3 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 20:02:19 ID:+pFbDANQ0
落ちました?
4 :
>2 ガッ:2005/04/23(土) 20:03:37 ID:IjMWiDQx0
5 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 20:03:54 ID:0V3MHAB70
あ、ほんと。
7 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 20:07:04 ID:tXAEt+RT0
立てたはいいが即死の予感 orz
あと何張ればいいんだ
保守
60までがんがれ〜
『13◆2qL78YV/jc氏版』
タイガースバトロワの最初の職人である13氏による作品。
時期は2004年11月。舞台は人工島。
甲子園と人工島は地下通路で連絡している。
運営委員会からの『指令』というものがあり、これに沿わないと爆死するなど、
独自のシステムが特徴。
13氏が体調を崩しているため、しばらく休止の状態。
『火粒◆0Afu/D6AhM氏版』
二番目の職人?である火種氏の作品。
時期は日本シリーズが行われる頃。
舞台はいずこかの遊園地。ロッカールームから出発。
どことなく詩的な文章が特徴。
短期間の投下ののち、動きが止まってしまっている。再開が待たれる。
『328◆U/eDuwct8o氏版』
328氏による作品。現在、単独職人遂行型では最大の話数を誇る。
時期は2004年のいつか。オフシーズンであることがうかがえる。
舞台は阪神壬午園(じんごえん)球場。甲子園に酷似し、規模はその何倍もある球場。
武器はバットとボール、それにグラブが渡されるという異形のバトロワ。
少年漫画の如きアツい展開が特徴。
投下も頻繁にされており、人気を集めている。
『781◆2Ud8ySLCX氏版』
781氏による作品。話数はまだ少ないが、強烈なインパクトを残す。
時期は2005年冬。選手らはキャンプ先のオーストラリアへ向かっているが、
搭乗機が攻撃を受け、不時着したマリアナ諸島のいずこかの無人島が舞台。
異形、といえばこれ以上異形のものはないであろう、
B級アクションのような独特の展開と文章が特徴。
しばらく前にも投下があり、マイペースながらも進行はしている様子である。
『リレー版』
プロ野球板におけるバトロワの基準方式であるリレーによる作品。
515氏、514氏、615氏、542氏、924氏の参加が確認されている。
時期は不明ながら、2004年オフシーズンと推測する。
舞台も不明ではあるが、元祖バトロワに近い感じの島のようだ。
神職人ぞろいだと個人的には思っている。泣かせの名文が多く含まれる。
読者による地図や参加者&武器の一覧などもあり、タイガースバトロワの看板的存在。
職人さんが複数いるせいか、投下頻度も高い。
『49◆NRuBx8130A氏版』
最も新参の職人、49氏による作品。
各バトロワの投下が滞っていた時期に開始された新しいバトロワ。
時期は日本シリーズ終了直後。
舞台は何十年も前に廃坑になった鉱山の島。49氏自身から地図が提供されている。
長崎県端島、別名軍艦島と呼ばれる実在の島がモデルになっている(原作2も?)。
開始時期は遅いが、投下が頻繁であったため話数は進んでいる。
捕手
即死の予感 orz
>>1 乙です!即死にならないよう何か話題を・・・
最近、リレーが止まり気味ですね。
忙しいのでしょうか・・・のんびりと続きを期待しています。
おお人が…
多少なりとも動きがあるのは4作品ですかね。
リレーは俺もスゲェ楽しみなんですけど。
まあ気長に待つしかない。
その前にスレの存在が…orz
ほしゅ
保守支援
支援アリガトウゴザイマス
保守がてら好きなキャラでも。
リレーの井川と薮のコンビがいいな。
今後どうなるのか一番気になる…
49氏の作品もかなりイイ。読み応えあるし。
出てきているキャラでは久慈と濱中が好きかな・・・
リレーだとバンビのその後が非常に気になる
コーチ陣も参加させられたようなので和田コーチの再登場にも期待
おお、新スレ立ったんだ〜!
>>1さん、乙です
この三人が気になる
(`_ノ´)人(e'ω'a)人(` ー ´)ノ●~
781氏は続き書かれないのかな?
結構好きだったんだけどな・・・
今一番投下頻度が高いのは49氏か?
職人さんごとにかなり文体も色々だなー
ゴレンジャイマダー?
元保管庫さんの若虎BRもずっと更新されてないですね
楽しみにしてるんですが
>>1 乙。
リレーで気になるのはゴレンジャーに誘われた人たち。
的場とかどうなってんだろと思う。
60レスまで約半分 ゼェゼェ
>30 781氏は今年入って止まってますね。再開するといいんですが
おお、あと半分ですか。
リレーは生き残ってる選手みんな気になる!ゴレンジャー、
そういやどうなったんだ。
ゴレンジャー、まだ全員が明らかになってないよね
金本、藤本、赤星にあと二人…誰なんだろう
49氏だとマエカーが虎版マクー空間でワロスw
まだ出てこない久保田はどこで何やってるのかなあ
保守 (―Å―)人(`・Å・´)
(丶`_ゝ´)人(@ω@)
【  ̄ヘ ̄ 】人(´゚ぺ`)
■━⊂( ;x;)彡ガッ☆メ`桜・´)ノ
こっ小宮山〜!!
リレーは気になることばかりですね
濱中の会いたい人は誰?とか
リンと藤原はこの後どうなる?とか
桧山はどこ行っちゃったんだ
リレーは三東と今岡が怖い
捕手
ゲームに乗った選手でまだ内面まで踏み込んで
書かれていない選手が怖いです
片岡とか伊代野、秀太は何を考えて殺したのか・・・
捕手
あと10で即死回避?
たぶんそうです
ネタスレには辛い鯖だ
リレーの藤本は奮闘してますが、49氏のは…
複数作品あると違いでも楽しめるかも
328氏も好きだなあ。
野口がすげえがんばっている。
誰かパソコン使ってハッキングしないか期待してる
リアルで出来そうなのは野州と井川くらいっぽいけど
13氏のも好きです
藤本と久慈のコンビが良かった
赤星が殺す側に回るのも意外で
復活していただきたいなあ・・・
GJ! GJ! GJ!
復活おめ!!!
あと少し!
保守!
職人の皆さん、これからも頑張って下さい!
支援
捕手 必死でスマン
保守
これで大丈夫なのかな?
捕手
>>53 野州もパソコンの達人?
「も」と言うと、イガーは達人ってことになるが。。。
乙でした。
>>62 野洲はなんせ社会人時代がIBM勤務だったから
65 :
62:2005/04/24(日) 03:37:41 ID:9dYeSKlE0
野洲の勤務先、IBMかぁ。知らなかったよ。
野洲の出身はIBM野洲。
井川もパソコン詳しいらしいから出来るかも・・・
野州は原作三村くらいの活躍は出来るべ爆弾は無理にしても
捕手がてら、感想
リレーで、絡みがあった人たちのその後が気になってたりする
接触を持った相手が死んだ三東とか(こっちは明らかになりましたね)
武器を手にした濱中を見逃した後の定時放送を聞いた葛城とかね
保守
どれも誰も続きが気になりますな
29.のらりくらり
どこか覚束ない歩みである。武器を手にして歩むなら、同じように武器を手にした40人以
上の男が押し込められたこの地を歩むなら、もっと注意深くすべきだろう。
しかし、彼はそのことに気付く風でもない。
「こっちか」
ひとりごちて、金澤は周囲を見渡した。
島の南の端は平坦な埋立地で、工場と思しき建物が外壁だけの姿を晒している。『鉱山』
という単語の響きに勝手に殺伐としたものを連想していたが、鉱場区の端にあるのがプー
ルの跡だとは、意外に住環境は良かったのかも知れない。
底に白線の残る四角い窪みを回り込みながら、金澤は往時の風景を思いやった。
やがて彼は目指すものに辿り着く。立ち止まって視線を上げると、島の最南端となる岸壁
の上には胡座をかいて座っている男の姿がある。その大きな背中に見慣れた42の番号を確
かめると、知らず、金澤の肺の底から安堵の息が溢れ出た。
「シモさん!」
呼び掛けると、下柳の首が最低限回されて髭の横面が覗いた。距離を配慮しない音量であ
ったので口の動きから察するしかなかったが、なんだ、と言ったようである。
「何してるんですか?」
「――何も」
簡潔に答えた下柳はすぐに視線を前へ戻してしまって、それ以上のアクションはない。
そっけない彼の反応に、金澤の胸は一瞬にして不安に満たされ、この不安はそのまま現実
になるものではないと自身を説得する必要に迫られた。
金澤は待った。が、すぐ焦れた。
「シモさん!!」
より力強く、彼は呼んだ。声色には隠し切れない焦燥が表れ、金澤はそれを少々みっとも
ないとも思った。だが、体裁より何より、下柳に答えて欲しかった。
しかし、下柳は振り返りもしないで片手を挙げるだけで、金澤に必要なだけの反応を返し
てはくれない。
(シモさん、マイペースだから。動じてないんだ)
金澤はそう思い込もうとした。ボウガンを握る手に徐々に力が入っていくのを自覚しつつ、
辛抱強く彼からの働きかけを待った。
下柳の沈黙を伺う金澤の脳裏に、目を見開いた片岡の顔、発砲の火花、そして己の放った
矢を突き立てたまま遠ざかる背番号8の背中が浮かんだ。
片岡に狙撃された時、彼は単純に驚き、咄嗟に反撃した。放った矢が片岡の背に突き立つ
タン、という音が、未だ鼓膜に張り付いている。
ぞっとした。攻撃と反撃の構図が一瞬にして成立することに怖気を感じ、逃げた。咄嗟の
判断というよりも、もっと拙く反射的な衝動だったと思う。
遠ざかれば逃れられる、立ち去れば再び出会わないだろうと、単純な発想。
しかし――それは通用しないのだろうか?
沈黙は不吉に続いている。不安が口をついて出そうになり、金澤は俯いて唇を噛み締めた。
それはもう言葉を待つための沈黙ではありえないと、金澤の勘が知らせている。下柳にと
って、会話――単なる応答だけとも言えるが――はすべて終わってしまっているのを、彼
は嫌々ながら感じ取る。
自分の存在は、下柳にとって路傍の小石のそれでしかないのだろうか?
下柳は金澤を、金澤は下柳をそれぞれ認識しているのに、声を掛け、会話ができる距離に
いるのに、お互いに受け入れがたい運命に瀕し、それを知っているというのに、大海のよ
うに広がるこの隔たりをどう理解すればいいのか。
馴染みの背番号に吸い寄せられるように近づいた俺は、招かれざる者なのかも知れない。
金澤の瞳が曇る。だが、誰もそれを見ず、誰も彼を励まさなかった。
【残り43人】
>1 スレ立て乙です
乙です!!
そして捕手
のらりくらり キタ━━━━━ミ '┏┓` ミ━━━━━!!!
>>1さん、スレ立て乙です
50.ハイエナ
わずか100メートルも進まないうちに足が止まってしまった。中谷は腰を曲げて
膝に手をつくと、地面に向かって大きく息を吐いた。――馬鹿げている。
ただ歩くという普段なら何でもない行為にいちいち勇気を振りしぼり、神経を
すり減らさねばならないなど、まったくもって馬鹿げている。
だが、地図もコンパスも持たない身にとって、こうして歩く先が禁止エリアでは
ないという保証はどこにもない。もしほんの数センチ先がそうであれば、
次の一歩を踏み出した時が命の終わりなのだ。
中谷はリュックからペットボトルを取り出し、水を一口飲んで喉を潤した。
数多くあるエリアのうち禁止エリアはたかだか数個、入り込む確率は何十分の
一だ。これ以上数が増えない今のうちにと行動したのだろう? 普通に歩こうと
慎重に歩こうと、ぶつかる時はぶつかるのだ。
(だから、開き直って行け!)
自分を叱咤し、中谷は歩き出した。
しばらく進んだ後、中谷は再び足を止めた。今度は禁止エリアの恐怖の
せいではない。路上にまるで絵の具をぼとぼとと落としたような大小の
赤黒い染みがあったからだ。
背筋に緊張が走る。一見して血とわかるそれらは、行く手を横切るように
点々と連なり一本の線を作っていた。血痕に混じって血染めの靴跡が
認められる。中谷はその向かう先に目をやった。
たどって行けば、誰かに会える可能性が高い。相手が怪我人ならば自分が
攻撃される可能性も少ないのではないか。
中谷は血痕にそって歩を進めた。血の乾き具合からすると、問題の人物が
通ってから時間が経っているようだ。これほどの出血では、待っているのは
生きた人間ではないかもしれない。だが、死体でも構わなかった。
それならそれで、自分の欲しいものが手に入る。
やがて見えてきた一軒の民家の手前で赤い道しるべは途絶えていた。
閉じられた入り口の引き戸にべっとりと血がついている。
中谷は戸に手をかけ、慎重に、そろそろと開けた。
「うわっ!」
思わず大きな声を上げた。足元に人が倒れている。こちらを向いたシューズの
裏は血と泥で汚れ、そこから奥へと延びた脚といわず背中といわず真っ赤に
染まっている。
「……ま、前川さん? 前川さん! しっかりして下さい!」
戸を閉め、右手に握っていた釘抜きを床に置くと、中谷は前川の身体に手を
かけて揺すった。だが、完全に事切れていた。
「ひでえ……」
すでに庄田が殺される場面を見た。遺体にも触れた。それでも背中から下が
白い部分を探すのが難しいほど凄まじい血で赤く塗り替えられた前川の姿に
中谷は顔をしかめた。背中にいくつも穴が開いているところを見ると、銃器の
たぐいで攻撃されたらしい。だが、血痕が示すように前川はすぐには
死ななかった。逃れてこの民家までたどり着き、力尽きた。どんなにか
苦しかっただろう? 彼の眠るような表情が唯一の救いに感じられた。
しかし、感傷にふけっている暇はない。前川には申し訳ないが、荷物を
いただかねば――。ところが、前川の遺体はカバンを身につけていなかった。
辺りを見回しても、どこにもそれらしいものがない。
中谷は入り口の引き戸に目をやった。ここに来た時、戸は閉まっていた。
もし前川が閉めたなら手をかけた時に付着するであろう血の汚れが
戸の内側にはない。おそらく前川は中に入り込むと同時に倒れ、そのあと
何者かがこの戸を閉めたらしい。
(誰かが、いる――?)
中谷は大きく身震いした。さっきは不用意に声を上げてしまった。
もし人がこの家にいるとしたら、とっくに気付かれているはずだ。
だが、薄暗い家の中はしんと静まり返り、物音ひとつしない。
潜んでいるのが殺意ある人物なら、自分を襲うチャンスはいくらでもあった
はずだ。そうしないということは、恐れて出て来ないのか、無人なのか。
「誰か、いるんですか?」
思い切って奥に向かって呼びかけ、中谷は家の中を見て回った。しかし、
自分以外に人がいる気配は感じられず、荷物も見当たらなかった。
前川が来る前にこの家にいたのか後から来たかは不明だが、ここに誰かが
いたことは確かだ。とはいえ、普通は血にまみれた死体の放置された家に
いつまでもとどまるとは思えない。彼は前川の所持品を手に入れ、
立ち去ったのだろう。あるいは前川がここに来たときすでに荷物を持って
いなかった可能性もある。不意に襲われ、何も手にする間もなく逃げたのかも
しれない。いずれにせよ、必要なものはここには無い。
落胆せざるを得なかったが、せめて何か役立つものを携帯してはいないかと
前川の身体を改める。殺された死体をあさるなど、自分もたいがいひどいな、
と中谷は思った。
(前川さん、申し訳ないです。けど、人助けやと思って下さい)
心の中で詫びつつズボンのポケットに手を入れると、折りたたまれた一枚の
紙片が見つかった。これも血で濡れている。破らないよう注意深く開いた
中谷はほんの少し顔を輝かせた。島の地図だったのだ。一面赤く染まって
いるが何とか読み取れないことはない。A-5とF-2二つのマス目いっぱいに
大きくバツ印が描かれ、それぞれ「12:00〜」、「18:00〜」と小さく書き込まれて
いる。さらに体育館のある中央付近のマス目がアミかけを施したように細かい
斜線で埋め尽くされている。この三箇所が禁止エリアとその予定地のようだ。
気になるのは、前川がいつ撃たれたかだ。もし昼の定時放送前ならば、
ここに記されているのは朝の情報のみということになる。
(名簿があったらな……)
定時放送はほとんど聞き流していたが、朝に比べ昼の死亡者はやたら
多かったと記憶している。だから、名簿があれば死亡者数から分かるのだが。
続けて前川の懐なども調べたが、結局、地図以外にめぼしいものは無かった。
だが、これは大きな収穫だった。地図だけでは自分の現在位置は
特定できないが、太陽で方角が分かればおおよその位置はつかむことが
できる。外は曇り始めていた。ぐずぐずできない。
「前川さん、すいません。これ、もらいます」
中谷は前川に向かって拝むように地図を顔の前に掲げた。その時、自分が
必要とするものをもう一つ彼が持っていることに気付いた。
「あ、これももらっていいですか? ほんま、悪いんですけど……」
そう言うと、中谷は前川が履いているシューズの片方の靴紐をほどき始めた。
サイズが合わないかもしれないが、あの家の下駄箱から失敬した窮屈な
革靴では歩きにくくて仕方がなかったのだ。
だが、前川のシューズは中にまで多量の血が入り込み、ぬるぬるしていた。
サイズ以前に、さすがにこれを履く気にはなれない。
中谷はため息をついたが、シューズを脱がせたまま放っておくのも悪い気が
して、再び前川の足に戻そうとした。
引き戸がゆっくり開いたのは、その時だった。
【残り41人】
うわぁぁぁぁ(AA略
エライとこで止まってて続きが気になる…
ともあれ職人さん乙です!
81 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/04/27(水) 03:16:13 ID:zKZdHu9l0
俺が中谷タンだったら、絶対ちびってる。
職人さんキテター!つながりウマー!
中谷タンがんがれ!!
乙です
中谷頑張れ
早く一軍に来いよ・・・
>>79 50.笑みの効用
筒井を殺し、前川を撃ったあと、幸いと言うべきかそれとも不運と言うべきか
どちらなのかは解らなかったが、彼は今まで誰とも遭遇していなかった。
片岡篤史(背番号8)は民家の並びの前に立ち、足を止める。紅葉の候、晴天。
陽射しは暖かいが風は少々冷たい。辺りは長閑そのもので、ぐるりと見回すと
大原の山奥を思わせる鄙びた光景が広がっていた。どれも似たような外見の
民家は所々欠けた瓦葺の屋根の下、汚れた壁にプラスチックの波型ボードを
立てかけている。一つ目をやり過ごし、少し考えてから二つ目もやり過ごし、
三つ目の戸口で足を止めた。
直感というのは得てしてアタっているものだ。
自分の気まぐれを後押しするように、胸中ぽつりと呟く。三和土から廊下に
土足で上がり込むと、朽ちかけた床がぎしぎしと抗議の声を上げてきた。
そう言えば最近、こんな姦しい声を聞いたような気がする。誰だっただろう?
(あの二人、や)
若くて純粋で、もひとつおまけに馬鹿な二人。
(なんで解らんのかなぁ)
銃を向けた時の顔は印象的の一言に尽きる。筒井も前川もいっそ素敵な具合に
絶望をふちどった貌をしていて、思わず笑い出したくなるような可愛らしさを
呈していた。彼らは全然解っていない。戦場で人を殺すのは仕方のない事だ。
と言うか、人を殺すからこそ戦場なのだ。他に選択肢がないのだから仕方ない。
自分の命と他人の命、どっちが大事だ?そりゃ当然自分だろう。
うん、これは正しいロジックだ。彼は頷いた。
未だ殆ど白いままのユニフォームを見下ろし、再びかそけく笑みを浮かべる。
内側から突き上げるような、溢れ出るような。どうしてだか笑いが込み上げた。
悦楽も不快感も綯い交ぜにして、とくりとくりと衝動が湧き上がる。
ああやだやだ、どうしてどいつもこいつも不細工な金太郎飴みたく性善説を
並べ立てるんだか。やだね、まったく。
やかましいな、と何気なく痛んだ床を見下ろす。見下ろして、漸く気付く。薄く
積もった埃。解りやすく踏まれた跡を見せながらこちらに囁きかけてくる。
『ねえねえ。足元をようく見てご覧よ。これは何だろうね?』
そっと屈んで観察する。まどろみを誘う昼下がりのうす闇の中、泥水の飛沫と、
乾いて黒くなった、何かを引き摺ったような形跡。
(よっぽどぼけっとしてたんやな)
自分の事である。
確かめもせず侵入したのは不用意だったと気付いて眉を上げた。注意散漫だ。
幾ら有能な相棒がいるって言ってもちょっとまずいよな。うん。
根本的に何かがズレた内省だったが、本人は特に気付いていない。先程よりは
注意をしつつ、続き間の戸にぴたりと耳をつける。
―――だ……さ、し―――
ああ、久し振りのヒトの声だ。
久しいと言っても実際は数時間前の話だったが、低い響きは静かに鼓膜を
震わせ、ひどく懐かしく、武者震いしたくなるような興奮を呼び覚ます。
(アタリやな)
もう一度笑って片岡は呼吸を整えた。音はそれきり途絶えたが間違いない。
相手を確認し、銃を撃つまでが上手く行くかどうか。相手より早く、相手を仕留め
られるかどうか。そこが問題だ。そしてそれ以外はなんら問題ない。
ひどく暗くて、そしてだからこそ否が応にも昂ぶりを訴える己が肉体を持て余す。
装弾を確認してちょっと振り返ると、木枠の窓から早くも西日が差し込んでいて
緩く空を漂う埃がひらひらと淡く光っていた。ささやかなノスタルヂアと昂奮。
訪れた余韻を払うように二、三度嚥下し、ゆっくりとドアを開ける。
(……?おらんやないか)
拍子抜けする。確かに声の端を捉えた筈だ。
(声聞こえたやんな……も一つ向こうか?)
チャ、とウージーが音を立てる。
(それとも逃げられたか)
ぎし、と床がささくれた愚痴をこぼす。
(いや、多分まだ)
カチャ。
「―――動かないで下さい」
……!
「手はそのまま、その武器を床に落として。妙な真似はしないで下さいよ」
(何やと―――)
ごり、と盆の窪に押し当てられた硬さに背筋が冷え、そして一気に燃え上がる。
感覚の奔流が逆を向いて溢れ出す。神経を抉るアラート。警告音。
「聞こえてないんスか?」
捻じ込むような動きで再び、その金属が首を圧迫する。ビープ音。やかましい。
「片岡さん」
「……誰や」
「チームメートの声も忘れたんですか」
苛立ちのない、ただ機械的に冷えた声音が。
「もう一度言います。武器を捨てて下さい」
振り向く事さえ許されぬまま硬直する。手の中のウージー。これを捨ててしまえ
ば勝機はない。しかし捨てなければ確実に鉛の弾を喰らう羽目になるだろう。
家の間取りの妙に一杯喰わされたと舌打ちする。
「―――井川」
「やっと思い出しました?」
井川慶(背番号29)は呆れたように呟いた。呆れたというよりも寧ろ、何処かしか
怒りを含んでいるような気がしないでもない。沈黙した片岡をさあ早くと急かす
ように銃口を押し当て、にゅっと伸びてきた右腕がウージーに手をかける。再び
ビープ音。片岡の脳内にだけ響く緋い音。
「ご大層なモン持ってますね」
「バッグん中に入っとったんや。お前かてそれ、そやろ?」
「片岡さん、時間稼ぎは無駄っスよ」
背後の井川がウージーを掴む手にぐっと力を込める。
「……武器を捨てろって言ってるんだ、俺は」
敬語の消えた語調に、可笑しさがこみ上げてきた。ああ面白い。なんて面白い。
(あのなぁ、井川)
くつくつと小さく肩を上下させる片岡に焦れたのか、首に当たる銃口の感覚が
強くなる。撃てないと思ってるんスか、と地を這うような低音で告げるエースに、
また一つ失笑を噛み殺した。まだまだ可愛いものだ。
(脅す時はな、首やのうて、背中に銃をあてるモンや)
武器から左手を放して腕を挙げる。ぱちんと音をさせ、肩に掛けたストラップの
止め具も外した。首に突きつけられた銃口はぴくりとも動かない。冷静そうに
思える警戒ぶりだが―――ふ、と息を吐く気配だけは隠しきれていなかった。
(お前もやっぱり青い、ゆう事やな)
右手にぶら下がった大型銃の先端がゆったりと重量感のある弧を描き、黒い
グリップが指から離れかけた瞬間、ぎゅうっと背骨が凝縮するような高揚感が
肺腑を満たし尽くす。熱い噴出が脊椎を駆け上る。
(この―――クソガキが!)
がしゃん。
「―――っ!」
叩きつけるようにウージーを捨て、思い切り身体を左に逸らした。勢いをつけて
右手を振り子のように振り回すと、鈍い感触と同時にパン、と乾いた音が響き、
てんで的外れの方向にあった窓ガラスが粉々に砕ける。
「ぁあァァアああッ!」
怒声は自然と、腹の奥底から搾り出された。身体を引く素振りを見せる井川に
向かって突進する。反動で天井を向いた銃口を横殴りに弾き飛ばし、たたらを
踏んで飛び退いたそのわき腹にしたたかな一撃を加えた。彼が呻き、身体を
くの字に折る。逃すものか。
「う……、」
勢いで一歩、二歩。突き出した拳と彼の頬が擦れ、熱が飛び散る。更に踏み
込んで蹴り上げる。風圧を感じるほどの至近距離を過ぎる片岡の脚をかわした
井川がIMIウージーを蹴り飛ばすと、重いシルエットそのままに、ウージーが
くるくると水平回転して床を一直線に滑り、傾いたベッドの下へと吸い込まれて
いった。あらま、ナイスゴール。
「クソ、っ」
井川の脳内で興奮しきりのアナウンサーの声が響く間もない。
バランスを失した彼の背中に躍る背番号を引っ掴み、片岡は肉付きの良い
身体を引きずり倒した。軋む床の悲鳴が、脳をとぷりと満たすアドレナリンを
軽く沸騰させる。理由などない。ただただ、目の前の『敵』を屈服させろと本能が
煽り立てる。
「井川!」
別方向からの声に、しかし振り向く事さえしなかった。複数相手は元より承知の
上だ。井川を解放すれば即座に撃たれるのは目に見えている。場が冷静に
なる前にさっさと制圧して人質にとってしまうのが賢い選択。そうだろ?
「く、そっ……離、っ……!」
井川の左手首を捻り上げ、銃のグリップを握り締める手をだん、だん、と床に
打ち付ける。抗う力は予想以上に強く、相変わらず強靭な四肢だと片岡は内心
苦々しく思った―――それは潜在的な、そして決して認めたくはない、若さに
対する嫉妬だったのかも知れない―――全身を総動員して抵抗する井川に
圧し掛かり、腹に膝をめり込ませる。苦悶に歪む顔。口をぱくぱくさせる様は
金魚のそれで、眺めていると或る意味面白い。縫い付けられて狂ったように
足を暴れさせているが、稚拙な動作は徒に床を啼かせるのみだ。
「アッちゃん、やめろ!やめろって!」
自分に取り縋って引き剥がそうとするもう一人を無造作に振り払う。呻き声。
速い息遣い。袖を引っ張る力がやや弱いのは気のせいだろうか。必死にしがみ
つく男に呼応して井川が右手を振り回し、何度か片岡の頬に熱さを走らせた。
それは所詮、なまくら前歯の飼いネズミが野良猫を甘噛みした程度に過ぎない。
しかし戦闘態勢の頭を加熱させるには十二分に過ぎる。
(ええ加減に大人しくせぇ!)
頭に血が上るのに任せ、井川の側頭部を拳骨で力の限りに打ち据えた。胸を
押さえつけた膝に思い切り体重を落とす。ブキッと、嫌な音。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ !!」
声にならない絶叫。裂かれた空気の爆ぜる音。遠慮なく膝を捻じ込むと、鋭い
悲鳴が一瞬遅れて耳を抉っていく。
「やめろ!おい!やめろ……ッ!」
抵抗が確実に緩んだのを見て取り、漸く片岡は制止の声の主に一瞥をくれた。
被った野球帽はつばが斜めにずれ、その下の頭部は赤が滲む包帯でぐるぐる
巻きにされている。ミイラみたいだ、と場違いな発見をしてつい笑うと、すっかり
血の気の失せた藪恵壹(背番号4)が可哀想なくらい瞠目した。
(アンタか)
顔の中で白目だけを唯一赤く染め、藪は片岡を見ていた。視線が泳いでいる。
マウンドで見たような憶えのある表情だった。制止するだけで積極的には攻撃
して来ない彼に片岡は笑う。―――この人は自分を殺せない。
「アッちゃん、やめて、く……」
問答は無用なのに、と片岡は呟いていた。どうすればこの人は解るんだろう?
無理矢理にでも解らせる手段を一瞬で百ほど連想し、胃がきりきりするほどの
爽快感を得る。そしてすぐその実行に着手する。言い募る彼の包帯に覆われた
部分を殴打し、続けざまに掌底で顎を捕らえると帽子が軽く跳ね飛んだ。腰が
引ける格好で藪が上体を仰け反らせる。隙が生まれる。
何故か、何故だか、可笑しかった。
「井、川ッ……」
「どけ!」
痛みに喘ぐ彼を突き飛ばす。やれやれ、呆気ない。後輩はまだ根性あるぞ?
「なァ、井川?」
強情な指。へばりついてなかなか外れない。その間も抵抗する井川の拳にもう
一度鼻の辺りを掠められ、荒い息を更に弾ませて片岡が低く唸った。鈍い熱に
こめかみを引き攣らせる。クソガキめ。梃子摺らせやがって。
「そろそろ観念、しィや……」
ぽた、ぽた、と彼の顔に血が落ちた。それが自分の鼻腔から出ているものなの
だと唐突に気付き、片岡は頬を歪めて井川の手を痛めつける勢いを激しくする。
何度も、何度も、壊れんばかりの力を込める。大事な商売道具なのに悪いな。
でももう使う事もないだろうし、怨むなよ?
「あ、ァッ!」
がこん、とトカレフが飛び出した。片岡のリーチの長い腕がすかさずそれを攫う。
さぁ、最後の詰めだ。この二人にはどうやって思い知らせてやろう?
その瞬間がミリ単位で近づいてくる気配に脳の芯が疼く。追い縋る手を跳ね除け、
井川に乗り上げたまま、半身になって振り返る。目が、合う。
勝った。
片岡はひらりと笑った。
パン。
「……ッァぁあ゙!」
搾り出した声を、途中で捻り潰したような悲鳴だった。もんどりうつ。また空気が
弾ける。藪の腰と膝が砕け、滑り落ちた鉄の棒がガランゴロンと転がった先に
右肩から倒れ込んだ。くたりと崩れ、蛹のように身体を丸めて二、三度痙攣する。
「アンタも、ホンマ甘いわ」
無様な偽善者。
息を荒げて片岡が悪態を吐く。最初から殴り殺そうとしていればこんな事には
ならなかっただろうに、本当に馬鹿な人だ―――
「ハァッ、は、ぁ……っ、ッあ、ぅぐ……」
金属の弾をまともに喰らった男は床にへたり込み、だらんと左腕をぶら下げて
いる。肩口からざあっとペンキを流したように真っ赤に染まり、緋色の水溜りが
じわじわ床を覆っていった。硝煙の臭いと血液の匂いが噎せ返るほどに濃い。
その甘ったるい瘴気の中に、小刻みに身体を震わせ、細かく息を継ぐ弱い人間。
「悪運は強いみたいやね、藪さん」
あと10センチ斜め下なら一発で済んでいたのにな?
反応のなくなった井川をうち捨てて立ち上がる。晴れやかな気分だった。
神経の図太いクソガキと、性格の脆い偽善者。一人は仰向けに転がって唇を
蒼くし、もう一人はびくびく震えながら這い蹲っている。いい気味だ。
「悪く思わんといてな?」
一筋伝った汗を拭い、ゆっくりとトカレフを掲げる。狙ったのは井川だ。視線の
先の青年は唾液交じりの激しい息遣いのまま、じりじりと上体を起こし、双眸を
吊り上げて必死にこちらを威嚇してくる。
可愛らしい抵抗だ。
片岡は嗤った。
致死量の笑みだった。
【残り41人】
91 :
542:2005/04/28(木) 03:40:25 ID:qTFMwLRS0
すんません章番号間違えました……
×50→○51 です。保管庫さん、お手数お掛けしますが宜しくお願いします。
乙です!
片岡こええええ!!!
御大と井川はどうなるんだあああ!!!
乙!いつも楽しみにしてます!
片岡…御大井川…。・゚・(ノД`)・゚・
職人さん、乙です!
片岡・・・((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
作家さん、お疲れさまです。
モミー、実はこんなキャラだったのか。。。
96 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/04/29(金) 18:53:23 ID:VxFeFTPT0
イガーたんの黄金の腕があああああ!
職人さん、乙です!!
97 :
96:2005/04/29(金) 18:57:30 ID:1piI9Bru0
あげちまった…スマソorz
上げ
hosyu
>>90より
52.残された選択肢
ずっと居た場所が禁止エリアになるから移動を始めたところだった。
そうしたら、とんでもない光景に出くわしてしまった。
視線の先に二人の人物が転がっている。一人はうつ伏せ、もう一人は
右半身を下に横倒しだ。巨体を重そうに揺すりながら小走りに駆けつけた
久保田智之(背番号30)は、二人が誰であるかを確認し、立ち尽くした。
ここまで何事もなく来たせいで、誰であれチームの仲間が人を殺す場面など
想像できなかった。中でも、そのような行為とは最も縁遠いと思われるのが、
この後輩だ。
最初に見かけた時、小宮山はうつ伏せのもう一人(その時は桜井だと
分からなかった)のそばに膝をついていた。あたかも見守っているかのよう
だった。ところが、どこか様子がおかしい。よく見ると、拳銃を手にしていた。
そして、おもむろに銃口を桜井の頭に――。
(何があった?)
久保田はしゃがむと小宮山のくの字に折れた右腕の先に握られたままの
ワルサーをそっと取り上げた。静かに目を閉じたあどけない顔を見つめて
いると、次第に胸が痛んできた。この狂ったゲームもここまで来たのか。
「おい……起きろ」
頬を軽くはたくと、小宮山はうっすら目を開けた。
「俺だ。久保田。……わかるか?」
「……」
ほんの少し口元が動いたが、視線はゆらゆら宙をさまよっている。久保田は
いったん小宮山に背を向けると、桜井の肩に手をかけ起こしにかかった。
まったく動く様子がない。急いで脈を調べてみる。
「……久保田……さん?」
振り向くと、いつのまにか上体を起こした小宮山が目をいっぱいに見開いて
こちらに視線を向けていた。
「おう、大丈夫か?」
小宮山は放心したような面持ちできょろきょろと周囲を見回した後、
自分の身体のあちこちを確認するように撫でる仕草を見せた。
「久保田さん……。あの、俺は……」
「ん? ……ああ。ちょっと倒れてただけだ」
「じゃあ、あれは……久保田さんが? 『やめろ』って声がして、その後……」
懸命に思い出そうとするように、小宮山は片手で額の辺りを押さえた。
「……まあな。で――」
桜井が生きていることを確認した久保田は小宮山に向き直った。
説明はあとだ。それよりも、まず訊きたいことがあった。
「お前は……こいつで桜井を撃とうとしてたな?」
久保田は小宮山の顔の先にワルサーをぶらさげた。
「……はい」
小宮山は居ずまいをただし、小さいがしっかりした声で答えた。
「何があった? ……お前が殺し合いに乗るとは思えん」
「……」
返事を待ったが、小宮山は目を伏せ、黙りこんでしまった。
「言いたくない――か?」
ならば、もう一人の当事者に尋ねるしかないが、こちらはいまだ目覚めない。
久保田はもういちど桜井の身体に手をかけ、仰向けにひっくり返した。
そこで初めて彼のユニフォームの前面に付着した無数の血痕に気付いた。
頭を殴られたような衝撃が走る。
手を止めたまま絶句していると、小宮山が静かに口を開いた。
「田村さんと松下さんを……殺したそうです」
「……なんてこった」
「目を覚ましたら、また誰かを……殺そうとするはずです」
小宮山はうつむき加減の頭をさらに低くした。
「だから……殺そうとしたのか?」
久保田はつとめて動揺を抑え、平静さを保とうとした。
「それ以外になかったんです。桜井さんを止める方法は……」
しぼり出すように話す小宮山の肩は小刻みに震えていた。やがて、膝の上に
置かれた両手の甲にぽたり、ぽたりと水滴が落ちはじめた。
「……武器だけ取ってほっとくってのは?」
「考えました。でも、それであきらめてくれるかどうか……。どこかでまた手に
入れたら、同じことでしょう? それに、武器が無い状態だと逆に桜井さんの
方が誰かに殺されるかもしれない。ならいっそ……って思ったんです」
小宮山は右手で目と鼻をこすったが、涙はとめどなく流れ出していた。
その姿は、久保田も知っている普段通りの小宮山だ。だが、あの時――
桜井に銃を向けた小宮山の表情は、遠目にもぞっとするほど冷静そのもの
だった。今とはまるで別人のように見えた。あれは、いったい何だったのか?
「……なあ。お前、本当はどうしたい?」
久保田は片手を小宮山の肩に置き、顔を覗き込むように尋ねた。
「桜井を……殺したいか?」
「俺には、そうするしかないんです」
「こうしないといけない、じゃない。……どうしたいか」
「殺したくないです。……もう、誰かが死ぬのは嫌です。もう、これ以上……」
小宮山は何度も大きく首を横に振った。
「わかった。……わかったから、泣くな」
しゃくりあげる小宮山をなだめながら、どうすればいいか久保田は考えた。
はなはだ自信は無いが、道は一つしかなかった。
泣きやんだ小宮山が見守る前で、久保田は桜井の身体と荷物を調べた。
カバンにはごちゃごちゃと色々なものが入っていた。ワルサーのマガジンは
小宮山に返してやる。カバンのポケットからはコルトガバメントM1911が
出てきた。松下のものだった拳銃だ。久保田には聞こえなかったが、
それを見た小宮山は少し目を丸くした後、つぶやいた。
「ほんと、なめられてたんだなあ……」
「桜井は俺が運ぶ。こいつと俺の荷物を頼む。これ……ちょっと重いけどな」
久保田は背中にしょっていたデイパックを下ろした。
「何が入ってるんですか?」
「……これだ。さっき、お前に投げつけた」
取り出してみせたのは、閃光手榴弾だった。殺傷能力は無いが強烈な光と
音を放つ。全部で一ダース、それが久保田の支給品だった。
「俺もかなりクラクラした。まともに喰らったら凄かっただろ? 悪かったな」
「いえ、ありがとうございました。でなかったら、俺……」
「……それで、お前の荷物は?」
「あ、上に置きっぱなしなんです。待っててもらえますか?」
小宮山は石段を指さした。
「そっか。……ついでに願掛けでもしてこい」
何気なく言ったつもりだったが、小宮山は急に神妙な表情になった。
「どうした?」
「さっき祈ってきたんです。これ以上、誰も死にませんようにって」
「お前な……なら自分が殺したら駄目だろ。それも神社でって罰当たりすぎる」
「……ですね」
肩をすくめ、ようやく笑顔を見せると、小宮山は軽い足取りで石段を
駆け上がって行った。久保田は微笑ましい気持ちでその背中を見ていたが、
傍らに伏せる桜井に目を向けると、にわかに心がこわばる思いがした。
大丈夫だろうか。二人なら、なんとかなる。なんとかするしかない――。
【残り41人】
職人さん、乙であります!
久保田なんだかかっこいいよ久保田
バンビが桜井を殺さなくてよかったぁ。
前のスレから気になってました。
それにしても、クボタンかこいい!!
グヘヘキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
職人さん乙!
>72より
30.見せかけの平和
濱中は手を伸ばして、教室の隅に落ちていた薄い本を拾い上げた。色褪せてはいるものの、
楽器と音符、そして『たのしいおんがく』の文字が表紙に踊る。
主を失った教科書は長い年月に耐えかね、ページはひとつにくっ付いてしまって、既に本
としての体裁を保ってはいない。無理に開こうとすれば、バラバラの紙片と化すだろう。
濱中は壊れ物を扱うに相応しい手付きで、表紙の砂と埃をそっと払った。
「これ、時代を感じますね」
「ああ、うん?」
教壇に腰を下ろした久慈は、濱中の笑顔を横目で確認するだけして曖昧な返事をした。
所持品の確認に忙しい彼の興味を、朽ち掛けた本で引き付けようという話でもない。濱中
はゆっくりと小さなベテランに歩み寄り、その隣に腰を下ろす。
久慈の両手が忙しく荷物の中身をかき回している。への字まゆ毛を寄せた横顔は至極真剣
なものだ。それを見るともなく見届けると、濱中はぼんやりと視線を彷徨わせた。
窓ガラスが抜け落ち、潮風が吹き通る粉っぽい教室。いくつか残っている机。オルガンの
なぜか鍵盤だけが向こうに落ちている。壁に掲示物の残骸。無数の画鋲の痕。
ここで学んでいた子供たちは、今はどこにいるのだろう。懐かしい教室が朽ち果てている
のを見たら哀しむだろうか。それとも面影を見出して思い出に浸るのか。
故郷を捨てるとき、子供たちは泣いただろうか。
彼は、ここにいない、顔も知らない人の事ばかり思いやる。
古い教科書の重みはごく小さなものだが、濱中の思考を方向付け、さらに独自に発展させ
るだけの力を持っていた。それほどまでに彼は胸に虚空を抱えている。
流れがあれば流されるだけの――自覚もある。
濱中は教科書を持つ手の、手首に目をやった。薄い赤みがまだ残る。
久慈は周囲に人気のない事を確認してから、そろりと、濱中の目を見ながら実に慎重に、
何かを試すように手を離したのだった。聡い男には、もう当たりはついているのだろう。
今の自分の内情を知れば、きっと困らせる。
だが――どうしようもないのだ。
隣から、深いため息が聞こえた。目をやると、特に何を伝えなくとも久慈は困り顔だった。
「濱中、お前の武器、何だった?」
「まだ見てないんですよ」
予想通りの問いに、そのままの答えを返す。久慈に視線で促されるまま、濱中は床に下ろ
していたバックパックを引き寄せ、中身を覗き込んだ。
と、隣の久慈も首を伸ばして同じように覗き込んでくる。その仕草が(先輩には失礼だが)
子供じみて少々可笑しく、濱中は笑いをかみ殺さねばならなかった。
「支給品、久慈さんのは何だったんですか?」
濱中が疑問と共に首を傾げると、久慈はそれを彼の顔の前へ引っ張り出した。眼前に現れ
た『ホットケーキミックス』の飾り文字を、濱中は思わず読み上げる。
徳用らしき大きな袋の向こうで、久慈が苦味が圧倒的に勝る苦笑を浮かべていた。
「森永だって。お徳用4袋入り。ホントにコレが俺の武器なのかな?勘弁して欲しいよ」
久慈は肩を竦め、再びごそごそと荷物を引っ掻き回した。手につくものを次々と取り出し
て並べ始める。ペットボトルの水、見慣れない非常食、地図に筆記用具――といった品々
が目の前に列を作っていくのを、濱中はどこか楽しそうな顔で眺める。
やがて、ぺちゃんこになったバックパックを前に、久慈はがっくり肩を落として項垂れた。
「久慈さん?」
久慈は下を向いたまま動かない。濱中は伏せられた顔を覗き込もうとしたが、その瞬間を
狙っていた久慈がひょいと顔を上げたので、軽く仰け反った。
「まあいいか。あんまり物騒なものでも怖いし。ある意味おいしいよね」
「確かに、おいしいかも知れないですね」
童顔つき合わせ、ふたりは笑った。
[久慈照嘉:ホットケーキミックス]
【残り43人】
111 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/05/06(金) 00:20:42 ID:K9jHLFaR0
保守
職人さん乙です。
久慈さん、ホットケーキミックスって…w
>110より
31.de profundis
「濱中、」
ひとしきり笑った後、久慈は急に真顔になった。真っ直ぐな視線に、濱中は目を瞬かせる。
「はい?」
「何を考えてる?」
特に何も、と濱中は笑みの残滓を拭いきれぬままの顔で返す。久慈は表情を固くした。
「どうして逃げなかった?久保田はお前を、」
一旦言葉を切り、それから久慈は続けた。
「――お前を、殺そうとしていただろう?逃げなければ死んでいた」
直球勝負を、彼は選んだ。
「だって、逃げる必要なんてありませんでしたから」
対峙する濱中の顔からは、幽かな笑みが消えていかない。むしろそのことで、久慈は先ほ
ど玄関前での自分の勘の正しさを悟って眉根を寄せた。濱中の視線が床に落ちる。
問われれば、語る以外にないだろう。はぐらかす手段を、自分は持たない。
「久慈さん、あの部屋で何を考えてました?
僕、これからどうなるんだろうって――でも考えて分かることじゃないですよね」
濱中は少しだけ顔を上げた。淡い苦笑が読み取れる。
「ただいくつか分かることはありました。
僕はチームメートと殺し合うなんてできないし、それに生き延びるべきじゃない」
「濱中!」
あまりの言葉に久慈は声を上げたが、濱中はゆるゆると首を振るだけだった。
「リハビリ中に呼び出されて――そもそも何事もなくても、僕は来年も戦力にならない。
もうこの背番号を継ぐ誰かも、決まっているような気がするんです」
濱中の口調には激しさはないが、凪の下に黒々とした口を開けている暗い深淵を垣間見て、
余計に久慈の心根は冷えた。チームの若き主砲としての復帰を望まれている男をしてこれ
なのかと一瞬思うが、『チームの看板選手』という肩書きがどんなに儚いものか、彼は身
をもって知っているのである。久慈は奥歯を噛み締めた。
「本当にみんな――、一軍も二軍も集められているから、意図なんて分かりませんけど、
生き残る誰か、ひとりだけ、そのひとりは、絶対に僕じゃない」
最後の一言だけを強く発し、濱中は小さく息をついた。諦めてしまった男の表情は曖昧で、
はっきりしたものは何も読み取れない。久慈は呆然としてその横顔を見つめた。
「久慈さん、僕の支給品、」
濱中がバックパックに手を入れ、見慣れた物体を久慈の前に差し出す。
真新しい白球である。ただ、その表面には楷書体で『井川』と書かれていたのだったが。
僕はこれを思い切り投げることもできないんですよ、と濱中は穏やかな口調で言った。
[濱中おさむ:サインボール]
【残り43人】
職人さん乙です。濱ちゃん・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
井川のサインボールはワラタw
第十二章・それぞれの理由
なぜ自分は生きているのか。
なぜ自分は死んでいないのか。
“生きる意味がない…”と、本気でそう思った。
負けないために創り出されたのに、負けてしまった。
その事実は、おのれの存在を否定するものだった。
何故彼は自分を殺してはくれなかったのだろうか。
いっそのこと殺してくれればよかった。
まさに生き地獄とはこのことであろう。
存在意義を砕いてなお止めを刺されずにいる自分は、文字通り生ける屍だった。
あまりに惨めな自分を客観的に捉えたとき、ふとしたことで理性が返ってきた。
バースはゆっくりと状態を起こし、眼の焦点の合わぬまま手探りで左眼に巻かれている眼帯を外す。
その激痛はあらゆる感覚を殺し、もはや痛みを感じない。
凄惨極まりない状況を理解したとき、不意にバースの顔から気力が失せた。
もうどうでも良い。
なるようになれだ。
このまま行き着く先まで生き恥を晒してくれる。
そう思い、ゆっくりと瞳を閉じた時――
――ゴツッ!!――
失ったはずの感覚がほんの一瞬だけ、鈍痛とともに蘇り―――そしてすぐにまた失われた。
午後四時。
台風の一過した壬午園球場は、先日までの悪天候とはうってかわって小気味良い快晴となった。
「でかいクチ叩いてたわりに、終わりは呆気ないもんやな」
目の前で横たわったまま、ついに動かなくなったバースを見て今岡は口元を吊り上げた。
渾身の力を籠めて叩き込んだせいで、木製のバットには深い亀裂が入っている。
「ああ、なんや。殺してもうたんか。そうか。助かるわ。手間が省けたわ」
その時、方角にして東、距離にして20メートルの地点から声が掛けられた。
振り返るまでもなく今岡は、それが岡田の声であると気づいた。
「よう、今岡。元気しとるか」
「…何の用や」
今岡は露骨に顔をしかめると、岡田はそれを察して苦笑した。
「ああ、ええで。そんな顔せんでも。みんなわかっとるわ」
「あ…?」
「知りたいんやろ? この大会が開かれたわけを」
岡田はニヤリと気色の悪い笑みを顔中に浮かべて、今岡を見た。
普通の人が見たら、即座に身の毛がよだつ思いをするであろうその顔を見ても、今岡は眉一つ動かさずに仏頂面のままだ。
「ええで、教えたるわ。お前だけにやで。ちょっとだけやで」
「…………」
別にそんなことは知りたくもないし聞いた覚えもないのだが、話すのならば聞くまでだと今岡は警戒を解かぬまま岡田の言葉に耳を傾けた。
「この大会が開かれたのはな、チームを元の状態に戻すためやったんよ」
岡田の放った言葉の意味が、すぐさまの理解にはつながらなかった。
訝しげな表情を岡田に向けると、岡田はいかにもおかしそうに体を揺らした。
「もともとの、弱い、阪神よ」
「なに…?」
“弱い”という岡田の言葉が癪に障ったようで、今岡は思わず眉を吊り上げる。
「ちゃうちゃう、お前が想像してるようなこととは、ちゃうんよ」
岡田は間の抜けた表情で、聞いてもいない問いを否定した。
その様は、今岡の反応を楽しんでいるようにも見える。
「…どういうこった」
「首脳陣を殴り飛ばして、金を出させて、それで選手を連れてきて優勝する。そんなのは、簡単なことよ。特に、優秀な監督に言わせてみればな」
ピンとくることがあったようで、今岡はそれ以上口を開かず、黙って岡田の話を聞いた。
「阪神タイガースはな、それがあかんから優勝できひんかったんや。そやけど、それをやったら優勝できた。要はそれだけのことなんよ」
「チームを優勝させて、そしてすぐにあの御方は引退し、連覇と日本一の夢はオレに託された」
「強い投手陣、爆発できる打線。それを託されたオレはご満悦や。ええトコどりやもん。V2なんてシーズン前から決定的やった。そやけど、邪魔なやつがおんねん」
野村、か…?
そう思った今岡は、その考えが即座に確信に繋がり、声に出して聞いた。
「野村か」
「そらそうよ。野村よ。奴は言ったんよ。“巨人と阪神は違う。阪神が巨人みたいになったらあかんのや”ってな。邪魔やで、今更そんなこと言われても困るんよ。結局優勝は逃したわ。全部あいつのせいなんよ」
今岡は考えた。
目の前の岡田の言うことをすべて鵜呑みにするわけにはいかないが、もしすべてが真実なのだとしたらそれはどういう意味なのだろうか、と。
「今、オレと野村は、対立しとるわ。もちろん水面下よ。実際はそんな素振りは見せへん。ボヤくだけや。そやけどな、奴はついに動きよった。それがこの大会よ」
「……!」
今岡は眉をピクリと反応させ、一瞬だけ表情を変えた。
「オレは反対よ。オレのチームの選手同士で殺し合いなんて。必死に反対したわ。そやけど無駄やった。この話にはな、黒幕がおんねん」
「黒幕? 野村か?」
「野村やない。あの御方や。あの御方がこの大会を開くことに賛成したんよ。あの御方がそう言ったら、オレには何もでけへん。それからすぐにオーナーが暗殺され、この大会が始まったんよ」
なるほどな、と今岡は心の中で呟いた。
あの野村が自分の意志で、これほどまでに過激な行動に走るとは思えなかったが、気性の荒いあの男ならば有り得ないとは言い切れない。
そう言えばあの男、この大会の始まる時もまるで姿を見せなかった。
まさか無関係というわけではあるまいと踏んでいたが、そういう裏があったわけだ。
「腰巾着め」
あの男の言うがままに動く岡田に、侮蔑の意味をこめてそう言った。
「なんとでも言うがええわ。ここまでのシナリオはだいたいそのままや、ほぼ完璧よ。あの御方の思惑どおりよ」
いかにも自信満々の表情でそんなことを言えるのも、岡田は未だに矢野と藪のイレギュラーを知らないからだろう。
もし、今更ながらにその事実を知ればその顔を醜く歪めることだろう。
その頃、当の藪と矢野は高山を引き連れて甲子園球場へと訪れていた。
普段は多くの客で賑わうこの球場も、今日という日は猫一匹見つけられなかった。
もちろん、今夜ここで阪神タイガースの試合が行われることは決してない。
阪神タイガースは解散した、と岡田監督は大会開始前に言っていた。
勝手な話だ。納得した覚えは無い。
こちらの都合も考えろと言いたい。
こっちには明確な目標だってあるのだ。
それを無視して「はい、終了」だなんて馬鹿げてる。
こちとら阪神タイガースの御大将などと、おだてられてきた身だ。
こんなところで諦めるつもりは毛頭ないのだ。
殺し合いが始まり、今日で三日目だ。
もう賽は投げられ、壬午園球場のほうはすでにのっぴきならぬ所まで来ている。
こちらとしてみれば、もう三日。だが世間的に見てやれば、たかだかまだ三日だ。
これから辿る事の顛末は、もはや誰にも推し量れまい。
それでもまだきっと間に合う、どうにかなる。
俺たちは俺たちで、すべきことがあるはずなのだ。
――というようなことを思ってここまで足を運んだのだが、それをいちいち口に出して言うのは面倒だし、言うまでもなく矢野も察しているかも知れないので、敢えて語らずに藪はここまで来た。
「今日という今日は身に染みる。一瞬先の命の保障があるこの瞬間こそが、平和ってやつだろうよ」
「そやな」
矢野は素っ気無くそう返した。
訝る藪が矢野の顔を覗くと、矢野は険しい顔で遠くを見ていた。
別におかしい話ではないが、虫の居所でも悪いのか。
「ここでは…仲間同士で殺し合いなんてしないんやろうな」
「ん…? ああ、まぁそうだな」
「アホやで。おちょくっちょるんとちゃうか。有り得へんて」
「そうだな…」
そんなことは分かりきっていることだし、これまで何度も語り尽くしてきたことだ。
それを敢えてもう一度言うということは、矢野なりの感慨があったのだろう。
「こんなところに居ましたか」
その時、元・大会運営委員であり野村の側近でもあった高山が二人のもとに近づいてきた。
何かの資料らしきものを持っている。
「興味深いものを見つけました」
「何だ、それは」
「おそらく星野前監督が、大会前にまとめた資料でしょう」
「星野監督? あの人もこの大会に関与しているのか? そんなことは聞いていないぞ」
「聞くまでもなく気付くと思いますが? あの単細胞が争いごとに首を突っ込まないわけがないでしょう」
皮肉るような口調で高山は言った。
やけに扇情的な口ぶりに二人は違和感を覚えたのだが、それは高山の恩師である野村と星野の仲が悪いことに起因することを知らないためである。
「まぁええわ。それより、なんて書いとるん?」
「どうやら、星野前監督が岡田現監督に送った指令書といったもののようですね。書いている内容を主に要約すると、とにかく殺戮を繰り返せと書いてあるばかりで、明確な目的は記されていませんね」
「…にわかには信じられんな」「アホちゃうか」
矢野と藪はほぼ同時に呟いた。
「あなた方にとって、星野前監督は恩師に当たるでしょうから、そう思うのも自然でしょうか。ですが、ここに書いてることは恐らく真実です」
「…星野監督が」
「何でや。一体、そんな真似して何の意味があるっちゅうねん」
「意味なんてあるのか無いのか、おそらく“楽しいから”とでもいったところでしょうか。彼にとって、人を殺す理由はそれだけで充分です」
「許せんな…」
藪は呟いた。
小さな声ではあったが、逆にそれは深い憤りを感じさせるものだった。
「高山」
「なんですか、藪選手」
「お前はどこまで知っている」
真剣な表情で自分を見据える藪に、高山は今更隠す気はないとでも言いたげに両手を挙げると、暢気な顔で言って見せた。
「おそらく全て知っていますよ。星野の企みも、我がボスのしようとしたことも」
「どうすれば止められる」
「いいえ。今更止めようなんて、あらゆる方法を考えても不可能ですよ。切って落とされた火蓋を元に返すことはできません。ただ、放っておいても、全滅すればおのずと止まるでしょうね」
「ふざけるな、真面目に答えろ」
怒りを露わに話す藪に、高山は口を尖らせながら「私は至って真面目なんですがね」とボヤいた。
「でしたら実際会って、話してみたらどうですか?」
「――は?」
「星野前監督とですよ。会いに行って、やめろと怒鳴りつけてやれば良いでしょう」
「どこにいるのかわかるのか」
「もちろん。これに書いてありますから」
そう言って高山は、その資料を自慢げにひけらかした。
「この資料によると、彼は大会が始まってから一週間後、つまりあと四日後ですね。四日後に壬午園球場を訪れるそうです。そして、その為の作業を現在行っています」
「………」
「行きますか?」
「ああ」
「今すぐですか?」
「ああ」
「そうですか、では行きましょう」
三人は、すぐに黒塗りの車に乗り込んだ。
ども。
新スレ立ってましたね、乙です。
なんだか中途半端なところで止めてすみません。
あんまりレス消費するのもどうかなと思って…
49氏、328氏ともに乙です!
両方とも続きがかなり気になる…
328の作品では、まだ始まってから3日しか経ってないんですね。
いろんなことがあったから、もう1週間くらい過ぎてるような気がしてました。
作家さんたち、いつもお疲れ様です。
126 :
代打名無し@実況は実況板で:
あげますね