【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
優勝賞金は10億円。
また、1億円を主催者側に払うことで途中棄権の権利が購入できる。
参加者には食料などの他1000万円分のチップが支給され、
他者からの奪取やギャンブルルームでのやりとりが許されている(後述)。
ちなみに獲得した金はゲーム終了後も参加者本人のものとなる。
【支給品】
数日分の食料と水、1000万円分のチップ、地図、コンパス、筆記用具、時計
以上の物品が全員に均等に振り分けられる他、
ランダムに選ばれた武器や道具が0〜3品支給される。
【ギャンブル関連】
主催者側が管理する「ギャンブルルーム」が島内に点在。
参加者は30分につき1人100万円の利用料を支払わなければならない。
施設内には様々なギャンブルグッズが揃っており、行うギャンブルの選択は自由。
また、賭けるものは、金、武器、命など何でも良い。
ギャンブルルーム内での暴力行為は禁止されており、過程はどうであれ結果には必ず従わなければならない。
禁則事項を破った場合、首輪が爆発する。
【首輪について】
参加者全員に取り付けられた首輪は、以下の条件で爆発する。
・定時放送で指定された禁止エリア内に入ったとき
・首輪を無理矢理取り外そうと負荷を加えたり、外そうとしたことが運営側に知られたとき
・ギャンブルルームに関する禁則行為(暴力、取り決めの不履行等)を犯したとき
なお、主催者側の判断により手動で爆発させることも可能である。
【定時放送】
主催側が0:00、6:00、12:00、18:00と、6時間毎に行う。
内容は、禁止エリア、死亡者、残り人数の発表と連絡事項。
【作中での時間表記】 ※ゲームスタートは12:00
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【主催者】
兵藤和尊(帝愛グループ)@賭博黙示録カイジ
蔵前仁(誠京グループ)@銀と金
在全無量(在全グループ)@賭博覇王伝零
【参加者一覧】
【アカギ 〜闇に降り立った天才〜】6/8
○赤木しげる(19歳)/○南郷/●安岡/○市川/●浦部/○治/○平山幸雄/○鷲巣巌
【賭博黙示録カイジ】5/7
○伊藤開司/○遠藤勇次/●船井譲次/●安藤守/○石田光司/○利根川幸雄/○佐原
【賭博破壊録カイジ】1/4
●大槻/○一条/●坂崎孝太郎/●三好智広
【賭博堕天録カイジ】2/3
●坂崎美心/○村岡隆/○兵藤和也
【銀と金】3/8
○森田鉄雄/○平井銀二/●有賀研二/○田中沙織/●神威秀峰/
●神威勝広(四男)/●吉住邦男(五男)/●川松良平
【天 天和通りの快男児】4/4
○天貴史/○井川ひろゆき/○原田克美/○沢田
【賭博覇王伝零】1/4
○宇海零/●板倉/●末崎/●標
【無頼伝涯】1/3
○工藤涯/●澤井/●石原
【最強伝説黒沢】3/4
○黒沢/○仲根秀平/○しづか/●赤松修平
【残り26/45名】
5 :
マロン名無しさん:2009/08/20(木) 00:54:25 ID:PgTlYQBK
【予約について】
キャラ被りを防ぐため、任意で自分の書きたいキャラクターを予約することができます。
したらばの「予約スレ」に、トリップ付きで予約するキャラクターを宣言をしてください。
有効期間は予約当日から一週間。
期限が切れても投下はできますが、混乱を招くため歓迎されません。
間に合いそうにない場合は、【期限が切れる前に】延長を申請するか、予約破棄宣言をお願いします。
延長申請がない場合、予約は解消され、そのキャラクターはフリーになります。
【他、書き手の注意点】
作品投下はトリップ必須(捨てトリ可)。
内容に自信がなかったり、新たな設定を加えたりした場合は
本投下前にしたらばの「一時投下スレ」に投下するとアドバイスをもらえます。
さるさん規制を喰らった場合もそちらにどうぞ。
乙です
突然でびっくりした・・・容量のことすっかり忘れてた
私もびっくりしました。
容量上、書き込みが不可能になってしまったため、
急遽、スレを立てました。
まとめサイトで新しいスレの貼り付けなどが終わり次第、
続きを投下したいと思います。
ただ今、パロロワ総合まとめサイト、福本ロワまとめサイトに
新しい現行スレを貼り付けてきました。
そのため、先程の続きを投下してよろしいでしょうか?
しえん!
13 :
主君の片翼9:2009/08/20(木) 01:29:43 ID:???
和也の登場はこれが終わりかと思われた。
しかし、周囲が暗くなった頃、事態は再び動き出した。
このギャンブルルール前で一人の老人が死体に興味を示したらしく、入念に死体を観察し始めた。
「老人・・・」
利根川の呟きに、村上はハッとあることを思い出した。
「確か・・・老人の名前は・・・鷲巣巌と・・・」
「わ・・・鷲巣巌だとっ・・・!」
利根川に電流が走る。
鷲巣巌と言えば、戦後、経営コンサルタント「共生」を立ち上げ、裏の経済に君臨した男である。
――そんな男までもが、このゲームに参加しているというのかっ・・・!
「あ・・・あの・・・」
村上が申し訳なさそうに声をかける。
自分の説明は思索にふける利根川を邪魔するものではないかと罪悪感を覚えたからである。
その声で利根川は我に返り、“構わん、話せ・・・”と促した。
村上は安堵の表情を浮かべ、続きを話し始める。
その時、どこで手に入れたのか、チェーンソーを担いだ和也が鷲巣の前に姿を現した。
鷲巣は首輪を求めているらしく、その要求に応えるように和也はチェーンソーで死体の首を切断した。
しかし、和也はその首輪を鷲巣に渡すどころか、鷲巣の首を狙い襲い掛かった。
ここで鷲巣の命運尽きると思いきや、幸運にもその場で拳銃を拾い、和也に銃口を向けた。
これでは鷲巣殺害は無理と判断したのか、和也は鷲巣を説得、そのままお互いに牽制しあいながら、この場を離れたのである。
「そういうことか・・・」
利根川はあごに手を当て、うむと頷く。
なぜ、鷲巣は首輪を欲していたのか。
なぜ、和也は再び、この場所へ戻ってきたのか。
なぜ、鷲巣を襲おうとしかのか。
一通りの流れを理解したが、情報が断片的であるため、和也や鷲巣の意図がまだ、判断できない。
「和也様も鷲巣も、ここへ現れた目的は一体・・・」
その時だった。
“少しよろしいでしょうか”と村上が利根川に頭を下げた。
「鷲巣巌と和也様の会話で知りえたことで、ぜひ、お耳に入れていただきたいことがございます・・・」
村上は四つの情報を切り出した。
一つ目は、和也は部下を欲しており、鷲巣を誘ったが断られたこと。
二つ目は、鷲巣もだが、和也も首輪を欲していたこと。
三つ目は、鷲巣はアカギという参加者に命令され、嫌々ながら首輪を回収しようとしていたこと。
そして、四つ目・・・
「このゲームの中で生まれたチームの中で、和也様のチームのみがゲームで残った場合、その時点でゲームは終了。
チーム全員が脱出することができるという『特別ルール』が存在するそうでございます・・・」
「何っ!」
利根川は今まで、バトルロワイアルは人間の生死を賭けた、次世代のギャンブルと思っていた。
しかし、そのようなルールが敷かれていてはゲームとして公平さに欠けてしまう。
一度、決められたルールは覆さない男、兵藤が、息子に対してとはいえ、一個人を贔屓するようなルール設定をするだろうか。
「なぜ・・・そんな変則ルールを・・・」
「和也様がおっしゃるには・・・このルールを設定したのは、財全と蔵前です・・・
その理由は帝愛の寿命を延ばすためだそうで・・・
それ故に、和也様は部下を求めながら、優勝を狙っておりますっ・・・!」
「財全と蔵前・・・」
利根川は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
利根川もこれまでの帝愛幹部を務めていた関係上、財全と蔵前の人間性は理解していた。
財全も蔵前も、兵藤と同じように莫大な富を抱え、常識から逸脱したギャンブルを楽しむ者であった。
しかし、彼らと兵藤とでは、大きく違う点がある。
兵藤はどんな状況であっても、常に公平なルールを貫くのに対して、
財全と蔵前は自分の立場が不利になると、ギャンブルに独自の変則ルールを作ったり、相手に折り合いを頼むなど、しばしばルールを曲げるのだ。
利根川から見れば、財全と蔵前は兵藤と比較することすらおこがましい小物であった。
彼らならば、息子の例外を兵藤和尊が反対したとしても、己の利益のために『特別ルール』を作りかねない。
兵頭より若く、帝王としての経験が浅い和也を帝愛のトップに就かせ、自分達の都合のよいように和也――帝愛を操縦する。
そのような計算が働いたルールなのだろう。
「しかし・・・」
利根川は“くく・・・”と肩を震わせると、突如、天井を撃ちぬくような豪快な笑い声をあげた。
「と・・・利根川様・・・?」
村上は突然の利根川の奇行におろおろと戸惑う。
利根川が笑うのも無理はない。
利根川は第一放送が終了した時点で、棄権が不可能であることを悟り、助かるのは優勝者一人のみ、
それであれば、和也より自身の優勝を優先すべきではないかと考えあぐねていた。
しかし、和也のみが使用できる『特別ルール』によって、今までの方針――和也を優勝させるという方針を貫いても問題ないことを理解した。
つまり、和也を優勝させることができれば、再び、帝愛幹部の座、もしくは帝愛以外の組織での復帰も夢ではないのだ。
その点では、財全と蔵前に感謝しなくてはならない。
しえん
これで利根川の今後の方針は固まった。
一点目は和也とすぐにでも合流すること。
和也がここから去ってから一時間も経っていない。
ギャンブルルーム周辺を徹底的に捜せば、めぐり合える可能性が高い。
二点目は和也と同様、首輪を回収すること。
和也は優勝を狙っている。
首輪の回収は、優勝以外の考えを持つ者――脱出もしくは対主催の連中への妨害行為だろう。
万が一、首輪を分解され、その解除方法を解いてしまえば、ゲームの土台が根本から崩れてしまう。
それはのちに和也が支配する帝愛という組織の沽券に関わってしまうだろう。
首輪の回収は帝愛を守ることへと繋がるのだ。
三点目はアカギを殺害し、鷲巣を仲間に迎えること。
鷲巣巌は先見の明によって、一時は日本の裏経済を牛耳った。
和也が鷲巣を仲間に引き入れようとしたのは、鷲巣がこのゲームにおいて、和也の力になる物を持っていると判断したためであろう。
利根川の記憶が正しければ、アカギ――赤木しげるは裏の麻雀界では知らないものはいない、無双の雀士である。
しかし、所詮、職を持たないチンピラでしかない。
そんな男に、あの鷲巣巌が命令されている。
しかも、鷲巣本人はそれを快く思ってはいない。
考えられるとすれば、ギャンブルで鷲巣がアカギに敗北し、従わざるを得ない状況下にあるということである。
鷲巣が和也の誘いを断ったのも、アカギとの契約の中に、誰とも組むなとでもという内容が含まれている可能性が高い。
ならば、アカギを殺害することで、鷲巣の枷を取り外し、改めて鷲巣を仲間へ引き入れるべきだろう。
和也の望むシナリオを事前に準備すること。
これもまた、帝愛への忠誠を示すための臣下の勤めである。
そして、四点目は・・・
ここで、利根川は考察と笑いを打ち切った。
“世話になったな”と呟くと、椅子から立ち上がり、村上に300万円分のチップを手渡す。
村上は目を白黒させて、利根川を見つめた。
「ギャンブルルームの利用料、情報料、合わせて200万円で十分でございますっ!
それ以上を受け取るわけには・・・」
村上は100万円でも多く、利根川に持っていてほしいと願っている。
しかし、利根川はその意図を察していながらも、心遣いは無用だと手をかざす。
「さっきも言ったはずだ・・・どんな参加者に対しても、公平であるべきだと・・・
ギャンブルルームの利用料はともかく、お前が私へ伝えた情報は、
規定のグレーゾーンを掻い潜って得たもの・・・
それだけの価値があると、私は考えている・・・!
それにな・・・」
利根川は村上に背を向け、歩き始めた。
「私も会長のようにあり続けたいのだ・・・公平な悪党にな・・・」
利根川の手がドアノブを掴もうとしたその時だった。
「と・・・利根川様っ!」
村上は利根川の行く手を阻むように前へ立つと、ドアノブに伸びかけた手に100万円分のチップを握り締めさせる。
「公平な悪党であり続けるのであれば・・・このチップは無用でございますっ!」
“村上っ!その手を離せっ!”と利根川が声を荒立たせるも、それに逆らうように利根川の手をより強く握り締める。
20 :
主君の片翼14:2009/08/20(木) 01:34:59 ID:0JYMZ5es
「私が貴方様に情報を伝えたのは、チップを多くもらうためではありませんっ!」
「どういうことだ・・・?」
利根川は訝しげに尋ねるも、村上はそれに応えることなく、耳を澄ますように利根川を見つめる。
村上の口から、盗聴器では聞き取れないほどに小さくも、はっきりした声が洩れた。
「オレは・・・片翼・・・」
「それは一じょ「私は公平で“あり続けなければならない”のですっ!」
利根川の言葉を遮り、村上は叫ぶ。
今まで利根川を敬い、謹んできた村上からは想像もできない意志の強さ。
利根川は村上の意図を察した。
――つまり、この100万円は依頼料というわけか・・・。
利根川はそのチップを受け取ると、ギャンブルルーム内を見渡す。
「このジャンブルルームは細かいところまで、清掃が行き届いているな・・・
それに、内装には品のよさを感じる・・・
もし、一条に出会ったら・・・ここを利用するように勧めよう・・・」
村上から強張ったものが消え、顔がみるみる綻んでいく。
村上はドアから離れると、無言で深々と頭を下げた。
しえん
利根川は外へ出た。
雪夜のように白い月光が辺りを淡く照らし、冷え冷えとした風が吹きぬける。
利根川は南を見つめた。
目線の先には病院が映っていた。
利根川の行動方針の四点目は病院へ向かうことであった。
本来ならば、平山を失った今、平山に協力していた井川ひろゆきと接触するため、
アトラクションゾーンへ向かうべきなのかもしれない。
しかし、発電所で接触した時の平山の話から察すると、
どうも、井川という男は平山の状況に同情して協力しているらしく、
利根川に対して好意を抱いてはいない。
もし、そんな男の前に現れれば、危険人物と見なされ、命を狙われる可能性が高い。
デリンジャーで対抗できなくはないが、
利根川は井川がどんな武器を持っているかを把握していない。
それに対して、井川は利根川の武器を平山から聞いているだろう。
利根川が不利な状況になることは目に見えていた。
また、平山への協力は善意であるため、必死に情報を集めているわけではない。
仮に、接触に成功したところで、有力な情報を持っているとは到底思えなかった。
アトラクションゾーンではなく、病院へ向かう理由はこのほかにも存在していた。
利根川はある事実を思い出したのだ。
――あのプロジェクト・・・
なぜ、帝愛、財全、誠京の三グループが協力してバトルロワイアルを開催しているのかは分からない。
しかし、この三グループにはある繋がりがあった。
かつて、この三グループによって、極秘のプロジェクトが進められていた。
帝愛側の責任者は黒崎であったため、利根川はその概要しか知りえていない。
しかし、そのプロジェクトと今回のバトルロワイアルに関係があるとすれば、
それを知る鍵は病院にある可能性が高い。
――黒崎・・・貴様が何を企んでいるのかは分からん・・・
しかし、オレは知っている・・・
お前が帝愛を乗っ取ろうとしていることを・・・!
かねてから噂はあった。
黒崎が兵藤の家族を言いくるめ、帝愛の利権を牛耳ろうとしていることを・・・。
中々尻尾を出さないため、あくまで噂の範囲でしかなかったが、
今回のバトルロワイアルの開催はその野心が露骨に表れていた。
かつての帝愛ナンバー2である利根川、兵藤の息子の和也、失態を犯したかつての部下の一条、帝愛へ牙を向けたカイジと遠藤。
彼らは黒崎にとって、忌むべき存在。
彼らを消すにはこのゲームはまさに打ってつけであった。
――この島は財全グループのもの・・・
しかし、あのプロジェクトのために使用されていたのであれば、
黒崎にとっては庭・・・
大方、財力を背景にした示威行為を目論んでいた財全をそそのかして、
開催させたというところだろう・・・。
プロジェクトの件もあるが、和也がこの付近にいる。
体を休む場所を探して、病院へ向かっている可能性もある。
利根川はチップを握り締める。
村上の言葉が頭を過ぎった。
『オレは・・・片翼・・・』
「片翼か・・・」
利根川はチップを見つめる。
――村上・・・お前が一条の片翼ならば・・・オレは和也様の片翼っ・・・!
利根川はチップをしまい、振り返る。
そこには全ての始まりであるD−4のホテルの上部が木の間から見え隠れしていた。
――黒崎・・・ゲームを盛り上げる道化役に、オレを選んだことを後悔させてやるっ・・・!
利根川は病院へ歩み始めた。
【E-5/ギャンブルルーム前/夜中】
【利根川幸雄】
[状態]:健康
[道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(28発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
[所持金]:2100万円
[思考]:ゲームで優勝、もしくは和也を優勝させての離脱
首輪の回収
遠藤の抹殺
カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺
アカギの抹殺、鷲巣の保護
病院へ向かう
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※一条はその目的次第で協力・殺害を判断します。
※E-5エリアギャンブルルームにいる村上から一条へのメッセージを承りました。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。
(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、その派閥全員を脱出させるという特例の存在は知っておりますが、それがハッタリとは知りません。
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。
電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えた為、平山が死んだと思っています (何かの切欠で計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。
支援
以上で終了です。
話がスレを隔てて分けられてしまうという
異例の事態が起きてしまいましたが、
皆様の支援のおかげで乗り切ることができました。
本当にありがとうございます。
誤字、脱字、気になる点などございましたら、
どうかご連絡をお願いいたします。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
投下乙…!
村上の盗聴器とか、利根川とのやりとりとか、すごい緊迫感で面白かった。
利根川は「自分に流れが来ている」と思っているけど、
実は和也の思惑通りに事が運んでいますね(鷲巣さまの件以外)
帝愛の悪党たちがどうやってまとまっていくのか期待…!
29 :
マロン名無しさん:2009/08/20(木) 02:07:15 ID:UaAlXk/q
村上かっこいいなーw
投下乙でした!
村上という意外な人物が登場し、書き様によっては今後も関わってきそうなかんじなのが面白かったです。
和也順調だなぁw
書き手氏乙です
利根川の今後に期待 楽しませていただきました
あと誤字発見しました
>>15 >なぜ、鷲巣を襲おうとしかのか。
おはようございます。
ご感想ありがとうございました。
初めは村上ではなく、別の人物と接触する話を
考えておりましたが、ネタが思いつかず、
今回の話で落ち着きました。
村上というイレギュラーなキャラを出していいものだろうかと
悩んだ時期もありましたが、
皆様から快く受け入れられて安心しました。
皆様ありがとうございました。
>>31様
誤字、ご報告ありがとうございました。
誤字は本人では思い込みの部分もあって、
なかなか見つけることができないです。
今回の誤字はまとめサイトに上げる際に
修正したいと思います。
本当にありがとうございました。
同じく誤字発見。最後らへんで
ギャンブルルームがジャンブルルームになってますよ。
>>34様
あわわわっ…
やってしまった…!
こちらもまとめサイトにアップする際に修正します。
ご連絡ありがとうございました。
零が再開してないから七月かと思ったらもう八月でした。
投下します。
さるったら避難所に投下するのでそのときは代理をお願いします。
二日連続で投下があるとは嬉しい支援
「涯、辛いかもしれないが・・・話してくれ。
オレと沢田さんは状況を飲みこめていない。何があったのか・・・」
赤松の亡骸、三人はその前を動けずにいた。
零は沈痛な面持ちで地面を見つめ、
涯は赤松の血が乾いていくのを黙って眺めていた。
沢田はそんな二人を見守ることを選んだ。
時間はゆっくりと、しかし確実に三人の周りを駆けていった。
そして、木の葉のざわめきさえ耳障りに思えるような重苦しい空気を断ったのは、
意外にも零の一言だったのだ。
信頼に値する人間の死はあまりに重く、、
また、赤松修平という人物は共に過ごした時間が僅かであったとしても
こうして少年達の心に一つ大きな穴を開けるだけの存在だった。
田中沙織から逃げ隠れて、数十分というところだろうか。
体感で言えば数時間――否。半日とも思えるような暗い刻。
零の言葉に顔を上げた涯の表情は、肉体疲労とは別の疲れが窺えた。
「あぁ・・・そうだな」
元より感情を表に出さない涯はともかく、零の落ち込み具合は痛々しいほどで
(無論涯とて零同様に、むしろそれ以上に思うところはあるのだろうが)
それ故に沢田は二人の少年が思い行くまで静かに待っていた。
赤松の死に顔は驚くほどに安らかなものだった。
沢田自身、その顔を見つめることで何かから救われる気持ちさえ覚える。
零と涯のことを思えば、不安定な精神状態で無理をするよりも
時間を犠牲にしてでも平常心を取り戻すことが大切だと、沢田はそう考えていた。
支援
しかし、涯に向けられた零の声色は凛としたもので、
沢田は自身の抱いていた大人としての責任は
ややもすると彼らに失礼になるのではないかとすら感じたのだった。
「赤松さんのことも含めて・・・
涯の知ってることを聞いておかなければ先に進めない・・・!」
零は赤松に背を向けるように座りなおすと、メモを取り出しながら言う。
対する涯の答えもまた、力強いものであった。
「あの女は・・・田中沙織だ・・・・」
沢田はメモを取り始める零を尻目に、ふと考える。
田中沙織。
彼女の顔さえも知らない。
岩陰から視認できた、この地で戦うにはあまりに頼りない体躯と
掠れた細い声から女であることは疑いようもない事実だとわかる。
だが現状、沢田と零からすれば、田中沙織は正体不明の殺人鬼。
「オレは赤松から逃げている途中・・・田中と鉢合わせた・・・!
田中がオレに向けて発砲・・・その後揉み合いになったが・・・
オレの段取りでは・・・誰も死ぬことなく済むはずだったっ・・・・・!」
涯は拳を強く握りながら、溜息を吐く。
「つまり・・・赤松さんと再会するよりも先に・・・
涯は田中沙織に接触したってことだな?」
「そうだ。オレは・・・田中から逃げる機を待った・・・。
しかしそれが訪れるよりも先に・・・追いついてきたんだ・・・!赤松が・・・!
結果・・・状況は一転し・・・赤松がボウガンで撃たれてしまった・・・」
差し詰め、戦いは不毛だとか涯くんを撃つなら俺を撃てなどと言ったのだろうな、
沢田は赤松の亡骸に向けて小さく笑った。
赤松の人柄を思えば想像に難くないことだった。
「・・・それで、涯は赤松さんを連れて逃げたってわけか?」
零の言葉に、涯は苦々しげに眉根を寄せる。
「いや・・・一度は田中との敵対関係は解消されたんだ・・・!
赤松の説得で・・・田中は自分の状況を話す気になり・・・・・・
棄権資金目的で人を襲っていたのだと・・・そう言っていた・・・。
だから・・・既にかなりの大金を集めていた田中に
オレと赤松が棄権資金に届くだけのチップを渡すことでその場は治まった・・・!
そして・・・
伊藤開司という男に会うべきだという言葉を残して、田中は去っていった・・・」
「つまり・・・彼女の目的は人を殺すことではなくチップ、
涯を狙ったのもそのためだったってことだよね・・・」
「するってぇと・・・どういうことだ・・・?」
零はペンを持つ手を止め、涯を見返した。
棄権資金を集めるという目的を果たしたはずの田中沙織が、一体何故赤松を殺すに至ったのか。
涯の話と現在の辻褄が合わない、と沢田も素直に首を捻る。
「問題はその後っ・・・!
体を休めていたオレと赤松の元に・・・何故か田中が戻ってきたことっ・・・!
あいつは・・・赤松に向けて再びボウガンを撃ち・・・
“棄権は不可能だった”・・・そう告げた・・・!
もはや人を殺すも厭わない様子の田中から・・・オレと赤松は逃げたっ・・・!」
支援!
しえん
田中沙織の“変化”がこの状況を生んだというわけか。
零は静かに目を閉じると、自分が知る限りの田中沙織を思い出す。
記憶の中の田中沙織はとりわけ大柄なわけでもなく、
また、空城の計が成したことを考えると、ある程度の冷静さを保っているということになる。
棄権という手段が使えなくなったから――
果たしてそれだけが、彼女を“赤松修平を殺す”という行為に至らせた理由なのだろうか。
戦闘意思を持たないとはいえ、人並み以上に筋力がありそうな成人男性を相手に、
その上近くにいただろう涯とも相対することになる状況を
どうして田中沙織は選んでしまったのか。
武器を持っているという自信がそうさせたのだろうか。
棄権が不可能になった、というだけではなく、
何か大きな身の危険を感じるような出来事が、あったのではないだろうか。
「田中から逃げる最中俺らと合流し・・・今に至るってわけか・・・?」
沢田は考え込んでしまった零をちらりと見やると、
涯の話を促すように話しかける。
「これまでがどうであろうと・・・
田中沙織が・・・赤松を殺したことには変わりない」
やや言葉に詰まりながら、涯は赤松の遺体を見つめた。
赤松という男がいなければ、今とは全く違った状況になっていただろう。
思い返せば赤松と顔を合わせているときは悪いことばかりが起きていた気がする。
それでも、彼に恨み言を投げるなどという気は毛頭なかったし、
ただひたすらに希望を見い出し、涯を庇った赤松には尊敬の念を覚えていた。
「赤松の遺志は・・・オレたちが継いで・・・」
「・・・そうだな」
零は、赤松に以前とはまるで違う表情を向けている涯を見て、
どうやら二人の間にあった蟠りはもうないのだろう、と感じた。
涯と自分とのいざこざも、赤松が解決してくれたような気がする。
涯と同じように、零も赤松に感謝をしていたし、
ただ“目の前で人が死んだ”以上の影響を、今回の出来事からは受けていた。
(だからこそ・・・赤松さんの死を無駄にしないためにも・・・)
そして零は、一言ずつ確かめるかのような調子で沢田、涯に向けて話を始める。
「・・・涯の話を聞いて・・・・聞きたい事・・・
そして・・・わかったことがいくつかある。
まず質問したいんだけど・・・赤松さんの怪我に応急処置をしたのは?」
「え・・・?」
「腹部の傷ではなく・・・腕の傷の方・・・適切な止血がなされていた・・・!
涯がそういった知識を持っているのならば既に自分の怪我に施しているだろうし・・・
赤松さんにしても同様、処置できるのならば涯の傷を優先的に手当てするだろう。
とすると・・・田中っていう女の人が・・・?」
「あぁ、それなら・・・赤松の腕の傷は最初にボウガンで撃たれた時のものだ。
その通り、田中が止血した。以前は看護師だったとかって・・・」
支援
「わかった・・・。
それと・・・もう一ついいか?
田中って人は・・・棄権資金を集め終えた・・・!
つまり一億円分以上のチップを所持しているということ・・・。
しかし棄権することが出来ず、そのため方針を優勝狙いに変えた・・・」
「棄権申告をする場所が禁止エリアだった・・・そう言っていたが」
「・・・なるほど。
で・・・田中さんはどんな様子だった?
再度涯たちを襲ってきたとき・・・躊躇う素振りもなかったのか・・・?」
「・・・そうだな。
会話を成り立たせることが出来るだけの理性は残っているようだったが・・・
少なくともオレは・・・明確な殺意を感じた」
涯の答えに対し、零は一瞬悩むような表情を見せたが、
それは本当にごく僅かな変化で、
沢田は不思議に思いながら零の言葉を待った。
「涯はオレたちと再会したとき・・・
“あいつは銃とボウガンを持っている”と言った。
しかし・・・実際に赤松さんに対して使われたのはボウガンのみ・・・。
銃があるなら、当然そちらを使用したほうが手早く確実だ・・・。
もしかして・・・涯に対して発砲した以降銃は使えない状況なんじゃないか?」
「・・・その可能性は高い。
壊れたか弾切れか・・・なんだと思うが」
「・・・」
支援
支援!
零は、沙織と再び接触を図ることに意味があると考えていた。
理由は大きくわけて三つ。
涯の怪我に関しても元看護師という立場の沙織に診てもらいたい。
伊藤開司に関係しているのならば話を聞きたい。
そして沙織を対主催に引き入れたい。
このまま沙織が人を襲い続ければ赤松のような被害者が増える。
勿論、それよりも早く沙織が死んでしまう可能性は大きい。
どのようになっていくにしろ、
“人が死ぬ”ということ自体を避けたい零にとって芳しくない。
先刻は詳しい状況がわからなかったこともあり、
沙織から逃げ隠れるという判断をした。
しかし、涯から聞く限り
沙織自身、殺し合いを望んでいるとは思えないのだ。
(悪いのは・・・・このゲーム自体・・・
生きたいと考えるのは当たり前のこと・・・
それが殺意へ結びつくように仕組まれたゲームのシステムが悪・・・!)
沙織の武器がボウガンである点については
決して不幸ではないと零は思っていた。
ボウガンの矢という嵩張るアイテムならば支給量も高が知れる。
多く見積もっても十数本であろう。
当然、矢をセットするのには、銃のリロードより時間がかかる。
素人ならば尚更である。
つまり、こちらが有効な遠距離武器を所持していなくとも、
隙をつける確率は十分だということだ。
しえん
万が一、涯に向けて使用したという銃器が再び使えるようになる場合も考えられる。
弾切れや故障などが原因ならば良いのだが
例えば安全装置の問題や弾詰まりなど、
田中沙織本人が冷静さを取り戻したときに解決しうる状態であるならば
再び銃を使用してくるという可能性も生まれてしまう。
(銃が相手となると・・・こちら側の武器があまりに心許ないが・・・
それでも・・・かつて看護師として働いていたのならば、田中沙織は一般人女性。
おそらくはそういった知識を持っていない)
最も恐れるべきは、銃やボウガンといった比較的強力な、殺戮行為を可能にしてしまうような武器が
かつて零の前に現れた平井銀二や鷲巣巌のような、“一般”ではない人間の手に渡ってしまうことだ。
被害を最小限に抑えながらゲームを崩す。
それが零の望む対主催のスタンスである。
「涯、沢田さん・・・反対されるだろうことは承知の上で・・・提案があるんですが・・・」
嫌な予感がするな、と沢田は苦笑いを漏らしながら顔をあげる。
「田中って女の人を・・・説得できないでしょうか?
いや・・・するべき・・・だと思う・・・・・!
彼女を探して・・・もう一度・・・・・話をしてみるべきだと・・・」
当然、零の提案は沢田からすれば突飛なもので、
そして同時に“嫌な予感”そのものであった。
沢田以上に反応を示したのは涯だ。
零の言葉に噛み付くように叫ぶ。
しえん
支援・・・!
「無理だっ・・・・・!
出来るわけないっ・・・!オレだってそれくらいやった・・・!
優勝以外に生きる道はあると・・・説得しようとした・・・!
それでも田中はボウガンを構えたんだっ・・・!」
「それはっ・・・足りなかったんだ・・・!
抽象的な言葉では・・・彼女の思う“希望”には・・・なりえなかったんだ・・・!
棄権という“安全”に手が届いたのに・・・結局のところそれは幻だった・・・!
彼女は動揺している・・・!
どうやって“安全”を手に入れれば良いか・・・考えるのはそれ一点・・・!
その後躊躇いなく赤松さんを撃つまでに心境が変化するのも・・・
この状況じゃ仕方ないとさえ言えるだろう・・・!」
「仕方ない・・・?」
「とにかく・・・!
問題は、彼女が赤松さんを撃った理由・・・!
赤松さんを殺したかったんじゃない。
自分が生き残りたかったんだ・・・!」
「同じだっ・・・!結果として赤松が死んだっ・・・!
同じだろっ・・・・・!」
「同じじゃないっ・・・!
彼女には通用するってことだ・・・!殺し合いをやめさせる説得が・・・!
“安全”を保障できると言えば・・・
人を殺すなんてリスクの高い行為からは手を引くはずなんだっ・・・!」
「安全を保障?」
しえん!
既に零の考えは田中沙織を説得するための切り札にまで及んでいた。
彼が目をつけたのはギャンブルルーム。
設置された目的は、主催のみが知るところだが、
参加者がギャンブルルームを利用する目的は、チップを稼ぐことだろう。
チップを稼ぐ理由は、棄権という道へ進むため。
しかし、棄権が出来ないという事実が明らかになった以上、
チップを稼ぐ意味は大きく減る。
例外として、
対主催や脱出を目的とした人間などが
情報や自身の進退を賭けて利用することはあるだろうが
ギャンブルルームはギャンブルをする施設であるという考えに則れば
最早ギャンブルルームを使う利点も少ないように思える。
(だが・・・そうじゃない・・・!)
ギャンブルルームの最大の特長――
“禁則事項”が存在するということ。
つまり、無法同然のこの島に置いて、唯一ルールに縛られた地帯。
“ギャンブルルーム内での一切の暴力行為は禁止”
主催側はそう明言した。
そして“禁則事項を破られたときは、首輪が爆発”・・・
ギャンブルルーム内で暴力行為を働くこと即ち死に直結するのだ。
裏を返せば、ギャンブルルーム内は絶対安全。
参加者間での殺し合いは完全に封殺された部屋ということになる。
支援
支援っ・・・!
遡ること数時間前。
零自身、ギャンブルルームを利用した。
平井銀二との戦い・・・持ち金すべてを失いはしたが、
そこで得たものは大きい。
零とて、ただ負けたわけではないのだ。
ギャンブルルームの“造り”を内側から把握することが出来たのは最大の収穫である。
分厚いカーテンで閉ざされた窓、
拳で叩いても音が吸い込まれていくほどに頑丈な壁、
黒服を介さなければ入室出来ないシステム。
多少の攻撃などでは影響さえなさそうな建物だ。
ギャンブルルーム自体を破壊しようとするならば
それこそダイナマイトクラスの火力が必要になってくるだろう。
そう、あの時零は確信した。
ギャンブルルームの利用価値はギャンブルに留まらない、と。
原則として、三十分利用するごとに100万円払わなければならない。
すると、一時間で200万円。
二時間で400万円。
三時間で600万円。
当初の支給金が1000万円であるため、長時間の利用は難しいといえる。
しかし、田中沙織はどうだろう。
1億円以上のチップを所持しているのであれば、
単純に計算して、五十時間。
五十時間はギャンブルルームに滞在できるのだ。
日数にして二日以上。
しえん
気を配らなければならないのは、
ギャンブルルームの位置するエリアが禁止区域にならないかどうかという点くらいだろう。
監視カメラ、盗聴器、そういったものが設置されているであろうことは想像に難くないが
例え主催から監視されていたとしても何ら問題はない。
(棄権が不可能になった今・・・
田中さんはチップなど無価値だと思っているかもしれないが・・・
そんなことはない・・・・!
それで安全な時間が買えるんだっ・・・・!
彼女の最も欲しているであろう“安全”が・・・!)
棄権に比べれば心許ない安全だろうが、
それにしても人を殺して優勝を狙うより遥かに“正常”な時を過ごせることは火を見るより明らかだ。
零たちも二日の時間があれば、今のように名ばかりの対主催などではなく
何らかの武器を携えて打倒主催を企てることが出来るようになるだろう。
元より、この島で主催を倒そうとするのならば時間は無限ではない。
時が経てばそれだけ禁止エリアが増え、ゲームに乗っていない人間は減る。
食料も限られた中では、短期決戦で臨まなければならないと最初からわかっている。
(オレ達が主催を倒す手立てを整えるまで・・・
あるいは味方を増やすまで・・・ギャンブルルームで待機していてくれ、と言えばいいだろうか。
対主催が可能であるという証拠を田中さんに示せれば確実だと思うんだが・・・)
「おいおい、だんまりじゃあ何もわかんねぇぞ」
沢田の言葉に、零ははっと顔をあげる。
支援
「すみません・・・ちょっと・・・」
零の考えをすべて話したとしても、涯は納得しないだろう。
それは零も理解していた。
この期に及んで衝突を起こしたくなどはないし、
先刻の涯の噛み付き具合から考えて、この案が快諾されることは永遠にありえないだろう。
今対する二人の人間は、ユウキやミツルたちのように
零自身の考えならば基本的に賛同し付いてきてくれる、というタイプの人間ではないはずだ。
沢田は零に比べて人生経験に富み、判断力もある。
涯についても、零より優れる部分は多くある。
何より対等であるためにも、彼の意見を無碍にするわけにはいかない。
(もちろんユウキたちの意見を切り捨てたことなどもなかったが)
もどかしさを、零は確かに感じていた。
涯は相も変わらず零に鋭い視線を投げかけている。
助けを求め沢田の方へ顔を向けると、
沢田は零の言葉を促すかのように首を振った。
小さく息を吸ってから、零は口を開く。
「伊藤開司について・・・彼女は知っている・・・・!
伊藤開司は十中八九・・・・・このゲームには乗らない・・・!
希望的観測でしかないが・・・・・・・!
そして伊藤開司は参加者の中でも・・・かなりの重要人物っ・・・・!」
「たかが一人の男についての情報を得るために危険に飛び込むって言うのかよっ・・・!」
「それだけじゃないっ・・・!
オレたちはオレたちの出来る範囲で・・・赤松さんのような被害者を減らすべきだと思うんだ・・・!」
赤松さんのような、というフレーズに、涯は僅かに反応し眉間に皺を寄せる。
しえん…しえん…
「優勝狙いの人間と・・・生き延びたいと考える人間は違う!
田中沙織は後者だ・・・!
生き延びる術があるならば人殺しなんてやめて縋ってくるはずだろっ・・・!
だったらっ・・・」
次に零の言葉を遮ったのは、沢田だった。
「なぁ零よ・・・そいつは理想主義がすぎるぜ・・・」
涯と零のやりとりは、内容の重さはあれど
少年同士の口論に過ぎない。
埒が明かない、と思ったのだろう。
沢田は諭すような声の調子で零に話しかけた。
「沢田さんっ・・・!
「ま・・・言いたいことはわかる」
予想外に柔らかい沢田の表情に、
零は口を噤むほかなかった。
「お前のことだ。
その理想を実行するだけのプランも考えてあるんだろうが・・・
そうだな・・・・お前には足りていないんだ」
「・・・」
「当然の如く・・・お前じゃ経験が足りない。
その癖どうも希望に賭けすぎる嫌いがある。
しかし・・・その足りない経験も・・・何らかの些細な出来事が切欠で足るかもしれない。
何十年も生きてみろって言ってんじゃねぇのさ。
ただ、今のお前の調子じゃ、涯を説得することは無理だって話だ。
いいか、赤松の死を無駄にするわけにはいかないんだ」
「無駄なんてそんな・・・」
赤松の死を無駄にしない。
自分なりにそう考えた上での提案だっただけに、零は驚いたように声をあげる。
「お前にその気があろうがなかろうが・・・
ま・・・結局のところ、そう見えるわけだ。今の段階では、な」
「赤松を殺した女だぞ・・・?そんな奴が・・・もし仲間になったとしても・・・
田中沙織が後悔していたとしても・・・オレは・・・」
涯は依然険しい表情のまま、しかし一段と小さな声で呟いた。
己の境遇との矛盾に苦しんでいるのだろう。
良識ある少年であるならば尚のこと
この島での生死の在り方、人殺しの存在には思い悩まなければならなくなる。
「俺はな・・・田中沙織と再び接触することがあれば・・・
零の考えを実行してみるのは悪くないと思ってる。
涯の言ってることは正しいし俺もまったくもって同意なんだが・・・
零のことも信用してるからな、俺たちの頭脳みたいなもんだ」
「沢田さん・・・!」
支援
支援
「だがな、零の口ぶりを聞くかぎりじゃあ、
今すぐにでも田中沙織を探しに行こうってなもんで、
そりゃ、賛成なんて出来ないさ。なぁ、涯」
涯はちらりと零を見やると、聞こえよがしに溜息をついてみせた。
沢田は軽く口の端をあげながら、ガキの喧嘩を見るのは嫌いじゃないんだがな、と付け足す。
「物事に一番大切なのはなんだろうな?
素晴らしい妙案も、タイミングを間違えれば無駄になる。
仲間の同意が得られないなら尚更だろうよ。
一番やらなきゃならないことを差し置いてでも実行するべきなのか?」
「一番・・・?」
「俺たちに希望を示したのは赤松だけじゃないってことさ、
そうだろ?零、お前の友達は優秀なんだっけなぁ・・・
色々遺してくれてるじゃねぇか」
零の手元に並ぶ標のメモには、びっしりと文字が並んでいる。
さっと目を通しただけで、その情報量に嘆息してしまうほどだった。
「そのメモを読めば・・・もっといい案が思い浮かぶかもしれないな。
何にしても・・・反対はしねぇさ、俺はな。
田中沙織のことについても、だ。
俺たちに一から十まで説明するのが面倒だってんなら一だけでいいくらいさ」
押し黙っている涯の肩にぽんと手を置くと、沢田は言葉を続ける。
支援!
「涯だって、ただお前の意見に反対してるわけじゃねぇ。
つまりは・・・赤松を殺した女は許せねぇっていう
涯なりの主張ってわけだな、それ以上でもそれ以下でもない。
田中沙織についての話題ばかりが続けば・・・
そりゃあ田中沙織が憎くなる。
自分の感情を差っ引いて客観的に物事を見られるっていうのはな、
それは特殊なんだよ、零」
沢田の目は優しかった。
口調も決して乱暴なものではなく、それ故に零と涯は静かにそれを聞き入れたのだ。
そしてその瞳の奥に潜む鋭さが、沢田の本質であるのかもしれないと思ったとき、
少年二人は沢田への信頼をより確かなものに変えたのだった。
「さて・・・
やることはたくさんあるぜ。
そのメモと・・・首輪を調べようか。
涯の傷の手当ても・・・簡単になら俺がやってやるさ。
何より・・・赤松の埋葬、だな」
【D-3/森/夜中】
【工藤涯】
[状態]:健康 右腕と腹部に刺し傷 左頬、手、他に掠り傷 両腕に打撲、右手の平にやや深い擦り傷
[道具]:鉄バット 野球グローブ(ナイフによる穴あり) 野球ボール 手榴弾×8 石原の首輪 支給品一式×3
[所持金]:1000万円
[思考]:零と共に対主催として戦う
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません。
支援
【宇海零】
[状態]:健康 顔面、後頭部に打撲の軽症 両手に擦り傷
[道具]:麻雀牌1セット 針金5本 標のメモ帳 不明支給品 0〜1 支給品一式
[所持金]:0円
[思考]:対主催者の立場をとる人物を探す 涯と共に対主催として戦う
※標のメモ帳にはゲーム開始時、ホールで標の名前が呼ばれるまでの間に外へ出て行った者の容姿から、
どこに何があるのかという場所の特徴、ゲーム中、出会った人間の思考、D-1灯台のこと、
利根川からカイジへの伝言を託ったことなど、標が市川と合流する直前までの情報が詳細に記載されております。
【沢田】
[状態]:健康
[道具]:毒を仕込んだダガーナイフ ※毒はあと一回程度しかもちません
高圧電流機能付き警棒 不明支給品0〜4(確認済み) 支給品一式×2
[所持金]:2000万円
[思考]:対主催者の立場をとる人物を探す 主催者に対して激しい怒り 赤松の意志を受け継ぐ
- - - - - - - - - - - - - - - - -
投下終了です。
支援ありがとうございました!
>>69の名前欄は信頼16/18 ◆IWqsmdSyz2の間違いです。
74 :
マロン名無しさん:2009/08/21(金) 00:17:30 ID:3DDDKCr7
圧倒的乙…!零は賢いなぁ
沙織についてはまだまだどうなるかわからない状況が続きますね。
しかし沢田さんかっけー
乙…!超乙…!
零の考察にはハッとさせられた。
二日の安全を買えるなら使わない手はないよなぁ…ギャンブルルーム。
沢田さんの落ち着いた大人っぷりがすごく良い。
投下乙です。
解決策を模索する零、それを感情的にまだ受け入れられない涯、その二人を包容力でまとめる沢田さん。
三者それぞれの考えが丁寧に描かれていてとても好感が持てました。
しづかもそうですが、未成年のキャラクターは誰と組むかが大きなキーポイントになるんだなぁと改めて思いました。
あと、零の時間を買うという発想は今までなかったので、
見たとき、思わず唸ってしまいました。
佐原の地下の話といい、
ジャッサンのストーリーは福本ロワに新しい流れを呼び込んでくださるので、
毎回楽しみでなりません。
次の作品も楽しみにしております。
また予約が
キタ━q(゚∀゚)p━!!!
投下乙でしたー
零の言うとおり、ギャンブルルームは今のところ一番安全ぽいですね
棄権できないイコールチップが無意味なわけじゃないってことか…
田中さんは一人じゃそれに気付けそうもないのが残念だ
そして予約…!
投下します。
零、涯、沢田の三人は、崖沿いの傾斜を下っていた。
二人の少年は、ただ黙々と沢田の後をついて歩いている。
先程の言い争いの余韻、心中にわだかまりを残したまま、目線を合わせられずにいた。
沢田は時々後ろを振り返り、ぎこちない二人を見て思わず苦笑した。
(互いに頑固者だからな…だが、二人とももう分かっているはずなんだ…!
しぶしぶ折れて妥協するのではなく、互いの主張を認め、尊重することができるっていうことを…。)
零が先ほど出した提案は、沢田にとっては目から鱗の妙案であった。
零を諌めながらも、あの情報量で、短時間で、あれほど頭が回る零という少年に感服していた。
具体的に『対主催としての行動』を取る段になったとき、零の出した提案は、
田中沙織だけでなく他の参加者に対しても有効なのである。
1000万のチップをまだ使っていない参加者は、5時間ギャンブルルームに留まれる。
非力な者や、戦うのに不向きな参加者にこのことを伝え、
チップを限界まで使ってギャンブルルーム内に逃げ込んでもらう…。
ギャンブルルームを集合場所にしたり、避難所として使う…。
その5時間の間に、『対主催者』グループは、主催に対して勝負を挑む…!
…と、いうプランも想定することができる。
(…ま、どうやって『挑む』か、俺にはまだ全く考え付かないんだがな…。
それに…これはまだもう少し先の話…!体制を整えてから…!)
沢田は赤松の亡骸を背負って歩きながら、赤松の言葉を反芻していた。
『ホテルでゲームの説明を受けた時、こんな予感があったんです…。
“自分はおそらくここを生きては出られないだろう”と…』
(俺も全く同じことを感じていた…。
そして、どうせならばこのゲームを潰してから死んでやろう、と。)
『涯君と零君を…頼みましたよ…』
赤松は最期にそう告げて逝った。
(――託されちゃあ、簡単に死ぬわけにはいかねえな…。
せめて、ゲームの終盤まで…!
二人の安全が確保されるまでは…なんとしても生き延びなければ…!)
◆
零は、黙り込んだまま、沢田の言った言葉を繰り返し反芻していた。
『物事に一番大切なのはなんだろうな?
素晴らしい妙案も、タイミングを間違えれば無駄になる。
仲間の同意が得られないなら尚更だろうよ。
一番やらなきゃならないことを差し置いてでも実行するべきなのか?』
(分かってる…分かってるんだ…!涯の同意が得られなければ駄目っ…!仲間なんだから…!
だが…こうしている間にも、事態は悪化する…。
田中沙織が人を襲う…手をますます血で紅く染めてしまうっ…!)
田中を追う………それが零の導き出した『最善』。
『最善』という結論に辿り着いているにも拘らず、動けないでいることがもどかしかった。
同時に、涯の心境だって分からない訳ではなかった。
『涯が標を殺したのではないか?』という誤解をしてしまった時、涯に対して一時期にでも持った感情。
怒り。憎悪。腹の内に渦書くどす黒い感情。
今の涯は、田中沙織に対してそのような思いを抱いているはずなのだから。
(そうだ…。あの時の俺の感情を思い出して見ると、二重に涯には申し訳ないことをしたんだ…。
涯の気持ちに気づかず、先走って自分の主張をしてしまった…!
だが…。それと、田中沙織を追うべきであるということは別問題…!だがっ…)
沢田はこうも言った。
『今のお前の調子じゃ、涯を説得することは無理だって話だ。
いいか、赤松の死を無駄にするわけにはいかないんだ』
(俺たちを危険な目に合わせるわけにはいかない、という沢田さんの配慮…無碍にする訳にはいかない…!)
田中沙織の持つボウガン…。
いくらボウガンという武器が、隙のできやすい武器とはいえ、危険であることに変わりはない。
また、ボウガンの矢に対抗できるような飛び道具がある訳でもない。
…何よりも、説得を試みた赤松が、沙織にボウガンで撃たれているのだ。その事実は無視できない。
零がボウガンの矢面に立つということは、同時に涯や沢田にも同じ状況を強いるということである。
(…冷静になって考えてみると…俺はずいぶん無茶な事を提案していたんだな……)
沙織を死なせたくないし、犠牲者を増やしたくない。
だがそれ以上に、涯や沢田を失いたくない。
沢田の言うとおり、策を練り直す必要があるのだ。
その前に…。涯に言っておかなければいけないことがある…!
零は、涯に向かって口を開いた。
◆
涯は、己の感情をどう処理していいか分からず混乱していた。
赤松に殺されかけ、憎み、追いかけてきた赤松を疎ましく思い、全力で庇ってくれた赤松に戸惑い、
沙織に情けをかける赤松に尊敬の念を抱き、誤解が解けたところで…殺された。
この数時間で、内なる激情に翻弄され、半ば放心状態…。
思い返せば、今まで涯が出会った人間の中であれ程の人格者はいなかった。
もっと…話をしてみたかった。
その赤松が平静を失うほど、標の死は赤松にとってショッキングなものであったのだ。
…例えばもし、零や沢田が誰かに殺されたら、俺はその誰かに対して、あんな風になるかも知れない。
赤松の心情…今ならはっきりと想像出来る。
(あの人でさえそうなんだ…。………田中沙織も………………。
いや、駄目だっ…! どうしたって…あの女だけは…許せない…!
零のようには考えられないっ………!)
涯の理念…『人は一人一人』『孤立せよ』。
田中沙織は己の優勝のみに目標を絞った。故に孤立している。
(だが、それは己に拠って立っている訳じゃないっ…!主催に踊らされているだけ…!
踊らされていることに気がつかないのが…恐怖に流される弱さが…。
俺には…許せないんだっ…!)
………それでも、赤松は。零は。そんな彼女を案じていた。
涯にはない冷静さで、物事を見つめていた。
…
(……俺には無理だっ…!)
涯は唇を噛み締める。
(俺は…狭いっ…心が…! だが…!)
涯はもう一度田中沙織について思いを巡らす。
田中沙織に対する感情…。沙織のことが許せないのは、赤松を殺されたから…だけではないことに気づく。
(……あの時、似ていると思ったのだ…)
沙織と戦ったとき、沙織は『すでに一人殺している』と涯に告げた。
その時、直感的に悟った。
沙織もまた、人を殺したという事実を受け止めるのが辛く、激しい葛藤があったはずで…。
しかし、葛藤があるからこそ『人間』なのだ。…ということを。
(同族嫌悪…! もう一人の俺っ…!)
涯も、一人殺した後は優勝狙いで動いていたのだ。…割り切ることが出来ず、葛藤を抱えながら。
赤松や、零、沢田に出会っていなければ…。ちょっとした運命の歯車の違いで、俺も…。
田中沙織は、“なっていたかも知れないもう一人の自分”なのだ。
背筋が凍るような思いだった。
………沙織を止めなければ…。
ようやく、涯はそこまで考えを突き詰めることができた。
だが、だからといって割り切れるものでもない。今すぐ助けに行こう、なんて気には到底なれない。
零に説明しておかなければ…!俺の思いを…!
涯は、零に向かって口を開いた。
◆
「「なあ…」」
二人は同時に互いの方へ振り向き、驚いて目を見開いた。
「あ…どうぞ」
「………………」
零に促されたが、涯はすぐに言葉が出てこないらしく、口を開いたまま困り果てた顔をした。
それを見て取った零が再び口を開いた。
「…先にいいかな?」
「ああ…」
「………ごめん…!」
「……………は?」
急に零に頭を下げられ、涯は面食らった。
「…その…俺…自分の主張ばかりで…涯の心情を全く考えてなかった…!
振り返ってみれば…俺、それで君を怒らせてばっかりだ…。ごめんっ…!」
「いや…………違う…!」
「え…?」
「元を正せば…俺に大局が見えていなかったせい…!
俺の視野の狭さのせいだっ…!」
「…………」
「だから…謝るな…!」
零はぽかんと口を開けていたが、じきにホッとした表情になった。
「いや…、謝らせてくれ。俺の説明が悪かったし…理屈に走って、
感情にまで気を回せなかったんだ…。気の利かない奴で、俺…だから…」
「田中沙織のことは、何とかすべきだと思う…」
涯は単刀直入に言った。
「俺も…、ああなってたかも知れないんだっ…。だから………!
だが………今は………」
零は、その言葉だけで察し、頷いた。
「わかった。俺も、もう一度時間をかけて考えてみようと思ってたんだ。
ありがとう…」
涯は零の笑顔を見て、複雑な顔をした。
(誰が“気の利かない奴”なんだよ…)
「仲直りしたか?」
沢田が後ろを振り向き、二人に問いかけた。
「ええ…」「……」
二人が頷くと、沢田は笑いかけ、背中の赤松に語りかけるように言った。
「そうさ…そうでなきゃ、赤松も安心して眠れねぇよ。なあ…?」
不意に、零の目から涙が零れ落ちた。
「…うっ…!」
涙は堰を切ったように溢れ出した。
零は堪らずその場に立ち尽くし、俯いて嗚咽を漏らした。
「…っ…ううっ…!」
涯は、それを呆然と見ていた。
零は恐ろしく頭の切れるところがあり、赤松の死の直後にあのような提案を思いつく所など、
どこか他人に対する感情が欠落しているんじゃないか、などと思うことがあった。
……………今まで必死に抑えていたのだ。
赤松の死と…、標の死。
それはすぐに受け止めることができないほど大きな悲しみであった。
「………………」
沢田は立ち止まり、黙ったままじっと待っていた。
「………落ち着いたか?」
「はい…すいません」
零は涙を拭いながら返事をし、涯は険しい表情のまま小さく頷いた。
「よし…じゃあ、行こう」
沢田は赤松の亡骸を背負い直した。
自分自身、この赤松という男に『侠』を見、共感しただけに、
心中に穴が開いたような虚しさを感じていた。
だが、赤松に二人を託されたという使命感が、今の沢田に力を与えていた。
「赤松さんの体…。静かな場所に弔ってあげたいですね…。」
零がぼそりと言った。
「そうだな…」
ゆっくりと歩きながら、沢田は返事をした。
涯は歩きながら、崖の向こうに見える建物を睨み付けていた。
――それは、この悪夢の始まった場所。D-4禁止エリアのホテル。
ここで棄権申請をしろ、と言ったにも拘らず、禁止エリアにすることであっさりと状況を覆してきた主催者。
(そのために田中沙織は絶望し、赤松を死に追いやった…。
田中沙織をそのように追い込んだのは…このゲームの主催者…!)
E-3の中央辺りまで来ると道はなだらかになり、坂道も終わりが見えた。
涯は再び背後を振り返った。ホテルは、暗闇の中で光もつけず、薄気味悪く聳え立っていた。
しばらく歩いて行くと、木々の間から大通りが見えた。
ぽつんと小さい木造の民家が姿を現す。
「着いた…。」
沢田が一言漏らすと、零と涯は「?」と疑問符を表情に出して沢田を見る。
「この家は、俺が昼間に見つけて、少しの間居座っていたんだ。
中に入る前に、アンタらに告げておくべきことがある」
沢田は二人の方を振り返り、また口を開いた。
「俺はここで一人殺している…。今もまだ死体が玄関先に転がっているはずだ」
零の顔に驚きの表情はない。第一放送直前、沢田からあらかじめ聞いていたことだからだ。
そして、漠然と歩いていたのではなく、沢田がまっすぐここを目指して歩いていたのだと気がつき、
一人納得して頷いた。
涯を見ると、張り詰めた顔でじっと沢田を見ている。
沢田は怒りとも悲しみともつかないような表情のまま、口の端を持ち上げて笑って見せた。
「…返り討ちにしてやったんだ。毒のついたナイフを持っていたのが幸いだった。
互いに『死』を覚悟しての戦いなら、不意打ちだろうと、武器に頼ろうと、同じ土俵での戦い…。
恨みっこなしさ。そうだろ…?」
普段の沢田なら、こんな言い訳じみたことは言わない。
だが、今は特別な事情があった。どうしても涯に話しておきたかったのだ。
…!
涯はじっと己の右腕を見た。
返り血が乾ききって指や腕にこびりついたままになっている。
人を殺した。
その罪悪感が消えることはない。
だが、ここに同じ痛みを知っている者がいる。その者は、痛みをありのまま受け止めている。
人知れず黙って内に秘めているだけでは、どうにも解れなかった重苦しい黒い塊が、
胸のうちで少しずつ解れていくのを、涯は感じていた。
他人に共感する。
今までは己の『弱さ』だと思い込み、忌み嫌っていた感情。
(だが…そうじゃない…。この暖かさ、強さは…。)
今の涯は、その感情を受け入れることが出来るようになっていた。
「…弔うつもりで戻って来たんですね…?」
零が沢田に聞くと、沢田は曖昧な笑みを浮かべた。
「元々、休む場所を探そうと考えていてここを思い出した、ってのが本音だがな。
手伝ってくれるか…? 零、涯」
二人は頷いた。
民家から大槻の死体を運び出し、家の裏手に三人で穴を掘った。
シャベルになりそうなものは見当たらなかったので、細長い板を見つけてきて掘り返した。
やがて、二人分の穴ができると、それぞれの穴に死体を横たえ、また土をかけた。
「何か墓標になりそうな物はないかな…?」
沢田は周囲を見回した。
「いや…沢田さん、このままのほうがいいです」
零は、額の汗を拭いながら沢田に言った。
「墓だって分からない様にしておいたほうがいい…。墓荒らしに荒らされないように…」
「何だって…?」
「死体の首輪を狙って、掘り返す不届き者がいるかもしれない…!」
沢田は一瞬呆気に取られたが、零の言わんとすることに思いが至り、ああ、と声を漏らした。
首輪なんか狙ってどうするのかと思ったが、死体から首輪を剥ぎ取り、
その首輪で実験しようとする参加者がいてもおかしくはない。
内部構造はどうなっているのか、どのような状態で爆発するようになっているのか…。
しかし、その行為自体は、首輪から逃れるための試行錯誤であり、生き延びるための必要悪である。
「…エゴだと分かっているんです。けど…。ここの墓は荒らされたくない…。」
赤松の死体を埋めた辺りを見つめながら、零は言った。
三人は民家の中に入り、ひっくり返っていたちゃぶ台を元に戻した。
涯は、沢田が探してきたタオルを濡らして顔や腕を拭き、体についた血や泥を落とした。
沢田は、涯の体中の傷を支給品の水で洗い流し、腹の傷を調べた。
「応急処置としちゃ不十分だろう…。傷の手当てが出来る場所を探さないとな…」
涯の胴にきつめにタオルを巻きながら、沢田は言った。
しえん!
支給品で簡単に食事をしてから、三人が今持っている支給品の確認に入った。
涯が預かっていた赤松のデイバックを空ける。
中には通常支給品、手榴弾8個、そして、首輪が出てきた。
「これは…。まさか…」
あの赤松が…死体から…? と、疑問に感じた涯だったが、零が否定した。
「いや…。標のメモに記してある。『村岡、死体から首輪、赤松さんに渡す。目的は仲間になること』
この村岡という人間が、標と赤松さんに首輪を渡したらしい」
首輪をよく見ると、死体から無理やり剥ぎ取ったのだろう、ところどころ血が輪の内側に付着している。
輪の部分は鎖帷子のように金属の網になっており、破ったり千切ったりなどできないようになっている。
繋ぎ目の金具が、石か何かの鋭利な硬いもので引っ掻かれ、叩き壊されて凹んでいる。
よく首輪が爆発しなかったものだ。
首の骨が折れるのを覚悟で、首の後ろ側の金具を叩き壊せば…。
首輪の前部分の装置に大きな衝撃を与えないよう気をつけて、
繋ぎ目の噛み合っている金属がひしゃげる位に金具を叩き潰せば、
力技ではあるが、首輪が外れる、ということだ。
ただし、ひしゃげるのは首輪だけじゃないわけで…。
……生きている人間の首輪には応用できない方法である。
涯は首輪を念入りに調べた。ところどころ螺子の穴らしきものがあるが、螺子は無くなっている。
繋ぎ目の金具を丹念に調べてみたが、特殊かつ複雑な構造で、素人には分析しきれない。
まるで知恵の輪のようだ。
零は先程から熱心に標のメモを読み込んでいる。
このゲームが始まってから標が見たこと、聞いたことが小さな文字でびっしりと書かれているらしい。
涯は首輪に目を戻したが、食事をした後ということもあって急に眠気が襲ってきた。
眠気を振り切るように首を振る。自覚すると急に体が重く感じる。
「二人とも、今日はもう休め。俺が見張りをする」
沢田が涯と零に声をかける。
「でも…」
零が言いかけるのを遮り、沢田は続けた。
「いいか…これからは体力勝負になる。疲労が溜まると、緊急時に正常な判断が出来なくなる。
だから今はできるだけ体を休めたほうがいい…。夜の間は俺が見張りをする。
明け方になったら起こすから、交代してくれ。昼まで休息をとらせてもらう。」
零は頷いた。
「それなら…わかりました。では、次の放送がもうすぐなので、それを聞いてからにしましょう。
で、次の6時間後の放送までに起こしてください」
「分かった」
沢田は、再びメモに目を落とした零と、今にもちゃぶ台に突っ伏しそうな涯を交互に見た。
零と涯を必ず守る。赤松に託された二人の『息子』を…。
(息子か…)
実の子供や妻は昔に出て行ったっきり、今どうしているのかも知らない。
(俺は…。罪滅ぼしをしたいのかも知れねえな…。)
沢田はふっと息をついた。ちゃぶ台に乗せた腕の時計をちらりと見る。
(そういえば、もう次の放送か…。)
しえん
【E-3/民家/真夜中】
【工藤涯】
[状態]:健康 右腕と腹部に刺し傷 左頬、手、他に掠り傷 両腕に打撲、右手の平にやや深い擦り傷
(傷は全て応急処置済み)
[道具]:鉄バット 野球グローブ(ナイフによる穴あり) 野球ボール 手榴弾×8 石原の首輪 支給品一式×3
[所持金]:1000万円
[思考]:零と共に対主催として戦う 首輪の構造を調べる 眠い
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません。
【宇海零】
[状態]:健康 顔面、後頭部に打撲の軽症 両手に擦り傷
[道具]:麻雀牌1セット 針金5本 標のメモ帳 不明支給品 0〜1 支給品一式
[所持金]:0円
[思考]:対主催者の立場をとる人物を探す 涯と共に対主催として戦う 標のメモを分析する 休息をとる
※標のメモ帳にはゲーム開始時、ホールで標の名前が呼ばれるまでの間に外へ出て行った者の容姿から、
どこに何があるのかという場所の特徴、ゲーム中、出会った人間の思考、D-1灯台のこと、
利根川からカイジへの伝言を託ったことなど、標が市川と合流する直前までの情報が詳細に記載されております。
【沢田】
[状態]:健康
[道具]:毒を仕込んだダガーナイフ ※毒はあと一回程度しかもちません
高圧電流機能付き警棒 不明支給品0〜4(確認済み) 支給品一式×2
[所持金]:2000万円
[思考]:対主催者の立場をとる人物を探す 主催者に対して激しい怒り 赤松の意志を受け継ぐ 零と涯を守る
見張りをする
しえん
以上です。
支援ありがとうございましたっ…!
投下乙です。
前回より零と涯の心理描写が丁寧に描かれてますね。
赤松の死の影響の大きさを改めて思いました。
この三人もですが、赤松の死は今後も様々な参加者に影響を与えるような気がします。
これからの展開に期待です。
まだまだ終わらせない…
限度いっぱいまでいく…
保守のあとは骨も残さない…!
予約が
キタ━━(゚∀゚)━━!!!
投下します。
ウィンドウの黒い背景、緑の文字がチラチラと点滅を始めた。
……否、点滅しているように見えるのだ。
森田はぎゅっと瞼を閉じた。
目が画面の文字を追い続けることを拒否している。
半日モニターの前で画面を見続けて、いい加減疲れた。
一時間ごとに更新されてくるデータは膨大なものであった。
それをメモ書きで整理していくうちに、要点をまとめるコツのようなものは掴んだが、
頭の中が容量一杯でメモリ不足といった具合である。
しかし、半日かけてデータを収集したことは圧倒的に有益である。
森田は今、全ての参加者の中で一番、このバトルロワイアルの状況を把握していた。
誰がいつどこで、どのように会話し、動き、殺し合ったか…。
どのような人間がどんな考えを持って、理性を以って、または感情のままに行動してきたか…。
「主催者」側の人間でなければ本来知りえぬ情報…!
言わば、この島(世界)における“神”の目線…!
(…いや、待てよ。本当にそうか…?)
森田はふと、モニターから目を逸らし、俯いた。
(あ………!)
あることに思いが至り、思わず声を上げそうになるのを堪えた。
(……もし…俺が主催者だったら…このフロッピーは…)
森田は近くに座っている遠藤や南郷に気づかれぬよう、ゆっくりと息を吐いた。
(となると…。俺が次にすべき行動は何だ…?)
メモ帳にペンを走らせながらしばらく思案した後、森田は遠藤を盗み見た。
相変わらず参加者名簿を見つめている。
内容を頭の中に叩き込んでしまうつもりなのだろう。
南郷の方を見ると、あぐらをかいたまま、うつらうつらと舟を漕いでいる。
(…………………)
じっと南郷を睨みつけていると、南郷はふと視線に気がつき、森田の顔を見た。
「何だ……?」
「南郷…」
森田は近寄ってきた南郷の胸ぐらを掴んだ。
「ここがどこだかわかってるのか…」
「は…?」
「今、俺たちは戦場の中にいるんだぞ。わかってるのかっ…!」
「はあ…」
「自覚してくれっ…!」
森田は南郷を突き飛ばした。南郷はあっけにとられてよろめき、呆然と森田を見た。
森田は顔を画面のほうに戻し、いらいらとキーボードを叩いた。
(何だ何だ…。八つ当たりか…?
クク…。ずいぶんイラついているようだな……。)
遠藤はその様子を名簿越しに眺めながら、ほくそ笑んだ。
南郷は場の空気にいたたまれなくなったのか、「トイレだ」と言い残して下の階に下りていった。
「森田…」
遠藤は森田に声をかけた。
「何だ…!」
「愛想が尽きたろう…?」
「……………」
「奴には戦おうという意志が感じられない…ただ留まっているだけ…。
お前はさっき、『南郷によって、救われる窮地もあるかも』などと言っていたが…。
そんな仮定になんの意味がある…?奴がどうやって役に立つと言うんだ…?」
「……今はまだわからない。だが…そのうち…」
「森田…!」
遠藤が立ち上がり、声を荒げる。こちらを見る森田の目には迷いがある。苛立ちや焦りが渦巻いている。
(もう一押しだ…)
「一体、何をいつまで待ち続けるつもりだ…?
そうこうしているうちに、お前の大切な人間が危険な目に遭うんじゃないのか…?」
「うっ…」
森田は遠藤から目線を逸らした。
「森田…。お前には非情と感じられる選択なんだろうが…。
南郷を見捨ててここを出ないか…?」
「ここを…?」
「そうさ。先程やったように、フロッピーはノートパソコンに入れて持ち歩けばいい。
バッテリーは数時間ほどしか持たないが、島に点在する建物を渡り歩けば充電くらいできるはずだ。
お前も、もう飽き飽きしてるんじゃないか…?ここにいつまでも留まり続けることに……」
「……………」
森田は何か反論したそうに遠藤を見上げていたが、やがて言った。
「そうだな…」
(折れた…!)
遠藤は心中で喝采を上げた。
今までずっと、この時のために退屈な時間を耐えてきたのだ。
森田に近づき、言い寄り、縛りつけ、翻弄する。
元々、一筋縄でいく相手だとは思っていない。だからこそ、回りくどい方法をとった。
意地の張り合い…。折れた方が負け…!全てこの瞬間のために耐えてきたのだ。
森田を同行させ、自分の意のままに操ること。それがゲーム開始以来の遠藤の狙いであった。
森田の強運…。
遠藤はそれに便乗したかった。
しかし、森田はカイジのように、弱者を助けようとする『悪癖』がある。
そのためなら危険な状況でも飛び込んで行きかねない。付き合わされるこっちの身が持たない。
だから、『見切りをつけさせる』必要があった。
一度、戦力にならない参加者を見限らせておけば、
次同じような事があったときも、見限るという考えにスムーズに辿り着きやすい。
その流れを作るために今までの行動があったのだ。
今ようやく、森田が遠藤の意見を聞き入れた。森田は唇を噛んでじっとモニターを見つめている。
「行くか…。南郷が戻ってくる前に…」
「待ってくれ。さっき言っていた『バッテリー』ってやつだが…」
「ああ……」
「ここにこれだけの数のパソコンがあるってことは、その…バッテリーも沢山あるってことだよな…?
バッテリーを沢山持っていけば、なかなか充電できなくても、
しばらくはノートパソコンを動かせるんじゃないか…?」
「ああ、型が合えばな」
「型…。俺はパソコンに関しては全く無知なんで、どの型がいいのかわからない。
できるだけ沢山探してきてくれないか…?」
「……………」
「頼むっ…」
森田は悔しそうな顔で遠藤を見る。遠藤は呆れ笑いを浮かべながら頷いた。
「仕方ねぇな…」
遠藤がバッテリーを抱えて戻ってきたとき…森田の姿はそこに無かった。
(逃げたか…?)
遠藤は森田がずっと座っていたパソコンの画面を見つめた。
黒い画面のウィンドウは先程と変わらず、緑の文字を表示している。遠藤は息を吐いた。
(いや…森田がフロッピーを置いていくわけがない。
こんな有利な道具を手放すはずがない。
それに、俺の元に置いて行けば、自分が『特定される側』になることくらい承知しているはず…。)
遠藤はパソコンの前に座った。あと5分で次の情報が送信されてくる。
◆
「追って来ないな…」
「そうだな。だが、急ごう。できるだけ離れておきたい」
南郷と森田はE-7、ショッピングモールから出て森の中を南下していた。
二人は急ぎ足で、ある地点を目指していた。
森田が先程南郷に八つ当たりをした時、南郷の手にメモの切れ端を握らせていたのだ。
メモの内容は、自分がこれから遠藤の目をごまかしてショッピングモールを出ること、
その時に南郷にも同行してもらいたい、先に下に下りていてくれ、というものであった。
「森田…」
「何だ…?」
森田は振り返って南郷を見た。
「その…良かったのか?俺が同行者で…」
「ああ、もちろん…。さっきは刺々しい態度を取って悪かったな…演技だったんだ、許してくれ」
「はあ…」
「遠藤に気づかれぬよう、アンタにメモを渡したかったんだ。
俺は…遠藤からどうしても離れたかった。奴は俺を利用しようとしていたから…!」
「そうか…」
「アンタはちょっとのんびりしている所があるが、信頼できる。俺の直感だがね。
もううんざりなんだ…。騙し合い、身近な人間同士で潰し合うなんてのはっ…!」
森田の顔が険しくなった。何か嫌な出来事を思い出したらしい。
「…ところで、今どこに向かってるんだ?」
「温泉旅館だ…ここを真っ直ぐ行った所にある。そこに…さっき出会った男、佐原がいるんだ。
例のフロッピーで確認しておいたから間違いない」
「さっきの…?」
「そうだ…今のうちなら、仲間に引き込めるかもしれない」
森田は言いながら、早足で歩いた。
◆
「やられた……」
遠藤は時計を見ながら、苦々しい顔で呟いた。
時計の長針が12の数字を過ぎても、画面が更新される気配が無い。
差込口を調べてみると、案の定フロッピーは抜き取られていた。
フロッピー内のファイルを立ち上げたままフロッピーを抜くと、画面がデスクトップに表示されたままになることがある。
おそらく、わざとそうしたわけではないのだろう。
森田はパソコンに疎いゆえに、データが破損するかもなどと危惧もせず、起動中にフロッピーを抜いたのだ。
(森田はもうここにはいないな…!)
遠藤は舌打ちした。
(だが…、それならそれで…!)
遠藤は、画面を一旦閉じると、慣れた手つきでパソコンを操作し始めた。
◆
「佐原って男を仲間に…?」
南郷は足の痛みを堪えながら、必死で森田の後を付いて行く。
「そうだ…。奴は今混乱している…。数時間温泉旅館に篭ったまま、身動きできないでいる…。
なんとか説得して仲間にするんだ」
「だが、危険じゃないか…?あの男は銃火器を…」
「遠藤に誘導されて、佐原が今までの行動を話していたろう…?
誤射によって自分の首を絞めるようなことになってしまったと。
それに、さっき佐原は俺たちを撃てなかった…。
神経を逆撫でしないよう落ち着いて説得すれば、きっと…」
「しかし…」
「それに、俺は『切り札』を持っている。奴を説得する『切り札』を…!」
ざわ…
「切り札…?」
「そう…佐原の話に出てきた“板倉”という男…。佐原が誤射してしまった男だが…。
板倉は、1時間ほど前に死んでいるんだ…!一条という男に殺された…!」
森田の話、これは全てパソコンに送られてくる情報から得た物である。
「フロッピーが偽りでないことを信じてもらうには、フロッピーで得た『佐原に関する情報』を示せばいい。
佐原が話していないことも知っているのだから、納得してくれるはず…!
その上で、板倉の死を佐原に告げる…!
佐原の一番の懸念は、板倉によって佐原の悪評を流されること…。そして板倉に命を狙われること…!
その不安を拭い去ってやることができる…!」
「なるほどな…」
森田の話に、南郷は頷きながら相槌を打った。
◆
「クク…転ばぬ先の何とやらだな…!」
遠藤はパソコンを操作しながら、一人笑った。
デスクトップには黒い画面が開き、緑色の文字が画面を勢いよく流れてゆく。
遠藤はバックアップを取っておいたのだ。
パソコンの起動の仕方もよく分からずまごついていた森田からフロッピーを借り、挿入した後、
フロッピーの中身をパソコン本体のハードディスクに保存しておいた。
画面に森田の現在位置が表示された。
ショッピングモールを出て、森の中を南下している。
向かう先は…温泉旅館。そこには佐原がいる。
「南郷と行動しているのか…。」
後を追おうかと思ったが、やめた。返り討ちにされたらたまらない。
(森田とは離れたが、フロッピーの中身を手に入れることができた。
このことを森田は知らない…!)
いつか、奴を出し抜くことが出来る筈である。
森田の位置を確認しながら、遠藤は低く笑いを漏らした。
◆
森田は歩きながら、フロッピーを取り出した。
(このフロッピーに送られる情報は、一見『主催者』の持っている情報そのもののように見える。
だが、本当にそうか…?
南郷のことや、佐原のことは正しかった。今は『正しい情報』を送って来ているということだ。
だが…。後々、もしこの情報の中に虚偽の情報が混ざり始めたら…?
直接赴き、この目で確かめでもしない限り、情報の真贋…信憑性はわからないっ…!
主催者が『情報を操れる』んだから…!)
情報の信憑性を疑うのなら、これ以上情報を手に入れても混乱するだけである。
今までの情報は全てメモし、頭に叩き込んだ。
遠藤の持っていた参加候補者名簿を見て、参加者の名前も顔も、どういう人物かも把握している。
参加者達が、この島で半日間どういった行動をしてきたかも…十分把握した。
(今後、情報を鵜呑みにしていたら、危険だ…!
だから…俺は自分の足で歩き、自分の目で確かめる…!これはもう…)
森田は手の中のフロッピーを眺めた。少し躊躇するが、振り切るように首を振る。
(必要ない…!)
パキッとプラスチックの割れる音が響いた。
木々の奥に旅館の瓦屋根が見えてきた。
近づいていくと、こじんまりとした民家風の建物が姿を現す。
「行くぞ…!」
森田と南郷は、入り口を警戒しながら旅館の中へと入っていった。
【D-7/ショッピングモール/真夜中】
【遠藤勇次】
[状態]:健康
[道具]:参加候補者名簿 不明支給品0〜2 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:森田の動向を探る、今後の行動について考える
※森田に支給品は参加候補者名簿だけと言いましたが、他に隠し持っている可能性もあります。
※森田の持っていたフロッピーのバックアップを取ってあったので、情報を受信することができます。
【E-7/森/真夜中】
【森田鉄雄】
[状態]:健康
[道具]:フロッピーディスク(壊れた為読み取り不可) 不明支給品0〜2(武器ではない) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:後々、銀二の助けになるよう準備をする このゲームの隙を見つける
遠藤を信用しない 南郷と行動を共にする 佐原を仲間にする
※フロッピーで得られる情報の信憑性を疑っています。今までの情報にはおそらく嘘はないと思っています。
※遠藤がフロッピーのバックアップを取っていたことを知りません。
【南郷】
[状態]:健康 左大腿部を負傷
[道具]:麻縄 木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:生還する 赤木の動向が気になる 森田と同行する
以上です。
乙でした!!
抜け目ないな遠藤さんw
森田達は無事佐原と合流できるといいなぁ
騙されたっ…森田を見誤っていてまんまと森田を見損なう所だった
とても面白かったです 書き手さんに圧倒的感謝っ…
遠藤と森田のシビアな駆け引きがよかったです
そんな中居眠りしちゃうおちゃめな南郷さんめっ><
原作でもここでも、南郷さんって(失礼ながら)本人は大して有能じゃないのに、
有能な人に助けてもらえる運命になってるなんだなぁ。
あと、福本作品に限らず漫画じゃよくあることだけど、沢田さん。
あんた、そんな性格でなんでヤクザ=犯罪組織の構成員、なんてやってるんだっっ?
福本漫画のヤクザは奇跡の優しさ
凍牌みたいにヤクザがクズに徹しても胸くそだけどね
現実のヤクザは、ブラックエンジェルズのド外道みたいなもん
(あるいはそれ以下)だろうからなぁ。
珍走もそうだが、くれぐれも漫画や映画の印象操作に騙されない
ようにせんとね。
ほんと、原田もだけど福本のやくざは結構いいキャラだよね
投下乙です。
やっと翼が羽ばたき始めましたね。
牙のために頑張って欲しいです。
森田が佐原と合流できるかどうかも気になりますが、
遠藤がどう動くかも気になります。
ある意味、完全な神の目を持っているのは
遠藤なので・・・
そうだよね、別にフロッピーに嘘の情報が流されるかは書き手さん次第だし
極端な話、遠藤無双になって優勝するかもしれんね
急な話ですいませんが、これから数時間ほど福本バトロワについてのチャットをやりたいのですが、いかがでしょう…?
もし反対意見がありませんでしたら、22時ごろにここにアドレスを貼らせていただきます。
チャットの内容は、初めての試みですし、福本ロワに関してなら何でも…という感じです。
ネタバレなどはないようにいたしますので…。
やるなら出れます たぶん
面白そうですね。
参加したいです。
チャット終了しました。
参加していただいた方々、ありがとうございましたっ…!
うわ気づかなかった
wikiのルールのページで、「予約は3日」を「一週間」に訂正しました。
乙です
そう言えば予約きてるよね
楽しみだ
138 :
マロン名無しさん:2009/09/07(月) 12:02:11 ID:476poXdr
442 :Trader@Live!:2009/08/17(月) 19:03:56 ID:iMtm0Mqi
>>394 なるほどー。
今も騒いでる香具師が、なんで児童ポルノ規制法案がでてきたのか、その目的を勘ぐってくれればいいんですが。
自民党と民主党じゃ、児ポ法を打ち立てる目的が全く違う。
民主党のバックには中共・韓国がいるが、この二国、二次元文化(アニメ・漫画・ゲームetc)が金になることを知ったんだよな。既に日本の輸出産業の一角を担うって麻生総理も言ってたし。
だから、民主党を通して二次元文化を規制する。今は商業ベースだけかもしれないが、将来のクリエイターを育てる土壌となる、一次二次創作も規制するかもしれない。
自民党が児ポ法たてた理由の一つに、北朝鮮利権があるんだってな。
安倍総理や麻生総理がクスリやらパチンコやらサラ金やら、北朝鮮利権をシメてる間に、北朝鮮の連中が児童ポルノ作って売りさばいてたらしい。
児童を護るのも大事だが、北とそれに群がる汚物も一緒に排除する気だよ、自民党は。
---------------
>北朝鮮の連中が児童ポルノ作って売りさばいてたらしい
これはプチエンジェル事件とか、ヒルズでも噂される児童売春との繋がりのことかもね。
「爺さん、あんたどこか行きたい場所はあるのか?」
闇の中を歩きながら、仲根は市川に声をかけた。
予想していたよりも、市川の足取りはしっかりしている。
まるで道の暗さなど関係がないとでも言わんばかりの躊躇いのなさで
――実際に、市川にとっては昼も夜も関係ないのだが
仲根の腕を杖代わりに一定の歩調を刻んでいた。
「そうさな。・・・人が集まる場所がいい。儂一人では何もできん。
この通り、歩くことさえままならんからな。協力できる人間がほしいところだ。
地図があるならそれを見て、目立つ施設にでも連れていってくれんか」
「人が多い場所に行くって事は、それだけ危険が増えるってことだ。
殺し合いに乗ってる奴らだっているかもしれない。それでもいいのか」
自分の事を棚に上げて、仲根が言った。
既にかなりの参加者が死んでいる。
自分も殺したが、それ以上に殺しをやっている連中がいるはずだ。
そうでなければ、短時間にあれほどの犠牲者が出るはずがない。
そんな奴らに道中に出会ったとして、負けるとは思わなかったが、絶対に勝てるという自信もなかった。
理由は二つある。
一つ目は、出会った相手が、必ずしも一人とは限らないということ。
人数の差はすなわち戦力の差だ。
武器を持ち、徒党を組んで向かってくる相手に、
目の見えぬ市川という荷物を抱えて立ち回るのは得策ではない。
――もちろん、自分の身が危険と判断すれば市川の身柄は容赦なく捨てるつもりだが。
もう一つの理由は、武器の差だ。
先刻、二人組の男と出会った時に痛感した。
配布されている武器には大きな偏りがある。
そしてそれは、時に埋めようのない力の差をもたらすのだ。
ダイナマイトを抱えていた中年の男。あれがもし本物だったとしたら。
想像以上に物騒な武器が配布されていることになる。
ハンドガンどころか、マシンガン、手榴弾、地雷、狙撃銃のような道具があってもおかしくない。
それらを相手に、刃物で立ち回りを演じるのは避けたかった。
「恐いか?」
揶揄するような市川の口調に対し、仲根は苛立ち昂ぶりそうになる感情を押し殺して言い返した。
「あんたは恐くないってのか」
「フン。老いぼれに、死を恐れる気持ちがあるかよ。
・・・まあいい。恐いというなら、無理は言わん。
他の人間に会う前に、儂を捨てて逃げるがいい。
お前さんよりも儂の方が耳はいい。人の気配がしたら、教えてやる。
だが忘れるな。一億集めたところでこのゲームに終わりはない。主催を倒さぬ限りはな」
しえん
「その体で、どうやって主催と戦うつもりだよ?」
「博打さ」
「はあ?」
「この島は恐らく、広大な賭博場だ。
お前さんや儂のような参加者を殺し合わせ、
その裏では誰が生き残るか、莫大な金をかけて愉しんでる奴らがいる。
優勝賞金の10億など紙クズとしか感じない、腐った豚の集まりだ。
だが儂は、それを逆手に取る」
「どういう意味だ」
「主催の連中を相手に博打をうつだけのことよ。
そのためには、奴らを賭場に引きずりだすための餌がいる。
儂と同様、主催に勝負を挑もうと考える打ち手も必要だ。
お前さんには、それを揃えるための手伝いをしてほしい」
仲根は、市川から改めて協力を求められ、どのように応えるべきか逡巡した。
先刻同様、理性では相手の言葉が正しいと思っているのに、素直に諾と頷く事ができない。
それは市川の言葉に現実味が足りないせいか、或いは、もっと別の要素があるのかもしれない。
明確に言葉に出来ない違和感。その正体は、一体何なのか。
考えるには、時間が必要だ。
もう少し、この老人と一緒に行動してみるべきなのかもしれない。
対主催、という言葉に嘘がなければ、その時は黒沢を仲間にするよう薦めるという手もある。
市川は、想像以上に頭がキレるようだ。その上、主催側の事情を知っているような風情がある。
自分と黒沢の不幸な行き違いも、目の前の老人ならばうまく解決してくれるかもしれない。
「その件については、もう少し考えさせてくれ。
それより、どこか人気のある場所に行きたいって言ってたよな。連れていってやるよ。
ただし、危険だと思ったときは、あんたが言った通り、見捨てて逃げるぜ」
「結構」
まずは市川の希望通り、この場から移動して、人が集まりやすい場所に向かう。
もしかしたらそこに黒沢がいるかもしれない。
盲の老人を助けている自分の姿を見せれば、或いは。
そんな打算も働かせつつ、足を止めて地図を広げた。
自分達の現在地はB−2。間もなくC−2に差し掛かかる。
人が集まりやすそうなところと言えば―――。
「商店街か」
付近には映画館や病院もあるが、市川を連れて歩くのだ。
見たところ体力があるようにも思えない。近いにこしたことはないだろう。
「行くぞ。爺さん」
「ああ」
仲根は地図を畳むと、市川が自分の腕を掴むのを確かめてから歩き出した。
アトラクションゾーンを出るまで暫く南下する。
途中で発電所から市街地へと続く道にぶつかるはずだ。
後は道に沿って人の気配を探せばいい。
盲目の市川の聴力を、どこまでアテにしていいのか、ハッキリ言って分からない。
(爺をつれて、警戒しながら歩くのかよ。面倒だな)
内心では自分の状況を憂いていたが、はじめて出来た同行者に対する警戒は、
仲根自身も知らぬ間に、少しずつ薄れはじめていた。
********
しえん
仲根の腕を杖がわりに歩きながら、市川は自分の思考に耽っていた。
その間も、耳から入る情報を遮断はしない。むしろ常以上に精神を研ぎ澄ませている。
盲目の市川にとって、触覚と聴覚はまさしく自分の目も同然だった。
(この男、意外に使えるかもしれん)
市川は先刻、改めて仲根に対主催のための協力を請うた。
無論、それは表向きだけの話だ。実際に主催と戦う意思などあるわけがない。
だが、ここで仮初めの仲間に引き込んでおけば後々何かと使えるかもしれない。
ダイナマイトを自分から奪っていった男は二人。
それらを相手に、武器を取り上げるための道具として仕立てるにはうってつけのように思われた。
明らかに若いと分かる声から推測して、年齢は二十歳に達しているかどうかというところだろう。
口ぶりからすると、もっと幼いのかもしれない。
異常としか言いようのない現状に対し落ち着いている様子からして、修羅場慣れしている事も分かる。
危険を察知する能力も高そうだ。
耳から伝わってくる足音や、杖のかわりとして掴んでいる腕の感触。
体は文句なしに頑丈だろう。それでいて、喧嘩一辺倒という程の馬鹿でもない。
ある程度は物を考えるだけの知恵がある。
市川は仲根に少し遅れて歩きながら、口端を歪めて笑みを作った。
御しやすく、丈夫な杖。
最初に自分を連れ回した石田に比べて、評価は高い。
拡声器を片手にバンジージャンプ台に登るような突飛で面白い発想はないが、反面で、思考が読みやすく操りやすい。
奪われたダイナマイトを取り戻すことが当座の目的だが、仲根にはそれを教えるつもりはなかった。
物騒すぎる道具を欲しがる理由を説明するのも面倒だったし、
ダイナマイトを持っている相手にけしかけるならば、情報を制限しておいた方が得策だろう。
火薬の塊に好きこのんで飛びかかる馬鹿はいない。
しえん
ダイナマイトは、「石田」という男が持っていったはずだ。
そして石田は、対主催を唱える「天」と繋がっている。
ならば、対主催という立場をとり続けている限り、どこかでぶつかるはずだ。
まずは人が多い場所に向かう。その上で、ダイナマイトの所持者を捜し、奪い返す。
だが、ダイナマイト奪還に、必ずしも固執する必要はない。
時と場合によっては、このまま手榴弾のみで自爆を決行してもいいと、市川は思っていた。
求めているのは、死に場所だ。自分以外の他者を巻き込み、華々しく散る。
殺人ゲームに放り込まれた時限爆弾。それが己の役割だ。
巻き込む人数は多ければ多い程いいが、極めて価値の高い強者、猛者ならば。
それが例え一人であっても、殺す価値はある。
例えば、先刻自分を押さえつけた「天」という男。
あれは間違いなく、強者、猛者に属するはずだ。
単に体格が優れているというだけではない。常人にはい、得体の知れない何か。
匂いのようなものが、周囲を漂っていた。
真っ当な人間のフリをしていたが、あの男は少なからず狂気を秘めている。
既に些かなりとも狂っている自分がそう感じるのだから間違いない。
市川の脳裏を、白髪の子供の残像が過ぎった。
赤木しげる。かつて己の自尊心を粉々に砕いた悪魔が見せた狂気。
あれと同じ色の気配を纏う男ならば、この身と共に砕くだけの価値がある。
有象無象の輩を巻き添えにするより、いっそ心地が良いはずだ。
(このゲームを覆す可能性を持つ男。それこそ儂に相応しい)
死んで華となる瞬間を思い描き、市川は声を出さず表情のみで笑った。
【C-2/アトラクションゾーン/夜中】
【市川】
[状態]:健康
[道具]:モデルガン 手榴弾 ICレコーダー 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:ダイナマイトを取り返す 仲根を利用する ゲームを覆す才覚を持つ人間を殺す 商店街(E-4)を目指す ※有賀がマーダーだと認識
【仲根秀平】
[状態]:前頭部と顔面に殴打によるダメージ 鼻から少量の出血
[道具]:カッターナイフ バタフライナイフ 支給品一式×2
[所持金]:3000万円
[思考]:市川に一時的に協力する 黒沢と自分の棄権費用を稼ぐ 黒沢を生還させる 生還する 商店街(E-4)を目指す
以上です。
ツッコミどころ満載ですが勘弁して下さい…。
乙です!
はじめましてですよね。
市川らしさがすごくよく出ていて、面白かったです。
久しぶりに天を思い出しましたw
初めましてです。
>147で誤字を見つけてしまいました…orz
×常人にはい
○常人にはない
チェックして貰ったはずなのに。申し訳ない。
もうちょっと市川で書きたい部分があるので、いろいろ精進してきます。
こんばんは。
ご存知の方もいるかもしれませんが、8月31日に予約をし、投下しないまま今日を迎えています。
破棄や延長の連絡もせず、そもそも予約を過ぎてしまっていたことに気付いていませんでした。
準備は出来ておりますので、勝手ながら今から投下させていただきます。
ルール違反ですので、「破棄をしたほうがいいのでは」という意見がありましたら当然破棄しますし
その心積もりは出来ております。
今後このようなことのないように努めます。
申し訳ありませんでした。
(治くん・・・怒ってるのかな・・・)
石田は己の失態に深い後悔を抱きながら、
目にたまった涙を拭う。
前を歩く治の背中は、少し前とはうって変わったように見える。
先ほど自分が気付いたミスは
治、黒沢から見捨てられても仕方がないといえるレベルのものであった。
このゲームを覆すカギに成り得る支給品、
――ダイナマイトを落としてしまったのだ。
カイジのために。
このゲームを覆すために。
玉砕の覚悟を携えてここに立っているはずなのに。
解れてしまったホルダーを押さえても、
なくした五本のダイナマイトは戻ってこない。
ほんの一部、わずかな解れである。
ダイナマイトがその解れをすり抜け、足元へ転がり落ちる様子を想像すると、
一体なぜ気付くことが出来なかったのか、石田の自責に拍車がかかる。
「クソッ・・・くそ・・なんで・・・」
こんなゲームに参加していること自体が間違いだということはわかっている。
しかし、今ここに生きている以上は、自分の出来る最善を尽くさなければならないのだろう。
行動を共にしてくれている仲間たちを思えば思うほど、
消えてしまいたくなる気持ちが苦しい。
(治くん・・・黒沢さん・・・)
支援します!
ダイナマイトを落としたことを打ち明けたとき、
焦る石田に、治は努めて明るい声色で答えた。
「石田さん、落ち着いてください・・・大丈夫ですから・・・!
マッチとか・・・そういうものは落としてないんでしょう?それなら・・・」
そう、ダイナマイトとて火がつかなければ火薬の詰まった円筒に過ぎない。
誰かの手にダイナマイトが渡ってしまったとしても、
火種がない状況であればほぼ問題はないのだ。
そもそも正面の視界も十分ではない夜闇の中で、
誰かが足元のダイナマイトに気付き、それを拾い上げる確率はそう高くないはずだろう。
治の冷静な励ましに、石田は大きく心救われた。
ダイナマイトと共に手に入れたライターは、
今でもまだ石田のズボンのポケットにある。
治の言うとおり、ライターがまだこちらの手の中にあるのならば
拾った相手がすぐさまダイナマイトを使用してしまう危険は少ない。
とはいえ、ダイナマイトが敵――市川のような人物の手に渡る可能性が減ったわけではない。
火種になるものを支給されている人間がどれだけいるか見当がつかないのだから、
治の言葉も気休めに過ぎないのだが。
黒沢にはダイナマイト入手の経由から説明しなければならなかったが、
それに対しての黒沢の返答も石田を責めるようなものではなく、
むしろ「よくやっちまうんだ・・・オレも・・・ドジを・・・」などと背中を叩かれ励まされたのだった。
(でも・・・)
そう、当初はそうして優しく接してくれていた二人も、
こうして歩く現在、石田に一言さえ声をかけてくる様子はない。
ダイナマイトを探すために戻るのは危険だという治の主張、
また、次の放送が近づいているということもあって
今、三人は予定通り美心の殺された別荘へ向かっている。
申し訳なさもあり、石田から話を切り出すことはなかったが、
歩きはじめて数分ごろまでは、治や黒沢と他愛のない会話があった。
それは落ち込む自分に対する二人の心遣いなのだろう、と石田は考えていたのだが――
(会話がないのは・・・仕方ない・・・!
オレがどうこう文句を言えた立場じゃないのもわかってる・・・!
でも・・・でもっ・・・・・・)
石田は再び目に溢れてくる涙に、手のひらをぎゅっと握り締めた。
(二人とも・・・明らかに機嫌悪くなっちゃったような・・・)
徐々に会話が減り、互いを気遣うような気配も消え、
今となっては、まるで他人同士であるかのよう。
そう、ただ同じ方向を目指しているだけであるかのように、
三人の男が歩いている状況だった。
(どうしよう・・・やっぱり・・・・
もう一度きちんと謝罪をしないとダメなんだっ・・・・きっと・・・・
二人は怒ってるんだ・・・!オレがダイナマイトを落としたことをっ・・・・・!)
このままじゃいけない。石田は唇をかみ締めながら考える。
黒沢はずかずかと先頭を歩いている。
彼の大きな体、大きな歩幅について歩くのは思いのほか大変だ。
移動しはじめた頃は、
黒沢も石田たちのスピードにあわせて、
何よりも周囲に注意しながら進むという意味もあって通常より緩やかな速度で歩いていたのだが、
現状、黒沢のうしろを治と石田が若干息をあげながらついて進む形になってしまっている。
治はというと黒沢とは逆に、当初に比べて随分と歩みが遅くなっていた。
石田の目には、治は歩き方自体が変わったように見える。
やはり、二人は怒っているのだ。
石田は逃げ出してしまいたくなる気持ちを抑えこんで、前方の二人に声をあげる。
「治くん・・・黒沢さんっ・・・!ごめんなさい・・・!
ほんとうに・・・すまなかったっ・・・・」
首を絞められているような、震えて情けない声色。
しかし石田は精一杯の謝罪の意を、二人に向けて投げかけたのである。
「え・・・?」
黒沢と治は立ち止まり、そして振り返る。
二人の目には、頭を深く下げた石田の姿が映った。
「あの・・・石田さん・・・・?」
「二人の優しさに甘えて・・・・なあなあになってしまっていたけどっ・・・・・
最初に謝らなければならなかったんだ・・・・!すまなかった・・・!」
「石田さん・・・わかったっ・・・!あんたの気持ちは・・・・
っていうか・・・・痛いほど・・・・わかっていたっ・・・・!オレにはあんたの気分・・・!」
「そ・・・・そうですよ・・・・石田さん・・・・頭、あげて・・・」
「あれ・・・・?」
予想とは違う二人の反応に、石田は素っ頓狂な声で答える。
「許して・・・・くれるのかい・・・・?」
「いや・・・許すもなにも・・・怒ってない・・・ですよ・・・・・」
ねぇ、と顔を見合わせる治と黒沢。
石田は三度溢れる涙を抑えることに懸命になりながら、
そうだったのか、と胸を撫で下ろした。
「だって・・・・黒沢さん・・・・速くなったし・・・・」
「あ・・・?」
「だんだん速くなってったから・・・歩くスピードが・・・!」
「そりゃあ・・・・すまん・・・!気付かんかった・・・!
いや・・・早く着きたくって・・・・」
黒沢は口ごもりながら石田に伝える。
「早く・・・?何かあるんですか・・・・?」
放送まで時間があることを確認しながら、石田は黒沢に尋ねた。
「そりゃ・・・まぁ・・・・」
美心さんの件もあることだし、触れないほうがよいのだろうか。
石田がそう判断した瞬間、黒沢の方から地鳴りのような音が響いてくる。
「ぐっ・・・!静まれ・・・オレの空腹っ・・・・・!」
黒沢は目をぎゅっと瞑りながら顔を僅かに赤らめる。
「ああ・・・!ハハ・・・」
言われてみれば、オレもお腹すいたなぁ、と石田は笑った。
黒沢が歩度を速めたのは、一刻も早く空腹を満たしたいがためだったのだろう。
怒っているのではないか、という考えは、
石田の不安な気持ちが導き出した幻想に過ぎなかったのだ。
「あ・・・!でも・・・治くんはっ・・・」
ここまで長時間行動を共にしてきて、石田はわかっていた。
治は、人を思いやる、気遣う、といった気持ちをちゃんと持ち合わせている。
だから移動中は後ろに気を配らなければならない、というのは傲慢だろうが
しかし、石田が治の背中に違和感を覚えたのは事実である。
きちんと目を合わせる勇気も振り絞らなければ出ない石田であったが、
治の真意を尋ねるべく、顔を上げて窺う。
「い、石田さん・・・」
石田への返答をするべく、口を開きかけた治だったが、
それが成るよりも先に治の体はバランスを大きく崩し、倒れた。
「どっ・・・どうしたんだいっ・・・!治くんっ・・・!!」
突然のことに目を見開く石田、駆け寄る黒沢。
「治くんっ・・・!治くんっ・・・・・!」
間近で見れば明らかに蒼白な治の顔色に、石田は息を呑む。
意識はあるようで、石田の呼びかけに手を動かして答えながら、
治はしばらくの間荒い呼吸を整えるように、肩を揺らしていた。
「く、黒沢さんっ・・・!治くんが・・・!治くんがっ・・・」
「ああっ・・・ああああっ・・・・!」
黒沢も慌てたようすで、治の体を抱き起こした。
「大丈夫かいっ・・・?!」
治の様子がおかしかったのは、簡単な理由だった。
怒っていたのではない。体調が悪かったのだ。
(思いやりだとかなんだとか・・・・一番欠けてたのはオレじゃないかっ・・・・!)
石田は己を叱責する。
二人が怒っているんじゃないか?なんだそれはっ・・・!
オレの勘違いだった・・・!自分勝手すぎた・・・オレがっ・・・・!
何よりオレが・・・!
二人から嫌われたくない・・・怒られたくないっ・・・
そういう気持ちばかりを持っていて・・・だから気付くことができなかった・・・!
「気付けなくてごめんっ・・・・!治くん・・・・!ごめんねっ・・・」
ぐったりした様子の治に、涙まじりの声で謝罪する。
「なんでこんな突然・・・・」
黒沢の呟くような一言に、石田も同意する。
「そうだよっ・・・!ちょっと前までは何ともなかったのにどうして・・・!
ずっと一緒にいたけど・・・何もなかったんだ・・・!
誰かから攻撃されたり・・・ケガすることもなくって・・・・!」
「じゃあ・・・持病とかあるんじゃ・・・」
今度は治が首を横に振って答えた。
細い声を絞り出すようにして、治は言う。
「黒沢さんと・・・会ったくらいの頃から・・・
だんだん頭痛と吐き気が・・・・・してきて・・・・・・徐々に強くなって・・・・」
「原因は・・・?」
「わからない・・・です・・・・・頭が・・・・ぐらぐら・・・」
「ぐらぐら?」
治の額に手を当て熱を測ったり、治の落とした拡声器を拾ったりしている石田の横で、
黒沢が治の言葉に反応し、問い返す。
「ぐらぐらすんのか?」
首肯で答える治。
続けて黒沢は質問する。
「もしかして・・・・頭打ったりとか・・・したか・・・・?」
「いや・・・・・治くんとはずっと一緒にいるけどそういうことは・・・」
石田が答えるのと同時に、治の脳裏に、ある一場面が浮かぶ。
――二つのデイパックを持つ自分。
ギャンブルルームから一歩踏み出したその直後、視界が大きく揺れた。
遠くなる世界。目の前が真っ暗になる。
そして・・・
(オレ・・・は・・・殺されるのか・・・?)
霞みがかった意識の中で、耳に聞こえるのは怒号と金属音。
死にたくない。まだ・・・オレは・・・。
「聞こえるか・・・?」
優しくオレを気遣う声。赤の他人を、本気で案じている、声色。
「治くん・・・なんでこんなことにっ・・・」
薄く瞼を開けると、涙でぐちゃぐちゃの顔をした石田の姿が、治を出迎える。
(天さん・・・石田さん・・・・黒沢さんっ・・・・)
出会ったばかりの相手を、こんなにも、
こんなにも真剣に思える人間が、そう多くいるものか。
治の目にも、じわりと涙が溢れてくる。
「あぁっ・・・・治くんっ・・・!痛いのかいっ・・・」
「大丈夫かっ・・・!」
「はい・・・だいじょう・・ぶです・・・。
ありがとう・・・ありがとうございます・・・」
「治くん・・・」
「オレ・・・・あたま・・・・打ってる・・・んです。
この島に来て・・・・・すぐ・・・・石田・・・さんと・・・会う前・・・」
「そうだったのかいっ・・・」
震える声で、石田が言う。
黒沢は神妙な面持ちで、しかし合点がいった、と言いたげに頷いた。
「やっぱり・・・!オレも経験があるっ・・・・!
頭を打たれたときってのは・・・・その瞬間は大した痛みじゃないっ・・・・・!
痛いが・・・・!本当の意味で危ないのはその後っ・・・・・・!
時間が経ってから・・・・頭がぐらぐらしてきてっ・・・・立ち上がることもできなくなるっ・・・・・!」
石田も頭の怪我は時間が経ってからが怖い、と聞いたことがあった。
強打した場合は、数時間から数ヶ月後に何らかの異常が起きることがあるらしい。
「治くんっ・・・・・・!」
「ごめ・・・んなさい・・・・。
いし・・・ださん・・・・くろ・・さわ・・・さん、迷惑を・・・かけ・・・て・・・・」
「迷惑だなんてあるもんかっ・・・・!」
「ご・・・めんなさい・・・」
そして、治は意識を手放した。
【D-6/森/夜中】
【黒沢】
[状態]:健康
[道具]:不明支給品0〜4 支給品一式×2 金属のシャベル 小型ラジカセ
[所持金]:2000万円
[思考]:カイジ君を探す 美心のメッセージをカイジ君に伝える 別荘に戻り必要なものを調達する
※メッセージは最初の部分しか聴いていません。
【治】
[状態]:気絶 後頭部に打撲による軽傷、強い吐き気・頭痛・目眩
[道具]:
[所持金]:0円
[思考]:別荘へ向かう アカギ・殺し合いに乗っていない者を探す ゲームの解れを探す
【石田光司】
[状態]:不安
[道具]:産業用ダイナマイト(多数) コート(ダイナマイトホルダー) ライター 支給品一式 拡声器
[所持金]:1000万円
[思考]:治を心配 カイジと合流したい カイジのためなら玉砕できる
※石田が落としたダイナマイトはB-6、C-6、D-6のどこかに落ちています。
-----------------------------------------------------------
以上です。
奇しくもタイトルが「謝罪」という・・・。
素敵なSS(
>>139から)が投下されたばかりなのににタイミングも空気読めてないしすみません。
本当に申し訳ありませんでした。
代理投下終了です。
私個人としましては、破棄の必要はないと思います。
人が多いロワではないということ、
面白い作品だったので破棄が勿体無いということ、
今までも書き手として活躍なさってる方ですので
「今後こういうことがないよう」という言葉を信用してというのが理由です。
読み専の意見なのでご参考までに。
治が頭を打った話がここで生きてくるとは…と感心してしまいました。
二投下連続で天の名前が出てきましたしw
まさか、一日に二作品連続投下されるとは思いませんでした。
まずは市川と仲根の話。
市川さんが狡猾さがしっかり描かれているのに好感が持てました。
その上で、市川さんの盲目故のスペックの高さを
分かりやすく、描写として散りばめられている
自然な流れに思わず、唸ってしまいました。
これからも投下お待ちしております。
黒沢、治、石田さんの話。
癒し系チームと思いきや、ここでまさかのシリアス展開に・・・
しかも、きっかけが書き手も読み手も忘れていた伏線で・・・
いつものことながら、本当に福本ロワの流れを
きちんと把握していらっしゃる方だなと
感心させれました。
締め切りについては、うっかり間違えてしまう時もあると思います。
これかも投下楽しみにしております。
一日に二つもきたっ…!投下…!僥倖…!パラディソ…!
>夜行
新規書き手さんきたっ…!ウェルカム…!
市川の思考や台詞がかっこいい。しびれました。
対主催の仮面をかぶるマーダーは他にもいたけれど、
市川の場合は自分の死をも恐れないだけに恐ろしい…。
ところで、僭越ながら気になった点を。
>市川の脳裏を、白髪の子供の残像が過ぎった。
アカギ13に出会ったとき、市川の目はすでに見えていなかったので、「白髪の子供の残像」が脳裏を過ぎるのは多少違和感が…。
市川さんの場合、「声」や「手で触った感覚」が脳裏を過ぎるのではないかと思います…。
意見してしまってすいません。是非また書いてくださいませ…!
>謝罪
待ってました乙…!題名に噴きましたw 誰しも一度は間違う事もあるということで。
石田の感情がすごく共感できました。
黒沢の足が速くなった理由がwなんて黒沢らしい。
石田がしょんぼりする話だと思って読んでいたら、治の「頭を打った伏線」と、黒沢の原作での経験がリンクして、ぞくっとしました。
話の持って生き方がすごくうまいですね。
治…今後どうなるのか激しく気になります。
長文失礼しました。
物語の作れる人がうらやましい
ダイナマイトは、「石田」という男が持っていったはずだ。
そして石田は、対主催を唱える「天」と繋がっている。
ならば、対主催という立場をとり続けている限り、どこかでぶつかるはずだ。
まずは人が多い場所に向かう。その上で、ダイナマイトの所持者を捜し、奪い返す。
だが、ダイナマイト奪還に、必ずしも固執する必要はない。
時と場合によっては、このまま手榴弾のみで自爆を決行してもいいと、市川は思っていた。
求めているのは、死に場所だ。自分以外の他者を巻き込み、華々しく散る。
殺人ゲームに放り込まれた時限爆弾。それが己の役割だ。
巻き込む人数は多ければ多い程いいが、極めて価値の高い強者、猛者ならば。
それが例え一人であっても、殺す価値はある。
例えば、先刻自分を押さえつけた「天」という男。
あれは間違いなく、強者、猛者に属するはずだ。
単に体格が優れているというだけではない。常人にはない、得体の知れない何か。
匂いのようなものが、周囲を漂っていた。
真っ当な人間のフリをしていたが、あの男は少なからず狂気を秘めている。
既に些かなりとも狂っている自分がそう感じるのだから間違いない。
市川の脳裏を、傲慢な子供の声が過ぎった。
赤木しげる。かつて己の自尊心を粉々に砕いた悪魔が見せた狂気。
あれと同じ色の気配を纏う男ならば、この身と共に砕くだけの価値がある。
有象無象の輩を巻き添えにするより、いっそ心地が良いはずだ。
(このゲームを覆す可能性を持つ男。それこそ儂に相応しい)
死んで華となる瞬間を思い描き、市川は声を出さず表情のみで笑った。
「夜行」最後の一文を>167の指摘通り訂正しました。
言われてみれば確かにその通り・・・っ!
ついでに誤字も訂正しました。
自分では気がつかない点でしたので、ご指摘頂き助かりました。
ではまた・・・!
171 :
◆uBMOCQkEHY :2009/09/08(火) 23:09:19 ID:+fN3JHSJ
お久しぶりです。
これから投下します。
支援!
173 :
追懐1:2009/09/08(火) 23:12:05 ID:???
ひろゆきはフェンスの先――アカギが消えた先を眺めていた。
林の中から銃声が聞こえた。
首輪探知機が正しければ、その銃声はカイジか田中沙織、もしくは北へ進んでいた5つの光点の先頭の誰かである。
カイジか沙織が光点の人物を襲うために放ったものであれば、面識がある分、まだ説得が出来る。
しかし、もし、銃を撃ったのが、光点の人物によるものであったとしたら・・・。
ひろゆきは右手に握る日本刀を見つめる。
――向こうは銃器・・・こちらは日本刀のみ・・・。
あくまで可能性とは言え、危険人物の元へ自分が行って何になるっ・・・!
どうせ、大したこともできず、被害を被ってしまうのが関の山だっ・・・!
ひろゆきは元来、思慮深い性格である。
危険で且つ、自身に対してメリットが小さすぎる行為は踏み止まり、最善の方法を模索する分別を持っていた。
その性質故に、ひろゆきはアカギの行動を理解することが出来なかった。
――アカギはさっきまでベンチに座って食事をしていた・・・
ならば、当然、今の銃声を耳にしているはず・・・!
ひろゆきは眉を顰める。
――アカギ・・・お前は一体何を考えているんだっ・・・!
ひろゆきはフェンスに触れた。
凍っているかのような鉄の冷たさが脳の奥を刺激する。
――追って、アカギを止めるべきだろうか・・・。
174 :
追懐2:2009/09/08(火) 23:13:07 ID:???
そうは考えてみるが、状況上、どう考えても、アカギは銃声を耳にしている。
分かっていて、その方角へ向かっているのであれば、あえて止める必要があるのだろうか。
そもそも、ひろゆきに第二回放送後に病院で会いたいという意味を含んでいると思われるメモを残しているのだ。
本人が死ぬつもりで向かっているのではないことは明白である。
――けれど・・・もし、アカギがあの銃声の主に狙われたら・・・。
ひろゆきはフェンスの金網を力強く握り、その上を見上げる。
フェンスの高さはだいたい2メートル程であり、越えることにはそれほど苦労しない。
しかし、ひろゆきは首を横に振る。
――危地へ飛び込む必要がどこにあるっ・・・!
アカギは自分の意志でこのフェンスを越えたんだ・・・!
もし、巻きこまれたら、それはアカギの判断ミス・・・
所詮・・・その程度の男・・・あいつは赤木さんじゃ・・・
そこまで思い、ひろゆきの思考は止まる。
ひろゆきは精神の深みへ飛び込むかのように、目を瞑る。
――赤木さんなら・・・この時どうする?
ひろゆきの脳裏に通夜の時の赤木の言葉が蘇る。
支援
176 :
追懐3:2009/09/08(火) 23:14:48 ID:???
『ただ・・・やる事・・・
その熱・・・行為そのものが・・・生きるってこと・・・・・・・!
実ってヤツだ・・・!
分かるか・・・?
成功を目指すな・・・と言ってるんじゃない・・・!
その成否に囚われ・・・思い煩い・・・
止まってしまうこと・・・熱を失ってしまうこと・・・
これがまずい・・・!
いいじゃないか・・・!
三流で・・・!
熱い三流なら上等よ・・・!』
ひろゆきは唇の端にかすかな笑みを浮かべた。
――そうだよな・・・赤木さんなら・・・
飛び越えるであろう。
ひろゆきは思う。
自分と赤木とでは、人間的な性質がまったく異なる。
土俵自体が違うのだ。
赤木に追いつくという行為は不可能といってもよい。
しかし、それでも赤木という人間に近づきたい。
赤木に近づくために必要なことは“己が己であり続けること”。
勿論、無意味な被害を避けることも己の考えの一つであり、間違いではない。
しかし、それはあくまで最良と思われる状況への逃避であり、
自分の心情とかみ合わないシコリを感じている。
ひろゆきは己に問う。
177 :
追懐4:2009/09/08(火) 23:15:50 ID:???
――オレは・・・どうしたい?
体の奥から湧き上がる一つの咆哮が、その答えを叫ぶ。
――アカギと戦いたいっ!
ここでヤツを見逃したくはないっ!
この直後、ひろゆきはメモをポケットにしまい、日本刀を鞘に収める。
勢いをつけて、フェンスに向かって高々とジャンプした。
フェンスが体重で、ガシャンと揺れる。
ひろゆきは這いずるように、フェンスをよじ登った。
フェンスを越えると、そのまま飛び降り、駆け出す。
今のひろゆきに迷いはなかった。
それどころか、まるで、吹き抜ける薫風を体に浴びるような清清しさすら感じる。
強い何かが心を押している。
――人はいずれ・・・どうあれ死ぬのだ・・・!
なら・・・可能な限り・・・自分の心に沿うべきだ・・・!
赤木のように生きるのだ・・・可能な限り・・・!
自然とひろゆきの口元が綻ぶ。
――待っていろっ!アカギっ!
ひろゆきが走りながら、アカギの位置を確認するため、首輪探知機の電源を入れようとしたその時だった。
178 :
追懐5:2009/09/08(火) 23:18:07 ID:???
「涯君っ・・・!」
「赤松かっ・・・」
ひろゆきは足を止める。
木々の間から見えたのは、牽制するように拳を構える少年とすぐ後ろで立ち尽くす男。
――あの少年が涯で、その後ろの男が赤松か・・・。
彼らは何をして・・・
ひろゆきは涯と赤松の視線の先を追い、言葉を失った。
二人の視線の先にいたのは、ボウガンを構えて二人と対峙する――
――田中沙織っ!
ひろゆきは三人に気づかれないように、三人の会話を拾える位置にある大木の陰に移動すると、身を屈め、振り返るように顔だけを僅かに出し、様子を伺う。
一時間程前まで沙織はカイジを尻に敷きながらも、特に変わった所がない女性であった。
しかし、今は触れれば火を発しそうな程の殺気に包まれていた。
そもそも、ひろゆきはカイジに危険を知らせるため、首輪探知機を頼りにその足取りを追い、その後、森の中へ消えたアカギを追っていた。
首輪探知機に映し出されていた光点の正体がカイジではなく、沙織と判明した時点で、ひろゆきがこの場にいる理由は皆無である。
アカギを追いたければ、その場からすぐに立ち去ればいい。
しかし、見ず知らずの人間とは言え、沙織に命を狙われている。
そんな状況を放っておく程、ひろゆきは冷徹にはなれなかった。
ひろゆきは自分の善良さに嘆きながらも、いつ、戦闘状態となってもいいように、刀を強く握る。
179 :
追懐6:2009/09/08(火) 23:19:31 ID:???
――何がどうしたんだっ・・・!
あの少年をなぜ狙う・・・?
あの少年が田中に何をした・・・?
「なぜ、その子を・・・涯君を狙う!君に何をしたというんだ・・・!」
その時、赤松が、まるでひろゆきの疑問を察したかのように問う。
「うるさいっ!黙って!」
沙織は金切り声で叫ぶ。
――耳を傾ける余裕すらないのか・・・。
ひろゆきは苦々しそうに歯軋りをする。
今の沙織は、状況を飲み込みきれていないひろゆきから見ても、
小さな力が加わっただけで爆発する爆弾のような危うさを秘めており、
扱いを一歩間違えれば、惨劇は免れない。
沙織と対峙する赤松もその危うさを察しているらしく、
沙織の精神を落ち着かせるかのように、穏やかな声色で語りかける。
「涯君は・・・私にとって、必要な存在なんだ・・・
涯君を解放してほしい・・・
代わりに、私を好きにしていい・・・だから・・・」
「嫌よっ!」
沙織は悲鳴のような声を上げ、赤松を拒む。
「そう言って、近づいて私を殺すんでしょっ!
この子さえ消えれば・・・あと、1700万貯まれば・・・
私、脱出できるのよっ!」
「・・・ということは・・・8300万も・・・」
この直後、沙織の顔から憎悪の感情がにじみ出る。
180 :
追懐7:2009/09/08(火) 23:22:02 ID:???
――まさか・・・!
沙織の禍々しい変化で、ひろゆきは悟った。
9時間という短い時間の中で、5000万円以上の費用を稼ぐのは容易なことではない。
考えられる方法は、ギャンブルで勝利するか、殺人を犯し続けるかである。
ひろゆきとカイジとの勝負の時、沙織はギャンブルに好意的ではなかった。
もし、沙織がギャンブラーとしての腕を持ち合わせていれば、自ら勝負をするはずである。
つまり、沙織がとった方法は真っ当とは、言えない後者であり――
――情緒不安定なヤツに、それを見せ付けるようなことを言えば・・・。
「あ・・・」
赤松もひろゆきからワンテンポ遅れて、言葉の重大さに気づき、口を手で塞ぐ。
しかし、時はすでに遅し・・・。
「そうよっ!人を殺したわよっ!
でも、こうしなくっちゃ、私、生きられなかったのよっ!」
――やはり・・・殺していたかっ・・・!
その沙織の言葉に、ひろゆきは愕然しつつも、次のようなシナリオを判じる。
もともと沙織は脱出目的の参加者であった。
その思いは強く、人を殺め、棄権費用をかき集めようという行動を取らせてしまうほどに・・・。
その殺人がカイジと合流する前の話なのか、後の話かは分からないが、
どちらにしろ、カイジはその事実を受け入れ、沙織と行動を共にしていた。
しかし、打倒主催者であるカイジと一刻も早い脱出の沙織とではスタンスが違いすぎた。
世話になった恩もあったのだろう。
沙織はカイジを殺害することなく、ひろゆきとの勝負中、その隙をついて荷物を持ち出し、逃げ出した。
そして、自分の目的を達成するために、目の前の少年を・・・。
支援
182 :
追懐8:2009/09/08(火) 23:24:29 ID:???
「やめろっ!」
「嫌っ!」
ひろゆきはその声で、ハッと我に返り、顔をあげる。
バシュッ! という音と共に、ひろゆきの目に飛び込んできたのは、
左腕の皮膚と筋肉が弾け、血を噴き出しながら、膝を突く赤松の姿だった。
――何てこったっ!
運の悪いことに、動脈を抉ったのだろう。
岩から洩れる源流のように、血がとくとくと流れ落ちる。
朱色に染まった地面が広がっていく。
――アカギを追いたい所だがっ・・・!
ひろゆきは柄を握る手に力を込める。
強力な狩猟具であるボウガンに対して、使い慣れていない日本刀では、当然、勝ち目はない。
しかし、今、彼らに助勢しなければ、沙織は容赦なく二人に止めを刺す。
どんなに果たしたい目的があったとしても、やはり、見過ごすことはできない。
ひろゆきは鞘から刃を少しずつ解放する。
――どこまで堕ちたっ・・・!田中沙織っ!
「涯君を・・・解放してくれないか・・・」
――なっ・・・!
信じられないことが起こった。
重傷だと思われていた赤松が、沙織を正視しながら立ち上がったのだ。
夥しい量の流血を考えれば、痛みを堪えるので精一杯のはずである。
ひろゆきは息を呑んだ。
――一体・・・何が、あの男をここまで駆り立てる・・・?
183 :
追懐9:2009/09/08(火) 23:25:58 ID:???
「なっ・・・!」
深手を負った赤松の異常なまでの執念。
ひろゆき以上に驚いたのは、対峙する沙織である。
沙織は新しい矢を探すため、周囲を見回した。
その行動はまさに隙であった。
「させない・・・」
全員の眼中から外れていた涯が、突如、沙織のボウガンを蹴り飛ばすと、沙織を地面へ叩き付け、押さえ込んだ。
「離してっ!」
沙織は逃れようと体を揺すりながら、喚き叫ぶ。
赤松が血の流れ続ける腕を押さえながら、沙織へ近づいた。
ひろゆきは刃の半分近くを抜きながらも、赤松の動向を見守る。
――まさか・・・殺すのか・・・?
しかし、赤松の行動はひろゆきの予想外のものであった。
「これ・・・棄権費用の足しにしてください・・・
後の700万円は・・・何とかしますから・・・」
沙織に1000万円分のチップを渡したのだ。
――おい・・・チップは命綱なんだぞ・・・!
ひろゆきは心の中で、異を唱える。
自分の命を狙う悪党に手を差し伸べる。
物語などではその後、悪党は改心していくというストーリーが王道であるが、
ここでは、そんな行動をすれば、悪党の餌食なるだけである。
赤松の行動は、ひろゆきからしてみれば、自分で自分の首を絞めるようなものである。
――ぬるい・・・!ぬるすぎるっ・・・!
ひろゆきが赤松に対して毒気づいた直後、赤松はうめき声を発しながら、腕を押さえた。
貧血に近い状況らしく、顔から赤みが消えている。
184 :
追懐10:2009/09/08(火) 23:27:26 ID:???
「赤松っ・・・!」
涯は沙織を押さえつけているため、赤松の身を案じながらも、その元へ近づくことができない。
赤松もそれを察しているらしく、涯に向けて穏やかに微笑む。
「涯君・・・私を助けてくれて・・・ありがとう・・・嬉しかった・・・」
この一言から始まった、赤松と涯の会話は、彼らの背後を知らないひろゆきにとって、断片的にしか把握できないものであった。
ただ、そのやり取りの中で認識できたのは、
涯もまた、沙織と同じように人を殺めた経験があること、
零という参加者との出会いから罪の意識が芽生えてしまったこと、
それによって、絶望の淵をさ迷っていることだった。
赤松の言葉はよほど心に訴えるものがあったのであろう。
次第に、涯の表情から毒々しい殺気が薄らいでいく。
それは沙織も同様であった。
沙織に小さな変化が現れた。
「ねぇ・・・応急処置させて・・・」
「この女は危険だ・・・!」
涯が反論するも、赤松はあえて、沙織の申し出を承諾した。
――獣に餌をばら撒くようなことを・・・!
ひろゆきも涯と同じように、欲求が体内に蓄積されるような苛立ちを覚える。
――あの女はすぐに牙を剥くぞっ・・・!
沙織は起き上がると、赤松の腕の傷を確認し、応急処置を施し始めた。
ひろゆきはその様子を目で追いながら、刀を構える。
――最悪の事態になった時は・・・オレが田中沙織を・・・。
支援
186 :
追懐11:2009/09/08(火) 23:48:01 ID:???
しかし、ここでもひろゆきの予想に反して、沙織は特に何かをするでもなく、応急処置を続けていく。
それどころか、少しずつ自分の過去を話し始めたのだ。
沙織が絞るような声で話していることもあってか、
ひろゆきは聞き取ることができない。
しかし、それを聞く赤松と涯が顔を強張らせていることから、不運なもののようである。
沙織が過去を語り終え、自嘲的なため息を洩らした時、涯は沙織に1000万円分のチップを差し出した。
「これでアンタの棄権費用は揃った・・・脱出しろ・・・」
その様子を見て、ひろゆきは思わず苦笑いした。
涯は対主催として生きる決意を表すために1000万円を渡したらしいが、
ひろゆきから見れば、沙織に同情を覚えた故の行動に思えてならなかった。
――本当に、お人よしばかりだな・・・。
沙織は2000万円のチップを握り締めながら、塞ぎこんだ表情で呟く。
「ねえ・・・本当に主催者に立ち向かうの?
こんなゲームを主催できる連中よ・・・!
どうせ、向かっていっても、姿を見ることすらできない・・・!」
赤松は“このゲームに参加している者は誰しもそう考える・・・”と沙織の考えを肯定しながらも、
“けどね、田中さん・・・”と子供に絵本を読み聞かせるかのように、穏やかな口調で話しかける。
「私と共にいた標君という少年は、最後までその主催者と戦おうとしていた・・・
小さな体で、頭を全力で働かせて・・・
そんな小さな子供が戦っていたのに・・・
大人がそれは無理だと否定するのは、まだ、早いんじゃないかな・・・」
――標・・・。
第一回目の定時放送の際に呼ばれた脱落者の一人だ。
――この男の支えはその標という少年への思い・・・か・・・。
187 :
追懐12:2009/09/08(火) 23:49:47 ID:???
「ごめんなさい・・・私はやっぱり主催者に立ち向かえない・・・」
沙織は立ち上がり、自分のディバックとまだ使えそうなボウガンの矢を拾う。
赤松に少しの間、休んでいた方がよいと忠告し、アトラクションゾーンのある方向を見つめた。
「私・・・ギャンブルルームへ行くわ・・・棄権申請を行うために・・・」
沙織はその後、赤松達と簡単なやり取りをした後、アトラクションゾーンへ駆け出していった。
赤松と涯はその背中を見つめ続けていた。
ひろゆきもまた、赤松や涯と同じように沙織の背中を見つめ続けていた。
――これで・・・良かったのかもしれないな・・・。
ひろゆきの出る幕はなかった。
ひろゆきは刀を静かに鞘に納める。
首輪探知機の電源をつけ、範囲を100メートルに設定した。
画面に光点が映し出される。
離れていく光点は沙織のものだとして、今、この場にはひろゆきの光点のほかに赤松の光点、涯の光点、そして、彼らに密着するように光る不明の光点が存在していた。
――多分、赤松か、涯が脱落者の首輪を所持しているんだろう。
しかし、問題は不明の光点ではなかった。
――設定を1キロメートルに変更した時に現れる・・・
赤松と涯を追う二つの光点・・・あれは、一体・・・。
188 :
追懐13:2009/09/08(火) 23:51:41 ID:???
「涯君・・・」
沙織の背中が見ええなくなった頃、赤松が呟いた。
「零君と・・・彼と一緒に同行する人が・・・
君と零君が別れた地点で待っている・・・行こう・・・」
しかし、この直後、赤松は眩暈を覚え、近くの木に寄りかかる。
応急処置を施したとは言え、大量の出血は赤松を貧血状態へ陥らせていた。
「赤松っ・・・」
涯はその場に赤松を座らせる。
「一旦、休めっ!」
「しかし・・・」
逡巡する赤松に対して、涯は一喝する。
「途中で倒れたら、オレは面倒を見切れない・・・!
それに、零と約束をしているんだろ・・・
お人好しの零のことだ・・・逃げずに・・・待っているさ・・・」
赤松はきょとんとするも微苦笑を浮かべ、頷く。
「そうだね・・・」
――そういうことか・・・。
二人を追う光点は、おそらく零という少年とその同行者であろう。
先程の赤松と涯との会話から察すると、零と涯は仲違いをしているらしい。
大方、罪悪感を覚えた零という少年が同行者と共に、赤松と涯と追っているのだろう。
いずれ、彼らは合流できる。
――アカの他人が、それをわざわざ知らせるまでもない・・・。
189 :
追懐14:2009/09/08(火) 23:53:09 ID:???
ひろゆきは二人に気づかれないように立ち上がると、その場から静かに離れた。
歩きながら、再び、首輪探知機に目を落とす。
そこにはアカギと思われる光点は存在していなかった。
結局、30分近くの間、ひろゆきは赤松達の顛末を見守っていた。
その間に、アカギを含めた参加者の光点の位置は大きく変動、
首輪探知機の範囲を1キロメートルに設定したところで、どれがアカギの光点かを特定することは、もはや不可能となっていた。
――どちらにしろ、アカギとは放送後、病院で会えるんだ・・・それに・・・
ひろゆきは時計を見た。
その時刻はすでに平山との待ち合わせの21時を過ぎていた。
――まだ、生きていればいいんだが・・・。
自然と足も速くなる。
ひろゆきはアカギと出会ったフェンスまで戻り、後ろを振り返った。
静寂が支配する林が広がっている。
――赤松・・・か・・・。
沙織を説得していた時、その瞳には一点の曇りもなかった。
それどころか、水のように澄んだ情熱さえ感じられた。
ひろゆきにはアカギと戦いたいという願意こそあるものの、
赤松のような憂き身をやつすほどの熱情にまでは至ってはいなかった。
そう言った意味では、赤松が羨ましくさえ思った。
「本当に自分の心に沿って生きている人間ってのは・・・
あんな眼をしているものなのかな・・・」
ひろゆきはそう呟くと、フェンスを越え、アトラクションゾーンへ駆けていった。
190 :
追懐15:2009/09/08(火) 23:53:58 ID:???
全てが解決したかのように思われた。
ひろゆきもそう思っていた。
しかし、ひろゆきは知らなかった。
その数分後、絶望に打ちひしがれた沙織が赤松達に殺意を向けることに・・・。
赤松がその殺意により、不帰の客となることに・・・。
ひろゆきがそれを知るのは後のことである。
ひろゆきは赤松達から離れた後、無事にアトラクションゾーンの事務室へたどり着いた。
「平山・・・いるのか・・・」
「ひろゆきか・・・」
まるでその言葉を合図にするかのように、平山は事務所から顔を出した。
ひろゆきは周囲に人がいないことを確認し、事務所へ入る。
事務所内は薄暗く、窓から洩れる月明かりで、辛うじて何がどこにあるのかが判別できる。
電灯があるなら、点けたいところだが、それではほかの参加者に居場所を知らせているようなものである。
そんな愚かしいマネはできない。
「生きていたんだな・・・」
平山が生きてここまでたどり着いていたことを、素直に安堵した。
しかし、平山はそんなひろゆきの感情などお構い無しに、愚痴をこぼすように訴える。
「遅かったじゃないか・・・待ち合わせの時間はとうの昔に過ぎている・・・
誰かに殺されたかと思っていたんだぞ・・・」
ひろゆきはすまないと軽く詫び、話を切り出した。
「平山・・・実は・・・」
「ひろゆき、聞いてくれっ!」
平山は、飛び掛るかのようにひろゆきの言葉を折る。
ひろゆきはその気迫に思わず閉口してしまうも、“とりあえず、どうしたんだ?”と平山を促す。
平山の口から飛び出したのは――
「オレ・・・もう利根川と会わなくてよくなったみたいだ・・・」
191 :
追懐16:2009/09/08(火) 23:55:12 ID:???
平山は簡単な事の経緯を説明した。
18時に利根川と発電所付近で落ち合い、今までに得た情報を伝えた。
利根川が次に会う場所を指定しようとした瞬間、平井銀二と原田克美が二人を襲撃した。
「原田克美だって!」
ひろゆきは思わぬ人物の名前に、声をあげてしまう。
ひろゆきの様子に、平山は戸惑う。
「え・・・あいつと知り合いなのか・・・あいつ何者なんだ・・・」
「関西の暴力団の組長だ・・・麻雀で対決したことがある・・・」
「組長と・・・麻雀・・・」
さも普通のことだろと言わんばかりに、とんでもないことを口にするひろゆきに対して、
平山はため息をつく。
確かに、ひろゆきは“ギャンブルだけで生きたい”と狂気の沙汰のようなことを口にはしていたが、
それでも裏の人間特有の胡散臭い空気を持ち合わせていなかったことから堅気の男と勝手に判断していた。
しかし、ヤクザの組長と知り合いで、しかも、麻雀で対決した経験があるという話を聞いて、
人を見た目で判断してはいけないという事実を改めて思い知らされてしまった。
「・・・で、どうした・・・?」
“どうしたもこうしたもねえだろ・・・”と平山は内心、呆れ返りながらも話を続けた。
利根川は平山を囮にして逃亡。
結局、次の待ち合わせはうやむやになってしまった。
192 :
追懐17:2009/09/08(火) 23:56:53 ID:???
「よかったじゃないか・・・」
ひろゆきはやわらかい表情を浮かべる。
「それにこれで分かったことがある・・・
勿論、その後、原田達に利根川のこと・・・伝えたんだろ・・・」
“ああ・・・”と平山は軽く頷く。
「だが・・・それがどうした・・・?」
「原田達は利根川を襲った・・・
そんな相手に自分の情報は漏洩されたくはない・・・
しかも、君との次の待ち合わせ場所は決めていない・・・
もう会う術がないんだ・・・
君が必死に情報を集めなくなることは目に見えている・・・
利用価値がなくなった君を・・・どうするのが合理的だと思う・・・?」
平山は自分の首に取り付けられているEカードの耳用針具に触れた。
「殺す・・・首輪を爆発させて・・・」
支援
194 :
追懐18:2009/09/08(火) 23:58:24 ID:???
「そうだ・・・けれど、利根川はそれをしなかった・・・
もしかしたら、君を泳がせておくためかもしれないが、
一番可能性として考えられるのは、その針具自体がハッタリ、
もしくは操作できる範囲が限定されているということ・・・」
平山はぐっと息を呑んだ。
「つまり・・・それは・・・」
ひろゆきはフフッと軽い笑みを見せる。
「今後、利根川に会わないように気をつければ、君は半ば自由ということ・・・
やろうと思えば、脱出費用を稼いで棄権も可能性だということだ・・・」
ひろゆきはアカギのメッセージの紙をしまったポケットに触れる。
第二回放送後、ひろゆきはアカギと会う。
今の平山には、特にこれといった目的は存在していない。
ならば、いっそのこと・・・。
「なあ・・・平山・・・
もし、よかったら、これから一緒に・・・」
「あのさ・・・ひろゆき・・・」
平山の表情は曇っている。
ひろゆきは首をかしげる。
「どうしたんだ・・・突然・・・」
平山の口から飛び出したのは、意外な言葉であった。
「もう・・・棄権・・・できないんだ・・・」
195 :
追懐19:2009/09/09(水) 00:00:10 ID:???
【C-4/事務所内/夜中】
【井川ひろゆき】
[状態]:健康
[道具]:日本刀 首輪探知機 不明支給品0〜2(確認済み)
村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 支給品一式×2
[所持金]:1500万円
[思考]:赤木しげるとギャンブルで闘う ギャンブルで脱出資金を稼ぐ
極力人は殺さない 自分の進むべき道を見つける
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
【平山幸雄】
[状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
[道具]:支給品一式 防犯ブザー
[所持金]:1000万円
[思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る
※利根川に死なれたと思われていることを知りません。
※脱出の権利は嘘だと知りました。
※赤松修平、工藤涯、田中沙織は、時系列上、088話希望への標(前半)であるため、状態表は省きます。
こちらで以上です。
もし、誤字、脱字がございましたら、ご連絡いただけると幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
乙です!
ひろ視点で物語を見るとまた雰囲気が違って見えますね。
赤松さん聖人君子だなあ…
平山と無事合流できて良かった。この二人も信頼関係があってよいですね
ひろがカイジと同じ考察をしているのが面白い。
アカギがこの時期、沙織の銃声を聞いて、どんな行動したのか気になるところです。
お疲れさまです。
ひらひろコンビって感じだなぁ。
誤字でも脱字でもないですが
前話で「棄権はできない」が「聞かれたくない言葉」と理解している平山が
ひろに(その点で)躊躇いもなく話しているのは不自然ではないでしょうか。
(カイジのとは別のでも)紙を見せて「できない」を伝えるのが適当かと思ったりします。
平山が凡夫だったで一蹴できるのかもしれませんが…
ご感想を下さった方、ありがとうございました。
そして、凡夫で申し訳ございません。
言われて見れば、不自然ですよね。
それもこれも、私が凡夫なばかりに・・・。
追懐18は以下のように修正し、
また、まとめサイトも変更いたします。
ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。
あと、ひらひろコンビって、音がかわいいですよね。なんとなく・・・。
「そうだ・・・けれど、利根川はそれをしなかった・・・
もしかしたら、君を泳がせておくためかもしれないが、
一番可能性として考えられるのは、その針具自体がハッタリ、
もしくは操作できる範囲が限定されているということ・・・」
ひろゆきはフフッと軽い笑みを見せる。
「今後、利根川に会わないように気をつければ、君は半ば自由・・・
やろうと思えば、脱出費用を稼いで棄権も可能だということだ・・・」
ひろゆきの考察は、奇しくもカイジが平山に話した考察と同じ理論を下地にするものであった。
ひろゆきはアカギのメッセージの紙をしまったポケットに触れる。
第二回放送後、ひろゆきはアカギと会う。
今の平山には、特にこれといった目的は存在していない。
ならば、いっそのこと・・・。
「なあ・・・平山・・・
もし、よかったら、これから一緒に・・・」
「ひろゆき・・・黙って見てほしいんだ・・・」
平山は一枚のメモをひろゆきに見せた。
「カイジからだ・・・」
「えっ・・・お前もカイジに会った・・・」
ひろゆきの言葉が止まった。
メモに書かれていたのは――
『盗聴の可能性有り 棄権は出来ない D-4が禁止エリアだから』
198ですがあわわ、恐縮です。
ここまでの密度で心理描写に長ける文を書けてる書き手さんが凡夫ってことはないですよ。
臨場感がやっぱりすごいです。
この雰囲気…ひろが思考の一つを達成できないことを知ってどう行動するのか…楽しみになってきました。
後藤が黒崎の部屋を出た後、間もなくして袋井との会談の場が設けられた。
時間が遅いということもあり、ホテルの内の会議室やレストランではなく、
袋井の部屋に直接向かう事で話が決まった。
もちろん、袋井や蔵前たちの部屋を用意したのも後藤である。
ここでの会話も絶えず収集しているが、先刻の黒崎と袋井が何を話していたのか、
それを予測させるような話題は一切なかった。
あらかじめ決められた符丁で話をしているのか、筆談を用いているのかは分からない。
どちらにしろ、容易に思惑を掴ませるような相手ではない。
袋井の部屋の扉を叩くと、後藤は他の人間を連れることなく一人で室内に入った。
「夜分遅くに、申し訳ない」
「いえいえ、こちらこそ。一度ご挨拶に伺わねばと思っていたところです」
「親睦を深めるために、一杯いかがですか」
「いいですね。何か用意させましょう」
室内には、小さなカウンターバーが設置されていた。
袋井の部下が、グラスと酒を持ってやってくる。
酒の支度を整えると、袋井は部下を別室に下がらせた。
後藤が一人で現れたのを見て、二人だけで話がしたいのだと察したらしい。
「ほう。ブランデーですか」
「寝酒に、と思ったのですが。そうおちおち寝てはいられませんな。
かなりのペースでゲームが進んでおりますので」
「ご心配には及びませんよ。音声、映像ともにすべて保存してあります。
大事なシーンを見逃すことのないようにね」
「それでも、臨場感というものがありますでしょう」
「確かに」
他愛もない会話を続けながら、後藤は袋井を観察する。
服装は午前中から変わらぬスーツだ。
身をゆるめ、眠るつもりなど端からないと態度だけでなくそこからも判断できる。
もしかしたら、袋井は自分を待っていたのかもしれない。
黒崎と会っていたことは周知の事実。
そこで額面通りの会話が交わされたと考える人間などいるわけがない。
二人の間に、否、帝愛と誠京の間にどんな密約が交わされたのか。
それを探りにくる人間がいるはずだと、踏んでいた公算はおおいにある。
「先程、黒崎さんとお会いになられたとか」
「ええ……。ゲームに関して、確認したいところがありましたので。ご挨拶をかねて」
「確認、ですか?」
「もちろん、あらかじめ決められた規定は存じておりますよ。
ただ、それだけでは対応しきれぬ場合もあるでしょう。
いわば、イレギュラーともいえる事態です。
ルールに存在しない偶発的な事件が起きた場合、三者で合議するのが原則ですが…。
…そういった状況に真っ先に直面するのは、ギャンブルルームに人を割いている帝愛。
事態が逼迫したものであれば、黒崎さんが咄嗟に判断を下すこともあるでしょう。
もちろん、それはゲームの進行を担う上で、当然の事です。
その上で黒崎さん……ひいては、帝愛のゲームに対する考え方を知っておきたかった。
特に、対主催を唱える危険分子を、どの段階で粛正するのか…?」
「なるほど。当然と言えば、当然ですな」
後藤は袋井の言葉に、納得した顔で頷いた。
無論、ここまでは盗聴器で取得済みの情報だ。
袋井が談笑の合間に黒崎に尋ねたのは「危険人物がゲームを破綻させようとしたとき、どの段階で対処するのか」という内容だった。今の会話と何一つ変わらない。
最後の一人まで殺しあうことを拒否し、このゲームの成立そのものを阻害する。
いわば、対主催の立場をとる人間が出てくることは最初から分かっていた。
参加者の名簿を作成した時点で、予め織り込み済みのリスクだ。
なぜそういった危険思考の持ち主をゲームに参加させたのかと言えば、
そういった人種が非常に優秀――零や標のように――なだけでなく、
ゲームそのものを盛り上げる大事な要素とみなされたからである。
ただ殺しあうだけではおもしろくない。
生き延びるために、協力し、信頼を培い、友情とも呼べる関係を構築する。
そして最後の瞬間、それらをかなぐり捨て、醜いばかりに罵りあい、殺しあう。
それこそがこのゲームの真骨頂。ギャンブルとしての有益な見せ場と言えた。
そういう意味では、宇海零などはうってつけの人材だ。
あれは人を引きつけ、奮い立たせる才がある。
人心にある疑心暗鬼の闇を払い、希望の光をもたらす。
だがその光のすべてが絶たれた時!
宇海零は絶望する……ッ!
カリスマは瞬く間に失墜し、その周囲を取り巻く人間もまた等しく絶望する……ッ!
誰も救えない、何も変えられないことにあの少年が気がついたとき、
そこで流すであろう血の涙と叫びは、このギャンブルに多額の資金を投じている資産家たちの歪んだ嗜虐心と制服欲を大いに満たすはずだ。
在全グループは、このゲームを始める前に、参加者は当然のこと、主催側に関しても可能な限りの情報を集めた。
帝愛は、伊藤開司に手を噛まれた経験がある。
裏カジノからかなりの資金を引っ張られたという話だ。
カジノには大量の目撃者がいたので、情報集めには困らなかった。
同様に、誠京は平井銀二にしてやられた経緯がある。
こちらも同様に、ギャンブルの場に、大量の第三者がいた。
政財界、果ては裏世界の大物までが揃っていただけに、事態は詳細まで把握できた。
誠京は―――蔵前は、平井銀二と森田鉄雄に麻雀で負けた。
現場を見ていた者の話では、実際に刺しにいったのは若い森田の方だという。
平井の隠し玉とも、鉄砲玉とも言われている森田の情報は驚くほど少ない。
背景と呼べるものが何もないのだ。
ある日突然、平井が森田を使いはじめた。
そしてある日突然、森田は裏の世界から姿を消した。
蔵前は平井の知謀によって、政治家数十名の借金を帳消しにさせられ、
あげく500億の手形をむしりとられたのだという。
帝愛の裏カジノとは比べものにならない程の金額が動いたはずだ。
強大な誠京グループだけに、それで屋台骨が傾くという事はなかったが……、
平井や森田に対しては特別な執着があるはずだ。
その証拠に、すでに裏の世界から足を洗ったはずの森田を、このゲームに参加させている。
蔵前が恨んでいるのは、平井と森田、どちらかは不明だが…。
この二人は、取引の材料として申し分ない。
後藤は確信していた。
「クク……単刀直入に言いましょう。袋井さん。
平井銀二と森田鉄雄。この二人をあなた方に差し上げます。
ここは我々が所有する島。
たとえゲーム進行を帝愛が仕切ろうとも、抜け道はいくらでもある……ッ!
帝愛はギャンブルに対しある意味公平だ。
こうしたやり方を嫌がる動きもあるでしょう。
だが我々は違う!そう、これはイカサマではない。
私どもからあなた方に対する……投資。…そう、お考え下さい……」
後藤の申し出に、袋井はいささかも驚く様子をみせなかった。
そのかわり、背後の寝室をふり返って声をかける。
「…どうやら、……話は、以上のようです。いかがいたしますか、蔵前様?」
閉じているとばかり思っていた寝室の扉が、いつの間にか開いていた。
そしてその扉の向こう側には、一寸の光も指さぬ、どす黒い闇が渦巻いていた。
支援ですが、予約スレに予約入っておりませんよ
そのためには、対主催分子を早期に処分するわけにはいかない。
あくまでもコントロールできる範囲に納めておく事が前提だが、『自分たちが脱出できるかもしれない、助かるかもしれない』という希望を持たせることもまた演出の一つである。
ドリームキングダムのアトラクション運営に携わってきた後藤には、そうしたショーを魅せる立場としての一種のこだわりがあった。
そして、黒崎が先刻の会話で袋井に出した答えは
「このゲームに破綻はありません。 対主催を唱える危険分子は、粛正せずともいずれ自滅するでしょう」
という、あたりさわりのない内容だった。
基本原則として、主催側が参加者の動向に手を加えることはしない。
そんなことをせずとも勝てるという余裕の表れでもある。
事実、そう確信でいるだけの設備を整えているのだ。
しかしこれらの会話は、あくまで表向きの内容だ。
本当に重要な内容は、会話の裏で筆談で交わされていたはずだ。
黒崎は蔵前を抱き込みにかかったとしたら、この時以外に考えられない。
「後藤さんは、どのようにお考えですか?」
「それは……。そうですね。あまりに危険な人物と判断すれば、
場合によっては、早急な退場もやむを得ないと思います」
「ほう。黒崎さんとは違うお考えのようだ」
「危険だと、どこで判断するかにもよりますが…。 現時点で極めて危険と目されている人物。
その中でも平井銀二のような男は、時期を見て処分するのも一つの手でしょう…」
「……なるほど…」
平井銀二。その名前を出した途端、袋井の表情が変わった。
後藤が考える、このゲームのエンターテイナー要素を鑑みれば、平井は重要な駒である。
優勝候補の一人でもあり、このゲームを破綻させるだけの狡猾さをも備えている。
それだけに、ゲーム終了間際まで残しておきたい人物だが。
―――蔵前を抱き込むとなれば話は別だ。
すいません。途中で弾かれて投稿順が狂いました。
1→2→3→3.5→4→5
この順番で読んでください。
予約・・・したほうがよかったですか・・・?
問題があるようでしたらこれは破棄してください。
>>207です。
ルールに予約は任意と書いてあるとは知らず
申し訳ございませんでした。
気を悪くさせてしまったかと思うと
本当に心苦しく思います。
まさか、ここで主催者の話が投下されるとは思いませんでした。
その上、銀さんと森田が目を付けられるとは・・・。
今後の展開に期待です。
読み手さんも世代交代しているのな
予約が任意、と最初に読んだ気がしたので、ほっとしました。
肝心の時系列なのですが、第一回放送〜第二回放送前。
「夜」ないしは「深夜」が適切かと思うのですが。
主催側という特殊な話を書いてしまったので、もしご意見などありましたらお聞かせ願えるとありがたいです。
初めまして。まとめサイトのアップを行っているものです。
投下お疲れ様でした。
主催者側の包囲網が縮まっている状況に
緊迫感を覚えました。
これからの展開が楽しみです。
時系列上、夕方の出来事の直後なので夜がよいのではないかと思います。
もし、夜に設定なさるのであれば、まとめサイトに載せる際は、
本編時間順の並びで、78話抜刀出陣の後に載せる様にします。
投下乙です…!うおお面白いっ…!
つか書くの早いですね…すげぇ…
主催者側の話をここまで雰囲気たっぷりに書ける、その文才に痺れるあこがれる。
主催者たちの中でなにが起こっているのか本気で楽しみ
足並みそろわないところを参加者につけこまれるか…
いっそ主催者達が潰し合うか…?
今後の展開が楽しみで仕方ありません。
夜のが良いんじゃないかな
この後に深夜のエピソードを追加してくれる人がいるかもしれないし
主催側の残り時間は余裕あった方が
それでは、時系列としては「夜」とさせていただきます。
……が、作品として、悩む部分が他にありまして…。
もしアドバイスいただけるようでしたら、したらばの井戸端会議スレにてお願いできますでしょうか。
書いて投下してから悩むなよ、と自分でも思います。
本スレでこんなことを言い出すのは今回限りにしますので、どうかご容赦下さい。
お待たせしました。
したらばで相談にのってくださった方、ありがとうございました。
結論としては、破棄・修正せず、このまま続行・・・!
お騒がせしたことをお詫びします。
時系列は
>>215でお願いします。
まとめサイトをアップしている者です。
時間設定、承りました。
本日、会社から帰宅次第、アップします。
☆ゅ
近麻よんだらHEROってwwww
HEROwww
今後のロワでの活躍にも期待がかかりますね
カイジの映画といい、最近、福本先生関係が動いておりますね。
私も期待しております。
タイトルのHEROはひろゆきのひろと英雄という意味のヒーローをかけているとは思うのですが、
つい、アカギ、ワシズの流れから、
ヘロと読んでしまいます。
へろゆき…ヘタレっぽいですよね。
ところで、天が主人公の天のスピンオフはいつ出てくるのでしょうか?
そういえば天…病院に向かう、といって村岡と別れてから姿を見ていないような。
今頃どこで何してるんだろうな。
天…原作でも空気だったが、ロワでも空気…。
まあ天は脇役だから仕方ない
天がロワで空気なはずないだろと思い、
登場回数を確認した所、5回…。
赤松の約1/3か…。
一応、主人公だったから赤松越えは果たしてほしいけど、
赤松越えできるかどうか心配になってきた…。
バトロワで重要なことは何回登場したかではなく、
どんな戦いをしたか、どんな生きざまだったではないのかな。
と言っても…天は赤松越えをするのは難しい気がする…何となく。
もう赤松の話はいい。お腹いっぱい。
ここの住民の中でカイジの映画観に行く人いる?
この流れにワロタwwwww
天…カワイソス
>>230 カイジをというか福本先生の黒服コスを観に行く予定
思ったより評判は悪くないようなので、
友人と観に行く予定です。
女の遠藤?が、原作より強そうなんで。
それだけ見にいこうかな。
予約が二件
キタ━(゚∀゚≡゚∀゚)━!!
「畜生、畜生、畜生……」
従業員控え室の片隅に座り込み、しづかは幾度も口の中で「畜生」と呟いた。
声は涙で湿り、気を抜くと嗚咽がこぼれてしまいそうだ。
「……畜生…!」
自分がおかれた境遇を嘆き泣き叫ぶ段階はとうに過ぎていた。
無人のホテルに、裸で放り出された。それだけではない。
ここにはいつ、殺人鬼がやってくるかわからないのだ。
動かなければ生き残れない。
しづかは、理屈ではなく、本能でそれを理解していた。
この島では、誰も自分を守ってくれない。誰も信用してはいけない。
騎士のような顔をして近づいてきた一条、それがどんな行為に及んだか……。
「畜生……ッ!」
忘れない。忘れられるはずがない。
例え自分がこの島を無事に生きてでる事が出来たとしても、今夜の出来事は決して忘れないだろう。
しづかは一条に襲われたショックから立ち直ると、着る物を求めて周囲に視線を向けた。
室内は雑然としている。既に誰かが捜し物をしたあとのようだ。
一条が先に従業員控え室を荒らし、血で汚れた服を交換していたのだが……、
当時、気が動転していたしづかは彼の服が変わっていることに気がつかなかった。
「せめて携帯があればなぁ…」
さすがに闇に目は慣れたが、室内が暗いことにかわりはない。
しづかが普段愛用していた携帯には、写真撮影用のミニライトがあった。
携帯のフリップを開き、液晶を光らせるだけでも、それなりに明るさは得られる。
懐中電灯と言わぬまでも、携帯があればと思うのも無理はなかった。
暗闇に一人きりという拭いようのない不安。
深夜の街を徘徊するのとはわけが違う。街は、そこに人の姿がなくとも、気配があった。
昼夜を問わず輝き続ける看板。閉じたシャッターの向こう側。
物言わぬビルでさえも、その先に、生きた人間がいるという確信があった。
携帯で呼べば、すぐに警察が駆けつけてくれる。
自分やその仲間達が歩いていた夜の街は、そんなふうに、安全が約束された場所だった。
けれどここは違う。
大声を上げれば、またたくまに異常者、犯罪者がやってきて
自分を獲物とみなし、殺そうとするだろう。
誰も信用できなくなった今となっては、気軽に助けを求めることも出来ない。
生き抜くために、信じられるものは自分だけだ。
不安や恐怖に押しつぶされてしまえば、そこから先の道は閉ざされる。
「これと、……これ、……かな」
しづかは、心細さを補うように、声にだして自分の考えを口にした。
幸いにも、男性用のシャツとズボンが何着かあった。
サイズの判別がつけ難いながらも、見つけ出した衣装の中から、比較的自分の体にあったものを選ぶ。
お世辞にも着心地がいいとは言えなかったが、裸でうろつくよりは余程マシだ。
しづかはそれらに着替えると、他の物資を求めた。
外を歩くのに素足では心許ない。どこかで靴を調達する必要がある。
そして何より、身を守る武器がほしかった。
フロントや客室、レストランを探せば、代用品が手に入るかもしれない。
特にフロントには、客の要望に応えるための細々とした道具があるはずだ。
しかし―――
そこに向かうには、死体の脇を通り過ぎなければならない。
先程から必死で見ないように心がけていたが、
さすがに部屋を出るとなると意識から追い出すにも限界があった。
「板倉……」
その名を口にしたことで、思い出してしまう。
板倉の死。
先程は一条から逃げることに必死で、死体を凝視する余裕はなかった。
一条はそんな自分を馬鹿にしたが、死体を目の前にしてうろたえない奴の方がどうかしている。異常としか思えない。
(そう、異常だ。この島にいる奴らは全員異常……!)
こんな状況で、生き残れるかどうか。
しづかは何度目かもわからぬ不安に襲われる。
その場に座り込み、身を縮めて時が過ぎ去るのをひたすら待ちたくなる。
圧倒的恐怖に、身が竦んだ。
それでも彼女が立ち上がった理由は、皮肉にも、腹の底で渦巻く怒りにあった。
「一条……ッ!」
しづかは震える手を握りしめて、立ち上がった。
意を決して、死体の間近にまで歩み寄る。
そこには、先程と変わらぬ姿勢で横たわる、物言わぬ骸があった。
最初に見た時と同様、否、それ以上の恐怖がしづかを襲う。
死体に対する生理的嫌悪も相まって、心臓が早鐘を打った。
だが同時に、恐怖だけではない感情が、湧き上がってくる。
「おまえも、一条に殺されたんだよな…」
土下座で命乞いをし、裸に剥かれ、あざ笑われた自分は、一度死んだも同然だ。
それだけに、命を奪われた板倉に、奇妙な同情と共感を感じる。
例えそれが一時の感傷でしかないにしても。
―――板倉が一条のように、打算の上で動いていたのだとしても。
「お前は私を、守ったんだよな?」
そういうことにしておこうと、しづかは思った。
そうとでも考えなければ、やりきれない。
誰も信じられないと思う反面で、誰かを信じたい、頼りたいという気持ちが、彼女の胸の奧で燻っている。それが板倉の死を、しづかにとって都合のいい過去に変えた。
板倉は自分を守ろうとしてくれた。いざとなったら一人で逃げろとまで言ってくれた。
あれが演技や策略であるはずがない。この男だけは、打算なしで守ろうとしてくれた。
「ありがとう」
守ってくれてありがとう。心の底から感謝の言葉を口にした。
しづかの中で、目の前の死体に対する嫌悪が消えた瞬間だった。
しづかは板倉の死体を漁った。
武器の類は一条が持ち去ってしまったために、収穫と呼べるものは何もなかった。
最後に、喉についた首輪に触れる。
この先、自分が助かるためには、持っていた方がいいような気がする。
仕組みや使い方は全く分からないが、人の首を飛ばせるくらい威力のある爆弾だと思えばいい。
他の人間に比べて非力だということは分かっていた。何でもいいから武器が欲しいというのが本音だ。
だが、しづかは板倉の首輪に触れただけで手を離した。
首輪は首にしっかりと密着しており、首を切り落とさない限りはずせそうにない。無理に外せば爆発する。
「にしても、こんな小さいモンに、爆弾なんて。マジかよ。信じられねぇ……」
常日頃から携帯電話を使う世代だけに、純粋にそのサイズを疑問に思う。
まさか火薬が入っていないのではないかと咄嗟に疑った。
だが現実に首輪は爆発した。
ゲーム開始前の説明で、しづかは爆発の様子を見ていた。
「だいたい、この首輪のどこに電池が入ってんだよ」
しづかは携帯の電池パックを思い浮かべた。
あれに比べて、首輪の大きさは、ずいぶんと小さく薄い気がする。
つまり携帯よりも高性能で小型の電池を使っているという事だろうか。
似たようなもので思い浮かぶのは、小型のメディアプレーヤーだ。
携帯よりずっと小さく、フルで充電すれば二〜三日は余裕で動く。
最近は太陽電池が搭載された携帯もあったはずだ。
放っておいても勝手に充電される仕組みがあるのかもしれない。
だが、もし、どこかで電池切れが起きてしまうとしたら。
首輪が動く時間が残り少なくなった時点で、最初のようにどこか一箇所に集められ、一斉に殺し合いをさせられたりするのだろうか。
「うーっ……」
考えてもどうにもならないと思ったしづかは、それ以上首輪について悩むのをやめた。
そもそも自分の頭は考えごとに向いていない。
板倉の死体をそのままにしておくのはかわいそうだが、外に引きずっていくだけの力もない。
しづかはその場で小さく手を合わせ、板倉の足から靴を脱がせた。
「全然ダメじゃん。…でも、ま、借りとくわ……」
男物の革靴は女の足には重く、歩くたびに脱げかかるほど大きかった。
どこかで替えを調達した方が良い。
だが今は、この靴で歩き出す以外に他はない。
しづかは革靴の足音を響かせながら、フロントに向かった。
「カッターもねぇのかよ。しけてやがる」
フロントを漁った結果、見つかったのは、小さなハサミが一本きりだった。
こんなものでどうやって、拳銃を持った男と渡り合えと言うのか。
落胆のあまり、その場にへたりこむ。
そんな彼女の視界を、黒くて細長い何かが過ぎった。
「ひっ……!」
驚愕して、飛びすさる。
虫か蛇かと思ったそれは、すぐに物言わぬ道具であることがわかった。
先端に小さな接続端子を持つコード。それは、足下の電源コンセントにつながっている。目を凝らすまでもなく、それが何であるかしづかにはわかった。
彼女自身も普段から愛用している。携帯の充電器だ。
複数のキャリアに対応しているのか、端子がタコ足配線のようになっている。
「なんだ。充電器かよ。脅かしやがって!」
舌打ちをして、投げ捨てる。
携帯電話を手にしていない今、充電器があっても何の意味もない。
しづかはその足で、レストランに向かった。
そこで未開封のペットボトルを手に入れる。
テイクアウト用に用意されていたビニール袋にそれをつめると、正面玄関から外に出た。
先程の恐怖の記憶から、体がそこに向かうのを嫌がったが、
窓を開けて外に出ようにも満足に開かなかったのだから仕方がない。
ホテルを抜け出してから、しづかは走った。
どこにむかっているのかは分からない。
地図や支給品を奪われているので、現在地すら不明だ。
ただ、外にいるのは怖かった。
せめて自分の身を守る手段を見つけるまでは、何かに身を隠していたい。
自然と目が、建物を探した。
「……あ」
しづかの瞳に、大きなシルエットが映った。
あの中を探せば、もう少しましな着替えと、身を守る道具が手には入るかもしれない。
彼女の足は、吸い寄せられるように目先の建物へと向かっていった。
【しづか】
[状態]:首元に切り傷(止血済み) 頭部、腹部に打撲 人間不信 神経衰弱 ホテルの従業員服着用(男性用)
[道具]:ハサミ1本、ミネラルウォーター1本
[所持金]:0円
[思考]:ゲームの主催者に対して激怒 誰も信用しない 一条を殺す 武器の入手
※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています。それ故、誰も信用しないと決意しています。
※和也に対して恐怖心を抱いています
※しづかが向かった先は、映画館、温泉旅館、病院いずれかです。どの建物に向かったのかは、次の書き手さんにお任せします。
しづか着衣を書いたので、投下しました。
したらばで別キャラの予約をしています。
しづか投下→したらばで別キャラ予約とすべきでした。
行動の順序が逆になってしまったことをお詫びします。
投下乙です。
しづかが動き出しましたね。
精神的にはドン底ですが、
しづかには頑張って欲しいです。
後、少し気になる点がありました。
>>236で部屋は暗いという描写がありますが、
『猛毒』で窓がないため、電灯を付けることが可能という描写と
『渇望』でしづかが光がもれる従業員控え室を発見したという描写から
多分、従業員控え室は明るいのではないかと考えられます。
気分を悪くさせてしまいましたら、申し訳ございません。
女子率が低いのでせめて長生きしてほしいものです。
>>244 そういえばそうですね。
ちょっとそのあたりを修正してきます。
ご指摘ありがとうございます。
投下乙です。
じつかに服を着せていただいてありがとうございます。
絶望から這い上がろうとするしづかの心理描写が深く書かれていたことが良かったです。
しづかにとって今は辛い状況かもしれませんが、
耐えて生きてほしいです。
>>236の電気についてですが、薄暗い部屋で、過去の自分のいた世界と重ねる描写が好きなので、
渇望の最後を修正させては頂けませんか?
一条が部屋を去る直前にに電灯を消して、薄暗い部屋の中でしづかが泣いているという描写を追加する形で、
もし、他の読み手様や
>>245様に差し支えがなければなのですが…。
ご意見お待ちしております。
自分としては全く問題ありません。
むしろとてもありがたいです…。
「渇望」修正しました。
「しづか・・・悔しければ、這い上がって来いっ・・・!
這い上がって・・・倒してみろっ・・・!この私を・・・!」
一条はそれだけ言い残すと、しづかを閉じ込めるかのように電灯を消し、扉を閉めた。
光がなくなった。
「ちくしょう・・・!」
しづかは膝に顔を伏せたまま、肩を震わせ、涙を流す。
和也から逃れていた時から悟ってはいた。
社会から必要とされていない犯罪者の巣窟に放り込まれていることを・・・。
そして、自分自身にもその烙印が押されていることを・・・。
存在価値がないという事実はしづかの心を絞め続けていた。
そんな中、板倉と一条に出会った。
彼らはしづかを一人の人間、一人の女性として丁重に扱ってくれた。
ようやく安らげる居場所を見つけたような気がしていた。
しかし、その認識は幻想でしかなかった。
「ここにいる連中は・・・皆・・・死んでもいい屑・・・犯罪者・・・!
誰も信用するものかっ・・・!」
しづかは歯軋りする。
「一条・・・てめぇは絶対殺すっ・・・!
どんな手段を使ってもっ・・・!」
少女の決意を聞いていたのは、闇と板倉の死体のみであった。
こちらでどうでしょうか?
ご意見、お待ちしております。
後、しづかの状態表に時間と場所の表記がないので、
それを追加していただけるとありがたいです。
>>248 ありがとうございます。
しづかに関して、時間帯は【真夜中】でお願いします。
場所ですが、ホテルを離れある程度移動している+次の出現場所及び進行方向は次の書き手様にお任せなので、鷲巣様とほぼ同様の扱いでお願いできますでしょうか。
映画館、温泉旅館、病院、何れかの施設が判別できる場所にいるという不明確な状況では扱い難いですかね?
>>248 ありがとうございます。
しづかに関して、時間帯は【真夜中】でお願いします。
場所ですが、ホテルを離れある程度移動している+次の出現場所及び進行方向は次の書き手様にお任せなので、鷲巣様とほぼ同様の扱いでお願いできますでしょうか。
映画館、温泉旅館、病院、何れかの施設が判別できる場所にいるという不明確な状況では扱い難いですかね?
分かりました。
では状態表は
【???/???/真夜中】
で、
キャラクター追跡表に載せる時は
便宜上、場所はF-6 ホテルでどうでしょうか?
>>250 了解です。
状態表は【???/???/真夜中】
マップ表記に関しては【F-6 ホテル】でお願いします。
では、承りました。
明日にはアップできると思います。
あと、大変遅れてしまいましたが、
福本ロワ100話突破、おめでとうございます!
100突破オメ
投下乙です…!
携帯の描写など、しづかの年齢やキャラを感じさせる描写がうまいと思いました。
大きい靴だと歩きにくそうだ…。今後、履きやすい靴が手に入ったらいいですね…。
次に予約されている話も楽しみにしています。
そして、福本ロワついに100話達成…!圧倒的達成…!
コングラッチュレーション
,―==7 Congratulation! コングラッチュレーション
|く ___ _> Congratulation!
fll`ーU+'
`''、 ー=| おめでとう・・・・・・・・!
_,,..-´:|ヽー-;ー..,,_
. ,−=-, ,,..-‘≡≡:| ><´|≡::|ヽ おめでとう・・・・・・・・! おめでとう・・・・・・・・!
. | l____ヽ.|≡l≡≡≡| |::| |≡:::/::|
. |(llー´_ヽ|≡|≡≡≡|.|:::|l≡::/::::| 100話達成おめでとう・・・・・・・・・・・・!
.. 4 l__`=|_|≡:|≡≡≡::||:::|'≡/≡|
/|\,.・|::≡:|ヽ|≡≡≡≡≡:::/|≡::| _,,.........、
≡|/}:ヽ|:≡|::::|{≡≡≡≡≡:::{ .|≡::| ヽ_,, ヽ
≡:| |:::|l≡:|≡|:|≡≡≡≡≡:::|. .|≡::| /_> |
:::≡l|:::|'≡:|≡:|::|≡≡≡≡≡:::|. .|≡::| |7 llう.. |
≡≡≡≡/|≡ヽ≡≡≡≡≡::::|. ..|≡::|. z-..,〃、 ム__ ll´.. |
::≡≡≡::/ ヽ≡ヽ≡::|―、≡≡::l ..|≡::| / ミ 1´/ヽ==,...
::≡≡≡| \≡ヽ::| ヽ≡≡l .ljヽl | しづか、ミ _,,,..-`‐三=ー-
::≡≡≡| |ヽ/ー.、.. ヽ≡≡l. .|/ | ノ= ∠i /ヽ、≡≡≡≡≡
:|¬、≡≡ヽ. |≡ゞー=ッ |≡≡| __/ (ll ー゜\|ヽ. /≡::ヽ≡≡≡≡≡
:| ヽ≡≡ヽ |≡≡ヽミ. |≡≡| l|. ll7| ヽu=/l二ll二l'''ヽ /≡:::/≡≡≡≡≡
:| ヽ≡≡ヽ≡≡| |≡≡| | | llヽ|w-ヽ/Nヽll | | /≡:::/≡≡≡≡≡≡
黒沢って作品としては人気なかったけどこのスレでは黒沢のキャラ達が結構愛されてるよね
黒沢のキャラクターたちは他の福本漫画に比べて一般人キャラだから
親近感がある
いままで黒沢読んだことなかったけど、このスレ見て興味が沸いて読んでみた。
このスレ読んでの自分の中のイメージと原作で結構ギャップがあって面白かった。
原作読む前の俺の勝手なイメージ
黒沢 寡黙で奥手だが実はナイスミドル
赤松 真面目だがドジでおっちょこちょい
しづか ワルだが、ちょっとかわいい小悪魔
仲根 黒沢命の小物
誰か天も読んであげて下さい
>>259 ちょwwwww
黒沢と赤松のイメージwwwww
仲根は頭もいいし運動神経もある良キャラだけどまだ中学生だからっ…!
投下します。
視線の先にあるベンチ。
それを脳が認識した途端、軽い疲労感が体を重くさせる。
半日ずっと歩き通しなのだ。
(やれやれ…)
アカギはベンチに座ると、無造作に足元の地面にジェラルミンケースを放り出した。
精神のみで活動できるなら、どれ程自由でいられるだろうか…?
まるでこの肉体は、己の魂を縛る枷のようだ。
枷だと思うからこそ、「肉体」…精神の「入れ物」に対する執着が無い。
担いでいたデイパックを降ろし、水を取り出して飲む。
体の渇きは癒されようとも、本当の意味での渇きは未だ満たせず…物心ついたころからずっと…。
アカギは今までの経緯を思い出していた。
◆
「赤木しげるさん…ですね…?」
とある街の雀荘から出てきたところを、サングラスをかけた黒ずくめの男に呼び止められた。
「アンタは…?」
「訳あって私の身分は明かせません…。ある方が貴方の才能に着目され、貴方を欲しておられます」
「悪いけど、どこの組の代打ちだろうが、興味ないんで…」
「いえ、そういった話ではございません…。貴方には、殺し合いのゲームに参加していただきたいのです」
赤木はじっと黒ずくめの男を見た。男は小さく笑う。
「興味を持たれましたか…?やはり貴方は変わったお方だ…。
貴方には、どうせ見抜かれてしまうから正直に話せ、と上から指示されております。
そして、そのほうがきっと同行していただけるからと…。」
「殺し合いのゲームというのは…?」
「…とある島で、あらゆる世界での猛者たちを集め、互いに命がけの戦いをしていただく…。
野蛮な殺し合いだけではなく、島に点在する専用施設に於いて、賭博でも戦っていただく…。
そこで賭けるものは何だっていいのです。金でも、腕一本でも、命でもいい。
命がけの、ギリギリのゲーム…面白いと思いませんか…?」
「フーン…。お宅らは、調べ尽くしてるって訳だ…俺について…。」
アカギは薄く哂うと、じっと男のサングラスの奥を覗き込む。心を見透かすように。
男はわずかにたじろいだ。
支援します!
「だが…気にいらねえな、そのゲーム」
「は………何故です?」
「ゲームに参加する他の参加者を、どうやってその島に連れてくるんだ…?
アンタの口ぶりだと、殺し合いの島と知らずに連れて来られるような連中もいるんだろう…。
そのゲームを企画した奴らは…?高見の見物ってわけかい…?」
男は後ずさりでアカギと距離をとり、焦りを隠すように含み笑いを漏らした。
「…いいじゃないですか、他の参加者のことなど…。 他人のことです…。
企画者についての事はお話はできません…。
もし気に入らないのであれば、そのように動いてくだされば良いだけのこと…。貴方の自由です…!」
『そのように動く』…、対主催としての立場を取るのも自由だ、という意味である。
『自由』…、それは決して肯定ではない…。
当然、『主催側も相応の処置を取るぞ』ということ…!
アカギは飽いていた。
鷲巣との麻雀…あの壮絶な一夜の後に戻ってきた『日常』に。
絶望的に飽いていた。
(行こう…。もう一度…死線を潜りに……。)
支援します。
こうして、アカギはこの島へと連れて来られた。
悪夢の開幕式が終わり、いの一番に名を呼ばれ、アカギはゲームのスタートを切った。
開幕直後、ある人物と遭遇した。
明らかに堅気でない風貌のその男は、アカギを『伝説の代打ちと同じ名を持つ天才』と評した。
だからアカギに興味を持ったのだと。
最初は、また平山のような偽者が出たのか、と呆れながら聞いていた。
誰かと比べて『本物』だ何だと言われ、面白い訳が無い。
だが…原田と名乗る男がその『天才』について話すたび、
良く分からない何かが…心の奥底で何かが引っかかった。
その違和感を探るため、原田の提案する『試験』を受けた。
結果、原田が対主催として共闘するに相応しい人物であることは分かったが、
引っかかりについては分からずじまいであった。
原田は味方を集めることを提案した。
アカギは、F-6のホテルを拠点にすることを提案した。
だが、このときアカギは全く別のことを考えていた。
味方を引き連れて歩くより、ホテルを拠点にするより、先にやってしまわなければならないことがある。
過去に主催者が開催したゲームを知る者からの情報収集。
首輪についての情報収集。
情報戦を制するには、ゲームが始まって間もない今が、行動を起こすべき時であった。
それには、自由に身動きができる単独行動が望ましい。
そう考えているところへ平井銀二と出会った。
平井銀二は、あっさりとアカギの考えを見抜き、アカギを開放した。
そして、首輪に関する情報を持っていると示唆した。
開放されてすぐ鷲巣と出会った。
あれだけの戦いの後で、アカギに対して戦意喪失している様子の無い鷲巣…。
このゲームに於いて、敵に回せばやっかいだが、味方にすればこれほど頼もしい味方もいない。
鷲巣には天性の剛運があるのだから。
その後鷲巣と別れ、首輪を探して歩いているところにカイジという男と出会った。
その男は、主催者の組織の一つ、『帝愛』に関する情報を持っていた。重要な情報を。
◆
半日経って振り返ってみれば、ここまで順風満帆といった状況である。
だが、アカギは感じていた。予感があった。
追い風から向かい風への変化…。
これから来る苦境…逆風を…………………。
それがいつ来るかまでは分からない。一時間後か…、または一日後か…。
支援します!
アカギは懐からメモ帳を取り出した。
そのメモ帳には『第二回放送後 病院内を探索』と書かれていた。
アカギが鷲巣と別れる直前、鷲巣との筆談で使っていたメモである。
鷲巣と放送前に病院前で合流し、放送を聞いてから病院の中に入る手筈になっていた。
病院には二つ用事がある。
治療器具の調達と、武器の調達。
包帯やガーゼなどを持っていれば、誰かが怪我をすることがあっても対応できる。
メスや鋏などの刃物があれば、襲われる事があっても応戦できる。
アカギはメモ帳を胸のポケットに仕舞った。
食事を摂っておくなら今しかない。
アカギはデイパックから食パンを取り出し、袋を破いて食べ始めた。
本来なら主催の用意した物など口にしたくは無いが、主催が毒を仕込むことは無いと踏んでいた。
カイジに話を聞いて、このゲームが『見世物』として催されている可能性が高いと分かったからだ。
『見世物』であれば、主催の用意した食事で毒殺など、陳腐なシナリオは描かないであろう。
見世物として成り立たなくなる。
それを確信したからこそ、アカギはこのタイミングで食事を始めたのだった。
食事を終えた頃、不意に、林の奥からバラララッと乾いた銃声が聞こえた。
アカギは銃声のする方角に首を回した。
フェンス越しに林の奥に目を凝らしてみても、木々に遮られて見えない。
それ以降音はぴたりと止んだ。
「……………………」
しばらくその方角にじっと耳を済ませていると、微かに女の声が聞こえた。
「… んでっ…? なんでよ………」
カチッ、カチッと軽い金属音が聞こえる。
「… われたのっ…? んで…動か…ないのよおっ………」
微かな声を頼りに、アカギは状況を推理した。
(女が他の参加者に銃を使った…。
だが、急に何らかの原因で銃が使えなくなった。
女は誰かに向かって発砲したが、殺しきれなかったのだ。
相手は銃火器を持っていない。
持っていれば、女がもたもたとしている間に、相手が女を殺せるはずだから…)
273 :
マロン名無しさん:2009/09/20(日) 00:21:31 ID:a1pMCO06
sienn
若い男の声と、女の言い争う声が聞こえる。
(何にせよ…ここからでは状況は分からない)
危険は百も承知だが、近寄って状況を把握することにした。
今なら、声の主達の混乱に紛れて近寄ることができる。
アカギはフェンスの下を見つめた。地面とフェンスの間に、少し隙間がある。
ぎりぎり小さい子供なら通り抜けられるが、大人には通り抜けられない程度の隙間。
隙間からジェラルミンケースを押し込み、フェンスの向こうへ潜らせた。
そうしておいて、自分はデイパックを背負いフェンスを登り始める。
フェンスを登る際、一部ワイヤーが出っ張っている箇所があった。
胸ポケットのメモ帳がワイヤーの先に引っかかり、メモの一部が破れてひらひらと舞い、ベンチに落ちた。
その時、下方から男の声が聞こえた。
「待てっ…!」
「………………」
この状況で『待て』と言われ、待つ者はいない。
アカギはさっとフェンスを乗り越えると、フワ…と地面に飛び降りた。
ジェラルミンケースを拾い上げ、早足でその場を離れる。
支援します!
「赤木さんっ…!」
フェンス越しに見ず知らずの男が名を読んだ。聞き覚えの無い声だった。
だが…その声に…
良く分からない何かが…心の奥底で何かが引っかかった。
(何だ……………………?)
原田と会ったときにも感じた、あの感じ。
正体不明の何かが心を…魂をざわつかせる。
胸中に違和感を残したまま、アカギは銃声の聞こえた方へと歩いた。
木陰から遠目に、先程聞こえた男女の声の正体を確認した。
(女のほうは田中沙織…。先程カイジと行動を共にしていた女だ。
それが一人でこんな所で銃を振り回している…。カイジという男は殺されたか…?
火傷跡のある男のほうはまだ14〜5歳くらい…銃で撃たれたはずだが、うまく弾が外れたか…)
男が女の銃器を蹴り飛ばし、女に勝敗を宣言している。
アカギはそこまでを見届けると、その場を立ち去った。
フェンス沿いに林を歩いていくと、C-4、アトラクションゾーンの入場口に出た。
入場口の周囲にはチケット売り場があり、その奥に事務所らしき建物がぽつんと見える。
アカギは入場口のゲートを抜け、再びアトラクションゾーンに入った。
北に向かってしばらく歩くと、広場になっている場所があり、平地の中央に死体が転がっていた。
見覚えのある顔だった。
浦部は首筋を切られ、仰向けに横たわっていた。
アカギは足元の死体を黙って見下ろしていた。
その目には、何の感情の変化も見られなかった。
アカギはデイパックからロープを取り出すと、横に倒したジェラルミンケースの取っ手に括りつけた。
そのまま浦部の胴体にもロープを回す。
ジェラルミンケースの上に浦部の死体を乗せると、ロープを引っ張った。
ズルズルと地面に後を残しながら、アカギは北へと歩いていった。
B-4で有賀の死体を見つけ、それも浦部の死体と同様にケースに括り付ける。
これ以上は重すぎて乗せられそうに無かった。
ふたつの死体をケースに乗せたまま、今度は数本のロープを繋いで最大限まで長くなるように伸ばした。
278 :
マロン名無しさん:2009/09/20(日) 00:33:48 ID:a1pMCO06
有賀「(´・ω・`)」
浦部「(´・ω・`)」
支援します!
作業が済み、一旦死体を置いたまま、アカギは歩き出した。
方位磁石を見ながら、B-4から真っ直ぐ西の方角へと、一歩ずつゆっくりと歩を進める。
やがて、アカギの首輪から警告音が発せられた。
開会式で聞いた警告音より少し長めの、間の抜けたビーッ、ビーッ、という音が響き、
アカギは半歩後ろに下がった。警告音が消える。
(なるほど…ここから先がB-3…)
その場にしゃがみ込むと、近くに落ちていた白い小石で地面に線を引く。
死体を括りつけたケースを引っ張ってきて、線を引いたところに配置する。
アカギは踵を返すと、伸ばしたロープの端を持ったまま、禁止エリアのB-3を、大きく弧を描くように迂回する。
C-3まで戻ると、そのまま強くロープを引っ張った。
ロープの端…、ジェラルミンケースは地面を引きずられ、B-4からC-3へ南西方向に直進する。
その途中で『禁止エリアのB-3』を通る。
B-3を通るとき、ケースの上に括られている浦部と有賀の首輪が、禁止エリアに反応する。
ビーッ、ビーッという警告音はやがて音の感覚が短くなり、ピピピピピピ…という電子音に変わる。
音が変わってから十秒くらいだろうか。
二つの首輪は、ほぼ同時に、ボシュッ…という音と共に爆発した。
アカギは二つの死体を括っていたロープを外す。
爆発して壊れた首輪を、割れて脆くなっているところから引き千切った。
焦げた首輪からどこまで分析ができるかは不明だが、これで首輪の内部構造を調べることが出来る。
扱いに気をつける必要も無い。
ふと顔を上げると、近くの木に子供の首が吊るされているのが目に入った。
「………………」
(首輪が無い。先を越されたか…)
近くに寄っていき、標の首を観察した。
切断面を見るに、糸鋸のような刃物で切られている。口には何も書かれていないメモが挟んである。
(……いや、このメモに印刷されている名前…。ふうん…。だいたいのアタリはついた…)
死体はC-3に放置し、焼け焦げた首輪とロープをデイパックに仕舞いこむと、アカギはその場を後にした。
支援します
【C-4/アトラクションゾーン/夜中】
【赤木しげる】
[状態]:健康
[道具]:五億円の偽札 ロープ4本 不明支給品0〜1(確認済み)支給品一式 浦部、有賀の首輪(爆発済み)
[所持金]:600万円
[思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す 死体を捜して首輪を調べる 首輪をはずして主催者側に潜り込む
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※五億円の偽札
五億円分の新聞紙の束がジェラルミンケースに詰められています。
一番上は精巧なカラーコピーになっており、手に取らない限り判別は難しいです。
※2日目夕方にE-4にて平井銀二と再会する約束をしました。
※鷲巣巌を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※鷲巣巌に100万分の貸し。
※鷲巣巌と第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。
※第二回放送後に病院の中を調べようと考えています。(ひろにメモが渡ったのは偶然です)
※首輪に関する情報(但しまだ推測の域を出ない)が書かれたメモをカイジから貰いました。
※参加者名簿を見たため、また、カイジから聞いた情報により、
帝愛関係者(危険人物)、また過去に帝愛の行ったゲームの参加者の顔と名前を把握しています。
※過去に主催者が開催したゲームを知る者、その参加者との接触を最優先に考えています。
接触後、情報を引き出せない様ならば偽札を使用。
それでも駄目ならばギャンブルでの実力行使に出るつもりです。
※危険人物でも優秀な相手ならば、ギャンブルで勝利して味方につけようと考えています。
※カイジを、別行動をとる条件で味方にしました。
投下乙です。
アカギさん、パネェwwwwwww
しかし、アカギなら、やりかねない。
有賀、浦部・・・因果応報だよね。
今回のSSで一番唸った点は、
アカギの行動に一本筋が通った点です。
これまでアカギの行動はその行方がころころ変わり、
何をしたいのか、分からなくなる時がありましたが、
(例えば、仲間を探し、拠点を決めようとした直後、
実は単独行動がしたかったと分かったりなど・・・)
今回のSSでなぜ、アカギがそのような行動をとったのかが
はっきり分かり、アカギというキャラクターに
更なる深みが生まれたような気がしました。
ちなみに、ひろゆきのメッセージのシーンは
ひろゆきはアカギが自分に対して残してくれたものと
感慨深く思っていましたが、
実際は偶然の産物でしかなかったことに
思わず吹いてしまいました。
実際はそんなもんだよね・・・と・・・。
投下、お疲れ様でした。
フワ…で吹いて、死体を黙って見下ろしている…は雀魔アカギのワンシーンを思い出させるからハッとした。
(さて…指令はあと二つ……何を命令すりゃあいいやろな……)
原田は、自分の考えを纏めるために足を止めた。
歩きながらでも思案はできるが、目的もなくうろつく趣味はない。
一体何を命じられるのか、落ち着きのない様子でこちらをうかがっている村岡の顔を見て、原田はニヤリと笑った。
絶えず人の顔色をうかがい、自分が生き残るためならば白を黒と言い張る。
この男に命じるならば、多少なりとも村岡自身に利する内容の方がいいだろう。
命じられた通りに動くことで、生き延びる確率が多少なりとも上がると分かれば、働きもよくなるはずだ。
なおかつ、失敗しても自分や周囲に被害が及ばないものがいい。
「お前、確か帝愛の人間を知ってる言うたな…?」
村岡は原田とギャンブルルームに入るまで、自分が出会ってきた人物の印象や、この島に来た経緯を情感たっぷりに語っていた。
それは主観に満ち、非常に歪んだ内容であったが、客観的な事実も少なからず含まれていた。
「は、はあ。そうざんすが……?」
「ほう。なら丁度ええ。主催側との窓口を作ってもらおうか」
「……は…?」
村岡は、原田の指令が理解できないという顔で首を傾げた。
「聞こえなかったんか。窓口や。この際、電話でも何でもええ。
オレと主催がタイマンで話す場所を作れ言うとるんや」
「む、無茶だ…!だ、だいたいワシはッ、裏カジノを経営しているだけであって、
そんな大それた人間じゃあないざんすよ…ッ!
帝愛との関係は、ロイヤリティーを上納していただけっ!
知ってるといっても限度があるざんすっ!」
「細かいことをグチグチ抜かすなッ!これは命令じゃ!」
「ひいいっッ!」
放っておけばいくらでも文句が出てきそうな口を塞ぐため、原田は銃で脅した。
案の定、村岡は自分の頭を抱えて身を竦ませる。
「もったいつけて結局『出来ませんでした』じゃ阿呆くさいわ。
……せやな。1日やる。今から24時間以内に、主催と話す窓口を作るんや。
ええな。24時間以内や」
「あ、あの……本当に…?ワシにそれをやれと…?」
「もしも約束を破ったら、そのときは分かってるな?」
「……ど、どういう意味ざんす…?」
「殺しはしない。約束だからな。ただし、相応の罰は受けてもらう。
オレたちがどうやってけじめをつけるかくらいは知ってるだろう?」
原田がサングラスの奥で目を細めた。
これ見よがしに、村岡の指へと銃口を押し当てる。
やくざ稼業の人間が、仕事上の失敗で責任を取る場合。
相応の金銭はもとより、そこにかけられた面子……、
それを精算するために指を詰めるというのは有名な話である。
無論、村岡は即座にそれを連想した。
汗ばんだ顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。
「指一本とは言わん。大事な大事な約束や。全部で十本、もらおうか?」
「十本ッ!そんな……!」
「そのかわり、どの指を落とすのかは選ばせてやる。足の指を含めてな。
手と違って、足ならそんなに目立たんやろ。
冬山登山で足の指が壊死した連中なんざそう珍しくもねぇ」
「ひぃぃ…、せ、せめてその半分に…っ、どうか……どうかっ、お願いしますっ」
「じゃかあしいっ!!十本と言ったら十本だ。ええな。うまくいったら俺に知らせろ!」
「はいいい!」
原田が再び拳銃をちらつかせると、村岡はその場で飛び跳ね、走り出そうとした。
「待て」
「はいっ!」
「……待ち合わせ場所を決めてへんやろ。時間と集まる場所を書いておく。
中間報告はそこで受ける。もう一つの指令も、メモに書いておく。
こいつは失敗してもペナルティはない。そのかわり、成功した場合はボーナスがつく」
「ボーナス…?」
「おどれ、…武器が欲しいんやろ?」
「え、えええっ、くださるんですかっ!」
「男に二言はない。武器はくれてやる。といっても、その時オレが持ってるものに限る。
もしかしたら、途中で銃は壊れて使えんようになってるかもしれんからな。
何も使えるモンを持ってなかったとしても、その時は恨むなよ」
原田はメモ用紙にペンでいくつかの場所と時間をかきこみ、最後に指令を一つ記すと、村岡の上着のポケットに押し込んだ。
村岡はメモに目を通すこともせず、恐怖と期待がせめぎあう何とも言えない顔で原田の前から姿を消した。
(さて……)
村岡が小走りで闇に紛れた後、暫くしてから原田は歩き出した。
予想以上に、村岡を相手に時間を使ってしまった。
そろそろ、平井と約束していたバッティングセンターに向かってもいい頃だろう。
(どこまでうまくいくかな…)
村岡に、主催側との連絡窓口を作らせる。
成功率は、あまり高くないと踏んでいた。
何しろ、これだけの大がかりなゲームをやらかす連中である。
そんな甘い状況を許すとは思えない。
それでも、百に一つくらいは可能性があるような気がした。
村岡が持つ、粘り強い生への執着がそれを可能にするかもしれない。
自分自身が生き延びる為に、どこまでもみじめに、あざとくなれる。
それはある種の才能だ。
例えば、死の危険に直面した時。
裸で土下座しろと言われたら、村岡は迷わず実行するだろう。
原田には、それができない。原田は、任侠の世界に生きる男だ。
そのなかでも組長という重い看板を背負っている。
見栄と体面。それをなくしては、原田組という組織はたちゆかない。
たとえ他の人間が見ていない場であったとしても、それは曲げることのできない理屈だった。
生きることに貪欲な村岡ならばあるいは、窓口を作るところまではいかずとも、主催に関する何らかのヒントを掴んでくるかもしれない。
己の保身のために。我が身可愛さのために。
ほんの少しでもいい。主催につながる線が見えたならば、その時は。
(手打ちや。手打ちにする)
主催を殺すもう一つのギャンブル。
アカギが示した可能性は確かに魅力がある。
とはいえ、どちらかが倒れるまで戦うのではなく、相応の代償を払って終了とする。
それが現代のやくざだ。
どこかで引き際を見つけられるならば、見過ごす手はない。
このゲームが、どのような背景のもとに発生したのかはわからない。
何が最終的な目的なのかも今のところは不明だ。
原田が懸念しているのは、「このゲームは単なる殺し合いではないかもしれない」という点だ。
もちろん、ゲームの中で誰が生き残るか、最終生存者を賭けての博打は行われているだろう。
けれどそれは、単なる不随行為ではないか。
(もしもオレが主催なら……)
原田は自分自身を主催者の立場に置いて考えてみた。
このゲームには、自分ですら一目を置くような人間が何人も参加している。
過酷な環境下でもそう簡単には死なないような、一癖も二癖もある連中だ。
(平井銀二がいい例だ)
自分ならば、彼らは殺さない。
この島で殺人という行為を働かせ、それを映像や音声という形で証拠にとって脅す事を考える。
博徒、雀士、策士。優秀な奴らの使い道はいくらでもある。
ゲームの中でふるいにかけ、一定数が生き残った時点でゲームをストップ。
観客には予め用意していたシナリオに沿って八百長の試合を見せ、納得させればいい。
もちろん、その時点で役に立たないと判断される不純物は、参加者の手による殺害という手段で取り除く。
(所詮はオレの推測や。だが殺し合いの向こう側にあるモノを、考えてみる価値はある)
主催が殺し合い影でやろうとしている事が何なのか。
それが分かれば、「手打ち」の可能性も見えてくる。
その時こそ、村岡に命じたもう一つの指令も生きてくるだろう。
原田は、村岡が消えた闇の向こうへと微かな期待を込めて視線を向けた。
【E-2/小道沿いのギャンブルルーム付近/夜中】
【村岡隆】
[状態]:健康 意気消沈
[道具]:なし
[所持金]:400万円
[思考]:ひろゆきとカイジと原田に復讐したい 今は原田に服従する 生還する
※村岡の誓約書を持つ井川ひろゆきを殺すことはできません。
※村岡の誓約書を持つ原田を殺すことはできません。
※【指令その1】3回分の命令が終わり、開放されるまで、正当防衛以外の人殺しは不可。
※【指令その2】24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る。失敗したら指10本喪失。中間報告の場所と時間は次の書き手様にお任せします。
※【指令その3】メモに記されています。内容は次の書き手様にお任せします。成功すれば原田から武器を貰えます。
****
暫く歩くうちに、バッティングセンターが見えてきた。
待ち合わせをしていた平井が来ているかどうか、少し離れた場所から確かめる。
バッティングセンターは、夜中にも関わらず煌々と明かりが灯っていた。
室内がどうなっているのかは不明だが、
屋外施設は闇に慣れた目には眩しすぎるほどの明るさで照らし出されている。
周辺はその光のおかげでほのかに明るく、
建物に近寄れば、人影はかなりはっきりと分かる状態だ。
舗装された道からわざと離れ、暗がりを選んで歩いていると、正面の方角から足音がした。
「原田さん。どうやら無事だったようですね」
「……ああ」
声には聞き覚えがあった。平井だ。原田は銃を腰のベルトに挟み、距離を詰める。
互いに、バッティングセンターの様子を遠目に伺っていたようだ。
結果的に、建物に近寄る前に合流する事ができた。
「どうでしたか、そちらは」
「収穫アリや」
原田は平井に対し、村岡の話をした。
博打に勝っただけでなく、そこで村岡に命じた指令の内容も全て説明する。
どこかで自分が行動不能になった時、
指令内容を回収できる人間が不在となっては元も子もない。
「なるほど。案外使える人間かもしれませんね」
「結果が出るかどうか…、まさに博打や。そっちの方はどないや?」
「平山の行き先は『カイジ』でした。予想していた通り、なかなか見所のある男でしたよ」
「仲間には誘わなかったんか?」
「どうしても解決しなければならない問題を抱えていたのでね。
そちらが優先ということで……、生きていれば明日の夕方、会えるでしょう」
「なるほど」
明日の夕方、というキーワードを聞いて、原田は大体の事情を察した。
時間帯はアカギの約束と同じだ。
短時間で再会と移動を繰り返すとは思えない。
必然的に、待ち合わせ場所は同一という結論に達する。
自分とアカギが別れたギャンブルルームの前。
恐らくはその付近に、カイジを呼んだのだろう。
「何や、浮かない顔やな。疲れたか?」
出会った時からどこか超然としていた平井の表情に、僅かな影が浮いている。
原田はその小さな変化を見逃さなかった。
「いえ。……これだけ歩けば、どこかで会えるかと思ったんですがね。
そう都合良くはいかないらしい。どうやら、この先も自分で動くしかないようだ。
この歳になって、修羅場を歩き回るのは面倒だと思っただけですよ」
平井は一瞬、何かを懐かしむような目をした。
過ぎ去った思い出を眺めている、静かな瞳。
そこにあるのは、後悔でも、期待でもない。
今はもう、手が届かない、失われた時間を噛み締めている。
平井が初めて見せる人間らしい側面に、原田は興味を覚えた。
「誰か、会いたいヤツがいるんか?」
「一人だけ。アテにしている男がいました。
とにかく運の強い男でね。
そいつの強運に乗りさえすれば、後は何とかなる。
そう思わせるくらいの力があった」
終始過去形で語られる男の存在は、
話を聞くだけで仲間に引き入れたいと思う程の魅力があった。
ギャンブルルームにおける勝負だけではない。
武器を使った殺し合い。
その最中であっても、運という要素は欠かせない。
黙っていても強運が転がり込んでくると言うのであれば、
その人物を確保するだけの価値はある。
「死んだのか?」
「いいえ。
運の強い奴ですから、今でもこの島のどこかで生きているでしょう。
ここまで来て会えないという事はつまり、
今の私と会わない事こそがあいつにとっての幸運。
恐らくは、そういう事です」
「どんな奴や。聞いてもええか?」
「名前は――――、いや、やめておきましょう。
妙な先入観を与えたくない。
ただ、これだけは言える。原田さん。
あなたのような人なら、必ずあいつは味方する。
もしどこかで会ったら、きっと一目で分かりますよ。
とにかく、欲のない、まっすぐな目をしている。
それより、どこかで休みませんか。もうこんな時間だ。
第二回放送を聞いたら、朝まで交代で仮眠を取るというのは?」
「せやな。考えてみれば、飯も満足に食ってへん」
「では、休む場所を探すとして…、予定としてはこのあたりでどうでしょう」
しえ
と、さるさん…
携帯なので代理投下できない…
五分後に支援投下します
平井は地図を取り出すと、
バッティングセンターから漏れる明かりに照らしてある一点を示した。
禁止エリアとされているD-4の周辺。
アトラクションゾーンを除いた、E-3からE-5を指で辿った。
「そこに、何かアテでもあるんかい」
「身を潜める建物の数が多い。それだけです」
休息を取るのは、第二回放送を聞いてからだ。
腰を落ちつけ、身を休めてから、実はそこが禁止エリアでしたと言われ、
慌てて移動するのは精神的にも肉体的にも負荷が大きい。
原田はこの場に座りこみたくなるのを堪えて、
支給品が入った荷物を背負いなおした。
疲れているせいだろう。最初に比べ、やけに重く感じる。
「行きましょう」
「せやな」
平井は地図を畳んで荷物に戻し、原田と並んで歩き出した。
「そうだ、原田さん」
「何や」
「私に何かあったときのために、このメモをあなたに託しておきます」
「あんたの言うてた、強運の持ち主とやらに渡せばええんか?」
「そのあたりの判断はご自由にどうぞ。必ずしも会えるとは限りませんから」
そう言って平井が差し出してきたメモには短く『島南、港を探せ』と書いてあった。
記されている文字を見て、原田が弾かれたように顔を上げる。
サングラスごしの視線を感じたのか、平井は白い歯を見せて小さく笑った。
地図には港らしき施設は記載されていない。
しかし、考えてみればそれはおかしな話だった。
ホテルやショッピングモールといった大量に物資を必要とする施設を抱えているこの島の輸送手段が、空輸だけというのはいかにも不自然だ。
仮に輸送手段の全てを空輸で賄っているとしても、ヘリではない。
軍用機ならば或いは可能かも知れないが、
ここは基地ではなくリゾート地としての名目を保っている。
最低でも、旅客機が離着陸できる滑走路が必要だ。
さもなければ、この地図にはない、海岸線のどこかに港が隠されている。
そして平井は、空路より海路の方が可能性が高いと踏んだ。
島の南側に、一体何があるのか。
地図を広げて確かめたい衝動に駆られたが、今は移動が優先だ。
第二回放送の後、禁止エリアを確認する際に確かめても遅くはないだろう。
「分かった。これは預かっておく」
「お願いしますよ」
原田は、隣に並んで歩く平井の顔をサングラスごしに盗み見た。
最初に出会った頃に比べ、疲労は滲んでいるものの、
相変わらず恐怖や狂気といった感情は見つけられない。
自分同様、命を賭ける現場に慣れている。
そして、それだけでは説明のできない何か。
得体の知れない、自信のようなものを感じた。
(この男は、一体何者や)
原田は、改めて平井という男を観察した。
ゲーム関連する、重要な秘密を握っている。
それは最初から分かっていたつもりだが―――
(想像していた以上に、危険な人間かもしれん)
アカギと平井、そしてカイジという新たな人物。
明日の夕方、彼らが揃った時に何が起こるのか。
原田は武者震いにも似た震えを感じ、
それを押し殺すように闇の中へと大きく足を踏み出した。
【F-3/バッティングセンター付近/夜中】
【原田克美】
[状態]:健康
[道具]:拳銃 支給品一式
[所持金]:700万円
[思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す ギャンブルで手駒を集める 場合によって、どこかで主催と話し合い、手打ちにする 体を休めたい
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて赤木しげるに再会する約束をしました。カイジがそこに来るだろうと予測しています。
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。原田も村岡を殺すことはできません。
※村岡に「24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る」という指令を出しました。中間報告の場所と時間は次の書き手様にお任せします。
※村岡に出した三つ目の指令はメモに記されています。内容は次の書き手様にお任せします。成功した場合、原田はその時点で所持している武器を村岡に渡す契約になっています。
※『島南、港を探せ』という平井のメモを持っています
【平井銀二】
[状態]:健康
[道具]:支給品一覧、不明支給品0〜1、支給品一式、褌(半分に裂いてカイジの足の手当てに使いました)
[所持金]:1300万
[思考]:生還、森田と合流、見所のある人物を探す
カイジの言っていた女に興味を持つ どこか適当な建物に隠れて身を休める
※2日目夕方にE-4にて赤木しげると再会する約束をしました。
※2日目夕方にE-4にいるので、カイジに来るようにと誘いました。
※『申告場所が禁止エリアなので棄権はできない』とカイジが書いたメモを持っています。
※原田が村岡に出した指令の内容、その回収方法を知っています
代理投下終了しました。
投下乙…!
原田は村岡の性質をうまく利用してますな。村岡なら死に物狂いで知恵を絞りそうだ。
主催者との接点をもてるのか…?今後どうなるか楽しみです。
原田の考察が興味深かった。
裏社会を生きてきた原田らしい。だからなんだかリアリティを感じる。
原田の仮説どおりなら、確かに、主催と参加者が戦って互いに消耗した後で、
話し合いで終結という結果もありえそうだ。首輪解除さえできれば。
後、『港』が南にあるとしたら楽しみだ。確か、まだ誰もその辺りへは行ってないですし。
銀さんが森田を思う描写も良かった。
投下乙です。
港という発想は考え付きませんでした。
脱出フラグがまた一つ見えてきましたね。
今後の展開が楽しみです。
圧倒的…まさに突風のような乙!
時期、タイミングというものは重要である。
特にこの島においては、ある意味、強運や強力な武器よりも重要かも知れぬ…!
林の奥に身を潜めていた和也は、利根川の姿を遠目に見つけ、口の端を吊り上げた。
ようやく忠実なる下僕を手に入れることができる。
利根川は病院前にいた。
村上のいたギャンブルルームを出て、隣に立つ病院の中を探ろうと考え、入口に入りかけていたところであった。
「よおっ…!利根川…!久しぶりだなっ…!」
利根川は急に名前を呼ばれ、僅かに顔を強張らせてこちらを見た。
林から出て来た和也の姿を認めると、「おお…!」と驚きの声を上げた。
「和也様…!よくぞご無事で…!しばらく拝見せぬ間にご立派になられて…」
深々と頭を下げる利根川に、和也はカカカッと愉快そうに笑った。
「いいって、そういうの…!のんびり世間話してる場合じゃないんじゃね…?
この辺、銃を持った死に損ないの爺いが徘徊してるから、気をつけたほうがいいぜ…!」
「は…それはもしかして、鷲巣巌めのことでしょうか…?」
「あ…??? 何で分かった…?会ったのか…?」
「いえ…実は…」
「…ちょっと待て」
和也は手を挙げ、利根川の言葉を制した。
「そこで覗いているのは、誰だ…?出て来いよ…」
木陰の奥から影が伸び、その人物はゆっくりと二人の前に姿を現した。
「和也様…!利根川先生…!」
和也達の下に現れた人物…それは一条であった。
F-6のホテルを出て、目的地をこれから決めようとしていた矢先、
利根川と和也の姿が目に入り、木陰に隠れて様子を伺っていたのだ。
最初は二人を撃ち殺すことも考えた。
一条はカイジへの復讐を果たす為なら、その道中に何人殺しても同じと考えていた。
(しかし、見つかってしまっては仕方が無い…!
こうなったら、友好的に近づいて共闘を持ちかけるが正解っ…!
それに、利根川はカイジに計り知れぬほどの恨みを持っている…!共に行動するにはうってつけの人材…!)
いくら一条が拳銃を持っているとはいえ、銃弾の数には限りがある。
復讐を邪魔する者…参加者を減らすには、どうしても一人では難しいところがある。
利根川…そして兵藤和也…。敵に回せば痛いが、殺しをする為の仲間としてはこの上なく有益な人材である。
利根川から見れば一条は、元ライバル、黒崎の傘下の者である。
本来、組織内での敵同士…!
しかし、一条は黒崎の推薦でこのゲームに参加することになったのだ。
利根川と一条には共通点がある。
カイジを甘く見たが為に痛い目に合い、直属の上司(利根川にとっては会長)に見限られ、この地に堕とされた。
故に、うまく取り入れば利根川を仲間に出来ると踏んでいた。
一条は賭けた。この行動が、吉と出るか、凶と出るか…?
「一条…久しぶりだな。」
「は…お久しぶりです。」
果たして、利根川は友好的に一条を受け入れた。
一条は和也達に向かって深々とお辞儀をしてから、利根川の顔を見上げた。
「一条…?ああ、あの有名な…沼パチンコで7億の被害を出した店長だったな…?」
和也の言葉に、一条の顔から一気に血の気が引いた。
「は、はっ…。返す言葉もありません…真に申し訳ございませんっ…!」
「カカカッ…!別にお前を責めるつもりで言った訳じゃあない。
大体あの被害は、カイジが出した金額、7億全てが奴らに奪われた訳じゃねえ…。
実質の被害額は2億と7千万ほど…そうだろ?」
一条は俯いていた顔を上げ、恐る恐る和也の顔色を伺った。
「概算になるが、あの時沼から奪われた金は7億だが、カイジの持ち分のほとんどを遠藤が奪った後、
カイジは残りの金を仲間救出のために帝愛に払った。
ここでカイジの金はほぼ0…。
その後、借金を帝愛に返した後の遠藤から、残りの金も帝愛が巻き上げることに成功している。
ここで遠藤の金も0…。
カイジと遠藤と共闘していたおっさんに奪われた金、これが2億弱の損害、
あとカイジ自身と、カイジが救った男達6人の「労働力」…7千万分の借金をカタに囲っていたのを損害と考えると、
あの時の『帝愛が回収できなかった金』、損失は2億7千万…。実質はな。」
一条は戸惑いを露にした表情で和也を見つめた。
「し、しかし…」
「…ま、あの件では親父の機嫌を損ねたのが一番痛かったなっ…!
けどよ…。だからってオレはアンタが無能だとは思わないぜ」
「えっ…?」
おはようございます。
支援します
和也は一条にニヤリと笑いかけた。
「オレはアンタの慎重さや、『沼』を作ったその発想を買ってんだ。
どうだ…オレの部下になっちゃえば…?きっと良い事あるぜ…!」
「は……」
一条の方は和也の軽い口ぶりに唖然としていた。
先程まで冷静に7億の損害について説明していたわりに、『なっちゃえば…?』ときた。
噂で和也の人となりは耳にしていたが、直接こうしてお目にかかるのは初めてだ。
実物を前にして、ただただ驚くばかりだった。
利根川が和也に話しかけた。
「和也様…、和也様の傘下に入れていただければ、部下の命も保障されるという情報を仕入れたのですが…」
「おお…?何…?何…?何でもう知ってんの…?それ…!」
和也がはしゃいだ声で利根川に尋ねると、利根川は頷きながら話した。
「ええ…それに関しては、あちらに見えますギャンブルルームの中で説明させて頂きたいと思います…。
一条…。お前にとっても、値千金の情報だ…。付いて来い」
利根川はそう言うと、病院の傍に建つギャンブルルームへと歩み寄った。
「店長っ…!!」
村上は一条の姿を見るなり号泣し始めた。
当初、予期せぬ再開に面食らっていた一条だが、やがて上司としての顔になると村上を諌めた。
「馬鹿者…オレはもうお前の店長じゃない。一条と呼べっ…!」
「はいっ…一条様っ…!」
「“様”はやめろっ…!」
ギャンブルルームへのチップは30分間、3人分を利根川が支払った。
利根川は、先程村上から聞いた情報を要約して、和也と一条に説明した。
・村上が盗聴器を仕掛けていたおかげで、和也と鷲巣のやり取りや、その話の中に出てきた、
『和也の派閥のみがゲームで残った場合、その派閥全員が生還できる』という情報を耳にしたこと。
・和也が首輪を集めていること。
・和也が部下を求めていること。
「一条…お前の部下、えらく使える奴だなっ…!」
「いえ、もう部下では…」
上機嫌の和也の言葉を、一条は訂正しかけたが、目を潤ませた村上がこちらを見ているのが視界に映り、言葉を変える。
「…ええ、私の自慢の部下です」
おはようございます。
しえん。しえん。
(実際、村上と利根川が事前に出会っていなければ、ここまで穏便にオレは利根川や和也様と合流できただろうか…?
合流できていなければ、和也様の『特別ルール』について、ゲームの序盤…このタイミングで知ることが出来たろうか…?)
そう考えると、一条は身震いした。
先程まで、一条の眼前にあるのは暗い絶望だった。
半ばヤケになり、カイジへの復讐と、その過程で邪魔になる者の殺人のみを心に行動しようとしていた。
今考えれば恐ろしい。
和也様の部下になり、我々派閥のみが生き残れば、すなわち勝利…!ゲームセット…!
部下以外は抹殺するのだから、その過程で復讐も行うことが出来る。
そして、生還した暁には、和也の右腕として、表舞台での地位は保障されたようなもの…!
輝かんばかりの未来予想図…!
復讐のみを糧に殺戮を行うより、どれだけ建設的か知れない。
(神はオレを見捨てなかった…!…いや、これはオレ自身の運…!強運…!)
利根川の心情も、一条のそれと同じであった。
利根川もまた、先程まで…村上に話を聞くまで、一条のように棄権や脱出が出来ないものと考え、絶望の淵にいたのだ。
「和也様…私どもを是非、部下に…!」
利根川、一条は和也に深々と頭を下げた。
「もちろんだっ…!よろしく頼むぜ…!」
和也は声を上げて笑い出しそうになるのを懸命に堪えながら、二人が部下になることを承諾した。
怖いくらいに上手く事が運んでいる。
この件に関して、本当の…真の強運の持ち主は和也であった。
(実際、村上が鷲巣とオレの会話を盗聴していなければ、『特別ルール』にここまで信頼性を持たせることが出来ただろうか…?
全く…とんだ『自慢の部下』だぜっ…!)
「『和也同盟』をここに結成するぜ…!異論は無いな、二人とも…!」
利根川、一条とも、全く異論は無かった。………ネーミングセンスに多少引っかかりを感じたものの。
ギャンブルルーム内、村上が見守る中、利根川の手で同文の誓約書を三枚書き上げる。
内容は『和也の部下として忠誠を誓う』といったものである。
全ての誓約書に3人のサインが入り、それを3人ともが持つ。
これで『和也同盟』は結成された。
(せいぜい俺のために働いてくれよ、…ゲームの終盤…最後の最後の瞬間まで、な…!)
もちろん和也の狙いは優勝。『特別ルール』は真っ赤な嘘なのだから。
当然、利根川も一条も最後には殺す気である。
しえん
利根川も、一条も、ここでミスを犯していた。
誓約書に『同盟を結んだ部下を殺してはならない』という一文を入れなかったことである。
無理もないっ…!
もし『特別ルール』が真実ならば、入れる必要の無い一文だからである。
利根川も、一条も、夢を見てしまった…。
己が再び「帝愛幹部として返り咲くことが出来る」などという夢…悲願を…!
ゆえに気がつかない…気づくことが出来ない…和也の巧妙な嘘をっ………!
実際、二人は信じざるを得ないのだ。
ただ一人生き残り、優勝すれば生還、という本来のルールを、利根川も一条も信じていない。
何故なら、自らが以前、ナンバー2として、またはカジノ店長として主催側の立場であった時…
そのような生ぬるい温情を「参加者」に与えたことは無いから…!
参加者が希望に手を掴んだとき、哂ってそれを踏みにじり、奈落へと突き落とす。
それがいつものやり方であり、それで兵藤会長に満足して頂いていたから…!
だから…自分達が参加者の立場に堕ちた今、「優勝すれば生還」など信じられないっ…!
その点、和也は兵藤会長の息子である。
残虐無比な会長といえど、よもや『特別ルール』が適用された後で、実の息子を殺したりはしまい。
在全や蔵前が話に噛んでいるならなおさら…!
ずっと真実味がある…!和也について行く事…それが生還につながるという言葉のほうが…!
すっかり和也の言葉に納得し、希望を見出している利根川と一条。
和也は、気づかれぬようそっと冷たい笑みを漏らした。
(ククク…息子か…!
だが…そんな常識が通用しないのがあの『兵藤和尊』だ…!
俺は…俺だけは知っている。他のどの参加者よりもあの人に近い分…!
親父は『ただ一人、優勝しか生還はありえない』と言った。
だからこそ、優勝してみせるしかないっ…今はあの狂った親父の溜飲を下げるしかないっ…!)
(その為なら俺は何だってする…!
親父の名前だろうが権力だろうが…何だって利用するっ…!最後の一人になる為にな………!)
このゲームで優勝し、周囲に自分の力が認められること。
それが今の和也の目標であり、切実なる願いであった。
しえん
【E-5/ギャンブルルーム内/真夜中】
【兵藤和也】
[状態]:健康
[道具]:チェーンソー 対人用地雷三個(一つ使用済)
クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0〜1個(確認済み) 通常支給品 双眼鏡 首輪2個(標、勝広)
[所持金]:1000万円
[思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
死体から首輪を回収する
鷲巣に『特別ルール』の情報を広めてもらう
赤木しげるを殺す(首輪回収妨害の恐れがあるため)
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。
※利根川、一条を部下にしました。部下とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※遠藤、村岡も、合流して部下にしたいと思っております。彼らは自分に逆らえないと判断しています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、その派閥全員を脱出させるという特例はハッタリですが、
そのハッタリを広め、部下を増やそうとしています。
※首輪回収の目的は、対主催者の首輪解除の材料を奪うことで、『特別ルール』の有益性を維持するためです。
※C-3に標の首がぶら下げられています。胴体はB-3地点の道の真ん中に放置されています。
【利根川幸雄】
[状態]:健康
[道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(28発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
[所持金]:1800万円
[思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
首輪の回収
遠藤の抹殺
カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺
アカギの抹殺、鷲巣の保護
病院へ向かう
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、
その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えた為、平山が死んだと思っています(何かの切欠で計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。
☆
さるさんになってしまいました。すいませんが代理投下をお願いいたします。
***
【一条】
[状態]:健康
[道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6 不明支給品0〜4(確認済み、武器ではない)
[所持金]:6000万円
[思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
復讐の為に利用できそうな人物は利用する
佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、
その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
早朝投下乙です。
代理投下しました。
和也同盟結成にわくわくしています。
是非彼らには活躍していただきたい!
和也プロデュースならぬ和也同盟…!
帝愛組がこうも揃うと、壮観ですね。
村上がかわいい…(笑)
今後の活躍が楽しみです。
しかし、個人的にはさほど気にしてなかったあのハッタリから同盟まで出来るとは
実に上手いこと拾ったよなあ
投下&代理投下乙です
最近ペース速くて読み手としてはうれしいです
一条の「自慢の部下です」がいいなぁ。極限状況に陥り、一度は修羅道に
踏み入ったからこそ、その反動で昔以上に人としての心が厚くなったような。
そんな名シーンを尻目に和也が凄い! ただのボンボンではない、ただの
権力固執野郎でもない、ちゃんと優秀な悪役として動けている。
あの親にしてこの子あり、か。
まとめサイトをアップしている者です。
本日は赤木さんの命日のため、
勝手ながら、赤木さんのAAを
本日限定で貼り付けてしまいました。
ちょっとした遊び心でと受け取っていただけたら
幸いです。
支援
支援…??
じゃあ俺も
支援
地味な流れに吹いたwww
…支援。
投下もないのに支援…!
不条理に身を委ねてこそ…2チャンネラー…!
倍プッシュだ…!
(投下まで)待てるな…息子よ……!
来る…投下がっ…!待ちに待った投下がっ…!
投下します。
現在、非常に電波状況が悪いです。
なおかつ、頻繁に猫による作業妨害にあっています。
本編が長いため、どこかでサルをくらう気がします。
どなたかに、代理投下をお願いするかもしれません。
ともあれ、よろしくお願いします。
342 :
天の采配1:2009/10/02(金) 21:47:28 ID:???
鷲巣巌は、どこともしれぬ闇の中をさまよい歩いていた。
所持品に地図はない。壊れた銃が一つ、手元にあるきりだ。
先程までかろうじて把握していた現在位置も、
兵藤和也とギャンブルルーム前で接触し、離脱した際にわからなくなってしまった。
第二回放送前に病院で待ち合わせをしているが、現状ではたどり着くことなどできそうにない。
赤木との約束。そんなものに固執しているつもりは毛頭ない。
だが、地図を持たぬ自分は、このまま第2回放送を迎えれば禁止エリアが分からぬまま島内をうろつくことになる。
さすがに、大雑把な建物位置関係は覚えているが、それだけで禁止エリアの把握は不可能だ。
どこかで地図を入手する必要がある。
そしてまた、病院にたどり着きさえすれば怪我の手当てができるのではないかという望みもあった。
「ワシとした、ことが……ッ!」
体に蓄積した怪我と疲労が、鷲巣の老体に重くのしかかる。
行動不能に陥るような大怪我こそしていないものの、満身創痍と言っても過言ではない現状。
先程から、悪寒と吐き気がひっきりなしに襲ってきている。
骨折や打撲の影響で、発熱しているのかもしれない。
背中にべっとりと張り付いた衣服の感触が、気分の悪さを増幅した。
気をぬくと、その場に倒れこんでしまいそうになる。
「この、馬鹿……、愚図が……ッ!歩け、もっとはやく歩かぬか……!」
鷲巣は自分自身の不甲斐なさを罵りながら、重い足を引きずり歩いた。
先程襲撃された結果を踏まえて、藪や林、茂みの中に身を隠しながら進んでいる。
舗装されていない地面を歩いているせいか、時折、足元が危うくなった。
転びそうになる度に、慌てて手近な木の枝につかまり体制をたてなおす。
なぜ自分が、藪の中をコソコソと隠れて歩かなければならないのか。
理不尽としか思えぬ状況に怒りがふつふつと沸いたが、肉体を責め苛む疲労と苦痛が鷲巣の口数を少なくした。
343 :
天の采配2:2009/10/02(金) 21:51:19 ID:???
「……………………」
もはや、喋る体力もない。
やがて鷲巣の体力は限界を迎えた。木の根元に躓き、地面に転がる。
手近な枝を掴んだが、身を支えきる前に枝ごと折れてしまった。
幸いにも草の上に落ちたので、転んだ衝撃は少ない。
だが、枝を圧し折り、茂みを転がった物音が意外と大きく周囲に響いてしまった。
そして運悪く、それを聞きとがめた人間がいた。
「誰だ……?誰か、いるのか?」
それは鷲巣にとって、聞き覚えのない男の声だった。
兵藤和也が追いかけてきたわけではないらしい。その事実に、危機感がほんの少しだけ薄れる。
だがその程度で安心していては、愚図もいいところだ。
鷲巣は壊れた銃を腹の下に隠し、うつ伏せに倒れたまま死んだふりをした。
誰何の声をかけてきた人物が、近づいてこないならばそれでよし。
もしも近づいてくるようならば、ひきつけて、銃で脅す。
荷物を奪い、この場から追い払えば、地図が手に入る。
病院までいかずとも、禁止エリアと現在地の把握ができる。
万が一にも、こちらの拳銃が壊れていることを悟られてはならない。
明るい場所で長時間観察させるような状況は厳禁だ。
この藪の中、暗闇にまぎれて銃を一瞬だけちらつかせ、体に押し付けて脅す。
そのためには、獲物をここまでひきよせるしかない。
支援
345 :
天の采配3:2009/10/02(金) 21:52:42 ID:???
「…………おい。そこにいるんだろう?」
(もう少しだ。もう少し……)
鷲巣の思惑通り、男は躊躇いもなく近づいてきた。
声の様子からして、すぐに危害を加えようという気配も感じられない。
ここにきて、何たる幸運だと鷲巣は思った。
(天はワシを見放してはいなかった……!)
「大丈夫か、おい!」
男は藪の中に分け入ってくるなり、声を荒げた。
人か倒れているという事実に驚いたようだ。間近にまで近寄ってくると、地面に膝をつき、
無造作とも思える動作で、鷲巣の両肩を掴んで抱き起こそうとした。
地面に倒れ伏している老人が、自分に危害を加えるはずもないと信じきっているようだ。
平常時ならば、それは褒められるべき行為だろう。
怪我人、或いは病人を気遣い、助けようとするのは人間として当たり前のことだ。
ましてやそれが世間的に弱者とされている女、子供、老人の類であれば尚更。
だがしかし、ここは戦場。人が人を殺す事に何に他の制約もない。
むしろ戦い、殺さなければ生き残れない殺人ゲームの真っ只中。
自分以外の他者から奪い、絞り取るのは金や時間だけではない。
人間が生まれながらに持っているたった一つの命。
取り替えのきかぬ唯一の財産さえも奪い取り、握り潰して当然の状況下において、男の判断は甘いと言わざるをえない。
両手を使って抱き起こすとはすなわち、武器を手放すという事だ。
たとえ強力な武器を持っていたとしても、手がふさがっていたのでは使えない。
つまりは攻撃の手段を自ら放棄したも同然。
まして相手はただの老人ではない。昭和の怪物、鷲巣巌。
下手な甘さを見せれば敗北は必須……!
346 :
天の采配4:2009/10/02(金) 21:54:03 ID:???
「動くな……!」
鷲巣は男に抱き起こされるよりも早く自力で起き上がり、銃を男の頭に押し付けた。
闇の中で、男が目を見開き、体を強張らせる。
「ククク……コォコォコォ……ッ!甘いな。貴様、こんな場所で他人を助けてどうする!」
「……爺さん、何をトチ狂ってやがる。銃を置け」
「命令するのはワシの方じゃ!命が惜しくば荷物と武器を置け…カカカッ……!」
「…まあいい……、どうせ爺さん相手にやりあうつもりはないからな…」
頭に銃を押し当てられた男は、素直に武器と荷物を置いた。
鎖鎌が地面に落ち、その横に支給品一式が入った荷物が置かれる。
だがその動作は「脅されて仕方なく」といった風情ではなかった。
まるで自ら武装を解除しているような余裕すら感じられた。
鷲巣も男の妙な落ち着きに気がついた。同時に、一つの疑問を抱く。
(こやつ、なぜ拳銃を怖がらぬのだ……?もしや、銃が壊れていることに気がついておるのか?)
鷲巣は瞬時にその可能性を否定した。銃が男の視界に入ったのは、ほんの一瞬だ。
その一瞬で銃の不具合を見抜いたとは思えない。
歪んでいるのは銃口付近。
頭に押し付けているのは、脅すと同時に、欠陥部分を相手の視界から隠す意味もある。
わかるはずがない。こちらが迂闊に発砲できない事情を知るわけがない。
ならばなぜ、ここまで落ち着いているのか?
俺携帯なんで誰か代理たのみます
348 :
天の采配5:2009/10/02(金) 21:55:07 ID:???
「貴様、何を考えておる……?」
鷲巣は改めて男の様子を観察する。
知らない顔だ。だが一度見れば忘れない顔でもある。
顔に刻まれた大きな傷跡。それも一つや二つではない。
特徴的過ぎる容貌は対峙する相手に威圧感を与える程だが、強面から筋物の気配はしなかった。
裏の世界を歩いてきた鷲巣には、それなりの観察眼がある。
この男は、暴力を背景に生きてきた人種ではない。
とはいえ、同じ裏の世界に身をおいている事は確かだろう。
そうでなければこゲームに参加している理由がないからだ。
「……爺さん、銃を置きな。俺はあんたに危害を加えるつもりはない」
「ククククク…………、何を馬鹿なことを。
貴様こそ、今すぐこの場から消えろ!今なら命だけは見逃してやる」
「嫌だと言ったら?」
「当然、撃つじゃろうな。この距離なら貴様の頭は破裂!
キキキ……!脳味噌をぶちまけて死ぬじゃろうよ…っ!」
「無理するなよ。あんたは今、俺を撃てないはずだ」
「……ふざけるなよ小僧。貴様、この銃が玩具だとでも思っておるのか!」
今すぐ引き金を引いても構わないのだと脅すかわりに、銃口をぐりぐりと男の頭に押し付けた。
安物の玩具とは異なる冷たさと硬さ。
偽物ではない。本物の拳銃だけが持つ無骨な重みが伝わったはずだ。
ところが男は、怯むどころか強気な笑みを浮かべて見せた。
349 :
天の采配6:2009/10/02(金) 21:56:56 ID:???
「あんたはやろうと思えば出会い頭に俺を殺せただろう。
荷物を奪うことが目的なら最初から殺していればよかったんだ。
それをしなかった理由を当ててやろうか?
アンタが倒れてたのは演技じゃない。本当は、体がキツいんだろう?
ここで俺を殺して荷物を奪ったとしても、すぐに移動はできないはずだ。
今俺を撃てば、銃声を聞きつけた奴らが集まってくる可能性がある。
銃を相手にしても怯まない装備を整えた危険な奴らがな。
少なくとも、そいつを危惧しているから、あんたはすぐに俺を撃たなかった。違うか?」
「……――――!」
「図星か。ならソイツを置いて、俺の話を聞いてくれ。それぐらいの余裕はあるだろう」
「……貴様、……何者だ…?何を企んでおる…?」
男の推測は半分当たって、半分外れていた。
銃を撃てない理由は的外れな物であったが、あえて鷲巣は図星を装った。
撃てない事は事実なのだ。
銃が暴発すれば、銃口を突きつけている相手も死ぬだろうが、自分まで死ぬ可能性がある。
銃を握る腕が吹き飛ぶだけでも相当な怪我だ。撃てるはずがない。
撃てないからこそ、せめて「拳銃」というカードを有効に使えるうちに、取引に応じた方がいいと判断した。
「いいだろう。…話だけは聞いてやる…さあ話せ…」
「俺の名前は天。天貴史だ。爺さん、あんた、怪我をしてるだろう。
この先に病院がある。そこで治療をさせてくれないか」
「………………は?」
鷲巣は一瞬、自分の耳を疑った。
目の前の男――天貴史と名乗った人物が、何を言ったのか理解ができなかった。
(こやつは今何と言った……?治療させてほしいだと……?)
350 :
天の采配7:2009/10/02(金) 22:00:14 ID:???
気でも狂ったのかと思ってその顔を見たが、天の表情は正気そのものだ。
冗談ではなく、本気で言っているのだとすればとんだ酔狂ということになる。
或いは、そこに何か企みがあるのだろうか?
(ワシを病院に運ぶ指令でも受けておるのか……?)
鷲巣は天とは初対面だ。利害関係も因縁もありはしない。
だが、本人には無縁の事柄でも、指令を受けていれば話は別だ。
赤木しげると自分自身のように、ギャンブルで繋がる上下関係が実在する以上、可能性はゼロとはいえない。
何らかの事情で、天は鷲巣をつれてくるよう誰かに命じられているのではないか?
あからさまに疑わしげな表情を浮かべている鷲巣を見て、天は両手を広げて見せた。
「言っておくが、こいつは俺の独断だ。
誰のためでもない。自分自身のために動いている」
「自分のため、……だと?」
「俺はこんなくだらないゲームで、これ以上誰も死んでほしくないと思っている。
少なくとも、そのために自分でできる限りのことはするつもりだ。
それが単なる悪足掻きでも構わない。何があっても諦めないのが俺の信条でね。
……というわけで爺さん、よかったら俺と一緒に病院に行かないか?
歩くのがキツいなら、運んでやる」
「爺さんではない。鷲巣巌じゃ!」
「はいはい。じゃあ交渉成立って事で」
「――――こら!勝手に動くでな……うひゃああ、離せ、この無礼者が……ッ!グオオオッ!」
351 :
天の采配8:2009/10/02(金) 22:01:17 ID:???
天貴史は銃をつきつけられているにもかかわらず、地面に置いた荷物と武器を拾ってしまった。
慌てた鷲頭が再度脅しをかけようとしたが、それよりも早く太い腕が伸びてくる。
まるで荷物でも扱うように肩に担ぎ上げられ、鷲巣は激怒した。
怒りに任せて暴れたが、頑丈な男の体はびくともしなかった。
それどころか、担ぎ上げられているせいで脇腹や腹の打撲が強烈に痛み、悶絶を余儀なくされる。
「悪い爺さん。腹を怪我してたのか!」
「馬鹿者……ッ!」
肩の上で苦しげにうめき声をあげた鷲巣の様子に驚き、天が慌てて足を止めた。
一度鷲巣を地面に下ろし、背中におぶさるように促してくる。
その様子にすっかり毒気を抜かれてしまった鷲巣は、
最早怒る気力もなく素直に背負われることにした。
(……まったく、……妙な男に捕まったものじゃ…)
天貴史という男の奇妙さに、鷲巣は首をひねらざるをえない。
殺人ゲームの最中で怪我人を助ける。そこに意味があるとすれば、協力者を募るくらいだ。
だが天という男からは、その意図すら感じられない。
得体の知れない人物ほど恐ろしいものはない。
何を考えているのかわからないということは、次に何をするかわからないということだ。
(いっそこの場で殺すか?)
無防備に晒された首に手をかけ、首輪を引きちぎれば天を殺すことができるかもしれない。
だが鷲巣は、あえてそれを実行しようとは思わなかった。
天を信用したわけではない。病院まで運んでくれるならば好都合だと割り切っただけだ。
どちらにしろ、第二回放送までには病院にいかなければいけない。
都合のいい乗り物を見つけた。
そう考えることで、鷲巣は天貴史という正体不明の男に背負われる自分の不甲斐なさを許した。
352 :
天の采配9:2009/10/02(金) 22:02:04 ID:???
----------------------------------------------
天は鷲巣を背負ったまま、病院の非常口を開けた。
二階建ての建物の内部は暗く、非常灯の明かりだけが廊下と出入口を照らしている。
天は迷いのない足取りで廊下を歩き、処置室へと足を踏み入れた。
治療のための簡易ベッドに鷲巣を下ろし、横になるよう促す。
あえて室内の明かりはつけず、処置室に常備されている非常用の懐中電灯を手に取った。
明かりを外や天井に向けたりはせず、用心深く足元だけを照らす。
「爺さん、どこを怪我してるんだ?」
「打撲や骨折が殆どじゃ。湿布と、骨を固定できるものをもって来い。……手当てくらいは自分でできる」
「熱が出てるだろう?そっちはいいのか?」
「だとしても、貴様に鎮痛剤や解熱剤が分かるのか?」
「………うっ」
「薬などいくらあっても無駄だ。使いこなせるだけの知識がなければな」
「分かった。ちょっと待ってろよ。確か湿布はたくさんあったはずだ」
「よく知っているな。既に中を探った後か?」
「いや。ざっと歩き回っただけだ。一階が外来で、二階が入院。そんな感じだな」
鷲巣にこたえたとおり、天は既に一度、病院に進入を果たしている。
外部に繋がる場所は、窓を除けば三箇所。
表玄関と、救急車が乗り付ける裏口、そして非常口だ。
全て施錠されていたが、天は一階にある待合室の窓を割って中に入った。
建物の内部を一人で歩き回り、大雑把な構造把握と、非常口の開錠は済ませてある。
一階には、処置室、各種検査室、薬の処方室と待合室、看護師の控え室や、食堂がある。
二階は入院用のベッドが並んでいるが、用がないと思ったのであまり詳しくは見ていない。
病院に行けば手当と助けを求める人間に会えるかもしれないと思ったが、天が来たときには誰の姿もなかった。
仕方なく院内で待機してみたものの、待てど暮らせど人がくる気配はない。
暇にあかせて病院内部を詳しく探索しようとしたが、鍵が閉まっている部屋が多く、
むしろドアが開く部屋の方が少ない状況では探索のしようもなかった。
鍵がかかっている部屋はレントゲンやエコー検査室のように、何らかの「検査」の看板が下がっている部屋ばかりだ。
検査用の高価な機材が収められているので、施錠は当然なのかもしれない。
また、検査の都合なのか、外壁を一周しても検査室が並ぶ一角は窓がなく、
あってもはめごろしの小さなもので、とてもではないが人間が出入りできるような大きさではなかった。
天が病院を訪れた目的は、怪我人の治療と救済だ。
幸いにも、処置室や処方室には入る事ができた。
鍵がかかって入れない検査室がまったく気にならないといえば嘘になる。
だが、重要なのは病院の探索ではない。
当初の目的を果たすため、天は「怪我人が来ないならば探しにいくまで」とばかりに外を歩き回った。
同時間帯には兵藤和也や利根川、一条が周辺をうろついていたはずだが、
天が鷲巣を発見し、なおかつ他の人間と接触することなく病院へとたどり着くことができたのは、まさしく僥倖だった。
或いは、鷲巣が持つ天性の「剛運」が、二人にそれをもたらしたのかもしれない。
ともあれ、天は念願の怪我人を発見・回収し、病院に運び込むことができた。
湿布薬や包帯、消毒液のような、素人でも分かる治療道具は予め一箇所にまとめてある。
いずれ病院を出るときに持ち出すつもりで、自力で抱えられる分量を寄せ集めてあった。
天は湿布とテーピングテープ、包帯を抱えて鷲巣が横たわるベッドに戻る。
道具を手渡すと、鷲巣は身を起こし、衣服を脱いであちこちに湿布を張りテープや包帯で固定した。
骨に異常があると自分でも言っていたとおり、痛々しい程腫れている場所がある。
鷲巣に疎まれながらも、天は途中で何度か手を貸し、テープによる固定作業を助けた。
「それにしても爺さん、よくもコレだけ怪我をして歩き回ってたモンだな」
「うるさい……!昔はこの程度、舐めてなおしてたわい!
それよりもいい加減、爺さんはやめんか……!」
「悪い。鷲巣さんだったか。その怪我、誰にやられたんだ。
銃を持ってるあんたに怪我を負わせるってのは、相当な危険人物と見たが」
「兵藤和也じゃ。このゲームの主催者の息子がまぎれこんでおる。
それから、名前は知らんがサブマシンガンを持っている狂人が一人」
鷲巣は、あえて自分がマシンガンの初期所有者であったことを伏せた。
奪われた事実を隠すと同時に、襲われた経緯すらも殆ど語らずに済ませてしまう。
防弾チョッキを着用しているという事実を、天に悟らせないためだ。
怪我の手当てを殆ど自分ひとりでやった理由もそこにある。
有賀に襲われた際、命が助かった理由は防弾チョッキにあった。
弾丸をカバーできる道具を持っていることが知れてしまえば、それが奪われる危険が発生する。
自分にとって有利な条件は徹底的に隠す。
それがひいては最終的な生存に繋がると鷲巣は考えていた。
「マシンガン…!?おいおい、何考えてんだよ!」
天は殺傷能力の高すぎる武器をゲームの中に放り込んだ主催に対して憤りを感じた。
市川が持っていたダイナマイトといい、マシンガンといい、
一度に多人数を殺せる道具がそろいすぎている。
それらの意図が、この理不尽なゲームを盛り上げることにあると言うならば。
(許せねぇ。そんなに人間の命ってのは軽いモンかよ……!)
天は拳を握り、眉間に力をこめた。
以前、天は目の前で絶たれていく命を、黙って見送ったことがある。
いいや、おとなしく指をくわえていたわけではない。
足掻いた。天なりに、精一杯足掻いた。
それでも引き止めることのできない命があった。
失われていく命があった。
それがどんなに大きく、かけがえのないものであったかを知っている。
人間はそう簡単に死んでいいものではない。
それを身をもって味わった。
これ以上はないほど噛み締めた。
だからこそ、この理不尽なギャンブルが許せない。
(命ってのは、もっと大きくて、重いモンじゃねぇのかよ……ッ!
ダイナマイトやマシンガンで吹き飛んじまうような、そんな軽いモンじゃない!
そいつを、狂った主催者どもにわからせてやる!)
支援
声にならぬ怒りを発する天の横で、鷲巣は冷静にその様子を観察していた。
(何を考えているのか分からんのは貴様も同じじゃ、天貴史。
貴様は底が知れん。だが今しばらくは……)
協力するしかないだろう、という結論を鷲巣は出した。
今のところ、天が他者に危害を加える様子はない。
それどころか、むしろ救いたがっている節がある。
それは優勝を狙う鷲巣にとって不利な要因だが―――
数多の怪我を抱え、厄介ごとが山積している現在。
一人では対応しかねるというのが本音だった。
そして今まさに、その厄介ごとが一つ増えつつあった。
「……外に人影が見えるな」
「何……っ?」
処置室の外は廊下を挟んで、処方室と受付が並んでいた。
受付側には表玄関があり、鷲巣はそこに動く人影を見つけた。
幸いにも、まだこちらの様子に気づいている気配はない。
窓ごしにちらりと動く影が見えた程度で、発見は単なる偶然だった。
天は慌てて手元の懐中電灯を消し、身を屈めて廊下に出た。
物陰に隠れながら受付に近づいていき、外の様子を伺う。
鷲巣は人目につかぬよう、ベッドの上に腹這いになり、床に降りた。
支援っ…!
「……どうじゃ?何か見えるか?」
「一人、だな。スーツを着てる。武器は、一見した限りではもってなさそうだ」
「油断は禁物…!分かっておるな…?」
「ああ。だが、見たところやっこさん、狂ってる様子もない。
冷静な人間が相手なら、俺は顔を合わせて話をしたいと思ってる」
「馬鹿な!ノコノコ自分から出て行くというのか」
「危ないと思うなら、あんたはここから一人で逃げてくれ。
たとえ危険人物だとしても、俺が話している間は足止めになるだろう?」
そう言って、天が立ち上がろうとする。
鷲巣は慌てて天に近寄り、服の裾を掴んだ。
「待て……!ワシに考えがある」
「考え?」
「貴様が前に出て奴と話すのは構わん。だが、危険だと判断した場合は、コレを使う」
「……銃で脅すってことか」
「貴様の意思を尊重して、殺しはせん。
危険な人間ならば武器を奪い、身包みをはいで、放り出すんじゃ…!」
「まあ、確かにそうした方が安全ではあるが…」
天が鷲巣の示した銃を一瞥し、難色を示した。
実はこの時、天は鷲巣の拳銃が使い物にならないことに気づいていた。
最初に銃を突きつけられた段階である程度憶測はついていたのだが、
ここにきて再度それを目にすることにより確信を持つことができた。
問題は、鷲巣は、銃が壊れていることを知っているかどうかだ。
十中八九、気づいているだろう。だからあの時、出会い頭に撃たなかった。
自分がそれに気づいた事を鷲巣に知らせるべきだろうか。
考えているうちに、玄関口に立っている男は今にも病院に入ってきそうな気配を見せた。
「分かった。いざというときはあんたに任せる」
天は覚悟を決めて、背に鎖鎌を隠した。
まともな人間が相手なら、武器を持って話しかけても相手にされるわけがない。
警戒された挙句、敵対認識されてはかなわない。
ここはあえて、素手で対応したほうがいい。
そう判断して立ち上がろうとした瞬間―――。
「待て…!」
またしても、鷲巣が天の服を掴んだ。
「何だよ、爺さん」
「二人目が来た……!よりにもよって厄介な……!」
「知ってるのか?」
「兵藤和也だ。奴はこのゲームの主催者の息子。特別待遇者じゃ」
「特別待遇?」
「奴と、その部下だけが生き残った場合に限り……
このゲームはその時点で全員生存、早期終了するなどという実に……実に、ふざけたルール…ッ…!
あの馬鹿息子め、よりにもよってこのワシを部下にしたいだなどと抜かしよってからに…〜〜っ!」
玄関付近で立ち止まっている男に近寄る若い男の影があった。
どうやら二人は知り合いらしい。
会話までは聞こえてこないが、仕草だけでも、
そこにハッキリとした上下関係が存在していることがわかる。
鷲巣の言うことが本当ならば、若い方が主催者の息子で、
先ほどから玄関に立っていた年配のスーツの男が部下ということになる。
支援っ…!
「なあ爺さん、さっきの話、本当か?特別待遇とかいう話!」
「……あの兵藤が息子だけに特別待遇を与えるとは思えん。
だが在全、蔵前が絡むとなれば話は別じゃ…!
奴が言う特別ルールが実際する可能性は、高い…」
「だったらどうして、その部下への誘いとやらを蹴ったんだ?」
先程の鷲巣の口ぶりからすると、兵藤和也に部下として誘われながらも、あえて話を蹴ったようだ。
生存することだけが目的ならば、誘いに乗ったほうがいい。
むしろ和也からの提案は、魅力的な誘いのように思えた。
何故目の前の老人は、その提案を蹴ったのか?
「馬鹿者!ワシを誰だと思っておる。
あのような小僧の下について生き延びるなど考えたくもないわ……!」
「要するに奴が気に食わないから断ったってことかい?」
「この世にワシを従えられるものなどおらん!
むしろワシが貴様らの王であるべき!……カカカッ!」
話しているうちに興奮してきたのか、妙な笑いをこぼしはじめた鷲巣の様子を見て、天は苦笑した。
出会ったときから妙にプライドが高いと思っていたが、ここまでくれば表彰ものである。
殺し合いにのっているのかどうかは聞いていないが、できれば仲間に引き入れたい。
何より、鷲巣は主催者を知っている口ぶりだ。
このゲームの主催者にかかわる情報ならば、喉から手が出るほどほしい。
とはいえ、その手の話をするのは、目の前に迫る二人の男を退けてからだろう。
363 :
マロン名無しさん:2009/10/02(金) 22:13:05 ID:q6IWg3PB
圧倒的支援
支援っ…!
支援っ…!
支援!
「確認させてくれ。兵藤和也って奴は、殺し合いにのっているのか」
「当然だ。奴は優勝を狙っておる…!つまり、自分の部下以外は全て殺す…!」
「いっそ全員奴の部下になっちまうって言うのはどうだ?そうすればみんなで生還できる」
「阿呆が。アレがそんなことを許すようなタマか……!貴様は何もわかっとらん…!」
「だが、話してみる価値はある。場合によっては、脅してでも奴を全員部下にさせる」
「やめておけ。不用意に近づくでない。奴は地雷を持っている。それ以外にも、武器があるかもしれん」
「地雷……?また、奴らは何てモンを……、つまり、あんたはここは無理せず引けって言いたいのか」
「フン。その頭、筋肉だけでできているわけではなさそうじゃな…?」
鷲巣の言うことも一理ある。
壊れた銃と鎖鎌しかもっていない自分たちが、二人の男を相手にできるだろうか。
仮に銃で脅す事ができたとしても、銃そのものが壊れていることを見抜かれる危険性がある。
ましてや相手は地雷を持っているのだ。下手に倒せば爆発が起こるかもしれない。
こちらは怪我をした老人がひとり。銃で脅す以外の動きは期待できない。
壊れた銃一つで、二人の人間の足をどこまでとめられるか、判断は難しいところだ。
だがここで、兵藤和也を逃がすのは惜しい。
兵藤和也という人物。その情報の全ては鷲巣から入ってきたものだ。
現時点で鵜呑みにすることはできない。
まずは実際に会って話し、確かめるべきではないか。
そこで特別ルールが実在すると言うのなら、生き残りたい人間を全て部下にできないか、交渉する。
難しいようであれば力尽くで従わせるという手もある。
そもそも、あの男が主催者の息子ならば、主催に対する何らかの交渉の道具になるかもしれない。
支援
気づかれぬうちに非常口から逃げる事は難しくない。
むしろこの場は逃げるが賢明。
けれどそれでは、救えない。
この島で生きている人間を助けることはできない。
兵藤和也は、この不条理なゲームの横紙を破る突破口になるかもしれないのだ。
せめて何かもう少し、使える道具があれば。
天は必死であたりを見回した。
時間はさほど残されていない。
逃げるならば、兵藤たちが玄関のドアを突破する前に、背後に下がる必要がある。
(諦めるな。諦めるな。諦めるな……!)
諦めなければ、道は開ける。
少なくとも、諦めてしまった人間に未来はない。
「…………あ!」
必死であたりを見回していた天の視線が、ある一箇所でとまった。
身を屈めたまま大急ぎで近寄り、それを掴んで戻ってくる。
「爺さん、これだ。コイツを使う」
「消火器……?そんなものでどうしろと言うんじゃ……!」
「手順はさっきと同じだ。まずは俺が出て、兵藤とか言う男と話す。
うまく話が運ぶようなら問題はない。
だが危険だと判断したら、そのときはコイツを、思い切りやつらの顔めがけて噴射してくれ。
外と違って、屋内なら煙がこもる。煙幕と目潰しだ!」
「……フン。まさかその程度の子供騙しで奴らを出し抜くつもりか……」
「少なくとも、意表はつける。
アンタの話を信じるなら、兵藤和也って奴だけ抑えれば問題はない。
あいつが死んじまったら、特別ルールは適用されないだろうからな」
「一か八かの賭けに、ワシまで巻き込むつもりか……ッ!」
「要するに、ギャンブルだろう。だったら俺は負けない!」
「貴様……ッ、ギャンブルならこのワシの方が強いに決まっておろうが……!」
「本当に面白い爺さんだな。曽我の爺さんや赤木さんといい勝負だ」
「何だと。貴様、今、何とっ…!」
妙なところでプライドを見せる老人に奇妙な親近感を抱いてしまうのは、
東西線を戦った敵味方の中に一癖もふた癖もある人間が多かったせいだろう。
鷲巣巌。その名前は、どこかで聞いたことがあるような気はするが。
どこで聞いたのかまでは思い出せない。もしかしたら、隠れた雀士かもしれないが。
それにしては態度が大きすぎる。まったくもって不思議な人物だ。
「いくぜ、爺さん!」
「……待て!」
またしても、鷲巣が天の服を掴んだ。
「何だよ、またかよ。まさかまた人数が増えたって言うんじゃないだろうな!」
「そのとおり。三人目が出よった……!」
「次から次へと……!ここには何かあるってのか?」
天は思わず頭を抱えた。
硝子越しに様子を伺っていると、新たに増えた三人目の男も兵藤和也の部下らしい。
態度からして、一番下に属するようだ。さすがに2対3では分が悪い。
同じ賭けでも、成立する公算がぐんと下がった。
ここは一度諦め、この場を離れるべきか。それとも、無茶を承知で殴りこむべきか。
思案している時間は先ほど同様、殆どない。
いっそ別の手を考案するべきか。
三人が一緒に行動するとは限らない。
病院の内部に潜み、人数が減ったところで和也だけを押さえるという手もある。
だが、それをやるにはやはり時間が足りない。
天は病院内部を詳しく探索しておかなかったことを後悔した。
鍵がかかっている部屋は別として、もう少し内部構造を詳しく見ておけばよかった。
罠を仕掛けるには未知な部分が多すぎる。
「―――仕方ねぇ。ここはやっぱり、一か八かで…」
「いや、…待て……様子がおかしい……」
「……ん?」
玄関付近に固まっていた三人組が、病院から遠ざかっていく。
どうやら、三人が揃ったことにより、別の用事ができたようだ。
追いかけるべきか一瞬考えたが、さすがにそれは無理だと判断した。
それよりも、他にやっておくべきことがある。
「どうやら、助かったみたいだな」
「…奴らはいずれ、もどってくる……、…用がなければ、このような場所には来るまい……」
「だろうな。分かってる。俺もそれは考えた。
さすがに5分、10分で戻ってくるとは思えないが……。
やつらが戻って来るまでに、俺はもう少しここの内部を探っておきたい」
「あの小僧どもが、ここで何かを得る前に、獲物を奪う……か…なるほど……なるほど…クカカカッ」
天は、玄関の向こうに誰もいなくなったことを確認して立ち上がった。
冷や汗をぬぐいながら、鷲巣が立ち上がる動作に手を貸す。
考えてみれば、仮に目潰しが成功したとしても、三人に対して一人で挑むのは無謀だった。
兵藤和也と特別ルールという情報を与えられて、柄にもなく焦っていたのかもしれない。
病院の内部をもう一度探りなおす間に、この先どうするべきか頭を冷やして考える。
(それがいい。そうしよう)
鷲巣は処置室のベッドで休ませておき、
自分ひとりで歩き回れば時間はさほどかからないはずだ。
そんなことを考えながら、二人で処置室へと引き上げようとした矢先。
―――視界の先で、非常口のドアが開いた。
前半の代理投下は以上です。
程なく後半の投下になります。しばらくお待ちください。
しえーん
『盗聴の可能性有り 棄権は出来ない D-4が禁止エリアだから』
平山が示したメモは、ひろゆきを困惑させた。
当初、ひろゆきはギャンブルで一億稼ぎ、脱出する方針だった。
それ以外にも裏道的な方法で現状から逃れる術があるのかもしれないが、
あらかじめ設定されているルールをあえて破ろうとは思わなかった。
ゲーム序盤から『首輪探知機』という戦闘回避型のアイテムを所持していたことも影響している。
道程は順調とは言えなかったが、少なくとも、自分が思うとおりに行動することはできた。
だがここで、ひろゆきが選んだ道は一方的に塞がれる。
メモに書かれている内容は、少し考えればすぐに理解できた。
棄権を申請できる場所が「D-4」に限られているのだ。
ギャンブルルームならばどこでも棄権申請ができると思っていたが。
どうやら、そう簡単にはいかないらしい。
「……そんな…、これは……?」
「……カイジが…俺に……」
「本当なのか?」
「わからない。だがこの状況で嘘をつく意味がない。
それにあいつが、嘘をつくとも思えない」
「……確かにな」
平山の言うとおり、カイジがわざわざこんな手のこんだ嘘をつくとは思えない。
ひろゆきが見た限りでは、カイジは信頼に値する人間だった。
強かな部分はあるが、それはあくまでもギャンブルの最中での話。
つまらないことで他人を騙し、陥れるような男ではない。
どこで情報を得たのかは不明だが、おそらくメモに書かれている内容は真実。
(カイジは、棄権申請という制度そのものを疑っていたからな…)
何かのきっかけで、確信を得たのだろう。
つまり、一億円集めても棄権はできない。
そう考えるべきなのだ。
「なあ、……どうするんだ。これから?」
平山が不安そうにひろゆきを見ている。
ひろゆきはメモを手にして、暫し考えた。
(俺はこれから、どうすればいい?)
ルールに則って考えるならば、殺し合いに乗るしかない。
だがそれは非常に勝算が低い勝負だ。
参加者には、原田のような荒事に慣れている人間もいるだろう。
そんな連中とやりあったとして、はたして勝てるだろうか。
(それに……)
最後の一人になるまで殺しあうということは、隣にいる平山を殺す、という意味でもある。
殺し合いに乗る以上、避けて通れない道だ。
むしろそれができないのならば、最初からそのようなくだらない勝負に乗るべきではない。
もっと別の生存手段や、脱出方法を考えるべきだ。
「……安心しろ。…俺は、殺し合いには乗らない」
「…ひろゆき……」
「向いてないんだ。殺し合いなんて…!
そんな手段、選んだ時点で失敗するに決まってる…!」
「俺だって、生き死にが絡んだギャンブルはゴメンだ…!」
「そのメモは、見せる相手を選んだほうがいい。
追い詰められてる人間が見たら、逆上して襲いかかってくる可能性がある」
「……ええっ!」
「地獄に垂れ下がってるクモの糸を目の前で切るようなものさ…」
平山に忠告しながら、ひろゆきは先ほど目にした光景を思い返していた。
田中沙織という女。彼女は確か、一億円を手にしていたはずだ。
今頃は、ギャンブルルームで棄権の申請をしているだろう。
この狂ったゲームから生還できる。
罪を犯したかもしれないが、それでも、命だけは助かったのだと。
罪悪感に苛まれながらも、安堵し、希望を抱くはずだ。
そこでもし、棄権は不可能だと主催側から告げられたら――
(……自暴自棄になる)
田中沙織は脱出の希望を打ち砕かれ、絶望するしかない。
生き残るために、殺人ゲームに乗るか。
それとも、生存そのものをあきらめて自殺するか。
これまでに見てきた彼女の性格からすれば前者だ。
あの場で傷ついていた赤松達の事が気にかかった。
今頃、無事でいればいいが。
もしどこかで田中と遭遇していたら、悲惨な状況になりかねない。
ひろゆきは探知機を取り出し、単位を1キロに設定して状況を確認した。
先ほど確認した時と比べ、光点の配置が大きく動いている。
即座に田中や赤松の位置を割り出すことはできなかった。
自分たちが身を休めている事務室に接近している光はない。
アトラクションゾーンを移動している光点はいくつかあった。
念のために、範囲を100メートルに切り替えて様子を探る。
さすがにそこまで接近している人間はいないようだ。
「それは?」
ひろゆきが取り出した道具を見て、平山がたずねてきた。
「コイツは首輪探知機。俺の切り札さ」
「……探知機……?そんなに便利なものがあるのか…?」
「ああ、こいつをもっている限り、無駄な戦闘は避けられる。
とはいえ、バッテリーの問題があるから常時使用するわけにもいかないけどな」
「そんな、相手の位置がわかるなんて、反則じゃないか…っ!」
「俺だって、最初からコイツを持っていたわけじゃない。ギャンブルで巻き上げたのさ」
「ギャンブルで…?」
「村岡っていう男が相手だった。セコイが頭の回る奴だ。
どこかで勝負する事になったら、裏をかかれないように気をつけた方がいい。
勝つためには手段を選ばない。必ず何かしかけてくる。
それより、切り札をわざわざ君に見せたのには、理由がある」
「……理由?」
「もしこの先、やるべき事がないなら。一緒に来ないか……?」
支援
首輪探知機の存在を平山に見せたのは、ある種の賭けでもあった。
持っているだけで、生存確率が跳ね上がる道具だ。
生き残りを願う人間の目には、さぞや魅力的に映るだろう。
平山が奪いにかかってくれば、当然、争いになる。
とはいえ、いつまでも所持していることを隠しておくわけにもいかない。
この先、何度か画面を確認する必要が出てくるはずだ。
その度に言い訳を考えるのは面倒だし、誤魔化しきれるとも思えない。
一緒に行動するならば、最初のうちに見せてしまった方がいい。
たとえ争うことになっても、構わない。
決定的な場面で裏切られるよりは、ここで確かめるべきだ。平山という男の性根を。
「その、探知機。……範囲はどれくらいなんだ」
「………100メートルと、1キロだ」
「移動している人間の位置もわかるのか?」
「ああ。そのまま画面上に反映される」
「だったら、その道具、次に使うときは画面を俺に見せてくれ。多少は役に立てると思う」
「……え?」
「得意なんだ。何かを覚えたり、計算したりするのが。
その証拠に、俺は今、地図を持っていない。
さっき会ったカイジに渡してきた。内容は全部頭の中に入っているからな」
「……そんなことが…できるのか?」
「ああ。…それで食ってきたようなもんだ…。
あんたは俺に、切り札の探知機を見せてくれた。
だから俺も、頭の中に入っている情報は全部話す。
といっても……、たいしたものじゃないがな。
俺の所持品は参加者名簿と島内施設のパンフレットだった。
そいつは全部カイジに渡した。内容はもちろん、頭の中に入っている」
「どうやら……まんざら嘘ってわけでもなさそうだな…」
ひろゆきは、平山の意外な才能に驚いていた。
この状況下で地図を手放すなど、自殺行為に等しい。
たとえある程度地形や建物を覚えたとしても、禁止エリアの追加や、
自分自身の移動にどこまで対応できるか怪しいものだ。
つまり平山は、地図を手放せるレベルで暗記ができる人間ということになる。
先程の言葉通り、暗記や計算で生計を立てていたとするならば。
――カメラや計算機のような精確な能力。
それはこの先、自分達が生きていく上で有効な武器になる。
問題は、平山につけられた厄介な道具だが…、
これは利根川に遭遇さえしなければいい。
そしてこちらは、他人との不用意な接触を避けられる首輪探知機がある。
(お前を、信用していいんだな……?)
平山は探知機を見ても、奪う気配は見せなかった。
それどころか、自分が持っている手札を開いて見せた。
(あとは俺が覚悟を決めるだけだ…)
「……平山、……俺は、このゲームと闘おうと思う…」
「ゲームと?」
「所詮は人間が決めたルールだ。どこかに綻びがあるかもしれない。
この首輪だって、絶対に外せないとは限らない。殺し合わずに済む方法を探す。ここから、生きて脱出するんだ」
「ああ!こっちこそ、よろしく頼む…!もし、どこかで会えたら、カイジを…」
「仲間にしたいんだな?」
「俺の命がかかっているんだ!本当は、一緒に行動したいくらいだったが…。
今は、田中って女を追いかけているはずだ」
「…それは…不味いな…」
「何が不味いんだ?」
ひろゆきは、アカギが残したメモの裏側に文字を記して平山に見せた。
『田中は、1億円持っている』
「え……!でも…っ……」
棄権はできないはずだ、と平山が視線で訴えてくる。
ひろゆきはそれに同意を示し、頷いた。
「じゃあ、今頃は……?」
「多分…な…。君だったら、どうする?」
「……わからない。かなりショックを受けると思うが。 その後は、何をやるか、見当もつかない…」
「俺でも、似たような状況に陥ると思う。もしかしたら、ヤケになって手当たり次第に人を殺しているかもな」
「そんな…っ、カイジが危ない……ッ!あいつは武器なんて何も持ってない。丸腰なんだぞ!」
「とは言っても、カイジがどこにいるか分からない以上、助けにはいけない」
「…あ、ああ……そうだな…」
「どこかでカイジと会ったら、その時点で協力を持ちかけよう。
もともと俺を仲間にしたがっていたくらいだ。きっと力になってくれる。
それまでは、生き延びてくれることを祈るしかない」
ひろゆきは改めて、自分が辿るべき道を考えた。
『第二回放送後、病院』
アカギが残していったメモ。そこに残された文字を見る。
何よりもまず、「アカギ」が何者なのか、確かめたい。
ゲームの綻びを探し、脱出することを目的にするとしても、それだけは譲れない。
そもそもこのゲームに参加した理由が、そこにあるからだ。
この先、どこでアカギに会えるか分からない。
カイジは心配だが、この機会を無駄にする事はできない。
(アカギ、まずはお前が何者か、見定めてやる!)
ひろゆきは平山に、病院への移動を提案した。
第二回放送後に待ち合わせをしている人物がいる旨を告げると、
カイジを心配しながらも同意してくれた。
「なあ、その、待ち合わせをしている奴って……」
支援っ…!
歩きながら、平山が聞いてきた。
出発前に、相互に持ち物は確認してある。
ひろゆきは地図を二枚持っていたので、余った一枚を平山に渡した。
平山の記憶能力を疑っているわけでないが、念のためである。
平山が持っていた「防犯ブザー」の使い道は今のところ思いつかなかった。
引っ張れば大音量が鳴る道具がある、ということだけを記憶にとどめている。
「ああ。言ってなかったっけ。……アカギさ」
「……え…!?」
言った途端、硬直した平山を見てひろゆきは笑った。
まるでヘビに睨まれたカエルのような顔をしていたからだ。
「大丈夫さ」
何の根拠もなく、平山を励ます。
きっと大丈夫だ。あの青年が赤木しげるとは縁のない人間だとしても。
その名前をかたるのではなく、継ごうと考える人間ならば。
それはきっと、信頼するに足る人物であると、ひろゆきは自分自身に言い聞かせた。
−−−−−−−−−−−
「光点が三つ…」
「どうする。まさか、中に入るつもりか……?」
「いや、まずは様子を見よう。ほかにも近づいてくる光点がある」
「集まってきてるっていうのか。アカギが呼んだ連中が」
「分からない。アカギが呼んだとは限らないだろう。もしかしたら、追われているのかも」
「何……ッ!」
病院付近まで辿り着いたひろゆきと平山は、念のために一度、首輪探知機を起動した。
範囲を100メートルに設定すると、病院周辺には意外な程多くの光点が集まっている事が分かる。
平山は画面を凝視し、停止している光点の位置と、移動中の光点を暗記した。
ひろゆきに合図をおくり、覚えたことを知らせる。
軽く右手を挙げるだけの単純な動作だ。
ここに辿り着くまでの道中、ひろゆきと平山はある一つの打ち合わせをしていた。
「…君が、暗記が得意ってことは、バラさない方がいいかもしれない」
「どういうことだ……?」
「一度見たものを全部覚えていられるなら、なるほど、心強い。
カードでも麻雀でも、勝負を有利に運ぶことができる。
だけど、それを相手に知られていたんじゃ意味がない。
むしろ逆手に取られるのがオチだ」
ひろゆきは、これまでに自分が戦ってきた歴戦の猛者たちの顔を思い浮かべた。
原田、曽我、天、そして赤木しげる。
通常の打ち手が相手ならば、平山は無双に近い勝率を誇るだろう。
けれど、彼らのような怪物クラスが相手となるとまるで話が違う。
間違いなく、平山の暗記能力を逆手に取ってくる。
彼らは計算どおりに勝負を運ぶことなど許してくれない。
予想外の手段でこちらを打ちのめしてくる。
事実、ひろゆきは何度となく自分が持つ常識という壁を崩されてきた。
平山が持つ、自分にはない能力。
それは、理論的に物事を考えたがるひろゆき自身の性質と相性がいい。
だがそれを生かすならば、常識の枠を破る必要がある。
手始めに、その能力を隠す。徹底的な凡夫を装い、油断を誘う。
ひろゆき自身、かつて成功した奇襲はその一手につきた。
小物を装い、警戒を解く。その隙に懐にはいりこみ、一撃で勝負を決める。
支援っ…!
「…こっちだって、そこまで馬鹿じゃない。悟られないようにする工夫くらいはできる」
「普段はそれでいい。覚えた事を他人に悟られないようにしていればいそれで…。
だけど、勝負の時はそれだけじゃだめだ…」
「じゃあ一体、どうしろって言うんだ」
「考えるんだ。…俺も考えるから、君も考えてくれ」
「……ああ、……分かった…」
以降、平山は通常は短い動作や視線でひろゆきに「覚えた」ことを知らせるようにしている。
ひろゆきは平山の合図を受けて、首輪探知機のスイッチを切った。
物音をたてないよう警戒しながら、光点が誰であるか確認するために移動を開始する。
病院の外側を、物陰に隠れながらゆっくりと歩いた。
駐車場からつながっていると思われる裏口、二階に続く非常階段脇の非常口には誰の姿も見えなかった。
人影が見えたのは、表玄関にさしかかってからである。
「あれは……?」
先に気づいたひろゆきは、闇の中で目をこらした。
病院周辺に明かりはない。その先に小さな建物の影が見える。
「一人、だな…。ほかの二人はどこだ…?」
「あっちに建物の影が見える。…多分、ギャンブルルームだ」
一度ギャンブルルームを使用したことがあるひろゆきは、それが同じ建物だと判断した。
ギャンブルルーム周辺ならば、人の数が多いことも頷ける。
残り二つは、あの部屋の中かと思ったが、平山がそれを否定した。
「さっき見た光点の位置からして、残り二つは病院の中…」
「……そうなのか?」
「位置関係からするとそうなる。どういうことだ。待ち合わせをしているなら…っ、あ…!」
平山はその時になって初めて、病院の表玄関に立っている男が誰だか察した。
見る間に青ざめ、小刻みに体を震わせはじめた平山の様子にひろゆきが慌てた。
「おい、大丈夫か!」
「……と、……とね、とねがわぁ…ぁぁッ」
その場に尻餅をついて座り込み、裏返り、掠れた声で平山が呟いた。
病院前に立っている男が、平山の首に厄介な道具をつけた張本人だと知って、ひろゆきが表情を変える。
「あれが、利根川…」
「に、逃げよう、頼む、見つかったら俺の命が…ッ!」
「大丈夫。まだこっちは見つかっていない。
それに、あそこで待っているということは、利根川がアカギと組んでいる可能性が高い。
だとしたら、俺は警戒されずに接近する事ができる。
うまくいけば、ギャンブルで君の起爆スイッチを奪えるかも」
「そんな無茶な!あそこに立っているのは偶然かもしれないだろう!
中にはほかに2人いるんだ。そっちがアカギの可能性だってある。
だとしたら、中と外に分かれて待っている理由がない。
もしかしたらアカギも、利根川に追われているのかも……!」
「……それなら、尚更、ここで逃げるわけにはいかない」
「ひ、ひろ……っ?」
「俺は、どうしてもアカギに会いたい。多少の火傷は覚悟の上だ」
「……死ぬかもしれないんだぞ…」
「……たとえ……死んでも…」
「……ひろゆき」
「死んでも、悔いはない。…ごめんな、平山。
一緒に組もうって言ったばかりで、こんなこと言って。
危ないと思ったら、一人で逃げてくれ」
「…ば、……馬鹿、お前……今更そんな…」
平山は、ひろゆきの言葉を聞いて首を振った。
ここまで言われて、ひろゆきを置いて逃げることなどできない。
さすがに利根川の前に出て行く勇気はないが。
ここで隠れて、状況を見守るだけならば。
その程度ならば踏み止まることが出来ると、自分に言い聞かせた。
足は震え、寒気がひっきりなしに襲ってきているが、なんとか身を起こしてひろゆきの隣に並んだ。
二人が話している間に、病院の玄関口には人影が増えていた。
病院内部から人が出てきた様子はない。
先ほど首輪探知機を起動した際、こちらに向かい移動している光点が2つあった。
そのうちのどちらかだろう、と平山は判断した。
利根川は、新たに現れた男と親しげに言葉を交わしている様子だ。
少なくとも敵対しているようには見えない。
「アカギじゃない。……利根川の知り合いか?」
平山は利根川から命じられていた、捜索人リストを思い浮かべた。
兵藤、一条、遠藤、カイジ。
このうちカイジは除外するとして、残るは兵藤、一条、遠藤の三人。
ただし、遠藤は見つけ次第殺すべしとされていた。
つまり利根川とは敵対していると考えていい。
そうすると、残っているのは兵藤と一条だけということになる。
「兵藤か、一条の可能性が高いな…」
利根川ともう一人はその場で殺し合うでもなく、
むしろ楽しげに話し合っているように見える。
会話の内容までは定かではないが、何らかの協力関係を結んでいるように思えた。
平山が暗記している参加者名簿によれば、
利根川も一条も旧帝愛の社員ということになっている。
そして兵藤は帝愛会長の息子と記されていたはずだ。
もしも利根川以外のもう一人が、一条か、兵藤だとすれば。
帝愛という繋がりで協力体制が生まれていたとしても不思議ではない。
支援っ…!
支援っ…!
「…外が2人で、中が2人か。人数を集めて、今から内部を襲撃するつもりか?」
「わからない。だとすればますます、中の様子が気になる」
「……だとしても、中に誰がいるかは分からない以上……」
「つまり、中にいるのはアカギじゃないと言い切れないってことさ」
「…無茶だ。それに、利根川は銃を持ってる……」
「拳銃を…?」
「…ああ……どこに持っているのか、パッと見では分からない。俺は、それに騙されて…」
「どこかに隠し持ってるのか…?」
「気がついたら手の中に銃があった。かなり小さかったと思うが、定かじゃない。
とにかく、気がついたら撃たれてたんだ……!」
「分かった。中に入ったら怪我の手当てもしよう…」
ひろゆきは、いつの間にか日本刀を片手に握っていた。
鞘を払い、白銀の刃を闇の中に晒す。
平山はそれを見て、酸素不足の金魚のように口をぱくぱくさせた。
冗談じゃない。ここでひろゆきを死なせてしまえば、自分はまたひとりになる。
死ぬだけならばまだいい。
利根川一派にとらえられて、自分が生きていることを喋りでもしたら。
――考えただけで、目の前が真っ暗になった。
「頼む、後生だ!……いかないでくれ…」
「……大丈夫だ。裏口に回る。利根川たちとは接触しない。中にいるやつらを外に連れ出す」
「その前にあいつらが入ってきたらどうするんだ!」
「いますぐに入ってくるって雰囲気でもないだろう。むしろ早く動いた方が勝算は高い」
「罠だったらどうするんだ。中にいる連中も、外にいる二人の仲間だったら」
「……その時は、一目散に逃げるさ」
「逃げ切れるわけが、ないだろう!お前、どうしてもアカギに会いたいんだろう。
だったら、聞き分けてくれ。意地をはるのも結構だが、死んだらそれまでなんだ。
死んでもいいとか、死ぬ覚悟はできているとか、俺にはさっぱり理解できない。
俺はカイジと会って、約束した。次に会うまでは、何があっても、生き延びる。
だからお前も、約束してくれ。せめてアカギと会うまでは死なないって」
「……平山…」
「……頼む……」
話しているうちに感情がたかぶったせいか、平山は涙を流していた。
自分の死を恐れてひろゆきの無茶な行動をたしなめるつもりが、
いつの間にか本当にひろゆき自身のことを心配していた。
鼻水を啜りながら必死で訴える平山の様子を見て、ひろゆきは柔らかく笑った。
「分かった。…少しだけ、考えをかえる」
「……ひろ」
「裏口か、非常口。そこから中に入ろうと思う。それは譲れない。
だが、もし、鍵があいていなかったら、その時点で侵入は諦める」
「鍵があいていたら、入るっていうのか……」
「中にいる人間に気づかれないように、できるだけそっと入る。
そこにいるのがアカギだったら、外に連れ出す。
もしアカギじゃなかったら、即座に逃げる」
「……本気なんだな…?」
「……ああ。それから、君にはこれを渡しておく」
「…探知機……、そんなもん手放してどうするつもりだ…!」
ひろゆきは、自分が持っている首輪探知機を平山に手渡した。
「万が一、中の連中が殺し合いを楽しむような危険人物だったり、
外にいる利根川達の仲間で、俺が捕まったり、殺されたりした場合。
首輪探知機が奪われたら、それは、とても危険なことだと思う…」
「……確かに。悪用されること間違いなしだ」
「カイジや君や、原田さんや…、とにかく、
俺が知ってる人たちの危険がグンと跳ね上がる。
だから、これは中に持っていけない。危ないと思ったら、君が持って逃げてくれ。
そのかわり、こいつを借りるよ」
そう言って、ひろゆきは平山の持ち物から防犯ブザーを借り受けた。
武器とブザーを持ち、一人で病院の中に入る。
もしも内部で危険な目にあったら、大音量が流れるブザーを鳴らすつもりだ。
外にいる平山にも、危険を知らせるために。
「いいのか。…中で、何もなくても、俺が、持ち逃げするかもしれないだろう」
「……その時は、預けた俺が悪かったって思うことにする。恨んだりしないから、安心してくれ」
「……お前、……お前は、…ッ、…どうして、そんなに強いんだ」
「俺が、……強い?」
「こんな状況で、どうして他人を信じられるんだ。誰かを助けにいこうなんて思えるんだ。
俺には出来ない。逆立ちしても真似できない。
どうしてわざわざ、自分を捨てるようなことを……、
死ぬかもしれないような危険を選択できるんだ!」
「…分からない。……ただ…、俺の中には、熱があるんだ」
「……熱…?」
「ただ……やる事…。その熱、行為そのものが……生きるってこと…!
いいじゃないか…三流で…! 熱い三流なら上等よ…!
フフ…、実際俺は、三流だよ。だけど、それで構わない。
死のうと思っているわけじゃない…。
死を恐れるあまり、足を止めてしまうこと…。
今の俺が恐れているのは、それだけさ…」
ひろゆきは、抜き身の日本刀を片手に茂みの影を縫うようにして移動していった。
その場に残された平山は、それ以上、ひろゆきを引き止めることができなかった。
「……何だよ……、何だよ、……何なんだよ…っ…!」
誰もいなくなり、一人きりの闇の中で、小さく呟く。
「……なんで、……お前も、カイジも……ッ」
平山は泣いた。わけもわからず、泣いた。
これまでに感じたことのない熱を感じて、その場でぼろぼろと涙をこぼした。
死が怖い、死にたくないと思う。
それのどこが悪い。生物として、あたりまえの事ではないか。
それなのになぜ、カイジもひろゆきも、それを目の前にしてあそこまで熱くなれるのか。
わからない。まるでわからない。
わかるのはただ、自分は、ここから動いてはならないということだけだ。
間違っても首輪探知機の持ち逃げはできない。
万が一、ひろゆきの身に何かあれば、この場から逃げるのではなく、踏み止まる。
せめて何がおきたのか、すべて見届けてやろうと思った。
すべてを見届ける。
それが、死地に飛び込むことのできない男ができる、唯一の行為だ。
だがその決意も、次の瞬間には大きく揺らぐ。
(人が、増えた……!)
利根川が立っている玄関に、もう一人の男の影が見えた。
しかもその男は、利根川たちと敵対するどころか、迎合する動きを見せている。
(利根川の他に二人。…やはり、兵藤と一条か……?)
可能性は決して低くない。
よく見れば三人の関係は対等ではなく、上限関係のようなものすら感じられる。
だとすれば、帝愛というつながりにも現実味が沸いてくる。
なにより、病院の外に立つ人数が3人に増えたことで、中に向かったひろゆきの危険が増した。
(……どうする。追いかけて、知らせるべきか…?)
今から走っておいかければ、ひろゆきの無謀な行動をとめられるかもしれない。
だが、もし間に合わなければ。ひろゆきが中に踏み込んだ後だったら…?
(…やっぱり、…駄目だ…!)
いくらこの場で待ち合わせをしているからといって、中の人間がアカギだと確信は持てない。
そうである以上、平山の理屈や感性では、ひろゆきの行動はリスクが高すぎる。
ギャンブルとして論外。認められる選択ではない。
平山は首輪探知機の電源を入れた。範囲は100メートルのままだ。
病院内部の光点2つは相変わらず不動。外側の3つは、玄関をはさむ形で固まっている。
移動している光点が一つ。病院内部に入り込んでいるようには見えない。
(もしかしたら、まだ外壁を移動しているのか?)
病院への侵入経路は、平山が見た限りでは三つ。
表玄関、裏口、非常口。ひろゆきが向かったのは、裏口か非常口だ。
鍵がしまっていたら、中に入ることは諦めるといっていた。
(鍵が閉まっていた……?)
ひろゆきは病院の中に入れずにいるのかもしれない。
だとすれば、まだ間に合う。まだ引き返すことができる。
危険すぎる選択の回避。それは何も、恥じる事ではない。
(俺は、……俺たちは、生き延びるんだ…!何があっても…!)
平山は、茂みの影から離れると、ひろゆきが走っていった方角を目指して走り出した。
探知機は作動させたまま。走りながら位置を測る。
まだ三人は動いていない。中の二人の場所も変わらず。
自分だけが、ひろゆきに近づいている。
支援っ…!
支援!
(あと少し、この林を抜ければ……!)
木々の間を走り抜けたところで、非常口の前に立つひろゆきの姿が見えた。
「……ひろ、待て、……やっぱり駄目だ!」
周囲に響かぬよう小声で言ったせいか、ひろゆきには聞こえなかったようだ。
それどころか、小走りに近づいている平山の存在に気がついてもいない。
片手に日本刀を握り締め、ドアの手をかけた。
病院内部に対して意識を傾け、緊張しているせいで、かえって周囲が見えていないようだ。
平山は首輪探知機の電源を切ると、上着のポケットに放り込み、走る速度を上げた。
「……ひろ、待て!」
「――――ッ!」
突然平山の気配が背後から迫ってきたことに気づいたひろゆきは、驚いて日本刀を振り回した。
刃物が目の前を通り過ぎ、平山が恐怖のあまり前のめりに転倒する。
「うわっ!」
「……ひいいぃ!」
支援
408 :
代理投下:2009/10/02(金) 23:46:25 ID:???
さるさんくらいました…
したらばの一時投下スレ862から代理投下お願いします。
一時投下のレス番号がずれているので
一時投下スレ「天の采配46」が本スレ「天の采配47」になるようお願いいたします。
支援
サルから復帰できました。
残り、投下します。
ひろゆきは相手が平山だったことを知るや否や、日本刀を手放した。
そのおかげで刃が平山を傷つけることはなかったが、
片手で握ったままの非常口のドアノブの存在を忘れていた。
倒れこんできた平山と、ドア口のひろゆきがぶつかる。
ドアに響く重い金属音とともに…
――――ガチャ。
非常口のドアが開いた。
背の支えを失い、ひろゆきが中に倒れこむ。
平山は咄嗟に壁をつかんでこらえようと思ったが、重さを支えきれず、ひろゆきの上に倒れこんだ。
「……誰だ…!」
運悪く、内部から声がかかる。ドスの聞いた男の声。
平山は慌てて、ポケットの首輪探知機を取り出そうとした。
外と中の人員配置がどうなっているのか、確認しようとしたのだ。
しかしそれを、下敷きになっているひろゆきの手がとめた。
「……ひろ、…お前」
「…迂闊に、人に見せたら、駄目だ…。それに、心配しなくても、大丈夫」
ひろゆきは、平山の体の下から抜け出すと、腕をさすりながら立ち上がった。
「……きっと、どこかにいると思ってました。――久しぶりです。天さん」
ひろゆきの視線の先には、白髪の老人と、顔に無数の傷を負った大柄な男が立っていた。
もし、サルくらいましたら、
私も代理投下引き受けます!
【E-5/病院内/真夜中】
【天貴史】
[状態]:健康
[道具]:鎖鎌 不明支給品0〜2 通常支給品 懐中電灯
[所持金]:500万円
[思考]:助けが必要な者を助ける アカギ・赤松・治・石田に会いたい
“宇海零”という人物が気になる 主催に対する怒り
※鷲巣から『特別ルール』を聞いています。確信はしていませんが、可能性は高いと思っています。
【鷲巣巌】
[状態]:疲労、膝裏にゴム弾による打撲、右腕にヒビ、肋骨にヒビ、腹部に打撲
→怪我はすべて手当済
[道具]:防弾チョッキ 拳銃(銃口が曲がっている)
[所持金]:0円
[思考]:零、沢田、有賀を殺す
平井銀二に注目
アカギの指示で首輪を集める(やる気なし)
和也とは組みたくない、むしろ、殺したい
※赤木しげるに、回数は有限で協力する。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※赤木しげるに100万分の借り。
※赤木しげると第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。
※鷲巣は、拳銃を発砲すれば暴発すると考えていますが、その結果は次の書き手さんにお任せします。
※主催者を把握しています。そのため、『特別ルール』を信じてしまっています。
【井川ひろゆき】
[状態]:健康
[道具]:日本刀 防犯ブザー 不明支給品0〜2(確認済み)
村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 アカギからのメモ 支給品一式×2
[所持金]:1500万円
[思考]:赤木しげるとギャンブルで闘う この島からの脱出
極力人は殺さない
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※二枚ある地図のうち、一枚を平山に渡しました
【平山幸雄】
[状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
[道具]:支給品一式 首輪探知機 カイジからのメモ
[所持金]:1000万円
[思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る
カイジが気になる
※利根川に死なれたと思われていることを知りません。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※ひろゆきから地図をもらいました
投下は以上です。
長文のため、何度かサルに襲われましたが、ご支援いただき、助かりました。
天が空気と言われて久しいため、なんとか彼の地位向上を図った次第です。
少しでも、天が他の主人公たちと並び立ってくれれば幸いです。
乙です!
ボリュームたっぷりで読み応えがありました!
やっと天さんが出てきて、安心しましたw
ひろと出会ったことで話がどう動いていくのか、期待大ですね。
おつ華麗さま! いや〜原作では立ち位置がない(読者目線はひろだし、先輩・師匠格は赤木だし)天を、
原作の性格設定そのままでここまで活かすとは凄い! 本っっ当に感服しました!
大作乙です…!
勝ち気で傲慢な鷲巣様に対して、どっしり構えている天が格好良かったです。
さすが主人公。
ひろと平山のやり取りも良かった。
ひろ…立派になって…。
平山もヘタレなりに、ひろやカイジに感化されて頑張ってる。
これから成長しそうで期待。
2組の二人連れの、それぞれの対比がよく出ていて面白かったです。
圧倒的乙…!
やはり平山とひろはナイスコンビ…!
天の存在がしっかりあって安心しながら読めましたw
鷲巣と天という組み合わせがまたいいですね。お互いマイペースでほほえましい…
本当に乙でした!
大作乙です!
ワシズ様と天のやり取りに笑いながら、
ひろとダメギのやり取りに静かな情熱を感じました。
帝愛組がまとまっていますが、
対主催者もまとまってきていますね。
これからの展開も楽しみです。
投下乙…!
ダメギは良くも悪くも思考が一般人で共感が持てるな(記憶力は凄いが)
仲間も出来たしぜひこれからも頑張って欲しい
それにしても鷲巣様に対してのリアクションが楽しみだw
大作乙です…
和也同盟の裏でこんなことが…痺れました
それぞれのキャラの個性を伸び伸びと描写されていてとても面白かった
これからも投下楽しみに待ってます
天と鷲巣という組み合わせが意外。でも味がある…。
というか、天が出てきてほっとしたww
ダメギって、ウラベ戦直後、鷲巣と闘う前に来てる気がする。
鷲巣様をしってるのかな……?
>>423 確かに、鷲巣麻雀を知ってる平山なら、原作で一気に死亡ルート→死体発見になって、生きてる可能性が無いから…
「浦部戦直後の平山」という設定なら、ここで鷲巣様と初対面の方が自然だし
福本ロワの平山登場話を読んでも、浦部戦直後の設定のようだ
いやー面白かった
とても面白かったです!
アカギを知る4人のこれからの会話が楽しみ…
大作…お疲れさまです…!
天、地味に危なっかしい…大丈夫か?
鷲巣の拳銃がどうでるかも楽しみ…
そして平山とひろ…どちらが危ういのか…
保守的も危険、積極的も危険…楽しみです
天、ひろと合流して、出番を食われたりしないかな…。
せっかく活躍してるのに不吉なこと言うなw
ダメギはひろにキャラを食われない・・・、むしろ相互に引き立て合う関係・・・ッ!
だが天とひろはどうだ・・・・・・?(ざわ・・・)
ひろを凌いでもアカギが控えてる
やっぱ食われそうな気が…
やっぱり天空気化キャンペーンwwww
適度に自己主張しないとな
頑張れよ天
自己主張しすぎても早死にしそうだけどな。
生き残って人数が10人切れば登場回数も増えるだろ。
いっそ空気化することで長寿を狙うという手もあるぞ、天。
鷲巣、ひろ、ダメギ、アカギ・・・
どれもこれも濃い面子が揃っている上に、
ドアを挟んで、同じぐらい濃い帝愛組の面子が控えている。
天・・・存在も危ないけど、命も危ないぞ・・・!
まだこんなにこのロワに読み手が残っていたことに驚いた
しばらくは安泰だな
完結が楽しみだ
大作乙
ダメギの呼び方が「ひろゆき」から「ひろ」に変わってるのに何故かホロリときた
パロロワ総合サイトのパロロワ毒吐き別館で
(と言っても、今、実質的な交流スレとなっています)
各ロワを紹介してくださる”褒め殺し?のピンク”さんが
福本ロワの紹介をしてくださいましたのでこちらに添付します。
過疎ロワ住人専用スレ2
1665 :褒め殺し?のピンク:2009/10/07(水) 02:55:30 ID:???0
批評なんて……そんな大層なものじゃないっ……
これはただの……ただの戯言のようなものっ……
だが……それでもいいなら……語ってみよう……!
福本ロワ……それは命がチップの……最悪のギャンブルッ……!
そして、参加者に金が支給され……これで色々な事が出来る……
例えば……30分100万円で入れる……島に点在するギャンブルルーム……!
ここでは一切の暴力が禁止されている……、賭けで勝負の場……
さらには1億を溜めると……なんと殺し合いを棄権できる……!
それがこのロワの最大の特徴っ……!
金……これがあれば確実に有利っ……
ひ弱な人間でも生き残る事が可能になる……誰よりも信頼に足るもの……
ゆえに、死にたくないのなら……命と金っ……
この二つを得る為に……殺し合いは加速するだろうっ……
それを見越してこのルールを作った主催達……
そして……そんな世界を作っていく書き手達っ……
まさしく……、まさしく狂気の沙汰っ……!
なんて恐ろしい事を考え付くっ……
狂人にしか考え付かない、人ではありえない……まさしく悪魔の所業っ……!
投下します。
「ご…めんなさい…」
治は消え入るような声でつぶやくと、気を失ってしまった。
「治っ!」
「治くんっ…!」
黒沢と石田が呼びかけるが、一向に目を覚ます気配が無い。
「ぐっ…!危険だ…このままじゃ…!」
「どっ…どうしよう…!黒沢さんっ…」
黒沢の額に脂汗が浮かんできた。
黒沢も同じような症状で倒れたことがある。以前、若者の集団と戦い、頭を何度も殴られ、
人生二度目の走馬灯を見る羽目になった。
(今、あの怪我から奇跡的に助かって俺はここにいる。
回復した矢先に、目が回るくらいの治療費(いっそ目覚めない方が良かったんじゃないかと思うくらいの)
のことを聞かされたが、それでも、こうして生きていられることを天に感謝している。)
だから、わかる。治の今の状態が、生死の淵を彷徨う危険な状態であること。
すぐにでも救急車を呼び、医者に見せなければならないということ。
しかし、この島では救急車など呼ぶことは出来ない…!
『殺し合え』などとふざけたルール…掟がまかり通っているのだ…!
「その人…具合が悪いんですか…?」
「!?」
背後からか細い女性の声が聞こえた。
黒沢たちが驚いて振り返ると、そこには若い女性が木陰から心配そうにこちらを見ている。
「あ…ああ…」
黒沢は、女性が手に持っている武器に思わず顔を強張らせたが、ひとまず警戒心を解き、返事を返した。
その女性は銃火器を持っているが、背後から自分達の背中を撃たずに、声をかけてきたのだから…。
「あなた達を攻撃するつもりはありません。よかったら…病状を診させてもらえませんか…?
私、昔は医療に携わっていたことがあるので…」
「医療に…?」
「ええ…。」
「あんたは…一人か…?」
黒沢は訝しげに聞いた。
「ええ、今は…。少し前まで、この島で知り合った、ある人と一緒に行動していたんですが…。
凶悪な殺人鬼と出くわしてしまって…。
私の見ている前で、その相手と殺人鬼が相打ちになりました…。
私は…良心が咎めたんですが…。二人の死体から武器を取って、ここまで逃げてきたんです…。」
「なるほど…それで…」
女性はその時のことを思い出しているのか、俯いてぶるぶると肩を震わせた。
黒沢がその女性に抱いていた違和感。
ざっと見た限りでも、防弾ヘルメット、ボウガン、マシンガン、膨れ上がったデイパック…。
元々支給されたにしては、持ち物の量が多すぎる。
だが、止むにやまれぬ理由で、三人分の荷物を所持しているのだと分かれば、不審がる必要も無い。
「そりゃあ、怖かっただろうね…!」
横で聞いていた石田が、女性に同情の眼差しを向けた。
「ええ…とても…。でも良かった…!あなた達のような温厚な人たちに出会えて…!
私は田中沙織と言います。以前は看護士をしていました。どうか、手助けをさせてください…!」
そう言うと、沙織は顔を上げ、黒沢、石田の二人にニコッ…と笑いかけた。
お人好しの石田はともかく、これで黒沢がコロッ…といっちまったのは言うまでも無い。
一気に広がるっ…漕ぎ出す…妄想の大海へっ…!
ナースっ………!?
美人のナースっ…!圧倒的ナースっ…!
闇に舞い降りた白衣の天使っ…!ザ・ホスピタル・エンジェルっ…!お色気病棟24時っ…!
(ああっ…馬鹿っ…馬鹿っ…!オレという奴は…美心というものがありながら…!)
黒沢はぶんぶんと首を振り、煩悩を断ち切らんとした。
「どんな風に倒れたのですか?」
沙織は横たわっている治の瞼をめくり、覗き込みながら石田に聞いた。
「さっきまで元気に歩いてたのに、急に気分が悪い、頭がぐらぐらすると言って…!
数時間前に頭に怪我をしたそうです…この島に来てすぐって言ってたから、おそらく昼過ぎくらいに…」
「怪我…どのような…?誰かに殴られたのですか?それとも転んだか何かで…?」
「申し訳ない…詳しく聞き出す前に、気絶しちゃったんだ…!」
石田は涙目になっていた。治の様子がおかしいのをいち早く感じでいたのは自分だったのに。
様子がおかしいのを『怒っている』と勘違いして…もっと早く気がついていればっ…!
「…治の症状…まずいか?やっぱり…」
妄想の海からようやく我に返った黒沢は、沙織に話しかけた。
時計を睨みつつ治の脈をとりながら、沙織は言った。
「単なる脳震盪ではないと思います。頭蓋骨にひびが入っていたり、内出血を起こしていたらまずいわ…。
手術が必要な状況なら私もお手上げ…。検査も出来ないし…。今できる最善は、できるだけ患者を動かさないこと…。
でも、そうも言ってられないわね。ここにいたら、誰に襲われるか分からない…」
黒沢は立ち上がり、ある方向を指差して言った。
「じゃあ、一先ずあそこに見えてる別荘に移動しないか…?
あの別荘には一度入ったことがあるんだ。
夜を明かすための根城になるし…何より、あそこには身を守るためのたくさんの武器がある…」
「武器ですって…!?」
沙織が身を乗り出して聞き返すと、黒沢は頷いた。
「誰かがあそこに大量に武器を隠して行ったんだ。
オレが別荘を去ってから誰も入っていなければ、まだそのままになっているはず…。
あ……!いや……!!」
「どうしたの?」
「いや…思い出した…。オレが去る前、来訪者がいたんだ。望まぬ来訪者が………!」
「それって、もしかして黒沢さんの彼女を………」
黒沢は、石田の言葉に頷いた。
「そうだ…!オレは守ってやれなかった…!彼女を…!
オレが部屋を離れたせいで、凶悪な侵入者は、入れ違いに彼女のいる部屋に入り、マシンガンを連射した…!
発砲した直後にオレは奴を張り倒したが、間に合わなかった…!」
「…黒沢さん…マシンガンを持っている相手に、素手で!?」
「いや…奴の死角から不意打ちだったから、銃火器を持っているかどうかは問題じゃなかった。
……奴は彼女を殺すことに夢中だったから……!」
「なんてひどいっ…!」
「…で、その侵入者はあなたに張り倒されてからどうなったの?」
沙織が、二人の話に冷静に割って入った。
黒沢は俯いた。
「その後は…ショックで…うろ覚えなんだ…。
張り倒してから、奴が倒れて…それっきり襲って来なかったから、気を失ったんじゃないかと思うが…。
オレはすぐに彼女の亡骸を抱えて外に出たから…」
「…止めを刺さなかったの…?」
黒沢と石田は驚いて沙織の顔を見た。沙織は、少し慌てた様子で言った。
「だ、だって…目の前で恋人を殺されたんでしょう…?だから…犯人が憎くなかったの…!?」
「正直…そこまで考えが及ばなかった…でも…。
おそらく、美心も復讐など…望んでいないだろうし………」
「美心ですって…!?」
黒沢の口から出た言葉に、沙織は少なからず動揺した。
「知ってるのかっ…!?美心のこと…!」
「え…いえ…ううん、勘違い。知らないわ。それより…。侵入者を張り倒して、気絶させたのね?
じゃあ、その侵入者が目を覚まして、部屋にまだ潜んでいるんじゃないの…?」
「ああ…そうだ。その可能性もある」
黒沢は、我ながら唖然とした。何故今までその可能性に気が付かなかったのか。
沙織は溜息をついた。
「危なっかしいわね…。もしその犯人の事に気が付かず部屋に入ってたらどうなってた…?
全員蜂の巣にされるところじゃない…!」
「ううっ…その通りっ…!すまん…!」
「無理もないよ…。恋人を喪って動揺してたんだろう、黒沢さん」
「いや…仕方ないじゃ済まない。アンタらを危険な目に合わせるところだった…!
じゃ…じゃあ…あの別荘に入るのは危険だから、やめよう。どこか別の場所に………」
「いいえ…、あの別荘に行きましょう」
沙織は別荘のほうを見ながら、決然と言った。
「もし武器が大量にあるのなら、『凶悪な侵入者』に武器が渡ったままになるのは恐ろしいことだわ…。
もしかしたら、もう移動してるかもしれない…そうしたら武器は持っていかれてしまってるかもしれないけれど…。
まだ別荘に一人で潜んでいるなら、武器を奪える。人数の多いこっちのほうが有利だわ」
「え、でも…戦うなんて…」
「いい…?武器は絶対に必要…。ここは戦場なのよ。
丸腰のままでいるなんて論外…!凶悪犯たちに向かって、どうぞ殺してくださいって言っているようなもの…!」
二人は沙織の剣幕に圧倒された。
沙織の言っていた、『目の前で殺人鬼と同行者が相打ちになった』…。
その惨状を見ているからこその言葉なのだろう、と受け取った。
支援
黒沢、石田、沙織は、茂みの影に隠れながら別荘の近くまで移動した。
別荘の周辺には照明が無く、僅かな月明かりを頼りに玄関先の階段を上った。
別荘は一階建てだが、見晴らしが良いように床を高く作ってあるのだ。
沙織が頷くと、それを合図に、沙織からウージーを借りた黒沢が先頭に立ち、そろそろと玄関の扉まで移動する。
石田は治を背負い、少し距離を置いて黒沢についていく。沙織もそれに続く。
先頭の黒沢は、音がせぬようにゆっくりと扉を開けると、手に持っていた『あるもの』を放り込んだ。
ドンッ…ガラガラガラッ……!!
「………………………………………」
扉の陰に隠れて様子を見る。僅かな音も聞き逃すまいと、懸命に聞き耳を立てる。
数分経ったところで、何も変化がないのを確認した黒沢は、石田や沙織と頷き合った。
黒沢を先頭に、中へと進入する。
フローリングの床に、先程黒沢が投げた物…デイパックからはみ出た石が転がっていた。
◆
「別荘のどこに潜んでるか分からない…用心するに越したことは無いわ。
玄関入り口前まで着いたら、まずはこれを中に放り込んで」
沙織は、3つ持っていたデイパックの一つを空にし、石を詰め込んだものを黒沢に渡した。
「何かしらの反応があったら、この手榴弾も放り込んでから進入するわ。
中にいる人間が爆発を逃れても、最悪でも威嚇にはなるはず」
「で、でも、…もし、黒沢さんの恋人を襲った犯人はすでに逃げた後で、
全く別の人…ここへたどり着いただけの人だったら………?」
「それは黒沢さんに判断してもらいましょう。犯人なら背格好や声でわかるわよね…?」
「ああ…わかった」
沙織の立てた計画は悪くない。
ただ、沙織に借りたウージーを使うかもしれないと思うと…。黒沢は気が重かった。
(しかし…しかしっ…相手は無抵抗の美心を容赦なく撃ち殺した男…!
放っておけば更なる悲劇を生み出すかもしれない…!だからっ…………!!)
懸命に己を鼓舞し、黒沢は別荘への階段を上ったのであった。
◆
だから、正直誰も居なくて助かった、と内心ではホッとしていた。
玄関入り口の電気をつけると、僅かな光ながら部屋の内部を見渡すことが出来た。
キッチン、バスルームへの入り口は開けたままになっている。黒沢が見廻りをしたとき、あえて空けておいたのだ。
寝室の扉も開け放したままになっていた。
「あそこだ…。あのベッドの上で、美心は殺された…。」
寝室に入ると、僅かに残る血の匂いに、黒沢の顔が歪む。
ベッドサイドに点々と飛び散った血が、黒く乾いている。
「武器がこんなに…」
沙織は、床に散乱していた武器を見回した。
「少し血がついた布団だが…ここに治を寝かせよう。地面よりずっと寝心地はいいはずだ」
黒沢はウージーを床に置き、石田の背から治を抱き上げ、ベッドに寝かせた。
沙織は、ウージーを拾い上げた。
「マシンガン…返してもらうわね…」
「ああ…、田中さん、それよりもう一度治の様子を………」
「た、田中さんっ…?」
石田の上ずった声に、何事かと振り返る黒沢。
そこには…グレネードランチャーを石田と黒沢に向かって掲げ、今にも発砲しそうな沙織の姿があった。
「ご苦労様…。ありがとう…、おかげで新しい銃が手に入ったわ…。
『弾切れのマシンガン』じゃあ心許無いもの………」
沙織の目はギラギラと光り、グレネードランチャーの先端は、腕が重さに震えながらも、はっきりと『獲物』へと向けられていた。
「な、何だ…!?どうした、田中さんっ…!」
「ひいいっ…!」
黒沢は驚愕して田中に問いかけた。『白衣の天使』が、何故自分達に銃を向けるのか…?
全くもって似つかわしくない光景…!
「ありがとう、って言ったのよ…。どういう意味か分からないの…?」
沙織は泣き笑いのような表情を作って見せた。
「ねえ、一つお願いがあるんだけど………。」
「な…何だ……?」
「死んでっ…今すぐ……………!」
沙織はグレネードランチャーを発砲した。
ボンッ………!!
薄闇の中、沙織の発砲した弾は、とっさに身をかがめた黒沢の頭上を掠め、壁にぶつかると思ったより柔らかい音を立てた。
ゴム弾なので、怪我をさせることは出来ても、人を殺すことは出来ぬ代物…!
「何これ…普通の銃じゃないの…?」
沙織は一瞬焦りの表情を顔に浮かべたが、すぐに背後にグレネードランチャーを放り捨てると、
脇に抱えていたボウガンに持ち替えた。
「いいわ………ボウガンでも撃ち殺せる………」
「待てっ…田中さん…!さっきの話は全部嘘だったのかっ………!?」
黒沢の問いに、沙織はフフ、と自嘲の笑みを浮かべた。
「全てが嘘って訳じゃないわ………。襲われたところまでは真実…!
相打ちになったんじゃなく、一方的に殺されそうになったところを、反撃するしかなかった…。
殺されたくなきゃっ…殺すしかなかったのよっ………!」
「まさか…仲間の人も、アンタが………?」
石田の問いに、沙織は一瞬表情を暗くした。
「さあね…。私が3人分の支給品を持っているんだから、『推して知るべし』って奴じゃないかしら…?」
「なんで…」
「決まってるじゃない………!優勝して生き残るからよ………!それしか道は無いから………!」
沙織は悲痛な叫び声を上げた。
「そんな…棄権するという手だって…」
石田は言いかけて、黙った。
棄権するにしろ、ギャンブルで金を賭け、誰かから奪うか…賭け事に自信が無ければ、殺してでも金を奪うしかない。
「棄権出来ないの…このゲームは……」
沙織は消え入りそうな声で言った。それを聞き咎めた石田は、恐ろしいのも忘れて沙織に聞いた。
「……え?それってどういう…」
「うるさいっ…!いいからもう死んでっ………!」
沙織が石田に向けてボウガンを向けた、その時。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「ひいっ!」
「キャアッ…!」
突然、身近に落ちた雷のような大声に、その場に居た沙織と石田は、驚きのあまり耳を塞いで固まった。
大声を張り上げたのは黒沢だった。
黒沢は、大声を上げた直後、驚いて縮こまってしまった石田と、ベッドの治をひょいひょいっと両脇に抱えると、
一目散に退散っ…!猛ダッシュっ…!生還っ…!大脱出っ…!
開いていた玄関から階段を駆け下り、あっという間に闇に消えた…!
「………………………」
沙織は一人取り残され、しばらくの間呆然と立ち尽くしていた。
やがて、息を吐くと、万が一黒沢が戻ってきた時のことを考え始めた。
武器をまだ物色していない………。その間、自分の身を守らないと…!
◆
森の中をがむしゃらに逃げてどれくらい経っただろう。
二人の男を両脇に抱えて走っていたが、さすがに数十分で限界っ…!
黒沢は、肩でぜえぜえと息をした。
「く、黒沢さん…。ありがとう、もう大丈夫だから降ろして…」
石田は弱々しい声で黒沢に言った。
「ああ…悪かった、荷物みたいに運んじまって…」
「いやあ…。腕力あるんだね…すごいや…」
「まさに火事場の馬鹿力ってやつだ…。さっきはいきなり驚かせて悪かったな…」
「おかげで助かったよ…本当にびっくりしたけど、あの人を驚かせて…威嚇して、隙を作る…それが狙いだったんだろう…?」
「そうっ…!威嚇…!今回はドンピシャ…まさにそれが狙いだった…!」
「今回……?」
石田が聞き返すと、黒沢は自嘲の笑みを漏らした。
「今まで、女の娘に声かけても…たいていギョッとされる…引かれる…逃げられる…!
こっちは威嚇してるつもりなんか皆無なのにっ…!」
黒沢は、ううっ…!と嗚咽を漏らし始めた。
「でもっ…あの女性は…!美心は…!そんなオレを受け入れてくれたのだっ…!
引いたり、嫌な顔をせず、一緒に行動してくれたっ…!
それなのにっ…!守れなかった…オレはっ…!」
「ううっ…!」
貰い泣きしている石田を見て、黒沢は少しずつ平常心を取り戻し始めた。
「ここにいるのはマズイっ…。治も、どこかで安静に寝かせてやりたいし…。」
「あ…黒沢さん、あれ…」
石田が指差した方向には、民家が並ぶ一角があった。
「家の中で休めるんじゃないかな…?」
「ああ…あの奥に見える家に入ろう……。」
治を抱えた黒沢と石田は、民家のうちの一つに入っていった。
そこは奇しくも、カイジと沙織がゲーム開始直後に出会った民家、その場所であった。
◆
沙織はまず玄関のドアを閉め、ドア前に、調度品のテーブルを引っ張ってきて、倒し、バリケードにした。
玄関のドアは円筒のドアノブでなく、横に伸びているレバーハンドル式なので、
ちょうどテーブルの台をノブの下からかませると引っかかり、外からは開けられなくなるのだ。
ざっと見たところ、人が外から入れそうな大きな窓は、寝室にしかない。あとは子供も通れないような小窓だった。
窓からの侵入に備えて、鍵のところに備え付けの電話から引っ張ってきたコードを巻きつけた。
窓を強引に空ければ電話機が落ち、電話機の棚の下に置いた金属の盆に激突して大きな音を立てる。
つまり敵を驚かせ、隙を作るための罠を仕掛けた。
黒沢達が戻ってきてもこちらが先に気が付き、先に撃ち殺すことができるように。
そうしておいて、床に散らばった武器をゆっくりと物色にかかる。
ベッドサイドに備え付けてあったランプシェードを持ってきて、床に置き、明かりをつけた。
手探りで武器を集めにかかる。色々な物が床に散乱している。
木刀を拾い上げ、使いこなせないからと捨てる。グレネードランチャーの方がまだ威嚇に使えそうだ。
先程背後に放り投げたグレネードランチャーを探し出し、手に取った。ずしりと重い。
(もっといい武器はないかしら…。軽い拳銃とか…)
ふと、暗がりの中、視界の隅に黒い靴底が映った。
背中に冷たいものが流れる。
(見ては駄目。見ては駄目。見ては駄目)
本能がしきりに警鐘を鳴らしているのに、手は警告に反するように、そろそろとランプシェードを掲げ、
闇の中に仰向けに倒れているであろう人間の、足先より遠くを照らそうとする。
そこには。
黒沢の言っていた、『マシンガンを持った来訪者』の成れの果ての姿があった。
薄明かりに浮かぶ青白い顔…。
半開きの空ろな目、眼球が、ランプシェードの明かりを受けてぬらぬらと光っていた。
手は頑なに武器を放すまいと……右手にマシンガン、左手に包丁を掴んだまま、事切れていた。
三好の死体は、寝室の扉を開いた状態のままでは、ちょうど扉の陰になっていたのだ。
寝室の扉は内開きで、外から室内を見渡しても、ちょうど死角になる位置に倒れていた。
寝室の中では、薄暗さも手伝って、誰も三好の死体に気が付かなかった。
黒沢たちが逃走し、沙織が玄関のドアに細工してから寝室に戻って来た時も、
寝室の扉は開けたままにしておいたため、意識的に死角になっていた。窓に罠を仕掛けていたときも同様である。
床の武器を物色しようと…明かりをつけ、床に意識を集中して初めて、三好の死体に気が付いたのである。
「ひ………」
手で口を塞いでも、悲鳴が漏れ出すのを抑えることが出来ない。
「ひああああああああああっっっ……あああっ……!」
沙織が恐怖に我を忘れたのは、死体を見つけた…それだけではない。
沙織は、三好…マシンガンを手に握り締めて死んでいたマーダーの死体に、己自身を重ねてしまった。
自分のそう遠くない未来を見た、という妄想に取り憑かれた。
『自分の死体だ』……と、脳が認識してしまったのである。
「ああああああっ………あああ…ああああああっ………………ああああああああああああ…………………!」
沙織の内に残っていた僅かな正気が、ガラス細工を割ったように粉々に砕けていく。
有賀のように、『殺しを愉しむ事ができる』人間ならば、死んだ殺人者に己を重ねて取り乱すことは無かっただろう。
客観的に己を省みたところで、恐れおののく事は無かっただろう。
罪悪感。心中に溢れそうになりながら、必死に堪えてきた慙愧の念。
人を殺すということは、誰かに殺されるということだ。
殺人快楽症の人間に、復讐に我を忘れた人間に、恐怖に取り付かれた人間に。
殺される。
「ああああああっ…………あ……っ……ああ…あ……ああああああああっ…………………………!」
沙織は頭を抱えて床に蹲り、甲高い悲鳴を上げ続けていた。
「人間らしさ」と定義されるもの…。
皮肉にもその感情が、沙織の内に残っていた「人間らしさ」を破壊した。
話の部分は以上ですが、状態表を投下する前にさるさんになってしまいました。
代理投下をお願いいたします。
461 :
慙愧20/21(代理):2009/10/09(金) 03:35:41 ID:1kSoDU0Z
【C-4/民家/真夜中】
【黒沢】
[状態]:健康 やや精神消耗 軽い疲労
[道具]:不明支給品0〜4 支給品一式×2 金属のシャベル 小型ラジカセ
[所持金]:2000万円
[思考]:カイジ君を探す 美心のメッセージをカイジ君に伝える 治を気遣う 沙織から身を隠す
※メッセージは最初の部分しか聴いていません。
※田中沙織を危険人物と認識しました。
【治】
[状態]:気絶(昏睡状態) 後頭部に打撲による軽傷、強い吐き気・頭痛・目眩
[道具]:
[所持金]:0円
[思考]: アカギ・殺し合いに乗っていない者を探す ゲームの解れを探す
【石田光司】
[状態]:健康 やや精神消耗 軽い疲労
[道具]:産業用ダイナマイト(多数) コート(ダイナマイトホルダー) ライター 支給品一式 拡声器
[所持金]:1000万円
[思考]:カイジと合流したい カイジのためなら玉砕できる 治を気遣う 沙織から身を隠す
※田中沙織を危険人物と認識しました。
※石田が落としたダイナマイトはB-6、C-6、D-6のどこかに落ちています。
【D-5/別荘/真夜中】
【田中沙織】
[状態]:恐慌状態 重度の精神消耗 肩に軽い打撲、擦り傷 腹部に打撲
[道具]:支給品一式×3(ペンのみ1つ) サブマシンガンウージー(弾切れ) 防弾ヘルメット 参加者名簿 ボウガン ボウガンの矢(残り6本) 手榴弾×1 グレネードランチャー ゴム弾×8 木刀 不明支給品×6
[所持金]:1億200万円
[思考]:絶望 武器が欲しい 死にたくない 森田鉄雄を捜す 一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒 カイジから逃れる 涯、赤松、その二人と合流した人物(確認できず)に警戒 黒沢、石田に警戒
※標の首を確認したことから、この島には有賀のような殺人鬼がいると警戒しています。
※三好の所持品、イングラムM11 30発弾倉×5 包丁 支給品一式がそのままになっています。
乙です!
沙織の[思考]の欄を見てると警戒だらけで泣けてくる…
マーダーからマーダーに狂気が伝染してる様な気がしてゾクゾクしました
投下乙です。
沙織が強かすぎる…。
黒沢の妄想も楽しかったけど、相手が相手なだけに笑えなかった…。
最後に沙織が精神崩壊し始めましたね。
バトロワらしい鬱展開でした。
この続きも楽しみです。
黒沢、頼りになるなぁ。
考えてみれば黒沢って力が強い、ガタイがいい、頭も結構いい、優しい、
職場の人間関係も(原作最終回後なら)円満で人望あり、
地位を考えるにそう安月給でもなかろう……年齢と顔以外、
男として欠けているものなんて殆どないんだよな。
沙織は沙織で、平凡な、普通の女性なのかも。強かさも脆さも込みで。
投下乙
てか黒沢の体力やべぇwww
>>460乙
面白かった!
治やばいなぁ。頭にダメージ負った状態で手当ても受けられず
逃げる時の振動で揺さぶられるとか死亡フラグが立ってる気がしてならない
どうなるのかドキドキする
三好みたいに目覚めないまま退場になったら悲しいな…
お久しぶりです。
本日はご相談があり、レスしました。
実は昨日、パロロワラジオのリスナーである
感電様からのお誘いでラジオに参加しました。
その時、リスナーの一人である、ジョジョロワの書き手さんであるスナイプガール様と仲良くなりまして、
もしよかったら、ジョジョロワと福本ロワ合同の対談ラジオを行わないかとお誘いをいただきました。
もし、皆様がお許しになってくださるのであれば、是非、開催したいと考えているのですが、どうでしょうか?
ご意見お待ちしております。
ガテン系の中でも建築関係はいちばん腕力あるよね……っ!
>>468 いいですね〜面白そう。
開催が決まったら是非参加したいです。
>>468 ジョジョも福本も好きな人は多いかもしれんね
自分もそうだから、あるとしたら楽しみだ
レスありがとうございました。
開催という方向で調整したいと思います。
日時などはスナイプガール様と相談の上、
随時、ご報告します。
スナイプガール様と相談した結果、
放送日時が決定しました。
放送は10月30日の22時からです。
当日、スナイプガール様が
ジョジョロワのスレと福本ロワのスレに
ラジオのアドレスと実況スレのアドレスを
貼り付けてくださります。
お時間のある方はぜひ、参加してください。
特に、乱入は心からお待ちしております。
乙!
楽しみにしてます!
∩00 ∩
. ⊂ニニ ⊃ ⊂ ニ )-- 、
,. ---ゝ ) | レ'/⌒ヽヽ
.( (´ ̄ ̄ / / ノ.ノ ○ ○
ヾニニ⊃ `'∪ ⊂ニ-‐'
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,| ''
∩00 ∩
⊂ニニ ⊃ ⊂ ニ )-- 、
,. ---ゝ ) | レ'/⌒ヽヽ
. ( (´ ̄ ̄ / / ノ.ノ ○ ○
. ヾニニ⊃ `'∪ ⊂ニ-‐'
がっ…! 保守っ…!
予約が二つもっ…!
止まらぬワクテカっ…!
保守
アカギ、カイジ、村岡投下します。
夜が齎す深く暗い闇。
時に人はその闇に恐怖を感じる…何も見通せぬその闇に……
バトルロワイヤル1日目。だいぶ夜も更けたその闇の中、大通りを一人走る男がいた。
伊藤開司。幾度となく不条理なゲームに巻き込まれてきた彼が今おかれている状況は、そう優しいものではなかった。
『田中沙織は銃器を持っているんだろう・・・?
もはや敵同然の相手を捜して動くのは危険なんじゃないか?』
『自分が裏切った男に追いつかれて、話を聞こう、なんて余裕があるわけがない。
お前が今やろうとしていること…。
それは、助けてやろうとしている相手を追い込み、その手をさらに汚させることに他ならない…!』
平山、銀二の二人の言葉が改めてカイジの胸に重く圧し掛かってきた。
自分のやっていることは本当に正しいのか。
彼女の為、自分の為…今、自分がやろうとしていることは…
(…やっぱり…早いとこ見つけないと…!)
なんだかんだと理由をつけてみても、自分が彼女から避けること…それは自らに降りかかるかもしれない危機を避ける為でしかない。
(そんなの…ダメ…! 絶対ダメ…自分の身可愛さに逃げてどうする…今、本当に辛いのは…)
そう、今、本当に辛いのは奪った金で棄権するという手段を潰され、助かる術を失った彼女…
誰かが彼女にそのことを教え、守らなければならない。
(とりあえず…行くしかない!)
銀二に応急処置をしてもらったおかげで足の状態はさほど悪くない。
さらに走るペースをあげていこう…としたとき、
「…待つざんす!」
カイジを呼び止める声が聞こえ、その場に足を止めた。
村岡に自分の上着のポケットの中のメモに目を通す余裕が生まれたのは原田から分かれて暫く後のことだった、
ひたすらに闇の中を小走りに逃げ続けた村岡は、人通りの多そうな大通りに近づいたことで、ようやくまともに思考する余裕が生まれたのだ。
村岡はメモの内容を必死に確認した。中間報告に指定された場所と時間、そして追加の指令…
『首輪の構造、性質等、首輪の解除に有益となる情報および物資の収集と調達。』
メモの最後にはそう書かれていた。
「こんなことならあの首輪をあいつらに渡すんじゃなかったざんす…」
思い返すは以前に自分の持っていた首輪。赤松と標に渡したあの首輪さえあれば…あるいは、原田から何か武器をもらえていたかもしれないというのに…
新たに調達しようにも、今の自分には人を殺すことが認められていない。
出来ることは死体を捜すか…もしくは……
村岡が大通りを走るカイジを見つけたのはその直後のことであった。
「お前…あのときの…!」
「探したざんすよ…!」
とうとう見つけた。憎き獲物…伊藤開司…自分をコケにしてくれた屑…ゴミ…悪魔…
どのように恨みを晴らすか…村岡はなるべく自らの感情を悟られぬように注意しながら、カイジに語りかける。
「お願いざんす…もう一度、もう一度ワシとギャンブルをしてほしいざんす!!」
カイジへの恨みをひたかくし、ただただ頭を下げる。例えどう思われようとも、勝負に持ち込めなければ意味がない…
ギャンブルルームでの約束は絶対。人を殺せぬ自分が恨みを晴らす為にはギャンブル勝負に持ち込むより他はない…!
「今はそれどころじゃ……!?」
唐突に現れたかつての敵に頭を下げられ、困惑を隠せないカイジ。
しかし、そんな彼の目の前に再びあの男が現れた…
「…赤木…しげる…」
アトラクションゾーンを立ち去ったアカギは、第2放送の時間を考え、病院目指して南下していた。
その視線の先にいたのが、ひたすらに走る男。
(あれは…カイジか。伊藤沙織が一人でいたから既に死んだものかと思ったが…)
連れの男とはぐれ、殺しに走る女。それを探している男。細かい事情は分からないがだいたいの想像はつく。
そんなことにわざわざ関わろうとするアカギではない。気づかれぬように立ち去ろうとしたのだが…
…一変! カイジに接触を図ってきた男を見つけ、その様子を窺う。
そして、先程カイジから聞いた、帝愛のゲームに関わっていた人間と判断…!
そして接触…少しでも情報を聞き出す為に……
「…こんなところで再会することになるとはな。正直、読みが外れた…」
少し残念そうな笑みを浮かべながら、カイジに語りかけるアカギは彼の耳元でそっと囁く。
「探し物は北にある…早く行け…」
「な…!?」
その言葉に若干戸惑うカイジだが、すぐにその意味を悟り北を向く。
「…悪い。ここはまかせた…」
そう言い残し、カイジはその場から走り去った。
【E-3/大通り/夜中】
【伊藤開司】
[状態]:足を負傷 (左足に二箇所、応急処置済み)
[道具]:果物ナイフ 地図 参加者名簿 島内施設の詳細パンフレット(ショッピングモールフロアガイド、
旅館の館内図、ホテルフロアガイド、バッティングセンター施設案内)
[所持金]:なし
[思考]:田中沙織を捜す 仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒
赤木しげる(19)から聞いた情報を元に、アカギの知り合いを捜し出し、仲間にする
平井銀二の仲間になるかどうか考える
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。
※アカギのメモから、主催者はD-4のホテルにいるらしいと察しています。
※アカギを、別行動をとる条件で仲間にしました。
※脱出の権利は嘘だと確信しました。
※明日の夕方にE-4にて待つ、と平井銀二に言われましたが、合流するかどうか悩んでいます。
※アカギの言葉から田中沙織は北にいると思っています。
「ま…待つざんす…!」
走り去ろうとするカイジを村岡は必死に捕まえようとするが、彼らの間に入ったアカギがそれを許さない。
「な…何を…ワシはあの男に用が……」
「俺はあんたと話がしたいんだがな…」
アカギの雰囲気に飲まれそうになりながらも村岡は決して折れない。
「お前に用はないざんす! そこを退くざんす!」
強情な村岡にアカギは語りかける。
「お前…あいつとギャンブルがしたいんだろう…? だったら俺が相手になろう…」
そう言うとアカギはジェラルミンケースを開け、その中身を村岡に見せる。
「やろうぜ…己の全てを賭けた…ギャンブルってやつをな……」
E-2、小道沿いのギャンブルルームに移動した二人はそれぞれ100万円を支払い入室。
種目とルールの詳細は道中での話し合いにより、サイコロの出目で優先権を決めて各自が提案することに決定…
そして、その結果……種目の選択は村岡。ルール調整はアカギ。
(…この勝負もらったざんす!)
村岡は当然のように十七歩を選択。自分の得意なゲームで勝負を賭ける。
(何かルールを付け加えるとしたら、さっきの原田との勝負のようなこちらの動きを制限するものに違いないざんす…でも、同じ手に何度も引っかかるほど間抜けじゃないざんすよ…)
村岡が待ちわびる中、アカギはあるテーブルの上から麻袋を持ってきた。
「そうだな…じゃあ、その十七歩にはこれを使うか…」
卓の上にばら撒かれたのは氷のように透き通った透明な麻雀牌。
「…両面牌による十七歩。言うならば……薄氷歩…!」
・薄氷歩ルール
互いに34牌を袋から取り出し、通常牌・両面牌に関わらず、伏せて自分の前に通常のヤマと同じように並べる。このときから、盲牌できないように皮手袋は必須。
目の前の34牌を相手に見せないよう開き、制限時間3分以内に 13牌選び、聴牌の形を作る。但し、通常の十七歩と違い、満貫縛りは無し。
東風戦で、場は親が東で子が西。
互いに捨て牌候補21牌の中から17牌を切っていき、先に相手のアガリ牌を切ったプレイヤーが負け。
河底ロンはアリ、ダブリーは無し。(通常のリーチ扱い)カン、その他鳴きも一切無し。
フリテン、チョンボは自動で敗北。
「点は15000点。それが先に無くなるか、ギャンブルルーム使用時間終了5分前に点がより少ない方の負け…それでいいな?」
「分かったざんす…」
(牌が透けて見えて困るのはどっちも一緒…このルールなら十七歩に慣れてるワシの方が圧倒的に有利。この男の全て…金も所持品も、何もかも貰って奴隷にしてやるざんす!)
東一局 親 村岡
ドラ表示牌 九萬(両面牌)
村岡の初期34牌
通常牌
六萬、八萬、二索、四索、六索、三筒、五筒
両面牌
一萬、四萬、五萬、五萬、六萬、七萬、八萬、八萬、二索、三索、五索、五索、九索、二筒、三筒、四筒、四筒、五筒、六筒、七筒、九筒、北、西、白、發、中
(…ドラの一萬は使えないざんすね。他の?九牌もバラバラで役を作れそうにないざんすし……)
村岡は改めて透き通った両面牌に目を配る。
(…通常の十七歩と、この薄氷歩で決定的に違うのはやはりこの両面牌…! いくら多面待ちにしてもそこが見え見えじゃ意味無いざんす。それにフリテン、チョンボが即死じゃあ、自分のアタリ牌は捨て牌候補に入れたくないざんす…)
思考の末、村岡の組んだ手…
五萬、五萬、六萬、八萬、八萬、三筒、五筒、二索、(二索)、(六萬)、(五筒)、(三筒)、(四索)
四索単騎待ち
アカギから見たとき
(?)、(?)、(?)、(?)、(?)、二索、五筒、三筒、八萬、八萬、六萬、五萬、五萬
(リーチ、タンヤオ、七対子…9600点。裏ドラが乗れば跳満で一撃ざんす…!)
そして、3分経過で手の構築終了…
公開されるアカギの手に村岡は驚愕…!?
村岡から見たアカギの手
(?)、(?)、中、(?)、白、(?)、北、(?)、西、(?)、南、(?)、東
(七対子の…字…一色…!?)
普通、ドラや字牌で待つことはまず考えられない。アカギの手は十七歩に精通した村岡にはまず考えられないものである。
(いや…あの男は自分からこの両面牌を指定してきたざんす。こんなみえみえであからさまな七対子なんて作るわけがない……)
しかし、通常牌は各種類1つずつ。つまり、こちらから見えていない通常牌は全て違う種類の牌……
もし、それらがこちらに見せている牌と何一つ被っていないとしたら……
村岡から見たアカギの捨て牌候補
一萬、一萬、二萬、二萬、二萬、三萬、三萬、四萬、五萬、四索、四索、四索、七索、七索、一筒、四筒、八筒、八筒、(?)、(?)、(?)
(有り得るざんす……国士十三面待ち…!)
「どうした…? お前が親だろ。早く切ってくれ…」
(く…落ち着くざんす…)
そう、冷静に考えれば何も怖くない。通常の十七歩ならば意表をついた国士十三面待ちで字牌の一発振込みも有り得るが、この薄氷歩では相手の手が殆ど見えている。
(こっちのヤオ九牌は全部で9枚。これを切る必要が出てくるのは互いに12枚切り終えたとき…でも……)
そう、アカギの捨て牌候補の中に確かに見える…自分のアガリ牌…四索が…!
(先にアイツが四索を切れば……)
村岡 一打目 七萬
(ワシの勝ちざんす……!)
対するアカギ。戸惑うことなく打…!
アカギ 一打目 四萬
(おしい…でも、この調子ならすぐにでも振り込んでくれそうざんす…四索を…)
しかし、アカギなかなか振り込まず……
以下、互いの11打までに切った牌。
村岡
七萬、(八萬)、(六索)、四萬、三索、五索、五索、二筒、四筒、四筒、六筒
アカギ
四萬、二萬、二萬、二萬、三萬、三萬、五萬、(七索)、七索、七索、(四筒)
(これでこっちのヤオ九牌以外は終わりざんす……)
村岡 12打目 七筒
(どうか…次で…四索を……!)
アカギ12打目 (九索)
「え…!?」
アカギの切った牌に村岡再び驚愕…!
支援
テスト
「どうした…? アタリか…?」
「いやいや! なんでもないざんす! こっちは別にロンでもチョンボじゃないざんす!!」
「そうか…なら、次はお前の番だぜ……」
(な…何が起こってるざんす? むしろお前がフリテンかチョンボじゃないざんすか…?)
村岡はとりあえず合わせ切り…
村岡 13打目 九索
間髪入れずにアカギも切っていく。
アカギ 13打目 四筒
村岡は暫しの思考停止の末に結論を導く。
(国士は消えた…完全に! 九索の通常牌無しに国士を作るのは無理ざんす…ということは…奴はやはりあからさまな字一色…)
となると次に切れるのは、一萬、九萬、九筒のどれか……
(安めに混老頭で逃げた可能性もあるざんす…どれも迂闊には切れない…もし、ドラの一萬がからんでれば、混老頭でも点は上がるざんすが……)
村岡はアカギの捨て牌と、その候補を改めて見る。
(捨て牌候補にあるのは一萬のみ。それも2枚……もし、一萬がアタリ牌ならフリテン、チョンボ即死ルールで自分のアタリ牌を抱え込むのは危険、かつ無意味。それにドラで待つのも無謀な話…)
村岡は意思を固め、3つの牌の中から選んだその牌を…切る!
村岡 14打目 一萬
「…ロン」
「え…」
村岡が切った後、即座に倒されるアカギの手牌。
(一萬)、(中)、中、(白)、白、(北)、北、(西)、西、(南)、南、(東)、東
「そ…そんな馬鹿なことが…なんでドラの単騎待ちざんす! それに捨て牌候補に2枚も抱えた待ちだなんて…だったらそのドラを使って三暗刻でも作った方がよっぽどいい……無茶苦茶ざんす!」
取り乱す村岡を尻目にアカギは口元を上げる。
「ククク…所詮あんたはその程度。初めに会ったときから感じてた…あんたの常識じゃ俺は捕らえられないんだよ…村岡さん?」
生意気なアカギの態度に村岡はますます頭に血が昇る。
「く…まあいい。次で逆転するざんす!」
(リーチ、七対子、混老頭、ドラ2…アカギは子だから跳満12000…)
「次だと…」
アカギは麻袋に手を突っ込む。
「まだ終わってないぜ…俺の対子は七つじゃない…」
アカギは堂々と卓に裏ドラ表示牌を叩きつける。
裏ドラ表示牌 (九萬) (通常牌)
「対子は八つ…リーチ、七対子、混老頭、ドラ4…倍満16000。俺の勝ちだ…」
「そんな…ドラ表示牌が揃ったざんすか……」
呆然とする村岡にアカギが語りかける。
「お前は見えている牌に全ての読みを任せた…だが、見えているものだけじゃ真実には辿り着けない…」
村岡はわざわざ自分から薄く張った氷の上を歩んだ。少しでも湖の底を覗く為に……
その結果、氷は割れて沈み込む…逃れられぬ湖の底へ……
薄く張った氷を透かして見えるのは、光届かぬ深く暗い闇。
時に人はその闇に恐怖を感じる…何も見通せぬその闇に……
見えそうで見えない……薄氷歩……!
(さて、そろそろ行かないともう一枚の手札がお待ちかねだな……)
【E-2/小道沿いのギャンブルルーム/真夜中】
【村岡隆】
[状態]:健康 深い意気消沈
[道具]:なし
[所持金]:300万円
[思考]:ひろゆきとカイジと原田とアカギに復讐したい 今は原田とアカギに服従する 生還する
※村岡の誓約書を持つ井川ひろゆきを殺すことはできません。
※村岡の誓約書を持つ原田を殺すことはできません。
※【指令その1】3回分の命令が終わり、開放されるまで、正当防衛以外の人殺しは不可。
※【指令その2】24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る。失敗したら指10本喪失。中間報告の場所と時間は次の書き手様にお任せします。
※【指令その3】首輪の構造、性質等、首輪の解除に有益となる情報および物資の収集と調達。成功すれば原田から武器を貰えます。
※赤木しげるに、回数は有限で協力する。(回数はアカギと村岡のみが知っています)
※赤木の五億円を本物だと信じています。
【赤木しげる】
[状態]:健康
[道具]:五億円の偽札 ロープ4本 不明支給品0〜1(確認済み)支給品一式 浦部、有賀の首輪(爆発済み)
[所持金]:500万円
[思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す 死体を捜して首輪を調べる 首輪をはずして主催者側に潜り込む
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※五億円の偽札
五億円分の新聞紙の束がジェラルミンケースに詰められています。
一番上は精巧なカラーコピーになっており、手に取らない限り判別は難しいです。
※2日目夕方にE-4にて平井銀二と再会する約束をしました。
※鷲巣巌を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※鷲巣巌に100万分の貸し。
※鷲巣巌と第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。
※第二回放送後に病院の中を調べようと考えています。(ひろにメモが渡ったのは偶然です)
※首輪に関する情報(但しまだ推測の域を出ない)が書かれたメモをカイジから貰いました。
※参加者名簿を見たため、また、カイジから聞いた情報により、
帝愛関係者(危険人物)、また過去に帝愛の行ったゲームの参加者の顔と名前を把握しています。
※過去に主催者が開催したゲームを知る者、その参加者との接触を最優先に考えています。
接触後、情報を引き出せない様ならば偽札を使用。
それでも駄目ならばギャンブルでの実力行使に出るつもりです。
※危険人物でも優秀な相手ならば、ギャンブルで勝利して味方につけようと考えています。
※カイジを、別行動をとる条件で味方にしました。
※村岡隆を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと村岡のみが知っています)
以上で投下終了です。
乙…!
ただアカギの手は混一色がついてるから三倍満ですね
>>496 なんというミス…
初期点を20000点にし、それに合わせてアカギのアガリの場面を修正次第仮投下スレに投下します。
執筆中に土壇場でアカギの手を変えたので、推敲不足だったようです。申し訳ありません。
乙
村岡踏んだり蹴ったりだな
それでも生きてるから運がいいのかもしれん
投下乙…!圧倒的乙…!がっ…乙っ…!
面白かった!
村岡フルボッコで気の毒…と思いながらも大爆笑してしまいました。アカギさん容赦ないwww
薄氷歩、というネーミングにセンスを感じました。足元の氷を覗きこんでしまい、闇に足を取られる…。
原作ばりの深い比喩表現に思わずため息を漏らしてしまうっ…!
したらばに新しい予約も来ていて僥倖っ…!
俺の暗刻は〜を彷彿とさせるセリフが格好いい!!
あと
>>482で田中沙織が伊藤沙織になってます。
まとめサイトをアップしている者です。
今回の106話 薄氷歩は一時投下スレにある
修正文と
>>500様のご指摘の箇所を直して、
まとめサイトにアップしました。
◆iL739YR/jk様、こちらでよろしかったでしょうか。
もし、ほかに修正したい時は、何なりとお申し付けください。
今回の話は今まで発想がなかったギャンブルだった上、
アカギらしい闘牌に読んでいて、ゾクッとしました。
素晴らしい書き手様がまた一人現れたんだなぁと・・・。
宣伝よろしいでしょうか。
10月30日 22時から
ジョジョロワ・福本ロワ合同ラジオ開催します!
当日、ジョジョロワリスナーであるスナイプガール様が
こちらにラジオのアドレスを記載してくださります。
ちなみに、現時点で、福本ロワでは私と◆6lu8FNGFaw様が参加予定です。
スカイプをお持ちの方はぜひ、参加してください!
そして、福本ロワへの情熱を熱く語ってください!
502 :
マロン名無しさん:2009/10/25(日) 06:17:57 ID:6XUzZ8Uq
すみません。
落ちる一歩手前なのであげます。
>>501 ありがとうございます。
修正箇所はそれで全部だと思います。
次回、投下するときにはミスしないように気をつけます。
>501
>503
乙っ…圧倒的な「乙」…!
落とさない…俺は落とさないっ…!
という訳で保守
506 :
マロン名無しさん:2009/10/29(木) 22:33:41 ID:5ihlBW86
げっ…!
げっ…!
あげっ…!
507 :
sage:2009/10/29(木) 23:13:40 ID:mRSrIGF/
mkl7MVVdlA本人の依頼で代理投稿します。
◆mkl7MVVdlAが巻き添えでアク禁中です。
したらばの一時投下スレに投下用の本文を記載しました。
どなたか代理投下お願いします。
「佐原。いるんだろう。出て来てくれ。
……いや、俺たちが信頼できないなら無理に姿を現さなくてもいい。
とにかく、俺の声が聞こえる場所にいてくれ。
お前が出てくるまで、俺たちはフロントを動かない」
温泉旅館の内部に入った森田は、南郷を連れてフロント中央に立ち、声をはり上げた。
佐原以外の人間、それも殺人に加担しているような輩が潜んでいた場合、それは自殺行為に等しい。
森田が遠藤と別れる間際に確認した限りでは周辺に他の人間がいなかったとはいえ、可能性はゼロではない。
それでもあえて自分の居場所を知らせたのは、佐原を悪戯に刺激しないためだ。
佐原は今、過剰な程のストレスに晒されている。拳銃の誤射、それによる誤解、裏切り。
それらの心理的な瑕疵に加えて、常時、命を狙われ続けるという尋常ではない圧迫感。
殺意という見えない恐怖に、喉をぎりぎりと締め上げられているはずだ。
生死の境界線に立たされる苦しさを、森田は嫌という程知っている。
人間の精神はそれほど丈夫にできていない。長時間恐怖に晒されすぎると、感覚が麻痺してくる。
戦場に駆り出された兵士が殺人を躊躇わなくなるように、時間が経てば経つ程に島内で殺人者は増加する。
自分が殺されると分かっていても、手元にある拳銃の引き金を引かずにいられる人間など稀有に等しい。
森田の脳裏には、神威ビルでの惨劇があった。
人間は、きっかけさえあれば実に容易く人間を殺す。
だからこそ、佐原との接触を急ぐ必要があった。
保守
森田は何度か「自分はフロントにいる」「声が聞こえる場所にいてくれ」という意味の発言を繰り返した後、佐原の姿が見えぬままに語りだした。
「遠藤とは別れてきた。あいつは頭がキレるが、信用はできない。だから決別してきた。
今ここにいるのは、俺と、南郷の二人だけだ。
こっちは丸腰。武器になるような物は何も持っちゃいない。
自己申告じゃ信用できないかもしれないが、さっき遠藤がお前に何と言ったか思い出してくれ。
あいつは俺たちが丸腰だと言った。武器を持つお前に、丸腰の俺たちを殺せ、とも。
遠藤が言っていた通り、俺たちは武器を所持していない。
俺たちは、佐原、お前と組みたい。
あの時、あえて選択を回避することで、殺人に乗らなかったお前と。
……そう考えて、ここまで来た」
室内からの応答はない。聴覚を研ぎ澄ませても、物音ひとつ拾うことはできなかった。
感じるのは自分の声の余韻と、南郷の気配。南郷には、念のために玄関側を見張って貰っていた。
完全に背を預ける形だが、背後から刺される心配はない。
そういう男だからこそ、森田は、一見して何の役にも立たないと思った南郷を選び、遠藤を捨てたのだ。
「お前が俺たちと組む利点をあげようと思う。
どこかで気になることがあったら、質問してくれ。
さっき確かめたんだが、電話を使って外部に連絡を取ることはできない。
だが、電話機に電源は入っている。つまり、内線は生きているんだ。
フロントに電話をしてくれれば、会話はできると思う」
森田は何度か「自分はフロントにいる」「声が聞こえる場所にいてくれ」という意味の発言を繰り返した後、佐原の姿が見えぬままに語りだした。
「遠藤とは別れてきた。あいつは頭がキレるが、信用はできない。だから決別してきた。
今ここにいるのは、俺と、南郷の二人だけだ。
こっちは丸腰。武器になるような物は何も持っちゃいない。
自己申告じゃ信用できないかもしれないが、さっき遠藤がお前に何と言ったか思い出してくれ。
あいつは俺たちが丸腰だと言った。武器を持つお前に、丸腰の俺たちを殺せ、とも。
遠藤が言っていた通り、俺たちは武器を所持していない。
俺たちは、佐原、お前と組みたい。
あの時、あえて選択を回避することで、殺人に乗らなかったお前と。
……そう考えて、ここまで来た」
室内からの応答はない。聴覚を研ぎ澄ませても、物音ひとつ拾うことはできなかった。
感じるのは自分の声の余韻と、南郷の気配。南郷には、念のために玄関側を見張って貰っていた。
完全に背を預ける形だが、背後から刺される心配はない。
そういう男だからこそ、森田は、一見して何の役にも立たないと思った南郷を選び、遠藤を捨てたのだ。
「お前が俺たちと組む利点をあげようと思う。
どこかで気になることがあったら、質問してくれ。
さっき確かめたんだが、電話を使って外部に連絡を取ることはできない。
だが、電話機に電源は入っている。つまり、内線は生きているんだ。
フロントに電話をしてくれれば、会話はできると思う」
「佐原。お前と板倉の最初の接触は、話し合いなんていう穏やかなものじゃなかった。
板倉は毒を持っていた。そいつで脅されたはずだ。
合流してから身を潜めていたのは、すぐ近くのホテルの上階。
お前が誤って拳銃を発射してしまった時刻は、夕方。
――――分かるか。俺たちはお前の行動を知ることができた。
そして、板倉はもう死んでる。一条という男の手によって殺されているんだ。
板倉が死んだ以上、お前の誤射を知る者はいない。板倉が復讐を仕掛けてくる事もない。
そして俺達は、あれが間違いだった事を知っている」
そこまで一気に話しきったところで、森田は一度、大きく息をついた。
板倉が毒を所持していたことは知っているが、それで佐原を直接的に脅していたかどうかは不明だ。
全ては会話記録からの推測に過ぎない。あくまでも条件を重ねあわせた上での想像でしかない。
とはいえ、これまでに森田が得てきた「板倉」という男の人物像から推し量れば可能性は低くない。
むしろこの程度の推測が当たらぬ程度では、数時間にわたって行動記録を観察し続けた意味がない。
「さっきも言ったとおり、俺達は敵じゃない。
殺し合いに乗っていない連中を集めて、このゲームを破綻させたい。
可能であれば、合流してほしい」
いつの間にか、手帳を持つ森田の手は大量の汗で濡れていた。
緊張すると顔ではなく手に出る癖は、昔から変わっていない。
「…………」
無言で待つ時間は、想像以上に長く感じられた。
ここで佐原を味方につけられなければ、自分は結局、それだけの男だという事だ。
かつて行動をともにしていた平井銀二のように、他人を安心させるだけの能力も、懐の広さもない。
「森田、俺からも言わせてくれ」
森田が佐原からの返事を諦めかけた時、
旅館の玄関口を見張っていた南郷が、建物に入って初めてまともに口を開いた。
「佐原。俺は……あんたと同じだ。誰も殺したくない。殺す度胸なんてまるでない。
だからって死ぬのは嫌だ。どうにかして生きて帰りたいと思っている。
できるなら、一刻も早くこんな地獄から逃げ出したい。
ここにきてから後悔の連続だ。
今でも、こいつは何かの冗談で、悪い夢でも見てるんじゃないかと思う。
だけどここは現実で、俺は実際に殺されかけた。
……森田は、こいつは悪い奴じゃない。単純な、損得で動く奴じゃないんだ。
その証拠に、こんな、何の役にも立たない俺と、遠藤って男を比べて、俺を選んでくれた」
「南郷…」
「いいんだ。俺は結局、何の役にも立ってない。それくらいは分かってるさ。
だからせめてこれぐらい、言わせてくれ」
薄暗い室内で、南郷が笑う気配がした。
佐原から不安を取り除くどころか、南郷に勇気付けられている自分に気がついた森田は、無意識のうちに張り詰めていた肩の力を抜いた。
場の雰囲気が緩み、森田の中に落ち着きと余裕が生まれる。
掌を湿らせていた汗が、少しずつ引いていく。
こちらが気を昂ぶらせていては、対話する相手が落ち着くはずがない。
安心感を与えるためには、まず自分が落ち着くことだ。
交渉の基本を思い出した森田が、仕切りなおすために手帳を上着のポケットに収めた瞬間、フロント内部の電話が鳴り響いた。
支援支援
佐原が話し合いに応じてくれたのかと思い、森田が電話に手を伸ばす。
フロントには、電話をかけてきた部屋の番号を示す機能が備わっていた。
各部屋の設備がどうなっているのかは不明だが、全ての親元となるフロントでは、通話状況の把握ができるらしい。
電話機と一体型の液晶画面に表示されている部屋番号は「**9」。
森田は、フロントに張り出されている館内の見取り図に視線を向けた。
「――――?」
見落としか、見間違いか。
液晶に表示されている部屋番号は館内見取り図のどこにも表示されていなかった。
不審に思いながらも、受話器を握る。
「………ッ!」
白いプラスチックの受話器に触れた途端、静電気のような痺れが走った。
指先から始まり、背筋から脳天までをゾクゾクと走り抜ける悪寒。
それは、仲間が増える前向きな予感ではない。むしろもっと、不穏な何か。
この電話に出てはいけない。森田の中で本能的な何かが通話を拒否した。
この先には表現しようもない大きな危険が迫っている。
先の見えない、深い谷。それが目の前に口をあけて待っている。
その危うさが同時に、森田の心を奮い立たせた。
この谷を飛べるかどうかは自分の力の及ぶところではない。それは谷が決めること。
――――俺にできることは、ただ地を蹴り、身を宙に投げること!
跳べるか跳べないかはこの際問題ではない。
ただその跳ぼうとする行為、それこそが重要だ。
「……もしもし」
森田は受話器を握りしめ、耳に押し当てた。
暗い魔の淵に、自ら身を投げるように。
********
佐原はフロントに接した隣室の窓から、森田が出て行くのを確認した。
どこへ向かうのか、闇の中へと向かい走り去っていく。
壁には耳を接したまま、フロント側の様子を探る行為は怠らない。
森田が出て行った事が何かの演技でなければ、建物の中には南郷だけが残ったはずだ。
一体、森田の身に何が起こったのか。先刻の電話は何だったのか。
知るためには、南郷に接触するしかない。
佐原は意思を固めて、銃を両手に抱え、廊下に続く扉に手をかけた。
先程の電話は、自分がかけたわけではない。
内線電話の仕組みがどうなっているのか分からない以上、不用意に電話を使うのは躊躇われた。
カラオケやホテルでは、通話口で部屋番号を伝えずとも、フロント側でそれを判別する事が可能だ。
この建物の内線電話にも同様の機能が備わっているだろうと判断した。
森田の説得はそれなりに魅力的だった。
何より、禁止エリアを把握していない自分はどこかで情報を入手しなければならない。
連合するかどうかは別として、情報を得るだけならば、接触してもいいかもしれない。
そう考える程度には、森田と南郷に対し、警戒のハードルを下げていた。
518 :
代理投下:2009/10/29(木) 23:44:14 ID:???
さるさんをくらいました…。
どなたか続きをお願いします。
森田が言ったとおり、一人きりでは行動が大きく制限されたままだ。
今の状態では、どこに隠れようと、安心して眠ることなどできそうにない。
睡魔と疲労は、恐怖という精神の異常な高揚をこえて、体のあちこちに泥のように絡み付いてくる。
安心できる居場所を手に入れたい。
それは佐原にとって、何より切実な願いでもあった。
まずは銃を構えたまま接触し、しばらく様子を見る。
一緒に行動して問題がないと判断した時は、先刻自分が思いついたアイデアを話す。
駄目だと思った時は、逃げればいい。
こちらは武器をもっているのだ。そう簡単に襲い掛かってはこないだろう。
深夜を過ぎて鈍りはじめた思考の中で、佐原が行動を起こそうとした間際。
フロントの電話が鳴った。もちろん、自分は電話をかけていない。
ならばこの館内に森田達や自分以外の誰かがいるのか?
予想外の状況に佐原はパニックを起こしかけた。
しかし、壁越しに聞こえてくる森田の声がこれまでになく慌てていたことが、逆に佐原の興奮を鎮めた。
旅館から出て行ったところを見ると、電話の相手は建物の外。
この建物へと外から電話をかけられるような人間など、限定されている。
恐らくは主催。もしくはそれにつながる人物からの連絡ではないか?
佐原は思案した末に、建物に残された南郷に接触することに決めた。
森田は遠藤に比べ誠実そうに見えたが、南郷はそれに輪をかけて善良そうだ。
先刻、森田に続いて語った南郷の言葉を聞いて確信した。
どこか得体の知れない強かさを感じさせる森田に比べ、南郷はどこにでもいるような一般人。
自分やカイジと一緒に鉄骨レースに参加した、石田のような人間だろう。
南郷とならば話してもいい。そう思い、フロントが見渡せる場所までやってきた。
「南郷、お前一人か…?」
「あ、ああ。森田は、外に出て行った」
「最初に言っておく。俺は、まだ森田って男を信用していない。だが、あんたとなら話してもいいと思ってる」
「ど、どうしてだ。俺なんか、……何もできないただの…」
「だからいいんだ」
両腕で構えていた銃口を、佐原はゆっくりとおろした。
図体こそ立派だが、南郷からは戦意が感じられない。むしろ武器を見て、怯えている。
どこにでもいるような、普通の人間の反応だ。そうだ、それが普通なのだ。
遠藤のように他人を撃てとそそのかしたり、森田のように平然と銃口に身を晒すような奴の方がどうかしている。
「俺は人を殺せない。殺す度胸もない。だからといって、主催に立ち向かう力もない。
ついでに言えば、ギャンブルの才能もない。
森田は何か考えがあるようだが、どこか底が知れない。
それがどうも、信用できないんだ。
……いや、信用はできるのかもしれない。だけど俺は、奴が怖い」
「怖い?森田が?」
「普通、こんな状況であそこまで堂々としていられるか?」
「そういう人間も、たまにはいるんじゃないか?」
「あんたにとっちゃ森田は頼もしい存在かもしれないが…。
俺にしてみたら、理解不能だ。まだ遠藤の方が分かりやすい。
森田って男は、こんな状況に慣れているか、神経がイカれてるかのどっちかだ」
「……佐原」
「俺は板倉を撃った後、混乱して、禁止エリアの放送を聞いていなかった。
それどころじゃなかったんだよ。
自分でもみっともないと思うが、それが普通の人間じゃないか。
あんたも話は全部聞いていただろう。俺の立場だったら、どうしていた?」
「何も、……何もできなかっただろう」
佐原と同じ状況に追い込まれた自分の姿を想像したのか、南郷が力なく首を振った。
その反応に満足した佐原は、銃を腕に抱えたまま、手近なソファに腰を下ろした。
「教えてくれ。あいつが参加者の動向を把握できるってのは本当なのか?」
「本当だ。どうなっているのか、仕組みはよく分からないが。
画面に情報が表示されて、そいつを手帳にメモしていた」
「画面?パソコンのディスプレイか?そういや、さっきもソフトがどうとか言ってたしな…」
「……すまない。そのあたりは詳しくない…。そこにある、その機械と同じような形の物だ」
そういって南郷が指差したのは、フロントに設置されているデスクトップのパソコンだった。
「なるほど。そうなると、今は情報を見られる状態じゃないってことか。
ノートパソコンでもでもあれば話は別だけどな」
「俺達はあの場所から何も持って出なかった。機械なんてものは何も持ち出してない…と思う…」
断定ができない様子に、南郷はパソコン関係に対し本当に疎いのだと佐原は判断した。
同時に、森田が持つ参加者の動向情報に一定の信憑性を認める。
首輪が携帯電話のように電波で制御されているのであれば、位置の把握は難しくない。
GPSでも仕込んでおけば一発だ。
自分しか知らなかったはずの情報を知っていたということは、何らかの形で音声を盗聴している可能性が高い。
位置関係と音声の把握。それができるならば、森田はいわばこのゲームで神の目を持っているも同然だ。
死と隣り合わせの状況において、あれだけの自信があったのもそれならば頷ける。
支援
「どうして森田はここを出て行ったんだ。さっきの電話は何だったんだ?」
「……俺も、よく分からない。ただ、森田の話じゃ、主催からじゃないかと…」
「主催?どうして主催が森田に?出て行ったってことは、呼び出されたのか?」
先程の電話が主催側からのものではないかとある程度予測していた佐原は、あえて何も知らないふりをした。
佐原の予想通り、南郷は素直に事情を説明してくれた。
「なぜ呼び出されたのか、森田も分からないといっていた。
だが、これはチャンスかもしれない。
それに、呼び出しを断ったら首輪を爆破すると脅されたようだ。
だから無視はできないと…」
「……チャンス…?」
「交渉するとか、事情を聞くとか、とにかく、行くしかないと言って、出て行った」
「あんたをここにおいてか?」
「一人で来るように指定されたらしい。この近くのギャンブルルームだ。
歩いてすぐだと言っていた。俺は、ついていってもよかったんだが。
どうせ、その間、ギャンブルルームには入れない。
部屋の外で立って待ってるのに比べたら、この中にいたほうが安全な気がした」
「忘れたのか。俺は銃を持ってるんだぜ。こっちが撃ってくるとは思わなかったのか」
「……え?……あ!」
言われて初めて気がついた、という顔で驚く南郷。
これまで自分が一度も撃たなかったからといって、絶対に発砲しないという保障はどこにもない。
考えたくもない話だが、暴発や、2度目の誤射という可能性もある。
銃器など扱ったことがないのだ。何が起きてもおかしくない。
南郷の甘すぎる現実認識に溜息が漏れた。
もっとも、こんな男だからこそ、森田は遠藤よりも南郷を選んだのかもしれないが。
或いは他に、南郷を選んだ理由があるとしたら?
命の危険に晒され続けた佐原は、目の前にある事実を素直に受け止めることが難しくなっていた。
森田に対する得体の知れない恐怖。
損得抜きの善意など信じられないという打算的な側面が、佐原の中で燻る猜疑心を煽る。
誰かを疑う事は、苦しいだけだ。誰も信じられなければ、一人で孤立するしかない。
だが自分はこれまで、誰かを心底信じることができただろうか。
この島に来るより、遥か以前。
コンビニでバイトをしていた頃から、誰かを心の底から信頼したことなどなかった。
表面だけのつきあい。薄っぺらい人間関係。それが当たり前の世界だった。
無償の善意などあるわけがない。
それは鉄骨渡りという死のゲームに直面した時点で嫌という程悟ったはずだ。
究極まで突き詰めれば、信頼できるのは自分だけ。
遠藤ではなく、南郷と共に行動する森田の行動が打算ではないと誰が保障できる?
「……なあ、南郷。もしかしたら森田は、主催の手先なんじゃないか?」
「森田が…?まさか」
「考えて見れば、参加者の動向を確認できるソフトなんて、そんな便利なモンをもってること自体がおかしいだろ」
「だけどあいつは、遠藤より俺を選ぶようなお人よしだ…」
「それが演技だとしたら…?」
「演技…?」
「遠藤には自分の正体がバレそうになった。だから別れて、あんたと一緒にいる。
俺が言うのも何だが、あんたはいかにも善良そうだからな。一緒にいるだけで、カモフラージュになる」
一度疑い始めると、きりがない。
分かっていたつもりだが、佐原は膨らんでいく疑惑という名の妄想を否定することができなかった。
「馬鹿な…。大体、そんなことして、あいつに何の得があるっていうんだ」
「……まあ、そうだな。確かに…」
仮に森田が主催者と繋がっている存在だとして、
その意義は何かと問われると、咄嗟に連想できるものは何もない。
殺人を快楽とする狂人が、『神の目』を駆使して密かに参加者を殺して回っているのか?
だとすれば、遠藤と別れてきたといったが、当の遠藤は既に死んでいるかもしれない。
佐原は自分の想像に、手足の先から体温が奪われ、冷えていくのを感じた。
「……そ、そういえば、あんたは、遠藤と森田が別れるところを見てたんだろう。
物騒な雰囲気にならなかったのか?……その、……殴り合いとか……?」
「いや、俺は森田に言われて、先に建物を出ているように言われたから…、話し合いだったのか、喧嘩をしたのかもよく分からないんだ」
南郷の言葉は、遠藤の生存を保証するものではなかった。
むしろ疑いを抱き始めている佐原にとっては、死亡の裏付けのように感じられた。
もしも森田が殺人者ならば、自分はターゲットとしてロックオンされたも同然だ。
早くここから逃げなければ、戻ってきた森田に遠からず殺される。
たとえ逃げても森田が参加者の動向を把握できる以上、完全に逃げ切ることはできない。
「いやいや、待てよ…」
佐原はぼそりと、独り言を呟いた。
そもそもなぜ、森田は自分を獲物に選んだのだ?
南郷はカモフラージュとしてしばらくは生かしておくとして、
遠藤の次に自分がターゲットになった理由は何だ。
単純に、もっとも近場にいたから、という理由ならば問題はない。
無差別の快楽殺人ならば、他のターゲットが現れれば当面の殺意からは逃れられる。
だがそこに、無差別ではない、何らの事情があったとしたら?
仮に遠藤が既に死んでいるとすれば、そこにも意味が隠されているかもしれない。
そういえばあの男は、参加者の選出を手伝ったと言っていなかったか。
全参加者の顔と名前を知っている。その上、森田の近くにいたおかげで参加者の動向を知る事が出来た。
つまり遠藤は、ゲームの真相に近づきすぎた。その気になれば優勝も夢ではない。
――――「粛清」
ひとつの単語が、佐原の脳裏を過ぎる。
ゲームを深く知りすぎたが故の粛清。遠藤があっさりと優勝しては面白くないと感じた主催者の意向が働き、殺された。
帝愛が主催ならば、それは十分にありうる話だと佐原は思った。
命をかけたレースを笑いながら観戦しているような連中の親玉だ。
ゲームを盛り上げるために、不必要な存在を刈り取るくらいは平然とやるだろう。
だとすれば次に自分が狙われた理由は、何だ…?
支援
主催の意思に反した行動など、自分はこれまで一度もとったことがない。
どこかで自分の姿を眺めていた人間がいるならば、
仲間を誤射した挙句に、錯乱して逃げ出した姿など、愉快以外のなにものでもなかったはずだ。
あえて存在を削除される可能性をあげるならば…、……首輪のシステムに気づいた点だ。
首輪は電波で制御されている。圏外に入れば起爆から逃れることができるかもしれない。
先程の自分の思いつきは、まさに天啓とも言うべき閃きだった。
それを言葉として発していなかったか?
自分では気がつかないうちに、独り言として呟いていたら?
首輪には十中八九、盗聴機能が備わっている。
喉元に装着している道具だけに、小さな音でも拾う可能性はある。
問題のある発言はしていない。
記憶の中では独り言など発していないはずだが、確信はもてなかった。
万が一、自分が首輪の秘密に迫った発言をしており、森田がそれに気がつき粛清を目論んでいるとしたら?
――――殺される。
恐怖で冷えた指先が、自分の意思とは無関係に震えた。
震えは指先だけにとどまらず、足先、膝、肩と広がり、ついには歯の根があわずガチガチと鳴った。
支援
「どうした。…具合でも悪いのか?」
「…い、…いや、何でもない…」
突然震えはじめた佐原の様子を不審に思い、南郷が声をかけてきた。
佐原は室内に南郷がいることを思い出し、少しだけ落ち着いた。
すべては自分の想像に過ぎない。
壮大な妄想を繰り広げた挙句、勝手に怯えているだけかもしれないのだ。
とはいえ、森田を警戒するにこしたことはない。
南郷が見ている前では何事もおきないだろうが、二人きりになるのは危険だ。
この場から一目散に逃げ出したとしても、主催に目をつけられているかもしれない以上、生き延びるための道は限られている。
森田が主催と繋がる殺し屋であるか否か、見極める必要がある。
場合によっては南郷に真実を知らせ、二人で森田を排除する。
自分が生き残る方法は、それしか残されていない。
人を殺すのはごめんだ。誰だって、望んで殺人者になりたいとは思わない。
だとしても、自分が殺される間際になって、死から逃れたいと望むことの何が悪い?
自分自身の命を守るための反撃は、罪ではない。
「正当防衛」という言葉が裁判でも罷り通っているのが、その証拠だ。
実際に引き金をひけるかどうかは、その場になってみなければ分からない。
ショッピングモールでの出来事のように、何も出来ず逃げ出してしまうかもしれない。
それでも佐原は、内心で覚悟を決めた。
定時放送では、死者の名前が発表される。
森田が殺人者か否か、遠藤の生死で判別すればいい。
「……なあ、南郷。次の定時放送まで、一緒にいないか。
森田がどんな奴か、自分なりに話して判断しようと思う」
「…あ、ああ。かまわない。むしろ歓迎だ」
「よかった。じゃあ早速だが、禁止エリアを教えてくれないか。さっきも言ったが、慌てていたせいで聞き逃しちまってるんだ」
「そういうことなら、俺でも出来るな!」
やっと出来ることが見つかったとばかりに、南郷はそそくさと荷物から地図を取り出した。
第一回放送で告げられた禁止エリアを聞きながら、佐原は迫りくる恐怖とともに、こみ上げてくる吐き気を必死に堪えていた。
*****
「用意は出来たか?」
「……はっ!」
「条件通りにしてあるだろうな」
「もちろんでございます」
黒崎は部下に一人に案内され、管理本部から離れた一室へと足を踏み入れた。
このホテルは随所に細工がしてあり、在全側に情報が漏れやすくなっている。
それらの影響を一時的に排除した部屋を用意させたのである。
これから自分が行う行為は、参加者の動向を通じて他の主催者に伝わるだろう。
よって、盗聴などの仕組みを解除するのはほんの一時で構わない。
極端な話、盗聴されていても構わないのだが、
途中で妨害が入る可能性も考慮してこのような場所を用意させたのだった。
「後藤は何か言ってきているか?」
「いえ、まだ何も…」
「なるほど。まずはこちらがどう出るか、様子を見よう、という事か。だがそれでは遅いな」
室内は黒崎のために用意された個室に比べて狭く、天井も低かった。
黒崎の部屋がスイートかそれに類する部屋だとすれば、
ここは一般的なシングルルームと言っても差し支えないだろう。
打合せ用のソファセットこそ設置してあるものの、調度品のランクは低い。
木製の机の上には、ディスプレイとカメラ、ヘッドセットが用意されていた。
画面の向こう側には一人の男が座っている。森田鉄男である。
「あの、黒崎様、本当によろしかったのでしょうか?」
「何がだ?」
「主催者サイドが参加者に対し過度に干渉する事は禁止されているのでは…」
「何だ。そんな事か。心配には及ばん。会長はお怒りになるだろうが、それも一時的な話だ。
最後は私に感謝するだろう。お前たちはこれまで通り、私の手足として働け。
会長ではなく、私の忠実な手足としてな…」
こちらの映像は、まだ画面の向こう側に流れていない。
黒崎はソファに腰を下ろすと、装備一式を調え、機材のチェックを終えた後に、GOサインを出した。
「こんにちは、森田鉄男君。こちらの呼び出しに応じてくれた事に、まずは礼を言おう」
『出てこなけりゃ首輪を爆破すると脅しておいて、よく言えたもんだな』
「手荒い真似をしてしまった事は詫びる。だがどうしても、君とこうして話がしたかったのだ」
『……何が目当てだ。まどろっこしい前置きは抜きにして、単刀直入に言ってくれ』
森田の背景には、ギャンブルルームの内装が映りこんでいた。
温泉旅館へと移動した森田に対し、電話という手段を使い、
最寄りのギャンブルルームへと呼び出したのは他でもない黒崎である。
彼の現在地はG-6。温泉旅館とホテルの間に位置する、道路沿いの一室だ。
「実は君に一つ、頼みたい仕事があってね」
『……仕事』
「もちろん、仕事というからには、報酬がつきものだ。達成したあかつきには、相応の対価を支払おう」
『受けるかどうか決めるのは、内容を聞いてからだ』
「賢明な判断だ。……内容としては実に単純だ。ゲームの会場内に散った【あるもの】を集めて貰いたい」
『……あるもの?』
黒崎は周囲に立つ部下に命じて、森田のディスプレイ画面をカメラの映像から予め用意したものへと切り替えさせた。
画面に映し出された物を見て、森田が息をのむ気配が伝わってくる。
『……これは…っ!』
「そう。君の首に嵌っているものと同じ、首輪だ。
参加者の中にはよからぬ事を考える輩がいるらしくてね。
死体から首輪を剥ぎ取り、集めている人間がいるようだ。
行為そのものは、咎められるような内容ではない。
下手に分解すれば、首輪は爆発する仕組みだ。素人が、そう簡単に解除できる代物でもない。
……だが、主催側として決して好ましい事態ではない。
そこで君に、主催側の人間として、改めて首輪集めを依頼したいのだ。
妙な輩の手に首輪が渡らないように」
『………』
「そう睨まないでくれたまえ。数は全部で、6つ。
それだけ集めれば、こちらの意向も他の参加者に伝わるだろう。
どうだね、引き受けてくれないか?」
黒崎は森田の画面を元の通りに切り替えると、改めて「仕事の依頼」という形で話を切り出した。
『……何故だ。何故、俺を選んだ?』
「君はこれまで、参加者の動向や位置を把握できる状況にあった。
死体の位置や、首輪の有無も記録しているはずだ。他の誰に頼むより確実だろう」
『…さっき……報酬が出るって言ったよな…』
「先にそれを知りたいかね?」
『当然だ。…仕事を引き受けてから、報酬が飴玉一つ、なんて言われたら目も当てられない』
「それはつまり、報酬次第では引き受ける、と?」
『好きに解釈してくれ。とにかく、用済みの首輪を集めると何が貰えるんだ?』
森田の前向きな態度に気をよくして、黒崎は説明を続けた。
支援
「結構。それでは先に報酬の説明をしよう。
依頼を無事に達成した暁には、このゲームを棄権するための資金を進呈する。
額面にして最大で三億円」
『三億?ゲームを離脱するのに必要な金は、一億だろう?』
「それでは君が手にする報酬は何もない。余分な二億はこちらからの祝儀だ。
もちろん、余った資金で、他の誰かを棄権させても構わないがね」
『……なるほど…』
報酬を聞いた森田は、画面の向こうで腕を組み、じっとこちらを見つめてきた。
まるでディスプレイ越しに、相手の真意を読み取ろうとするかのように。
数分間の沈黙後、男は、不意に目を伏せた。俯いた表情を推し量る事はできない。
対面ではない、機材を介した会話の限界だ。
『…ククク……ッ!』
伏せられた頭が、小刻みに震える。
『ククク…、ハハハハ……ッ!』
「森田君?」
突如として笑い出した森田は、顔を上げるなり画面越しにニヤリと笑った。
『言ったはずだ。まどろっこしい前置きは抜きにしてくれと。
要するにアンタ達は、俺に殺しをさせたい。違うか?』
「……何故そう思う?」
『既に死んでいる人間から首輪を剥ぎ取ればいい。
たったそれだけで三億円が手にはいるなら、楽な話だ。
そう思って気安く引き受けるとでも思ったのか……?
三億あれば、自分が棄権するどころか、余った金で他の人間まで救う事が出来る。
そんな甘い幻想に浮かて、用意された餌に飛びつくとでも思ったのか。
スケベもいい加減にしろ……!』
ダン、と目の前の台を拳で叩き、森田が声を張り上げた。
『死体から首輪を集めるだけで三億。そんな甘い話、あるわけがない!
どうせ最後は、生きている人間に手をかけざるをえなくなる。
最初からそうなるように、予めルールを設定しておく。
―――――それがお前達のやり方だろう。違うか…?』
「なるほど。事前に聞いていたとおり、馬鹿ではないようだ…」
『さあ、聞かせてもらおうか。首輪集めのルールの全貌と、俺を選んだ理由を』
黒崎は、森田鉄男という男の面構えを改めて観察した。
画面越しではあるが、表情や視線に動きがある分、写真で見るよりも伝わってくるものがある。
この男はそう簡単に折れない。そう感じさせるだけの気迫があった。
予め用意されていた資料でも分かっていたことだが、相当な修羅場をくぐっている証拠だ。
短期間の間に何度も危機に直面し、生き存えてきただけの事はある。
「よろしい。それでは、首輪を集めるにあたり、依頼内容を詳細に説明しよう」
『……詳細、か。物は言いようだな』
「まずこの依頼は、一度引き受けた限り、放棄はできない。
同時に、依頼達成までに一定の期限を切らせてもらう。
『期限内に達成できなかった場合は?』
「君の首輪が爆発する。早期の首輪爆発を理不尽と感じるかもしれないが、リスクとしては低い方だ。
君も、このゲームが永遠に続くとは思っていないだろう。
いくら巧妙に逃げ回ろうとも、島内全てが禁止エリアになってはおしまいだ。終わりは必ず訪れる。
とは言っても、制限時間を課す以上、他の参加者より厳しい環境におかれることは必至。
そこで、背負うリスクに相応しい特典を用意する事にした。
制限時間の中でも、早期に達成すればするほど、高額なボーナスが出る。
言い忘れたが、生存者の首から取得した首輪は、通常とは異なり、首輪2個分としてカウントする」
『見事な殺人推奨ルールというわけだ!
……そうやってご丁寧に飴とムチを用意してまで、俺に殺し合いをさせる理由は何だ?』
「簡単な話だ。このゲームの中で、殺人数が減っている。
どこかで刺激剤を与えたいと思うのは、主催側として当然の意向だろう」
『3人殺せばゲームクリアか。……払う代償としては低いんじゃないか?』
「そのための制限時間だ。時間ギリギリにクリアした場合、ボーナスを含め、報酬は一切与えられない。
依頼未達成により、首輪が爆発することだけは避けられるがね」
支援支援
541 :
猜疑と疑惑:2009/10/30(金) 01:20:48 ID:???
黒崎は予め用意していた内容の一覧表を、森田の眼前へと広げるよう指示を出した。
これまでに説明したルールが記されているだけでなく、ボーナスを含めた報酬条件まで表記されている。
--------------------------
【依頼内容】
制限時間内に首輪を6個集めること。
期間は依頼受託時から、第4回放送終了まで。
死者の首輪は1個、生存者の首輪は2個とカウントする。
第4回放送を過ぎても集められなかった場合は依頼未達成とみなし、森田鉄男の首輪を爆破する。
森田鉄男がギャンブルルームに規定数の首輪を持参し、申告した時点で依頼達成とする。
報酬の受渡は申告と同時に、ギャンブルルームにて行う。
【報酬一覧】
第2回放送終了までに集めた場合
ゲームを棄権する資金1億円+ボーナス2億円
第3回放送終了までに集めた場合
ゲームを棄権する資金1億円+ボーナス1億円
第4回放送終了までに集めた場合
報酬、ボーナスともになし
--------------------------
すみません、タイトルに
24
が抜けました
森田は一覧表を眺めた後、時刻を確認した。
第2回放送までの残り時間を確かめたのだろう。
残り時間を考えれば、第2回放送終了までに依頼を達成することは極めて難しい。
いますぐにこの部屋を出て温泉旅館に戻り、南郷と佐原を殺してもまだ数は足りない。
現在の交渉に時間をかければ、それだけ行動開始からの残り時間が少なくなる。
それが分からない程愚鈍ではあるまいと、黒崎は思った。
『……こっちからも注文をつけさせてくれ。それが承諾されるなら、契約してもいい』
「内容次第だ」
『注文は二つ。一つは、第3回放送までに首輪を集めた場合。
ボーナスも報酬もいらない。そのかわり、進入禁止エリアの設定を解除する権利が欲しい。
解除期間は、依頼達成直後から無制限。権利は当然、他者に譲渡できるものとする』
「何故だね?」
『俺はあんたたちが黙ってここから逃がしてくれるほどお人好しだとは思っちゃいない。
そう言えば分かってもらえるか?』
「なるほど。だがそう言われてこちらが素直に了承するとでも?」
『こいつは俺の推測だが。黒崎さん、あんたが俺を選んだことには、大きな理由があるはずだ。
俺に与えられた初期配布品。あれも実は、この仕掛けのためにわざと仕込んだものじゃないかと思ってる。
つまりこれは最初から台本が用意されているステージ。アンタには、俺を舞台に上げる必要がある。
こっちがリクエスト通り舞台にのってやると言ってるんだ。少しはサービスしろよ』
「勘違いしてもらっては困るな。依頼を引き受けないなら、今すぐ君の首輪を爆破する。
こちらとしては、そういった対応も可能なのだよ」
『いいや、あんたは間違ってもそれをしない。
何故なら、そんな脅しじゃ俺が動かないってことを知っているからだ』
支援
強気な森田の姿勢が、単なるハッタリが否か黒崎には見極める必要があった。
場合によっては、平井銀二の首輪爆破を取引材料として持ち出してもいい。
かつて平井と行動を共にしていた男だ。否とは言わないだろう。
森田鉄男を殺人者とする。
それは、黒崎が袋井を通じて蔵前に提示した取引条件の一つだった。
どこまで気づいているのかは不明だが、森田はこれまでの会話から、一定の状況を推測しつつある。
ここで平井の名前を出し、下手に揺さぶりをかければ、計画の全貌が露見する危険がある。
黒崎は思案した結果、森田の主張を条件付で受け入れることに決めた。
「……いいだろう。進入禁止エリアの解除を報酬として与える。
解除時間は依頼達成直後から60分間だ」
『他者への譲渡は?』
「認めよう。ただし、一方的な譲渡は禁止する。受け取る側の了承も必要だ。
相互の意思確認がとれない場合は、譲渡拒否とみなし、進入禁止エリア解除権そのものが消失する」
『少々厳しいが、それでよしとしよう。…それからもう一つの注文だが。
死者の首輪なら1個、生存者の首輪なら2個、このカウント条件のところに次の一文を加えてくれ。
――――森田鉄男と、平井銀二。この二人の首輪に限り、3個分の価値があると』
画面越しに、森田の目がぎらりと鈍く光った気がした。
黒崎はそこから感じられる自暴自棄ともいえる覚悟に意表を突かれると同時に、
この男がどこまでこちらの真意を察しつつあるのか、疑惑を抱いた。
何故ならば、森田による平井銀二の殺害は、こちらにとって願ってもない状況だからである。
ともあれ、一方的に不利な条件を押しつけてくるのではなく、相手の利まで考え抜いた上で交渉を持ちかけてくる手腕は評価に値する。
「……了解した。契約書を作成する。双方、一部ずつ保存だ。
ささやかながら、首輪を集めるための道具を進呈しよう。せいぜい、楽しませてくれたまえ」
黒崎は部下に命じ、折り畳み式の小型ナイフを一本、森田の目の前に置かせた。
【F-7/温泉旅館・フロント/真夜中】
【佐原】
[状態]:精神疲労 首に注射針の痕
[道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 、懐中電灯、タオル、浴衣の帯、支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:遠藤と会いたくない 人を殺したくない 自力で生還する
森田が主催者の手先ではないかと疑っている。遠藤は森田に殺されたかもしれないと思っている。
※第1回放送の内容を、南郷から取得しました
【南郷】
[状態]:健康 左大腿部を負傷
[道具]:麻縄 木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:生還する 赤木の動向が気になる 森田&佐原と同行する
【G-6/ギャンブルルーム/真夜中】
【森田鉄雄】
[状態]:健康
[道具]:フロッピーディスク(壊れた為読み取り不可) 不明支給品0〜2(武器ではない) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:後々、銀二の助けになるよう準備をする このゲームの隙を見つける
遠藤を信用しない 南郷と行動を共にする 佐原を仲間にする
※フロッピーで得られる情報の信憑性を疑っています。今までの情報にはおそらく嘘はないと思っています。
※遠藤がフロッピーのバックアップを取っていたことを知りません。
※以下の依頼を受けました。契約書を1部所持しています。
※ナイフを受け取り、持っていくかどうかは次の書き手様にお任せします。
--------------------------
【依頼内容】
制限時間内に首輪を6個集めること。
期間は依頼受託時から、第4回放送終了まで。
死体から集めた首輪は1個、生存者の首から奪った首輪は2個とカウントする。
森田鉄男、平井銀二の首輪は3個とカウントする。
第4回放送を過ぎても集められなかった場合は依頼未達成とみなし、森田鉄男の首輪を爆破する。
森田鉄男がギャンブルルームに規定数の首輪を持参し、申告した時点で依頼達成とする。
資金の受渡は申告と同時に、ギャンブルルームにて行う。
【報酬一覧】
第2回放送終了までに集めた場合
ゲームを棄権する資金1億円+ボーナス2億円
第3回放送終了までに集めた場合
進入禁止エリアの解除権(60分間)
他者に譲渡可能。ただし、渡す側、受け取る側、双方の意思確認が必要。
確認がとれない場合、権利そのものが消失する。
第4回放送終了までに集めた場合
報酬、ボーナスともになし
--------------------------
以上です
代理にて失礼致しました
執筆者様、お疲れさまでした
普通なら願ってもないはずの森田からの提案を佐原が信用できないというのが、
疑心暗鬼が交錯するバトルロワイヤルならではの展開ですね
そして、南郷さんにとっても癒されますwww
後半は、物語が思ってもみない方向に大きく動き、読んでいてワクワクしました
森田の選択は…?
まったく個人的なことですが、今回代理投下ということで、
いつも楽しませて頂いている福本ロワのお役に立てて、とっても嬉しかったですwww
圧倒的乙…!
面白かったです…!
佐原…普通の人なりにわりと頭が回る器用タイプだけに、
森田が修羅場慣れ過ぎなのに気付いたりとか…佐原も一筋縄ではいかないですね
元々あまり人を信用してない、という描写、原作を思い返して納得するものがありました。
今後の展開が楽しみです。
森田と黒崎の話は読んでてワクワクいたしました。
作中に出て来た契約書や制限のおかげで、今後森田がどういう動きをするのか道筋を数パターン考えられますので、次のリレーに繋がりやすいと思いました。
黒崎の行動が主催者側にも何かしらの影響を及ぼしそうで、楽しみです。
あと数時間で合同ラジオっ…!
乙……!
また新たな火種が…
市川といい森田といいここの書き手は
斬新な爆弾をどんどん作ってくなww
「ハァ・・・ハァ・・・」
カイジは額の汗を拭うと、周囲を見渡す。
――本当に・・・北に田中さんがいるのかっ・・・!
D−3 アトラクションゾーン。
カイジは再び、この地に舞い戻っていた。
カイジは少し前にアカギから“探し物は北にある”と聞かされた。
しかし、北は広い。
アカギが進んできた道を考えれば、アトラクションゾーンではないかと
勝手に判断していたが、アトラクションゾーンは人っ子一人おらず、
あるのは物言わぬ遊具とそれを照らし出す月光のみである。
――なんで・・・もっと具体的に言わねぇんだっ・・・!
カイジは心の中でアカギに悪態をつく。
カイジはアトラクションゾーンを見渡しながら、快楽殺人者――有賀研二にあったことを思い出す。
有賀を殺害した際、6800万円という大金を手に入れた。
ここから少しずつカイジと沙織の歯車が狂い始めていた。
それまではカイジの意見に従順だった沙織が、危険な行動は慎むようになど、主張するようになっていった。
今にして思えば、大金を手に入れたことで、沙織は棄権という方針を明確にしたのだろう。
それが危険回避の自己主張、そして、カイジの裏切りへと繋がっていった。
カイジは沙織の変化に気づかなかった自分を悔やむと同時に、そこから沙織の人間性を考える。
555 :
水理2:2009/10/31(土) 01:38:12 ID:???
――田中さんは利で動く部分がある・・・
もし、出会ったところで、オレを生かすメリットがなければ・・・
オレを・・・殺すっ・・・!
カイジは歯軋りする。
――多分、田中さんは1億円を手に入れれば、脱出できると信じている・・・
それは不可能だと伝えた上で、別の脱出手段を見つけなけれ・・・
ここでカイジの思考がとまった。
カイジの目線の先にあったのは“水飲み場”だった。
カイジの喉が思わず、グッと鳴る。
カイジはこのゲームに参加してから飲まず食わずのまま、今に至っている。
その上、有賀の銃弾によって出血、沙織の裏切りによって、二時間近く走り続けている。
圧倒的水分不足っ・・・!
カイジの身体が無意識にそれを求めることは当然であった。
カイジは吸い寄せられるように、水飲み場へ近づくと、蛇口のハンドルを掴んだ。
――頼むっ・・・出てくれっ・・・!
カイジは力強く目を瞑り、ハンドルを捻る。
水が蛇口から滝のように流れて出る。
支援
557 :
水理3:2009/10/31(土) 01:41:54 ID:???
カイジの表情が思わず、緩んだ。
「やった・・・!」
この直後、カイジは顔を蛇口に近づけ、酒を煽るかのように、水を口の中へ流し込んだ。
スポンジのように乾ききった体の芯が潤っていく。
カイジはひとしきり水を飲み終えると、頭から水を被る。
疲れなどの邪念が霞み、頭が冴えてくる。
しかし、カイジはこの直後、顔を水から離した。
――何やっているんだっ・・・!オレはっ・・・!
この水は主催者が準備したもの、毒が入っている可能性があるのだ。
迂闊に飲んでいいはずがない。
人間は空腹や睡眠不足など、いわゆる生理的欲求が満たされないといらだったり、考えが短慮となる。
無理をしてでも、沙織を見つけなければならないという使命感がカイジの生理的欲求を麻痺させていた。
しかし、それは目が粗い考察など、本人の意識の及ばないところで静かに影響を与え始めていた。
カイジは水に警戒しながらも、あることを思い出す。
沙織の支給品の名簿にかかれたトトカルチョと思われる数字である。
もし、このゲームが鉄骨渡りのように多額の賭けを行われていたとしたら、
参加者が殺し合って人数を減らすというゲームのコンセプトの中で、
“主催者”が準備した水を飲んだために死亡というシナリオが用意されていたのでは、出資者は納得しないだろう。
――・・・ってことはこの水は安全ってことだよな・・・。
カイジは軽く笑いながら、肩の力を抜く。
水を大量に摂取しただけだが、それでもカイジは先程よりも冷静な思考を取り戻し始めていた。
558 :
水理4:2009/10/31(土) 01:43:17 ID:???
――そう言えば、平山がくれた名簿にはトトカルチョが・・・
カイジは左手に持つ地図と参加者名簿と施設パンフレットを見つめながら、身震いした。
カイジの脳裏に閃光が走る。
――どうして、オレは気づかなかったっ・・・!
カイジは蛇口の水を止め、ある物を探す。
それは数メートル先にあった。
「公衆トイレ・・・」
その公衆トイレはコンクリートの壁でできた、公園などでよく見かける典型的な箱型の形状の建物である。
カイジはその公衆トイレの一番奥の個室に入った。
――ここなら・・・主催者の目も届かないよな・・・。
カイジは濁った蛍光灯が照らし出すトイレの便器に腰をかけ、地図を広げる。
トイレに入ったのは用を足すためではない。
これから行う考察を主催者に気づかれたくなかったからである。
参加者の動向を確認するため、この島全体に監視カメラが仕込まれている可能性がある。
しかし、トイレの中はどうか。
沙織の参加者名簿のトトカルチョから、今回のゲームがギャンブルの品目であると考えうることができる。
参加者の動向を見守る間、ギャラリーは食事をとっていることもあるだろう。
そんな時、参加者の排便がモニターに映し出されれば、どんな気分になるのか。
さぞや不快なものであろう。
それらを踏まえれば、トイレに監視カメラが仕込まれている可能性はほかの場所と比較しても、格段に低いと予測できる。
559 :
水理5:2009/10/31(土) 01:44:57 ID:???
カイジは地図をまじまじと見詰めながら、ある施設を探していた。
――貯水池・・・浄水施設・・・。
カイジが地図から探していたもの、それは上水道を成立させるための施設である。
水道の仕組みを簡単に説明すると、ダムや貯水池などに貯められた原水は需要地までまとめて運ぶ導水施設を経由し、
浄水場など水質を改良し飲めるように処理する施設へ送られる。
その後、必要な水圧と水量とを伴って需要者に配られる。
先程、カイジは水飲み場で水を飲んだ。
上水道のシステムは成立していると言える。
しかし・・・
――・・・ないっ!どこにもないっ・・・!
カイジは地図に記載されている施設をもう一度、確認する。
カイジが沙織と遭ったC−4の民家のように、地図上で省略されている建物もある。
しかし、貯水池や浄水場と同じように日常生活を円滑に進める施設として、D−1に発電所が記載されている。
そのような施設を隠す必要がないと主催者は判断しているのだ。
そんな発電所が地図上に記載されているにもかかわらず、同じように生活を維持するための貯水池や浄水場が記されていないのは道理に合わない。
では、先程、カイジが摂取した水は洗浄されていない海からの水なのかと言えばそれも違う。
塩辛くはなかったし、何より消毒されていなければ、カイジは今頃、腹を下し始めているはずである。
――上水道に不備はない・・・じゃあ、下水道は・・・。
カイジは腰を降ろしているトイレのレバーをまわす。
水が音を立てて、便器の中へ吸い込まれている。
560 :
水理6:2009/10/31(土) 01:46:55 ID:???
――やっぱり機能しているってことだよな・・・。
当然、下水道関係の施設も地図上には存在しない。
ここから導かれることはただ、一つである。
――この島にではなく、本土もしくは別の孤島・・・
この島から離された場所に存在するっ・・・!
カイジはこのように考察する。
この島とは別の場所に、それらの施設は存在し、地下にあるだろうパイプで繋がっている。
そのパイプの上水道からは水が送られ、下水道からは汚水が流される。
つまり、もし、それらのパイプを見つけ、それを辿って行けば、この主催者の思惑に乗ることなく、ゲームから脱出することができるのだ。
――この脱出方法は田中さんを説得するための切り札っ・・・!けれど・・・
カイジは立ち上がると、トイレから出て歩き出す。
カイジに様々な疑問が沸き起こる。
――その地下の上水道や下水道へ続く場所はどこにあるっ・・・。
それに見つけ出したとしても、首輪はどうなるっ・・・。
そもそも、この仮説は仮でしかない・・・
そんなパイプ、本当に存在するのかっ・・・!
カイジは足を止める。
――けれど、可能性があるなら・・・オレは賭けるっ・・・!
このゲームを覆すためにっ・・・!
561 :
水理7:2009/10/31(土) 01:49:24 ID:???
【D-3/アトラクションゾーン/真夜中】
【伊藤開司】
[状態]:足を負傷 (左足に二箇所、応急処置済み)
[道具]:果物ナイフ 地図 参加者名簿 島内施設の詳細パンフレット(ショッピングモールフロアガイド、
旅館の館内図、ホテルフロアガイド、バッティングセンター施設案内)
[所持金]:なし
[思考]:田中沙織を捜す 仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒
赤木しげる(19)から聞いた情報を元に、アカギの知り合いを捜し出し、仲間にする
平井銀二の仲間になるかどうか考える
上水道、もしくは下水道へ続く場所を探す
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。
※アカギのメモから、主催者はD-4のホテルにいるらしいと察しています。
※アカギを、別行動をとる条件で仲間にしました。
※脱出の権利は嘘だと確信しました。
※明日の夕方にE-4にて待つ、と平井銀二に言われましたが、合流するかどうか悩んでいます。
※アカギの言葉から田中沙織は北にいると思っています。
代理投下終了です。
カイジの圧倒的閃ききたっ…!
水のみ場の水から、この水はどこから来るのか、という根本、物事の本質に至るところがいいですね。
これで、佐原の気づきと同じ地点に辿り着いたのかな。
下水道探しは、マンホールを探すのかな?首輪に関してはどうするかな?今後の動きが楽しみです。
圧倒的乙…!
ぬけてるようで、やっぱりカイジって切れ者なんだなぁと思い知らされました。
水を飲んで勝手に慌ててるカイジが本当にカイジらしいw
たしかにトイレの水は水道管がなきゃ流れない…田中の説得も含め、この閃きをどう活かすか。今後の活躍が楽しみです!
いつの間にか二つ来てる…どちらも乙!!
田中さんの説得と森田の任務、もう続きが気になって眠れないw
一つ思ったんだが森田の名前は「鉄雄」じゃないか?
565 :
名無しさん:2009/10/31(土) 04:09:27 ID:???
乙です
どんどん面白くなってきますね
みんなカイジのトイレパワーアップフラグに
触れてあげようよwww
乙です
すごくカイジらしさが出てて良かったです
いろんなところで話が動いてますね…!
今後が楽しみです
まとめサイトをアップしている者です。
107話猜疑と疑惑を
>>564様の指摘部分を修正、
108話水理と共にアップしました。
なお、Wikiの容量の関係上、猜疑と疑惑が前編、後編になってしまいました。
勝手に分割をしてしまい、申し訳ございません。
乙です
まとめサイトの絵掲示板に新しいイラストが投下されておりました。
シーンのチョイスがなかなか渋い。
書いた方、乙です!
ただ今ネット環境がないので見られませんが、
「埋葬」の絵を投下していただきありがとうございました。
ネット開通しましたらすぐに見に行きます!
保守してみせよう このスレ…
573 :
マロン名無しさん:2009/11/09(月) 22:44:54 ID:omsjCkDo
暗黒騎士キバ
が・・・保守・・・・・・!
…守っ…!
…守っ…!
保守っ…!
ククク…
そろそろ禁断症状が…
書いてるのでもう少し待ってて下さいっ…!
今日の0時過ぎに予約しますので待っていてください。
圧倒的・・・まさに突風のような保守!!
予約
キタ━q(゚∀゚)p━!!!
支援…!
フライングだが
583 :
マロン名無しさん:2009/11/18(水) 22:41:56 ID:eOzXvv/F
圧倒的支援
支援
支援
うず…うずっ…
まさかのフライング支援に申し訳なさを感じ、書き込みました。
現在、推敲中であり、最終チェックをしてくれる妹から投下の許可が降りれば、
明日か明後日には投下ができるのではないかと思います。
投下が可能になりましたら、
何時頃投下を開始するのかスレに書き込みます。
ちなみに、今回もさるさんを喰らうほどの長さです。
申し訳ございませんが、投下の際はどうかご支援をお願い致します。
本日の23時頃、仕事で疲れて倒れることがなければ、投下します。
どうかその際には支援をお願い致します。
やった!
待ってます!
支援・・・ざわ・・
ワクワク、ワクワク。
お久しぶりです。
昨晩はフライング支援ありがとうございました。
では、投下します。
593 :
劇作家1:2009/11/19(木) 23:08:11 ID:???
―――――――――世界は舞台、人は役者。
ウィリアム・シェイクスピア
E-5ギャンブルルーム前。
月下に照らされ、浅く生えた雑草の上に一人の男の死体が横たわっている。
その肉体は上半身しか存在していない。
胴から下は、まるで豚のミンチをぶちまけたかのように、細かな肉片となって散乱している。
この男にとって、自分の死は突然のことであったのだろう。
まるで自分が死んでいることに気づかず、これから何かを語ろうとしているかのように、口が半開きになっていた。
そして、その頭部は胴体から離れていた。
その男を見下ろす少女がいた。
その体型より大きすぎるシャツとズボンを着た少女――しづかは死体の前に立ち尽くす。
「誰だよ・・・こんな酷いことをしたのは・・・」
しづかの瞳から涙が露のように流れてくる。
死体の男――神威勝広はゲームが始まった直後、しづかと行動を共にしていた。
しかし、何者かによって仕掛けられた地雷によって、命を落とした。
しづかはこのゲームでは誰も信用してはいけないということを思い知らされた。
しづかの心に深い傷跡を残すには十分すぎる出来事であり、それに追い討ちをかけるかのように、今、勝広の首は切断され、首輪が奪われている。
――板倉といい・・・どうして、私にやさしく接しようとした奴らは皆、酷い目に遭わなくちゃいけないんだ・・・。
勝広が死体となった後も理不尽な仕打ちを受けている哀れさ、
勝広の首を切断した何者かの悪意への怒りと恐怖。
しづかが流す涙は、彼女に圧し掛かる負の感情そのものであった。
594 :
劇作家2:2009/11/19(木) 23:10:00 ID:???
それと同時刻である。
しづかの前に建つギャンブルルームでは・・・。
「『和也同盟』をここに成立するぜ・・・!異論はないな、二人とも・・・!」
この言葉をきっかけに兵藤和也、利根川幸雄、一条は主従関係の契約を結んだ。
この時点で30分経過しており、今度は一条のチップによって、さらに1時間の延長を申し込んでいる。
ちなみに、本来ならギャンブルルーム内での延長申し込み行為は
ゲーム開始直後のひろゆきと村岡の勝負を見ても分かるように禁止であるが、
(もし、ギャンブルルーム内での延長申し込み行為が成立すれば、村岡が勝負終了直前、さらに黒服に振り込むことで、結果的に村岡が勝利してしまう)
“一度、外へ出て、すぐに入って利用を申し込めば問題ございません”という村上のアドバイスによって、成り立っている。
「さて・・・支給品の確認だが・・・」
和也の一声から、利根川、一条がテーブルの上に持ち物を並べる。
一条は3つのディバックから次から次へと支給品を取り出していく。
その数に、さすがの和也も苦笑を浮かべる。
「お前・・・一体、何人、殺っちまってんだぁ・・・?」
一条は肩を竦めて答える。
「邪魔者が多すぎましたので・・・」
595 :
劇作家3:2009/11/19(木) 23:14:05 ID:???
その時だった。
ギャンブルルームの管理人、村上が呟く。
「あの少女は・・・」
「ん・・・?一体、どうしたってんだ・・・村上・・・」
和也が村上へ顔を向ける。
村上は入り口付近にある小窓を食い入るように覗きながら報告する。
「この建物前にある死体の前で・・・少女が・・・泣いています・・・」
「へぇ・・・心優しい女の娘じゃねぇか・・・」
和也は精神を追い詰められる、このゲームの中において、良心を残す人間がいるという事実に興味がわいたようで、にやつきながら村上の次の言葉を待つ。
村上は目を細め、再び、小窓から外を見つめる。
「確か・・・あの少女は・・・死体の男と共にいた・・・娘・・・」
この直後、和也は獲物を見つけた禽獣のような眼光を光らせる。
「どれ・・・見せてみろよ・・・」
和也は椅子から立ち上がると、村上の方へ近づき、小窓を覗く。
「あの派手な髪の色・・・昼間、ここでオレを襲った奴に間違いねぇぜっ・・・!」
「派手な・・・髪の色・・・」
一条の眉がわずかに動く。
「今、その少女は・・・一糸まとわぬ姿ではありませんか・・・」
和也は首をかしげる。
「いや・・・服は着てる・・・
と、言っても、どこかで調達したらしいブカブカの作業着だけどな・・・」
一条は立ち上がると、和也と同じように小窓を覗く。
一条の顔に、裏で生きてきた人間特有の嗤笑が浮かび上がった。
「ああ・・・彼女は“しづか”というのですよ・・・」
596 :
劇作家4:2009/11/19(木) 23:15:30 ID:???
一条は和也に手短に事の顛末を説明した。
しづかとホテルの前で出会ったこと、
同時刻に同じように合流した板倉という男と共にホテルで身を落ち着かせようとしたこと、
そのホテルで自分の命を狙う板倉を殺害したこと、
そして・・・
「しづかという娘・・・目上の者に対する礼儀が少々欠落していたので、
“分かりやすく”上下関係を叩き込んでやりました・・・」
一条は具体的には言わない。
しかし、その言葉で一条としづかの間に何があったのかはおおよそ予測がつく。
和也は満足げに哄笑する。
「カカカ・・・お前も“帝愛”に骨の髄まで浸かっちまっている人間だなっ・・・」
一条は“ふふっ・・・”と微苦笑で返答する。
「それはお褒めのお言葉と取らせていただきます・・・」
「けど、どうするよ・・・」
和也は窓に映る少女――しづかを見つめながら、頭をかく。
「あそこで泣かれちゃ、
オレたちもこのギャンブルルームから出るに出れねぇ・・・」
「では・・・殺しますか・・・?」
「それでもいいかもしれねぇが・・・なぁ・・・」
その時、和也はテーブルの上に並べられた支給品に目をとめた。
その内の一つを掴む。
面白いおもちゃを見つけたと言わんばかりに、和也の口元が吊りあがった。
「なぁ・・・ちょっとした悪戯を仕掛けてみないか・・・?」
597 :
劇作家5:2009/11/19(木) 23:18:22 ID:???
「うぐっ・・・うぐっ・・・」
しづかは嗚咽を殺しながら、涙を流していた。
ギィィィ・・・・・――――
ギャンブルルームの扉が静かに開く。
「なっ・・・!」
闇に慣れすぎた視界を焼き切る室内灯の光。
しづかは手を翳し、光を避けるように目を細めた。
「え・・・女の娘か・・・」
扉から一人の人物が現れた。
室内灯の逆光から、どのような人物かは分からない。
しかし、その声には深みがあり、年配の男性のもののように思えた。
「てめぇは誰だっ!」
しづかは右手に握っていたハサミを男に突き出す。
「ま・・・待ってくれ・・・私は君を傷つけるつもりはないっ・・・!」
男はそれ以上進むことはなく、ドアの前で立ち止まり、両手を挙げて、自分がいかに無害な人間かをアピールする。
しづかは男の反応を無視するかのように、ハサミの標準を男の首に定めたまま、じりじりと少しずつ後ずさりし、極力安全な間合いを作っている。
しづかは間合いを計りながら、男の愚かさを鼻で笑う。
「何が“君を傷つけるつもりはないっ・・・!”だっ・・・!
そんな甘い言葉、誰が信じるってんだっ・・・!
ここは殺し合いの場っ・・・!
甘い言葉を信じれば、必ず寝首をかかれるっ・・・!」
598 :
劇作家6:2009/11/19(木) 23:23:15 ID:???
孤独なしづかを救ってくれたのは、板倉と一条のやさしさだった。
そのやさしさに安らぎを感じた直後、一条は板倉を殺害し、その場が一転した。
しづかは何とか命を繋いだものの、その代償は口惜しいほどの恥辱であった。
「え・・・アンタ・・・」
しづかはあることに気づき、息を呑んだ。
目が光に慣れてきて、男の顔がおぼろげに見えてきたのだが、男の顔は火傷でただれているのだ。
「その顔は・・・」
「ああ・・・これか・・・」
男は自分自身の顔に触れる。
「怖がらせてすまない・・・
私は以前、信頼していた男から裏切りを受けてね・・・
結果的に、このような目にあったのだ・・・
だからこそ、誰も傷つけたくはないのだ・・・
痛みは誰よりも分かっているからね・・・」
「裏切り・・・傷つけられた・・・」
――この男、私と同じ立場じゃないのか・・・。
しづかに近親感に似た感情が生まれる。
しかし、しづかは首を横に振る。
――甘い考えを抱くなっ!
助かるために、男から武器を奪うんだっ!
「本当に傷つけるつもりがなかったら、そのディバックを渡しなっ!」
しづかは助けを求める悲鳴とも受け取れるような金切り声で喚く。
「・・・分かった・・・」
男がディバックを肩から下ろそうとした直後だった。
599 :
劇作家7:2009/11/19(木) 23:31:42 ID:???
「貴様っ・・・!何をしているっ・・・!」
ギャンブルルームの扉から怒声を上げながら、もう一人の男が現れた。
突然の乱入者に、しづかは全身に冷水を浴びせられたかのような喫驚を見せながら、ハサミの標準を乱入者に合わせる。
「て・・・てめぇは、何者なんだっ・・・!その男と組んでいる奴か・・・!」
やや興奮気味のしづかに対して、乱入者である男は冷静に語る。
「お前は私を参加者と見ているようだが、私はここのギャンブルルームを管理する者・・・
その証拠に・・・私には首輪がない・・・」
乱入者は自分の首を指差す。
「言っておくが、私を殺したら、ルール違反として、お前の首輪は爆発するぞ・・・!」
乱入者――ギャンブルルームを管理する主催サイドの黒服と分かったしづかは、
“チッ!”と、あからさまに不愉快さを表す舌打ちをし、吼える。
「じゃあ、アンタは黙ってなっ!私はこの男に用があるんだっ!」
しづかはハサミの標準を再び、男に合わせる。
黒服は半ば呆れたようなため息を洩らす。
「もう一つ付け足しておこう・・・
その男も殺せないぞ・・・
ルール上、“ギャンブルルーム内での暴力行為は禁止”。
その男はまだ、ギャンブルルームから“出てはいない”・・・!」
「何っ・・・!」
しづかは男の足元を見る。
確かに、男の足はドアより奥で立ち止まっている。
「くっ・・・!」
しづかの瞳に再び、涙がにじみ出る。
男はゲームのルールによって、その身が保障されている。
どんなに足掻いたところで、自分の不利は目に見えていた。
――ここは黙って退散するしかないのかっ・・・!
“武器を手に入れる”という計画の一歩を進めることができない。
身中の肉をむしられるような苛立ちが、しづかの中でくすぶっていた。
遅れて支援…?
601 :
劇作家8:2009/11/19(木) 23:34:31 ID:???
黒服は汚れたノラ猫を追い払うかのように、手を振るう。
「早くここから去れっ・・・!さもないと・・・」
「まぁ・・・いいじゃないか・・・」
今まで黙っていた男が、黒服をなだめる。
この言葉に黒服は面食らう。
「何を言っている・・・この少女はお前を・・・」
「この島では殺し合いが求められている・・・
命を狙われて、当たり前じゃないか・・・」
男はしづかをまじまじと見つめる。
「この少女はサイズの合わない服を着ている・・・
この道中、何かあったのだろう・・・
信頼していた人物から裏切りを受けた・・・とか・・・
上手く言えないが、今の彼女は私と同じ立場のような気がしてならないんだ・・・」
男はしづかにやさしく言い聞かせるかのように、温かみが篭った口調で語り始めた。
「“ギャンブルルーム内での暴力行為は禁止”というルールは君にも適用されるかもしれないが、それは私も一緒だ・・・
ギャンブルルーム内にいる私が君に何か危害を加えようとすれば、
ギャンブルルーム内で暴力行為を行ったとして、私の首輪が爆発する・・・」
男は隣にいる黒服に詫びるように手を挙げる。
「申し訳ないが・・・彼女と二人で話をさせてはくれないか・・・」
黒服はと呆れ混じりのため息をつく。
「どうなろうと知らないが、それだけは覚えておけ・・・
どちらが攻撃しても、今の状況下では首輪が爆発するということをな・・・」
黒服はまるで捨て台詞のように注意を促すとギャンブルルームへ戻っていった。
602 :
劇作家9:2009/11/19(木) 23:36:51 ID:???
男は黒服がギャンブルルームの奥へ引っ込んでいったことを確認すると、一呼吸置いて、しづかを見つめる。
「信じて欲しい・・・
変な話だが、私は君に命を狙われ、脅威を感じている・・・
しかし、君の力になりたいという気持ちも存在しているんだ・・・
私はもう暴力は嫌なんだ・・・
それに、ルール上、君に危害を加えることは出来ない・・・
だから、そのハサミを収めてはくれないか・・・」
しづかは男の言葉を信じていいものなのか、逡巡する。
ギャンブルルームのルールはよく分からない。
しかし、監視する立場にある黒服が口にしたルールなのだ。
どのような参加者にも、公平に適用されるのであろう。
下手に攻撃を仕掛けて自滅するよりは、男の出方を探った方が賢明である。
しづかはハサミを構えたまま、男を見据える。
「分かった・・・
私もアンタを攻撃しない・・・
けど、アンタと同じように、私もアンタを信用できない・・・
だがら、ハサミは下げられない・・・」
男は“それで構わない”としづかの要求を受け入れた。
「君・・・ディバックはどうしたんだ・・・」
しづかはしばらく黙っているも、気まずそうに言葉を洩らす。
「・・・取られた・・・」
「そうか・・・」
ククク…まだだ。まだ終わっていないっ……。
支援、倍プッシュだっ……!
支援
支援は二度するっ……!
606 :
マロン名無しさん:2009/11/19(木) 23:44:36 ID:mEJMUeY3
支援。
607 :
劇作家10:2009/11/19(木) 23:45:58 ID:???
男は肩にかけてあったディバックをしづかの目の前に差し出す。
「君はこれを持つといい・・・」
「あ・・・あんたのディバックは・・・」
「ああ・・・私のかい・・・?」
男は差し出したディバックとは別のディバックをしづかに見せた。
「実は私はディバックを2つ持っていてね・・・
夕方、道端で倒れていた死体から回収した物だ・・・
あまり気分のいいものではないことは百も承知だが、あると何かと便利だろう・・・
それと・・・」
男は自分のディバックから食料を出した。
「これもその死体が持参していた物だ・・・良かったら、食べてくれ・・・」
しづかはハサミの構えを解かない。
しづかに一条の毒気に満ちた冷笑が蘇る。
「まさか、その食料、毒でも入っているじゃないんだろうな・・・
安心させて、どこかでそれを食べさせて、それで私を殺そうと・・・」
しづかは男をなじるように捲くし立てるが、後半になるとむせび泣くような声に変わっていく。
信用すれば、足元を掬われる。
一条から受けた屈辱への激憤と同時に、
誰も信用することができない寂しさ、理不尽さが
しづかの心の中で、流れの悪い汚泥のように交じり合っていく。
気がつくと、弱みを見せるなと自分にあれほど言い聞かせていたにもかかわらず、
しづかの瞳からは涙がぼろぼろと零れ落ちていた。
608 :
劇作家11:2009/11/19(木) 23:47:18 ID:???
「辛かったのだろうな・・・」
男は食料であるパンを開け、その一部をちぎると、自分の口の中に放り込んだ。
口を動かしながら、子供にプレゼントを渡す父親のような笑顔をしづかに向ける。
「ほら・・・これでも、信用できないかい・・・?」
「あ・・・」
しづかは喉からかすかに声を搾り出す。
――この男を信じてもいいんじゃないのか・・・。
しづかの中で今まで強く張り詰めていた物が徐々に解かれていく。
そんな感情を抱いてはいけないと分かってはいるのに乾いた荒野に降り注ぐ恵雨ように、心に温もりが染み込んでいく。
男はあることを閃いた。
「そうだ・・・これも持っていくといい・・・」
男は自分のディバックからある物を取り出した。
「それは・・・」
男の手の中にあったものは野球ボールと丁度同じ大きさの、蛍光オレンジ色のボールであった。
「これはカラーボールと言って、
例えば、強盗に遭遇した時、相手に投げて用いるものだ。
もし、このカラーボールが相手に当たれば、ボールは壊れ、
中身の液体が相手にぶちまけられる。
この液体は特殊染料で、一度、ついてしまうと簡単には取れない・・・
つまりね・・・」
「そんなのは分かっているっ!
要するに、相手を驚かすための道具だろ?」
男の丁寧すぎる説明に苛立ちを覚えたのであろう。
しづかは男の話の腰を折った。
男は意外そうな顔を見せ、“以前にも使った事があるのかい?”と尋ねた。
「使ったことはないが・・・」
しづかは首を横に振りつつ、言葉尻を濁す。
「私の支給品にも入っていた・・・奪われちまったが・・・」
支援は……僕らの手の中にっ……!
610 :
劇作家12:2009/11/19(木) 23:48:13 ID:???
男は無言のまま、しづかと同じ目線になるようにしゃがむと、ディバックの両脇についている小ポケットを空けた。
男はしづかに小ポケットの中身をちらりと見せ、“ここの中には何も入っていない”と伝えると、カラーボールをその中へはめ込む。
小ポケットの穴の大きさはカラーボールの直径とまったく同じで、その底を完全に覆い隠すように、カラーボールが収まってしまった。
「このカラーボールをポケットの中に入れておけば、
もし、誰かに襲われた時、すぐに投げつけることができる・・・
それに・・・」
男はカラーボールを小ポケットから出すと、それを傾けた。
その直後、カラーボールから糸を引くように、液体が少しずつ漏れ出した。
「死体から回収した時にはすでに破損していた・・・
多分、この持ち主が何者に襲われた際に、どこかにぶつけてしまったのだろう・・・
この小ポケットの大きさは、カラーボールを固定して保管するにはまさに打ってつけ・・・
ああ・・・そうだ・・・」
男は自分のディバックから包帯を出した。
それをカラーボールにぐるぐると巻く。
それを左手に乗せ、しづかに見せる。
「ちょっとした応急処置だが、これだけ巻けば、
むき出しの状態のときよりは割れにくいだろう・・・
本当なら、小ポケットの中ではなく、手に持ってもらいたいものだが、
この特殊塗料は夜でも目立つ・・・
もし、それが君の手についてしまえば、相手に存在を知らせることになる・・・
かえって、君の危険が増してしまうんだ・・・」
男はここで一呼吸置くと、まるで小さな子供にお使いを頼むかのように、
ゆっくりとだが、はっきりとした言葉を紡ぐ。
「だから、ここぞという時まで、“小ポケットから出さない”ようにするんだ・・・
いいね・・・?」
611 :
劇作家13:2009/11/19(木) 23:48:57 ID:???
しづかは特に肯定をする様子もなく、男を睨みつけ続ける。
男はカラーボールを、右手に持つディバックの両脇の小ポケットの中へ、食料をメインポケットへしまうと、それをギャンブルルームの前へ置いた。
「前にも話したが、できることなら、君の力になりたい・・・
けれど、私も怖いのだ・・・
再び、裏切られるのではないか、襲われるのではないか・・・と・・・
君を突き放すようで申し訳ないが、そのディバックを持って、
私がこの扉を再び開けるまでに、ここから立ち去って欲しい・・・
それが君に出来るぎりぎりのこと・・・」
男は“すまない・・・”と呟くと、ギャンブルルームの扉のドアノブに手をかける。
「ま・・・待ってくれっ!」
しづかの悲痛な声に、男の手が止まる。
「・・・どうした・・・?」
「あ・・・その・・・」
しづかは服の端をぎゅっと握り、うつむいた。
「な・・・名前・・・聞いてもいいか・・・?」
常に攻撃的な姿勢を崩さなかったしづかの少女らしい仕草に、男は笑みを滲ませる。
「私の名前か・・・・・・“黒崎”だ・・・君は・・・?」
「しづか・・・私はしづか・・・だ・・・」
「・・・しづか・・・か・・・」
男は名残惜しそうにしづかを見つめ続けるも、手に握るドアノブを動かす。
「生き抜いてほしい・・・生きるんだ・・・しづか・・・」
黒崎と名乗った男はそのまま扉を閉じた。
しづかはそれを黙って見つめ続けた。
612 :
劇作家14:2009/11/19(木) 23:50:11 ID:???
黒崎と名乗った男――利根川は扉を閉めた直後、後ろを振り返った。
そこには利根川から顔を逸らしながら、腹を抱えて笑いを堪える一条と
椅子にもたれながら豪快に笑い転げる和也の姿があった。
「・・・いつまで笑い続けるおつもりですかな・・・お二人とも・・・」
利根川の声にはやや怒りが含まれている。
和也は“悪りぃ・・・!”と手を挙げて詫びた。
「けどよぉ・・・
何が“君の力になりたい”“生き抜いてほしい”・・・だっ!
帝愛ナンバー2のアンタからは想像できねぇセリフの数々・・・
笑うなって方が無理な話だろ・・・!」
利根川は不機嫌そうに椅子に座る。
「そもそも年頃の女の娘を安心させるような“慈愛に満ちた”口調でと、
注文をつけたのは、和也様ではありませんかっ・・・!
私はその指示を忠実にこなしたに過ぎませんぞっ・・・!」
「おいおい、それ以上怒るなよ・・・利根川・・・」
利根川にへそを曲げ続けられては今後に支障が出ると察した和也は
“アンタの芝居はプロの役者ものそのものだったぜっ!”“ぜひ、スクリーンで見てぇもんだぜっ!”と
見え透いたお世辞を並べると、それまでとは打って変わって落ち着いたトーンで語る。
「だが、アンタが大芝居をうってくれたおかげで、事は前進したっ・・・!
帝愛次期当主として、礼を言うっ・・・!」
利根川もその言葉でやっと機嫌を直したのか、腕白な息子を持って苦労するという微笑を含んだため息を洩らす。
「これも、このゲームで生き残るため、そして、帝愛のためですからな・・・」
「へへっ・・・ありがとよ・・・!」
どうせ支援なら強く打って・・・・支援っ・・・・!
支援……
支援……
615 :
劇作家15:2009/11/19(木) 23:53:32 ID:???
「和也様・・・差し出がましいようではありますが・・・
今回の策は少々・・・目が粗いものではありませんでしたか?」
その時、やっと笑いが治まった一条が額に皺を寄せた表情を見せる。
和也は“しゃあねぇだろ・・・道具が限られているんだからな・・・”と頭をかきながら、立ち上がり、テーブルの上に並べられた支給品を見下ろす。
和也の目があるものでとまった。
それは手に収まるような円盤状の塊――和也の支給品である地雷であった。
今、その地雷は“一つ”しかない。
和也はそれを掴む。
「人が多いところで、発動させてくれよ・・・オレの地雷をよ・・・」
和也はしづかのディバックに自身の支給品である地雷を仕掛けていたのだ。
では、どこで仕掛けていたのか。
話は少し前にさかのぼる。
和也はしづかに地雷を持たせる戦術を思いついた直後、一条、利根川、村上にその戦術を簡単に説明、いくつかの仕込みを準備した。
・ディバックへの切り込み
和也は一条にディバックを1つもらっても構わないかと尋ねた。
一条はこの時点で、自分のディバック、板倉のディバック、しづかのディバックと三つのディバックを所持している。
勿論、一条としては一つあれば十分なので、快く了解した。
和也はしづかのディバックを手に取ると、その小ポケットの脇を利根川が勝広から回収したノミで、指が三本入るほどの切れ込みを入れた。
616 :
劇作家16:2009/11/19(木) 23:54:23 ID:???
・包帯の結び目
包帯は一条の支給品であり、カラーボールを覆るほどの長さを確保し、ノミで切断。
その先を絞首刑の際に使用される、引っ張ればきつく絞まっていくロープの結び方――首吊り結びで結う。
その後、結び目を機転に、使用前と同じ形状なるように、包帯を巻いていった。
・カラーボールの毀損
カラーボールはしづかの支給品であり、ノミで軽く叩き、亀裂を作った。
・地雷の仕掛け
地雷を仕掛ける場所は小ポケットの底である。
しかし、いくら和也の地雷が手に収まるような小型のものであったとしても、
底ですっぽり納まってしまうというには少々その形状は大きい。
そこで和也は地雷を小ポケットに仕込んだ後、策に必要がない板倉のディバックをノミで切り裂き、その布を地雷の上へ覆いかぶせた。
しづかに小ポケットの中には何も入っていないと確認させる時、地雷の存在を悟られないようにするためである。
617 :
劇作家17:2009/11/19(木) 23:55:55 ID:???
ここからが利根川の出番である。
まるで偶然かのようにしづかと接触、ある程度の信頼関係を結び、食料とカラーボールを渡す約束をする。
食料はしづかからの信頼を得るための道具でしかなく、重要なのはこのカラーボールである。
亀裂が入ったカラーボールを素手で持つことが、いかに危険なことであるかをしづかに伝えながら、そのカラーボールを包帯で包み、しづかに見せ付ける。
この際、包帯の結び目はカラーボールと手の平でしづかから見えないように隠すことがポイントである。
しづかの視線は左手のカラーボールに釘付けとなる。
その隙に、右手はディバックを掴んでいるかのように見せながら、親指、人差し指、中指の3本を小ポケットの切り込みの中へ突っ込み、ある物を探り当てる。
地雷の安全装置である。
地雷は安全に持ち運びができるように、ピン状の安全装置を抜かなければ、作動しない仕組みとなっている。
その安全装置を発見し、指でその位置を確認した直後、利根川は包帯で巻いたカラーボールを小ポケットに入れた。
包帯の結び目を穴の中に入れた指で捕らえ、安全装置のピンに括りつけ、包帯がピンに肯定されるように引っ張る。
618 :
マロン名無しさん:2009/11/19(木) 23:56:53 ID:mEJMUeY3
支援・・・。
支援は命より重い……!
揺れない支援
621 :
劇作家18:2009/11/19(木) 23:59:16 ID:???
和也プロデュースの自爆爆弾の完成である。
後はしづかにディバックごと託せばよい。
もし、しづかが何者かと接触すれば、疑心暗鬼のしづかはカラーボールを投げつけようと、ディバックから取り出す。
その瞬間、カラーボールと繋がっている地雷の安全装置のピンが抜け、ディバックの圧迫によって地雷が発動。
しづかを含めて周囲の人間が爆発に巻き込まれ、うまく行けば大多数の参加者を減らすことができるのだ。
「・・・と言っても、しづかがカラーボールを確認したくて、
小ポケットからカラーボールを取り出してしまったら・・・」
一条の疑問に、和也は“あっ!そうか・・・”と手をパンと叩いた。
「・・・一条には仕込みばかりを頼んじまって、
オレと利根川の打ち合わせには参加していなかったもんな・・・」
和也は不敵な笑いを見せる。
「あのカラーボールにはちょっとした“魔法”が仕掛けてある・・・
一条が懸念する可能性も無きにしも非ずってところだが・・・」
和也がここまで言いかけたところで、窓を覗いていた村上が和也たちに声をかける。
「今、しづかがディバックを確認し始めました・・・」
「ほう・・・どれどれ・・・」
和也は小窓からしづかの様子を探った。
622 :
劇作家19:2009/11/20(金) 00:00:17 ID:???
しづかは暗闇に目が慣れてきたのか、月明かりを頼りに黒崎――利根川から渡されたディバックの小ポケットを開けた。
「うわっ・・・何だよ・・・これ・・・」
その直後、しづかの動きがとまる。
小ポケットの中に収まるカラーボールの蛍光塗料は目に突き刺さるような蛍光オレンジの色であるが、
その色が包帯に染みて、広がっているのだ。
しづかはこれ以上洩れないようにボールの位置を変えようとするが、
その手は触れる直前で思いとどまる。
「亀裂を探してボールに触れれば、塗料が手に付く・・・
付いてしまえば、洗い落とすことは不可能っ・・・」
しづかは小ポケットを閉じる。
「これを使えるチャンスは一回・・・それも、早い段階で・・・」
――武器を持っている奴にぶつけ、その隙をついて武器を奪う・・・!
しづかはそう決心すると、
今まで手に持っていたミネラルウォーターをディバックの中へ突っ込み、
そのまま、森の闇へ――自分が目標としていた建物へ駆け出していった。
623 :
劇作家20:2009/11/20(金) 00:01:23 ID:???
「・・・利根川に頼んでおいたのさ・・・
“包帯に液を滲ませて、それを見て分かるように入れてくれ”っとな・・・」
「なるほど・・・
これはしづかの心理を上手くついた“魔法”ですね・・・」
“これは参りました”と、一条は頭を下げる。
それに対して、和也は“いいや・・・これも手先が器用なお前がオレの指示を信じて準備してくれたおかげだ・・・”と一条を労った。
「それにしても・・・」
一条には和也の機転もそうだが、それ以上に興味深いことがあった。
「この“盗聴器”・・・感度がよいですね・・・
しづかの独り言をはっきり聞き取ることができる・・・」
一条は和也が握り締める盗聴器のイヤホンを見つめる。
そう、しづかのディバックには盗聴器が仕掛けられていたのだ。
しかも、外に出ることが出来ない村上の暇つぶしとして使われていたあの盗聴器である。
村上がため息をつく。
「言っておきますけど、“ギャンブルルーム内の備品持ち出し禁止”という規定がないとはいえ、
ギャンブルルームの備品を勝手に使わないで下さい・・・」
和也は“カカカ・・・”と年齢に似合わないふてぶてしい笑いを見せる。
「おいおい・・・その規定がないのは、ギャンブルの種目によっては備品を消費しちまう場合があるためだろ・・・
これは極論だが、二つのコップに入った水のうち、どちらかに毒が入っていたとする・・・
毒入りでない方を選ぶことができるかという馬鹿な賭博をやろうとした時だ・・・
仮にこのギャンブルがどんな結果に終わったであれ、
まさか水を飲んだ参加者から、“水はギャンブルルームの備品なので返してください”とは
言えない・・・
なにせ、消化しちまってるもんな・・・
だから、備品の持ち出し禁止は規定に加えられなかった・・・
そんなに文句があるなら、その規定を加えなかった主催者と
利根川に“盗聴器”の存在を伝えちまった自分を恨むんだな・・・
その備品、予備もあるんだしよ・・・」
624 :
劇作家21:2009/11/20(金) 00:02:11 ID:???
「まあ・・・そうですが・・・」
和也の言葉は一理あるが、主催サイドとしての立場もある。
和也と黒崎の間に挟まれるような位置にいる村上にとって、
和也のグレーゾーンの戦略は、常に心を労するものであった。
村上の不安定な立場を察してか、一条が村上の肩に手を添える。
「お前にはいつも苦労をかけてばかりだな・・・すまない・・・」
村上は顔を穏やかに緩ませると、首を横に振る。
「いえ・・・そもそも私は貴方がこのゲームに参加すると聞いて、この任務を志願しました・・・
貴方をこのゲームから離脱させる手助けを少しでも出来ればと願い・・・
例え、私の行為が上から咎められたとしても、それは覚悟の上のことでございます・・・」
「村上・・・」
一条はどこか吹っ切れたような表情を浮かべた。
「これからもよろしく頼む・・・我が部下・・・いや、我が“片翼”として・・・」
「“片翼”・・・・・・どうして、それをっ!」
村上は照れのあまり、慌てて手で口元を押さえた。
一条の口から、その単語を聞いて、自分のセリフの臭さを思い知る。
“先程、利根川先生からこっそり聞いた・・・”と、一条はさらりと答える。
「あの時は・・・その・・・勢いで、そんな単語を・・・」
村上は女々しくも、口元を手で押さえたまま、ゴニョゴニョと言い訳をする。
“別に構わん・・・”と一条は苦笑を洩らし、“それに・・・”と話を続けた。
「私は改めて思う・・・
自分一人の力ではこのゲームから脱出することができないことを・・・
不十分な翼・・・私もまた、片翼でしかないのだ・・・」
一条は村上を射抜くように見据えた。
「翼は・・・両翼が揃わなければ、飛翔できない・・・
共に生き抜き・・・このゲームから飛び立とう・・・」
「一条様・・・」
村上の声が潤む。
その手の隙間からは笑みがこぼれていた。
625 :
劇作家22:2009/11/20(金) 00:03:59 ID:???
「和也様・・・少しよろしいでしょうか・・・」
「んっ・・・どうした・・・?」
一条と村上のやり取りを見つめていた和也は利根川の方を振り返る。
「私の質問も差し出がましいものではありますが・・・
しづかという少女に地雷を持たせたのは参加者の人数を減らすため・・・
しかし、この少女、いつ地雷を発動させるかは分からない・・・
それに・・・その・・・」
「・・・“せこい”って言いたいんだろっ・・・」
「い・・・いえ・・・そのようなつもりはっ・・・!」
和也の言葉を利根川は全力で否定する。
しかし、和也は“女の娘に爆弾の運び屋をさせるわけだしな・・・そう思うのは当然だ・・・”と、利根川の指摘を肯定する。
肯定した上で、和也は利根川に問う。
「利根川・・・ゲームが始まってから、しっかり休憩を取っていたか・・・・・取ってないだろ?」
突然、これまでの流れとは関係ない問いに、利根川は困惑しながらも、“確かに、しっかりとは・・・”と正直に答える。
「だろうな・・・」
和也はどっしりと椅子に深く背もたれる。
「オレ達が優勝するためには一人でも多くの参加者を減らす必要があるが、
寝る間も惜しんで参加者を探すってのは効率が悪いし、いずれ疲れも出てくる・・・
あの少女に地雷を渡したのは、仕事の代理としてさ・・・
オレ達の休憩の間のなっ・・・!」
和也は指で盗聴器のイヤホンをいじくりながら、
“利根川だから話すけどさ・・・”という前置きで心の内を口にする。
「正直、今回の策が上手くいくとは思ってはいない・・・
成功する確率は10パーセントくらいってところか・・・
この盗聴器も、休憩のBGMってくらいにしか捉えていない・・・
けど・・・もしかしたら、聞こえてくるかもしれねぇからさ・・・」
悪党のくせに何かっこよく纏めてんだ支援
627 :
劇作家23:2009/11/20(金) 00:06:03 ID:???
和也は盗聴器のイヤホンに耳を傾ける。
和也の双眸が陰惨に光った。
「あの女の悲鳴・・・ゾクッとくるぜっ・・・!」
この直後、身を刺すような寒さが利根川を襲った。
和也の身体全体から極寒の冷気を感じたからだ。
利根川は直感的に思う。
――やはり、和也様は会長の息子・・・
誰よりも会長の狂気を受け継いでいるっ!
「ところでよ・・・利根川・・・」
利根川はハッと我に返り、顔をあげる。
「オレのシナリオには、“黒崎”と名乗れという筋書きは存在しなかったはずだが・・・」
利根川は臣下が主君に礼を取るかのように、うやうやしく頭を下げる。
「一つ目の理由はあの娘の洞察力を試したかったため・・・
開会式のとき、黒崎ははっきりと自分の名前を名乗っていた・・・
しかし、あの娘は黒崎という単語を聞いてもピンとは来なかった・・・
つまり、あの娘の洞察力は程度が低いもの・・・
もう一つは、極力、我々の匂いを消すべきと考えたため・・・
和也様にはこれからも暗躍し、最終的には優勝していただく必要がございますゆえ・・・」
和也はこの言葉を聞いて、二カッと晴れやかな顔になる。
「その土壇場の機転っ・・・!
もうお前は“指示待ち人間”なんかじゃねぇ・・・!
立派なオレの策士だっ・・・!」
「和也様・・・」
利根川としては珍しく柔和に顔を緩ませる。
「その言葉が何よりでございます・・・」
守銭奴のように支援
629 :
劇作家24:2009/11/20(金) 00:07:36 ID:???
和也は思う。
一条も利根川も地獄のどん底から、その延長線上にあるこのゲームへ引きずり出された。
このゲームは彼らを更なるどん底に突き落とすはずであったが、
一条も利根川もこの逆境の中で一皮向けて、確実に成長を遂げている。
逆境を己の養分としているのだ。
――オヤジも見る目がねぇぜっ・・・!
魅力的な部下を一度の失態で退けた父親を鼻で笑う。
――だがよ・・・
和也から父親譲りの底知れぬ闇とも言うべき冷笑がにじみ出た。
――どんなに素晴らしい臣下であったとしても、最後は死んでもらうんだがな・・・。
和也は口元に軽く触れ、その笑みを隠し、立ち上がる。
「さて、今後の方針について話し合おうか・・・」
630 :
劇作家25:2009/11/20(金) 00:09:08 ID:???
【E-5/ギャンブルルーム内/真夜中】
【兵藤和也】
[状態]:健康
[道具]:チェーンソー 対人用地雷三個(2つ使用済、その内の1つはしづかが所持)
クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0〜1個(確認済み) 通常支給品 双眼鏡 首輪2個(標、勝広)
[所持金]:1000万円
[思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
死体から首輪を回収する
鷲巣に『特別ルール』の情報を広めてもらう
赤木しげるを殺す(首輪回収妨害の恐れがあるため)
『和也同盟』の今後の相談をする
※ 伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。
※利根川、一条を部下にしました。部下とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※遠藤、村岡も、合流して部下にしたいと思っております。彼らは自分に逆らえないと判断しています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、その派閥全員を脱出させるという特例はハッタリですが、
そのハッタリを広め、部下を増やそうとしています。
※首輪回収の目的は、対主催者の首輪解除の材料を奪うことで、『特別ルール』の有益性を維持するためです。
※しづかに自爆爆弾を持たせました。その様子を盗聴器で確認しております。
※C-3に標の首がぶら下げられています。胴体はB-3地点の道の真ん中に放置されています。
631 :
劇作家26:2009/11/20(金) 00:09:49 ID:???
【利根川幸雄】
[状態]:健康
[道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(28発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
[所持金]:1800万円
[思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
首輪の回収
遠藤の抹殺
カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺
アカギの抹殺、鷲巣の保護
『和也同盟』の今後の相談をする
病院へ向かう
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、
その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えた為、平山が死んだと思っています(何かの切欠で計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。
※しづかに自爆爆弾を持たせました。その様子を盗聴器で確認しております。
632 :
劇作家27:2009/11/20(金) 00:11:11 ID:???
【一条】
[状態]:健康
[道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0〜3(確認済み、武器ではない)
[所持金]:5400万円
[思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
復讐の為に利用できそうな人物は利用する
佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
『和也同盟』の今後の相談をする
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、
その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※しづかに自爆爆弾を持たせました。その様子を盗聴器で確認しております。
633 :
劇作家28:2009/11/20(金) 00:12:04 ID:???
【E-5/ギャンブルルーム付近/真夜中】
【しづか】
[状態]:首元に切り傷(止血済み) 頭部、腹部に打撲 人間不信 神経衰弱 ホテルの従業員服着用(男性用)
[道具]:ハサミ1本 ミネラルウォーター1本 カラーボール(と対人用地雷) 通常支給品(食料のみ)
[所持金]:0円
[思考]:ゲームの主催者に対して激怒 誰も信用しない 一条を殺す 武器の入手
※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています。それ故、誰も信用しないと決意しています。
※和也に対して恐怖心を抱いています
※利根川を黒崎という名前と勘違いしております。
※利根川から渡されたカラーボールはディバックの脇の小ポケットに入っており、そのポケットの底には地雷が仕込まれています。なお、カラーボールが蓋のような状態のため、しづかはその存在に気づいておりません。
※この地雷は包帯によってカラーボールと繋がっており、カラーボールを引っ張ると、地雷の安全装置であるピンが外れ、ディバックの圧迫によって爆発するように仕掛けられております。
※しづかが向かった先は、映画館、温泉旅館、病院いずれかです。どの建物に向かったのかは、次の書き手さんにお任せします。
お疲れ様っ……!
お疲れ様っ……!
まさしく本物の地雷っ……!
数少ない女性がどう出るかっ……!
圧倒的乙…!
しづか頑張れ超頑張れ
こちらで以上です。
支援してくださった皆様ありがとうございます。
こんなにもバリエーション豊かな支援をいただけるとは…。
福本ロワの住民の方々やさしさを改めて感じました。
本当にありがとうございました。
637 :
ドラえもん:2009/11/20(金) 01:20:13 ID:???
しづかちゃんがんばれ。超がんばれ
圧倒的乙…!
利根川の名優っぷり、策士っぷりにしびれたっ…!
一条の冷酷さと、村上に対する親密さの対比がすごい。
和也…こええ…!読んでいてぞくぞくしました。
しづか…ひどい目に遭ってばかりだな…。
仕掛けた地雷がどんな風に爆発するのか、考えるだけで恐ろしい…。
地雷の仕組み、よくここまで考えたものと思う。すごいの一言。
悪人だらけでやばいな
だがその中でも和也は際立っている…!
さすが兵藤一家…!
今回も大作乙です!
またひとつ、思ってもみない方向に話が広がりました。
書き手さん皆様すごいですね。読んでいてひきこまれます。
しづか、かわいそうな目にばかり遭って…
次こそは、しづかが本当の善人に出逢えますように
しかし、そこで地雷が発動したりしたら、地獄絵図だな…
予約
キタ━━(。A。)━━ッ!!!
>>640 確かに善人といるとき発動は悲惨だな
ただその斜め上の展開があるんじゃないかと期待
投下します。
そこに行けば、人の一人二人くらいはいるのではないか…。
出会う人物がどんな立場を取る人間であっても構わない。
現状に何か変化をもたらす出来事が起きるなら、多少のリスクなど…。
淡い期待を抱いて、不気味な老人、市川の手を取り、仲根は目的地に辿り着いた。
だが、商店街の入り口に着くなり落胆の溜息をついた。
『いらっしゃいませ』と書かれた、錆の浮いたアーケードを潜ると、奥までずっと『シャッター街』が続いている。
通りには転々と街灯が並んでいたが、所々電球が切れかかり、チカ、チカと不規則に点滅を繰り返している。
何年も前に時を止め、埃をかぶったままのシャッターを見ていると、不安がよりいっそう大きくなる。
仲根は溜息をついた。そこは予想していた以上に陰気な場所であった。
彼の知っている夜の商店街は、店こそ古くとも、看板の蛍光灯が一部切れかかっていようとも、
そこで生活している人間の息遣いが感じられた。
新しいパチンコ屋の横に場末の古びたスナック屋、その並びに派手な壁面のゲーセンが並ぶ。
ネオンの点滅、人込み、喧騒、遠くで車のクラクション。
仲根の知っている商店街は、そんな商店街である。
ここは辛気臭すぎる。
一様に同じ雰囲気のシャッターが並んでいる。同じ時期に店が建てられ、同じ時期に使われなくなったのであろう。
シャッターは堅く閉ざされており、試しに取っ手に手をかけてみるが、持ち上がる様子など無い。
「くそっ…!」
腹立ち紛れにシャッターを蹴ると、がしゃん、と無機質な金属音を立てた。
「どうした…?」
仲根の後ろで佇んでいた市川が声をかけた。
「商店街に着いたら、武器になりそうなモンを調達しようと思ってたんだが…。
生憎、どこもシャッターが閉まっていて入れそうに無いんだ」
「窓はないのか…?」
「あるにはある。だが、二階だな…。」
仲根は上を見上げた。大抵の店は一階が店舗、二階が居住スペースになっている。
店と店の隙間から壁をよじ登り、二階の窓を割って中に入り、一階に降りてシャッターを中から開ければいいのであるが…。
仲根は、それがひどく面倒に感じた。
否、『面倒』というのは自分へのごまかし…。本心は、店の中に入るのが怖いのだ。
この商店街の持つ不気味さ…。生活感の無さ…。それでいて中に何が潜んでいるか分からない雰囲気が、
悪いほうへと想像力を掻き立てられて厭なのだ。
「シャッターのない店を探すか…。他の参加者のいる気配がない今のうちに、奥まで探索しておこう…。
爺さん、ここは障害物もないし、真っ直ぐの道だから転ぶことも無いだろう。ついてきてくれ」
仲根は市川にそう言葉をかけると、北へ向かって歩き出した。
商店街の中程に八百屋を見つけた。
その店の軒先にはシャッターがついておらず、外から店の内部を見渡せた。
包丁でも置いてないかと店の中を探してみたが見つからない。
店先は野菜を並べるための台が埃をかぶっている。旧式のレジの台の下にも棚があったが何も入っていない。
用具入れでもありそうなものだが、見当たらない。店の奥は木製の扉によって閉ざされている。
奥は薄暗く、しんとしている。不気味さに耐え切れず、仲根は外に戻ってきた。
(まるでゴーストタウンだ…。数年前から急に人が去り、一斉に時を止めたみたいな…。)
昼間に来ていればそこまで不気味に感じることもなかったはずだが、夜の闇は人を心細くさせる。
(急に人が…?)
違和感。人の消えた街。いったいここで何があったというのか。
「何か見つけたか…?」
仲根の思考は、市川の声によって遮られた。
「いや…。何も武器になりそうなものは…。」
仲根は返事を返しながら、市川に己の心細さを悟られまいと、話題を探すべく辺りを見回した。
「ああ、向かいの店にも入ってみるか…。シャッターじゃなくてガラスの扉になっている…。扉を壊せば…」
街灯の明かりで、ガラス越しに店の奥まで見渡せる。
仲根は八百屋の奥に置いてあった台車を転がしてくると、そのガラス戸に向かって勢いよく台車をぶつけた。
ガシャーン…!!パリン…。
台車は店の中に突っ込み、ガラスの扉は大きな音をたてて割れた。
仲根はガラスの破片に気をつけながら、店の中に入る。入ってから、そこが釣りの道具を置いている店だと気づく。
(そういや、何の店か確かめてなかったぜ…。釣りの用具なんか、武器にはならないか…)
落胆しながら、店内を見渡す。ふと店の壁に飾ってあるものを見つけ、お、と声を上げる。
仲根が見つけたのはライフジャケット。着用しておくと、水に溺れる前に膨らんで浮き輪代わりになるあれである。
泳いで島を脱出できるなどとは考えていない。それよりも、ジャケットの丈夫さに着目した。
着ておけば、ナイフなどの刃物や鈍器から体を守る防具になる。
仲根は大人用のライフジャケットを二つ手に取り、店を出た。
「爺さん、いいものがあったぜ」
市川にもライフジャケットを渡してから、それを着込む。
市川は店の前にあぐらをかいたまま、ジャケットの形状を手探りで確かめようともせず、ただじっとしていた。
「お前さん、何を焦っておる…?」
「え…?」
仲根が市川のほうを振り向くと、市川はじっと座ったまま、ニヤリと口の端を吊り上げた。
「先程から歩く足音、息遣いが不規則だ…。それに、ガラスを割るときの大きな音。
周囲に人の姿が見えないからといって、軽率だと思わんかね…?」
「あ…!」
仲根は動揺した。誰かが音を聞きつけてやってくるかもしれない…その可能性を失念していた。
大きな音は周囲に己の位置を知らせる。「どうぞ殺してください」と言っているようなものである。
市川はくつくつと笑いながら、まるで他人事のように呟く。
「もっとも…儂はそれでかまわんのだがね…」
「アンタは…」
仲根は、心を見透かされたことから来る苛立ちを市川にぶつけた。
「アンタは死が怖くないってのか?主催相手に勝負するなんて言ってたが、その前に殺されてもいいってのかよ…?」
口に出してから、仲根は市川が先程言っていたことと今の市川の態度のずれに違和感を覚えた。
矛盾、というほどでもない…だが、何か引っかかる。
「だいたい、アンタはどうやって勝負を挑むつもりなんだ…?さっきは手伝うと言ったが、それもアンタの計画による。
それに、さっきから引っかかる…。アンタに真剣さが感じられない…!
俺が大きな音を出すような馬鹿をやったのに、焦る様子もない…!
主催に勝負を持ちかける前に殺されたんじゃ、無念なはずなのに…」
「ククク…そう一度に質問されてもな…」
仲根が問い詰めたところで市川は怯む様子も無い。それが仲根の神経を逆撫でした。
チッと舌打ちしながら、仲根は市川になおも問いかける。
「じゃあ一つだけ答えろ。何が目的なんだ…?」
「……………」
「アンタの目的が分からないようじゃ、アンタと同行してられねえよ…」
仲根は先程からずっと心細さを感じていた。
元々自分が居た世界を思い出し、今いる人気の無いこの場所にうんざりしていた。
仲根には、無意識下で『大人』にすがりたいという欲求があった。この同行者に、少しでも信頼、尊敬できるところがあれば。
そのためには同行者がどういう人間であるか知らなければならない。
「お前さん、いくつだ…?」
「…15だ」
「15…。若いの…」
市川は驚いた。若いとは思っていたが、背の高さや修羅場慣れしているところから、20歳前後と考えていたのだ。
「それがどうかしたかよっ…?質問に答えてくれよ…」
「…昔、13歳のガキが勝負を挑んできたことがあった…。6年ほど前のことだ」
「…それで?」
「儂はそいつと麻雀で勝負をし…。そのガキが勝った…。
それから、儂の打ち手としての名声は地に堕ちた…。
評判の落ちた打ち手など、死んだも同然…。
儂が死を恐れぬ理由…それは、儂がもう死んだも同然の抜け殻であるからだ…。」
「………………」
「『目的は何か』という問いだったの…。
抜け殻でも、何かこの世に爪痕を残したい、という思いはある…。
それには、主催という巨大な敵に一矢報いること…。それが『目的』というやつだ…。」
「………………」
「お前さんの質問に答えたぞ。これでよかろう」
「なぁ…。何かおかしくないか?」
「何…?」
仲根の問いに、市川は眉を寄せた。
(真の目的がそれではない、と感づかれたか…?)
市川は内心動揺したが、表に出さずにもう一度問う。
「何がおかしい、と…?」
「アンタさ」
仲根は市川を見下ろし、聞いた。己のうちに芽吹いた疑念の目が、より大きくなっていくのを感じていた。
「アンタ、勝負する相手間違えてないか?その13歳のガキに勝つことを目指すのでなきゃ、道理が通らないんじゃねえか」
「何…?」
「だって13歳のガキと戦って敗れたから、アンタの名声が堕ちたんだろう…。
じゃあもう一度戦ってそいつに勝てばいい話じゃねえの?」
「なんだと…」
「もしかして、認めたくないのか?13歳のガキに負けたことをさ…」
「何も知らんからそんなことが言える…」
市川は、苦々しげに舌打ちをした。
「奴は…13歳にして“持って”いた…。儂や、その他大勢の打ち手が何十年かけて、それでも持ちえぬ何かを…!
勝負がついたその瞬間に、悟らざるを得なかったのだ。
儂は一生涯、奴には敵わぬ。そう痛感せざるを得なかったのだ。
精神をズタズタにされ、抜け殻になった儂に、奴はかぶせてこう言い放った。
『もう一度勝負を』……。
泥塗れになった儂の顔に、さらに泥を塗りつけるような奴の言葉…。その点は流石ガキだ…礼儀も何もあったもんじゃない。
そのときの儂の心境が分かるか…?」
「分からねえな…!」
仲根はそっけなく言った。
「俺の知ってる人は…。尊敬できた大人は…。
傷つけられた尊厳のためなら泥まみれになっても、プライドをかなぐり捨ててでも、勝負に勝つ男だった…!
その方法があんまり突飛で、奇想天外で、俺もびっくりすることがあったけど…。でも…!
己の矜持を守るため…。守りたいもののためなら…。どんなことをしてでも勝つ男だった…!」
仲根は唇を噛み締め、黒沢に思いを馳せた。
「麻雀ってのは年齢の関係の無いゲームだろ…?
囲碁でも将棋でもネットが普及している今、さらに年齢や年数なんか関係なくなってきている。
13歳のガキにアンタが負けたところで何の不思議もねえ…。
才能がどうとかって言うが、それも織り込み済みでその世界にいたんじゃねえのか…?
アンタは何だ…?一度負けたくらいで、戦意喪失…。ガキに負けたことがそんなにショックかい…?
俺から見たら、アンタはただふてくされてるだけにしか見えねえ…」
「もういい…」
市川は仲根の言葉を遮った。
「何を話しても無駄なようだ」
「そうだな」
仲根はぼそり、と呟いた。
「……やめた」
仲根はふう、と息をつくと、市川を冷ややかな目で見下ろした。
そして突然市川の胸倉を掴んだかと思うと、懐からチップを奪い取った。
「何をする…!」
「アンタと同行する気なくなった…。チップはもらうぜ」
「…儂を殺すか…?」
「いや、いいや…。どうでもいい…」
仲根はチップを上着のポケットに突っ込み、「じゃあな」と言葉を残して北へと歩き始めた。
後に取り残された市川は、ぎり、と奥歯を噛み締めた。
(どうでもいい、だと…。)
実際、仲根の言い放った言葉は市川には酷である。
若者は、己の可能性、才能を、無限に伸ばすことが出来ると思い込んでいる。
そして己の経験の浅さゆえに、覆すことの出来ぬものなど存在しないと思い込んでいる。
『赤木しげる』という人間の持つ圧倒的な才能…。人間性…。
強烈な敗北感…。
それは、赤木しげると対峙した者にしか決して分からぬ…。
出来ることなら一生出会いたくなかった、あのような者とは。
あれはまさしく悪漢(ピカロ)…。人の心を食らう悪魔であった。
(儂の人生は…儂の全ては、奴が成長する為の餌となったのだ……………!)
(赤木………。お前さえいなければ………!)
どこにもぶつけようの無い怒りを抱え、市川は座り込んだまま、固く拳を握り締めた。
◆
仲根は商店街の出口へ向かって歩き続けた。ポケットの中のチップがチャラチャラと音を立てる。
先程まで同行していた男。得体の知れない不気味な存在であり、何か独特の気配を持っていると感じていた『大人』だったが、
蓋を開けてみれば、そこにいるのは(仲根にとっては)何の変哲の無い只の爺さんだった。興味が失せてしまった。
(爺さんが言っていた、『一億集めても棄権できない』という言葉の根拠とか…。
対主催の立場をとることとか…。色々聞くつもりだったことは聞き出せなかったが…。
いいや…。兄さんに再会してから相談すればいいことだ)
仲根は黒沢の姿を思い浮かべた。心細さが吹き飛んだ。
(兄さん…。どうか無事でいてくれよ…!)
空を見上げると、満月がくっきりとした輪郭を持って輝いていた。
【E-4/商店街/真夜中】
【市川】
[状態]:健康 軽い疲労
[道具]:モデルガン 手榴弾 ICレコーダー ライフジャケット 支給品一式
[所持金]:0円
[思考]:赤木に対する怒り ダイナマイトを取り返す ゲームを覆す才覚を持つ人間を殺す
※有賀がマーダーだと認識
【F-4/商店街/真夜中】
【仲根秀平】
[状態]:前頭部と顔面に殴打によるダメージ 鼻から少量の出血
[道具]:カッターナイフ バタフライナイフ ライフジャケット 支給品一式×2
[所持金]:4000万円
[思考]:黒沢を探して今後の相談をする 黒沢と自分の棄権費用を稼ぐ 黒沢を生還させる 生還する
***
以上です。
655 :
マロン名無しさん:2009/11/21(土) 19:15:56 ID:x2kyFV8v
乙です。
改めて見ると中根15歳なのか、アカギ並にすげぇな・・・
◆
仲根は商店街の出口へ向かって歩き続けた。ポケットの中のチップがチャラチャラと音を立てる。
先程まで同行していた男。得体の知れない不気味な存在であり、何か独特の気配を持っていると感じていた『大人』だったが、
蓋を開けてみれば、そこにいるのは(仲根にとっては)何の変哲の無い只の爺さんだった。興味が失せてしまった。
(爺さんが言っていた、『一億集めても棄権できない』という言葉の根拠とか…。
対主催の立場をとることとか…。色々聞くつもりだったことは聞き出せなかったが…。
いいや…。兄さんに再会してから相談すればいいことだ)
仲根は黒沢の姿を思い浮かべた。心細さが吹き飛んだ。
(兄さん…。どうか無事でいてくれよ…!)
空を見上げると、満月がくっきりとした輪郭を持って輝いていた。
***
10/10に一部抜けがありましたので修正します。
乙です。
投下乙です。
仲根が言っていることはまさに正論ですよね。
アカギと戦って、勝利しなければ、そのトラウマを乗りきったことにはならないと。
市川は実は自分探しの旅をしているのかな…と感じました。
投下お疲れ様でした。
二人とも乙です
悪者大集合・・・この時間、病院組は何してるんでしょうね?
市川も変化の兆しか?
老人と若者か…
絶対に相容れないものの象徴にもなっていて
いいタイトルだなーと思った
え〜急な話ではありますが、
今から第二次放送をどんな風にするか、意見交換のためのチャットをしたいと思いますが、どうでしょうか?
少なくとも日付が変わるまでは下記アドレスにいます。
お時間ございましたら、是非参加してください。
ネタバレ的な話も含まれますので、その点は了承いただいた上で参加をお願いいたします。
今回の意見で決定というわけではありません、あくまでアイデアを出すためだけの会議ですので、
よろしくお願いいたします。
なお、チャットで出された意見は、井戸端会議スレに投下して他の書き手様にもご意見を頂いてから採用させていただく予定です。
http://chat.mimora.com/common/chat.mpl?roomnum=758779
チャット本日開催ですか。
今から、参加します。
チャット終了しました。
したらばの井戸端会議スレに、今回出た意見を提案として書き込みさせていただきます。
保守だっ…!
665 :
マロン名無しさん:2009/12/02(水) 23:35:26 ID:fJAXXlHJ
保守
666 :
マロン名無しさん:2009/12/04(金) 06:18:53 ID:pmUNOTLF
続きをうき…うき…待ちながら、保守っ!
わく・・・
てか・・・
668 :
マロン名無しさん:2009/12/06(日) 06:14:14 ID:N5vZaNii
予約来た…っ!
ざわ…ざわ…
予約
キタワァ(n'∀')η゚*。:*!!
うき…うき…
投下します。
G-6のギャンブルルームを背に大通りを歩きながら、森田はフッと笑みを漏らした。
足取りが軽い。
黒崎との契約は、森田にとって好機以外の何者でもなかった。
第3放送(あと6時間強)までに首輪を6つ集めねばならないこの仕事は、一見ハイリスク、ローリターンのように見える。
だが、森田はこの取り決めで十分だと考えていた。
実際は第4放送まで、という取り決めであったが、森田にとっては意味の無い一文であった。
ノーリターン承知で第4放送までに首輪を集め、己の命を永らえる為だけに足掻くつもりなど、初めから無い。
最悪の場合を想定してみる。第3放送の直前になっても、首輪が一つも集まらなかった場合にはどうするか。
その時近くにいた信頼できる参加者に権利を譲渡することを了承させ、
銀さんに頼んで、ギャンブルルーム内に二人で入り、互いの命を奪い合う。
最後の手段にその選択肢があるのだから、正当防衛、過失致死以外での殺しをするつもりも全く無い。
もちろん、銀さんを巻き込まぬ様に最大限の努力をするのが前提である。
黒崎に飲ませた二つの条件。
禁止エリア一ヶ所の永久解除。
銀さんと自分の首輪2つに6つ分の価値を持たせたこと。
この二つの条件がある限り、不慮の事故、不測の事態に巻き込まれることさえ無ければ、
首輪を6つ首尾よく集めて成功、または命を以って最後の手段で成功、
どちらに転んでも森田の思惑通り、主催者たちに対する『勝ち』である。
森田は、D-4のホテルを解除するつもりであった。『一億払って棄権』の為ではなく、
他の参加者の為、対主催者達への足がかりを作る為である。
あの場所は物語の始まった場所であり、第1放送で早くも禁止エリアとなった『開かずの間』である。
何も無いはずが無い。
『一億で棄権の権利』について、森田は信用していない。
開会式での黒崎の言葉を思い出してみる。
『棄権を望まれる方は当ホテル地下で、一億円にて権利をご購入いただけます……。
………ルールは以上となります』
D-4ホテル地下で棄権申請をし、首輪が即座に解除されたとしても、黒崎は『島からの脱出』には何ら言及していない。
『棄権』という言葉の意味はあくまで、『ゲームからの降板』であり、『生還』という意味では無い。
そこに必ず落とし穴がある、と森田は考える。
ただ、森田がこれから出会う他の参加者に、『D-4のホテルのエリアを解除させれば、一億で棄権出来るようになるから協力して欲しい』
と説明し、協力を仰ぐことは可能だ。一応嘘は言っていないのだから。
森田の決意は固まっている。覚悟も出来ている。
その為に先ずしておくべきことがある。
………………南郷や佐原に謝っておかなければ。
温泉旅館の暖簾を潜り、薄暗い玄関を抜けると、フロントの中央に南郷がいた。
「……おかえり」
南郷に声をかけられ、森田は少し微笑んで見せた。
「佐原はまだ出てきてくれないようだな」
森田はやれやれ…と溜息をつく。南郷の視線が泳ぐのを見て、森田はそれを別の意味に解釈し、言った。
「いや、アンタのせいじゃない。俺の考えが甘かったんだ。気にしないでくれ」
「………………なあ、森田」
「何だ?」
南郷は森田の正面まで歩いてきた。森田の両肩に手を置く。
「正直に答えて欲しい。アンタ、今までに人殺しに関わるような仕事をしたことがあるか?」
「なんだ、いきなりどうしたってんだ?」
「頼む、答えてくれ」
南郷は今までに無い真剣な眼差しで森田を見る。森田は、一度視線を落とし、再び南郷の目を見ると言った。
「………巻き込まれたことがある」
「どんな風に」
「ある一族の勢力争いだったのが、いつの間にか復讐劇に変わっていた。
血の繋がった人間同士が互いに殺し合った。比喩表現でなく、本当に殺しあったんだ。
まるで今参加させられているこのゲームのように。
俺はその中で一番権力を持った爺さんを護る役だった。死んだのは復讐を目論んだ犯人とその弟。犯人も爺さんの身内だった。
そして犯人と弟は社会的弱者だった。俺は…むしろその二人こそ助けたかった……」
森田は俯き、言葉を切った。
「自分が何を護りたいのか、何をするべきなのか分からなくなった。
…いや、本当は分かっていたんだ。だが護れなかった。
だから……………」
森田は一旦そこで言葉を切り、声を発さずに唇だけ動かした。
『今度こそ、悔いを残したくない』……と。
そのときの森田の目は真剣そのもので、南郷にはどうしてもこれが演技には見えなかった。
佐原の言うように、演技が達者なのかもしれない。だが、南郷には森田の言葉に嘘があるとは思えなかった。
根拠は無い。唯の直感である。だが、この環境下、信じられるものは己の直感しか無い。
「………そうか、わかった。俺にも協力させてくれ」
「………南郷」
南郷と森田のやり取りを柱の影で見ていた佐原は、落胆の溜息をついた。
(あれだけ忠告したってのに……!
南郷は人が良すぎる…!
森田はアンタを隠れ蓑にして、己の怪しい行動をカモフラージュしたいだけ…!
口では何とでも言える…!相手の思惑通り、いいように操られてるだけってことが何故わからない……!)
佐原は内心歯がゆい思いでいっぱいになった。
だが、いやだからこそ、次に森田が発した言葉に耳を疑った。
「……南郷、すまない。アンタと同行できなくなった」
「ええ……?」
目を丸くした南郷に、森田は言葉を続ける。
「状況が変わった。先程俺は主催の黒崎に呼ばれ、この近くのギャンブルルームまで呼び出された。
ギャンブルルームの中で黒崎とテレビ電話のようなもので話をし、ある契約を結んだ。
契約の内容は簡単に言えば、期限内に首輪を6つ集めてこい、というものだ。
死亡者から回収した首輪1つ、生存者から奪ったものは1つで2つ分とカウント、
俺の首輪と、とある俺の尊敬する元上司の首輪はそれぞれ3つ分とカウントするという条件で。
俺は今から首輪を探し回らなければならない。実質的な期限はあと6時間強。
危険な任務だ。だから、アンタと同行することはできない。
ここに契約書がある。契約書の真贋はアンタ自身で判断してくれ」
森田は懐から契約書を出し、南郷に渡す。
「……………第4放送までならあと12時間じゃないのか?」
「最後の行を見てくれ。何も報酬が得られないなら、そこまで時間を引っ張る意味は俺には無い」
「………つまり、アンタは…」
南郷は森田の首輪をじっと見つめる。森田は笑って見せた。
「まだ死ぬと決まったわけじゃない」
「というか…言っちまっていいのか?俺に」
南郷は森田に契約書を返しながら、素直に疑問を口にした。森田はこともなげに言う。
「口止めされてないからな」
「はあ…。まあ、契約書に『口外するな』とは書いてないな」
「だろ…?極秘任務だとは言われていない」
南郷は森田をまじまじと見つめ、はあ、と息をついた。
「……度胸あるな」
「この期限じゃ怯えてる暇もないんでね、これから島を駆けずり回らなきゃならない」
森田は契約書を元のように折り畳み、懐にしまう。
「……生存者から奪ったら2つ分、か…」
南郷の言葉に、森田は頷いた。
「奴ら、俺に殺しをさせたいんだ。それが奴らの目的の一つなんだろう」
「目的が他にもあると?」
「あとは、任務でなく自分の考えで首輪を集めている参加者がいるのが困るんだと言っていた」
「…ほう」
「そういえば確か、例の情報端末で調べたことだが、数時間前『赤木しげる』も機能を失った首輪を2つ所持していたな…」
「何…!」
南郷の顔色が変わった。森田は、南郷を諌めながら言った。
「アカギはまだ一人も殺していない。それも例のフロッピーで確認済みだ。
首輪は死体から剥ぎ取ったもの。首輪は爆発してその機能を失っている。
俺は、道中アカギに会ったらその2つの首輪を譲ってもらうよう交渉したいと思っている」
「………だが、あのアカギが素直に応じるかな…。」
「そんなに偏屈で頑固なのか?アカギって奴は」
「いや、どっちかというと気分屋かな…。ギャンブルで負けたら譲る、なんて提案されたら諦めたほうがいいぞ」
南郷は真剣に言った。親しい間柄だから言葉に遠慮が無いのだろうか。
「………そうなったらギャンブルを受けたいんだけどな、俺としては」
「アンタがギャンブルに相当の自信があるなら、なおさらやめとけ…。勝敗に関わらず、勝負が数時間じゃ済まなくなるから」
「……? そうか、なんだか分からんが忠告は聞いておこう」
頷く森田に、南郷はふと呟いた。
「……生きてる人間のは、2つ分なんだな…?」
「そうだ」
「なら、もし第3放送直前…。首輪が足りなければ…。俺の…。『そういう手伝い方』も…」
「南郷……!」
南郷の言わんとすることを察し、森田が眉間に皺を寄せる。
「そういうことは安易に…」
「……はは、やっぱりそうやすやすと覚悟はできないな」
南郷の額には脂汗が浮いていた。
「だが、念のため第3放送までに合流しないか。
俺も、それまでに死体を見つけたら首輪を回収して、アンタに渡すことも出来るだろう」
「南郷…!」
森田は南郷に頭を下げた。
「ありがとう…」
「顔を上げてくれ、森田。やっと俺にも『ここにいる意味』が出来そうなんだ」
南郷は森田の肩を叩いた。
「ちょっと待て南郷……!」
柱の影からずっと様子を伺っていた佐原は、銃を構えて森田と南郷の前に姿を見せた。
「お人好しもいい加減にしろ…!
何故自分からやすやすと罠に嵌りにいく…?どう考えても胡散臭いこの話に乗るっ…!
その上自分から森田に殺される理由を作ってやってどうするっ…!」
佐原の剣幕に押されること無く、南郷は淡々と言った。
「じゃあ聞くが佐原…。森田が嘘をつくメリットは何だ…?
さっき言っていた『主催の手先』だからか…?
じゃあ今回、森田が俺に『主催からの任務』を全て説明したメリットは何だ…?」
南郷は佐原に問いかけ、佐原は言葉に詰まる。
「だって…どう考えても話が出来すぎてるっていうか…。」
「主催から任務を受けたことか?それとも、森田が俺と別行動をとる理由がか?」
「だが、また合流するんだろう…?その時に殺されるに決まって…」
「それも俺が自分で言い出したことだ。俺が森田を判断し、己で考えたことだ。
この島ではいつ誰に殺されるか分からない…。なら、俺は自分の直感に賭ける。
直感が見当外れで、その結果死ぬとしても…だ。どうせ死ぬなら、強く打って死ぬ…!」
南郷はきっぱりと言った。
森田はそんな南郷を見ていて、つくづく思った。南郷を見くびっていたこと、己の選んだくじが『当たり』であったこと。
佐原は、南郷に自分の意見に同意してもらえなかったことに、強いプレッシャーを感じていた。
南郷に多少親近感を感じていたからなおさら…。
3人の中で、己の意見だけ食い違っていることが、孤立していることが、ひどく息苦しく感じた。
そんな佐原の様子を見て、森田は言った。
「佐原…。アンタが俺を信用出来ないのであれば、それでかまわない」
森田の言葉に反応し、震える銃口をこっちに向ける佐原を、森田は冷静に見つめた。
「むしろ疑わなきゃあいけない。声をかけてくる他の参加者、そしてこのゲームの仕組み、自分が見えている全て…!
全てを疑えっ…!
だが、疑っているだけでは何も出来ない。自分で取捨選択し、行動するんだ。南郷の言うように。
だから、アンタの疑問…。俺の任務の意味、主催の思惑…全て納得するまで疑って疑い尽くせ…!
もちろん、今俺が発している言葉自体もだ…!」
森田はそれだけ言うと、玄関に向かって歩き出し、歩きながら振り向いた。
「南郷、第3放送の1時間前くらいになったら、G-6にあるギャンブルルームの前で合流しよう。
G-6がもし禁止エリアになったらこの温泉旅館前でどうだ?」
「ああ、わかった」
「じゃあ、時間も押してるんでこれで」
「気をつけてな…」
「アンタも…」
短く別れの言葉を交わすと、森田は玄関から再び外に出て行った。
佐原は、震える銃口をゆっくりと下ろす。森田の言葉が頭の中をぐるぐると回っている。
森田の言葉を受け入れることを脳が拒否している。
だがそれは恐怖からではなく、森田の冷静さや堂々とした態度に対する反発心からかもしれなかった。
◆
森田は早足である地点へ向かっていた。
F-3、バッティングセンター。
最後に見た情報ではそこに平井銀二の名が点滅していた。それだけは決して忘れようが無い。
だが、急がなければならない。
平井銀二がずっとそこに留まっている保証など無い。
銀二はこの半日、常に行動していたし、バッティングセンターは腰を据えるにしては少々目立ちすぎる建物だ。
森田はこの瞬間をずっと心待ちにしていた。
銀二に会うのは、必ずゲームの突破口を見つけてから、と心に決めていたからだ。
今まさに、突破口を開くための糸口を見つけた。
黒崎との契約内容を伝え、首輪回収の協力を請うために、銀二に会う。
これでようやく合わす顔ができたというものだ。
………………銀さんに会える…!
森田は息を切らしながら、だが決して警戒を怠ることなく、大通りを走っていった。
【F-7/温泉旅館・フロント/真夜中】
【佐原】
[状態]:精神疲労 首に注射針の痕
[道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 、懐中電灯、タオル、浴衣の帯、支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:遠藤と会いたくない 人を殺したくない 自力で生還する 森田を信用したくない 混乱状態
※森田が主催者の手先ではないかと疑っていますが、自信がなくなっています。
※遠藤は森田に殺されたかもしれないと思っています。 第2放送で遠藤の名前を呼ばれたら、森田をマーダーと認識することにしています。
※第1回放送の内容を、南郷から取得しました。
【南郷】
[状態]:健康 左大腿部を負傷
[道具]:麻縄 木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:生還する 赤木の動向が気になる 佐原と今後について話し合う 森田の首輪集めを手伝う
※森田と第3放送の一時間前にG-6のギャンブルルーム前で合流すると約束しました。
【G-6/大通り/真夜中】
【森田鉄雄】
[状態]:健康
[道具]:フロッピーディスク(壊れた為読み取り不可) 折り畳み式の小型ナイフ 不明支給品0〜2(武器ではない) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:遠藤を信用しない 人を殺さない 平井銀二と合流する 首輪を集める
※フロッピーで得られる情報の信憑性を疑っています。今までの情報にはおそらく嘘はないと思っています。
※遠藤がフロッピーのバックアップを取っていたことを知りません。
※南郷と第3放送の一時間前にG-6のギャンブルルーム前で合流すると約束しました。
※以下の依頼を受けました。契約書を1部所持しています。
※黒崎から支給された、折り畳み式の小型ナイフを懐に隠し持っています。
――――――――――――――――――――――――――
【依頼内容】
制限時間内に首輪を6個集めること。
期間は依頼受託時から、第4回放送終了まで。
死体から集めた首輪は1個、生存者の首から奪った首輪は2個とカウントする。
森田鉄雄、平井銀二の首輪は3個とカウントする。
第4回放送を過ぎても集められなかった場合は依頼未達成とみなし、森田鉄雄の首輪を爆破する。
森田鉄雄がギャンブルルームに規定数の首輪を持参し、申告した時点で依頼達成とする。
資金の受渡は申告と同時に、ギャンブルルームにて行う。
【報酬一覧】
第2回放送終了までに集めた場合
ゲームを棄権する資金1億円+ボーナス2億円
第3回放送終了までに集めた場合
進入禁止エリアの解除権(60分間)
他者に譲渡可能。ただし、渡す側、受け取る側、双方の意思確認が必要。
確認がとれない場合、権利そのものが消失する。
第4回放送終了までに集めた場合
報酬、ボーナスともになし
――――――――――――――――――――――――――
投下は以上です。
投下乙です。
乙です
読んでて凄く興奮してきましたw
これから森田が銀さんに会えるのか、南郷さんや佐原はどうするのか…
とてもワクワクします
687 :
マロン名無しさん:2009/12/07(月) 21:50:41 ID:a6odsQlr
乙です!
凄く凄くドキドキしました…!
次に森田が出会うのは誰なのか、気になりますね!
圧倒的投下乙っ…
森田も南郷さんも恰好いいな…痺れたっ…
佐原もどう出るか目が離せないっ…
もうバトロワスピンオフで NANGOH〜逆襲の凡夫〜
とか連載してくれないかな
投下お疲れ様でした。
南郷さんが南郷さんらしい。
森田は銀さんと会えるのか。
今の状況だと、会うと死亡フラグの予感。
怖いけど、それはそれで楽しみです。
>>688 バトロワスピンオフいいですね。
個人的には死者スレネタですが、
ONO〜奉仕のヤンデレ〜
とか見てみたいです。
690 :
マロン名無しさん:2009/12/08(火) 01:12:55 ID:/HsHf90x
乙…!
圧倒的乙…!
佐原への森田の台詞かっけえ
南郷さんも覚悟決まってていいな
692 :
マロン名無しさん:2009/12/08(火) 16:36:44 ID:5OCvHi4k
hosyu
勝負が数時間じゃ済まなくなるから
鷲津が言えば切実
694 :
マロン名無しさん:2009/12/09(水) 00:46:52 ID:yhTWKgYT
またまた予約キターッ!
どき・・どき・・
696 :
◆uBMOCQkEHY :2009/12/10(木) 23:50:45 ID:pevLIMDd
お久しぶりです。
今回は初めての主催者サイドの話なので
ドキドキしております。
もし、お時間がありましたら、
支援をお願いいたします。
ピィ ピィ ピィ ・・・・・
部屋にコール音が響き渡る。
「ん・・・何なんだ・・・」
黒崎は気だるそうな声を洩らし、リクライニングチェアからゆっくりと腰を上げる。
森田にナイフと依頼を託した後、黒崎は自室にて仮眠をとっていた。
仮眠を妨げたコール音は部下からの連絡を知らせるものである。
黒崎はパソコンの画面から部下のモニターへ接続する。
パソコンの画面に部下の顔が映る。
「申し訳ございません・・・黒崎様・・・」
「別に構わん・・・どうした・・・」
直属の部下には第二回定時放送まで起こすなと伝えてある。
しかも、今回のゲームは細部に渡ってマニュアル化されており、黒崎が一時的に抜けた所で何の支障もない。
そのような万全を期した状態にもかかわらず、部下から呼び出されるのは、由々しき問題が発生したのか、もしくはあの方直々の連絡なのか・・・。
「会長からご連絡がございます・・・」
――後者かっ・・・!
黒崎は“分かった・・・”と言うと、画面を切り替えた。
その画面の先には闇の中から薄っすらと浮かび上がる顔があった。
兵藤和尊である。
亡霊を連想させるような映像に身の毛がよだつ感覚を覚えつつも、黒崎はあくまで平静を装って対応する。
「会長・・・こんな夜分遅くに・・・」
「森田との契約・・・あれは何だ・・・」
黒崎が全てを言い終わる前に、その言葉を遮るかのように兵藤が呟く。
独特のしゃがれた声の中に潜む毒素。
黒崎の身体の奥が底冷えしていく。
この一言で、兵藤が苛立っていることを察した。
698 :
苦情2:2009/12/10(木) 23:53:32 ID:???
黒崎は兵藤に気づかれないように息を呑み、説明する。
「あれは・・・」
「まあ、よいわ・・・わしにではなく、客人に話せ・・・お詫びとともにな・・・」
黒崎は兵藤の言葉に面食らう。
「お客様に・・・お詫び・・・ですか・・・」
黒崎の眉がわずかに上ずる。
実はこのバトルロワイアルは参加者が優勝をかけてのゲームであると同時に、その優勝者を巡ってのギャンブルでもあった。
その賭け事に興じている者のほとんどが、これまで様々な方法で金を積み上げ、今や社会の上部に君臨する資産家である。
ちなみに今回のバトルロワイアルでは快適なギャンブルを楽しんでもらうため、
このギャンブルに興じる者は“ある施設”に集められ、主催者の持て成しを受けている。
黒崎は近くの時計を見る。
森田との連絡を終えてから30分ほどしかたっていない。
――こんな短時間で・・・話が広まっているというのか・・・!
その黒崎の心を掬うかのように、兵藤は話を続ける。
「どうも、お前と森田とのやり取りを目撃してしまった客人がいての・・・
それでお前の独断のルール設定が発覚した・・・
今、ホールに集まっておる・・・!」
――集まっているだとっ・・・!
黒崎は急いでパソコンを操作し、ホールのモニターを立ち上げる。
そこには、すでに20人近くのギャラリーが円卓のテーブルに座っていた。
黒崎は苦虫を潰したかのような表情を浮かべる。
――集まれるわけがないっ・・・!
黒崎はホールのモニターに目をやる。
目に映ったのはそれぞれのギャラリーが手に持つノートパソコンだった。
699 :
苦情3:2009/12/10(木) 23:55:28 ID:???
ノートパソコンは主催者がギャラリーに支給したものである。
この場に集うギャラリーは高額の掛け金を各参加者につぎ込んでいる。
しかし、このゲームは24時間の耐久レース。
当然、ギャラリーから見れば、24時間動向を追うことには限界がある上、ほかの参加者の動きも把握せざるを得ない場面も発生する。
その問題点を解決させたのが、このノートパソコンである。
この画面上では、指定した参加者の動向を自動で追跡することが可能であり、場所によっては、画面操作で別のアングルのカメラに切り替えることが可能である。
また、全てのカメラの映像は録画されているため、この場面を見逃してしまった、ほかの参加者の過去の動向を映像で見てみたいという時は、巻き戻しで確認することができる。
なお、この時、どの参加者のどのような場面を確認したいかを調べるために用いられるのが“ダイジェスト・リスト”――森田に支給されたフロッピーのデータだ。
ダイジェスト・リストはギャンブルルームの利用者、何らかの重要な会話、殺害者、退場者、交戦場面など、バトルロワイアルの大まかな情報を分かりやすくまとめて、1時間おきに配信する。
森田はこのダイジェスト・リストを“お前たちは我々の手のひらの上にいる、余計なことを考えるな”という警告と受け取っていた。
このゲームで支給されたのには、そのような牽制の意味もあるだろう。
しかし、本来の目的は参加者の動向を追うギャラリーがゲーム全体の流れを把握するためのものであったのだ。
話は戻る。
このノートパソコンを採用してから、ギャラリーに一つの特徴的な動きが見られ始めた。
黒崎は再び、ギャラリーの様子を見る。
20人近くのギャラリーたちはお互いの顔を向かい合えるように設計されている円卓テーブルに座っているにもかかわらず、会話をしている者はほんの僅か。
ほとんどの者はパソコンの画面に釘付けとなっている。
――やはり、この場においても、接触は皆無かっ・・・!
700 :
苦情4:2009/12/10(木) 23:56:59 ID:???
支給されたパソコンはバトルロワイアルにおいて、必要なことが全て網羅されていた。
前述の通り、バトルロワイアル内の映像や情報の提供を初めとして、
息抜きの音楽や映画鑑賞、果ては食事やマッサージの注文なども可能である。
ほかのギャラリーの手を借りることなく、パソコンだけで全てが事足りてしまうようになってしまったのだ。
また、お互いに自分の身分を明かしたくないという考えも意見交換の機会を妨げる要因に拍車をかけている。
バトルロワイアルは参加者同士の殺し合いという社会の倫理から逸脱したギャンブルである。
しかも、その掛け金の最低額は1000万円からであり、今回この場に集まったギャラリーはその金を容易に捻出できる、それ相応の身分の者ばかりである。
もし、そのようなギャンブルに嬉々として高額の金をつぎ込んでいることが洩れれば、偽善者どもからバッシングを受けることは確実であろう。
場合によっては、社会的地位からの転落にも繋がりかねない。
結果的に、ギャラリーは通常、自室でパソコンの画面を眺めるスタイルが確立されてしまった。
ホールに集まっている者はギャラリーの一部でしかなく、そのほかの人間は、時間上、すでに就寝してしまっているか、自室のパソコンから様子を伺っていると思われる。
それだけ極力、他人との接触は避けたいのだ。
だからこそ、この短時間で森田との契約の情報が漏洩、一部の参加者が一ヶ所に集まるなどありえないのだ。
ここから導き出されることはただ一つである。
――誰かがギャラリーを誘導したっ・・・!
「黒崎・・・」
「はっ・・・!」
黒崎は兵藤の呼びかけで我に返る。
「くれぐれも客人が納得できるよう、説明をするのだ・・・」
「10以内に準備し、お客様に説明を・・・」
「・・・5分だ」
701 :
苦情5:2009/12/10(木) 23:58:05 ID:???
黒崎の返答も聞かずに、兵藤は連絡を絶った。
黒崎は苦々しいため息を洩らし、リクライニングチェアに腰をかける。
森田との契約を広めたのは誰なのだろうか。
今回の件は“森田鉄雄を殺人者とする”という蔵前との取引によるものである。
よって、蔵前とは考えにくい。
では、在全サイドによるものなのか。
しかし、ここで黒崎は思いとどまる。
――いや・・・おそらく・・・会長ご自身だろう・・・。
兵藤は先程、“どうも、お前と森田とのやり取りを目撃してしまった客人がいての・・・”と言った。
なぜ、兵藤がそのことを知っていたのか。
兵藤と対話をできる人間は黒崎を含め、極少数の人間に限られている。
ギャラリーの意見はそのクレーム処理専門のスタッフが対応しているため、ギャラリーが兵藤にこんな問題が発生したのだと直談判することなどありえない。
ギャラリーから兵藤に問題を伝えられたのではなく、兵藤が事前にその情報を掴み、
それをデータという形でギャラリーに送信したという流れが自然である。
――確証こそないが、それが一番可能性として高い・・・
しかし、なぜ、そんなことをする・・・?
私を試そうというのか・・・?
ギャラリーを審判者としてっ・・・!
「・・・黒崎様・・・」
黒崎は静かに顔をあげる。
部下が目の前に立っていた。
ノックをしたのにもかかわらず返答がなかったため、入ってきたらしい。
「ご気分が優れないようですが・・・」
黒崎はリクライニングチェアに深く背もたれる。
「やってほしいことがある・・・」
そう呟くと、部下を引き寄せ、耳打ちした。
702 :
苦情6:2009/12/11(金) 00:00:10 ID:???
ギャラリーが集まるホール。
著名人の記念式典を執り行うのに相応しい、格調の高さを感じさせる赤い絨毯に、金粉をまぶしたような壁面。
そのホールの中央には円卓テーブルが並べられ、お互いのテリトリーを侵害しない程度の距離で、ギャラリーが腰をかけている。
主催者を待っている間にも、ホールへ集まるギャラリーは一人、二人と増え続けていく。
しかし、それは関係ないと言わんばかりに皆、席に着くや否や、ノートパソコンの画面を開き、それを食い入るように見つめていた。
このホールの正面には映画館のスクリーンのような巨大モニターがあり、定時放送時には黒崎の姿と分割された画面で、参加者の表情が映し出されるようになっている。
逆に言えば、それ以外では使用されない部屋である。
周囲の照明がやや暗くなった。
ギャラリーは一斉に、中央のスクリーンを凝視する。
スクリーンに黒崎の顔が浮かび上がった。
スクリーンの黒崎はマイクを握り、落ち着き払った表情で会見を始める。
「皆様、本日は夜分遅く、このホールにまでお越しいただき、ありがとうございます。
そして、今回の私の独断とも言える森田との契約の件では、さぞや不快な思いをされたことと深くお詫び申し上げます」
黒崎は形式的な言葉で詫び、深々と頭を下げる。
その直後、端の方に座っていた一人のギャラリーが待っていましたと言わんばかりに立ち上がる。
「おいっ!オレは森田に1000万円も賭けているんだっ・・・!
もし、森田が契約を遂行できずに首輪が爆発したらどうしてくれるんだっ・・・!」
――さっそく来たか・・・。
黒崎は視線を訴えたギャラリーへ向ける。
703 :
苦情7:2009/12/11(金) 00:01:18 ID:???
訴えたギャラリーはこの場の中では比較的若い部類に入る男であった。
「まったくその通りでございます。
もし、森田が第4回定時放送までに首輪を集めることができなければ、首輪は爆発。
森田は脱落となります・・・。
そうなれば、私どもが介入したが故に、起きてしまったこと。
ギャンブルという公平さを求められる場においては、本来避けるべき行為であったと・・・」
「そこまで分かっているのであれば、なぜ、あんなことを・・・!」
若者の形相は、まさに怒髪天を衝くかの如きである。
それに対して、黒崎は平静な態度で対処する。
「私どもも、その点に関しては重々理解をしております・・・
しかし、これは已む無き行為・・・
他のお客様からのご要望にお答えするための苦渋の選択だったのです・・・
“ゲームがつまらなくなってしまった”というご要望に対しての・・・」
「客の要望・・・だと・・・!」
若者は周囲を見渡し、狼狽する。
黒崎は淡々と話を続ける。
「ゲームがつまらなくなってしまった・・・
それはとどのつまり、殺し合いが減ってしまったという一言に尽きます」
“理由は簡単です”と、黒崎は手元にあるパソコンを操作した。
この直後、各ギャラリーのパソコンの画面に参加者名簿が映し出された。
名前の枠がそれぞれ色で囲われている。
704 :
苦情8:2009/12/11(金) 00:02:20 ID:???
色別にみると、
黒枠――安岡、浦部、船井譲次、安藤守、大槻、坂崎孝太郎、三好智広、坂崎美心、
有賀研二、神威秀峰、神威勝広、吉住邦男、川松良平、板倉、末崎さくら、
標、山口、澤井、石原、赤松修平
赤枠――赤木しげる、治、伊藤開司、石田光司、森田鉄雄、平井銀二、
天貴史、井川ひろゆき、原田克美、沢田、宇海零、工藤涯
緑枠――南郷、平山幸雄、遠藤勇次、佐原、村岡隆、黒沢、仲根秀平、しづか
青枠――市川、鷲巣巌、利根川幸雄、一条、兵藤和也、田中沙織
となっている。
「まず、黒く囲われている参加者、こちらは脱落者。現時点で見せしめ含めて、20名。
緑枠は脱出もしくはスタンス不明の者、8名。
青枠はゲームに乗っている者、6名。
最大の問題点は赤く囲われている参加者・・・このゲームを潰そうと目論んでいる者、通称、対主催派・・・12名っ!」
黒崎はやや興奮してきた己を落ち着かせるように、静かに深呼吸をし、説明を続ける。
「この人数は現在、残っている参加者26名中、その半数近くに及びます。
彼らは出会えば、すぐに協力体制もしくはグループを組んでしまうでしょう。
緑枠の参加者も、我々に歯向かう姿勢こそ、見せておりませんが、
基本的に殺し合いに乗らないスタンスを持つ者がほとんど・・・
つまり、20名の参加者は出会った所で、戦闘など起きるはずがないのです・・・
また、マーダーと呼ばれるゲームに乗った者。
彼らは、このゲームを引っ掻き回してくれる存在です。
もっとも期待が出来るのは和也様、利根川、一条のグループ。
しかし、彼らは用心深く、すぐには行動を起こさない。
市川、鷲巣は武器を奪われ、マーダーとしては機能できない・・・
残るは田中沙織ですが、彼女は精神不安定でどのように転ぶか予想がつかない・・・」
支援
支援
先が気になる…!
707 :
苦情9:2009/12/11(金) 00:07:04 ID:???
ホールの中がざわつき始めた。
ギャラリーが自分の話に食いついてきていることが手に取るように伝わってくる。
黒崎は確信した。
――今こそ、切り出す時・・・!
「そこで我々はこのゲームの潤滑油として、森田に首輪を時間内に集めろという特殊ルールを課したのです。
森田をジョーカーへと仕立て上げることで、ほかの参加者の不安を助長させ、殺人の連鎖を作る・・・
それが我々の狙いなのですっ!」
黒崎は若者へ顔を向ける。
「無論、森田を選んでしまったことは我々の独断・・・
その点に関しては深く反省しております・・・
そこでお詫びにですが、森田が制限時間内に依頼を達成することが出来ず、その首輪が爆発した時、お客様の掛け金の半分をご返還・・・
どうか、こちらでお許しくださいますでしょうか・・・?」
「け・・・けど・・・」
若者が納得しがたいという態度を見せた直後だった。
「ふざけるんじゃねぇよっ!!!」
恰幅の良い男が声を荒げ、立ち上がった。
「オレが賭けた参加者は開始早々、殺されちまってんだっ!」
男は若者の前に立つと、荒ぶる感情のままに若者の頬をぶん殴った。
若者はぐはっと声をあげ、床に叩きつけられる。
男は若者に吐き捨てるように言い放った。
「掛け金が半分も戻ってくるのに、がたがた言ってんじゃねぇよっ!」
「お客様の安全の確保をっ!!!」
黒崎の指示で、周囲にいた黒服が暴れる男を押さえ、そのまま扉の方へ引きずる。
「何すんだっ!離しやがれっ!!!」
ギャラリーは縛られた闘牛のように、黒服の手の中でもがく。
“馬鹿やろう!”“クソッたれがっ!”などと、若者や黒崎に罵声を浴びせ続けながら、扉の向こうへ消えてしまった。
ホール内は水を打ったように静まりかえった。
支援
709 :
苦情10:2009/12/11(金) 00:14:06 ID:???
「すぐにお客様の手当てを・・・」
黒崎は黒服に命じようとするも、若者は“必要ない・・・”と、力が抜け切ったような声で返答し、自席へ座る。
黒崎は申し訳なさそうに頭を下げる。
「退出なされたお客様のお怒りは我々の不手際が招いたもの・・・
ご指摘くださったお客様には何の落ち度もございません・・・」
黒崎は心苦しそうな顔で言葉を搾り出す。
「森田の件はお客様にご納得いただけるまで
我々としても責任をもって対応いたしますが、
今、お客様は大変お疲れかと存じ上げます・・・
そこで、この件は後日に・・・」
「・・・その条件で・・・構わない・・・」
若者は首をうなだれたまま、呟いた。
「今・・・なんと・・・」
黒崎は息を呑み、問い直す。
ざわ・・・
ざわ・・・
黒崎同様ギャラリーも、若者が黒崎の条件を受け入れる発言をするとは思わず、さざ波のようなざわめきが会場内に溢れる。
「しかし、このようなことはじっくりと考慮すべきでは・・・」
黒崎の説得に対して、若者は首を横に振る。
「さっきの男の言葉は一理ある・・・
それに、ここにいる奴、皆、そう思っているんだろう・・・」
「お客様がそこまでおっしゃるのであれば・・・」
710 :
苦情11:2009/12/11(金) 00:24:47 ID:???
黒崎はギャラリーを見渡す。
「ほかにご意見をお持ちの方はいらっしゃいますでしょうか・・・」
乱闘の直後である。
当然、持論を述べようというものはおらず、ホール内は再び、静寂に包まれる。
しばらく待ってみるも、会場から動きは見られない。
やがて、黒崎は、これ以上の進展は望めないだろうと判断し、マイクを握り直した。
「我々の提示した条件は必ずしも最善なものとは言えません・・・
しかし、どうか今回は、これでご理解いただけませんでしょうか・・・」
黒崎は静寂に一石を投じるような発問。
それに対して、ギャラリーは・・・
パチッ・・・パチッ・・・!
黒崎の言葉への賛同を示すように、一人、二人と拍手で答えていく。
次第に、拍手はフィナーレを迎えた直後の舞台の喝采のように会場内に響き渡る。
ギャラリーが黒崎の意見を支持すると意志表明した証だった。
「皆様・・・」
黒崎は感謝の念を表すように、再び、頭を下げた。
「主催一同、全力をもって、今後もゲームの運営に尽力いたします」
その時の黒崎の顔は・・・不敵に笑っていた。
711 :
苦情13:2009/12/11(金) 00:26:29 ID:???
黒崎はカメラを切り、近くの椅子に座り、深々と背もたれる。
一時はどうなるかとは思ったが、事は全てうまく運んでくれた。
――人とは・・・意外と単純なものだな・・・。
黒崎は思わず、苦笑を浮かべる。
この直後だった。
ピィ ピィ ピィ ・・・・・
コール音が響き渡る。
黒崎はパソコンのモニターを開く。
画面に映るその顔を見て、黒崎は肩の力を抜いた。
「ご苦労だったな・・・」
そこに映し出されていたのは、あの会場から退場させられた男の姿だった。
退場させられた男――黒崎の部下は黒崎と同じように苦笑を浮かべる。
「私自身、これほどうまく行くとは思いませんでした・・・」
「人間の集団心理を利用すれば、容易いものだ・・・」
集団心理とは、社会心理学の用語で、その社会の構成員である集団が、合理的に是非を判断しないまま、特定の時流に流される事を指す。
簡単に説明すると、自分の意見を持っていたとしても、多数派の意見や強い立場の者の意見があれば、そちらに流されてしまうという心理行動である。
一度、この集団心理が浸透すれば、強い意見を補強する意見のみが歓迎され、異論は徹底的な反論や発言の控えなどによって、排他されていく。
こうして、“幻想”の全会一致が実現するのである。
712 :
苦情13:2009/12/11(金) 00:27:48 ID:???
「ホールのギャラリーは、あの“揉め事”でどちらの意見が優位かを察した・・・
そして、その後、こう考えたはずだ・・・
“もし、反論を言えば、自分も周囲に叩かれる対象となる・・・”
だから、私の提案に賛同した・・・
例え、心の奥では納得していなかったとしても・・・」
「さすがでございます・・・黒崎様・・・」
部下は深々と頭を下げながらも、ふとある疑問を口にする。
「黒崎様・・・私が実は“さくら”であったと発覚することはございませんでしょうか・・・」
「それはない・・・」
黒崎は黒服の不安を一蹴する。
「お前はギャラリーと接触がない部署にいる男・・・
何より、あのギャラリーは隣の客がどんな人間であるかなど興味がない・・・
今の彼らの世界はノートパソコンの中なのだからな・・・」
主催が支給したノートパソコンによって、お互いの交流はほとんどなくなってしまった。
隣の人間に興味がない、触れないように配慮している連中なのだ。
あの時、暴れたギャラリーがいた事実は思い出せても、それがどんな人物であったのかまで気にかけることはないだろう。
その時、画面の先にいる部下があることに気づく。
「黒崎様・・・一番の立役者が戻ってきたようでございます・・・」
画面にもう一つの顔が映る。
「大変お待たせいたしました・・・」
その顔はホールで黒崎に反論した、あの若者であった。
「なかなかの演技力だったな・・・」
「黒崎様のお褒めに預かり、光栄でございます・・・」
若者を演じた黒服は深々と頭を下げる。
713 :
苦情14:2009/12/11(金) 00:28:50 ID:???
実はホール内の渦中の二人は黒崎の手の内の者であり、あの謝罪会見劇は全て仕組まれたものであった。
黒崎の計算はこうだ。
まず、さくら――若者が会場の人間の考えを代弁する。
これでホールに集まったその他のギャラリーは訴えた若者を仲間と認める。
その後、仲間と認知された若者は黒崎の言葉や反論者によって主張の手を弱めていく。
この流れから、集まったギャラリーは“あの男の立場は弱い・・・つまり、自分が考えている主張は間違っているのではないのか・・・”と自問自答を始める。
それを決定付けるように、若者は最終的に自分の意見は誤っていたと認めてしまう。
こうして、ギャラリーの考えは決まった。
“あの若者の意見――自分の意見は否定された・・・周囲の人間も若者と同じ意見に違いない・・・!”と。
黒崎はほくそえむ。
――火種はもみ消すに限る・・・。
「あの・・・黒崎様・・・お話したいことが・・・」
その言葉を発したのは若者を演じていた黒服であった。
黒崎はその意味深な言い回しに眉を曇らせながらも、“話してみろ・・・”と促す。
黒服は肩身が狭そうな様子で口を開いた。
「実はあの会場の中で、こんな意見を耳にしてしまったのです・・・
“あの首輪に欠陥はないのか・・・”
“対主催派に解除されることはないのか・・・”と・・・」
黒崎は顔をしかめる。
――また・・・火種か・・・!
714 :
◆uBMOCQkEHY :2009/12/11(金) 00:32:38 ID:oxYuJrF5
こちらで以上です。
支援してくださった方、ありがとうございました。
乙……!!!
圧倒的乙…!
面白かった!
黒崎の策士っぷりにしびれた。さすがNo2。
会長…利根川に対してもだったけど、No2に対して容赦ないな。
ギャラリーたちがどうやって観戦しているか具体的な描写で書かれてますね。
イメージできて面白かったです。
>“あの首輪に欠陥はないのか・・・”
>“対主催派に解除されることはないのか・・・”
首輪解除フラグにつながるか…?楽しみです。
おつ
さくらかわいいよさくら
男はサクラだろうと思ったけど、若者もだったか。流石だなぁ黒崎。
主催者側が、参加者以外と火花を散らすってのは面白いな。おつ華麗!
乙。二人ともサクラってのは面白かったんだけと、それだと
>黒崎同様ギャラリーも、若者が黒崎の条件を受け入れる発言をするとは思わず
この文おかしくない?
俺もそこは少し違和感かんじた
黒崎と若者がグルだとその時点で知らない俺たちと
同位置の視点で見た表現だと思うな、だから俺個人としては同じ視点で見られるこの表現好きだ
気になる人が多いなら「黒崎同様」がいらない、って方向かな
叙述トリック見慣れてないだけじゃないの?
724 :
719:2009/12/12(土) 21:32:31 ID:???
ナレーション部分が黒崎側の視点から書かれてるから、なんか気になったんだけど
文章的におかしくないなら別にいいんだ、ごめんね
ただ今、会社から帰ってきました。
皆様、ご感想ありがとうございました。
>黒崎同様ギャラリーも、若者が黒崎の条件を受け入れる発言をするとは思わず、さざ波のようなざわめきが会場内に溢れる。
この一文についてですが、
黒崎同様の反応をギャラリーもしたという意味で書きました。
叙述トリックというものではなく、
私の文章能力の低さがもたらしたもので・・・
ご迷惑をおかけしてごめんなさい。
>>719様と同じような混乱を持つ方は大勢いるかと思いますし、
今後も違和感を覚える方もいらっしゃると
思います。
そこで
>黒崎の条件を受け入れるという若者の発言に、さざ波のようなざわめきが会場内に溢れる。
という一文に変更しようかと思いますが、
どうでしょうか?
同じくミスリードかなと読んだので自分は違和感なかったけど
書き手さんが叙述狙ったわけではなく変更していいと言うなら賛成です
ところで次スレの季節かしら
>>725 その変更、文章もすっきりして良いと思いました
>次スレ
もうそんな時期なんですね…
書き込めなくなる前に早めに立てておくのが吉ですね。
もし差し支えなければ立てましょうか?
スレ立てといて投下待ちよりは、投下予定者があらわれてからのがいいんじゃないかな…
今、予約が一件入っておりますので
新スレ立てておきますね
>>730様
新スレ乙です。
まとめサイトとパロロワ辞典のスレにも新しいスレのアドレス貼ります。
あと、黒崎の一文修正しました。
黒崎、後藤投下します。
(黒崎…袋井…そういうことか……!!)
後藤利根雄は苛立っていた。
遡ることおよそ4時間程のこと……後藤は蔵前グループとの接触を図っていた。
彼の目的はただ1つ。詳細は不明だが…黒崎の不穏な動き。
そんな帝愛の策に対する防衛策…蔵前の抱き込み…
そこで後藤は蔵前の欲しがっているであろう…平井銀二と森田鉄雄、この2人を条件として提示した…
だが、返答は『NO』……
この返答に思わず悔しさを顔に出す後藤に袋井は言った。
『…いずれ分かる』、その一言だけ……
そのときは何のことだか分からなかった後藤…故に一先ず様子見となったのだが……
彼が黒崎と森田の契約について知るのはそれから更に1時間程後のことであり…
……そして、今に至る。
全てを悟った後藤は黒崎の下へと向かっていた……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…参加者の諸君、ご苦労。黒崎だ…これより第二回定時放送を行う。
今回も復唱はしない……よく聞いてくれたまえ…
ではまず、前回から今回の放送までの間に敗れ去った敗者の名を発表する。
『有賀研二』、『三好智広』、『板倉』、『赤松修平』
以上4名。前回と比較するとあまり芳しくないペースと言えるだろう……
色々と考えがあってのことなのだろうが…いたずらに時間を消費するなど愚の骨頂…!
優勝の為…参加者諸君には今以上に努力していただきたい…。
続いて、禁止エリアを発表する。
重要事項であるため、聞き逃さないように願いたい……
『G-4』、『H-1』
……以上の2箇所だ。
最後に…このゲームに不満を感じ、抵抗を試みようとしている一部の参加者諸君。
これまではこちらも静観してきたが…あまりに度が過ぎる行為には“それ相応”の報いがあるということを忘れないように……注意してくれたまえ。
……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
放送を終えた黒崎は一息入れる間も無く、即座にパソコンと向き合い始めた。
ひたすらにキーボードを叩く彼の様子は誰の目から見ても凄まじいものであった。
休むことなく彼が取り組んでいる案件…それはギャラリーからのクレーム処理。
“森田との契約” これは蔵前グループとのつながりを考えた黒崎の策に他ならない。しかし、その動きは他に知られることなり……火種を消すこととなったのはまだ最近のこと……
安心したのも束の間…彼の耳に入ってきたのは新たな火種…
一部のギャラリーから上がり始めた疑問の数々……
まとめて言えば、首輪に関する様々な不信…不安…ギャラリーは恐れていたのだ。首輪の信頼性を…それを解除した参加者の狂気の刃が自らに向けられることを……
(きっかけは…やはり森田との契約か…)
主催が直々に参加者に首輪の回収を命じる…この行為から首輪の信頼性を疑う者がいても不思議ではないだろう。
ギャラリーに対する回答…首輪の信頼性を示さなければ……そして、そろそろ…
「黒崎様……後藤様がお見えになられました」
(ほぉら…来た…)
パソコンのモニターを鏡代わりに身だしなみを確認すると、黒崎はさっと立ち上がった。
「…お通ししろ」
前回の放送から6時間後…後藤は再び黒崎の自室を訪れた。
「これはこれは後藤様…今度はどのようなご用件で…?」
「とぼけるな…化かしあいもいい加減にしろ…! 蔵前に何を吹き込んだ!!」
「これはまた随分と…」
開口一番。苛立ちを隠しきれなかった後藤はつい本音を黒崎へと浴びせる。
「何の話だか…私にはさっぱり……」
「例の“契約”…あれがゲームを盛り上げる為…だと? ふざけるな! 貴様は…帝愛は何を企んでいる…」
後藤の剣幕に臆することなく、黒崎はパソコンへと視線を移す。
「用件がそれだけなら帰っていただいてよろしいですかね? 今、ギャラリーからのクレーム処理で忙しいもので……」
「当然だ…あんな馬鹿げた契約でゲームに水を差されてはギャラリーも文句を言いたくなるだろう…それにああでもしなければ主催は対主催の首輪解除を抑止出来ないと公言しているようなもの。収拾などつくわけがない……」
「そうですかね…? あの首輪は帝愛の技術の集大成…それに関してはそれなりに自信があるんですがね…」
そう言うと、黒崎はキーボードを叩き終え、デスクの後ろのプリンターから排出される紙の束を手に取った。
「ちょうどギャラリーへ配布する首輪の情報がまとめ終わったところです。よかったらご覧ください…」
「そんなもの……!?」
後藤は書類を跳ね除けようとしたが…思い留まりそれを受け取る。
「そうだな…これは持ち帰り…ゆっくり拝見、検討させていたただこう…いいかな?」
「どうぞどうぞ…その為に印刷したのですから」
「…感謝する」
これまでの態度とは一転…後藤は急に何か納得のいった様子を見せるとその部屋から去っていった。
それを見て黒埼はやっと一息入れて腰を下ろした。
「こんなところか……」
黒崎のパソコンのモニタに写っているのはギャラリーへの返答…首輪に関する情報……
この度、お客様より当帝愛グループが開発した製品
―現在行われております『バトルロワイアル』において参加者が使用している『首輪』―
に対する疑問の声が多く寄せられた為、その回答として、このような文章を皆様へとお送りさせていただきました。
主な質問とその回答を簡単にですが以下にまとめさせていただきます。
質問
・本当に参加者に解除されないのか?
・あの首輪に入るようなサイズの小さな電池ではゲーム中に切れてしまわないのか?
・そもそもどんな構造なら、あの大きさで多機能(位置把握、盗聴、爆弾、生体信号受信)を実現できるのか? 無理に詰め込んでいるようならば、何か欠陥があるのでは?
回答
首輪に使用されている電池は『固体高分子形燃料電池』といい、簡単にいえば首輪内部に蓄えられた水素を空気中に存在する酸素と反応させることで『発電』する電池でございます。
予め、絶対過剰量の水素を合金に吸蔵させてありますので、例えばこの世から空気でも無くならない限り、
このゲームが行われている最中に電池が切れるということは絶対にありえないといえるでしょう。
そして、電池自体に水素を多量に使用することで、爆薬や爆弾に割くスペースを小規模に押さえ、あのサイズでの多機能化に成功しました。
つまり、あの首輪に搭載されている電池は電源であり、火薬であり、火種であるのです。
勿論、使っているのが水素という、室温常圧でいとも簡単に爆発してしまうような気体ですから、
参加者が内部構造をきちんと把握しないで分解しようとすれば多少の火花でも首輪を爆発させてしまうのは明らかです。
以上のことより、一参加者が首輪を自力で解除することなど不可能です。
皆様は安心して今後もゲームをお楽しみください。
(上出来だ…)
黒崎はここまで読むと残りの文面を全て消し去り、黒服に連絡をとった。
「…今から送る文面をお客様方のパソコンに送信しておいてくれ」
これで全てが整った…黒崎はそう感じていた。
黒崎の部屋を後にした後藤は手渡された書類を改めて確認していた。
しかし、彼が熱心に目を通していたのは首輪に関する文面ではない。その先に書かれていた内容であった。
(そういうことなら…協力させてもらいますよ、黒崎さん…)
そこに書かれていたのは黒崎から後藤…在全側への意思表示…このような一般書類の中に紛れ込ませる形をとったのも、そこに書かれている驚愕の内容からすれば当然の配慮…
「それにしても…帝愛の技術力は流石だな…」
一通り書類に目を通し終えた後藤が関心したのは表向きの本題…首輪の技術に関して。
今回使用している首輪の開発はEカード用の針具開発の経験を生かせる帝愛の担当であった。
(要求されていた多機能を実現する為に…帝愛がここまで仕上げていたとは…)
後藤の心に掠める一抹の不安…これだけの技術力…まさか…
(その気になれば例のプロジェクトも帝愛だけで出来るのでは…?)
そう考えた途端…後藤の背筋に嫌な悪寒が走った……
(しかし…それだけか…?)
後藤の心に尚も残る不安…予感…それが何なのか…今の彼にはまだ分からなかった。
>>734の修正を忘れていました。
安心したのも束の間…彼の耳に入ってきたのは新たな火種…
一部のギャラリーから上がり始めた疑問の数々……
まとめて言えば、首輪に関する様々な不信…不安…ギャラリーは恐れていたのだ。首輪の信頼性を…それを解除した参加者により、この狂気の宴が破壊されることを……
以上で投下終了です。
投下乙です。
主催者もとうとう動き出していましたね。
黒崎と後藤が繋がることになるとは・・・
意外な展開に驚いてしまいました。
これでこそ、バトルロワイアル。
続きが気になってしょうがありません。
そして、放送突破おめでとうございます!!
書き手として、個人的な感想ですが、
私がこちらで投下を始めた当時は
書き手さんが数人しかおらず、
私みたいなものが投下してよかったのか、
このロワって、放送前に自然消滅してしまうのではないかと
懸念していた時もありました。
けれど、今や、第二のエースと呼ぶにふさわしい◆6lu8FNGFaw様が牽引力となり、
丁寧な心理描写と意外性ある考察を得意とする◆IWqsmdSyz2様
初投下で主催者サイドの話を書いてロワ全体を大きく動かしてくださった◆mkl7MVVdlA様、
緊迫の麻雀戦と今回の放送を投下してくださった◆iL739YR/jk様を始めとする多くの書き手様、
死者スレを定期的に更新してくださる書き手様、
何よりこのロワを見守り、コメントなどの支援をしてくださる読み手様に
支えられてここまで来れたと思います。
私なんかが言うのもおこがましいかもしれませんが、
本当にありがとうございます。
外出から帰ってきてから、
今回の放送をまとめサイトにアップしたいと思います。
あと、前スレにおいて、放送が終了したら、
人気投票を行いたいという要望がありましたが(覚えていらっしゃる方おりますか?)
ぜひ、したらばで開催したいと思いますがどうでしょうか?
乙です!
投下乙です。
緊張感をヒリヒリ感じた。
主催者が介入宣言しちゃったし、
これからゲームがますます加速しそうな気がする。
>>739 人気投票面白そうですね。
楽しみです。
第二放送投下乙ですっ…!
興奮しました!
黒崎が後藤に何を伝えたのか、後藤がどんな「協力」をするのかがすごく気になるっ…!
>水素
首輪の構造ktkr
調べるつもりでいじってたら暴発、なんて展開がありそうで怖いですね…
>>739 人気投票楽しみにしております!
他のロワの人気投票のことをよく知らないのですが、どんな形式になるんでしょう?
今、考えているのは
・投票はしたらばで専用のスレをたてて行うこと
・投票形式は漫画ロワのポイント形式かジョジョロワ2ndの振り分け方式
ポイント形式
上位5作まで選出可能(必ず5作選出しないと駄目、という訳では無い。一位のみへの投票なども可)
1位を5P、2位を4P、3位を3P、4位を2P、5位を1pとして計算する
振り分け方式
一人の持分のポイントを投票するキャラクターや作品に振り分ける
・投票内容は総合部門(好きな作品)、死者部門、MVP部門(輝いていた人、頑張った人)
・投票は第一回定時放送編と第二回定時放送編に分けて行う
・投票期間はそれぞれ一週間。
こんな投票をしてみたいや
こんなルールがあればいいのになどご要望がありましたら、
ご連絡ください。
第二放送突破かー
俺が見始めたのは第一直前くらいだったかな
見る前はパロロワに対する嫌悪感もあったんだが
実際見てみるとどんどん引き込まれていった
深い心理描写とかギャンブルシーンの熱さは
福本が書いてるんじゃと思うくらいすごいし
もう第二放送かと思うとなんか感慨深い…
他のパロロワとは違う動き方をするからな
死者スレとかはやっぱり馴染めないが(書き手の自己主張が過ぎる)
死者スレは個人的には楽しみなんだけどな
まぁ好き嫌い分かれるか
他のパロロワはあまり読んでないけど他と福本ロワの動き方の違いってどんな風に違うもん?
>>746動きかたの違いってキャラの動きの違いか?
他のパロロワではアカギがクールだったり、熱血だったり、恋したりしている。老アカギは原作最終巻のごとく人生相談。
ダメギはやられ役として書きやすいのか、福本キャラではアカギの次くらいに出演パロロワが多いなw
バトルよりも腹の探り合いや駆け引きがメインだからかな。
あと、ほかのロワにありがちな原作と著しく性格が乖離したキャラクターがほとんどいないからか…。
(三好は変わっていたが…)
確かにこのロワって独特の雰囲気があるよね。
予約きた!
最近このスレとしたらばをチェックするのが、楽しみでしかたない
ざわ・・・ ざわ・・・
久しぶりの村岡
>>748 まあマーダーが少ないから三好がそうなるのも仕方ないか・・・
田中沙織の豹変振りはびっくらこいたが まあしゃあないよね
無差別マーダーは課程はどうであれ結果的にキャラ崩壊を意味するでしょ?
無差別マーダーが少ないのは書き手さんが原作のキャラを大事にしているから
俺はそう思う
元からマーダーの有賀は例外だけどなw
福本ロアは確かに原作を大事にしてると思う
殆のキャラが違和感なく読める
社長スレみた
他のスレの住民から支持されるロワスレ珍しいよね
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次スレに投下キター!
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埋めネタないかしら
,r- 、,r- 、 かの土田晃之に「この子は本物のヲタクだ」と一目置かれた(笑)
/// | | | l iヾ.キモヲタの教祖で戦隊モノにレギュラー出演したくてしょうがなくておなじみ(笑)の自称しょこたん(笑)だお!
/./ ⌒儲⌒ \ヽ、 特撮は勿論、アニメやゲームに興味のあるフリしてれば
// <・> <・> ヽヽ 信者も企業もむこうからやってくるから楽だお♥
r-i./`∴)(●●)(∴´ヽ.l-、. 最近は死人を利用して稼ぐ方法もみつけたお♥
nnnn | | | トエエェァ' | | ノ nnnn
川 l l /ノ| |ヽ `エエィ´ ノ| || ノ|川 l l
!` '⌒/. | | | |\∪ー-‐'' /| || || ヽノ'⌒`!
ヽ、 ノ | | |/⌒llー 一ll⌒ヾ| ||. ゝ ノ
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