即興の魅力!
創造力と妄想を駆使して書きまくれ。
お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
前スレ:この三語で書け! 即興文ものスレ 第十二単
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1050846011/-100 その他、関連スレは
>>2
3 :
名無し物書き@推敲中?:03/07/19 02:49
前スレの続き、「為替」「買わせ」「架空」でお願いします。
4 :
名無し物書き@推敲中?:03/07/19 03:27
ずいぶん気がはやいね。
7 :
名無し物書き@推敲中?:03/07/19 03:44
まえがきにかえて。
「消防所のほうから来ました」こう言って、消火器を売り歩く詐欺があった。
今はもう有名な手口なため、消火器を買わせようたって、そうは行くまい。
「俺、俺」「え?誰?サブ太郎かい?」「そうサブ太郎だよ」
今はこういう風に電話での詐欺がはやっている。
「為替で失敗して、どうしても30万。明後日までに用意しなけりゃいけないんだ」
「俺今動けないから、代わりに会社の子よこすから」
もちろん来るのは、架空の会社の架空の女の子である。
一言で言うと、共犯者。
というニュースが頻繁にやっているので、もう俺俺と言ったって警戒され。
だからといって、「私、私」と言ってみたグループがいる。
私はその女性達の貧弱な想像力が許せないのである。
そして、「俺俺」詐欺を知っていながら、「私私」は聞いたことないから大丈夫だろう。
そう考える被害者の方も許せないのである。
いったい日本人の想像力と言うのはどこへ飛んでいってしまったんだろうか。
その原因について、本文の中にて述べていく。
なお本文中敬称は省略した。ご了解願いたい。
次は→「醤油」「くるり」「ごみ」
いまどき……
魚の形をした醤油入れも珍しいような。
まあなんにしろ、中身を九割使って、捨てる。一割残すのは、しょっぺぇから。
容器は椅子に座ったまま、部屋の隅のごみ箱に向けて、ひょい。
魚の醤油入れは、空中でくるりと回って
ぽちゃん――広がる波紋。
つい立ち上がって机に足が当て痛ぇ。……っぃー。
で、けんけんけんっと、ごみ箱に寄って、ごみ海原を眺めてみる。
すると、もうそこに魚はいないのだ。故郷か未境に旅立ったのだ。
感動。そして足が痛い。涙が出る。うううう……。
次は「次は」「これで」「お願いします」でお願いします。
「次は」「これで」「お願いします」
「次は」と言ったまま、アナウンサーがフリーズした。
見る間に顔の血の気が引き、手に持った紙が大きく震える。
「おいおい、何やってんだよ」と親父が突っ込みをいれる。
「何だろうね」とお袋がのんびりとした口調で言う。
おれは、ちょっとドキドキしながらテレビを見つめる。
「こ、これで」とアナウンサーは震え声で言った。
「私は、これで失礼させていただきます」
紙を残したまま、アナウンサーは姿を消した。
スタジオがザワザワして、ディレクターらしき人物が
残された紙を見る。「な、なんだって」と悲鳴。
一瞬騒然としたかと思うと、後は静寂が残った。
誰もいないスタジオを、おれたちはじっと見つめている。
「何が起こったんだ」とおれは呟いた。
ふいに親父が飛び上がってテレビに抱きついた。
「何が起こった。教えてください」泣いていた。
「お願いします。大黒柱として知る権利がある」
テレビは、何も答えてくれなかった。
次は、「マラソン」「電子手帳」「幽霊」でお願いします。
友人の一人に電子手帳を買って損をしたと愚痴られた。
例の名物社長の通信販売を見て購入したのだが、結局、携帯電話で事足りてしまうそうだ。
まあ、よく聞く話ではある。
だいたい、辞書を必要としないような人種ほどああいったものを欲しがるものだ。
それは裏を返せば自己の知識のなさをよくわきまえているということでもある。
こんな自説を吹聴していたら、あるとき件の友人にマラソンの語源を尋ねられた。
にやりと笑い、マラトンの戦いの逸話を得意げに解説し始めたら、その年号まで突っ込まれた。
イライラしながら携帯からネットにアクセスしていると、友人がB.C490とすらすらと数字を読み上げた。
まじめな顔で友人が電子辞書をよこすので、私はいぶかしみながらそれを受け取った。
すると、画面には人物辞典が開かれており、私の目にはソクラテスの文字が突き刺さった。
次のお題は「逆転」「さよなら」「ヒット」で
さよなら、同僚たち。僕が大学に帰ることは、もうないだろう。
僕はもう、人間ではなくなった。
元ナチで、ヒットラーの右腕と言われたゾル大佐の率いる特務機関が、
僕を拉致し、改造した。政府の人口抑制計画、その要として僕を
生きた兵器に変えたのだ。
さよなら、学生たち。僕が教鞭をとることは、もうないだろう。
僕はもう、戦士としてしか生きられない。
政府の主義主張で無用な人間を殺す、そんな世界の価値を逆転させる
ため、僕は改造バイク『サイクロン』を駆る。
さよなら、僕の愛した世界。
僕は世界を、僕の愛した世界を守るため、仮面をかぶり、闘争に赴く。
ライダー。
次のお題は「ハンドガン」「マカダミアナッツ」「靴下」で。
14 :
名無し物書き@推敲中?:03/07/20 23:11
「ご隠居さん!いるかい?」
「なんだい八っつあんかい、なんだい、靴下のままで?
そうとうあわててるね・・・」
「ハワイではの部屋の、いや、ルームの中でも靴を履いてたからね。
日本、いやジャパンに帰ったら真っ先に脱いだんだ」
「だからって外を靴下で歩かないでもいいじゃないか。
極端な男だね・・・。それにその怪しい英語は何とかしておくれ。
・・・なんだい八っつあん?」
「ご隠居さんにお土産だよ。」
「・・・・・・・!ええっ!
八っつあんが私にお土産!?」
「あっしだってお土産を買ってくることもあるよ!
なんだい!鳩が豆・・・いや、ハンドガンで、ええと・・・」
「・・・もういいよ八っつあん。お土産の中身はマカダミアナッツだね」
次回!「呪いの」「フライ」「VS」の三本でーす
「呪いの」「フライ」「VS」
「う〜ん。」
最近の小学生の作文は感想を書くのが非常に難しい。生徒たちの作文を前に俺は悩んでいた。
通常、最初の2、3行で何処其処へ行っただのが羅列され、後はマス目を埋めるための
苦しい努力が続くものなので最初の数行を読めば内容がほぼ把握できたのだ。
しかし、今の子供は本を読まない。活字といえばテレビ欄くらいのものなので
もろにその影響が出ている。作文のラテ欄化というのだろうか。
「家族で北海道旅行〜深夜のホテルに響く謎のフライパンの音 摩周湖伝説と呪いの洞窟〜」
と、二時間ドラマのタイトルみたいな旅行記ものがあるかとおもえば
「k−1GP ミルコVSサップ」
と、テレビで見た格闘技の試合の様子が実況で書かれていたりする。
日本人なら教わらなくても日本語が話せるから国語の時間は不要だと嘯く輩も
居るが日本語は教えなくては確実に失われてしまう。
そんな危機感が子供たちの作文から聞こえてくるようだ。
次は「学校」「あさがお」「ありがとう」でよろしく。
「学校」「あさがお」「ありがとう」
彼が死んだ。
それも人の良かった彼らしい死に方で。
彼に友人は、遺影に向かって「――ありがとう……、ごめんな……ほんまに」
と悲痛な面持ちで泣き叫んでいたが、私は泣けなかった。
私の感情というものは彼が葬られた時、一緒に埋葬されてしまったようだ。
彼と私は、いわゆる恋人同士の間柄ではなかった。
一緒に学校へ通って、一緒のクラブへ入って、間違いなく、私は彼の一番傍にいた女だったが、
彼はこの秘められた思いに気づくことなく逝ってしまった。
朱鷺色に滲む夕暮れ時、ヒグラシがひっそりと鳴いている。
家の塀沿いに植えられている今年初めて咲いたあさがおの花が、どす黒い赤紫色にしぼんでいた。
私はそっとその傍のベンチに腰をかけた。
黒いワンピースの裾を生ぬるい風が揺らす。
彼が死んでも、時は流れていくらしい。
本でそういう文句を見かけたとき、私はその文面を軽蔑の眼差しで見つめたが、
今はそんな気持ちは微塵もなく、ただ、私の胸をその言葉が通り過ぎていくだけだった。
「明彦兄さん……」
日が沈み、薄暮色のカーテンが広がる空を見つめ、私はそっと彼の名を囁いた。
☆相も変わらず長いなw
次は「煎餅」「イタ飯」「チェーンソー」でお願いします。
3行目訂正
○彼の友人
×彼に友人
すみません……。
「煎餅」「イタ飯」「チェーンソー」
煎餅を齧っていた。
鈍く光りそうな歯で、全てのものを噛み砕くかの如く。
今日の煎餅は少し甘い。
日頃は塩気のあるものを好むのだが、今日に限って甘いほうを選んでしまった。
これではいつもの調子が出ない。
そうだ、これが終わったらイタ飯でも食べに行くか。
もはや作業となりつつあるチェーンソーを抱え込みながら、そんなことを考えた。
くぐもったエンジン音が体に心地よく響く。
今まで、作業中にこのエンジン音が途絶えたことはない。
悲鳴が聞こえた。
同時にその声を出した相手も俺の視界に入る。
喉の奥から笑いが止まらなかった。
早く片付けてさっさとイタ飯を食べに行こう。
期待感からかつい力を入れてしまい、鈍い音と共に咥えていた煎餅が真っ二つに割れた。
それが……合図だった。
次は「ネズミ」「珈琲」「携帯電話」で頑張ってください
同棲相手と別れるか伴に歩むか……私は悩んでいる。
「夕飯なにとろうか?」向かいには惚けた表情で男が煎餅を口に咥えている。
今、私達は食卓にしているテーブルに着いて夕食を考えていたところだ。
ありとあらゆる種類の店屋物。食事の宅配チラシが上に広げられている。
経緯はこうだ。私達は食事を当番制で決めているが夕食はその時次第となっており、
今日はどちらもその気は無い。そして自然に男は店屋物で済まそうとしているのだ。
何かにつけて……男のこうした事なかれな態度は私を脆弱にしているような気がする。
そう気付いてから別れる事を考えだした。もちろん自己弁護の布石は打っている。
夕食の材料は昼に買い揃えて、下ごしらえもすぐにした。頼まれればすぐ作るつもりだ。
……卑怯者。私もこの男と変わらない、いや打算的で利己的だ。この男はその点、無垢だ。
でも二人で生きる事は奉仕や従属、献身だけではないはずだ。同棲でも変わらないはず。
でも……しかし……だけれど……。私の煩悶もお構い無しに男は能天気な声を出す。
「今日はイタリアかなぁ?」ピザ!?こんな暑い日にピザ?頭の中にはおが屑か?コラ。
「でも暑い日にはなぁ……」どうやら肉は詰まっているようだ。「爽快感が無いよなぁ」
そういう問題か?煩悶してるのも馬鹿らしくなってきた。童のように彼はワザとらしく手を打つ。
「そうだ!チェーンソーで切り分ければ爽快か?」……別れよ。
ああ、被った
でもお題出してないから18の方で……
18さん、すいません。
縁側に腰を下ろし熱い茶をすすった。おばあちゃんが勧めてくれるので、煎餅にも手を伸ばしぼりぼりと齧る。
「お昼は何が食べたい?昨日はカツカレーだったから今日はうなぎでも取るか」
おばあちゃんは店屋物のメニューをいくつも手にしている。
「いいんだよ、おばあちゃん、そんなに気を使わなくて。そこのコンビニで弁当買って来るから。
うなぎなんて食べちゃったら、こっちがお金払わなくちゃいけなくなる。」
「弁当はおいしくないだろうに。それにあそこまで遠いじゃないか」
「近所に定食屋でもあればいいんだけどね」
「定食屋はないなあ。ああ、そこの通りまで出ればレストランがあるわ」
おばあちゃんの言うレストランなら来る途中に見たからしっていた。この格好で入るのは気の引けるイタ飯屋だった。
「けんちん汁ならすぐ用意できるけど、食べるかい?」
「ぜひ食べたい。けんちん大好き。おばあちゃんそうしようよ」
「若いのに変わってるなあ。じゃあ、そうしますか」
どっこいしょと言っておばあちゃんは台所に向かった。
実は煎餅が苦手で冷たいコーラが飲みたいとこっそり思いつつ、軍手を着ける。チェーンソウを拾い上げ、エンジンを回す。
でも、けんちんは楽しみだな。若くてもごぼうぐらい食うよ、おばあちゃん。
巨大なソテツに立ち向かいながらそう思った。早くも腹がくうと鳴いた。
しかし、どうして昔の人間はソテツなんて好んで植えたんだろうな。気が知れん。
うおう。あほだ。お題は18氏のままで。
「ネズミ」「珈琲」「携帯電話」
「いい加減に観念して出て来い。お前は袋のネズミだ。」
窓の外で拡声器を振り回してバカが叫んでいる。袋のネズミなら捕まえに来い。
こっちから出て行ってやんなきゃ、逮捕できないような横着者しかいないのか。
俺は立てこもりの強盗犯だが、お前らは税金泥棒じゃないか。
相手してやるのも面倒臭い。俺はポケットから缶珈琲を取り出し、飲み始めた。
やがて、ヘリコプターらしい爆音が聞こえ始めた。覗いてみると何かが光っている。
サーチライト?真昼間だぞ。可哀相に、相当頭が悪い奴らしい。
ガックリと肩を落とした俺の視界にでっかい鉄球をぶら下げたクレーン車が映った。
浅間山荘事件のときテレビに映ってたアレだ。俺の頭の中は疑問符で一杯だ。
そのとき、人質にしていた娘の携帯電話が鳴った。
「代わってくれって……」
俺は電話を受け取ると音を立てないように裏口を開け路地裏へ向かった。
あくまで説得に応じる振りをしながら、出来るだけゆっくりと話を続けた。
おそらく携帯が圏外になるまで奴らは気付かないだろう。
俺は逃げた。こんな奴らに捕まるのはイヤ過ぎる。
お次は「強風」「烏龍茶」「おつり」で。
強風というより、暴風。
まず音が聞こえない。ごぉーごぉーいってる風の音だけが聞こえる。
目も開けられない。顔面筋の引き攣るような薄目をしてる俺は、きっと変な顔になっている。
そして……ここ、どこよ。あっちはどっち? どれがどれ? ううん?
……まあ、とりあえず歩く。
風向きは斜め前方。邪魔。身体がだるくなり、歩む速度はヴァージンロードを歩くよう。
あーもーきっと世界は俺以外どこかに吹っ飛んでしまったのだ。この風で。きっとそうだ。
明りだ。
うっはは、と歓び跳ねる。遠くに明りが。誰か居るかも。
女だったら甘えてやろう。男だったら肩を抱こう。子供だったら撫でてやる。自動販売機だった。
アウチッ……。気が遠くなる……数秒……忘れていた音を思い出す。ごぉー。
とりあえずポジティブに。ジュースが飲める。糖分摂取で気を落ち着けよう。烏龍茶以外売り切れ。
うん、烏龍茶にも糖分はあるかもしれない無いとは言えない無くてもいい。
財布には千円札。小銭はなし。『おつり切れ』ぴぴっぴどぅー。
千円冊が風に乗って飛んでったよフライ・ハイ!
ちょっと気持ちよくなってきた!
次は「惚れ」「照れ」「幸せ」でお願いします。
…絶えず窓に降りかかる雨によって外の景色はまだらに歪んでいる。
かろうじて見える空は黒雲に覆われ、時折閃光が瞬き、雷鳴が轟く。
先日、みほ子ちゃんが作った照れ照れボウズは己の無力に打ちのめされていた。
本当ならば今日の朝、みほ子ちゃんは幸せそうな笑顔を浮かべて遠足へ行くはずだったのだ。
それが自分の力が至らぬばかりに天候は悪化。
大好きなみほ子ちゃんは彼の頭をコツンと叩いて悲しそうな顔をした。
「雨…止まないね…」
せめて彼女が彼の体をビリビリに破いて内側のティッシュを引きずり出し、
昆虫の死体でも包んでゴミ箱に捨ててくれたら、彼の心はここまで痛まなかったのに…
みほ子ちゃんの弟などは彼の事を指差し「ただの首吊り人形」と罵る始末。
悲しくても彼は照れ照れボウズ。
惚れた女のために涙一滴、流すことすら適わない。
彼が精一杯の力を振り絞っても、せいぜいパフパフと埃を撒き散らす程度である。
照れ照れボウズは悲しみに暮れながらも「天気になぁれ」と何度も呟いた。
→「飛翔」「火」「路」
上の文、似たようなのを以前みたような…?
>上の文、似たようなのを以前みたような…?
>>25の自分の文のことです。
照れ屋なのである。もうホント、どうしようもないくらい。
意中の異性を前にするとロボット状態。サイボーグだけどそんな問題じゃない。
頭に植え込んだ電子脳はこんなときに限って情報整理をしだす。
僕の事はいい、彼女の話をしよう。
物好き以外は大抵電子化処置を受けたこの世の中。顔もいじり放題だから価値観も変わった。
それだけじゃない、いろんな創作作業も簡略化され文化水準も上がった。
無名の兄ちゃんやインドアボーイが一夜で音楽家なんて事もある。
メディアの演出もアイドルで精一杯。もう通用しないさ、そんなもの。
だけど世の中が変わっても色恋沙汰だけは変わらない。
魂の存在が身近になったのだ、余計な物が取り払われる代わりに。
確かに彼女はそう美人ではない、平凡さ。顔のバランスも体格も。
でも普段の仕草や微笑に僕は惚れてしまったのだ。
たとえカメラアイ越しでも視界に入るだけで幸せさ。
今日は、そうクールに。いつもより少し身だしなみを整えるぐらいで。
清潔感ばっちりで、ハイキングに誘う。少し高い自然区歩行チケット。
二人分さ。きっといけるさ。
次は「深窓」「お嬢様」「浪漫」
都大路の屋根から屋根へ飛翔を続ける影が一つあった。彼を探しているのだろう、
「鬼はどこだ」 役人達の怒声と共に、いくつもの火が通りを右往左往している。
――誰が鬼だって? 失礼な話だ。
彼は巻き毛をいじくりながら、そううそぶく。人並みはずれた力と運動神経を持つ
彼は、鬼と呼ばれ恐れられる盗賊だった。彼は親を知らない。気が付けば一人きり、
幼い頃より「鬼の子供だ」といじめられた。長じてからは自分から鬼と名乗った。
鬼と呼ばれ恐れられ、その度に自分が人外に近づいていく気がしていた。
そんな彼の様子が変わったのは二月ほど前、都大路で女と会ってからだった。
女はまだ若く、薄汚れた身なりをしていたが顔立ちは美しかった。女は売女だった。
彼は女を連れ帰った。夜、女は胸に彼の頭をかき抱いて寝た。彼は初めてあたたかな
気持ちで眠った。次の日から女は彼の家で、彼の帰りを待つようになっていた。
役人に追いまわされ今日の稼ぎは少ない。女へのみやげも反物一つだった。
隠れ家に戻ってきた彼は、いつもと違う家の様子に、ふと戸の隙間から中を覗いた。
そこでは女と見知らぬ男が乳繰り合っていた。脱ぎ捨てられた男の着物は、安物では
なかった。彼はなぜ今日に限って、自分の行く先々に役人がいたのかを悟った。
台風のような音をたて火柱が立っている。抜き身の刀を下げた彼は、燃える彼の
家には背をむけ、路に落ちる自分の影をじっと見つめていた。彼にはその影の
頭に角が見えるような気がしていた。
次は27さんの、「深窓」「お嬢様」「浪漫」でお願いします。
ああ、聾唖の娘よ。我が娘。
幼い時から私の腕の中にいた。か弱く耳も聞こえないお前は、外では生きていけないから。
屋敷の中が俺とお前の世界。深窓に育つ姫よ。それでいいではないか。
なのにああ。年頃だとは気付いていたが。初潮を迎えて何年も経つが。
娘よ。窓の外に立つ男は誰なんだ。
お前はあいつと見詰め合い、どんな言葉を交わしているのだ。
俺はお前に教えてやった。あいつは不良なんだと。女の子にひどいことをするのだと。
お前の答えは、想像を絶する痛みだ。それがどれほどのものかお前にはわからないのか。
紙に書き殴られた文字。「私だってセックスくらい知ってる」
なぜこんなことになったのだ。一人で生きれぬ聾唖のお前なのに。なぜ。あの男と見初めあうのか。
……見初める。見る。聞こえぬが、見える。谷崎潤一郎の「春琴抄」を読んだことがある。
佐助は針で目を潰した。黒目を突いたから痛くはなかった。目を潰したのは愛のためだった。
娘よ。音も光も無い世界でも、俺がいてやる。ぬくもりを与え続けてやる。いつまでであろうとも。
夕方から激しい雨が降っていたが、男は構わず窓の外に立っていた。私は彼に近寄り、見詰め合う。
娘は耳が聞こえない。「はい」と彼は頷いた。娘は不自由な子だ。「はい」ともう一度頷いた。
そして「お嬢さんと――」言葉を放つ彼の瞳は輝いている。浪漫溢れる青年よ。
娘が君を待っている。言葉は予想外に軽々しく放たれる。喜色満面な彼を前に、私は失うものを想った。
そして、恐らく娘が生まれてから一番父親らしい私で、窓の影から不安げにこちらを眺める娘に笑いかけてやった。
長文スマソ。次は「パンの耳」「甘い」「お菓子」でお願いします。
パンの耳を齧って飢えを凌ぐ。
最近、世界に瑞々しさが感じられない。野菜不足だろうか?
別の刺激を得る事で、どうにかしようと砂糖掛けパンの耳揚げを食べる事にした。
まるで砂交じりの耳を齧っているみたいだ。味はもはや空気の如し。
飢えとは遠い世界だった過去を思い出す。何故か幼児の時代だ。
母がしょうがないといった優しげな笑みで作ってくれたお菓子。
甘い匂いのした様々な食卓。味醂を使っているのかな?
その後、辛い思い出が私に降り注ぐ。
もう付き合えないと涙をこぼす恋人。言いがかりをつける小学生の友人。
ただ静かに涙を流す同棲相手。殴りかかってくる男。
恋人の死による無力感で慟哭する友人。私を蔑む春売り。
何故生まれてきたのだろう?何故生きているのだろう。
まるで悲劇の中心だ。禍根だ。
私の死で皆が笑顔を浮かべるのなら……
僕は初めて人に優しくなれるのだろう……
とか言いつつ次は「嫉妬」「微笑み」「恋人」
『フライパンの耳』を持つ男がいた。
耳で目玉焼きが焼けるわけではない。男はフライバンのような大きく丸い不様な耳を持っていたのだ。
掌ほどもある耳が顔の両側に場違いな如くに付している。
幼い頃からその事でいじめられ、なじられ、血を分けたものにまで虐げられた。
「テレビに出てみませんか」と、甘い言葉につられかけた事もあったが、
硬く自分を戒め、甘言に乗らぬように己を律した。
男、二十歳を超えるある日、姿形の異様なるが為に差別される事に嫌気がさし、山に篭ることとした。
深山にちんけな小屋を立てた。必要な物資は山菜を売って得ることにした。
男の存在は麓の村では周知のものであった。
「耳の大きな男がいる」「フライパンが住んでいる」等と噂され、次第に男のもとへ足を運ぶ者どもも現れた。
けれどもそれらの人々は偽善的態度で男に施しをあたえるのみであった。
それは自己満足の発露であり、男の目はそれらの心情を的確に見抜いていたので、決して心を開かなかった。
男を訪れるものの中に小さな五歳ほどの女の子がいた。名前は……失念した。
男の住居がかなりの山奥なのにもかかわらず、その女の子はある日忽然とやってきた。
男の耳を見るなり、「びくっ」と体を竦め、ゆっくりと両の手を差し出した。
見ると沢山の菓子類がその手にあふれていた。
「おじさんはお菓子あまり食べれないと思って……」
しかし男はその手を無下にも振り払った。少女の優しさが、人間の優しさが怖かったのだ。
少女は瞳を潤ませ、重い足取りでそこを後にした。地面にはチョコやビスケットが散乱していた。
それから、それから、私はずいぶん長く、声を出す事はなかった。独りでいたかったから。
しかし私は、大きな耳を研ぎ澄まし、少女の足音を待っている。
#次は30のお題で。
この板ではいくつもの駿文があった。
その不群とした才は時には人を笑わせ、またある時には頬に涙をすべらせ、読後には万紫
千紅の感慨を読者へ届けたのだろう。文字のかたち、その言葉の聴こえ、また意義をとわず
文と言うものは、すべからくこころに値をあらしめる媒体であるべきで、この板にすむ人々は
必ず他板の誰よりもそれをよく知っているはずだろうからだ。
彼は自分もそうでありたいと思うし、そうだと信じている。
彼にとってここに篤と訪れる文人たちは、すわ女神ヘラの嫉妬にも劣らない鮮烈な文思の
みなぎりを感じようとしているかと思われる。そして感じるための、また感じたあとの行動はそ
れぞれであろうと思う。彼の場合を鮮にあげれば、真似をしてキーを叩く、いつまでも胸にとど
めその主人公の心を慕倣する、またはどうもこの人には追いつけっこないと嫉妬する……。し
かしどれもが新しい発見であり、これまでの事柄で彼が学習することはあっても、後悔はしないことにやぶさかではない。
もちろん、それがどうして難しいことだということも彼は実感しているが。
そして今、彼は苦悩していた。これまで思ってきたことは、あくまで「文芸」による判断の上で
の話にすぎない。恥ずかしながらおれは今日の今日まで、知らず知らずこの愛しい恋人の膝
枕でうたた寝をむさぼってきた、と。つまり、口は手以上にものをいうが、言の葉がかくも呪言
のひびきをもってこの胸に溜まってくれたのに、彼は夢見がちな私心という名の沼地に手足
をとられ、言行不一致という有り体をさらしてしまった、と悩むのだ。
なぜこんな事を彼が思ったのかというと……。とあるスレッドを見つけてしまったからだ。そこ
には、ごく単純な文言でこう書かれてある――「白血病患者を救え! team 2ch 〜CPUパワーを、貸して下さい〜」
【UD】白血病患者を救え!Team2ch Part34【@news】
http://news4.2ch.net/test/read.cgi/news/1057894628/l50 自己満足と言ってもいい、青臭いやつだと言われてもかまわない……。
結構有名なこの企画、あなたも偽善から生まれる愛を育んでみませんか?
┏━━┓
┗┓┏┻━┳━━┳┳┳┓
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┃┃ ━┫━ ┃┃┃┃ ∧ ∧
┗┻━┳┻━╋┻┻╋┫ ( ´∀`) // ̄ ̄/
┃┏┓┣━━┫┗━┓ ( つ_// 2ch,/
┣┻┛┃┏━┫┏┓┃ [二二} 三 三]
┃ ━┫┗━┫┃┃┃
┗━━┻┳━╋┫┗┛
┃ ┃┣━━┳┳┳┳━━┓
┃ ┃ ━ ┃┃┃┃ ━┫
┃┃ ┃ ━┫ ┣━ ┃
┗┻━┻━━┻┻┻┻━━┛
- CPUパワーを、貸してください -
#謎カキコでびっくりさせてスマソです。次のお題は【高校】【サラダ】【羊羹】でお願いします
八月五日、天気は快晴――私は久しぶりに高校に行った。学校は夏休み、生徒の
姿はほとんど見あたらない。約束の場所は調理室、私は恐る恐る扉の中を覗いた。
中にはもう何人か集まっている。そのうちの一人が私を見つけ、嬌声を上げた。
「幸恵、久しぶりじゃない」 「美和?」
私はそれが一瞬誰だかわからなかった。私の知っている美和は、長い髪の
大人しそうな雰囲気の子だった。今目の前に立っているのは、髪を染め短くした――。
「分かんなかった? 幸恵が学校辞めてから、会ってなかったもんね」
いたずらっぽく笑う幸恵。 私もつられて笑い出す。
調理実習室を借りて、久しぶりの同窓会。今日は学生の頃のように、一緒に
料理を作るのだ。メニューはちょっと気取った欧風のカレーとサラダ、デザート付き。
私たちはおしゃべりしながら、でも手際よく料理を進めていった。学校を辞めてから
家事ばかりしていたけれど、皆で作る料理はなんで楽しいのだろう。
完成――白いプレートに盛り、私たちはテーブルについた。皆でお行儀悪く
おしゃべりしながらの食事。とても美味しい。 しかし、デザートのケーキに入って
いたナッツを噛んだ瞬間、あごに痛みが走った。入れ歯が割れたかもしれない。
――もう洒落たデザートより羊羹、茶髪より白髪染めの似合う年だもんねえ。
私は少し寂しい思いで旧友たちとの食事を続けた。
次は「空港」「チョコレート」「入道雲」でお願いします。
>>34 訂正 8行目
× いたずらっぽく笑う幸恵。
○ いたずらっぽく笑う美和。
スレ汚しゴメンなさい
たくさんの人。通り抜けていく騒音。空港の待合室。
人を待つのは嫌いだ。人ごみの中にいるのも。
約束の時間が過ぎてからいったいどれだけの時間が過ぎただろう。
苦労して手に入れたチョコレートコスモスの花束も心なしか萎んで見える。
何とか気を紛らわそうとして外を見る。
まばゆい夏の空に入道雲がひとつ。
あの雲が見えなくなるころにはきっと会える。
だってこんなに待ったのだから。
雲がゆっくりとかすんでいく。
もうすぐだ。
もうすぐ…
……
…
次。
「夜」「埋め尽くす」「空き缶」
一行感想
今日のカプール 25・27+30・31:もはや故意犯だろおまいら。27(30)は重婚中
25:てれてれ。好いシーンだな。ネタの取捨選択はお好みで(A-)
27:本当、彼女の話をしろってば、アンドリュー(映画ネタ)。前向きな姿勢はgood(B-)
28:まとまりは悪くない。けど、鬼と名乗ったのは自分、ならば失礼と思うのはおかしいYO(B+)
29:yourメル欄で減点1。食べ方の書かれたスパゲッティなど…。雰囲気はよし。(B+)
30:飢えからどんどん状況が過去へ返っている心理が見える。つか走馬灯だな(B)
31:もし…太田チューが本当にいたら(絵は滑稽だが)。科白のとこ、ちと判りづらかった。(A-)
32:話はよい。だが薬のキメ過ぎで「微笑み」抜けてるぞ、減点。ちなみに俺は既にやってたり。(B+)
34:暖かいランチパーティーにただよう羊羹の気配……お、俺、食べたくなってきたよ。(A)
36:詩的な描写が落ち着きもあってよい、まさにセレナーデ。ウホッ…!(A-)
(S:超スゴイ A:スゴイ B:人並み C:微妙 D:論外)
誤爆スマン。
39 :
「夜」「埋め尽くす」「空き缶」 ◆QkRJTXcpFI :03/07/23 13:11
「夜」「埋め尽くす」「空き缶」
挿入口が半開きになったビデオデッキが捨てられている。
明日は危険物の日なのだろうか、空き缶の詰まったビニール袋、ハ
ンガー、壊れた物干し、くたびれた傘などが山盛りだ。
20年も前だったら、ビデオデッキがゴミステーションに捨てられ
ているなど、想像もしなかっただろう。今は珍しくも何ともない風
景。
それより、埋め尽くす勢いで捨てられる多量のゴミにあきれる。物
が豊かになった証拠なのだろうが、生活が楽しくなったという実感
がないのはなぜだろう。
ところでビデオデッキだが、友人が捨てたものなのだ。型でわかる。
他のゴミに埋もれるようにしてそこにあるのは、わけありなのだ。
40 :
「夜」「埋め尽くす」「空き缶」 ◆QkRJTXcpFI :03/07/23 13:11
勤めていたスーパーがつぶれ、無職になってしまった友人の唯一の
楽しみはビデオ鑑賞。Hビデオを再生中故障を起こしたまま、中の
テープを取り出すことさえ出来なくなってしまったらしい。出す方
法がないか電話で相談を受けたが、そんな簡単なものでもない。高
専を受験したほどメカに強い私は「取り出してあげよう」と申し出
たのだが、猛烈に断られたのだった。
夜アパートへ無理に押しかけると、デッキは処分してしまったと言う。
どんなヤバい物を見ていたのか興味シンシンだったのだが、何のこ
とはない、彼がひた隠しにしていたのはホモビデオの鑑賞をしてい
たというだけの事だった。
彼は何かとりえのある人と言うわけでもないが、みんなの人気者
なのだ。実はホモで無職でおまけに痔が悪いと言う三重苦の上、ア
パートのゴミステーションにそのまま捨てると言うストレートな所
が彼の彼たる由縁なのだと思った。
次のお題。「ブタの蚊取り線香(ブタの蚊取り線香立て)」「高校
野球」「甘酸っぱい思い出」でお願いします。
ポケットにさした小型ラジオから聞こえる高校野球の中継がやかましいかった。
それでもボクはこれを聞くとようやく夏になったと実感できた。
押入れから取り出したブタの蚊取り線香を埃を払ってから縁側において、
ボクもその隣に寝そべった。
蚊取り線香独特の匂いを楽しみながら、
もうひとつの楽しみのため胸のポケットからタバコを一本引き抜いた。
ブタの口にタバコを押し込んで中の線香から火をもらった。
そうして吸い込み、吐いた煙は、少しの間そこに留まってから、
揺らぎながらこの夏の空に消えていった。
ちょうど去年の夏のあの甘酸っぱい思い出のように、
もうあの頃に比べてどうしようもなく年をとってしまったボクにとっては、
もう苦くなってしまったあの思い出のように。
過ぎ去ってしまったものに後悔しているわけではない。ただ思い出すだけだ。
でもこんなものをまだ持っているから誤解されるのかもしれない。
彼女からもらった蚊取り線香はただ静かに煙を吐き出していた。
それに習ってボクももう一度煙を肺いっぱいに吸い込み、吐き出した。
今度吐いた煙は留まることなく、強い風に吹き散らされてしまった。
次のお題。「ステンレス」「犬」「胡椒」でお願いします。
「やだ、錆びてるじゃない……」
私は、ちょうど刃先の半分程に約2ミリの錆の出た包丁を見て苛ついた。
「ステンレスは錆びないんじゃないの?」私は口ごもるように呟いて
包丁をゴミ箱に投げ入れた。
外資系のサクセスフル・キャリアウーマン、若き37歳にして
アシスタントディレクター(部長補佐)、港区にある2LDKのマンションも手に入れた。
私はこうした成功を享受できる、一握りの”選ばれた”人間だ。
―――上司には常にイエスマンであり、部下には常に120%の成果を求め、
犬のように働く―――。
今夜、私は3ヶ月ぶりにクッキングを楽しもうとキッチンに立ったのであった。
スタートはアンラッキーであった。が、包丁の錆など現在の成功と比べれば瑣末すぎる。
私はいつもの店へデリバリーを頼むべく、電話を手に取った。
「……もしもし、ええ、ではいつもの物をスタンダードで、20:00ジャストに17階エレベーター横に
時間厳守で。それと……いっぱいで……え?聞こえない?…………。
にんにくっ!とっ!胡椒っ!イッパイっ!でっ!……ではお待ちしています」
―――37歳、独身、広すぎるマンションでラーメンを啜る……。
次のお題は「カーテン」「海」「休日」でお願いします。
日付は2日ほど遡る……
「大家さん、いるかいっ!」
「なんだい八っつあんかい。おや、ずいぶんとご機嫌ナナメみたいだね」
「今アッシとカカアは冷戦状態なんだ!大家さん、ウチの中に
鉄のカーテンをひく許可をおくれっ!」
「なんだおかみさんとケンカして来たのかい。すぐに物が飛び交う
ホット・ウオーになるおまえさん達が冷戦とは珍しいね。
でもね、八っつあん。大家として鉄のカーテンをひく許可なんて出せませんよ。
どんな理由があったのかしらないけど、ここは亭主のおまえさんが
一歩引いてやりなさい」
「ご隠居さん、アッシの心は海のように広い。解りやしたと言いてえところだが
今日ばっかりはそうはいかない」
「今日はなんで駄目なんだい?」
「今日は海の日。アッシの寛容な心も定休日だいっ」
次は「ゴクッ」「盆」「秘密厳守」です。よろしく!
しまった!11行目「ご隠居さん」→「大家さん」で。
くそう。
「いい?秘密厳守よ?」
と言いながらクスクスと笑っている良子姉ちゃん。
それは昼ご飯も終わり、することも無いのでもう一度釣りにでも行こうかと
家をでた時のこと。
隣の家に住む良子姉ちゃんがなにやら奇妙なものを作っていた。
「良子姉ちゃん、なに作ってんの?」
暇をもてあましていた少年の僕にとってはそれがとてつもなく面白いものに見えた。
フフっと少し微笑んで少し考えこんだ良子姉ちゃんは
「そうね。今夜、一緒に海へいきましょ。これがなんなのか、わかるわよ。」
「でも、今はお盆だよ。海へ行ったらダメだってジイちゃんが言ってたぞ」
「だからね…いい?秘密厳守よ?」
そういいながら笑う良子姉ちゃんはなんだか別人のようで
僕は思わすゴクッと唾を飲み込んだ。
そして夜。
「いい?静かにしててね。」
そういうと良子姉ちゃんは木箱にロウソクをともしたものを
砂浜に置いた。
しばらくの間、波の音だけが静かに流れていた。
その時。
向こう岸から、またひとつまたひとつと明かりが流れてきた。
赤い光と緑の光。二つの光達がうわりふうわり揺れていた。
良子姉ちゃんは白い布をとりだし、それを頭上高く振り上げた。
すると光は岸辺へとどんどん近づいてきて、上陸したかと思うと
空へとあがり、家々のほうへと消えていった。
その様子は不思議でもあり美しくもあった。
言いたいことはたくさんあったが、言葉にならなかった。
その後、帰り道でも次の日になっても
あの光がなんなのか、良子姉ちゃんは話してくれなかった。
遠い夏の思い出。
次は「網戸」「草」「靴下」で。
46 :
「網戸」「草」「靴下」 ◆QkRJTXcpFI :03/07/24 14:20
「網戸」「草」「靴下」
「ドスン」
まどろみを破ったのは、人の身長程あるヘビだった。
最初、何が落ちてきたかわかっていなかった高雄だったが、うひゃ
ぁ〜ぁという声にならない叫びを上げて飛び上がると、驚いた勢い
で網戸を破り、さっき誕生日にプレゼントしたばかりの靴下をはい
たまま庭に飛び出てしまった。
見上げると太い梁がそのまま見えているわらぶきやねのおばあちゃ
んの家。今は湖の底だ。
学生だったいとこの高雄は、ニューヨークの商社で働くビジネスマ
ンになっている。
夏休みのたびにいとこ同士がおばあちゃんの家に集まり、草取りの
アルバイトをしておこづかいをもらったりしていた。
その私も東京に住んで早10年。子育てに追われながらの毎日。
のんびりした田舎の生活が懐かしい。
次のお題。
「えも言われぬ甘い香り」
「そこはかとなく漂う色気めいたもの」
「現代人が忘れかけた何かを思い出させてくれる」
長いけど助詞をはさんで文中にとり込んでも、単独で使っても、そ
れは料理次第ということで。
「どうぞおかけ下さい」
左端の紳士的な男性が僕に声を掛ける。その隣には、こちらを見てニヤニヤしている
禿げ上がったオヤジ、右端には垂れ下がった太い眉毛のジジイが座っている。
就職の最終面接である。
「では、机の上にあるカードをめくって下さい」
左端の紳士が指示を出す。
僕は、緊張でカードを掴み損ねないよう注意しながら、並べられた3枚のカードをゆっくり開いた。
「えも言われぬ甘い香りのもの」
「そこはかとなく漂う色気めいたもの」
「現代人が忘れかけた何かを思い出させてくれるもの」
「ええっ!?」僕は驚き、思わず声を上げてしまった。何でも、この「もの」に該当するイメージを
答えろ、ということらしい。こんな面接は初めてだ。僕は動揺する心を抑え、無い知恵を
必死に働かせ考える。……前二つは何だかエロッぽい雰囲気があるぞ。
これはエロ路線で行けということか?禿げのオヤジは行けるだろうが、紳士にはもっと硬派
でないと受けないだろう……。それに眉毛ジジイは、何を考えているのか読めん。
うう、どうすればいいんだ!
数秒置いて、僕は覚悟を決め口を開いた。
「まず『えも言われぬ甘い香りのもの』とは、湯上りの姉であります。姉弟でありながら、湯上り
の姉のうなじには、何やら表現してはならぬ様な香が立ちこめ、3秒と一緒にいられないのです。」
「次に『そこはかとなく漂う色気めいたもの』とは、小泉純一郎氏であります。私は、小泉氏を
テレビで拝見し、政治に必要なのは知識ではなく色気であることを発見したのであります。」
「最後に『現代人が忘れかけた何かを思い出させてくれるもの』とは、阪神タイガースであります。
彼らが呼び起こしてくれるものは、私が語るに及びませんっっ!」
―――しばし静寂。そして、僕の右肩が叩かれる。いつの間にか右隣に誰かが立っていた。
「合格だ。」僕は声の主を見やる。黒と黄色のハッピに包まれた「主」の右手には黄色いメガホンが。
正面では、かの3人が床に額が届くほどにひれ伏していた。
長文スマソ。次のお題、「楽園」「蜜」「臥す」でお願いしますッ。
高校からの帰り道。いつもの商店街、カーブになった池の横、そして墓地……。
どうもここは苦手だ。十七にもなって情けないのが、とりあえずここだけは自転車で
全力疾走することにしていた。しかし今日、俺はとぼとぼ自転車を押していた。池の
横で釘を拾い、パンクしてしまったのだ。うう、嫌だ……何か、嫌な予感がする。
顔を横にそむけながら歩いていると、そこへ何か、そこはかとなく漂う色気めいた
ものが、すうっとたなびいてくるではないか。色気めいた? いやほんとに薄紫に
色付いていやがる。紫煙ってやつか? しかも、えも言われぬ(げーっ)甘い香り……。
「待てい、そこの男子高校生」
冷や汗だらだらで足早に通り過ぎようとする俺の前を、野太い声がさえぎった。
恐る恐る墓に目をやると、そこに立っていたのは身長二メートルの線香束だった。
「貴様、この近くに住んでいるのか」 雷の様な声、俺は思わず何度も頷く。
「何、それならば何故一度も墓参りに来んのだ」
俺は少しむっとした。俺ん家の墓はここにはない(確かに参ったことはないが)。
言い返してやろうと口を開き、俺はとたんに煙にむせた。奴から煙わきまくりなのだ。
「不心得者め、現代人が忘れかけた何かを思い出させてくれるわ!」
偉そうにそう言い放つと、奴は煙をまきちらしながら、俺の方へ突っ込んできた……。
その後? 俺はこう見えて柔道黒帯なんで、思わず巴で投げ飛ばしたら池に
落ちて沈んだみたいだけど。しかし、これからどうしよう。
一度墓参りに行っとくべきか、それとも何とかバス通学に変えるべきか……。
長文&被りですみません。お題は47のものでお願いします。
――何の説明もいらない 地上の楽園――
そう銘打たれた文字は南の島のキャンペーンポスター。
貴方の頭の中に描かれたとおりのものが私の目の前にある。
水平線すらわからないのではないかと思われる真っ青な空と海。
輝く太陽の恵みを一身に浴びた、白浜に臥す女性の肌は密のように輝く。
同性ながらも美味しそうだと思ってしまうほどの、惜しげもなく晒された肢体。
こんな美味しそうな女性に迫られたら、私でも転んでしまうかもしれない。
「失楽園の間違いだろ」
思わず悔しさが音声となって唇からもれた。
夏の陽射しには罪はない。しかし坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
諦めてくれ、太陽。今わたしはお前も好きではない。
太陽のバカヤロー!!と叫んでしまえばただの熱血野郎で。
そんなに熱く感情を表すのも癪なので、憎憎しげに睨み付けているのだが、
知らぬ人には憧れを持って見つめていると思われているのだろう。
自分の夫が、太陽の化身のような女優に転ばされ、
手に手をとってバリ島に旅立たれ、私でも転ぶわ、なんてにっこりと笑う妻はいない。
笑ってたまるか。そう。太陽以上に嫌いなバリ島。
「バリ島の『バ』は、馬鹿が行く『バ』なんだよーだ」
浮気相手憎けりゃ、旅行先まで憎い。そう友人達に愚痴りまくった。
しかし、このショッピングモールの抽選で私が引き当て、握り締めるチケットは、
「豪華バリ島8日間の旅」
隣のポスターでは、太陽の化身が誇らしげに笑っている。
次は「魔女」「すいか」「ビール」で
間にあわなかったんですが、
46のお題でも書いていたのでアップさせてください。ごめんなさい。
香道会館展示ブース。いくつも並んだ香炉は空なので、何も匂いはしない。
備前に志乃に古美濃、織部。煌びやかではない数々の香炉は、そこはかとない色気を漂わしている。
嗅覚は脳の中でも感傷を直接刺激する。
はるか昔、幾人もの手を介して手元に届いた愛しき人からの手紙。
市販のものなんてなく、本当に一人一人違う唯一無二のもの。
文からのたった一筋の香りが、何人もの涙を誘い出した。
こう文字にするだけで色っぽい。
いくつものそんな香りを立ち上らせてきたという、
香炉自身が持っているプライドが香炉の色気なのだろうか。
中央の台の上には本日の香として、ひとつの香炉が置かれている。
不勉強な私にはわからない香がたかれている。
現在匂いがする、というと安っぽい香水の匂いである事が多い。
香水、といってもパヒュームではなく、オードトワレ。
そのために香というと鼻に刺激を与えるもの、
と思ってしまうのだが、さすがにここではそんなことはない。
えもいわれぬ甘い香り、を体験したいという方にお奨めする。
しかし展示ブースの前でお香の講習会のビラをでかでかと貼るのはどうだろう。
「現代人が忘れた何かを思い出させてくれるもの――香道」
そんな無粋なチラシを貼るのではなく、
2ヵ月後くらいに一通のほんのりと香る葉書が届くのが良い。
もう一度香りに会いたくなりませんか?
そんな文面で。
お題は「魔女」「すいか」「ビール」のままで。
試合の打ち上げはごてごてした油っぽい料理ばかりだった。
「デザートでも作ってみない?」
綾辻がそう言い出して、結局フルーツポンチを作ることになった。
だが困ったことに作り方を知っている奴が、彼女も含めて独りもいない。
とりあえず、ちょうど小ぶりのスイカがあったのでくりぬいて器につかった。
確か中身は果物だということはかろうじて覚えていたので、
冷蔵庫にあったバナナ、チェリー、それにトマトとアボガドを入れることになった。
綾辻によればトマトもアボガドも果物には違いないとのこと。
ボク自身は食べたことは無かったのだが、
アボガドって寿司のネタになっていなかったっけ、と思い出した。
もちろん綾辻のお仕置きが怖くて口には出さなかったが。
たしかアルコールが入っていたな、と誰かが言い出して
飲み残したビールが投入されることになった。
スイカの赤とビールの黄が混じったスープの上でアボガド由来だと思われる油が、
時折はじける気泡に揺らされている。
その時スイカを挟んで向こうに座っていた酒井を目が合った。
その顔には覚えがある。左右のバランスと取ろうと眉を整えていたら、
気付くと半分しか残っていなかった。そんな顔だ。
たぶんこれで完成なのだろう、
というか誰もこれ以上の悪化を望んではいないのは明らかだった。
ボクが思い出していたのは昔のB級ドラマで見た魔女の大なべ、
事実人骨が入っていればさまになっていたであろう。
味は……推して知るべし、である。
長文スマソ。ネクスト……「いとおし」「とおし」「うっとおし」
私は緊張した体を解す為に窓へと首を向ける。梅雨空のうっとおしい街並みが広がっている。
目の前のあのヒトはどう思うだろう?後ろめたさに目を背けたと判断するのだろうか。
そう思われたくない、悲しい。感情を伝えるためには論理が必要である。
しかし論理を通した感情はすでに別のものとなっている。
感情は文字や言葉より、色や温度に近いからだ。
不快に思われたくない……少し暗く淡いピンク色だろう。
そう思うのはいとおしいあなただから……それが明け方のように段々輝く。
でもこうなってしまったのは悪意があるわけじゃないの!
色は淡いピンクから爆輝により純白へと昇華する。
「さっきから何踊ってるの?」梅雨らしいジトジトとした目つきで彼は私を見る。
「さようなまなこでおみにならないでたもれ」よよよと私は泣き崩れる。
「いい加減な古語で喋らない、つか誤魔化すな」うなだれるとテーブルの下が見える。
待ち合わせ場所近くの喫茶店。その床にはずぶ濡れになった彼のズボン。
その雫が作った水溜り。「そりゃさぁ……ここは遠いよ、電車の乗り継ぎも多かったから時間もかかる」
「いとおしいあなたさまにあうにはいととおし」
「でも展覧会に誘ったのは君だし、現地集合も君から言い出したんだし」
素で流された!顔を見ると怒りを通り越してあきれ果てている!「雨が降り出したのは天気のせいだし……」
「そうそう、それで行く気なくしかけたのも天気のせいだし」
墓穴を掘ってしまった。彼の視線が痛い。
「そんで展覧会が終わっていたのも天気のせい……?」
動悸が痛い。胸が割れそうだ。なんとかしよう、何とかせねば。
「梅雨が悪いのよ!!」
「なわきゃねーだろ」
いけね題入れ忘れてました。
「胡瓜」「茫洋」「暁」
でお願いいたします
夏場とはいえ高原の夜は冷える。夜明けともなれば尚更だ。俺は長袖を着こみ、
土の上に座っていた。昼の名残か、ズボンを通して黒土がほんのり温かい。
夏休みに入ってすぐ、従姉の由里さんから電話があった。由里さんは
もう結婚していて、旦那さんと二人、高原で野菜を作っている。
「泥棒?」「そう、この一週間毎日よ」 いつも元気な由里さんの声が力ない。
由里さんの話によると、胡瓜ばかりが連日盗まれるらしい。由里さんちの
胡瓜は、毎年わが家にも送って貰っているが、太くて甘くて実に上手い。
「それで、俺は順さんと一緒に、畑の見張り番をしたらいいの?」
「ごめんね。高志ちゃん、大学の柔道部でしょう。順だけだと心配で」
由里さんの夫の順さんは、優しいけれど確かに喧嘩はあまり強くなさそうだ。
アルバイト料を出す、という由里さんの申し出を断って、俺は快く引き受けた。
空がだんだん明るくなってくる。暁の細い三日月の下で、一面に広がる胡瓜畑は
茫洋と広がる海のようだった。心奪われた俺の袖を、隣にいる順さんが引っ張った。
「高志君、あれ」 震える指がさす黒い影――。驚きのあまり思わず立ち上がる。
隣の順さんも。俺たちに気付いて影は逃げていった。順さんが呆然とつぶやいた。
「あれ、頭のてっぺん」 そう、あれは――河童。俺たちは影の消えた方を見ていた。
次は「寿司」「きつね」「海の家」でお願いします。
「うっみ〜。うみうみうみうみぃぃぃ!」ガキが喚きながら波打ち際に向かっていく。
その向こうでは二十台前半のネェちゃんが更衣室から出てきたところだ。
「見て。あれ」足元にはヒールの高いサンダル。足が長く見えると考えての事だろう。
「甘いわねぇ」冷やしきつねを啜りながら、目の前の彼女は感想を言う。
「まったくだ、本当に甘い」かき氷をつつきながら僕も同意する。
「世紀の瞬間が見れるのでしょうかぁ?」即席レポーターとなり彼女は実況する。
「さて砂浜に出る第一歩!彼女にとっては大いなる一歩!」つられて僕は古館一郎になる。
件の彼女はツンと澄まして一歩を踏み出す!そしてぇ!!
ヒールが深く砂浜に刺さった……
「ぎゃはははははは!」「い〜ひひひひひ!」その惨状に笑い転げる僕達。
「あんたら何しに海に来なすったんだね?」この海の家の親父が疑問をぶつける。
なんでだろ?二人とも泳げないのに……。「さぁ」彼女が呟く。「わからないね」
素直に僕も呟く。風鈴の音と共に風が虚しさを一層ひき立てる。
「帰りに寿司でも食べようか……」店の勘定を澄ましてシャワー室に向かう僕ら。
「わ〜。わ〜」一応嬉しそうにする彼女。まぁ来てよかったかな?
「回転寿司じゃなくて割烹でしかも奢りだわ〜わ〜」
……そうなるよね、やっぱり。
次は「細工師」「時計」「狸」
「細工師」「時計」「狸」
「バーテンではなくて細工師なんです」マスターはカウンターの中でシェイカーを振る。
狸おやじの風貌にもかかわらず、繊細な手つきだ。
「何の細工師かって?」ショートグラスに琥珀の液体を注ぐと、
悪戯っ子の様にウインクをし、テーブルのカップルを指差した。
暗い照明のせいか、カップルの表情を窺い知る事は出来ない。
しかし、二人が険悪な雰囲気なのはすぐに分かった。
時折声を荒げる男。啜り上げる女。
マスターは何時の間にか黄金に輝くカクテルを二杯作り上げた。
カクテルを持ってカップルの席に行く。
「当店からのプレゼントです」マスターは男と女にグラスを渡した。
「五分待って下さい」カウンターに戻ったマスターは微笑むと懐中時計を見た。
「見てください」五分後、マスターはカップルを指差した。
二人は見詰め合い、テーブルの上で指を絡ませている。
「乾いた心に恋を細工するんです」マスターは微笑んだ。
次のお題は「かき氷」「納豆」「指紋」でお願い致します。
58 :
「かき氷」「納豆」「指紋」:03/07/25 22:08
「かき氷」に合う物はなんだろうか?練乳などと馬鹿正直に答えていたのでは、
捻りもかけらもないし、ツマラナイ。
では、これは絶対に合わないだろう、という物を入れるとどうだろう。
人間が考えし得る範囲外の物を入れてしまえば、いとをかし。
だから「かき氷」に「納豆」を加えてみることにする。人類初の試みだ。
それぞれ単体では美味である。ならば足してもそう不味くはならないのでは
ないだろうか?ではさっそく試してみよう。
…出来たには良いが、これは一体なんだろうか。なんだか「納豆ふろーずん」
という言葉を連想させるような、物体である。取り敢えずそれを、実験体の
山田君に食べてもらおう。……口から「納豆ふろーずん」を垂らし、泡を吹きな
がら倒れてしまった。仕方がないので、一応皿についていた自分の「指紋」
をふき取ることにする。だから、安心して成仏してくれ。山田。
次の御題は「水泳」「水不足」「かなづち」でお願いします。
>>58 誤)捻りもかけらもない
正)捻りのかけらもない
誤字スマソ…
60 :
「水泳」「水不足」「かなづち」:03/07/25 22:49
「現在○○地方は深刻な水不足に悩まされており……」
天気予報士がいかにも深刻そうな口調で話している。
隆はテレビ画面をにんまりとしながら眺めていた。
この時期、水泳の授業が始まる。
だがこんな状況ではプールに水を張ることはできない。
隆はかなづちだった。
物干し竿には大量のてるてる坊主が吊るされていた。
お天道様に願いが届いたのだろうか。
電話がかかってきた。
「…はい、ええ……」隣の部屋から母親の声が漏れる。
電話を切ると母親が部屋に入ってきた。
「隆、水泳海でやるってさ」
学校から海までは歩いて5分位の距離だった。
物干し竿には大量のてるてる坊主が吊るされていた。
次のお題は「踏切」「コート」「トマト」でお願いします。
学校に向かう途中、いつも踏み切りにイライラさせられる。
低血圧の僕は朝っぱらから機嫌が悪くて、学校に行くまでが苦痛でしょうがない。
そんな時に踏み切りの長い腕で目の前を通せんぼされると意地悪された気分になる。
その上、カンカンと耳障りな音を立てられると頭がガンガンと割れそうになるのだ。
いつも踏み切りの奴は赤い目玉があっちこっちに動いて大声で喚いているに見える。
「そんなに僕らの事が心配なのか?まるで近所のおばさんみたいなおせっかいだ!」
ある日の朝、僕はコートとトマトを持って踏切までやって来た。
踏み切りの奴はちょうど長い腕を上げて黙ったところだった。
僕は周囲に誰もいない事を確認し、踏み切りの奴の背中に回ってコートを着せた。
そしてコートの懐にトマトを袋ごと詰め込んだ。
コートのボタンをキチンと留めて、トマトの袋をしっかり隠した。
「後はバットで殴ればコートの中のトマトが潰れて奴は血まみれだ!」
作業に没頭していて気づかなかったが、奴はいつの間にか長い腕を水平に伸ばしていた。
だが今日に限って奴は赤い目をギョロつかせて叫ばない。
奴とは別種の巨大な騒音が僕のすぐ側まで近づいていた…
「害」「熟」「天」
62 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/07/25 23:54
「踏切」「コート」「トマト」
ウインブルドン、決勝戦。
自国選手とアメリカ選手の一騎討ちに、観客は沸きに沸いていた。
その観客席から、ひときわ高い悲鳴が巻き起こった。
無粋な観客が、選手にトマトを投げつけたのだ。
踏切りを誤り、膝関節を捻ったアメリカ選手。
彼は、犯人を捜し当て、怒りを抑えてこう言った。
「1ケ月後だ、コートで会おう」
その1ケ月後。
選手は、簡易裁判所で犯人を待っていた。
犯人は、テニスコートで相手を待っていた。
念のため、コートも着込んでた。すごーく暑い。
熱狂ファンとはこうなのか、何でもテニスと結び付けてしまうのか。
仕方ない。
彼は、こうと決めたらテコでも動かないたちなのだ。
※ああ、駄洒落・・・
次のお題は:「浴衣」「宇宙船」「秒読み」でお願いします。
し・・・失礼しました;
次のお題は61さんの「害」「熱」「天」でお願いします。
自分もいっしょうけんめい考えますので・・・
>>63 えーと、61さんの御題の「害」と「天」はあってるけど、もう一つは
「熱」じゃなくて、「熟」だよ。
「害」「熟」「天」
「マネージャーさん」「は、はいっ!」
女優は、静かにこう言った。
「私ね、今度、初めての裸体写真集、を出そうと思うの。うふふ」
「はぁ」マネージャーはかしこまるばかりだ。
女優生活70年。
芸能界に君臨する彼女は、円熟の境地を迎えていた。
しかし・・・85歳で裸体写真集。
これは、もしや公害ではなかろうか。
が、奇跡と言おうか、天賦の才と言おうか、写真集は最高の出来だった。
トップレベルの美容技術と撮影技術、それにCGが一人の老女を天女にしていた。
賞賛と賛辞。彼女の夢は、今達成されたのだ。
彼女は本屋に潜入し、客の賛辞を盗み聞く。
そうするしかないのだ。加工され尽くした映像は、既に彼女と判断できなかった。
彼女だけが、真相を知っているのだ。
写真のモデルの正体を。
※なんかくらひ・・・
お題は継続の「害」「熟」「天」でお願いしまふ。
則天去私。千円札で皆に熱愛されている夏目漱石大先生が好んだお言葉だ。
天命に従って私を捨てる。人間すべてに聞かせたいお言葉だ。
元来私たちは凡欲にまみれる汚い生き物だ。
基督にユダヤ、イスラムでは悪魔の囁きにあたる。
何故欲はいけないのか?それは社会を形成する集団を内から害してしまうからだろう。
政治家が贈収賄に転んではならんし、与える事で優遇されようとするのもならん。
そんな大きな話じゃなくても、気に入ったからといって勝手に物を取るのも駄目だ。
こうして考えてみると宗教は社会……もとは群れの原理ではなかったのだろうか?
そしてそれを実践していくうちに集団ができ、そして集団を管理する為の組織がいる。
その組織が慣例化していくうちに形骸となり……破綻する。
昔なら背教徒と呼ばれる改革者がそれを正しただろうし、反乱が起こった。
だが今は技術が進んだ。産業革命以降、遠方が手に届きだしたのだ。
ミサイル、爆撃機、空母。
そうして内輪だけの争いが他国や他民族の干渉を招く。
もう我々は神や悪魔、革命家に英雄といった正の存在より……
人間を無差別に殺し現実的で直接的である同じ位の大きさの生き物。
まさに人類の敵を待つしかないのかも知れない。
いずれ私と同じような考えを持つ夢想家が作るかもしれない。
熟年というよりも狩れ切った人間の妄想だ!!
なのに何故胸騒ぎがするのだろう……?
付けっ放しのテレビからは遺伝子操作による新種の生物のニュースが流れている。
そして……映された生物は人間並みの知性があり繁殖力もあることを知らせている。
だが……まだ人類は知らない。
生物が偶然、情報網という概念に直接干渉できることを……。
次は「お詫び」「侘び」「ワラビー」
67 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/07/26 02:12
「お詫び」「侘び」「ワラビー」
必殺の回転パンチをテンプルに打ち込むと、黒い挑戦者は音も無く倒れた。
ぴくりとも動かない挑戦者・・・既に廃人かもしれない。
それでもチャンピオンは怯まない。堂々のタイトル防衛だ、文句あるかという風である。
しかしある日、そんな彼の目に強敵が現れた。
レフリーは声高らかに挑戦者を告げた。グローブをはめ、二本足で立つワラピーを!
もちろん、チャンピオンの一撃でワラピーは倒れた。
しかしその後、山の様な抗議のメール、投書がチャンピオンを追い詰めた。
「チャンピオンは鬼だ」「ワラピーがかわいそう!」「チャンピオンはワラピーにお詫びすべきだ」
これには勝てない。チャンピオンは仕方なくリターンマッチを行う。
ワラピーがパンチを繰り出した、ポン。
「うわぁぁぁ!」と倒れてみせるチャンピオン。「わ、侘しい・・・」
チャンピオンは負けたのだ。力ではなく投書に。
ワラピーは黙して答えない。寂しい笑顔のトレーナーに、軽くステップを踏んでみせる。
これでよかったのだ、人間として廃人の生活を送るよりは。
人間には戻れない。でもいい、勝ったんだ。
そうさ。改造手術の前に、あれほど決心したことじゃないか。
※ワラピーといえば、やっぱしこれ(←???)
次のお題は:「エプロン」「地底」「草原」でお願いします。
68 :
名無し物書き@推敲中?:03/07/26 02:16
【こんくらいは】 マフィア化の実像公開 【知っておけよ】
●ニセ札づくり マネーロンダリング 高利貸し
●ストーキング殺人 レイプレイパーレイプット
●極右 ネオナチズム デマゴーグ(〜ちゃんねる)
●児童虐待 性的虐待
●カニ密漁(ロシアコネクション) 希少動物密猟
●不法移民出入国 ←ハァ?→ 人種・移民差別
●産廃不法投棄
●自動車窃盗団 ピッキング 違法建築
●児童売春 幼児ポルノ(撮影したあとに口封じして埋める)
●人間の臓器売買 毒ガス散布 空中浮揚と解脱(!?)
●周りに反撃され勝ち目ないと見るやパニックと茫然自失と破滅
●金融詐欺(バブル崩壊の一因) 企業役員脅迫 総会屋
●誘拐ビジネス 保険金殺人
●警察買収 涙目でグレ息子を劇団へ(もしや、こちらも裏金?)
●武器密輸 核物質入手 科学者亡命(北チョソ)
●麻薬取引 覚醒剤(ヒモが女をシャブ漬け)
●破壊テロリズム 暗殺 たてこもり 時代遅れニセ赤軍(革マル派)
●アウトロー気取り厨房(特に女) ←ハァ?→ ヤヴァイと警察に逃げ込むwhy!
●組織のっとり秘密化 ←ハァ?→ 裏切り者に対する制裁
・近年増加しているのは、
●個人情報の売買 盗撮メディア販売
これもキモいぞ油断できんぞ…想像を遥か凌駕するエグさ
連中の偽情報をわざと逆に理解してやりな!(ププ
的屋博徒義理人情の世界はすでに廃れ、
日常の裏で際限なく進む、騙しの手口がすべてを奪う
そして、つぎはあなたの人生が・・・
※日本コピペ協会(JCU)公認テンプレート※
真夏の正午――昼食の用意をした私は、エプロンで手をふきふき、庭で遊んでいる
娘を迎えにいった。 「リエちゃん?」 娘の姿が見えない。門は五歳のリエにはまだ
開けられない。私は慌てて辺りを探した。すると庭の桜の木の下に、人一人余裕で
通れる穴が開いているではないか。穴のそばには、リエが遊んでいたスコップが落ちて
いる。スコップを拾い、私は穴を覗いた。「リエちゃあん、どこなのー」 声はよく響いた。
穴はどこまで続いているのだろう。私は思い切って穴の中に降りてみることにした。
穴の底はなぜか明るく、苔のような黄緑の草原が広がっていた。私が呆然と立って
いると、向こうの方から何かが走ってくる。それはリエと――熊? いや、違う。何かは
わからないけれど、私の背丈くらいある毛むくじゃらのものが、リエを追いかけていた。
「リエちゃん!」 私の悲鳴を聞きつけ、リエが一目散に駆け寄ってくる。 「ママ!」
抱きとめようと手を広げた私に、リエが言った。 「それちょうだい」
リエの手の先には先ほど拾ったスコップ。思わず私はリエにそれを渡す。
「ありがと」 リエはそれを上手く受け止めると、怪物に向かってスコップを投げつけた。
すこーん――軽い音を立て、それは怪物の頭に命中。すると怪物は動きを止め、
次の瞬間、大声で泣きながら元来た方に戻っていった。
いつの間にかリエの周りを親指くらいの小人たちが取り巻いて、歓声をあげている。
「わー地底の勇者様、ばんざーい」「いつもありがとうございますー」
いつのまに、いやいつから――私は半ば呆れて、誇らしげな娘の様子を見ていた。
次は「ピアス」「墨」「川岸」でお願いします。
墨を流したような漆黒の川面を渡る風が、川岸に陣取った人々の間を
抜けて熱気を払っていく。サイレンの唸りがざわめきを切り裂き、その
響きが途絶えると数十万の観客がいるとは思えない静寂が降りてきた。
コンビニで買ったビニールシートに剛と並んで膝をかかえながら、みち
るも息を殺しながら「このあたり」という方向に目を向けた。
ぱっと川の中州に光が輝き、光跡が上がる。遅れてジッポのライター
に火をつけるのにも似たこもった音が耳に届いたその時だった。
ふと、そろえて抱えた膝の上に剛が何かを置いた。膝頭の間を何かが
滑って落ちる感触に、みちるは反射的にうつむきそれを押さえようとした。
リボンのかかった小さな箱を捕まえた自分の手がふと、白々とした光に照
らされて浮かび上がる。つかの間遅れて日本最大の打ち上げ花火の放
つ轟音が身体と鼓膜に響いた。反射的に顔を上げた時には直径650
メートル、正三尺玉の大輪は、数十万人のどよめきの中すでに散り始
めていた。
「誕生日おめでとう」振り向くと、剛がみちるを見つめていた。「馬鹿!
わざわざ東京から来たのに、三尺玉見られなかったじゃない!」みちる
の抗議に「うん、俺も見られなかったな」と笑う。「でも大丈夫、花火大会
の最後にもう一発あるから」
「そういう問題じゃないってば」ため息をつくみちるの肩に剛は手を回した。
「大丈夫、来年も見にくればいいんだから」「...交通費は剛持ちだよ?」
「約束する。来年はそれつけて見に来ような」剛はみちるの手の中の小箱
をつついた。
帰りの新幹線の中で開いた小箱の中身はピアスだった。
長いですね、次は「水虫」「DVD」「麻雀」でお願いします。
今日、私は3ヶ月付き合っていた彼氏に振られてしまった。
それも、仕事を終え帰りの電車の中で眠っていた時に突然メールで、である。
酷い振り方だ。疲れと悲しみで、もの凄い脱力感が襲ってきた。
と同時に今までの思い出が脳裏に甦る。しかし、思い出すのは
麻雀好きの彼に無理矢理麻雀を覚えさせられた事とか、
2人で見たDVDの内容とか、そんな小さな事ばかり。
それもその筈、この3ヶ月間、付き合ってはいたものの殆ど私の一方通行だったのだ。
あいつが本気で恋をするようなやつじゃないって事くらい分かっていた。
それでも私は、そんなあいつが好きだったのだ。
この3ヶ月、あいつに尽くしてばかりで
私の方には何も残らなかったな。思い出さえも、ちっぽけなものしか。
残ったものと言えば、あいつにうつされた水虫くらいのものか――…
そう思うと、悲しくて悔しくて情けなくて、ちょっぴり泣いた。
次は「携帯」「リップクリーム」「タオル」で。
私の顔はひどい乾燥肌だ。
いつでも手入れをしなければ、すぐに唇はガサガサ、肌は荒れ放題。
それは湿潤な夏においても一切変わらない。
家にいるときは絶えず濡れタオルで顔を湿らせておかねばならないし、
外出するのは大変で保湿乳液を一瓶、リップクリームを何本も携帯する。
そうするようになったのは中学生の夏からで、それ以前は乾燥肌は今ほどひどくなかった。
人生の転機は中学一年の六月最初の日だった。
私は豪雨の中、壊れそうな傘を必死で支えながら学校に向かっていた。
校門までくると全身を合羽で包んだ体育の先生が私の方を見て言った。
「今日は学校休みになったぞー」
先生に向かってお辞儀をすると私は踵をかえした。
すぐ目の前にスリップした乗用車が突っ込んできていた。
それから五年後、私はあの事故によって一度顔全体の皮を削ぎ落とされ、
後遺症として顔の表面は保湿機能を失い、ひどい乾燥肌になったのだ。
あの日、私と同じ事故に巻き込まれた体育の先生は植物状態になって三年前に衰弱死した。
「源」「夜」「鍵」
暗闇の中、男は立っている。
男の正面には、深い寝息を立てながらベッドに寝る女がいる。
美しい女の寝顔。
男は歓喜の混じった興奮を抑えるに、必死であった。
また、今、この女の部屋に男が忍び込んだ事を、
誰も気づいていないという事実も、男を喜ばせた一因であった。
さて、この女の家には鍵がかかっていた。
しかし、この男はあるトリック――近所では知れたトリックであるが――
を使って鍵を開けずに、この女の家に侵入したのであった。
遠吠えが男の耳に届いた。
先ほど犬に追いかけられた記憶が蘇り、男は忌々しそうに舌打ちした。
いつものことだ、男はそう思って自分を慰める。
もう行こう、男は思った。そして、男は壁に空いているフラフープ状の穴へ足を入れた。
壁の外には、部屋に入る前にきちんと揃えた男の靴がそのまま残っていた。
―――源家のある夜の出来事である。
次のお題は、「日よけ帽」「軟弱」「唇」でお願いします。
「そろそろ日が高くなってきたから終わりにしらっさい」
ばあちゃんの言葉に俺は草取りの手を止めた。稲の葉の緑の波から顔
を上げようと腰を伸ばすと、あちこちにきしむような痛みが走る。まるで
鏡割りの日の鏡餅になったような気分だ。服の下の身体に細かいひび
が入っているような気がする。
山間の棚田はまだ稲の葉の緑より水面のほうが目立っている。その水
面をきらめかせる梅雨の晴れ間の太陽を避け、俺達は農道に止めた軽
トラの影に避難した。
貸して貰った日よけ帽の顎紐を解いて外し、俺は大きく息を吐いた。
「都会の軟弱モンには田の草取りは辛かろう?飲まっさい」
ばあちゃんが古びた水筒を開けてくれたお茶を、俺は一気に飲み干した。
生ぬるい番茶だったが、今の乾いた唇と喉には甘露のごとく染み込んだ。
「うまいら?遠慮せんで、もう一杯飲まっさい」
ばあちゃんが笑う。
俺は無言で器を差し出した。
次のお題は、「ダンベル」「ビーズ」「はちみつ」でお願いします。
「ご隠居さん!うちのハニーが…」
「ハニー?おかみさんのことかい?なんでまたそんな呼び方を?」
「へっへ、うちのカカアははちみつのように甘くていい香りがするだろう?」
「はいはい、ごちそうさま。でも私はその呼び方は嫌だよ、何か他に呼び方は
ないのかい?」
「うーん、色も白いから『白さと香りのニュービーズ』」
「もう人の呼び名ですらなくなっちゃったね…。で、おかみさんがどうかしたのかい」
「ダンベルダイエットを始めたんだ」
「ダイエット?スタイル抜群のおかみさんが何でまた?」
「へっへ、ハニーはうちの女王蜂。もっとウエストがくびれてないと女王蜂とは
言えませんや。ハニーが夜中に垂らす蜜の味といったら…。聞きたい?」
「八っつあん、それ以上やると違う板に逝く必要が出てくるからやめておくれ。
で、おかみさんのダイエットは成功したのかい?」
「それが…、運動で疲れたと言っちゃ、食っちゃ寝でブクブクと・・・」
「八っつあん、どうやらおかみさんの蜜の味は大甘だね。」
NEXT「探偵」「個人指導」「奥義」名詞ばかりで3つ!
77 :
「探偵」「個人指導」「奥義」:03/07/27 10:35
俺は平和な日常を心から愛していて、何も変わらない日々ってものにどうしようもない愛着を感じるんだ。
だから、敢えて何かをしようとは思わないし、俺の日常を壊す気も無い。
そんな日に、こんなダイレクトメールが入った。
「探偵を目指す貴方に朗報!探偵学園!個人指導できめ細かな指導、探偵の奥義!」
うむ、これはなんと言えばいいか、胡散臭い。そしてどうにも、好奇心をくすぐられる。
俺は読みさしの文庫本を置いて、ダイレクトメールと向かい合った。
「尾行の基礎から、探偵業の基本、そして高度な応用まで!こんな時代を生き抜く技術を満載!」
どうやら専門学校のようなものらしい。しかし、メール全体から溢れる胡散臭さがまるで拭えない。
気が付いたら俺は電話を手に取っていた。
「はい!探偵学園です。入校のもうし・・」
ガチャリと電話を置いた。そして読み止しのミステリーにまた手をつけた。
今日もストーリーは始まらなかった。こんな日々を愛していた。
次は「騾馬」「妊娠検査薬」「種無しスイカ」で。
テレビの中でもったいつけた調子でナレーターが言う。「種無しスイカの
……」思わず、箸が止まる。「……種がある」ヘエヘエヘエと続く音に、
夫の「へえー」という声が重なった。その声が平静なのにほっとしながら
私は小鉢のおひたしに箸をつけた。自分の過敏反応に思わず苦笑する。
そういえば、あの時もテレビがついていたっけ。
「メスライオンとオスヒョウの雑種がレオポン、とメスウマとオスロバの雑
種が騾馬です。これらの雑種は生殖能力がありません。一代限りなの
です」つけっぱなしだったテレビからそんな解説が流れてきて夫は笑った。
「タイムリーだな」
私は混乱した頭で、それでもその言葉の中に自虐的な響きを感じた。
「お前が納得できないなら、別れてもいいんだ」と夫は言った。
「お前が望むものを、俺は与えてやれないから……ごめん」
違うの。そんな風にあなたを傷つけるつもりはなかったの。だって私、原
因があなたにあるなんて思いもしなかった。
何を言っても傷つけてしまいそうで何も言葉にすることが出来ず、うつむ
く夫をただ抱きしめるしかできなかったその夜、私は未使用の妊娠検査
薬をゴミ箱に捨てた。私にはもう必要なかった。
次は「冷夏」「水着」「デジカメ」でお願いします。
買ったばかりの携帯のカメラで、自分の肉棒を撮影しながら、肉男は
独り寂しく微笑んだ。
デジカメやカメラ付き携帯が売れるのは、エロが目的としか考えられぬ。
恋人達は、他人に覗かれる事無く、お互いの性器を映像に残して楽しんで
いるのであろう。
四畳半一間のアパートの窓から、蒼く澄んだ空が見える。
冷夏の予報は外れ、ぎらつくような太陽が見える。
肉男は、まだ知らない。
今日バイトの面接に行く、デパートの水着売り場の女子店員と、彼が
運命的な恋に堕ちる事を。
次は「微笑」「運命」「恋」でお願いします。
「死ね」と言ったら微笑んで、
「はい」と答えて死んでった……
好きだった。恋をした。いつからだろう。駄目だった。
彼女が欲しい。運命的で。どうしようもない。駄目だった。
彼女の触れた男を壊し。彼女の家と家族を壊し。彼女の全てが欲しかった。
憎かった。
奴が全てを奪った。そして好きだと。憎かった。
だから決心した。それを奴に聞かせてやる。「あなたの言う通りにします」
まず喜んだ。アレもコレもソレも。従った。やがて暴力的になった。従った。
死なないだけの身体。それでも狂っていく男を眺めるために。死ななかった。
「死ね」と言われたから微笑んで、
「はい」と答えて死んでやった。
次は「友情」「努力」「勝利」でお願いします。
米朝ついに開戦!? 各国の反応さまざま
「そ知らぬ顔」中国 「対岸の火事」日本 「内戦勃発」韓国
今回の米朝開戦により、近隣各国は緊急に対応を迫られることとなった。
中国は建前上北朝鮮との友情を維持する必要があるが、北朝鮮への全面的な支援は
米国勝利後の交渉で不利な立場となるため、しばらく事態を静観する構え。
日本は米国からの支援要請に対し、専守防衛を理由に自衛隊の派遣を見合わせ
休戦へ向け外交努力する方針。
一方、韓国では反米派と反朝派の対立が国内を二分する内戦へと発展した。
情報筋によるとこの内戦は北の対南工作の疑いが強いという。
次は「大陸」「軌道」「爆発」
「それで中央ステーションまでは後どれくらいかな。」
「ええと…」
付き添いの若者が自分の腕時計を覗き込んだ。
「出発が正午ちょうどでしたからあと30分もすれば付くと思いますよ」
そうか、ありがとうとつぶやいて私はまた思案に戻った。
アポロ13号の月着陸からはまだ半世紀ほどしかたってはいない。
だがそのたった半世紀ほどの間に軌道エレベーターは完成に至ったのだ。
この爆発的な進歩の先端に自分がいて、なおかつ地上の大陸から
遠く離れた所に来たと思うとやはり感慨深いものがある。だが…。
「便利な時代になりますね。」
今度は若者のほうから話しかけてきた。
「こんな短時間で誰でも訓練なしに静止軌道まで来れるようになるのですから。」
私は軽く会釈をして返した。
彼は知らない。私がロケット工学者であるということを。
この軌道エレベーターが完成すれば、
もうロケットなど過去の遺物となってしまうだろう。
かつては選ばれたものだけが行けた場所が
これからはいつでもいけるくだらない場所になってしまうのか?
そう思うのは年を取ったからかもしれない。
だがそう思わずにはいられないのだ。
ねくすと「いばら」「ナイフ」「棺」
いかん。全滅一発、貧窮の底にまで転落した。
世間の風は、貧乏人に冷たい。たとえそれが、棺桶を三つ引きずった勇者だとしても。
「寄付が足りないようですな」
神父が冷たく言い放つ声を背に、俺はとぼとぼと教会を後にした。金。金。金がなけれ
ば、何もできない。
825ゴールド。それを稼ぎ出すため、俺は多くを売り払った。いばらのムチ、聖なるナイフ、
どうのつるぎ。かわのよろい、かわのたて、たびびとのふく。実質、丸裸に近い状態だった。
「どうする。今のままじゃ、戦えんぞ」
戦士が沈鬱に呟く。
「いっそのこと、アリアハンに引き返すか……」
他に手はない。皆言いたいことは多くあったろうが、結局はアリアハンへの帰還と話は決まった。
「でもよ」
魔法使いが、ふと言った。
「キメラのつばさを買うお金、あるの?」
皆が沈黙した。
次のお題は「交通事故」「大爆笑」「大王」で。
大王という異名を持つアラブの石油王は大変に退屈していた。そして、側近に命じた。
「おい、本物の交通事故が見たい。それも死亡事故だ。貧乏人でも買ってこい」
「はあ……」
男は貧しい男を一人、札束で買ってきた。そして、大王の言うとおりに彼らを日
本製の軽自動車に乗らせた。大王の広大な自宅の一角に設けられた、「交通事
故スペース」とでもいうべき、電柱やガードレールの再現された場所で、彼は自分
の身を犠牲にして交通事故を起こすのだった。
大王は拡声器を持って叫びだした。
「いいかあ、青いシャツのお前。電柱に突っ込むんだ。時速180キロでだぞお!」
青いシャツの男は震えながら、車を加速させた。もし金をもらったのに逆らえば、
家族がどうなるか分からない。
数分後、日本製の軽自動車は電柱に突っ込み爆発炎上していた。中から、火に
包まれた男が出てきたが、絶命するまで放置されていた。
「これが本物の交通事故か。大したものだ。わははははは」
「差し出がましいようですが、交通事故とは自然発生的に起きるもので、人為的に
起こしてしまっては、処刑とか拷問とか殺人というのでは……」
「交通処刑に交通拷問、交通殺人か。こいつはいい。わははははは」
大爆笑する大王を横目に、側近の男は辞表をその場に置いて、屋敷を後にした。
あ、お題は「拳銃」「ショートケーキ」「コアラ」で
「おっと、失礼」
俺は招待客たちを掻き分けて、赤城の座る席のほうに進んだ。
SP達が俺に気付き身構えたが、俺が両手を上に向けてやると、
赤木はそれを制止した。
…SPの三人とも左肩が微妙に下がっている。仕事道具か。
SP達は姿勢を正しはしたが、やはり警戒は解いていない。
俺の全身をくまなく観察している。
赤木は隣に座る奴の孫に何事か囁いた。
いままでにやついていたのが一気に不機嫌になる。
ガキは目の前のショートケーキと、それについで俺をじっと睨んでから
SPと一緒に席を離れた。
悪いことをしてしまったみたいだ。まぁこれからもっと悪いことをするわけだが。
「おげんきでしたか?赤木会長」
「ああ、よろしくやっとるよ、サワダクン」
あいかわらず胸糞の悪くなる声だ。後でその口にてめぇのチンポをねじ込んでやるさ。
俺は赤木の座るテーブルの反対側に立つと、
テーブルの上のガキのプレゼントを掴みあげた。
デフォルメされたコアラの縫いぐるみだ。
「それにしても随分湿っぽい格好だね」
赤木はいやみたっぷりに俺の黒ずくめの服装を笑った。
俺は縫いぐるみをもてあそびながら返した。
「なぁに、喪服ですよ。あんたのな」
縫いぐるみはずっしり重い。拳銃一つぐらいに。
今すぐぶち込んでやれないのは残念で仕方ない。
だが焦るような事ではない。楽しみは後に取っとくもんだ。
ネクスト「未来」「現在」「過去」
87 :
「未来」「現在」「過去」:03/07/29 02:22
「幸福システム」が人々の間に知れ渡りつつある。
このシステムは縦横5o、厚さ1oのプラスとマイナスの電子版で、この二つの電極を
合わせることにより、神経から脳へ、現在の状況から分析された「最良の未来のみ」を
伝達することができる。使用方法は、右の人差し指と顎にそれぞれの電極を埋め、
考える振りをしてさりげなくシステムを作動させるのが普通である。
このシステムは1セット1億円は下らないと言われるほど高価であるので、一部の政府
高官、財閥の子息等の間で使用されていた。また、開発当初から、社会システムを
揺るがしかねない程の衝撃的な商品との判断で極秘に売買されていた経緯もあり
人々の噂に上るまで数年を要したのであった。
なんの不自由ない身分の上に、輝く未来を確実に選ぶことができる。
このシステムを知った人々は嫉妬し反感を持った。
そして、至極当然に、この夢のようなシステムを奪うため、社会では誘拐や殺人が
頻発するようになった。敏腕な政府高官、業績を伸ばした企業経営者、順風満帆な
良家の子息等が犠牲者である。しかし、人々は不穏なニュースを耳にする度、熱狂的に
喜び、せせら笑うことで良い未来を選べない自分達の悲しい現実を慰めたのであった。
さて、ここでお気づきの方もあろう。この幸福システムには致命的な欠点がある。
それは、過去に遡って最良の選択をすることができないこと、つまり、幸福システム
を手にすることにより、結果として誘拐や暗殺による早死という不幸を選び取って
しまうかどうかは判らないのである。
このお題で他の方のも読んでみたいな〜っ
ということで、お題は継続で。よろしくお願いします。
88 :
名無し物書き@推敲中?:03/07/29 02:40
オッス!オラ悟空。フリーザを倒してさっき地球に戻ってきたんだけど
驚いた〜!フリーザが復活してやがった!
でもフリーザはオラが地球に戻る前にある男に倒されてたんだ。
そいつはオラにだけタイムマシーンで現在に来たことを打ち明けたんだ。
「ほっほ。まろはみやびなお子ちゃま、おじゃる丸じゃ。仲良くしてたも〜」
タイムマシーンなんて信じられねえけどホントの話みてえだ。
でも驚いたのはそれだけじゃねえ。そいつを追って3匹の子鬼が現れたんだ!
その中でも青いやつが強いのなんの。腹のポケットから未来の道具たらを
取り出して強い強い。おじゃる丸押されっぱなしだ。強ええな〜おめえら!
よっし、オラも闘うぞ!黄色いの!オラが相手だ!
「よーし、あたしだってお兄ちゃんに負けないんだから!」
オラだって負けねえぞ!お!何だそのマントは!オラのかめはめ波がはじかれちまう・・・。
でも何とか3匹とも退治したぞ!あ〜腹減った。
「ほっほ、今のは人造子鬼どもじゃ。ドクター・ゲロが過去から送りこんだのじゃ」
何だって!ドクター・ゲロ?何だか知らねえが、面白いことになってきたみてえだ!
「ほっほ、まろはしばらくこの時代にとどまることにするぞよ。
これ悟空。そなたの家に連れてってたもれ」
何だって……!またチチに怒られちまう……。
人造子鬼を激闘の末倒した悟空とおじゃる丸。ドクター・ゲロとは
何者か?おじゃる丸は敵なのか、味方なのか?
次回、「泣くな」「巨人」「詩」
くっそ、カブった!
オラのお題はスルーしてくれ!
あれ、前の人がお題出してねえから
オラのお題でいいってことか……。
何度もスレ汚しすまねえ!
91 :
「未来」「現在」「過去」:03/07/29 05:06
「今の私はたぶん3人目・・・」
彼女は少しうつむいてそう呟いた。
現在の彼女?僕は困惑を隠せなかった。
微笑むでもなく、嘆くでもない彼女の横顔。
無表情なその瞳が、ぼくにはなんだか悲しかった。
制服の上からほぼ全身を覆う白い包帯。
頭部には鮮やかな赤がにじんでいた。
でも僕は気付かざるを得ない。
今までも包帯を外した彼女はまるでケガなど
なかったかのように美しかった。
だいたいケガをしたとき君は制服姿じゃなかったはず。
僕の疑問はイヤな形で解けようとしていた。
それは、水槽をただよう何体もの彼女・・・
僕は声にならない悲鳴をあげた。
そう、僕は知ってしまったのだ。
このスレで過去に少なくとも2回はこのお題が出たことを。
そしておそらく同じお題が未来に再び登場するであろうことを。
次回「泣くな」「阪神」「詩」
俺はものみの塔に登った。ここからは街が一望できる。街の外には麦畑、それを
とりまく果樹園、広がる緑の野、その向こうの森……。街の教会の鐘が大きく鳴った。
「そろそろ始まるぞ」 俺は苦々しげに森の方を見た。
うおおおおん うおわあああああん
鐘の音に引き続いて、森の奥からとんでもない大きさの泣き声が聞こえてくる。
「泣くな」 俺は森のほうに向かって怒鳴るが、もちろんなんの効果も無い。
耳栓をしていても、耳の奥がびりびり震えるほどの音量だった。 これがいきなり
始まった時は、何人も耳をやられた。時々は夜もこれをやられるので、寝ている間も
油断できない。夜眠れないと、ノイローゼになるものも少なくない。
声の正体はでかい赤ん坊だった。でかい、といっても並みの大きさではない。
奴は寝そべったままで森の木と同じ高さがあるのだ。巨人の子供なのかもしれない。
そいつはある日突然現われた。もちろん俺たちは対処した。軍隊を作って取り囲み
剣で刺したりもしてみた。でもまったく歯が立たない。それどころか、奴は手を振り回し、
今まで以上の大声で泣くしで、全く手に負えなかった。収穫といえば、そのとき、奴の
近くに落ちていた大きな木の板を拾ったこと。何か大きな字の書かれたそれを拾って、
今学者の先生に解読してもらっている。ん? 下が騒がしいな。
「おおい、字が読めたらしいぞ」 本当か――俺は塔を駆け下りた。
それから? 俺たちは子供の面倒を見ている。朝昼晩と牛を連れていって乳をやり、
昼には交代であやしに行って、泣き出したら詩人が歌など歌ってやる。仕方ないだろ?
札に「この子をお願いします」って書かれてたんだから。ああ、改心して引き取りにこないかなあ。
長文失礼します。次は「時計台」「抜け殻」「銀」でお願いします。
「いいかあ。銀のナイフで人を殺すと、美味いらしいぞ」
「兄ちゃん、何言ってんだよ。狼男とかを攻撃するなら分かるけど……」
兄は私の言葉に笑った。
「実はな、俺もう食べたんだ」
兄と私、二人だけの秘密の場所が時計台内部の階段の一番上だった。
そこで語られた兄の告白。
風景は暗転する。体が穴だらけになった兄の抜け殻が萎んで、地面にゆっくり
とへたりこんでゆく。
足元を見ると血まみれの女性が転がっている。私の手のひらは血で染まってい
る。そして、口元に違和感を感じ、シャツ越しに肩へ唇を押し付ける。べっとり無地
の白いシャツに赤い染みが残った。私はゆっくりと叫んだ――
私は目を開けた。見慣れた部屋の風景がある。枕元のテーブルにはには兄の
遺品である銀のナイフが置いてある。
兄は猟奇殺人犯として、昨年警官隊に射殺された。
兄の言葉は私の脳裏にこびりついたままだった。だが、人を銀のナイフで殺して
食うわけがない。枕元の銀のナイフは自戒のために置いてあるにすぎない。私は
再び目を閉じた。
台所には人間の大腿骨とちょうど同じ形状の骨が1本転がっていた。
次のお題は「玄関」「地球儀」「ストロー」で。
玄関らしき場所で男は自分がどこにいるか分からないように呆けて立っていた。
数分立ち尽くした後諦めたように男は歩き出した。玄関からは一本道でかなり遠くに黒
塗りのドアがある。
男は緩々と歩きながらようやくドアの前にたどり着きゆっくりとそれを押した。
部屋の中には緑色でモヒカンの九官鳥が机の上に立っていた。
「ヘイヘイヘイ! ユーはとんでもないアンラッキーメンだな。ユーはこれからファンキー
なトリップにお出かけだ! テーブルの上のストロー吹き矢でユーがゴーする先決めな!」
九官鳥がまくしたてると、けたたましいドラム音と共に天井から巨大な地球儀が下りてき
た。それは勢いよく回転している。
「おーっと。ちゃんとヒットしねえと、ユーはヘル行きだぜ!」
男は異常な状況に飲まれたのかストロー吹き矢を手にとって構えた。
勢いよく放たれた矢を見事地球儀に命中した。九官鳥も黙って地球儀が止まるのを見守っ
ている。数分後、停止した地球儀に向かって九官鳥が飛び立った。
「ゴーするのは……。コロンビアだ! キドナップがこのプラネットで最高に発生しやすいカント
リーだ!」
私が何気なく見ていたテレビはCMを続ける。
「このように急に誘拐が多発する危険地域へ行くことになった時おすすめなのが、誘拐保険。
身代金から全て当社が負担致します。ただし、先進国で発生した誘拐事件に関しては、この
保険の適用外なのでご了承ください。万が一生きて帰れなかった場合、及び体の一部が欠
損した場合も当社は責任を負いかねます」
「ここはつぶれた方がいいよな」
私は部屋で一人こぼした。
次は「ビデオテープ」「空き缶」「天国」でお願いします。
彼女の時間は残り少ない。
偉いお医者様が太鼓判を押した不治の病だ。
僕はコーラの空き缶を放り投げる。
道に落ちてたビデオテープを蹴飛ばしてみる。
それから、蹴飛ばしたテープの中身を想像して、
二人で盛り上がる。
彼女の時間は残り少ない。
天国なんて信じない僕は、今この世に在る彼女を
笑わせるためなら、どれだけだっておどけてみせる。
急に顔を背けて彼女は呟く。
ねぇ、あたしたち、むりしてわらってるよね。
次の御題は「残り」「道化」「無理」
古着は売れ行き良い。実家の押入れから発見した食器セットやナベセッ
トもぼちぼち売れてる。初めてのフリーマーケット出店にしては、なかなか
な売れ行きじゃない?
「おねえさん、その道化師の人形、いくら?」さえないおじさんが声をかけ
てくる。おじさんが目をつけたのは押入れ産の陶器の人形だ。高さ30セ
ンチほど、妙に怖い顔で不気味なやつ。
「8000円」とりあえずふっかけてみる。
「それじゃ高いよ。新品でも5000円くらいでしょ」
失敗、ふっかけすぎたか。でも今更引けない。「無理無理、7500円」
「じゃ、この調理道具セットをつけて7000円」
おじさんが選んだのは結婚式の引き出物でもらった調理道具のセットだ
った。沢山の道具がセットになっているのだけれど、プラスティック製の
柄が安っぽい上にピザカッターやケーキサーバー、メロンを丸くくりぬく
道具など、普段使わないようなものばかりで売れ残り候補ナンバー1。
普段台所に立たないおじさんには、価値があるものに見えるわけね。
内心ラッキーと思いながら、私は妥協したような顔でうなずいてやった。
小娘から見えないところまで行って、俺は人形の裏をチェックした。まち
がいない、アンティーク・マイセンだ。50万は堅いだろう。
がっついているように見られないように交渉道具に使った調理道具セッ
トを俺はそばのゴミ箱に放り込んだ。
次のお題は「実家」「交渉」「ゴミ箱」で。
「残り」「道化」「無理」
残り一分半か……。
M87星雲からやって来た正義の使者、ゴールデンマンは胸に輝くタイマーを見た。
M87星雲以外の場所では、三分しかゴールデンマンとして存在出来ないのだ。
悪の結社、道化団が地球に結成されたとの情報を得て、ゴールデンマンは今日はじめて地球にやって来た。
そして、地球の平和の為に道化団の本部を攻撃したのだ。
ピエロの格好をした道化団の隊員達がゴールデンマンに襲いかかる。
ゴールデンキック!ゴールデンパンチ!次々と技を繰り出す。
ピュインピュイン。胸のタイマーが赤く点滅する。
くそっ、全員を倒すのは無理か……。
ゴールデンマンとして存在出来る時間が一分を切ると、タイマーが輝くのだ。
「あ」突然ゴールデンマンは消滅した。
――M87星雲と地球では、時間の進む速度が三十秒違う事をゴールデンマンは知らなかった。
次のお題は「試験管」「初夢」「パラダイス」でお願い致します。
98 :
名無し物書き@推敲中?:03/07/29 16:50
3分も遅れて2ゲットに失敗し、チンコを晒す事になってしまった香具師 降 臨 。
2 :名無しさん@お腹いっぱい。 :03/07/29 15:53 ID:R6vdMRQf
2get!
3 :名無しさん@お腹いっぱい。 :03/07/29 15:56 ID:I9U3f4Yc
2get
できなかったら、チンポ丸出しで街を歩きます。
4 :名無しさん@お腹いっぱい。 :03/07/29 15:57 ID:gQ9H4VSn
>>3祭りの予感だな
さあ、2ちゃんねらーのツワモノ共よ。↓のスレに集結し、
>>3のチンコが晒される瞬間を拝め!
http://pc.2ch.net/test/read.cgi/pcnews/1059464679/l50
実家が売りに出された、と突然両親から告げられた。
決して金に困ってしたことではないという。
田舎に新しい家をもう買っていて、交渉がうまくいったので
余ったお金でこれから世界旅行をするのだそうだ。
私はしばらく実家には行っていなかったが、
他所様のものになる前にもう一度だけ見に行くことにした。
久しぶりに見た家は、確かに所々は懐かしくはあったが、
家具はもう持ち去られていたので全く違う場所のようにも思えた。
だとすると思い出というのは家自体ではなく、
その中に入っている物にだけあるものなのだろうか。
母の愛用していた箪笥や、私が昔壊して、蓋の無くなったゴミ箱、その他色々の様に。
そう考えるとなんだかこの家に申し訳なくなってきた。
ただ玄関を出て、振り返って見たそれは、
紛れも無く私が何度もいってきますとそれと同じ数だけのただいまを言った我が家だった。
ネクストはうりさんの「試験管」「初夢」「パラダイス」で。
「さ〜て、できたぞぉう……」
マッドサイエンティスト、としか言いようの無い目つきで友人は喜声を揚げる。
「最高の出来栄えだ。シャブや大麻なんて物より遥かにクール!そしてヘルスィー!」
試験管の中には、何色だ?とにかくどどめ色の液体が満たされてる。
「化学式はどうなんだよ?材料も見せないで何偉そうな口きいてんだよ」
ここは薬学部の研究室。その中で駄目学生である俺とこいつはイケナイ物を作っていた。
なんとか中毒性の無い、そして劇物でもない薬を作ろうとしているのだ。
いかんせん、駄目学生だ。殺虫剤ならぬ戦争用の殺人剤なんてものも作ってしまう。
そうして苦吟しているうちに時は流れ、年が明けた。それと同時に連絡が入った。
三が日なのに研究室に篭っているのは友人から誘ってきたのだ。
なんでも初夢により天啓がきたそうだ。
頭にキタだけだろうが、一応何かは完成した。
匂いをかぐだけでも少し来る。
我慢できずに友人からそれをもぎ取る
俺は吸う。
これが安全
夢?ピンク?楽しい!!
イッツ・ア・パラダァァイス!!
翌日、新聞の地方欄の片隅に学生が研究室で事故死した事が載っていた。
「鑑定が定かではないので分からないが、吸引できる安楽死薬を作っていたのでは?」
そう書いており、この件の最初で最後の報道になった。
しばらく後……。各地で有力者の突然死が報じられ始めた。
次は「嗜眠症」「彼女」「幸せ」
「今年の初夢は富士山で人語をしゃべる鷹といっしょに焼きナスを食べる
夢だった。この間のロト6では1万1000円が当たった。今年の私はツイ
てる!ツイてるはずだ!!」
怪しげな蛍光緑の液体の入った試験管を手に、博士は自分に言い聞か
せるように言った。
「博士、実験の結果はツキに左右されるものではないのでは?」
助手の男が気の抜けた声で言う。
「否! これまでの実験がことごとく失敗に終わった理由がツキがなかっ
たこと以外にあろうか!?」
「仮説が間違っていたからでは?」
「理論は完璧なのだ!わしの仮説が間違っているわけが無い!!」
「ですから、その理論に穴があるのでは?」
「...君はわしの助手なのになんでそんなに冷静なのだ?」
「そりゃ、これだけ実験失敗が続いてんだから当然なのでは?」
「煩い、煩い!今度こそ成功するのだ!! そして特許を取って金持ちに
なって南の島でパラダイスするのだ!!」
言うなり、博士は試験管の中の液体を煽った。
「あ!まずは動物実験をするのが先なのでは?!」
助手の言葉も間に合わなかった。
そして博士は本物のパラダイスに行った。
お次は「本物」「耳掻き」「逸品」で。
梅雨が明けたばかりの晴れ渡った空を見上げて、涼子は思いきり伸びをした。
清々しい洗濯日和だ。洗濯物を干しながら、これからのパラダイスのような
人生を考えると自然に顔が綻んでしまう。
白蛇が登場する初夢を見てからトントン拍子に話が進み、半年で人も羨む玉の輿。
彼は大手一流薬品メーカーの研究職。仕事といえば事務しか知らない涼子にとって、
彼の仕事ぶりがわかるのは、3ヶ月前に業界紙に載った写真だけだ。
そこには真剣なまなざしで試験管の中を覗き込む彼の姿が映っている。
鼻歌を歌いながらベランダで洗濯物を干していると、足元でズズズズッと音がする。
「ひ、ひやぁ〜!」と情けない声が出てしまった。そこには直径4センチ以上はありそうな
巨大な蛇がズルズルとベランダの柵から入ってきていたのだ。巨大で不気味な色の蛇は、
そのままベランダの隅の日陰でとぐろを巻いて大人しくなった。
逡巡したが、つまんで捨てる勇気があるわけでもなく、ひとまず放置しておく事にした。
蛇は縁起がいいはず、と考えては見たものの高揚した気持ちが一気にしぼんで
しまった事は否めない。
その時、電話が鳴った。不気味な蛇を見た後のせいか電話の音まで不気味に感じた。
受話器を取った瞬間に、慌しい声が聞こえた。
「○○薬品第三研究室ですが!奥様ですか?実験中に薬品が爆発して…」
-----
お題は前の方のでお願いします。
あちゃ3分遅かったか。
お次のお題は
>>100さんの「嗜眠症」「彼女」「幸せ」でどぞー。
20XX年、人類は男女の産み分けを超え、天使と悪魔の産み分けに成功した。
俺の隣に寝ているのは天使だ。やつは呑気にすやすやと寝息を立てていやがる。
まあやつにとってはこの硬い寝台もパラダイスだものな・・・・・・。
俺は苦々しい気持になり舌打ちしようとしたが、新生児なので舌は微妙に動いただけであった。
俺は、試験管にいた時から、五感を全て研ぎ澄まし自分の運命を悟っていた。
天使と悪魔を産み分ける為には胚が2つ必要で、俺は悪魔、やつは天使と予め決められていたのである。
そして、この後悪魔は、悪魔処分法により皮膚も臓器も切り刻まれ細胞まで実験に使われ廃棄されるのだ。
・・・・・・それにしても空気が美味い。俺は培養液から取り出された後、この寝台に並べられたのだが、
空気は想像以上に美味かった。初夢を見る間もなかったな、そう思うと俺は眠って
みたくもなるのだが、それではこの限られた「生」の時間を楽しめなくなってしまう。
まだ開かぬまぶたから洩れてくる光も温かく美しい。
足音でナースが近づいてくることが分かった。とうとう時が来たようだ。何が白衣の天使だ、
俺には悪魔に見えるぜ、そう思い俺は最後の抵抗をしようと右手いっぱいに力を込めたが、
新生児なので腕はだらりと垂れたままであった。そして、抱えられる。・・・・・・絶対絶命!
しかし、俺は羽飾りのついた籠にふわりと降ろされる。と、同時に、悲鳴を上げた天使が
ビニール袋に入れられる音が聞こえるではないか。―――俺は瞬時に、間違えられたのだと理解した。
神の気まぐれか。俺は今この時から「生」を掴み取って行くことを心に決めた。
次のお題は「画面」「太陽」「不可解」でお願いします。
あ、ごめーん。わたしは12分も遅かったよ・・・。
書き込み確認、30秒ぐらいのつもりだったんだけど、そんなに経ってたのか・・・。
お題は
>>100さんので。
「とにかく眠いのよ」
追加オーダーを済ませた彼女は、ファミレスのメニューを閉じながら言った。
「朝起きるでしょ?ダンナのお弁当作っているともう眠くなるの。朝ごはん
食べて、さて洗濯物干そうって時にはもう耐え難い眠気。結局、また布団
に戻って寝ちゃって、昼に起きて昼ごはん食べたらまた眠くなって……
嗜眠症っていうの?一応そういう病気あるらしいんだけど、病院行った
ほうがいいかなって思うの」
彼女の目の前、4人がけのテーブルに並んだ空の食器を私は見下ろした。
小エビのカクテルサラダとモッツアレラトマトとイタリア風オムレツとチョリ
ソーとマルゲリータピザとイタリアンハンバーグとベニス風エビドリアと
ペペロンチーノとドリンクバーのカップが二つ。このうち私の担当はモッツ
アレラトマトとペペロンチーノとドリンクバーのみ。残りは全部彼女の胃袋
の中だ。
「食欲も増してるみたいね。その症状、私のお姉ちゃんそっくりよ」
「お姉さん、なんて病気だったの?」
「病気じゃないわよ、お、め、で、たっ」
彼女は大きく目を見開いた。
「え?でも、おえってなってないわよ?」
「初期につわりのない体質の人もいるのよ」
「ふうん、そうなんだー」
彼女が幸せそうにウエイトレスの持ってきたショートケーキを三口で平ら
げるのを見ながら、私はさすがに胸焼けする喉元をさすった。
次のお題は
>>104さんの「画面」「太陽」「不可解」で。
画面には見慣れた顔が映っていた。我ながら情けない表情をしている。
消してしまいたいところだが、電源はもともと入っていない。
頭に巻いていたタオルで汗を拭う。今日はやけに太陽がでかく感じた。
ジリジリとアホほど熱を吸収する黒い箱を置き去りにして、階段を降りた。下には自販機がある。
ポカリを喉に流し込みながら見上げると、石段の中腹には29インチのテレビがどっかりと鎮座していた。
上から下ってきたじいさんはテレビを不審そうに、二度ほど振り返った。
まあ、他人が見れば不可解でシュールな光景だろう。
空き缶を軽トラの荷台に放り投げると、携帯を取り出す。友人に応援を要請するつもりだ。
だが、三度コールしたところで、切った。
四年前、親父は一人で上まで運びやがったんだよな。あの、クソ重てえのを。
どうしても、この一事が心に引っかかるのだ。
しばらく立ちつくしていると、やがて脳内にロッキーのテーマが流れ始める。
やっぱりこの場合「燃えよドラゴン」よりも、こっちの方がはまる。さっきは選曲を間違えたんだ。
そんな風に気合を入れ直すと、俺は一気に階段を駆け上がるのだった。
次は101氏の「本物」「耳掻き」「逸品」でいってみよう。
・・・ダブリでごめんなさい。
「画面」「太陽」「不可解」
「うるせえ!」朝からぐずる女房の連れ子を蹴り飛ばした。
四歳になったばかり小さな身体が、毬の様に床の上を転がる。
「仕事に行って来る」部屋の隅で小さくなっている女房を一瞥すると家を出た。
――俺の仕事は宇宙観測だ。今は主に太陽を観測している。
モニターの画面にはいつもと変わらず太陽のコロナが揺らめいている、筈だった。
「ん?」俺は自分の目を疑った。
「所長、不可解な現象が!」観測員一同、モニターの前に集まる。
太陽の表面に、にこちゃんマーク、所謂ピースマークが浮かび上がっているのだ。
その日から太陽光線ならぬ、にこちゃんマークが地球に降り注いだ。
それは、一見黄色い雪だった。しかし、良く見るとにこちゃんマークが浮かんでいるのだ。
地球上に数々の異変が起こった。
フセインは涙をこぼしながら自らの悪行を詫びる。金正日は熱い抱擁で核査察団を受け入れる。政治家達は恵まれない子供に献金を寄付する。
まるで地上に愛と平和が溢れた様だった。
俺はと言えば、四六時中女房と子供を抱き締め、頬擦りしながら叫ぶ毎日だ。
「愛してるよお、お前達を愛しているよお!」ってね。
次のお題は108さんの「本物」「耳掻き」「逸品」で。
「こちらが本日のお品でございます」 セールスマンが愛想よく鞄から小箱を取り出した。
真紅のクッションの中央に鎮座しているのは、小さな木の棒のようなもの。
「これは?」 「これは耳掻きでございます」
私はまじまじとそれをみた。本物を見たのは初めてだった。
「しかもこれは天然の竹でできていまして、まさしく逸品でございます」
「触ってみてもいいかね」 私はそれをそっと手に取った。軽い。そして美しい。
セールスマンが何かいいかけようとしたのを、私は右手でさえぎった。
「……いつも通り、クレジットで」
「毎度ありがとうございます」 今まで以上の笑顔で、セールスマンは深々と頭を下げた。
セールスマンが帰り一人になると、私はたまらず小箱を開けた。 耳掻きのつやのある
褐色となめらかなラインが私の目を楽しませる。これは銀製のスプーンの隣に並べよう。
でももう一度、コレクション棚に並べる前に触ってみたい。私はつまむように持ち上げた。
「耳掻き、といっていたな……」 私はそれを顔の横にあてて見た。それから――。
私はそこで耳掻きを下ろした。人間たちはこれをどうやって使っていたのだろう。
耳の無い我々ロボットには、スプーン同様使えないものだな……私はそれを棚にしまった。
次は「駐車場」「クリーム」「彫刻」でお願いします。
ぼくね、きのうの図工の時間に彫刻刀で手を切っちゃたんだ。みんなは校庭でドッジボール
してるんだけど、手が痛くてできないんだ。だからね、みんなとドッジボールできなくても
しょうがないんだよ。しょうがないんだ。でも、ほんとはちょっと嬉しいんだ。だって体育にがてなんだもん。
ぼくが同じチームになるとみんな嫌な顔するんだ。ぼくがいると負けるし、じゃまなんだよ。
あーあ、いつもこうやって駐車場から見てるだけだったらいいのにな。きずがずっと治らなければいいのに。
でも、ほけんの先生にたくさん薬つけられたからすぐ治っちゃうのかな。あのクリームはすごく良くきく
薬なんだって。あっ、鐘が鳴った、もう休み時間か。休み時間もみんなはサッカーしてるんだけど
ぼくはヘタクソでできないから、いつもひとりぼっちなんだ。運動ができるようになる薬もあればいいのにな。
「おい、雄太!」わ、わ、一番怖いやつが来たよ〜。やだな。「な、なに?」
「お前なんでそんな所に座ってるんだよ。」
「きのう手を切っちゃったから・・・」
「そっか、じゃあ手を使わない事やろうぜ。こっちこいよ。」
えっ、ぼくなんて、いてもじゃまになるだけなのに、別にいいのに、ひとりの方が気楽だし…。
「ドロケイならできるよな?」できるけど、走るのも遅いし「あっ、あの…」
「おーい、雄太、手が使えないんだって!ドッジボールやめて、ドロケイやろうぜ!」
「おれたちの陣地はこっちな。やつら絶対倉庫の裏に隠れるからみんなで囲んで捕まえようぜ」
みんなで遊ぶのはやっぱり楽しいな。あの薬は友達もできるようになる薬だったのかな。
---
次のお題は「華」「風」「不具合」でお願いします。
>111
タイトル入れ忘れました。すみません。
「駐車場」「クリーム」「彫刻」です。
「兄貴、兄貴。すまねえ、遅れちまった」
「このすっとこドッコイの役立たず!この八五郎を30分も待たせやがって……。
やい熊!何で遅れた!」
「何もそこまで言わなくたって……。家を出ようと思ったら愛車のクラウンに
不具合が出て……」
「オメエの家の大八車がクラウンだぁ?いいかげんなことヌかすねィ!
『いつかはクラウン』で買った車が大八車だったらジャロどころじゃ済まねえぞ」
「で、しょうがねえ、テメエの脚で走ろうか、と思ったんだけど
ひどい向かい風で……」
「おい熊。確かに今日は風が強えェが、オメエの家は風上だ。
……ケンカ売ってやがるのか?よーし、火事と喧嘩は江戸の華、かかって来い!」
「お!何だ何だ?」
「ケンカだ!」
「よーし、やれやれ!」
「おい兄貴!なんか変な雰囲気になって来たぜ……」
「何だなんだ見せ物じゃないぞ……!おい熊公、ずらかるぞ……それっ」
「おーいっ!ケンカするんじゃなかったのかぁ」
「しつこいな、まだ追いかけて来やがる。今日は不具合が出て中止になりましたぁ」
次は「組」「サイン」「世界へ」の三語
「うぅ…。のどが…。水、水…」
――駄目だ。ここで水を飲めばウェイトオーバーになるぞ。
「だけど…」
――世界への切符はもうそこだ。来週の試合に勝てば、その次はタイトルマッチだぞ。
「だけども…」
――今おまえは3キロもオーバーしてるんだぞ。
「頼む。水を」
――組合わせにも恵まれた。序盤は堪えて相手のパンチを見極める。
――4ラウンド目に俺がサインを出したら、そこから一気に攻めるんだ。そうすれば勝てる。
「俺にはボクシングよりも大事なものが…」
――己を見失うな……。
――茶番だな、そう思った。虚しさが溢れてきた。
頭上では海鳥が鳴いている。
救命具に身を委ねながら、流される事三日と少し。
渇きが俺を襲う。大量の水に包まれてはいるが、それを口にする事が出来ぬこのくるおしさ。
いっそ海水を……。
太陽は厳然と煌いている。
次は「アラブ」「みぞ汁」「義理人情」で。
一台のジープが砂漠を走っていた。搭乗者は俺と運転手のみ、俺たちは炎天下の
砂漠を、もう四時間も走り続けていた。「まだ着かないのか」 俺は何度目かの質問を運
転手にぶつけた。彼は無愛想に運転を続ける。俺はぐったりと座席で目を閉じた。
聞かずとも分かっていたことだった。何せ、見えるものは砂と空と陽炎のみなのだから。
俺がこのアラブの小さな国に、我が社の支社長として赴任してもう三年になる。
こちらの商人いうのは実に商魂たくましい。俺の仕事はこの辺りで産出する鉱石の
買い付けだが、日本では歴戦の営業マンとして鳴らした俺でも、てこずらされていた。
そんなわけで俺はそろそろ疲れていた。日本を出る前は嫌っていたはずの義理人情
とか腹芸とか、そういうしがらみのようなものでさえ今はしみじみ懐かしかった。
ジープが走り初めて六時間。日がすっかり落ち、砂漠は急激に冷え込み始めた。
「おい、まだか」 俺は震えながら言った。「お前の主人はどこで何をやっているんだ」
そもそも俺が砂漠を走っているのは、何度か取引のあった商人に、商談成立の宴を
設けるから、と呼ばれたからだった。その取引は俺の勝ちといってもいいできだった。
ひょっとしたらその仕返しでどこかに連れてかれるのか……俺が疑問を感じ始めたとき、
運転手が前方を指差した。 「あそこです」 砂漠の真ん中に、いくつもの灯が揺れていた。
「ひどい目にあいましたよ」 にこやかに出迎えた商人に、俺は言った。商人はにやりと笑うと、
人を呼んだ。「まずは歓迎のスープをどうぞ」 俺は運ばれてきた椀を、震えながら受け取った。
その椀に入っていたのは――熱々の大根とジャガイモのみそ汁。俺は何も言わずすすった。
「うまい」 実にうまい。むさぼるように飲む俺に、商人がウィンクをしてくる。
またやられたなあ――俺は晴れ晴れと自分の完敗を悟った。
長文申し訳ない。次は「ハム」「針」「半開き」でお願いします。
「・・・・・・コーラン、コーラン、コーランっと」
ムハムマド・ムハメット・ムハムメドは、コーランを探していた。
ムハムマドの1時間目の授業は日本語である。しかし、ここはアラブ。
日本語の授業であってもコーランを身体から離してはならないのである。
「や、やべえ、もう授業始まってるよ。間に合わねえじゃねえか・・・・・・」
ムハムマドの顔が青くなった。アリー先生はとても厳しい。杖で叩かれるかもしれない。
もう行くべ、ムハムマドはそう思い駆け出した。
「ギーリ、ニンジョゥ、ギーリ、ニンジョゥ・・・・・・」
授業は、やはり始まっていた。教室で生徒たちが日本語を復唱しているのが
外にいるムハムマドにも聞こえるのだ。ムハムマドは駈ける。
「ギーリ、ニンジョゥ、ギーリ、ニンジョゥ・・・・・・」
ムハムマドが教室の扉に手を置く。ガラリ。途端に復唱はピタリと止まり
教室の皆が振り向く。そして数十の目がムハムマドに向けられる。うっ、針のムシロ、
ムハムマドは固まった。そして、つり目の教師が静かに口を開く。
「(日本語)遅刻デス。罰トシテー『義理人情』ノ意味、コーランノ言葉使イ説明ナサイ」
ガビ〜ン。ムハムマドの半開きだった口が床に届いた。
この後、ムハムマドは杖で打たれ廊下に立たされることになる。
元はと言えば、昨日の夜「忘れないように」とムハムマド自ら自分のターバンの中に
コーランを巻き入れたのだ。が、それはアッラーのみぞ汁。
駄文失礼。お題は継続で。
手入れの行き届いた和室に、不安定な羽音が遠のいてゆく。蠅であろう。
俺は卓袱台を挟んで、親父の目の前にゆっくりと腰を下ろした。
「忠則のところには世話にならんよ。お前達は共働きだしな。
独りになったが、まだまだ自分の世話は自分でできるから、気を使うなよ」
お袋の葬式が済んだ後、親父は鼻の脂汗を取りながらそう言った。
実際、住宅ローンの返済で芳子には勤めを辞めてもらうわけにはいかない。
私大に行った昌司も就職まであと1年ある。同居は数年先だな、その時俺はそう思った。
先程の蠅が卓袱台の上にある、ビニールから半分取り出されたサンドイッチに止まる。
サンドイッチのハムは端の方から干からびて硬くなっている。
―――親父は昼食を食っていて死んだのだ―――。そして、蠅は再び空を舞い、
背もたれのある座椅子に体を預けたままの親父の半開きの口元に止まった。
俺は家族を守っているつもりだった。でも親父だって家族だったのにな、そういった
後悔の念が、俺の咽喉の奥から、目頭から、また足元から押し寄せてくるものの、
目の前の亡骸の滑稽さに不思議にも唇が痙攣しそうになる。
何かに咎められ、俺はあぐらを組み直す。まだ自分を正当化したいのかもしれない。
羽音が止み、先程までは聞こえなかった秒針の刻む音がこの静かな和室に響いた。
次のお題は、「夕暮れ」「水鏡」「終」でお願いします。
「夕暮れ」「水鏡」「終」
−−七月最後の夕日だ。私はしばし目をほそめ、遠い森に落下してゆく
盛夏の夕焼けを眺めていた。夕暮れの時間が一番悲しく、一番味わいがある。
明から暗に転ずる一瞬の輝き。−−人生もそうではないか。
壮年期から老年期へ移行する曖昧な時間。熟年という呼び名もあるそうだが
……「爛熟」という言葉が私の脳裏にうかぶ。
水草に覆われた睡蓮の池に、私はそっと視線を落とす。
どんよりとした深緑色の水鏡には、ゆらゆらと男の姿が映された。
暗く沈んだ水面に、一瞬、夕映えの残光がきらめいた。
帽子を深くかぶり、白いビニール袋を手にした仄かな人型が揺れている。
−−私は、今日一日の糧に感謝して、我の終の住処となった、林の庵に
戻っていった。入り口には「残響庵」と扁額が掛かっている。
今日の落日は素晴らしかった。あとで、一句詠みたいと思う。
「新宿西口公園にお住まいのみなさん!炊き出しの準備ができました!」
「ホームレスの皆さん!お集りください!おにぎりと味噌汁をお配りします」
……私は眉を顰めながらも、暮色に包まれた公園に響き渡る、不粋な声の方に歩き出した。
次は「魑魅魍魎」「墨」「恐怖」でお願い致します。
その三幅一揃いの掛け軸は、ずっと前から妻の家に伝わっていたらしい。
一幅には、どこか愛嬌のある顔をした擬人化された獣達が行列を無し、
一幅には獣の顔をした武士達に守られて何故か牛のいない牛車があり、
一幅には魑魅魍魎どもが列を作っていた。正しい順番に掛けると獣、牛
車、魑魅魍魎の順で行列になるのだ。
落款も銘も無いが、今しがた描きあげたかのような鮮やかな黒に濡れる
墨の線は、精気が滲みだしているかのような生々しさを持っていた。
「またそれを使うのですか?」床の間に掛けた三幅の掛軸を見上げてい
た俺に妻が声を掛けた。「大きな契約があるんだ」うるさい、この根暗女が。
心の中で毒づく。逆玉ともてはやされても、婿養子なんて悲しいもんだ。
表面上は大会社の社長だが、資産は妻の名義。いっそ、妻をどうにかで
きないものかと考えた俺は、この掛軸にその方法を聞くことをにしたのだ。
この掛軸を掛けた部屋で眠ると、夢の中に魑魅魍魎達を従えた獣達が現
れて悩みに答えてくれる。神がかり的な経営手腕で知られた今は亡き義
父にそう教えられた時は、何を馬鹿なことをと思った。しかし、実際にこの
掛軸をかけて眠ると、獣達が夢に現れ、事細かに悩みに答えてくれる。そ
の新製品は売れる、その専務は信用できない。まさに百発百中だった。
「ねえ、あなた、ご存知? この掛軸、呪いをかけるのにも使えるのです
よ」妻が言った。「初耳だ」「正しいものを逆の順番にすると、そこに特別
な力が生まれるんです。この掛軸も掛ける順番を逆に……魑魅魍魎達
を先頭に牛車、獣達の順に掛けると人を呪い殺すことができるんです」
良い事を聞いた。妻が出て行くのを待って、俺は掛軸に手を伸ばした。
翌朝、和室のふすまを開けると、案の定、夫の姿はなかった。
乱れた布団の横から、掛軸のかかった床の間に向かって無数の引っか
き傷が畳に残されていた。10本の指で、必死に抵抗したのだろう。剥が
れた爪と血の跡が夫の恐怖を物語っているようだった。
私は床の間にかけられた掛軸を見上げた。
魑魅魍魎が率いる牛車の中から、血だらけの腕が差し伸べられていた。
はい、長かったです。次のお題も入らないくらいに。(汗
というわけで(?)、お題は継続で。
(^^)
123 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/02 01:27
「魑魅魍魎」「墨」「恐怖」
勇者が我が家に帰った。旅に出てから、三年の月日が経っていた。
「母上、久しぶりです」「おやまあ、大きくなって」
笑顔で出迎えた母は、息子の成長に喜びを隠せない。
「もう大丈夫です。村に潜む魑魅魍魎どもを、一網打尽にしてみせます!」
なんて心強い言葉だろう。母は、息子が最初に旅に出た頃を思い出す。
ヒノキの棒を携え、ハリネズミにも恐怖をあらわにしていたあの頃・・・
その時だ、三匹のハリネズミが不意に彼等の前に現れたのは。
「来たな!」
勇者は、ここぞとばかりに、4人がかりでハリネズミを退治した。
堅く握り締めたハリネズミの手・・・指をこじ開けると、小さな財布が見つかった。
「ちぇ。7ゴールドしか持ってないや」
三匹で大事に使っていた薬草を、無造作に袋に入れる勇者たち。
母は見た。武力を手にした我が子の、墨を流した様にどす黒い影を。
「お前は成長したよ」母は言った。
「本当にお前は変わったよ」
※ムリヤリ削って15行(笑)
次のお題は:「湖水」「水車小屋」「原子力」でお願いします。
姉貴に先に風呂に入られてしまった。
姉貴は一度風呂に入ると五時間は出てこないので、僕は近くの銭湯に行ってきた。
きょうび珍しい原子力風呂だ。お湯が青白く光っているのがレトロな感じで気に入っている。
ゆっくり4時間ほど風呂に浸かって帰った。さて、風呂上がりのいちご水を作ろう。
いつものように水車小屋に水を汲みに行くと、上流で野良犬がおしっこしていた。
さすがに気持ち悪くなった僕はちょっと遠出して町外れの湖まで行った。
ここは水が綺麗で好きだ。ちょうどその日の昼間、姉貴とここでボートに乗った。
湖水を汲んで家に帰り、急いでいちご水を作った。姉貴が上がるのにぎりぎりで間に合った。
果たして姉貴は満足してくれるだろうか。満足しなかった場合は一口飲むなり襲いかかって来る。
姉貴の形意拳はまったく衰えていない。僕は槍術の他に双剣術も身につけ、
狭い場所でも十分に戦えるようになったけど、姉貴と戦うのは避けられるに越したことはない。
姉貴がいちご水のコップに口をつけた瞬間、僕は重大なことを思い出した。
昼間あの湖でボートに乗ってたとき、姉貴が急におしっこしたいと言い出し、そして…
姉貴は一口飲むなりコップを置いて、静かにこう言った。
「これは…いちごレモン水ね」
※…ちょっと下ネタが入ってしまった…よって感想は不要です。
次は、「旅立ち」「惜別」「この場所」で。
私は山沿いの小さな村で暮らしている。村から徒歩1時間足らず距離に、日本でも有数の
大きな川の水源と言われる小さな湖がある。この辺りでは、その鬱蒼とした自然に囲まれた
小さな湖の水を飲料水として使用している。時折研究者が訪れる位で普段は外部の者が
立ち入る事はまずない。その湖畔で、壊れた水車小屋にひっそり棲んでいる男がいる。
母の話によると戦争後まもなくから、もう20年位はそこに住んでいるらしい。にもかかわらず、
日常的にそこを利用している私達でさえ男が何者なのか誰も知らない。男の年齢は20代にも
50代にも見え、いつもくたびれた流行遅れの服を着ている。
いつものように湖水を汲みに行くと、滅多に口を聞かない男が静かに話しかけてきた。
「最近嫌な匂いがしないか?」男が話すときはいつも静かに低い声で話をする。
「いえ、別に…」その時の私と男の会話はそれっきりだった。
しかし翌日水を汲みに入った時も、その次の日水を汲みに行った時も同じ事を訊かれた。
私は生まれてこの方12年もここに住んでいるけど、そんな事は感じた事は無い。
そんな事が1週間くらい続いたある日、いつも静かな男が目をギラギラさせてこう言った。
「今すぐここから逃げなさい。村中の人を全て避難させなさい。」
急にそういわれてもどうしたらいいのかわからないし、第一わけがわからない。
「詳しい理由を説明している暇は無い。この近くの原子力発電所が危険な状態にあるんだ。
広島に落ちた原爆みたいなものだ!とにかく早く逃げなさい!」
「ゲンシリョクハツデンショ?って何?近くにある??オジサンは何で逃げないの?」
その時、ドーンという爆音と共に、突き飛ばされるような衝撃をうけた。
*****
あれから50年近く経つが、私は以来寝たきりの状態で、男の消息もわからない。
あの時の衝撃で、村は壊滅状態になったことは風の便りで聞いたがそれが報道された様子は無い。
あの日何があったのか、どなたか調べていただけませんか?
---
長くなりましてすみません。
次のお題は「みみずく」「暴風雨」「古時計」でお願いします。
あう、15分も前の方がいましたね。すみません。
前の方の御代でお願いします。
「え、お前その格好…何?どっかいくの?」
「ちょっとな。遠出しようと思ってな。○○あたりに」
「遠っ!っていうかなんで今日なの?!平日じゃん思いっきり」
「思い立ったが吉日生活」
「なんのキャッチコピーだよ。せめて夏休みにやれよ!終わってるよ!」
「乗り遅れたんだよね」
「そっか…」
「……惜別会する?」
「しねーよ。どうせすぐ帰ってくんだろ?むしろ帰ってこないとおまえ出席日数やばい」
「いや。貴様とこの場所で会うことはもうないであろう……」
「え………
何その口調」
「拙者はしばし向こうで暮らそうと思っている……日数は替え玉が稼ぐであろう」
「え、あっちってもう住むとこ決めたのか?!すげえな。自立してんだな!」
「うん。っつーか友達んち。アポ無しで」
「迷惑だよ!」
「いい日友だち」
「旅立ちだろ!」
古時計が二度鳴った。雨の魔女リダは、ふと蜘蛛の糸で編物をしていた手を止めた。
――前にも同じようなことがあったような気がする――
何かが聞こえた気がした。外は暴風雨。深夜だというのに、窓に叩きつける雨が白く輝いて見える。
リダは戸口に立つと、大きく扉を開けた。激しく吹き込む雨に、古い樫の桟の上で居眠りをしていた
ミミズクのクァロが飛び回った。 「リダ、何する」 クァロの金切り声を無視して、リダは外に出た。
「見て。人間の赤ん坊よ」 いつの間にか、家の脇の大きな林檎の樹の下に、小さな籐籠が
置かれていた。籠の中には柔らかそうな白い毛布でくるまれて、小さな男の子が眠っていた。
暴風雨のたびに、リダはその夜のことを思い出す。あの日から十二年が経った。リダは赤ん坊を
育て、大きくなるといろいろ教えた。薬草の知識、動物の言葉、それから魔法……。
リダは恐ろしいものが近づいてきているのを悟っていた。赤ん坊はすっかり立派な少年となった。
今こそ旅立ちの時。胸の奥で波打つ惜別の情を飲み込み、リダは少年と向き合った。
「気をつけて、きっと本当のお母さんに会うのよ」 「ありがとう……」
少年は扉を開けた。稲光と共に、雨が激しく吹き込む。少年は振り向いた。柔らかな灰色の瞳。
「ぼく、この場所に戻ってくるから」 リダがうなずくと、少年は身をひるがえし闇の中に姿を消した。
少年の約束が守られることはない。リダは知っていた。出会いは運命、そして別れも――。
何かを忘れるようにリダは首を振り、扉を閉じた。敵が近づいている、準備が必要だった。
私はそこまでを読み終えた。「続きはまた明日な」というと、子供は不満そうな顔をしながらも、
目を閉じるとすぐに眠ってしまった。実家で見つけた、幼い頃に大好きだった本。毎晩、母に読んで
もらい、自分で何度も読み返した。私はページをめくった。幼心に好きだった魔女との別れの場面。
――また戻ってきたよ―― 嵐の丘にたつ魔女の家の挿絵を、じっと見つめた。
長文失礼します。次は「はちみつ」「アイロン」「空手」でお願いします。
「はちみつ」「アイロン」「空手」
計画は緻密さを欠いている。それは分かっているが、もう後には引けない。
「お父さん、はちみつ取って」
ふと気づくと娘がじっと私を見つめていた。私は娘にビンを渡してやる。
「これって何の花の蜜なの?」
娘がトーストにはちみつを垂らしながら、尋ねる。
「さあ、いろんな花から集めて来るんじゃないのか、働き蜂が。多分」
私は投げやりに答えた。
「ふーん……。お母さーん、私のスカートにもアイロンかけておいてー」
特に興味があっての質問ではなかったらしく、娘はすぐに自分の慌ただしい朝に設定を切り替えた。
隣の部屋からは「やだ」と短い返事か返ってくる。
「お願いー、今日、空手 朝練あるのー」
妻の応えは「知らない」と相変わらず素っ気無い。しばらく娘は騒ぎ続けることだろう。
普段ならたしなめる所だが、今日はこんな喧騒も愛しい。
この日常を守るためには、やるしかない。架空手形を切るのだ。それしかない。
それで乗りきれるはずだ。多分。
次は「いちごシロップ」「人工衛星」「上腕二頭筋」でいってみよう。
チョコアイスどっさり、生クリームにチョコレートシロップが流れるチョコ
レートパフェ。いちごシロップに練乳たっぷり、アイスクリームの乗ったカ
キ氷。カスタードプリンに色とりどりのフルーツ、キャラメルソースのキャ
ラメルプリンアラモード。
ジャンクな甘い誘惑が彼女の脳味噌の周りを人工衛星のように回り続け
ていた。
ダイエットモードに入って数日も経つと、普段興味のないそんな食べ物が
無性に食べたくなるのだ。
「駄目よ、駄目。今年こそはナイスバディをゲットして栄光を掴むんだか
ら!」
彼女はコンセントレーション・カールで上腕二頭筋にかかる負荷を意識し
ながら、そう自分に言い聞かせた。
はちきれそうなTシャツを盛り上げてくっきりと浮き立つ筋肉がうねる。
彼女の後の壁には彼女の目標が掲げられていた。
「東日本ボディビル選手権入賞!!」と。
次は、「夏」「勝負」「入れ込む」でお願いします。
「……へへ、カッコ悪いとこ、見られちまったな」
「ううん、そんなことない! すごくカッコ良かったよ!」
お前がそう言ってくれんなら、負けるのも悪くねえな。
喧嘩に負けて、勝負に勝ったってパターンだな。
でも、おいおい、俺、死ぬんじゃねえか?
喧嘩でナイフは卑怯だろ、何リットル流れてるんだよ、俺の血。
ああ、そんなに泣くなよ、俺なんかのために。
プラスチックみたいだ、キスしたらひんやりしそうだ、お前の唇。
そうだよ、美人って冷たい感じだから夏が似合うんだよ。
なあ、あいつが言ってたけど、お前、ヤリマンだったのか?
なんでベンチャンって呼ばれてんのか、ずっと不思議だったけど、
公衆便所のベンチャンかよ。
そんな女なら、さっさと姦っちまえば良かったよ。
お前でオナニーした事ねえよ、入れ込むだけ入れ込んで、
本気で女神様みたく思ってたよ。
そんな女なら、姦って姦って姦りまくって、
俺だけの便所にしちまえば良かった。
一緒に暮らして、姦って姦って姦りまくってよ。
何だよ、俺、いつの間に目を閉じてんだよ、もう死んでんのかよ。
長生きしたかったな、長生きしたかったよ。
お前と長生きしたかった。
次は、「長生き」「女神」「負け」でお願いします。
132 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/02 13:37
「夏」「勝負」「入れ込む」
セミ時雨の夏。吹き出る汗を拭いもせず、武蔵は彫り物に余念がない。
勝負、勝負、で明け暮れた過去の日々。
自分は、一体、何に心を奪われていたのだろう?
剣も勝負も捨てた、今。
武蔵の脳裏に浮かぶのは、恋人・お通の事だった。、
終始彼を慕ってきた彼女は、剣に憑りつかれた自分から離れていった。
今の武蔵には何もない。
ただただ、彫り物に入れ込むだけだ。
庵に入ってから、どれだけの月日が流れただろうか。
お通が風の噂を聞き、このあばら屋を訪ねたのは、五回目の夏の事だった。
武蔵は驚き、しかし何を話していいか分からなかった。
かがみこみ、じっと彼の目を見るお通の微笑。
それを前にして、彼の心に浮かぶのは唯一つの事だった。
この五年間、考え、悩み抜いてきたこと。
机の上で乾燥を待つ、「1/8スケール・お通フィギュア」の仕上げ作業の事だった。
※事実だったら面白いな(^^;
次のお題は:「スイカ」「遺伝子」「成長」でお願いします
ごめんなさい、失礼しました m(_ _)m
こんな時間、だれも書いてないだろうと・・・油断してました。
次のお題は131さんの、「長生き」「女神」「負け」でお願いします。
俺はずっと勝ちつづけてきた。金も、女も、名誉も、力も。
人生全ておいて、常に勝利の女神が微笑んでくれた。
叶えられない望みなど何も無かった。俺は全てを手に入れたんだ。
いや、手に入れられなかった物が一つだけある。不死身の体だ。
このまま長生きした所で、老いて醜く変貌していくだけ。
そんな事は我慢ならない。ここで負けを認めるのは生涯の汚点だ。
何とかしなくてはならない。俺は全てを勝ち取ってきた男だ。
必ず何とかしてみせる。こんなに悩んだのは産まれて初めてだ。
そしてようやく答えがでた。これで俺は死においても勝利を得たのだ!
「 昨夜午後11時ごろ、○○県××市の住宅街の路上で、近くに住む17歳の少年が
死亡しているのが見つかりました。遺体があった場所は、市内でも有数の高層
マンションがある地域で、近くを通りかかった人が発見しました。
××署によると、少年の手には遺書らしきものが握られており、靴の置いてあった
マンションの23階から飛び降り自殺を図ったものとみて、詳しく調べを進めています。」
---
次のお題は132さんの「スイカ」「遺伝子」「成長」でお願いします。
はすむかいの家で最近スイカ泥棒が多発しているらしい。
ある日、僕と姉貴は頼まれて畑の見張りをすることになった。
畑は広いので二手に分かれて見回ることにした。
畑は変わったスイカでいっぱいだった。水玉模様のもの、四角いもの、羽根が生えているもの…。
そういえば、ここの主人は遺伝子工学の研究もしているらしい。
一通り見回りを終えてから、僕は見晴らしのいい丘に上がって一休みすることにした。
丘の上には一本の大きな桃の木がある。この桃の木は一年中いつでも咲いている。
この木を眺めていると懐かしさがこみ上げる。十年前にここで姉貴と僕は姉弟の契りを結んだ。
ふと気付くと背後から僕の名を呼ぶ声がする。姉貴だった。手頃な大きさのスイカを一個抱えていた。
「はい、おやつ。一休みしよ」
二人でスイカを食べた。あんまり食べるとまたおねしょするよ、とつい口を滑らせてしまったが、
姉貴は機嫌がいい日らしく、くすっと笑っただけだった。安心。
食べ終わった後で、種を一個地面に落としてみたら五秒で成長して実ができた。
こんなスイカもあるんだなあと二人で感心した。
畑に戻ってみると、主人がスイカを一個盗まれたと言って慌てていた。
大失敗だ。二人でのんきに休憩なんかしてたからだ。これからは気を引き締めなければ…
※16行になってしまった…
次は「穏やかな波」乾いた風」「サテライト」で。
穏やかな波が打ち寄せる、静かな海。
誰もいない海。
遥かな水平線に、光の柱が雲を裂いて降り立っている。
それはすべてを滅ぼした、ビームサテライトからの終わらない砲撃。
海原の彼方から吹き寄せる、奇妙に乾いた風。
イオン化した大気が、世界の果てまで流れわたる。
滅びた世界は、ただただ静謐にたゆたっている。
次のお題は「眠り」「愛煙家」「無限」で。
138 :
「眠り」「愛煙家」「無限」:03/08/02 16:54
男は傷だらけのコートを脱ぐと、古ぼけた古城の最上階にある
豪奢な天蓋付きベットでスヤスヤと眠り続ける美女のそばにひざまづいた。
この姫は無限とも思える長い長い時を、ひたすら眠り続けてきた。
もはや伝説上にしか存在しないと言われていたかの有名な眠り姫オーロラだ。
地方に残る言い伝えをあますことなく収集し、分析した結果、
ついにその眠り姫が現在も眠り続けているこの場所を発見したのだ。
魔女の呪いか知らないが、この場所の磁力がねじれていて通常のレーダーでは
発見できないようになっていた。まわりを取り囲む新種の肉食植物たちも、古代魔女の
仕業だろうか。まだまだこの伝説に謎は多い。
しかしだ、どうだろうこの美女の美しさは。伝説以上だ。
「彼女を起こしたら、それこそ俺が王子様って奴かもしんねえな……」
男はにやにや笑いながら、ポケットからタバコを取り出した。
愛煙家の彼は、どんな危険な場所に行くにもタバコを忘れないのだ。
一本取り出して、ぷかぷかふかしはじめた。
そのときだった。
「だああああ!!くっせぇえええ!!!」
眠れる美女は悠久の眠りから飛び起きた。
139 :
「眠り」「愛煙家」「無限」:03/08/02 16:58
すいません。次の御題は
「ペット」「デット」「ロケット」で。
妻が白鳥の湖にハマった。ロシアバレエ団の公演に行かせろ、さもなくばいつでも
白鳥の湖を見られるようにしろ、とかまびすしい。辟易した私は、ついついオデット姫
の3Dモデリングを作ることを約束してしまった。
しかし、これがなかなかに難しい。CADで家屋のモデリングを作るのが私の仕事
だが、生身の人間をモデリングするのがこれほど難しいとは思わなかった。ロケット
のようにずん胴のマペットが表示されるたびに、私は頭を抱えた。かてて加えて、
あのチュチュというドレスの「ひらひら感」。ドアの可動部のようにはいかない。
ワークマシンを叩き壊そうとこぶしを振り上げたことが、何度あったか判らない。
ようやく完成したデータを見たときの妻の言葉、「まあまあね」には正直殺意を覚えた
が、ロシア旅行の費用を思えば安いものだ。
しかし、妻がつづけて一言。
「これ、動かないわよ?」
私は3Dムービーを作ることを約束させられた。
次のお題は「金属バット」「江戸」「主人公」で。
「金属バット」「江戸」「主人公」
平賀源内が俺の部屋にやってきたのは、昨日のことだ。「平賀源内でござる」と本人が言うのだし
多分、本物なんだろう。突然、深夜に泊まりにこられて流石にびっくりしたが
まあ、SF漫画は嫌いじゃないし、礼儀正しいのでとりあえず、一泊させてあげることにした。
だいたいその手の漫画によると、未来の情報を知ってしまった過去の人間は不幸な末路を辿っている。
また関った人間にも必ず災難が降り掛かるのが常道だ。「じゃあ、これ護身用に置いておきます」と
金属バットを預けると、なるべく彼に接触しないとうに、俺は早朝から散歩に出かけた。
帰ってみると、平賀源内は何やら夢中で紙にメモをとっている。「あっ!まずいッスよ!」
俺は何かの情報を書き付けているのだと察して、慌てて止めさせようとしたが
その途端、タイムトンネルが開いたようで、つるりと彼は何処かに姿を消してまった。
俺は心配になって、歴史の教科書を開いてみた。「平賀源内。土用の丑の日にうなぎを……」と
書いてある。「げっ!もしかして?!」と思って部屋のテレビを見ると、案の定、NHKの「こころ」が
つけっぱなしだった。ああ……。主人公の家、繁盛している鰻屋だぞ。これは未来のヒントを
与えてしまったじゃないかと、愕然としていると、金属バットに吸い付いた彼の頭髪を見つけた。
「静電気か?」もしや!!と思って本を見ると「江戸で初めてエレキテルという摩擦器を……」と
書いてある。こりゃタイムパトロールが抹殺にくるぞ!と怖くなり、俺は裸足で部屋を飛び出した。
次は「当直」「奇妙」「足音」でお願いいたします。
当直の警備員は私たちの泊りがけの仕事を快く思っていないようだ。
「もし、出かけるのなら常に私どもにその旨をお伝えください、もちろん帰ってきたときも御報告を…」
渋い顔をしたこの中年の警備員は私に不機嫌な声を浴びせる。
気持ちは分からないでもないが不快だ。そうして警備員とのやりとりも終え、仕事に戻る。
小一時間ほど経つと誰ともなしに休憩を取り始めた。そしていつの間にか雑談をする事になってしまう。
久しぶりだ、こうして脈絡無くあやふやな事をするのは。
「にしてもあの警備員!何であんなに不機嫌なんだ?」
男の同僚の疑問に私は無味乾燥な答えをやる。
「いちいち確認しなきゃならんからさ。対応は悪いけれど警備員としては優秀だよ」
「そうかな?建前を取り繕っただけでホントは出入り口しか見張ってないんじゃないの?」
女の同僚の反論により議論が過熱した。曰く、サボっている。曰く、酒を飲んでいる。
曰く、産業スパイを潜り込ませている。曰く……。はしっこい子供じみた意見が泡立ち、子供のように結論し……。
有志が時間を見計らい警備員を見に行く事となった。
有志とはもちろん、言いだしっぺと反論者、そしてその反論への投疑者。
つまり発端となった我ら三人だ。足音を潜ませて、なるだけ監視カメラの目を食い潜り、
とうとう目的地の警備員詰め所にたどり着いた。「さ〜て、鬼が出るか蛇が出るか?」
覗き込んだ同僚が固まる。「なになに?私にも見せて?」
真ん中に立っていた彼女の動きも固まる。そして私の方を向く二人。硬い表情だ。
「なんだよ、なんか面白い物でもあったのか?」
「見るな、目が腐る」「見ないほうがいいわ」
そんなことを言われても見るに決まっている。
有無を言わさずに覗き込んだ。警備員室の中には奇妙な光景があった。
なんだあの女?ていうかなんでボンテージなんだ?
つーか女?
そこには厳しい、獲物を求める捕食者の目でモニターを注視する……
ボンテージ姿の女装した警備員がいた……。
次は「令嬢」「同級生」「恋人」
私は当直室の椅子に座り、金縛りにあったように硬直している自分を真正面に
あるガラス窓で目にしながらビクビク怯えている。アレがやって来たのだっ!
数十年前の当直の夜にアレはここに来た。布が擦れるような柔らかい足音が
耳に入り、スリッパを履く者が多い病院では珍しく、好奇心が抑えられない
私はそっと当直室のドアを開けて、足音のする方へ視線を向ける。そこには
古墳壁画に描かれるような着物を纏い、長髪の美しい女が立っていた。
私は女の人間離れしたあまりの美しさに我を忘れ、思わず当直室のドアを開け
てしまった。すると、女は私に気付き目をカッと見開く。
『・・・・・・妾を見たな。お前は死なねばならぬが、よくよく見るとまだ年若い。
あと少し生かしてやろうか。再度、妾を見た時が最後と思うがよい』
と、言い残すと女はフッと姿を消した。
そして今、私の耳にあの一日たりとも忘れもしない奇妙な足音が響いている。
あの女が何者かは知らない。分かる事は、かつて体験した事のない出来事が
すぐそこまで待ち構えているという絶望だ。
足音が私の背中で止まり、眼前の窓ガラスに、あの女が映りニヤリと笑った。
20分ほど遅かったですが、一応書いたので。
お題は142さんの続きでよろしく。
144 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/03 02:00
「令嬢」「同級生」「恋人」
校医として無事就職が決まった兄に、妹はささやかな祝杯をあげた。
「それで、それで、どこの学校なの?」と妹は聞く。
「フッフッフ、それがだ、お前が中退した、あの女学校の校医なのだよ」
「うわぁ」と彼女は驚く。そうか、良家の令嬢が集まった、あの女子高か・・・
「これからは、女学生を恋人の様に調べ尽くす毎日が待っている。世話になったな」
「まあ、お兄様ったら、最低ね!」
と、笑いつつも妹は心配だった。その夜は食事が喉を通らなかった。
自分は知っている、あそこの生徒の傍若無人さを。同級生も大勢いる。
アホ兄の愚かな幻影が、崩れなければいいが・・・
翌日。案の定、兄は暗い表情で帰ってきた。
「検査衣に着替えてくれ、今日は・・・腹部超音波検診だ!」「はぁーい」
「やっぱし私でないと」彼女は検査台に横たわる、ステンレスの冷たさが、背中に快い。
検査の準備をする兄の声が聞こえる。涙声だった。
「校医なんて・・・愛のない検査なんて面白くない。不純だよぉぉぉ!」
検査台からは、小3から今まで、ぎっしり並んだ自分のカルテの天井棚が見える。
兄妹のお医者さんごっこに始まる彼の医学キャリアは、こうして原点に帰ったのだ。
※ちょっと変かも;
次のお題は:「キャンディー」「海底」「ギヤマンの鐘」でお願いします。
現在、私ジョン・ワトソンは盟友シャーロック・ホームズと共に甚だ危険な状態にある。
私は万一この事件の記録を発表できなくなる事態に備え、日記のような短い覚書を行く先々で残すことにする。
願わくば、これらの覚書が私の遺書とならず、この事件をちゃんとした手記の形で発表できることを。
ホームズが大きな荷物を抱えて逃げ込むように私の病院へやってきたのは5月の始めのことだ。
ホームズは疲れ切っていた。これほどの憔悴ぶりは「最後の事件」の時以来である。
疲れが取れるヘロインキャンディーを差し出すと、ホームズは一度に一掴み分も飲み込んだ。
普通の人間なら致死量だが、コカインで鍛えられているホームズは数分意識を失っただけですんだ。
「失礼、ワトソン君。ここ数日、僕は卍党に追われていてね」
意識を取り戻したホームズはそんなことを言い出した。そんな組織は初耳だというとホームズは大げさなほど驚いた。
「奴らは世界制覇を狙っている。そのために必要なギヤマンの鐘を探しているのだ。
僕はある日捜査の一環で海岸で釣りの真似事をしていたんだが、何の偶然なのか、
海底からそのギヤマンの鐘を釣り上げちまった。それで今の追われる生活というわけさ」
「この大きな荷物がその、ギヤマンの鐘とやらなんだね?」
「そう。これに世界制覇に繋がるどんな力があるのかは僕にも分からないが、これを卍党に渡してはならないことは確かだ。
これから僕は一つ危険な旅行をすることになるが、君も協力してはくれないだろうか?」
次は「冒険」「回想」「帰還」でお願いします。
146 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/03 11:43
「冒険」「回想」「帰還」
急流から落下して2週間。彼の意識は、まだ戻らない。
「この人っ・・・この人はいつ治るのでしょうか。大丈夫でしょうか?」
ショールを纏った女性が、すがる様に訊ねる。
「あ・・・家賃が滞納しておりますので。下宿の管理人なんです、私」
と、慌てて節度を装う。かなり親密な関係らしい。
不意にうめき声が響く。「うううっ、旗だよ、eだよ、初歩だよー」
「ごらんの通りです。昔の算数ドリルの回想でもしてるらしい。
意外と、貴女も夢の中の脇役ででているかもしれませんね」
医者は故意に話題をそらして、肩をすくめる。
その後、医師は転属願を出し、最後の挨拶をしてこの病院を去った。
原因不明の患者を担当し続ける事は、彼にとって危険すぎる冒険だったのだ。
医師ばかりを責めるわけにもいかない、症状があんまり特殊過ぎた。
遊園地の急流すべりで気絶とは・・・もう一つの世界に意識を奪われる様だった。
彼が無事意識を取り戻し、社会への帰還を果たす日はいつだろう。
西暦2000年の高度医学をもってしても、それは判らない。
※なぜショール姿なのか・・・自分にも判らない。
お題は継続の「冒険」「回想」「帰還」でお願いしまふ。
「冒険」「回想」「帰還」
遠くで蝉が鳴いている。暑い。
扇風機すら無い部屋で、俺は寝転んで網戸越しの空を見上げる。
窓辺に掛けられた風鈴は微動だにしない。
入道雲と青空のコントラストが、ただ眩しい。
こんなとき、きまって俺は回想する。
目を閉じると、始めに浮かんでくるのはいつも水平線だ。
そこから海と空が生える。そして、小さな帆船と仲間達。
「あったぞ!間違いない!あの島だ!」
あの冒険の日々は、夢だったのだろうか?
今でもはっきりと思い出せる。俺たちは確かに宝島に上陸したはずだった。
様々な罠を掻い潜り、暗号を解き、財宝を目の当たりにしたのだ。
だが気が付くと、俺はベッドの上にいた。
仲間達がその後どうなったのか、無事帰還できたのか、俺には知る由もない。
風鈴がちりり、と音を立てた。日はもう沈みかけている。
吹き始めた風に潮の香りがしたのは、気の所為だろうか。
次は「血」「夜」「月」でお願いします。
「血」「夜」「月」
「夜」はいつもひとりぼっちだった。
どうせクラくて、イジイジしているからさ。
「夜」はひとりでメシをたべる。
「血」チッ、また皿にホコリがはいっていやがる。
ゆびでつまんで「'」ホコリをすてた。
ああ、ひとりじゃつまらん。メシもまずい。
「月」があそびにきた。
となりにだれかいるようだ。だれだよ?
「月」はオレにすまなそうに、カノジョをみせた。
「日」だった。ふたりはなかよくみつめあう。
……「明」
かえれ!かえれ!オレはそこらじゅうにバラまいた
こいしをなげて「。」やつらをおいだした。。。
「月」ごめんよ。オレはじぶんのとなりに
ちいさな「月」をかいた。「腋」
次は「舌」「睫毛」「ボタン」でお願い致します。
149 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/03 16:39
満月の夜は怖い。
欠けた月が満ちる時、同時に欠けた記憶も甦らせる。
たとえそれが前世の記憶であっても・・・。
月は人に何を求めているのだろうか。
由紀子は、満月の夜は決まって同じ夢を見る
「殿様、お許しください。私は・・・私は・・・」
彼女は夢の中で、何度と無く詫び続ける。
だが『殿』と呼ばれた彼の瞳はすでに色を失い、冷酷に笑う。
そして、振り下ろされる鈍色の刀。悲しみと共に全てが血に染まっていく。
満月の夜、白々と明けていく夜空に浮かぶ赤い月。
彼女の瞳には、血の涙を流しているように見えてならないのだった。
次は「水鏡」「刃物」「青」でお願いします。
150 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/03 16:40
149です。だぶってしまって済みません。
お題は148のお題でお願いします。スレ汚してしまってお詫びします。
「血」「夜」「月」
十歳になる息子の夜尿症が治らない。原因は私にあるのは分かっているのに
今朝もまたヒステリックにしかりつけてしまった。
息子が学校に行ったあとに訪れる静寂と自己嫌悪。
溜まった洗い物、脱ぎ捨てられたままの服、散乱した雑誌、上がり続ける血圧と
血糖値、慢性的な月経不順に偏頭痛。
ひどい生活。
やっぱり、あいつに電話しよう。
幸い、向こうが頭を下げてきているんだし、意地を張っても仕方がない。
何より、あの子は父親が大好きなんだから。
重複御免。お題は148氏のままで。
「舌」「睫毛」「ボタン」
ビーッという笛の合図。彼らの列が動き出す。僕はお結びを両の掌に1つ包み先頭の彼に渡す。
「彼ら」というのは路上生活者のことだ。僕は彼らの食糧支援ボランティアをやっている。
でも僕にはこの福祉活動に特別な思い入れがあったわけではない。ただ暇だったのだ。
「打ち込めるものが無いんですよね」と立ち話した仲の良い高校の数学教師に
「やってもらえないか?」と誘われたのがきっかけだった。
次々に彼らの一つの顔が近づいては去り、また近づいては去っていく。
彼らはお結びを受け取ると、その場では決して食べず、僕らの見えない場所へ行き
ひっそりと手をつけるのだ。
彼らの舌は人間の舌だ。僕らと同じように味わうことのできる舌。
彼らの心も人間の心だ。僕の軟弱な心以上に己の弱さを恥じている。
たかだかお結びの一つで、与える者と与えられる者に区別されてしまう恐ろしさ。
僕は一人の人間を萎縮させてしまう程の力を得て、段々と逃げ出したい衝動に駆られていく。
不自然にならないよう注意しながら、僕はゆっくりと彼らから目を逸らす。
すると、瞬きもせず凛と睫毛をあげ真正面に彼らに向かう数学教師が僕の目に飛び込んできたのだ。
何かが解放された。僕はシャツのボタンを外し胸元を緩め呼吸を整えると
改めてお結びを掴み、そして正面にいる彼の瞳を見据えた。
次は
>>149さんの「水鏡」「刃物」「青」でお願いします。
僕は水鏡
鏡でいるためには揺らぎがあってはならない
だから僕はいつまでもそのまま
でも僕は待っている
その曇りなき水面に刃物を突き立ててくれるのを
僕の表面を破って中に立ち入ってくれる存在を
そしてその刃物に僕の色が映り
深い青に染まっていくのを見ることができたら
僕は鏡であることをやめることができる
心を震わせて、波紋をつくることができる
『「水鏡(みずかがみ)」は平安時代の終わりごろから、鎌倉時代の初めに
書かれたと言われる歴史物語である。』
ここまで書いたところで、手に持った鉛筆を指先で器用に回し始めた。
昔からシャープペンより鉛筆が好きで、筆箱の中には8本の青い鉛筆が
刃物で綺麗に削られている。
「ええと・・・なんだっけ。」
2ヶ月後に受験を控えて、模擬試験の真っ最中。歴史物語である水鏡についての
説明する問題が出題されている。水鏡は、四鏡のうちの一つである事は覚えているのだが、
他の鏡物の作品名が思い出せない。
文学史の作品を全て暗記するのは無理なので、語呂合わせで覚える事が多い。
1192年の鎌倉幕府成立を"イイクニ作ろう鎌倉幕府♪"と覚えるのと同じようなものだ。
「思い出した!"ダイコンミズマシ"だ!」
回していた鉛筆を止めて、早速続きを書いた。
『「大鏡」「今鏡」「水鏡」「増鏡」の四鏡のうちの一つで編年体で書かれている。』
---
次のお題は「港」「明日」「耳」でお願いします。
港町。行くために来る所。そんな町にもう半年。宿の娘は今朝も聞く。
「あなたはいつこの町を発つんです?」
友人のように接してくれる口調は嬉しいが、この質問をされる度、私の胸は痛みを感じずにはいられない。
「明日……」普通の声で、言えただろうか。
「嘘ばっかり」彼女からは、冗談めいた批難の声が上がる。
「うちに来た時からずっと、明日明日って言ってるじゃないですか。うちだって暇な商売じゃないんですから、長くいるならそう教えてくれればいいのに」
「迷惑をかけてすまない。明日発つ」
「やめてくださいよ。そんなにしつこく言われたら、いくら嘘でも寂しくなります……」
「……一緒に来ないか? 明日。親父さんも、許してくれた」
私の言葉に、彼女はまず耳を疑い、そして驚きの波が引くにつれ、涙を浮かべ、微笑んで、頷いて。
目が覚めると空虚な気分になる。港町。私はあとどれだけこの街にいるのか。宿の娘は今日も訊く。
「あなたはいつこの町を発つんです?」
ある日、記憶障害になってしまった彼女に、明日が来たなら。その日、私は彼女と町を発つのだ。
あっ、お題は「ナンバー」「イチゴ」「GO」でお願いします。粗相でした。
「ナンバー」「イチゴ」「GO」
イチゴ世代、なんて瑞々しい響きだろう。ふっくらとはちきれそうな赤いイチゴのイメージ。
来月15歳になる私は、その言葉に魅了されていた。
教室の扉を開き、自分の机を探す。あった、いつもの場所。
でも、机の上に何かが置いてあるみたい、私はそれを見てハッとした。
ゴリラの写真。しかも、GORILLA!とローマ字が振ってある。
ヒドイ!私はそう思い泣き崩れそうになった。しかも、後からやってきた先生までも
「あら、お友達じゃない!」などと嬉しそうに厭味を言うなんて・・・・・・。
私は色黒で鼻も上向き。こんなイジメは今までにも何度かあったけれど、その都度耐えてきた。
左右の拳が小刻みに震える。今日も耐えられるだろうか・・・・・・!?
しばらくして鈍感な先生は、やっと私の気持に気づき写真をどけた。
授業が始まると、目の前に0から9までのナンバープレートが並べられた。
私は、3を探す。2+1は3よ!!もう来月で15歳だもの、これぐらいはすぐに分かる。
私は得意げに3を指差した。すると先生は笑顔になり、白衣のポケットからバナナを取り出す。
私はさっと受け取り皮を剥くと、もっしゃもっしゃとかぶりついた。
次のお題は「叢生」「しなる」「頬」でお願いします。
158 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/05 04:54
叢生 読めねえよ。
『叢生』と彼はつぶやいて、空を見上げる。
「ちくしょう、馬鹿にしやがって。意味のわかる説明しやがれ・・・」
振り向くとそこには歯科がある。
「これだから医者は嫌いなんだよ、難しい言葉ばっかりつかいやがって説明になってねえ」
頬を撫でる心地よい秋の風すら、彼にとって鬱陶しい物に感じてしまう。
少年時代、この歯並びの悪さから『デコボコガイコツ』とバカにされていた。
それを歯科医院の息子が「歯は矯正すれば治るんだよ、心配無いから」と俺に何度も言った。
励ますつもりだろうが、俺の家にはそんな金は無かった。だからいつも頭にきていた。
社会人になりその事すら忘れていたが、歯科に行ったばかりに思い出してしまった。
あいつは今でもかわっていなかった。
「はい、次の方どうぞ。あれ、石田君だよね。僕だよ、久しぶり」
なんて言って、しかも看護婦を呼びやがった。歩くたびに妖艶にしなる細い腰。
「妻だよ。美佐子、僕の学生時代の・・・」
それから後は覚えていない。だから医者は嫌いだっ。
俺は嫉妬している、そうさどうせ俺なんて彼は自嘲気味に笑った。
****************************
次のお題は「創世記」「宇宙」「糧」でお願いします。
創世記 第215章
宇宙に飛び出し他星系との交流も深まり技術力の進歩と種としての進化が起き……。
人間はとうとう世界という概念を個人の差は無く、絶対普遍の物として固定できた。
世界という言葉は本来、この世の……この宇宙のすべてを含む言葉であり人間にはあまりにも大きすぎたのだ。
蟻が巣を俯瞰できるか?自分の姿を直に見れるか?それらとは正反対の極みであれども真に世界を感じる事は人間にはできなかった。
その極みに辿り着き、とうとう人間すべてが世界を感じる事ができた途端。
それは起きた。
社会が軽んじられた。自分の触れる範囲の人間以外には皆、興味を示さなくなった。
男女の差……性の長所短所は考えられなくなった。性行為時以外、恋や愛は無価値になった。
親子という概念が喪失した。人生経験と能力以外において家族連帯は消えたのだ。
つまりは人間どころかすべては世界とだけ直通していた……、
つーか結局は「私」と「世界」だけが無条件の接触だと気付いてしまったんだ。
こうして今、僕も世界を相手に独り言を言っている。
死にした「他」のかでとてもい。
よかっまだ自分持てる。
こうて書くできのもなんとかやれたが
でもげんかい
わたs
私は黙って本を閉じた。
「なんで地球人類が死滅したんでしょう?」
「世界は何も求めてはいない、ただあるだけだからだろう?」
「接触、交流により糧を求める彼らには耐え切れなかったからですか?」
「ああ……悲劇!寂しがり屋が恋したのはクールビューティー!ってね」
「言いえて妙ですね。知識よりも経験は上か……」
第28太陽系第3惑星ユグドラシル。
北欧神話の宇宙樹から名付けられたこの星には、名前が示す通りさまざまな奇妙で
珍しい草木が叢生していた。
<ひでえジャングルだな。空が見えねえ>
宇宙服の無線を通じて、相棒が愚痴を言っている。
私は、無視してバイザーのモニタに映る大気成分をチェックしていた。
<なあ……この星にも創世記ってもんがあるんなら、神様の奴はどうして動物を
作らなかったんだろう。
俺たち『動物』は、星の寿命を越え、宇宙を支配しようなんて大それた野望を持つに
至ったのに、この星の生命は自分たちを産んだ星と寿命を等しくするのかな。
俺、草とか木って嫌いなんだよ。なんか自分だけで納得してるって感じがしてよ。
生きる糧を捜し求めてこそ人間じゃねえか。そう思わねえか? まあ、植物って
人間じゃねえけどよ……>
惑星ユグドラシルの太陽は、その寿命が尽きようとしている。
中性子検査の結果、この星には遂に動くものは見つからなかった。
我々の任務は、動かないもの──おそらくは植物──の知性体との接触だ。
モニタのアラームが、ユグドラシルで最も熱的反応が高い地域に到着したことを伝えた。
次のお題は「寂し」「言葉」「種」
古典に挑戦!
---
山里ののどけき春の日、花ははなやかに今めかし。
思ひ沈むべき種はい(くさわい)なきとき、人々、
一々に言葉に花を咲かせけることなど、今ぞ思し出づる。
空蝉(うつせみ)の世ははかなしと知るものを、かうにこそありけれ、
と夢のやうに思ひいづ。
ぬばたまの闇に君の絶えはてたまひぬるを、今は昔とて、
昔を今に成すよしもなく、ただ涙にひちて明かし暮しける。
いとはかなう暮れぬ夕暮の静かなるに、空の気色いとあはれに
ひさかたの光を出る風ぞ寂しき。
--->(念のため大意)
山里の春、桜が華やかに咲いている。
悩みの種が無いころは、人々と些細な話にも花を咲かせ
たことなどを今思い出している。
この世ははかない物だと知っていたけど、これが普通だと
夢のように考えていた。
あなたが亡くなってしまったのは昔の事だけど、昔を
取り戻せるはずも無く、ただ日々涙に暮れている。
しみじみと暮れていく静かな夕暮れの、美しい夕暮れの光から
流れる風すら寂しく感じる。
---
お題は引き続き「寂し」「言葉」「種」で。
「創世記」「宇宙」「糧」「寂し」「言葉」「種」
私は金具の入った左足を引きずりながら帰宅した。そして電燈のスイッチを引く。
薄明かりに照らされてはいるが、誰もいない家は寂しく、しいんと静まり返っている。
「『光あれ』神は言われた」創世記のこの言葉は、ビッグバン理論の冒頭に重なる。
爆発による高温・高密度の状態から膨張して今日の宇宙ができたとするが、この初めての
爆発により、世界に光が溢れたというではないか。
この理論を知った当時、私は物理学を専攻した学生だったのだが、聖書になぞり理論を
展開する学者達を鼻で笑っていた。まったく、自然現象と教義を結びつける宗教が多すぎる。
世界には多種多様な宗教宗派があるのに、なぜキリスト教だけを取り上げ、崇めるのか。
学者の風上にも置けんな、まだ若く不遜な私はそう考えていた。
転機が訪れたのは、去年の夏である。企業の研究所に勤めて10年、生活も安定し、久しぶりの
家族旅行で新潟まで高速を飛ばしていたところ、対向車線を走っていた居眠り運転のトラック
に突っこまれ、私達の車はスピンし壁に激突、炎上した。奇跡的に私だけが助かったが、
妻も息子も娘も即死だった。
私は、深く息を吐き机に腰掛ける。そして今日の糧を与えて下さった神へ感謝の祈りをささげる。
病院で1ヶ月ぶりに意識を取り戻した私の病室の机には聖書があった。
孤独と絶望の中、開いたページには今もあの時のままに栞が挟んである。
――疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。
わたしは柔和で謙遜なものだから、わたしのくびきを負い、わたしに学びなさい。そうすれば、
あなたがたは安らぎを得られる(マタイによる福音書第11章28節)――
次のお題は「赤」「青」「白」でお願いします。(これだったら簡単だと思い、選びました
>>158)
166 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/05 18:07
でも……そこに僕の小さな手が届くことはなかった。
十年前、突然 お姉さんはこの町を出た。
その時の僕は本当に幼かったから、泣いて引き止めることしか考えていなかったんだ。今でも思い出すと、少し恥ずかしい。
でもお姉さんは、泣き止むのを辛抱強く待ってくれて、優しく諭すように言った。
「言葉は願いを叶えるための、大切な種なんだよ」
「大事に育てれば芽を出して、大きな花が咲くの」
「キミがお友達が欲しいって言えば、きっとみんな一緒に遊んでくれる。友達になってくれるんだから」
「私にもね、大きな夢があるんだ」
「今こうしてキミに伝えたんだから、私は願いを叶えに行ってくるよ」
そして現在、そのお姉さんは自分の願いを叶えて、ブラウン管の中で、見知らぬ人のように見知らぬ女を演じている。
あれから、内気だった僕にも少ないながら友達が出来た。
それでも本当の気持ちを言葉に出来なかった僕は、いまだに願いを叶えられてはいない。
今、本当の気持ちを言葉に出せば、またお姉さんは帰ってきてくれるだろうか。
僕はその手をとる事ができるだろうか。
番組が変わって、無表情のキャスターがおめでたいニュースを読み上げる。
お姉さんと有名な男優が、来月結婚する。
「……寂しい」
いまさら言葉にしても、もうお姉さんは帰ってこない。
前より大きくなったこの手でも、あなたには届かない。
若葉さんと重複してしまいましたが、どうしても「寂し」「言葉」「種」で
書きたかったので書いてしまいました、ごめんなさい。
テーマはこのまま若葉さんの継続で「赤」「青」「白」でお願いします。
幼い頃、隣の家には優しいお姉さんが住んでいた。
お姉さんはいつも、友達が少なく部屋で泣いていたばかりの僕を連れ出しては遊んでくれた。
とても優しくて、綺麗で、どんな時でも皆を明るくしてくれる自慢のお姉さんは、僕の密かな憧れで。
でも……そこに僕の小さな手が届くことはなかった。
十年前、突然 お姉さんはこの町を出た。
その時の僕は本当に幼かったから、泣いて引き止めることしか考えていなかったんだ。今でも思い出すと、少し恥ずかしい。
でもお姉さんは、泣き止むのを辛抱強く待ってくれて、優しく諭すように言った。
「言葉は願いを叶えるための、大切な種なんだよ」
「大事に育てれば芽を出して、大きな花が咲くの」
「キミがお友達が欲しいって言えば、きっとみんな一緒に遊んでくれる。友達になってくれるんだから」
「私にもね、大きな夢があるんだ」
「今こうしてキミに伝えたんだから、私は願いを叶えに行ってくるよ」
そして現在、そのお姉さんは自分の願いを叶えて、ブラウン管の中で、見知らぬ人のように見知らぬ女を演じている。
出だしがおかしかったので追加訂正しました、無駄にレス消費してしまってごめんなさい……(;´Д`)
「構造色を知っていますか?」元、大手繊維会社の開発員だという触れ
込みの彼は、弱小繊維会社の社長である俺と向き合うとそう切り出した。
「夕焼けの赤や擦りガラスの白、海の青なんかが代表です。空の空気
や雲には赤い色素はないし、擦りガラスも海の水も元々は透明です。
けれど、人間の目には色がついて見える」そう言って、彼は緑がかった
不思議な青に輝く蝶の標本を示した。
「このモルフォチョウもそれと同じです。この蝶の羽根には青の色素は
無い。鱗粉の表面にある細かなひだが、この色以外の波長を吸収してし
まい、この色だけしか反射しない構造になっているため、この色に見える
のです。そして、このモルフォチョウの色を繊維の構造で再現したのがこ
の布なのです」
蝶の羽根と同じく滑らかで艶やかに輝く青い布に、俺は目を見張った。
これは売れる!そう直感した俺は、彼の布を破格の価格で買い取った
のだ。
しかし、その後、この繊維の欠陥が判明した。繊維の表面のひだで色
を再現するこの色素を持たない化学繊維は、水に濡れるとそのひだの間
に水が入り込んでしまい青い色を反射する構造を失い、元の色、つまり、
色素の無い透明になってしまうのだ。この欠陥があったからこそ、彼の
元いた会社ではこの繊維の商品化を中止したわけだ。
畜生、やられた。俺は歯噛みしながらこの損を少しでも取り戻すための
アイデアを捻り始めた。
「通常繊維と2重構造にした『水に濡れると色が変わる水着』は、かくして
大ヒット商品となったわけです」TVのインタビューに俺は営業用の笑顔で
答えた。
その裏で「水に透けるランジェリー、水鉄砲つき」がアダルトショップで
隠れた人気商品になり、「水鉄砲ランパブ」が大ブームとなったことは
おおっぴらには言えないけどな...
次のお題は「雷」「雨」「唇」でお願いします。
子供のころ、ママの匂いを嗅ぐのが大好きだった。
いつも部屋に飾ってあった白い百合の花と同じ香水。
きれいな赤いハイヒールを踏み鳴らして、町の酒場で朝までタンゴを
踊っていたママ。町中の荒くれ男がみんなママに夢中だった。
青い瞳と黒い髪は、東洋人と西洋人のハーフだからだってママはいつも
自慢してたっけ。わたしは瞳も髪もすべてパパに生き写しらしいけど。
「あんたのパパがね……死んだのよ」ある日ママはわたしの手を引いて丘の上の
大きなお屋敷に連れていった。黒いドレスに赤いハイヒールのママのこと
お屋敷の人は寄ってたかって追い出した。ママは百合の花を一輪、丘の上の
空に投げると東洋の言葉で「サヨナラ」と言った。
ママもその後すぐに死んじゃった。酒場でつまらない男に刺されて。
わたしは一人、ママのお母さんが住む、東洋の国に引き取られた。
今、この国の酒場でわたしはタンゴを踊っている。
わたしの中のママの血が、わたしを踊りに駆り立てる。
……さあ、出番だ。赤いハイヒールが光の中へ滑りこむ。
「ニューハーフのリリーでーす!!わたしのタンゴ・ショーをお楽しみ下さい!」
***
かぶりスマソ。お題は170氏の「雷」「雨」「唇」でどうぞ。
何度も唇を湿らせながら、赤く頬を染めて。
「うーん、つきあおっかー? …………」
君は冗談めかして言ってたけど、直後の「間」が何より真剣で、おかしかった。
雷雨の日、表情を青ざめて。
「あたし、駄目。あなたがいなくなったら、もう、あたし……駄目。駄目になる……」
君の言葉はいつになく重くて、黙っていることしか出来ない僕は、全身が冷たくなった。
白装束で笑う君の姿。
素敵だね。
直接は見れなかったけど。
君の友達が写メールで送ってくれたから。
君は主婦になる。僕の出番は少なくなるのかな。彼はもう、ずっと君の傍にいるのだから。
でも時々は、僕という携帯電話で話してよ。これからも、君を応援しつづけるから。
なんと「赤」「青」「白」で書いたのを、カブったから修正したのさん!
てか一行目と五行目の読点前を付け足しただけね。
次は「読」「点」「前」でお願いします。
遠くで雷の音がしている。空は今にも雨が降りそうにまっ黒だ。あたしは自転車を飛ばす。
憧れの斎藤先輩、親友の美奈子。グラウンドで一緒にいた二人を見て、あたしは
どきっとした。先輩を見上げる美奈子と美奈子を見下ろす先輩。二人ともはじめて見る笑顔。
あたしは何気ないふりをしてグラウンドに歩いていった。
「先輩」 あたしは二人に声をかけた。
「おう、山下」 二人は私の方を向いた。
「……先輩、今日熱っぽいので、部活休みませて下さい」
「智子、大丈夫?」 心配そうな美奈子に、私は無理に笑った。
その様子をどう感じのか、先輩は「わかった」とうなずいた。
「雨降りそうだし、気をつけて帰れよ」
背中に投げかけられた先輩の声。お人よしのいつもの優しい先輩の声。
美奈子と二人で「ちょっといいよね」って言い合ったこともあったっけ。
さっき振り向いた先輩の顔、つやつやの唇。美奈子の自慢、パール入りリップと
同じ色の唇。
大粒の雨が顔に落ちた。続いてざあざあと降りだす雨。髪はぐっしょり濡れ、唇から
水がしたたる。あたしは雨に濡れながらわんわん泣きながら、自転車をこぎ続けた。
かぶってます、すみません。次のお題は
>>173さんの「読」「点」「前」でお願いします。
あの時、二つの点は線になり、あの土地で一度だけクロスした。
いつも腹の探りあいをしているようでいて、実は一方的に俺の心が読まれていただけだったのか。
交差は一瞬、そして二本の直線は一度しか交わらない。絶対に。
二度目があるとすれば、それはどちらかが曲がった時だ。
少なくとも君は曲がらないだろう。
魂が凍り付いてしまう前に、願わくは、もう一度だけ――。
あっさり短めに書いてみました。
つぎは「お茶・ディスク・ライター」
「お茶」「ディスク」「ライター」
「ぶぶっ!」
噴き出された鶸色の弾け模様が、質朴な卓の上をどこか芸術的に彩る。
「大丈夫ですか、あなた」
音に驚いた妻は、ゲホゲホと咽せる私の顔を覗き込むように側へ寄り、
卓上の汚れよりもまず優しく気遣いの声を添えてくれた。
「お茶を煎れるなら十分に冷ませと、いつも言っているだろう」
だのに私の口ときたらいつもの調子のままに叱りの文句をつく。
そんな態度はやはり手厳しくあったようで、短い謝罪の言葉が返るも
俯き加減に顔を沈ませた妻の台布巾へと伸ばされる手はどこか控え目に思わせた。
湯の温度を碌に確かめもせず、不用意に口へ含んだ私も私であるのだが。
妻の心遣いに対していささか申し訳なく思うた私は
「そうだお前、以前斎藤さんに頂いたディスクがあっただろう。持って来てくれんか」
先日とある旧友より頂戴した一枚の音楽CDの存在を思い出し、それを持って来るよう頼む。
妻はクラシックが好きだった。私も好きなのだが仕事が忙しく、まだ聴いていなかったのだ。
折角の心休まる休日だ、一緒に聴くとしようか。
私は四角い箱より煙草を一本抜き取りながら、卓の上のライターに手を伸ばした。
次は「陸」「一」「心」でお願いします。
178 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/06 00:16
「陸」「一」「心」
亀を助けた彼を、乙姫は心の底からもてなした。
しかし、浦島太郎は陸に帰った。時間が詰まった葛篭を胸に。
陸の時間で、ゆうに50年は過ぎていた。
ちょうどその頃、乙姫の体に小さな異変があった。
食事の最中に催した、突然の嘔吐。明らかに妊娠の兆候だった。
「なぜ、魚類が卵でなく・・・」
声を詰まらせる父親にまっすぐ向かい、乙姫は静かにこう言った。
「魚類の子ではありません、これは陸の人間の子・・・大地の子です!」
しかし、乙姫は父親の名を決して言わない。
名を言えば浦島は捉えられ、処刑され、文字通り海の藻屑となってしまうだろう。
亀は大挙して浜辺に向かった。乙姫を懐妊させた男を探して。
しかし、そこには白髪の老人が一人いるだけであった。
乙姫は、こういう事態を既に予測していたのである。
※今日は見過ごした・・・
次のお題は:継続の「陸」「一」「心」でお願いします
ゆっくりと、港が遠ざかる。
夕日が静かに一日の労を終えようとする中、聞こえてくるのは波の音と柔らかな汽笛。
船は急き立てるように速度を増していき、陸地は夕闇に溶け出し始めた。
彼女はもう、家に着いてしまっただろうか?
「一目だけでも、会いたかったんだ」私は彼女にそう切り出した。
そして、
それだけしか言えなかった。
どうやら私の言葉では、彼女の心に僅かな波風も立てる事はできなかったらしい。
視線を戻す。
「後悔先に立たず、か」
ありふれた諺を小さく呟いて、私は溜息を漏らした。
と、その時。
「あっ!」
潮風が乱暴に私の顔を殴りつけ、帽子が名残を惜しむように島に向かって舞い上がった。
既に手は届かない。帽子に、そして――――。
「さよなら」
私はまた呟いた。
>>155と微妙に被ってるがカンベンな。
次のお題は「夜」「時間」「鏡」で。
夜 時間 鏡
りりりりん!りりりりん!また電話が鳴っている。「はい」
「……」返事はなし。またか。毎度おなじみの無言電話だ。
まだ深夜の二時だ。うす気味悪い行為だが、何かの脅迫なら無言ではないだろうし
嫌がらせにしても、心当たりもない。だいたい、70過ぎの老人に執着して
ストーカー行為をする奴もおらんだろう。
私は定年退職後、妻に「私も定年退職とさせて頂きます」と言って出ていかれ
息子夫婦にも「偏屈なお父さんとは、同居は無理です」と宣言され家族中に
見捨てられた。こんな老人を相手にしてくれるのは、有難いことかもしれない。
私は無言電話氏に語りかける。「随分遅い時間まで、起きてるんですねえ」
「こんな年寄り相手じゃ、つまらんでしょう」「……」まったく返事はない。
私は空しくなって「それじゃあ、これで失礼します。おやすみなさい」と電話を
切ろうとした。その時、電話の横の壁にかけた鏡に、白髪頭の老人の姿が映った。
携帯電話を左耳にあて、家の電話の受話器を右耳にあて、ぺこぺこお辞儀をしている
私自身の姿だった。……ボケ老人だ。完全にボケておる。何をやっておるんだ己は。
いつの間にか、ボケと突っ込みが、私の家に同居していた。
――――
次は「苦痛」「手紙」「悪意」でお願い致します。
苦痛 手紙 悪意
「クラスのお友達じゃない、変に避けるのはおかしいでしょ?」
たまみはなにも言わなかった。
美貌でもちろん男子にも人気があって、成績もいい神楽崎さんに話しかけられた時、わたしはわたしに陽があたったような気がした。たまみから離れるわけじゃない、と意識して思った。
でも、たまみか、神楽崎さんたちか、を選ぶ機会は週に7回はあって、徐々に神楽崎さんたちを選んでいた。ずらすように。
意識してそらしているたまみの視線を、痛いほど感じていた。
小学生の3年の時に激しいいじめにあった。それ以来、わたしはクラスでは一番地味なところを選んで身をおいていたのだ。その前からいままでずっと、たまみは友達だった。
たまみはあまりグループに入りたがらないので、わたしがいじめられたあとは、ほとんど二人でいた。「わたしたちはちょうどいいね」とたまみは言っていた。
夜、たまみから電話があった。
「あした神楽崎さんと登校するの?」
「・・・・・・」
「あたしといっしょに行こう。前と同じ場所に同じ時間。神楽崎さんたちと行くより10分早いわよ」
学校に着くと、玄関でわたしの腕を引いて止まった。
そして、入り口側を向いて、ふたり並んで10分待った。
神楽崎さんととりまきの三人が登校してきた。神楽崎さんはわたしと、たまみを見た。
そして、視線をおとして下駄箱に進みふたをあけた。毎日と同じく落ちてくるはずのラブレターは、いびつで細かく、ひらひらと散って落ちた。
たまみはつかつかと進んで神楽崎さんよりも早くしゃがみ、手紙の破片をかき集めてつかんだ両手を、神楽崎さんに突き出した。反射的に受けとってしまった神楽崎さんの顔はすぐに苦痛にゆがんだ。
たまみとわたしはまた並んで教室に向かい歩き出した。
彼女の横顔は悪意に満ちていたけれども、「どうしたの?」と言ってわたしに向きなおった彼女の顔は優しかった。
「整理」「いちかばちか」「現在」
「整理」「いちかばちか」「現在」
電話のベルが鳴った。ハルはフォークを置いて、グラスに注いだ
ミネラルウォーターを一口すすってから受話器を取った。
パスタの味と匂いが舌と鼻腔に残っていて、
話すのが少し躊躇われた。
「もしもし、隅田です」
数秒間待ったが、返事はなかった。その沈黙のなかでハルは
先の自分の声が残響しているのを聞いた気がした。
ハルは受話器を置いてテーブルに戻ると、パスタを平らげ、
グラスにミネラルウォーターを注ぎなおし一息に飲み干した。
ハルは自分の決断をいちかばちかにかけた種類のものだとは
考えていなかった。荷物は全部整理し終っている。
現在の整然とした部屋を見渡し、もうここに残しているものは何もないのだと
改めて感じた。
次は「雑踏」「耳鳴り」「ピアノ」でお願い致します。
駅前の雑踏の中に、僕は美也子を見つけた。彼女であるはずがない、それは分かって
いる。昨日、彼女は死んだばかりなのだから。しかし――背中までの長い髪、ピアノを
引きこなす長い指、少しすました横顔――すれ違いの一瞬、僕は慌てて振り向いたが、
交差点の人込みの中に、恋人の面影を見つけることはできなかった。
その日から、僕は度々息苦しさを覚えるようになった。特に人込みにいるとひどい。胸が
苦しくなり、耳鳴りがしてくる。昨日は駅の改札で座り込み、救急車で病院へ連れていかれる
騒ぎになった。狭い救急車の中、辛い呼吸を繰り返しながら、僕はピアノの音を聞いた気がした。
「どこが悪いのか、特に心臓に異常もありません」 首をひねりながら言う医者に、頭を
下げ、僕は病室を出る。光さす中庭――運び込まれた病院に、僕は見覚えがあった。
通り過ぎる看護婦が僕に会釈をする。間違いない。ここは美也子が入院していた病院だ。
僕の心臓がどくんと鳴った。、記憶にしたがって歩き出す。エレベータを使い、廊下を
通って個室の前に立ち、入り口を見上げる。名札は空だった。僕の体から力が抜けた。
当然だった。美也子は意識を取り戻さぬまま、先日亡くなったではないか。
あの日、警察に美也子が強盗に襲われたと聞かされた時、僕は本当に驚いた。あわてて
駆けつけた病室で、彼女は意識不明のまま寝かされていた。もし、このまま――僕は祈るような
気持ちで、毎日病室に通った。彼女は一度も目を覚まさなかった。
そう、すべて終わったのだ。あの我が儘な美也子はもういない。僕が喧嘩をして思わず殴ったら
美也子が倒れた事も、警察は気付いていない。美也子の復活も無くなった。終わった、のに――。
中庭に置かれているピアノからは自動演奏のメロディが流れていた。美也子の得意だったシュー
ベルトだな……僕は胸を押さえて倒れながら、ぼんやり考えた。看護婦の足音が近づいてきていた。
次は「菌」「朝顔」「地獄」でお願いします。
饂飩粉病だな。私は甥っ子の朝顔を見て断定した。葉に白い粉状の菌が付いている。
「朝顔、病気なの?叔父ちゃん……」
甥が自分の事のようにうろたえている。表情もこの朝顔のように苦痛を感じさせるものだ。
だが私よりこの朝顔には遠い。
私は先天性の皮膚病、アトピーなのだ。その中で極端に乾燥する症状である。
だから今の朝顔の気持ちもよく分かる。体の表面が燃えるように熱く痛いに違いない。
「ねえ、朝顔治るの?叔父ちゃん……」甥は私が黙っている事に不安を感じたのか、
さらに顔色まで悪くなってきた。しかし甥を無視して朝顔に語る。
君はどうする?己以外に恃むものも無く、誇り高く生きる「野性」のように死を待つか?
それとも……私のように「社会」なんてわけの分からない物に生かしてもらって、醜態を晒すか?
周りがどう在れ生きる事は地獄だ。常に何がしかの影響に晒されて、利用されて、奇麗事という飴を与えられて。
でもこんな事は「人間」だけしか頓着しないよなぁ。その時、朝顔が揺れた。
(その場所、そう考えられる場所が君さ。好きにやればいいんだ)
私の中に声が聞こえた、ような気がした。きっと揺れたのも感じられないくらいの微風が吹いただけだろう。
「治るよ!薬を買いに行こうか!!」
甥っ子に力強く応え彼の満面の笑みを見届けた後、兄に車を借りる旨を告げた。
次は「浴衣」「笑顔」「二人」
駅前で毎年開催されている祭りが今日で最終日だった。
姉貴がどうしても行きたいと駄々をこねる。
僕は去年姉貴のおかげで結構な恥をかいたので、行きたくなかった。
僕は一人で行ってと言ったのだが、姉貴はどうしても二人で行きたいと聞かない。
最後には泣いてしまい、とうとう僕も折れた。姉貴とはいえ女の子の涙には弱い。
それに姉貴と言っても血は…いや、これは言うべきことではなかった。失言、失言。
「分かった、行くよ」というと姉貴はたちまちキラキラ笑顔になった。
嘘泣きだったことにやっと気付いたが、「行く」と言ってしまった以上はしょうがない。
去年と同じ展開にさえならなければいいのだ。
駅前に行くと、恒例の盆踊り大会をやっていた。優勝者にはスイカ百個が贈られる。
姉貴は僕の同意も得ないで参加してしまった。去年と同じだった。
踊りも酣になって姉貴は熱が入ってきた。去年と同じだった。
そして、去年と同じように突然姉貴は自分の着ている浴衣に手をかけたのだった。
「………こんなもの着ていたら動きが鈍るわ!」
次は「流し」「十文字」「線」
「流し」「十文字」「線」
一年という月日は、こんなにも短いものだったのですね。
私は去年と同じ浴衣を着て、今年は一人で、この成瀬川の河原に来ました。
何度も見た景色。数え切れないほどの灯籠の火が、夕暮れ過ぎの川面を埋めています。
誰にも内緒で、私も灯籠を作ってきました。手に載るくらいの、小さな灯籠です。
あなたは嫌がるでしょうね。ごめんなさい。
何度となくわがままを言った私の、多分最後のわがままです。
基督教だったあなたは、灯籠流しなんて異教の習俗だと、軽蔑していたけれど。
でも毎年最後は、仕方ないなあ、と、はしゃぐ私に付き合ってくれたんですよね。
そう、去年だって、私が、どうしても行こう、って駄々をこねたから。
あなたはこの川のほとりへ来て。
そして、おぼれた子供を助けるために、雨上がりの成瀬川に飛び込んで、……。
――私は岸に近づき、浴衣の裾を濡らさないようにしながらそっと、灯籠を浮かべる。
水辺の砂に指で線を引いて十文字を書くと、あの人がしていたように私も指を組んで、
小さな光が他のたくさんの灯籠に交じって消えるまで、そのただ一点だけを見つめていた。
#次は「蝉」「茶碗」「差し込み」で。
蝉時雨のうるさい昼下がりの中仙道で、街道傍にうずくまる女性を見つけた。
「もしお女中、如何なされた」
「あ、お侍様。急に差し込みが参りまして……持病の癪でございます」
「なんと」
このような旅路で、難渋しておろう。儂は懐から酒瓶と茶碗を取り出した。
「さ、これを飲まれよ。気付け程度にはなろう」
受け取った茶碗の中身を、女性は一息に飲み干した。
「有難うございます。迂闊にも暑気に当たりまして。お蔭様で、気が楽になりました」
すっかり元気を取り戻し、何度も頭を下げながら歩み去る女性を見送ったところで、
たまの善行に気をよくした儂も懐に酒瓶を仕舞い、旅路に戻ろうとした。
と、酒瓶を収めた懐で金子の音がせぬのに気づいた。見れば、巾着が消えておる。
すわあの女性は巾着切りであったか、と気づいたときには、女性は遠く街道果ての
陽炎に消えようとしていた。
「おおいお女中お女中、それはあんまりであろう。恩を仇で報いるとはなにごとか」
儂は叫び、女性の後を追い始めた。
次のお題は「終点」「王者」「端数切捨」で。
僕と姉貴は二人して電車の中で寝込んでしまい、気がつくと終点の駅に着いていた。
姉貴は僕より早く目が覚めていたのになぜか僕を起こさなかったようだ。
駅員が来て、この列車は車庫に入るから降りてくださいと言った。
僕はすぐに立ち上がったが、姉貴はいくら駅員や僕が言っても動こうとしない。
駅員はとうとう怒って「陸の王者ライオンを連れてきてやる!」と言って走っていった。
このままでは99.99999%危険だ。10の位で端数切捨てても90%危険だ。
「姉貴、一体どうしたの!返答次第では僕だけ逃げるよ」と僕は断固とした調子で聞いた。
すると、姉貴はいきなり泣き出してしまった。
「おねしょしちゃって動けない…」
次は「電光石火」「太陽の子」「青い閃光」
189 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/08 18:52
おもしろかったからあげてやるよ
鮮烈の青い閃光、カケル!
電光石火の歯ぎしり、ススム!
猛き太陽の子、トマル!
ヤクザのベンツにも容赦しない、俺たち、特攻野郎信号チーム。
歩道を渡りたくなったらいつでも呼んでくれ!
次「所得税」と「愛」と「友情」で。
191 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/09 00:37
所得税と愛と友情
所得税か……。
払ったことねーな。
国民年金も払ったことねー。
タバコも酒もやらねーから、払ってんのは消費税だけか。
……小学生と変わんねーじゃねーか。
俺の人生に愛が足りないのは、その所為かもな。
いや、少なくとも原因の一つにはなってるだろうよ。
まてよ、でも俺、車乗ってるわ。ガソリン税払ってんじゃん。
あのベンツ燃費わりーから、結構な額じゃねーの?
まあ、自動車税は払ってねーから、威張れたもんじゃねーか。
でも、まあ、持つべきものは友達だよな。
こんな俺が生きてられるのもあんたの友情あってこそだ。
だから、税金なんて後回しにして、さっさと俺に金を返しな。
次は「リーチ」「一発」 「のみ」で。
「リィィィチ!」
そう叫んで俺は奴に手を向ける。何も言わずになすがまま、奴は俺のいいようにされる。
「いっぱぁぁぁつ!!」
ドリンク剤の宣伝を真似して叫ぶ。周りは喧しそうに顔をしかめるが奴は無表情だ。
俺のせいで懐が寒く……いや暖かくなってはいるが。
俺は回りの視線のみ気にして、奴から奪ったそれをこれまた宣伝の真似して親指だけで開けた。
「まるでお通夜みたいに静かだな……どうした?いつもみたいにウォンウォン鳴れよ」
「冷蔵庫相手に遊んでネェで仕事しろや!!」
会社に缶詰で機嫌の悪い同僚達に叱られ、僕は「玄人ごっこ」を止め、
リーチイン冷蔵庫から出したドリンク剤を飲み干すのであった。
いつもなら喉に焼け付くそれも少しだけ優しい気がした。
次は「矜持」「孤高」「彼女」
「リーチ」「一発」「のみ」
昼休み前の授業が少し早く終わったので、僕はまだ誰もいない文芸部の部室に鍵を
開けて這入ると、先週の漫画雑誌を読みながら、一人しかいない後輩を待っていた。
それは一年生の吉川愛奈である。今年わが部から唯一発行された部内誌「一番星」に
いきなり四十枚のファンタジー小説を書いた期待の星だ。三年の僕は引退が近いから、
部長の仕事を引き継ぐために吉川にいろんな話をする。その一々に「はい、先輩ー」
といって頷く二重瞼がよく動いて、僕が何処へ行くにもついてきてくれる可愛い後輩だ。
化粧もほとんど使わないようだし、余計なアクセサリーもつけない。派手なところが
無いけれど、するべき事はするし、言うべき物は言う。本当にいい子だと思っている。
と、その時、がちゃっと音を立てて部室のドアが開いた。
「先輩、見て見てー」
走ってきたのか頬を赤くして息を弾ませる吉川愛奈の髪の毛はいつもの綺麗な黒髪
ではなくて、黄色に近いような明るい茶髪になっていた。
「染めたの?」「ううん、ブリーチです」
いつもの席に坐って弁当を広げる仕種は全く変わらないのだけれど。
僕はいつのまにかこの子を自分のものみたいに思っていたことに気づいていた。
#遅レスすまそ、冴えないなあ、お題は上の「矜持」他で。
泣き出してしまった姉貴をどうすることもできず、僕はその場に立ち尽くしていた。
「ライオンを連れてきてやる!」と言って駅員が走り去ってからすでにかなりの時間が経った。
プラットホームの方にさっきの駅員と大きな動物の気配を感じた。
窓から見ると、駅員が連れていたのは雌のライオンだった。あの駅員、なかなかの通だ。
僕は戦う覚悟を決めた。僕にも男の矜持というものがある。姉貴を置いて逃げる気なんてない。
ライオンを相手にするのは初めてだった。
裏山で虎を退治したことは何回もあるが、その時はいつも得物の蛇矛を持っていた。
その蛇矛は長さが一丈八尺(4メートル強)あるので普段は持ち歩いていない。
こんなことになるとは思っていなかったから第二の得物である双剣さえ持っていなかった。
僕は素手でライオンと一対一で戦おうとしている。まるで孤高の勇者にでもなった気分だ。
ついに駅員とライオンが目の前に現れた。早速ライオンを僕らにけしかける駅員。
ライオンがこっちを睨む。来る、と思って僕は拳を固く握り締めた。
ところが、ライオンはいきなり駅員をどついて気絶させると、ゆっくりこっちへ歩いてきた。
まったく敵意を感じなかった。ライオンはごろごろ言いながら僕に頬擦りした。姉貴にもした。
僕と姉貴はほぼ同時に気付いた。彼女は五年前から行方不明になっていたうちのペットだった。
次は「救える者」「迎え撃つ」「世界の終わり」
世界の終わりについて僕らが書けることは少ない。
それは核によって荒廃し死の灰が舞っているような世界かもしれないし、常
にユーラシア大陸ぐらいの緑ガメが這いずり回っているような世界かもしれな
い。要するになんでもありなのだ。
だから世界の終わらせないためのヒーローについても、僕らが書けることと
いうのはひどく限られているのだ。それは衆議院のうちの一人かもしれないし、
あるいは僕かもしれない。世界を救えるものというのは空を飛びまわれるよう
な存在とは限らないのだ。
あらゆることが考えられる、と僕は思った。あらゆることが起こり得て、あら
ゆるニーズが生まれる。「いらない命なんて無い」というのは単なる確率論に
基づいた言葉なんだろう。多分。
僕はそこまで書くとノートを閉じ、窓の外を見た。空は真夏の昼過ぎだという
のに暗く、風は休日だというのに強かった。天気予報を見ようとしてテレビをつ
けたら二分前に北朝鮮からテポドンが日本に向けて発射されたというニュース
速報があった。
これだけは言える、と僕は思った。頭のいかれた連中のミサイルを迎え撃つ能力はも
ちろん僕にはない。つまり、僕はニーズに応えられなかったのだ。
もし今現在何年か前の僕自身に情報を伝える手段があるのなら、僕は僕にこ
う教えるだろう。
「ニーズに応えられるようにしろ。あらゆることを想像してね」
巨大な物体が絶望的な圧力と速度で俺に迫っていた。
逃げろ。自分を救える者は自分だけだ。
全力で走り出そうとした刹那、すさまじい衝撃が俺を襲った。
何だ? 何が起きた?
一瞬、俺を地面に叩きつけた巨大な物体は、俺にとどめをさすために
再び宙に舞い上がった。
ああ、これが世界の終わりなんだ。俺はここで死ぬんだ。
自然とそう納得した。
とどめの一撃を加えようと加速するそれを、俺は視線で迎え撃つ。
俺はここで死ぬ。しかしせめて、誇り高く死にたい。
俺の命を奪う凶器から、俺は目を逸らさなかった。
巨大な死神の翼が、俺の視界の全てを闇に染めた。
手に握ったスリッパをそっと除けると、今度こそゴキブリは動かなくなった。
私はほっと一息ついてから、害虫の死骸を始末するためのティッシュを
取りに行った。
かぶりかと思ったけど次のお題出てないからいいのかなと書き込みま
した。
次のお題は「絶望」「荒廃」「明るい未来」でお願いします。
「絶望」「荒廃」「明るい未来」
彼女が自殺したと聞いたとき、僕に驚きや戸惑いは殆ど無かった。
最初に思い出したのは大学時代、彼女と付き合っていた頃の何気ない会話だった。
「わたし、絶望したことが無いの」
君は未来に不安を感じないの、という僕の問いに
彼女は確信に満ちた声でそう答えた。
「例えば明日、核戦争が起きて世界が荒廃したって平気」
「いくらなんでもそれは大袈裟だよ」
「大袈裟なんかじゃないわ。未来は常に明るいものよ」
今思えばそれは、諦めの感情に近いものだったのだろう。
希望を持たないから絶望も無いのだ。
「明るい未来、か。僕の未来もそうだといいな」
「それはあなた次第ね。期待してるわ」
彼女の言う「明るい未来」に僕は今、立っているのだろうか?
そう考える度に言いようのない不安に襲われるのは、
或いは僕の未来が明るいことの証明だといえるのかもしれない。
次は「ヒグラシ」「縁側」「お隣」でお願いします。
今、縁側で俺と一緒にスイカを食ってる友人は、
鬱を電波で煮詰めて自虐で味付けしたようなどうしようもない奴で、
今日も今日とて「ヒグラシが俺に『死ね死ね死ね』と鳴いている」と、
例のパナウェーブ教祖の強制失禁発言並に被害妄想の入ったことを言っています。
そもそもあれはヒグラシじゃなくてクマゼミなんだと言っても聞く耳持たず、
とうとうお隣の岸沼さんの家に向かってスイカの皮を投げる始末。
それは岸沼さん家の庭に代々伝わる立派なセンダンの樹にとまったクマゼミをかすめて、
横にある朝顔の鉢を倒しました。
夏なんだなあと呆れ半分で実感せずにいられない光景です。
次は「コンビニ」「湯冷め」「抑圧」でお願いします。
200 :
「コンビニ」「湯冷め」「抑圧」:03/08/09 22:29
戦闘の帰りだった。俺はひとっ風呂浴びた後、コンビニに寄った。
そして自分んちのようにコンビニの冷蔵庫を開けて、冷えた発泡酒を取り出す。
どーん、と遠くでミサイルの爆発音が聞こえてきた。
概ねそれは港湾地帯を狙ったもので、俺の住んでいる近辺にはまあ、影響はない。
それにミサイルだって、迎撃隊がほぼ100%、空中で打ち落としているのだ。
それはわかってはいても、戦闘帰りの俺にとってそれは気持ちのいいものではない。
「気合い入ってんじゃねーか」
俺は湯冷めしたように冷たくなった体をさすった。
「兵隊さんですか?」
コンビニの店員は俺の並べた発泡酒と柿ピーをレジに通しながら話しかけてきた。
「まあね。パートさ。週休四日。三日向こうでドンパチやってこっちに帰ってくる。少なくとも戦争やってりゃ飯は食えるしな」
俺は職安で勧められたこの仕事に少し後悔していた。
「オレも勧められたんすよね。絶対安全な上、終わったら死ぬまで年金生活だってね。でもちょっとね」
「まあ正解なんじゃねーの? 死ぬしさ。マジで」
「はは、またあ。絶対安全なんでしょ? ほら、なんつったっけ、なんとかスーツ」
「死ぬんだよ。敵はな」
「ははっ、やだなあ。やっぱり安全なんじゃないですか」
こいつには殺しても殺しても向かってくる奴っていうのがどれだけおっかないか、わかんねえんだろうな。
俺は女も子供も銃を取り、抑圧している何かから解放されたような笑いを浮かべて死んでいく敵の顔を思い出して、背筋を震わせた。
次は「乾電池」「蛇口」「石斧」で。
今日の日本史は校外授業です。新石器時代の石器の作り方を学習しましょう。
磨製石器はほとんどが、黒曜石でできています。硬くて、それでいて一定方向に
力を加えると綺麗に割れるので、重用されました。それでは、皆さん川に入って黒
曜石を探してみましょう。
ははあ、あまりいい石がありませんね。残念、そういう日もあります。でもこの花崗
岩に埋まっている石は大きいですね。では先生が裏技を教えましょう。マンガン乾電
池の中身を、花崗岩に塗りつけます。あと三上君、向こうに蛇口があるのでバケツに
水道水を汲んできてください。……はい、ありがとうございます。後はこの石をこのバ
ケツに入れます。……ほら、綺麗に割れました。これはマンガンが水道水の塩素と反
応して2価の塩化マンガンになり、花崗岩の硫酸カルシウムを……おっと、これでは化
学の授業ですね。細かいことは、化学の井上先生に聞いてみるといいでしょう。
はい、これで黒曜石が手に入りました。よく見ると、表面に波模様がありますね?それに
沿わせるように、適当な石ころに打ちつけてみると、ご覧のとおり。削げるように割れます。
もうこれだけで、石斧の完成です。こうして手にもって使うのを、ハンドアクスと呼びます。
……もう黒曜石は見当たらないようですね。しかしせっかく外に出たのですから、新石器
時代の遺跡である大森貝塚を見学して帰りましょう。
やや嘘。突っ込み御免。
次のお題は「井戸」「関門」「ブルー」で。
元彼女の友人連主催井戸端会議、のような吊るし上げは終わった。
彼女との交際は確かに有意義なものだった。実際、物の見方や人生観は変わったし。
欲しい物があれば奪えるぐらい力をつける事。恋愛は好きになることが必要条件、
好かれる事が十分条件である事。一つの終わりは一つの始まりである事……。
そして今なら言える。原因は彼女が社交的過ぎて俺が独り者過ぎただけだということが。
彼女はたくさんたくさん友達がいた。それは俺だけの生活領域に食い込んでおり、
ほとんどの情報が彼女に筒抜けだった。煙草の銘柄を変えたことはその日にバれた。
やましい事は無い、同じ銘柄を吸う奴が多かったから変えただけだ。
コンビニでの立ち読みも筒抜けだった。読んでいたのがエロ本じゃなかった事は幸運だ。
スーパーで買った食材もダダ漏れ、そして推測された料理もぴったし。
もちろん黙ってばかりではない。彼女が喧嘩後に行く場所は天性の勘で当てまくったし、
彼女の情報屋どもを調べまくって関門を回避し続けた。
チープなスパイごっこだ。そしてジれた情報屋の流した俺二股説。
シャボン玉のような素早い破局。くそったれ……。
彼女は初めて体を許した俺よりほんのちょっと、情報屋どもに心を許した。
そして情報屋どもの中心的存在の男とくっ付いて、残ったのはブルーな馬鹿。
だから人間は嫌いなんだ!!
え、何?次?
「三本」「微笑み」「艶やか」だよ、じゃあな。
203 :
「三本」「微笑み」「艶やか」:03/08/10 22:16
珠子の三本のアホ毛はあまりにもハマっていた。
「なんー? 利夫さーん、どうしたのぉー?」
珠子は首を傾げた。アホ毛はそんな珠子の頭と一緒にるん、と揺れる。
これだよ、これ。
俺は拳を握りしめて、顔の奥からにじみでてくるにやけ笑いに耐えていた。
「変やの……ああ、また跳ねとるー。うち雨嫌いや」
珠子は台風一過のやけにくっきりとした自分の影を見て、せっかくのアホ毛を直しはじめた。
「ああっ」
「なん?」
「べ、別に」
珠子はびっくりしたような顔を微笑みに溶かして、手ぐしでアホ毛をなめしはじめた。
「なー、うち、ここの毛だけ上向くんよ。なんやすごい格好悪いやん?」
珠子は時々唾をつけながら、きょろっと眼を上に向けながらアホ毛を直していく。
「ほんまはワックスで直したいんやけど、利夫さん整髪剤とか嫌いやいうし」
ああ、もう。
「いや、俺さ、そういうのなんていうか……個性だと思う。俺はね。気にしないっていうか」
珠子はきょとんとした顔で俺を見つめて、そしてにこっと笑った。
「やってうち、もっと利夫さんに好きになって欲しいん。やから、もっと綺麗になりたいんや」
珠子は微笑みながらアホ毛を直していく。
俺はそんな珠子の紅色のほっぺがやけに艶やかで、ただ顔を横に向けて、
「そう」
としか言えなかった。
次は「サラミ」「チーズ」「虫眼鏡」
サラミが好物の愛犬“チーズについたノミを、わたしは虫眼鏡で覗いていた。
次は「ごま」、「モダン」、「ステージ」
205 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/11 00:46
「ごま」 「モダン」 「ステージ」
艶やかな照明の中で繰り広げられるモダンバレエをステージにかぶりついて
観ていたおっさんが「開けゴマ」と叫んでいた。
お題はもう一回「サラミ」「チーズ」「虫眼鏡」で。
206 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/11 02:31
「サラミ」「チーズ」「虫眼鏡」
彼はふと探究心を擽られ、虫眼鏡でチーズを覗いてみた。
正確にはそれは、チーズの様であり、納豆・豆腐傭・ヨーグルト・ヤクルトの様でもあった。
とりあえず、まずは「醗酵」のための菌が、さらに菌の中の無数の宇宙・生命体が見えた。
「わわわーっ!」
彼は思わず、虫眼鏡を取り落とす。
恐怖だった。何気無しにあけた瓶に、山の様な蛆虫を見た時の、恐怖。
切った魚の内臓から、何百もの寄生虫の塊が出てきた、あの経験。
卵から孵った、無数の蜘蛛の子が一斉に・・・
とにかく彼はビニール袋の口をしっかり結んで廃棄。記憶も一緒に廃棄できればと悔やむ。
見なければよかった。もうチーズは食べられない・・・
友人はクーラーなしの下宿で、サラミの様に干からび、愚痴っていた。
「摂氏50度・・・どうしてこんなに暑いんだ。もしや、宇宙は滅亡に向かってるのかぁ」
「知るもんか。第一、異常気象と宇宙じゃスケールが違いすぎだろ」と答える。
「神のみぞ知るか・・・でもなあ、宇宙には生命なんて腐るほどあるだろなあ、きっと」
「些細過ぎて目が届かないか、目が届くとしたら・・・ああ暑い」
※暑さで茹だって書いてます
次のお題は:「井戸」「怪物」「装置」でお願いしまふ。
寄生虫とか、蛆虫とか、そういうの使う人多いね。
もはや新鮮じゃないんだけど。
スティーブン・キングの時代でそういうのは使い古されてるでしょう。
荒涼とした大地をひた走る影があった。
影は八本の足を持ち、振動と風の抵抗を受けて、大きく丸い頭が揺れている。
波打つ足には大小の円を二つ重ねたような吸盤が、電子機器の装置のように規則的に並んでいる。
表面の皮膚はカサカサにひび割れているものの、それが巨大な蛸である事は誰の目にも明らかであった。
蛸は生まれ故郷の海ではデビルフィッシュ、海の怪物と呼ばれ忌み嫌われた。
それゆえ家族は皆殺しにされ、蛸とその仲間たちは海を追われて陸にあがった。
仲間たちは環境の変化に耐えられぬ者、天敵の餌になる者、皆死んでいった。
最後の一匹となるこの蛸は井戸から井戸へ渡り歩いて、渇きを凌いだ。
腹が減れば巨体にものを言わせて、動物、植物何でも食べた。
あれから数百年、この蛸は今も仲間を探して旅をしている。
巨大な体をくねらせ、砂埃を巻き上げて、今度はどこへ向かうのだろうか。
『ナッツ』『空調』『雲海』
私はある高山の頂上付近に一軒の山小屋を持っている。
夏休みにここで酒を飲みながら雲海を見下ろすのが私の楽しみである。
ある日気付くと、つまみのナッツに蛆虫がたかっていた。
構わず食べたが、エベレストの山頂で蛆虫がわくという事実は気になった。
確かに置いてあったのは新鮮とは言えない代物だ。
素人ほど無意味な新鮮さを求めたがる。古くなったものにこそ本当の味わいがあるのに。
それはともかく、換気が悪かったのかと思って空調設備を調べたらそこにも蛆虫がたかっていた。
これはさすがにただ事ではないと思って私は慌てて下山したが、
直後に謎の病気に冒され一週間生死の境を彷徨うことになった。
医者の話だと原因は寄生虫で、今まで誰も見たことのない種らしい。
まあ、さほど壮健でもない私がこうしてあっさり全快したのだ、人類の脅威にはなるまい。
次は、「パラサイト」「パラノイア」「パラシュート」で。
この手は創るために、この足は求めるために与えられた。
創生のカタパルトに打ち上げられ、ソロモンを下に見下ろし、
気が付けば与えられたパラシュートには穴が空いていた。
戻ろうとすれば死ぬ。でも本当はこれが望んでいたこと。
すなわち鉄筋のバベルの塔から星にパラサイト。
ゆっくり魂が腐っていく快楽に溺れながら、パラノイア達が言った。
この手は奪うために、この足は逃げるために与えられた。
次、「妥協」「精神」「二番目」
211 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/11 22:10
「妥協」「精神」「二番目」「パラサイト」「パラノイア」「パラシュート」
「わーい、まだパラサイトしてるの。情けないわぁ。」言われて彼は激怒した。
「お、お前だって、同じじゃないかー!」しかし相手はひるまない。
「私、サナダムシだからいいもん。寄生虫がパラサイトするのは当然だもん」
「そーだそーだ」と吸血ジストマ、ヒラの回虫までもが尻馬に乗る。
「もういい!」と彼はそっぽを向く。
「俺には不屈の精神がある。宿主が死ねば共倒れで妥協してるお前達とは違う。」
パラノイア一歩手前の暴論に、寄生虫もタジタジである。
「何が寄生だ、何がパラサイトだ。俺達は宿主の死を超えて、何百年と生き続けるのだ。」
嘘じゃない、彼は思った。
宿主が死んでも、自分の形が消えても、俺の内容は二番目の宿主にコピーされるのだ。
燃えた戦闘機からパラシュートで脱出する、あのパイロットの様に。
彼の名は遺伝子。
そこに記された遺伝情報は、何千年という時を超えて、リフレッシュを続けてきた。
人間というメディアへの、記録、保存、複写を何世代も繰り返しながら。
もし宿主が独身で死を迎えなかったら、彼もそうできた筈なのに。
※前すれに遅れたので、ムリヤリ6題に改造・・・せこい。
次のお題は:「ハイジャック」「綿菓子」「浴衣」でお願いします。
212 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/12 08:17
「ナッツ」「空調」「雲海」「パラサイト」「パラノイア」「パラシュート」
「妥協」「精神」「二番目」「ハイジャック」「綿菓子」「浴衣」
完璧に空調の整ったファーストクラスのシートで航空会社が用意してくれた
浴衣姿でくつろいでいた。希望すれば綿菓子やヨーヨーなどもくれるそうだ。
窓の外に広がる雲海を眺めつつ、ナッツをつまみにビールを飲んでいると
この機がハイジャックされているのをうっかり忘れてしまいそうになる。
この状況でも妥協をしないサービス精神には敬意を表したいところだ。
主犯格は物腰のやわらかなインテリジェンスを感じさせる男で、それが乗務員
たちを落ち着かせているようだ。私に言わせれば、自らの行動に絶対の自信を持ち、
全てを掌握して悦に入っている様は、ただの典型的なパラノイアに過ぎないのだが。
彼がどんな主義主張で行動しているのか知らないが、テロリストなど所詮資本主義
にパラサイトしているクズだ。飛行機一つ二つ落としたところで世界が変わるものか。
「ちょっといい?」
私はフライトアテンダントを呼び止め、二つの質問をした。
彼女の最初の問いに対する答えはノー。パラシュートは用意してくれないらしい。
二番目の質問にはイエス。東京に着いたら食事に付き合ってくれるそうだ。
やれやれ、何とか無事に着陸してくれないもんかね。
213 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/12 08:24
次は「乙女」「A型」「うさぎ」でお願い。
214 :
「乙女」「A型」「うさぎ」:03/08/12 11:23
「こいつさ、基本的に動かねーんだよな」
最近うさぎを飼いはじめた雅也は、キャベツをゲージの中のうさぎにやりながら楽しそうに呟いた。
「がさつな君が動物飼うなんて乙女ちっくなことするとは思わなかったよ」
A型だなんて信じられないくらいいい加減な雅也とそのうさぎとには、
結構うまくやれているような雰囲気さえあって、僕は意外だった。
「名前はなんていうの?」
「名前? 決めてないよ。基本的にここにはオレとこいつしかいねーしさ」
「でも可愛がってるんなら名前ぐらいつけてあげた方がいいと思うけど」
「じゃあ、マコト」
「なっ、なんで僕の名前なんだよ」
「ははっ、冗談だよ。なーマコト。ほら、もっと食べるか? がっつくなよ。可愛いなあ」
雅也は笑いながらうさぎを撫でた。
僕はなぜか顔が真っ赤になってしまってうさぎから目を逸らした。
「こいつさ、どうやってんのかわかんねーけど、夜に時々ゲージから抜け出すんだよ」
「ふーん」
「で、何処にいると思う? 起きたらさ、オレの寝てる枕のとこにいるんだよ。
寝返りうったら潰しちまうんじゃないかってハラハラするよ。なあどうすりゃいいと思う?」
「知らない。ゲージに鍵でも掛けとけばいいんじゃないの」
僕はのんきにキャベツを食べているうさぎが非道く憎らしかった。
次は「ねずみ」「秋雨」「ハム」で
「ねずみ」「秋雨」「ハム」
秋雨の中、傘も差さずに夜の町に佇んでいる、どこか憂いのある黒装束の女。
一一それが私だ。薄い鎖カタビラの胸元から夫が顔をのぞかせる。あなた愛してるわ。
夫がねずみ小僧だったと知ったのは去年のことだ。13回目の盗みで足がついた彼は
警察との死闘の末、逮捕され、奥歯に仕込んであった青酸カリで自殺をしたのだ。
その日まで、彼は模範的な夫だった。まったく泥棒の気振りも私には見せずに……。
――彼が何をしようと、私はあの人を愛していた。
夫の死後、あまりの衝撃で私は部屋に引きこもりあの人のことだけを想って
毎日、飲まず喰わずで暮らした。餓死で構わない、死ねばあの人に会えると思った。
そんなある夜、台所の排水溝からドブねずみが這い出してきたのだ。汚物を毛にまとい
悪臭のするねずみが、私の足下にすりよって来た。
冷蔵庫で干涸びたハムの切れっぱしをやると、何度も頭を下げるねずみ。
その時、私は天啓を受けたのだ! 「あなたなのね?」ねずみは「ちゅう」と1回頷いた。
――それから私はねずみを抱いて、夫の意志を継ぐべく、連続12回仕事をこなした。
「いくわよ」「ちゅう!」私達は深夜の宝石店に忍び込む。夫の形見となった
秘伝の錠前セットで楽々と侵入する。ああ……今夜はどこのビルから宝石を蒔こうか。
次は「保険」「高血圧」「低血圧」でお願いします。
低血圧の私は朝が苦手だ。朝の支度には2時間半ほどかかる。8時に出勤なら
5時半には起きる事にしている。起きたらまず顔を洗い、鏡の前に座る。
顔を洗っても頭が寝ているので、半目の能面のような状態だ。その上、眉毛が
ないので我ながらとても恐ろしい顔をしている。その後も頭が働かず、動作は
異常なほど緩慢だ。朝食をとっても同じだ。この姿を見た主人に言わせると
「目を開けてはいるが寝ながら食事をしている」ように見えるらしい。
一方主人は高血圧で、保険に入る場合にも検査で引っ掛かるほど。毎日
高血圧を抑える薬を飲んでいる。とはいっても、私のように生活に支障を
きたしている訳でもない。私の場合、医者は「ちょっと低いけど、まあ
女性はしょうがないよね」とか言うだけ。大体、高血圧を抑える薬や
食事法はよく聞くが、低血圧を上げる薬というのはあまり聞かない。
しかし、ついに低血圧の為の中国の秘薬を入手したのだ!これを飲み始めて
から、すこぶる体調がいい。今までの朝の悩みが嘘のようだ。目覚めも
スッキリ、おまけに冷え性も治るというおまけつき。すばらしい薬だ。
健康診断の結果が届いて愕然とした。再検査…。事由の項には
「血圧の急激な変化のため」とかかれている。血圧の欄をみて仰天した。
その値は今までの倍に跳ね上がっていた。
---
次のお題は「カレー」「健康」「窓」でお願いします。
健康カレーについて何かを書かなければならないと思うので、書く。
だがその前に健康という言葉そのものについて考えてもらいたい。
なにをもってして健康というのだろうか。野菜をぶち込めばそれが健康カ
レーか?と言われれば、首をひねってしまう。確かに栄養価は高くなるだろう。
だがカレーというのは米での満腹感に依存しすぎているきらいがある。
知っての通り、米というのは太りやすい食材なのだ。いくら栄養価が高かろうが、
そのせいで肥満になってもしょうがない。それに野菜がゴテゴテ乗ってしまっ
ているカレーというのは、ルーとライスの和を楽しむという、カレーが持つ存在意義
を損失してしまう。
じゃあなにが健康カレーなのか。僕はこのことを書くのをやめようと思う。
だってほら、窓から見える青空が爽やかだから。みんなも外でカレーでも食べようよ。
ストレス発散になるよ。
218 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/13 01:38
健康カレーについて何か書かねばならない謂われはないが、書く。
まずはたぬきうどんという食い物について考えて頂きたい。
あれを食べると狸になるのか?と問われれば誰しも首を横に振らざるを得ないだろう。
その事実から押し測るに健康カレーとは、食せば健康になるカレーなどではなく、
カレーそのものが健康だということではなかろうか。
そう、健康なカレー。
なにをもってしてカレーを健康だと決めるのか、難しいところだ。食い物である以上
鮮度ははずせない条件なのだが、知っての通り、カレーは一日寝かせると旨味を
増す料理なのだ。ライスは炊きたてが健康であることは明白なのだが。
はたしてなにがカレーにとっての健康なのか。もう、追求するのは諦めよう。
だってほら、窓から見える夜空に火星が妖しく輝いているから。
みんなも外でカレーをひり出そうよ。ストレス発散になるよ。
「そうか」
僕は前の二つのレスを眺め、そしてゆっくりとそう呟いた。
「僕は浅はかだった。健康カレーを追求するあまり、健康とカレーを同一のものと勘違いしてしまったんだ。
イコールにしてしまったんだ。でも違うんだ」
僕は窓から見える火星を見つめ(見事なカレー色だった)、今まで健康カレーについて書いてきた原稿を
焼き払う決心をした。
「戦争と平和」と僕は言った。「罪と罰、赤と黒。そう、健康とカレーは…」
僕はそこまで言うと、流れる涙を拭いて夜の町に繰り出した。
次は「天使」「般若」「大猿」で。
220 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/13 03:56
今日みた夢をはっきりと覚えている。
一匹の大猿が、次々と私に質問をする夢だ。
質問の内容は、私の好きな色や嫌いな場所といった
他愛も無い事だが、私の答えによって大猿の顔が
天使のようにも般若のようにも変わるのだ。
そんな夢だった。
それで、今私の目の前にいる大猿はどう解釈すればいいのだろう。
次のお題は『心霊スポット』『恋』『缶コーヒー』で。
おはよう、早いね。今日はお店の手伝いないの? そうなんだ。花屋も大変だね。
そう言えば、昨日、私が心霊スポットに行ったことは知ってるでしょ。うん、湖の近くにある廃屋ね。あそこがなんで心霊スポットになったか知ってる?
うん、恋人に騙された若い女が、集団でレイプされて殺された場所だったよね。
レイプされた女が逆に男をレイプするって、変な噂もあるけど、一般的には、男が行くと女の霊に殺されて、女が行くと悪霊にレイプされるってのが、有名だよね。
私達は、男二人女三人で行ったの。別に普通の廃屋だった。ただボロくて、少し気味が悪いだけで幽霊が出ることもなかったんだ。
だけど、一つだけ気になったことがあって、女がレイプされたって言われている部屋に、缶コーヒーと花束が置いてあったの。
あれってお供えなのかな。噂では女はコーヒーが隙だったって言うし。それでね、聞きたいことがあって、そこにおいてあった花束のことなんだけど……。
ああ、ちょっと待ってよ。そんなに急がなくたっていいじゃない。あーあ、行っちゃった。
次ぎのお題は「LAN間接続装置」「地獄」「君が代」でお願いします。
噂では女はコーヒーが隙→好き
君が代が固有名詞っぽいのでお題変更。
「地獄」「金の卵」「ネットワーク」
ラッキー4時44分と222。
すこぶる縁起がいい。
金の卵を産む鶏、買主の強欲により死亡!
シュツットガルトに流れたその至急報は、瞬く間にヨーロッパ中の金融ネット
ワークに行き渡った。ここ数年来続いていた金の価格低迷の根源が、唐突に断ち
切られたのだ。
とある貧しい農夫が黄金軽量所に持ち込んだ、黄金の鶏卵。それが1週間にわ
たり繰り返されたとき、ヨーロッパ市場全体に金融恐慌が訪れた。すべての経済の
基盤ともいうべき金の供給過多が疑われた瞬間、群集心理はこぞって利益確定売り
に転じたのである。
マリ国王カンカン・ムーサのメッカ巡礼以来という大暴落の中、世界各地の金融
市場で地獄絵図が繰り広げられた。商人だけでなく、貴族までもが首を吊り、富豪
の令嬢が体をひさいだ。
金の卵を産む鶏、それこそがヨーロッパを瀕死に導いていた源だったのだ。
シュツットガルト発の至急信の瞬間より、金だけでなくすべての金融商品が反発
に転じた。イギリスで茶葉が、フランスで小麦が、オランダでチューリップの球根
が。
奇跡の回復を遂げた諸国経済は、乱高下による闘争の時代を迎えつつあった。
次のお題は「女王」「愛」「種」で。
僕はかなり酔っ払っていた。渋谷のハチ公前の喧騒がぐるぐる回る。
「お金持ってない?」
年老いた女のホームレスが金をせびりに来た。
「ねえ、あたしねぇ、渋谷の女王なの、お金ちょうだい」
誰に言ってるんだろう。気持ち悪いほど甲高い声だ。
ポケットに突っ込んだ右手をまさぐると、今日の昼間保険屋のおばちゃんからもらった柿の種の小袋があった。
「ねえ、お金ちょうだい」
とうとう肩を揺すられた。やっぱり僕だったんだ。
ポケットの中の柿の種を渡し、精一杯優しい目をつくり
「愛してるよ」
と伝えると、その老婆は夢中で柿の種を貪りだした。
どうも照れているようだった。
「女王」「愛」「種」
「女王様なんて、できないよ」
そういって私はくすんくすんと母親の前で目に手を当てて泣き出した。
学芸会の役決めのとき、ジャンケンで負けてしまったのだ。小学6年生は毎年、
眠れる森の美女をやるのだが、白雪姫はすぐに推薦で決まってしまうのに、
敵役の女王は誰もやりたがらず中々決まらない。
・・・・・・私は気弱でおどおどしているし目だって大きくなく、女王様なんて柄ではないのに。
すると、お母さんは私を優しく抱きしめてから、何も言わずに鏡台の前へ導いた。
これから魔法をかけるよ、そうお母さんが言い杖を振る仕種をすると、白い粉を
はたいて私にお化粧を施しはじめた。次第に私の顔が私ではなくなる。
お母さんが腕を止めたとき、なんと、鏡の中には美しい女の顔があった。
鼻筋の通った私の顔は、実に化粧栄えのする顔だったのだ。
学芸会の当日、化粧を施した私にクラスの男子が息を飲んだ。
ライトアップされた舞台上に豪華なドレスを纏う私は、白雪姫を萎縮させる程の存在感があった。
私はウイスキーの入ったグラスにスティックを挿し、水を注ぎ静かに掻き回す。
あれから10年経ち、私はホステスとして夜を舞台に女王を演じている。
ただの気弱な少女から一目置かれる美女へ変貌を遂げたものの、手のひらを返したような
男子の扱いや、嫉妬を押し殺した女子の上辺だけの付き合い、本音と建前を行き来する
人間関係に疲れ、自分自身を愛しむことのできるここへ辿り着いたのである。
次のお題は、「ゆるい」「地図」「横」でお願いします。
ゆるいカーブだ。俺はスピードを落とさずに曲がる。
ハンドルに掛かるGは俺を挫こうと牙を剥くが、
そんなものは俺たちF1ドライバーにとっちゃ挨拶程度だ。
ジャブにもなりはしない。
俺たちは道を走る中で最速を目指している。
地図を片手に風景を楽しむドライブとは反極に位置する。
忙しなく……小刻みに切るハンドル。
ハンドルに備え付けのデバイスコントローラを絶えず弄る指。
強烈なGに耐え、瞬時に情報を捉える身体。
そして常に速さを求める魂。
俺の前には何者も走らせん。俺が速いのではなく他が遅いのだ!
しかし中々歯ごたえの有る奴もいるようだ。
俺の横に今、着けて来やがった!
どいつだ!?どこのチームの奴だ!
威嚇の気配を向ける俺を無視して、そいつは疾風のように駆けていった。
何者かが後に続く。がそいつに一蹴されて遥か彼方に飛んでいく。
「それら」の正体に気付くと俺は車をコースから外して止めた。
争いあっていたほかの奴らも同じく止まる。
それどころかレース場となったこの街のすべてが止まった。
そりゃそうだ。あんなモン見たら止まるわな。
「○○○○○バードォくぇっくぇっ」
最速のそいつは満足げに鳴くとどこかに行った。
それをぼろぼろになったコヨーテが追いかける。
田舎に帰るか……
次は「離別」「再会」「門出」
地面に胡坐をかいて、組んだ足の上にボロボロの地図を広げた。
先ほど苦労して進んできた獣道は地図上で適当なゆるい線が引かれている。
線の先には湿地帯があり、その中心には泥面を波立たせる大きな蚯蚓(みみず)の絵柄が書かれている。
湿地に住む魔物の噂は旅人たちの伝説の一つとして耳にしていた。
噂の真偽を吟味する暇は無いが、いざ湿地に近づいて行くと徐々に恐怖が膨らんできた。
このまま横道に入って、遠回りになるが湿地帯を迂回して安全に進むべきか。
しかし、それでは食料が足りなくなり日が落ちれば猛獣に襲われる危険が増えるだろう。
私はぬかるんだ地面を踏みしめて、目的地までの最短距離を前進する事にした。
湿地に足を踏み入れて半刻、濁った緑色の藻が浮いた泥が私の膝まで飲み込み始めた。
バランスを崩さぬよう下ばかり見て歩いていたが、辺りを闇が包み始めたので顔を上げた。
眼前に地面を根こそぎ掘り返したようなコブが四方八方絡まりあって網目模様の地上絵を形成していた。
これが湿地に住む魔物、ワームたちの移動した痕である事は想像に難くない。
途端に額に疲労とは別の汗粒が浮かび、足を進めねばならないのに泥に足を取られて身動きできない。
恐怖に飲まれて岩のように固まっていると、十メートル程先の地面がぼこりと音を立てて盛り上がった。
凍りつく私の、視線を知ってか知らずか泥土に埋もれた未知の魔物は私の方へとゆっくりと近づいてくる。
『撤退』『斑』『緑青』
姉貴が僕におつかいを頼んだ。
裏山の奥に住んでいるおばあさんのところにパンとぶどう酒を届けてほしいとのことだった。
特に忙しくもなかったので引き受けると、姉貴はにっこり笑って僕にバスケットを渡した。
玄関で靴を履いていると、姉貴が後ろから僕の頭に何かかぶせた。
横の鏡で見たら、かぶせられたのは赤ずきんだった。
「うん、ばっちり似合うよ」満足そうな姉貴。
このままではエプロンドレスでも着せられかねないので、僕は急ぎ目に家を出発した。
地図を見ながら裏山を進んでいく。
この裏山は遭難者が出るほど危険ではないが、道は結構複雑で人が迷うことはよくある。
ふと異常に気付いた。地図では今歩いているのは真っ直ぐな道のはずなのに、
今歩いている道は先がゆるいカーブになっている。
地図がおかしいんだろうと思ってそのまま歩いていくと、とうとう行き止まりになった。
引き返そうと思って振り向いたら、道が消えていた。
「…迷ったかな」思わず独り言が出た。「迷ったね」横から誰かが返事をした。
横を見ると、狼がいた。
弥太郎がいないと友から連絡を受ける。昼飯を奢ってもらうことを条件に捜索を手伝った。
とはいえ問題の場所は尋常じゃなく入り組んでいるので、そう見つかるものでもない。
しかも弥太郎は小柄な奴なのだ。案の定、昼間で捜したが見つからない。
「前金制にしよう。いま奢ってくれ、昼飯」
「金がない」
「じゃあインスタントラーメンでいい。ここで作れ」
友はしぶしぶ棚からラーメンの袋を出して、器に空けた。
袋のガサガサいう音を聞きながらもう一度周囲を見渡す。
やはり友の部屋は尋常じゃなく汚い。もう少しでゴミ屋敷になれる。
不安になって聞いてみる。
「それ、賞味期限大丈夫なのか?」
「いや、これの方はいいんだわ。水の方が危ない」
軋んだ音を立てる蛇口をひねって、友が首を傾げる。
「大分前に壊しちゃってさ、五ヶ月くらい使ってないんだわ、コレ」
と、弥太郎がそこから出てきた。
ところてんを押し出すように、緑青色の鱗に覆われた身体が蛇口から出てくる。
先日見かけた時より二周りほどでかい。
二秒後、友が叫んだ。
日に焼けて退色した壁紙に、赤い斑模様が飛び散る。
とりあえず撤退した。
来週のサザエさんは「子守歌」「半導体」「日本刀」の三本です。
>>227 「離別」「再開」「門出」
>>230 「子守唄」「半導体」「日本刀」(227とかぶった228「撤退」「斑」「緑青」の続き)
232 :
「子守唄」「半導体」「日本刀」(:03/08/14 04:33
『マイホームは、総て和室にしよう』
私の言葉に妻は頷いた。
もう5年も前の事になる。
IT業界にいる事が、私を古風なモノへと執着させるのかもしれない。
この居間からも見えるベビーベッドでは、息子が静かに寝ている。
息子を見下ろす半導体が奏でる子守唄を聴きながら。
結局、もう人間はアナログの時代に戻れない。
それは、日本刀とピストルの選択に近い。
現代人は簡単だという理由でピストルを選ぶ。
ピストルの暴発も、使いこなせるようになった日本刀の強さも知らずに。
次のお題は『クリスマス』『神社』『幻影』で。
test
『クリスマス』『神社』『幻影』
サンタクロースのアルバイトを始めた。デパートのおもちゃ売り場で
「いいコのみなさん! メリークリスマス!」と大声を張り上げて
今年おすすめの、売れ筋、在庫処分、年越し懸念商品を売りつける。
「ろくなもんじゃねえなあ」バイトが終わると、がっくりと疲れて
デパートからほど近い、路地裏の立ち飲みで、焼酎のお湯割りを呷る。
「こっちも、同じよお」しめ鯖を箸でつまんで、ぷるぷると震わせながら
隣の男が俺の小皿に、しめ鯖をわけてくれた。赤ら顔の太ったじいさんだ。
「おたくなんか、良い方よ」「そうだよ、俺等なんか飼い殺しさ」
よく見ると、床に座って、トナカイがぺちゃぺちゃと、純米酒をなめていた。
「ああ、大いなる幻影、グリーンランドに帰りてえなあ。」隣の男が溜め息をついた。
「おたくもサンタクロース?」俺が聞くと「はあ?トラウトサーモンだって?」
「いや、サンタクロースですかって、聞いたんだよ」「おまえ……煙突屋か?」
男は嫌な顔をして店を出ていった。なんだよ、煙突屋って。変な男だ。
そこで目が覚めた。こま犬にまたがったまま居眠りしていたようだ。
「三田黒臼神社」のさい銭箱の中に、小銭選り分け装置をプレゼントすると
借りていた鹿を境内に放し、俺は軽々と12月の夜空に舞い上がった。
***
次は「キンモクセイ」「シャベル」「猫」でお願いします。
僕は姉貴のおつかいで裏山に来て迷った上に狼と出逢った。
狼のいうことには「お嬢さんお逃げなさい」とのこと。僕はお嬢さんではないので逃げなくていいらしい。
狼は僕を襲う気ではないようなので、僕はおばあさんの家を探すのを再開しようとした。
「待ってくれ赤ずきん、頼みがあるんだ」と狼は言った。
僕は実際赤ずきんをかぶっていたので赤ずきんと呼ばれても仕方のないことだ。
狼は先週離別した奥さんとよりを戻したくて探しているらしい。
それで探すのを僕に手伝ってほしいそうだ。
どうせ迷っているところだったので、僕は手伝うことにした。
少し歩くと地面に何か落ちているのを見つけた。白い貝殻の小さなイヤリングだった。
狼に見せると、これは奥さんのもので、奥さんが近くにいることを意味すると喜んだ。
程なくもう一匹の狼が姿を現した。探している相手だということは言われなくても分かった。
話を聞けば、向こうもよりを戻したくて探していたそうだ。
寄り添って去っていく狼夫婦。僕は二匹の新たな門出を心から祝福した。
気が付くと僕はまた一人で、すでに自分がどの辺りにいるのか分からなくなっていた。
僕はこの裏山で最初の遭難者となる光栄に浴するかもしれない。
庭のキンモクセイ、はらはらと落ちる。木の下に黄色い花溜まりができる。
――私はそこでスケッチの手を止めた。上手く描けない。深いため息が出た。最近、夫の
帰りが毎日遅い。帰宅した後でもなんだか上の空で、携帯での電話やメールが増えた。
気になって夫の携帯をこっそり見ても、いつも履歴が消してある。無口な夫を冷静に
問い詰める自信がなくて、私はいつも言葉を飲み込む。苛々して趣味の絵にも集中できない。
結婚八年目、念願の一戸建てを買い、引っ越してきたばかりだというのに。夫は好きな
植物を庭に置き、私は前から欲しかった猫を飼いはじめた。何でこんなことに……。
私のイライラの原因は他にもあった。発情期でもないのに、猫のぴーたんの姿が三日前から
見えないのだ。夫に相談したが、もともと猫が好きでない夫は「すぐ帰ってくるよ」と気の無い返事を
しただけだった。「どこにいっちゃったんだろう」 私は泣きそうな気持ちで窓から庭を眺めていた。
ふと妙なことに気付いた。昨日はなかったはずのシャベルが庭に出ている。夫が使ったのだろうか。
しかし昨夜は私がすっかり寝込んでから、深夜二時を回って帰ってきたはずだった。
なんだか私はひどく嫌な予感がした。よく見れば、三本並んだキンモクセイの右端の根元だけ、
なぜ土が黒々と湿っているのだろう。私はふと、じゃれてひっかいたぴーたんをげんこつ付きで叱る
夫の姿を思い出していた。まさか――私は居ても立ってもいられず、庭に出てシャベルを握った。
七時、夫が帰宅した。「お帰りなさい」 私は玄関で夫を迎えた。「今日は早かったのね」
夫は「面倒な仕事が片付いたから、これからは毎日早く帰れるよ」と言い、その後で
「顔色良くないけど、大丈夫」と優しく尋ねた。私は無言で頷くと夫に抱きついた。その足元に
じゃれつくぴーたん。「ぴーたん、帰ってきてたんだね」 夫はわしゃわしゃと猫の頭をなでた。
私はその様子を微笑みながら見ていた。今夜からは夫の携帯を気にせずに済むのだ。
次は「冷夏」「クーラー」「生ビール」でお願いします。
「冷夏」「クーラー」「生ビール」
冷夏、冷夏、うーん、これに決めよう。よし、「なぎさ 冷夏」
私は銀座の売れっ子ホステスである。新しい源氏名はこれでいいだろう。
この不景気にもかかわらず、6ケタの引き抜き金を用意してくれた新店の
オーナーには感謝である。これでなんとか、前の店の売掛金は清算できる。
「タ−さん、いらっしゃい」「おお、店を移ったって言うから来てやったよ」
「うふふ。嬉しいわあ。生ビールのぬる燗でいい?」「おお、フルーツもとれや」
タ−さんこと、家電量販店社長の蛸島さんは、上客だ。いつも大金を落としてくれる。
「ところで、今度は何つー名前で出てるんだっけ?」ターさんはさり気なく
私の膝をなでなでする。「あ、お名刺がおそくなってごめんなさあい」
私が『なぎさ 冷夏』の名刺をそっと目の前に取り出すと、タ−さんの顔色が変わった。
「冷夏だとお? おい、こっちはクーラ−売った金で、銀座にきてんだ! ふざけんな!」
「いやん。ごめんなさい。じゃあタ−さんの為に、暖冬って名前にするわあ」
私は涙をこぼして、タ−さんの首にかじりつく。「泣くことないだろうがあ」
ターさんは旦那気分でにやにや笑いだす。まっく予想通り。さて、ドンぺリ開けますか。
次は「恋人」「笑止」「骨壷」でお願いします。
239 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/14 14:33
「恋人」「笑止」「骨壷」
『笑止』
男はそうつぶやいた。僕は耳を疑った。恋
人を亡くして、涙を流す僕にそう呟いたのだ。
僕は流れる涙を拭うこともせずに、そのまま
男を睨み付けた。男は意地悪く『ニヤリ』と
笑い僕にこう言った。
『何が悲しい。お前と奴は他人ではないか』
僕は男の言葉を聞きながら、ゆっくりと拳
を握りしめた。そして、その拳を振り上げよ
うとすると
『ふん。お前も骨壷に入りたいのか』
と聞こえたかと思うと、僕は腕を逆に極め
られ、そのまま床に倒され気を失った。
これが、男と僕が初めに会った時の出来事
のすべてだった。
次は、「雑誌」「編集」「デザイナー」
240 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/14 23:21
「雑誌」「編集」「デザイナー」
俺は今一体何をやっているのだ?
俺は今机に向かって何かを書いている。俺のいる部屋は薄暗くしんと静まり返って、
壁にところどころ入ったひびから水が時折ちょびちょびと流れている。
何かを考えようとしても、いっこうに何も頭に思い浮かんでこない。
何かを思い出そうとしても、決して何かの映像の断片さえも浮かんでくることはない。
しかしさっきから、デザイナー、デザイナー、と頭の中に誰かの声がこだましている。
手は勝手に紙の上にペンを走らせて、書き疲れて休めようとしてもどうにも止まらない。
おれは、必死に、今自分が何を書いているのかを見ようとした。なぜか猛烈に
嫌な予感がしたからだ。ぎこちなく、首を、下に向けようとする。そのたびに激痛が走る。
目の玉が痛くなるまで下を見つつ、俺は再度首を下に向けようと集中する。もはや俺の体では
なくなった俺の体は、しかしわずかではあるがようやく自分の要求するとおりに動いてくれた。
興奮を押し殺しつつ、ぐっ、と下をのぞき込む。一枚の大判の紙が見える。その向こうには、
かなりの量の紙がきっちりと束ねてある。そしてその一番上に、「雑誌用」と書かれた貼り紙がしてあった。
それを見た瞬間、俺は何かを思いだした気がした。しかし何かに吸い込まれるような
感覚を覚えた後、俺の思考はプツリ、と途切れた。
机に突っ伏して動くことのない俺の横で、小さいランプが、ぷぁんぷぁんと点灯していた。
そのランプにはうすぼんやりと黒く「デザイン雑誌編集者 58歳」という文字が印刷されていた。
次は、「喧嘩腰」「あめんぼ」「風まかせ」でお願い。
241 :
「雑誌」「編集」「デザイナー」:03/08/14 23:33
仕事が見つかんねぇ。面接ではいい感じなのに結果はいつもうすっぺらい紙に
「今回はご縁がなかったことで」だ。電車の中で漫画ばかり読んでるやつらに
仕事があって俺にないのがむかつく。探し方がよくないのか?ファッション雑誌の
編集とか洋服のデザイナーとか。経験もスキルもねぇのに、こんな、一見、華やか
そうなっていうかおしゃれっぽい仕事に目が行っちゃう俺はやっぱ馬鹿なのか?
っていうかいつまでもぶらぶらしてられねえんだよな。貯金もあんまり残ってないし。
父親が女作って出てってから母親が泣きながら何度も電話かけてくるし。母親も精神的に
参ってんのにさらに息子が無職なんてなぁ。俺も胸がいてーよ。でもなあ・・・。
とりあえずバイトって手もあっけど俺と同年代の奴らが正社員でボーナスもらってると
考えるとさ。とにかく動かねえと。先が見えねえ。社会が怖え。腹へった。
「おしゃれ」「靴」「高卒」
すいません、かぶりました。
お題は240さんのでおねがいします。
「喧嘩腰」「あめんぼ」「風まかせ」
夏。アスファルトは照り返しでユラユラと歪み、溶けて灰色の水
面に変わる。人は駅から際限なく吐き出され、滲んだ視界の色合い
を万華鏡のように変えていく。俺はその中をスイスイ滑り、落ちて
きた羽虫のような女達の生き血を啜る。
女が欲しいところなら何でも引き受けた。AVメーカー、風俗店、
キャバレー、果ては接待のコンパニオンまで。
落ちる女はすぐにわかる。奴らは一見風まかせにふらふらと漂っ
ている。そんな自分が好きだと言う。だが本当は、紐の端っこを誰
かに持っていてもらわないと風船みたいにどこにも行き場がないこ
とを良く知ってる。だからその場では喧嘩腰で別れても、落ちる奴
は必ず後で手応えが返ってくる。
今日もそんな女がやって来た。近頃にない上玉だ。こいつはビジ
ネス抜きにする。今そう決めた。俺は彼女の氷水に錠剤を一つ落と
し込む。そして自分の奴にも。致死量の青酸だ。
俺はこの街という水たまりから抜けられないあめんぼだ。
水面にへばりつくのはもうやめにする。
#16行。久しぶりだとなかなかうまく行かんな。
#次のお題は
>>241の「おしゃれ」「靴」「高卒」 をサルベージ。
244 :
「おしゃれ」「靴」「高卒」:03/08/15 01:47
お昼休み、会社の同僚の二人は新しく出来た定食屋に食べにいくとかで、お弁当の私は一人会社に残って電話番をしていた。
「すいませーん、事務の面接に来たんですけど。ようちゃ、洋介、あの江島さんの紹介で」
その子は会社のドアを開けるなり、中の私におずおずと声を掛けた。
私はその子の靴が妙に赤いのにまず目がいった。服も会社に面接にきたにしては妙に可愛らしかった。
高卒だという彼女は社長の、といっても社長と社員三人のデザイン事務所なのだが、いつものごとくその社長の知り合いだということだった。
「ああ、はい。日田瑞奈さんだっけ? じゃあこっちに」
「はい」
素直な子のようだった。私は少し安心した。社長は結構手ぐせが悪く、その上妙に面倒見のいいところがある。
でもまあ、趣味は悪くないと思う。私はね。
「来週から来れるんだっけ? ごめんね、まだ契約書とかないみたいだから不安かもしれないけれど、でもきちんとお給料は出るから」
「はい」
その時、定食屋に食べにいっていた二人が事務所に帰ってきた。
「ただいま。吉乃ってとこ、結構よかったわよ。あら? その子新しい子?」
「日田瑞奈です。どうかよろしくおねがいします」
「こちらこそ。ねえ19歳だっけ? 若いわね」
「あは……あの、皆さんおしゃれで綺麗な人ばかりなので、緊張してます」
私たち三人は顔を見合わせて、思わず吹き出した。
「だって、ねえ?」
「洋介さんの女好きにも困ったものよね」
「え? それってあの」
「ようこそ江島事務所へ。瑞奈ちゃん」
私たちは先輩の余裕を見せながら、瑞奈ちゃんに笑いかけた。
次は「勾玉」「たこ糸」「プリンタ」
245 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/15 02:00
「勾玉」「たこ糸」「プリンタ」
秋葉原の特売価格で買ってきたプリンタが、
どうも、ガタガタする。
排出部が、勝手に、バカッと、開いてしまう。
何回押さえても、だめだ。
ガムテープで固定しようとしたが、それだとだんだん粘着部のゴミがついて汚くなる。
だから、たこ糸を巻いて、固定することにした。
だが、まだ問題がある。
どうも、オイルの臭いが漂うのだ。
型が古いプリンタだから、これは、在庫処分のいい加減なものなのかな。
だから、どこか、不必要に、こすれているんだろう。
そう思って、一応は納得した。
だが、翌日、突然私はある代理店から入ってきたレポートを、
大量に印刷する羽目になった。
2000ページもある。
冗談じゃない。
もう、部屋の中は、石油をまいたような臭いが、すごい。
私は、匂玉を口にあてがい、涙を流しながらひたすら印刷しつづけた。
次は
「辞書」「電球」「ギター」
(簡単かな?)
246 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/15 02:07
2ちゃんねるの皆様、おはよう、こんにちわ、今晩は。
今日は 8月15日 終戦記念日です。
日本はかつておっきな戦争をして、負けました。
政治信条を抜きにして、この戦争に殉じた我々日本人の先人達に、
ほんの少しの黙祷をお願い致します。
あの戦争では間違いも多かったでしょうが、我々日本の立場と言うのもありました。
そこに命をかけて戦った多くの誇り高き日本人がいます。
彼らの命の犠牲の上で、現在の我々が成り立っている事を忘れてはいけません。
貴方が行う事は非常に単純で簡潔です。
両手を合わせ目を閉じ、少しだけ頭を下げ、このパソコン画面に向かったままでも結構です。
ほんの少しだけ、黙祷をお願い致します。
先人達に感謝を、そしてこれからの未来は我々が築き上げるのだと。
ありがとう。
>>246 あんた、自分がどこの何者か、きちんと宣言しろよ。
語っていることの大きさから考えて、名も無い物書き志望、では済まされないんだぜ。
遊びじゃないんだよ、戦争だの犠牲だのってのは。
その黙祷を依頼するからには、それなりのオーソリティなんだろうな?
もし学会とかの関係者だったらハッ倒すぜ。
煙草の火を借りた恩を忘れたことはなかった。十八で予備校に通ったいたころだ。
あれから六年。向こうは俺を忘れたかも知れないが、俺は忘れない。
未成年で、しかも大学にも入れていない。半端な男が、いや少年が、安い煙草をふか
していきがっていたころの思い出が愛しいだけかもしれない。肩こりに耐えて辞書を
まくり、眠気をかみ締めて数式に取り組んだ。火を貸してくれた男は、結局、大学には
入らなかった。バンドを組んでギターを担当しており、予備校よりもスタジオでの練習や
ライブ、それにアルバイトに精を出しているようだった。予備校講師は毎年なじみの警句
なのだろう「夢に向かう助走期間だ、がんばれ」と繰り返した。がんばれと。
十代の少年にとってギターをもった男が格好良く映らないはずがなかったから、俺は
あいつに憧れていた。今だから認めることのできる事実だ。チケットを買ってくれと頼ま
れて何枚か引き受けたこともある。地方のライブハウスの電球はちかちかと古ぼけて、
俺の垢抜けないジャンパーを隠してくれた。
あいつも、あのライブハウスも、母の選んだ俺のジャンパーも、今はどうなっているの
か。俺は、あの頃の――予備校講師が繰り返した生き方をしている、と言ったら軽蔑さ
れるだろうか?もちろん、大学を辞めてバンドなんてやっていないさ。あの時代は確かに
助走期間だったし、今でも辞書をまくり、数式に取り組んでいる。たぶん、ずっとそうして
いくだろう。たまには論文を書いて、音楽も聴くよ。
次は「ベイビー」「ポップコーン」「紅葉」
250 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/15 02:24
部屋の電球が切れたので、取り替えることにしたのだが
脚立が見当たらない。というか初めからそんなものない。
そこで、電話帳と数冊の辞書を積み重ねて踏み台とした。
かなり不安定な足場で、乗ってみるとふらふらとする。
危ういなと思いつつ、上を向いて電球に手を伸ばした。
その途端に案の定足場は崩れ、私は転倒した。
咄嗟に手をついたのだが、それがいけなかった。
激しい痛みを感じた私は思わず呻いた。
「ごっせづ、ギター」
速攻
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━( ゚)━━( )━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )━━(゚∀゚)━━━ !!!!
252 :
ベイビー・ポップコーン・紅葉:03/08/15 02:34
「ベイビー」「ポップコーン」「紅葉」
デイブたちは、約束の紅葉の木の下で、待っていた。
ポップコーンをほおばりながら、
今日のカブスの先発投手はウッドじゃないか、いやウッドは肩が復調していない、
などと、がやがやと話し込んでいた。
俺が声をかけると、彼らは一瞬、クスクスと笑い合い、それから奇妙な目配せ。
突然、ワッ、と俺に襲いかかってきた。
何するんだ!
俺が怒鳴ると、デイブたちは、いまやもうゲラゲラと笑いながら、俺を押し倒し、
「さあ、これでも食らえ、ベイビー!」
などとわめきながら俺の顔面に強烈なパンチをふりおろした。
鼻血が、ぶっ、と出た。
バタバタと暴れる俺を、さらに何発も、代わる代わる、好きなだけ殴って、
デイブたちは、走り去っていった。
俺は、ぼんやりと、空を眺めていた。
やがて、カブスの試合が始まったのを、通行人のラジオから悟った。
俺は突然起きあがって、リグレー・フィールドに駆け込んだ。
内野席に着くと、レフト側の席にデイブたちが陣取って、何かわめいているのが見えた。
俺は、ジャンパーの内ポケットに隠していた、叔父の写真を取り出していた。
さっき、デイブたちに見せたかった、かつての野球選手だった叔父の写真。
俺がウソつきじゃないってことを、いつか必ず、やつらにも見せつけてやるんだ。
すごいファウルボールが俺のところに飛んできた。
俺はそれを座席から跳びあがって、取った。
かすかに、デイブたちの「ワーオ、ベイビー!」というわめき声が聞えたような気がした。
→ 次は「夢」「車輪」「スプレー」
僕は姉貴のおつかいの途中で道に迷っている。
地図はいつの間にか紛失していた。
辺りに人の気配は全くない。足跡も車輪の跡も見当たらない。
この辺りは長いこと人が足を踏み入れてないらしい。
急に疲れが出て歩けなくなった。少し休んで周りの風景でも眺めることにした。
ふと奇妙な感覚に襲われた。なぜかこの風景には見覚えがある。
実際にこんな場所に来たことはないはずだった。なのに、一体なぜだろう…。
…そうだ、夢だ。ここは最近よく見る夢と同じ風景なんだ。
それは奇妙な夢だ。その夢には姉貴が出てくる。
僕は姉貴を聞いたこともない名で呼んでいる。
そして、姉貴も僕を聞いたことのない名で呼んでいる。
最後に、お互いに糸の出るスプレーをかけ合って夢は終わる。
姉貴に一度内容を話してみたら、それは前世の記憶よ、と言った。
一体、前世で僕と姉貴はどんな関係だったのだろう。
あれこれ考えているうちに疲れがずいぶん取れた。
さて出発しよう、と立ち上がろうとして、いつの間にか僕は手に何か持っていることに気付いた。
糸の出るスプレーだった。
次は「ガーネット」「ベリル」「真珠」
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
255 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/15 16:14
唐揚
おいヤマザキ。
何が山崎パンだ、おまえ本当に訴えられるぞ。
バカ
257 :
「ガーネット」「ベリル」「真珠」:03/08/16 02:32
クリソベリルを買うことになった。
間違ってもクリンベリルではない。まあ貧乏人に言えばエメラルドの仲間だ、ととりあえず言っておくことにしよう。
「ねえ、見て。これほら、色が変わるでしょ?」
彼女は言う。高いんだそうだ。知ったことか、と俺は思う。
「カードで払えるかな?」
「お客様、このカードでは少々限度が……」
「あそ」
俺は親父のカードを出した。アメックスのプラチナだ。
色の変わる宝石を買うんだ、と言ったとたん親父が握らせたものだった。
「少々お待ち下さいませ」
店員はカードを押し抱いていそいそと下っていく。
「ねえ見て、綺麗でしょ。私ね、これと真珠のブレスレッドのくみあわせがいいと思うの」
「ああそうだねおれもそうおもうよ」
俺は適当な言葉を返す。
どうせ聞いちゃいないのだ。この女は値段にしか興味がない。綺麗とかなんとかじゃなく、札束を身に付けているのが趣味なのだ。
「あなたは何か買わないの?」
「ああ、俺は……これがいいな」
俺がガーネットのタイピンを差すと、彼女はつまらなさそうな顔をした。
「あなたっていつもそうね。そんなにザクロ石が好きなの? 安物じゃない」
「馬鹿。こりゃ縁起のいい石なんだよ。友愛とか真実とか愛情とか」
「へえ。そう」
彼女はそんな事でお腹が膨れるとでも思ってるの、と言いそうな顔をした。
次は「金持ち」「紙屑」「電子」で
258 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/16 03:26
990「お言葉ですが、排泄をしない人間などいやしませんでしょう。彼女は多少の
好き嫌いはありますが、我々と同じものを摂食しています」
991「しかし、そのための器官は有しておるのだろう?報告書にはそう記載されているぞ」
992「それなんですが、実は、トイレからある物質が検出されましてね」
993「何が見つかったの?勿体つけんな、早く言え」
994「ガーネットです。分析の結果間違いありませんでした。真珠の涙ならぬガーネットの
便です。彼女はガーネットを排泄しているんです。まさに天使じゃありませんか!」
995「やれやれ、何を言い出すかと思えば。馬鹿馬鹿しい。出来ればエメラルドにして
ほしいね。うちのワイフはベリル系が好きなんだよ。」
996「では、どう説明するんです?彼女はウンコをしてないんですよ、この半年」
997「してるよ。こっそり。そして自分で食っちまってるんだ」
998「なかなか結論でないね」
999「デリケートな問題だからね」
1000「1000。」
このスレッドは1000を超えました。もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
迷うのが唐突だったように、そこから抜け出すのも唐突だった。
僕はいつの間にか持っていたスプレーのノズルを押した。すると爆発して視界が煙に包まれた。
やがて煙が晴れると、目の前に小さな家があった。
家の前には一人のおばあさんがいた。どうやらここが目的地らしい。
僕は届け物のバスケットを渡した。おばあさんは中で休んでお行き、と言った。
姉貴が心配するし疲れてないからいいですと言ったら、強引に家に引きずり込まれてしまった。
家の中は高価な家具でいっぱいだった。このおばあさんは意外と金持ちなのかもしれない。
掃除も行き届いている。紙くず一つ落ちていない。趣味のよさが覗えた。
おばあさんは僕を家中引きずりまわしたが、それ以上のことは何もせず外に出て開放してくれた。
どうやらおばあさんは僕に家の中を見せたかっただけらしい。
僕の帰り際におばあさんは電子ジャーをくれた。パンとぶどう酒のお礼の品らしい。
お礼を言って、僕はおばあさんと別れた。
数歩歩いて、ふと何かが気になって振り返った。
おばあさんはもういなかった。あの小さな家も消えていた。
「かささぎ 予言する 鳥刺し男」
260 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/16 06:59
「かささぎ 予言する 鳥刺し男」
「鳥刺し」男がぽつりとつぶやいた。
「え?何?」と僕は聞き返した。鳥刺しとはあまりに唐突な言葉だ。
「お前のその手だよ。筋 塞いで角を引いて使う戦法。俺の手には効くんだよ。
何が初心者だよ、この三味野郎が。もう、手加減しねえからな」
男はタバコをベンチに押し付けて消すと、腕を組んで盤を睨んだ。
「将棋始めたのは最近だよ、ほんとに。でも、鳥刺しか。いいね、なんか風情
があるよ。じゃあさ、そっちの戦法は差し詰め泥棒かささぎだね」と僕は言った。
「あん?そんなの聞いたことねえぞ。こっちゃあただの振り飛車だ」
男はパチリと歩を上げた。手が駒からゆっくりと離れたところから男の迷いが読み取れる。
「いや、そのうるさそうな飛車がかささぎだよ。かささぎはからすみたいに賢い鳥で、
僕の故郷じゃ白がらすって呼ぶくらいなんだ」
「ふん、くだらねえ。断言するが、その呼び名は流行らねえ」
男は盤から目を離さずに、言い捨てた。
「そう? じゃ、僕は予言するよ。十七手先で僕が勝っちゃうよ」と僕はにやにやして言った。
男は「ふん」と言ったきり、結局、長考の旅路から帰ってはこなかった。
次は「黒幕」「シュークリーム」「復縁」
262 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/16 13:05
取り調べ室。
デブな刑事が息を切らせている。
「おら、さっさと吐けよ。こっちも手がいてえんだよ。あんま殴らせんなよ、な?」
目の前の男はまぶたを腫らし鼻血を拭こうともしていない。白いシャツに赤く点になっている。
「・・・ある女に借金があって、ちょっと返済が滞っていたんです。それで困っていたら
気に食わない女がいるからそいつを殺してくれればチャラにしてあげるよって言われて。それで・・・」
デブは煙草に火を点け、言った。
「じゃあ、復縁を断られたから宮路さんを殺したってのは嘘か。ああ?」
男は目を閉じて下を向いている。震える声ではい、すいませんと返事した。
「誰なんだ。その黒幕は。あ?おまえが借金してた女だよ。名前とか職業は」
男はデブの目を見て言った。
「寺沢・・・。寺沢美香子。シュークリーム屋で働いてます」
デブはえっ、と声をあげた。一瞬頭が真っ白になったが気付くと男にとびかかっていた。
すぐに後輩たちが暴れる寺沢を取り押さえ、取調室から放り出した。
その間、男はじっと寺沢の目を見つめていた。
「心臓」「詩集」「緑色」で。
263 :
「心臓」「詩集」「緑色」:03/08/16 14:08
追い詰められた貧相な顔の男は海辺まで逃げてきた。
うまく心臓を狙って刺したのだが、厚い詩集に阻まれたのだ。
よれた薄いコートの襟は汗で黒く滲んでいる。
雲間から射しこむ光は空気を緑色に染めている。
立ち止まり屈んで息を整えた男は後ろをふりかえり追っ手が見えないのを確認する。
男は渚に向かっては懸命に顔を洗いだす。
すると厚く塗られた化粧は剥げて、違った雰囲気の顔がまた現れる。
ずっと精悍で若くなった印象を受ける。
コートに隠されたタオルで顔を拭うと、コートを脱いでは近くの茂みに隠す。
「やりなおしだ」
男はつぶやくとまた浜辺を歩きだす。
今度はゆっくりとした速度で。
次は「モノクローム」「いとこ」「左利き」でお願いします。
中央線沿いの寂れた駅にひっそり佇む小さな喫茶店。
流れるシャンソンに二人耳を寄せた暖かい日に飲んだ
あの甘いコーヒーも今はもうモノクロームの果てにこぼれて消えた。
太陽のまぶしい季節に横浜近くの教会で挙げた結婚式。
「佐織のいとこ?かわいいなー、結婚したいよ」って冗談で言った俺の頬をはたいて温かい
涙流したおまえは今はもう声も聞えない。
左利きのおまえは指輪を右指にはめて、無邪気な顔で、でも少し照れながら
「愛してるよ」って暖かい冬の木漏れ日の中ではしゃいでたね。
今はもうモノクローム。雨の中で冷たいからだが震えている。
次は耳かき、ライター、携帯電話
着信音が鳴り響き、手探りで携帯電話を手に取った。
頭を抱えながら上体を起こし、ベッドの上であぐらを掻く。寝ぼけ眼で誰からの
電話か見ていなかった。「あい、もしもし?」相手がなにも言わないことに気づいたのは、
それを三度、繰り返したときだ。こちらも無言で電話を切り、ベッドから降りて洗面台に向かった。
朝食を済ませて煙草に手を伸ばしたが、いつも一緒に据えているはずのライターが見当たらない。
あたりを見回し、着替えてないパジャマの胸ポケットに手を当てたが、どこにもない。
ふと、テレビの上の写真立てに目を止めた。男と肩を組んで幸せそうに微笑む自分の姿。
ライターは彼に買ってもらったものだった。
白い煙草をいっぽんくわえたまま溜め息をつき、それをつまんでボックスに戻した。
テレビの前を通るとき、その写真立ても伏せた。
玄関のドアが開いていることに気づいたのはすでにスーツを着込み、ヒールに足を通したときだった。
チェーンまで開いている。不審に思いながらも廊下に出て、鍵をかけた。ドアに背を向けてエレベーター
に向かっているとき、なにかの気配に振り向いた。鍵をかけたはずのドアが開き、
男が首を出していた。彼だった。
とっさに足がエレベーターに駆け出した。ボタンを押すと停まっていたケージが開いた。
間にあわなかった。彼の手が閉まる直前差し込まれ、肩からかけたバッグをつかまれた。中身が
散乱し、小筆やリップ、ちいさな耳かきまでが転がった。目を剥いた彼が、息を荒らしながら
乗り込んでくる。その息がかかった。生暖かかった。彼にスーツの襟元をつかまれた。
首筋に据えられたのは冷たい包丁だった。
次は「ドブネズミ」「モヒカン」「領収書」で頼んまっせ。
266 :
「ドブネズミ」「モヒカン」「領収書」:03/08/16 18:51
室正夫は自転車で雨に濡れる夜道をひた走っていた。パンクにかぶれているので髪型は
モヒカン。雨のせいでトサカが情けなく額に張りついている。目的地は閉鎖されたトンネル。
そこで神田と待ち合わせているのだ。用件はアシッドの売上金の受け渡し。で、分け前をもらう。
初めての取引相手で不安だったが「分け前3割」の言葉につられた。
「やべっ、遅刻だ」室はそう呟いて一層力強くペダルを踏んだ。
息を切らしながら室がトンネルに入っていくと、暗闇の中に小さな火が見えた。
その火の元まで歩いていく。トンネル内部はひどくじめじめしている。
「おせーぞ、パンクス」神田が煙を吐き出しながら言った。足元には吸殻がいくつも散らばっている。
室はすいません、と頭を下げ、金を渡す。神田は無言で金を受け取り、枚数を数え始めた。
室はなんとなく手持ち無沙汰になり辺りをきょろきょろと見まわしている。足元を巨大なドブネズミが走り去った。
水のしたたる音。「オッケー」と神田が呟き金を上着の内ポケットに入れ、ほら、と室の取り分を出した。
「あのぉ」室が言う。あ?と神田は眉をひそめた。
「4割もらえないですかね?サツとかに結構目ぇ付けられて危なかったんですよ。
俺も、まあ、やばい橋渡ってるんでぇ。だめっすかね?」
神田は何度か小さく頷いたあと「いいよ。あ、領収証忘れてたな」と言い内ポケットに手をいれた。
出てきた手にナイフが握られているのを見て、室はわっ、と叫んだがすぐに右胸を刺された。
動けなくなった後も4回腹を刺され、その場に崩れ落ちた。
「きなこ」「リュックサック」「野良猫」で。
「きなこ」「リュックサック」「野良猫」
「あんた、いくつ?」ケバイ化粧でマスカラおばけの女が話しかけてきた。
「16。」あたしがマックのストローを噛みながら、かったるく返事をすると
「うそ。13でしょ?中1じゃねーの?」とマスカラ女はガンを飛ばしてきた。
渋谷にきて3ヶ月。プチ家出してきた頃は、荷物もビトンのバックだけだったけど
今は着替えや化粧品があるから109でもらったビニール袋が大活躍してる。
でも、家出クサいのがモロばれかも。こういう奴にからまれるし。
「なんで?あんたいくつ?」あたしはガンを切り返して、金髪の前髪をかきあげる。
「へへ。あたし13。タメじゃん?」マスカラ女は虫歯だらけの前歯を見せて
にやっと笑った。なんだ。タメか。あたしはホッとしてマスカラ女と友達になった。
「これ、あたしの子供」マスカラ女は、リュックサックから薄茶色のかたまりを
取り出すとマックのテーブルの上にのせた。痩せてて目ヤニだらけの子猫ちゃんだ。
「なんて名前?」「きなこ。きな粉みたいな色してんじゃん?」嬉しそうに言う。
「ちがうよ。あんたの名前」私がマスカラ女に聞くと、真っ赤になって下をむいた。
「さとこ」「あたし良美」野良猫みたいに生きてても名前があるんだ、あたしたち。
***
次は「傷」「場末」「熱」でどうぞ。
269 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/16 21:18
270 :
「傷」「場末」「熱」:03/08/16 22:55
些細な事で口論となり美和が「もう別れる。帰ってこないから」と家を飛び出して
行ってから1週間。まったく音沙汰がねえ。携帯も通じないから連絡の取りようがない。
実家にも親しい友人宅にもいねえっていうから万事休す。最初はこりゃ気楽だってんで
1人でAVを見たり夜更かししたりもしてたけど、さすがに、その、寂しいっていうか。
美和の代わりに枕を抱きしめて眠ったりさ。で、朝、隣を見ても誰もいない。寂しい。
そのうち、あきらめを通り越してどうでもよくなってきてさ。湿っぽいのも嫌だから
酒浸り。仕事帰りにはかならず泥酔して死んだようにベッドに倒れこんでさ。
昨日なんか最悪。いかにも場末って感じのこきたねえ居酒屋でちびちびやってたら
隣のハゲがしつこく絡んでくるからちょっと小突いたんだ。そしたらそれをきっかけに
大乱闘。で、頭を瓶のようなもので殴られて気を失った。休み前だからって調子に乗りすぎた。
頭の傷が超いてえ。腫れて熱を持ってる。ずきずきする。ってなんで額に濡れタオルが載ってんだ?
キッチンでなにやら音がする。誰だ?と思い寝室を這い出てキッチンへ行くとそこには
よく見なれた小さな背中があった。おれは力いっぱい抱きしめたい衝動をこらえ、ちょっと
驚かせてやろうと思い、そろそろと近づいていった。
「花壇」「狂犬病」「納豆」
271 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/16 22:56
272 :
「花壇」「狂犬病」「納豆」:03/08/17 01:30
明暗・・・ここでは上と下。すがるように願った。
残念ながら、暗がりに花壇。溶け込んでく。
俺からもはたからも評価はまさに「狂・犬・病」
もぉしかすると、納豆は悪魔の食べ物かもしれないぜ。
PLAY! Bye… after?待ってた、長い橋。再会。夜。
とりあえず、電灯だって壁のようなもん。
すぐ・・・!また夜、ガラス張りのトラック。
逆さ文字で「I LOVE YOU」・・・いくつまで・・・?。
どのみち納豆、また今日も。
今は?知らない奴が持ってた手紙。
(奇跡的だ!)(信じられない!)おーおー学者達。
俺にとっちゃ別のパターン「麻の服を着ています。」
頭越しの顔と外れた仮面、声、なみだ・・・?
生きてる花が好きなんて、そんなの奇跡かまやかしさ。
締め付ける、暗がりに花壇。思い出と同じぐらい現実。
さよならはあの時。納豆は変わらない。そのまんま now…
「小便」「オーリング」「いましかない!」
弟がおつかいから帰ってこない。もう午後4時だった。わたしは心配になって玄関に出て待っていた。
たとえおしっこがしたくなっても、そしてそのまま小便少女になろうとも、
弟が帰るまでわたしはここから一歩も動かないと決めた。
午後6時になった。弟はまだ帰ってこない。
心配になったわたしは弟が無事かどうかオーリング占いをした。
弟は無事なようだった。ひとまず安心。ただ…おしっこしたくなってきた。
午後8時になった。弟はまだ帰ってこない。
尿意がどんどん高まる。でも、弟が帰るまでは動かない…つもり。
午後10時になった。もう限界が近いのが自分で分かった。
さっきはああ言ったけど、これでも年頃の娘なのでやっぱり小便少女にはなりたくない…。
もうすぐ歩くこともできなくなる…トイレに行くなら、いましかない!
弟よ、不甲斐ない姉を許してちょうだい…そう心につぶやいて私は家に入ろうとした。
そこへ、弟が帰ってきた…。
次は、「スペクター」「ブレイン」「ドラフト」で。
There was a man whose name was Edward Spector in the hut beside a lake in a wood.
He was ugly but gently quiet, but the people around him called him “Specter"
and run away from him when they came across him.
The day was same. A woman who met him in the wood changed her face terrible and run.
Spector felt sadness, so he returned his hut and immediately lay in the bed.
But he couldn’t sleep. He had a deep grief on his brain.
He got out of bed and drank a glass of water at a draft.
Hundreds of years had passed since then. The landscape changed and the wood was lost.
Oddly Spector was living there. He gradually felt it weird,
but he couldn’t understand why it was.
Actually, he was a real ghost, but he couldn’t have realized it yet.
3語とも英語っぽかったので「試みとして」英語で書いてみた。ので、感想不要。
文法ミス、スペルミス等のご指摘、謹んで受けます。
次のお題は「理由」「実り」「薄い」でお願いします。
275 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/18 01:36
>>268
「どっかで読んだ」ってのも気になんない完成形。「16」も最初はいける。
最後きゅって感じだからそこを丁寧にいければいいんじゃないの。
276 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/18 03:14
「理由」「実り」「薄い」
夏休みも終わり、そろそろ大学受験。
彼女は湯舟からあがり、体を丁寧に洗いだした。
私って、一体、何のために勉強してるんだろう・・・
その時だ、薄い湯煙の向こうでドアが開き、若者の影が近ずいてきたのは。
思わず双胸を覆い、怯える彼女!
しかし、すぐさまその表情は、安堵と呆れ顔に変わった。
「あら、また? よく挫けずに頑張れるわね」
小学生の頃から毎回こうなのだ、いまさら前を隠すのも面倒なほどだ。
「ち、違うんだ、偶然の事故なんだ、ごめん!」若者は慌てて帰っていった。
「違うの。私、貴方が羨ましいの。その理由は・・・」と彼女は言いかけた。
が、その時、若者の姿はもうなかった。
その頃、いつもの家の、いつもの部屋で、若者は頭を抱えていた。
「またやった、我ながら恥かしい。実りのない研究だ。あーあ、こんな時・・・」
と、言いかけて気をとりなおす。「いや、一人で最後までやりぬくぞ!」
確かに彼は劣等生だ。でも、彼には確固とした勉強・研究の目的がある。
静香ちゃんが羨ましがっていたのも、そこだ。頑張ろう。
どこでもドアの再発明まで、あと一歩。
※通り抜けフープでも可
次のお題は、継続の:「理由」「実り」「薄い」でお願いしまふ。
「お前は言い訳ばっかりするよな」先輩が軽蔑を視線にこめて呟く。
言い訳ではない、理由を述べただけだ。今回の失敗は徹夜続きで判断能力が鈍っていた事が原因だ。
だからといって許せとは言っていないだろ?あんたも同じ条件で働いてるんだからな。
「ろくな人間じゃねぇぞ、お前……」眉間に皺を寄せながら彼は呟く。
言われるまでもない。自分の事は自分が一番知っている。
自惚れるほど優れていない、かといって取り柄があるわけでもない。
毎日が煩悶だ。最悪な事に責任転嫁できない小心者だから、自分を責め続けている。
まったく、幸の薄い生き方だよ。こうして自分を責め続けるなんて。
ああ、もう少し頑張れば実りのある人生が待っているんだろうな。
いや、頑張っても同じ人生かもしれないよな。
アホかお前は。諦めて逃げようとしてんじゃねぇぞ。
「とにかくだ、俺はお前を解雇できないのが悔しい」憎憎しげな顔を彼は私に向ける。
「お前みたいなクズと同じ職場なのが納得できんよ」言いたいことを言うと彼は持ち場に戻った。
そして仕事と個人的な作業を続ける。
それを尻目に俺は彼の端末から抜き終わった情報を処理しだす。
まったくだよな、クズと同じ職場に居る限りやっぱり自分もクズなんだよな。
画面に映る情報はきっちりと、冷淡に、冷徹に彼の横領および背任を示していた。
機械的に俺はそれを保安部に流す。
(特別内偵部より要請。被疑者の容疑が確定した。処理班を頼む)
相変わらず彼はブツブツと俺への不満を零している。あと十分もすればあの世行きになる体で。
どっちがクズなんだろうな、先輩?
俺にはわからんよ。悪さするクズにそれを嗅ぎ回るクズ。
どっちがクズなんだ?
次のお題入れ忘れてました。つか前の題を変え忘れてました。
てか、バレバレですな。何書いたのか。
次のお題は
「迂闊」「墓穴」「永久機関」
「迂闊」「墓穴」「永久機関」
ここは何の町ですかって? 墓穴掘りの町だよ。
君もここの生れかい?やっとこの町に辿りついたんだね。
この仕事はすごいよ。永久機関の発見だね。穴を掘る。どんどん。
土を盛る。ざくざく。すると穴の中に僕は隠れてしまうでしょ?
大丈夫。となりの人も穴を掘ってるから、どんどん土は僕の上に降ってくる。
だから、穴は深くなっても、高さは変わらないんだ。ずっと同じ。
変だって?だって、となりの人も僕なんだもの。同じスピードだよ。
同じ力で掘る「ぼくたち」が集う町なんだから。ぼくたちは元は一つだし。
掘っても掘っても穴は完成しないんだもの。いつまでか知らないけど。
でも掘っているからさ。毎日休みなく。一度も休んだことないなあ。
ふるい土、新しい土にも終わりはあるんだろうけど。
あ。泥なんて投げるなよ。左のぼくがペースを崩したじゃないか。
君は迂闊すぎるよ。穴が塞がったじゃないか。作業終了、完成だよ。
「あ、左心室の動脈にクロットがつまったようです!」
「心筋梗塞だ!バイパス手術だ!」
次は「ホテル」「温泉」「ゴルフ」でお願いします。
僕と姉貴はお盆休みを利用してちょっと遠出してみた。
目的地はある田舎の温泉街。最寄の駅からノンストップの快速で4時間かかる。
しかも車内にトイレがなく、そのため姉貴がかなり危ない事態になったが、
その時のことについて詳しく述べるのはやめておこう。
着いた頃には夜だったので、ひとまず宿を取って、
散策するのは明日にしようということになった。
ところがどこの宿を探しても満室だった。考えてみれば混むシーズンだ。
野宿も考えたほうがいいかと思い始めた頃、ようやく空いた宿が見つかった。
『グレートホテル』という看板が立ててあったけど、あんまりグレートには見えなかった。
通された部屋はやけに広かった。ゴルフの素振りさえできそうなぐらいだった。
と思ったら、本当にクラブが一式置いてあった。あいにく僕も姉貴もゴルフは知らなかったが。
こんなに広い部屋なら高いかも…と心配したが、驚くほど安い。他のもっと狭い部屋より安かった。
密かに宿の人に聞いたところ、昔この部屋で殺人事件があったらしい。姉貴には黙っておくことにした。
おまけに宿の手違いで布団が一つしかなかった。布団は一つ枕は二つという状況である。
しかし、僕も姉貴も疲れ切っていたので危ない雰囲気にはならずにすぐ寝入った。
「秘密」「電撃」「フィーバー」
281 :
「ホテル」「温泉」「ゴルフ」:03/08/19 00:44
夏休みも終盤。俺は今両親ととある温泉街のホテルに泊まっている。
楽しいはずの旅行。でもなーんかもやもやすんだよな。え?なんでかって?
実はな・・・言うなよ?俺ね、同じクラスの佐川に恋しちゃったの。
佐川のことを考えるとドキドキして寝れねえ。告るかな。ああ、でも。うーん。
1時34分か・・・。ちょっと温泉入ってこよっと。
まずは露天風呂。うおっ!目がふたつ浮いてる!と思ったら黒人だった。夜に同化してて
わかんなかった。黒人が温泉入ってるなんて珍しいな、と恐る恐る俺も湯に浸かる。
沈黙。気まずいな。「what is your name?」尋ねてみる。「my name is ○○○○」○○○○?ふーん。
動物みたいな名前だな。そのあと黒人は自分からゴルフプレイヤーだ、と言った。
そのあともちょっと会話して黒人は湯から上がった。しばらくして俺もあがると俺の
衣服の上にサインボールがのっていた。
帰りの電車の中で父親にその話をすると「○○○○っ!?オマエ、それはアメリカのスーパースターだぞ!」
だって。スーパースター。知らなかった。
彼と言葉を交わしたってだけでなんでこんなに背中を押される気になるんだろ。スーパースターだからか。
始業式の日の放課後。俺は友達と楽しそうに談笑する佐川のもとへずんずん歩いていった。
ポケットの中であのゴルフボールを握りしめて。
「キャラメル」「蝶」「ミルク」
すいません。かぶりましたー。お題は280を。
283 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/19 07:07
「秘密」「電撃」「フィーバー」
自信満々で公開された、冒険活劇映画だった。
どこにも興行的失敗の要素などなかった。
地の果てに眠る、秘密の最終兵器。
古文書に記された、謎の黒い箱。
独裁国家がそれを狙っている、それだけは防がねば!
現地で繰り広げられる、手に汗握る争奪戦。
遂に、無謀ともいえる電撃作戦で黒い箱を手に入れる冒険家。
潜水艦にぶら下がり、惜しくも囚われの身となる。
敵の手により黒い箱は開封され、そして・・・
なのに、試写会場はちっとも沸かない。
フィーバーどころか、暗い表情さえも見える。
「ウーン、なぜなのか。私にはワカリマセーン。」
超大物のアメリカ人監督は、頭を抱える。
各国では大入り、絶賛の嵐なのに・・・
「レイダース2/失われた玉虫の厨子」は、こうして日本公開打ち切りとなったのだ。
※ちょっと小さいか
次のお題は:281さんの「キャラメル」「蝶」「ミルク」 でお願いしまふ。
284 :
「キャラメル」「蝶」「ミルク」 :03/08/19 10:19
琥珀色の明方に起きた。毛布には蟹が数匹たかっていた。
払い除けてブーツを履く。ガラスの嵌めていない窓からは
果てしなく連なる雲が見えた。潮と緑の匂いが濃く混じった空気を吸い込む。
床にへばりついた羽虫を踏んでテーブルに向かい、残っていたミルクを飲んだ。
煙草を吹かして汗ばんだ襟首をさする。暫くの間はシラミを潰していた。
海辺に出ると女が走っていた。女の体は無数の蝶で覆われていた。
両手を振り乱して足をもつれさせながら追い払おうと逃げていた。
時折できる隙間から長い髪と鍔広の帽子、白いドレスが窺えた。
私は、黒と黄と赤と白、それに所々に青が混じった影に叫んだ。
「海へ入りな!」影はもがくようにして海水へと向かった。
行き場をなくした蝶が花びらのように天へと捲かれた。
近寄ってみれば若い女だった。塩水に頭まで潜ったあとの、その顔は
自失しているようだった。女からは香油のキャラメルのような香りがした。
残っている蝶がまだ辺りを羽ばたいていた。
「よく洗って匂いを落としてから出るんだ。でないとすぐ狙われる」
呆然としたまま頷いて女は海水で身体を何度も拭った。
女は、この近くに別荘があるのだという。旅行者だった。
次は、「熱帯」、「拳銃」、「背広」、でお願いします。
ケーキ?じゃ、私が作ったげる。大丈夫よ、普通のお店くらいには焼けるわ。
んーと……あ、クレープの生地が残ってる。ミルクレープでいい?それなら、
三十分で作れるわよ。おっけ、じゃあ始めるね。と言っても、今から作るのは
クリームだけなんだけどね、えへへ。
バタークリームにレモンエッセンスとコアントロー。これだけで、ずいぶん風味
が違うのよ?あとこれは私の趣味なんだけど、砂糖を煮詰めて作ったキャラメル
シロップがレモンの香りとよくマッチするの。レモンクリームと交互に塗りこんで
いくと、もう、最高!
あとは、クレープを敷いて、レモンクリームを塗って、その上にクレープを重ねて、
またその上にキャラメルクリームを塗って。塗って、敷いて、塗って、敷いて。
はい!本当に三十分でできたでしょ?へへ、もっと誉めて?本当はクレープ生地
作るのに四時間はかかるんだけどね。今回はアイデアの勝利!ということ。
どう?おいしい?……よかったぁ……
今まで嘘知識を色々書きましたが、今回のは本当。天下一品。
ただしキャラメルは少しミスるとベッコアメになったり、焦げて激苦になるので注意。
次のお題は「戦果」「豪雨」「挑戦」で。
すまん。
284氏の「熱帯」「拳銃」「背広」にて継続を賜りたく。
287 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/19 16:09
「熱帯」、「拳銃」、「背広」
僕は驚かずにはいられなかった。そこには、あの日僕を気絶させた男が立っていたのだ。
場所はある熱帯地域のジャングル。僕は、会社の命令でジャングルの奥に住むと言う、偏
屈な老人を訪ねていき、書類に判子をもらいに行くところだった。
このネットワークが整備された現代に、わざわざ人の家まで行くのかよ。などと思ったが、
僕の鞄の中に書類は、『第二次都市開発、並びに第三次遷都計画』についてのものであり、
件の老人の判子でこれらがスタートする事を考えれば文句など言ってられなかった。
僕ははりきって家を出たのだが、ジャングルをなめていた。サラリーマンの戦闘服は背広
だぞ。という父の口癖を信じて、いつもの癖で背広のまま出かけてしまった事を後悔した
のは、ジャングルを歩き始めてすぐだった。
いつまでも後悔していてしょうがないと、前を見て再び歩き出したところで男を見つけた
のだ。僕は、非常時のために一応持ってきていた、ポケットの中の拳銃を握りしめた。そ
して静かにポケットから出して構えようとしたところで
『笑止』
そう聞こえかと思うと、男は消えていて頭に激痛が走った。薄れゆく意識の中で最後に僕
が見たのは、男の姿。これが、男と僕が二度目に会った時のすべての出来事だ。
だいは『蝉』『坊主』『御盆』で。
その日は熱帯夜だったらしいが、僕と姉貴の泊まった部屋ではなぜか寒気すらするぐらいだった。
翌朝。姉貴はおねしょしていなかった。家ではここのところ毎日していたので心配していた。
姉貴はよく「気持ちいいから家ではわざとしてるだけなの!」と言い訳してたが、
それもあながち嘘ではないのかもしれない。
顔を洗おうと洗面所へ行ったら、タオルケースの中に何か黒いものがあった。
取り出してみると拳銃だった。さすがにびっくりして宿の人に届けた。宿の人は、
「ああ、あの部屋は前に刑事さんが泊まっていきましたから、忘れ物でしょう」と言った。
持ち主に届けてくれるというのでその拳銃は宿の人に渡して部屋に戻った。
それにしても、日本の警察はいつから44マグナムを使うようになったのだろう。
浴衣を戻すのにクローゼットを開けると、今度は一着の背広があるのに気付いた。
これも忘れ物なら届けよう、と思って取り出してみたら、背中の部分が血染めになっていた。
見なかったことにした。
とりあえず、この宿は早いとこ出た方がよさそうだ。
蝉が鳴く。み〜〜ん、みんみん、みぃぃぃ〜〜。
体感気温、約三十度。超熱帯夜の蝉がこれほどまでに暑苦しいとは。
まあ、それは蝉のせいだけではない。背広にネクタイ、革靴のいでたちで
墓石の陰に潜んで三時間。汗でワイシャツが素肌に張り付き、気持ちが悪い。
両手でホールドした拳銃もすっかり体温が移り、生暖かくなってしまった。
俺は墓石に隠れたまま、耳をすませ続けていた。ミンミンゼミに時折混じる、
草履の音を。この御盆の日に引導を渡しにきたのが坊主。笑えもしない。
ざり、と至近で音がした。思わず身を硬くした俺。
御影石の向こうに、墨染めの衣が覗いた。間違いない、奴だ。片手に箒、片手
に御盆。無敵の矛と無敵の盾で俺を追い詰める、組織が送り込んだ殺人僧侶。
俺は両手に構えた拳銃を、そっと奴にポイントした。緊張と暑さと蝉の声が俺の
掌に汗を噴き出させる。慎重に狙え、しくじればまた奴は御盆で銃弾を弾き返す。
そしてこの汗で張り付いた背広では、逃げ回ることもかなわない。
近藤さん、頼む。俺は今までかくまってくれた墓石の主に祈りつつ、引き金を引いた。
次のお題は「創立記念日」「国産」「しっぽ」で。
『蝉』『坊主』『御盆』「戦果」「豪雨」「挑戦」
夕方から東京は豪雨になった。八月の御盆休みもいよいよ明日までだ。
「さてと、そろそろ出動しますか」俺は自分自身に気合いを入れると
カッパを羽織り、息子に別れを告げると、どしゃぶりの町に飛び出した。
天候。時間。イベント性。どれをとっても、絶好のチャンスだ。
あふれる下水をまたぎ、目的地まで全力の行軍を続ける。家で待つ
七歳の坊主のためにも、今日の戦果は、何としても上々といきたい所だ。
「まもなく閉店のお時間です。本日もまことに……」閉店10分前。
俺は計画通り『スーパー ひかり』の肉売り場に到着する。
すき焼き用半額。豚焼豚用半額。御盆パーティーセット、半額。ゲッツ!
よっしゃ。ここで俺は乾物コーナーに身を潜める。ハイエナがうろつくと
店員も駆け引きをしやがって、ギリギリまで定価で勝負する気になりやすい。
俺は蝉の抜け殻のような、無心な顔をして「干し椎茸」を検分するフリをする。
キター!店員登場!俺はまっしぐらに「お子さま握りパーティセット」を
掴み取り「これも半額でいっすか?」と可愛く突き出した。……ペタリ。
げえーーーッツ!!パパ頑張ったぞ! 戦利品を手に俺はレジに走り出した。
***
次の御代は289氏の「創立記念日」「国産」「しっぽ」で。
291 :
「創立記念日」「国産」「しっぽ」:03/08/19 22:08
先月、親友の奈々子が交通事故であの世へ行ってしまった。
それ以来なにもする気が起きない。学校をさぼってテレビばかり見ていた。
でも、さすがに家に篭りっきりだと自分でもやばいと思ったのでむりやりでかけた。
今日は水曜日だけど創立記念日で学校は休みだ。商店街も空いていて歩きやすい。
ふと「ペットショップ」という看板が目に付いたので入ってみる。
あっ!この柴犬かわいいなー。しっぽ振ってなついてくる。ガラス越しに見ていると
わんわんと鳴いてその声に重なるように(優貴、あたし!)と奈々子の声がした気がする。
ああ、やっぱり大好きな親友の事は忘れられないな。うんうん、忘れないよ奈々子。
元気でね。(ひとりで感傷に浸るなって!こっち見てよ!相変わらずとろいな)
・・・え?この犬しゃべってる?奈々子?え?なんじゃこれ?
(信じらんないのも無理ないけど。なんか気付いたらこんなんなってた。あっ!
そうだ。優貴、あたしを買って。優貴んちで飼ってよ。でさ、またたっくさん
話しようよ。いつもしてたようにさ。会いたかったんだよ、ずっと)
ははは・・・。マジかよこれ。信じられない。値札を見る。「国産 75000円」とある。
こないだバイト代入ったばっかじゃん。奈々子ぉ。なにやってんだよおまえはよぉ。
私は涙をぼろぼろ流しながら「すいません!この柴犬ください!」と叫んだ。
「心霊写真」「たたり」「レスリング」
僕がまだ心霊写真偽造のバイトをしていたころ、編集部に妙な噂が広まった。
どうやら霊を売りものにしているとたたりがあるらしい、というものだった。
「くだらん」とバイト仲間は言った。「そういう噂こそ霊を馬鹿にしているってもんだ。そうだろう?」
そういうと彼は「足首が消えている心霊写真」を作るのを再開した。
バイト仲間の足首がなくなってからというもの、その噂の効果は増幅し始めた。
あれは奴の不注意だ、交通事故でたまたま足首を失っただけじゃないか、と言い張って
いた先輩も、自分の肩に何かが乗り始めた頃にはこのバイトをやめたいともらし始めていた。
彼が得意な心霊写真は「あるはずのない手が…」といった類だった。
噂はより具体的になっていた。つまり「偽造した通りの現象が作成者の身に降り懸かる」と。
僕が「自分と長谷川京子が裸で泥レスリングをしている写真」を作り出したのはこの頃だった。
自分の裸の写真と長谷川京子の写真とエログラビアにある女の裸があればCGでちょちょいのちょいだ。
お互い全裸。僕が彼女に寝技をしている。長谷川京子の乳房のうち片方はむき出し、
もう片方は乳首の方にだけ泥がついている。彼女の陰毛にも泥がエキゾチックに絡まって
いる。チラリズムを踏襲した素晴らしいものに仕上がった。
写真が完成し、時が来るのを待っていると幽霊団長が地獄からやってきてきて僕にこう言った。
「君のは心霊写真じゃない。アイコラだ」
293 :
「心霊写真」「たたり」「レスリング」 :03/08/20 02:23
「そんなことあるわけないじゃないか!」とレスリング部の先輩は言った。
大会の写真には先輩の首筋に、相手の選手のものでもない、どう考えても誰のものでもあり得ない『手』が巻き付いていた。先輩は1週間後に死んだ。
「偶然だ! 偶然だ!」僕は町中を絶叫して走っていた。部活の格好のままだった。半裸の身体からは乳首が見えて、乳首の廻りには薄らと毛が生えていた。
僕は先輩が好きだった。先輩はクラスの女と付き合っていた。
僕は先輩とそいつが写っているクラスの遠足の写真を手に入れて、並んで写っている二人の間に針で毎日ちいさな傷をつけ続けていた。
あの『手』は僕の呪だ。心霊写真なんかじゃない僕の呪いの手だ。
女はまだ生きていた。なんで死んでしまったのが女じゃなかったんだろう。死んだのが女だったらどれほど僕は胸の透く思いだったか。
渋滞で車が詰まった街道を横断し、買い物帰りの中年女に奇異な目でみられ、野良犬は僕に道を譲った。女は葬式場で泣いていた。
堤防沿いの道に出て橋の欄干から身を落して泳いだ。濁流に何度も流されそうになりながら、対岸まで泳いで渡った。
先輩はバイクの事故だった。女を迎えに行く途中の出来事だった。あいつと付き合ってさえいなければ、こんなことは起らなかったんだ。
僕には偶然の意味がわかっていなかった。僕のせいだった。全部が僕のせいだった。僕があんなことをしなければ、先輩は生きていて、部活帰りに学校前の駄菓子屋でアイスクリームを僕と一緒に食べてくれたのに。僕のせいだった。
先輩、たたるなら僕にして下さい。
夕方の太陽はどこまでも赤くて、堤防には灼けた石と草いきれが、むんむんと立ち篭めていた。
次は「高層ビル」「ひまわり」「笛」で。
「高層ビル」「ひまわり」「笛」
夏休みも残り少なくなって、松岡東小学校の八十年物の木造校舎は、八月の青空をも
さえぎって繁る西洋けやきの林に包まれ、いたるところからみんみん蝉の暑苦しい声が
やまない。時々、水泳場のほうから、甲高く鳴る呼び子の笛にあわせて、競泳の練習を
しているらしい飛び込みの水音が聞こえる。僕たちは、丁度何かの資材を運んで通り
かかった小使いの田中さんに、今日も暑いですねー、とかお世辞を言うと、今はうさぎか
何かを飼っているらしい飼育小屋のところを這入って、ずいぶん狭くなったような気が
する中庭を通り抜け、校舎の裏手に回った。あの頃よりは相当老けた気がする田中さんは
きっと子供だった僕らのことなど憶えていないのだろうけれど、特に訝るでも怪しむでも
なく、あー暑いですなあ、とか答えて過ぎていってしまった。
昔は高いように見えた鉄柵に両腕をもたれて、僕らは緩やかな斜面になって広がるこの
松岡盆地が名物の陽炎に揺れるのを見ていた。高層ビルも新幹線も無い人口四万六千の
地方都市で十二年前僕らは出会って、同じ町で小学生中学生高校生という時間を過ごし
ながら、この春、僕は東京の大学へ、彼女は地元の看護学校へと別れ別れになるまで、
どんなに僕たちの関係が貴いものかを知ることが無かったのだった。
花壇では僕らの頃と同じように二年生が大輪のひまわりを育てている。背の高いほうでは
ない彼女ですら、今ではもうひまわりの花は見上げるような高いものではない。
昔したように土臭い花壇の縁に腰掛けると、僕たちは二年生の頃の話をした。枯れたひまわり
から種を取ったこととか、それをこっそり分けて食べたこととか。
キスが何かすら知らなかった頃の夏と同じように僕らのTシャツには汗がにじんで止まらない。
相変わらずみんみん蝉が啼いている。眠っていた幾年月を償おうとばかりに。
#次は「井戸」「物差し」「呼び子」で。
「井戸」「物差し」「呼び子」
松羅屋五郎兵衛は、供も連れずに丑三つ時の千住の大辻を早足で歩いている。
月明かりの掘沿いの道には猫の子一匹、姿を見せず、川面の風は生温かい。
千住大橋の方では、捕り物でもあったのか、遠く呼び子の音がしている。
松羅屋は日本橋でも三本の指に入る「海産問屋」の大店である。
松島藩西門玄久郎が後ろ盾となって幕府の御目付に伝手を発し、極上品の海苔
昆布、煮貝の三品を献上した事が、松羅屋の地位を他の追従を許さぬものとした。
西門は、武士を捨てた五郎兵衛の長兄にあたり、松島藩江戸家老の要職にある。
五男の部屋住みを、松羅屋に養子に出した父、西門玄武は昨年鬼籍に入った。
「娘の紀和を預かった。本日丑三つ、千住 目蔵橋にて待て」
無気味な血染めの投げ文が、五郎兵衛の休む奥の間に投げ込まれたのは
今日の昼過ぎだった。中庭の井戸には、紀和の草履が浮いていた。
紀和は数えの十六、明眸皓歯の器量と琴の腕前はまず、見事なもので
「松羅屋のお紀和さんは弁天さまの生まれかわり」などと人の口に立つほど
良く出来た娘だ。秋には西門の兄の勧めで、縁談が持ち上がっている。
「紀和……」低く嘆くと、普段の柔和な顔とは裏腹に物差しを入れたような
固い五郎兵衛の背中が、武士の一命を取り戻したかのように大きく波打った。
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次は「風邪」「御免」「減量」でお願い申し上げる。
高志が大きな咳をした。高志の肩に頭を預けて座っていた私は、その音で目を覚ました。
「あ、御免。起こした?」 慌ててこちらを向いた彼に、私は首を振った。 「ううん、大丈夫」
「俺、風邪引いちゃったかな」 高志は言い訳するように私に言った。
高志の肩は熱っぽい。そして私も。
昨日から何も食べずに、二人でこうして座っている。なのにお腹がすかず、
ただ眠くてだるかった。
「何か食べようか」 高志の問いに、私はまた首を振った。
「ううん、今減量中なの」 高志はそれ以上何も言わず、また二人で静かに座っていた。
昨日、街に突然落ちてきたミサイル。それっきりテレビは映らないし、そのうち二人とも
体がどんどん熱くなってくるし、今朝ついに電気まで止まってしまった。
高志がもぞもぞと身動きをする。その振動で私は目を覚ました。頻繁に意識が飛んでいる。
そのうち、もう目が覚めることもなくなるのかもしれない。
私は上目遣いで高志の顔を見上げた。いつも、わがままな私のそばに居てくれた高志。
怒ったり呆れたり、それでも一緒にいてくれた。
私は「ごめん」と言いかけ、その言葉を飲み込んだ。その代わりに「ありがとうね」と
小さく呟いた。目を閉じている彼の顔が頷いたように見えた。私は暗くなる部屋で、再び
彼に頭を預けて目を閉じた。
次は「数字」「あげは」「チョコレート」でお願いします。
朝食もそこそこに僕と姉貴は宿を飛び出した。
まだ時間が早いので、僕と姉貴は辺りを散歩することにした。
温泉街だけあってそこら中で間欠泉が噴き出している。結構危ない。
ガイドブックによると、火傷を負う観光客を数えたらかなりの数字になるらしい。
朝食が少なかったので小腹がすいたかな…そう思ったところへ、
目の前に一枚のチョコレートが差し出された。姉貴が用意していたらしい。
二人で食べている最中に、姉貴が不意に「これ、何のチョコだか分かる?」と言い出した。
分かっている。ハーシーズとかいう会社のだ。姉貴はこの会社のチョコレートが大好きだ。
「ハーシーズでしょ?」と言ったら、「そういう意味じゃないよ。バレンタインデーのチョコだよ」と姉貴は溜息。
そんなことを言われても今は8月のはずだ。先月は7月だったし先々月は6月だった。
「バレンタインデーは今年から8月に移転したのよ」と姉貴は言った。
ふと、姉貴がきれいなリボンをつけているのに気付いた。
しばらくするとリボンが飛んだ。正体は蝶だったらしい。
見たこともない模様だった。また、何となく不吉な予感を覚えさせる模様だった。
後で図鑑で調べてみよう。多分、あげはの一種だろう。
次は「電子」「太陽」「ゴーグル」でお願いします。
298 :
「電子」「太陽」「ゴーグル」:03/08/20 20:42
中尾学はファーストフード店前の駐車場にバイクを止めた。目の前に電力会社の看板がある。
「電子ちゃん?変なキャラクターだな」と呟いてヘルメットとゴーグルをハンドルにかける。
太陽が地表を容赦なく照りつける。学は首筋を伝う汗を乱暴にタオルでぬぐった。
そしてひとつ大きな溜息をついた。
この2ヶ月、学は大学の休みを利用して幼い頃生き別れになった母親を探す旅に出た。
北海道を出発し、さまざまな情報を頼りにバイクを走らせたのだが、ここ長崎で
情報がぷっつり途絶えた。
この1週間あらゆる手を尽くしたが母親の居場所はわからなかった。
学は今日で見つからなければもう諦めようと思っていた。もうすぐ大学も始まる。
会ったからといってどうするわけでもない。ただ母親の元気な姿を見たかっただけだ。
唇を噛み締め、生まれつきある左頬のアザを撫でた。またひとつ溜息をつく。
そして、冷たいものでも飲んで帰ろうと思いファーストフード店に入っていった。
その隣の蕎麦屋では50代半ばの女性がいそがしく料理を運んでいた。
女性のズボンのポケットにはいつも1枚の古びた写真が入っていた。
写真の中の少年は屈託のない笑顔を振りまいている。
そして彼の左頬にもまた、アザがあった。
「天才」「壷」「マスク」
「さあ、そろそろ白状したらどうだ?殺すも生かすも、おまえの態度次第だぞ」
強がってはいるが、拷問吏の汗から見て、こいつも限界らしかった。ならば、
もう少し遊んでやるだけだ。今夜じゅうに4人目までつぶせるか?
「今度はどんなお話が聞きたいかな?そうだ、本当はビッグ・ジョンの足のう」
そこまで言ったところで、拷問吏の拳が俺の頬にめり込んだ。
「貴様が壷に隠した、あのプログラムの解除コードだっ!」
拷問吏がわめいた。
「マスクROMはすでに当方で確保している。貴様が解除コードを吐けば、それで
一切合財にけりがつくのだ!もう後はないぞ、いかに貴様が耐苦痛訓練を受けた
アンダーカバーワークスの天才だとしても、選択肢はたった2つだ!賢明な判断で
生き延びるか、犬に相応しい惨めな最期を迎えるかだ!」
やれやれ、そんなことをわめいてる時点でおまえは3流だよ。てめえらじゃ解除
できませんって教えてくれてありがとさん。
俺は、口中にたまった血をべっと吐き出した。もうちょっと遊んでやるか。
夜は長いぜ、3流拷問屋さんよ。
次のお題は「高速バス」「ボス」「子供」で。
300 :
「高速バス」「ボス」「子供」:03/08/20 23:41
「乗りてえったら乗りてえんだよ!」事務所にボスの怒声が響く。
俺は恐る恐る言った。
「でも、マフィアのボスが高速バスなんてちょっとカッコ悪いですよ。観光だったら
せめてリムジンかなんかで・・・」
「うるせえ!おい、ウー。てめえいつからそんなに偉くなったんだ?俺に指図すんのか?
ああ?脳味噌撒き散らしてえのか?」
短期なボスはもう銃口を俺に向けている。ジャッキーとパクを見る。二人とも知らんぷり
してやがる。くそっ。俺は震える声で言った。
「わ・・・分かりました。チケット取っておきますから」
当日。ボスが「ピストルは持つな。車内でドンパチやられると俺の楽しみが台無しになる」
というので置いてきた。バスは単純な市内観光コースを巡るだけだったがボスは子供のように
はしゃいでいた。2時間半かけてバスは出発地点へ戻ってきた。
突如、パン!と爆音が響いてパクの首から血が吹き出した。耳鳴りがする。
気付くと運転手がピストルを持ってこちらへ向かってきていた。
俺は「ボス!伏せて!」と叫ぶ。
無意識にジャケットの内ポケットに手を突っ込んではっとした。
「夏祭り」「ラムネ」「ホームレス」
301 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/21 01:03
僕と姉貴は妙なお店を見つけた。骨董品屋らしかったけど、置いてあるのはどれも怪しいものばかり。
主人はパイプをふかしたおじいさんで、これまた怪しい風貌だった。
「このパイプはかの名探偵シューロック・ホームレスが使っていたものだ」とのこと。
結局、ここで姉貴は「おねしょが治る石」というのを買った。50円だった。
ここで物を買った客は久しぶりだったらしく主人は大喜びだった。
帰り際に主人は今夜は夏祭りだと教えてくれた。案の定、姉貴が見ていこうよと言い出す。
帰るための電車は昼頃のしかないから、見ていくとすればもう一日この地に泊まることになる。
お金の方はかなり余裕を見ていたし、前日の宿代がかなり浮いたのでもう一日泊まっても問題はない。
しかし、姉貴と夏祭りの取り合わせは危険なので、僕はやっぱり帰ろうと言った。泣かれるかと思ったが姉貴は意外に素直だった。
そういうわけで僕と姉貴は駅に来た。
着くなり姉貴は「おしっこ。ちょっと待っててね」と言って小走りに駅のトイレに向かった。
そういえば姉貴は途中でラムネを5本も買ってがぶ飲みしていた。
電車まではあと20分ぐらいあるので大丈夫だろう。…と思ったら、姉貴はいつまで経っても戻ってこない。
わざと出てこないのは分かっていたが婦人用トイレに入って引っ張り出すわけにもいかず、僕は待つしかなかった。
そのうち電車が来てしまった。そして…行ってしまった。その直後に姉貴がにやにやしながら出てきた。
「あちゃー、困ったね、電車行っちゃったね。これはここにもう一日泊まりかな」
どうやら、僕の負けらしい。
次は、「科学」「バイオ」「チェンジ」でお願いします。
「科学」「バイオ」「チェンジ」
僕と姉貴は駅のホームで危機に陥っていた。
目の前ではマウンテン・ゴリラを連れた駅員が不敵に笑っている。
その堂々たるゴリラの背は月の光を浴びて白く輝いていた。
「シルバー・バックに出会ったら、まず逃げることを考えろ」
裏山で知り合ったフクロウの言葉が脳裏をよぎる。
僕は姉貴の手を取って、逃げ出そうとした。だが、遅かった。
駅員がピーと笛を吹くと七人もの駅員がそこここから現れ、僕らは取り囲まれてしまった。
絶体絶命だ。もう、これは、変身するしかない。
僕らはバイオ・テクノロジーによって生み出された科学の子みたいなものなのだ。
「チェエーンジ!!」
気張って叫んで見たものの、変身しなかった。ふと横を見ると姉貴が腰を抜かして
へたり込んでいるではないか。しかもさっきトイレに行ったであろうに、大量にお漏ら
ししてしくしく泣いている。二人の心が一つにならないと変身はできない。
ちくしょう、ここまでか。
「お前ら女の子を泣かして恥ずかしいとは思わないのか!!」
と、吼えたのはシルバー・バックで、彼は駅員を捕まえるとぶんぶんと振り回し始めた。
どうやら、僕らは助かるらしい。
次は、「大道芸人」「説明会」「保険証」でお書きになって。
「大道芸人」「説明会」「保険証」
√さあて、お立ち合い!ご用とお急ぎのない方は、ほんの暫くの間
見てらっしゃい、聞いてらっしゃい、さあ、そこの奥さん!
いや、あんたじゃないの。後ろを歩いてる、そうそう、あなた!
ぼんやり歩いてる奥さん!ねえ、奥さん気をつけなきゃあいけないよ。
大道芸人の稼ぎ場所なら 掏摸や掻っ払いにとっちゃ天国だ
財布に保険証大丈夫かい?え?掏られて困るモンなんか持ってない?
√蠅は手を摺る、足を摺る、うちの父ちゃんゴマを摺る!
その父ちゃんへのお土産だ。どうだい奥さん!この包丁!
え?子供が待ってるって?いけねえなあ。
√急くな、急くなこの世の旅は来るまで待とう霊柩車!ってね
え?引きこもりの息子がいる?息子と二人暮しだって?
√世にも哀れな物語り 親の因果が子に報い 出来た息子が引きこもり
あの子イジメでこの子はミジメ! 息子は学校にナジメない!
いいだよ、奥さん、そういう人のために、この包丁をおすすめしてンのよ
ほうらトントン トントン よく切れるでしょう。大根でも人参でも
かまぼこの板だって ほうらこの通り!豚骨だってほら、まッふたつ!
√さあ買った!買った!出所不明の包丁だ!切った切られた息子と二人!
シラ切り通せ!取り調べ!さあ黙秘権の説明会も特別にやっとこうか?
−−−
次は「天狗」「バナナ」「見世物小屋」でお願いです。
僕と姉貴は
>>303を読んで少なからず驚いていた。
ここまで似た境遇の人が他にいるとは思わなかった。まあ、それはそうと…
電車が行ってしまったので、結局僕と姉貴は夏祭りを見ることにした。
まだ祭りには時間があるので、先に今夜の宿を確保することにした。
やっぱりどこも満室で、空室があったのは前と同じグレートホテルだけだった。
あてがわれたのは例の殺人事件の部屋ではなかったので少し安心。
だが、壁の不自然な位置に天狗のお面がいくつも飾ってあった。
姉貴が、気味が悪いから外しちゃおうと言い出した。
フックで引っかけてあるだけなので取るのは簡単だし、後で戻しておけばいい。
外してみたら、お面のあった位置全てに銃弾の貫通した跡があった。
この部屋で過去に何があったのか、もはや宿の人に聞く気も起きなかった。
夜になって、夏祭りが始まった。早速出店で好物のチョコバナナを5本も買い込む姉貴。
僕が心配していた盆踊り大会はないようだった。
興奮して浴衣を脱ぐ人がいるかららしい。他にもいるとは思わなかった。
出店を見て回っていると、大きなテントがあって「見世物小屋」と書いてあった。
僕も姉貴もそれを名前だけは聞いたことがあるけど実際に見たことはなかった。
入場料も105円とやけに安いので、入ってみることにしたのだった。
※似たような作風の人がいたとは驚き…
次は、「超新星」「光」「ライブ」でお願いします。
はい、夜遅いですけどしっかり目を覚ましましょう。どうです?この輝き。
都会ではちょっと見られない、星の数ですよね。これが、地球本来の空です。
街のイルミネーションは宇宙からの光をほとんど包み隠してしまいますからね。
せっかくの林間学校です、肝試しばかりと言うのも無粋ですね。たまには天体
観測としゃれこみましょう。
順番に望遠鏡を見てみてください。そう、ひときわ輝く5つの星です。あれが
天秤座、英語で言うとライブラ。ギリシャ神話の正義の女神、アストライアが持つという
正義を量る天秤をイメージして名付けられた星座です。中央にある星は「ズベンマ
ルエケリ」と言います。珍しい緑色をした星なんですが、都会では非常に見づらいん
です。そうそう見られませんから、順番に見ておいてくださいね。
次はおおいぬ座のシリウスです。そう、あれ。肉眼でも見えるくらい明るい星です。
非常に近い星なんです。約8.7光年の距離にあります。星の最期の大爆発、「超新
星」寸前の状態にあるのではないかと言われています。昔の文献に「夜が昼になっ
た」とありますから、その時にはきっと物凄い輝きが世界全体を包むことでしょう。
まあ、百万年単位で先の話なんですけどね。
さて、星々のショーも今夜はおしまいです。明日の朝ご飯をおいしく食べるために、
今日はそろそろ寝ましょう。
ちょい長。
次のお題は「キウイフルーツ」「アニメ」「剣」で。
星野晃はキウイフルーツを食べることによって銀河戦士アステリオンに変身するのだ。
では、その原理を説明しよう。
キウイフルーツに含有される特殊なビタミンCは星野晃の体内を循環し、
その際に星野晃の体中のアストラル粒子をアニメート(活性化)させる。
アニメートされたアストラル粒子はもう一つの意識「アステリオン」を覚醒させ、
「アステリオン」の意識は星野晃の意識に取って代わり、肉体もそれにふさわしい姿へと変化する。
そして、普段は星野晃のアクセサリーとして存在するアストラルブレードは、
「アステリオン」の覚醒に反応し、真の姿…光り輝く剣に戻るのだ。
次のお題は「パトロール」「斥候」「偵察」
「お前、パトロールに行ってこい」
「はい」 俺は隊長の言葉に勢いよく返事をした。隊長はすぐに拳が出る。さっさと
出かけるに限るのだ。俺は天幕の外に飛び出した。
「お前、斥候に行ってこい」
「はいっ」 俺は敬礼をして、すぐに天幕を出た。ジャングルで交戦中。交代の部隊がこないまま、
もう二ヶ月。最近、隊長はひどく怒りっぽい。くだらない理由で殴られたらたまらない。
「お前、偵察に行ってこい」
「分かりました」 返事はきびきびと。だって本当にすぐに殴るんだから。面倒なんて
言ってられない。ぐずぐずせず、俺はすぐに天幕を出た。
「なあ、パトロールと斥候と偵察とどう違うんだ」
「知るもんか」
天幕の外で一緒になった俺たちは、三人足並みをそろえてジャングルの中心に向かった。
しばらく行くと背後で銃声が聞こえてきた。
「そういえば、俺たち三人が出ていったら、隊長一人で大丈夫かな」
「知るもんか」
俺たちはどうせ下っ端、上官の命令は絶対なのだ。
次は「あんみつ」「キリン」「石鹸」でお願いします。
「あんみつ」「キリン」「石鹸」
持病の対人恐怖症がひどくなり、私はほとんど部屋から出られなくなった。
唯一外出できるのは好物のあんみつを買いに行く時だけだ。あとのことでは
石鹸ひとつ買うにも、人と関わりたくはない。今の世の中変人が多すぎるのだ。
精神科医は「荒療治もたまにはいいでしょう」と言って、私に「電話人生相談」の
ボランティアを奨めた。赤の他人の話を聞くことが回復の手がかりになるらしい。
そろそろ電話が転送されてくる時間だ。
「もし、もし?」「へへへ、どんなパンティはいてるの?ハアハア……」
私はあんみつの包装紙を手に取り「紫の丸に梅印、紙製の物を安政元年より履いています」
「……ガチャ。」切られた。気があいそうな人だったのに。なぜだろう。
「もし、もし?」「あのお、キリンの首はどうして長いんですか?」子供の声のようだ。
私はあんみつのふたを開けて、黒蜜のチューブを取り出し、底がカラになるまで絞り出した。
「世の中には二つの不幸がある。一つは底なしの不幸。もう一つは底のある不幸。
キリンの首は長いけれど地面には届くのです。つまり、底を打った不幸なのです」
「ガチャ。」また切られた。今の子供は底なしの不幸を背負っていたのだろうか。
「もしもし?あ、先生ですか。ええ、どうも。はい。今日は以上ですか?」
「……わかりました。また病院で。楽しみにしている漫談が始まるので、失礼します」
私はあんみつを片手にテレビをつけた。 「国会中継の時間です」 「わははっ!」
次は「かに」「怨念」「琵琶」でお願いします。
「かに」「怨念」「琵琶」
「野茂 と ホモの違い」
完投して喜ぶのが野茂
浣腸(かんちょう)して喜ぶのがホモ
打たれるのを嫌がるのが野茂
打たれるのを喜ぶのがホモ
野茂はホモを狙わないが
ホモは野茂を狙う事がある
お尻を見せて球を投げるのが野茂
お尻を見せて玉を揺らすのがホモ
野茂は球を投げるが
ホモは玉を捨てる
野茂はお尻をむけて投げるが
ホモはお尻を向けて誘う
給料でかにを買うのが野茂
給料で琵琶を買うのがホモ
野茂には恩人が一杯居るが
ホモには怨念しかない
次は「詔」「原始」「暗黒舞踏会」
あの世とこの世の境目に私達の住処がある。原始の頃から、この世を俯瞰で眺めてきた
選ばれた一族の末裔。いつの時代も地を這うものは、私達を仰視する肉の塊にすぎないのだ。
雑踏のすき間に漂い、倒れてはまた起き上がる塊。どうやら小さな女乞食のようだ。
髪逆立て悪臭の香水まき散らし、手は曲がり、目は爛れた灰色。足は腫れ、喉は焼け火箸で
えぐられたかのように痛み、一口の水のためには命さえ投げ出すほどの苦しみの有り様。
「御夫人、私と一緒においでなさい。水を差しあげよう。さあ」 私が震える女乞食の身体に
そっと柔らかな外套をかけてやると、女は途端に失神した。
女は不思議な気配に目をさました。耳にワルツの演奏が聞こえる。目を射るような
シャンデリアの明かり。驚いて起き上がろうとすると、絹の寝台がふわりと弾んだ。
いつの間に着替えたのか、銀色に輝く虹色のシフォンのドレス。手にはスズランの花束。
髪はカールして、さざ波のように顔にかかる始末。いったい何が? 身体も痛まない。
唇には甘い果汁がうっすらと残っている。すらりとした白い足はなんて軽いのだろう。
「さあ、いきましょう。家来たちが、あなたの女王としての詔を待っているのです」
件の紳士が言う。見渡す限り、黒い夜会服の人々。「女王よ!暗黒舞踏会開催のお言葉を!」
「みなさんありがとう。どうぞ踊ってください」女は満面の微笑みを浮かべ白い手を掲げた。
『新宿のビルの隙間から女性の遺体発見 カラスの群れに襲われ白骨化した様子』
お題失念。失礼しました。
次は「バーテン」「大将」「小僧」でお願いします。
313 :
「バーテン」「大将」「小僧」:03/08/22 22:17
私の家の近くに小僧寿司という寿司屋がある。
ここの大将のグンジさんは元バーテンダーという経歴の持ち主だ。
その時のクセが抜けないのかやたら高い位置で寿司を握る。
さらには「はい、ジントニック・・・いけね、中トロぉ」なんてジョークも飛び出す。
いつもにこやかに客を迎えてくれるので小僧寿司もグンジさんも町内の人気ものだ。
ある晩、飲みに行った帰り道、小僧寿司の前を通ると誰かがすすり泣く声が聞こえてきた。
シャッターは下りている。誰?声は小僧寿司の中から聞こえてくる。私は耳をシャッターに近づけた。
よおく聞くとそれはグンジさんの声だった。
「うう・・・寿司なんて。寿司なんてよお・・・」
私は聞いてはいけないものを聞いてしまった気がして走って帰った。
翌日、通学途中に小僧寿司の前を通るとグンジさんはいつも通りの笑顔で
お客さんを迎えていた。
昨日泣いていたなんて微塵も感じさせない笑顔だった。
「熊」「成仏」「スピード」
「熊」「成仏」「スピード」
サケ漁は、秋口に限られる。
産卵のため、川に登って来るのを捕まえる。
仲間は、腹が膨れればいいと思っているが、この時期は、オスに限る。メスは子持ちのため、身が痩せている。
もっとも、冬眠前のこの時期は、スピード勝負。捕まえた傍から食べ、また漁に出る。
しかし、今年は不漁である。川下で、人間の漁が著しい。
しかも、川釣りの連中が、近くまで来ている。
熊避けの鈴を鳴らすだけならいいが、地元の猟友会が張っていて、迂闊なことは出来ない。
頃合いを見て、川釣りする人間を成仏させようと思っている。
次は、「残暑」「美術」「座布団」
「残暑」「美術」「座布団」
ねえあなた、美術館に行きませんか。
何だっておまえ、突然にそんなことを。
いいじゃありませんか。たまには付き合ってくださいな。
そんな風であって、私たちは日曜日の美術館にいたわけです。
まだ残暑厳しい、九月のあたまの頃でした。
私は駅から歩くのですっかり陽射しにやられちまって、
椅子でぐったりとしておりました。
それで妻はひとりで館内をまわっていたようで、
なにやら一枚の絵の前でうんうんと頭をひねっておりました。
見れば絵には座布団が一枚。お世辞にも上手いとは言えない絵です。
なあおまえ、この絵がどうかしたのかい。私にはよくわからないんだが。
あらあなた、この座布団、とても良さそうですわよ。座ってみても良いのかしら。
そう言うと妻は、するりと絵の中に入っていきおったのです。
なるほど確かに、こうすると良い絵になりました。
「空間」「湾曲」「ねじ回し」
「空間」「湾曲」「ねじ回し」
「パパパパッパパーン!ねじ回し〜!!」
青い寝巻きのそいつが腹についた大きな白いポケットから取り出したのは、
柄の黒光りする、大きなマイナスドライバー。
「なんだよ〜、もっと役に立ちそうな道具を出してくれよ〜。」
「なに言ってるんだい。君にはコレで十分だよ。ささ、行った行った。」
青寝巻に促されるまま僕はしずしずと廊下を行き、そろりとふすまをスライドした。
両親が静かに寝息をたてている。
僕は手中のドライバーに視線を落とした。
現実とは、なんと脆い事か。
「さぁ、行こうか。だぁれも知らない…とびっきりクレイジーな自由空間へ。」
いつの間にか青寝巻の手にも僕のと同じドライバーが握られていた。
僕らはそれぞれ父、母の横に立った。
「せーの!」
「せーの!」
掛け声を合わせ、ありったけの力で胸部めがけて振り下ろした。
ずぶり、と、ドライバーは案外あっさりとそこにめり込んで行ってくれた。
耳に一瞬、聞いた事も無い汚らしい声が聞こえたけれど、
めりこんだドライバーを動かして湾曲を描いてやると、それもすぐにやんだ。
「…なんだ、ドアなんて、要らないじゃないか。」
僕は思わず吹き出してしまった。
ついさっき眠りにつくまでこの人たちは、こんな現実を思いつきもしなかったんだろうな。
そう思うと、おかしくてしょうがなかった。
ゲンジツからヒゲンジツへのトビラだなんて、ドコにだってアルじゃないか。
僕らは今、空間も時間も光も闇も越えて、どこへだって行ける。
「青」「すいか」「テニスポール」
317 :
「青」「すいか」「テニスポール」:03/08/23 03:26
2組の吉沢凛とは家が近いこともあり、何度か一緒に帰ったことがある。
付き合ってるとかそういうのじゃなかったと思う。僕はたまぁに彼女が
懸命にテニスボールを打ち返す姿を遠くから眺めてたりはしたけど。
太陽がばかみたいに照りつけるせいで青空さえも白んでしまいそうな昼下がり。
下から「守。友達が来てるわよ」と母の声がした。誰だろう?
玄関に凛が立っていた。白いワンピース。少しドキっとした。大きなすいかを持っている。
僕は落ち着いて言った。「どうしたの?」
「うちの畑でとれたすいかなの。お母さんが守くんちに持っていってあげなさいって」と凛は微笑んだ。
僕もつられて微笑む。「立派なすいかだね。あがりなよ。麦茶もあるから」
「ううん。遠慮しとく。すぐ帰らなきゃ行けないし。あのね、守くん。実は私・・・」
凛は下を向いたまま黙っている。僕の心臓が速くなる。「どうしたの?遠慮せずに言ってよ」
「私、転校することになったの」
えっ!?頭が真っ白になった。それから凛は来週には引っ越すなどと言ってたけど
あんまり覚えていない。凛は手を振って帰っていった。
その晩、家族で凛が持ってきたすいかを食べた。すごく甘いすいかだった。
でも甘味を感じると胸がすごく痛んで少ししか食べられなかった。
「不恰好」「猿」「記録」
318 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/23 15:14
「不恰好」「猿」「記録」
その日もまた、オレは校内記録を塗り替えた。3年生になってから早くも3度目の更新だ。
「わぁ、真田君はやっぱり速いなぁ。とてもかなわないよ」
屈託のない笑顔で人なつっこく話しかけてくるのは、同じクラスの久保、通称「猿」だった。
高校に入ってすぐ同じ陸上部で出会い、たがいに切磋琢磨してきた、と彼は思っているようだった。
しかしオレは、彼を軽蔑していた。表面では友好的な笑顔を取り繕っていたが、内心ではこんな猿と関わり合いたくないと思っていた。
その日の夕方、もう部活を切り上げようとしていた頃、来客があった。
顧問の教師が連れてきたのは、風采の上がらない無精髭だらけの酒臭い男だった。顧問はいかにも迷惑そうな様子を隠しもせず、気乗りのしない様子でオレたちのグラウンドを紹介していた。
男はそんな説明などはなから聞くつもりもないようで、しきりに周囲を見回していたが、突然オレと猿を指さした。
「お前ら、ちょっと走ってみろ」
100メートルを走り終えると、ふたりの差は1完歩分だった。絶対に、永遠に詰まらない差だと思った。
「お前、フォームが不恰好だな」
その男の指先は、オレの方を向いていた。
2年後、猿はオリンピックに出場することになる。
お題「菩薩」「臥薪嘗胆」「eメール」
俺は元上司の殺人計画を立てている。あいつは、ろくなヤツじゃねぇ。
不景気の名の元に、いきなり解雇しやがった。やつを殺さなければ気持ちがおさまらん。
俺はインターネットやeメールを活用し、殺人後の処理を任せる相棒を探した。
そして、上司に俺の憎しみを見せる為、文字通り臥薪嘗胆した。
薪の形に曲がり、クソ不味いものしか食ってない体は、俺の容姿を変えた。
アンダーグラウンドと呼ばれるジャンルの掲示板で、相棒を見つけたのはそれから一ヵ月後だった。
そいつはハンドルネームを「菩薩」と言って、本当の菩薩のように殺人計画に強固に反対した。
しかし、俺の決意が固いことを知ると、あっさり考えを変え、俺に協力をすると誓ったのだ。
犯行決行日。行き付けの酒屋から出てきた元上司を殴って車に押し込み、そいつの頭を思う存分殴って殺した。
殺人の興奮と報復できた喜びと、人に知られたくない恐怖で興奮した俺の後ろに、もう一台の車が止まった。
菩薩だ。黒フィルムを張った車から降りてきたのは、本当に後光の眩しい菩薩だった。
俺は青ざめて逃げ出す。すると、菩薩は彫刻のようないつもの笑顔で、俺をもっと震え上がらせた。
「お約束どおりご協力します。私はこの方が極楽往生できるように導いていきましょう。
この方のご遺体は、もうすぐ警察の方が引き取りに来られます。
あなたは鬼が引き取って下さるそうです。三千年ほど地獄で修行することになりましょうが」
遠くから近付いてくるパトカーのサイレン。後退った俺の背中に、鬼の大きな腹が当たった…。
お題「カレンダー」「雲の上」「猛スピード」
320 :
「カレンダー」「雲の上」「猛スピード」:03/08/23 18:14
ケンはものすごい勢いでアパートの階段を駆け下りていた。約束の時間に遅れそうなのだ。
先日、タレントのバンビー鹿間のPR写真のカメラメンに抜擢された。逃せないチャンス。
しかしなんだってこんな日に寝坊なんか。そういやカレンダーでは今日は仏滅だった。嫌な予感。
急げ!愛用のマウンテンバイクに飛び乗る。渾身の力をこめてペダルを踏んだ。
バンビー鹿間は時間にシビアな事で有名だ。もし、今日自分が遅刻なんぞしてしまったら
永久に仕事は回ってこないだろう。ケンは人の間を猛スピードですり抜ける。
急ぐあまり、ケンは後ろを確認せず道路を横断してしまった。急接近してくる車の音。
あっと思った時には身体は宙に浮いていた。雲の上まで飛んでいくような感覚。ふと「仕事・・・」と思った。
直後、背中に凄まじい衝撃。ケンはその場で気絶した。
誰かの呼ぶ声がする。誰だ?で、ここは何処だ?ケンはぼんやりと目を開けた。バンビー鹿間が覗き込んでいた。
「あっ!坂本くん。気がついたかい?良かった。本当に良かった。え?ここかい?ここは病院だよ。
いやね、実はね、君を跳ねた車を運転していたのは私なんだ。いや、恥ずかしいんだが私も寝坊してしまってね。
つい前方不注意になってしまった。お医者さんの話によるとどこにも異常は無いから明日にも退院できるそうだ。
ここの支払いはもちろん私が払う。撮影は君が退院してからにしよう。本当に済まなかった」
なんだ・・・そうだったのか・・・。ケンはなぜか可笑しくなり静かにふふふと笑った。
バンビー鹿間もつられて微笑んだ。
「充血」「絶壁」「チワワ」
ザ・ドッグショーはもう始まっていた。受付のお姉さんも最初は
「今からの出場は無理よ」と言っていたのだけれど、僕が脇からサリー
の顔を少しのぞかせると、もうまいってしまって、すぐにエントリー
ルームに通してくれた。サリーってそういう奴なんだ。チワワ部門は
激戦区よ。頑張ってね。そういって受付の彼女は僕にシートを握らせ、
少しかがんで顔を近づけると、ほっぺに軽くキスをしてくれた。悪く
ない気分だったけど、これもサリーのせいだってことを忘れないよう
にしなきゃいけない。でもやっぱり僕は少しぼぅっとしてたみたいな
んだ。何故って、フェンリーの奴が近づいてくるのに全然気づかな
かったんだからね。仕方ないよ。彼女の唇すっごくよかったんだ。
でも、よりによってフェンリーはないだろうって思う。彼は僕と鼻を
くっつけるぐらいのところまで歩いてくると、ぴたりと止まって、お
まえのサリーはあばずれだ、と言った。教室で先生に当てられて、ト
ーテムポールが突っ立ったまま充血した目で九九を答えているみたい
なだった。僕は絶壁を見上げるようにフェンリーの奴をにらみかえすと、
サリーは強いよと言った。僕の言える数少ない真実だった。
「扇風機」「空」「成長」
322 :
「扇風機」「空」「成長」 :03/08/23 20:36
1人の、言葉が話せない少年が河原に寝そべっている。
彼は空から何か落ちてくるのに気付いた。
目で追うとそれはちょっと離れた草むらにざん、と音を立てて落下した。
少年は草を掻き分け、薄い紫色の石のような物体を手に取る。
それは表面がごつごつしたとても硬い球体だった。
少年はそれをしばらく眺め、上着のポケットへ入れた。
少年はそれを自分の机の引出しにしまっておいた。
ある日少年が扇風機で涼んでいると引き出しの中からぱりん、と音がした。
引き出しを開けるとそこには消しゴムくらいの大きさの毛がふさふさした生き物がいた。
身体つきが丸く、ころころ転がっている。少年はそれを掌に載せ、一緒に扇風機で涼んだ。
その生き物は何も与えなくてもどんどん成長し、いまではハムスター程の大きさになっていた。
いつものように少年の胸に載せて遊んでやっていると、それはころころ転がって少年の
口の中へ入ってしまった。少年は驚いた。慌てて指で引っ張りだそうとするがどんどん奥へ入ってしまった。
最後にごくん、と飲みこんでしまった。咽喉の異物感はすぐに消えた。
少年は本当に驚いたので「ああ、びっくりした」と言った。
「大王」「同情」「豆」
ある所に一人の貧しい男がいた。
何年も着ているヨレヨレでボロボロの服に、伸び放題の鬢髪、栄養不足でガリガリの体。
そんな彼がついに栄養失調で死んだ。
早速、あの世に来た男を、閻魔大王が調べる。それはそれは貧しさに苦労を重ねた人生だった。
「男よ、お前は一生を貧しく過ごしたが、何か望みや希望は無かったのか」
「へぇ、一度でいいから、思う存分腹いっぱいの飯を食いたいと願っていました。それだけです」
閻魔大王は、欲の少なく貧しい男に同情し、一粒の豆を与えた。
「お前はこれを握って転生する。庭に埋めれば、絶えず実を結び、人を飢えさせることが無い」
男はたいそう感謝して、ある貧しい家の息子として生まれ変わった。
さて、その家の庭に植えた豆は、取っても取っても実をつける。
家族は豆を食べて腹いっぱい。余った豆を売ると、次第に暮し向きも良くなった。
不自由なく成長した男は、豆にすっかり飽きてしまった。豆に満ちた生活を嫌うようになった。
ある日、家族が止めるのも聞かずに豆を根っこから抜くと、火をつけて灰にした。
途端、天気が荒れ、男は雷に当たって死んでしまった。
男は死んで昔のことを思い出したが、後の祭り。
男の欲の無さ、素朴さを試していた閻魔大王によって、一粒の豆にされてしまったとさ。
「雨」「飛行機」「童謡」
「雨の日って目に見えるもの全部小さくなるの、知ってる?」
リリ子はこんにゃくチップを食べながら言った。
「ほらね、こんにゃくだってこぉんなに縮んじゃって(笑)」
「バカ、それはそうやって作ってんだろ」
成田を飛び立ってから、僕はリリ子が自分で切った不揃いな前髪や
つまみ食いをしながら料理を作って胸焼けしていたリリ子の姿や、
そんなことばかり考えていた。
紙ナプキン付きのサンドイッチが配られてきた。小さな紙ナプキンを
おそるおそる広げながら、そうか雨の日だしなあ……と窓の外を見た。
雲の上はノー天気な青い空が広がっているだけだ。
ヘッドフォンを付けてみると「♪なのはぁなばたけぇに いりひうすれ」
と動揺が聞こえてきた。
「飛行機に乗るのはこわいけど、地中海に船で行くのってたいへん
だよね、だからリリ子我慢するんだ」といつも言っていたリリ子。
地中海の海は、この窓の外に見える空のように青いんだろうな。
リリ子、約束どおり地中海に連れてってやるからな。
僕は小さな箱になったリリ子をぐっと抱きしめた。
次の三語を入れるの忘れました。
「ダンス」「鏡」「ポスト」でお願いします。
「ダンス」「鏡」「ポスト」
学園祭の最後を締めるのは、熱狂的なファイヤーストームだと思ってた。
少なくとも、聖倫学園ではそうだった。高等部のごつい先輩たちが上半身裸になって
雄叫びを上げる中を、ボク達は炎に駆け寄り、また離れて、気違いみたいに大声を出して
走り回る。夕闇の中の火、汗、そして運動場の泥。それが夏、それが祭だと思ってた。
ボクが聖倫の内部進学を蹴って県立松岡一高に入学してからもう四ヶ月になる。
父さんを説得するときには色々言ったけど、ボクが聖倫をやめたホントの理由は一つ。
上から下まで男、男、男の子しかいない男子校での三年間がつくづく嫌になったのだ。
せめて高校からは共学に行きたい、そう思ってココに来たのに。
ステキな女の子はたくさんいるけど、ボクには知り合い以上友達未満が精一杯。
ボクは「学園祭の最後を飾るフォークダンス」を一緒に踊る相手も無くて、夕空にきゃっ
きゃっという嬌声が満ちる中、グランドの隅でサッカー部のゴールポストにもたれていた。
ボクと別れる時泣いてくれた吉崎や中川は今ごろ聖倫の運動場で叫び狂っているのだろう。
昼間は騎馬戦や棒倒しで流血するまで殴りあったりしたのだろう。だのにボクは。……
向こうの方にも同じように所在なげにたたずんでいる男の子がいる。眼鏡がないから良く
見えないけど、みんないかにもダサい感じのヤツらばっかり。
あれっ、あの子はボクのクラスの三村サンだ。さっきも誰かに誘われてるみたいだったけど、
断ったのかな。三村サンみたいに可愛い女の子が一人で立ってるなんて、どうしたんだろう。
――その時三村サンがずっとボクのことを見てて、自分から声をかけようか、ボクが呼んで
くれるのを待とうか、決心がつかないでいたなんて、近視のボクは、気づいてなかった。
#デカダンスとかポストモダンは書けんかった。
#次は「ジャケット」「はし」「スター」で。
今日はデートだ。普段の僕は冴えない男だが、一世一代の大勝負。朝から気合を入
れていこう。
いつも食べなれたご飯と味噌汁は、フランクエッグとトーストに。テレビのニュースは
NHK−FMのクラシックに。部屋も掃除した、カーテンもあけた、Tシャツとトランクスじゃ
なくて、ちゃんとパジャマを着て寝た。よし、今のところはかっこいいぞ、僕。
あまり気取った風を感じさせない色合いのジャケットとパンツ。相応にお金もかかった
けど、阿佐美さんに恥ずかしい思いはさせたくないし。僕なりに似合っているとも思う。
じゃじゃっと焼き上げた目玉焼きをオーバルディッシュに移して、はしを……違った、
ナイフとフォークだ。いつもの癖だけど、今日だけは伏せておかないとね。
トースターから跳ね上がったトーストにバターを塗り、フランクエッグにソースを……あ、
醤油しかない。
ソース、ソース……駄目だ、ソースを探してキッチンを歩き回るのは結構かっこわるい。
代わりになるものを探して、優雅な気分に戻らなきゃ。 粒入りマスタード、か。フランク
エッグだし、これでいいかな。目玉焼きはプレーンで。
よし、今朝は優雅な気分だ。ちょっとビールが飲みたくなったけど、今日のデートも優雅
にいけるさ。
次のお題は「公園」「蚊」「生命保険」で。
保険の営業マンも楽じゃないね。まぁ楽な仕事なんて物は無いけどさ。
結局、気の持ちようだろ?仕事が楽か楽じゃないかって。
言ってしまえば合うか合わないかだけど。
そんなことより、あれだ。いま自主休養を公園で取ってるんだけど。
ガキと奥様で賑わってるんだよなぁ。
ここはいい公園だよ。オブラード、「見栄えのいい常識」に包まれてさぁ。
会社近くの公園なんて悲惨だぜ。ホームレスなんて体のいい言葉で片付けられたので一杯。
乞食ではないんだってよ、日本は福祉がどうたらこうたらって言うわけで。
結局は本人次第である程度選べるようになっただけで侍の時代から変わっちゃいない。
薮蚊と同じようにな。くっそ、また食いやがって。サボったのがバレるだろ、畜生。
でもまぁ、へへ。保険屋なんてハイエナが出始めた分、変わったか。
つってもあれだぞ。すぐ金出すなんて勘違いすんなよ。
金が貰えるかもしれない交渉する為に普段、金払うんだからな。
そう、保険も変わっちゃいないの。
「コーヒーショップで船乗りが始めた生還の賭け」からな……。ヒヒヒっ。
人生は博打です。だから慎重に確実に手堅く事を進めましょう。
その為に私どもは常に皆様の繁栄とご健勝を祈っております、クックック。
次は「煙草」「浴衣」「残暑」
「煙草」「浴衣」「残暑」
大学の休暇を親元で過ごしていた僕のところにメールが届いた。
残暑見舞い、と題したそのメールの送り主は幼友達の麻衣子で、そこには、
雄太と早苗と一緒に天神様の縁日に行くんだけど、来ない? と書いてあった。
僕は公認カップルの雄太&早苗に一人付け加わった形の麻衣子が居所を無くして
いる様子を想像しながら、うん行くよー、という返事を書いた。
僕たち四人は子供でにぎわう天神様の境内を昔の話なんかしながら歩いた。
射的、籤引き、甘酒、薄荷パイプ、僕たちはいくつもの屋台の前を素通りした。
案の定いつのまにか雄太と早苗は二人だけで盛り上がってしまい、僕と麻衣子が
その後から並んでついて歩く形になっている。
僕は前会った時からの近況なんかの話をしながら、オレンジ色の浴衣に草履を
履いて綺麗に化粧をし髪を上げた麻衣子の姿を見ていた。
もう僕は普通に煙草も吸って酒も飲むし、時には馬券だって買う。女の子の体が
どういうものかも知った。僕たちは昔のように一緒に縁日に来てはみたけど、
ここにいるのはぜんぜん昔の僕たちなんかじゃないんだ。あたりまえのことだけれど。
短大を出て就職した麻衣子が明日は仕事だから早いけどもう帰るねと言った。
僕は送るよと言って、雄太と早苗を残して麻衣子について来た。
祭の喧騒を離れて、通いなれた路地を街灯だけが照らす。
僕は前よりもっと可愛くなった麻衣子と二人並んで歩きながら、昔のように心が
ドキドキすることのない自分のことを、なんだか寂しいなと思っていた。
#次は「風」「つば」「キング」で。
冷夏だと思われた夏も盆を過ぎてから酷暑がやってきた。
風が吹くのを恋しく思いながら、頸や背中に纏わりつく汗をハンカチで拭う。
汗を幾度も拭ったために饐えた臭いを発したハンカチに殺意に似た怒りをおぼえた。
黒い皮製の営業用カバンが湯たんぽのようになっている。
私は涼みたいという渇望に敗北して、コーヒーチェーンで有名なスタバに駆け込んだ。
マニュアル通りの接客の筈が、眼前の女店員の言葉はどもっていた。
その時だった、彼女の震える口から泡立ったつばが放たれ、私の鼻先を掠めた。
彼女は若く白皙の美人といった感じであるが、残念ながら乙女の香りではなかった。
アイスコーヒーやその他諸々を載せたトレイを空いている席へ運ぶとトイレへ足を運んだ。
蛇口をひねり、ハンカチを洗い、そのハンカチでこするように顔を洗う。
私は正面の鏡に映る、赤みを帯びているが精気を失ったような顔を茫然と眺めた。
私は踵を返し、便器のほうへ歩み寄りチャックをおろし、いやな湿り気のジャングルから一物を取り出して排泄した。
安堵の溜め息を大きく吐くと同時に或る落書きが目に入ってきた。
落書きは「キング・オブ・させ子 090-…」と書いてあった。
「キングじゃねぇーだろ、クイーンだろ」と一人ごちた。
■次ぎは「歯痛」「サナトリウム」「翼」
颯颯と風が吹き込み、白い二重のレースカーテンを揺らした。私はベッドから降り、
窓のそばに立った。このサナトリウムは町外れの高台にある。眼下に赤茶色の屋根の
家々と、それからその向こうには洋々とした海が広がっていた。
私は海が好きだった。今日のような陽光を受けきらきらと白く輝く海も、雨の日の
暗く水面を泡立たせる海も。「行きたいな、海……」
そのとき、私の頭の奥を刺すような痛みが襲った。
「いたっ!」
ナースが慌てて走りよってくる。私は彼女に大きく口を開けた。ナースは慣れた手つきで
私の口の中に苦い脱脂綿を突っ込む。
「はい、歯痛を抑える薬ぬっときましたからね」それから彼女は恐い顔でベッドの下に手を
入れた。 「……やっぱり、いつまでも治らないと思ったら」 出てきたのはチョコバー。
私は知らないふりをして、布団にもぐりこむ。
「もうじき夏休みも終わっちゃうでしょ。何のために入院してるのか考えなきゃ」
私はため息をついた。使われていないサナトリウムが、生活習慣病を治す為の入院施設と
して稼動して半年。折角の夏休みの間、私は親に放り込まれて、おやつ抜き生活中なのだ。
ぶつぶつ言いながらナースが出て行く。私はのぼせて布団から出た。少し涼もう。
私は窓のそばに立った。外は海。海岸にはいくつものビーチパラソル。
――私も、美里たちと一緒に海に行って、カキ氷食べたりしたかったなあ……。
私は深い深いため息をついた。
次は「氷」「パラソル」「光線」でお願いします。
目覚めると雨戸の隙間から暗黒を切り取った光線が目についた。
どうやら昨夜、外を騒がせた台風は通過したようだ。
火照った躰に汗がへばりついている。
手元にある冷房のリモコンのスイッチを手探りで入れた。
太ももを掻きむしると、蚊に刺されたであろう感触を指に感じて舌打ちした。
喉か渇き、冷蔵庫から氷を取り出し口に含む。
冷たさの後に頭のこめかみあたりに激痛が走る。
雨戸を開けて外を見た。
昨日の台風が嘘のように空は青々としていて微風がふいていた。
道に落ちているビニール袋やパラソルの残骸などが、その痕を残していた。
氷が全て口腔内で溶けるまで、蒼穹を眺めていた。
次ぎは「欠伸」「恋心」「嘔吐」de!
333 :
gr ◆iicafiaxus :03/08/25 19:37
「欠伸」「恋心」「嘔吐」
僕はふすま越しに聞こえる飲み会の喚声を少しうとましく思いながら、嘔吐を続ける
神崎愛子の背中をさすっていた。途中、今日の幹事の山口さんが様子を見に来たけれど、
大丈夫だから僕に任せて、と言って帰した。愛子は昔っから自尊心の強い人だから、他の
女の子たちの前でこんな醜態を見せることなんて考えたくもないだろうし、まして男の子
なんかに介抱させるくらいなら、一人で寝てるほうを取ることだろう。
無論僕も男の子なのだが、愛子によれば「本家と分家とはいえ住んでる所も隣同士で家族
同然の従弟のあんたに恋心なんて持ったら変態を通り越して変質者」なのだと。やれやれ。
その愛子が宴中、青白い顔でやって来て、僕を廊下へ連れ出すと、「私… もうダメ」と
言うなり僕の肩に体重を預けてその場へ崩れ落ちてしまったのだった。
別室の床の上の洗面器を前にかがみこんだ愛子は、苦しそうな顔をしてげぼげぼと一しきり
吐き戻すと、背中の僕の手を軽く払いのけて、はあはあと大きく息をする。「全部出してしまえば
楽になるよ」という僕の言葉にうなづく。再び背中を撫ぜ始めた僕の手の動きに反応して、
愛子はまた少し吐いた。そしてもっと吐こうとして、しかし吐けずに、血の気の引いた顔を
ゆがめる。僕は「指、入れていい?」と一応確認して、愛子の半開きになった口の中へ軽く
水で濡らした指を入れる。愛子の喉の奥の柔らかい部分に指が触れたと思うと、愛子の体が
波打つように揺れて、温かい反吐が胃の方から溢れてきた。手を抜いて、洗面器に吐かせる。
やがて胃液しか出なくなったので、辛そうな愛子に僕は吐くことをやめさせて、水をやり、
適当に引いた座布団の上へ汚れていないほうの手で横様に臥させる。気持ち悪そうに荒い息
をしていた愛子は、やがて大きな生欠伸をしたかと思うと、静かに寝入ってしまった。
僕は濡れた手の匂いを嗅いでちょっと舐めてみてから、洗面器も持って流しへ向かう。
#なぜかずっと、sage カキコしてました。スマソ。
#次は「低音」「引き出し」「また」で。
334 :
「低音」「引き出し」「また」:03/08/25 21:32
また、佳子さんの激が飛ぶ。
「音が揃ってないじゃない。ちゃんと集中する」
鍵盤に映る蛍光灯の刺激に眩暈がしたのだった。
スクリャービンのエチュードは正直楽しくない。
左の薬指が疼いた。
僕がまだ中学生の頃、とても縁がなさそうな不良ぶった沙希と仲良くなった。
昼休みに体育館のピアノを使わせてもらっていた僕はショパンを弾くのが好きだった。
その時、体育倉庫に屯していた不良たちの一人が沙希だった。
「あのワルツ弾いてよ」
「オーパス69の1かい?」
「数字なんてどうでもいいの、音さえ憶えていれば、それで…」
「ふぅーん、ワルツは単純だからなぁ…」
沙希はピアノ線をハンマーで叩くところを眺めていたかと思うと、僕に口づけしてきた。
沙希の歯の感触とワルツのリズムだけが僕に存在していた。
自転車の後ろに沙希を乗せてカーブに差し掛かる時、斜線をはみ出して横転したバイクに巻き込まれた。
バイクと共に引きずられ、抗うこともできず吸い込まれるようにガードレールへと向かった。
後ろから咄嗟に僕をかばうように反転させられ沙希に抱きかかえられながら衝撃が走った。
蛍光灯と点滴が目に入った。
沙希とのペアリングが指にくい込んでいた。
それ以来、左薬指が鈍くなり低音の粒が揃わない日々が続いた。
高校生になった今では気にならない程度に指も完治した。
しかし、こんな夜は引き出しから沙希の写真を取り出して、ショパンのOp.69-1「別れのワルツ」を弾かずにはいられない。
次ぎは「オアシス」「蝋燭」「嫉妬」
335 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/25 21:32
「低音」「引き出し」「また」
ぶんぶんぶん、と、ファンが回る音が耳に残る、リノリュームの冷たい感触が
心地よい、8月の市民病院の廊下。
俺ら勝ちにいったんだよな。負けなかったよな、鉄パイプの冷たさ、覚えてたよ。
冷静だったよな、凶悪の連中、目じゃなかったんだよ。弱い。弱すぎ。
無駄無駄無駄。俺らに張り合うの百年早ぇって、肩組んでよ。俺ら。
ぶんぶんぶんっと、低音のファンの周波が耳から離れなくなった。
「うっせえぞここのエアコンおらああ!」
「ひいい、はい。すいません。」
「殺すぞカスわれえええ!」
牝豚の甘語婦に教育を施しておいた。安心してくれ。サトル。お前のこの苦痛は
続く事は無いだろう。安心しろ。お休み。良くなるさ。引き出し、俺らの寄せ書き
入れといた。ゼッテー嫁(w。
またな!サトル!お前は最高だぜ!
「8月25日 加藤悟 交通事故 脳挫傷 脊椎損傷 絶対安静」
次は「音色」「プール」「長い影」で。
「今夜、うちに遊びに来ない?」
私とMとの付き合いはもう数年になるが、Mが私を家に誘ったのは初めてだった。
私の家にMが来たことは何回もある。また、泊まったこともある。そして、交わったことさえもある。
なのに、Mの方は今まで自分の家に私を来させようとは決してしなかった。
「私は住所不定なの」Mはいつも冗談めかしてそう言っていた。
「じゃあ、住所が決まったんだね」私が冗談めかして言うと、Mは真面目な表情で肯いた。
Mの家は特に何の変哲もない小さな家だった。
家具は必要最小限のものしかない。テレビもない。私の家にもないけれど。
唯一あった電化製品はラジオだった。
かけてみると、低音がまともに出ていない。
「寝ぼけて踏んづけて壊しちゃった」とMは言った。そこで私も踏んづけてみたら直った。
Mは喜んでタンスの引き出しから一本のシャンパンを取り出し「乾杯しようよ」と言った。
場違いなほど高級なシャンパンだった。
337 :
kitahara:03/08/25 22:15
「音色」「プール」「長い影」
校舎の裏の細い道はそのままプールに続いていて、彼女は水の底で今でも僕を待っている。
雨上がりの夕焼け空に照らされた学校帰りのいつもの小道には二人の長い影がどこまでも続いていて、東の空の虹にかけた僕らの願いはそのまま僕らの約束になった。
『いつまでも仲良しで、いつまでも一緒にいられますように』
でも大抵の思春期の僕らがそうであるように、僕と彼女も大きくなるにつれて段々とそれぞれのグループへと別れていった。
『聞いたか?アイツ、三組の○○と付き合っているんだってさ』
だから、中三の夏の終わりに彼女がプールの底で見付かったと聞いたとしても、何故だか涙はこぼれなかった。
『いつまでも仲良しで、いつまでも一緒にいられますように』
夏の終わりの台風で打ち上げられた思い出たちが海岸べりで白と青の音色を放っている。校舎の裏の細い道はそのままプールに続いていて、緑色になってしまった水面の奥に彼女の顔が見えた気がした。
338 :
「音色」「プール」「長い影」:03/08/25 22:27
まだ熱気が留まっている夕暮れ。新田光子とその友人が市営のプールから出てきた。
二人とも遊びつかれたらしく二言三言話しただけで手を振って別れた。光子は自販機で
ポカリスエットを買い、「ほたるの光」を奏でるピアノの音色を聞きながら歩き出した。
帰途。光子はある銅像の前で足を止めた。地元出身の演歌歌手の銅像である。
紅白歌合戦にも何度か出場し、年に一度の地元公民館を貸し切ってのコンサートは
立ち見もでるほどの人気だ。
光子は歌手になりたかった。それも演歌歌手。流行りにとらわれず、人間の行き様を
切々と唄う姿に昔から憧れていた。そのことを両親にはまだ話していない。両親は
来年光子が高校を卒業してからは地元で就職すると思い込んでいる。歌手になるためには
それに沿った専門学校などに行かなければならず、家を出ることになる。1人娘の光子を
両親が簡単に手放すはずもなく、頑なに反対される様子が目に浮かび光子はひとつ溜息をついた。
言うべきか否か。もちろんこの町は大好きだ。でも・・・。
「はあ・・・どうしよ」と光子は呟きポカリスエットをぐいっと飲んで銅像を見る。
もちろん銅像が口を開くはずもなく、自分で決めるしかないと今までと同じ結論に達した。
その後すぐに光子は家へ向って歩き出したので、銅像から伸びた長い影が自分に
覆い被さるように重なっているのには気がつかなかった。
「茶柱」「回転」「砂浜」
僕と姉貴は見世物小屋に入った。中には大きなスクリーンがあった。
見世物小屋とは、映画を見せてくれるところらしい。
上映が始まる直前に僕と姉貴に湯飲みでお茶が出された。
僕のも姉貴のも茶柱が立っていた。他の客もそうか聞こうとしたら客は僕と姉貴だけだった。
僕と姉貴がお茶に口をつけるのとほぼ同時に場内が暗くなった。上映開始らしい。
上映されたのはどうにもおかしな映画だった。
主人公は小学生ぐらいの少年で、小さな村に住んでいた。
村長の悪しき企みを阻止しようと、村長の自転車を肥溜めに投げ捨てて少年は村を追われた。
あてもなく何日も彷徨い、たどり着いたのは砂浜だった。
疲れ切った少年はその場に立ったままぼんやり海を眺めていた。
そこへ突然、少年より二歳ほど年上らしい少女が現れた。
少女は少年の前で一回転してポーズを決め、こう言った。
「ヘーイ、そこのお兄さん、お茶しない?」
気がつくと僕は湯飲みを床に落としていた。横を見ると姉貴も少なからず驚いていた。無理もない。
この映画は…僕の過去と、僕と姉貴が出会った時のことをそっくりそのまま再現していたのだ。
次は、「高速」「地球」「ジェット」でお願いします。
340 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/26 00:38
「高速」「地球」「ジェット」
「仕事」を終えると、老人は逃げる様にその場を後にする。
ジェット旅客機で2時間ゆけばもう東京、あの片田舎とは大違いだ。
これでいいのだ。
村長の頃の悪事を知る者は、今や、地球上のどこにもいない。
高速道路誘致に関わる小さな汚職だが、国会議員候補者の今は絶対困る。
「あ、しもた!」
湯のみに入れた睡眠薬と、暗示に使った脚本を、大急ぎで捨てる。
彼等の驚きかたは只事ではなかった。
自分たちの「過去」が映画で上映されているのだ、無理もない。
実際は、睡眠薬で熟睡中に記憶させられたニセモノの過去なのだが・・・
まるっきり気付かない風だった。本当の過去と信じ込んでいる様だ。
この現代に、肥溜めなどそうそうあるわけはないのに。
思えば、少し、大林監督作の映画の影響もあったな。
まあ・・・いいじゃないか、彼等はこれから二人で平和に過ごせるのだ。
自分たちが姉と弟だという暗示も、信じきっていた様だから。
※大急ぎ(^^;
次のお題は:継続の「高速」「地球」「ジェット」でお願いしまふ。
341 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/26 01:22
「高速」「地球」「ジェット」
「地球の平和を乱す奴は許さん! 文芸戦隊リテラルマン!」
……スポンサーの意向とはいえ、こんな恥ずかしい台詞を毎回毎回言わされるとは、羞恥プレイもいい
ところだ。夕飯に思いを馳せながら、適当に雑魚をあしらう。時折かけ声を出したり、相手の攻撃を食
らうことも忘れない。雑魚がいなくなれば今週の怪人と対峙。一発で分かる弱点は攻撃してはいけない。
それがルールらしい。仲間の誰かがピンチになったら─今回はブルーか、気の毒に─本気で攻撃、だ。
なんとかバスターで敵が木っ端微塵になり、間髪入れずに巨大化して復活する。こちらも対抗してジェッ
ト機に乗り込み、すぐに合体してロボットになる。まったく、最初からデカいのでやれっての。お互いに。
「合体! リテラルロボ!」
またですよ、恥ずかしい。だいたいなんでレバー二本で巨大ロボットが動かせるんだよ。まあいいや。
さっさとくたばれ怪人。あーこらバカ、高速道路を壊すな。スポンサーに怒られるだろうが。そうだそう、
そっちのビルはライバル会社のだから思う存分やってくれ。よしよし。時計を見るとちょうどいい頃合いに
なっている。
「必殺! リテラルソード!」
はい爆砕。
「ペンは剣より強し、だ!」
キメ台詞で終了。もうね、この稼業は思考停止しないとやってられんのですよ。
え、愚痴ばっかり言うなら辞めろって? 週休6日で高給の仕事があれば転職しますけど、アテあります?
次は「鋼鉄」「粉砕」「カナヅチ」
「高速」「地球」「ジェット」
「暑いね。どっか涼しいとこ行かない?」
「あ……うん、そうだね」
何処にでもある、小さな児童公園の木々で、最近めっきり聞かなくなったミンミンゼミが大合唱をしている。
滴り落ちる汗を淡い水色のタオルで拭い、私はベンチの隣に座っている恵にぎこちなく微笑んだ。
恵は恵でどこか所在無さげに暑さで地球のように澄んだ青い瞳を潤ませながら、私の提案にゆっくり首肯する。
しかし、どちらもその場から動こうとしなかった。――いや、むしろ動けなかったのかもしれない。
気まずい空気が二人の間に流れる中、低い唸り声を上げて、上空をジェット機が通り過ぎていった。
「で……、恵、今日は突然どうしたんだよ」
「うん……、ほら……久しぶりにこっち帰ってきたしさ……」
少しぶっきらぼうな私の口調に臆したのか、恵はどこか歯切れの悪い返事をする。
私は緊迫した空気に耐えられなくて、勢いをつけて立ち上がった。
「ほら、ちょっと歩くよ」
手を差し出すと、恵は案外素直に色白の小さな手で私の手に縋って来た。
「で、結局うまくいかなかったわけね、大和とは」
隣を歩いていた恵は明らかに体を硬直させた。――隠そうとはしていたけれども。
「もう私は気にしてないから……」
「でも……!」
「もう何も言いっこなし。――終わったことなんだし」
話しながら、私の瞼の裏には今でのことが高速で過ぎ去って行った。
「当時婚約してた大和と親友のあんたが駆け落ちしたことは決して許せない。
なかったことにしろと言われてもうんとは言えない。
でもね、もう終わったんだから、いつまでもうじうじしてるのも私、嫌いなの」
私は恵をにらみつけ毅然と言った。
恵はうな垂れたまま何も言わない。
「だからね、また私たちの関係一から作り直そうよ」
辛くても進んでいかなければいけない今がある。
私は恵にそれを気づいてほしかった。
☆長いですね。
次は「アメンボ」「だるまさんが転んだ」「カジキマグロ」で。
かぶりすみません。
ということで、次は341さんの「鋼鉄」「粉砕」「カナヅチ」で。
映画はまだ続いていた。この後の展開は分かっている。でも、僕も姉貴も目を離さずにはいられなかった。
少女は少年から事情を聞き、その場で少年をお持ち帰り…いや、自分の家に連れて行った。
行き場も知人も無くしていた少年にとって、少女との出会いは砂漠でオアシスを見つけたようなものだった。
少年は、二歳しか年の違わない少女のことをまるで女神のように懼れ敬った。
少女に毎晩のように夜中トイレにつき合わされても、少女が毎日のようにおねしょしても、少年の畏敬は変わらなかった。
少女と話すときは常に敬語を使った。少年が普通の言葉で喋ったのは、少女が飼っていたライオンと話すときだけだった。
少女は、ライオンと打ち解ける少年をなぜかいつも不機嫌な目で見つめていた。なぜ不機嫌なのか自分でもなかなか分からなかった。
そして、ある日の夜中に少女は気付く。自分はライオンに嫉妬していたということに。
自分は少年を奴隷か何かにしたくて持って帰った…いや、連れて帰ったのではない。なのに、
少年はまるで自らが奴隷であるかのように接してくる。それが嫌だった。
解決する方法は一つ。少女は蝋燭を数本用意して、隣の部屋で寝ていた少年をつっついて起こした。
いつものようにトイレに付き合わされるものとばかり思っていた少年を、少女は外まで連れ出した。
蝋燭の明かりを頼りに、少女は家の近くの丘の大きな桃の木の下まで少年を引っ張っていく…
そこまで見たところで、僕は突然腕を掴まれ見世物小屋の外に引っ張り出されてしまった。
引っ張りだしたのは姉貴だった。顔が真っ赤だった。
「もう…もういいよ。他のところ行こう…ね?」
僕も今では同じ気持ちだった。そのまま僕と姉貴は見世物小屋を立ち去った。
スクリーン中の二人は、あの桃の木の下で誓いを立てて姉弟になる。
※うはうさん、339に続くような内容で書いてくれましたが
話の都合上無視してしまいました…ごめんなさい。
345 :
ゴンザレス:03/08/26 02:29
巨大な鉄骨のジャングルジムを青テントで囲った中に、長い鋼鉄パイプが運
ばれてきた。ゴンザレスはカナヅチの重みでずり下がるカーペンターパンツを
腰の位置まで戻し主任の指示を聞いていた。デカセギで日本に来てから半年、
日本語も半分理解するのがやっとだ。作業主任はゴンザレスにだけ、事務所に
ついて来るように言った。なんだろう?現場を変えられるかクビにでもなるの
だろうか。とくに不平も言わず、勤務態度も悪くはなかったはずだ。
プレハブの事務所に入ると、黒い合成皮革のソファに目つきの鋭い男が大股
を開いて座っていた。
「前田さん、どうですか? こいつはまだ日本語はうまくしゃべれませんぜ」
「ああ、いいよ」前田と呼ばれた男は大儀そうに答えた。
「ゴンザレス、稼ぎのいいアルバイトを探してるんだろ? 前田さんはいいひと
だからちゃんと勤めるんだぞ」
アルバイト? 日本語も満足にわからない自分にできる仕事といったらこういう
現場での肉体労働だけだ。それだってボロキレのようになるまで働いてひと月
5〜6万程度の手取りにしかならない。突然のチャンスはうれしい気もしたが
頭の隅の粉砕しきれない不安の塊がゴンザレスを緊張させた。
次は>342さんの「アメンボ」「だるまさんが転んだ」「カジキマグロ」
でお願いします。
>>344 ☆サンクス!☆
「アメンボ赤いなあいうえお」
演劇部の発生練習はこれから始まる。
一通りの練習を終えた俺たちは休憩した。
最近、この休憩時間に「だるまさんが転んだ」ゲームがブームとなっている。
俺たちのローカルルールでは鬼に浣腸することができるのである。
後輩のタツローはこのゲームで切痔になったことを真剣に悩んでいた。
しかし、それを知った連中はタクローをさりげなく追い込むことに愉悦を覚えた。
タクローの時だけ皆、公演ではみせないような集中力を発揮した。
そんなタクローは次回のヘミングウェー「老人と海」での公演でカジキマグロ役に抜擢された。
大海原を引き摺られるような役は彼にしかできないということで、満場一致で可決したのだった。
次ぎは「胸毛」「サックス」「鼻血」で。
朝食にゆで卵が出た。早速、テーブルの角でノックする――が、割れない。
もう一度、少し強めにノックした。しかし割れない。
もう一度、もう一度――なんと手強い卵だ。髪を振り乱し、力の限りに打ちつけても
殻にはひびひとつ入らない。逆にテーブルのほうが悲鳴を上げる始末だ。
私は納屋にしまった工具箱を開け、カナヅチを取り出した。鋼鉄のヘッドで力の限りに
殴りつければ、いかに強固と言えども所詮は卵。卵は木っ端微塵に粉砕されるだろうが、
少なくともプライドは保てる。
私は卵を床にしっかりと固定し、カナヅチを振りかぶり、打ち下ろした。
次の瞬間、私はへし折れた柄を手に、愕然としてただ卵を見つめていた。
次のお題は「梅」「出航」「畳」で。
出航の朝、父さんはいつも家でつけた梅干の入った壺を風呂敷に包んで
「じゃあ、行ってくるからな・・・」と漁港に向った。
今じゃ考えられない6畳一間に4人の子供。
僕らは高度成長の波とともに世間では立派な大人になった。
もうすぐ取り壊されるその古くて小さい実家のそばにある堂々とした梅林。
その根元にポツンと墓が梅干の壺を抱いている。
半年もマグロ漁船で海と戦った父さん。
僕らも時代のうねりにしっかりと帆を揚げてこれからも進みますよ。
そんな決心を毎年この蒸し暑いお盆の時期にさせられる・・・
梅林ではセミが力いっぱいナイテいる。
次のお題は「アイスクリーム」「電球」「三振」で。
349 :
gr ◆iicafiaxus :03/08/26 05:03
「胸毛」「サックス」「鼻血」「アイスクリーム」「電球」「三振」
我が神明学園ハイキング部には高等部と中等部を合わせても男が二人しかいない。引率の
先生にも男はいないからこの山の家の男子浴場は俺と四個下の成瀬とで今日は貸し切り
状態だ。俺は隣で一生懸命まだムケてない性器を綺麗に洗おうとしている成瀬の華奢な
肉付きをちらちらと横目で見ながら、自分のものが立ってしまわないように頭を再三振って
冷静に努めつつ、成瀬のと対比するべくも無い自分のむさくるしい体を洗っていた。
と、ふと成瀬が鼻頭を押さえてうつむく。「どうした?」と聞きながら俺はさりげなく成瀬に正対
してその体を眺める。成瀬が違和感ありげに何度か手で鼻に触れていると、まもなく真っ赤な
血が流れてきた。鼻血だ。「さっき湯船に浸かりすぎていたんだろう。どれ」と、俺は成瀬の
肩に手を遣り、顔を近づけて様子を見てやる。電球の光がよく当たらないからと言って成瀬の
体を自分のほうへ近寄らせる。「これは鼻血だな。きっとのぼせてるだけだよ、外で休みな」
石鹸を流した成瀬が脱衣場へ出て行ったのを見ると、俺はこの場で今見た成瀬のまだ毛も
薄い股間にあったもののことを思い出しながら自慰をしようかと思った。が、自重した。
俺もさっと体を洗って外へ出る。成瀬はパンツ一枚で長椅子に掛けて鼻に紙を当てていた。
俺は「冷たいものでも食え。俺の奢りだ」と愛用のナップサックスタイルのバッグから財布を
取り出して自販機でアイスクリームを二本買い、成瀬のすぐ真横に腰掛ける。成瀬はまだ
変声の終わらない声で「ごちになります」と言ってそれを受け取る。
体を拭く俺に、「いいなあ、先輩は逞しくて。僕なんか体重も45キロ無いし、今日だって
のぼせて鼻血なんか出しちゃうし……」と情けない声を出す成瀬。俺は「何言ってんだ、俺
なんかちょっと腕が太くて胸毛があるってだけじゃないか。お前みたいに綺麗な体をしてる
方がいいんだよ」と言いながら、ばしばしと成瀬の肩、背中、腰そして尻を叩いてやった。
#次は「パン」「詰まる」「見栄」で。
350 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/26 06:39
>>346さんの「胸毛」「サックス」「鼻血」を消化させていただきますね。
「何?音を楽しめだと?我々は人間たちの昼夜問わない騒音にいつも
悩まされているのだぞ!いい加減なことことをいうな、このくそ坊主!」
三蔵法師は嫌音妖怪たちに殴られ鼻血が溢れてきた。
「やいやいやいやい、お前ら!うちの和尚さんに何をしてる?ただじゃ置かないぞ!」
筋斗雲に乗って悟空が三蔵法師を助けに来た。
「悟空、おやめなさい!やめろというのが聞こえないのか?ナムサンカメンファラオー・・」
「キーン、キーン・・・」 悟空がかぶっている頭のリングが閉まりだす。
「いて、痛ててて、助けようとしてこいつら懲らしめてるのに何でだよ和尚さん?」
「悟空よ、この者たちに罪は無いのだ。騒音ばかりを昼夜与えている我々人間が悪いのだ。
お前の力で人間たちの作ったすばらしい音楽を聴かせてあげなさい!そうすれば、きっと
わかってもらえるはずだ。」
「わ、わかりましたよ、和尚さん・・全くいつも頭かたいんだから・・・」
悟空は真っ白い大きな雲に五線譜を作り、自分の胸毛を抜いて吹き飛ばした。
とすると、その五線譜に悟空の分身たちが♪となり一つの曲がみるみる出来上がった。
「いいかお前らよく聴けよ!これが人間の分身ともいえる魂の叫び・・音楽だ」
悟空は如意棒をひょいと空に放り投げてサックスに変え、心を込めて吹きはじめた。
「♪In Gandhara,Gandhara They say it was India
Gandhara,Gandhara 愛の国 ガンダーラ♪」・・・・(完)
お嬢さんが好きだった。
正確に言えば、パン屋で働いているアルバイトのお嬢さんが好きだった。
毎日毎日、足繁く通った日々を思い出す。
弁当を忘れ、仕方なく昼休みに学校を抜け出して買いに行ったパン屋。
息が詰まるくらい笑顔の似合う、素朴で素敵なお嬢さんを見たパン屋。
購買のパンが不味いと見栄を張り、労力を厭わず走って行ったパン屋。
でもお嬢さんの姿を見れたその日は、疲れなんて残らなかったパン屋。
それから半年たった昼休み。
特別になったはずの風景は、今は工事の音にかき消されている。
当然の事ながら、彼女はもういない。居場所なんて知る由もない。
名前も聞き出せなかった。名札すら見る勇気もなかった、
それでも最初にかけてくれた一言と、笑顔だけは覚えている。
……まぁ、ろくに返事も出来なかったのはいうまでもなくて。
あれ以来、行く度に事務的な買い物しか出来なかった。
青春と笑う事も出来ないようななんでもない日々。それでも、
―――ありがとう。君がいるだけで、幸せでした。
秋も深まり、冬になる頃、またその土地には新しい建物が立つという。
そこにお嬢さんはいないだろうけれど、思い出で終わらせるのも悪くない。
転入生として入学したりはしてくれないかな、などと淡い期待も抱きつつ。
なくなっていく半年間の思い出を見ながら、不味い購買のパンをかじった。
ちょっとわけがわからないかな?
まぁともかく、次のタイトル「水月」「夜桜」「量子力学」
352 :
「水月」「夜桜」「量子力学」 :03/08/26 12:15
僕たちの観察できる世界には限りがあるのだという。
物心ついたときから、この世界は無限だと僕は思っていた。時間も空間も
限りなく続くものだと思っていた。頭のなかで想像する時間は永遠で、
宇宙は無限に続くものだと信じていた。
高校の物理の時間に先生が「ついでに」と前置きをして話し始めた
ホーキングや量子力学の話を、騙されたような面持ちで僕は聞いていた。
途端に不安になった。先生の話が確実なら、机の上でころりと転がした
赤鉛筆が本当にそこにあるというというのは、わからない。どれぐらいの
速さで動いているかはわかる。どこにあるかというのもわかる。けれども、
どれぐらいの速さでどこにあるのかということは、確率的にしか述べられ
ないというのだ。
ならば僕が気になってしかたのない、窓際の前から二列目に座っている
女の子も本当は、そこにいるのかどうか、わからないのだろうか。
僕の網膜へ届く光の束は、水月が風に吹かれて揺らめき、雲に隠れされて
消えるように、うつろいやすい、曖昧で儚気な姿なのだろうか。
新しいクラスメイト達とみんなで夜桜見物にいったとき、こっそり写真に
収めた彼女の輪郭は、果たして印画紙に浮かび上がった通りなのだろうか。
休み時間、掲示板を確認するふりをして僕は、立ち話をしている彼女の
傍を通った。制服のスカートの端っこを、ばれないようにカサリと触った。
次は「戦争」「朝食」「バスケット」
353 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/26 14:21
「戦争」「朝食」「バスケット」
朝食を食べながら見ていたテレビでは、
ある大国と独裁者の国が戦争をしていると言う
ニュースを流していた。
僕はこのままどちらかが勝っても、仕返しをして、それでまた仕返しをするって言う感じの
まるでバスケットボールの試合みたいになる事を予想して、
シャワーを浴びながら手首を切り落として、きっちり自殺した。
オダイハオナジデ。
354 :
「戦争」「朝食」「バスケット」 :03/08/26 15:22
僕は今日は珍しく朝食をきちんと食べた。母親もどうしたの?なんて言って
驚いている。腹にたっぷりとガソリンを補給し、僕は学校へ向った。
2時間目にB組との合同体育があり、更衣室で僕は「3年C組 木野進」と刺繍が入っている
Tシャツに着替えた。今日はB組対C組でバスケットボールの試合をやることになっている。
女子も一緒なのでいいところを見せるチャンスだ。バスケ部の僕は気合をいれる。
そこに、B組の大門が入ってきた。186CM。バスケ部のジャイアント馬場と呼ばれている。
大門は僕に気付き、「おまえには負けないからな」と言った。
女子の声援をかけたB組対C組のまさに戦争。皆、いやにキレのいい動きだ。
ガリ勉の長尾でさえ「さぁ、1本とってこぉ!」なんて大声を出している。
僕にパスが回ってきて3ポイントシュートを決めた。ガッツポーズ。女子の歓声。
うんうん、いい感じ。直後、大門が長身を生かして派手なダンクをかましやがった。
大門が俺をちらっと見た。女子の歓声は僕のとは比べものにならないほど大きい。クソっ!
大門はすれ違いざまに「おまえには負けない」と残して行った。まったく、負けず嫌いなやつだなぁ。
ぼくはドリブルをしながら前を見た。大門が壁のように両手を広げて立ちはだかっている。
ふう、と小さく息を吐いた後ぼくは僅かなスキをついて抜きに出た。大門が迫る。二人とも女子のことは忘れていた。
「犬の耳」「殴打」「図書館」
朝起きると、犬の耳が生えていた。鏡の前で歯ブラシをくわえたまま
ひとしきり踊った後、あたしはそれに両手をかけ、力いっぱい引っ張った。
すぽ、とそれは簡単に取れた。勢い余ってひっくり返り、脱衣籠に背中から
ダイブするくらい。何の事はない、それはただのイヌミミカチューシャだったのだ。
カチューシャの部分に、「姉貴のイヌミミ萌え(はあと)」と刻んであった。弟の仕業
だったのだ。
「芳樹ぃぃ〜〜〜〜っっ!!」
あたしは朝も早くから弟を殴打し、打擲し、撲撃した。
クラスで今朝のエピソードを披露したところ、おおいにウケた。
「ヘンターイ!」「ヤバいよその弟!」「禁断の愛!」「いいじゃんその程度」
ひとしきり嬌声を上げた後、あたしたちは一斉に最後のの発言者を見た。
普段は寡黙で、特には目立たない、恭子だった。
「あの、別に襲われたわけじゃないし、わたしが昔図書館で雄二に……」
そこで真っ赤になって黙ってしまった恭子、あたしたちは一層高い嬌声を上げた。
今日は思わぬ恭子の私生活を洗いざらい追及することで終わった。
そして翌朝。
起きると、ネコミミが生えていた。
次のお題は「無頼」「ジャム」「ハンドル」で。
晩夏特有の濃い夕焼けを見ていると鬱屈した気分が更に増大した。
今夜、スタジオで他のバンドとジャムセッションすることになっている。
その相手バンドに無頼漢で有名なサトシがいるのが俺の気分を沈める原因だ。
昔、サトシに自転車を貸した時、戻ってきたときにハンドルがなくなっていた。
理由を訊いたらブレーキを握ったらいきなり切れて効かなくなり電柱にぶつかって、腹いせにハンドルを抜いたのだそうな。
その時サトシは俺にあやまるどころか逆ギレを起こしたので、何故だか俺が謝るハメになってしまったのだ。
今夜のまたトラブルが起こりそうだと思うと、胃が痛くなってきた。
次ぎは「露出」「はぁと」「ビンゴ」
私は隣のコンビニに大好物のバナナジャムを買いに行った。
売り切れていた。向いのスーパーに行っても売切れだった。
はすむかいの別のコンビニにもなかった。そのまた向いの店も売り切れだった。
歩いて行ける範囲の店は探したが、どこにもバナナジャムだけ置いてなかった。
私は意地になって車を出した。こんなことは初めてだ。いらいらしながらハンドルを切る。
バナナジャム好きのバナナジャム星人でも現れて買い占めたんじゃなかろうか。
売っていそうな店を見つけ次第入って探し、最後にはこの辺りで最も大きなデパートにやってきた。
そこでもバナナジャムだけ売切れだった。こうなったら電車で行ける範囲も探そう。
駅へ向かうのに車に乗ろうとすると、黄色い布をかぶった男に呼び止められた。
私は黄色い布をかぶるような人間に心当たりは無い。なので誰だと尋ねた。すると男はこう答えた。
「俺は宇宙の無頼漢、バナナジャム好きのバナナジャム星人だ!」
前田さんの使いという若い男がゴンザレスを迎えにきたのは翌日の昼前だった。
現場主任は「今日は病欠ということにしておくから」と言って、事務所裏の飯場で寝泊りして
いたゴンザレスの荷物を簡単にまとめるように言った。
「フリオたちに聞いたんだが、おまえ、早く金を貯めて一度国に帰りたいって言ってたらしいな。
ここにこのままいてもろくに貯金もできないからな。ちょうど前田さんが真面目で口数の少ない
男を探していたから俺が推薦したんだよ」
主任は同じデカセギ仲間たちを通してゴンザレスの言動をそれとなくチェックしていたようだった。
ジャムの空ビンに貯めて隠していた500円玉をそっとバッグに詰めていると、
「二ヵ月分入ってるからな。誰にも挨拶していかなくてもいいぞ。俺のほうからみんなには適当に
言っておくよ。まあ、ひとりふたりフラっといなくなっても誰も気にはせんけどな」
そう言って茶色い封筒を渡してくれた。主任は、まるで用済みの家具をひとにあげるかのよう
な気軽さでゴンザレスの生活を譲り渡した。ゴンザレスにとっても新しい環境への不安というより、
両親が死んだ後、自分を頼りにしている小さい妹や弟たちのことを思うと"前田さんのアルバイト"
を断る差し迫った理由などなかった。使いの男はだるそうにハンドルにもたれ、運転席の窓から
ゴンザレスの荷物を値踏みしていた。キーホルダーには無頼と書かれた札と金の鈴が揺れている。
「パスポートとホントに大事なものだけでいいぞ」男がゴンザレスを少し急かした。
359 :
「露出」「はぁと」「ビンゴ」:03/08/26 21:19
俺とマルさんは繁みの中で息を潜めている。高層マンションの前に一台のベンツ。
中には人気絶頂タレントの神田正義が乗っているはずだ。有名人のプライベートショットを
盗み撮りして週刊誌に売りつける。俺たちはそんなハイエナのような仕事を生業としていた。
俺が監視でマルさんが撮影、というように仕事は分担されていた。カメラのファインダーを覗いていると
周りの状況がわからない。しかもマルさんはかなりのデブだ。いつもはぁはぁと喘いでいる。
咄嗟に逃げることができない。去年の夏に監視役を頼まれて以来ずっと名コンビだ。
「ビンゴ」ファインダーを覗きながらマルさんが言う。運転手がドアを開け、神田が降りてきた。
マルさんはレンズのトルクを回し、露出を開放にした。もう暗いのでフィルムも高感度のものを
使っている。俺は双眼鏡で周りを見渡す。とくに変な様子はない。ベンツのエンジン音が聞こえた。
ベンツが去った丁度その時、突然強風が吹きぬけた。俺は「あっ!」と叫んでしまった。
神田の髪の毛の一部がふわぁっと飛んだのだ。突然はげになった神田は大慌てで髪の毛を
取りに行きすぐに装着した。そして周りをきょろきょろ見渡して小走りでマンションへ消えて行った。
「すげえ!大スクープだ。100万いくよこれ。撮った?」マルさんを見る。
うん、まあねと言いながらマルさんはフィルムを取り出しぴーっと引き伸ばしてぽいっと捨てた。
俺が悲鳴を上げる前にマルさんがはぁはぁしながら言った。「ハイエナにも心はあるからね」
「素麺」「御用」「媚薬」
360 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/26 21:32
361 :
「素麺」「御用」「媚薬」:03/08/26 21:51
裏の長屋に住んでる八五郎さんが、お盆に素麺を乗せてやってきた。
「八五郎さん、今日は何の御用?」
「お光ちゃん、素麺食わないかい。ここの素麺はうまいんだよ」
八五郎さんは私の返事も聞かずにお椀と箸を渡してくれた。
ちょうどおなかがすいていたので、私は素直に箸を取った。一口食べただけで媚薬入りと分かった。
八五郎さんはここのところ毎日のように媚薬入りの寿司やら蕎麦やらを持ってくる。
実は私はくの一で、そんなものは効かない身体になってる。いい加減気付いてくれないかな…
「基地」「ベース」「本部」
362 :
「基地」「ベース」「本部:03/08/26 22:08
「そろそろ日も暮れてきたからベースに帰ろう」
太郎がそう言ってくれた時俺は心からホッとした。
「なあ、何の因果で俺たちはこんな前線の基地にいてるんだ?
ここの国の人間がどんな生活をしてようが、誰と恋愛してようが
俺たちにはまったく関係もないし興味もない。
ただ本部の指示でわけもわからずただ派遣されただけ・・・。
だけどここで誰かと知り合ってわかりあえたら素敵だな?」
なんてこと言って運命の前に立ち尽くす俺たちだった
「場所」「進む」「満足」
363 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/08/26 22:29
「場所」「進む」「満足」
やっと決まった6ケ国会議・・・代表はいちはやく訊いた。
「日本は何番目だ?」
「後ろから2番目だ」
がーん。歴史の衝撃が代表を襲った。
経済大国日本にとって、この扱いは到底満足できないものだ。
千年の時を超えて伝えられる、あのセリフを言わねばなるまい。
ああ!よりによって、この時、この場所で、自分が代表とは・・・トホホ。
彼は勇気を振り絞って、一歩前に進む。「ちょっとお待ち下さい!」
各国の代表が一斉に振り返った。ひええ。
「日本は、中国にも、米国にも、おまけに某国にも、貢ぎまくくっています。
ここは席順を、今一度考え直してみてはいかがでしょうか!」
席順は再検討された。
六角形の机と、アルファベット順の発言順・・・彼の提案は受け入れられたのだ。
「さすが日本は立派な国だ」・・・と、世界が思ったか否か。
時代の繰り返しに驚く彼に、そこまで考える余裕はどなかった。
※新聞まるごと信じまくりれす;
次のお題は:継続の「場所」「進む」「満足」でお願いします。
364 :
「基地」「ベース」「本部」 :03/08/26 22:58
ぼくと兄ちゃんはやっと完成したひみつ基地の前でうんうんうなっていた。
名前が決まらないのだ。「基地」とか「ベース」とか「本部」とかアイデアを
くつか出したんだけどうまくいかない。突然兄ちゃんが手を叩いた。
「スペースベースひみつ基地日本総本部!」ってのはどうだ?
ぼくはかっけえ!と叫び兄ちゃんはほんとにすごいなぁと思った。
つぎの日、2人でジュースとかおかしを持って基地に行くと中でホームレスのおじさんが
寝ていた。足の裏が真っ黒なおじさんでぼくらは怖くなったのですぐ帰ってきた。
365 :
gr ◆iicafiaxus :03/08/27 00:38
「場所」「進む」「満足」
「あれ、どっちが俺のコップだっけ」
「どっちでもいいよ。たぶん私がこっち」
放課後の文芸部室。風を通そうと少しだけ開いた窓から、サッカー部の男の子達の声が
遠く聞こえてくる。低いテーブルの上には、電気ポットで入れた即席のホットレモンティーが
二杯。僕たちは広くもない部屋のそれぞれ反対側の壁にもたれて、何も言わず、本を
読んでる。時々、どっちかが、思い出したようにレモンティーをすする。あとはページを読み
進む音。遥か運動場の喚声。書棚の本の紙の匂い、レモンティーの湯気の安物の香料。
ページからそっと顔を上げる。眇めをする僕に気づきもせず、本の文字を追って目を
行き来させる中村祐子。俯きかけた眉根がそれにあわせて、上がったり下がったりする。
彼氏でも兄弟でもない僕が中村とずっと一緒にいられるのは、ほんのはかない偶然で。
――約束なんてありもせず。でも明日も来るって保証が無くても、いつも授業が終わると
僕たちはこの場所にやって来て、レモンティーを入れて。特に用なんて無くて、テレビの話、
今読んでる本の話、ねー聞いて聞いてー、という中村の口癖。体育の水泳で疲れた日には、
肩を並べて眠った、夏。解けない宿題があった時には、夜まで、一緒に考えてた冬。
僕はレモンティーを一口。すると中村はわずかに折れていたスカートの裾を直して、また
本の中へ。悪いから僕も、そんな中村からゆっくり目を離して、物語の世界に戻る。
約束がしたい、この毎日を必然にしたいと思いはする。僕が一つ勇気を出せば、中村は
きっと受け入れてくれよう。――でも、多分それは違うんだ、……と、天神様も、言ってる。
――満足しちゃってると言えば軟弱者みたいだけれど、そうじゃない。僕は今ここにいる
中村祐子のことが心底何より大好きだから。……それだけ。――レモンティーをもう一口。
#次は「先々」「つまみ」「裏」で。
「先々」「つまみ」「裏」
先々の事を考えると不安になるよ。そう思わない?
今年は冷夏で野菜も出来がわるいみたいだ。蝉も少ないよね。
もう秋の萩が咲きはじめてるし。変な年だよね。嫌な気候だよ。
ああ。肩が凝る。そう。むち打ちになって、もう2週間。
裏にいる奴は全然平気だって。細いし頭が小さいからね。
いまどきの奴なのよ。そう。新入り。ちょっと毛色がちがうでしょ。
げっ。また肩にのる気?もう参ったなあ。そーっとね。ひっぱらないでよ。
つまみに来てくれるのは大歓迎だけど。もっといい所に子供達は住まわせたいし。
ねえ百舌鳥くん? 聞いてるの? あ、こら!首が折れるよ!ひーっ。おい!
乾いたひまわりの花がバサリと畑に落ちる。百舌鳥は種をくわえて飛び去った。
***
次は「竜」「煮沸」「獅子」でお願いします。
367 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/27 13:08
「本日の夕食は竜田揚げである!」
部長の宣言に、部員は皆、おおと色めき立つ。
早速ビーカーを煮沸消毒し、サラダ油をなみなみと注ぐ。
他の部員も各々の仕事を手際良く済ませ、なんやかんやで
20分後には皆が食卓についていた。
いただきます、の挨拶の後、我先にと竜田揚げに喰らいつく亡者たち。
それが悲劇の始まりであった。
口から泡を吐いて倒れる者がいる。
うつぶせになったまま動かない者がいる。
竜田揚げをよく見れば、衣には青や緑や、とにかく食べては
いけなそうなものがそこかしこに付着していた。
「獅子をも恐れぬ我が化学部、薬品如きに何をためらおうぞ!」
部長は平然と竜田揚げを食べ続けている。
僕は逃げ出した。
次は「太陽」「伝説」「特急」でひとつ。
368 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/27 22:00
彼は大変疲れているように見えた。
「くだらない仕事を、感情を殺した機械のようにこなす毎日さ。」
彼の口から、そんな自嘲ぎみな台詞が出てくる事に、私は驚いた。
なにしろ私の中では、大学生の時分の彼は(私と彼は同じサークルだった)、
とても社交的で、スポーツも万能、その姿は太陽のように光り輝き、そんな彼の周りには、
彼の輝きに引きよせられるかのように、幾人もの人が集まり、
いつも華いでいた、という記憶しかないからだ。
なにしろ、嘘か本当かは知らないが、今でもサークル内では(もしかすると校内でも)
三拍子そろった伝説のイイ男として名前を挙げられるぐらいらしいのだから。
しかし、今、私の目の前に立っている彼からは、大学時代にそんな人間だったとは
誰も想像できないほど、周りの人ごみに溶け込んでいる。
大望に身を焦がし、夢にあふれていた、若き日の彼はそこにはいなかった。
私は、しばし呆然としていたが、そろそろ出発の時刻だということに気づき
「今度、飲みに行こう、連絡するよ。携帯の番号は変わってないのか?」
「ああ、昔のままだ」
私は、出張先へと向かう特急のなかで、彼の変わりようと、
携帯の番号は昔と変わってない、ということについて、
しばし思考を巡らせたが、答えは出せないまま、
少しの優越感と、多大な喪失感を抱き、眠りについた。
次は「とじしろ」「遊園地」「扉」でお願いします。
「とじしろ」「遊園地」「扉」
今日は、雄太と五月の初デートの日。
「いや〜、やっぱ遊園地って楽しいね〜。
ちょっと子供っぽいかな〜、なんて思ってたんだけど。」
「うんうん、楽しいね。五月もねえ、来てよかったよ〜。」
「ところでさ〜、お弁当作ってきてくれる、って言ってたけど、もうさ〜、おなかへっちゃって、
ぺこぺこなんだよ〜。いいかな?」
「うん!五月一生懸命作ったよ。雄太君の好物もリサーチ済み!おいしいと思うよ!」
「うわ、うれしいな〜、早速だけどいただきま〜す!」
そういって、雄太はお弁当を受け取ると、勢い勇んで、かわいいチェック柄の弁当箱を開けた。
「!!??」
雄太の目の前にある弁当箱の中には、ど〜ん!と謎の物体が!!
「さ、五月ちゃん、っこ、これは何??」
「何って、雄太君の好きな、クリームパンの卵とじしろみそ和え、だよ!」
「え!?た、確かにクリームパンも、卵もしろみそも好きだけど・・・これは・・・」
しかし、雄太のその後の「全部一緒にしただけじゃないか!」という叫びは、
横で見ている五月の、彼氏が私のお弁当をおいしく食べてくれる!
という、夢見る乙女のマナザシにより、声にでることはなかった。
雄太はその日、天国への扉を開けかけたとか、開けなかったとか。
次は「悪魔」「光」「車」で。
「とじしろ」「遊園地」「扉」
僕らが住んでいるこの世界は所謂資本主義社会とか言われるモノらしい。
そんな世界の片隅にあるこの僕の四畳半の扉が開かれたとして、僕が彼女の待つ浜辺へと辿り着けるかどうか全く分かりはしないだろう。
今、テレビの中では二本足で歩く奇妙なネズミが手招きをしているが、閉園時間のガードマンや行列待ちの人達の疲れきった顔を気にしながら遊ぶ遊園地なんか糞喰らえだ。
パソコンの中から無闇に夢や希望を売るキチガイ共の施しなんか糞喰らえだ。
したり顔で宗教に逃げ込んだ女の戯言なんか糞喰らえだ。
文法も文脈もしっかり整って完成された冷たい文章なんて窓から放り投げてしまえ。
ああ、出来る事なら親愛なる君よ。
次に、再び君が物語を書く事があるのなら、そのほんの1ページ、いや1行、いや、とじしろの余白でも構わないから、世界中の皆に、それが駄目なら僕だけにでも良いから
『ああ、世界は素晴らしい』
と、一言書き添えて貰いたい。分かって貰えるだろうか?
次、『石』『卵』『意思』
「悪魔」「光」「車」
僕は車に乗ってただひたすら人込みの中を突っ切っている。
僕の住む地方都市の、その中核をなすオフィス街は夕刻にもなると会社帰りの人達で溢れ返っている。その中を車に乗って走り過ぎるのだから人がどんどん死んでいく。思ったよりも簡単に、まるでゴムマリみたいに跳ね飛んでいく。
僕は光を探していた。このどうしようもない世界から、いや、どうしようもないのはどうやら僕の方らしいのだが、抜け出た先。そこから差し込んでくる眩い光。
『若いのだから、何か楽しみでも見付けなさい』
ある日、良心的な上司が僕に言った。彼はまるで放課後の教師のように僕に微笑んでいたが、彼は真面目すぎて人の上に立つにはあまりにも常識的過ぎた。その彼のセリフは僕にはこう聞こえたんだ。
『だったら、やっちゃえよ』
繰り返しになるが僕は車に乗ってただひたすら人込みの中を突っ切っている。赤ん坊を連れた女性が僕に向かって何か言おうとしていたけれど、僕にはその声すら無視した。
『この○○』
問題。○○に入る言葉を“悪魔”以外で答えなさい。
修正しました。次のお題は今度こそ『石』『卵』『意思』で。
『石』『卵』『意思』
「どれがホンモノの卵かわかる? この中にはゆで卵とガラスの卵と石の卵が入ってるの」
カラフルにペイントされたイースターエッグをカゴに詰めながら、アユミは片手でグーを包んだり
両手で丸く握ったりしながら、卵が山盛りになっているカゴを指差した。裕樹は(アユミの手話より
も難しいよ)と、外国人のように肩をすくめて手をオーバーに広げ、首をかしげて見せた。アユミの
密生した睫が黒い瞳をいっそう大きく見せている。その瞳は、光の強弱に関係なくあたりの空気
をすぅっと吸い込んで、何かのはずみでカゴの中の卵さえもアユミの意思次第で取り込んでしまう
のではないかというほどの深い黒だった。
市民劇団の手話劇でキリストの復活をテーマにするのだという。そのための小道具らしかった。
神の復活に立ち会った者には奇跡が起こるという。アユミはひとりで黙々と絵を描いていたのだろう、
うっすらと汗ばんだうなじあたりから生温かい空気が立ちのぼっていた。
アユミがカゴを動かそうとした途端、一個の卵がころころと転がってしまった。カゴを載せてあった
大道具用のベニヤ板が緩く傾斜していたのだ。(エッグロールみたいだね)僕はにっこり笑ってボール
を転がすしぐさを見せた。エッグロールはゆで卵を割らないように転がす復活際の遊びだ。アユミが
一瞬ハッとした表情を見せた。素早く追いかけて掴んでみると、モザイク模様の卵は硬くて冷たかった。
(これはゆで卵じゃなかったよ。ハズレだった)僕は両手で「×」をつくり苦笑いをした。
次は、「芝生」「看板」「コースター」です。
「芝生、刈り終わった?お疲れ様!」芝刈り機を片付ける。なにも考えないようにしているがつい彼女の胸元に目がいく。
目を無理やり遠くにある「ぢ」の看板へと向けながら、何故こんな事になったのかを考え始めた。看板を見ていたんだよな。
金曜日の夜、大きな仕事が片付いた記念に同僚と飲み会を開いたんだ。でも僕は最近の自分に虚無感を感じており、
たいして飲めなかった。お開きになった後も遣る方なしにバス停のベンチに座って呆けていたんだ。「ぢ」の看板ネオンを見ながら。
そうしていたらいつの間にか隣に彼女が座っていた。(お久しぶり)(どなたですか?)キャッチか何か胡散臭いものかと警戒する。
(忘れた?ほら、あの馬鹿デザイナーの時に)(あぁ……N社の)(そう、N社のこういう者ですよ)そう言って僕に名刺を渡してきた。
それは記憶と、名刺入れの中にあるものと同じだった。彼女とはある仕事を一緒にして、わがままなデザイナーに頭を悩ませた仲だ。
(キャッチじゃなかったんだ)(酷いわねぇそれ)そうして話しているうちに彼女が家に来ないかと僕を誘ったんだ。
どうにでもなれと投げやりに彼女の家に行って、紅茶を飲んで、ここは彼女の生家であり彼女の両親が亡くなっている事を聞いて。
庭の芝刈りが大変だと聞いて。で、僕も庭の荒れようが異常に気になって。結局泊まったんだ。
でも僕は虚無感を感じる自分を強烈に憎んでおり、そんな自分が彼女と……なんてことが許せなくて手を出せなかった。
そうして彼女が視界に入る事も、自分が彼女の家に居る事も怖くなって彼女に背を向けて寝た。
背中に視線を感じていたのもきっとそうした事からの気のせいだろう。
(でも今更になって、目が行くなんてなぁ……)間が悪いと言おうか、馬鹿と言おうか。ますます自分が嫌になってくる。
「はい、ご褒美」そう言って出された麦茶を一気に飲み、ただひたすらコップ下のコースターを眺める。
コップには彼女が像が浮かんでおり、何もかも見透かしているような笑みを浮かべ、空を眺めると鱗雲が青空に浮かんでいた。
もう秋が来るんだ。
次は「連鎖」「連結」「煉獄」
374 :
「連鎖」「連結」「煉獄」:03/08/31 00:33
「なぜ今までどおり炎で焼かないんだ?」
「天国政府から物言いがきまして…CO2を削減せよとのことです」
煉獄の任務を任せられている大尉は、目の前に広がる半透明球体の列を見やり、ため息をついた。
政府のバカどもはいつもこうだ。自分たちはただ決めるだけで、結局全部、下のやつらに押し付けておしまいにする。
この霊魂たちを、火を使わずにどうやって浄化させろというのだ。
「少尉、何かいい案はないかね?」
「とにかく霊魂たちを天国へ送ればいいんですよね?」
「できるのか?」
「ええ。なんとかなると思いますよ」
少尉は霊魂を、ある種の規則性にそって並べた。
「あとは繋がるのを待つだけです」
『ファイヤー』
「ん?」
『アイスストーム』
「なんだ?」
「始まったようです」
先ほど並べた霊魂のいくつかが、棒状、またはステッキ状になっては一瞬の輝きを残して消えていった。
変化はそれだけではなかった。ほとんどの霊魂が近くの者と連結し、同じ仲間がはやくこないかじっと待っているように見えた。
『ダイアキュート』
大尉たちの心の内に直接聞こえてくるような、不思議な声だった。
声が心をノックするにつれ、大尉の記憶の引き出し、生前の幼き頃の思い出が詰まった宝箱がすっと開いた。
大尉「…まさか…7連鎖!?」
『ぱよえーん』
天国は、突如飛来したおじゃま霊魂によってパニックに陥り、軍隊まで出動する騒ぎになった。
次は「包帯」「IDカード」「千里眼」でお願いします。
375 :
お絵描きBBS:03/08/31 00:46
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 同人をやっています! 明るく、楽しいHPですよ!
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http://pink.sakura.ne.jp/~erotan/ l」 |」(l| ( | | ||. !lm \_ _________
| |ゝリ. ~ lフ/リ lアノ V
| | /\∨/‐-/`'/
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!リl/ // ヽ _ , '⌒ ⌒\
_〈 // \\\ ノ// ヘヘ、
. `つノl// ヽ // |||)、 <絵を描くのが好きな人は
//'へ゛ーノ お絵描きしに来て下さいね!
376 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/31 23:24
「包帯」「IDカード」「千里眼」
顔を覆う包帯が、ゆっくりとほどかれていく。久々の光の感覚の中に、
可愛げのない看護婦と、忌々しい医者の顔が、ぼんやりと象を結ぶ。
「どうかね、《千里眼》の調子は」
答えてやるのも癪だったが、問題があっては困る。意識を集中すると
――まだ無意識に動かすことはできないようだ――メカニカルな駆動音
と共に、視界が目まぐるしく変わっていく。窓の方に目をやれば、遥か
彼方、空に浮かぶ雲の構成粒子までもが手に取るように見える。《千里
眼》なんて名前は伊達じゃないようだ。
「悪くないな。少しフォーカスが甘いかもしれないが」
「なに、ピント合わせなんて慣れの問題だよ」
ガハハと医者は下品に笑い、ポケットから俺のIDカードを取り出した。
「もう無効になってるかもしれないがね。持って行きたまえ」
無言でそれを受け取り、腰のリボルバーを確認する。もうこんなとこ
ろに用はない。世話になった、と片手を挙げて、俺は病院を後にした。
さて、両目の仇を討ちにいきますか――
次のお題は「警察」「黄金」「指令」で。
それは、かつてこの国が黄金郷と呼ばれていた時代。
望めば全ての物が手に入るような程に人々の生活が豊かであり、
貧富の差が存在しないため警察が不要なほど平和であった。
ここに、夜が訪れない繁華街で闇と闇の間を縫って移動する男がいる。
一見して怪しい人物ではあるのだが、この国の人々は気が付かない。
平和ボケした人々をあざ笑うかの様に彼は行動し、暗躍する。
一昨日は、強盗をして銀行からありったけの金を強奪した。
昨日は、役所に忍び込んで重要書類を盗み出した。
そして今日、彼は一人の女をその手にかけた。
驚くほど無抵抗に、マネキンのように死んでいった。
男はフッとため息をつき、呟く。
「きっとこの事件も今まで同様、新聞にも載らないのだろうな」
彼が国から極秘裏に与えられた指令
―――人々の進歩のため、平和以外をもたらすこと―――
いつ達成されるかと男はまた一つ、今度は大きくため息をついた。
次のお題は「図書館」「携帯」「メガネ」でお願いします。
「やれやれ、これはまた待ちぼうけくらっちゃうかな……。」
男は待ち合わせ場所に、きっかり5分前に来ていることを、手元の時計で確認し、
続いて携帯のメールで、待ち合わせ場所が間違っていないことを確認すると、
やおら、懐から少し時代遅れな感じの銀縁の眼鏡を取り出した。
それは、一般に携帯図書館と呼ばれているものである。
彼の持っている型はバーゲンセールで買ったもので、最新のものに比べると
機能が劣っていたり、デザインが古めかしかったりするが、
まぎれもなく携帯図書館であり、また彼はその機能に十分に満足していた。
彼は眼鏡のつるの部分をいじって、タイマーを15分にセットすると
続いてさっきとは違うつるの部分をいじると、この前から読んでいる今流行の小説が
瞬時に眼前に広がり、彼は周りを気にすることなく、読みふけりはじめた。
「ピピピ……」
15分が経ったことを知らせるタイマーが彼の耳に響き、
彼は携帯図書館からログアウトし、ポケットにそれを仕舞い込んだ。
人ごみの向こうから、彼女のお気に入りの赤いリボンのついた帽子が
こちらに向かってくるのが見えて、彼は自分の勘が当たったことに少し嬉しくなり、
また、人に迷惑をかけることなく、時間をつぶせる、携帯図書館が発明された時代に
生まれたことを感謝した。
次のお題は「禁止」「過去」「記憶」でお願いします。
日本から「ぼけ、つっこみ」が失われて久しい。
20世紀中ごろからテレビ、ネット等の普及により、関西の文化が、全国に広まり、
一時は日本中のいたるところで、ぼけにつっこむ姿が見られたものだと言う。
しかし、「ぼけ、つっこみ」が精神を学ばず広まりすぎた結果、本来は会話のテンポ
をよくするための技であったものが、「ぼけ、つっこみ」があらずんば会話にあらず、
などという本末転倒な社会になってしまったらしい。
そのような時に、以前から関西圏の文化の広がりに危機感を抱いていた、一部の急進
派議員達により国会に「ぼけ、つっこみ禁止特別法案」が提案され、あまりのテンポの悪
さにうんざりしていた関西圏の議員の裏切りもあり、法案は可決されてしまった。
法案が可決されてからの「ぼけ、つっこみ」に関する弾圧は凄まじく、一時は関西の
人口の2分の1が刑務所に収容されたといわれている。
ちなみに「ぼけ、つっこみ禁止令」による初の逮捕者は、この法案が可決されたニュ
ースを見て「ど○いやねん!」とつぶやいた人物だ、などという都市伝説がネット上で
はまことしやかに流れている。
法案可決から2世紀たった今では、もはや「ぼけ、つっこみ」は誰の記憶にも残って
おらず、「のりつっこみ」等の様々な技は過去の文献でしか見ることは出来ず、一部で
は復活させようという機運はあるものの、未だ失われたままである。
次のお題は「玉」「分」「手紙」でお願いします。
380 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/02 00:26
「玉」「分」「手紙」
かつて、宇宙飛行士の必須条件の一つに「既婚であること」があったらしい。
なんでも有事の際、「何が何でも地球に帰る」という意識が強いからだとか。
そんな条件も廃止されて久しいが、やはりクルーのほとんどは既婚者だ。子
持ちも多い。暇さえあれば親バカ自慢の応酬だった。唯一独身だった俺にはど
うもわからないが、まあ、結婚もアリかと思わせてくれたよ。
だけど今はーーこいつらには悪いが――独身で良かったと思ってる。みんな
押し黙っちゃいるが、誰もが泣き叫びたい気持ちだろう。俺にはこんなの堪え
られそうにないよ、まったく。
やがて無線も途切れ、誰からともなく家族への手紙を書きはじめた。俺も一
応、友人宛に一筆したためて、封筒をシャツの下に放り込む。時計を見れば、
事故から20分が経過していた。そろそろ機体が分解するか、そうでなくても熱
でこっちが参っちまうだろう。外から見れば綺麗な火の玉になってるだろうな。
両手を組んで静かに目を閉じる。俺にできることは、祈ることぐらいだ。
――神様、まだ信じてやるから、一つだけでいい、最後の願いだ。
こいつらの手紙を、間違いなく家族に届けてやってくれ――
次は「家族」「恋人」「子供」で。
381 :
「家族」「恋人」「子供」:03/09/02 13:39
クリスマスのお台場。大観覧車の前には家族連れ、恋人などが長蛇の列を作っている。
待ちくたびれて愚図っている子供を母親がたしなめる。その様子をうすら笑いを浮かべながら眺めている男がいた。
男は先ほど一人で観覧者に乗り超小型時限爆弾をしかけた。見かけはかわいいやつだが
破壊力はビルをふっとばすほどだ。ご丁寧に座席のネジをはずしその内部に置いてきた。
あと、1時間だ。血染めの聖なる夜。歩きながら男は笑い出したくなるのをこらえる。
そして自宅でビールでも飲みながらショーを鑑賞しようと思った。
リポーターの青ざめた顔が目に浮かぶようだ。男は軽い足取りで電車に乗りこんだ。
その頃、男の自宅のテーブルの上には1通の置手紙があった。それにはこう書かれていた。
「お父さんへ。健一と真奈美がどうしてもと聞かないので二人を連れて
お台場の観覧車に乗ってきます。帰る前に連絡します。ごはんは台所にある
肉じゃがとお味噌汁を温めて食べてください。 恵美」
「乱闘」「偉人」「消息」
382 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/02 17:35
江戸川乱闘が死んでから、およそ50年が経つ。
没後50年を記念し、偉人乱闘を称えるイベントが各地で行われている。
もっとも過激だったのが、高級SMクラブのパーティだ。
乱闘の有名作「陰獣」をモチーフに、大規模な乱交SMパーティが行われた。
中でも5メートルの巨大消息から垂れるロウが圧巻。参加したマゾ男は体のほとんどをロウで覆いつくされ、まるでロウ人形のようだった。
「ヤッターマン」「おじいさん」「芝刈り」
おじいさんは流れを読めていなかった。
「おお、それは何かの。芝刈り機かの」
「やだなあおじいちゃん、これはキックボードというものですよ」
「うーむそうかい。最近の流行はわからん。グループサウンズとか何とか」
「おじいちゃん、それは最近の流行ではなくて昔の流行ですよ」
「むむ、しかしそれは何かの。芝刈り機かの」
「やだなあおじいちゃん、これはキックボードというものですよ」
「そうかい。最近の流行はわからん。ヤッターマンとか何とか」
ボケているとも言う。
再度「乱闘」「偉人」「消息」
「おじいさん、この前まであんなに楽しみにしてたじゃありませんか。なんで急に行き
たくないなんて言い出すんですか。」息子の嫁の困惑した声が部屋越しに聞こえる。
そう、今日はわしらの小学校卒業50周年記念に、卒業時に埋めたタイムカプセルを
掘り出す日なのだ。嫁の言うとおり、ついこの間までわしはその時を楽しみにしていた。
タイムカプセルの中身よりも、当時憧れだったクラスのマドンナ的存在のミッコち
ゃん、上京して苦労しつつも今は国会議員をしている光男などと旧交を温めれることが
なにより嬉しいことだと思っていた。振り返ってわしは、小学校の時分には級長も務め
ており優等生だったと思うが、その後は社会的な地位は極めることは出来なかった。が
しかし、息子、娘3人はきちんと育て上げたし、息子家族ともうまくいっている、なん
ら彼らの人生と比べてもひけめを感じることはないはずだった。
しかし、わしは突然自分がタイムカプセルに何を書いて入れたかを思い出したのだ。
「ああ、そうだ、わしはこれから芝刈りにいかなきゃいけなかったんじゃ!」
「おじいさん、そんな、昔話のはじまりじゃあるまいし、こんな住宅地のどこを芝刈り
するんですか……」
ああ、どうして50年前のわしはタイムカプセルにあんなしょうもないことを書いて
しまったのだろう。確かにわしは優等生だったはずなのに、魔がさしたとしか思えない。
「ヤッターマンコーヒーライター」
50年前のわしは一体、今のわしに何を残したかったのだろうか……
次は「鳥」「風呂」「顔」でお願い
385 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/02 18:48
子供の頃ヤッターマンというとてもくだらないアニメがあった。くだらない
だけにもう内容はとうに忘れてしまったが、大人になった今でも忘れられない
光景がこのアニメと関係があるのは、完璧な人生を送ってきた私にはなんとも
慙愧の念に堪えない。その出来事は私と兄でテレビに映るあり得ない光景を見
ていた時に起こった。私はこんなアホ丸出しの作品は見たくなかったのだが、
兄はそのアニメにピッタリのアホであった。私の愚劣な争いを避ける性質はそ
の頃から既に形づけられていたようである。兄は私を睨みつけると、黙ってチャン
ネルをその番組にあわして、また私を睨みつけた。どうしても見たいらしいのである
。私はちゃぶ台の横の座布団にちょこんと正座したまま兄の目を見て「別にいいよ」とだけ答えた
。それからすぐにアニメが始まり、兄は私がいるのも憚らず大声で主題歌を歌いだした。
私は右斜め後ろから、画面と兄をちらちら眺めやりながら、兄はもう脳みそが溶け
ちゃったんだ、可哀相にとだけ思った。兄の主題歌斉唱が終わった時。隣に住むボケた
おじいさんがいきなり庭に現れた。あれ、あんなの持って何しにきたんだろう?
と私は首を傾げた。その手には小型の芝刈り機が握られていたのである。ああそうか
我が家の芝刈りをしにきてくれたんだな、このおじいさんもたまには役に立つじゃ
ないかと、少し感心したところ、なんとおじいさん芝刈り機持参で居間にあがって
きたではないか。おじいさんはヤッターマンに夢中の兄に頬を緩ませ微笑した。しかし
おじいさん、兄にはこれといった用事は無かったようである。なぜなら、そのまま
兄をやり過ごしまっすぐ私に向かってきたからだ。私は相変わらず正座したまま
茫然自失としていた。アニメ以上に非現実的光景であった。おじいさんは私の前に
仁王立ちすると、持ってた芝刈り機で私の頭を刈り始めた。居間に音響が溢れ、兄は
テレビのつまみを回した。私は頭をコキコキ揺らしながら、兄の背中を眺めていた。
おじいさんは私の頭を刈り終わると、兄に向かって、音を小さくして見なさいと優しく
注意しながら、去っていった。そしてテレビに目を向けると「お仕置きだべ〜」
という場面であった。今でも私の頭にはその時できた10円禿げがある。
三島 学園 愛
土曜深夜のファミレスでは、今日も他愛もない会話が流れては消えていく。
「あのさあ、紅い靴はいてた女の子、とか言う歌あるじゃん?」
「ああ、あるね、なんか昔あった実話を元にしてるとか、っていう奴だろ?」
「そそ、あの歌って歌詞をよく考えてみると怖くね?」
「よく考えなくてもこえーよ。だってちっちゃい女の子が偉人さんに連れられて
どっかいっちゃうんだぜ?消息不明だよ?人身売買というーか人攫いだぜ。
誰か、体張ってでも止めなかったんか?俺らなら止めるべ。」
「当時は、まだ法律とかあいまいだったし黒船も怖いからさあ、誰も異人さんに文句言
えなかったんだろうなあ。赤鬼とか言われてたらしいしさ。ま、俺らなら止めるね。」
「ん、赤鬼?ホーナーか?時代が違うべ?当時の偉人って言ったら、西郷隆盛なんじゃねー の?あ、それとも坂本竜馬かな?」
「ホーナー、ってそれも懐かしいな、おい。初の日本球界現役メジャーリーガーだっけ?
なんか、ぱっとしなかったよな。成績より乱闘騒ぎでも起こしてた方が盛り上がる、
っつーの!わかってなかったね、あいつは!」
「だよなー最近でっかい乱闘騒ぎねーからさー、野球もつまんねーよなー」
「だなー。」
「てか、話は変わるけどさ…… 。」
深夜のファミレスでは、誰もが思い思いにしゃべり、今日も平和に過ぎてゆく。
次は「説明書」「二度」「視線」でお願いします。
やった、やった!やった!!ついに買った!
ドラゴンクエスト3。みんな知っている、大作中の大作!当日ゲットは不可能だと
言われたソフトは今僕の手の中にあり、ファミコンにささる時を今か今かと待ってい
るのだ。
走れ、走れ、速く、もっと速く!僕は電車の中で足踏みをした。やりたい、やりたい!
ああもう、やりたくてしょうがない!あと30分なんて待てない!
僕はついに待ちきれず、箱を開けた。つんと鼻をつく、新品のシリコンの匂い。これ
が僕を魅了するのかと思うと、たまらなくなる!我慢できなくなった僕は箱から説明書
を取り出し、読み始めた。
回りの視線が集中するのが分かる。『ドラクエだ』『今日手に入れた奴がいるぞ』そん
な言葉にならない言葉が、僕と僕のドラクエに突き刺さる。これが、優越感というやつか。
いいだろ、みんなうらやましいだろ!僕はなんとも言えないにやにやを張り付かせ、説
明書を読みつづけた。
ちょうど二度説明書を読み終わったところで、電車のドアが開いた。その途端、僕は駆
けだした。
僕を待ち受ける、めくるめく冒険目指して!
過去の憧憬。
次のお題は「麦茶」「橘」「街灯」で。
388 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/03 00:16
「麦茶」「橘」「街灯」
次々と入る日本劣勢のニュース。
満州の地を捨て逃げる彼等に、財産と呼べるものなどほとんどなかった。
人目を避けた暗い路地の、小さな街頭の下。
「父さんの最後の宝物を、見せてあげよう」
麦茶に握り飯という粗末な食事の後で、夫が小さな橘の実の飾りを出した。
橘の実を二つに割ると、中で二人の老人が楽しそうに碁をしている。
「<橘中の楽しみ>だね、父さん」息子が呟いた。
追い詰められていた。下手な飾り細工じゃないかとは誰も言わない。
夫の言いたい事は分かる。
ゼロから幸福という価値を生産するには、碁の様な触媒が必要なのだ。
「仕方ないわね、二人で一生将棋でもしてましょうか?」
「そうだね、これでも結構幸せさ」
「いやだ、ボクはそんなのいやだぁ!」
そんな境地に満足できない息子は、逃げる様にその場を後にした。
他者を征服し、価値を略奪するという手法を捨て切れなかった。
彼は巨大な桃の中に隠れ、ドンブラコと川を流れていったのだ。
※「橘」がすごく難しかったぁー
次のお題は:「サイダー」「スイカ」「太陽」でお願いしまふ。
389 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/03 01:07
杉浦太陽(ウルトラマンコ スモス)はサイダーで喉を潤した。
ごきゅごきゅと鳴る喉。目の前には大清水と書かれた自動販売機がある。
太陽は周りを窺い、人がいないのを確かめると
ゴスッ
と自販機を蹴った。小銭が出てくるまで蹴り続けようと思ったが、やめた。駅員の気配を感じたからだ。
つまらなそうに背中を丸め、太陽は階段を上がる。
自動改札機にスイカを通し、帰路につく。つまらない一日を終わらせるために。
次
「ヤッターマン」「コーヒー」「ライター」
「ちょっと男子!静かにしてよ!」
「うるせーのはタカコの方じゃん」
ヒロとユウジがこっちを向いた。笑いをこらえている。何かたくらんでる顔だ。
「なータカコユカー、これ言えるか?」
「なによ」
「ヤッターマン。コーヒー。ライター」
「なにそれ」
「一気に言うと難しいんだ。早口言葉って俺達うまくねーんだよ」
「簡単じゃない。ヤッターマンコーヒーライター」
「やータカコ言ったぞ! あーあ言っちゃったー!」
ヒロがはやしたてた。ユウジは大笑いしてる。
「ちょっとー! なによー?」
タカコは2人に何かひっかけられたと気づいたみたい。でもヒロとユウジは答を言わずに
笑いながら行っちゃった。
「なんなのあれ?」
「さあ、なんだろ?」
タカコにはそう答えて、私はヒロとユウジの会話に聞き耳を立てた。
「ヨシオすげーよなー。知ってた? 10回クイズってあいつが日本に流行らせたんだぜ」
「なんでわかるんだよ?」
「だって笑っていいともでタモリがやった1ヶ月も前だぞ、ヨシオから10回クイズ聞いたの」
「よっちゃんも誰かに聞いたんじゃないか?」
「違うよ俺が考えたんだって言ってた。ヤッターマンも昨日考えついたんだってさ」
「へえほんと? よっちゃん天才じゃん!」
ヨシオもあのラジオ聴いてるんだ……。ああ、ヒロとユウジにヨシオの嘘を教えたい!
あ、あとタカコにも種明かししてあげなきゃ。でも困ったなあ。
次は「バンコク」「パリ」「富士山」
391 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/03 03:52
「バンコク」「パリ」「富士山」
富士山はパリとバンコクの間に位置するものである。
とハゲズラ教授がクスクス笑いながらつぶやいた。
次は「口臭」「メガピクセル」「試験管」
392 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/03 04:25
「口臭」「メガピクセル」「試験管」
メガピクセルの説明をするのに試験管は必要ないだろう!
とハゲズラ教授は口臭を撒き散らしながら助手をしかりつけた。
次は「帰納法」「緩衝材」「履歴書」
393 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/03 07:06
履歴書の特技欄に「数学的帰納法」
と書いてはうす笑いを浮かべる私の彼はハゲズラ教授。
先日助手が完成させた緩衝材に関する論文を奪い取り
またひとつ輝かしい履歴を増やすことができたらしい。
そんな彼はベッドの上でも物凄い。
次は「シメジ」「むっちり」「上層部」でお願いします。
394 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/03 09:58
「シメジ」「むっちり」「上層部」
「シメジってナンだったっけ?」タケシが呟いた。
コンビニのドア前の駐車場でさ。俺ら真夜中2時に駄弁ってたさ。
ちょっとBURONが効いてる?タケシ。
「白い馬の事だよ。多分。」ヒロユキがボケてみる。
「いや、韓国で人気のアイドル歌手の名だっただろ?」コウジがのってみる。
「あーそう。尻のむっちりしたさ、頭にワイヤレスマイクのっけてグラインド
させるの、それで、尻をさ。ユン・シメジっていうんだよ、あの子。大人気だって」
白い馬はDOUSITAのよ?ヒロユキ君?
「胸デカイんだよね、ユン・シメジ。ぎゃはは」タツオくんがのる。
受けがいいぞ、ユン。て、誰?
「サバの煮込みの上澄みの上層部の事だったと俺は思うんだけど、おかしいなあ」
コンビニから買い物終えてやっと光男が出てきて、今聞いた話にのる。
「そうともゆうかもしらん。ギャハハ!」タツオくん、ナンか悪いもの食べた?
「シメジなんだったっけぇ……」まだ言うか。タケシぃ……。
次は「アサリ」「ぷにぷに」「貧困層」でお願いします。
395 :
「アサリ」「ぷにぷに」「貧困層」:03/09/03 18:09
潮干狩り アサリぷにぷに 貧困層
(解説)この季節、食料を求めて海辺をさ迷うひとたちも
いるということを決して忘れてはならないという自戒を
込めてみました。
次は長いのでお願いします。
「リモコン」「信号」「献血車」
396 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/03 18:40
ねえねえママきいてよきいてよ
ぼくねへんなリモコンひろったんだ
ボタンが3つあって
あおいのときいろいのとあかいの
まるでしんごうきみたい
おもしろそうだからぼくあおいボタンおしてみたの
そしたらカナコちゃんがあおくなっちゃったの
びっくりしてきいろのぼたんおしたの
そしたらカナコちゃんにきいろいはんてんがでてきちゃったの
ぼくこわくなってあかいぼたんおしたの
そしたらきゅうきゅうしゃがきてカナコちゃんをミイラにしちゃった
こわいよ、ぼく、こわいよ!
ママはそっといいました
それはね坊や、献血車っていうのよ
こうして坊やはミイラになりました
次のやつ「時計」「下着」「食虫植物」
この三語スレは自己認識の場でもある。男はそう考えていた。自己認識なんてものはどこでもできる。
だが自分の文筆力の位置、物書きという人間としての自己認識にはもってこいの場だ。
三語で即興文なんて誰でも書ける。例えばこの「時計」「下着」「食虫植物」なんてやろうと思えば簡単にできる。
腕時計をした下着泥棒はたまたま犯行現場にあった食虫植物を盗みたくなり、
変態犯罪者から変態窃盗犯になった。
ほらできた。しかし即興文だけであって他には「なんにもない」まだ小学生の書く空想作文のほうが面白い。
もしお題が無茶苦茶で辛いとあなたが感じるのなら物書きを目指す事は諦めた方がいい。
以上の三語からでも無限の広がりが待っているのだ。時計という題一つでもこれだけ考え付く。
「腕時計なのか置時計なのか?掛け時計か?クォーツなのかゼンマイか?はたまた公共の設置時計なのか?」
登場人物との絡みや状況が合わされば書ききれないくらいだ。そして登場人物でもあなた自身が思い浮かべる無限の広がりがあるし、
視点や主体も入れると一つの小宇宙ができる。(燃え上がらなくてもいいし第六感をすっ飛ばさなくていいが)
だがそれだけでは自己認識はできない。批評が無い文章などは便所の落書きだ。(「やりてー」レベルの頭の悪さと一緒になっちゃう)
作品を作り上げる事によってようやく物書きのスタートラインに立てるのだ。批評をしてもらうというスタートラインに。
次は「うなじ」「朱」「哀愁」
「時計」「下着」「食虫植物」
腕時計を見る、午後九時だ。ここは女性専用のマンション裏手。ベランダが面している方向だ。
見上げると碁盤みたいにベランダが並んでいて、当たり前な景観だが薄ら寒い。
ここのベランダに生々しく個性が現われてるところなんて吐き気がくる。
「そこで何をしている!?」懐中電灯に照らされた。「どなたですか?」僕は間抜けな返答をする。
「警邏中の警官だ!き――」警官が問いかける前に僕は喋った。「ちょうど良かった。悩んでいたんですよ」
警戒を解くために手早く免許証を渡して地面を指す。「ほら、これ見て下さい」地面には女性物の下着が落ちている。
下着には赤い血が着いているのだ。それも結構な量で。
「君がやったのか!」何をだ。「僕が見つけたときにはこうでしたし、触ってもいませんよ」
そうして僕は女性専用のマンションを見やる。「もしかしたらと思って、お巡りさんを呼ぼうかと考えてたんです」
警官はすぐさま応援を呼んだ。そして飛んできた彼の相棒に見張られながら、僕は件のマンションの問い合わせに立ち会うこととなった。
といっても、もう一人の警官に管理人室で見張られるだけだった。口をパクパクさせる食虫植物・蝿取り草を眺めて数十分、この件は片付いた。
何のことは無い。貧血気味の女性が包丁で手を深く切り、止血のときに使った下着を洗おうとして洗濯機のあるベランダに出た。
そこまではいいのだが、貧血気味な上に結構血を流してしまったのでベランダで倒れたわけだ。その時、件の下着を落としたわけだ。
一連の確認が終わり僕は渋い顔(疑い半分、ばつの悪さ半分)の警官に免許証を返してもらった。
そして今度は僕が尋ねる番だった。懐からアレを出して訪ねる。
「さて、今度は君に聞こうか。私は本署から来たモノなんだが最近騒がせてる……」
黒皮に嵌った菊の紋章に彼らは人が悪いと文句を言った。その様があの蝿取り草のようで僕は微笑んだ。
400 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/03 23:13
うなじ清川にこころ(中越典子 が勤めてはや3ヶ月。哀愁翔との競演を期待したこころだったが、朱肉が足りずゲームオーバー
お前らはもっと長いのでやれよ
「永井すゑみ」「丸谷才一」「ボボ・ブラジル」
>>400 ストーリー練る頭が無いからって嫉むなよ。
402 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/04 00:17
いや、この程度のストーリー練る頭が無くても誰も妬まないよw
読んでるのは自分だけでしょ?次に書くやつも最後の行読むだけw
403 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/04 00:27
15行程度に纏めるために無駄な部分を削ぐ練習になるから
このスレはけっこう参考になる。
無理やり入れた感じのする三語なら、簡潔な文章のほうがまだ
マシだったりするという逆転の発想みたいなものも時には
いいのではないだろうか。マンネリになれば、それこそ、ただ
書いたという自己マンになってスルーされることもあるわけ
だから。
創文板としては、常にあらゆる可能性とアプローチに対して
柔軟であるべきだと思うよ。
文字情報は多ければいいというものではないのだよ。
404 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/04 01:04
なるほど、この程度でも参考にする=仲間内で落選傷の舐め合いする連中が多いってことだなw
406 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/04 01:41
>>405 誰も真剣にやってないからどーでもいい
ってかオッサンのくせに自治厨ってうざいよ
そだね。ルールは守ったほうがいいかもね。
っていうか、感想スレはずっと下?
>>404 自分で書いたものってどうしても読み込んでしまって
ミスを読み飛ばしてしまうことってあるから、客観的に
見てくれるひとがいるのは助かるよ?
そんなにいちいちイヤミを言うなよ。
仲間になりたくないなら黙って放置しておけばいいじゃん。
408 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/04 05:39
「うなじ」「朱」「哀愁」
俺は、じっと息を潜めて待った。ひたりと、裸足で木床を踏む音がする。顔をあげる間もなく、ふすまが開いた。
「あぁ、いいお湯だった」
実和子はそう言って、座卓を挟んだ俺の向いに座った。
味気ない旅館の浴衣なのに、それをまとう実和子からは、なんとも言えぬ色香が立ちこめていた。
「謙二さん早かったのね。…ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」
今年、三十も後半に差し掛かっている実和子は、いっこうにその気配を感じさせない。
俺と実和子は、七年前に勤め先の会社で出会った。俺が部長で、実和子は派遣社員だった。それから先は、早かった。
俺は、妻子を持ちながらも、独身の実和子と逢瀬を重ね、実和子もまた、そんな立場の俺を受け入れてくれた。
「そっちに行っていいかい」
実和子の答えを待たずに、俺は実和子の傍らへと座る。
ゆるくまとめ上げた髪の下にある、白く透き通ったうなじは、出会った頃のままだ。
俺はそっと、そのうなじに唇を寄せる。
「謙二さん…」
実和子の頬がさっと朱に染まるのが、視界の端に映った。俺はそのまま実和子をやさしく抱き寄せて、唇を耳もとへと移した。
「実和子、すまない」
自分でも驚くくらい、冷静だった。
「もう、終わりにしよう」
理由を、実和子は聞かなかった。
俺は、哀愁をおびた宿を後にした。
----------
へたくそでスマソ。次は『本』『明ける』『鏡』で。
409 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/04 07:13
開けっ放しの窓のそばでレースのカーテンが風に揺れている。
窓から入った月光が鏡に反射する。
雲の有無で微妙に変わるその光に気を取られながら本を読む。
明日までに読まなければならないと言う事情がある、特殊な本を読み進めている。
あぁ、光が気になる。何故こんなにも気になるのだろう、今夜が満月だからだろうか?
俺は無理矢理に紙の表面に目を走らせる。
こんな読み方をすれば、内容が脳を素通りしてしまう何てことは分かっているのに。
ため息をついて、上を向いた。目の回りをマッサージすると眠気が少し強くなった。
休憩を入れようとコーヒーを入れていると、窓の内側の色が黒から濃紺に変わっているのに気付く。
もう夜は終わる、本を急いで読まなければいけない。
夜が完全に明けるとき、俺は「ダイビング講習」を枕にして熟睡していた。
そのまま完全に寝過ごした。沖縄行きの飛行機に乗り損ねてしまう。
空港にいる奴等を思い、諦めた俺は二度寝に入る……。
***
駄目だ。これは。
次は「まち針」「王様」「パラシュート」で。
石造りの部屋を、古臭いランプがおせじにも明るいとは言えない光で照らしていた。
中途半端な形に千切れた布切れ。床に散乱する無数の待ち針、絡み合った絹糸の山――
もう俺はいいかげんうんざりだった。
そりゃあ確かに俺の国の国民的英雄である「王様」から注文が入ったときは、机に足の小指をぶつけちまうくらいに飛び回り、喜んださ。
それは名誉なことだったし、何よりたんまり報酬がもらえることになってたからな。
だが―――
もう俺はいいかげんうんざりだった。
騎兵の戦死、槍兵の突撃、砲兵の城攻め、マスケット銃を担いだ兵士達の行進、パラシュート部隊の奇襲、毒ガスの散布、ミサイルの着弾、小惑星爆弾の閃光……
終わらない戦いのタペストリー。どんな長城より長いタペストリー。
戦い死戦い死戦い死戦い死戦い死戦い死戦い死――――気が逝っちまいそうだろう?
だがそれも今日で終わりさ。長城より長い仕様書の左端を、俺の左手が掴んでる。
さあ、ラストシーンだ。さっさと終わらせて家に帰って、ムーミンでも読もう。
刹那、目に飛び込む最終場面。戦いの終わり。戦い自身の終わり。え?そりゃあ―――
次のお題は「雪」「黒」「陣」で
「雪」「黒」「陣」
雪の降り始めた夜空の下、街の中を駆け抜ける。
背後からは、怒気を含んだ叫び声が聞こえる。
待て、この野郎──なんて言われて待つ馬鹿はいない。
ネオンから遠ざかるよう、闇へ、闇へと暗がりを求めて走り続ける。
明るく人の多い場所へ向かった方が良いのかもしれないが、
誰かが助けてくれるという保証など、どこにもない。
「ここまでくれば……」
わずかな安堵感からその場に座り込んだ、その時──
闇の向こうから一陣の風のように飛んできたナイフが、腹部に深く刺さった。
「こんな真っ暗なところが死に場所になるとはな……」
鈍い痛みに耐えかねて仰向けに寝転ぶと、その目には空が映った。
すると痛みに歪んでいた顔に、笑みが浮かんできた。
俺は気付いたのだ。
次の日には漆黒に染まったこの世界が、血で赤く染められたこの大地が、
降り積もる雪によって白一色に染められるであろうことを。
※次のお題は「花束」「壁」「地球儀」でお願いします。
「花束」「壁」「地球儀」
米寿のドレスを身に纏った女が辻堂駅のホームを歩いている。歩調は遅い。
歳は四十歳前後だろうか。薄い唇に真っ赤な口紅を塗りたくった様と、塗り壁
のような白いファンデーションが異様な雰囲気を醸し出している。周りの視線
がその女に集中した。
二十歳くらいの、薔薇の花束を持った青年が後ろから女を追いかけて走って
きた。
「光子さん、光子さん、待ってください、光子さん」
光子と呼ばれた女は振り返り、歯茎を出して微笑む。その顔を見て、近くに居
た小学生が泣き出した。
「慶介さん、置いていきますわよ」
光子は歯茎を見せたまま言った。口の中は口紅に負けないくらいに赤い。子供
の泣き声は勢いを増してゆき、ホーム全体を包み込みそうなほどだった。
「待ってくださいよ光子さん、次は川崎へ向かうんですよね、これ、忘れ物で
すよ」
慶介と呼ばれた男が追いつく。
「あら、ありがとう」
光子が手を差し出す。すらっと伸びた細い指先は、その口とまったく似つかわ
しくない白を発色している。
「あなたが川崎へ着くことはありませんけれどね」
慶介は薔薇の花束を振りかざした。すると、花と花の間から鉄の筒が姿を現す。
「Good Bye,Honey.Have a pig dream.」
筒の先から弾丸が放たれた。弾丸は光子の左胸を貫通し、その後ろにあったペ
ッドボトルのゴミ箱に当たって兆弾し、流れ弾となったそれは反対側のホーム
に居た男の鞄に着いた地球儀型のキーホルダーを砕いて地面に落ちた。光子の
身体からは血が噴き出し、慶介の履いていた白いパンタロンを赤く染めた。
次は「ヘロイン」「フリーライター」「脚気」でお願いします。
「ヘロイン」「フリーライター」「脚気」
チョップ、ちょっぷ、チョップ、ちょっぷ
別に脚気を心配してやってるわけじゃないんです。
よく友達から「変な癖だな」って言われますけど。
ネタが出ないときはいつもそうなんですよ。
膝皿の下のわずかな空間をチョップして足がびくんと上がると、妙な快感がありませんか?
その快感にくっついて何かが湧き上がってきてくれるような気がして……
え?……ああ、言ってませんでしたっけ?まぁ、しがないフリーライターってやつです。
ええ。本当ですって!だいたい嘘ついて僕に何の得があるって言うんです?
昨日は左官だって言ってた?おかしなことをいう人だな。
そんなわけないじゃないですか。あなたとは今日会ったばかりだし……
ガチャ
「駄目ですね。今度はフリーライターだなんて言ってます」
「やっぱりか……まったく、あんな妄言野郎がヘロインの売人のわけねぇじゃねえか」
「同感です。……何でも噂によると今回の件には身内が関係してるとか……」
「やれやれ……世界一の警察も地に堕ちたもんだな」
次のお題は「酸」「蝶」「炎」でお願いします。
回れ、回れ、輪舞が回る。踊れ、踊れ、天使が踊る。
核酸(DNA)と似た構造の螺旋の回廊を、送り火がひた走る。
天使達にできることは、上昇気流にあてられ、蝶のようにひらひらと宙を彷徨うだけだ。
また一人、また一人、狂った天使の翼が止まり、下界へと身を堕とす。
ある天使は地獄の業火に身を焼かれ、また、ある天使は人の血に全身を染めて息絶える。
核酸の螺旋が生み出す流血の惨事は予定調和なのかもしれない。
それでも彼らはただ羽を震わせて、すこしでも人に近づこうとするのだ。
彼らが報われることはない。これは報いなのか。それとも、これが人を愛した原罪なのか。
そして今無情にも、人の生み出した劫火が眼前に追っていた。
もう耐えられない! 最後に生き残った天使がそう諦めかけた、そのとき、
果てしなく続くと思われた回廊はそこで途切れ、炎もゆっくりと消えていった……
――ねえ、タカシったら
「何独りでぶつぶつ言っているの? もう、気持ち悪い子ね。
いつまでも蚊取り線香なんか眺めてないで、さっさと宿題やんなさい」
# 久しぶりに書いた。スレが続いていてなんか嬉しい。
# 真面目に書いたので、ぜひ読んでください。
# お次は、「叙述」「トリック」「推理」
この世に、魅力のある犯人なんて存在しやしない。
知性的?クールでカッコイイ?決して、そんな悪が存在してはいけない。
悪人は悪人、捌かれるべき人間であり、それ以外の何者でもない。
だから、吉田、俺は部下の言葉に無性に腹を立てた。
まるで、犯人がさも高尚な人間であるかのような言い方、気に入らない。
俺は、ヒヨッコのくせに、誇らしげにプロファイリングとやらを披露するこの男を、
同僚曰く、蛇のような目で、思いきり睨み付け、咳払いしてやった。
物言わぬ証拠の叙述、人を欺くトリックや、高等な推理、ロマンではあるかもしれない。
ただ、現実は緊迫した頭脳戦を楽しむ余裕など与えてくれやしない。
これは、対等な戦いなんかじゃない。
なぜなら、俺達には負ける事が許されない。それが奴らを助長させる。
敵の強さを認めてもいけない。奴らの自尊心を、徹底的に叩き潰す必要がある。
悪を叩き潰す、絶対的正義を維持してゆくために。
#…微妙。
次のお題「妖婦」「淫靡」「乱れた」
淫靡!乱れた女教師!
「ふぁ〜出席取るわよぉ〜。池島君?」
顔のつくりと体型以外が壊滅している女教師が気だるそうに点呼をとる。
呆れ顔にどこか慣れを感じさせる池島?は答えた。
「先生、僕は池田です」
「いっけね間違っちゃった。いけないのは不感症だわ」
あまりの寒さに生気を抜かれる生徒達。
ただ一人ガハハと笑う教師。
日常に潜む罠!恐怖におびえる妊婦!
満員電車の中で一人の女性が乗客の波に困惑している。
そして厭らしい笑みを浮かべる中年。
それを睨む男もいる。
中年はそれに気がつかず視線を固定したまま、にやけている。
困惑から不安、そして恐怖に妊婦は飲まれていく。
辛抱たまらず男は中年を咎めた。
「目の前に妊婦さんが居るんだから席を譲って頂けますか?」
週刊誌のバカ広告に目を奪われていた中年は赤面をして席を譲る。
「ありがとうございます!」
一転して妊婦は表情に輝きが満ちる。そして愛しそうに張った御腹を撫でた。
「て言うコントなんすけど、どうっスか?」
「明日からこのスレ来なくていいぞお前」
次は「ランプ」「喫茶店」「過去」
男は毎日をダラダラと過ごすことにも飽いて、久しぶりに外に出ることにした。
別段男の気を引くものとてなかったが、犬が電柱に小便する姿や、郵便配達人がポストを漁る姿など
、TVと違う風景はいくらか男に新鮮な空気を与えてくれた。
男はやがてぶらりと喫茶店に入った。
月に何度も来ぬ男を、マスターは良く憶えていた。
コーヒー一杯で閉店までいるのだからそれもそうか。
窓際の席に落ち着きながら男は一人ごちた。
金の無い男が、それでもこの店のコーヒーのファンだとマスターは思っているだろうか。
男は一口すすって、いつものように外を眺めた。
男は同じ風景を見るために、いつも同じ席に座った。
窓を越して向こう側に、古い本屋があった。
その店には、男の幼なじみが嫁にいっていた。
といっても、一緒にいたのは中学生の時までで、本屋に嫁いだのを知ったのも偶然だった。
何かを思い立ちその店に入った時、彼女のほうから声を掛けてきたのだ。
久しぶりに見る彼女は、記憶とは随分違っていたが、それでも男の過去を刺激するには十分だった。
それ以来、男はこの喫茶店に来るようになった。
窓越しには、店の構えが見えるだけで主人も女主人の姿も見えないが男は満足だった。
彼女の昔の姿を思い浮かべながら色々と思索することで男の一日は過ぎていくのだ。
そうして、マスターの「お客さん。申し訳有りませんが、閉店でございます。」の声で目覚めては、
マスターがアルコールランプをふっと消すのを見て、男はまた、家路へと着くのだ。
次は「サラリーマン」「靴」「廊下」
418 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/06 21:22
ある昼下がり。信子は自宅の廊下を拭いていた。しばらくぶりの掃除だったので
白い雑巾にびっしり黒い埃がついた。信子はそれを見る度に「うわっ」と言った。
雑巾をバケツの水ですすいでいるとチャイムがなった。
「はーい」玄関のドアを開けるとサラリーマン風の男が立っていた。
「あ、私、こういうものです」信子は手渡された名刺を見た。
「東京都保安委員会?あの、どのようなご用件で……」
「地域住民の皆様に防犯対策の重要性を認識していただきたく、ご説明にあがりました。
失礼ですがこちらにはお一人でお住まいでしょうか?」
「いえ、夫と二人暮らしです」「今日は旦那様はご在宅でしょうか?」
「仕事ですけど」信子はなぜこんな事を聞くのだろう、と思った。ふと、男の靴が
目に入った。歩き回る仕事のはずなのに靴が綺麗だ。
おかしいな、と思った瞬間信子は右肩を男に突き飛ばされた。そのはずみで床に頭を
強打した。あっ、と思った時には男にのしかかられていた。
「駄目だなぁ。家に一人なんて言っちゃあ。防犯しなきゃ奥さん」と男は信子の耳もとで囁いた。
信子の叫び声は家の外までは届かなかった。
「驚愕」「クロワッサン」「労働」
419 :
「驚愕」「クロワッサン」「労働」:03/09/06 23:55
あたしが久しぶりにチョコクロワッサンを買ったのは、いつも食べてるコロネがなかったからだ。
「ごめんな、コロネ、今日終わっちゃったんだよ」
奥から出てきた宮田ベーカリーのオーナー、太一はそういってにこっと笑った。
驚愕の事実、という程じゃないけれど、あたしは少し意外だった。
コロネはあんまり人気がなくて、仕事の帰りに寄っても2、3個はいつも余っているからだ。
だからあたしは太一に不味い不味いいいながら、いつもコロネを買っていた。
「知的労働者にとって砂糖とカフェインは大事なんだからね。いいよもう。じゃあこのチョコクロワッサン貰うから」
「毎度。いつもありがとうな」
「……ねえ、コロネ作る数減らしたの?」
あたしは不安になって太一に尋ねた。
すると太一は嬉しそうににこっと笑った。
「いいや。これでも増やしてんだよ。最近ここのコロネおいしくなったねって言われるようになってさ、
今日なんか女子高生がどかっと来て、バカバカ買っていったんだよ。
これも晴香のおかげかもな。いつもお前、不味い不味いってって言うだろ?
悔しくてさ。チョコ替えたりパン生地変えたり、今までも色々いじってたんだよ。気がつかなかったか?」
あたしは何故かイライラして、何も言えずに太一にお金を払って店を出た。
その夜あたしは夢を見た。太一の店で、山盛りになったコロネを食べる夢だ。
太一は後からどんどん新しいのを焼いてもってきてくれる。
あたしはそれを、太一、こんなに食べきれないよと言いながらつぎつぎと口に運んでいく。
そしてお腹がいっぱいになったとき目が覚めた。
「……あたし、コロネがそんなに好きだったっけ?」
次は「ワセリン」「包帯」「耐熱容器」で
―――後輪の外れた、自転車。
ハンドルは傾き、カゴはひしゃげ、泥除けはへこみ、サドルにはカッターで切り傷が
付けられていた。その、サドルの「傷」にはワセリンがべっとり。
その自転車の前には、包帯を手にした男性が一人。
手にしたその布をフレームに、ペダルに巻きつけた。
巻き終えると、離れて自転車を眺めてみる。
「んー……パンチが足りないね」
台所に向かい、冷蔵庫を開け、トマトジュースの缶を手にした。
戸棚から耐熱容器のタッパーを取り出し、ジュースをタッパーに空けた。
「トマトの赤は、熱くたぎる血の赤だ」
タッパーを電子レンジにぶち込んだ。
――包帯はトマトの血に塗られ、サドルは傷を負い、スポークは骨折した。
観衆からはどよめき、怒号、拍手……とにかく感情を表すすべての行動が、彼に向けられた。
「作品名、『街角の戦』!」
次は「月面」「タバコ」「JIS(日本工業規格)」
・・・・・・・・・・ つまらなくてごめん
「月面……か」
俺は大した感慨も無く、日の丸片手に月面に降り立った。テレビでは
快挙のなんのと騒いでいるが、所詮二番手三番手。一着アメリカは
いいとして、中国に負けてりゃ世話ない。
「そんなもんよりも」
俺はヘルメットの右端に視線を送った。視線感知センサーが反応し、
速やかに俺の欲求に答える。
スロットから飛び出したタバコが、俺の唇におさまった。。
「月でタバコを吸える贅沢を実現させた奴のほうが、よっぽど快挙の喝采
に相応しい気がするんだがな」
吐き出した紫煙は瞬く間に循環フィルターで浄化され、太陽光で分解さ
れる。
「日本工業規格恐るべし、か」
俺は日の丸を月面に突き立てた。俺たちを月に送り込み、月でタバコを
吸わせてくれた連中は、今ごろビール片手に俺たちを見ているんだろう。
俺はもう一度、深深と吸いこんだ紫煙を吐き出した。
次のお題は「さよなら」「試験」「降下」で。
422 :
「さよなら」「試験」「降下:03/09/07 19:40
司法試験に落ちてしまった。この2年間の苦労がすべて水の泡だ。
友人の誘いを断り、体調が悪いのを我慢し、漠然とした不安と戦いながら
死ぬ気で勉強してきたこの2年。夢が、儚く散った。
親にはなんと言おうか……。僕は重い足取りで予備校へ向かう。
いや、それよりも由佳は来てくれるのだろうか。
昨日の夜メールで僕は由佳に自分の気持ちを伝えた。
それを受けとってくれたなら今日の3時に予備校の屋上に来てくれるはずだ。
屋上についた。時計を見る。まだ由佳は来ていないようだ。
煙草に火を着け、邪魔な前髪をかきあげる。風を遮るものがないのでけっこう肌寒い。
僕は上着のポケットに両手を突っ込んで震えた。空には普段通り雲が悠々と
泳いでいる。僕が試験に落ちたところで何も変わりはしない。
僕の腕時計の数字は3:27となっている。そういうことか……。
もう一度空を見上げる。僕がいなくても何も変わらない。
「さよなら」僕は全速力で駆け、転落防止用の柵を飛び越えた。急降下。
背中の方で由佳の声が聞こえたような気がした。
「トマト」「炎」「警察」
運命改変の講義を終えた後、いつも通りこの大学の隅にある時空大王のところに行った。
もちろん今日一日の勉強内容をテストされるためにだ。
「今日は王子同士がどう巡り合ったかについて学びました」と僕は大王の部屋に入るなり
言った。内容を忘れないうちに全部しゃべりきってしまう作戦なのだ。「サマルトリアの王子とローレシア
の王子のすれ違いがなぜ起こったかと申しますと、ローレシアの王子が早くサマルトリアの王子と
会いたいという心がドラキーを倒す剣に力を入れてしまい、傷ついたドラキーが回復のために
泉に向かってしまい、その為モンスターの分布に異変と言いますか、ムラが生じ、防御力の
恐ろしく低いサマルトリアの王子でも単身で簡単に泉に向かえてしまったのが原因だそうです。
これを防ぐために運命を改変してやるとすれば、まずサマルトリアの王子の妹に媚薬を飲ませ…」
「おいトマト」と大王は言った。僕はこの大学では二番目に地位の低いトマトなのだ。「お前の
友人達は皆ぞくぞくと昇進し続けているぞ。昨日までお前と同じトマトだった新井も、今では
立派な灰皿だ。同級でトマトなのはお前ぐらいのものだ」
「彼が灰皿になったのは死んで二階級特進になったからでしょう。ねえ、僕はあまりこの大学
の専攻には向いていないみたいです。なんというか、人の運命を変えるということはある意味
自分の運命に歪みを作ってしまうだけのような気がするんです。うまく言えませんが。だから
大王が昨日私に指令した『司法試験に落ちた男の運命を改変する』という任務も断ったでしょう。
大体意味がわかりませんよ。私が警察官になって由佳っていう女の子の服を炎にくべて、
顔に引っかき傷をつくるなんて。それで男の運命が本当に変わるんですか?」
「バタフライ効果なんてそんなものだ」と大王はつまらないことのように言った。「とっとと遂行
してきたらどうだ?今回はわりと簡単だと思うが」
「わかりましたよ」と僕は仕方なく言った。
次は「毒」「亀」「しましま」でお願いします。
夜の闇の中でその金色の波はうねっていた。蠢く黄金のしましま模様が隙間なく
小船を取り囲み、取り残されまいとするものが群れにさらに加わって、海は鈍い光
で沸騰していた。イラブウミヘビはコブラの二千倍もの猛毒を持ち、一旦咬まれた
ら、40分以内に血清を打たなければ全身ミミズ腫れ模様になってかきむしり、の
たうって死ぬことを覚悟しなければならない。この海に落ちたら最後、もはや生き
ては帰れまい。「どうだ、船酔いは」と、黒田さんが声をかけてきた。
「いや、マジ、死にそうっすよ」僕は船の縁にしっかりと掴まった。黒田さんは
少し落ち着くからと、ポットに入れてきた紅茶を飲むように勧めてくれた。僕は
カップをふたつ並べ、それぞれに紅茶を注ぎ、ひとつを黒田さんに手渡そうと少し
前のめりになった。そのとき突然、黒田さんが立ち上がった。そして、よもやの悪
夢は現実になった。僕は金色の海に飲み込まれてしまった。もう何が何だかわから
なくなって、僕はめちゃくちゃに暴れた。沈むまい、咬まれまい、と必死だった。
疲れて抵抗も尽きた頃、船の上で黒田さんが大笑いしているのが目に入った。
船に引き上げられた僕は、船底にへたばって、吐く事もできないまま、引き上げら
れた亀の息のように臭い自分の息にむせ返っていた。僕がウミヘビと思っていたの
は、ただの夜光虫の群れだった。
次は、「裏切り」「皮」「ステンドグラス」でお願いします。
陽光が、教会にはつきもののステンドグラスを通して俺を照らしている。
別に俺は神父でもなければこの宗教の信者でもないので、ここにいる理由は思いつかないが、気まぐれというのは恐ろしいものだ。
……いや、気まぐれではないのかもしれない。
何度目かの彼女の裏切りは尽きかけていた俺の愛想を悉く燃やし尽くした。
もういい加減に関係を断ったほうがいい。このままでは俺が破滅してしまう。
これまでに幾度もそう思ったのに、いまだに決断できない自分がここにいる。
やはり今回も俺は彼女との縁を切れないのだろう。
長椅子に座って腕を組む。俺のほかに誰もいない教会の中は静寂という音に満たされ、耳の奥の雑音を際立たせる。
「――神に祈る趣味はねえ」
聖母の像を見つめながら吐く。瞳のない彫刻の表情は慈愛に満ち、その腕はすべてを受け入れて許すかのように広げられている。
バッグの中から、何も考えずに買ったリンゴを取り出し、皮も剥かずに一口かじる。この建物の中での飲食は禁止されているはずだ。
「……」
神様とやら。俺と彼女を許してくれ。
Next/「リモコン」「カード」「舌」
閻魔大王は新たな平気を導入した。「自動舌切り」マシーンだ。
これまではずっと部下の鬼にやらせていたのだが、
最近は軟弱な性質の鬼が増えてきたのでなかなかそれをやりたがらない。
そこでこのマシーンの出番というわけだ。
今日も、地獄行きの人間が連行されてきた。
カード破産の末に家族を残して自殺した男だ。
「判決!舌切り!」
閻魔が威厳たっぷりに言う。
いやだぁ、と騒ぐ男の口に、鬼が舌切りマシーンの刃の部分をねじ込む。
「では閻魔様、執行してください!」
側近が言う。
「え、俺がするの?」
「なんのためにこんな高いマシーンを買ったと思ってるんですか!さあ!」
「う、うん。じゃあリモコンを……」
閻魔が言う。はて、といった顔の側近。
「リモコンなんてありませんよ?直接スイッチを押してください。
あとはマシーンが買ってにやってくれます。」
閻魔は思った。
こんなことなら自動舌切りマシーンを買わないでもっと極悪非道の舌切り執行人を雇えばよかった。
427 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/08 10:49
>>726 ちょっとワロタ。で、次のお題は?
勝手に決めていいのであれば・・・
「戦争」「学徒動員」「死」
これをうまくやれたら、すごいかも。
ちょっと重い雰囲気になりそうだけど、あえて。
って、これは漏れが書いちゃだめなのか?
だとしたら、次の人オナガイシマス。
>>427 あえて、の意味が分からない。
なんか書きたいなら俺が題だしてやるぞ。>メ蘭
むせかえる腐臭、髑髏を囓る太った鼠、
炸裂音とともに、要塞の内外には雨が降り注ぐ。
雨は川となりて、俺たちが立て籠もる塹壕を満たしはじめた。
壕を満たす、おびただしいほどの、血、血、血!
死の沼の底で沈思する。狂ってしまわぬうちに、この思索にケリをつけたかった。
――学生当時、マルクス主義に傾倒していた俺は、
民主国家が学徒動員することに反発し、傭兵としてゲリラに転じた。
まるであいつらは、腐敗した古代ローマ帝国の元老院だ、そう憤ったからだ。
しかし、戦争ともなれば、いかにそれが強大なものか思い知らされる。
あいつらは今頃、近代化された兵営でうまいものをたらふく食っているのだろう。
安全の場所で、算盤を弾いている連中が、湯水のように物資を送ってくれるからだ。
認めてやろう。民主主義とは戦争を遂行するのに最も効率的な仕組みだ。おまえたちが最強だ。
臓物にまみれ、意識を手放さんとしていたそのとき、
上空から飛来した一隻の爆撃機がたった一個の爆弾を落とすのを目のあたりにした。
「……何事も効率的にってやつか」
着弾とともに俺は永遠に狂気から解放された。
# 次のお題は
>>429氏 もしくは、「楊枝」「傘張」「喜劇」
現在の三語は
「リモコン」「カード」「舌」 (425・426継続)か
「楊枝」「傘張」「喜劇」 (430)
目の前に並んでいるからくり人形はとてもよく出来ていた。前掛けを着けてお茶を運ん
でいる丁稚や、爪楊枝を骨にした蛇の目をくるくる回しながら、せっせと油紙を張っている
傘張り職人、屋形船を漕ぐ小袖の船頭。どれも昔懐かしい風俗を巧みな仕掛けで再現してい
る。「昔は、大量生産できる玩具なんてなかったですからね。その分、細かな技術を駆使し
て自作の玩具を子どもに与えたり、見よう見真似で作ることを教えることなども当たり前だ
ったようです」僕は、折鶴の折り方さえ忘れてしまっている自分を内心で恥じていた。子ど
もの頃、田舎の祖父に教わった竹とんぼや笹舟の作り方さえ、今となっては記憶の彼方だ。
どれも息子たちに教える機会などないまま、彼らは大学生になってしまった。息子たちの世
代にとってのオモチャとは、TVゲームやPCだ。僕は両の手のひらを広げてしみじみと眺
めた。こんなに深くて複雑な手相を刻む前の子どもの手は、のっぺりしている分、可能性も
大きく広がっているはずだった。僕は、目覚まし時計をバラバラにして組み立てなおしたと
きの何ともいえない快感を思い出していた。母に叱られながら、喜劇役者になったつもりの
おどけた表情で、平気で切り替えしていた自分のことを思い出して苦笑した。そうだ、押入
れに仕舞い込んだままの未開封のプラモデル、あれを出して組み立ててみよう。僕は展示場
の係り員に礼を言って、地下鉄の入り口を目指して早足で歩いた。
次は、「リモコン」「カード」「舌」か「あえて」「疎開」「自決」
でどうぞ。
都市−地方の較差が広がる時代に、一人の立候補者が現れた。
「あえて機能集中を廃止し、地方に国家機能を分散しよう」
土建族と農政派議員の日和見的寄り合いの偶然から、彼はまんまと与党の総裁に
登りつめた。
その結果が、これだ。
俺の所属する厚生労働省庁舎は、今や宮崎のはずれにある。不便なこと限りない。
なんといっても、カードの使える銀行が車に乗って30分の所にしかないのだ。
いくら省庁が寄り集まって反対しようが、議員先生の塊が強引に推進してしまってい
る以上、覆しようがない。
首相自ら長野に移転した内閣府に移動し、『各自決定には従うように』と特別通達を
打っただけで、さっきまで反対していた局長連が舌の根も乾かぬうちに『従うか、あるい
は左遷か』などと言い出した。結果が同じなので、みんな従わざるを得ない。みんな自
嘲気味に、『テポドン疎開っすよ』などと、諦めムードが漂っている。
テレビでは、新たな省庁移転について放送している――
なに!?財務省は東京!?日銀が移転を拒んだため!?
すっかり気分の悪くなった俺は、リモコンを叩き付けるようにしてテレビを消した。
次のお題は「マッチ」「ケーキ」「怒涛」で。
ありていに言って、それは雑巾の汁を絞ったような味だった。この席が
誕生日会でなかったら、そしてまたこのケーキが母の作ったものでなか
ったら、少年はほとばしる激情に駆られて、ついカッとなってしまったに違
いない。それほど飛びぬけた味だった。
誕生日会に呼ばれた被害者たちにとれば、それは悲劇以外の何者でも
ない。あるいは机にうつ伏せたまま顔を上げぬ者、あるいはトイレに立った
まま帰らぬ者、無言で席を立ってそのまま玄関に向かい、願い叶わず途中
で倒れる者もいた。
悲劇のヒーローたる少年は、怒涛の勢いでケーキを口に押し込めた後、
三日口を利かなかったという伝説まで作った。
この劇の立役者とも言うべき母は後に「ろうそくに火をつけたマッチが
ケーキの中に混入したからだ」と言いつくろったが、その後何者かに、火の
ついたマッチを家の中に混入されるという事件に見舞われた。
次のお題は「すっとんきょう」「腕っ節」「暴発」で。
榴弾、加農。多分青山の分隊は蹴散らされた、と思う。迫撃砲。鈴木と森本が吹き飛ばされた。
人間なんて、爆弾から見れば、豆腐だとかケーキの様に柔らかいのだと、初めて知った。
止めにテッポウ抱えた連中が洪水のように押し寄せ、殆どが流された。向こうはまさに疾風怒濤。
俺が幾ら弾をばら撒いても減らない。俺の隣の奴らはどんどん倒れる。弾が尽きた。みんな、地に伏せている。
俺は、逃げた。もうだめだ、頭に穴を空けられるのも、爆弾で細切れにされるのも嫌だ。
北へ、港へ。仲間がいるかもしれないし、そうじゃないかもしれない、けれど。
そう思い、疲労という名の重しが乗っかった足を引きずった。
飢え渇きは俺の脚を止める最高の荷――止まるな、来るぞ、あいつらが!!
死にたくない、ただそれだけ。それだけで泥を啜れた、草を食めた。怖かった、生きたかった。
もう、どれだけ歩いたか。太陽が何回出たか?月を何度拝んだか?
月も星も雲に隠れたその晩、まだ俺は脚を引きずっていた。
向こうに、か細いマッチの様な明かり。
明かり、光だ!!
あの重しは何処、俺の脚は内燃機関でも付いたように回り始めた。
m9っ`Д´) <「重機」「鉄パイプ」「おにぎり」が君を待つ!!
リロードし忘れた…。
スマソ、スルーしてけろ。
三笠山重機は、日本で始めて、人型ロボットを工員として本格採用したことで知られる工場だ。
ある日、三笠山重機社長三笠山月影の元を、某大手コンビニエンスストア商品開発担当者が訪れた。
「どういったご用件でしょうか」
「実は、おにぎり自動製造マシーンを作っていただきたいと思いまして」
そう言って来客は目の玉が飛び出るほどの現金を三笠山の前に差し出した。
「そしてマシン製造後にはお宅のロボットにおにぎりを作っていただいてね。
『ロボットの作ったおにぎり』として売り出したいのですよ」
「はぁ、そうですか」
三笠山は困惑した。おにぎり製造マシンなんて明らかに専門外だ。この企画だって明らかに馬鹿げている。
だが、最終的にはコンビニ側の出してきた多額の現金に目が眩んでそれを引き受けた。
おにぎり製造マシーンは無事に成功され、ロボットの作ったおにぎりは商品化された。
それからしばらく経ったある日のこと。工場の社員が社長室に飛び込んできた。
「大変です!ウチで作ったおにぎりに異物混入騒ぎが!」
「なんだって!何が入っていたんだ!」
「鉄パイプだそうです!おそらく出荷の際に誰かが間違って!どうしましょう!」
三笠山は考えた末に、言った。
「……よし。ロボットの指が混入したことにしよう。」
次は「浜風」「番長」「コンペンセータ」
今の御題:
>>434 「すっとんきょう」「腕っ節」「暴発」
>>437 「浜風」「番長」「コンペンセータ」
のどっちか
補償器(電子機器なら「増幅器」と思っていい)。
誤差修正用装置
御題:「浜風」「番長」「コンペンセータ」「すっとんきょう」「腕っ節」「暴発」
七式光学銃について。
二〇〇六年、領土領海を巡り、日中関係が緊張。中国の油田はもうロクにない。
石油が欲しかった。石油がなければ航空機が飛ばせず、戦うことができないからだ。
その緊張状態のさなか、在日米軍が撤収を表明。中国は米国にこう伝えたのだろう、「核戦争辞さず」。
この動向を受け、防衛庁長官の名で、総理に一つの報告が送られた。
「日本核武装計画」。
中国の暴発には「日本独力による」何らかの手段でICBM迎撃、同時に核による北京攻撃。米軍にはもう頼れない。
その「何らかの手段」が「七式光学銃」。
出力三メガワット×三、車両牽引型で電力供給車(戦車トレーラーを転用)が随伴。三菱重工。
要求されるものはこうだった。「TMDの様な一発きりではなく、連射可能で、核弾頭を破壊できる装備」。
開発主任に選ばれたのが、梶川健史。光学機器、それも陽子コンペンセータからレーダー用レーザーまでも
電子の動向から光粒子まで触った経験があるのは彼しかいなかった。
因みに彼のあだ名が「番長」。何でも触らなければ気がすまない性格、有無を言わさぬ命令の仕方、その体格と腕っ節の強さ、
何か思いつくとすっとんきょうな奇声を上げるなど、子供じみた行動……それらのせいで「主任」と呼ばれることは稀だった。
が、そのような「番長」でなければ、全てを知り尽くし自由な発想をする「子供」でなければ、この装備は成らなかったろう。
果たして、それは浜風による塩害対策を施され、台場などに配備された。
新型「東風6」を、核弾頭を実戦で叩き落した世界初の装備となる。
#こういうのもありなのかね?ドキュメンタリーっぽいの。
( ゚Д゚)y−~~<次の御題は「痛覚」「麻酔」「ガソリン」
痛覚が麻痺してきた
麻酔をしたおかげだろう、しかし朦朧としてくる
俺は死ぬだろう、だがこれだけは最後にやっておきたい
いや、やっておかなければならない
その一心で海岸へ向かった
着いた俺はカバンの中からガソリンの入った小ビンを取り出し開け、そしてカバンに直接かけた
今まで自分を支えてくれていたものに礼を言いながらも火を放つ
赤く燃えているそれを見ていると足がふらふらしてきた
限界の様だ
「……じゃあな、俺のエロ本」
完全に燃え尽きたのを確認した俺はその場で座り目を瞑ってこの世にも別れを告げた
次は「涙」「砂糖」「計量」
「痛覚」「麻酔」「ガソリン」
「いくよ。いい?」「ん。いいよ。一発でやって」
あたしは朋子に膝枕をしてもらうと、昔ママに耳かきをしてもらった時
みたいに左耳を上にして目をつぶった。宮下公園の古い木のベンチは夏の
日射しを木目の中に閉じこめているみたいに温かい。このまま眠ってしまいそう。
あたしはマニキュアの爪でピースマークのいたずら描きをなぞりながら朋子が
気合いをいれてアイスピックを耳たぶに突き刺すのを待つ。コンビニで買った
ロックアイスでずっと耳を冷やしていたから血はあんまり出ないはずだ。
家出中でお金がないから100円ショップで買ったアイスピックでピアスを開けようと
言いだしたのはあたしだ。「麻酔なしで耳に何個も穴なんかあけたら、マジ痛いじゃん?」
「平気。痛いのなれてるし」あたしは痛いことを求めている。痛みに耐える訓練中。
殴られても笑っていられれば客には負けない。でも、死んだママのこと、なぜか思い出した。
ママは公園の砂場でガソリンをかぶって自分で火をつけたんだっておばあちゃんが
言ってた。パパに「身体に火がつくと痛いの?」って聞いたら「痛覚は最初になくなるんだよ」
って言った。「死ぬ準備を身体がするんだ」……ガッツん。耳が燃えるような熱い衝撃が走った。
耳の中に心臓ができたみたいにドクドクと痛みが頭にひびく。「オケ。もうイッコやってね」
朋子は本当のママみたいな心配そうな顔をして、冷たい手であたしの髪をなでた。
かぶりスマソです。お題は442さんの「涙」「砂糖」「計量」でおねがいします。
「涙」「砂糖」「計量」
「牛乳これくらい?」と計量カップ半分ほど。
砂糖は私の愛、いっぱいいっぱい入れてしまおう。
ホイップクリーム泡立てながら「君のように甘いね」。
「あ〜、も〜えっちぃ!」、迂闊にも泡立て器を振り回し、クリームが壁にべったり。
「……甘すぎ」、彼は渋い顔だった。
その晩私は涙。こんなはずじゃなかったのに。
(。A 。 )<「塩」「偉人」「DVD-R(あなたが+派なら+、
RAM派ならRAMでもいいや)」
445 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/09 22:17
「塩」「偉人」「DVD-R」
試験管の中で、塩基の反応が群青色の輝きを見せる。
博士はおもむろに顔をあげて、傍らの助手にこう言った。
「喜べ!妙子君」
「わーい、先生。実験、成功したんですね?」
しかし答えは意外だった。
「いや、ただ言ってみただけだ。『喜べ』と」
「え・・・!?」一体,何がどうなのか。彼女は訳がわからない。
彼女にとって、博士は偉人であり、尊敬の的だった。でも、これって?
「あの、その、先生・・・」と言いかける彼女に、博士はなおも言う。
「喜べ、喜べ、喜べぇぇぇ!」「わーい、わーい、わぁぁぁーい」
「喜べ」と言われると、長年のつきあいで喜んでしまう。当然の様で、不可思議な事実。
「これはいい。DVD-Rに録画してエンドレス再生すると、一生喜べるぞー」
「なんだかよく分らないけど、赤飯炊きますねー」
小豆を洗いながら、彼女は思い出した。
結局、試験管の物体は何だったのだろう。何かの触媒だろうか?
「いいもん」彼女は思った、これでいいのだ。
なぜなら・・・なぜなら彼女は、喜ぶと嬉しかったのである。
※納得^^;
次のお題は:「酸」「異人館」「サインはV」でお願いします。
押尾先生は偉人です。
なぜなら先生は安倍なつみの膣内にその肉棒を入れた人生の勝ち組だから。
世間では「お塩」「テンキュー」「ファッキンライト」などと揶揄されておりますが、
あなた達の中で誰かひとりでもモーニング娘。とセックスできた方がいますか?
もし俺はなっちとやったぞ!俺は矢口とやったぞ!
という方がいらっしゃいましたら、名乗り出ていただくと共に証拠を提示してほしいところ。
ハメ撮り映像のうpきぼんぬ、でございます。
小生の家にDVD-Rに焼いて送ってくれても結構でございます。
[ ´へ`]<次は「アンドロステンジオン」「妊娠」「結婚」でテンキュー!
>>446 はカブリかな? お題は
>>445でいきます。
強烈な刺激臭があたりに漂っていた。彼はその前を通りがかったというただそれだけの希薄な縁から、
豚でさえ咳き込みそうな異臭を放つ洋館へと足を向けた。普通の嗅覚を持つ人間なら、そのような厄介
ごとに首を突っ込むよりも、そそくさと立ち去るほうを選ぶはずである。しかし彼の好奇心は、顔をしかめ
て足を速めるよりもその異臭の元を究明する方に魅かれたのだ。
ドアはあっけないほど簡単に開いた。その前にあったレンガ造りに挟まれた鉄門も、まるで見掛け倒し
だった。古い趣のある装飾が施された、半ば腐臭のする木製の扉の向こうは、しかし彼の想像通りなら凄
惨な光景を彼の目に映すはずだ。
屋内の様子は、彼の予想をより悪い方向に裏切った。扉を開けてすぐ、これは想像に難くなかったのだが
大広間には異臭が立ち込めていたのだ。大広間にはその源泉まであった。元は紅かったであろうすすけた
絨毯の上に、正視に堪えない量の、胃液が、ぶちまけられていたのである。その量たるや、自身さえも、この
不名誉極まる宴会の列席者へと招きかねないものだった。
「う……」
当然ながら気分が悪くなり、彼は口に手を当てる。自業自得とはいえ、人並みに嗅覚を持ったことを彼は恨
んだ。強烈な酸の臭いに声も出せず、呻き、既にある酸性の汚物に半分以上溶けたランチを紹介してやった。
トシャトシャと音がする。次いで彼の咳き込む声が聞こえ、その次にゆっくりと広間の向こうにある扉が開く
音がした。
奥から脂肪率と背の高い黒人が出てきた。一指し指と中指を立て、陽気な声で「サインはV」などと叫んで
いる。彼は黒人を視界に入れてすぐ、君子危うきに近寄らずという古い格言を思い出したが、もはや実行に
移すほど意識はなく、その格言を思い出すのも致命的に遅かった。
臭気に中てられて倒れた日本人は知っておくべきだったのだ。その異人館が、「黒人の胃袋」という名で
知られていることに。
長くてスマソ。次は「放蕩」「折檻」「身だしなみ」で。
「アンドロステンジオンって知ってるか?」
「なんだそりゃ?」
「一種の薬だ、簡単に言えば性的興奮剤」
「それがどうした」
「ちょっと薬を弄ってたらな……なんと改良したらフェロモンが大量にでる効果になったんだよ」
「ほんとか?」
「安全性もバッチリ、ほら、中田もこれ使って女ゲットしたんだよ」
「妊娠したから仕方なく結婚したといってたような……」
「一つお前にやるよ」
「とりあえずさんきゅ」
ごくっ
「何ここで飲んでんだよ!」
「いけなかったか?」
「ってそりゃ………」ふぅん
「どうした?って何俺の肩を掴んでんだよ、あっこれお会計ねマスター、ちょっとまてって、え!なんでここ……ええっちょっとまてよ!男にも効くのかよ!」
二人は明るい夜の街へ消えていった
次は「親」「睡眠」「漢字」で
いつのことだっただろう。――そうだ、あれは小学生の頃。
自分の名前を漢字で書いてみましょう、と国語の時間に教師が出した課題。
周りは一心不乱にノートに名前を書いている。けれど――僕は書けなかった。
僕の前に立った教師が、不思議そうに問い掛けてきた。「どうしたの?」と。
書きたかった。けれど書けなかった。涙がこぼれそうだった。
難しすぎる、漢字。
小学校低学年だった僕には、到底書けないような漢字だった。
帰宅した僕は、親に当たり散らしていた。泣きながら、何度も、何度も。
泣き疲れて眠るまで、その日はずっと親に怒りをぶつけていた。
――そうだ。そんなこともあった。
今、僕の前には眠るように息を引き取った母親がいた。
去年、急逝した父親の後を追うように。
この一年、母親はほとんど睡眠を取っていないように思えたけれど。
けれど、この安らかな顔は本当に幸せそうだった。
僕の名前――今では、他のどんな漢字よりも好きな、僕の名前。
次は「烏龍茶」「携帯電話」「CD」でお願いします。
450 :
「親」「睡眠」「漢字」:03/09/10 01:50
8月31日、もう9月1日でしたが、太郎は泣きながら漢字ドリルをしていました。
もちろん夏休みの宿題だからです。
本当は他に計算ドリルが残っているのですが、それはまだ手をつけていません。
親はそんな太郎に愛想を尽かして寝てしまい、太郎は一人で残りの宿題を片付けておりました。
時間はもう午前2時。そんな時間なんて大晦日だって寝ています。
太郎は心ぼそくてわんわん泣き出してしまいました。
「太郎君、太郎君、何を泣いているんだい?」
太郎の知らないおじさんが、太郎のいる部屋の窓を叩いておりました。
「宿題が出来ないの。まだ一杯残ってるのに」
「じゃあおじさんが手伝ってあげよう。計算ドリルをかしてごらん」
おじさんはそう言うと、太郎の計算ドリルを片付けてくれることになりました。
太郎は勇気百倍です。午前3時になるころには宿題は全部終わってしまいました。
「ありがとうおじさん」
「いいえどういたしまして。それで御礼が欲しいんだが、太郎君、君のはいているパンツをくれないかな?」
太郎はとても恥かしかったのですが、結局手伝ってくれた御礼におじさんにパンツをあげました。
次の日太郎は睡眠不足で辛かったのですが、でもとてもすっきりといい気分で、終わらせた宿題を持って登校しておりました。
途中の橋まで来たときに、太郎はびっくりして足を止めました。
昨日のおじさんがいたからです。
「やあ、太郎君。今から学校かい?」
「は、はい」
「おじさんはあのアパートに住んでるんだ。いつでも遊びに来ていいんだよ」
おじさんはそう言うと、太郎の頭を何度も何度も撫でました。
次は「絵本」「残酷」「ブックカバー」で。
すいません。
次は「烏龍茶」「携帯電話」「CD」で
「絵本」「残酷」「ブックカバー」「烏龍茶」「携帯電話」「CD」
いつもは買わないような人生訓の本。カバーお付けしますか?いいえ。
ありがとうございましたのマニュアル口調を背に店を出た。
街は月の光など蹴散らすように必死に輝こうとしている。
CDレンタル屋、衣料店、飲食店、最近はデパートも遅くまで開くのが常。
闇を焦がす明かりは絵本にでも出てきそうに美しい。
明かりを灯す人は、常に相手の火を消そうとし、自分の光をより明るくしようと戦っているのに。
残酷な御伽噺。
――私は、先ほどその光を消された。
妻にはどう言えば?泣くか、怒るか?「あなたはもういらない人よ」と言われるか?
そればかり考えながら、道を行きつ戻りつ、もう午前だ。
これを飲んだら帰ろう、そう思って買った烏龍茶は五本目。
何気なしにかばんから取り出した携帯電話は着信十五件。妻だ。
この様子だと、私の解雇を既に同僚辺りから聞いたのかもしれない。
――お願い、帰ってきて、いなくならないで。
心に、再び、ほんの少しだけ光が灯ったような気がした。
#420=435=441=444=452
#文体が安定せんなどうにも
(σ´∀`)σ<「フロントガラス」「緑茶」「辞書」を次の人ゲッツ!!
やっちまった。
上は評価0点。スンマソン。
ブックカバーをカバーと省略しているため
自 主 晒 し a g e
455 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/10 04:23
「あんたが辞書を愛してるのはよく分かったわ」
隣でレイコが呟いた。
「読んでみれば案外楽しいものさ。暇つぶしという点でこれ以上に優れているものを僕は他に知らないね」
「そうね楽しいでしょうね。でもお願いだからせめて運転中に読むのはやめて。あと運転を暇なものと考えるのもやめて」
僕の足はアクセルにかかり、手はハンドルにかかっているが、目は『敬語挨拶辞典』の内容を追っている。
「大丈夫だよ。フロントガラスに何か映ってればきっちり見てるさ」
「フロントガラスに映ってからじゃ遅いわ……。ちゃんと前とミラーを見て操縦して」
「はいはい。分かってるよ」
僕の気のない返事にイライラしたのだろう。
顔を上げたときに目に入ったルームミラーに、レイコがペットボトルの緑茶の残り半分ほどを一気飲みしてため息をつく光景が映った。彼女の手の中でべこり、と音を立てながらペットボトルが潰れていった。
もうすぐその手が僕の首にかかるかもしれない。仕方ないので僕はマジメに運転することにした。彼女の実家まで軽くあと数百キロはある。
無事に着けたなら、お邪魔するまでに少しだけ復習をさせてもらうとしよう。ええと、「娘さんをください」だっけ?
Next/「年下」「開始」「見る」
「年下」「開始」「見る」
授業開始のチャイムと共にH先生が駆け込んできた。
皆「またか」と言った表情で息を切らしている彼女を見ている。
正直、どうして彼女がこうも毎回ギリギリの時間にならないと教室にやってこないのか、疑問に思う。
以前にもそんなことを思ったクラスの奴が、彼女に尋ねたことがあった。
だが、まだ若い彼女は曖昧に笑うばかりで何も答えない。
――授業はそれでも進んでいく。彼女の高い声が、徒然草を奏でている。
僕はしばらくその声に聞き入り、ややもすれば年下にも見える童顔の彼女の横顔を眺めていた。
はっきり言って理系の僕にとって古典の時間は苦痛以外の何物でもなかったけれど。
彼女の声を聞き、彼女の顔を見る。
それだけで、その不満はどこかへ霧散してしまう。
窓の外に目を移せば、午後の太陽を浴びた新緑が眩しい。
取りあえず生きてきた中で幸せをこんなに感じる時間は、これまで無かった。
次回は「テレビデオ」「システム手帳」「スティックシュガー」でお願いします。
458 :
「テレビデオ」「システム手帳」「スティックシュガー」:03/09/11 01:04
「へー、あなたのおうち、テレビデオなんだ?」
「これ、録画してる間は裏番組みれないんでしょ?」
「録画しながらその番組見てるの?馬鹿らしくない?」
「あ、システム手帳見せてもらうね。」
「はい、ありがと。あなたの予定って。」
「カレンダーに書き込んだほうが便利なんじゃない?」
「コーヒー煎れてくれたのはありがたいんだけど。」
「お客さんにはスティックシュガー出すほうがいいかもよ。」
「砂糖ガチガチなんだもん、除湿剤買ってあげよっか?」
次は「バルーン」「マイン」「空振り」でお願いします。
さぁ七回裏横浜ベイスターズの攻撃。
山下監督はここでピッチャー加藤に代打小田嶋を送ってきました。
どうですか解説の江川さん。
そうですね、甲子園は知っての通り浜風でかなりフライが揺れる球状ですから。
知っての通り今年の横浜はバルーン打線と呼ばれるほどポップフライが多いだけに、
井川君は味方がエラーをしないことを祈るしかないでしょうね。
小田嶋の打撃は心配無いと?
井川君は今日球に力が入ってないわりに抑えていますからね。
チェンジアップが生きないから空振り三振は少ないけれど、少ない球数で打ち取ることができている。
守備に不安のある今岡君のところに打たせないのが一番重要なんじゃないでしょうか。
そうですね、今シーズンの今岡は虎のゴールドマインと呼ばれるほどタイムリーエラー続出ですからね。
さぁ井川第一球投げた!ストレート142km/h入ってストライク!小田嶋空振りました。
どうやら小田嶋は一発狙っている雰囲気ですねぇ。
今岡君のところにゴロを叩きつけられればそれがベストなんですけれどねぇ。
次は「カジノ」「知事」「ネオフォビア」でお願いします。
ネオフォビア
私にとってそれほど遠い言葉はないだろう。
中三の頃、屋根裏にできたスズメバチの巣をばるさんと金チョーるで撃退した。
いや、スズメバチの巣って後から知ったんだが。
高三の時はERに夢中になって隣町の大病院の集中治療室に見学に行った。
見舞い客と思われたようだ。ずさんな管理だな、と思いつつも重症患者の皆さんを見てちょっとへこんだが良い経験になった。
大学一年の時はX−ファイルに興味を持ち、レンタルビデオ屋に走った。
深夜二時。借りてきたのはSEX-ファイルだった。
「さて、ここまで言ったら私がどんな人間かわかったかな?」
「えぇ、いつまでも幼稚だ、ということは」
「ははっ筒井筒の仲間と気の許せない会話。心地よいね。さて、ここで新たな目標ができたので君に聞いてもらいたい」
「冷夏で蜂たちは気が荒くなっていますよ」
「ファイナルアンサー?」
「健康診断はもう終わりましたよ?」
「へぇ〜」
「……外聞が悪いので、エロビは少し考えてくださいね」
「ヘキサゴーン!!ははっ全然方向性が違うよ。いや、いまさらながら、私という人間を一言で表すと、ペドフィリア。
それに尽きないか?今度『上司へ世界で一番短い手紙』に書いてくれてもらいたいんだが?」
ドミノ的な音を立てて彼の机上から電話や書類箱が落ちる。
なんだろう、ドリフ的な行動をするとは、新しい技だ。
「知事、ペドフィリアは幼児愛好者ですよ?」
「……。」
黙って落ちたものを広う彼。
「んー…それもまたヨシ!今度自宅でカジノを催すんだが、景品の一つに幼児を入れてみようか?」
「それはまた、線路の上に小石を置くようなことをおっしゃらないで下さい」
軽やかに笑う彼の顔から冷風が漂う。
「……ごめんなさい。間違えました……。」
「わかっていただければよろしいです。ネオフィリアもほどほどにしてくださいね」
執務室に広辞苑を置こうと思いました。
次の各の忘れました;
「産後」「引力」「声」で。
「産後」「引力」「声」
「ねえ。子供のころ大きくなったら、ナンになりたかった?」
あたしはバスタブに腰かけて、太ももにくっついたロウソクの固まりを爪ではがしながら
サキに聞いた。サキは金髪の長い髪を半月形のバレッタでまとめて、女王様衣装にはねた
ロウソクを氷で固めて落としている。溶けたロウは豚の脂身みたいにねっとりと黒いレースの
ビスチェにからみついてなかなか落ちない。「うーん、なんだろ。セーラームーンかな?」
「あはは!カワイイじゃん」あたしはサキが好きだ。この仕事を始めたのもサキに声をかけられた
からだし。いつもサキとセットでお仕事をする。ハマサキ風のゴージャスな巻き髪の
サキはオフの時は3歳の女の子のママだ。15で産んで産後すぐ、この業界に復帰したから
ケイザイテキには助かってるらしい。サキにはしつけのイイ客を引きよせる引力があるって
店長が言ってた。今日の客も大人しいおじいちゃんだ。
「あたしはお空の星になりたかったなあ」「なんでえ?死んじゃうみたいじゃん、悲しいよお!」
死んだママのこと「お星さまになったのよ」って、みんながあたしに言うから人は大きくなると
星になるんだと思っていた。「あと、お姫さまにもなりたかったけど、もう女王様になれたからいいや」
あたしが言うと、サキはちょっとうれしそうな、まぶしい目をした。
「ううう。どおウだまア」タオルをくわえたまま絨毯に土下座している客が部屋でうめいた。
サキは「お黙り。おまえには月にかわってヒドイお仕置きをしてやる」と低くて冷たい声で
言うとあたしにウィンクした。笑ったサキの瞳にバスルームの明りが細い月のように映った。
次は「満月」「願いごと」「夜道」でお願いします。
「高校も一緒に行きたいんだけどさ、成績が足りないのよ」
塾の帰り、夜道を二人で歩く
僕と彼女の接点はこの僅かな時だけだった
「困ったもんだね、こればっかりは限界な所もあるし」
「これが今の私の願いごとなの、ミツキの願いごとは何?」
「僕の願い事?」
たまたま帰り道が一緒で
たまたま趣味が合って
君の事を全然知らないけど
その僅かな会話をしている時がとても楽しくて……嬉しくて……そして悲しくて……
「好きな人に告白することかな」
「ふぅーん、がんばってね」
・ ・
「うん、じゃあ彼氏によろしくね」
「「バイバイ」」
満月と街頭が照らすコンクリートを走って僕は家に帰った
あー切ないなー(⊃Д`)
次は「食パン」「登校」「土下座」で
「食パン」「登校」「土下座」
わたしがパパの会社のリムジンに乗り込むと、秘書の和田さんが
「お嬢様、今日はパーティでの花束贈呈よろしくお願いします」と
今朝から何度目かの念を押した。「わかってるって」私は横目で毛先を
にらんで、きっちり三つ編みを黒いゴムでまとめながら、不機嫌に返事をした。
聖星女子学院の校門が見える、大使館前の交差点で車をおりる。和田さんは
まだ何か念を押したそうに車の窓から私を見送っている。もう、ウザイよ。
今日はパパの後援会の決起大会とパーティがある。私は一人娘としてパパに
花束を渡すのだ。壇上で土下座するパパ。「どうぞこの山田一郎を男にしてください!!」
万雷の拍手が起きたら、わたしが制服で小走りで入場。泣きながら花束を持って。
和田さんの演出で父と娘は抱き合って泣く。これでイッチョあがり。
「貧乏のドン底で食パンの耳を4里離れたパン屋にもらいに行った子供時代」
「苦学して靴磨きをしながら高校に通い、教科書を買う金もなく写本したものです」
泣き落としでまとめた演説が一番うけるらしい。本当はパパも苦労なんかしてない。
私は登校用の元気のでるオクスリを舌の下にぺろりと放りこんだ。鼻の粘膜は
大事だから最近はシャキッとする系はやめている。ああ、だるい。クスリ変えようかな。
**次は「虜」「年増」「つばめ」でおねがいです。
466 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/12 00:46
「虜」「年増」「つばめ」
館を踏み荒らす足音が、床下の隠し部屋にまで響いていた。
兵は略奪を常とした。そして、略奪の対象は貴重品だけとは限らない。
「姫様、御安心してごじゃれ」と、床下で婆が囁く。
「おばばが、ついてますぞえ」
「ええ」と気丈に答える姫だったが、袖は不安に震えている。
と、館を荒らすだみ声が不意に途絶える。「ここだぁ!」。
と、不意に床板が跳ね上げられ、おおと声をあげる郎党達の顔がのぞく。
酒と欲望に濁りきった目は、虜となった姫達に注がれる・・・
主人の馬がようやく館に着いた頃、略奪は既に完了していた。
焼けた柱、破られた旗・・・婆の目はぼんやりと、廃墟の空を眺めている。
姫の誇りは、最後の一片まで砕かれたのだ。名も無き浪人達に。
里へとつばめ返りする主人の胸には、既に復讐の計画が宿っていた。
が、まずは身内を慰め、その心を癒すことが第一だ。
数人の男に蹂躙された大年増と、誰にも相手にされなかった姫の心の傷を。
※やっと15行・・・
次のお題は:「虜」「年少」「とんぼ」でお願いしまふ。
467 :
「虜」「年少」「とんぼ」:03/09/12 01:44
とんぼは他の虫と比べて美味いらしいからですねえ。
こんな季節だってのに、見かけなくなりましたねぇ。
ええ、今となっては虫も貴重な蛋白源ですからねえ。
何もありませんが、これでよろしかったら召し上がってください。
えぇ、「ふすま」ですよ。
穀物のそれではなく、文字通り奥座敷の襖だったものですけどね。
結構味付けにはこだわってるので、なんとか食べれますよ。
腹もふくれますしね。
政府は来るべき食糧難について憂慮してた時期もあったようですが、
なかなか具体的な対抗策はうかばないようでしてねぇ。
今ではごらんの通り、配給の食糧も毎年少なくなっていって・・・
この前もらったのはどれくらい前のことでしたかねぇ・・
あれ、お客さん?どうしたんですか?
もしかして私の退屈な話で眠くなっちゃいました?
すいませんねえ、さっきの襖のおかゆにちょっと薬を入れさしてもらいましたよ。
近頃は虫もよく取れなくなってきたんで、
うちの子どもたち、蛋白質が不足してるみたいでね。
次は「赤ワイン」「ひとめぼれ」「片側一車線」でお願いします。
「赤ワイン」「ひとめぼれ」「片側一車線」
「おるぁぁあ二輪ドリフトォ!」
ああ、俺は今、日本最速の米屋――って、なんか右に軽トラ来たんですけど!?
片側一車線で抜きに掛かるとは、頭が(放送禁止)!
車内であいつは「亜細亜最速の酒屋ぁぁ!」とか「軽トラドリフトぉ!」とでも吼えてるに違いない。
……というか、あの、なんかビン落としてるが。路面には点々と赤ワインの残骸が。
こうなったのには訳があった。
信号は赤。俺はカブ。当然すり抜けないわけには行かないだろ?だからやった。
信号の先頭は軽トラだった。よく見覚えのある、「酒田酒店」。
サイドミラーで俺を見たのかは知らないが、道を塞いできた。これじゃ通れない。
ここで抜けなきゃ男が廃るということでトラックのケツから右を抜いてやった。
運転席には良く見た顔。酒田敏明、俺の宿敵だ。
こいつが俺に「あきたこまち?ひとめぼれ?時代は酒だぜバーカ」と言って以来、俺の敵。
このチ○○スに前を行かせる訳にはいかねぇ、青信号と同時にロケットスタートだ!
「世界最速の米屋ぁぁ!」と赤信号の酒田を抜くと、「太陽系最速の酒屋ぁぁ!」と
カーブで抜いてきやがる。さすがに馬力が違う、畜生、負けてたまるか!
銀河系最速、宇宙最速、豆腐屋を越えた、赤木を超えた、XGP-15A2を超えた……。
ふと気づけば、辺り一面は水田ばかり、向こうには山も見える。
ちょうど夕日が山に隠れようとしている。
「……ここ、どこだ?」
#レース漫画とか小説好きの人ゴメソ
( ;´Д`)<次回「マンガ」「フェリー」「医薬品」
「マンガ」「フェリー」「医薬品」
「旅ゆけばあーー♪」薬問屋の番頭が、気持ちよさそうに渡し船の上で唄をうたっている。
なかなか羽振りがいいようで目のつんだ博多帯に珊瑚の根付け。鹿皮の煙草入れを下げている。
髪も垢じみたところは微塵もなく、すっきりと結い上げている。船の上は上方から江戸に戻る
人々で混雑していた。「あっ、痛たた!」男の隣に座っていた奥女中風の女が身体を九の字にして
腹をおさえている。「おい!でえじょうぶか?」男はあわてて女を抱き起こす。「あい。急に刺し込みが」
男は女の美しい顔に魅入ってしまった。「今、良く効く丸薬をやるからな」「あい。御親切に」
女の手がそっと胸元の巾着を抜き取っていったことも知らずに、男はうっとりと女に笑いかけた。
「旅のー空からアー♪」海上フェリーのデッキで男が歌をうたっている。医薬品会社のやり手営業マン。
イタリアンスーツにハンドメイドのキッドの靴。携帯ストラップはいぶし銀。アンティークのダンヒルの
ライター。髪は青山のサロンでカットしているだけあって、風に煽られても乱れ方もきまっている。
「きゃあ!」男の隣に立っていた若奥様風の女が悲鳴をあげた。女は海風に舞い上がるスカートを
懸命におさえようとしている。男は女の白いガーターベルトに魅入ってしまった。女はあわてた余りに
ハンドバックを落としてしまった。「大丈夫ですか?」男は顔を赤らめながら女のハンドバックを拾って
やる。そのスキに男の尻のポケットから、別の男が、するりと札入れを抜き取っていった。
札を抜いた男は知らん顔をして、デッキのベンチでマンガを読んでいる。海はおかしそうに波を立てた。
次は「クリーニング屋」「図書館」「昼寝」でどうぞよろしく。
470 :
「クリーニング屋」「図書館」「昼寝」:03/09/12 16:32
久家は助手席のドアを閉めるなり、言った。
「ダメでした。クリーニング屋の店主も見た事も聴いた事もないそうです」
不精髭をいじりながら美濃は本当に首になるかも、と思い小さく溜息をついた。
美濃と久家は刑事で今は強姦魔の西を追っている。
だがこの二人がさぼりぐせがあり無能な上、西が結構すばしっこい奴なので
一向に尻尾すら掴めない。久家は体力はあるが高卒で漢字が読めない。
美濃は8人連続で犯人を取り逃し「次は無いからな、この無能人間」と署長に言われていた。
「どうだ、久家。もう今日は埒があかないから図書館に昼寝でもしに行くか」
「あ、いいですね。そうしましょう。らちってなんですか?」
図書館。久家がなにか音楽を聴くというので美濃はソファで眠ることにした。ああ、疲れた。
といっても2件しか聞きこみしてないが。美濃はすぐにうとうとし始めた。
突然、久家が「美濃さん!あれ!あれ!」と揺り起こしてきた。
「なんだ。うるさいな。人が寝てるのに」目を擦りながら美濃が言う。
美濃はしばし憮然としていたのち、「あっ」と驚いた。
右斜め向いのソファで西がぽかんと口を開けて眠っていた。
「和牛」「鬱」「窃盗」
昔、 車のスクラップ工場で
働いていた時、
いつも同じ奴(窃盗や詐欺の前科あり)が、
廃車を頼みに来てた。
肩書きだけはその度に違ってた、
経営コンサルタントとか和牛のブローカーとか。
『なんで、この人は こんなに次から次にまだ
乗れる車を廃車にするんだろう?』
と疑問に思ってた。
ある日
いつも通り作業をしていると・・・
鬱な話だよ。
次は「奥さん」「米屋です」「スペランカー」でお願いします。
主婦というのは、家事さえやってしまえば暇なものである。
我が家はまだ子供もいないし、経済的にやや余裕があるので、パート等はやっていない。
先日、この家に越してくる時に持ってきた旧式のファミコンと、子供の頃遊んだソフト。
最近はそれをプレイして暇な時間を過ごしている。
マリオブラザーズ、グラディウス、スペランカーなどなど。どれも懐かしいものばかりだ。
ピンポーン。「どーもー、米屋です。奥さん、いるんでしょー!? 奥さぁーん!!」
大声を張り上げながらドアをガンガン叩いている。今時米屋が家を戸別訪問なんてあるものか。
新聞屋の一斉訪問のお陰で、私は居留守を学んだ。もちろん、戸締りも万全だ。
10分ほど経つと静かになった。諦めて去ったのだろうか。結構粘っていたようだけど。
「あ」
うっかり穴に落ちてしまった。またやり直しか。
私に子供が出来る頃には、このゲームもクリアできているのだろうか。
次は「部」「クイズ」「英国」で。
「英国部主催!第三回クイズ問題大会!!」
教室のまん前で、客寄せなのか、声を張り上げるオタっぽい男一人。
はて、英国部?スカートでも履くのかってそりゃスコットランド。
通りがかった奴らは皆、そいつに目を向けた。
そのオタっぽい奴、真っ赤な顔をしてやがる。
「失礼しました。クイズ部主催、英国部もんだ……」
一同、爆笑。
学園祭が終わって以降、そいつのあだ名は「英国部」―――らしい。
(*゚ー゚)<次は「C」「パソコン」「スピーカー」らしいよ。
「ランクCですか、じゃあこの部屋でどうぞ」
「うああああああああああああぎゃおぺふぇげたらあああ!!!!!」
次々とパソコン、カメラ、プリンタ、スピーカー、キーボードが壊されてゆく
そして破壊尽くされ男の体力も尽きたところで事は終わった
「ありがとうございました」
満足顔の最後の客が帰り職員達は仕事を片付ける
「マスター、この仕事を始めてからランクB以下の処理しかしてないですがAってどんな感じなんですか?」
「そういえばお前に、ってゆうか他の社員には言ってなかったか」
「皆不思議がってますよ、マスターしか関与してないから何してるかも全然分からないし」
「過去に一人手伝わしたんだがな……それ以来来なくなっちゃって」
「……やばい事ですか?」
「いや、有様が酷いだけだよ、ほら、さっさと掃除しな」
マスターはそう言って奥へ行った
「はぁ、毎日この血を落すのは大変だな、まあその分金が入るからいいが」
ちなみにオチは殺人ではないです
次は「姉」「逆らう」「マッサージ」でお願いします
476 :
「姉」「逆らう」「マッサージ」:03/09/14 01:52
僕はお姉ちゃんが大好きだから、毎日お姉ちゃんにマッサージする。
「ああ、そこ……気持ちいい」
僕はお姉ちゃんに喜んでもらえるのが嬉しくて、背中が柔らかくなるまで何度も何度もマッサージする。
「うん。お姉ちゃん最近こちこちだね」
「んー、でも卓也が揉んでくれるから、ん、ん、はぁ」
「お姉ちゃんのお仕事ってなんなの?」
「ん……人殺し」
お姉ちゃんは呟くように答えた。
「え?」
「あのねー、何にもないとこに人を押し込んで、毎日作文書かせるの。それをずっと監視してるだけ」
お姉ちゃんはそう言うとふっと笑った。
「さて問題。人間そうなったら、何日たったら死ぬでしょうか?」
僕はお姉ちゃんの背中を揉むのを止めた。
「……お姉ちゃんのこと、嫌いになった?」
「ううん。でも僕、嫌だな。お姉ちゃんがそんな仕事するの」
「多分私も同じ……」
お姉ちゃんは言葉を止めると僕を引き寄せてぎゅうっと抱きしめた。
「……卓也、おちんちん大きくなってるね」
僕は恥かしくなってお姉ちゃんに逆らおうとした。
でもお姉ちゃんは僕の体を放してはくれなかった。
「卓也、私ね、人殺しちゃったみたい……」
お姉ちゃんは何かに怯えているように僕の体にしがみついていた。
僕はお姉ちゃんが大好きだから、お姉ちゃんを守らなきゃいけないんだ。
僕はおちんちんが立ってるのも構わずお姉ちゃんの頭を抱きしめた。
次は「蝉」「桜並木」「クーラー」で
公園がある。噴水とそれを囲む広場があって、誰が放したのか金魚の住む池もある。遊歩道も敷設
されていて、春には桜並木が人を賑わせたりもする。夏になると暑さで人は離れていくが、夕暮れ
ともなるとちょうど良い静けさと共に虫が鳴き始める。
広場のベンチに二人の男が座っていた。背の高い男と低い男が、その両端で物思いに耽っている。
噴水が天然のクーラーになって、二人とも居心地が良さそうだ。
「こおろぎが鳴いてる」
傍から見てもぼおっとしている様子の男がぼそりと呟いた。意識さえはっきりしていないのか目が
うつろである。
「蝉です」
新聞から横目で見やってもう一人が呟いた。憮然とした表情で、何か冷たい空気を纏っている。
急速に顔の色を戻した背の高い男が、低い方に体を向けた。
「これ蝉の鳴き声なんですか」
「ええ、ヒグラシですね」
「……田舎育ちなもので、お恥ずかしい」
背の高い男が立ち上がる。気を悪くしただろうかと謝ったが、返事もあやふやに行ってしまった。
「この鳴き方、こおろぎよ」
背後で声がした。新聞を閉じて振り向くと、待ち合わせに30分遅れた彼女が立っている。背の
低い男はことさら背を伸ばして向こうを見やり、呟いた。
「……都会育ちだからな」
次は「天体」「袋詰め」「雪景色」でお願いします。
478 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/14 08:54
コテージの入り口から男が出てきた。
後ろ向きだった。
どうみてもサイズが合わないとわかる長靴を履いて、危うげな足取りで後ろ向きにコテージから遠ざかっていく。
あたりは一面の雪景色。白い大地には、あたかもどこからかコテージへたどり着いたかのような足跡が刻まれつつあった。
背中に大きな麻袋を背負っていた。
何が袋詰されているのかはわからない。だが、ああ、内側から滲んでいる赤黒い染み―――――それは血ではないのか。
・・・・・・俺は舌なめずりをしていた。
どうやら面白いことにめぐり合えたらしい。そう思った。
もやもやと鬱屈した毎日を吹き払うような、そんなことに。
男はそのまま、ゆっくりと杉林の中へと消えていった。しばらくそのまま覗いていたが、男は姿をあらわさなかった。
たしかあの方角には小さな湖があったはずだ。
彼は何をするのだろう。
たぶん人を殺したに違いない。
その罪を逃れるために、どに小細工をしたのか、どんなトリックを弄するつもりなのか。
考えると異様に興奮してきた。
彼の誤算はただひとつ。
偶然にも俺が天体望遠鏡で、他人のプライバシーを覗き込むようなマネをしていたことだったろう。
さあ、どうしてやろうか。
俺は薄ら笑いを浮かべながら望遠鏡を片付けると、部屋へ戻った。
たぶんすべては明日からだ。
479 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/14 08:55
次は「蒼白」「臆病」「庇護」
そう、夏休みにあいつらとキャンプに行った時の話だ。
何故かキャンプ場の近くに、古びたでっかい洋館があったんだよ。
古びたっつっても、窓ガラスやカーテンが無くて、廃屋かと思ったんだけど、壁とか妙に綺麗でさ。
そいでその夜、肝試ししようってことになって。俺クジ運悪くて、一番最初、しかも一人で行くハメになった。
行った証拠に、扉にトランプを貼り付けて、最後に全員でそれをチェックするってルールになったんだ。
んで、その洋館に着いてさあ貼ってとっとと帰ろうと思って、そしたら、扉押したら開いたんだよ。スーッと。
昼間来た時には閉まってた。開かなかった。それは確かなんだ。でも、俺は深く考えずに入っちまったんだよ、中にさ。
入ったとこがホールみたいになってて、広いんだ。したら、玄関から15mくらいかな?離れたとこ、そう、真正面の扉。
そいつが開いて、中から白い女の子が出てきてさ。ドレスみたいの着てたな。多分……14、5歳ってとこか。
白いってのは、顔面蒼白で、手や足も白いんだ。当然、服や靴下も。髪も真っ白だった。
俺はボーッとな、その子見てたんだ。そしたら、消え入りそうなか細い声で、
「私達は、この屋敷の庇護の元に生かされているの。お願い、荒らさないで。早く、帰って」
ってさ。最初何言われたのか判らなくて、でも、すぐ判ったよ。
その子の後ろの開いた扉の先、目が見えたんだ。一つや二つじゃない。数十、数百、だ。
それはな、全部、妖しく光ってた。色が違うんだ。何色ってわけじゃないけど、全部違ったんだ。
俺はその子に、ゴメンッ!!って一言叫んでさ、ダッシュで帰ったよ。
あいつら、青い顔して走ってきた俺を見て、ダッセー! とか臆病もーん!! とか、好き勝手言ってたよ。
俺は行くなって言った。止めろって言った。でも、あいつらは行っちまった。当然帰ってこなかったよ。
次の日、もう一度洋館まで行ったんだ。そしたら、三階だったかな、女の子がいてさ。例の白い子。
俺は、そいつに向かって頭下げて、そいで手を振って、別れた。
……こんだけだ。これで全部。ああ、頼むからその洋館探そうとしたりするな。もう迷惑かけたくない。
誰にって?あの子にだよ。……ああ、一目惚れだ。
次は「ショップ」「段ボール」「赤」でお願いします。
パソコンを買った。
店に入った途端、店員が鐘をがらんがらんと、店全体に鳴り渡るほどに鳴らしまくっ
たのだ。
「おめでとぉございますぅ!本日500人目、キリ番ゲットです!」
周囲の注視に耐えながら話を聞くと、ショップブランドのパソコンを、お値段はその
ままにアップグレードして売ってくれるという。
しかも、真っ赤にペインティングされた外装に換装されているという。
「誰かさん専用です」
赤。誰かさん専用。アップグレード。
私の脳裏に、『通常の3倍』という文字が速やかに浮かび上がった。まあ3倍はない
だろうが、ほぼ最強スペックになるのは間違いあるまい。私は即断した。
「買いましょう!」
大きな段ボールを抱えてほくほく顔で帰った私は、早速段ボールをあけた。
赤い外装。早速気になるCPUをチェックする。
あれ?私は首をひねった。CPUは、一般の製品と300メガヘルツしか変わらなかったのだ。
訝りながらあちこちを調べ続けた私は、本体裏にプリントされた文字を見つけた。
「……ジョニー・ライデン専用……」
次のお題は「フリードリンク」「灰皿」「絶望」で。
フリードリンク制だから私は気兼ねなく珈琲を飲み干す。ここはカラオケボックスの一室。私は今、夫を試している。
もし夫がここに駆けつけなければ私は離婚するつもりだ。BGM代わりに適当な曲を選んで流す。
そして結婚以来、久しぶりに煙草に火をつける。
付き合っていたときはなんて優しい人なのだろうと勘違いをして夢中になっていた。
しかしそれは間違いだった。彼はただ優しい男を演じていただけ。
煙草を一息吸う。そして肺から紫煙を吐き出す。
結局は周りの視線を気にして仲のいい同僚である私に愛想を振りまいていただけ。
そして周りの期待どうりに結婚。そんな本末転倒な彼の生き方に気付いたのだ。
煙草を吸う。今度は少し溜めて肺から出す。
何故私と結婚したの?私を愛していないの?私の勘違い?
煙草が頭に回って朦朧となる。気を引き締めるために珈琲を一杯飲む。
一体私は何がしたいのか?その前にどういう心境なのか?
彼に絶望したから?いや絶望したならこんなことをせずに離婚届をすぐ突き出す。
失望したんだ。彼という人間に、彼という夫に、私という女に、私たちの家庭に。
だからこそ彼を待つ。私が愛していた男をもう一度愛するために。
私は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。……そして夜は明けてしまった。
次は「誇り」「世界」「歓喜」
「誇り」「世界」「歓喜」
見晴しの良い高台に、一人の男が座っている。
後ろには剣を帯びた男が二人、まるで従者のように立ち控えている。
一つの時代に終わりを告げようとする時、
人はかくも誇り高き存在になるのであろうか。
男の顔は、これまでとは比べ物にならないほど気高く見えた。
下の広場では、大勢の人々が絶え間なく歓声を上げていた。
それは長く続いた争いの日々に終止符が打たれた喜びと、
これから訪れるであろう平和な世界に対する希望の叫びであった。
男がゆっくりと立ち上がり、群集に向けて手をかざす。
すると一際大きな歓声が沸き上がり、やがて辺りを静寂が包み始めた。
男は満足そうな笑みを浮かべつつ、再び大地に腰を下ろした。
次の瞬間──剣が振り下ろされ、男の頭と胴体が切り離された。
「暗く長い暴君の時代は終わった!」
「我らの革命は、今この瞬間に成し遂げられた!」
歓喜の雄叫びは、一晩中鳴り響いた。
※感想書きの方々、いつもありがとうございます。
次は「リスト」「塩」「記憶」でお願いします。
484 :
「リスト」「塩」「記憶」:03/09/15 05:19
戦国武将、上杉謙信。
戦場の修羅、冷酷無比と恐れられている彼も
意外にハートウォーミーな一面を持っていました。
そう皆さんご記憶の通り、『敵に塩を送る』です。
この言葉を聞いただけで胸がキュンとなるご婦人がたも
いらっしゃることでしょう。
しかし彼のこの行為、実際はそれほど美談とも言えないんですよ。
それというのもですね、謙信が送った塩というのではですね。
使用済みの清めの塩を敵に送っていたようなんですよ。
そして配下の兵達には、
「敵は穢れた塩を食らっておるわ、見よ!奴らには死相が出とるぞ!」
なんて言って士気を向上させてたみたいなんですから。
いやはや、謙信もなかなかのマキャベリストなんですねえ。
次は「知」「辻」「加護」でお願いします。
485 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/15 08:21
「南無八幡大菩薩・・・・・・」
俺は神の加護を祈った。
これからやろうとしていることは、それはもう、大それたことだ。世間的には人道に外れているといえるかもしれない。
だが、大願成就のためには、どうしても避けて通れないことだった。
七辻通りの一角に身を潜め、俺は待った。
地元でさえ迷い道と呼ばれているこの界隈では、夜ともなれば人通りはほとんどない。
それでも、一刻ほどしたろうか、とぼとぼと歩いてくる人影。
会社からの帰宅途中か。くびれた背広に身を包んだ初老の男だ。もちろん一面識もないことはいうまでもない。これは重要なことだ。
さらに小さく身を隠した俺に気付かずに、ごく普通の足取りで去っていく。
無防備な背中がさらけ出された――――今だ!!!!
俺は無言で電柱の影から飛び出すと、足早に男に走りよる。
腰の刀を抜き放つと、間をおかず、一気に袈裟懸けに振り下ろした!!!
絶叫が夜陰に木霊した。
そのときには、もう俺は踵を返し、急いでその場から逃げ出している。
とにかくすぐ逃げる、これが基本なのだ。テキストにもそう書いてあった。
手ごたえはあった。大丈夫、うまくいったはずだ。万が一しくじってたとしても、顔は見られていない。大丈夫だ。
どうして自分が斬られるなければならないのか。男には理解することはできないだろう。
ましてや、世の中にこんな通信講座が存在しているなど、知る由もなかっに、違いない。
「通信教育講座。Let's武士道!! 第11回 やってみようLet's辻斬り!!」
「あなたにもできる簡単辻斬り!! 人を斬るなんて怖くない!! かならず成功する辻斬り10ポイント」
武士道を極めるまで、あと少しだ。
次の三語は?
スマソ、次のお題は「戦車」「戦闘機」「戦艦」でよろしく。
「戦車」「戦闘機」「戦艦」
春のとろけそうなクリーム色の日差し包まれ、大好きなレディーグレーという紅茶を飲んでいた。
膝の上には、黒とストーングレーを貴重とした表紙の雑誌を載せて、心休まる午後のひと時を過ごしている。
その雑誌は、今一番売れているものの一つで、数百年前の過去の遺物たちが、あまた盛り込まれており、私の胸の奥にある浪漫をかきたてた。
「この戦闘機、本当にかっこよくない?」
私は、隣に座って別の雑誌を読んでいる彼氏の如月にその写真を見せたが、彼はつまらなそうに首を振るばかりだった。
「分かっちゃいないな、柚木は。500年前に戦争で活躍したこの戦艦が一番だよ。
戦闘機ごときで戦争という浪漫を語ろうなんて、変わってるよ。これだからお姫様は――」
如月は皮肉たっぷりの口調でその言葉を吐く。
私は最後のページにのっている戦車を横目で見やり、如月こそ、戦争を分かっていないと憤慨していた。
でも、私はそんな如月の皮肉めいた所が好きだけれど。
今の世の中、優しすぎるだけの男なんてはやらない、戦争があったという時代ならいざ知らず。
膨れ面のままでいると、如月は死体の写真集を机に置き、私の唇を強引に奪った。
「これだから、お姫様はかわいいんだから」
私も、悪戯っぽい笑みを浮かべて、彼の成すがままにベンチに横たわった。
私は平和な世の中を愛しているが、同時に退屈な世の中に飽きを感じている自分もいた。
「何か面白い出来事が起きますように」
☆平和なご時世にはやるものは「エログロ」だそうです。
もう一つ、犯罪もね。
次は「アンスリウム」「息吹」「不倫」で。
漢字ミスです。
2行目
×貴重とした
○基調とした
すみません。
>>485 ごめん、催促したわけじゃないんだけど
thanks
「おいお前!アンスリウムって知ってるか?」
誰かと思うと、南郷だ。久しぶりに会ったかと思うと、妙に息が荒い。
「いったいなんなんだ、藪から棒に」
白井はとりあえず、南郷を向こうに押しやりながら訊いた。顔が近いと、吐息
というか、息吹が鼻を直撃して気持ち悪いのだ。
「この間植物園行ったんだよ、植物園。そしたらアンスリウムって花があって
な、これがなんともエロチックなんだよ。なんつーかな、エロ不倫マンガあるだ
ろ。あれで女性器の象徴として蘭が描かれたりするけど、その代替に使えるく
らいに。まあ話のタネに、これみろ」
南郷がぐいぐいと突き出す写真を、白井は辟易しつつも手にとって眺めた。
「女性器っつーか……どっちかというと、ふぐりだなこりゃ」
「なるほど!」
南郷が手を打った。
「確かにペニスだ。ナイスだ白井、俺はこれを元にマンガの新境地を開く!」
南郷は白井から写真を奪い取ると、ぜいぜい荒い息を吐きながら駆け出した。
行く手には文化部棟。マン研にでも向かうのか。
獣を世に解き放った、白井はそんな不安を感じていた。
次のお題は「合鍵」「立て看板」「飼い犬」で。
僕たちの春は霧雨ではじまった。花屋の前で、ふと立ち止まった真里菜。むせ返る
ほどの春が息吹いているショーウインドーの中に、何かを見つけたらしい。
「あっ、白いアンセリウム。この花はね、いいことがある前触れなの」
「へぇー、これの花言葉って、そういう意味なんだ? 」
僕は作家になりたくて、だけどバイトも中途半端だし親ともうまくいってなか
った。家を飛び出して安アパートで書く自分の夢は、決してばら色なんかじゃなかった。流されているのがわかっていながら、今の生活から抜け出せない自分はどうしようもな
いヤツだ。そんなことはわかっていた。夢のかけらを集めても星屑はしょせん星屑さ。
真里菜とこうしているのが楽しくても、年上の有美のやさしさにほだされて、一年近く
も不倫している自分には、まともな幸せなんて望むだけ間違っている気がした。せめて
真里菜を妹のままで置いておくことが、今の僕のたったひとつの人間らしさかもしれな
いとも思った。無機質な僕の生活の隙間を、幼い真里菜は必死にカバーしようと頑張っ
ていた。それはただ無邪気なだけだったのかもしれないが、僕は真里菜の横顔を見なが
ら、掬いそびれた何かをもう一度手に戻せるかもしれない、そんな錯覚を覚えた。僕た
ちの春に追いつくんだ。真里菜が僕のほうを振り向いて僕の右手を両手で包んだ。
「アンセリウムのほんとの花言葉はね、一緒に暮らす幸せっていう意味なの」
霧雨にしっとりと濡れた真里菜の顔は、びっくりするほど大人びて見えた。
>493 改行に失敗しました。すみません。
次の三語は、>492さんのでお願いします。
495 :
「合鍵」「立て看板」「飼い犬」:03/09/15 17:44
アパートの合鍵を探していたら何者かにズボンを引っ張られた。
僕がはっと振り向くとそれは茶色い犬だった。誰かの飼い犬だろうか。ずいぶん汚れている。
振り払おうとしても強い力でぐいぐい引っ張る。まるで僕をどこかへ案内しようとしているようだ。
なんだろう?しかたなくついていくことにした。
犬と10分くらい歩き、とある廃屋に辿り着いた。中はがらんとしている。犬がささっと裏庭へ
走っていったので僕もおそるおそる歩いて行くと「ジョリーの墓」という手製の
木でできた立て看板が目に入った。風雨にさらされペンキの文字が消えかかっている。
地面を見ると掘り返されたような後があり、白っぽい骨がいくつか剥き出しになっていて
お菓子の包装紙とか空き缶なんかが散乱している。おそらく子供のいたづらだろう。
僕は掘り返された土を足で元通りにしてやり、ごみを手で集めた。ふと、周りを見渡すと
あの犬の姿はどこにも見当たらなかった。代わりに庭の片隅に咲いていた小さな赤い花を摘んで持ちかえった。
数日後。僕がTVのナイター中継を見ていると玄関の方から小さな声が聞こえた。
玄関のドアを開けてみると小さな茶色い子犬がうずくまっていて「くぅん」と鳴いた。
僕は「やあ。いらっしゃい」と言い子犬を抱きかかえると部屋の中に放してやった。
子犬はテーブルの上のコップに活けられたあの赤い花の匂いをいつまでもくんくん嗅いでいた。
「辛辣」「精神病院」「坊や」
496 :
「辛辣」「精神病院」「坊や」:03/09/16 00:52
丘の上の診療所は精神病院だという話だった。
僕は学校の帰り道その丘の下の道を通るときいつも上を見上げてしまう。
よく白い寝間着姿の綺麗な女の人が窓から顔をつきだして、じっと遠くを見つめているからだ。
「坊や。よう会うね。お菓子あるよ。おいで」
僕は呼び止められたのははじめてで、なんと言っていいかわからずその人を見上げていた。
その人はにっこりと笑うと、足元にいい匂いのする白いハンカチを落とした。
茶巾に折られたそのハンカチの中にはかりんとうと飴が入っていた。
見上げると、その人は微笑みながらうんうんと頷いた。
次の日僕はハンカチを手にその診療所を訪れた。
看護婦さんに通された病室で、あの女の人がベッドの上で微笑んでいた。
「わあ。嬉しいわ。ハンカチ返しにきてくれたんやね。わざわざありがとうね」
「お姉さん、なんの病気なん?」
「時々頭の中でな、虫が暴れるんよ……やから」
僕が黙っていると、その人は淋しそうに笑った。
「やから、暴れんうちにはようお帰り」
病室を出ると先生が僕の所に寄ってきた。
「なあ、君なあ、時々来てくれんかな。この子な、君を見かけた日は病状が落ち着くんや」
「なあ、あんたお姉さん直されへんの?」
先生は気圧されたように口をぱくぱくさせた。
「あんたヤブや。医者とちがうんか」
「辛辣なこと言うなぁ」
先生はそう言うと媚びるように口元に笑みを作った。
次は「サインペン」「タイプライター」「コルクボード」で
497 :
「サインペン」「タイプライター」「コルクボード」:03/09/16 02:09
彼はサインペンで書いた履歴書を持っていた。
それだけで、「私は社会生活に不適合な人間です」と示しているようなモノだった。
当然、わたしが事務員をやっている小さな会社に、彼が雇われることはなかった。
それでも、いつのまにか、わたしは彼の部屋に入り浸るようになっていた。
彼の部屋には大きなコルクボードが置いてあった。
彼はそこに、様々なメモを虫ピンで止めていた。
「飴→夜→メタファーとしての」
「精神疾患とは体内でのカテコールアミン量のバランスの不均衡・・・」
「びんろうは苦いものである」
これらのメモが意味することは、わたしにはさっぱりわからない。
カタカタ、カタ、カチャ、カタカタ、ガチャン、カタカタカタ・・・
まるで何かの音楽を奏でるように、タイプライターの音が響いていく。
彼は作家を目指しているらしいが、
今の時代にタイプライターなんて、彼はやっぱりどこか違っている。
それでも、そんなところが、わたしが彼を気に入った理由であるかもしれない。
次は「ブリッツ」「わたあめ」「感謝状」でお願いします。
498 :
うはう ◆8eErA24CiY :03/09/17 09:08
「ブリッツ」「わたあめ」「感謝状」
妹は僕の帯をつかんだまま、本堂の前までついてきた。
祭りも三日目、夜店も鈴なりの様相だ。
「わたあめ、買って」
「・・・よく飽きないなあ、3つ目だけど」
「今度は水色の」
と、色にこだわる妹は、一方で福引はずれ景品の小さなプリッツを食べている。
「わたあめっ、わたあめっ、わたあめっ」「おーけー。待ってて」
橋の欄干で彼女を待たせ夜店に向かう。
その途中、背後でざわめきが聞こえた。 「わぁぁ!」
雑踏に紛れたスリを、妹が捕まえたのだ。
僕達は本堂へ招かれた。
商店街の会長が、僕に即席の感謝状を手渡す。
「違います。捕まえたのは妹です」
「ええっ、それは失礼。よくやったね、お嬢ちゃん」
「わたあめ・・・」
この会長、気がつかないだろうなあ。妹が柔道五段だなんて。
童顔で、とても28には見えないし。
※なんのこともなく書いてるー(^^;
次のお題は:「避暑地」「出来事」「シェルター」でお願いします。
499 :
「ブリッツ」「わたあめ」「感謝状」:03/09/17 14:47
朝起きたら俺は「ブリッツ」としか喋れなくなっていた。なぜだ?なにが原因だ?
昨日の縁日で食べたわたあめ?まさか。感謝状でもなんでも書くから誰か治してくれ!
とにかく両親に事情を説明しようと思い、階段を降りた。
母は「ブリッツブリッツ?なにふざけてるの。はやく朝御飯食べて支度しなさい」と御飯をよそった。
くしゃみがでた。母が怪訝そうな顔をして「ちょっと。風邪でもひいたの?いやねえ。
うつさないでブリッツブリッツブリッツ」と言い、母ははっとして目を見開いている。
「ブリッツブリッツブリッツブリッツ」何を言ってるのかわからない。
すると「何だ。朝っぱらから。やかましい」と父が洗面所から出てきて言った。
母が涙目で「ブリッツブリッツブリッツ」と必死に説明したが、父は「ふざけるんじゃない」
と怒鳴った。父はジャケットに袖を通しながら「あ。今日は遅くなるからな。メシはブリッツブリッツ」
と言い、あっというような表情をして見る見る青ざめていった。「ブリッツ!」母がすがる。
一体どうなっている?まさか……伝染するのか?俺は咄嗟にテレビをつけた。
「しばらくお待ちください」という画面がでた。どのチャンネルもこの画面だ。
両親も食い入るように画面を見つめている。そのうち、外から大勢の人が
「ブリッツ」と叫んでいるのが聞こえてきた。
「美女」「虎」「刑務所」
お題は498さんで。
501 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/17 15:12
「ここは・・・・・・なんだ・・・・・・?」
高橋の声が上ずったのも無理はない。
そこにはまったく予想されなかった風景が広がっていた。
シダの類の植物群が見渡す限り大地を覆い、遠くには赤茶けた歪な山嶺が連なる。大気にさえ、やや硫黄の臭いが混じっているような気さえするのだ。
こんな場所は地球上にはない。少なくとも、いま、この時代には。
「おい、あれを見ろ!!」
石田が空を指差す。誰もが予想していなかった、されど十分に予想してしかるべきモノがそこにいた。
蝙蝠のような翼をはためかせた蜥蜴のようななにかが、何匹も何匹も木の葉のように、ゆっくりと空を乱舞しているのだ。
何かが・・・・・?
もちろん、それが何であるかはわかりきったことだ。目にしたことがある人物だっているだろう。ただし、資料や映像に限られるだろうが。
「あれは、プテラノドンじゃないのか!!!」
「ばかな!!! ここが、古代の地球だとでも!?」
避暑地で有名な軽井沢で、偶然見つけた洞窟。面白半分に探検していくうち、それはシェルターらしき人工物へと変わり、いくつもの扉を潜った果てにたどりついたのが、ここなのだった。
信じられないような出来事。しかし、これは確かに現実であるのだった。
「これは発見だ、大発見だよ!!」
「すぐに戻って知らせよう。俺たち有名人だぜ!!」
そうはしゃいで踵を返した2人は、次の瞬間、そこにあるはずのない壁に激突。じめんに尻餅をつく。
壁・・・・・・?
嫌な予感がした。二人は恐る恐る、ぎこちない動作で視線をあげていく。
予感が当たった。巨大な肉食恐竜の顔がそこにあった。2人と1匹の視線が絡み合った。信じられないことだが、さいつはニヤリと笑ったように見えた。
餌見〜〜〜〜〜っけ、そんな感じで。
「「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」」
2人の悲鳴をTレックスの咆哮が打ち消した。
その後、2人がどうなったのかは定かではないが、少なくともこの発見が世に出ることもはなかった。
そして、絶滅したはずの恐竜たちは、今日も地底の楽園で平和な日々を過ごしている。
おしまい
最近お題を書かない人が多いぞ
503 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/17 20:27
む、すまない。
「注ぐ」「飼う」「流れる」
504 :
名無し@かいてます:03/09/17 20:51
耳の奥のほうで、緩やかに流れる小川の水音が響く。久しぶりの音。本物の音。僕の体は喜びと感動で震えた。
思えばあの時、こんな風に鼓膜が震える感覚を、僕は当たり前のことだと思っていたんだ。
僕は10歳までまったく正常な聴覚を持っていた。
といっても、誰もそれが特別なことだとは思わないだろう。それが普通の人間だし、僕もそう思っていた。
時々テレビやラジオで「今に感謝せよ」と言う人がいたが、聞くたびに無性にムカツいて、「当たり
前のことを当たり前に思って何がいけないんだ」と野次ったりもした。
でも、あっという間に、僕は当たり前の人間ではなくなった。10歳4ヶ月のある日、僕は高熱を出して、
意識を失った。母は半狂乱でヒステリーを起こし、父は病院へ電話する手が震え、何度もかけ直したという。
僕が9歳の時から飼っているミニコリーのシェリまでもが、心配そうにほえ続けたそうだ。
当の本人は、まったくその記憶がない。あたりは暗闇で、僕はその中をさまよっていた――ずいぶん長い時間。
そして目覚めた時には、もう音とはおさらば。両親が嬉し涙を見せて話しかけてきたのを、僕は訳が分からず呆然
と見つめていた。
あの時、僕が音が聞こえないと知った両親の表情の豹変・・・・・・まるで「終わった」とも言いたげだったのを、今でも
覚えている。
To be continued?
おっと、んじゃ次は
「美女」「虎」「刑務所」
507 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/18 03:09
男は後手を縛り上げられ、床に転がされていた。
そこは刑務所の反省房で、男は懲罰のため閉じ込められていたのだ。
「よぉ32番、そろそろ懲りたころか?」重い鉄の扉を開けて看守が入ってきた。
「最初からおとなしくしてりゃこんな目には・・・ああっ!!」
軽口を叩いていた看守は突然、息を呑んだ。
そこには大きな虎が牙を剥き、鋭い眼光でじっと看守を見据えているではないか。
「旦那、よく見てください。そいつぁ絵ですよ、絵」
なるほど落ち着いて見れば、その虎は壁に描かれた絵に違いなかった。
「ここに閉じ込められて泣いてたんですがね、その涙で、足を使って描いてみたんでさ」
「そういやお前はシャバでは名の知れた彫刻家だったそうだな。それにしてもよく描けてるもんだ・・・」
看守は壁の虎に近づき、まじまじと眺めた。と、次の瞬間!
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
絵の虎は突如として生を受け、壁から飛び出して看守に向かって跳びかかってきたのだ。
猛け狂った虎は看守を襲い、足の方からバリバリと喰らい始めた。
「旦那!旦那ぁ!」
「うううううう・・・32番よぉ・・・お前に・・・お前に、頼みがあるんだ・・・」
「何です、旦那?」
「今度は・・・壁に美女を描いてくれねえか」
NEXT
「ペンギン」「聴診器」「角砂糖」
どうも調子が悪いので近所の病院に行った。
看護婦に名前を呼ばれて診察室に入ると、中には白衣を着た巨大なペンギンがいた。
「どんな具合ですか」椅子に座った自分に落ち着いた中年男の声でペンギンが聞いてくる。妙な気分だ。
「いや、昨日からなんだかだるくて…」とまどいながら答えた。
「吐き気は」
「ありません」
「熱は?」「微熱が…」
ペンギンは前ひれで聴診器をつかむとシャツをあげるように指示した。
「ふむ。まあ風邪ですね。お薬出しときますんで、休養をとって下さい」
診察室を出る時、看護婦がペンギンにバケツから生魚をあげるのが見えた。
「じゃあこれがお薬です。食後なるべく三十分以内にのんで下さいね。お大事に〜」
看護婦から渡された袋には角砂糖が六つ入っていた。
それで風邪が治ったのだから、やっぱり妙な話ではある。
次「看護婦」「椅子」「バケツ」
今日は看護婦の衣装を手渡された。
「い、いいから、そそこに座るんだ!」
私は、何があろうと彼の命令通りに行動し、何があっても逆らわない。
たとえ、私が女装をしている今でも、それは揺るがない。
命令通りに椅子へ座ると、ひやりとした感触がピンクのスカートから身体へ伝わり、私は思わず腰をあげそうになった。
彼の顔を見ると、案の定眉間にしわがよっていた。私が自らを叱りつける前に、彼の甲高い声があがる。
私は悪態を後悔したが、それはいつもの後悔だけに終わらなかった。彼が怒りにまかせて立ち上がったとき、私より彼の傍にあったバケツが転んだのだ。
バケツからこぼれた色は、様々な色の絵の具が混ぜられ、緑だか茶色だかの色をして混雑とし、床を汚している──私はひどく心が満たされるのを感じた。
彼の傍を占拠したかわりに、汚い色で犯され、周りを汚染し、あげく転んで、役目を全うすることさえできずに終わったのだと。
私の心情とは真逆に、「く、クソォッ!」と彼はヒステリックにそのバケツを蹴った。私は彼を、声に出さず精一杯応援する。
やがて彼のスケッチブックが手から滑り落ち、白紙はバケツ色に染まる。彼が暴れ出す。
いつもの発作が始まった。
彼へ悲しさを感じることはなくなった。むしろ、今なお私と居てくれることへ感謝さえ感じている。
端から見ると、いや、自らからしても、私は異様であるが、彼が異様である限り、私はずっとこうだろう。
「魚」「窮屈」「ノート」
「魚」「窮屈」「ノート」
『明日の予定。新しい店の面接。あーあ、お金ほしいよお』『しんちゃん大好き まい』
男を待つ間、私はラブホテルのベットの横にあったノートのいたずら書き読んでいた。
池袋のラーメン屋の前の路地で、大学生っぽい若い男に「おねえさん、ヒマ?」って
声をかけられた。「ヒマだけどお金もってる?」って聞いたら「バイト代、出たから」と
言うので2万でついてきてやった。いつもは混んでいる駅の近くのラブホテルは水曜日の
夜のせいかすぐに部屋が取れた。ああ。疲れた。秋物の新しいハイヒールの靴ずれが痛い。
本当はガキなんて相手にしないんだけど、とにかく早く眠りたかった。部屋にはいると男は
すぐにスカートをたくし上げてきた。露骨に嫌な顔をしてやると「汗クセーかな?待ってて」と
言ってバスルームに飛びこんでいった。ふん。キスなんて百万年早い。こっちは体張ってんだよ。
私はベットの上でパラパラとノートをめくる。ノートの途中に赤のインクでびっしり何か書いてある。
『魚の刺青の男にやられた』『くすり入れられた死にたくない』『助けて 助けて』『死ぬのいや』
めちゃくちゃな字だった。私は嫌な鳥肌が立って、窮屈なハイヒールにもう一度痛む足を入れると
マジックミラーからバスルームをのぞいた。果たして、男の背中には何もなかった。なんだ、びっくりした。
だが、男が床に脱いだズボンのポケットからは、手錠とナイフがこぼれていた。「ねえ。早く逃げなよ」
突然、上から声がする。血だらけの顔の女が天井に張り付いていた。絶叫した途端、部屋の灯りが消えた。
**次は「靴」「きのこ」「廃虚」でおねがいです。
511 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/18 22:17
それはまるで恐竜の化石のようだった。
信じられるだろうか?
かつて、そこが都市と呼ばれたコロニーだったことを。
そこに数万をこすヒトが暮らしていたことを。それぞれのヒトがそれぞれの意思を持って懸命に生きていたことを。
ここだけではない。この惑星すべてに都市は広がり、億を越すヒトが存在していたのだ、確実に。
いまはもうなにもない。煤けたような黒く汚れた廃墟が一面に広がるのみだ。
ときおり思い出したように風が吹いて、黒ずんだ塵をまきあげる。ほかに動くものはなにもない・・・・・・。
きっかけがなんであったかは定かではない。
まったくの突然に、その惑星は一瞬にしていくつものキノコ雲に覆いつくされたのだ。
まるでその星が沸騰し膨張しているような景観だった。
核と呼ばれる殲滅兵器を、我々ではなく、彼らの同朋に向けているという信じがたい事実は、すでに遥かな以前から認知されていた。
かといって同朋を憎んでいるかと思えば、わが身を削るような保護政策を同じ同胞に対して施したりもする。
高尚な精神性と幼児的な狭量が同居する、おかしな、だが愛すべき種族だった。
ふと地面に目をやると、奇跡的に原型をとどめた靴とよばれたモノがあった。
すべてが黒く汚れた廃墟にあって、それだけが、どういうわけか、くすんではいたが、それでもまだ赤かった。
わたしはそれを拾い上げた。
これを記念にしよう。かつて、この惑星にひとつの知的種族がいたことの。ふたつの相反する精神をその内に宿していたことを。
そして、その葛藤を克服できるまで進化をなしえず、自らの炎で滅んでしまったことを。
くりかえすが、彼らは愛すべき種族だった。
少なくとも、私だけは彼らを愛していた。
512 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/18 22:18
「哀悼」「神聖」「晩餐」でどうぞ
哀悼
やべ、↑失敗した
最後の晩餐の時
私は深く哀悼していた
「ごめんな・・・でも俺は彼女のことが・・・」
「ううん、いいのよそれよりも食べよ」
神聖
そう彼は私を形容した、私はそう言われたのがうれしかった
しかしあまりにも純すぎる
そう言って彼は私と別れると言ってきた
「・・・・・・・・・・」
「何よ、毒なんて入ってないわよ、ほら」
そう言って私はスープに口つける
「ははは、何でも無いよ、ごめんごめん」
彼は私の何を見ていたのだろうか
何も知らない私にいろいろな事を教えて、それで飽きたら捨てるわけ?
こんな私にも、邪な、黒いことだってあるのよ
「あ・・・れ・・・・」
「ごめんね、一緒に死んで・・・・・・」
次は「携帯」「シナリオ」「走る」でお願いします
「携帯」「シナリオ」「走る」
薄い桃色の携帯電話がほしい。
もちろん、最新式のもので、アドレス帳にはぎっしり名前が登録してあるような。
朝の通勤ラッシュ時、携帯禁止の車両で女子高生がメールを打っている。
マナー違反の上、何よりも彼女のその笑顔が鬱陶しかった。
私はなるべくそちらの方を見ないようにして、手元の今度の文化祭用のシナリオに集中しようとした。
本当は、内容なんてちっとも頭に入っていない。
それでも、躍起になって、シナリオにかじりつく〈ふり〉をしていたが、
全速力で走る電車の突然の急カーブでそれもあえなく中断された。
女子高生の方に少し目をやると、彼女は何事もなかったかのようにドアにしな垂れかかって、メールを打ち続けている。
圧迫した空間の中、私には、その場所だけ、輝いているように見えた。
今時、携帯を持っていない高校生なんて、天然記念物ものだろう。
当然、携帯を手に入れること自体は簡単なことだし、社会的に見ても持っていない人口の方が少ないくらいだ。
だからこそ、私は敢えて持とうとはしなかった。
……余計寂しくなるだけだ、月末になっても料金の心配をしなくてもいい携帯は。
それでも私は――薄い桃色の携帯電話がほしかった。
☆違う理由だけど、私も携帯は持っていません。
次は「雌鳥」「葛餅」「模試の結果」でお願いします。
516 :
「雌鳥」「葛餅」「模試の結果」:03/09/19 01:23
「はい、模試の結果が出てるわよ」
先生が無造作に『葛餅』をわたしに放り投げた。
現在主流の生体有機コンピューターでは、
このナノチューブシナプス含有ポリマーで作られた物体が
記録メディアとして一般的だった。
それを私達はその外観から『葛餅』と呼んでいた。
ふた昔前のメディアであるCDを『お皿』とよんでいたように。
「やはりこんな結果になりますか、自分でもどうかなコレっては思ってましたけど」
「まっ、努力の跡は見えるんだけど、あなたに男の扱いは難しいようね」
CDがその役割を終え出したころから、地球全体のメス化が急速に進行した。
甲虫にはそのほとんどに角がなく、ニワトリは鶏冠の小さい雌鳥ばかりになっていた。
人類も例外ではなく、今では女だらけ、数少ない男もかなり女性化が進んでいた。
「この保護計画では5年後の人口は現在の63%に減少すると考えられます」
そう結論づけられた模試の結果を眺めながら、
私は『男をその気にさせる』プログラムの新しい試案の構想を練っていた。
次は「ストレンジ」「ノギス」「ポップ」でお願いします。
517 :
「雌鳥」「葛餅」「模試の結果」:03/09/19 01:33
板倉環は彼が担任しているクラスの子に返す模試の結果に目を通しながら、葛餅を食べていた。
葛餅は生徒の雪村晴香が持ってきたものだ。
それは可愛らしいハンカチで雌鳥羽に包まれたタッパーに入っていた。
晴香はよく失敗した、とか作りすぎた、と言っては環に食べ物を持ってくる。
その市販のものよりモチモチと美味い葛餅も、作りすぎてしまったものらしい。
「おっと」
楊枝から葛餅が模試の用紙に滑り落ちた。
環は慌ててテッシュでそれを拭き取ったが、模試の用紙は水を吸い、ごわごわしたシミになってしまっていた。
それは晴香の模試の結果だった。
「まいったな」
仕方なく環はそのシミを丸で囲み、”葛餅の跡。上手かった”と書き入れて、教室に向かった。
「この間の模試の結果を返す。浅野、江原……高野……光浦……雪村」
晴香は返された模試のシミをじっと見つめていた。
環は居心地の悪い気分で晴香の様子を盗み見た。
晴香はシミのついた模試の結果を抱きしめて、幸せそうに微笑んでいた。
次は「コオロギ」「バケツ」「国旗」で
すいません。
次は
>>516さまの「ストレンジ」「ノギス」「ポップ」でお願いします。
519 :
「ストレンジ」「ノギス」「ポップ」:03/09/19 02:34
聞いてくれよ、ちょっと奇妙な話なんだけどどさー。
この前、うちの電子レンジが突然動かなくなっちゃたんだ。
あれー、最近このレンジ使いすぎてたからかあ?
ストライキ起こしちゃたかな?これがほんとのストレンジ、なんちゃって。
まあ、冗談はともかく何で動かなくなったのか聞いてみたわけよ。
え、誰に聞いたかって?もちろんレンジ本人に。
教育テレビでよくやってただろ、おでこのめがねでデコデコデコリーン
とか変な呪文言ってモノと会話するやつ。それをやってみたんだ。
そしたらさ、レンジの奴最近太ってきたのを気にしてるらしい。
確かに俺はポップコーンとかフライドチキンとか脂っこいものを
よくレンジにかけるんだよね。こういうの、太るもとらしいんだ。
それでノギスを使って大きさを測ってみたら、確かに買ったときより
横幅が大きくなってる気がする。
しかたないから、レンジにお願いしちゃったよ。
コレから俺、低カロリーなヘルシー料理しか食べません。
だからまた前のように温めてください、ってね。
次は「コオロギ」「バケツ」「国歌」で
520 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/19 07:05
「コオロギ」「バケツ」「国歌」
アリの生活に、休息はない。
朝5時、起床。
国家斉唱にラジオ体操。
「人員点呼、番号ォー!」「本日の業務は・・・」
新人アリの彼がそれを見たのは、そんな冬の日の事だった。
複数のアリ達に、キリギリスが痛めつけられている!
ズタズタになったその羽は、決して寒さのせいだけではなかった。
「おやおや、あのキリギリス様が・・・へっへっへ」
「そらそら、腐った胡瓜だ。欲しいか?土下座してみろ!」
「ジャンプなんてしやがって。生意気なんだよ。ムカツクー」
ここぞとばかりに向けられる、集団生活のストレス・・・
バケツを持って黙々と、アリトイレの掃除をするキリギリス。
若アリは来年の夏が怖い。まあ、自分はその日まで生きてはいないか。
原因はそこだった。アリ組織は強固だが、アリ本人は重労働で短命だ。
冬も、もうすぐ終わる。復讐の夏が近い。
越冬能力を持つコオロギの足音がカサカサと、どこからか聞こえてきた。
※一行オーバーしたー
次のお題は:「昆虫」「注射」「秘密」でお願いしまふ。
「昆虫」「注射」「秘密」
9月の夕暮れの町を私はふらふらと家路にむかう。顔に貼られた巨大な絆創膏がひきつれて
唇がめくれあがってくる。顔はおおきな花粉症用のマスクでかくしているし、鼻から上は
濃い茶色のサングラスをかけているから私の秘密は道ゆく他人には知られることはないだろう。
「で、決めました?」美容形成外科を標榜する新宿の病院の診察室で、若い医師が
せっかちに聞いてきたのは昨日のことだ。待ち合い室には、ケミカルピーリングで
顔の皮をひとむきしようとやって来た人。フェイスリフトで顔からおでこまで縛り上げ
10年分の時間を買い戻そうとしている人。様々な願望を胸に秘めた人間で市場のように
ごった返している。「……決めました。やります」「じゃ、明日予定通りオペで」
今朝から「気持ちを楽にするお薬ですからあ」という安定剤の注射をされても緊張して
オペ室に入った。全身麻酔ではなく局所麻酔にしたから、医師の作業がおぼろげに
感じられた。コツコツ、ノミのような物で削られたり、何かをグイグイ押しこまれたり。
夜になって顔の腫れがピークに達したが、ナースに薬をもらって私は退院した。小さい頃から
低い鼻のことで「昆虫」とか「せみ」とか「顔面スライディング」とか言われ苦しんできた。でも
今は他人の鼻を観察しながら笑いが込み上げてくる。不細工な鼻ばっかり。しかし、駅の鏡を見た時
私に新たな苦悩が襲ってきた。「ああ。もっと頭も小さくしたい」頭蓋骨縮小の名医を探す旅が始まった。
**次は「猫」「本名」「屋敷」でおねがいです。
「昆虫」「注射」「秘密」「猫」「本名」「屋敷」
その瞬間、ある夏の日の出来事を思い出した。照りつける日差しと草いきれ、ひどい喉の渇き……。
虫かごにはシオカラトンボ、アブラゼミ、イナゴが数匹入っている。どれも標本にするほどの価値は
なかったが、どうしても新しい昆虫採集セットを使いたかったのだ。
仲間内で猫屋敷と呼んでいる廃工場にやってくると、セットを非常階段の三段目で広げた。
注射器をおっかなびっくり取り出し、メロンシロップのような薬品を小さな容器から吸い取る。
まずはイナゴからだ。その大きさからは想像もつかないほどの瞬発力を秘めた脚力を警戒して、
慎重につかむ。クリーム色をした腹は柔らかく、針を押し当てるとぐにゃりとへこんだ。力を込めてずぶり
とやると、ゆっくり薬を注入する。小さな腹には多すぎる量だからすぐに溢れ出し、ぼたぼたと垂れたが
構わず全部使い切る。イナゴは触角や足を何となくといった感じで動かしていた。手を放しても逃げる
ことはせず、やがて死んだ。それから手当たり次第にかごの中の虫に針を突き刺した。そして、一匹も
いなくなると、セットを片してさっさと工場を後にした。結局、標本は作らなかった。当時は意識していな
かったが、ちゃんと罪悪感はあったのだと思う。誰にも話さなかったのだから。
アンフェタミン、日本名で言うところの覚せい剤を腕に注入しつつ、思い出したのはこんなことだ。
いまも注射器に関しては、あの頃と同様に秘密にしている。でも、それは罪の意識からではない。
ただ単に捕まりたくないだけだ。
次は「アンテナ」「第六感」「スランプ」
523 :
「アンテナ」「第六感」「スランプ」 :03/09/19 22:08
その頃、僕らはよく、日が暮れてから校舎にこっそりと忍び込んで、屋上に集まったね。
仲間の誰かが持っていたBCLラジオ(クーガ2200ってやつだ)で地球の裏側からの電波をキャッチしようとしていたんだ。
手製のループアンテナを手すりにくくりつけ、雑音の中にじっと耳を澄まして声を探したっけ。
あの頃のラジオはデジタルチューニングしか知らない世代には信じられないだろうけど、アナログの目盛りを頼りに第六感で放送局を探り当てていたんだ。
僕らの探していたのは、アルゼンチンからの放送だっけ。
かすかに消えては浮かんでくる声に、僕らは息をひそめて集中してたよね。
受信状態を、今日は絶好調、今日はスランプなんて言いあったっけ。
いま、君たちは何をしているんだい?
あの頃みたいに耳を澄ましてみるけれど、君たちの声はちっとも聞こえやしないや。
きっと、僕は、大人になってからずっとスランプなんだな。きっと。
NEXT
「戦艦大和」「詩集」「緑」
あたしは物持ちがいい。
あたしが生まれてはじめてお兄ちゃんから貰ったプレゼントは20センチぐらいの
戦艦大和のプラモデルだったけれど、緑のフエルトを下敷きにそれは今でもあたしの机の上に飾ってある。
ありがとうって言うとお兄ちゃんはとても嬉しそうに笑って、その後もプラモデルがうまく出来るとあたしにくれた。
あたしはそんなプラモデルの横に置おいてある古びた高見順の詩集を手に、お兄ちゃんの入院している病院に向かった。
「ああ、雫」
病気に犯された人というのは、どうしてこんなに柔らかく笑うんだろう。
「これ頼まれてたやつ。大変だったよ。お父さんの遺品ダンボールに入れたままだったから」
癌で死んだお父さんの遺品は形見わけされることになり、あたしは棚一杯の本を貰っていた。
「ごめんな。雫なら持ってると思ったんだよ」
告知はもうこりごり。医者にお兄ちゃんの病状を聞かされたお母さんはそういって首を振った。
「……どうしてこの詩集なの?」
「ん?……なんとなくな。ちょっと読みたくなってさ」
あたしはお兄ちゃんに詩集を手渡した。
手渡す瞬間思わず涙をこぼしてしまったけれど、お兄ちゃんは何にも言わず微笑んでいるだけだった。
次は「地震」「おでん」「薬」で
525 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/20 21:06
「店主!!!」
差し出したおでんを一口食べるや否や、そいつはいきなり俺を怒鳴りつけやがった。
偉人めいた貫禄がある初老の男なんだが、放った言葉は滅茶苦茶だ。
「なんだ、この味は。よくもこんなものを私の前に出せたものだな!!!」
「は、はあ?」
「どれもこれも熱を通しすぎて、素材本来の味が死んでいる。つゆの中で素材が泣いているわ!!」
いきなり何を言い出すんだ。コメディアンか、この男は。
「しかも、全ての素材をいっしょに煮込むとは言語道断。がんもと牛すじでは、それぞれ最適な加熱時間が異なるはず。で、あれば、時間差で煮る程度の工夫はすべきではないか!?」
この親父・・・・・いまがどういう時だかわかってんのか?
「しかもこのつゆ、舌をピリピリ刺すような味、これは化学調味料を使っているな?
料理に対する情熱も工夫も感じられぬ。否、これは料理でさえない。どういうつもりでこの店を出しているのか、伺いたいものだな!!」
「まわりを見ればわかるだろ」
俺は冷ややかに言ってやった。見渡せば、地震で倒壊した瓦礫が広がる大地。
かつてはここが数多の高層ビルが立ち並ぶ大都市だったとは、にわかに信じがたいものがあるだろう。
この珍奇な2人連れの後ろには、家を失い、焼け出された被災民たちが列を作っている。
「俺は炊き出しやってんだよ、炊き出し。俺は俺なりによ、とにかくあったかくて美味いモンたくさん作ろうって、じゃあとにかく煮込みがいいなって、それでおでん出してんだよ。
だいたいなんなんだ、あんだら。こんな場所までベンツで乗り付けて美味いのマズイの。後ろの人たちの邪魔だから、食ったらつべこべ言わずにどっかへ行ってくれ!」
とたんに、そいつはいきなり立ち上がり烈火のごとく吼えた。
「この貝原雄山によくそこまでほざけたものだな!!! 不愉快だ、帰るぞ、仲川!!!」
ベンツに乗り込んで、何処かへと去ってゆく・・・・・・。
なんなんだ、あいつらは。最近はおいしいのが多いが、アレは極めつけだ。
薬(ヤク)でもやってんじゃねえかな。
「願望」「福音」「飢餓」
526 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/20 21:08
すまん
×おいしい→○おかしい でよろ
この誤字はちとひどいや(^^;)
527 :
「願望」「福音」「飢餓」 :03/09/21 02:57
ある夕暮れの繁華街、冴えない風貌の中年男が突然叫びだした。
「はいはいはいみんな注目!、おまいらに福音や、心して聞いてや」
「ここにおる人間は皆フサフサや、これから先ヘアチェックとは無縁の人生やで」
「おまいらはフサフサや、フサフサパラダイスや!俺が保証したる。
それでもおまいらはそれを当たり前のことだと思っとるんや!
おまいらは、ヘアスタイルがどうの、髪の色がどうのと
髪をいじることばっかに夢中で、何か大切なことが忘れとるんとちゃうか?」
「見てみい、世の中にはフサフサ飢餓で苦しんでる人間もぎょうさんおるんや!
そんな人達のこと毛先ほどでも考えたことあるか?
今こそおまいらは、毛髪力をそんな恵まれない人達にわけてやるべきや!
そうすればおまいらの心は、これから先永久にフサフサやで!」
(それはお前の願望やないんか?)
まわりの群集の多くは、冷ややかな目で彼のことを見ていた。
まるで現在に降臨した預言者のように、熱く民衆に語りかける彼の頭部は
見事なまでに額と頭部の区別がつかなくなっていた。
次は「ハイボール」「接近」「二人でお茶を」でお願いします。
「ハイボール」「接近」「二人でお茶を」
「サキがさあ、どうしても無理だっつーからさあ」店長から突然、あたしの携帯に呼び出しが入った。
サキはあたしの先輩の女王様だ。たぶん、娘のまいちゃんが熱をだしたんだろう。3歳のまいちゃんは
生まれつき体が弱い。ホテルのルームナンバーと内藤という客の名前を告げると電話は切れた。
あたしは一人でお仕事をするのは始めてだ。サキはいつも「絶対一人でデリは受けないで」
「客に無理矢理酒の浣腸されて、急性アル中で死んだコがいるんだよ」って言ってた。
でも、あたしが受ければサキにもお金を渡せる。まいちゃんのためにもお金は必要だ。
部屋のドア−をノックすると「はい」とういうくぐもった声がして、ガチャリとドアーが
開いた。客は「かけて」と言うと、テレビの前のソファーに座って何も言わずに画面を観ている。
テーブルの上には氷の溶けたグラスとウィスキーの小瓶。「君も飲む?」と聞かれて
「サイダーみたいの飲みたい」と言うと、「甘くないヤツだけどいい?」と言って冷蔵庫から
サイダーの瓶を取り出し、あたしに渡した。浴衣を着た客が接近するとカビみたいな墨汁みたいな変な
においがした。「ぼくはハイボールにしよう」そう言ってあたし頭を子供にするみたいになでた。
客の脇腹から何かの管が出て袋がぶら下がっている。「腸にね、大きなガンがあってもうダメなんだ」笑いながら言う。
「君にいっしょにビデオを観てほしい。『二人でお茶を』っていう古い洋画なんだけどね」
あたしは黙って客の背中に手をまわした。暗い病気のにおいを胸の底まで吸いこんだ。
次は「息」「泡」「くらげ」でお願いします。
海の中から見上げた空は、月の明りに満ちていた。
夜空は揺れて、世界の向こうに。
吐息が立ち上る。泡となって、音を立てて。
ごぼごぼ ぼぼぶっ
でもその音以上に、よく聞こえるのは、自分の音。
鼓動、血、肉の音、それに、頭の中の音。
よく聞こえる。
今、背中から沈んでいったなら、どうだろう。
世界を見つめながら潜っていく。光も、何もかもなくなるまで、どこまでも深く。
素晴らしい空想に、涙が。海に紛れる、でもそれは私の一部。溢れた。
はっとした。驚いた。
もう月は見えない。視界を遮るのは、白っぽい透明。
くらげさん。ごめんね。邪魔をした。バイバイ。
海面に上がり、顔を拭って世界を見たら、想像も出来なかった、無数の星が。
今度は涙が頬を伝う。肌を包む。私の一部。
ストーリー性はないね。うん、ないね。
つぎは『ささやき』『ぬくもり』『しあわせ』でお願いします。
530 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/21 20:33
俺がその気になれば、20メートル離れてる「対象」の衣擦れ
の音だって聞こえる。ほら、今お前少しだけ息を吸っただろ?それ
も、だいたい、まあ20ccってとこかな。男ならもう少し肺活量無い
とね。もちろん、悪意を持った敵に呼吸を読まれないことがそれ以前
に必要なんだけどさ。
ミズクラゲって知ってるか?まあ知ってることにしてくれ。知らなきゃ
今覚えろ。ストラビラ化してエフィラを採集するんだ。以上。
意味が分からなかったらネットで調べろよ。ざっと見積もって300
0万のバカどもがお前の問いに答えてくれる。この国はこんなに荒
れちまって、もう誰も信じねぇけど、昔はここにそれこそ天をうがつ
建物がざっと3000万はあったんだ。今お前が向かってる電子の
網も、その遺産さ。俺たちはそいつらを食いつぶして生きてんの。
「ネット・バブル(泡)」って呼ばれた時代だったね。
次は「新聞」「パイプ」「灰皿」でお願いします。
531 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/21 21:09
「すいません、火を貸してください」
パイプを咥えている老人に声をかけた。
パイプを借りると、そのパイプを新聞につけた。新聞に燃え移った火はしだいに
大きくなっていった。
老人がしゃがみこんで言った。
「新聞に火をつけて何をするつもりなんだ」
「消火器の性能をためすんだ、やってみるからおじさんもみててよ。
と言い、消火器を火の方へ向けた。
「あれっ、でないな」
「どれどれ」
老人は思いっきり消火器をつかみ、放り投げた。鈍い音を立て、消火器は地面に衝突した。
「灰皿はないかい」
次は、
「豚」「羊」「アヒル」でお願いします。
あさのじゅういちじ、
学校に着くと私は、保健室に向かいます。
教室に、学ぶことなんてありません。
「お前が来るころだと思っていたよ」
「山根…授業は?」
「あんな豚教師どもに習うことなんかねぇよ」
本当は知ってる、私に付き合ってくれている事。
私たち、まるで迷える子羊みたいね。
「山根、わたし、自分のこと醜いアヒルの子だって信じていたいの」
次は「白」「幻想」「夕暮れ」で
533 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/21 22:07
回虫深沢竿無袋直樹乳酸菌生生
昆虫長坂脳軟化症晋垂流放置戯
卑劣野々村潰屋英樹賽河原墓守
栄養団地妻巨大便器猪刑牌屡病
534 :
「白」「幻想」「夕暮れ」:03/09/21 22:49
From: 「白」「幻想」「夕暮れ」
Mail:
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白虹、と言うんだと思う。夕暮れ時の空に白い虹が、南西から南東へとかかっていた。
幻想的な空を巡る一本の道。もし地球に土星のような輪があったなら、こう見えるんじゃないだろうか。
「綺麗だね」
「台風あけの雲だろ……おい時人、やめろよ、外じゃ嫌だって!」
瑞季はキスしようとした僕の体を押し退けた。
僕はよほど物欲しそうな顔だったらしい。瑞季はぷっと吹き出すと僕の頭を撫でた。
「時人ってさ、よっぽど溜ってんだな」
瑞季は笑いながら腰まである長い髪の毛を筆にして、僕の手をちょんちょんと刺激する。
「お前ってさ、どうしてそう女みたいなの?」
「瑞季はそういうの嫌い?」
「嫌いだよ。大嫌い」
瑞季は少し羨ましそうにそう言うと、僕の手にキスをした。
僕は手にくすぐったさを感じながら、じっとキスの跡が乾いていくのを見つめていた。
「でも僕、瑞季が羨ましいよ。すごく凛々しくて格好いい」
瑞季はすこし微笑んで長い髪に抱かれるように髪の毛を纏って寝そべった。
次は「コピー」「換気扇」「スプリンクラー」で
私はコピーする。
みんなに気に入られている人の仕草、語調、癖。
全てをコピーする。
そうするしか、私は友達を作る事が出来なかった。
今、みんなに気に入られている人は、変わっている。
家に帰ると、すぐに換気扇を回し、庭の植木にスプリンクラーで水をやるそうだ。
私の家に換気扇は無いし、植木も無い。
まして、スプリンクラーなんかあるはずが無い。
仕方なく、私は家に換気扇を取り付け、植木を植え、スプリンクラーを買った。
そして、私は彼女の癖をコピーした。
家に帰る。
換気扇を回し、スプリンクラーで植木に水をやる。
私の仕草を見ている人は居ない。
私がこれをやったからといって、みんなが私を好きになってくれるわけでもない。
癖をコピーする…一体、何の意味があるのだろうか。
庭先では、1つしかない植木に、スプリンクラーが水をかけ続けていた。
次は「故郷」「上京」「おにぎり」で
536 :
くさりかけ:03/09/22 01:31
長距離列車の中で食べたおにぎりは、なつかしい味がした。
母は駄目な人で、男をとっかえひっかえしては家に引っ張りこんで
いた。どうやら彼女にとって男は消費物らしく、時間がたつと腐って
しまうらしい。そんな彼女が、死んでしまった父をかえりみるはずも
なかった。それどころか、娘の私すら邪魔なようであった。
ある日家に帰ると、書置きが手糞な字で母の蒸発を宣言していた。
一呼吸おいて、玄関から派手にノックの音。その向うで誰かが
金を返せと怒鳴り散らしていた。
上京すれば、働き口もあるだろう。捨てた故郷に未練はない。
でも、長距離列車の中で食べたおにぎりは、なつかしい味がした。
537 :
くさりかけ:03/09/22 01:42
おっと、次の御題は
『箱』
『鍵』
『最後』
で、よろしく。
新スレ立てなくていいのか
539 :
gr ◆iicafiaxus :03/09/22 03:18
「箱」「鍵」「最後」
高校の名前と共に卒業記念という文字が彫りこまれた木の蓋を開けると、オルゴールが
高い音で「イエスタデイ・ワンスモア」を奏でた。曲は途中から始まって、3回くらい
繰り返し、やがて次第に力を無くしてまた途中で消えてしまった。
私はオルゴールを持ち上げて箱の底を見た。卒業式の日にみんなに書いてもらった
寄せ書き。元気でねとかまた会おうねとかありきたりな言葉を添えて書かれた、クラスの
友達、部活の後輩、たくさんの名前の文字に、その人の顔が浮かんでくる。
箱の中を探ってみれば、ブレザーの襟につける学年章とか、自分の名前を捺すときの
ゴム印なんかにまじって、新潮文庫のキーホルダのついた、安っぽい真鍮製の鍵が一つ。
県のなんとか推進計画というのの一環だとか。戦前からあの部室長屋があった場所には、
綺麗なクラブルーム棟がこの春、完成しました。
私が3年間を過ごした文芸部の部室も、今はもう無くなってしまって。いらなくなった
この鍵は、旧部室で最後の部長の私が、記念にもらってきたのです。
夏の休暇に私は郷里へ帰って愛する後輩たちに会ってきました。新しいクラブルームに
招かれて一緒にお茶を飲みました。みんな元気で、クラブルームは明るく、活動はたぶん
私の時より盛んになっていて、彼らは本当に其処にいることが楽しそうでした。
でも、この鍵が合うドアはもう、どこにもないのですよね。
私は鍵を箱にまた戻して、蓋を閉め、オルゴールを引き出しの奥へ片付けた。
#次は「林」「うるさい」「靴」で。
#多分次の人はもう書けないので、じゃあスレ立てしときます。
何で無駄に長文が多いの?
簡潔に上手くまとめれる香具師はいないの?
541 :
gr ◆iicafiaxus :03/09/22 03:29
542 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/22 03:59
>>540 次スレで1度やってみ。
その時自分の文章力に気付くでしょう。
∧ ∧
/ ヽ ./ .ヽ
/ `、 / ヽ
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..━━━━━━━| ||||| ノ .|━━━━━━━━
ミッ | < .|
ャッ ヽ __ノ /
ウチ \ /
何年もの間、都会と言う森林の中を私はさまよっている。
もう抜け出すことは出来ないのだろうか、靴は既にボロボロだ。
聞こえてくるのはうるさい騒音。
ここで一生を終えるのかもしれない――
望んで此処へ来たはずだったのに、何故か涙が出た。
次は「猫」「空」「真実」
三語スレストーカーに魅入られたらすぃ
真っ白な猫は、自分の瞳の色みたいな空を見上げていた。
私はその傍らで真実味の無い文章を、ただ黙々と書き呟く。
次は「チョコレート」「スクーター」「彼岸花」
彼岸花は死人花。スクーターはやくざな玩具。電柱の根本にはチョコレート。彼の好物。
これだけ置いて帰ります。もう、ここには来ません。さようなら。
次は「プライド」「出会い頭」「ダウン」
出会い頭の右ストレートが俺の腹筋に食い込んだ時、惨めにも俺は失禁してしまった。
客席が騒然としている、だけど負けたわけじゃない、プライドが俺にファイティングポーズを取らせた。
次は「声」「夢」「捨て」