しいから
膨満感な状態に同じ料理を出されるのは如何な物かと考えた。
時期をずらすだけで評価も変わりそうだし…

どうでしょう?>ALL
構わんよ ここはただの誉め師しかいない場所じゃないしね
俺は続けてでも全然良いけどな、面白い物はいつ読んでも面白し。

早く読みたいだけという話もあるがw
ネタが幾ら使いつぶされていようとも
作者の力量によってそれは金にも鉄くずにもなる。

とりあえず書くんだ!!
なんか無謀に誉めすぎててどうかと思うよ。キモイ。
それだけ良い作品ばかりってことだろ。
誰もひどい作品を誉めません
ほんとに、ひねくれものってのはどこにでもいるもんだな
<489エロパロにて詳細希望
書きました。満足してくれれば幸いです。
おまいらはすごいな。SS読んでも全然面白くない。なんつーか本編じゃないとって感じだよ。
まあここに書くことじゃないか。
どうやら現在投下されているSSはない模様。
よってこれより投下を行います。興味、関心のない方は
待避することをお勧めします。

>>541
皆がそうとは思いませんが、逆に貴方のような存在を納得させ
ようとしている職人も居ます。
よって、漠然とした板の雰囲気を書き込むのではなく
各作品毎に批評を願いたい。
543Stray Cats:04/01/08 16:09 ID:3ghiskBD

 爽やかな風が木々を揺らす。
 我はそろそろ日課となりつつある護衛につくため、ガッコウへやってきた。
 途中、主とは異なるが興味深い雰囲気を持つ人間の女に話しかけられるが
 我は相手にすることもなく最優先事項である主の姿を求めて歩を進めた。

 自己紹介が遅れたな。 
 我が名は伊織。猫をやっている。
 そして、我を膝の上に据え置き、安らかな寝息を立てているこの人間の女。
 彼女こそ我が主にして銘主、塚本八雲、その人である。
 今日の気候は確かに穏やかで、昼寝をするのには最適だろう。
 我もついついウトウトとしてしまう。
 それは猫としての性でもあるし、決して悪いことではない。
 だが、彼女がこうしている間は別だ。
 なぜなら我は彼女を守護する”サムライ”なのだからだ。
544Stray Cats:04/01/08 16:10 ID:3ghiskBD
主との馴れ初めは春。
 放浪の旅の末、とあるジンジャ(人間がサンパイというものをやる建物らしい)に
腰を落ち着けて暫く経ったある日の夕方のことだ。
 主(この時はまだ人間の女程度にしか意識していなかった)は、落ちる夕日を背に
何の前触れもなく我の前に現れた。

「こんな所に猫が住み着いていたんだ…」
 何を言っているかわからないが、何か言葉を言った後、人間の女はその身をかがめて
我を凝視する。
『どのような人間も初見は警戒すべし』
 母の教えは、その懐から離れて数年、嫌と言うほど正しいことを身にしみて分かっていた。
 経験上、このジンジャという建物は人間の訪れが少なく(何故か特定の時期になると大勢の
人間がやってきて騒ぎ立てるが)塒にするには悪くないところであるということはわかっていた。
 そのことを踏まえて思考してみる。
 この目の前の人間の目的は何であろう?
545Stray Cats:04/01/08 16:12 ID:3ghiskBD
 我を虐げにやってきた。
 ――否。この人間からはそういった雰囲気が感じられない。
 数多の修羅場をくぐり抜けてきた我の勘がこの人間の女の攻撃性を否定する。
 しかし、まだ安心するわけにはいかない。

 我を捕獲するために来た。
 ――否。まず、そのような道具が見あたらない。
 体力では勝るものの、俊敏さや平行感覚、小回りの良さは我ら猫に遙かに劣る人間が
素手で捕まえに来るはずがない。手に持っているカバンの大きさから考えても仲間達がやられた
と聞く捕獲道具を収納できるかどうか甚だ疑問だ。よってこれも違うだろう。

 食料を配布しに来た。
 ――この可能性は否定できない。
 何故か人間の中には我らに好意を抱き、食料を配布する輩が存在する。
 こちらとしては有益な存在であり、そのような人間は重宝する。
 新参者の我は、まだここら辺の縄張りでは食事を取ることも一仕事だ。
 人間達が定期的に捨てるゴミブクロから食事にありつくのが最も合理的で確実なのだが
そういった所謂手堅い箇所は先客が多く、彼らといざこざを交えてまで有り付くのは
外交の面から見ても芳しくない。
 誤解されては困るが、決して戦いそのものを恐れているわけではない。
 先達に畏まることはメリットも多く、土地になれていないならば彼らの知識に肖ることは多い。
 だが譲れないこともある。
 そのときこそ戦の時だ。
 我が額の十字傷はそんなことを考えることもなかった若さ故の過ちであり、己を戒める
悔恨の傷でもあり、初勝利の誇り高い勲章でもある。
546Stray Cats:04/01/08 16:15 ID:3ghiskBD
 そのようなことを考えていると、目前の人間はおもむろにカバンを開け
中から小さな箱のようなものを取りだした。
 緩やかに風が吹き、その箱からいい匂いを運んでくる。
「今日はね、ちょっと食欲がなかったの…」

 ――今だからこそ言えるが、月齢周期で強まる他の人間には備わっていない主の特異能力。
 おそらくその力でこの時は精神的に参っていたのだろう――

 鶏肉に何らかの調理法を用いたその香ばしい匂いの食べ物。それを数個、我の前に置く。
 夕餉のために町に繰り出そうと考えていた矢先のことだ。
 当然我が胃もその旨そうな肉の塊に顫動活動を行う。

 くー。

「お腹、空いてたんだね…」
 人間の女はまた何か言うと、すっと立ち上がり肉から(当然我からも)少し距離を取った。
 伸びた影がまた小さくなり人間はまた何か喋った。
「お食べ」
 足下にはご馳走、人間との距離もある、加えて空腹だ。
 今すぐにでも飛びつきたいと思う心を、しかしすんでのところでねじ伏せる。
 油断は禁物だ。
 食料の配布と見せかけ、その実、食事に有り付いた仲間が倒れる。
 そんな逸話を母から教えてもらったことがある。
 機敏さで劣る人間が取る捕獲方法の一つだそうだ。なんとも狡猾な奴らだ。
 その話を思い出し、我は人間の女と肉、交互に見比べる。
 間近に展開される至極の時とその後に続く命の危機。
 答えは当然一つだ。
547Stray Cats:04/01/08 16:15 ID:3ghiskBD
 我は後ろ髪引かれる思いでジンジャの床下へと歩き出した。
「あ、」
 後ろで小さく声を上げる人間の女。
 我は歩みを止めず床下に潜り込んだ。
 それからしばらく人間の女は同じ格好で同じ場所にいたが、我が姿を現さないと分かると
諦めたのかジンジャから離れていった。
 人間が離れ、もう戻ってこないことを確認して我は再度肉に近づいた。
 実にいい匂いだ。
 日も既に暮れかけている。これから町へ繰り出してもこれ以上の食料にはありつけまい。
 最後まで我らを虐げたり捕獲しようとする、そんな人間達特有の雰囲気を表さなかった人間の女
 を再び思い出す。
(食べてみるか…)
 自らの経験と本能の合意により我は肉を口にした。
 ――旨い!
 同じようなものはゴミブクロから食したことがあるが、本当にアレは同じものだったのだろうか?
 いや、これがおかしいのか?
 そんな疑問も一瞬で、我は数日ぶりのご馳走に舌鼓を打った。

 全てを平らげた後、心地よい満足感が我を満たす。
 暫しゆるりとした後、いつもの日課通りに食後の運動に町へ赴こうとした我に
一陣の風が吹き抜ける。
 吹き抜けたその風が、少し寒く感じたのは、夜が近いだけだろうか?
 そんなことを考えながら我はきらきらと光りだした町へ足を向けた。
548Stray Cats:04/01/08 16:16 ID:3ghiskBD
 次の日の朝、再び現れた彼女は肉(後にこれがカラアゲなるものだということを知る)が
無くなっている事に気をよくしたのか、同日夕方さらに我に食料を配布した。
 どうやら彼女は我が思考した可能性の一つに該当するものらしい。
 その日から我は彼女から与えられる食料をありがたく頂戴することにした。
 危険はないようだし、ゴミブクロを漁ることもなく確実に手に入る。
 その上、味は極上と来れば誰であろうとも我と同じ判断を下すだろう。
 だが、最低限の警戒だけは続ける。
 これを怠ったばかりに倒れていった仲間達を知らないわけではない。
 いついかなる時でもこの心構えを捨ててはいけないのだ。
 だが、我の気概とは裏腹にこのような蜜月がしばらく続いた。
 そろそろ警戒するのも馬鹿らしくなってきた、そんなことを考え出したある日。
 予想外のことが起きた。
 彼女が朝餉を持ってきてくれたのは、嬉しい誤算なのだが
 朝だというのに彼女以外の人間の女が現れたのだ。
549Stray Cats:04/01/08 16:17 ID:3ghiskBD
 突如、我の心になくなりかけていた猜疑心が息を吹き返す。
 もしや彼女は我が油断するのを待っていたのでは?
 我が馬鹿面を下げて、飯を食う様を見ながらほくそ笑んでいたのでは?
 考えれば考えるほど疑わしくなる。
 しかし、よく見れば彼女自身も驚いているような気配を感じる。
(ただの偶然なのか?)
 ここでまた母の言葉を思い出す。
 彼女はともかく、隣の人間の女は現時点では敵か味方かも分からない。
 我にとっては危険な存在だ。
 なにやら我を見て彼女たちは話し合っているようだ。
(感じる雰囲気から害意はないとは思うが…)
 我は与えられた朝餉を無視してジンジャの床下へと潜り込んだ。
 このような警戒心こそが長寿の秘訣である。
「お弁当置いておくね」
 彼女の声が外から聞こえる。
 加えて聞こえる話し合う声と遠ざかる足音。
 その両音が聞こえなくなって、漸く我は塒から出て朝餉を取ることにした。
(せっかく持ってきてもらったというのに悪いことをしてしまった)
 綺麗に完食した後、我は考えた。
 今までは彼女一人だったというのに、何故今日に限って彼女は違う人間の女と同伴なのだろう?
 何か理由があったのだろうか?
 そもそも、彼女は何故我を賄ってくれるのだろうか?
 ただの気まぐれにしてはあまりにも長期に渡っている。
 疑問に思った我は、かねてから計画していた案を実行に移すことにする。
 少しずつ縄張りの拡張を続けていた我だが、我を賄ってくれる彼女のことが気になり調べたところ
彼女たちと外見が似通っているもの達が集う場所を発見したのは割と最近のことだ。
 母が言っていた”ガッコウ”という所だろう。
 母の話と類似する箇所を数点見つけて、そう結論づけた我は、彼女の真意を見極めるため
そして日頃の恩義に報いるためにも彼女の後を追尾してみるかと考えていたのだ。
 町が徐々に騒がしくなってきた。
 ガッコウや町に多くの人が集まる時間になってきたのであろう。
 我は自身に決して彼女に気取られることのないよう念を込めると
 賑やかになりつつある町へ繰り出した。
550Stray Cats:04/01/08 16:18 ID:3ghiskBD
 ――後日分かるのだが、この時一緒に現れた人間。
 我が主の姉にして、その後、我の生涯の好敵手となる人間の女。
 塚本テンマ。
 主より運動能力の点で確実に劣っているであろうこの人間は
そのくせ何かと我にちょっかいを出してくるのだ。
 ヤツの身分が主の姉でなかったら、実力を持って徹底排除するところだが
いかんせん、そのようなことをすれば主が悲しむことが予想できる。
 心に刃を持ち、時々訪れる理不尽な振る舞いに堪えるのも”サムライ”の勤め。
 今日も我は心身を鍛え、訪れるであろう不条理との戦いに……
 …愚痴っぽくなってしまったな。
 とにかく、だ。
 ヤツと主が二人同時に訪れた、この日が我の転機だったのだろう――
551Stray Cats:04/01/08 16:19 ID:3ghiskBD
 ガッコウでの彼女は我に向ける雰囲気とは違い、どこかよそよそしい感じを受けた。
 特に同じ人間の男達が彼女に声をかけると、その気配が顕著になったのは疑問だった。
 我らの価値観からすれば、異性に好意を持たれることは喜ばしいことであり、誇れることだ。
 それなのに彼女は戸惑いを見せ、時にはたじろぐ姿も見受けられる。
 それとは逆にガッコウでの男達は彼女の名を口にすることが多い。
 三度目の夕餉の際彼女から自己紹介を受けているので彼女の名が”ヤクモ”ということは
分かっている。だから男達が彼女に好意を示していることは我にも分かる。
 それだけによいよ彼女からの雰囲気が理解できない。
 我には与り知らぬ何かがあるのだろうか?
 我が男達を観察していると、ふっと彼女の気配を感じた。
 我の存在がばれてはいかん。あくまでも隠密行動による視察なのだ。
 さっと身を翻して、我は今まで歩いていた窓際から飛び降りた。
552Stray Cats:04/01/08 16:20 ID:3ghiskBD
 夕餉の時は迫っていた、なのに我は未だこのようなところで立ち往生している。
 愚かしさ、ここに極まり。自らを呪いたくなる。
 日はとうの昔に落ち、満月があたりを照らす。
 明度は十分、しかし足が動いてくれない。
 何という不甲斐なさだ!
 ここ数年の研鑽は精神的傷跡を凌駕するには至らなかったのか…
 
553Stray Cats:04/01/08 16:21 ID:3ghiskBD
 時を幾ばくか戻そう。
 彼女と鉢合わせになる前に学校から離れた我は、予想していたことではあるが
このガッコウ周辺を縄張りとする同胞と接触してしまった。
 売り言葉に買い言葉、剣呑な雰囲気をあたりに散らし我らの決闘は始まってしまった。
 自らに有利な地形を求めて戦略的撤退を行いながら考える。
 何がまずかったのであろうか?
 どうにも相手を諫めるこの言葉が決め手のようだが……
「別に貴殿の目当てとするゴミブクロを奪取しに来たわけではない。落ち着かれよ。
 当方はそんな”どうでもいいもの”を奪い合うような”貧相な食生活”は送っていない」
 ……何がまずかったのであろう?

 シャッ!

 数瞬前に我がいた場所に鋭い斬撃が舞う。
(くっ、やはり地の利は向こうにあるか)
 この町に落ち着いてやや経ってはいるが、後ろから追っていたはずの奴はいつの間にか
我の前に現れ、なかなかの疾さの攻撃を繰り出してくる。
 かなり頭に血が回っているようだ。
 現在の場所は奴の縄張りでも我の縄張りでもない第三者の支配域。
 このような場所でのいざこざは話がややこしくなる上に、下手をすれば三つ巴という最悪の構図
も考えられるはずだろうに…
 そんなことも思いつかないほど怒り狂っているのか?
(いや、もしかして…)
 六度目となる突進を紙一重でかわし、我は思考を重ねる。収束する一つの可能性。
(増援の当てがあるのか?)
 先ほどから攻撃が微妙に手ぬるいのは、時間稼ぎを目的としているのかもしれない。
 この地で奴が戦略的な同盟を結んでいれば、なおのことここは我には不利だ。
 数手ほどこちらからも攻撃を繰り出し、さらに後退を続ける。
 奴はどうしても我に一泡吹かせたいようだ。
 漲る闘志は時を経てもすり減ることがなく、むしろあふれんばかりの様相を呈している。
(ならば!)
 我は奴に完全に背を向けると、脱兎の勢いで走り出した。
 期待通り、奴も離されまいと必死に食らいついてくる。
 疾さでは我に分があるが、地形を知り尽くしているであろう奴はつかず離れず我を追ってくる。
 とうとう、我の縄張りまで奴は着いてきた。
 走る速度を少しだけ落とし、奴との距離を一定に保つ。
 ここで奴を巻くことは可能だが、これからガッコウへ向かうたびに襲われるというのは
気持ちのいいものではない。
(決着をつけようではないか)
554Stray Cats:04/01/08 16:22 ID:3ghiskBD
 ジンジャまで走り抜いた我らは流石に双方疲労の色を見せていた。
 だが我よりやや年を重ねているであろう奴は、それでも敵愾心を萎えさせることがなかった。
 その双眸が紅蓮の炎でゆらりゆらりと揺れている。
 対する我はここに来るまでの様子から”怯えている”と思われているだろう。
 尾は項垂れ、萎縮した気配を漂わせる。
 少ない手数、完全なる逃亡、これらから例え気配を察っしなくともそう考えるのが普通だ。
 奴もこちらが疲れ、ここに走り込み、許しを請うだろうと考えているのだろう。
 これから始まるであろう嗜虐の時間を夢想し、顔を歪めてニヤニヤしている。
 我は(奴から見れば)最後のあがきとばかりにこのジンジャで最たる巨木へ駆け登っていった。
 その様をゆっくりと、半ばあきれ気味に観察して奴は口を開いた。
「おいおい、そんなところに登って降りられるのかい?後先考えないってのは若い奴の特権だね」
 自分の優位性を確かに感じて奴は我を追い、木を登ってきた。
(ふっ)
 我は心の中で笑った。
 無駄に年を重ねて、我の策も見抜けぬとは。
 奴が我のいる枝に登り終える、その瞬間。
 我は走り出した。
 奴に向かって!
555Stray Cats:04/01/08 16:22 ID:3ghiskBD

 が、しかし。
 奴は我のいる枝で止まらず、さらにその上の枝まで登り切った。
 頭上から奴の声がする。
「どうせそんなこったろうと思ったぜ。見え見えなんだよ、おまえみたいな若造の考えなんてな!」
 そう吐き捨てると、今度は奴が頭上から襲いかかってきた。
(くっ!)
 まずい。
 この角度、あの疾さ、やられる!
 少しでも損傷を少なくするため我は回避行動を取る。
(間に合わない!)
 それは殆ど偶然だろう。
 奴が襲いかかってきた瞬間。
 今にも隠れようとしている太陽がその最後の煌めきを奴の目に撃ち込んだ。
「むぅ!」
 奴の必殺の一撃は僅かに逸れ、ぎりぎりで回避行動を取っていた我には届くことがなかった。
 すたっと着地、いや着木を決める奴。
 我と奴の距離は僅か。
 間を置くこともなく襲いかかってくる奴を後目に、我は枝先へ”飛ぶように”走り出していた。
 確かに奴の運動能力を侮っていたのは、我の失策だ。
 だが奴は誤解している。
「へっ、そっちは行き止まりだぜ」
 勝利を予感したものの余裕だろう。
 あえて、焦らして走りながらも奴は後ろからそう息巻いてくる。
 確かにもう、枝は細くなり走ることはかなわない。
 だが奴は気がついていない。
 我が不自然に跳躍した理由に。
「――!! これは!」
 突如動きを止める我ら。
 一方は意識的に、もう一方は否応なく。
「貴様…最初からこれが狙いで!」
 我は反転し奴に向けて口を開く。
「初撃をかわした今」
 ゆっくりと奴に近づく。
 何とかしようと藻掻く奴。
「この瞬間こそが我の描いていた策なのだ!」
 突進。
 為すすべもなく地上へと墜ちていく奴。

 ズサッ!

 落下音。勝負はついた。
 受け身はとれたのであろう、奴はよろよろと立ち上がるとおぼつかぬ足取りで(まぁ当然だが)
我を見ることもなくジンジャを後にしていった。
556Stray Cats:04/01/08 16:23 ID:3ghiskBD
「ふぅ」
 一息ついて、我は張りつめていた緊張を解きほぐしていく。
「最後は偶然もあり我に軍配が上がったが、まだまだ精進せねばな」
 勝利の高揚感に身を包みながら、一人ごちた。
 糸による結界。
 これが我の策だ。
 数日前までこの木には、四角い板のような物体が糸と繋がったまま風に流されていた。
 その板だけどこかへ飛んでいき、この木のこの枝には糸が絡まったままになっていることを
 夕餉を届けてくれる彼女を見上げる際気がついたのだ。
(この勝利、彼女に感謝せねばいかんかな?)
 元はといえば彼女を尾行しガッコウへいった事が発端だ。
 だがそれは我の意志であるし戦闘になったことは我の不注意でもあるのだ、彼女に非はない。
 しかし、我が戦ったことを知ると彼女は悲しそうな顔をするような気がする。
 そして、その顔を我は何故か見たくないと思う。
(彼女がやってくる前に終わってよかった)
 殆ど陽も落ち、あたりにはここらの夜らしく静謐さが漂っている。
 高揚感も薄れていき、いつもの冷静な自分へと……

(…高い!)

 改めて我のいる場所を認識する。
 高い。高すぎる。
 ここまで高かったとは…
 戦闘による緊張感で稀薄だった精神的傷跡がよみがえる。
 ―――アレはまだ母の温もりがすぐに感じられるときのことだ。
 今と同じように我は大きな木を近くに育っていた。
 幼い我の冒険心は、自らが降りることが不可能な高さまで気を登らせていた。
 一晩中泣き明かし、次の日の朝、母に助けられて無事降りることができたという結末だ――

 そして現在、未だ克服できていない事を我はその身で知ったのだ。
557Stray Cats:04/01/08 16:23 ID:3ghiskBD
「お夕食だよ」
 大きいとは決して言えないが、その凛とした声がこの巨木の上まで聞こえる。
 彼女が夕餉を持ってやってきたのだ。
 ここからでも匂うその香りは戦いで消耗した我が胃袋を強く刺激する。
 少々変わった匂いだが。
「居ないの…?」
 しゃがみ込んでいた彼女は、普段我が塒としているジンジャの床下をのぞき込んでいる。
(どうする…?)
 このままでは我が彼女の夕餉を無碍にしたと誤解されてしまう。
 それは無性に許せなかった。
 だが我にも猫としての誇りがある。
 高いところへ登って降りられなくなった、なぞ成長した我が身が受ける評価としてはあまりに
 酷だ。
(どうする?)
 この木を降りて彼女の元へゆけばよい。
 答えは分かり切っている。だが微動だにせんのだ、我が足が!
 そのくせ心は激しく揺さぶり動き続ける。
 焦燥、恐怖、困惑、憤怒、苛立ち……
 いつまで経っても現れない我に失望したのか、彼女は立ち上がり踵を返した。
 我は、恥を忍んで――
 寂しそうな雰囲気をまとい、歩き出す彼女。
 ――助けを、懇願した。
558Stray Cats:04/01/08 16:24 ID:3ghiskBD
 それから、紆余曲折を経て我は主の元にやっかいになっている。
 最近では主の言葉も少々分かるようになり、さらに親睦が深まったように感じる。
 そして我が主の与えてくれていた食事は全て主のお手製だったことに
ここに来て気がついたのは言うまでもない。道理で旨いはずだ。
 だがいいことばかりではない。
 我が居候することになり、同時に現れた好敵手の存在。
 ヤツの存在は我の生活に研鑽の二文字を与え続ける。
 主を守護するためにもヤツの存在は欠かせない。今日も今日とて修行の日々は続く。
 そんなある日。
559Stray Cats:04/01/08 16:25 ID:3ghiskBD
 テレビ(箱の中で絵が動くキカイだ)で我が主とヤツが毎週楽しみにしている番組が終わった後
ヤツはフロ(熱い水が大量にあったり、とかく水が跋扈する危険地帯)へ行き
主は我を膝に抱きゆっくりと優しく撫でながらこう言った。
「面白かったね、伊織」
 どうやら、先ほどの番組の感想を聞いているようだ。
 確か男が違う男に頭を垂れ、何かまくし立てていたことを思い出す。
 それが一体何を意味するのか、興味はないが主が面白いと感じたのだ。
 きっと大切な意味があるのだろう。
 撫でる手を止めることもなく主は我に話しかける。
「私はね、姉さんみたいに好きな人が居ないの…」
 ヤツのことが話しに上がる。
 好敵手であるヤツは、しかし主にとっては大きな存在らしく、ヤツの名が上がるときは
大抵嬉しそうに、羨ましそうに、時には心配をしているような雰囲気を感じる。
 だがいまはひどく悲しそうな雰囲気。
 我は主のこのような姿をよしとしない。どうにか元気づけられないものか思考する。
「でもね、いつか私も好きな人ができる…そう思うの」
 よく分からないが、どうやら主は自らの特異能力について思い悩んでいるようだ。
 我らの価値観からもそれは分かる。
 特異な能力は他のものの追随を許さないのだ。
 それ故に時には集団の首領、時には排他される異端者、そのような立場になる。
 怒りすら覚えるが我が主はどうやら後者らしい。
 時々感じる沈痛な雰囲気は、傍にいてこちらも同じように痛ましく感じる。
「あなたのように強く、優しい――」
 ぴたりと撫でる手が止まる。
 ふっと主を見上げる我。
「――けど、私にだけ弱いところを見せてくれる…そんな……」
 何とはなしに自分のことを言われている感じがする。
 褒められているような、でも少し馬鹿にされたような、よく分からない気配だ。
「そんな万石さんのような、お侍みたいな人」
 最後は少々口早に主は話を打ち切った。
 我を見つめて話しかけてくれていた主は、そこまで喋ると視線を上に逸らした。
 主には珍しく照れているのだろうか?
560Stray Cats:04/01/08 16:26 ID:3ghiskBD

 ざぱーっ

 扉と壁で隔たれた向こうでは、多量の水が流れる音がする。
 その音は大きくはないが、主がうち切った話の余韻を思考へ転換するよい起点となった。
 今の話、主の言葉に一つ、とりわけ強く心に留まるものがあった。
 それは”サムライ”
 先ほどの番組でも同じ言葉を聞いたような気がする。
 その言葉の意味するところは分からないが、関連性を結びつけられないほど我の思考は
鈍重ではない。
 つまり、きっと我が主は”サムライ”というものを欲しているに違いない。
 それがどのような存在であるのかは、先のテレビから推測できる。
 必死に頭を垂れていた男は、一見情けなく見えたが
その先にいる男のために、その身を省みず斬撃を繰り出し、身を呈して戦っていた。
 要するにそのような行為を行うものを”サムライ”と言うのだろう。
561Stray Cats:04/01/08 16:27 ID:3ghiskBD

 ならば我は誓おう。
 我は主の”サムライ”となることを。

「主の歩むその道に、茨の森があるならば、我が主の爪となり、全て残らず刈り取ることを」

「主の進むその道に、身を刺す寒波が吹くならば、我が主の毛皮となり、覆い包んで守ることを」

「我はここに誓う」

 そう口に出し宣言した我は、違うテレビの絵を思い出す。
 それは体中に金属をまとった人間の男が、傅いて人間の女の手に口を付けるといったものだ。
 やはり意味はよく分からないが、それがとても厳かなことだというのは、見ていたヤツと主の
様子から察することができた。
 人間のまねは性に合わないが、ここは主に理解してもらうため我から歩み寄るのが筋。
 我は主の手を舐めた。
 初めてのはずのその行為にふと既知感を感じ、考えを巡らす。
 そしてたどり着く。
(あの夜か…) 
 あのときはそんなことを知ることもなくやっていたが、今考えてみると
既にあのときから我は主に誓いを立てていたのかもしれないな。
 少し自嘲的な笑みが出る。
 構うことはない。あのときの思いがしっかりと形になって今となっているだけだ。
 数度舐め見上げると、主は優しい瞳で我を見つめていた。
「応援してくれるの?…ふふ、ありがとう伊織」
 喜んでくれているようだ。
 我の真意が主にくみ取ってもらえたかは分からないが、我が意志は既に鋼となっている。
(主を守り、主を救う。これが我の生きる道なのかもしれないな)
 改めて立てた誓いを胸に、再度主の手を舐めようとしたとき。
 フロ場でなにやら騒ぎ立てる声がした。
 主が気を向け、立ち上がる挙動をする。
 粛々とした雰囲気は霧散し、いつもの空間、いつもの空気が居間に戻る。
 常々思うのだがヤツは騒がしすぎる、情緒というものを解して欲しいものだ。
 我は心の中で嘆息した。
 少々残念だが主の膝上から身を下ろし、我はあわて急ぐ主がフロ場へ行くところまで見守り
居間を離れた。
 庭に面した廊下を歩き、瞬く星々を見つめながらあの夜を思い出す。
「あの日こそが我の第二の誕生日なのだな…」
 誰にいうでもなく小さくつぶやき、その場に寝っ転がる。


 我が名は伊織。今は”サムライ”をやっている。

562Stray Catsを書いた人:04/01/08 16:30 ID:3ghiskBD
 ま た や っ ち ま っ た _| ̄| ...○

本当は旗派応援用SSの予定がどこがどうなってかこの有様。
伊織メインなんて一体どうよ?
しかも、また戦闘シーンいれているし…(´Д⊂)

再起不能にならない程度の評価でお願いします(;´Д`)

伊織より沢近キボン
伊織が渋くてかっこイイ!伊織メインでも十分いけるな。
>530
やってみようかな、と思ったもののセリフ覚えてないから無理だー。
誰か他の神に希望、と……。
>>522
ほのぼのしますた(=´Д`=)
何気にサラも播磨とアイコンタクトしてますな(笑)

>>562
伊織カコ(・∀・)イイ!!
>>562
スクランのキャラでオリジナルの作品を書いたという感を受ける。
個人的にそういうのは苦手。
あと、少々長すぎやしないかい?

所詮、無責任な名無しの戯言なんで、聞き流しておいて下さい。
568旗派:04/01/08 20:47 ID:gJmdJpBt
くどいようだけど誰か沢近と美琴のケンカ話inマガジンをここで文章にする能力の
ある香具師きぼん
>>562
伊織が主人公っていうのが好き嫌い分かれそう。
文章は凄い上手いし読みやすかったです。
570cat meets …girl?:04/01/08 20:59 ID:1hTojYPs

「ム、この黒猫は確か…八雲くんの飼い猫だったか。よ〜し、エサをあ
げよう、こっちに来なさい」

 ス…

「…なぜ遠ざかるんだ。ちょっと待ちたまえ。このお弁当は猫でも安心
して食べれるものだ。それに、自慢ではないが味のほうも――」

 スス…

「……だから、なぜそんなに遠ざかるのだと言っている。 心配は無用
だ、八雲くんのたいせつな猫ならばボクも八雲くんと同じぐらいキミを
大切に…こら、人が話している途中にあくびをするのは失礼なこと――」


 ススス…。

「ちょ、ちょっと待ちたまえ! 僕の出番はこれだけかなのか!? な
ぜ八雲くんとのからみがないんだ! こんな扱いは酷すぎるぞ!
 最近は準レギュラーぐらいになってき…て、こら! 話を――」

 花井春樹、フェードアウト…
571 cat watched sister's an erotic.:04/01/08 21:00 ID:1hTojYPs

 伊織の眼前で、姉妹が妙なことを行っていた。

「ほら、八雲…」
「だめ…姉さん……」

 弱弱しく否定するも、八雲は姉にあがらうことが出来ない。姉はしっ
かりと自分を固定させて、動けないようにしている。

「久しぶりだからかな…すごい…」
「…ん」

 天満がじっくりと嘗め回すように自分を観察する。それだけで八雲は
恥ずかしい。
572cat watched sister's an erotic.:04/01/08 21:01 ID:1hTojYPs

「それじゃあ…いこっか」

 震えながらも頷く八雲

「うわ…スゴイ……たまってるね、八雲」
「…そんな」
「フフ、八雲も自分ですればいいのに」
「…だって…それは」
「まだ怖い? それとも、自分でするよりも私に任せたほうがいいの?」
「……」

 真っ赤になっる八雲、それを見て笑う天満。

「じゃあ、続けるね…」

 姉の嬉しそうな声が聞こえた。
573cat watched sister's an erotic.:04/01/08 21:02 ID:1hTojYPs

「ほら、スゴイ、コレ見てよ八雲」
「…姉さん、汚いよ…」

 眼前にわざわざ「ソレ」を天満は八雲に見せ付ける。羞恥で顔から
火が出そうだった。

「でもほんとスゴイ、こんなに……八雲ってば」




「…姉さん…もう終わり?」
「まだだよ、もう一つの方があるでしょ」
「え…」
「もちろん、そっちもするからね…」
574cat watched sister's an erotic.:04/01/08 21:04 ID:1hTojYPs

 すでに、その行為は終盤。天満も最後の攻撃に移った。

「姉さん、もう…」
「もう少しよ、もう少しだから」
「イヤ、痛い…っ!」
「ダメ、動いちゃ!」
「…でも」
「大丈夫、もう少しだから…ほら、もう少し…」
「………ん!」
「よし…もう少し…」
575cat watched sister's an erotic.:04/01/08 21:05 ID:1hTojYPs






「ほら取れた! よ〜し、終わりだよ〜!」
「…ホント?」
「いやー奥のほうに大きいのがあってサ! ホラ!」
576cat watched sister's an erotic.:04/01/08 21:05 ID:1hTojYPs

 そう言うと、天満は先っぽについたソレを見せる。

「姉さん、毎回わざわざ見せなくても…」
「えー、こう言うのって見るもんじゃないのー?」
「…普通は見せないと思うけど…」

「いやーひさしぶりだからスゴク溜まってたよ、耳アカ」
「…姉さん、そんな大声で…」

「でもさー八雲ってば、未だに一人で耳掻きできないの?」
「…」
「いつまでも子供じゃないんだから、ネ」
「…うん、今度から頑張ってみる」

 ふと伊織がやってきた。そして、天満の手にあるものを不思議そうに
見た。
 天満は伊織の前にかざし

「あ、伊織、これはね『耳掻き』、て言うんだよ」
577cat watched sister's an erotic.:04/01/08 21:07 ID:1hTojYPs
 と教えた。まあ、猫に日本語が理解できるかどうかは知らないが、伊
織はニャア、とだけ鳴いた。
 結局、不思議そうにそれを眺めて、その後、興味があるのかじーっと
数十分見続けたそうな。

 cat watched sister's an erotic. FIN


 …ん?『erotic』?

 おやおや、これは失礼

 cat watched sister's an 『earpick.』FIN.

 cat meets girl,Tommrow girl is …Akira.
578cat watched sister's an earpick.:04/01/08 21:08 ID:1hTojYPs

 花井を出したので、代わりに塚本姉妹の話を投下したわけだが、題名を
間違えてしまった。おかげで、いらぬ誤解をまねきそうな作品に大変身。
 いやー、まいった、まいった、大失敗。以後気をつけますネ。

 追記・earpick【名詞】日本だけでのみ、耳掻きと訳す。
なるほど猫からみるスクランメンバーですか
シリーズ化楽しみにしています
奈良ってホモだっけ?
>stray cat
大作すぎてちょっと読みづらいかな。
二話か三話くらいに分けて欲しかったよ。
後、時間とか場所が飛んだら、題名変えるとかすると良い感じかも!
etc.「・・・@」 「・・・一日目」とか・・・
ちなみに晶SSの人ですか?
582Stray Catsを書いた人:04/01/08 23:09 ID:3ghiskBD
>>581
晶SSはあまりでていないから、おそらくそうかと。

catシリーズのセンスの良さを感じながらの投下だったので
ちょっと緊張してしまったっす。
どうしても自分が書いてしまうと長文になってしまうのが悩みの種。
目的のものが的確に欠ける職人様達が羨ましい( ´ー`)
皆さんの意見を参考に懲りずにまた書こうかと思います。
それとももうやめておいた方がいいかな?(´・ω・`)
583 ◆Eri//qLXXY :04/01/08 23:11 ID:6NLJgz8D
>>507-513
致命的ミスに気付きました。
× 紘子 → ○ 絃子
全箇所です。「いと」で変換できなくて、つい勘違いで…。
誤字脱字にいちいち訂正レスするのはウザいかなと思って控えてましたが、
さすがに人名の間違いはマズイですよね。お許しを。
>>582
最初っから上手く書ける人なんていない
日々これ精進しかないんで、懲りずにがんばれ
585沢近と美琴のケンカ話inマガジン:04/01/08 23:40 ID:o91xijr6
『美琴って・・・ たいしてかわいくなくない?』

・・・

どうして、あんなことを言ったんだろう。
天満だけじゃなく、美琴にまで先を越されたようで悔しかった?

いや、違う。なんだろうこの嫌な気分・・・ん?

「播磨?」
「げ?」
「って、人の顔みるなり、なに逃げだしてんのよ!」
って、私もなに追いかけてるのよ!
「ちょっと!待ちなさいよ!」
追いかけてどうするのよ!
分からない、分からないけど、あいつ、なんか元気なかった。
私の顔をみた瞬間露骨に嫌な顔してた。
それが・・・たまらなく嫌 ・・・

・・・

「ハァハァ」
見失っちゃった・・・。このまま・・・帰ろうか・・・。
なんかばかばかしいくなってきた。
セミの声がうるさい。
少し、涼んでいこう。

「いらっしゃいませー」
涼しい。てと、どこか開いてる席は ・・・え?

播磨と・・・美琴?

「あ・・・」
やっぱり・・・カワイイわね美琴は・・・
でも・・・その「あ・・・」って、何よ!?
「ごめんなさい デートの邪魔しちゃったみたいね」
「あ あのよーこれにはふかーいワケが・・・ ってオイ!なんで逃げ出すんだよ!?」
なんで?なんでって、それは・・・なんで?
え?私なんで今逃げてるの?
「おい!待ってって!」

・・・

「ハァハァ」
さ、坂は・・・キツイ・・・
「・・・あ、あらら?」
美琴がいない?
「あきらめたのかしら・・・」
火照った体に風が冷たい・・・
「な、なんであきらめるのよ・・・」


そして仲直り
END
っていうか、文章はとっても上手いと思いますよ〜
それに、SSに合わせて挿絵も描いてもらったじゃないですか!
これで、自分は下手とか思って、やめちゃったらもったいないですよ
(途中で送信してしまいました・・・スマソ
588My best friend:04/01/09 00:02 ID:428kxWRR
「実際のところ、どう思われているんだろうか、僕は」
 物憂げな表情でぽつりと呟く花井。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、と
サラがフォローする。
 それでも、はあ、と溜息をつく姿に、見ている方は笑みがこぼれてしまう。
 茶道部部室。今日も今日とて花井は八雲の姿を求めて訪れていたが、またしても
『運悪く』空振りの様子。本当に運悪くなのか、は……言うまでもない。
「そう簡単に了承してもらえるとは思ってはいないが、避けられているような
気がするのだよ、やはり」
「うーん、八雲は男の人わりと苦手ですから……」
 その言葉にそれ見たことか、とまたどんより落ち込んでいく花井。
「でも苦手、っていうだけですよ?」
「……うん?」
「嫌いだって言ってるわけじゃありませんから。八雲はちょっと人より苦手なこと
が多いかもしれませんけど、誰よりいろんなものを好きになろうとしてるんじゃ
ないかな、なんて思うんです」
 楽しそうに、そして羨ましげに話すサラ。
「毎日会ってると分かりますよ、八雲がだんだん変わっていくの。もちろん八雲は
八雲で変わらないところもあるんですけど……なんて言ったらいいのかな、そう、
素敵なんです、すごく」
「君のような友人がいて、塚本君も幸せだな」
 サラにつられるような形で微笑を浮かべる花井。
「私もですよ。八雲は自慢の親友ですから」
 くすりと笑うサラ。
「だが……やはりこの気持ちを受け取ってもらうのは一苦労だろうな」
 口振りこそ悩んでいるようだが、その表情はもう吹っ切れた様子。
「その辺りは先輩の心がけ次第、じゃないですか?」
 まったくだ、と今度は二人で笑いあう。
589My best friend:04/01/09 00:02 ID:428kxWRR
「でも先輩ならいつか届くかもしれませんよ」
「ありがとう、と言いたいところだが、本当にそう思うのかい?」
 冗談めかして聞き返した花井に、あくまで『かも』ですよ、と釘を刺してから答えるサラ。
「だって一生懸命じゃないですか。少なくとも私が見ているかぎり、先輩の八雲への
気持ちは裏表も何もなしのひたすらまっすぐ、です」
 ちょっとアプローチは強引ですけどね、という一言に、ぐっ、と呻く花井。
「冗談でもなんでもない、本当の気持ち。そういうのって届くものですよ、きっと」
 それに、と続ける。
「一生懸命な人、私も好きですから」
 さらりとそう言って微笑むサラ。
「そうか……うむ」
 ありがとう、とこちらはちょっと気恥ずかしげな花井。
「見てる人はいつだっているものですよ。先輩の近くにもいるんじゃないですか?そういう人」
「そうだな……」
 その言葉に花井は一人の幼馴染みの姿を思い浮かべる。
(ミコちゃん、か……)
 なんだかんだと言いながら、つかず離れずの距離にいつもいてくれる人。もしかすると、
自分にとって一番の親友とは彼女のことかもしれない、と思う。
「大切にしないとダメですよ、そういう人」
「いや、大切にとかそういう関係では……」
「……本当ですか?」
「……むう」
「セ、ン、パイ?」
「分かった分かった。僕の負けだ、もう勘弁してくれ」
 そんなお芝居のような一幕の後で、どちらともなく笑い出す二人。
590My best friend:04/01/09 00:04 ID:428kxWRR
「さて、それでは僕はこの辺でおいとまするとしよう」
「珍しいですね。もうすぐ八雲も帰ってくると思うんですけど……」
 だからだよ、と立ち上がる花井。
「あんな話を聞いた後だ。せっかくの二人の時間を邪魔するわけにもいくまい?」
「先輩……」
 ではまたくるよ、とドアを開ける。
 そこに。
「あ……」
「おや、塚本君じゃないか!」
 先ほどまでとはうって変わって、いつものアタックモードに戻る花井。
「今日は実に運がいい!さあ一緒にお茶でも!」
(今日は実に運がいい!さあ一緒にお茶でも!)
 いつものように裏表ない『声』を聞き取る八雲。
 けれど。
「……と、言いたいところなのだがね」
「……え?」
 『声』はそこで止まったけれど、現実の花井の声はまだ続いている。
「急用が入ってしまってね。いや残念だよ」
「そうですか……」
「まあ、機会などいくらでもあるだろうしね。それではまた会おう!」
「……はい、また来て下さい」
 その言葉にうむ、と笑顔で頷くと、花井はその場を立ち去っていった。
「よかったの?八雲。また、なんて言って」
 そんなやりとりを後ろでにこにこしながら見守っていたサラが、ちょっと意地悪な
様子で尋ねる。
 その質問に。
「……うん」
 花井先輩、やっぱり悪い人じゃないから、と。
 八雲は笑顔で答えた。
591いろいろ書いてみてる人:04/01/09 00:13 ID:428kxWRR
どうしてこういつも花井にいい役をやってしまうのだろう、と思いつつ。
でもサラの話です、きっと。

>>582
悩んでみてもどうにもならなかったりするので、ともかく書くべし。
自分もスルーされる話があったりするけれど、ちょこちょこいただく
ぐっじょぶの一言に助けられつつ糧にして、もっといいもの書けるように
精進している身です。
がんばれー
592Stray Catsを書いた人:04/01/09 00:34 ID:Vjssmz8G
>>586
元々は、とある絵を元に描いた三次創作的なSSなので
挿絵をもらったときは狂喜乱舞しました(´∀`)
一人でも自分のSSで満足してもらえる方がいるのならば
筆を置かず色々と書いてみたいと思います。
586氏以外のお褒めの言葉もありがたく頂戴し、次の作品への原動力
にしますです。(`・ω・´)

>>591
お疲れさまです。
同じ職人の方からの一声、大変励みになります。
SSの方もよい雰囲気で、キャラが頭の中で動いているようです。
こういったものこそ自分が書きたいSSの一つなんですが
いっつも誰かが戦う殺伐とした長い文章に…(´・ω・`)

お互い、ここの住人を唸らせるような作品作りを頑張りましょう(´∀`)
………( ̄□ ̄)ハッ!!SPECIALのネタバレかと思ってしまった!
雰囲気・セリフ回し・間が高いクオリティを生み出している…
気に入りましたm(__)m
>>588
>それ見たことか、とまたどんより落ち込んでいく
この表現はちょっとおかしくない?
595591:04/01/09 01:02 ID:428kxWRR
いやもう、まだまだですよ、自分。
温かい言葉が身にしみますです、はい。

>>594
理系学生の日本語を気にしちゃいけn(ry
さておき、上の段で「やはり」を使ってしまっていたので、重複するから別表現だよな、
と適当に言葉を選んだせいだと思われます。
素直に「ほら」にするとか上の「やはり」を削るとかすればよかったです。
596旗派:04/01/09 01:14 ID:heRf2dsA
んー・・・・。書いてくれた人に申し訳ないけどとても分かりにくい。ほんとにスマソ
ってことで台詞と背景描写,内面描写すべて忠実かつ面白く表現した「美琴と沢近のケンカから
仲直りまで」のSSきぼん。本当に申し訳ない。
申し訳ないと思ってるなら頼むな。あんたの言ってる事が我侭だってことぐらいは分かるだろ?
大人しく単行本を待つよろし。
そもそもノベライズスレではないからなあ。
膨らむ妄想を具現化したものが投下されていくわけで。

むしろ本スレで要約でも貰った方が良いと思われ。
>>596 気持ちはようわかる。一週間二週間で禁断症状初期段階に達するのに二ヶ月以上も待ってられへんよ。
漏れも旗派
細かいセリフなんておぼえちゃいないからなぁ。
面白そうなネタだけど、できそうにない。
>>596
心理描写なんかなしに淡々とセリフと状況説明だけをしていくならやらないこともないがそれでいいか?
それともセリフだけ書き出して誰か書く気のある人に後を託すか?
>>596=599
自作自演はやめようぜ!!
熱望してるってのはわかったからさ。

>>600
考えようによっちゃスレ荒れを招くようなネタだよなw
603旗派:04/01/09 01:40 ID:heRf2dsA
>>598 妄想はもちろん内面描写で思う存分入れてもらわないと。だからマガスペの
ときにSS化されたような形でやって欲しい。あれは本編よりも面白かった。文章
の力っちゅうのはすごい。本スレではそういう能力のある香具師はいるとはおもへ
ないしね。ここは文章力に長けた人が結構いるからここでしか頼めないんだよね。
っちゅうことで誰か頼む。
>601
セリフをとりあえず書き出してみてはどうか。

>602
だよね(w
605旗派:04/01/09 01:42 ID:heRf2dsA
>>601 あんたは播磨・・・いや神だ!
606無所属派:04/01/09 01:54 ID:Vjssmz8G
ある意味面白そうなお題ですね。
挑戦してみたい気もしますが、当方資料がないと書くことができない
修練不足の書き手。
嗚呼、マガジンもマガスペも購入していればよかった…
607「WHEN HARRY MET SALLY…」 ◆Eri//qLXXY :04/01/09 01:57 ID:at3mwqp8
 サ ラ 話 か ぶ っ た ・・・。_| ̄|○

播磨 拳児は今日もバイクを走らせる。
またここに来ちまった──。
半ば身を隠すようにして、切なげな視線を送る。
見つめる先にいるのは…かつて共に暮らし、心を通わせた相手。
今はもう、互いの間には大きな隔たりがある。
越えようのない壁が。深く暗い堀が。
それは決して望んだ別れではなかった。
固く、きつく抱きしめ、最後の刻まで離れ離れになるのを拒んだ。
それでも、周りがそれを許さなかった。
身を切るような辛さ。
一緒にいたいと思う。ささやかな願い。それが、心をこんなにも傷つけるなんて。
苦しむ相手を想い、別れを選んだ。
サングラスを外す。レンズ1枚の壁ぐらい、せめて取り去りたい。
向こうも気付いている。
つぶらな瞳に憂いを漂わせ、視線を絡ませる。
もう、別々の道を進まねばならぬ。
それぞれの生活が、日常が、既にある。
それでも。
会いたい。姿を見たい。無事を確認したい。
幸せを見届けたい。俺が与えられなかった…幸せを。
口に出してはいけないのかも知れない。
言葉を投げてはいけないのかも知れない。
それでも。
そうせずにはいられない。
──呼び慣れた、その名を口にする。

「ピョートル──。」
芸達者なキリンの周りには、今日も結構な数の子供たちが群がる。
無事でいるみたいだな。よかった…。

「播磨先輩!」 弾んだ声に振り向く。
亜麻色の髪の少女がこちらに手を振りながら近づいてくるところだった。
「あんた……塚本の妹さんの友達の」
「サラです。サラ=アディエマス。」
これまでも何度か同じ場所で顔を合わせたことはあったが、今日はいつもと違うところがあった。
「今日は、妹さんと一緒じゃないんだ?」
「八雲は、急にお姉さんと出掛ける用事ができたみたいで。今日は私一人です。」
「…そうか。」
ガッカリしました?と茶化すように聞いてみる。別にい?そうじゃねえけどな。
「いつも二人一緒でいるだろ?なんかミョーな感じがしてよ。」
全くうろたえた素振りを見せない。なーんだ、つまんないの。

「─そういえば、八雲ぬきで先輩とお話するのって、初めてかしら。」
「と言っても、妹さんとはあんまりしゃべってないけどな。」
クスッと笑う。そういえばそうだ。三人でいても、八雲はあまり言葉を発してはいない。
「妹さん、俺のこと何か言ってた? 怖いとか、…おっかないとか。」
「いいえ。播磨先輩─怖いなんてことありませんよ。」
動物に接する姿を通し、八雲とサラは彼の優しさを目にしている。ほら、今も。
「そうか?なんだか避けられてるっていうか、嫌われてんじゃねえかって気がすんだよな。」
「気のせいですよお。…あのコはもともと口数の多い方じゃないんです。
それに、男の人が苦手っていうか…すごく引っ込み思案なところがありますから。」
「あ、そう…。」

しばし無言。どことなく気まずい沈黙。
突然─ゴクリという大きな音が聞こえ、驚く。ツバを飲み込んだ音。先輩、緊張してる?
「じゃ…じゃあ、妹さんのお姉さんが、何か言ってたとか、聞いてない?」
「え? いえ、特に何も…。」
「そ、そうか……。」
「──何かあったんですか?八雲のお姉さんと。」
「い、いや、何でもないんだ。何でも…。」
ちょっと凹んだように見える。なんだかわからないけど、そっとしておいた方がよさそうだ。

「お昼にしましょうか。今日は八雲がいないから、私がお弁当作ってきました。」
「おお!悪いな毎週。気ぃ使わなくていいんだぜ。」
「気にしないでください。先輩の食べっぷりを見てると、なんか嬉しくて。」
「そうかぁ?…実は結構アテにしてたりしてな。」
「それに、ちょっとしたデート気分で楽しくありません?」
「バ…バカ言うなよ!」 照れてる。困ってる。こういうの、慣れてないんだ。

ピョートルに目を移す二人。しばし無言。心地よい沈黙。
「ピョートル…ちょっと元気がないんじゃありません?」
「ああ、やっぱりそう思うか?」
「やっぱり、八雲がいないと寂しいのかな…。」
私だけじゃ、ダメ?物足りない? これってちょっとヒガミかな?
「んなことねーだろ。」
「そうかしら。」
「俺と友達さんが来てるんだ。それで寂しいなんて言ったらバチが当たるぜ。」
「…サラです。サラ=アディエマス。」

珍しく八雲がそばにいない。言うなら今だ。彼女の前では言いづらかった─あの事を。
「あのコ…。」
「ん?」
「あのコ…八雲、とっても頑張ってます。男の人に対して、前向きになろうとしています。
だから、播磨先輩……あのコの力になってあげてくれませんか。」
「お、俺が?」
「八雲、播磨先輩にはとっても自然に接してます。他の人よりも心を開いてる。」
釈然としない顔。…あれで…か? と言いたそうな。
「間違いありません!なんてったって、『さん』ですから。」
「サン…? なんだそりゃ。」

播磨「さん」。先輩じゃなくて、「さん」。
八雲自身、意識しないでそう呼んでいる。自覚がないからこそ、本物だと思うのだ。
例え、それがまだ「恋」と呼べるようなものでないとしても。

「彼女、何かに心を縛られているような気がして…私には見えない、何かを見ているような。
それでも前に進もうとしてる。一歩踏み出そうともがいてる。
私、そんな八雲の背中を押してあげられたら…って。
だから播磨さんには、引っ張って欲しい。彼女の手を引いてあげてくれたら、きっと……。」
「友達さん。」
「はい?」
「あんた──いいヤツだな。」
「!」
思わず照れてしまい、うつむく。面と向かってそんなこと言われると、なんだかくすぐったい。

「さようなら。今日はとっても楽しかった。」
「そう?俺しかいなくて、楽しくなかったんじゃないか?」
「いいえ。すごく得した気分です。播磨さんの目って、意外とカワイイんだ。」
「? お、おおっ!」
慌ててサングラスをかける。
「八雲が聞いたら悔しがるだろうな〜。」
「見せもんじゃねえんだ、んなこと言わなくていいよ!」
「んー…それじゃあ、二人だけの秘密ってことで。」
「秘密って…あやしい言い方すんなって。」
「フフフ。じゃ、また来週!」
「おう!妹さんによろしくな!あと妹さんのお姉さんにも!」
「今度、茶道部にも遊びに来て下さいね。八雲も喜びます。」
「へっ、茶ぁなんてガラじゃねえよ──。」
「意外と似合うと思いますよ。播磨さんとお茶! シブくて。」
「そ…そうかあ?」 まんざらでもない顔。やっぱり、カワイイ。
…ごめんなさい、ウソです。でもこれはナイショ。

帰り道。夕暮れの町を歩く。足取りは軽い。
塚本の妹さんの友達。妹さんのお姉さん。播磨さんの呼び方は、いつも八雲のお姉さんが起点だ。
「頑張れ八雲!ライバルは手強いわよ。姉妹だからって、負けちゃダメよ…!」
グッと拳に力を込める。そうよ。八雲がその気になったら、播磨さんだって──。

あれ?

播磨「さん」。先輩じゃなくて、「さん」。


「……参ったなあ……。」
夕暮れの空を見上げ、つぶやく。


「ねえ八雲。私もライバルよって言ったら…あなた、どうする──?」

 〜fin〜
いいね、サラは本当にいい娘だ。ある意味王道。
(・∀・)ニヤニヤしながら読まさせていただきました。
GJ!!
最初はサラ視点の間接的な八雲SSだと思ってた。
まさか最後こうくるとは。

このスレの派別の職人戦力図はどれくらいなのだろうか・・・
サラがライバルなら俺が(*´Д`)ハァハァします。グジョブでありました。

>>605
今ちょっとだけ書いたけれどすっげー時間かかるよセリフ全て引用すると
とりあえず衝撃の一日だけすましてみるわ
あとはスレ住人の判定をまって続きをやるかどうか決める
はっきりいってスレ違いだからな
617旗派:04/01/09 02:16 ID:Ys39K5E9
求めるネタはちがえど,いいものはいいよ!!GJ!! 新しい風だね。
>>614 数値化してみてください
618旗派:04/01/09 02:17 ID:Ys39K5E9
>>615 本当にありがとう
つーかコテやめれ
620衝撃の一日:04/01/09 03:46 ID:I2C3WD3a
台所で麦茶を入れる天満、隣では八雲がおにぎりを握っている。
「あ、姉さん今…丁度おにぎりを……」
「え?あっありがと〜 丁度 お腹減ってたの!!
 あ そーそー もーすぐ美琴ちゃん来るからあがってもらってね」
そういい麦茶を二階の持って上がる天満
「あっ、姉さん…伊織…見なかった?」
八雲が天満を呼び止め尋ねる
「え 伊織?ん〜見てないなー」
暑さのせいかここ最近素行の悪さが目立つ伊織を八雲はじっくり諭そうとしたが…伊織はひねくれて雲隠れしてしまった
(少し…叱り過ぎたかな…コトバ通じてないし)

二階にて
「晶が居ないと進まないわね〜」
「まあまあもーすぐ美琴ちゃん来るし」
麦茶をもって上がってきた天満につっかかるのは沢近
「ホント 私達おバカ2人組じゃ お手上げだよね〜 ハイー 麦茶〜」
「え!!!」
天満は満遍なく成績が悪い、沢近は国語系が苦手なのだがそれでも全てにおいて天満より上だ
そういう自負があるからこそ、彼女にとっておバカ2人組は絶対に流すことが出来ない暴言であった
「ちょ………!!ま 待ってよ〜私の苦手は国語系のみよ それだけで同ランクってのはさァ」
しかし天然天満には何を言っても無駄
「ねー 愛理ちゃん この問題わかる? ぜんぜんワカラナイ…」
「人のハナシききなさいよ!!」
621衝撃の一日:04/01/09 03:47 ID:I2C3WD3a
鼻歌交じりに問題にとりかかりあっさりギブアップするだけで沢近の発言は全く耳には言ってないのである
「ごめん ここんとこなんだけど」
「んーっ?えっとこれはねぇ…」
「えー あれ?ホントだっ!でもなんで?なんかズルい〜っ」
「数学がズルくてどーすんのよ…わかる気もするけど」
と問題に引っかかりながらも宿題を続ける天満、一方沢近はまるでやる気なし
集中力を欠いている人間は得てして考えなくてもいいことを頭に浮かべてしまうものである
そしてそれは強烈な印象を残したものほど浮かびやすい
「ねぇ…天満ァ 私もひとつききたいコトがあるんだけど……」
「うんっなになに?きいてきいて!」
「男の人の体って見たことある?」「え?」
そう、沢近の脳裏に浮かび上がるのはあの旅龍での出来事
「あ いやそーじゃなくて…」
(あーもう!!黙ってると脳裏に浮かんでくるのよねアレが… おかげでバカなことを言っちゃったじゃないこれというのもあのド変態がワケのワからんないことをするから…はぁ…でもこんなコト1番疎そーな天満にきいてどーすんのよ…私もどーかして…)
「あるよ 男の人のハダカ」
「もへ!?」
衝撃である、お子様であり全てにおいて自分より下にいたと思っていた天満がよりにもよって1番自身の合った男女交流の部門に置いて己より上に行ってるのかもしれなかったのだ
「え?ちょ ちょっとまって…なに?」
「え?別にフツーなんじゃない?それくらい」
そうさらっといいのけた天満にさらに衝撃を受ける沢近
(え? そ それってまさか…天満が…オトナのつきあいを…? わ… 私だってまだなのに!!)
「そ それってつまり烏丸君と……?」
「やだ なんでわかんの?そーなのよもー!!そう 実はついこのあいだねーはぁと」
ガーン ショックのあまり息まで切らしてしまう沢近、フツー息なんか切れんぞ
「ど どうしたの愛理ちゃん まさか愛理ちゃん…見たことないの?そういうの好きそーなのに」
さらに追い討ちをかける天満 しかしここで両者の回想には大きな食い違いがある
天満は男の裸とは上半身、すなわちパンツをはいた状態をイメージしており
沢近はまさに素っ裸を想像していたのである
そして女性が男性の全裸をあたりまえのシチュエーションと言えば…
しかし天満はただ単にプロレスを見に行っただけであった
「へ?あ…」
「あります」
622衝撃の一日:04/01/09 03:47 ID:I2C3WD3a
(もしかして……天満の方が詳しいの?でも……そうだ!!いくら天満でもあんなコトは…ちょっとズルいけど一応事実だもんね)
負けず嫌いの沢近、かなり天満に対抗意識を燃やしてしまった
「口を塞がれたりとか」
「ジョノクチジョノクチ あーやったやった」
「はがいじめにされたりとか」
「あれ大技よねー!」
(ま…負けたー…)
微妙にかみ合ってない二人の会話、実際には沢近のほうがよっぽど際どい事をしているのだが……
「でも男のコって好きよねーああいうの…」好きだと指しているのはもちろんプロレスのこと
「……え」(そ…そうなのー!?)好きだと思ったのはもちろんイケナイこと
(もしかして…あれも…?え!?じゃ…じゃあ もしあのまま晶が来なかったらアイツー……………………)
こなかったらナニをされていたのだろう、と妄想を張り巡らせる寸前まで来てしまった沢近さん
もーなにがなにやら分からない状態に陥っています
そんな友人の動揺に全く気付かないのか気付かない振りをしているのか別の話題を彼女にもちかける塚本天満
「あっ あのね愛理ちゃん……実はもひとつ相談があってね」
「まだなにかあるの!?もーなんでもきなさい」沢近さん、かなり混乱してるようです
「あの…えっと… ね………………播磨くんて……………美琴ちゃんのことが好きみたいなの…………
なんとか2人にうまくいって欲しいんだけど…愛理ちゃんに協力してもらいたくて……美琴ちゃんにとってもいいと思うし……」
「で…でも…美琴って…たいしてかわいくなくない?」
以前自分に告白したり海じゃ裸で抱き付いてきた(?)癖に美琴のことが好きだって?私は美琴より魅力がないっての?
プライドを傷つけられた沢近の口から発した本人も信じられないような言葉がでてきました
そして部屋の扉が開きそこには無言でその場に立つ美琴が居ました、沢近の手からシャーペンが落ちる そして――壊れた友情
「すみませーんエアコン修理のモンですがー」
以前、天満が伊織を追いかけて壊してしまったエアコンの室外機の修理の人がやってきました
「ゴメン!八雲お願い」「うん…」
妹に任せ自分は友人達の間に戻る。先ほどの沢近の発言で凍りついた場を少しでも和ませようと天満も必死だった
「それにしてもあっついねー!!も少し 窓開けよーか!」
「「そーだね…」」
2人が口を開いたのはその一言だけ、部屋にはノートに文字を刻むわずかな音が響くのみ
623衝撃の一日:04/01/09 03:48 ID:I2C3WD3a
「…どうもご苦労さまです…」
その頃八雲は修理の人の応対をしていた 修理工は2人、1人は中年の男・もう1人は天満のクラスメートで
以前刑部絃子先生が体育館に連れていたキリンに咥えられて連れ去られた播磨拳児であった
八雲は自分に好意(というか煩悩)を抱く異性の心が読めるというかなり実生活上必要のない超能力がる
中年男性の煩悩はそのまま読めるのだが、この播磨の心は全くわからなかった 最近では珍しいことである
「……………………あーあの……こちらです…」
(キリンの人・・・)
心の読めない男、播磨、しかし八雲が知っているのはキリンの人ということだけであった
ニャー
「…伊織!こんな所に……」
先ほどから行方不明だった伊織が庭の片隅に居ました びっこ引いてます
「伊織 あなた…足をケガして………?」
逃げ出す伊織
「!ちょっと待って伊織……!」
草陰に隠れてしまった伊織「どうしよう…怒ってるんだ…………」
ねこじゃらし・毛糸玉・ナスにマッチを突き刺した馬(八雲はネズミと主張)を駆使してなんとか草陰からおびき出そうとするが
「……ホラ あなたの好きなシシャモ 今ならもう一匹付けてあげるよ」と
エサを目の前にしても一向に出てくる気配なし、見た目どおりかなり意固地な猫のようだ
「…………ダメだ…出てこない………私のせいで…早くケガを治さないと」
「任せな」
絶望している八雲の左肩に手をやり一人の男が立ちあが、いや腰をかがめた そうキリンの人 播磨である
「え…」目を丸くする八雲
伊織と対峙する播磨 一瞬のにらみ合い しかし播磨の眼力に屈したのか伊織は播磨が「おいで」と手を差し伸べるだけで草むらから出てきた
仰天する八雲をよそに播磨は伊織の足を見て冷静に対処する
「どれ……ああこれはトゲだ 足の裏にトゲがささってたんスよ さ…これでもう安心スよ」
八雲の腕の中に伊織を渡す播磨
「あ…ありがとうございます!あ あの…」
「あ?」
「動物…お好きなんですか……?」
「いや〜別に好きってワケじゃないんスけどね〜 ある日を境になつかれちまって」
伊織の頭をなぜなぜ
「あれ?この猫 このキズ たしか…前に……川で……」はい、川に流されたのを助けたことが有りますよ、播磨さん
「あれ?この家…」そう、愛しの天満ちゃんの家です、気付けよ播磨
なんとかお礼をしたい八雲は修理工の2人(というより播磨に)話し掛けます
「あ あの 甘いものはお好きですか…?良ければさしいれを………」
しかし相変わらず播磨の心の声はわかりません
624衝撃の一日:04/01/09 03:50 ID:I2C3WD3a
そして八雲が自作のケーキと級友のサラからもらった美味しいお茶を用意している時二階では……
無言を打破しようと天満が沢近に質問をした
「ねっ ねえ愛理ちゃん この問題なんだけど……」
「…んーゴメンわからないわ」「ううんありがとー」国語系が苦手な沢近に古典の問題はつらいようです
「美琴ちゃんは?」
「えっと…こーゆーことだろ?」「ああ!!そっかあ ありがとー!!」周防美琴 古典は出来る
「いいって 『これくらい』」
何気ない一言なのに沢近は悪意の一言に感じてしまいます
そして再び沈黙が部屋を支配する
「ねっねえ美琴ちゃん この問題なんだけど…」
「ん〜ちょっとわかんねーな〜」「ううんっありがとー」数学は美琴にとって鬼門らしい
「数学?」挑戦的なのは沢近愛理
「こーゆーこと!」「なるほど!サッスガー!」
「『大学を考えているなら』当然ね」美琴が大学進学希望だということを知ってかどうか、かなりな嫌味である
(どーしたらいいの〜!?クーラーがないのに涼しいよ〜!!勉強じゃダメだ!!他に楽しい話題!何か…何かないの〜!?)
それにしても愛理ちゃんなんであんなコトを?などと疑問にもつ天満、そんなことも分からない鈍感なあなたが悪いんです
「皆 遅くなってゴメン 旅行の写真が出来てるよ〜」
冷気漂う極寒の地に舞い降りた女神は旅行の写真もとい高野晶
「ありがとう!晶ちゃ〜ん!!」「?」「見よう 見よう!!楽しみにしてたの〜!!」
わらにもすがる思いで写真にすがりたい天満だが…この写真が2人の亀裂をより大きくしてしまうと誰がこの時予想できただろうか…
「お〜っ!!なにこれ美琴ちゃん今鳥君にモテモテー!!ひゅーはぁと」「カッカンケーねえ!!」
「わかんないわよ〜あのヒゲグラサンともすでにカゲで付き合っちゃってたりするかもよ〜?」
「はあ!!?」
すでに戦闘モードに突入しかけていた沢近はどんな話題でも美琴につっかかるようなことしか言えませんでした
すぐに我に返ってあやまろうとしたのですがその前に美琴もさすがに怒ります机を叩いて
「あんた!言いたいコトがあんならハッキリ言いな!!なんでえさっきからコソコソと!!
人の居ないトコで陰口たたくなんざとんだ臆病者だ!恥ずかしくねーのかい!!」と啖呵を切りました、江戸っ子?
カチンと来た沢近
「ああ…そうじゃあ言わせてもらうわよ!!私はアンタみたいにいろんな男に手ェ出さないわよ
長年幼馴染とイチャついたり海に行けばナンパされて消えたり」
塚本家、空襲警報発令中
625衝撃の一日:04/01/09 03:51 ID:I2C3WD3a
「播磨君だって…!!」激昂した沢近にはこの一言が余計だったということに気付かなかったようです
「待て待て待て待て!!
何から何までおかしいだよとりあえず!播磨はあんたと仲良く手ェとりあって見つめ合ってたじゃね―か!!」
「え゛!?」衝撃を受けたのは塚本天満
「な…ああれは急にアイツが現れて私の手を掴んで勝手に告白してきたのよ!」そのことを知っていることに動揺しつつ反論する沢近
「え゛え゛〜!?」さらに衝撃を受ける天満
「やってらんない!!私帰るわ!」沢近愛理、形勢不利にて戦線離脱
引きとめようとする天満の言葉をさえぎり一足先にお帰り

「姉さん達…にぎやかだなあ 勉強になるのかな」状況を知らない一階の八雲はのんきなものだ

「またね天満!」パタンッ 晶は完全に無視ですか?
「…美琴ちゃん…播磨君が愛理ちゃんに…」
「…本当だよ 黙ってた方がいいかなってすぐにその場をはなれたけれど…」
「そんな…播磨君…美琴ちゃんに告白の練習までしたのに………」アンタがやらせただけ
「え゛?」美琴、衝撃の事実を知る?
「あんなに一生懸命だったのに…フタマタかけようとしてたなんて…最低だよ…播磨君!」←原因

コーン 運悪く、天満のこの一言だけを聞いてしまった男、播磨拳児、しかし部屋の外の室外機の修理と言う職務中の男は厳しいのである
「おいバイト 何泣いてんだ キッチリ仕事しろ!!」「いやもう 何がいったいどーなんてんのかさっぱりで…」
男に悲嘆に暮れてる時間はない、働け播磨

「すみませんお茶菓子を――」
仕事に入ったばかりの二人に差し入れを持ってきた八雲が目にした物は
相棒が泣き始めてしまったため仕事を中断せざるをえなくなった中年とキリンの人だった
事情がわからずただオロオロする八雲
何を思ったのかケーキを引っ込めおにぎりを作り始めた、甘いものは苦手だとでも思ったのだろうか?

「だ…大丈夫っス…!自分…仕事だけはキッチリやりまス!」涙を拭き、再び播磨は立ち上がった!
「さしいれ………です」
播磨の前ににぎりたてのおにぎりをお盆に載せた八雲が現れた
「あ…あのっ私にはわからないけど……頑張って下さいっ………」
「しょっぱい」聞いてんのか、播磨?しょっぱいのは涙…だそうだ
(何があったんだろう……)遠目から播磨を見つめる八雲 至近距離から播磨を見つめる伊織であった
普段ここでSS書いてる人って一作品仕上げるのにどのくらい時間かかってます?
ただテキスト写すだけなのにめちゃくちゃ手間取ったよ、コレしかも楽しくない
やる気のないもの書いた上に読みにくいものにしてしまってスマン
後の処分はスレ住人の皆様にまかせます、おやすみなさい
「あの…えっと… ね………………播磨くんて……………美琴ちゃんのことが好きみたいなの…………
なんとか2人にうまくいって欲しいんだけど…私 こういうの疎いから 
愛理ちゃんに協力してもらいたくて……美琴ちゃんにとってもいいと思うし……」

セリフ抜けあり スマン、本当にスマン
っつーかたった一人の我侭なんだから、そんな甘やかすな。
コミックス待てと一言言えば済むこと。
同意。でもノベライズはうまくできてたと思う。乙。
630旗派:04/01/09 13:38 ID:OK78eVPW
なるほど。こういうわけが・・・・。とてもよくわかった。マガスペの「あの日です」
ってのはこの日のことだったわけだ。わがまま聞いてくれてありがとう。
>>607-612 乙!
自覚がないからこそ、本物だと思うのだ、の後に
サラも自覚無しに『播磨さん』って言ってるのに
一人悶えました。大好きですサラ。
今読み返したら…リンカーンヒゲに惚れたのか、サラw
>>632
んん・・・?俺も読み返したけど全然わからない。
どの文章からヒゲ読み取ったんだ?
>632
610 名前:○播磨 拳児、天満の「ヒゲ、ステキ」発言に勘違い中。○ 投稿日:04/01/09 02:00 ID:at3mwqp8
<これやね。
成程、タイトルだったか。
636「SPY GAME」  ◆Eri//qLXXY :04/01/10 08:40 ID:Gk5bKe2/
>>607-612の姉妹編です。蛇足と言わずに、是非。

「ねえねえ、知ってる? 播磨くんのウワサ。」
短い夏休みが終わり、キャンプの写真をみてはしゃぐ美琴たちの輪に加わってきた冬木 武一。
播磨 拳児が動物園で女の子とデートしている姿が何度か目撃されているというのだ。
その相手というのがなんと、なんと!「あの」塚本 八雲に似ているというではないか。

「塚本の妹ぉーー? そりゃないだろ。」 ハナから冗談だと取り合わない、美琴。
「播磨…そうか…いつの間にCを…あなどれないヤツ…。」 何やらブツブツつぶやく、今鳥。
「常識的に、あり得ない組み合わせだと思うけど?」 冷ややかな視線を冬木に送る、沢近。
「へえー……」 晶は意に介さない様子。
「ま、ガセだろうけど…おい冬木、塚本と花井には聞かせるなよ。話が余計にややこしくなるから。」
美琴が釘を刺す。天満は播磨を探しに、花井はトイレに行っており、幸いその場にいなかった。

わかったと言いながらも、冬木は楽しげな口調を隠せない。でもさー…
「いやあー、ウチの一年生で一番人気の八雲ちゃんが男とつきあってるなんて、
本当なら大ニュースだよ!なにせ、今まで浮いたウワサ一つなかったんだから。
しかもその相手が「あの」播磨くんかもって言ったら……。
とにかく真相を確かめて、本当なら是が非でも現場を写真に収めないとね。」

何 故 な ら 、 恋 す る 女 の 子 は 輝 い て い る か ら …… 。
638○冬木 武一、パパラッチ。○:04/01/10 08:42 ID:Gk5bKe2/

「……で、なんで私がつきあわなきゃならないのかしら。この歳で動物園なんて……。」
「だってほら、さ。動物園に男一人ってのも寂しいじゃない。」
「たく、アホらしいったらないわ。」
「そんなこと言って、沢近さんも結構乗り気なんじゃない?ほら、そのカッコウ。」
ジーパンにスニーカー。ボーダーの長袖シャツ。普段の彼女とは違うシンプルな出で立ちだ。
ご自慢の金髪は、目立たぬよう野球帽に押し込められている。とどめは、薄手のサングラス。
「こ、これは…私が動物園なんて、らしくないんだもの。なるべく知られたくないからよ!」
「でもこうやってさー、隠密行動するのって、ちょっとスリルがあってワクワクしない?」
「それは、否定しないけど…。まあいいわ。冬木君?ともかく今日はきっちりオゴッてもらうわよ♪」
「…はい…約束ですから。」 財布の中身を確認する。しくしく。
「しっかしそのウワサ、信用できるのかしら。だいたいあのヒゲが動物園なんかに通うワケ──」

 居 る し !!

たそがれてる男が一人。柵に寄りかかり、子供達と一緒に、キリンが行う芸を見ている。
(ホ…ホントにいるなんて)
(でも、一人みたいだね。待ち合わせしてるのかなあ?)

ほどなく、答えは出た。
「播磨先輩!」 女の子の弾んだ声がアイツを呼ぶ。声の主を探す。
亜麻色の髪の少女が、播磨に手を振りながら近づいてくるところだった。
「あの娘……確か天満の妹の友達の」
「サラちゃんだね。サラ=アディエマス。」
冬木は、八雲以外の他学年の女子のチェックも怠らない。
それにしても、思いもかけない組み合わせに、ただただ唖然とするしかない。

二言三言、言葉を交わす。
両手を後ろ手に組み、播磨の顔をいたずらっぽく覗き込むサラ。
が、彼のリアクションに物足りなそうに空を見上げる。
かと思うと、次の瞬間にはおかしそうにクスッと笑う。
くるくると目まぐるしく変わる表情が愛くるしい…と、同性ながら思う。
639○沢近 愛理、乗り出しすぎ。○:04/01/10 08:43 ID:Gk5bKe2/

しばし無言。…いい雰囲気じゃないの。
突然─ゴクリとツバを飲む音がここまで聞こえ、驚く。 音、でかっ!緊張してるの丸わかりだわ。
思いつめた表情で、サラに何ごとか話しかけている。やや困惑気味のサラ。
少しぎこちない空気が漂う…。と、唐突に先程の柔らかい笑顔に戻る。
肩に掛けたバッグを下ろし、ジッパーを開ける。むりやり話題を変えようとしているな。
何かトンでもないこと言って、はぐらかされたに違いないわ……あのバカ。
会話の断片をなるべく聞き逃すまいと、見つからない程度に身を乗り出す。

…"お昼にしましょうか"…。                …"お弁当作ってきました"…。
    …"悪いな毎週"…。
              …"先輩の食べっぷりを見てると、なんか嬉しくて"…。
…"そうかぁ?"…
            …"デート"… …"楽しく"…。

お弁当! 毎週? 嬉しい…楽しく…。 ……ふーん、やっぱりデートなんだ。
アイツ、照れてる。困ってる。鼻の下のばしちゃって。みっともない。
ベンチに並んで腰掛け、遠くを見やる二人。しばし無言。何なの、このムード。
相手は「あの」播磨なのよ。あのコもどうかしてるんじゃない?

            …"元気がない"…。
    …"やっぱりそう思うか?"…
                …"寂しい"…。

いかにも心細げな表情を見せるサラ。
顔を見合わせる二人。播磨の言葉に、ちょっとむくれて、すねて見せたりして。
640○沢近 愛理、想像力豊か。○:04/01/10 08:44 ID:Gk5bKe2/

お弁当はサンドイッチと、水筒に入った…あれはお茶かしら。
さほど手の込んだメニューじゃない。なのに───
あーあ、あんなに美味しそうに頬張っちゃって。いやしいったらないわ。
一瞬の逡巡の後、意を決したように播磨に話しかけるサラ。
切羽詰った顔。彼女にとって非常に重要な内容であることは想像に難くない。
肝心な場面なのに、風に揺れる葉の音が邪魔してよく聞き取れない。

    …"八雲"…           …"男の人"…
   …"播磨先輩"…      …"になって"…。
  …"俺が?"…
                                    …"心を開いて"…。
やくも?今ヤクモって言った?やっぱり、あのコも関係あるんだ。
心を開いてって…え?もしかして今、告白してる?まさか…三角関係とか?
優柔不断そうな顔。二人の女の子のどちらを選ぶか、決めかねているような。
何なの、あの男!!大した器量でもないくせに、いったい何様のつもりなのよ!

          …"縛られて"…             …"見えない"…。
   …"前に"  … "してる"…        …"もがいて"…。
             …"押して"…
                  …"欲しい"…。          …"てくれたら、きっと"……。
「!!」
この辺りは、もう自分の理解を超えている。想像が、際限なく広がる。
それはもう、あんなことや、こんなことや…果てはあ〜んなモノまで…。
頬を染めてうつむくサラ。もじもじしちゃって。それをだらしないアホ面で見つめる男。

 こ ん の ド 変 態 が !!

だいたい、あのヒゲは何のつもりなんだか。顔中毛むくじゃらにして。
『ケダモノ』───ホント、そう呼ぶのがぴったり。動物園に違和感なくハマるわ。ただし、檻の中に。

その後、播磨たちは数時間に渡っていくつかの動物達を見て回った。
それを追いながら冬木はシャッターを切り続ける。
と、シャッター音に混じってギリギリという音が聞こえてきた。
(?…沢近さん!歯ぎしり、歯ぎしり!聞こえちゃうよ!)
「何か言った!?」
(いえ…なんでもありません……。)

「さようなら。今日はとっても楽しかった。」
……
「いいえ。すごく得した気分です。播磨さんの目って、意外とカワイイんだ。」
……
「んー…それじゃあ、二人だけの秘密ってことで。」
……
「フフフ。じゃ、また来週!」
……
「今度、茶道部にも遊びに来て下さいね。八雲も喜びます。」
……
「意外と似合うと思いますよ。播磨さんとお茶! シブくて。」
「そ…そうかあ?」
まんざらでもない顔。何よ、デレデレしちゃって。
アンタに茶道なんて似合うワケないでしょ!?脳が誤作動するのが関の山だわ。

沢近のイライラは頂点に達した。
「ああ!!もうガマンできないっ!!」
「あ──沢近さん、何を?」
「天満の妹だけじゃなく、その友達にまで手を出してるのよ?あの変態ヒゲに一発見舞ってやるわ!」
植え込みから飛び出し、駆け出していく沢近。その後姿を、冬木はファインダー越しに見送る。

「ムフフ。嫉妬に身を焦がす、恋する女の子──とっても魅力的だよ、沢近サン。」

後に、動物園で楽しそうにはしゃぐサラと、それを真剣な表情で見つめる沢近、さらには
真空飛び膝蹴りを放つ沢近の写真が、冬木の商品リストに名を連ねることとなる───。

 〜fin〜
シ尺i斤
    ̄
GJ!!
朝から萌えさせていただきますた。
>>637-641 
GJです!
沢近の勘違いっぷりが(・∀・)イイ!
久々に立ち寄ってみたんだが・・・旗派の俺達、スマン。
俺は今日から播磨×サラの国際派に移籍だ。
SSのサラが可愛い過ぎる(*´Д`)ハァハァ
                 ,r=''""゙゙゙li,
      _,、r=====、、,,_ ,r!'   ...::;il!
     ,r!'゙゙´       `'ヾ;、, ..::::;r!'゙
    ,i{゙‐'_,,_         :l}..::;r!゙
.  ,r!'゙´ ´-ー‐‐==、;;;:....   :;l!:;r゙
 ,rジ          `~''=;;:;il!::'li
. ill゙  ....         .:;ll:::: ゙li
..il'   ' ' '‐‐===、;;;;;;;:.... .;;il!::  ,il!
..ll          `"゙''l{::: ,,;r'゙
..'l!       . . . . . . ::l}::;rll(,
 'i,  ' ' -=====‐ー《:::il::゙ヾ;、
  ゙i、            ::li:il::  ゙'\
  ゙li、      ..........,,ノ;i!:....    `' 、   _, ._ グッジョブ
   `'=、:::::;;、:、===''ジ゙'==-、、,,,__ `' (゚ Д゚ )
     `~''''===''"゙´        ~`''ー (  ))
                        丿 |    

萌え転がりました!
あいやー、この構成はうまい。おじさん一本とられたな、こりゃ。ははは…
沢近が播磨のいい所を発見してドキーンな展開キボン
649My Dear:04/01/10 21:50 ID:hG05FNip
『……え?本当に?』
『ああ、久しぶりに休みが取れてね』
『それじゃ明日は一緒に……』
『もちろんだ。まだ行ったことのない場所がいいな……そう、確か近くに動物園があったね』
『うん。でも私もあまり行ったことがないけど……』
『尚更じゃないか。ではそうしよう。明日、二人で動物園に』
『わかったわ。楽しみにしてるから』
『私もだよ、折角の娘との休日だからね。ではおやすみ、愛理』
『おやすみなさい、お父様』


 翌日。
 約束通りに沢近は父と動物園を訪れていた。
『じゃあ次はあっちに行きましょう!』
『おいおい、少しは落ち着いたらどうだい?まるで小さな子供みたいじゃないか』
 急な仕事、突然の用事、忙しく飛び回る父の仕事柄、約束を反故にされたことは数知れない
彼女。その度に笑顔で気にしていない、という風を装い続けてきた。
『だって嬉しいんだもの。ほら早く、お父様』
『わかったよ。やれやれ、しょうがないな、愛理は』
 実のところを言えば、今回もそうなるかもしれない、と思っていたのだった。しかし、今回
は久しぶりに――いつ以来なのか思い出すのに苦労するほどに――本当に久しぶりの二人での
外出だった。彼女が浮かれるのも無理はない、と言える。
『おいおい、そんなに走っていると……』
『大丈夫、平気へい……きゃっ!』
「うおっ!」
 そんな高揚した気分のせいか、彼女らしくもなく動物を眺めていた人とぶつかってしまう。
「ごめんなさい、ちょっとよそ見、を……?」
「いや、こっちの方こそちょっとぼけっと……?」
 互いに謝ろうとした二人だったが、その相手に気がついて愕然とする。
「なんだ、ヒゲじゃない」
「……だからヒゲって言うんじゃねぇ」
650My Dear:04/01/10 21:51 ID:hG05FNip
 よりにもよってなのかなんなのか、沢近がぶつかった相手は播磨だった。さっそく流れ始める
いつものじとっとした空気。
「なんでアンタがこんなとこにいるのよ」
「うるせぇ。いいだろうが、別に」
「よくないわよ。だいたいアンタがぼけっとしてるから……」
「何?今のはどう考えてもお前の方が……」
 相変わらず売り言葉に買い言葉の二人。
 そこに。
『だから言ったじゃないか、愛理。……それで、そちらの方はお友達かな?』
『え、あの、そんなことないわ、ただの通りすがりの……』
「おい、何話してんだ?つーか誰だ、このオッサげふ」
 突然目の前で英語の会話を繰り広げられ、わけがわからない、といった様子で沢近に尋ねる
播磨。ちなみに最後の一言のせいでありがたい一撃(父からは見えない絶妙の角度)を頂戴している。
「オッサンじゃないわよ!お父様よ、私の」
「そ、そうか……それは、スマン……」
 うずくまりそうになりながらも、どうにか平静を装って言う。
『やはり知り合いのように見えるのだが……』
『……通りすがりのクラスメイト。そう言おうと思ったの』
『クラスメイトか、それは奇遇だね。そうだ、せっかくだし彼にもご一緒してもらったらどうかな』
『え……!そんな、お父様私は……』
『今もずいぶんと仲がよさそうだったじゃないか。なに、私は全然気にしないよ』
『そうじゃなくて、私が……!』
「……」
 ……などという会話が繰り広げられているとはつゆ知らず、なんとなく手持ちぶさたの播磨。さすがに
黙って立ち去るのは気まずいし、一声かけようにも会話に割り込めない。
651My Dear:04/01/10 21:51 ID:hG05FNip
 そんなやりとりがしばらく続いた後。
「あの、ね……」
「お、おう。なんだ」
 やけに深刻そうな顔で言ってくる沢近にたじろぐ播磨。
「私はどうしても嫌だ、って言ったんだけど」
「な、なんだよ」
「お父様がね……あなたも一緒に、って」
「……ハイ?」
 何を言っているのか理解できない、という顔。
「だから、私たちと一緒に来なさい、って言ってるの」
「なんで俺がそんなことしなきゃなんねェんだよ!」
「私が訊きたいわよ、そんなの!……とにかく、お父様は言い出したら聞かないの。お願い」
「お、おい……わかったよ、行けばいいんだろ、行けば」
 言って頭を下げる沢近に、女の子のそういう態度には弱い播磨は渋々承諾する。
『お父様、こちらクラスメイトの播磨くん』
『ふむ、ハリマか……なかなかいい名前だね』
 そう言ってから、今度は播磨に片言の日本語で挨拶する。
「ヨロシク」
「あ、いや、こちらこそヨロシク」
 妙に畏まってしまう播磨。その脇腹を沢近がちょんちょんとつつく。
「……ちょっと」
「……なんだよ」
「わかったと思うけど、お父様はあんまり日本語が得意じゃないの。でもだからって変なこと
言ったら……わかるわよね?」
「……ああ」
 もう殴られたしな、というのはさらに頂戴しそうだったので口に出さず、なんでこんなことに、
と心の中で嘆く播磨。
652My Dear:04/01/10 21:52 ID:hG05FNip
 ともあれ、そんな風にしてやけに上機嫌の父に少し複雑な気分のその娘、そしてなんだかもう
よくわからないそのクラスメイト、という風変わりな三人での動物園巡りが始まった。
 最初は不機嫌そうな沢近だったが、歩き始めてからは播磨の意外な一面に驚かされ通しだった。
 動物たちのあまり知られていない面白い習性、人気スポットの穴場、といった動物園の楽しみ方
に加えて、果ては何匹かの動物にはちょっとした芸までさせてみせた。
「ちょっと……どうやってるのよ、それ」
「ん、まあいろいろとな……」
 と当人はあまり多くを語らなかったが、よくよく周りを見てみれば、播磨のそれを楽しみにして
いる人たちもいるらしく、ここではずいぶんと有名人らしい、ということを知る。
 一方の播磨は、なんかシャクだよなあ、と思いつつも、沢近の後ろに立っている父親だという男が
しきりに感心してくれるため、檻の中の友人たちに頭を下げつつ、ちょっとした芸をやってもらっていた。
「ねえ、あの子は何が出来るの?」
「あいつか。あいつは――」
 そしていつのまにやら沢近までも楽しそうにして尋ねてくる。普段は目にしないそんな様子も、つまりは
父親の存在によるものだろう、と思う播磨は、
(ま、たまにはこういうのも悪くはねェか)
 あくまでたまに、だけどな、などと考えたりする。
 そしてその間、沢近の父はあまり口をはさまずに、娘とその友人のにぎやかなやりとりを穏やかな視線
でじっと見守っていた。
 数時間後、これで一通りだぜ、という播磨の一言で腰を下ろす三人。けっこうな距離を歩き回ったせいか、
心地よい疲労感に襲われる。
『私、なにか飲み物買ってくるわ。お父様は何がいい?』
『愛理に任せるよ』
 わかったわ、と今度は播磨に尋ねる。
「飲み物買ってくるんだけど、播磨くんは何がいい?」
(播磨くん……?)
 その言葉に疑問を持ちつつ、いや任せる、と答える播磨。すると、その答えに何故かふふっ、と笑みを
こぼす沢近。なんだよ、と訊くと。
「ごめんなさい、たいしたことじゃないの。なんだか二人とも似てるな、って。それだけ」
 それじゃ行ってくるわね、と去っていく沢近。
(……なんっかなあ)
 そのあまりに大きすぎる普段とのギャップに、そういうもんなのかねえ、とちらりと横の男を見る。
653My Dear:04/01/10 21:53 ID:hG05FNip
 と。
「ハリマくん、だったね」
「ああ、そうっすけど……?」
 かけられた声に返事をしてから気がつく。
「……日本語?」
「ああ、愛理には内緒にしておいてくれると嬉しいよ。数少ない父の秘密、というやつでね」
 などと言いながらにっこり微笑んでみせる。食えねえ親父だ、と思いつつ、わかりました、と返事。
「あの子とはずいぶん仲がいいようだね」
「いや、そんなことないっすけど」
「そうかな?あれだけ笑顔でいるあの子を久しぶりに見たよ」
 もっともかまってやれない私が悪いんだけどね、と自嘲気味の表情に、何も言えなくなってしまう播磨。
「なかなか難しい子だろう?怒ったり拗ねてみせたり」
 その様子に気をつかったのか話題を変えてくれたのだが、実のところ播磨としてはこれも答えにくい
話題である。
「難しいっつーか……まあそうですね、ハイ」
「遠慮しなくてもいいよ。まあともかく、あの子にもいろいろとあってね、なかなかストレートに感情を
出さないんだよ」
 あくまで私から見て、だよ、と付け加える。どうやら英国と日本の違いに考慮しているらしい。
「その辺り、君ならきちんと受け取ってくれそうに見えたんだがね」
「……全然ないっすよ、そんなこと」
「君がそう言うならそういうことにしておこうか。……そうだ、何か訊きたいことはあるかな?愛理のこと
でも答えられる範囲で答えてあげよう」
「いや別にそれは……」
 と、ふと思いついたことがあったので尋ねてみる播磨。
「……カレーと肉じゃがってどっちが好きっすか」
「その二つならカレーだが……?」
「いや、なんとなくなんで」
 質問の意図を汲み取ろうとしばらく思案顔だったが、やがてなるほど、という顔をする沢近父。
「やはり君のような人があの子の友人でよかったよ」
「別に友人ってわけじゃ……」
 と、そこで視界に沢近の姿を捉える二人。
「おや、そろそろ戻ってくるね……くれぐれも内緒に。頼むよ」
「それはいいっすけど……」
「それはよかった。では最後に一つだけ」
「……なんっすか」
「娘をよろしく頼むよ」
654My Dear:04/01/10 21:54 ID:hG05FNip
 どういう意味、と聞き返そうとする播磨だったが、沢近の姿はもうすぐ近く、約束通り会話はもう出来ない。
仕方なしにじと目で父親の姿を見てみるが、なんでもない様子で微笑んでいる。
(やっぱり食えねえ親父だ……)
「おまたせ……何?変な顔して」
「なんでもねェよ、別に」
 ならいいけど、と今度は父に向き直り、コーヒーのカップを渡す。
『おまたせ。何かお話してたの?』
『彼の英語と私の日本語じゃ無理だよ』
『それもそうよね。ううん、なんだか向こうから見たときにそんな風に見えたから』
 そう言って腰を下ろした沢近と入れ替わるようにして立ち上がる父。
『お父様……?』
『すまないね、愛理。そろそろ行かなくてはいけないんだ』
『……え?』
 沢近の顔に一瞬よぎる影。
『今朝になって入った用事でね……本当にすまない』
『ううん、いいの。半日付き合ってくれただけでも感謝しないと』
 それは笑顔という名の仮面をつけた、彼女の言葉。
『愛理……でもね、ちゃんと夕食までには帰ってくるよ』
『え――――』
『期待していいんだろう?今日の夕食』
『――うん、楽しみにしててよ。びっくり……びっくりさせちゃうんだから』
『ああ、楽しみにしているよ』
 そう言って、知らずこぼれた沢近の涙をそっとぬぐう。
『では彼にもよろしく言っておいてもらえるかな』
『うん、わかったわ』
 じゃあ、と軽く片手を上げてから去っていく。その姿を、沢近は見えなくなるまでじっと見つめていた。
「お父様がよろしく、だって」
「そうか」
 先ほどまでは自分の居場所のなさに縮こまっていた播磨、ようやく一息つく。
(よろしく、ねえ……)
 娘を、の一語がないだけで、こうも印象が変わるのかね、などと考えたりする。
「……悪かったな、今日は」
 邪魔しちまったみてェだ、とそれでも一応謝っておく。やっぱり悪いのは沢近の方だと思うのだが、
それを言ってもどうにもならないことはいい加減学習済みだ。
「そうね、最悪よ。天満や美琴ならともかく、よりにもよってアンタだなんて……」
 いつも通りの愚痴。
 けれど――
「……でも今日はありがとう。なんだかんだ言っても、けっこう楽しかったわ、私も」
 もちろん、それでもアンタがヒゲで馬鹿なのは変わらないけどね、と付け加える。
「……うるせえ」
 言葉こそとげとげしいものの、いつものじっとりした雰囲気はない。
「そろそろお昼ね……ねえ、ここのお勧めとかあるんでしょう?」
「まあな」
「じゃ、案内しなさいよ。今日はそれで許してあげるわ」
「……わーったよ。ったく……」
 播磨はぶつくさ言いながら、沢近は相変わらず楽しそうに、それぞれ立ち上がる。
 その姿。
 もし一切何も知らない人が離れた場所から見ていたとするなら――どう、見えただろうか。
 ともあれ。
 そうやって、二人は並んで歩き出した。
655My Dear:04/01/10 21:57 ID:hG05FNip
親父が謎の人物に……
どこか何かを失敗したような。

おまけ
「今戻ったよ、中村」
「お帰りなさいませ、旦那様」
「いや、君の言った通りなかなか面白い青年だった」
「そうですか、それはようございました」
「愛理は……どうなんだろうな」
「それはお嬢さまがお決めになることですから」
「それもそうだな」

とかなんとか。
親父がな・・・くえねえ。

でもGJでしたよ。はしゃぐ沢近(*´Д`)ハァハァでした
はりまは えりのおやじの おすみつきを てにいれた!
やべぇ……もろキた。
つーか本スレで俺が書き込んだ「こんな展開が見たい妄想!」が元だろテメー!
さすがだよ!GJ!
659655:04/01/10 22:52 ID:hG05FNip
沢近の好きなものが動物園だったの忘れてた……
あははー。
本編でも高確率で沢近の動物園好きと播磨の動物好きが絡んでくると見たね。
さあ,どんどん来たれ妄想の嵐!!
>>655 GJ!!
GJ!とても読みやすかった!!
沢近の内面描写がされてないとこが新鮮でイイ!!
なんだなんだ!
2・3日離れただけで何本投下されてるんだ!(;゜д゜)
それにしても・・・



GJ連発で萌だえ死にそうです、神様 _● ̄ム
>>655
ぐじょーぶ。

そして
>>657にワロタ
サラSSキボンヌ!!てか俺も播磨×サラの国際派に乗り換えようかと…
まじでここ数本良過ぎー(゚Д゚)
設定に破綻もないし文章も巧いし、いい感じに面白い。
絵板に神降臨
全てが神だ!日本には八百万の神がいて本当に良かった!
親父いかす。
中村セバスちゃん化希望
マジでここ数作はすばらしい作品が投下されてるな。
各SS職人さんのレベルの高さにちょっと引きながら一本投下します。
読みづらい部分やなんじゃこらぁな所もあると思うけどそこは勘弁して下さい。
満開の桜並木道を一組のカップルが寄り添って歩いている。

 二人は周囲の喧騒など耳に入らないように瞳を輝かせ、語り合い笑いあっていた。
その光景はとても微笑ましいものだった。すれ違う人々の心さえ楽しくさせるほどに。
「俺も今日から大学生か…実感がわかないな」
男がつぶやくと、少女は悪戯っぽい笑みをうかべ、おもむろに男の頬をつねりながら
男の正面に回りこみ、小首をかしげながら問い掛ける。
「どお、痛くない?播磨君」
「天満ちゃんにそんな事されてもなぁ…。痛くない、てか『もっと!』て感じだよ」
「いやん、もうっ。播磨君そんな趣味があったの?」
天満は再び播磨の横に戻り、そっとその腕に自らの腕を絡ませる。
播磨は天満の頭をそっと撫でながら、「冗談だよ」と囁くと、ふっと真剣な表情に戻り
天満に答えを返す。
「あの頃の俺には進学なんて考えられなかったからな。いつも赤点ばかり取ってて。
でも、あの数学の補習のときに、天満ちゃんの本当の気持ちを知った時は本当に
びっくりしたけどな。」
「私も。だって播磨君は美琴ちゃんが好きだと思っていたから…。あの時二人きりになれて、
ナントナク播磨君の好きな人って私なのかなーって思ったから、つい聞いてみたの。
私のことすき?って」
 播磨は遠くを見つめながら、過去の思い出を振り返る。思い出の中の天満は今より少し
幼く遥か遠い存在にみえた。
播磨にとって当時の記憶はかけがえの無い宝であり、当時の友人達とは今でも連絡を取り合え
る状態にある。ただ一人を除いて。
唯一の例外、塚本天満は当時の友達と言う立場から、今では彼の恋人と言う存在に変わっていた。

 その様子を黙って見つめていた天満は、柔らかい笑みを浮かべ囁くように彼女にとって一番
大切なひとである播磨に問い掛ける。
「何を考え込んでいるの?」
「…ん?昔の事だよ。あれ?そういえばあの時に高野もいなかったか?」
「晶ちゃん?たしか…晶ちゃんに私達が勉強を教えて貰っていて…。でも、私が播磨君に
質問した時には間違いなく二人きりだったわ。何処に行ったんだろう?」

(晶はその時、掃除道具入れの中で二人の様子をビデオに撮影中。この話はまた別の機会に…)

「そういやそうだな。まぁ、おかげさまで天満ちゃんとこうして付き合えるように成ったから
高野には感謝しないとな」
天満は、コクンと頷き幸せそうに笑った。
二人は再び満開の桜並木道を歩き始める。
しばらく歩いていると、ちょっとした休憩所らしい建物が見えてきた。テーブルがひとつ、
長椅子がふたつあり、側には自販機が設置されている。
「天満ちゃん、ちょっと休んでいこうか?」
「うん。私ジュース買ってくる。播磨君少し待ってて」

休憩所の長椅子に座り二人は再び取り留めの無い話に華を咲かせる。

「…そういえば私が初めて播磨君に会ったときは、びっくりしたなぁ」
「え?天満ちゃん、アレを覚えてたのか?」
播磨の顔に動揺が走る。
「あれって何?。二年生の時、クラス替えで播磨君の名前があったのは知ってたけど、
実際に会った事は無かったし。わるーいウワサは聞いてたんで、実際に会ったときの
イメージと違ってたからびっくりしたの。それより教えてよ。あれって何?」
「…本当の最初の出会いはなぁ、その二年前なんだよ。天満ちゃんは覚えてないかも。」
「うーん、二年前…。ダメ、降参。お・ね・が・い。聞かせて?」

「…あの頃の俺は『自分が強いかどうか』って事しか興味が無かったんだ。だから
あっちで揉め事が無いか、こっちで喧嘩は無いかって感じで毎夜ごと街に繰り出していた。
そんなある夜、一人の女の子が、やくざに絡まれているのをみてチャンスと思ったんだ。
『これで喧嘩が出来る!しかも相手にとって不足は無い!』ってね。その女の子には悪いけど
助けるって気持ちはこれっぽっちも無かったんだ。ただ、喧嘩の後でその女の子が血をみて
貧血を起こしたんで、家まで連れて帰ったんだけど。…ここまで言って思い出さない?」
長々と説明した後で天満が買ってきたジュースを一口のみ彼女の顔を覗き込む。
うつむきながら考え込んでいた天満はふっと顔を上げ播磨に問い返す。
「何となく思い出してきたわ。アレって播磨君だったの?」
四月の柔らかな風が二人の間を流れていく。
「何となく思い出してきたわ。アレって播磨君だったの?それじゃ私も気が付かないよ。
だって、あの時のヒトはひげもサングラスも無かったから。」
「まあ、ひげとサングラスには理由があるんだが、それより天満ちゃん、あの時どうして
絡まれてたんだ?」
播磨に問われた天満は記憶の断片を思い出すように集中しあの時の状況を心に思い浮かべる。

―――確か、あの日は友達と映画を見に行って…。それから友達と別れて家に帰る途中で…。
突然男の人に声を掛けられたんだったかな?見た目がモロにアッチ系の人だったから怖くて…。
周りにいる人たちは誰も助けてくれなくて。私は怯えて声も出せなくなったのよね。
あの男はガタガタ震える私に『ちょっと事務所まで一緒に行こうか?』なんて言いながら
私の手を引っ張って路地裏に連れて行こうとして。
でも、隙を突いて逃げ出した所までは良かったけど、道が全然わからなくて大通りを探して
いるときにまた見つかりそこで追い詰められたんだっけ。
『もうだめかなー』って思ったときに、知らない人に助けられて…。そこで一旦気を失って…。
気が付いたとき、知らない人が覆い被さっていて、思わずその人を投げてしまって――
そこまで何となく説明していた天満は改めて「あの時はありがとう」と播磨に礼をしながら、
でも…と続けた。
「でも、助けてもらって何だけど、第一印象は最悪だったわ。」
その言葉を受けた播磨も頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。
「やっぱりな。俺はあの後必死になって天満ちゃんの事を調べたんだ。何処の中学か、
何年生なのか、てな。同級生だってわかってからは、何処の高校に進学するのか調べて
俺も一緒の高校に行く為に必死で勉強したんだ。…でも…怖かったんだ。
ひょっとして、俺の好きになった人に怖がられてないか?嫌われてないか?ってね。
俺は頭が悪いから、考え付くのは変装だけだった。ひげ、メガネ。ありきたりだけど」
「その変装のおかげで私にとっての最悪の出会いは回避できたんだから良かったじゃないの」
「そう言われると本っ当に助かるし、ヤッタ甲斐があったって思えるな」

しばらく話し込んでいた二人だが、ふと天満が腕時計に目を配りあることに気付く。
「いけない。播磨君、そろそろ入学式が始まるよ。さ、急ぎましょ。」
天満は播磨の手を取り小走りに駈け始める。
播磨も天満の手を握り返し彼女について行く。
二人の未来は何処までも続く。今と同じく手と手を取って。
若い二人の未来にかんぱ…


トントン…がちゃっ
「拳児ー。いるー?カレー出来たわよ」

…カリカリカリ。
『若い二人の未来に乾杯』

「あんたまた現実逃避してるわけ?いいかげんにあきらめなさいよ。あんたは天満に
振られてあたしと結婚したんだから。」
…カリカリカリカリ。
「ちょっと見せてみなさいよ。…まー未練たらたらと…。しかも今度は小説?
どうせ書くんだったら、『麗しき美少女沢近愛理』と『野蛮人播磨拳児』の大冒険
みたいなの書きなさいよ。」
…カリカリカリカリカリ
「ま、とにかくご飯だから。早く来なさいよ。」
…カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…

       fin
と、以上で終わりです。
しかし、俺はなんでこんなオチのSSしか書けんのかなぁ。
>>676
よ、よかった。
漫画落ちじゃなかったらどうしようかとオモタ。
>>676
沢近さん心が広い・・・。いや・・まあ、その・・GJ!!
よく読んだら意外に黒展開だった_| ̄|○
なぜだろう、寒いや……
初、天満×播磨キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

・・・と思ったら漫画オチだったー
 _| ̄|○
こんなんスクランじゃねーよ!!

とレスしようと思ったら、このオチですかい。
いや、オチはオチで沢近のキャラが違うよーな気がするんですが、
それまでがありえねー展開だっただけに、力技で納得させられてしまいました。
682「GONE IN 60 SECONDS」 ◆Eri//qLXXY :04/01/11 19:36 ID:XbeAzwIW
  _| ̄|○ 播×天…シリアス…カケナイ…スミマセン…。
683○60秒の学級日誌──。○:04/01/11 19:36 ID:XbeAzwIW

新学期早々、俺と天満ちゃんの関係に急展開の予感!
彼女がなんと、なんとヒゲの魅力の虜になったと独白──。
ヒゲ、ステキすなわち 俺、ステキ。 そう、それはつまり俺の素晴らしさに気付いたということ!

それを知って以来俺は念には念を入れ、俺の持ち得る魅力を極限まで磨き、高めてきた。
機は熟した。今こそ…今こそ長かったこの片想いの歴史に終止符を打つべき時…!
時代の風が俺を後押ししているのを感じるぜ。全身に愛のパワーがみなぎる。
今の俺は、誰にも止められねえ…。
いける! いけるぜ! 今日こそ天満ちゃんのハートをガッチリキャッチだ!!
待ってろ、天満ちゃん!いざ決戦の地、2-Cへ──。

俺の登場に色めき立つ一同。にじみ出るオーラは、どうにも隠し切れないようだ。
お待たせ、天満ちゃん!俺の、俺の晴れ姿を見てくれ!

「お…おはよう!」
「あ、おはよう播磨く…あっれ〜〜?なんか、」
684○ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。 ○:04/01/11 19:37 ID:XbeAzwIW
                                      _/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
アレ…     ___                       _/              ヽ、
     ,/ ̄:::::::::::::::: ̄\  思イガケナイ リアクション…    /                 ヽ
     //⌒ヽ,__/⌒ヽ:,:ヽ   _______     /    /~1             }
    ,|| /⌒   ⌒\|::|||             \   }   /| | ||             {
    ||| ___   __|::|||   お 猿 さ ん だ ね 、\ \  |  | | |:|    ({⌒\    }ヽ
    ,ヘ}ヽ(_)┬( (___ノ|::ヘ|                > \|  |  V i⌒|   ヘ  ヽ   { )
   .彡Z川川リj ! 川川川ノミ   播 磨 く ん 。  /     /    |  |    }   )   } j
     Z!lル川ノ`ヘリ川ハリオ\  _______/     /  '''  |   |   ノ  ノ   ||ノ
   / Z彡小川リ川ミ三ゞ \                 |      し' 1  / /    ‖
  /   彡ハミミ川シ彡リ|ヾ   ヽ                 |  ワ    |  /'´     ‖
  |     ヽ|ヾ川リン       |                 \      |         ‖
  |      ヾリハノ        |                   \___/ノ         リ|
  |        V         |                      | ノ         小}

685○播磨 拳児、早退。○:04/01/11 19:38 ID:XbeAzwIW

 う お お お お お お ぉ ぉ ぉ ん !!

「あれ?播磨くんもう帰ったの?」

「…ガッコ来てまだ1分と経ってないぞ。」

「…結局何しに来たんだ、アイツ?」

 〜fin〜
ものすごい勢いでワロタ。
沢近いい奴…なのか?
AAなんてヒキョーだw
688669:04/01/11 20:15 ID:E1rUBgiP
ごめんよー
くさい玉つぶして逝ってきます_| ̄|○
……アレ?今日はネタの日?
どうしよう、と思ったものの、無理っぽかったので頭をユルめにしたやつで。
ゆるゆるあまあま。
690fall in love...?:04/01/11 22:14 ID:g2xyzih5
「やあ、お邪魔するよ」
「あ、花井先輩。いらっしゃい」
 放課後に茶道部を訪れる花井とそれを出迎えるサラ。そんな構図がいつのまにか
日常のようになっているここ最近である。
「ハイ、どうぞ」
「ありがとう。いや、ここに来て君の入れてくれた紅茶を飲むと実に落ち着くよ」
「ふふ、先輩がここに来るときっていつも興奮気味ですからね。最近はもう最初から
気分が落ち着くようなハーブティー、用意してるんです」
「そうか……それはすまないね」
 苦笑する花井。そのどこか覇気のない様子に、不思議に思ってサラは尋ねる。
「今日は『八雲君!』じゃないんですね」
「ん、ああ……」
 少し言いよどんだ花井だったが、隠しておいてもしょうがない、と口を開く。
「八雲君にはね……断られたんだ」
「……え?」
「好きだとか嫌いだとか、そういうことはまだわからないが、気になる人がいるそうだ。
そしてそれは僕ではない、と」
「そう、ですか……」
 だがね、とまた苦笑混じりに続ける花井。
「決して僕のことが嫌いなわけじゃないから、そう言って頭を下げるんだよ、八雲君」
 いや参ったよ、と大袈裟に天を仰ぐ。
「彼女が悪いことをしたわけではないのにね。むしろ謝るべきは僕の方だと思うんだが……
まあともかく、そういうわけで目下八雲君とは友人関係、といったところ、かな」
 ひとしきり語り終え、紅茶のカップに口をつける。
691fall in love...?:04/01/11 22:15 ID:g2xyzih5
「あの、ごめんなさい……私全然知らなくて……」
 申し訳なさそうにするサラに、かまわないよ、と言う花井。
「いずれわかることだよ、君が謝ることじゃない」
 そうですね、と少し強ばっていた表情を柔らかくするサラ。
「でも今日は八雲来ませんよ?」
「ああ、知っているよ。彼女から聞いたからね」
「じゃあ……あ、私に会いに来てくれたんですね」
 冗談のようにそう言ってみたサラ。
 が。
「……」
 何やら花井の反応がおかしい。
「……あの、先輩?」
「む……いや、まあその通り、と言えばその通りなのだが」
「………………先輩?」
「今まで八雲君ばかり見ていたからね、今日はちゃんと君のことを知ろうと思って、だよ。
それに君にはいろいろと世話になっているし……」
 なんだか恥ずかしい話だがね、と彼には珍しく照れているような表情を見せる。そんな
花井に最初は面食らった様子のサラだったが、
「ありがとうございます。なんだかそんな風に言われたのって初めてです」
 そう言って微笑む。
「う、うむ……」
 その表情にまたも照れくさそうな花井に、それじゃお茶、もう一杯入れますね、と席を立つサラ。
「ふう……」
 視界からサラの姿が消えたところで、一息ついて肩の力を抜く花井。その耳に、こぽこぽこぽ、と
ポットにお湯を注ぐ音だけが響く。
 しばらくして、戻ってきたサラが二人分のカップにそれぞれ紅茶を入れる。
「とっておきのやつを入れましたから、味わって飲んで下さいね」
「ああ、ありがとう。でもどうしてわざわざ……」
「それはですね――」
 そうサラは思わせぶりな間を持たせてから。
「――私も先輩のこと、ちゃんと知りたいって思ってるからですよ」
 いたずらっぽく微笑んだ。
692fall in love...?:04/01/11 22:16 ID:g2xyzih5
ヌルすぎですね、はい。
たまにはこういうのも……


余談

「……美琴さん」
「ん?どうした高野」
「花井くんのことなんだけど」
「ああ、アイツね。なんて言うかさ、惚れっぽいんだよ昔から」
「……そう」
「でも心配いらないって。大丈夫大丈夫」
「どうして?」
「いつだって本気だからね。それに引き際もちゃんと弁えてるし、問題ないって」
「ふうん……」
軟派な花井って何か違う気がする……
思い込んだら一直線。悩まず迷わず突っ走る。
こういうのに好かれると弱そうなのは誰だ……?

意外とイチさんなんか(ry
いや、むしろ沢近だろう。
>>695
沢近が花井タイプに惚れることはないんじゃないかな
「英国にもああいうタイプいたし―」みたいな発言なかったっけか?

まぁ、播磨のタイプもダメとか言って押し切られてるし分かんね(´凵M)
花井原理主義者の自分は花井のSSを見ると本気でうれしい。
花井原理主義者の自分は花井のSSを見ると本気でうれしくなってくるよ。
すまない。二重投稿だ。m(__)m
>>697-698-699
お前は花井かw
>>608-612
メチャ(・∀・)イイ!!
サラかわええ(*´Д`*)
702Spice Girls:04/01/12 10:33 ID:VudB43x1
「イトコ!ラー油とってくれ!」
「やれやれ、『さん』をつけろと何度言ったらわかるんだ」

 ここは中華料理店「青雲幇」
 時刻も夕方に差し掛かり、店は俄に賑わいを見せてきていた。
 店内はそれこそ老若男女の混合米。
 家族連れ、カップル、サラリーマン達など様々な組み合わせの席が見渡せる。
 そんな中、フロアにいた店員の目を一度は捉えてしまう、そんな異彩を放つ二人組が
 店内入り口付近の窓際席に座っていた。
 一人は男。
 身長も高く、体格もいい。ヒゲにサングラス、髪はオールバックの美丈夫。
 一人は女。
 男に連れ添うには十分なスタイル。胸元をそこはかと開いたシンプルなシャツ。
 黒羽濡れた長髪を涼やかに流す麗人。
 ご存じ、播磨拳児と刑部絃子の二人だ。
703Spice Girls:04/01/12 10:34 ID:VudB43x1
「いい加減、呼び捨てでもいーじゃねーか。減るもんじゃねーし」
 『さん』付けを毎度のごとく強要してくる自分の従姉に
 これも毎度のごとく不満の声を上げる拳児。
「ふむ、ではこの『辛い胡麻油』通称:ラー油は没収というこ…」
「すいませんでした、絃子さん!」
 そして毎度おなじみのやりとり。
 拳児が失恋(と本人は思っていた)による迷走の末、絃子のマンションに帰ってきた日も
この光景は変わることはなかった。
 そんな些細なことに確かな安堵を感じ、感謝する拳児ではあるが
 一度でも自らの気持ちを口に出してしまえば、あの従姉のことだ、悪のり、増長は当たり前。
 果ては
 「なんだかんだと言って最後には私の元に戻ってくる。そういう男なんだよ拳児君は」
 等と、決して間違いではないが誤解せずにはいられないようなことを言い出すに決まっている。
 そんな言葉が誰かの耳に入りでもすれば、ややこしくなること請け合いだ。
 愛しの女神、天満ちゃんへのアプローチはこれからが本番というのに、そのようなことを
させるわけにはいかない。
「Bene」
 そんなことを考えていると、彼女は流暢な発音で了承し拳児にラー油を手渡してきた。
「……時に拳児君。そろそろ話してくれないかな……」
 グラスを手に取り、中の液体の動きを楽しむように揺れ動かす絃子。
 受け取った小瓶は滴下する量を調節できるように作られた入れ物らしく
拳児は話を聞きながら注ぎ口をゆるめ、注文したネギミソチャーシューに散布しようとしていた。
 だがその瞬間、思いも寄らぬ一言が拳児の鼓膜を振動させる。

「沢近さんとは一体何があったのかね?」
704Spice Girls:04/01/12 10:35 ID:VudB43x1

 ジョボボッ

 あたりに漂う濃厚な胡麻の香り。
 頼んだミソラーメンは、あり得ない大きさの油膜でチャーシューが覆われている。
「っ〜今度は突然何言い出すんだコラ!豚骨ラーメンもびっくりなぐらい
油ギッシュになったじゃねーか!」
 カンッと殆ど空になってしまったラー油の瓶を叩き付ける。
「いきなり奢るというから付いてきてみれば、やっぱりそんなことを企んでやがったのか!
ねぇよ、ねぇ。なぁーにもねーよ!大体どこからそんな話が…」
 もはや別の料理となったネギミソチャーシューを脇にどけ、最後はブツブツと言いながら目の前の
焼売に箸を延ばそうとする拳児。
 そこに絃子の追い打ちがかかる。
「だがな、拳児君。この写真を見て彼女とは何もなかったという君の言質、信じられると思って
いるのかね?」
 その手に持つのは、拳児が跪き、愛理の手を取り、視線を絡め合わせている写真だ。
「なっ!?そんなもの一体いつの間に?つーか誰が撮りやがったんだ!」
 拳児は慌てて絃子の持つ写真をひったくる。
 特に抵抗することもなく、写真を渡す絃子。その顔には微笑。
「ふ。その反応。合成かと思っていたが、どうやら本当のようだな」
 そういうと、どこから取り出したか既に手には同じ写真が数枚。
「一枚だけじゃないだと!?まさかネガごと持っていやがるのか」
「なに、とある生徒に生活指導を行ったところ、このようなものを進呈してくれてね。
ついでにこの時の話を聞くと、喜んで話してくれたよ」
 夏休みに入る前、在庫処分という売り文句で大々的に売り出していた数多の写真の中に
絃子の写真があったことが冬樹武一にとっては最大の不幸だった。
 独自の情報網により、発売日前に押さえた絃子は彼を尋問し、ある取引を済ませることにより
見て見ぬふりを決めることを約束した。
 そのときの贈呈品の一つがこれである。
「絃子!そいつの名前を教えろ!」
「まぁ安心したまえ拳児君。私から他言無用としっかりその生徒には言い聞かせてある。これ以上の
情報の漏洩はないだろう…」
 あと『さん』を付けろ、と絃子は話を続ける。
「しかし、これでどういう事か分かっただろ?現在君が知る限り、情報源は二つある。一つはクリアー
されているが、もう一つは未だ健在だ」
 拳児の反応を楽しむかのごとく視線を送る絃子。
 対して拳児は、写真を奪い取ることは諦め、見せる表情は焦燥と苦悶。
「く…。生徒を脅迫するなんざ、教師のすることじゃねーだろ!何考えていやがる!」
「ふむ。確かに教職に就くものとしては褒められる行為ではないな」
 手に持つ写真を胸ポケットにしまい、グラスに入っている紹興酒(淅江省の三年物)に口を付ける。
「だが、私は曲がりなりにも保護者だ。恋に破れたと勝手に勘違いして家を飛び出した扶養人が
ある日突然帰ってきたとなれば、心配して当然…」
 コトッとグラスをテーブルに置き、白魚のような手が空を舞う。
「今ではもう何事もなかったかのように振る舞っている君を見て、そろそろ事情を話してもらおう…
そう思ったのさ」
 二人の間は店内の喧噪とはまるで別空間、静かで穏やかな空気が漂う。
「……心配…かけちまったみてーだな…」
「ああ、とても心配したよ」
 ゆっくりと絞り出すように話す拳児にすかさず返す絃子。
「わかったよ。話してやるよ、あの日から今までの俺の無様な姿を」
 そこまで言うと拳児はぐいっと老酒を呷った。
「だがな、酒抜きでは語れねぇ。ガンガン頼むぜ!今日もよお」
705Spice Girls:04/01/12 10:36 ID:VudB43x1

 ――そして拳児は話した。
 愛しの天満ちゃんの好きな相手が一度気を許した烏丸だったこと。
 何もかも信じられなくなり、終いには自らの強さまで信じられなくなったこと。
 慰みに書いた漫画で評価されるも、尊敬していた漫画家に再度裏切られたこと。
 何もかもが嫌になり墜ちるとこまで墜ちたと思っていたとき、綺麗なお姉さんに出会ったこと。
 彼女に養ってもらい、ヒモ同然の生活を過ごしたこと。
 全てを捨てた自分に動物たちの声が聞こえるという能力が備わったこと。
 彼らの声で占い屋をやってみたら評判になったこと。
 そんなとき天満ちゃんが現れ、泣きながら去る彼女を慰めるため全力で駆け抜けたこと。
 捕まえた彼女が何故か沢近で間違って告白してしまったこと。
 今でも沢近が根に持って、自分に当たってくること。
 そんな彼女を疎ましく感じてきていること。
 でも天満ちゃんへの思いは変わらないこと。
706Spice Girls:04/01/12 10:37 ID:VudB43x1

「ろゆーわへは。ほのふぁふふれるらいおもひ、わらるら〜?」
「いや、何を言っているのかさっぱりなんだが」
 ふぅと嘆息して絃子も紹興酒を呷る。
 前回同様、いや前回以上にぐでぐでに酔っぱらった拳児はそれでも飲むのを止めようとしない。
「同じ轍を踏まぬように今度は途中から店員君に水で割らせていたというのに
16℃程度でこれとは…これでは常駐してくれた君に申し訳が立たないな」
 視線を拳児の横に向け、シフトが終わった後もそこに座り、酌をしていた店員に話しかける。
「わざわざ、すまなかったね。サービス残業までさせてしまって」
「いえ、お気になさらないでください。私も興味がありましたから」
 そういって微笑む店員の顔には何故か笑い以外の感情が見える。
 途中から彼女も飲んでいるようだから、その影響もあるのだろうか?
「気持ちはちゃんと伝わってきましたし」
 そういって店員は席を立つと、空になった酒瓶を持ってきた盆へ集め出した。
「しかし拳児君。君もつくづく間が悪いというか、運が悪い男だね」
「あんのことら〜?」
「隣を見てみたまえ」
 付けていたサングラスを外し、眼を凝らす拳児。その瞳に映った姿とは――
「さ、さ、さ……”最高”に今、合いたくない女に似ているっすよ〜店員さん」
 ――沢近愛理、その人であった。


 その後、拳児は知ることとなる。
 沢近愛理が夏休みを利用して短期のバイトで「青雲幇」にて働いていること。
 彼女の新技――両足先で首を固定し体をひねると同時に締め放つ――で昏倒したこと。
 そして今まで以上に彼女からつらく当たられるということを。
707Spice Girlsを書いた人:04/01/12 10:40 ID:VudB43x1
今回は
      ・文章をなるだけ短く。
      ・キャラの会話を多く。
      ・萌え重視。
      ・戦闘シーンを入れない。

 という課題で挑戦してみました。

結論: _| ̄|○

誰か萌える文章の書き方を教えてください。(;´Д`)人
エアカットかよw
青雲幇ってことは
金剛六臂とか言うあだ名のやたらごつい店員さんがいたりするんですか?
店長のあだ名は鬼眼麗人?
途中、店員を晶だと睨んだのは内緒だ。
>707はさりげなく某エロゲライターの決意表明のパロだな(w
712Spice Girlsを書いた人:04/01/12 11:17 ID:VudB43x1
>>709
何のことかは分かりませんが、店長とマネージャーは美男美女の
兄妹です。邪推されるぐらい仲がよいらしいです。

>>711
これも何のことか分かりませんが、スクランキャラにガン=カタを
させたいと思っているのは確かです。


投下していったSSはエピローグや違う視点の話もあったりするわけで
それを公開するか、脳内でとどめるか最近悩んでます。
明らかに萌え路線じゃない自分の文章を読み返せば読み返すほど
やめときゃよかったと後悔する日々ですので…
でも、皆さんの批評がうれしハズカシ時には厳しくて、とてもありがたいです。
こんな書き手でよければこれからもよろしくお願いします。
と遅まきながら新年の挨拶をしてみました。
713With you:04/01/12 14:39 ID:vUjxvpqW
昼休みの賑やかな教室の片隅で、いつものように刑部絃子は一人昼食を取っていた。
級友達は皆、気の合うもの同士で集まって昼食を楽しんでいる。彼らの他愛のない会話の
断片が、絃子の頭の中にノイズとなって飛び込み、彼女の思考を中断させた。
(まったく・・・何が楽しいのだろう)
絃子は級友達の方に視線を向け、小さくため息をついた。学校きっての美人にして、
学年主席の頭脳を持つ才媛。そのためだろうか、彼女はクラスで浮いた存在だった。
窓の外へと視線を移す。灰色の雲が、空をすっぽりと包み込んでいた。
「友達」と言えるような存在はいなかったが、絃子は別段それを寂しいと感じたことは
ない。無理に他人に合わせようという気もなかったし、何より、くだらない話をし、
馴れ合う為だけの存在など必要だとは思えなかった。
714With you:04/01/12 14:42 ID:vUjxvpqW
「・・・さん、刑部さん」
不意に声をかけられ、絃子の思考は再び中断された。
「隣り、いいかな?」
「あ、ああ」
声をかけてきたのは、同じクラスの女子生徒だった。長い髪が特徴的な、どちらかと
言えばおっとりとした雰囲気の女の子。確か、笹倉という名前だったか。
「この頃、ずっとこんな天気だね。イヤになっちゃう」
そう言うと笹倉は絃子の隣に座り、自分の弁当を広げた。一瞬、いい香りが辺りに
立ちこめる。
715With you:04/01/12 14:44 ID:vUjxvpqW
「・・・何で、私に声をかけたんだ?席なら他にいくらでも空いているだろう」
しばしの沈黙の後、絃子は笹倉に尋ねた。笹倉は笑顔で答える。
「だって、一人で食べるよりも二人で食べた方が楽しいじゃない」
答えになってないと思ったが、そのことを絃子は口には出さなかった。そう、とだけ答え、
再び絃子は窓の外へと視線を移した。
「刑部さん、お昼ご飯は?」
今度は笹倉が質問を投げかけた。質問に答える代わりに、絃子は机の上に置いたままに
してあった食べかけの機能性食品を指差す。
「だめだよ刑部さん、ちゃんと食べないと」
笹倉は自分の弁当箱から一つの卵焼きを取り出し、絃子に差し出した。
「卵焼き。私、こう見えても料理得意なんだよ?はい、あーん」
「・・・悪いけど遠慮しておくよ」
「だめ。食べなさい」
仕方ない、と言った感じで絃子は笹倉の方に向き直った。
716With you:04/01/12 14:49 ID:vUjxvpqW
「食事は必要な栄養分を摂取するためのものだよ。同じ栄養が含まれるなら、何を
食べたって変わらないさ」
「そんなことないよ。おいしいものを、楽しく食べるのが大事なんだから。
 体だけじゃなくて、心にも栄養を与えてあげるのが本当のお食事なんだと思うな」
笹倉は笑顔で答えると、さらに卵焼きを絃子の口元へと近づける。絃子はとうとう観念し、
口を開いた。ほどよい甘さが、口の中に広がる。
「・・・どう?」
「ああ、おいしいよ」
「そう、よかった。失敗してたらどうしようかと思っちゃった」
笹倉は、満面の笑顔を浮かべて絃子の顔を見つめた。見ている人の気持ちを温かくして
くれる、太陽のような笑顔。
「それに私、もう一つうれしいことがあったな」
「・・・何?」
どこからか吹いてきた風に、笹倉の長い髪がふわりと揺れる。
「刑部さん、やっと笑ってくれた」


雲の切れ間から、少しだけ教室に光が差し込んだ。
717With you おまけ:04/01/12 14:55 ID:vUjxvpqW
「うーん、『おさかべさん』って何か言いにくいなあ。下の名前で呼んでもいい?」
「・・・別に、構わないけど」
「じゃあ、『絃子ちゃん』なんてどう?」
「そ、それはちょっと・・・」
「いいじゃない、そっちのほうが可愛いし。これからよろしくね、絃子ちゃん?」
「・・・ああ」


というわけで、先生二人の高校時代など書いてみました。
オエビに影響受けすぎてますな・・・。
一瞬
「あれ、いつの間に書いたんだっけ?」
と思うぐらい同じ内容を考えていました_| ̄|○

笹倉先生の下の名前が分からないという点を上手にごまかしている所がいいですね。
フルネームが分からなくて書くことを断念していましたから…
つまり、絃子さんがネコで笹倉センセーがタチですか?
>>712
いいよ〜萌えないけどGJ!!
ほのぼのな感じで。ガンガレ。

>>562
伊織が主人公っていうのが好き嫌い分かれそう。
文章は凄い上手いし読みやすかったです。
元ネタ知らない・・・
ありえんミスをした・・・
ほんとごめん
724Run after your back:04/01/12 22:25 ID:JA7Cw6D7
「やれやれ、少し鈍ったかな」
 ロードワークの道すがらにある矢神神社、その境内で賽銭箱の前に腰掛けてぼやく花井。
どこか身の入らない鍛錬、その原因が肉体的にどうこう、というものでないことはさすがに
わかっている。
(八雲君、か……)
 いつどこにいても、何をしていても、常に頭のどこかで八雲のことを考えているような
気がする花井。どうしてそれほどまでに、その問に答えはない。つまるところそれが『恋』
というものであるわけで。
「まだまだ精進が足りないか……ん?」
 と、視界の隅に小さな黒い影を捉える。
「……猫?」
 黒猫が一匹、すたすたと――どこか風変わりな形容だが、花井には妙に堂々としているよう
に見えた――こちらに向かって歩いてくる。
(確かどこかで見たような……)
 特徴あるその額の十文字に、校内で幾度か姿を見かけたことがあるのを思い出す花井。そんな
彼の様子にはまったくかまう素振りも見せず、黒猫はそのまま近づいて来て――
「……おい」
 花井の膝の上に乗った。
「いきなりそれはないだろう。まったく、君は礼儀というものをだな……」
 返事が返ってくるはずもない、というのは当然わかっている花井だが、思わず口に出して
しまう。それほどまでに黒猫の態度は傍若無人だった。
(余程警戒心がないのか……或いはその逆、か)
 並外れた警戒心があるが故に、敵意のない相手を確実に見分けられる。確かに口では文句を
言った花井だが、だからといって別段どうこうしてやろう、というつもりはまったくない。
 しかし、そんなことを考えているうちに。
「……寝るか?普通」
 我が物顔で座り込んでいた黒猫は、ついに寝息を立て始める。
「まったく、飼い主の顔が見てみたいぞ……」
 そんなことを呟いていると。
「……。……り」
「……ん?」
 誰かが何かを呼んでいるような声がする。しかもその声には聞き覚えがあって……
725Run after your back:04/01/12 22:25 ID:JA7Cw6D7
「あ……」
「おや、塚本君じゃないか」
 その声とともに境内に姿を現したのは八雲だった。普段なら立ち上がって駆け寄る花井だが、
膝の上の黒猫に気を遣ってそうはしない。
「こんなところで会うとは正しく奇遇だね。今日はどうしたのかな?」
「あの、先輩。その子……」
 そこにいるのが花井だと気がついた瞬間、一瞬足が止まりかけた八雲だったが、その花井の
膝の上に目的の黒猫――伊織がいるのに気がつく。
「うん?……ああ、コイツのことだね」
 成程君の猫か、と言いつつ八雲に手招きをする花井。
「塚本くんには悪いんだがね、ごらん」
「伊織……」
 相変わらず花井の膝の上で寝息を立てている伊織。その姿に、しょうがないなあ、とでも
いうような微笑みをうっすらと浮かべて、花井の隣に腰掛ける八雲。
「名前は伊織……でいいのかな?彼はいつもこうなのかな?」
「いえ、あまり人に懐くような子じゃなくて……」
 私も時々避けられたりするんです、と少し寂しそうな八雲。
「ふむ。君に好かれて喜ばないとは、なかなか我儘なヤツだな」
「あ、それは……私が悪いんです、きっと」
「そうかな?今もわざわざコイツを探してここまで来たんだろう?君の方は十分……っと」
 そこで唐突に起き上がる伊織。ぐるりと辺りを見回して、傍らに八雲の姿を見つけるとまるで
風のように一目散に逃げていく。
「伊織……!」
 八雲も追いすがろうとして立ち上がりかけたが、花井を放り出して行くのも悪いと思い、諦める。
「私、やっぱり嫌われてるのかな……」
「そんなことあるはずないだろう。いいかね、さっきも言ったが……ん?」
 八雲を正面から見据えて、君に好かれて、ともう一度言おうとした花井だったが、その八雲の
向こう側、茂みの中にこちらを窺うような様子の伊織と目が合う。
(……成程、な)
 八雲に好かれているのに逃げ回る、という花井にしてみれば不可解極まりない行動、その理由を
悟って、思わず笑い出してしまう。
「……あの、先輩?」
「ああいやいや、すまない。でもわかったんだよ、伊織が君から逃げる理由がね」
726Run after your back:04/01/12 22:26 ID:JA7Cw6D7
「え……?」
 きょとんとした顔の八雲に、種明かしをする。
「実はね、今伊織はちょうど君の後ろの茂みに……ああ、振り向いてはダメだ、また逃げてしまうからね」
 まだわからない、という表情に花井は続ける。
「ヤツはよく君から逃げる、と言ったけれど、探せばわりとすぐに見つかったりするんだろう?」
「はい……少なくともどっちへ行ったのか、というのは……」
「だろう?それはね、塚本君」
 ちょっと間をおいてから、わざとなんだ、と告げる。
「……どうして」
「むう、ここまで来てまだわからないとは……それだけ君が純真、ということか」
 うむ、素晴らしい、などと脱線しかかる花井。
「あの、先輩」
「……すまない。そう、つまりだね――伊織は君にかまってほしいんだよ」
「――え?」
 驚いた、という反応の八雲。
「なんだろう、子供の発想、とでも言うのかな。ただ撫でられたりしているだけでは我慢できない、
だから逃げる。何故なら逃げたら追いかけてきてくれるから、というわけだ」
「伊織……」
「まあ、可愛いと言えば可愛いかもしれないな」
 さて、これでどうだろうか、塚本君、と尋ねる花井に、ありがとうございます、とぺこりと頭を
下げる八雲。
「なに、塚本君のためだ、気にしないでくれたまえ。それよりも、だ」
「……?」
「伊織が待ちくたびれているようだよ。早く行ってやるといい」
 僕もロードワークの途中だったからね、と立ち上がる。
「はい……」
 そう言って八雲も立ち上がって振り返ると、待っていたかのように駆けていく黒猫の姿。後を追って
駆け出した八雲だったが、境内を出るところで立ち止まって振り返る。
「花井先輩、ありがとうございました」
 彼女にしては珍しく、大きな声で礼を言う。対する花井はそれに応えて笑顔で手を振る。それを見た
八雲は、最後にもう一度頭を下げてから伊織の後を追って駆けていった。
「……やれやれ」
 その後ろ姿を見送りながら呟く花井。
(恋人と言うよりはただの先輩後輩、か)
「さて、僕も頑張るとしようか」
 追いかけるべき背中は手のまったく届かないところだがね、と思いながら、花井もまた、走り出した。
727Run after your back:04/01/12 22:28 ID:JA7Cw6D7
いろいろ二番煎じで申し訳ない。
あと最初は美琴も一緒で、ジュース買いに行ってる間の出来事で、
帰ってきた美琴がなんか拗ねてる、とかあったのは秘密。
GJです!次回作にも期待!
GJ!!
花井カコイイ!!
すみません、いつになるかはわかりませんが、SS絵描いてもよろしいでしょうか?
丁寧に描きますからm(__)m
731727:04/01/13 00:12 ID:syY2ugXm
「私、やっぱり嫌われてるのかな……」 → 「私、やっぱり……」
に読み替えると喜びます。俺が _| ̄|○

>>730
いやもうどうぞどうぞ、全然構いません。
>>731どうもありがとうございます!
my best friend描いた後描かせていただきます。
自分のできる範囲で努力してw
733少年時代:04/01/13 01:52 ID:gKPNK0Yd
「愛理ちゃん、一緒に夏祭りいかない?」
 夏も深まり、秋の足跡が忍び寄ってくるような、八月の終わり。
 そんな時、沢近愛理は、友達である天満から、夏祭りの誘いを受けていた。
「夏祭り…?うん、私はかまわないけど」
 沢近は、受話器のコードを、右手の指でクルクルと回しながら、電話の向こうにいる天満に答えた。
「ほんと!?よかった〜。あ、そうそう、後美琴ちゃんと、晶ちゃんもくるからね〜」
 本当に嬉しそうな天満の声に、思わず沢近にも笑みがこぼれる。
「──うん、わかった。今日の7時に集合ね…うん、それじゃまた後で」
 チン。
 軽く受話器を置くと、沢近は、大急ぎで自分の部屋にかけていた。
「浴衣……私が着られそうなもの、あったかな…?」
734少年時代:04/01/13 01:54 ID:gKPNK0Yd
 ぴーひゃらら。どん、ぴーひゃらら。
 7時。辺りは少しずつ薄暗くなり、神社の入り口からは、楽しそうな笛や太鼓の音が漏れていた。
「おーい。こっちこっち〜」
 浴衣を見事に着こなした美琴は、同じく浴衣に身を包んだ沢近を見つけると、手を左右に振った。
「はぁはぁ……ごめん。遅れちゃった。意外とこの下駄っていう履き物、歩きにくいものねえ」
「慣れたら、そんなに歩きにくいものでもないよ」
 少しいきを乱しながら答える沢近に、晶が静かに答える。
「そういうものなのかな……しかし、すっごい人ねえ。ウワサには聞いていたけれど……」
「仕方ないよ〜。この辺りじゃ一番大きなお祭りだからね」
 天満は、自分たちと同じように浴衣に身をつつみ、神社へとむかっていく人々を見ながら言った。
「さぁさぁ!ぼさっとしてないで、さっさといくぞ!!」
「わー、美琴ちゃん、気合い入ってるね」
「あったりまえよ!──そういえば、愛理は、祭りは初めてじゃないのか?」
 景気よく腕まくりをした美琴は、その隣に並んで歩く沢近に尋ねた。
「ううん、昔来たことあるかな。小さい頃、夏休みの時に日本に戻ってきたときに、一度だけ行ったことがあるの」
「へぇ、そうなのか。まあ、とにかく今日は楽しもうぜ!」
「わわ、美琴ちゃんひっぱらないでよ〜」
 そうして、浴衣姿の4人は、神社のほうへと歩いていった。
735少年時代:04/01/13 01:56 ID:gKPNK0Yd
「見て見て!美琴ちゃん、あのお面、すごく面白いよ!」
 周りに整然とならんだ、色とりどりの夜店に、すっかり目を奪われた天満は、まるで小学生のようにはしゃいでいた。
 そんな天満に、美琴は半ば呆れかえるように答える。
「だぁ!いちいちはしゃぐな!こっちが恥ずかしい」
「まぁまぁ……しかしスゴイ人ね。うっかりすると、はぐれちゃいそう……」
 沢近は、辺りをぐるりと見回すと、自分の予想を遙かに上回る人に、わずかなため息をつきながら言った。
「……はぐれたときのために、どこか集合場所を決めたおいがほうがよさそうね」
 いつの間に買ってきたのか、真っ赤なリンゴ飴をなめながら、晶が答えた。
「そうね、それじゃどこにしましょ──きゃ!」
 突然押し寄せきた人波に、沢近は、文字通り飲み込まれてしまった。
 人混みをかき分け、慌てて元いた場所に戻ってきたときには、既に美琴達の姿はなく、
ただただ笛と太鼓の音だけが、変わらず辺りに鳴り響いていた。
「困ったわね……どうしようかしら」
 沢近は、辺りをキョロキョロ見回したが、やはり美琴達の姿はみえない。
「仕方ないわね。歩いて探すしかないか……」
 あきらめたかのように、軽くため息を一つつくと、沢近は、夜店に囲まれた道の中を、奥へと歩いていった。

「みんな、どこに行っちゃったのかしら?……でもホントにすごい人ね」
 人、人、人。文字通りの人だかり。
 奥に進むにつれ、夜店の数も増えていったが、それにつられるようにして、人の数も増えているようだった。
「──ふぅ、これじゃあなかなか見つかりそうにないわね……少し休憩しようかしら」
 慣れない下駄に疲れたのか、沢近は、近くにおいてあったベンチに腰掛けた。
 そしてぼんやりと行き交う人々を眺める。
 その中に、新品の浴衣を着た小さな女の子と、その女の子の手を引く男の子の姿が沢近の目にとまった。
 その女の子は、今にも泣き出しそうな顔をし、その男の子は、まるで女の子を安心させるかのように、
しっかりとその小さな手を握りしめ、ほんのちょっとだけ大人びた表情を浮かべながら歩いていた。
(迷子かしら?)
 小さな疑問が、沢近の頭をかすめる。
 多分そうなのかもしれない。友達とはぐれてしまい、いきなり不安になってしまった女の子。
 その女の子を、まるで守るかのようにして歩く男の子。
 そんな二人を見たとき、沢近の頭に、ふと懐かしい情景が浮かんだ。

(そういえば──)
736少年時代:04/01/13 01:59 ID:gKPNK0Yd
 ぴーひゃらら。どん、ぴーひゃらら。
 辺りに、11年前でも変わらぬ笛と太鼓の音が鳴り響く。
 夏休みを利用し、母親の故郷である日本へと遊びに来た沢近は、大好きな父親と一緒に夏祭りに来ていた。
 だが、予想以上の人混みにのまれ、父親と離ればなれになってしまった。
 父親と一緒にいたときには、あれほど楽しそうに見えた夜店も、そして、あれだけ賑やかに聞こえた太鼓の音も、
ひとりぼっちとなってしまった6才の沢近には、自分を不安にさせるものにしか映らなかった。
(どうしよう……お父さんとはぐれちゃった……)
 気丈な子である。
 初めは、父親を捜そうと辺りを歩いていたが、そう簡単に見つかるわけでもなく、
また慣れない下駄に疲れたのか、近くのベンチに座るのであった。
 ベンチに座りながら、ぼんやりと行き会う人々を眺める沢近。
 その目に映るのは、色とりどりの夜店と、はなやかに着飾った行きかう人々。
 その中に、自分と同じく、真新しい浴衣に身を包み、両手を父親と母親に手を引かれながら、
楽しそうに歩く少女の姿を見つけた。
 その姿を見たとたん、今までこらえてきた不安が、いっせいに、沢近の心に押し寄せてきた。
(どうしよう……ほんとにお父さんに会えるのかな……ちゃんと帰れるのかな……)
 一度押し寄せてきた不安の波は、そう簡単に引くわけでもなく、
どんどんと、沢近の心を掻き乱してゆく。
 そして、ついにその不安に耐えられなくなり、今までこらえてきた涙が、一気にこぼれおちそうになったその時、

「──どうしたんだよ?」

 突然聞こえてきた声に、沢近は、驚きながら顔をあげる。
 ふと前を見上げると、目の前には、一人の少年が立っていた。
「大丈夫か?」
 短パンに、所々すり切れた白いTシャツを着た少年は、心配そうな顔つきで、沢近を見つめた。
「あの……その……」
 当時、日本語を使う機会があまりなかった沢近は、自分の意志を満足に伝えられるほどの
語学力はなく、ただ相手の言うことがおぼろげに分かり、非常に簡単な受け答えが、
かろうじて出来るぐらいであった。
「ひょっとして、お前、迷子か?」
 沢近の不安な様子を察したのか、少年は優しく尋ねた。
 その声に、コクリと小さく頷く。
「友達は?」
「イナイ……」
「お前の母ちゃんは?」
 ふるふると首を横にふる沢近。
「──じゃあ、お前の父ちゃんは?」
 その言葉を聞いた瞬間、沢近の目から、思わずじわっと涙がにじみ出る。
「わわ、泣くなよ!つ、つまり、お前の父ちゃんとはぐれたんだな?」
 目の前で、いきなり泣き出しそうになった少女を見た少年は、慌てて答えた。
 ──コクコク。
 声に出すと、本当に泣き出してしまいそうになるのを必死にこらえながら、沢近は首を縦に振った。
「わかった!それじゃ、俺がお前の父ちゃんを見つけてやる!」
 そう言うと、少年は、自信ありげに、その小さな胸を力強く叩く。
「……ホント?」
 涙にぬれた長いまつげを震えさせながら、上目がちに沢近は少年を見上げる。
「おう!男に二言はねえ!──さ、いこうぜ」
 そういうと少年は、すっと目の前に自分の右手を差し出した。
 小さな手。多分、大人にはそう映るであろうその手。だが今の沢近にとっては、誰よりも大きな手に見えた。
「うん……」 
 そして、おずおずと自分の小さな手を差し出す。
 それを見た少年は、ニカッと笑うと、ちょっと照れくさそうに、だがしっかりと手を握りかえしてきた。
737少年時代:04/01/13 02:02 ID:gKPNK0Yd
「お前、髪が金髪だけど……ひょっとしてガイコクジンってやつ?」
 人波をかき分けながら歩く二人の小さなカップル。少年の手には、しっかりと沢近の手が握られていた。
 その少年は、沢近の不安を少しでも和らげようとしてか、先ほどからしきりに話しかけていた。
「ううん……半分、日本人」
「半分?うーん、よくわかんねえな……ま、いいや」
 少年は、つないだ手とは反対側の手で、自分の頭を掻きながら言った。
「そういえば、お前は、お祭り初めて?」
 再び尋ねてきた少年の問いかけに、沢近はコックリ頷く。
「そうか!どうだ、楽しいだろ?」
 少年は、ヘヘとなぜか得意そうに鼻をすすりながら答える。
 だが、沢近は首を小さく横に振ると、一言、怖い、と小さくつぶやいた。
「怖い……?あぁ、自分の父ちゃんとはぐれちゃったんだもんな……うーん」
 少年は、しばらく考え込むと、やがて辺りをきょろきょろ見回し始めた。
 そして、ずらりとならんだ色とりどりの夜店の中から、望みの夜店を見つける。
「来いよ!面白いものみせてやるから!」
「え……?」
 少年は力強く沢近の手を引くと、その夜店のほうへかけていった。

 ついた先には、屋台の奥の台に、大小様々の的が並び、別の台に区切られた手前には、使い込まれ、
ところどころ錆びが浮き始めていた、おもちゃの銃が並んでいた。
「へへ……これ射的っていうんだぜ」
 少年は、ちょっと得意げに答える。
「シャテキ……?」
「おう。あそこに並んでいる的、あるだろう?あれを狙って、ここにある銃でねらうんだ。
 上手く当たったら、あっちに並んでいる景品がもらえるってわけさ」
 そういうと、少年は景品の棚を指さした。
 そこに並んでいたのは、様々な景品の数々。大小、そして色とりどりの景品が、ところ狭しとならんでいた。
 そんな色彩豊かな景品に、一時の間、沢近は目を奪われる。
「どれが欲しい?」
「え……?」
 少年の思いかけない問いかけに、キョトンとして沢近は答える。
「俺が、お前の欲しい物取ってやるよ。俺、こう見えても射的得意なんだぜ?」
 少年は、自信ありげに答える。そんな様子がおかしかったのか、沢近は少しだけクスリと笑った。
「ほんとに……いいの?」
「おうおう!任せておけ!」
 沢近は、しばらく景品を眺めていたが、やがて、小さな髪留めに目がとまった。
「あれ……」
 おずおずと、その髪留めを指さす。
「あの、髪留めだな。三等か……よーし、見てろよ!」
 そういうと少年は、ごそごそと自分のポケットを探る。果たして出てきたのは、
汗で鈍く光っていた、二枚の百円玉。
「げ!一回分かよ……はぁ、母ちゃん、もうちょっと小遣いくれもいいじゃんか……」
 少年は、ブツブツと文句を言っていたが、やがて、屋台の奥に座っていた男に声をかけた。
「おっちゃん、射的一回分ね!」
「へい、らっしゃい!──おぉ、坊主生意気にも女連れか?妬けるねぇ!」
 ねじりはちまきを、固く自分の頭に巻いていた、その中年の男は、冷やかすかのように声をかける。
「う、うるせぇな!と、とにかく早く玉くれよ!」
「はっはっは、すまんすまん。一発オマケしとくよ」
 そう言うと、屋台の中の男は、少年にコルクでできた玉を4発渡した。
 少年は、ありがとう、と言うと、手前の台に乗っている銃を、その手に取った。
 少年には、少しばかり大きすぎる、おもちゃの銃。だが、少年はそんなことに気にする様子もなく、
なめらかに玉を込めていった。
「よーし、それじゃ、よく見てろよ!」
「う、うん」
 せいいっぱい背伸びをし、少しでも的に当たりやすいように、その小さな体を伸ばす少年。
 そんな姿を見つめる沢近の目からは、いつの間にか不安の色は見えなくなっていた。
738少年時代:04/01/13 02:04 ID:gKPNK0Yd
 ──ぽん。
 小さな音が、あたりに響く。
 少年の手により、おもちゃの銃から発せられたコルクの玉は、なだらかな放物線を描くと、
三等と書かれた的の手前に落ちた。
「あぁ、くそう!もうちょっと上か!」
 少年は悔しそうにつぶやくと、2発目の玉をこめ始めた。
 そして2発目。同じような音を立て、同じような放物線を描いた玉は、今度は的の上側を
わずかにかすめるようにして、飛び越えていった。
「ちっくしょう!今度は狙いすぎたか!」
 心底悔しそうに少年はつぶやくと、3発目の玉をこめ始める。
 そして、ゆっくりと狙いを付けられた、銃から放たれた玉は、ゆっくりと弧を描きながら、的に当たる。
「やった!……あ」
 コツン、と的に当たる。だが、的はぐらぐらと揺れ動くだけで、倒れてはくれなかった。
「くぅ……だめか。くそ、最後の一発か……頼むぜ」
 慎重にねらいを付ける少年。そんな少年の必死になっている姿に、いつの間にか沢近の目は引きつけられていた。
そして、無意識のうちに、少年のシャツの端を、ぐっと握る。
「頑張って……」
 沢近が小さくつぶやく。その声が少年に届いたのかどうかは、分からない。
だが、その声と同時に銃から発せられたコルクの玉は、見事な放物線を描き、一つの的に当たった。
 
 ──パタン。
 小さな乾いた音を立て、その的は後ろに倒れる。
「やった!」
 思わず声を上げる沢近。その顔には、喜びの表情が浮かんでいた。
 だが、それとは対照的に、少年の表情はさえない。それに気付いた沢近は、不思議に思い、小首をかしげる。
 そして、ちょっとバツの悪そうな顔をした少年は、頭を掻きながら答えた。
「わりぃ……あれ、四等の的なんだ」


 ちりん、ちりん。
 透き通った鈴の音が、辺りにこだまする。
 沢近の左手には、小さな鈴が握られていた。
 あの後、四等の景品として、小さな鈴をもらった沢近は、しばらくの間、
その鈴を自分の顔の前で左右に振っていた。
 その鈴の奥には、両手を顔の前で合わせて、必死に謝っている少年の姿があった。
「本当にゴメン!自信あったんだけどなぁ……」
 沢近は、いいよ、と言っているのだが、それでも、少年はぺこぺこと謝っていた。
「いいよ。本当に気にしないで……」
 そして、沢近は、その鈴を飽きる様子もなく、目の前で振っていた。
 ちりん、ちりん……
 楽しそうに鈴を振る沢近。そんな様子に気付いたのか、少年は、ニッと笑うと、沢近に尋ねた。
「──どうだ?お祭りって、楽しいだろ?」
「うん!」
 はっきりと、そして嬉しそうに答える沢近。そんな沢近を見た少年は、ちょっと照れくさそうに笑っていた。
739少年時代:04/01/13 02:05 ID:gKPNK0Yd
 そんなとき、沢近の耳に、会いたい人の声が聞こえてきた。
「お父さん!」
 声のしたほうを見ると、周りの人だかりから、頭一つ分高い、金髪の男性の姿が目にとまった。
 沢近は、自分の父親に気付くと、必死に手を振る。そして、それに気付いた父親もまた、
一瞬安堵の笑みを浮かべると、人波をかき分け、こちらに向かってこようとしていた。
「お?お前の父ちゃん見つかったか?」
 それに気付いた少年は、嬉しそうに沢近に尋ねる。
「うん!」
「そうかそうか、それはよかったな。──それじゃ俺はこの辺で。二度と迷子になるんじゃねーぞ」
 少年は、ニッコリと笑うと、反対側のほうへ駆けていこうとした。
 だが、それを見た沢近は、とっさに少年の腕を掴む。
「うん──?どうした?」
 少年は不思議そうな表情を浮かべる。
「あの、その……」
(お礼……いわなくっちゃ。でも、なんて言えば……?)
 言いたいことはたくさんあった。でもそれがなかなか上手く、言葉としてでてこない。
まして、普段使っていない日本語では、尚更困難であった。
 だから、沢近は、
『────』
「え……?スマン、外国語で言われても、俺分かんねえよ」
 少年は、きまずそうに答える。それを見た沢近は、一瞬、表情にかげりを見せると、
次の瞬間、ニッコリと笑って、少年につぶやいた。
「──ありがとう」
 その時の少年の顔。初めキョトンとした表情で、次の瞬間、ちょっぴり顔を赤くし、
そして、気恥ずかしそうに、おう!、とつぶやくと、くるりと後ろを向き、人混みの中へ消えていった少年。
そんな少年の後ろ姿を、沢近は、見えなくなるまでずっと見つめていた。
740少年時代:04/01/13 02:08 ID:gKPNK0Yd
「ふふ……それから、私、必死に日本語の勉強したんだっけ……なんだか懐かしいな」
 ぴーひゃらら。どん、ぴーひゃらら。
 辺りに、今も昔も変わらぬ笛と太鼓の音がこだまする。
 その中で、沢近は、昔を懐かしむように、優しい笑みを浮かべていた。
「あ、そろそろ、美琴達を探さなくっちゃ」
 ふと現実に帰り、立ち上がろうとしたその時、

「──どうしたんだよ?」

 あの時と同じように優しい、でも今度は、あの時よりも大人びた声が聞こえてきた。
 ゆっくりと顔を上げると、目の前にいたのは、ジーンズに白いTシャツ、そしてヒゲとグラサンを付けた、
沢近のよく知る人物──播磨拳児が立っていた。
「なんだ、ヒゲか……もう!せっかくの人のいい思い出、汚さないでくれる?」
「な、なんだよ!いきなりワケわかんねーこと言いやがって!」
 わざとらしく大きなため息をつく沢近に、播磨は非難の声をあげる。
「──ったく。こんなところで、なにしてんだよ?」
「友達に会いに行くところよ」
「そうか、そりゃ邪魔して悪かったな。どこか集合場所でも決めてるのか?」
 そんな播磨の問いかけに、おもわず口ごもってしまう沢近。
「……それをこれから探すのよ」
 それを聞いた播磨は、軽く吹き出すと、小さく笑い始めた。
「ちょっと、何笑ってるのよ!失礼ね!」
 今度は沢近が非難の声を上げる。
「わりぃわりぃ。つまり、お前、はぐれたんだろ?」
 笑いをかみ殺すようにして、沢近に尋ねる播磨。
「そ、そうよ!悪い!?」
「いやいや、別に──スマンスマン、邪魔して悪かったよ。それじゃ、俺はこの辺で」
 そう言うと、播磨はクルリと後ろを向き、歩き始めようとした。
「──あ、待ちなさいよ!」
 この時、なぜ播磨を呼び止めたのか、沢近にもわからなかった。
昔の事を思い出したからなのか、ちょっとしたキマグレなのか、それとも──
「うん?なんだよ?」
 一方の播磨は、立ち止まると、不思議そうに尋ねてきた。
「あなた、今どうせヒマなんでしょう?その……よかったら、美琴達を探すの手伝ってよ」
「な!なんで俺が、そんなこと……ハイ、ワカリマシタ、サワチカサン」
 ギロリとその切れ長の目で睨まれると、つい何も言えなくなってしまう播磨。
 元々女性に弱い上に、沢近には色々負い目もあるのも事実である。
「──それじゃ、行きましょうか」
 そう言うと、沢近は、ちょっと満足そうに立ち上がり、歩き始める。
 それを見た播磨は、軽くため息をつくと、沢近と並んで歩き始めた。
741少年時代:04/01/13 02:12 ID:gKPNK0Yd
「しかし、本当に人で一杯ねえ……」
 人混みの中をかき分けるようにして、前に進む二人。
 人の数は減る気配もなく、奥に進むにつれ、ますます増える一方であった。
「しかたねえだろ。祭りなんだし。人が少ない祭りなんて、俺は想像できねえなぁ……」
「それもそうね……きゃ!」
 行き交う人々に押され、思わずバランスを崩す沢近。
 その瞬間、播磨の手がが、沢近の手をとらえ、転ばないように支えた。
「っと。大丈夫か?転ばないように気を付けろよ」
「う、うん。ありがとう……」
 自分の想像よりも、遙かに大きな播磨の手。その力強い手が、なぜか昔の少年と重なって見えた。
「それじゃ行こうか……って、あの、サワチカサン?」
「何よ……?」
「あの、そろそろ、手を放して頂けないでしょうか?」
 恐る恐る尋ねる播磨。だが、沢近は顔を真っ赤にしながら、ちょっと恥ずかしげに答えた。
「こ、転ばないようにするためよ!あ、あと、これだけ人が多くちゃ、またはぐれちゃうかもしれないでしょ!
 ……わわ、私だって恥ずかしいんだから、貴方も我慢しなさい!」
「わ、わーったよ!」
 もともと、こういったことに免疫のない播磨である。沢近と同じように、
いや、それ以上に顔を赤くし、ぶっきらぼうに答えた。
 サングラスのせいで、表情はよく分からない。だが、きっとその下には、恥ずかしさと照れで一杯の表情が
浮かんでいるに違いない。少なくとも、沢近にはそのように感じられた。
742少年時代:04/01/13 02:13 ID:gKPNK0Yd
 ぴーひゃらら。どん、ぴーひゃらら。
 奥に進むにつれ、笛と太鼓の音が、より一層大きくなる。そして、その音に比例するかのように
人の数も少しずつ多くなっていった。
 その人だかりの中を、かき分けるようにして進む、一組の男女。
 お互い顔をわずかに赤くし、そしてそれをお互いに悟られないように歩いていた。
「──ちょっと、何かしゃべりなさいよ」
「ちょっと」
「あのね……」
 手をつないでから、播磨は一言もしゃべらない。もともと異性と話すのは得意でない上に、
手をつなぐシチュエーションなど、ほとんどなかったのだから、無理はない。
 一方の沢近。播磨よりは、異性としゃべることに対しては抵抗はない。
とはいえ、このように手をつなぐといったことは、今までほとんどなかったので、気恥ずかしいのは同じであった。
 だが、やはり経験の差なのか、最初にしゃべりかけたのは沢近であった。
 先ほどからそれとなく話題を振ってはいるのだが、とんちんかんな答えばかり返ってきて、ほとんど会話にならない。
 やがて、沢近は、大きくため息を一つつくと、播磨に話しかけた。
「ねえ──どうして、さっき、私に話しかけてきたの?」
「どうしてって……そりゃ、お前、一応クラスメイトなんだし。
 見かけたら、挨拶ぐらいするのが礼儀ってもんじゃねえか?」
「ふぅん……」
 ようやく会話らしい会話になったことに、沢近は満足したのか、何気なしに頷く。
「ま、その、後なんだ……ちょっと、昔のことを思い出してな」
 播磨は、沢近のほうを見ようともせずに、ただ前だけを見て、歩きながら答えた。
 サングラスのせいで表情はよく分からない。多分、何も変わってないように見える。
 だが、一方の沢近は、表にはださないものの、心臓の鼓動が、一瞬高く跳ね上がったのを自覚していた。
「昔──?」
「あぁ。昔──もう十年も前のことになんのかな?ちょうどさっきのベンチのところで、迷子の子供をみつけてな。
 俺が、そいつの親を探してやったことあるんだよ」
「へ、へぇ。そうなんだ」
 極力平静に答えようとする沢近。だが、彼女の心臓は、その答えとは裏腹に、激しい鼓動を打っていた。
 なぜこんなにも鼓動が早くなるのか。
 驚き、焦り、それとも期待──?
 様々な感情が入り乱れ、より一層、彼女の鼓動を速くする。
「その──その子のことは、覚えているの?」
 恐る恐る尋ねる沢近。だが、播磨は、そんな様子に気付いてか気付いてないのか、
飄々とした様子で答える。
「いや……もうなにせ、十年近く前の話だからなぁ……そいつが男か女かも覚えてねえよ」
「そう──」
 少し安心したのか、それとも残念だったのか、理由は分からないが、
心臓の鼓動は、先ほどよりも落ち着いていた。
743少年時代:04/01/13 02:15 ID:gKPNK0Yd
 ふと辺りを見回すと、あの時と同じ──もちろん屋台の様子や、中にいる男は違うが──射的の屋台が目に付いた。
それを見た瞬間、沢近の口から、何気なしに言葉が漏れる。
「ねぇ、播磨君。あなた、射的得意──?」
「なに、射的!?おうおう、俺は得意だぞ。なにせ、昔っから得意だったからな!」
 俄然元気になった播磨は、自信ありげに答える。
 そんな播磨をみた沢近は、クスリと笑うと景品の棚を眺めた。
 あの時とは、少し違う品揃え。でも、当時とかわらない物もあった。
 そして、目的の物を見つけると、軽く微笑み、ゆっくりと一つの景品を指さす。
「──それじゃ、あの三等の髪留めを取ってくれる?」

 ちりん、ちりん──

 数分後、射的の屋台の前には、両手を自分の目の前で合わせ、必死になって謝る男の姿と、
なぜか嬉しそうに、鈴を目の前で鳴らす少女の姿があった。
「ホンッとすまねぇ!自信あったんだがなぁ……」
 気まずそうに、頭を掻きながら播磨は言った。
「いいの。多分、こうなる気がしてたから──」
 沢近は、楽しそうに、鈴を鳴らしながら、播磨に言った。
 一方の播磨は、訳が分からないといった様子で、ぽかんとした表情を浮かべていた。
744少年時代:04/01/13 02:17 ID:gKPNK0Yd
 ちりん、ちりん。
 賑やかな喧噪にまじって、澄んだ鈴の音がこだまする。
「そ、そうか。まぁ喜んでくれたのなら、俺も嬉しいぜ……ん?あそこに見えるの、周防さんじゃねえか?」
 はっと我に返った播磨は、奥の方に、クラスメイトである周防美琴の姿を見つける。
 沢近は、播磨の視線を追うように、自分の視線をむけると、そこにはキョロキョロと辺りを探すかのように、
人混みの中を歩いている美琴の姿があった。
「あ、ほんとだ……おーい、美琴ー、こっちこっち!」
 沢近は嬉しそうに手を振る。それに気付いたのか、向こうにいた美琴もまた、手を振り返してきた。
「お、どうやら無事見つかったみたいだな──そんじゃ、俺はこの辺で」
 あの時の少年と同じように、クルリと後ろを向くと、雑踏の中に消えようとする播磨。
 そんな播磨を見た沢近は、とっさに声をかける。
「あ、待って!」
 その声に気付いた播磨は、不思議そうに振り返る。
「なんだよ?まだ、何かあるのか?」
「──その、あの」
 珍しく口ごもる沢近。
 あの時言えなかった、お礼の言葉。感謝の言葉。伝えたかった言葉。
 その言葉が、沢近の口から、静かにこぼれ出す。

「──本当に、今日はありがとう。すごく楽しかったです──また、いつかまた、会えると嬉しいな」

 その言葉をキョトンとした様子で聞いていた播磨。
「あー、まぁそのなんだ……どういたしまして、かな?
 ──大体、また新学期になったら、イヤでも顔を合わせると思うんだが……」
「いいの──ほんとにありがとう!」
 恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしながらクルリと後ろを向く沢近。そして、美琴のほうにむかって
駆け出そうとしたその時、

「──もう、親父さんと、はぐれるなよ」
745少年時代:04/01/13 02:19 ID:gKPNK0Yd
 ちりん、ちりん。
 辺りに鈴の音が響き渡る。
 ゆっくりと沢近が振り返ったその時、既に播磨の姿は雑踏の中へと消えていた。
 沢近は、つい先ほどまで播磨が立っていた地面を見つめる。
 そして、ゆっくりと自分の顔の前に、もう一度鈴を持ってくると、優しく降り始めた。
 ちりん、ちりん──
 
「お待たせ!随分探したぜ!一体どこに……って、どうした?なんか随分嬉しそうだけど……
 何かいいことでもあったのか?」
 駆けつけたきた美琴が、不思議そうに尋ねる。
 それを聞いた沢近は、優しい微笑みを浮かべる。
「うん、ちょっと、ね──」

 
 9月。夏の足音も遠ざかり、秋の気配が感じられる季節。
 学生達にとっては、新学期が始まる季節。
 わずかに紅に色づき始めた通学路を、天満は歩いていた。
「ふぁ〜……今日から学校か。みんな元気かな〜」
 そんな天満の背中を、ぽんと軽く叩いてきた者がいた。
「あ、愛理ちゃん、おはよ〜」
「おはよ、天満。急がないと遅刻しちゃうよ?」
 軽く天満に挨拶をした沢近は、そのまま、学校へと駆け出す。
「え〜まだ、走らなくても大丈夫だよ」
「いいの、いいの。ほら、早く!」
 天満をせかしながら走る沢近。
 その手にもつ鞄には、二つの小さな鈴が結ばれていた。
 一つは、鮮やかな光を放つ、きれいな鈴。もう一つは、
所々汚れてはいるが、それでもなお美しい光沢を放つ鈴。

 ちりん、ちりん──
 沢近が走るにたびに、二つの鈴は、清らかな音を立てる。
 その音は、見事な秋晴れとなった、晴天の空に吸い込まれていった。

(了)
746少年時代の中の人:04/01/13 02:22 ID:gKPNK0Yd
スクラン初SS書きです。
もっと短くするつもりが、随分と長くなってしまった…(;´Д`)

題名は、もちろん、あの有名な歌からとりました。

というか、こんなのスクランじゃねえよ…_| ̄|○

キャラクターを掴むのは、難しいですね。

誤字脱字、文法ミスはご容赦を。

それでは。
スクランじゃねえな・・・でもGJですた。
シャツの端をギュッと握る沢近(;´Д`)ハァハァ
まえあった八雲×播磨とかぶるが気にしないキニシナイ。
748Dandelion:04/01/13 02:30 ID:VVip+9Kz
八雲がその花を見つけたのはほんの偶然だった。
通学途中の道路脇、アスファルトの切れ目から健気に芽を出し花を咲かせている、
一輪のたんぽぽの花だった。
「たんぽぽってすごいよねー。こんな所でもちゃんと花を咲かせられるんだから」
サラの言葉に、八雲は「うん」と頷いた。
それからの毎日、その場所を通る度に八雲は道路脇のたんぽぽを気にかけるようになった。

ある日、学校から帰る途中、八雲は踏み潰されているたんぽぽの花を見つけた。
誰かが故意に踏んだのか、それとも車のタイヤに轢かれてしまったのか、たんぽぽの花は
ぐったりと地面に伏してしまっていた。
「あ…」
八雲は一瞬悲しげな表情を浮かべたが、すぐにきょろきょろと辺りを見回すと、側に落ちていた
短い小枝を拾ってきた。そして、かばんから家庭科の授業で使った縫い糸を取り出すと、慣れない
手つきでたんぽぽに小さな添え木を作ってあげた。
(こんなことしか出来なくてごめんね)
八雲の作った添え木に支えられるように、たんぽぽの花は再び空に向かって立ち上がった。
749Dandelion:04/01/13 02:31 ID:VVip+9Kz
「八雲、みてみて。たんぽぽが綿毛になってるよ」
サラがタンポポを指差す。
八雲が添え木を作ってあげてからしばらくして、たんぽぽは真白な綿毛に姿を変えていた。
「もうすぐだね」
「うん…」
「八雲のおかげだね」
「ううん、そんなことないよ…」
「八雲は本当に…」
サラの言葉が終わりかけた時、不意に一陣の風が二人の間を吹き抜けた。
「きゃっ」
サラが髪を抑えながら小さく悲鳴を上げる。八雲も思わず目を閉じた。
周囲の木々が風に煽られてざわめく。
しばらくの後、風が通り過ぎたのを感じ取った八雲がゆっくりと目を開けようとする。
ぼやける視界の中、八雲は自分の頬をなにかが優しくかすめた気がした。
「八雲っ、みてっ」
先に目を開けたサラが空を指差す。
八雲はゆっくりと青い空を見上げた。
「あ…」
たんぽぽの綿毛が、二人の頭上に舞い上がっていた。
綿毛は八雲達の頭上を徐々に離れ、風に乗りながら、青い空にまるで吸い込まれるかのように
飛び去っていこうとしている。
二人は一瞬驚きの表情を浮かべたが、それは徐々に安堵の色に変わっていった。
750Dandelion:04/01/13 02:32 ID:VVip+9Kz
「八雲のたんぽぽ、行っちゃったね」
空を見上げながらサラがにっこりと微笑む。
「うん…」
八雲も空を見上げて頷く。
「ちょっと寂しいね」
「うん…」
「でも、きっとどこかの町で綺麗な花を咲かせるよ。だって八雲のたんぽぽだもの…」
サラの言葉が戸切れ、一瞬の静寂が辺りを包んだ時、八雲の心にある小さな声が響いた。
八雲がちょっと驚いた表情でサラを横目で覗き込む。
「ん? どうかした?」
サラはにっこりと微笑んでいる。
「ううん…なんでもない」
「さあ、早く学校行かないと遅刻しちゃうよっ」
走り出すサラを追いかけながら、八雲はもう一度空を見上げた。
あの時、たんぽぽの綿毛が空へと昇っていったとき、八雲には確かに聞こえた。
”ありがとう”という声が。
「八雲〜っ、早くう〜っ」
遠くから呼ぶサラの声に導かれ、八雲は駆け出した。
空には入道雲。
夏はすぐそこまでやって来ていた。
751748-750:04/01/13 02:59 ID:VVip+9Kz
初めて書いてみました。
SS絵描いてもらえるようになるまで精進しますです。
>>746
京都生まれなのに日本語不自由な沢近萌え。
あと、美琴は「愛理」とは呼ばないんじゃね?

>>748-750
乙。
でも、正直スクランじゃねえと思う。
今夜も奈良祭り!!

>>746,751

               ∩
               ( ⌒)     ∩_ _
              /,. ノ     i .,,E)
             ./ /"    / /" .
   _n  グッジョブ!! ./ /_、_   / ノ'
  ( l    _、_   / / ,_ノ` )/ /_、_    グッジョブ!!
   \ \ ( <_,` )(       /( ,_ノ` )      n
     ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ     |  ̄     \    ( E)
       /  n /   \   ヽフ    /ヽn ヽ_//
       (ヨ )              ( E)
       / |    _、_     _、_    | ヽ
       \ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/ / good job!!
         \(uu     /     uu)/
          |      ∧     /

でも播磨は「周防さん」とは呼ばないぞ、と。海編参照
>>746
イイ!だけどあまりにも播磨っぽくない台詞の数々が少し
気になるところ

>>751
いいよいいよー。脳内補完SSっていうよりはスクラン題材
の詩みたいな印象を受けた
>746
確かにスクランらしくはないが(オチが笑いじゃなかったり
でも二次創作SSだから、萌えられればOK!
その意味では最高でした!GJ!
>>756
萌えないSSばかり書いている自分としては一体どうすればいいんだ_| ̄|○

>>746,>>756
お疲れさまでした。
初SSでこのレベル、次回作が楽しみです。
新たな職人さんが現れるのはいいことですね。
絵板に負けないぐらい活気ある板にしたいと大きくでてみますです。
>>746
個人的にはかなり気に入った。
なので、やはり名前の呼び方とか細かいとこが気になる…
(゚Д゚)スボァー
760少年時代の中の人:04/01/13 14:05 ID:gKPNK0Yd
感想ありがとうございます。
幼ジョ沢近で(*´д`*)ハァハァという、個人的なリビドー全開で書いた作品ですので、
後半部分は後から付け足しました。

ネタ、思いっきりかぶってましたね…しかも夏祭りネタって、月マガのほうで扱ってたネタだし…
かぶりまくりでスマソ(;´Д`)

呼称のミスですが、これまた初歩的なミスが連発ですね。
こちらの確認不足です。
美琴→沢近の場合は「沢近」 播磨→美琴は「周防」ですな…_| ̄|○

一応訂正したものをうpろだに上げておきました。違和感ありまくりというかたはどうぞ。
http://www.kari.to/upload/source/d/3282.txt

台詞回しは、正直書いている時から違和感ありました。(特に播磨)
シリアスになったとき、播磨がどんな台詞を言うのか…想像できなかったので、
こちらの妄想で書きました。 申し訳ありません(;´Д`)

それでは。
761cat meets girl:04/01/13 15:37 ID:vZPl9UiP

 夜の帳はすでに降り、世界は黒く、わずかな淡い月光のみに照らし出
されている。現在の時間はシンデレラが逃げ出してから3時間ほど、通
りの人は、まばらですらない。

 高野晶は息をする。呼吸を整えるためと、心を落ち着かせるため。他
人から見れば、いつも落ち着いて見られようとも、彼女にも興奮する時
はある。ただそれが少なく、普段めったにないだけである。

 通りの奥、物陰に背中をあずけて時計を見る。おそらく、彼らの再攻
撃は5分後といったところか。今ごろ彼らは、休憩と次の攻撃の準備の
時間だ。
 晶自身も休憩は必要だった。さすがに数が多いと骨が折れる。致命傷
は無論ないが、小さな傷があちこちにある。なによりも、多人数を長時
間相手にしただけに、神経にささくれが出来てきた。精神的休憩が十分
に必要だ。
762cat watched sister's an erotic.:04/01/13 15:38 ID:vZPl9UiP

 ふと、目前のゴミ箱に何かが降り立った。一瞬にして、心を戦闘状態
に変える。だがしかし、それは無意味に終わった。

「…アナタは…」

 目の前に降ってきたソレは顔見知りだった。


「こんな遅くに、それもこんな場所、どうしてアナタがいるの?」
「にゃ〜」

 質問に応えるているのか、伊織は何度も鳴き声をあげる。しかし、た
とえ戦闘と工作のプロであっても、猫の言葉は理解できない。

「ここは危ないわ、早く塚本さんのところに帰りなさい」
「なー」
763cat meets girl:04/01/13 15:40 ID:vZPl9UiP

 せっかくの忠告も、彼にはどこ吹く風のようだ。猫らしいのだが、こ
こにいては命の危険が伴う。じっと眼をみつめることで、自分の意思を
伝える。伊織も視線を返す。
 本能的に感じ取ったのか、伊織は小さく一鳴きすると、くるりと向き
を変えた。

 全身のバネを使って晶が伊織に飛びつく。そして、受身を取りつつ移
動する。コンマ数秒の時差を置いて、さっきまで伊織がいた空間に銃弾
の嵐が吹きすさぶ。

「にゃ〜」

 腕に抱えた伊織が一鳴きする。それが驚きか、感謝なのか、判別する
余裕は晶になかった。すぐさま応戦し、一人の右太ももに狙いをつける。
 引き金を引く力は一瞬で、かつ弱い。しかし、主の力によって弾き出
された鉛の塊は、その数百倍のパワーで敵に襲い掛かった。手ごたえア
リ。男がのけぞりつつも地面に倒れる。

 その男の周辺でわずかな動きがあると、あちらの攻撃はピタリと止ん
だ。
764cat meets girl:04/01/13 15:40 ID:vZPl9UiP

 頭の中で単純な引き算ををする。あと5人…。

 ふと見れば、黒猫は腕の中からこちらを見ていた。不思議そうな眼を
してこちらを見上げる。

「こういうことよ、危ないから早く帰りなさい」
「にゃー」
「そう、いい子ね…」

 素直に返事をした伊織に笑みを返す。戦闘中といえども、心に潤いを
なくしていけない、と晶は思う。まわりに自分のこえを隠しているだけ
特にその気持ちは大きかった。

「行きなさい」

 パッと離すと、伊織は地面に降りて、もう一度こちらを向く。

「このことは皆に内緒よ、それからアナタに貸しが一つ出来たわね…」
「んなー」
765cat meets girl:04/01/13 15:43 ID:vZPl9UiP

 言葉を受けて、だっと駆け出す伊織。晶がその姿を確認して、彼に背を向
けた。そして敵の方向へと向かおうとした瞬間。 

「ぐわっ!」

 背後で男のうめき声がした。すぐさま振り向けば、黒服の男が物陰か
ら転がり出てきた。
 数秒の時間差もなく、引き金を絞る。男は体勢を立て直す暇もなく、
右肩と左足を撃ち抜かれ、戦闘能力を失くした。
 高野晶としたことが、疲れていたかといって敵の接近をこれほどまで
に許すとは。しかしそれよりも――どこからか猫の鳴き声がした。

「にゃ〜」

 恐らく、いや間違いなく彼だろう。

「…そう、借りはすぐに返す主義なのね、ありがとう…」

 すでにここを去り、もはや見えない命の恩人に、わずか数秒、静かに
感謝の意を示す。そして、すぐに気持ちを臨戦態勢にスイッチする。

 残りは4人…ここは一気に…
766cat meets girl:04/01/13 15:44 ID:vZPl9UiP

 向こうは一気に2人も脱落して、急いで建て直しをしているだろ。叩
くなら今しかない。
 高野晶は駆け出した。静かに、舞うように、飛ぶように。
 早く、速く、疾く、瞬く
 右手の拳銃を握り締める。硬く、冷たいその感触が、今は頼りになる。
温もりはいらない。今は火傷するような冷たさが必要な時。

 敵は突然の襲来に驚きの表情を浮かべる。それにかまわず晶は突っ込
んだ。撃つ、かわし、撃つ、撃つ、撃つ、かわし、撃つ、撃ちつづける。

 誰も知らない、舞うように敵を討つ女。
 月が静かに見下ろしていた。
 黒猫だけが知っていた―――。

 cat meets girl,Tommrow girl is …Kalen.
これだからSSスレはやめられない
>>766
今回のcat meets girlのタイトルは何だったの?
なんか途中変わってたけど。
なんで晶=エージェントって設定が当たり前のようになってんだ?
>>766
まさかこう来るとは思いませんでした。
銃撃の描写がとかくかっこよかったっす。
次回のかれんも期待しています( ´ー`)

>>769
マガスペで一度作者様がやらかしているそうです。
晶のやりたい演劇の内容だ、いや晶はエージェントだ、と一時期は本スレに
物議を醸しました。
結局、真実は今のところ闇の中でこれから明かされるのかもしれません。
沢近父って日本人じゃなかった('A`)?
英語で喋っている描写があるが。
>>771
おとんが英国人
おかんが日本人

単行本を100回音読しろ
音読…アオリも含まれるのか?
出遅れましたが、
>>746
播磨が幼少時の女の子のことを覚えていて、それを沢近と気がつかず、
「その子にかっこいいところをみせようとした」みたいな話を、祭りとお酒の勢いで
話ちゃったりして、で、
「へ、へー。もしかして、その子が、は、初恋の相手だったりするの?」
みたいなことを沢近に言わせちゃったり、なんて、
勝手なIFストーリー組み立てて盛り上がってしまいました。

もちろん、原作のストーリー、展開、最高です。超GJです!
LL書いてもよかですか?
LLとは?
lich lord
>>776
容量が残り少ないので新スレ移行後が良いかと
新スレタイには晶を!
理由:晶だったらスクラン本編で語られないような裏話を知っていそう。それがSS!
晶は雑談スレだから麻生にしなさい
お、気がつけば457KBも使ってたのか…
あと一つSS投下されたら移行かな。
新スレは480kb超えたくらいで立てればいいんでね?
このスレの最初の方でも話してたみたいだけど
次スレはマロンだよね?
もう完全にSSスレだし。
奈良なんて話が空いた時に出てくるぐらいだし。
当たり前田のなんとやら
786What is it:04/01/14 01:45 ID:F+W74EmJ
「姉さん、人を好きになるってどういうこと――?」



「……なんだよ」
「ふふ、でもそれって先輩の方が悪いんじゃないんですか?」
 ところはいつもの動物園、偶然……ではもはやなく、週末には三人でこうして園内をまわるのが
完全に習慣になっていた。特に何をするわけでもないけれど、かけがえのない大切な時間。
 けれど。
(……)
 隣を歩く播磨とサラの楽しげな様子に、今日はどこか寂しさを感じてしまう八雲。決して自分も楽しく
ないわけではないし、それほど自分から会話を振ってくるわけでもない播磨を、あの手この手で会話に
引き込んでいくサラの様子は見ていて微笑ましいと思う。
(……でも)
 自分だって以前と比べればずいぶんと積極的になった、とは思う。話しかけられれば当然答える
し、自分の方から話を振ることだってある。
 それでも、目の前のサラの様子を見ると思ってしまうのだ。
 自分には出来ない、と。
(どうしたんだろう、私……)
 少しだけ世界が遠くに感じられて、そして――
「……雲、八雲」
「……あ」
 自分の名を呼ぶサラの声に我に返る。
「八雲、大丈夫?なんだか調子悪いみたいだけど……」
「ううん、大丈夫……」
 そう言ってはみたものの、身体ではなく心のどこかがまだ軋んでいるような気がする。
「すまねぇ、俺がぼけっとしてて妹さんの様子に全然気がつかなかった」
 無理に付き合わせて悪かった、と頭を下げる播磨。
「そんなこと……」
(……悪いのは私なのに)
 心配そうな播磨の様子に、また心が軋む。
「どうしよう、今日はもう帰ろうか」
「うん、私はそうする……」
 でも二人はゆっくりまわってきて、となんとか笑顔を作って答える。
「いや、でもよ……」
「大丈夫です、一人で帰れますから」
 自分でもらしくない、と思う言葉が口をついて出る。
(私……)
 そんな様子になおも心配して食い下がる播磨だったが、サラに引き留められる。
これでいいんだよね?、というサラの瞳に、ごめんね、と頷く八雲。
「それじゃ、また……」
「お、おう……」
「気をつけてね、八雲」
 そうやって、心に軋みを抱えたまま、八雲は動物園を後にした。
787What is it:04/01/14 01:46 ID:F+W74EmJ
「……ただいま」
「あれ?今日は早かったね、八雲」
 いつもだったら夕方なのに、と不思議そうな顔の天満。
「うん、ちょっと……」
「そっか」
 そう言って納得したような素振りの天満だったが、すぐに、そうだ、と何か思いついた
ように尋ねてくる。
「前から思ってたんだけどね、いっつも八雲ってどこに行ってるの?」
 もしかしてデートだったりして、とどこか落ち込んだような八雲の気配を感じ取った
のか、冗談まで付け加える。
『友達と動物園に行ってるだけだよ』
 いつもの八雲ならそう答えただろう。
 けれど。
「姉さん」
「ん?なに?」
「姉さん、人を好きになるってどういうこと――?」
 口から出たのはそんな言葉だった。
 この不安定な自分の心に説明をつけられるとしたらそれしかない、と八雲は思っていた。
しかし、恋というものはもっと楽しいものではないのか、という考えがそれを打ち消す。
(烏丸さんの話をしているときの姉さん、いつも楽しそう)
 なら自分のこのよくわからない気持ちは一体何なのか。姉にしか訊けない、姉にさえ訊く
のをためらっていた、そんな問いかけ。
「うーん、難しいこと訊くね、八雲ってば……」
 その真剣な表情に、しばらく天満も言葉を探す。
 そして。
「いい、八雲。人を好きになるっていうのはね」
「うん……」
788What is it:04/01/14 01:47 ID:F+W74EmJ
「よく、わかんない」
「……姉さん」
 ふざけてるんじゃないよ、と真面目な顔で否定する天満。
「えーと、こういうこと訊くっていうことは、八雲にもなんだかわからないけど気になる人、
っていうのがいるんだよね」
「……うん」
「会いたいとか話したいとか、そういうのじゃなくて、いろいろごちゃ混ぜにしちゃった
みたいな、そういうよくわかんない気持ち?」
 それにもうん、と頷く八雲。
「私はね、そういうのが恋なんじゃないかな、って思うんだ」
 そう答える天満に、八雲は先ほどの疑問を口にする。
「でも姉さん、恋って苦しいものなの……?」
「うん、それはね……覚えてるかな、八雲。二年生になってすぐのころの私」
「あ――」
 その言葉に八雲は思い出す。クラス替え、席替え、ことあるごとに一喜一憂していた姉の姿。
あのころから天満は恋をしていた。それはつまり。
「苦しいとか寂しいとか、そういうのもぜーんぶ集めて一つにしちゃったみたいな、そんなよく
わかんないのが恋じゃないかな、なんて思うよ」
 と、そこまで真面目な顔で語ってから、今度はいつもの柔らかい表情で、ほんと言うと私も
まだよくわかんないんだけどね、と付け加える。
「だから八雲の今の気持ちが何か、っていうのには答えられないよ。もちろんそれが誰かを好き、
ってことだったらいいな、って思うし、そしたらお姉ちゃんどんどん応援したいけど」
 そんな天満の言葉に笑顔を見せる八雲。
『やっと笑った。やっぱり八雲は笑顔が一番だよ』
「よし、それじゃ今日はお姉ちゃんと一緒にお出かけ!すぐにしゅっぱーつ!」
 そう言うや否や、勢いよく立ち上がる天満。
「ありがとう、姉さん」
 心の声と現実の声、その両方に礼を言って、八雲も立ち上がった。
 目尻に浮かんだ涙をそっと拭いた、その後で。



 そんな姉妹水入らずの時間を過ごして、就寝前。
 八雲は伊織を膝に抱えて窓辺に腰掛けていた。
「私はどうなんだろう……?」
 昼間のことを思い出してそう呟いてみる。しかし、伊織は気のない素振りでにゃおう、とあくびをするだけ。
「お前に訊いてもしょうがないね……」
 まったくその通り、という顔をしてからぴょん、と膝の上から降りて床の上で丸くなる伊織。その仕草に
微笑んでから窓から空を見上げる。夜空には、都会とはいえ目をこらせば幾つかの星の姿。
 それを見て。
 願わくば、と。
 八雲は小さな願いをかける。
(この気持ちが――)
 そんな夜空に、星が一つ、流れた。
789What is it:04/01/14 01:49 ID:F+W74EmJ
自分でも何を書いているやらよくわかんなかったり。
いやはや。
ヤクモンは大人への階段を一歩登ったんだね・・(*´Д`)ガンガレー
GJです!
GJです!八雲萌え!
と思いつつもその後のサラと播磨が気になってしまう俺は国際派。
なんでこう見てない間に大量に投下されてるんだ(;´Д`)
終わらねえYO
本当にご苦労さまですm(__)m
そろそろ次スレ突入ですな
誰がたてる?800?
>>794

>>783

容量で決めた方がいいべや
播磨×(八雲VS沢近)の三角関係が好きだったのだが、
播磨×(八雲VSサラ)もいいなぁ…。
自分は花井×サラがまったりでしてていい。
>>796
じゃあ播磨×(沢近VS八雲VSサラ)の四角関係でどうよ?
799cat meets girl:04/01/14 18:29 ID:L4E8iRvI

 伊織としたことが、とんだヘマをしてしまった。

 先ほどからこの場所から動けずに3時間。すでに空腹感でお腹が一杯、
という不思議現象までが起きている。
 風が強いとは思っていたのだが、まさか看板が倒れるとは。運良く下
敷きにはならなかったが、ここからの脱出は今のところ不可能だった。
 ミャー、ミャーと鳴いても、誰も助けてくれない。優しい人間はいな
いのか。新世紀だというのに世も末だ。
 自分はここで死んでしまうのだろうか?

「…よいしょっと」

 突然、太陽の光が彼を包んだ。そして、見上げればそこには女性が一
人。かなり重たいはずである鉄製の看板を軽々持ち上げている。だれだ
ろう?

「あ、やっぱりいた…大丈夫?」

 誰かは知らなかった。ただ、その荒業とは不釣合いな、かわいいらし
い女の子だった。
800cat meets girl:04/01/14 18:29 ID:L4E8iRvI

「ふう、なにか鳴き声が聞こえたから…ええと、どこか怪我はない?」
「にゃ〜」

 公園のテーブルは日陰にあり。涼しげな風は首もとをすり抜ける。な
ぜか助けた猫は、自分のあとをひょこひょこついてきた。その姿がカワ
イらしいので、一条はなんともなしに、彼とのひと時を過ごしている。

 スリスリと一条の足にすりつく伊織。命の恩人であるからして、彼女
への伊織の評価はかなり上位に位置しているようだ。
 その様子を見て、一条は伊織に話しかける。質問、疑問、独り言、自
分のこと、誰かのこと、いろいろなこと…
801cat meets girl:04/01/14 18:31 ID:L4E8iRvI

「はー…、なんで私って男の人と縁がないんだろう…」

 数ある独り言でも、もっとも多くの回数をこぼす一条。伊織にしてみ
れば、そのワケはすぐに理解できた。スチール缶を片手で楽々握り
潰しながらそんなことを言っているのだから、当然である。
 先ほども、男たちが近づいてはいるのだが、それを見た瞬間、回れ
右してどこかへいった。
 まあ、それも本人はさりげに分かっているのか、握りつぶした缶を、
じっと見つめた後、ひとつため息をした。

「…それも猫さんには関係ないですよね」
「にゃ〜ご」
「ふぅ、こんなにいい天気なのに…」

 自分の気分だけは、晴れてくれなかった。
802cat meets girl:04/01/14 18:32 ID:L4E8iRvI

「…お〜い、誰か〜」

 ボケっとしていた一条に、聞き覚えのある声が響いた。男性が助けを
求める声、その声は親しい…と思われる人物の声だった。
 急いで声に向かって走り出す。声の場所へとたどり着くと、それはや
はり今鳥だった。やたら大きな看板が体の上を覆っている。どうも、動
けないらしい。

「あの…今鳥君、大丈夫ですか?」
「…イヤ、見て分かんだろ」

 そりゃそうだ、と思ったのか、顔を赤くしつつ力を込める。気合を入
れていないように見えるが、看板はグググ、と持ち上がった。素早く脱
出する今鳥。
 それを確認して、看板を離す一条。地響きと共に、看板は地面に落ち
た。
803cat meets girl:04/01/14 18:34 ID:L4E8iRvI

「…あの、大丈夫ですか?」
「お〜助かったー、ありがとよ」
「いえ、そんな…」

 赤くなって顔を下に向ける一条。ここらへんが男性に慣れていない所
か。まあ、それを魅力てきに見せるのも戦略なのだが…彼女にはまだ当
分無理なことである。
 今鳥はしばらく考えたかと思うと、急にらしくない表情をした。

「一応、お礼をしなきゃな」
「そ、そんな…お礼だなんて…え!?」

 いきなり、ぐいっと一条を引き寄せる今鳥。そして、さり気に腰に手
をまわすのが女たらしっぽいところ。
 一方、一条は突然の出来事に言葉が出ない。首まで真っ赤にしながら
オロオロあうあうするだけである。

「あの…今鳥君…その…ええと」
「お礼、お礼…」

 そう言って、顔を近づけるてくる。これはまさか! でもそんな!
思わず眼をつむる一条。徐々に今鳥の顔が近づいるのが分かる。
息遣いが聞こえ、今ではすでに息遣いを肌で感じるほど近い。
 ふと、暗い視界の上から、知らない声で言葉が降ってきた。

「…どんな女の子でも、必ずいい所はあると思う…にゃー…」

 唇に なにかが触れた。
804cat meets girl:04/01/14 18:35 ID:L4E8iRvI

 パッと眼を開ける。そこには今鳥はおらず。ただ黒猫がぺろぺろと唇
をなめているだけだった。まわりで親子が楽しそうに遊んでいる。倒れ
た大きな看板もない。

(今のは…夢…?)

 ポカン、と一条は虚空を見る。気が抜けるやら恥ずかしいやら、赤く
なったり、ボケっとしたり、一人百面相をして、落ち着いたのは5分後
だった。

 しばらくたって、落ち着いてから冷静に夢の内容を思い出す。妙な夢
というか、変な夢というか、引っかかるものがある。

「…」

 なんともなしに黒猫に視線を送る。彼は首を傾げつつ見返してきた。

「今の夢、まさか猫さんが…?」
「にゃ〜お」
805cat meets girl:04/01/14 18:40 ID:L4E8iRvI

 当の黒猫は、ひょい、とテーブルから降りて、ステテテと駆け出した。
一条が、待ってと言うと、数メートル離れた所で立ち止まり、こちらに
振り向く。そして、もう一度

「にゃ〜お」

 と一鳴き。

 その後は二度と鳴かず、なにもせずに視界から消えていった。
一人残された一条は、ぼんやり、猫が行ったと思われる場所を見続けた。

「まさか、そんなこと…」

 それでも、なんとなく、頭のスミに残る。少し唇に指を触れる。あれ
は確かな感触だった。
 もしかしたら、もしかしたらだけれども、あれは黒猫の恩返しなのか
もしれない。少しメルヘンだけれども、そんな気がする…ようなしない
ような。結局、一条女史は悩んだだけで、答えは出なかった。



 まあ、その答えは黒猫にしか分からない。

 それでも、少しドキドキした『真昼の夢の恩返し』

 そう思うのも、悪くない。

 cat meets girl,Tommrow girl is …?
いつもの猫の人じゃない気がする。
別に猫は専売特許ではないだろ
開口一番それはどうかと思う
>>778
UOかよっ
>>808
今ごろつっこむのかよっ
>>806
ワタシもそんな気がした。やや方向性が違うけど、夢を見せる点で
某黒猫を想像してしまった。そうでなくても、
今までの作風ってこんなんだったっけ?


>>807
主役を猫にするのはワタシも問題ないと思う。
ただ、題名が…。元々このシリーズ書いてる人なら、ワタシの
「違う人が書いてるような気がする」て意見は失礼なものだけど。
もし別人が書いてるなら…この題名はいいのか?ってことで。
萌えるシチュエーションを色んな作者さんがいじってくれるのは、
個人的に大歓迎なのですが。
同じ歌でも、違う歌手が歌えばまた違った味が出てくるわけだし。

もっというなら、一回投稿されたSSを、別の神が
「ここでのやりとりは、こうしてみたほうが、もっと萌えると思うのだがどうか?」
みたいな感じであげ直しをしてみたりしてみるのも楽しいのではと思ってみたり。
折角の掲示板なわけだし。

ま、作品をあげている神々には「自分の作品はいじられたくない」という思いがあるかもしれないので、
なんともいえませんが。
自分が考えた旅行や、飲み会のプラン、企画書などが色んな人の意見でより良いものに修正されていくのは
僕は好きなので、そんな風に思いました。
俺は理系なんで文章についてどうこう言えるほど詳しくないが、確かに妙だ。
今まで、伊織の内面からの描写を全くしないようにしてきたのに、今回だけ
伊織の内面からの状況説明から話が始まっているし。

単に、作者の気が変わっただけかもしれないが。
文章のクセが判断できるほどの読解力はないからなぁ。
>>811
いや、それにしたって一言ことわりを入れるのは常識だ。

文芸部に名前貸してた時、自分の書いた文を勝手に手直して掲載された時は
ものすごい不快感を感じた。手直しを入れるのは当然なんだが、一言もなし
に自分の作品が変えられたのは、文学に思い入れのない俺でも頭に来る。

つか、そもそも掲載しないという話だったのに。
814テンプレ案:04/01/14 21:39 ID:kSt4gLmX
週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」のSSスレです。

SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。

前スレ
もっとスクールランブルの奈良くん萌えスレッド
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1072536035/

前々スレ
スクールランブルの奈良くん萌えスレッド
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1060335566/

新スレは容量480Kb位で建てて下さい。
話題になっている今回のcatシリーズだが
ぱっと見た感じだと同じ作者だと思われ。

確かに今までは伊織はあくまでも道先案内であり
その回ごとに絡むキャラを引き立てることが役割の存在だったと思う。

だが、皆も分かっているように今回のメイン、一条かれんは割と最近のキャラで
本作でも現段階では深く掘り下げられていない。
しかも、他のキャラとの絡みも今鳥以外ハッキリしていない。

前スレ、現行スレでもフラグのふの字も立っていないキャラや
あまりにも分かっていない絡みはSSでは敬遠されがち。

以上より、かれんのみだと話が薄くなる叉は続かなくなるので
伊織を絡ませたのではないかと推測する。

>>813
同意。SSとはいえ無断の改変は作者に対する冒涜。
スレタイはフツーに「スクールランブルSSスレッド」にしてほしいな。
奈良イラネ

817テンプレ案:04/01/14 21:47 ID:kSt4gLmX
週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」のSSスレです。

SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。

前スレ
もっとスクールランブルの奈良くん萌えスレッド
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兄弟スレ
スクールランブル@エロパロ板
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新スレは容量480Kb位で建てて下さい。
姉妹スレと呼びたい
819猫の人:04/01/14 22:02 ID:L4E8iRvI
シリーズ終わってから書こうと思ってたんですが、どうも混乱させてしまったようなので

まず、今回の一条も私が書いたものです。

理由としては>>815氏が言っていたのが半分正解です。
イチさんは未だキャラや他のキャラとも関係性が掴みきれていないもので…
実力不足で申し訳ない。

もう半分は「作品ごとの試み」です。
一応、どの作品もそれぞれ作風やストーリーにイメージをもって作っています。
なので、厳密にはどの作品も、ぱっと見似てても、自分の中では色々変えているつもりです。
晶の話などが好例かと思います。

その結果、今回は伊織(のイメージ)が出張ってきてしまった、ということです。
さらに最近、某宮崎アニメを見たもので…感化されてしまいした(苦笑)

どちらにしろ、自分の実力不足が招いてしまったことであり
結果として、皆さんにいらぬ誤解を招いてしまいました。申し訳ありません。
これから、もっと精進したいと思います。
820811:04/01/14 22:05 ID:m+D6PUgS
>>813 >>815
えーと、もちろん僕も無断で改変するのを推奨ってわけでなくて、
あくまでも、作者さんと掲示板で、雑談まがいに「ここはこうしたほうがどう?」
みたいな意見を言ってみて「作者だけど、そのような展開もいいと思います。」
ってことになれば、改変してみたらどうかなって、
思ったわけです。

で、まぁ今回は、タイトルと雰囲気だけだったので(結局別人か同一人物かわからないけど)
そんなに荒立てるほどではないのじゃないかなー?と思ったわけで。
821812:04/01/14 22:14 ID:M4nbLa4n
>>819
いえ、こちらこそ早とちりして申し訳ありませんでした。
822811:04/01/14 22:21 ID:m+D6PUgS
なんだか色々変なこと書いてしまってすみませんでした。

今回の猫さんですが、SSで一条さんみたのは初めてな気がしたので
新鮮でした。今鳥×一条のからみは本スレではあまり人気ないようですが、
自分は好きなからみなので、よかったです。
823倉庫の人:04/01/14 22:40 ID:khJFsQMy
壁||∀゚)<指摘ナイ限リ誤字脱字モソノママ保存!!
824815:04/01/14 22:44 ID:6IGjmTAk
作者様も光臨されて話が収束したようなので一つ愚考を。

SSスレとSS感想スレの棲み分けというのはどうだろう?
書き手から見れば、感想や今回のような議論の合間に作品を投下するのは
阻まれるだろうし、逆に読み手もSSがいつでも投下されて良い状態を作ろうとして
敢えて感想を控えたり、マンセー、GJ一色にしてしまいがちでは?
ぬるま湯のような空間はSS投下の良い温床となるが、質の低下は免れない。
これは他の作品投下スレ、絵板などでも同じ事が言えると思う。

書き手と読み手のよりよい関係を築くためにも、感想&議論スレとSSスレの乖離を
提案してみる。
>>824
そういうふうにスレを分けるとたいてい荒れて衰退しますです。
本体SSスレに入った感想やSS以外のレスに「感想スレに書けよ」と誘導が貼られて
それをコピペ厨が貼りまくってスレが流れて
上げられて荒れて、書き手も様子見に入ってスレ停滞
そのうち感想スレがしぼんで消えて本体が残り、根気強い住人だけが浮上を待つ
なんてのがよくある流れ
>824
いくら漫画サロン板でも、SSスレと感想スレと分けて立てられたら
いい顔せんと思うが。
>823
あ、それ以前に旦那。誤字脱字はかまやしねぇんですが、


812 名前:名無しさんの次レスにご期待下さい 投稿日:04/01/14 21:13 ID:M4nbLa4n
<こーゆーのまでコピペしないで、消してった方がいいんじゃないですかね。
一部の人しか名前部分は使ってないですし。
ID、その他ってことやね。
でも、その一部の人(>>637さんのみたいのとか)のは
ぜひ残して欲しいので、そうするとなんだか統一性がとれないから、
全部残すようにしていたりするのかも。

名前欄のところで、話の展開を反転させたり区切ったりに使ってる場合などもある
のかもしれないし。どうなんでしょうね。
自分はそんなに気にならないですが。

とりあえずは、>>823さん乙です。
480なんでそろそろ次スレ立ててきてみてもよろしいでしょうか。

テンプレテキトーに改訂〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」のSSスレです。

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ttp://www93.sakura.ne.jp/~mm/SchooLRumble/index.htm

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831倉庫の人:04/01/14 23:49 ID:khJFsQMy
理由はまさに>>829と、最初管理人大王様がやってた頃のフォーマット引きずってるのと。
私は特に気にならないんでそのままにしてあります、なんか味があるし(?)
どーしても気になる!という意見多いなら消しますが
私としては残したままでいたいっす。
フルテキストから訂正するときちょっと大変なんですが_| ̄|○

>>799-805
  _,.;-''"~~''-,r'"⌒'-、                ,.;'
r"           ヽ   ,.-''"~"''ー、_     r'"
{      す ま   ヽ<   ,.-'"  ~"'-、  {  す 目 フ
 >  き ぐ っ    >レ'~       \ ゝ  ぐ を フ
/   め に て   /     , ,.;'' '    . V   投 は ン
    て ア ろ  /    ,.:''"        ';  下 な
    や ッ よ ;'       _,.-'"ミ      ';   し す
ゝ、  る プ   ヒニゝ、 ハ ヒ´_,.-'''"      .|  や と
  ヽ か ロ    ヾ-t''〉 ;';;,,r'五ニ7    r'^';|  が
   〉 ら |     /~~/ y´ ~~""''-、    タ i  る  
  ;'  な ド    '; ( ノ ,_     ;i   'レ',イ        ノ
  .';    を     'i `t`"'っ     ;i  r-' 'ト、     r'~
   ヽ_     ,r'~"''| トこニ-.,__、   ;;  |   .'i ヽ_,.-'"
    ~''--'''"~    | t--.,_,,      r'    .'i
             '、       _,.-'     .|
              ゞ,二;;;;='''""     _,..-┴
               |i~  ̄   __,.-''"~   |:;iii

追加しました。執筆乙です
前作にナンバー振るの忘れてたので修正しました
832倉庫の人:04/01/14 23:51 ID:khJFsQMy
ぐあ、容量厳しかったのね…失礼
次スレ立ちました?
立てるんならマロンに立ててね。
乙していいのかな…
もう一個『スクールランブルのSSスレッド』っての立てて、重複願いで奈良消す?やるなら今しかないが。
>837
いいよ別にやらんで。
猫の一条のSS読んでて、
JOJOの「山岸由花子はシンデレラに憧れるの巻」思い出した…
康一→イチさん、仗助→美琴、億泰→沢近で、
康一「ボク由花子さんとチューしちゃったハイ」の話。

美琴「なにをされただとォ!?あのバカ あれだけどやしつけてやったにまだ懲りずに」
一条「(中略)なんか、その、いいかなぁ〜って…これって恋かなぁ」
美琴「おい…沢近、聞けよ、マガジンも月までブッ飛ぶこの衝撃…なんとあの今鳥と…」
沢近「私だってまだなのに、なんで彼女が先に〜(えーん」
美琴「だからよォ〜泣くこたないだろーがよォーッ」

…億泰→沢近…_| ̄|○
840名無しさんの次レスにご期待下さい:04/01/15 23:02 ID:WJqfPEOP
>>839
上の文を読んで何故か億泰の顔をした沢近じゃなくて
何故か金髪のツインテールつけた『ザ・ハンド』が
『ドドドドド…』って迫るシーンが頭に浮かんだ……。

なんで?(゜□゜;)
841840:04/01/15 23:04 ID:WJqfPEOP
ゴメンナサイ サゲ忘レマシタ _| ̄|○
さて、埋めるか。
埋めるのなら、王様の耳はロバの耳の如く本音を封印させてくれ。
俺は声高々にあげて叫ぶ!
俺は!アンチオニギリ派だー!
本音の封印か・・・ 正直沢近あんまかわいいとは思わなかったりする
ただかわいくないなどとも断じて思わん 面白いキャラだ!
俺も便乗封印。
最近、播磨がモテ過ぎ。サラ、晶まで播磨と良い感じ(SS内)。
違和感ありすぎ。
しょうがないだろ、所詮ここに書き込まれてるのは
ハーレム型か投影型ラブコメが好きな連中の妄想でなってるんだから

もう一度播磨の面白さを再確認して播磨を立たせるような作品作りをやってみてくれ

オレ?やだよ、原作を超える自信がない限りSSなんて書かねえよ
埋め
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('A`)
播磨のキャラはここのありきたりなSSしか書けない奴らには再現不可だな
>>850
ありきたりじゃないSSってどういうの?とても興味があるのだが…
ここのSSの播磨は確かにちょっと格好良いこといいすぎ。
まー、多少なりとも美化しないと話作れないのはわかるんだけど。

ってことか? >>850
>>851
原作のキャラクターをもっとしっかりと生かしたSS

ここにあるのはそれこそキャラクター名を変えても違和感のないようなSSが多いだろ。
原作のキャラクターが全然生かせてないというか、
表面の人間関係だけを利用しているだけな気がするんだな。
最近はそれすら無視してるのもあるし。
>>852
ってこと
一言言わなきゃ気が済まないお年頃か・・・。
厳しい、けれど真実なんだよね、実際のところ。
しばらくその路線目指してみます。
>>852
>>853
なるほどそうだなぁ。
漏れは晶エージェントの話読むと('A`)になるよ
>>853
そうなると俄然難しくなりそう。
言っていることは間違っていないし、賛同するけど
まだまだ原作もキャラの掘り下げが足りないから妄想が含まれるのは
ある程度仕方ないような…
だからといって、口調まで無視したSSは論外。自分で一度読み直せと。

あと晶のエージェント設定は一体どう解釈すれば良いんだろう…
>>857も言っているように晶だけはスクランで異色の存在。
エージェントの話を好まない人が現れるのも頷ける。
もともと原作でも一種のボケとして展開された話だから
そこをメインに持ってこられてマジメにやられてもちょっと困るってのはある
俺はサラが好きだけど播磨や花井とくっついて欲しくない。
恋愛絡めずに出番が増えるのは無理なのか?
>>860
本編では多分絡まないと思うが、
SSは自分の萌えキャラの恋愛を書きたい奴が多いのだから
仕方がないと諦めてる。
諦めてるくらいなら読むな、と突っ込みは無しの方向でよろしく
|-`)。oO(激論ですなぁ…)
       なかなか面白い話になったな。
壁||∀`)<でも新スレには持ち込まないようにしようぜ
       SS書き屋さんたちFightだ
原作のキャラクターを生かせと言われても、原作はギャグ漫画だぞ?
どうやって花井や播磨のようなネタキャラをシリアスSSに書くんだよ?
俺は妄想が入りまくったSSの方が好きだけど…。
両方好きだ
自分の妄想を叩き込むのがSSなのに、
それを否定してたら、SSなんて書けないな。

脳内設定は個人個人で違うんだから、
いちいち突っ込むなよ。
野暮だから。
書くのは勝手
だがここに晒してるからにはそれなりに周りに読んでもらいたいから
そして評価してもらいたいからじゃないのか
批評が嫌なら書き込まないでtxtファイルをHDに保存しとくだけでいいだろ

でも妄想キモイってわざわざ書きこむほうもどうかしてる
しょせん妄想だってのはわかってるんだからな、きもいんだったらスルーしろ
つまらんってのならまだわかるがな
>>867
はべどー
869868:04/01/16 20:28 ID:ZY3xIaXy
「はげどー」と書きたかった
|-`)。oO(なんか次スレがえらいことになってまつな…)
批評が嫌っつーか、
「このキャラは俺の脳内ではこんな動きはしないんだよ!」
っつー痛い発言がやだ。

同じ妄想なら、SSに昇華してくれ、頼むから。
人様のSSにケチをつけるな。
やっぱりID非表示のマロンじゃ荒れる原因になるんじゃないか?
1人で自作自演できるし
良いSSを読むと、今までの荒んだ心が癒される。
>>872
板違いにならんのはマロンだけなんだから仕方ないだろ
もう書きこめんの?
連続書き込みや改行でも引っかかるしな。
とりあえず、流れは正常に戻ったからよしとするか。

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   |                /| |`i:::ッ /   告白するならイマノウチ
   |、    一    _,.. -'"::| | .|:::ii´
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            i:::::l| l ゞ='    ゞ=' ,'ij:::::::!
            |:i:::`iヘ ""  .:!   "" ,:::i:::::i:|      オラオラお前等、周防>>3琴が500KBGETだ!
             l:|:::i::l:::ゝ  ヾ フ  ,.イ::il::i::l:|
          ,r―''''''ヽ, i::i:ノi`i .  ,. i::i::!:ノl:ハ:lj      
      ,r‐' ,、;-‐''''""''ヾ、、,  `´  |_l八ハ从iヽ     >>1条 今鳥と頑張れよ
     / ./     r''"ヽ, \,     l`ヽ、         >>8りま(播磨) 学校来てよかったろ?
     j l ,. /    '    l   ヽ、 ト,   ヽ        ささ>>9ら(笹倉)先生 次は頑張ります
    ,.Lj∠、'´   , i,    /     `ヾ、`'ヽゝ       >>10ま(天満) お前もっと勉強した方がいいぞ
    l,      / 二'''"    ,;、,     `''ー゙--、     >>30ちか(沢近) 励ましてくれてありがとうな
     /゙ヽ-ッ-‐'´ ./`ト-:rイ「´ ゙l;:`''ト-、,_  ノ'i,    >>89も(八雲) あんまり話したことない
   /  / ,;∠∠,ノ´  イ  l l, ├''|  |、,/ l  |   >>871(花井) お前はイチイチうるさいんだよ
../ノ ./ /、,    ,、' ./  / .l |:::::l,. | ゙ヽ、!_,,、L,   >>1000生 怖がることなんてねーのに
ヽ---ツ  ∧   ̄ ̄  /    | |:::::::| |  r'"/  l,  幽>>0の女の子 ・・・・誰?
   /  ./ .ト、,_    /      | |:::::::|. ! l'´! /   |
  ./、 ./   l,  ` ̄ ./        |.|::::::::l |. !. l, l     l
 .l、,.ノ     l,     ;'      .j |:::::::::! | ゙'ーベニ,ノ