その時‥‥!
たまたま手をかけた、ベッド脇のクローゼットの中から、何かが落ちてくる‥‥‥!
ドサドサドサッ‥‥‥!
それは、有賀が残していった大量の武器に支給品‥‥‥!!
黒沢、驚愕っ!!
思わず、手に取る‥‥‥。
たまたま掴んだのは、銃! グレネードランチャー!!
「‥‥‥うーんっ。
ここはどこ?」
背後で美心がつぶやく。
黒沢、ドキッとして、美心に駆け寄る。
「気が付いたかっ!」
起き上がった美心の手を、思わず握ってしまうっ‥‥!!
「‥‥きゃっ!」
小さく叫び声を上げて、美心は恥らう!
「‥‥‥いや〜ん‥‥‥!!」
美心、困惑‥‥!
気が付けば、ベッドの上‥‥‥!!
‥‥‥黒沢と二人きり、手を取り合って‥‥‥!!
そして、目の前には息を荒げた黒沢の顔が間近に‥‥‥!!
「お、およしになってっ‥‥‥!
私は‥‥‥私にはっ‥‥‥!!」
カイジくんという、決まった男性がいるのよっ! と言いかけて、美心は口を閉ざした。
黒沢の手には、銃!!
‥‥‥美心ったら‥‥罪な女!
こんな中年男性まで魅了しちゃうなんて!
「きっと、私が思い通りにならなかったら、銃で脅して言うことをきかせるつもりだったのね‥‥!!」
「ち、違うっ!
俺は無実だっ‥‥‥!!
誓って何の悪意もありませんっ‥‥!」
こういうとき、言い訳をすればする程、誤解をされるのが黒沢である。
美心は考えを巡らせる。
銃で脅されたんじゃ、抵抗はできないわ‥‥‥。
でも、純潔は‥‥‥‥、純潔だけは守り通さなきゃ‥‥‥カイジさんのために!!
それには‥‥‥この場は、ちょっとしたお芝居が必要ね‥‥‥!!
「‥‥うん、わかった‥‥‥。
私も、黒沢さんのことは素敵だなって、
最初に会ったときから思ってたの‥‥‥」
あまりにも思いがけない発言に‥‥‥黒沢‥‥舞い上がる!!
‥‥うら若き女性からの‥‥告白っ!!
夢にまで見た‥‥‥妄想っ!!
「‥‥だから‥‥‥そういうことは‥‥‥、
もうちょっと、お互いを良く知ってから、ね‥‥‥。
それまで、オ・ア・ズ・ケだぞっ!!」
黒沢は顔を真っ赤にして、ぶんぶんぶんと頷く。
美心は心の中で、カイジに謝る。
‥‥‥カイジくんごめんね‥‥でも、美心の本心はカイジくん一筋だからねっ!
大丈夫。カイジくんは、きっとわかってくれる‥‥‥!
* * *
その頃、有賀は、拡声器の声を聞いていた。
金が欲しくば奪いに来い、と。
有賀は、金には興味は無かったが、声の主には興味を持った。
「‥‥‥そんなに‥‥‥殺して欲しいのかい‥‥‥‥?」
かなり遠くから聞こえた声のようだった。
きっと、この声に誘われてくる者は多いだろう。
そして、声の主である獲物は誰かに獲られる可能性もあるだろう。
だが、その時は、この声におびき寄せられた他の者を標的にすればいいだけのこと。
修正は以上です。
ご迷惑をお掛けしました。
◆JsK8SvgrFA 氏 修正ありがとうございます。
美心は、シリアス展開なこのバトルロワイヤルの
1輪の“華”ですね。長く咲いていてくれるとよい。
>>953 >カイジさんのために
まだ一つだけなおし忘れてるな
誰か修正たのむ
何度も申し訳ありません。
修正します。
こういうとき、言い訳をすればする程、誤解をされるのが黒沢である。
美心は考えを巡らせる。
銃で脅されたんじゃ、抵抗はできないわ‥‥‥。
でも、純潔は‥‥‥‥、純潔だけは守り通さなきゃ‥‥‥カイジくんのために!!
それには‥‥‥この場は、ちょっとしたお芝居が必要ね‥‥‥!!
「‥‥うん、わかった‥‥‥。
私も、黒沢さんのことは素敵だなって、
最初に会ったときから思ってたの‥‥‥」
あまりにも思いがけない発言に‥‥‥黒沢‥‥舞い上がる!!
‥‥うら若き女性からの‥‥告白っ!!
夢にまで見た‥‥‥妄想っ!!
「‥‥だから‥‥‥そういうことは‥‥‥、
もうちょっと、お互いを良く知ってから、ね‥‥‥。
それまで、オ・ア・ズ・ケだぞっ!!」
黒沢は顔を真っ赤にして、ぶんぶんぶんと頷く。
美心は心の中で、カイジに謝る。
‥‥‥カイジくんごめんね‥‥でも、美心の本心はカイジくん一筋だからねっ!
大丈夫。カイジくんは、きっとわかってくれる‥‥‥!
* * *
その頃、有賀は、拡声器の声を聞いていた。
金が欲しくば奪いに来い、と。
有賀は、金には興味は無かったが、声の主には興味を持った。
「‥‥‥そんなに‥‥‥殺して欲しいのかい‥‥‥‥?」
かなり遠くから聞こえた声のようだった。
きっと、この声に誘われてくる者は多いだろう。
そして、声の主である獲物は誰かに獲られる可能性もあるだろう。
だが、その時は、この声におびき寄せられた他の者を標的にすればいいだけのこと。
ご指摘有難うございました。
960 :
950:2008/11/20(木) 12:18:39 ID:???
あわわ乙です
なんか手間かけさせてしまったですね…
961 :
956:2008/11/20(木) 12:28:05 ID:???
お疲れ様です
本当は俺がなおしちゃえば良かったんだろうが携帯なもんで面倒でな
すまんかった
乙です
美心、大ボケもいいところすぎるわw
しかし、有賀が拡声器の方に向かうとなるとこれはヤバい。
血みどろになるのは勿論だが、それ以上に現時点だと有賀が一番金を持ってるんだよなぁ……
所持金の額を知られたら、集中砲火を浴びかねん
投下します
風がうねりを上げて耳元をかすめていく。この場所は海が近いせいだろう。
標、赤松、村岡、そして利根川の四人は、その風の中でお互いの意図を探り合っていた。
「どうだね。ここは主催者に対抗する者同士、協力し合わないかね」
利根川は、穏やかな口調で話しかけてくる。
‥‥‥が、しかし‥‥‥!!
利根川は口では友好的な発言をしているが、袖口に銃を隠し持っている‥‥‥!!
赤松は、両脇に冷や汗が滲むのを感じた。
(‥‥‥袖口‥‥‥、ということは、撃とうと思えばいつでも撃てる体制‥‥‥!!
これはうかつなことは言えないっ‥‥‥!)
しかし、標と赤松の利根川への警戒をよそに、村岡は勝手にまくしたてた。
「‥‥‥それはそれは。
私たちもねぇ、連れは一人でも多いほうがいいと思ってたところざんす。
それがましてや利根川さんは、帝愛でも重要なポストにおられた方ざんす。
その利根川さんが、一緒になってくれるなんて、これ以上の僥倖はないざんす。
どうです? よござんしょ‥‥‥?」
そこまで言うと村岡は、標と赤松を振り返った。
赤松は、どう返答したものか考えあぐねて標の顔を見た。
標は赤松に、
(いいから、ここは僕にまかせて)
と目で合図を送った後、
「‥‥‥僕、怖いよ‥‥‥」
と、子供らしく怯えて見せた。
「‥‥‥だって、武器を持った黒服の人がいっぱい‥‥‥。
こんなに大掛かりなゲームを仕組んでる人たちに立ち向かっても、かないっこないよ。
‥‥‥おじさんは、どうやってこのゲームの主催者に復讐するつもりなの?」
利根川は答えた。
「おや、坊や。
‥‥‥おじさんはね、知っているんだよ。このゲームには、とても優秀な人がいっぱい参加していることを。
そういう人たちを上手く集められれば、黒服なんかただの雑魚だよ。
おじさんはね、みんなで協力してこのゲームの主催者を倒そうと思ってるんだよ。
だから、坊やも心配しないでおじさんの言うことをきいてくれるね?」
(ちっ、このくそガキが小生意気なことを!
‥‥‥しかし、なんでこんな子供がこのゲームに参加している?‥‥‥)
利根川には、そんな疑問が湧き上がってきた。
(‥‥‥このゲームには、確かに何の役にも立たないクズ共も沢山参加している‥‥‥。
女もだ‥‥‥。しかし、子供というのはあまりにも不自然‥‥‥。
何か、ある‥‥‥。で、なければこのガキに何か特別な能力があるということか‥‥‥?
ふむ、このガキには警戒が必要かもしれん‥‥‥)
村岡が割り込んでくる。
「そうざんすよ」
利根川さんは失脚した身とは言え、帝愛のナンバー2でおられたお方ざんす。
きっと、他の参加者の情報も、私などよりずっとお持ちでいらっしゃる筈ざんす。
ここはひとつ、みんなで協力して主催者に立ち向かうざんすよ」
実は村岡にとっては、対主催などどうでもよいことであった。
ただ村岡は、利根川は他の有力な参加者の情報を知っているであろうこと、そして、より有力な者のメンバーに加わった方が、自分にとって好都合であるだろうと判断し、とりあえず利根川に同調することにしたのだった。
標が利根川に問いかける。
「‥‥‥例えば‥‥‥優秀な人って、他にどんな人がいるの‥‥‥?」
(チッ! ‥‥このガキ、子供のフリして油断ならないな。こっちの情報を探ってきやがった‥‥‥。
これ以上このガキに関わらない方がいいかもしれぬ‥‥‥。
村岡も仲間にいることだ‥‥‥ここは村岡が知ってる以上の情報は出さない方が賢明‥‥)
利根川は一瞬でそこまで考えた。
「‥‥‥そうだな‥‥‥。
たとえば、伊藤開司‥‥‥」
村岡が仰天する。
「カイジですってぇ!?
そりゃ、アナタを破滅させた張本人じゃないざんすか!!
‥‥‥カイジには、私も煮え湯を飲まされてるざんす!!
あんな奴と仲間になるなんて、こりごりざんす!」
「‥‥‥まぁ、そういう気持ちもわからないでないが‥‥‥聞け。
確かに、カイジは私たちを悲惨な目に合わせた。
しかしそれは、カイジを敵にまわしたからそうなったということだ。
普段はただのクズだが、追い詰められた時奴は思っても見ない強かさ、閃きを見せる。
こんな究極のゲーム‥‥‥バトルロワイヤルなんて、彼が活躍するうってつけの舞台じゃないか。
ここは、過去のことは水に流して、なんとかカイジを味方に引き入れたいところだ‥‥‥」
「そういわれりゃ、そうざんすけどね‥‥‥」
村岡は不服そうである。
その時である。
やや遠くから、拡声器の声が聞こえてきた。
『聞けっ……!ここに一千万ある……!!得たくば、奪いに来いっ……!!』
「‥‥‥今の声は‥‥‥どういうことざんしょ‥‥‥‥」
村岡は不思議がる。
「‥‥‥『奪いに来い』とは、妙ざんすね‥‥‥。
まるでわざわざ、殺しに来てくれ、といってるようなもんざんす‥‥‥‥」
そんな村岡を見て、利根川は、
(‥‥‥相変わらず、使えなさそうな男だ‥‥‥)
と、内心思う。
「‥‥‥十中八九、釣りだろう。
まあ、こんな挑発に乗る奴は、どうせろくでもない奴ばかりだろうがな‥‥‥」
つぶやくように利根川が言う。
「‥‥‥そうかな‥‥‥」
標が言う。
「‥‥‥どんな事情があるかもしれないじゃない‥‥‥」
そして標はまた赤松に耳打ちする。
(‥‥‥潮時だ。これを言い訳にしてこの場を離れよう‥‥‥)
「‥‥‥利根川さんは、放っておくの‥‥‥? 今の声を‥‥‥」
「ふふん。当たり前だ。
こんな安っぽい挑発をする奴にも、それに釣られる奴にも興味は無い」
「‥‥‥そう‥‥‥。でも僕は気になるよ‥‥‥。
行こう、赤松さん‥‥‥。
利根川さんとは、話が合わないみたいだから、ここでお別れだ‥‥‥」
標は赤松をうながして、利根川に背を向ける。
「おい、待て。
一つだけ頼まれてはくれないか」
利根川の声に、標は振り返る。
「‥‥‥もし、お前たちが、伊藤開司に会うことがあったら、伝えてくれないか‥‥‥。
私がカイジの協力を欲しがっていることを‥‥‥。
私は主催者をどうしても倒したい。そのためにはカイジの力が必要だ‥‥」
「‥‥‥わかった。もしカイジに会うことがあれば伝えておくよ。
行こう、赤松さん‥‥‥‥」
歩きながら、赤松は標に話しかける。
「‥‥‥あれで良かったのか?」
「‥‥‥あれ以上、利根川といてもメリットはない‥‥‥。
利根川が主催者を倒したい、というのは、きっと僕たちに近づくための口実‥‥‥。
‥‥‥たぶん、本当にお互いに協力しあう気は無い‥‥‥」
「‥‥‥そうか。
ところで、本当に、さっきの声の方へ行くのか?」
「‥‥‥うん‥‥‥。
‥‥‥利根川のいうように、『釣り』ってことも考えられるけど‥‥‥。
あの声には‥‥‥なにかそれ以上のものを感じるんだ‥‥‥」
「なるほど‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥あれっ? そういえば村岡さんは?」
「‥‥‥どうでもいいよ‥‥‥。
もう首輪も貰ったし、これ以上あの人から新しい情報も出てこないだろうし‥‥‥‥」
* * *
「‥‥あ‥‥あらら‥‥‥?」
標と赤松は、村岡のことなど眼中にない様子で立ち去って行った。
「し、標さんっ? 赤松さんっ?
‥‥‥あ、行っちゃったざんす‥‥‥。
と、利根川さんっ‥‥‥!」
利根川は不機嫌そうに村岡を睨みつけた。
村岡には利用価値どころか、荷物すら無い‥‥金も無いので殺す価値すら感じられない‥‥!
‥‥それにもうすぐ、平山との定時連絡の時間である。見られでもしたら面倒だ‥‥‥。
「お前には用はない。立ち去れ!!」
「‥‥ひっ‥‥‥!」
村岡は、行ってしまった二人を追いかけて走り出した。
「また、所持品無しの一人ぼっちになるのはカンベンざんす!!
標さぁーーーんッ‥‥‥‥!!
赤松さぁーーーんッ‥‥‥‥!!」
【C-1/樹林地帯/夕方】
【赤松修平】
[状態]:健康
[道具]:手榴弾×10 石原の首輪 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:できる限り多くの人を助ける 標を守る
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません
※利根川のカイジへの伝言を託りました。
【標】
[状態]:健康
[道具]:モデルガン 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:バトルロワイアルの穴を見つける 他の対主催派と合流する
※利根川のカイジへの伝言を託りました。
【村岡隆】
[状態]:健康 やや興奮状態
[道具]:なし
[所持金]:0円
[思考]:赤松・標の後を追う ひろゆきとカイジに復讐したい 生還する
※村岡の誓約書を持つ井川ひろゆきを殺すことはできません。
【利根川幸雄】
[状態]:健康
[道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(30発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:三人を利用する ゲームで優勝、もしくは和也を優勝させての離脱
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※一条はその目的次第で協力・殺害を判断します。
※平山と次の定時連絡時に発電所で落ち合う約束をしました。
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコン
Eカードで使われた針具操作用のリモコンです。
電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具
Eカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
投下は以上です。
乙です
標と利根川のキレっぷりは半端じゃないな……
見事な読みあいでした。
そして、市川の周辺がますますカオスに……皆逃げてー!!
◆JsK8SvgrFA 氏 作品投下、乙であります。
ごく、穏やかで、乱暴な言葉使いは無いのに、
利根川、標のハラの読み合いにヒヤヒヤしました。
赤松さんは悪意に曝されたこと無いのだろうなァ…
投下乙です。相変わらず切れ者同士の心理戦が面白い!
数少ない理性的常識人の赤松は読んでると自然に応援したくなってしまうw妻子もいるんだし、頑張れ。
そして市川の所に標達まで集結とは・・・
拡声器はどこのロワでも惨劇を生むアイテムと言われてるらしいが、どうなるのか?
代理投下します。
「操作」
話の折り合いのついたカイジと沙織の二人は連れ立って声のした方へ向かっている。
だが沙織は先程のあれが果たして本当に女の悲鳴であったのか怪しく感じ始めている。
二人同時に耳にしているのだから流石に空耳という事はあるまい。
しかし、風の音であるとか金属の軋む音であるとか、その可能性がないこともない。
沙織はその事を伝えようとカイジに声を掛ける。
「ねえ、カイジくん…」
それを遮るように。
衣を裂くような女の悲鳴が辺りに響き渡った。
「美心っ…!!」
「ちょっとカイジくん…!?」
カイジは沙織が止める間もなく走り出していた。
(待ってよっ…私を置いていかないでっ…!)
沙織は必死になってカイジを追いかける。
(何を考えているのだ、あの男は)
沙織の心に怒りが噴き上がる。
――私は一人になってしまっては生きていけないというのに――
走りながらカイジは忙しなく辺りを見回す。
この一帯は土産物の売店やら飲食店が細々と建ち並んでいて見通しが良くない。
おまけに、これらの店舗に先程の悲鳴が反響してしまっていて音源の確定も難しい。
「くそっ…!」
カイジが焦り苛立っているのは明らかだった。
それでもカイジは疾走を止めず、やがて広場へ出た。
やや遅れて息を切らせた沙織も広場へ到着する。
生垣があり、地面はタイル張りになっている。
何かを発見したらしいカイジはしゃがみ込み、右の人差し指で地を撫でた。
カイジの表情がみるみる険しくなる。
荒れた鼓動と呼吸も多少収まった沙織もカイジの異常に気付いて駆け寄る。
空を模したタイル。
その白い雲の部分に、僅かに黄色味を帯びた赤い汚れが広がっている。
沙織は息を呑む。
「…血だわ…」
塗料や飲料水の類には出すことの出来ない、血液特有の赤。
「ちくしょうっ…!一体何があったっていうんだ…!」
その時。
『聞けっ……!ここに一千万ある……!!得たくば、奪いに来いっ……!!』
「な…なんなのよ、今の…」
しかし沙織が動揺したは一瞬。
すぐにあることに気付き戦慄を覚える。
今の宣言の音源はそれ程遠くない。アトラクションゾーン内であることは間違いないだろう。
恐怖と焦燥が沙織の背を駆け上がる。
一刻も早く離れなくては我が身が危ない。
ここは――危険だ。
「行きましょうカイジくん…!」
「しかし…」
知人のものかもしれない血液がカイジの判断を鈍らせているようだった。
「いい加減にしてっ…!」そんなカイジの態度に、沙織は怒鳴りつけたい衝動をどうにか飲み込む。
冷静になるのだ。感情的になる事…それは今の自分に一番あってはならない事。そう、自分に言い聞かせる。
内輪もめなどしていれば確実に死ぬ。沙織は暗愚な女ではない。
そう、今すべきことはヒステリックに怒鳴り散らす事ではないのだ。
沙織は未だしゃがみ込んだままのカイジの正面に回りこみ、膝を着く。
カイジの両肩に手を掛け、真正面からその瞳を捉える。
二人の男女の顔と顔の距離は近い。
カイジは僅かに動揺する。その隙を突くように沙織は言葉を発する。低く、ゆっくりとした口調で。
「カイジくんは美心さんのことが心配なのね…。それはとてもよく分かるわ。
でもよく考えて…。この血液が美心さんのものとは限らないでしょう?
もしそうであっても、これは致死量の血液ではない。むしろ大した出血じゃないわ。
勿論、最悪の事態も考えられる。もしそうなら――」
そこで一旦言葉を区切るが目は逸らさない。
「――あなたにはどうする事もできない」
断じるように毅然と、しかし冷酷さを滲ませないよう細心の注意を払う。
「だけどねカイジくん…、」
ここで沙織は少し声のトーンを上げ、笑顔を作る。
「望みは充分にあるわ。
美心さんは無事逃げおおせたのかもしれないでしょう。血液の量は然程多くはないし、引き摺ったような跡も無い。
ならばその可能性は高いんじゃないかしら」
そう言ってカイジの左手をきゅっと握る。
「美心さんと合流して彼女を守ってあげたいと、そう思うのなら今は生き延びる事を第一に考えてっ…!」
本心から言えば、美心という女の無事などどうでも良い。
寧ろ死んでいてくれた方が好都合なのだ。
だが、そんなことはおくびにも出さない。
飽くまで演じるのは善意の第三者。
そして沙織の演技は功を奏したらしい。
「そうだな…」
す、とカイジは立ち上がる。
「取り敢えず一旦アトラクションゾーンから出よう。
今のでどんな奴が集まってくるか分からない。恐らく寄ってくるのは金か殺しを望む危険人物。
ここは…危険だ。声がしたのとは反対側…東口から行くことにしよう…」
「そうね…カイジくんの言う通りだわ…」
沙織も立ち上がる。
主導権はカイジにある――そう彼に思わせるのが肝要なのだ。
だが実際には、無自覚の内にカイジの行動は沙織の望む方向へ操られつつある。
沙織の口からはここが危険であるとも、ここから離脱するべきだとも一言も発せられてはいないのだ。
二人が東へ向かおうとした少しばかり歩いたところで沙織はカイジの腕を掴んだ。
「田中さん…?」
「しっ…!あそこ見て…。生垣の向こう…」
カイジは目を凝らす。
そこにいたのは青年。
白い短髪がちらちらと木々の向こうで揺れている。
「あいつは…“赤木しげる”…」
243 :操作345 ◆wZ6EU.1NSA:2008/11/20(木) 20:32:56
▼
日は西に傾きつつある。
独りになった平山は急に心細くなる。
スタッフルームを出るまでは確かにあったと思われた希望は歩を進める毎に萎えしぼんでゆく。
平山は支給品である参加者名簿に連ねられた名前と、利根川から渡されたメモの内容を反芻する。
それらの文面を彼は一言一句違わずに記憶していた。
〈兵頭和也〉に遭遇したところで、もし彼がこの殺し合いに乗っていたら…?
〈遠藤〉や〈一条〉に遭遇したところで、人を殺すのは嫌だ。勿論殺されるのも御免だが。
〈伊藤開司〉との遭遇が運良く叶ったところで、彼が説得に応じて協力してくれる保証などない。
頭がくらくらする。
それは出血により軽い貧血状態に陥っているせいか。
若しくは極度の緊張状態から来る精神疲労のせいか。
俯くと装着された金属――己が操り人形であることの証――が目に入った。
会場で首輪を爆破された少年の最期が蘇る。
それは平山の脳内にまるで連続写真のように鮮明に再生された。
……オレは死ぬのか…あの山口という少年のように…
……利根川がほんの僅かな力を指先に込めるだけで…
「うっ…!」
平山はその場に蹲り嘔吐した。
【C-4/アトラクションゾーン/夕方】
【伊藤開司】
[状態]:健康
[道具]:ボウガン ボウガンの矢(残り十本) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒
※平山の存在に気付いていますがアカギだと思っています
【田中沙織】
[状態]:健康 精神不安定
[道具]:参加者名簿 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:足手纏いになるものは殺す 死に強い嫌悪感 森田鉄雄を捜す
赤木しげる、有賀研二、一条、神威勝広、神威秀峰、利根川幸雄、兵藤和也、平井銀二、吉住邦男に警戒
※平山の存在に気付いていますがアカギだと思っています
【平山幸雄】
[状態]:嘔吐 左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
[道具]:参加者名簿 不明支給品0〜2(確認済み) 通常支給品
[所持金]:1000万円
[思考]:カイジを捜す 利根川に会いにいく 引き続き利根川の命令には従うが、逃れる術も積極的に探る
※ひろゆきと21時にアトラクションゾーン事務所で落ち合う約束をしました。
※カイジ、沙織の存在に気付いていません
代理投下は以上です。
代理投下ミスで、>979に「243 :操作345 ◆wZ6EU.1NSA:2008/11/20(木) 20:32:56 」が入ってしまいました。
申し訳ありません!!
代理投下ありがとうございます
こちらこそ申し訳ない
>>984次スレ乙です
おもすれー!
ほんと女3人の動向は見てて楽しいな
黒沢と美心、なんて最高の組み合わせ!
平山は大変だなあw
利己的ながら冷静で頭の回る沙織とお人好しなカイジのコンビが面白い!
埋める?
wikiの編集者様、いつも乙です
新スレに投下されてたから、こっち埋めるよー。
うめ… うめ…
この際一気に埋めます。
埋め
995 :
マロン名無しさん:2008/11/22(土) 19:38:48 ID:fKLIXzm4
埋め
埋め
埋め
埋め
さあ、1000をとってくれ!
1000 :
マロン名無しさん:2008/11/22(土) 19:50:59 ID:BlaVlQ7I
ありがとう
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。