福本漫画バトルロワイアル part.6

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605一致18/20 代理:2010/03/27(土) 07:20:55 ID:???
【F-3/路上/黎明】

【利根川幸雄】
 [状態]:健康 興奮状態
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(残り25発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
 [所持金]:1800万円
 [思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
     首輪の回収
     遠藤の抹殺
     カイジとの真剣勝負での勝利…その結果の抹殺
     鷲巣の保護
     病院へ向かう
     アカギを探し出し、撃ち殺す
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利…その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えたままですが、平山が生きて病院内にいることを盗聴器で確認しました。(何かの切っ掛けで計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。
606一致19/20 代理:2010/03/27(土) 07:23:50 ID:???
【F-3/道路脇の森/黎明】

【井川ひろゆき】
 [状態]:健康
 [道具]:日本刀 首輪探知機 懐中電灯 村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 アカギからのメモ 支給品一式×2 (地図のみ1枚)
 [所持金]:1500万円
 [思考]:赤木しげるから事の顛末を聞いた後、ギャンブルで闘う  この島からの脱出 極力人は殺さない  平山と共に利根川をしばらく尾行する 同時にアカギを追う
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※鷲巣から、「病院に待機し、中を勝手に散策している」とアカギに伝えるよう伝言を頼まれました。
607一致20/20 代理:2010/03/27(土) 07:28:35 ID:???
【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 カイジからのメモ 防犯ブザー
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る カイジが気になる ひろゆきと共に利根川をしばらく尾行する
※計器に不具合が起きていることを知りません。 (計器の生体信号の不具合だけです。利根川の持つリモコンからの電波では正常に作動します)
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※カイジに譲った参加者名簿、パンフレットの内容は一字一句違わず正確に記憶しています。ただし、平山の持っていた名簿には顔写真、トトカルチョの数字がありませんでした。
※平山が今までに出会った、顔と名前を一致させている人物(かつ生存者)
  大敵>利根川、一条、兵藤和也  たぶん敵>平井銀二、原田克美、鷲巣巌
  味方>井川ひろゆき、伊藤開司      ?>田中沙織、赤木しげる       主催者>黒崎

 (補足>首輪探知機がある、としづかが漏らした件ですが、それは和也しか盗聴していません。利根川と一条はその頃、病院に爆弾を仕掛けに行っていました。)
 (補足2>首輪探知機は、死んでいる人間の首輪の位置は表示しません。探知機に信号が送られるときに、死亡者の首輪からのデータは省かれています。)
608マロン名無しさん:2010/03/27(土) 08:28:03 ID:???
乙です!
次がどうなるのかすっごく気になる…!!
609マロン名無しさん:2010/03/27(土) 09:26:15 ID:???
乙!
平山の実力がでてきましたね。
ひろゆきには天さんのことで精神的ダメージが少なからずありそうですが
はたしてうまくフォローできるのでしょうか。
ともかく目が離せませんね!

610マロン名無しさん:2010/03/27(土) 13:54:58 ID:???
投下乙です。

平山が一歩一歩成長している様子に胸を打たれます。

あと、一条は村上の元に戻れるでしょうか。
戻ってこれたら、村上のこと誉めてやってほしいです。
そして、村上が淹れたコーヒーを飲んでほしいです。
611マロン名無しさん:2010/03/27(土) 21:45:20 ID:???
投下乙!
熱いぜ平山。
でも、このかっこよさが何となく死亡フラグに見えてしまう不思議。
利根川も行動の一つ一つに執念を感じていい。
612マロン名無しさん:2010/03/27(土) 22:43:33 ID:???
投下乙です
平山がんばれ
613マロン名無しさん:2010/03/28(日) 08:21:34 ID:???
投下乙です!
平山がここまで熱いキャラになるとは誰が予想できただろうか
もうダメギなんて呼べないよ

平山がんばれマジがんばれ
614マロン名無しさん:2010/03/28(日) 16:18:20 ID:???
投下乙です
熱いよ平山、がんばれがんばれ
…原作的にはその状態は次で死にかねんがなw
頼むから、死ぬなーw

平山の今後には凄く期待してます、かませなんかで終わるんじゃないぞ
615したらば 代理投下:2010/03/29(月) 17:48:21 ID:???
297 : ◆6lu8FNGFaw:2010/03/29(月) 14:08:10
アク禁に巻き込まれましたので、すいませんが、代理投下をお願いいたします。

***

一致◆6lu8FNGFawです。

たくさんの感想、ありがとうございました。

ところで、首輪の探知機に関して矛盾点がありましたので、修正した部分を投下いたします。
首輪探知機は死亡者の首輪(まだ爆発していない首輪)にも反応するのに、
過去に投下された作品に書かれていたその記述を見落とし、「反応しない」と変えてしまいました。
お詫びして訂正いたします。
616したらば 代理投下:2010/03/29(月) 17:49:48 ID:???
298 : ◆6lu8FNGFaw:2010/03/29(月) 14:11:27

>>586  一致20/1(修正)

ひろゆきと平山はアカギを追う決心をした後、鷲巣と別れ、病院が見えない所まで移動した。
そしてまず首輪探知機の電源を入れる。

F-4の、地図で見ると商店街入口付近に3つの光点が集中している。その光はアカギではない。
その3つの光点は先程からずっと動く様子がないし、アカギがそこまで遠ざかるにはまだ時間的に早すぎる。
同時に、東へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これは利根川と一条のもの。
それと同時に、西へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これはアカギとしづかのもの。
あと、鷲巣のものである光点が病院に1つ、病院近くのギャンブルルームに謎の光点が1つ。

他、病院非常口付近に光点が1つ……。これは死亡した天の首輪である。
他、病院から少し離れた場所に光点が1つ。地図と照らし合わせた場所からいって、草むらの中である。
先程からずっと動かないのを見ると、どうやらこの首輪の持ち主ももう息が無いらしい……。

ひろゆきと平山が周囲を警戒しながらアカギの後を追い、F-4へと差し掛かった頃。
探知機に、利根川達のものと思われる光点が一度止まり、東の方からこちらを追う形に変化した。
同時にアカギとしづかのものと思われた2つの光点は急に二手に別れ、別々の方向へと動き始めた。

「別れた…!?」
走りながら、ひろゆきと平山は同時に落胆の声を上げる。
どちらがアカギの光点なのか判別が出来ないからだ。

「しかも、道標がここで止まってるぜ」
平山が地面に目を向け、言った。そこはちょうど商店街南側入り口、路地の交差点にあたる場所だった。
617したらば 代理投下:2010/03/29(月) 17:51:50 ID:???
299 : ◆6lu8FNGFaw:2010/03/29(月) 14:12:03

>>607  一致20/20(修正)

【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 カイジからのメモ 防犯ブザー
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る カイジが気になる ひろゆきと共に利根川をしばらく尾行する
※計器に不具合が起きていることを知りません。 (計器の生体信号の不具合だけです。利根川の持つリモコンからの電波では正常に作動します)
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※カイジに譲った参加者名簿、パンフレットの内容は一字一句違わず正確に記憶しています。ただし、平山の持っていた名簿には顔写真、トトカルチョの数字がありませんでした。
※平山が今までに出会った、顔と名前を一致させている人物(かつ生存者)
  大敵>利根川、一条、兵藤和也  たぶん敵>平井銀二、原田克美、鷲巣巌
  味方>井川ひろゆき、伊藤開司      ?>田中沙織、赤木しげる       主催者>黒崎

 (補足>首輪探知機がある、としづかが漏らした件ですが、それは和也しか盗聴していません。利根川と一条はその頃、病院に爆弾を仕掛けに行っていました。)
 (補足2>首輪探知機は、死んでいる参加者の首輪の位置も表示しますが、爆発済みの首輪からは電波を受信できない為、表示しません。)

こちらで以上です。
618マロン名無しさん:2010/03/29(月) 22:16:10 ID:???
状態表が出た瞬間にまるでテレビのいいとこでCMが
入ったときのようなもどかしさをかんじた


まじで続きが気になる
マガジンの10倍楽しみだわ
619マロン名無しさん:2010/03/30(火) 00:01:03 ID:???
たしかにwもうマガジン読んでないもん。
カイジがギャンブルするようになったら教えて。
620マロン名無しさん:2010/03/30(火) 13:13:20 ID:???
和也編は中国人の過去話を一話使ってやりはじめた時点で見限ったw
621マロン名無しさん:2010/03/31(水) 15:09:23 ID:35ysVOYd
支援…!
続きが気になって…
もう…気が狂いそう…

書き手の皆様、いつもお疲れ様です!
622マロン名無しさん:2010/03/31(水) 15:10:39 ID:???
あげてしまいました…

逝ってきますorz
623マロン名無しさん:2010/04/06(火) 00:42:50 ID:???
保守っ…!
624マロン名無しさん:2010/04/06(火) 02:15:13 ID:???
マガジンがどうとかいって 
零本スレのエイプリルフールネタにだまされた俺
625マロン名無しさん:2010/04/08(木) 00:39:23 ID:???
おや…?
626 ◆uBMOCQkEHY :2010/04/10(土) 17:26:05 ID:???
以前から作りたいと何度か予告していましたが、
本日、まとめサイトで福本ロワ用語集を作ってみました。

文章はしたらばであった福本ロワ用語集スレの単語を今の状況に合わせて修正したり、
初見の方にも理解していただけるように加筆したりしています。

もし、ご指摘などがありましたら、
本スレ、もしくはしたらばの用語集スレにご連絡いただけるとありがたいです。

なお、福本ロワ用語集は用語集と銘打っていますが、
要は福本ロワの特徴をまとめたような物として活用していただけるとありがたいです。

これからも用語はしたらばの用語集スレで募集しております。
627マロン名無しさん:2010/04/12(月) 21:57:48 ID:???
しはらばに投下が来たのにパソコンがアク禁で代理投下できない…。

誰か代わりに投下してください…。
628マロン名無しさん:2010/04/12(月) 22:26:21 ID:???
行ってきます!
629代理投下:2010/04/12(月) 22:31:09 ID:???
303 : ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:05:00
アク禁に巻き込まれましたので、こちらに投下します。
代理投下をお願いいたします。長文ですいません
630代理投下:2010/04/12(月) 22:31:26 ID:???
304 :抜道1/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:06:55

佐原は、南郷を連れてF−6のホテルに背を向け、歩き出した。

佐原の行動方針は2つ。
南郷の言っていたD-5の死体から、首輪を回収すること。
その後、マンホールを見つけ、南郷から借りている麻縄を使い、首輪を縄に括り付けて垂らし、爆発しないかどうか実験をすること。

(俺は何としてもこのゲームの突破口を探す…!
安全に移動できる手段を見つけ、そして、何とかして島から脱出する…!だから棄権費用の事も考えないと…)
佐原はグッと唇を噛み締める。
安全を確保するのは大事だが、それだけでは駄目なのだ。棄権費用を稼ぐ手段はまだ思いついていない。

(……それはおいおい考えていくしかないか…。一歩一歩だ。先ずは安全を確保すること……!)
地下道を掌握すれば、ゲリラ的に地上にいる他の参加者を襲い、銃で脅してチップを奪うことが出来るかもしれない。
板倉の頭を潰して首輪を回収したことで、今の佐原には行動する為の勢いがついていた。

(まず地下……。地下へ降りられるか確認だ……。
………地下だと?)

ふっ、と何かが、佐原の脳裏を掠める。
(確か、黒崎は……)



ドドォォォーーーーーーーーーンッ………!!!!

「!?」
周囲に大きな音が木霊し、佐原達は反射的に身を縮めた。
631代理投下:2010/04/12(月) 22:32:02 ID:???
305 :抜道1/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:08:20

「な、何だ…!?北の方から大きな爆発音が…」
「ああ……凄い音が……」
佐原と南郷は顔を見合わせた。
ちょうど今、自分達が向かっている方角からの音。

「どうする…?あの音を確かめに行くか…?」
南郷の提案に、佐原は首を横に振った。

「やめとこう。あの爆発音は参加者同士の殺し合いの結果、出た音だろう。今は他の参加者と鉢合わせになりたくない」
「じゃあ、迂回して行くか……」
「ああ……」

佐原は地図を思い浮かべた。商店街の方向に行けば、島の中央を通る羽目になる。
だからといってショッピングモールの傍を通っていくのも…。
先程の遠藤とのやりとりを思い出すと、近くを通る気になれなかった。

「…いったん体制を立て直すか?」
南郷が、佐原の後ろから声をかける。

「今さっきの音は広範囲に渡って聞こえただろう。あの音を聞きつけてやってくる参加者もいるかもしれない。
しばらくさっきの温泉旅館にでも戻って、じっとしているのも手じゃないか?1時間くらいすれば騒ぎが収まるかも知れない」
「…………」
佐原は、南郷の提案した消極策に乗るのはあまり気が進まなかったが、だからといって良案がある訳でもない。
それに、一つ所で立ち往生している今の状況はまずい。
632代理投下:2010/04/12(月) 22:32:37 ID:???
306 :抜道3/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:10:15
>>305は抜道2/27です、すいません

*****************

「…わかった」
佐原は頷き、一度温泉旅館まで引き返すことにした。

(……さっき何か思いつきかけたんだが、爆発音で思考が中断されてしまった…。
何だった…?何か重要な……)
「おい、あっち側の空、何だか明るくないか?」
南郷の声に、佐原は再び思考を中断させられた。

「何だ?」
「ほら、あっちの空…。ショッピングモールの辺り…。」
南郷は東の空を指差した。

「何が……あったんだ……。」
二人はE-7とF-7の境目まで移動していた。
遠目に見てもはっきりと分かるほど、大型ショッピングモールはめらめらと燃え盛っていた。

「遠藤が……?放火か?…でも何のために放火を?南郷、何か心当たりないか?」
「さあ…。俺が知っている限りでは遠藤の支給品は、参加候補者名簿だけだった。火事を起こせそうな持ち物はなかったと思うんだが」
「じゃあ巻き込まれたか?厄介事に…」
「まあ、そう考えるのが妥当だろうな。…だとしたら、早目にあそこを出てきて正解だったな…、遠藤には悪いが…。」
南郷は、呆然と空を見上げたまま、呟いた。

温泉旅館ののれんを潜り、佐原と南郷は一先ず休息をとることにした。
「すっかり出鼻を挫かれた気分だ…」
「…そうだな。だが、先程からずいぶん行動したし、休憩を取るのも悪くないんじゃないか」
南郷は、フロント近くのソファに座り、足をさすりながら答えた。
633代理投下:2010/04/12(月) 22:33:06 ID:???
307 :抜道4/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:11:34

佐原はそんな南郷の様子を見ていた。
(足の怪我、やはりきついんだな。休憩をしたいと言い出したのも、足を休めたい為だ。どうもいまいち、緊張感に欠ける…。
だが反面、同行者としてはあの森田のような頭の回るタイプでなくて良かった。
やはり森田は南郷を利用しようとしていたんだ、間違いない…!)

佐原は南郷から目を逸らし、今後について考えを纏めることにした。
(こうしてる合間にも、ゲームは進行していくっ…!
何しろ、この島の中、場のチップは数に限りがあるんだ。棄権する為には早めにチップを集めて回らなきゃならない。
…それはともかく、今出来ることをやらなければ…。今の状況でも出来ることといったら……。)

「佐原、どこかへ行くのか?」
南郷が、玄関から外へ出て行こうとしていた佐原に声をかける。
「ああ、すぐに戻るさ。この縄、あともう少しの間借りたら返す」
佐原は南郷に縄を示して見せた。



「あった……。」
温泉旅館の裏手、建物のすぐ近くの路地に、探していたものはあった。
窪みに手をかけ、佐原はマンホールの蓋を外しにかかる。
多少力を込めなければならなかったが、なんとか錆付いた蓋を脇へどけることが出来た。

佐原はまず麻縄の端に首輪を括り付け、マンホールの穴から、慎重に縄を下ろしていった。
だいたい縄の半分くらいの所まで下ろしたとき、カツン、と穴の中から小さな音が響いた。
634代理投下:2010/04/12(月) 22:33:28 ID:???
308 :抜道5/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:12:56

(ふ〜……先ずは第一関門クリア……)
佐原は一度深呼吸をすると、縄を掴む位置を変える。
縄のもう一方の端を掴むように持ち替え、マンホールから歩いて遠ざかることで縄を引っ張り、首輪を穴から引き出した。
いつ爆発しても良いように十分な距離をとったのである。

(もし爆発し、周囲に大きな音が響いちまったら俺一人でも逃げちまおう。南郷はあの足じゃ早く逃げられない)
薄情なことを考えながら、佐原は縄を引っ張っていく。
果たして、首輪は地上に戻ってきても爆発することなく、無事に実験は成功した。

(よっしゃっ…!)
佐原は心の中でガッツポーズを取る。不安要素が無くなり、ずいぶんと心が軽くなった。
(実質“生きてる”首輪が無事だったんだから、俺が地下に降りても首輪が爆発しないことがこれで確定した。
あとは……。地下を探索だ。地下で移動できるなら、いくら地上が危険でも関係ない…!すぐに行動に移るか)
佐原は、すぐに地下に降りようとしたが、少し考えて南郷を呼びに行くことにした。

「……成程」
麻縄を佐原から返してもらい、盗聴の危険性を考慮して佐原が書いたメモを見て、南郷は何度も頷いた。

「俺はすぐに行動しようと思うが、アンタはどうだ?足の具合、あまり良くないんだろう」
「いや、大丈夫だ。少し休んだから、歩ける。それにこうなった以上、時間を潰すのは勿体無い」
「わかった。それなら、今から行こう。例の道を通ってD-5へ。そこまで通路が通ってるかどうかは、行って見なけりゃわからないが」
「ああ…!」
南郷はソファから立ち上がった。
635代理投下:2010/04/12(月) 22:33:53 ID:???
309 :抜道6/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:14:06

旅館から持ってきた懐中電灯をつけ、そのままデイパックに電灯を押し込むと、佐原はマンホールの穴に足を踏み入れた。
デイパック越しの明かりでほんの僅かだが、ぼんやりと周囲が見える。
梯子を降り始めのときは良かったのだが、下まで降りていくうちに段々と悪臭が漂うようになってきた。

「うわっ……えらい匂いだ。やっぱり下水道だな」
佐原は懐中電灯を手に持ち、持っていたタオルを顔に当て、マスク代わりにしながら言った。

同じく、温泉旅館で佐原に言われ、懐中電灯とタオルを手に入れた南郷が同じ格好をして頷く。
「ずいぶん使われてなくて流れがなく、ヘドロが溜まっているもんだから、通常の下水道よりひどい匂いだな」

「まぁ、しゃーないか……。安全と引き換えだと思えば……。」
佐原はげんなりした顔をしながらも、方位磁石を取り出す。

「地下だと方向感覚が掴みにくくなるからな。でも、俺距離感を掴むのはわりと得意だから、多分なんとかD-5まで行けると思う」
「ああ、頼もしいな」
南郷のどこかのんびりした返事に、佐原は溜息をつく。

「…アンタ、途中でへばったりすんなよ。俺は自分しか面倒見切れないから置いてくぞ」
「大丈夫だって!……佐原、少し雰囲気変わったか?」
「ああ?」
「いや、ずいぶん明るい表情になったじゃないか」
「……そうかな」
佐原は曖昧に笑って見せた。
636代理投下:2010/04/12(月) 22:34:28 ID:???
310 :抜道7/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:16:05

佐原が南郷を置いていかなかったのは、結局は心細かったからである。
地下がいくら安全とはいえ、真っ暗な閉鎖空間の中を一人で歩き回ると考えるだけで気が滅入り、おかしくなりそうだ。
南郷なら背中を任せても大丈夫だろうと思ったし、自分の直感を信じたかった。多少人を見る目には自信がある。
実験に成功したことを切っ掛けにして、佐原は本来の自分を取り戻しつつあった。

下水道は、匂いや暗さを除けばずいぶん移動しやすかった。
島の地下に碁盤の目のように張り巡らされているようで、道は真っ直ぐで、地上に比べ高低差も無い。

懐中電灯で前を照らし、歩きながら佐原はふと先程考えていた事を思い出した。
棄権についてである。
棄権についての情報は、つまるところ、開会式で黒崎が話した挨拶の言葉の中にしかない。

 「最後に…………当然皆様には最後に生き残ること………優勝者を目指していただきたいのですが、
 例外として途中で生きたまま棄権する権利もございます。
 棄権を望まれる方は当ホテル地下で、一億円にて権利をご購入いただけます……。 」

(……あ)
その時、佐原の中で何かが弾けた。

(当ホテル地下で、一億円にて権利を)
(当ホテル “地下” で)


「……南郷、D-5へ向かう前に、一箇所寄る所がある…!」
佐原は、背後の南郷へ呼びかけた。懐中電灯の届かぬ先、眼前に広がる闇を見据えながら
637代理投下:2010/04/12(月) 22:34:52 ID:???
311 :抜道8/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:17:54

ずっと心に引っかかっていたのだ。
D-4ホテルで棄権の権利を購入できる筈なのに、D-4が禁止エリアになったこと。
これは『事実上棄権をすることが出来ない』という主催者の意向で、参加者に圧力をかける為なのだろうか?

だが、実質それで圧力に屈し、優勝を目指す方向転換をする者が現れる一方、
主催者に対して強い反感を抱き、対主催に流れ、殺し合わなくなる参加者も出てくる筈である。
主催者にとって棄権の権利を潰すことは、ゲームの進行も妨げる諸刃の剣になるのである。
快楽殺人者でもない、優勝を目指すには力の足りない一般人の参加者は、一億稼いで棄権したいから殺し合うんであって、
そうでなければ誰が好き好んで殺しに乗りたいと思うだろうか。

もちろん、帝愛のギャンブルに参加して、賞金を渡すとき難癖をつけられたり、掌返しをされたことのある佐原には、そうでないと断言も出来なかった。
だが、掌返しをするにしても、D-4ホテルが禁止エリアになったのはまだゲームの序盤だったのだ。
鉄骨渡りを始め、歩き出した直後にゴールの窓が「開かずの間」だと教えられるようなものである。
参加者にやる気をなくさせてどうするというのか。

(奴らなら、もっと希望を残しておくはずだ…。儚い希望に縋ってもがく俺達の姿を見て笑う為に…!)
D-4が禁止エリアになったことで『棄権の権利が無くなった』とは、佐原にはどうしても思えなかったのだ。

(つまり……あるんじゃないか…?
D-4が禁止エリアになっても、参加者が棄権の権利を購入できる“ホテル地下”に安全に入れるルートが…!
……………この先に……!)
違和感と、地下通路。それがここに来て佐原に一つの答えをもたらした。
638代理投下:2010/04/12(月) 22:35:16 ID:???
312 :抜道9/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:19:06

「ずいぶん歩いたな…」
「ああ。多分もう少しだ」
佐原は、懐中電灯で腕時計や方位磁石を照らして見比べながら、ただひたすら突き進んでいた。
ふと眼前に、唐突に佐原達の行く手を阻むように壁が現れる。

「何だ…?ここで行き止まりか?」
「いや…。この壁を良く見てみろ、南郷」
南郷は佐原に促され壁に近寄ると、懐中電灯で壁を照らし凝視する。

「…ここだけいやに新しいな」
「そうだ。最近作られた壁だ。出来てからまだ数ヶ月と経ってないようだ」
「ここは…?」
「この周囲を調べてみよう。俺の考えが正しかったら、必ず入り口がある筈だ」
二人は手分けして、壁伝いに入り口の在り処を探った。

「あった……」
佐原の持つ懐中電灯の明かりが、真新しい木製のドアを照らしていた。
「南郷、来てくれ。ここに入り口がある」
「……本当だ。しかし何だってこんな下水道に、こんなドアが…?それに、ここはどこなんだ?」
「ほら、見ろ。ここに札が下がっている」
「……『引換所』……?一体……?」
「分からないか…?」
佐原の含み笑いに、南郷は軽く首を振った
639代理投下:2010/04/12(月) 22:35:42 ID:???
313 :抜道10/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:20:46

「さっぱり分からねえ…。一体ここは何だ?」
「棄権の権利を購入出来る所さ」

佐原は南郷に、何故こんな所に棄権の権利を購入出来る場所があるのか、自分の推測を説明した。
「ここはD-4、禁止エリアのホテルの地下にあたる場所だ。地下道は電波が届かないから、ここまで安全に辿り着けるって訳だ」
「そうだったのか…。だが、俺達は一億を持っていないから棄権出来ないぞ、今入っても」
「棄権出来るかどうかを確かめに来たんだって言えばいいさ。一億はこれから集めるってな」
「……じゃあ、入ってみるのか?」
「ああ」
佐原は逸る気持ちを抑え、ドアノブに手をかけた。

「……罠ってことはないよな?」
南郷の呟きに、佐原はビクッと肩を震わせ、ドアノブから手を離した。

「わ、罠?」
「いや、こんなに分かりやすいドアだと、もしかしてと思ってな」
佐原の背中に嫌な汗が流れる。
あの時みたいに、風で吹き飛ばされるなんてことは…。今回の場合爆弾とかで…。

「…だ、だが、ここまで来ておいて確かめもせず帰るなんて…!」
「……ノックをしてみたらどうだろう」
「は…?ノック?」
「ああ。もし佐原が言うように、ここがちゃんとした『棄権の権利販売所』なら、まともな反応が返ってくるだろう。無反応なら警戒したほうがいい」
「…そうか。アンタの提案、案外いけるかも知れないな」
佐原は頷くと、控えめにノックをしてみた。
640 ◆6lu8FNGFaw :2010/04/12(月) 22:35:47 ID:???
携帯から支援します!
ありがとうございます。

21レス目からは修正したほうを投下お願いします。
641代理投下:2010/04/12(月) 22:36:05 ID:???
314 :抜道11/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:23:44

コン、コン。

「……入れ」
中から聞こえた声に、思わず二人の顔が緩む。
だが、まだ油断は出来ない。佐原は恐る恐る、扉を盾にしながらゆっくりと扉を開けた。

そこは、開会式で見たホテル内部の雰囲気と良く似ていた。
簡素ながらも、床に敷かれた重厚な色の絨毯。6畳ほどの間取りだが、そこに置かれた椅子やテーブルは一見して高級と分かる。
数人の黒服が立ち、一人が佐原達に呼びかけた。

「どうした?部屋の中に入れ」
「…念の為聞くが、部屋に入った途端にドカン、なんてことは…?」
「そんなことはありえない。この部屋に辿り着いた時点でお前達は命を保証されている」
「信じていいんだな、その言葉…?」
「安心しろ。嘘をつくようになど言われていない」
「……分かった」
部屋に入ると、数人の黒服は佐原と南郷を取り囲み、一斉に拍手を始めた。

パチ… パチ…
「Congratulations…! Congratulations…! おめでとう…! おめでとう…!」

「おめでとう、お前達はこのゲームが始まってから最初にここに辿り着いた者達だ。間もなく主催者が直々に来られ、お前達に祝辞を述べられるだろう」
「祝辞…?そんなモンいらねえっ…それに、まだ俺達は…」
「ああ、いらっしゃったようだ」
黒服が後ろを振り向くと、目線の先にあったエレベーターの扉が開き、中から黒崎が現れた。

「やれやれ…。ようやく一人目か。思ったよりも遅かったな」
黒崎は先程まで頭の痛い出来事に翻弄されていたのだが、疲れた素振りを見せず佐原達に笑いかけた。
642代理投下:2010/04/12(月) 22:36:43 ID:???
315 :抜道12/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:26:00



数分前。
黒崎は在全の気紛れなゲームに付き合わされた後、すっかり冷めてしまったコーヒーを片手に椅子に深く腰掛けていた。
目の前のモニターが再び切り替わり、黒服の姿が映し出された。

「黒崎様、最初の『棄権希望者』がここまで辿り着いた様ですが」
「……そうか、すぐ行く」
「かしこまりました」
黒崎は、再び通常のモードになったモニターから目を逸らし、疲れた体に鞭打ってもう一度立ち上がった。

下がっていくエレベーターの中で、黒崎は先程の冷めたコーヒーに添えてあったメモに思いを巡らす。
メモには簡潔に、「了解した」といった内容が書かれてあり、その下にも数行、文章が書かれていた。
その数行は、黒崎の疲弊した体に再び活気を取り戻させるのに十分な内容であった。



「参加者の君達には、優勝を目指して欲しかったのが本音だが、『棄権』は君ら参加者に与えられた権利だ。
おめでとう。さあ、一億円分のチップを出したまえ」
黒崎が促すと、佐原は僅かに動揺したが、胸を張って言い返した。

「生憎、まだ持ち合わせが無いんだ。
今は、本当にお宅らが『棄権』の権利をちゃんと交換してくれるのか、それを確かめに来ただけ…!」
「成程、疑われていたのか。実に心外だ」
黒崎は部屋の中央に置かれた椅子に座り、指を組んだ。
643マロン名無しさん:2010/04/12(月) 22:37:05 ID:???
支援
644代理投下:2010/04/12(月) 22:37:13 ID:???
316 :抜道13/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:27:46

「だって、ここは禁止エリアになったじゃねえか。でも、地下なら首輪の電波が届かないかもと気がついて、それで…。」
「では、ここに君達が辿り着いたのは偶然だったのか?」
「…いや、さっき地下を歩きながら思い出したんだ。あんたの言葉をさ」
「私はこれ以上ないくらいに分かりやすい言い方で説明したつもりなのだが、どうやらきちんと話を聞いていない参加者が多かったようだ」
「普通、下水道から通って来れるなんて思うかよ…!」
「普通…?このゲームの中で物事を『普通』に考えること自体が異常だ。そう思わんかね?」
黒崎の言葉に、佐原は思わず大声を上げた。

「詭弁だっ…!自分達の異常性を正当化しようとすんなよっ…!」
「フフ、何はともあれ、君達は棄権の為の『正しいルート』を見つけたんだから、いいじゃないか」
「良くねえ…!確かめる為に余計な時間と労力使わせやがって!」
「…それが、実はそうでもないのだよ、佐原君。最初に辿り着いた君達には特別に大きなチャンスがある」
「…は?」
佐原は目を見開いて黒崎を見た。

「最初にここへ辿り着いた者の所持金が一億に満たなかった場合、あるギャンブルをして勝てば、特別に棄権の権利を得ることが出来るのだ」
「……ギャンブル…?」
「そうだ。だが、これは最初の一人しか挑戦できない。君達二人のうちどちらか一人だけだ」
「………………」
佐原と南郷は顔を見合わせた。南郷が心配そうに口を開く。
645代理投下:2010/04/12(月) 22:37:37 ID:???
317 :抜道14/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:29:20

「…それ、選ばれなかった方はどうなる…?ここで殺されるのか?」
「まさか。ここを出て、ゲームに戻ってもらうだけだ。その後、棄権したければ自力で一億稼いで来てもらう」
「…成程、今までと同じか…。」
南郷は少し考えた後、言った。

「じゃあ、俺は遠慮するよ。元々、佐原がいなけりゃ俺はここに来れていないんだ」
「南郷…」
南郷は、佐原の顔を見ると、軽く微笑んで見せた。

「良かったな、佐原。元の世界に帰れるチャンスだ。頑張れよ」
「…ああ、すまないな」
「いいさ。俺はまだやり残してることがあるんでな。…探している人物がいるんだ。アンタと同年代くらいかな」
「……そうか。早く合流出来るといいな」
「ああ。そうだな」
南郷はそれだけ言うと、黒服の一人に連れられ、エレベーターに乗って行った。
佐原は、南郷の背中がドアに隠れてしまうまで目で追っていた。


「…さて、では佐原君、そこの椅子にかけたまえ。ギャンブルを受けるということで良いんだな?」
「その前に、ギャンブルの内容と、負けたらどうなるか説明しろよっ…!」
佐原は椅子に座りながら、黒崎に言った。
646代理投下:2010/04/12(月) 22:38:08 ID:???
318 :抜道15/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:31:09

「ギャンブルの内容は至って簡単。じゃんけんだ」
「……は?じゃんけん?」
「そうだ。一発勝負、勝ったら君は棄権の権利を得る」
「……負けたら?」
「君の首輪をここで爆破させてもらおう」
「っ………!」
佐原の表情が険しくなる。黒崎は顔色一つ変えず、言った。

「君は今、いくら持っている?……1000万?ではあと残り9000万円も足りないんだろう。
一度、2000万の為に命を張った君なら、ここは当然受けるだろう…?」
「…………!」

佐原は、黒崎を睨みつけた。黒崎はなおも語りかける。
「負けが怖いなら、やめても構わない。先程の南郷の様に、あそこのエレベーターから出て行ってもらうだけだ」
「やるよっ…!そんな言い方で揺さぶりをかけたって、俺の心はもう決まってる…!」
「ほう」
「やりゃあいいんだろ…!畜生っ…!」
「何、今からするギャンブルは正真正銘、公明正大なギャンブルだ。そんなに心配することもない」
黒崎の合図で、黒服が3枚のカードを差し出した。黒崎はそれをテーブルに並べる。

「これを見たまえ」
「これは…、カードにじゃんけんの絵が描いてある…?」
「そうだ。以前別の場所で行われたギャンブルで使われたカードだが、それを流用する。
簡単だ。私はカードをシャッフルし、三枚とも並べる。
君はグー、チョキ、パーのうち自分が出すものを口
647代理投下:2010/04/12(月) 22:38:31 ID:???
319 :抜道16/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:33:22

黒崎の言葉に、佐原は訝しげな表情をする。
「だが…今見たカードが三種類だからって、本当にその時伏せたカードは全部バラバラなのか?」
「もし不審に思うなら、ギャンブルの後カードを捲ってみれば良い。
だが、私は君が何を出すか決める前にカードを置くんだ。君の出すものが何か分からないのに、カードの柄を偏らせる意味がないだろう」
「……確かに」
「そもそも、こんな手順でやるのは、普通のじゃんけんだと後出しだ、と揉める事があるだろう。
それを防ぐ為、それに、君に選んでもらう為だ。最初に辿り着いた者の特典として、優遇しているのだよ」
「………」
「やるかね?」
「……わかった」
佐原は頷いた。

黒崎は馴れた手つきで3枚のカードをシャッフルすると、カードを伏せたままテーブルの上に並べた。
「さあ、君は何を出す?」
「……………………」

(……考えたって分かるもんか。結局運否天賦、なるようになれだ…!)
佐原は暫くの逡巡の後、覚悟を決めて叫んだ。

「チョキだっ…!」
そして、黒崎がこちらを翻弄するような台詞を吐く前に、即座に一枚掴んで捲った。
648代理投下:2010/04/12(月) 22:38:54 ID:???
320 :抜道17/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:35:02

佐原が引いた黒崎のカードは………!

チョキ……!


「あいこだな」
「……あ、あいこの場合はどうなる?」
「勝負なし、続行だ」
「……そ、そうか…」
佐原ははあ、と大きく息を吐き出した。
黒崎は佐原の手からチョキのカードを取り返すと、そのカードを破り始めた。

「ああ……?何してやがる?勝負続行なんだろ…!?」
「そう、そして、一度使ったカードはこのように破棄する」
「は…?」
「さあ、次だ。君の出すものを言い、カードを選びたまえ」
黒崎はチョキのカードをビリビリに破いて床に落とし、残りの二枚のまま佐原に続きを促した。

「…え?新しくカードを補充しないのか…?」
「ああ、しない」
「え、だって……」
佐原は混乱した。今チョキを破ってしまったのだから、残るはどう考えてもグーとパーしかない。
649代理投下:2010/04/12(月) 22:39:19 ID:???
321 :抜道18/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:36:27

「…もう一度やって、またあいこだったら…?」
「そのときも今のように、使ったカードを破棄し、続行する」
「…カードの補充は、しないんだな」
「もちろん」
黒崎の言葉に、佐原はますます混乱した。

(普通に考えたら、俺はパーと言い続けたら絶対に負けないってことになるじゃないか…!?
い、いやいや、待て、さすがにそんなうまい話ある訳が無いっ…!
つまり、これは罠なんじゃないか…?例えば、さっきこれ見よがしに破ったカード…!あれが実はチョキじゃあなかったら…!?
例えばパーだったら…!俺は2分の1の確率で負けることになる…!)

佐原は黒崎を睨みつけ、言った。
「その前に、今伏せてあるカード、確かめさせてもらう!本当にグーとパーなのか…?」
「ああ、構わんよ」
黒崎は伏せてある2枚のカードを捲った。

「……確かに、グーとパーだ…」
「そうだ。それが何か…?」
「……いや」
「もう一度言おう、佐原君。これは『最初にここへ辿り着いた人間への優遇』なのだ。これは慈愛のゲームなのだ」
「……慈愛…。」
「そうだ。だから君に有利なように出来ている」
「………」
650代理投下:2010/04/12(月) 22:39:42 ID:???
322 :抜道19/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:37:37

慈愛うんぬんは胡散臭すぎるが、確かにこの勝負、黒崎が言うようにイカサマの入る余地が無い。
それに、いくら怪しいからと言ってわざと負ける訳にもいかない。命が懸かっているのだから。
黒崎は再び2枚のカードをシャッフルし、伏せて並べた。

「……パー…!」
佐原は再び発声し、即座にカードを捲る。

捲ったカードは、パーだった。

「またあいこか。なかなか勝負がつかないな」
黒崎は、今佐原が捲ったカードを破り、一枚残ったカードも開いて見せた。
残ったカードは当然グーである。

「……だが、あと一回でつくだろう、勝負」
「ああ、そうだな。では佐原君、ここで決めたまえ」
黒崎は再びカードを伏せ、佐原に言った。

(……何考えてるんだ…?俺を勝たせたいとしか考えられねえ…!だが、勝たせて何になるんだ?黒崎は何を考えてる…?)
黒崎の行動に疑問を抱きつつも、佐原は言葉を発する。
どちらにしろ佐原のとる行動は一つしかないのだ。

「パー…!」
そう言いながら開いたカードは…当然ながらグーであった。
651代理投下:2010/04/12(月) 22:40:14 ID:???
323 :抜道20/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:39:00

「おめでとう、佐原君。君は棄権の権利を手に入れた。晴れてこのゲームからの離脱となる」
「御託はいいっ…!早くこの首輪を外してくれよ…!ここへきて掌返しは無しだぜ…!」
「外すとも。さあ、やってくれ」
黒崎が黒服に話しかけると、黒服は頷き、首輪を外すための道具を持ってきた。

「その銃やデイパックを降ろせ。首輪を外す邪魔になる」
佐原は頷き、肩にかけていた銃や背中のデイパックを下ろし、床に置いた。
黒服は佐原の後ろに回り、首輪の留め具にいくつかの機械をつけ、爆発が起こらないように処理した後、首輪を外しにかかった。

ピーッ……
小さい機械音と共にあっけなく首輪は外れ、ボトリと絨毯の上に落ちた。

「……………………」
佐原は硬い表情でしばらく首を擦っていたが、やがてこらえきれずに声を絞り出した。

「……っ………!!
やった……!やった……!やったあっ………!!」

(やったっ…!やったっ…!首輪から開放されたっ…!これで晴れて俺は、この殺し合いから降りて自由になれるっ…!)
首輪を外して、ようやく首にかかっていた重みと共に、心にかかっていた重圧も消え、佐原は感動に身を震わせた。

「おめでとう、さあ、これを受け取るがいい」
黒崎は、佐原に封筒を差し出す。
652代理投下:2010/04/12(月) 22:41:21 ID:???
支援 ありがとうございます。スレ容量が491を超えていますので
新スレを建てさせていただきます。
653代理投下:2010/04/12(月) 22:43:53 ID:???
新スレ
福本漫画バトルロワイアル part.7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1271079773/
上記に移ります。
654代理投下
痛恨のコピーミスです 本当に申し訳在りません。
幾度お詫びしても足りませんが、申し訳ありません。
318 :抜道15/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:31:09

「ギャンブルの内容は至って簡単。じゃんけんだ」
「……は?じゃんけん?」
「そうだ。一発勝負、勝ったら君は棄権の権利を得る」
「……負けたら?」
「君の首輪をここで爆破させてもらおう」
「っ………!」
佐原の表情が険しくなる。黒崎は顔色一つ変えず、言った。

「君は今、いくら持っている?……1000万?ではあと残り9000万円も足りないんだろう。
一度、2000万の為に命を張った君なら、ここは当然受けるだろう…?」
「…………!」

佐原は、黒崎を睨みつけた。黒崎はなおも語りかける。
「負けが怖いなら、やめても構わない。先程の南郷の様に、あそこのエレベーターから出て行ってもらうだけだ」
「やるよっ…!そんな言い方で揺さぶりをかけたって、俺の心はもう決まってる…!」
「ほう」
「やりゃあいいんだろ…!畜生っ…!」
「何、今からするギャンブルは正真正銘、公明正大なギャンブルだ。そんなに心配することもない」
黒崎の合図で、黒服が3枚のカードを差し出した。黒崎はそれをテーブルに並べる。

「これを見たまえ」
「これは…、カードにじゃんけんの絵が描いてある…?」
「そうだ。以前別の場所で行われたギャンブルで使われたカードだが、それを流用する。
簡単だ。私はカードをシャッフルし、三枚とも並べる。
君はグー、チョキ、パーのうち自分が出すものを口頭で示してから、君が三枚から一枚選んで私のを引くんだ。
どうだい?私がイカサマをする余地がないだろう」